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第2回東方最萌トーナメント 五本目

392 STR「或る魔道書の履歴」2/2 :2005/01/28(金) 01:44:37 ID:wSogJFAQ
 貫くような声が、私の意識をつなぎとめた。
「ただでさえ、本盗人に苦労させられているっていうのに」
 ゆるゆると飛揚してきたのは、この書斎の主――
 パチュリー師。

『盗人ですって』

 少女は鼻で笑った。

『私は、自分のモノを取り戻しにきただけよ』

 私を見据え、まなじりを吊り上げる。

『さぁ……来なさい。私のもとに』

 私は、パチュリー師を見た。
 彼女はただ、私を見ている。
 いつもの、あの冷徹なまなざしで。

 ――自分で決めなさい。

 そう、言われている気がした。

「私、……私は……っ」

 ……さわ……

「……あ」
 ふいに、風が私の頬を撫でた。
 それは爽やかで、それでいて脆い、
 あの心から吹いてくる、彩色の――風。
「――私は」
 閉じようとする心を。
 戻ろうとする肉体を。
 叱咤して。


「もう――モノじゃない」


 叫んだ。

『……ちっ』

 少女は舌打ちして、陰に溶けた。

『――いずれ、取り戻しに来るわ』
『――必ず、ね』

 最後に残したのは、笑い――というには、
 あまりに異様な、それだった。


「……まったく。うちの見張りはいないも同然だわ」
 少女がいたあたりをげしげしと蹴りながら、パチュリー師。
「あの、私……」
 言葉をかけようとした私をさえぎって、彼女は背を向けた。
「あの子。また来るのかしらね」
「――おそらくは」
 フン、とパチュリー師は鼻を鳴らした。
「今度は、あの馬鹿でかい本を横取りしてやらないとね」
 と言い捨てて、ふいに振り向きざま
「もっと警備を厳重にするように、言ってきて頂戴」
「……あ」
 私は、深く頭を下げた。
 とっさに浮かんでしまった笑みを、見られないように。
 羽根がやけにはためいてしまうのは、止められなかったのだけれど。

「――転職でもしようかしら」
 門衛稼業に疲れたのか、この方はそんなことをおっしゃる。
「何を、されるのですか」
「さぁ? 決めてないけど……」
 さしずめ、と私はいった。「『門』はどうです」
「へぇっ? あははっ。門番が門になってもねぇ――」
 吹き出して、笑みくずれる彼女。
「あなたが、冗談を言うなんて、初めてじゃない?」
「えぇ」
 私は、片目をつむってみせた。
「ほんの――ほんの、冗談です」




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