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('A`)ドクオと飛竜と時々オトモのようです
1
:
名も無きAAのようです
:2011/12/18(日) 00:08:51 ID:88pYr5WMO
小説板から引っ越してきました。蕎麦は後程ご馳走します。
前スレ
http://jbbs.m.livedoor.jp/b/i.cgi/sports/37256/1300286882/1-
250
:
名も無きAAのようです
:2011/12/20(火) 20:13:43 ID:7u/py5xM0
いや、やっぱり厳しいですね。なんとか今日中に幕間だけでも投下したい。
251
:
名も無きAAのようです
:2011/12/20(火) 21:22:02 ID:82Hd2GfsO
こんなとこで追い付くとは!!
いっそ明日まで気付きたくなかった!!
252
:
名も無きAAのようです
:2011/12/20(火) 22:15:17 ID:iTj6KoA6O
ブーンがHR2でデッドリボルバーって(笑)
253
:
◆.WtyGIaY4.
:2011/12/20(火) 23:24:56 ID:3OkAeC82O
やっと時間出来た。【幕間】だけ投下。
254
:
名も無きAAのようです
:2011/12/20(火) 23:26:01 ID:sYkkHA.20
待ってたよ
255
:
幕間
:2011/12/20(火) 23:26:10 ID:3OkAeC82O
デレ、ツン、ブーンが無許可で山に登った。その報は、すぐにギルドマスターであるアラマキの元へ届いていた。
言うまでもなく、ドクオ達を手伝いに行ったのだろう。
ギルドに届け出をせずに、狩場に入るなど、本来ならば絶対に許される事ではない。すぐにでも連れ帰らねばならない。
だが、アラマキは今回の事をどう処理しようか迷っていた。
規律を乱す訳にはいかない。分かってはいるのだが、それを決断出来ずにいるのは
ミセ*^ー^)リ「………」
アラマキの目の前で真っ黒なプレッシャーを放つ、ミセリの存在があるからだ。
256
:
名も無きAAのようです
:2011/12/20(火) 23:26:52 ID:3OkAeC82O
/;,' 3「……じゃから、勝手にあの三人は行ってしまったんじゃろ?」
ミセ*^ー^)リ「い い え。私が不注意で許可を出してしまいました」
三人が山に入ったと聞いたミセリは、疲れていた身体に鞭を打ち、全力で偽装工作を行った。
一昨日は騎士達の独断専行、昨日はツンの【迅竜】ナルガクルガの討伐。今日のユクモ初となるG級の認定。
異例、特例となる処理を、ミセリは一人でこなし続けた。
この三日間、一睡もしていない。彼女の本来であればパッチリと可愛い目の下にも、真っ黒い隈が出来ている。
ミセ*^ー^)リ「……」
/ ,' 3(どうしよ、儂。マジ怖ぇよ……)
257
:
名も無きAAのようです
:2011/12/20(火) 23:27:55 ID:3OkAeC82O
勿論一部始終を見ていた狩人達には、ミセリが三人を庇っている事など百も承知だ。
だが、このギルドに伝わる不文律。
―――受付嬢は絶対に怒らせるな
その杭が、彼らを動かせずにいた。
258
:
名も無きAAのようです
:2011/12/20(火) 23:28:34 ID:3OkAeC82O
それもそのはず、以前ミセリに年齢を尋ねた者が居た。二十歳そこそこの中堅狩人だった。
自分の想い人が、ミセリに見惚れているのを見て、少し意地悪を言いたくなったらしい。
ミセ*^ー^)リ「なーいっしょ♪」
次の日、その狩人は狩りに出た。ハチミツ採集という、小銭を稼ぐのには丁度良いクエストだった。
採集用に装甲の薄い、動きやすい格好で孤島に渡った彼女が見たものは、森を食らうほど大きな【尾鎚竜】ドボルベルクの姿だった。
これは堪らない、と全力で逃げ帰ってきた狩人は、文句の一つでも言ってやろうと、クエストを手配したミセリの元へ詰め寄った。
ミセ*^ー^)リ「あれれぇー、私ったら言い忘れちゃってたわぁ!ごめーんねっ★」
狩人全員が引いた。
259
:
名も無きAAのようです
:2011/12/20(火) 23:29:23 ID:3OkAeC82O
しかも質が悪いのは、ミセリはドボルベルクの討伐も既に手回ししていたのだ。万が一、ハチミツを採りに入った狩人がドボルベルクと遭遇しない様に。
確かにギルドマスターは絶対的存在だ。しかし狩人にとっては、自分達の命を指先だけで左右するミセリの方が恐かった。
ミセ*^ー^)リ「みんなー!皆も“ちゃんと”見てたわよね?」
全力で首を縦に振る狩人。
もうこれはお手上げ、と溜め息を吐くアラマキ。
/ ,' 3「ふぅ。では今回だけは罰則を与えないでおくぞぃ。ただ、危険なのは確かじゃ。すぐに連れ戻すよう何人か送る。それでええか?」
ミセ*゚ー゚)リ「えぇ。私が間違えて了承の判を押しちゃったのが悪いんです」
/ ,' 3「よく言うわ」
ミセ*^ー^)リ「こんな簡単なミスをしてしまうくらい、私を酷使したギルドが悪いんです」
/;,' 3「ほんとうに、よく言うのぉ……」
260
:
名も無きAAのようです
:2011/12/20(火) 23:30:17 ID:3OkAeC82O
しかしこれにて一件落着。すぐに追っ手を差し向ければ、三人が山を登る前に捕まえられるだろう。
しかし事態は、そう上手く転ばない。
ここで更なる混乱を生み出す人物が表れたのだ。
乱暴に開かれたギルドの扉。明らかに明確な敵愾心が籠もっていた。
( ^Д^)「………」
人を馬鹿にした様な目、騎士の証であるマントを身につけた男。
プギャーであった。
261
:
名も無きAAのようです
:2011/12/20(火) 23:30:54 ID:3OkAeC82O
ユクモの狩人達の反応は早かった。己の得物を抜き、構え、プギャーを取り囲む様にして立ち塞がる。
( ^Д^)「……はぁ。相変わらず狩人って奴は野蛮ですね。丸腰で入ってきた男一人に、そんな殺気立たないで下さいよ」
