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【SS】(裏)第8回CPUトーナメント開催!?
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1日1レスの頻度で更新できたら良いなと思ってます。もちろん暇があればそれ以上更新出来るよう頑張ります。ちなみにアイデアは別の方です
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「うー、今回も勝てなかった。ハンマーもハートもないんじゃ勝てる試合も勝てないよ」
ぶつぶつ言いながら目的地を目指すヨシオくん。今日は10月5日。第8回CPUトーナメント大会の予選の全行程が終わった翌日だ。
本戦に出場する選手は各々試合に向けて鍛錬を積んだり、ゆっくりと休息を取ったりしているが、最弱決定戦まで暫く予定が空いていたヨシオくんは、特にする事もなかったため実家に帰省中だった。
「それにしても今大会はハイレベルだったなー。まさか殺意まで敗退するなんて思わなかった…ん?あれは何だろう?」
道端に赤と白のコントラストが映えるボールが1つ転がっていた。
手に取ってみると、それは大会でもお馴染みのあのアイテムだった。
「これはモンスターボール。もしかして、誰かが捨てたのかな?酷い事をする人もいるもんだなあ」
そう言うとヨシオくんは拾ったモンスターボールをカバンの中にしまった。同じポケモンとして放っておけないからだ。
「これは後で大会の運営さんに届けてあげようっと。きっとあの大会でなら君も輝けるんじゃないかな」
良いことをした気分になり、短い手足を大きく振ってスキップしながら再び家を目指すヨシオくん。
それから暫く時間が経ち、ようやくヨシオくんは家に着いた。
「ただいまー、いやー今大会は凄かったよー」
いつものように扉を開けて家に入るヨシオくん。だが、そこにいつものような光景はなかった。
「あれ?ママ?パパ?どこにいるのー?」
いつもなら家に帰るやいなや両親共に玄関で出迎えてくれて労いの言葉をかけてくれるのだ。
しかし、今日はそれがなかった。それどころか家のどこにもいなかった。今朝、家に帰ると連絡したから忘れているはずもない。
どうしたものかと無い知恵を絞っているとテーブルの上に手紙が置かれている事に気付いた。
「あ、置き手紙がある。何か知らせたい事があるなら電話してくれれば良いのに」
きっと親からのメッセージだろうと思って手紙を読み始めたヨシオくんは、その内容に驚嘆した。
『ヨシオくんへ。この手紙を読んでいるという事は既に気付いているかもしれないが、君の両親はそこにはいない。なぜならこの私が拐ったからだ。もちろん警察に連絡してはいけない。発覚次第どうなるかは分かっているだろう?返して欲しければ10/6の午前10時までに下記の場所に来ること。それと、この手紙は必ず処分すること』
「な、何だこの手紙は!?パパとママが拐われた?しかもこれは大会が行われる場所?うーん何がどうなってるんだろう?」
突然の出来事に戸惑うヨシオくん。しかし、どんなに悩んでも解決策は思いつかない。
仕方がないから、とりあえず明日指定の場所に行ってみようと結論付けたヨシオくんは、帰省の疲れもあってか、その日は手紙を処分するとすぐにグッスリと眠った。
これから起こる出来事など、当然知る由もなく…
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朝4時。まだ外は薄暗く、静寂に包まれていたが、既にヨシオくんはベッドから出て朝食の準備をしていた。
「うー、眠い。でも10時に会場集合だから朝食を済ませたらすぐに出なくちゃ間に合わないよ」
そう言いながらヨシオくんはフライパンと格闘中。どうやら目玉焼きを作っているらしい。
辺りにはいくつもの卵の殻と中身が散乱している。きっと何度も割るのを失敗したのだろう。
「やっぱり料理は難しいなあ。いつもはママがやってくれてるけど、今日は自分でやんなくちゃいけないからね。…よし、出来たぞ」
そう言って皿に盛りつけられた目玉焼きは少し焦げていて、形もアメーバみたいになっていた。
いつものように塩、醤油、ケッチャプをかけて食べるヨシオくんだが、一口食べると苦虫を噛み潰したよう顔をした。
「う、まずい。やっぱりママのようには上手くいかないなあ」
しかし残すわけにもいかないので、せっせと目玉焼きを口に運び、食べ終わるとテーブルや台所を綺麗にして、洗面所で歯磨きをする。
そうして朝の営みが全て終わると、昨日と同じカバンを持ってヨシオくんは家を後にした。
「それにしても、何で指定の場所が大会の会場何だろう?…なんだか嫌な予感がしてきたよ」
家を出て暫くすると会場があるいつもの街に着いた。
一応は有名人のヨシオくんは自分の正体がバレないように帽子、マスク、サングラスをしているのだが、愛されボディのヨシオくんにはどれもミスマッチで、いつもすぐに街の人たちに気付かれてしまう。
