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( ^ω^) 剣と魔法と大五郎のようです
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懐かしい夢を見た。
体も心もまだ幼くて、それでも、だからこそ幸せだった頃の記憶。
ξ゚⊿゚)ξ (……)
薄暗闇の中、天井に手を翳す。
思えば遠くに来た。
それは、物理的な距離ではなくて。
ξ゚⊿゚)ξ (……)
体のいたるところに出来た傷跡を、死んでしまった両親が見たらどう思うだろうか。
きっと怒るのだろう。そして、悲しむのだろう。
傷を作ったことでは無くて、傷を作るに至った理由を。
ξ゚ー゚)ξ (……ふふ)
いつもそうだった。
二人の心配を無視して怪我をして、母親の手痛い拳骨を貰ったものだ。
よくよく考えれば、きっとあの頃から成長なんてしていない。
ξ ⊿)ξ =3
脳裏にちらつくあらゆる感情を息と共に吐き出して、硬く目を閉じる。
迂闊にあの頃を思ったりしないように。
幸せな夢を、もう見てしまわないように。
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_,. -- - 、
/  ̄`Y´  ̄丶.
, ' -‐ ー_  ̄丶丶
///  ̄'´ ゙; ヽ
〃, ' / ,' ヽ. ミ!
| !. ,.' ノ ,ィ 、ヽ ゙. |
ト、|. ! / /! ,./ ヽlヽ、! | ィォ
| ノ!|_l/:::::::|/i!::::::リ::::::! l!汐
刈从!゙:::::::::::::::::::::::::::::::| /!介
,ミ人i!:::o:::::::::::::::::::::::::::::'!うトヽ、
ぐ'、 ヾ、 ' ,チ'´ ゞ,く
ソ _>: ..´__`...,.<__ `ヽ)
,r'i ̄| |::ゝヽ.。ノノ::::l |゙i ̄!ヽ
| ヽ.i| ヽ:`::TT:´:::,.' lリ !,.' }
l ヽ /! ヽ、:!:|::/ !V ,'
∧. ,' ヽ-‐t=fλー‐‐'' {. ∧
ヽ_;_! _,/ノ゙' i_/_ノ
ィァォ. ´ ´| |ェム
|::}... ;.. ....::i,'| * * *
|::i!:: .. !::.......:.:.:: ,!::l
|/.!.:.:. :.. ,'. ' ,'l::!
/| !.:.:.:.: / : .': |:| 剣と魔法と大五郎のようです
/.,' !:.:.: ,' : ,:. リ Second thread.
/ ; :l:. /.: : ,:. l゙、
_. -...::''´, ' .l:. |: ,:. . ,:. | ト、
,r' ..:.:.:::.: ノ. | ..:l /:. ,:.: ! ヽヽ * * *
, ' _,.. ' ! !,':. ,:. |:. ヽ ヽ
{ _ - ' , ' ! .:.|:. ,:. !:. 丶 ヽ
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支援
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( ^ω^) (ねぇねぇドッグ)
('A`) 『ん?』
( ^ω^) (サロンって、こんな物騒なトコだったっけ?)
