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( ^ω^) 剣と魔法と大五郎のようです
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懐かしい夢を見た。
体も心もまだ幼くて、それでも、だからこそ幸せだった頃の記憶。
ξ゚⊿゚)ξ (……)
薄暗闇の中、天井に手を翳す。
思えば遠くに来た。
それは、物理的な距離ではなくて。
ξ゚⊿゚)ξ (……)
体のいたるところに出来た傷跡を、死んでしまった両親が見たらどう思うだろうか。
きっと怒るのだろう。そして、悲しむのだろう。
傷を作ったことでは無くて、傷を作るに至った理由を。
ξ゚ー゚)ξ (……ふふ)
いつもそうだった。
二人の心配を無視して怪我をして、母親の手痛い拳骨を貰ったものだ。
よくよく考えれば、きっとあの頃から成長なんてしていない。
ξ ⊿)ξ =3
脳裏にちらつくあらゆる感情を息と共に吐き出して、硬く目を閉じる。
迂闊にあの頃を思ったりしないように。
幸せな夢を、もう見てしまわないように。
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年内にもう二話分読めるとはありがたいおつ
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ちゃんと更新が来ることのありがたさよ
乙
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おつおつ
展開が楽しみで仕方ねぇや
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乙!流石兄弟死なないといいなぁ…
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乙!次回が楽しみだ
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乙。流石がどこまどおいつめれるか楽しみ
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乙!ツンちゃんとヨコホリがこれからどうなるのか凄く楽しみ!
そして流石兄弟の運命は・・・!次も楽しみにして待ってます!!
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お疲れ様です
ブーンとドクオのコンビでさえ軽くあしらわれて合体とかさせられてんのに
母者たちどんだけ強いんだよ
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勝てるはずないと思いつつ勝って欲しいという思い
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乙。ミルナパート好き
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乙!
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乙乙
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予告か思うから上げるなw
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時が経つのは早いな
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27話が来ると聞いて
http://boonpict.run.buttobi.net/up/log/boonpic2_1681.jpg
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真ん中はツンさんなのか二刀流だからブーンなのか男前だからツンさんなのか
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真ん中はツインテールだからツンちゃんだな
怒髪天をつくって感じか
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>>576
諸星大二郎みたいな、かなり味のあるタッチだね!乙です。
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日付代わってからになりそうッス
申し訳ないッス
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待ってるからァー!
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ゆっくりでよろしいのでお待ちしてます!
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全裸待機不可避
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いくよ
かこへんぽいかんじだよ
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( #´_ゝ`) 「なんでダメなんだよ!!」
∬´_ゝ`) 「……落ち着きなさい、アニジャ」
( #´_ゝ`) 「アネジャは黙ってってくれ。俺は父者と話してるんだ」
彡⌒ミ
( ´_ゝ`) 「……」
アニジャはテーブルに拳を叩き付ける。
向かい合う父はさして驚く様子も無く、冷たい目で兄者を見返した。
そこに親愛の情は一切なく、純粋な侮蔑の意志のみが見て取れる。
それが、まだ幼いアニジャの頭に、更なる血を登らせた。
さらに口を開こうとしたアニジャの前に、手が翳される。
アニジャが鬱陶しそうに視線を向けると、一転冷静に父を見返す、双子の弟の横顔。
(´<_` ) 「……父者、俺も兄者と基本的な考えは同じだ」
彡⌒ミ
( ´_ゝ`) 「やれやれ、オトジャの方はもう少し冷静かと思ったが」
( #´_ゝ`) 「どういう意味だよ!」
(´<_` ) 「兄者、落ち着け。父者、俺は至って冷静だ」
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荒野の中心に忽然と現れる、オアシスを中心とした酒と娯楽と武力の街、VIP。
その片隅、比較的閑静な住宅街の一軒家にて、その親子喧嘩は行われていた。
家の中心のリビングに居るのは、サスガ家の内四人。
大黒柱であるサスガ=チチジャ、長女のアネジャ、そして双子の兄弟であるアニジャ、オトジャ。
もう二人、母と末っ子の妹が居るのだが、今は席を外している。
一つのテーブルを挟み父と兄弟が向かい合い、姉は壁の傍で両者の動向を監視している。
彡⌒ミ
( ´_ゝ`) 「異国の内紛に干渉しようと言うのが、冷静な思考の末の提案であると?」
(´<_` ) 「ただの内紛じゃない。奴隷解放を目指す革命だ。力を貸してやるに足る理由はある」
彡⌒ミ
( ´_ゝ`) 「彼らの国の中で治める問題であることには変わらない。
国として支援することはいいだろうが、直接戦闘に介入するのは領分を越えている」
(´<_` ) 「……チャンネルは、大ぴらにはしていないが、政府側を支援している」
彡⌒ミ
( ´_ゝ`) 「だろうな」
( #´_ゝ`) 「分かってるならなんで!!」
-
彡⌒ミ
( ´_ゝ`) 「何度も言わせるな。アニジャ。領分を越えている」
( #´_ゝ`) 「……」
彡⌒ミ
( ´_ゝ`) 「確かに私たちが介入すれば、戦争は容易く終息させられるだろう」
(´<_` ) 「……」
彡⌒ミ
( ´_ゝ`) 「だからこそダメだ。サスガは真理の探究者であって一介の戦争屋であってはならない」
( #´_ゝ`) 「あんただって……!」
彡⌒ミ
( ´_ゝ`) 「父親に向かってあんたとは何事だ」
( #´_ゝ`) 「あんたで十分だよ、この分からず屋。昔は、あんたたちだって戦争に参加してたんだろ」
彡⌒ミ
( ´_ゝ`) 「それは自国の為であった。それでもなお、私はあの日々を後悔している」
(´<_` ) 「自分の後悔を俺たちに押し付けるわけだ」
彡⌒ミ
( ´_ゝ`) 「そうだ。年長者はそうして、若輩を正しき道に導く役目がある」
-
彡⌒ミ
( #´_ゝ`) 「お前たちのような無能が首を突っ込んで何ができる!!」
ドォッ
(´<_`# ) 「やってみなければ分からぬことはあるはずだ!」
彡⌒ミ
( #´_ゝ`) 「無駄死にして終わりだよ!お前たちは世界の広さも己らの小ささも知らん!」
( #´_ゝ`) 「だから!あんた達の元でそれが分かるってのかよ!」
ゴォオ
彡⌒ミ
( #´_ゝ`) 「いずれ見ることになる!その時を待てと言っているのが分からんのか!!」
(´<_`# ) 「分からんね!」
( #´_ゝ`) 「今俺たちの力を必要としている人が居るかもしれないだろ!!」
彡⌒ミ
( #´_ゝ`) 「大局を見ることも出来ん小僧共が!!」
バチィッ
( #゚'_ゝ゚) 「うっせぇハゲ!」
彡⌒ミ
( #゚'_ゝ゚) 「ハゲてねえよ!!」
ドンッ
(´<_`# ) 「ハゲてはいるだろ!」
∬´_ゝ`) 「……こりゃもうだめね。母者呼んで来よう」
-
魔法を撃ち合い、罵り合いながら空を駆ける三人の阿呆を見上げ、アネジャは頭を掻いた。
こうならないように話し合う機会を設けたのだが逆効果だったようだ。
円滑で穏やかな家庭を望む彼女の気苦労は全く絶えない。
アネジャはV響き渡る魔法の怒号を聞きながら、足早に近所の公園へ向かった。
そこに母と妹がいる。
話し合いの場に居ると弟たちが遠慮するので出かけて貰っていたのだ。
「サスガさんちは今日も仲良しねえ」と空を見上げるご近所さんに頭を下げながら歩くこと、数分。
目的の公園に着くと、母が妹を空高くに放り投げて遊んでいた。
一見して虐待のようだが、投げられている方は満面の笑みで喜んでいる。
∬´_ゝ`) 「母者」
@@@
@#_、_@
( ノ`) 「分かってるよ。……だから無駄だって言ったんだ」
ドーン!
バゴーン!!
