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( ^ω^)は取り憑くようです
52
:
名も無きAAのようです
:2014/01/06(月) 02:01:18 ID:6pDYyCys0
こりゃ未練残るわ、成仏できん
53
:
名も無きAAのようです
:2014/01/06(月) 02:02:35 ID:m0DKhI/c0
乙
期待
54
:
名も無きAAのようです
:2014/01/06(月) 02:24:39 ID:bGWhBqjE0
乙
55
:
名も無きAAのようです
:2014/01/06(月) 03:12:13 ID:E.2Q0Sus0
おつ
笑えない死に方ですねぇ
56
:
名も無きAAのようです
:2014/01/07(火) 00:39:09 ID:Qs.BpFe.0
乙
ヘリカルが圧縮されやすいんだよね
57
:
名も無きAAのようです
:2014/01/08(水) 18:17:45 ID:KATAoqUY0
どきどきしますわ
58
:
◆MgfCBKfMmo
:2014/01/08(水) 22:06:11 ID:wbrnvMHg0
始めます。
59
:
◆MgfCBKfMmo
:2014/01/08(水) 22:08:12 ID:wbrnvMHg0
18歳のとき、ブーンはニューソーク市立の大学に入学した。
アスキー通りといった中心地からは離れているものの、市内でもかなり古く、広大な敷地を持つ大学だった。
早々に新入生の歓迎パーティが開かれ、ブーンもそこに出席した。
盛大にご馳走が振る舞われる宴会。1時間もすぎれば、だいたい会場でグループが出来上がっている。
ブーンはというと、出会ったばかりの若者たちと集まって、お酒を飲み合い遊んでいた。
(|!^ω^)「おえ……そろそろ休むお」
真面目に飲酒をするのは初めての機会だった。
お酒が自分に合わないことを理解したブーンは、その場にいた人たちを適当にあしらって外へ出る。
今となっては顔も覚えていない人たちだ。
宴会場は学校のすぐ傍で、ソーサック川沿いの通りに面していた。
パーティはどう見積もってもあと1時間は続くだろう。それまで川辺りで涼もうか。
痛む頭を抑えつつも、通りを横切り、堤を登った。
60
:
◆MgfCBKfMmo
:2014/01/08(水) 22:09:16 ID:wbrnvMHg0
眼下臨める川は、向こう岸の都心部からの光に照らされていた。
アスキー通りを含む市の中心地が、その光源となっている。原色の入り混じった節操のない光の帯だった。
堤防を降りれば小道にたどり着く。
洪水防止のための仕組みの上に空いたスペースを、散歩道に整備したものだ。
ところどころにベンチや小屋が置かれている。夜景を鑑賞したり、くつろぐことができる場所となっていた。
やや肌寒い風が吹き抜けていて、酒気が流されていく。ブーンは心地よく思った。
立ち止まって深く呼吸したのち、座れる場所がないかなと首を動かした。
ξ-⊿-)ξ
近くにあった、木造の簡易な小屋の中。
テーブルに向かい合う形で置かれている、長椅子の上。
彼女はそこに座っていた。
61
:
◆MgfCBKfMmo
:2014/01/08(水) 22:10:16 ID:wbrnvMHg0
目を閉じているから、眠っているのだろうかとはじめのうちブーンは思った。
でもそれは違った。眉間をつまむ彼女の指がじりじりと動くのが見えたからだ。
もう片方の手には携帯端末が握られている。耳からは離れているから、通話は終わっていたのだろう。
ついさっき通話を終え、その結果苦悶している。そう見て取れた。
ξ ⊿ )ξグスッ
ひとつ鼻をすすると、彼女は一層強く歯噛みし始めた。
「なんで……」という、か細い震え声がその口から出てくる。誰に向けたものでもないつぶやき。
それから、彼女は顔を下に向け、腕を組んで頭を覆ってしまった。
(|!^ω^)「…………」
彼女を見るのは初めてだったし。同じ大学かどうかも、そのときにはわからないでいた。
ほうっておくこともできたのだけど、どうしてかブーンの視線は、彼女から離れないでいた。
62
:
◆MgfCBKfMmo
:2014/01/08(水) 22:11:21 ID:wbrnvMHg0
気になるから――簡単に言ってしまえばそうなのだろう。
彼女が何に苦しんでいるのかわからない。
だけどどうにか力になれないだろうか。
( ^ω^)「大丈夫ですかお?」
気になったから、声をかけてみることにした。
彼女からの反応は鈍かったものの、ゆっくりと顔を持ち上げてくれた。
ξ;⊿;)ξ「ふえ?」
ぐしゃっと潰れた顔が現れたときには、さすがにブーンも驚いた。
そのときの彼女の姿は、これから先何年も、ブーンの頭から離れることはなかった。
63
:
◆MgfCBKfMmo
:2014/01/08(水) 22:12:15 ID:wbrnvMHg0
結局、パーティには戻れなかった。
後から主催者に多額の金額を請求されて、
これはひょっとして騙されているんじゃないかと思うこともあった。
しかし、残念ながら
今となっては誰が主催だったかも、ブーンは忘れてしまっていた。
.
64
:
◆MgfCBKfMmo
:2014/01/08(水) 22:13:25 ID:wbrnvMHg0
∇∇∇ ∇∇∇
∇∇ ∇∇
∇ ∇
( ^ω^)は取り憑くようです
Scene 2. そしたら彼は取り憑きました
∇ ∇
∇∇ ∇∇
∇∇∇ ∇∇∇
65
:
◆MgfCBKfMmo
:2014/01/08(水) 22:14:16 ID:wbrnvMHg0
(#゚ω゚)「ふっざけんなこの野郎!」
叫んで、ブーンはショボンに拳を振るう。
足で地面をける感触も無く、本当の意味でブーンはショボンに飛びかかっていた。
対するショボンはというと、がっかりした面持ちをしていた。
(´・ω・`)「せっかくおとなしくしてくれていると思ったのになあ」
言って、ひらりと身をかわす。ブーンの拳は空を切り、バランスが崩れた。
(#゚ω゚)「くっそ、この」
怒りは収まらなかった。
いきなり人の前に現れて、『お前は死んでいる』などと言われ、いい気分になる人はいない。
それ以外にも、腹をたてる理由があった。
こんなところにいるはずじゃないんだ。
自分はあの公園で待っていなくちゃならないんだ。
それなのに、死んでいるだなんて、よくもそんなことを――
こうした憤慨により、ブーンの内心は荒れていたのである。
66
:
◆MgfCBKfMmo
:2014/01/08(水) 22:15:24 ID:wbrnvMHg0
(´・ω・`)「落ち着いてくれ。殴ったところで私は痛くも痒くもないんだ」
暴れまわるブーンを前にしては、ショボンの様子は淡々としすぎていた。
そのために、ブーンの神経が逆撫でられる。
再びショボンを襲おうともがいたが、身体はなかなかいうことをきいてくれない。
この半身だけの身体に慣れていないことをブーンは痛感した。
ショボンが「ふう」と一息つく。
(´・ω・`)「僕達の今の状態はとても曖昧なんだ。この場所自体が現実とはかけ離れているからね。
よし、気分転換にここがいかに不可思議かを実例紹介してやろう。見ていなさい」
ブーンが鼻息荒く腕をバタバタふるうのを傍目に、ショボンは白い大地に両手をついた。
「えいっ」と気のない掛け声がして、とたんに大地が盛り上がる。
67
:
◆MgfCBKfMmo
:2014/01/08(水) 22:16:17 ID:wbrnvMHg0
(;゚ω゚)「え……」
こみ上げていた怒りが、薄れていく。
関心が目の前の現象に移ったからだ。
(;^ω^)「な、なんだお!?」
あっけにとられるブーンをよそに、白い地面がうねうねと動き始める。
理解を超えた光景を目の当たりにし、感情が追いつかなくなった。
白い地面は、思ったより柔らかいものだったのだろうか。
それが、かたまって、跳ねて、うごめく。
見た目では、紙粘土のようだ。見えない手でこねられているような様相を呈する。
ものの数秒で、形作られたのは、バーカウンターだった。
ご丁寧にワインセラーまで置かれている。
真っ白なので、着色前の模型のようにも見えた。バーの模型なんてものがあるのかはわからなかった。
とにもかくにも、地平線まで見える地に、バーの内装だけが鎮座している。
そのことは、異様というよりほかなかった。
68
:
◆MgfCBKfMmo
:2014/01/08(水) 22:17:27 ID:wbrnvMHg0
(´・ω・`)「椅子が足らないや」
そう言うと、ショボンは一度指を鳴らす。
白の地面が盛り上がって、カウンターに向かう形でひとつ丸椅子が現れた。
(´・ω・`)「お望みなら色合いも素材も変えられるよ。どれがいい?」
ブーンに何も言わせないまま、指が二度、三度、何度となく鳴らされる。
そのたびにカウンターが変化していく。黒、赤、メタリック、もこもこの何か――
(;^ω^)「待ってくださいお!」
ひたすらに置いて行かれる空気に嫌気が差して、ブーンが声を出した。
(´・ω・`)「あ、これね」
ショボンはその言葉を自分の質問への答えと受け取ったらしい。
バーカウンターは、木造のアンティークなものにおちつく。
69
:
◆MgfCBKfMmo
:2014/01/08(水) 22:18:29 ID:wbrnvMHg0
(;^ω^)「いや、別にカウンターはどうでもいいんですお」
はっきり言ってしまうと、ショボンは息を呑み、タレがちの眉が一層斜めになる。
思いの外ショックだったらしいが、構わずブーンは話を続けた。
(;^ω^)「なんでそんなふうに変化させられるんですかお。まるで魔法じゃないですかお」
(´・ω・`)「そんな大層なもんじゃないよ。曖昧な存在は適当に姿を変えられる。
君も数年この空間にいればできるようになるよ。まあ、それがお望みならばだけど」
さらりと言ってのけると、ショボンはふわふわ浮かんで、カウンターの内側に赴く。
バーテンがいるべき位置だ。客は一名。ブーンだけ。
(´・ω・`)「さて、注文を聞こうか」
(;^ω^)「……」
(´・ω・`)「酒は嫌いか。それじゃあミルクだな」
(;^ω^)「そういう意味じゃなくて! 確かにお酒は苦手ですけど」
70
:
◆MgfCBKfMmo
:2014/01/08(水) 22:19:15 ID:wbrnvMHg0
慌てて口をはさみ、頭を捻って言葉を探す。
目の前で起きているのは明らかに超常現象だ。
このショボンという男にしたって、普通ではない。
この状況をなんとか飲み込むために、納得できる説明が必要だとブーンは考えた。
( ^ω^)「もう少し細かく事情を聞いて構わないですかお?
やっぱりいろいろ気になるんですお。こんな、不思議なものを目の前で見ちゃったからには」
(´・ω・`)「ああ。もちろん、構わないよ。もう暴れたりしないと約束してくれたらね」
物腰柔らかく、ショボンがすすめてくる。
すでにブーンには、暴れる気などさらさらなかった。
呆気に取られているというのもあったし、自分がまっとうな人間でないという実感もある。
なにより、ショボンがそれほど悪人とも思えなかった。
冷静に話を聞いてみるべきだろう。
首を横に振ると、ショボンがほっとしたように肩を落とした。
殴られても痛くないと言いつつ、緊張はしていたようだ。
71
:
◆MgfCBKfMmo
:2014/01/08(水) 22:20:16 ID:wbrnvMHg0
ブーンが席に座る間に、ショボンはワインセラーの前で何度か指をパチパチ鳴らした。
飲み物を準備しているらしい。音が弾けると、棚の中にボトルが生えてくる。
頼んでいなかったが、本当にミルクを用意してくれていることがブーンにも遠目からわかった。
ブーンは肘をカウンターに乗せる。すると、身体が支えを得て安定した。
上半身が人間と同じだからだろう。そのことがブーンの胸を温める。
自分が死んだとなかなか納得できていなかったから、人間らしい振る舞いができたことにほっとしたのである。
ショボンがグラスを手に振り返ったとき、ブーンは口を開いた。
( ^ω^)「僕は本当に死んだんですかお?」
(´・ω・`)「うん」
(;^ω^)「…………」
即答されて、引きつるブーンの前にグラスが置かれる。中のミルクがたぷりと揺れた。
飲み物にすぐに手を付ける気にはなれず、ブーンは質問を続ける。
72
:
◆MgfCBKfMmo
:2014/01/08(水) 22:21:14 ID:wbrnvMHg0
( ^ω^)「あの、シベリアステートビルの瓦礫のせいですかお」
(´・ω・`)「たぶんね。君が死んだとき、君の身体周辺の景色を見ることができたのだけど
瓦礫が降り注いで燃え上がって、結構な騒ぎになっていたよ」
やや気になる物言いだったものの、瓦礫が落ちるのをブーンも実際に目撃していたので
ショボンの発言は信頼できる情報なのだろうと思った。
そう思い至ったからこそ、ブーンの気持ちは深く沈み込む。
(; ω )「…………そうですかお」
自分は本当に死んだのか。
認めてしまうと、なおのこと辛い。
言葉は続けられなくなって、ブーンは項垂れる。
喉の奥に様々な言葉が上り、這い出てこようとする。
だけどうまくまとめることができなくて、吐き気を感じるばかりになってしまった。
その様子を見かねてか、ショボンが「あー」と言う。
73
:
◆MgfCBKfMmo
:2014/01/08(水) 22:22:17 ID:wbrnvMHg0
(´・ω・`)「死んでしまってはいる。でもね、君はまだ中途半端な位置にいるんだ」
引っかかる物言いに、ブーンは再び顔を上げた。
( ^ω^)「中途半端?」
(´・ω・`)「うん」
それから、ショボンは長々と説明を続けた。
(´・ω・`)「ここはね、あの世とこの世の狭間。
あ、もちろんこの言い方は現実世界から見た言い方だよ。他にうまい言い方が無くてね」
ショボンがまず、腕を伸ばして上を指した。
(´・ω・`)「人が死んだらあの世に行く。行ったことがないので詳しくは知らないけど、なんとなくわかるでしょ?
だけど――ときにはあの世に一気に行けずに、この【狭間の世界】で立ち往生しちゃう人がいる」
上を向いていた指に、片方の手のひらが押し当てられる。
腕が押し戻されて、ブーンの目の高さまで落ちてきた。
74
:
◆MgfCBKfMmo
:2014/01/08(水) 22:23:17 ID:wbrnvMHg0
(´・ω・`)「なんでかというと、心がまだ現実世界に繋がっているからだ。
つまり、『未練』があるんだ。そいつがあの世への道を塞いでしまっている。
だけど身体は死んでいるから現実世界にも戻れない。そんな人が、この【狭間の世界】にやってくる」
ショボンの片腕がゆっくりと横に払われる。
バーの外の空間を示しているのだろう。この白黒の、【狭間の世界】そのものを。
あの世とこの世の狭間にいる。
突飛な話だが、今のこのフワフワした状態の説明に不思議とマッチしている、そうブーンは思った。
(´・ω・`)「君も、何か未練んがあるのだろう?」
問いかけられたときには、ブーンもすでに思い当たっていた。
75
:
◆MgfCBKfMmo
:2014/01/08(水) 22:24:15 ID:wbrnvMHg0
( ω )「未練……」
ブーンは、つぶやく。
゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙
ξ゚⊿゚)ξ
゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙
――――ツン。
未練といえば彼女しかいない。
思い浮かべた途端に、猛烈な感情がこみ上げてくる。
( ω )「あ……ありますお。もちろん」
短めに答えた。
あんまり話し続けると、嗚咽でかき乱されてしまいそうだった。
感情を無理やり、押し込める。
(´・ω・`)「ふむ……そうか」
76
:
◆MgfCBKfMmo
:2014/01/08(水) 22:25:23 ID:wbrnvMHg0
ショボンは顎を擦って目線を上に向ける。
続ける言葉を迷っているように見受けられた。
ややあって、ショボンが発言する。
(´・ω・`)「辛いかもしれないけど、率直に言うよ」
(´・ω・`)「その未練があるかぎり、君は成仏できずここを彷徨うことになる」
(|!^ω^)「え……」
まさかと思って聞き返したものの、ここでもまたすばやく、ショボンはこくりと頷いた。
77
:
◆MgfCBKfMmo
:2014/01/08(水) 22:26:18 ID:wbrnvMHg0
(´・ω・`)「そうだ。現実にもあの世にもいられないまま、エネルギーが尽き果てるまでここにいることになる」
(|!^ω^)「い、嫌だお! そんなの!!」
反射的にブーンは叫んだ。
首を外に向けると、真っ白な大地が目に映る。
この広大な場所で、ぽつんと存在し続ける。
考えただけでも寒気がする。
(´・ω・`)「嫌かい?」
(|!^ω^)「そんなの、当たり前じゃないですかお!」
78
:
◆MgfCBKfMmo
:2014/01/08(水) 22:27:12 ID:wbrnvMHg0
(´・ω・`)「……ちなみにどうやっても5,6年もすればエネルギー切れであの世に行けるよ」
急に話が切り替わって、ブーンは目を瞬いた。
(;^ω^)「そうなのですかお?」
(´・ω・`)「そう。僕が今それを実感しているからね」
ショボンの手のひらが、自らの胸に触れた。
「あ……」と、今更ながらもブーンは気づく。
この世界にいるということは……ショボンもまた、自分と同じ存在なのだ。
( ^ω^)「ショボンさんも、何か未練を残して死んでしまった人なんですかお」
(´・ω・`)「うん。もうここには6年ほどいるかな」
軽々と、彼は言ってのける。
何もない6年を想像して、ブーンは身を強ばらせた。
79
:
◆MgfCBKfMmo
:2014/01/08(水) 22:28:16 ID:wbrnvMHg0
(´・ω・`)「そんなに怖いかい?」
(;^ω^)「あ、いえ」
否定しようとしたものの、うまく言葉が続けられない。
その姿を見て、ショボンが力のない微笑みを浮かべた。
(´・ω・`)「あのね、何もずっと一人っていうわけじゃないんだ。
君や僕のように、【狭間の世界】に来てしまった人はそれなりにいる。
そういう人たちと話し合って未練を消すお手伝いをすることもあったんだよ」
(´-ω-`)「まあ、それでも6年間のうち、9割は独りでいたかな。ははは」
ショボンが目を閉じると、目尻の皺が際立った。
疲れ果てている。長い深い悲しみのせいで――
そう訴えかけてきているように、ブーンには見えた。
その悲しみが、6年の空白によるものなのか、
あるいはまた別の原因によるものなのかは、そのときのブーンにはわからなかった。
80
:
◆MgfCBKfMmo
:2014/01/08(水) 22:29:23 ID:wbrnvMHg0
( ^ω^)「……6年ということは、ショボンさんは、もうすぐ成仏するんですかお?」
途切れた話を戻す。
ショボンは「ん?」といって、目を開いた。
(´・ω・`)「ああ、そうだと思うよ。これだけ長くいるとだいたい感覚でわかるね。
なるべくエネルギーを使わないようにしているが、もってあと数日といったところだろう」
言って、それからわずかに上を仰ぎ見る。
遠くの何かに語りかけるかのように。
(´・ω・`)「でもね……私はできるだけ長く、ここに残っていたいんだ」
ブーンにとって、それは不可解な言葉だった。
ショボンはこの空間にいて、つらいと思わないというのか。
その意味を込めて首を傾げると、ショボンにもその意図が伝わったようで、彼は言葉を続け始めた。
81
:
◆MgfCBKfMmo
:2014/01/08(水) 22:30:31 ID:wbrnvMHg0
(´・ω・`)「『未練』というものを考えてご覧。
それは何かしら現実世界で持ち合わせた、悩みや苦しみ、後悔の名残だろう?