( ゚'μ゚) 「でぇい!!」
その男は、武器も構えず棒立ちのブーンに対し剣を振り上げた。
隆々とした筋肉。
握られた剣は刃こぼれが多いものの、肉厚の刀身が破壊力の高さを伺わせる。
高い位置からの、力強い振り下ろし。
重さを感じさせ無い、風切る一撃である。
しかし、ブーンはこれを男の脇をすり抜ける形であっさりと回避した。
地面に打ち付けられた剣は激しい金属音をまき散らし、土を大きく抉る。
男は体勢を大きく崩すことなく、すぐさま剣を引き構えた。
重い武器を使うだけあって流石の足腰だ。
( ゚'μ゚) 「ぬぅっはぁーァッ!!!俺の一撃を躱すとはなかなかやるな貴様ァッ!!」
('A`) 『俺、こういう脳筋っぽいの嫌い』
( ^ω^) (ドッグの魔法の使い方も脳筋だと思うけど)
('A`) 『うるせえやい』
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男が再び剣を振り上げる。
単調な攻撃だが、この男のポテンシャルには非常に見合っていた。
圧倒的な破壊力と間合いの広さは、同時に反撃の困難さの証明。
理解しやすい一撃必殺は受ける側に必要以上の警戒心と恐怖心を抱かせる。
その上、男の筋力は攻撃の威力のみならず、武器の取り回しにも反映されていた。
攻撃後の隙が、思いのほか小さく、機敏。
反撃に対し反撃を合わせることも可能だろう。
これならば下手な小技を多用するよりも、一気に叩き潰した方が効率的だ。
純粋に強い力は、ちょっとした方向性を与えるだけで十分に武力足りうる。
( ゚'μ゚) 「ぶるぁあ!!」
しかし。
( ^ω^) 「―――杉浦双刀流、無刀の型」
それはあくまで、相手が同程度以下の武力しか持たない場合の話。
( ^ω^) 「『陽炎送り』」
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( ゚'μ゚) 「?!ッ」
大剣は一撃目と同様に地面を斬った。
違ったのは、ブーンがその刃を避けなかったということ。
( ゚'μ゚) 「素手で……ッ!?」
分厚い刃が頭を砕くその寸前、ブーンは空の右手を振るった。
男の剣に向けて、男の剣よりも速く、男の剣に添うように、流す。
交差し、刹那に満ちぬその時間に剣閃はブーンの体を大きく逸れる。
勢いづいた剣は男の制御を振り切り、より深く地面へ。
伝わる衝撃は掌を痺れさせる。
( ゚'μ゚) 「!」
驚愕し平静を失った男の目の前、ブーンは一気に間合いを詰めた。
男は反射的に後退。
しかし地面にしっかりと食い込んだ剣がその動作を妨げる。
打撃の破壊力を持ったまま、ブーンの左手が男の顔面を鷲掴みにした。
鼻の潰れる感触。
その流れを殺さず、左の踵で男の軸足を掬い上げる。
地面を離れる男の体。
ブーンは全身の力を籠めて、掴んだ男の頭を地面に叩き付けた。
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( ゙'μ゙) 「ッカァ!?」
男は目を剥き、唾液と鼻水を吹き出す。
受け身を取らない地面との衝突。
彼の脳みそが意識の支配から切り離されるのは、必然であった。
( ^ω^) 「さて」
男の戦闘不能と、とりあえず死亡していないことを確認し、ブーンは懐からスキットルを取り出す。
中身はもちろん大五郎(焼酎。不美味)。
キャップを片手で外し、大きく一口呷った。
('A`) 『何者だろうな、って、何となくわかるけどよ』
( ^ω^) 「たぶん、禁酒党かその類だと思うけれど」
男は、ブーンが大五郎を補充しているのを見て迷いなく勝負を挑んできた。
酒類根絶法がどうのこうのと本人すら理解していないような口上を述べていたので、禁酒党の同類で間違いないだろう。
( ^ω^) (僕らがちょっと外してるうちに、随分急変しちゃったみたいだおね)
(;'A`) 『……ああ。問答無用だったもんな』
サロンシティに戻ってまだ間もない内に襲われたことを考えると、各地でこれに似た事態が頻発している恐れがある。
現に以前の穏やかな雰囲気とは異なる、不穏な臭いが風に乗ってブーンの鼻に届いていた。
鉄錆に似た、血の臭い。
戦場には遠く及ばないが、平常では感じない程度の濃度がある。
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( ^ω^) (どうする、ドッグ?)
('A`) 『面倒だし、リッヒの家で荷物引き取ったら、さっさと出ていきたいところだが……』
( ^ω^) (一応、街中の様子だけ見てみるかお?)
