したらばTOP ■掲示板に戻る■ 全部 1-100 最新50 | |

SSの館

1名無しさん:2003/11/09(日) 05:43
創作小説をジャンジャンと

71もしもR組がOGに出たら:2003/11/10(月) 03:51
月やコロニーに対するゼ・バルマリィ帝国の破壊活動の被害は地球と比べて小さかった。
その差は小さなもので住民が息を潜めて生活しているという状況は変わりがなかったが、
病院のような医療機関が健在なだけ地上よりはマシといったところだろう。
そのセレヴィス・シティにある唯一の病院の廊下をリュウセイは一人歩いていた。
人が少ないためか院内は静かで足音がよく響く。
ある病室の前に立ち、リュウセイは一瞬迷ったあと扉を開いた。
病室の中では肩ほどに伸びた緑髪の美女が微笑を浮かべながらベッドの上でマフラーを編んでいる。
「久しぶり…アヤ」
アヤはちらりとリュウセイを見たが、何も言わず微笑を浮かべたまま編み物を続けた。
アヤはリュウセイも所属していた元SRXチームのリーダーだった。
しかしL5戦役のとき激しさを増す戦いの中、
彼女の繊細な精神は過剰なT-LINKに耐えることができなかった。
それ以来アヤはこの病院に入院することになった。リュウセイも始めは頻繁に見舞いに訪れていたが、
レジスタンスとしての活動が忙しくなると次第にその間隔も開いていった。
最後にアヤに会ってからもう2年が経つ。久しぶりに会う彼女は以前と変わらないように見えたが
その雰囲気は比べようがないほど儚げに感じられた。

72もしもR組がOGに出たら:2003/11/10(月) 03:52
リュウセイは病室を見渡したあとベッドの脇で椅子に腰掛け、話を始めた。
アヤは相変わらず話を聞く様子がみられなかったが気にしていない。
「アヤ…3日後レジスタンスはグリーンフラワーに攻撃を仕掛ける。
…5年前は、俺は弱かった。弱くて…SRXの力を引き出せなかったんだ。
ライはそんな俺を助けるために死んだ。そしてお前も…
…今の俺はあの時からどれだけ強くなったかわからない。
だけど今度は絶対に勝つ。勝ったからといって何も戻っては来ないけど、
守りきってみせる…今度は、絶対に。
それだけを言いに来たんだ。もう、ここに来ることもないかもしれないから」
「ねえ、リュウ」
突然呼ばれてリュウセイは驚きアヤの方を見た。
「このマフラーの色…マイに似合うかしら?」
そう言って編んでいたマフラーをリュウセイの目の前に差し出した。
入院してからアヤはただマフラーを編み続けている。
部屋の隅にはすでに編みあがったマフラーの山ができていた。
しかしこれからもアヤは編み続けるのだろう、すでにこの世にいない妹、マイのために。
おそらく、ずっと。
「ああ…そうだな。似合うと思うよ」
リュウセイは目頭が熱くなるのを必死にこらえて、ただそう言った。
握っていた拳に思わず力が入る。
「そう、よかった」
アヤが編み物を再開するのを見てリュウセイは病室を出ようと立ち上がり扉の取っ手を握った。

「来るわ」

アヤが言ったのかと思い振り返るが、相変わらず編み物を続けている。
気のせいかと思いリュウセイは病室を出た。
リュウセイの足音が次第に遠ざかっていき、また病室に静寂が戻る。
その中で微笑を浮かべていたアヤが小さな声で呟いた。

「あの人が…来る」

73もしもR組がOGに出たら:2003/11/10(月) 03:52
リュウセイが病院でアヤと会っていた頃、フィオナたちはセレヴィス・シティの郊外にある
共同墓地にある彼らの父親の墓の前にいた。
「ここに来るのも久しぶりね。最近はずっとエクサランスの開発にこもりっきりだったから…
 ミズホは来るの初めてだっけ?」
来る途中に街で買った花束を墓前に置きながらフィオナは聞いた。
「ええ…でも博士たちと面識がなかった私が来てもよかったんですか?」
性格からだろうミズホは居心地が悪そうに答えた。
「別にいいさ。親父たちは偏屈なわりに寂しがり屋だったからな。人数は多い方が喜ぶよ。
 ミズホの方はご両親に連絡とかしなくていいのか?」
「私も…父も母ももういませんし、墓もエルピスにありますから…」
「そっか…ごめん」

ミズホの両親は9年前のエルピス事件の際に命を落としていた。
彼女だけではない。この共同墓地に眠る人々もほとんどが戦災等によって亡くなっている。
そういう意味では病死という自然な形で人生を終えた父たちは幸せと言えたのかもしれない。
以前よりもずっと多くなった周りの墓石を見ながらフィオナはそう思った。

「それにしてもタイミングが悪いよな。レジスタンスに合流したのはいいけど
 いきなり敵の本隊への突撃作戦だっていうんだから」
重くなった空気を変えようと努めて明るい調子で言ったラウルの言葉にラージが答えた。
「逆に言えばチャンスですよ。ここで戦果を挙げることができたら
 時流エンジンの有効性を大きく広めることができますから」

そう、それがレジスタンスに参加した一番の目的だった。
新しいエネルギー技術の宣伝には戦争というものは格好の舞台である。
他人が聞けば不謹慎だと激怒しかねない理由だろう。
もちろん地球圏の開放という意思は少なからずある。
しかしそういった理想だけで人が生きていくことはできない。

「とにかく負けることはできませんよ。ここまで来て失敗したら
 あの世で父さんたちに何て言われるか…」
「メチャクチャ怒るでしょうね、何か目に浮かぶわ。
 …もうそろそろ時間かな。クロガネに戻りましょう」
「そうだな」
クロガネへ戻る途中、ラウルは奥に一つの人影を見つけた。
「あれ、あそこにいるのキョウスケさんじゃないか?」

74もしもR組がOGに出たら:2003/11/10(月) 03:52
キョウスケは一人墓前の前に座り、持ってきた二杯のコップに日本酒を注いでいた。
いつもは見せないような穏やかな表情をしている。
「エクセレン…前にお前が飲みたがっていた大吟醸だ。結構高かったぞ」
チンと音を立て持つ者がいないコップに乾杯をして口をつけていると
様子を見ていたフィオナたちが近づいてきた。
「キョウスケさん…」
「ん?お前たちか…」
雰囲気から話しかけてもいいものか迷ったが好奇心から思わず話しかけてしまった。
墓石を見ると Excellen Browning 164−188 と書かれてある。

「昔の仲間…ですか?」
「ああ…」
拒絶されるのではないかと恐る恐る尋ねるがそんなことはなくキョウスケは淡々と答えた。
先程の様子から見て、ただの仲間などではなくおそらく深い関係…恋人同士だったのだろう。
「やはり帝国監察軍に?」
不躾な質問をするラージに思いきりヘッドロックをきめながら慌ててフィオナはキョウスケに謝った。
「何であんたはいつもそう無神経なのよ!
 ごめんなさいキョウスケさん!こいつの言うことは気にしないでください」
2人の漫才のようなやり取りを全く気にせずキョウスケは立ち上がった。
「いや、こいつは…エクセレンは…俺が殺した」
「え…?」
意外な答えに4人が固まっていると墓地にもう一人入ってきた。

「お、何か珍しいメンバーが揃ってるな」
「リュウセイ…アヤの調子はどうだった?」
「…うん、元気だったよ。エクセレンへの挨拶は済んだみたいだな」
笑顔で話すリュウセイだったが少し表情がぎこちない。
無理をして笑っているのだろう。よく見ると目が少しはれている。
「ああ、俺はもう戻るが…お前はライのところに寄って行くのか?」
「まあな、少し遅れるかもしれないから艦長にはそう伝えておいてくれよ」
墓地を出て行くキョウスケを見送った後リュウセイは暗い顔をしている4人の方を振り向いた。
「で、どうしたんだ、お前たち。キョウスケに何かきついことでも言われたか?」
「いえ…その…エクセレンさんの事を聞いて…」
フィオナの言葉を聞いてリュウセイは少し困ったような顔をした。
「そうか、聞いたのか…まあ、昔の話だしお前たちには関係ないさ。
 あんまり気にするなよ。じゃあ、俺はまだ用があるからまたな」

リュウセイと別れて帰路についても4人は口数が少ないままだった。
「ねえ、ラージ。私がもし死んだらキョウスケさんみたいにずっと私のお墓参りに来てくれる?」
フィオナはふと思った事を口にした。
自分にはエクセレンの様に何年経っても自分の事を想ってくれるような人がいるだろうか…
「死ぬなんて、そんなふざけた事を言わないでください」
「ラージ…」
「あなたの生命力の強さとしぶとさは僕が一番よく知っています。
 僕よりあなたが先に死ぬことなんて100%ありえませんよ」
思わず出てしまったラウルの笑い声を聞きながらフィオナは肩を落とした。
(少しでも感動した私が馬鹿だったわ…)
4人の中に少し明るい雰囲気が戻ってきた。
もうすぐクロガネも視認できるくらいに近づいてくる。
それでも腑に落ちない何かが消えることはなかった。

75もしもR組がOGに出たら:2003/11/10(月) 03:53
その日の夜、フィオナは一人で艦長室の前にいた。
扉の前に立ってインターフォンを押そうとし、その手を下ろすといった事を数分繰り返している。
また少し悩んだ後、意を決したような顔をしてインターフォンを押した。
「どうぞ」
「…失礼します」
中からのレフィーナの声を聞き、開いた扉の中に入っていった。
「あら、フィオナさん、どうしたんですか?さあ、そちらに座ってください」
艦長室のデスクにはスコッチが注がれたグラスがあった。
真面目なレフィーナのイメージに似合わないそれに気付き、思わずフィオナは聞いてみた。
「お酒…飲まれてたんですか?」
「あ…ええ、尊敬していた人たちがよくお酒を飲まれててね。真似して飲み始めたんですよ。
 私はあんまり強くないから本当に少しずつですけど。
 …規律違反ですから内緒にしてくださいね。
 って私のことばかり話してもしょうがないですね。何か話があるんじゃですか?」
急に話を振られたフィオナは言いにくそうにした後、姿勢を正してレフィーナの顔を見た。

「共同墓地でキョウスケさんに会ったんです。
 そこで聞いたんですけど、エクセレンさんって人を殺したって…どういうことでしょうか?」
初めは彼女を守りきることができなかったという意味だろうと思った。
しかしそれを言ったときのキョウスケの顔や、リュウセイの態度を見ると
それだけではないような気がする。
彼らに改めて聞くことははばかれるがレフィーナなら何か知っているのではないか、
そう思ったのである。
レフィーナは黙ってスコッチを一口飲んだ後、聞き返した。
「なぜそんな事を聞くんです?あなたにそれを知る必要が?」
「……わかりません。ただ…気になるんです。単なる好奇心とかじゃなくて…」
フィオナの言葉を聞き、一つ溜息を吐いてレフィーナは話し始めた。
「5年前、私たちの敵はエアロゲイター…帝国監察軍だけではありませんでした。
 今はなぜか出現しなくなりましたが、アインストという正体不明の敵もいたんです。
 そして…」

76もしもR組がOGに出たら:2003/11/10(月) 03:54
何度目かのアインストとの戦闘の後、突然エクセレンは失踪した。
次に彼女が現れたのはアインストの集団の中、敵としてだった。
恋人だったキョウスケは説得を何度も試みたが効果は見られなかった。
そしてその日が来た。
アインストの罠に掛かりキョウスケ以外の者が出撃できないときにエクセレンが現れた。
艦を、他の仲間を守るためにキョウスケができたのは一つだけだった。
エクセレンが乗る機体の撃墜。
脱出装置は、働かなかった。

「それから大尉は変わりました。元々よく喋る人ではなかったんですけど、めっきり無口になって…
それに戦闘でも…」
元々突撃戦法を得意としていたキョウスケだったが、特に無茶な突撃をすることが多くなった。
今まで生きてこれたのが奇跡と思えるほど機体も壊れた。それでもその戦い方を止めようとしない。
これは、キョウスケにとって自分に対する罰なのだ。戦うこと、死ぬこと自体が罰ではない。
仇を討とうにもその相手はいない。自ら命を絶とうにも、そんな安易な死では自分が許せない。
その状況でどこまでも不器用な男のできる唯一の贖罪。
それはエクセレンのいない世界で戦い、生き続けること。
どんなに苦しもうとも、傷つこうとも続けられるだろう。
いつか意味のある死が彼を全てから開放するまで。

「そんな…そんなのって…」
「キョウスケ大尉だけではありませんよ。リュウセイ中尉もL5戦役でチームメイトを
 亡くしてしまいました。彼ら以外にもこの艦にいる人は大体同じような傷を持っています。
 私も…大切なものを失いました」
レフィーナは手に持ったグラスを見つめた。いつの間にかグラスは空になっていた。

フィオナは愕然としていた。自分の周りにいる者の想像していた以上に過酷な生き方に。
それに比べると自分たちのやろうとしていることが、とても自分勝手で幼稚なものに感じられる。
自分にはここにいる人たちと共に戦う資格すら無い様にさえ思えてきた。
フィオナが何も言葉を発することができずにいると、後ろの扉がいきなり開いた。

77もしもR組がOGに出たら:2003/11/10(月) 03:54
「艦長、いつの間にそんなにおしゃべりになったんだ」
キョウスケが艦長室に入ってきた。先程の話の直後だったためフィオナは驚いて思考が停止した。
「大尉…女同士の会話を盗み聞きですか?」
「部屋に入ろうとしたら聞こえてきただけだ。それにそんな話でもなかっただろう」
「キョウスケさん…その…」
何か言わなくてはと思いキョウスケの方を見たが目が合うと二の句が告げなくなってしまった。
その暗い瞳に自分の全てが見透かされるような気がして酷く惨めに感じる。
自然と涙があふれてきた。
「私…その…ごめんなさい!」
結局何も言うことができず、ただそう謝ってフィオナは艦長室を飛び出した。
キョウスケはしばらく扉の方を見た後、フィオナが座っていた椅子に腰掛けた。

「女の子を泣かせるなんて男の風上にも置けませんね」
「……さっきといい、最近ショーン副長に似てきたんじゃないのか」
微笑みながら言うレフィーナにキョウスケは心底呆れた顔をした。
「フフ…そうですか?とにかく何の御用でしょう」
「分かっているだろう、オペレーションSRSの確認についてだ」
「そうだと思いましたけど。どうですか、彼女たちは?」
急に真面目な顔になりレフィーナは聞いた。
オペレーションSRS、三日後行われる地球圏の存亡をかけた作戦の名前である。
「センスはいいものを持っている。機体性能も中々のものだ。
 贅沢を言えばもう少し経験を積ませたかったが時間がないしな。
 まあ、足手まといにはならないだろう」
「厳しいですね。まあ、私たちには人員を選んでいる余裕なんてないんですけど」

78もしもR組がOGに出たら:2003/11/10(月) 03:54
フィオナと共同で使っている部屋にいたミズホは、
今まで見当たらなかったフィオナが急に入ってきて驚いた。
「フィオナ、一体どこにいたんですか?…もしかして泣いてます?」
フィオナは目をこすり涙をぬぐって、明るい声で答えた。
「ううん、ちょっと艦内を散歩していただけ。なんでもないよ。
 …今日は色々あって疲れちゃったからもう寝るね。おやすみ」
「……おやすみなさい」
ミズホは心配そうにフィオナを見ていたが、
どうしたらいいのかわからなかったのでフィオナがベッドに入るのを見とどけた後
自分もベッドにもぐりこんだ。

ベッドに入ったフィオナだったがレフィーナの話が頭から離れず眠れずにいた。
枕を抱きしめながら、明日どんな顔で皆に会えばいいか考えたが全く思いつかない。
自分は何をするべきなのか、何ができるのか。そんなことが頭の中を回る。
その日、フィオナは結局ほとんど眠ることができなかった。

79もしもR組がOGに出たら:2003/11/10(月) 03:55
「…オナ…フィオナ!」
心ここにあらずといった感じでエクサランスのコクピットで整備をしていたフィオナは
同様に整備していたラウルからの通信にやっと気が付いた。
「え…何?」
「何?じゃないよ。ラージがさっきから呼んでるぜ」
下を見ると確かにラージがエクサランスの足元でこちらの方を見上げている。
「ホントだ…ごめんラージ!どうしたの?」
「時流エンジンのチェックをしますから出力を50%まで上げてください!」
少し苛立っているようなラージの声を聞き、フィオナは慌ててエンジンを起動した。
エンジンの機動音が格納庫の中に響き渡る。
その中でミズホが心配そうな顔でフィオナの方を見つめていた。

ロビーのベンチに座り俯いてまた悩んでいたフィオナだったが、
急に首筋に冷たいものを当てられて驚いた。
「キャ…ラウル!」
ラウルは笑いながら両手に持っていたジュースの入ったカップの片方をフィオナに差し出して
隣に座った。
「今が戦闘中だったらお前は死んでいる…なんてな」
冗談を言って茶化した後、ラウルは神妙な顔をしてフィオナの顔を覗き込んだ。
「一体どうしたんだ?今朝からおかしいぞ。ミズホも心配していたけど、
 昨日の夜何かあったのか?」
「うん、ちょっと…」
「俺にも言えないようなことなのか?」
「ううん、そうじゃない…実はね…」
フィオナは昨日レフィーナに聞いた話をした。
キョウスケの過去、リュウセイの仲間、この戦いまでに失われていった命。
そして自分たちはこのままでいいのだろうか…

「そっか…そんなことが…」
ラウルはジュースを飲みながら天井を見上げた。
「でもさ…酷な言い方だけど俺たちが悩んでもどうしようもないんじゃないかな。
 全てはこの戦いに勝ってから…だろ?」
「そう…かもね」
少し明るい表情に戻ったフィオナを見てラウルは安心した。
「そうそう、大体フィオナの頭は深く考えることに向いてはいないんだからさ。
 悩んだって意味ないって」
「そうね…ってあんただけには言われたくないわよ!」
「ちょ…フィ、フィオナ…首…き、極まってる…って」
数分後、医務室に青い顔で意識を失ったラウルが運ばれてきた。

80もしもR組がOGに出たら:2003/11/10(月) 03:55
「…以上がオペレーションSRSの内容だ。質問は?」
オペレーションSRS決行の前日、ブリーフィングルームにパイロットが集められ、
キョウスケから作戦内容の説明があった。
その内容は至極単純なものだった。
まず、PT部隊による敵旗艦ヘルモーズへの攻撃。
それにより人型兵器の陽動。
そこにクロガネの回転鋭角を用いてヘルモーズ内部への突入。
そしてPT部隊も突入し、艦の中枢を破壊というもの。
地球圏存亡を賭けた作戦としてはいささかお粗末で無茶なものとも思えるものだが、
彼我戦力差を考えてもこれが最善の策だ。
そしてその前準備としてレジスタンスは地上での大胆な活動を行い、
帝国監察軍の戦力を地上へと向けさせていたのだ。

「作戦成功確率はどれくらいなのでしょうか?」
リュウセイの隣に座っていた見知らぬ女性が手を上げキョウスケに質問した。
フィオナとラウルは「誰?」と囁きあう。
「…成功確率は9.23%だ。ただしこれが最も高い数値でもある。
 ラトゥーニ少尉以外に質問は無いか?」
その想像していたよりも低い数値を聞き騒々しくなった部屋を見渡し、
キョウスケは先程までより大きな声で言った。
「無いようだな、ではこれで解散する。今日は全員よく休んでおけ」

81もしもR組がOGに出たら:2003/11/10(月) 03:55
会議が終わった後、ミズホと2人で廊下を歩いていたラウルは、
展望室に入っていくリュウセイを見かけ、つられるように展望室の中に入った。
窓から宇宙を見ていたリュウセイだったがそこに映るラウルたちを見て振り向いた。
「ラウル…何か用か?」
フィオナにはああ言ったものの話しかけづらくなってしまっていたラウルは戸惑った。
「あ、いや、別に用というほどじゃないんですけど」
「すまないな」
「はい?」
急にリュウセイに謝られて何を言っているのかわからず思わず聞き返した。
「危険な作戦に巻き込ませてしまった。
 元はといえば俺たちが5年前に負けてしまったのが今の地球圏の状況の原因だ。
 本当なら俺たちだけでケリをつけるべきなんだろうけど」
「そんなこと気にしてません。自分たちからレジスタンスに参加するのを志願したんですから。
 それに誰もリュウセイさんたちを責めてはいませんよ。
 リュウセイさんたちも大切な人を亡くして今まで苦しんできたんでしょう」
言ってしまった後でしまったとラウルは思ったが
リュウセイは気を悪くした様子も無く、また窓の方を見た。
「ああ、そうだな。だから今度は失くさない。命に代えても…」

「リュウセイ…」
先程ラトゥーニと呼ばれた女性が入ってきた。
ラトゥーニの様子を見て女の勘からか何か閃いたミズホはラウルの腕を引っ張った。
「ほらラウル、エクサランスのチェックをしなくちゃ。明日はガンナーで出撃ですよ」
「え?それは会議前に終わらせたはずじゃ」
「…鈍感。いいから行きますよ」
そのままミズホはラウルを引きずって展望室から出て行った。
「何だ?あいつら」
「…こっちも鈍感」
ミズホの意図が全く理解できなかったリュウセイには小声で呟いたラトゥーニの声も聞こえなかった。
「リュウセイ…さっき命に代えてもって言ってたけど…」
「聞いてたのか…」
「駄目…だからね、死ぬなんて考えたら。そんな事をしたってライ少尉もアヤ大尉も喜ばない…
それに…リュウセイがいなくなったら…私…」
ラトゥーニはそう言って俯いた後、首を振った。
「ううん…リュウセイはアヤ大尉の面倒をずっと見るんでしょう。だから…生きなきゃ」
「…そうだな。生きて帰らなきゃいけないよな」
また窓の外を見て言ったリュウセイを見て、ラトゥーニはぎこちない笑顔を浮かべた。

82もしもR組がOGに出たら:2003/11/10(月) 03:56
艦長室ではレフィーナとテツヤが向かい合わせで椅子に座っていた。
「よく考えてみれば副長とこうやって2人きりでお酒を飲むのは初めてでしたね」
「自分は酒が全く駄目ですから…」
「これはそんなに度が高くないから大丈夫ですよ」
ワインを2つのグラスに注ぎながらレフィーナは言った。
「本当に副長には感謝しています。副長がいなかったら私の時間は5年前で止まったままでした」
「そんな、艦長がいらしたからこそ我々もここまで戦って来れたんです。
 それに艦長の下について支えていけというのがダイテツ中佐の最後の命令でしたから」
それを聞いてレフィーナは目を伏せた。
「そう…だったんですか…」
「いえ!命令でなくても自分は艦長の下に入る事を望んだだろうし
 …できることなら、これからもずっと艦長を支えていけたら…って何を言っているんだ俺は
 ……ええい!」
急にしどろもどろになったテツヤはグラスのワインを一気に飲み干し、
真剣な顔でレフィーナを見つめた。
「艦長!この戦いに生き残ることができたら、自分と…」
そう言うテツヤの口に指を沿えレフィーナは止めた。
「副長…私、好きなものは最後まで残しておくタイプなんです。
 だから…それは全てが終わった後聞かせてください。
 ただ…今は…名前で呼んでもらえませんか?」
「艦…レフィーナ…」
そして薄明かりの中で2つの影は重なった。

83もしもR組がOGに出たら:2003/11/10(月) 03:56
ついにオペレーションSRS決行の日が来た。
ラグランジュポイント5に到達したクロガネの前方に
帝国監察軍旗艦ヘルモーズ、コードネーム・グリーンフラワーが見える。
カタパルトから次々と発進していくPTに続き、フィオナたちが乗るエクサランスも発進した。
「でかい…」
遠くにいても視界のかなりの部分を占めるヘルモーズを見てラウルは呟いた。
クロガネの数倍の大きさはある。
「サイバスターがいれば少しは楽になったかもしれないけどな」
「マサキは…まだラ・ギアスから帰ってきてないから…地上のことは…私たちで何とかしなきゃ」

リュウセイたちの会話を耳にしながらフィオナは不安そうな顔でヘルモーズを見た。
ラウルに言われたことはわかっているのだが
それでもキョウスケが乗るフリッケライガイストを見るとつい悩んでしまう。
そこにキョウスケからフィオナに個人回線で通信が入ってきた。
「フィオナ、この前艦長に聞いた事を忘れろとは言わん。
 だが俺たちの過去はお前たちには関係のないことだ。
 戦闘中に他の事に気をとられると死ぬことになる。今はただ…生き残る事を考えろ」
「キョウスケさん…はい」
部隊の展開が終了すると、ヘルモーズからも敵機が出撃してきた。

全部隊にレフィーナの通信が入る。
「こちらクロガネ…全機へ、聞こえますか。
 今まで…多くの同胞たちがその命を散らしていきました。
 我々がここまで来れたのも、その屍を礎にした血塗られた階段を上ってきたからです。
 彼らの想い、彼らの願い、決して無意味なものにしないためにも…
 この戦い、負けることは許されません!
 皆さんの奮戦を期待します!!」

84アクセルs:2003/11/10(月) 03:58
幼女────
汚れ無き未成熟な体に純粋な心を持ちし幼い女の子の事である。

そんな天使のような幼女に黒い魔の手が忍び寄っていた!
そいつらは、全ての幼女を大人にしてしまおうとする
     悪の組織《アンチロリータ》
幼女達は抵抗も空しく次々と奴らの手によって大人にされていった
しかし!そんな時に何処からかそいつは現れた!
全身が真っ赤なパワードスーツを着て
額にチャームポイントの真っ赤な1本の角を付け
端ら辺に○の中に《幼》の字のある真っ赤な布を首に巻き
そして、目の部分は唯一赤くない黒いサングラスを付け
そいつはやって来た!!そいつの名は・・・・
     幼女大佐ロリッシャー!!!!!