私の『未練』もおそらくそれなんだ。後悔が、罪の意識となって、私をここに縛り付けている」
(´・ω・`)「簡単に晴らせる代物でもないし、何より私は、その苦しみを忘れたいと思っていない。
出来る限りこの狭間に彷徨い続け、後悔し続けることが、せめてもの償いだと思っているんだ」
目尻の皺を見たときに感じた深い悲しみが、ブーンに思い起こされた。
そこに見えたものこそが、彼の『未練』そのものだったのだろう。
ショボンという人間の一片を耳にした、そんな気がした。
(´・ω・`)「君のはどうだい? どんな『未練』なのか、聞いてもいいのかな?」
82
:
◆MgfCBKfMmo
:2014/01/08(水) 22:31:24 ID:wbrnvMHg0
話がブーンに振られると、ブーンは「えっと」と声を漏らす。
自分の心に問いただす。
自分の未練――ツンのこと――を、忘れたいなんて思わない。
もしまだ許されるならば、彼女のことをまだ想っていたい。
たとえ人の身体が無くなったとしても。
再び、感情がこみ上げてくる。
先ほどは堪えた気持ちを、今こそゆっくり吐き出していく。
( ω )「…………プロポーズ、するはずだったんですお」
83
:
◆MgfCBKfMmo
:2014/01/08(水) 22:33:18 ID:wbrnvMHg0
予想したとおり、言葉尻が震えてしまった。
それでも構わず話を続ける。
( ;ω;)「ツンとは、大学一年生のときに知り合ったんですお。
初めて見た時、彼女は泣いていて。その様子が、とても気になって。
僕は彼女に声をかけて、話をしてみたんですお」
新年会のパーティの夜。
ニューソック川の川沿いの小屋の中。
泣いている彼女と出会ったときのこと。
( ;ω;)「彼女のお姉さんは何か事件に巻き込まれたらしくて、そのせいで周りの人に悪い噂を立てられていたんですお。
それをツンはずっと気に病んでいて。あのときもそのことに関して良くない連絡が来たらしく、荒んでいて……」
( ;ω;)「大まかな話だけしてくれたんですけど、それでもとても重たい話でしたお。
だけど、僕はどうしても彼女を気楽にさせてあげたいと思って、真剣に聞いて、受け答えをし続けましたお。
そうしたら、最後の最後に彼女が、笑ってくれて」
( ;ω;)「『この話を他人にしたのはあなたが初めて。またお話しましょう』って」
84
:
◆MgfCBKfMmo
:2014/01/08(水) 22:34:17 ID:wbrnvMHg0
また会うことができる。
彼女はブーンと会うことを望んでいる。
そのことが、ブーンに例えようのない幸福感をもたらした。
( ;ω;)「それから、彼女との友人関係が始まりましたお。
思えばこのときには、もう僕は彼女のことが好きだったんですお。
彼女の笑顔が大好きだったんですお」
ブーンは一呼吸をおいた。
すでに嗚咽もまじり、息も続きにくくなっていた。
でも、どうしても話したい。
そう思い、ミルクを一口飲んで、話を続けた。
( ;ω;)「ようやく告白できたのは、去年のことですお。そして一年付き合って、今日になって。
プロポーズのためにデートコースやプレゼントまで用意して、公園で待っていましたお。
そうしたら爆発が起きて……やっと、やっと彼女に想いを伝えられると思ったのに」
( ;ω;)「僕は本気で彼女を愛していて、本気で一緒に暮らしたいと思っているんだと、
そう、伝えられると思ったのに……なんでこんなことに……」
85
:
◆MgfCBKfMmo
:2014/01/08(水) 22:35:18 ID:wbrnvMHg0
ミルクに伸びようとする手が、途中で止まった。
ひどく震えていて、この手で持ったらきっと中身がこぼれてしまうと、朧げながらにブーンは自らを制していた。
その手は、方向を変え、ブーンの顔に押し当てられ、ひたすら涙を拭うのに使われた。
止めどなく流れてくる涙が、彼の手を溢れ落ち、カウンターにも滴っていく。
(´・ω・`)「…………彼女のことが、未練なんだね」
ショボンが静かに言う。ブーンの耳に、その音は染み渡った。
ブーンは鼻をすすりながらも、ひとつ大きく頷いた。
( つω;)「せめて、どうしてあの待ち合わせ場所にいなかったのかは知りたいですお。
いつもの彼女なら待ち合わせに遅れることなんてなかったのに。
どうしてあのとき、遅れてしまったのか。その理由だけでも知りたいですお」
死んでしまった悔しさが、ブーンの言葉を濁らせた。
あのとき、15分ほど待ち合わせ時間が過ぎていた。
その間にツンに何が起こっていたのか、今を持って、ブーンは知らない。
86
:
◆MgfCBKfMmo
:2014/01/08(水) 22:36:17 ID:wbrnvMHg0
(´・ω・`)「ふむ……」
ショボンが小さく唸る。
ブーンの話を聞いて、感慨に耽っているように、ブーンには見えた。
ところが、どうもそうではないようだった。
ショボンは眉根を寄せ、考え事をしている。
(´・ω・`)「晴らせないことも、ないか……?」
誰に問いかけるでもなく、ショボンがつぶやく。
ブーンもその言葉に気づいて、涙を拭って彼に意識を向けた。
それから短く息を吸って、ブーンへ視線を送る。
(´・ω・`)「……君はまだ、死んだばかりだろう?」
87
:
◆MgfCBKfMmo
:2014/01/08(水) 22:37:17 ID:wbrnvMHg0
( ;ω;)?
質問の意図はわからなかった。
( ;ω;)「それは、多分。僕の記憶も少しはあるし、ショボンさんが見た通りなら」
ブーンは首を縦に振る。
ショボンはまた「ふむ」と唸った。
(´・ω・`)「私はね、さっきも言ったように、ここへ来た人の成仏のお手伝いをして過ごしていた。
そのとき使っていた手法が、君にとって役に立つかもしれない」
ショボンの指が、一本突き立てられる。
ブーンが見ているうちに、その指が下へと向けられた。
白い地面へ、まっすぐに。
88
:
◆MgfCBKfMmo
:2014/01/08(水) 22:38:20 ID:wbrnvMHg0
.
(´・ω・`)「もし君がまだ、エネルギーに満ちあふれているならば――
現実世界に降りて、人に取り憑くことができるんだよ」
.
89
:
◆MgfCBKfMmo
:2014/01/08(水) 22:39:34 ID:wbrnvMHg0
( ;ω;)「……取り憑く?」
突拍子のない言葉を耳にし、涙が途切れた。
(;^ω^)「まさか、幽霊とかお化けみたいに、人の身体に乗り込めるんですかお?」
(´・ω・`)「乗り込むか。どうだろう。
僕が見ている様子では、乗り込むというよりお借りするといったほうが近いかな」
(´・ω・`)「君が取り憑いている間、元の人の意識は眠る。
君はその代わりにその人の身体を操れるんだ」
(;^ω^)「そんなこと、どうやって」
(´・ω・`)「それはやってみたらわかるよ。もちろん死んでいるわけだから、いろいろ制限があるけどね」
90
:
◆MgfCBKfMmo
:2014/01/08(水) 22:40:21 ID:wbrnvMHg0
(´・ω・`)「それで、どうだい。興味はないかい?
もしそのツンという子に取り憑いたら、彼女がどんな様子なのかわかるんじゃないかな」
ショボンの言葉が、ブーンをハッとさせる。
ツンがどうして待ち合わせに来れなかったのか、その理由がわかるかもしれない。
ブーンの興味がふつふつと湧き、目を見開かせた。
ショボンの案に、乗ろうとする。
ところが、別の気持ちが湧いてきた。
【狭間の世界】に長年暮らしているショボンに対する気後れだ。
( ^ω^)「いいんですかお? そんなふうに協力してもらって。
その……ショボンさんは未練を消せないのに」
すると、ショボンはやや眉を吊り上げて反応した。
(´・ω・`)「言ったろう? 僕は未練を消したくないんだ」
(;^ω^)「で、でも」
91
:
◆MgfCBKfMmo
:2014/01/08(水) 22:41:15 ID:wbrnvMHg0
(´-ω-`)=3
ショボンが大きな溜息をつくので、ブーンの言葉が途切れる。
(´・ω・`)「あのね、僕が人の未練を晴らしていたのは趣味とか、癖みたいなものだ。
困っている人を見ると助けてあげたくなる性分なんだよ。現実世界にいた頃からね」
(´・ω・`)「だから、もし君が困っているならそれを助けてあげたい。それだけなんだ。
必要なのは僕への気遣いじゃなく、君がどうしたいか、だよ」
別に難しいことを言っているわけでもない。
『人を助けたい』なんて、陳腐とも捉えられかねない言葉だ。
でも、それにもかかわらずショボンの言葉は、とても力強かった。
ショボンが本心で語っていることが、ブーンにはよくわかった。
92
:
◆MgfCBKfMmo
:2014/01/08(水) 22:43:01 ID:wbrnvMHg0
(´・ω・`)「改めて、聞くよ。僕の提案に乗るかい?」
ショボンがまた、質問する。
ブーンは、一呼吸おいて、それから質問に答える。
( ^ω^)「…………知りたい、ですお」
ショボンの首が縦にふられた。
「任せてくれ」と、彼は小さく続ける。
93
:
◆MgfCBKfMmo
:2014/01/08(水) 22:44:06 ID:wbrnvMHg0
(´・ω・`)「一応確認なんだけど、君はその子に触ったことがあるよね?」
「え?」ときょとんとしつつも、ブーンは肯定する。
(´・ω・`)「良かった。取り憑くことができるのは、君の霊魂が入った身体で触ったことのある人だけなんだ。
触ったことがあるくらい親密な関係の人でないと、その身体にお邪魔できないんだよ」
( ^ω^)「……よくご存知ですお」
(´・ω・`)「長年の研究の成果だよ」
これが先ほど言っていた『いろいろある制限』のひとつなのだろう。
ブーンは真剣に受け止め、頭に入れた。
( ^ω^)「他にどんな制限があるんですかお?
僕がツンの現状を知るのに関わりそうなことでは……」
もし彼女の状況を確認するのに支障が出るならば、検討しなおさなければならない。
だからショボンから、聞けることは聞こうと思った。
(´・ω・`)「ふむむ、少し確認するならそこまで気にしなくていいと思うけど。
あえて言うなら、【狭間の世界】に来たばかりの霊魂ならば、現実世界で総計100分まで人に取り憑くことができる。
それ以上の時間を使えばエネルギーを使い果たし、君は成仏してしまう」
94
:
◆MgfCBKfMmo
:2014/01/08(水) 22:45:01 ID:wbrnvMHg0
100分――【狭間の世界】で5,6年過ごせることと比べれば、ずいぶんと短く聞こえる。
現実世界で生きることは、それだけエネルギーを使うことなのだろう。
(´・ω・`)「あとは……そうだな。同じ人には連続で15分までしか取り憑けない」
(;^ω^)「15分!?」
さらに時間が短くなり、思わずブーンは声を上げる。
(;^ω^)「な、なんでですかお?」
(´・ω・`)「昔、僕が手助けした人の中に、15分以上他人に取り憑いた者がいた」
そのときを思い出そうとしているのか、あるいは嫌な思い出だったからか
ショボンは話し声のトーンを落とした。
(´・ω・`)「それでね、取り憑いた霊魂は戻ってこれたんだが、取り憑かれた体の方は意識を取り戻さなかった」
(;^ω^)「え……」
95
:
◆MgfCBKfMmo
:2014/01/08(水) 22:46:00 ID:wbrnvMHg0
(´・ω・`)「たぶんだけど、15分も別の霊魂に取り憑かれたら、身体が元の霊魂を受け付けなくなってしまうんだと思う」
(;^ω^)「つまり……連続で15分間取り憑かれた人は、死ぬ?」
(´-ω-`)「植物人間かな。意識が戻らないことを現実世界ではそう呼ぶ」
(;^ω^)「…………」
突然別人の人格になったと思ったら、ぱたりと倒れてそのままになる人間。
そんな情景を想像して、絶句する。
間違ってもツンをそんな状態にするわけにはいかない。
冷や汗をかきながら、ブーンは心に刻み込んだ。
ショボンから思いつく説明はここまでだったようで、話が途切れた。
ブーンは半分以下になったミルクを眺めながら、他に聞くことはないか思案し始める。
程なく、先程からショボンの説明の中で気になる点があることに気づいた。
「そういえば」と、言葉を続ける。
( ^ω^)「ここから現実世界を見ることってできるんですかお?
ショボンさんは、取り憑かれた人が意識を取り戻さないのを『見た』って言いましたけど……
そういえば僕のことも、『瓦礫に潰される僕を見た』って言いましたおね?」
96
:
◆MgfCBKfMmo
:2014/01/08(水) 22:47:12 ID:wbrnvMHg0
(´・ω・`)「ああ、それか。良い質問だな」
勿体つけたように、大きくショボンは頷いた。
(´・ω・`)「僕達霊魂は、一度取り憑いた人間のことを監視できるんだ。僕はこれを【俯瞰】と呼んでいる」
( ^ω^)「【俯瞰】?」
(´・ω・`)「見ていてくれ。そのほうが理解が早いだろう」
言って、ショボンはワインセラーの方に顔を向け、指を鳴らした。
突然、空間に四角い平面が浮かび上がり、ワインセラーを覆い隠す。
ブーンが驚いている暇もない。白い大地が変化したときと同じように、その形成はあっという間のことだった。
まるでディスプレイのようなそれは、ぷつりと音を鳴らすと、映像が現れる。
97
:
◆MgfCBKfMmo
:2014/01/08(水) 22:48:10 ID:wbrnvMHg0
灰色の無機質な箱が見える。
小さなロッカーのようなものだ。
(´・ω・`)「さっき、触れた人には取り憑くことができると言ったね」
取り憑くことについて、ショボンが言った内容だ。
彼は触れるという行為が『縁』の象徴だと言っていた。
そのことを思い出して、ブーンはこくりと首肯する。
(´・ω・`)「それは霊魂でも同じことだ。霊魂同士が触れ合えば、相手の元いた身体に取り憑くことができる」
ショボンの指が、また下へ向けられる。
ブーンはそれを聞いて不思議に思った。
( ^ω^)「あれ、ここに来るのは死んだ人だけじゃないんですかお?」
(´・ω・`)「うん、死んでいる。だから結果が少し変わってくる。
きちんとした生体ではないものに取り憑くと、霊魂はすぐにこっちの世界に戻ってきてしまうんだ」
98
:
◆MgfCBKfMmo
:2014/01/08(水) 22:50:38 ID:wbrnvMHg0
ショボンの指が、くるくると回りながら上へと上昇した。
霊魂が【狭間の世界】に戻ることを表していたのだろう。
ブーンはそれを律儀に目で追う。
ショボンの話が続く。
(´・ω・`)「で、だ。一旦そうして取り憑くと、その人の身体の半径3メートル以内を【俯瞰】できるようになる。
一度取り憑いた身体と僅かながらに縁が結ばれているから起こる現象だと僕は見ている」
( ^ω^)「それで、監視できると……それも研究の成果ですかお?」
(´・ω・`)「そうだね。今この映像に映っているのも、そうして一度取り憑いたことのある人間のものなんだよ」
(;^ω^)「人間って……ここに映っているの、箱ですお?」
(´・ω・`)「うん。ちなみに一番最近取り憑いた人のものだ」
99
:
◆MgfCBKfMmo
:2014/01/08(水) 22:51:55 ID:wbrnvMHg0
一番最近。
その発言と、ショボンが自分の死因を知っていることが、ブーンの頭のなかで符合する。
嫌な想像が一気に浮かび上がってきた。
(;^ω^)「ま、まさか僕の!?」
(´・ω・`)「その通り」
ショボンの口角が一段と釣り上がった。
呆然とした後、ブーンは顔をしかめる。
(´・ω・`)「さっき一瞬取り憑いて状況を確認したんだ。一瞬ね。そのとき死因を知ったから君に教えることができた」
(;^ω^)「もしかして、ここで人を見つけるたびに同じことをしているんですかお?」
(´・ω・`)「うん。気になるだろう?」
(;^ω^)「うーん、まあ……」
100
:
◆MgfCBKfMmo
:2014/01/08(水) 22:52:40 ID:wbrnvMHg0
(´・ω・`)「君の死体は今、霊安室に保管されているようだね。無事回収されてよかったじゃないか。
もし粉微塵にされて、およそ生物と言えない形になっていたら取り憑けないし、【俯瞰】もできないからね」
あの小さな箱の中に自分の身体が収められている。
粉微塵ではないにしても、いくらか折れ曲がっていることが想像できた。
それがいいことなのか悪いことなのか、ブーンには判別しかねた。
さすがにやり過ぎたと思ったのか、ショボンが「済まない」と詫びて、顔をうつむかせる。
ブーンとしては今更な反応だった。
(´・ω・`)「まあ、現実世界を見れた理由はこれさ。
そのツンという子を調べる上で、もしかしたら必要かもね」
それからすぐ、ショボンは指を鳴らし、ディスプレイが閉じられる。
隠れていたワインセラーが、再び顔を出した。
101
:
◆MgfCBKfMmo
:2014/01/08(水) 22:53:39 ID:wbrnvMHg0
(´・ω・`)「さて、説明はもういいだろう。
さっそく君の未練を晴らそうじゃないか」
ショボンが手のひらを打ち付け、やる気をアピールし始める。
(´・ω・`)「ふふ、久しぶりに腕がなるなあ」
人助けを心底楽しんでいる、そんなショボンの気概を感じ
今更ながら、心配する必要は無かったんだと、ブーンは気付かされた。
∇∇∇
102
:
◆MgfCBKfMmo
:2014/01/08(水) 22:54:36 ID:wbrnvMHg0
バーから数メートルほど離れた場所で、ショボンが地面に手を触れる。
大地がうごめき、出来上がったのは、ひとつの椅子だ。
妙に物々しく、光沢を発し、細々とした彩色も施されている。
例えるなら、SF映画に出てくる宇宙船の座席だ。
( ^ω^)「ずいぶん凝ってますおー」
(´・ω・`)「今日は宇宙のインスピレーションがあったんだ」
(;^ω^)「で、何か意味があるんですかお?」
(´・ω・`)「ただのお飾りさ。効果は同じだ。ほら、座って」
促されるままに、ブーンはその椅子に座った。
やや仰角なので、視界の半分以上を黒い空が占める。
黒一色がこれほど不気味なものなのかと、ブーンは改めて思った。
これからどんな体験をするのだろうか。
そんな想像により、ブーンの胸が高鳴りだす。
103
:
◆MgfCBKfMmo
:2014/01/08(水) 22:56:05 ID:wbrnvMHg0
(´・ω・`)「取り憑く方法は簡単だ。取り憑く相手を思いっきり念ずればいい」
存外あっさりした方法で、ブーンは肩透かしをくらう。
しかし内容は抽象的に思われた。
( ^ω^)「……思いっきりって、どうすれば」
(´・ω・`)「コツがいるね。今ちょうど、真っ暗な空が見えていると思う。
そこにそのツンという子の顔を思い浮かべるんだ。さっきのディスプレイみたいに考えればいい。
黒いスクリーンいっぱいに思い描いたその子に、取り憑きたいと切に願うんだ」
( ^ω^)「スクリーンに浮かべるイメージ……」
ブーンの視界にうつる、真っ黒の空。
そこに、彼女の顔を思い浮かべる。
104
:
◆MgfCBKfMmo
:2014/01/08(水) 22:56:59 ID:wbrnvMHg0
やろうと思えば、イメージはどこまでも膨らませることができた。
初めて見たときの泣いている顔、その後に見た笑った顔。
付き合い始めてからの一年間で、さらにいろんな彼女の顔を見てきた。
それらを出来る限り、思い出す。
不意に、自分が死んでしまった事実を思い出した。
もう彼女には会えない。その憤りが、先ほどショボンを殴る衝動に駆り立てた。
怒りは鎮まったといっても、憤り自体が消えたわけではなかった。
ツンを思い浮かべるたび、胸の痛みも増していく。苦しいという感情が自己主張を始める。
いい気分ではない。
ひたすらに事実と向き合う時間が訪れた。
105
:
◆MgfCBKfMmo
:2014/01/08(水) 22:58:04 ID:wbrnvMHg0
取り憑けば、また彼女に近づける。
彼女の身に何が起きたのか、知ることができる。
それが可能なら、自分は――
目が、自然と閉じられた。黒い空はもう必要なかった。
強い光を、一瞬だけ感じた。
∇∇∇
106
:
◆MgfCBKfMmo
:2014/01/08(水) 23:01:02 ID:wbrnvMHg0
そこはどこかの部屋の中だった。
ξ-⊿-)ξ zZ
ツンは眠っていて、スヤスヤと寝息だけを立てている。
これから何が起こるのか、もちろん彼女はなにも知らないでいた。
...ヒュン
\ ,,_人、ノヽ,,/
) (
━━━━━━━━━ ξ-⊿-)ξ ━━━━━━━━━
) (
/^⌒`Y´^Y`\
音も光も現実には何も起きていない。
見た目にはなにも変わらずに、彼女の意識だけが、ひっそりと交代された。
∇∇∇
107
:
◆MgfCBKfMmo
:2014/01/08(水) 23:02:05 ID:wbrnvMHg0
目は閉じている。
それはすぐにわかった。
“おい”
声がする。
誰かが話しかけてきているのかとも思った。
でも、音が響いている感じではない。耳で受け取るというより、もっと脳に近い距離で聞いている気がした。
(´・ω・`)“うまくいったぞ”
声の主が、先程まで傍にいた男だとわかる。
“なんでショボンの声が聞こえるんだお”
ブーンは心のなかで返答した。
108
:
名も無きAAのようです
:2014/01/08(水) 23:02:26 ID:BnS0rEHYO
支援
109
:
◆MgfCBKfMmo
:2014/01/08(水) 23:03:04 ID:wbrnvMHg0
(´・ω・`)“何の事はない。【狭間の世界】で私が話しているだけだ。
取り憑いている間、こうすれば私の言葉を聞くことができるんだよ”
さしずめ、ナビゲーターといったところか。
事情のわかる人の言葉を聞けるというのはありがたい。そう思い、ブーンは安堵する。
“そりゃあ、助かるお。何かあったら助けてくれお”
(´・ω・`)“そのつもりだよ。さあ、目を開けてみろ。ちゃんとツンに取り憑いているか?”
