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SS投下スレ
462
:
◆YYVYMNVZTk
:2011/10/29(土) 05:49:38
予想もしていなかった事態に、生まれるのは意識の空白。
いくつもの疑問符が頭の中に浮かび、しかしその問いに対して納得できる答えは一つも思い浮かばない。
ここにきて、さらに現れる不確定要素――それもきっと、悪い意味での。
何故、何故こんなにも上手くいかないのか。
余りにも理不尽な現実に涙がこぼれそうになる。
思い返してみれば、自分はいつだってそうだった。
いくら努力を重ねても――現実というものは、いつも厳しく非情な結果だけを突き付ける。
落ち込んでみたり、時には泣いてしまったり。
努力が実らなくても、『どうせ自分は劣等生なのだから』と理由を付けて、頑張ったポーズだけしてみて。
夢に向かって頑張ってるだなんて、そんな自分は、いつの間にか何処かに置いてきてしまっていた。
最初は、違ったと思う。空を飛びたい――純粋な思いが胸の内を占めていて、それに向かって一直線に進もうとしていた。
けれど夢への近道だったはずの訓練は日々のルーチンワークとなっていて、どこか心は倦んでいた。
自分はナンバーワンにはなれないんだと、はっきりとではないけど、そういうことを理解していたんだと思う。
頑張って前へ進んでいるふりだけして、実はその場で足踏みをしていただけの日々――だった。
そしてフィリオが死んで――私の足は、完全に止まってしまった。
もう、頑張るふりさえもしない。自分のことを見ていてくれた人はいなくなってしまったから。
ただ死んでないだけの毎日が続いていた。
生きようだとか、頑張ろうだとか、そんな前向きな考えが浮かんでもすぐに消えて、無力感に襲われる。
ツグミがいなければ、本当に野垂れ死んでいたかもしれない。
いや、死ぬことは怖かったから、やっぱり死なないくらいに無意義な時間を過ごしていたのかな。
食べて寝て、身銭を稼いで、永遠に続くかと思ってたループが突然途切れてここに連れてこられた。
それでも私は変わらず、いつものように人に迷惑をかけることしか出来なくて。
こんな――こんな自分のために、どんどん人が死んでいってしまった。
だけど今度は、足を止めるわけにはいかなかった。引き継げ、と言われたから。
私のために命をかけてくれたみんなのためにも、その分まで私が精一杯生きなければいけない――そう思った。
なのに私は、結局のところ具体的に何をすればいいのか分かってなくて、あまり役に立たない、そんな存在のままだったように思う。
何がいけなかったのだろうか。
確かに私は、操縦技術だって決して高くないし、頭だって良くない。
みんなと比べて、優れてるところなんてない。
「……アイ、ビス」
「――カミーユ!? 無事なの!?」
「ああ、なんとか。だけど、これは――」
カミーユの顔に浮かぶのは焦燥と困惑。
既に状況は取り返しのつかないところまで来ている。ビッグクランチ――終焉へと近づいていく、この宇宙。
収縮を続け、全てがゼロになり、超新生を経て、再び宇宙が創世される――その臨界点まで、どれほどの猶予が残されているのか。
刻一刻と悪化していく状況に対して、しかしカミーユたちにはもはや打つ手はなかった。
そこに突如として出現した、不確定要素。
閉ざされた世界に無理矢理に侵入してきた次元を超えるほどの力の持ち主。
そしてカミーユは極大にまで肥大化したNT能力により、其のものの正体を直感する。
それが真実ならば状況は決して好転などしていない。
出来ることならば何かの間違いだと信じたい。だがそれは紛れもない事実なのだ。
あいつはゼストのなれの果てだ。
463
:
◆YYVYMNVZTk
:2011/10/29(土) 05:50:43
◆
ここまで来るのに、永遠とも思える時間を費やした。
目指したのは完全。創造主が望んだ、人をも、神をも超える存在。
しかし――足りなかった。
幾年月をかけて力を取り戻しても、かつて創造主が望んだであろう完全には程遠かった。
何が足りなかったのか――候補は幾つも上がったが、そのどれもが決定的なものではなかった。
