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第2回東方最萌トーナメント 55本目

382 アリス支援SS :2005/03/05(土) 15:06:50 ID:96X1FEWw
「はぁ……」
 部屋に戻るなり、アリス=マーガトロイドは魔術書をテーブルの上に置いて、靴も脱がずにベッドに倒れ込む。
 夜も深まり、寝るには頃合いの時間。日中は目も眩むほどの熱気もすっかり冷やされ、ひんやりと冷えた布が肌に心地良い。
 だが、身体にたまった疲労以上に、心に沈んだ淀みが彼女を眠りから断絶した。
 ごろりと体を返して仰向けになり、くすんだ金色の瞳で天井をぼんやりと見つめる。
 星と月の放つかすかな光のみが差し込む部屋の中で、そこはおぼろな影を浮かび上がらせるのみ。


 - 紅玉色の郷 -


「最近、調子悪いなあ……」
 今日も日中に霊夢と弾幕ごっこをしていたのだが、自分でもあきれるほど動きが悪かった。
 しまいには向こうから「この辺にしとこ。あんた調子悪そうだし」なんて言われてしまう始末。

 スランプ、というのとは何か違う。
 頭が回らないわけではない。体に力が入らないわけでもない。
 でも、心に何かが引っかかって――それとも、心が何かに引っかかって?
 とにかく調子が出ないのだ。

 ああ、眠れない。
 こんな時、以前なら気晴らしに散歩に出かけたりしたものだが、最近は外に出たがらなくなっている。
 なので最近そうするように、アリスは灯りを点けると、ホームサイズのワインセラーから開封済みの瓶を一本、
適当に取り出した。落ち着いて飲む時ならデキャンタも用意するのだが、そんな気分でも無いので直接グラスに注ぐ。
 ……テイスティングのマナーなど知ったことかとぞんざいに舌に乗せたが、まともに味わうには厳しいくらいに
劣化していた。

 けれど、今の目的は美酒を味わうことでなく、ともかくアルコールを喉の奥に流し込むことなので、こんな酒の方が
良いのかもしれない。

 一息に飲み干し、すぐに次の酒を注ごうとすると、グラスの半ばほどを満たしたところで瓶の中の液体が尽きた。
 中途半端な量だったが、流石にちゃんぽんにするほど理性と知性を曇らせていたわけでは無いので、大人しくグラスを
空にしてから次の瓶を見繕う。開封済みのものが無かったので、なるべく質の低いものを取る。コルクを抜く動作は
身に染みついてしまったものか、こんなに投げやりな気分の中でもばか丁寧で、そんな自分に苦い笑みが漏れる。


 なみなみと注がれた液体の中にじっと視線を落とす。
 紅く、暗く、浮かび上がる自分の顔は、ひどく不機嫌そうだ。
 いやいやと小さくかぶりを振る。こんなもやもやとした気分を抱えて機嫌良さそうにしていられるほど、自分はまだ
年月を経た存在じゃあない。
 こんなトゲを胸に突き刺したまま、穏やかでなんていられない。

 ああ、そうだ。
 本当は、自分の胸の奥底でワインの澱のように淀んでいる感情が何であるか、私は正しく理解している。
 理解しているが故に、意識したくないのだ。
 意識してしまえば、それは認めることであるような気がして。


 あの日から数日も経とうとしているのに。
 未だに鮮明に思い出す。

                ワ ラ
 下から私を見下ろして、嘲笑う鬼の顔。
『そろそろ本当の孤独に気が付いたんでしょう?』


「ッ!」
 わき上がる感情に流されるように。
 或いは、その感情を力ずくで抑えつけようとするように。
 強くきつく激しく、自分の手をテーブルに叩き付ける。

 その拍子にグラスが倒れ、薄手のクロスをさっと敷いたように、テーブルの上を紅く紅く染めた。




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