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FFDQかっこいい男コンテスト 〜ドラゴンクエスト7部門〜

18触れた傷あと:2003/11/16(日) 20:39
7(ラスト)

「おはよ。キーファとうまくいった?」
「お、おはようマリベル」
翌朝。月の代わりに空に昇った太陽の下。
同じ浜辺で声をかけたマリベルは、アルスのどこかホッとしたような顔に軽く怒りを覚える。
「…うまくいったみたいね。全く、嬉しそうな顔しちゃって」
「え?! そ、そんなことないってば!」
「…あーあ。ヤマかけただけなのに当たっちゃってた? やっぱあたしってすごーい」
「……」
「よ、二人とも、早いじゃん」
後からキーファもやってきた。聞きなれたはずの声なのに、アルスは一瞬飛び上がりそうになるほど驚いてしまった。
「お、おはよぉ! キーふァ!」
「…どうしたの? あんた声が裏返ってるわよ」
不審そうな視線をよこすマリベルに、返事する余裕すらアルスにはない。
そんなアルスを、キーファは可笑しそうに見やる。
「こいつさー、昨日オレに噛み付いたんだぜ?」
「え?! 何それ!」
「き、キーファってば! 黙っててってお願いしたじゃないか」
「へへーん、昨日嘘ついた罰!」
顔を真っ赤にするアルス。思わずくりあげたパンチを身軽くかわしてキーファは走り出した。
「お前なんかに捕まるか、鬼さんこーちらっ!」
「待てよ! もう! キーファのばか!」
「ちょっと待ちなさいよ! あんたたち、何があったわけー!」



…追いかけるアルスの前に、キーファがいる。
彼のうなじには、赤い小さな傷跡。
あの絶頂の瞬間、アルスは思わずキーファに歯を立ててしまったのだ。

その瞬間のことを思い出してアルスは思わず赤面したが…
それと同時に、憧れの人の体に己のしるしをつけられたような気がして、
少しだけ、喜びも感じてしまったのだった。

19保管人 </b><font color=#FF0000>(MOMO/RMo)</font><b>:2003/11/16(日) 20:58
ageても大丈夫ですよ〜!

新人さん、とても(・∀・)イイ!感じです。
また書いてくらさいね!

20名無しの勇者:2006/03/15(水) 03:25:38
投下します。サイードとアルス、ED後。

211/8:2006/03/15(水) 03:27:14

「お前は不思議な目をしているな」
 そう言った彼のほうが、よほど変わり者だと、アルスは思った。

―――

 その日も、世界は平和だった。
風は柔らかく、潮は凪ぎ、空は青い。小さな島の内陸、うっそうと茂る森をかきわけ進みながら、
アルスはふと空を見上げた。時折出くわす魔物たちも、以前に比べれば数はぐんと減った。
これが当たり前なのだ、と思った瞬間、背負った武器の重みに心が疼いた。数多の命を奪ってきた剣は、
目の前に広がる穏やかな世界には、あまりにも不釣合いだった。
その剣を凶大な敵に振りかざした日から、もう半年が経つ。世界は急速に変わっていった。
ほんの数年前まで、己が暮らす小さな孤島が世界の全てだと信じていたことが、まるで嘘のようだった。
十数年のあいだ、培い、守ってきた当たり前は、もう何の意味もなさない。
火を噴く山が、風止まぬ深い谷が、そして暑く渇いた砂漠がそこにはあった。初めて見るものにばかり溢れた
世界はどこまでも広く、それがアルスにはとても不思議だった。
けれど、それももう昔の話だ。歳若い旅人として世界中をさすらった身である。故郷とは似ても似つかぬ
旅先の光景に、感動を覚えることはあっても初見の驚きはもはや無い。
見慣れた空を仰いだ。雲が形を変えながら流れていく。