そんな狩人達など、目に入らないという様に、プギャーは真っ直ぐアラマキへと近づいていく。
( ^Д^)「そちらも、勝手に突っ走った馬鹿が出たそうじゃないですか」
/ ,' 3「ふぉふぉ、なんの事かのぉ」
周りの狩人達は、プギャーが現れた理由を理解出来ないでいた。何故このタイミングで騎士である奴がギルドにまで、わざわざやって来たのか。
( ^Д^)「先程、フォックス様とキュート様からの命を受けました。我々騎士が、山に入った三人の捜索を行います」
262
:
名も無きAAのようです
:2011/12/20(火) 23:31:36 ID:3OkAeC82O
ギルドが揺れた。あの頭の堅い騎士派が、狩人の捜索を行うというのだ。こんな事、今まで一度も無かった。
( ^Д^)「狩人の方々は結構。私達が全力を以て三人を救いだします。それを皆様に伝えに来たのです」
静まり返ったギルド。そこから拍手が波紋の様に広がっていく。
( ^Д^)「……よろしいでしょうね、ギルドマスター」
/ ,' 3「……勝手にせい」
その言葉に、プギャーの口が厭らしく釣り上がった。
( ><)「プギャーさん!三人をお願いします!!」
差し出された手を、悟られない様に無視し
( ^Д^)「……えぇ、任せて下さい」
プギャーは小さく言った。
『汚ねぇ手で触れんじゃねぇよ、獣臭ェ……』
263
:
名も無きAAのようです
:2011/12/20(火) 23:32:18 ID:3OkAeC82O
―――
――
―
( ^Д^)「……」
「プギャーさん、見事な演技でしたね」
264
:
名も無きAAのようです
:2011/12/20(火) 23:33:08 ID:3OkAeC82O
ギルドの外に出るなり、駆け寄ってきた若い騎士。
( Д )「ククッ……ヒハッハハハハハ!!!!!!!」
突如、プギャーは笑だす。腹を抱え、顔を歪めて、彼は心の底から笑った。
m9( ^Д^ )「見たかよwwwwアイツらの顔をwwww何が『三人をお願いします』だwwwwwwww助ける気なんて最初からねーよwwwwプギャーwwwwwwww」
「しかし、これからどうするんですか?我々も山に……入りますか?」
プギャーは、不安そうな騎士を、うざったそうに見た。
( ^Д^)「当たり前だろ。俺達も入るぞ。馬鹿三人は、見つけたら殺せ。少しでも、狩人派の戦力を割けとの命令だからな」
「でもっ!我々だけでは……うっ!?」
反論しようとした男の胸ぐらを掴み、ドスを利かせた声で言う。
265
:
名も無きAAのようです
:2011/12/20(火) 23:33:53 ID:3OkAeC82O
(#^Д^)「殺すんだよ、それがあの御方の命令だ。それに、先に入った二人もだ。
特にギコはなっ!絶対俺の前に連れてこいっ!!直々にぶっ殺してやるからよぉ!!!」
後を付いていた三人は、余りの剣幕に言葉を失うが、すぐに『はいッ!!』と答えた。
( ^Д^)「……ここで一気に狩人派の戦力を削る。ギコさえ居なくなれば、後は雑魚しかいねぇからな。
ハハハッwwwwwwwwwwww」
狩人達を出し抜いた。そして敬愛する“あの御方”の望みを遂に果たす事が出来る。
プギャーは浮かれていた。
266
:
名も無きAAのようです
:2011/12/20(火) 23:34:21 ID:3OkAeC82O
―――だから
( ・∀・)「ふむ、これは困ったねぇ」
茂みの向こうで影が動いた事に、彼らは気が付かなかった。
267
:
名も無きAAのようです
:2011/12/20(火) 23:37:49 ID:3OkAeC82O
本当に短いですが、今日はここまでです。
続きは、明日投下しに参ります。
次回はジンオウガとドクオの戦い、最初からクライマックスになるよう、頑張ります。
ではでは。
後、ミセリ誕生日おめー。
268
:
名も無きAAのようです
:2011/12/20(火) 23:41:33 ID:sYkkHA.20
乙
続きが気になるね
269
:
名も無きAAのようです
:2011/12/21(水) 00:30:48 ID:8nLh0tZA0
乙
ミセリ怖えぇw
270
:
名も無きAAのようです
:2011/12/21(水) 00:38:53 ID:5esQe6nc0
乙
プギャーは誰にやられるのだろうか
271
:
名も無きAAのようです
:2011/12/21(水) 00:48:59 ID:296SXht60
ミセリこわい…明日も楽しみに待ってます
272
:
名も無きAAのようです
:2011/12/21(水) 18:11:43 ID:z8vjZyw2O
足が痺れてきた
273
:
名も無きAAのようです
:2011/12/21(水) 18:30:38 ID:5slZBVb.O
俺の初ジンオウガ討伐はマフモフ一式にクロスボウガン改という情けない装備だったなぁ
何でドクオは氷弱点だって思えるんだ
なんとなく火だと思った俺はバカなのか………
274
:
◆.WtyGIaY4.
:2011/12/21(水) 20:30:59 ID:qXxYSYY60
今日の投下は相当遅くなる予定です。明日読んだ方が良いかもです。
>>252
贅沢ですよねー、ブーンは親父から武器を貰ってますから。あの野郎、楽しやがって。
>>273
立派ですよ、自分はジャギィ装備でしたね。
今回のジンオウガはGとして勝手に強くしているので、多分ジャギィなんかで行ったら即乙なんだろうな。
ジンオウガの弱点予測についてですが『ドクオが戦った事のある雷属性』と考えるとフルフル・キリン・ベルキュロスと思われるんですが
キリンは糞肉質の為例外として
フルフルは炎が弱点なんですよね。でもそれは雷属性云々ではなく寒い場所が好きなモンスターという事で炎が弱点になったんじゃないかと考えました。
という訳から、住んでいる環境に関係なく雷属性の弱点と仮定出来るのは氷だとドクオは決断した訳です。
途中で書き込み押したけど、書き込めてない事をいのる。
275
:
◆.WtyGIaY4.
