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( ^ω^)マインドB!のようです
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私が ひとりぼっちにならないように
「羽生、どうした!?落ち着け!こ、こら……それを離すんだ!!」
「弟者!?……あんた、弟者……だよね?」
「ツン!どうした、しっかりしなさい!」
「ショボン……?ショボンなの……?」
-
( ´_ゝ`)「……ロマ先生も言ってたろ。犯人探しみたいな真似はするなって」
(´<_` )「そんなつもりは無いよ」
( ´_ゝ`)「弟者は何か心当たりでもあるのか?」
(´<_` )「……いいや。だけど」
_,
( ´_ゝ`)「……」
尚も何か言いたげな弟から顔を逸らし、兄者はせかせかと歩を進めた。
何か考え込んでいるのかむっつりと黙り込んで、不機嫌そうに見える。
(´<_` )「……兄者、今日のことは」
(´<_` )「兄者のせいじゃないよ」
-
ふっと、兄者の姿が消えた。
顔をあげて見てみれば、見慣れた石垣に『流石』の文字。
気づけば弟者は自分の家の前に立っていた。辺りは日が落ちてすっかり暗い。
いつの間にか、もう家に着いたのか。
ここまで歩いてきた筈の兄者は既に隣にはいなかった。何処にも。
家の前に着いても何も言わないまま、ドアを開けて母者の顔を見る前に
帰宅が遅くなったことの説明を弟者に託して、兄者は意識の奥深くの世界へ引っ込んでしまった。
(´<_` ) =3
そんな彼の様子を察して、弟者もこれ以上何か伝えようと努力するのを諦めた。
今の兄者は、他のことに意識を向ける余裕が無いほどに
目の前で病院に運ばれていった つーのことを気にしているようだった。
(´<_` )「……ただいまー」
―――翌日になって登校しても、ブーンは学校に来てはいなかった。
代理のフィレンクトによれば、つーはまだ病院にいると言う。
彼女の意識は戻ったのか、今どんな状態なのかもわからない。
その事が、兄者をますます無口にし、彼の心中を曇らせた。
誰とも口を聞く気にはなれなかった。デレとも、弟者でさえも。
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+ + + + + + + + + + + +
ミセ*゚ー゚)リ「ねーねー!トソっちー」
(゚、゚トソン「……なんですかミセリ」
机の下からぴょこんと顔を出し、意地悪い猫みたいにニタニタ笑うミセリ。
トソンはそんな親友の顔を怪訝そうに見返した。
自分でも、不貞腐れているのが分かっていた。
ミセ*゚ー゚)リ「へへへー。実はね?ちょーっとしたニュースがあるんだけどね?聞きたい??」
答えはNOだったが、どっちみちミセリが自分の返答など気にしないことは分かっていた。
(゚、゚トソン「つまらない話なら後にしてください。今そんな気分じゃないんです」
ミセ*゚ー゚)リ「まーまー聞いて聞いて!
あのねー?トソっちにはちょっとショッキングなニュースかもしれないんだけどー」
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ほらね。聞いてない。呆れるトソンの前で、ミセリはへらへらと笑った。
どうやらこの友人は、その”ちょっとしたニュース”とやらを
余程自分に聞かせたくてたまらないらしい。
ミセ*゚ー゚)リ「実はね。ここだけの話……」
口に手をあて、一拍置いて、今の時間空席になっている とある席をチラと見やる。
じろりと睨みつけるトソンの視線を無視して、”ちょっとした”という言葉とは裏腹に
まるで、今世紀最大の重大発表でもするかのように、浅く息を吸い込んでミセリは言った。
ミセ*゚ー゚)リ「……弟者君って、B組の津田さんと付き合ってるんだってー!」
.
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(゚、゚トソン「……」
ミセ*゚ー゚)リ「だってー……てー……テー……」←セルフエコー
(゚、゚トソン「……」
ミセ*゚ー゚)リ
(゚、゚トソン
ミセ*゚ー゚)リ
(゚、゚トソン「……」
(-、-トソン「……知ってますよ」
短くそう言ってトソンはそっぽを向いた。
-
ミセ*゚ー゚)リ「ありゃ?知ってたの??」
(-、-トソン「……」
予想に反してあまりに味気無いリアクションに、ミセリはきょとんとして首を傾げた。
それ以上何も言わないトソンを前にして、邪魔されないのを良いことに
彼女は楽しそうに話を続ける。
ミセ*゚ー゚)リ「この前の土曜日にね、シベリア駅で
こっそり待ち合わせしてるとこ見たって子がいるんだー。
2人とも私服に着替えて、仲良さそうだったってさ。確かな筋よ!」
(-、-トソン「……」
ミセ*゚ー゚)リ「うんうん。やっぱさー
同じマインドB持ちで、特別教室に通ってる者同士、気が合うんじゃないかな?
ほら、2人とも読書好きで、秀才タイプだし。お似合いだよね!」
わざとやっているのだろうが、やけに嬉しそうな態度に腹が立つ。
トソンは苛々とした溜め息を吐いた。わざわざ教えられなくても分かっている。
-
なにせ先日の放課後、廊下にて
2人で待ち合わせの約束をしているところを
運の悪いことに、ばっちり目撃してしまったのだから。
「じゃ、明日の放課後、公園でな」
「はいはい」
|゚、゚;トソン「……!」
ロッカーの影に身を隠し、弟者にもツンにも、誰にも気づかれないよう
一人その場から走り去り、泣きながら家へと帰った。
あんな光景見たくなかった。信じたくなかった。
その夜はあまりのショックに、家に帰ってからも涙で枕を濡らしたものだ。
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―――あれから、今日でもう4日経つ。
流石にもう落ち着いて、いつもの冷静な自分を取り戻したとはいえ
廊下で見た仲の良さそうな2人の姿は、日常のなかフと脳裏をよぎっては
ギトギトとした嫌な気持ちを呼び起させ、決して平常心でいさせてはくれないのだった。
ミセ*゚ー゚)リ「それからね!これも噂なんだけど、弟者君たら1年の子とも……」
そんな胸中を知ってか知らずか、今日のミセリはやたらに五月蠅い。
これがもし、見たくない現実を直視してしまった最悪のあの日だったなら
目の前で愉快そうに喋る頭の足りない友人の細い首を
鶏を屠るようにきゅっと絞めているところだったろう。
実際今だってそうしてやりたいくらいだ。この能天気なお喋りミセリめ。
ミセ*゚ー゚)リ「〜〜〜、〜〜〜」
(゚、゚トソン「……」
(゚、゚トソン(……でも)
(-、-トソン(考えてみたら、当たり前ですね)
-
流石弟者はかっこいい。
鼻のすっと通った整った顔をしていて、身長も高いし、真面目だし
それに、少々無愛想ではあるものの、誠実で優しいのだ。
読書が好きでいつも本を読んでいるのも、共通の趣味で好感が持てたし
もしも一緒に好きな本のことなど語り合えたなら、きっと楽しいだろうなと思った。
実際話をしたことなんてほぼ無いし、一方的な片思いでしか無いのだが
そういう話に無頓着でうぶなトソンにとって、人生で初めての初恋の相手だった。
この際、突発的に騒々しい別人になることは置いておいて。
トソンの中で、弟者はまさに理想のタイプであり憧れの存在だったのだ。
-
……だからこそ、自分にとって理想の男性像である彼に
既に恋人がいるという事実を知っても、ああ、やっぱりか。
と、どこかで納得してしまっている自分がいる。
それに、相手はあの津田ツンだというのだから。
地味な容姿の自分と違って、彼女は学年の中でもトップクラスで可愛い。
性格は少しきつめだが、それを差し置いても男子の間で人気があるし、頭も良いので有名だ。
(-、-トソン(……それに)
(-、-トソン(同じようにマインドBを持っていて、同じ特別クラスに通っていて……)
ミセリの言う通り、これ以上無いほどにお似合いでは無いか。
心のなかで、人知れず乾いた笑いが出た。
-
ミセ*゚ー゚)リ「……だからさ、トソっち」
(゚、゚トソン
ズブズブと、泥のような深い思想に1人はまっていくトソンを現実に引き戻し
ミセリはずいと顔を近づけ、強めの口調で言った。
ミセ*゚-゚)リ「―――これできっぱり、諦めなね?」
先程までのふざけた態度を急に止め、やけに強く念を押してくる。
最初に弟者の名前が出た時も、彼女は決して良い顔はしなかった。
彼女は彼女なりに、自分のことを気にかけているということなのだろう。
(゚、゚トソン「……」
ミセリの言いたいことは分かっているつもりだ。
恋は盲目という言葉も知っているし、私だって馬鹿じゃない。
―――だが
(゚、゚トソン(余計なお世話よ)
休憩時間が終わり、席を離れていく親友の背を見つめながら
心のなかで舌打ちをした。
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すいません、少し席外します
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うおおおおきてる!しえん
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待ってた!支援
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やたー!!きてたー!!