《幼女の味方》

?「突然だが諸君、君達は幼女が好きかね?
私は幼女が好きだ!嫌、大好きだ!!
あの汚れ無き未成熟な体を触れるのが好きだ。
白く純粋な穢れの無い心を自分色に染めるのは何とも言えない。
しかし!しかしだ!!
こんなに素晴らしい幼女を大人にしてしまうなどと言う
人生の半分を嫌!90%以上を無駄にしている哀れな者達が居る
そいつらの居る組織の名は《アンチロリータ》
まったくもって哀れな者達である・・・幼女の素晴らしさに気付かないとは
本当に哀れだ・・・そこで今回、私は《アンチロリータ》の諸君らに幼女の
素晴らしさを教える為、そして幼女を守る為に立つ上がったのである!!」

シャア「それと、最後になるが自己紹介をしておこう。
私の名前は《シャア=アズナブル》皆は私の事を大佐などと呼ぶ。」
ピキーーーン!
シャア「む?早速幼女のピンチのようだ!
それでは諸君!!また何処かで会える事を祈る!!たぁっ!!!」

85ハマーン:2003/11/10(月) 03:58
『ある日の暖かい午後』

その日はまだ陽が高いうちに仕事を終える事になった。
寡黙に作業を進めるキョウスケは人より仕事のスピードが速い。
普段からこういうわけではないが、時に定時より早く仕事を終えて帰宅する事もある。
「まだ時間はあるか」
今日のエクセレンは非番、この後アルフィミィでも連れて何処か出るかと思っていた。

「ただいま」
いつもならアルフィミィが飛んでやってくるはずなのだが、今日に限って家の中はやけに静かだった。
「時間出来たから皆で何処か行くか…」
リビングにまで来てキョウスケは家の中がやけに静かなわけを知った。
アルフィミィが窓際のソファーの上でぐっすりと昼寝していたのだ。
「まったく…気持ちよさそうに寝てるな。これでは起こせんか」
キョウスケはアルフィミィの側まで行き、軽く彼女の髪を撫でながら呟いた。
「キョウスケ、何してんの?」
キョウスケが視線を上げるとそこにはエクセレンの顔があった。エクセレンの両手には恐らく取り込んだばかりであろう洗濯物。
「キョウスケ〜寝た子に何をしようとしてたのかしら。まさか……」
「別に何もしてないぞ」
「わかってるわよ。だってアルフィミィ…こんな天使のような寝顔だもんね」
エクセレンもアルフィミィの髪を優しく撫で上げる。アルフィミィは相変わらず気持ちよさそうな寝顔をしている。
そしてそれを見守るエクセレン。
「エクセレン………今の顔、お前も天使みたい…だったぞ」
言ってすぐ視線を外に向けるキョウスケ。しばしポカンとした表情のエクセレン。
(慣れない事を言うものではないな)
「キョスケもちゃんと言えるじゃない♪
 じゃあ、この家にはふたりも天使がいるのよねぇ。キョウスケの幸せ者♪」
「そうだな」
(こんな気持ちのいい日は、部屋でごろごろしてるのも悪くないか…)

「ん…」
それから数10分後、アルフィミィがぱちっと目を覚ました。そしてごしごしと目をこする。そして感じる重い感覚がふたつ。
「?」
全く状況の分からないアルフィミィの右側にはキョウスケ、左側にはエクセレンが彼女を挟むように居眠っていた。
「キョウスケ、エクセレン起きるですの。重いですの」
窓からは今も暖かい日差しが3人を優しく照らしていた。

86ハマーン:2003/11/10(月) 03:59
『いつかのメリークリスマス』


 ゆっくりと12月の明かりが灯りはじめ、慌ただしく踊る街を誰もが好きになる。

「キョウスケ、クリスマスって何ですの?」
キョウスケの膝の上でテレビ番組を見ていたアルフィミィが唐突に訪ねた。
 時は12月、世間はクリスマス一色だった。
「クリスマスというのはだなキリストの誕生を祝う日だが、今ではほとんど関係ないな。
 普通にパーティーなんかをしたりするものだ」
「パーティー…楽しそうですの」
「それとねぇ、クリスマスには好きな人にプレゼントをあげたりするのよ」
入浴を終えたエクセレンがガウン姿でリビングへ入ってきてそう付け加えた。
 その後はクリスマスのカップルの過ごし方などの独演会へと続いていった。
「クリスマス、プレゼント……」
相変わらず独演会を続けるエクセレンとそれを無視してテレビを見るキョウスケを尻目に、
アルフィミィの中にひとつの思いがあった。

87ハマーン:2003/11/10(月) 03:59
 それから数日後のナンブ家。
「最近のアルフィミィ…自分の部屋に閉じこもってばかりね」
「ああ、そうだな」
夕食と入浴を終え、普段ならば3人揃っての団欒の時間のはずなのだが、
アルフィミィは入浴を終えると「用事がありますの」とさっさと部屋へと戻っていってしまった。しかもそれが数日続いている。
「ちょっとキョウスケ、様子を見てきてくれない?」
「どうして俺が」
「こういう時は父親の仕事よ。たまには父親らしく振舞いなさいよ」
キョウスケは重い腰を上げるとアルフィミィの部屋へと向かう。
 まさかアインストの…という考えが一瞬脳裏を過ったが、それはないとその考えを振払った。
「アルフィミィ…入るぞ」
ドアをノックして部屋に入ろうとするキョウスケ。ドアには鍵がかけられてあった。
 キョウスケ自身の風習として部屋のドアに鍵をかける事はないのだが、「年頃女の子には見られたくない秘密が多いものよ」と、
エクセレンが鍵をつけさせたのだった。
「キョウスケ!?
 ダメですの。入っちゃダメですの」
わざわざ鍵を開け、少し開いたドアからアルフィミィが顔を覗かせた。ドア越しに初めて見るアルフィミィの部屋は年相応に可愛らしいものだった。
「聞いてるんですの?
 忙しいから出てってほしいですの」
「ああ、すまん」
小さな手と女の子の弱い力で頑張ってキョウスケを押し出すとドアを閉めた。
 キョウスケはとりあえずアインスト関係の心配はないと思いつつも、やれやれという感じでリビングへ戻った。
「で、どうだったの?」
リビングではエクセレンが入浴後にいつも行っている体操の最中だった。
 パジャマを着てするのではなく、いつも素肌の上にガウンを纏った状態でやっているのだけは、やめて欲しいとキョウスケは言っているのだが、当のエクセレンは聞く耳を持たない。
 以前この時にブリットが訪ねて来た事があって、ちょっとした騒ぎにもなった。
「何も…部屋にすら入れない状態だった」
「おかしいって事は?」
真面目な顔になってエクセレンが聞く。彼女にとってもまだアインストの事が気にかかるのだ。その心配はないだろうとキョウスケが答えると、ようやく安堵の表情を浮かべた。
 キョウスケがソファーに座ると、エクセレンも体操を終えて彼の横に座る。アルフィミィが来てからしばらくなかったふたりだけの時間。彼女の為に酒を入れてやると、グラスを前に差し出した。
「キョウスケ、クリスマスプレゼントって決めた?」
「いや…子供向けのプレゼントなんて思い浮かばんしな」
それでもふたりの間の会話はやはりアルフィミィの事になってしまう。
 ふたりの間のちゃんとした子供というわけではないが、そういう事が問題ではない。
 アルフィミィが側にいるだけでより人に優しく出来る、穏やかな気持ちになる。
 そして何より大切にしたいと思える気持ち。そういうのが大事だという事。
「お前は決まったのか?」
「もっちろん。準備はもう整ってるわよ。
 キョウスケは決まってないだろうと思って、ちゃんとキョウスケの事も考えてあるわよ♪」
その時のエクセレンの表情は小悪魔的なちょっと悪戯心を匂わせる微笑みを浮かべていた。

88ハマーン:2003/11/10(月) 03:59
 12月24日。クリスマスイヴ。
 この日はふたりとも通常勤務で、夕方になるまで仕事をする事になっていた。その辺はクリスマスだからというのとは関係ないものである。
 夕方、作業を終えるとエクセレンとキョウスケは近くのショッピングモールへと向かう。キョウスケからアルフィミィへのプレゼントを買うためだ。
 結局あの日エクセレンはキョウスケに何を買わせるかというのを教えずに、「私に任せといて」と言うだけだった。
 キョウスケは嫌な予感がするとは思いながらも、ひとりでは考え付くことなどできないと腹を括っていた。
「キョウスケは、これを買ってプレゼントするのよ♪」
「こ…これをか? 分の悪い賭けだな……」

 ちょっと遅くなってふたりは家へと戻ってきた。部屋の中は電気はついているものの、やはりアルフィミィは自室で閉じこもっているようだった。
「ただいまぁ、アルフィミィ。これからパーティやるわよ〜♪」
荷物を抱えてエクセレンがキッチンへと向かった。その後を例のプレゼントを抱えたキョウスケが気配を察知されないようにリビングへと移動していた。
 もう夜も遅いのでこれから料理をするわけではなく、あらかじめ買っておいたものなどを調理するくらいだから短時間で準備はできあがる。
「キョウスケ、準備できたわよね? アルフィミィ呼んできてくれない?
 来ない…とは思わないけど、一応ね」
リビングの方でパーティーの準備を終えたキョウスケは、アルフィミィの部屋へと向かう。
 思えばあれからあまり顔を合わせていない。顔を合わせるのは食事の時間くらいだけだろうか。エクセレンは一緒に入浴してるから、
その分だけは若干会う時間は多いのだが、それでも大差はない。
「アルフィミィ、パーティーの準備ができたぞ」
「もうちょっとですの。もうちょっとしたら行きますの」
ドアをノックしてドア越しに伝えたキョウスケの言葉に応えた。キョウスケは「分かった、待っているぞ」とだけ言い残してリビングへ戻る。
 既にそこには多くの料理が並べられていて、飾り付けが華やかだった。
 キョウスケの話を聞いたエクセレンは、ふたりのグラスにはシャンパン、アルフィミィのグラスにはジュースを入れて待つ事にした。
 アルフィミィの部屋のドアが開く音を聞くと部屋の明かりを消し、キョウスケがケーキのロウソクに火をつけた。
「わ…暗いですの」
リビングの暗さにアルフィミィが驚いた表情で言葉を紡いだ。
「Merry X'mas. アルフィミィ♪」
「メリークリスマス、アルフィミィ」
そのアルフィミィをエクセレンとキョウスケがクリスマスを祝う挨拶で迎えた。とてとてとアルフィミィがふたりの側まで来る。
「ほらアルフィミィ、ケーキのロウソクの火を消して」
「はいですの♪」
エクセレンに促されるままにアルフィミィがふ〜っと息を吐いてロウソクの火を消した。
(誕生日じゃないんだがな)
ついそんな事を思ってしまったキョウスケだが、それも野暮な事か…とそう思うのをやめにした。

89ハマーン:2003/11/10(月) 04:00
「じゃあ、これからプレゼント交換ね」
親子3人のパーティーもそろそろ終わりを迎えようとしていた。
 アルフィミィも楽しそうな顔をしてるし、キョウスケも普段の表情とあまり変わらないような気がするがきっと楽しんでいる。エクセレンにはそう感じる事が出来た。
「まずは私からアルフィミィへ」
包みをアルフィミィへと渡す。開けてみてと言われたアルフィミィがその包装を解くと、中は化粧用の道具箱だった。
「アルフィミィは私と一緒で素がいいし、きっと化粧したら可愛くなるわよ♪」
次はキョウスケの番よ…とウィンクで合図を送るエクセレン。
「次は俺だ。俺からはこれを……」
キョウスケは立ち上がり部屋の隅から大きな物体を運んできた。
「わわ…おっきいですの。くま?」
アルフィミィの前へ移動されたそれは、大きなシロクマのぬいぐるみだった。体長にして1.5Mもある大型のもの。先ほど買ったプレゼントというのはこれの事だった。
 アルフィミィはその大きなぬいぐるみをしばらく抱きしめると、「プレゼント取ってきますの」と部屋へと戻っていった。
 数分後、リビングに戻ってきたアルフィミィの手には何かが握られていた。
「えっとプレゼント…色々考えたけど、なかなか思いつきませんでしたの。
 だから絵を描いてみましたの。私とキョウスケとエクセレン。ずっと一緒ですの。そう思って描きましたの」
アルフィミィの手にあったそれは3人揃った記念写真のような絵だった。上手ではないけれども、アルフィミィの気持ちが十分に伝わってくる、優しい絵だった。
「アルフィミィ…」
「アルフィミィ、ありがとう。私たちはずっと一緒よ」
エクセレンがぎゅっとアルフィミィを抱きしめる。
「キョウスケも、エクセレンも嬉しいですの。クリスマスっていい日ですの」

 いつまでも手を繋いでいられるような気がしていた。何もかもが煌めいて、がむしゃらに夢を追いかけた。
 喜びも悲しみも全てを分かち合う日々が続いていく事。それを思って微笑みあえる、いつかのメリークリスマス。

Fin.

90もしもR組がOGに出たら:2003/11/10(月) 04:01
「そこだ!」
迫り来るゼカリアにラウルの乗るエクサランス・ガンナーのガトリングビームガンが命中し
また一つ宇宙に小さな光が灯った。
「ったく、どんだけ倒せばいいんだよ!」
ラウルの叫びに近いぼやきも仕方がない。もう戦闘開始から全体で100機近くは撃墜している。
それでも、初めからわかっていたことだが物量戦では分が悪い。
レジスタンスの味方機もかなりの数が撃墜、もしくは中破で戦艦に戻っており
戦闘している機体は初めの半分近くに減っていた。
「がんばりなさい!あと少しの辛抱よ!」
フィオナの激が飛ぶが、このセリフももう5回目である。
疲労感が漂ってきたところにリュウセイの声が届いた。
「もうそろそろ打ち切りらしいぞ」
確かに今まで次々と出てきた敵の増援がいつの間にか途絶えていた。

「今です!艦首超大型回転衝角始動!」
クロガネの艦首モジュール、超大型回転衝角が回転を始める。
「テスラドライブ最大出力!」
「ロケットエンジンクラスター点火!」
ブリッジの中に声が響く。緊張した顔をしたレフィーナは一度目を伏せた後
前方のヘルモーズを睨み、叫んだ。
「全速前進!クロガネ突撃!!」

91もしもR組がOGに出たら:2003/11/10(月) 04:01
「クロガネが動いた!?」
「行けぇぇぇ!!」
ヘルモーズへ向うクロガネを見てフィオナたちは祈るような気持ちで叫んだ。
回転衝角がヘルモーズの装甲を貫く
…かと思われたが、装甲まであと数メートルという所でクロガネは遮られてしまった。
「これは…ホワイトスターと同じ積層式フィールド!?」
テツヤが驚愕に満ちた声をあげる。
艦全体が振動する中このままでは艦体自体がもたないと判断したレフィーナは後退を命じた。
「くっ、エンジン逆噴射!後退します!」

「駄目…だったのか?」
虎の子の作戦が失敗したのを見てレジスタンスの誰もが諦めと絶望の言葉を漏らす。
その隙を突いてヘルモーズの艦首がレジスタンスの部隊の方へ向いた。
「敵艦艦首に高エネルギー反応!」
「!?Eフィールド出力全開!PT部隊は射線上から避難してください!」
ヘルモーズのレギオン・バスターが閃光と轟音を携え放たれた。
「ち、ちょっと待った!」
PT部隊が四散する中、ラウルが反応が遅れ取り残されてしまった。
「ラウルーー!!」
フィオナの悲痛な声が周囲に響いた。

92もしもR組がOGに出たら:2003/11/10(月) 04:01
レギオン・バスターの閃光が収まり、宇宙に静寂が戻った。
「ラウル!大丈夫なの!?ラウル!!」
「大丈夫だ…キョウスケさん!?」
取り乱した声を上げるフィオナにラウルは返事しようとしたが、前の光景を見て驚いた。
エクサランス・ガンナーの前方にフリッケライ・ガイストが立っていた。
フリッケライ・ガイストが盾となったためラウルは助かったらしい。
「騒ぐな、まだ動ける」
どうやら無事らしいキョウスケの声にラウルたちは安心したが
最悪の状況は今だ変わっていない。
「各機、クロガネに戻ってください。一旦離脱します!」
「駄目だ」
レフィーナの後退命令が下ったが即座にキョウスケは拒否した。
「このまま後退してもまた敵の戦力を集中させるだけだ。
 勝てるチャンスは今しかない」
「しかし大尉、あの積層式フィールドがある限りこのままでも勝ち目は…」
「まだ…打てる手はある」
キョウスケはそう言うが八方塞がりのこの状況で
そんな物があるとはレフィーナには思えなかった。

「フリッケライのステークにはフィールド貫通機能がある。
 全エネルギーをそれとブーストにまわせば艦体まで届くはずだ。
 そこに回転衝角で突撃すればクロガネでいける」
「ふざけるな、キョウスケ!そんな事をしたら…」
リュウセイが大きな声を上げる。
確かにフリッケライガイストを点としフィールドにぶつければ
艦体に到達する可能性はわずかながらにあるかもしれない。しかしその数値はかなり低い。
しかも、例えそれが成功したとしてもフリッケライガイストは確実に回転衝角に巻き込まれる。
脱出も不可能だ。
「そうです!ここで大尉を失うわけには…っ!?」
キョウスケの提案を聞き入れることができないと判断したレフィーナだったが、
モニターに映るキョウスケの顔を見て言葉を失った。
キョウスケの目からはすでに光を失われている。誰が見ても明らかだった。
「大尉…」
「さっきのビーム自体はバリアーで何とか防げたが…光にやられた。
 もうまともに戦うことはできん。だが方角と距離さえわかればステークをぶつけることくらいはできる。
 …早く判断しろ。時間はないはずだ」
ラウルが弱々しい声を上げる。それも仕方がない、自分のミスが原因なのだ。
「俺が勝手にやったことだ。気にするな」
そんなラウルに対するキョウスケの声の中には
いつものぶっきらぼうな様子だけでなく少しだけ優しさが感じられた。

93もしもR組がOGに出たら:2003/11/10(月) 04:02
レフィーナは迷った。
5年前、多くの部下を失っておきながら自分はダイテツとショーンの計らいで生き延びてしまった。
ここでもまた犠牲にしなければ、同じ過ちを繰り返さねばならないのか…
「艦周辺に重力震反応!」
そんな思考もオペレーターであるユンの声に遮られた。
クロガネの周りを囲むように敵機が現れる。打ち止めかと思われたがまだ戦力が残っていたらしい。
「副長……キョウスケ大尉に敵艦座標の伝達を」
「艦長!?」
「これ以上の被害を被るわけにはいきません!」
テツヤはまだ何か言おうと口を開いたがレフィーナの頬を流れる涙を見て歯を食いしばった。
「大尉…敵艦は現在のフリッケライの位置から2時の方角、距離300だ…」
「了解」

「何で…何で皆止めないんですか!?死ぬことなんてないですよ!」
「フィオナ、それくらいにしろ」
他の者の反応が信じられないようにわめくフィオナをリュウセイが止めた。
「リュウセイさん…だって…」
「これは戦争なんだ!絶対に…負けられない戦争なんだよ!」
リュウセイの叫びに思わずフィオナはひるんだ。
誰も納得などしていない。しかしこれは戦争、誰かが死ぬというのは当たり前の事。
改めて自分は戦場に立っているということを知った。
「リュウセイ、後の戦闘指揮は頼んだ」
「ああ……」
「キョウスケさん!俺…」
ヘルモーズの方へ向いたキョウスケに向けてラウルは言葉をかけようとしたが
何を言えばいいのかわからず言葉が続かなかった。
「…お前たちは俺のようになるな。守りたいものは決して諦めずに最後まで守り通せ。
 お前たちには何もしてやれかったが…最後の命令だ」
その通信の後、フリッケライガイストはヘルモーズに向けて突撃した。