('A`) 『そうだな。酷いようなら』
( ^ω^) (手を出す?)
(;'A`) 『その後の厄介を招かない程度にな』
基本的には、ブーンたちは酒類根絶法と大五郎の対決には首を突っ込まないようにしてきた。
他人の揉め事よりも優先するべき事柄が、彼らにはあるからだ。
一度手を出してしまえばその渦中に巻き込まれることになってしまう。
それは、望ましいことでは無い。
('A`) 『行くか』
( ^ω^) (あ、ちょっと待って)
馬車や家畜に轢かれて絶命するというあんまりな事態を避けるため、伸した男を道の端に寄せる。
地面に食い込んだ剣も引き抜いてその傍へ。
目覚めてすぐに振り回すことが出来ないよう、落ちていた家畜の糞を柄に塗っておいた。
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キター支援
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('A`) 『……ふーむ』
足早に訪れた市街地。
予想に反し戦闘が起きている場面は少ない。
ただし、その一歩手前はいくらでもある。
武器をちらつかせ、睨みあう大五郎と根絶法側の兵士。
中には口汚く罵り合う者もおり、緊張感のある空気が漂っていた。
長閑な農の街サロンの姿はどこへやら。
ブーンは筋骨隆々な男たちを見て、小さくため息を吐く。
有象無象の半端者ばかり出なく、中には相当の実力を感じさせる者もいた。
( ^ω^) (おーん、あの鉄腕甲の男、どっかで……)
('A`) 『しっかし、なんで支店から遠いこんな中心地に大五郎の兵士がいるんだ?多すぎだろ』
( ^ω^) (お?ああ、確かに)
疑問は路地を一つ曲がって、すぐに解消された。
二人はでかでかと『大五郎』の看板を掲げている店を発見する。
以前どんな所だったか記憶は少々虚ろだが、間違いなく大五郎の支店では無かったはずだ。
( ^ω^) (うーん、完全に禁酒委に喧嘩吹っ掛けてるおね)
大五郎酒造の販売する『大五郎』は比喩抜きでブーンたちの命の水である。
故にどちらかに加勢せねば収まらない状況に立ち会ったならば、大五郎側にすると決めていた。
しかし、これを見てしまうとその気持ちが揺らぐ。
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まるで、自ら諍いを起こすことを目的にしているようだ。
市街地に店を出せば、闘争が激化することは予想できたはずである。
それでも強行したということは、つまり街の治安よりも自社の利益を優先したということ。
('A`) 『ツンはいねえのかな』
( ^ω^) (臭いは少しするけど、沢山人がいる上、なんか別の臭いのせいで把握できないお)
(;'A`) 『あいつ、また変なのに絡まれて大怪我してないだろうな……)
( ^ω^) (ありそうで困る)
(;'A`) 『な』
( ^ω^) (なんていうか、危険を呼び寄せる才能みたいなのがあるおね)
(;'A`) 『半分は自分から首突っ込んでる気がするけどな』
( ^ω^) (油被って火事場に飛び込むタイプ)
(;'A`) 『せめて水にしてほしい』
周囲を見渡すが、知った顔は居ないようだった。
適当な相手に話を聞こうとも考えたが、全員が警戒心丸出しの顔でこちらを見ている。
ブーンが腰に剣を差していることを見抜いて、敵か否かを判断しようとしているのだ。
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( ^ω^) (どうしよ。あんまりうろついてるとまた襲われそう)
('A`) 『とりあえず、店に入ってみるか。酒も補充できるときにしときたいしな』
( ^ω^) (おっおー)
ブーンは再びスキットルを取り出し、一口呷った。
目の前で酒を飲むことで、「自分は敵でない」ということを手っ取り早くアピールしたのだ。
