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+】(メ ´_ゞ`) Channelers

167名も無きAAのようです:2014/10/12(日) 17:46:18 ID:cOEaN73k0
ドクオが去ってから5レスで反撃の一手を繰り出せるレベル

168名も無きAAのようです:2014/10/12(日) 18:21:51 ID:nI5rleiY0
.
 まほろばの丘に、兄者はたたずんでいた。

 輻射熱は確かに身体を包んでいる。
 だが不思議と、危機感はない。
 穏やかなあたたかみを感じさせる、陽光のごとき光が広がっていた。

 ひらり、ひらり。
 花びらが舞うように、雅やかに、数多の影が揺れ落ちる。


(メ  _ゝ ) 「……」


 幻惑的な光景も、やがておぼろに揺らぎ、溶け。
 光の霧散とともに、すべては掻き消えた。

 あとは元通り、荒れ散らかった倉庫の殺風景な像が結ばれ。
 静寂がおとずれる。


『 ぐ…… 』


 やがて苦悶が響いた。
.

169名も無きAAのようです:2014/10/12(日) 18:23:06 ID:nI5rleiY0
.
 散り散りに床へ落ちた札の中に、ただ一枚だけ。
 中心部分にいびつな穴の開いたものがあった。


/ ゚、。 / 「……う、くっ」


 声の主は、大腿部を押さえてよろめいた。
 白い生地に、じわり、濃い赤が滲む。

 鈴木ダイオード。
 彼の脚をかすめた、念動力の弾丸は。
 横倒しの簡易テーブルに炸裂し、天板の中央へ、亀裂を生じさせていた。


(メ ´_ゝ`) 「わお。 当たっちった」


 対峙する兄者は、奇妙な体勢でそこにいた。
 左腕を前方に伸ばし、指先はVサインを形作っている。
 もう片腕は招き猫のように曲げ、手のひらを下向きに、顔の真横へ添えられていた。

 彼の左前方、ダンボール箱の端が、僅か燻っている。
 ” 放電現象 ” の回避。
 そして反撃。

 倉庫内を包む光の中で──兄者は、それらを同時にやってのけた。
 その事実を理解したダイオードは、微かに顔を曇らせる。
.

170名も無きAAのようです:2014/10/12(日) 18:24:16 ID:nI5rleiY0
.
/ ゚、。 / 「……あんた、のーりょくの射程距離は……3メートル半は」

(メ ´_ゝ`) 「限界じゃないぜ? 自制だよ。
       勝手に勘違いしたのは、そっちだしー」

/ ゚、。 / 「……!」


 たじろぐ敵の10メートルほど先で、
 兄者は、にいっと歯を見せて笑った。

 左手のVサインを、さらにぐっと突き出す。
 ぐにゃり。
 二本の指が可動域を越え、有り得ない方向へ変形した。

 ダイオードは眉を顰めた。
 が、すぐに気づく。
 念動力の収斂により、周囲の空間が歪んで見える所為なのだと。


(メ ´_ゝ`) 『 届かないと思った? ざんねん 』
.

171名も無きAAのようです:2014/10/12(日) 18:25:16 ID:nI5rleiY0
.
 兄者は右手を伸ばした。
 緩慢に、一つ一つの動作を見せ付けるように。
 左手のVサイン部分を摘むと、腕に沿って、ゆっくり右手を引き絞る。

 すると景色が不自然に捩れた。
 輪郭がぼやけて判然としないが、目を凝らせば、
 念動波の集合体が、細長いゴムのように伸びてゆく様が見て取れる。


/ ゚、。 / 「撃ち抜いたんだな。 ソレで」

(メ ´_ゝ`) 「御名答」


 通常の波動攻撃に比べ、初速の向上。
 飛距離拡張。
 それらに伴う、威力の倍増。


(メ ´_ゝ`) 「 “ スリング ・ ショット ” 」


 サイキック ・ エネルギーの凝縮波。
.

172名も無きAAのようです:2014/10/12(日) 18:26:18 ID:nI5rleiY0
.
 波動を凝縮する分、衝撃面は縮小する。
 が、そんなものはデメリットの範疇に入らない。

 ドッヂボールをぶつけられることと、ゴム銃で撃たれること。
 どちらがより脅威的か、考えるまでもない。


/ ゚、。 / 「──確かに、射程距離を見誤っていたのはスズキのほうだケド」

(メ ´_ゝ`) 「?」

/ ゚、。 / 「つっても、そんなもん大したネタでもないケド。
       3メートル半という射程限界を誇示していたのは、
       油断を誘う作戦だったんだろ。 ならば」

(メ ´_ゝ`) 「なんだよ」

/ ゚、。 / 「一撃で仕留められなかった、オマエの負けだ」

(メ ´_ゝ`) 「やけに饒舌じゃねーかっ」


 周囲の景色を乱反射する波動体は、
 すでに不可視とはかけ離れた、禍々しいオーラを放つ球と化していた。
 引き絞った右手の指を解放すれば、すぐに推進力を与えられることだろう。
.

173名も無きAAのようです:2014/10/12(日) 18:28:23 ID:nI5rleiY0
.
σ゙/ ゚、。 / 「来な、サイコキネシスト」

(メ ´_ゝ`) 「───そうさせてもらうぜっ!」


 札の投擲と、念動弾の射出はほぼ同時だった。
 両者は吸い込まれるように中央へ飛来する。

 貫ける。
 兄者が確信した瞬間、札を中心として、赤く平たい衝撃波が展開された。

     て
(メ ´_ゝ`) そ 「げっ」


 透過性の高い、可視光によるシールド。
 つまりそれは、

      て
(メ;´_ゝ`) そ 「うお!? ふにゃ、くそッ!」

       リ フ レ ク ス
 ───“ 反射能力 ” 。
 ダイオードの導き出した、スリング ・ ショットへの最適解。
 飛ばした札は、兄者を狙ったものではなく、念動弾を弾き返すためだった。
.

174名も無きAAのようです:2014/10/12(日) 18:30:01 ID:nI5rleiY0
.
(メ ´_ゝ`) 「ずっりぃ! でもさー……」

                        リフレクション
 その意味を即座に理解した兄者は、“ 反射弾 ” を、


(メ#´_ゝ`) 「ワンパなんだよなっ!」

/ ゚、。 / 「!」


 難なくかわした。

 すぐに体勢を整え、Vサインを作る。
 右手を添え、ぎりぎり引き絞るモーションのあと、第二弾が発射された。


 〜 〜 〜
.

175名も無きAAのようです:2014/10/12(日) 18:42:54 ID:nI5rleiY0
.
【 ダイオードサイド: 第三倉庫奥 ・ 壁側 】


 対するダイオードは、札を放てる構えになかった。
 辛うじて、手元にて “ リフレクス ” を展開。
 だが、そこでの跳弾はまたも兄者に避けられた。


/ ゚、。 / 「くっ、アンタ────」

(メ ´_ゝ`) 「“ 組み合わせる ” 暇なんて、与えねー!」


 スムーズに攻撃姿勢へ移り、念動弾を放つ。
 反射現象の逆進性と、その軌道の正確性を、相手はすでに理解していた。

 ダイオードがこれまで用いてきた “ リフレクス ” は、特殊だ。
 攻撃系PSI対策として、ちょっとしたアレンジが施してある。

 反射現象(リフレクション)で生まれる跳弾に、入射角と反射角の概念がないのだ。
 テレキネシスは、仮にどの角度から衝突しようとも、
 そのままの勢いで、真逆の方向へ跳ね戻される。
.

