したらばTOP ■掲示板に戻る■ 全部 1-100 最新50 | |

三夜一夜の果て

1さまんさ:2012/08/06(月) 20:25:23
三夜一夜ルール:https://dl.dropbox.com/u/53789508/rakugaki/2012_08/3helen/3helen_rules.txt #基本的に千夜一夜のヘレンと全く同じとします。

特殊ルール1:某マックオートさんが終盤近くに起こしたイベント「サミットカード」程度のお戯れは推奨しませんが許可します。やられたら笑って許してあげましょう。あまりやらないようにしましょう。
特殊ルール2:千夜一夜よりもゆるくやりましょう。設定を緻密にするあまり読み込みの足らない相手に必要以上を要求してはなりません。

期日:本日から〜12日23:59:59までとします。別に毎日1000文字かかなくても大丈夫です。

2さまんさ:2012/08/06(月) 20:36:03
キャラクターも本文もここに投稿してください。

【キャラクター投稿】
・名前(必須)、設定(必須)、構成、画像のURL等。
・ここに直接書き込んでください。
・構成考えるのめんどくさい人はあとでもいいです。なくてもいいです。
・物語の途中で投稿してもいいみたいです。

3utsm3@飢者髑髏喜一第0話:2012/08/06(月) 22:03:54
・名前 飢者髑髏 喜一
・イメージ https://dl.dropbox.com/u/53789508/rakugaki/2012_08/3helen/3helen_utsm3_dokuro.jpg
・構成 HP8知性2/技9
 9/0/1//死の欠片
 45/0/8/防御無視/ドノンガ
 プラン 死の欠片。相手の防御力8以上ならドノンガ。
・設定 
 男。フリーランス。高校生。16才。黒髪。
異世界からリリオットのある世界に召喚された。
 あれこれ考える事が嫌い。すばやさをモットーとする。
 非常にケンカっぱやく、口から出るのは女とセックスする事ばかり。
 リリオットから帰る手段を探すついでに
 無損失疎通路の使い手、特に魔女を探している。

4utsm3@飢者髑髏喜一第01話:2012/08/07(火) 00:21:15
精霊都市リリオットの7番街は商業地区である。
まばらに人が行き交い、出店が賑やかな声を張り上げ、土煙と日差しの匂いがけだるさと少しの懐かしさを運んでくれる。商業都市は混とんとしている。あちらではフルーツを山のように積んだ車が秤を吊るし、こちらでは刃物を床に並べた男がじっと客の訪れを待っている。親子連れの者もいれば、辺りをキョロキョロと見ている不審者もいる。売る物も買う者も滅茶苦茶。秩序も何もあったものではない。公騎士団が本来それを正すはずなのだが、セブンハウスのペルシャ家により7番街に立ち入る事はできない。当然毎日何かしらの事件がおこる。この場所での喧騒と人だかりは日常なのである。

その日最初の人だかりを作ったのは黒髪の少年だった。発端はきっと些細なもので、肩がぶつかっただの、店の商品が紛い物であっただのの類であったのだろう。少年は複数の男達に囲まれ、暴行を受けようとしていた。もし彼に謙虚さがあれば冷静に状況を見つめ逃走することで自らを守っただろう。彼に強靭な肉体や綿密なプランがあれば一対多をものともせずに向かい来る敵を倒しただろう。知恵を絞り、策を練りこの場をやりすごす事もできるだろう。

彼にはその全てが無かった。

少年は戦闘が避けられないとみるや、もっとも近い男に走り寄り鳩尾に信じられない速度の拳を連打した。9/0/1//死の欠片とよばれるそれは当たり所さえよければドラゴンですら瞬きする暇も与えず倒せる高速の拳であるのだが…

