したらばTOP ■掲示板に戻る■ 全部 1-100 最新50 | |

( ^ω^)はしがない錬金術師のようです

1名も無きAAのようです:2014/03/31(月) 09:29:54 ID:VstccL4M0
ほのぼの近代ファンタジーもの

2 ◆Dl8RDFPb.U:2014/03/31(月) 09:30:42 ID:VstccL4M0
( ・∀・)「錬金術なんてもはや時代遅れですよ」

魔導テレビに映る顔立ちの整った男が、唐突にこう言った。

( ・∀・)「幾千幾万もの触媒を使い分けるなんて場所をとりますし、非効率的ですからね
      かつては、少ない魔力で様々なことができたんでしょうが、今は効率化と量産性の時代です。魔法も技術躍進によって省燃費化が進んでいますし…」

プツン、とテレビの電源が落ちた。いや、ひとりの男が電源を落としたのだ。

( ^ω^)「あれが世界一の大魔導師様の言うことかお」

ムスリとした顔の男は、狭く危ういバランスで保たれた部屋の中をなれた動きで移動し、椅子に大きく腰掛ける。
錬金術師特有の赤茶けたフードのせいで少し老けて見れるが、その顔はとても若々しい。

( ^ω^)「だいたいテレビもラジオも自動車も錬金術で作られたもんだろうがお…なーにが効率化と量産性の時代だお」

ぶつぶつと呟きながら、男は周囲にある様々な触媒。キノコだとか、魔法石だとかをかき集め、選別の作業に戻る。
錬金術には、質のいい触媒が必要だ。それを見極めるのはいつだって人の手である。非効率的と言われても仕方がない。

( ^ω^)「……」

男は黙々と選別を続ける。魔光ランプのほのかな灯りが彼の手元を優しく照らした。
と、その時だ

('A`)「ちーっす」

奥の…いや、彼から見て奥だが、あそこは玄関だ。まあそこの扉が唐突に開き、小柄な男が現れた。茶色の混じった剛毛な髪が目立つ。ドワーフ・クォーターだろうか?

( ^ω^)「あれ、ドクオ。今日は随分早いおね」

ドクオと呼ばれたそのドワーフ・クオーターは、おう、と返事をして、背負ったザックを床に下ろした。狩人が好んで使う、革製の丈夫なザックだ。

('A`)「今日は珍しいもんが採れたんでな。早めに切り上げて来たんだわ」

3 ◆Dl8RDFPb.U:2014/03/31(月) 09:31:32 ID:VstccL4M0
錬金術師の男はまた慣れた動きで玄関口へと移動し、どれどれと覗き込む。
ドクオは彼の顔をギリギリまで寄せてから、突っ込んでいた手をパッと引き抜く。

('∀`)「ほれ、アマメガラスの大羽根だ!」

( ^ω^)「マジかお!…で、どこに?」

(;'A`)「あ、あれ?」

彼が引き抜いた手には、何も掴まれていなかった。

(;'A`)「あれー?」

ドクオはザックを大きく開け、中を物色する。

('A`)「……どっかに落としてきた」

( ^ω^)「あのさぁ…」

(;'A`)「い、いや大丈夫!通ってきた道は覚えてる!どっかに落ちてるはずだから拾ってくるわ!」

言うなりドクオはザックを背負い飛び出していく。壁にかかったいくつかの薬瓶が危なげにカタカタと音を立てた。

( ^ω^)「あ、ちょうど日の出かお…」

錬金術師の男は開けっ放しのドアから東の山脈を見上げる。一歩外に出ると、すがすがしい朝の空気が彼を取り囲んだ。

( ^ω^)「うーん、気持ちのいい朝だお」

彼は一つ伸びをして、再び小屋の中へと戻った。その扉の上には「ブーンの錬金・まじない屋」と拙い文字で書かれた看板がかけられていた。

4 ◆Dl8RDFPb.U:2014/03/31(月) 09:32:12 ID:VstccL4M0



( ^ω^)はしがない錬金術師のようです。



.