今日もその例に漏れずヨシオくんの周りには気がつけば人集りができていた。
「ヨシオさん!今日はどちらへ行かれるんですか?」
「握手してくれませんか?」
「サインください!」
「うー困ったなあ。今は急いでるから後にしてほしいんだよー」
「背中触ってもいいですか?」
「最弱決定戦も頑張ってくださいね!」
あまりキツイ事が言えないヨシオくんの訴えは街の人たちの喧騒に掻き消されてしまう。
どう対処すべきかと悩んでいると、突然何者かに体を持ち上げられ、そのまま人集りの外まで運ばれたヨシオくん。
しばらくそのまま運ばれて、路地裏に入ったあたりでようやく降ろされた。
例を言おうと顔を見ると、それはヨシオくんの見知った人物だった。
「レイアくん!何で君がここに?」
フードを被っていたが、たしかにそれは同期の英雄、灼熱のレイアその人だった。
「よお、ヨシオ。お前こそ何でここにいんだ。昨日帰省したんじゃなかったのか?」
ヨシオくんはレイアにあの手紙の事を話すか迷ったが、警察じゃなければ大丈夫だと判断し、昨日の出来事をレイアに語った。
「…なるほど。どうやら俺とお前は同じ理由でここにいるらしいな」
そう話すレイアの目は怒りに燃えていた。
「えっ?てことはレイアくんも誰かを人質に?」
「ああ、昨日手紙が届いてな。実家の両親を預かったって内容で、最初は信じちゃいなかったが、電話にも出ねえし、近所の人に確認してもらったら家にもいねえみたいだからな。まだ半信半疑だが、とりあえず来てみたってわけだ」
自分以外にも被害者いる事に驚いたヨシオくんだが、レイアが仲間にいると分かると不謹慎ながら少しだけ嬉しい気持ちになった。
「そっか。でもレイアくんがいるなら安心だね。それじゃあ一緒に行こうか」
そう言って、レイアとヨシオくんは2人で会場へと向かった。
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会場に着くと入り口に看板が立っていた。
『スタジアムの中央で待機していて下さい』
不審に思いながらもスタジアムの中央に向かった2人だが、そこには既に多くの先客がいた。
その中の1人は2人に気づくと声をかけてきた。
「ヨシオにレイア。やはり2人も呼ばれたんだな」
「脇役くん!?それに他のみんなも!もしかして大会の出場者が全員いるの!?」
辺りを見回すと同じブロックで戦った壊れた大学生やちょこにゃ。それに花形の選手である殺意のヨシオや世界のrekuiemuの姿までもがあった。
切れた脇役も同じように辺りを見回し、相変わらず冷静な口調で話しを続けた。
「ああ。だが、ここにいるのは皆予選で敗退した選手たちだけのようだ。一応、本戦に出場した笑えない女に連絡を取ってみたが、一向に電話に出る気配がなくてな。一体これから何が起こるのだろうか」
他の選手たちも皆不安そうな表情でこれから起こる出来事を待ち構えている。
そして10時を迎えた。
『レディース・アンド・ジェントルマーン!ご機嫌いかがかな、第8回の敗北者諸君。君たちにはこれから楽しいショーの演者になってもらうよ』
突然スタジアムの巨大スクリーンに顔をマスクで覆った謎の人物が映し出され、選手たちに話し始めた。
「うう、悲しい。そう、僕はフォックス勢唯一の敗北者。うう、悲しい」
「◯す」
「くくく、敗北者か。面白い。まだ我は真の力を発揮していないだけだよ。我が血塗られた聖剣(ブラッディ・ホーリーソード)の前では全てが無力」
「あ、スピアーくんだー」
「演者?一体私達に何をやれと言うのですか?そもそも演者、演劇の起源とは古代の宗教的祭祀が発展したものと考えられています。古代ギリシアでは…」
選手たちはスクリーンの男の発言に様々な反応を示すが、当然男には届いていなかった。
男は一拍置くとそのまま説明を始めた。
『ふふふ、何のショーかって?君らにはある人達と戦ってもらうのだよ。さあ、入場したまえ!』
男の言葉とともにスタジアムの扉が開き、そこからぞろぞろと何者かが入ってきた。
ヨシオくんはすぐに彼らの正体に気付いた。
「え?それじゃあもしかして、僕達が戦う相手って…」
『そう、君達には第8回大会の本戦出場者と戦ってもらう。つまりこれは本戦出場24名と本戦未出場24名の生き残りをかけたデスマッチなのだ!』
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期待
黒幕は転校の恨み関係で壊大と予想
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「………」
謎の男が宣言した内容に選手達は皆、二の句が継げなかった。
選手同士で戦う。百歩譲ってそれは問題ない。普段から自分達がやっている事だ。
けれど、一同が引っかかっていたのはデスゲームという言葉だった。その不吉なワードの意味する所とは一体?