いかんせん、防御に弱い。

黒髪の少年は拳を掴まれ連打を封じられる。死の欠片を諦め抵抗を試みるも倒す人数が違いすぎる。体力が圧倒的に足りない。あわれ少年は地面にうずくまり、男達の暴力をその身に浴び続けた。あとはボロ雑巾のようになるまで殴られた後に金品をはがれるか、わけのわからぬ所に連れて行かれ臓物を切り売りされ人生の幕を降ろすか。どちらにせよ彼に未来はないだろう。
野次馬もすっかり飽きた顔で消化試合を見つめていた。


だから、誰もがそこに新たな人物の介入があるとは思わなかったし、その人物の起こした行動にとても驚いた。
「皆さま、ケンカはお止めになって下さい」

5平澤@ウエルディメンタ・デ・パパス第0話:2012/08/07(火) 02:35:38
ウエルディメンタ・デ・パパス
82/3/5

羽ペン 3/3/1
紅茶 30/0/9 回復
老いたるオカルティズムの祖 41/6/11 炎熱


相手現ウェイト≧11 かつ 老いたるオカルティズムの祖の攻撃力-相手の防御力≦0 なら老いたるオカルティズムの祖
相手現HP≦(相手防御力-3)×相手残りウェイト なら羽ペン
老いたるオカルティズムの祖の攻撃力≧相手最大HP+45 なら老いたるオカルティズムの祖
自最大HP-自現HP≧30 かつ 自最大HP-自現HP≦相手最大HP-相手現HP なら紅茶
同時行動 なら羽ペン
相手が凍結でなくウェイト=9 なら紅茶
相手の防御が2以下ならば羽ペン
紅茶
老いたるオカルティズムの祖

リリオットの売文家。
オカルト書の募集家である。
肖像画は若いころのもの。
http://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/s/sinope/20120806/20120806230324_original.png?1344261824

6平澤@ウエルディメンタ・デ・パパス第0話:2012/08/07(火) 02:39:41
すみません、プラン一文目の「≦0」は「≧相手現HP」です。

7drau@ダンサ・カルナヴァル第0話:2012/08/07(火) 12:05:45
名前: ダンサ・カルナヴァル
構成:60/10/4
(詳しい構成はまた後日に記します)

男性。外れの漁村からジェロニモ鳩にまたがって、新鮮な魚やらを売りにきた田舎者商人。頭に被ったほっかむりと、口元で光る目立つ白い前歯が自身のトレードマーク。
書物や演劇や娯楽への関心がそれなりに強く、ミーハー。遠く離れた場所でかみさんと子供が自分を待っていて、のんびりしてはいられないのだがついつい横道に逸れがち。
「――いや、それも仕方ない、俺は生きているのだ」

8drau@ダンサ・カルナヴァル第1話:2012/08/07(火) 14:12:15
巨鳥の背に乗って、空を滑る。昇りきった太陽の視線を浴びながら、手で額を拭う。じわりと体表に浮かぶ大粒の汗を、巨鳥は己の羽根の掻っ切るような動作とともに、背後の空中に振り落とす。巨鳥が鳴く。豆粒大ほどの人が行き交うリリオットの街が見えてきた。
メインストリートの大通り、時計塔、煌びやかな貴族街、リリオットの街の輝きを見下ろしながら、ダンサはまた額を拭った。そこに効果は無い、だが笑う。今日はいい天気だ。
手綱を捻り、旋回と共に下降する。鳥の胴に括り付けた積荷に一瞬負荷がかかり大きく震える。
背中に腹をくっつけて縮こまりながら、後ろをちらりと見やると、巨鳥の汗が描いた放物線に、虹が重なって見えた気がした。
  
商業地区近くの大広間に降り立つ。風の音とは違う、生命の発する賑やかな音がわっと立ち上がる。
顔なじみの男達が、積荷と自分を下ろすのを手伝ってくれる。
見渡せば、あいも変わらず人だかりが所々でできている。それはもはや珍しくもない光景だ。この街では特に。

