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【ノベール】RED STONE 小説upスレッド 六冊目【SS】
1ルイーダ★:2008/01/15(火) 19:34:37 ID:???0
――自分で書いた赤石サイドストーリーをひたすら揚げていくスレッドです――
●作品の投稿や感想はもちろん、読み専門に徹するのもまた有りです。
●技量ではなく、頑張って書いたというふいんき(ry)が何より大事だと思われます。
●職人の皆さん、前スレに続き大いに腕を奮ってください。



【重要】以下の項目を読み、しっかり頭に入れておきましょう。
※このスレッドはsage進行です。
※下げ方:E-mail欄に半角英数で「sage」と入れて本文を書き込む。
※上げる際には時間帯等を考慮のこと。むやみに上げるのは荒れの原因となります。
※激しくSな鞭叩きは厳禁!
※煽り・荒らしはもの凄い勢いで放置!
※煽り・荒らしを放置できない人は同類!
※職人さんたちを直接的に急かすような書き込みはなるべく控えること。
※どうしてもageなければならないようなときには、時間帯などを考えてageること。
※sageの方法が分からない初心者の方は↓へ。
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/game/19634/1117795323/r562



【職人の皆さんへ】
※当スレはあくまで赤石好きの作者・読者が楽しむ場です。
 「自分の下手な文章なんか……」と躊躇している方もどしどし投稿してください。
 ここでは技術よりも「書きたい!」という気持ちを尊重します。
※短編/長編/ジャンルは問いません。改編やRS内で本当に起こったネタ話なども可。
※マジなエロ・グロは自重のこと。そっち系は別スレをご利用ください。(過去ログ参照)



【読者の皆さんへ】
※激しくSな鞭叩きは厳禁です。
※煽りや荒らしは徹底放置のこと。反応した時点で同類と見なされます。
※職人さんたちを直接的に急かすような書き込みはなるべく控えること。



【過去のスレッド】
一冊目 【ノベール】REDSTONE小説うpスレッド【SS】
http://jbbs.livedoor.jp/game/19634/storage/1117795323.html

二冊目 【ノベール】RED STONE 小説upスレッド 二冊目【SS】
http://jbbs.livedoor.jp/game/19634/storage/1127802779.html

三冊目 【ノベール】RED STONE 小説upスレッド 三冊目【SS】
http://jbbs.livedoor.jp/game/19634/storage/1139745351.html

四冊目 【ノベール】RED STONE 小説upスレッド 四冊目【SS】
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/game/19634/1170256068/

五冊目【ノベール】RED STONE 小説upスレッド 五冊目【SS】
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/game/19634/1182873433/

【小説まとめサイト】
RED STONE 小説upスレッド まとめ
ttp://www27.atwiki.jp/rsnovel/

2名無しさん:2008/01/15(火) 19:35:28 ID:/holCfNk0
スレ建て乙。

3ルイーダ★:2008/01/15(火) 19:35:29 ID:???0
【付録】
●BBSの基本仕様
 ※投稿すると以下の書式が反映されます。投稿前の推敲・書式整形にご利用ください。
 フォント:MS Pゴシック/スタイル:標準/サイズ:12
 投稿制限:1レス50行以内(空行含む) ※これを越える文は投稿できません。



●フランデル大陸史 ※三冊目139氏の投稿より(一部表現は改編)
 ※ほぼゲーム内設定に忠実なはずです。そのまま使うなり参考にするなりお好みでどうぞ。
〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓
4423年…「赤き空の日」※RED STONE降臨。
4556年…追放天使がRED STONEの噂を広める。
      噂の真相を調査していたエリプト帝国が悪魔の襲撃により滅亡。
4658年…エリプト滅亡後、同帝国の生き残り(傭兵等)をブルン王室が雇い入れ、王室の直轄機関
      となる『レッドアイ』を設立。
4805年…『レッドアイ』会長失踪。ロムストグバイルの書記にて詳細判明。※資料1
      同年――ブルン国王アラドン失踪。
4807年…『レッドアイ』がRED STONEを発見。
      同年――バルヘリ・シュトラディヴァディの暴挙によりブルン王国が崩壊。
      ※『シュトラディヴァディ家の反乱』
4828年…共和国主義を唱えるバルヘリに対し、自らの地位を危惧した貴族らがバルヘリの母方で
      あるストラウムを持ち上げクーデターを企てるも失敗。貴族たちはビガプールに亡命し、
      トラウザーを王に立てナクリエマ王国を建国。混乱のまま戦争は終結。
      古都ブルンネンシュティグに残ったバルヘリはゴドム共和国を起こす。議会政治開始。
4850年…ナクリエマ王権を息子バルンロプトへ移しバルヘリ隠居、後年死亡。
4854年…バルンロプトは貴族の政治介入を疎んじ、貴族に対し『絶対的弾圧』を行う。
4856年…王の圧政に耐えかねた貴族たちはバルンロプトの息子を新王に即位させる企てを密か
      に推し進めるが、現王を恐れる一部の貴族による寝返りで計画は破綻。首謀者たちは
      反乱罪で処刑され、王の息子は王権を剥奪されたうえ幽閉される。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
4931年…現代――レッドアイ狂信者によるスマグ襲撃事件発生。狂信者はスマグ地下道を占拠。
      現ナクリエマ国王タートクラフト・カイザー・ストラウスがビックアイに傭兵を展開。謎の警
      戒態勢に入る。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
※資料1)レッドアイ会長の失踪直前に記された『補佐官スロムトグバイルの手記』より抜粋。



     「汝らの求めるREDSTONEは汝らが思うような至高の宝ではない。
     天空から複数略奪された盗品のひとつに過ぎないのだ。
     汝らが目的を果たしたとき、宝はなにがしかの富と名誉をもたらすやも知れぬ。
     だが忘るな……それは至高の宝にあらず。必ずや汝らを破滅へと導くだろう。
     ――あのブルン終末期の王と■■■■■■■」



     ブルン暦4805年12月8日 王室直轄機関『レッドアイ』会長 アイノ・ガスピル
     頭筆記 会長補佐官スロムトグバイル



〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓
※註釈――同資料は2006/03/18投稿時点で139氏がゲーム内から抽出したデータです。
 その後のアップデートによる新NPC、クエストによる設定追加分は含まれていません。

4名無しさん:2008/01/15(火) 19:37:49 ID:/holCfNk0
>>2
途中に書いてしまって申し訳ないです…

5スメスメ:2008/01/15(火) 20:12:48 ID:9l7GYbCoo
早速、分不相応ながらに投稿をしたいかと……。

6スメスメ:2008/01/15(火) 20:16:22 ID:9l7GYbCoo


「ふぅ……、何とか撒いたか?」

ここは古都から少し西へ行った所にある共同墓地。
ある依頼を受けてそこの地下墓地にオレはいる。

そこでいきなりガイコツ共に囲まれてしまい、オレは敵を千切っては投げ千切っては投げ……



ん?
ウソを言うなと……?

ハイ、すみませんウソです、ごめんなさい……。

だって、2、3体なんてレベルの話じゃ無いぜっ?
どう見ても2、30体の数字だよっ。
あんな数どうやっても無理だよ……。


……。

うん、気を取り直して奥へ進みますか♪
じっちゃんも「いちいち気にしてたらハゲる」って言ってたしな、うん。

それに、どうやら図らずも目的地に近付いてるみたいだし。
どうもこの通路の奥から怪しい気配がプンプンしてくるんだよ。

なぁんて事言ってたら、着いちゃったッポイね。
そっと通路からそっと部屋を除くと……、やっぱりいた。
今まで来た冒険家の返り血を浴びてたような赤く変色したガイコツ達が奥の祭壇を守るように立っている。

3体か、これなら何とか出来そうだ……ん?


「おいおいおいっ!」

よく見たらすぐ側に女の子が居るじゃないかっ。
しかも奴らがその子に気が付いて明らかに狙われている!
なんつー、ベt……
いやいや、そんなことよりも、

『助けなきゃっ!』

そう、頭で考えた瞬間にはもう敵の中に突っ込んでいた。
『人助けをすることに何の迷いも考えもいらない』って、じっちゃんも言ってるしね。
そんな中、距離を詰めている間にもガイコツ共はその子に向かって得物を振り下ろそうとしているっ!

もう倒している時間なんてないっ!

オレは更に加速し、ガイコツ達の間を駆け抜け、その子を抱きかかえて何とか救出!!
ふぅ、あぶなかった……。

「おい、大丈夫か?」
抱きかかえたその子を地面に立たせて、そう聞くと女の子はキョトンとした顔でこっちを向いている。
おいおい、まさか気付かなかったのか?
つーか何でこんな所にこんな子がいるんだよ……?
ふと、彼女に眼を向けたときに目に入ったのは、
片方が金色に近い澄んだ瞳で片方が紅く深い瞳の色をして、髪も眼と同じ透き通るような金色をしたフワフワの猫っ毛な髪型だ。
へぇ、珍しいな。
それにしても、その瞳を見ると何だか引き込まれていくような……。

っと、見惚れてる場合じゃねぇ。
「あんたはここに居な?」
そう言って女の子を部屋の柱に座らせ、ガイコツ共を睨みつけた。

7スメスメ:2008/01/15(火) 20:25:08 ID:trZxvsZ.o
振り向くと奴ら、ケタケタ笑ってやがる。
相当腕に自信があるのか、甘く見られているのか……。
甘く見られてると思うと……
そう思った瞬間にオレは歩を進めて、駈けだしていた。

狙うは頭、一気に駆け詰めて片を付けてやるっ。
そう思って渾身の力を込めて拳を突き出したけど、やっぱり現実はそうはいかない。

ガキィン……

「げっ!」
突き出した拳がガイコツの剣に受け止められちまった。
その瞬間、左右から残る2体の突きがオレに向かってくるっ!
「ほぁっ!」
オレはとっさに身体を『くの字』の様な状態になり避けたけど、正面のガイコツが追い打ちをかけるように剣を振り下ろしてくる。
「ふんぬりゃあぁぁぁっ!」
そこで目一杯仰け反り、それをも回避っ!
あぶねぇあぶねぇ……
……って端から見たらすげぇダサいんだろうなぁ。
そう感じながらも『ブリッジ』の様な格好のまま後方(この場合前になるのか?)にカサカサと距離をとって仕切り直す。

やっぱり考え無しで突撃しちゃいけないよなぁ。
つーコトなんでちゃんと頭を冷やしてから……、

「いきますかっ!」
と意気込んでからオレは、右足を後ろに引き、拳を作って戦闘態勢に入る。

こいつらの攻撃方法はとても単純だ、垂直に打ち下ろしてくるか突いてくるだけ。
ほら、さっそく打ち込んで来たっ。
「はぁっ!」
と気合いと一緒に蹴りを奴の剣に向かって放つ。


金属がぶつかり合う音と一緒に剣が弾け飛ぶ。
靴底に金属板が入ってるんだ、そんなナマクラじゃあ切れないぜ♪

得物を蹴り上げられ、それでもケタケタ笑いやがるその顔にめがけて……
さっきの、
「お返しだぁぁぁぁっ!!」
蹴り上げた脚をそのまま力強く地面を踏みつけ、目一杯の正拳をぶちかます!
粉々に砕けた頭部が地面にバラまかれ全身をガクガクと震わせながら崩れ落ちていった。

残りは2体、その2体もオレが拳を打ち出した瞬間に最初と同じような剣線で突き出してくる。

「おぉっ!」

オレも打ち終わったと同時に左の背面蹴りを右側の奴に喰らわすっ!
こっちも顔面に見事に入って砕け、そして崩れ落ちていく。
流石に動揺したのか躊躇している残りのガイコツに向かって今さっき喰らわせた足をそのままガイコツの居る後方へ回しながら振り上げ、遠心力も加わった踵を頭上から打ち下ろすっ!
最後の1体も頭から真っ二つになって崩れていった。

「ふぅ……」これでひとまず大丈夫かな?


ーゾクッー

背中から物凄い寒気を感じる。
ハハ、大丈夫って訳でも無さそうね……。

祭壇の方から今まで感じなかった強烈な気配を感じる、明らかにその気配はオレに向けられ今にも飛びかかって来そうな勢いだ。
その気配に胸がチリチリする……。
これが『殺気』って奴なのか?
これだけでマジで腰が抜けそうだぜ、笑えねぇなぁ……。


『バインダー』だっ!


あれはヤバいっ!
頭の中で『逃げろ』って叫んでるんだけど脚がビクついて動きやしない。

ふと、あの子は無事だろうか、と眼を柱の方にやると……


をいっ!!
寝てるよっ。

つーかどー言う神経してんだ?
この殺気を感じないのか??
だとしたらスゴいな、おい……。

って、現実逃避してる場合じゃねぇって!
ほら、お客さんが突っ込んでくるぞっ!
動け、動けうごけっ!!
動けよっ!?俺の脚っ!!







ーどけっ!アルっ!!ー

8スメスメ:2008/01/15(火) 20:37:10 ID:F2CaMOkAo
どうも、スメスメです。
おそれながらこのスレ初投稿をば……。
どうしても一人の人物の主観でしか書けないため解りづらいかと思いますが次回で別の目線で書きたいと思います。

9メイトリックス:2008/01/15(火) 23:39:24 ID:neGQmqs60
Hellfire Salvage
The Decidings Part.1


このまま全部凍ってしまえばいい。
この胸を焦がす、不毛の火さえ冷ましてしまえたなら。
震える身体にマントをぎゅっと引き寄せ、白い息を吐く。砂漠の夜の厳寒を昼間の暑さから想像するのは難しい。
昔の人は、既死者さえ殺す死神に喩えたそうだ。
それはこの小さなオアシスの町でも変わらないのだろう。
酒場には明々と灯がともり、民家には暖炉が燃えていたけれど、奥まった路地に潜むわたしに、身を暖める手段はない。

厚布のごわごわした感触が、わずかなぬくもりをつなぎ留める。旅立ったわたしに故郷を偲ばせてくれる、たったひとつの持ち物。
姉さんがわたしを驚かせようと、こっそり夜中に少しずつ、何ヶ月もかけて織ってくれたのを知っている。
いつかあなたが一人前になる日のために、ね。
そう言ってぱっと花のように笑った姉さんの顔を思い出すとき、わたしの胸は張り裂けそうになる。
このマント、あのころは金紅色に輝いているように見えたのに。
煤けて穴だらけになってしまった今は、砂漠をさまようミイラの包帯かと見紛ってしまう。
携えていた自慢の槍はとっくに折れ、旅の費用をまかなうには鎧を売り払うしかなかった。
今のわたしを見て、かの誇り高い一族の末裔だと気づく者がどれだけいるだろう。

一年も前の秋の日、わたしは生まれ育った地に背を向けた。
長老たちは思い直せと何度も訴えた。無謀な出立は死によって報いられると。
でもわたしは聞き入れなかった。もう一度あの日に戻れたとしても、やはり頷かないと思う。
彼らが差し伸べてくれた手を振り払い、わたしは行かなければならなかった。
東方へ向かい、アリアンを越え、はるかゴドム共和国の領土へ。
姉さんを探すために。

誰かの近づく気配に息をひそめる。
聞こえてきたのは、砂をつめた二つの皮袋を交互に引きずるような音。それにじゃらじゃらと鎖の鳴る音が加わり、不吉なリズムを刻む。
最後の武器、たった一本の矢を握りしめる手に力がこもった。聞き違うはずがない。この忌まわしい足音を。
胸の奥の炎が一瞬にして全身を駆け巡った。血に植えつけられた憎しみが熱を持って叫ぶ。復讐を果たせ、と。

目の前が真っ赤に染まり、考えるよりも先に身体が飛び出していた。
矢を隠し持ったこぶしが突き出され、敵の喉笛に深々と突き刺さる――そうなるはずだった。
けれど、手に残ったのは空を切る感触。
飢えと寒さに苛まれ続け、正常な判断力を失ってしまったわたしに、もう力は残されていなかったのか。
目の前で空色のローブが翻るのが見えた。そいつは幻惑するような優雅さでくるっと回ると、そのままわたしの腕をつかみ、ひねり上げた。
肩に鋭い痛みが走る。冷たい刃が喉に押し当てられ、漏れかかった悲鳴を凍りつかせた。
首筋にかかる吐息は、この寒さの中にあってなお、背に震えをもたらす冷気を帯びていた。
ねじる力はどんどん強まり、肩の関節が嫌な音を立て始める。手から矢が落ちた。
痩せ細ったわたしの腕など、枯れ枝と同じくらいたやすく折られてしまうだろう。
熱い涙が頬を伝った。結局わたしは、何も出来ないままこいつに殺されるのだ。姉さんのように。
姉さん。
どこにそんな勇気が残っていたのかはわからない。どうせ死ぬのなら、最期に憎むべき仇の顔を目に焼き付けておきたかった。
刃が肌を裂き血の筋を残すのもかまわず、必死に首を回し、後ろを振り向いた。
だけど、そこに顔はなかった。そいつの頭部は鉄色のマスクに覆われていたから。
バイザーの奥には深い闇。その奥から二つの青白い炎がわたしを見据えていた。

10メイトリックス:2008/01/15(火) 23:40:57 ID:neGQmqs60
「誰かと思えば砂色の髪の民か」
口を開いた、という表現は正しくないかもしれない。地の底から湧き上がるような深い声が、鉄仮面を震わせる。
「久しく見なかったぞ、短命な遠類よ。未だ滅びてはいなかったのだな」
古めいた文句を紡ぎ、そいつはくつくつと笑った。こいつはわたしの血の色をした眼を見たのだ。
「お前たちは遠類なんかじゃない!たくさんの仲間を殺しておいて……!」
憤怒と嫌悪が全身を駆けめぐり、口から迸った。もう自分の身の危険など眼中から消え失せていた。
獣のように唸りわめき、罵詈雑言の限りを浴びせながら、わたしは無表情な仮面に言葉を叩きつける。ついこの間も一人殺したくせに、と。
沈黙が降りた。寒空の下、わたしの荒い息づかいだけが耳障りに響く。そいつの青白い眼光は瞬きもしなかった。
「知らんな」
空々しい答えが返る。
「知らないなんて言わせない!見た人がいるんだから!」
抑えきれない怒りに声が震えた。「ニイドってネクロマンサーが姉さんの死体を運ぶのを!」
酷使された喉がひりつく。首から流れ出した血が、マントに赤黒い滲みを作っていくのがわかった。
「それに、あの槍を送り付けてきたのも……」

あの日、その包みが届けられるまで、自分に決断の日が迫っているとは思いもしなかった。
幸せだった。わたしはただ姉さんの帰りを待ってさえいればよかった。
姉さんは一流の傭兵。どんな危険にも勇敢に立ち向かい、涼しい顔で潜り抜けてきた。
そして、決して笑顔を忘れた事がなかった。
村を発つ時も無事に帰ってきた時も、大丈夫だよ、といつも微笑んでくれた。あの花のような笑顔で。
だからわたしは安心して待っていられた。
友達と笑いさざめき、薬草を摘み、村の小さな子どもたちの面倒を見た。両親のいないわたしに、姉さんがしてくれたように。
そうやって、再び旅立つ時まで二人で暮らす平和な日々に思いを馳せていた。
でも。
真っ二つに折れた槍が包みから転がり出た時、わたしは言葉を失った。
姉さんの大切にしていたボア・クラン。肌身はなさず持ち歩いていたはずなのに、どうして。
手がかりを求めて、必死に包みの残りを解いた。槍をくるんでいたのは上質な絹の布だったけれど、気にする余裕などなかった。
使われていない矢の束が、血にまみれ弦の切れた弓が、次々とわたしの目に晒される。その度に、絶望が胸に澱のように溜まっていった。
姉さんが武器を手放す事はありえない。わたしたちは皆、小さいころから武器を自分の一部として扱うように教えられてきた。
エリプトの傭兵にとって、武器は命と同じくらい大切なものだから。それがここにあるという事は、つまり姉さんは――。
恐ろしい可能性に思い至ったわたしの目が、布の端に吸い寄せられる。そこにはひとつの見慣れぬ文字が縫い込まれていた。

やがてうわさが聞こえてきた。
姉さんは生ける謎に殺されたのだと。古き悪魔の一人、ルーンの名を持つ者に。
旅人が他のうわさを伝える事もあった。
東へ進んだ砂漠の地に、ルーンの名を持つ死術士が移り住んできたらしいと。
悪魔。その単語に村中が色めきたった。
かつて大帝国だったエリプトを滅ぼし、わたしたちの祖先を離散させた宿敵。その殺戮と陵辱は留まるところを知らなかったと聞く。
一族に悪魔の血が混ざったのもこの時期だったそうだ。
あの悲劇以来、わたしたちはあらゆる悪魔とその眷属を憎み、狩り立ててきた。悪魔と等しく恐るべき傭兵団と称されるほどに。
ましてや古き悪魔と言えば、それよりも以前から地上を徘徊し、力を行使していた者たちだ。
村の戦える者はすべて立ち上がろうとした。
この機に数百年の間に各地に散らばってしまった同胞を呼び集め、かつての報復を行うべきだと主張する古参の傭兵さえいた。
しかし、長老たちは疲れ切った表情で首を振った。
長老たちは知っていたのだ。彼らが見ようとしないものを。彼ら以外の目には明らかな事実を。それをわたしも見てとった。
彼らは弱過ぎたのだ。弱く、愚かになり過ぎた。エリプト傭兵団はもはや存在せず、昔日の栄光は既にない。
どれだけ彼らが悪魔を倒そうと、やつらの数は日々増え続けている。
敵が勢力を増し続けている間、わたしたちは衰えていく一方だったのだ。
だから、わたしはたった一人で旅立った。皆を巻き込む事などできはしなかった。
村を去る時の長老たちの表情が忘れられない。
わたしの身を案じ心を痛めながらも、その顔には残酷なほどありありと安堵が浮かんでいたのだ。

11メイトリックス:2008/01/15(火) 23:41:42 ID:neGQmqs60
「成る程、遂に追いついたか」
不意に喉もとの刃が取り払われ、ねじり上げられていた腕が自由になった。
わたしは素早く身体を反転させ、ズキズキと痛む肩をかばいながら、無事な方の腕でニイドに殴りかかる。
「私を憎むのも無理からぬ事。だが君は誤解している」
彼は造作なくそれをいなすと、さっきとはまったく違う、同情さえ感じられる調子で言った。
「確かに噂は全て違わず真実だ。しかし、姉上に死を与えたのは私ではない」
「そんなたわ言、信じると思ってるの」
わたしの脳裏にネクロマンサーの話術に関する数々の伝説がよぎる。悪魔の誘惑術を用い、どんな相手でも言いくるめてしまうのだ。
そんなものに騙されるわけにはいかない。視線を走らせ、相手の隙を探ろうとした。
わたしの考えを読んだのか、ニイドは鷹揚に肩をすくめると握っていた刃物をこちらに差し出し、言った。
「信用して貰うしか無かろう。姉上の死の真相が知りたくば」

小振りの美しい曲刀だった。
埋め込まれた無数の宝石は、ひと目で比類なく高価だと知れるものばかり。所持者の手にしている財産を量らせるには充分だ。
警戒して動かないわたしに受け取るよう促し、言葉を継ぐ。
「武器を渡しておく。ただ、私に説明の機会を与えてくれさえすれば良い。その後裁くか否かは君に委ねる」
「わたしを嵌める気なのね。呪術を使えるネクロマンサーに武器なんか必要ない」
頑なな疑いに気を悪くした様子もなく、彼は答えた。
「然り。されど私にその気があれば君はとうに死んでいる。それは理解している筈だが?」
肩がズキンと痛んだ。確かにその通りだった。こうも明白な事実を突きつけられなければならないなんて。
悪魔の言葉に耳を傾けるか、一族の名にかけて彼を殺すか。内に生まれた逡巡がわたしを悩ませる。
首から流れ出す熱を持った血が、耳を貸すなと声を上げた。お前は欺かれている、と。
そうであったなら。ここで彼を殺せば全てが終わる。
もう悪夢に悩まされる事も、息が出来ないほどの焦燥感に追い立てられる事もない。
その選択肢はとても魅力的で、蜜のように甘く思えた。この誘惑に抗するのは愚かというものだろう。
……でも、わたしにはわかっていた。ただそれを認めたくないだけなのだ。
――彼は真実を語っている。
そうでなければ、まだローティーンでしかない半人前ランサーの言葉になど耳を貸す道理がない。
その上、誤解を解こうと説得するなんて。
完全に信用したわけではなかったが、姉が死ななければならなかった理由をどうしても知りたかった。
持てる限りの理性をかき集めて胸の炎を抑え込むと、声を押し殺して呟いた。
「わかった。だけど妙な真似はしないで」
精一杯脅しを込めたつもりだったその声の、あまりの弱々しさにわたしはショックを受けた。
呆然としているわたしを気遣ったのだろうか。ニイドは神妙にうなずくと答えた。
「承知した。では私に付いて来たまえ。君の……」わたしの首と肩を示す。「傷の手当もしなくては」
わたしは力なく首を垂れると武器を受け取り、彼の後について歩き始めた。


――――――――――――――――――――――――

>>1
スレ立てありがとうございました。

>>スメスメ氏
結構ピンチに陥ってるはずなのにすんごく前向きな武道家さん、良いですね!
豪快というか、サバサバした感じといいますか。希望の持ち続けられる暖かさだと思います。

スメスメ氏に便乗して初投稿でございます。続きモノかもしれません。多分。
前スレまで黙々と読み専門だったのですが、皆さんの達者な文を読んでる内にムズムズしてきまして。
自分も書いてみたいなと思い、ついにやらかしてしまった次第です。長いです!ウザいです!
このスレでも皆さんのますます盛り上がっていくストーリーを楽しめるといいなと思います。

12スメスメ:2008/01/16(水) 00:11:19 ID:ddy6MTJU0
どうも、ID違うかもしれませんがスメスメです。
普段携帯での投稿で、久々にPCで見てます。

>>メイトリックス殿
初投稿おめでとうございます。

いやぁ、こんなに沢山書けるのは羨ましいですよ。
自分なんかはどうしても文章に表現すると言う事に不向きなのでしょうかね?

お互いに盛り上げられるような作品が書けるようになりたいですな♪
そしてコメントありがとうがざいますっ♪

13みやび:2008/01/16(水) 05:58:34 ID:jgSWs2eg0
◇――――――――――――――――――――――――Red stone novel−Responce
 【レス1/2】
前スレ>之神さん
 うおっ、レスするのはお初ですよね!?(脳味噌ないので違うかも(汗))
 之神さんの作品はまだ読んでなかったりして……(びくびく)
 いや他にもたくさん未読の方がいるんですけどね(ひぃ)
 これはさっそく之神さんの作品を読まなくては。
 ……なんて書くと誤解されそうですが、とくに「レスをくれた人の作品しか読まない」という
自己ルールがある訳ではありません。最初のスレから読んでいるので、単に読書作業が亀
なだけです(泣)

 ――書きたい欲求――
 おそらく完全ROM専してる方の中には、自信がなく気後れして投稿できないでいる人も
いらっしゃるかと思います。なので少しでも投稿しやすいようにと、あの一文を入れてみま
した。もちろんここの住民の人たちは新人さんを温かく迎え入れてくれるはずですが、やは
り目に見える形のほうがいいかなあ、と。
 暗黙のスレ上げ――そういえば忘れた頃に上げてくれる方もいらっしゃいますね。
 このスレは他と違って上げても比較的平和なので、あまりに長期間沈んでいる場合はこっ
そり上げてみるのも悪くはない。みたいな旨を加えてもいいかもしれませんね。
 いやでもやはり暗黙のほうがいいのかな(笑)

前スレ>68hさん
 はっ――しまった(汗) テンプレ案のフォント情報はWin相当です(汗)
 Winのメモ帳等でMSPゴシック、標準、12ポイントに設定すると、見た目がこの掲示板の
表示と同じになる(専ブラ使用環境を除く)――ということです。
 ローカル側で掲示板と同じ大きさに表示させて推敲すれば、完成形を想定した書式整形
がし易いだろうなあ、と思って採用してみたのですが……。
 過去にRSをプレイしていてOSをMacに乗り換えた人がいないとも限りませんよね。さらに
その人がここを見ている可能性となると恐ろしく低いですけど(笑) でも可能な限り万人を
想定するのが本来ですからね。註釈は入れるべきでした(泣)
 仕様が変ってなければ解像度はWin96dpi、Mac72dpiなので、Web上ではWinの方が表示
は大きくなるはずです。数値的には1.3倍ですが、体感的には倍に見えるはず。

 しかし感想というのも立派なトレーニングだと思いますよ。さしずめ68hさんは黒帯びといっ
たところでしょうか。むふふ♪

前スレ>スメスメさん
 筆が遅いのは作家のご愛嬌ですよ(笑)(そうなのか……)
 こちらこそあらためてよろしくです♪
Red stone novel−Responce――――――――――――――――――――――――◇

14みやび:2008/01/16(水) 05:59:06 ID:jgSWs2eg0
◇――――――――――――――――――――――――Red stone novel−Responce
 【レス2/2】
前スレ>白猫さん&ワイトさん
 ラス投稿お疲れ様でしたー♪
 が、まだ読書が追いついてないです……(いやん)
 読み切りに関してはなるたけリアルタイムで感想を述べているのですが、連載ものは1スレ
から読んでいるので、どうにも亀すぎですね(泣)
前スレ>◆21RFz91GTEさん
 ラストお疲れ様です!
 こういう感傷的な短編は大好きです♪
 何気ない日常を切り取っただけでも、そこに情緒的な要素が加わればどんなものでも物語
になる。そんなお手本みたいなお話ですね。
 過疎ぎみなRSの現状ともある意味シンクロしてるかもしれない辺りがまた刹那的かも。

 ちなみに今は「名無し」だった頃の◆21RFz91GTEさんの作品を読んでたところです。(遅ッ)
 感想はのちほど〜。(いつやねんな(汗))

>スメスメさん
 人称はある種の罠ですからね(汗)
 一人称だと現実味のある表現が可能だけど、代りに「主人公が知り得ない情報」を読者に
見せることができなくなりますから、シーンを変えたり色々な手段で対抗する訳ですが、慣れ
が生じると作者さえ視点を見失ってしまうという墓穴でもあったり(笑)
 とは言え創作欲にかなうものはありません。小難しいことは考えず自由に投稿してください。
 私なんてもう心臓に毛が生えそうです……(恐)

>メイトリックスさん
 祝! 初投稿♪
 というわけで初めまして。私も途中乗車の身です。

 エリプトの滅亡と悪魔のくだりは、公式でも概要しか紹介されていないので、謎めいていて
すてきです。
 復讐に燃える主人公と訳ありな宿敵という構図も、掴みはバッチリですね。
 姉の死にどんな真相があるのか……。続きが楽しみです。
 また作家さんが増えて嬉しいです。これからも投稿をお待ちしております!

 >>1
 最後になりましたがスレ立てお疲れ様です!
Red stone novel−Responce――――――――――――――――――――――――◇

15◇68hJrjtY:2008/01/16(水) 16:49:52 ID:zKuyzEVI0
>>1さん
スレ立て乙であります!一日遅ればせながらもスレ発見しました(笑)
みやびさん案のテンプレ等もそのまま…良い仕事ありがとうございます。

>白猫さん (前スレ992〜996)
スレ終了間際な投稿、ありがとうございました!
今回も色々な発見と進展がありましたが、個人的にはルフィエがネルを想っていたのに気がついたシーンが良かったです(*´ェ`*)
サーレの「ルヴィぽん」と「ネルぽん」はしばらく私の頭から離れない呼称になりそうです(笑)
関西弁のウィザードって物凄く楽しそうなんですが、男勝りのアーティも素敵。
歌姫の正体も明らかになりましたね。と、聞きなれた単語が出てきたと想ったら北欧神話が原点でしょうか。
続き楽しみにしていますね。

>ワイトさん (前スレ998)
待ちに待った後日談…と思いきや、物語は続いているようで良かったです(笑)
ビショップのヒース君も仲間に入ったと思ったらリンケン!冒険話は大好きです(ノ∀`*)
戦闘面ではないラータの素顔(?)も見れましたし、安心して続きを楽しめそうです。
ヒースの犯罪歴は個人的に気になりますけど(笑)

>21Rさん (前スレ1000)
1000ゲットおめでとうです!
実は私も似た理由で以前在住していたMMOから抜け出してRSやってる身…実に親身に読めたと思いますorz
ギルドというひとつの集まりができるとどうしても人同士のいざこざは仕方ないものですね。
でもそれをまとめるギルマスは一人。だからこそ友人というものはとても大切だと思います。
彼(彼女)が無事にRS世界に復帰し、無くしていた仲間と再会できた…つい涙がこみ上げてきそうになりました(´;ω;`)
1000という記念番号での心に残る短編、ありがとうございました。

>スメスメさん
ムハー!武道家キタ━━☆゚・*:。.:(゚∀゚)゚・*:..:☆━━!!
女の子を守って戦うというシチュエーションに鼻水モノです!(違
しかし、いつも思いますがガイコツやバインダー相手との戦いはどうやって倒したら良いのでしょうね…。
私の愛読する某ファンタジー小説では「腰の骨か頭蓋骨を打ち砕く」のが一般的らしいですが(笑)
一人視点での物語というのは実際の作家さんによる書籍でもよくありますし(「吾輩は猫である」とか)、読みづらいなどということはありませんよ。
むしろ仕掛けられた罠とか敵側の思惑が読み取れないぶん、ワクワク感が増しますし。
続きお待ちしています。

>メイトリックスさん
初めまして!ここで感想を書かせてもらってる一人、68hです。
ランサーとその妹…復讐という言葉を背にしているランサー(アーチャー)のシリアスなお話ですね。
エリプトという国の情景もこのスレでは時折語ってくれる書き手さんが出てくれますが、滅びてしまった国と考えると色々と想像するしかありません。
メイトリックスさんはそんなエリプトと、そこに生きた二人の姉妹を実に悲しく、そして力強く描いていると感じました。
ネクロマンサーのニイドが持つ謎、そして姉の死の理由。彼女と共にそれらが判明していくのを楽しみにしています。

>みやびさん
Mac云々は私も限りなく可能性は低いと思いつつも…でも改めて考えるとやっぱり居ないかもしれませんが(苦笑)
でもMacだとまったく読めない、または書き込めないなんてことはないでしょうし、気にする必要はありませんでしたね(;´Д`A ```
むしろフォントやレイアウト関係の注釈をみやびさんが提案してくれるまでまるで気にしてなかった自分の方がorz
黒帯なんていただける事態じゃありませんね(´;ω;`)

16ESCADA a.k.a. DIWALI:2008/01/16(水) 18:51:49 ID:OhTl4zsk0
前スレからの続きですよ〜


「・・・えと、これを・・・き、着るんですか〜?」「うっせ〜、早く着ろっつーの!!この美少年君〜」
エルフの長老の屋敷にて展開される、幼児ミリアの捕獲作戦。その一環で、一人の美少年エルフが禁断の扉を開けさせられようとしていた。
「んしょっ・・・うぅ、なんか・・・お尻がムズムズしますよぅ〜」顔を赤らめて、自身の背後に目を見やるエストレーア。実は彼が着たのは
エディの悪企みによって持ってこられたそれは、彼の仲間である槍使いのラティナの衣装だった。鎧は問題ないのだが、インナーに問題がある。
・・・女性用のハイレグレオタード、しかも後ろはTバック仕様なのだ。それをたった今着てしまったエストレーアだが・・・違和感がない。
「うぉお〜、さすがはエストレーア!!美少年は女装させてもイケるって本当の話だったんだな〜・・・」エディの傍で感心しているのは
彼の友人でもありライバルでもある、エルフ暗殺者のクレイグ。彼もまたエディと共に、エストレーアに女装をさせた張本人ということだ。

「うぅ・・・こんな格好でミリアちゃんを説得しろと言うんですか〜??恥ずかしいですよぅ〜」股間を隠すようにして、モジモジとした様子の
彼をよそに、エディとクレイグの妙な視線がエストレーアの身を包む・・・。「う〜む・・・あとは胸に丸いものを詰めれば完成だな。」
「なァなァ、こんなところにパンが落ちてたぞエディ〜」どこから取り出したのか、クレイグが棒読みの声と共に丸い菓子パンをエディに手渡す。
「お、グッジョブだぞクレイグ〜!!・・・お〜っしゃ、これでエストレーアも萌えキャラ確定、最強の女装少年の完成だ〜、イェ〜イ」
鼻血を垂らした男二人に引きずられて、「あぅ〜、やめてぇ〜」とヘタレまくりな声を出す美少年エルフはキッチンへと連行されていく・・・

「あ・・・エディ、エストレーアの声とかどうすんだよ?外見は完璧でも、声がこれじゃぁバレなくね??」少し不安な表情を浮かべ、クレイグがエディに問う。
「はぁ・・・これでも一応、声帯模写はできますよ?例えば・・・『えと・・・あ、あたしっ、エストレーアですっ/////』・・・とか。すごいでしょ?」
キュートで甘いアニメ声を躊躇なく発するエストレーアに、男二人のピュア(?)なハートは貫かれまくりだった・・・

「・・・ボソボソ(なぁ、オレさぁ・・・不覚にも勃起しちゃったんだけど・・・・テヘ☆)」
「・・・ボソリンチョ(惑わされちゃダメだぞエディっ!!エス公はあくまで男なんだ、我慢しる!!)」
「・・・ボソリンヌ(でもさ〜、これ破壊力強すぎだって〜。うは、超ヤベェ〜/////)」
「・・・ボソソンヌ(・・・たしかに、エストレーアの女装がここまで来るもんだとはね・・・恐ろしい子っ!!)」

「あぅあぅ〜・・・・もう好きにしてください〜」
女装モードが馴染んできてしまったのか、既にアニメ声を模写したエストレーアの破壊力溢れる萌え声が
幼女ミリアが待ち受けるキッチンへと続く廊下に木霊する・・・

17ESCADA a.k.a. DIWALI:2008/01/16(水) 19:21:34 ID:OhTl4zsk0
一方、こちらはエルフの村近郊の森の中。
魔術師のバーソロミューと、相棒のエルフ魔術師のマスケーロがテクテクと歩いている。
「さ〜て・・・暴走したフィナーアさんはどこに行ったんでしょうかね〜・・・っと。」杖をクルクルと軽く回しながら、彼が気だるそうに言う。
「たしかにこの森の中を・・・ん?どこからか変な声が聞こえてきますよ、バーソロミュー?」相棒のマスケーロが、森の奥から聞こえる声に反応した。

・・・そして場所は移って、今度は森の中のとある茂みの中。
「んっ・・・はァ〜んっ!!イェスイェ〜ス!!バーニンマイプ〇シー!!バーニンマイプ〇シィ〜!!ふぁっ・・・あぁ〜んっ!!」
「ぜぇ・・・ゲップ、なァ・・・フィナーアちゃん?もういいだろぉ〜?オレの体力もう限界なんだわ・・・勘弁してくれぃ・・・むあ〜・・・」
「ダメよっ・・・んっ・・・あっ・・・まだまだイケちゃうんだから!!あと3時間は続けてもらうわよ〜、さァもっと激しく突いてぇ!!」
「もうだめ、死ぬ〜・・・・・」「・・・アレクシス、あんた一体何してるんですか?」「うげっ!!まま、マスケーロ!?いつの間にっ!!?」

茂みの中で子どもの教育上よろしくないコトをやっていたのは、ビーストテイマーでミリアの姉のフィナーアと、エルフ戦士で槍使いのアレクシス。
突如その場に姿を見せたマスケーロに驚くや否や、肩まで垂れ下がるドレッドヘアを逆立たせ、パイプウニのような髪形を作っていた。
「はぁ・・・相変わらずこの人は24時間脳みそピンク色なんですから〜。まぁ、無事で何よりですよフィナーアさん。」
半ば結果はわかっていたように、呆れながらバーソロミューは言葉を紡ぐ。そしてマスケーロも首を縦に振る。
「おいおいそりゃお前ら、体力がゼロに近づいて倒れそうな俺を無視するなっつーの!!KYだKY、空気読んでく・・・むぐ!?」
無視されているのが嫌なのか、突っ込みを入れようとしたアレクシス。だがフィナーアがいきなり彼の顔面にまたがり始め、言葉が途切れる。
「それで?アタシに何かご用かしら、生真面目コンビなお二人さァん?」腰をリズミカルに上下させながら、セクシー目線で彼女が訊く。
「あぁ・・・そうでしたね、実はカクカクシカジカのパラレルスウィングで、なにやらミリアちゃんにトラブルがあったそうで・・・」
「えぇ〜!!?!あぁんもうっ、何で早くそれを教えないのよ〜!!ミリアちゃん待ってて、お姉ちゃんが助けてむぎゅ〜ってしてあげるからねっ!!」
愛する妹のトラブルと聞いて、即座に屋敷へと猛ダッシュするフィナーア・・・相変わらず何も着ずにすっ裸のままだったが。

「・・・あの人には服を着るという概念はあるんでしょうか、ねぇマスケーロ?」「露出狂の思考は僕の知識の範囲外ですからわかりません。」
「ところで、そこで鼻血垂らして悦って気絶している筋肉質な彼、どうします?」「あぁ、そうですね・・・いじって晒して笑いものにしましょう。」
その後、闇の元素による芸術的イタズラにより、アレクシスが村中の笑いのネタにされることになったのは言うまでもない。
幼女ミリアが無意識に引き起こすバカ騒ぎは、これだけでは済まない。いや、タダで済むはずがない・・・・!!

18ESCADA a.k.a. DIWALI:2008/01/16(水) 19:28:46 ID:OhTl4zsk0
お久しぶりです、REDSTONEの世界観と常識を壊しまくった自己満足小説でおなじみ、ESCADA a.k.a. DIWALIです。
遅くなりましたが、書き手や読者、そしてコメンテーターの皆様。あけましておめでとうございます、今年も良しなに。
・・・という訳で、さっそく頭の悪さの塊みたいなものをアップさせて頂きました;;;

このドタバタが終わったら、そろそろ新章突入に移りたいと思います。
その際は軽くキャラクター紹介も書いておこうかと、ではでは(*゚ー゚)ノシ

19FAT:2008/01/16(水) 20:53:23 ID:x96Nj7JI0
前作 二冊目>>798(最終回)

第二部 『水面鏡』

キャラ紹介 三冊目>>21
―田舎の朝― 三冊目1>>22、2>>25-26 
―子供と子供― 三冊目1>>28-29、2>>36、3>>40-42、4>>57-59、5>>98-99、6>>105-107
―双子と娘と― 三冊目1>>173-174、2>>183、3>>185、4>>212
―境界線― 三冊目1>>216、2>>228、3>>229、4>>269、5>>270
―エイミー=ベルツリー― 三冊目1>>294、2>>295-296
―神を冒涜したもの― 三冊目1>>367、2>>368、3>>369
―蘇憶― 五冊目1>>487-488、2>>489、3>>490、4>>497-500、5>>507-508
>>531-532、7>>550、8>>555、9>>556-557、10>>575-576
―ランクーイ― 五冊目1>>579-580、2>>587-589、3>>655-657、4>>827-829
>>908>>910-911、6>>943、7>>944-945

―8―

 ランクーイは尻餅をついたまま、少し照れくさそうに手を差し出したレルロンドを見た。
「さ、立てるか?」
 ランクーイはその手をしっかりと掴み、立ち上がった。彼の視線の先には地にひれ伏し
たエルフの姿があった。
「いきなり上から襲い掛かってきたんだ、おどけちまったぜ」
 洞窟を抜けた二人は突然、真上からエルフの奇襲を受けた。それをいち早く察知したレ
ルロンドに突き飛ばされ、ランクーイは尻餅をついた。レルロンドはエルフが着地した瞬
間の隙を見逃さず、弓端の刃を俊敏にエルフの首にあてがい、押し切った。勝負は一瞬、
ランクーイは己の未熟さを改めて痛感し、レルロンドの言いつけを守ろうと心に誓った。

 昔からそうだ。いつだってレルロンドはランクーイを守ってきた。決して誇示しない繊
細な強さを持ち、弱いランクーイに引け目を感じさせないように、ランクーイをカバーし
てきた。レルロンドの本当の強さにランクーイは今更ながらに気付いた。

「僕の立ち位置がよかったな。敵はお前しか見てなかった。敵は宙に浮いていたんだし、
あそこで魔法を浴びせていたらきっとお前が勝ったさ」
 レルロンドはまた、ランクーイの弱さを隠した。決して罵声など浴びせない。ただ優し
く、そしてさり気なく次へのアドバイスをくれるのである。
「ああ、今度は絶対俺が倒してみせるぜっ!!」
 友の優しさに、ランクーイは誠意の眼差しで応える。そして二人は笑い合った。と、そ
のとき、バッサバッサと木々が音を立てたかと思うと、赤黒いオーラを纏った何かが放た
れた矢のようなスピードで二人に急接近してきた。
「燃えろぉぉぉぉぉぉぉおおっっっ!!」
 早速レルロンドのアドバイスを生かすランクーイ。しかし、放たれた炎は敵のオーラに
いとも簡単に弾かれ巨大な砲弾のような塊がランクーイを襲った。
「うっわぁぁあああああああ!!」
 塊はランクーイの目の前に落ち、弾かれた地面がランクーイを体ごと吹き飛ばす。レル
ロンドはすぐさま矢を射掛けるが塊には刺さらず、真っ二つに折れて乾いた音を立てた。
「なんだ、このエルフは……」
 塊の正体はエルフ。しかし、今まで二人が対峙してきたエルフとはその肉体、気迫、殺
気ともに違っていた。赤黒い筋肉ははちきれんばかりで、眼は充血し、体は魔法のような
オーラで覆われている。
「ひゃぁぁぁぁぁはぁぁぁぁあああっっっっっ!! 餓鬼だぁぁぁ!! うまそうな餓鬼
共だぜぇぇぇぇぇっっっっ!!」
 首に乾物を二つ吊り下げたエルフはレルロンドを舐めるように見下すと、短剣をぬらり
と腰から抜いた。そして雄叫びと共に獲物に飛び掛った。
「うっ! くっそぉ!!」
 レルロンドとエルフの距離は五メートルほど。しかし、エルフはただの一跳躍でレルロ
ンドの懐に潜り込んだ。エルフは素早く剣を真横に振るい、レルロンドの腹を裂こうとす
る。レルロンドは弓の下端の刃でこれを防ぎ、弓を地面に突き立て、しならせ、その反動
で再びエルフとの間合いを空ける。
「ランクーイっ!!」

20FAT:2008/01/16(水) 20:54:31 ID:x96Nj7JI0
 ランクーイは木にもたれかかったまま、目はぶるぶると震えていた。

 恐怖。

 ランクーイは絶望的だった、あの野犬に襲われたときのことを思い出していた。絶対的
な実力の差。自分ではどうすることもできない。無力。ただ、捕食されるのを待つだけの
弱者。
「ランクーイ、動けっ!! いつまでもそこで立ち止まるなっ!!」
 追撃を受けるレルロンド。弓使いのレルロンドは弓の両端に刃が付いているからといっ
ても、やはり接近戦は苦手である。なんとかして自分の得意な間合いに持って行きたいが、
エルフは執拗に迫ってくる。素早いエルフの剣捌きは少しずつだが確実に、レルロンドの
肌に傷をつける。それを傍観しているランクーイの頭の中では、同じ光景がぐるぐるとル
ープしていた。だらだらと汚らわしいよだれを垂らし、顔を覗き込んでいる野犬。実際に
は至らなかった捕食の瞬間を、彼は何度も、何度もイメージしてしまっていた。
「ランクーイ、君はもう立派な魔法剣士だろっ!! もう、憧れを手にしているじゃない
か!! ランクーイ、動けっ!!」
 ランクーイはその言葉に、ハッと我に返った。そうだ、なんであの頃と一緒にしている
んだ? 俺はもうあの頃の俺じゃないじゃないか!!
「俺は……」
 ランクーイはゆっくりと木から背中を離すと、両手に魔力を集結させた。
「俺は魔法剣士なんだぁぁぁぁぁああああああっっっ!!!」
 ランクーイの腕が熱く燃え上がる。その熱量はラスに与えられた魔力だけではとうてい
考えられないほど、強大なものとなった。
「うぅぅぅりゃあああああああああっっっ!!!」
 燃え盛った腕を地面に叩きつけると、地面がマグマを噴出するように炎を噴出しながら
一直線に割れた。その炎はエルフを目指し、徐々にその威力を増していく。
「ぐぅぎゃぁぁぁぁぁぁっっっっ!!」
 炎に包まれたエルフは全身に浮き出た血管を流れる血液が沸騰するようで熱く、痛く、
もがいた。
「ランクーイ、お前はやっぱり選ばれた魔法剣士だ!!」
 レルロンドはもがくエルフに飛び掛ると口の中に弓の下端を突き刺し、思いっきり
弦を弾いた。
「ぼげぎゃがあばぁぁあああああ」
 屈強な外面と違い、柔らかな喉を、刃が弾かれた反動で踊る。
「爆ぜろ!!」
 レルロンドは素早く弓を引き抜くと腰から爆薬を取り出し、エルフの口に詰め込む。ほ
どなくしてエルフの内部で爆発が起き、口を塞いでいたレルロンドの腕にきしむような衝
撃が伝う。
「レルロンド、どけぇ!!」
 ランクーイはまだ燃え盛っている腕を、今度はエルフに直接叩き込んだ。エルフから噴
出すマグマのようなドロついた赤。エルフは悶えることもなく、黒焦げになって倒れた。

21FAT:2008/01/16(水) 20:55:04 ID:x96Nj7JI0

「レルロンド、俺……」
 ランクーイはまた、レルロンドに何も言えなかった。しかしレルロンドの目は優しく、
穏やかなたれ目はランクーイの涙を誘った。
「いいんだ、ランクーイ。僕はお前がこうやって成長していくのを見れるだけで、幸せだ
と思っているんだ。よくトラウマを克服できたな」
 下を向いて涙を流しているランクーイの頭を優しく二度、ぽんぽんと叩いた。ランクー
イは泣きながら、レルロンドの傷に魔法をかけた。優しい光が傷口を塞いでいく。
「さぁ、ランクーイ、ラスさんを探そう。まだまだこの森は深そうだからな」
 ああ、とランクーイは頷き、顔を上げた。ツンと立った髪も、一重の勝気な目も、どこ
か大人びて見えた。
「おーーーーい、お前らぁぁぁぁぁぁ!!」
 突然、大声が森に響き渡る。その方向を仰ぎ見ると、ラスが両手を口にそえて叫んでい
た。
「ははっ、探す手間が省けたな、ランクーイ」
 レルロンドが優しいたれ目を向けると突如、前方の木が真っ二つに引き裂かれた。そし
て悠々と立っていた木の、それより遥かに大きな鉄塊が優しいたれ目を向けたランクーイ
を奪い去った。ズドォォォォンという地震のような振動を伴った爆音が大量の土埃を舞い
上げる。レルロンドは目を背けることができなかった。一瞬で視界から消え去ったランク
ーイはおもちゃの人形のように宙高く舞い、ぐちゃぐちゃになって地面に落ちた。

ランクーイは、死んだ。

22FAT:2008/01/16(水) 21:58:45 ID:x96Nj7JI0
>>ルイーダ★さん
スレ建てありがとうございます。

>>白猫さん
まさに目の離せない展開で一気に読ませていただきました。
サーレに苦戦しながらも絆で辛勝。これで二人の仲が急速に接近したり!?
一方で登場の「蒼き傭兵」アーティと「白の魔術師」カリアス。
主役登場って感じでカッコよかったです。
歌姫は破壊されるのか?イグドラシルはどこに?ワルキューレはだれ?
と気になることがたくさんあります。早く続きが読みたいです。

>>ワイトさん
さすがはデスサイズ、切り離された腕はもう戻らないのですね。
そこから呪いみたいにいろいろ制限が出てきたり、別の生き物が腕になったりしたら
(そんな漫画があった気が……)色々と妄想しちゃいます。
仲間ができたことでこれからどのような物語が語られるのか、楽しみにしています。

>>21Rさん
激しく感動、というか共感致しました。
久しぶりにinして、ギルチャや耳で一言「おかえり」
この瞬間、RSやっててよかったなと思いました。
この話を1000レス目に持ってくるところもさすがだなと思いました。
もし、昔書かれていた職人さんたちが帰りあぐねているのなら、この21Rさんの小説
を読んで、帰ってきてほしいです。
「ただいま」と。

>>みやびさん
素晴らしいテンプレ案、ありがとうございます。
そして私の前作、及び短編の読破ありがとうございます。
私は奥の深い謎解きや、手に汗握る戦闘シーンは苦手なので、それならせめて
話の中の人物たちには人間のような心を持たせ、まるで現実の人間が話の中に
息づいているような作品にしたいと思い、これまで書いていたので、みやびさんの
レスには心を救われたような心境です。
みやびさんの作品は設定がとてもしっかりしているので目がそちらに向きがちになります
が、やはりみやびさんも描いているものは「人間」だと思います。
でなければエレノア母ちゃんであんなに感動できません><
また気が乗ったら作品、投下して下さいね。お待ちしております。

>>◇68hJrjtYさん
いつも感想ありがとうございます。
なぜかエルフを悪者にしたがるFATです。
短編へのレスは本当に嬉しいです。それ自体が独立しているものですから一度
見過ごされるともう二度と見てもらえない気がして……
また煮詰まったら短編を書いてみようと思っているので、そのときはまたよろしくお願いします。

>>スメスメさん
一人称、私も前作で何度か挫折を味わい、今作では三人称でチャレンジしています。
が、一人称には一人称の良さが、三人称には三人称の良さがあるとわかり、結局は自分の
書きやすいほうでいいのかなと思っています。
じっちゃん気になるよ、じっちゃん。
バインダーの殺気にも動じない女の子、守ってやるって気負ってるのに中々の脱力
シーンですね。
殺気に圧されている脚は動くようになるのか、女の子は目覚めるのか!?
続きが楽しみです。

>>メイトリックスさん
初めまして。というかかなり書きなれているのでしょうか、頭の中に浮かび上がる
情景、哀しい思いを吐き出したかのような冒頭の「このまま全部凍ってしまえばいい」
には鳥肌が立ちました。
強い思い出を持った強い女性の意志、こういう話は大好きなのでぜひともこれからも
続けていただければ、と思います。
続き、楽しみに待っております。

>>ESCADA a.k.a. DIWALIさん
え、エストレーアっ!?
ニューハーフじゃないですけど、男でもキレイな人はたくさんいますよね。
しかもアニメ声……学園祭にいて欲しかったキャラです。
ついに姉、フィナーアが出撃し、ミリアの罠の砦も落ちるのでしょうか?
続き楽しみにお待ちしております。

23◇68hJrjtY:2008/01/17(木) 05:24:19 ID:zKuyzEVI0
早朝に失礼します。

>ESCADA a.k.a. DIWALIさん
エストレーアの腐女子絶賛姿に想像がとめどないです(笑)
そしてフィナ姉は前回から今までまだ続けてましたか…体力ありすぎて凄すぎる(((´・ω・`)))
確かにこの話はESCADA a.k.a. DIWALIさんしか書けませんね(笑) でも、エロ部分を上手く隠蔽するのも逆に大変なのかもしれないですね。
さて、次回は女装姿エストレーア(+クレイグ、エディ)とフィナ姉が全面対決ですね!(違
新章同様、キャラ紹介の方も楽しみにしています。仲間モンスター(?)たちもたくさん出ていましたし(笑)

>FATさん
ちょ、ちょっ…ええええええええ!うわああああああ!
などと絶叫したくなるようなラストシーン…。
その直前まではランクーイがトラウマを克服したなどの成長が物語られた直後だっただけにこの展開は・゚・(つД`)・゚・
エルフの姿や行動ももはや原始人みたいですね。そうか、藪にいる原始人はこんなエルフの成れの果てと(違
ランクーイの姿にレルロンドと同じく動揺を隠せない私ですが、ともかくも物語は続いていますし目を背けてはなりませんね!
色々と想像しながら次回を待っています!