『おっと、すまない。私としたことがつい興奮して大げさな表現をしてしまった。デスゲームと言っても別に命を奪い合う訳ではない。奪い合うのは君達の誇り。つまり選手生命だ!』
「選手生命!?」
ヨシオくんは謎の男の発言に思わず声を出してしまった。
選手生命を奪い合うなんて、それこそ理解不能だ。彼にそんな権限があるはずが無い。
そんなヨシオくんの考えは次の一言で完全に否定されてしまった。
『ちなみに、大会の運営は私の支配下にあるよ。そもそも、そうでなければ私がこんな事を出来るわけがないだろう?』
それは俄かには信じ難い一言だった。しかし現状が今の言葉を事実だと証明しているのも確かだった。
このスタジアムはCPUトーナメント以外のあらゆるイベントを行う事を禁じた、いわば聖域。
いくら大会休止中とはいえ、このような大事を運営が許すはずがない。
それでもヨシオくんは完全に納得する事は出来なかった。
この大会の運営のトップに立つPさんという人は常に選手を第一に考え、このような暴挙を黙認するはずがない。
それに、お金に余裕があるとは思えないが、買収を受け入れるような人でもなかったはずだからだ。
『おそらく皆、疑問に思っているだろう?一体どうやってと。答えはこれだ!』
謎の男がそう言うと、スクリーンの映像が少しバックし、彼の隣に黒いマスクを口にした男がいる事が分かった。
その男を見るやいなや、選手達は口々に声に出して叫んだ。
「Pさん!?」
「何で主催者があそこに!?」
そこにいたのは大会の創設者P(ピー)だった。
本当に彼は自分達を裏切ったのかと選手達は絶望にくれたが、すぐに様子がおかしい事に気付いた。
『チ◯コー!チ◯コー!チ◯コ?チ◯コー!』
下ネタ嫌いで有名なPさんが絶対に言わないはずの言葉を連呼していたのだ。
何がどうなっているんだと選手達が戸惑っていると、謎の男が説明を始めた。
『驚いたかね?この通り今の彼はただチ◯コと発するだけの存在だ。運営の人々には彼を元に戻す事と引き換えに私に協力してもらっているのだよ』
衝撃の事実に一同は驚嘆する。謎の男はそのまま話しを続けた。
『さて、前置きも済んだところでそろそろ本題に入ろうか。ルールは第8回大会に倣ってアイテム、ステージともに制限ランダムとさせてもらう。ただし、ストックはたったの1つ。つまり、一度バーストしたらその選手は即敗退だ。敗退後の扱いはその時にさせてもらう。形式は勝ち残り、先に24人バーストした方が負けだ。それでは今から30分後の11時を第1回戦とする。それと、こちらには人質がいるのでね。その事を考慮した上で行動してもらうよ』
それは選手達に対する自身の優位性を再確認するだけでなく、彼らに本気で戦う事を強制する意図もあったのかもしれない。
作戦会議はすぐに始まった。始めに声を上げたのはレイアだった。
「面倒な事になったが、とにかくやるしかねえ。幸か不幸か、こっちにもある程度戦える人材は揃ってる。大丈夫だ。お前らの選手生命をこんな所で終わらせたりはさせねえ」
最古参の自分が皆を引っ張っていくしかないと奮起するレイアにつられて、他の選手達も次々と意気込みを語り始めた。
「うむ、レイアの言う通りだな。皆の力を合わせれば、きっと乗り越えることが出来るだろう」
「そうですよね。僕もカービィ勢ダブルエースの片翼として微力ながら頑張ります」
「僕も頑張るよー。最古参の一員として後輩のケくんとか妹ちゃんとかにばっか良い顔させられないからね」
最初は不安だったヨシオくんも、皆の声に段々と勇気付けられていくのを感じた。
けれど、よく見回すと一部の選手達は乗り気ではない事に気がついた。
「けど、もしも僕たちが勝ってしまったら、その場合本戦出場者の方々が引退する事になるんですよね?うう、悲しい。あちらは天才さんやロハス君みたいな僕なんかとは比べ物にならないスター選手ばかりなのに、彼らを差し置いて僕なんかがのうのうと大会に出場するなんて許されるんでしょうか?そんなの…うう、悲しい」
「そもそも戦力差が満たされていない。あちらは三強や八王子率いる猛者24名に対して、こちらはゴリラやヨシオ族などお荷物ばかり。これでは満たされる結果を得ることなど夢のまた夢」
第8回大会が初出場の選手を中心にネガティブな発言が飛んできた。
「あ?おい、満たされないヒーロー。お前、俺をお荷物扱いしたのか?◯すぞ?つうかゴリラどもはバナナ食ってんじゃねえよ!◯すぞ!」
「落ち着いて殺意!きっとヒーロー君は僕の事を言ってるんだよ。今回も一勝も出来なかったしさ」
怒った殺意のヨシオを慌ててなだめるヨシオくん。しかし、選手達の間に嫌な雰囲気が漂い始める。
時間を確認した脇役は大きな声で場を納めた。
「皆、落ち着いてくれ。とりあえず試合開始のアナウンスまであと5分だ。そろそろ最初に出る選手を決めなければ」
もうそんなに時間が経ったのかと焦るヨシオくん。
しかし、今の雰囲気のままでは勝てる試合も勝てなくなってしまうと分かっていながら、最弱候補の自分が何を言っても無意味だと思い、言葉に詰まってしまう。
そして無情にも時計の針が11時を迎えた。
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Pさんが下ネタ嫌い………??????