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キテタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!
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やっべぇ普通に大文字の送り火忘れてたわ
ちょっと見て来ました。今年も相変わらず「K」にしか見えませんでした。
再開します
-
(-、-;トソン「はあぁぁ〜」
体操着姿でのろのろと階段を登りながら、トソンは盛大に溜め息を吐いた。
今は3時間目。体育の時間で、皆別館へと移動しているのだが
何故彼女1人だけが本館に戻り、のろのろと教室を目指しているのかというと
トソンは今日、自分が鍵締め当番だったことをすっかり忘れてしまっていたのだった。
普段は絶対にこんなミスしないのに。
体育館に移動し授業がはじまって、しばらくしてからやっと
誰1人として教室の鍵を閉めていないという衝撃の事実に気づいたのだった。
おかげで本館までの長い渡り廊下を逆戻りし
1人鍵を閉めに来なければいけない破目になった。
この時間はA組、B組ともに体育で、A組は南館、B組はグラウンドで授業が行われている。
その為2年生の教室が並んでいる廊下は、C組とD組の教室から先生の声が聞こえる以外
比較的静かなものだった。
-
(-、-;トソン「なにやってんだろもう、超ダサ……」
まったくもう。先程の休憩時間にした、ミセリとの会話を思い出す。
彼女が急にあんな話をするものだから、あれからそのことばかり考えていて
鍵のことなどすっかり忘れ、ぼーっとしたまま教室を出てしまったのだ。
自分が間抜けだったことは重々承知の上だが
こうもツいていないことが続くと、ついつい他人のせいにもしたくなるというものだ。
階段を登りきる頃には、疲労に心労も相まって どっと歳をとったように感じた。
誰もいない、静まり返った廊下を1人歩く自分は傍から見ればさぞ情けない姿に違いない。
-
(-、-;トソン「さっさと締めてさっさと戻ろう……」
(゚、゚トソン「……ん?」
その時ふと、トソンは足を止めた。
自分達の教室の前に、誰か立っているのに気づいたからだ。
さらに……よくよく見てみれば
遠目に見えるその人物には見覚えがあった。
(゚、゚トソン「あ」
(゚、゚;トソン「あれって……」
-
―――10分程前―――
ζ(゚ー゚*ζ「……あれ」
階段を降りている途中、デレははたと立ち止まった。
ζ(゚ー゚*ζ「あれ?」
段差に立って視線をめぐらし、上を見て、下を見た。
もう一度ゆっくりと、同じように辺りを見まわす。何度見ても、どう見ても階段だ。
それは分かる。分かるのだが。でも、どうして自分は階段を降りているのだろうか……。
-
デレはぼんやりと記憶を辿った。今はツンの時間の筈だ。
だって、ついさっき特別クラスで交代したばかりだもの。それは覚えている。
いつもより時間がかかってしまったので、ツンは次の授業に遅れると言って焦っていた。
ζ(゚ー゚*ζ「………」
ツンはどこにいるのだろうと思い、探してみる。が、彼女はどこにもいなかった。
名前を呼んでも、いつもみたいに返事してくれない。
いつもなら、困った時はすぐ助けてくれるのに。
ζ(゚ー゚*ζ
ζ(゚ー゚;ζ
どうしよう。
迷子になってしまったのだと理解して、途端に心細さがデレを襲った。
-
迷子になった時は、できるだけその場を動かないで
ツンが出てくるまで待つように言われている。それが一番安全だからと。
だが、早くなんとかしないとツンは次の授業に遅れてしまう。
自分のせいで彼女に迷惑はかけたくなかった。早く2年生の教室へ行かないと。
とはいえ―――デレは今、自分が一体どの校舎の、何階の階段にいるのかも分からなかった。
ζ(゚ー゚;ζ
おちつけ、おちつけ。パニックを抑え、自分に言い聞かせる。
……ツンは当然、次の授業の為に自分の教室に向かっていた筈だ。
どうして途中でいなくなってしまったのか、それはわからないが、とにかく
ツンがこの階段を降りていたのだから、このまま降りるのが正解だと思われた。
降りた先が全然見当違いな場所だったらどうしよう。
先生に見つかって、サボってると思われて怒られたらどうしよう。
不安を抱えながらも、デレは前へと進むことにした。
-
ζ(゚ー゚*ζ「!2年……D組」
階段を降りた先で、最初に目についた教室の札を読み上げ
デレはほっと胸を撫でおろした。どうやらここが2年生の階で正解のようだ。
辺りは静かで、誰の姿も見えない。
授業はもう始まっているようだ。急がないと。
ζ(゚ー゚*ζ「えっと……ツンちゃんは、2年B組だよね」
アルファベットは既に学習済みだ。順番も覚えている。
ここがD組で、確か、ツンの学年のクラスはDまでしか無い筈だから
D、C、B、Aと辿っていけば良い。デレは頭の賢い子だった。
D組の教室を通りすぎ、次に、隣の教室にC組の札を見つけた。
長い廊下を歩きながら、教室では無さそうな鍵のかかったドアは幾つか無視して
2年B組の文字を探し、きょろきょろと辺りを見渡す。
後ろを振り向くと、廊下を挟んで向い側に教室が2つ並んでいた。
デレは小走りに近寄り、ガラス窓をそっと覗きこんだ。
-
ζ(゚ー゚*ζ「……あれ」
窓からは、机と椅子が沢山並んでいるのが見える。
生徒の物であろう、脱いだ制服や鞄や教科書が机の上に置かれていた。
だが、電気は消えていて薄暗く、生徒は1人もいないようだった。
頭上の札を確認してみると、2年B組と書かれている。
目指していたツンの教室だ。だが、何故誰もいないんだろう?