5 ◆Dl8RDFPb.U:2014/03/31(月) 09:34:13 ID:VstccL4M0
( ^ω^)「…帰ってこねえお」

ブーンはアマメガラスの羽根を拾ってくると言ったきり帰ってこないドクオの身を案じていた。
アマメガラスといえば全長8メートルにも達する巨鳥だ。羽根は高級品で、東の山脈を更に越えた先でなければまともに手に入らない。
そんなものが道端に落ちてたとして、拾わない輩などいないだろう、ブラックマーケットにでも売り出せば相応の金になる。

( ^ω^)「まあこの村にそんな妙なことする人はいないとは思うけど…」

彼の住む村は都会から遠く離れた里山である。自動車が発明され各地への交通が楽になったとは言え、好んで来ようとするものは少ない。
逆に田舎暮らしを不便に感じ、出ていくものは多い。今はまだ問題視されてはいないが、いずれ我々の世界同様過疎化に苦しむ地区となるだろう。

(*゚ー゚)「ブーンくん、おはよう」

( ^ω^)「おっ、いらっしゃいませだお」

そんなことを考えていると、扉が開き本日一人目の客が現れた。若く、淑やかな雰囲気を醸し出す女性だ。

( ^ω^)「今日は何用かお?しぃさん」

しぃと呼ばれたその女性は、壁にかけられた薬品類を見つめながら、人差し指顎に当てて考える素振りをする。

(*゚ー゚)「最近ギコくんが食欲ないのよ、理由を聞いたら、『最近仕事が忙しくて疲れが取れないんだ』って…」

( ^ω^)「疲労回復かお、なら"リポミタン"か"オロミナン"がいいおね」

ブーンは立ち上がり、戸棚の中から黄色っぽい薬瓶を取り出す。

(*゚ー゚)「そういう直に疲労に効く系じゃなくて、食欲とかに効くものって無いのかしら?やっぱり自慢のご飯を食べてもらえないのは悲しくて…」

( ^ω^)「おー…なるほど、ちょっと待っててお」

6 ◆Dl8RDFPb.U:2014/03/31(月) 09:36:59 ID:VstccL4M0
ブーンは更に奥の方を探る。食欲増進の薬というのは無い、そんな人間の根本的欲求をコントロールすることなど不可能だ。
だが、間接的にそれを補うのならいくらでも方法はある。

( ^ω^)「これなんかどうですかお」

ブーンは奥から、どろりと濁った緑色の液体を出してきた。奥の冷蔵庫で冷蔵していた品だ。

(*゚ー゚)「七草クヮイン…?面白い名前ね」

( ^ω^)「お粥に入れて食べさせてあげてくださいお。あと残った場合は冷蔵保存お願いしますお」

(*゚ー゚)「分かったわ、ありがとねブーンくん」

しぃは瓶の側面に書いてあるお代を彼に渡すと、それをしげしげと見つめながら帰っていった。

( ^ω^)「食欲無いと言ったらやっぱ酸っぱいモンだお」

ブーンはポツリとそんな事を呟く。彼が渡したあの薬…いや、あんなもの薬でも何でもない、数種類の野草をすり潰したものに、レモン汁と調味料を混ぜただけのものだ。
豊富な栄養素と、サッパリとした味付け。これだけで人間の食欲は戻るというものだ。ああ言っておけばプラシーボ効果だって期待できる。

7 ◆Dl8RDFPb.U:2014/03/31(月) 09:38:01 ID:VstccL4M0
(;'A`)「お ま た せ」

( ^ω^)「その言い方はやめろ」

と、続いて入ってきたのはドクオだった。その手には彼の顔ほどもある大きな羽根が掴まれている。

( ^ω^)「おお…マジモンのアマメガラスの羽根じゃないかお、ちょっと痛んでるけど」

('A`)「元々落ちてた拾いモンだししゃーない、ここはアマメガラスの生息域と違うしな」

('A`)「で、これで何か作れねえか?レア物だろ?」

( ^ω^)「羽根だけじゃなんとも…まあ作れないこともないお」

(*'A`)「おお、見つけてきた甲斐があるってもんだぜ…なんか出来た日には俺にも試させてくれよな」

( ^ω^)「(自分から実験台に)なっていくのか…」

( ^ω^)「でも、出来るものなんてしょーもないものばっかだお?アマメガラスの羽根で出来てる一番有名なのは育毛剤だお」

('A`)「育毛剤…」

ドクオは自分の髪を撫でる。ドワーフの血が入った彼は、ゴワゴワとした剛毛の持ち主だ。毛根も強い。

('A`)「…いらねえな」

( ^ω^)「だと思ったお。まあ生き物素材だから使わないと痛むし、とりあえず作るけどお」

('A`)「この村に育毛剤がいる奴なんているのかね…」

( ^ω^)「さあ…」


新着レスの表示


名前: E-mail(省略可)

※書き込む際の注意事項はこちら

※画像アップローダーはこちら

(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)

掲示板管理者へ連絡 無料レンタル掲示板