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>>7
ニュートラルおちんちんダブルス!
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>>7う○こー!
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チンポ!!!
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おちんちんがいいですね〜
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今日は更新出来ないかもです。申し訳ない
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Pさんの扱いに草しか生えない
続き楽しみにしてます
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とりあえずヨシオくん達は様子見でヤミノツルギを先鋒に選んだ。
当然、本人には心の準備など出来ていない。
「くくく…。わ、我に任せておくがよい、愚民共。ついに我の封印されしチャー…サードアイを解放する時がき、来たようだな」
不安げにヤミノツルギを見送る一同。
すると向こうのチームからも選手が1人やってきた。
「最初の相手は君かい、ヤミノツルギ君。同期としてお互い悔いが無いように戦おう。悪いけど、手を抜くつもりはないよ。僕にも守るべき人がいるからね」
相手の先鋒はライムライトだった。予選でエルバンを倒すほどの猛者。レベル8勢の中では頭一つ抜けた存在となっていた。
相手チームは惜しみなく彼を選べる程選手の層が厚いんだという事を改めて実感した敗者チーム。
それでもヨシオくん達古参勢は何とか皆を励まそうとする。
「大丈夫!ネス相手なら事故も狙えるし。1ストック制のこのルールなら事故は負けと同じだよ!」
「うむ、ヨシオの言う通りだ。あちらにはネス、フォックス、ファルコン、リンクとステージによっては事故を狙える選手が多い。そこを上手く利用できれば我々にも勝機はある」
彼らの言葉で多少は不安が解消された敗者チーム。それでもやはり、彼我の戦力差は無視できるものではなく、浮かない顔の選手が多い。
「それにしても、あの男はまだなのか」
誰かがそう口にした。
確かに時刻は既に11時を5分過ぎていた。そして11時10分、ようやくスクリーンが点いた。
『すまない、すまない。少々込み入っていてね。さて、どうやら両者ともに選手が決まったようだ。それでは、いつもの大会と同様にそのカプセルに入りたまえ』
その言葉とともに地面からカプセルが2つ出てきた。普段の大会では、選手達はこのカプセルに入って戦いの場へと転送されるのだ。
そしてライムライトとヤミノツルギがカプセルに入ろうとした、まさにその時。
「ちょっと待ったー!」
「ほげー!」
何処からともなく飛んでくるブーメラン。そしてそれに吹き飛ばされるヤミノツルギ。
声の主を探す選手達は観客席に人影が複数あるのに気付いた。
「おい、黒光!強くやり過ぎた!ヤミノツルギ君が向こうで伸びてるじゃないか」
「いいんだよ、転校生。伸ばすつもりで投げたんだから予定通りだ」
「何もよくないじゃないか!?」
観客席で特に騒がしい2人を見て選手達はすぐにその正体に気付いた。
「黒光君に転校生君!?ということは観客席にいるのは…」
ヨシオくんは観客席を見回し、自分の予想が正しい事を確信した。
他の選手達も予想外の乱入に混乱中だ。
その中でも1番驚いていたのはスクリーン越しの謎の男だった。
『な、何故お前ら第8回未出場組がここに!?まさか、あれも…まあいい。とりあえず私もそっちへ向かう。そこで詳しい事を聞こうじゃないか』
その言葉とともにスクリーンの電源が切れた。
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期待してるので失踪だけはしないで!