:2011/12/21(水) 20:32:51 ID:qXxYSYY60
あ。ベルキュロスの弱点の氷だと仮定した訳です。言葉足りずになってました。
276
:
名も無きAAのようです
:2011/12/21(水) 22:09:12 ID:PnCPSuW.0
ラージャンも氷だぜ
277
:
名も無きAAのようです
:2011/12/21(水) 22:11:50 ID:eYTKoIxc0
楽しみにしてる
278
:
名も無きAAのようです
:2011/12/21(水) 22:20:40 ID:z8vjZyw2O
風邪ひく
はよぅ
はよぅ
279
:
名も無きAAのようです
:2011/12/21(水) 23:07:05 ID:5slZBVb.O
>>274
わざわざ説明してくれてありがとうございます
納得しました
しかしまだ3GがPSPでも出ると信じてるんだが無理なのか
280
:
名も無きAAのようです
:2011/12/21(水) 23:39:55 ID:fQ7gTy9UO
ドクオとジンオウガのガチンコが楽しみで仕方ない
ブーンの成長もすごく期待してる
2や2Gの続きが出ないかとまだ待ってる
281
:
名も無きAAのようです
:2011/12/22(木) 00:01:55 ID:JKRt588.0
来ないのかな
282
:
◆.WtyGIaY4.
:2011/12/22(木) 00:20:20 ID:C6Ims8Vo0
居るのですが投下する時間がなかなか取れないのです。もう暫くお待ちください、と言うよりも深夜になる可能性が高いので明日見て頂いた方が良いかと思います。
283
:
名も無きAAのようです
:2011/12/22(木) 00:38:56 ID:NxgcPffkO
それでも裸で待機!!
284
:
名も無きAAのようです
:2011/12/22(木) 00:54:39 ID:6PEIo4lo0
まったりと待たせて頂きます
285
:
名も無きAAのようです
:2011/12/22(木) 00:58:27 ID:rH5ppmJgO
明日じっくり読むよ!
ワクワクして眠るー!オヤスミ^し^
286
:
名も無きAAのようです
:2011/12/22(木) 02:34:47 ID:iRXrxbqE0
俺は全裸待機継続中
287
:
◆.WtyGIaY4.
:2011/12/22(木) 03:37:13 ID:tS9kwa0AO
遅くなりましたが、六話の投下をしに参りました。
288
:
6―7
:2011/12/22(木) 03:41:00 ID:tS9kwa0AO
お前のその優しさが、いつかお前を殺すよ
―――砦のマスター 竜人でぃ―――
.
289
:
名も無きAAのようです
:2011/12/22(木) 03:42:12 ID:tS9kwa0AO
雷雲漂うユクモ山。南側は緩やかな傾斜となっており、身体を鍛えていない一般人でも登りやすい様になっている。
普段ならば、薬草やキノコを摘む人の姿があるのだが、今は影すらない。
一方北側は、急斜面。崖と言っても良いくらいの傾斜がある。崖下には非常に流れの速い川が流れており、もし落ちてしまえば、為す術なく自然に呑み込まれてしまう。
290
:
名も無きAAのようです
:2011/12/22(木) 03:42:51 ID:tS9kwa0AO
何故ユクモ山の形が、こんなに歪な物になってしまったのか。
これには諸説あるが、一番主流な物は、崖下に流れる川が山肌を削り取ったという説である。
だが中には気圧を司る【古龍】によって作られたという学者もいる。
その存在ですら定かではない架空の龍。
古龍が竜巻を巻き起こし、ユクモ山の北側を削ったのだと言う。
そして、その龍が通った後、急激な気圧の変化により局地的な大雨が降り、川となったのだと。
川の名前は“龍川”龍の川と書いて“りゅうせん”と読む。
291
:
名も無きAAのようです
:2011/12/22(木) 03:43:34 ID:tS9kwa0AO
―――
――
―
('A`)「………」
『………』
ユクモ山、その山頂の程近くの開けた場所。そこに佇むは、一人の人間と一匹の神。
彼等を隔てる距離は5m。静かだった。先程までの戦いが嘘の様に押し黙ったまま、ただ睨み合っていた。
292
:
名も無きAAのようです
:2011/12/22(木) 03:44:21 ID:tS9kwa0AO
ここにきてジンオウガは、驚きを隠せない。今まで何百、何千の人間を殺してきた。充分に武装した者もいれば、鍬や棒しか持っていない、なんとも貧相な人間もいた。
だがそれぞれ共通して言える事は、彼らの目だった。
恐れ、怒り、憎しみ、必ず彼らの視線からは、この三つの感情が見られた。
('A`)「………」
だが、目の前に居る人間は違う。一瞬だけ自身の感情を爆発的に表に出すと、それからは至って平淡。自然だ。
今まで自分が見たことないタイプの生き物だと思った。
面白い。
293
:
名も無きAAのようです
:2011/12/22(木) 03:45:20 ID:tS9kwa0AO
『Waohoooooooo!!!!!!』
ならば自分が見定めよう。神と呼ばれる自分が、この男の本質を。
響き渡る咆哮、余りの声量にユクモの木々達が騒めいた。
ジンオウガは、先手を取ろうと姿勢を低くした。咆哮からの追撃、古典的ではあるが、全ての大型種が持つ最も信頼のおける組合せだ。
―――だが
('A`)「いい加減、お前の声は飽きた」
目の前に現れた顔。前転からの跳躍。小さな身体で、ドクオは5mもの距離を一瞬で埋めた。
294
:
名も無きAAのようです
:2011/12/22(木) 03:45:53 ID:tS9kwa0AO
『……!?』
ドクオの手に握られた双剣は、真っ直ぐジンオウガの首下へと伸びる。
慌てて、前脚で弾くようにそれを防いだ。
('A`)「チッ」
ドクオは軽く舌打ちすると、 そのまま両手を全力で振り回す。
ジンオウガの前脚を撫でる様に【鋼龍双】ラファール=ダオラが振るわれる。
先程から執拗に狙われる前脚に、ジンオウガは苦悶の表情を浮かべた。確かにドクオの双剣では、効果的なダメージは与えづらい。一撃でジンオウガの動きを止めたり、尻尾を両断するなんて事は出来ない。
だが双剣の強みは、その圧倒的な手数。狩人の使う全武器種の中で最も刀身の短い双剣。加えてそれは、最も軽いという事を意味する。
その斬撃は瞬きすら許さない。
295
:
名も無きAAのようです
:2011/12/22(木) 03:46:55 ID:tS9kwa0AO
一撃一撃が、着実にジンオウガの前脚を傷付けていく。
その存在が強大である程、痛みに疎いモンスターだが、流石に堪えた。
('A`)「ふん、前脚が思うように動かなくなったか」
ジンオウガを目の前にして、ニヤリと笑う男。
『………』
やってくれる。ここまで自分を傷付けたのは、目の前の男が初めてだ。
ジンオウガは喜びに震える。
('A`)「……」
間違いなく、今まで戦った存在の中で圧倒的力を、この男は持っている。
しかも、コイツは本気で自分を倒すつもりらしい。
ならば、とジンオウガは身体を捻った。得意の跳躍からの体当たりに回転を加える。ギコが苦しめられた動きだ。
296
:
名も無きAAのようです
:2011/12/22(木) 03:47:25 ID:tS9kwa0AO
('A`)「なるほど、それか」
ドクオも、その意図を察して下がる。
ジンオウガは跳んだ。間違いなく全力の跳躍。
―――ここで殺る
叩きつけた右前腕。
だが捕えた感触は無かった。
すぐに反転し、敵を探す。狩人はすぐに見つかった。自分の前方に居たのだ。
('A`)「ふん、そんな予備動作丸出しの攻撃で俺を捕えられると思うなよ」
どうやって、あの狩人は自分の攻撃を躱したのか。
その答えが判った時、ジンオウガの背に冷たい物が走った。
297
:
名も無きAAのようです
:2011/12/22(木) 03:47:51 ID:tS9kwa0AO
―――向っていく自分の下を潜ったというのか
.