24之神:2008/01/17(木) 09:18:39 ID:Z3wyKhJU0
1章〜徹、ミカの出会い。
-1>>593
-2 >>595
-3 >>596 >>597
-4 >>601 >>602
-5 >>611 >>612
-6 >>613 >>614
2章〜ライト登場。
-1>>620 >>621
-2>>622
-○>>626
-3>>637
-4>>648
-5>>651
-6 >>681
3章〜シリウスとの戦い。
-1>>687
-2>>688
-3>>702
-4>>713>>714
-5>>721
-6>>787
番外クリスマス >>796>>797>>798>>799
-7>>856>>858
-8>>868>>869
番外年末旅行>>894-901
4章〜兄弟
-1>>925-926
-2>>937
-3>>954
-4>>958-959
-5>>974-975
5冊目――――――――――――――――――――◆

25之神:2008/01/17(木) 10:02:56 ID:Z3wyKhJU0
α
「あの・・・・・まず誰なんですか?そこから始めるべきでしょう」
「ちっちっちっ、待っては居られないのだよ徹くん!」人差し指を突き出し左右に振るこの男・・・・
おそらくミカ達のほうの人間だろう、青い髪なんて普通じゃねえ。
「でも、一応教えておくべきかなっ」男は足を止めた。
「俺の名前は、ナザルド。ナザルド・デイクトンね。ナザルドでいいよっ」ふむ・・・・ナザルドね。
「やっと名前を・・・・・・って、そういえば場所は分かってるんですか?」
「おう、知ってるぞ。もうすぐだ」
・・・・・・。

β
体中あちこちに裁縫針のような物が刺さる。痛い・・・・・動くともっと痛い・・・・。
男が口を開く。
「あんまり黙ってると、死んでしまいますよ?もっとも、それでは私も困るんですけど」
「血を流すって言ったわね?あんた、国民みんな殺してどうするつもりよ」
「ハハハ、国民みんな殺すわけ無いじゃないですか、死ぬのは駆り出される傭兵のみなさんですよ、そして・・・」
「傭兵は当然、貴方のような赤い目の方達・・・ですから」微笑み顔が、冷酷な顔へと変わった。
「バカね、変な宗教入っちゃって。何がきっかけか知らないけど、やめたほうがいいわ、今更だけど」
「何の理由も無く赤い目を恨むほど、私も酔狂ではありませんよ・・・・・とにかく」ガチャ
「話を、ね」また針が深く身体へ沈む。

γ
ちっ・・・・・4対1・・・・。
「大丈夫、殺しはしない。人殺しは好みでは無いから」
「殺しは・・・って、何する気だよまったく」召還獣達が歩み寄ってくる。
「とりあえず、じっとしてなさい」笛の合図と共に神獣の1匹が動きを見せる。
ブォオオオオ・・・・・・と風が音をたてて渦を巻く。
「くっ・・・・前が・・・・見えナっ・・・・!」これじゃあ投擲もままならねえ。
そして笛の音が響く。
「いい加減竜巻から・・・・・出せ・・っ!」投擲斧を適当な方向へ投げ・・・・・・それは自分に跳ね返る。
「うぇっ・・・・これじゃあいつかのバカウィザードじゃねえかっ」・・・・何か・・・何か出る方法は・・・
「ケルビー、ヘッジャー、捕まえなさい」
2匹の神獣は思いっきり飛び掛ってきた。
また、笛の音。
すると竜巻が止み、俺はケルビーとヘッジャーに捕らえられていた。
「案外あっさり捕まるもんね、大泥棒ライトともあろう者が」
「へっ、おかげで竜巻抜けられたぜ、神獣も竜巻には入れないんだな」俺は仰向けで寝転ぶ状態で捕まえられた。
そこに、俺の頭の位置にシルヴィーがきた。
「さぁ、それじゃ捕まってもらいますから」シルヴィーが俺に手をかけた時、俺は・・・
「待て、さっき裏切りながらとか言ってたよな」
「言いましたけど、忘れて。関係無いから」
「いやぁ、だったらお前の親分も裏切ってもらおうかなーってな」
「無理なお願いね。それに、捕まっても減らず口は健在なのね、感心するわ」
「じゃあ減らず口ついでに言っておくが」
「お前、青いパンツは似合わねぇ・・・・・・よっ」
ドドド・・・・・と召還獣それぞれに、俺は一気に短刀を投げた。
「お前・・・・・何恥ずかしがってんの?」シルヴィーは赤くなってプルプルと震えている・・・。
「・・・・・・うるさい」
「スキだらけだ、お返しな」
バン!と音がして、シルヴィーの笛が短刀に弾かれた。窓の出来る予定の位置から、遠くへ。

α
「本当にここですか?建設中のビルにしか見えないんですけど」
「ここだって、絶対!うん、きっと・・・・」待て、きっとって何だ・・・・・・
その時上から何か振ってきた。
「んー?なんだアレは・・・・棒?」
ゴン!という音と共に、それはナザルドに勢い良く命中した。
「・・・・痛ッ!誰だこんなもん投げたのはっ!」
なんか、この人についてきて良かったのだろうか・・・・。

26之神:2008/01/17(木) 10:09:00 ID:Z3wyKhJU0
今更ですが、ルイーダさんスレ立て乙です。
いつ立つのかwktkしながら待ってましたぁ!
今回は、ライト×シルヴィーの話・・・・みたいな。
その時上から何か振ってきた。→その時上から何か降ってきた、でお願いします。
では、短編を繋げるようなこんな長編ですが、6冊目でもよろしくです。

27ワイト:2008/01/17(木) 12:59:47 ID:Z/wysRgM0
何時の間にか待ちわびた6冊目スレ立ってるのに気付き投下!(遅いなorz)
そして新しく立ったスレでも皆様どうぞよろしくお願い致します!!

他レス略(以外に長く続いています)⇒前レス5冊目998(連戦の後に続く話)⇒続き

「それでよーヒースはどうするんだ?これからさ」
「私はラータさんに付いていきますよ!・・得に行く宛ては無いので・・」
「そうか・・・そうだな、じゃぁ一緒に右腕を治してくれる奴でも探す冒険にでも出るか?」
「普通のビショップじゃ治す事も出来無いんだろ?・・・しかも切られた腕の原型は此処には無いしな・・」
「でも、完全に無い物を治す事は、誰に頼んでも無理だと思うのですが・・?」
「まー・・・ずっとそんなんじゃ何時まで経っても決まらねぇしさ・・・」
「物は試しにこの腕を蘇生?してくれる奴探しに行こうぜぇ〜?」
「そうですねぇ・・・確かにこのままでは何かと不便ですし・・・行ってみましょうか!」
「んじゃー今回の冒険の目的は右腕を治してくれる奴を探すって事に決定!!」

そんな訳で意気揚揚とリンケンを後にし一先ずは情報を集める為にオアシス都市アリアンに向かったのだが、
特に何の準備もせずに砂漠を横断するとなると当然至極行き倒れになる可能性もあると言うのに・・


「まさかとは思うが迷ったか・・・?なぁヒース〜アリアンにはまだ着かねぇのかよ?」
「もう少しだとは思うのですが・・迷ったか?と言われると、もしかすると、そうかもしれませんね・・」
「そうだと言ってくれorzしかし久し振りに歩くとなると広いなぁ此処は・・・ぁ!」
「敵だ!ヒースは離れてな!にしてもまたスナッチャー・・・?」

ズバッ!ぐあっふぁっ!!断末魔を上げるスナッチャーだが、それを躊躇無く一瞬の内に仕留める
ラータもヒースはある意味凄いと思いつつアリアンに向けての歩みを進めているのだが・・・

「来た道からはずれてるような感じは少しずつ頭の中から判るのですが・・」
「戻るにも戻れないって訳かよ・・・段々と足もだるくなって来たしなぁ・・」
「ていうか・・さっきからスナッチャーばっかじゃねぇか?出てくる敵がよ」
「確かに違和感は感じます。そう思える程にスナッチャーが出てきてますしねぇ・・」
「おっと!またスナッチャーが出て来たみたいだぜ?ヒースは・・・・って」

ドゴッッ!!ぐふぇ!!ラータが倒す前にヒースが何やら重そうな鈍器で、スナッチャーを殴り潰した・・・
「(何か今、可笑しい断末魔上げてなかったか?流石の俺でもあれは痛いな・・うん)」
「どうしました?それよりも此処はどうなってるのか・・・以前はこんな事無かったはず・・」

そう普通なら迷わない砂漠地帯なのだが、理由があったのだ・・何故かしらスナッチャーが
誘導するかの様に私達の前に現れ、それをラータが楽に倒しながら進むのだが、
それがいけなかったのかも・・・とヒースは今頃になってそれに気づいていた・・


「本格的に・・迷ったかもしれませんね!!(やばいなぁーどうしよう・・)」
「そんな大声で言わんでも俺だってそろそろ気づいてるって話だよ・・・」

此処で一旦中断させて頂きます@@;この続きはまた書きますので、
申し訳無いのですが、次をお楽しみにお願い致します・・・では|ω・)また

28◇68hJrjtY:2008/01/17(木) 17:10:54 ID:CJGnCxzg0
>之神さん
青いパンツ青いパンツ青いパンツ…(エコー  はっ!いや、その!なんでもありません(ゴルァ
やっぱりこういうタイプの女の子って口説き文句とかセリフに弱そうです(*´д`*) 萌えー!
一方徹の方はナザルド君と潜入作戦…棒が勢い良くぶつかっても平気の平左っぽいナザ君の防御力に脱帽。さすが!
ちょっと頼りなさそうでいて実は…的なキャラ、うーん。憧れます。
ピンチのミカを救え!続き楽しみにしています。

>ワイトさん
二人パーティーになった直後に迷ってしまいましたね(ノ∀`)
ここは「迷ったんじゃない、砂漠を見に来たんだ」でなんとか!(ならん
スナッチャーの断末魔の悲鳴をわざわざ文章にしてくれたのもなんだか嬉しいというか(笑) そうそう、こんな風に言うんですよね。
ビショップの殴打って剣とか槍よりもリアリティがあって怖い気がします。棍棒とか現実にもありそうな武器ですしね。
さてさて二人の行方は何処へ。スナッチャー地帯を抜けられるか否か…続き楽しみにしています。
---
ところで、提案というかなんというか。
ワイトさんは一人のセリフが終わる前に」(かぎかっこ閉)を使っているようですが、続けて同じ人物が話す時は改行だけしてみてはいかがでしょう。
そうすると飛躍的に読みやすさが増すと思いますが…もちろん意図的に今の書き方をされているのでしたら申し訳ありません。
指摘ではなくてあくまで提案なので、無視されても構いません(o*。_。)o

29名無しさん:2008/01/17(木) 17:19:24 ID:gXqJ5/rQ0

>スメスメ氏

ブリッジで動き回る武道はどうみてもゴキブリですがそれが(・∀・)イイ!

>メイトリックス氏

読みふけってしまいました。
端々の言い回しに想像を掻き立てられて、続きが凄く気になります。

>ESCADA a.k.a. DIWALI氏

思いのほかエロスでビックリしました。

>FAT氏

最後の最後の急展開に度肝を抜かれました。
今まで読んでランクーイに移入している部分があっただけに特に。

>之神氏

複数の視点がついに絡み合ってきましたね。
物語を読んでいるときのこういう瞬間が凄く好きです。このまま複数の視点で
進むのでしょうか。

>ワイト氏

スナッチャーの断末魔が忠実すぎるww

30白猫:2008/01/17(木) 18:53:32 ID:atY7HWIM0
Puppet―歌姫と絡繰人形―

第一章〜第五章及び番外編 5冊目>>992



第六章 -夜空の下で-

(初めてPuppetを読まれる方に分かりやすいよう、少々の解説を交えます。
序章〜第五章を読まずにいきなり第六章を読んで頂いても問題ありません)

〜これまでの大体のあらすじ〜

18年ぶりに古都へと戻ったリトルウィッチ――ルフィエ。
古都の変貌ぶりに驚いた彼女は、南西部[オベリスク跡地]で、諸々の罪で警備兵――ネルに逮捕される。
しかし瀕死の重傷を負った彼を治療したこともあってか、ルフィエは無罪放免となった(ネルが揉み消した)。
その後、[大戦]の発端となった呪術師が到来したこともあって、現在はネル・ルフィエ・仕事仲間のレイゼル・ネルの知り合いの一人娘リレッタの四人で活動している。
そして霧に包まれ、人々の消えたビガプールに訪れた四人だったが、突如魔物とリトルウィッチ[歌姫]の襲来を受ける。
なんとか魔物と[歌姫]を撃退した四人だったが、今度は[傀儡]と名乗るサーレとデュレの襲来を受ける。
が、宝石[エリクシル]の力の発現も手伝って、ネルはその二体の傀儡を撃退した。
そんな中、ビガプールに到着したブルンの守護神の二人が、[歌姫]を撃退したらしい。
平和の戻ったビガプールで…しかし、ネルの顔にはまだ暗雲が残っていた。




ビガプールの隣の都市、ビッグアイ。
その入り口の門の脇で、銀髪の少年は、目の前の少女の胸倉を掴む。

「なんであの時、仲間になることを承諾したんですかッ!!」
「………っ」

少年の名はネリエル=アラスター=ヴァリオルドⅣ世。
フランテルに現存する唯一の貴族の末裔であり、古都ブルンネンシュティングの警備兵。
[ブルンの影狼]という異名で畏れられている少年である。
その機械仕掛けの右腕には宝玉[エリクシル]が埋め込まれており、自在にその形状を変化させる。
十六歳には見えない大人びた口調とその銀髪で、しばしば成人と間違えられるのが悩みだという。

少女はルフィエ=ライアット。
ビガプールの[歌姫]から、[歌姫]の素質を見出されたリトルウィッチ。
ケロッとした性格だが、常に仲間を思いやる少女である。
[大戦]の後自分たちが迫害された、ということを知ったが、自分を匿うネルのことを知り、大した危機感は覚えていない。
常に自分を庇うように戦うネルに、いつも歯がゆいものを感じている。





あの後、ビガプールの霧も、魔物達の姿も消えた。
サーレを退け、失血でぶっ倒れたネルをブルンの守護神の一人、[白の魔術師]カリアスが抱え、今はビガプールに隣接する都市、ビッグアイで休養を取っていた。
が、ネルは目を覚ました途端、数時間も看病し続けたルフィエに掴みかかった。

胸倉を捕まれ、戦いの際とは比べものにならないほどの剣幕で怒鳴られ、ルフィエは縮こまる。
だが、それでネルの怒りは収まらない。さらに詰め寄る。

「あそこで仲間になってしまったら、必ず世界を滅ぼしかねない計画の片棒を担がされる…。
あのルヴィラィが邪魔な人間である僕を生かすわけがないでしょう!? そもそも、僕のためなどに承諾するなど、軽率にも程がある!!」

その言葉を聞き、ルフィエはしかし唇を引き絞る。
小さく、非常に小さく、呟く。

「…………ネルくんは、ずるいよ」
「ッ……」

怒りで全身を戦慄かせていたネルは、しかしその言葉で止まる。
腕の震えが止まったのを見、ルフィエはその腕を撫でる。

「辛いことは全部自分が背負い込んで、みんなの代わりに自分が傷付いて、
今度は自分の命を捨ててまで、あるかどうかも分からない計画を破綻させるの…?」
「…………貴方は!」
「私、何も分かりません…。私、私馬鹿、だから…大きな世界より、小さな仲間達の方が、大切なの…」
「……貴方は、甘すぎる。これは、戦いなんですよ?」
「戦いは…あなただけが、傷付かなきゃいけないんですか」
「ッ……!」

今度は止まるのではなく、絶句する。
トンと床に折り、ルフィエは零れる涙を腕で拭う。

「私達、仲間でしょ…? 一緒に戦って、一緒に傷付いて、一緒に笑い合う仲間でしょ…?」
「仲間だから…じゃ、ない。僕は――」

潤むルフィエの目を見、ネルは腕を放す。
ドサリと地面に倒れ込むルフィエには目もくれず、ネルはビッグアイを出た。

31白猫:2008/01/17(木) 18:53:55 ID:atY7HWIM0


「あいつはさ、ルフィエちゃん」

座り込んで泣きじゃくるルフィエを見、無精髭を生やした茶髪の青年はポンポンと肩を叩く。
彼はレイゼル=ハイエット。19歳でかなりの酒飲み。
ネルと同期の警備兵であるが、槍の腕は中の下。
料理が得意らしく、ルフィエもよく彼に料理を教わっているという。


「両親を、たった一人の妹も守れなくて、絶望に打ちひしがれてた。
それを救ったのがアーティさん…あの人は、あいつに[騎士道]を教えたんだ」
「…騎士、道」
「そうさ。己を犠牲に他者を護る。他者の代わりに自分が糧となる。
それを知って、奴はそれを生き甲斐として生き始めた。あいつにとって他者の糧になることは、生きることと同義なんだよ」
「貴族のプライド…ですか…。馬鹿みたい、です」
「ああ。あいつは馬鹿さ。甘っちょろい馬鹿だ」

涙を拭き、目が真っ赤になったルフィエの顔を撫で、レイゼルは立ち上がる。

「でも、あいつのお陰で俺らは、今日まで生きて来られた」

常に盗賊団との戦いで第一線を戦っていたネルを思い出し、レイゼルは笑う。
ルフィエも、数日前の[テレットトンネル]での出来事…そして、先の戦いを思い出し、頷いた。

(私…ネルくんの背中ばっかり見て、戦ってきたんだな)






「…ネリエルさま」
「…………リレッタ?」

寝間着姿で夜のビガプールを眺めていた金髪の少女は、小さく頷く。
少女はリレッタ=アウグスティヌス。
大教主[ルゼル=アウグスティヌス]の一人娘であり、強力な[天使]。
ネルに好意を抱き、ひたむきにネルのことをサポートする少女である。
それを見、ネルは少しだけ笑って彼女の横に立つ。

「此処は、すごく綺麗な夜空が見えるんです…アウグスタでは見えない、沢山の星」
「……リレッタ、もう、大丈夫なんですか」
「はい。ネリエルさまが…助けて、下さいましたから」

ネルに寄りかかって、リレッタは夜空を眺める。
ネルも一面に広がる星空を見、笑う。
その笑い顔に途方もなく惹かれ、しかしリレッタは言う。

「ネリエルさま、私…決めたんです」
「?」
「ネリエルさまはお優しいから…私かルフィエさんか、どちらかなんて選べないはずです」

いきなりグサリと突き刺さったその言葉に、ネルは閉口する。
それを見てか見ずにか、リレッタは続ける。

「ネリエルさまのそれは、優柔不断とは違う…みんなを思いやって、自分を犠牲にする考え方から来る葛藤だってことも、知ってます。
だから私、決めたんです。ネリエルさまがその葛藤を越えて私を選んでくれる日まで」

ネルの手を自分の胸に置いて、リレッタはクスリと笑う。

「だけど…一つだけ覚えておいて下さい。私は、貴方のことが好きです」
「……はい」

ネルは今更、リレッタの笑顔とルフィエの笑顔が似ていることに、気が付いた。

32白猫:2008/01/17(木) 18:54:20 ID:atY7HWIM0

「さて…それじゃあ整理するぞ、ネリエル」
「はい」

ビッグアイのとあるテントに集まったネル達は、入り口で待っていたもう一人のブルンの守護神、[蒼き傭兵]アーティに中に通された。
その中には膨大雑多な資料が敷き詰められ、かろうじて六人が座れるスペースがあった。
「戦いの直後にすまないね」と頭を掻くアーティに、しかしネルは頷く。
「既にこれは戦争です」…その言葉に、ルフィエは少しだけ顔を俯かせた。

「私が歌姫から聞き取った情報はいくつかある。
まず、ルヴィラィは[ラグナロク]と呼ぶ何かの計画を実行中らしい。
その[ラグナロク]は、…まぁ恐らくは、世界を破滅させる等の類のものだろう」
「それはルヴィラィの部下…らしき者達から聞きました。
奴らはルフィエを仲間にしたがっていた…恐らくは、[歌姫]の力を持つリトルウィッチを集めている」
「歌姫の力…か。そんな奴はさっさと処刑してしまうのが一番なんだが…」

俯いているルフィエを横目で見、しかしアーティは言う。

「だが、ライアットは今のところ私達の陣営だ。戦力を裂くわけにはいかない。
それに[歌姫]は、ライアットを中心に戦力を集めろとも言っていた。[ワルキューレ]を集めろと」
「…とにかく今は情報が少なすぎます。[グングニル]と[ラグナロク]、それとルヴィラィの動向に目を光らせておきましょう」
「ヴァリオルド家の情報網でも、なんとかならんか?」
「なりません。なれば苦労しませんよ」

若干イライラした声で、ネルはそう言う。
ルヴィラィの情報の調査は、既にネルも使える限りの権力をフルに使って使っている。
それでも、動向が掴めていない…というより、足跡すら見つけていない。

「現状では戦力を集めなければならない…丁度良い機会です。ルゼル様の手紙を…お見せします」

テント中央の机に、ネルは一枚の朱印手紙を置く。
[最優先事項]の意を持つ、朱印の圧されたその手紙を、アーティは目を細めて見る。
差出人は、アウグスタ教会最高責任者…[ルゼル=アウグスティヌス]。

「ふ…あの男からの手紙か。これの命に従って、動いているのか?」
「あの大教主様から…おっかないもん持っとるなぁ、自分」

アーティ・カリアスの反応を見ずに、ネルはその手紙を持ち、開く。
そこに書かれていた、数の命を読み上げる。

「[ネリエル君、状況は此方も把握した――]」





今現在、この大陸内で冒険者の数は数千にまで落ち込んでしまっている。
その、陣営も整っていない状況で、あのルヴィラィと戦うことは愚の骨頂だろう。
奴は大戦において、[傀儡]と呼ばれる無数の人形を使い、約2500の冒険者と数万の住民の命を奪った。

「ルゼル様、見えました」
「うむ」

私自身の手でその[傀儡]のほとんどは破壊した。だが13個、13個の[傀儡]は、破壊することができなかったのだ。
その[傀儡]たちの力が、当時の私では抑えきれぬほどの力を持っていたのだ。
なんとか幾十もの同志達の力で、11の[傀儡]を封印し、2の[傀儡]の力を奪った。
だがそれでもその二体の[傀儡]…シャーレーンとデュレンゼルの力は、目を見張るものだったのだ。
結局数多くの同志達を失い、私も退けられ…それほどの力を持つ[傀儡]を、奴は所持している。

「ファウンティンス・ハイランド…[マペット]の眠る地に、まさか訪れようとは」
「仕様のないことです…敵は[パペット]を蘇らせようとしているのですから…」

そして[パペット]…パペットとは、約百万の呪術師の呪いの込められた髑髏だ。
その髑髏は自我を持ち、伝説通り、古代大陸だったスージャネ大陸を滅ぼした。
それに対抗しうるのが、伝説の聖なる者が造り出した十字架、[マペット]だ。

「よし、すぐに[オベリスク]を浮上させるぞ。時間がない」
「は」

マペットはいわば、全世界の[聖]の力を集め、具現化したものだ。
それを扱えるのは恐らくは私と娘のリレッタのみ…しばらくはリレッタと動向を共にして欲しい。
それともう一人…この伝書鳩の持ち主も、必ず傍に置いておくようにしてくれ。
嫌な予感がするのだ…ルヴィラィから決して目を離すな。

33白猫:2008/01/17(木) 18:54:47 ID:atY7HWIM0

「[君達に神々の祝福があらんことを―― ルゼル=アウグスティヌス]…。
これが、ルゼル様がルフィエの伝書鳩で送り返してきた手紙の概要です」
「……ルゼル殿は[傀儡]の存在を知っていた…?」
「というより、戦ったことがあるみたい」

手紙の内容を聞き、アーティは思案する。
彼女は若くしてブルンの警備隊長にまで上り詰めた女性である。
少々乱暴な面もあるが、頭も切れ素早い洞察力も持っている。
僅か数度の襲撃で[月影団]のアジトを絞り込み、襲撃を掛けそのアジトを潰したことすらある。
月影団首領[紅瓢]アネットとブルンの守護神[蒼き傭兵]アーティ…この二人の女傑の戦いは、冒険者達にもよく知られていた。

「…今は戦うときではない。確かにそうかもしれんな」
「……しかしこのまま、奴を野放しにするわけには」

アーティが頷くのを見、しかしネルは言う。
その性急とも思える声に、アーティは苦笑した。

「どのみちルゼル殿が動いてるんだ。ルヴィラィも大きな動きはできまい…。
今はまず、優秀な人材を集めなければ…そうだろう?」
「んーで、優秀な人材が集まるんやったら…今の時期、いー感じのがアリアンであるやろ?」
「………ゴドム主催、[FORCE]選抜武道大会…ですか」

アーティとカリアスの言葉に、ネルは思案する。
[FORCE]とは、数十年前に結成された史上最強と謡われたギルドの名。
その[FORCE]は今は大戦で解散してしまったが、その[FORCE]のメンバーを選抜する目的で行っていた武道会は現在も行われている。
最も、現在はゴドム共和国が主催し[FORCE]は単なる称号に成り下がってしまっているが。
その武道会が、一月の二十日から開催される。

「ですが今日は八日…いえ、もう九日になってしまいました。
大会の参加締め切りは十七日…ここからアリアンまで、どう見積もっても半月はかかりますよ」
「参加だけなら、ライアットの伝書鳩を使えばいい…予選に間に合えば問題無い」
「さっすがアーティはん。あくどい」
「五月蠅いわね」

カラカラと笑うカリアスに、アーティはジットリとした視線を送る。
もうこれで話は終わり、とネルは書類の山を崩さないよう立ち上がる。

「では僕の分の参加状もついでに送っておいて下さい。では」

そう言うが早いか、ネルはテントを足取りも荒く立ち去った。
その後ろ姿を見やり、アーティは目を細める。

「ライアット、伝書鳩を発動する前に教えてもらいたい…ネリエルの腕のことを」
「…ネル、くんの?」

結局終始俯いたままだったルフィエに、アーティは自嘲混じりの笑みを浮かべる。

「あの子の腕…[エリクシル]について、もう少し情報が欲しいの」
「………エリク、シル…」
「そうよ。エリクシル。カリアスの話だと、活性化したって話じゃない?」

活性化、の言葉にルフィエは思い出す。
深い霧の中立ち上がる巨人と、白と黒の少女。
そして壁に縫い止められる、血塗れの――

「…………っ」

そこまで思い出し、ルフィエはきつく目を瞑る。
(嫌だよ…もう、護られながら戦うなんて…嫌だよ…!)
そんな[歌姫]の姿を見やり、アーティは溜息を吐いた。

「あのね、ライアット」

ルフィエの姿に、アーティは今は無き、一人のリトルウィッチの姿を思い出す。
自分が守り、自分を助け、共に戦い、共に友情を育んだ、二人といない親友。
その姿とルフィエが酷似しているのを感じ、アーティは自嘲気味に微笑む。

「確かに貴方のような強力なリトルウィッチ…[歌姫]は、唄を紡げば猛威を振るうわ。
だけど、それは"ただそれだけ"のこと…[歌姫]であっても、貴方達は一人では戦えないの」
「………ぇ…」
「貴方達は唄を紡ぐとき、一瞬だけ息を吸う…達人であればその合間に、喉に刃を突き立てるなんて簡単なの。
例を挙げるなら私やネリエルは…そうね。貴方に唄を紡がせる暇無く、瞬殺出来るわ」
「…………」

何を飾るまでもない、アーティは事実を語る。
単一箇所で戦うならば、リトルウィッチほど容易い敵は無い。

「貴方達リトルウィッチは一人で戦うことなんてできない…誰かの陰に隠れて、援護するので精一杯」
「そんな、こと…」
「能力的にはそう確定しているのに、どうして貴方はわざわざ前に出ようとするのかしら?」
「…………」

押し黙るルフィエに、諭すようにアーティは言う。

「でもね…私達はそれを咎めたりなんかしない。貴方は貴方にできることを精一杯やってるの。
ただ私達戦士が前に出て、貴方達魔術師が援護をする…"ただそれだけのこと"なのよ」

ただそれだけのこと…その言葉に、ルフィエは目をきつく閉じる。
(それでも、それでも私は…誰かを傷付けたくないの…)

34白猫:2008/01/17(木) 18:56:14 ID:atY7HWIM0

ビガプール南部。
木々の妖精達が住み着くこの地は、[魔術に酷似した能力-ZIN]を使う魔物達が多いことで知られていた。
そのビガプール南部…トランの菩提樹が仄かに光る大平原に、ネルの姿があった。
([エリクシル]の力を制御しろ)
目の前に立ち塞がる、ずんぐりむっくりの巨大な木妖精…トレント。
そのトレントに右腕を差し向け、ネルは思考を流す。
([エリクシル]は物質を変換する錬金術と、古代魔術によって生み出された宝玉だ)
トレントの、かなり大振りな打撃を半歩下がり避け、ネルは手を握る。
(先刻は僕の[護る]という感情に反応した…でも、それだけじゃ駄目なんだ)
気を失ったリレッタ、毒の霧を受け、半ば麻痺状態となっていたレイゼル、衣服もボロボロに千切れ、自分を助けるために敵の手に堕ちようとまでしたルフィエ。
それら全てが、鮮明な映像として脳に残っている。
そして、それら全てが、彼の[騎士道]の精神を押し潰した。
(これを自在に操らなければ…僕は誰一人、誰一人…)
既にトレントと相対して数十分が経過している。しかし、その腕は全くと言っていいほど反応が無かった。
レベルは圧倒的に彼の方が上とはいえ、とにかく敵の数が多い。
加えて、彼はビガプールの戦で貧血状態になり、さらに[エリクシル]の発動条件の調査の為、ポーション一本飲んでいない。
(そろそろ…時間だな)
いい加減息が切れてきたのを感じ、ネルは腕を下ろす。
接続部に走る痛みに顔を顰め、しかしネルは右腕を回す。
(天候が悪くなってきてる…じき雨に…)
と、背後で眩い光が放たれ、同時に地面から木妖精が現れる。
まるで大木が生える行程を早回しに見るように、木妖精が地面から、生えた。
木妖精が腕を振り上げ、背後からネルの脳天に振り下ろす、
寸前、ネルの短剣が体中に突き刺さり、木妖精は靄となって消え去る。
それを見るまでもなく、ネルは目を閉じ、小さく息を吸う。

「『 シャドウ―― 』」

   ゴス

詠唱の途中、ネルの背後から、何かが立ち上がった。
立ち上がって、彼に凄まじい勢いの打撃を叩き込んだ。
メキメキメキ、と肋骨が拉げるのを感じ、ネルは堪らず吹き飛ぶ。
(――ッ)
吹き飛ぶ途中、痛みを推してネルは"それ"の姿を見やる。
他の木妖精とは違う…青色の体表の木妖精、エンティング。
(エンティング…どうして、気付けなかった!?)
ゴロゴロと地面を転がり、ネルはゆっくりと立ち上がる。
左肋骨に数本亀裂が入っているのを感じ、しかしネルは短剣を構える。
(どうせリレッタにかかれば一晩で全快です…それよりは、こいつを)
目の前のエンティングを睨み、ネルは短剣を鋭く放つ。
が、

「っな!?」

サクッ、という音すら立たず、放たれた短剣は全て地面に落ちる。
有り得ない、と目を見張るネルの前、エンティングが鋭く腕を振り上げる。
(く――)
速過ぎる、その攻撃に、ネルは咄嗟に身を捩る。
が、エンティングの殺傷圏から逃れられない。苦渋の表情でエンティングの打撃を眺める――

   「『 ――――… 』」

瞬間、
凄まじい威力の衝撃波がネルの眼前を通り過ぎ、同時にエンティングの右腕がもぎ取られた。
その衝撃波は尚も推進力を全く衰えさせず直進…大木にぶつかる直前、突如方向を転換し、空の彼方へと消えた。

「ネルくんッ!!」
「………ルフィ、…エ?」

その衝撃波を見送った途端、挙がった声にネルがそう呟く。
衝撃波が来た方向を見れば、厚手のコートを着た少女が、こっちに向かって駆けてくる。
その姿を見やり、ネルは溜息を吐いて言う。

「どうして来たんですか。全く…」

そう呟き、ネルは鋭く腕を振るう。
途端、先まで沈黙を続けていた[エリクシル]が突如活性化…その腕に、千変万化の力を与える。
瞬時に腕を槍状に変化、エンティングの胴体に突き刺す。
同時に3mの高さはあろう頭に飛び乗り、左腕の短剣を振り上げた。

「ッハァアアアアッ!!!」

35白猫:2008/01/17(木) 18:56:35 ID:atY7HWIM0


「なんだ、援護必要無かったじゃないですか」
「そうですね」

ネルの胴に包帯を巻き、ルフィエは言う。
その言葉に相槌を打ち、ネルは己の右腕を見やる。
今まで沈黙を続けていた右腕が、ルフィエの声を聞いた途端突如活性化した。
ひょっとすると…彼女、ルフィエと右腕に何か関係があるのだろうか。
(…あり得ませんね)
溜息を吐き、ネルはすくっと立ち上がる。
目を白黒させてそれを見るルフィエの頭に自分の帽子を被せ、言う。

「ほら、さっさと帰りますよ」
「………はい」

ネルの言葉は素っ気なかったが、ルフィエはその言葉に少しだけ笑った。
(許して、くれたのかな)
自分が悪いことをしたなど欠片も思っていないが、彼を怒らせてしまった、ということには彼女も多少なりとも凹んでいた。
彼の帽子を両手で取り、ルフィエは今度は声に出して笑う。

「……ふふ…」
「…何がおかしくて笑ってるんです。さっさと戻りますよ」
(………あれ)

やっぱり許して貰ってないのかな、とルフィエは目を白黒させる。
が、当のネルはさっさと歩き去って行ってしまう。

「ま、待ってよぅ」
「やです」
「やですって…ちょっとネルくん」






次の、朝。
(主にアーティとネルの破壊した)市街地の復興が最優先され、やっぱりというかテレポーターはいなかった。
テレポーターのいない麦畑の前、旅支度を調えた一行は苦い表情で集まっていた。
元々これはアーティも予想していたことなので、予め想定しておいた案を言う。

「それじゃあ予想も的中したところで…シュトラセトに向かうわよ」
「……此処から、ですか? 僕でも軽く三日はかかりますよ。足手まといが二人もいては無茶です痛っ」
「いくらなんでも無謀ってもんやなぁ、三日分の食料なんかあらへんあいたたたたた」

即座に反論したネルとカリアスの足を踏みつけ、アーティは言う。

「此処から半月かけてアリアンに向かうより、三日でシュトラセトに行ってテレポーター使った方が早いわよ」

その端から見れば完璧そうな案に、しかしネルは言う。

「……あのですね。南に来たことのないアーティさんに言っておきますけど」
「…………」

図星だった。
アーティは[ブルンの守護神]と謡われるが、実際のところその名の通り古都の警備ばかりで、街の外に出ることはほとんどない。
古都のテレポーターが戦争終結の前年から廃止され、ますますアーティの箱入り娘癖は悪化した。
一方ネルは警備兵の他にシーフとして、フランテルの全土を飛び回っている。地理は彼の方が詳しかった。

「"この僕の持ちうる力をフル活用して"三日です。このメンバーだとそうですね…十日はかかります」

[足手まとい]…レイゼルとルフィエを横目で見、ネルはさらに言う。

「敵は全て[ZIN]系統の魔物です。リレッタがいるならともかく、それ無しで三日なんて無謀にも程があります」
「…ちょい待ち、「リレッタがいればともかく」ってどーゆー意味よ」

目を細めるアーティを見、ネルはリレッタを見やる。
妙に頬が赤くなっている…とおいうより、林檎と張り合っても勝てるくらいの勢いである。
頭に卵を載せれば目玉焼きが焼けそうだが、それは流石に可哀想である。

「……どうしたの、リレッタ?」
「リレッタは今から僕とスマグに向かいます」
「…………」



「「「「は?」」」」

36白猫:2008/01/17(木) 18:57:11 ID:atY7HWIM0

「いやだから、今から僕とリレッタはスマグに行くんですって」

とうとう顔を俯けてしまったリレッタには目もくれず、ネルは飄々と言う。

「[エリクシル]についての書物がスマグにあるそうなので調査に行くんですよ」
「そんなこと言って実は最近人気のスマグの大噴水でも見に行くんじゃねーのー?」

レイゼルのその言葉でリレッタの肩がビクリと揺れた。
スマグの大噴水とは、魔法都市スマグの内部にある、巨大な魔術建造物である。
昔から[金貨を投げ入れば願いが叶う]と言われているが、何処の誰が広めたのか[恋人同士が金貨を入れると永遠に結ばれる]などという話が最近話題になっている。
そのせいで噴水の排水溝が詰まるなどのトラブルもあり、現在は投げ入れられた金貨、総額2800万Goldでスマグの外部に造営されている。
その余りに分かりやすい図星に、アーティは苦笑する。

「まぁ、調査なら文句は言わないわ。ってことは貴方達、[タッグバトル-トーナメント]に出場するのね?」
「はい。昨夜ルフィエにも頼みました」

その際思い切り鼻で笑われたり思い切り不機嫌になられたり、と面倒だったんですよ…とまでは言わない。
今でもルフィエの機嫌が凄まじく悪い…のも、理由の一つである。

「それじゃあ、リレッタ…頼みます」
「………………はい」

ヒューヒューという息づかいの方が大きくて返事はよく聞こえなかったが、とりあえず頷いた動作で理解できた。

「とりあえず、リレッタの魔力充填が完了するまで[ZIN]について僕の知識を――」
「要りませんよそんなもの。時間が惜しいなら、早く行きましょうよアーティさん」
「え、あ、そ、そうね」

妙にピリピリしているルフィエを細目で見、ネルは腰から"あるもの"を取り出す。
それを数秒凝視したが、溜息を吐いてそれを握る。

「ルフィエ」
「…………」
「……ルフィエ」
「…………」
「…………ルフィエ」
「…………」

頑なに黙りを決め込むルフィエを見、ネルはもう一度溜息を吐く。

「神器も無しに戦うのは危険です。だからこっちを見ろと言ってるんです、ルフィエ」
「…………何ですか」

ようやくこちらを振り向いたルフィエに、ネルは手に持ったものを投げる。
それを危なっかしい手つきで掴んだルフィエは、それを見やる。
小さな、正八面体の形をした金色の宝石。
何かのお守りにすら見えないそれを、ルフィエは眺める。

「………これは?」
「タリズマン…それを使えば、即席の防御魔法を発動できます。
回数制限はありますが、効果は折り紙付きです。単なるお守りですよ」
「ちょ、ちょっとネリエル、それあんたの母さんの形見――」

アーティの言葉を無視し、ネルは頷く。
タリズマン、と呼ばれるその宝石を手に取り、ルフィエはネルの顔を見た。
[遠慮するな]とネルが目で言っているような気がして、ルフィエは呟く。

「…ありがとうございます」
「いいですね? ぜっっっったいに過信はしないように。気休め程度なのですから――」
「それでも、嬉しいです。ありがとうございます」

微笑むルフィエを見、ネルも釣られ、少しだけ笑う。
と、その腕がぐいっとものすごい力で引かれた。

37白猫:2008/01/17(木) 18:57:41 ID:atY7HWIM0

「?」
「ネリエルさま、行きますよ」
「え、あ、はい」

今日は妙にピリピリしてるな、とネルは目を白黒させる。
その[ピリピリしている]理由が、まさか自分にあるとは思いもしない。
ネルの手を引き、リレッタは皆から少し離れ、街道の上に立つ。

「『 エバキュエイション 』」

リレッタがそう唱えた瞬間、後背の翼がバッと開かれる。
呪文を唱えた者に唯一無二の超速をもたらす、[エバキュエイション]である。
現代こそ[ポータル用タリズマン]が発明され、ポータルを開く呪文へと成り代わってしまっているが、
1920年代のフランテルで、瞬間移動の力を使うことができるのは、ごく少数のウィザードだけという。

「そ、それでは、二月一日にアリアンで落ち合いましょう」
「ええ。トーナメントはこっちでも見させてもらうわ」
「せーぜー熱い夜でも送りなされ、お二人はん」
「遊びに行くんじゃ――」

ネルの言葉が終わる寸前、リレッタの[エバ]の力が発動…二人の姿が掻き消えた。
それを険しい顔で少しだけ見、ルフィエは我侭も終わり、と言う。

「行きましょう、アーティさん」






「り、リレッタ…飛ばしすぎ、ですッ!?」

何か言ったような気がしたネルに、しかしリレッタは答えず右へ旋回する。

(渡したくない…ネリエルさまは、渡さない)

FIN....

38白猫:2008/01/17(木) 18:58:17 ID:atY7HWIM0
【第六章までの主要登場人物】

・ルフィエ=ライアット 76歳 ♀ 
年齢と中身と外見が果てしなく合致しない(本人曰く成長の仕方が違う)。実質年齢16歳くらい。
生存するリトルウィッチの内、唯一飄々と町中を歩き回る少女。
[大戦]については[脱走者]と名乗ったリトルウィッチから聞いただけで、実際にその目では見ていない。
唄を紡ぎ、神器でその力を高める[歌姫]の力を備える。
18年間一文無しで旅をするくらい無謀。
今はネリエルと共にルヴィラィの動向を追う。

・ネリエル=ヴァリオルド 16歳 ♂
本名ネリエル=アラスター=ヴァリオルドⅣ世。愛称は[ネル]。
異名[ブルンの影狼]を持ち、その異名に違わぬ隠密・戦闘面での巧みさを見せる。
[大戦]で両親と右腕を失い、警備兵の仕事をしつつ妹を捜す。
その右腕に埋め込まれた[エリクシル]の力で、その腕を自在に変化・戦闘を行う。
その実力は、単一の[傀儡]を退けるほど。

・レイゼル=ライアット 19歳 ♂
ネリエルの親友であり仕事仲間。
古都一の大豪邸、ヴァリオルド邸に居候している。
酒には強いが、酔っぱらうと狂うらしい。
料理が得意。戦闘は中の中。
ネリエル並に多方面に顔が利き、古都の裏道を知り尽くす男。

・リレッタ=アウグスティヌス 15歳 ♀
フランテル最強のビショップ、ルゼル=アウグスティヌスの一人娘。
神々から敬愛を受けた、正真正銘の[天使]。
単一機動レベルならネリエル以上の力を持ち、対アンデット戦では猛威を振るう。
ネリエルに好意を抱き、常に傍にいるルフィエに対抗心を抱く。

・ルゼル=アウグスティヌス 42歳 ♂
[アウグスタ]の名の由来となった、古代の名家[アウグスティヌス]の血を引く。
世界最強とも謡われる力の持ち主で、現代のアウグスタ教会の最高責任者であり大教主。
大戦でも前線で治療を行い、[アウグスタ事変]を解決した歴戦のビショップである。

・ルヴィラィ=レゼリアス ?歳 ?
[大戦]を引き起こした呪術師。
独特の服装をしており、呪術師でありながら[唄]を紡ぐことができる。
殺人に対して特に感慨は抱いておらず、必要であれば殺す、という信条を持っている。
サーレを始めとする[傀儡]を部下に持ち、実力は未知数。

・アネット=ライラ 22歳 ♀
異名[紅瓢]を持つ、盗賊団[月影団]の首領。
ネリエルやルヴィラィを退けるほどの実力者であり、[大戦]を生き残った歴戦の戦士。
ネリエルも知らない、何か二人の関係があるらしい。
愛剣[黒斬剣]は、一太刀で二の呪いを相手に掛ける呪剣。

・シャーレーン ?歳 ♀
愛称は「サーレ」。
自身をルヴィラィに造られた[傀儡]と名乗る少女。
無数の杭を自在に操り、対象を瞬時に串刺しにする。

・デュレンゼル ?歳 ♂
愛称は「デュレ」。
身の丈6mはあろう巨人で、右腕も異様に大きい。
サーレと同じ[傀儡]であり、その皮膚は鉄製の剣程度ならば簡単に弾く。

・アーティ=ベネルツァー 21歳 ♀
異名[蒼き傭兵]。文字通り蒼い髪と蒼い瞳のランサー。
蒼い稲妻を操る魔槍使いであり、ブルンの守護神と謡われる。
が、結構市街を破壊して減給を喰らう常習犯。

・カリアス=ハイローム 17歳 ♂
異名[白の魔術師]。妙に訛った喋り方の青年。
が、あまり白魔法(治癒魔法)は得意ではない。
移動能力に特化した彼の[ヘイスト]は、絨毯をも追い抜かす飛翔を対象に授ける。

39白猫:2008/01/17(木) 19:01:48 ID:atY7HWIM0
何時の間に立ってたんですか六冊目!
ということでどうもこんにちは、白猫です。
初投稿の方もいらっしゃるようで、私としても嬉しいことです。
5冊目からのまだまだ新参者なので、六冊目も精進しますです。
えっと、第六章は伏線みたいな感じです。異様に長いですが伏線です。あくまでも。




一足先にシュトラセト→アリアン経由で出発したルフィエたち。
それとは別に行動を行っていたネリエルとリレッタは、魔法都市スマグへ到着する。
スマグの魔法研究所へ入ろうとした二人は、そこで身の丈三メートルの巨人に遭遇する。
そのどギツい印象に思わず抜刀したネリエルだが、その巨人の様子をリレッタは奇妙に思う。

巨人…ガリレドに中に通され、研究所責任者、[ケイン=ジュード]の部屋に通された二人。
そして語られる、ネリエルの右腕に埋め込まれた[エリクシル]の謎。
その謎を訊き、ネルはリレッタに一つ、頼みをする。
その頼みを、渋々ながら受けたリレッタだったが――

第七章『深紅の衣』、その内公開、のはず。

40名無しさん:2008/01/17(木) 19:06:31 ID:6To1UW7I0
>>スメスメさん
戦闘シーンなのに何処となくほのぼのとしていて読み進みやすいです。
一人称・三人称、どちらの方が良いということは無いので、書きやすい方で書いていったら良いと思います。
>>メイトリックスさん
「復讐」個人的に好きなテーマです。ニイドが何を話すか?続きが待ち遠しいです。
>>ESCADA a.k.a. DIWALIさん
腐女子や適度に暗喩されているものが良いです。今後起こる騒ぎ。どんなものか気になります。
ただ、教育上あまりよろしくないので「裏小説版」に行ってみてはどうでしょうか?

41ルイーダ☆:2008/01/17(木) 19:45:30 ID:7STiPqps0
小説スレのみなさん、こんばんは^^ はじめまして^^
自分の立てたいスレだけ立てる身勝手なスレ立て人ルイーダです^^
このスレは今まで見たことなかったので、スレ立て依頼を見てもスルーしてたのですが、
他の人が立てないまま、2度目の依頼があったので、ちょっと覗いてみたら・・・
まあ、なんとお行儀のいい素敵なスレなんでしょう!
ビックリして、思わずスレ立てちゃいました^^

ところで、テンプレの

   ※□部分は黒で塗りつぶされている。

と言う注釈を

     ――あのブルン終末期の王と■■■■■■■」

と判断して勝手に変えましたが、問題なかったでしょうか?^^;

あ、いや、問題あるって言われても今更どうにもならないのですが・・・^^;

では、皆さん、これからもこの素敵なスレがんばってください^^

42◇68hJrjtY:2008/01/17(木) 23:55:58 ID:CJGnCxzg0
>白猫さん
伏線ッ!伏線だけでこれだけの文章量。これは七章への繋がりが楽しみです。
五章までの流れも自然な形で入れられているのも良いですね。今まで読んでいた私ですが改めてその部分も読ませてもらいました(嬉)
まずはやっぱり武道会行きTEEEE!こういうイベント、本当に今のRSには必要です。○×大会もいいけどさー。
ネル君には「遊びじゃないんですよ」って釘を刺されそうですが、やっぱりタッグトーナメントって響きが「オラ、ワクワクしてきたぞ」状態です。
確かに今回は大掛かりな戦闘が無かったぶん個々の心中模様が良く描かれていたと思います。
相変わらずな(笑)三角関係と、"エリクシル"の発動の謎…そして別れ別れになったパーティー。
七章以降では二つの視点からの物語となるのでしょうか。楽しみにしています!

>1さんことルイーダさん
このスレは初めての来訪(?)だったのでしょうか。一応住人の一人です!
黒く塗りつぶされている〜という部分の■に関しては問題ないと思います。
そこが変化しても年表や歴史の内容には大した影響はないと思いますし…RSのゲーム内でも隠されていたものですしね。
それでは改めましてスレ立てありがとうございました。次回も宜しくお願いします!(コラ

43ワイト:2008/01/18(金) 00:23:01 ID:Z/wysRgM0
◇68hJrjtY様提案有り難いです!是非参考に(ry)有難う御座います(^∀^*)
そして今書き込みし投下しようと思ったら全部消えた・・・うわあぁぁぁ!!

44 ◆21RFz91GTE:2008/01/18(金) 01:45:29 ID:Xb8K0UzI0
////********************************************************************************////
  ■◆21RFz91GTE:まとめサイト(だるま落し禁止)
  ■ttp://bokunatu.fc2web.com/trianglelife/sotn/main.html

////********************************************************************************////

 Snow of the Northwind-最終章-

 The last World/It Little story…。

注意:この作品は本編背景ストーリー破壊及び作者オリジナル作品となります。出てくる街、団体名等は実際のゲーム中に出てくる物とそうでない物が御座います。オリジナル要素が多いため実際のゲーム中で使用されるスキルとは別にオリジナルスキルが存在することもありますので予めご了承下さいます様お願致します。
 また、当作品は長編小説の三部作中最終章に当ります。始めてご覧になられる方はまとめサイトよりお読みする事をお勧めします。

注意2:当作品ではゲーム内部で使用されるスキル名は記載されません、文中の写生や雰囲気から大まかに読み取ってください。尚この作品より作者オリジナルスキルにはスキル名を使用させていただきます。作者自身の「こんなスキル有ったらいいなぁ〜」になりますので予めご了承くださいませ。


Act.1 アレン・ケイレンバック



 冷たい北風が吹く、それは冬の到来を知らせてくれる冷たく悲しい風。先日から振り続いている雪は私達が澄むこの街に一つ化粧をした。白くてサラサラしたパウダーをゆっくりと厚化粧をするように赤い屋根の上に降り積もる。
 吐く息は白く、タバコの煙と区別が付かない程外が寒くなっていた。家の前で遊ぶ子供たちは大人の真似をしてタバコを吸う真似をしている。とても無邪気でまだこの先に未来がある小さな子供たち。この子たちの本にはどんな結末が描かれているのだろうか。
 あの日より三ヶ月。この街は何も変わらずにその一日を送ろうとしている。誰も知らない誰にも知らされて居ないあの小さな事件は一つのギルドで起った一つの伏線。
咎人と呼ばれる存在とその後ろに二人の若者が立っていた。咎人は黒い衣装を身に纏、黒い帽子を被っている。若者の一人は白いローブを羽織っている女性だった。もう一人は女性より三十センチは高いであろう、美しいウィザードが立っていた。
そこは、かつて大戦と呼ばれる戦の犠牲となった二人の墓の前だった。墓の中は荒れていた、二年間も放置満足のいく整備もされて居ないこの墓は冒険者達が最初に立ち寄る場所として有名な場所にもなっている。周りには何百人と冒険者達が立ち並んでいる。それも全て同じ目的のために。
 「アレンの遺骨は?」

45 ◆21RFz91GTE:2008/01/18(金) 01:45:50 ID:Xb8K0UzI0
「墓の中、盗掘されていなければの話だけど…。」
咎人が一歩、また一歩と墓へと足を運んだ。そして墓の目の前まで到達すると腰に備え付けている剣を二つ取り出した、一本はシャムシールのような形をしていて鍔より先は青から赤へと色が変色していた。まるで幾戦も乗り越え幾多の生血を吸ったかのような酷刑な剣。名を「グルブエルス」と言う。もう一本、左手に構えるグルブエルスより長い長身の剣、細く長いその剣は刃こぼれ一つ無いまっすぐで不気味に光り輝いている。名を「ツインシグナル」と言う。
咎人は二つの剣を逆手に持ち変え腰を深く落とした。右手を後ろに回し左手を前に持ってくる。一つ息を吸って、ゆっくりと吐くとその場から姿を消した。いや、消したと言うより捉えることが出来ないと言ったところだろうか。その姿を捉えているのは咎人のすぐ後ろにいたランサーとウィザードの二人だけだった。その二人も精神を集中させコマ送りにしてようやく捉える事が可能になる。周りと取り囲む何百という冒険者達は咎人の姿を捉える事は不可能だった。
数秒咎人の姿が消えた刹那、何時か見た投げ短刀があたり一面に広がる。スカカカカカカカと音を立てて周辺の木々や大地へと付き刺さる。それを確認したウィザードは右手に構える杖を空へと付き上げた。すると周りに集まっている冒険者の中から何人かのウィザード達も同じく杖を空へと付き上げる。
「蒼空なる空のさらに向こう、汝…失われし十法により我らの声を聞きたまえ!」
中央で一番最初に杖を振りかざしたウィザードが叫ぶ、同時に回りにいたビショップ達が一斉に祈りを天へとささげる。すると投げつけられた短刀に沿って青い光が次から次へと流れ、そして繋がっていく。空から見ればそれは巨大な魔法陣であった。二十四の角を持つ果てしなく巨大な魔法陣は六つの角を持つ魔法陣から発生された四つの魔法陣連鎖による代物だった。余りに巨大な力を持つ魔法陣は力の開放を今か今かとスパーク現象を起こす。
「蘇れ…死人よ!」
咎人が姿を現した、突如自分の真上に数本の剣を放り投げた。それらは一直線に空へと昇り、そして地面へと付き刺さる。そこに新たな魔法陣を出現させ幾つにも連なる魔法陣はその力を無限連鎖し始める。そして魔法陣の中央部分に当る該当者の墓から一つの光が空に向かってのびた。それを確認した咎人はツインシグナルを空中から地面に向かって放り投げ突き刺した。最後に咎人自信が地面へと急速に落下を始め、地面へとグルブエルスを付き刺す。すると辺り一面は光に包まれその場にいた全ての人の視力を瞬時に奪い去った。暫く目を閉じていてもまぶしい光が分かるほど辺り一面が輝き、そしてそれは数秒続いた。
「あっちぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!」
光が収まると同時に墓が有る方向から突然聞きなれない声が聞こえてきた。一直線に飛び出したそれは人の形をしていた。
「クラウス。」
「サー…。」
クラウスと呼ばれたウィザードは杖を振りかざすと高速で詠唱を始める、そして辺り一面の水素原子を集めると酸素と反応させて水を作り出した。その水を軽く杖で叩くと飛び出した人に向かってゆっくりと飛んで行った。
ばしゃーんと音を立てて水は人へとぶつかり燃えていた炎はその水によって全て消え去った。
「あちちちち…ほへ?」
突然水がぶつかり体の周りにまとわり付いていた炎が消えた事に気づいた人はそのまま一直線に地面へと落下した。
「…これが?」
「…えぇ、何も変わっていませんね。」
イテテと声に上げながらゆっくりと立ち上がる人は辺りを見渡し状況を把握しようとした、そして同時に自分の腹部に血相を変えて手を回す。
「あ…あれ?」
「彼こそが、元ギルドマスター…「アレン・ケイレンバック」です。」



Act.1 アレン・ケイレンバック
END

46 ◆21RFz91GTE:2008/01/18(金) 01:52:06 ID:Xb8K0UzI0
というわけでこんばんは、21Rです。
というかあけおめ…(遅

最近風邪ひいて腎臓やられて入院してましたヾ(´・ω・`)ノ
いやぁ〜、皆さん体調には十分に注意してくださいね(笑

と言うわけで最終章始まりです、もう暫く御付き合いくださいませ。


コメ返し

>>14 :みやび様
ほぼ実体験です(笑
ただ、主人公の女性はリアルじゃ男性になりますけどヾ(´・ω・`)ノ

>>15 :◇68hJrjtY様
ばっちり1000狙ってましたヾ(´・ω・`)ノ
強いて言うなら997辺りからずっとスタンバってたんです(汗
始めての1000ゲットなるかぁ!ってスタンバってたらとれましたヾ(´・ω・`)ノ

>>22 :FAT様
いやはや(笑
確かに昔の職人さん達にも帰ってきて欲しいですねぇ〜。
Flash作ってる時にスペシャルサンクス作るために過去スレ見てたら懐かしい職人さん達を見れて
ちょっと懐かしくなりました、みんなかんば〜くヾ(´・ω・`)ノ

>>41 :ルイーダ☆様
スルーいくない

47ESCADA a.k.a. DIWALI:2008/01/18(金) 10:02:34 ID:OhTl4zsk0
続きです〜

舞台はひとまずキッチンへと戻る。
最終兵器を引っさげて来てやったと言わんばかりの不敵な笑みを浮かべるエディとクレイグ、そして彼らに不本意ながらも女装させられて
連れてこられた美少年のエルフ、エストレーア。屋敷のセキュリティシステムが張り巡らされたキッチンの中央にあるテーブル・・・そこに幼児化したミリアが
ちょこんと座っている。ほっぺたを膨らませ、やはり警戒心を向き出しにした眼差しを送りつけてくる・・・
「むぅ〜!!ミリアはぜ〜ったいおくしゅりなんかのまないも〜ん!!あっちいくの〜、め〜っ!!!」両腕を振り回してミリアは薬を飲むことを頑なに拒む。
「大丈夫だぞミリアちゃん、お兄たんたちはお薬なんか持ってないぞ〜?」「そうだぞ、苦い薬なんてナイナイ!!ほら、見てみなって!」
両者とも両手を上に挙げ、ミリアの幼児化の呪いを解除するための薬を持っていないことを証明した・・・ミリアの顔に初めて安堵の相が浮かび上がる。
「うにゅ〜・・・お兄たんたちいい人なの〜!ねぇ、ミリアとあそぼ?たいくつなの〜」無邪気で愛くるしい笑顔を携え、テーブルの上をハイハイしながら
エディたちの下へと向かうミリア・・・だが、3人にとってこれは非常事態だった!!!
「おいクレイグっ!!ミリアちゃんが床に落ちたら大変なことになるぜ!?」即座にハノブ発のトラップ解析機能付きゴーグルを装着するエディ・・・!!
「こうなったら体を張ってでもミリアちゃんを助けないと・・・!!いくぜエディっ!!」「ほいきた相棒ぉっ!!」

「ふみゅ、あそぼっ、あそぼ〜」未だに自身に危機が迫っていることがわからない彼女は、ハイハイを続けていた。テーブルの端が近づいてくる!!
「やべぇ〜っ!!!てて、テーブルから落ちちまうっ!!!クレイグぅ〜!!」「まかせろっ、いくぜ〜・・・必殺スライディ〜ングっ!!!」
クレイグの鋭いスライディングが広いキッチンの床を貫き、そこから身をひねったクレイグは、落下してきたミリアをレシーブで空中へと上げた。
「キャハハハハっ、わ〜い!!ミリアお空飛んでるのよ〜!うゅ〜」放物線を描いて落下してるだけなのに、無邪気な彼女はそれを大いに楽しんでいる。
ひとまずミリアの危機回避に成功したクレイグ、「ふぅっ・・・」と安堵し一息ついたのも束の間の事だった・・・

「カチリ☆」

「・・・・・・うそぉん;;」
青ざめて呟いた時にはもう遅く、またも床が開き・・・クレイグは落下し、また爆弾の餌食となってしまった。
「ぎぃいぃぃやぁああぁあああぁあああああああ!!!!!??!?!!」
酷い断末魔が、床に空いた落とし穴から吹き出る火柱の轟音と共に響き渡る・・・。
「くそっ、クレイグがセキュリティの餌食に・・・ってミリアちゃんこっちに落ちてきたァ――――!!?!」
「にゃぅ〜、こんどはエディなの〜!!あそぼっ、あそぼ〜!」「えと、えとっ・・・エストレーアぁっ、トスうぅっ!!」

48ESCADA a.k.a. DIWALI:2008/01/18(金) 11:02:32 ID:OhTl4zsk0
「はわわわっ・・・・えと、つつつ、次はサーb・・・」『ちげぇええぇええぇええ!!キャッチすんだよバカヤロー!!!!』
「あぅ〜、すいませんですぅ〜!!」一連の流れからサーブをやろうとしたエストレーアに、男二人の激が飛んでくる!!
・・・が、無事落下してきた幼女ミリアをキャッチし、3人の間に安堵の空気が流れる。「ふぅ、ひとまずピンチは去ったな!大丈夫か・・・」
振り向き様に喋ろうとするが、同時にエディの足元からまたもや「カチリ☆」という無機質な音が出る・・・・そして間もなく!!
そして今度は、エディが例の竹槍の餌食となってしまった!!!勢いよく床から飛び出した槍は、またも罠を踏んだ者目掛けて伸びて行き
ついには変なところに刺さってしまうのであった。刺さった瞬間、エディは目を丸く見開き、「はぐぁっ!!?!」という声と共に崩れ落ちる。
キッチン入り口には、困惑したエストレーア(女装中)と、無邪気に喜ぶミリアの姿があった。


一方、屋敷の中にいる他の連中はどうなっているのだろうか・・・?

