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FFDQかっこいい男コンテスト 〜ドラゴンクエスト2部門〜

1名無しの勇者:2002/10/18(金) 20:16
DQ2の小説専用スレです。
書き手も読み手もマターリと楽しくいきましょう。

*煽り荒らしは完全放置。レスするあなたも厨房です*

130町人B:2004/09/17(金) 02:14
尻切れトンボでおしまい(゜∀゜ )
サマルたんに捨てられるのが怖いと思いつつ、自分が役立たずではないかとうじうじ悩む
ローレタンを書きたかったのに、なかなか難しいでつ。。。

おめめ汚しスマソ。ヘ(゚∀゚ヘ)アヒャ

131町人B:2004/09/20(月) 06:27
ヘ(゚∀゚ヘ)アヒャ
ローレタン陵辱ネタを再び投下しまつ。
イヤな人は『ローレタン陵辱』をNGワードに追加してくだはい(゜∀゜ )
ゆるい肉便器系なんで、ご注意を。

名前設定
ローレシア王子 ローレ
サマルトリア王子 サマル 
ムーンブルク王女 ムーン

場面設定は、初めてベラヌールの街を訪れた3人組です。

132呪いの代償(ローレタン陵辱ネタ):2004/09/20(月) 06:28
ベラヌールの街。湖に囲まれたというよりも湖上都市といった感じの美しい街だった。
「わぁ、綺麗。」ムーンが歓声を上げる。
人々で賑わうその都市は、観光名所として有名なだけでなく、この大陸随一の経済の中心でもあった。
旅人達のほかにも、様々な商品を扱う商人達で賑わい。さらにその珍しい商品を目当てにして、旅人達が
訪れる。そして潤った経済は、更に観光名所を整備し美しい街の景観を維持するのに使われているらしい。

「見事だねぇ。本当に。サマルトリアとは大違いだ。」
サマルもキョロキョロと辺りを見回す。
「そりゃ、森の国だからなぁ、サマルトリアは……。」
「いつかはサマルトリアもこんな風に賑わったらいいなぁ。」
「サマルトリアは農業国特有の、のんびりしたのが良いんじゃないの。何も真似することは無いわよ。」
「そうかも知れないけれど、やっぱり憧れるなぁ、田舎者の僕は、ね。」
そう言ってサマルが笑う。
「ローレもそうでしょ?」
「なんで俺にふる?」
田舎者だと言いたいのか?いや、確かにローレシアも田舎だが。
「海と草原の国ローレシア、森と山の国サマルトリア、人と商業の国ムーンブルク、考えてみれば姉妹国
 と言いながら随分と違うわね。」
感慨深げにムーンが言う。
「でも、ローレの所は良いよね。発展の余地があるもん。周りは草原だし、海に近いから港町として整備すれば
 かなり賑わうんじゃない?」
サマルが悔しそうに言う。そんなに田舎がイヤか?
「でも、東の最果てに位置するからな……ローレシアは。」
俺はそう言ってサマルを慰める。慰めになっているのかどうか不明だが。

そうこうしながら、俺たちは観光をしながら、今夜の宿を探していると、一人の老人がいきなり俺を見るなり声をかけてきた。
「おおっ……そこのお若いの。」
「俺のことか?」
「そうですじゃ……。お若いの……おそろしや、死相が出ておりますぞ。」
その不気味な声にひやりとした汗が背中を伝う。馬鹿なことを……という前にサマルが
「どういう事だよ! それは!?」
と食って掛かった。おそろしや……おそろしや……と老人はただ首を振るだけだった。
ムーンはムーンで首をかしげながら、「そんな感じはしないけどねぇ……。」

133呪いの代償(ローレタン陵辱ネタ):2004/09/20(月) 06:29
その夜。
「んんっ。あっくっ……ひゃっうぅ。」嬌声とグチュグチュと濡れた音、ベットのきしむ音が響く一室で、
いつものごとく、サマルに抱かれていた俺はふと視線を感じて、天井を見遣った。骸骨が俺を見ていた。
「な、何……うあっ。」本能的な恐怖に震える。その様子にサマルが異変を感じ取り、サマルが天井を向いた
瞬間に、骸骨がカカカと笑って鎌を振り下ろした。
サマルは俺を庇うように両手を広げて、そして、ベットに倒れ込んだ。
「サマル!」
「……うっ……何だ、コレ……。」
みるみるうちに顔色が青くなり冷や汗が吹き出していく。俺はサマルに毛布をかぶせ、もう一方のベットからシーツを
自分の身に纏って、隣で寝ていたムーンを呼びに言った。

出てきたムーンに、サマルの様子が変だと伝える。初め俺の格好に呆れていた彼女も、サマルの様子を見て
表情が変わった。その場で詳しい説明をすると、すぐに教会の神父を呼んできてと言われ、俺は服を着ると
教会に走った。
教会で神父に説明すると、神父はうーんと唸りながら。
「判りました。おそらくは呪いでしょう……。とにかく、体を温めるようにして下さい。私は後から
 解呪に詳しい人を宿屋に連れて行きます。」
と言い、効くかどうか判りませんが、と言いつつ聖水をいくつか貰った。

俺が宿屋に戻ってしばらくすると、神父が昨日の「死相が出ている」と言った老人を連れてきた。
「貴方は……。」
俺がびっくりしていると、老人の方も驚いた様子で、
「おや、ご無事でしたか……。それは良うございましたが……。」
「ああ、俺の替わりに連れが呪いを受けたみたいでな……頼む、サマルを助けてくれ。」
「もちろん、わしも全力を尽くすよ。」
そう言って老人はサマルの様子をつぶさに観察し、診察を始めた。

「やはり、邪神の死の呪いですじゃ……。しかし、幸いなことに目標としていた者以外にかけてしまった分、
 呪いの効果は薄くなっているようですな。」
「で、助かるんですか?」
俺は気が気でなく尋ねる。
「難しいのぅ。効果が薄いと言っても、このままでは衰弱して死んでしまう。そしてこの手の呪いを解くには、
 術者を殺すしか方法が無いのじゃ……。」
俺は目の前が真っ暗になったような気がした。
「そんな……。」
ムーンが声を震わせながら首を振っている。
「世界樹の葉は効きませんかね?」
神父が老人に聞く。
「世界樹の葉ならば、解呪できるかもしれんが……手にはいるのかのぅ。」
「世界樹の葉とは何ですか?」
神父がそれに答えた。
世界樹とは、生命を司る存在であり、生きとし生けるものの祖先を生み出したと伝えられる樹の事である。
その樹を用いて、ルビス様はこの世の生き物をお造りになった。その生命を司る世界樹の葉には、死者をも
生き返らせることが出来るという言い伝えがある。
「そして、先日、この街きっての豪商であるフリーサー家が世界樹の葉を手に入れたとか……。」

134呪いの代償(ローレタン陵辱ネタ):2004/09/20(月) 06:29
俺は神父に頼んでフリーサー家を紹介して貰った。
神父の仲立ちでフリーサー家の当主に会った俺は頭を下げた。
「いかに、ロト3王国の王子とは言え、当方といたしましても損害を被る訳には参りません。」
温厚そうな紳士がにこやかに切り返してくる。
当主が提示してきた金額は、俺が持っている所持金よりも3桁は多い。
それでも、必要経費のみであり、利益は取っていないということだった。
それにしても……。
「フリーサーさん、この方はハーゴンを倒す旅の途中、もし彼らがハーゴンを倒せば、魔物が居なくなり、
 今よりも、商品の輸送にそれほど経費が掛からなくなりますよ。」
神父が助け船を出す。こうした交渉は主にサマルが相手をしていた。俺は臍をかむ思いだった。
「しかし、その経費を削減するための先行投資だというのは良いとして、当家のみが負担するのはおかしな
 事でしょう。」
「それなら、是非ほかの商家にも説得して掛け合って下さいませんか?これも人助けと思って。」
神父がなおも食い下がり、俺もお願いしますと頭を下げる。
「うーん……。ローレ殿下でしたかな?貴方は、何でもするという覚悟はお有りか?」
「勿論だ。サマルが助かるのならば何でもする。」
即答する。しかし、それでもなおフリーサーの当主は
「その言葉、偽りはございませんね?」
と重ねて尋ね、俺は強く頷く。

そうして、フリーサー家の当主は世界樹の葉を神父に手渡す。
「本物かどうか、確認して下さい。」
神父はでは、失礼と言いつつ、なにやら呪文を唱える。すると葉がうっすらと白く光る。
「確かに本物のようですね。強い魔力も帯びていますし、回復魔法に共鳴する……間違いないでしょう。」
その言葉にフリーサー家の当主は、頷き、
「それでは、ローレ殿下、申し訳ないが一週間ほど私の手伝いをして頂きますよう、おねがいしますよ。」
「判った。」
「では、商談成立ですな。」

135呪いの代償(ローレタン陵辱ネタ):2004/09/20(月) 06:30
神父が帰った後、俺は部屋を宛われて風呂に入っておくよう言われる。その言葉に従った。
昨夜からずっと動き回っていたため、体が汚れていたのは確かだから。体を清め終わると、
真新しい服が用意されていた。

「明日から、融資をお願いしに、各商家を回ります。それに付いてきて頂きたい。」
俺が風呂から上がって、フリーサー家の当主に呼ばれていくとそう言われた。
「判りました。けれど、俺は交渉には向いていませんよ。」
俺が怪訝そうに言うと、当主は笑って言う。
「ええ、神父さまとお話ししていた時にそれは重々承知の上ですよ。」
「ならば、なぜ?」
そう言うと、当主は立ち上がり、俺の肩に手を乗せて
「良いですか、貴方は融資の際の対価です。その意味が判りますか。」
そしてチクリと首筋に痛みが走る。
「なっ!!!何を。」
力が抜けて、がくりと膝を付く。
「何でもする覚悟だと、貴方は誓いましたよね……。もし抵抗するようでしたら契約不履行ですよ。
 神父様にも迷惑が掛かるでしょうね。」
耳元で囁かれぞくりと体が震える。
で、どうしますか?
「判った……好きにしろ。」
そう言って、俺はフリーサー家の当主に躯を売った。

136呪いの代償(ローレタン陵辱ネタ):2004/09/20(月) 06:31
躯がしびれていた俺をベットにまで連れて行かれ、たやすく服を脱がされた。両手を頭の上で縛られる。、
「良い眺めですね。」
俺は思わず顔を背ける。脇から胸を撫でられて、身じろぎしてしまう。
「良いですか?これから貴方は、融資をお願いしにいくのですよ。せいぜい気に入られるように努力して下さいよ。」
そう言って、胸の尖りを指先で弄ぶ。
「ううっ。んっ。」
「なかなか初々しいですね。けれど……」
脇腹からへその当たりを撫でられて、
「感度が良いですね。もう、かなり勃起している……。初めてじゃないの?」
それには答えずにいると、内股をすっとさするように撫で上げられて。
「ひゃっ。ああ……」
「質問には答えなさい。」
「は、初めてでは、無いです。」
「相手は……呪いを受けた方ですか?」
「は、い……ひゃっくっ。や、やめ……て。」
当主が指先で俺の花芯の先、蜜が零れてくる穴に指先を押しつけぐりぐりと回していた。
「素直でよろしい。けれども、ほかの家の当主では、素直ではないのが好みというのもあるので
 心得ておくように……いいですね?」
「はい……うっくっ。」
ゆっくりと俺の花芯をさすり、そして止める。
「下の口は受け入れた事はあるようですが、上の口で頬張ったことはあるんですか?」
「うっんん。あ、ありま、す。」
じっくりとねっとりとした花芯への刺激が完全に止まり、当主がゆっくりと俺の顔に腰を近づける。
「では、貴方の舌使いをチェックしたいのでしてみて下さい。」
ゆっくりと口を開けると、そそり立った怒張が侵入してくる。頬張るだけでも辛い大きさに涙が零れる。
懸命に舌を遣い、頭を前後に振る。時には動きを止めて吸い、先の穴の部分をちろちろと舌で舐める。
先走りの苦みが口に広がり初め、口の端から唾液が流れ出ていく。
「ほほう……かなり、巧いですね。ふふっ。では、出しますから全てを飲むぐらいで。」
そう言って、俺の頭を掴み、激しく前後に振り始める。
どくっどくっ、と波打ち、精が口の中に広がる。必死になって飲み込もうとするが、ねばねばした体液が
大量に放出されたお陰で、全てを飲み込むことが出来ず、口の端から流れ出てしまった。
口内の殆どを占めていた肉棒が引き抜かれ、荒い息をする。
「ふふ、なかなか良かったですよ。」
あごを掴まれて言われる。恥ずかしくて顔が赤らむのが判る。
「さて、夜は始まったばかりです。まだまだ、私を愉しませて下さいよ。ふふっ。」
そう言って。俺の胸の先を舌で転がしながら、もう一方を指でつままれる。
「んっ、ああっ。」
くちゅ、ちゅ……くちゃ。
「いっ。うっ。やぁっ。変に、なる……イヤだっ。ヤメ、テッ」
胸を何度も何度も吸われ、擦られ、舐められて、その刺激だけで俺は頭がおかしくないそうで。
「躯は悦んでいるようですよ……ふふ。もっと良い声で鳴いて下さいよ。ふふっ。」
更に当主は空いた手で俺の花芯を弄り始める。
「うあっ、ああ。だっ、くぅああああっ」
足の先まで伸びる。目が見開かれ、涙が零れ、仰け反る喉。反り返る背中。
果てそうになるその瞬間に出口を塞ぎ、根本を押さえ込まれ、止められる。
「ひゃ……い、イかせて……ああっ。」
つい、口走ってしまった媚態に、優しげな笑みを浮かべる当主。
「何を言っているのですか……まだまだ夜は長いんですよ。もっと私を愉しませて下さい。」
ぐちゅりと、俺の秘所に指を挿れられて、躯がびくんと跳ねる。
俺は与えられ続けられる快楽に溺れ、自我を失いながら、朝まで解放されずに責め続けられた。

137呪いの代償(ローレタン陵辱ネタ):2004/09/20(月) 06:32
俺の躯が熱いまま、次の商家の所へ行った。

「で、この子が対価です。」
フリーサー家の当主が、でっぷりと太った好色そうな中年に俺を紹介する。
俺は、フードを外しマントを脱ぐ。
「おおっ。なかなかの上玉じゃなっ。」
興奮気味に鼻息荒く、今日の俺の“ご主人様”は俺を舐めるように眺める。
マントの下は、全裸に青いエプロン一枚という出で立ちで、俺は恥ずかしくて俯く。
露わになった尻を当主に撫でられ、ひくっと震える。
「この通り、主要な箇所は開発済みですよ。ただ、正式な娼夫では有りませんので、
 技術的にはまだまだの所は有りますが……。」
「うむっ。初々しくて良いな……。よし、出資をしよう。」
「では、商談成立ということで。」
「うむっ。うむっ。さぁ、こっちにおいで……。かわいい僕ちゃん。」

寝室へ着くと、そのまま後ろから抱きしめられて、耳を甘く噛んできた。
その感触にうち震えると、
「かわいいのぉ。たまらんのぉ。」と荒い息と共に耳に吹き込まれる。
後ろから胸に手を回されて、エプロンの生地と胸の尖りが変に擦れて嬌声が上がる。
それに更に煽られたように、徐々にご主人様の右手が下の方に降りていき、俺の花芯を掴む。
「ひゃ。う。」
「ほほっ、もうこんなのになって……初々しい割には淫乱じゃなぁ。」
ホホホと笑いながらしごき始める。エプロンに先走りのしみが付き始める。
むふーと鼻息が首筋に当たる。ぞくりと背中をふるわせると、今度は我慢できないと言わんばかりに
俺の後ろの穴に指を突きいれてくる。
「はっ、うっ……駄目……そ、そこはっ。ああっ。」
「ほほぅ、辞めても良いのかのぉ?」
「いえ……、や、辞めないで、……下さい。」
ここで捨てられるわけにはいかないという思いで嫌悪感を押し殺す。けれども、決してそれだけではなく
快楽に溺れている自分もそこには居た。
「うむっ。いいぞぉ、いいぞぉ。そのままベットに上半身を倒しなさい。それと脚を開いて。」
言われるとおりにする。ベット載って、尻を突き出すような姿勢になる。
「ほほっ、おねだりしているみたいじゃなぁ。優しくしてやるからのぉ。楽しみにしておけ。」
そう言って、ぶよぶよのソレが俺のナカに侵入してくる。
「い゛っ、あ゛っぐぅぅぅ。」
あまりの痛さに悲鳴を上げる。
「おうおう、大きすぎたかのぉ、すまんのぉ。」
「大きいです……。ご主人様のは、大きくて……凄い大きくて……苦しいです。」
絞り出すような声で言う。
「そうか、すまんのぉ。じゃが、すぐに良くなるから、それまでの辛抱じゃ。」
そう言って、腰を揺り動かす。
「うんっ、んっ、あぅ……うあっ。」
俺は、初め演技で嬌声を上げ始めたが、しかし次第に快楽が俺を襲うようになっていく。
「良いぞぉ。良いぞぉ。凄く締まりが良いのぉ。ほほっ。そうらっ。」
「ああっ。だっ、うっ……ああっ」
より深く突き刺されて、精をナカにドクドクと注ぎ込まれる。ずりずりと引き抜かれていく感触に
脱力し、ベットに倒れ込む。視界が霞む。
「うほっ。おぬしの穴からわしの精液とおぬしの血が混じって綺麗じゃぞ。いいのぉ。処女を喰ったみたいじゃ。」
上機嫌で今度は俺にキスをしてくる。絡められる舌に、気持ち悪いと思う。けれども顔には出さず、ただ放心している
ふりをしていた。“ご主人様”が俺のエプロンを脱がすと、
「今度はおぬしが動く番じゃ。そうら、まずはわしの息子を元気にしておくれ。」

138呪いの代償(ローレタン陵辱ネタ):2004/09/20(月) 06:33
さっきまで自分のナカで蠢いていたそれをまずは、ペロペロと舌で綺麗に舐め取る。
ゆっくりと銜え、先に歯を当てないように慎重に舐めていく。
「ういのぉ。そのたどたどしさが何とも言えんのぉ。」
苦しくて涙が零れてくる。何をしているのだろう、と。けれども、“ご主人様”はなれない行為に苦しんでいる様に
思ったようで、いいのぉ、いいのぉと連発していた。
元気を取り戻したそれに、今度は、自分から挿れろと言われ、素直に従う。
くちょりと先を自分の入り口に導く。なかなか巧く入らず焦りが出てくる。
「難しいかのぉ……ほれっ。」“ご主人様”が俺の腰を掴み、誘導する。
そしてぐぷっ、という音と共に捻り込まれてくる。
「うっ、あっ。」
「ほれっ、もっと腰を沈めんか。」
「は、はい……。ううっ。」
ゆっくりと沈めていくが体重が変に掛かるとズキンと脳天まで響くような刺激が与えられ巧く腰を沈めることが出来なかった。
「ほほっ、良い顔じゃのぉ。しかし、そんな顔をされると、わしももう我慢できんわい。」
そう言って俺の腰を掴み、一気に引き下ろした。
「ひあああああああああああああああああああああああああ」
感じたこともない刺激。痛みだけではなく、快楽だけでもなく。訳のわからない電流が躯中を伝う。
「おおっ。良いぞ、良いぞ……うおっ。」
めちゃくちゃに腰を上下に動かされて、注ぎ込まれる体液。
そして、前立腺を乱暴に刺激された俺は呆気なく果ててしまう。
けれども、その絶頂は一向にやむ気配が無くて、俺は失神してしまった。

