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【青鬼】(SSスレ)

1名無しさん:2009/05/14(木) 23:22:37

 住宅街からほんの十五分ほど歩いた 山の中にある 空き家
 いつからそこにあるのか
 誰が住んでいたのかも分からないその館には
 
 お化けが出るという噂があった

21:2009/05/14(木) 23:23:03
 場違い且つ急ながら勝手にホラーっぽいSSでも始めます
 設定はまんま某フリーゲームからの転載ですが
 自己満足的なオリジナル要素もふんだんに加えるつもりです
 だらだら更新していくんで気が向いたらお付き合いください

31:2009/05/14(木) 23:23:34

 とある休日の昼下がり――。
 薄暗い森の中を進んでいくと、突然開けた空間が広がっている。
 その地に、しゃれた洋館が堂々と構えられていた。

 その洋館の入り口付近に、中学生が四人。
 彼らは、この洋館のゆかりの者でも招かれた客でもなかった。

「本当に入るのか?」

 眼鏡をかけた、見るからにインドア派な印象の少年――ひろしが呟く。

 外面はいたって綺麗で、誰かが住んでいる気配が伝わる建物だ。外見もそう古びてはいない。
 とはいえ、洋館の外には中学生ら以外の人影はなく、その上館内を外から窺うことはできない。
 なぜなら屋敷中の窓という窓が、まるで台風を予防するかのように張り板で頑強に打ち付けられていたからである。
 加えてタイミングよく野鳥の声がギャーギャー過ぎ去れば、昼間とはいえ不気味さは払拭できない。

「そ、そうだよ、やっぱ帰ろうぜぇ……」
 
 少し頭を金髪っぽく染めた、ひ弱そうな少年――たけしが震えながら言う。
 元々今回来るつもりはなかったが、見栄っ張りな面もある彼は「怖がりだから」との挑発に強がりほいほい付いてきてしまったのだ。
 が、結局それが体のいい頭数合わせになったことを当人は知らない。

「いや、やっぱここまで来た以上、噂を確かめてみたいよなっ」

 ツンツン頭の活発そうな好青年――卓郎が、震えるたけしと対照的に嬉々としてはしゃぐ。
 今回の企画の発案者であり、兼リーダーみたいなものだった。
 山中のベッドタウン付近に怪しげな空き家がある。今度の休みの日、そこへ冒険してみよう!
 元気一杯の中学生だ。高校生では、いや普通なら中学生でも休日にこんな過ごし方は求めないだろう。
 ――とはいえ、彼の呼びかけで人が集まるのは生来のカリスマゆえである。

「もう、卓郎ったら」

 最後は紅一点の美香。
 地毛の茶髪をポニーテールにまとめた彼女は、校内レベルでも競争率の高い容姿を誇っている。
 が、風のウワサによると、すでに卓郎とくっついているとかいないとか。
 噂が真実なら、両名は確かにお似合いのカップルと呼んで差し支えなかった。


 ――噂。
 この洋館には、お化けが出るという噂ある。しかしその内容は極めて乏しい。
 誰が言い出したのかは分からない。どんな姿かたちのお化けなのかも分からない。
 人に危害を与えるかどうかさえ分からない。単に、出る。情報はそれだけ。
 
 もし噂に「館に入った人間は皆殺しに遭う」とでも尾ひれが付いていれば、彼らも抵抗があったろう。
 しかし、その噂は未知だった。なんせ「お化けが出る」ことしか分からないのだ。
 幼い故に、中学生たちは未知の恐ろしさを知らなかった。
 いや恐ろしさどころか、逆に警戒心をそれだけ薄めてしまっていた。


 ろくに備えのない四人の少年少女は、豪奢な装飾がなされた扉を開け、中へと足を踏み入れる。
 全員を飲み込んだとき、その扉は、まるで締め切るのを躊躇うかのごとく、ゆっくり、重々しく閉まっていく。

 知る由がなかった。
 欲望ではなく、中学生ゆえのただの好奇心だった、という抗弁は通用しない。
 いつだって現実は、誰彼問わず平等に非情だ。
 何が待ち構えているのか、潜んでいるのか。
 未来は数秒たりとも先読みできはしない。


 ――が。その運命を踏まえてなお、この四人には。
 ここまで過酷な恐怖を植えつけられる謂れはなかった――。

4名無しさん:2009/05/15(金) 01:32:30
あのブルーベリーお化けのやつ?

5名無しさん:2009/05/17(日) 13:36:49
まだ〜?