兵士達の警戒が少々弛んだところで、ブーンは店に入る。
両開きの木の扉。
金具が新しいようで、音も無くスムーズに開いた。
ξ゚⊿゚)ξ 「いらっしゃいま……」
入って一歩目。
入口に背を向けてテーブルを拭いていた少女が声をあげた。
目が合って、彼女とブーンは、動きを止める。
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( ^ω^) 「……」
ξ゚⊿゚)ξ 「……」
( ^ω^) 「……そんな格好もするんだおね」
ξ;゚⊿゚)ξ 「……うっさいわね」
テーブルを拭いていたのは、紛れも無く流れの傭兵、ツン=ディレートリ。
一目で彼女であると分からなかったのは、店に漂うアルコールの香りと、彼女の身に着けている衣服のせいであった。
( ^ω^) 「一瞬気付かなかったお」
ξ;゚⊿゚)ξ 「ええい五月蠅い。似合ってないのは自分が一番分かってるっての!」
( ^ω^) 「いやいや、似合ってる似合ってる。別に変では無いお」
ξ;゚⊿゚)ξ 「ぐむぬ……」
憮然とした顔のツン。
白いブラウスとロングのスカートを身に纏い、その上からエプロンをしている。
普段は高い位置できつく結われていた髪も、今は低い位置で、ゆるくまとめられているだけ。
少し見ただけでは、そこいらにいる町娘のようだった。
初対面であれば関係者の娘が手伝いに来ているような印象を受けただろう。
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(’e’) 「つんちゃ〜ん、お客さん?」
ξ゚⊿゚)ξ 「あ、えっと」
やや低い位置から、ツンの目がブーンを伺った。
小さく頷いて返す。
ξ゚⊿゚)ξ 「そうらしいです」
(’e’) 「いらっしゃいませ〜。ごゆっくりどうぞ〜」
補充用の大五郎を買って出てゆくつもりだったが、カウンター席に案内される。
ツンに聞きたいこともいくつかあったため、大人しく従っておいた。
店内に客は一人。
恰幅のいい農夫がソーダ割りを飲んでいる。
ξ゚⊿゚)ξ 「注文は?」
( ^ω^) 「とりあえず、ロックで。あと適当につまめるものを」
ξ゚⊿゚)ξ 「レモンかライム」
( ^ω^) 「どちらも無しで」
ξ゚⊿゚)ξ 「はいはーい。お客いなくて暇だからすぐに出せると思う。ね、ジョーンズさん」
(’e’) 「店員の言葉がストレートで辛い」
-
(’e’) 「はい、こちら焼酎のロックで〜す」
( ^ω^) 「おっおー」
言葉の通り、品はすぐに提供された。
店長、ジョーンズの手さばきに無駄が無く、一連の動作が流れるよう。
このがら空きの店がもったいない速さだ。
(’e’) 「こちら〜ナッツの盛り合わせです〜」
木の器に盛り付けられたナッツを、一つまみ。
塩気の利いたいい味だ。
口の中に残る香りと仄かな甘みを大五郎でつぅっと流す。
( *^ω^) 「ふ〜」
美味い。
体質上大五郎の補給は脱水時の水分補給に近い感覚があるが、こうして味わうのもまた良いものだ。
確かに質のいいものでは無く、酒としての個性は薄いがその分適応力が高い。
果汁で割って飲むのも良いだろう。
肴によっては、本来以上の奥深さを生み出すことは十分に可能だ。
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( *^ω^) 「ふぃ〜。五臓六腑に沁みるお〜」
ξ゚⊿゚)ξ 「相変わらず美味しそうに飲むよね」
( *´ω`) 「命の水だお〜」
ξ;゚⊿゚)ξ 「酔っ払いの戯言じゃないのが恐いところだわ」
( ^ω^) 「ツンも飲むかお?」
ξ゚⊿゚)ξ 「いい。仕事中だしそもそも飲めないし」
( ^ω^) 「おー、もったいないおー」
(’e’) 「怪我して無かったら、飲ませちゃうんだけどね〜」