もちろん、それが目的だったのだ。
確認しないわけにはいかない。
目を、ゆっくり開ける。
瞼に奇妙な重さを感じたが、開けられない程ではなかった。
110
:
◆MgfCBKfMmo
:2014/01/08(水) 23:04:09 ID:wbrnvMHg0
ξ-⊿-)ξ「うーん……」
ξ゚⊿゚)ξパチッ
自分から発せられる声が女性のものであるのに、かなりの違和感を覚えた。
聞き覚えのある声。ツンのものだと気付き、ブーンは目頭が熱くなる。
また彼女の声を聞くことができた。それだけで、もうほとんど未練はないようにも感じられた。
次は状況を確認しなければならない。
ブーンは目を動かす。
最初に気になったのは、四角い光源だった。
視界からみてやや左寄りに、発光する何かがある。
目が慣れてくると、正体がつかめた。
扉に空いた出窓のようだ。どこかの部屋に、自分はいる。
そこから、身体が右半身を床につけて横になっていることに、ブーンは気づいた。
111
:
◆MgfCBKfMmo
:2014/01/08(水) 23:05:05 ID:wbrnvMHg0
起き上がろうとして、身体が揺れる。
しかし手応えはない。
ξ;゚⊿゚)ξ「あ、あれ?」
手を地面について、身体を支えようとする。今度はゆっくり、慎重に。
しかし肝心の、地面に手をつく感覚がない。
手が動かないのである。
身体の後ろ側にあることはわかったが、どれだけ力んでもそこから離れようとしなかった。
(´・ω・`)“おい、どうした?”
ξ;゚⊿゚)ξ「そんなの僕が知りたいお」
ツンの声のまま、自分の口調でブーンは呻いた。
112
:
◆MgfCBKfMmo
:2014/01/08(水) 23:06:16 ID:wbrnvMHg0
ξ;゚⊿゚)ξ「ひょっとして……」
部屋の中は、冷たい。
コンクリート造りの無骨な部屋のせいもあるが、暖房もなにもついていないように思われた。
春とはいえ、まだ肌寒い季節に不親切すぎる。
そんな様子と、自分の体勢が、ブーンに嫌な予感を与えた。
ξ;゚⊿゚)ξ「ショボン、僕の状況、【俯瞰】できるかお?」
ショボンはすでにブーンの霊魂に触れている。
だからブーンの取り憑いた身体を【俯瞰】することも可能なはずだった。
指を鳴らす音が聞こえる。向こうの世界でショボンがディスプレイを表示し始めたのだろう。
途端に、息を呑む音がした。
(;´・ω・`)“できたが……しかし……なんだこれは”
ショボンは明らかに困惑していた。
ブーンの想像に拍車がかかる。
113
:
◆MgfCBKfMmo
:2014/01/08(水) 23:07:18 ID:wbrnvMHg0
ξ;゚⊿゚)ξ「ショボン、いいから言ってくれお。僕は今どうなっているんだお!」
思わず大きな声が出る。
焦りがありありと口調に浮かんでしまっていた。
(;´・ω・`)“…………どうか、気を悪くしないでほしい”
そう忠告を入れてから、ショボンは状況を説明してくれた。
(;´・ω・`)“君は今、両手と両足を縛られているんだ”
.
114
:
◆MgfCBKfMmo
:2014/01/08(水) 23:08:45 ID:wbrnvMHg0
ξ;゚⊿゚)ξ「な……な…………」
悪い予感が、的中した。
その衝撃が、音となり、口から飛び出してくる。
ξ;゚⊿゚)ξ「なんだってええええ―――――!?」
部屋中に、絶叫が反響した。
.
115
:
◆MgfCBKfMmo
:2014/01/08(水) 23:09:58 ID:wbrnvMHg0
ツンが待ち合わせ場所に来れなかった理由が、ようやくブーンには理解できた。
ツンは――監禁されていたのである。
残り時間 99分45秒
∇To be continued...∇
116
:
◆MgfCBKfMmo
:2014/01/08(水) 23:11:06 ID:wbrnvMHg0
今日はおしまい。
117
:
名も無きAAのようです
:2014/01/08(水) 23:15:56 ID:BnS0rEHYO
乙
急展開だな、惹き込まれる
118
:
名も無きAAのようです
:2014/01/09(木) 02:16:02 ID:negybsM60
おつ
まじか…ツン
続き気になる
119
:
名も無きAAのようです
:2014/01/09(木) 08:10:12 ID:LKs8TNxQ0
乙
続きはよ
120
:
名も無きAAのようです
:2014/01/09(木) 21:55:06 ID:VNYkpCVc0
衝撃すぎる展開
121
:
名も無きAAのようです
:2014/01/13(月) 01:27:28 ID:p.3Si6O.0
最初読んだときは、78さんの名作「リプレイ」のパクり作品だと思ったけど超展開。
楽しみだ
122
:
名も無きAAのようです
:2014/01/13(月) 12:31:05 ID:wLTcieQo0
気になる…木になる…
123
:
◆MgfCBKfMmo
:2014/01/13(月) 21:27:19 ID:F2t219ls0
始めます。
124
:
◆MgfCBKfMmo
:2014/01/13(月) 21:29:40 ID:F2t219ls0
新入生歓迎のパーティに行く気なんて、彼女には無かった。
どうせ大抵の人とは短い関係で終わってしまう。気遣うのは疲れるだけ。
余計な人付き合いはしない方がいい、というのが彼女の主義だった。
それを姉であるしぃに話すと、彼女は露骨に驚いてみせた。
(*゚ー゚)「行きなよ!」
話を聞いた意味はあったのかと疑いたくなるくらい、彼女はひたすらそう主張した。
ξ゚⊿゚)ξ「なんでよ。いいじゃん別に」
(*゚ー゚)「良くないよ! ひょっとしたらすごくいい人と出会うかもしれないじゃない」
ξ-⊿-)ξ「あたしそんなに周りに期待してないからなあ」
125
:
◆MgfCBKfMmo
:2014/01/13(月) 21:30:43 ID:F2t219ls0
聞き手であるしぃの顔が、一瞬曇る。
ツンは「あっ」と焦り、急いで首を横に振った。
ξ;゚⊿゚)ξ「違うの、別に姉さんのことはそんなに関係なくて」
彼女は必死に言い繕った。
嘘をつくのは苦手だったから、しぃにもすぐにバレただろう。
しぃのことを知っていたから、周りが嫌いになった。
人間は知らない人のことを平気で傷つけられるのだと、思い知らされた。
その暗澹な期待がこのときツンの言葉となってつい漏れてしまったのである。
(*゚ー゚)「…………行ってきなよ」
力を落としながらも、彼女はまたそのセリフを続けていた。
ツンにはもう、何かを言い返す気が起きなかった。
126
:
◆MgfCBKfMmo
:2014/01/13(月) 21:31:39 ID:F2t219ls0
パーティにしっかり顔を出したものの、一時間で飽きてしまった。
頭のなかに姉のことがずっと浮かんでいて、ツンの気持ちを散らす。
元々陽気になることが苦手なツンは、さらにさらにぎこちなくその場を過ごしていた。
同学年の人たちが、なんだかすごく遠い星の人たちのようにツンには感じられた。
どこかの星の、苦労や悩みを知らない人々。
ξ;^⊿^)ξ「ごめんね、お酒に酔っちゃったみたい。外に出ているね」
絡みついてこようとする、できたばかりの知り合いたちを適当にあしらう。
酔ってなどはいなかったが、この嘘は姉に対してのときみたいにバレることはなかった。
外へ出て、とにかく歩く。
やがてソーサック川が見えてきて、その河川敷へ降りた。
127
:
◆MgfCBKfMmo
:2014/01/13(月) 21:32:41 ID:F2t219ls0
ξ-⊿-)ξ「はあ……」
独りになると、落ち着いた。
溜息が冷たい夜風と混じり、流れ去っていく。
川の煌きをぼんやり眺めていると、ポケットに振動を感じた。
携帯端末に通知がきていて、見てみると不在着信が1件入っていた。
パーティ会場にいたままだと、今よりも気づくのが遅れただろう。
運が良かった。少しだけいい気になり、相手の電話番号を確認する。
しぃだった。
なぜか、ツンの胸がざわつく。
急いでリダイヤルを押し、反応を待った。
128
:
◆MgfCBKfMmo
:2014/01/13(月) 21:33:42 ID:F2t219ls0
『……もしもし』
通話に出た彼女の声は、思わず心配したくなるくらいにか細かった。
ξ;゚⊿゚)ξ「どうしたの? お姉ちゃん」
すぐには返事が来ない。
いくらかすすり泣く音が聞こえてくる。
しぃが泣いている。
それだけで、嫌な予感はさらなる膨らみをみせた。
ξ;゚⊿゚)ξ「ねえ! 用があるから電話したんでしょ?」
やや大きめに確認すると、しぃの吐息がわずかに乱れた。
129
:
◆MgfCBKfMmo
:2014/01/13(月) 21:34:43 ID:F2t219ls0
数秒間、ツンはじっと待っていた。
『…………さっき、警察から連絡があって』
『あの人が、認めたって』
ξ;゚⊿゚)ξ「え?」
その言葉をすぐには飲み込めなかった。
そんなことはありえない、と彼女は信じていたからだ。
ξ;゚⊿゚)ξ「なんでよ! どうしてそんなことをあの人が言うの!?」
130
:
◆MgfCBKfMmo
:2014/01/13(月) 21:35:51 ID:F2t219ls0
しぃはいくつか言葉を続けたものの、要領は得なかった。
彼女自体が混乱しているらしい。
ξ;゚⊿゚)ξ「じゃあ、何? 世間で言っているような悪い噂が本当で
お姉ちゃんの彼氏さんは本当の本当に悪い人だったってことなの!?」
『そんなんじゃない!』
しぃの悲痛な叫び声が耳に届く。
ツンの身がすくんだ。姉の叫びなど、何年ぶりに聞いたことだろう。
これを言うことが、姉を傷つけることだと重々承知していた。
それでも、信じていたのだ。裏切りのようなその言葉に、何も感じないわけがないじゃないか。
ツンは苛立ちながら、しぃの言葉を待った。
131
:
◆MgfCBKfMmo
:2014/01/13(月) 21:37:06 ID:F2t219ls0
『……そんなんじゃない』
繰り返された姉の声は先ほどとは対照的に弱々しかった。
ξ゚⊿゚)ξ「でも……あの人はそう証言までして」
『ううん、そうじゃないの』
彼女が首を横に振る姿が、ツンの頭のなかで容易に想像できた。
ツンは言葉を継ぐのをやめる。
『あの人、ね……もう連絡しないでくれって』
ようやく聞こえた、彼女が訂正した理由。
彼氏であるあの人との縁を絶たれた。
それはつまり、しぃがすでにあの人の恋人ではないということ。
132
:
◆MgfCBKfMmo
:2014/01/13(月) 21:38:27 ID:F2t219ls0
ξ;゚⊿゚)ξ「…………」
かけてやれる言葉が見つからなかった。
何を言ってもしぃを傷つけてしまう。
何もしなくても、彼女は終わらない内省を繰り返し、じわじわと傷ついていくだろう。
どうしたらいいのか、わからない。
『……それじゃ』
最後にそう言うと、しぃから電話が切られた。
ツンに返答する隙は、全くなかった。
133
:
◆MgfCBKfMmo
:2014/01/13(月) 21:39:27 ID:F2t219ls0
ξ;゚⊿゚)ξ「…………そんな」
切れた電話を持ちながら、そうつぶやき、ツンは目を閉じた。
ツンは眉間を頭でつねり、思考を整理しようとする。
しかし、いくら頑張っても、考えはまとまらなかった。
心中に様々な情景が思い浮かんで、ツンの邪魔をしてくる。
パーティの喧騒なんて比較にならない、心をひっくり返し続ける煩わしさ。
目から涙が溢れそうになり、屈んで顔を覆い隠す。
ぐちゃぐちゃな思いをどうにかしたい。
誰かがその手助けをしてくれたら、どれだけ楽なことか。
ひたすらに辛い、とめどなく苦しい、そんな感情ばかりが溢れてくる。
134
:
◆MgfCBKfMmo
:2014/01/13(月) 21:40:25 ID:F2t219ls0
「大丈夫ですかお?」
声をかけられ、ツンが顔をあげる。
目の前に、見知らぬ青年が立っていた。
戸惑いを浮かべつつも、とにかく心配だという顔をツンに向けている。
そんな、若い青年の顔。
これがツンの、初めて彼と出会ったときの記憶だった。
.
135
:
◆MgfCBKfMmo
:2014/01/13(月) 21:41:24 ID:F2t219ls0
∇∇∇ ∇∇∇
∇∇ ∇∇
∇ ∇
( ^ω^)は取り憑くようです
Scene 3. それから彼らは協力しました
∇ ∇
∇∇ ∇∇
∇∇∇ ∇∇∇
136
:
◆MgfCBKfMmo
:2014/01/13(月) 21:42:28 ID:F2t219ls0
「お、おいどうした!」
ドアの向こうから、男の大声が聞こえてきた。
ξ;゚⊿゚)ξ「あ、いえ……」
息を潜めるうちに、足音がドアに近づいてくる。男のものだろう
それからガチャガチャという音。鍵を開けているようだ。
ドアが半開きになり、男の顔が飛び出して部屋をキョロキョロ見回した。
やや間を置いてから、地べたに転がるツンと目が合う。
<_フ;゚−゚)フ「あ、そっか。縛ってあったんだった」
頭を軽く叩いた後、青年風の男はツンに指をさす。
<_プ−゚)フ「おいお前! ようやく起きたようだけど、静かにしていろよ!
ここで妙な騒ぎでも起きたら責任が全部俺に来るんだからな。
余計な誤解でも招いたら先輩たちすぐに怒るから、怖いから――」
137
:
◆MgfCBKfMmo
:2014/01/13(月) 21:43:46 ID:F2t219ls0
そう言うと、男の顔が青くなる。
怒ると怖いその先輩たちとやらを想像しているようだ。
ひとつ身震いしたのちに、男は「わかったな?」と念を押して、ドアをバタンと閉めた。
鍵をかける音。部屋は再び静寂に包まれる。
ξ;゚⊿゚)ξ「…………」
ツンの身体の中には、ブーンの霊魂が宿っている。
今、ブーンはそこで自分の状況について考えた。
自分は監禁されている。
あの青年の仲間たちがツンを縛り上げ、この無骨な部屋に押し込めた。
窓も何もない暗い部屋。なんの目的かはわからない。
ξ゚⊿゚)ξ“ショボンさん、あいつらの正体はわからないんですかお?”