176名も無きAAのようです:2014/10/12(日) 18:44:22 ID:nI5rleiY0
.
(メ#´_ゝ`) 「見切ってんだよッ!」


 波動は射出位置、つまり発生点目掛けて正確に返ってくる。
 軌道は一定、目指す座標は、常にひとつ。
 ならば。

 “ 反射 ” を察知した瞬間、軽く体を引く。
 たったそれだけで、兄者は跳弾を回避することができる。

 しかもこれは、 “ 猪鹿蝶 ” のように、周囲を無差別に飛び交う札とは違う。
 シールド展開座標は、あくまでダイオードの手元付近。
 よしんば札を放ったところで、数メートル前方が関の山。

 “ 反射現象 ” を視認したあとで動いても、
 兄者はそれを悠々避けることが可能だった。


/ ゚、。 / 「くっ」


 “ リフレクス ” による反撃が無駄だと知ると、
 ダイオードは回避へと行動をシフトする。
.

177名も無きAAのようです:2014/10/12(日) 18:45:47 ID:nI5rleiY0
.
 ゴム銃を模した念動弾攻撃は、ダイオードの位置へも届く。
 すでに安全圏などない。
 それは二人の立場が五分になったことを意味している。

 札を飛ばし、飛ばされた札を弾かれ、攻撃を避ける。
 壁に沿って移動し、距離を保ちながら札を繰り出す。


(メ;´_ゝ`) 「いってぇ! このっ……!」


 兄者はときおり被弾する。
 “ 避けきれない ” パターンも生まれつつある。
 ダメージは確実に蓄積しているはず。

 だが、ダイオードは形勢の悪化をひしひしと感じていた。


/ ゚、。 / (こいつ……!)


 それもそのはず。
 兄者は超能力の応酬の中、ダイオードとの距離を着実に詰めてきていた。
.

178名も無きAAのようです:2014/10/12(日) 18:46:48 ID:nI5rleiY0
.
 札の雨に苦悶する。
 ときおり炎に体表を焼かれる。
 電撃に絶叫する。

 なのに──兄者は、斃れない。
 札をあらかた弾き飛ばし、
 隙を見せれば、容赦なく念動力の弾丸で反撃してくる。


/ ゚、。 / 「ちっ……」

(メ ´_ゝ`) 「捉えたぜ!」


 倉庫内は広々としているが、移動可能な空間には限界がある。
 積み荷がところどころ崩れた状態ではなおさらのこと。

 念動弾を避ける際、箱に足を取られた。
 兄者が一気に間合いを詰める。
 腕を引いた。 サイコキネシスによる殴打の構えだ。

 ダイオードは咄嗟に “ ブローフ ” を展開。
 自身を吹き飛ばすことで、無理やり横移動を試みた。
 追撃を避けるべく撒いたパイロキネシスは、兄者の肩口に赤い柱を灯した。


(メ;´_ゝ`) 「あっっっちぃぃ! てめっ、こンの……っ!」
.

179名も無きAAのようです:2014/10/12(日) 18:48:24 ID:nI5rleiY0
.
 兄者はそれを慌てて掻き消している。
 思ったとおり、大したダメージも感じさせることなく。


(メ#´_ゝ`) 「鍔迫り合いもできねぇくせに、サムライ名乗ってんじゃねー!」

/ ゚、。 / 「……五月蝿い」


 ダイオードの誇りに切り込む一撃だった。
 受身の体勢で歯噛みする。  が、態度には出さない。
 この程度の挑発には乗れない。

 サイコキネシスは、それだけ危険なPSIなのだ。
 発生するエネルギーは、不可視の暴力装置といっても過言ではない。
 ときに刃物となり、万力となり、凶弾となる。

 その上、制御が難しく、暴走しやすいというやっかいな特徴を持つ。
 能力が発現した途端、頭蓋の内部を、ぐちゃぐちゃにかき混ぜられて死んだ者もいる。
 念動力の刃で、ミキサーにかけられたかのように。


/ ゚、。 / 「……む」


 弾き飛んだパイロキネシスが、天井付近で爆発した。
 落下した蛍光灯を、兄者は身を翻してかわす。
.

180名も無きAAのようです:2014/10/12(日) 18:49:58 ID:nI5rleiY0
.
 ガラスと木屑の降り注ぐ中、ダイオードはサイコキネシストと正面から対峙した。


(メ ´_ゝ`) 「最終ラウンドっつったところか」

/ ゚、。 / 「……」


 そうかも知れない。

 距離と物量によるアドバンテージを生かし、
 じわりじわりとダメージを与えてきたつもりだ。
 だが、兄者の耐久性は想定以上だった。

 もうすぐ札が尽きる。
 先ほどはとうとう接近まで許した。
 認めたくないが、形勢は覆ったものと考えていいだろう。

 決定打が必要だ。
 ここでとどめを刺さねば、ヤツのタフネスに押し切られる。


/ ゚、。 / 「いいだろう」

(メ ´_ゝ`) 「そーこなくちゃな」


 紙片を構え、ダイオードは神経を研ぎ澄ます。
.

181名も無きAAのようです:2014/10/12(日) 18:51:12 ID:nI5rleiY0
.
/ ゚、。 / (遊びは終わり。 ここで蹴りをつける)


 とっておきの必殺技があった。
 既に下準備は済ませてある。

 エレキネシス、パイロキネシス、ブローフ、シンクロノス。
 4種類もの超能力の “ 関連付け(リレイト) ” 。

 ブローフ── “ 拡散 ” による威力の減少を、
 攻撃系PSIの重ね合わせで補ったそれは、
 最悪の範囲攻撃といっていい。


/ 、 / 「いざ、尋常に」


 なお、パイロキネシスとエレキネシスは、
 “ 同調させる能力(シンクロノス) ” を “ つなぎ ” に使わないと “ 関連付け ” できない。

 とはいえ、4枚の札それぞれが、その効力を持つことにはならない。
 効果の現れる札は、あくまで1枚に限られる。
 だが、その威力は折り紙つきだ。
.