139呪いの代償(ローレタン陵辱ネタ:触手系):2004/09/20(月) 06:33
次の日も、別の“ご主人様”に奉仕すべく連れて行かれた。
黒髪で、は虫類を思わせる風貌の男だった。俺は粗末な服に着替えさせられて、部屋に移された。
その部屋には、うねうねと触手を動かす魔物が居た。
「なっ、なんだよ、これ!」
俺が驚き後ずさりするが、今日の俺の“ご主人様”が後ろから俺を押して、魔物の方に倒れ込む。
すると一斉に触手が俺の躯に絡めてくる。
「ひっ、や、やめろっ。」
俺は必死になって触手から逃れようとするが、武器も何もなくそのままずるずると引き込まれていく。
見ると、“ご主人様”は、すこし離れた椅子でこちらの様子を楽しげに見ていた。
「なぁに、死にはせんよ。まぁ、死んでも生き返らせてやるから安心しておけ。」
狂ってる……。俺は恐怖で顔をゆがめた。触手が服の裾から侵入してべりっと破き始めていた。
「ひっ……いや、いやだああああああ。」
俺はたまらず泣き叫ぶ。恥も外聞も有ったものではない。嫌悪感と恐怖で俺はパニックを起こす。
もがけばもがくほど、触手が俺をきつく締め上げていく。けれど、冷静になれる状況ではなかった。
着ていた服が殆どボロ衣の様になり、殆ど全裸に近い状況になっていた。がっちりと四肢が触手で
押さえられ、宙ぶらりんにされる。悲鳴を上げていた口にも触手が入ってきて、塞ぐ。
「ううーーー。」
くぐもった声しか上げられず、しかし触手をかみ切ることも出来ず。息が出来ず苦しい。
触手の先からなにやら粘っこい粘液が分泌されて、気持ち悪かった。必死で飲むまいと口の端から
唾液と共に流し出そうとする。首を伝って、胸や腹にまで流れていく。
今度は大量に分泌され、否応なく飲み込まざるを得なかった。
飲むとすぐに躯が熱く火照ってくるのを感じた。それにあわせて触手がわさわさと動き、俺の躯を
嬲り始めた。胸や腹や太股を撫で上げられ、隆起し始めた花芯にも巻き付く。
透明なぬめった粘液が触手の先から分泌されて俺の躯が、その粘液で濡れていく。薄暗い部屋でも
不自然なほど妖しく光っていた。
「んんっ。くんんっ。」
いつの間にか漏れ聞こえる声が悲鳴から嬌声のそれに変わり、触手の一本が秘孔の入り口当たりを
マッサージするようにぐりぐりと押し始める。
「んんー。」
大きく股を開かされ、観賞者によく見えるように高く掲げられる。そして、つぷりと挿入を開始し
始める。ゆっくりと解すように入り口付近から穴を広げるようにくねくねと動く。粘液が分泌され、
内壁が熱を帯びていく。さらに触手がもう一本侵入しようすると、痛みできゅうと蕾が収縮する。
それを受けて、今度は前の花芯の先を擦りだす。急激な快楽に背中が反り返り、喉が仰け反る。
その時に胸まで弄られて、身じろぎをする。その瞬間に触手がもう一本侵入することに成功した。
「んんっ、んー。んむぅっ。」
一際大きな嬌声が上がる。せり上がる射精感に今度は根本を押さえられて、止め置かれる。その
苦しさに涙が零れていく。ぐちょぐちょと濡れた音を立てながら、3本目がずぶりと突き刺されていく。
限界まで広げられて圧迫感と共に前立腺が刺激されて、苦痛と射精感が増していく。先走りの蜜が
止めどなく流れ出ている先に、細い触手がつぷっと侵入してくる。今まで以上の快楽と射精感で、
躯が一瞬硬直する。しかし、ナカをずるずるとはい回るように蠢く触手が、更に奥深くまで抉る感触や、
胸に吸い付くような感触、腹を撫で回されて、すぐに力が抜けていく。もう駄目だと。体が自分の
意志から離れてしまい、快楽を追い求めるようになっていく。
尿道の内部をずるずると這い上っていく感触に、極限を超えた射精感が誘起される。けれども、花芯の
根本をきつく戒められた上に、精をつくる部分が触手によって縛られているために、射精が阻まれ、
絶頂を迎えることが出来ない。いや、絶頂よりも遙かに超えた快楽を感じながら、解放されない苦しみに
苛まれている、そして、解放されたい一心で、腰を振り、身をよじり、悶えていた。
くぐもった嬌声を上げながら、様々な角度から犯されて嬲られ続けた。

140呪いの代償(ローレタン陵辱ネタ):2004/09/20(月) 06:33
次の“ご主人様”は、淫乱なのが好みだとフリーサー家の当主に言われた。昨日の分も含めて
せいぜい乱れると良いと、笑っていた。俺はそれに対して返事をしなかった。
昨日の熱がまだ躯を苛むうちから、更にクスリを飲まされ煽られていた。その上、貞操帯を嵌められて、
イけなくされている。一方、後ろの穴には既に男のアレを模したモノが埋め込まれている。
そんな状態で、俺はすでに意識を半分飛ばしていた。
その日の相手は、比較的若めの男性だった。精力も旺盛らしく、すぐに行為に及んだ。
服を脱がされて、俺の窮屈そうな貞操帯と後ろに埋め込まれたモノを見て、
「へぇ、準備が良いな。」
笑いながら、ソレを抜いてすぐに自分のモノを俺に埋め込む。
「ひっ……あっ。はぁはっ、は、はずし、て。ああっ」
俺が懇願するように頼むと、
「俺がイくときに外してやるよ。ふへっ。お前のナカ、結構いいぜぇ。」
そう言うと、いきなり腰を激しく振り出して、俺は突かれるたびに短く途切れた声を上げる。
「良い声で鳴くじゃねぇか……いいぜぇ。うっ。」
あっという間に俺のナカに熱い欲の体液が注がれていく。俺もそれを受けて一気に射精感が高まるけれど、
貞操帯に阻まれてイけなかった。
「は、外して、くれるって……言ったのに。」
涙目で訴える。
「お前、年、いくつだ?」
「じゅう……ろく。」
「ああ、じゃあ犯りたい盛りだわなぁ……でも、」ニヤリと笑い続ける。「ちぃとは我慢もおぼえろや、この淫乱が。」
そう言うと、俺を突き刺したまま、俺を抱きかかえ、俺をうつぶせにする。結合部分が変に擦れて嬌声が上がる。
そしてさっきよりも激しく腰を打ち付けられた。昨日から射精を止められていた俺は、その刺激に泣きながら、
嬌声を上げ続けていた。ぐちゅぐちゅと濡れた音と嬌声、そして俺を嬲る声が遠くで聞こえていた。
後ろから犯された後、ずるりと抜かれて、出された体液がこぽりと零れ、内股を伝う。
「おい、お前から動いてみろ、良かったら、外してやるよ。」
そう言われ、今度は、騎乗位の体勢で、自分から埋め込んでいく。あっさりと根本まで受け入れてすぐに躯を上下に揺らす。
「そんなにがっつくなよ。お前ほどの淫乱も珍しいぜ、全く。」
呆れたような口調で言いながら、もっと良い声で鳴けと命じてくる。
貞操帯が付けられている上から、弄られて苦しくて苦しくて涙が出てきた。
三度目の射精を受け入れて、ようやく外して良いと許可を得た。そして、俺がここに来る途中で埋め込んでいた
張り型を手渡されて、自分で自分を慰めてみろと言われた。

「淫乱君のオナニーって見てみたいんだよ。よく見えるようにしろよ。」
ニヤニヤと笑いながら言ってくる。
覚悟を決めて俺は股を広げて張り型をゆっくりと埋め込んでいく。そして張り型を動かしながら右手で自分のを擦る。
「いっ、あっ……んあ、い、くぅっ。あああっ」
呆気なく俺は絶頂を迎え、声を上げる。どぼどぼと大量の精が飛び出して俺の顔や胸、腹を汚していく。
その様子に、
「すげぇ量だなぁ、おい。しかも、我慢もきかねぇのかよ。まぁ、淫乱らしいって言えばらしいがな。ははっ。
 でも、良かったぜ。またな。」
そう言って、相手は部屋から出て行った。

俺はしばらくの間、放心していた。

141呪いの代償(ローレタン陵辱ネタ:SM系?):2004/09/20(月) 06:35
次の日は、眼光の鋭い、銀髪の青年だった。
すぐに俺は裸にされて首輪を嵌められて、地下室に連れて行かれた。そこは、拷問部屋だった。
俺は恐怖で身がすくむ。入り口で立ち止まると、鎖を強く引かれて、バランスをくずす。
それにも構わず、引っ張られて引きずられるような感じで部屋の壁際に連れて行かれる。
そこの壁からでる鎖に両手を固定される。首輪の鎖は相手が手に持ったまま。
そして、両手の鎖が上げられて、俺はつま先が床に触れるぐらいまでひっぱり上げられる。
手首が痛む。苦痛に顔をゆがめていると、鞭で躯を叩かれた。
「さぁ、早速始めようか……、お前は、なかなか丈夫そうだから楽しめそうだな。」
ぴしっという音と共に、体のあちこちが赤くはれていく。
「……くっ。」
歯を食いしばり痛みに耐えるが、時折漏れる悲鳴。
「ふふっ、色っぽいよ……。さぁ、これはどうかな。」
そう言って、鞭の先が胸の先を掠めるように叩く。
それをきっかけに、反対側の胸の先、内股、腹の辺りをくすぐるような感触の鞭の痛みが走る。
決して、先ほどよりも加減している訳ではなく、痛みも感じる。しかし……。
「ふふっ、感じてきたようだな。素質が有ると思ったぜ。」
「嘘……だ……ひゃっ。」
脇から腹に痛みが走る。しかし、俺は劣情を感じていて、俺のモノはそそり勃っていた。
その先をめがけて鞭が振るわれ、半端でない痛みが走る。しかし、萎えるどころか堅さを増していた。

そしておもむろに、鞭を置くと俺の足首を掴んで高く上げる。腰を突き出すような姿勢になって
そのまま、貫かれる。
「!!!うああああああああああああ」
ほぐされていない俺の秘所に、相手の肉棒がねじ込まれていく。痛みに一瞬息をのみ、そして悲鳴。
「ふふっいい顔だな。痛いのが気持ちいいなんて、立派な変態で淫乱だね。」
ちがうと首を振る。けれども。
「でもここから先走りが溢れてきているぜ。ほらっ。」
そういって、俺の先から、透明な蜜をすくい取る。
「うっああっ。」
そして、そのまま俺は呆気なく果てた。

次は四つん這いにされ、手かせと足かせで固定される。
そこへ、丸い小さな卵の様なモノを見せられる。
「何をするか、判るか?」
楽しそうに聞いてくる。俺が首を振ると、
「ここに挿れるんだよ。」と、俺の秘所に入れ始める。
「うっ。あっ。」
「ほら、力を抜いて……何個入るかなぁ。」
かなり奥まで詰め込まれ、下腹部が圧迫されていく。
脂汗が滲み、もう無理だと言っても無視されて更に詰め込まれていく。
結局20個全てを挿れられて脂汗がだらだらと流れる。
「俺が良いと言うまで“卵”を出すなよ。」
それに対して、俺は言葉に出せず、ただ、首を振っていた。
次の瞬間、俺の下腹部に容赦ない蹴りが入った。
「がはっ。」
衝撃で“卵”が飛び出そうになる。
「ほら……しっかり締めとけよ……出そうになってるぜ。」
そう言って出そうになった“卵”を奥に押し入れる。
「うっあ……。」
喉の奥から唸るような声が漏れる。ただ息を吐いただけで声帯が震える。
また、容赦のない蹴りが俺の腹に食らう。今度は連続して何度も。
「うあっ。ああっ。」
一つ“卵”が勢いよく飛び出す。すると次々に“卵”が飛び出ていって……
俺の内壁を勢いよく擦っていき……。吐精してしまった。
「ふふっ、凄いね……。言いつけを守らなかっただけじゃなくて、射精までするとはねぇ。凄い淫乱。」
萎えた俺のモノを足先で嬲りながら言う。
俺は信じられなくて、それと恥ずかしくて涙を流す。
「ほらっ、泣いているんじゃないよ」
そう言って、俺の髪を掴み、顔を上げさせられる。そして、目の前にそそり立った男のソレ。
「お前ばっかりイきやがって……。ほら、しゃぶれよ。」
口の中に苦みが広がる。強引に喉まで突かれる。懸命になって舌を使うと。
「へぇ、巧いじゃない……。出すぜっ」
そう言った瞬間に引き抜かれ顔に熱いモノが降り注ぐ。そして、先で俺の顔ににすくりつける。

142呪いの代償(ローレタン陵辱ネタ:SM系?):2004/09/20(月) 06:36
次に持ってこられたのは、首かせと手かせ、足かせが一体となったモノだった。
大きく股を開かされ、腕は後ろに回されて、膝と頭を床につけられる。尻を突き出すような格好。
「酒、飲んだことあるか?ここで飲むと普通よりも回りやすいんだぜ。」
そう言って、発泡酒の瓶を秘所に突き立てられる。
「ひっ、ああっ。」
トクトクと体の中に入っていく。しゅわわっという泡のはじける感触が内壁を刺激してくすぐる。
次第にアルコール分が吸収されて鼓動が早くなり、体も熱を帯びてくる。
「もうこれ以上ははいらねぇか……。抜いてもちゃんと出口を閉めて出すなよ。」
ちゅぽんと、瓶が抜かれる。俺は必死で力を入れて漏れないようにした。しかし、ちょろちょろと股を伝う。
そこへ怒張が宛われて、俺が緩めるまもなく侵入を開始する。
「い゛っ、ああっ。」
痛みが走る。次に圧倒的な圧迫感。さっきの“卵”とは比較にならないくらいの。
「おおっ、いいぜ。しゅわしゅわして、おまけに締め付けもまた良くなっているな。ははっ」
「…く、苦しい……壊れ、る……。」
下腹部が弾けそうで、息も絶え絶えに助けを求める。しかし、律動を辞めようとはせず、
「じゃあ、壊れちまえよ。」
更に激しく腰を打ち付け俺を貫いた。
俺は息が出来ず、少しでも苦痛を和らげようともがく。けれども腰を強く掴まれて逃れることが出来なかった。
より激しさを増して、俺は貪られ続け、もう限界に達する直前にナカに注がれて、抜かれる。
「ああっっ。」
俺は抜かれると同時に一気に噴出させて、その勢いで射精する。そして、意識を飛ばしてしまった。

143呪いの代償(ローレタン陵辱ネタ:切断系?):2004/09/20(月) 06:37
最後の日。
黒髪の少年が最後の相手だった。同世代で有ることに安堵したのだが、それは間違いだったとすぐに判った。
昨日と同じような地下室につれてこられて、堅い木製のテーブルの上に寝かされて、腕や脚、腰にベルトで固定される。
不安げな様子の俺に、にこやかに口づけをして「大丈夫だよ」と微笑む。
そして、ナイフで俺の腹や胸に浅い傷を付けていく。
わずかな痛み。けれどもそれほどはいたくなく。傷口をペロペロと舐められてその方がくすぐったかった。
次に取り出してきたのはリング状のピアス。
にこやかに笑いながら、胸の先に……。
「あ゛あ゛っ」
強烈な痛みが走り、体が跳ねる。血が流れ出す胸の先をペロペロと舐められる。
痛みと快感に頭がぐるぐる回る。
反対側にもピアスの針が当てられて、今度はじわりじわりと針を突き刺していく。
先ほどの痛みに比べれば幾分マシであったが、それでも、涙が零れていく。
「ふふ……可愛いよ。ローレ。」
甘い声で俺の名前をいう。
「じゃあ、次はコレ。」
そういって、一回り大きな鈴付きのピアス。俺は本能で恐怖を覚える。
「や、やめろ……やめて、くれ。」
「だぁめ。」
そいつはそう言うと俺の花芯を掴み、扱いていく。あっという間にそそり勃ったソレの尿道の中にピアスの針を差し込む。
「うああああああああああああああああああああああああああああああああ」
尿道のほかに穴が開いて針が突き出る。そしてピアスリングが尿道を塞ぐような形ではまる。
俺は一瞬気を失っていた。水をかけられて意識を呼び戻される。
「この程度で気絶してちゃ、駄目だよ……。まだまだ前準備なんだから。」
にっこりと笑う。天使のような笑み。だけれども俺は、ふるえが止まらない。
がらがらと運んで来たのは……ギロチン。殺されるのか?と思うと声が出なかった。
左脚の付け根の所に、ギロチンがセットされる。息をのんだ。
「ローレ、君が自分で切るかい?」
「頼む……何でもするから、辞めてくれ!」
悲鳴に近い懇願。
けれど、激痛が走り、左脚の感触が消えた。
一瞬血が吹き出たが、すぐに止まる。ベホマを唱えたらしい。
俺は信じられないように首を振っていた。ギロチンの先には俺の左脚が飛んでいた。
がらがらと今度は右脚の付け根にセットされた。
「辞めてくれ……なんでこんなことを……。」
「だってさ、性奴隷人形に手足は邪魔なだけだよ。」
にこやかに笑う。そして、ざしゅっと鮮血が飛び散った。

144呪いの代償(ローレタン陵辱ネタ:切断系?):2004/09/20(月) 06:37
右腕も、左腕も、泣いて懇願したのにあっさりと、本当にあっさりと切断された。
「もう……殺して。殺せっ。」俺は泣き叫んだ。こんな事って有るモノか。
俺が何をした。なんでこんな苦しみを味あわなければならないんだ!
なんで、こんなことに……。俺はただ、泣いていた。奴がギロチンを片づけている間、ずっと。
しばらくして、次に持ってきたのはペンチの様なもの。

「今度は目でもくりぬくのか……。」
やけっぱちで尋ねる。それに頭を振る。さっきまで死んだ方がマシだと思っていたのに、
内心でほっとするのが、無様だと思った。
するといきなり眠気が襲ってきて……俺は意識を手放した。

しばらく経って目覚めると、ちゃんと周りが見えた。目があると思い安堵した時、気が付いた。
口の中の違和感。歯が全て抜かれていた。
「…………!……!?」
俺は叫びそうになった、しかし、声も出ない。
「これで完成。ふふ。」
「ごめんね。歯を抜く感触を楽しめなかったね。だけどこの顔、すごく気に入っているんだ。」
そう言って、俺の頬を両手で撫でる。
「もし、ローレの意識が有る状態で歯を抜くんだったら、ペンチかハンマーで歯の部分を
 叩かなきゃいけないでしょ。そうすると輪郭まで変わっちゃうかなぁっておもって。」
俺は呆然として聞いていた。
「歯があったら、舌を噛んじゃうかも知れない。だから全部抜いたんだ。危ないものね。
 そうそう、歯がなかったらちゃんと言葉をはなせないから声帯も取っちゃったから。」
要らないでしょ。と続けてにこやかに言う。
「!!!!!!!!!!!!」
俺は音にならない叫びを上げた。そして、泣いていた。死んだ方がマシだと。本当にそう思った。
死ぬことすら許されない。こんなことって!