ダンサは、顔なじみたちに挨拶と礼を済ませ、肩や首を回しながら商業地区を歩き出した。
頭にほっかむり、口元に白い歯。ダンサは今日もダンサだ。

9平澤@ウエルディメンタ・デ・パパス第1話:2012/08/07(火) 21:07:14
「恐怖!! 不可解な言語を話す黒髪!!!」

 黒髪というのはえてして珍妙な文化を持つものであるが、このほどリリオットは七番街で発見された黒髪ほど興味深いものはいないだろう。彼の黒髪はすでに青年といっていい体躯であるが、彼はまったく公用語を話すことが出来ず、抑揚のないうなり声を発することしか出来ないというのだ!! しかし彼の物腰は知性ある人間のそれであり、けして知恵遅れや狂人の類ではない。これはいったいどういうことだろうか?! 言語学専門のドナッチェ教授によると、彼は「話している」のだという。ただし、我々がまったく出会ったこともない言語で。
 おお、精霊よ! 人が大地に満ち、ヘレンの英知がすべての大陸に開かれたこの世界で、我々の知らない言語といもうのが存在しえるのだろうか?? ドナッチェ教授はまた、こうも語る。言語というのは人が世界を構築する上でもっとも大切なものである。我々はみな同じ言語で語り、同じような世界を見る。しかし、もし、そこにまったく異質な言語が入ってきたら? そして、それが万が一にでも話者を増やし始めたら? もしかしたら、世界は、我々のまったく知らない、異質なものになってしまうかもしれないのだ!!
 現在その黒髪の行方は知れない。これは公騎士団の失態といえよう!! 一説にはペルシャがその公邸で厳重に保護しているという話もあるが、しかし、我々はまた市民の義務として、その動向に目を光らしていかなければならないだろう。彼の黒髪が最後の一人とは限らないのである!!


 書き終えて一息つく。いまいちだ。どうにも恐怖が足らない。
「あの顔ではなあ」
 おのぼりさんのそれなのである。警邏の連中へのへのぶらさがりで偶然出会ったネタではあるのだが、ここの所ろくな事件も起きていないリリオットではいちいちネタの選り好みも出来ない。チェナドもまた、よく分からないコメントしかよこさない。彼を見つけたというペルシャのお嬢様にも話を聞きたいところだったが、目つきの剣呑な護衛が傍につきしたがっているので諦めた。お嬢様との恋話の方向でも一つでっち上げようかとも思ったが、まあそれはもう少し煽れたらにしよう。
 紅茶を入れて、一息つく。そろそろ容器の底が見えるが、先立つものに欠ける。今年の初物が出回るのはもう少し先だが、そのころまでに購入費を用意できるかどうか。今年の新茶は出来が良いと聞くだけに、何とかして纏まった金を手に入れたいとも思う。
「まあいい、さて、今日の葬儀屋は、と」
 独り言が多くなったな、と自嘲する。

 葬儀屋めぐりは彼の日課だ。人の死と事件や物語は切り離せない。もちろん、直接的にそういう死者に出会えることというのはそうはないが。そして彼の目的のもうひとつが独り者の死者。それは事件やゴシップとは関わりないが、独り者、それも男の独り者というのは何かしらを溜め込んでいるものだ。たいていは誰にも話さず。それらの死者の情報を嗅ぎ回り、遺品が大家らに処分されるときにつばを付けに行く。パパスの探しているのは古書だ。それも俗悪なオカルト本やホラ話の類。今、彼が特に探しているものは、ヘレン教の開祖、ヘレンにまつわるものだ。ヘレンは黒髪ではなかったかと、彼は疑っている。それを裏付けれるような資料があれば、いや、資料などという大層なものでなくともいい。古さがあり書物の形でかかれたもの、その形があれば人を納得させられる、そういうものを彼は追いかけている。
「今日はいないねー、それっぽいの」
「そうかい」
 銅貨を渡す。
「あー、そうだ。一人居た。女だけど」
「婆さんか?」
「婆さん婆さん。魔女だよ」
「魔女?」
 あれ? あんた知らないかい? と葬儀屋は笑う。3丁目の魔女っていやあちったあ有名だと思ってたぜ。
「あー、あの占いか。死んだのか」
 そういえば何度か取り上げたことがある。歓楽街の女衆の間ではけっこうな人気だったはずだ。もう一枚葬儀屋に銅貨を渡して、パパスは彼女の住んでいたというアパルトメントへ向かう。