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ポケモン実況の「ババア!」しか言えなくなるP菌思い出したwww
のんびり支援!
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しばらくするとスタジアムのVIP席に謎の男が姿を見せた。
「さあ、それでは話してもらおうかね。なぜ君達がこの場所に現れたのかを」
黒光はニヤリと笑ってその質問に答えた。
「俺が今回の事件に気付けたのはこいつのおかげだ。なあ、ティーダ」
「ウホホッ」
意外な人物(ゴリラ)の名前が挙げられた事でますます混乱する選手一同と謎の男。
その反応を楽しみながら黒光はある選手に質問をする。
「おい、下目使い。お前の拐われた奴って一体誰なんだ?」
下目使いは何でそんな事を聞くのだといった訝しむ表情で答えた。
「俺のペットだが、それがどうした?」
「そう、お前はペットの妖魔を誘拐されたわけだが、ちょうどその日、とあるゴリラがその誘拐の瞬間を見ていたってわけだ」
黒光のその言葉で選手達は全てを理解した。まるで選手達を代表するかのようにヨシオくんが改めてそのゴリラの名前を口に出した。
「それがティーダ君ってことだね」
「そういう事だ。どうやら遊びの約束をしてたらしい。そんで道端で困り果ててドラミングしてるティーダを俺が見つけたってわけ」
黒光はそこまで話すと説明が面倒になったのか転校生に首で続きを促した。
「黒光はティーダ君から事の詳細を聞いた後すぐに僕に電話をかけたんだ。最初はいつもみたいに僕にドッキリでも仕掛けてるんだと思ったけど、調べてみたら今大会の出場選手の親族達が次々に行方をくらませてる事が分かってね。そのまま調査を続ける内にここに辿り着いたんだ」
一通りの説明を終えて一息つく転校生。
説明自体に不備は無かったが、選手達はある1つの点をずっと気にしていた。そしてそれは謎の男同じだったらしい。
「説明はそれで終わりかね?」
「…というと?」
とぼけているのか質問に質問で返す黒光。しびれを切らしたヨシオくんが代わりにはっきりと質問をした。
「その…もしかしてだけど、前もって誘拐の情報を掴んでたなら、その人質の居場所も調べたのかな?」
もしも人質の居場所の情報を得ているなら、あわよくば既に人質を解放しているなら、この不毛な戦いは行わずに済む。
そんな期待を胸にしながら質問するヨシオくん。
しかし、その質問に対して黒光はあっ、と声を出して頭を掻いた。
「やべ、完全に忘れてた」
転校生も申し訳なさそうな顔で黒光に代わって弁明する。
「すまない、ヨシオ君。僕達も忙しくてね。そこまでは手が回らなかった」
それを聞いた謎の男は高笑いしながら黒光達に向けて言った。
「はっはっは!所詮は大会に出場すら出来ない小物。まだまだ詰めが甘いようだね」
散々に言われた黒光は特に反論もせず、おどけるように肩をすくめるだけだった。
機嫌を良くした謎の男は続けざまに聞く。
「それで、そんな君達が一体何の用かね?どちらか一方が無様に敗れる様でも見に来たのかい」
黒光は相変わらずニヤニヤ笑いながら答える。
「あー、確かにそれも面白そうだが、もっと面白い事を考えてるんでね」
「ほう?それは?」
「俺達もこのゲームに参加する。もちろんヨシオ達の組の一員としてな」
黒光の予想外の一言に謎の男のみならずヨシオくん達も驚きを隠せなかった。
「く、黒光くん。それはどうい…「どういう事だね、それは。君達の参加を私が許すとでも?」
謎の男のその発言に黒光はやれやれと首を振って言う。
「許すも何もお前自分で言っただろ。本戦出場24名と本戦未出場24名のデスマッチって。なら、俺達もその本戦未出場の枠に入るよな?」
屁理屈に聞こえるが、確かに筋は通っていた。
謎の男がどういう決断を下すのかヨシオくん達は固唾を呑んで見守っていたが、黒光はどこか自信のある顔で謎の男の答えを待つ。
「まあいい。お前達の参加を認めよう。ただし、敗北時のペナルティはお前達にも適用させる。それと、私の許可なしにこのスタジアムから出る事も禁じる。この2つの条件は守ってもらうぞ」
「はいはい、りょーかい」
最後までヘラヘラしながら黒光は謎の男の言葉を受け入れた。
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ヨシオくんは不思議に思った。
なぜ、黒光はこうも余裕なのかと。そもそも黒光達は何のメリットがあってこの件に首を突っ込んだのかと。