隣に並んだ教室へと駆け寄り、同じようにガラス窓に顔を近づける。
こちらも誰もいない。隣り合った教室は同じようにしぃんとしている。
試しに扉に手をかけてみると、ガラガラと音をたててあっけなく開いた。
とはいえ、誰もいないのでは中に入っても仕方が無い。
A組、B組の教室を前にしてデレは途方に暮れた。
-
ζ(゚ー゚;ζ「どうしよう……」
もう放課後のわけは無いし
きっとB組のみんなは他の場所で授業を受けているんだ。
そうあたりをつけるも、デレはツンの時間割など把握していなかった。
道がわからなくなったら、誰かに聞いて教えてもらいなさい。
優しいパパの言葉を思い出す。
何の授業で、何処にいるのか、誰かに聞けばわかるかもしれない。
だが、辺りを見渡しても誰もいないし、だからと言って
中で授業をしている最中のC組、D組の教室に入るのは流石に躊躇われた。
扉を引いた途端一斉にこちらへ向けられるであろう、40人あまりの視線を想像してぞっとする。
-
ζ(゚ー゚;ζ「……」
デレは考えた。
3階の特別クラスに戻って、モララーに助けてもらおうか。
でも、マインドBクラスでの授業が終わってから時間が経ってしまっているから
戻ってももう誰もいないかもしれない……。それに、今日はブーンも、ロマネスクもいない。
ζ(゚ぺ;ζ
先生もいないし、つーもいないし、その上ツンちゃんまでいなくなってしまった。
兄者は何も教えてくれないし、シャキンもぴりぴりしているし、みんな怒っているみたいで怖い。
どうしてかはわからないが、今日はなんだか嫌なことばかり起きる。
不意に泣きそうになって、デレはぎゅっと涙をこらえた。
パパのところに帰りたい。
-
支援支援
-
涙が出そうになったので、慌てて目元を擦り
どうしようか考えて、しばらく「2年B組」の文字を見つめた。
これからどうしたらいいのかわからない。誰でも良いから、誰かに助けてほしかった。
他に行く当ても無くて、A組とB組の教室前を行ったり来たりする。
ζ(゚ー゚;ζ(どうしよう、どうしよう……)
良い考えが浮かばない。早くしないと、ツンが……
ζ(゚ー゚*ζ「……あ!」
―――その時、不意に
遠くからこちらへ歩いてくる誰かの人影に気づいて、デレは声をあげた。
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その誰かは、ツンと同じくらいの歳の女の子だった。
制服ではなく体操服を着ている。
デレはすぐに、その女学生が履いている上履きのつま先のカラーが緑色なことに気づいた。
この学校で生徒が履いている上履きは、学年ごとにカラーが分かれている。
確か、1年生は赤、2年生は緑、3年生は紺色。
―――2年生は緑!
すると、こちらに歩いてくるあの女の子は2年生の筈だ。
A組かB組、どちらかの生徒かもしれない。
デレは顔を輝かせ、B組のみんなが何処へ行ったか聞こうと思い
ツンと同じ年の筈の、自分からしたら年上のお姉さんの元へ駆け寄った。
向こうも気づいたようだ。目を丸くしてこちらを見ている。
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(゚、゚;トソン
なんということだろう。今一番会いたくない相手に出くわしてしまった。
2年B組、津田ツン。無意識に、4日前の嫌な記憶が蘇る。
(゚、゚;トソン(なんで??)
今の時間、B組はグラウンドで体育の授業を受けている筈だ。
それが何故制服姿のままこんなところにいるのか。サボり?
ζ(^ー^*ζ
(゚、゚;トソン
いや、しかもなんでそんな嬉しそうな顔して小走りでこっち来んのよ。
トソンはツンとは直接の面識は無い。
クラスが同じになったことも無ければ、話したことさえ無い筈だ。
それなのに、彼女が笑顔でこちらへ駆け寄ってくる理由とは??
他に思い当たる節も無くて、トソンは嫌な予感がした。
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(゚、゚;トソン(ま、まさか……)
(゚、゚;トソン(……私の弟者君に色目使ってんじゃ……
……とかなんとか言われるんじゃ!?)
混乱して、あまりに突飛しすぎた考えに突っ走るトソン。そんな筋合いは無い。
たじろぎ、思わず後ずさるも、恋敵・津田ツンはもうトソンの目の前まで来ていた。
愛想の良い笑顔が怖い。一体……
ζ(゚ー゚*ζ ズイッ
(゚、゚;トソン「あ……」
ζ(゚ー゚*ζ
(゚、゚;トソン
ζ(^ー^*ζ「こんにちは!」
(゚、゚;トソン「、へ?」
―――やけに元気いっぱいの気持ち良い挨拶をされ、トソンは拍子抜けした。
-
ζ(゚ー゚;ζ「あっあっ、授業中だから静かにしなくちゃだね……」
目を丸くしてぽかんとするトソンの前で
慌てて、シィッと口元に指を当て目線をきょろきょろさせる津田ツン。
それから、歯を見せて へへとはにかんだ。
(゚、゚;トソン
―――なんだ、これ。
目の前の彼女は、トソンの知っているツンのイメージでは無かった。
知り合いでは無いが、彼女はなんていうか、もっとハキハキした性格だった筈だ。
勝手な印象だが、生徒会長とかやってそうな……そんな感じの。
男子に注意する時なんかも、結構きつい言い方してた気がする。
-
ζ(^ー^*ζ「えへへ……あらためまして、こんにちはっ」
秀才お嬢様(?)キャラってこんな癒し系天然要素も兼ね揃えてるものなの?
それともこれは演技なのだろうか。
自分を油断させる為か……もしくはぶりっこというやつか。
(゚、゚;トソン「……」
それにしても
ζ(゚ー゚*ζ
(゚、゚;トソン(くそう、やっぱり近くで見ると本当に可愛いな……)
自分より背が低く、小柄で、女の子として理想の背丈。
大きな瞳に長い睫毛、白い肌に、綺麗な金色の髪。
まるで西洋のお人形さんみたいだ。地味で目立たない自分とは大違い。
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世の中これくらい容姿が愛らしければ
多少のぶりっこは許されてしまうものなのかもしれない。
しかもその見た目に加えて、意外な二面性を持っていることも今明らかになった。
普段つんけんしているのが嘘みたいなこのぽわぽわぶり。どっちが演技かは知らないが。
男の人ってこういうの好きそうだもんなぁ。ギャップ萌えとか言ったっけ?