こちらは大浴場・・・男湯と女湯を隔てる壁の前で、トレスヴァントとラティナは会話をしていた。
「お〜いラティナぁ〜、痛みは引いてきたか〜?」「うんっ、大丈夫だよ〜!!まだちょっとジクジクするけど、大した事ないわよ〜」
実はラティナもエディと同様、竹槍がエラいところに刺さってしまったのだ。塗り薬をトレスヴァントに塗ってもらい、この浴場の
薬湯によって治療するため、いまこうして入浴している。傷も何とか引いてきたらしく、ラティナの明るい声が響く。
「トレスヴァント〜、あたしそろそろ上がるからね〜」「お〜う、オレはまだ入ってるからな〜?」カラカラと戸を開ける音がする・・・

「あぁ――――――――――――っ!!!?!?!!?!?」

脱衣所からの彼女の驚きの声が、ハッキリと聞こえるくらいの音量で浴場まで届いた。

49之神:2008/01/18(金) 11:15:44 ID:Z3wyKhJU0
1章〜徹、ミカの出会い。
-1>>593
-2 >>595
-3 >>596 >>597
-4 >>601 >>602
-5 >>611 >>612
-6 >>613 >>614
2章〜ライト登場。
-1>>620 >>621
-2>>622
-○>>626
-3>>637
-4>>648
-5>>651
-6 >>681
3章〜シリウスとの戦い。
-1>>687
-2>>688
-3>>702
-4>>713>>714
-5>>721
-6>>787
番外クリスマス >>796>>797>>798>>799
-7>>856>>858
-8>>868>>869
番外年末旅行>>894-901
4章〜兄弟
-1>>925-926
-2>>937
-3>>954
-4>>958-959
-5>>974-975
5冊目――――――――――――――――――――◆
-6>>25

50之神:2008/01/18(金) 11:37:29 ID:Z3wyKhJU0
γ
シルヴィーの笛は、短刀に弾かれそのまま窓の外へと飛んでいった。
「あっ・・・・・・」ハッとしたようにシルヴィーは声を上げた。
「お返し、な?とにかくこれで・・・・」ライトは続ける。
「笛を持たないお前は、もう普通の女の子だ」その時、シルヴィーが笑い始めた。
「ハッ・・・・・ハハハ。普通、いいねぇ普通、なれるといいなぁ普通、なりたかったよ普通・・・・ああ普通な・・・」
ケラケラと狂ったようにシルヴィーは笑っている。
「おい、正気か。普通普通ってお前・・・・・」ライトは目の前の狂った少女を見つめる。

「裏切って殺して消して裏切って!その私が普通?ハハ・・・・・無理だよそんなの・・・」


4年前〜
大陸某所。
古い酒場のような所のカウンター席を挟み、2人の男が話していた。
「おい、分かってるよなぁ?もう期限はとっくに過ぎて、しかもその期限から1年は経ってるんだよ」
「聞いてんのかコノ野郎ッ!!!」ガン・・!とナイフをカウンターに突きつける。
「ヒィっ・・・・・!すすすす、すいません・・・・・っ!」
「お前が借りてる分の金を、そろそろ返してもらおうとなぁ!!1年も見逃してた俺等に感謝しろやっ!」
「は・・・・・はい・・・・でも・・・お金なんてウチには」
「うるせぇ!」
「・・・・・・・・」
「きちんと払ってもらわねえとな・・・・。それとも」カタギでは無いであろう男は、突きたてたナイフを怯える男に向けた。
「ヒッ・・・・・いい、命だけは・・・・・!」男はもう泣きそうである。
「じゃあ他に払えるモンあんのか?オイ、あんのかよ」
「えっと・・・・・その・・・・・・・」

「む、娘を・・・・・」


こうして私は、父に売られた。
賭場で金を馬鹿みたいに使うあの男は、自分可愛さに娘を売った。

「おいおいおい、こんな子つれてきちゃってよぉ・・・・ヘヘヘ」ガラの悪い男達が、私を見ている。
「好きに使っていいんだよねぇ?ヘヘ、エヘヘヘヘ・・・・・」
「いー身体してんなぁー?ええ?おい」
「キミは売られたんだからね、売られた分、たっぷり使うからよろしくねぇ?」

その後の事は覚えていない。いや、思い出したく無い。
蹴られ、殴られ、身体も好きに弄ばれ、私はボロボロだった。
雑用と虐待とを受けて1年。

消したい、嫌な者、嫌な物・・・・・全部消そう。

51之神:2008/01/18(金) 11:52:58 ID:Z3wyKhJU0
消した。消したはいいけど、生きていけない。どうしよう。

そうだ、私を使ってくれるところに行こう。

こうして私は自分を売った。
さまざまな組織に入り、使われ、見切りをつけて裏切り、また入り・・・・・。
賭場の負け金の価値の私は、こうして生きていくしか無かった。
行く先々、ほとんどの場所でいいように使われ、利用された。

そうしてあるとき入った「赤い目を嫌う組織」。
赤い目の事を嫌いでも何でも無い私は嫌気が差す内容だったが、仲間はみんな優しかった。
そんな時、組織の一員として命令が下った。
赤い目の男を殺してこい、と。

男の名前を聞いたとき、私は迷った。
逃がしてやるか、命令通り殺すか。しかし、こんな運命を背負わせた あ の 男 だ。

「お久しぶりですね、お父さん。いえ、売られたので親子でも無いですがね」
「・・・!シルヴィーかっ・・・・・ええと・・・その・・・・どこ行ってたんだ?」男は冷や汗を流す。
「貴方のお財布の代わりに、身体で払ってきたんですよ。ええ、とても無駄な4年でしたけど」私は笛を構えた。
「わかった、悪かった・・・・だから・・・・その赤い獣をこっちに向けるなっ・・・!」
「さよなら」
「待て、待て待て・・・・・話せば分かる!話せば分かる、だからちょっと待っttttttt」
ドシュ・・・!赤い獣は男の喉を食いちぎった。

こんな奴のために、私は・・・・・・・・・・・

それからの私は、REEとして生きている。あの馬鹿に売られた時からの、運命だから。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

「へぇ、たいした事ねぇな」ライトはせせら笑う。
「ハぁ?お前!私がどれだけ苦しんだかっ!痛かったかっ!知らないからそんな事を言えr」言いかけた時。

「じゃあお前」
「家族、一族全員から、武器向けられた事あるのか?」ライトはそう言うと、上着を脱ぎ始めた。
背中、腹、肩・・・・・・夥しい数の火傷、切り傷、抉られた跡が、無数に刻まれていた。

52ESCADA a.k.a. DIWALI:2008/01/18(金) 11:57:59 ID:OhTl4zsk0
「うぉわぁっ!!?ラティナぁ〜、何があったんだ〜!?」突如響き渡ったラティナの叫びに動揺し、トレスヴァントは湯船でバランスを崩しかけた。
「やだぁ〜、あたしの鎧とレオタードがなくなってるぅ〜・・・何で〜?」少し泣きそうな彼女のキュートな声が、トレスヴァントの耳に入る・・・
彼の目にはメラメラと炎が灯され、額には青筋が浮かび上がる・・・愛する彼女が困らされたと直感した彼は、怒りに火が付いてしまった!!!
「・・・さ〜て〜は〜エディの野郎の仕業だなァ?あんのヤロー、ラティナを泣かせやがったらタダじゃおかねぇっ!!!
 ラティナっ、オレあいつをちょっとシバいてくるぜ!!風邪引くといけねぇから、風呂で待っていてくれよ!?・・・っしゃぁ行くぜぇっ!」
勢い良くガラガラと戸を開けて、ピシャァンと叩きつける音がする。ラティナは不本意ながらも、もう少しばかり入浴することに・・・
「トレスヴァントぉ・・・///////」自分のために怒ってくれる彼に思いを馳せて・・・鼻の下まで湯船に浸かりつつ、プクプクと泡を立てていた。

そして今度は屋敷の廊下・・・
アレクシスといけない事をヤっていたフィナーアが、ミリアのピンチと聞きつけて猛ダッシュしている最中だ。
「はぁ〜・・・何でこんなに肌寒いのよ〜!?全裸で動き回ってもいいように暖房くらい効かせなさいよぉ〜!!バカぁ〜ん!!!」
少し冷たい空気の漂う廊下を愚痴りながら、彼女は全裸で走りぬける・・・と、いきなりダッシュを止めてその場でブレーキ。
「あらあらァ?こんな所にクローゼット・・・しょうがないわ、せっかくだからお洋服でも選んで着ていこうかしら〜、うふふっ♪」
気兼ねなくクローゼットのドアを開けるフィナーア、彼女の目の前には・・・リプリートマーキと原始人がクローゼットの整理をしていた。
「あ、フィナ姉じゃないか!!てゆうか裸一丁で何してるのさ〜?」フランクな声で呼び掛けるのは、リプリートマーキのセルジオ。
そして原始人の方はシンバ。2匹ともフィナーアに従属するペットである。「ま〜たどっかの野郎とヤってたのか!?相変わらず淫乱だなオイ」
「何よぅ、好きでやってるんだからいいじゃないのよ!!・・・あ、それよりも何かいい服とかない?肌寒くって・・・」
「そんならこの服とかどうよ!?今ならネコミミやガーターも付けとくぜ〜」「おいおいセルジオぉ、そりゃマニアック過ぎないか??」
「っきゃぁ――――ん!!!何ていいセンスしてるのセルジオちゃァんっ!!アタシ嬉しいわ、こういうの着てみたかったのよ〜」
セルジオがクローゼットから取り出したある服を手に取ると、いきなり狂喜乱舞するフィナーア。
早速それを着た後、意気揚々とクローゼットを後にしキッチンへと猛ダッシュを再開するのであった。

to be continued...

53ESCADA a.k.a. DIWALI:2008/01/18(金) 12:03:46 ID:OhTl4zsk0
>之神さん
あっ、タイミング悪い時に投下しちまった・・・申し訳ないです;;;
以前から現代×赤石世界のストーリー、楽しく読ませてもらってます。
複数視点の話はかなり高度に思えるので、その技術やセンス、参考にしたいです。

そしてライトvsシルヴィも決着でしょうか??
お互いの壮絶な過去に引き込まれますね・・・ひどい家族だ;;
これからもストーリーがどう続くのか楽しみです。

54之神:2008/01/18(金) 12:11:14 ID:Z3wyKhJU0
α
「とりあえず、ここだと思うんだ俺は」ナザルドは、ドアの目の前に立つ。
「ここですか・・・・何で?」
「いや・・・・・勘!」
「ええええ・・・・・・・・」

この男、ナザルドはどうもつかめない。何でミカのことを知ってるのか、何で一緒に来るのか、そもそも剣士ってコイツ・・・・

「お、おじゃましまーす!」・・・・・・・アホか。
中は思ったとおりの工事中、ペンキの匂いが鼻につく。
「居ない・・・・ですかね」
「いや!いるんだよ絶対!だって俺がいるって思ってるんだもん」さっきは、たぶん・・・・だった男が・・・。
「何の思い込みですか貴方・・・・」
「あーっ!ここ怪しいわホレここ」いちいちうるさいな・・・・・・まったく。

ナザルドが指差した所は、壁に隙間が開いてるところで、光が漏れていた。
「ん・・・・・?」覗こうと顔を近づけた時に、奴はもう事に当たっていた。
「てぃ!」
ボコッ・・・・・・バラバラバラバ・・・・・・・!
思いっきり壁を殴ったナザルドは、もう壁の向こうの光景を見ているようだった。

β
「話す気にはなれましたか?」
血を流しすぎてなのか、声がよく聞こえない。全身が麻痺のような状態に・・・・・・。
「・・・・・あっがっ・・・・」声にならない。
「ああ、麻酔が多すぎましたかね。針にね、少し塗ってあるんですよ」いっ、今更・・・・・・。
意識が遠のく・・・・・痛みと共に、少しずつ・・・・・その時。

「てぃ!」
ボコッ・・・・・・バラバラバラバ・・・・・・・!


γ
「・・・・・・・!な、何その傷・・・!?」
「何って、焼いた鉄を押し当てられたりな。フォークで抉られたり」
「何で・・・・・・何が・・・・・」
「今度話してやるよ、俺が死ぬ前にでもな・・・・・で、シルヴィーちゃん、ちょっと寝てて」
ゴン。
鈍い音が鳴り、シルヴィーは気絶した。

「それにしても・・・・・・召還獣動けなきゃ、本当に普通の可愛い女の子だ」
ライトはシルヴィーを抱えて走っていった。

55之神:2008/01/18(金) 12:18:09 ID:Z3wyKhJU0
ESCADA a.k.a. DIWALIさん
別にタイミングなんていいですよw
あんまり気にしません(´ω`*

とりあえず笛が無いと無理ですからね、本当。
あっさりと決着です。まぁ、一時的に。


超余談
実はワードで打つのが面倒で、そのままここに書き込もうとしたら・・・・
エラー!文が長すぎます。
と出まして。ああ、戻って分けて書き込もうとしたら・・・・書いた文が消えてる!
というアホなことをしてしまいました。ええ、本当ショックでした。
なのでこれは、2度目に書いたやつですね・・・・・・。

更に余談。
スキル名とかを小説に入れたり、効果音的なのを入れるのが苦手です・・・・orz
なので迫力に欠けたり(´・ω・`)

56◇68hJrjtY:2008/01/18(金) 16:48:50 ID:95kSdOn20
>21Rさん
あのレイとの激戦で果てたアレンの復活…章が切り替わって突然のこの展開は先の動乱を予感させるものがあります。
でもアレン君は相変わらずなようである意味安心しました(笑)
ユラン君やクラウスもそうですが、21Rさんの描くウィザードはボケ役でも憎めないというか楽しい人物が良いですよね(*´ェ`*)
さて、アレンが復活して物語はどう動いていくのか…最終章となるこの章、じっくりと読ませてもらいます。
---
自分にFlash作品や絵を描く才能があれば皆様の小説の一部分でも表現したいなぁと切に思っています(´;ω;`)
そういう意味では21RさんのサイトにあるいくつかのFlash作品には感動しています。
ちょっと挑戦はしてみたんですが…やっぱり絵心も必要になってくるようですしねorz

>ESCADA a.k.a. DIWALIさん
之神さんとのシンクロおめでとう!ヽ|・∀・|ノ
トレスヴァントとカップルになってからというものなかなかに女らしくなってしまったラティナさんも可愛いです!
しかし猪突猛進タイプなトレスヴァントに狙われたら流石のエディも…(;´Д`A  エストレーアが所在無さそうです(笑)
すっかりフィナ姉の18禁姿に慣れてしまっているリプたちもなんだか別の意味で可哀想な(笑) (笑うな
レオタード姿のエストレーア、猫耳ガーター姿のフィナ姉…ドタバタぶり、楽しみにしてます。

>之神さん
悲しいシルヴィーの過去…と思いきやライトにもまた隠された悲しい過去があったのですね。
普段飄々としているのがこの過去を隠そうとしてのものなのだろうかと思うと感慨深いです。
シルヴィーとライトの方は一時的にも決着が着きましたが、ナザ君たちの方がまだでしたね(笑)
やっぱりナザ君良いキャラだなぁ…実力の程は如何に。続きお待ちしてます。
---
二回連続執筆、おつかれさまでした(´;ω;`)
もし既に使っている、或いは理由があって使いたくないという場合ならば申し訳ありませんが
今後そのような悲しい結果にならないように是非とも専ブラ導入されてみてはいかがでしょう?フリーソフトですし。
むしろ書き手さんの方がこの手のツールは便利だと思うのですが…
一応自分が使ってるのは「Jane Doe」ってツールです。ググればすぐ出てくると思います〜。
改行やバイト数などが書き込み欄の↓にリアルタイムで表示されているので残り文字数等分かりやすいです。
もし導入過程で「○○が分からない」という場合は少しながら手助けもできると思います故!

57FAT:2008/01/18(金) 22:29:18 ID:U2Q.7z7A0
前作 二冊目>>798(最終回)

第二部 『水面鏡』

キャラ紹介 三冊目>>21
―田舎の朝― 三冊目1>>22、2>>25-26 
―子供と子供― 三冊目1>>28-29、2>>36、3>>40-42、4>>57-59、5>>98-99、6>>105-107
―双子と娘と― 三冊目1>>173-174、2>>183、3>>185、4>>212
―境界線― 三冊目1>>216、2>>228、3>>229、4>>269、5>>270
―エイミー=ベルツリー― 三冊目1>>294、2>>295-296
―神を冒涜したもの― 三冊目1>>367、2>>368、3>>369
―蘇憶― 五冊目1>>487-488、2>>489、3>>490、4>>497-500、5>>507-508
>>531-532、7>>550、8>>555、9>>556-557、10>>575-576
―ランクーイ― 五冊目1>>579-580、2>>587-589、3>>655-657、4>>827-829
>>908>>910-911、6>>943、7>>944-945、六冊目8>>19-21


―9―

 ランクーイの死の瞬間を、ラスもまた見ていた。二人に危険を知らせようと必死になっ
て上げた声が、皮肉にも二人の注意を自分に向けてしまい、ランクーイを死なせてしまっ
た。

 ――ラスは二人に再会する前、こんなやりとりをしていた。
 緑髪のエルフの挑発に乗り、ラスは無我夢中でエルフを追った。背中に生やした巨大な
翼を持ってしても、エルフとの距離は縮まらなかった。
「見込んだ通りの速さ、見込んだ通りの邪気。貴様はやはり闇の者だ」
 先を駆けながら、エルフは更に挑発する。
「うっせーーーーんだよっっ!! ぜってーーーー殺してやるっっ!!」
 二人は飛ぶように駆け、川を一跨ぎに越え、森の奥地へと辿り着いた。背丈三つ分の崖
を軽々飛び上がると、エルフはそこで立ち止まり、振り返った。ラスはその頭上に大刀を
振りかざすと、着地の勢いを乗せて振り下ろした。エルフはその軌道を紙一重でかわすと、
大胆にもラスの腕を掴んだ。
「憤るな。あれを見よ」
 指差された方向を見て、ラスは怖気を覚えた。そこには怨念の集積のような泉があり、
四方にエルフが座り、更にその外周を淀んだ水が城の堀のように囲んでいた。その泉は怨
念が渦巻き、いくつものおどろおどろと歪んだ顔が浮き沈みし、時空を歪めているようで
あった。
「其の先が貴様ら闇の者の住処。我らの世界とを結ぶ門。貴様はあの先を知っているだろ
う」
 ラスは固まってしまった。全身が硬直する。その先に行ったことはない、知ってもいな
いはず。しかし、ラスの記憶は、その遺伝子は、知っている。誰に教えてもらうでもなく
も、ラスはその先を知っていた。
「俺は……俺は、何者なんだ?」
 ラスはその先に今すぐ飛び込みたい衝動に駆られた。そこに飛び込めば、自分の謎が、
何者なのかが判明する気がした。
「待て」
 その衝動はエルフによって妨げられる。制止した腕を切り落とし、飛び込むことも出来
たがラスもまた異変に気付き、言葉に従った。泉の縁に座っていた四匹のエルフが皆揃っ
て同じ方向を見た。その先から別の三匹のエルフが現れ、入れ替わった。
「見ていろ。闇の者への納入が始まる」
 三匹のエルフはおもむろに首飾りを外すと、泉の上に浮かべた。泉の中を彷徨っていた
ドクロのような歪んだ顔達は、与えられた餌を我先にと奪い合うように喰らいつく。ドク
ロたちが求めているのは生の餌。しゃぶりつくと、まるで汁をすするように何かが抜け、
しぼんでいく。

58FAT:2008/01/18(金) 22:29:56 ID:U2Q.7z7A0
「人の魂」
 エルフが呟く。
「あれは人の魂を吸う。それが食事。それが我らに課された義務」
 ラスは怯えた顔でエルフを見る。
「俺はあんなもの食わない。俺は母さんの作るシチューが好きなんだ!」
「あれは闇の者の餌。闇の者はあれを喰らう」
 エルフの言っていることの意味が分からない。俺はあんな怨念の塊のようなものを食う
っていうのか? ばかばかしい。そもそも俺は闇の者なんかじゃねぇ! ラスは心の中で
叫んだ。
「闇の者よ」
 しつこいエルフに怒りの目を向けるラス。しかし、エルフが静かに指差したそこに、ラ
スは身を震わせた。彼らの立つ崖の下、数十メートルのところにそれは居た。重い黒の鎧
を全身に纏う巨大な物。そそり立つ木々と頭を並べるほどの巨体。ゆっくりと、しかし確
実にどこかを目指し、進んでいる。その巨体に似合わず、静かに、一つの音も立てずに。
「なんだあれは?」
「あれは守護者」
「お前らエルフのか」
「違う」
 エルフの大きく、深い黒の瞳に感情が宿る。
「闇への扉の守護者。あれは我らの敵だ!」
「憤るなよ」
 今度はラスがエルフの怒りを静める。
「俺にも分かるように分かりやすく説明してくれ」
 エルフはラスの目を真剣に見た。エルフの目の色は深く、吸い込まれそうな美しい黒に
戻っていた。
「我らが種族は長命少子。生涯で子は二人しかできぬ。故に長い命を失わぬ為、鍛錬を積
みその力は自己保守のためにしか使わぬ。しかし、あの門がある日突然開いた。我らは其
処から出てきた者たちと戦い、負けた。奴らに敵わぬと判断した長は奴らの提示した条件
を飲んだ。それがあの泉の守護、奴らの餌の納入。奴らはあの黒鎧を泉の守護者として残
した。あれの役目は泉の守護と餌の納入の監視。納入のないもの、逆らう者の処刑。我ら
はそれから人間狩りを始めざるを得なかった。我らを守るために」
 ラスは真剣に話を聞いていたが、このエルフが首に乾物を飾っていないことに気付いた。
「我は反逆者。奴らの言いなりになっていれば、我が種族は滅びる。其れ故我は奴には従
わぬ。身を隠し、機を探っている」
「なぜ俺につっかかってきた?」
「貴様の臭いだ。あの泉より出し者と同じ臭いがした。貴様に侵略の意思があるか、確認
したかった」
 ラスは複雑な表情をしつつも、自分は闇の者ではないと否定出来なかった。と、突然、
背後で火の手が上がった。ラスは振り返ると、そこになじみのある魔力と見慣れた二つの
顔を発見した。
「ありゃー、ランクーイか。あいつ、ほんとに様になってきやがったぜ」と嬉しそうに言
った。
「主の連れか。奴らは人間だな」
 暫しの間をおいて、再び炎が見えた。
「奴らは俺の弟子だ。俺は奴らの成長を見届けるまでは、あんな泉には近寄らないぜ」
 一度は衝動に負けそうになったラス。しかし、かわいくなってきた弟子を残しては行け
ない。ラスを人間として留めたのはランクーイであり、レルロンドであった。
「話の続きは奴らとしようぜ、エルフのおっさん」
 エルフは頷かず、黙って炎の上がったあたりを指差した。そこにはあの黒鎧が、音もな
く、いつの間にかランクーイたちの目の前に移動していた。
「なっっっ!! おーーーーい、お前らぁぁぁぁぁぁ!!」
 大声で危険を喚起するも、時すでに遅し。振り上げられた鉄塊のような剣は悠々と立つ
木を頂辺から切り裂き、ランクーイを直撃した。凄まじい威力で潰されたランクーイは地
面に叩きつけられ、その衝撃で宙を舞い、ぼろぼろになって落ちた。
 エルフはラスの腕を掴むと、風のようなスピードで唖然と立ち尽くしているレルロンド
と砕けたランクーイを抱き、何かを強く念じた。次の瞬間、四人は浜辺に居た。エルフに
抱きかかえられて、レルロンドは何が起こったのかを全く理解できなかった。しかし、一
緒に抱き上げられているランクーイの変わり果てた姿を見て、現実なのだと思い知らされ
た。

59メイトリックス:2008/01/18(金) 23:00:55 ID:wxeZONQQ0
Hellfire Salvage
The Decidings Part.1>>9-11

The Decidings Part.2

どうして、こんな所にいるのだろう。
悪魔と言葉をかわしてはならない。その掟をこうも簡単に破ってしまうなんて。
他ならない、このわたしが。
首筋に手をやり、あてがわれた布をそっと押さえてみる。
柔らかで、温かい。痛みはもう感じられなかった。
ふと不安に駆られ、包帯に巻かれた肩に視線を移す。
もし、二度と武器を執ることができなくなっていたら――。
おそるおそる腕を上げてみると、こちらの痛みも完全に引いているのがわかった。
ニイドの治療は完璧だった。名も知らない薬草や膏薬を巧みに使い分け、瞬く間に処置を終えてしまったのだ。

薄闇の中、座り心地のよい安楽椅子に身を沈め、わたしは待っている。彼が話し出すのを。
薪の爆ぜる音が耳に快く響く。背にした暖炉から漏れる赤々とした火の色が、古風な趣の壁紙に淡い彩りを添えていた。
この眠気を誘うような暖かな部屋でも、ニイドはマスクもコートも身から外そうとはしない。
テーブルを挟んで向き合うように置かれた椅子に腰掛け、いまだ口を開かずにいる。
眠っているのか、目覚めているのか。生きているのか、死んでいるのか。
それすら感じ取る事はできなかった。

本当にすべてを知りたいのだろうか。
さっきまでのような強い確信を、わたしは持てずにいる。あれほど求めて苦しみ続けたはずなのに。
いざ目の前に真実を握った手が差し出されると、恐れが頭をもたげ始める。
怖いのだ。
自分の手には負えなくなる事が。自分の手から離れていく事が。
姉さんを失って、その復讐さえも奪われるとしたら、一体どうすればいい?
一刻も早く真実を知りたいのに、わたしの一部は彼が答えなければいいと願っている。
還らないものをただ偲び続けるだけの生活に、耐えられるとは思えない。
でも、姉さんのために知る必要がある。自分なんかの事よりも……。
相反する想いが胸の内で渦巻いていたけれど、もう猶予は残されていなかった。
ニイドは話す準備ができている。
どんな真実でも、それを受け入れなければ。

重々しくうなずき、ニイドは語りかける。
「RedStoneについて、君の知る所を述べてくれ」
唐突な言葉に戸惑うしかなかった。あの伝説が何の関係があるのだろう。
そう伝えると、彼は首を振った。
「姉上が追ったものを語る上で、深く関わる事なのだ。とかく述べよ」
だからわたしは知る限りを口にした。天から墜ちた赤い石、不老不死や富をもたらす宝、火の神獣の卵だと。
然り、と彼は肯定する。
「かの石の噂は数多あり、互いに相容れぬものも耳にする。では古き悪魔については如何様に聞いた」
村の伝承の数々が思い出される。そこには、力強く、畏怖すべき存在に対する怯懦の念が深く表れていた。
そのいくつかをかいつまんで話していると、ニイドは不機嫌そうに遮り、うなった。
「唾棄すべき誇張だ。代を経る毎にこれほど歪められようとは」
疲れきった溜息をつく。
「ならば、そこから始めるとしよう」

夜が更けるのもかまわず、わたしは彼の話に聞き入った。

60メイトリックス:2008/01/18(金) 23:01:37 ID:wxeZONQQ0
赤き空の日については知っていよう。
500年前、あの忌まわしい赤い悪魔共がRedStoneを奪い去り、天界を混乱に陥れた日だ。
多くの天使が翼を折られて地に降り、失われた宝玉を探し求めんと走駆した。
多くの異変が顕れたも関わらず、当時の人間はそれらに関心を払おうとしなかった。
彼らにとっては、天界での惨事など遠い出来事に感じられたのだろうな。
RedStoneを強く求めたのは、元々の所持者である天界の者達と――我等地下界の住人だった。

悪魔たる我等が、自己中心的で争い合うばかりの存在だというのは認めざるを得ぬ。
それでも、この危機に際し団結して対処するだけの分別は持ち合わせていた。
我等の目的は不届きな赤い悪魔共を捕らえ、天界に引き渡す事だった。
太古の争い以来、誰もが天界と事を構えるのを嫌っていたのでな。
あわよくば、RedStoneを己がものとしてしまえ、との意図が無かったと言えば嘘になるが。

脅しと讒言に満ちた合議の末、我等は天界と同じ手法を用いる事となった。
すなわち、力を完全に封じた使節を地上界へ送り、情報を集めさせるというものだ。
これが君等の言う古き悪魔達だ。
最上階位の賢魔ウィルドを筆頭とし、25人の誉れ高き悪魔が地下界中から集められた。
私はそこに第10階位の代表として加わったのだ。
我等はネクロマンサーに身をやつした。人間を恐れさせぬよう、悪魔の能力と姿を捨ててな。

事実、最初の100年は驚くほど上手く運んだ。
我等は実利を好む。有益な報告を寄越す者には、惜しみなく見返りを与えた。
知られざる魔力を手にする法、愚か者をかどわかす技、呪詛に抗する術をな。
手元に集まった情報は、数で遥かに勝る追放天使共が収集したそれの比ではなかった。
天界の高潔な使者達は人間の本質を理解していなかったのだな。
25人の中で最も年若かった私は、食い違う情報の数々を吟味しながら冗談を飛ばしたものだ。
RedStoneなど真に存在するのか、騙しを得意とする我等こそが踊らされているのではないか、とな。
無論、兄弟同然だった一人を除き、誰も耳を傾ける者などありはしなかったが。
想起するに、あの頃の我等が最もRedStoneに近づいていたのかも知れぬ。

だが、愚昧な天使共め。奴等が全てを台無しにしたのだ。
一向に集まらぬ情報に業を煮やしたのか、或いは我等の探索行を嗅ぎつけたか。
富をもたらすだの、最上の智を授けるだのと在りもしない巫山戯た噂を振り撒き、人間達をけしかけた。
何たる事か。我等の努力は水泡に帰した。
噂の真贋は見極め難く、RedStoneへ続く道は閉ざされた。
人間達は欲に満ちた頭を嬉しげに振りながら探索へと繰り出し、そのうねりは大陸中に広がった。
とりわけ、エリプト帝国のかの宝玉への執着ぶりは常軌を逸していたと言えよう。
賢魔ウィルドは任務失敗を報告するべく地下界へと赴き、我等は皆死を覚悟した。

しかし、その前に破滅が来たったのだ。

61メイトリックス:2008/01/18(金) 23:02:14 ID:wxeZONQQ0
「人ならざる者共の招来、エリプトの滅亡、謀略と虐殺――。正に地獄と呼ぶに相応しいものだった」
ニイドは嘲るように笑った。
「かの記憶に関しては、君等の方が鮮明なのではないかね」
彼の態度にはひどく苛々させられたが、それでも怒りを吐き出すわけにはいかなかった。
確かに彼の話には引き込まれたし、古き悪魔への見方を少しだけ変える助けにはなるかもしれない。
でも、まだ肝心な事を聞いていないのだ。
「それで、姉さんが追っていたものっていうのは何?」
「破滅の日に実際には何が起こったのか、だ」
毒気を抜かれたのか、ニイドは淡々と答える。
「核心に迫りつつある、とも言っていたな。明かされれば400年の歴史を覆し得ると」
「……ちょっと待って」
手を上げてニイドを制する。彼は何を言っているのだろうか。
「奥地にまで迷い込んだ冒険者が、眠りについていた悪魔たちを目覚めさせたんじゃないの?」
わたしはそう聞かされていたし、フランデル大陸のほとんどの人々がそう信じているはず。
もう常識と言ってしまってもいい話なのに。
彼は肩をすくめる。
「私とて何が起こったかは知らぬ。されど、考えてもみたまえ。大陸中の悪魔が一夜にして目覚めるなど――」
話しながらもその手が小刻みに震えているのを、わたしは見逃さなかった。
「――そんな事が有り得るだろうか」
言い終えた時には、もう震えは止まっている。

胸の中に、再び彼への疑いが募ってくるのを感じた。
わたしに隠している事があるのだ。それも、ひとつやふたつではなく。
「あんたたちの、仕業じゃないの?」
疑念に駆られ、言うつもりなどなかった言葉が口から飛び出す。
「みんな強い力を持った悪魔だったんでしょ。それなら、仲間たちを解放する事なんて簡単なはず――」
空を切る風、ぐしゃりという音が、わたしの口をつぐませた。
瀟洒なテーブルが、ニイドのこぶしの下で見る影もなくひしゃげていた。
「私は“何も知らぬ”と言ったのだぞ!」
轟くような大声に、部屋じゅうが震えるのがわかった。
余裕綽々に見えた彼の変わりように、何も言う事ができない。
先にわれに返ったのはニイドだった。
すまない、と低い声で詫びて立ち上がると、テーブルの残骸を片付け始める。
手際よく部分ごとに分解し、元の形を連想できないほど細かくばらすと、それを暖炉の中へ放り込んだ。
その間、わたしは馬鹿みたいに目を見開いたまま、ただ座っていた。
彼が席に戻った時、ようやく口が開けるようになった。
「わ、わたし――」
自分でも何を言おうとしたのかわからない。謝罪か、さらなる追及か。とにかく何かを言わなければ。
けれど、ニイドはうるさげに手を払う仕草で応じた。
「言うな。関わり無き事と思い、言うまいとした私が悪かった。しかし、我等も犠牲を払ったのだ」

悲痛さのにじむ声で彼は明かした。
あの日を境にして、彼らへの対応がまったく変わってしまった事。
歓待されていた屋敷からは追い出され、街の人々は石と罵声を投げつけた。
囚われた仲間の多くが拷問の末に惨殺され、逃げ延びた者も傭兵たちに命を狙われ続けた。
地上へ上がる時に力を封じられた彼らに、抵抗するすべなどない。
信じられない事に、地下界の方針さえ一変してしまっていた。
命からがら帰還した数人は裏切りの罪で処刑された。
残された者たちは数百年の間、息を潜めて隠れるしかなかったのだ。恐らくは、これからも永遠に。

語り終え、魂を絞り尽くしたように見えるニイドに、わたしはかける言葉を見つけられなかった。

62メイトリックス:2008/01/18(金) 23:02:52 ID:wxeZONQQ0
――――――――――――――――――――――――
あたたかい励ましをいただいたので、調子に乗ってまた投稿です。
第一話はPart.2で完結させるつもりが、えらく長くなってしまったのでPart.3まで延長する羽目に。
1レスごとに場面転換をしようとしてるのがいかんのでしょーか。地の文がしつこいですが、見逃してくだしぇ。

>>スメスメ氏
私は貴方のように軽快で身踊るような文を書きたいんです。だけどクソ重くなってしまうんです。何故でしょうか。
そしてコメントありがとうございます。お互いがんばりましょうー。

>>みやび氏
初めまして。コメントをいただけて光栄の至りです。
公式ページの世界観をぐりぐり読んでいたら不意に思いついたネタだなんて口が裂けても言えません。

>>◇68hJrjtY氏
コメントに感謝。いただいた感想を読み返して、幸せな気分に浸るのがマイフェイヴァリットです。
滅びた過去というのは、やはり郷愁を誘うものなのかもしれません。
雰囲気ぶっ壊しにならないように気をつけます。

>>ESCADA a.k.a. DIWALI氏
鼻血噴きました。キーボードが血まみれです。どうしてくれるんですか。

>>FAT氏
あああああああ゛、ランクーイぃぃぃぃ!!!せっかく求めていた真の魔法剣士となれたのに…。
死はどんな輝きも涙も持ち去ってしまうものですが、こんな展開が好きな私はどうすれば。
そしてコメントをありがとうございます。
ヘボ文なりに、ときたま光るフレーズを見つけていただければ幸いです。

>>之神氏
なんとなくショートショートを連想させる風味が好きです。くそ、羨ましいぜライト。

>>ワイト氏
スナッチャー……。彼らの命をかけた一発芸は涙を誘いますね。うぅ。

>>29
読みふけって下さってありがとうございます。
もって回ったような言い回しが多いですが、辛抱して下さいまし。

>>白猫氏
氏の描かれる荒涼とした世界観が気に入っています。しかしそこで生きる人間は熱いですね。
しかしネル君素直じゃねー。

>>40
私も好きなテーマです、復習。ついつい何度も見直してしまいますよね。

>>ルイーダ☆氏
そのスカしっぷりがラヴリー☆彡

>>◆21RFz91GTE氏
私ごときがコメントするのも気が引けるのですが、死んでも変わらないアレン君が素敵過ぎます。

ええい、ふぁっく!!全レスするにも行数が足りないようです。しかも書いてる間にFATさんの新作がー。

63◇68hJrjtY:2008/01/19(土) 01:27:42 ID:95kSdOn20
>FATさん
成る程、藪森に居るモンスターの力関係が起因となっているのですね。
ガーディアン…確かにあそこの適正レベルと照らし合わせると場違いですよね。
本来人間と敵対しないエルフが取引のために人間と戦うようになった…上手い設定だと思います!
ラスもやはり「闇の者」なのでしょうか…生い立ちを知っているだけに否定できないのが悲しいです。
窮地を救われた形のラスたちですが、この緑髪のエルフの思惑はいかに。そしてランクーイはやっぱり…。
続きお待ちしています。

>メイトリックスさん
「無力化した地下界の使者」こと、ネクロマンサーたちの発祥ですね。
ニイドたち彼らネクロマンサーたちがそもそもレッドストーンと深く繋がっていたという過去語り。
あまりネクロマンサーや悪魔は歴史上の表舞台に立たないせいもあり、このあたりの話は興味深く読めました。
そしてニイドの反応ぶりを見るに悪魔たちを目覚めさせた存在は別の場所にいる、別の方法があるということになるのでしょうか。
なんとも奥深いレッドストーンを主軸とした物語…謎が解き明かされていくのを待っています。

64FAT:2008/01/19(土) 10:33:13 ID:U2Q.7z7A0
感想書き途中に寝落ちしてしまったのでこんな中途半端な時間になってしまいました。

>>◇68hJrjtYさん
そ、その発想はなかった><
堕ちたエルフが実は原始人だったなんて素敵な設定で話を書いていたらもっと
藪編おもしろくできたかもしれませんね。
さり気なくさらっと言葉に出る68hさんの発想力にはいつもインスピレーションをいただいております。
実際に藪のガー君には何度も即死させられたので、このような話になっていたり。

>>之神さん
シルヴィーといい、ライトといい、過去を背負う者同士、悲しみに屈折してしまった
シルヴィーと、悲しみを背負って耐えているライト、二人のやりとりは胸が痛くなりました。
次回はついにミカ救出となるのでしょうか!?
楽しみにしております。

>>ワイトさん
失った右腕を治すための旅、やっぱり冒険物はこういった目的が一番にくるもの
ですよね。
私もワイトさんのスナッチャーに惚れました。断末魔な意味で。
いかにもといった断末魔を上げながら、スナッチャーたちはどこに導こうとしているの
でしょうか?続きをお待ちしております。

>>白猫さん
ネル君のもてっぷりに嫉妬しちゃいます。天然というか、鈍感というか、こうした
心のずれは読んでいて面白いです。
ルフィエがあまりにも自由なのでつい忘れちゃってましたが、この世界でのリトルウィッチ
への偏見は強く、アーティーさんのいやみとも取れる発言も尤もなのですよね。
続き、お待ちしております。

>>ルイーダ☆さん
ルイーダ☆さんに立てたいと思われるスレであることを嬉しく思います。
もしよかったらなにか書いて投稿してみてくださいね。妄想もありですから。

>>21Rさん
おおーー!!
アレン君復活ですか!
最終章は誰が主人公となるのかと色々と妄想しておりましたが、アレン君が出て
くるとは思いませんでした。
英雄の復活によって最終章はどのように話が進んでいくのか、とても楽しみです。

>>29さん
レスありがとうございます。
ここまで来るのにあまりにランクーイを描きすぎていたので私自身も抵抗がありました。
途中、誰が主役だっけなと考えてしまうほどでした。
今後も読んでいただけたら幸いです。

>>ESCADA a.k.a. DIWALIさん
次から次へとネタのオンパレード、うらやましいほどの才能です。読んでいて飽きない
作品というのはこのような作品のことを言うのでしょうね。
次はどんな波乱が!?とわくわくして待っております。

>>メイトリックスさん
ときたま光るフレーズどころか、ほぼ全ての描写が光り輝いて見えます。どうやら私は
メイトリックスさんの文が好きなようです。
話の内容も悪魔/ネクロマンサーの地上進出から地上、地下界双方からの拒絶と主人公の
偏見が徐々に崩れていくのが手に取るようにわかり、それでも復讐という目的を失うこと
への不安から(?)再びニイドを疑う等、心の揺れ動く様がとてもよく伝わってきました。
ぜひとも最後まで読ませていただきたい作品です。楽しみに待っております。

65 ◆21RFz91GTE:2008/01/19(土) 12:37:20 ID:Xb8K0UzI0
////********************************************************************************////
  ■◆21RFz91GTE:まとめサイト(だるま落し禁止)
  ■ttp://bokunatu.fc2web.com/trianglelife/sotn/main.html
  ■Act.1 アレン・ケイレンバック >>44-45
////********************************************************************************////

 Snow of the Northwind-最終章-

 The last World/It Little story…。

66 ◆21RFz91GTE:2008/01/19(土) 12:37:47 ID:Xb8K0UzI0
Act.2 少女3



 「つまり、私を復活させた理由は今後巻き起る大戦の兵力としてアデルの力を利用して復活させた…いや蘇生させたって事?」
英雄復活の儀式が終了し、無事に目的を果たしたミト達はその足でギルドのアジトへと戻った。そこで突然復活させられた事に疑問を抱いていたアレンは疑問に思っていた事をそのままミト達に質問と言う質問を付きつけた。
「はい、アレンさんの力が如何しても必要なんです。」
「…。」
真剣に語るミトにアレンは一度黙り込んでしまった、静寂に支配された会議室をアレンはゆっくりと見渡しここが本当にあのギルドのアジトなのかと少し疑問を抱きながらゆっくりと目を配った。
「お願いします、古都の存続が掛かっているんです。」
ミトはガタンと椅子を倒しながら立ち上がった、そして目の前で呆けているアレンに活を入れるかのように喋りだした。
「アレンさんの力は明白です、今まで何人者ウィザード達がその高みに挑みそして力及ばず挫折するのを何人も見てきました。アレンさんには先の大戦での力が…。」
「止めてくれ。」
アレンはゆっくりと立ち上がると懐から一本タバコを取り出して口に咥えた。火をつけてゆっくりと煙を吐きながら一度きつい目をミトにむけて右手を机の上に置き、左手は腰に据えた。
「戦と言うのは強いて言うならウィザード達の魔法の弾膜だ、俺は弾膜遊びをするつもりも無ければ誰かが死んでいくのを見たくもない。敵だろうが味方だろうが同じ人間だ、それが消えていく…それが戦争だ。」
「しかし…。」
「ミト、君は一体どうしてしまったんだ?俺が知るミト・メーベはそんな事をいう娘じゃなかった、俺が死んで二年の間に何が君を変えたんだ?」
「…ですが!」
「…ミルは…ミルはどうなる。」
その言葉にミトは我に帰った、過去に何が起きて何をしたのか。そして誰が犠牲になり誰が死んで誰が生き延びたのか。結果的に何が残ったのか、何を今の世界に残すことが出来たのかを。
「もうあの赤い石も無い、ミルも居ない。俺には戦う理由が無い。」
「…。」
「少し頭を冷やせミト、俺が知っている君はそんなんじゃ無い。」
そこまで言うと席を立った、何も言い返せないままのミトを後目に会議室を出ようとドアへと足を運んだそのときだった。アレンの前に一人のウィザードが左手を伸ばしアレンの退室を妨害した。
「アレン様…マスタはギルドの事を考えて…。」
その言葉を聞いた瞬間今まで穏やかだったアレンの顔は急に悪鬼へと化した、左手で目の前にたち憚るクラウスの腕を払いのけ、クラウスの胸元を掴んだ。
「ミルの居ない世界で俺にこれ以上関わることも無ければ俺には何も関係の無いことだ!ギルドがどうなろうと知ったことじゃない!」
「…アレン様。」
「その様って言うのも止めてくれ…俺は偉くも無ければ賢者でもない。ただ一人のウィザードだ。」
暫く鬼のような目をしていたアレンはクラウスの事を威嚇するかのようににらんでいた。そして胸倉を掴んでいた手を話すとそのまま会議室を後にした。
「…。」
「マスタ…。」

67 ◆21RFz91GTE:2008/01/19(土) 12:38:17 ID:Xb8K0UzI0
ギルドのアジトにまだアレンの部屋が存在していた。そこは過去にアレンがアパートの一室として借りていた部屋だった。鍵は掛かって居ない。ゆっくりとドアノブに手をかけて押した、そこには昔と何一つ変わって居ないかつての自分の部屋がそこに現れた。
愛用のティーカップに愛用のコート、何もかも旅立つ前と同じ部屋がその場に現れた。埃が被って居ない事を見るとこの部屋は誰かが手を入れていたという証でも有った。
「英雄…か…。」
近くに有った椅子を手に取るとそこに腰かけた、背もたれを前に持ってきて蟹股を開いた状態で座る、そして背もたれの一番上に両手を乗せてそこにあごを乗せた。
ゆっくりと自分の部屋を見渡し昔と本当に何も変わらない日常がそこには有った。変わったといえば自分の身の回りと自分自身の扱い。それだけだった。
何もかもがあの日と同じで今にでもあの人の声が聞こえてきそうになる。たった数ヶ月の旅を共にした一人のランサーの面影はそこには無かったが、目を閉じれば彼女の声が今にも聞こえてきそうな。そんな気がした。
「ミル…。」



 暫くうつむいた状態で両手におでこを付けて座っていた、そこに一つの足跡が聞こえた。ゆっくりと顔を上げるとそこには過去に自分と等価していた存在と酷似した人形が立っていた。
「久し振り…。」
「…あぁ。」
二人は互いに言葉を交わし、そして咎人はアレンと同じように椅子に座る。ただし蟹股で座るような事はしなかった。
「あの時は助かった…いや、本当にあの時の貴方なのか?」
「強いて言うなれば違う、あれは私の記憶の一部を転写した擬人。レッドアイの幹部達は私が記憶を転写させたことなど知る良しも無かったがな。」
「…貴方は何故私を蘇らせた。」
「…確かめたい事が有った、それだけが理由では無いが。」
そこまで言うと二人は同時にダンマリを始めた、会議室と同じように静寂がアレンの部屋の中を支配する。コチコチと時計の音だけがゆっくりと部屋の中に鳴って居た。
「確かめたい事…それは?」
「…あえて我に言わせるつもりか、お主ほどの力なら当に気づいていると思うのだが。」
「…どう言う意味だ?」
アデルはゆっくりと椅子から立ち上がると窓の位置を確認したのち瞬時に動いた。
「こう言うことだ。」
「なっ!」
アレンの体はふわっと浮いた、いや…浮いたと言うよりは投げ飛ばされたと言うのが正しいだろう。ガシャンと窓が割れる音が聞こえた刹那建物の窓からアレンが飛び出した。続いてアデルの姿も確認できた。
勢い良く地面へとアレンは落下した、上向きに落下し腰を強打した。両手を使い置きあがろうとしたその時自分の喉下にアデルのグルブエルスが付きたてられた。
「貴様、さっきギルドがどうなろうと知った事では無いと言ったな?」
「それが…どうした!」
「本気でそれを言って居るのか!?このギルドは貴様らが作り守ったギルドではなかったのか!?」
「あ…あんたみたいなキメラにそんな事言われたくは無いな!人外魔境の成れの果てが俺に説教を…。」
そこまで言うと腹部に激痛が走った、アデルの右足が後ろに下がったと思った刹那アレンの腹部を右足で蹴飛ばした。その衝撃でさらに数メートルアレンは吹き飛んだ。
「人外魔境とは聞き捨てならんな、アレン…お主も死して尚蘇った人外魔境その者だ!」
「んだとぉ!」
アレンは立ち上がるとクラウス以上の高速の詠唱を施した。そして右手に生前使っていた杖を何処からとも無く召還した。そしてさらに詠唱を始め辺り一面に燃え盛る火炎球を五つ作り出した。
「勝手に蘇らせて俺を人外魔境と呼ぶのは侵害だ!」
「貴様のその腐りきった根性を叩きなおしてやると言って居るのだ!」
アデルは腰に備え付けて有ったツインシグナルも取り出して左手に構える。そして腰を深く落し戦闘体制を整えた。
「あんたに言われなくても分かってるよ!」
アレンは作り出した五つの火炎球を一つずつ杖で殴り弾き飛ばした、綺麗なアーチを描き一つ一つがほぼ同時にアデルへと襲いかかる。その火炎球全てをアデルは両手に装備している剣を使って綺麗に弾き飛ばす。弾き飛ばされた火炎球は飛んできた方向へと全てが帰っていく。それを確認したアレンはすぐさま次の詠唱を始めた。辺り一面の微弱な電力を収縮させ上空に雷雲を作り出した。そして飛び掛かって来る火炎球一つ一つに落雷が落ちて相殺した。
「分かってるさ、このギルドを守りたくとも守る理由が今は無い。急に蘇って英雄扱いされ、挙句の果てには戦争の道具と来たもんだ…俺が関与すればまた災厄が起る!あんたの言うところの因果律って奴だ!」
そう言うとアレンは杖を再びどこかへ消し去った。そしてアデルも戦闘体制を解除し剣を腰に付けている鞘へとしまった。
「俺が死んでから二年、一体何があった?」




Act.2 少女3
END

68 ◆21RFz91GTE:2008/01/19(土) 12:46:19 ID:Xb8K0UzI0
こんな時間におはよう御座います、お昼は酢豚でしたヾ(´・ω・`)ノ
何でも関東地方日曜・月曜と雪とか…。
雪振ると面倒なんで嫌ですよねぇ〜あ、皆はこんな大人になっちゃダメですよ?