l从・∀・*ノ!リ人 キ キャッキャッ
∬´_ゝ`) 「……早く止めないと、叔父者に迷惑かかっちゃうよ」
-
@@@
@#_、_@
(# ノ`) 「仕方ないね……“紅蓮盛りて―――”」
∬´_ゝ`) 「さぁ、姉者と遊ぼうねイモジャ、あぶないからね〜」
l从・∀・*ノ!リ人 キ キャッキャッ
∬´_ゝ`) 「よく楽しめるわね、この状況……やっぱり血なのかしら……」
火火火
火#_、_火
(# ノ`) 「“―――炎神招来”」
短い魔法式展開の後、ハハジャの体が炎に包まれた。
単に燃えているのではなく、魔法による炎の外骨格を纏っているのだ。
火火火
火#_、_火
(# ノ`) 「アネジャ、イモジャをよろしく頼むよ」
∬´_ゝ`) 「うん」
纏う炎を一際大きく膨らませハハジャは自宅の方向へ飛翔した。
強化した筋力で跳躍、炎の噴射で滞空時間を延ばしているだけなのだが、
中身が母であることもあって人間サイズの隕石にしか見えない。
∬´_ゝ`) 「さて、ゆっくり帰るころには終わるかな」
l从・∀・*ノ!リ人 キ キャッキャッ
-
しばらくして。
∬´_ゝ`) 「ただいま」
@@@
@#_、_@
( ノ`) 「おかえり」
___ ___ ___
//⌒___ \ //⌒___ \ //⌒___ \
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\\ \ \\ \ \\ \
(( | (( | (( |
| ∩ | ∩ | ∩
| | | | | | | | |
| | | | | | | | |
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__________/__/_________/__/_______/__/______
∬´_ゝ`) 「さて、晩御飯の用意しなきゃ」
@@@
@#_、_@
( ノ`) 「今日はカレーにしようかね」
l从・∀・*ノ!リ人 キ キャッキャッ
* * *
-
<_フ;゚ー゚)フ 「じゃあ、何か?それで家飛び出してきたってのか?」
( ´_ゝ`) 「そうだよ」
<_プー゚)フ 「お前ら何歳だっけ?」
(´<_` ) 「もう13歳だ」
<_プ ,゚)フ 「……もうって、俺より一回りも下じゃねえか!」
( ´_ゝ`) 「でもショーグンは戦力になれば誰でも良いって言ってた」
<_プ ,゚)フ 「…………いや、まあ、お前らが役に立つのは散々見たけどよ…………」
(´<_` ) 「エクストは大人なのに弱いよな」
<_プД゚)フ 「よっ……弱くはねえよ!これでも一応隊長やってんだよ!!」
( ´_ゝ`) 「革命軍は人員不足」
(´<_` ) 「ああ、人員不足だな」
<_プ ,゚)フ 「このクソガキ共…………」
-
支援
-
父との喧嘩の二カ月後、双子の兄弟は異国の革命軍のキャンプにいた。
荒野の岩山の麓に出来た洞穴を利用した場所で、いわゆる見張り台としての役割をもっている。
本拠はここからさらに西、本国の人間は知らないオアシスの元の廃墟群にある。
この場に居るのは兄弟と、分隊長であるエクスト=プラズマンと
⌒*リ´・-・リ 「エクストたいちょぉ〜、おばちゃんがくれたよ〜〜」
革命軍により開放され、そのまま革命軍に入った元奴隷のリリ=アウロリ。
本拠へ戻っていた彼女が返ってきたので、丁度四人である。
エクストの部下に当たる兵士は残り三人いるが、今はもう一つのポイントに出張っていて今は居ない。
⌒*リ´・-・リ 「あ、双子ちゃんもいる!食べる?豆の粉で出来た焼き菓子だよ!」
( ´_ゝ`) 「あ、はい」
(´<_` ) 「いただきます」
<_プー゚)フ 「なんでお前らリリには素直なの」
⌒*リ´・-・リ 「リリはお姉さんですから!」
リリは、小柄な胸を精一杯張る。
年齢は兄弟よりも上なのだが、彼女の身体ははるかに年下の少女に見えるほど、不自然に未発達であった。
-
<_プー゚)フ 「リリ何歳だっけ?」
⌒*リ´・-・リ 「14歳!」
<_プー゚)フ 「はぁ〜〜〜、ガキばっかだよなぁ、ウチ」
( ´_ゝ`) 「でもこの中で一番弱いのエクストだよな」
(´<_` ) 「最弱」
⌒*リ´・-・リ 「隊長かっこわるい」
<_プ―゚)フ 「おまえらな……」
⌒*リ´・-・リ 「いいからお菓子食べましょ。はい、隊長」
<_プ―゚)フ 「……おう」
⌒*リ´・-・リ 「よっこいしょっと」
<_プ―゚)フ 「おい、俺に座るな」
⌒*リ´・-・リ 「地面堅い」
<_プ―゚)フ 「わかる」
⌒*リ´・-・リ 「隊長はリリの椅子」
<_プ―゚)フ 「わからない」
-
⌒*リ´・-・リ ポリポリ
つOと
<_プ〜゚)フ ポリポリ
( ´_ゝ`) モグモグ
(´<_` ) モグモグ
⌒*リ´・-・リ 「甘いもの久しぶり〜」
<_プー゚)フ 「な。砂糖どうしたんだろ」
⌒*リ´・-・リ 「どこかから支援があったって聞きましたよ」
<_プー゚)フ 「奇特なトコもあったもんだな。大抵の国が革命の波及を恐れて鎮圧を願ってるだろうに」
⌒*リ´・-・リ 「むずかしい。私たち、自由になりたかっただけなのに」
( ´_ゝ`) モグモグ
(´<_` ) モグモグ
<_プー゚)フ 「大丈夫、勝てるさ。外がどうだって、国内の大半は俺たちの味方なんだ」
( ´_ゝ`) 「…………」
(´<_` ) 「…………」
-
⌒*リ´・-・リ 「じゃ、私向こうの人たちにも持ってくね!」
<_プー゚)フ 「ついて行かなくて大丈夫か?」
⌒*リ´・-・リ 「うん!なんたって私隊長より強いし!」
<_プー゚)フ 「おう。もうちょっと小さい声で言おうな」
( ´_ゝ`) 「今更だろ」
(´<_` ) 「公然の事実」
<_プ ‐゚)フ 「温もりが欲しい」
手を振って出て行くリリを見送る。
小柄で幼く見え、どう捉えても戦闘要員では無いが、事実「隊長より強い」という言葉は冗談では無い。
<_プー゚)フ 「ったく、どんどん生意気になりやがる」
(´<_` ) 「……嬉しそうだが」
<_プー゚)フ 「まあな。ガキが生意気ってのは、健康的で良い」
-
( ´_ゝ`) 「なあ、エクスト」
<_プー゚)フ 「なんだ?」
( ´_ゝ`) 「リリって、奴隷、だったんだよな?」
<_プー゚)フ 「あれ、言ってなかったか?」
(´<_` ) 「ぼんやりとな。詳しくは聞いてない」
<_プー゚)フ 「そっか、すっかり全部知ってるもんだと思ってたわ」
( ´_ゝ`) 「どんな奴隷だったんだ。いくら雑に扱われていても、あんなに傷を負うとは……」
<_プ ,゚)フ 「……あー―……胸糞悪いからあんまり言いたい話でもないんだがな」
(´<_` ) 「それなら……」
<_プ ,゚)フ 「……いや、せっかくだから、聞いてくれ。手短にするからよ」
この国には富豪や貴族など身分の高い人間同士の諍いが起きた場合、
それぞれの所有する奴隷を戦わせその勝敗で落としどころを決める風習がある。
いわば、代理決闘だ。
当人たちの命を懸けずに済むため、些細な諍いでも行われるようになり、
現代ではそれだけが目的の貴族の戯れの一つとなっていた。
リリは、それに使われていたとある富豪の戦闘奴隷の一人である。
金に物を言わせ調教し魔法によって改造し、齢14歳にして、身長140cm未満にして
大型の獣を素手で屠る超人となった。
-
<_プ ,゚)フ 「助け出してすぐは、あんなに表情も豊かじゃなったんだよ。
……やっと、呪縛が取れてきたように思う 」
( ´_ゝ`) 「……」
<_プー゚)フ 「お前らが来てくれたおかげもあると思うんだ。年が近い奴、いなかったからよ」
(´<_` ) 「……役に立てているなら、嬉しいが」
<_プー゚)フ 「んだよ、謙遜か?」
( ´_ゝ`) 「だって、あんまり役に立ててないし……」
<_プ ,゚)フ 「……おら」
( ;´_ゝ`) 「いってぇ!なんで蹴るんだよ」
<_プ ,゚)フ 「腹立つ」
( ;´_ゝ`) 「なんでだよ」
<_プ ,゚)フ 「お前等が役に立ってないんだったら俺は何だ、極潰しか?」
(´<_` ) 「エクストは人が良いから」
( ;´_ゝ`) 「うん」
<_プ ,゚)フ 「生々しいフォローやめろよ」
-
(´<_` ) 「……次の作戦、リリも連れていくのか?」
<_プ ,゚)フ 「ショーグンはそのつもりだ。俺も、アイツの戦力は必要だと思ってる」
( ´_ゝ`) 「……いいのか?」
<_プ ,゚)フ 「なにが」
(´<_` ) 「エクストの、リリへの接し方は、戦力とかそういう観点じゃないように見える」
( ´_ゝ`) 「うん」
<_プ ,゚)フ 「……そりゃお前ら、あいつをただの「武器」とは見られねえだろ」
( ´_ゝ`) 「……」
(´<_` ) 「……」
<_プ ,゚)フ 「なんだよ」
( ´_ゝ`) 「まともな大人だ」
(´<_` ) 「初めて見た」
<_プ ,゚)フ 「お前らやっぱり俺をバカにしてるよな?」
* * *
-
夜。夕刻に一旦仮眠を取った兄弟は、二人で見張りについていた。
昼間は出張していた三人も戻り、他の兵は皆洞穴の奥で眠っている。
荒野の夜は冷える。
アニジャは毛布にくるまり、索敵の魔法を見つめていた。
球形に浮き上がる青いビジョンには、なんの反応も映っていない。
( ´_ゝ`) 「…………寒いな」
(´<_` ) 「兄者、湯を沸かしてきた」
( ´_ゝ`) 「流石だなオトジャ」
(´<_` ) 「……どうだ?」
( ´_ゝ`) 「有視界範囲には接近は無い。探知もとりあえず反応は無いな」
(´<_` ) 「変わろう。わたせ」
( ´_ゝ`) 「おう……」
(´<_` ) 「……接続良好。探知範囲にノイズ無し」
-
静かな夜だった。
空は晴れており、お蔭で気温は低いが、風はさほど強くない。
時折吹くのに身を縮めればよい程度で、この荒野としては穏やかな方である。
アニジャは受け取った湯のカップで指を温めながら。
オトジャは索敵の魔法の精度を高めながら、透明な空気の夜を過ごす。
見惚れては居られないが、星が綺麗だ。
白く曇る息の先に、はっきりとした星屑の靄が見える。
( ´_ゝ`) 「……勝てると思うか」
土嚢に背を預け、空を仰ぎ見ながらアニジャが問う。
本人としてはつい零れてしまった言葉に過ぎなかったのだが、態々取り消す気も起きず、弟の返事を待つ。
(´<_` ) 「……さあ、な」
( ´_ゝ`) 「……正直、難しいと思うんだ。俺は」
(´<_` ) 「……」
-
( ´_ゝ`) 「確かに、今のところ民意は革命に傾いてる。でも、それだけじゃ勝てない」
(´<_` ) 「実際のところ、人も武器も足りてないからな」
( ´_ゝ`) 「俺たちみたいなガキが受け入れられたのだって、結局はそういう背景だ」
(´<_` ) 「そこは、ちゃんと腕を買ってもらったと思おう」
( ´_ゝ`) 「つったって、あんまり役に立ててないしな……」 ズズズッ
つU
(´<_` ) 「……まあ、な」
( ´_ゝ`) 「剣も魔法も、もっと上手に使えるつもりだったんだけどな」
(´<_` ) 「……経験の問題だろう。すぐに慣れるはずだ」
( ´_ゝ`) 「ちゃんとした師匠、欲しいよなー。父者たちは頑なに戦闘用の簡易魔法教えてくれなかったし」
(´<_` ) 「……とはいえそこらの魔法使いじゃ、役に立たんがな」
( ´_ゝ`) 「なーにが、真理の探究者だ。肝心な時に使えなきゃ、魔法なんて何の意味も無いっての」
(´<_` ) 「……」
-
⌒*リ´・-・リ 「……やっほー、双子ちゃん」
(´<_` ) 「リリ?もう交代の時間か?」
⌒*リ´・-・リ 「んーん。何となく眠れないから」
( ´_ゝ`) 「冷えるだろ。中に居た方が良い」
⌒*リ´・-・リ 「へーき、もっと寒い夜に木の根を枕に寝たことだってあるもん」 エッヘン
(´<_` ) 「……兄者」
( ´_ゝ`) 「分かってるよ。ほら、リリ。入れ」
⌒*リ´・-・リ 「大丈夫だって」
(´<_` ) 「出てきた今は平気でも、すぐ寒くなるだろ。入れ」
⌒*リ´・-・リ 「んー―……わかった……」 モゾモゾ
⌒*リ´‐ ,‐リ 「……あったかい」
( ´_ゝ`) ズズッ......