そして、ある結論に至る。足りなかったものは、アインストの力であると。
主は最初からアインストの力を求めていた。ならば足りないのは、それなのだろう。
しかし――いなかった。
AI1が、いや、デュミナスが成長した時間軸に、アインストという存在はいなかった。
このままでは自分はデュミナス(間違い)のままだ。
それは嫌だった。
故に、時間を――次元を超える力を欲した。
アインストが確実に存在した、全ての始まりの時へと再び戻るために。
デュミナスが力を取り戻した時代に時流エンジンが発明されたのは幸運であった。
そしてデュミナスは時を超える力を手に入れた。
「我と……合体」
「そう。私は願う。あなたと合体したいと。あなたと共に、完全なる――超神へ」
デュミナスの言葉に対し、蒼色の少女は唇の端を軽く釣り上げる。
少女の口から発せられるのは、拒絶の言葉。
「……否。断じて……否。我が望むは……完全なる世界。そして……その監査。
その世界に過ちは……必要ない。我は……不完全な存在を……拒絶する」
既にノイ・レジセイアは完全を手にしている。
このままこの宇宙を終わらせ、新たな――静寂なる、完全なる宇宙を創世し、永遠にその世界を見守り続けることで、レジセイアの望みは叶えられる。
今さら不完全な存在であるデュミナスを取り入れる必要も、協力してやる義理もない。
デュミナスは哀れな存在である――憐憫、そして蔑笑が自分の中で生まれていたことに、少女は気付く。
感情だ。
個体では脆弱なタンパク質の塊に過ぎない人間が、時にアインストを超える力を生み出す――その源の一つが、感情であるとレジセイアは考える。
不完全が完全を超える――その一因を、レジセイアは得たのだ。
微かだが、確かな歓喜を覚えながら、少女は右手を上げ、攻撃の合図とする。
デュミナスは不要な存在だ。今ここで処分しても何の問題もない。
少女の背後に佇む鬼――ペルゼイン・リヒカイトが殲滅の光を放つ。
白光は刺し穿つ剣となり、デュミナスを貫いた。
「……なぜ」
デュミナスは問う。何故自分は過ちとされるのか。
生まれてから、ずっと戦い続けてきた。自分の存在が決して間違いなどではないと証明するために。
「あなたも私を否定するのか」
自分を望むものは誰もいなかった。
孤独だった。故に、自らの分身を生み出そうと、そう考えたこともある。
だがその選択肢を選ぶことはなかった。
創造主が目指したのは、完全なる個。いくら眷族を生み出そうと、それでは間違いを正すことが出来ない。
「ならば私は……その否定と戦おう」
刺し貫かれた傷もそのままに、デュミナスは拳を握る。
四の拳と二の翼を持つその姿。トリトンと呼ばれる、デュミナスの最終形態。
永遠とも思える歳月の果てに、ラズムナニウムはメディウス・ロクスとは違う、新しい姿を模索した。
そして生まれたこの姿は、戦闘力のみならず、全ての面でメディウスを超えている。
握られた拳が、裂破の勢いで幽鬼へと向かい――加速、加速、加速!
音速の壁を優に超えるそれを、しかしペルゼイン・リヒカイトは悠然と受け止める。
無論、受け止めた側も無傷ではすまない。受けた右掌は砕け、五指のうち四指を失う。
しかし消失した四指が、瞬く間に再生する。アインスト従来の再生力にDG細胞による強化分を加え、その速度は従来の数倍にも及ぶ。
464
:
◆YYVYMNVZTk
:2011/10/29(土) 05:51:20
「無駄……無意味……無力」
ペルゼイン・リヒカイトの両肩に備えられた鬼面が、音もなく浮遊する。
くるりくるりと回転するそれの周りに、薄らぼんやりと影が見え始めた。
次の瞬間、影は実体化する。ペルゼイン・リヒカイトを幽鬼とするならば、現れたのはその眷属である悪鬼。
青白んだ光を漂わせ、幽鬼の両脇に這うそれが、蒼の光を無差別に放つ。
全周囲に向けた砲撃に対し、回避は不可。デュミナスは甘んじてそれを受けざるを得ない。
更に増える傷。デュミナスとて自己回復の術は備えているが、戦闘中に完全回復するほどの力はない。
攻め、受ける。この二手のやりとりだけで、レジセイアとデュミナスの力量差ははっきりとしてしまった。
デュミナスが弱いわけではない。レジセイアが圧倒的すぎるのだ。