この容姿と性格で、彼のことも好きにさせたのだろうか……
そこまで考えて、トソンははっとした。―――心がざわつく。
心臓の中で大量の虫がぞわぞわ蠢いているような、すごく嫌な感じがした。
胸がむかむかする。
―――こんな子嫌いよ。大っ嫌い。
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(゚、゚トソン、「な……なんですか」
ζ(゚ー゚*ζ「あ!あのねあのね、ちょっと聞きたいことがあって」
(゚、゚;トソン「はぁ……」
そんなトソンの胸中も知らず、津田ツンはにこにこと質問を投げかけてくる。
(゚、゚;トソン(調子狂うなぁ)
ζ(゚ー゚*ζ「えっと……おねーさんって、高校2年生?」
(゚、゚トソン「?そうですけど?」
“お姉さん”という物言いが少しひっかかったが、つっこまない事にした。
例え面識が無くとも、上履きのカラーを見れば同じ2年生だと分かるだろうに。
彼女なりの冗談か何かのつもりなのだろうか。トソンは少し苛立ちを覚えながら答えた。
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ζ(゚ー゚*ζ「そっか!よかったぁ。
あ……あたしも!高校2年生、なんだけどねっ。
2年B組なんだけど……。その、教室にもどって来たのに、誰もいなくって」
(゚、゚トソン「それは……そうですよ。今は、A組もB組も体育の時間ですから」
ζ(゚ー゚*ζ「!そうなんだ!えっと、B組は今、どこで体育の授業をしてるの?」
(゚、゚トソン「?わからないんですか?」
ζ(゚ー゚;ζ「あ、あの、その……忘れちゃったの」
もじもじと俯き、目線を泳がせるツン。本当に困っているようだ。
(゚、゚トソン「いつもと同じ場所ですよ」
ζ(゚ー゚;ζ「……ど、どこだった……かなぁ?」
(゚、゚トソン
-
頭の回転が早いトソンは徐々に勘付いてきた。
明らかに、目の前の彼女はさっきから、様子も言動もおかしい。
いつものハキハキしたツンとは違う、あどけない喋り方。
子供のようなトーンの高い声に、口調、それに幼い仕草。
改めて見てみても、演技やぶりっこしているようには思えない。
まるで本当に、5,6歳くらいの幼い女の子を相手しているようだ。
幼い女の子……。
トソンはハッとした。
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(同じようにマインドBを持っていて、同じ特別クラスに通っていて……)
そうだ。ツンは特別クラスに通っている。
彼女のマインドBがどんな人物なのかは聞いたことが無いが、きっと性格も記憶も違う筈だ。
本人とマインドBとで性格が異なることは、いつも弟者を見ていたので知っていた。
ζ(゚ー゚*ζ
もしかして―――目の前のこの子は、ツンではなくて
(゚、゚トソン(……津田ツンのマインドB……!?)
-
ζ(゚ー゚;ζ「おねーさん?」
(゚、゚トソン
……もしこの子が本当にツンのマインドBで、うんと小さい女の子だったなら。
さっきから自分のことを”お姉さん”と呼ぶのにも頷けた。
時間割のことや、体育の授業の場所がわからないのも納得できる。
トソンは確信した。
(゚、゚トソン「……」
―――この子は津田ツンじゃない。別の”誰か”なんだ―――
.
-
ζ(゚ー゚;ζ「そ、それでね!早くしないとツンちゃんが……、じゃないや
あの、あたし、授業におくれちゃうの。だから、場所を教えてほしいんだ」
ζ(゚ー゚;ζ「け、ど……」
(゚、゚トソン「……」
ζ(゚ー゚;ζ「?」
急に黙ってしまったトソンに疑問を抱き、顔を覗きこむデレ。
ζ(゚ー゚;ζ
……どうしよう、もしかしたらこのお姉さんも迷子なのかもしれない。
自分と同じように、行くべき場所がわからないのだろうか。それで、困っているのだろうか。
迷子が2人。どうしたらいいんだろう。
なんで、何も言ってくれないんだろう……。
やっと希望の光が見えたと思ったのに、またもデレの心は不安でいっぱいになった。
一度我慢した涙が目尻に熱を持たせ、堪らず泣いてしまいそうになる。
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ζ(゚-゚;ζ「……おねーさ……」
心細さに耐えきれず、もう一度声をかけようとしたその時。
トソンは顔をあげ、心配そうに自分を見つめるデレに視線を合わせた。
ζ(゚-゚;ζ
(゚、゚トソン「……ええ、わかりました」
(^、^トソン「私が連れて行ってあげますよ」
僅かに潤んだ金色の瞳をまっすぐに見つめて
トソンは愛想良く ニコリと微笑んだ。
-
16話投下以上です。支援等ありがとうございました!
次回の投下予定日は未定です。
なるべくさくっと書きあげて早めにあげれたらいいなぁ……
今年の百物語ももう終わってしまいますね。
やはり大好きなイベントです。来年も楽しみ!
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乙!
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きてた!!乙
-
不穏だな...
乙!
-
最後のトソンの笑顔不穏すぎるんだが!?
つーもデレちゃんも心配だ……乙乙!
-
不安要素が多くてドキドキするな
面白かった!乙!
-
乙です!しぃとつーも最後のトソンもどうなるんだろう……
色々な問題が渦巻いてきて続きがめちゃくちゃ気になる!
-
乙
トソンは普通にいい子でしたコースであってほしいけど
不穏な方向に転がるコースもそれはそれで見たいような
-
トソンが道を踏み外さないことを祈る
-
弟者は何か勘付いたのかな?