182名も無きAAのようです:2014/10/12(日) 18:52:20 ID:nI5rleiY0
.
 これでシンクロノスの札はストック切れ。
 それ以前に、今のダイオードの体力では、一度放つのが限界の大技だ。
 正真正銘の切り札。


(メ ´_ゝ`) 「へへん。 構えだけはいっちょまえだなっ」


 加えて、周囲には猪── “ リフレクス ” を撒き散らしている。

 先ほどまで使っていたものとは違う。
 反射角を広く設定した、“ 乱反射専用 ” 札だ。


/ ゚、。 / 「……」


 サイキック ・ ファイナルウェポン。

 拡散 ・ 乱反射するエレキネシスによって、庫内は巨大な電撃殺虫機と化す。
 同時に炸裂するパイロキネシスの連弾。
 辺りは火の海に包まれ、電灯、電子機器の類は全て破壊されるだろう。

 サイコキネシスで防げる代物ではない。
 バリアでも展開できれば別だろうが、これまでの兄者の戦い方を見る限り、
 それは不可能だろうと、ダイオードは確信している。

 良くて大火傷。
 場合によっては、死。
.

183名も無きAAのようです:2014/10/12(日) 18:53:35 ID:nI5rleiY0
.
/ ゚、。 / 「覚悟はいいか? これで、本当に終わり」

(メ ´_ゝ`) 「そのキレイな顔をフッ飛ばしてやる!」

/ ゚、。 / 「やってみろ」


 兄者はぐっと腰を落とし、駆け出した。


(メ#´_ゝ`) 「おおおおおおおおお!」


 伸ばされた左手。
 V字の指先に生まれた念動弾を番え、ゆっくり右手を引く。

 練成された波動がここまでの弾性を持ち、かつ形状を保っているという事実に、
 ダイオードは眉を顰める。

 サイコキネシス。
 やはり、悪魔のPSIだな。
.

184名も無きAAのようです:2014/10/12(日) 18:54:20 ID:nI5rleiY0
.
/ ゚、。 / (死んでくれるなよ)


 ここで遭ったも何かの縁。
 超念動能力────レアモノ────、絶対に手に入れてみせる。


(メ#´_ゞ`) 「うおおおおおおおおおおおあああああああ!!」

        リ レ イ ト
/ ゚、。 / 「“ 関連付け ” ────【 雨四光 】 」


 交差した腕の先。
 計四枚の札が怪しく輝くと、蔦のような光の糸で紡がれた。


 〜 〜 〜
.

185名も無きAAのようです:2014/10/12(日) 19:01:58 ID:nI5rleiY0
※今回少し長い。残りは明日投下します。

186名も無きAAのようです:2014/10/12(日) 19:02:18 ID:3KGbP5j.0
おっうつううう

187名も無きAAのようです:2014/10/12(日) 19:07:05 ID:/UnYkplo0
おっつんおっつん

188名も無きAAのようです:2014/10/12(日) 19:09:20 ID:4Q7NJdgo0
乙!
ドクオ消えてすぐ形勢逆転してワロタ
兄者つえーわ

189名も無きAAのようです:2014/10/12(日) 19:10:52 ID:FHIvLUpo0

激アツだな

190名も無きAAのようです:2014/10/12(日) 21:10:45 ID:ztrSKY6M0
チャネラーきてたこれで勝つる

191名も無きAAのようです:2014/10/13(月) 00:06:10 ID:47OggJDU0

明日も期待

192名も無きAAのようです:2014/10/13(月) 10:48:39 ID:.r1.tOSY0
ドクオさんの挽回チャンスがあると信じてるおつ

193名も無きAAのようです:2014/10/13(月) 17:53:04 ID:8ijslF5w0
.
【 しぃ ・ クーサイド: 広域農道路上 】


 猫塚しぃは、VIP学園に通う2年生だ。
 成績は上の中といったところ。
 生徒会では会計補佐をつとめている。

 色白の肌にショートカット、身長は平均よりだいぶ低い。
 華奢で、小柄で、童顔。
 容貌は妖精と称される程度に整っており、魅了される者も多い。

 あとはまあ、ちょっとだけ人よりよく食べるかも知れない。
 それ以外は、いたって普通の高校生だといえる。
.

194名も無きAAのようです:2014/10/13(月) 17:54:56 ID:8ijslF5w0
.

(l|l*>−<)


 そんな彼女は、今夜。






(l|l*>−゚)



爪l|l 〜 )



川 ゚ д゚)



 トラックを止めた。

.

195名も無きAAのようです:2014/10/13(月) 17:56:24 ID:8ijslF5w0
.
(*゚ο゚) ゙ !


川;゚ -゚) 「や……」


爪; 〜 ) 「……やりやがった」


 素手で。


 彼女の抵抗の軌跡は、
 奇妙に長いS字状のブレーキ痕となって、路面に刻まれていた。
.

196名も無きAAのようです:2014/10/13(月) 17:57:08 ID:EttilP5I0
いつのまにこんなに更新が!!

197名も無きAAのようです:2014/10/13(月) 17:57:09 ID:8ijslF5w0
.
川;゚ -゚) 「……はぁ」


 停止したトラックの後部を数メートル先に見やり、
 クーは短いため息をついた。
 気を抜くと、その場にぺたりと尻をつきそうになる。

 間一髪だった。
 暴走するトラック上にしぃの姿を見たとき。
 彼女が何をしようとしているのか、クーは瞬時に理解した。

 すぐさま路肩の用水路へ飛びつき、
 クーは流れる水を掻き飛ばした。
 そして、荷台の通過するであろう路面を、薄い水の幕で覆った。


川;゚ -゚) 「……まったく、信じられんことをする」


 車輪を無くした台車は、アスファルトへ直に接触する。
 が、ボード部の摩擦はハイドロプレーニングにより緩和され。
 長い制動距離を経て──トラックは、制止した。

 彼女のフォローがなければ、しぃの荷台は地面の摩擦に耐え切れず、
 一瞬で宙を舞っていただろう。
 トラックは、私が止めた。
.

198名も無きAAのようです:2014/10/13(月) 17:59:11 ID:8ijslF5w0
.
川;゚ -゚)


 クーの頬に冷や汗を伝わせた張本人は、
 車の脇にしゃがみ、マグロのしっぽをタイヤ下に押し込んでいる。
 ……車止め、らしい。

 無謀に次ぐ無謀。
 虫も殺さない風貌で、よくもまあこんな綱渡りをやってのけるものだ。
 クーは呆れ顔で、しぃの小さな背中を見た。


川 ゚ -゚) (────だが)


 そういうヤツは嫌いじゃない。

 黒髪をかき上げ、斜め後ろに流す。
 腰に手をあて、目を細めて、小さくつぶやいた。

 超人め。
 後でひたいに米って書いてやる。

 その直後、トラックのドアが開き。
 憔悴しきった表情の男が、よろよろ這い出してきた。


 〜 〜 〜
.

199名も無きAAのようです:2014/10/13(月) 18:01:27 ID:8ijslF5w0
.

/ ゚、。 / 「!!」


 血飛沫が上がった。

 威力 ・ スピード ・ 射程距離。
 全てが向上した隠し玉、一点集中型サイコキネシス ・ シュート。

 被弾。
 兄者の必殺技は、無表情なコピー能力者に、苦痛の喘ぎをもたらした。


/ 、 / 「─────な、ぜ、アンタが────」


 今までとほぼ同じモーション。
 が、念動弾が射出されたのは、肩の横まで引き絞った右手ではなく。


(メ ´_ゝ`) 「へへっ。 かかったな」


 軸──パチンコのY字フレームを模した、左手の先からだった。
 兄者は指先をふっと吹き、おどけて見せる。
.