94もしもR組がOGに出たら:2003/11/10(月) 04:02
フリッケライガイストの右腕とフィールドがぶつかり合い。じわじわとステークが押し込まれる。
しかしフィールドの斥力もかなり強く、激しい振動がコックピットにも伝わってくる。
「さすがに…この賭けは分が悪すぎたか…」
精一杯の力で機体を押さえながらキョウスケはひとりごちた。
しかしその顔は警報が鳴り響くコックピットの中にふさわしいものではない。
キョウスケはわずかに笑みを浮かべていた。
左腕が吹き飛びながらもその表情を崩すことはしない。
「エクセレン…もうすぐ…お前の所に行けそうだ」

「キョウスケ…」

「!?…幻聴…か。フッ、思っていたほど悪い者でははないな。…最後だ!いけっ!フリッケライ!!」

95もしもR組がOGに出たら:2003/11/10(月) 04:02
ついにステークが艦体に辿りついた。同時にフリッケライガイストは機体の限界を超え、爆発を起こした。
「クロガネ、突撃!!」
そこにクロガネの回転衝角が突き刺さる。キョウスケが命を賭してフィールドに穴を開けたため、
一度目よりは進めているが、それでも抵抗はまだかなり強い。
「このままでは艦体がもちません!」
「諦めてはいけません!このチャンスだけは決して無駄にはできないんです!」
レフィーナの必死な言葉の直後、回転衝角がフィールドを突破した。艦体とぶつかり合い火花を散らせる。
そして数秒後、クロガネは艦体を突き破り、中へ突入した。
「今だ!PT部隊、突入!」
それまでクロガネの護衛をしていたPT部隊にリュウセイの指示が伝わる。
次々と残っていたPTがクロガネが空けた穴へ入っていった。

「リュウセイ中尉、敵艦内への全機突入確認しました」
「了解」
やっと突入したヘルモーズの中でユンからの報告を聞きリュウセイは返事を返した。
しかし、本来この報告を聞くはずだった男はもういない。
「キョウスケ…クッ、ちっくしょおおおおおお!!!」
静かな艦内にリュウセイの慟哭だけが響き渡った。

96もしもR組がOGに出たら:2003/11/10(月) 04:03
「艦体の被害はどのくらいですか?」
ひとしきり涙を流したレフィーナがテツヤに現状を聞いた。
いつまでも悲しんでいるわけにはいかない。まだ作戦は全て終了したわけではないのだ。
「艦首回転衝角はもう使い物になりません。
 また動力部にも被害があり通常航行は問題ありませんが、戦闘は不可能です」
かなり無理をして突入したのだ。この程度の被害で済んだことはむしろ幸運とも言えるだろう。
「わかりました、それでは本艦はここで待機します。
 PT部隊は二つに分け、一つは本艦の護衛、もう一つはリュウセイ中尉の指示に従って
 敵艦中枢部を破壊してください」
「了解…うっ!?」
レフィーナの指示を聞き自分が連れて行く人員を選ぼうとしたリュウセイは
頭の中に火花が散るような感覚を感じた。
この感覚は忘れもしない。5年前L5戦役のときに感じたものと同じ物だ。
「艦長…どうやらその必要はなさそうだぜ」
「えっ?」
レフィーナの疑問の声と同時にユンは周囲に起こった異常に気が付いた。
「重力震反応!大型機動兵器サイズの物体が転送されてきます!」

クロガネの前方に紫に輝く機動兵器が空間転移をしてきた。
今までに出現した帝国監察軍の機体とは雰囲気から違うそれを見てフィオナは思わず唾を飲んだ。
「こいつは…」
「ズフィルード…帝国監察軍の切り札。5年前もあと少しまで追い詰めたところでこれが出てきたわ。
 そしてこの一体のために私たちは全滅した…」
「そんなに強いんですか!?」
ラトゥーニの説明にラウルは動揺し、声を上げる。現在のレジスタンスの戦力は
5年前のそれと比べればやはり見劣りしてしまう。
それを全滅させたような化け物を相手に勝てるのだろうか…不安に思うのも無理はない。
「逆を言えば、こいつさえ倒せば後は雑魚だ。
 それにこのグリーンフラワーの中枢も兼ねているらしい…力の出し惜しみはするなよ」
そう言ってリュウセイが乗るR-1がズフィルードへ向かって突撃した。
他のPTたちも攻撃を開始する。2体のエクサランスもそれに続いた。

97もしもR組がOGに出たら:2003/11/10(月) 04:03
最後の戦闘が始まった。
レジスタンスたちは全力の攻撃を仕掛けるが
念動フィールドに遮られ、ズフィルード本体にまで届かない。
「フェアリーも効かない!?」
「単発の攻撃じゃフィールドを破るのは無理だ!複数の攻撃を同時に叩き込め!!」
リュウセイの指示を聞き、ラウルはフィオナに通信を入れた。
「聞いたかフィオナ!俺のプラズマカノンにフェアリーを合わせてくれ!」
「わかったわ!タイミングはそっちに合わせる!」
ガンナーのロングレンジプラズマカノンとコスモドライバーのフェアリーが同時に火を噴く。
さしものフィールドもこの一点攻撃には耐えられず、ズフィルードは直撃を受け体勢を崩した。
「いける!」
倒せない相手ではない。
希望が見えたことによりレジスタンスの攻撃も一層激しいものになる。
しかしズフィルードは大した被害もない様子で体勢を立て直し、先程攻撃を加えた相手、
コスモドライバーに攻撃目標を絞り、オメガウェーブを放った。
「くっ、避けきれない!?きゃあああ!」
直撃だけは避けたがその高威力にコスモドライバーは跳ね飛ばされ壁に叩きつけられた。

「大丈夫か、フィオナ!?フィオナ!!」
ラウルの声にも反応しない。壁に衝突した際に気絶してしまっていた。
動けないコスモドライバーに対し止めを刺そうとズフィルードは狙いを定める。
「させるかよ!」
何とか狙いを外させようとリュウセイたちは猛攻をかけるがものともしていない。
エネルギーの光が集まり攻撃が放たれるかと思われた時
ヘルモーズ全体が揺れだした。
「何!?地震…なんてわけはないし…」
「艦長、新たな重力震反応が!」
まだ何者かが出てくるのか。レジスタンス内に緊張が走ると
ズフィルードのそばで光が集まってきた。
集まった光が球体状になるとその中から漆黒の人型機動兵器が現れた。
「何だ、こいつは…」
その姿を見て思わずラウルは呟いた。

98もしもR組がOGに出たら:2003/11/10(月) 04:05
「ここは…?破壊神は…いないようだな」
新しく現れた機体から発せられた男の声を聞きリュウセイは思わず声を上げた。
「この声…イングラム教官!?生きていたのか!!?」
「R-1…それにその声はリュウセイか…どうやらまた違う世界に来てしまったようだな」
イングラムと呼ばれた青年は周囲を見渡し意味不明の言葉を言った。
「どういうことだ?」
「こちらの話だ。戦闘中なのだろう?手を貸す」
「!?…また、裏切るつもりじゃないだろうな」
リュウセイの疑いの言葉も当然かもしれない。
この男には一度手痛い裏切りを受けているのだ。
「そう思うのなら後ろから俺を撃っても構わん」
そう言ってイングラムの機体は背面の翼を開き戦闘態勢に入った。
その姿はさながら美しい堕天使のように見えた。

「ラウル、コスモドライバーを連れて一旦クロガネに戻れ」
「そんな!俺はまだいけます!」
受けた命令が納得いかないように言うラウルに対してリュウセイは落ち着いた声で返した。
「フィオナをそのままにしておくつもりか?それにもう戦うなといっているわけじゃない。
 簡単な修理を終えたらすぐ戻ってこい」
ラウルは一度コスモドライバーが倒れている方を見た。
「…わかりました」

99もしもR組がOGに出たら:2003/11/10(月) 04:05
格納庫へと運び込まれたエクサランスにラージとミズホが駆け寄る。
「ミズホさんは先にガンナーの修理へ。僕はフィオナを起こしてエンジンをチェックします」
「はいっ」
外側から手動でコックピットハッチを空けたラージは
ぐったりと気絶しているフィオナからヘルメットを外した。
一応外傷は見当たらないことに安心すると、頬を叩いて起こそうとした。
しかしフィオナはうめくだけで起きる気配はない。
起こすことを諦め、一旦外へ運び出そうとするがベルトをうまく外せず愚痴をこぼした。
「まったく、誰ですか。こんなにきついベルトにしたのは…」

「くしゅん…あ、ごめんなさい」
「それはいいから早く修理を終わらせてくれ!」
コックピットに入り込みフレームのチェックをしているミズホにラウルは叫んだ。
まだ外で戦っているリュウセイたちが心配なのだろう。
「フレームに異常はありませんね。修理は必要ありませんけど…
 っ!口の中を切ってるじゃないですか!」
口を拭ってみると確かに手の甲に血がついている。
興奮状態にあった戦闘中は気付かなかったが今になって鉄の味が広がった。
「こんなの大したことない!早く戻らないと…
 もう…人が死ぬのに何もできないなんて嫌だ!」
血をパイロットスーツに擦り付けながら取り乱したように叫ぶ。
結果的に自分のミスによってキョウスケを死なせてしまったショックを思い出したようだ。
「落ち着いてください!そんなんじゃ戻ったって何もできませんよ!
 …お願いだから…落ち着いて…」
自分の肩を掴み涙を流し始めたミズホを見てラウルは少し落ち着いてきた。
「わかったよ…ごめん、ミズホ」
「いえ私こそ…手当てをしますからヘルメットを脱いでください」

100もしもR組がOGに出たら:2003/11/10(月) 04:05
ラウルたちが格納庫に戻っている間も戦闘は続いていた。
驚くことにイングラムの乗る機体は一体だけでもズフィルードと互角に戦える力を持っていた。
むしろリュウセイとのコンビネーションによって押してさえいる。
だが他のレジスタンスは近づくことすらできず後方からの援護に専念するしかできない。
(イングラムの機体…何なんだ?地球やエアロゲイターだけじゃない。
 見たこともない技術が使われている?)
「リュウセイ!一気に決めるぞ!」
黒い機体が打ち出した遠隔機動兵器の攻撃を受けよろめくズフィルードを見て
イングラムはリュウセイへ叫んだ。
「ああ!!」

「時の流れを垣間見よ…」
イングラムの機体が右腕をかざし、光の球体が集まる。

「トロニウムエンジンフルドライブ!念動集中ぅ!」
R-1の右手にエネルギーが集まり光を発する。

「インフィニティ・シリンダー!!」
「T-LINKナッコォォォ!!」

イングラムが放った光の球体が命中しズフィルードが吹き飛ぶ。
そこにR-1の拳が胸部を貫いた。
数秒の沈黙の後、閃光を放ちズフィルードは爆発した。
「俺たち…勝った…のか」
リュウセイの呟きの後、レジスタンス全体から歓声が巻き起こる。
「…そうだ、イングラム!…いない。どこに行ったんだ…」
見渡しても先程までいた黒い機体の影もない。
「イングラム…お前は一体…」

101もしもR組がOGに出たら:2003/11/10(月) 04:05
格納庫の中ではラウルたちが外からの歓声を聞いていた。
「終わったみたいですね。
 結局、私たちは力になれたんでしょうか」
「いいさ、そんなことは。皆生きてる…それだけで十分だよ」
「…そうですね。ラウル、お疲れ様」
格納庫へ戻ってくる味方機を見て、戦闘が終わったことを確信し安心して微笑みあう。
しかし、その安らかな雰囲気も突然起こった爆発によって崩された。
予定外の攻撃にブリッジにも再び緊張が走る。
「何が起こったんですか!?」
「艦尾部に攻撃が命中!どこからの攻撃かは不明です!」

「私はデュミナス…」
ラウルはこの聞いた覚えのある声に反応した。
「この声は!?ミズホ、降りろ!もう一度出る!」
「えっ、駄目です。まだ手当てが…」
「そんな時間は…くっ、しっかりつかまってろ!」
1秒でも惜しいかのように慌てたラウルはミズホを乗せたままハッチを閉じ、クロガネを飛び出した。
「ラウル!?待ちなさい!」
ラージはその様子を見て呼び止めたが間に合わない。
まだ気絶しているフィオナを見て舌打ちすると、コスモドライバーを操縦しラウルを追いかけた。
ラウル、フィオナには及ばないがラージにも一応操縦の心得はある。
しかしコスモドライバーはまだ修理を終えていないこともあってふらふらとよろけながら進んだ。

102もしもR組がOGに出たら:2003/11/10(月) 04:06
「ラウル、いきなり飛び出してどうしたんですか?」
「あいつだ…月の工場で機械を暴走させた奴がいるんだよ!」
「何ですって…」
ラウルの言葉にラージが驚いているとクロガネの後方から見たこともない機体が現れた。
いや、どこか生物的なフォルムを持つそれは機体と呼べるのかもわからない。
「私はデュミナス…過ちを起こさせる者」
再び言葉を発したデュミナスと名乗るそれがまたクロガネに攻撃を仕掛けた。
「させるかぁ!」
ガンナーはデュミナスへ向って攻撃を仕掛けるがデュミナスはその攻撃をものともせず
攻撃をガンナーへと向けた。
「うわっ!」
その攻撃に耐えきれずガンナーが倒れる。
「ラウル!大丈夫ですか!?」
コスモドライバーがふらつきながらもガンナーに近寄る。
ミズホはコックピットのモニター見て驚きの声を上げた。
「フレーム損傷率80%を突破!?たった一撃で…」

そんなエクサランスたちを見てレフィーナは即座に命令を下した。
「このままでは…PT部隊出撃!」
「駄目です。先程の攻撃でカタパルト部分が大破!出撃できません!」
テツヤの言葉を聞き思わず絶望の表情を浮かべる。
「そんな…」
そこにまた大きな振動が起こった。
「動力部に被弾!…爆発します!」
「くっ、総員退避!
 …ダイテツ中佐、ショーン少佐…申し訳ありま…」

「クロガネが!」
ラウルは振り返り、攻撃を受け爆発するクロガネを見た。
その爆発に巻き込まれるかと思ったその時、奇妙な光が2体のエクサランスを包んだ。
「これは…!時流エンジンの出力が上がっている!?
 120%…150%…馬鹿な!?」
ラージが上げた驚きの声を聞いた直後、すさまじい衝撃が機体を襲った。
「うわああああ!!」
「きゃああああ!!」
3人の意識はそこで途絶えた。
そしてL5宙域の大部分を巻き込んだ大きな爆発が収まった後、そこには何も残ってはいなかった。

103もしもR組がOGに出たら:2003/11/10(月) 04:06
後に4人は知ることになる。

5年前のL5戦役の実情、

突如襲いかかってきたデュミナスの正体、

そしてこの戦いは序章に過ぎなかったということを。

しかしそれはまだ先の話である…

104ハマーン」:2003/11/10(月) 04:07
『とある元旦のギアナ高地の風景』

マスター「新年明けましておめでとうぞ、ドモン」
ドモン 「明けましておめでとうございます、師匠」
マスター「うむ、こういう時は臥薪嘗胆というものぞ」

そこでプチっと切れますドモン=カッシュ。

ドモン 「東方不敗! あんたは間違っている!!」
マスター「なにィ!?」
ドモン 「なぜならば、あんたが言おうとした言葉な中国の故事熟語。いわば新年の挨拶とは無関係!!
     新年の挨拶を間違えるなど、愚の骨頂!!」

師匠は応じます。

マスター「ならばワシが正しいかお前が正しいか、決着を着けてくれるわ!」

師匠、聞く耳持ちません。新春からこの師弟はこんな感じでありましたとさ。
ちなみに臥薪嘗胆と謹賀新年を間違えたという事で、ひとつ。

105アクセルs:2003/11/10(月) 04:08
このあらすじは、「スパロボクエスト」の仮のあらすじです。
変更するかもしれません・・・

あらすじ
第一章「影のヒロイン」←改名「影の薄い幼女」
王様に呼ばれるエリスは、王より最近、子供(幼女)が誘拐されている事件を
調べ出来るならその首謀者を倒すように命じられる。
第二章「ショボ兄貴の冒険」
ある城の話。城の皆から兄貴と呼ばれる生物学上男の戸籍上女なふたなり娘(?)
は、城の外に出たくて仕方がない困った姫(?)。自室の壁を壊して脱走する事
は星の数ほどそのたびにシーブックとアクセルに連れ戻されました。
そんなある時、城(町?)の外に脱出に成功した姫はそのまま旅にでようとすると
シーブックとアクセルが城から来ましたが、連れ戻さずに付いて行くとの事・・・
シーブックとアクセルと共に旅に出て・・・(長い)
第三章「夜逃げ屋シュウ」
ある町にシュウという男がいた。この男、借金地獄な日々を過ごしている。
実はそんな生活から逃げ出す計画を練っていた!
そう・・・夜逃げをしようと考えていたのだ!借金取りからシュウは逃げれるのか!?
第四章「萌えキャラスレの痴女姉妹」
レビとルリの姉妹はある人物を探す放浪の旅に出たのであった。
ある人物とは、ミスマル=ユリカとヴァルシオーネの2人である。
自分達の想い人が惚れている二人を亡き者にして、悲しんでいる想い人を
慰めてゲットしゴールイン!・・・何て考えていたりする・・・
第五章「導かれしショボ達」
主人公・・バーンは村の皆からションゲと呼ばれる男。
ある時村に魔物が襲撃して来た!村の者達はションゲを護る為に戦うつもりだ!
ションゲはドモンビーによって地下倉庫に連れて行かれそこで衝撃の事実を言われる。
なんとションゲはショボ勇者である事を教えられる。
驚愕の事実に驚くションゲを隠すと扉を隠し戦いに赴くドモンビー!
外が静かになったのに気付き外に出たションゲは荒れ果てた村を見る。
そして・・・池の近くにドモンビーが愛用していたエロ本が・・・
そこで一言
「ドモンビー・・・前から思ってたけどやっぱり男だったのか・・・・」
こうしてションゲは魔王を倒す事を胸に誓いながら旅立つのであった・・・・
・・・その行く先で・・・多くの「導かれしショボ」に会いながら・・・・・

106デスピニス:2003/11/10(月) 04:09
…エリスさんがライアン役なら、ホイミン役はブルホーンですか?
四章の主役がレビさんルリさんということは、飛影さんは殺されてるの?

107アクセルs:2003/11/10(月) 04:10
ホイミン役は・・・・決まっていない。
ホイミンから人になるからな〜
飛影は殺されていません・・・何せ動機がまったく違うから(w

ホイミン役・・・誰が良いでしょう?

108アクセルs:2003/11/10(月) 04:11
ホイミンはアルフィミィにします。
人間になって欲しいからね・・・
パノンはヒイロだ!
寒いギャグは彼の専門だからな!!
問題はドランだ・・・
誰にしよう?

109もしもR組がOGに出たら:2003/11/10(月) 04:12
「うう…うん?ここは…」
ラウルが目を覚ますと、そこは自分が気絶するまでいた場所、
エクサランスのコックピットとは似ても似つかぬ光景が広がった。
医療機械器具とベッドが並んだ殺風景な部屋、どこかの医務室らしい。
「ラウル!気が付いたんですか!?」
おそらくずっと看病してくれていたのだろう、
ミズホが今にも泣き出しそうな顔でこちらを覗き込んできた。
「ミズホ…そうだ!デュミナスは…クロガネはどうなったんだ!?」
少しでも動くたびに体中が悲鳴を上げたが、何とか上体を起こし詰め寄ると、
ミズホは何か言い辛そうに目を伏せた。
「その…ラウル、落ち着いて聞いてください」
「おっ、気が付いたみたいだな」
そう言って医務室に入ってきた少年を見てラウルは驚きの声を上げた。

「リ、リュウセイさん!よかった…無事だったんですね」
ラウルの言葉を聞いたリュウセイは困ったような顔をして頬を掻いた。
「ん?あんたもか…悪いんだけどさ。どこで会ったっけ?ちょっと覚えていないんだよな。」
「え…?」
よく見てみると目の前にいるリュウセイは自分の知っている人物と比べて
少年らしさが抜け切れておらず自分と変わらない年くらいに見える。
すっかり混乱したラウルはミズホを見つめた。
「すみません、まだ気が付いたばかりで記憶が混乱しているみたいです。
 あとで皆さんのところへ挨拶をしに行きますから少し2人にさせてもらえますか」
ミズホがそう言うとリュウセイは気にしていないように笑顔を浮かべた。
「そっか。じゃあ俺はロビーにいるよ。多分皆もそこにいると思うから」
「はい…すみません」
リュウセイが出て行くのを見とどけてすぐ、ラウルは再びミズホに詰め寄った。
「一体どういうことだよ!あの人リュウセイさんだよな?
 俺たちの事を覚えていないって…第一、何であんなに若いんだ!?」
「だから落ち着いてください。…ラウル、今が何年かわかりますか?」
「何年って…新西暦194年だろ」
いくら時流エンジンの研究に忙しく世間知らずだったとしても、それくらいは知っている。
しかしミズホは首を振り、信じられない事を口にした。
「いいえ、ここは新西暦189年。私たちのいた時代より5年前の世界なんです。
 そして…ここは地上にある地球連邦軍極東支部伊豆基地です」
「何…だって…それじゃフィオナとラージは!?一緒にいたんじゃないのか!?」
「それが…発見されたのは私たちだけらしいんです」

110もしもR組がOGに出たら:2003/11/10(月) 04:12
地球連邦軍極東支部伊豆基地、その司令室に一人の男が入ってきた。
急に入ってきたために室内にいた者たちの注目を一身に浴びたその男は
その視線も気にしないようなそぶりで敬礼をした。
「イルムガルト・カザハラ中尉、マオ・インダストリー社への出向任務完了し、
只今帰還しました」
敬礼を解いて笑顔を浮かべたイルムを見て初老の男、この伊豆基地に停泊している戦艦
ハガネの艦長であるダイテツが懐かしむような顔をした。
「ご苦労だった、イルム中尉。だがマオ社への出向任務終了はもう少し後の予定だったはずだが?」
「まあそれはこちらにも色々都合があるということで…
 ところで格納庫に知らない機体がいくつかありましたけど、極東支部か開発したんですか?
 マオ社やテスラ研でも新しい機体の開発はまだ本格的に取り掛かれていないというのに」
苦笑いを浮かべ後頭を掻いたイルムは、基地についたとき気になった事を聞き話題を変えた。
「残念ながらあれは我々が所持している機体ではないよ。
 連邦軍に協力したいという人物たちが現れてね。まだどういう扱いにするか決めかねているが
 しばらくここにいてもらう事にしている。おそらく今はロビーに集まっていると思うから
 暇があれば行ってみればどうだい?」
イルムの疑問に伊豆基地の司令官であるレイカーが柔和な表情を浮かべたまま答えた。
ホワイトスター戦役から地球連邦軍の指針として戦力の補充が重要視されている。
そのためいくつかの開発途中だった機体も計画から凍結され、量産機の製造が求められていた。
それはSRX計画を進めていた極東支部も変わりはない。
そのロールアウトされている機体も前大戦の傷が癒えきっているとは言えず
プラスパーツの再調整に手間取っている状況だ。
「そうですか…それじゃ今からロビーに行ってみますよ。
 …そうだ、一つ質問があるんですが、その新人さんって女ですか?」
そんなイルムの言葉を聞き司令室にいた者は皆呆れたような溜息をつき、
同時になぜイルムが予定より早く出向任務を終えたか少し想像がついた。