口調だけ残念そうに、ジョーンズがカウンターにソーダ水を置いた。
そばにはレモンとガムシロップ。
(’e’) 「はい、ツンちゃんもきゅうけ〜い」
ξ゚⊿゚)ξ 「いいんですか?」
(’e’) 「せっかくお知り合いも来てるならゆっくりしなよ〜」
ξ゚⊿゚)ξ 「んー、じゃ、お言葉に甘えて」
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ツンがブーンの隣へ。
グラスのソーダにレモンを絞り、シロップを垂らしてマドラーでかき混ぜる。
柑橘の刺激的で爽やかな香りが鼻を抜けた。
( ^ω^) 「そういえば」
改めてのあいさつ代わりに、グラスの腹を軽くぶつけ合った。
殺風景な店の中にいつも通りの音色が響く。
( ^ω^) 「傭兵の仕事はお休みかお?」
ξ゚⊿゚)ξ 「……ちょっとね」
( ^ω^) 「血と薬の臭いがするけど」
ξ;゚⊿゚)ξ 「あんたの鼻、本当に怖いわ」
ツンがソーダを一口。
気泡が弾け、グラスから音と共に小さな水滴が途切れなく飛び上がっている。
ξ゚⊿゚)ξ 「ちょっとへまして、結構深い傷作っちゃったから、とりあえず予備人員として待機中」
( ^ω^) 「ああ、やっぱり……」
ξ゚⊿゚)ξ 「……自覚はしてるけど、不満だわその反応」
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( ^ω^) 「動いてて平気なのかお?」
ξ゚⊿゚)ξ 「ん?ああ、一応リッヒに塞いでもらったし。ほら」
ツンがブラウスの襟をはだけさせる。
隙間から見えた傷は、痛々しさこそまだ残しているもののしっかりと塞がれていた。
目を凝らせば、魔力の糸が上下の皮膚を行き来しているのがわかる。
ξ゚⊿゚)ξ 「痛みどめももらってるし、正直休む必要なんてないんだけど」
( ^ω^) 「もうちょっと、怪我しないように戦わないと」
ξ゚⊿゚)ξ 「それ、真っ向から言い返そうか?」
( ^ω^) 「おーん、返す言葉が無いお」
ξ゚⊿゚)ξ 「それに、未熟者が戦うんだから、怪我ぐらい当然でしょ」
( ^ω^) 「……リッヒには怒られなかったのかお?」
ξ。゚⊿゚)ξ 「めっちゃ怒られた。縫合麻酔なしだった」
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待ってたわ
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ξ゚⊿゚)ξ 「そう言えば、そっちはどうだったの?魔女を追って出てったって聞いてたけど」
( ^ω^) 「おー、魔女自体は、空振りだったお」
具体的にどんな状況だったかは口にしなかった。
酒を飲みながらするような話でも無い。
思い返すだけで鼻に蘇ってきた生臭さを、大五郎で流す。
ξ゚⊿゚)ξ 「それにしては、随分長居してきたのね」
( ^ω^) 「ちょっとね。ドッグの故郷で、色々」
ξ゚⊿゚)ξ 「ふーん。修行とか?」
( ^ω^) 「そんなところ」
( ^ω^) 「……と、」
グラスをカウンターに置く。
( ^ω^) 「今サロンってどうなってるんだお?来た途端に襲われたんだけど」
ξ;゚⊿゚)ξ 「え、マジ?」
( ^ω^) 「マジ。手に余るような相手ではなかったけど、ちょっとびっくりしたお」
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ξ゚⊿゚)ξ 「……うーんま、ここに店があることを考えれば、大まかには何が起こってるかわかると思うんだけど」
こういうことは苦手だ、と顔に出しながらツンもグラスを下した。
頭を指で掻き、しばし思案する様子を見せる。
ξ゚⊿゚)ξ 「……今、サロンには支店襲撃のために根絶法支持団体の主力級がいくつか集まってる」
( ^ω^) 「ほう」