コメ返し
>>56 :◇68hJrjtY様
ウィザードは基本ろりこn(うわなにするやめr
いやはや、ウィザード達は弄り易くて楽しいですよ〜。なんかこう、紳士なんだけどどこか一つ抜けてるような
所がありそうな感じで。
ほら、彼らは狼に変身するじゃ無いですか。だから夜は(お前等誰だなにするやめr
―――
Flashはノリで作れますよ、絵は長い期間描いて行かないと上手くならないですが何とかなりますよb
何でもそうですが、基本は馴れと時間ですね〜。と言うかだるま落し禁止だってば(笑
あ、因みにアデルやレイの元ネタはだるま落しした先の小説が元ですヾ(´・ω・`)ノ

>>62 :メイトリックス様
アレンは死んでもあのままです、このスレッドでロリコン扱いされた可愛そうな人ですヾ(´・ω・`)ノ
第二章から俺がロリコン扱いにした素敵な人ですヾ(´・ω・`)ノ
コメントありがとう御座います、遠慮なくドンドンコメしてくださいな(笑

>>64 :FAT様
アレンの復活は有る意味必須でした、第二章でと有る人の存在を仄めかしているので(ぁ
余り書くとネタバレになるのでこれ以上は言えませんが…。
ですが一つ。
ミトは美味s(うわなにするやめr

69◇68hJrjtY:2008/01/19(土) 18:48:45 ID:95kSdOn20
>FATさん
いいいインスピーレションなんて大層なシロモノじゃございませんよ(汗
ただのお馬鹿な妄想といいますか想像の権化というか…何言ってんだか分からなくなってきた(;´Д`A ```
場違いガーディアンが黒幕(?)として語られてたので原始人も確かに見た目的には場違いだなぁと思ったところから来てます(笑)
もちろんこんな妄想は無視してFATさんオリジナルの世界観を築いてください!ってか築いて!( ´・ω・)

>21Rさん
空白の時間…アレンが居ない間に起きたことがあまりにも多すぎますね。
確かにもし自分が死んで数年後に生き返った時に自分の居場所だったところが変わっていたらどう思うか…。
死んでしまった人、消えてしまった人、それでも生き残った人々の強い思い。
それらを知らないアレンが蘇って即座に危機に直面できないという気持ちはなんとなしに分かる気がします。ミルの存在も大きかったですしね。
アデルの説得ですが果たして。アレンの心を動かせるのか…そしてロリコン癖は未だ…(え
---
元ネタ暴露しちゃっていいんですか!(笑)
RS関係のFlashってあんまり無いから自作しようとか考えてた頃が私にもありました…。
ノリで作れてしまう21Rさんの方が天才的のような気が!時間が空いたらまた挑戦してみます(苦笑)

70白猫:2008/01/19(土) 19:12:14 ID:c7kJICI60
Puppet―歌姫と絡繰人形―

第一章〜第五章及び番外編 5冊目>>992
第六章 -夜空の下で- >>30-37
これまでの主要登場人物 >>38


第七章 -深紅の衣-



魔法都市スマグ。
遙か古代より魔術で栄え、今も魔術では右に出る地は無いほど、魔術だけに特化した都市。
スマグの噴水や地下道といった建造物も、ほぼ全て魔法によって造られたという。
その都市に、二人の少年少女が降り立った。


 「そ、想像よりなんというか…寂れてますね」
スマグの風景を眺め、リレッタは苦笑する。
同じように辺りを眺め、しかしネルは何の感慨も抱かない。
 「街の景観なんてどうでも良いことです。早く研究所へ行きましょう」
ネルは、早速研究所へと向かおうとしているらしい。
できれば(というより本題の)スマグの噴水を見に行きたかったリレッタとしては、かなり遺憾なことである。
 「…何してるんですか、リレッタ」
 「………ネリエルさまのばーか」
 「はい?」
目を白黒させるネルには目も暮れず、リレッタはスタスタと歩き始める。
その後ろ姿を見、ネルは首を傾げた。
 「……何怒ってるんでしょう」
恐らく、救いがたい朴念仁たる彼には一生答えは出ない。





 「…大きい……」
 「流石、魔術研究の中心部と呼ばれる研究所ですね…」
魔法研究所、正門前。
スマグの外れに造営されているこの研究所は、その規模・設備、いずれ全国でもTOPクラスの研究所だった。
その規模は傍目に見ただけでも一都市並の規模である。
 「ね、ネリエルさまの家より広いかも…」
 「そんな訳ないでしょう。どう見積もっても2/3です」
フンと鼻で笑うネルを見、リレッタは思う。
 (一体ネリエルさまの家の規模って…)
 「さあ、早く入りますよ」
リレッタの心の内など知らず、ネルはスタスタと研究所の中へと入る。
と、

 「あ、あのぉ…」
 「ん……………!!?!?!?!」
突如挙がったひ弱そうな声に、ネルはフッと振り返る。
そこに立っていた、3m近くはあるであろう大男。
筋骨隆々、という台詞がまさに似合う、しかも全身に無数の縫い痕のようなものが走っている。
さらに顔はフランケンシュタインもどっきりなおぞましい形――
 「ぅ、うぁあああッ!!?」
 「な、何するだブッ」

   めきょ

思わず放った、巨大化した右腕の強烈な一撃。
それが大男の左脇腹に食い込み、男は堪らず吹っ飛んだ。
ボテンボテンと4,5バウンドし、男はようやく…止まる。
 「な、ななななななななな何なんですかこの男は」
 「ね、ネリエルさま…」
その凄まじい威力に目を白黒させ、リレッタはネルの袖を引っ張る。
ネルの本気の一撃が全く予想していなかった脇腹に食い込んだのだ。通常の人間ならば、しばらく失神するくらいの衝撃なのだ、
が。

 「い、いでぇ〜…ひでぇ、オラ何もしてねぇのに…」
 「!!」
脇腹をさすり、何ということもなく大男が立ち上がった。
その頑丈さに目を白黒させ、ネルはしかし後ろ手でリレッタを背後に押しやる。
と、その大男がネルの方を向き、叫んだ。
 「ひでぇだ! 人を外見で判断しちゃいけねぇだッ!!」
 「五月蠅いですね! 人の第一印象は外見で判断するんですよッ!!」
 「そ、そんなのねぇだ! オラはただの人間だ!!」
ただの人間、の言葉にネルはピタリと止まった。
 「人間…?」
 「そうだ。オラぁ人間だ。この研究所の門番のガリレドってんだ」
 「…………どの辺が?」
 「ひ、ひでぇだ!!」
ネルの疑わしげな目に、大男…ガリレドが叫ぶ。
ドスンドスンとネルに駆け寄り、不格好な顔を突き出して言う。
 「オラこんな姿してるだども、ちゃんとした人間だ! 信じてくれだ!」
 「そ、それ以上寄ったら斬ります」
右腕を剣状に変化させ、後ずさりしながらネルは脅す。
ウルウルと目を涙ぐませて、ガリレドはネル達の前で土下座をする。
縮こまっても、その姿はまるでカバ…である。
その姿にリレッタは少し思案し、ネルの袖を引いて言う。
 「…………話だけでも、聞いてあげませんか?」
 「あ、ありがとうごぜぇます! 天使様!!」
 「ひゃっ!?」
涙をボロボロと零すガリレドに手をがっしと掴まれ、リレッタは頓狂な叫びを上げる。
すぐさま先の優しい声を一変させ、ネルに泣きつく。
 「ね、ネリエルさまぁ…!」
 「と、とととりあえず離れなさい、ガリレド! 話はそれからです!」
 「ありがとうごぜぇますだーっ!!!」
 「うぉああああああ!?」
 「きゃぁああああ!?」
3mはあろう巨体に抱き付かれ、堪らずネルとリレッタは押し潰された。

71白猫:2008/01/19(土) 19:13:11 ID:c7kJICI60
北及び南フォーリンロード。
魔術に酷似した能力…[擬似魔術能力-ZIN-]を使う魔物たちの塒と呼ばれる、ビガプールとシュトラセトを結ぶ街道。
最も、魔物達も寄りつかない街道と柵が作られるのはこれから数年後の話で、今では木々があちら此方に生える、一つの森の状態である。
ビガプール・アリアンに流れた冒険者達が、比較的資金稼ぎに使うのがこの地である。
木妖精、と呼ばれる魔物の体液を抽出・加工することで[ポーション]として使用することができるからか、
国内で流通しているポーションのシェアの数十%がこの地域に集中している。
その南フォーリンロードを、まさに驀進という表現通りに突き進んでいる一行があった。
 「ハァアアアアアアアッ!!」
襲い来る無数のエルフ達の胸に、瞬時に数本の槍が突き刺さる。
突き刺さった槍は瞬時に消滅、その中から凄まじい勢いで一人のランサーが飛び出した。
槍を喰らい、尚も息絶えないエルフは、その背後から数本の矢を射掛ける。
その矢を槍の旋回で切り払い、そのランサーは瞬時に走り去ってしまう。
それを追いすがるエルフの背後、
 「遅いよ」
という言葉と共に、その背中に巨大な杖がモロに直撃した。
その杖を放った白コート姿のウィザードは、文字通り凍り付くエルフの頭を踏みつけ、跳び越える。

さらにそのウィザードに遅れて、旅塵まみれのコートを着、無数の楽器を引き連れる少女と鎧姿の青年が駆け抜けた。
 「速いですね…こっちはバトルマーチまで使ってるんですよ」
 「まぁ、あの二人に追いつくなんて相当頑張らないとなぁ」
その少女…ルフィエは、まるで手を払うように魔物達を薙ぎ払っていくアーティとカリアスを眺める。
魔物達の取り零す無数の剣だの矢だの篭手だのを完全に無視して走るその驀進は、軽くアリアンのブラックリストに載りそうな勢いである。
ルフィエ達は、かれこれもう一週間は走り続けている。
食事や休憩、睡眠などに少々の時間は潰しているが、それ以外はひたすら走る、走る、走る。
数日前にテレットトンネル前を通過したまでは良かったが、その後トラン森に迷い込んだり荷物を無くしたり、少々のトラブルに巻き込まれた。
やはりネルの[この面子だと十日掛かる]という言葉は正しかったらしい。
 (この後オーガとかクマとかマーマンの住処を通るんだ…嫌だな)
グロテスクな魔物や巨大な魔物に耐性のないルフィエにとって、この驀進はハッキリ言って拷問以外の何者でもなかった。
トレントなどと戦うのまでは良かったが、サティロスやエルフ、大熊などと戦うときにはもう…。
 (なんでこんなにグロテスクな殺し方しかできないんだろう…)
どうしても血だの身体の断面だのが好きになれないルフィエは、やっぱり戦いは好きになれそうになかった。
 (相手は人じゃない、って割り切れないのはまだ子供だからかなぁ)
リトルウィッチは成長が早く、老化が遅い種族である。
故に精神が成熟するのが遅い、という一般的な理由もある。
 (もっと、頑張らないとな)
そう思うルフィエの前、森の木々の間に、カラフルに光る丸い建造物が見える。
 「お…オクトパスが見えたな」
隣を走るレイゼルが呟き、ルフィエもその建造物を眺める。
 (ネルくんは、もうアリアンに着いたのかな)
リレッタとネルの飛び去った光景を思い出し、ルフィエは顔を渋くする。
 (やだやだ、私、なんでこんなこと)
ネルのことを思い出すと、冷静でいられなくなる。
彼の力になりたい、どころか、彼の傍にいたいと強く思うまでになっていた。
いったい、いったい、どうしてしまったのか。
 (何だろう、私…バカみたい)
その目の前、巨大な木妖精が立ち上がる。
げ、と顔を顰めるレイゼルを見、ルフィエは瞳を閉じる。
その口から、小さな唄が紡がれる。

72白猫:2008/01/19(土) 19:14:28 ID:c7kJICI60
   パラパラパラパラパラパラパラパラパラパラ
 「しかし、リレッタ」
 「はい、長老さま」
スマグ魔法研究所、書庫。
世界最大の魔術書の貯蔵量を持ち、その蔵書の数は数万冊以上と言われている。
その書庫に隣接する小さな部屋…[所長室]。
書庫との仕切は存在しないため、書庫の読書場と勘違いする研究者も多い。
この魔法研究所の最高責任者であり、この部屋の持ち主である[ケイン=ジュード]は、今はいない。
ネルとリレッタを通したのは、魔法都市スマグに古くから住む、[長老]だった。
その[室長室]の中…小さな机と4つの椅子のある机の上に、数十冊以上の本が積まれていた。
   パラパラパラパラパラパラパラパラパラパラ
 「まさかヴァリオルド当主殿と一緒に来られるとは思わなかったぞ」
 「ええ…急ぎの用でしたので、すみません」
その椅子の一角に座る白髭の老人…長老は、品定めするようにリレッタを眺める。
首を傾げてそれを見るリレッタは、念のため訊いてみる。
   パラパラパラパラパラパラパラパラパラパラ
 「…何ですか? 長老さま」
 「いやぁ、良いボディになったのう」
思い切り真面目なその言葉に、リレッタはポカンと一冊の本で長老の頭を叩く。
と、その手に持たれた本が、凄まじい勢いでひったくられた。
   パラパラパラパラパラパラパラパラパラパラ
 「…………」
 「…………」
恨めしそうに、リレッタは向かいの椅子に座る(といっても本でほとんど見えない)ネルを見る。
ネルはそんな視線にも気付かないように、凄まじい勢いで本を捲り続けている。
このような光景が、既に数十分繰り広げられている。もう外は真っ暗である。
本を捲っては放り出し、次の本にかじりつく。
その本を書庫の清掃員が受け止め、元の場所に戻す。
清掃員が戻し終わって戻ってくると、さらに新しい本が宙を舞う。
   パラパラパラパラパラパラパラパラパラパラ
 「…のう、ヴァリオルド殿」
 「…ネリエルさま」
その二人の言葉に、ピタリとネルの手が止まる。
しかし、話しかけられたからではない。本を捲り終わったからである。
その本をひょいと投げ、ネルは言う。
 「何ですか」
 「何ですか、じゃないですよ…それで、成果はあったんですか」
 「ふむ…一応、[エリクシル]に関する資料は第一棚にあるだけ持ってきたがのう」
その言葉に、新しい本に手を伸ばそうとしたネルの手が止まる。
 「第一…?」
 「まだ第二〜第六棚があるがのう…後は神話だのの記録ばかりじゃが」
 「それで、成果はどうだったんですか」
リレッタの言葉に、ネルの顔が渋い顔に変わる。
 「成果…ふ、ふふ、ふふふふふふ…」
 「……ネリエル、さま?」

   「無いですよ、無いからこうやって本捲ってるんじゃないですか!? 大体どうして[エリクシル]に関する資料はどれもこれも錬金術関連なんですか!? 錬金術において[エリクシル]は単なる[不老不死の妙薬]とされるエリクサーじゃないですか!?」

ぜーはーぜーはーと荒い息をするネルを見、しかし長老は言う。
 「当たり前じゃのう…アラスターの造った[エリクシル]は、錬金術と魔術を用いて造られた、世界最初の[物質変換石]じゃし」
 「…世界最初? つまりそれに関する著書が存在しないんですか?」
そうじゃよ、と長老は頷く。

73白猫:2008/01/19(土) 19:14:52 ID:c7kJICI60

(ここからややこしい説明になるので飛ばしたければ飛ばしても良いです)

彼自身、一度アラスターの相談を受け、その[エリクシル]の調合を手伝ったことがある。
 「奴は持ちうる知識を全て使い、[賢者の石]に魔術を吹き込んだのじゃ」
 「賢者の…石?」
賢者の石。
哲学者の石、天上の石、大エリクシル、赤きティンクトゥラ、第五実体とも呼ばれる、卑金属を金へと変換する霊薬の名。
霊薬、という名だけあって、詳しい形状は一切不明であるらしい。
さらに精製方法も一切不明で、[水銀に何らかの反応を加え続ける]としか分かっていない。
賢者の石を創り出した人物は古今東西ただ一人、初めて[人工生命体-ホムンクルス-]を創り出した、パラケルススだと言われている。
 「…てことは、僕の曾祖父…アラスター=ヴァリオルドが、[パラケルスス]だって言うんですか?」
 「それはないのう…[パラケルスス]…フィリップス・アウレオルス・テオフラトゥス・ボンバストゥス・フォン・ホーエンハイムは、わしやアラスターの生まれる前の人物じゃ」
 「でも…貴方は、賢者の石を創り出し、不老不死となったのではないですか?」
 「それも違うのう。わしが造ったのは[エリクシル]…不老長寿の妙薬じゃ」
 「でも、ある著書では[エリクシル]と[賢者の石]は同じものだと言われている」
 「残念じゃがそれも違う…エリクシルと賢者の石は、与える効果が同じなだけじゃ…。
 どちらも、[物質に永遠の効果を授ける]というだけじゃ」
 「…では、…僕の腕は、いったい、何なんですか」
 「……さてのぅ。恐らくは[物質の質量や硬度・性質を自由自在に変化させることのできる腕]といったところかのう」
 「それだけじゃ、[生まれたときから僕の腕にある]、[腕が別のものになっても常に甲に存在する]というこの石の現象が説明できません」

 「……呪い…」
その言葉に、今まで口から言葉を吐き出すように喋っていたネルが止まる。
その声の主…リレッタは、小さく言う。
 「その腕には、[製作者]の呪いが掛けられていて…ネリエルさまの腕から、どうやっても剥がれない…そう考えられませんか」
 「そうじゃの…恐らくは、遺伝性の呪い。曾祖父から祖父、祖父から父、父から子へと、順々にその石が受け継がれていると考えれば妥当じゃの…。まさに奇怪な」
 「……ですが、父…カナリア=ヴァリオルドの写真の腕には、こんな石は無かった」
 「右腕にあるとは限りません…身体のどこに発生するかは、ランダムなのでは?」
 「それこそ、胸や足、太股もしくは内蔵のどこかという可能性もあるの」
 「…………」
解ける、どころかさらに深まる自分の腕の秘密。
彼の疑問はまだ終わらない…そもそもこの腕、[エリクシル]の性質がまだ分かっていない。
しかも、そのような効果があるのに、何故今まで発動しなかったのか。
何故、自分の[護る]という気持ちに反応し、目覚めたりしたのか。
それが、リレッタの言う[呪い]と何か関係しているのか。
 「……まぁ、今はもう自由に変化させることはできますし、問題ないです」
腕を剣状に変化させ、ネルはそれを眺める。
甲、指もその剣の一部となり、肘から真っ直ぐに伸びる、その刃。
その刃を造るためにか、自分の体内から微量の魔力が流れ出したのを感じた。
しかしその魔力の量は毛ほどの量、[シックスセンス]を発動すれば、充分に対応できるほど。
 (………しかし、やっぱりまだ慣れない)
剣へと変化させることができるが、腕の感覚がハッキリと掴みづらく、[シックスセンス]で感覚が研ぎ澄まされていないと、使用に難がある。
やはり慣れるにはしばらく戦闘を行わなければならない。
しかも、生温い魔物との戦いではない、視線を彷徨い、様々な戦術を駆使する対人戦…
 「リレッタ」
 「?」
ネルの言葉に、リレッタは首を傾げる。
しばらく思案し、しかしネルは言った。
 「僕と、模擬戦闘をお願いします」

74白猫:2008/01/19(土) 19:15:12 ID:c7kJICI60

スマグ裏、大噴水へと通じる広い街道の両端に、ネルとリレッタが立つ。
その二人から少し離れ、長老とガリレドが、前者は興味津々に、後者はオロオロと眺める。
 「いいんですか? ネリエルさま…」
 「ええ。貴方が相手ならば適任です」
 「私、ネリエルさまより強いですよ…?」
 「だからこそ…です。格上の相手と戦ってこそ、力量を上げることができる」
ネルの言葉に俯き、しかしリレッタは顔を上げる。
 「じゃあ、この後…私に、少し付き合ってくれませんか?」
 「? ええ、良いですけど」
 「それじゃあ…行きます」
ネルが頷くのを見、リレッタはゆっくりと両の腕を開く。
その後背の翼が同じように広げられるのを見、ネルはゆっくりと体勢を低くする。
それを見てか見ずか、リレッタは小さく呟く。

   「『 ホーリーエクス・クロス 』」

瞬間、
リレッタの両腕に、凡そ一メートルはあろう十字架が出現する。
まるで盾のようにリレッタの腕を護るその二つの十字架は、しかしその鋭利な先端で相手を破壊する剣にも成り得る。
しかしこの両腕の十字架…[ホーリーエクス・クロス]の効果は、それだけではない。

十字架を宿したリレッタは、その翼で一気にネルとの距離を詰め、右腕の十字架を突き出す。
それを目ではなく感覚で察したネルは、瞬時に身体を捻り、リレッタを"跳び越える"。
標的を失った右腕の十字架が、街道の端の石像に凄まじい勢いで突き刺さる。
瞬間、突き刺さった十字架を中心に、眩い黄金色の爆発が辺りを呑み込んだ。
その爆発の圏外へと脱していたネルは、その無茶苦茶な威力に顔を顰める。
 (全く…装備型の術の威力じゃないですよ、あれは)
リレッタの[ホーリーエクス・クロス]は、小型のホーリークロスを両の腕に宿す術である。
防御の盾にも、攻撃の剣にも使え、さらに接触した物体を中心に[ホーリークロス]を発動させるという、凶悪な能力を持っている。
直撃さえしなければ怖くはない術だが、とにかく威力が高い。
しかもリレッタ自身の攻撃速度や移動速度も非常に高く、全てを避けきることは非常に困難である。
幾度と無く戦っているネルですら、無傷であの破壊力を避けきることは不可能なほどである。
しかし、だからこそ、戦う相手に相応しい。
 (エリクシルよ…僕に、力を)

 「ネリエルさま…死なないで、下さいね」
そう呟き、リレッタは両の手を自分の前で合わせる。
まるで何かを打ち出す発射口のように構え、リレッタは小さく呟く。
 「『 エクス・クロス…収縮 』」
瞬間、リレッタの両の腕の十字架が突如砕け散り、光の粒子となってリレッタの手の中に凝縮されていく。
二つの十字架の魔力を手の中で凝縮させるその光景を見やり、ネルは目を細める。
 (来る…リレッタの持つ、対ヒト直線攻撃術)

   「『 バスター・シャイン 』」

リレッタがそう呟いた、瞬間。
彼女と距離を取っていたネルに、凄まじい光量の衝撃波が放たれる。
[バスターシャイン]…ヒトに対して異常な威力を持つ直線攻撃型スキル。
形こそリトルウィッチの[ブレストファイア]に似ているが、その威力は桁で違う。
その衝撃波を正面から見やり、しかしネルは逃げない。
 (この程度の術を受けきれなくて…この先、護ることなんて、できはしない)
右腕を、例えるならばクレイモア状の大剣に変化させ、構える。
 (受けきれる術じゃないのは分かってる…なら、斬る!)
それを見、術を発動している本人であるリレッタが叫ぶ。
 「駄目ですネリエルさま! この術は、…この術は、斬れません!」
 (それでも…それでも、僕はッ!!)

思う間に、家すら一撃で倒壊させてしまうほどの衝撃波が、ネルの身体を呑み込んだ。
その大剣は一瞬衝撃波を切り払い、しかしすぐに、その光の怒濤に呑み込まれた。

75白猫:2008/01/19(土) 19:15:36 ID:c7kJICI60

 (いやだ)
崩れ落ちる民家。
朦々と立ち上がる黒煙。
 (やめろ)
逃げ惑う人々。
その後背を貫く、無数の矢、剣、槍。
 (やめてくれ)
剣を交わすヒトとヒト。
どちらが死ぬまで終わることはない、その舞踏。
 (お願いだから)
自分を護るように戦い続けた父の背中。
妹と自分の腕を握り、ただ走っていた母の横顔。
 (もう)
それら全てが。
それら全ての、大切なものが。
 (もう、嫌なんだ)
奪われ、切り裂かれ、踏みにじられた。
殺した者に憎しみを抱いたわけではない。
 (もう、"護れない"のは)
ただ、大切なものすら護れなかった自分に。
ただ、大切なものに護られていただけの自分に。
 (もう、こんな、こんな自分は、嫌だ)
憎しみが、憎しみが沸いた。
自分を憎み、力のないこの自分を憎み、力を欲した。
 (もう二度と)
だからこそ、自分は選ぶ。
"護るために殺す"という、意味のないその茨の道を。
 (もう二度と、繰り返さない)



   その為に、僕は力が必要なんだ…

76白猫:2008/01/19(土) 19:16:01 ID:c7kJICI60

バスターシャインの怒濤をモロに喰らい、脇の広葉樹林に放り込まれたネルが、ゆっくりと立ち上がる。
体中の傷は酷いものだったが、不思議と痛みを感じない。
それどころか、[運気]の力で既に傷の大半が癒えつつあった。
 (不思議だ…力が湧いてくる)
その、ビガプールで初めて[エリクシル]を発動したときと同じ現象に、ネルは悟る。
この[エリクシル]の、真の意味を。
 (そういうこと…だったんですね、曾御爺様)
右腕が、[エリクシル]と同じ紅色に染まっているのを見ても、不思議と驚きはなかった。
その紅が、胸に、首に、四肢に、広がっていくのを感じても、不思議と恐れはなかった。
ただ、巨大な力を得たことからくる、壮大な喜悦感だけが、彼の心を占めていた。
 (……[エリクシル]よ)
地面を一蹴、
瞬時に街道までの十数メートル距離を跳び、ゆっくりと着地する。
 (僕に、全てを護る力を)
身体を覆う紅が、ゆっくりと形を造っていく。
 (僕という命を糧に、全てのヒトを、護れ)
絵の具を純白のスケッチブックに落としたような、深紅の色の、衣に。
それを見やり、ネルは小さく呟く。

 「[エリクシル]第二段階へ移行…[深紅衣-CRIMSON ROBE-]発動」








 「ギリで所要日数十日で到着やな。流石ネルはん、戦力分析も的確やわ」
 「こっからテレポーターを使って午後に予選…地獄だわ、これ」
総長のシュトラセト、ようやくテレポーター前の広場に到着したルフィエ一行。
十日間戦い詰めだったせいか、皆の息もかなり荒い。
シュトラセトの門までオーガの群を引き連れてしまったが、それは全く気にすることではない。
 「こ、声枯れぞう…」
 「ネル、の奴、アリアンの、りょ、旅館取ってく、くれてっかな」
長時間の戦闘に全く慣れていないルフィエとレイゼルにとって、この十日間はまさに地獄のようであった。
FORCEに参加しなくて良かった、と自分の判断をルフィエは今更評価した。
 「テレポーターの費用はそうね…古都のネリエル=ヴァリオルドにツケといて」
 「畏まりました。アリアンまで四名様、お送りいたします」
自分の背後で若干コスい発言が聞こえたような気がしたが、そこはスルーしておく。
 「ネリエルのやつ、部屋取ってなかったらぶっ飛ばす」
 「リレッタはんおるから、多分取ってくれてはると思うで」
 「取っててもとりあえずぶっ飛ばす」
今度は自分の背後で若干物騒な発言も聞こえたが、ルフィエはこれもスルーする。
東の空から昇る太陽を眺め、ルフィエは息を整える。
 (…ネルくん、もうアリアンに着いてるんだろうな)
 「ルフィエ? 何してるの、早く」
見れば、アーティ達は立ち上がり、テレポーターの描いた魔方陣の中に入っている。
それを見やり、ルフィエは立ち上がる。
 「はい、今行きます」

77白猫:2008/01/19(土) 19:16:25 ID:c7kJICI60

 「こっれは…また奇怪な」
 「ネ、ネリエルさんどうしたんだ?」
紅いローブを纏い、舞い降りたネルを見、長老とガリレドは瞠目する。
まるで生き物のように蠢き、獲物を求めるように這うそのローブを、リレッタは細い目で眺める。
 (あの衣…エリクシルが広まって造られてるの?
 そうとしか考えられないけど…なに、どうしてあの衣…あんなに、あんなの邪悪な力を感じるの)
軽く思考を流し、リレッタはゆっくりと両の手を開く。
その掌に小さな光の弾を精製し、それをゆっくりと強めていく。
 「『 ホーリー・ジャベリン 』」
瞬間、リレッタの両手に光り輝く槍が出現、リレッタはそれを軽く振るう。
 ([ホーリージャベリン]は威力がかなり高いけど…ネリエルさまならきっと、堪え忍べるはず)
そう心の中で呟き、リレッタはネルの眼前へ躍り出る。
凄まじい速度で旋回される槍を、続けざまに数発、繰り出す。
が、

   ――ガィイイィインッッ!!

リレッタの二本の槍が、ネルの身体の数十㎝前で、阻まれた。
光り輝く、十字架の盾で。
紛うことなき、[ホーリーエクス・クロス]で。
 「…………!?」
 「駄目ですよ、リレッタ」
驚愕に目を見張るリレッタに、ネルは微笑む。
その瞳の色を見、リレッタは目を見開いた。
 (…どうして)
その瞳の色は、濃い紅色…[クリムソン]と同じ色をしていた。
いつもの彼の深い緑色ではない…それを見、リレッタは恐怖を感じる。
 「元々[ジャベリン]は近接攻撃術ではない…歴とした遠距離攻撃、投擲術です…。
 そしてもう一つ…この[深紅衣]を相手にしたときに、安易に術を見せてしまうことは死に繋がります」
そう呟き、右手をゆっくりと天に翳す。
瞬間、その腕から左右に光が伸び、一瞬後、その手には光り輝く槍が握られていた。
 (…!? そん、な…[ホーリー・ジャベリン]…!?)
その術の発現を信じられない様子で眺めるリレッタに、ネルは言う。
 「驚きは、何も生み出しません」
そう呟き、十字架の盾を鋭く天に突き上げる。
力の均衡を保っていた二本の槍が、それだけでリレッタの手から弾き飛ばされた。
 (っく…!?)
速く、強いその動きに、リレッタは機転だけで空に舞い上がる。
一瞬後、先までリレッタがいた場所を、ネルの十字架がブンと通り過ぎた。
 (どうして…どうして、見ただけで私の術を)
ネルの左手の十字架は、間違いなくリレッタの[ホーリーエクス・クロス]。
ネルの右手の長身槍は、間違いなくリレッタの[ホーリー・ジャベリン]。
どちらも、追放天使程度では使えないはずの、[天使]であるリレッタの術。
しかし、ネルのその十字架であり、槍であり、リレッタの術の色とは違っていた。
その二つ…本来なら眩い黄金色であるはずのその二つは、ネルの瞳と同じ、深紅の輝きを放っていた。
その光景に戦慄するリレッタに、左に十字架、右に槍を構えるネルはクスリと笑う。
 「驚きましたか? まぁそうでしょうね…僕自身、とても驚いています」
空を舞うリレッタに、ネルは笑いかける。
そして、右手に握った槍を持ったまま、ゆっくりと振りかぶる。
 「…乾、坤、一…ッ擲!」

瞬間、
ネルの右手から繰り出された槍が凄まじい速度で飛翔、リレッタに向かって飛ぶ。
 「っ!?」
突如繰り出された槍を見、リレッタは咄嗟に身を捩る。
が、その凄まじい速度の槍の投擲は、問答無用に彼女の左翼をぶち抜いた。
 「――っ――――」
 「言ったでしょう? ジャベリンは、投げるものです――」

78白猫:2008/01/19(土) 19:16:52 ID:c7kJICI60
ドサリ、と地面に落ちたリレッタ…その左翼を見、ネルは目を細める。
全長30㎝ほどの巨大な穴の空いたその翼。
傷口からは、止め処なく紅い鮮血が溢れ出していた。
 「天使の血も、紅いのですね」
 「リレッタ!?」
 「り、リレッタさん!!」
地面に倒れたリレッタに駆け寄る長老とガリレドを見、しかしネルは目を逸らした。
自分の姿を眺め、小さく思案する。
 (この力は…[深紅衣]を発動中は、一度見た術をコピーできるようですね…。
 しかし比較的短時間内に見た術しかコピーすることはできなく、ノーマルのスキル、もしくは単純なスキルしか写し取れないようですね…。
 リレッタの[エクスクロス]も構成が難しいとはいえ、ノーマルのスキルですし…。
 単純なパラレルやエントラを使う冒険者はほとんどいませんし、実戦ではほとんど役に立ちませんね。おまけ程度でしょうか)
腕を上げてローブを眺めるが、伸縮が可能、というわけでもなく、ただの衣である。
恐らくは魔術を断絶する程度の衣だろうか、と軽く思案する。
軽く右腕を振ると、その腕が変化、剣状に伸びる。
 (腕の変化能力は衰えていない…というより、むしろ硬化されたくらいか)
 「……あな、たは」
思案するネルに、か細い声がかけられる。
怪訝そうな顔で、ネルはその声の方向に振り向く。
 「…貴方、は、誰…です、か」
 「………?」
左翼の一部をもぎ取られ、息も絶え絶えなリレッタが、ガリレドの身体にもたれ、言う。
 「…貴方は、誰なんです…か」
 「…誰って、ネリエル=ヴァリオ――」
 「ちがう」
ネルの言葉を、リレッタが遮った。
 「ネリエルさまは…人を、軽々しく傷付けたり、しない」
 「…………」
リレッタの翼にゆっくりと包帯を巻き、長老はゆっくりと立ち上がる。
目を細めるネルに歩み寄り、言う。
 「力に呑まれおったか、ネリエル=ヴァリオルド」
 「…………」
 「図星かの…今、お前さんはさぞ、良い気分なのじゃろうな」
 「…………」
 「人は力を得れば変わるものじゃ…それが人の手に入れるべきではない、巨大な力なら尚のこと」
 「…………何、が言いたいのです」
 「お前さんは何故、巨大な力を求める?」
押し黙るネルに、長老は諭すように言う。
"奴"も今のネルと同じ様な状況に、陥ったことがあった。
人を愛し、人に妬まれ、尚も人を護り続けた、一人の男。
"奴"…カナリア=アラスター=ヴァリオルドⅢ世に、ネルはよく似ている。
 「お前さんは護りたかったのじゃろう…自分の大切なものを、全て。
 その為には強大な力が必要…故に、お前さんは力を求めた…違うかの?」
 「…………言った、覚えは、ありませんが」

 「…ふ、お前さんがある男に似ていてのぅ…その男…カナリアも、今のお前さんと同じようなことになっておったわ」
 「…………」
反論する気配を見せないネリエルを、しかし長老は微笑んで眺める。
本当に、瓜二つだ。姿は似ていなくとも、性格はほんとうに、"カナリア"と同じだ。
 「今お前さんは…何を傷付けたのかのう?
 今お前さんが傷付けたものは…お前さんが、命を賭してまで守ろうとしたものではなかったのかのう?」
 「…………」
 「よく考えてみることじゃ…なら、お前さんは」

79白猫:2008/01/19(土) 19:17:53 ID:c7kJICI60
その言葉が、途切れた。
途切れさせられた。
一本の、長老の腹部から生えた黒い何かに。


 【ダメだよお爺ちゃん…ネルぽんいい感じなのに】
 「そうね…ようやく、いい感じの力を探知したものね」
 【パペット偉イ。パペット力見ツケタ】

その黒い何かが、黒と白の髪の少女…サーレの杭だと気付くのに、ネルは数秒掛かった。
そして、その数秒は、致命的な遅れとなった。
髑髏…パペットの口が突如開かれ、そこからいつかと同じ、無数の触手が繰り出される。
反応する暇もない、
瞬時に無数の触手に絡め取られ、ネルの身体が地面から離れる。
 「…………ッ……」
 「話を聞いてたけれど…この坊や、カナリアの息子だったのね」
 【あー、すごい強いあの剣士でしょ? そういえば、なんか雰囲気とか似てるかも。
 ルヴィぽんを散々痛めつけてさー。流石に焦っちゃったな、あのときは】
 【ルヴィラィ弱イ。単一箇所デ戦エナイ。ヒヒッ】
 「サーレもパペットもお黙り。ご飯抜きにするわよ」
 【うっ…】
 【ヒヒッソレハ困ル、ヒヒヒヒヒッ】
その緊張感のない会話を経て、ようやく白いドレスを纏った呪術師…ルヴィラィはネルに向き直る。
 「さて…と。ネリエル坊や、ちょっとお話があるの」
 「何、の…話ッ…です」
 「あら連れない子…そうね。簡単に言えば…貴方が、欲しい」
 「!?」
その言葉に、ネルではなくリレッタが驚愕に目を剥いた。
キリキリと締め付ける触手に顔を顰め、しかしネルは言う。
 「適当なこと、を…ッ、貴方が欲しいのは…これ、でしょう」
そう呟き、ネルは自分の胸を指す。
そこに輝いているのは、深紅衣を司る命とも言うべき部分…[エリクシル]。
それを見、ルヴィラィは笑う。
 「鋭い坊やね…[深紅衣]を発動できるようになったのなら、私としても敵に回したくないの。
 それに今の坊やの力は、前と比べられないほどタチが悪くなってる…」
 【ルヴィぽんの話分かりにくいかもだけど…簡単に言えばネルぽんは、今力に塗れて私達に近い状態にある】
 【ダカラパペット引キ寄セラレタ! パペットハ近シイ力、感知デキル!】
 「単刀直入に言うわ…私に従いなさい」
サーレを引き連れ、パペットを抱え、ルヴィラィは凶悪な笑みを浮かべる。
しかし、ネルは眉間の皺をさらに深くする。
 「承伏、しかねます…」
 「あら、そんなこと言っていいのかしら」
そう言い、ルヴィラィは軽く手を払う。
瞬間、無数の触手がパペットから伸び、瞬時にガリレドの巨体を絡め取る。
 「な、なんだ!?」
突然のことに藻掻くガリレドだが、その触手はビクリともしない。
が、逆に締め付ける力が強まり、ガリレドの身体に次から次へと触手が巻き付いていく。
目を見張るネルとリレッタ、失神する長老の目の前で、ガリレドが肉玉のようになってしまった。
 「はい」
ルヴィラィがそう呟くのと、グシャ、と何かが潰れる音が聞こえるのと、どちらが早かったか。
ネルの打撃を受けてもビクともしなかったあの巨漢が、まるで握り飯を潰すかのように、いとも簡単に、潰された。
触手の合間から垂れる紅い血を見、サーレはキャハハハと笑い転げる。
 【あっけないじゃん改造人間ー。もうちょっと強いと思ったのにぃ】
 「さぁて…次はあの可愛いお嬢さんを肉片にする? それとも長老さんの方がいいかしら」
 【あれ、長老って死なないんじゃない】
 「ああ、そうね…長老さんは不老不死だったわね」
そう言い、ルヴィラィはゆっくりと右腕を上げる。
瞬間、
バチンッと何が弾ける音と共に、ネルを縛っていた触手が消し飛ぶ。
ドサリ、と地面に落ちた気色の悪い肌色の触手は、すぐに黒い炎を上げ、燃え尽きる。
 【ヒーーーッ!!! パペットノ手チギレターッッ!!!!!】
 「あら」
 【あは…】

80白猫:2008/01/19(土) 19:18:28 ID:c7kJICI60
コン、と街道の石畳を鳴らせ、ネルが地面に着地する。
身体全体が紅く発光し、まるでその影響のように彼の帽子が燃え上がり、塵一つ残さず、燃え尽きる。
 「ガリレドが、何をした」
その声に、リレッタは目を剥いた。
いつもの、他人を思いやり、皆を護る優しい彼の声でも、先の絶大な喜悦感に浸った高慢な声でもない…怒りだけで塗り固められたような、そんな声。
 「ガリレドは、何も悪いことはしていない」
コツン、とネルは一歩ルヴィラィ達に歩み寄る。
それを微笑で眺めるルヴィラィに、言う。
 「彼は、話を聞いてもらいたかっただけだ」
コツン、とさらに歩み寄り、言う。
その背後、触手が引き、元が何かも分からない肉片を見やり、言う。
その肉片の合間にちらつく、鈍色の破片を見やり、言う。
 「彼は、ともだちになって欲しかっただけだ」
コツン、と街道の中央まで歩き、尚も足を進める。
 「自分を"人間"らしかった。力に溺れ、大切なことを見失った僕よりも、人らしかったんだ」
 「…………」
 【ルヴィぽん、どうするのさ】
コツン、とさらに足を進め、ルヴィラィに向き合う。
触れようと思えば、お互いの肌にも触れ合うことのできる距離。
そこに立ち、ネルは言う。
 「返せよ」
ルヴィラィの胸元の髑髏を掴み、そこに顔を突き出し、言う。
 「ガリレドを…返せ」
その言葉と同時、右腕の甲をルヴィラィに向けて振るう。
それを軽く避けたルヴィラィに、さらに蹴り掛かる。
ヒィーッという声にも耳を傾けず、ネルは目をカッと見開く。
瞬間、辺りの石畳が突如波のようにうねり出す。そして数秒経たずに、亀裂が走った。
 【…!?】
 「フフ…面白いことになってきた」
目を見開くサーレの腕を掴み、天空へと舞い上がったルヴィラィを睨み。
亀裂の走り、崩壊した石畳の中、ネルは天空へと跳び上がった。

 (錬金術…ね。辺りの大地に錬金術を掛けて、物質の体積を変化させたのね)
 【ルヴィぽんどうするの? ネルぽんは仲間にするんでしょ……っわ!?】
首を傾げるサーレは、突如迫ってきた紅い何かを咄嗟に避けた。
恨めしそうに見れば、ネルが数本の紅い槍を構え、こちらを睨んでいる。
怖っ、と目を細めるサーレに、ルヴィラィは小さく言う。
 「あっちの天使を[鳥籠]に押し込めなさい」
 【えっ】
 「早く」
そう言い、ルヴィラィはサーレの腕を離す。
瞬時にパペットを抱え、叫ぶ。

   「永遠の闇、極楽の陰、この世の善悪幸不幸、笑って見せよう泣いて見せよう、どう受け取るかは貴方次第、どうぞ一つ堪能あれ、『 ダークネスイリュージョン 』」

瞬間、
パペットの口から吹き出した黒い靄が、ネルを覆い隠す。
これこそが、呪術師得意の幻影術、[ダークネスイリュージョン]。
対象をまやかしの闇に陥れ、能力値を逆転させる力。敵が強ければ強いほど、この術の威力は高まる。
ネルのような強力な討ち手は、このような呪いは通用しない場合がある。
しかしルヴィラィはそれに[唄]の力を付加し、完全無欠な威力を創り出していた。
 (さて、いつまで持つかしら)
 〈ヒヒッ。今回パペット出番ナシ?〉
 (そうね。もうさっきのでお終い)
 〈帰ッテイイ?〉
 (だーめ)
そう二人だけで通じる会話をし、瞬時にルヴィラィはドレスを翻す。
瞬間、ルヴィラィとパペットの姿がまるで透明のカーテンに包まれたかのように、消える。
半秒遅れて、ダークネスイリュージョンの内部から、凄まじい紅色の大爆発が起きた。
黒い靄が霧散し、夜空の中にネルは放り出される。
 「…………」
小さく息を吸い、辺りを眺める。
一面の夜空、空に燦然と輝く半月。
遙か下方に見える、リレッタと長老の姿。それを確認し、ネルは息を吐く。

吐いて、身体全体の力を抜いた。飛翔の力諸共に。
半秒遅れて、先までネルの上半身があった場所を無数の炎弾が貫いた。
それには目も暮れず、ネルは凄まじい速度で降下していく。
と、その真上。
姿を現したルヴィラィは、その降下するネルに向かい、さらに無数の炎弾を放つ。
が。
 「!?」
 【ヒッ!?】
ルヴィラィとパペットが驚くほど呆気なく、ネルにその炎弾が着弾した。
途端に大爆発を起こすその光景を見やり、しかしルヴィラィは気を緩めない。
が。

81白猫:2008/01/19(土) 19:18:52 ID:c7kJICI60
 「遅いッ!!」
 「ッ!?」
ルヴィラィの左肩を上から蹴り、そのままの力でルヴィラィを無理矢理蹴り落とす。
バギャン、と石畳を砕き、ルヴィラィとパペットは街道に直撃した。

 (なん、て無茶苦茶な…)
 「動かないで下さい」
ゆっくりと立ち上がったルヴィラィの首元に、短剣が突き付けられた。
見れば、ルヴィラィの両腕を右手でがっちりと掴み、左手で短剣を、ルヴィラィの首に密着させている。
1㎝動かせば、街道に夥しい量の鮮血が飛び散ることは、間違いない。
 「少しでも動かせば頸動脈を切り裂きます」
 「………あら、これで勝ったつもり?」
 「パペットに術は発動させませんよ…発動しても、首を切り裂きます」
 「………そういう意味じゃないわよ、坊や」
そう言い、ルヴィラィは身体を前に倒す。
な、と瞠目するネルの前で、短剣がルヴィラィの首に突き刺さった。
途端に辺りに血が飛び散り、ルヴィラィの身体は地面に倒れ、彼女の帽子、[リトルサンシャイン]が地面を転がった。
が。
 「―――あ゙、ああ…」
 「………!!」
ゆらり、とルヴィラィの身体が起き上がった。
驚愕に目を剥くネルの前、ルヴィラィはゆっくりと立ち上がる。
その首からは止め処なく鮮血が溢れ出している。が、彼女はそれを全く見ようとしない。
だが、ネルはそれだけに驚いたのではない。

似ているのだ。
 「………ルフィ、エ…?」
彼女の、顔が。
紛うこと無い、ルフィエ=ライアットに。
 「………残念だけど、私はルフィエじゃない…ルヴィラィ」
そう呟き、ルヴィラィはリトルサンシャインをひょいと拾う。
 「全く、この顔が嫌だから帽子を被ってるのよ? 少しは考えて頂戴」
瞠目するネルには目も暮れず、ルヴィラィは左手で帽子を被り、右手で軽く、傷口をなぞる。
途端に、彼女の首の、決して浅いとは言い難い傷が、あっという間に塞がった。
 「…………有り得、ない」
 【有り得ないことないよ。ネルぽん】
その言葉に振り向いたネルは、目を見開く。
先まで長老とリレッタがいた場所に、巨大な鳥籠が出現している。
その中に入ってるのは、気絶し、真っ新な網の床に横たわっているリレッタ。
そのリレッタに、サーレは1mはあろう杭を突き付ける。
 【翼の力を失ったらこんなもんなんだね、天使】
 「………っ」
ジリ、と足を動かすのを見、サーレは手に持つ杭の力を強める。
 【動かないで。可愛い可愛いリレッタちゃんが血塗れになってほしいの】
 「…………」
まさに四面楚歌。
人質を取られ、敵に囲まれ、ネルは唇を引き絞る。
彼の左腕の短剣を手に取り、血に塗れたルヴィラィは言う。
 「来てもらうわよ…ネリエル坊や」

82白猫:2008/01/19(土) 19:19:20 ID:c7kJICI60
長ッ!!(第一声コレ
メモ帳一ページ+第二章くらいの字数です。ありえないです。
こんなにたくさん書いたの初めてですよ…ごめんなさい嘘です。
ようやく物語が急展開です。初登場のガリレド君は成り行きで死んじゃいました♪(待)
ルヴィラィサーレパペット登場。ちなみに私はリレッタちゃんとサーレが好きです、はい。
いつか二人を激突させてみt…コホン。

感想のへんじ。

「………え、ちょっと待って。ここでなんで私達が出てくるの?」
「知りませんよ。きっとこうやって返事した方が面白いとかいう魂胆でしょう」
目を白黒させるルフィエにかこの世の理不尽にか、ネルは溜息を吐く。
「ていうかネルくん、本は大切にしなよ」
「あの書庫にある本は全てレプリカ。傷付いても問題ありませんよ」
「………あ、そ。


とりあえずさっさとやっちゃった方がいいよね…ええっと、FATさんへ。
私もいつも古都の本屋さんで読んでます、FATさんの小説。ネルくんいないと読めないけど。
いっつも字数云々で感想は書くスペースがないのですが、そんなの関係ねぇ!ってことで書きますね。
ええっと…ランクーイがぴんちです。危険です。私が唄わないとまずくないですか?
ネルくんの天然&鈍感は折り紙付きですよ。ラブレターはチェーンメールと勘違いするくらいです。
リトルウィッチへの偏見云々は、武道会編を見ると(8〜9章くらい)分かると思います、たぶん」

「えーっと、…◇68hJrjtYさん。
いつも馬鹿猫の小説に感想を下さってありがとうございます。泣いてます。たぶん。
武道会は遊びではありません。人材を見つけるために行くんです。後夜祭? そんなもののために残るわけないでsフガ」
「ネルくんは堅物です。仕事とプライベートをとっっっっことん分けます。
私? 私は…アレックスくんやシェリルちゃんと遊ぶのがいちばん楽しいかな?」

「メイトリックスさん。初めまして、でしょうか、初めまして!
メイトリックスさんの小説も読んでます。新作はお財布に厳しかったです。
描写が素晴らしいです。作者を越えます。絶対。
作者のようにくどい描写はしないように! 恐ろしいことになります!(文字数とか文字数とか文字数とかorz
世界観はREDSTONE探索が大々的に開始される十年ほど前の架空世界ですね。
ネルくんは素直じゃない、じゃなくて天然なんです。ほんとにダメなんです。なんとかしてください」
「…余計なお世話ですよ」



じかいよこくのこーなー

「あれ、今回は次回予告ってないの?」
「次回予告をすると[思いつきのネタがやれない]らしいです」
「そういえば今回も、次回予告に合わせるために色々改変したらしいよね」
「[ケイン=ジュード]が出てきてません。何やってんですか馬鹿猫」


ネルくんにボロクソ言われたところで今日はこれまでですっω;`)
まぁ、上記の理由もあって次回予告は廃止! 次回乞うご期待!
…や、その、過度の期待されてもしょうがないですが。

83ワイト:2008/01/19(土) 23:22:50 ID:Z/wysRgM0
前スレRS小説5冊目>>998⇒RS小説6冊目>>27⇒続き

「あぁ・・まじに疲れる!ちくしょうめぇ・・・スナッチャーもしつけぇし、
何処に誘導してるんだよ・・・いや、そもそも誘導してねぇかもしれねぇぞ?」
「そんなはずは・・しかし数は減ってきてると思いますよ?奴らにも学習能力はあるでしょうし・・
そろそろ終着点!という可能性も、まだありますし・・(何気に此処、地図に乗って・・無い?」

ズドッッ!ドシュッ!!

スナッチャー「ぐあっふぁっ!!!」スナッチャー「ごはっ・・!」
「ラータ・・・聞いてました?あ、それよりも重大な事が!」
「2体同時に来るとは・・って、あ・・すまん、また出てきたもんだから
つい殺っちまったよ!・・あ!ヒース!!屈んでろっ!!!」
「え?」


ヒュッ!!シュッ!!!
カキイィィンッッ・・・!!!

ラータの投げたダガーと今敵がヒースに向けて長剣を振り落とし交えた所に金属音が鳴り響く!!
「うわぁぁぁぁ!?何!?(逃げなきゃ逃げなきゃっ!」
「おいおい・・スナッチャーか?いや違うな!(何時の間にかヒースの野郎後ろにいるしな・・w
逃げるだけなら俺より早いんじゃないか?こいつ・・・)」
此処で突如背後からヒースを襲って来た敵が口を開く!

「貴様ら・・我の部下が御世話に成ったらしいなぁ・・?報告通りに違わぬ奴らだ・・!
スナッチャー程度のLvだと大変暇にも程が有っただろう?しかし本当に付いてくるとは・・
気が付かなかったのか?此処はもう地図には載らない場所だと言う事に・・な!」

「ふ〜ん・・それで?お前が俺達を案内させたのか?何か用か?」
「その冷静さを今まで通りに貫けると思ったら・・大間違いだぞ・・?」
「何だ?用無しなのか?なら帰させてもらえないかな?相方が腰抜かしちまってるしな」
「そうか、なら帰る前に・・そうだな・・・こういうのはどうだぁ!?「ΠχΕΓΛΨΦζ」!!!!」

                 フッ!
此処は太陽が照り付け光の差す砂漠のはずなのに・・今何かの呪文?により光は断たれ
    一瞬の内に周りを暗闇に包まれた空間?に閉ざされてしまう・・!

「何をする気・・だ?(視界は・・ぼやけてるが少しは見える・・)」
「ふっ・・・意外に慌てふためくと予想していたが・・案外こんな状況下に置かれても冷静沈着だな・・!
ヒースとやらには興味は無い・・!ラータだったか?貴様には死んでもらう・・!」
「(・・どうやら俺だけを標的にしてるのか?ならヒースにはすまねぇが、ちと集中させてもらうかな!)」

84ワイト:2008/01/20(日) 00:36:08 ID:Z/wysRgM0
前スレRS小説5冊目>>998⇒RS小説6冊目>>27⇒RS小説6冊目>>83⇒続き

「(・・・どうやら俺だけを標的にしてるのか?ならヒースにはすまねぇが、ちと集中させてもらうかな!)」
「今から起る事に耐えられなくなる貴様の表情が目に浮かぶ・・・」
「何だと・・・?お前は戦わないって言うのかよ?」
「さ  あ  恐  怖  し  ろ   」
「(何だ!?敵の気配?いや息遣いが、何故か感じ取れなくなってくる・・・・どういう事だ?
だが、今俺は暗闇に支配された空間に閉じ込められてしまっている事は判るけどな)」

「さぁってと・・・まずこういう手口に対しては恐らく突破口があるとは思うけどな・・」
「(まずは・・叫んでみるか!)おーいっ!!ヒースいるかあぁぁ!?」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・返事は返って来ない



「やべぇ・・!視界が、何も見えなく・・・・」
次に視界さえも何が何だか確認出来ない程に支配されてしまう。それは即ち敵の格好の餌食でもある


「おい・・・待てよ・・さっきまで手を掛けていた壁がねぇ!?!?!!?」
そして辺り構わず手を無茶苦茶に振ってみるが、当然かの様に感触は一切掴み取れない・・


「(何かがおかしい・・俺は何処に立っている?そもそも砂漠なのか、此処は・・?
くそ・・・発狂しそうになる・・・何なんだよ!?・・出口を探さないと・・・)」


それは平衡感覚を失うという事を意味している・・!そう・・頼れるのは自分の足のみ・・・
必然的に歩かされる事を強制されるラータは歩く!!只管に歩き続ける・・!
「はぁはぁ・・はぁは・・ぁはぁ・・出口は?何処だ?何処何だ!?
誰か・・ヒースいるんだろ・・なぁ!返事してくれえぇ!!」


ラータの必死に訴え掛ける叫び声は無情にも意味の無い行為に終わる。
気は狂いそうにも成るがそれでも歩き続ける。しかし先の見えない道を歩いている様な感覚にも陥る。
次第に立っても居られなくなる。孤独・・それは今のラータの全てを不安に包みこんでいく・・

「何か無いのかよ!?頼む「誰でも良い」「何でも良い」助けてくれ・・・」

85ワイト:2008/01/20(日) 00:44:08 ID:Z/wysRgM0
スナッチャーに誘導されるがままにラータとヒースの辿り着いた先に待っていたのは
まだ素性を明かさない謎の敵・・そしてラータとヒースは敵の謎の呪文により
暗闇に包まれる空間へと閉じ込められてしまう・・・そして孤独・・・!