111もしもR組がOGに出たら:2003/11/10(月) 04:12
まだ体の所々が痛むがとりあえずミズホにつれられてラウルは基地内にあるロビーにたどり着いた。
そこにいる者の顔はほとんど見知らぬものばかりだ。
わずかに知っている者もいたが、リュウセイのように自分の記憶の中の姿より少し若い。
「あら、もう起きて大丈夫なの?」
緑色のショートカットの女性がラウルたちに気付き声をかけてきた。
「はい…あなたは?」
恐る恐る聞き返すとその女性は笑顔で答えた。
「あ、ごめんなさい。私はアヤ・コバヤシ大尉。この地球連邦軍極東支部に所属しています」
(アヤ大尉…その名前、どこかで聞いたことが…)
ラウルが記憶の中から何とか思い出そうとしているとリュウセイが話の中に入ってきた。
「それにしてもあんな機体で大気圏突入してよく無事…じゃないな。3日寝込んでたんだから」
「ええ、まあ…」
ミズホから聞いて今までの成り行きは聞いている。
まだにわかに信じられないのだがタイムワープをした後
エクサランスはこの伊豆基地近くの海上に不時着したらしい。
そこで突然現れた事の言い訳として単身で大気圏突入したという事にしていた。

「志願兵だって?仲間が増えて嬉しいことは確かだけど、
 そんなに俺たち困っているように見えるのかなあ。
 まあ、確かに最近はDC残党の件で少し忙しいけどさ…
 ところで、やっぱりラミアとはお互いに知らないんだよな?」
「ラミア…?」
聞き覚えのない名前を聞きラウルは首をかしげるとリュウセイは自分の後方を指差した。
「ああ、あっちに一人で座っている女だよ。お前たちと一緒に不時着してきたんだ。
 本当に知らないのか?」
リュウセイの指し示した方を見ると確かに一人の女性が座り、こちらを見つめていた。
その視線は鋭いもので、むしろ睨んでいると言った方がいいかもしれない。
だが、やはり当たり前の事だが、見覚えのない顔だ。

112もしもR組がOGに出たら:2003/11/10(月) 04:13
ラウルはラミアの方へ近づき話しかけてみた。
もしかしたらフィオナたちの事を知っているかもしれない。
「えっと、ラミアさん…ですか」
「呼び捨てで結構でございますですわ」
訛りというにはあまりにおかしいその口調にいきなりラウルは面食らった。
「口癖のようなものでありますですわ。お気になさらないでくださいでございます」
(ちっ、早めにこの言語回路の故障も修理しておかなくてはな…)
ラミアが漏らしてしまったその呟きをラウルは聞く事なく悩んでいた。
はぐれてしまったフィオナたちの事を聞こうにも自分たちがタイムワープしてきた瞬間を目撃され、
その事を他の者に聞かれたりしてはややこしい事になる。
「ラウル…どこを見ているんですか?」
ミズホの妙に低い声に我を取り戻すと目の前にラミアの胸があることに気が付いた。
いつの間にか俯いて考えにふけっていたらしい。
「うわっ、すみません!そんなつもりじゃ…」
しかし当のラミアはそんな2人のやり取りの意味がまったくわからないのか
きょとんとした顔で聞き返してきた。
「何か話があるのではございませんですか?」
「あ、その…そうだ。俺にも敬語は使わなくていいですよ。息苦しいのは苦手ですから」
「そうか、助かる」
「…普通に話す事もできるんですね」
「気にするなといったはずだ。早く話をしてもらおうか。こちらも暇ではない」
苛立ってきたようなラミアの声を聞き慌ててラウルは話をしようと口を開いた。
しかし、それと同時に警報と共に館内放送が響き渡りその声はかき消される事になった。
「百里基地にDCの部隊が出現。当基地に救援要請が来ています!
 ハガネクルーは総員第2種戦闘配置につき、待機してください!」

113もしもR組がOGに出たら:2003/11/10(月) 04:13
「な、何だ!?」
「DCの残党だよ!最近多いんだよ、こういうことが」
途端に基地の中が慌ただしくなってきた。
突然の状況の変化にうろたえるラウルは喧騒の中から聞こえてきた「出撃」という言葉を耳にして閃いた。
「ミズホ!エクサランスは動けるか!?」
「え?一応格納庫で修理してはいますけど…まさか!?」
「俺も出る!」
正直なところラウルはまだ今置かれている状況を理解できず混乱していた。
いや、厳密に言えばそれは正しくない。理解はしているのだ。
しかしそれを受け入れることができないでいる。
こういうときは何かに集中すれば落ち着けるかもしれない。その点で戦闘というものは丁度いい。
ミズホが止めるのも聞かずラウルはロビーを飛び出した。

「リュウセイさん!」
勢いよく飛び出したはいいものの、基地の構造がわからず早速立ち往生してしまったラウルだったが
運良くパイロットスーツに着替えたリュウセイを廊下で見つけた。
「ラウル?ロビーで待っといてくれよ。すぐ戻るから」
「俺も…行きます!」
駆け寄ってきたラウルが発した言葉を聞き、リュウセイは顔をしかめた。
「ラウル、これはゲームなんかとは違うんだぞ」
「俺も実戦経験ならあります。遊びのつもりなんかじゃありません」
そう言ったもののリュウセイの難しい表情に変化はない。
だが思わぬところからラウルに助け舟が入ってきた。
「わかったわ、格納庫に案内するからついてきなさい。」
急にかけられた声に驚き、後ろを向くと体に密着したパイロットスーツを着た美女が立っていた。
「ヴィレッタ教官!?」
「彼の実力を見るいい機会でしょう。ダイテツ艦長には私から言っておくわ」
「ならば私も同行してよろしいでございますですか?」
気配も感じなかったのだが、いつの間にかラミアもそばにいた。
またもいきなりで面食らっているラウルとリュウセイを差し置いて一人冷静なヴィレッタが答えた。
「ええ、そうね。あなたも来なさい」
話が自分を除いたところで勝手に進んでいることに納得しない様子のリュウセイだったが
ラウル、ラミアの2人とヴィレッタを交互に見つめ、結局観念した。
「まあ、ヴィレッタ教官がいいって言うなら仕方ないか。
 あとラウル、さっきから言おうと思ってたんだけどよ、俺にも敬語は使わなくていいぜ。
 年はあまり変わらないだろ?」
「あ、はい…じゃなくて、ありがとうリュウセイ」
そう言われたものの、リュウセイに対してはまだ未来での彼の姿のイメージが強く、
受け答えもどうもぎこちなくなってしまう。
しばらくは苦労する予感がした。

114もしもR組がOGに出たら:2003/11/10(月) 04:14
基地の地下に停泊しているハガネの格納庫に着いたラウルたちは
他と比べサイズが一回り大きく、存在感のある機体に気が付いた。
「おい、これってグルンガストじゃないか!?」
「何です?他の機体とかなり雰囲気が違うんですけど…」
「超闘士グルンガスト壱式、テスラ・ライヒ研究所が開発したスーパーロボットだ」
この時代の機体についてほとんど知識がないラウルの質問にラミアが答えた。
「よく知っているわね。それに頭部を見たところ、あれは1号機。
 するとパイロットは…」
ヴィレッタの記憶の中にはこのグルンガスト壱式のしかも1号機を愛機にしている人物は一人だけ、
女性を見ればまず口説きから入る、以前は彼女の上司だったリン・マオの恋人の…
「そう!俺ってわけさ」
「イルム中尉!?いつ戻ってきたんだ?」
「ついさっきな。…っとそこの2人が噂の新人さんかい?
 俺はイルムガルト・カザハラ、イルムって呼んでくれていい。ま、よろしく頼むよ」
「あ、はい」
「第2種戦闘配置との命令だったでありますでしょう?
 これ以上話がないなら私は失礼させてもらいますですわ」
急に自分たちに話を振られうろたえるラウルと対照的にラミアは丁寧ながら冷徹に話を止め、
自分が乗ってきた機体、アシュセイヴァーへと踵を返した。

その様子を訝しげに見つめていたイルムは自分に向けられたリュウセイとヴィレッタの視線に気が付いた。
「ん、何だ?」
「いや、イルム中尉があんな美人を口説かないなんておかしいな…って」
「あのな…俺は所構わず女を口説くとでも思っているのか?」
「違っているの?」
ヴィレッタの言葉にイルムはがっくしと肩を落とした。
「まあ、正直自分でも驚いてはいるんだがな。彼女、何か違うんだよな…」
「何かって何だよ?」
「それが分かれば苦労しないさ…」
そんな事を話しているうちに格納庫の床が小さく振動しだした。
「ハガネも発進したみたいね。あなたたちもコックピットで待機しておきなさい」
現在の戦闘指揮官であるヴィレッタの指示でラウルたちはそれぞれの機体に向っていった。

115もしもR組がOGに出たら:2003/11/10(月) 04:14
DC、かつてのロボット工学の権威、そしてEOT解析の第一人者であったビアン・ゾルダーク博士を
総帥として、地球連邦に反旗を翻した組織は先のDC戦争において崩壊していた。
しかし、ビアン・ゾルダーク、アードラー・コッホといった反乱の首謀者が死亡したとはいえ、
その構成員全てが消え去ってしまったわけではない。
世界ではそのわずかに残ったDCの残党兵による小規模なテロ活動が問題となっていた。
地球連邦政府はそれに対し徹底抗戦の方針を打ち出し、
非情とも言えるほど元DC兵、またはDCに協力した者たちに対する取締りを強化していた。
しかしその目的は単なる治安維持だけではない。

DCに参加した者が全員、ビアンのように異星人に対抗するためでも
アードラーのように世界征服を目的としたわけではなく、
むしろそうでない者が大部分であった事からわかるように
潜在的に連邦政府に不満を持っているものは多い。
そういった者たちによる反乱を抑えるための「見せしめ」としてである事は
誰の目から見ても明らかであり、
陰でこの連邦政府の行動を「残党狩り」と呼ぶ者もいた。

116もしもR組がOGに出たら:2003/11/10(月) 04:15
「全機出撃!」
佐世保基地が視界に入ると同時にダイテツの命令が下り、ラウルたちはハガネを飛び出した。
「はあ…」
「どうしたんです…じゃない、どうしたんだリュウセイ?」
「いや、おまえのエクサランスもラミアのアシュセイヴァーもスーパーロボットじゃないんだよなあ…」
「は?」
リュウセイの言葉の意図が分からず思わず聞き返したところに、通信が割り込んできた。
「まだおまえはそんなくだらない事を言っているのか。
 もうすぐ敵の射程範囲に入るぞ。気を引き締めろ」
「くだらないって何だ、ライ!いつもいつも…お前には男のロマンってものが…」
「だから何度も言わせるな。そんなものは知らん」
「はいはい、2人ともそれくらいにしなさい」
「本当にここは軍隊なのか…?」
SRXチームのやり取りを聞き、小さな声で呟いたラミアの声は誰の耳にも届かなかった。
ラウルの方はと言えば未来の雰囲気とのあまりのギャップに苦笑いを浮かべるしかない。
しかしどこか心地良い雰囲気ではある。いつの間にか肩の力は抜けていた。
「敵機判別、リオンタイプFが13機。高機動タイプの敵が相手ね。
 リュウセイ少尉とイルム中尉が敵を撹乱しつつ突撃、
 他のものが援護というフォーメーションで行きましょう」
「了解、行くぜ!R-1フライヤーモード!!」
ヴィレッタの指示を聞くと同時にR-ウィングに変形し、勢いよく先行するリュウセイを見て
イルムは口の端を上げた。
「やれやれ、あいつも相変わらずだね。それじゃ俺も遅れないように行きますか」
グルンガストも飛行形態ウィングガストに変形し、R-ウィングを追いかけた。
「教官、リュウセイでよかったのですか?」
R-2のツインマグナライフルを放ちながら、ライがヴィレッタに問いかける。
その問いにアヤがヴィレッタの代わりに答えた。
「あの子も前の戦争で十分成長しているわ。心配しなくても大丈夫よ」
「別に俺は心配などしていませんが…」

117もしもR組がOGに出たら:2003/11/10(月) 04:16
数十分後、戦闘は大した問題もなく終わろうとしていた。
敵機の数は少なくなかったが、万全の状態でないとは言え
前大戦を勝ち抜いたSRXチームたちにとっては大した問題ではない。
また新たに加わったラウルとラミアの実力が想定していたより高かったのもその理由の一つだ。
「へえ…結構やるじゃないか、ラウル」
「それほどでも…!?危ない!アヤ大尉!」
リオンを撃墜し、振り向いてリュウセイに返事をしたラウルが見たのは
援護のため後方に回っているR-3を狙いレールガンを構える敵機の姿だった。
「えっ?きゃああ!!」
援護も間に合わずレールガンから放たれた弾丸がR-3の背部に命中し、倒れこむ。
止めを刺そうと再度構えるリオンだったがウィングガストの突撃、スパイラルアタックを受け
その銃口から弾丸が発射されることはなかった。
「あ、ありがとうございます、イルム中尉」
「いいさ、気にすんな…」
口をつぐんだイルムの視線の先には、淡々と最後に残った敵機を撃ち落した
ラミアのアシュセイヴァーがあった。本人は気付いていないがその視線は
味方を見るものにしては少々険しいものになっている
「何か?」
「……別に」
その視線に気付いたラミアの問いにイルムは肩をすくめてぶっきらぼうに答えた。

「全敵機の沈黙を確認。ハガネに戻るわよ」
「敵兵の捕獲はしなくてよろしいのですか?」
「それは百里基地の方に任せましょう。彼らだって無能ではないわ」
聞き方によっては無責任とも取れそうな指示を出したヴィレッタに続き
他の機体もハガネへ帰艦していく。
ラウルはその最後尾でゆっくりと進んでいた。
(本当にここは過去の世界なのか…だとするとあの人たちはもうすぐ…)
「どうすりゃ…いいんだ…」
苦しげに漏れたその言葉に、答える者はどこにもいなかった

118もしもR組がOGに出たら:2003/11/10(月) 04:17
「……え?」
フィオナは目の前のモニターに映し出されている景色に呆然となった。
どこまでも広がる暗闇、そしてその中にいくつか小さく灯る星々。
どこをどう見てもそこは宇宙空間だった。
「えっと…確か私たち、グリーンフラワーの中に突入して…そこでズフィルードって奴と…」
戦闘の途中で気絶し、戦線離脱したフィオナにはなぜ自分がこんなところにいるのか
まったく見当もつかない。
頭を抱えて俯いたフィオナの目に、自分の腰に抱きつく形で眠っているラージが入ってきた。
「な、何してんのよ!!」
思わず蹴飛ばしてしまったラージの後頭部はまっすぐ壁に向かい、
鈍い音が狭いコックピットの中に響いた。

「いたた…あ、フィオナ、気が付いたんですか?」
「そんなことより、これは一体どういうことよ!?」
「…宇宙ですね」
「そんな事見りゃわかるわよ!私が聞きたいのはなぜここにいるかってこと!」
指差したモニターを覗きこみ、眼鏡を押し上げながら言ったラージの言葉に
フィオナはつい声を荒げてしまった。
ラージのいつも冷静でマイペースな性格は、とても頼もしく感じることもあるが
こういった場合だと苛立ちを増大させてしまう。
「ええ…フィオナは気絶していたから混乱するのも無理はないですね。
 落ち着いてください。説明しますから」

大まかにこれまでのことの説明を受けたフィオナはショックを隠しきれないようだった。
「そんな…クロガネはデュミナスにやられたっていうの…?」
「おそらく…あの爆発でしたから…なぜ僕たちが無事なのか不思議ですけど」
「じ、じゃあラウルとミズホは!?」
「周囲に彼のエクサランスの反応はありませんね…おや」
勝手にレーダーのコンソールを操作していたラージは何かを見つけた。
「フィオナ、エクサランスを後ろに向けてくれませんか」
「いいけど…えっ、これって…地球?」
振り向いたエクサランスの眼前に広がったのはまぎれもなく青く光る美しい星、地球だった。
「どうやらここは衛星軌道上のようですね。それよりもこれを」
ラージが指差したモニターの部分には身動きせず漂っている人型機動兵器があった。
「もしかしてレジスタンスの機体かも!パイロットは!?」
自分たち以外の生存者の可能性を見つけ、嬉しそうな声を上げたフィオナは
その機体に近づき、接触通信を試みた。

119もしもR組がOGに出たら:2003/11/10(月) 04:17
「…うう…レモ…ン」
「よかった、生きてる!聞こえますか?応答してください!」
「ん…ここは…どこだ?」
「地球近くの衛星軌道上ですよ。あなたはレジスタンスですか?」
「レジスタンス?いや違う。俺は……誰だ?」
「え…もしかして…」
「くそっ、思い出せない。記憶喪失ってやつか」
「あ、私はフィオナ・グレーデン。こっちはラージ・モントーヤです。
 …あなたの名前は?何も思い出せませんか?」
せっかく見つけた記憶喪失ということに少し落胆した様子のフィオナだったが
相手を気遣ってか、明るい声で聞いた。
「君がキスしてくれたら思い出すかもな」
「え?キ、キス?」
「それならお安い御用ですよ。さあフィオナ、あちらのコックピットに…」
「何言ってるのよ!冗談に決まってるでしょう!」
「そうなんですか?」
異常なまでに世間知らずのラージの言うことはどこまで本気なのか判別がつかない。
少し頬を赤くしたフィオナは相手をするのも疲れるだけだと判断して、
記憶喪失という男の方に視線を戻した。
「いや、してくれるんならそれはそれで嬉しいんだが…冗談だよ。
 …自分が誰だかわからないのは本当だけどね」
「…ったく、本当に何もわからないんですか?」
「ああ…いや、ちょっと待ってくれ。
 …アクセル」
「もしかして、それが名前ですか?」
「そう…らしい。他のことはさっぱりだけどな」
少しであるが事態が進んだことで表情がいくらかやわらいだフィオナは次にとるべき行動を考えた。
「それじゃ、いつまでもここにいたってしょうがないし…移動しましょうか」
「そうですね。ここからだと月へ向ったほうがいいでしょう…これは!?フィオナ!」
ラージが何気なく見たレーダーの反応に異変が起こっているのを見つけた。
いつの間にか周囲を小型の機動兵器に囲まれている。
見たことがない機体だが、ところどころに突き出ている突起が
どことなく図鑑で見たことがあるハリネズミという動物を連想させる。
「どう見ても地球のものじゃないわね。帝国監察軍?」
「こんな兵器のデータは見たことありませんが…多分そうでしょうね」
などと話していると、その小型兵器が突然ガトリングを放ってきた。

120もしもR組がOGに出たら:2003/11/10(月) 04:17
「燃料チェック…結構消費してるな。
 機体の損傷は…軽微。全然動けそうだな」
「アクセルさん!?」
敵の攻撃を何とかかわしたフィオナは黙々と戦闘準備を始めているアクセルに気が付いた。
「戦うしかないさ。友好的な相手でもなさそうだしな。
 あんたたちは逃げろ!」
「1人じゃ無茶ですよ!記憶だってないのに!」
「大丈夫だ。操作方法は体が覚えているらしい。武器の威力も記憶で変わるわけでもないし、
何とかやれそうな気がするんだな、これが」
「…わかりました」
少し躊躇したが言い争いをしている状況でもない。
覚悟を決めた顔をして振り向きざまに近づいてきた機体にハイコードマグナムを叩きこんだ。
「フィオナ!?逃げろといっているだろう!」
「私だってこんな状況が初めてってわけじゃないですから。
 ラージ!SOSをお願い」
「もうしましたよ」
「さすがね。じゃあ、しっかりつかまっててよ!」
「あんたら…」
コスモドライバーが放った二度目の攻撃を合図にしてか
敵機が一斉に突撃を始めてきた。

121もしもR組がOGに出たら:2003/11/10(月) 04:18
「よいしょぉっ!一丁あがり…っと何か近づいてきているみたいだな」
拳を敵機に打ち込み―驚くことにアクセルの機体は現在の兵器にしては珍しく
内蔵兵器を用いず、拳と鋭く尖った肘を武器としていた。
アクセルはこちらに近づく影に気が付いた。
「こちらでも確認しました。戦艦のようですね」
「もしかして…クロガネ!?」
フィオナの淡い機体もむなしく、現れたのは見たこともない赤い戦艦だった。
「あれは…馬鹿な、あれはL5戦役の際に大破したはず…」
ラージの言葉の意味がわからずフィオナが聞き返そうとしたところで通信が入ってきた。
「こちらは地球連邦軍所属、ヒリュウ改艦長のレフィーナ・エンフィールド中佐です。
 SOSを発信したのはあなたたちですね」
「!?レフィーナ艦長!生きていらしたんですか!…でもちょっと若い」
「え…確かによくこの職に就くには若いと言われますけど…」
「すみません、救援には感謝しますが戦闘中ですので話はこの程度に」
お互いに戸惑っている2人をおいてラージが話を切り上げた。
「そうですね。PT部隊出撃してください!」
レフィーナの命令でヒリュウ改から4体の人型機動兵器が出撃していく。
「ヒリュウ改…」
まだ混乱しているフィオナの耳にアクセルの呟きが聞こえてきた。
「記憶が戻ったんですか!?」
「いや…戻ってはいない…」
(そう…見たことはないはず…なのに俺はこの戦艦を知っている?)