黒光の性格上、単なる善意でこんな事をするとは思えないヨシオくんだったが、いかんせん判断材料が足りな過ぎる。
それに、今はこの予期せぬ援軍に感謝するのが先だと結論付けた。
「ありがとう、黒光君に転校生君。それにみんなも。分からない事ばっかだけど、とりあえず今は素直に嬉しいよ。君達の助力があればこの勝負、勝てるかもしれない」
「うむ、私からも礼を言わせてもらおう。本当によく来てくれた」
口々に感謝の言葉を述べるヨシオくん達。するとレイアが手をあげて、ところで、と切り出した。
「水を差すようで悪いが、先鋒はどうするんだ?ヤミノツルギはこの通り試合出来る状況じゃねえぞ」
名指しされたヤミノツルギは伸びたまま放置されている。
流石に今から叩き起こして試合に出すのはレイアも気が引けた。
「ああ、なら僕に任せて欲しい」
名乗りを上げたのは転校生だった。
「僕はこの中で唯一ライムライト君に勝利した経験がある。もちろん彼があの時よりも強くなっているのは知っている。けど、それは僕も同じ。だから、ここは任せて欲しい」
胸を張って自信ありげに話す転校生。特に異論も出なかったため、そのまま先鋒として出場することになった。
転校生はライムライトが待つカプセルの方へ向かう。
それを見た謎の男はVIP席から再びアナウンスを始めた。
「ようやく両選手が出揃ったようだね。それでは、いつもの定型文で試合を開始しようか」
謎の男は2人がカプセルに入ったのを見ると大きく息を吸い、聞き慣れたいつものあれを高らかに叫んだ。
「それでは(裏)第8回CPUトナメ第1試合を行う。ライムライト(NE)対無敵の転校生(LI)。ルールはストック1のアイテム制限ランダムのステージ制限ランダムでいく。Ready to fight!」
その宣言とともにカプセルが起動して強い光を発し、次の瞬間にはカプセル内の2人は消えていた。
彼らは戦いの場へと無事転送されたようだ。
2人の様子はいつもと同様、スタジアムのモニターで観戦することが出来た。
選手達は己の選手生命がかかった大事な初戦を心配そうに、そして祈るように眺める。
テーテテテテテ、テテテテテ
そしてモニターからBGMが流れ始める。
どうやら最初のステージはプププランドに決まったらしい。
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すごい楽しみにしてます
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勝負はすぐに決まった。
崖端でのライムライトの的確な後ろ投げに復帰力のない転校生はなす術なし。
開始わずか20秒でライムライトが勝利した。
試合後スタジアムに再び転送された2人。
ライムライトは安心したような、転校生は恥ずかしそうな顔をそれぞれしていた。
ヨシオくん達は転校生に何と声をかけようか迷っていたが、黒光はとても楽しそうに笑いながらいつもの黒光節を炸裂させる。
「あれ?おかしいなあ。僕に任せて欲しいって言ったのはどこのどいつだっけ?いやあ、まさか秒殺されるなんてねえ。てゆーか、そもそもお前がライムライトに勝った時も1ストック目はこんな感じで秒殺されてたよな。まさか同じ過ちを犯すとは、さすがは無敵(笑)の転校生」
散々に言われた転校生は顔を赤らめながら無言で黒光をバシバシと叩いた。
その様子を見たレイアは思わず声を張り上げて彼らに向かって言った。
「おい、ふざけてる場合じゃねえ。たった今、俺達は選手生命の終わりに一歩近づいたんだぞ。それなのに何楽しそうにしてるんだよ。お前達は俺らの邪魔をしに来たのか!」
「言い過ぎだよ、レイア!…確かに転校生君は負けちゃったし、黒光君もおちゃらけてるけど、悪気があるわけじゃないよ。転校生君が負けたのはわざとなはずがないし、黒光君がこうなのも、きっと雰囲気を和ませるためなんだよ」
今にも殴りかかりそうなレイアを何とか宥めるヨシオくん。
見ると、脇役も殺意のヨシオを同じように抑えていた。
険悪なムードが漂うなか、当事者の黒光は相変わらずヘラヘラしながら問いかける。
「まあ、ひとまず俺らのことは置いといて、次は誰が行く?このままだと、もう2、3人はあいつに喰われるぞ」
お前が仕切るなと言いたそうな顔のレイアだったが、これ以上自分が輪を乱すようなことをするのはマズイと分かっているため、少しづつ冷静さを取り戻していった。
そのままレイアを中心に話を進め、次はモルダーが出ることになった。
彼もまた、ライムライトに勝利した経験のある貴重な選手だからだ。