298
:
名も無きAAのようです
:2011/12/22(木) 03:48:26 ID:tS9kwa0AO
恐怖を感じた。怖くないのか、一歩間違えれば、巻き込まれて即死だろう。
理性と知性を持ったジンオウガだからこそ、恐怖した。
今まで決死の覚悟というのは見た事があるが、自分の命を擲つ様な戦い方をする人間なんていなかった。
気圧されている。神と崇め恐れられていた自分が、たった一人の人間に。
『Waohoooooooo!!!!!!』
ジンオウガは、背を向け駆け出した。
このままではいけない、と悟ったのだ。
('A`)「………」
流石のドクオも、ジンオウガの全速力に追い付けるはずがない。
木々を薙ぎ倒す様にして、真っ直ぐユクモ山の頂へとジンオウガは駆ける。
('A`)「……ふん。頂上で待っていろ」
ドクオ達が狩りに出て十時間。戦いは、遂に佳境へと入った。
夕闇が照らすユクモ山の頂上。そこが最後の決戦場となる。
299
:
幕間
:2011/12/22(木) 03:49:23 ID:tS9kwa0AO
場面は、ドクオとジンオウガのタイマン勝負から数時間遡る。
デレ、ツン、ブーンはユクモ山を登っていた。
ζ(゚、゚*ζ「……」
ξ゚⊿゚)ξ「……」
( ^ω^)「……」
三人の顔からは緊張が見て取れた。ユクモ山に入ってからというもの、一歩登る度に重い重圧がのしかかってくる。
もう向こうでは、戦いが始まっているんだな、と三人は口にしないが感じていた。
ζ(゚、゚*ζ(ドクオさん、ギコさん、無事でいて下さい)
300
:
名も無きAAのようです
:2011/12/22(木) 03:49:54 ID:tS9kwa0AO
やっと一合目が見えてきた。
(;^ω^)「おっ?」
だが、そこには先客が居た。ここからでは、まだ遠くて見えないが、背に武器を背負っている事から狩人か騎士だろう。
( )「……」
(;^ω^)「……」
ブーンの鼓動が早くなる。
何故立ち入り禁止を命じられているユクモ山に、自分達とドクオ達以外の人がいるのか。
段々と大きくなっていく影。ヒラリ、とマントがはためいた。
(;^ω^)「二人ともッ!止まるおッ!!」
あれは狩人ではない、騎士だ。恐らく自分達を拘束しに来たのだろう。それ以外考えられない。
301
:
名も無きAAのようです
:2011/12/22(木) 03:50:33 ID:tS9kwa0AO
(;^ω^)「おっ!?」
―――しかし
ξ゚⊿゚)ξ「……」
ζ(゚、゚*ζ「……」
ツンとデレは歩くのを止めない。まるで、あの人影が見えない様にスタスタと進んでいく。
不思議そうにするブーンに対して、ツンは言った。
ξ゚⊿゚)ξ「アンタに見えて、私達に見えない訳ないでしょうが」
ζ(゚、゚*ζ「大丈夫ですよ。危険人物ですけど、敵ではないと思います。……多分」
確かにガンナーであるツンやデレが、見落とすはずがない。
それに、デレの微妙な言い回し。ブーンには心当たりがあった。それも最悪の。
302
:
名も無きAAのようです
:2011/12/22(木) 03:51:01 ID:tS9kwa0AO
( ・∀・)!!
( ・∀・ )彡
( ^ω^)「こっちみんな」
.
303
:
名も無きAAのようです
:2011/12/22(木) 03:52:18 ID:tS9kwa0AO
待っていたのはモララーだった。
いつも飄々とした彼だが、何を考えているのか分からないという怖さがある。
( ^ω^)「モララーさん、こんな場所で奇遇ですお」
( ・∀・)「やぁ、そこへ行くのはブーン君と我が麗しのツンデレ嬢ではないか!!」
ξ゚⊿゚)ξ「……」
ζ(゚、゚*ζ「……こんにちは」
ツンとデレからは剣呑な雰囲気を感じる。
天敵モララー、ここに見参である。
その雰囲気を察してか、ブーンは努めて明るい雰囲気で言った。
(;^ω^)「もっ、モララーさん!ブーン達は少し急いでるんでっ!!」
急いで背を向けて去ろうとする。
だが
( ・∀・)「まぁ、待ち給えよ」
ブーンの腕は、モララーによって捕まれた。
304
:
名も無きAAのようです
:2011/12/22(木) 03:52:53 ID:tS9kwa0AO
( ・∀・)「君達に追い付いて格好良く登場するためにどれだけ走ったと思っているんだね。もう少し、私の話に付き合ってくれても良いだろう?」
空気が更に尖った。
ブーンは必死にモララーを引き剥がそうとするが、ピクリとも動かない。
(;^ω^)「離して下さいおっ!ブーン達には行かなきゃならない所があるんですおっ!!」
そんなブーンの言葉に、モララーは「はははっ」と軽快に笑い、言う。
( ・∀・)「それは無理だよ。私は君達を連れ戻しに来たのだからね」
.