138
:
◆MgfCBKfMmo
:2014/01/13(月) 21:45:28 ID:F2t219ls0
(´・ω・`)“それはわからないな。あくまでこっちからは外観しかわからない”
【狭間の世界】にいるショボンからメッセージが届く。
脳内だけに伝わるそれは、この状況ではとてもありがたい助けだった。
ξ゚⊿゚)ξ“それじゃ、この部屋の外はどうですかお”
(´・ω・`)“残念ながら大したことはわからないな……
廊下で椅子に座っている青年が見えることと、部屋の外が明るいことくらいだよ”
ξ;゚⊿゚)ξ“うーん”
ツンの状況は、楽観できるものではない。
青年の口調から察するに、怪しげな集団に拘束されているようだ。
このまま彼女を残していては何をされるかわからない。
ξ゚⊿゚)ξ“ショボンさん、僕はこのまま成仏するわけにはいかないお”
(´・ω・`)“脱出する気かい?”
ξ#゚⊿゚)ξ“こんなわけのわからない状態でツンを放っておくわけにいかないですお!”
139
:
◆MgfCBKfMmo
:2014/01/13(月) 21:46:28 ID:F2t219ls0
(´・ω・`)“……同感だ”
ショボンの一言が妙な重みを有していた。
(´・ω・`)“取り憑くことの基本は頭に入っているな?”
ξ゚⊿゚)ξ“はいですお”
霊魂の入った身体で、相手に触れたら取り憑くことができる。
それが基本。
(´・ω・`)“僕は【俯瞰】で君にアドバイスをする。
そこは造りからして廃ビルの一室だ。同型のものを見たことがある。
慎重に行動すれば抜け出せるはず。15分の制限に気をつけろよ”
よくビルの部屋の構造なんて知識が入っているものだ。
理由を聞きたくなったが、時間も惜しいので、ブーンは問うのをやめた。
(´・ω・`)“作戦はこうだ”
ショボンは簡単にこれからなすべきことを説明する。
ブーンは真剣に内容を頭に叩き込んだ。
∇∇∇
140
:
◆MgfCBKfMmo
:2014/01/13(月) 21:47:27 ID:F2t219ls0
<_プ−゚)フ「あーあ、眠いよう」
廊下で、青年はぼやいていた。
青年の名はエクスト。
今、彼は今日までのことを想起している。
幼い頃からニューソーク市で育ち、自由な精神に感化されて、遊びつくす毎日を送っていた。
彼が市内の青年チームに所属したのはつい最近のことだ。仲間に誘われ、流されるままに参加した。
仲間内でワイワイやる、最初のうちはそれしか目に入らなくて、だからこそ楽しかった。
しかし、所属して数日が経過したのち、ある噂を知った。
このチームのボスが、きな臭い連中と関係しているらしいと言う情報だ。
きな臭い連中の全容はわからない。
ちんけな青年チームか、海外マフィア、果てはテロリストまで、噂は広がりを見せている。
共通しているのは、あまり世間体がよくない人たちということだ。
この噂を聞いて、エクストは震え上がった。
自分は楽しく過ごしたいだけだ、本気で悪事をする気など毛頭ない。
脱退を考えることもあったが、そんな噂が立つチームならばそれは楽ではないだろう。
このことはチームの先輩たちにはとても言えないエクストの内心だった。
141
:
◆MgfCBKfMmo
:2014/01/13(月) 21:48:25 ID:F2t219ls0
噂をきいてしばらくはぎこちない日々が続いた。
遊んでも本気では楽しめないからだ。
それでも、しばらくしたらその緊張に慣れはじめた。
チームが犯罪に手を染める素振りを、少なくともエクスト自身は目にしなかったからだ。
もしかしたらあれは本当に噂なのかもしれない。
このチームは本当にただの遊び人の集団で、悪い人たちなんていうのは嘘なんだ。
そう考えると気分が良くなった。
徐々に、エクストは悩みを忘れた。
悩むくらいなら遊んだほうがいい。遊んで、楽しんだほうがいい。
その考えを信条に、彼は今日まで生き続けていた。
今日までは。
142
:
◆MgfCBKfMmo
:2014/01/13(月) 21:49:25 ID:F2t219ls0
<_フ;゚−゚)フ「……」
今日の14時半頃、彼の小さな信条は脆くも崩れ去った。
( ^Д^)「それじゃ、お前はそいつを見張っておけ。鍵はこれな」
にやにやした先輩が、鍵を放り投げてくる。
エクストは状況が飲み込めてなくて、盛大に顔面にそれをぶつけ、「ぎゃっ」と呻いた。
( ^Д^)「それくらいも取れないのか」
<_フ;−;)フ「い、いやちが!」
涙目になりながら、落ちた鍵を拾おうとする。
先輩はものすごく蔑んだ目でエクストを見下ろすと、すたすたと歩き去ってしまった。
<_フ;−;)フ「うええ、まじかよお」
143
:
◆MgfCBKfMmo
:2014/01/13(月) 21:50:25 ID:F2t219ls0
ドアを閉める時、中で眠っている少女が見えた。
全く知らない金髪の少女。両手両足を縛られている。
先輩が言葉少なく説明したところによると、少しの間預かるように言われた丁重なものらしい。
いったい誰が人間をものとして扱うのか。
深く考えるわけにもいかない。
疑問なんてもっちゃいけない。
ドアを閉め、用意したパイプ椅子に座って監視する。
何かあったらドアを開け、少女を確認する。
それが今日、彼の託された役割。
初めてエクストが犯罪に手を染めた経緯だった。
144
:
◆MgfCBKfMmo
:2014/01/13(月) 21:51:25 ID:F2t219ls0
「うわああああああああああ」
<_フ;゚−゚)フ ビクゥ!!
部屋から大声が聞こえ、エクストの眠気が吹き飛んだ。
<_フ;゚−゚)フ「なんだなんだ!」
慌てて鍵を携え、ドアの方に接近する。
声は明らかにあの女の子のものだった。
起きたのは確認したが、どうして叫んだというのだろう。
<_フ;゚−゚)フ「おい!」
ドアを開けると同時に問う。
しかし目線の先に彼女はいなかった。
<_フ;゚−゚)フ「あ、あれ?」
145
:
◆MgfCBKfMmo
:2014/01/13(月) 21:52:25 ID:F2t219ls0
消えた? そんなはずは――
視線が右へ左へ、部屋の奥へと動きまわる。
<_フ;゚−゚)フ「ど、どこへ……」
そうつぶやいたとき、足元に感触があった。
何かが当たる感触。
顔を下に向けると、金色の髪が見えた。
女の子のものだ。ドアの傍に転がっていただけらしい。
<_フ;゚−゚)フ ホッ
なんのことはない。移動していただけだ。
叫んだ理由はわからないが、とりあえず問題が会ったわけでもない。
ほっとして、手をのばそうとする。
146
:
◆MgfCBKfMmo
:2014/01/13(月) 21:53:29 ID:F2t219ls0
しかしその前に、女の子の方がごろんと部屋の中央へ移動する。
きょとんとするエクストの目の前に、彼女の顔が露わとなった。
ξ^ー^)ξ ニイィ
<_プ−゚)フ ?
...ヒュン
\ ,,_人、ノヽ,,人,/
) (
━━━━━━━━━ <_プ−゚)フ ━━━━━━━━━
) (
/^⌒`Y´^Y`^"\
彼女の笑顔の真意を知らないまま、エクストの意識はぷつりと途絶えた。
∇∇∇
147
:
◆MgfCBKfMmo
:2014/01/13(月) 21:54:30 ID:F2t219ls0
...フッ
Σξ゚⊿゚)ξ「あ、あれ?」
突然目が覚めた気がした。
いつの間に眠ってしまったのだろうか、そう彼女はまず思った。
148
:
◆MgfCBKfMmo
:2014/01/13(月) 21:55:25 ID:F2t219ls0
目の前のドアが開いていて、さらにそこから見知らぬ男が覗いている。
<_フ − )フ
ξ;゚⊿゚)ξ「ひい!」
彼女はこの部屋の記憶を有していなかったし、エクストについても何も知らなかった。
慌てて立ち上がろうとしても、身体が動かない。縛られていると気付き、さらに背筋の凍る思いがする。
エクストの身体がゆらりと動く。
こいつが自分を縛り上げたのだろうか。だとしたら、逃げなくては。
じたばたともがく彼女をよそに、エクストの身体は一歩、彼女に近づく。
ツンが恐怖で目を閉じたとき、青年が口を開いた。
<_プー゚)フ ニイィ「うまくいったお!」
ξ;゚⊿゚)ξ「!?」
149
:
◆MgfCBKfMmo
:2014/01/13(月) 21:56:26 ID:F2t219ls0
<_プ−゚)フ「お?」
青年が何かに気づいた様子で、自らのポケットに手を伸ばす。
取り出したのは、小型のナイフだった。
<_プー゚)フ「おっお、いいものあったお」
動揺する彼女の元へ、エクストの手が伸びる。
ツンはナイフを凝視して息をつまらせ、身を強ばらせる。
その緊張した腕に、エクストの腕が触れたかと思うと、ぶちっという振動がした。
ξ;゚⊿゚)ξ「え?」
まさかという思いで、彼女は確かめた。
ツンの両手が動く。縄が千切れていた。
<_プー゚)フ「待っててくれお。今足も外すお!」
陽気にそう言うと、青年はそそくさと作業を進めた。
何が何だかわからないまま、ツンはその様子を見守り続けていた。
150
:
◆MgfCBKfMmo
:2014/01/13(月) 21:57:21 ID:F2t219ls0
<_プー゚)フ「よし、立てるおね?」
ξ゚⊿゚)ξ「え、ええ」
苦笑いしながら、ツンが答える。
<_プー゚)フ「これ、渡すお」
そう言うと、彼は銀色の鍵をツンに差し出した。
<_プー゚)フ「こいつはこの部屋の鍵だお。僕が中にいるから閉めてくれお」
ξ;゚⊿゚)ξ「えええ? いいの?」
<_プー゚)フ「いいんだお。早く早く」
促されるまま、ツンが部屋の外へ行く。
踵を返すと青年が部屋の中から彼女を見つめていた。
151
:
◆MgfCBKfMmo
:2014/01/13(月) 21:58:46 ID:F2t219ls0
ξ゚⊿゚)ξ「あ、あの……ありがとう」
他にいう言葉が見つからず、とりあえずツンは感謝を述べる。
青年は満足そうに頷き、それからうつむき気味になった。
ドアを閉める直前、ツンは彼の表情に気づいた。
<_フ− )フ「…………」
何かを言いたそうで、でも口を噤んでいる、そんな顔。
こんな顔を知らない自分相手にするだろうか、とツンは首を傾げる。
数秒待ったが、彼は何も言わない。
152
:
◆MgfCBKfMmo
:2014/01/13(月) 21:59:55 ID:F2t219ls0
<_フー )フ
柔らかい表情を浮かべ、彼が手を振る。
ツンは戸惑いながらもそれに従い、扉を閉め、鍵を回した。
その視線に込められた意味には気づかないままに。
...フッ
∇∇∇
153
:
◆MgfCBKfMmo
:2014/01/13(月) 22:00:54 ID:F2t219ls0
<_プ−゚)フ「あ、あれ」
意識が戻ったとき、足音が聞こえた。
誰の足音だろうとのんびり考えつつ、周りを見る。
あの部屋の中だ。
どうして自分はここにいるんだろう。
<_プ−゚)フ「…………」
少女がいない。
隠れているわけでもなく、第一部屋には他に誰もいない。
この状況と、さきほどの足音。
ふたつの意味がつながる。
154
:
◆MgfCBKfMmo
:2014/01/13(月) 22:01:43 ID:F2t219ls0
<_プ−゚)フ「な、な、な」
正体不明の恐怖が彼を包み込む。
<_フ;−;)フ「なんだこれええええええええええええええ」
ドアに駆け寄り叩くも、全く誰の反応もなく、むなしく拳が痛むばかりであった。
∇∇∇
155
:
◆MgfCBKfMmo
:2014/01/13(月) 22:02:46 ID:F2t219ls0
(; ω )「ああ……あ……」
嗚咽が喉の奥から搾り出されてくる。
熱がこみ上げてきて、瞳が次第に潤った。
(; ω )「ツンが、いたお……あそこに、あんなに近くに」
そしてまた別れなければならなかった。
生きているツンと死んでいるブーン。その間のとてつもない壁。
それが今、再び彼の前に聳えていると感じられた。
(´・ω・`)「……よく言わなかったな」
椅子の横で、ショボンが小さく賞賛してくれた。
156
:
◆MgfCBKfMmo
:2014/01/13(月) 22:03:57 ID:F2t219ls0
(´・ω・`)「よく我慢して、別れられたものだ。
あれだけ別れを惜しんでいた君ならば、なおのこと」」
( ω )「……言ってしまっても、何も変わらないですお」
別れ際、逡巡があった。
自分が取り憑いていることを言おうかどうか。
迷い、それから言わない方を選択した。
( ω )「言っても、別れなければならないことに変わりはないんですお。
彼女は僕が死んでしまったことを知らないんですお。
言ってしまって、傷つけるくらいだったら、僕は――」
157
:
◆MgfCBKfMmo
:2014/01/13(月) 22:04:54 ID:F2t219ls0
( ω ) フッ
短く鋭い吐息。
泣き顔している場合じゃない。そう自分を奮いたたせる。
( ^ω^)「何も言わないまま、彼女に悟られないまま、ツンを救ってみせますお!」
上り詰めた情感は押し戻され、涙が引いていった。
ショボンを振り向くと、またも大きく頷いてくれている。
(´・ω・`)「よし、それじゃ彼女を【俯瞰】しようか。出口まで誘導するんだ」
( ^ω^)「もちろんだお!」
∇∇∇
158
:
◆MgfCBKfMmo
:2014/01/13(月) 22:05:55 ID:F2t219ls0
あれから、時間が経過した。
ξ;゚⊿゚)ξ「なんだか頭がくらくらするわ」
頭を抑えながら、彼女は薄暗い廊下を進んでいく。
使われてない古いビルの廃墟なのだろう。
窓の外からは、若干傾き始めた昼下がりの太陽に照らされる街が見えた。
ξ;゚⊿゚)ξ「あっ」
廊下の向こう側、曲がり角のところから人の声がする。
誰か来たのだろうか。
そう思った途端に、
...ヒュン
と意識が消えてしまう。
しばらくしてから
Σξ-⊿-)ξ「?」
と目が覚めると、違う場所にいる。
159
:
◆MgfCBKfMmo
:2014/01/13(月) 22:06:59 ID:F2t219ls0
ξ;゚⊿゚)ξ「まただ……」
話し声はすでに聞こえない。
彼女は安堵しつつ、足を進めた。
部屋を出てから10分近く歩いている。
その間に何度も同じことが起きていた。
話し声や気配を感じるたび、意識が飛ぶ、不可解な現象だ。
最初は気のせいかと思っていたが、
あまりにも頻発するので特異さに彼女も気付き始めた。
ξ;゚⊿゚)ξ「疲れているのかしら」
早いところここから抜けだして休んだほうがいいかもしれない。
そうして自分の身に何が起こったのか把握しよう。
目的が決まり、ツンの足取りは自然と速まる。
3階、2階……ひとつずつビルの階段を下っていく。
160
:
◆MgfCBKfMmo
:2014/01/13(月) 22:08:05 ID:F2t219ls0
2階から1階へ続く階段を降りた。
マンションのエントランス。幸いにも人が見当たらない。
このまま入り口から出てしまおうした。
ξ;゚⊿゚)ξそ
外から入ってくる気配を察して、階段の裏方に回りこむ。
顔をわずかに出して様子を伺う。
入り口に、人影が見えた。
∇∇∇
161
:
◆MgfCBKfMmo
:2014/01/13(月) 22:09:08 ID:F2t219ls0
(;^ω^)「ツン、どうして動かないんだお!?」
(´・ω・`)「入り口から入ってくる陽光を見てみろ。影があるだろう。
どうやら誰かがそこにいて出れないみたいだな」
( ^ω^)「じゃあ、その人がどこかへいくのを待つしかないってことかお」
(´・ω・`)「そういうことに――ん?」
(;´・ω・`)「おい、彼女何か慌ててないか?」
ショボンに言われて、ブーンがディスプレイに目を向ける。
ツンが目を見開いて上を見上げていた。
階段の上、上階だろうか。
162
:
◆MgfCBKfMmo
:2014/01/13(月) 22:10:27 ID:F2t219ls0
(´・ω・`)「【俯瞰】を操れ。上方も3メートルまで見えるはずだ」
(;^ω^)「そんなこと急に言われても」
(´・ω・`)「イメージだ、イメージ。彼女から上へ遠ざかるように念じるんだ」
言われるがまま、ブーンは目を凝らして集中する。
彼女のことを見つめつつ、彼女から遠ざかる。
上へ上へ。
不安だったものの、【俯瞰】は思ったとおりに動いてくれた。
163
:
◆MgfCBKfMmo
:2014/01/13(月) 22:12:08 ID:F2t219ls0
彼女の身体が何かで遮られ、真っ暗になり、更に進めると床が見えた。
2階の様子だろう。
そこには数人の若い人々が集まっていた。
(=゚ω゚)ノ“まったく、女を逃しちまうなんてよう”
( ^Д^)“おまけに自分で部屋に閉じ込められるとか、何してんだか”
<_フ;−;)フ“ううう、なんでだか俺も覚えてないんですよお”
(=゚ω゚)ノ“とっとと降りてボスを迎えて、そこで頭下げるんだよう”
( ^Д^)“へへ、どんな罰を下してくれるのかみものだぜ”
<_フ;−;)フ“わああああ”
164
:
◆MgfCBKfMmo
:2014/01/13(月) 22:13:12 ID:F2t219ls0
(;^ω^)「あわわわ、まずいお! はやくいかなくちゃだお!」
入り口にいるのは、きっと彼らの言うボスだ。
このまま青年たちがその人物を迎えたら、ツンが外へ出る機会は更に減る。
それどころか見つかってしまうかもしれない。
<_フ;−;)フ“やめてくれえ、連れて行かないでくれええ”
青年がじたばたし、周りの青年たちが慌てて取り押さえている。
すんなり降りるつもりはないようだが、力ずくで連れて行かれるのは時間の問題だろう。
(´・ω・`)「よし、こいつを使おう」
青年の惨めな姿を、ショボンがびしっと指さした。
ブーンもこくりと応対する。
∇∇∇
165
:
◆MgfCBKfMmo
:2014/01/13(月) 22:14:11 ID:F2t219ls0
<_フ;−;)フ「うええええ」
(;^Д^)「このやろう暴れやがって、おい足押さえろ足!」
(;=゚ω゚)ノ「わかっているんだよう、でもうまくいかな」
...ヒュン
\ ,,_人、ノヽ,,人,/
) (
━━━━━━━━━ <_フ;−;)フ ━━━━━━━━━
) (
/^⌒`Y´^Y`^"\
<_フ^−^)フ「おっ!」
(;^Д^)(;=゚ω゚)ノ「!?」
166
:
◆MgfCBKfMmo
:2014/01/13(月) 22:15:28 ID:F2t219ls0
========<_フ^−^)フ「ボスうううううう!!」
(;^Д^)「こ、こいつ自分から!」
エクストの身体が階段を駆け下りていく。
階下に潜むツンには目もくれず、一直線に入り口に向かって。
( ゚∀゚)「ん?」
線の細い、さっぱりした男が一人見えた。
( ゚∀゚)ノ「おお、エクスト! 出迎えご苦労さ――」
ズダダダダ
「はいどーーーん!!」<_フ#^−^)フ)∀゚)「!!?」
167
:
◆MgfCBKfMmo
:2014/01/13(月) 22:16:33 ID:F2t219ls0
(;^Д^)「おいあのバカボスになんてことを!」
(;=゚ω゚)ノ「大変だよう、とっちめないと」
...ヒュン
\ ,_人、ノヽ/
) (
━━━━━━━━━ ( ^Д^) ━━━━━━━━━
) (
/^⌒Y´^Y\
( ^Д^)「おっおっお」