それぞれの理由で動きが止まってしまったフィオナたちとは逆に
ヒリュウ改から出撃してきた機体は着々と戦闘準備を進めていた。
「よっしゃ、久しぶりの実戦だぜ!いくぞ!」
赤い量産型ゲシュペンストMk-2に乗る、気の強そうな女が他の機体に確認を入れる。
「オクト2了解、あれは…エアロゲイターか?」
緑の量産型ゲシュペンストMk-2に乗る男は逆に少しおどおどしながら敵を見ていた。
「オクト3了解、しかしまあ…ひさびさ地球に戻ってきたと思ったらこれかよ」
他に比べてかなり大型の機体、ジガンスクードに乗る少年は溜息をついている。
「オクト4了解、嫌なら下がっていなさいタスク、あなたは訓練をよくサボっていたんだから」
黒色のAMガーリオンに乗る、どこかしら高貴な雰囲気を漂わせる少女がタスクと呼んだ少年に言葉を返す。
「お、心配してくれてるのか、レオナ?」
「べ、別にそんな事はなくてよ。ただ…足を引っ張られるのが不安なだけで…」
「お前ら、戦闘中に無駄話してんじゃねえよ!」
なんとも緊張感に欠けた状況で戦闘は再開された。

122もしもR組がOGに出たら:2003/11/10(月) 04:18
もう、フィオナたちが手を下すまでもなかった。
ヒリュウ改から出てきたオクト4人はこういった正体不明の敵に対して慣れているらしく、
またフィオナとアクセルでかなり敵機の数を減らしていたこともありすぐに戦闘は終了した。
「あなたのお名前は?」
「あ、はい。フィオナ・グレーデンといいます。あっちにいる人はアクセルという名前らしいです」
「それではフィオナさんとアクセルさん、ヒリュウ改に着艦してもらえますか?
 少しお話を聞きたいので」
「わかりました」
穏やかではあるが決して断れない雰囲気を持ったレフィーナの言葉を聞き、
フィオナとアクセルはヒリュウ改へと進路をとった。
「ねえ、ラージ、これって…もしかして…」
「話は後にしましょう。今は少し考えをまとめる時間が必要のようです」
「そう…ね」
そうは言っても、ラージの苦しげな表情を見て
フィオナは自分の想像がおそらく間違ってはいないことを確信してしまった。
フィオナの少し後ろをついていくアクセルの方も、また難しい顔で考え事をしていた。
(ヒリュウ改だけじゃない。
 あれから出てきた機体も俺は知っている…俺は一体…何者だというんだ…)

123もしもR組がOGに出たら:2003/11/10(月) 04:19
フィオナたちがヒリュウ改と合流した翌日、極東支部伊豆基地の司令室には
ヒリュウ改からの通信が入ってきていた。
「それでは、そちらでもヒリュウ改に地球帰還命令が出た理由はわからないということか」
「ええ、何しろ急な話でとにかく戻って来いということでしたから。
 今もその後の命令が来ないので、エルピスコロニーにお邪魔させてもらっていますよ」
腕組みをしたダイテツが話している相手はヒリュウ改の副長のショーン・ウェブリーである。
そばには複雑な顔をしたレフィーナもいた。
「しかし、伊豆基地の方にもお客さんがいらしているとは…
 実はこちらにも来ているんですよ。エクサランスという機体に乗った可愛いお嬢さんたちが」
「宇宙にもか。志願兵と言ってはいるが…少々怪しいところもあるな」
「人を疑うというのはあまりしたくはありませんが
 イングラム少佐の件の二の轍を踏むわけにもいきませんし…」
レフィーナが悲しげな顔をして言うと、ダイテツは元気付けるように少し笑った。
「こういうことについて調べてくれそうな人間に少し心当たりがある。
 そちらにきた3人についても合わせて聞いてみる事にしよう。その代わりといってはなんだが、
 ヒリュウ改が遭遇したという正体不明の機体についての調査は任せるぞ」
「ええ、少なくとも地球製ではありませんし、エアロゲイターの機体とも少し違うようですから…
 もしかしたら別の異星人のものとも考えられますな」
「また…戦争が始まるのでしょうか…」
レフィーナの表情がますます暗くなった。
この若い艦長にはその肩書きにしては少々優しすぎるところがある。
「そんな顔を部下に見せてはいかんぞ、レフィーナ中佐。
 決して喜ぶべきことではないが、我々はそのためにいるのだからな」
「わかっています」
ダイテツの厳しい言葉にレフィーナはそう答えるものも、その表情は晴れなかった。

124もしもR組がOGに出たら:2003/11/10(月) 04:20
中国山東省、水墨画をそのまま抜き出したような雄大な自然が広がっているところに、
それには到底似つかわしいとは思えないテントがあった。
慌しく白衣や作業着を着た人間が出入りしている中で2人の美女がお互いに難しい顔をして向き合っている。
眼鏡をかけた女性が一つ溜息をつき黒髪の女性に問いかけた。
「ウェンリーさん…やはり、私たちには協力してはもらえないのですか?」
「はい…あなた方、LTR機構の方々の事情は理解しています。
 本来ならば強行的にもあれを運び出して調査できる権限もあるのに、
 エリ博士は私の話を聞いてくれてここでの調査にとどまってくれている事にも
 感謝してはいますが…
 それでもやはりあれは人の手に委ねるべきものではないのです」
ウェンリーと呼ばれた女性は俯きながらも強い意思を込めた調子で返した。
「我々はただ学術的にあの遺跡から発掘されるものを調査したいだけです。
 それにあれはあくまで過去の遺物でしょう?
 現代で軍事利用も出来るとは思えませんが」
エリもそう簡単に引き下がるわけにもいかず、何とか説得を試みようとするが
ウェンリーの意志は曲がりそうもなくただ首を振るだけだった。
「あれは…科学といったものの常識を遥かに超えたところにあるのです。
 だからこそ私の一族は旧世紀からあれを外に出さないという使命を
 この名前と共に受け継いできました」
こういった押し問答をもう何ヶ月も前から繰り返してきている。

また一つ溜息をついてエリが口を開こうとしたとき、
テントの外から大きな爆発音と振動が伝わってきた。
「何が起こったの!?」
エリがテントの外に飛び出すと、一気に悲鳴と砂煙が襲いかかってきた。
見上げると空から数機のAMリオンが遺跡を攻撃している。
「あれはAM…もしかしてDC!?」
「アンザイ博士!ここは危険です、下がってください」
「私はここの責任者です。自分だけ真っ先に逃げることはできません!」
「し、しかし…」
遺跡から逃げてきた研究者と言い争いをしていると、
攻撃をしていたリオンは地面に降り立ち、何やら作業を始めた。
彼らの目的の見当がついたときにはすでに遅く、
リオンたちは遺跡の中の何かにワイヤーを巻きつけ飛び立っていった。

「なぜDCがこの遺跡を…彼らはあれがどういうものなのかわかっているというの…?」
エリはもう小さくなってしまっているリオンを見続け、自分に問いかけるように呟いた。
「4体!?確かに彼らが持ち去ったのは4体だったんですか!?」
急に聞こえてきた大声に驚き振り返ると、ウェンリーが命からがら逃げ出してきた研究員に
掴みかからんとするような勢いで問い詰めている。
「ウェンリーさん、どうしたんですか?」
ウェンリーは、落ち着かせようとして呼びかけたエリの言葉も聞こえないようで、
その場にへたり込んでしまった。
エリが駆け寄ってきても、この世の終わりが来たかのように絶望の表情を浮かべ
何か呟き続けるだけだ。
「そんな…龍と虎だけではなくあの2体も復活していたなんて…」
ふと遺跡があった方を見てみてが、エリの不安を表したかのように
黒煙が絶えることなく立ち上がっているだけだった。

ラウルとミズホが伊豆基地に保護される1ヶ月前の事件である。

125もしもR組がOGに出たら:2003/11/10(月) 04:20
「もう知っているものがほとんどだろうが、彼らがこれよりこの極東支部に協力してくれることになった
 ラウル・グレーデン君、ミズホ・サイキ君、ラミア・ラヴレス君だ。
 ラウル君とラミア君はパイロット、ミズホ君はメカニックでそれぞれ曹長待遇とする。」
ラウルたちはブリーフィングルームで前に並ばされ、レイカーから紹介を受けた。
「…それではヴィレッタ君、これからの事を説明してくれ」
その他の部署などの簡単な説明の後、ラウルたちは下げられ代わりにヴィレッタが前に出た。
「このあと13:00に、ハガネのクルーは戦闘準備をしてまたここに集合…」
「何かあったのか?」
何もなければそのような命令は出ない。
愚問とも言えるリュウセイの質問で説明が中断されても、ヴィレッタは顔色を変えず答えた。
「極東支部にDCの犯行予告が来たのよ。時間は15時ちょうど、場所は神奈川の藤沢地区。
 ハガネはそこで警備を行います」
「藤沢だって!?」
場所の名前を聞きリュウセイは声を荒立てた。
「ああ、そういえばあの地区にはあなたの実家があったわね。
 でもあまり心配する事はないと思うわ。今まで、DCが犯行予告をしたことなんてなかった上に、
 藤沢地区には政治的、軍事的に重要なものがあるわけでもないから
 たちの悪いいたずらといった可能性が大きいし」
「陽動といった事は?」
「もちろんその可能性も考慮して他の極東支部の基地も緊急配備をとっているわ。
 私たちが警備につくのも支部の中で一番小回りがきく部隊だからよ。
 …特に質問がなければこれでブリーフィングは終わらせるわ」

126もしもR組がOGに出たら:2003/11/10(月) 04:21
ヴィレッタの話が終わった後もブリーフィングルームの中はざわついている。
その中でリュウセイが難しい顔をして椅子に座ったままでいた。
自分の母親は極東支部の軍事病院に入院しており藤沢地区にはいない。
しかし自分が生まれ育ったところが狙われていると聞いては、
心配する事はないと言われても気が気ではない。
そんなリュウセイの姿が気になりラウルは声をかけた。
「リュウセイさん…」
「……ん?ああ、ごめん。考え事をしてたよ。
 そうだ、まだ俺たちの紹介をしてはなかったかな。この前、一緒に戦ったからわかってると思うけど…
 あそこのキザったらしい金髪がライディース・F・ブランシュタイン少尉。
 さっき説明していたのがヴィレッタ・パディム隊長。後は俺とアヤでSRXチームってのを組んでるんだ。
 そしてあそこでラミアを口説いているのがイルムガルト・カザハラ中尉さ。
 ま、これで俺たちは正式に仲間になったんだ。改めて、よろしくな」
「あ…ああ、よろしく」
無理に明るく振舞っているようなリュウセイの態度にかける言葉が見つからず
横を見てみると、ミズホが信じられない事を聞いたかのように顔色を真っ青にしていた。
「……ブランシュタイン…」
「ミズホ、どうかしたのか?」
「え…あ、なんでもないです」
そうは言っても顔色はまだ優れない。
そのままミズホはふらふらとした足取りでブリーフィングルームを後にした。
「大丈夫か、彼女?」
「さ、さあ…」
残された2人は心配そうな視線をミズホが出て行った扉から動かせなかった。

「ライディース少尉…」
廊下を歩いていたライは、ともすれば聞き逃してしまいそうな小さな声が自分を呼ぶのを聞いて足を止めた。
振り向くとミズホがこちらを向いて俯いている。
「君は…ミズホ君だったかな、俺のことはライでいい。…何か用か?」
「あの…ぶしつけなことを聞いてすみませんが、
 エルザム・V・ブランシュタインという人を知っていますか?」
「エルザム?兄だが…何か?」
「兄弟…いえ、なんでもないです。呼び止めてすみませんでした」
会釈をして走り去っていくミズホの背中をライはわけのわからないといった顔で見つめた。

127もしもR組がOGに出たら:2003/11/10(月) 04:21
先程リュウセイに口説いているといわれていたイルムとラミアだが、
2人の間を包んでいる空気はそんなものではなかった。
「話とは何でございますでしょうか?」
「この前の戦闘だがな、あの時のお前の位置だったら
 アヤが撃たれる前に助けることもできたんじゃないか?」
「そうだったでしょうか…なにぶん始めての実戦だったでございますから
 ただ一番近くの敵を攻撃した方がいいと思ってしまったですわ」
「それだ。お前は自分を戦闘に関しては初心者と言っているが、
 この前の動きでは俺には到底そうとは思えないんでな」
もともと穏やかとはいえないラミアの目がますます鋭くなる。
「何が言いたいのでありますか?」
「単刀直入に言うと、俺はお前が信用できないってことさ。
 前も手痛い裏切りを受けたことがあってね。何度もそういう目に遭うのはごめんだ」
何秒かお互いの視線がぶつかりあい、ラミアの方が口を開いた。
「私からは信用してくれと言う他ありませんですわね」
「…ふん、まあいいさ。こっちも証拠があるわけではないしな。
 ただ俺が言ったこと…忘れるなよ」
一方的に話を切り上げイルムは立ち去った。
(あの男…中々勘が良いようだ。今後の任務の邪魔になるかもしれんな…今のうちに消しておくか…?
 ちっ、アクセル隊長がいればもう少しうまくいくのだろうが)

128もしもR組がOGに出たら:2003/11/10(月) 04:21
藤沢地区にハガネが到着し警備に就いてからかなりの時間が経った。
「…何も起こらないな」
ラウルがぼやいたのも無理はない。予告された時間からとうに1時間は過ぎている。
「他の地区が攻撃されたというのも聞きませんし、やはりいたずらだったのでしょうか?」
「…かもしれないわね」
ライとヴィレッタがそんな事を話している中、リュウセイは落ち着きなく周りの景色を見渡している。
「どうしたのリュウ?」
「あのさアヤ…ちょっと外に出たらダメ…だよな」
リュウセイにとって前大戦終結後の休暇以来の故郷である。
しかも、そのときには母親といることが多かったため家から出ることも少なかった。
しばらく見ないうちに様変わりしてしまったように感じる景色を見てみたいと思ったのだ。
「そうね…もうDCが来る気配もないし、地域住民の人も避難先から戻り始めたみたいだから…
 ただ、すぐに戻りなさいよ」
「サンキュ!やっぱアヤは話がわかるぜ」
そう言ってリュウセイはR-1を屈ませて、コックピットから飛び出した。

「確かこっちの方だったよな…」
あたりを見渡しながら見慣れた街並みをぬけると、そこにまた懐かしい建物が見えた。
「お、あった。はは、さすがにこれは変わってないや」
それは学校だった。
今はアメリカのラングレー基地で看護兵をしている幼馴染のクスハ・ミズハと共に通った高校。
軍にスカウトされたため卒業を目前にして中退となってしまったが、
ここで作った思い出は忘れた事はない。
「リュウセイ…?リュウセイでしょう!」
懐かしい気分に浸っていたところに突然自分の名前を呼ばれ振り向くと、
浅黒い肌の元気そうな少女が手を振りながらこちらに駆け寄ってきた。
「お前…カーラか!それにユウも、久しぶりだな!」
「やっぱりリュウセイだ。ほらユウ!あたしの見間違いじゃなかったでしょう」
近づいてきた少女はリルカーラ・ボーグナイン、
それに困ったような顔をして歩いてついてくるのはユウキ・ジェグナン。
リュウセイとクスハの中学時代からの友人だった。
特にカーラとクスハは親友同士で以前はよく4人で遊びに出かけたりしていた。

129もしもR組がOGに出たら:2003/11/10(月) 04:22
「本当に久しぶりね、リュウセイ。でもその制服…軍に入ったって話は本当だったんだ」
「まあな、今は伊豆の方にいるよ」
リュウセイの返事にカーラは心底落ち込んだように溜息をついた。
「なんだ、つまんない。じゃあ、クスハと駆け落ちしたって噂は嘘だったんだ」
「その噂を流したのもカーラだっただろう」
「そうだっけ?」
「何でそうなるんだよ。大体クスハは今、彼氏と一緒にアメリカにいるんだぞ」
「ええっ!どうして!?あの子あなたにベタ惚れだったじゃない!」
今度は大声を上げて自分に詰め寄るカーラに少しリュウセイはたじろいだ。
「お前なんでそんな事を…」
「そんなの見てりゃ誰でもわかるわよ。気付いてなかったのはあなただけ。
 まったくどこをどうやったらこんなに鈍感になれるのやら」
「うっ…別にいいだろ。こっちにはこっちの事情があったんだから」
そう言ったものの、カーラはまだものすごい形相で自分を睨んでいる。
仕方なく軍事機密にかかわらない範囲で成り行きを説明することにした。

「へえ、白人美男子と愛の逃避行か…それはそれでまたロマンチック…」
「おい、全然違うぞ。お前…本当に俺の話を聞いてたのか?」
リュウセイの突っ込みも耳に入らないのか、
説明とはまったく違う想像をしているカーラは胸の前で手を組み目を輝かせている。
「無駄だ、リュウセイ。こうなったらこいつに何を言っても聞かないのはわかっているだろう」
「ユウ…お前も相変わらず苦労しているみたいだな…」
「まあな」
自分の世界に入ったままのカーラに置いていかれた2人は苦笑いを浮かべた。

そのまま3人で昔話に花を咲かせていたところで、
ポケットに入れていた携帯通信機の発信音がそれを遮った。
「やべ、時間をとりすぎたかな」
急いで通信機を取るとアヤの慌てた声が飛び込んできた。
「リュウ、早く戻ってきて!連邦軍の輸送機がDCに襲われてこっちに向ってるの!」
「何だって!?わかったすぐに戻る。おっと、ユウとカーラはすぐに避難所へ戻ってくれ」
「ねえ、その輸送機ってあれ?」
カーラが指差した先には煙を吹きながら近づいてくるタウゼントフェスラーがあった。
「何でこんなに近くまで…HOSジャマーでも使われてたのか!?」
「そんなことよりも、あれ…こっちに落ちてくるぞ!」
慌てて3人が逃げ出したと同時に学校へタウゼントフェスラーが突っ込んでいった。

130もしもR組がOGに出たら:2003/11/10(月) 04:22
「いたた…なんでこんなところを軍の輸送機が通るのよ…」
数十秒ほど気絶していたカーラが目を覚ますと周りは以前の面影もなく瓦礫だらけとなっていた。
「ユウ…リュウセイ…生きてる…?」
「うぅ…」
うめき声が聞こえた方を見るとリュウセイがうつ伏せで倒れていた。
「リュウセイ!大丈夫!?」
急いで駆け寄り、体を揺するとリュウセイも気がついた。
「痛ぅ…足をひねったみたいだな。カーラは怪我ないか?」
「うん…ユウは…?ユウ!返事をして!!」
見渡していてもユウの姿は見当たらない。当然返事も聞こえなかった。
「う、嘘でしょ。さっきまで…一緒にいたんだよ…」
「カーラ…」
リュウセイは呆然としたカーラにかける言葉もなく、思わず視線をそらすと
その先にある撃墜されたタウゼントフェスラーの中に、PTの影があることに気がついた。
「カーラ、俺をあのPTのところまで運んでくれ」
「え、でも…ユウが…」
「早くしろ!まだDCの攻撃は終わってはいないんだ!このまま死にたいのか!!」
「死ぬ…って…」
認めたくはなかった現実を突きつけられ、覚悟を決めるしかないとわかったカーラは
リュウセイに肩を貸し何とか立ち上がらせ、タウゼントフェスラーへと向かった。

「これは…ゲシュペンストMk-2のタイプTT!?」
ようやく姿を見せたPTはリュウセイが始めて乗り込んだ機体だった。
何とか外からコックピットのハッチを開け乗り込むとリュウセイは手際よく機体の操作を始めた。
「エンジンに火が入っている?それにこの出力…かなりチューンされてるぞ」
「そんな事よりさっさと出しなさいよ!」
「カーラ!?何でお前まで入ってるんだよ!?」
「あんたが連れてきたんでしょうが…それとも、か弱い女の子を1人であそこに置いていくつもり?」
「仕方ねえ…タイプTT、起動!」
2人を乗せたゲシュペンストMk-2タイプTTが力強く立ち上がった。

131もしもR組がOGに出たら:2003/11/10(月) 04:22
「あれは…!?一体誰が動かしているんだ!?」
外ではすでに本格的に戦闘が始まっており、
リオンの攻撃をR-2の巨体に似合わないすばやい動きでかわしたライは
リュウセイたちが乗ったゲシュペンストに気がついた。
「俺だよ」
「リュウ!?どうしてそこにそんなものが?」
「話は後だ!民間人を1人保護している。R-1はまだそこにあるか?」
「民間人だと?お前…その機体に民間人を乗せたのか!?」
ゲシュペンストMk-2自体はそう新しい機体でもないが
タイプTTが搭載しているT-LINKシステムはいまだ最重要機密となっている。
ライが神経質になるのも当然と言えた。
「そこまでにしなさいライ、今は戦闘中よ。リュウセイの処罰は後で決めるわ。
 リュウセイ、R-1はハガネの陰に移動させてあるわ。急いで戻りなさい」
(それにデリケートなあのシステムが2人乗っていても変わりなく作動しているということは…)
「しかし隊長…わかりました」
ヴィレッタの有無を言わせない雰囲気にライも口を閉ざすしかなかった。
「やっぱ、あたしが乗るとまずかった…?」
「気にすんなよ。…急ぐからしっかりつかまってろよ!」

132もしもR組がOGに出たら:2003/11/10(月) 04:23
R-1のところへは他の味方機が敵を近づけさせないように配慮してくれた事もあり
難なくたどり着くことが出来た。
リュウセイはR-1のコックピットへと乗り換えタイプTTに一人残ったカーラへ言った。
「いいか、ここもじきに危険になるから、早く後ろに下がっていろよ。
 そいつの操縦方法はバーニングPTと同じだからお前もわかるだろ」
確かにこの機体のコックピットは
よくリュウセイに付き合わされてプレイした事のあるゲームのコントローラーに似ている。
しかし、ゲームと実戦ではかなりの違いだ。リュウセイに抗議しようとしたが、
R-1は変形し戦場へと飛び去っていってしまった。
「ちょっと、リュウセイ!
 …もう!何かに集中すると周りが見えなくなるのは相変わらずね。
 えっと…確か、これで移動を…」
危なげな感じで後退を始めたタイプTTだったが、ある程度ハガネから離れたところで
敵機に見つかってしまい、リオンの攻撃が襲い掛かってきた。
「わっと…攻撃は…これ!?」
装備していたマシンガンで応戦するが実戦の素人、ゲームも付き合い程度しか経験のない
カーラでは機動性の高いリオンにかすらせる事も出来ない。
そんなカーラへ向けてリオンは容赦なくレールガンを発射する。
狙いは何とか外したが脚部に命中してしまい、バランスを崩して尻餅をつく形で倒れこんでしまった。
リオンの銃口が今度は外さぬよう慎重にコックピットへ向けられる。
「ダメ…まだ…こんなところで死ねない!」
カーラのその叫びに呼応して、背部の武器パックから刃の付いた円盤が飛び出し、
回転をしながらリオンへ向っていった。
「な、T-LINKカッター!?カーラが使ってんのか!?」
救援に入ろうとしたリュウセイが驚きの声を上げる。
カーラが意識して動かしたわけではないのだがT-LINKカッターは
耳障りな金属音と火花を撒き散らしながらリオンを叩き落し、
そのまま首と胴体を捉えビルを背に磔にした。
カーラにも何が起こっているのか理解できなかった。
「うわああああっっ!!!」
だがそれ故に、単純な死への恐怖が彼女にマシンガンを乱射させた。

