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ダンゲロスSS3幕間SSスレ

131雨竜院雨弓:2013/08/24(土) 05:27:25
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 試合当日、雨竜院家――。

「わあ、かっこいいよお兄ちゃん!」

 雨竜院家の傘術家が纏う戦闘服――龍が絡みついた傘の紋章入りのフード付きローブ――に身を包んだ雨弓を見て畢は声を上げる。

「そうか?」

 雨弓は戦いのために特別な服を着るということ自体あまり好きでなかったが、縁浅からぬ聖槍院家の九鈴との戦いなのだからと父や叔父に着せられ、可愛い妹がこうして喜んでいるとまあいいかという気持ちになっていた。

「頑張ってね、お兄ちゃん」

「畢、お前は俺に負けて欲しくないのか?」

 九鈴との関係が野試合に委ねられて以降、家族内では口には出さないものの、雨弓が負けるのが都合がいいのではという雰囲気になっていた。

「うーん、九鈴ちゃんを炊きつけたのはボクだけど、でもお兄ちゃんが戦うなら勝って欲しいってのもあるし。
 お兄ちゃんが勝負を受けたなら、勝っても負けても後悔しないと思うし。
 だから、『どっちも頑張って』かな? ボクは」

 付き合ってるって勘違いしててごめんね、と最後に謝る畢の頭を雨弓は撫でてやり、恐らく自分を1番応援してくれる妹に言葉をかける。

「ありがとう……頑張るよ」

 雨雫を生き返らせようと参加した大会も、思えばどこかに、本当に生き返らせるべきかという迷いがあった。雨雫を過去のものにするのか。雨雫を思い続けるのか。勝負の結果がそのまま答えでは無いが、答えを出す後押しとしては武術家の自分に相応しい気がした。

「決めなきゃ、なあ」

 雨弓は手にしたロケットペンダントを開いて、そこにいる雨雫の笑顔を見つめる。いつもは首にぶらさげているそれを、この日初めて雨弓はポケットにしまいこんで家を出た。
この日もまた、雨が降っていた。

試合に続く


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