てか勘違いやでトソン…
-
(゚、゚トソン「ところでツンさん。こんな話を知っていますか?」
ζ(゚ー゚*ζ「!」
不意に呼びかけられて、デレはぱっと顔をあげた。
前を行くトソンは相変わらずこちらの顔を見ようともせず、スタスタと歩を進めていく。
「私が連れて行ってあげますよ」
そう、体育の授業が行われている体育館まで案内してもらう約束をして
あれから2人で本館を出た後、学校の敷地内を歩いている間もずっと
何か考え込んでいるのか固く表情を結び、黙りを決め込んでいたトソン。
こちらからあまり余計なことを喋って、高校生では無いとバレてしまっては困るし
とはいえずっと黙ったままなのも気まずくて、どうしたらいいか困っていたところ
しばらくぶりに彼女の方から口を利いてくれたので、デレは嬉しかった。
-
ζ(゚ー゚*ζ「どんな話?」
(゚、゚トソン「……この学校の裏庭に、戦前からの建物で
今もなお取り壊されていない古い体育館がありますよね?」
ζ(゚ー゚*ζ「……?そうなの?」
(゚、゚トソン「ええ。この学校が設立された時からある建物で
終戦後、他の校舎が次々新しいものに建て替えられていく中
今も現存しているのはあの体育館だけなんだそうですよ」
ζ(゚ー゚*ζ「……そうなんだ!すごいね」
デレには、トソンが何故今急にそんな話を持ち出したのかは分からなかったし
『戦前から』という言葉がどれくらい前のことを指しているのかもいまいちピンとこなかったが
とにかく、その体育館とやらがすごーく古いということだけは分かった。
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(゚、゚トソン「どうして今もその体育館だけが取り壊されず
ひっそりと残されているのか、その理由はご存知ですか?」
ζ(゚ー゚*ζ「へ?……もったいないから?」
(゚、゚トソン「違います。実は、ある噂があるからなんですよ」
ζ(゚ー゚*ζ「どんな?」
(゚、゚トソン「それはですね……」
そこでふと言葉を区切り一拍置くと、トソンは立ち止まってデレの方へと振り向いた。
同じく足を止めたデレに向け、彼女なりに精一杯怖い顔を作り声を落として言う。
-
(゚皿゚トソン「……出るんですよ……」
ζ(゚ー゚*ζ「……?なにが?」
(゚皿゚トソン「幽霊が、です」
ζ(゚ー゚*ζ「……」
(゚皿゚トソン
ζ(゚ー゚*ζ
ζ(゚o゚*ζ
ぽかん。
デレはトソンの顔を見た。
-
ζ(゚o゚*ζ「おばけさんが??」
(゚、゚トソン「オバケさんなんて可愛いものじゃないですよ」
(゚、゚トソン「噂によるとあの体育館、
戦争中は地元民の避難場所として指定されていたそうなんです」
ζ(゚o゚*ζ「?」
(゚、゚トソン「けれどある日、爆撃された際に火が燃え移って
あの場所で人が何人も焼け死んだそうですよ」
ζ(゚o゚*ζ「?火事があったの?」
(゚、゚トソン「ええ。その証拠に
中にはあちこち燃えた痕があり、床も天井も焼け焦げてボロボロで
扉の内側には、閉じ込められ火と煙に追い詰められた人々が
もがき苦しみながら滅茶苦茶に引っ掻いた、爪の痕が生々しく残されているとか……」
ζ(゚o゚;ζ「……そうなんだ……。閉じ込められちゃったの?かわいそうだね」
-
気分はどこぞの淳二とばかり、おどろおどろしい雰囲気を醸し出し話を続けるトソン。
(゚、゚トソン「ですから、あの場所には今も亡くなった人達の霊が閉じ込められていて
誰もいない筈の体育館から時折、中から助けを求める苦しそうな呻き声や
女の人の泣き声や、大勢の人の逃げ惑う音が聞こえてくるんです、って……」
ζ(゚o゚;ζ「えぇっ、すごい!不思議だね」
(゚、゚トソン「……ゾッとしませんか?そんな声が聞こえてきたら」
ζ(゚ー゚;ζ「うーん……もう燃えてないよって、教えてあげたらいいんじゃないかな?」
(゚、゚;トソン「いや、相手は幽霊ですよ。話が通じる筈ないでしょう」
ζ(゚ー゚;ζ「そうなの?おばけ語とかあるの?」
(゚、゚;トソン「ねーよ!!あっ、いや、多分……」
思わずキャラを忘れかけ、咳払いで誤魔化すトソン。
-
(゚、゚;トソン(……なんだかなぁ)
トソンは肩透かしを食らったような気分だった。
いまいち期待していた反応と違う。
朗読はするのも聞くのも好きだし、語りには一応の自信があった。
だが、あれだけ気合を込めて迫真の怖い話を聞かせたというのに
目の前の少女は全然怖がっている風には見えない。
話にはノッてきているが、なんというか、食いつくポイントがややズレているような。
_, 、_
(-、-;トソン「……うーん……」
ζ(゚ー゚*ζ「?」
小さい子には少し難しい話だったかもしれない。
それとも、元々この手の話には耐性があるのだろうか?
-
(゚、゚;トソン「と……とにかくそれで!
取り壊すと祟られるとか、学校に災いが及ぶとかで
誰も使用しないにも関わらず、今も残っているって噂ですよ」
ζ(゚ー゚*ζ「そうなんだ!おねーさん物知りだね!」
(゚、゚;トソン「この学校では有名な話ですよ……。あ」
渡り廊下の東側に面したグラウンドに居る生徒達に見られないよう
広い学校の背面をグルッと回り、青い狗尾草がボウボウに生えた裏道を通り抜けた先で
トソンは立ち止まり、その巨大な建物を見上げた。隣に立つデレもそれに倣う。
ζ(゚ー゚*ζ「?」
(゚、゚トソン「……そ、それで!これがその」
若干芝居がかった動きで、おもむろに手をそちらへ向けるトソン。
(゚、゚トソン「……幽霊が出るっていう、噂の古い体育館なんですが……」
-
―――2人の目の前には、いかにも年季の入った丸屋根の建物が聳え立っていた。
辺りはひっそりと静まり返り、人がいた形跡も、誰かがいる気配も無い。
周囲は雑草が茂り、薄汚れた壁は所々罅割れて、割れている窓も幾つか見える。
まだ日の高い昼前にも関わらず、その建物全体からは
いかにも何か出そうな薄気味悪い雰囲気が醸し出されていた。
ζ(゚o゚*ζ「うわぁ」
(゚、゚トソン「ほら、なんだか怖いでしょ?」
ζ(゚o゚*ζ「ほんとだ。古いねー」
体育館を見上げ、しげしげと眺めるデレ。
VIP高にこんな建物があるなんて知らなかった。帰ったらパパにも教えてあげよう。
-
(゚、゚トソン「……」
(゚、゚トソン「……えっと」
(゚、゚トソン「それでですね……」
数秒の間を置いて、トソンはぼそりと言った。
(゚、゚トソン「―――2年B組は、今日はここで体育です」
ζ(゚ー゚*ζ「え?」
-
びっくりして、デレは隣に立つトソンの顔を見た。
ζ(゚ー゚;ζ「え、だって、今は誰も使ってないんじゃ」