10taka@エミリック第0話:2012/08/07(火) 21:59:35
名前:エミリック

セブンハウスの「ペルシャ」分家のフェルスターク家長男。
若い頃は素行不良で暴力沙汰だらけの問題児であった。
さらにエフェクティブ将軍の娘を護るためにリリオット家の人間に暴行。
普段の素行もあり、貴族の地位を剥奪された上に投獄される。
エフェクティブ将軍の助けにより脱獄し、その後数十年エフェクティブとして活動している。

フェルスターク家惨殺事件の際に現場で目撃され、殺人の容疑で指名手配されている。
500万ゼヌの賞金首がかかっている。

「まだ、オレは捕まるわけにはいかん。」

炎熱刀の「エメレテックス」を所持しているが、滅多のことでは抜刀しない。
左利き。

http://dl.dropbox.com/u/90111973/image/emirc.png

構成
HP64/知力6/技術5

気/35/0/10 防御無視
避/0/45/6
鞘/15/15/5
拳/5/0/1
刃/40/15/16 炎熱
峰/40/15/13 炎熱 封印

プラン
基本的に戦闘は避けて逃げます。
逃げれないようなら捕まるわけにはいかないので戦います。

1.相手が構えてなければ「鞘」で牽制する。
2.相手の残りウェイトが11以上かつ防御が10以上なら「気」を放つ。

3.カウントが100経っても逃げれないようなら、援軍呼ばれる前に以下の手段
3-1.相手の知力*10が相手の最大HP以下なら「峰」で動きを止めます
3-2.さもなければ「刃」で傷を与えます

4.相手が防御無視なら「拳」を叩き込む。

5.相手の攻撃が15以下なら「鞘」で防いで反撃する
6.相手の攻撃が16以上かつ残りウェイトが8以下なら「避」けます。

7.さもなければ
7-1.相手の知力*10が相手の最大HP以下なら「峰」で動きを止めます
7-2.さもなければ「刃」で傷を与えます

11taka@エミリック第0話 修正:2012/08/07(火) 23:12:57
スキルに不備があったため修正します。

気/35/0/10 防御無視
避/0/45/6
鞘/15/15/5
拳/5/0/1
刃/40/15/13 炎熱
峰/40/15/16 炎熱 封印

12taka@エミリック第1話 修正:2012/08/07(火) 23:47:10
一振りの刀を持ち、ボロボロの服を着た初老の男が、何かを探して裏路地を彷徨う。

「いたぞ!エミリックだ!」
後ろから叫ぶ声が聞こえる。振り向くと騎士の格好をした数人の男たちがこっちへ走ってくるのが見える。

「公騎士団か。しつこい連中だな。」
男は剣をグッと握ると、追っ手から逃げるために走り出す。
が、前方に同じような格好した男が数人待ち構えていた。


「エミリック!フェルスターク一家惨殺の容疑で逮捕する!大人しく投降せよ!抵抗すれば命の保障はない!」
騎士達は剣を抜き構える。
何度聞いたか分からない台詞。公務員っていうのは大変だな。
「悪いが、オレはまだ捕まるわけにはいかん。しなければならんことがある。」