ってな訳で意外に長く続きそうな予感はしていますが、早めに終われる様には努力するつもりです!
急な展開に成って少し読みにくいとは思いますがご了承を・・・では|ω・)また

86◇68hJrjtY:2008/01/20(日) 08:47:40 ID:95kSdOn20
>白猫さん
いつもながらの長文執筆…しかし本当に凄い…。
というか次回予告等見るに既にほぼ執筆終了しててちょっとずつ投稿してるとか!?ウーン、恐れ入ります。
今回もエリクシル成長、ルヴィラィの本性(?)プチ判明、リレッタの幽閉にネルの誘拐(?)と見どころたくさんでしたね。
人間という器で受け止めきれる以上の力を手にしてしまったであろうネルの心境変化がネルファンな私には印象深かったです。
「力に呑まれる」…長老さんやリレッタの言葉通り、今だけかも知れませんがネルは変わりましたね。
それが良い方向へ進むかどうかは今後次第といったところでしょうか。
そして、やはりルヴィラィとルフィエの酷似した顔も気に掛かります。リレッタとルフィエの三角関係も!(え
それと全然個人的なんですがパペットの喋り方が可愛いと思えてしまう私はどうなんでしょう!ねえ!( ´・ω・)
キャラ総出演の後書きも面白かったです、なりきりっぽいノリで!次回お待ちしています(笑)

>ワイトさん
ラータほどのシーフでも暗闇に飲み込まれたままでは恐れにやがて塗りつぶされてしまう…リアルな恐怖ですね。
空間に閉じ込められるという術(?)は単純だからこそ最悪な状態だと思います。さて、この窮地をどう切り抜けるか!
しかしちゃっかりとラータよりも素早く避けてるヒースが良い(*´ェ`*)
案外聖職者と盗賊ってミステイク的に上手くやっていけるのかもしれませんね! まあ、ヒースは前科あるようですが(苦笑)
「早く終わらせる」なんて寂しい事言わずにガンガン続けちゃってくださいよ!(コラ
続きお待ちしています。

87 ◆21RFz91GTE:2008/01/20(日) 10:27:24 ID:Xb8K0UzI0
////********************************************************************************////
  ■◆21RFz91GTE:まとめサイト(だるま落し禁止)
  ■ttp://bokunatu.fc2web.com/trianglelife/sotn/main.html
  ■Act.1 アレン・ケイレンバック >>44-45
  ■Act.2 少女 3 >>65-67
////********************************************************************************////

 Snow of the Northwind-最終章-

 The last World/It Little story…。

88 ◆21RFz91GTE:2008/01/20(日) 10:27:45 ID:Xb8K0UzI0
Act.3 少女4



 「俺が死んでから二年、一体何があった?」
二人の間に一つの北風が吹き荒れたとても冷たく骨の髄まで染み渡るような厳しい寒さを持った風だった。
「主も死ぬ間際に見たのでは無いのか?」
「…あれは、幻覚ではなかったのか。」
「幻覚では無い、我も主の精神に一部を寄生させていた時にハッキリと主の目から見た。」
アレンは一つつばを飲み込んだ、そしてこれから一体何が起きるのかを予想しそして一度絶望の意識が芽生えた。だがそれを表情には出さずにアデルに問いかける。
「しかし!アレはミルが自害した時に同時に消滅したはずでは!」
「まだ実体化していなかったのだろう、実体化する前でもアレの力は人知を遙に超えた存在だというのは言うまでも無い。」
「…と言う事は。」
アレンとアデルは次の言葉を同時に言った、それは人知を超えた存在であり人が何千と言う歴史を持っても手に入れる事が出来なかったいわば賢者の石。人はそれを探し、そして朽ちて行った赤い宝石。
『レッドストーンはまだこの世界に有る…。』


 その日の夜、アレンはミトに話を付けるために彼女の部屋に向かおうとしていた。そこで丁度クラウスの後姿が見えた、彼もまたミトの部屋へと用事が有るために移動しているところなのだろう。クラウスはアレンが近くにいる事をまだ察知していなかった。そのまま彼女の部屋の前で立ち止まると軽くノックをしてドアを開けて中に入って行った。
「こんな夜更けに男を部屋に入れるなんてミトも相変わらず無用心なんだな…私も人の事言えませんが。」
一つ首を横に振ってクラウスが出てくるのを待とうとした。だが一時間しても出て来ない、よほどの話なのだろうか。はたまた自分の事を話しているのでは?と思ったアレンはしのび足でミトのへやに近づきドアに紙コップと耳を立てた。
「…ここですか?」
「あ…そこ…ん!」
そんな声が中から聞こえた、アレンは自分の顔が青ざめていくのが瞬時に理解する。そして一緒に旅して来た仲間のミトのあられの無い姿を想像して鼻血を垂らした。そして次の瞬間アレンは咄嗟の行動に出る。杖を召還し高速詠唱により杖にいかずちの力を与えそして一気にドアを蹴破り中には居る。
「二人とも何してる!」
部屋の中に飛びこんだアレンの姿に二人はびくっと肩を震わせた、そしてアレンは見た。椅子に座ったミトの肩を優しくもんでいるクラウスの姿を。
「あ…アレンさん!」「アレン様!」「あ…。」



 「――――――だと思ったんです。」
ドアを蹴破って壊したためアレンはそこに正座させられていた、アレンの目の前には顔を真っ赤に染めたミトの姿とテレながら頭を掻いているクラウスの姿が有った。
「そ、そんな事するわけないじゃ無いですか!大体アレンさんは昔から早とちり癖が有るんです!私はただ必要な書類に目を通していたところにクラウスが肩をもんでくれるって言うからもんで貰っていただけなんです!大体ですね、特に防音もして居ない木造の部屋の中でそんな事するわけ無いじゃ無いですか!外に声がまる聞こえですよ!?それに私まだ十六ですよ!?」
「いや、だからこそ美味しい…。」
そこまでアレンが言うと自分の顔のすぐ脇を何かが高速で通り過ぎる音が聞こえた。ヒュコっと音が聞こえた刹那後ろの壁に一本の矢が刺さっていた。矢を確認したのちミトの方を見ると何処から取り出したのか久し振りに見る琥珀の人を握っていた。
「ななな、何を言うんですかアレンさん!」「さすがアレン様だ!ご理解の有る方だと思ってました!」
一度に二つの意見が重なった。そしてアレンの隣に静かにクラウスも正座を始めた。

89 ◆21RFz91GTE:2008/01/20(日) 10:28:54 ID:Xb8K0UzI0
「アレン様。」
アレから一時間後、アレンは屋上で星を眺めていた。分厚いコートを着込んで首には彼女がくれたマフラーが巻かれている。タバコを吸いながら星空を眺めていたところにクラウスが簡単な防寒具をまとって階段を上がってきた。
「クラウスか、様ってのは止めてくれって言っただろ?」
「そうは行きませんよ、例えアレン様が英雄じゃないと言っても私からすれば貴方様は英雄なのですから、英雄以前に貴方はこのギルドのマスタだった方です。今となっては元帥です。」
「ギルド元帥か…。」
ゆっくりとアレンの隣に来て懐からタバコを取り出そうと弄っていた、それを見たアレンは自分のタバコをスッと取り出すとクラウスの前に差し出す。
「吸いな、モーリスだ。」
「では、お言葉に甘えて。」
アレンからタバコを一つ貰うと右手をだして指を鳴らした、中指と親指の摩擦によって生じた簡単な熱を何倍にも膨らませて人差し指の先に簡単な炎を作り出した。それをタバコまで持っていくとタバコに火がつく。一呼吸置いてからタバコの煙を肺に通し二酸化炭素と共に空気と混じらせる。
「私は嬉しゅう御座います、アレン様が此度の戦に参加を決意された事を。」
「ギルドの為じゃないさ…。」
「では?」
「俺の右腕が泣いているんだ、二度と放すまいと決めた人の手を放してしまったこの右腕が泣いているんだ。それに決着を付けなきゃいけない事もある。」
「決着…ですか?」
鉄柵に両手をかけて前傾姿勢になって明かりが灯るこの街を眺めていた。そして遠い目をして何処を見て居るのか分からないアレンの姿がそこには有った。口元に咥えたタバコはジジっと音を立ててゆっくりと燃えていく。
「先の大戦って言われているあの戦い、アレは赤い宝石が絡んでいた。」
「マスタよりお聞きしています。ですがあの宝石はミル様の自害と共に消滅したのでは無いのですか?」
「いや、あの宝石はまだこの世界に残っている。不思議な症状をした病人を見た事は無いか?」
クラウスはハッとした、数ヶ月前にこのギルドを襲った災厄を思い出していた。一人のビーストテイマーが犠牲になり、そして一人のウィザードと一人のシーフが犠牲になったあの災厄を。
「英雄症候群…。」
「そう呼ばれてるらしいな、アデルは俺を蘇らせた理由の一つがそれの確認らしい。あの時、俺の体内にアデルの精神が寄生していた。あの宝石も何らかの法術で人の体内に寄生する。その時のエネルギーは膨大な物で人一人の命を必要とする。あの宝石とて他の人の体内に寄生するにもかなりのエネルギーを消費しているはずだ。よりしろとなる殻を探し出しそれに寄生する。それはまるでヤドカリだ。それを幾年と繰り返し、着々とエネルギーを蓄えている。ミルの力は大陸一と呼ばれるほどの力だった。そのエネルギーを吸収し、ベルの力までも吸収したのであれば…。」
一瞬血の気がひいた、それ程までの力を蓄えた未知なる宝石がまだこの世界に存在し、そして人々の生命というエネルギーを糧に行きながらえる存在。

90 ◆21RFz91GTE:2008/01/20(日) 10:29:17 ID:Xb8K0UzI0
「アレが動けば何万と言う人間が命を落す、それも全て吸収してしまうだろう。だからこそ目先の戦は避けたかった。俺が動けば血の匂いを嗅ぎ付けた死神が近寄ってくる。人の死こそがアレの栄養源となる。」
「…。」
「そうなればアレは完全に実体化するだろう、それこしてこのギルドとアリアンの傭兵ギルドだ。何千…いや、何万と言う命が一瞬にして消える。それを狙って死神は鎌を振るい、魂を貪り、冥府への道を開き、そして喰らう。そして決戦当日…あの日から丁度三年目。」
「英雄の命日…ですか。」
そこまで言うとアレンはフッと一瞬笑みを零した、自分の命日に大きな戦が行われるという事。そして生き返り現代の世界をこうして眺めていても世間では英雄の命日と言われるその日。
「不思議なもんだ、こうして生き返っても命日って言われるんだからな。」
「…不躾な質問で恐縮なのですが。」
アレンのタバコの火が消え、次のタバコを取り出そうとしたとき今度はクラウスのタバコが目の前に出てきた。それを一本貰うと何も無い空間から炎を呼び出しタバコに火をつける。同じようにクラウスもタバコを一本取り出すと先ほどと同じようにして火をつけた。
「何故ミルリス様は蘇らなかったのですか?」
「…魔法学校で習わなかったか?還元の法は対象となる人物の遺骨が必要になる。俺は深手を負って命絶えたがミルは跡形も無く自分の力で吹き飛ばした。遺骨も残らないほどの業だった。それに、蘇るのは俺だけで十分だ。」
「と言いますと?」
鉄柵に寄りかかっていたアレンは身を返すとクラウスの肩を一つ叩いてそのままアジトの方へと足を進める。そしてどこか淋しそうで辛い声で。
「戦争の道具…こんな思いをアイツはしなくていい…俺だけで十分だ。」
そう一言言ってアジトの中へと戻って行った。



Act.3 少女4
END

91 ◆21RFz91GTE:2008/01/20(日) 10:34:01 ID:Xb8K0UzI0
今夜から雪だそうですヾ(´・ω・`)ノ
こんにちは〜、21Rです。

本当に寒いですねぇ〜タバコの火で暖を取ってる俺ですがこれがまた暖かいんです(´;ω;`)ブワ
と言うわけでコメ返し

>>69 :◇68hJrjtY様
ロリコンはアレンの特許です(ぁ
むしろアレですね、蘇ってもアレンは素敵で楽しい奴ですよ。
----
元ネタ暴露ぐらい(ぁ
アレほどだるま落し禁止だっていったのにぃ〜(´;ω;`)ブワ

92FAT:2008/01/20(日) 20:52:49 ID:SHH8vO0M0
前作 二冊目>>798(最終回)

第二部 『水面鏡』

キャラ紹介 三冊目>>21
―田舎の朝― 三冊目1>>22、2>>25-26 
―子供と子供― 三冊目1>>28-29、2>>36、3>>40-42、4>>57-59、5>>98-99、6>>105-107
―双子と娘と― 三冊目1>>173-174、2>>183、3>>185、4>>212
―境界線― 三冊目1>>216、2>>228、3>>229、4>>269、5>>270
―エイミー=ベルツリー― 三冊目1>>294、2>>295-296
―神を冒涜したもの― 三冊目1>>367、2>>368、3>>369
―蘇憶― 五冊目1>>487-488、2>>489、3>>490、4>>497-500、5>>507-508
>>531-532、7>>550、8>>555、9>>556-557、10>>575-576
―ランクーイ― 五冊目1>>579-580、2>>587-589、3>>655-657、4>>827-829
>>908>>910-911、6>>943、7>>944-945、六冊目8>>19-21、9>>57-58

―10―

 ここは鉄の道、道の中間地点。四人の目の前に広がるのはダイム内海。晴れ渡る青空の
青を吸収し、海は一面深い青で、ただ一つ、丸い太陽の輝きだけが映し出されていた。浜
辺に寄せては返す波の音も、その表面を撫でる風も、とても穏やかであった。緑髪のエル
フはレルロンドを放したあと、優しくランクーイの死体を砂浜に降ろした。
「我は棲家に戻る。闇の者よ、いずれ運命を受け入れねばならぬ時が来るだろう。其の時、
我は再び貴様の前に現れようぞ」
「おいっ! 待て、待ってくれ」
 ラスの制止を聞かず、ランクーイの死体を悲しそうに一瞥した後、エルフは空気のよう
に透明に透き通り、風のように去っていった。
 残されたラスとレルロンドは互いに沈黙し、レルロンドはランクーイの手をしっかりと
掴み、ラスはランクーイに背を向け、海面に映し出された眩しい太陽を眺めていた。時が
経つにつれ、ランクーイの手が冷たく、無機質になっていく。さっきまでは、ほんの少し
前まではあんなに熱く燃え盛っていたランクーイの手。矢を弾き返すほど屈強なエルフす
ら焼き尽くしたその手は、もうここにはない。幼い頃から、何度も触れてきたその温かな
感触は、もう、二度と帰ってはこないのだ。レルロンドの涙はランクーイの冷たい体を温
めることは出来ない。
 まるで本当の兄弟のように、本当の兄弟以上に愛情を持っていたランクーイ。

 なぜ、なぜ助けてあげられなかった!! 隣にいたじゃないか!! 手を、この冷たく
なってしまった手を引けば、助けられたじゃないか!! 突き飛ばして、代わりに自分が
犠牲になればよかったじゃないか!! いくつだって、ランクーイを助けられる方法はあ
ったはずだ!! 僕は何をしていたんだ!!
 
レルロンドは自分を責めた。一度はランクーイから離れ、そのことを後悔した。

 だからずっと一緒に居ると、どんなことがあっても守ると決めたのに!! 僕がランク
ーイを死なせてしまうなんて!!

93FAT:2008/01/20(日) 20:53:37 ID:SHH8vO0M0

 ラスは傾き、長細くなった海面に映し出された太陽を眺めながら、レルロンドと同じこ
とを思っていた。

 なぜ、なぜ置いてきてしまったんだ!! どうして俺はこうも自己制御ができないん
だ!! あのときエルフの挑発に乗らなければ、情動を抑えることが出来ていれば、こん
なことにはならなかった!! 

 ラスはランクーイに背を向けながら、その頬には幾筋もの涙が流れていた。他人のため
に流した、生まれて初めての涙だった。

 あの瞬間だって、叫ばずに何か魔法をかけてやれば助かったんだ!! ランクーイの注
意を向けるんじゃなくて、黒鎧の注意をこっちに向けてやればよかったんだ!! 俺はな
んで餓鬼なんだよ!! なんで大人じゃないんだ!! なんであいつを殺しちまったんだ
よ!!

 ラスもまた、自分を責めた。二人と旅を始める前は、面倒くさいと思っていた。死を覚
悟しろ、と言ったのも子守が面倒くさかったからだ。ところが、二人と旅をしていくうち
にラスは変わった。特にランクーイに対しては自分と同じような豪快さと弱さを持ってい
ることに惹かれた。ランクーイの独特の素直さもラスを喜ばせた。
 最初は魔法を教える気などなかった。しかし、ランクーイだから本気で修行させた。そ
してランクーイはラスの意図する通りの成長を見せてくれた。師匠と呼び、ラスを心から
尊敬してくれた。それがラスには、心の栄養の乏しいラスには何物にも換えがたい幸せだ
った。これからもずっと、ランクーイと旅を続けたいと願っていた。
 涙は止めどなく溢れ、それでもラスは拭うこともせず、ランクーイへの愛情は白砂に吸
い込まれていった。

94FAT:2008/01/20(日) 20:54:12 ID:SHH8vO0M0

 ダイム内海に陽が沈む。
 水平線で半分になった太陽は一本の鮮やかな赤い道を作りだし、同じ思いを抱えたまま
の二人を、浅橙色に染める。すでに冷え切ってしまったランクーイの手は、レルロンドの
涙で濡れている。涙に濡れた手に夕日が滲む。レルロンドは重い口を開いた。
「ラスさん……ランクーイを、どこかに眠らせてあげませんか」
 ずっとランクーイに背を向けていたラスが重々しく振り返った。その目には、涙の跡が
乾いた海水のように白い結晶となり残っていた。レルロンドはラスもまた、悲しいのだと
言うことに胸が苦しくなった。
「ああ……ちょっと、ちょっと待ってくれ」
 ラスは少し腰を浮かせると、今度は夕日に背を向けて座りなおした。眼下には見たくな
いランクーイの姿がある。それでもラスはしっかりとランクーイと向き合った。
「ちきしょう! ちきしょう!!」
 堪らず、ラスは砂を叩きつける。叩きつけられた砂は高低の放物線を描き、その一粒、
一粒を夕日が煌かせる。レルロンドはその飛散に弾けたランクーイの命を見た。
「ラスさん、止めてください。ランクーイにもかかっています」
 悲痛な表情でラスの行為を止める。ラスの目からまた涙が溢れ出した。
「僕が……」
 レルロンドは悔しそうに唇を強く噛み、続けた。
「僕が隣にいたのに、助けてあげられなかった。ランクーイを殺したのは僕です。ごめん
なさい、ラスさん」
 ラスは驚き、レルロンドの目を強く見つめながら必死に否定した。
「違う! ランクーイを守ってやると言ったのは俺だ! なのに、あいつを置き去りにし
た、守ることを放棄してしまった。ランクーイを殺したのは俺だ、この俺なんだ!!」
 レルロンドも驚いた。ランクーイの死の責任を、ラスもまた感じていたのだ。それも自
分同様に、重く、深く。
「ラスさん、あなたが罪に感じることはない。僕がランクーイを守ると決めたのはあなた
と出会うずっと前からのこと。僕にとってあいつは全てだったし、なんだってあいつのた
めにしてきた。あなたと旅をしたがったのも、ランクーイに魔法を教えてほしかったから。
ランクーイの憧れを叶えてほしかったから。あなたは、これまでランクーイの望むことを
全て実現させてきた。それだけでランクーイは満足だったんです。あいつを守るというこ
とまで、そんなに欲張りにあいつは求めたりしない。それは長年、僕の役割だったんです
から。だからあなたまで、僕と同じ涙は流さないでください」
 ラスはレルロンドの優しいたれ目に心の内を見透かされたようで、急に胸の中の重圧か
ら解き放たれた気がした。レルロンドは罪を背負う。でもそれは、誰かと共有するような
罪じゃない。自分一人が悔やみ、苦しめばいいこと。ラスは教育者として立派に役割を果
たしていたのだから。

95FAT:2008/01/20(日) 20:56:20 ID:SHH8vO0M0

 ラスの涙が止むころには、あたりはもう暗くなりつつあった。ラスは険しい顔をして、
なにかをレルロンドに伝えるべきか、否かを迷っているようだった。ラスは一度レルロン
ドを見、すぐに視線を下ろしてランクーイを見た。そして思い切って顔を上げた。
「レルロンド、死ぬ覚悟はあるか?」
「死なない覚悟ならあります」
 レルロンドの強い意志は、暗がりの中でもはっきりと見えるほどの表情となって現れて
いた。ラスはその表情に満足気に微笑み、一つの提案をした。
「これはお前で初めて試す魔法なんだが……」
 ラスは茶色のウェスタンハットのつばを親指で上げた。レルロンドは真剣にラスを見つ
めている。
「エンチャットの応用でな、まず、ランクーイを一つの魔法元素とするため、極限まで圧
縮する。おそらく拳ほどの大きさもなくなるだろう」
「ランクーイの肉体は……?」
「だから、圧縮するんだ。体ごと。肉体も全て魔法元素に還元させる。そして出来たラン
クーイの魔法元素をお前にエンチャットする。お前の内側にな」
「……ランクーイを、僕の中に?」
 レルロンドは理解しようと必死に頭を働かせても、ラスの言っていることがよく飲み込
めなかった。
「そうだ。俺が今までランクーイに教え込んできた魔法のいろは、あいつが自分で得た魔
法の力、それを全部お前に引き継がせる」
「ランクーイが、僕の中に!」
 レルロンドの表情が明るくなる。
「ただし、さっきも言ったようにこの魔法には前例がない。もし、お前がランクーイの魔
法元素を受け入れられない器だとしたら、おそらく死が待っている」
「魔法元素と言ったって、ランクーイなのでしょう? 僕は必ずランクーイを受け入れて
みせますよ。兄弟の魂だ、僕にしか受け入れられない!」
 レルロンドは即答した。ラスはまたも満足げに微笑み、レルロンドとランクーイの手を
そっと放させた。魔力を両の手に溜め、ランクーイの冷たい体に触れる。
「ランクーイ、さらば! 初めての弟子よ、いや、友よ!!」
 暗くなった浜辺に火柱が立ち昇る。ランクーイの火の元素が、ラスの送り込む火の元素
と共鳴し、熱く猛る。
「ぬううぅううぅうぅぅ!!!」
 ランクーイの火の元素をラスが力で抑えつける。ラスの魔力は立ち昇った火柱を徐々に
圧縮させ、それは高密度の青い炎となり、辺りは神秘的な蒼い闇に包まれた。横歩きをし
ていた大きなカニが、遠くで砂に潜った。
 ランクーイの体は見る見るうちに縮み、やがて一つの赤い塊となった。ラスは全身に汗
をかきながら、更なる魔力を送り込んだ。不細工な原石のような赤い塊は徐々に輝き始め、
それは美しい赤玉となって浜辺に輝いた。暗黒に落ちてきた太陽、とでも言えばこの美し
さは伝わるだろうか。ランクーイの魂が感じてきた一生の様々な想いがこの赤玉の内側に
は詰まっていて、それが二人を再び涙させるほどの美しさとなり、死をも奪うほどの強い
生命力が感じられた。
 ランクーイの魂に惹かれたのか、大きな鳥がどこからともなく飛んできて二人の遥か頭
上を数回旋回し、再びどこかへ消えていった。
「きれいな魂だな。あいつがいかに純粋だったか、この玉を見れば伝わってくる」
「ええ、ランクーイの魂ですから」
 二人は暫しの間、ランクーイの魂に見惚れた。月のない夜空を、ランクーイの魂が明る
く照らした。穏やかな夜風は突然の明かりに戸惑いながらも潮の香りを大陸へと運んだ。
「さあ、覚悟はいいな? ランクーイを、この熱い魂を受け止めろよ」
 ラスは感動に震える手でランクーイの魂を大事に持ち上げ、レルロンドの瞳の奥をじっ
と見つめた。
「はい。ランクーイ、僕が必ず守ってやるからな」
 レルロンドもラスの瞳の奥を強く見つめ返した。そして、ラスはランクーイの魂をそっ
とレルロンドの胸に押し当てる。ランクーイの魂はレルロンドの胸の中に吸い込まれるよ
うにゆっくりと沈んでいき、ラスが手で蓋をする。辺りは一瞬暗闇に戻る。しかし次の瞬
間、レルロンドの全身から火が立ち昇った。
 辺りは再び、明るさを取り戻した。

96FAT:2008/01/20(日) 20:56:55 ID:SHH8vO0M0
「うっ!! わあぁあぁぁあぁあぁっぁぁ!!」
 予想以上のランクーイの魔力の強さに、レルロンドは身を引き裂かれるような痛みと熱
さを全身に感じる。焼けているような、ちぎれているような、破裂しているような、何と
も耐え難い痛みだった。

 でもここで、ここで負けちゃいけない!! ランクーイを守るのは僕だ!!

 レルロンドはひたすら痛みに耐えた。痛みに遠退きそうになる意識を意志で繋ぎ、ラン
クーイへの想いを何度も何度も心の中で繰り返した。すると胸の中で、飴玉がゆっくりと
溶け出すように、少しずつランクーイの記憶が、ランクーイの想いがレルロンドの中に流
れ込んできた。

 ――レルロンド、俺、立派な魔法剣士になれたよ、ありがとう。
 ――レルロンド、俺、はぐれて、一人ぼっちで寂しかったんだ。お前と再会できて嬉し
いよ、ありがとう。
 ――レルロンド、俺、師匠と一緒に旅が出来て本当に感謝しているよ。お前が強引に師
匠を引き止めてくれたおかげさ、ありがとう。
 ――レルロンド、俺、生まれた町がお前と一緒でよかった。一緒に生きてきたのがお前
で幸せだったよ。
 ――レルロンド、ありがとう。

 レルロンドの中に流れ込む記憶、感情は全て、レルロンドに対する感謝の気持ちだった。
口に出さなくともレルロンドには分かっていた。けれど、こうして本当の気持ちを聞くと、
たまらなく嬉しくなった。
「ランクーイ……礼を言うのは僕のほうさ。お前が生まれてから死ぬまで、ずっと一緒に
居れて幸せだった。これからも、よろしくな」
 レルロンドは見事、ランクーイを受け入れた。制御された炎はレルロンドの中に居場所
を見つけ、静かに、すっと引いていった。
「師匠」
 ラスは一瞬、懐かしい呼ばれ方に、ランクーイがそこにいるような気がした。
「って呼ばせていただいても良いですか? ラスさん」
 しかしそこに居るのは確かにレルロンド。ランクーイと一つになったレルロンド。明る
く、希望に満ちた笑顔を向けるレルロンド。
「ああ、まだまだ修行は続くぜ。二人共、強くなれよ」
 ラスは少し泣いた。それは哀しみなのか、感動なのか、どの涙かはわからないが間違い
なくラスの心が感じて溢れた涙だった。
「はいっ!!」
 ランクーイの想いを胸に、新たな旅への期待を乗せ元気よく、はつらつと返事をするレ
ルロンド。
 三人の旅はここから再び始まる。新たな形で、新たな決意で!

97FAT:2008/01/20(日) 21:55:14 ID:SHH8vO0M0
寒い日のほうが作品の進みが良い気がします。

>>21Rさん
ああ、ロリコン英雄のアレン様><
真面目に勘違いした私も同類ですね。
ミルのために戦うことを決意したアレンがめっちゃかっこいいです。
愛嬌のある面を見た後だからこそ余計にですね。
今後もアレン君のぼけと本気の凸凹期待しております。

>>◇68hJrjtYさん
他人の妄想や想像の権化がいいインスピレーションになるのですb
なので他の人の作品を読むことは自分が物を書く上で必要不可欠なことだなと思います。
も、もちろんぱくってるわけじゃありませんよ!笑

>>白猫さん
おお!ルフィエからメッセージが!?感激です!
せっかくのラブレターもチェーンメール扱いではやるせないですね。いっそのこと色気で攻めて
みてはいかがでしょうか。
今回も白猫さん節全開ではらはらどきどき読ませていただきました。
護りたいという気持ちから発動しているはずのエリクシルなのに漂うのは邪悪な力、という
ことで非常に気になるところです。やっぱり呪いなのでしょうか?
次回も楽しみにお待ちしております。

>>ワイトさん
「ぐあっふぁっ!!!」最高です。何度聞いてもいいなぁ(笑)
謎の空間に隔離されてしまったラータ、自分の中の現実や常識が消えてしまう
ということが一番の恐怖ですよね。ラータの不安な気持ちがよくわかります。
脱出できるのか、ヒースと再会できるのか、続きお待ちしております。

98◇68hJrjtY:2008/01/20(日) 23:59:14 ID:95kSdOn20
>21Rさん
「戦争の道具」…そう言ってしまえば実も蓋も無いながら事実ですね。
それにしてもなんてミトは美味しいんだ!と別のところで感動してます(笑) →正座
少しずつ語られていた「英雄症候群」ことライルが黒幕的に浮かび上がってきましたね…。
レッドストーンの存在も含めて、アレンの参加したこれからの戦いは激戦を予想させます。
---
だ、だるま落とししてませんよ!う、うん…うんうん…。
でもそう言われるとやりたくなry

>FATさん
ランクーイという一人の死がただの死で終わらず、そこからさらに進ませる…。
レルロンドがそれを受け止められないはずはありませんね。彼ができなきゃ誰もできませんよ。
そしてランクーイの力をレルロンドがその媒介となって発動という姿が今にも目に浮かびます。感動しました!
「ランクーイとレルロンドは二人で一緒」という言葉の意味が分かったような気もしました。
さて、三人の旅の行方ももちろんですが、一方のエイミーたちの方も気にかかります。
物語の続き、お待ちしています!

99みやび:2008/01/21(月) 04:55:00 ID:DDeYTqw20
◇―――――――――――――――――――――Red stone novel−Responce[1/2]
 >68hさん
 あれ……おかしい。50行以上可能みたいです(汗)
 初投稿のとき一発目で書き込み容量オーバーのエラーをいただいたので、一文字+改
行連打のテキストを投稿して「文字数ではなく行数カウントで(50行で)エラーになる」の
をちゃんと確かめたずなのに……。
 設定変わったのかしら……。
 スレ立てやったことがないんですが、文字数や行数のルールってスレッド作成者が任意
に設定できるんでしょうかね?
 というか、これって1000埋まるまで私の恥部が晒されるってことですね……(゚ー゚)ケケケ
 ア....コワレタ(;´д`)

>ESCADA a.k.a. DIWALIさん
 自己満足とかは気にしないでオッケーですよ♪ たぶん(笑)
 まああれです。ゴッホにしろピカソにしろ芸術家なんて、後年になって評論家や一般人が
勝手に解釈して評価してる訳で……本人はモロ自己満足の押しつけですし(笑)
 いや文章はちょっと畑がちがってきますけど、自己満足9に対して読者を意識してる1、
がプロの世界でもデフォな気がします(笑)
 というか読書はまだ追いつてません(汗) 感想はのちほど〜(汗)

>FATさん
 あり難いお言葉です。でも私のは「設定で満足+体力のなさ」で頻繁に筆が止まってし
まうという大きな欠点が(汗)
 コンスタントに書き続けるFATさんや他の職人さんたちには頭が下がる思いです。
 今はちょっと他の作業をしていますが、それが終ったらまたエレノアを動かしてあげたい
です。

>ルイーダ☆さん
 ここ見てるかわかりませんが、□部は■で問題ナッシング!
 てか「黒塗り」なのに素直に■にしなかった私がアホなんです(汗)
 ルイーダさんもスレ立て頑張ってください。(まあスレ立てに頑張れってのも変ですね(笑)
 ただ多くの人がおそらくスレ立て人や管理人をNPCだと思ってるフシもあると思うので、
やはり「頑張って」というエールが相応しいのかも。

 と。そろそろカラータイマーが点滅し始めたのでこの辺で。あとちょっと自分の宣伝もある
し(宣伝かよ)
 レス見逃してる方がいたらごめんなさい。あと感想してない職人さんたちも……きっと追
いつきます(汗)
Red stone novel−Responce――――――――――――――――――――――――◇

100みやび:2008/01/21(月) 04:55:29 ID:DDeYTqw20
◇―――――――――――――――――――――Red stone novel−Responce[2/2]
 えーと。今ちょっとサイト作ってます。
 基本的にはここに投下した作品の保管庫ですが、RS以外のものやエログロも載せると
思いますので、暇な方はお越しください。(ってまだ完成してない(笑)
 まあそんな訳でしばらくは投稿できません。という言い訳です。

 本当はまとめサイトにしようかなあ……と思ったのですが、私の趣味による書式固定な
ので、それに合わせてオリジナルの文章も改行や句読点の追加、禁則処理等の微調整
が必要(要はアンソロジー的で編者による編集が入る)になるので、こりゃあ無理だな…
…と断念(笑)
 なにはともあれ、とにかく完成させないとね(汗)
 UPできたらまた宣伝しに来ます(´▽`)

 追記――
 久しぶりにINしたらダウンロードサイズに思わず吹いたみやびでした。
Red stone novel−Responce――――――――――――――――――――――――◇

101◇68hJrjtY:2008/01/21(月) 12:48:29 ID:95kSdOn20
>みやびさん
おお!ついにみやびさんも自小説サイトデビューですね!
私はまったくその方面のスキルが無いので羨ましい限りです。21Rさんもサイト持ちですしね。
UPしたら是非訪問させてください!エログロもお構いナシで読ませてもらいます(笑)
サイト作成頑張ってくださいね!
---
ムムッ、したらばの設定が変わったというのならば分かりかねますね(汗) ローカルルールも公開されてないようですし。
というわけで使いもしないのにしたらばレンタルしてみました(*´ェ`*)
初期設定だと最大投稿文字数は4096、最大投稿行数は100のようです。
文字数がオーバーしてると行数がOKでもエラー、その逆もあるということになるのかもしれません。
でもみやびさんの実験(?)では50行でエラーったという事ですし…やっぱり管理人さんが設定変えてるのかもしれませんね。


以下蛇足。
このスレのwikiなんですが、未だにパスが不明のまま…もしかして大元のniftyに会員登録しないとダメなんでしょうか。
いやパス無くてもランダム英数字入れれば投稿できるのですが、1スレ目から毎回入力すると考えると実に面倒なんですよ(爆
wiki作った人がもしいらっしゃればパスの方をお尋ねできるかもしれませんが…ウーン。
まとめサイトを自分で別個に作っちゃってもいいものだろうか。それともなんとか今のところで頑張ってみるか。
個人的にはwebの資源の無駄遣いを避けるために今のまとめwikiで頑張りたいものです。

102名無しさん:2008/01/21(月) 21:58:28 ID:ZulpD7oo0
「さあ、今日もやるぞー」
自室のドアを後ろ手で強く閉め、目の前に輝くデスクトップの電源を入れる。
高校から帰ってくるといつもこうだ。部活には入っていない。
何をするかと言うと、今ハヤリのネットゲームの一つ、REDSTONEだ。
このゲームはMMORPGなので、リアルタイムで日本中の人とチャットをしたり、狩りをしたりすることができる。
僕は最近、狩りそっちのけでチャットを中心にこのゲームをしている。
この前狩りPTで知り合ったテイマーさんと仲良くなったからだ。口調からして女だろう。
ひそかにリアルで会うことも期待して、アイテムとかお金は装備さえもあげた。
彼女はとても喜んでくれて、もっとあげたかったが泣く泣くあげられるものはない、と伝えた。
でも彼女はそんなこと気にしていなかったみたいだ。本当に良かった。
今日もさっそく彼女に会おう。
「あれ?今はINしてないのかな?」
友達リストのテイマーのアイコンがモノクロだ。
いつもはこの時間にいるはずだが、今日は何かあったのだろうか…。

〜〜

男は本当に単純だ。
テイマーなど女性職でちょっと可愛くするだけで、すぐ食いついてくる。中が男だと知らずに。
この前もカモを見つけて、Uや億品などをもらった。
そいつは、もうあげられるものがないと言っていたから、もうこのテイマーは消すだろう。




ないんでもないっす、妄想御免。

103之神:2008/01/22(火) 15:07:31 ID:Z3wyKhJU0
1章〜徹、ミカの出会い。
-1>>593
-2 >>595
-3 >>596 >>597
-4 >>601 >>602
-5 >>611 >>612
-6 >>613 >>614
2章〜ライト登場。
-1>>620 >>621
-2>>622
-○>>626
-3>>637
-4>>648
-5>>651
-6 >>681
3章〜シリウスとの戦い。
-1>>687
-2>>688
-3>>702
-4>>713>>714
-5>>721
-6>>787
番外クリスマス >>796>>797>>798>>799
-7>>856>>858
-8>>868>>869
番外年末旅行>>894-901
4章〜兄弟
-1>>925-926
-2>>937
-3>>954
-4>>958-959
-5>>974-975
5冊目――――――――――――――――――――◆
-6>>25
-7>>50-51-54

104之神:2008/01/22(火) 15:28:30 ID:Z3wyKhJU0
α
「ホラな、やっぱ居たじゃんか」ナザルドは得意げに徹に向き直る。
悪いがそれどころじゃ無い状況・・・・・・・だな。
「おい、お前・・・・・・・」俺は昨日の男に目を向けた。
「なんでミカが、全身刺されて倒れてんだよ・・・・・・死んで無いよな・・・・・おい」
「いえ、平気ですよ。まだ死んでませんから」目の前の優男は肩をすくめて答えた。
「まぁ、これ以上やると死んじゃいますけど・・・・・・・ね」男は不気味な笑みを浮かべる。
「くっ・・・・・・おい!おいミカ!返事しろよ・・・・・!」
「寝ちゃってますから、簡単には起きないでしょうけど」
「とりあえず、返してもらうからな・・・・・・・彼女を」
「それは困りましたねぇ。返せないんですが」
「お前の理屈は・・・・・・聞いて・・・・ねえっ!」俺は何も考えず、ミカの方へ走った。

「返す」男はミカの前までジャンプした。
「ワケには」そして軸足を固め、
「いかないと言ってるでしょう」そうして徹は、もう片方の足で蹴り上げられた。

「うっ・・・・・・ぁ」身体が宙に浮く・・・・・・!
「しばらくおとなしくしてて下さいよ。私は友好的に事を進めたいのです」
「ガッ・・・・・、女に針刺すのが友好的かい・・・・・笑えるな、笑えねえけど・・・」
「女だなんてとんでもない」あ?
「悪魔ですよ」

γ
「んーどこだ、見当たらねーなー・・・・・」走りながら探すも、見つからない・・・・・。
「せめて場所くらい聞いてから寝てもらうんだったわ・・・・」
肩に少女を抱えながら、俺はひたすら走っていた。

あれ・・・・・・あいつ、誰だ・・・・・?
無駄に動きがいい、青髪の男がそこにいた。
「おい、誰だあんた・・・・・」
「お?俺は剣士だよっ」

105之神:2008/01/22(火) 15:50:01 ID:Z3wyKhJU0
α
あれ・・・・・・そういえばあいつどこだ・・・・。
ナザルドがいねぇ・・・・!
あー・・・・・・・・意識が・・・・・蹴り1発かよ俺・・・・・。
「ぐっ・・・・・・」

γ
「剣士?剣も無いのにか」
「うん、剣士。ところでさ」
「ん?」
「ちょっとついてきてくれない?」そう言うと、俺の返事も聞かないで男は走っていった。
まぁ、アテも無えし・・・・・・

それにしても、どこかで見たツラだな・・・・・・誰だっけ・・・・。
「こっちだよー」
「あー次こっち」無駄に元気な声を出す男、1分ほど走ると・・・・

「ほら、ついた。お友達じゃない?」

・・・・・・・ミカ、徹もか・・・・・。何より
「よう、ブラック」

――――――――――――――――――――――――――――――――



数年前、俺は代々ある武道の名門、プザーシュを飛び出した。
蹴りや殴りなんていう、退屈な技で敵を倒すとか、そんなものに退屈して・・・・もあったが。
飛び出す何年か前から、俺は徹底的にやられたから、だ。
何をやられたかっていうと、具体的には虐待か。内容はぶっちゃけ言いたくねえな、思い出すのがイヤだし忘れてきたし。
昔からシーフに憧れてた俺は、プザーシュでは除け者にされた。
だからこんな家、すぐに飛び出してやろうと思ってた。
しかしなかなか出れないこの家。外に出るのを禁止されてたし、出ると余計に殴られるし。
だから俺は家を出るために、自分の弟を人質に取り、家を出ることに成功した。
初めて見る外に俺は感動したし、友達とか仲間とかできたしな。俺は弟を裏切ったが、出て良かったと思う。

――――――――――――――――――――――――――――――――

「何故私の名前を知ってるんですか、貴方と会うのは初めてかと思いますが・・・・?」
「まぁ忘れても無理ねえか」俺は帽子を取って相手を見て・・・・・言った。
「ライト・プザーシュ、で思い出すかい?」
「我が弟よっ」

「兄さんか・・・・・・会いたくなかったな、二度と」

106之神:2008/01/22(火) 16:18:13 ID:Z3wyKhJU0
γ
「ねえねえ、俺ちょっと話に入れないから、帰っていい?」ナザルドは空気を読まずに言うと、走っていった。
・・・・・・・・・。

「俺も会いたくは無かったけどな、お前がバカな事してんだ、来ない訳にもいかないし」
「バカね・・・・・家を飛び出して泥棒になるより、悪魔退治のほうがマトモな生き方かと思いますけど」ブラックは笑った。
「それをバカっていうんだよ、ブラック・・・・・・!」俺は短刀を握る。
「忘れませんよ・・・・・・」
「は?」
「忘れませんよ・・・・兄さんが私に向かって刃物を向けた事、人質として・・・・・忘れませんから」
「じゃあ手前も言えねえな。よくも日常的に殴る蹴る・・・・俺で遊んでくれやがって」
「だから!それは兄さんが泥棒になるとかバカな事を言うから、プザーシュの汚点を排除すべk・・・・」言いかけてライトが割る。
「知らねえよ、汚点だがなんだか知らねえが、やりたい事やろうとする俺を・・・・・・・・・」

しばらくの沈黙が流れ・・・・・・ブラックが言った。

「いいでしょう、決着といきますか。お互い恨みはあるんだから」
「上等だ、愚弟め」
「兄さんには言われたく無かったな・・・・」

β
あー・・・・・・意識が遠のいてた・・・・今何時だろ。
あれ、動けない・・・・・ああ、私拷問されてたんだっけ・・・・・・。
徹が倒れてる、あれ、ライトもいる・・・・・あれ・・・・あれ・・・・あれー・・・・・・。

Σ
「はっ・・・・・」
「おやおや、お目覚めですか赤い目の」
「ライトっ・・・・・・!」
「ミカ・・・・・・・起きたのか」

「えっ・・・・徹がなんで倒れてるの・・・?」今すぐにでも飛び出したい・・・・けど、椅子に固定されて動けない・・・・。
「ちょっ・・・・・・・あっ・・・・!」ブラックは注射器のようなものを刺していた。
「今から大事なところなんです、少し黙っててください」
「うっ・・・・・・・・」


γ
ミカは・・・・・・きっと平気だろう、勘だけど・・・・・。
「お前、殺されても文句言うなよ?」俺はブラックに吐いた。
「兄さんも、このお友達と仲良く昇らないように気をつけてくださいね」
「はっ、知ったことか」俺はシルヴィーを徹の横に置いた。

「じゃ、始めようか」




あれぇ、なんで私この部屋に・・・・さっき戦って、ライトっていうのと話して・・・・・そして・・・・。
あ、眠らされてたのか・・・・・。
笛・・・・・・笛・・・・・あれ・・・笛が・・・・どこだっけ・・・・。
声が聞こえる・・・・・ブラックさんの声・・・・・・。

「まぁそうですよ」
「彼女は捨て駒ですかね、いいように動いてくれます」
「お前、そんなんでシルヴィーを・・・・!」

何の話だろ・・・・・・よく聞こえない、いや、聞きたくないのかな・・・。
もう少し、気絶してればよかった・・・・・・。


倒れながらシルヴィーは、泣いていた。

107之神:2008/01/22(火) 16:25:31 ID:Z3wyKhJU0
おはこんばんちわ。
なんと見ない間に100レス超え・・・・!恐ろしきかな小説スレ。

あと>>102さん初めまして・・・・かな?
なんか視点がいいです、私の書きたいのと似てるかも・・・・・。

あんまり他の人の作品の感想を書かない私なので、珍しく感想とか・・・・。

今回の題材の兄弟、ですが。ブラックとライトは兄弟でした、っていう単純な・・・・orz
まぁお互い恨みあってるような、そんなような。

ナザルドはどう見てもKYですありがとうございました。

では・・・・(´・ω・)つ旦
引き続き小説スレをお楽しみ下さい。

108名無しさん:2008/01/22(火) 17:59:23 ID:gXqJ5/rQ0
>メイトリックス氏

元々強大な力を持っていたであろうネクロマンサー達の怨嗟のような
ものが伝わってきて、凄く興味深いです

>白猫氏

凄まじいボリューム・・・力を手に入れたからでしょうか
ネル君がかなり精神的に危うくなっている印象です

>ワイト氏

やっぱりぐわっふぁがwすませんw

>◆21RFz91GTE氏

何だかアレンのエロス方面が死んでる間に強化されているようなw

>FAT氏

魂そのもののエンチャントですね
ランクーイの想いが強く伝わってきました

>102氏

ああ、僕の知人のことを思い出して情けなくなってきた
僕の知人はランサーでスクリュー貢がせてたけど(´ω`;)

>之神氏

剣士君はいつ剣士らしいことをするのかずっと気になってますw

109ESCADA a.k.a. DIWALI:2008/01/22(火) 17:59:37 ID:OhTl4zsk0
続き〜

何とかキッチンからミリアを引きずり出すことに成功した、エディとクレイグにエストレーア。
しかしエディはケツに竹槍がピンポイントで直撃、クレイグは爆弾付きの落とし穴に落下してしまい、現在行動可能なのはエストレーアだけ。
「やぅ、うにゅ〜・・・ふみゅぅ〜!!」無邪気で愛くるしい声を出しながら、ミリアは自身を抱いているエストレーアにじゃれついている。
「あらら、大人しくして・・・イタタっ、ほっぺた引っ張らないで〜!!!」「キャハハハッ、ぷにぷになのよ〜!!うにゅ、うにゅ〜」
幼い彼女に悪戦苦闘するも、彼は何とかご機嫌取りに成功しているようだ・・・ついに懐から呪い解除の薬を取り出す!!
「あのね、ミリアちゃん?お姉さんがいいものあげるよ、飲んでくれる?」「ふにゅ?ミリアのどかわいたの〜、ジュース飲むなの〜!!」
言葉巧みにミリアに薬を飲ませようとする・・・オレンジ色の液体が入った瓶のフタを開け、飲み口をミリアの唇へと運ぶ・・・・・・。

「(よ〜し・・・もう少しで飲んでくれるぞ!)は〜いミリアちゃん、あ〜んしてね〜」「うにゅ・・・あぁ〜ん」


「ゴルァアァァアァァァアァァァアァァァアアアァアアアアアア!!!何やっとんじゃエストレーアぁあぁあぁ!!!?!
 何でオメーがラティナのレオタードを着てんだァ!!?!ブチ殺したるァ嗚呼ァ亜あぁあぁぁああぁぁぁあぁぁ!!!!」

・・・来てしまった。怒り心頭、唐辛子を食べさせられたかのように全身を赤く染めたトレスヴァントが、鬼のような形相をして
その場に乱入してきた!!!実は彼、恋人のラティナと風呂に入っていたのだが・・・彼女の衣服が盗まれたのを受けて
怒りのままに犯人を捜索中のところだったのだ。真犯人は傍で悶絶しているエディとアフロヘアになったクレイグだというのにこの状況。
彼にとっては「エストレーアがラティナのレオタードを着込んでヘンタイモードを楽しんでいる」というシチュエーションにしか見えていない!
指の骨をバキボキと、文字通り骨太な音を鳴らすトレスヴァント。そして青ざめる一人のシーフと二人のエルフ・・・三人ともビビっていた。
ミリアは恐怖の余り「ふゃぁ〜!もんちゅたーがきたなのぉ〜、逃げるのよ〜!!」と泣きじゃくりながら、またキッチンの棚へと引き篭もる。

110718:2008/01/22(火) 18:03:31 ID:gXqJ5/rQ0
前スレの718です。またちょっと書いてみました。難しいですねー。
やっぱり僕にはエアーマンくらい勢いで書いてしまうもののほうがあってるようですw
よかったら読んでみてください〜。


古都の一角、パブや安宿が立ち並ぶ通りに、古びた焼肉屋がある。
昔から古都の大食漢たちを味・量双方から唸らせてきた、愛されるべき名店である。
開店まもなく、客もまだまばらな日暮れ時に、凄まじい勢いで肉を平らげる中年男と、
ジョッキ片手にその様子を眺める青年の姿がみえる。

中年の男は、一心不乱に半生のロース肉とツヤツヤのご飯を口にかきこんでいる。時折箸をおき、
ボリボリと禿げ上がった頭を掻きながらジョッキをあおる彼の顔は、炭火の熱と琥珀色の液体の力で
赤く火照り、元々垂れ下がっている目じりはこれ以上下がりようがないほどになっていた。
鼻炎持ちの彼の団子っ鼻からは、アルコールのせいか僅かに鼻水が垂れ、過度に蓄えられてしまった
豪快な口髭を光らせている。得物を銀色のトングに持ち替え、ついに大好物のカルビ皿へと手を伸ばす。

皿に丁寧に並べられた厚切りのカルビをトングで纏めて網の上に落とし、適当に広げると炭火に炙られてタレと
肉汁が焦げ付き、なんとも言えず香ばしい香りが辺りに広がる。

表面に軽く焦げ目の付いた肉をとり、甘辛いタレに浸して飯に乗せ、「ノリ巻き」の要領で飯を巻いて口に運ぶ。
追い討ちをかけるようにキムチを壷の中からつまみ上げ、口に放り込む。白菜のサクサクとした音が鈍く響く。
ひとしきり味わい尽くすと、ジョッキに並々と注がれたビールを一気に口の中に流し込む。思わず、爽快なため息が漏れる。

目の前には、ビールの泉、肉の山。至福のひと時だ。一心地ついたのか、口髭に付いた泡を掌で拭う。

その様子を、正面でビールを嗜み、時折キムチやユッケに箸を伸ばしながら面白そうに眺めていた青年も、
さすがに暑さが堪えてきたのか身につけていたマフラーと、綺麗な緑色のコートを脱ぎ、無造作に丸めると
自身の傍らに置いた。そして長く、ウェーブのかかった髪を後で纏めると、自身もカルビ肉を焼き始めた。

「何だ、食うんじゃねぇか。食わねえのかと思ってたぜ」
「先輩と一緒に肉焼いたら、自分の分が確保できませんからね」

「ああそうかい」と軽くそっぽを向いてジョッキをあおる中年を尻目に、苦笑しながら肉を焼く青年。

見る限りは特に代わり映えのない、先輩と後輩の呑み会であるが、この2人が唯一他の客と異なるのは
2人が「冒険者ギルド」に所属している、所謂冒険者と呼ばれる類の人間ということである。

だらしなく笑っている禿げた親父も、どことなく頼りなさげな長髪の若者も、いざ任務を帯びその身を危険に
晒せば、その経験、知識、何より磨きぬかれた技を駆使して任務の遂行を目指す危険任務のエキスパートである。

彼らが普段手にしているのはトングや箸とは似ても似付かぬ、鋼鉄の巨斧や業物の魔導杖であり、
その身に纏うのは分厚い肩プロテクターやミスリル製のコートなのだ。

今2人は、それぞれが帯びていた任務を終え、互いの無事を確認し、数ヶ月ぶりに馴染みの店の親しんだ味に
ありついている最中なのである。

111718:2008/01/22(火) 18:04:27 ID:gXqJ5/rQ0
あ、かぶってしまってた・・・

ま、また後程書き込みます、失礼。

112ESCADA a.k.a. DIWALI:2008/01/22(火) 18:25:36 ID:OhTl4zsk0
「おぉコラ・・・・ブッ飛ばされる覚悟はできてんだろうなァ〜!?」額にビッシリと青筋が浮かび、悪魔ですら逃げ出したくなるような
ブチキレ顔のトレスヴァント。手には大剣「ビッグセイジ」が握られ、その剣も持ち主の怒りに共鳴するように一層燃え盛っている・・・!!
「あ、あの・・・あのあの〜・・・こ、ここ、コレはですね?エディとクレイグにやらされ・・・」「バッ、何言ってるんだエス!?」
「テメー!!何責任逃れようとしてんだよ、お前も半ばノリノリだったじゃねぇか〜!!」「そもそもあなた達が発案したんでしょうが!!」
「・・・・ゴチャゴチャうるせぇええぇええぁあぁぁああぁぁあああ!!!!!!死ね!!お前ら全員死刑判決じゃ!!叩っ斬ったらぁぁ!!」

キッチンでは男4人がボカスカと殴りあう中、またもキッチンに来訪者が・・・フィナーアだ。
途中で寄ったクローゼットから着てきたのは・・・ミニスカートタイプの黒いメイド服。しかもネコミミと付け尻尾も付いている。
「あらァ?あらあらあらァ〜ん!?・・・・何かしら、男の子同士殴り合ってるだけなのにィ・・・何で?何でこんなに血が騒ぐの!!?!
 ・・・んぁっ、もう・・・ダメぇっ!!フィナちゃん我慢できないわァ〜んっ!!!アタシも混ぜてちょうだァ―――――――――い☆」
一人勝手に問答、同時に自身を抱きしめて喘いで・・・せっかく着てきたメイド服をあっさりと投げ捨てたフィナーアが乱闘の渦にダイブ!!!
「うぉあぁあぁぁ!!?何でいつの間にフィナ姉が混ざってるんだよォォォ!?誰だこんなの呼んだのわ!!?!」エディが泣きながら叫ぶ。
「ま、人のことを災害扱いしちゃって!!そんな悪い子はァ・・・イケナイところをナメナメしちゃうわよ〜!?カモォ〜ンっ!!!」
「ぎゃぁああぁぁぁああぁチャックを下ろさないでぇ―――――!!?!!!!」「うふふっ、うふふふふふふふふ♪」
しょっぱい水がエディの目から溢れ出し、エストレーアとクレイグはトレスヴァントに馬乗りでマウントパンチの餌食とされ、フィナーアは・・・

「やぅ〜・・・ミリアけんかきらいなのぉ〜、今のうちににげるなの・・・ふにゅ?」
棚から降りてその場から立ち去ろうとハイハイで移動を開始するミリアだが、彼女の目にあるものが止まった・・・!!
オレンジ色の淡い輝きを放つ液体が入った瓶・・・ミリアはそれが呪い解除の薬とも知らず、フタを開けてすぐに飲んだ。
「うにゅ〜・・・オレンジ色なのにイチゴ味〜、不思議なのよ〜?・・・?ふぇ・・・ふにゃ!?」
いきなりボン!!という短い爆発音が出ると、辺りには白い煙が立ち込める・・・乱闘中の5人も何事かとその手を止めた。

113ESCADA a.k.a. DIWALI:2008/01/22(火) 18:55:26 ID:OhTl4zsk0
煙が晴れる。その向こうには・・・年齢低下の呪いが解けたミリアの姿があった、が・・・・
「ちょっ・・・ウハ/////」とエディ。「・・・・・意外とムネあるんだな、ミリアちゃん/////」こっちはクレイグ。「・・・/////」エストレーア。
「うぁ・・・あんなところがツルペッタn」トレスヴァントに・・・「あぁ〜ん、裸の上にタンクトップだけなんてぇ、ミリアちゃんやるじゃな〜い!!」フィナ。

呪いは解けたのはいいのだが・・・いきなり元の年齢に戻ったおかげで体のサイズも元通り、しかもだ。
幼児化していたときに着ていたタンクトップは、今となってはミリアの乳房を隠す程度・・・他は何も着ていないミリアの姿がそこにあった。
「うにゅ〜、みんなどうしたの・・・ん?ふゃぁああああぁああぁああぁあああ!!?!//////////」
自身がかなりフェティッシュな格好をしていることに、ミリアはようやく気付いた。すると彼女は身を震わせ、拳を固め始める・・・・!!
「うゅ〜!!!!ミリアは・・・ミリアはァ・・・ケンカは大嫌いだけど・・・うゅ、え、えっ・・・・///////////」
顔を桃色に染め上げ、少し俯く彼女・・・周りの5人は「え?」という表情を浮かべる。だが・・・・
突如、ミリアはキッと顔を挙げ、即座にカンフーの構えを取った・・・!!!拳には炎がメラメラと渦巻いている・・・!!!
「げぇっ!!!ジャファイマのばばあ、ミリアちゃんになんつーもん教えやがったんだよぉっ!!?」「クレイグぅ、何だアレぇ!?!」
「簡単に言うとアレは炎の元素を身に纏うんだよ〜!!並みのエンチャとは比べ物にならないくらいつよ・・・」
しかしこうしている間にもミリアは5人の懐へと潜り込んでいた・・・大胆に開脚し、踏ん張って力を込める!!床にひび割れが入った。

「問答無用〜!!ミリアはねっ、ケンカは嫌いだけどっ!!えっちぃのはもっともっともぉ〜っと!!大嫌いなのぉ〜っ!!!!!!」
凛々しいけどもやっぱり可愛い声で叫び、掌打アッパー一発でエディたちを屋根ごと吹き飛ばした・・・・!!
各々の断末魔が山彦を従えて響く中、荒く削れた丸い穴から太陽の光が優しく差し込むのであった・・・。
「うゅ・・・ふゃぁ・・・エッチエッチエッチぃ〜!!ばかぁ〜!!!!」泣きながらミリアはキッチンを後にし、自分の部屋へと走っていった。




一方、こちらは森の郊外・・・・
「何なんだろうね・・・結局こうなっちゃったよ〜」「んだんだ、まぁ人生何があるかわかんないし・・・・っ!!?」
「テンメぇらぁ〜・・・まだ私刑執行は終わってねぇんだよ!!?!ラティナの悲しみ、オレの拳をもって思い知れぇ〜!!!」
「ちょっ、まっ・・・ぎゃあぁああぁあああぁぁぁあぁあああぁぁ!!?!」
トレスヴァントによってシバかれるエディとクレイグ・・・そんな彼らを他所に、着替えたエストレーアとフィナーアはその場を後にして
トレーニングに励むのだった。チャンチャン♪


・・・ん?何か忘れていたような・・・・

「くしゅんっ!!!・・・・はぅ〜、トレスヴァントぉ〜・・・早くあたしのレオタードと鎧を取り返してきてよォ〜!!
 うぅ〜ブルブル・・・湯冷めしちゃう〜!!!バカぁ〜!!!・・・・・・・っくしゅん!!!」
大浴場で泣き言を叫ぶラティナでした、チャンチャ・・・「笑い事じゃないんだからねっ!!////////」

to be continued?