「ローレ……ほら、鏡があるよ。新しい自分を見てみて。」
そこには、変わり果てた自分が映っていた。手足をもがれ、声も奪われた、生きている人形。
「泣き顔、とっても可愛いよ……ローレ。」
俺は首を振っていた。絶望。
奴は、俺を抱きかかえてベットに持っていった。

唇を塞がれ、舌が入ってくる。口を閉じても歯が無くて容易に侵入される。
指で胸の尖りを刺激され、へその当たりを撫でられる。首筋にキスをされて鎖骨を甘く噛まれる。
人形になった俺はショックを受けていたのに、たやすくそそり勃ち始める。
まさに浅ましいこの体。性奴隷人形だと言われたが全くその通りじゃないかと……自嘲する。
いや、性奴隷という肉便器だ。俺は惨めな思いをしながらも、どんどんと奴の行為によって、
煽り立てられ、追い立てられていく。
彼の花芯が俺の口の中に入れられる。口を閉じてもかみ切ることはできない。
「歯がないとやっぱり、こんなに気持ちの良いものなんだねぇ。すごいよ。」
思いっきり頭掴まれて、喉の奥まで何度も何度も突き立てられる。
ゆっくりと引き抜かれる。糸を引きながら、今度は俺の下の口に宛われ挿れられた
「ほへぇ……すっごく良いよ。ローレのナカ。上の口も良かったけど、こっちはすっごい締め付けで。
 ローレも感じているんだ……息が荒くなっているし、鼓動も早くなっているね。ふふっ。」
俺はどうしてしまったんだろう。前よりも挿れられている感触がより強く感じられ、
前の部分も敏感になっている感じがする。切断された四肢の分、ほかの感覚が密になったのだろうか。
これでは、本当に性奴隷人形で……。イヤだ。イヤ、だ。うっああああああああああああ。
ナカで出された感触に、ローレも触発されて射精する。その射精感が今までとは比べものにならない
くらい激しくて、頭が真っ白になって意識をとばしてしまう。

俺は……もう……

145呪いの代償(ローレタン陵辱ネタ):2004/09/20(月) 06:38
「おめでとうございます。ローレ殿。お陰で融資を取り付けることが出来ましたよ。」
にこやかにフリーサー家の当主が言う。
俺は、やっと終わったのかと思う。まるでではなくて、悪夢そのものだった。
傷は完全に癒えている。ベホマをなんども唱えられて五体満足の状態で今は居た。
「ほかに……方法は無かったのか?」
俺は恨みを込めて言う。
「無いでしょうね。商人が投資を行う時、上げる利益と確率を掛け合わせたもので判断します。
 今回の件の場合、申し訳ありませんが、投資分の回収を見込めませんでした。」
淡々と説明する当主に、
「で、足りない分は、俺で払った訳か……。」
「ええ、そうなりますね。ですが……」
こほんと咳払いをして、
「恋人であるサマル様を悦ばせる手法も会得したんじゃないんですか?」
俺は真っ赤になって反論できなかった。

146町人B:2004/09/20(月) 06:44
なんか、サマル×ローレのつもりで書いていたのに、何時の間にやら、
ローレタンがひたすら犯されているSSになりますた。アッヒャッヒャ!ヽ(゚∀゚)ノ

しかし、複数のエロネタでSSを書こうとすると体力が消耗しますな。
何度も似たフレーズを遣い回してスマソ(´・ω・`)

おめめ汚しスマソ。ヘ(゚∀゚ヘ)アヒャ

147名無しの勇者:2004/09/27(月) 09:33
何かチョト見ぬ間に神が降臨してる!ロレ受けがいっぱいに・・(´Д`*)
これは6のセーブデータが消えてしまった私への慰めか・・orz

町人Bさんの豊富なエロネタに敬服いたしました。
何気に裸エプロンなロレに萌えました。
これからもサマロレがんがって下さいねヽ(・∀・)ノ

148名無しの勇者:2004/11/23(火) 20:51
>100-103の、余裕のあるサマル王子が新鮮で、いたく萌えました。
なんかこう…ちょっと意地悪めなイケメンを連想してそわそわそわそわ…

149名無しの勇者:2004/11/25(木) 23:32
久し振りに来たらロレ受が満載(*´Д`)アハーン
町人B様、乙です!


壁|∀・)ノ□ 竜王の曾孫×ローレSS投下して行きます。

登場するのは、>>107-118と同じ二名です。
毎度のことですが個人的な萌え発散SSですみま…y=ー( ゚д゚)・∵. ターン

以下9レスほど使用します。相変わらず短くまとめられない模様↓↓↓↓

150竜王の曾孫×ローレ【1】:2004/11/25(木) 23:33
 丸いグラスに注いだ葡萄酒が切れた。
 かの“竜王”の曾孫と呼ばれる王は読書をしていたその目を上げて、一旦は口元に当てた空のグラ
スを見遣り、それから傍らのボトルに視線を向けた。
 そちらのほうも既に中身は底をついている。
 近頃、飲む量が増えて来た。
 竜の体では酔うことが少ないのであまり気にしていなかったが、今宵はまだ本を読み始めてからさ
ほど時間が経っていない。特別に喉が渇いているという訳でもないのだが……。
「……」
 思い当たる原因といえば、壁を隔てた書庫に居る者の存在だろう。
 王は、物音ひとつ立たない扉の向こうを透かすように見て、短く息を吐いた。
 他者を近づけることを良しとしない王が、唯一気を許している“彼”。
 その者が来ると湿っぽい地下城の雰囲気が途端に柔らかく変化を遂げる。それに当てられて心身共
にくつろいでしまい、それゆえ酒の量が増えるのだ。
 だが、今夜はもう一本ぐらい栓を開けても良いだろう。
 誰の許しを得るでもなくそう考えると、王は読みかけの本に栞を挟んで椅子から立ち上がった。
 葡萄酒は書庫の更に奥、四面を岩で囲まれた貯蔵庫に寝かせてある。
 それを取りに行くついでに“彼”の様子も見て行こう。
 冬の夜は冷えるから、人間の体には特に気を遣ってやらねばならない。放っておくと“彼”は机に
突っ伏したまま眠ってしまうことが良くあるのだ。暖炉に火は入れてあるものの、風邪でも引かれた
日には扱いに困る。
 重い扉を押し開けると、埃っぽい部屋の真ん中に設置した読書机に身じろぎもせず向かっている黒
い頭が見えた。
 背凭れの高い椅子に腰掛けているというのもあるが、元々、王族に生まれた者であるから流石にい
つ何時でも美しい姿勢を保っている。
「寒くはないか」
 王が黒い頭に向かって問い掛けると、
「大丈夫です。お気遣いありがとうございます」
 と、高くもなく低くもない声が答えた。
 振り向きもせずに言ったその後頭部を眺めて、そういえば今日はまともに顔を見ていないな、と王
は思った。“彼”の場合、城を訪ねて来るなり書庫へ直行することは良くあることだったので、さほ
ど気にも留めていなかったが……気付いてみると案外、淋しいものである。
 王は、そのまま何も言わずに貯蔵庫へ向かい、棚にずらりと並んだ中から一本のボトルを抜き取る
と、先程まで使っていたグラスと真新しいグラスとを持って再び書庫へと上がって来た。

151竜王の曾孫×ローレ【2】:2004/11/25(木) 23:34
 頭の先までぴんと伸びたその背後に歩み寄り、手元を覗き込むと“彼”は本を開いた上に自分の両
手を置いて掌を見つめていた。
「……何をしておるのだ」
 王の口調に僅かに滲んだ呆れを感じ取ったのか、“彼”──ローレシア王子は首を捻って王の顔を
仰ぎ見た。
「書物ではなく、お前の手に何か書いてあるのか?」
 そう問われて王子は首を横に振った。
「どうして私には魔力が宿らなかったのでしょうか」
 気の抜けた声でそう言うと、ローレシア王子はまた自分の掌に視線を落とした。
 よく見れば、彼が机上に開いているのは魔道の解説書のようだ。
 それを目にした王は、ふむ、と唸った。
「……書庫にある書物から学んだ甲斐あって古代文字は読めるのです。でも、いざそれを口に乗せて
唱えても呪文は完成し発動することがありません」
「然様。文字を読むことは可能でも、体が魔力を宿していなければ魔道を根本から理解することは出
来ぬ。唱えたところで所詮、お前にとっての呪文の効果は想像の産物でしかない」
 王は何を今更といった様子で王子に言った。
「魔力のことは遺伝上、どうにもならぬことゆえ仕方がないと思って諦めるのだな」
「冷たいのですね…」
「余は現実的な話をしたまでだ」
 じっとりと湿った目線で見つめられて、王は肩を竦めた。
「しかし、魔法の使えない戦士や武道に秀でた者が魔力を操ることが出来るようになった…と、この
解説書には記してあるのですよ。期待ぐらいしても良いではありませんか」
「それは、その者たちが特別な書物を用いて修行を積み、悟りを開いたからであろう。適当な修行で
誰でも修得出来るものではない」
 王はそこまで言うと、王子がじっと自分を見上げているのに気が付いた。
「……言っておくが、ここに“悟りの書”はないぞ」
「…………そうですよね」
 期待が外れ、しょんぼりと項垂れた王子は深々と溜息をついた。
 王がグラスを掲げて「飲むか」と尋ねれば、王子は曖昧に頷きを返す。彼の斜め横にある椅子を引
いて腰掛けると、葡萄酒の栓を抜きながら王は彼に向かって尋ねた。
「何故、今頃になって魔道を極めようなどと考えた」
「──昨日今日の話ではありません」
 王子の言葉に、酒をグラスに注いでいた王はチラリと彼に向かって視線を走らせた。

152竜王の曾孫×ローレ【3】:2004/11/25(木) 23:35
 確かに言われてみれば、王子は魔力が宿っていないことを悔やむ様子を始終見せていたような気が
する。彼がここへ来て読み耽っていた書物の大半が、魔道に関するものだったということも王は記憶
していた。
 だが、それは世界が邪教による支配を受けていた頃の話だ。平穏を取り戻した今、王子が魔力を欲
する必要があるのだろうか。
 想像の範囲で思い付くことといえば、ひとつしかなかった。
「母君のことが関係しているのか」
 その問いに対して王子の肩がぴくりと動いた。
 予想していたとおりの反応を目にした王は彼に酒を勧めながら、やはりそうだったかと胸の内で嘆
息した。
「……昨日が、母上の命日だったのです」
 グラスを両手で包み込んだ王子は、ぽつりと呟いた。
「そうか」
「母上のことを思い出そうとすると、悲しそうな笑顔と謝罪の言葉しか浮かびません」
 葡萄酒を一口飲んで乾いた唇に湿り気を与えると、王子はぼんやりと遠い目つきをした。


 王子の母は六年前に病死している。
 
 以前に“竜王”の曾孫が王子本人の口から聞いたことだが、生前の王妃は大層美しかったそうで、
その美しさに一瞬にして虜となったローレシア国王が半ば強引に嫁がせたというあまり喜ばしくない
逸話が残っている程だ、と彼は話していた。
 王妃は、ローレシア王家に嫁ぐ前は小さな町で暮らすごく一般の女性であり、当然のように魔力な
どは持ち合わせていなかった。そして、一人息子である王子は母親より気品と美貌を受け継いだが、
同時に魔力を宿さない体をも授かってしまった。
 その件に関して国王が妻を責めることはなかったが、王妃は出産後からそのことで悩み続け、病魔
に冒され死の床に就いても尚、国王と王子に謝り続けていたという。
 王子は王子で、父が武芸と魔道の両方を操る者であるがゆえに幼い頃から引け目を感じて育って来
ており、魔法が使えないということがあらゆる所で彼の劣等感と直結し、それが母親の死とも重なっ
て心的外傷となり、彼を今も苦しめ続けているようだった。

153竜王の曾孫×ローレ【4】:2004/11/25(木) 23:36
 意気消沈している王子を眺めながら、王はグラスを回して深い赤色の液体を玩んだ。
「……その様子では、今も父君とは話をしておらぬようだな」
「儀礼上の会話は交わしますが、親子として話す機会はまったくありません」
「何故だ」
 間を置かずに尋ねた王を、王子は面食らったように丸い目をして見た。
「……『何故』?」
「言葉の意味が分からないではあるまい。何故、父君と話をしないのだ」
 困惑した表情で首を傾げた王子に向かって王は更に尋ねた。
 すると、王子は益々困った顔で眉間に深い皺を作った。
「談話の時間も取れませんし、それに…………会話が思い付きません」
「何でも良いのだ。お前の趣味、その日にあった出来事。あるいは、旅から戻った後であれば幾らで
も土産話はあろうが」
「父上は、私にそういったものは求めておられないように思います」
「そういったものとは何だ」
「その──そういった…息子、らしさは……要求されていないと」
 話しているうちに俯いてしまった王子を見て、いよいよ重傷だな、と王は片手で頬杖をついた。
「私が魔道にも精通し得る体であれば、父上は私に対して失望せずにいられたのです。母上も、あれ
程までに苦しんで亡くなったりは……」
「そうは言うが、お前は十分、父君の期待に応えたのではないか?」
 思い詰めた表情を浮かべる王子の言葉を、王はやんわりと遮った。
 王子は何と言っても、魔物を統べる悪魔の諸王だけでなく邪神をも屠ったのだ。
 常人では対抗することすら困難である悪魔どもを常闇の国へと送り返すことを、彼と血の繋がった
仲間たちは見事成し遂げたのである。これ以上の親孝行があるだろうか。
 だが、城へ凱旋した当時の風景を思い出して、王子は表情に暗い影を落とした。
「……無論、世界に平和が戻ったことに関しては大変お喜びのご様子でしたが、特にそれ以上のお褒
めの言葉は賜りませんでした」
 子が子なら親も親か。
 王は口にこそ出さなかったが、絡まる一方で解けることを知らない糸のような親子関係を内心で
誹った。
 これは少々、背を突いてやらねばならないのかもしれない。

154竜王の曾孫×ローレ【5】:2004/11/25(木) 23:37
「愛する女性との間に生まれ落ちた唯一の忘れ形見を、死をも覚悟せねばならない旅路へと送り出し
た父君の胸中は如何ばかりか。──お前も、本当は分かっておるのであろう?」
 溜息混じりに吐き出された王の言葉に王子は面を上げた。
「父君とて、お前が憎くて討伐の旅を申し付けたのではない。子を持つ親という立場以前に、大陸一
の軍事力を誇る国の主席としての立場があるのだ」
「……それは、良く存じ上げております」
 拗ねたような表情で、王子は下唇を噛んだ。
 もし、あの日──ムーンブルクが陥落したとの報が宮中に伝わった時──国王が王子に出立を命じ
なければ、ローレシアは世界の諸国に対して面子が立たなかっただろう。
 西のラダトーム、中央のムーンブルク、東のローレシア。
 統べる面積こそムーンブルクが最大だが、ローレシアはサマルトリアとデルコンダルという列強を
従えている。両国とも文武に秀で、数多くの優れた戦士や魔法使いを輩出してきた土地だ。
 ハーゴン軍の台頭を阻止するべく、サマルトリアからは多彩な魔法を操る王子が討伐の命を受けて
旅立った。デルコンダル王に子はなかったが、もし彼に跡継ぎが誕生していれば国王は迷わずその者に命じたはずだった(それが叶わなかったから代わりに月の紋章を王子たちに与えたのである)。
 その二国の上に立つローレシアだけが、一人息子を大事に囲っている訳には行かなかった。
 分かっている。分かっているのだ。
 王子もこの世界を愛する者の一人、平和を守るために旅立つ義務があり、また、当然のように覚悟
も出来ていた。父王に命ぜられずとも彼は自発的に旅立つことを願い出たに違いない。
 だが、それでも。


「それでも──父親として一言、声を掛けていただきたかったのです」

155竜王の曾孫×ローレ【6】:2004/11/25(木) 23:39
※あ…上で改行失敗しました…_| ̄|○


 グラスを持つ手が微かに震えるのを見れば、家族の概念が薄い竜族の王でさえも愛に飢えた子供を
目前にして同情を禁じ得なかった。
 王子を哀れむのは簡単だ。
 しかし、今、彼に必要なものは憐憫の情などではない。
 ゆっくりと深い溜息をつくと、王は尖った顎を鋭い爪の付いた指でさすった。
「父君は、武人ゆえの自尊心が邪魔をして素直な気持ちを顕せずにおるのだろう。お前と同じで、た
だ不器用であるだけだと思うがな」
「…そうでしょうか」
「子が親を信じなければ誰が信じてやるというのだ。……父君と一度、腹を割って話し合うが良い。
このままではいつまで経っても埒が明かぬぞ。それともお前たち親子はこの先も母を失った悲しみに
浸かり続け、そこから抜け出さぬという所存か?」
 王子は自信なさげな表情を浮かべて項垂れていたが、王の問いに虚を突かれてハッと顔を上げた。
「あ……」
「只でさえも母君は、家族を残して先立つことを申し訳ないと感じておられたのであろう。その上、
今日も家族が不和を引きずっているのだと知れたら、母君はあの世で浮かばれまい」
 その言葉に、王子は気まずく落ち着かない素振りを見せた。
 彼も、本当は父と心を通わせたいのだ。敬遠はしているが憎んでいる訳ではないのだから。
 それはおそらく、彼の父も息子と同じ気持ちなのだろうと王は思う。要は、嘆いた心が流した涙で
回転軸が錆び付いてしまっただけのことであり、軸部分に潤滑油を注してやれば再び二つの歯車は噛
み合い始めるのだ。
 しかし、油を注したからといって歯車自体が動かなければ意味がないのである。
 歯車のどちらかが腐食を始める前に手を打たなくてはならない。そのきっかけを与えてやるのは、
赤の他人で構わなかった。
 だが、王は敢えて自らが関わることを選択した。
 我ながら酔狂なことだ、とは思ったが、わざわざ止める気も起きなかった。
「余は血の繋がった子を持たぬゆえ、お前を思い扱う父君の心情を理解したとは言い切れぬが……お
そらくは心持ちを同じくされていることと思う」
 王はグラスの中身を飲み干すと机に置いた。静かな空間にコト、と硬質な音が響いた。
「もし仮に魔王が降臨し、この世が闇に包まれたとして再びお前を死地へと赴かせねばならぬかと思
うと──正直、ゾッとする」

156竜王の曾孫×ローレ【7】:2004/11/25(木) 23:40
 ハーゴンやシドーのような輩は、いつ降って湧いて来るか分からない。
 もしも、またあのような者たちが現れたら、実力と経験を備えた王子が先陣を切ることになるだろ
う。共に戦った仲間はムーンブルクの地でめでたく結婚した。妃が子を身籠もった今では、兵を出す
ことは可能でも本人たちが自由に動くことは困難だ。
 そこで、当たり前のようにローレシア王子に対して人民の期待が集中するだろうことは容易に予想
が付いた。
「──お前を心配し、愛する者が周囲に必ず居るのだということを忘れるな」
 王は左手を伸ばすと王子の頭をぽん、と軽く叩いた。
 幼い頃から、周囲の期待を損なわぬように、そして、魔力を持たない劣等感を克服するためにと死
に物狂いで剣術や武術を身に付けてきた王子は、我が身を気遣われるということに慣れていないはず
だった。
 案の定、暗く翳っていた王子の瞳が大きく見開き、透徹した深青色が王を捉えた。
 王子はポカンと口を開けて呆気に取られていたが、やがて戸惑いと気恥ずかしげな色を表情に浮か
べた。
「……はい」
「分かれば良い」
 椅子の背に反っくり返った王の尊大な態度に王子は小さく笑うと、グラスの縁に口を付けた。

 ようやく彼の顔に笑顔が戻った。

 そのことに気を良くした王は、ふとした案を思い付き、姿勢を元に戻すと机の引き出しから新しい
蝋燭を一本取り出した。そして、蝋燭を机上の燭台に差し込むと不思議そうに眺めている王子の顔を
チラリと見た。
「魔法を使ってみたいのであろう?」
 突然の問いに王子は一瞬考え込み、それから勢い良く頷いた。
 王は悪戯を思い付いた子供のようにニヤリと笑って見せ、身を乗り出すと机に置かれた王子の手を
甲の側から握った。