200名も無きAAのようです:2014/10/13(月) 18:03:04 ID:8ijslF5w0
.
 前方へいっぱいに伸ばし、ピースを形作っていた左手。
 右手に凝縮した念動弾を飛ばすための台座。
 もしくはフロントサイト(照準器)──そう思われていた、二本の指。

 その指先が瞬時に閉じ、ピストルと化した。

 ダイオードは、マズルを見誤った。
 凝縮した波動を飛ばすのに、ゴムの張力は必要なかった。
 むろん、兄者が故意にそう思わせていたのだが。

 左手の指先に力を集中し、スリング ・ ショット予備動作中に、射出。
 これまでより早いタイミングで発射された念動弾は、
 札を投げたダイオードが体勢を整える間もなく、その肩へ吸い込まれたのだ。


/ ゚、。l|l/ 「ぐっ、ううっ」


 そして。
 “ 雨四光 ” とやらは、発動しなかった。
.

201名も無きAAのようです:2014/10/13(月) 18:04:24 ID:8ijslF5w0
.
 その理由を知るには、前段として、ダイオードの能力の性質を理解する必要がある。

 ポーカー勝負の際、ダイオードはいちどロッカーを装着したはずだ。
 しかし、花札やちんぽっぽ人形など、おもちゃにコピーされた超能力は消えていなかった。
 (ブーンの能力──アポーツにおける “ アクティブ状態 ” は消えてしまったというのに)

 つまり、アンチ ・ サイ能力をもってしても、
 ヤツのアイテム──コピー済みの能力について、リセットは不可能だと推察される。

 ……だが。


 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−


  / ゚、。 / 「発動タイミングはある程度操作できるケド」


  / ゚、。 / 「どっちにしろ、扱えるのはスズキだけ」


 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−


 札に封印された“ 他人の超能力 ” を “ 起爆 ” させるのは、ダイオード自身のチカラだ。

 アイテムのリモート ・ コントロールそのものが、こいつの超能力によるものならば───!!
.

202名も無きAAのようです:2014/10/13(月) 18:06:42 ID:8ijslF5w0
.
【 ドクオサイド: 第三倉庫 ・ 外窓付近 】


(#'A`) 「俺が触れている限り、お前はその力を行使できない!」


 “ 点火 ” の瞬間は、封じることが可能。


:::/ ゚、。;/::: 「オ、マエ……!!」


 俺は窓枠から乗り出した体勢で、
 ダイオードの首に巻きつけた腕を、さらにねじり上げた。
.

203名も無きAAのようです:2014/10/13(月) 18:08:13 ID:8ijslF5w0
.
(メ ´_ゝ`) 「ドクオ」

:::( 'A`)::: 「あん?」

(メ ´_ゝ`)b 「GJ」

(;'A`) 「……いいから、早くこいつを何とかしてくれっ」


 暴れこそしないものの、俺の腕を剥がそうとするダイオードの握力は強まる一方だ。
 くそ……やっぱいてえ。 マジいてえ。

 ジャケットのおかげで傷は浅かったが、
 メスの刺さりまくった袖には点々と血がにじんでいる。
 右腕が疼き、熱が強まる。 この姿勢は長く持ちそうにはない。


:::/ ゚、。;/::: 「……逃げたんじゃ……なかった……のか」 ギリギリ


 間もなく、床に散った “ 雨四光 ” は全て、
 入り口シャッターの外へ弾き飛ばされた。
.

204名も無きAAのようです:2014/10/13(月) 18:10:43 ID:8ijslF5w0
.
:::(;'皿`)::: 「ピンと……きた、からなっ」 イテテ


 さっきの兄者の言葉を思い返す。
 全てはあの一言から始まっていた。


 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−


     (メ ´_ゝ`) 「中は……おれ一人で大丈夫だ。
            お前は行け! 早く!」


 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−


 “ ここは ” ではなく “ 中は ” 。
 違和感のある言い回しだ。
 倉庫の入り口へ、きびすを返した瞬間、俺は気づいたのだ。


('A`) 「外から回り込め、って事だろうとな」


 あの後俺は、足音を殺し、倉庫の外周を移動した。
 そして、窓から慎重に中の様子を伺いつつ、機を待った。
.

205名も無きAAのようです:2014/10/13(月) 18:12:41 ID:8ijslF5w0
.
 サイコキネシス対策として、ダイオードは常に、兄者と一定の距離をとっていた。
 必然的に、壁際へ位置取る回数は多くなる。

 壁に沿って移動するダイオードを、
 兄者はスリング ・ ショットによって、巧みに誘導していた。

 入り口シャッター以外に存在する、もう一つの進入口。
 棺桶死が登場時に破壊し、枠まで吹っ飛ばしていた、
 がらんどうの──この、開いた窓のほうへ。


/ ゚、。;/ 「うぐ……くっ」


 というより、最後はダイオード自ら、こちらへ移動している節もあった。
 “ 雨四光 ” とやらがどういった能力か知らないが、
 こいつの話しぶりからして、相当威力のあるワザだったに違いない。

 とすると、こいつは巻き添えを恐れ、脱出を考えていたのかも知れない。
 ……俺が軒下へ待ち構えているとも知らずに。

 罠ってやつは、抜け道に張ることで、最大限の効用を生むもんだ。
.

206名も無きAAのようです:2014/10/13(月) 18:16:07 ID:8ijslF5w0
.
(;'A`) 「!」


 などと考えているうちに。
 ダイオードは肩を震わせながら、右手に摘んだ札の切っ先をこちらに向けた。
 俺は驚いて腕を放す。


     て
/ 、 / そ 「がっ!?」


 だが、ダイオードの身が解放されることはなかった。
 俺の腕から逃れたヤツの体は、瞬間的に後方へ吹っ飛び、壁に磔にされたからだ。
 苦渋に顔を顰めるダイオード。 とうとうその鉄面皮が剥がれた。

 兄者が右手をかざしたまま、一歩ずつ近づいてくる。
 両腕を念動力で押さえつけているらしい。
 サイキック壁ドンとでもいったらいいのか。


(メ ´,_ゝ`) 「よっ。 捕まえたぜ」


 もがくサムライの眼前に立つと、
 ぼさぼさ頭のダークヒーローは、にぃっと微笑んでみせた。
.

207名も無きAAのようです:2014/10/13(月) 18:17:44 ID:8ijslF5w0
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/ ゚、。;/ 「くおっ……オマエ、一対一(タイマン)を望んでたんじゃ」

(メ ´_ゝ`) 「卑怯だと思ったかい? 悪いな、期待に副えなくて。
       そもそも俺とアンタじゃ “ 正々堂々 ” の解釈が違うみたいだ」


 人差し指の銃口を、ダイオードのこめかみに当て。
 『 BANG 』 とささやいてみせる。
 いちいち面倒くさいヤツだが、今はこのオッサンヒーローこそが頼みの綱だ。


(メ ´_ゝ`) 「俺にとって正々堂々ってのは、弾丸(タマ)の投げ合い、ぶつけ合いじゃねえ。
       肉体同士の殴り合い以外にねえんだよ。
       アンタがお望みなら、最初から付き合ってやってたぜ」


 左手で、ぐっと拳を握って示す。
 無駄なアクションのたびに拘束が解かれるのではとヒヤヒヤするが、
 伸ばした右手一本で、相手の両肩を押さえつけ続けることが可能らしい。
.