つU
-
⌒*リ´・-・リ 「……ねえ、なに話してたの?」
(´<_` ) 「ん?」
⌒*リ´・-・リ 「二人とも怖い顔してた」
( ´_ゝ`) 「……見張りを笑顔でやる奴なんていないよ」
⌒*リ´・-・リ 「それもそっか……」
それからリリも無言になった。
兄弟の間に挟まりながらも体勢を変え、上を向く。
白い息が風に靡いた。
しばし誰も口を開かず、各々に荒野の地平を見つめる。
リリの視線の先には僅かにぼんやりと灯りの見える、王国の城下町があった。
⌒*リ´・-・リ 「双子ちゃんは、革命に味方したくて、家出してきたって、たいちょーが言ってた」
( ´_ゝ`) 「ああ」
⌒*リ´・-・リ 「なんで?」
( ´_ゝ`) 「なんでって、言われてもな……」
⌒*リ´・-・リ 「私たちが可哀想だから?」
( ´_ゝ`) 「そうじゃないよ。現状なんて、来て初めてちゃんと把握したんだから」
-
(´<_` ) 「……都合がよかったんだよ」
⌒*リ´・-・リ 「つごー?」
( ´_ゝ`) 「オトジャ」
(´<_` ) 「今更リリたちに嘘を言ってどうする」
⌒*リ´・-・リ 「どういうこと?」
(´<_` ) 「自分たちの力を試したかった。そのために、戦場が必要だったんだよ」
( ´_ゝ`) 「……大義名分をもって、心置きなく力を振るえる戦場が、な」
⌒*リ´・-・リ 「それが、革命軍だったの?」
(´<_` ) 「そうだ。世論には支持されているはずが、状況は劣勢の革命軍。これ以上の場所はないと思った」
( ´_ゝ`) 「奴隷制が残ってるのも胸糞が悪いし、敵に対して遠慮しなくて済むと、思ったんだ」
⌒*リ´・-・リ 「……そうだったんだ」
( ´_ゝ`) 「……すまん」
⌒*リ´・-・リ 「……」
(´<_` ) 「……今は、ちゃんとお前たちを勝たせたいと思っている」
⌒*リ´・-・リ 「……」
-
再びの沈黙。
珍しく風がやみ、静けさが耳に痛い程だ。
双子は時折魔法の管理を交換しながら地平に怪しい動きないか目を凝らしている、
どれほどの時間が経っただろうか。
アニジャの持っていた飲み残しの湯が完全に水に戻ったころ、リリの頭が前後に揺れ始める。
顔を見ると、瞼を重たげに今にも寝入ってしまいそうだった。
(´<_` ) 「……リリ」
⌒*リ´ - リ 「……寝てないもん」
( ´_ゝ`) 「……」 ファサッ
⌒*リ´ - リ 「…………アニちゃん、オトちゃん」
( ´_ゝ`) 「なんだ」
⌒*リ´ - リ 「……それでもね、助けに来てくれて、嬉しい」
( ´_ゝ`)
⌒*リ´ - リ 「……ありがとう」
( ´_ゝ`)
(´<_` )
⌒*リ´ , リ スゥー―......
-
( ´_ゝ`) 「……」
(´<_` ) 「……」
⌒*リ´ , リ スヤスヤ......
( ´_ゝ`) 「……来て正解だったと、思うか」
(´<_` ) 「……それはこれから決まることだろ」
( ´_ゝ`) 「……そうだな」
ヒュゥゥゥゥ......
カサササッ......
* * *
-
怒号の響き渡る戦場の中を、エクストは駆けていた。
双子とリリ、よりによって一番気にかけなければいけない子供たちとはぐれてしまった。
他に残っていた部下も既にやられている。
エクスト達が遊撃隊として援護するはずだった本体もほぼ壊滅状態。
最後の望みをかけて行った王都侵攻作戦は、この段階で、事実上の失敗だった。
<_フ;゚Д゚)フ 「ハァッ、ハァッ……、せめて、アイツらをにがさねえと……!」
<_フ;゚Д゚)フ 「……クソッ!いねえ!
<_フ;゚Д゚)フ 「双子が居りゃあ、大丈夫だろうが……」
〈 =oOo〉 「……いたぞ!テロリストの残党だ!」
<_フ;゚Д゚)フ 「……ああ、やってらんねえ……!!」
エクストは戦わずに逃走を選択。
侵攻に失敗した今、優先すべきは一人でも多くの命を連れて逃げること。
それは、作戦開始前にリーダーである元将軍が言っていたことでもある。
-
一方、隊からはぐれた兄弟とリリは、破砕された民家の陰に身を寄せ、息を顰めていた。
兄弟は体の数か所に擦り傷があるのみで、目立った外傷はない。
問題は、リリの方である。
敵の魔法兵の放った爆破魔法から兄弟を庇い、飛び散った家屋の破片を腹に受けてしまったのだ。
絶え間なく敵と遭遇するため真面に処置する余裕が無く、破片は刺さったままになっている。
( ;´_ゝ`) 「エクストは?」
(´<_`; ) 「分からん。あれでも腕は立つから、死んだとは思いたくないが……」
⌒*リ´ - リ 「……ぅ、」
( ;´_ゝ`) 「リリ」
⌒*リ´ - リ 「……ごめん、双子ちゃん……私、お姉ちゃんなのに……」
(´<_`; ) 「喋るな、今傷を……」
( ;´_ゝ`) 「……?!」
魔法による止血を試みようと、オトジャが魔法式を展開する。
しかし、組み上がる前に荒々しい足音が響いた。
敵兵だ。
恐らく、魔法適正のある者に、魔法の気配を察知されたのだ。
-
〈 =oOo〉 「誰かいるのか?!」
( ;´_ゝ`) 「チッ」
〈 =oOo〉 「……おまえらぁ、革命軍のガキだな?」
兜の隙間から、兵士の口が歪むのが分かった。
こちらが子供とみて、油断したのだろう。
あるいは、良からぬ性癖によって喜んだとも取れるが。
しかし、その傲慢は、兄者が間を詰め、鎧の隙間より剣を突き刺すのに十分な時間であった。
〈 =oOo〉 「…………あえ?」
剣を抜くと同時に血が噴き出す。
アニジャは崩れ落ちる敵兵の体を慌てて支え、音が経つのを防いだ。
しかし、力を失った手から剣が落ち、けたたましい音を鳴らす。
「なんだ、今の音は?」
「おいどうした、何があった!」
( ;´_ゝ`) 「……くそ、ここもダメだ」
-
(´<_`; ) 「一先ずここを出よう」
⌒*リ´ - リ ハァッハッ......
