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('A`) いつでも風は吹くようです
1
:
名も無きAAのようです
:2012/03/31(土) 23:59:46 ID:aVwhgCt20
いつだって、誰だって、
遠い過去へ置き去りにしてきたものがある筈だ。
埃をかぶったまま、くすぶり続けている思い。
時々取り出してもすぐに仕舞い込んでしまう気持ち。
今か今かと待っている、始まりの瞬間。
飛び出す時は――
('A`) いつでも風は吹くようです
36
:
名も無きAAのようです
:2012/04/01(日) 00:48:08 ID:5DwzsHQ60
('A`)「今のところは……」
J( 'ー`)し「本当は迷ってるんじゃないの? 優柔不断なところだけ似てる」
母さんが、話しながらテーブルに座る。
( ゚д゚ )「ん? 誰にだ?」
J( 'ー`)し「あなたに。『お腹が気になるからジムに通おうか』って言ってから、
1ヶ月は経ってると思うけど。
近所のデミタスさんなんて、オリンピック目指してるのに」
( ゚д゚ )「それはだな……」
言葉に詰まっている父さんを尻目に、俺は黙々とカレーライスを食べる。
('A`)「ごちそうさまでした」
37
:
名も無きAAのようです
:2012/04/01(日) 00:49:25 ID:5DwzsHQ60
いつもより早く食べ終えて、自分の部屋に戻った。
外はもう真っ暗。僅かに肌寒さを感じて、赤外線ヒーターの電源を入れる。
こんなことなら、まだこたつを片づけなくても良かったな。
寒くても悴む程じゃないから、手は普段通りに動く。
デミタスさんとの会話を思い出して、部屋の隅にある真っ白な箪笥を開けた。
ギイ、と軋む音。
奥の方に見える、黒い布の袋。
いつもなら、取り出そうと手を伸ばした所で躊躇する。
心に引っ掛かった不安を拭い切れなくて、
掴む事が出来ずに、手を引っ込めてしまう。
38
:
名も無きAAのようです
:2012/04/01(日) 00:51:09 ID:5DwzsHQ60
何度繰り返しただろう、何度「やろう」と思っただろう。
もう、やめにしよう。
意を決して黒い袋を掴み、開けて中身を取り出す。
綺麗な新品のシューズともう一つ、
クシャクシャに丸まった紙が、袋から出てきた。
懐かしい痛みが湧き上がるのを堪えながら、紙を広げる。
('A`)「――」
中学時代の、あの時の入部届け。
シワだらけでよれよれになってても、なんとか字は読める。
39
:
名も無きAAのようです
:2012/04/01(日) 00:53:04 ID:5DwzsHQ60
入部届けには、名前・希望する部活・希望する理由を記入する欄が、
それぞれ設けられていた。
その中の、希望する理由に書かれている事。
『走る事が好きだから』。
一番シンプルで、純粋で、力強い思い。
あの時にはまだ無かった、強固な心。
これをしっかりと持っていれば、どんなに笑われたってやっていける。
転んでも挫けそうになってもまた這い上がれる、
そんな確信に満ちた直感が、体中に溢れてきた。
('A`)「やってやる」
40
:
名も無きAAのようです
:2012/04/01(日) 00:54:47 ID:5DwzsHQ60
この日だけは、夜が過ぎるのをいつもより短く感じた。
すんなりと眠る事ができて、翌日も気持ち良く目覚められた。
朝食も終え、小休憩。
お茶を飲んでいると、母さんが洗い物をしながら話しかけてきた。
J( 'ー`)し「そうそう、今日ゴミを出してたらね。
公園の桜が咲いてたよ。まだ満開じゃないけどね。
もうすっかり春ねぇ」
('A`)「へぇ、いつもより早いんじゃない? ここら辺じゃ」
いつもなら四月になってから咲く筈なのに、珍しい事もあるものだ。
最近、暖かかった所為だろう。
('A`)「じゃ、いってきます」
J( 'ー`)し「いってらっしゃい」
41
:
名も無きAAのようです
:2012/04/01(日) 00:56:32 ID:5DwzsHQ60
玄関を出て、大きく深呼吸。
外は昨日のようなぽかぽか陽気で、冬の名残はどこにも感じられない。
いつもと同じ道を通り、まっすぐに河川敷へ向かう。
('A`)「ん。んん!?」
河川敷に着いて準備体操――しようとして、足元にある「何か」に気が付いた。
ネズミの死骸だ。
小さい、茶色いネズミが、ぴくりとも動かずに横たわっている。
まさか。まさか、あいつがやったのか。
辺りを見回す。
土手の上、小さくなっていくギコの後姿を発見した。
('A`)「ほー」
42
:
名も無きAAのようです
:2012/04/01(日) 00:59:49 ID:5DwzsHQ60
もう老いていくだけかと思ったのに、年をとっても充分やれるみたいだ。
6年前の事を思い出して、思わずにやける。
俺もやってみるよ。自分が出来る所まで、全身全霊を傾けて 。
('A`)「さーて」
短距離走は久し振りだ。
入念に準備運動をし、きちんと体をほぐして、しゃがみ込む。
気持ちを落ち着かせてから前傾姿勢になる。
すると、生暖かい風が吹いた。
後ろから前へと、勢いよく吹きぬける風。
追い風だ。
それを逃さないように、しっかりと足を踏みしめて、
43
:
名も無きAAのようです
:2012/04/01(日) 01:00:42 ID:5DwzsHQ60
('A`)「!」
走り出す。迷いも不安もかき消して、全力で前へ飛び出す。
風の中でのスタートダッシュは、今までで最高に気持ち良かった。
('A`) いつでも風は吹くようです おわり
44
:
名も無きAAのようです
:2012/04/01(日) 01:02:25 ID:5DwzsHQ60
うおお
すごく短かったけど、読んでくれた人ありがとう。
感想など頂けたら嬉しいです。次に活かしたいので。
45
:
名も無きAAのようです
:2012/04/01(日) 01:03:21 ID:dpVsaLwY0
面白かったけど消化不良だなぁ
もう少し書いて欲しかった
46
:
名も無きAAのようです
:2012/04/01(日) 01:19:56 ID:62YPiB.60
恋愛ものでは無かったか
しかし面白かった、乙
47
:
名も無きAAのようです
:2012/04/01(日) 01:26:31 ID:U0/9WlFUO
これから先の高校で記録を伸ばしていくとことか
( ^ω^)、(´・ω・`)とかの絡みまでよみたかった
短編じゃ終わらなくなるけど
48
:
名も無きAAのようです
:2012/04/01(日) 14:02:16 ID:MbuMJ6TMC
続きが読みたくなるような話だった
乙
49
:
名も無きAAのようです
:2012/04/02(月) 11:38:46 ID:fH8RK0pMO
乙
一瞬の風になれ 的なさわやかさ
続きを期待
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