133もしもR組がOGに出たら:2003/11/10(月) 04:26
「カーラ……カーラっ!」
ふと我に返ると自分の名前を呼び続けるリュウセイの顔がそばにあった。
どうやらこれに乗り込んだときと同様に外からハッチを開け中に入ってきたらしい。
「リュウセイ…あの敵は…?」
まだ体が震えて操縦桿から手も離せなかったが、ただそれだけは声に出すことが出来た。
「ああ…戦闘は終わったよ。もう大丈夫だ」
そうリュウセイは言うがその表情はどうもぎこちない。
体も意識的に外を見せないようにしているように見えた。
視線を脇にそらし外を覗き込んでみると
「ダメだ!見るな!」

そこに見えたのは
マシンガンが直撃したのだろう、大きく穴を開けたリオンのコックピット
真っ赤な血に染まったその中央にあるのは
以前の姿を想像させることも不可能な、人間"だったもの"の塊

「あ…あれ……あたし…あたしが……殺した…?」
胃からこみ上がってくるものを何とか抑えカーラは呟く。
その声は先程とはまた違った恐怖に震えていた。
「落ち着け!お前のせいじゃない!」
自分へ呼びかけるリュウセイの声がどんどん離れているように感じた。

「い…や……嫌ああああぁぁぁっっっ!!!!」

134もしもR組がOGに出たら:2003/11/10(月) 04:26
寝ぼけてますね。また大きなミスをしてしまいました。
以下が>>124>>125の間に入る予定でした。


「ラウル、いいですか…?」
「ち、ちょっと待った!」
ミズホがラウルに当てられた部屋に入ると、着替え中でトランクスだけ穿いているラウルと目が合った。
「…ごめんなさい!」
「いや、扉のロックもしてなかった俺も悪いし…それより何か用?」
とりあえずズボンだけでも急いで穿いて、顔を真っ赤にして後ろを向いているミズホに問いかける。
「ええ…レイカー司令からなんですけど、
 ラミアさんと私たちを基地の皆さんに改めて紹介するので、
 ブリーフィングルームに来てくれということらしいです」
「なんか…今更って感じだな」
「仕方ありませんよ。ラウルはずっと寝込んでいて、私もあまりここの人と話していませ
 んし…」
この前の戦闘の後、病み上がりの状態での機体の操縦でラウルは基地についた途端に倒れ、
また医務室に逆戻りになってしまい、再び2日ほど寝込んでしまっていた。
やっと今日、普通の生活に支障がないほど快復したばかりである。
ミズホもまたその間、ラウルの面倒とエクサランスの整備を往復しているだけだった。
リュウセイや、アヤなどは何度か見舞いに来てくれて話も少ししたが、
他では顔と名前すら一致しない者もいる。
「そうだったな…ごめん、俺のせいで」
「いいですよ。でもこれからは自分の体のこともちゃんと考えて行動してくださいね」
やっと着替えも終わり、ラウルとミズホはブリーフィングへ向った。

135もしもR組がOGに出たら:2003/11/10(月) 04:27
「こちらタウゼントフェスラー9。L4宙域到達まであと0100」
他に何も聞こえない静かな宇宙空間に1隻の輸送艇がゆっくりと進んでいる。
その操縦席に座っている、少々気の弱そうな少年がいずこへと連絡を取っていた。
少年の名はリョウト・ヒカワ。その優しそうな顔から想像もつかないが、
これでも先の戦争で活躍したハガネに搭乗し、活躍したパイロットの一人である。
「どうしてこんなに定時連絡の回数が多いのかな…?やっぱり、僕じゃ頼りないのかな…」
「何言ってるの。あなたはこの輸送機の機長なのよ。もっと自信持たなきゃ!」
「う、うん…」
リョウトが落ち込むように呟くと、後ろからリョウトと逆に気の強そうな少女の声が聞こえてきた。
少女の名はリオ・メイロン。彼女も同様にハガネに搭乗していたパイロットである。
2人はホワイトスター戦役終了後、軍を辞めて月のマオ・インダストリーに就職していた。
もともと機械いじりが趣味だったリョウトにとって、血生臭い軍よりは性に合っていたのだが、
突然、謎の荷物の輸送任務を言い渡されエルピスコロニーへと向かっていた。

リョウトはリオに気づかれないようにズボンのポケットの中に手を入れた。
中には映画のチケットが2枚ある。
この仕事を終えたら2人には休暇が与えられることになっており、リオを誘おうと考えていた。
オペレーションSRWの前日にも横浜の中華街へデートに誘ったのだが、
結局マオ社の入社でうやむやになってしまい、その後も休暇が合うことが滅多になかった。
―リョウトは知らないのだが、それはリオの父親でありマオ社常務のユアンがそう仕向けていたらしい。
とにかく、疎遠になっていた2人にとってこの休暇はチャンスである。
リョウトは緊張のため高鳴る鼓動を抑えるために一度深呼吸をして口を開いた。
「あのさ、リオ…」
「それにしても、今私たちが運んでいる積荷って何なのかしら?」
いきなり撃沈である。
それはともかくリオの疑問はリョウトも気になっていた。
DC残党のテロが問題となっているが、ホワイトスター戦役を終えてからは世界情勢もいたって穏やかと言える。
それなのに兵器製造が主な業務であるマオ社の社内は何やら慌しくなっている感じがしていた。
そこに意図不明の輸送任務である。どうもきな臭いものを感じられる。

136もしもR組がOGに出たら:2003/11/10(月) 04:27
「mk-2の量産型かしら?」
リオの言った量産型とは、マオ社で自分たちが開発をしていたヒュッケバインmk-2の量産型のことである。
兵力補充を急務とした連邦政府の指針で開発を急かされた機体だ。
「でもあれはもう1ヶ月前にロールアウトしたよ。いまさら極秘で運ぶ必要もないと思うけど…」
リョウトの言う通り量産型ヒュッケバインmk-2はすでに起動実験も終え、
各コロニーや地球連邦支部にいくつか配置されている。
「じゃあ、何だって言うの?」
「それは…」
リョウトがまた俯いて考えていると、リオは操縦室から出て行こうとした。
「どこへ行くの?」
「ここで考えてみてもしょうがないから実物を見てみるのよ」
「で、でも…」
「リョウト君はここにいていいわ。私だけで見てくるから」
「待って、僕も行くよ」
リョウトは操縦をオートパイロットに変更し、1人で格納庫へ行こうとするリオを慌てて追いかけた。

その時、急いでいたためリョウトは気づかなかったが、
輸送機のレーダーはこちらに向かっているいくつかの機体を捉えていた。

137もしもR組がOGに出たら:2003/11/10(月) 04:28
「さあ、召し上がれ。口に合うかどうかわからないけど…」
所変わってエルピスコロニーに停泊しているヒリュウ改の食堂。
結局ヒリュウ改に乗り込むことになったフィオナが他のメンバーに料理を振舞っていた。
エルピスコロニーについて1週間ほど経ったがあの正体不明の機体は依然発見されず、
したがって戦闘もないまま過ごしていたフィオナはエクサランスの整備に忙しかったラージと違い
とにかく暇をもてあましていた。
そこでいささか遅れたが救援の礼ということで昼食を自分が作ることにしたのである。

「へえ、結構美味いじゃないか」
「一応前は毎日作ってましたから」
エクサランスを開発していた当時はラージもミズホも作業に専念しており、
かといってラウルに任せるわけにもいかないので家事一般は全てフィオナの仕事となっていたのである。
「いや、でも本当に美味いよ。イカロス基地にいたころはほとんど毎日レトルトの料理だったし
 たまに手料理があっても作るのがカチーナ中尉やレオナだったからとても食べれるものじゃ…」
勢いよく料理を口に運びながらフィオナを褒めるタスクは自分に突き刺さる2つの冷たい視線を感じた。
「タスク…後で外に出て実戦訓練だ。サボっていた分を一気に取り返させてやる」
「中尉、私も手伝わさせていただきますわ」
死刑宣告ともいえる言葉を聞き、冷や汗をかいたタスクは周囲に目で助けを求めるが
皆、何も言わず料理を食べているだけである。
(ご愁傷様…)
そこにいた全員が言葉に出さずそう思った。

半分泣きかけながらタスクが何とか言い訳を考えていると、
突然緊急事態を知らせるサイレンが艦内に鳴り響いた。
「L4宙域にてSOSを受信しました。総員第二種戦闘配置についてください!
 繰り返します…」
「これは大変だ!急がないとな!」
不謹慎ながらこれ幸いとタスクは一目散に飛び出していく。
「あの野郎…」
カチーナも苦々しく舌打ちをしてタスクを追いかけていった。
「フィオナ、僕たちも行きましょう」
「ラージ…いいの?」
自分たちがタイムスリップをしてしまったことに気づいた後、
フィオナはラージにあまりこの時代に干渉しないように釘を刺されていたのである。
「もしかしたらラウルたちかもしれません。それにあまり消極的に動いていると
 かえって怪しまれてしまいます」
「…そうね」
そうは言ってもフィオナの表情は少し嬉しそうだった。
未来で自分の無力さを痛感していたフィオナは誰かの役に立つということが
ただ単純に嬉しかったのである。

138もしもR組がOGに出たら:2003/11/10(月) 04:28
時は少し戻る。
リョウトたちはタウゼントフェスラーの格納庫で突然襲い掛かった振動に驚いていた。
「これは…爆発!?」
自分が出るときにはぶつかるような隕石や小惑星のたぐいは無かったはずである。
すると自分たちは今、何者かに攻撃を受けているということになる。
「どうして…操縦席に戻ってみる!」
「もう間に合わないわ!あれで脱出しましょう」
振り返り戻ろうとするリョウトをリオは呼び止めた。
指差したところには一機の戦闘機がある。
「あれは…PTのパーソナルファイター?何でこんなものが…」
「考えたってわからないわよ。早く乗りましょう!」
パーソナルファイターにリョウトたちが乗り込み、脱出するのと同時に
タウゼントフェスラーはエンジンに攻撃を受け爆発した。

自分たちを襲った機体を見てリョウトは言葉を失った。
量産型ゲシュペンストmk-2、以前は自分たちが属していた地球連邦の機体である。
「あなたたち!私たちはマオ・インダストリー所属の者よ。なぜ攻撃するの!?」
リオが呼びかけても相手は反応せず、こちらへ攻撃を仕掛けてくる。
何とかそれをかわしたリョウトは、タウゼントフェスラーがあったところに
PTらしき物があることに気がついた。
「ヒュッケ…バイン?見たことないタイプだけど…!
 リオ!あれを使うよ」
「え、本気なの、リョウト君」
「こんなところで死にたくないだろう!?」
敵の攻撃をスレスレのところで避けながら何とかドッキングに成功すると
PTのカメラアイに力強い光が灯った。

(やっぱり…開発計画書で見たことがある。これはヒュッケバインmk-3だ!
 でもどうして…mk-3の開発計画は凍結されたはずじゃなかったの!?)
自分たちが乗り込んだ機体の正体に戸惑うリョウトは目の前の計器が示してある言葉にまた驚いた。
「これは…トロニウムエンジンを搭載している!?」
SRX計画のいくつかの機体が搭載しているトロニウムエンジン。
膨大な出力をもたらしながらも常に暴走の危険性を伴う、最も危険な諸刃の剣を
自分が今扱っていることに武者震いしてしまう。
「ぼうっとしてないで!敵が来てるわよ!」
リオの言葉に我を取り戻しヒュッケバインmk-3を急前進させる。
一応エンジンはクォータードライブに抑えたが、それでもかかるGはすさまじいものだった。
「こんな機体を僕が使うの…!?でも…やるしかない!」
リョウトの顔に先ほどまでの気弱そうな表情と変わって強い意志が浮かび上がった。

139もしもR組がOGに出たら:2003/11/10(月) 04:28
「ゲシュペンストとヒュッケバインが戦っているですって!?」
戦闘開始から数分後、ヒリュウ改がSOSが発信された宙域、
つまりリョウトたちが戦っている場所に辿り着いた。
しかし、戦っている相手が連邦軍のゲシュペンストmk-2であるという報告を聞き
レフィーナも判断に詰まってしまう。
「ヒリュウ改、応答願います。こちらはリョウト・ヒカワです」
「リョウト少尉!?ではそのヒュッケバインは少なくとも味方ですね」
「はい、あっちは何度通信を試みても反応してきませんから…」
レフィーナが目配せするとユンは頷いて答えた。
「連邦軍の識別信号は出していますが、こちらの通信にも応答しません」
「ではPT部隊…」
レフィーナがゲシュペンストを敵と見なして出撃命令を出そうとしたところで
その敵機は四散して撤退していった。
「追いますか?」
穏やかな表情を崩さないショーンの言葉にレフィーナは首を振って答えた。
「いえ、罠かもしれません…今回はリョウト少尉たちが無事だったことで良しとしましょう」
「賢明なご判断ですな」
ブリッジとは逆に納得いかない様子なのが今か今かと出撃を待っていたカチーナである。
「おいおいマジかよ…せっかくタスクの代わりしてにストレス発散できると思ったのによ」
(実戦訓練って何をするつもりだったんだろ…)
フィオナは少し想像してみたが、すぐに止めた。

140もしもR組がOGに出たら:2003/11/10(月) 04:29
「なるほど…ではマオ・インダストリー社にも問い合わせてみる必要があるかもしれませんね」
エルピスコロニーに帰る途中のヒリュウ改のブリッジでレフィーナたちはリョウトの報告を聞いていた。
「ヒリュウ改に下された地球帰還命令といい、少尉たちが運んできた凍結されたはずの
 ヒュッケバインmk-3のことといい、地球圏も少しきな臭くなってきましたな」
「あの…」
考え事を始めたショーンたちにリョウトが言いにくそうに声をかける。
「そういえば、2人とももう軍は辞めていましたね。
 エルピスコロニーに着いたら艦を降りても結構ですよ」
「そのことなんですが…僕をまたパイロットとして使ってもらえませんか?」
「リョウト君!?」
突然の申し出にそこにいた者の全員が驚く。
「ごめんリオ。でもやっぱり僕は戦争で…理不尽な暴力で苦しむ人をこれ以上増やしたく
 ないんだ」
「仕方ないわね…じゃあ私もこの艦に残るわ」
「いいのですか?こちらとしては願ったり叶ったりなのですが」
「はい」
2人は真剣な顔で声をそろえた。

(はぁ…これで2人きりの休暇も先の話か…)
「どうしたの、リオ?」
リョウトが問いかけると、少しため息をついたリオは顔を真っ赤になって首を振った。
「な、何でもないわ!…これからもよろしくね、リョウト君」
「う、うん」

141もしもR組がOGに出たら:2003/11/10(月) 04:29
ある一室の中、一組の男女が電灯もつけずにいる。暗くて顔もうっすらとしか見えないが、普通こういうときにあるような甘い雰囲気は全くなく、むしろ緊張した空気が部屋全体を包んでいる。部屋に盗聴器がないことを確認したあと、女の方から話し始めた。
「ダイテツ中佐からの依頼だけど一応調べてみたわ」
「どうだった?」
「6人とも一癖あるって感じね。…誰から聞く?」
「では記憶喪失という男から聞こうか」
「アクセル・アルマーだったわね。
 …はっきり言ってこの男のことが一番不可解よ。
 この男、連邦軍所属とデータにあったんだけど…死んでいるのよ。
 DC戦争の3年前に」
「死んでいる?」
「ええ、訓練中の事故ということで。
 あの時期は事故での死亡者や行方不明者が結構いたけどその中の一人というわけね。
 DNA検査とかしたわけじゃないから本人かどうかは判別つかないけど…
 乗っていた機体、ソウルゲインについては手がかりなし」

「…そうか。ではラミアという女の方は?」
「ラミア・ラブレスという名前は確かに戸籍データに存在したわ。
 スペランツァコロニーに父親がジャンク屋を経営していて
 その父親もDC戦争中に死亡というのも合っている」
「機体の方は?ジャンク屋に作れるような代物なのか?」
「ジャンク屋っていっても腕のほうはピンキリあるからね。
 不可能ってわけじゃないと思うけど…ただ」
「何かあるのか?」
「データが…似過ぎているのよ。ADの最新機に」
「AD…フレモント・インダストリー社のアサルト・ドラグーンか?
 しかしあのプロジェクトは中止になったはずだろう」
「ええ、元々プロジェクトADはマオ社のPTに対する敵対心から始まったものだし
 企業としては採算が取れないということで開発は無期延期になったわ。
 …だけど気になる事もあるの」
「何だ?」
「DC戦争の時期からなんだけど連邦からフレモント・インダストリー社にかなりの金が流れているのよ。
 初めは少しずつだったんだけど、今では戦後復興という名目でマオ・インダストリーとほぼ同額の
 補助金が出ているわ」
「……」
「この件に関してはZ&R社も同じなんだけどね」

142もしもR組がOGに出たら:2003/11/10(月) 04:29
「で、最後にエクサランスという機体に乗ってきた4人ね。
 彼らも戸籍に関しては供述と合っているわ、ほとんどね」
「…こいつらも何かあるのか?」
「フフ、うんざりした顔をしないで。戸籍を見るとこの4人…全員14,5歳のはずなのよ。
 まあ、人によってはその年で20歳前後に見えなくもないこともあるかもしれないけど
 4人が4人とも、というのはおかしいでしょう
 そしてエクサランスという機体…確かにフェル・グレーデン博士たちが新しいエンジンの研究をしている
 というのは知っているけど、実用化のレベルまで研究が進んだというのは初耳だったわね」

「…死んだはずの男、中止された計画の機体に乗る女、そしてデータと年齢が合わない4人か…
 確かにどいつも一筋縄ではいきそうにないな。一応このことはダイテツ中佐に報告しておくが
 もうしばらく調査を頼めるか?」
「ええ、私もそのつもりだったし。
 …そうだ、話は変わるけどあの2人、こっちの要請を承諾してくれたわ」
「そうか……皆には迷惑ばかりかけるな。特にお前には…すまない」
「あなたはあえてそういう道を選んだんでしょう。
 皆わかっているわ…それであなた自身が傷ついているのも。
 だから協力しているのよ、私も含めてね。
 もっと自信を持って…レナンジェス・スターロード中佐」
「ああ…ありがとう、ミーナ」

143もしもR組がOGに出たら:2003/11/10(月) 04:31
先の藤沢地区への出撃から1週間が過ぎたある日、
伊豆基地のロビーではリュウセイとカーラが向き合って無言のまま俯いていた。
傍から見ると何やら深刻な雰囲気を漂わせそうな様子だが、実際にはそんなことはない。
それも当然のことで、二人はただDコンを使ってリュウセイはゲームの、
カーラは音楽のデータと睨めっこをしているだけだからだ。
「なあ」
「うん?」
そんな中、リュウセイがカーラに話しかけた。
ぞんざいな返し方にも気を悪くした様子がないところを見ると、
ロビーの中を包む静寂に耐えられなくなっただけなのだろう。
「お前、いつになったら家に帰るんだ?」
先の出撃のときに止むを得なかったとはいえ、
機密事項の塊ともいえる軍の機体に乗り込んだことでカーラは伊豆基地に連行されていた。
恋人であったユウが行方不明になってしまったこと、
初めて自分の手で人を殺めてしまったことで激しく取り乱した
カーラの様子を見たリュウセイにとっては、
彼女を心配せずにはいられなかったのだが、
それを一笑に付せるかのように翌日にはその本人が
何事もなかったかのように元気な様子を見せていた。
「ほら、あたしって昔から嫌なことも一晩寝れば忘れるタイプだったでしょ」
カーラは笑いながらそう言っていたが、注意深く見ればそれは
ただ周りを心配させないための空元気であることは明白だった。
だが、リュウセイは安心した様に見せた。
自分がどんな言葉をつくろっても彼女の傷を癒せないことをわかってしまったからだ。

144もしもR組がOGに出たら:2003/11/10(月) 04:31
ともかく、ヴィレッタの厚意もあって無断で機体に乗り込んだことも不問に終わり、
念のための精密検査も2日程前に以上無しとの結果が出たはずで
カーラが伊豆基地に残る理由はなくなったはずである。
「あれ、リュウセイは知らなかったっけ?」
「何をだよ」
「あたしここでパイロットをすることになったから。
 ま、同僚になったわけね。」
「ふうん……何だってぇ!」
適当に聞いていたため、さらりと流してしまいそうになった会話の中に
聞き捨てならない言葉があってリュウセイは大声を上げた。
「きゃ…いきなり大きな声出さないでよ。びっくりしたじゃない」
「パイロットになったっていつから!?」
「えっと…一昨日からかな?」
激しい剣幕に思わずたじろってしまっているカーラの言葉を聞くと
リュウセイは勢いよく立ち上がり部屋を出ようと走り出した。
「ちょっと、どこへ行くのよ」
「パイロットなんてだめだ。俺は許さないからな! すぐ家に帰れ!」
「何で一々あんたに許しを請わなきゃならないのよ」
「とにかく! 今から教官に話をつけてくる!」
カーラの話も聞く耳持たず、リュウセイはロビーを飛び出した。
そんな様子を見てため息をついたカーラは何となしに天井を見上げ、呟いた。
「そりゃあ、あたしだってしたくはないよ…
 戦争なんて…人殺しなんて…」

145もしもR組がOGに出たら:2003/11/10(月) 04:32
「どういうことだ!」
ヴィレッタの部屋に入るなり先程と同じ剣幕で怒鳴ったリュウセイを見て、
アヤと何やら打ち合わせをしていたヴィレッタは相変わらずの冷静な態度で聞き返した。
「何のことかしら?」
「カーラのことだよ! 何であいつがパイロットになってんだ!?」
拳をデスクに叩きつけながら詰め寄るリュウセイの言葉に
ヴィレッタは納得いったかのように頷いて、
デスクの上にあったコーヒーを飲みながら切れ長の目でリュウセイを見つめた。
「連邦軍が慢性的な戦力不足にあることはあなたも知っているでしょう。
 それに彼女はT-LINKシステムを扱える貴重な存在よ」
「だからって…あいつは民間人だぞ!
 それに貴重って、俺たちが持っている念動力って何なんだ?」
「今はまだ話すことができないわ。私もよく知っていることではないし
 今言えるのは、イングラムが求めていた力の一つということ…それだけね」
リュウセイの抗議が一旦止まったところでヴィレッタはさらに言葉を続けた。
「それにパイロットにするというのは彼女本人から言い出したことよ」
「えっ、どういうことだよ」
「彼女のボーイフレンド…ユウキ・ジェグナンといったかしら、
 軍が行方不明になっているその人の捜索を続ける代わりに、
 自分をパイロットとして使ってくれとね」
ヴィレッタの話を聞いてリュウセイは何も言えなくなってしまった。
元はといえば自分が勝手にR-1から離れ、カーラたちに会わなければ
戦闘に巻き込ませることもなかったかもしれない。
それでなくても、ゲシュペンストに乗せたとき安全な位置まで避難させておけば
カーラも持っていた念動力の素質が発覚することもなかっただろう。