( ;´_ゝ`) 「リリ、辛いけど我慢してくれ」
⌒*リ´ - リ 「ごめん、ね…………」
(´<_`; ) 「……急ごう!」
「居たぞ!!」
( ;´_ゝ`) 「!」
移動しようと、建物の陰から顔を覗かせた瞬間を、物音に寄ってきた敵兵に見つかる。
敵は五人。全員がぬかりなくすぐに武器を構えた。
先ほどのような奇襲は難しい。傷を負ったリリを抱えながら正面切って戦うには辛い人数差だ。
( ;´_ゝ`) 「クソ……」
(´<_`; ) 「アニジャ、俺が何とか道を開くからリリを連れて……」
「オトジャァアアアッ!!下がれェエエ」
( ;´_ゝ`) 「「!!?」」(´<_`; )
-
突然の雄叫び。
その方向も定かでないうちに、壁の向こうから人影が飛び出した。
煤焦げた壁の上部を蹴ったその男は、敵兵の前に。
着地と同時に手斧を振り下し、兜ごと敵の頭をかち割った。
動揺する残りの四人のうち、最も手近に居たもう一人に、すぐさま斧を振り上げる。
敵兵は反射的に盾を顔の前に引き上げたが、これはブラフ。
振り上げられた斧は半円を描いて横に滑り、がら空きになった肋骨を肺ごと割り潰す。
( ;´_ゝ`) 「エクスト!!」
突然現れたその男は、はぐれた仲間、遊撃隊隊長のエクストだった。
全身が血と埃にまみれており、相当の修羅場を強引に抜けてきたことが問わずともわかる。
<_フ;゚Д゚)フ 「ガキども!行くぞ!!」
〈 =oOo〉 「残党がァ!させるか!!」
<_フ;゚Д゚)フ 「やるかオラァアアアア!!!」
(´<_`; ) 「“蒼海に潜りて―――碧き刃を振るい―――魚を断つ!!”」
〈 =oOo〉 「?!」
オトジャの放った水の刃が残っていた敵兵の首を切り裂いた。
エクストに気を取られていたせいか防御は無し。断たれた動脈から血飛沫が噴き出す。
-
<_フ;゚ー゚)フ 「……おいおい、俺要らなかったじゃねーか。流石だな」
(´<_`; ) 「いや、助かった。ありがとうエクスト」
<_フ;゚ー゚)フ 「良いから行くぞ、市街に脱出する!」
エクストは再会を喜ぶ余裕も無く、すぐに走り出した。
今は彼の導きに従うしかない。
兄弟もリリを担ぎ、すぐにそのあとを追う。
( ;´_ゝ`) 「どうやって抜けるんだ?どこもかしこも」
<_フ;゚ー゚)フ 「いざって時の隠し通路があるんだ、そこまでいけば……」
(´<_`; ) 「……!?待て!!」
最後尾で魔法による探知を行っていたオトジャが、前を行くエクストとアニジャの襟首を掴む。
あまりに急だったので、二人は首を絞められ、目を白くする。
オトジャはふらついた男達とリリを引っ張り、瓦礫の影に身を隠した。
少し顔を覗かせて睨む先に居たのは敵の兵士たち。
-
〈 =oOo〉 「居たか?」
〈 =oOo〉 「新たに四名の残党を捕縛しました。やはりこの枯れ井戸、地下通路になっているようです」
〈 =oOo〉 「よし、これを餌として罠をはれ!くれぐれも逃がすなよ!!」
敵の数は十余名。
全員が武装しているが、見たところ戦闘の痕跡は無い。
恐らく、残党狩りを任された部隊なのだろう。
複数人で組みながら、近辺の瓦礫の陰などを探っている。
隠れている四人に気付くのは時間の問題だ。
(´<_`; ) 「ダメだ……ここは、もう」
<_フ;゚Д゚)フ 「そんな……嘘だろ……」
⌒*リ´ - リ 「ハァッ、ハッ……ゥグ……」
( ;´_ゝ`) 「……エクスト、離れよう」
<_フ -)フ 「……ああ」
-
<_プ-゚)フ 「……リリの傷はどうだ」
(´<_` ) 「急所は外れてる。少し血を流し過ぎたが、リリなら回復は見込める」
<_プー゚)フ 「……そうか」
目的にしていた集合ポイントから、さらに身を隠し移動したのは、とある民家の地下倉庫だった。
入口に丁度良く瓦礫が覆いかぶさり、入ることは出来るが目立たないようになっている。
ここならば、しばらく敵の目をやり過ごすことが出来るだろう。
( ´_ゝ`) 「……周囲はダメだ、やっぱり王国軍がうじゃうじゃしてる」
(´<_` ) 「……ここまで露骨に残党狩りしてるって、ことは」
<_プ-゚)フ 「……俺たちも、終わりだな」
( ´_ゝ`) 「……」
(´<_` ) 「一体、どうして王国軍はあんなに一気に盛り返したんだ」
<_プ-゚)フ 「数人、変な魔道具を使う兵が居た。あいつらの魔法で、主力の部隊がやられて総崩れだ」
(´<_` ) 「……魔道具か。ものによっては、確かにな」
( ´_ゝ`) 「なんとかできないのか」
(´<_` ) 「……」
-
<_プ-゚)フ 「……お前ら、怪我は?」
( ´_ゝ`) 「大したものは無い。戦闘の継続は可能だ」
(´<_` ) 「同じく。魔力もまだ十分ある」
<_プー゚)フ 「よし、じゃあお前ら二人は逃げろ」
( ´_ゝ`) 「……は?」
<_プー゚)フ 「お前ら二人だけでなら何とか逃げられるだろ。ここを感づかれて囲まれる前に逃げろ」
( ;´_ゝ`) 「そんなこと、出来るわけないだろ!」
<_プー゚)フ 「俺は裏切り者の元国軍兵士だし、リリは奴隷だ。絶対に見逃しちゃもらえないが、お前らは違う」
( ;´_ゝ`) 「違う、そういうことじゃない!そんなこと、やったらダメだって言ってるんだ!」
<_プー゚)フ 「お前らには世話になった。最期まで付き合わせるわけにはいかねえよ」
(´<_` ) 「……あんたはどうするんだ」
<_プー゚)フ 「そうさな……リリを連れて投降。革命軍残党の情報でも嘯いて命乞いしてみるか」
( ;´_ゝ`) 「だめだろそんなの!」
(´<_` ) 「アニジャ声がでかい」
( ;´_ゝ`) 「……万が一制裁を逃れられても奴隷に戻っちゃうんだぞ。いや、むしろ前よりも……」
<_プー゚)フ 「お前らには関係ないことだ。お前らが残ったって結果は同じだしな」
-
( ;´_ゝ`) 「そうかも、しれないけど!」
(´<_` ) 「……待て、二人とも」
潜ませた声でオトジャが二人を制す。
耳を澄ませると、地面を踏む足音が複数。
たまたま通りがかったというには、人数が多すぎる。
(´<_` ) 「気づかれた」
<_プ-゚)フ 「チッ」
(´<_` ) 「……人数は、二十弱か。まだ増えるかもな」
<_プ-゚)フ 「お前らなら何とかぬけられるだろ。俺が囮になるから」
( ´_ゝ`) 「……逃げないよ」
<_プ-゚)フ 「いうこと聞けクソガキ」
( ´_ゝ`) 「お断りだ。俺たちは大人の言うことが聞けないからここに居るんだ」
(´<_` ) 「まったくだな。どうする気だ」
( ´_ゝ`) 「今取り囲んでる兵士を出来るだけ倒して、挑発した上で引きつけて逃げる」
(´<_` ) 「……その隙に、リリを連れて逃げられるかエクスト」
<_プ-゚)フ 「お前ら……」
-
( ´_ゝ`) 「時間が無い、行くぞオトジャ」
(´<_` ) 「ああ」
<_プ-゚)フ 「おい!」
( ´_ゝ`) 「俺たちは自分たちの力を測りたくて。強くなりたくてここに来た」
(´<_` ) 「せめてあんたらだけでも助けられなきゃ、コケンに関わるんだ」
<_プД゚)フ 「だから……」
制止しようとするエクストを無視し、双子は地下室を飛び出した。
間もなく、怒号と剣のぶつかり合う音が響いてくる。
とても二対多とは思えないほど、絶え間なく激しい戦闘の音。
それが、双子がまだ生きている証明であり、これから殺されるかもしれない不安でもあった。
<_プ-゚)フ 「……クソ……ッ!」
⌒*リ´ - リ 「たい……ちょお……?」
-
エクストの腕の中で、リリが意識を取り戻した。
状況を呑み込めていないのか呆けた目で顔を見上げてくる。
そっと、優しく、エクストはその額の脂汗を指で拭った。
<_プ ,゚)フ 「リリ、大丈夫か?」
⌒*リ´ - リ 「……私は、平気。それより双子ちゃん……」
<_プ ,゚)フ 「……」
⌒*リ´ - リ 「わたしも戦うから……双子ちゃんを、助けにいこう」
<_プД゚)フ 「そんな傷で戦ったら死んじまうだろうが」
傷に響かないよう、少しだけ強くリリを抱きしめて窘める。
そんなエクストの頬に、小さな手が伸びた。
傷跡だらけの腕だ。
刃物では無く、鞭や鈍器で作られた引き裂かれたような抉れたような歪な白い蛇行。
エクストはその痕にそっと指を這わせる。
僅かに感じる凹凸は、それがいかに深くリリを苦しめていたかを物語っていた。
-
⌒*リ´ - リ 「……わたしは、ほんとうなら、もうしんでた」
<_プ-゚)フ 「……ッ」
⌒*リ´ - リ 「……あの時たいちょーがきてくれなかったら、きっと……」
<_フ )フ
⌒*リ´ - リ 「……あそこには怖いものしかなかったもの」
<_フ )フ
⌒*リ´ - リ 「だから、これでじゅうぶんだよ。自由を夢見れたそれだけで………」
<_フ )フ
⌒*リ´ - リ 「…………だから」
-
リリの言葉を、轟音が遮った。
落雷の音。ただ、雲もない今日の陽気には、あまりに突拍子の無い音だ。
エクストの頭に、仮面をかぶった敵兵の姿が浮かんだ。
本来であればもっと善戦できたはずの革命軍を壊滅にまで追い込んだ、妙な魔道具を扱う集団。
奴らが用いていたのは、一瞬見ただけではあるが、雷を操る類のものだった。
となると。
⌒*リ´ - リ 「たいちょー、双子ちゃんが……」
<_プ ,゚)フ 「……」
雷鳴を境に、戦闘の音が止んでいた。
立ち去る雑踏も無い。
幾つか聞こえた敵兵の声が聴き間違いでなければ、恐らくあの兄弟は。
<_プ-゚)フ 「……わかった、いくぞ」
⌒*リ´ぅ- リ
<_プ-゚)フ 「ギリギリまで俺を食え、出来るな?
