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第2回東方最萌トーナメント 39本目

273 お前”も紅”色に染まれ 6 :2005/02/21(月) 01:16:56 ID:UUpV92/2
それから後。
幻想郷の様々な場所で、彼女の姿を見るようになった。
そしてその蒼の髪と、椿色の着物を目にした時――必ず私は、彼女に話しかけるようにしていた。

あの時止められなかった、紅色の背中。
いかなる干渉も、やんわりと拒絶するかのようなあの背中。

それが酷く寂しげに映って、気になって仕方がなかった。


最初は、一言二言を喋る程度だったが。
時を経るに従って、少しづつ私達の間の言葉は豊かになっていった。
丁度集落に、私と同じぐらいの年頃の少女が一人もいなかったのも後押しになったのかも知れない。

壊れてしまいそうな危なげな美しさと対照的に、柳を思わせるような飄々とした立ち居振る舞い。
同じような年頃の少女が、みな彼女のようなを持っているのかは判らなかったが。
少なくとも、教養も知識も豊富な彼女は、年頃の少女達となにかと話が合わないことの多い私にとって、正に得がたい相手だった。

時に、麓の岩に腰掛け、麗らかな日差しを浴び。
時に、高い杉の木の枝の上に立ち、抜けるような空を眺め。
彼女は色々な場所にいたが、人里でだけは会うことが無かった。
その事について聞いてみても、困ったように笑って誤魔化すだけ。

だから私は、それ以上この件について言及することは無かった。


不思議な関係が続いていた。
少女は、自分のことについて殆ど何も語らなかった。
何処に住んでいるのか。
普段は何をしているのか。
外では、どのような立場にいたのか。

気にならなかったといえば、嘘になる。

やろうと思えば、この少女の歴史を覗き、本人の意思に関係なく全てを知ってしまうことも出来た。
しかし、私はそれをしたくはなかった。

幻想郷の『外』からきた少女――そして、恐らくは。
幻想郷以外に、居場所を求められなかった少女。


私達は、互いの過去を知らなければ、心を許すことも出来ないほど愚かのだろうか。


「……? それ――菫?」
「ああ……綺麗だろう?」
「へぇ……もしかして、初恋の誰かからもらったとか? 随分と年季ものみたいだし」


私とて、知られたくない過去がある。
たとえ知られたとしても、わざわざ口にはしたくない部分だってある。



「まあ、年季ものではあるし、思い入れの強いものではあるがな……私の、宝物だ」



そういうことは――自分の胸の内に、そっとしまっておけばいい。



切れ切れな言葉を風に載せる程度だった会話が、いつの間にか藹藹としたものとなり。
いつしか私達は、軽口を叩きあい、笑顔を咲かせるような間柄となっていた。

少女と話していると、私は楽しかった。
子供達の世話をしながら、日が暮れるまで遊びに付き合うのとは違った楽しさがあった。

少女も、同じ感情を抱いていてくれればいいと思った。
私が見ている限り、少女も私と一緒にいる事を楽しんでいてくれたようだったが。

それでも、時折。
どこか遠くを見つめ、酷く乾いた笑みをふっと浮かべることだけは――彼女は止めなかった。



不思議な少女と関わりを持つようになってから、半年の年月が過ぎて。
相変わらず彼女は人里には降りず、そして私は人間達のために幻想郷を見回る日々の中。




奇妙な噂を、私は耳にした。




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