部屋に入ってきたときの勢いが全く無くなってしまったリュウセイを見て
今までそばで2人のやり取りを見ているだけだったアヤが言葉をはさんできた。
「そのことについて今、ヴィレッタ教官と話をしていたんだけど
 捜索の結果、学校の周辺ではあなたたちの話にあったような人の遺体は発見されなかったわ」
「じゃあ、ユウは生きているのか!?」
かすかな希望が見えたことで明るい表情を取り戻すリュウセイとは逆に
アヤは深刻な顔で首を振った。
「残念だけど…そう楽観視はできないわ。
 生きているとすればなぜ名乗り出てこないのか疑問に残るし…
 今は藤沢地区周辺の病院にも問い合わせているところだけど
 それらしき人が収容されたという報告もまだなのよ」
「結局…どういうことなんだ?」
「わからないわ…今の段階では情報が少なすぎる。
 とにかくこの件は軍の情報部に任せることになったから安心してくれていいと思うけど…
 このことはまだカーラさんには話さないほうがいいでしょうね。
 リュウも注意して」
「…わかった」

146もしもR組がOGに出たら:2003/11/10(月) 04:32
事態を少しも好転できなかったことに落ち込みながら
ヴィレッタの部屋を出たリュウセイはふと自分の手の平を見つめた。
ヴィレッタが貴重といった、自分たちが持っているという念動力。
T-LINKシステムを扱えることや前大戦で自分が乗ったSRXの起動に必要など、
軍にとっては確かに普通の人間が持っていないという点もあって、貴重かもしれない。
だがそれで今まで一体何ができただろうか。
結局、前大戦でも敵に捕らえられ、
機械に操られていた哀れな少女一人救い出すこともできなかった。
そして今回も、今はアメリカにいるクスハと同様、
その力を持っているというだけの友人を戦争に身を置かせることになってしまっている。
リュウセイは苦々しい顔で唇を噛み締め、
いつの間にか血の気が引くほど強く握り締めた拳を廊下の壁に叩きつけた。

147もしもR組がOGに出たら:2003/11/10(月) 04:32
同じ頃、伊豆基地の司令室でもダイテツとレイカーが深刻な表情で話をしていた。
「ジュネーブの連邦本部が音信不通になった!?」
ダイテツはレイカーの口から出た信じられない言葉に驚き、目を見開いた。
「そうだ。何が起こったのかはまだ不明だが、
 昨日まで異常無かったというのに、現在では一切の連絡が取れなくなってしまっている」
「たった一晩で攻め落とされたとでもいうのか…
 しかし、今ジュネーブは連邦軍の中で最大の戦力を持っているはずだぞ」
前回の戦争の中でDCの襲撃とエアロゲイターのミサイル攻撃によって
2度壊滅させられたジュネーブにある地球連邦軍本部は、
ヒュッケバインmk-2などの量産型を多く配置された結果、
以前より大きな戦力を保持しており
Rシリーズなどの特別な機体を持っているこの極東支部や
アメリカのラングレー基地を含めても
地球圏の中で最も攻め落とすのが難しい拠点となっていた。
「一体どのような方法で…?」
「これを見てくれ。軍事衛星から撮影された今朝のジュネーブの写真だ」
レイカーから渡された写真にはジュネーブのごく普通の風景が写されており、
その他には何も無かった。
そう、何も無いのだ。
本来ならばDC残党のテロを警戒して巡回しているはずの偵察機も、
演習を行っているはずの部隊も写されていない。
まるでジュネーブから軍だけが消え失せたようになっている。

148もしもR組がOGに出たら:2003/11/10(月) 04:32
「まともに戦闘を行った形跡すら残されていないとは…
 まさか…エアロゲイターか?」
「いや、それはないだろう。アステロイドベルトのイカロス基地やコロニー統合軍からも
 異星人の軍勢が襲来したという報告はない。全く正体不明の敵というわけだ。
 そこで我々がその調査をするようになった」
量産機の製造を重視した昨今における連邦の方針だが、
ジュネーブ本部以外にそれらの機体はほとんど配属されず、
DC戦争時と同様、この非常時にまともに動ける戦力を持っている支部は極わずかという
皮肉な状況になっていた。
「仕方のないことだな。ハガネの艦首モジュールは?」
「まだトロニウムエンジンの調整が終わってはいない。
 クロガネを使ったほうがいいのではないかね?」
「いや、こういった時ほど使い慣れたものの方がいいからな」
「わかった。艦首モジュールの代わりといっては何だが、
 宇宙にいるヒリュウ改やラングレー基地のATXチームも
 ジュネーブに向かわせることになった。途中で合流してくれ。
 その他の人員や装備も準備ができ次第そちらに補充させる」
「やれやれ…状況は以前より悪いくらいだな。儂にはお似合いと言えるかもしれんが」
不敵な笑みを浮かべるダイテツにレイカーは申し訳なさそうな顔をした。
「すまないな…出発はいつにする?」
「できるだけ早い方がいいだろう。
 機体の整備などから今日はもう無理だろうが、明日にでもここを発つ」

149もしもR組がOGに出たら:2003/11/10(月) 04:33
その日の夜、伊豆基地の格納庫では整備員、パイロットを問わず
ハガネクルー総出での作業が行われていた。
しばらく基地を戻ることが無いだろうと伝えられたため、誰もが念入りに整備している。
「なんだかこの雰囲気、未来でのことを思い出しますね」
エクサランスの周りでフレームのチェックをしていたミズホが
コックピットの中を覗き込んで、作業をしているラウルに話しかけた。
「あの時と同じ結末には…しない」
深刻な顔をして呟くラウルを見て、ミズホは少し悲しげな顔をした。
(まだ…吹っ切れてはいないんですね)
ミズホは自分の視線に気付かず作業を続けるラウルに
できるだけ明るい声で話しかけた。
「エンジンの調子はどうですか?」
「だめだ、出力が思ったより上がらない。
 たぶんエンジン本体に異常があるんだろうけど…
 こればっかりはラージじゃないと無理だろうしな…」
大きくため息をついて頭を掻いたラウルは、
その横で通信機のランプが点滅していることに気がついた。

150もしもR組がOGに出たら:2003/11/10(月) 04:33
「誰からだ?」
通信機のスイッチを入れると前面のパネルに
この時代に来てからずっと心配し続けていた顔、フィオナが映し出された。
「あ、本当に繋がった!」
「フィオナ! 生きてたのか!?
 しかもこうやって通信できるってことは…お前たちもこの時代に?」
「まあね。そのあたりはラージが詳しく…
 ラージ! ラウルたちと繋がったわよ!」
久しぶりに顔を見たのがよほど嬉しいのだろう、
フィオナは満面の笑みを浮かべながら近くにいるラージを呼び寄せた。
「やはりあなたたちもこの時代に来ていたようですね」
「やはりって…わかっていたのか?」
「今は時間が無いのですから…その話はまた後で。
 今どこにいるんですか?」
「地上の極東支部の伊豆基地って所だけど…
 明日にはここを出るらしいぜ」
「極東支部…もしかしてハガネという戦艦に乗り込んでいるのですか?
 なら丁度いいですね。僕たちは今、宇宙でヒリュウ改に同行しています。
 これからヒリュウ改は地球に下りてハガネと合流する予定ですから
 その時にまた改めてこれからのことを話し合いましょう」
「あ、ああ…」
「それから、この時代の人たちにあまり干渉しないように注意してください、いいですね。
 それではまた地球で会いましょう」
「お、おい。そりゃどういう意味だ!?」
ラージはラウルの呼び止めも聞かず、通信を切ってしまった。
「くそっ、いつだって人の話を聞きやしない!」
光を灯さなくなった画面を殴りつけ、ラウルは不機嫌そうに立ち上がりコックピットから出た。
「ラウル! どうするんですか?」
「寝る。俺にできることはもうやりつくしたし、明日は早いんだ。
 ミズホも早く寝たほうがいいぜ」
苛立ちを隠そうともせず肩を怒らせながら格納庫を出て行くラウルを見て
ミズホの心配そうな表情はますます深くなってしまっていた。

翌日、ハガネは伊豆基地を出発した。
これが新たなる戦いの本格的な始まりとなることを
その時、誰一人として予想してはいなかった。

151もしもR組がOGに出たら:2003/11/10(月) 04:36
自室として使ってあるマオ・インダストリーの社長室で
リン・マオは執務に追われていた。
机の上に山の様に積まれている資料や報告書に目を通し、
手際良くサインをすませている姿を見て、
彼女が以前は優秀な軍人であったことを想像できる者はほとんどいないだろう。
仕事が一段落ついたのか、首をまわしてマッサージしながら
紅茶を飲み一息ついていると、どたどたと大きな足音が廊下から聞こえてきた。
「社長!」
入ってきたのはユアン・メイロン。
リンの父親であるマオ・インダストリー先代社長、ティン・マオと共に
一代にしてこの会社を大きくした功労者である。
「どうした、常務? そんなに慌てて」
「どうしたもこうしたもないですよ。Mk‐3を運んでいた輸送機が襲われたって
 なぜ私に教えてくれなかったんです!?」
(こうなるとわかっていたから言わなかったんだが…)
普段の冷静なユアンと、今目の前にいるおろおろしている彼とのギャップに、
リンは悪いと思いながらも微笑みを隠し得なかった。

「大丈夫だ。積み荷は無事エルピスコロニーに届いたそうだ」
「あの社長…私が心配しているのはそちらではなくて、
 いや、もちろんそれも心配ではあるんですが…」
「わかっているよ。リオ…娘さんも無事だ。
 今はリョウトと一緒にヒリュウ改に保護されているらしい」
意地悪そうな笑みを浮かべるリンの言葉を聞き、
ユアンは安心してほっとため息をついた。
「そうですか…しかし、こんなことになるなんて…
 だから私は反対したんですよ」
「常務が反対していたのはあの子たちを2人きりで任務に就かせたことだろう」
「う、それは…」
リオとリョウトがほぼ付き合っているという関係で、
ユアンがそのことを快く思っていないことは社内でもっぱらの噂だった。
ユアンとしてもリョウト個人に対しては悪い印象は持っていない。
開発者としても優秀であるし、人当たりの良い彼の性格はむしろ好感が持てる。
しかし、だからといって今まで愛情を注いで育ててきた一人娘との交際には
簡単に首を縦に振ることができない。
父親としての複雑な心情である。

152もしもR組がOGに出たら:2003/11/10(月) 04:36
「傍から見ていると余計な心配だと思うがな…」
どう見ても恋愛事に奥手そうな2人であるため
ユアンが危惧するような事になるには
あと数年はかかるだろうと簡単に想像できる。
もしリオの相手がイルムのような男だったら…
(どうしてここであいつが出てくる!)
そこまで考えたところで、自分が追い出した男の顔が浮かび、
リンは頭を振った。

2人がそれぞれの理由で頭を抱えていると、
備え付けのインターフォンから秘書の声が聞こえてきた。
「社長、イスルギ重工のフィリオ・プレスディ主任が
 ご面会に来られていますが」
「あ、ああ。すぐに行くと伝えてくれ」
「かしこまりました」
自分の考えていたことを聞かれたわけでもないのに
どぎまぎしながらわざとらしく咳払いをするリオと違い、
ユアンの方は仕事に生きる男の顔になっていた。
「例の二社提携によるプロジェクトですか?」
「ああ、開発もいよいよ大詰めといったところだろうな」
「それはよかった。
 あちらのAMとこちらのPT、人型をしているという点では似ていますが
 内部構造はかなり違うらしいですから。
 中々折り合いがつかなかったらしいですから」
「だがこちらにもメリットはあった。
 特に、現時点でテスラドライブに関して、我が社はイスルギ重工にもテスラ研にも
 遅れを取っているからな。そのノウハウを学べるというのは大きいよ」
そう言いながらスーツの上着を羽織っていると、
インターフォンからまた発信音が鳴り響いた。
「どうした? 今出るから主任にはもう少し待ってもらってくれ」
「いえ違うんです。たった今連絡があったのですが、
 セレネ基地で調整を行っていたレッドが何者かに強奪されたそうです!」
「何だと!?」
インターフォンから聞こえてきた言葉にリンとユアンは驚きで目を見開いた。
嫌な感じの冷や汗が背中をつたってくるのを感じた。

153もしもR組がOGに出たら:2003/11/10(月) 04:37
一方、エルピスコロニーの方ではジュネーブ陥落の一報が伝わっていた。
「では我々も地球に赴いてハガネと共に調査せよと?」
「ああ、そういうことになった。
 慌しいことになってすまないと思っているが」
レフィーナと話している壮年の男性、ブライアン・ミッドクリッド大統領は
少々申し訳なさそうにしながらも人当たりの良い薄い笑みを浮かべた。
「それに言いにくいことではあるんだが…
 君たちがここに居ることで少しばかりまずいことになりそうでね」
「それは私たちが地球連邦軍に所属しているからですかな?」
ショーンの言葉にブライアンは頷いた。
「そういうことだね。最近、DCの残党狩りの影響もあって
 地球連邦のコロニーに対する風当たりは強くなっている。
 それでコロニー統合軍の中で以前にもまして
 地球連邦に不満を持つものが増えてきているんだ。
 もともと統合軍にはマイヤーの信望者が多かったしね。
 そんな中、連邦軍所属のヒリュウ改がエルピスに停泊しているということは
 彼らに無用の刺激を与えかねない。
 何とか僕の方でも抑えてはいるが、下手をすると第2のDC戦争が始まってしまうかもしれない」
「わかりました。なるべく早くここを出ることにします」
ショッキングなことを言われたにもかかわらず、穏やかな表情を崩さない
レフィーナの返事を聞いてブライアンは深々と頭を下げた。
「本当に申し訳ない。君たちを追い出すような形になってしまって…」
「お気になさらないでください。大統領の責任ではありませんよ」
そう言ってレフィーナはショーンの方を見て頷きあった。

154もしもR組がOGに出たら:2003/11/10(月) 04:38
「地球に降りるってことになったら、コスモドライバーフレームじゃ
 少し心許ないわね…」
ラージの部屋のベッドに腰掛けているフィオナが、
同じ部屋の机に向かって資料と睨めっこをしているラージに話し掛けた。
「そうですね…」
フィオナは気の抜けた返事をするラージの背中を溜息混じりに見つめた。
「ねえ、ラージ。何をそんなに苛立ってるのよ?」
「別に、そんなことはありませんよ」
「嘘。何年付き合ってると思ってんの?」
ラージは作業を一旦止めてフィオナの方を振り向いた。
あまり感情を表に出さないラージの顔を見ても
他の人間は何を思ってるのかわからないだろうが、フィオナはそうではないらしい。
「逆に僕の方が聞きたいですよ。なぜフィオナはそんなに落ちついていられるんです?
 僕たちは過去の世界に居るんですよ。」
「だって…仕方がないじゃない。来てしまったことはもう変えられないんだから」
「僕は…父のタイムマシンの研究を否定してきました。
 それが偶然とはいえこんな事態になるなんて…
 科学者としてこれほどの屈辱はないですよ」
苦々しい表情で呟くラージはいつもの落ち着いたイメージと少し離れて見える。
「だからって悩んだってどうしようもないでしょう。
 これからどうするのか考えないと」
フィオナにしても何も不安がないわけではない。
それでもそのまま立ち止まらないだけの強さが彼女にはあった。

「そうですね…とりあえずはラウルたちを見つけ出して、
 未来に戻る方法を考えないと」
「ちょっと待って、ラウルたちもこの時代に来ているの!?」
思わず声を荒げて聞き返すフィオナにラージはさも当然といった顔をして話を続けた。
「あの状況から考えてそうみるのが自然でしょう。
 ただ彼らの居場所が掴めないことにはこちらからも迎えに行けませんし…」
そう聞くなりフィオナは急に部屋を出ようとした。
「どこへ行くんですか?」
「エクサランスよ。あれには通信機を載せてたでしょう。
 うまくいけばラウルたちと連絡がつけるかもしれない」
「あ、その手がありましたか」
フィオナの提案を今まで思いつかなかったのだろう、
ラージは目から鱗が落ちたかのような顔をした。
それを見るフィオナの顔に少し苦笑いが浮かぶ。
「頭はいいくせにそういうことは思いつかないんだから…
 とにかく、早く行きましょう」

155もしもR組がOGに出たら:2003/11/10(月) 04:38
明日の出向に向けてまだ騒がしさの残る格納庫で、
フィオナはエクサランスのコックピットにで通信機の操作を始めた。
ラージは他の整備員に捕まり、作業の手伝いをさせられている。
通信機の周波数を合わせ、何度かコールを試みたが
ラウルからの反応は無かった。
(やっぱりダメなのかな…)
そう思って諦めようとした時、通信が開きラウルの顔が画面に映し出された。
「あ、本当に繋がった!」
「フィオナ! 生きてたのか!?
 しかもこうやって通信できるってことは…お前たちもこの時代に?」
「まあね。そのあたりはラージが詳しく…
 ラージ! ラウルたちと繋がったわよ!」
フィオナが呼ぶと外で何やらリョウトと話をしていたラージは
すぐにコックピットに駆け寄ってきてフィオナを押しのけた。
「やはりあなたたちもこの時代に来ていたようですね」
「やはりって…わかっていたのか?」
「今は時間が無いのですから…その話はまた後で。
 今どこにいるんですか?」
「地上の極東支部の伊豆基地って所だけど…
 明日にはここを出るらしいぜ」
「極東支部…もしかしてハガネという戦艦に乗り込んでいるのですか?
 なら丁度いいですね。僕たちは今、宇宙でヒリュウ改に同行しています。
 これからヒリュウ改は地球に下りてハガネと合流する予定ですから
 その時にまた改めてこれからのことを話し合いましょう」
「あ、ああ…」
「それから、この時代の人たちにあまり干渉しないように注意してください、いいですね。
 それではまた地球で会いましょう」
「お、おい。そりゃ…」
ラウルは何か言おうとしていたらしいが、
ラージは自分の要件を告げるとすぐに通信回線を閉じてしまった。

156もしもR組がOGに出たら:2003/11/10(月) 04:39
「あれくらいでよかったの?
 もうちょっと話し合った方がいいんじゃないの」
フィオナが少ししか話をすることができなかったことで不満気な声をあげる。
「いや、ここで話し続けていれば他の人に
 怪しまられてしまうかもしれませんから。
 フィオナは部屋に戻って休んでいてください」
「いいけど…ラージは?」
「僕はもう少し作業を頼まれてますから」
そう言ってラージはさっさとコックピットから離れてしまった。
一人残されたフィオナも何もすることが無くなってしまったので
結局ラージの言う通り部屋に戻ろうとしたがその途中、
廊下で自分と同様、所在無さげにうろついているアクセルの姿が目についた。

「アクセルさん、どうしたんですか?」
「ん、いや。リョウトとラージにソウルゲインの整備を頼んでたんだが、
 そばでゴチャゴチャしてると邪魔だっつって追い出されちまったんだな」
よほど暇だったのだろう自分に話し掛けてきたフィオナを見て
アクセルは嬉しそうな顔で話した。
「自分で整備できないんですか?」
「ある程度は戦闘と同じで体が覚えてるんだがな。
 専門知識のいるところまでいくとさっぱりだな」
普段の様子や戦闘の時の熟練した動きを見るとつい忘れてしまいがちだが
この男は記憶を無くしていたのだ。
まずいことを聞いてしまった気がしたフィオナは少し俯いてしまった。
「…早く記憶が戻るといいですね」
「まあ戻るんなら早いに越したことはないけど…
 記憶喪失ってのも意外と楽しいもんなんだな、これが。
 フィオナも一度なってみるか?」
「え、遠慮しときます」
自分たちとはまた違った意味で辛い境遇にあるはずなのに
底抜けに明るいアクセルを見ていると
自分たちが悩んでいることがくだらないことのように思えてしまう。
フィオナはぎこちない笑みを浮かべながら目の前にいる不思議な男に頼もしげなものを感じた。

157もしもR組がOGに出たら:2003/11/10(月) 04:40
格納庫ではソウルゲインの整備をリョウトとラージが行っていた。
「この機体は非常に興味深いですね。
 非常識な外見と戦闘方法に比べて内部構造はかなり合理的なものになっている」
コックピットのハッチに背もたれながらラージが呟くと
それにコックピットの中にいるリョウトも頷き返した。
「うん…どうやら駆動系はゲシュペンストmk-2のSタイプを基にしているみたいですね」
グルンガストの基礎にもなったそれならばこの機体のパワーも納得はできる。
「では動力は何を使用しているのでしょう?
 電力を用いているところがありますけど、それだけでは出力が足りないですし…
 他に何か使っているみたいですが…
 ここは一つ、分解してみますか」
リョウトはいきなり物騒なことを言い出すラージを見て、少し冷や汗が流れた。
「い、いやそこまでしなくても…
 それに、多分これは生体エネルギーの一種だと思いますよ」
「生体エネルギー? いきなり非科学的なことを言い出しますね」
「前の戦争のとき、そんなエネルギーを動力にする機体に乗った仲間がいたんですよ。
 もしかしたらこの機体を開発した人も、そのデータを見たのかもしれないですね」
ラージがリョウトの話に興味を示し聞き入っていると、
コンソールを操作していたリョウトがモニターに映ったあるものに気が付いた。

動力系とも駆動系ともつかなく、また火気類を搭載していないソウルゲインに似つかわしくないそれは、
以前自分がハガネに持ちこんでしまったものを想像させる。
「ラージさん、ちょっとこれを見てもらえませんか?」
リョウトに言われモニターを覗きこんだラージの顔色が少し青くなった。
「これは…もしかして、爆弾?」
「やっぱりそう思いますか。
 …どうします? 解除して取り外してみましょうか」
リョウトの声にもさすがに緊張の色が見えるがそれも仕方のないことだろう。
爆弾処理など自分には全く経験のないことであるし、
出港までの時間を考えると専門家を呼ぶ余裕もない。
「止めておきましょう」
「えっ、どうしてですか!?」
予想外のラージの答えにリョウトの声が少し上ずった。
「今までの戦闘で爆発しなかったところをみると
 この爆弾の起爆装置は簡単には作動しないものなんでしょう。
 …おそらく自爆用の物ですね。ならば僕たちのような素人が迂闊に扱うより、
 アクセルさんの記憶が戻ったときに処置してもらう方が安全です」
「そう…ですね」
見つけたときには少しうろたえてしまったが、
冷静になって考えるとラージの言うことの方が正論であるように思える。
「とにかく今は様子を見てみましょう。必要だと判断したら僕が艦長に報告します。
 それでいいですね」
「わかりました」