305
:
名も無きAAのようです
:2011/12/22(木) 03:53:36 ID:tS9kwa0AO
ブーンの手が強張った。
ツンは背のジャギットファイアを取出し弾まで装填する。デレも即座に弓を構え矢を番えた。
ζ(゚、゚*ζ「騎士が、ギルドのやり方に介入するんですか?」
( ・∀・)「ふふん、君達が構えると威嚇無しで撃ってきそうだから怖いね」
デレの真剣な問いにも、モララーは冗談を言うだけで答えようとしない。
ζ(゚、゚*#ζ「答えてよっ!“お兄ちゃん”!!」
ξ゚⊿゚)ξ「……」
ふむ、とモララーはブーンを掴んでいた手を離し、考える様に顎にやる。
ブーンは、急いで後ろに下がった。
( ・∀・)「どちらかと言えば、ギルドのやり方に“私”が介入するのだよ。デレ嬢」
306
:
名も無きAAのようです
:2011/12/22(木) 03:54:23 ID:tS9kwa0AO
( ^ω^)「どういう事ですかお?」
( ・∀・)「今はまだ知らなくて良いことだよ」
ブーンの当然の疑問を、モララーは即座に拒否した。どうやら話す気は無いらしい。
( ・∀・)「今は黙ってユクモへ引き返し給えよ。ギルドマスターも今回はお咎め無しという事で納得してくれたようだったしね」
ξ゚ ー゚)ξ「誰がアンタの言う事なんて聞くもんですか。裏切り者のクセに」
ツンは、セーフティーを外し真っ直ぐにモララーへと向ける。
裏切り者、そう呼ばれた時に僅かにモララーの表情が変化したが、すぐに改められた。
( ・∀・)「ほぉ、ツン嬢。君に人が撃てるのかい?それなら良く狙って撃つと良い」
モララーは、態度を変えない。
ζ(゚ー゚*ζ「悪いですけど、モララーさんの言う事は聞けません。私達は、ドクオさん達のお手伝いがしたいんです」
デレも弓をモララーへと向ける。
ブーンは、ハンマーを構えずに地面に置いた。もしハンマーを使ってしまえば、モララーは確実に重症を負ってしまうからだ。
ツンやデレの様に上手く外す事が出来ない、素手で戦う以外に無かった。
307
:
名も無きAAのようです
:2011/12/22(木) 03:54:44 ID:tS9kwa0AO
ξ ⊿ )ξ「変わっちゃったね……お兄ちゃん……」
.
308
:
名も無きAAのようです
:2011/12/22(木) 03:55:15 ID:tS9kwa0AO
そのツンの呟きが引き金。ツンのジャギットファイアとデレのフロギィリボルバーが火を噴いた。
―――だが
「―――本当に、ごめんよ」
ζ( ー *ζ「あっ……うっ……」
倒れたのはデレだった。
( ・∀・)「ふむ。やはり嫌われ者の私と言えども、人間を撃つのには抵抗があったのかな」
ブーンにもツンにも見えなかった。モララーがデレの背後に移動したと思ったらデレが倒れたのだ。
309
:
名も無きAAのようです
:2011/12/22(木) 03:56:16 ID:tS9kwa0AO
ξ;゚⊿゚)ξ「デレッ!?」
( ・∀・)「おっと、どんな状況でも気を抜いてはいけないな。ドクオ君に教わらなかったかい?」
ビクッと、揺れるツン。背後にモララーが居た。
「―――お前達が成長してくれて、嬉しいよ」
ツンの視界は暗転する。最後に聞こえた小さく消え入りそうな呟きは、決して胸の成長を指した物ではなかっただろう。
( ^ω^)「……モララーさん」
( ・∀・)「なんだね、ブーン君」
今立っているのは、ブーンとモララーだけだ。
310
:
名も無きAAのようです
:2011/12/22(木) 03:57:32 ID:tS9kwa0AO
( ^ω^)「どうして、ボク達を止めるんですかお?ボク達が、全然強くないからですかお?足を引っ張っちゃうからですかお?」
ブーンの言葉にモララーは首を振る。
( ・∀・)「違うよ。私が言いたいのは、ドクオ君とギコ君の気持ちを考えろという事だよ。
彼らは、君達を信頼して山に登ったんだ。君達にならユクモを任せられると信じてね。それを右往左往して、結局ビビりながら山に入るという決心をした君達に腹が立ったのさ」
( ^ω^)「確かにボク達は恐がってたお。歩くのも遅かったし、物音がしたら飛び上がって驚いてたお」
( ・∀・)「ふむ」
―――でも
( ^ω^)「それは悪い事かお?確かにユクモ村を守るのも大切な事だって分かってるお。でも、ボクは、ボク達は、ドクオから色んな事を教えてもらったお。言葉じゃなくて、あの人の背中から」
311
:
名も無きAAのようです
:2011/12/22(木) 03:58:09 ID:tS9kwa0AO
( ・∀・)「……何を学んだのか、聞いても良いかい?」
( ^ω^)「狩人の心得だったりとか、数えきれない程、多くの事だお。
―――でも、それよりなにより」
ブーンは、大きく息を吐いた。
( ^ω^)「仲間の大切さだおっ!あの人は常に仲間を気に掛けて戦っているおっ!!その背中に追い付きたくて、ボクはここに居るんだおっ!!!!」
ドクオの教えは、確かにブーンの心に刻まれていた。
ブーンの想いは、重かった。
312
:
名も無きAAのようです
:2011/12/22(木) 03:58:50 ID:tS9kwa0AO
だがモララーは、それを軽く押し退ける。
( ・∀・)「確かに君の想いは受け取ったよ。だが私にも譲れぬ物があるんだ。ここは引いてくれ給えよ」
( ω )「……」
ブーンは震えている。自分の無力さに。ここを押し通すだけの力は、今のブーンには無い。だが「はい、そうですか」と割り切れる程、ブーンは賢くない。
313
:
名も無きAAのようです
:2011/12/22(木) 03:59:19 ID:tS9kwa0AO
ξ*゚ー゚)ξ『でも、そんなバカなブーンの事が、私は好きなんだから』
.
314
:
名も無きAAのようです
:2011/12/22(木) 04:01:20 ID:tS9kwa0AO
( ω )「……分かりましたお。ボク達は、村へ帰りますお」
ちゃんと話せているだろうか。出来るだけ平坦に、モララーの油断を誘えているだろうか。
震える足は無視する。今は、自分が怯えているだとか、そんな事はどうでも良い。
( ・∀・)「そうかい!分かってくれた( ω )『でもッ!!』……なんだい?」
ブーンはバカだ。毎回のクエスト報酬の管理も全てツンに任せているし、ドクオが話す経験談だって完璧には理解できない。
―――だがッ
.