⌒*リ´・-・リ 「……うん!」
* * *
-
〈;;;( ∵)〉 「やれやれ、やっと大人しくなりましたな……」
( ´_ゝ ) 「……クソ」
地下室から飛び出した双子は、実力以上に善戦したといえる。
魔法を撃ち、剣を振るい、倍も生きた大人の兵士たちを鬼気迫る勢いで倒し伏した。
残党を狩るつもりでだらけた敵兵たちはその気迫に圧倒され、一見して兄弟が勝利するかに思えた。
実際に、勝てると確信した。
魔力は十分。士気も、実力も息を合わせた二人の方が十数の敵よりも勝っていたのだから。
が。
〈;;;( ∵)〉 「さぞ名のある親を持つのだろう。その力、凡百のものとは思えん」
( <_` ) 「……」
〈;;;( ∵)〉 「まあ、我らが『雷虎豹』の前では、所詮小童よ。ククク……」
この、仮面の男が現れ戦況は一転した。
腕の魔法具から放たれた痛烈な稲妻が、圧倒的な威力で兄弟を焼き払ったのだ。
辛うじて展開した防御魔法も功を奏すことは無く、アニジャ達は撃で戦闘不能に陥っていた。
仮面の男はくぐもった笑いを漏らす。
アニジャは、痺れと痛みに満ちた体を起こそうとするが、指先すらも動かない。
無様であった。
叫びを上げそうになる。
揚々と家を飛び出し、よその戦場に首を突っ込み、勝利に導くととすらできず。
そして、この有様だ。
格下の兵相手にどれだけ無双しようと、一たび手練れに会えばあっさりと負ける。それでは意味が無い。
父の言葉が、苦痛で鈍る頭の中に反響する。
-
〈;;;( ∵)〉 「もう抵抗も出来ませんでしょう」
〈 =oOo〉 「手を煩わせてすまなんだ。後は我々が処理しよう」
仮面の男に変わり、敵の兵士がアニジャの前へ。
腰の剣を抜き、振り上げる。
〈 =oOo〉 「多く仲間を殺したてめえらは、この場で首を落とす」
〈 =oOo〉 「待て、生きてる者は捕らえよと……」
〈 =oOo〉 「ばれやしねえ!殺さねえと腹の虫が収まらねえんだよ!」
陽光を浴びた剣がぬらりと光る。
アニジャは歯を食いしばり、その鈍色の死を睨むしかできなかった。
〈 =oOo〉 「死ね!」
振り上げられた剣が今まさにアニジャに振り下ろされんと言う時、豪快な破砕音が響き渡った。
地下倉庫への入口に覆いかぶさっていた木の棚が木端微塵になり、空高く舞う。
誰もがその光景を目で追った。
剣を振り上げていた兵も、咄嗟に身を竦めそちらに顔を向けた。
雷撃を受け瀕死となったアニジャとオトジャも、それを見ていた。
そして、心から落胆する。
-
瓦礫を破壊し、地下室から飛び出したのは一人の少女だった。
年は十四。しかしながら身の丈は精々130cmと少しだけ。
リリ=アウロリ。
せめて無事に逃げ延びてほしいと願った彼女は、木端舞い散る中をまるで猫を彷彿とさせるしなやかさで回転する。
多くの視線と意識を引きつけたまま落下し、四足を使っての着地。
そのまま獣の如く、体を屈め縮める。
〈 =oOo〉 「が?!」
全身の力を弾けさせ、リリは最も近くに居た敵兵に飛び掛かった。
俊敏の一言。
取りつかれた兵士が抵抗した数秒の間に、首がへし折られる。
〈 =oOo〉 「改造奴隷か!」
リーダー格が叫ぶのよりも早く、リリは次の獲物へ飛び掛かる。
狙ったのは、アニジャを今まさに殺さんとしていた兵士。
自身が狙われていることに気づいたその兵は、迫るリリに振り上げていた剣を叩き付ける。
-
しかし、遅い。
リリは無秩序ともいえる機動で斬撃を回避。
そのまま兵士の背後を取り。
⌒*リ#´・Д・リ 「がうー!!!」
股間を下方から、思いっきり掴み上げた。
ダメ押しで、手に触れた柔らかい何かを思いっきり握り潰す。
兵士は蛙のような悲鳴で泡を吐き出し、地面に崩れ落ちた。
この光景に、大半の敵兵がたじろぐ。
⌒*リ#´・Д・リ 「アニっちゃん大丈夫?!」
( ´_ゝ ) 「リリ、なんで」
⌒*リ´・-・リ 「貴方たちが私たちを逃がすために戦うって、言ってくれたから」
( ´_ゝ ) 「馬鹿な……」
⌒*リ#´・Д・リつミ 「がおー!!近づいたらタマタマミンチだよ!!!!」
つミ
小柄で、なおかつ歳不相応に童顔のリリに、敵兵たちが気圧される。
金的とは確かに、ただ殺すよりも遥かに戦意を削げる。
-
〈;;;( ∵)〉 「あの小娘、ただの人ではありませんな」
〈 =oOo〉 「魔法で体を弄られた改造人間だ。お偉い方の玩具だよ。あんな成りで大型の獣を素手で殺しやがる」
〈;;;( ∵)〉 「ほう。それはそれは」
仮面の男が、前に出た。
リリの威嚇に迂闊に近づけぬ他の者どもを尻目に、全く怖気ることなくリリに近づく。
黒衣を纏ったその腕には、金輪の魔道具。
( ´_ゝ ) 「リリ、お前、腹の傷……」
⌒*リ#´・Д・リ 「ヘーキ!たいちょーのこと食べたから!!」
言葉とは裏腹に、リリの足を血が伝って落ちる。
応急処置で塞いだ傷が、全てでは無いが開いているのだ。
背を向けられているためアニジャからは良く見えないが、顔色も決して良くは無い。
当然である。
いくら回復力が常人より優れているとはいえ、瓦礫で負った傷は複雑で、そう容易く治癒するものでは無い。
⌒*リ#´・Д・リ 「がうー!!こっち来ないで!!」
〈;;;( ∵)〉 「こわいこわい」
-
仮面の男が手を翳す。
瞬時に雷光が走った。
リリは腕の動きのみでタイミングを見切り回避。
攻め込まずに距離を取り、別の兵士の陰に回って盾とする。
仮面の男は躊躇わず雷撃を放つ。
リリは機敏に逃走。
取り残された敵兵のみが雷に撃たれ白目を剥いて崩れ落ちる。
〈 =oOo〉 「貴様ッ!」
〈;;;( ∵)〉 「おっと、失敬」
尚も雷撃は止まらない。
リリも一切止まらず、跳ねまわって回避を続ける。
戦闘不能に陥るのは敵兵ばかりではあったが、リリの機動力も徐々に落ちていた。
⌒*リ;´・Д・リ 「ハァハァ……」
〈;;;( ∵)〉 「鬼ごっこは、終わりでよろしいかな」
リリが貧血でふらつき、地面に膝をつく。
消耗の差は歴然だ。仮面の男は特に疲労した様子も無く魔道具をリリに向ける。
( ´_ゝ ) 「リリ!」
⌒*リ;´・-・リ 「ッ!」
-
「終りなのは……」
〈;;;( ∵)〉 「ッ?!」
<_フ#゚Д゚)フ 「てめえだオラァァ!!」
柄の悪い雄叫びと共に飛来した斧が、仮面の男の背中を捉えた。
骨の砕ける音が響き渡る。
見事なクリーンヒットだ。仮面の隙間から血を吹き出し、膝を着く。
<_フ#゚Д゚)フ 「所詮道具頼りのてめえが!」
恐らくは、リリが暴れている間に移動していたのだろう。
元隠れていた廃墟とは別の建物から飛び出したエクストが仮面の男に全力で駆けより。
<_フ#゚Д゚)フ 「狩人気取ってんじゃねえぞクソモヤシ!!」
全体重を乗せたドロップキックを頭部にお見舞いする。
仮面の男は受け身なしの状況でその直撃を喰らい、首をありえない角度にへし折られながら吹き飛んだ。
⌒*リ;´・-・リ 「たいちょー、遅い」
<_フ;゚ー゚)フ 「すまん!だけどこれでなんとか……」
三〈;;;( ∵)〉 三〈;;;( ∵)〉 三〈;;;( ∵)〉 三〈;;;( ∵)〉 三〈;;;( ∵)〉 三〈;;;( ∵)〉 三〈;;;( ∵)〉 ゾ゙ロロロロッ!!