157竜王の曾孫×ローレ【8】:2004/11/25(木) 23:41
 王子はその行動に驚いて、咄嗟に手を引こうとした。
 だが、手の甲がじんわりと温まる感覚を得て彼は好奇心のほうを優先させた。
「これは──」
「少量だが魔力を与えてやる」
「……魔力を他者に与えることが出来るのですか?」
「術者の力が対象に作用し、傷を治癒させることが可能なのだから魔力自体を授けることも可能よ。
だが、力を使用すればなくなるし、使わずともそのうち消え失せる。お前は魔力を蓄える能力がない
からな」
 徐々に掌へと移りつつある熱を感じて、王子は期待に頬を紅潮させた。
 王族にしては荒れている手が完全に温もりを持ったところで、王は手を離すと、火の点いていない
燭台を王子の前に置いて両の手で蝋燭を翳すように言った。
「目を閉じて想像するのだ。お前は、明かりを灯す際に如何にして火を点ける?」
「マッチを擦って火を点けます」
「では、それを心に思い描け」
 王の言葉を聞いて王子は瞼を閉じた。
 そして、情景を想像した。
 頭薬と側薬の摩擦による発火、立ち上る煙と鼻をつくツンとした臭い、空間に柔らかく広がる蜜色
の光。
 それらを心の中で反芻し、何本もマッチを擦った。
 ある時、蝋燭に翳した掌がカァッと熱くなった。同時に王子の全身に得も言われぬ感覚が走った。
 これが魔力を放出するということなのか。
 恍惚の表情が浮かびかけていた王子の耳に、シュッという耳障りな音が届いたのは間もなくのこと
だった。
「?」
 何かがおかしい、と感じて王子は薄く目を開いた。
 期待をして目前の蝋燭を見遣れば、芯は燻り、黒煙が細々と上がっている。
 もしかして……と考える間もなく、魔法の発動に失敗したようだ。
 王子は落胆して岩の天井に向かって上っていく煙の方向を仰ぎ、傍らの王に視線を向けたが、──
あろうことか王は口元に手を当てて笑いを堪えていた。
「なッ…」
 瞬時に顔を赤らめた王子に、王は手をひらひらと振って悪気はないことを主張した。
 だが、その肩は今も小刻みに揺れている。
「何が可笑しいのですか!」
「すまない。だが……お前の想像したマッチは、どうやら湿気ていたようだな」
 とうとう喉を鳴らして笑い始めた王を責めるように、王子は憤慨の表情を向けた。

158竜王の曾孫×ローレ【9】:2004/11/25(木) 23:42
「あんまりです。初めてのことで戸惑っていましたのに」
「いや…惜しかったのだがな。ほんの一瞬だが、赤い火が見えた。筋は悪くない」
「──本当ですか?」
 褒められたことで機嫌が直ったのか、王子はぱっと表情を明るくした。
 そして、うきうきとした様子で椅子の上に座り直すと王に向かって両手を差し出した。
「何だ」
 王が軽く眉を顰めると、王子はにこりと笑った。
「今一度、魔力をお与え下さい」
「お前は余を衰弱死させるつもりか」
「そこまでの力は欲しておりません」
「そんなことを言って、もう一回、もう一回、とせがむのであろう」
 伸ばした手を軽く叩かれて、王子は唇を尖らせた。
「……案外に出し惜しみなさる方なのですね」
「お前は段々と図々しくなるな」
 王は苦々しい顔で言ったが、短く溜息をつくと、机上にだらりと置かれていた王子の手を取った。
 予想していなかった行動に、王子は王の顔をじっと見つめた。
「…今宵はこれきりだぞ」
 ぶっきらぼうな物言いだったが、黄金の王の瞳には柔らかい色が灯っていた。
 それを見た王子の顔にも、みるみる歓びが広がっていった。

 関係が修復した後では、王子は父親ともこのように交流を深めてゆくのだろう。
 王子に魔力を注ぎながら王は予想した。それは喜ばしくもあり──少し、淋しくもある。
 彼は“親代わり”の竜族ではなく血の繋がった肉親の下へ戻ってしまうだろうか。
 王は長年孤独に過ごして来たが、王子が居なくなった生活など今更、想像が付かなかった。
 時々でいいから、顔を見せ──声を聞かせて欲しい。
「魔法を使いたくなったら、いつでも訪ねて来るが良い」
 王子を温める手に、自然と力が籠もる。
 本音を隠した言葉で彼の興味を引こうとする己の狡猾さを王は嘲った。

 王は、後ろめたい気持ちを抱えて瞼を伏せていた。
 そのため、王子の顔に浮かんだ一抹の寂寥を見ることはなかった。
「……はい」
 握る手の強さに痛覚とは別の痛みを感じて、王子は自らの掌に視線を落とすと静かに目を閉じた。

159名無しの勇者:2004/11/25(木) 23:43
以上で終了です。前回より仲が進展した…のか?('A`)
直球型のご先祖様たちと違ってこちらの二人は奥手なので進展も牛歩並です。
ニブチンのローレがほのかに恋心を意識しただけでもマシかもしれませんが。

それでは失礼致しました。

160名無しの勇者:2004/11/26(金) 01:08
うぁあああああ、グッドタイミングで遭遇!!
曾孫様いい、野望で煮えたぎる若さはないけれど、(…けっこう若いはずなのに)
人間の王にない貫禄と余裕と、ちょっとのやきもち妬きに痺れます。
ローレの親代わりを卒業して、発展するかもしれない気配、まだまだ楽しみです。

161名無しの勇者:2004/11/27(土) 02:28
曾孫様×ローレキテタ━━━━(゚∀゚)━━━━!
読んでてもどかしいけどそれがたまりません(;´Д`)ハァハァ

162名無しの勇者:2004/11/27(土) 12:06
職人様乙です!…じつは密かに続編を期待してました。
ローレかわいいよローレ(*´Д`) 曾孫様も落ち着いててカコイイ!
手まで握ってるのにどこかすれ違い気味…こういうSS大好物です。

163名無しの勇者:2004/11/27(土) 20:27
すごくヨカッタ!
よければまた続きも楽しみにしています(;´Д`)ハァハァ

164名無しの勇者:2004/12/23(木) 14:42
是非、保管キボンヌ!
続きが楽しみです。

165名無しの勇者:2004/12/24(金) 01:07
DQ1・2スレの作者様はウェブの神殿を構えておいでのようですよ。
某サーチから神殿への道が開かれておりました。

166名無しの勇者:2004/12/26(日) 17:18
>165
神殿ハケーソしますた。thx!
1日遅いクリスマスプレゼントをもらった気分(*´∀`)ノ■

167名無しの勇者:2005/01/12(水) 23:28
神殿が開けないorz
ウワァァン

168名無しの勇者:2005/01/12(水) 23:57
見れるよー?

169名無しの勇者:2005/01/13(木) 19:47
私も見れないよう(TдT)
ウワァン

170名無しの勇者:2005/01/13(木) 20:47
なんでだろう。
開けるようになったけど表示されないよう。
某サーチから逝けますか?

171名無しの勇者@神殿の中の人:2005/01/13(木) 21:23
[壁]Д`)アワワワワ 報告を貰って飛んで来ました。
開けないというご指摘は以前にもいただいたんですが…
ノートン先生を切ってもダメですか?

172170:2005/01/13(木) 21:54
バスターなんですが、切ってみても駄目でした。
403 Forbidden と出ます。すみません(つД`)
ロビーに移動した方がいいですか?

173名無しの勇者@神殿の中の人:2005/01/13(木) 22:25
すみません、書き込みこれで最後にします。
私事でスレ汚しして大変申し訳ないです。

>170=172さん
バスター切ってもダメですか。あわわどうしよう(゚Д゚;≡;゚д゚)
参考までにお使いのOSとブラウザのバーションをお聞きしても良いですか?
それを見て対処法を考えたいと思います。
ブラウザはスタンダードでないものだと弾かれるかもです…。

174170=120:2005/01/13(木) 23:07
窓XPのSP2でIE6です。どうしてでしょうかね(;´Д`)
捨てアド残して去ります。スレ汚しすみませんでした。

175俺様受け:2005/01/31(月) 13:41:46
って、もう過去の遺物なのかなー。
時流に逆行してるのを、あえて―――。
スルー推奨(悲)。

176名無しの勇者:2005/01/31(月) 13:45:40
「さがれ、カイン!」
「るせぇ!任せろってば!」

前に立ちはだかるカインの金髪に視界を阻まれ、アレンは掲げた剣も降ろさざるを得ない。
アレンには窺い知ることの出来ない古代語が、カインの口から耳に拾えないほどの速さで紡ぎ出され、
張り詰めた空気が臨界に達し、カインの後姿は閃熱を背景にした黒いシルエットになる。

「ベギラマ!!」

一瞬で、狂暴な屈強のモンスターの一群が、熱と光の渦の中で無力にも灰燼と化していく。

「まだだ、息があるぞ!」

視線をモンスターに向けたまま、光に照らされたカインの顔が振り返り気味に向けられる。

わかってる、見とれてただけじゃない!
アレンはその言葉を飲みこんで地を蹴り、カインの傍らから前に飛び出した。

「――――――ッ!!」

無言の気合が込められた太刀が、断末魔から開放すべく、死にきれないモンスターに一閃の光となって打ち下ろされた。

177俺様受け:2005/01/31(月) 13:49:46
あれ?cookiesは……!?;;

178俺様受け:2005/01/31(月) 13:52:05

アレンは気持ちのままに怒りをぶつけてくる性格ではない。
普通に話しかければ、普通に応えてくる。
だからといって、内心に抱えた憤懣を隠しとおせるわけではない。


―――困ったわね。

マリアは、普段から無口なアレンと、弁舌が立つくせに言葉の足りないカインとを代わる代わる見やった。
お互い、相手が怒っているのはわかるが、相手の非を責めることも無く、自分に非があるとも思っていない。
こういったことは、よくあることで、そのうちおさまるのは分っているのだが。

宿で、重苦しい静寂の中摂られた夕食の後、マリアは開け放したアレン達の部屋を覗いた。
そこではアレンが一人で武具の手入れをしている。
マリアに気付いたアレンは、柔らかく問いかけるような微笑を向ける。
なんでもないの、というふうに軽く手を振って笑い返した。
同室のカインは部屋に戻りあぐねてるらしい。

案の定、カインは階下で途方に暮れたように、所在無くぶらついている。

「きっと貴方がアレンを困らせたのね?違って?」

怒るでも責めるでもないマリアの言葉に、カインはことさら厳しい顔で振り返る。
カインの繊細で整いすぎた顔立ちは、揺れ動く感情を隠せないまま、マリアにだけ見せる小さな子供が拗ねたような表情になり、視線が逸らされる。

179モンスターズの憂鬱(1):2005/02/03(木) 06:50:52

 ロンダルキアの夜空には、今日も星が見えない。決戦を前にして、吹雪は最後の抵抗を見せるように
いつにも増して猛烈に吹きすさんでいる。
 暖炉で薪が爆ぜる音を聞きながら、ロランは窓の向こう側の景色をぼんやりと
眺めていた。愛用のゴーグルを膝元に置いて、ロッキングチェアを所在無げに揺らす。それまでの旅路では
ただのアクセサリーに過ぎなかったゴーグルも、極寒の地となれば話は別だ。
 心ここにあらず。まさにそんな感じのロランをいよいよ見かねて、サトリはもはや読み飽きた魔術書を
しおりも挟まずにぱたりと閉じた。
「どうした、ロラン?」
「え?」
 後ろから突然に呼びかけられて、ロランは一瞬だけ肩をすくめた。野外に出ればどんなにかすかな
魔物の気配でも感じ取るはずの剣の名人がこの体たらくとは、何とも情けない。
 サトリは呆れるのをこらえてもう一度同じ質問を繰り返す。しかし返ってきた答えは実にそっけないものだった。
「いや、何でもない」
「何でもないって、お前。少し気ぃ抜きすぎだろ」
 そうかな、と言いながらはにかんでみせるロランの表情はどことなく曇っていて、何でもないはずが
無いことを如実に物語っている。サトリは呆れついでにため息をこぼした。
「何でもないこと無いわよ、顔色も悪いわ」
「ルーナまで。そんなことないよ」
 放っておけば「どうかしたのか」と「何でもない」の堂々巡りに発展しかねない。そう確信した
ルーナは、とうとう二人に口を挟んだ。
「無理しないで、私たち仲間なんだから」
 彼女の使う「仲間」という言葉は、心なしかロランとサトリが口に出す以上に重いものをはらんでいる。
ルーナが背負った境遇によるものもあるだろうが、何より、彼女の裏表ない優しさがその一言に
込められているせいに他ならない。
 戦友にして親友の二人に迫られて、ロランは気弱な笑みをますます情けなく崩した。
「ごめん。でも本当に何でもないんだ」
 それぞれに一度ずつ伝えた言葉を、ロランはもう一度やんわりと繰り返す。
 物腰こそ柔らかいもののこうなると彼は中々に頑固で、余程のことでもなければその主張を変えることは
ない。それをよく知る二人には、追及を諦めるより他の選択肢は残されていなかった。
「それならいいけど、ロランったらいつも一人で抱え込むんだもの。でもまあいいわ、私たちでよかったら
いつでも相談に乗るから」
「ありがとう、ルーナ」
 心優しい少女の一言に顔を綻ばせて、ロランは感謝を述べた。決して個人の領域に無理やり踏み込む真似を
しないルーナは、相談役としてこの上ない相手だと彼は思う。
「あ、シスターに呼ばれてる。私ちょっと行ってくるわね」

180モンスターズの憂鬱(2):2005/02/03(木) 06:51:22

 気候に慣れ、強敵との戦いに慣れるためには、それなりの時間が必要だ。そのために身を寄せる場所を
提供してくれたのは、ロンダルキアにただ一つ佇む小さな祠の神父とシスターだった。日々の食事から蘇生まで
何かと世話になっており、特に女性同士ということもあってかルーナとシスターは親しくしているようだった。
「ルーナの奴、意外と呑気なんだな」
 若い女性の声がした台所へとルーナは小走りで駆けていく。彼女がドアの向こうへ消えるのを
見届けて、サトリは軽くため息をこぼした。
「そう?」
「明日はいよいよだってのに」
「気楽な方がいいよ。変に気張るよりは」
「そりゃそうだ」
「だろ?」
 言葉少なな形ばかりの会話を断ち切るように、気のない笑顔を浮かべたままロランはついと窓の外へと
視線を逸らした。白く柔らかなはずの雪の結晶が、鋭い凶器となって窓ガラスに噛み付いてくる。ほんの
数センチ先の光景が、暖かな部屋の中では遠い出来事のようだ。
 その様を食い入るように見つめるロランの肩を、サトリはぐいと掴んだ。
「……おい」
 ロランはサトリの乱暴な仕草に少しためらった風だったが、彼の目が怒っていないことを
確認すると、また力ない笑みを作って言った。
「サトリ、ルーナにも言ったけど大丈夫だよ。ただ疲れてるだけだ」
「疲れてるだけってお前、」
「今日戦った魔物……あいつら、ものすごく手強かっただろ? それだけだよ」
 思い切り顔を渋らせたサトリの言葉を遮って、ロランは矢継ぎ早にそう告げた。彼のこういう態度は珍しい。
「……」
 ルーナのように柔和な態度を取ることは、サトリには出来ない。こうも頑なに拒まれ続ければ、
サトリは黙り込むしかなかった。
 それを納得してもらえたのだと受け取ったロランは、規則正しく揺れていたロッキングチェアから
立ち上がった。握り締めたゴーグルのレンズは、手のひらの温もりで白く曇っている。
「心配しなくても、今日はもう寝るから。明日はいよいよハーゴンの討伐だし、体調は万全にしておかなくちゃね」
 サトリのほうを見てへらりと笑ったロランの顔色は、確かに先刻ルーナが言ったように優れない。明らかに
苦悩を抱えているロランを放っておくわけにもいかなかったが、それにしても彼を引き止めておくのは憚られた。
「……ああ」
「じゃあ、僕は先に寝室に行ってるよ。サトリも早く寝たほうがいい……お休み」
「……ああ」

181モンスターズの憂鬱(3):2005/02/03(木) 06:51:44

 手に持った魔術書の内容は、先程以上に頭に入ってこなかった。いつものサトリなら熱中して読みふける、
高尚な文句が書き連ねられているはずの文字列が、今はただの記号に見えて仕方がない。
 自分を納得させるように盛大なため息を吐き出して、サトリは立ち上がった。
 台所ではルーナとシスターが明日の弁当の下ごしらえをしていて、「もう寝る」と告げにその場面を覗いた
サトリは何だか拍子抜けしてしまった。まったくハイキングにでも行くつもりなのかと言いたくなる様な、苦難の
旅の集大成が目前になっているとはとても思えない光景だ。しかしそれが彼女たちなりの心遣いであり、
精一杯の気晴らしであることも同時に理解していたため、彼は敢えて何も言わずにその場を立ち去ることにした。
 石造りの階段を上って、二階へと向かう。年老いた神父は既に寝入っているらしく、男二人が
拝借している寝室の隣部屋は静まり返っていた。
 サトリは寝室のドアを開いた。ランプの中で炎がちらちらと揺れ、室内を暗く照らしている。
「……ロラン、まだ起きてるか?」
 返事はなかったが、寝台の上でロランの身体がぴくりと動く。ロランがそのまま起き上がろうと
したので、サトリは慌てて制した。
「そのままでいいから聞け、そのままでいいから」
 すっかり綻びだらけになった愛用の法衣をロランが寝ていないほうの寝台へと投げ捨てて、サトリは暖かな
毛布の中に潜り込んだ。寝返りを打つと、背中を向けて毛布に包まるロランがちょうど目線の先になる。
「……俺たちが心配してるのはな、お前の体調だけじゃない、気持ちもなんだよ。ルーナも
言ってたけどさ、お前いつも一人で抱え込むから。ルーナに話せないことだったら、俺が聞いてやる。
明日の戦いに臨むのにそんな状態じゃ、ハーゴンにも失礼ってもんだろうが」
 下の階で話した際に言えなかったことを、サトリは一息に吐き出した。ロランは一瞬だけ肩を動かしたが、
それきり固まって動かなくなる。
 重苦しい沈黙に耐え切れずにサトリがとうとうあくびを漏らしたところで、たった一言、彼はぼそりと呟いた。
「……ごめん」
 ようやく口を開いたロランのあまりにも彼らしい言葉に、サトリは思わず苦い笑みを浮かべる。
「謝るな。俺たち仲間だろ? 何も話してもらえないんじゃ、逆に不安なんだよ」
「ごめん、ありがとう」
「だーかーら謝るなって、俺お前に謝られるの苦手なんだよ」
 耳の辺りが痒くなる、と言ってサトリはぼさぼさの金髪を掻きむしった。ついでに上半身を起こして、
皺が寄った毛布を撫で付ける。