208名も無きAAのようです:2014/10/13(月) 18:19:46 ID:8ijslF5w0
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(メ ´_ゝ`) 「ちなみに、おれがねらーになってからの十数年間──。
       喧嘩(ガチンコ)での戦績は、29戦29敗だ」

/ 、 ;/ 「!!」


(メ ´_ゝ`) 「うち姉者5回、母者7回」 ボソ


 聞かなかったことにする。


(メ ´_ゞ`) 「そう、おれは────」


『 “ 正々堂々 ” 闘って、勝ったことは一度もない 』


(;'A`)


 とびっきり何の自慢にもならない事実を吐いて。
 孤高のサイコキネシストは、深く腰を落とした。
.

209名も無きAAのようです:2014/10/13(月) 18:20:44 ID:8ijslF5w0
.
(:::::::_ゞ`) 「──はなから、ガチンコで挑んでたら」


/ 、 ;/ 「ぐぅ……っ! 離っ……」


 俺は窓枠の特等席から、その様子をしっかり目に焼きつけていた。


/ 、 ;/ 「くああああああああああああああッ!!」



          『  いくらでも、勝てただろうにな  』



 見えない拳が、サムライヤロウの長身を、打ち上げる瞬間を。



 〜 〜 〜
.

210名も無きAAのようです:2014/10/13(月) 18:22:19 ID:8ijslF5w0
.
【 タムラサイド: 広域農道 路上 】



爪;゚〜゚)


 トラックから降りた鈴木タムラは、きしむ関節をだましだまし歩いた。
 めまいがする。
 膝を折りそうになりつつ、必死にこらえる。

   リ  ア  ク  ト  ン
 “ 反作用を操る能力 ” を発動した。

 トラック前部──キャブ部分にかかる “ 反作用を、増大した ” 。
 “ サイアミーズ ” のモンスター ・ パワーだけじゃない。
 トラックは、俺が止めた。


爪;゚〜゚) (おめでてえヤツめ!
      オレがチカラを使ってなきゃあ、今頃は……!)


(;*゚ο゚) ゙


 トラックを襲った小さな怪物を、
 タムラは噛み付きそうな表情で睨みつける。
.

211名も無きAAのようです:2014/10/13(月) 18:23:23 ID:8ijslF5w0
.
 が、以外なことに。


(;*゚ー゚) 「……やりました」


 当の怪物は、くしゃっと表情を崩した。


爪 ゚〜゚) 「え」


 タムラはぽかんとその様子を眺める。
 空気が弛緩した。


(;*^ー^) 「えへへ……」


 怪物ははにかみながら、胸の前で控えめなピースサインをつくった。
.

212名も無きAAのようです:2014/10/13(月) 18:25:56 ID:8ijslF5w0
.
爪;゚〜゚) 「は、あは、え……?」


 なんだこりゃ。
 どーいう状況だよ。
 意味わかんねェ。

 タムラはこの時、いつの間にか自分が頬を緩めていることに気づいた。
 朗らかな少女の笑顔に、おずおずと、親指を立てて応える。


(*^ー^)


 それを見た怪物は、これまた照れくさそうに、
 ちょんちょん、とピースの刃先をあわせる。


爪 ゚〜゚)
.

213名も無きAAのようです:2014/10/13(月) 18:26:48 ID:8ijslF5w0
.
『 ぷっ 』


 自然に笑い声が漏れた。
 タムラの笑いにつられるように、少女も破顔し、肩をすくめる。


(*^ー^) 「えへへへ……ふふっ」

爪*゚〜゚) 「へ……へへっ」


 どちらともなく近づき、こつん、と拳を合わせた。


『 あはははははは! 』


 誘拐犯と、被害者の妹。
 相対する関係の二人は、夜空に笑いあう。

 共同作業で、大事故を回避した。
 達成感すら覚えている。
 タムラは前髪を掻き上げ、ひときわ大きく笑った。
.

214名も無きAAのようです:2014/10/13(月) 18:28:05 ID:8ijslF5w0
.
 意味わかんねェ。
 なーんで絆されてんだ、オレ。

 でも、愉快だ。
 久しぶりに心から笑った気がする。


(*^ワ^)


 不思議だ。
 さっきまであんなに恐ろしい相手だったのに。
 目の前で、こんな表情されちゃあな。


爪* 〜 )


 あーあ、俺の負けだわ。
 なーんか、ぜんぶ、どうでもよくなったー。

 報酬のことは気がかりだが……もう、これで終わりでもいっか。
 タムラはそう考え始めていた。
.

215名も無きAAのようです:2014/10/13(月) 18:29:31 ID:8ijslF5w0
.
(*^ー^) 「あはは……さて、それじゃっ」


 が。












(#*゚∀゚) 「戦闘かいしだぁぁあぁあぁ!!」


     て
爪l|l゚〜 ) そ 「えぇ─────!?」



 相手も同じ考えでいてくれるかは、また別の話だ。



 〜 〜 〜
.

216名も無きAAのようです:2014/10/13(月) 18:30:49 ID:8ijslF5w0
※もうちっとだけ続く。 20時くらいに戻ってきます。

217名も無きAAのようです:2014/10/13(月) 18:39:11 ID:P3PHNX9E0
支援

218名も無きAAのようです:2014/10/13(月) 19:58:26 ID:UAfNONEA0
期待

219名も無きAAのようです:2014/10/13(月) 20:13:47 ID:8ijslF5w0
.
【 ドクオサイド: VIP港 倉庫街路上 】


 どこか信じがたい光景だった。

 ノーヘルでバイクに跨るスーツの男は、
 一瞬だけこちらを振り返ると、無言のまま走り去った。
 俺たちは肩で息をしつつ、小さくなるヤツの姿を見送る。


(;'A`) -3 「だぁぁああぁもう! 何やってんだよっ!」

(メ;´_ゝ`) 「いやーまさかなー。 まだあんなに動けるたぁなー」

(;'A`) 「この……ポンコツヒーロー……!」


 敗走する原付サムライ……鈴木ダイオード。

 兄者が能力を解除した途端、それは起こった。
 まさに一瞬の出来事だったのだ。

 追い詰めたのはこちらだが、
 いきなり逃げ出すようなキャラだなんて、思ってもみなかった。
.

