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投下用SS一時置き場

919望むのは剣ではなく 12/17:2006/11/24(金) 23:43:44 ID://f634J.
「……此処から出ないと」
 治療を施したくとも、今のアリスにはその為の魔力が残されていない。
片手で眠るマリアを抱え、家の外へ出て顔を上げる。
ロープは無事に繋がってはいるものの、
疲労の積み重なったアリスには、丸く切り抜かれた空までの距離は絶望的なまでに遠かった。
正攻法ではとても脱出出来ない、何か策を講じなければ。

 ずれた眼鏡をくいと掛け直し、ゆっくりと目を瞑る。
急激に頭の中が冷えていく感覚。次にその目を開けた時にはアリスは冷静さを取り戻していた。
辺りを見回し、転がるクリフトの遺体に目を向け、ふと思いつく。
 先程マリアを襲撃するのに彼が用いた杖。あれを使えば一瞬で上まで身体を運ぶことも可能なはず。
だが、回転数の上がった頭はすぐさまその策の穴を見つけ、却下の判を押した。
回復し切らぬ己の体力では二人分の体重を支えきれるか分からない。
その上片手に杖を、片手にマリアを抱えた状態では、上まで飛んだところで縁に捕まることも出来ない。
せめてマリアが目を覚まし、自力でアリスにしがみつけるくらいにまで回復しない限り、
この案を試すことは不可能そうだった。
 かと言って、風など絶対に起こらない井戸の中では風のマントで舞い上がることも出来ない。
自力で脱出するというプランは諦めるほかなさそうだった。

 差し込む光に手をかざす。か細い光は、だが先程よりその明るさを増している。
正確な時間は分からないが、夜明けはそう遠くない。
放送を聞けば、アリスたちの生存は外の仲間たちにも伝わり、いずれ助けが来るはずだが、
向こうにこちらの居場所が伝わっていない以上、誰も此処を見つけることが出来ない、なという悲劇も起こりうる。
 何らかの方法で、こちらの居場所を伝えなければ。




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