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改訂版投下用スレッド

310名無しさんだよもん:2007/11/04(日) 17:13:09
「それもそうですね」
 一方、会場の沈黙を破ったのは、やはり司会者である秋子さん。
 何か思うところがあるのか、一度二度と首を縦に振る。
「それでは、ハクオロさんでした。皆さんもう一度大きな拍手でお送りください」
 再度の拍手の海。
 今度は恥ずかしい歓声も挟まれなかった。


「さあ、ここからはTOP3の発表です!
 葉鍵鬼ごっこ、第三位! 柏木、楓さんです!」
「楓ーっ!」
「楓おねーちゃーん!」
 秋子の呼び声と、姉妹の歓声と、割れんばかりの拍手。
 促され、俯きながら壇上に上がるのは柏木家三女の柏木楓。
「おめでとうございます楓さん。三位入賞です」
(あ、ありがとうございます…………)
「……?」
 しかしその声は、マイクで拾ってようやく聞こえるか聞こえないか程度のものだった。
「楓さんもリサさんと同じように、長い時間を一人で戦い抜き、見事この成績を収めました。
 特に終盤の大追撃戦は長かった大会の中でも有数の名勝負だったといえるでしょう」
 大人数を前にして恥ずかしがっていると判断した秋子は、自分主導で話を進めていく。
 もっとも、その予想は半分正解で、半分ハズレであったのだが。
「それでは、楓さん、こちらが賞金になります。そして―――――」
 促されるまま熨斗袋を受け取る楓。
 しかし、三位以上はこれだけでは終わらない。つまり……

311名無しさんだよもん:2007/11/04(日) 17:13:29
「何かお願い事があれば……一つだけ。私どもで協力できる範囲ならかなえてさしあげますが……
 もしすぐには思い浮かばなければ、後ででも」
「い、いえ」
 と、そこで初めて楓は前を向いた。
 相変わらず緊張のせいか頬は赤いが、瞳は確かにキッと前方を見据えている。
 楓の様子を見て、正式な賞品の受け渡しは後にしようと考えていた秋子だが、楓のその様子を認めると
 微笑みながらマイクを手渡した。
「みみ、みなさんありがとうございます。柏木…………楓です」
 ごくりとつばを飲み込む。その音はいくらかマイクに拾えたほどだった。
(楓ちゃん……)
 そんな従姉妹の様子をみて心配げなのは柏木耕一。もちろん、他の姉妹もだが。
「…………」
 唯一、いくらか不機嫌そうな千鶴は除いて。
「そ、それでは僭越ですが…………わ、私の願いを発表させていただきます」
 緊張のせいか、どもり気味ながらもいつもより饒舌な楓。
「わた、私の願いは…………願いは…………」
「……………………」
 ざわついていた会場も沈黙に包まれる。
 なにせ、初めての本格的な賞品発表なのだ。

 すぅと息を吸い込み、吐いて、吸い込み、吐いて…………
 ふんぎりがつかないのか、そんなことを何度か繰り返す。楓。
 そんな中、ふとステージの足下まで来ていたリサと目があった。
 パチリと、片目をウィンクする。
「…………!」
 それに促されたのか、楓はいよいよ大きく息を吸い込むと…………

『耕一さん私とデートしてください!』

 こちらもまた一息に、一気に言い切った。

312名無しさんだよもん:2007/11/04(日) 17:13:43
「いいぃっ!!?」
 次の瞬間、どっと沸く会場。そして三百近い瞳が一気に耕一に向けられる。
「…………!」
 壇上の楓はいたたまれなくなったのか、瞬間湯沸かし器のように顔を紅潮させるとまたしてもうつむいてしまった。
(は、初音っ……!)
(う、うん!)
 一方会場の一角。こちらも別の意味で一触即発の状態であった。
 楓の願い。姉妹だけあって大方の予想はつけていた梓と初音。
 発表の瞬間、千鶴の利き腕と利き足の動きを封じることができる位置に飛び退いたが…………
「……どうしたんですか2人とも。突然に」
 千鶴は不機嫌な顔を隠そうともしなかったが、閉会式の進行表に目を落としたままその場を動こうともしなかった。
「ち、づる、ねえ…………?」
「一応私も主催側の一人ですよ。個人の感情でせっかくのフィナーレを壊すような真似はしません。
 楓の賞品は楓のものです。そして私の気持ちは私のものです。もちろん耕一さんの気持ちも、それらとは全くの別物です」
(…………ふう)
 その言葉を聞いて、安堵のため息をついたのは梓でも初音ちゃんでもあるが、もちろん。
(よかった…………)
 足立さん。苦労人である。


 ざわざわと会場がざわめく。もちろん、その中心にいるのは耕一だ。
「あ、いうえ…………お?」
「Hi! Mr.Koichi!」
「あ、リサ…………さん!」
 そんな耕一にひょいとマイクを投げ渡したのはリサ。そのまま言葉を続ける。
「ladyがあれだけ勇気を振り絞って、この4日間のすべてをそそいで、あなたにproposeしたのよ?
 さあて、あなたはそれにどう答えるのかしら?」
「あ、あう、あ…………」

 この状況で、断れる男がいたら、それは際限なしの大物か大馬鹿である。
 そして、幸いなことに耕一は、そのどちらでもなかった。

313名無しさんだよもん:2007/11/04(日) 17:14:06
「えと、あの、その…………まあ」
 マイク越しのやりとり。当然そのすべては会場に筒抜け。
 すなわち今ここにいる全員が、その証人である。
「あ、ありがとう楓ちゃん…………その」
 突然のご指名。緊張しながらも言葉を探す耕一。
「……………………」
 楓はもはや前を見ていられない。
「…………お、俺なんかでよければ…………その、いいよ」
 タメも雰囲気もクソもないが、耕一は肯定でもって楓の願いに応えた。
「今度の三連休ぐらいに帰省するから…………それでいい、かな?」
(……………………………………………………)
 沈黙し続ける楓だが…………
(…………はい)
 小さい、しかし確かな答え。
 マイクはしっかりと、その言葉を拾った。
「Congratulations pretty girl!! Ms.Kaede, over!!」
 最後の台詞を奪ったのはリサ・ヴィクセン。
 千鶴や秋子が何か言う前に、すべては大きな拍手の中にかき消えた。


「…………なあ初音」
「なあに梓お姉ちゃん」
「なーんかあたしたちって、陰薄いよな」
「しょうがないよ。今の主役は楓お姉ちゃんなんだから」
「ま、な…………」

【閉会式(授賞式) 続行中】
【鶴来屋別館パーティーホール】
【北川、住井、サラ、ティリア、リアン、エリア、ニウェ、源之助以外全員】

 ※ 残りは観鈴、みちる、【浩平】です。


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