182モンスターズの憂鬱(4):2005/02/03(木) 06:52:17

「はは、サトリらしいな……大したことじゃないけど、聞いてくれるかい」
 幾重にも重ねられた毛布を掻き分けて、ロランは寝返りを打った。それゆえに精悍な顔立ちになり切れない
大きく丸い瞳が、遠慮がちにサトリを捕らえる。
「ったりめぇだろ」
 相棒のそんな顔を見るのが、実はサトリのお気に入りだった。サトリは戦闘能力もリーダーとしての気質も、
ロランには決して叶わない。彼が唯一このローレシア王子に優越感を抱ける瞬間が、まさに今だった。
「……バズズ」
「え?」
「今日戦った、あのシルバーデビルだよ」
「あ、ああ……そいつがどうかしたのか?」
 ハーゴンが潜む塔の番人。あの白い魔物を、忘れられるはずがない。
 他の同種の魔物とは比べ物にならない体躯、知能、魔力。もはやロンダルキアに残す敵はハーゴンのみ、と
息巻いていた三人が急遽祠での一晩の静養を過ごさざるを得なくなったのは、偏に彼によるものだった。
「あいつが最期に言ったこと、サトリは覚えてるか?」
 サトリのいる寝台の方を向きながらも、ロランの視線はどこか遠くへと向けられていた。サトリは
何も言わず、ロランの次の言葉を待った。
「覚えてないんならいいんだけど」
 何も言わない親友に気が咎めたのか、ロランはふとそう言った。
「言えよ」
 サトリは強い目線でロランを見据える。こういう場合、視線が強いほうが勝つのだ。
 ついに折れたのは、ロランの方だった。
「まったく、君に隠し事は出来ないな」
 苦い笑みを浮かべるのは、今度はロワンの番だった。寒気に荒れてひび割れた唇を痛そうに吊り上げながら、
悪戯っ子のようににやりと笑ってみせる。しかしその笑顔は、次の台詞をつむぐ前に消えてなくなっていた。
「……勇者が英雄とは限らない、超人はすなわち魔の者に等しいのだから」
 頬に当てた枕に視線を落として、ロワンは言った。
「は?」
 サトリが反射的に疑問符を返したのを、つまりいまいち意味が飲み込めないのだとロランは
解釈したらしく、取り繕うように言葉を続ける。
「よく分からないだろ? 僕もよく分からないんだ。……だけど、何だか嫌な気分になってさ」

183モンスターズの憂鬱(5):2005/02/03(木) 06:52:56

 それきりロランは何も言わず、サトリもどう返したらいいか分からずに黙り込んだ。こういうときに
上手い慰めの言葉を思いつけない自分が、サトリにはもどかしくてならない。
「……まあ、アレだ」
「ん?」
 こういう場合、軽口王子が思いつく最善策は決まってただ一つだった。
「とにかく、俺たちが英雄じゃなきゃこの世界に英雄なんて存在しないぜ。俺たち以上の勇者なんて
いやしねぇんだからさ」
「うっわ、ご先祖様の罰が当たりそうだ」
 軽口で全てを煙にまいてしまえ。それが、サトリが苦し紛れに達した結論だった。それでも、途端に
破顔していつもどおりに自身の失言をたしなめるロランを見ると安心できる。
「ま、いいじゃねぇか」
「サトリらしいや」
「俺らしくない俺なんて俺じゃないだろ」
「あはは、おっしゃる通りだな」
 ひとしきり掛け合い漫才を楽しんでひとしきり笑った後で、サトリはふと真顔に戻って呟いた。
「バズズとやらが何を言ったか俺は知らないけど、お前はお前だ。気にすんなよ」
「……うん」
 ロランの丸い瞳が泣きそうに歪められて、サトリは胸中で焦る。
「ま、俺から言わせりゃお前の馬鹿力は十分化けもんだけどな」
 サトリが気まずい雰囲気をごまかそうとすると、決まって冗談交じりの言葉が口からこぼれてくる。
それを知らないロランではなかったから、彼の言葉ひとつひとつが一々ありがたかった。
「失礼だな、そんなこと言ったらしょっちゅう死んだり生き返ったりしてる君だって化け物じゃないか」
「ルーナだって人外になった前科ありだぜ」
「それ、ルーナに聞かれたら確実に殺されるな」
 二人は声を揃えてくつくつと忍び笑った。下の階から今にもくしゃみが聞こえてきそうだ、とサトリは思った。
「とにかくだな、俺たちゃ三人揃って化けもんだってこった。あんまし気にするな」
「別に気にしてなんか、」
「そうやってすぐに弱いとこ隠すのな、お前は」
 ロランの否定の言葉は、サトリの鋭い声色にかき消された。突然おどけた調子を潜めたサトリに
ロランはうな垂れるしか出来ず、毛布を寄せて肩を覆った。
「何につけてもそうだ。剣術の稽古もこそこそやって、わざわざ俺たちの目を盗んで魔術指南の本読んで。
腹に穴開いてんのに『気にするな』って言われた日にゃ、本気で気にするの止めようと思ったぜ」
「それは……」
 その先に続く言葉が見つけられず、ロランの弁明は未完成のまま空気に溶けていった。
「言い訳無用。俺はお前のそういうとこ嫌いじゃないけど、不安になる。そのままじゃ多分、いつか自滅するぜ」
「そんなことないよ」
「……どうだか」
「サトリは時々心配性すぎるんだよ、それだけだって」
「そうかねぇ」
「そうだよ」
「……まぁいいや。さ、寝るぞ」
 これ以上話しても埒が明かないことは眼に見えて分かっていたので、サトリは押し問答がこじれる前に
会話を打ち切ることにした。改めてもぐりなおした寝台は、体温が移ってすっかり温まっていて心地いい。
「ああ、お休み」
「明日寝坊すんなよ」
 最後の戦いを控えているはずなのにロランの就寝前の挨拶の調子はいつもと全く変わらず、それが
やや緊張気味のサトリには少し癪に障った。
「君に言われたくないな」
 茶々を入れれば、思いがけずロランは笑いながらも付き合ってくれた。引っ込みが付かなくなって、
サトリは言い返す。
「俺がいつ寝坊したんだよ」
 笑いを交えながら、ロランは今までの長い旅路を思い出す。こうして振り返ると、辛かったことなど
なかったように思えてしまうから不思議だ。
「リリザを発つ朝だろ、ラーの鏡を探しに行く日にもだし、ああ、確かデルコンダルの決闘の
ときもだ。ベラヌールの一件は仕方ないけど、テパの町でドン・モハメに会いにいくのが昼過ぎに
なったのは君のせいだよね……って、サトリ?」
 同意を求めてサトリへと声をかけたが、ついに彼からの返事はなかった。二人分の呼吸音と吹雪が
窓を叩く音だけが、部屋の空気を振るわせていた。
「何だ、もう寝ちゃったのか。……お休み、サトリ」
 最後に親愛を込めて友人の名を口にして、ロランは瞳を閉じる。

184モンスターズの憂鬱(6):2005/02/03(木) 06:53:16

 それきりロランは何も言わず、サトリもどう返したらいいか分からずに黙り込んだ。こういうときに
上手い慰めの言葉を思いつけない自分が、サトリにはもどかしくてならない。
「……まあ、アレだ」
「ん?」
 こういう場合、軽口王子が思いつく最善策は決まってただ一つだった。
「とにかく、俺たちが英雄じゃなきゃこの世界に英雄なんて存在しないぜ。俺たち以上の勇者なんて
いやしねぇんだからさ」
「うっわ、ご先祖様の罰が当たりそうだ」
 軽口で全てを煙にまいてしまえ。それが、サトリが苦し紛れに達した結論だった。それでも、途端に
破顔していつもどおりに自身の失言をたしなめるロランを見ると安心できる。
「ま、いいじゃねぇか」
「サトリらしいや」
「俺らしくない俺なんて俺じゃないだろ」
「あはは、おっしゃる通りだな」
 ひとしきり掛け合い漫才を楽しんでひとしきり笑った後で、サトリはふと真顔に戻って呟いた。
「バズズとやらが何を言ったか俺は知らないけど、お前はお前だ。気にすんなよ」
「……うん」
 ロランの丸い瞳が泣きそうに歪められて、サトリは胸中で焦る。
「ま、俺から言わせりゃお前の馬鹿力は十分化けもんだけどな」
 サトリが気まずい雰囲気をごまかそうとすると、決まって冗談交じりの言葉が口からこぼれてくる。
それを知らないロランではなかったから、彼の言葉ひとつひとつが一々ありがたかった。
「失礼だな、そんなこと言ったらしょっちゅう死んだり生き返ったりしてる君だって化け物じゃないか」
「ルーナだって人外になった前科ありだぜ」
「それ、ルーナに聞かれたら確実に殺されるな」
 二人は声を揃えてくつくつと忍び笑った。下の階から今にもくしゃみが聞こえてきそうだ、とサトリは思った。
「とにかくだな、俺たちゃ三人揃って化けもんだってこった。あんまし気にするな」
「別に気にしてなんか、」
「そうやってすぐに弱いとこ隠すのな、お前は」
 ロランの否定の言葉は、サトリの鋭い声色にかき消された。突然おどけた調子を潜めたサトリに
ロランはうな垂れるしか出来ず、毛布を寄せて肩を覆った。
「何につけてもそうだ。剣術の稽古もこそこそやって、わざわざ俺たちの目を盗んで魔術指南の本読んで。
腹に穴開いてんのに『気にするな』って言われた日にゃ、本気で気にするの止めようと思ったぜ」
「それは……」
 その先に続く言葉が見つけられず、ロランの弁明は未完成のまま空気に溶けていった。
「言い訳無用。俺はお前のそういうとこ嫌いじゃないけど、不安になる。そのままじゃ多分、いつか自滅するぜ」
「そんなことないよ」
「……どうだか」
「サトリは時々心配性すぎるんだよ、それだけだって」
「そうかねぇ」
「そうだよ」
「……まぁいいや。さ、寝るぞ」
 これ以上話しても埒が明かないことは眼に見えて分かっていたので、サトリは押し問答がこじれる前に
会話を打ち切ることにした。改めてもぐりなおした寝台は、体温が移ってすっかり温まっていて心地いい。
「ああ、お休み」
「明日寝坊すんなよ」
 最後の戦いを控えているはずなのにロランの就寝前の挨拶の調子はいつもと全く変わらず、それが
やや緊張気味のサトリには少し癪に障った。
「君に言われたくないな」
 茶々を入れれば、思いがけずロランは笑いながらも付き合ってくれた。引っ込みが付かなくなって、
サトリは言い返す。
「俺がいつ寝坊したんだよ」
 笑いを交えながら、ロランは今までの長い旅路を思い出す。こうして振り返ると、辛かったことなど
なかったように思えてしまうから不思議だ。
「リリザを発つ朝だろ、ラーの鏡を探しに行く日にもだし、ああ、確かデルコンダルの決闘の
ときもだ。ベラヌールの一件は仕方ないけど、テパの町でドン・モハメに会いにいくのが昼過ぎに
なったのは君のせいだよね……って、サトリ?」
 同意を求めてサトリへと声をかけたが、ついに彼からの返事はなかった。二人分の呼吸音と吹雪が
窓を叩く音だけが、部屋の空気を振るわせていた。
「何だ、もう寝ちゃったのか。……お休み、サトリ」
 最後に親愛を込めて友人の名を口にして、ロランは瞳を閉じる。

185モンスターズの憂鬱(7・終):2005/02/03(木) 06:53:51
 隣の寝台からすうすうと控えめな寝息が聞こえるのを確認して、サトリは瞼を開いた。
「……やっぱ、気にしてたか」
 彼は知っていた。魔物が死の間際にロランに放った呪詛の言葉も、バズズの落ちた首を睨みつけて
ロランが異様に身体を硬くしていたことも。
 若年ながらも武術の国・ローレシアで一、二を争う剣術の達人であるロランが、その力ゆえに
恐れられていることもサトリはまた察していた。旅の途中で立ち寄ったローレシア城だが、ロランと
連れ立って歩いているだけで何か得体の知れないものを見るような眼差しを向けられるのが、
彼にはたまらなく不快だった。
 サマルトリアではのんびり屋で通っていたサトリだが、自分はのんびり屋というよりも単に
怠け者で面倒くさがりのだけだ、と彼は思っている。へらへらと振舞ってはいるが、周囲の感情には
わりと敏感な自信があった。
 尊敬と怯えが入り混じった視線を受けるたび、ロランの肩が強張るのが痛々しい。そして日頃から穏やかで
笑みを絶やさない彼の瞳に影が落ちるのに、サトリは逐一心を痛めていた。
 だからなのだろう、とサトリは思う。バズズの言葉にロランが敏感に反応したのは。
 魔物という存在は一概に人の弱い心を見抜き、付け込む力に長けているものだ。その中でも抜きん出た
力を持つバズズのような輩なら、相手の精神を抉ることなど造作もないことに違いない。
「こればっかりは、俺がどうにか出来る問題じゃねぇもんな……」
 サトリは小さくぼやいて、ため息をこぼした。

 ――出来ることならば、守ってやりたい。誰にも傷付けさせたくない。

 彼にこの思いが伝わるときは、きっと来ない。しかし大切なのはそれではないことを、
サトリはよく理解していた。
 静かに眠るロランを起こさないよう、気配を消してサトリはそっと起き上がる。寝室に備え付けられた
小さな机の上には、精霊ルビスから送られた美しい宝玉の首飾りが無造作に置かれていた。
 惑いを打ち払うルビスの加護が込められたその守りを、毛布越しのロランの胸元にそっと乗せる。彼の
苦悩が少しでも晴れるよう祈りを込めて。
 明日の朝ロランが目覚めて、精霊の宝玉が彼の寝台にあることを尋ねられたら何と答えたらいいものか。
 ――とりあえず、ルビスが加護を与えたのだろう、とでも言っておこう。
 そう思いながらサトリは再び毛布に包まった。



 明日、彼らは英雄になる。

186179-185:2005/02/03(木) 06:58:51
本スレで話題が出ていたモンスターズ+で書かせていただきました。
数あるDQ漫画の中でも屈指の名作だと信じて疑ってないです(w
勢いあまって書いたもののどこに投下すればよいか分からなかったので、
とりあえず2部門で投稿させていただきました。
お眼汚し、失礼致します。

187名無しの勇者:2005/02/03(木) 07:31:07
>186
GJでつ。
ロランかわええ(*´Д`)ハァハァ
孤立しているのを一人ただ耐えているロランが激萌えでつ。

>175さんも是非、続きキボンヌ。

188179-185:2005/02/05(土) 00:12:57
184さん、感想ありがたいです。
稚拙な節も多々ある文ですが、萌えていただけるなんて光栄です。
久々にモンスターズ+萌が来てますので、もしかしたらまたこそこそ投下してるかもしれません。

……5と6が凄いことになっちゃってますが、見てみぬ振りしてくださいorz

189179-185:2005/02/05(土) 00:15:33
184って……187さんごめんなさい○| ̄|_

190名無しの勇者:2005/02/05(土) 02:28:42
>179-185の姐さん
楽しませてもらいました。3人ともすげーイイ!
モン+好きとしてもの凄く感謝!

191179-185:2005/02/07(月) 22:48:46
こりずにまた投下します。179-185の続きになります。
相変わらず上手く纏められてない文ですが、どうぞご容赦ください……。

192君の願いが叶う日(1):2005/02/07(月) 22:49:28

 ロランが目を覚ましたのはまだ夜が明ける前で、就寝前に灯した
寝台の脇のランプの火は尽きかける寸前のところでちらちらと揺れ、瞼越しにも
その存在を主張していた。
 眠りの世界から放り出されてしまった以上瞳を閉ざし続けているわけにも
ゆかず、ロランはうっすらと目を開けた。乾ききった眼球と瞼が擦れて
少し痛い。寝覚めでぼやけた視界には、何の飾り気もない石の天井が広がっている
だけだった。もはや見慣れた目覚めの景色だ。ロンダルキアの祠で寝泊りを
世話してもらうようになってから、もう十日以上が経つ。
 何度かまばたきを繰り返しながら、ロランは頭をゆっくりとめぐらせて
部屋の様子を見渡した。雪明りが厚手のカーテンの切れ間からぼんやりと漏れて、
かすかなランプの炎と共に部屋の中を照らし出していた。暗く重たい天井が、今いる場所が
旅の途中で立ち寄った街々の宿屋とは違うことを、最後の戦いがいよいよ迫っている
ことを、嫌でもロランに思い出させる。
 窓の外はこの世の終わりのように静まりかえっていて、昨夜には確かに
吹きすさんでいたはずの吹雪がまるで嘘のようだった。隣の寝台から漏れる
サトリの規則正しい寝息以外、音は無い。
 とうとうここまで来てしまったのか、とロランは改めて思った。ローレシアの城を
旅立ってからの様々な出来事が、一瞬のうちに頭の中を通り過ぎていく。
先行きも見えないまま一人でさ迷った頃があまりに遠い昔のように思えて、彼は
布団の中で音を立てずに笑った。
 本当にいろいろな事があったものだ。世界中を旅して回った。行き詰まったことは
多々あったが、その旅にも今日で終止符が打たれる。邪神官を討ち、ロトの血が
世界を救う。その目的がいよいよ果たされるのだ。
 それは喜ぶべきことだったが、ロランには一抹の名残惜しさもあった。志を共にする
仲間との、使命を帯びながらも気ままな旅。世間を知らずに城の中で育った
箱入り王子にとって、触れるものは皆一様に新鮮で素晴らしいものばかりだった。
広大な草原、荘厳にそびえる山々、賑わう下町。
 宿屋で出された暖かな郷土料理をつつきながら、サトリの冗談をルーナが
やんわりとたしなめる。それをロランが笑って、二人も笑う。時には弱音も吐きながら、
三人で確かめ合いながら進んだ道程。

193君の願いが叶う日(2):2005/02/07(月) 22:49:56

 長い旅路を思い出せば、旅の感傷ばかりがロランの胸を満たした。
 ――今はまだ、振り返るときじゃない。
 取りとめも無く流れる思考を移すように仰向けのままの姿勢から寝返りを
打とうとして、ロランはふと胸元に重みを感じた。ずっしりとのしかかる
その感覚は、しかし不思議と心地いい。
 毛布の上に右手を這わせて探ると、すぐに原因を突き止めることができた。
「……あ」
 毛布を除けて起き上がったロランが目にしたものは、美しい宝玉だった。大地の
精霊の紋章をいただいたその首飾りは、ランプの炎を受けてきらきらと
輝いている。ひんやりとした感触が火照った肌に心地いい。
 その首飾りを手に持ったまま、おや、とロランは首をかしげる。就寝前、それを確か
卓の上に置いたはずだと彼は記憶していた。精霊の守りに祈りをささげてから
眠りにつくことが、最近の彼の習慣になっていたのだ。
 ただの思い違いなのかとも考えたが、自分が寝台に持ち込んで眠ったのだとは
到底ロランには信じられなかった。他にも様々な可能性を模索してみたものの、
納得する理由が欠片も見つからない。
「何なんだ、一体……」
 誰に言うでもなくロランは呟いた。まったく身に覚えの無い出来事は、少し不気味だ。
 沸き起こる不審な思いを振り切るように、彼はわざと大きく頭を揺さぶった。
その拍子に、サトリの眠る寝台に視線が移る。すぐ隣で悩むロランなどどこ吹く風で
呑気にいびきなどをかいていて、ロランは八つ当たりよろしくその金髪頭に少し腹を立てた。
 こののんびり屋め、と目一杯の皮肉と親愛を込めてサトリに無言の非難を浴びせた
ところで、ロランははたと気付く。
 ――ああ、そうか。
 ロランは、ふと昨晩のサトリとのやりとりを思い出した。
『お前はお前だ。気にするな』
 ロトの守り神と言っても過言ではない精霊ルビス。彼女から賜ったその美しい守りは、
あらゆる迷いや誘惑を断ち切り、正しき道を示すという。「してやったり」と言わんばかりの
皮肉っぽいサトリの笑みが、手に持った宝玉の光の中に浮かんで、消えた。