315
:
名も無きAAのようです
:2011/12/22(木) 04:01:45 ID:tS9kwa0AO
(#`ω´)「好きな女を殴られてッ!黙ってられる程、バカじゃねーんだおおぉぉぉおおお!!!!!!!!!」
.
316
:
名も無きAAのようです
:2011/12/22(木) 04:02:34 ID:tS9kwa0AO
ブーンの拳がモララーの頬を捉えた。
( ・∀(メ)「……」
それでも、モララーは倒れなかった。先程のブーンの想いに負けぬ、譲れない物が彼にもあったからだ。
( ・∀・)「ふむ。今のはなかなか効いたよ。心に刺さる、良い拳だった」
―――だが
(#・∀・)「俺だって、この二人が大切なんだ!!この大バカ野郎がァ!!!!」
今度は、モララーの拳がブーンを捉えた。ブーンはそのまま後ろへとブッ飛ばされる。
( ω(メ)「……クソ、がお」
それでも尚、立ち上がろうとする。意地があるのだ、男の子には。
317
:
名も無きAAのようです
:2011/12/22(木) 04:04:01 ID:tS9kwa0AO
「……俺は、少し野暮用がある、お前は二人を連れて山を降りろ」
( ・∀・)「男なら。大切な女の一人や二人、抱えてやれねーとな」
モララーは、背を向け脇道へと入っていった。
ブーンは、泣きそうになるのを必死に堪え、ツンとデレをしっかりと抱えた。
318
:
名も無きAAのようです
:2011/12/22(木) 04:06:03 ID:tS9kwa0AO
「ふんっ、随分と甘いなぁ。モララー」
脇道に入ったモララー、野暮用とは先程からずっと此方を窺っていた奴らの事だ。
( ・∀・)「ふむ、その馬鹿面、どこかで見覚えがあるなぁ」
(#^Д^)「あぁん?なんだと、お前!!」
プギャーだった。
( ・∀・)「あぁ、その下品な声はプギャー君ではないか!いやいや、うっかりしていたよ!
あっ、君達は確か山に入った三人を保護しに来たんだったねぇー」
プギャーは、内心ドキッとした。あの命令は、自分にだけ伝えられたはずなのに。
( ・∀・)「いやー、ギルドの近くにいたらなにやら君の声が聞こえてきてね。そしたら“騎士として狩人の救出”に行くと言うじゃないか!
これはもう!仕事熱心な私としては手伝うしかないと思ってねっ!」
やられた、とプギャーは思った。これでは、山を登る口実が無くなってしまった。
319
:
名も無きAAのようです
:2011/12/22(木) 04:06:46 ID:tS9kwa0AO
( ^Д^)(……いっその事、あの三人だけでも)
そう考えた時だった。
―――止め給えよ
( ・∀・)「もしあの三人に何かあれば俺がお前を殺す。如何に完璧に取り繕っても俺はお前達を絶対に殺す」
モララーには、本当だと思わせるだけの迫力があった。
320
:
名も無きAAのようです
:2011/12/22(木) 04:07:25 ID:tS9kwa0AO
(;^Д^)「……んなこと、しねぇよwwww人殺しは、狩人も騎士も関係なくご法度って事くらい知ってるしwwww」
( ・∀・)「そうかい、それなら構わないんだよ。じゃあ早く帰り給え。あっ、そっちの道を通っても殺すよ。今来た道を、負け犬の様に惨めに帰るように」
プギャーの心を、筆舌し難い敗北感が襲う。
(#^Д^)(クソッ、ギコもアイツも。絶対いつか殺してやる……)
大人しく引き返していくプギャー達を見て、モララーは最後に一言付け加えた。
( ・∀・)「あぁ!あと馬鹿笑いも止めておいた方が良いよ!【馬鹿面】と【馬鹿笑い】は君の数少ない特長だが、内緒話をする時は控えないといけない!」
プギャー達が見えなくなるのを見送って、モララーは漸く一息ついた。
321
:
名も無きAAのようです
:2011/12/22(木) 04:08:48 ID:tS9kwa0AO
( ・∀・)「ふむ、やはり時は着実に進んでいるのだな」
愛する妹分達も、一人前に成長している。
( ・∀・)「……お兄ちゃん、か。久しぶりに呼んで貰えたな」
木々が不自然に騒めいた。何かが、モララーに向かって接近している。
( ・∀・)「全く、これでは私が過労死してしまうよ。働き過ぎは良くないね」
背後のスラッシュアックスを抜いた。折り畳んだ状態のまま、まだ変型させていない。
322
:
名も無きAAのようです
:2011/12/22(木) 04:09:20 ID:tS9kwa0AO
( ・∀・)「!?」
近付いてきたモノを見た瞬間、モララーは走りだした。あれはアイルーの担架だ。
頭を過る最悪の予感。
(;*゚ -゚)「はぁ……はぁ……、ご主人様!後少しですにゃっ!!」
(,, Д )「……大丈夫、だ。足をやられた、だけだぞ」
運ばれていたのは、ギコだった。
323
:
名も無きAAのようです
:2011/12/22(木) 04:10:07 ID:tS9kwa0AO
( ・∀・)「ギコっ!」
(;*゚ -゚)「モララー!どうしてここに……そんな事より大変なのにゃ!ご主人様がジンオウガにっ!!」
モララーは、ギコの様子を見る。足が折れている。だがそれより出血が酷い。
( ・∀・)「……時間との勝負だな」
モララーは背に収めていたスラッシュアックスをしぃに預けると、ギコを抱えた。
( ・∀・)「持ってろ、俺が最速で運んでやる」
その言葉に、しぃは頷いた。
だがモララーの視界に、もう一匹のオトモが目に入る。
(* ∀ )「……」
生気を失ったツーだ。
324
:
名も無きAAのようです
:2011/12/22(木) 04:10:57 ID:tS9kwa0AO
( ・∀・)「ツーもどこかやられたのか?」
その言葉に、しぃは何と言えば良いか言い淀んだ。
(* ∀ )「ドクオに……お前は俺のオトモじゃないと言われたのニャ。オトモとしての契約もしてないし、オレっちが勝手に懐いていただけだったのニャ」
(*゚ -゚)「ツー……」
( ・∀・)「……それで?」
ツーは小さな声で語る。
325
:
名も無きAAのようです
:2011/12/22(木) 04:11:34 ID:tS9kwa0AO
(* ∀ )「ギコを連れて村に帰れって……ギルドオトモの本懐を果たせって言われたのニャ……」
( ・∀・)「それで?」