(゚、゚;トソン「きょ、今日は特別ですよ。
せっかくの体育館ですし、使わないと勿体無いですからね!」
ζ(゚ー゚;ζ「でも火事でボロボロって……」
(゚、゚;トソン「大丈夫ですよ。最近修復したんですよ……多分」
喋りながら、トソンは自分でも無理があるなと思った。
先程の話と矛盾しまくっているし、口を開く度にボロが出ていく感覚がする。
もちろん今も中に人のいるような気配や音などしないし
建物と周りの状態を見れば、もうずっと誰も使用していないのは明らかだ。
ここで今も授業が行われているだなんて、いくら小さい子でもおかしいと気づく。
再度体育館を見上げ目を丸くするデレから、トソンはそそくさと距離を置いた。
-
―――別に、元々大した考えがある訳では無かった。
ただ、弟者とツンとのことでひどく傷つけられた仕返しに
ちょっとした意地悪をして、怖がらせてやろうと思っただけなのだ。
この子が津田ツンじゃないのならば
後に学校で彼女と顔を会わせても、自分の仕業だとバレる心配は無いし。
なにより、憎き恋敵と同じ顔をして、何も知らないこの子供は
トソンにとって、個人的な仕返しをするのに丁度都合の良い相手だった。
ただそれだけだ。
そこで偶然フと思い浮かんだのが、この古い体育館にまつわる例の怪談話。
小さい子なら、幽霊の話もころっと信じて簡単に怖がらせることができると思った。
……のだが。
ζ(゚ー゚*ζ
(゚、゚;トソン
でも今、話を聞かせても目の前の女の子は平然とした顔をしているし
さっきまで雰囲気たっぷりにつまらない噂話を真剣に語り、嘘を吐いて
それを必死に誤魔化そうとしている自分が、トソンはなんだか馬鹿らしく思えてきた。
-
(-、-;トソン「……じゃ、じゃあ。
A組は別のところで体育なので……私はこれで」
それによくよく考えてみれば、呑気にこんなことをしている場合ではない。
早く授業に戻らなければ流石にそろそろ怪しまれるだろう。
強面の体育教師に睨まれるのは御免だった。
授業時間中に油を売って、こんなことをしている今の状況が急激に恥ずかしくなってきて
誰かに見つかる前に、トソンはさっさとこの場を離れることにした。
……まぁ、少なくともこれで津田ツンは次の授業に大幅に遅れることになったのだし。
彼女へのちょっとした報復としてはもうそれで充分だ。
これ以上厄介なことになる前に、こんな所に長居は無用と トソンは踵を返した。
ζ(゚ー゚*ζ「あ、うん!教えてくれてありがとう、おねーさん!」
(゚、゚;トソン「どういたしまして」
ζ(^ー^*ζノシ「じゃあ、またね!バイバーイ!」
(゚、゚;トソン「……」
トソンの姿が見えなくなるまで、デレはずっと手を振っていた。
-
―――1人その場に残されたデレは、再び体育館を見上げた。
だが扉にはもちろん鍵が掛かっているので中に入ることは出来ない。
元来た道を引き返すしか無いのだが、この裏庭には他に人がいる建物も無いし
それに、わざと分かり難いルートを通って来たから、あの子は当分迷うことになるだろう。
(゚、゚トソン「……」
卑怯なやり方だと自覚してはいるが、自分にはこんなつまらない逆襲が似合っている。
そう納得し、しばらくデレが入り口を探してウロウロするのを
トソンはこっそり茂みに隠れ遠くから見届けるつもりでいた。
-
ヽζ(゚ー゚*ζ
そうとは知らないデレが扉に手をかける。
そしてすぐに、封鎖されていることに気づいて困惑の表情を浮かべる
―――筈だった。
ヽζ(゚ー゚*ζ ギィッ
Σ(゚、゚;トソン(え!?)
少し押されただけの扉は、錆びた金具を軋ませながら簡単に開いてしまった。
(゚、゚;トソン(っな……)
(゚、゚;トソン(なんで開いてんの??)
-
実は、扉に備え付けられた錠は錆びて脆くなっており
以前に生徒の誰かが肝試しに訪れた際、こっそり壊していたのだった。
何も知らないデレが中へと足を踏み入れる。
少しだけ開かれた扉。暗闇に物怖じもせず、歩を進めていく少女の後姿。
混乱したまま、その光景を目で追うトソン。
そしてその時、フと―――
――――鍵の他に、扉に備え付けられた古い閂が目に入った。
錆びているが、見たところ壊れてはいないように見える。
(゚、゚;トソン
トソンは何故か、そこから目が離せなくなった。
-
暗い。
ζ(゚ー゚;ζ「……誰もいない……」
デレは扉を開けて体育館の中へ入り、埃の積もる床にトンと足をつけた。
が、当然そこで体育の授業など行われている訳は無い。しんと静まり返っている。
トソンの話では、中は焼け痕で半壊しているということだったが
天井や床には所々小さな穴が空いているものの、見渡す限り特に酷く損傷している箇所も無く
埃が積もり蜘蛛の巣が張り巡らされている以外は、思いの他綺麗な状態が保たれていた。
窓から差しこむ光で細かな埃が漂っているのが見える。
デレは目の前のステップを降りようと段差に足を踏み出した。
-
ζ(゚ー゚;ζ「うーん……」
ζ(゚ー゚;ζ「おねーさん、間違えちゃったのかな」
首を傾げ、独り呟きながら階段を降りようとした、その時
ギ……ガシャンッ
後ろから、唸るような重い金属音が響いた。
はっとしてデレは振り向く。
ζ(゚ー゚;ζ「え?」
少しだけ開けておいた筈の扉が、閉ざされていた。
-
デレは驚き、振り向いた姿勢のまま数秒扉を見つめていたが
じきに視線を前へ戻すと、足を一歩踏み出して段差を降りた。
トントントン。早く降りて、次の授業に向かわないと。
次の授業……
ξ;゚⊿゚)ξ「遅れちゃ……」
ξ;゚⊿゚)ξ
ξ゚⊿゚)ξ
ξ゚⊿゚)ξ「へっ?」
“ツン”は、階段を降りて教室のある2階の廊下へと到着したつもりが
やけに広く、薄暗い空間が目の前に広がっていたので驚いた。
-
ξ゚⊿゚)ξ
ξ゚⊿゚)ξ「どこ此処」
ぽつり、素直な感想を呟く。
この場所に見覚えは無かったし
どうして自分がこんな場所にいるのかも、皆目見当がつかなかった。
自分は夢でも見ているのだろうか。呆然として辺りを見渡す。
確か、体育が行われているグラウンドに向かっていた筈なのに。
暗く、吹き溜まった薄寒い空気が体を通りすぎる。
所々穴の空いた床や天井。埃っぽくて少し黴臭い。
一歩踏み出すと、板張りの床がギィと軋んだ。
-
ξ゚⊿゚)ξ「……??」
どうにも上手く回らない頭を働かせ、ツンは考える。
何もかもわからないことだらけだが、まず此処は何処なのか
ぐるりと辺りを見渡して思考を巡らせた。
―――遥か頭上にある天井に、柱の無い広い空間。
向こう端の、そこだけ高くなっているところはステージだろうか。
木材でできた床によく目を凝らすと、ほとんど擦れてはいるものの