ξ゚⊿゚)ξ 「禁酒党副頭領の一人、ニダー。山幻旅団フォックス。“サイボーグ”ヨコホリ」
ξ゚⊿゚)ξ 「この三人のそれぞれが、本来一つの都市を担当するだけの実力者なのね」
( ^ω^) 「……随分と力が入ってるんだおね」
ξ゚⊿゚)ξ 「でも、実際はそれほど激しい襲撃にはなって無いの」
( ^ω^) 「……ああ、なるほど」
ξ゚⊿゚)ξ 「ドクオ?」
( ^ω^) 「うん。つまり、名だたる将で大五郎の警戒を引き揚げさせて、消耗を狙ってるってことなんだおね」
ξ゚⊿゚)ξ 「そう。時々本気で潰しに来る部隊もいるから、ただの脅しじゃないのが厄介なところなわけ」
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ブーンの目はツンの胸元へ。
別にやましい気持ちとかでは無い。やましい気持ちを覚えるほどでもないし。
注目するのは、胸元を大きく裂いた傷の後。
確かにツンはまだ未熟な、もとい少々思慮の足りない部分はあるが、一人の戦士としては優秀な部類に入る。
それがこれだけの傷を作ったということから、相手の力量は推し量れた。
ξ゚⊿゚)ξ 「その上、禁酒委員会も目を光らせているから、大五郎側から討伐に打って出ることはできない」
( ^ω^) 「なるほど、キツイ状況なのはわかったお」
ξ゚⊿゚)ξ 「ほんと、こんな状態じゃなきゃ呑気にドリンクなんか啜ってないわよ」
(’e’) 「僕はツンちゃんと一緒に居られてうれしいよ〜」
ξ゚⊿゚)ξ 「私は外回りの方がうれしい」
(’e’) 「恋が一方通行で辛い」
ツンが残っていたドリンクを一気に飲み下した。
服装が女らしくなっても、男っぽさは衰えをしらない。
( ^ω^) 「そう言えば、なんでその恰好?」
ξ゚⊿゚)ξ 「治療の副作用で部屋に戻られなかったから、パートの人の服を借りたの」
(’e’) 「今の状態で一人で歩かせるのは怖いし〜、接客ならこっちの方が合うしね〜」
( ^ω^) 「なるほど」
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ξ゚⊿゚)ξ 「さて、休憩終わり!」
(’e’) 「もう少しゆっくりしててもいいのに〜」
ξ゚⊿゚)ξ 「大人しくしてるの性に合わなくて」
背伸びをするツンのエプロンの内側にナイフを見つけた。
何かしらの武器を仕込んでいるのだろう。よく見るとスカートにも歪な膨らみがあった。
靴もいつもの魔道具のブーツだ。
恐らくは、というか予測はできていたが、この娘全く安静にする気が無い。
油被って火事場に飛び込むどころか、火だるまになってから火事場に飛び込んでいくタイプである。
わかっていたけれどバカである。
( ^ω^) (……リッヒに会ったら労いの言葉をかけよう)
('A`) 『苦労のあまり泣いちゃうかもな』
ξ゚⊿゚)ξ 「……なによ」
( ^ω^) 「なんでも。傷は痛まないのかお?」
ξ゚⊿゚)ξ 「今は痛み止めが効いてるから、平気」
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支援
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>やましい気持ちを覚えるほどでもないし
さりげなくひでえ
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自分が使ったグラスを持ち、ツンが席を立つ。
カウンターの奥にある洗い場に引っ込んだ。
ブーンは自分のグラスに目を落とす。
話しながらも口をつけていたので、酒は大分減っていた。
このままもう一杯頼むか、足早に立ち去るか。
状況は何となく把握できたし、できれば早々に立ち去りたいところだが。
( ^ω^) (……)
('A`) 『もう少し残るか』
( ^ω^) (いいのかお?)