ふと、黒光はある事に気付いて転校生に問いかける。
「あれ?さっきお前、自分の事をこの中で唯一ライムライトに勝利した選手とか言ってなかったか?モルダーも勝ってるじゃねえか。任せておけって言っといてあっさり負けるわ、唯一勝利したって言っといて他にも勝った奴がいるわで嘘ばっかだな。もう今日から無敵の転校生改め嘘つき転校生に改名しろよ」
「な…別にわざと嘘をついた訳じゃないんだから、そんなに言う必要ないだろ。それに、絶対黒光も今の今まで忘れてただろ」
「へー。じゃあ俺が覚えてなかったって証拠はあんのかよ?」
「ず、ズルいぞ、それは。そんなのあるわけないだろ」
再び始まった黒光と転校生の掛け合いにレイアの堪忍袋の緒が切れそうになったところで、モルダーが自ら転校生のフォローに回る。
「いいんですよ、転校生さん。私達青ネス勢と影の薄さは切っても切れない関係にありますので。私が思うに、これは青という色が大きく影響してると思うんですよね。そもそも古くから青は非日常世界の色として、時には死体を連想させる色として忌み嫌われてきたのですよ。そのせいか古代社会においての基本色は黒、白、赤の3色で、青は…」
「いや、僕が悪いんだ。ごめんね、モルダー君。これからは気をつけるよ」
長くなりそうなモルダーの話を強制的に終わらせる転校生。
もともと自分が蒔いた種だったために、その顔には反省の色がうかがえる。
その様子を見たレイアはため息をつき、とにかく頑張れよと一声かけてモルダーを送り出す。
その頃、初めからやけに余裕な表情の黒光をずっと疑問に思っていたヨシオくんは、黒光をみんなから遠ざけて1対1の状態にし、遂に質問してみる事にした。
「ねえ、黒光君。なんで君はそんなに飄々としていられるの?もしかしてだけど、黒光君は自分の選手生命はどうでもよくて、あんまり信じたくないけどレイアの言う通り、本当にただ邪魔しに来ただけなのかな?…ごめんね、こんな事聞いて。仲間を疑うなんて僕もあんまりしたくないんだけど、こればっかりはどうしても気になっちゃって…。ねえ、教えてよ黒光君。君は今一体何を考えてるの?」
真剣な表情のヨシオくん。それに応えてか、黒光も顔から笑みを消し、頭を掻きながら質問に答えていく。
「ああ、なんだ。心配しなくても、俺はこのコンテンツが大好きなファンの1人だし、この大会に出場できるのを誇りに思ってる選手の1人だ。そこは揺るがない。俺が余裕そうなのは別の理由があるだけだ」
そう言うと黒光はヨシオくんの耳元で、誰にも言うなよと念を押してから呟いた。
「このゲーム、すでに俺らの勝ち、チェックメイトだ」
「え?」
黒光の思いがけない告白に今日1番の驚きを覚えたヨシオくん。
「それってどうい…」
「それでは(裏)第8回CPUトナメ第2試合を行う。ライムライト(NE)対有の無限モルダー(NE)。ルールはストック1のアイテム制限ランダムのステージ制限ランダムでいく。Ready
to fight!」
謎の男の宣言が響き渡る。どうやら第2試合が始まるらしい。
ヨシオくんの質問が聞こえたのかいないのか、黒光は質問には答えることなくヨシオくんに言う。
「まあ、とりあえず今はこの試合を楽しみましょうや、先輩」
その顔は今までの意地悪そうな笑顔ではなく、少年のような屈託のない純粋な笑顔だった。
その顔を見て、これ以上質問する事が憚られたヨシオくんは、モニターを楽しそうに眺める黒光の横顔をただ見つめる事しか出来なかった。
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何このSS凄すぎて!!??
続きが気になって夜も眠れねぇよ
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次の更新は来週の土曜日を目標に頑張ります。遅れて申し訳ないです
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そして、1時間後。
ヨシオくんは壮絶な戦いを繰り広げていた。
未だ嘗てない強敵を前に歴戦の戦士ヨシオくんもさすがに悶え苦しむ。
踏ん張る度に口から漏れる声は、さながら獣の唸り声のよう。
苦悶の表情はさながらムンクの叫びのよう。
「ウォォォォォォ。ウォォォォォォ。」
ヨシオくんは自分をここまで追い詰める犯人の目星はついていた。朝食の卵だ。あれが消費期限切れだったのだろう。
己との戦い。狭い個室で行われている熾烈な戦いに、そして遂に終止符が打たれた。
プリンッ!