222/8:2006/03/15(水) 03:28:01

時代を巡り、世界を繋ぎ、ふと立ち止まったとき、彼は勇者だった。ちょっとした子どもの冒険は、
壮大な旅に姿を変えた。
多くの人と出会い、多くの人をなくした。共に寄り添ってきた朋友をなくした。決していなくなることは無いと
思っていた父をも失いかけた。そして、新しい仲間に出会い、遠い時代のもう一人の父に出会い、そして。
そして。
 ――やめよう。……もう過ぎたことだ。
たがを外れてにじみ出る過去の記憶を無理やりに封じ、アルスは上へやっていた目線を進路へと戻した。
もう立ち止まらない。黙々と足を前へと進めていく。
アルスが目指すのは、小さな島の中心、そこにひっそりと佇む神殿跡。彼にとって、そして世界にとってもまた、
すべてがはじまった場所だった。
あの時、もしも。最近になって、アルスはよく思う。
あの時、もしキーファがこの遺跡に目をつけなかったら。あの時、もし謎解きを出来ずに終わっていたら。
あの時、もし石版を見つけられずにいたら。
そうすれば、世界はずっと変わらなかった。そうすれば、今頃、キーファはグランエスタードの王位を継承していて、
アルス自身はようやく船の下っ端くらいをさせてもらえるようになっていて、マリベルは相変らず普通の、
ちょっと気が強いだけのお嬢様のままで。
けれどもしもそうならば、天真爛漫で人懐こいガボにも、お茶目な好々爺の英雄メルビンにも、
大人びている割に好奇心ばかり強いアイラにも、出会うことは決してなかった。
皆、苦楽を共にした大切な人たちだった。
そしてアルスの脳裏にもうひとり、「大切な人」の顔が浮かんで、消える。背が高くて、よく日に焼けていて、
嫌味っぽいのに、笑うと意外に人好きのする顔。
アルスは今から、彼に会いにいく。

233/8:2006/03/15(水) 03:28:38

『旅をしよう。共に』
そう綴られた文がアルスのもとに届けられたのは、数日前のことだ。
平和な日々の中、サイードの手なずけた魔物を通して二人は手紙を交わしていた。日記にしたためるような
他愛ないことや、些細な日常の変化などを告げる、ささやかなやりとりだ。穏やかな漁村の青年と、
草枕の気ままな旅人と。話題は尽きることを知らなかった。
そうしてある日、フライングデビルの運んできた手紙には、たった一言、上のように書かれていた。いずれ
サイードがそう告げることを、アルスは根拠も無いままに薄々予感していた。
だからアルスは悩まなかった。快諾の意志を記した、やはり一言だけ書かれた紙切れを魔物に渡すと、
彼はすぐに荷支度を始めた。手に馴染んだ至高の剣と盾を背に、最低限度の日用品や非常食、着替えを袋に。
両親や仲間たちへの言い訳は必要なかった。生まれ持っての風来坊である自分と理解ある周囲の人々たちに、
アルスは心から感謝した。

――あいつに会ったら、何て言ってやろうかな。
近道をするために通る草むらで、進路を掻き分けながら、アルスはそんなことを思う。形どおりの挨拶なんて、
手紙の中で書きつくしてきた。
開け放たれた古代神殿の扉をくぐり、トントンと軽快に地下へ続くハシゴを下りながら、アルスはふと
彼に初めて出会ったときのことを思い出していた。

244/8:2006/03/15(水) 03:29:16

砂漠に住むその青年の目は、不思議にアルスへと既視感を与えた。遠くばかりを見つめる、少し寂しげな眼差し。
「ふん、お前がスクイヌシサマとやらか。とてもそうは見えないな」
アルス達を一目見るなり、彼はそう言った。
無関心を装った瞳には未知なるものへの好奇心が輝いていて、その光はアルスの心をかすかに揺らした。
マリベルがすぐ隣できいきいと腹を立てていたことにも、アルスは気づかなかった。
「あの、君は?」
思わず口をついて出たが、その問いかけに返ってきたのは、無愛想な一言だけ。
「お前には関係のない者さ」
結局、彼の名を本人から聞きだすことが出来たのは、二度目にあったときだ。
「俺の名は、サイード。誇り高き砂漠の民だ」
凛と張ったその声を、アルスは今も鮮明に覚えている。