61:2009/05/25(月) 21:15:10

「中は思ったよりきれいだな」

 開口一番は、先頭きった卓郎の率直な感想だった。
 確かに、お化けが出るという怪談からはギャップを感じるほど内装は綺麗なもんだった。

 しかし奇妙だ。
 眼鏡のフレームを直しながら、ひろしは黙考する。

 入り口の正面玄関を入ってすぐ眼前に大きめの階段が構えられ、後はすべて廊下を介しそれぞれの部屋へと繋がっている構造となっている。
 その廊下だが、ガラス備品で覆われている電球全てに照明が点いているのだ。

 窓は外から確認した通り全部ガチガチに締め切られており、陽の明るさも窺えない。
 だから照明がなければ館中が暗闇に覆われることになり、この照明は勿怪の幸いといえる。
 
 幸いなのだが。
 何故、点けっぱなしなのか。
 館内は静まり返っており、誰かが住んでいる様子もない。
 無人を漂わせながらも、照明の電源が入ったままというのが飲み込めない。
 第一、電気代は誰が払っているんだ。
 出費してまでこの状況を放置する理由は。必要性は。
 
 考えれば考えるほど薄気味悪さばかりが募る。


「お、おい……もう帰ろうぜ……」

 違和感を察知したのか、ひ弱そうなたけしが情けない声でうめいた。

「なんだよたけし、ビビってんのか? まだ入ったばっかで?」

 卓郎がさっそくニヤニヤしながらからかう。
 まるで探検の名目でたけしを弄ぶのを楽しみにしていたかのように。

「ビビってなんかねーよ!」
「そうか? じゃ、お前、お化けがいないかどうか先に行ってみてこいよ」
「あ、あ? それはお前、話がちげーよ」

 それを聞いて、周囲を観察していたひろしはフゥとため息をついた。

「科学的に考えて、お化けなんているわけない」

 好機を得たと言わんばかりに、たけしがひろしを指差した。

「じゃーお前一人で行って見て来いよ! ほら! ほら早く!!」

 差した指をそのまま右方面へとズイズイ向けるたけし。
 ひろしにとってはあらぬ展開だが、彼はもう一つため息を重ね、眼鏡をかけ直しただけで事も無げに言った。
 
「いいよ。この館には元々興味があったしね」
「い、言ったな、一人でだぜ、絶対行って来いよ! やっぱヤメってのはナシだかんな!?」
「はいはい」

 ひろしが指差された方向へ一人でさっさと向かっていく。
 ひろしにその気はなかったが、たけしの虚勢だけが浮き彫りになってしまった。
 それをネタにした揶揄嘲弄が、一人探索へ乗り出した彼の背後で騒々しく始まる。

「まったく……」

 ひろしは振り向く気も起こらず歩を進めていった。
 廊下の果ては遠く、ひろしの眼鏡を以ってしても見えない。
 この場から離れるのは別世界への没入のようにも思えたが、この時のひろしには居残る未練なんてまるで無かった。

71:2009/05/27(水) 20:14:42

「空気は清浄、特によどんでもないな」

 脇見をしながら歩くひろしは、観察を怠らない。

「それにしても――広い」

 廊下は果てが目視出来ないほどにぐんと伸びており、ちょうど高校の校舎内の風景を思わせた。
 長い。薄茶のフローリングがどこまでも続いている。
 片道がこれほど距離があれば、全幅で三百メートルは下らないんじゃなかろうか。
 かくれんぼどころか、鬼ごっこにも不自由しないな。
 
 しかしこうも容積があると、余計人の気配がないことに不気味さを覚える。
 今前進している通路の右側には、締め切られた窓が等間隔に。
 左手には、ベージュ色のクロスの壁が無機質に続いている。
 そこから生えている照明は全て稼動しており、廊下を無言で照らしていた。
 天井にも高いルクスのライトが数多く設置してあり、おかげで館内の明るさは真昼間の屋外となんら変わらない。
 
 だが、同じなのは明るさだけだ。
 際立って不自然な点は、音がないこと。

 外では鳥の鳴き声、風に揺れる草木のざわめき、また遠くに都会の音も辛うじて聞こえた。

 
 ここはどうだ。
 音がない。
 ただ自分の歩幅の、自分の足音だけが耳に入るばかり――。

 自然の雑音は、潜在レベルでヒトの理性を維持している。
 音が失われたとき気が狂うこともあるという話を、ひろしは身をもって思い知った。
 もしかするとお化けが出るなんて話は、まさにこの環境が起因しているのかもしれない。

「……ふん」

 そうだ。お化けなんている訳ない。
 オカルトなんてものがまかり通るはずはない。
 全ての事象は科学的根拠に基づいて論破できる。
 どうせ今回の件も、解明したときには鼻先で笑える茶番劇――。



 廊下を直進すると、左手方向に室内へと続くドアが見えた。
 
「『図書室』」

 ドアに設置されたプレートにはそう書いてある。
 
 ひろしは一瞬立ち入ろうか迷ったが、先に廊下の奥へと進むことにした。
 前もって館の大雑把な奥行きが知りたかったのと、図書室に入れば恐らく本好きの自分はしばらく出て来れないだろうから皆を待たせてしまう、という配慮と自制からだった。