(;=゚ω゚)ノ「おいなんで笑って」
========⊂二二二( ^Д^)二⊃「ブーーーーーーーン!」
(;=゚ω゚)ノ「!?」
168
:
◆MgfCBKfMmo
:2014/01/13(月) 22:18:09 ID:F2t219ls0
...フッ
Σ<_プ−゚)フ「あ、あれ」
(#) ∀ )「…………」
<_プ−゚)フ「ボス! どうしてそんな地べたに寝っ転がって」
(#) ∀ )「エクスト、お前みたいな新入りがどうs――」
========⊂二二二( ^Д^)二⊃「おおおおおお!!」
<_プ−゚)フ「あ、プギャー先輩が走ってくる!」
(#) ∀ )「おお、ちょうど良かったぞプギャー。はやくエクストを捕まえて」
ズダダダダダダ
「はいどーーーーーーん!!!」ヽ( ^Д^)ノ┌┛)`∀゚)・;'「あっれえ!?」
169
:
◆MgfCBKfMmo
:2014/01/13(月) 22:19:23 ID:F2t219ls0
(;=゚ω゚)ノ「ああ、外でプギャーが暴れているよう、なんなんだよう!」
...ヒュン
\ ,,_人、ノヽ/
) (
━━━━━━━━━ (;=゚ω゚)ノ ━━━━━━━━━
) (
/^⌒Y´^Y\
(=゚ω゚)ノ「おっおっ」
========⊂二二二(=゚ω゚)二⊃「こいつも連れて行くおーーーーーん!!」
ドガシャーン
ムッギャー
∇∇∇
170
:
◆MgfCBKfMmo
:2014/01/13(月) 22:20:41 ID:F2t219ls0
ξ;゚⊿゚)ξ「な、何が起きたというの……!?」
ボスと呼ばれていたから、少年たちのリーダーだったのだろう。
その人物が、配下である少年たちに襲われ外を転がりまわっている。
取っ組み合いの姿はすでに入り口から遠く離れてしまっていた。
もうツンの周りには誰も居ない。
ξ゚⊿゚)ξ「……行っていいのね」
一言つぶやくと、足早に入口へ向かう。
日光に思いっきり照らされる。眩しくて、ツンは手のひらで目を覆った。
ずいぶん久しぶりに浴びた気がし、力がみなぎってくる。
これからまた一走りしなければ。
ξ゚⊿゚)ξ「よし!」
気合を入れて、彼女は外へ駆け出していった。
疲れは感じていたものの、意識でそれを誤魔化しながら。
171
:
◆MgfCBKfMmo
:2014/01/13(月) 22:21:39 ID:F2t219ls0
少年たちを避けるため、なるべく路地裏を選んだ。
場所はまだ判然としないが、大通りに出ればすっきりするはずだ。
十数分走り続けた頃。
人混みの音が耳に届いてきた。
一瞬立ち止まり、ツンは息を呑む。
進むたびに、徐々に大きく聞こえてくる。
それほど大きい音ではないが、大通りに続いていることは間違いない。
ξ*゚⊿゚)ξ「この道でいいんだわ!」
つぶやくと一層自信がつく。
そのまま道を突き進む。
路地裏の先の明るい光が、派手な景色が、だんだん臨めるようになる。
「お嬢さん」
不意に声をかけられた。
172
:
◆MgfCBKfMmo
:2014/01/13(月) 22:22:29 ID:F2t219ls0
ξ゚⊿゚)ξそ
声がしたのは、隣だ。
川д川
髪の長い女性が佇んでいた。
声をきくまでツンはその女性に全然気づいていなかった。
ものすごく影が薄い人だとツンは思った。
女性の前にはこぢんまりとした台座がある。
その上には真っ赤な小さい座布団と、水晶玉。
それだけで、あまり関わり合いになりたくない人物だとツンは直感した。
川д川「あなた、ちょっと私の話を聞いていかない?」
ξ;゚⊿゚)ξ「いや、今はちょっと……」
173
:
◆MgfCBKfMmo
:2014/01/13(月) 22:23:29 ID:F2t219ls0
ちらりと、来た道の方を見やる。
音は聞こえないものの、先ほどの少年たちが追いつかないとも限らない。
ここは急いで立ち退かないと。
そう思ったとき、女性の言葉が飛び込んできた。
川д川「あなた、取り憑かれているわよ」
ξ゚⊿゚)ξ「……え?」
174
:
◆MgfCBKfMmo
:2014/01/13(月) 22:24:30 ID:F2t219ls0
目を瞬かせるツン。
その腕に、女性の手が伸びてきて、軽く握ってきた。
川д川「私は東洋からきた霊媒師なの。
もしあなたが望むなら、あなたに取り憑くその霊魂、調べてあげてもいいわよ」
突然の申し出を、ツンは呆然としながら聞いていた。
∇∇∇
175
:
◆MgfCBKfMmo
:2014/01/13(月) 22:25:53 ID:F2t219ls0
(#^ω^)「何言ってんだおこいつ」
ディスプレイを見ながら、ブーンがぼやく。
∩(#^ω^)∩「僕は今ここにいるお! なにデタラメ言ってんだお」
(´・ω・`)「うん、詐欺師だろうな」
ショボンもまた呆れた調子で画面を眺めていた。
ツンは腕を掴まれて動揺しているものの、女性の言葉に耳を傾けている。
川д川“さあさあ、この台座の向かいに座って。
今から水晶玉に霊魂の影を映し出すわ。それがいいのか悪いのか、占ってあげる”
(#^ω^)「離してくるお!」
苛立ちながら、ブーンはまた現世へ赴いた。
∇∇∇
176
:
◆MgfCBKfMmo
:2014/01/13(月) 22:27:21 ID:F2t219ls0
川д川「むう〜〜〜〜〜」
ξ;゚⊿゚)ξ「あの、唸ってばっかりですけど」
川д川「静かにして! もうすぐ姿を現すわよ!」
ξ゚⊿゚)ξ「はあ」
川д川「むむむ、こ、これは〜〜〜〜〜〜」
...ヒュン
\ ,,_人、ノヽ/
) (
━━━━━━━━━ 川д川 ━━━━━━━━━
) (
/^⌒Y´^Y`\
川д川「こんなことしている場合じゃないお!」
ξ゚⊿゚)ξ「え?」
177
:
◆MgfCBKfMmo
:2014/01/13(月) 22:28:28 ID:F2t219ls0
川д川「君は追われているんだお」
ξ゚⊿゚)ξそ「な、なぜそれを!」
ツンは驚愕する。
誰かに追われているなんて話、とっさに出てくるものでもあるまい。
ましてやそれを的中させるなんて。
怪しげな霊媒師だとばかり思っていたが、実は相当な実力者なのかもしれない。
ツンの霊媒師に対する興味は一層膨らんだ。
ところが当の霊媒師は、まるで人が変わったかのように大声を出している。
川д川「そんなことどうでもいいお! はやく走って逃げるんだお!」
178
:
◆MgfCBKfMmo
:2014/01/13(月) 22:29:22 ID:F2t219ls0
ξ;゚⊿゚)ξ「で、でもどうして急に。
それに、占ってみるって言ったのはそっちじゃ」
川д川「占ってみてわかったとかそんなところだお」
なるほど理にかなっている。
ツンは納得し、改めて彼女の実力を思い知らされた。
川д川「さあ」
ξ;゚⊿゚)ξ「わかったわよ」
あまりにも急かされて狼狽しつつ、ツンは席をたつ。
お礼でも述べようかと思ったが、霊媒師がものすごい剣幕で睨んでくるので
結局何も言わずにそそくさと走り去ってしまった。
∇∇∇
179
:
◆MgfCBKfMmo
:2014/01/13(月) 22:30:19 ID:F2t219ls0
...フッ
Σ川д川「はう!」
去りゆくその背中を眺めていた、霊媒師が、がっくりと首を下げる。
意識を取り戻した霊媒師は、きょろきょろと当たりを見回した。
先ほどまで目の前に座っていたはずの女性がいない。
そのことに、彼女は息を呑んだ。
川д川「もしかして私、霊媒成功しちゃった……!?」
彼女の手がわなわなと震え始める。
180
:
◆MgfCBKfMmo
:2014/01/13(月) 22:31:29 ID:F2t219ls0
彼女の出身である東洋の島国には、
霊魂をその身に宿らせて思いを語らせるという霊媒作法があった。
この国に渡ってきてから見た目で怪しまれることは多かったが、
彼女としてはいつでも真剣に、その作法を実践し続けていたのである。
それが今、ようやく実現したのではないか。
彼女は驚きを禁じ得なかった。
川д川「ふ、ふふふ……やったわ。やったわよ私」
慣れない熱い興奮が、腹の底から湧いてくる。
長い黒髪の奥で目を見開いて、霊媒師はにたりと盛大な笑みを浮かべていた。
∇∇∇
181
:
◆MgfCBKfMmo
:2014/01/13(月) 22:33:16 ID:F2t219ls0
ξ;゚⊿゚)ξハア、ハア
霊媒師と別れて後、街道に出た。
走ってきたことの疲れが、荒い息遣いに乗り移っている。
汗を拭いながらも、ツン頭のなかでは先ほど霊媒師に言われた言葉が残っていた。
『取り憑かれている』
普段なら気にもかけないものだが、それがどうしてか頭のなかで反芻されている。
意識が消えて、気がついたらトラブルが解決している。
そんな不思議な出来事が部屋を出たときから繰り返されていたからだ。
心霊現象めいた作用が働いているなんて、ありえるだろうか。
でも自分は確かにそれを体験して――
182
:
◆MgfCBKfMmo
:2014/01/13(月) 22:34:21 ID:F2t219ls0
空想が始まろうとしたところで、ツンは強引に首を振って現実に思考を戻した。
そんな言葉に構っていたから余計な時間を使ってしまったんだと反省する。
ξ;゚⊿゚)ξ「とにかくまずは警察を探さないと」
道端の看板を見て、自分の位置を確認する。
アスキー通りを含めた繁華街からみて北西に位置する『マリントン』という地域だ。
かつてはニューソーク市で最も治安の悪い地域とも言われていた。
そのイメージを払拭するべく、数年前に活躍した政治家の名前が地域の名前として付された。
しかし、今ではその政治家自身が失職してしまっており、地域のイメージ向上にはほとんど効果を成していない。
ξ;゚⊿゚)ξ「おっかないところに来ちゃったなあ」
看板の傍に地図があったので、警察署を確認しようとする。
183
:
◆MgfCBKfMmo
:2014/01/13(月) 22:35:33 ID:F2t219ls0
しかし、なかなか集中できない。
疲れのせいだ。滴る汗を拭って、なんとか目を細める。
( ^ω^)“ツンは相当疲れているみたいだけど、なんでだお? 制限時間は守っていたはずじゃ”
(´・ω・`)“ビルで最初に引っ切り無しに交代していたから、魂のほうが疲れちゃったのかもね”
(;^ω^)“そんな、もしここで倒れたりしたら……”
(´・ω・`)“いや、ここは見守っていよう。残り時間ももったいないからね。
外には出ているんだから状況は良くなっている。あとは彼女を信じよう”
数分して後、ツンは歩き始めた。
警察署は遠くにあったものの、交番が近くにあった。
ひとまずそこを目指して進んでいく。
184
:
◆MgfCBKfMmo
:2014/01/13(月) 22:36:19 ID:F2t219ls0
道行く人々が、ふらつく彼女を時折見つめていた。
単に気になっただけか、何事かの企みがあるのか。
地域の特性上、いろんな良くない可能性が考えられた。
ツンは身を強ばらせながらも、その視線を無視して進んでいく。
またあの霊媒師のような人に捕まってしまっては困る。
今度はさらに逃げ出せないかもしれない。
地図で覚えた道の先。
白地に青の文字で『NSPD』と書かれた看板が見えてきた。
ニューソーク市警の警察のマークだ。
認識すると同時に、ツンの胸に安堵が広がる。
185
:
◆MgfCBKfMmo
:2014/01/13(月) 22:37:36 ID:F2t219ls0
ξ; ⊿ )ξ「ああ、やっと……」
呻くような小言の後、数歩近づき、扉の前に立つ。
こつこつと弱々しく扉が叩かれる音。
中にいた警官が顔を上げた。
音に気づいてくれたのだろう。
ξ; ⊿ )ξ「よかった」
それを確認したツンの意識が、遠のいていく。
足が身体を支えられなくなって、その場に膝をついたころには
彼女はすっかり目を閉じ、眠ってしまっていた。
∇∇∇
186
:
◆MgfCBKfMmo
:2014/01/13(月) 22:39:01 ID:F2t219ls0
ディスプレイの中で、交番の扉が開く。
(;・∀・)“おい、どうした君!? そんなところで”
飛び出してきたこの男が警官なのだろう。
動揺しながら、彼はツンを担ぎ上げる。
(;・∀・)“眠ってるなあ。休んでなんとかなるか? 病院に連れて行ったほうがいいかなあ”
頭をかき、警官が扉を閉める。
これでもう怪しい少年たちがツンの元に現れることはないはずだ。
( ^ω^)「一段落ついたお……」
ぽつりと言って、目をこする。
集中しきっていた神経を、肩を回したりしてほぐしていった。
187
:
◆MgfCBKfMmo
:2014/01/13(月) 22:40:17 ID:F2t219ls0
椅子に乗ったまま、ショボンの方を向く。
(´・ω・`)b
ずいぶん若々しい仕草に、ブーンは思わず笑みを漏らす。
(´・ω・`)「お疲れ様だ。ひとまず安心だな」
( ^ω^)「ありがとうございますお。いろいろ手助けしてもらって」
取り憑くことを教えてもらったのはもちろん、
彼女に取り憑いている間に様々なナビゲーションをしてくれたのも大いに助かった。
だからこそ彼女を取り巻くトラブルを回避することができたのだ。
感謝の気持から、ブーンはショボンに片手を伸ばす。
ショボンは眉を引き上げ、肩をすくめる。
彼もまた同様に片手を差し出し、ブーンと握手する。
いっときの仕事の達成感を、ふたりで分かち合った。
188
:
◆MgfCBKfMmo
:2014/01/13(月) 22:41:45 ID:F2t219ls0
( ^ω^)「しかしあの若者たちはなんだったんですかお?」
手を離してから、思いついた疑問をショボンに投げかける。
( ^ω^)「どうしてツンを監禁なんか……ツンに狙われる理由があるなんて思えないんだお」
(´・ω・`)「ふむ、確かに【俯瞰】していて気になる点はあった」
ショボンの目が細く鋭く変化する。
(´・ω・`)「監禁っていうのはね、準備がいるんだ。
その人を捕まえ移動する方法、閉じ込める場所、見張る人――とにかく手間がかかる犯罪だ」
(´・ω・`)「今回の若者たちは何らかのチームに所属していたみたいだから
それなりの下地はあったのだろうけど手間がかかることに変わりはない」
(´・ω・`)「それでも実行したのだから、監禁することによるメリットが何かあったはずだ」
189
:
◆MgfCBKfMmo
:2014/01/13(月) 22:42:54 ID:F2t219ls0
(´・ω・`)「監禁の多くは性犯罪に付随するものだけど、
見たところツンさんはそんなものに巻き込まれたわけでもなさそうだったね」
(´・ω・`)「それ以外の可能性としては誘拐犯罪だ。
誘拐の目的は得てして金銭だ。誘拐して、残っている家族を脅したりする。
まあ、ときたま純粋に怨恨目的で人を閉じ込める人もいるから、この線も考えるとして」
(´・ω・`)「どうだろうか。ツンさんが特別お金持ちだったり、誰かに恨まれていた節は無かったかな」
突然の考察の後に声をかけられ、ブーンは僅かばかり反応が遅れる。
(;^ω^)「いや……彼女はごく普通の一般人ですお。
それに恨みも、少なくとも僕には全く心当たりがありませんお」
だからこそ、彼女が監禁される理由が見つからない。
190
:
◆MgfCBKfMmo
:2014/01/13(月) 22:44:05 ID:F2t219ls0
(´・ω・`)「ふむ……それじゃどうしてツンさんは監禁されたのだろう」
ショボンの考察がまた始まる。
(´・ω・`)「彼女自身も状況が把握できていないようだったな。
逃げ出すときも、機転を利かせて撃退はできたが、本気で逃したくないならばもっと厳しい警備がありえたはずだ」
(´・ω・`)「それが無かったということは……ツンさんを逃がすことをすぐ諦めてしまったからか、あるいは」
ショボンは一旦間を置いてから、言葉を続ける。
(´・ω・`)「――ツンさんを一旦閉じ込めておくことそのものに意味があったか、だ」
( ^ω^)「閉じ込めておくことそのものに意味? どういうことですかお?」
(´・ω・`)「……可能性の話として一つ思いついたから、いいかな」
191
:
◆MgfCBKfMmo
:2014/01/13(月) 22:45:42 ID:F2t219ls0
(´・ω・`)「あの若者たちが何か計画しているとするね。
何かとても大事なことをするんだ。どこかの場所で。
そこに部外者が入ってこようとする。すると彼らはどうするだろう」
(´・ω・`)「どうにかしてその部外者を遠ざけようとするはずだ。
話して説得できればいいけど、話して自分らに良くないことが振りかかる内容なら、穏便にはいかないね
そのような場合は、あまり社会的に望ましくない強行手段に出る可能性もある」
ショボンの言いたいことが、ブーンにもようやくわかった。
(;^ω^)「とても大事で、人に話すわけにいかない内容……それってやっぱり、犯罪かお。
どこかの場所にツンが近づいていて、そこで犯罪をしようとしている奴らが、彼女を遠ざけるために監禁した、と」
(´・ω・`)「僕ならばそう考えるね」
( ^ω^)「そんなの……」
何も知らないで歩いているツンに、突然見知らぬ男が現れて、眠らせて連れて行く。
あまりにも理不尽な想像が膨らんで、ブーンの胸中はにわかに沸き立った。
192
:
◆MgfCBKfMmo
:2014/01/13(月) 22:47:19 ID:F2t219ls0
(#^ω^)「そんなの、身勝手すぎるお! ツンは巻き込まれただけじゃないかお!」
(´-ω-`)「僕に怒られても困る。それにこれは想像に過ぎない」
ショボンは肩を竦めて、ブーンの前のディスプレイに目を向けた。
ブーンが表示できるディスプレイ。今は交番の中のツンの姿が映し出されている。
(´・ω・`)「さっき、君は取り憑いた状態で少年たちのボスを殴っただろう。
条件は満たしているはずだ。奴らのボスに取り憑いて、探ってやろうじゃないか。
やつらの目的ってやつをな」
ブーンもその言葉に同意する。
この件が終わるまで、未練は断てそうにない。
黒い空に目を向けて、あのとき殴った線の細い男の姿を思い浮かべた。
∇∇∇
193
:
◆MgfCBKfMmo
:2014/01/13(月) 22:48:22 ID:F2t219ls0
<_フ;−;)フ「ボス〜、許してください〜」
(;^Д^)「ジョルジュさん、俺達何も覚えていないんですよー!」
(;=゚ω゚)ノ「全員同じ部屋に閉じ込めるなんて、暑苦しくてしかたないんですよう!」
(;;)∀゚)「うるせえ」
どよめきを無視して、ボスこと、ジョルジュは外の廊下で、パイプ椅子に腰掛けていた。
自分を殴った三人の部下の部屋にはしっかり鍵をかけてある。
なぜ殴られたのかはさっぱりわからなかったが、後で制裁を加えてやろうと今から考えを巡らせていた。
194
:
◆MgfCBKfMmo
:2014/01/13(月) 22:49:21 ID:F2t219ls0
(;;)∀゚)「お前らが俺のことを嫌いなことはよくわかった」
ジョルジュは冷たく言い放つ。
「そんなことないっすよ!」と聞こえてくるも、それもまた耳に入れない。
(;;)゚∀゚)「そうだな、もし本気で謝るんだっていうんだったら、夜中のソーサック川の横断遊泳でも」
...ヒュン
\ ,,_人、ノヽ/
) (
━━━━━━━━━ (;;)゚∀゚) ━━━━━━━━━
) (
/^⌒Y´^Y`\
.