<_フ )フ ;゚Д゚ 「一体何人いるんだよ!!!」
-
( ´_ゝ ) 「……チッ」
( <_` ) 「あり得ない展開でも、無かったがな」
⌒*リ´・‐・リ 「そんな……」
虫のように次々現れた魔道具兵が四人を取り囲んだ。
数は十。
皆、先の一人と同じく腕に魔道具を装着している。
リリが、その場にへたり込んだ。
顔を俯くまではしなかったが、その横顔に希望は見えない。
〈;;;( ∵)〉 「遊び過ぎた阿呆とはいえ同胞を殺されては、われわれも大人しく帰るわけにはいかんのだ」
<_プД゚)フ 「クッソ!」
〈;;;( ∵)〉 「まずは、貴様だ」
<_フ )フ 「!!!」
エクストの体が、雷の光と声に呑み込まれた。
激しい明滅。耳を抜けて頭を貫く轟音。
それでも目を背けられず、光の中にエクストの姿を探した少年少女の前に再び現れたのは。
⌒*リ´ Д リ 「たいっ……ちょお……!」
命も面影も奪い去られた、人型の黒。
自重によって地面に崩れ、そのままピクリとも動かない。
-
⌒*リ´ ‐ リ 「……たいちょう」
〈;;;( ∵)〉 「次は、お前」
( ; _ゝ`) 「だめだ逃げろ!」
(´<_ ; ) 「リリ!」
⌒*リ# Д リ 「やだぁ!!!」
リリの全身が、にわかに膨らんだ。
小さな体に似合わぬ、筋肉の膨張。
四足の獣の如く、地面を握り、全身の力で最も近い仮面の男に飛び掛かった。
( ; _ゝ`) 「リリ!!」
伸ばした手の、その指の間。
アニジャはそこから、少女が消え去る瞬間を見た。
本のページを破りとるような、強制的で圧倒的な排除であった。
〈;;;( ∵)〉 「やれやれ、あまりに恐ろしいので焼き過ぎてしまった。臆病ものはこれだからいかんね」
一人がおどけて肩をすくめると、他の数人から顰めた笑いが漏れる。
目の前に倒れるリリの死骸は、それが本当に人であったか疑う程、原形を留めていない。
-
〈;;;( ∵)〉 「さてと、そちらの双子には、さほど恨みは無いのだが……」
〈 =oOo〉 「おい、待て」
〈;;;( ∵)〉 「なにか
〈 =oOo〉 「そいつらは俺たちが捕らえる。貴様らはもう下がれ」
〈;;;( ∵)〉 「……暴れられたら厄介では?」
〈 =oOo〉 「ふん、このざまであれば関係ない。おい、縛れ」
〈 =oOo〉 「殺さないのですか?」
〈 =oOo〉 「捕らえよとの命だ。晒す首は多い方がいい、とな」
〈 =oOo〉 「悪趣味なことで」
〈 =oOo〉 「口が過ぎるぞ」
〈 =oOo〉 「は、ではただちに拘束し、牢へ!」
双子の体に縄が巻かれて行く。
アニジャは、抵抗せず大人しく拘束されていた。
一瞬魔法を組み上げようとしたオトジャも、それを見て抵抗を諦める。
完全に腕を固められ、強引に連れられる最後、アニジャは首だけで振り返った。
兵士に背を突かれ、向き直るまでの一瞬に見えたリリとエクストは、やはり死んでいる。
* * *
-
〈;;;( ∵)〉 「さてと、そちらの双子には、さほど恨みは無いのだが……」
〈 =oOo〉 「おい、待て」
〈;;;( ∵)〉 「なにか
〈 =oOo〉 「そいつらは俺たちが捕らえる。貴様らはもう下がれ」
〈;;;( ∵)〉 「……暴れられたら厄介では?」
〈 =oOo〉 「ふん、このざまであれば関係ない。おい、縛れ」
〈 =oOo〉 「殺さないのですか?」
〈 =oOo〉 「捕らえよとの命だ。晒す首は多い方がいい、とな」
〈 =oOo〉 「悪趣味なことで」
〈 =oOo〉 「口が過ぎるぞ」
〈 =oOo〉 「は、ではただちに拘束し、牢へ!」
双子の体に縄が巻かれて行く。
アニジャは、抵抗せず大人しく拘束されていた。
一瞬魔法を組み上げようとしたオトジャも、それを見て抵抗を諦める。
完全に腕を固められ、強引に連れられる最後、アニジャは首だけで振り返った。
兵士に背を突かれ、向き直るまでの一瞬に見えたリリとエクストは、やはり死んでいる。
* * *
-
連行された兄弟は、他に囚われた革命軍兵士とは別の、石組みの地下牢に放り込まれた。
恐らく、魔法を使えるがための特別扱いだろう。
こんなところに押し込められなくとも、二人に魔法を使って暴れる気力は無かったのだけれど。
〈 =oOo〉 「処刑は明朝だそうだ。楽しみにしておけよ」
兵士はそう言って去っていき、以降まったく姿を見せなかった。
牢には、ネズミの鳴き声以外の音が無い。
遠くから何かの音が聞こえるが、一体それが何に由来するのかはわからないほどに小さかった。
(´<_` ) 「アニジャ、大丈夫か」
( _ゝ )
(´<_` ) 「……」
-
アニジャは、牢の奥の角に座り込み、膝に顔を埋めている。
入れられて暫く、気力の無い目で彷徨った後、ここに収まった。
それから、一言も言葉を発さない。オトジャは意志の疎通を諦め、自身も石の壁に体を凭れた。
冷たさが心地よくすらある。
いずれ寒さに変わると分かってはいるが、雷を受けた体は未だ満足には動かず、その痛みには丁度いい。
連れられて、幾分時間が経った。
どこからか入り込んで来る陽光が赤いので、もう夕刻なのだろう。
他の兵士たちは、どうなっただろうか。
牢にくる道すがら、何人かが捕虜になっているのは見た。
それ以外の人間は、どうなったのか。
逃げ延びて反攻の期を待っているのか、それとも。
エクストと、リリの最期を思い出し、オトジャも顔を覆った。
不意に、何度もリフレインされる。
父や母であれば、あの仮面の男たちにも負けはしないだろう。
どころか、もっと安全で確実な戦略をもたらし、確実な勝利を与えることが出来たはずだ。
オトジャも顔を伏せ、あらゆる敗北を噛みしめる。
-
それからさらに、どれほど時間が経ったろうか。
差し込んでいた光がなくなり、離れたところに座るアニジャがはっきり見えない程度に暗くなる。
( ´_ゝ`) 「……ッ?」
(´<_` ) 「……?」
一向に動かずにいたアニジャが立ち上がり、壁に耳を当てた。
真剣な目つきだ。
一瞬気が違ってしまったのかと心配したが、どうやらそうではない。
(´<_` ) 「どうした」
( ´_ゝ`) 「聞こえないのか、戦闘の音だ」
(´<_` ) 「?」
倣って、オトジャも壁に耳をつけた。
意識を集中すると、確かに何やら騒がしい音が響いてきている。
戦闘というより、オトジャにはもっと違う何かに思えた。
( ´_ゝ`) 「いかなくちゃ……」
(´<_` ) 「どうする気だ」
( ´_ゝ`) 「きっと、残っていた人たちが戦ってるんだ。せめて援軍に行かないと」
(´<_` ) 「何言ってる、仮に残党が居たとしても今の俺たちじゃ」
( ´_ゝ`) 「俺は、諦めるためにあの家を出たんじゃない」
-
止めようとオトジャを無視し、アニジャは魔法を組み始めた。
雷によって全身にダメージを負った今の状態で魔法を使うのは不可能だ。
当然アニジャも途中で展開を誤り、魔力を霧散させ、また最初から組みなおす。
稀に出来上がって放ったとしても、入口を塞ぐ堅牢な檻を破壊することはできない。
何度も、何度も繰り返す。
できそこないの水の刃を打ちつけては無駄にし、また組む。
一発たりとも真面に発動はせず、やがてアニジャの魔力が尽きた。
( ´_ゝ`) 「オトジャ、魔力を貸してくれ」
(´<_` ) 「アニジャ、もうやめろ」
( # _ゝ ) 「だから!俺は…………」
アニジャが叫んだ瞬間に、牢全体が大きく揺れた。
地震、では無い。
腹に響く音と、共に魔力の振動が肌を痺れさせる。
何者かが、魔法でこの牢を含む建物全体を破壊しようとしているのだとすぐに気付いた。
( ´_ゝ`) 「……な、」
戸惑い、天井を見上げると同時、突然に月の輝く夜空が表れた。
続いて、これまでと異なる地鳴り。丁度、大きな建物が倒壊したような音だ。
震動がさらに大きくなり、兄弟はそろって地面に尻をつく。
-
「あーっ、やっぱりここだーっ☆」
( ;´_ゝ`) 「……なん、だ?」
(´<_`; ) 「???」
o川*゚ー゚)o 「魔法の気配がすると思ったら、こんなところにも牢屋があったのね」
砂埃が降り落ちる中、その向こうに居たのは一人の女だった。
月の逆光の中でも何故か顔が見える。
無邪気さを感じさせる笑顔で微笑む彼女は、一瞬全てを忘れて見惚れるほど、美しかった。
o川*゚ー゚)o 「よっこしょ」
女は地下牢に飛び降り、兄弟の前に立った。
近くで見ても、近づいたからこそ目が離せない。
魔法により浮力を得ている余波か、髪の毛が月光に舞い、この世とは異なる世界を見ているよう錯覚に襲われる。
o川*゚ー゚)o 「貴方たちもかくめー軍の捕虜だよね?みんな集まっているから、行きましょ」
膝に手を当て屈み、手を差し伸べてくる女。
優しい笑みだ。
呆然として動けないアニジャを見て、そこに少し淋しさが混じる。
-
o川*゚ー゚)o 「そっか、事情が飲めないよね」
手を引っ込め、今度はアニジャと体が触れるほどに近づいてしゃがみ込む。
伸ばした手は、やはり優しくアニジャの頭を撫でた。
o川*゚ー゚)o 「革命軍は勝ったわ。あなたたちの戦いは終わったの」
( ;´_ゝ`) 「……?」
(´<_`; ) 「それって、どういう」
o川*゚ー゚)o 「そのままの意味☆ さ、だから行きましょ。男の子がそんなしょぼくれた顔するものじゃないわ」
再び差し出される手。
女の言葉は、理解しがたかったが、不思議と信頼出来た。
手を受け取ると、アニジャの身体にも浮力の魔法が纏わり、自然に体が立ち上がる。
o川*゚ー゚)o 「さ、あなたも」
(´<_`; ) 「……うん」
オトジャも同じく、補助を得て立ち上がる。
女はそのまま両手で兄弟を引き連れ、夜空に飛び上がった。