220名も無きAAのようです:2014/10/13(月) 20:14:33 ID:8ijslF5w0
.
(;'皿`) 「で、どーすんだよこれから!」

(メ ´_ゝ`) 「追う! 当然じゃ!」

(;'A`) 「あ!? ……ああ、ですよねー」

(メ ´,_ゝ`) 「追跡なら任せな!
       こーゆーこともあろうかと、
       さっきあいつが倒れた時、胸ポケットに小型のGPS発信機入れてやったぜ」

(;'A`) (マジかこのオッサン)


 なんと準備のいい。
 ピンチ時には美味い豚汁を作ってくれそうだ。

 兄者に促されるまま、よろよろ駆け出す。
 第三倉庫から少し離れた場所に、一台の車が駐車してあった。
 ボロボロの軽。 恐らくは彼のものだろう。

 兄者に続き、俺も隣に乗り込む。
 勢いに合わせてシートが軋む。
 まったくもって、満身創痍の俺たちにぴったりの乗り物だ。
.

221名も無きAAのようです:2014/10/13(月) 20:16:24 ID:8ijslF5w0
.
( 'A`) 「んで」

(メ ´_ゝ`) 「んー?」

(;'A`) 「……なんで俺が運転席側なんだ?」


 導かれるまま飛び込んだのは、右側。
 目の前にはハンドルが、これまたボロいカバーに包まれている。


(メ ´_ゝ`) 「おれがナビゲートしなきゃ始まらんだろーよっ。
       できるんだろ? 運転」


('A`)


(メ ´_ゝ`)


('A`) 「まあ……………………
    …………………………
    ……うん………………
    ……………一応は……」


(メ*´_ゝ`)⊃ 「れっつらごー!」
.

222名も無きAAのようです:2014/10/13(月) 20:17:06 ID:8ijslF5w0
.
 嬉しそうにそう叫んだあと、兄者は棺桶モバイルを後部座席から取り出し、
 くるんと片手に構えた。
 こちらはイミテーションではなく本物のほうだろう。

 ……横から覗きこむと、パネルには確かに、
 VIP港を中心とした路線図と、道に沿って動くマーカーが表示されている。

 マジか。
 マジかよこのオッサン。
 なんなんだよ、今日のこの、目まぐるしい出来事の数々は!


(;'A`) (ええいもう、乗りかかった船だ!)


 実際は船じゃなく、オンボロの軽だが。

 ポセイドンや黒服はとっくの昔に消えていた。
 しぃちゃん達は他の誘拐犯を追っている。
 しかるに、俺だけ港でのほほんと待っているわけにもいくまい。

 あまりに色々なことがありすぎて、頭はすでに、正常な思考を放棄している。
 長い夜になりそうだ。
 実に三年近く連載しているような印象だ。

 エンジンと数回格闘したのち、俺はアクセルを踏み、倉庫街をあとにした。


−−−
.

223名も無きAAのようです:2014/10/13(月) 20:18:47 ID:8ijslF5w0
.

(l|l ゚_ゝ゚)



( ゚A゚)


 数十分後。
 俺たち二人は、ひしゃげたガードレールの横で固まっていた。


(l|l ゚_ゝ゚)


( ゚A゚)


(l|l ゚_ゝ゚)


( ゚A゚)


(l|l ゚_ゝ゚) 「ペーパードライバーなら……先に……言え……」


( ゚A゚)
.

224名も無きAAのようです:2014/10/13(月) 20:21:54 ID:8ijslF5w0
.
(l|l _ゝ ) 「……そして、何故、止まらんの……?」


( ゚A゚)


(l|l _ゝ ) 「なんで加速するの……? なんで逆走するの……? バカなの……?」


( ゚A゚)


( ゚A゚) キコエ……ナクテ……


(l|l;゚_ゝ゚) 「何百回止まれって叫んだと思ってんだ!」


( ゚A゚) アセッテ…… ブレーキ ドッチカ ワカラナクナッテ……
.

225名も無きAAのようです:2014/10/13(月) 20:24:04 ID:8ijslF5w0
.
 ひとしきり叫んだり、暴れたり、頭をかきむしったりしたあと。
 兄者はため息をつきながら、右手を俺に差し出した。


(メ;´_ゝ`)つ 「……まあいいや。 ほれ」

( ゚A゚) ……ハイ

(メ;´_ゝ`) 「ひとまず目的地には着いたんだ、ガムでも食って落ち着こうぜ……」


 一応弁解しておくが、俺が停車させた路肩のガードレールは元々ひしゃげており、
 事故ったわけではない。

 まあ……いつそうなってもおかしくなかったというか、
 下手な絶叫マシン顔負けの数十分だったけど。


( ゚A゚) ……アリガトウゴザイマス


 依然前を向いたまま、やけに薄いガムを受け取る。
 開きっぱなしの口に運ぶと、甘酸っぱいいちごフレーバーが広がった。


(*'A`) (あ、おいちー)


 いやに口どけのいいガムだ。
 舌の上でとろりと柔らかくなったそれを、噛むことなく飲み込んだ。


(メ;´_ゝ`) 「なんじゃこりゃ? ソッコー溶けたぞ。 味もち悪ぅ〜〜」


('∀`) 「……」


('A`) 「ん!?」
.

226名も無きAAのようです:2014/10/13(月) 20:25:31 ID:8ijslF5w0
.
(メ ´_ゝ`) 「なんだかんだ言いつつ、もう一枚もらうんですけどね」 パク

('A`)


 ……そして気づく。
 俺はこれを、何度も口にしたことがあるという、その事実に。


('A`;) 「……アンタ、これ、どこから……」

(メ ´_ゝ`) 「ん? ガム? おまえの上着のポケットだけど?」

('A`)


 ……。
 ……。

 それはガムじゃねええっ。
 そう言ったつもりの声は、言葉として成立していなかった。
 呂律が回っていないことに気づき、口元を抑える。


��(゚A゚l|l) 「う、ぐっ!?」


 次の瞬間。
 内側から揺さぶられるような感覚をおぼえ、俺はシートに前かがみになる。
.

227名も無きAAのようです:2014/10/13(月) 20:27:51 ID:l.kjh7q.0
久々のドクミか……支援

228名も無きAAのようです:2014/10/13(月) 20:28:13 ID:8ijslF5w0
.
 ああ、これは。

 目の前がスパークし、世界はぐにゃぐにゃと歪んでゆく。
 全身を襲う、寒気と、熱と、痛みと、快感と。
 体をバラバラにされ、再構築されるような、なんとも言えない感覚に襲われる。


『 う、ぐ、あああっ 』

( メ´_ゝ`)?



『 ああっ、うあ……ああああっ 』

     て
( メ ゚_ゝ゚) そ !?



『 やめ……見るなっ、……あああぁぁ! 』

;(;;;゚_ゝ゚);


===
==

.

229名も無きAAのようです:2014/10/13(月) 20:29:22 ID:8ijslF5w0
.
 ─── ようやく眩暈が収まったところで。

 伸びた髪をかき上げ、僕は兄者に食ってかかった。


从 □ ;リル 「勝手に! 何っ! ……食わせてんだぁっ!」

(メ  _ゝ ) 「生命の神秘を見た……」


 襟を掴まれ揺さぶられる兄者は、
 呆けた表情で僕のほうを見ている。


从 △ ;リル 「……はぁ、はぁ……ああもぅっ」


 手を離した。
 両腕を交差させ、ふた周りほど小さくなった身体を抱えこむ。
 先ほどまでなかった弾力が、窮屈そうに、二の腕を押し返してくる。

 背もたれに身を投げ出した。
 衣の擦れる不快感に身を捩る。
 こんなタイミングで……なんて、聞いてない。
.

