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投下用SS一時置き場
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(そして万一危なくなっても、井戸の出口に向けて飛びつきの杖を振るえばいい。
呆気に取られている間に、私はのうのうと脱出できます。まさに万全)
戦闘手段、逃走手段……全てを見直し、クリフトは心を落ち着かせる。
リアを人質に取った時の震えは、もうなかった。
数多の武器を手にした自信はクリフトの恐怖心を鈍らせ、戦意を高揚させていく。
「では……リアさんといいましたか。
あなたの大事な仲間達が死んでいく様を今からとくとお見せ致しましょう」
使える武器を懐に収めた後、ぐい、とリアを引きずり出す。
猿轡ごしにんー、んーと抵抗をされるが、構わず隠れた家から連れ出した。
家を出てみれば、そこで井戸をちょうど降りたところの二人の女性の姿が認められた。
あちらもすぐにこちらの存在に気付いたようで、途端に表情を険しくしている。
(あの凶悪そうな魔物は姿が無い――となれば、あの声の方に向かいましたかな。
ならばやりやすい。片割れのマリアには既に魔力はないし、熱血女さえ何とかすれば……)
「ようこそいらっしゃいました、お二人とも。
アリスさん。そのお召し物はイメージチェンジですか?よく似合っておられますよ」
言ってから気付いたが、あれはなんだろう。宿屋に見たときまではつけていなかったはずだが。
まさかあの眼鏡の効力が私の居場所を嗅ぎつけた?だとすれば奪っておいても損はないかもしれない。
「……こんな状況でよくそんな軽口が叩けますね、クリフトさん!
ともかくリアちゃんを放しなさい!そして大人しくお縄につきなさいっ!」
「それは無理な相談です。貴方達には、ここで死んでもらうのですから!」
先に動いたのはクリフト。さっそく氷の刃を掲げ、高らかに攻撃宣言。
「凍えなさい!氷の刃っ!」
刃から勢いよく冷気の風が噴出し、彼女たちに襲い掛かる。
しかしその冷気はアリスの王者のマントにより勢いを削がれ、その冷気は二人の周囲を凍らせるに留まった。
(なんと、あんな防具があるのですか!これでは冷気の効き目は薄い――ならば)
一方のアリスは王者のマントの性能に感心していた。
咄嗟にマリアを庇おうと前に出たが、マントのおかげでダメージは殆どない。
なるほど、アレンから受け取っておいて正解だったようだ。
「あれはトルネコさんの武器!さっそく使いこなしていますね」
「しかしどうしましょう?このまま冷気で間合いを取られるとまずいのでは」
マリアの手元にはいかずちの杖がある。だが、こんな閉鎖空間で炎を起こしたらどうなるか。
炎上した密室では余計な煙を吸い込みやすい。
ましてここは地下。たちまち酸素は減り、呼吸は難しくなるだろう。
また、炎が燃え広がれば逃げ道もなくなる。
特に井戸と地上を繋ぐロープが燃えてしまえば、まさに一貫の終わりなのだ。
「ええ、そうですね。でも――」
攻めるしかないでしょう!と言うが早いか、アリスは隼の剣を構えてクリフトに飛び掛る。
しかしクリフトはそれを待っていたかのように不敵な笑みを浮かべ、懐から一本の杖を取り出した。
アリスはそれを見て、先ほどリアを誘拐された際に使われた体力を奪う杖のことを思い出す。
また力を抜かれたら敵わない、思わず足を止め、その杖の光を避わそうとし――それが仇となる。
「――えっ?」
魔力の光が放たれたのは、アリスではなく、後方に居たマリア。
そして振ったのはサギの杖ではなく、『飛びつきの杖』。
マリアにいかずちの杖を構える間も与えず、クリフトは彼女の身体に氷の刃を突き立てる。
散った血液は冷気に当てられ赤い氷となって、マリアは氷と共に倒れる。
悲鳴を挙げる間もない、一瞬の出来事。
「マリアさんっ!」
「んんーんーっ!」
振り返ったアリスが、瞳に涙を浮かべたリアが叫ぶ。
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