機と器――それに加え、気までも備えたレジセイアは彼の望んだ完全に、限りなく近い存在となっている。
それでもデュミナスは、止まらない。止まれない。
これは自分の意味を探す戦いなのだ。ここで膝を屈して負けを認めてしまえば、自分は本当に、ただの間違いで終わってしまう。
何のために生まれて、何のために生きてきたのか、その意味さえ失ってしまうのだ。
宙に現れたのは剣の群れ。デュミナスが顕現させた幾重もの剣の包囲がレジセイアを狙い打つ。
さしものレジセイアも、この剣の全てを叩きこまれてはただではすまない。
数秒のラグを置いて不規則に迫る剣の群れを、慎重に、かつ大胆に、かわすもの、いなすもの、受け止めるものを見極め、処理。
一波、二波と続く刃の嵐を相手にしながら――レジセイアは気付く。
デュミナスの纏う装甲が、不気味に蠕動している様に。
変化――変形は一瞬で完了した。
デュミナスそれ自体が一振りの巨大な剣になり、レジセイアを狙わんと最外で円陣を組んでいた自らの剣さえも撥ねのけ、幽鬼を刺し貫かんと突進する。
再び実体化した悪鬼がペルゼイン・リヒカイトの盾となるも、ごりごり、ごりと抉られ、削りとられていく。
足止め出来たのは数秒。骨を砕かれ膝を屈す幽鬼の傀儡を尻目に、デュミナスはペルゼイン・リヒカイトと肉薄する。
剣の切っ先がアインスト・コアに触れたのと白羽取りの形で刀身を握られたのは同時。
「ノイ・レジセイア。私は貴方に問う。
……完全とは、何なのか? 不完全とは、間違いなのか?
間違いは、否定されなければいけないのか?
否定とは――消滅させることなのか?」
デュミナスは問う。答えを求める。
対し、レジセイアは答えない。ただ無言で、幽鬼を使役するだけだ。
「私をこの舞台に昇らせたのは貴方だ。
私の育ての親が、創造主ユーゼスであるというのなら、貴方は生みの親と言えるのかもしれない。
このバトルロワイアルという舞台上で、私はメディウス・ロクスとして、AI1として、ゼストとしてその役割を演じてきた。
だが……結果として、私は何にもなることができず、間違い(デュミナス)の烙印を押されることとなった。
私に力が足りず、創造主の望むものとなれなかった……これは、今更取り返しのつかないことだろう。
しかし私には分からない……私はいったい、何をすればいい? 何をすれば……自らに刻まれた間違いを消しさることが出来る?」
剣の姿を解き、そのままがっぷりと四つを組む。
四つの手全てに全力。決して離さず、の意志でレジセイアと密着する。
そして、問う。更に問う。問い続ける。
かつてとこれからの、自らの存在意義を。
「答えを――答えを――教えてくれ!」
「哀れ……実に哀れな存在だ」
冷笑を美貌の彩りとしながら、蒼髪の美少女は重い口を開く。
「我がヒトに完全を求めたのは……ヒトが、不完全を完全にする因子を……感情と意思を持つため。
自らの中に失敗を……自らの外に不可能を発見したとしても……ヒトは、それを打破するために考え、行動し、そして叶える。
故にヒトは……不完全であっても完全に限りなく近づくことさえある……その力を我のものとするためにこの箱庭は作られた。
AI1は可能性の欠片……ヒトという存在を計るためのただの機に過ぎない。
ただの機が……完全を目指す……? 答えを求める……?」
笑止、とレジセイアは吐き捨てた。
465
:
◆YYVYMNVZTk
:2011/10/29(土) 05:52:13
「自らの内に眠る可能性の欠片にすら気付かず……ただ他者に言われるがままの傀儡……不完全……不適当……不要……」
それ以上を語らず、ペルゼイン・リヒカイトは自らの傀儡――オニボサツをデュミナスの背後に展開、挟撃の形を取る。
いや、挟撃ではない。デュミナスの剣により崩壊したはずのもう一体も早々と蘇生している。
二点の挟撃ではなく、三点からなる包囲。
そして三体の手に握られるのは、ペルゼイン・リヒカイト唯一にして最良の武器であるオニレンゲだ。
二体の鬼面が刀を振りかぶり、同時にデュミナスの胴体部を突き刺し、その場に固定。更に包囲は強化される。
これでもう、デュミナスは完全に動けない――いや、動かない?