微かにコートラインらしき線が引かれているのも見えた。
その他、ガランとしてほとんど何も置かれてはいないが、この建物はまるで
ξ゚⊿゚)ξ「……」
ξ゚⊿゚)ξ「体育館?」
-
でも、こんな古そうな体育館が新築の南館内にある筈は無いし
校門近くの第一体育館でも無い。ここの学校施設は大体が比較的新しくて綺麗なものだ。
―――だが、此処がVIP高校の体育館だとすれば、あと一つ……
あと一つ。ツンには思い当たる節があった。
ξ゚⊿゚)ξ「……え゙」
ξ゚⊿゚)ξ
ξ゚⊿゚)ξ「まさか」
全身の動きが止まる。
ξ゚⊿゚)ξ「……こ……ここって……」
ξ゚⊿゚)ξ
ξ゚⊿゚)ξ
ξ|li゚⊿゚)ξ サーッ
-
ミセ*゚ー゚)リ「ねぇねぇなお君!ちょっといいかな?」
2年A組の授業が行われている南館三階。
体育館隅の一角にて、ミセリはこそこそと同チームのなおるよを手招きした。
('(゚∀゚*∩「!!な、なんだよミセリちゃん!?」
名簿順で振り分けられ、コート外の壁沿いにて自分達の順番を待つ暇な時間。
別グループ同士のバレー試合が終わるのを熱心に観戦しながら待っていたなおるよは
今回たまたま同じグループとなったミセリからの、予想外のお声掛けにドキリとして飛びあがった。
ミセ*゚ー゚)リ「あ、声抑えて抑えて!内緒の話だから」ヒソヒソ
きょろきょろと周囲に視線を巡らし、口に手を当て声を潜めるミセリ。
('(゚∀゚*∩「な、内緒!?」
ミセ*゚ー゚)リ「うん。あのね、ちょっと聞きたいことがあるんだけどね……」
そう言ってミセリは、意味深なワードに一層胸を高鳴らすなおるよの目を覗きこんだ。
('(゚∀゚*∩(ミセリちゃん可愛いよ……)
-
ミセ*゚ー゚)リ「なお君ってさ、弟者君と仲良いじゃん?」
('(゚∀゚*∩「!だよ!」
ミセ*゚ー゚)リ「弟者君のこと色々知ってるよね?」
('(゚∀゚*∩「うん!」
ミセ*゚ー゚)リ「それでね、ズバリ聞きたいんだけど……」
ちらと、今はジョルジュと共にコートに出て試合中の弟者の姿を見やる。
ミセ*゚ー゚)リ「……弟者君が、B組の津田さんと付き合ってるってほんと?」
('(゚∀゚∩「……えっ!弟者が、つ……津田さんと??」
ミセ*゚ー゚)リ「うん。2人がシベリア駅で一緒にいるとこ見たって友達が言っててね」
ミセ*゚ー゚)リ「本当なのかなー?って」
なおるよは、ミセリから突拍子も無く予想外の質問をされ
なんのことか分からない様子で、しばらく頭に疑問符を浮かべていた。
が、やがて閃いたように「あ!」と大きな声をあげた。
どうやら声を控えめにひそひそ話を続けることは彼には難しいらしい。
-
トソン……もうだめだな
-
('(゚∀゚∩「あー!違うよ!
多分それ、妹者ちゃんと公園に遊びに行くところだったんだよ!」
ミセ*゚ー゚)リ「え、妹者ちゃん?って、えーと……弟者君の妹だっけ?小学生の」
('(゚∀゚∩「そうそう!津田さんと妹者ちゃんは仲良しで、よく一緒に公園で遊んでるんだよ!」
ミセ;゚ー゚)リ「えっ、津田さんが??その、ちっちゃい子と一緒に公園で遊ぶの?」
('(゚∀゚∩「そうだよ!弟者はその付き添いだよ!」
ミセ;゚ー゚)リ「へ、へー。意外。津田さんって結構子供好きなんだ……」
('(゚∀゚∩「うん!そ……、あ」
('(゚∀゚∩
ミセ*゚ー゚)リ「?」
-
('(゚∀゚∩
('(゚∀゚|li∩(これ、人に言っちゃいけない話だったよ!!!)
自分はなんて口の軽いお調子者の馬鹿なんだと後悔したが、時既に遅し。
彼は弟者から、ツンのマインドBであるデレが妹者と仲が良くて
週に一度シベリア駅近くの公園に出かけ遊んでいることは聞かされていたが
ツンが、自分が公園で遊んでいることを人に知られるのを嫌がる為
固く口止めされていたことを思い出した。
言ってしまったことが知れたら、ツンからも弟者からも怒られる。
いやそれ以前に、軽々しく約束を破るなんて男として最低だ。なおるよは青褪めた。
-
('(゚∀゚|li∩「……」
ミセ*゚ー゚)リ「なお君?」
('(゚∀゚;∩「ひゃっ、ひゃい」
ミセ*゚ー゚)リ「あれ……もしかして今の、秘密の話だった?」
('(゚〜゚;∩「う、うん……だよ」
ミセ*゚ー゚)リ「あー、そうなんだ」
('(´〜`;∩「……僕、約束破っちゃったよ……」
ミセ*^ー^)リ「大丈夫大丈夫、、内緒の話だから」
('(゚〜゚;∩「ミ……ミセリちゃん、誰にも言わないでくれるかよ?」
ミセ*゚ー゚)リ「うん!私言わないよ」
('(゚〜゚;∩「ほんとに?」
ミセ*゚ー゚)リ「ぜーったい言わない!約束」
('(゚∀゚∩
('(゚∀゚*∩ パアァ
ミセ*゚ー゚)リ(まぁ、どっちにしろトソっちに教えるつもりは無いしね)
-
Σ('(゚∀゚;∩ ハッ
('(゚∀゚;∩「で……ででもなんでミセリちゃん、急にそんなこと聞くんだよ?
も、もしかして!もしかしてミセリちゃん、弟者のこと……!?」
ミセ;゚ー゚)リノシ「ん?あっ違う違う!そんなんじゃないよ」
ミセ*゚ー゚)リ「ただね、私の友達で1人、弟者君のこと気になってる子がいるから
その子の代わりにこっそり調べてあげてるんだー」
('(゚∀゚∩「友達?」
ミセ*゚ー゚)リ「そ。それだけだから、あんまり気にしないで。
私がこのこと聞いたってことも、秘密だよ?」
('(゚∀゚∩「わ……わかったよ!」
ミセ*^ー^)リ「ふふっ、ありがとねなお君。
秘密の話教えてくれて。助かっちゃった!」
('(゚∀゚*∩「……どっ」
('(゚∀゚*∩「どーいたしましてだよー!」
-
ミセ*^ー^)リ +:゚('(゚∀゚*∩。+゚*
_
(;゚∀゚)「お、おいあれ見ろ弟者……。なおの奴が女子と話しして浮かれてる!」
(´<_` )「ほんとだ。あれ垣花か?珍しいな、何の話してるんだろ」
_
( ゚∀゚)「さぁなぁ……。でも、あのなおのデレ顔見ろよ。
すっかり舞い上がりやがってくれちゃって、憎いね青春だねぇ」
(´<_` )「え、なに?なおって垣花のこと好きなの?」
_
( ゚∀゚)「いやいや見てたら分かるだろー?教室でもさぁ、反応わかりやすすぎだってw」
(´<_` )「へぇ、そうなんだ。どうりで嬉しそうなわけだな。
良かったじゃん、なお」
_
(;゚∀゚)「……お前ってさー、その顔してるくせにそういう話マジで鈍いよなぁ。
安心通り越してその余裕ある感が逆に腹立たしいぜ。あと流石に心配になってくる」
(´<_`;)「顔とそれがどう関係あるんだよ」
('(゚∀゚*∩(なんて良い子なんだよミセリちゃん……!)
ミセ;゚ー゚)リ(……にしても、トソっち遅いなぁ??)