エミリックと呼ばれた男は、走る足の速度を緩めずに前方の騎士達に向かって突進する。
騎士達は突進してくるエミリックに対して斬りかかった。

しかし、騎士達の剣はエミリックが持つ刀の鞘で難なく弾かれる。
それと同時に、鞘が首の後ろや肩、腹などに打ち込まれる。

エミリックは崩れ落ちる騎士達の間をすり抜け、裏路地の奥へと消えていく。


「封印宮の入り口・・・。一体何処にあるんだ・・・。」
エミリックはポツリと独り言を呟いた。

13utsm3@飢者髑髏喜一第02話:2012/08/08(水) 01:23:00
「つまる所、アンタは…」

豪華な装飾のなされたベッドの上で飢者髑髏喜一はぼんやりと呟くように口を開いた。リリオットに来てすぐごろつきといざこざになり敗北し、気が付いたらここに運ばれていたようだ。貴族の一門であるペルシャ家の『客人の間』という所らしい。赤を基調としたその空間は喜一の来た世界の一般的な部屋の3倍から5倍は広く、マンションの一室がすっぽりと入る。ベッドの他にも会議用の机や箪笥、簡単な調理場まであり、その気になれば客人達は生活することもできるであろう。

その広い広い『客人の間』に喜一を運んだ張本人が喜一の横に佇んでいる。ゆるくウェーブのかかった金髪は丁寧に織り上げた絹のようで見る者を魅了させる。細かな指先はまるで他の人間と基本的な作りが違うかのように華奢で美しい。緑色の瞳を見つめていると吸い込まれてしまいそうだ。
ペルシャ家令嬢”マーガレット”。齢16にして公騎士団を統括する娘だ。マーガレットはにこやかにほほえみ喜一の問いに答える。

「そう、キーチさん。あなたに『私の』公騎士団に入って欲しいのですわ。どうしても捕えて欲しい男がいるの。」

ペルシャ家令嬢からの直接のスカウト! もしこの話をリリオットの民が受ければ二つ返事で承諾したであろう。何しろ入るのは困難だが待遇の良さに出る事は不可能とまで呼ばれる組織だ。稼ぎには一生困らない。治世組織であるにも関わらず、命が奪われるほどの任務は殆どといっていいほどなく、近年頻発・激化している勢力間抗争などは対処するポーズを見せているだけといっても過言ではない。勤務時間は9時から5時まで。福利厚生年金完備、貴族サービスの一部も認められている。

貧困層にとって夢のようなその誘い価値を、しかし、喜一は拒絶した。彼がリリオットに来て日が浅いという事も関係しているが、一番の理由は彼の性質が状況の理解を拒んだのだ。勝利したごろつきではなく敗北した喜一がスカウトされたのは何故かとか、この街で起きている争いの背景とか、マーガレット直属の公騎士団という胡散臭さといった諸々の疑問を喜一は持っている、持ってはいるが、視野を広く保ち、嘘や騙りは防ぎ、熟考し真実を見出す事を喜一はできない。1か0か、好きか嫌いか、勝利か敗北か。全て一瞬で決めたくて仕方がない。面倒臭い計算や考察はできない。ありていに言えば、馬鹿なのだ。

「それよりか、アンタいい女だな。ヤらせろ。」

はたかれた。


https://dl.dropbox.com/u/53789508/rakugaki/2012_08/3helen/3helen_marguriette.jpg

14drau@ダンサ・カルナヴァル第2話:2012/08/08(水) 14:33:45
積み荷を売った金を魚屋の店主に預けて、ダンサは商業地区を巡る。敷き詰められた数々の露店を見やるほっかむり男の足は、軽やかに歩を進めて跳び廻る。舞うように、ミルクを落とした紅茶をかき混ぜるように。

物珍しい品を見て顔を綻ばせ、アツアツ出来立ての食に誘われ横からつまむ。《林檎の砂漠焼き》と書かれた紙。見事なまでの砂のような味しかしない。咳き込みながら、同時に頬っぺたが落ちそうになるのを感じた。

――我が目よ、この世の歓楽を見よ!我が口よ、この世の甘露を誘え!ヘレンよ!リリオットの賑わいを歌え!

ダンサは、どこかでみた文章を弄っては、己を代弁し、喜びを高めた。その後ろでタコ殴りにされた唸る黒髪の男が、貴族の令嬢に連れられていく。

――獣を探すか、刃を誘うペルシャの魔よ。その獣は果たして手に負えるものか?