-
女と共に空を駆け、辿り着いたのは王宮前の広場。
空から望む限り、多くの人が集まっている。
その内の一人、小柄な少女がこちらに手を振った。
傍らにいた男も同じく手を上に翳す。
o川*゚ー゚)o 「ほら、あの子が貴方たちが居るはずだから探して、って言ってたのよ」
( ;´_ゝ`) 「な、なん……」
(´<_`; ) 「そんな、だって……」
o川*^ー^)o
⌒*リ*´・-・リ ノシ 「ふたごちゃーん!!!」
( ;´_ゝ`) 「リリ!!」
<_プー゚)フ
(´<_`; ) 「エクスト!!」
三 ⌒*リ*´・Д・リつ 「双子ちゃ〜〜〜ん!!」
三 つ
地面に降り立つと同時に少女、リリが駆け寄り、飛びつき、抱き着く。
二人係で何とか受け止めるもふらついてそのまま倒れた。
リリは気にする様子も無く、倒れ込んだまま、兄弟の体を同時に抱きしめる。
-
⌒*リ*´;-;リ 「よかったぁ、死んじゃってなくて、よかったぁ!」
( ;´_ゝ`) 「え、いや、でも……!」
(´<_`; ) 「おまえら、だって、いや、むしろ!」
<_プー゚)フ 「ああ、俺たちは、確かに死んだらしいよ」
( ;´_ゝ`) 「エクスト」
<_プー゚)フ 「ほれ、リリ、離れな」
⌒*リ´・-・リ 「……うん」
(´<_`; ) 「どういうことなんだ、エクスト」
<_プー゚)フ 「助けられたんだ。あの、魔女さんにな」
エクストが視線で指したのは先ほどの女。
彼女は既に二人の元を離れ、革命軍の兵士たちの感謝を受けながら王宮の方へ歩いて行った。
よく見ると、エクストやリリだけでなく、死んだはずの他の仲間たちまでもが、その中に居た。
<_プー゚)フ 「詳しい事情はわからねえが、あの人が王国軍と、糞王を倒して、俺たちをよみがえらせてくれたんだ」
-
( ;´_ゝ`) 「よみがえらせ、た……?」
信じがたい話ではあったが、目の前に居るのは紛れも無く殺されたはずのエクストだ。
目も合わせないまま、アニジャはオトジャの頬を指でつまみ。
オトジャは額にアニジャの頬を摘まんで、同時に思いっきりつねった。
めちゃくちゃ痛い。
一応は、夢では無いらしい。
⌒*リ´・-・リ 「私たちもね、死ぬと思った次の瞬間、突然この広場の前に居てね」
<_プー゚)フ 「傷は治ってるし、夜になってるしで、全く状況は掴めなかったんだが」
⌒*リ´・-・リ 「魔女さんの声がね、ふわ〜って頭の中に聞こえて、なんか納得しちゃったの!!」
<_プー゚)フ 「実際、目の前で他の殺された奴らが生き返るの見たしな」
( ;´_ゝ`) 「蘇生魔法……」
(´<_`; ) 「それも、遺体が原形すらとどめていない、死後数時間たった死者を……」
⌒*リ´・-・リ 「それよりほら、いこう!これからショーグンが宣言するって!!」
リリの怪力で手を引かれ立ち上がる。
そこで、自分たちの体の傷も修復されていることに気付いた。
痛みも、違和感も無かった。いつの間に掛けられたのかすら分からないが、小さな傷まで含めてすべてが綺麗に消えている。
( ´_ゝ`) (これが、悪名高い)
(´<_` ) (魔女の力)
-
革命軍のリーダーである元将軍の宣言を終え、広場は祝勝ムードに包まれた。
次々に篝火を灯し、酒を持ち合い、笑顔で、あるいは泣きながら勝利を祝い合う。
誰もがすべてを諦めたはずだ。
それを思えば、この逆転が過ぎる勝利は、手放しで喜ばざるを得ないのかもしれない。
例え自分たちの力でなくとも、必死に戦い、足掻居たからこそ起きた奇跡であると、言ってしまっても良いのだろう。
ただそれは、部外者であるサスガの双子には、素直に受け取れない喜びだった。
( ;´_ゝ`) 「気配はこっちだよな?」
(´<_`; ) 「ああ、間違いない。隠そうとはしているが、大きすぎてダダ漏れだ」
人々の間を掻い潜って、兄弟は魔女の姿を探していた。
魔力の気配が強いため居場所は予想できたのだが、人にもまれて中々たどり着けない。
やっと人の群れを抜け、夜の街を二人で駆ける。
魔力の気配は如実に大きくなり、察するに、魔女も二人の接近に気付いたようだ。
o川*゚ー゚)o 「おや、これはこれは頑張り屋と噂の双子くん」
魔女は、廃屋の屋根に座り、景色を眺めていた。
向こう側には空に穴を開けたような月。
どこか黄昏た様な姿に、二人はまた、見惚れそうになる。
-
( ;´_ゝ`) 「あんた、魔女、なんだよな?」
o川*゚ー゚)o 「うん、自分で名乗ったことは無いんだけど、いつの間にかそっちの方が有名になっちゃった」
(´<_`; ) 「俺たち、あんたに聞きたいことがあるんだ」
川*゚ ,゚)o 「ん〜〜〜……?スリーサイズと体重と年齢以外なら答えるけど……」
b
( ;´_ゝ`) 「なんで、俺たちを、革命軍を助けてくれたんだ?」
川*゚ ,゚)o 「あら、そんなこと?」
b
(´<_`; ) 「無礼かもしれんが、俺たちの聞いたあんたの噂は、助けるとか、そんなのとは真逆なことばっかりだったから」
o川*゚ ,゚)o 「あらあら、悪名高いなあ私も」
魔女は屋根を飛び降りた。
手に魔法の光を灯し、丁度三人が収まる程度の明りを生み出す
o川*゚ー゚)o 「噂が違う、ってことじゃないわ。逆の立場から見れば、私は一つの国を滅ぼした大罪人だもの」
( ;´_ゝ`) 「……たしかに……」
o川*゚ー゚)o 「それに、革命軍を助けたって言うのはニュアンスが違うの。私は、修正に来ただけ」
(´<_`; ) 「修正?」
-
o川*゚ー゚)o 「あの仮面のやつらとね、ちょっと因縁有でね」
( ´_ゝ`) 「……」
o川*゚ー゚)o 「あの魔道具も、私を殺すためのものなんだけど、その実験をこの国の内紛でやりはじめたのよね」
(´<_` ) 「……」
o川*゚ー゚)o 「流石にさ〜、そういうのはいまいち気分が悪くてね。
だから、迷惑かけた革命軍の人たちへのお詫びも兼ねて一応、加勢したの」
( ´_ゝ`) 「成程、な」
o川*゚ー゚)o 「もしかしたら自力で勝つかもしれないと思って様子見てたんだけどさ〜。あいつらめっちゃ胸糞悪いもーん」
o川*( ∵))o 「『ククク……らいこひょーこそ真のちから……』」
o川*゚Д゚)o 「とか言ってんだよ?腹立つー!戦ってみたら全然雑魚だし!!」
(´<_` ) (……あの魔法具が、雑魚か)
( ´_ゝ`) (……うん)
仮面の男たちへのヘイトを、身振り手振りを交え喚き始めた魔女を無視し、兄弟は目を合わせる。
これは魔女を探し始めた時点で、二人で相談し決めていたことだ。
-
o川*`皿´)o 「だいたい何なのあのへんな仮面!気持ち悪いし!」
( ´_ゝ`) 「あのさ、魔女さん」
o川*゚ ,゚)o 「……え、あ、ごめんね、ちょっと愚痴をこぼしたいお年頃だから許してね」
(´<_` ) 「それは別にいいんだけど、俺たち、魔女さんにお願いがあるんだ」
o川*゚ ,゚)o 「お願い……?」
( ´_ゝ`) 「うん。たぶん、あんたじゃないとだめなんだ」
o川*゚ ,゚)o 「聞くだけなら、聞いてあげるけど」
再び、兄弟は顔を合わせる。
互いが緊張しているのが表情から分かって、互いに安心する。
( ´_ゝ`) 「じゃあ、さ」
o川*゚ー゚)o 「うん」
( ´_ゝ`) 「俺たちを、あんたの弟子にしてほしいんだ」
o川*゚ ,゚)o 「……………はいぃ??」
* * *
-
少々揉めたのち、魔女の弟子となった兄弟は、各地の戦場を転々とした。
弟子、と言っても魔女は直接二人に教えを授けたわけでは無い。
o川*゚ー゚)o 「私は、いわゆる修験者ではないからさ、人に授けられるような経緯で力を身に着けたわけじゃないの」
o川*゚ー゚)o 「だから、面倒は見てあげるし、魔法使うとこを見せては上げるけど、それ以上は勝手に盗んで」
大よそこんなことを始めに言ってはいたのだが、実際には魔女が自分で力を振るうことはほとんど無く、
目の当たりに出来たのは数えても五回程度だ。
代わりに魔女は兄弟に力に見合った戦場を見つくろい、兄弟はその戦場で全力をとして戦った。
一年ほど過ぎ、いくらか彼らの力が凡人の域を逸脱し始めた頃に、魔女は仮面の男たちの掃討を始めた。
この時も自分では戦わず補助に徹し、実際に敵の軍勢を滅ぼしたのは14をいくらか過ぎた兄弟たちであった。
いくつもの苦難に、兄弟は音を上げず耐えた。
魔女もただ放任するのではなく、そばに立ち二人を補助し続けた。
兄弟は、そうした幾つもの戦場を乗り越え強くなった。
力と比例して、魔女のことを信頼していった。
休息の時には火を囲んで他愛のない話をし、笑いあった。
厳しく、自分たちを認めてくれない父のこと。
ひたすらに怖い母のこと。
母の次に怖いけれど、実は優しい姉のこと。
そして、自分たちをはるかに超えた才を持つ、愛しい妹のこと。
-
そして、兄弟が魔女に弟子入りし、三年後。
彼女と彼らは、袂を分かつことになる。
* * *
-
( ´_ゝ`) 「なあ、キュート」
o川*‐ ,‐)o 「なあに?」
アニジャは星空を眺めていた。
視野の半分が黒い何かに覆いかぶさられ見えないが、特に気にはならない。
頭の下の柔らかさと温もりが心地よかった。
星を見るのをやめ、ゆっくりと瞼を閉じる。
頭を撫でられた。
子ども扱いされているようでもどかしいが、これはこれで悪くないというのが本音だ。
( ´_ゝ`) 「本当に、もう一緒にはいけないのか」
o川*゚ ,゚)o 「ん〜〜……私もさぁ、貴方たちにけっこう愛着湧いてるからさ、一緒にはいたいんだけど」
「だからこそ、ダメってのもあるのよね」と付け加えたのを聞こえなかったことにする。
キュートには、なにか大きな企みがあるのだ。