158もしもR組がOGに出たら:2003/11/10(月) 04:41
翌日、エルピスコロニーを出たヒリュウ改は順調に地球への航海を進んでいた。
もうすでに、目の前に地球が広がっている。
「地球…か」
窓から見える青い星を見て呟いたフィオナの後ろからカチーナが話しかけてきた。
「何だ。地球は初めてなのか?」
「いえ、私は地球生まれなんですけど…
 久しぶりに降りるんで、何か懐かしくって…」
父親の行った時流エンジンの研究の為にコロニーへ移住してからは、
地球に戻る暇もなく、そこに帝国監察軍の侵攻が始まったのである。
実質10年近く地上に降りていないことになる。
(そういえば…この時代にも当然昔の私たちがいるのよね…
 何だか不思議な感じね)
フィオナが何も喋らずそう考えていると、不安になっていると勘違いしたのだろうか
カチーナが元気付けるように明るい声をあげた。
「ま、心配するなよ。旧世紀時代ならともかく今は大気圏突入でも危険はあまりなくなったし」
「でも大気圏突入の隙をついた攻撃というのもセオリーの一つッスよ」
どこにいたのかタスクが後ろからいきなり話に入ってきた。
「どこの世界のセオリーだよ…」
カチーナが呆れたように返していると突然艦内に振動が走り、警報が鳴り響いた。

「正体不明の集団から攻撃を受けています!
 PT部隊は直ちに出撃してください!」
「だあっ、タスク! お前がいらん事言うからだ!」
頭を掻き毟りながら走り出したカチーナは八つ当たり気味な言葉を
隣に走るタスクにぶつけた。
「お、俺の所為っすか!?」
「ごちゃごちゃ言ってんじゃねえ!
 フィオナ、お前も早く行くぞ!」
「は、はい!」
カチーナの勢いに呆然としていたフィオナは急に呼ばれたことで我を取り戻し
カチーナたちの後を追って走り出した。

159もしもR組がOGに出たら:2003/11/10(月) 04:41
攻撃を仕掛けてきたのは前回と同じ、量産型ゲシュペンストmk-2の部隊だった。
「ドラゴン2から各機へ、本艦は5分後に大気圏突入の態勢に入ります。
 それまでに戻ってきてください」
オペレーターのユンの言葉を聞いてカチーナは薄い上唇を舐めた。
「5分もあれば十分だ。全部片付けてやるぜ」
「まあ、血気盛んな隊長さんだこと…ん?」
肩をすくめて呟いたアクセルはレーダーが捉えた
超高速で接近する機体に気がついた。
「何だ…うわっ」
一瞬の隙をついて黒い機体が物凄い速さでPTの間を縫って通りぬけた。
その機体が一直線に向かう先にはヒリュウ改がある。
「しまった! ゲシュペンストは囮だったか!?」
「ヴァイ…サーガ…」
「アクセルさん?」
意味不明の単語を呟くアクセルにフィオナが問い掛けると、
急にソウルゲインは黒い機体を追いかけていった。
「待って! アクセルさん!」
「フィオナ、黒い奴はアクセルに任せろ!
 あたしたちはここでこれ以上敵を通さないようにするんだ!」
カチーナに呼び止まれ、フィオナは少し躊躇した素振りを見せたが
意を決したように振り向き、ゲシュペンストに向けてフェアリーを放った。

ヒリュウ改に近づいた黒い機体は交差した瞬間に斬撃を叩きこんだ。
小さな爆発が次々と起こる。
だがそれに黒い機体は満足しないのか二撃目を与えるために剣を振りかぶった。
が、その剣が振り下ろされることはなかった。
横からソウルゲインの玄武剛弾が飛んできたため
マントのようなシールドで防いだのだ。
2体は向き合って数秒対峙する。
しかし永遠に続くかのように思われたその静寂を黒い機体のパイロットが破った。
「なぜお前がここにいる?
 お前はW17と共に地球に降りたのではなかったのか?」
「あんた…俺を知っているのか!?」
「何を言っている…?
 …ちっ、時間だ。引き上げるぞ」
そう言ったかと思うと、黒い機体は来たときとは逆の方向に向けて飛び去っていった。
ゲシュペンストもその後に続く。

160もしもR組がOGに出たら:2003/11/10(月) 04:41
「引き際を見極める力はあるようですな。
 中々あの指揮官侮れませんぞ」
状況を省みず感心したように頷くショーンの言葉とは逆に
ユンはかなり焦って声を荒げた。
「艦長、先ほどの敵機の攻撃により突入コースから少し外れてしまいました!
 一度戻って再突入を…」
「いえ、このままPT部隊を収容して突入します。
 今、戻れば狙い撃ちされかねません」
ユンの言葉を遮ったレフィーナにショーンはまた頷いた。
「賢明ですな。とりあえず少しばかり角度が狂ってもヒリュウ改なら大丈夫でしょう」
「…わかりました」
ユンもそんな二人を見て頷き、PT部隊が全機収容したのを確認して艦内ヘ放送した。
「これよりヒリュウ改は大気圏に突入する。
 なお、これは予定外の突入となっている。各員は衝撃に備えよ」
「さて宇宙でも色々起きましたが、地上では何が待っているんでしょうな。
 はたして鬼が出るのか蛇が出るのか…」
ショーンの呟きは警報にかき消され誰の耳にも届かなかった。

161もしもR組がOGに出たら:2003/11/10(月) 04:41
「こちらw17、応答せよ」
ハガネがジュネーブへ向けて出発した日の深夜、
暗い格納庫にあるアシュセイヴァーのコックピットの中で
ラミアが何処かへ連絡を取ろうとしていた。
だが、通信機が故障でもしているのかスピーカーから聞こえてくるのは
微かなノイズ音だけである。
「応答せよ…駄目か」
落胆したような言葉を吐いたラミアだったが、
声色や表情からは全くそれを感じさせない。
とにかくこのままいても仕方ないと判断したラミアは物音を立てずコックピットから離れた。
その時、誰にも気付かれないように消しておいた電灯の明かりが急に灯った。
「誰だ!?」
「きゃ…ラミアさん?」
「ミズホ・サイキか…何をしている?」
思わずそう聞いてみたが、彼女が手に持っている工具箱を見ると愚問だっただろう、
想像通りの返事をミズホは返してきた。
「ちょっと気になって眠れなかったので、エクサランスの点検を…
 ラミアさんもですか?」
「ええ、そんなところでございますですわ。では私はこれで…」
先ほどの自分の行為を見られていたわけではないことに安心して
いつものおかしな敬語でこの場を立ち去ろうとしたラミアだったが、
ミズホに呼び止められてしまった。
「あのラミアさん、よろしかったら少し手伝ってもらえませんか?」
「…何?」
ミズホが何を言わんとしているのか理解できず、ラミアはその場に硬直してしまった。

162もしもR組がOGに出たら:2003/11/10(月) 04:42
(…で、なぜ私はこんなことをやっているのだ?)
ミズホの指示通りスパナを渡しながら、ラミアは難しい顔で悩んでいた。
ミズホの方はそんなラミアの悩みもまったく気づかない風に
楽しそうに笑顔すら浮かべながら手際よく作業を進めている。
「助かりました。こんな広い格納庫に一人でいるとさすがに心細くて…」
(そういうものなのか?)
ラミアには想像できない心理である。
他愛もないことを話しながら進めていたミズホの作業も一通り終わったらしい。
ラミアは先ほどから疑問に思っていたことを聞いてみた。
「ミズホさん、素人目ですけどエクサランスには問題はございませんように
思えたのでありますが、こんな時間にここまでの点検の必要はあったのですか?」
「ええ、特に問題はなかったんですけど…
 私がこうすることでラウルが生きて帰ってくる可能性が高くなるのなら…」
「そんなにラウルが大切なのでごさいますか?」
「えっ!? あ、あの私はそんな…
 いえ、大切なのは確かですよ…ええと…そう!仲間ですから」
耳まで真っ赤にして、一人でうろたえるミズホをラミアは理解できないといった風に、
首をかしげながら見つめた。
兵士は消耗品。確かに無意味に消費するのは愚の骨頂であるが
だからといって、一人一人に必要以上に固執するのもまた愚かしいことである。
ラミアは今までそう考えて、いや、教えられていた。
そしてそれに疑問を感じることもなかった。
そのためミズホの言っていることも理解できずにいた。
「仲間…か」
ラミアの呟きも耳に入らなかったのだろうか
ミズホは相変わらず赤い顔でぶつぶつ言いながら首を振っていた。

163もしもR組がOGに出たら:2003/11/10(月) 04:43
夜が明けてもハガネの航海は順調に進んでいた。
進みすぎていることが嵐の前の静けさといった言葉を想像させるのだが…
「ふあぁ…」
「気がたるんでるぞ、エイタ。」
一部、そうでないものもいるようである。
ブリッジの中では欠伸をかみ締めていたエイタが、副長のテツヤにたしなめられるといった
のどかな雰囲気に包まれていた。
「でも思ったような敵襲もなくて暇で暇で…」
「当たり前だ。そのために海路を進んでいるんだからな」
ハガネはDC残党等の攻撃を避けるためにもユーラシア大陸ではなく
太平洋を横断していた。
現在のDCには以前と違いハガネに対抗できるだけの海戦力を保持しておらず、
距離的にも日本からさほど変わらないために選んだ航路である。
また途中で北米のATXチームと合流するにも都合がよかったのも理由の一つである。

「もうそろそろハワイ沖に着くころか」
「え、はい、あと数時間でハワイ島が見えてきますが…」
テツヤはダイテツにそう返したが、そこに何かあるのか思いつかなかった。
「昨日、出るときにレイカーに言われてな。そこで一足先に補充人員が待っているらしい」
「補充人員ですか…誰ですか?」
「フフ…懐かしい顔だぞ」
お世辞にもあまり似合っているとはいえない笑みを浮かべるダイテツの顔を見て
テツヤとエイタは顔を見合わせて同時に首をかしげた。

164もしもR組がOGに出たら:2003/11/10(月) 04:43
「イエェェイ! 3、連、勝!」
その頃シミュレータールームではカーラの明るい声が響いていた。
その傍らではラウルがすっかり落ち込んでいる。
戦闘初心者であるカーラの訓練のためにラウルと模擬戦闘を行っていたのだが、
結果は先ほどの通りらしい。
「ほう、大したもんだな」
「昔っからこういったことの要領掴むのは得意なんですよ」
感心したように頷くイルムに向けて
カーラはピースサインを出しながら得意そうな笑みを浮かべる。
「俺だってこのシミュレーターがエクサランスに対応していれば…」
「チッチッチッ。甘いよ、ラウル君。
実戦で敵はそんな言い訳聞いてくれないんだから」
面白くなさそうに言うラウルだったが、逆にカーラにやり込められてますます落ち込んでしまった。
そこに今度はリュウセイが袖をまくりながら入ってきた。
「よし、じゃあ次は俺が相手してやるよ」
「え、いやよ。あんたちっとも手加減してくれないんだから」
「バカ、それこそ実戦で通用するか。
 さっさとシミュレーターに入れ」
まだ文句を言うカーラを押しやっていると艦内に警報が響いてきた。
「どうした!?」
『本艦針路上にて友軍のSOSを受信!
総員、第一種戦闘態勢に入れ』
「ラッキー、急いでいかなきゃね」
これ幸いとばかりに格納庫へ走り出すカーラを見て
他の者も呆れたように苦笑いを浮かべながら後に続いた。

165もしもR組がOGに出たら:2003/11/10(月) 04:44
ハワイ諸島の中の小さな島の上で戦闘が始まっていた。
戦っている一方はPT2機と輸送機が1機。
もう一方はとても機械には見えない骨やツタで作られたような物体である。
「クソッ、いったいこいつらは何なんだ!」
「今までのどのデータにも該当するものはない…」
量産型グルンガスト弐式のブーストナックルを撃ちながら、
苛立つように叫ぶ男、カイ・キタムラ少佐とは逆に、
戦闘機に変形している白いPT、ビルドラプターに乗る少女、
ラトゥーニ・スゥボータ少尉は冷静にデータとの照合を試みていたが
それも意味を成していないようである。
「こうなったら…T8! ここから離脱しろ!
 近くにハガネが来ているはずだ」
カイの命令があったがタウゼントフェスラーは一向に離脱する様子を見せない。
「どうしたT8! 早く離脱を」
「カイ少佐、それは出来ない。
 俺の仕事はあなたたちをハガネに届けることだ。
 行こうとしても敵がそうさせてくれそうにない」
「だがレナンジェス中佐!」
「それに件のハガネも今来たところらしい」
その言葉が終わるとほぼ同時に水しぶきを上げて海面からハガネの姿が現れ、
そこから機体が飛び出してきた。

「ビルドラプター!? じゃあ乗っているのは…」
以前の自分の愛機を見つけたリュウセイの声にラトゥーニが返事をした。
「リュウセイ…」
「やっぱりラトゥーニか! 元気そうだな」
久しぶりに戦友の顔を見て自然とリュウセイの顔がほころぶ。
「ってことはそっちの弐式には」
「相変わらず元気は有り余っているようだな」
「やっぱりカイ少佐か…」
「何だ、その扱いの違いは?」
思わず呟きを聞き逃さなかった額に青筋を浮かべながら迫るカイを見て、
イルムは冷や汗を浮かべて目が泳いだ。
「いや、別に他意はありませんよ」
「そんなことより今は戦闘中でしょう!?」
ラウルの言葉がきっかけになったわけではないだろうが
ツタで造られた方の敵からのビームが襲い掛かってきた。
「いったいなんだよ、あれは!? 生きてんのか?」
異様な敵の姿にリュウセイもさすがに驚きで声を上げる。
「それはわからん。いきなり現れて攻撃してきたんでな。
 わかっているのは敵ということだ」
カイの説明を聞き、リュウセイは舌打ちしながら
R-ウィングのGリボルヴァーを放った。

166もしもR組がOGに出たら:2003/11/10(月) 04:45
いつもとは勝手の違う敵に、誰もが苦戦を強いられながらも
何とか少しずつ敵の数を減らしていた。
だが慣れというものは、時によっては油断を生み出すものとなる。
ラミアのアシュセイヴァーがガンレイピアで骨のような敵を倒し、
次の目標へ向かおうとしていると、後方からビームが襲い掛かってきた。
「しまった! 避けきれんか!」
せめてコックピットへの直撃を避けようと、
腕で防御する体勢を取ったアシュセイヴァーの前方にR-1が入り込み
そのまま命中した。
「ぐっ!」
「リュウ! 大丈夫なの!?」
「大丈夫だ。少し頭を打っただけだよ」
R-3のアヤが近づき心配そうな声を上げるが、リュウセイの声を聞き安堵の溜息を吐く。
そんな様子をラミアは呆然としながら眺めていた。
「なぜだ?」
「ん?」
「なぜ私の盾になった? 一歩間違えば撃墜されていたところだぞ」
リュウセイの方もラミアの言葉が理解できないといった感じで
頬を掻いて答えた。
「なぜって…仲間だからだろ。当たり前じゃないか。
 それよりもまだ敵は残っているんだ。気を抜くなよ」
リュウセイはそう言ってまたR-ウィングに変形し飛び立っていったが
ラミアはまだ動けずに何やら呟いていた。
「仲間…私が…? 馬鹿な、そんなものは私には必要ない
 だが…なぜ不快な感じがしないのだ…」

167もしもR組がOGに出たら:2003/11/10(月) 04:46
半分ぐらいに数を減らしたところで、残りの敵は煙のように消え失せてしまった。
戦闘終了を確認して各機はハガネへと戻っていった。
そんな中、格納庫へ戻ったイルムは同時に収容した
タウゼントフェスラーから降りてきた男を見て驚きの声を上げた。
「お前…ジェスか!?」
「イルム! そうかお前は極東支部にいたんだったな。
 何年ぶりになるかな」
ジェスの方もイルムに気づいたのか、少々驚いた様子を見せながらも
笑顔を浮かべた。
「あいつらの葬式以来だから…3年だな。
 お前こそなんでこんな所に? 参謀本部にいるんじゃなかったのか?」
「見ての通り、少佐たちのエスコートさ。
 もちろん、それだけという訳でもないが…
 すまないがダイテツ艦長の所へ案内してもらえるか?」
「だったら俺たちと行こう。今から報告もしなければならんからな」
2人の話の中に入ってきたカイに連れられてジェスが格納庫を出て行くと
タイミングを図っていたラウルがその場にいた者の疑問を代表する形でイルムに聞いてみた
「イルム中尉、知り合いなんですか?」
「ん? ああ、仕官学校時代の同期さ。
 もっとも、俺と違ってあちらは次席卒業のエリートだがね」
「へえ…中尉と違って真面目そうな方ですね」
「どういう意味だよ」
極東支部に来て日が浅いラウルにまでそういった風に見られていることに
イルムはらしくもなくショックを感じた。

ブリッジで、ジェスはダイテツに封筒に入った書類を渡していた。
「それではこれを…例の報告書です」
「うむ、すまないな。しかし本部は壊滅したというのによく無事だったな」
「ちょうどその時は他の所に行っていたので。
 そういう悪運は強いんですよ」
封筒の中身を気にしながらもテツヤがジェスに恐る恐る話しかけた。
「中佐は先ほどの敵をご存知なのですか?」
「いや、俺も全く初めて見たものだった。
 もしかしたらあれが本部を襲ったのかもしれないが…」
「それはジュネーブに行けば答えが出るだろう」
ダイテツの言葉にジェスは頷く。
「そうですね。それでは俺はこれで、本部が音信不通になって色々と忙しいので」
一礼してブリッジを出て行ったジェスを見送り、テツヤはダイテツに聞いてみた。
「艦長、なぜレナンジェス中佐が危険な輸送任務に?
 中佐は極東支部所属でもないのに…」
「さあ、な」
ダイテツは明らかに何か知っている風な様子だったが、
その雰囲気がこれ以上の問答は無意味というものを感じさせたため、
テツヤはそれ以上何も聞けなかった。

168名無しさん:2003/11/10(月) 04:46
股間王誕生!

キキキ キキキ キングオブハート!!
キキキ キキキキ キングオブハート!!
怒れ 鉛色の股間 赤い赤玉 金の玉
光輝く自慰ストーン 幼女の貞操 汚すため
今こそ 勃ち上がれ
人の女の貞操を 汚す変態許せない
キキキ キキキ キングオブハート!!
キキキ キキキ キングオブハート!!
早朝オ○ニー承認だ!
今だ! 妄想展開だ!
変幻自在! 曲がる・精子!
露出! 妄想! カツ丼! 自慰! 誕生!
無敵の ドデカイ一物 ぼくらの股間王!
キキキキ キングオブハート!!

169名無しさん:2003/11/10(月) 04:47
諸君、私は萌えスレが好きだ。諸君、私は萌えスレが好きだ。諸君、私は萌えスレが大好きだ。

セクが好きだ。質問攻めが好きだ。雑談が好きだ。談議が好きだ。ネタが好きだ。
コテが好きだ。名無しが好きだ。百合も好きだ。薔薇が大好きだ。
元は家ゲ板で、ゲサロで、議論板で、その他はとりあえず無視してこれだけで、この地上で行われるありとあらゆる萌えスレが大好きだ。

ネタを並べたコテの一斉ネタ投下がハゲワラの表示と共に名無しを吹き飛ばすのが好きだ。
空中高く放り上げられた鰤が名無しの書き込みでウワアア━━━━━ヽ(`Д´)ノ━━━━━ ン!!!になった時など心が踊る。
ドモンの操る(ピー)が萌えコテを脅かすのが好きだ。
怒号を上げてアスカが脱いだ服を名無しが鍋で煮て食した時など胸がすくような気持ちだった。

桜島大根をそろえたレビのセルフバーニングをニヤニヤするのが好きだ。
デパ地下にやってきたシュウが、すでになくなった試食皿を何度も何度も刺突している様など感動を覚える。
弟絶対主義のクインシィをgishigishi.exeで攻めていく様などはもうたまらない。
泣き叫ぶ海本が私の振り下ろした手の平とともに金切り声を上げる芋の山にばたばたと薙ぎ倒されているのも最高だ。

哀れなションゲが、雑多なPCで健気にも立ちあがってきたのをfusianasanがPCごと木っ端微塵に粉砕した時など絶頂すら覚える。
フィオナの無乳が滅茶苦茶にされるのが好きだ。

必死に披露したはずだったネタが放置されていく様はとてもとても悲しいものだ。
名無しの物量に押し潰されて轢かれるのが好きだ。
荒らしに追いまわされ空転する談議をするのは屈辱の極みだ。

170名無しさん:2003/11/10(月) 04:47
諸君、私は萌えスレを、地獄のような萌えスレを望んでいる。
諸君、私に付き従ってはいなくて対等の萌えスレ戦友諸君、君達は一体何を望んでいる?
更なる萌えスレを望むか?情け容赦のない祭りのような萌えスレを望むか?
ネタの限りを尽くし、三千世界のコテを圧倒する嵐の様な萌えスレを望むか?

萌えスレ!!萌えスレ!!萌えスレ!!

よろしい。ならば萌えスレだ。
我々は満身の力をこめて、今振り下ろさんとするコテと名無しだ。
だが、この暗い闇の底で200スレ以上もの間堪え続けて来た我々にただの萌えスレではもはや足りない!!
大萌えスレを!!一心不乱の大萌えスレを!!

我らはわずかに1板100人に満たない2ちゃんねらにすぎない。
だが諸君は一騎当千の古強者だと私は信仰している。
ならば我らは諸君と私で総住人100万と1人の住人集団となる。

我々を忘却のかなたへと追いやり眠りこけている連中を叩き起こそう。
髪の毛をつかんで引きずり降ろし眼を開けさせ思い出させよう。
連中に萌えスレの味を思い出させてやる。
連中に我々のネタとセクの嵐を思い出させてやる。
天と地のはざまには奴らの哲学では思いもよらない事がある事を思い出させてやる。
100人に満たない住人で世界を萌やし尽くしてやる。

「最初最後のノーマル&薔薇両刀の旦那ことグエン・サードより全住人へ」
目標、萌えスレ本スレ!!
第何次でもいい、とにかく騒いで祭ってやれ作戦。状況を開始せよ。
逝くぞ、諸君。


新着レスの表示


名前: E-mail(省略可)

※書き込む際の注意事項はこちら

※画像アップローダーはこちら

(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)

掲示板管理者へ連絡 無料レンタル掲示板