歯についた林檎の皮をペロリと舐めながら、林檎の砂漠焼きを買うと、縄でくくられた鳩の元へ戻る。巨鳩がダンサと眼を合わせて嘶いた。晴れ渡る空に甲高く、そう、高らかに。聴衆を誘う。

「ピャー!」

――いってくる、相棒。

ダンサも笑ってから、鳩の嘶きに応えてやる。林檎を投げやると、鳩は喜んで丸のみにした。

リリオットの街を巡ろう。付き合いの長い顔馴染みを一人誘って、彼は商業地区を離れた。しばらく街をさ迷っていると、壮年の男が訊ねてきた。
「君たち、すまないがこのアパルトメントのある住所はこちらであっているかね?」


「いんやぁ、おららも詳しくは知らねぇべっちゃらども。どらどら?みせちょくら」

どうやら道を訊ねているらしい男に、同行者と二人一緒に頭を捻り、どうにか奥の通りを指差した。多分、あちらで合っているとは思うが、無事に到着することを願い、ふとダンサは気付く。

――その面影、もしや!かのオカルト書の祖と一部で名高いあのお方では!この様な所でお目見え出来るとは!

サインを頼んだが、生憎書いてもらえるような色紙がない。男が咳きを一つして、手帳と羽ペンを取り出した。彼を煩わせるのは本懐ではない。貴重な手帳を使わせるわけにもいくまい。ダンサは歯を一度指差しかけて、首を振り、改めて自身の背中に書いてくれる様に頼んだ。ミーハーである。この服はもう洗えない。
「いやいや、なんぞすまんことすますたなぁ、ほれ、そろそろいくっぺよ!」

同行者は呆れた顔でダンサを見る。ダンサは何のそのと喜びいさんだ。

15平澤@ウエルディメンタ・デ・パパス第2話:2012/08/08(水) 23:13:05
ウエルディメンタ・デ・パパスの名前を呼ばれるのは久しぶりだ。

サインを求められ、パパスはそのような感慨に耽る。訛からしてどうやら田舎の者のようだ。流行り廃りの激しいリリオットで、ウエルディメンタの名前を覚えている者はそうはいないだろう。

「封印宮はなぜ封印されたのか?」
「なぜ占いは当るのか?」
「超約魔術」
「跳躍魔術」
「腸薬魔術」

あのころは羽振りがよかった。毎晩高い酒を飲み、もてなし嬢と戯れた。パーティーに招待され、街の名士と談笑などもした。そのころに覚えた贅沢は抜けきらず、茶葉の質やペンの羽根がジェロニモ鳩であるかどうかになどつい拘ってしまう。
今 パパスにサインを求めた男は超約魔術の名を出し、現代におけるオカルティズムの祖であると誉めそやした。確かにあれはウエル ディメンタ・デ・パパスの著作の中で一番に売れたものだ。しかし、あれはパパスオリジナルの著作ではない。あれには種本があった。
人気を受けてまったくの無から書いた魔術シリーズ第二段は振るわず、三段目は版元に原稿を突き返された。今では、著者の署名が載らない類の文章を書いて糊口をしのいでいる。だが……
「おっと、すまん」
ふいに声がして、パパスは慌てて飛びのいた。白髪の初老の男性が駆けていく。
「おい、そいつを捕まえろ!」
 数人の公騎士団服を着た男たちが叫びながら走ってくる。白髪の男はすでに向こうの角を曲がっている。
「クソ、なんてはしっこいやつだ!」
「おい、お前! なんであいつをむざむざ逃がした!?」
 一人がパパスに食ってかかる。とんだとばっちりである。