114ESCADA a.k.a. DIWALI:2008/01/22(火) 19:01:25 ID:OhTl4zsk0
はい、以上は幼女ミリアちゃんの一騒動でした;;
このお話の後に、前スレでの「Battle Show」編に続くわけでございます。
次回はそのBattele Show編が終わってからのお話、そろそろシリアスな雰囲気も入りますよ?
本来の「vsザッカルの一味」路線に戻って、頑張っていきたいです・・・

っと、各作品への感想も書きたいのですが、時間がないのでこれにて;;
というか読書が追いついていない・・・いずれ読破して感想を書かせて頂きたいです。
ではでは。

115七掬 ◆ar5t6.213M:2008/01/22(火) 20:36:11 ID:Zz47wR0.0



・・・・・・わたしは、何に怒っているのだろう。

誇りとしていた帝国の紋章が刺繍された、はためく外套も
恋人がくれた銀の腕輪も
振るった槍の後にいつも続いていた長い髪も
母がくれた紅い眼も

忘れてきたことさえ忘れて、わたしは何をしているのだろう。

何も分からないことさえ自覚せず
わたしはただ、意味も分からない怒りと共に得物を振り下ろす。

吹き出る血に、何か遠い過去が浮かんだ気がした。
とても懐かしく、でも、すごく辛くて、悲しくて。
嫌だ、思い出したくなんかない。
消えちゃえ、消えちゃえ・・・・・!!

どんなに必死に逃げようとしても、わたしは絶対に逃げ切れない
この身体は、わたしが逃げることを許さない。
幾ら傷ついても、すこし時間がたてば再び動き始める。
四散したはずの身体が、何処からか再び集まってくる。

わたしの心を、この監獄に繋ぎとめる忌まわしい鎖。
わたしの身が滅びても、絶対に解き放たれない魂。
永遠の連鎖。

いつか、解放される日が来るのだろうか。
そんな夢さえ身体が壊され、再び蘇るときに薄らいでいく。
わたしは、絶対に逃げられないんだ・・・・・。

また、身体が壊れた。
やっぱり解放されない自分自身に、一片の悲しみもわかない。
悲しいなんて感情を、忘れてしまっただけなのかも知れないけれど。

あ、また懐かしい感じ。でも、怖くない。なんだろう、これ。
これは、音・・・声だ。
あたりは薄暗くて・・・・・・なんだか寒い。

なぜだろう。こんな感覚があるわけ無いのに。
目も、耳も、肌も無くしてた筈だったのに。
いつの間に拾えたんだろう。無くした事も、忘れてたはずなのに。

目の前に小さな影が佇んでいた。
青い炎を宿した、不思議な仮面から、声が響く。

『そなたの恨み、我が預る。神すらも赦さぬそなたの業を我が赦す。
 契約を交わそう。そなたの器を我に捧げよ・・・』

・・・・・意味が、分からなかった。
言葉なんて、久しぶりに聞いたから。
立ち尽くして、一生懸命意味を考えているわたしを、彼は辛抱強く待ち続けてくれた。
一生懸命考えたけれど、結局彼が言った意味は良く分からなかった。
それでも、なんとなく彼は、わたしを必要としてくれてるんだって事は伝わってきた。
それが、なんだかとても嬉しいことのような気がして、協力してあげようと思った。

116七掬 ◆ar5t6.213M:2008/01/22(火) 20:43:02 ID:Zz47wR0.0
そう言おうとして、気付いた。
 ―――わたしには、口が無いんだ・・・・

怖かった。わたしが何も言えないことを、彼は否定と受け取るだろう。
彼が立ち去ってしまえば、わたしは・・・・独りだ。

ずっと独りだったはずなのに。
寂しいなんて感情、忘れていたはずなのに。
恐かった。彼に見捨てられたくなかった。
でも、彼の問いに答える方法が分からない。

何も言えないわたしを、彼はずっと待ってくれていた。
けれど、何も言えないわたしに見切りを付けたのか、ついに『やはり無理か・・・』と呟いて背を向けて歩き始めてしまった。
わたしは、ぎこちない足取りで必死で彼を追いかけた。
全力で走ったつもりで、それでも歩く彼に追いつくのにしばらくかかってしまった。

その背に、出し方すら忘れてしまっていた声をかける。

『マッ・・・・!!』

言った瞬間びっくりした。
自分が言ったんじゃないみたいにしわがれて、ひび割れた声。
しかも、口ものども無いはずの自分から、確かに響いた声。
それでも、彼は振り返ってくれた。
ただ黙って、少し驚いたようにわたしを見つめている。
生まれた瞬間に泣きはじめる赤ん坊みたいに、わたしは必死で、出来るはずもない息をして言葉を継いだ。

『テツダウ・・・テツダウ』
『我と契約を結ぶというのだな?』

頭をぶんぶんと上下に振って、そうだと伝えた。
どういう契約か、分かりもしなかったが、それでも彼について行きたかった。
彼も一つ頷くと、わたしの体に手を添えた。

『契約成立だな。そなたは今から我の物だ。そなたの業も、その力も』

彼の手から魔力が流れ込み、身体がズキンと痛む。
大切な相手に捧げた破瓜みたい、なんて、馬鹿なことを考えているうちに、契約の儀式は終わったらしい。

『ついて来い』

わたしの主となった彼が、わたしに命じる。
わたしは黙ったまま、彼に従って歩き始めた。



再びわたしの物となった、わたしの自我。
昔の記憶に囚われ、逝き損ねたわたしが、新たな道を歩き始める。
夢も希望もないかもしれない。
それでも、わたしを記憶の闇から救ってくれた彼のために。
ずっとずっと、歩き続ける。


                                        死霊術の契約 ―完―





・・・・・こんばんは。元169こと、今回コテハン付けるに至りました七掬です。
まずは小説スレ六冊目おめでとうございます。
今回はネクロマンサーに恋する純情女骸骨鎧のお話でした。(歪んだ小説なのは仕様ですorz)

小説スレがいい感じに賑わっていてほとんどROM専な私ですがいつも目尻を下げさせていただいています。
作者様ごとの感想はこの前出没してからの分とても多いのでもう少し後に落とす予定です。

では、皆様のご健勝とますますの小説スレの発展を願って!!

117◇68hJrjtY:2008/01/22(火) 22:22:43 ID:qv24xFu60
>102さん
えっ、続かないんですか( ´・ω・)
ネカマになって貢いでもらうプレイ…RSに限らずですが良くある展開ですよね(笑)
私も男女という区切りはなくとも、初心者さんを見つけると色々手助けしてしまいたくなる性癖が(;´Д`A ```
本人のためを考えるとやらない方が良いとは分かっているのですが。
もし良ければ続きお待ちしてますよ(笑)

>之神さん
ライトの過去が判明すると同時にブラックの過去もまた明かされましたね。二人が兄弟だとはまったく予想外でした(汗)
恐ろしいことに折角の再会ながらお互いがお互いを憎んでいる…戦いは避けられないのでしょうね。
ナザルド君KYだろうと好きですよ!何か秘密を持っていそうな予想なんですが、どうなんだろう。
ところで彼が剣を持たないというのにも何かしら意味がありそうな気もしています(ノ∀`*)
シルヴィーの「もう少し気絶していればよかった」というセリフのせいで前が見えません(´;ω;`) 続きお待ちしています!

>ESCADA a.k.a. DIWALIさん
やっぱりというかなんというか、最後はミリアちゃんの拳が発動してしまいましたね(*´ェ`*)
うーん、未だに赤ちゃんミリアが名残惜しいのですが、元の年齢に戻れたミリアちゃんもイイ!口調はさほど変わってないみたいですが(笑)
ESCADA a.k.a. DIWALIさんの小説、毎回笑って読ませてもらっているので今後のシリアス展開に非常に興味津々。
そういえばエルフ集落のドタバタ話で忘れてましたが(こら)、ザッカル君がまだ居ましたね!
ラティナさんが風邪を引かないようにお祈りしつつ続きお待ちしています(笑)

>718さん
おお!エアーマンを書かれた718さんですね!いっそコテハンを「エアーマン」にしたら良いのではないでしょうか(笑)
今回はシリアス路線(?)のようですね、ただの食事風景をこんなに細かく書いてもらえるとお腹が空いている時は厳しいものがあります(苦笑)
そういえばRSでは冒険者という定義が「レッドストーンを追いかける者たち」ということでひとくくりにされているような気がしますが
個人的にはレッドストーンが絡まずともこういう輩はたくさん闊歩している世界観を想像しています。
冒険者ギルドという施設の存在も私の妄想の中にあったので、上手くシンクロしている小説みたいで嬉しい限り。
続き待っていますね。

>七掬さん
後書きで初めて分かったという不届き者な私ですが、なんと骸骨鎧とネクロマンサーのお話だったとは。
でも骸骨鎧もその前はやっぱり普通の人であったのですよね。このお話では女性のような表現がされているのは面白かったです。
ネクロマンサーと契約を結んだというハッピーエンド(?)の終わり方なのにどこか寂しくて悲しい空気を感じたのは私だけでしょうか。
アンデッド…つくづく悲しい存在だと思います。
最近作ったネクロで骸骨君をテイムしようとして返り討ちに三回くらい遭った68hでした(爆

118之神:2008/01/22(火) 22:38:32 ID:rlRiyE6E0
感想どうもです(・ω・`

なんかメンテスレの伸びがすごすぎて・・・・思わず笑ってしまいました・・・・w
1時間たらずで1000行っちゃうのがもう・・・w

119スメスメ:2008/01/23(水) 08:33:48 ID:nVg63o/Qo
前スレ>>750 現スレ>>6


木々は様々な祝福を実らせ
且つその身を赤や黄色などに彩る。
私は少し肌寒くなってきた風に当たりながらいつもの様に街頭に立ち、待っている。

「遅い……本当に彼に任せても良かったのか?」

私の名はフローテック、このブルネンシュティグでとある依頼を頼んでいる者だ。
その依頼とは、
『私の代わりにバインダーを少しでも眠らせてやる事』
それだけだ。



『バインダー』

それは彼『バインダー』が人間として生きていた頃、彼はちょっとした資産家だった。
金儲けの為に手段を選ばず沢山の恨みを抱え、その恨みの所為で呪いをかけられてモンスターとなってしまった……。

表向きはその様な事になっているが実際は違う。
彼は生前『ある組織』に在籍し、多額の資金を融資していたらしい。
彼がそこで何をしていたのかは分からない。
だがこれだけは確信を持って言う事ができる。


彼は殺されたのだ。

それも私の目の前で……。
だが今となっては事の真相を調べる術は無く、ただ事実としてあるのは彼が何者かの手によって近付く者全てに刃を向ける凶悪なモンスターとなってしまった事だけだ。
モンスターならばなんて事はない、実も蓋もない言い方だが始末してしまえばいいのだ。

だが彼、『バインダー』はただのモンスターでは無かった。
実際に当時のブルン騎士団が出向いて討伐したはずだった、しかし数日後に奴がまた目撃されたのだ。
その後も討伐隊が組まれ何度も倒されたのを確認されたが何度倒しても蘇ってくる。
その内、奴はどうしてかは不明だが、あの地下墓地から外に出てこないことが解り、以来それを理由に討伐隊が組まれる事は無くなってしまった。

当時私の父はその騎士団に入隊しており、討伐隊の打ち切りに異を唱え続けたが聞き入れて貰えず自ら除隊してバインダー討伐に残りの生涯をかけた。
しかしその父も歳を取るごとに衰え、最期はバインダーから受けた傷が原因でこの世を去る事となる。

私はただ私の父親の
『少しの間でも良い、父バインダーに安息を渡してやってくれ』
と言う遺言に従って彼に安息を渡してきた。
若い頃は一人で何とか出来ていたのだが私ももう若くない、それ故にこうしてクエストを設け、街頭に立って冒険者たちを待ち続けている。
しかし私も歳だ、こうやってクエストを通じて奴を一時だが、眠らせてやれるのも後僅かだろう。
出来ればバインダーに永遠の安らぎを与えてやれれば……。

120スメスメ:2008/01/23(水) 08:43:55 ID:OEe.fNW.o
そんな時であった。
「あんたがフローテックさんかい?」
ふと老いた腰を曲げ見上げると、そこには以前に自分が張った依頼書を持った少年の姿が、目に映った。
「確かに私がフローテックだが何か?」

「あんたの依頼、受けに来たよ」
そう言って歯を見せながらニカッと笑み、左手の親指を立てながら拳を私に向かって差し出した。


……不安だ。
今まで私の依頼を受けて行った者は一人の例外を除き、
重厚な鎧で身を包み、腰には剣を引っ提げた者や、
軽量化された木の鎧を身に纏い、軽快に敵を槍で刺し貫く者、
召還獣やモンスターと意志疎通をし、共に戦うもの、
己の知識を魔力に変え、敵を様々な術でなぎ払う術者、
はたまた、神の加護を受けその力を行使する僧侶など様々な冒険者が居た。

それらに比べて彼はどうだ?
見事な銀髪をポニーテールのように結んで背中まで垂らし、真っ白なカッターシャツに小旅行用のリュックサック背負っている。170㎝あるのかどうかの背とやや細身の身体つきは冒険者としては小柄な方だろう。
顔から15、6歳程だろうか?
笑うとだとさらに幼く見える。
それ以上に冒険者として身を守る為の武器や防具を彼は身につけておらず、とても冒険者とは思えない風貌だ。
しかし―――善い眼を持っている。


「ところで、冒険許可証は持っているのか?」

『冒険許可証』
とはこのフランデル大陸において文字通り冒険者としての活動を許可する証明書であり、これがないと冒険者として必須の武器の携帯や、私の様に正式に仕事の依頼をしている通称『クエスト』と呼ばれる仕事を行うことが出来ないのである。
この許可証はここブルネンシュティグの他にオアシス都市アリアンやアウグスタ半島にあるブリッジヘッドなどの都市でも取ることが可能である。無論、実戦における実力など其れ相応の能力が求められる訳で、テストの為のクエストが用意されている。それをクリアした者が初めて冒険者として認められるのである。

「もちろん、今見せようか?」
そう言うと彼は背中のリュックサックに手を突っ込み、ゴソゴソと、
「これだろ、フローテックさん」
と言いながら私に『許可証』を差し出した。
……なるほど、確かに本物のようだ。

名はアレヴァール=エヴァーソン(18歳)。
どうやらブリッジヘッドでこの許可証を取ったようだ。
と、言うことは必要最低限の実力を持ってはいると言う事か……。

それにしても……何処か似ている。
私が若かった頃、出会ったあの男に……

121スメスメ:2008/01/23(水) 08:47:13 ID:OEe.fNW.o

もう何年前の話になるだろうか……?
私がいつもの様にバインダーを討つ準備をしていた時だった。
その男も歯を見せながらニカッと笑んでこう言ってきた。

ーあんたがフローテックかい?ー

ーあんたのバインダー退治を手伝いにきたぜっ!ー

そうだ、あの『眼』だ。
自分の力や行動に自信を持ち、未来に希望を持ち、迷いの一切無いそんな眼が……。
そんな眼に惹かれ、気が付くと彼と共にバインダーを討ちに出かけていたのだ。
驚くことに彼の戦いは武器を一切使わず、拳のみで戦うと言うモノだった。
それでも彼一人で墓地に現れるモンスターを薙ぎ倒し、挙げ句バインダーですら拳一つで打ち倒してしまうほどのモノであった。私はその力に圧倒され唯々見惚れていただけであった。
後に彼が有名な戦士であると知るが二度と会う事が無く今に至る。


……それにしても外見は似ていないがこの『眼』、
あの時の彼を連想させる。
などと、懐かしむ様に彼に依頼の説明をしていた。
が、
「……何をあさっての方向を見ながらぶつくさ言っているのだ?」
私が訝しげに聞くと、
「あ〜わりぃわりぃ。」
……やはり不安だ。

「で、そのバインダーてのはどこにいるんすか?」
こちらに向きを正し、訊いてきた。

「……この街の西門から出てしばらくしたら集合墓地があるその墓地からさらに地下に入って更に奥へ進んだ今はもう使われていない祭壇に奴は居る。」
「あいよっ、オレに任せてくれれば後はもう大丈夫っ!大船に乗った気分で待っていてくれよ!」

「とは言うが、あんた大丈夫なのかい?見た感じ武器らしい物を持ってはおらぬようだが?」
「だいじょうぶだって、オレにはこれだけがあれば十分っす!」と、胸にドン、と拳を当てた。



ー大丈夫だって、俺にはこの身体一つがあれば十分だぜぃっ!ー


……全く、不思議な縁があるものだ。
ここまで同じだと彼の腕を試してみたくなってしまうではないか。

「ふ、む……なら君に頼んでみよう」

「やった 『但しっ!』
と、私は喜ぶ彼を制しながら、
「無理だと思ったならば必ず退くのだ、いいな?」
そう言うと彼は「オーっ」と元気よく答えながら駈けていった。

斜陽が彼を照らし、背に大きく影を伸ばす姿を見せながら……。

122スメスメ:2008/01/23(水) 08:57:57 ID:C6qTlPxwo
ぎゃーっ!
最近のこのスレ、活気がありますね。
もう120だよ……。

と云う訳で(何が?)今回は番外編っぽく書いてみました。
世界観などの足しになればいいんだけど……。
本編はまだもう少し……
皆さんみたいにもっと書き上げる頻度を早くなりたいよ……。
では感想はまた後ほど。

123名無しさん:2008/01/23(水) 10:25:05 ID:gXqJ5/rQ0
>ESCADA a.k.a. DIWALI氏

暴れる前にまずは服を着ろと心の中で元幼女に突っ込んだのは内緒です(^ω^ )

>七掬氏

骸骨鎧が元女性だったとは全く考えもしなかった・・
そう考えるとネクロが連れて歩く骸骨も可愛らしく・・・?(^ω^ )
背負った業に押しつぶされてしまいそうな女性の繊細さが伝わってきました

>スメスメ氏

このタイミングでフローテックからの視点とは。主人公への移入が深まりますね・・
確かにバインダーって何で何度も復活してくるのか・・あまり疑問に思わなかったなーw

124718:2008/01/23(水) 10:27:10 ID:gXqJ5/rQ0
昨日は失礼。>>110の続きです。

「いやあ、今回はなかなか稼げたぜ。考古学者のお守りで小規模の墓地を探索してきたんだが、
報酬の割にはラクな仕事だったぜ」
「羨ましいなあ、僕なんか食材ハンティングでデフヒルズの砂漠に半月滞在しましたよ。昼はクソ暑いのに
夜は寒すぎて、まともに眠れやしないし、二度と行きたくないですね」
「そりゃあ運がなかったな。ギャハハハッ」

親父のほうが豪快に笑うと、口から米粒が飛び、隣のテーブルに向かっていった。それを若者が一瞥すると、
米粒が線香花火のように小さく、強く燃え上がり、一瞬で中空に消えた。

「きたないなあ、もう」
「ギャハハハハ」

全く気にする様子でもなく、親父は飯をキムチで巻いてモリモリと貪っている。

「しかし先輩、最近仕事のペース早くないですか?無理してません?」
「ん?ああ・・・やっとマイホームのローンが終わりそうなのよ」

モグモグさせていた口にまたもビールを流し込み答える親父の顔から、なんとも嬉しそうな笑みがこぼれた。

「おー、すげえ!」
「35年ローンを10年で返しきれるんだ、上々だろう?ヘヘッ、あと少なく見積もっても半年はかからねえだろうよ」
「・・・そうですか、じゃあ、先輩もついに引退ですね」

若造は、そういうと少しだけ寂しそうに笑った。
冒険者は、何も全員が「冒険」やら「名声」やら「レッドストーン」なんてものを求めているわけではない。
この男のように、金を得るための手段として、また生活の糧として、このような仕事に身を投じている
ものは多数存在する。特にそのような者たちには、目的を達成し冒険者家業から足を洗うものも多い。
この男も、そうした「仕事人」の一人なのである。

「まあ、ローンを返済したら、娘の嫁入り道具のために少しだけ稼いで、それでサヨナラするつもりさ」
「え、娘さん結婚するんですか?」
「バカヤロゥ、まだ嫁にはやらねえよ。まあ、あれだ、いつか来る日に向けてってやつよ。」
「へぇ〜」
「・・・・・・お前も、あんまりはまるなよ?」

ひとしきり照れくさそうに語った後、男は目を細め、目の前にいる若者を見据えると、諭すように言った。

「銭は稼げる。でも、ここは長くいていい世界じゃねぇ。一寸先は、てやつだ。」
「・・・・」

若者は、困ったような顔をしてビールを飲んだ。言葉は無くなり、炭火の弾ける音だけがパチパチと響く。

「まあ・・・きっと、見つけますよ。」
「何をだよ」
「んー、何かを?」

困った顔のまま笑う若者の顔が滑稽で、親父も釣られて苦笑いを返す。腹も満たし懐かしい顔の懐かしい話も
聞け、満足した2人はそれぞれの家路につく。

「じゃあな。また焼肉でも。」
「ええ、また焼肉でも。」

親父はきっと、久しぶりに出会う妻や娘の反応を思い、ニヤつきながら帰るのだろう。
若者は今後の自身の行く道について考えながら歩くのだろう。
または、今日の焼肉とビールの美味を思い出して、次の機会に胸を膨らませるのかもしれない。
そしてまた明日からの彼らは、任務を帯びて身一つで死地へ赴くのだ。家族のため、自身のため、そして、仲間と
馴染みの店で杯を交わすために。

125ESCADA a.k.a. DIWALI:2008/01/23(水) 11:01:07 ID:OhTl4zsk0
さて、新章突入ということで主要キャラ紹介から・・・
多少設定変更とかありますがそこは割愛で^^;


ミリアン・ウォン
+いちおう主人公、ビーストテイマーの少女で14歳。拳法使いだが、口調、精神共に幼い。
彼女のペットとしてファミリアの「ファミィ」が一緒に行動していて、彼女とはこの上ない仲良し。
エルフ戦士の選りすぐりのエリート「サーファイユ」も彼女と主従の契約を果たしている。やっぱり仲良し。

トレスヴァント・ヘンリケス
+ミリアの仲間で職業は戦士、19歳。ラティナの彼氏で相思相愛、彼女を愛する故に周りが見えなくなることも。
腕力は驚異そのもので、重量のある大剣もナイフを振り回すように軽々と使いこなす。
スーパースペックな肉体を持つ分、頭は相当に弱い。九九ができるかどうかというレベルらしい・・・

エディ・ヘンリケス
+ミリアの仲間でシーフ、19歳。トレスヴァントとは双子の兄弟だが、こちらは軽い性格でお調子者。しかもイタズラ好き。
流行や最新鋭のものには敏感、すぐに自身に取り入れる。爆弾や有刺鉄線、影を使った魔法を駆使したトラップ戦術が得意。
一応武術も会得しているが一般の冒険が使うそれとは異なるが・・・・

ラティナ・シノノメ
+ミリアの仲間の一人で槍使い、18歳。東洋系の血が入っており、槍術では圧倒的な腕前を見せる。明るくて優しいが多少頑固。
ただし「ラティナ」という名前はニックネームであり、本当の名前は未だ明らかではない・・・
酒が入ると性格が一変、邪悪なスマイルを引っさげて迷惑を撒き散らす悪女に返信する。

バーソロミュー・サヴェスティーロ
+ミリアの仲間の一人、22歳のウィザード。スマグの名家、サヴェスティーロ家の御曹司だが冒険者として家を出る。
趣味は読書と魔法の研究。闇の元素の扱いをマスターし、「ブラック・アート」と称した新魔法を開発中。
クセ者揃いのPTの中で、唯一の常識人で博識。

フィナーア・ウォン
+ミリアの姉で21歳。溺愛する妹のミリアと同じくビーストテイマーで、リプリートマーキや原始人を従えている。
「猛獣女王」の異名を持ち、フランデル各地のモンスター達とも交流が深い。性格は陽気なのだが、露出狂でエロい。
彼女もまた妹と同様に体術を会得しているが、レスリングを軸とした投げ技中心のスタイルをとる。


ではでは、ストーリーに入りますよ〜

126ESCADA a.k.a. DIWALI:2008/01/23(水) 11:29:42 ID:OhTl4zsk0
Chapter.03 Episode-01/Killing a Killing

「うゅ〜、今夜のバトルとっても楽しかったなの〜!!また見たいな〜」「ハハっ、ありゃベストバウトだったよなミリアちゃん?」
ブルンネンシュティグのバトルバーから退店し、エルフの集落へと帰路を進むミリアたち。熱い闘いに会話の花を咲かせている。
先程のメインイベントの試合で闘った、フィナーアとバーソロミュー、そして成り行き上、大天使ルシフェルと彼の妻のマリアも彼女達と合流していた。
「いやぁ若いってのはいいもんだねぇ、特にそこのビーストテイマーのお嬢ちゃんなんかイイ乳して・・・・あでっ、あぃだだだだだだだだっ!!?!」
「もうアナタっ!!私が居るのに・・・・浮気なんて許さないんだからね////」フィナーアに色目を使うルシフェルを、マリアが耳をつねって振り向かせる。
「わりィわりィ・・・ちょっとした冗談だよ、お前のことはちゃんと愛してるぜ、マリア?」「あ・・・あなたァ////」
「わぁ〜、かぁちゃん色っぽい〜」
夫婦とその子供の微笑ましいやりとりの中、一行うちエディだけは張り詰めた面持ちで歩を進めていた・・・その様子にトレスヴァントが問い掛ける。
「・・・おい、エディ?お前さっきから様子が変だぜ?服装も普段と違うし・・・」彼が指差すその先には、グレーのニットキャップに
黒っぽいタートルネックのスウェット、そして脚をスマートに見せるブラックレザーのフレアパンツを着こなすエディの姿があった。
その姿は、暗殺者というのを具現化したようなものだ。重苦しい雰囲気を纏い、声を低くして・・・エディは自身が見たものをパーティに打ち明けた。

「・・・実はな、さっきのバトルバーでよ・・兄貴が・・・ミゲルの兄貴の姿が見えたんだよ。しかも『悪魔に魂を売る』とか
 不気味な感じで呟いていたんだ。10年前に冒険先の砂漠で事故があってから行方知れずだったけど・・・あの後姿は間違いなく兄貴だよ。
 だけど・・・何か、すげぇイヤな予感がするんだ。」エディの表情から、悲しみのような恐れのような表情は消えない。

「(10年前・・・砂漠?まさか・・な)気にすることはねぇよ少年、上を向いて歩こうぜ?」少し怪訝そうな表情を浮かべたルシフェルだったが
沈みがちなエディの肩をポンと叩き、彼を励ます・・・だが、そんな慰めもこの直後に起こる事態の前では無意味に等しい。
間もなくバーソロミューの持つポータルスフィアが光を発したが・・・その輝きは普段と違って、血のような赤い輝きを放っている・・・!!
「(この光り方・・・もしや何か異変が!?)はい、バーソロミューです・・・マスケーロ!?どうしたんですかっ!!?一体何が・・・」
「ねぇねぇ、どうしたのバーソロミュー!?エルフの村からなの?何があったの〜!?」ミリアがバーソロミューに尋ねる。

「しぃっ!!ミリアちゃん、今は大人しく・・・・っ!!?!マスケーロ、返事をっ!!!」

127ESCADA a.k.a. DIWALI:2008/01/23(水) 11:47:14 ID:OhTl4zsk0
『・・・どこの誰かは存じ上げねぇが、悪いがさっきアンタと会話していたエルフには眠ってもらったよ。なぁに・・・殺しちゃいねぇぜ?』
背筋の凍るような冷たい声が、ポータルスフィアから聞こえてくる・・・聞き覚えのあるその声にトレスヴァント、エディ、ルシフェルが反応した。
「兄貴っ!!オレだ、トレスヴァントだ!何やってるんだよ、エルフの村に何しやがったんだぁ!!?」「こっちはエディだぜ、何してるんだ兄貴!?」
『はっ、久々じゃねェか・・・出来損ないの愚弟ども。愚弟呼ばわりされても未だに俺を慕っているとはな〜、泣かせるじゃねぇかオイ?クククク・・・
 ところで、こいつは俺の勘なんだがなぁ・・・すぐ傍に天使がいるはずだ・・そう、俺の女を見殺しにしたクズ天使様がよォ!!!』
「あなたっ・・・あの時の!!お黙りなさいっ!!!」夫を侮辱されたマリアが吠え掛かるが、それを制止してルシフェルが応答に出た・・・

「やはりか・・・あの時彼女を亡くしてしまったシーフなんだな?・・・すまない、本当にすまない。」
『すまないの一言で済むハナシじゃねぇんだよォオォォオォオオ!!?何今更になって詫び入れてやがるんだこのボケぇっ!!!
 ・・・クク、まぁいいさ。今ザッカルさんの命令でエルフの村を潰してる最中だからよぉ〜・・・ポータル越しに悲鳴を楽しめや?
 あばよ、クズ天使に出来損ないどもぉ!!!!一生這いずり回ってな、ヒャハハハハハハハハハハハハ!!!!!!』

「・・・兄貴っ!!!あのクソヤロォ――――――――!!!!」トレスヴァントの怒りの雄叫びが、テレットトンネル付近に木霊した・・・!!
「皆、ここは急いで森に送ってやる!!事の発端はオレの不手際だ、奴を止めるのを手伝ってやるぜ!?」意を決したルシフェルは、すぐさま亜空間の
入り口を開き、一行を中に入るよう促す。ミリアやバーソロミュー、ラティナにエディ、トレスヴァント・・・そしてルシフェル夫妻も表情を険しくし
エルフの集落へと繋がるワープホールへ足を踏み入れた・・・!!

128ESCADA a.k.a. DIWALI:2008/01/23(水) 12:22:57 ID:OhTl4zsk0
エルフの集落・・・
戦士達を除く住民全員が森の郊外に無事避難したが、村は炎に包まれ、廃墟と化していた・・・!!

そして炎に包まれた村の中央広場で、一人のシーフとエルフが対峙していた・・・ミゲルとクレイグだ。
「・・・がはっ、ゼェっ・・・テメェっ!!!」ナイフを握り締め、クレイグは相手を睨みつけるが・・・全身切り刻まれた様に流血し
息も絶え絶えになっていた。一方のシーフは、ダメージと言えるものすら全く受けていない健全な状態のまま、クレイグを見下している。
「弱えな・・・威勢はいいが、エルフ戦士どものエリートがどれ程かと思えばこのザマか・・・話にならねぇなぁ〜、オイ?」
「・・・るせぇっ!!!オレ達の村をここまで滅茶苦茶にしやがって、許さねぇぇえええぇぇぇぇぇっ!!!!」
怒りに身を任せたクレイグの渾身の一撃がミゲルの首を捉えたかに思えたが・・・
斬られたのは彼の残像、すでにクレイグの背後に回っていた!!
「・・・坊やは寝ていな」そう呟くと、鋭くも重いボディブローをクレイグのみぞおちに一発ぶち込む!!
あまりのダメージにクレイグは吐血し地面にドッと倒れた・・・そして倒れた彼を、ミゲルは冷たい目線で見下している。

「エディ殿、戦士たちの始末は終わりましたかな?」「あぁ、ディアス爺さんか・・・大したことねぇな。」
一人のレッドアイ法術師が、ミゲルの影から姿を現した。真紅色のローブが炎のように揺らめく・・・・
「しかし、このような制裁如きに我輩ら『8人の殺戮者(キラー・オブ・エイト)』の内の二人が送り出されるとは・・・」
「どうしたよ爺さん、何か不満でもあるのかい?」「・・・いやはや、あっけなさ過ぎて退屈でして・・・む?」

何かに気付いた法術師、『魔老』ディアスが振り向く・・・その先には、戦闘態勢に入ったミリアたちの姿があった!!

「よくも・・・エルフの皆をっ!!!ミリア・・・ちょっと本気出しちゃうかもっ!!!!」
カンフーの構えと共に手足に炎を纏う彼女の横にエディが並び、兄ミゲルに言葉を投げ掛ける・・・
「兄貴・・・いやミゲル。もうあんたはオレらの兄じゃねぇ・・・!!友を傷付けやがったテメェを、消させてもらう・・・!!」
「オレもあんたに同じ言葉を投げるぜ、ミゲル・・・ビッグセイジで叩っ斬ってやらぁ!!!」
3人を相手にしても、ミゲルは余裕の表情を崩さない・・・不適にニヤリと笑うと、血走った目で一行を睨む!!
「上等・・・上等だよ3匹のクズどもがァ!!!まとめて消されるのはテメェらなんだよっ、自惚れてんじゃねェェエェェェェェエエエェ!!」
狂気に駆られたミゲル、彼の手にしたバタフライナイフが襲い掛かるっ――――――!!!

一方、村の郊外にあるトレーニング場・・・既に移動していたバーソロミューとルシフェル、マリアは魔老ディアスと対峙している・・・!!
「ホッホ・・・これはこれは、大天使ルシフェル殿。セラフィム級の天使に会えるとは、いやはや・・・」
「・・・天使が現われるときは2つある。一つは祝福のため・・・もう一つは邪悪なる者への制裁のためだ・・・!!」
「して、我輩は果たしてどちらになるのでしょうかね・・・」わざとらしく惚けた素振りで、ディアスは言葉を返す・・・
「無論・・・裁かれる側でしょうね。」とバーソロミュー。「あと、悪魔の地獄の招待状もオマケについてくるわよ?」
夫の言葉に付け足しを加えたマリアは、炎に身を包み悪魔の姿へと変身していた・・・!!
「ふふ・・・これはこれは、久々に本気を出さねばいけないようで・・・『魔老』の名は伊達じゃないということを、ご教授しましょう。」
構える3人の前で、ディアスは無限に魔法陣を生み出し、詠唱状態に入った―――――――!!!

to be continued...

129ESCADA a.k.a. DIWALI:2008/01/23(水) 12:31:04 ID:OhTl4zsk0
あっ・・・ここでミスが;;
>>128でディアスがミゲルに呼び掛けるところが「エディ殿」になってる・・・
そこは「ミゲル殿」と脳内改変してからお読み下さいませ><

130メイトリックス:2008/01/23(水) 13:07:03 ID:VBpBVrfU0
Hellfire Salvage
・The Decidings Part.1>>9-11 Part.2>>59-61

The Decidings Part.3

「なぜ姉さんは、あの悲劇の日について調べていたの?」
どうしても答えの出せない疑問だった。
「その、つまり…。わたしの知っている姉さんは、ただの傭兵だったから。凄腕だったけど、歴史とか伝説に興味を持つタイプじゃなかったし」
ずいぶんと長い間、ニイドは黙ってわたしを見つめていた。
その眼から落ち着きの色が消え失せているのを見て、漠然とした不安に駆られる。また何かまずい事を言ってしまったのだろうか。
「知っているものだとばかり思っていた」
狼狽した様子で彼はつぶやく。意味がわからない。一体何の事、そうたずねる前に、爆弾が落とされた。
「君の姉上はレッドアイの構成員であり、調査は彼女に与えられた任務だったのだ」

もう何を聞いても驚くまいと決めてたのに、わたしは揺さぶられた。
かつてブルン王国の秘密機関だったレッドアイは、ブルンが共和制に移行した約100年前に、非合法組織に指定されている。
姉さんがそんなものに関わりを持っていたはずがない。
わたしたちの村は共和国から遠く離れていたし、姉さんだって――
でも、本当にそうだろうか。
姉さんは傭兵だった。わたしなんかには想像もつかないほど多くのものを見聞きし、触れてきたはずだ。
どこかであの組織と接触を持つ機会があったかもしれない。
それとも、逆なのか。
大陸のあちこちを飛び回る傭兵の仕事は、レッドアイの隠された任務を遂行するにはうってつけの隠れ蓑だったという事もありえる。
そう考えると、わたしは愕然とするしかなかった。
一体、わたしは姉さんの何を知っているのだろう。
やさしかった姉さん。料理も裁縫も、わたしよりずっと上手だった姉さん。
でも、自分の冒険について話してくれた事は一度もない。
傭兵としての姉さんのイメージは全部、他の傭兵たちに聞いた評価から作り上げたものだった。
わたしに見せていた顔が仮面だったのだとしたら。
そうだとしたら、わたしは姉さんの何なのだろう……。

「思い詰めているのか」
気がつくと、ニイドの顔がすぐ目の前にあった。
「何をも知らされていないのならば、姉上が君を危険から遠ざけんとしていたのは明らかだ」
泣きじゃくる子どもに言い含めるように、彼はゆっくりと語りかける。
「君を想っていたからこその事だろう」
きっと、そうなのだろう。
それでも、旅の間に疑いに凝り固まった心は、それを信じようとしない。
これほどまでに姉さんを愛して、慕い続けてきたのに。姉さんは何も明かしてくれてはいなかった。
――本当の姉妹じゃないから?
ずっと、その事が負い目だった。
姉さんに相応しい妹になれるよう、いつだって努力した。
血のつながった家族よりも深い絆で結ばれていると、そう信じられるように。
姉さんも、そんなわたしに応えてくれていると思っていた。それは幻想だったのだろうか。

「いいか、疑いは全て君の中に在る」
ニイドの深い声に、われに返る。彼は椅子から身を乗り出し、わたしの両手を握りしめていた。
力強い何かが、腕を伝わって体の中へ流れ込んでくるのを感じる。
「己が双眸で確かめるがいい」
その言葉が耳に届いた瞬間、わたしの視界は暗転した。

131メイトリックス:2008/01/23(水) 13:07:54 ID:VBpBVrfU0
ここはどこだろう。
周りを見回そうとして、自分の頭がいやに重たくなっているのに気づいた。
何これ……。
自分の顔をぺたぺたと触ってみるが、どうなっているのかよくわからない。
わけがわからなくなって手を見ると、分厚い皮のグローブにすっぽりと覆われている。
これは、もしかして……。
ここは今までいた部屋とは違う。
趣味の良い家具が小奇麗に並んでいる。壁にかかった絵は、わたしでも知っている有名な画家のものだ。
外から漏れ聞こえてくる喧騒に誘われて、明るく日の射す窓に目をやると、見えたのは活気にあふれた港街の風景。
それに、ああ――海だ。
生まれて初めて見るそれは、キラキラと輝いていてどこまでも青く、そして……吸い込まれそうなぐらい美しかった。

カラン、とドアに付けられたベルが鳴り、誰かが部屋の中へ入ってきた。
海に見とれていたわたしは、あわてて振り返り――凍りついた。
ほとんど金に近い砂色の髪。命の躍動を感じさせる真っ赤な瞳。
二度と目にできないはずの、あのほほえみ。
姉さんが、そこにいた。

どこに行ってたの。どうして、わたしを置いて行ったの。
そう聞きたかった。
思いっきりわめいて、怒って、泣いて――姉さんの胸に飛び込みたかった。
その後には、謝りたかった。
姉さんを疑ってしまった事、死んだなんてひどい勘違いをしてしまった事……。
きっと、姉さんは許してくれるはず。だって、たった二人の家族なんだから……。

だけど、わたしの口から出てきたのはまったく違う言葉だった。
「感心だな。今日も定刻通りとは」
「ええ、時間は無駄にできませんから」
姉さんはふっと笑うと、部屋の隅に置かれていた椅子を持ってきて、わたしの向かいに座った。
「昨日は当時の地下界の勢力関係について伺いましたね。今日はRedStoneの効力に関してお聞きしたいのですが」
自分の中の何かが、音を立てて死んでいくのを感じた。
これはニイドの記憶に過ぎない。わたしはただ、見ている事しかできないのだ。
さっきはあれほど心を動かした風景も、今はどうしようもなく色あせて見える。

なんとなく話を聞いているうちに、わかってきた事があった。
――ニイドは姉さんの事を好ましく思っている。
質問には進んで答え、知識の誤りには的確な指摘で応じた。
姉さんは静かに聞き入り、疑問があれば放っておかず、重要な部分は紙に書き取って記録している。
彼はそんな真剣な態度が嬉しいようだった。
そう言えば姉さんは、たとえ相手が子どもでも、話半分に聞いたりした事はなかったな。
それを思うと、誇らしさと懐かしさに胸が痛んだ。

急に会話が途絶えた。
見ると、姉さんは目を閉じてこめかみを押さえている。その身体がゆっくりと傾いだ。
思わず飛び出していた。倒れてきた姉さんを、腕に抱きとめる。
コート越しにもわかるほど、全身が熱い。
これはすでに起こった過去だ。変える事はできない。それでもわたしは、自分の無力さを憎んだ。
ほとんど聞き取れない声で、姉さんが何かをつぶやく。
わたしは必死の思いで耳を近づけた。
「ピアース……」
姉さんの最後の言葉。たったひとつの単語が、唇から溜息のように漏れた。

132メイトリックス:2008/01/23(水) 13:08:25 ID:VBpBVrfU0
いつの間にか、わたしは元の部屋に戻っていた。
腕にはまだ、姉さんの体温が残っているような気がする。
握っていた両手を放し、ニイドは言った。
「本来は幻影を見せて相手を恐怖に陥れる術だ。少し異に使わせて貰った」
言葉を切るとやさしくたずねる。
「ピアース……。君の名だね?」
わたしは、何度も何度もうなずいた。
そのたびに涙がぼろぼろとこぼれ落ちたけれど、抑える事ができない。
「泣いても良いのだぞ。君には、悲嘆を感じる事が許されているのだからな」
彼の口調に混じった哀しみが、心に幾重にも張りめぐらされた堅い守りを打ち破った。
わたしは声をあげて泣いた。
疑いも絶望も、涙がすべてを流しさってくれるまで。

ようやく落ち着いてから、ニイドはヴィジョンに含まれていなかった細部について話してくれた。
姉さんの泊まっていた宿で、折れた槍と血に染まった弓を見つけた事。
他の持ち物はすべて誰かに持ち去られた後だった事。
掘り返されるのを心配して、姉さんの死体に封呪を施して埋葬した事。
思うに彼女は既に殺されていたのだ、と彼は語った。その後、何かを聞き出すために蘇生されたのだろう、と。
そんな事が可能なのかと問うわたしに、彼はうなずいた。
短い間ならば。それができる者に心当たりがある。
では、どうして。わたしはたずねた。どうして、姉さんはあなたを訪れたの。
わずかな沈黙の後、彼は答えた。確かな事はわからん。だが、推測する事はできる。
なら、それを話して。わたしは食い下がった。

「彼女は、ウルの紹介で来たと言ったのだ。故に私は彼女を歓迎した」
「ウル?」
「然り。かつては我が兄弟同然だった古き悪魔だ。蘇生者も彼に相違なかろう」
複雑な胸中を表すように、ニイドの声は暗かった。
「蘇生された者は蘇生者の制御を受けざるを得ぬ。話してはならないとされた事は、決して話せぬのだ。
 君の姉上は何かを知り、殺された。恐らくは、真実を嗅ぎ回られると都合の悪い輩にな。
 その後、知り得た事実と自らの死の明示を禁じられた上で蘇生され、送り出されたのだろう。
 ウルは彼女の死を通じて私に伝えたかったのだ。“これから何が起きようと、気づかぬ振りをしろ”と。
 さもなくば斯様になるぞ、とな」
吐き気がした。
姉さんは意志の強い人だった。その姉さんが、操り人形みたいに弄ばれたなんて。
さすがにニイドも憤りを感じているようだった。
「驚嘆すべきは彼女の意志の力だ。残された時間を使って、婉曲ながらも手がかりを残そうとした。
 それ故私は、古き盟友が何を成さんとしているのか知る必要があると思ったのだ」
そう言い放ってから、彼はうなだれた。
「不幸にも、彼女の生きている内に勘付く事は出来なかったが」

「それで、わたしにあの包みを送ったの?何かが起こっているのを知らせるために?」
ようやく自分の中で、すべてがつながったような気がした。わたしの苦しい旅は、無駄ではなかったのだ。
けれど、ニイドは首を振った。
「全ては徒労だった。身に付けていた物から出身を割り出し、包みを送ったのは承知の通りだ。
 私自らも大いなる危険を冒し、所在に関する噂を振り撒きながらこの地まで来たった。
 姉上が身近な誰かに秘密を打ち明けていた可能性に賭けたのだよ。しかし、君は何も知らなかった」
彼が浮かべた戸惑いの意味が、遅まきながら理解できた。
何という事だろう。
最初、わたしは彼の丁重さに不信を抱いた。どうして必死に誤解を解こうとしているのかを。
考えてみれば当然だ。わたしたちは初めからすれ違っていたのだから。

133メイトリックス:2008/01/23(水) 13:08:55 ID:VBpBVrfU0
――――――――――――――――――――――――
ノスタルジックなお話しなのか陰謀モノなのか良くわからない具合になっちゃってますね。
とりあえず第一話はここまでです。ベリー中途半端。要約力の無さのせいさHAHAHA。

>>◇68hJrjtY氏
どうも赤い石の堕天については天使と赤い悪魔がクローズアップされがちなので、日陰者にも光をピカピカと。
しかし、氏の感想は鋭くてヤバイです。そのうち結末を言い当てられてしまいそうです。そしたら泣きます。
>>FAT氏
エルフも一枚岩ではないのですね。緑髪の彼は渋い。ランクーイを悼む、夕焼けの場面が美しいです。
夜のシーンは、どんどんダークに墜ちていってしまうのかと少し心配してしまいましたが、杞憂だったようです。
しかしラスさん、その発想は地味にスゴイぞ!ノベール魔法賞クラスだ!
つくづく、ランクーイは彼らにとっての太陽だったんだなと思う次第です。美しい炎の玉を眺めながら、ぼんやりと。
>>◆21RFz91GTE氏
英雄とは苦しいものなんですよ、って誰かが言っていたのを思い出しました。誰かは思い出せません。スミマセン。
アレン君は浦島太郎状態ですよね。2年の間に起きた事を考えると無理もないと思いますが。
どうにか歩み寄れるのか、このままロンリーウルフなのか、ロリコンに終わるのか。彼の明日はどっちだ!
と思ったらエロオチかい!ダンディなシーンとのギャップがツボ過ぎます。
>>白猫氏
ロングテールをお疲れ様でございます。
いつも冷静なネル君だけに、力に溺れてもCOOLってのがさり気なく怖いです。と言うか強っ!怖っ!
目的と手段が逆転してしまうと、取り返しのつかない事になっちゃいますね。それにしてもガリレド君可哀想…。
くどい描写に関しては、私はもう手遅れのよーです。座って語り合ってるシーンだけで300行近いって、どんだけー。
氏の描写はメリハリがあって読みやすいです。それから、返事の形式がらぶりーです。それから、リレッタ様のお怪我が気になって夜も眠れません。
>>ワイト氏
皆さんはスナッチャーの断末魔に目を奪われているようですが、私はそれは氏の巧妙な目くらましだと思います。
私は断然、氏の効果音に着目します。良く見てください。一瞬にして情景が頭の中にフラッシュバックするでしょう!
ラータは視覚はおろか、聴覚も触覚も遮断されてしまったような印象を受けます。
これらは、人間が外界を感じる上で大きく依存する感覚ですね。私だったら3秒で発狂しそう。
>>102
REDSTONEを始めたばかりの頃の自分を思い出しました……。
しかし、中の人はわかりづらいですよね。どうしてもキャラの外見とチャットの調子で判断してしまいます。
そんな私は、今日もエネルギッシュなBISさんにベッタリです。
>>之神氏
とってもシリアスな話をしている横でも、ナザルド君が実にフリーダムなのに笑ってしまいました。
氏はその辺りの切り替えが素晴らしいと思います。誰だよと聞かれて、剣士だよ!と返す彼もなかなかのモノですが。
>>108
延々と暗い話ですが、コメントを下さってありがとうございます。
長い寿命の種族だからこそ、不本意に殺されたりする事には敏感なのかもしれません。
>>ESCADA a.k.a. DIWALI氏
トレスヴァント君がヤバくありませんか。いや、フィナーアさんもヤバイですしエストレーア君もかなりのモノですけれども。
しかし、ミリアさんも元に戻れてよかっ……たんでしょうか、これは。
>>718
すきっ腹にこれは堪えます……。本当においしそうに食べるなぁ、オジさん。
冒険者は立派な仕事として成立しているんですねぇ。なかなか稼ぎも良さそうですし。命を懸けてるから、と言われればその通りです。
こういう生活感あふれる話も大好きです。続くんでしょうか……?
>>七掬 ◆ar5t6.213M氏
余韻があって、いい読後感です。アンデッドと言うからには、彼らは元々生ある者だったんですよね。
それを思うと、BISさんの万歳三唱で次々と砕け散っていく彼らを見るにつけ、悲しみが募ります……。
>>スメスメ氏
クエスト依頼人にも、それぞれの事情なり人生があるんだなーと考えさせられます。
それにしてもこれは……フローテックさんじゃなくても心配になるぞ……。器が大きい、とも言えますが。

134ワイト:2008/01/23(水) 17:05:08 ID:Z/wysRgM0
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「何か無いのかよ!?頼む・・「何でも良い」「誰でも良い」助けてくれ・・・」

堆にラータは、耐えられ無くなってしまう・・・歩く意欲が失せる・・それに加えて、
自分が、其処に立っている・・それ以外の自覚は無い。考えようにも考えられない状況・・・
だが・・・もしも「自分の立っているこの足場まで、消えて無くなってしまったら・・・?」
言葉に言い表せない恐怖が、ラータに襲いかかる。その時、敵はようやく姿を現しラータに語り掛けた。


「脱け出せない恐怖に言葉も出ないようだなぁ・・?どうすれば、この状況に苦しむ事無く
脱け出せるか・・教えてやろうかぁ?それは「死ねば良い」そうだろう?死ねば、この恐怖からも、
逃れられる・・!だが、それ以外に方法は無いからなぁ・・?ククックッ・・クッククッククハッハッハハハッッ!!!!」


ヒュッ!カランカランカラン・・・・
ラータの足元に一つの長剣が、敵の手によって投げられる・・・
「その長剣で、自分の腹を真っ直ぐに突き刺せば良い・・・それだけで、助かるんだぜぇ・・?
簡単だろう・・?一瞬の内にその動作は終了する・・この孤独から抜け出せるんだぁ・・!」

思考は完全に停止寸前のラータに、敵の発言は雅に誘導するかの如く・・「死ねば良い」そう、
それしか助かる方法は無い・・!敵は「死ねば助かる」という固定観念を、ラータの頭に植え付けたのだ・・

「これで俺は脱け出せるのか・・?死ねば、助かるのか・・・?」
「あぁ・・全ては終わるぞ・・貴様は救われるんだよ!さぁ・・やってみろ!
(完全に、詰んだあぁぁっ!!呆気無かったかぁ?まぁ・・死ねば終わりだ・・!)」
ラータは長剣を手に取り、ゆっくりと自身の腹を突き刺す動作に入る・・!





その瞬間何処に、行ったかどうかも判らぬ、ヒースの叫ぶ大声が頭に響いてきたっ!!!!!

「ねぇ、ラータッ!!!!起きてよっ!何時まで寝てるつもり!??」
その大声にラータは飛び上がった!だが意識はまだはっきりとしない・・

「?え・・?何がどう・・?ヒース・・?え?お前何処に行ってたんだ・・?」
「どうもこうも、ラータが行き成り、意識を失ってずっと気絶してたんだよ・・?」
「そうなのか・・?ってことは俺は今・・助かったって事だよな・・?」
「よく判らないけど・・そういう事じゃないの???」
状況を上手く掴めないラータを余所に敵が悔恨の笑みを浮かべ喋り始める!

「ギックッククックッ・・チッ、後一歩の所を!ヒース、貴様には特に用は無かったんだが・・!
貴様の所為でラータを消せなかった!!こうなれば!仲良く2人一緒に消えてもらう他無い。まずはラータからだ!!」

「ふぅ・・要するに仕切り直しって訳か・・危ない所だったが、まだ負けた訳じゃ無いっ!!
(ヒース・・ありがとよ!お前が居なきゃ完全に敵に嵌められてた所だったよ・・)」

135ワイト:2008/01/23(水) 17:09:30 ID:Z/wysRgM0
ようやく敵の呪文からヒースのお陰で、脱け出す事に成功したラータは我に返る・・!
そして今!敵との戦闘が始まろうとしている・・ってな感じで進めてみました!
そんな訳で、今回は締め括りたいと思います。それでは|ω・)また!

136◇68hJrjtY:2008/01/23(水) 18:13:28 ID:6bX/m3/c0
>之神さん
自分は知らなかったのですが長時間の臨時メンテか何かあったようですね?
ま、まあ、果報は寝て待てといいますし。というか実際昼寝していたかも!(爆

>スメスメさん
過去語り風にバインダー退治のクエを掘り下げた番外編。確かにRSのクエって実は味があるものが多い。
武道君が出ているだけで嬉しい私ですが、フローテック老人の語る「昔居た戦士」である武道家も似た性格っぽいですね。体育会系万歳(*´ェ`*)
今回はそれでも番外編というわけで冒険者の証明書等のスメスメさん独自の世界観がチラリと読み取れました。
この話が前回の武道君の活躍(笑)と謎の少女の発見へと繋がる感じなのでしょうか。
ゆっくりで構いませんしまた世界観補完の番外編を書いてくれても嬉しいです、続きお待ちしています!

>718さん
これは…続きを予想したくもあり、ここで話が終わってもいいのかもという気持ちもあり。イジワルですね((((;´・ω・`))))
ある夜の酒場、二人の冒険者とキムチとビール…やっぱりお腹が空きます!(まだ言うか
冒険者稼業を「仕事」と捉えれば、ハイリスクハイリターンなこの仕事人たちの生活もまた想像に易いです。
彼らにも家族が居て友人が居て、恋人が居て連れ合いが居る。死を賭けた戦いに身を投じる者たちの、ほんのひと時の安らぎのお話。
二人の将来がどんなものであれ、それが悲劇となって欲しくないですね。
(もし続きがあるなら楽しみにしてますよ!)

>ESCADA a.k.a. DIWALIさん
ついに本編移行、エディたちの兄であるミゲルと魔老ディアスの襲撃となりましたね。
これはシリアスな戦闘シーンになりそうですね。でもまあ、本気を出したミリアが一番怖いんですが(汗)
大天使「ルシフェル」の本領発揮となるか否か。愛妻(笑)マリアとの連係プレイなんかも楽しみです。
ところでラティナさんの名前は本名じゃなかったんですね(;・∀・) これから戦闘シーンなのに別の気がかり点が増えてしまった(笑)
兎にも角にも、続きお待ちしています!