('A`) 『キュートの居場所にあてがあるわけじゃねえし、こんな状況じゃ、ツンだけじゃなくリッヒも心配だしな』
面倒事を避けるといいつつも、親交のある人間が危険にさらされるかもしれない状況を見過ごしてゆくわけにもいかない。
ツンもハインリッヒも、他人と言い切るには幾分世話になりすぎた。
せめて新たな魔女の手がかりを見つけるまでは、この街で荒事を収める役を買ってもいいのかもしれない。
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きたきたきたきた!!
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( ^ω^) 「さてっと」
ξ゚⊿゚)ξ 「行くの?」
( ^ω^) 「うんお。もう少しサロンには残ろうと思うけれど、とりあえずリッヒ探しにいくお」
ξ゚⊿゚)ξ 「あんたのことだから心配ないとは思うけれど、気を付けて」
( ^ω^) 「おっおー。服が変わると言うことも違うおね」
ξ;゚⊿゚)ξ 「うっさいわ」
懐を弄り金を収めた麻袋を取り出し中身を確認する。
ブーンとドクオ、二人分の所持金を合わせて持っていたが、流石に心元なくなってきていた。
手元にある分の他に、信頼に足る人物にいくらか預かってもらってるとはいえ、少々問題である。
食事や寝床は何とか狩りや野宿で凌げるにしても。問題は魔女に埋め込まれた呪縛、「大五郎」の確保。
こればかりは金が無くては何ともならない。
('A`) 『禁恨党のフリして荷馬車襲撃するか』
( ^ω^) (おーん。悪くは無いけど。それは最終手段で)
ξ゚⊿゚)ξ 「……どしたの?」
( ^ω^) 「ちょっと悪巧み」
ξ゚⊿゚)ξ 「……?」
* * *
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( ,,^Д^) 「ちょっとニョロ。大人しくしてくれにゃ」
サロンの市街地から外れた小高い丘の中腹。
大五郎の傭兵、タカラ=イッコモンは首に巻き付いた蛇と格闘しながら農道を歩いていた。
蛇は、イタチと合成され、全身に柔らかな体毛を生やしたキメラである。
本来はタカラのものでは無く、同僚の少女の相棒であるが、出歩けない彼女の代わりにタカラが世話を買って出ていた。
現在大五郎の新サロン支店で給仕の真似事をしている彼女が首に獣を撒くのは流石に問題があったのだ。
なつっこい性格なので世話に苦労は無いが、暇つぶしに耳を甘噛みされると本気で痛いのでやめてほしい。
( ,,^Д^) 「……お」
ニョロと格闘しながら歩を進めたどり着いたのは、治療魔法の使い手、ハインリッヒの家である。
ハインリッヒは庭に立ち、草臥れた白衣のポケットに手を入れたままタカラのことを待っていた。
从 ゚∀从 「……よう、悪いな、態々来てもらって」
( ,,^Д^) 「気にすんニャ。半分我が家みたいなもんだし」
从 ゚∀从 「冗談になって無いからな、それ」
ハインリッヒに招かれ、家の中へ。
家主本人とは異なり清潔に保たれた屋内は、ほんの少し薬品の臭いが漂う。
リビングを抜けてそのまま診療室へ向かった。
-
从 ゚∀从 「……さて、ここ数日の様子は、どうだった?」
( ,,^Д^) 「正味な話、調子自体はすこぶるいいニャ。不調を一切感じニャい」
从 ゚∀从 「……それは、よくねえな」
ため息と共に、ハインリッヒが自らの銀髪を掻き上げる。
白い肌の眉間に、深い皺が寄っていた。
从 ゚∀从 「……とりあえず、状態を見せてくれ」
( ,,^Д^) 「おう」
指示通りタカラは服を脱いだ。ニョロは傍の診察用ベッドに乗せる。
山村に生まれ、狩人として生き、傭兵となった彼の体は無駄なく引き締まっている。