「ふう。今日の敵はなかなか手強かったよ」
レバーを引き、強敵と別れを告げるヨシオくん。だが、お腹はスッキリしても頭の中はモヤモヤしていた。
原因は黒光のあの言葉だ。すでに勝っている。そう言った黒光の顔は嘘を言っているようには見えなかったが、現状は芳しく無いはずなのだ。
ヨシオくんがトイレに向かった時、相手は未だ20人近く残っているのに対してヨシオくん側はすでに半分を切っていた。
あのペースで行くと自分が戻る頃には勝負が決まっていてもおかしくはない。
そんな不安を抱きながらスタジアムに戻るヨシオくん。だが、奇妙なことに入り口に近づいても選手達の声が全く聞こえない。代わりに聞こえるのは誰かの高笑い。
嫌な予感がしたヨシオくんは走ってスタジアムに駆け込む。
そして目に映り込んだのは予期せぬ光景。
地面に倒れこんでいる選手達。そしてガスマスクをしながら高笑いをする謎の男。
「大丈夫、みんな!?一体どうしたの!?」
駆け寄ってみると意識はあるようだ。どうやら体が麻痺しているらしい。
すぐにカバンから治療薬を取り出そうするヨシオくん。だが、それに気付いた謎の男はヨシオくんに声をかける。
「おや、ヨシオくん。ダメだよそんなことしちゃ。それじゃあ選手達が起きちゃうじゃないか」
そう語りかける謎の男に理解が追いつかないヨシオくんは今の思いを全てぶつけた。
「彼らに何をしたんだ!それに、ゲームの勝敗はどうなった!そもそも君は一体誰で、何の目的でこんな事をしたんだ!」
その叫びに謎の男はふむ、と頷くとおもむろにガスマスクを外した。
「ではとりあえず、この顔に見覚えはあるかね」
ついに自分の正体を現した謎の男。その顔を見たヨシオくんは言葉に詰まってしまった。というより名前が出てこなかった。
その様子を見て、予想通りの反応だと言わんばかりの顔をする謎の男。
「やはり、君も他の選手と同じか。…まあいい、特別にここで何が起きたか語ってあげよう。それがせめてものたむけだ。これから死にゆく敗者へのな!」
そして時は少し遡る。
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名前が出てこなかったで草
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名前が出てこなかったww 答えじゃねーかwwww
あいつだよあいつ、あれ…?うーん、思い出せないな
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「…遂にあなたの登場ですか、師匠」
レイアは次の対戦相手の姿を見て思わずそう呟く。
「ほほ、お主もなかなか頑張っとるの。残り1人の状況からここまで盛り返すとは思いなんだ。だが、残りは精鋭中の精鋭。さしものお主と言えど、連戦に次ぐ連戦で彼奴ら全員を倒すのは至難の業じゃろ。なれば、他の者にやられるくらいなら、せめて儂がこの手で引導を渡してやろうと思っての」
レイアは玄酔楼の後ろに残っている選手達を改めて確認してみた。確かに、3強の一角のエルバンや八王子筆頭のタバコマスターの子など格上と認めざるを得ない選手ばかりが残っている。
ちなみに天才は黒光相手にアフォックスして敗退している。
「確かに、俺の力だけじゃこの逆境に打ち勝つのは難しいのかもしれません。でも、俺は負けていった仲間の想いを双肩に担ってるんです。最後まで絶対に諦めませんよ」
レイアの意気込みをただただ黙って聞く玄酔楼。時々彼が何を考えているか分からない時があるレイアだったが、今もまさしくその状況だった。
そのまま黙ってカプセルに入る玄酔楼に続いてレイアもカプセルに入った。
それを見た謎の男は高らかに宣言する。
「さあ、遂にファン待望の組み合わせがここで実現!(裏)第8回CPUトナメ第43試合を行う。玄酔楼(LU)対灼熱のレイア(LU)。ルールはストック1のアイテム制限ミドルのステージ制限ランダムでいく。ready to fight!」
カプセルから降りたレイアは辺りを見回す。見慣れた巨大樹から、ここがプププランドだと分かった。
ここは小春日和のような心地良い暖かさに包まれた空間だが、今のレイアにはそれを感受する程の余裕はない。
理由は1つ。目の前の強敵の事で頭がいっぱいだからだ。
一挙一動を見逃す事すら許されない。
持ち得る限りの集中力を発揮してレイアは玄酔楼に注目する。
「さて」
そう、だからこれは決してレイアに非があるわけではなかった。ただ、玄酔楼という存在が規格外な化け物であるだけなのだ。
「少々語ろうかの」
"後ろ"から聞こえてくるその声に冷や汗をかくレイア。彼は知っている。玄酔楼は自分に戦い方、生きる姿勢、数々の事を教えてきたが、それらは全て戦いの中でだった。
つまり、玄酔楼は今もまた自分に何かを伝えようとしているのだということを。
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