230名も無きAAのようです:2014/10/13(月) 20:32:24 ID:8ijslF5w0
   ,_
从゚、゚;リル 「動きにくい身体にしてくれて。 責任とれっ」

(メ ´_ゝ`) 「責任て……まっこと意味がわからないんだが……」

从'、`;リル 「服装とかサイズとか……こう、色々あるんだよ、このカッコは」

(メ ´_ゝ`) 「あ、思い出した」


 兄者はぽんと両手を打つ。


(メ ´_ゝ`)つ¬ 「実はだな!
          こんな時のためにって、服なら預かってたんだった」

从゚△゚;リル 「はぁ────!?」


 なんだそりゃ。
 わからん。
 本気で意味がわからない。

 兄者は、後部座席から一枚の手紙と紙袋を掴み上げた。
 首を傾げつつそれを受け取ると、僕は手紙を開いた。
.

231名も無きAAのようです:2014/10/13(月) 20:34:50 ID:8ijslF5w0
.
 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−


   ( ‘ω‘)
    ニーチャンへ
    突然アレがソレになっちゃった時のために、服は用意しておきましたお
    いざとなったら使ってくださいね   ぶーん


 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−


从'。`;リル 「……マジか。 気が利くっつうかなんというか」


 聞けば、僕が気絶していた間(28話)、ブーンが内緒で兄者に預けておいたらしい。
 兄者が車で来ることがわかっていたとはいえ、用意周到すぎやしないか。


从'、`;リル 「まーいーや。 じゃあちょっと着替えて……」


 ぶつぶつ言いながら紙袋の口を開き、固まった。


从・x ・リル


 ……服。 確かに入っている。
 でも、なぜ。
 普段着じゃ、ない。
.

232名も無きAAのようです:2014/10/13(月) 20:36:46 ID:8ijslF5w0
.
 綺麗に折りたたまれた状態で、紙袋に収められていたもの。
 それは、メイド服。

 先日までバイトしていた、クーの知り合いの店の……
 フレンチ仕様の、例の、あれだ。


(((メ;´_ゝ`) 「どうした? ……げっ、コレ……」


从 皿 ;リル (あのヤロ───────!)


 ……二度と身に着けることなどないと思っていたのに。

 ご丁寧なことに、靴と下着まで入っている。
 わざわざタンスから掘り出してくれたのだろうか。
 ありがとう弟……後で教育的指導。

 同じメイド服でも、ブーンの所持する例のアレじゃないあたりが確信的だ。
 あっちのほうが布面積も広いのに。 暖かいのに。
 たぶん汚されるのが嫌なんだろう。
.

233名も無きAAのようです:2014/10/13(月) 20:38:32 ID:8ijslF5w0
.
从-、-;リル 「……もういい。 着る。 今の服よりは動きやすいだろ……」

(メ ´_ゝ`) 「おう、早くしてくれよな」


从-。-;リル 「はぁ……」 グイ

从゚、゚;リル ハッ

(メ ´_ゝ`) ?


从゚皿゚;リル 「出てけっ!」


 兄者を車から押し出し、紙袋に手を突っ込む。




ε-(´く_`; ) 「なんだってんだ一体……」

   ,_
从゚、゚;リル ガチャッ

(メ;´_ゝ`)彡゙ 「うお!? な、なに!?」

从///リル 「ごめん、ちょっと、その……」


 ……途中で一度ドアを開け、背中だけ止めてもらった。


 〜 〜 〜
.

234名も無きAAのようです:2014/10/13(月) 20:39:26 ID:8ijslF5w0
.
【 ドクミサイド: VIP市臨海部 ・ 旧工業地帯 (ソーサク1丁目) 】


 背負った星空の清澄さとは対照的に、
 目的の廃ビルは、禍々しい佇まいを見せていた。

 荒涼とした隣の空き地から見上げる。
 奥側には、似たような廃ビル、廃屋が数軒連なっている。
 むろん、周囲に人気はまったくない。

 四階だろうか。
 一箇所だけ明かりのついた窓がある。
 ヒーローおやじのぼさぼさ頭越しに、そちらへ目を凝らす。

   ,_
从゚、゚;リル 「……」


 窓付近に人影は見えない。
 メイド衣装にジャケットを引っ掛けた姿で、僕は身を震わせた。

 この寒い中、なんでこうも場違いな格好してるんだろう。
 公開処刑も甚だしい。
.

235名も無きAAのようです:2014/10/13(月) 20:40:23 ID:8ijslF5w0
.
(メ ´_ゝ`) 「どうする?」

从゚、゚リル 「何が?」

(メ ´_ゝ`) 「入るのか、入らないのか」

从'。`リル 「あ、ああ……」


 GPSの移動反応はこのビルで止まり、その後途絶えていた。
 キーホルダーは、ここで発見 ・ 破棄されたと考えていいだろう。

 それだけでは、ダイオードがビル内に留まっているかはわからない。
 だが、建物の脇で例の原付を発見し、疑念は確信に変わった。

 間違いない。
 ヤツは今、この中にいる。

 クー達からの連絡はない。
 正確には着信履歴が残っていたが、何度かけ直しても出なかった。
 留守録に場所を吹き込んでおいたものの、連絡があるまで待つべきだろうか。
.

236名も無きAAのようです:2014/10/13(月) 20:42:04 ID:8ijslF5w0
>>235訂正
×キーホルダー  ○発信機

237名も無きAAのようです:2014/10/13(月) 20:42:48 ID:8ijslF5w0
.
从 、 ;リル 「……行こう」

(メ ´_ゝ`) 「だよなっ」


 口から出た言葉に、自分で驚いた。
 以前であれば、わざわざこんな、危険に飛び込むような決断はしなかったと思う。
 無謀は重々承知の上で、湧き上がる好奇心を止められなかった。

 ポセイドン一味が、しぃちゃんの両親を手にかけた犯人だとは思えない。
 だが、チャネラーや超能力について、僕たち以上の情報を握っていることは間違いない。

 だから、ヤツを追う。
 しぃちゃん達のためにも、
 ……いや。


从 、 リル 「……」


 僕だってそうだ。

 結局のところ、手がかりを求めているのは、誰のためでもない。
 少年少女の手助けを──巻き込まれた風を装いながら。
 その実、僕は僕自身のために、糸口を欲している。

 知りたい。
 あのクスリは何なのか。
 僕のこの状態は─────僕は、誰なのか。
.