195
:
◆MgfCBKfMmo
:2014/01/13(月) 22:50:20 ID:F2t219ls0
(;;) ∀ )
突然言葉が途切れたことに、部下たちも気づいた。
(;^Д^)「ジョルジュさん?」
(;=゚ω゚)ノ「どうしたんですよう、そんなに怒っているんですかよう」
...フッ
Σ(;;)゚∀゚)
(;;)゚∀゚)「あれ、なんか一瞬気を失っていたような」
何事も無かったように、ジョルジュは目を瞬いた。
実際彼自身は、自分が取り憑かれ、そしてすぐに離されたことにまるで気づいていなかった。
196
:
◆MgfCBKfMmo
:2014/01/13(月) 22:51:06 ID:F2t219ls0
<_プ−゚)フ「あ、あ! やっぱりそういうことありますよね! だから僕らも」
(;;)#゚∀゚)「お前らとはちげえよ!!」
<_フ;−;)フ「ひいいいいいい」
怒鳴った直後、かすかな振動音がした。携帯端末のヴァイブレーションだ。
ジョルジュは急いでポケットからそれを取り出す。
(;;)゚∀゚)「ああ、取引先から連絡だよ。まずお前らのこと通報しておいてやるから覚悟しておけよな」
喚く声をこれまた無視して、通話に応答する。
(;;)゚∀゚)「もしもし、ジョルジュです」
先方からの声は、ジョルジュにだけ届く。
197
:
◆MgfCBKfMmo
:2014/01/13(月) 22:52:00 ID:F2t219ls0
( ^ω^)“電話を聞くことはできないんですかお?”
(´・ω・`)“残念ながら無理だ。ボスの話に集中しよう”
(;;);゚∀゚)「いやあ、その、実は私の部下がとちってツンってやつを逃してしまいまして」
(;;)゚∀゚)そ「え、もういい? そうですかそりゃ良か――いえ、なんでもないです」
ツンが逃げたことが、もういいこと。
ショボンの考えた経緯と符合する。
(*^ω^)“ショボンさんすごいお!”
(´・ω・`)“静かに、まだ話は続いているみたいだ”
(;;)゚∀゚)「で、ええと、何でしょう。もう一つの計画?」
ジョルジュはきょとんとした様子になる。
198
:
◆MgfCBKfMmo
:2014/01/13(月) 22:53:08 ID:F2t219ls0
(;;);゚∀゚)「ええ、もちろん。断るわけにはいかないですよ!
事情は何でも、うちのものがやらかしてしまったわけですし」
(;;)゚∀゚)「それでその計画というのはどのような? え?」
(;;)|!゚∀゚)「いやあその、人を傷つけたりとかそんな物騒なことはちょっと……
私達はあんまり本格的というか、基本集まって遊ぶことがメインのチームなんで」
(;;)゚∀゚) ホッ「あ、見張り……ええ、それくらいならなんとか」
(;;);゚∀゚)「ターゲットの画像、ですか。もらっても仕方ないような……
いえいえ! そんなつもりは! もう大切にもらっておきます!」
199
:
◆MgfCBKfMmo
:2014/01/13(月) 22:54:06 ID:F2t219ls0
通話が終了したところで、ジョルジュががっくりと肩を落とした。
相当に疲労したことが見た目にもよくわかる。
(;;)゚∀゚)「……面倒くさそう」
そう呟いたのは、ブーンとショボンにも、部屋の中の三人の部下にもはっきりと聞き取れた。
( ^ω^)“つまり、こいつらはさらに大きな犯罪者に使われているのかお?”
(´・ω・`)“そのようだ。これはいよいよ大きな犯罪の臭いがしてきたな。
どうやら今度は誰かを傷つけようとしているらしい。殺人かもしれないな”
(|!^ω^)“……ショボンさん、さっきから思っていたんですけど
そんな言葉をほいほい使うなんて、あなたいったい生前はどんな生活を”
(´・ω・`)“あ、おいジョルジュが画像を見ているぞ! フォーカスを合わせろ”
200
:
◆MgfCBKfMmo
:2014/01/13(月) 22:55:43 ID:F2t219ls0
嫌そうな顔をしながらも、ジョルジュは画像を見据える。
(;;)゚∀゚)「こいつが、あいつらの狙っている人か……」
『あいつら』が何を企んでいるのか、全容はジョルジュも知らない。
深入りしたら碌でもないことになるのは明白だった。
こうして手助けするだけで結構な金が入ってくる。
それだけのために彼は『あいつら』とつるんでいた。
画像に映っていたのは、ひとりの女性。
┌─────┐
│ .│
│ 川 ゚ -゚) ..│
│ .│
└─────┘
(;;)゚∀゚)「いったいこの人は何をしたんだかね」
嘲笑混じりにそうぼやいて、ジョルジュはその画面を閉じた。
∇∇∇
201
:
◆MgfCBKfMmo
:2014/01/13(月) 22:56:47 ID:F2t219ls0
(;^ω^)「ううむ、結局手がかりはほとんど無かったですお」
ジョルジュが使われている身である以上、詮索したところで得られる情報もたかが知れている。
いくら取り憑いて調べても、ツンが攫われた理由は把握できそうになかった。
ツンはもう安全なのだろうか。
それが気がかりで、気になる点はいくつもある。
( ^ω^)「これからどうしたらいいと思いますかお、ショボンさん」
すっかりショボンに質問することが癖になっていた。
アドバイスを受けることに慣れてしまっていたのかもしれない。
出会ってまだ一時間も立っていないが、聞くとすぐに、的確な言葉をかけてくれたから。
そのショボンが、このときは返事をしなかった。
202
:
◆MgfCBKfMmo
:2014/01/13(月) 22:58:02 ID:F2t219ls0
「あれ?」と思い、ブーンが彼を振り向く。
(;´ ω `)
俯いた彼が、そこにいた。
(;^ω^)「ショボンさん!?」
ただならぬ気配を感じて、ブーンが叫ぶ。
ショボンはそれを聞いているのか、いないのか判然としなかった。
203
:
◆MgfCBKfMmo
:2014/01/13(月) 22:58:55 ID:F2t219ls0
(;´ ω `)「なぜだ……」
よろめきながら、ショボンが歩く。
ゆっくりディスプレイに近づいていく。
今、その画面にはジョルジュの姿が映っていた。
部屋の鍵を開け、部下たちを出している。
先ほど言われた計画に手伝わせるためだろう。
(;´ ω `)「なんで彼女が、巻き込まれているんだ?」
画面の目の前に立つショボン。
その腕が持ち上げられ、握られた拳が重々しく画面を叩く。
揺れこそしたものの、消えたりはしない。
204
:
◆MgfCBKfMmo
:2014/01/13(月) 22:59:45 ID:F2t219ls0
( ^ω^)「ショボンさん、あの女の人知っているんですかお?」
知り合いだから、これほど動揺しているのだろうか。
それはそれで理屈が通っているようにも思える。
(´ ω `)「知っているとも」
ショボンの顔が持ち上がる。
狼狽し切った顔の、目に涙が浮かんでいた。
( ^ω^)「あの……」
かけようとした言葉が、消えてしまう。
何を言ってもショボンには届かない気がした。
数秒後、ショボンは口を開き、述懐する。
205
:
◆MgfCBKfMmo
:2014/01/13(月) 23:00:59 ID:F2t219ls0
「僕の死因を、言ってなかったね」
「僕は」
「彼女を庇って死んだんだ」
残り時間 78分54秒
∇To be continued...∇
206
:
◆MgfCBKfMmo
:2014/01/13(月) 23:02:21 ID:F2t219ls0
今日はおしまい。
207
:
名も無きAAのようです
:2014/01/13(月) 23:31:31 ID:ecW9UuPMC
(´・ω・`)にも悲しい過去があったのか
208
:
名も無きAAのようです
:2014/01/14(火) 05:06:55 ID:6JEz.K5.0
ツンが助かったと思いきや今度はショボンか…
おつ。次も楽しみにしてる
209
:
名も無きAAのようです
:2014/01/14(火) 20:26:40 ID:Db3vk1dQ0
似たような境遇で余計にブーンに同情してくれたのかな
黒幕も気になる
210
:
名も無きAAのようです
:2014/01/16(木) 23:38:52 ID:a2KxgrWY0
乙
続きが気になる
残り時間があるのが緊張感があっていいね
211
:
名も無きAAのようです
:2014/01/20(月) 07:34:30 ID:.0pzgh8U0
ゲームのような設定で面白い
取り憑く先を転々とするあたりゴーストトリックを思い出すな
212
:
名も無きAAのようです
:2014/01/23(木) 20:29:20 ID:T.pTTd5A0
投下します。
213
:
名も無きAAのようです
:2014/01/23(木) 20:30:38 ID:F0SUY4/g0
はい
214
:
◆MgfCBKfMmo
:2014/01/23(木) 20:30:51 ID:T.pTTd5A0
マリントン地域は、ニューソーク市の中央を流れるショーセッツ川の下流域に位置していた。
この川とソーサック川は、ニューソーク市の中央街を挟む形で流れており、市の象徴的な河川でもあった。
大型コンベンション・ホール『K・S・Kコンベンションセンター』は、マリントン地域の堤防の傍に位置していた。
そこにニューソーク市警警備部の人間がSPとして配備されたのは、今から6年前の冬の話である。
この日、K・S・Kコンベンションセンターには続々と人が集まりつつあった。
ニューソーク市議会にて大きな影響力を有する政治家、マリントンの特別講演が行われようとしていたためである。
予てより市の治安の悪化を嘆いていたマリントンは、治安良化の始まりとしてこの講演で自分の公式の声明を発表するらしかった。
それは、マリントンが市に蔓延る犯罪者たちの徹底弾圧を始めることを意味していた。
犯罪者やマフィア、暴力団といった反社会的な人たちからの反発があることは明らかだ。
対テロ対策として、マリントンは警察に自らの身の安全を保証するように要請したのである。
危険だと分かっているならばそのような面倒を起こすなと、市警に勤める誰もが思っていたが、警官の身分では反論はできない。
こうして寒空の下、低いモチベーションにしがみつくように
数十名の警備部の人間が同センターに派遣されることとなったのである。
215
:
◆MgfCBKfMmo
:2014/01/23(木) 20:32:32 ID:T.pTTd5A0
( ゚∋゚)「よう、相棒」
大柄な男が、玄関に現れた。警察の制服の上からでも、その張り具合から、筋骨隆々な様が伝わってくる。
( ゚∋゚)「コーヒー買ってきたぜ。温まろうじゃないか」
差し出された、安い缶コーヒー。
それを彼は受け取る。その冷たい手にまず彼は驚いた。
続いて、缶の温もりが彼の掌をじんわりと広がっていった。
(´・ω・`)「ありがとうクックル。もうしばらく頑張れそうだよ」
警備部の人員は、仕事があると毎度同じ面々が配備されることが多い。
理解し合える人々の方が、有事の際に連携が取れ、強固な警備が可能となるためだ。
ショボンとクックルもそのような経緯で顔見知りになっていた。
怪我や事故の多い警備部だが、幸いまだ二人とも大きな負傷は負っていなかった。
216
:
◆MgfCBKfMmo
:2014/01/23(木) 20:33:23 ID:T.pTTd5A0
( ゚∋゚)「俺達が入り口内の担当になるのは講演が始まる頃だったな。それまでは耐えるしかないか」
(´・ω・`)「やれやれ、これだけ人が来るのを見ていると、いつまでたっても終わらない気がしてくるよ。
政治家の講演なんてどいつも大して変わらないというのに、よく集まるものだ」
( ゚∋゚)「マリントンはアピールに力を入れているから、民衆が感化されているのさ。
西部のあのクズ共のの溜まり場を自分の名前に置き換えたり、よくやるよ」
その後も、政治家の愚痴を何度か言い合ったが、寒さが体力を奪うので、口数は減っていった。
入場者に目を光らせているが、怪しげな人物は目にはいらない。
持ち物検査等は入り口内の人間の仕事であり、ショボンたちは大雑把な一次審査と外の動きにだけ注意しておけばよかった。
開演の時間が迫るにつれ、入場する人の数も少なくなっていった。
もう5分もすれば、外の警備の必要性もなくなるだろう、そんなとき。
(´・ω・`)「……ん?」
217
:
◆MgfCBKfMmo
:2014/01/23(木) 20:34:21 ID:T.pTTd5A0
( ゚∋゚)「どうした?」
(´・ω・`)「いや、あそこの物陰で何かが動いた気がしてね」
センター前には駐車場があり、車が並べられている。その一つを、ショボンは指差していた。
( ゚∋゚)「風がゴミを運んでいたんじゃないか?」
(´・ω・`)「どうだろうか、生き物のように見えたけど……見てくるよ」
警備としては、わずかな変化も見逃すわけにはいかないとショボンは思った。
つかつかと車に歩み寄り、その後ろに首を伸ばす。
(´・ω・`)「……」
川 - )
まだ10代半ばと見える少女が一人、蹲っていた。
寒さのためだろうか、見窄らしい服装に包まれたその体は小刻みに震えてしまっている。
218
:
◆MgfCBKfMmo
:2014/01/23(木) 20:36:17 ID:T.pTTd5A0
マリントン地域からの子だろう、とショボンは直感した。
あの地域は昔から犯罪者集団の隠れ蓑としての性質を持っていた。
社会の黒い闇の部分。しかしその闇に、縋らざるを得ない人たちがいた。
国民の貧困層、特に、親に捨てられた子どもたちだ。
マリントンに蔓延っていた犯罪者集団は、世間からの風当たりこそ強かったものの
そのような身寄りのない子どもたちにとっては仕事と生活を保証してくれる養い手でもあった。
闇の世界に子どもたちが足を踏み入れる、目を背けたくなる事実だが、現実として黙認されている節もあった。
そうしなければ、子どもたちは死ぬ一方でしか無いのだから。
その秩序が、マリントンの政策により一挙に崩れた。
溢れかえった貧しい子たちはマリントンの作り上げた特別養護ホームに収容される扱いになっていたが
ある程度成熟した子どもが今更取ってつけたような家族ごっこに馴染めるはずもない。
この震えている少女ほどの年頃なら、なおさらだろう。
結果、マリントン地域中にたくさんの貧しい子が散り、細々と生活を送る羽目になっていたのである。
219
:
◆MgfCBKfMmo
:2014/01/23(木) 20:37:24 ID:T.pTTd5A0
川#゚ -゚) キッ
鋭い目が、ショボンに突き刺さる。敵意を感じながらも、ショボンは目を離さないでいた。
世間一般から見れば、彼女のような子は自ら進んで社会からドロップアウトした人間でしかない。
蔑まれる生活を送ってきたのだろう。
彼女が世の中を恨み、状態的に睨みを効かせるのは致し方のないことだ。
そうショボンは考え、彼女を咎めることはしなかった。
川;゚ -゚)「う……」
突然、彼女の顔が青ざめる。
その顔が下を向き、何度か咳を繰り返した。
220
:
◆MgfCBKfMmo
:2014/01/23(木) 20:38:50 ID:T.pTTd5A0
どうしたのかと、ショボンはややうろたえがちに声をかける。
(´・ω・`)「寒いのかい?」
川;゚ -゚)「…………うん」
消え入るような返答だった。
憐憫の情が、ショボンには湧いてくる。
この子にはなんの罪もない。
ただ貧しくて、必死に生きてきただけにすぎない。
それなのに、こんな時代になってまで、寒さに苦しまなければならない。
せめて、彼女に暖をとらせよう。
どこか落ち着いていられる、暖かい場所はないものだろうか。
「ふむ……」と言い、思案を巡らせると、すぐに答えに辿り着いた。
221
:
◆MgfCBKfMmo
:2014/01/23(木) 20:40:17 ID:T.pTTd5A0
後方のK・S・Kコンベンションセンターをショボンは指し示した。
少女がそれにつられて、建物に目を向けるのがわかる。
人もいっぱいいるし、暖房だってついている。
少女一人が紛れ込んでも、誰も気にもとめないだろう。
少女の目線がショボンに戻ってきたので、ショボンはにやりと歯を見せた。
(´・ω・`)「君、名前は?」
川 ゚ -゚)「…………クー」
(´・ω・`)「そうか、クーさん。ひとつ提案なんだが」
(´・ω・`)「あの中に入ってみるかい?」
222
:
◆MgfCBKfMmo
:2014/01/23(木) 20:41:49 ID:T.pTTd5A0
川;゚ -゚)「え、いいの?」
すぐに、彼女が飛びついてきた。
目を剥いて、ショボンの発言の真意を図ろうとしている。
川;゚ -゚)「でも警備がたくさんいるよ?」
(´・ω・`)「ふふ、それは僕の仲間だ。もう少ししたら入り口の担当が僕になる。
一緒に警備する相棒も、頼み事にはすごく弱いやつなんだ。だから、きっと大丈夫さ」
本当はいけないことだろう。でも、この子は政治家の気まぐれで被害を被っただけだ。
そんな子の、今晩の夜風を凌ぐ場所くらい、作ってあげてもいいだろう。
ついでにマリントンに風邪でも移してやれれば、なおさらいいのに、と心の中で毒づいた。
川;゚ -゚)「あ……ありがとうございます」
少女がぺこりと頭を下げるのを、ショボンは細い目で見つめていた。
223
:
◆MgfCBKfMmo
:2014/01/23(木) 20:43:09 ID:T.pTTd5A0
数分後、講演が始まると、担当が変わった。
ショボンとクックルが、入り口の中の係。
クックルに事情を話したら、苦笑いしながらも、「しょうがないな」と言ってくれた。
その少し後に彼女は来た。
外の警備に呼び止められているのを、ショボンが口出しして止める。
それから、そっと彼女を会場の中へと誘導してあげた。
会場の扉をゆっくり閉め、満足そうな表情で帰ってくるショボンを
相棒のクックルが不思議そうな顔で見つめていたが
ショボンは特に何も答えず、柔らかく微笑むばかりであった。
∇∇∇
224
:
◆MgfCBKfMmo
:2014/01/23(木) 20:44:08 ID:T.pTTd5A0
∇∇∇ ∇∇∇
∇∇ ∇∇
∇ ∇
( ^ω^)は取り憑くようです
Scene 4. ようやく彼らはつながりました
∇ ∇
∇∇ ∇∇
∇∇∇ ∇∇∇
225
:
名も無きAAのようです
:2014/01/23(木) 20:45:20 ID:F0SUY4/g0
ショボンの生前の話がどう絡んでくるのか楽しみ
226
:
◆MgfCBKfMmo
:2014/01/23(木) 20:45:40 ID:T.pTTd5A0