-
(゚、゚|liトソン「はぁっ、はぁっ」
―――息を切らし、トソンは走っていた。
自然と震えが込み上げてくる手を強く握りしめる。
(゚、゚|liトソン(どうしよう)
―――こういうのを、”魔が差す”と言うのだろうか。
デレが体育館の中へ入っていくのを見届けた、あの後
トソンは気づかれないよう扉に近寄り、閂を閉めて施錠してしまった。
気づいたら錆びついた閂棒に手をかけていて
ガチャンと扉を閉めてから、すぐに怖くなって逃げ出したのだ。
-
(゚、゚|liトソン(どうしようどうしようどうしよう……閉めちゃった……)
そんなつもりじゃなかったのに。だって、鍵が開いてるなんて知らなかった。
別にそんな、酷い目に遭わせてやろうなんて思わなかった。閉じ込めたりなんて。
ただ、あの子があんまりにも怖がらないで、ケロッとしているものだから
ただもうちょっとだけ、もう少しだけ怖がらせてやりたくなったのだ。
そう。ただもうちょっと、ほんの、少しだけ―――
あの子も自分と同じように、誰かに裏切られて、嫌な気持ちを味わえばいい。
自分と同じくらい、心を傷つけられれば良いんだと、そう思ってしまったのだ。
今更戻って扉を開けたりしたら、自分がやったということがバレてしまう。
もう取り返しはつかない。今はとにかくこの場所から離れたかった。
-
(゚、゚;トソン(……で、でも)
(゚、゚;トソン(そのうち誰か気づくよね?)
―――大丈夫、大事にはならない。ならない筈だ。
そのうち、用務員さんか、先生か誰かがきっと気づく。
鍵が開いてたのが悪いんだ。あの子が疑いもせず、中に入ったのが悪いんだ。
トソンは必死で自分に言い聞かせた。
私は悪くない。大したことではないと。
未だ手に残る、錆びついてザラザラした厭らしい鉄の感覚を無理矢理揉み消した。
自分がしでかした悪行に怯え、その場を逃げ去る彼女の耳に
廃れた体育館を反響する絶望の叫びが届くことは無かった。
-
17話以上です
wordでは割と可愛かったデレのぽかん顔が大分アレなことになってて焦りました
次話は上手くいけば日曜日に
-
乙
-
おつおつ!
ツンどうなるんだ……
嫉妬すると自分でも信じられない行動とかする事とかあるんだろうな
トソンもだけど、ミセリもなんか気になる
-
乙
次話はすぐだなんて嬉しいこと言ってくれるじゃない
-
乙
デレにもツンにも大ダメージの予感
-
乙!しぃつーの次はツンとデレちゃんが……!!
-
トソンの目的が、ツンに嫌な思いをさせることだったなら
充分すぎる程にその目的は果たされたようである。
ξ|li;Д;)ξ「φ○×※;?▲〜〜〜!!!?!?」
トソンが急いでその場を離れ、授業が行われている南館へ戻ろうとしている頃
閉じ込められたツンは完全にパニックになって、開かない扉を無茶苦茶に叩いていた。
もし今この付近を、体育館の例の噂話を知っている人物が通りがかったなら
あまりに鬼気迫るその叫び声を聞いて、死者達の魂が中で大暴れしているものと思い
青褪めて立ち所に逃げ出していたに違いない。
―――だが残念ながら、ツンにとってはまったく運の悪いことに
授業が行われている今この時間帯、寂れた裏庭の片隅を通るような誰かは
生徒も教師も、用務員でさえ誰も存在しなかった。
-
ξ|li;⊿;)ξ「いやあああああ!!なんで開かないの!!?」
―――ツンにはわけがわからなかった。
マインドBクラスでの授業が終わって、デレと交代して。
でも時計を見ると、授業終了から既に15分あまりが経過していて
次の科目は体育だから、授業が行われているグラウンドまで
教室の鍵を貰いに行かなきゃいけなくて……
それで急いでいた筈なのに、何故今こんな場所にいるのか。
どうして扉が開かないのか。
-
そして何故―――よりにもよって”此処”なのか。
さっきから必死に頭の隅へと追いやって、考えないようにしていても
呪われた古い体育館に纏わるおどろおどろしい噂話が次々と脳内再生されて
実はかなりの怖がりである彼女をますます恐慌状態へと追い立てていた。
気のせいか、背後にゾワゾワとした嫌な気配を感じる。
誰かが怨めしそうにこちらを見ているような気がする。
火に炙られ苦しみながら死んでいった、大勢の亡霊が。
……今、ツンが必死になって叩いている扉には
噂で聞いたような、死に際の爪痕等は見当たらないようだったが。
半狂乱のツンにはそれどころでは無かった。
むしろその風説を今、形にして再現してしまいそうな勢いだ。
-
ξ|li;⊿;)ξ「誰かー!!」
声の限り叫び、いくら叩こうと固い扉はビクともしない。
ξ|li;⊿;)ξ「!そっ……そそっそうだっ携帯……!」
ξ|li;⊿;)ξ「……は、教室の鍵付きロッカーに入れてたんだったああああうあああぁあぁあん」
誰かに助けを求める術も無い。
自分の力ではどうにもならないことが分かって
ついに、彼女はへなへなとその場に崩れ落ちた。
途方に暮れた子供のように蹲り、自らの肩を抱いてしゃくりあげる。
ξ;⊿;)ξ「ぅ……うっ……ぐすっ……なんで……」
-
―――子供の頃からずっと、霊とかお化けとか、そういうのはとにかく駄目だった。
ツンは暗闇が怖かった。
台所の隅の暗がりや、押入れの奥。トイレの扉を開けた先。
誰もいない筈の闇の中に、何かが潜んでいるような気がして
一度意識してしまうと、どうしても怖くてたまらなくなる。
お母さんはいない。お父さんはお仕事。1人ぼっちのお留守番。
ξ;⊿;)ξ「怖いよぉ……!お父さぁん……!」
1人にしないで。1人に……
広い体育館に、少女のすすり泣く声が虚しく響いた。
-
来たー!続き気になってたんだ支援!
-
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
―――――――――――――――――――――――――――――――― ―
――――――――――――――――――――――― ― - - -
――――――――――――――― ― - - -
――――― ― ― - - -
「こわくなんかないよ」
――――― ― ― - - -
――――――――――――――― ― - - -
――――――――――――――――――――――― ― - - -
―――――――――――――――――――――――――――――――― ―
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
-
懐かしい声を聞いた。
小さい頃お友達だった、女の子の声だ。
寂しい時1人で泣いていると、いつの間にか傍にいて
いつも一緒に遊んでくれた女の子。名前も知らない女の子。
「大丈夫、パパが帰ってくるまで一緒にいてあげる」
そうして2人で沢山遊んだ。お人形遊びや、おままごとなんかを。
どこから来たのかも、どこに住んでいるのかも分からない。
あんなに仲が良かったのに、何故だか名前も、顔も思い出せないが
ただひとつ、いつも笑顔でとても勇気があったのを覚えてる。
-
「おばけさんなんかこわくないよ。
ツンちゃんをこわがらせたら、わたしが めってしてあげる」
そう言って女の子は優しく微笑んだ。
――――ママが死んでしまって、ひとりぼっちで、いつも泣いていた私の傍にいてくれた。
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