(* ∀ )「……それだけニャ」
( ・∀・)「え、それだけ?」
326
:
名も無きAAのようです
:2011/12/22(木) 04:12:27 ID:tS9kwa0AO
これを聞いたのがブーンやデレなら、絶句していた事だろう。どれほどツーがドクオに懐いていたのか、知っているからだ。
( ・∀・)「……」
しかし、この男はそんな事知らない。知ったこっちゃない。
( ・∀・)「いやいや、別にドクオは何もおかしな事を言ってないだろう」
(* ∀ )「……ニャ?」
( ・∀・)「ギコの怪我は一刻を争う。しぃだけじゃ荷が重かっただろう。それにアイルーなら人命が最優先、オトモじゃないアイルーでも分かる事だろう。
」
(* ∀ )「ニャ……」
( ・∀・)「それに彼はドンドルマ出身だよ。オトモの契約云々を“知っているとは思えない”のだが」
ドクオの出身地ドンドルマにアイルーを従えて狩りに出るという習慣は無い。
確かにアイルーとの契約を知っているとは考えづらい。
327
:
名も無きAAのようです
:2011/12/22(木) 04:13:19 ID:tS9kwa0AO
それに
('A`)『あぁ、よろしく頼むよ』
思い出されるのは、差し出された手。
初めて対等だと、オトモと主人の関係ではない、別の関係を与えてくれた人。
(*;∀;)「……」
ドクオはツーと確かに主従関係を結んではいなかった。
だが、別の関係を結んでいたのではなかったか。
328
:
名も無きAAのようです
:2011/12/22(木) 04:14:43 ID:tS9kwa0AO
( ・∀・)「それに、ギコは私が引き継ぐよ。お前は今ギルドアイルーとしての役割を果たした」
『ここから先は、お前の意志次第だ』
(*;∀;)「ツーは、ドクオと“友達”ニャ」
( ・∀・)「そうだろうとも」
329
:
名も無きAAのようです
:2011/12/22(木) 04:15:44 ID:JKRt588.0
キター
モララー△
330
:
名も無きAAのようです
:2011/12/22(木) 04:15:53 ID:tS9kwa0AO
――――ならば、行き給えよ
.
331
:
名も無きAAのようです
:2011/12/22(木) 04:16:21 ID:tS9kwa0AO
ツーは、駆け出した。己の主人の下へではない。己の“友”の下へ、ツーは走ったのだ。
( ・∀・)「世話の焼けるアイルーだね。さて、しぃ。我々も行くよ」
(*゚ー゚)「はいですにゃ!!」
332
:
6―8
:2011/12/22(木) 04:17:50 ID:tS9kwa0AO
ユクモ山、山頂付近。真っ黒な雲が架かっているせいか、視界はかなり悪い。雨は全く降っていないのに、雷が鳴り響いている。所々に、雷が落ちたのか真っ黒く焦げた跡が残っていた。
標高が高いためか、背の高い草木は生えていない。
山でありながらも、広場の様になっている。
その中央に【雷狼竜】ジンオウガは鎮座していた。
そこに、ゆっくりと上がってきた男。ドクオだった。
333
:
名も無きAAのようです
:2011/12/22(木) 04:18:37 ID:tS9kwa0AO
('A`)「……肉が食いたい」
.
334
:
名も無きAAのようです
:2011/12/22(木) 04:19:30 ID:tS9kwa0AO
ここに至ってドクオは普段通りだった。決戦を前に気負いはない。
('A`)「さっさとお前を討伐して、飯でも食うか」
ここまでの戦いは終始ドクオが攻めている。だからこそジンオウガは一旦退いたのだ。
しかしジンオウガが、ここで待っていたという事は、逆を言えばこの場所でなら勝機があるという事だ。
それはドクオも重々承知。
335
:
名も無きAAのようです
:2011/12/22(木) 04:20:00 ID:tS9kwa0AO
『Waohooooooooo!!!!!!!』
ジンオウガの咆哮が響く。ドクオも背の双剣を抜き構えた。
最後の決戦が始まる。
('A`)「そろそろ地に伏せろ」
ドクオは、身を低くしジンオウガへと近付く。
一方、ジンオウガも敵をリーチ内に入れさせまいと、乱暴に尻尾を振るう。
まさに嵐、ドクオも一旦止まらざるを得ない。
('A`)「鬱陶しい尻尾だ、見てるだけで気が滅入る」
しかし尻尾を気にせずにジンオウガに攻撃を加える為には、奴の股下まで入り込まなければならない。
それには、あの嵐を潜り抜ける必要がある。
336
:
名も無きAAのようです
:2011/12/22(木) 04:20:50 ID:tS9kwa0AO
('A`)「………」
ドクオは、ここで距離を開けた。
しかし、距離を取ればドクオの攻撃は届かない。完全にジンオウガの距離となってしまう。
('A`)「来いよ」
だが、ドクオの狙いはソコだ。
自分が一方的に攻撃出来る状態だと思うと、攻守の比重は確実に攻撃へと傾く。
ドクオは待っていた。散漫とした突撃を。
337
:
名も無きAAのようです
:2011/12/22(木) 04:21:23 ID:tS9kwa0AO
『Waohooooooooo!!!!!』
しかし、ジンオウガはなかなか攻撃をしてこない。
('A`)「……なかなか賢いな。やはり通常のモンスターの様にはいかないか」
ならばと、一気に距離を詰めに行く。だが勿論ドクオを狙って尻尾は動く。
八方塞がり、ここに来て増してくるジンオウガの圧力。
('A`)「ふむ」
だが、ドクオは焦らない。ドクオには確信があった。この根比べ、勝つのは自分だと。
338
:
名も無きAAのようです
:2011/12/22(木) 04:22:33 ID:tS9kwa0AO
さて、皆はカロリー(calorie,記号:cal)の役割を知っているだろうか。
カロリーとは、熱量の単位である。食品等に明記されている物だ。
人間は、カロリーを採るために物を食べる。
物を食べる事は、空腹や栄養分の補給は勿論、身体に熱量を取り込むという大きな役割を持っているのだ。
その熱量は、身体を動かしたり、頭を働かせたりする事によって消費されていく。
339
:
名も無きAAのようです
:2011/12/22(木) 04:25:56 ID:aFvIw.UwO