バーカウンターに、ふたりは移動した。
ブーンが客側、ショボンがバーテン側。
飲み物は、水だけにした。
( ^ω^)「……落ち着きましたかお?」
(´・ω・`)「ああ、だいぶね。取り乱してすまなかった」
数分前に、ショボンは狼狽してディスプレイを叩き続けていた。
それをブーンが無理やりバーへ移動させた。
興奮冷めやらないショボンに対し、注文することで、なんとかその気を休めることに成功したのである。
( ^ω^)「……それで、ショボンさん。さっそく本題に入らせていただきますお」
ブーンがいうと、ショボンも「うん」とこたえ、待ち構えてくれる。
ブーンは一呼吸置いてから話し始めた。
227
:
◆MgfCBKfMmo
:2014/01/23(木) 20:47:24 ID:T.pTTd5A0
( ^ω^)「ショボンさんは、あの画面に映った人を知っているんですかお?」
ブーンが言っているのは、先ほどまでディスプレイに表示されていた、長い黒髪の女性のことだ。
年齢は20代前半といったところか。ブーンたちと同じくらいか、それよりも若く見えた。
(´・ω・`)「……彼女と出会ったのは、6年前の冬だ。1月だったかな」
ショボンは一瞬遠くを見る目になり、それからふっと頬を緩ませた。
昔を回顧する人が、時折みせる表情だった。
(´・ω・`)「私はね、実はニューソーク市警の警備部に所属していたんだ」
( ^ω^)「え? 警察だったんですかお?」
驚いた後に、ブーンは「だからか」と呟いた。
ショボンがマンションの間取りに詳しかったこと、犯人グループの狙いを冷静に分析していたこと。
これらは全て、ショボンが犯罪と近い距離で生活を送っていたからこその洞察力だったのだろう。
228
:
◆MgfCBKfMmo
:2014/01/23(木) 20:49:19 ID:T.pTTd5A0
納得顔のブーンを見て、ショボンは「そうだよ」と一言添える。
(´・ω・`)「それでね、6年前の冬、K・S・Kコンベンションセンターという場所で銃撃テロが行われたんだ。
僕もそこに配属されていたんだけど、そのことは、覚えているかな?」
( ^ω^)「ああ、それは……」
時代はかなり遡るが、大きな事件だったので、ニュースやネットでも度々話題に上ることがあった。
一般人であるブーンでも、すぐに思い出せることができたぐらいに。
政治家マリントン銃撃テロ事件。
市政のために革新的な政策を次々と打ち出していた政治家マリントンが、講演の最中に狙撃された。
突然の停電で誰もが油断している隙をつかれたのである。
なお、後に配電管に時限爆弾の仕掛けの痕跡が発見され、この犯行が綿密な計画の末になされたとわかった。
229
:
◆MgfCBKfMmo
:2014/01/23(木) 20:50:15 ID:T.pTTd5A0
予備電源の点灯により犯人はすぐに見つかったが、犯人は簡単には捕まらなかった。
彼は警備の人間を一人巻き込んだ後、その場で自殺したのである。
その後の調べにより、犯人は市内の過激派テログループの一員であることが判明した。
運良く生き延びたマリントンだったが、それまでの好戦的とも言える政策が人命を脅かしたのだという非難を浴び
次々と味方が反対派へと流れていったために、政治の表舞台から姿を消すことになった。
これが6年前の銃撃テロの、一般報道で知られる概要である。
(´・ω・`)「その事件で、暴れる犯人の凶弾により死亡した警備の人間、それが僕だよ」
突然の告白に、ブーンは目をむいた。
230
:
◆MgfCBKfMmo
:2014/01/23(木) 20:52:06 ID:T.pTTd5A0
(;^ω^)「そうだったんですかお……」
ニュースになるほどの大事件。
その被害者に、このような形で出くわすとは、まさしく思いもよらなかった。
対するショボンは、なんてことはないといった風に身を竦めている。
(´-ω-`)「うん。びっくりしたね。まさかあっさり死んじゃうとはね」
どう答えていいかわからず、ブーンは返す言葉をやや悩んだ。
( ^ω^)「……それが無念で、未練になったんですかお」
しみじみとブーンは言うも、それに、「いや」とショボンが応える。
231
:
◆MgfCBKfMmo
:2014/01/23(木) 20:54:14 ID:T.pTTd5A0
(´・ω・`)「あの事件の犯人に未練はないよ。僕を殺したやつは死んでいるしね。
僕が未だに気になり続けているのは、そのとき出会った女の子のことさ」
( ^ω^)「女の子……ひょっとしてそれが、さっきディスプレイに映っていた子ですかお?」
(´・ω・`)「そうだ。名前をクーという」
ショボンの顔が、また少しだけ綻んだ。
(´・ω・`)「見た目は大人びたが、すぐにわかったよ。
彼女は当時社会問題となっていた、マリントン地域の貧しいスラムの子どもだった。
6年前のあの日、K・S・Kコンベンションセンターの前で、寒さに震えている彼女に出会ったんだよ」
232
:
◆MgfCBKfMmo
:2014/01/23(木) 20:56:00 ID:T.pTTd5A0
(´・ω・`)「僕は彼女を暖めたいと思ってね、中へ引き入れた。
そのあとで、事件が起こり、逃げようとする犯人の取り押さえようとする中、彼女を見つけた。
犯人もまた、震える彼女の方を向いた。そうしたらニヤつくのが僕から見えたんだ」
顔の緩みは消える。
真顔になって、それから彼の瞼が閉じられた。
(´-ω-`)「ぞっとしたね。とっさに僕は彼女を守ろうとして身体を飛び込ませたんだ。
弾が飛んできて、僕の剥き出しの首元にあたった。
血が、どっと噴出す感触があって、僕の視界はすぐに暗くなった」
(´-ω-`)「……それで、目が覚めたらここにいた」
低いトーンで、ショボンの話が終わる。
死の経緯を淡々と話せるあたりに、ショボンのこちらへ来てからの長大な時間の経過を感じさせた。
233
:
◆MgfCBKfMmo
:2014/01/23(木) 20:58:55 ID:T.pTTd5A0
( ^ω^)「だから、『彼女を庇って死んだ』ということですかお」
(´-ω-`)「うん」
( ^ω^)「じゃあ、ショボンさんの未練は……彼女のこと」
(´-ω-`)「そうだと思う。事件そのものへの興味はすっかり薄れてしまったというのに
どうしてか未だに、彼女の姿が頭から離れないでいるんだ。
彼女は今どうしているのか、あのときの事件がトラウマになってはいないか、そんなことばかりが気がかりなんだ」
ショボンはまだ目を開こうとしない。
(´-ω-`)「それが、せっかく見つけられたと思ったら、はっきりと命を狙われているなんてね。
結構ショックが大きいみたいだ。すっかり狼狽えてしまった。さっきはカッコ悪い姿を見せてしまって申し訳なかったね」
234
:
◆MgfCBKfMmo
:2014/01/23(木) 21:00:02 ID:T.pTTd5A0
ディスプレイを叩いたことを言っているのだろう。
もうブーンはそんなもの、気にしてなどいないというのに。
疲れきった気持ちが、言葉にありありと乗っかっていた。
ブーンはその顔を見つめ、思案を巡らせる。
( ^ω^)「確かめられなかったんですかお?
クーさんに取り憑けば、彼女がどうしているかとか、わかったんじゃ」
ブーンの言葉を遮って、ショボンが短く鼻で笑う。
別にブーンを嘲ったわけでもないだろう。どちらかといえば、自分自身を嘲っている、そんな調子だ。
(´ ω `)「……これもまた、恥ずかしいお話なんだけどね。
僕と彼女は、ただの一度も、触れ合ったことさえ無かったんだよ」
言葉尻が、微かに震えていた。
235
:
◆MgfCBKfMmo
:2014/01/23(木) 21:01:00 ID:T.pTTd5A0
(´ ω `)「おかしな話だ。心に残っているのがほとんど縁のない子のことばかりなんて。
おかげで僕は未練を晴らせず、6年もこの空間に閉じ込められることになってしまった。
たまにここで見かける人を助けつつ、こっそりクーの情報も仕入れようとしていたんだけどね、それもここまで来たら無意味だ」
(´ ω `)「僕にできることは、ここでひたすら彼女に謝ることだけだったのさ。
あんな怖い目に合わせてしまって申し訳ない。
僕があのとき誘わなければ人が死ぬ姿なんて見なくてすんだのに、ってね」
( ^ω^)「…………」
気持ちを吐露するショボン。
その顔は俯いている。
カウンターについている腕が、微かな震えを帯びていた。
彼の悔しさが、どうしようもなかった無念が、そこには表れていた。
236
:
◆MgfCBKfMmo
:2014/01/23(木) 21:02:57 ID:T.pTTd5A0
思えばこの場所に来たときから、ショボンの表情には悲しみが湛えられていた。
ブーンはその悲しみの内容をようやく知ることができたわけである。
彼にどのような言葉をかけてやればいいのだろう。
ブーンは逡巡する。
自分はまだ【狭間の世界】に来たばかりだ。
初めてその世界の性質を知った時は、動揺して拒んでいた。
しかしそれからショボンの協力を得て未練を晴らそうとしている。
今にして思えば。、どれほど運の良い話だったのだろう。
自分にはちゃんと、この世界を出る糸口があるのだ。
それに対してショボンには手がかりがなかった。
動揺なんて嫌というほどしたことだろう。
いや、そもそもショボンにはこの世界を説明してくれるナビゲーターだっていなかったはずだ。
状況は、自分より過酷だったはずである。
237
:
◆MgfCBKfMmo
:2014/01/23(木) 21:04:21 ID:T.pTTd5A0
その彼を単純に慰めることなんてできない。
「辛かったね」などという安易な同情を向けることなんてできない。
ブーンはそう、自制を働かせる。
だけど、その一方で、湧き上がる気持ちがあった。
慰めや同情とは違う。
もっと熱く、明確な行動的意思に基づいた気持ち。
(#^ω^)「ショボンさん!」
大声を出し、カウンターを掌で叩いた。ショボンの顔が少しだけ持ち上がり、ブーンへ向けられる。
彼の目がじんわり充血していることがわかったが、ブーンは怯むこと無く言葉を続けた。
(#^ω^)「あの若者たちは、ツンを襲った悪人ですお。
そいつらの仲間が、今度は僕の恩人であるショボンさんの大事な人を狙っていますお」
238
:
◆MgfCBKfMmo
:2014/01/23(木) 21:05:56 ID:T.pTTd5A0
ショボンを成仏させる手がかりは、今自分たちの目の前に現れた。
ツンの追っていく最中に、垣間見ることができた。
これはショボンにとっての、巡り巡ってきたチャンスなんだ。
ここまで自分に協力してくれたショボンが、助かるための。
彼の未練を晴らすための。
(#^ω^)「ここまできたら、僕はもう放ってなんかいられないですお!
みんなみんな、僕にとっては未練に変わりないですお!」
息を吸い込み、気合を入れる。
一際大きな声で、ブーンは自分の決意を口にする。
(#^ω^)「一緒にクーさんも助けましょうお!
それで、奴らを捕まえて、ショボンさんの未練を晴らすんですお!
僕達ふたりならきっとできますお!」
239
:
◆MgfCBKfMmo
:2014/01/23(木) 21:06:59 ID:T.pTTd5A0
語気を荒げながらも、はっきりと宣言する。
乱れない力強い目で、ブーンはショボンを見つめていた。
(;´・ω・`)「…………お前」
(´-ω-`)
(´-ω-`) フッ
柔らかな笑みが、彼の顔をじんわりと満たす。
240
:
◆MgfCBKfMmo
:2014/01/23(木) 21:08:32 ID:T.pTTd5A0
(´-ω-`)「ありがとう」
なんの飾りもない、質素な言葉。
だけど、それまでに表れていた疲れは、そこには感じられない。
確固たる意思を持った人が有する強さ。
ショボンもまた、ブーンと同じようにそれを抱き始めていたのである。
ブーンは「よしっ」と雄々しく掛け声を発する。
(#^ω^)「そうと決まれば、取り憑き再開ですお!」
(´・ω・`)「!…………ああっ!」
バーを後にし、ふたりの霊魂は再び、白い大地の椅子へと向かっていった。
∇∇∇
241
:
◆MgfCBKfMmo
:2014/01/23(木) 21:09:47 ID:T.pTTd5A0
ニューソーク市総合病院は、ニューソーク市でも随一の規模を誇る病院である。
警察機関との関り合いも深く、事件で負傷した警察官や民間人、
そして時には緊急の医療を必要とする囚人が運ばれることもあった。
最後のケースが起きたときは、秘密裏に事が運び、民間人に扮した警備も付されることとなる。
そのうち、民間人が入院する棟の一室に彼女はいた。
ξ-⊿-)ξ
ξ-⊿-)ξそ「ん……」
ξ゚⊿゚)ξ パチ
意識が戻るとすぐに、彼女は上半身を起こした。
目を数度瞬かせて、視線をゆっくり動かす。
242
:
◆MgfCBKfMmo
:2014/01/23(木) 21:10:51 ID:T.pTTd5A0
目に写ったのは、自分が寝ている大きめのベッドと、薄いベージュ色の毛布。
ベッドを包むように敷かれている黄色いカーテン。清潔な印象をあたえる白い壁。
そして、脇に佇むさっぱりとした顔つきの男。
( ・∀・)「おー、起きたね!」
軽やかな口調で、男はツンに語りかけてきた。
( -∀-)「やーよかったー。
ずっとここにいるわけにもいかないし、どうしようかと思っていたんだ」
素直に安堵していることが、口調から伺えた。
次いで、その人が目を見開き輝かせて、ツンに声をかける。
( ・∀・)「どう、気分は平気かい? 何か聞きたいことはある?」
243
:
◆MgfCBKfMmo
:2014/01/23(木) 21:11:54 ID:T.pTTd5A0
状況の飲み込めていないツンは、「えっと」と返答を詰まらせた。
ξ;゚⊿゚)ξ「あ……あの、気分は多分平気です。えっと、まずあなたは誰ですか?」
( ・∀・)「ああ、申し遅れたね。
僕はニューソーク市警の巡査のモララーだよ。マリントン地域の交番に勤務しているんだ」
マリントン地域という言葉を聞いて、ツンははっとする。
ξ゚⊿゚)ξ「それじゃ、ひょっとしてあなたが私をここまで運んだんですか?」
( ・∀・)「うん。交番の前で、君が意識を失ってしまったものだからね」
ξ-⊿-)ξ「ありがとうございます」
( ・∀・)「いえいえ。そうとう疲れていたみたいだけど、何かあったのかい?」
ξ゚⊿゚)ξ「あ……それは」
244
:
◆MgfCBKfMmo
:2014/01/23(木) 21:12:55 ID:T.pTTd5A0
ツンは自分が、監禁されていたこと、そしてその監禁場所から逃げてきたことを簡潔に述べた。
事件性を帯びた内容のため、モララーの表情は驚いたものから一転、真剣なものになる。
交番前まで辿り着いた経緯を聞き終えて、モララーは眉を顰めた。
_,
( ・∀・)「結局、どうして監禁されたのかはわからないのかい?」
ξ;゚⊿゚)ξ「ええ……突然だったもので」
_,
( ・∀・)「思い当たる節は?」
ξ;゚⊿゚)ξ「…………」
ツンの目が、モララーから離れて何もない空間を泳ぎ始める。
何かを判断しかねているように。
モララーは眉の形を変えず、ツンの表情を観察し続けていた。
やがて、意を決したかのごとく、ツンが口を開く。
245
:
◆MgfCBKfMmo
:2014/01/23(木) 21:14:14 ID:T.pTTd5A0
ξ;゚⊿゚)ξ「や、やっぱり私は思い当たらないです」
_,
( ・∀・)「本当に?」
ξ;゚⊿゚)ξ「ええ」
_,
( ・∀・)「……」
( -∀-)ゞ「……うーん。となると単なる金銭目的かなあ。でも財布はあるしなあ」
ξ゚⊿゚)ξそ「あ、私の持ち物あるんですか?」
とっさに、ツンはそのワードに飛びついた。
246
:
◆MgfCBKfMmo
:2014/01/23(木) 21:15:16 ID:T.pTTd5A0
( ・∀・)⊃「枕元の台に置いてあるよ」
手で示されたのは、ツンの後ろ側。首をひねり、確認する。
台の上にいくつかのものが並べられていた。
特に財布と携帯端末が置かれていることに、ツンは胸を撫で下ろす。
ξ゚⊿゚)ξ「ああ、良かった」
( ・∀・)「携帯の再起動も終わっているよ」
「ありがとうございます」と再度彼女は言い、急いで携帯に手を伸ばす。
ξ゚⊿゚)ξ「あれ?」
( ・∀・)「ん? どうしたの?」
ξ゚⊿゚)ξ「いえ……実は彼氏と待ち合わせしていて。
ずっと待たせてしまっているからきっと連絡が溜まっていると思っていたんです。
でも今見たら何も連絡が入っていないから、おかしいなって」
247
:
◆MgfCBKfMmo
:2014/01/23(木) 21:16:52 ID:T.pTTd5A0
メールを送れない事情でもあるのだろうか。
病院だし、通話は控えたほうがいいだろう。
とりあえずメールだけでも。
そう思って、ツンはメールボックスの操作を続け、一通のメールを送った。
しかし、すぐに返ってきてしまう。
『相手に届きませんでした』のメッセージを添えて。
ξ;゚⊿゚)ξ「あれ?」
もう二回、三回と送るが結果は同じ。
いったいどうしたのだろう、ブーンの携帯端末が壊れでもしたのだろうか。
そう彼女は怪訝に思いながら、ひとまず諦めて、別のメールを確認する。
248
:
◆MgfCBKfMmo
:2014/01/23(木) 21:18:37 ID:T.pTTd5A0
と、ここでモララーが質問をする。
( ・∀・)「待ち合わせ場所に向かっている途中で捕まったのかい?」
ξ゚⊿゚)ξ「あー、いえ、実は先に別の用事を済ませようとしていたんです。
姉の方の、その、元カレさんに話したいことがあったんで」
答えながらも、操作は続く。
携帯端末のメールボックスに溜まっていたメールのうち、一番最近のものが選択される。
メール内容が見えたが、ツンはすぐにそれをスクロールさせてしまう。
結局一番最後に添付されていた画像だけが、表示された。
┌─────┐
│ .│
│ (,,゚Д゚) .│
│ .│
└─────┘
やや骨張った頬と、鋭い目つきが特徴的な男。
モララーには、ツンの手により、その画像は見えなかった。
249
:
◆MgfCBKfMmo
:2014/01/23(木) 21:21:06 ID:T.pTTd5A0
見えたのは、【俯瞰】している別の世界の霊魂だけ。
(´・ω・`)“しぃという人のメールに添付されていたようだけど”
( ^ω^)“しぃっていうのは、ツンの姉のことだお。
話からして、この人がしぃさんの元カレさんなのかも知れないですお”
(´・ω・`)“君は見たことなかったのかい?”