歳と共に少々脂肪も乗ってきていたのだが、最近は激務続きで元の状態へ近づいていた。
从 ゚∀从 「……また、怪我をしたのか」
( ,,^Д^) 「まあ、荒事ばかりだからニャ」
体を見て、ハインリッヒはさらに顔をゆがめる。
タカラも自身に視線を落とすが、確かに気分のいい光景では無かった。
-
从 ゚∀从 「診るぞ」
ハインリッヒの手が淡く光る。
そのままタカラの肩に触れ、ハインリッヒは目を閉じた。
体の中に冷たい感触が広がってゆく。
今までと比べても、最も長い診察。
途中何度か呪文を呟き魔法を組み換えた。
ハインリッヒの額には汗が浮かび、かなりの負担がかかっていることを物語っている。
从 ゚∀从 「……終わったぞ」
( ,,^Д^) 「どうにゃ?」
从 ゚∀从 「……もう一度、聞くが、本当に不調は無いんだな?」
( ,,^Д^) 「まったく」
从 ゚∀从 「……わかった。状態はかなりよくない」
( ,,^Д^) 「……そうか」
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从 ゚∀从 「進行の速度に変化が無ければ、平穏に暮らすという条件付きで一年くらいはまあ、問題ないだろう」
( ,,^Д^) 「……」
从 ゚∀从 「あくまで、俺の治療を受け続けての話ではあるけどな」
( ,,^Д^) 「……そうか」
从 ゚∀从 「もしも、今までみたいに怪我をすりゃあ、倍以上の進行度になると思え」
( ,,^Д^) 「……」
从 ゚∀从 「あと、頭だけは本気で守れ。頭が無事なら、せめて人格は保てるはずだ」
( ,,^Д^) 「わかったニャ」
从 ゚∀从 「で、だ」
やや早口に言葉を終え、ハインリッヒが一息つく。
診察中の汗はそのまま。
心なしか呼吸を乱れている。
从 ゚∀从 「傭兵をやめるつもりはないのか」
-
( ,,^Д^) 「……難しいにゃあ。俺、弓を引くしか能ないから」
从 ゚∀从 「戦闘にかかわる場所にいれば、必然的に危険性は増す」
( ,,^Д^) 「……」
从 ゚∀从 「弓を置かないにしろ、せめて、残りの時間、家族の傍にいてやることはできないのか?」
( ,,^Д^) 「……」
从 ゚∀从 「大五郎がダメなら、VIPの知り合いに紹介する。傭兵よりは、安全な仕事のはずだ」
( ,,^Д^) 「……」
从 ゚∀从 「……家族を大事にしねえと、罰が当たるぞ」
( ,,^Д^) 「……そうだ、にゃあ」
从 ゚∀从 「……」
( ,,^Д^) 「……今の仕事が一段落したら、それもいいにゃ」
从 ‐∀从 =3
-
( ,,^Д^) 「じゃ、仕事の途中だし、帰るにゃ」
処置は、それほど時間を取らずに終了した。
もともとできることは少ないから、とハインリッヒは苦々しく呟く。
この男らしい反応だ。患者本人よりも、患者の体に気を遣っている。
从 ゚∀从 「……すまない」
( ,,^Д^) 「なにがだにゃ?」
从 ゚∀从 「毒の治療の時に、俺がもっと入念に診察していれば、対処のしようはあったかもしれない」
( ,,^Д^) 「……俺はあの時一回死んだようなもんだにゃ」
从 ゚∀从 「……」
( ,,^Д^) 「リッヒには、感謝しても恨むことなんかできねえにゃ」
从 ゚∀从 「……すまん」
ぱたりと、扉を閉める。
頭を掻いて、欠伸をひとつ。
外に出れたのがうれしいのか、ニョロが頭を遊ばせて周囲を見渡している。
( ,,^Д^) 「さて、帰るかにゃ」
呟いて再び欠伸をひとつ。
空気の割れるような爆発音が遠くから響いてきたのは、そのすぐ後だった。
* * *
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