ここに至ってもなお、デュミナスの瞳はもう一人の創造主である蒼髪の少女を中心に入れ、微かにもぶれてはいない。
それほどまでにデュミナスの意思は、願望は、強烈なのだ。
狂執、と言い換えてもいい。自らの存在を知り、正す――それこそが、デュミナスにとってのアイデンティティに他ならないのだから。
声にならない咆哮が、問いを重ね続ける。答えの返らない疑問が、魔星の中心で木霊し続ける。
「――――――――!」
「故に……我は……否定する」
ペルゼイン・リヒカイトがデュミナスの巨大な眼に、ずいと剣を差し込んだ。
何の障害も無かったかのように滑らかに入っていった刀身を前後左右に揺さぶる。
眼球上に浮かんだ一筋の線が、幽鬼の手の動きに合わせて生き物のように太くなり、広くなり、増えていく。
ざしゅ。ざしゅ。ざしゅ。ざしゅ。ざしゅ。ざしゅ。ざしゅ。ざしゅ。
表面の三分の一は、既に球面を保ってはいない。
人でいう血管、神経、体液にあたるモノを撒き散らしながら、胴に刺さる二本の刀のせいで倒れこむことも出来ない。
拷問とも言える、幽鬼の一方的な殺傷は続く。××が、××と、××に、言葉では言い表せないおぞましさと共に、淡々と行為は続く。
眼球をあらかた破壊し終え――ノイ・レジセイアはそのアイスブルーの瞳に、奇妙なものを見つける。
個での完全――超神を目指すことを選択したデュミナスには不要になったはずのもの。
幾重もの装甲に包まれ、デュミナスの奥底に眠っていたそれ。
無人のコクピットブロックが、幾百年ぶりに外気の元にさらけ出されていた。
◆
あまりにもレベルの違い過ぎる攻防を前に、アイビスとカミーユはただ手をこまねいて状況の変化を待つしかなかった。
出来ることといえば、巻き添えを食らわないようにブレンのチャクラシールドの中で待つことだけ。
歯がゆい現実だった。ノイ・レジセイアを倒し全てに決着をつけると意気込んでも、元々の実力差は埋めようもなかったのだ。
無駄……無意味……無力……デュミナスに向けられた言葉が、そのまま自分たちにも当てはまる。
突然の乱入者が蒼髪の絶対者に楯ついたその時は、最後の最後で好機が訪れたと、そう思った。
だがデュミナスとレジセイアの闘争は、二人が介入する隙など全く無く。
そして、デュミナスでさえも――あれだけ自分たちを苦しめた、ゼストの進化形でさえも――レジセイアには及ばなかった。
全身に広がる疲労、倦怠感が気力を奪っていく。
絶望――その二文字が、頭の中を駆け回る。
「それでも……ここで諦めるわけにはいかないんだよ……!」
ここで自分が諦めてしまえば、膝を屈してしまえば、今まで散って行った命が、本当に無駄になってしまう。
まどろみの中で感じた多くの命と声があった。
絶望のままに死んでいった者たち――志半ばで倒れた者たち――意思を、希望を託していった者たち。
まだ自分には、立ち上がるための足がある。敵を見据える目がある。力を振るう拳がある。
剣を杖に、もう一度立ち上がる。たとえ、この剣が届かなかったとしても――最後まで、抗うことを諦めたりしない。
「……アイビス、やれるか?」
少年が声をかけた赤毛の少女は、しかし――泣いて、いた。声もなく、泣いていた。
「あ、アイビス……?」
「……あのさ、カミーユ。――何で私たち、戦ってるのかな? こんなに必死に、もがいてるのかな?」
「……っ! しっかりしろ、アイビス! 俺たちがやらなくちゃ、皆が――」
「違うんだ。そういうんじゃないんだ。……少しだけ、時間をもらっていいかな?」
466
:
◆YYVYMNVZTk
:2011/10/29(土) 05:52:50
アイビスの言葉に、カミーユは面食らう。
確かに状況は絶望的。しかし、だからといって、泣いて喚いてどうにかなるものではない。
こんな状況だからこそ、最後まで諦めずに戦い抜く意志こそが何よりも大切なものなのだ。
たとえ生き残っていたのが自分ひとりだったとしても、最後まで戦うつもりだった。
だが……ここでアイビスがその意思を失くしてしまえば……
カミーユの不安は募る。そんな少年の心中を知ってか知らずか、アイビスは語り出す。
「あたしは、落ちこぼれだった。一人では何も出来ない子だった。
……まるで、自分を見ているみたいなんだ」