194君の願いが叶う日(3・終):2005/02/07(月) 22:50:41

 思い返せば、いつもそうだった。
 どんな些細なことにも耳を貸し、親身になって心配してくれるのはルーナだ。サトリは
滅多なことがない限り、表立って励ましの言葉をかけるような真似はしない。
かと言って彼が冷血漢だというわけでは決してなく、いつでも遠まわしながらよろける
ロランの肩を支えてくれた。
 ロランは手にしたルビスの宝玉をそっと持ち上げた。銀の止め具が
しゃらしゃらと軽やかに鳴り響いて、不気味に静まり返った部屋の空気を洗い流して
いく。そういえば昨夜の苦悩に反して不思議と嫌な夢にうなされなかったことを、ロランは
思い出す。
 不器用で遠回りで、あまりにも直接的なその激励のやり方に、彼はつい
顔をほころばせた。改めてサトリの眠る寝台を覗き込んだが、よく見ればそれは
照れくさくてそっぽを向く悪戯っ子のようにも見えて、ロランは笑みをますます濃く浮かべた。
 サトリのことだ、どうせ目が覚めたら適当な台詞でごまかすつもりだろう。彼とはお世辞にも
長年の付き合いとは言えないが、ロランとて伊達に苦難の旅を共にしてきたわけでは
ない。サトリが視線を斜めに向けて「精霊様の加護でも下ったんじゃねぇの」とでも言う姿が
容易に想像できた。
「まったく……口で言ってくれればいいのに」
 そうは言ってみたものの、励ましや慰めを言葉にすることが何よりも苦手なサトリの
ことだ。それが精一杯の彼なりの感情の表し方なのだと、ロランには痛いほどよく分かった。
 ――苦しいのなら、守ってやる。俺がお前を。
 迷いを払うという精霊の宝玉は手の内で柔らかくきらめいて、サトリの無言の心遣いを
そうと告げていた。
「言ってくれなきゃ、こっちも何も言えないんだよなぁ」
 敢えて声に出してそう呟き、ロランは苦く笑う。是、と答える準備は既に出来ていた。
 実際、ロランはサトリの思いに薄々勘付いていた。仲間として、友人としての連帯意識や
親近感――そしてそれ以上の思慕にも。
 感情をストレートに伝えるのは不得手なサトリだったが、その挙動一つ一つから彼の
思いを読み取るのは、造作も無いことだった。基本的に分かりやすいのだ、サトリという男は。
 しかしながらその好意に対する否定的な気持ちは不思議と湧き上がって来ない。今まで
腫れ物を触るような扱いを受けて育ってきたロランには、むしろ彼の気持ちは有難かった。
 そしてそれが叶わぬことだとも、彼は余さず理解していた。
 魔法こそ使えないものの、剣術ならば誰にも負けない自信がある。少なくとも、
王宮兵士直々の指導を体よく抜け出してさぼっていた(本人が語っていたので間違いあるまい)
サトリでは、「守ってやる」対象が逆転してしまっているのが現実だった。
 それ以前に同性同士、何よりもそれぞれが継承すべき王家の血筋を担うべき存在だ。この旅が
終わってしまえば、おそらく身を寄せ合うことすら儘ならないだろう。
 それでも、ロランは思うのだ。

 ――彼が自分を守りたいと思うのなら、守られてやりたい。全てが終わったら、いつかきっと。

 我ながらわがままで子どもじみた考えだと胸中で笑い、その思いが叶うときが
来ることをロランは心から願った。

195名無しの勇者:2005/02/13(日) 03:41:43
>192-194
乙です。すごくよかったよ。感想スレも覗いてみて下さいね。

196名無しの勇者:2005/03/09(水) 19:51:27
忘れられた頃にサトロラひっそり投下します。
無茶苦茶長くなった上にぐだぐだでごめんなs…y=-( ゚∀゚)∵ターン

197So, you don’t have to worry(1/6):2005/03/09(水) 19:53:14

 幾百年もの沈黙を保っていた双塔が轟音と共に崩れ去っていく。深い憎しみや孤独や
悲しみを一身に背負い続けてきたその塔は、長い年月を経てようやくすべての役目を果たし
終えたようだった。
 その様子を、三人は遠くからじっと眺めていた。
 危険にいち早く気付いたサトリが二人を引き連れて移動呪文を唱えたのだ。崩壊を始めた
塔の頂上にいたサトリとルーナ、双塔の架け橋の下に風のマントで落下していたロラン、
そのままであれば、三人とも瓦礫のなだれに巻き込まれて間違いなく命を落していただろう。
「……終わったのね」
 感慨深げにルーナはぽつりと言った。丸く愛らしい瞳は細められ、今やすっかり瓦礫の
山と化したロンダルキアの双塔に向けられている。彼女は気付かなかったが、その脇では王子
二人も同じようにどこか気の抜けた表情を浮かべて遠くを見つめていた。
 長い、本当に長い道のりだった。世界を駆ける旅を終えて尚出口の見えなかった苦悶の
日々が、ついに終わりを迎えたのだ。
 ロンダルキアの雪山に木霊していた双塔の最期の咆哮が次第に遠のいていく。やがて辺りが
完全な静寂に包まれ、遥か彼方の空で鳶が鳴いた。その呑気な声が無性におかしく
感じられて、三人は足元に広がる草原に寝転びわけも分からぬままに笑いあう。
 そうしてひとしきり騒いでから、三人一様に無言で青空を仰いだ。快晴だ。ほんの
数刻前までは吹雪と暗雲に隠れていた陽光が、今は惜しげもなく大地に降り注いでいる。
「さて……これから、どうする?」
 いつしか重くなっていた口を最初に開いたのは、サトリだった。上半身を起こし衣服に
付着した葉を大雑把に払う。邪神官討伐の旅に赴いたときと同じ、紋章の刺繍が施された
法衣だ。そしてサトリが何気なく呟いた台詞は、宿先で地図を囲みながら三人でよく
交し合った言葉。かつて旅をしていた頃を思わせるような一場面に、ロランは自然口元を緩ませた。
「これから、か。そう言えば考えてなかったな」
「そうねぇ……もとの時代に帰る方法も分からないし、どうしたらいいかしら」
 緩和しきった頭を働かせる気になれず、ロランはなおざりに返事を返す。ルーナも同じ
気分なのだろう、柔らかな若葉の上で寝返りを打ちながら似たような台詞を吐いた。
「とりあえず、なるようにしかならないってか」
 全く実のない意見を全く実のない結論で適当にまとめ、サトリは大きく口を開けてあくびをした。

198So, you don’t have to worry(2/6):2005/03/09(水) 19:53:44
 見知った土地に見知った仲間を目の前にしてあやうく失念しかけていたものの、彼らが身を
置いているその時代は本来三人がいるべき時軸ではなかった。いつの間にか迷い込んだ
その世界では、三人にしてみればほんの数月程度前の出来事である破壊神との戦いが、既に
伝説と化すほどに過去のこととなっている。
 ルーナと同じように寝返りを打って、ロランは瞳を閉じた。そしてたった幾日かの間に起こった
数々の出来事を瞼の上に思い浮かべる。見慣れぬ魔物を供とし自らを魔物使いと名乗った不思議な
少年、異形の力を身に纏ったかつての強敵との邂逅。絶望の深淵、そして再会。
 その横では、サトリとルーナも同じように目を閉じて数日間の記憶を思い返していた。
 二人にとっても、それは忘れられぬ日々である。
 行方をくらましたままの仲間を探して世界中をくまなく探し回った後の、最後の望みを託しての
ロンダルキアへの過酷な旅。邪の神は滅びても世界に根付いた魔物の存在は消えず、極寒の
地へと続く洞窟には相変わらず侵入者を狙う獣たちがはびこっていたのだ。
 しかしやっとの思いで辿り着いたその白銀の世界にも友の姿はなく、二人は激しい
絶望にかられた。もはや友はどこにもいないのではないか、もしや思いつめて自ら命を絶って
しまったのではないか、と悲嘆にくれる二人の前に、突如現れた旅の扉。
 一縷の希望に縋るがごとく飛び込んだその先――そこに、彼はいた。
 再会の感激を噛みしめる間もなく激戦に巻き込まれはしたものの、彼らはようやく
巡り合うことが出来たわけだ。
 そして今、こうして何事もなかったように三人で日光浴などをしている。隔てられた時を微塵も
感じさせないそのひと時は、三人にこの上ない幸福感を与えた。
 風はどこまでも穏やかで、僅かにこびり付いたままの悲しみすらも洗い流していくかのように、
柔らかく草原を吹き抜けていく。頭上では鳶が輪を描いて舞っていた。

 頭上で燦然と輝いていた太陽が次第に西に傾き、溶け残った雪が夕日を受けて黄金色に
輝き始めた頃、三人はようやく重い腰を上げた。
 吹雪は収まったとはいえ、ロンダルキアは高山地帯だ。宵になれば底冷えのする外気が容赦なく
体温を奪っていくだろう。その上洞窟などには凶暴な魔物も多数生息しており、野宿を
するにはあまり向かない土地である。
「しっかし、どこに行ったもんかねぇ……」
 サトリは辺りを見渡した。視界の隅々まで広がる大自然は美しく壮大だが、現在彼らが
置かれた状況を考えるとあまり喜ばしい景色ではない。
「あの祠は?」
「まだあるけれど、今は誰もいない」
 ルーナが案を出したが、ロランはやんわりと却下した。自身もまた旅の途中で世話になった
祠を訪ねてみたのだが、そのときには既に無人で、誰かに荒らされたような状態になって
いたと彼は語った。
「そんなトコは御免だぜ」
 彼らが現在いる位置は、双塔がそびえていた台地を見渡せる小高い丘だ。そこからかつて
三人が身を寄せていた小さな教会の祠に向かうには、それなりの時間と体力が必要とされる。
その上凍えることはないと言ったところで、温かな料理や傷ついた身体を休めるための毛布、
治療用の薬草などはとても期待できないだろう。そこへ向かったところで
一時凌ぎにしかならない、とサトリは言ったのだ。
「あ、そう言えば」
「なあに?」
 おもむろに口を開いたロランに、ルーナは話を振った。
「宿なら心配しなくても良さそうだ」

199So, you don’t have to worry(3/6):2005/03/09(水) 19:54:26
 三人の内で唯一移動呪文を能くするサトリの魔力は、もはや長距離の移動を可能に
するほど残されていなかった。「その時代」を長らく旅していたロランがロンダルキア山脈の
麓に人里があることを覚えていたのは、非常に幸いなことだったと言えよう。
 魔力による移動をする際に発せられる青い光に包まれて三人が麓の町に辿り着いた
ときには、すでに気の早い星が輝き始めていた。人々は忽然と現れた少年たちを奇異なものを
見る目でじろじろと眺めたが、すぐに興味をなくしたのかそれぞれの日常へと戻っていく。
 ルーナが何気なくロランに町の名前を聞いたが、ロランは申し訳なさそうに首を振った。極力
人の集まるところを避けて旅をしていたので、町の存在は知っていたが名前までは分からないと
彼は言う。サトリが街道にいた若い娘をつかまえて土地名を聞いてみたところ、それは
三人に聞き馴染みの無いものだった。
 とにかく安い宿を見つけて部屋を取ることができ、定食屋か酒場で腹を満たすことが
できれば町の名前など行く当ても無くさすらう旅人にはどうでもいいことである。それは
ロラン達にとっても同じことで、実際にその町の名物だという温かな料理を目の前にして
しまえば、知らない土地にいるという疎外感は彼らの胸中からほとんど消えうせてしまっていた。
 根菜と鶏肉を主とした簡素な郷土料理だが、町の周辺でしか採れないという香草を
ふんだんに使ったメニューは、なるほど確かに名物というに相応しい味である。元々ハーブの
栽培に興味のあるルーナがしきりと配給係に香草の名前を尋ねていたが、満足な返答は
もらえなかったようで、不満げに頬を膨らませてお薦めだという鶏の香草焼きを突いていた。
 気心の知れた仲間との和気藹々とした晩餐は続き、それをほほえましく眺めていた店の
マスターに地元の果実酒などを振舞われて、三人は上機嫌で料理店を後にした。
 夜の町並みをそぞろ歩きながらの帰路であったために宿屋のドアを叩いたのは随分と遅い
時間になってしまっていたが、おかみは嫌な顔一つすることなくロラン達を迎え入れた。
彼女に侘びを入れて部屋のカギを受け取り、荷物を寝室に放り込んで取りあえずそれぞれ
湯浴み場へと向かう。
 落ち着いて今後の動向を考えられるようになったのは、それから後のことだった。示し
合わせた通りに人気の無い広間を抜けてテラスへと向かう。誰もいない空間は一風変わった
相談をするにはもってこいの場所だ。ロンダルキアから吹き降ろされる冷たい夜風が、風呂上りで
ほてった身体には心地いい。
 周囲を気にすることなく三人頭を寄せて明日以降のことを話し合い、取りあえず数日間の
行動をまとめて寝室へと引き上げることとなった。
「それじゃあ、おやすみなさい」
「うん、お休み」
「おう」
 簡素な廊下の上で、ルーナは王子二人と就寝の挨拶を交わす。三人積もる話もあったのだが、
同室を取ることは流石に憚られた。邪神官討伐の頃には一室で夜を明かすことも時には
あったものの、それは財布の中身に宿代にすら裂く余裕が無かったときのみのことである。何より
身体を休めるための宿で、夜を徹して話し込んでいては元も子もない。明日からはまた、
新たな旅が始まるのだ。
 ルーナの姿がドアの向こうに消えたのを見届けて、ロランとサトリは歩き出した。廊下に
敷かれた質素な絨毯はそれぞれの生まれである王城のような豪奢なものではないが、二人の
ブーツを柔らかく受け止めて足音をしっかりと吸収していく。
 ロランは何も言わずに歩く。時々天井を見上げては、感慨に浸るように吊るさられたランプの
明かりをじっと見つめている。サトリは口を開こうと試みたが何を話していいか分からず、
小さく鼻を啜った。

200So, you don’t have to worry(4/6):2005/03/09(水) 19:55:16

 二人に当てられた部屋は、値段の割には広くて清潔で、風通りのよい比較的上等の部屋
だった。寝台が二つに卓と椅子が一つずつ、備え付けの箪笥にはきちんと折りたたまれた部屋着が
しまわれている。大きめに取られた窓には既に柔らかなカーテンが引かれており、室内を暖かく
照らすランプの光が屋外にこぼれるのを防いでいた。
 お互いにまともなベッドで眠るのは久しぶりだと言って軽く笑い合う。あまりにも長い
別離の時間を感じさせないやり取りが、かえって不思議だった。
「それにしても、ルーナには迷惑かけただろ? 言い忘れてたけど、明日宿を発つ前に
謝っておかないと」
 サトリより先に部屋着に着替え終わって、ロランは寝台に体を預けた。柔らかな毛布と日に
干されたシーツが心地よくて、思い切り顔を埋める。そして思い出したように、ぽつりと
そう言った。
「そうだな……っておい、俺はどうなんだよ、俺は」
 自分に対するねぎらいの言葉が無いことに気づいたサトリは少し口を尖らせる。ゴーグルを
外した頭をわざわざ巡らせ、ロランが身を埋める寝台の方を睨みつけてやった。
「聞くまでも無いだろう。感謝してるよ、ものすごく」
「……それならいいんだけどさ」
 面と向かって謝礼を言われるとかえって照れくさい。サトリは床に放り投げた愛用のマントと
法衣を拾い上げて、無造作に箪笥の中に押し込んだ。空いている寝台に飛び込むと、マットレスの
スプリングが軋んだ音を立てた。
「だけどほら、君はその性格だし。ルーナが道中苦労したんじゃないかなって思ってさぁ」
 寝返りを打ってサトリの方を向き、ロランは歯を見せて笑った。冗談めかして言ってはいるが、
あながち冗談ばかりことをその笑みが語っている。
「お前なぁ……本当のこと言うと傷つくんだぞ」
「自覚はあるんだ」
「文句あっか」
「無い」
 意味の無い会話が、やけに耳に心地よく響く。
 サトリは寝台から起き上がって窓際の卓まで歩き、その上に放り出したままの己のゴーグルを
手に取った。随分と傷が増えているが、レンズだけは新しい。ローレシア王子捜索の旅に出る
ことになり、その出立の折に取り替えたためだ。そのすぐ横にロランの青いゴーグルも置かれて
いたがこちらは目を覆う箇所にもいくつか傷が見られ、サトリは手に取った自分のものとそれとを
見比べて少し心を痛めた。
 それを箪笥の中、旅着の上に無造作に放り込んで、それから部屋の隅に放ったままにされている
少しばかりの荷を箪笥の横に移動させる。就寝前にすべきことが大方終わったのを確認して、
サトリはフロアランプへと手を伸ばした。
「消すぞ」
「ん」
 ロランはくぐもった声で承諾の意を示し、サトリはそれを受けてランプの灯を落とした。
室内は一瞬暗闇に包まれたが、ロランが起き上がってカーテンを開けたため、夜の柔らかな
暗がりがすぐに部屋を満たした。月はなく町明かりはほとんど落ちてしまっていたが、星の光が
仄かに明るい。窓の外、群青の空には雲ひとつ無い。
 サトリは卓上に置かれた夜間照明の小さなランプに手を伸ばしたが、窓際に立ち呆ける
ロランを見てその手をそっと下ろした。彼が何を思っているかサトリには分からなかったが、
何であるにせよそれを邪魔するようなことはしたくなかった。
 サトリは紐を緩めていたブーツを完全に脱いで寝台の脇に転がし、そのまま寝台に倒れこむ。
毛布にもぐりこんで頭を枕に沈め、それだけでは落ち着かないので指を組んで金の髪の下に敷いた。

201So, you don’t have to worry(5/6):2005/03/09(水) 19:56:10
 そうして目を瞑ったものの窓際から動こうとしないロランのことが脳裏から離れず、
サトリはそっと瞼を持ち上げた。彼は微動だにせずガラス越しの夜景を眺めている。静まり
返った町と、うっすらと浮かぶロンダルキアの山脈。
 遠くばかりをぼんやりと見つめるロランの様子を見ていると、彼が再び姿をくらまして
しまいそうな予感に襲われる。サトリは思わず口を開いた。
「ロラン」
「何だい、サトリ」
 名前を呼べばロランは振り返り、そして当たり前のように名前を呼び返される。些細な
ことで妙に安堵を覚える自分に軽く呆れ、サトリは胸中で、ああ、と小さくため息を漏らした。
「その……寝ないのか?」
 声をかけてしまった以上何かしらの話題を振らねばならず、サトリは取りあえず当たり障りの
無い質問を投げかけた。刻限は分からなかったが、大分に遅いことだけは明かりの無い
町並みを見ればすぐに知れた。
「ああ、うん、寝るよ。気に掛けてくれてありがとう」
 ありがとうと言って破顔し、ロランは窓際から離れて寝台へと腰を下ろした。先程サトリが
したように下履きを脱いで、かかとを揃えて寝台のすぐ横に置く。
「別に気に掛けたわけじゃねぇよ。明日からいろいろ大変なんだから、寝られるときに
寝とかねーと」
「あはは、そうだね」
 サトリは言葉尻を濁してふいとあさっての方を向いた。本人はごまかしたつもりの照れが
ロランにはしっかりと伝わって、彼は向けられた背中を見て忍び笑いをもらす。
「それにしても、何だかまだ信じられないな」
「ん?」
「……また三人で旅が出来るようになるなんて、夢みたいだ」
「夢なわけあるか、馬鹿」
「分かってるよ、ただ……」
「ただ、何だよ?」
「嬉しいんだ、本当に。嬉しすぎて実感が湧かないくらい」
「そうか」
 くつくつと笑うロランの声で彼が心底から幸せだと伝わってくる。それを聞いてサトリは
ほっと胸を撫で下ろした。決して口には出さなかったが、サトリとルーナは不安だったのだ。
自分たちがロランを探すことが、彼にとっては迷惑な行為でしかないのではないだろうか、と。
「だったらもうどこにも行くんじゃねえぞ」
「どこにも行かないさ。行きようがないよ」
 柔らかく微笑んで、ロランはきっぱりとそう言い放った。
「その言葉、忘れるなよ」
「ああ」
「すっげぇ手間だったんだからな、お前を探すの」
「……ごめん」
 冗談めかして吐き出した皮肉はサトリの思った以上に効果があったようで、ロランは笑みを
消しうな垂れて頭を枕に押し付け、ぽつりとそれだけ言った。やっとの思いで搾り出されたような
か細い声が、サトリの良心をきゅうと締め付ける。
「……悪い」
「何でサトリが謝るんだ」
「そんなつもりで言ったんじゃねえよ。お前を探すにしたって、好きでやったことなんだし」
 恐る恐る寝返りを打ってサトリはロランが横になる寝台を覗き込んだが、枕に埋もれた
その表情を読み取ることは出来なかった。かける言葉が見つからない。次の台詞を考えあぐねて
とうとう彼が寝返りを打ちなおそうとしたとき、ロランはようやく小さな声を上げた。
「サトリ」
「何だよ」
「……そっち、行っていいかい?」
 枕に吸い込まれてくぐもった、しかしはっきりとしたロランの声がそうと告げた。サトリは
しばらくその言葉を胸中で反芻し、無言で寝台に人ひとり分が横になるのに程よい間を空けた。