238名も無きAAのようです:2014/10/13(月) 20:43:35 ID:8ijslF5w0
.
从'、`;リル 「……オジャマシマス」

(メ;´_ゝ`) 「いーから早く入れよ」


 枠だけの入り口ドアを開け、僕たちは中に踏み込んだ。

 階段の電灯は点いたが、エレベータは使用できないようだ。
 唾を飲み込み、こわごわ階段をのぼっていく。

 結局、明かりが生きていたのは二階までで、三階以降は暗闇だった。
 兄者にくっついて進む。


从 □ ;リル 「わひっ!?」

(メ;´_ゝ`) 「ちょっ!? ……どんだけポンコツなんだ」


 たまに暗がりでコケそうになりつつ。

 窓が明るかったからといって、ヤツが四階にいるとは限らない。
 踊り場を含め、途中の暗闇に潜んでいる可能性だって充分ある。
 旧校舎を探索したときの記憶がよみがえり、足がすくむ。
.

239名も無きAAのようです:2014/10/13(月) 20:44:34 ID:8ijslF5w0
.
 目的の階層へはすぐに着いた。
 廊下は左右に伸びている。

 壁際にスイッチを発見したが、電灯の点く気配はない。
 携帯のライト機能を頼りに進むほかない。


(メ;´_ゝ`) 「!!」      ガタン>

从゚皿゚l|lリル 「ひょわ!?」


 その時、左方向から音が聞こえた。
 仰天した兄者が立ちすくみ、僕はその背中にひたいをぶつけた。


从゚□゚';リル 「ちょっと! 脅かすなよっ!」

(メ; ゚_ゝ゚) 「んなこと言っても! おれだって怖いもん!」

从 △ ;リル 「もんとか言うなよオッサン……」


 明かりのついていた部屋は、確か右側だ。
 どうする。
 どちらへ向かう。
.

240名も無きAAのようです:2014/10/13(月) 20:46:36 ID:8ijslF5w0
.
 あーだこーだ言い合ったのち、兄者先導のもと、左へ進むことにした。
 手分けして……とも考えたが、今ここで離れるのは得策ではない。
 僕は彼の後ろを、少し距離を空けて着いてゆく。

 きょろきょろと、後ろ側を何度も振り返りつつ歩を進める。
 いくら音がしようと、明かりのあった部屋は後ろ方向に間違いないのだ。
 背後からいきなり襲われてはたまらない。


从 、 ;リル (それにしても)


 この建物は何なのだろう。

 雑居ビルにしてはいささか大きい。
 露出した鉄筋と薄汚れた壁は廃墟としての雰囲気ばっちりだが、
 そもそもの用途がわからない。
.

241名も無きAAのようです:2014/10/13(月) 20:47:19 ID:8ijslF5w0
.
 廊下にはいちおう採光用の窓がある。
 ドアの形状はオフィスビルを思わせる。
 だが、その並びはアパートのようでもあり、ホテルのようでもある。


(メ;´_ゝ`) 「まだ奥があるのか……」 ボソ


 考えている間に、兄者との距離が開いてしまっていた。
 兄者は今にも廊下の角を折れようとしている。
 半身が暗闇に吸い込まれ、それに合わせて明かりも乏しくなる。


从'。`;リル 「あ、待って……」


 その時だった。
.

242名も無きAAのようです:2014/10/13(月) 20:48:05 ID:8ijslF5w0
.
/ ゚、。 / カチャッ


从゚、゚リル 「 」


 あまりにも、唐突に。


      て
从゚□゚|lリル そ 「─────!!」 バタン


 横のドアが開いたかと思うと。


(メ ´_ゝ`)彡 「え?  ……あれ?」


 悲鳴を上げる間もなく、僕はそいつに、部屋へと引きずりこまれたのだった。



(続く)

.

243名も無きAAのようです:2014/10/13(月) 20:49:23 ID:8ijslF5w0
.
※ 読んでくれてありがとう。

※ 「引き」が23話と被ってる。 この話はあとで修正するかも。

※ ポセイドン編はあと2話で終わりです。 長かったなぁ。
.

244名も無きAAのようです:2014/10/13(月) 21:01:48 ID:l.kjh7q.0


245名も無きAAのようです:2014/10/13(月) 21:10:40 ID:UAfNONEA0


246名も無きAAのようです:2014/10/13(月) 21:16:46 ID:ZN5GKNgY0
おつんこ

247名も無きAAのようです:2014/10/13(月) 23:56:25 ID:.r1.tOSY0
おつギコ達の動向が気になるね

248名も無きAAのようです:2014/10/14(火) 12:58:42 ID:T426ZR4k0
また萌え豚路線なのか…?

249名も無きAAのようです:2014/10/15(水) 14:10:23 ID:J6z9m/lA0
ドクミ久し振りだな
というか何年ぶりだ

250名も無きAAのようです:2014/10/18(土) 10:00:15 ID:cLu3SmwI0
クーの『特別製の水』ってまさか、おし…な訳ないか

251名も無きAAのようです:2015/01/11(日) 11:30:42 ID:fSQ04ccU0
あけおめ

252名も無きAAのようです:2015/03/27(金) 14:06:26 ID:U5wrDBt.0
勃起age

253名も無きAAのようです:2015/07/16(木) 18:25:21 ID:hG9himQE0
今度は一年後と予想

254名も無きAAのようです:2015/09/01(火) 21:27:05 ID:UN0Ntxk20
待ってる

255名も無きAAのようです:2015/09/14(月) 15:22:57 ID:flo5j5I20
余裕で待ってる

256名も無きAAのようです:2015/11/19(木) 21:22:33 ID:Cs35qH4U0
来るまで待ってる

257名も無きAAのようです:2015/11/21(土) 03:57:12 ID:OL53TzCk0
私は、あなたが「もう投稿しません。ここで終わりです」というまで、ずっと、ずうっと待ちます。
たとえそれが何年後だろうとも、何十年後だろうとも。
いつかこのお話の終わりがくるまで、そして終わりがきても私はあなたとこの作品のファンです。

どうぞ、のんびりと自分のペースで筆をお進めください。
……とはいえたまに生存確認なぞをしてくださると、少なくとも私は喜びます。

258名も無きAAのようです:2016/05/24(火) 02:07:46 ID:5gSg1vYE0
ぶひぃ!

259名も無きAAのようです:2016/11/20(日) 17:42:01 ID:oCDKsRH20
何をどう彷徨って辿り着いたかは忘れてしまったけど
今更全部読んでとても楽しませて貰いました
続き、お待ちしておりまう

260名も無きAAのようです:2016/11/20(日) 20:04:48 ID:Zt4HvyGQ0
ぶひひぃ!

261名も無きAAのようです:2017/02/19(日) 01:50:35 ID:T.94dJvw0
待ってる

262名も無きAAのようです:2017/02/19(日) 23:27:09 ID:6uUJM94U0
なっつwww
これも逃亡してたもんなー面白いのが続々逃亡で悲しくなるね

263名も無きAAのようです:2017/08/26(土) 15:51:18 ID:O0h13Jv60
連載開始から読んでたよ
今でも待ってるぞ

264名も無きAAのようです:2018/09/23(日) 22:43:02 ID:xsK9sR5M0
戻って〜〜


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