>メイトリックスさん
いやいやいや、結末を言い当てるほど読解力はありませんよ!orz
でも毎回感想のせいで書き手さんの先手を打ってしまうことがないようにしたいとは思っていますが…どうなのだろうか(;´Д`A ```
さて、ニイドの記憶の再描写によりようやく明かされた"彼女"ことピアースの姉の行動と境遇。
蘇生術を使っての拷問にも似たレッドストーンの情報収集、それでも最後の最後まで妹の事を考えていたのかと思うとますます悲しいです。
ニイドとの和解、とまではいかなくともピアースとのわだかまりは多少緩んだようですね。
同じ"姉"を知る者同士、その真相にまた一歩近づけたらと思います。続き楽しみにしていますよ!

>ワイトさん
実際人間にとって「一番耐えられないもの」のひとつにこうした束縛状態での放置というものがあるそうです。
ラータじゃなくても普通に狂人になってるところですが、ヒースのお陰で助かりましたね!これもパーティープレイなのさっ。
でもしかし、今までさりげなくアウトオブ眼中(古ッ)だったヒースまでも狙われてしまう事態に…。
ラータ君、頑張ってくれ〜!続きお待ちしています(笑)

137白猫:2008/01/23(水) 20:55:23 ID:y8XNfWoQ0
uppet―歌姫と絡繰人形―

第一章〜第五章及び番外編 5冊目>>992
第六章 -夜空の下で- >>30-37
第七章 -深紅の衣- 70-81
これまでの主要登場人物 >>38



第八章 神卸



二月一日、フランテル北部。
 【[イグドラシル]は全六階層になってるんだ】
 「…………」
 【一階層毎に魔物を配置してあるんだ。進入できないように】
 「…………」
 【進入シテキタヤツラミンナ死ヌ。ヒヒッ】
 「お黙り。わざわざ此処の情報をひけらかすことはないわ」
サーレを先頭に、雪道を歩く一行。
アリアンの遙か北、東西に伸びるソゴム山脈の峰に、彼らの姿があった。
大陸内でも屈指の標高6000m台の山々が連なる、現代でいうヒマラヤ山脈。
数日掛けてこの地に到着した一行は、そこで小休憩を取っていた。
 「…一体、何処まで行くんです」
終始両腕を鎖で縛られているネルは、不機嫌の色を全く隠さず、言う。
その隣、此方は特に何もされていないリレッタは、じっと遙か遠方の景色を眺めている。
それを見やり、ルヴィラィは笑う。
 「[イグドラシル]まで行くのさ。生憎と原石が切れていてねぇ。
 此処から後数日といったところだね…居場所はすぐに変更できるから、知らせても無駄だよ?」
ここに至るまでにブツブツと一人で何かを呟いていたネルを思い出し、ルヴィラィはせせら笑うように言う。
それを聞き、今までずっと道のりを覚え込んでいたネルは舌を打つ。
 「そもそも、僕に何をさせようってんですか」
 【ネルぽんそんなに怒らないー。取って食べようなんて思ってないよぉ?】
ネルの首に腕を回し、サーレは笑う。
 「…僕に用があるなら、リレッタは解放して下さい」
 「何言ってるんですかネリエルさま。私は帰りません」
ルヴィラィに言うネルに、リレッタはむくれる。
 「此処まで来てどうして戻らないといけないんですか」
 「………あのですね」
 「私は帰らないですよ。絶対」
むくれるリレッタを見やり、ネルは溜息を吐く。
それを見てか見ずか、サーレは言う。
 【ルヴィぽん急ご。天候ヤバい】
 「ええ、そうね。」
小さく笑い、ルヴィラィは靴で、凍った地面をコンと叩く。
瞬間、ルヴィラィを中心に凄まじい旋風が吹き荒れ、ちらつく雪が瞬時に吹き消される。
 「さて…行くわよ」





二月十日、アリアン。
武道会も午前中に終了し、残るは後夜祭だけとなった、この日。
 「一体ネリエルとリレッタ、何処で道草食ってんのかしら」
 「落ち合う予定日からもう二十日経ってもうたなぁ。あの二人やから、くたばったとは思われへん」
 「くだばってもらっちゃ困るわ…あいつに一体どれだけツケてると思ってるの?」
砂にまみれた広場を胡散臭そうに眺め、アーティは溜息を吐く。
その隣でぐでっとするカリアスは、隣に置かれた箱…正確には、その中に入っているトロフィーを眺める。
 「…なんていうか、やっぱ雑魚ばっかやったなぁ」
 「歴戦の冒険者はみんな東のブリッジヘッドや北のブレンティルで活動してるもの」
 「アーティはん、もーちょい手加減してくれたら良かったんやないですか」
 「あんたになんで手加減するわけ。今日の晩メシもかかってたし」
 「…………」
武道会は、やっぱりというかアーティ・カリアスの二人で上位を独占してしまった。
カリアスは敵の技量を見極めるために手加減をして戦っていたが、アーティが問答無用に敵(及び闘技場)を破壊してしまったため、武道会そのものが中断したという事件も2,3度あったという。
広場の反対側、オアシス脇にちょこんと座るルフィエを見やり、カリアスは目を細める。
 「元気ないな、ルフィエはん」
 「その内自分で割り切るでしょ…ほら、さっさと晩メシ食べに行くわよ」
 「え、ほんまにオレが奢るんかいな。優勝賞金たんまりあるやないですか」
 「あんなもの、もうスッたわよ」
 「………ええ加減ギャンブルあかんで」
 「うるさい。さっさと行くわよ」
日も既に傾いたアリアンの中、アーティはすっくと立ち上がる。
溜息を吐いて、カリアスもよいしょと立ち上がった。
が。

138白猫:2008/01/23(水) 20:55:45 ID:y8XNfWoQ0

 「…………カリアス」
 「『 ヘイスト 』」
アーティが促し、カリアスが呟いた瞬間。
アーティとカリアスの後背に、白く煌めく翼が出現する。
それを見もせずに、アーティはベンチに立てかけてあった槍を掴む。
 「『 ファイアー・アンド 』」
アーティが呟いた途端、その柄に黄金色の炎が宿る。
 「『 アイス 』」
次に刃の部分に青色の炎が宿る。
ここまでだと、単なるランサーの魔術[ファイアー・アンド・アイス]と変わらない。
が。
 「『 アンド…ライトニング 』」
瞬間、
アーティを中心に、蒼い稲妻が辺りに迸り、その稲妻はアーティの身体を覆うように帯電してゆく。
これが、アーティ特有の三大属性付加能力…[ファイアー・アンド・アイス・アンド・ライトニング]、通称FIL。
両端に炎と氷の力を宿し、さらに槍を媒体に強力な稲妻を召還する力である。
その唐突な力の発現に、広場にいた冒険者、住民たちが慌てて彼女を指す。
が、それには彼女は取り合わない。
 「市街を破壊せんといて下さい」
 「わーってるわよ」
カリアスの皮肉にはしっかり答え、アーティは槍を振るう。

   ――ドォオオドォオオオオンッッ!!!

アリアン広場の背後、巨大な外壁が突如爆砕される。
悲鳴の上がる住民たちの中、アーティは鋭く息を吸う。
巻き上がる砂埃の中、アーティの声が響き渡った。

 「――敵襲よ!!」






 「アーティさん!?」
 「ルフィエちゃん、伏せなッ!」
ベンチから立ち上がったルフィエは、しかしその言葉に頭を下げる。
途端、彼女の頭の上を数本の矢が通り過ぎる。
目を見開いたルフィエに、レイゼルは小さく言う。
 「襲撃みたいだな…アーティさんところまで突っ切るぞ」
 「は、はい」
不安そうな顔で頷くルフィエを見、レイゼルは苦笑する。
いじめてんじゃないんだけどなぁ、とレイゼルはルフィエの手を掴む。
 「姿勢低く。飛んできた矢とかに当たらないように」
 「は、はい」
悲鳴と爆炎の鳴り響く夜のアリアンの情景を、姿勢を低く歩きながらレイゼルは見渡す。
 (アリアン警備隊の腕もぬるくなったもんだな…ネルが見たら激昂するぞ)
 「でも、どうしてこんな日に」
 「そりゃあ、武道会後だから。年始では一番デカいイベントだし…っと」
頬を掠った矢を見、レイゼルはさらに頭を低くする。
それを見、ルフィエは目をきつく閉じる。

139白猫:2008/01/23(水) 20:56:20 ID:y8XNfWoQ0
足りない。
何かが、足りない。
以前まであったものが、ない。
 「………くん…」
 「ん?」
 「えっ」
ルフィエの呟きに、レイゼルは首を傾げる。
足りない。
"彼"が、足りない。
どんな時にも冷静であり、
どんな場合にも混乱せず、
どんな敵にも屈しない、
どんな者にも手を差し伸べ、
どんな生物にも優しい、"彼"が。
 (来て、ネルくん)
心の中で、呟く。
彼が、いない。
こんな時にこそ、必要だというのに。
こんな時にこそ、傍にいて欲しいのに。
 (そうじゃない、いつかなんて関係ない、私は――)
目を閉じる。
身体を、両腕で抱える。
震え出す身体を、必死に抱える。
 (………ネルくん…!)
 「アーティさん!」
 「ん」
外壁から突入する盗賊達と切り結ぶアーティは、その声に振り向く。
数十、数百と雪崩れ込んでくる盗賊の大半を一人で相手にしているというのに、その顔には疲労の色すら見えない。
 「非常識な奴らっすね」
 「ふん、スターヒールの奴らね。相変わらず数だけなんだから」
と、東方の夜空…旅館付近の方角。
その空に、蒼く光る、巨大な龍が立ち上がる。
その打ち上がった蒼い龍を見、レイゼルは目を細める。
 「ドラゴン…ツイスター?」
 「みたい、ね」
その龍を細目で眺め、アーティは再び槍を振るう。







アリアン東部、東門脇。
そこに、小さな二つの陰があった。
 「あなたは此処に」
 「でも、…貴方も、お怪我を」
少し高い声に、少女のような高い声が反論する。
が、最初の声は首を振り、兜のようなものを被る。
 「……どうしても、行くのですか」
 「皆が、戦っている」
 「…………私は、また、待っているだけ、ですか」
 「…必ず、生きて戻る。それに、誰も殺さない」
 「………………はい、フェンリルさま」
 「…やめて下さい。あなたには、その名で呼ばれたくない」
しばらく会話が続いた後、バチンという音と共に、深紅の閃光が立ち上がる。
その閃光の中心、蒼い兜を被り、紅い衣を纏う陰…フェンリルは、アリアンの中心部へと飛ぶ。
機械仕掛けの右腕が、その光の中で奇妙にうねる。
 「我が禍々しき右腕よ…今、一時の力を」





アリアンの東部から立ち上がった閃光が、凄まじい速度で飛ぶ。
数秒も経たずにアリアンの内部へ突入した閃光は、
宙を舞う龍の首を、跳ね飛ばした。





 「『[エリクシル]第二段階…解放、[神卸] 』」







FIN...

140白猫:2008/01/23(水) 20:56:44 ID:y8XNfWoQ0

「今回の長さはそうでもなかったね、ネルくん」
「そーですね、嵐の前の静けさってやつですね」
やけに狭い和室、真ん中に置かれたコタツに、ルフィエはくるまる。
その隣で胡散臭そうに蜜柑の皮を剥き、ネルは溜息を吐く。
「今回もコレですか」
「いいじゃない。楽しいし」
「…………」
「いっそのこと、[ルフィエネル、主人公二人のおまけコーナー]とか作っちゃおうか」
「やです」
蜜柑を口の中に放り込み、ネルは即座に拒否する。
途端にむくれるルフィエに、ネルは溜息を吐く。
「さて、さっさとやりますよ、コメ返し」
「あ、茶柱…」
「早く!」



「んーっと、名無しさんさん? へ。
ネルくんは色々やばかったらしいです。教えてくれないですけど」
「何処がやばいんですか。別に普段と同じです」
「自覚してないところがやばいです」

「メイトリックスさん。
…僕は怖くないです。絶対怖くなフガ」
「まぁ、人は力を得ると変わってしまうものです。
次回ではネルくんも登場するみたいです。なんで名前がフェンリルなの?」
「うるさいですね」
「………」
「リレッタの怪我は大丈夫です。一応長老の施療は受けましたし」

「◇68hJrjtYさんへ。
いつも感想ありがとうございます♪ 68hさんの小説はいつ発進ですか?わくわく。どきどき。
本編はちょびちょび書いて投稿してるみたいです。最終章の執筆は終わってるんですけどね」
「ルヴィラィの本性はあんなものではありませんよ。
最も、それは此処で語ることではありませんが。

FATさんへ。
エリクシルの正確な力もまだ語れません。本編を待ってくだフガ」
「ネルくんサービス悪すぎ。ていうか邪魔。
い、色気ですか? ちょっと自信ないかも…。
でも、次回は恋愛シーン的なものがあるらしいで」「んなものあるわけないでしょうが」
「…………」




次回予告のコーナー

「…で、ここは私達の担当なわけ」
「ネルはん、ものっそ適当やなぁ」
「今度晩メシおごらせるわ。絶対。ぜっっっっっっっっっっっっったい」
「んで次回っすけど…そうっすね。



次回、夜のアリアンで乱戦が始まんねん。
足止めにてこずりながらも、アーティはんは龍を掻き消した者の元へ向かう。
やけどその力の主は、真っ直ぐルフィエはんの元へ飛ぶ。
その姿に、ルフィエはんは驚愕すんねん。
…こんなもん?」
「…その喋り方だと、どうも緊張感伝わらないわね」


第九章、その内更新です。その内。
…その内。
「いつですか、馬鹿猫」
その内です。

141718:2008/01/24(木) 13:44:46 ID:gXqJ5/rQ0
感想いただきまして、ありがとうございます。

>メイトリックス氏
単純に食べるシーンを描いてみたいという欲求から作り始めましたので、
そこは自分なりに力を入れてみました(^ω^ )

>◇68hJrjtY氏
僕は他のネトゲも遊んだことあるんですけど、RSって生産スキルとかがないから
生活感はほぼ皆無な気がして。なんで、自分なりに「食っていく」という部分を
補完してみたいというのもありました。

ちなみに、基本1話完結の短編のみの投稿を心がけているので
この話もこれで終わりです。次からは「終わり」といれるようにします(^ω^;)

142◇68hJrjtY:2008/01/24(木) 18:35:54 ID:HjxIUrvE0
>白猫さん
ルフィぽんやレイぽんたちと、ネルぽんであり(?)フェンリルという名前の彼たちがアリアンで集結しそうな勢いですね。
しかしなんだか物騒な(笑)事態になっておりますが…この窮地を救う形で彼が登場となるのかどうか。
ルヴィぽんの本性はあれだけではない。確かにそうですよね!
まだまだ、謎が謎を呼ぶぜ〜♪みたいな展開なのに勝手に妄想してはイケマセン。
ネルぽんとリレぽんを捕まえたその理由だけでなく、彼女の達成しようとしている目的とは…。そしてフェンリルという名の意味は。
色々と楽しみにしています。ぽんぽん。
そ、それと、私の小説については期待しないで下さいorz 頑張ってるには頑張ってるよ!

>718さん
こちらこそ早とちりをば。やっぱりあれで終わりで良かったと思いますヽ|´ェ`|ノ
食事風景や普段の生活風景を描写するのは意外と難しいんですよね。
普段の行動は普通だからこそ意識してませんし、それだけに捉えにくいものです。
ところで生産系スキルって確かに無いですよね〜。釣りとか料理とか裁縫とか。
RSの背景に「レッドストーン争奪戦」の歴史があるかどうかは謎ですが、もっと狩り以外の楽しみも欲しいところです。

143みやび:2008/01/25(金) 20:27:57 ID:tGMKURmA0
◇――――――――――――――――――――――――Red stone novel−Responce
 うお。さすが伸びが早いですね。

 えーと、ひとまずサイトのアップが終りましたのでお知らせに来ました。
 しんどかったです(泣)

 ちょっと息切れしてて、アップを終えたばかりでチェックが不充分なので、リンク切れ等
不備もあるかと思いますが(汗)
 ちなみにここに投稿した既存作品の再録だけで、RS以外のネタや新作はまだまだ準
備中です。
 まあ自分好みの書式で保管できるだけでも満足と言えば満足なんですが(笑)
 手元の作品が上がり次第、適当に更新してゆきます。
 とりあえずアド。
ttp://book.geocities.jp/miyabi_ft26/

 感想などはまたあらためて書きに来ます。ふぃー
Red stone novel−Responce――――――――――――――――――――――――◇

144◇68hJrjtY:2008/01/25(金) 22:18:25 ID:HjxIUrvE0
>みやびさん
みやび屋さんサイトのBBSに一番乗りしました☆-(ノ●´∀)八(∀`●)ノイエーイ
あっちにも書いてしまいましたがやっぱりHP作成のイロハ、覚えたいなあ。
と言っても置くべきコンテンツなんてまるで無いんですけどね(笑)
というかHP作成技術っていうより、みやび屋さんの場合はイラストの素敵さもあると思います。
ブラウザですが、Sleipnirでもちゃんと表示されてましたよ!

145七掬 ◆ar5t6.213M:2008/01/26(土) 01:45:22 ID:TXKpkJjQ0
感想でっす。初めての方初めまして。お久しぶりの方お久しぶりです。
前自分が現れてからの全ての方にレスを返した(つもり)のでとっても長いですが、適当に読み飛ばしてくださいw

>>前スレ548さん
 バフォメットー!!!
 私は一度も会ったことが無くて雰囲気で想像するしかないんですが、
 ハイテンションなバフォメット見てみたいです(笑
 たくさんの登場人物が出てきているのにそれぞれ個性があるのが凄いですね。
 私はたくさん登場させようとして挫折したので・・・憧れます。

>>FATさん
(門松のお話)
 すごく可愛らしいお話で目尻が下がりました。
 確かに、私たちにとってはレッドストーンのサービス停止はゲームが出来なくなるだけですが、
 ゲーム内の主人公達にしてみればそれこそ死活問題ですよね。
 今年も一年、よろしくお願いいたします。

(赤い悪魔のお話)
 前半のエルノさんが剣士さんを待っているところは本当可愛らしくて、
 あんなカリスマ性溢れる悪魔の乙女の一面が本当愛らしいです。
 後半は少し雰囲気が変わってどちらかというと可愛らしいというより綺麗な感じの文面ですね。
 悪を払う者、という言葉に胸を打たれました・・・。

(本編)
 ラ・・・ランクーイさん・・・。悲しい。悲しすぎます。
 いつもいつも、元気で明るく、ラスさんに魔法を教わってどんどん強くなってたのに・・・
 それでも、レルロンドさんにエンチャントとして新しい命を得た二人。
 決意を新たに、少し形が変わってもまた、再び『三人の』冒険が始まるのがとっても嬉しいです。
 
>>68hさん
 いつも感想ありがとうございます。
 実は『異次元に引っかかる』っていうのは、ゲーム本編でのランサーのバグり易さの比喩だったりします(汗)
 本当は火抵抗が低いとか、呪い耐性が低いとかそういう設定があったら良かったんですが・・・。
 小説を書かれるとどこかで書かれてましたよね。楽しみにお待ちしています。

>>ESCADA a.k.a. DIWALIさん
 相変わらずの色っぽさ、小気味良いリズムとテンポ。
 いいですねぇ〜。
 これから本編。エディさんとトレスヴァントさんのお兄さん登場・・・。
 一体砂漠で何があったのか・・・。楽しみです。

>>前スレ571さん
 こ、これは・・・。
 奇妙な鎧を着た少女、静かな砂漠の街リンケンで起こる嵐・・・。
 ぞっとするほど引き込まれる始まり方。続き楽しみにしています。

>>21Rさん
(1000スレ目のお話)
 1000おめでとうございます。
 なんと、実話を元にしてあるんですか。
 RSしてもほとんどソロな私はギルドの温かさとか実際知らないんですが、
 ゲームとは言ってもやっているのは人間。とても情緒感溢れるお話でした・・・。

(本編)
 また、戦いが始まるのですね・・・。
 アレンさんのミルリスさんへの想い。『戦争の道具…こんな思いをアイツはしなくていい…俺だけで十分だ。』
 ふだん茶目っ気たっぷりな分、真剣な場面になるとその人間性が際立つ。なんと格好良い・・・。
 魔法の表現も相変わらず洗練されていて美しかったです。
 『北風』ギルドに吹き込む嵐。再び始まったアレンさんの命の物語。続き楽しみにしています。

 『act28 白の季節』も見させていただきました。スペシャルサンクスに加えていただき本当にありがとうございます(感涙)

146七掬 ◆ar5t6.213M:2008/01/26(土) 01:46:00 ID:TXKpkJjQ0
>>之神さん
(クリスマスのお話)
 サンタコスのミカさん・・・・それに恐らくサンタコスのシルヴィーさん。
 徹さんが羨ましい限りです(死
 細部まで表現されていて本当に可愛らしいお話でした。

(本編)
 ライトさんの弟・・・。しかも、明るい感じのライトさんと違ってかなり冷酷な感じがしますね。
 恨みを持つ兄弟同士の闘い。肉親同士殺しあうのは凄く悲しいことですね・・・
 それにしても、ライトさんがあんなに暗い過去があったとは。今までのライトさんの明るさが逆に悲しくなってきます。
 シルヴィーさんの過去も、また辛いものですね。倒れながら涙を流している姿を思い浮かべると・・・いたたまれません。
 ナザルドさんも気になります。たくさんの人物が出てくるのに個人個人はすごく均整が取れてて素敵です。
 次回作楽しみにしています。

>>前スレ629さん
 そういえば、憎きペンデルカンプからのクエストで、花を取ってくるものがありましたね・・・。
 傷つきながらも木を守って闘う父。彼の苦しみや、息子と妻に対する愛情が、とても切なくて辛いです。
 父に代わって槍を取った息子も、亡き父を思いながら、必死で闘い続ける・・・。
 短い文章の組み合わせで、全体としても短めでとても読みやすいのに内容はすごく詰まっていて素晴らしかったです。
 またのご投下をお待ちしています。

>>キリトさん
 狼男というのは、とても悲しい存在ですよね。
 それすらも受け入れて分かり合える親友って凄く素敵だと思います。
 『おかえり』、『ただいま』って、こんな短い言葉の中に、信頼が込められているような、
 そんな素敵な二人のこれからの冒険が楽しみです。

>>みやびさん
(MIROKUのお話)
 エレノアさんのお話の裏側には、こんな不思議な物語があったのですね。
 このMIROKUが作られたのは、どうやら今私たちが生きている世界みたいですが、
 高度に機械化され、そして起きた戦争によって消滅した私たちの星。みやびさん独特の描写が光りますね。
 人間の欲望だったり愛だったり、生き様だったり死だったり。
 多くのものを見つめながら、MIROKUの少女は何を想うのでしょうか。
 最後に記された、スロムトグバイルの手記も手伝って、とても感慨が深く残る作品でした。

(呪いのNPCのお話)
 ひえええぇぇぇぇ・・・・。私は最近もっぱらソロ狩りなのですが、
 呪いのNPCらしきものを見つけてしまったら速攻でパソコンの電源ごと落としかねません(汗
 それ位見事な怪談(?)話でした・・・。
 作中のスレ住人のレス文、どこかから引っ張ってきたんじゃないかって想うくらいものすごくリアルに描かれてて
 もう本当にさすがとしか言い様がありません。

(RSカタストロフィーのお話)
 凄い・・・・。なんだか攻殻機動隊みたいな近未来のお話ですね。
 前作の槍が唸り魔法が飛び交うような、そんなファンタジーも素晴らしかったですが、
 こういうAIとかプログラムハッカーとかも、もの凄く素敵ですね。
 『彼女』に侵入したサラさんは無事逃げ切ることが出来るのか。通信が途切れた絵馬さんはどうなったのか。
 ワックワクしながら次回作を待ちます

 サイト設立おめでとうございます!小説スレで作品を探して読み返すのも中々骨ですからね。早速読ませていただきます。

>>白樺さん
 おお・・・昔見た童話のような、不思議な物語ですね。
 食人スコーピオンとかデビロン様とか、実際にあったら失神もののセミボスの隠れ里に迷い込んだ純サマナー。
 レベルアップした時に開けた小箱の中に入っていたレミネッサにデビロン様の優しさが・・・(違
 最後に本を閉じる音が入っているところが、凄く印象的な終わり方でした。

147七掬 ◆ar5t6.213M:2008/01/26(土) 01:48:10 ID:TXKpkJjQ0
>>前スレ717さん
>>前スレ718さん
 文章は短めですが、流れるような文面は非常に整っていて読みやすいですね。
 二刀流剣士さんのお仕事とその後の息抜きの対比。
 一拍緊張をおいた後に五感的に感じる文章を持ってくるところに職人を見た気がします。
 また何か書いていただけたらとっても嬉しいです。

>>スメスメさん
 フローテックさんの回顧がすごく切なくて印象的です。
 自分の老い先というか、もうすぐバインダーに安息を与える事が出来なくなってしまう慙愧の想いを、
 アレヴァールさんの持つ独特の自信に溢れる瞳が拭い去っているような、そんな気がします。
 フローテックさんが彼の瞳に見出したのは希望の光か、それとも・・・。  続きを楽しみにしています。

>>ワイトさん
 これは恐いですよねぇ・・・。
 明かりの全く無い部屋に閉じ込められた人は実際数日と持たずに精神が限界に達するそうです。
 ラータさんは明かりが無い上に自分以外の声も聞こえず、壁はおろか床の感覚も無く・・・。
 私なら数分で耐えられなくなるでしょうね・・・
 何はともあれヒースさんのお陰で脱出! この後の逆転劇に期待します!!

>>白猫さん
 二月一日に世界樹イグドラシルへと向かい、その九日後の武術大会で起こった襲撃。駆けつけたネルさん。
 ・・・は良いんですが、この九日間に何があったのか。非常に気になるところです。
 ルフィエさんやリレッタさん、ネルさんを筆頭とした心理描写や、言葉の表現、
 町や戦場などの風景描写が非常に綺麗で、細やかで、とっても素敵です。
  次回予告が気になります。龍を掻き消した者って・・・ネルさん、なのかな。
 姿に驚愕するって一体どういうことでしょう。妄想がつきません。続きを楽しみにしています。
 
>>前スレ810さん
 か、可愛らしい・・・(危険)
 剣士さんの苦悩やテイマーさんの無邪気さがとても上手く表現されていて文章もすごく綺麗ですね。
 『明日も、よい日でありますように』、ですごく上手に締めているのに、
 さらにもっと可愛らしい落ちを最後の最後に持ってくるところがすごく粋でした。
 
>>メイトリックスさん
 ニイドさんの古風な喋り方がすごく格好良いですね。
 一人称で描かれている地の文がすごく洗練されていて流麗で美しいです・・・。
 振り出しに戻ってしまったピアースさんとニイドさんの旅ですが、ここからどのような展開になるのでしょうか。
 今まですれ違っていた二人が一緒になったことによってどんな道が開けるのか。 続きを楽しみにしています。


やっと書き終えました。遅くなってごめんなさい。
やっぱり68hさんみたいにきちんとこまめにレス返しするのが一番賢いですね(汗
(落とした小説より感想の方が長いってドンダケー・・・orz)

148之神:2008/01/26(土) 17:06:09 ID:F4rLZrSo0
1章〜徹、ミカの出会い。
-1>>593
-2 >>595
-3 >>596 >>597
-4 >>601 >>602
-5 >>611 >>612
-6 >>613 >>614
2章〜ライト登場。
-1>>620 >>621
-2>>622
-○>>626
-3>>637
-4>>648
-5>>651
-6 >>681
3章〜シリウスとの戦い。
-1>>687
-2>>688
-3>>702
-4>>713>>714
-5>>721
-6>>787
番外クリスマス >>796>>797>>798>>799
-7>>856>>858
-8>>868>>869
番外年末旅行>>894-901
4章〜兄弟
-1>>925-926
-2>>937
-3>>954
-4>>958-959
-5>>974-975
5冊目――――――――――――――――――――◆
-6>>25
-7>>50-51-54
-8>>104-105-106

149之神:2008/01/26(土) 17:47:57 ID:F4rLZrSo0
γ

「お前、今何を・・・・・・?」ライトはブラックに問いかけた。
「注射ですよ・・・・・・・まぁどうせ戦うなら」

「面白いほうが、いいでしょう?」ブラックはニヤリと不気味に笑った。

「賭けですよ。赤い目の女の身体に劇薬が回れば最後・・・・・もっとも、刺してある針にも薬は縫ってありましたが」なおを言葉を続ける。
「この女、結局何も言いませんでしたからね。もう諦めましたので」わざとらしく両手を上げ肩をすくめる。
「愚弟とは言ったが・・・・・・もう弟でも無い位置づけだよ、俺の中では」ライトは短剣を構える。
「光栄です」

一瞬の沈黙。そしてそれを破ったのは、

「オラっ、避けて・・・・・みろっ!」ライトの短剣だった。
勢い良くブラックに吸い込まれた短剣は、ヒュー・・・・と小気味良い音を立て・・・・

当 た っ た が 、当 た ら な か っ た 。

「だよな・・・・・分身か」
「簡単にナイフ程度にやられるような育て方は、プザーシュじゃしてないよ?」
「お前、そのナイフ程度に殺されないように気をつけろよ?」と、ライトは同時に何本ものナイフを投げた。
それはまるで一本の槍のように収束したが・・・・・・
またしても当たらなかった。
・・・・・・チッ、厄介だな分身は・・・・。
ライトは投擲斧に持ち替え、ブラックを見据える。
「しまった、当たらないな・・・・・・・」ライトは帽子を被り直す。
「そりゃあ、当たらないよ。何せ分身は・・・・・ッ!」ブラックが言いかけた瞬間、斧がブラックめがけて飛んできた。
「なら、当たるまで投げればいい話か」ライトは投げた後のポーズで言葉を続ける。一言だけ。

「フィーバータイムだ」

その瞬間、ライトから斧が無数に放たれた。
キン、キン、カキン、キンキン・・・・・・・コンクリート製の壁へと斧が 刺 さ る 音が響く。
既に刺さった斧に斧が当たる音、壁が崩れる音・・・・無数の音が響き続ける中ブラックは
それをすべて受け止めていた。

「終わり?」斧の投擲が止み、最初に口を開いたのはブラックだった。
「ちっ・・・・・・・」ライトは拳を握る。
「そろそろ当ててみなよ、退屈だ」
「ハッ、お前だって避けてるだけじゃねえか」強がってみたが、実際ライトの攻撃はまだ当たっていないのも事実だった。
「じゃあ、そろそろ攻撃するよ。お言葉に甘えて」
「ナメた事言ってねえで、とっととしてみろっての」両手に斧を構えたライトは吐いた。

「ああ」
ブラックのパンチ。
「言われなくても」
蹴り。
「やるから平気ですよ」
膝蹴り。
「大体」
回し蹴り。
「途中で修行を放棄して」
パンチ。
「泥棒になった貴方が」
踵落とし。
「完成した武道家に」
パンチ。
「勝てるわけ」
パンチ。
「無いでしょう・・・・がっ!」
三連蹴り。
「どうしました」
パンチ。
「何も言えない程」
後ろ回し蹴り。
「攻撃くらってるんですか」
蹴り飛ばし・・・・ライトは飛んだ。

150之神:2008/01/26(土) 18:11:55 ID:F4rLZrSo0
γ
「くっ・・・・・・ガハッ・・・・」普通なら顔面が変形でもするような連撃を、ライトは奇跡的にも受け止めていた。
「ほう、受けて立っていられるのはすごいですね」

「これで殺すつもりだったんですけどね」ブラックは本当に悔しそうな顔をした。

「どうですか、修行の重なった蹴りや拳の味は」手をさすりながら聞くブラックに、ライトは吐き捨てる。
「まぁまぁだな、3691点くらいだ」
「何点中ですかそれは」
「教えない♪」
あくまで余裕を見せるライトに、ブラックは苛立つ。
「貴方はいつもそうやって・・・・・」
「・・・・・・・・・・。」
ヒュッ、とダートの飛ぶ音がした。
それはブラックの手に受け止められたが。
「やっぱり、受け止めたか」
「その程度は、余裕です」思いっきり話を武器で逸らされたブラックだったが、気にしなかった。

「じゃ、続きだ」
「えっ?」
見るとライトの手には大量のダートが握られていた。
指と指の間に、まるで掻ぎ爪のように。

キンキンと音が鳴り、それはブラックに吸い込まれる。
当然のようにブラックは避けるが・・・・・今回は違った。
避け先を読まれ、その場所にダートが飛ぶ。

一撃、脇腹に命中したダートは、ブラックの返り血を浴びて赤黒く光るのだった。

α
「うっ・・・・・イテテテ・・・・・」俺が起きた時には、ワケのわからん光景のオンパラダイスだった。
壁中に刺さっている斧、それは天井にも。横に倒れる少女。腹から血を出すブラック。
なんだこれは、状況が掴めねえ・・・・・!
とりあえず、ライトとブラックに声をかけるのは憚られた。こう、空気的に、なんとなくだが・・・・。
そしてナザルドという自称剣士も居ない。吹っ飛ばされたか、逃げたのか。
俺はとりあえず横の少女を起こすことにした。
「おい、起きろ・・・・おーいえーと・・・・シルヴィーさん」ゆさゆさと身体を揺らしても反応が無い。
人体の知識は無いが、死んでない事はわかる。
「おーい、こんなときに寝てると何されるかわかんねーぞー・・・・おーい?」
俺は手に笛を持っているのを思いだし、それを手に握った。軽く振りかぶり・・・・」
ゴン。
「痛いじゃないか」突然目をカッと開いたシルヴィーは、徹を見つめる。
「あ、ごめんなさい・・・起きないんで・・・・・つい」
シルヴィーの上体を抱え、見つめる俺・・・・・あー、ミカには見られたくないやこの状況。

「とりあえず」
「返してくれ、笛」

151之神:2008/01/26(土) 18:18:28 ID:F4rLZrSo0
こんにちわ。それともこんばんわですかね。
大好評絶賛激突中・・・・・!とでも言いますか。
兄弟躊躇い無くぶつかっております。スケールデカ過ぎな兄弟喧嘩。
まぁお気づきかもですが、この章はライトがメインですね。
しかし戦闘シーンは難しい(´〜`)
迫力のシーンを書いてみたいものですヽ(´ー`)ノ
そして、いつも感想ありがとうです。

152ワイト:2008/01/27(日) 01:10:00 ID:Z/wysRgM0
こんな私の小説にも、感想を述べてくれる職人様方々に感謝です!有難う御座いますっ!!
今回は小説投下には、関係の無い書き込みですが、すいません・・では|ω・*)また!

153◇68hJrjtY:2008/01/27(日) 04:35:26 ID:q5.Nxr5Q0
>七掬さん
うーん、書き手の皆様にとってみたらある程度小説がまとまった時点での感想、の方が良いのかもしれませんが(汗
というのも今後の展開とか予定しているものを感想屋が先んじて言い当ててしまったりすると
やっぱり精神衛生的に嫌だ、やる気とかダウンしちゃうって人も居るかもしれないとか色々心配しています( ´・ω・)
私なんかの先読みはだいたい当たらないことが多いのですが、ともかくそのへんは気をつけようと思っています。
既に何らかの被害(?)を受けた書き手さん、申し訳ないですorz

>之神さん
わーぉ!武道の連続攻撃って見惚れますよね〜!
私も確かに武道贔屓なところはありますが、ソロ狩りしている武道さんを影でこっそり見ていたことがありますよ(ストーカー
分身やら仰け反りやら、回避も確かにウザい!でも、それに対するライトも互角以上の戦いぶりですね。
なにやら短剣が銃弾のように見えてきましたよ。壁や床に跳ね返って当てる跳弾みたいな。
蚊帳の外な徹たち、行方不明のナザ君も気になりますが…ライトvsブラック、決着は如何に!

154ワイト:2008/01/27(日) 11:36:34 ID:Z/wysRgM0
前小説5冊目>>998⇒6冊目>>27⇒6冊目>>83⇒6冊目>>84⇒6冊目>>134⇒続き

「ふぅ・・・要するに、仕切り直しって訳か・・?危ない所だったが、まだ負けた訳じゃ無いっ!!
(ヒース・・ありがとよ!お前が居なきゃ、完全に敵に嵌められてた所だったよ・・・)」

「貴様程度の実力では、そもそもお話に成らんのだよ・・?先程の呪文を解いた事もある・・・
私の名前を此処で、明かしておこう・・・聞いた事は無いと思うが、「ヘルアサシン」」
「(何だそりゃ・・アサシン系等の敵にそんなの居たかな・・?)」
「御託は此処らで終わりだ・・!ラータ!!死ぬ前に我の名前を刻みながら死ねえぇぇっ!」

バババババシュッッ!!
先手を打ち込んだのは、ラータ!目では捉えきれない程の速度で、幾多のダートを投げるっ!!
それを余裕の表情を浮かべながら、アサシンは・・長剣を後ろに構え、勢いよく振り抜くっ!

ドンッ!!アサシンはダートの方向を見据えながら、何と「ソニックブレード」を放つ!
キンッ!カンッ!カキンッ!真空波の勢いは、瞬く間にダートを撃ち落とす・・!
「(戦士のスキルを、こうも簡単に使えるなんて一筋縄じゃ行けねぇなこれは・・)」

だが、考える間にアサシンは、ラータと接近戦を持ち込もうと瞬時に駆けて来たっ!!
ブォンッ!!サッ!アサシンの振り下ろす剣を紙一重に仰け反るが、余裕は一切無い・・!
接近戦では、まずアサシンに有利に働く・・!そう回避しながら、ラータは一気に距離を取るっ!
相手も、それに気付いたのか否や後退しながら、またもや対峙する様に距離を置く!


ドドドドッドンッ!!しかし幾重にも重なった「ソニックブレード」を、アサシンは次々に放つっ!!!
辛うじて回避するのに成功している、ラータを余所にアサシンは次の手を打つ!

「ス・・ト・・・レート・・」ゾクッ・・!悪寒を感じ取ったラータは、真っ先にそれに対する為に
ソニックブレードを一旦無視し集中する・・しかし身体中には真空波に因って多少かすり傷を食らわされる。
だが、それでも・・こうしなければ次の攻撃で死んでいたかもしれなかった・・!!







「スパアアァァアイイィックッツ!!!!!!!!!!!」
ゴゴゴ・・・!地面を揺るがす一撃を・・次の瞬間!ズドドドオォォンッ!!

剣圧の嵐を起こしながら、一直線上に佇むラータ目掛けて襲いかかるっ!!!
回避する・・・!そう決めていたラータだったが、それを無視するかの勢いで、
ラータは身体中彼方此方に剣圧の嵐によって、生々しい切り傷を負わされる。
だが・・もし、この次の手に集中していなければ・・切り傷だけでは済まなかったであろう・・!

「クハッハッハッハハハッハッ!!!!痛いだろう・・?だから言ったであろう・・
貴様程度の実力ではお話には成らない・・とな!だが、後悔しても遅いぞ・・!」
「(ちくしょー・・・まさか戦士の上級スキル「ストレートスパイク」まで扱えるなんてよ・・
しかしまぁ、まともに食らえば・・簡単に五体が吹き飛んでた所だぜ・・!)」

155ワイト:2008/01/27(日) 11:44:18 ID:Z/wysRgM0
此処で一旦中断です!続きは、また次のお楽しみと言う事で・・!
また続きを考えた後に投下したいと思っています!それでは|ω・)また!

156FAT:2008/01/27(日) 19:22:19 ID:i6bpBbJo0
前作 二冊目>>798(最終回)

第二部 『水面鏡』

キャラ紹介 三冊目>>21
―田舎の朝― 三冊目1>>22、2>>25-26 
―子供と子供― 三冊目1>>28-29、2>>36、3>>40-42、4>>57-59、5>>98-99、6>>105-107
―双子と娘と― 三冊目1>>173-174、2>>183、3>>185、4>>212
―境界線― 三冊目1>>216、2>>228、3>>229、4>>269、5>>270
―エイミー=ベルツリー― 三冊目1>>294、2>>295-296
―神を冒涜したもの― 三冊目1>>367、2>>368、3>>369
―蘇憶― 五冊目1>>487-488、2>>489、3>>490、4>>497-500、5>>507-508
>>531-532、7>>550、8>>555、9>>556-557、10>>575-576
―ランクーイ― 五冊目1>>579-580、2>>587-589、3>>655-657、4>>827-829
>>908>>910-911、6>>943、7>>944-945、六冊目8>>19-21、9>>57-58、10>>92-96


―言っとくけど、俺はつええぜぇぇぇぇ!!―

―1―

 まだ夜明け前、まだ星が見える頃、レンダルとデルタは寝ているエイミーの顔をそっと
覗き込んだ。それは死人のように青白く、寝ながらも不安げであった。あれから一週間と
ちょっと、エイミーは病人のようにベッドの上で過ごす時間が長くなっていた。目が覚め
ても立ち上がれず、毎日ジョーイが献身的に看病した。そんなジョーイの姿を見て、エイ
ミーは「ありがとう」と弱りきった声で感謝するので精一杯だった。レンダルとデルタは
そんな姿を見ているのに耐えられなくなり、二人で密かにある決意を固めた。
「エイミー、待ってろよ。必ず俺たちがラスを連れ戻してやるからな。あんな奴には負け
ねぇ」
 レンダルは寝ているエイミーの黒く、長く、美しい髪を優しく撫でた。
「そうですわ。だからお姉さま、早く良くなってくださいね」
 デルタはすっかり痩せてしまったエイミーのしなやかな手を温かく握り、少し泣いた。

 エイミーの家から出ると、六月の朝の風が肌に冷たかった。二人は朝焼けを始めた空を
背に、町の出口の一本道を歩き出した。
「よぉ、こんな時間にどこへ行くつもりだい、お嬢さんたち」
 道の脇に生えている枝を張った一本の木の陰に、ジョーイが立っていた。青い騎士は全
てを見透かしたように二人に優しく微笑みかけた。
「お前には関係ねぇよ。首を突っ込むんじゃねぇ」
 そんな優しいジョーイを突き放すような鋭いレンダルの眼光。慌ててデルタがフォロー
する。
「お姉さま、ジョーイさんにそんな言い方があって? ごめんなさい、ジョーイさん。で
も、でもね、ジョーイさんにはエイミーお姉さまの傍に居てあげてほしいんです」
 デルタの大きくて丸い目。その可愛らしい瞳が真剣に訴える。
「お姉さまが今、必要としているのはジョーイさんとラスちゃんなんです。だから、私た
ちがラスちゃんを連れて戻ってくるまで、そのときまでどうか、どうかお姉さまの力にな
ってあげてください」
 泣きそうになるデルタを、レンダルはぶっきら棒な優しさの手で包み込む。
「そういうこった。悔しいけど、あいつが求めてるのは俺たちじゃねぇ、お前なんだよ、
ジョーイ。だから大人しくエイミーを看病してな。言っとっけど、エイミーをどうにかし
やがったら、俺はお前を許さねぇからな!」
 レンダルのキツさはエイミーを思うがゆえのものであった。ジョーイは二人の熱意に負
け、くるりと向きを変えて家に帰っていった。途中、一度振り返り、「頼むぞ」と手を挙げ
た。二人は力強く頷くと、町を出た。

157FAT:2008/01/27(日) 21:04:15 ID:i6bpBbJo0
>>68hさん
いつも感想ありがとうございます。
本来ならば、人は死んだら終わりな気がしますが、死すらも次に繋がっていける
という点で、異世界小説は素晴らしいなと思いました。
現実でも故人から学べることはたくさんありますが、持っていた力を丸々引き継ぐ
なんてことできませんものね。

>>みやびさん
おお、サイト開設おめでとうございます。早速お邪魔させていただきますね。
私はブランクが長かったので、コンスタントに書けていると言っては嘘になって
しまいます><
今後こそはコンスタントに書きたいと思っておりますところです。

>>102さん
貢ぎたくなってしまう気持ち、わかる気が……
しかし、こんな純粋な(?)男の気持ちを踏みにじる男、実際世渡り上手
なのはこのようなちょっとずる賢い人なのですよね。

>>之神さん
もはや血が繋がっていることなど関係なしの血で血を洗うバトル。いや、血が
繋がっているからこそここまで激しく争うのですね。
私も息が詰まるような激しい戦闘シーンを書いてみたいです。
そんな私の戦闘シーンの先生は(勝手に)白猫先生です。

>>108さん
感想ありがとうございます。
ランクーイの想い、無事に伝わってよかった、嬉しいです。

>>ESCADA a.k.a. DIWALIさん
ミリアょぅι゛ょ化の話、大変面白く読ませていただきました。掌打アッパー最強
ですね。追い討ちをかけるトレスヴァントも最高です。
本編ではエルフの村が……
各々の怒りは強敵に打ち勝てるのか、続きを楽しみにお待ちしております。

>>718さん
親父の汚いながらも豪快な食事姿に思わず涎が……
この板で食欲をそそられるとは思いませんでした。しかし、本当に感動したのは
最後の括りです。冒険者にとってはこうして馴染みの店で馴染みの仲間と共に食事を
する約束さえ守ることは難しいものですものね。
またの投稿、楽しみにしております。

>>七掬さん
なんという魂の作品。女だった骸骨鎧の逃避と苦悶とそこからの解放が切なく
伝わってきました。
彼女は人間に戻れたわけでもなく、成仏できたわけでもありませんが、それでも
自分を必要としてくれている人と出会え、魂は救われたのでしょう。
感動に胸が熱いです。

>>スメスメさん
私も昔「バインダー」クエの話を書いたことがあるのですが、いやぁ、ここまで
掘り下げられなかったです。「ある組織」とはなにか、気になります。
スメスメさんの描く「バインダー」クエ、楽しみに待っております。

>>メイトリックスさん
深いですね。二人のやりとりが手に取るようにわかるほど詳細な描写と、一人称
によるピアースの心情描写が完璧に混ざり合い、物語の深みを増していると思います。
同じ題材で書いたとしても、ここまで人を引き付ける文を書くことは出来ないと感じました。
互いに別々の見方で相手を見ていたわけですが、ようやく理解できたのですね。
二人を待つものは何か、続きを楽しみにお待ちしております。

>>ワイトさん
素早さが売りのアサシンに戦士の豪快さが合わさった「ヘルアサシン」
なんとも反則級の強さですね。
しかも呪術(?)まで使えるとなっては手も足も出ないですね……
いや、私はきっとヒースがなんとかしてくれると信じております!

>>白猫さん
なっ、なにがどうなっているのでしょうか?
ネル=フェンリルならば、ネルを「フェンリル」と言った声の主はリレッタ?
なぜリレッタはネルを「フェンリル」と呼ぶのでしょう。というかフェンリル
とは一体……?
アリアン襲撃はなにか意図されているものが?ドラゴンツイスターを放った主は?
?ばっかりな感想になってしまいましたが、FILカッコいいですね、ぜひ知識ランサー
用に実装してほしいスキルです。
次回の恋愛シーン、期待してますね、ルフィエさんb

158◇68hJrjtY:2008/01/28(月) 00:21:54 ID:Z72vxUWQ0
>ワイトさん
敵さんの特技ってカッコイイ名前の多いですよね〜。あんまり知られていないだけに惜しい。
できることなら発動時に技名表示とかやって欲しいです(笑)
しかし、ワイトさんは実に効果音の使い方が激しくて戦闘の臨場感が増しますね!
想像が容易くなってこちらも嬉しいですよヽ|・∀・|ノ
予想以上に強い自称「ヘルアサシン」…ラータとヒースは太刀打ちできるのか。続きお待ちしてますね。

>FATさん
待ってました、エイミー編!
それでもエイミー編もラス編との繋がりを匂わせてレンダルとデルタの出奔となりましたね。
エイミーの容態も心配ですし、レンダル&デルタの旅もラスと出会えるのか…。どっちのコンビの展開もワクワクです。
レンダルの男言葉やデルタの可愛い子っぷりも久しぶりで和みました(*´д`*)
しかしタイトルが戦闘シーン突入っぽくてなんだか良いです(笑)
個人的にはジョーイとエイミーの二人にはホニャララになって欲しいとか妄想してますが、さてさてどうなることやら(おばちゃん風に
続きお待ちしてますよ!

159名無しさん:2008/01/28(月) 10:08:55 ID:gXqJ5/rQ0
>白猫氏

フェンリルは果たして、ネリエル氏なのでしょうか、それとも第二のエリクシルの保持者なのでしょうか。
地雷のように大量に設置された複線がどのように回収されていくのか、謎が集束していく瞬間が
待ち遠しいです。頑張ってください。

>之神氏

ブラックのコンボタイムの流れが凄くいいですね。思考とは切り離されたところで的確に体が
動き、相手にダメージを与えていく。達人の動きが見事に描写されていると思います。

>ワイト氏

ワイト氏の文体は効果音を多様していることと、文体に意図的に勢いをつけるからでしょうか、
一文一文ごとに挿絵が浮かんできてまるでマンガを読んでいるような錯覚を受けます。
今回の戦闘シーン、今までの中でもかなりの迫力を受けました。

>FAT氏

ついにラス側とのクロスポイントが見え隠れし始めましたね。どのように2人がラスと
邂逅するのか、急かしてはいけないと分かっていても気になります。

160718:2008/01/28(月) 10:42:48 ID:gXqJ5/rQ0
・・・こらまた、妙なやつがやってきたなぁ・・・

初めてそいつらを見た感想は、まあこの一言に尽きるな。
歴史ある古都で、鉄工所勤めなんぞしてれば武具の修理を求める
冒険者がひっきりなしに駆け込んでくる。だから、今まで随分と
いろんな人種を見てきたが、そいつの風貌はあからさまに妙だったな。

ダブッダブの服着て、鉄仮面かぶって、頭のテッペンから火ぃ噴いてよ。
背中には破戒僧どもが使いそうなドでかいハンマー背負ってよ。
オマケにお供が、どこから拾ってきたんだか、カタカタカタカタ顎骨
震わせてる骸骨剣士ときたもんだ。

さすがの俺もギョッとしたよ。でも、ここを訪れるってことは相手は
大事なお客様だ。粗相があっちゃいけねぇと思ってよ、まあいつも通り
「いらっしゃい、修理をご希望で?それとも武具のオーダーメイドですか?」
なんて聞いてみたんよ。そしたら奴さん、何て言ったと思う?

『すみません、一月でいいんです。僕をここで雇ってもらえませんか』

あんまりにもボソボソしゃべるもんだからさ、俺聞き間違えたのかと思ってよ。
「え?」って聞き返したらさ、そいつ、『待った』とばかりに手を前に突き出して

『分かってます。僕の腕を見て、それで決めてください』

なんて言ってさ、骸骨と揃って準備運動なんか始めやがってよ。大体骸骨だぞ?
骨ばかりのテメエの体のどこに準備運動が必要なんだって思ったりしたけどよ。
なんかそうこうしてるうちに『これ借りますね』っつって打ち直すつもりだった
クレイモアと金敷引っ張り出してよ。俺ボーッとそれ見てたんよ。かなり
アホ面だったろうなぁ、そん時の俺。

でも、ここからが見ものだった。

大振りのクレイモアを骸骨が担いで、奴さんの頭の炎に突っ込むとよ、あっという間に
刃が赤を通りこして、真っ白に光りだしてな、それを見計らって骸骨が金敷に剣を置く。
そしたら奴さん、背中のハンマーで思いっきり刃を打ち始めたんだ。で、熱が逃げてきたら
また直ぐ頭の炎で焼きなおす。これの繰り返しよ。でも動きがやたら洗練されてんだ。
全く無駄がねぇしよ、「あー、こいつらきっとコレで生計立ててきたんだな」って。

打ち直されたクレイモアは、そりゃあ見事なもんだったさ。キレーに波紋が入っててな。
まるで鏡みてーな、本当に綺麗な刃だった。
俺が剣に魅入ってると、そいつがジーッと俺を見つめてくるのよ。

『どうですか?雇ってもらえますか?』

ってな。
俺ら職人の世界は腕と気質次第だ。もちろん即、採用よ。
その瞬間の、骸骨と手を取り合って喜ぶ奴さんの姿は忘れられねぇぜ。
骸骨なんかケタケタ笑いながら無骨なスキップ踏んでよ。や、骨だから
無骨ってのは違うか。まあ、あれだ。見たら一生忘れねえよ、ありゃ。

そいつらはきっちり一月働いて、一月分の手間賃を渡したら出て行っちまったよ。
しばらく奥地に行くから、旅費が必要だったんだそうだ。俺には分かんねぇけどよ、
大事な使命のためなんだとよ。

・・・さて、休憩は終わりだ。そのクレイモアをしまって来な。今日中にあと20本の剣と
槍の修理を終えなきゃならねえんだからよ、キリキリ巻いていくぞー。

おわり

161718:2008/01/28(月) 10:43:16 ID:gXqJ5/rQ0
ネクロマンサーがどうやって旅費を稼いでいるのかを、一月雇った雇い主側の
視点で描いてみました。

実際のゲームみたいに露店する人ばかりじゃなくて、こういう風に旅先で
働くことで賃金を得るやつもいていいんじゃないかなーと(^ω^ )

>◇68hJrjtY氏

本当に生活の描写というのはよく分からないですね。その描写の中で
人物が何を思っているか、感じているかが行動ににじみ出ているような
描写をしてみたいとは思うのですが・・・

>FAT氏

ヨダレを誘えたようで大満足です(^ω^ )

冒険者にとって、日常の些細な約束を守ることが生還することとほぼ同列である
こと、飯を食い酒を飲むだけのことがこの上ない喜びだということを、
どうすればそれと描かずとも伝わるかということは意識していました。
稚拙な文体でもそれを感じとっていただけたなら幸いです。

162ワイト:2008/01/28(月) 19:04:52 ID:K6NYKD9I0
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「(ちくしょー・・・まさか戦士の上級スキル「ストレートスパイク」まで扱えるなんてよ・・
しかしまぁ、まともに食らってりゃぁ・・簡単に五体が吹き飛んでた所だぜ・・・!)」
「まだまだいくぞっ!!!!!」ダンッッ!!アサシンが動く!

敵はこれ見よがしと瞬く間に間合いに入り接近制を挑んでくる・・!そして、
よろめいている俺に、息を付く暇を与えない・・怒涛の攻めが襲いかかるっ!!
キイィンッ!ガキンッ!!ガキイィン!!!!
「(片腕だけじゃ・・きつい!何時かやられちまう・・・!)」
「考えてる暇があるか!?こ・れ・で・も・食らえっ!!」


ビュアッ!!!打ち下ろし!水平振り回し!!強突き!!!を一度に放つ!
ガキッ!!キィンッ!!・・・ブシュッ!防ぎきれない・・!

「クックックッククッ!3発中、2発は防いだようだがぁ・・
惜しいねぇ・・!後一発が命中したか、フッ・・ハハハッ!」
高笑いしている隙に、また距離を取る!!だが今の攻撃は紛れもない
「ハリケーンショック」そのもの!アサシンの表情からは笑みが零れている・・!

「(やっべぇなぁ・・・隙ってもんが見当たらねぇ!!でも策は、まだあるけどな!)」
トプンッ・・・・アサシンの眼の前から、ラータの姿形が、瞬く間に消え去る!!
「馬鹿が!!何をするかは大よそ察しが付くんだよおぉぉっ!!!!」
アサシンが雄叫びを上げるかの様にラータの一歩先の手を読んでいたっ!