 やっとのことで公騎士団の難詰を逃れて、目的のアパルトメントへとたどり着く。幾人かの化粧の濃い女が、
白い花を持って入り口に並んでいる。ああ、そういうものが必要だったな、パパスは花屋を探し、一束の白鶏頭を買おうとする。
「あんたもあれか? あれの?」
「ええ、まあ、そんなところです」
 適当に受け答えをして、パパスが花屋を出ようとしたとき、パパスは嫌なものを見た。

〔少し大人になったあなたのための占い特集。今月は【陰毛占い】〕
☆古代、陰毛は神聖なものとして考えられていました。エルフはそれを身体にある鎮守の森として捉え、円と十字をその上部に描いて奉りました。また、ドワーフの男性は陰毛が抜けると、それを屋根の上に隠して家内の安全を願ったといいます。陰毛が現在のように剃られるようになったのは、ヘレン教が一般的になってからのことです。無毛の乙女ヘレンにあやかって、男女ともに陰毛を剃るのが当たり前のファッションとなってしまいました。ですが、最近陰毛が見直されています。性生活研究家のタニエドさんによりますと、陰毛のある女性はない女性に比べて実に50%以上もの……☆
「古い雑誌はさっさと捨てようぜ……」

「陰毛占いいいじゃない陰毛占い、じゃ、あと詳細はお願いねェ」
 そのように丸投げされた記憶がよみがえるのだ。

16drau@ダンサ・カルナヴァル第3話:2012/08/09(木) 14:39:33
かみさんと子供が、遠く離れた場所でダンサを待っている。速く会いに行ってやるべきなのだろう。だがダンサは寄り道を楽しむ。楽しめる。寄り道は、生の隠し味だ。もうしばらく、味わっていたい。

――俺は生きているのだ。

何事にも終わりはある。 華やかで賑やかな謝肉祭も、一度始まれば必ず終わらねばならないものだ。終わらない夢現の一時は悪夢であり、それは人の身には過ぎたるものなのだ。

――だが今はまだ違う。

ダンサは同行者と共に、空の下で夜闇の現れを出迎えた。

「あんら〜、早いっぺなぁ。お天道様、眠っちまっただよ。おいは宿に戻るでよ。おめさんもここらで帰るっぺよ。なんなら一緒にいくべか」

ダンサは同行者と別れ、歓楽渦巻く風俗街へと向かった。
店に入ると、ダンサを引き留めるように、かみさんの笑った顔が床に浮かんで現れた。足運びは軽やかに、唄を口ずさみ、かみさんの顔を踏みつけ通り抜けた。
人の幸せも、美しさも、いつか必ず終わる。




「あら、お兄さんったら身体が夜冷えしちゃってるわ。ふふっ、手、ひんやりして気持ちいいね♪」

ダンサの手を握って己の頬に当てる女が、くすぐったそうに笑う。

「――冷めた林檎は如何かな、お姫さん」

片手を女の腰に回し、もう片手で食べ掛けの林檎を差し出す。

「あっ、それ、砂漠焼きよね。甘みが染みてて、あたし、好きよ?ふふっ」

女はダンサの首筋を指でなぞる。

「――砂の様な味だけの林檎と、腐った林檎。どちらが欲しい」

「あら、どういう謎解き(リドル)かしら?」

「――こういう問いさ、妖精さん」

林檎を握り潰す。果汁が女の顔に散った。

「――砂上の楼閣を、俺は崩す。ペルシャの魔を払う力を貸して欲しい、“君達の”エフェクティヴに」
女は驚いた眼を細めて、ダンサの歯に付いた皮を舌で舐めとってやる。ダンサの首に両手を回し、小首を傾げた。

「――どうしたものかしら」

窓辺から覗く夜の暗影。
色褪せた視界。笑う女。 ダンサは、相手の手を取って踊りだしたい衝動にかられた。こんな時、かみさんと子供が恋しくなる。分かち合いたくて、恋しくなる。


新着レスの表示


名前: E-mail(省略可)

※書き込む際の注意事項はこちら

※画像アップローダーはこちら

(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)

掲示板管理者へ連絡 無料レンタル掲示板