(;^ω^)“実はあんまり深くしぃさんの事情を知っていたわけじゃないんですお。
元カレさんが世間で酷い悪い扱いをされていて、そのせいでしぃさんと長く会えない場所にいくことになって、突然別れてしまったとしか。
あんまり知ってほしくもないようなんで、僕からは大して追求しなかったんですお”
( ^ω^)“ただ、最近復縁しそうとだけ、ツンから聞いていたんですお”
( ・∀・)「それじゃ、その場所は詳しく教えてもらえるかな?」
250
:
◆MgfCBKfMmo
:2014/01/23(木) 21:22:36 ID:T.pTTd5A0
ξ;゚⊿゚)ξそ「え? どうしてですか?」
( ・∀・)「その地域一帯を調べれば、君を捕まえた犯人グループがどんな連中か割り出せると思うんだ」
ξ;゚⊿゚)ξ「……実は少し記憶が曖昧になっていまして。
もう少ししたら思い出すかもしれないのですけど」
( -∀-)「ふむ……それなら仕方ないか」
潔く言うと、モララーはすっくと立ち上がる。
( ・∀・)「時間をおいて、また来るとするよ。
僕のアドレスを教えるから、また何かあったら連絡をしてくれ」
(´・ω・`)“おい、あれやるぞ”
( ^ω^)“あいさー”
251
:
◆MgfCBKfMmo
:2014/01/23(木) 21:23:59 ID:T.pTTd5A0
モララーがツンの携帯端末を受け取り、自分のアドレスを打ち込んでいる間。
\ ,,_人、ノヽ,,/
) (
━━━━━━━━━ ξ゚⊿゚)ξ ━━━━━━━━━
) (
/^⌒`Y´^Y`\
ξ゚⊿゚)ξ「おっお」
と、ツンの意識が変わり、その腕がモララーへと伸びる。
( ・∀・)「ん?」
ξ゚ー゚)ξ「握手してくださいお!」
(;・∀・)「え。このタイミングで?」
ξ゚ー゚)ξ「お礼ですお!」
252
:
◆MgfCBKfMmo
:2014/01/23(木) 21:25:48 ID:T.pTTd5A0
動揺しながらも、モララーは作業する手を休め、片手を伸ばす。
ツンの掌と、モララーのそれが合わせられる。
あとは
\ ,,_人、ノヽ,,/
) (
━━━━━━━━━ ( ・∀・) ━━━━━━━━━
) (
/^⌒`Y´^Y`\
Σξ゚⊿゚)ξ
この通り。
ξ;゚⊿゚)ξ「またぼんやりしちゃってた。あら、なんで握手?」
( ・∀・)「おっおっ、入力終わっているお。どうぞだお」
253
:
◆MgfCBKfMmo
:2014/01/23(木) 21:27:02 ID:T.pTTd5A0
渡された携帯端末を、ツンは手に取る。
ブーンの霊魂の入ったモララーは、にんまりしながらツンに「さよならだおー」と告げ、そそくさと退出する。
後に残されたツンは、若干気にかかるような素振りをみせながらも、
ξ゚⊿゚)ξ「……行ってくれた」
と、ほっと息をついていた。
それは、あまりに小さい言葉だったから、上の世界の人にも気づかれてはいなかった。
∇∇∇
254
:
◆MgfCBKfMmo
:2014/01/23(木) 21:28:08 ID:T.pTTd5A0
( ・∀・)「さてと、あとは警察に通報だお」
モララーの身体は病院を出て、近くの公園に足を運ぶ。
職場である交番の場所もよくわからないので、ひと目につかない場所に行くことにしたのである。
ベンチに座って、モララーの携帯を眺める。
普通に通報用の番号にかけようと最初は思っていたが、ふと思いついて、アドレス帳を覗いてみることにする。
そこには警察関係者の名前で溢れていた。
モララーは几帳面だったようで、各人物の年齢、誕生日、役職名までが事細かにプロフィールに登録されている。
せっかく自分も警察の姿になっているのだし、こっちで通報したほうが信憑性や迅速性が増すかもしれない。
思惑が浮かび、登録欄から最も位の高い役職名を探す。
やがて見つけたのは、警察学校の教官の肩書を持つ人物だ。
名前を見ると、『クックル』と書かれていた。
255
:
◆MgfCBKfMmo
:2014/01/23(木) 21:29:33 ID:T.pTTd5A0
(´・ω・`)“む、ひょっとして警備部のクックルか?”
( ・∀・)“知っているんですかお?”
(´・ω・`)“懐かしいなあ、生前のときのパートナーだよ。よく出世したものだ。
教官の仕事は、経験を積んだ成績優秀な現職の警官が受け持つんだよ”
( ・∀・)“ほえー、それじゃ今かけるのにもちょうどいいお!”
モララーの指が勢い良く俊敏に動き、電話が繋がる。
耳に押し当てると、すでに相手が電話に出たところだった。
( ゚∋゚)『モララーか。随分久しぶりに電話をかけてきたな。
しかしどうした? 今は仕事中だろ?』
やや声を潜めている。
ちなみにこのクックルの声は、【狭間の世界】のショボンには届いていない。
256
:
◆MgfCBKfMmo
:2014/01/23(木) 21:30:42 ID:T.pTTd5A0
( ・∀・)「クックルさん、クーという方、ご存じですかお?」
これだけで、すぐに事情が伝わると思っていたわけではない。
話の導入として付した、お飾りの言葉にすぎなかった。
しかし、
(;゚∋゚)『!?』
予想外にも、クックルが息を呑んだ。
( ・∀・)「え?」
(;゚∋゚)『新米巡査に過ぎないお前が、どこでその話を』
257
:
◆MgfCBKfMmo
:2014/01/23(木) 21:32:23 ID:T.pTTd5A0
(;・∀・)「あ、いえその」
うろたえながら、考える。
知っている経緯は当然完全には話すわけにはいかない。
ある程度暈して話を進め無くてはならない。
( ・∀・)「匿名の通報があったんですお。その人が危ないって」
(;゚∋゚)『匿名の、だと……』
低く長い唸声が挟まれた。
(;・∀・)「むしろ、何かやばい事件の話でももちあがっているんですかお?」
モララーの中にいるブーンは、クックルの返答を静かに待つか迷ったが
自分の残り時間を無駄にしたくないとも思い、自ら声をかけて催促した。
258
:
◆MgfCBKfMmo
:2014/01/23(木) 21:33:19 ID:T.pTTd5A0
(;゚∋゚)『……そのうち、本部の方から連絡がいくと思うが、ほかならぬ教え子のお前からの頼みだ。
そのような通報を受けたわけだし、気になるだろう。一度しか言わないからよく聞けよ』
前置きを入れ、クックルが続ける。
( ゚∋゚)『……ニューソーク市被害者の会という団体があることを知っているか?』
控えめなトーンで、クックルが質問してくる。
聞き覚えはあった。
ニューソーク市の犯罪の規模や数が拡大し、市警もその処置に手一杯になる一方で、
犯罪被害者の方々はしばしば、自分たちが蔑ろに扱われているという意識を抱くようになった。
そのような犯罪被害者が、「被害者権利の確立」「犯罪者の徹底糾弾」「罪なき被害者の支援」等を掲げて設立した民間団体
それが『ニューソーク市被害者の会』である。
事件が起こるたびに意見を公開したり、一部メンバーがテレビに出演して討論したり
被害者という言葉が飛び交う場所に自ら飛び込み、活動を行うことで、近年存在感を増している組織でもあった。
( ・∀・)「噂には聞いたことありますお」
259
:
◆MgfCBKfMmo
:2014/01/23(木) 21:34:43 ID:T.pTTd5A0
( ゚∋゚)『なら話は早いな』
一呼吸置いてから、クックルが続ける。
( ゚∋゚)『クーは、あの団体の設立メンバーの一人だ』
(;・∀・)「え、そうなんですかお?」
( ゚∋゚)『それで今、とある事件の捜査会議が終わったばかりでな。
その団体との関係が考えられるという話題が持ち上がっていたんだ』
( ・∀・)「そうですかお……それで、その事件とは?」
( ゚∋゚)『……二時間ほど前に、シベリアステートビルで爆発が起きたろう』
260
:
◆MgfCBKfMmo
:2014/01/23(木) 21:36:27 ID:T.pTTd5A0
(;・∀・)「なっ!」
耳にして、胸がざわついた。
ここで、どうしてあのビルの名前が出てくるのだ。
あの、自分の命を奪った爆発事故が起きた場所の名前が。
(;・∀・)「お、起きましたお。でも、それが何なのですかお?」
あの爆発が何らかの事件の結果である可能性。
どうしてそれを思わなかったのだろう、とブーンは驚愕する。
自分は、ひょっとして何かに巻き込まれて死んだのか?
自分でもそれと気づかないまま?
261
:
◆MgfCBKfMmo
:2014/01/23(木) 21:38:49 ID:T.pTTd5A0
ブーンの霊魂の興奮が、モララーの心臓の動きを加速させる。
思いもよらない自分の死因への肉薄。
彼は今、クックルの返答を耳を集中させて待っていた。
( ゚∋゚)『爆破されたシベリアステートビルの部屋は、某財団の元オフィスだったんだ』
クックルがあげた財団の名前は、ブーンでさえも名前を知っている有名な団体のものだった。
( ゚∋゚)『その財団だが、実は被害者の会に秘密裏に資金援助を行っている。
まあ、別に犯罪をしているわけでもないし、ある程度精通している人なら知り得た情報だけどな』
( ゚∋゚)『シベリアステートビル爆発後、犯行声明のようなものは出されていないし、警察本部も犯人の動機にそうとう手を焼いている。
ほとんど唯一と言ってもいい手がかりが、爆破場所のあのオフィス。犯人は財団に関係のある人物かもしれない。
そこでその関係の一つを洗っていたんだが、その中の有力候補として被害者の会の名前が上げられたんだ』
262
:
◆MgfCBKfMmo
:2014/01/23(木) 21:40:21 ID:T.pTTd5A0
( ゚∋゚)『さっきお前が言っていた匿名の情報と掛けあわせれば、被害者の会メンバーのクーが狙われる可能性も考えられる。
今から本部にはこれないか? この情報を伝えないといけないんだが』
(;・∀・)「う……すみませんお。僕はいけないですお。クックルさん、お願いできますかお?」
時間を考えれば、本部まで赴いている暇はない。
今電話で聞いたことを、向こうの世界で待っているショボンに早く伝えてやらなければ。
それに、自分の残り時間のこともある。
自分には関係ないことだとわかっていながらも、ブーンはクックルに対して心から謝っていた。
( ゚∋゚)『む、そうか。じゃあ俺から伝えておくよ』
意外にもクックルは、格別何も咎めなかった。
ブーンは「ほっ」と安心の声を漏らす。
263
:
◆MgfCBKfMmo
:2014/01/23(木) 21:41:40 ID:T.pTTd5A0
( ・∀・)「ありがとうございますお」
( ゚∋゚)『いや、なに。いいんだ』
電話越しに、クックルの微笑む吐息が聞こえた気がした。
不思議に思って、ブーンは耳をそばだてる。
( ^∋^)『俺は人からの頼まれごとに弱いんだ。昔からな』
そんなことをいうクックルの口調は、どことなく寂しさを滲ませていたが
聞いている側にとっては、やや引っかかる物言い、というだけにすぎなかった。
264
:
◆MgfCBKfMmo
:2014/01/23(木) 21:42:38 ID:T.pTTd5A0
( ゚∋゚)『そうだ、捜査会議で上げられていた爆破事件の容疑者の画像データ、見たいか?』
切ろうとしたところで、突然クックルが提案した。
( ・∀・)「いいんですかお?」
( ゚∋゚)『情報を提供してくれたお礼だ。役に立つかはわからんがな』
確かに、交番勤務のモララーが爆破事件の容疑者を追い詰めるということはないだろう。
それでも、中にいるブーンは、好奇心から、クックルの質問に「いいですお」と答えた。
自分を死に追いやった人は、気になるものだった。
電話が切られて、数秒後。
携帯端末が震え、データの受信を知らせる。
開き、メールボックスをチェックすると、文章と画像が表示された。
265
:
◆MgfCBKfMmo
:2014/01/23(木) 21:43:47 ID:T.pTTd5A0
――――――――――――――――――
from Cockle
鑑識が現場の爆発物の欠片と、過去の犯罪のデータベースを照合して見つけたんだ。
こいつは6年前のK・S・Kコンベンションセンターでも同様の爆弾を用いていたらしい。
最近出所したばかりであることも、上層部に興味を抱かせる一因になっている。
反省などせずに、また元の犯行グループと連絡を取っていたんじゃないかってな。
なんにせよ、これがそいつの顔写真だ。
266
:
◆MgfCBKfMmo
:2014/01/23(木) 21:45:09 ID:T.pTTd5A0
┌─────┐
│ .│
│ (,,゚Д゚) .│
│ .│
└─────┘
名前はギコという。
気になったら、自分でも調べてみるといい。
今日は連絡、ありがとな。
.――――――――――――――――――
267
:
◆MgfCBKfMmo
:2014/01/23(木) 21:47:35 ID:T.pTTd5A0
(;・∀・)「…………は?」
画像がもたらした意味を、はっきり理解するまでに時間を要した。
どうしてこの人物の顔を、再び目にすることになったのか。
文章にさえも、思わぬ文字が綴られている。
K・S・Kコンベンションセンターの名前を聞いたのは、ついさっき、【狭間の世界】でのことだ。
ショボンが死んだ事件の現場。
そこに、ギコが関わっている。
しぃさんの元カレ。
その妹であるツンは、彼に会おうとしたときに監禁されている。
268
:
◆MgfCBKfMmo
:2014/01/23(木) 21:50:21 ID:T.pTTd5A0
(;・∀・)「なんでだお!?」
今日、生きている間、そして死んでから目にしてきたたくさんの人達。
その顔がふわふわと浮かび上がる。
無秩序に出会ってきた人物達だ。
,. - ξ゚⊿゚)ξ -、
,." `ヽ.
/ `、
川 ゚ -゚) (*゚ー゚)
! l
', ,'
丶 /
(´・ω・`) (,,゚Д゚)
`'-、_ _,.-'´
`゙''ー-‐'''"´
彼らが、意味をなして、見えない糸で繋がっていく。
269
:
◆MgfCBKfMmo
:2014/01/23(木) 21:52:22 ID:T.pTTd5A0
人と人とは、無意識のうちに結ばれている。
袖触れ合うも多生の縁。
ブーンは、自分が今まで何も知らなかったことを思い知らされた。
残り時間 65分31秒
∇To be continued...∇
270
:
名も無きAAのようです
:2014/01/23(木) 21:53:49 ID:F0SUY4/g0
話が大きく動いて今回も面白かった
続きが今から待ち遠しい
乙
271
:
◆MgfCBKfMmo
:2014/01/23(木) 21:54:51 ID:T.pTTd5A0
今日の投下は終了です。
ニューソーク市の学期は、日本と同じく4月始まり。
警察機構も似たようなものです。
全7話+エピローグを想定していますが、きっとこれからあと3話は長めになることでしょう。
それでは。
272
:
名も無きAAのようです
:2014/01/23(木) 23:03:10 ID:4FCnu8As0
ツンが心配だ!クーも心配だ!
273
:
名も無きAAのようです
:2014/01/23(木) 23:31:01 ID:..6z3hNc0
うおおおおつ!
クーが心配だがツンもまだ何か隠しててクックルいいやつでギコお前ぇ!?
これからどうなるか気になる
274
:
名も無きAAのようです
:2014/01/24(金) 05:21:04 ID:f8FxGfkw0
ドキドキしてきた
275
:
名も無きAAのようです
:2014/01/24(金) 08:01:39 ID:d.euDQG60
乙
276
:
名も無きAAのようです
:2014/03/04(火) 21:06:54 ID:aRwG8l8M0
期待
277
:
名も無きAAのようです
:2014/04/13(日) 21:18:28 ID:dVO9MGvs0
続き待ってますお
278
:
名も無きAAのようです
:2014/05/18(日) 02:51:06 ID:2I0HTwaE0
期待して待ってる
279
:
名も無きAAのようです
:2014/06/19(木) 20:58:22 ID:0aqgTftU0
まだなの?かかないの?逃げたの?
280
:
名も無きAAのようです
:2014/06/19(木) 21:20:27 ID:HgY7zIhg0
何これ面白そう
281
:
名も無きAAのようです
:2014/06/19(木) 22:19:33 ID:diqiMDusC
もう続きは来ないよ
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