202So, you don’t have to worry(6/6・終):2005/03/09(水) 19:57:08
 布が摩れる音と、控えめに弾むスプリングの音と、それから裸足で木の床を歩くぺたぺたとした
音がした。二人分の重みに苦情を訴えるように、マットレスがぎしりと軋んだ悲鳴を上げる。
 毛布越しに触れたロランの重みに鼓動が早まる。そんなサトリの心境などどこ吹く風で、黒髪を
温いシーツに押し付けロランは口を開いた。
「本当はさ、恐かったんだ」
 サトリは何も言わず、ロランの背に触れた肩を小さく揺すって続きを促した。
「何がって聞かれても……とにかく、何もかも。だから逃げたんだ。まさか二人が追いかけて
きてくれるなんて思わなかったから、本当に嬉しい」
 吐き出すようにそう言って、ロランは消え入りそうな声で「ありがとう」と「ごめん」を呟いた。
「……そんな悲しいこと言ってくれんなよ。俺たち仲間だろ?」
 旅をしていた頃は常に先頭に立って明るく振舞っていたロランだ。面と向かって彼の弱音を
聞くことは滅多にないことで、サトリは少なからず切り返す言葉をためらった。
「何かあったら、絶対言えよ」
「うん」
「だからもう、どこにも行くなよ」
「……うん」
 伝えたいことはまだ残っていたが、サトリはそれで満足だった。

 暫く言葉を交わさないままそれぞれ寝台の上で丸くなっていたが、眠気はゆるゆると二人に
襲い掛かってくる。
 次第に鈍くなる意識の中で、サトリは背中越しに寝そべるロランの呼吸が少し深くなったのに
気付いた。半身を起こして彼の様子を窺うと、どうやらサトリより先に寝入ってしまった
ようで、ロランは猫が丸くなるように身体を縮めて眠っていた。
 その窄められた背中を無性に抱きしめたい衝動に駆られてサトリは手を伸ばしたが、寸前の
ところで思いとどまった。万一ロランが目を覚ましたら、伸ばされた手の理由を何と言っていいか
分からなかった。
 代わりに自身が被っていた毛布を広げ、ロランの身体にそっと掛ける。そうして自分のほうにも
少しだけ引き寄せた。二人で使用するには幾分か幅が足りなかったが、ロンダルキアの夜を
思えば大した寒さは感じない。
「……どこにも消えるなよ」
 ――俺が、守るから。
 その呟きが出来ることなら彼の耳に入らないように、その思いが叶うことなら彼の心に届くように。
 ちぐはぐな思いを胸に抱いて、サトリは眠りに尽くためにそっと目を閉じた。

203197-201:2005/03/09(水) 19:59:43
以上で終了です。
全然くっついてくれないこの二人…orz

204197-201:2005/03/09(水) 20:00:14
以上で終了です。
何かあんまり801になってないなぁ…全然くっついてくれないこの二人orz

205名無しの勇者:2005/03/11(金) 00:05:18
うぅ…アアアーサトロラキテター!萌えました!
頑張れ、頑張れサトリ!!

206197-202:2005/03/11(金) 13:31:24
感想ありがとうございます!
もう本当に書いていて自分でももどかしい限りです。
作戦名「はやくくっつけ」でキーを打っています(w

何だか自分のボボンっぷりに嫌気が差す今日この頃…(′∀`)
徒にレス消費ばかりして本当に申し訳…y=-( ゚∀゚)∵ターン モイッチョイットキマス
では他のDQ2の書き手さんを待ちつつ、暫く地下で二人をくっつけてきますノシ

207名無しの勇者:2005/03/13(日) 23:44:26
では私は作戦名「サトリがんばれ」でお待ちしてます。
なんかもうくっついてもくっつかなくても2人が幸せならいいや。
…というくらい、読んでいるこちらがホワンとした気持ちになります。
いやまあもちろんくっついて欲しいですけどw

208Naked Eyes【3】(178の続き):2005/03/24(木) 12:21:05
マリアは柔らかく微笑するとカインに寄り添うように見上げた。

「アレンはきっと心配しててよ。もう部屋に戻りましょう」

マリアの絹のような声に宥められて、カインは不意にことさら明るい表情で見返す。

「カイン?」

「そんなに気にすんなよ。アレンにはちゃんと謝っておくから」

なにか言いかけようとする王女に、カインは大仰に手を振って遮った。
彼はそのとって付けたような笑顔のまま「おやすみ」と手を振って背中を向け、足早に立ち去った。

マリアは白い額を曇らせ、胸の前でさし延ばしかけた手を握り締めた。



自分の小ささが、痛みとなってわが身を苛んだ。
足手まといになることを恐れ、必死に追いすがる毎日だった。

剣はアレンに敵いようもなく、魔法ではマリアに及びもつかない。
この二人の天賦の才の前に、自分が貧弱で無能であることをいやがうえにも思い知らされる。
それでも可能な限り、この二人の負担になるまいと、力も技も使い尽くせる限り使い果たすようにして、ここまで旅してきたカインだった。
それでもアレンは、一度たりともカインに助力を頼むことすらなかった。自分が、彼の前に出るのを喜ばないのは当然だった。

すばやさでは彼に負けるまいと、カインが先陣を切った時もあった。自分にだってやれる。守られるだけの立場ではないという事を証明したかった。
だが一撃で息の根を止められなければ、次の瞬間に反撃はくる。
何が起こったかわからないまま、意識を取り戻した時、自分は教会の祭壇の前にいた。
マリアの流す涙に胸を衝かれたが、それ以上に居たたまれなかったのは、怒気を滲ませたようなこわばったアレンの表情だった。
それすらも一瞬垣間見ただけで、アレンはそのまま顔をそむけ、以来アレンは自分とはまともに眼すら合わそうとしない。

209Naked Eyes【4】:2005/03/24(木) 12:25:00
時間を潰すのにも疲れてきた。
もういい加減アレンも眠っただろうとカインは暗い部屋にそっと戻ってきた。

部屋の両端にあるベッドの片方に、横になったアレンは背中を向けて身動き一つしない。

カインは一つ小さな息をついて、もう片方の自分のベッドに音も無く静かに潜りこもうとした。

「今までどこで何してたんだ?」

アレンの怒りを押し殺した声に、カインは凍りつきそうになった。

「起きてたのかよ?」

不機嫌なカインの問いに、アレンの怒気が強まる。

「心配で眠れるわけがないだろう!」

相手が上体を起こす気配を感じながら、カインはささくれた気分で横になる。
どうせ俺のやることはアレンを不愉快にすることばかりなんだろう。

アレンがベッドから降りて近づいてくる。言葉だけでは足りないということか?
相手が自分の傍らに立つのを、幾分身構えて見返した。
言葉で足りないなら何で来るのか、それに押されるまいとにらみ返すつもりだった。

―――あれ?

アレンのカインを見下ろす顔は、悲しみに彩られたものだった。

「……」
言葉もなく見つめるカインに、かがみこむようにアレンの顔が近づく。

「そんなに僕はキミに嫌われてるのか……」
アレンは耐えきれないように一度目を伏せた。
「だけど、僕は、君が心配だから、無理や無茶をして欲しくないから……」

意を決したようにアレンは立ち上がった。
「部屋を替えてもらうよ」

「どこ行くんだよ!」

「僕と一緒じゃ君がイヤだろう?」

「おい、ちょっと待てよ!」
素足のままベッドを下りてアレンを捕まえる。
「誰がイヤだなんて言った!?」

210Naked Eyes【5】:2005/03/24(木) 12:31:49

回転が速いカインの頭も混乱して言葉が上手く続かない。

「第一、誰が嫌ってるって……!?」

「離してくれないか」

「離したら出て行くんだろ?」

大した動作でもないのにカインは動揺で、肩で息をするほどだった。力でもみ合うなら、
カインはアレンに敵うはずがなかったが、アレンは大人しく従っている。

アレンはアレンで、自らの葛藤の為に動けずにいた。
自分の上着を掴むカインの手をどけたかったが、触れるのが恐ろしかった。

ただでさえ嫌われているのに。

離れた方がお互いのために一番いい。

「君がイヤだろう?」

「だから誰がそんなこと言ったよ?」

「イヤに決まってる!」

「決めんなよ!」

「君のことが……好きだ!」

搾り出すようなアレンの告白に、カインが息を飲む。

「初めて会った時からずっと……。迷惑だって判ってる。だから遠ざかりたかった。
でも、君が傷付いたり苦しんだりするのは、僕には耐えられないから。」

211名無しの勇者:2005/03/26(土) 01:00:40
>210せ、先生!!続きを…ッ!(ぐふっ)

212Naked Eyes【6】:2005/03/31(木) 23:48:44

アレンの上着を掴んだカインの手が、ためらいがちに離れた。

視線を落として、カインがぼそりと言う。
「―――嘘だろ」

「嘘じゃない!」

弾かれるように真剣な表情で振りかえるアレンの視線から逃げるように、彼は自分のベッド
に戻って腰を下ろす。

「なに言ってんだよ……」

抑揚のない言葉。うなだれたように肩を下ろし、カインは両手を握り合わせて自分の両腿に
ひじをつく。


―――初めて会った時?

カインは目を見開いて、自分の中の記憶に目を凝らした。


サマルトリアの城。皇太子として生まれながら、幼くして両親を失った自分。
摂政に立つ叔父がそのまま玉座に上り、何の後ろ盾のない自分は彼にとって邪魔者でしか
なかった。
不慮の事故の一つでもあれば、何も知らずに兄と慕ってくれる彼の小さな姫が、次の王位を
約束されると言うもの。

その自分が生き長らえたのは、皮肉にも叔父が人知れず恋慕していた我が母親に自分が生き
写しだったから―――。



回想するカインの手に力が入る。



行為の真の意味の知識がなくとも、本能で恥辱を強いられていることは理解できた。
ものごころつく頃から、口と手で奉仕する事を教えられ、毎夜のごとく強要された。
幼いながら、わが身の屈辱ゆえに他言できず、だからこそ誰一人として知られることなく、
それは日々延々と繰り返されてゆく。

病弱気味で、同年代の少年に比べて華奢な彼だったが、知的にはひどく早熟で、記憶にも
回転にも優れ、聡かった。それゆえに、人と全体の相関を見抜き、わが身の位置も認識していた。

無邪気で無垢な王女と接するにつけ、これが逆の立場でなかったことを心底安堵し、呑気さを
装うことで、彼女から自分の傷心を隠し通すことに決めたのは自分自身だった。

これほどの処遇に甘んじながら、なおも何の苦悩も抱いてないような彼を、王は愚鈍ではないか
と疑い、それはえてして自分には好都合と納得していた。
だからこそ過度に警戒することなく、対外的には子を案じる慈父をも装えたと言ってよかった。

だが、ほどなく、叔父の恋慕の想いは、妄執となってカインを襲った。

人の力では抗うことの出来ない摂理と言う運命。はかない花のように若く美しいまま身罷った
義姉たる亡き王妃への想いは、絶ち切られ、狂おしい想いと途方もない孤独だけが取り残され
ていた。それはひたすら隠されたまま、募るほどに歪み、やがて悲憤と激しい憎しみへと変質
してゆく。

十になった式典の夜、カインは腕を掴まれ、寝台に抑えつけられた。

213Naked Eyes【7】:2005/03/31(木) 23:51:25


アレンの前で、腰掛けたカインの肩が震えた。



アレンは、その式典にローレシア王の名代として、出席していた。
公式行事は滞りなく進行し、国民の一般参賀を受け、盛大な晩餐があった。
式場の移動の合間、闊達なアレンは自分から参列者の人並みの中をすり抜けるように小さな体で
掻き分け、カインに追いついたのだった。

―――カイン、見つけた!

心から嬉しそうな笑い声。何がそんなに嬉しくて楽しいのだろう。

―――僕、アレン。もうさっき紹介されたから知ってるよね

笑いながら片手が差し出される。どうしていいか解らない様子で立ち竦むカインの手を、待ちき
れないでアレンは掴んだ。

―――早く!急がないと見つかっちゃう!

限られた時間の合間で、アレンはその新しい友達と遊びたかったのだろう。掴んだと同時に走り
出し、カインを急かしてお城の冒険に誘い出した。

惹き込まれそうな青い瞳。
絵本に始まって、どんな書物の伝説にも絵が描かれている、勇者ロト。その再来と謳われた面影
を残す少年。

―――ね、カイン
―――あれは?カイン
―――カイン、それでさ……

いつのまにかカインも笑っていた。
アレンの笑い声とその息に、何かの魔法にかかったように、めまいがして、動悸がした。




生まれて初めて、他人に助けを求めた。


王は、カインを組み敷き、両膝を割らせ、彼を押し開き、こじ開け、張り裂けるまで引き裂いて
貫いた。
腕ほどもある物は脈打ちながら深く突き上げ続け、血を流しながらひくつく果肉の中に繰り返し
体液を注ぎ込む。

歯を食いしばっても涙が溢れ、体内を蹂躙される苦痛に、何度も透明な胃液を吐き出した。

―――アレン!!

カインは声も出せないまま叫んでいた。

明るい陽射しの中、自分に笑いかけたアレンに精一杯手を伸ばしながら。

214Naked Eyes【8】:2005/04/01(金) 03:36:52


うなだれたまま黙り込む相手に不安を感じてアレンが近づく。

「カイン……?」

傍らに立ち、覗きこむアレンの、囁くような問いかけ。

さっと振り仰ぐように顔を上げたカインの両手が広がり、アレンに伸ばされる。

「―――!!」

その手はアレンの首に縋りつくように回され、その勢いでアレンは相手に覆い被さるようになった
形で、二人して寝台に倒れこんだ。

アレンは咄嗟に肘と膝で自分を支え、下敷きになったカインに重みが負担にならないよう体を浮か
せた。

「カイン、何を……」

しがみついてアレンの首筋に顔を埋めていたカインは、うめくように息を漏らすと、ようやく相手を
解放し、仰向けに頭をついて、覆い被さったままのアレンを見上げた。

揺れる渇望の想いに、水色がかった緑の瞳が熱を帯びたように濡れている。

カインの形のいい唇が、蝶の羽のように震えた。

「オレが、抱いてくれって言ったら、……どうする?」

アレンは、さっと耳まで赤くなった。破裂しそうになる鼓動が、頭の中でまで割れ鐘のように鳴り響く。

絶句する相手に、カインは薄く笑った。

「いいんだぜ。無理しなくて―――」

そらすように横を向こうとした瞬間、アレンの顔が近づいた。

「う……」
 
勢いよく押し付けられるアレンのキス。しっかりと強く、暖かく、それでいて不器用な。
いかにも不慣れなアレンらしい。
それすら罪悪感を感じたように、すぐさま離れてゆく。

その離れかける口を追うようにカインが体を浮かし、両手がアレンに回された。

かすかなうめきと共に吐息が漏れ、カインの唇がアレンに押し付けられ、口が開かれる。

アレンは目を見開いたが、従順にカインの為すがままに任せ、その熱い息と舌を受け入れた。息が止まる
ほど喘ぎと唾液を貪り、その信じられない激しさに応えてカインの口腔を犯した。

何度も角度を変えては求め合い、互いに差し出せる全てと奪いたい全てを約束するかのようだった。

215175:2005/04/01(金) 20:21:57

「―――そして一夜が明けた」(BGMチャララ〜♪)で、次の回に終っても良さそうな悪寒。

アレン=16歳。正義感強く、生真面目で優しい優等生勇者。知識はあっても、体験に対して貪欲じゃない。
カイン=16歳(アレンより半年くらい下)。怜悧で繊細な、冷笑的激情家。献身的な面は隠されている。
マリア=同年齢ながら、一番大人。聖母のような限りない愛情と、思春期の不安定さを持っている。

性格は、概ね建部信明氏のゲームブックDQⅡ(自分のバイブル)に準拠してます。
可愛いサマ坊や、+のサトリも大好きなんですが、自分の基本が「てめえら死にやがれ」の
カイン皇太子殿下なのでこう言う展開に……。
王様のベッドは、サマルトリア城の二階のあのベッドです。(ちょっと待てと誰かに突っ込んで
欲しいよ)

不定期更新なので、割り込み推奨もとい感謝しますです。
3人くらいなら読んでくれてる方がいるかもと期待しつつ、また後半お付き合い下さいませ。
(今までが前半!?)