ひんやりした地下の匂いがアルスを包んで、彼は小さくくしゃみをした。その音が石造りの壁にこだまして、
空気を震わせる。しばらくぶりの地下神殿は、いつにもまして静まり返っているようだった。
鼻を擦り、旅荷を背負いなおして、アルスは旅の扉の間へと向かう。
待ち合わせ場所は砂漠のオアシス、世界をまたにかけたアルスならば転移呪文で容易く辿り着けるはず
だったが、彼はそれをしようとはしなかった。
――だって、つまらないもんな。
数年前、世界を変えてしまった冒険は、この遺跡から始まった。己の足で、歩いて、迷って。
旅とはそういうものだ、とアルスは考える。だから新しい旅に出るにあたり、その魔法は封じることに決めていた。
やがて辿り着いた部屋には、石室が四つ、静かに鎮座ましましている。消えること無い精霊の炎が、
ぼんやりと床に描かれた世界図を照らしていた。アルスは迷うことなく、黄色い炎を掲げた祠、
その中で輝く光の渦に入っていく。それは遠い地へと繋がる、旅の扉だ。
遠い地へと。彼を待つ人のいる地へと。

255/8:2006/03/15(水) 03:29:53

次に目を開けたとき、彼は砂塵に巻かれて尻餅をついていた。
「あたた……」
相変らず、旅の扉の衝撃には慣れない。アルスは思い切り打ち付けた腰をさすった。あっという間もなく
砂まみれになってしまった荷物の汚れを掃うことも忘れない。
「ははは、世界の勇者も砂嵐には勝てないか」
しゃがみこんでいるアルスに、ふと手が差し伸べられた。日に焼け骨ばった、そして懐かしい手だった。
「そういう君も随分砂まみれだね」
アルスはにやりと笑い、伸ばされた手を取る。そうして引き起こされるのにまかせ、立ち上がった。
「久しぶり。……背、ちょっと伸びたんじゃないか?」
「そうか? そうかもしれないな」
見上げた顔が、記憶にあるよりほんの少し高いところで笑っている。
「半年、ずっと旅してたんだろ? どうだった」
「世界は広いんだな。知らないものばかりだった」
放っておけば一人で喋りだしそうな口ぶりに、アルスは短く「そう」とだけ返した。
「……ところで、それ、もうひとつ無いの?」
それ、とは砂漠の民が常用している丈夫な布地の外套のことだ。日照りや砂埃、延いては夜分の極寒から
身を守るもので、目の前の青年も衣服と荷を隠すように羽織っている。おいおい必要になるだろうことはアルスにも
分かっていたが、まさかのっけから砂嵐に見舞われるなど、彼にも予想は出来なかった。
砂の混じる風に顔をしかめるアルスをよそに、砂漠育ちの青年は外套の下の麻袋から、自らの羽織と
同じものを取り出す。そしてそれをアルスに放った。
「ああ、もちろんお前の分も持ってきた。何しろこれからは二人旅になるからな」
サイードの一言に、アルスはにこりと微笑む。

266/8:2006/03/15(水) 03:30:53

「これから、どうする?」
サイードから受け取った外套を羽織って、アルスが尋ねた。ここは砂漠の真中だ。どこへ行くにもまずは
交通の便のいいところに出る必要がある。
「とりあえず砂漠を抜けるのが先決だろうな。だがこれでは動きようもない。砂嵐が止むのを待つか」
「待つって……一体どこで、いつまでだい?」
過去に仲間達と砂漠を旅したころのことを、アルスはふいに思い出す。砂嵐にも何度か遭遇した。
空を覆いつくす砂風に、ガボははしゃぎ回り、メルビンは岩陰から一歩も動かず、アイラは物珍しそうに
辺りを眺めて戦いを忘れ、マリベルに至っては転移呪文でひとりフィッシュベルへと戻ろうとした。
そんな状態が、三日三晩。
そういうお世辞にも楽しいとは言えない記憶しかないものだから、嵐が止むまで待とうというサイードの
意見には一も二もなく賛成だった。が、辺りには舞い踊る砂を防げるようなものは何もない。
子どもっぽく頬を膨らましたアルスをよそに、サイードはくすりと笑った。
「忘れたわけじゃないだろう。この近くには、砂漠の民の村がある。これでは着くまでに時間がかかるだろうが、
歩いて一刻もないはずだ」
「あ」
「では行こうか。俺の生家もある。大したことは出来ないが歓迎するぞ、救い主どの」
サイードの笑顔がいたずら好きの悪童のように歪んで、それを見てアルスはやれやれと溜息を一つ吐いた。
砂漠の村の歓迎ぶりは、よく身に沁みている。