此処じゃ支援って必要ないんだろうけど支援って書き込みたくなる不思議
支援
340
:
名も無きAAのようです
:2011/12/22(木) 04:26:01 ID:tS9kwa0AO
('A`)「そろそろ、か」
明らかにジンオウガの動きが遅くなってきた。口からはだらしなく涎を垂らし、肩で息をしている。
カロリー切れである。
ジンオウガの様な大きな身体をした生物は、ただ起きているだけで大量のカロリーを消費する。それが、さっきまでの様に尻尾を乱舞し、飛び掛かりと繰り返せば、その消費量は爆発的に増大する。
何時間も一切補給をせずに戦えば、ガス欠になるのは当然だ。
加えてドクオの愛双【鋼龍双】ラファール=ダオラが、ジンオウガの熱をどんどん奪っているのも大きい。
341
:
名も無きAAのようです
:2011/12/22(木) 04:27:39 ID:tS9kwa0AO
('A`)「さて、と」
ドクオは、迷いなく懐へと入り込んだ。そして乱舞。前脚を重点的に、撫で斬る。
遂に見出だした勝機。一気にドクオは、決めに掛かっている。
('A`)(ここで取る……)
血飛沫が飛び散る。その一粒一粒が、ラファール=ダオラの圧倒的冷気により凍り付き、結晶化していく。
もしこの戦いに観客が居れば、誰もが魅入られていただろう。
辺りを漂う雷光虫の白玉と、ジンオウガの紅玉が周囲にたゆたう。
342
:
名も無きAAのようです
:2011/12/22(木) 04:28:38 ID:/9OMmJZEO
今気づいた、こんな時間に
今から読む、④
343
:
名も無きAAのようです
:2011/12/22(木) 04:28:40 ID:tS9kwa0AO
('A`)「これでッ!!終わりだッ!!!」
ドクオの双剣が、今日初めてジンオウガの頭部へと走った。
突き刺さった双剣、ドクオはジンオウガの首下を蹴り上げる事で引き抜いた。
('A`)「………」
ドクオの片手にはジンオウガの尖角が握られている。
だが何時もの様に、綺麗なまま解体した訳ではなく、根元がポッキリと折れてしまっている。
その尖角は、未だに熱い。
('A`)「ギコ……」
ギコのあの時の一撃が、ジンオウガの尖角を、ここまでボロボロにしていたのだ。
344
:
名も無きAAのようです
:2011/12/22(木) 04:30:07 ID:tS9kwa0AO
('A`)「!?」
しかし、感慨に浸る暇はない。
ジンオウガの身体から三度の発光が起きたからだ。今度は前回までと違い、強烈な光量。
('A`)「……ヤバいな、これは」
ピリピリと肌を刺激するジンオウガの雷。
―――そして
(;'A`)「!?」
周囲が光に包まれた。雷が落ちたのだ。ジンオウガへと。
345
:
名も無きAAのようです
:2011/12/22(木) 04:30:45 ID:tS9kwa0AO
光々と輝くジンオウガ、まさに神。今までのジンオウガの姿は全く嘘の様だ。
圧倒的な威圧感に、初めてドクオは表情を変えた。
変化は容姿だけではない。
『Wlohoooooooo!!!!!!!』
今までと全く違う咆哮。
ジンオウガが持っていた理性が全てぶっ飛び、野性が帰ってきた様だ。
ジンオウガを撃退した四人の狩人達は、さぞ絶望した事だろう。
もう終わりだと、身を粉にして戦っていれば、更にもう一段上があったのだから。
('A`)「それがお前の本気か」
天晴れだ、ユクモにもここまで力を持った怪物がいた。
346
:
名も無きAAのようです
:2011/12/22(木) 04:31:30 ID:tS9kwa0AO
('A`)「それでも、俺は負けない」
ジンオウガはドクオへと疾走する。もうジンオウガには、ドクオが人間だと認識出来ていない。ただただ自分の存在を脅かす化け物。
ジンオウガの巨体が勢いを付ければ、それはもう凶器である。
('A`)「コイツ、リミッターが外れて速さまで上がったか」
先程までの、ジンオウガの動きになれてしまったドクオの目は、今のスピードに付いていけずにいる。
怒りによる大幅な身体能力向上、これはドクオの様な思考派の狩人にとっては大きな不安要素となる。
('A`)「チッ!!」
ジンオウガは、不規則に飛び続ける。しかも、切り返しの時間が驚く程短い。
('A`)「……」
ならばと、ドクオも腹を括った。
半身に構え、どっしりとジンオウガを迎え撃つ。
狙いは頭部、先程付けた頭の傷だ。あそこにねじ込む。
('A`)「……来いッ」
.
347
:
名も無きAAのようです
:2011/12/22(木) 04:32:59 ID:tS9kwa0AO
ジンオウガの前脚がドクオへと迫る。
反らす様にして、それを紙一重で躱した。
―――そして
ドクオの双剣が、ジンオウガの頭部を刺した。
348
:
名も無きAAのようです
:2011/12/22(木) 04:33:58 ID:tS9kwa0AO
舌打ちが聞こえる。
(#'A`)「クソッ!浅かったか!」
そして状況は最悪となる。
('A`)「やってくれる、ジンオウガめ」
ドクオの片方の双剣が、ジンオウガの頭部に突き刺さったまま、取れなくなっていた。
ここに来ての握力低下。ジンオウガも確かに補給出来ずにいたが、ドクオも何も食べていなかったのだ。
これはドクオが、ユクモに来て初めて犯したミスである。
残された剣は、あと一本。
だが、これでは敵の攻撃を受け流す事は出来たとしても、受け止める事は出来なくなった。
('A`)「絶体絶命、か」
349
:
名も無きAAのようです
:2011/12/22(木) 04:35:00 ID:tS9kwa0AO
残った一本を左手で順手に構える。
('A`)「最期の足掻きだ。来いよ、ジンオウガ」
ジンオウガの身体が唸った。単純な突進、されど小さな人間を潰すには充分な一撃だ。
ドクオは、左へと身体をずらしジンオウガの右側へと回り込んだ。
―――そして
('A`)「オラアァァアアア!!!!!」
驚くなかれ。ドクオは、ジンオウガの右前腕を殴り付けたのである。
何を血迷ったか、と笑うだろう。強靭な身体を持つ怪物を素手で殴るなど、正気の沙汰ではない。
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