それと
「光の神よ!大地の精霊ルビス様!我が願いを聞き届けたまえ!肉体にぬくもりを、
瞳に光を。さまよえる211さんの魂を、この肉体に戻したまえ!ザオリク」

216街人B@研修中:2005/04/05(火) 07:38:58
久しぶりに来たら、萌が沢山(*´Д`)ハァハァ

取りあえず、>126-129の続きでも投下してみる。( ・∀・)アヒャ
ムーンタン視点でつ。エロ無し(´・ω・`)ショボーン

217ルプガナへの長旅に備えて買い出しに行く予定だったはずなのに:2005/04/05(火) 07:39:48
「遅い……。」
私は、魔法書を宿屋にあてがわれた自分の部屋で読みながら、何度目かの不平を漏らす。
明日からルプガナを目指して旅立つ前に、長旅に必要なものを今日、3人−ローレとサマルと私−で買い出しに行く予定だった。
そのはず「だった」のよ。
ところが、朝になっても二人は彼らの部屋から出てくることはなく、私が昼食を一人でとった後も起きてこない。
(このまま、明日の朝まで出てこないつもりかしら……あの二人は。)
きっと起きてはいるのだろう。私が朝食を済まして部屋に戻る時、彼らの部屋から物音がしたのだから。
けれど、そこへノックをして入る気にはならなかった。いくら再従兄弟(はとこ)といえども、年頃の淑女が、年頃の殿方の
部屋にみだりに入るのは気が引ける……という訳ではなく、彼らは全裸でベットに潜り込んでいることが容易く予想できたからだ。

以前、私は彼らの隣の部屋に泊まっていたが、彼らの閨事が筒抜けだった為、それ以後は少し離れた部屋に変えたのだ。
「全く……、毎晩しているでしょうに。何を考えているのかしら。」
まるで小姑みたいね、と自嘲してしまう。と同時に、扉がノックされる。
「どうぞ。」
多分、サマルだけだろうと予測したら、やっぱり彼だけだった。
「えっと、まぁ、ローレが発情させるような表情をするんだから仕方ないんだよねぇ……。おはよう、ムーン。」
サマルだけっていうのは、予想通りだけれども、開口一番の言葉にあきれて、どういえば良いのか判らない。
「いきなり、何を言い出すの?」
眉をひそめて問う。
「いやだって、何を考えているのか判らないって言ってたじゃないか。」
さっきと同じように、のほほーんとした口調で。
「あら、立ち聞き?イヤね。」
(この地獄耳が。)
露骨にイヤな顔をすると、「いや、聞こえただけだよ。」という型どおりの返答。
外見も優男で、のほほーんとしているくせに、こういうところは策謀家だ。のほほーんとしている振りなのかもしれないが。
「まぁ、良いわ……。それよりも、買い出しはどうするのよ。もう少しすれば、夕方よ?」
「ああ、それは大丈夫。ローレがちゃんと買い出しリスト作ってくれたから。」
そういって、ぴらぴらと紙を見せる。
それを聞いて少し安堵する。サマルと二人だけで買い出しに行けば、絶対に何か買い忘れる。私は、長旅の経験は無いし、
サマルは、策謀家なのか本当に抜けている天然なのか判らないが、どっちにしろ、抜けた行動を取るのには変わらない。
「そう……、じゃあ、さっさと買い出しに行きましょうか。」
そう言って、受け取った買い物リストを見る。買う店ごとに整理されていて使いやすい。おまけに、店も通りの並び順で
ずいぶんと買い出しの手間が省けるように考えられていた。
(マメよね……)
私の方が、ムーンペタに来ている回数が多いはずなのに、私以上にこの街に詳しくなっているローレを感心してしまう。
「ところで、ローレの具合はどうなの?」
おそらくは、ベットから起きられないんじゃないかと思うのだけれども、悪いのならば、ベホイミぐらいはしないと、と思っていたら、
「凄く良いよ。もう最高。あれほどの名器は無いんじゃな…ぐふっ。」
うっとりと話すサマルの顔に、読んでいた魔法書をぶつけてやった。

218ルプガナへの長旅に備えて買い出しに行く予定だったはずなのに:2005/04/05(火) 07:40:22
買い出しは予想以上にスムーズに進み、すべての買い出しが終わった頃でも、まだ日は高かった。
「これで全部かしら。」
沢山あった買い出しは、同じ店になんども通うといった無駄手間が無かったため、非常に効率が良かった。
「ローレのお陰ね……。ローレが居なかったら、本当に困るわね。」
「ええっ。僕のお陰で、かなり安く買えたじゃないかぁ。」
(この女たらしが。)
もうすぐ旅立つからということで、餞別代わりに店番の女性たちが値引きをしてくれたのだ。下は少女から上は老婆まで。
そうは思ったが、確かに値段交渉や情報の収集などではサマルが得意とするところだ。この間などは、井戸端会議にまで
参加していた程である。
「でも、本当にローレって何でも出来るわね。薬草の調合から、天気の予想、方角や距離のはかり方とかまで。」
そう、ローレと旅をして少ししか立っていないが、彼の活きた知識には何度も助けられた様に思う。
「まぁ、苦労しているから。」
ぼそりとサマルが口を滑らし、しまったというような表情を一瞬だけ浮かべた。ほんとに一瞬で、すぐにのほほーんとした
顔に戻っていたが。
(ああ、やっぱり策謀家ね……。)
少しの間、沈黙が流れた。

「ねぇ、ムーン、少しあの湖のほとりで休憩しない?」
のんびりとした声。微笑んでいたけれど、少し困ったような、追いつめられて諦めたような、そんな目だった。

219ルプガナへの長旅に備えて買い出しに行く予定だったはずなのに:2005/04/05(火) 07:40:43
「ローレは、僕が今から話す内容を知っているということは知らないから。」

小さな湖のそばで座って、しばらくしてサマルがそう切り出してきた。

僕は、10歳ぐらいの時、父親と共にローレシアを訪問したことがあるんだ。その時、城の様子とかが少し変だったんだ。
まぁ、簡単に言えば、サマルトリア側は皇太子である僕も訪問していたにもかかわらず、ローレシア側の皇太子である
ローレが出てこなかったんだ。皇太子同士の交流も訪問の目的の一つだったはずなのに、ね。
向こうの大臣たちの言い分は、まだローレ王子は幼く、失礼が有ってはならないから。という一点張りでね。
僕とローレではそんなに歳も違わないし、両国間の関係も良好だったから、別段、ちょっとのことでは外交関係に問題が
出るようなことは無かったはずなんだ。しかも、公式の場だけじゃなくて、非公式の場であるパーティでも会えなかった。
僕は、その時、そんなに僕と会うのが嫌なのかなぁと思って、少し拗ねてパーティを抜け出したんだ。そしたら、ありがち
だけれども、城の中で迷子になったんだよ。言い訳しておくと、ローレシアはサマルトリアと違って、街と城が一体になって
いるような構造だったからね。半分べそをかきながら、とぼとぼ歩いていたら、同い年ぐらいの兵士がやってきてさ、道案内を
しれくれたんだ。その時、僕と同い年ぐらいで、もう兵役があるの?って聞いたら、いや、志願したんだよ。って答えたんだ。
まぁ、それがローレだったんだけど、そんなこと知らなかったし、ましてや王子が一般兵になるとは思いもよらなかったから、
散々悪態を付いてしまったんだ。せっかく遠いところから来たのに、ここの王子は会ってくれない。酷いって。いろいろと愚痴を
言ったさ。それを悲しそうに聞いていて、それぞれの立場が有るから……と最後にぽつりと言ったとき、しまったと思った。
その時は、彼はローレ王子に仕えている身だから、主君の悪口を聞かされたら悲しいだろうなぁと思って、ごめんって謝った。
結局、彼がローレだと判ったのは、僕と父が宛がわれている部屋の前に到着したとき、ローレシアの大臣が血相を変えて、
「ローレ様!ローレ様がサマル殿下を連れ出したのですか!?サマル殿下の身にもしもの事が有ったらどうするおつもりですか!」
って、少年兵であるローレを叱りつけたんだ。すぐにローレがその大臣に謝って、今度は僕に「申し訳ありませんでした。サマル殿下。
私は任務に戻りますので失礼します。」って敬礼して行ってしまったんだ。
僕は、呆気にとられて、僕が勝手に抜け出したんだって言えずじまいで、ただ突っ立っていただけだった。

220ルプガナへの長旅に備えて買い出しに行く予定だったはずなのに:2005/04/05(火) 07:41:11
ローレとはそれっきりで、ずっと気にはなっていたんだけれども、会えなくてさ。だから、ローレが旅立ったって聞いたら、すぐに
僕も旅立つ準備を始めて。あと、なんでローレがあんなに冷遇されていたのかが気になってさ。ローラの門で足止めさせておいて、
僕はわざと旅立ちの泉を経由してローレシアの実情を調べに行ったんだ。

まずは街の人たちに話を聞いた。そしたら、口々にローレに対する不満を言うんだ。なんでも、ローレが魔法の素質を持っていない
事に対して、王位を継ぐのは不安だと。ちゃんと国を守れないんじゃないかって。また、魔法の素質がないのは勇者の血を引いて
いない証であり、国王の本当の子供ではないのではないかと猜疑の目を向けられている様だった。
そのために、ローレの母親は優しくて国民からの人気が高かったけれども自殺したらしい。王妃様が浮気したという噂が流れて。
そのことからも国民から人気が低くなっているようだった。それと、少し前に、魔物討伐に向かった騎士団が壊走するという不祥事が
有ったのだけれども、その原因がローレが統率を乱したからだと噂されていた。それ以外も散々な言いようでさ。最後に結ぶ言葉が、

「ローレ王子さえ生まれてこなければ、誰も不幸にならなかったのに。」だったよ。

221ルプガナへの長旅に備えて買い出しに行く予定だったはずなのに:2005/04/05(火) 07:41:45
でもさ、次に酒場に行って、非番の兵士たちに話を聞いたら、全く違っていた。曰く、
「魔物討伐での騎士団の壊走は、魔物が予想以上に多くて団長が真っ先に逃げ出したのさ。そして騎士団が混乱に陥ったんだ。
浮き足だった騎士団は簡単に包囲されてしまって、全滅か?というところで、ローレ王子が血路を開いて兵を逃がしたのさ。更に、
ローレ王子は最後まで戦場に残られて、一人でも多くの味方が脱出できるようにしていらっしゃったんだよ。ところが、敗戦の責任を
逃れるために、団長は、ローレ王子が全体の統率を乱し、真っ先に開戦の火蓋を切ったのが原因だと言ったのさ。お陰でローレ王子は
謹慎のあと、新設された遊撃部隊の隊長に左遷。しかも部下は、たった二人しかいなかった。」
「ローレシアの兵制は、4人一組で小隊を組み、5つの小隊で中隊を組み、5つの中隊で大隊を組むのだけれど、遊撃部隊はどこの
大隊にも属さない、中隊という扱いでスタートしたんだ。中隊なら20人居るはずなのに、たった3人だけ。」
「多分、団長はローレ王子に戦果を上げさせないつもりだったんだろう。ローレ王子が戦果を上げて昇進すれば、あの壊走劇の真実が暴かれる
可能性がある。」
「それと、前々からローレ王子は、自分の命を省みられない所があって、真っ先に危険な飛び込む癖がおありだった。そのため、
ローレ王子の身に何かあれば、直接上の上司である大隊長の責任問題になるから、それを避けたかったのもあるらしい。」
「でも、遊撃部隊は、ほかの部隊が訓練中に遭難した時、真っ先に駆けつけて全員無事に救助したりして、実績を上げ、隊員数も増え、
短期間でローレシア一番の精鋭部隊になったんだぜ。ローレ王子の功績だよ。だが……、今度はたった一人で、ハーゴン征伐を命じられた。
おまけに、今まで使っていた銀製の長剣は部隊の所有物だとか言って、返納させて銅の剣一本だけ……。ローレ王子に死ねと言っている
ようなもんだよ。」
「それで、部下が何人かが付いていこうとしたら、団長が謀反を企てている恐れありと吹聴しやがった。そんな訳でローレ王子は、本当に
たった一人で旅立っていったよ。しかも見送りは不許可だった。ローレ王子が不憫でならないよ。」

それで、僕は思ったのさ。ローレ王子の人気を落とすと得をする人物が居るんじゃないかとね。そして、僕はローレシア王に謁見をする
ついでに、城で働くメイドたちに話を聞いたんだ。彼女たちが一番詳しいだろうから。
もっとも、守秘義務が徹底しているらしく、最初はなかなか口を開かなかったけれど、まぁ、彼女たちもローレに同情的だったから、
最後にはここだけの話と言うことで教えてくれたよ。
ローレが5歳になるころ、王妃に首をへし折られ殺されたこと。王妃はその直後、首をつって自殺したこと。そして勇者の血を引く、
ローレのみが精霊の加護で蘇って、王妃は生き返らなかったこと。王妃を溺愛していた国王は、ローレに対し憎しみを抱いたこと。
そして、宰相は王族と外積関係にあり、その孫も王位継承権を持っていること。

222ルプガナへの長旅に備えて買い出しに行く予定だったはずなのに:2005/04/05(火) 07:42:05
愕然としたよ! 僕は!
すべての悪意、いや、害意がローレに向かっていることに。
隣の国が、いやしくも勇者ロトの国が、これほどまでにどろどろとした陰謀が渦巻いているとは!

それでも、僕はサマルトリアの王子であって、ローレシアの国にどうこう口出しすべきではないと納得しようとしてたんだ。
だって、口出しをすれば、内政干渉に当たる。必死になって、やり場のない怒りを抑えようとしていたんだ。
10歳の頃に出会った、あの悲しそうな顔が思い浮かんで。すぐに会いたいと思ったけれど、会ってどう言えば良いのか判らなくて。
結局すぐに、リリザの街へ逃げるように、ローレシアを後にしたんだ。

リリザで、ローレに会ったとき、一瞬言葉を失ったよ。
僕だったら、とうに絶望していただろう。母親に殺され、父親から疎まれ、国民からは、「生まれてこなければ良かったのに。」と
呪詛の言葉を聞かされて。
けれど、ローレの表情は絶望すらなくて。ただ、諦めしか無かったんだ。
考えてみれば、死のうと思っても、死ねない。もし、死ねるのならば、母親に殺されたときに絶望と共に終えることが出来たはずなのに。
世界はローレを必要としているから、終わりに出来ない。それは彼の意志に関わらず。
そして、死ぬことが出来ていれば、王位を狙う宰相がこれほどまでに国民に対してローレのネガティブキャンペーンを貼る必要もなく、
すべての悪意がローレに向くことはなかったはずなのに。

その時、僕は思ったんだ。ローレを守らないといけないって。いや、守りたいって。だから、僕は。
「共に戦いましょう。」と握手を求め、ローレはびっくりした様な顔で、でも、すぐに笑顔で答えてくれたんだ。

223ルプガナへの長旅に備えて買い出しに行く予定だったはずなのに:2005/04/05(火) 07:42:32
「その時、一目惚れだったんだよ。」
やっと、長い長い話が終わった。いつの間にか、夕方を過ぎ、日が沈む寸前になっていた。
私は、ただじっと話を聞いていた。泣きそうになりながらも、私は泣かなかった。泣いちゃいけないような気がしたから。
少し前にローレが泣きながら、私に話してくれた事があったけれど、これほどまで徹底されていたとは思っていなかった。

「ローレが遊撃隊の隊長になった後、凄い苦労して居るんだよ。遊撃隊のはじめから参加した一人のラーズって言う人が
話していたけれど、予算も無いし、訓練する場所も与えられず、森や山の中でレンジャー部隊のようなまねごともさせられて。
その時の経験が、今、役立てているのだと思うよ。」

「さぁ、もう帰ろう。遅くなるとローレが心配すると思うし。」
「そうね。」
そう言って私が立ち上がると、サマルは
「でも、聞いてくれてありがとう。」
「え?」
「やっぱり、僕一人で抱え込むのは、辛かったよ。だから、ムーンが聞いてくれて。ありがとう。」
人懐こい笑顔を私に向けてサマルが言う。
「当たり前じゃない。私たちは仲間なんだから。私だけのけ者にしないでよ。」
「うん。そうだね。」
そして、私たちは家路?を急いだ。

224街人B@研修中:2005/04/05(火) 07:44:54
相変わらず、1行の長さがまちまちで見にくいかも。(´・ω・`)ショボーン
いつも投下してから気づく罠。

あと、活かしきれなかった裏設定

サマルタンは、ローレタンのパパがローレを疎んでいたと思っていますが、単に誤解でつ。
でも、ローレタンのパパは、パパなりに頑張っていたのでつが、王妃が死んだショックで、
すぐにローレタンに構ってやれる余裕が無かったことと、ローレタンに良かれと思ってやったけれど、
すべて裏目に出てしまっているため、まわりから、パパはローレタンに対して良い印象を持っていないと
誤解されていまつ。さすがにサマルタンは、ローレのパパから、直接聞ける訳でもなかったので。
と、本文に書ききれなかったので、補足と言い訳。アッヒャッヒャ!ヽ(゚∀゚)ノ
難しいなぁ……。

225街人B@研修中:2005/04/05(火) 07:45:42
エロがないから追加で書いてみたけれど、エロくなかった……・・・(;´Д`)ウウッ…
取りあえず、おまけ投下。

おまけ 前日の夜

部屋に戻るや否や、サマルが俺の耳をかんできた。
「おいっ。って……ふあっ。」
「当分、できないでしょ。だから……。」
甘い言葉を紡ぎながら、俺のうなじに唇を滑らせていく。ぞくりとする慣れることのない感触。
いい加減、耐性ができても良いはずなのに、躯の制御が効かなくなる。
「だ、駄目だって、あ、明日が……」
明日は、買い出しに行く予定だった。
「大丈夫だって。買い出しなら、僕とムーンで行くから。」
ガクガクと膝が震え、崩れ落ちそうになるのを、ぎゅっと後ろから抱きすくめられて、サマルに支えられるような格好になる。
「ま、まだ、剣もちゃんと、み、磨いて……うぁ。」
もう、駄目だ。あっという間に意識が混濁してきて、何を言っているのか、考えもまとまらなくなって。
サマルは、ずるい。ずるいんだ……。
「ねぇ、いいよね?」
そのくせ、子供がお菓子をねだるような声で言ってくるんだ。
いつの間にか、胸元が開けられて、サマルの少し冷たい手が、服の間に差し込まれていた。
駄目だと言っても、何度も何度も同じセリフを繰り返してくる。
そして、少しずつ服がはだけていって、少しずつ焦らせるような手つきで触れてきたり、
唇で頬や肩、喉のあたりを責めてくる。
いつも、抵抗する暇もなく、あっという間にこの躯は、サマルに落ちていく。

凄く浅ましい躯。

早く、「うん。」とうなずいた方が、楽になれる。という思いすら出てくる始末で。
けれど、その言葉を出すのは、恥ずかしいと、わずかに残った理性が押しとどめている。
その結果、サマルの愛撫がねっとりと、この躯を少しずつ熱く火照らせていく。
我慢できないぐらい、もう熱くなっていた。

いつの間にかアンダーシャツは脱がされて、ズボンのホックもはずれ、サマルの手がそこに伸びていた。
「もう、いいよね……ローレのここ、凄くきつそうだし、下着も濡れているよ。」
人差し指で、そそり立っているソレの先をつんつんとつつく。その度にびくびくと躯が震えている。
いつの間にか、ベットに端に座り、更にそのままベットに押し倒されるような格好で。背筋が反り返る。

ああ、もう……なんでこうなるのかな。いつも。
甘いキスをされて、そのままサマルの背中にゆるゆると手を回し、抱きついた。
それが合図。
ただあとは、ひたすらに貪られるままに、喘ぐだけだった。

226184:2005/04/05(火) 21:49:03
>189
亀レスですが、気にしないで下さい。ヽ(´ー`)ノ
サトロラ最高です。サトリタン(*´Д`)ハァハァ。ロランタン(*´Д`)ハァハァ。
とっとと押し倒せと応援しつつ、純情っぽいところが萌えでつ。

>215
カインタンも萌えですた。王様GJと思ってしまった私は、( ゚Д゚)イッテヨシでしょうか。

つか、修論の改訂版を出せと元居た研究室の教授からメールが来て、(;´Д`)ウトゥー
アッヒャッヒャ!ヽ(゚∀゚)ノアッヒャッヒャ!ヽ(゚∀゚)ノアッヒャッヒャ!ヽ(゚∀゚)ノアッヒャッヒャ!ヽ(゚∀゚)ノアッヒャッヒャ!ヽ(゚∀゚)ノ

誰か、ローレタンとサマルタンを陵辱してい……(ry

227名無しの勇者:2005/05/18(水) 17:08:46
>>160

228227:2005/05/18(水) 17:11:06
うわぁあやってしまったorz
スイマセン
>>165
サイトヒント希望、見つからない、もう無いんですか?

229名無しの勇者:2005/05/21(土) 00:18:38
>>228
地道に探せば見つかるよ。ヒントは>>165に書いてあるとーり


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