277/8:2006/03/15(水) 03:31:35

ますます激しく吹きすさぶ風と砂に行く手を阻まれながら、二人は砂の海を歩いていく。
「なあ、アルス」
外套を奪おうとする突風に耐えつつ、サイードは口を割った。「何?」うまく聞き取ることができず、
アルスは聞き返す。
「初めてお前を見たときから、ずっと思っていたことがあるんだ」
アルスの疑問符など気にも留めず、サイードは続ける。聞こえていようが聞こえていまいが構わない、とでも
思っているようだった。
「アルス。お前は、不思議な目をしている」
「……」
今度ははっきりと聞こえたが、アルスは何も言い返さなかった。
「不思議で、変わり者で、おかしな奴だ」
そう言うサイードのほうがよほど変わり者だ、とアルスは思う。立派な屋敷からわざわざ独り立ちして
猫と暮らしていたり、族長の裕福な家柄に生まれついたのにちっとも欲を持っていなかったり。
何より、それら全てを捨てて選んだのが、こんな自分との二人旅だ。その彼を変わり者と呼ばずして
何と呼べばいいのか。アルスは胸中で苦笑をもらした。
「だがな、俺はそんなお前が嫌いじゃない。だからこうして共に旅が出来て、心から嬉しい。感謝している」
「……あのね、サイード」
喋るたびに砂が舌に纏わりつく。その感覚に辟易しながら、アルスは言葉を続けた。
「そういうことは、普通もっと落ち着いたところで言うもんだよ」
何もこんな聞き取りにくいところで言わなくてもいいだろう。そうアルスが言うと、サイードは笑って切り返した。
「分かっているさ。だが今どうしても伝えたかったんだ」
「恥ずかしい奴だなぁ」
つられてアルスも笑って、そしてもう一度口を開く。「でもね、」
「僕も嬉しいよ、君と旅が出来て。誘ってくれて、ありがとう」

288/8:2006/03/15(水) 03:32:22

「それでさ、砂嵐が止んだら、どこへ行こうか」
大声を張り上げながら、アルスが尋ねた。歩けども、歩けども、村は未だ見えてこない。
「お前に任せるよ。まだ行ったことのないところが、俺には沢山ある」
「そっか」
「だからな、もしよければ、……」
そこで突風が巻き起こって、サイードの声を遮った。
「え? 何?」
「もし、よかったら。お前の旅でお前が出会ってきた、美しいものも、醜いものも、すべてこの目で、この手で、
確かめてみたい。構わないだろうか」
「……」
アルスは口元が緩むのを感じていた。本当に、この砂漠の青年は、気障ったらしい奴と言うべきか、
明け透けな男と言うべきか。けれどその言葉は、アルスの心を強く、強く揺さぶった。
「構うわけないよ。ちっとも構うもんか」

初めてサイードに出会った日、何故だか、彼に初めて会った気がしなかった。
そして今、その理由に、アルスはふと思い当る。
「あ、そうか。似てるんだ」
「……何か言ったか?」
「ううん。何でも」
似ている。その好奇心にばかり満ち溢れた瞳は、似ているのだ。かつての親友に、仲間に、
――そして何よりも、他の誰でもない、アルス自身に。
「じゃ、どこに行くかはとにかく村についてから決めよう。君を連れて行きたい場所が、たくさんあるんだ」

二人の旅は、まだ、これから始まる。

29名無しの勇者:2006/05/20(土) 11:41:15
久々に見に来たら萌えが
(;´ρ`)ハァハァ
GJです!


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