「……もう五分ぐらい経つな」

 ちょっと周囲の観察に気を取られすぎたか。
 少し急ごう。
 ひろしは早歩きで廊下をまたいでいく。

81:2009/06/01(月) 12:21:26

 廊下の最奥部にはドアがあった。
 ごく一般的に目にする、ノブ部分が金属の木製のドアだ。

「『リビング』」

 そう記されたプレートが掛かっている。
 少し躊躇ったが、お化けの有無を確認するには一個室ぐらい調べるべきだろうと侵入を正当化する。
 つまるところ図書館でお預けをくらったばかりで、加えてもうここらにドアも無かったので、一度くらい個室をチェックしたかっただけ。

 入る前に、どうせ誰もいないだろうがノックしてみる。
 無音の館内に、扉を二回叩く音がやけに響いた。

 ……五秒ほど待ってみたが反応はない。
 中で何かが動くような気配もなかった。


「……入りますよ?」

 念のため声に出して断りを入れても、返ってくるのは静寂だけ。

 ひろしはおずおずとノブに手をかけ――ひねった。
 鍵の手応えはなかった。
 扉は小動物の鳴き声のような軋みと共に、おもむろに引かれていった。


 部屋の電気は既に点いていた。
 思わず誰かいるのかと思い、ドアを引く手が止まる。

 ……だが、相変わらず何も反応はない。
 ただ電気が点いている。それだけ。
 波のように押し寄せる、沈黙。無音。


 ――ひろしは一呼吸置き。
 

 一気にドアを開けた。
 拍子に、ドアから小さい叫び声が上がった。


 まず、次々と室内の模様が目に飛び込んでくる。
 廊下と同じクロス(壁紙)――イステーブル、蛍光灯、食器棚――キッチン――。

 中へ入り、後ろ手で戸を閉める。
 少しだけ気がかりだったので確認してみたが、勝手に鍵がかかって閉じ込められる――なんてことはなかった。
 第一、この部屋は怪談のイメージとはかけ離れている。

 ひろしは二三歩足を踏み入れ、部屋内をぐるりと見渡した。

 居間。
 館の中にこんな所帯じみた空間があるのも妙だが、リビングルームとしか表現しようのない部屋だった。
 
 テーブルがあるゾーンと、そこから境界を隔てるように、ソファ、テレビ、本棚といったくつろぎゾーンがある。
 得体の知れないものはない。
 違和感があるとすれば窓がないことくらいか。

91:2009/06/01(月) 12:22:10

 配置されている家具、備品はいたって平凡。
 そこまでボロでもなければ、埃もそんなに溜まっていない。
 まるで今なお普通に使用されているかのような様相だ。
 意味合いは異なるかもしれないが、まさしくリビング(生きている)ルームと言ったところか。


 ――もとから電気が点いてあった分、さっきまで誰かがいたような雰囲気を禁じえない。
 しかし、誰もいない。

 死体でも安置されているなら話が変わるが……大丈夫、死臭はない。
 実際にヒトのは臭ったことはないが、死体からは酸とガスが発生するのは知っていた。
 相当するような刺激臭はない。
 
 誰もいない。
 主を失った空っぽの居間。
 
 ――強いて目を引くものといえば、乱れていると言われればそうかもしれない程度のイスぐらいだった。
 整然と並んでいるテーブルイスの中で、一脚だけモノがぶつかったかのようにズレている。


「ん……?」

 イスの向こう側に何か光沢があるものがたくさん落ちている。
 ひろしは周辺に気を配りながら、そろりそろりと近づいていった。


 一瞬ぎょっとする。


 しかしそれは普段見慣れないものだったからであり、何なのか確認してみてすぐに現実味を取り戻す。

 白い皿が割れ、粉々に砕け散っていた。
 この破片の広がり方から、誤って取り落としてしまったと推測される。
 座り込んで、欠片を一つ手に取ってみる。まだ新しい。
 
 誰が割ったのだろうか。
 この館の住民だろうか。
 なぜ片付けてない。
 

 ――部屋内に、他に物々しい形跡はない。
 粉砕された皿だけがひときわ目立って浮いていた。




「……いったん皆と合流しよう」

 少々長居し過ぎたかもしれない。
 ひろしは立ち上がると、部屋を出た。

 部屋に鍵がかかっている、なんてことはなかった。
 小さく安堵の息を吐く。
 
 部屋を後にする直前、もう一度だけ割れた皿の方を見た。 
 原型を留めていない皿は、数年前からそうであったかのように、物言わず横たわっていた。

10名無しさん:2009/06/04(木) 23:05:53
続きまだか

11名無しさん:2009/06/14(日) 08:10:09
あげ


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