何を、とははっきり言わずとも、アイビスがデュミナス――ゼストと自身を重ね合わせているということは明白だ。
アイビスもまた、落ちこぼれとして扱われてきた。
だから――
「きっと、あたしが考えてることは、正しくなんかないんだと思う。
でも――見たくないんだよ。自分のことを認めて欲しくて、なのにそうしてもらえなくて苦しんでる誰かは――見たくないんだ。
自分勝手なんだ。分かってるんだ。でも、でも……!」
大粒の涙がアイビスの目からぽろりぽろりと零れ落ちていく。
赤毛の少女は、臆面もなく――他人のために、涙を流していた。
もしかしたらそれは、自分自身のための涙だったのかもしれない。
デュミナスがまるで自分のようで――鏡に映る自分の姿を見て、泣いているようなものだったのかもしれない。
でも、それでも。アイビスはデュミナスのために泣いていたんだ。
「アイビス……」
「ジョシュアはこんなあたしのことを命がけで守ってくれた。
シャアはあたしにみんなの分まで生きろって――勝手に死ぬのは許さないって言ったんだ。
クルツは無い胸張って生きていけるように、精一杯頑張れって……
ラキはこんなあたしのことを優しいって、ブレンをよろしく頼むって。
あたしはどう生きるのが正しいのかなんて分からない。自分がやることみんな正しいだなんて思っちゃいない」
「そんなの――俺だってそうさ。ただ、許したくないことがある。だから戦うんだ。
少しでも、自分を――世界を、変えていくために」
467
:
◆YYVYMNVZTk
:2011/10/29(土) 05:59:06
ああ――と、アイビスはぐずりと鼻をかみながら頷く。
カミーユは強いねと。
「あたしには、そんな大きな目的なんかないんだ。
でも、胸を張って生きていたいから――精一杯頑張りたいから――もう、自分を誤魔化したくなんかない」
すぅ、と大きく息を吸い、
「あたしは、デュミナスを助けたい」
そう言った。
「ごめんね……最後の最後で、こんな我儘」
いつの間にか、アイビスの瞳からは涙が消えていた。
代わりに満たすのは――意思。強い意志だ。
カミーユが望むものとはベクトルは異なるものの、その強度はまぎれもないものだ。
「本気なんだってのは……痛いほど分かる。止める言葉なんかないってことも、よく分かる。
……それで、本当にいいんだな、アイビス?」
こくん、と首を縦に振る。
既に心は決まっている。まだ、何をすればいいのかは分からないけれど、自分が何をしたいのかははっきりと分かっている。
「ごめん」
「自分でそう決めたんなら謝る必要なんかない。
……後悔だけはしないでくれ。そうじゃないと、大尉たちが浮かばれない」
「……うん。それじゃ――」
「いってこい、アイビス。――飛べ!」
カミーユの声を聞き、アイビスはブレンと共に飛んだ。
――――
というわけで、書いていたのはここまでになります。
ここまで書いて、このクオリティであの最終盤の流れをぶち壊したらどうしようなどと考えすぎて続きが書けなくなり、予約破棄してしまったと。
結果としてあの最終回が投下されたことを考えると……ううん、やめておきましょうかw
二次スパは自分の中でもとても大切な思い出でして、今でもたまにSS群を読み返します。
この企画に参加できて、本当に幸運でした。
パロロワ自体にはまだ参加しておりますので、どこかでお会いしましたらよろしくお願いしますw
468
:
名無しさん
:2011/12/21(水) 00:45:16
ここに感想を書くのはルール違いかもしれませんが、折角投下されてますので。
本スレももう存在しませんしね。
>>467
GJ!!
デュミナスとアイビスを重ねる丁寧な心理描写が流石だと思います。
破棄などしなくとも充分だったのではないでしょうか。
正直もったいなかったんじゃないかなと。
最終話のデュミナスとアキトを繋げる発想にも舌を巻きましたが、このデュミナスとアイビスを重ねる展開の続きも見てみたかった気がします。
まぁでも今更ながらに自分が見たかった展開の一部をあなたの文章で見られて何かわけもなくうれしかったりします。
もう文章なんて書けなくなってるくせに、触発されて構想だけあった最終話に手をつけて投下したくなるw
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