そのために、兄弟を同行させることができなくなったのだろう。
連れ添った三年で、大よそキュートの性格はわかった。
確かに、かつて噂で聞いたような残虐性、嗜虐性はある。
しかし同時に、いたって普通の女性的な慈愛も持ち合わせているようにアニジャには思えていた。
現に、三年もの間同行していたと言うのに兄弟は何の危害も与えられていない。
それどころかキュートはあの革命軍と同じく、多くの人々を救っている。
残虐性より話題にならないのは、本人が自分の手柄として広めたがらないからに過ぎない。
どちらかと言えば、無意味な残虐行為に及ぶ回数の方が少なかったように思う。
-
( ´_ゝ`) 「そうか」
o川*゚ー゚)o 「あら。なに?寂しい?」
( ´_ゝ`) 「……」
キュートがアニジャの顔を覗き込む。
とある山の中腹。
突き出した岩の上にキュートは腰掛け、アニジャはその太腿に頭を乗せている。
顔が近く、星明りの逆光でも何故かキュートの顔ははっきりと見えた。
気まずくなり、顔をそむける。
o川*゚ー゚)o 「ふふ、大きくなってもまだ子供ね」
( ´_ゝ`) 「っせえな」
アニジャは起き上がり、キュートから離れた。
やっぱり、子供扱いは誰にされても嫌いだ。
それが的を射られているからこそであるということは自覚している。
o川*゚ー゚)o 「あらら、最後の夜なのにいけず〜」
( ´_ゝ`) 「ついてくって言ったらどうする」
o川*゚ー゚)o 「ん?」
( ´_ゝ`) 「着いてく。キュートがこれからやろうとしてることにも、協力する」
-
o川*゚ ,゚)o 「懐いてくれるのは、嬉しいんだけどね」
( ´_ゝ`) 「懐いてるんじゃなくてお前の魔法をもっと盗みたいんだよ」
o川*゚ー゚)o 「照れ屋さん」
( ´_ゝ`) 「……」
o川*゚ ,゚)o 「そもそも、貴方たちの目的は私と一緒に居ることじゃないでしょう」
( ´_ゝ`) 「強くなるために一緒に居ようとしてるだけだ」
o川*゚ ,゚)o 「私、明日からしばらく研究漬けよ。時々材料集めはするけど、それだけ」
( ´_ゝ`) 「……」
o川*゚ー゚)o 「……別に二度と会わないって言ってるわけじゃないのよ。あくまで貴方たちは貴方たちの道を行きなさいってだけ」
o川*゚ー゚)o 「きっと、私の傍に居るよりも、その方が強くなれるわ」
( ´_ゝ`) 「………………わかった」
o川*゚ー゚)o 「よし、いいこいいこしてあげよう」
( ;´_ゝ`) 「要らねーよ!」
o川*゚ 3゚)o 「あ、なんだったらちゅーがいい?ちゅー」
( ;´_ゝ`) 「だから、子ども扱いすんなって」
-
o川*゚ー゚)o 「ってかさー、前々から疑問だったんだけど、なんでそこまで強くなりたいの」
( ´_ゝ`) 「随分今更だな」
o川*゚ー゚)o 「男の子はそういうものだもの。ただ、理由は聞いたことなかったから」
( ´_ゝ`) 「…………妹がいるってのは言ったよな」
o川*゚ー゚)o 「うん」
( ´_ゝ`) 「ああ。妹はさ、俺たちよりもずっと才能があるんだよ」
o川*゚ー゚)o 「うん、それも聞いた」
( ´_ゝ`) 「俺たちなんて比にならない。それこそ兄弟の中でキュートに並べるとしたら、妹くらいだと思う」
o川*゚ー゚)o 「……へ〜〜…………そこまでなんだ」
( ´_ゝ`) 「ああ。確実に俺たちは追い抜かれる。でも、そんなのアニキとして恥ずかしいだろ」
o川*゚ー゚)o 「……」
( ´_ゝ`) 「親共は、妹に魔法と剣術を仕込んで、何かをやらせようとしてる。たぶん、危険なことだ」
o川*゚ー゚)o 「……」
( ´_ゝ`) 「その時に、守ってやれる力が欲しいんだ。そのためには普通に学んでたんじゃ身に付かないレベルの力がいる」
-
( ´_ゝ`) 「キュートと初めて会った、あの革命の時だって。もしキュートがいなかったら俺たちは負けてたし、死んでた」
( ´_ゝ`) 「何もできないのは嫌だ。だから弱いままではいたくない。それは、理由にならないかな」
o川*゚ー゚)o 「……なんだ、結局男の子な理由なのね」
( ´_ゝ`) 「わるかったな、ガキで」
o川*゚ー゚)o 「ま、ガキはガキだと思うけど」
そっぽを向いたアニジャの頭を、キュートが撫でる。
身長は既にアニジャの方が高い。
微笑む彼女の顔は、やや見上げる角度だ。
o川*゚ー゚)o 「いいんじゃない?わたし、そういうのは好きよ」
( ´_ゝ`) 「だから、子ども扱いすんなって」
o川*゚ー゚)o 「照れちゃってまあ、可愛いこと」
( ´_ゝ`) 「照れてねえよ」
o川*゚ー゚)o 「あれ、どこ行くの?」
( ´_ゝ`) 「小便」
o川*゚ ,゚)o 「あらやだ」
-
森の中に入り、適当なところで用を足していると、背後に物音がする。
一瞬警戒したが、相手が分かりすぐに解いた。
木の陰から姿を見せたのは、双子の弟のオトジャである。
どうにも不満げな顔でアニジャを睨んでいた。
(´<_` ) 「……アニジャ」
( ´_ゝ`) 「なんだよ、ションベン中だって」
(´<_` ) 「……魔女に傾倒しすぎだ」
( ´_ゝ`) 「……キュートの使う魔法は、生涯を賭してやっとたどり着くかどうかの物ばっかりだ。傾倒もするさ」
(´<_` ) 「……それは、そうだが」
( ´_ゝ`) 「それに、オトジャだってそう言いながら、キュートのこと、信頼はしてるだろ?」
(´<_` ) 「だから、問題なんだ。あの『魔女』を、無警戒に信頼している今が」
( ´_ゝ`) 「……どっちにしろ今日でおしまいなんだ。オトジャが気にすることじゃない」
(´<_` ) 「……」
( ´_ゝ`) 「ったくさ。オトジャは昔から考え過ぎなんだ。ほんとはキュートに甘えたいと顔に出てる」
(´<_` ) 「…………否定はしないがな」
-
森の中に入り、適当なところで用を足していると、背後に物音がする。
一瞬警戒したが、相手が分かりすぐに解いた。
木の陰から姿を見せたのは、双子の弟のオトジャである。
どうにも不満げな顔でアニジャを睨んでいた。
(´<_` ) 「……アニジャ」
( ´_ゝ`) 「なんだよ、ションベン中だって」
(´<_` ) 「……魔女に傾倒しすぎだ」
( ´_ゝ`) 「……キュートの使う魔法は、生涯を賭してやっとたどり着くかどうかの物ばっかりだ。傾倒もするさ」
(´<_` ) 「……それは、そうだが」
( ´_ゝ`) 「それに、オトジャだってそう言いながら、キュートのこと、信頼はしてるだろ?」
(´<_` ) 「だから、問題なんだ。あの『魔女』を、無警戒に信頼している今が」
( ´_ゝ`) 「……どっちにしろ今日でおしまいなんだ。オトジャが気にすることじゃない」
(´<_` ) 「……」
( ´_ゝ`) 「ったくさ。オトジャは昔から考え過ぎなんだ。ほんとはキュートに甘えたいと顔に出てる」
(´<_` ) 「…………否定はしないがな」
-
( ´_ゝ`) 「……しかし、明日からは二人か。どうするかねえ」
(´<_` ) 「行く先は決めているのか」
( ´_ゝ`) 「オトジャが決めていいよ。どこ行ったってやっていけるだろ、俺たちなら」
(´<_` ) 「……」
オトジャが何か言おうと口を開いた時、枝葉の揺れる音が聞こえた。
視線を音の方向に向けると、きゅーとがひょっこりと顔を出した。
o川*゚ー゚)o 「お、いたいた。二人とも、そろそろ寝ましょ」
( ´_ゝ`) 「ああ」
o川*゚ー゚)o 「あ、何なら三人で川の字でねよっか☆」
( ´_ゝ`) 「あのな……」
(´<_` ) 「……付き合ってられん」
o川*゚Д゚)o 「ちょーっ、ふたりともいけずー!!」
* * *
-
これからさらに四年後。
二人の名が傭兵として広まり、久方ぶりに故郷に帰る直前のこと。
サスガ兄弟の妹イモジャの前に、突如魔女が現れ、その力を振るった。
父も母も兄たちもいない中、姉を庇いながら善戦したイモジャではあったが、魔女には敵わず四肢を奪われる。
久しい帰郷の、その時に見た妹と姉の姿は。
兄弟たちが持っていた信頼を変貌させるに十分以上の光景だった。
そして、現代、旧ジュウシマツ砦前。
* * *
-
空には、鉛を溶かしたように鈍い色の雲が浮かんでいた。
見上げれば大きな雨粒が遠慮も無く頬を叩く。
その冷たさが、火照った体に心地いい。
o川*゚ー゚)o 「あなたたちが招いた雨を浴びるなんて、いつぶりかしら」
掌を目の前へ。
指を閉じて器の形を作る。
絶え間なく降り続く雨は、すぐさま水たまりになり、指の隙間から溢れ零れた。
滴り落ちる、大きな他の雨粒より大きな水の帯。
地面にぶつかり、飛沫が返る。
o川*゚ー゚)o 「もう、懐かしいくらいだわ」
掌を逆さに。
放たれた水の塊は瞬く間に地面を流れる川の一部になる。
o川*゚ー゚)o 「貴方たちはすぐに大きくなって、強くなって、それを傍で見ているのは、思いのほか楽しかった」
言葉に対する返事は無い。
落胆を隠すため、小さく笑む。
彼らはそう言えば、どんな理由であれ笑みを向けられるのが苦手だったなと、昔を懐かしむ。
o川*‐ ,‐)o 「……それじゃあ、おやすみなさい。可愛い、可愛い、坊やたち」
やはり答えは無い。
物言わぬ屍となった双子の身体は、雨を受け、血を流し、ただ静かに眠っているようであった。
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おわりんこ
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乙
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