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第2回東方最萌トーナメント 16本目

458 あの日の約束、帰らぬ約束3 :2005/02/03(木) 03:06:19 ID:8xnxSEKY
 それでも、終わりはやってくるものだ。残酷なほど、あっけなく。
 ある日、寝床で血を吐いた飼い主は、そのまま起き上がろうとしなかった。一歩一歩と迫り来る『死』というものを、ただ臥して待っていた。
 枕もとで、顔を覗き込むてゐに、飼い主は笑いかけた。
「てゐ……今まで、ありがとう」
(ちょっと、何よそれ……なんで今までなの?)
 てゐは問う。しかし、通じるはずもない。兎の言葉は、人間にはわからなかった。
「僕は、てゐに何もしてあげられなかったけれど……」
(いっぱい、いっぱいしてもらったよ! 全然、返せないくらい!)
 叫ぶ。心の中で、てゐが叫ぶ。もどかしく、激しく。
「……てゐは、僕のこと、あんまり好きじゃなかったみたいだけど……」
(そんなことない! 勝手に、決め付けないでよ!)
「僕は、てゐと居られて、幸せだったよ。……多分、てゐには『人間を幸せにする力』があるんだろうね」
(私も……私も幸せだった!)
 兎の目から、ぽろぽろと涙がこぼれる。涙腺のない兎が、泣いた。心の中で、号泣した。咆哮した。
 それでも、届かない。
 飼い主には、届かない。
「てゐ……約束、してくれるかな」
 てゐの頭を撫でながら、飼い主は弱々しげに言った。
「生きて、くれ。僕の分まで……ずっと、ずっと長生きしてくれ」
(分かった……分かったから、そんなこと言わないでよ!)
「てゐ……君のこと……好きだったよ」
「……わ、私も、大好きだった……っ!」
 唐突に、部屋に響き渡る声。その声に驚いて、てゐは思わず肩をすくませる。人間の、肩を。
「え……?」
 自分の、肌色の手を眺める。
「……は、はは……」
 てゐは、笑った。飼い主の肩を揺すり、おこそうとする。
「ほら、私……ヒトガタになったんだよ……? ねぇ、起きて、見てよ……ねぇ……」
 帰るはずもない返事を待ちながら、てゐは飼い主を揺すりつづけた。




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