したらばTOP ■掲示板に戻る■ 全部 1-100 最新50 | |
レス数が1スレッドの最大レス数(1000件)を超えています。残念ながら投稿することができません。

第2回東方最萌トーナメント 50本目

355写想 2/4:2005/03/01(火) 21:44:20 ID:bSd9rJDE

「やあ、待たせて悪かったね――」
奥に引っ込んでいた霖之助が姿を現す。
そして鈴仙のただならぬ様子に気づく。

「店主さん。この写真は……どうしてこんなものが、ここにあるんですか」
震える声で霖之助に問う。
彼女が手にしているアイテムを認めて、霖之助は納得した。
「ああ、驚いたかい。その写真立ては、普通の品じゃないんだ」

鈴仙に歩み寄り、横から鈴仙の手にした写真立てを覗き込む。

「こいつはね、観るものの一番大切な想い出を写し出すんだ」

銀細工の写真立てをみつめ、霖之助は微笑みを浮かべる。
「なかなか気の利いた道具だろう?
 これが一つあればカメラも要らないし、撮ったものを整理する手間もかからない」
霖之助の言葉を、鈴仙は呆然と聞いていた。

自分の目の前にある、楽しそうな友の姿。

しかし、それを見つめる鈴仙の脳裏に甦るのは。

――血に染まった月の戦場。

「…っ!」
湧き上がる嫌悪感に、思わず口を押さえる。

――レイセン、一緒に私たちの月を守ろう!

友と誓いあった約束。
しかし彼女はそれを破った。

月に攻め入る侵略者との戦い。
たくさん殺して、たくさん殺された。
目の前で冷たくなっていく、友の体。
その悲惨に耐えられず、彼女は逃避を選んだ。

この写真に写っている友の半分は、彼女の目の前で逝った。
残りの半分は、幻想郷にきてから、彼女の耳でその最期を知った。

目眩がした。倒れかける鈴仙を、霖之助がとっさに支えた。
「一体どうしたんだい……?」
霖之助は困惑していた。このアイテムは呪いの品ではない。
精気を吸い取るような性質は持っていないはずなのだが…。

首を傾げながら、うつむいた鈴仙の顔を見る。。

その目に涙が光っていた。

「……」
それを見て霖之助は理解した。
彼女に見えているものが、彼女にとってどういう意味を持つものなのか。

「……初対面でこういうことを言うのもなんだが、
 よかったら話を聞かせてくれないかな。
 言いにくい事だとは思うけど、他人に打ち明ければ少しは楽になる」
霖之助は優しくささやく。

鈴仙は黙って嗚咽をこらえていたが、やがてぽつりと呟いた。

「……私は、裏切ったんです……」




掲示板管理者へ連絡 無料レンタル掲示板