「貴様は・・我の影に潜んでいるんだろう・・・?其処から油断を突こうとしても、無駄だっ!!!
これが貴様の最後に成るかと思うと・・笑いが止まらんわ!!終わりにしてやる・・!」
ドスッッ!!!!(ヒュッ!)真っ直ぐにアサシンは、自身から出来ている影を勢い良く刺すっ!
シーン・・・・?悲鳴が辺り一帯に轟くかと思いきや・・・何の反応も無いっ!!(ドシュッッ!!)


「小賢しい・・!だが、何れは姿を現す他に手は無い!!我に隙など無いぞ!」
「いや?もうてめぇは油断してるよ!自分の実力を過信し過ぎたな・・」
意味有り気な発言をしながら、ラータは姿を現し始めたっ!!

「其処かっ!何をするかと思ったが・・!特に何もせずに出てくるとはな!!」
「だぁから〜もう詰んでるぜ?自分の身体を、よぉく調べてみれば?」
「はっ!!?何を・・!ゲボッ・・グファ!」ブシュッッ!ドクドクドク・・・
アサシンの口から突然、留めなく夥しい程の血が流れて出している!!
そして、自分の身体を見渡すと、心臓付近にダートが深く突き刺さっているではないか!?

「そんな・・どう・・・な・・っている?」途切れ途切れに話すアサシン・・!
「影なんて・・潜り込んだのは最初から自分の影だよ!!そんで、隙を伺ってた訳だが、
その定位置から・・てめぇが自分の影を高らかに刺した所にダートを放っただけさ・・!
それ以外に隙は見当たらなかったしな・・・勝利宣言はちと早すぎたんじゃないか??」

「うぐぐ・・・こうも簡単に・・・我が敗れたという・・のか・・・・・迂闊だった!
だが・・終わらんぞ!!我が死に逝く時は!貴様も、道連れだぁぁぁ・・あぁ・・・ぐあっふぁっ!!」
「ヘルアサシンとやらの最後か!危なかったな・・俺も後少しで死ぬかと思った・・・
(道連れっても・・死んじゃったら意味がねぇぞ?)まぁ何にしても、これで終わりだ!」

163ワイト:2008/01/28(月) 19:59:17 ID:K6NYKD9I0
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「(道連れっても・・死んじゃったら意味がねぇぞ?)まぁ何にしても、これで終わりだ!」
「おーい!!ヒース!そろそろ隠れて無いで、出てこおぉぉい!!!!」
コソコソ・・・敵はもう居ないか、周りをキョロキョロと確認しながら、慎重にヒースが出てきた・・!

「もう・・あのアサシンは倒しました・・・?」
「まー・・・何とかな!最後に言い残した事は気に成るけどな・・?
それよりも、ヒース!すまねぇが、そろそろ回復を頼む!流石にやべぇ・・!」
「はい!わかりま・・し!?」
「ど・・どうしたんだ??ヒース・・・?」


「ラ・・・ラータ!め・・目の前を、み・・見て!!」
目の前には、「ヘルアサシン」の死体以外には特には見当たらない・・!
だが、その死体からは大量の血液が溢れながら流れて出ていた!!
そして・・・何故か、その血は死体の中心に覆いかぶさる様に凝縮されていく・・?

「何だ・・?流れ出る血が、自然と集まる訳ねぇよなぁ・・?
(もうこいつは死んでるはず・・!何がこうさせているんだ!?)」
しかし・・裏腹にどんどんとその血は凝縮し、膨大に膨れ上がっている!!

何時しか、「ヘルアサシン」の身体から、血が流れ出るのが止まると・・・
全ての血は次第に「ソニックブレード」の様な形を模しながら・・只管に
その血で出来たその刃は鋭利に形を研ぎ澄ませ、そして次第に大きくなっていく・・・!!!!


「もしかして・・あれって「ブラッドシェーカー」!??!?!!?」
「う・・確かにな・・・だが、ありゃぁ・・でか過ぎるにも程があるぞ!?
(恐らくだが、身体に流れる全ての血を「ブラッドシェーカー」に使ってる訳か!!!)」

どうやら完成したようだ・・!普通の「ブラッドシェーカー」とは比較するまでも無い!許容量を
超え、限界以上に凝縮された血で、もう止められない程の大きさと化していた!!!!


「逃げられねぇ・・よな?ど・・どうする!?ヒース!何か良い手は無いか!!」
ヒュウゥ〜・・・旋風がラータの近くを通り過ぎる・・!ヒースの姿はすでに無い(えぇ!?)
もう見えない程の小さい粒の様なヒースが岩陰に隠れているのを、見付ける事が出来た・・!

「(ヒース・・・せめて回復してから(T∀T)アサシンの最後の悪足掻き・・えげつねぇ!
俺一人で、これはどうにもならねぇんだけど・・誰か助けてくださいm(_ _)m)」


そして!限界を超え最大限に増幅を果たした「ブラッドシェーカー」は、ラータに目標を定め
(ヒースは逃げました)この膨大な大きさからは考えられない程の速さで、血の刃が!!ラータを襲うっ!!!!

ドビュウウゥゥンッッツ!!!!!!!!!!!!
「うわぁぁぁぁぁ!??!?ちょw頼むから待ってくれぇ!!」
恐怖から来る叫びに思わず、腰を抜かしてしまった・・これでは受け身も取れない!
と・・いうことは?どうにもならない血の真空波が、絶望を誘う様に飛んでくる!!


此処で一旦中断です!続きは前回と同じくお楽しみ・・!と言う事でお願いします!!では|ω・)また!

164白猫:2008/01/28(月) 20:15:09 ID:y8XNfWoQ0
Puppet―歌姫と絡繰人形―

第一章〜第五章及び番外編 5冊目>>992
第六章 -夜空の下で- >>30-37
第七章 -深紅の衣- >>70-81
第八章 -神卸- >>137-139
これまでの主要登場人物 >>38




第九章 チャージング



 「……な…?」
アリアンの夜空に輝く、蒼い龍。
その龍の首が、突如飛び入ってきた紅い閃光に跳ね飛ばされた。
数秒も経たない内に消滅した龍を見、アーティは瞠目する。
あの龍は、恐らくは味方の援護攻撃。
 「…カリアス」
 「あいよ。『  アイススタラグマイト 』」
瞬間、
崩壊していた城壁を塞ぐように、巨大な氷の柱が立ち上がった。
厚さは優に数メートルを超える。これでスターヒール盗賊団の侵入口は立たれた。
 (最も、マスターしてへんからさっきの爆発クラスの攻撃喰らったら割れてまうけど)
 「ナイスよ。私はあの紅いののところ行くから、お願い」
 「あいよ」
カリアスが言い終わる間もなく、アーティは凄まじい速度で走り出す。
途中、立ち塞がる破落戸共を薙ぎ払い、尚も跳ぶ。
 (あの龍の大きさはかなりデカかった…徒者じゃない術者の力のはず)
その龍を一撃で破壊する、それほどの実力者が、この街に侵入した。
 (止める…止めなければ、一般人に、被害が)
先の紅い閃光は、既に夜空のどこにも見られない。
…ということは、既に先の閃光の主は、この町のどこかに、いる。
 (…何処)
走りながら、辺りを見回す。
逃げ惑う人々、襲撃場所へ向かう冒険者たち、必死に誘導する警備兵たち。
人々に紛れているとしたら、探しようがない。
 (とにかく、今はさっきの術の発動場所へ)

と、
その脇を、凄まじい速度で、"何か"が通り過ぎた。
 「!?」
咄嗟に槍を構え、振り向く。
が、その"何か"の姿は、どこにもない。
アーティに気配を感じさせる間なく、彼女がその姿を視認する間なく、
猛烈な速度で、この膨大雑多な人の群を、簡単に縫うように走り去った。
 (………なに)
不吉な予感が胸を過ぎるが、今は考え込んでいる場合ではない。





 ([韋駄天]…もう少し、速く)
紅い衣に覆われた足に、さらに魔力が付加される。
その付加に比例するように、筋肉が強化される。
 ([神卸]で力が削がれてる…[鏡映し]は、使えないかな)
逃げ惑う住民たちに触れないよう、既のところで身をかわす。
逆足で地面を踏み込み、再び前へと跳ぶ。
と。
 (!)
目の前に、人垣ができている。
 (瓦礫が崩れて…誰か下敷きになったのか?)
が、今は"そんなもの"を見ている暇はない。
思い切り左足で踏み込み、跳ぶ。
数十人の人垣を跳び越え、再び疾走を開始する。
 (さっきアーティさんの姿が見えた)
広場に入り、冒険者達と盗賊達が交戦している間を、抜く。
 (お任せします…"黒騎士"は、貴方が倒して下さい)
そして、見えた。
氷の柱が立ち上がっている城壁前。
白装束を纏った魔術師と、槍を構えた警備兵。
そして――

165白猫:2008/01/28(月) 20:15:41 ID:y8XNfWoQ0

 「!!!」
 「!?」
突如視界いっぱいに広がった紅色に、ルフィエとレイゼルは驚愕する。
魔物か、と槍を持ち上げるレイゼルの前で、紅色のマントが翻る。
蒼い兜の下から覗く紅眼が、少しだけ細められる。
コン、とブーツが地面を叩き、その兜の主…銀髪の少年、フェンリルが降り立つ。
 「こんにちは」
 「…………」
 「…………!?」
飄々と話すその口調にルフィエは首を傾げ、レイゼルは槍を構える。
 「誰だ、お前!?」
 「誰って…ああ、なるほど」
レイゼルの言葉にポンと手を叩き、頷いた。
被っていた兜に手を掛け、クスリと笑う。
 「この姿じゃ分かりませんね、当然です」
兜を脱ぎ、ガチャンと床に落とす。
まだ幼さの残る、紅い瞳と銀色の髪を持つ、端正な顔。
見紛うことない、ネリエル=ヴァリオルド。
 「……ネル、くん…?」
 「ああ、確かにそうなのですかそうではないというか」
頭をポリポリと掻き、フェンリル…ネルは苦笑する。
その仕草は確かにネルのものだったが、だがおかしい。
絶対に、おかしかった。
彼の魔力は、"この世のものではない"。
 「…ルフィエはん、レイゼルはん。そいつ、ネルはんやないで」
 「…」
 「!」
 「…………ご明察」
そう呟き、ネルは再び兜を拾い、被る。
 「改めて名乗りましょう。私は[韋駄天]。
 ネリエル=ヴァリオルドによってこの世に舞い戻された、神です」
 「………神?」
 「神…だと?」
その言葉に目を細める二人を見、カリアスはフンと笑う。
 「えらい大仰な代名詞持っとるやんけ…[世界で最も速い神]やって?」
 「ええ、その通りです。それが、ネリエル=ヴァリオルドの能力…[神卸]」
そして、と[韋駄天]は小さく呟く。
コン、と小さく地面をブーツで叩いた瞬間、彼の兜の色が、蒼から鈍色に変化した。
途端に薄れる、先の"この世のものではない魔力"。
鈍色の兜を脱ぎ、改めて言う。
 「二十日ぶり…ですね。"こっち"が、僕です」






 「……これは…?」
ようやく人を避けつつ鍛冶屋前の広場に到着したアーティは、辺りを怪訝そうに眺める。
先まで龍が立ち上がっていた鍛冶屋前の広場。
そこで、惨状が広がっていた。
何もかも、凍り付いている。
住民たち、冒険者たち、警備兵たち、商人たち。
さらには瓦礫や、小さく燻る炎すらも、文字通り凍り付いている。
間違いない。
先の龍の術である。
しかし、何故。
 (どうして…これじゃあ、市街を攻撃してるじゃない)
 「おい、おまえ」
と、辺りを見回すアーティに、不機嫌そうな声がかけられる。
咄嗟に槍を構え、振り向いた先にいたのは、黒い兜、黒い鎧、黒マント、黒い剣を持った、黒髪、黒目の妙齢の女性。
上から下まで真っ黒、金具やマントの裏地以外、全て真っ黒というその姿に、アーティは呆ける。
 「………なに?」
 「おまえが、私の碧龍を消したのか?」
 「……碧龍? さっきのドラゴンツイスターのこと?」
ドラゴンツイスター、の言葉にフンと女性は鼻で笑う。
 「そんなチンケな槍で私の碧龍を消したのか…? スターヒールにも多少はできる者がいたということか」
その言葉に、今度はアーティが鼻で笑う。
女性の言葉の後半からして彼女は味方…なのだろう。
だが、その言葉は頭に入っていて、入っていなかった。
 「チンケな槍…とは言ってくれたわね。[レヴァンティン]って言って、大金はたいて造らせた代物なんだけどね」
 「かける金の多さとと武器の強さはイコールじゃない…おまえのその槍が良い例だ」
ビシ、とアーティの額に青筋が走る。
 「OK。今すぐその言葉を撤回して駐屯所まで同行すれば、手は出さないわ。
 従わないなら…力ずくで、謝らせる。諸々の罪で刑務所にぶち込んで上げるわ」
 「できるのか…おまえに?」
二度目の嘲笑に、しかしアーティは答えない。
手に持った槍を、目の前の女に思い切り投げつける。
それを見やり、女は目を細め、剣を抜き、切り払う。
 「…やる気か?」
 「やる気よ」
背から二本目の槍を取り出し、アーティは小さく息を吸う。
 「一撃で決めさせてもらうわ。先に言っておく。私の名はアーティ=ベネルツァー。[蒼き傭兵]アーティ」
 「……カリン。"黒騎士"、カリン」
既に臨戦態勢に入ったアーティを見、女性…カリンは小さく呟く。
右手で握られた剣を両手で掴み、カリンはゆっくりと構える。
 (私の碧龍を打ち消すほどの実力なら…長引かせるのは利口ではないな)
 (初手から来る、かな…長期戦好きじゃないし)

   ((初手からの最大術で、決める))

166白猫:2008/01/28(月) 20:16:29 ID:y8XNfWoQ0
 「バカ!!」
 「…!?」
兜を脱いだネルに、ルフィエは怒鳴りかける。
目を白黒させるネルは、頭を掻いて首を傾げた。
 「20日も何やってたんですか! ほんとに…ほんとに心配したんだから!!」
 「………えぇ、っと…?」
助けを求めるように、ネルはレイゼルへと視線を流す。
が、レイゼルは肩をすくめて、そっぽを向いている。
 「人がどれだけ心配してるかも知らないで…何が韋駄天なの!!」
ネルの紅色の衣を掴み、ルフィエは彼の胸に頭を押しつける。
その姿に少しだけ躊躇って、しかしネルはその手を握る。
 「すいません…でした」
 「バカ…だよ、ほんとに…バカ…」




 「詳しい説明は後に頼めますか…? 色々立て込んでいるので」
 「色々…?」
 「何のことや、ネルはん」
再び氷の柱を立ち上げたカリアスは、その言葉に向き直る。
少しだけ考え、ネルは頭を掻く。
 「スターヒールは囮です。本来の目的は、ルヴィラィを遺跡へと通すこと」
 「………遺跡? アリアン遺跡のこと?」
 「はい」
アリアン遺跡とは、アリアンの地下に広がる巨大な遺跡のこと。
アリアン全土だけではなく、東部の傭兵達の墓にも繋がっているほどの広大さだという。
 「なんでそんなところに、ルヴィラィが…」
 「…………[レッドストーン]、やな」
その言葉に、ネルが小さく頷く。
[レッドストーン]。
今から約五百年前、この地に零れ落ちたという石。
火の鳥の雛の卵だとか、幸運をもらたす石だとか、千軍万馬の力を与える石だとか言われているが、詳しいことは定かではない。
ただ一つ分かっているのが、その所在。
現在レッドストーンは此処、アリアンの地下遺跡の最深部に眠っている。
そのレッドストーンを、あのルヴィラィが狙っている。
 「……ちょっと待って」
顔の上半分だけを隠す、小さな兜を再び被ったネルに、ルフィエは小さく言う。
 「…アリアンの遺跡には、みんなが避難してるんだよ」
此処、アリアンは四方を砂漠に囲まれている。
万が一敵襲があった場合、町の地下に広がる、広大な地下遺跡を避難場所としているのだ。
と、いうことは。
 「…ルヴィラィが、己の計画の一部でも知った者を、生かすわけがない。
 彼女は、確実に、何もかも、殺し、壊し、…砕きます。何も、何も残らない」
 「…………っ!」
そこまで聞き、ルフィエは駆け出す。
この広場の端に、地下遺跡への入り口がある。
そこから入り、今からでも住民たちを――
 「待って」
と、その腕がネルに掴まれる。
何を、と振り向いた先、

ネルの顔が、視界一杯に広がった。

167白猫:2008/01/28(月) 20:16:56 ID:y8XNfWoQ0


 (………はれ?)
 「……君は、ここにいて下さい」
兜を深く被り直し、ネルはマントをパンパンと叩く。
ヒューウ、と口笛を吹くレイゼルに、兜越しからどギツい視線を浴びせかける。
 (今……私?)
 「君は、外見では分かりにくいとはいえリトルウィッチ。冒険者達の中に紛れ込むわけにはいかない」
 (ええっと……今、私…何を)
 「とにかく今は、カリアスさんとレイゼルと一緒に此処を守って。ルヴィラィは、僕が止める」
 (今の…今のって…キ)
 「聞いてるんですか、ルフィエ!?」
ネルの怒鳴り声で、ルフィエは我に戻る。
その胸から正八面体の宝石を取り出し、握る。
 「ん…やだ。私も行く」
 「…だから、君は――」
 「違うの」
ネルの言葉を、小さく遮る。
 「私、行かなきゃいけないの、ルヴィラィのところへ。
 私なら大丈夫、ネルくんが守ってくれるでしょ? 私は、そのことを疑ってなんかしてない」
 「…………」
 「でも、もうちょっと…キスのタイミングくらい、考えて下さい」
少しだけ頬を染め、ルフィエは左手の人差し指を唇に当てる。
やや、というかしばらくの沈黙の後、ネルは答えた。
 「……知りませんからね。僕は」
そう言い、ネルは左手でルフィエの手首を掴む。
右手をゆっくりと胸に当て、目を閉じる。
 (――[エリクシル]よ)
胸のエリクシルが、途端に光を放ち始める。
淡く、しかしはっきりと視認できるその光は、ゆっくりとネルの身体を覆う。
 (僕に、本当の力を)
途端、彼の全身を覆っているローブが、ゆっくりと変形してゆく。
彼の戦闘スタイルに最も適した鎧…"軽鎧"へ。
 (僕は、あのとき)
スマグでの戦いを、リレッタを傷付けてしまった戦いを、思い返す。
力を求め、ただ力を求め、そして力を得た、得てしまったときのことを、思い返す。
 (莫大な力を得…その力の真の意味を理解することができず、溺れた)
罪もない警備兵を、自分のせいで、死なせてしまったことを、思い返す。
その後、怒りに任せて錬金術を使い、リレッタを敵の手中に陥れてしまったことを、思い返す。
 (でも、今は違う)
目を開け、形作られていく鎧を見、ネルは空を仰ぐ。
 (大切なものを…大切な人を、護る)
自分の左手の先にある、温もり。
それを、護るために。
 (そう…"総て"を護るために、力をくれ)
知らず、口が開かれる。
そして紡がれる、"本当の力"の旋律。

   「『 エリクシル第二段階真正解放…[紫電狼-フェンリル-]、発動 』」






 「行きよったか…ちんたらしよって」
 「カリアスさん、二人だけで大丈夫なんすか」
遠ざかるネルとルフィエ、群がってくる盗賊達を交互に見、レイゼルは問う。
が、カリアスはニッと笑い、杖を軽く振るう。
途端、凄まじい烈風と共に、盗賊達が吹き飛ばされた。
 「もちやで。オレがこんなアホみたいな奴らにやられる訳ないやろ」
 「…………そっすね」
良くも悪くも、カリアスはアーティと並ぶ、ブルンの守護神である。

168白猫:2008/01/28(月) 20:17:23 ID:y8XNfWoQ0

 【ねぇ、ほんとにネルぽんほっといていいの?】
 「ええ。私の邪魔をしない限り、別に捕まえておく理由もないわ」
 【ヒヒッ。捕マエテモマタスグ逃ゲラレル。前ミタイニ。ヒヒッ】
ところがどっこい、ルヴィラィ達は既にアリアン地下遺跡の内部。
既に第二階層まで下り、辺りには人っ子一人いない。
 「仕様がないでしょう、あの場合は。まさか[イグドラシル]の第三階層から第五階層を丸ごと吹き飛ばされるとは思わなかったもの」
 【まぁ、びっくりしたよね。リレッタの神術。[ビッグバン]だっけ】
 【ヒヒッ】
カツ、カツ、カツと、ルヴィラィのヒールが床を叩く音が響く。
その音を耳に挟みながら、宙をフワフワと浮くサーレは問う。
 【でさ…結局、ネルぽんの[エリクシル]って何なの?】
 「アラスター=ヴァリオルドが創り出した、[第二のレッドストーン]よ」
 【…第二のレッドストーン?】
 【ヒ?】
首を傾げるサーレと怪訝そうな声を上げたパペットに、ルヴィラィは頷く。
 「アラスターは、持てる知識を全て、[賢者の石]に打ち込んだ。自分の魂諸共。
 奴が創り出したかったのは[神々の石]…如何なる物質も変成し、如何なる生物も創り出し、また壊す…。
 まさに"神様だけができる悦楽を人がすることのできる"石…それが神々の石」
 【それが、第二のレッドストーンで…ネルぽんの腕にある[エリクシル]?】
 「そ」
カツ、とルヴィラィは、巨大な扉の前で足を止める。
その扉をそっと指でなぞり、目を細めた。
 「離れていなさい」
 【はーい】
飛び退くサーレの気配を感じつつ、ルヴィラィは人差し指で、扉をつ、と触る。
瞬間、

凄まじい爆音が遺跡内部に響き渡り、ものすごい量の土煙が舞う。
その土煙の中、まるで何もなかったように、再びルヴィラィが歩を進め出す。
 「あの[エリクシル]はまだ未完成品…[無]から[有]を創り出すことはできない。
 息絶えた者に再び命を吹き込むこともできなければ、新たな命を創り出すこともできない、紛い物」
その後に続くサーレは、ふぅん、と目を細める。
でも、とルヴィラィは続ける。
まだこの話は推測の域を出ていない。
だが、ネルの戦闘能力と[エリクシル]の力、その二つを照らし合わせれば、それは確論となる。
 「あの[エリクシル]は徐々にその力を増している…恐らくは、宿主の魔力を借りて」
 【……どゆ意味?】
 「たぶん[エリクシル]は、構造自体はもう完成している…足りないのは、莫大な…凄まじく莫大な、魔力」
 【……つまり、あれ?】
 「そうよ。[エリクシル]は宿主が相手を裂く度に、宿主が替わる度に、膨大な魔力を吸収している」
 【……ふーん。だから、そのアラスターってのが、呪いかけたんだ】
 「[エリクシル]の完成にはまだ時間がかかる…でもね、一つだけ、その[エリクシル]を解放する方法がある」
 【………オリジナル、[レッドストーン]を】
カツ、とルヴィラィは再度立ち止まった。
既に辺りの土煙は晴れ、目の前に、"それ"があった。
赤い妖光を放つ、不気味なほど赤い、駝鳥の卵のような石。
それを見やり、ルヴィラィは今度こそ笑みを浮かべた。
 「………そう、[レッドストーン]を、[エリクシル]に斬らせるのよ」





 「…ネルくん、私」
アリアンの地下遺跡に入り、疾走を始めたネルの背中で、ルフィエは呟く。
その声色が常のものとは違うことに気付き、ネルはできるだけ語気を和らげ、問う。
 「何ですか?」
 「…………」
彼は、肩に顔を埋めるルフィエのその顔を、今まで見たことがなかった。
だが、どういう顔かは、分かっていた。
だが、どうしてそんな顔をするのか、分からなかった。
彼女の顔に浮かんでいるのは…恐怖、そして不安である。
 「…私、嫌な予感がする」
 「嫌な、予感?」
 「…………」
鸚鵡返しに言うネルに、しかしルフィエは答えない。
"あのとき"と、同じだ。
 (嫌だよ…今度は、ネルくん…そんなの、そんなの…)
"あのとき"のモヤモヤと、この感覚は同じ。
一ヶ月と少し前、古都で会ったリトルウィッチの言葉を、思い出す。

 [私達リトルウィッチには、誰にも力がある。人ならざる力…。
 私の力、読心であったり、おまえの力…[予見]であったりする]

 ([予見]…未来を見ることのできる、力)
自分には、見える。
"近い未来"が。
しかし、そんな。
そんなことが、起こるわけがない。
 (……この先に行ったら、きっと)
そんな彼女の心境など理解する間もなく、ネルは階段を跳び下りる。
 (…………

   ネルくんに、とても嫌なことが起きる気がする)

169白猫:2008/01/28(月) 20:18:09 ID:y8XNfWoQ0


 「――――」
 「――――」
アリアン、鍛冶屋前広場。
辺りの景観が完全に凍り付いたこの広場で、ただ二人凍り付いていない二人が、武器を構え合う。
一方は槍。
一方は剣。
アーティとカリン。二人とも、全く動こうとしない。
否、
動けなかった。
 (――この術は、連撃は不可能…迂闊に仕掛ければ逆を返される)
 (さて…さっきのツイスターより大きいのが来るわね…どう、仕掛ける)
両者共に、仕掛けるタイミングを計りかねている。
迂闊に仕掛ければ、反撃の術に巻き込まれる可能性がある。
故、共に仕掛けることができない。
と。
 (………む)
 (お)
両者の間に、小さな紙が舞い込む。
武道会の宣伝がでかでかと書かれた紙は、ゆらゆらと揺れ、ゆっくりと落ちてゆく。
 (ラッキーラッキー…丁度いい、これが落ちた瞬間――)
その紙が、
突如黒く塗り潰され――違った。
 「!!?」
 「魔創残龍剣四十四乃巻、『 ――黒龍剣!! 』」
その紙が、真っ黒の龍に喰らわれたのだ。
身の丈数メートルはあろう、龍の頭だけがカリンの剣から生み出される。
 「――っちぃ!」
咄嗟に槍を旋回させ、両手で柄を握る。
途端に、その槍が、蒼色の稲妻で覆われた。
 「"チャージ"を見せれないのは残念だけど――『 マルチプルツイスター! 』」
瞬間、
アーティが突如6人に分身、その全員が槍を旋回させ、突撃してくる。
が。
その全員が全員とも、黒い龍に食われ、裂かれ、呑み込まれる。
 (ちっ…やっぱりチャージング無しだとキツいわね、なら)
その分身の中、龍の頭を跳び越えていたアーティが、空中で槍を鋭く構える。
その構えは、投擲。
 「…ライトニングチャージング、『 ジャベリン 』」
瞬間、アーティの槍の先端に、凄まじい量の稲妻が凝縮される。
その下方では、龍が方向転換をし、自分を喰らおうと上昇してくる。
 (二度が限界かしら…まぁいいわ)
 「『 ジャベリン 』」
今度は柄に稲妻が凝縮される。既に槍の半分が、蒼い稲妻で覆われていた。
まだ、龍と自分の間には少しの距離がある。
もう一度、言う。
 「『 ジャベリン 』」
さらに今度は、残った柄に凄まじい量の稲妻が凝縮される。
それを肩で構え、アーティは不敵な笑みを浮かべた。
と、その目の前で、黒龍が巨大な口を開ける。
 「『 ――ジャベリン 』」

170白猫:2008/01/28(月) 20:18:37 ID:y8XNfWoQ0
瞬間、
今まさにアーティを喰らおうとしていた黒龍が、蒼い稲妻によって消し飛ばされた。
それでも尚、放たれた槍の速度は衰えない。
広場に向かって凄まじい速度で迸り、その中央に立つ、カリンへと飛ぶ。
 (当たれ――――!!)
が。
カリンは両の手で握った真っ黒の剣をゆっくりと構え、迸ってくる槍を見据える。
そして、一閃。
黒い剣から迸ったドス黒い靄が、アーティの槍の紫電を呑み込み、剣が槍を弾き飛ばした。
 「――二十三乃巻、『 宴影剣 』」
 (――ちっ)
巨大な黒龍に視界を阻まれ、大雑把な狙いしか取れなかったことをアーティは後悔する。
二度の[チャージング]ならば、恐らく的確にカリンの死角へ槍を投擲できたであろう。
だが、あの黒龍の圧力(プレッシャー)から、アーティは返ってさらにもう一度チャージングを行ってしまった。
アーティの最大にして最強術、[ライトニング・ジャベリン]。
持った槍に凄まじい量の稲妻を帯電させ、投擲する彼女のオリジナル術。
一度のチャージングならば、威力は[FIL]と変わらない。
が、そのチャージングを二度、三度行うことで、彼女の術の威力は二倍にも、三倍にも、十倍にも膨れ上がった。
逆に、チャージングを行えば行うほど的確な狙いが定めづらくなり、疲労も行った分だけ襲ってくる。
実質、彼女はこのチャージングを、最高で[五回]までしか行ったことがない。
その五回目のチャージングの時は、一撃で古城を撃ち抜き消し飛ばし、彼女はその反動でぶっ倒れた(もちろん古城の弁償料の請求はしっかり来た)。
精々戦闘で使えるのは四回のチャージングまでである。
 (三度のチャージングのジャベリンを楽々と切り払われたか…マックスじゃないと無理かなぁ)
地面に降り立ち、アーティは過去のことを思い出してげんなりする。
町中で放てば、無論この辺りは吹き飛び…凍り付いている住民達の命は無い。
それどころか、地下の遺跡にまで影響が及び、倒壊するかもしれない。
いくら彼女でも、数百、数千、あるいは数万の命がかかるかもしれない賭けなどできない。
 (ま、大丈夫よね)
わけではなかった。
魔力で一本の槍を精製し、それを両手で掴む。
目の前に立っているカリンにそれを構え、小さく呟く。
 「『 ――ジャベリン 』」

 (……〜〜〜〜〜〜ッッッ!!!!)
カリンは内心、かなり痛がっていた。
それもそうである。いくら術を帯びた剣で切り払ったとはいえ、相手は凄まじい量の稲妻を帯電した槍。
それを切り払いもすれば、その手に凄まじい量の電流が流れ込む。
 (無茶苦茶馬鹿みたいな術を使いおって…こんな奴初めて――)
 「『 ジャベリン 』」
 「!!!」
気付けば、アーティが三本目の槍に、先と同じ稲妻を帯電させている。
その輝きは既に先と同程度…いや、それ以上か――?
 「…四度目の、『 ジャベリン! 』」
瞬間、
アーティの両手の槍が、変形する。
先が三つに分かれた、より強力な投擲槍。
 (空気抵抗など関係ないということか…[コルセスカ])
 (ちょっとヤバ…意識遠のいてきたかも)
両手でコルセスカを必死に握りしめ、アーティは再度、息を吸う。
 「『 ――ジャベリン!! 』」

   バチン

 「…………」
 「…………」
槍が、消えた。
稲妻諸共、槍が消えた。
 「…………魔力切れ?」
 「あはは、そーみたい」
あまりのあっけなさに、カリンは持っていた剣を取り落とす。
 「ごめん、ちょっとタイム」
 「…勝手にしろ」




FIN...

171白猫:2008/01/28(月) 20:19:06 ID:y8XNfWoQ0


[ルフィエネル主人公二人のおまけコーナー1]

 「キャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!」
 「第一回から何みっともない顔晒してんですかルフィエ」
赤面でコタツの周りをピョンピョンカンガルーのように跳ね回るルフィエを見、ネルは溜息を吐く。
蜜柑の皮を剥いて口の中に放り込み、ネルは頭を下げる。
 「どうも皆様、ネリエル=ヴァリオルドです。
 今回から作者白猫もとい馬鹿猫の身勝手な提案により、このおまけコーナーができることとなりました。
 実は本編も四度書き直してるんですね。アーティさんと黒騎士の戦いを先に延ばすか延ばさないかで一悶着。
 さらに僕が敵になったりならなかったり、ルゼル様が出てきたり訳の分からなくなったので書き換えたそうです」
 「え、ちょっちょちょちょちょちょも一回この第九章見直していい?」
 「五月蝿いですよルフィエ。
 さて今回は僕、ネリエルもといフェンリルの新しい力を少しだけお見せしました。
 [神卸]。まぁ簡単に言えば、今まで逢った者の魂を卸し、一時的のその力を得る術ですね」
 「なななんなんか真ん中らへんですごおおおいことネルくんがした気がするんだけど!」
 「黙って下さいルフィエ。
 さて、早速コメ返し、いってみましょう」


 「◇68hJrjtYさん。
 いつもコメントありがとうございます。白猫も喜んでます。
 謎の多い小説なわけです。固有名詞も多いわけです。今回はそれの典型的な形ですね。
 アリアンで一体何が起こるのかは次回に持ち越しです。メッ、ですよ?
 [フェンリル]は僕の術の名です。[紫電狼]と言われるとアーティさんと僕の合体みたいになってしまいますが違います。
 最も、元々の僕の異名も[影狼]なので、それが[フェンリル]に変わってだけというやつですか。
 僕とリレッタに関することは、恐らく少し先のことになるでしょう。
 七掬さん。
 初コメでしょうか。ありがとうございます。
 空白の九日間についてはじきに語られるでしょう。
 本当は次回に書く予定ですが、執筆が間に合わないかもしれません。
 あの龍は明らかに市街を破壊していたので…少しひねる必要がありましたので。
 ルフィエ…そういえば、なんであの時僕に驚いたんですか? 確かに格好は変だったけど」
 「へ? あ、えっと…ネルくんの魔力が、人というより魔力に近いものだったから…ちょっと信じられなくて」
 「だ、そうです。

 FATさん――」
 「あ、ちょっと待って。私やりたい」
 「……は?」
 「ええっと。
 FATさん、コメントありがとうございます♪
 本当はくどい恋愛描写してたそうですが、思い切って削いだそうです。
 私はくどい方が好きだったけど…ごにょごにょ。
 FILは白猫もずっと使いたかった描写だそうです。今回のチャージングもそうだったらしいです。
 あ、でも最初はリレッタちゃんの技だったらしいけど。

 名無しさん様。
 第二のエリクシル保持者…って、いるの? ネルくん」
 「さあ、どうでしょう。[エリクシル]は僕より長老やルヴィラィの方が詳しいですし…。
 曾祖父と同じほどの権威の術者は多かったようですし、第二、第三のエリクシルがあっても不思議じゃないでしょうね」
 「地雷のような伏線…確かに多いよね。固有名詞並だよ」
 「はっきり言って迷惑です。邪魔です伏線」
 「…はっきり言い過ぎ」



次回予告のこーなー
 【サーレちゃん次回予告でびゅー♪】
 「……はぁ、なんで私が…」
 【リレッタくらーい。もっとテンションアップアップ♪】
 「そのテンションの意味が分かりません…。


 ええっと、次回。…ナレーション風に言った方がいいのかな。
 ネリエルとシャーレーンがいよいよ正面衝突。
 遺跡全体を揺るがしかねないその衝撃に、アリアン全体の地盤が崩れ始める。
 その中でとうとう対峙した、ルフィエとルヴィラィ。
 ルヴィラィの素顔にルフィエは驚愕し、しかし彼女は杖を構える。
 そして紡がれる、新たな旋律…[幻想曲]。

 ――ふう、こんなものかな」
 【あは、リレッタうまーい】
 「…あなたなんにもしてないです」


今回はこの辺で。
誤字脱字修正・加筆を行おうと思いましたが、途中で諦めました(オイ
アリアン編が終わったらしばらく沈黙するでしょうか。
とりあえずこの緊迫した状況をちゃいちゃいと書こうと思います(意味不
では次回第十章、次回もやっぱりその内更新です。

172 ◆21RFz91GTE:2008/01/29(火) 12:21:22 ID:hnbHyKHE0
////********************************************************************************////
  ■◆21RFz91GTE:まとめサイト(だるま落し禁止)
  ■ttp://bokunatu.fc2web.com/trianglelife/sotn/main.html
  ■Act.1 アレン・ケイレンバック >>44-45
  ■Act.2 少女 3 >>65-67
  ■Act.3 少女 4 >>87-90
////********************************************************************************////

 Snow of the Northwind-最終章-

 The last World/It Little story…。

173 ◆21RFz91GTE:2008/01/29(火) 12:21:43 ID:hnbHyKHE0
Act.4 レスキュー?



 「キメラに禁忌も何も無いさ、それに失われた術法だ。この世に我を咎める者などおらん。禁忌と言うのであれば我その者だ。」
「いや、まぁそれはそうだけど。」
二年間の空白を埋めるために資料質に篭りっぱなしになっていたアレンの元にアデルがやって来ていた。少しでもと思い知識の少量を与えようというのだった。だがそれは禁忌から始まりロストミスティックに終わる失われた術法のおオンパレードだった。
「そもそもお主を蘇らせた還元の法も禁忌だ、生身の人間が使えば未完成品の人形が生まれ、そして朽ちていく。もちろん法術を使った張本人もただでは済まないと思うが。」
「それはそうだろう、あんなのあんた一人の力でやろうとしてもそう簡単に行く法術でも無いだろう。クラウスほどの術者とそれに乗じて多少ながらの力が加わりそして神の使いであるビショップ達の力を借りてやっとこさだ。上空から見たが何だあの魔法陣は、常識のかけらも無いじゃないか。二十四の角に九つの印、さらにルーン文字を使う魔法陣なんて始めて見たよ。」
「だからこそ私一人の力では無理だったのだ、私一人の力ではアレほどの角を持つ魔法陣等到底作れん。」
「……胸を張って言うな。」
幾つかの書物を取り出すとそのまま近くのテーブルに腰をかけた。対面にアデルも座り集められた書物に手を伸ばす、だがそこに書かれている文字は現代の文字を利用した暗号になっている。それを解読できるはずも無く数秒で本を閉じた。
「本を読むときぐらいそのタバコと言うのを止めたらどうだ?」
「集中できるんだよ、あんたも一本どうだ?」
クラウスが以前から吸っていたのを目撃していたせいもあり、多少ながら興味を持っていたアデルはその誘いに一つ貰う。そして吸い方を教わりアレンの作り出した炎で火をつけた。
「ぐ…なんだこれは。」
「それがタバコって奴さ、馴れれば咳き込む事も無いし苦にならなくなる。むしろそれが無いと逆にイライラすることもあるさ。最近の科学って奴は凄くてな、そのタバコに含まれるニコチン成分ってのが厄介で中毒症状を引き起こすらしい。大人の娯楽として最初に振舞われてから幾十年、今では煙たがれるだけだ。」
「タバコだけに煙たがれる、か…お主にユーモアのセンスが無いと言うのは以前から知って居たがこれほどとは思わなんだ。」
「……放っておいてくれ。」
近くに置いてある鉄製の受け皿にタバコを押し付けて火を消した、そして帽子を脱いでテーブルの上に置く。一度席を立ち近くの本棚から一冊の本を取り出してまたテーブルに着いた。分厚い書物で表紙は皮製、痛み具合から年代物の書物だと推測が付く。
「何だそれ。」
「地図だ、どうも方角や現在地の認識が甘い様でな。以前危うくアジトに帰れなくなるところだったのだ。そのため少し地理に関しての勉強を…。」
そこまで言うと妙な視線を感じた、ゆっくりと顔を上げると必死に笑いをこらえているアレンの姿がそこには有った。ある種納得しているような顔もしていた。その表情に困惑を覚え何かと尋ねた。
「いやすまない、以前意識の中であんたと昔の記憶を巡っていた時の事を思い出した。思い返せば不思議な事だ、何故あんたはあの時師匠…ミルとレイの決戦の場所にすぐにつれて行かなかったのか。それはあんたが方向音痴だったからだ。だから俺とミルが分かれた所からの場面を見せて、そこから後を追ったんだ。完璧人間かと思っていたがそんな一面が有るとは驚いたよ。むしろ笑わせてくれた。」
「お主、もう一遍死んで見るか?」
「いや、遠慮しておこう。笑い過ぎた事に関しては謝るが、何故方向音痴何だ?アレだけの知識があるにも拘らず五感はさえて無いのか?」
耳まで真っ赤にして今にでも剣を抜こうとしていたアデルは怒りを静めて静かに椅子に付いた、そして一つため息をついてから昔を思い出すように。
「合成されたドワーフが方向音痴だったのだ。」
と言い訳をするように呟いた。

174 ◆21RFz91GTE:2008/01/29(火) 12:22:07 ID:hnbHyKHE0

 アレからどのくらいの時間が経過したのだろう、太陽は空の南の位置まで上がっていた。お腹の減り具合から見てもそろそろお昼時なのだろう。受け皿を見ると十数本の吸殻が溜まっている。それを見て少し禁煙を始めようかと本気で悩んだ。だが吸殻をみるとまた一本吸いたくなるのが喫煙者の定め。懐に手を伸ばしタバコの箱を取り出した。だがそこには一本もタバコは入って居なかった。
 空箱をテーブルに置いて他のタバコを取り出そうとするがコートのポケットにすらタバコは入っていなかった。よくテーブルの上を見ると空き箱が三つ。朝からこの資料質に篭りっぱなしで買出しにも出ていなかったためかいつの間にか全てのタバコを吸いつくしていたのだった。
「アデル、タバコを買ってくるついでに昼を取ろうと思うんだけどあんたはどうする?」
「ならば我も行こう、朝から何も食べていなくて腹が空いていたところだ。それにしても…。」
「ん? どうした?」
アデルは一つ、また一つ咳き込むと辺り一面の空気を見た。資料質の中は煙が充満していて他にいた人はいつの間にか全員が資料質を出て行った後だった。
「ミトに怒られても我は知らんぞ?」
アレンはそこまで言われてようやく気が付く。辺り一面煙だらけでアデルの姿がぼんやりに見えていた。メガネを外していたからぼんやり見えていたのだろうと思っていたがそれは間違いでメガネは装着している。事の重大さに気が付いたアレンはすぐさま立ち上がると窓へと走った。そしてすぐさま窓を開けると外から新鮮な空気が流れ込んでくる。逆に部屋の中にたち込めていた煙は外へと流れ出す。その煙に一部の人間が火災と勘違いをして急いで近くの事務所へと書け混んで行く。そして中から数人のウィザードが出てくるとすぐさま水の魔法を唱えるために詠唱を始める。
「ちょっと待ってくれ!火事じゃないんだ!」
誤解を解こうと必死で叫ぶその声は周りのざわめきにかき消され、そして流されて行った。そして
「ってぇぇぇぇ!」
直後、水圧は差ほどでもない水の大砲がギルド専属の資料館に直撃したのは言うまでも無い。



 騒ぎが有ってから一時間後、ミトの長い説教を受けた後アレンとアデルは揃って買い物へと出かけていた。ずぶ濡れになった衣装を取替え簡単な防寒具を身に付けて噴水近くのメインストリートをあるいている時の事だった。
 見慣れない冒険者達がメインストリートを歩いていた、かなりの重装備をして居る事から新しくこの街に来た冒険者達ではなく、どこかの街を拠点にしている何かしらのパーティーの様に見えた。兜こそは被って居ない者の見慣れない冒険者達に露天商達はざわめきを隠しきれずに居た。
「見慣れないな、といっても二年間死んでいた俺が言うのも何だが。」
「我も見ない者達だ、どこかのパーティーか?」
二人は立ち止まり人ゴミにまぎれて男たちの様子を伺っていた、かなりの長旅をしてきたのだろう。荷物は多く、荷袋がパンパンだった。だが腰に備え付けているポーチは見る限り何も入って居ない様子、薬草等を詰めるポーチだった。
「アジトの方に向かうな、誰かの知り合いか?」
「そうは思えん、あのなりではミトが嫌がるだろうて。」
「…確かにな。」
「しかし、あの武装は些か大げさに見えぬか?それ程遠くの街から来たパーティーでは無いか?」
「確かに…アイツらの通った後見てみろ。」
ゆっくりと男たちの後を尾行するアレン達はある物に気が付いた。それは砂だった。サラサラとしていてまるで砂漠の砂のようにもみえる。
「砂漠の砂か、リンケンにあんな武装をしてまで居る理由もないからアリアン辺りからか?」
「どうだろうか、リンケンで何かあったと考えれば察しは付くが…所でアレン。」
木の影から次の木へと移る丁度中間地点でふと疑問を感じたアデルは小声でアレンに質問をする。
「リンケンとはどの辺なのだ?」
その言葉にアレンは文字通り転んだ。余りに間抜けで例えようが無いぐらいの転びっぷりだった。そして何故転んだのかアデルは疑問に思った。


Act.4 レスキュー?
END

175 ◆21RFz91GTE:2008/01/29(火) 12:38:55 ID:hnbHyKHE0
お久し振りですヾ(´・ω・`)ノ
最近>>1を読み直してて気が付いたのですが、俺のこの話グロ入ってるような(汗
首が吹っ飛んだり手首が切り落とされたりその他諸々…。

内臓飛び出して無いから大丈夫ですよねヾ(´・ω・`)ノ

コメ返し
>>97 :FAT様
アレン君は魔法がそこまで得意じゃないって裏設定もあります。
そろそろ21Rワールド全開で今後のお話が展開して行きますので遠い目でお楽しみくださいヾ(´・ω・`)ノ
あ、後最終話付近でのブーイングは受け付けますヾ(´・ω・`)ノ

>>98 :◇68hJrjtY様
ミト美味しいですよミト、メインキャラの中でも唯一の女性キャラですからね。しかもろr
因みに美味しさで言うと…
イリア=ミト>>>ミル>>>>超えられない壁>>>>アレン=クラウス です(ぁ


>>133 :メイトリックス様
英雄はなりたくてなれる物でも無いですよね、認められてこそ英雄なんでしょう。
辛いかも知れませんねぇ〜、そのぐらい試練が有った方がアレン君には丁度いいかもヾ(´・ω・`)ノ
エロだなんてとんでもない、肩をもんでいただけですよ〜。こう、もみもm(うわなにするやめr

>>145 :七掬 ◆ar5t6.213M様
アレン君の設定はもう少し紳士だったんですよ彼。
始めからお茶目キャラにするつもりも無かったのですが、気が付けば皆からロリコンって呼ばれて今に至りますヾ(´・ω・`)ノ
WIZ=ロリコンの設定が出来たのはそれからの事ですヾ(´・ω・`)ノ

176◇68hJrjtY:2008/01/29(火) 14:49:33 ID:oILznhIo0
>718さん
ネクロの意外な技術といいますか…面白く読ませてもらいました(笑)
頭の火というのが盲点でしたね、実はアレ、最初見た時「絶対変!」と思ってしまっていたのですが
見慣れるというか、RSでの2Dグラではあまり目立たないのもあって忘れていました(苦笑)
こんな風に鍛冶技術で使ったり、咄嗟の時の火として利用している光景を思い浮かべると凄く楽しそうです!骸骨君も含めて。
戦闘以外での冒険者たちの意外な一面。これはぜひともシリーズ化してもらわないと(え
次回のお話もお待ちしています。

>ワイトさん
また嫌なところで寸止め作戦ですか(ノ∀`)
「アサシン」と言いながらも戦士スキルのほとんどをマスター、いやそれ以上の力を持つヘルアサシン戦。
ヒースの逃げっぷりを尊敬しながらも苦戦の様子が見て取れます。ほとんど執念めいたものもありそうですけどね(笑)
余裕の表情が得意(?)なラータも流石に神に祈りたくなる心境だろうなぁ…(;´Д`A ```
とにかくも続き、お待ちしています!

>白猫さん
なにやらスレが進んでると思ったらなるほど、白猫さんの小説投下がありましたか(笑)
さてさて、今回も面白く読ませてもらいました…。
神卸…ですが、これは想像つかなかった。スマグでちょろっとネルとエリクシルの話が出ていたものの延長だとは思いましたが
実は実は、とんでもないものだったのですね。改めて白猫さんのオリジナル設定に脱帽。
「神卸」という言葉自体は実際の昔話とかにもありそうですが、明らかに違うものみたいですしね。
名前関係は分かりやすい説明ありがとう、ネル君(笑) まだまだ読解力ってか理解力足りませんねorz
初登場なカリンとアーティの女同士一騎打ち、ネルとルフィエ、ルヴィラィの迫るアリアン遺跡地下のレッドストーン。
色んな人物と場面の今後が楽しみです。続きお待ちしていますね。

>21Rさん
やっぱりアデルとアレンのコンビは最高です(*´д`*)
ボヤ騒ぎになるほどのアレンの喫煙癖もそうですが、アデルの方向音痴もかなり年季入ってますね!
アデルにぜひともあのアリアンからバリアートまで行くクエとかやらせてみたいです(笑)
今回は和みデー(?)というか、まったりとした休息日でしたが…なんだか不穏な空気が流れ出しましたね。
大仰な冒険者たちの目的はなんなのか。続きお待ちしてます!

177ESCADA a.k.a. DIWALI:2008/01/29(火) 16:57:19 ID:OhTl4zsk0
>>128からの続きです〜

各々がミゲルと、そして魔老ディアスと対峙している中・・・エルフの民が逃げた先の森では、ラティナとフィナーアが怪我人の治療に当たっている。
「かたじけないぜフィナ、まさかいきなりこんな目に遭うとは思ってもなんだ・・・ちくしょうっ、ザッカルめ!!」フィナーアのペットである
原始人のシンバは固く握り締めた拳を地面に思い切り叩きつける・・・ぶつけ所のない怒りを晴らすように。エルフの民達も同じ気持ちに囚われていた。
「シンバちゃん・・・大丈夫よ、あたしや仲間達が、あの変態殺人鬼をぶっ飛ばしてあげるわ。だから・・・ね?気を落とさないで」「・・・すまねェ」
普段とは違い、心の底からシンバを気遣う彼女。だがその憂いを帯びた表情は一変し、目つきは狩人のそれと化す・・・!!!
「・・・フィナ、あんたも同じようだな?」「えぇ・・・どうやら罪のないエルフの人たちも殺そうとしているようね、あのおバカさんは・・・」
いきなり物騒なことを呟く二人に、傍で作業をしているラティナやエルフの民に戦慄が走る・・・!!
「お、おいおい・・・姐さん、あんたいきなり何を・・・」「そうですよフィナーアさんっ!!突然怖いこと言わなくてもンぐっ!?」
「シィっ!!・・・・ポソポソ(静かにしていて。ザッカルの手下がこの辺りを徘徊しているの・・・あたし達はそいつらを狩りに行くから
 ラティナちゃんはエルフの皆の手当てをしてあげてね?・・・シンバ、セルジオ!久々にやるわよっ!?)」
シンバと、リプリートマーキのセルジオはマスターの言葉に頷き、懐からフィナーアが所持する鞄を出した・・・中から3枚の布切れを取り出す。
彼女は服を全て脱ぎ捨て、一枚を胸に巻いて乳房を隠し、もう一枚はふんどしの様に締め付け、そして最後の一枚は額に巻きつける・・・。
首から銀細工のドッグタグをぶら下げ、地面から泥をすくい、それを顔に塗る。シンバとセルジオも、彼女と同じ迷彩模様の布を鉢巻状に締めて
泥によるフェイスペイントを顔に施した。

「ま・・・まさか、その格好は・・・!?」一人のエルフの青年が彼女達の野性溢れる姿に反応した。同時に他のエルフも言葉を付け足す。
「まさかとは思うが・・・アンタぁ、アリアンを中心とした砂漠地域で数々の裏組織を相棒のペットと共に、裸一貫で潰し回った奴なのか!?」
「オレも聞き覚えがあるぜ!!迷彩模様のビキニ一丁で墓荒らしのグループを単身で乗り込んで壊滅させたのもアンタだろ!?」

「うふふ・・・ご名答。これでもあたしはS級冒険者の一人なんだからっ!!雑魚狩りくらい何てこと無いわ、シンバ!セルジオ!いくわよ〜っ!!」
「ハっ、久々の狩りだぜ・・・血が疼くねぇ!!」「ヤッハ〜ゥ!!ジャングルでの戦闘を思い出すねぇ〜!!!トルルィィコォォォォオオォォ!!!」
臆することなく狩りへと出掛けるフィナーアとそのペットたちを前に、エルフの民とラティナは頼もしさと戦慄を同時に感じていた・・・

178ESCADA a.k.a. DIWALI:2008/01/29(火) 17:28:23 ID:OhTl4zsk0
・・・森の中。炎で燃え盛る村とは違い、夜の静寂と暗闇が辺りを包み込む。
不気味さ漂う小道を、ザッカルの部下と思わしきアサシンの一グループが歩を進める・・・。
「あ・・・あっ、アニキィ〜?何か恐いっすよォ〜・・・」一人のアサシンがビクビクと震えながら、気弱な声を出している。
「ま〜たいつものビビりかァ!?てめぇそんなんだからいつまで経ってもチキンなんだよっ!それにここら辺には猛獣なんざいねぇんだよっ!!」
先頭を切るリーダーと思わしき男が、先程のヘタレな部下に激を飛ばした。「そ・・・そうっすね」部下の一人は申し訳なさそうに、しかし未だ
気弱なアティテュードで返事を返した。そうして歩を進めること数分・・・リーダーの男が点呼を取ろうとした時、異変が起こった。

うっ!?・・・ドサリ

「おい下っ端ァ!臆病になりすぎて腹イタでも起こしたのか!?しょうがねぇぁァ〜・・・おらっ、とっとと起きやがれ・・」
リーダー格の男が、グループの少し後で蹲る下っ端を起こそうと場を離れるが・・・それが命取りになった!!
「ぎゃっ!?」「うぉぁっ!!」「ぐふぉぇっ!!?」・・・・次々と、いきなり部下達が地面に伏してゆく・・・。
「・・・は?」振り向くと、そこには関節を不自然に曲げられた者達の山が出来上がっていた・・・殆どの者が泡を吹いている。
「おいおいおいおいおいおいおいおいおいおい・・・・何だよこれ、何だよコレ何だよコレ何だよコレぇえぇぇぇ!!?!」
突如起こった事態に、男は頭を掻きむしるほどのパニックに陥っていた・・・だがそのパニックも、女の声が聞こえたと
思ったときにはもう止んでいた。

「おバカさん・・・このあたしが『猛獣女王』だってこと、忘れてたんじゃなくて?」

ゴキリと首から鈍い音がした後には、その男も泡を吹いて地面に伏していた・・・フィナーアのチョークスリーパーだ。
「はァ・・・意外とあっけなかったわ、たったの1分でゲームセットなんてつまんな・・・あっ、そうだわ!!
 この退屈をこの人のマッチョな肉体で晴らせばいいじゃない、あたしって頭いいわ〜!!それじゃ・・・いただきまァ〜す☆」

・・・・久々にまともになったかと思いきや、すぐにいつものエロ女モードに戻ったフィナーア。
気絶したリーダー格の男の肉体に抱きついたり色々したりして暇を潰すのであった・・・。


「おい、第二部隊から連絡がこねぇぞ?一体何してやがるんだあいつらは・・・」
「・・・隊長、それよりもこの沼地を渡ることを優先しやしょうよ。早く任務を終わらせないとザッカルさんが・・・」
「おぉ、すまんすま・・・ん?何だこの沼・・・色が、灰色に変わっているような・・・」
こちらは先程のグループとは別の部隊。森の中を歩く中、沼地に差し当たるが・・・そこは本来なら沼地は無い!!
灰色に濁った水の中から、一匹のリプリートマーキが姿を現した・・・!!!
「ヒャッホォ――――――――ウ!!!イーハイーハァ、アリーバアリーバァ!!!トリィコォォオォォオ!!」
甲高い声と共に、水しぶきを従えて現われたセルジオ、敵が仰天しているところにミラーカーズを掛けた。

179ESCADA a.k.a. DIWALI:2008/01/29(火) 17:47:01 ID:OhTl4zsk0
「げぇっ、リプリートマーキだぁ!?おかしい、ここには生息してないはず・・・」「ぐぁっ!?何だこの黒いモヤモヤは!!?!」部隊に乱れが生じる。
「ちぃっ、気味悪いもん投げつけやがってぇ・・・死ねぇ!!」部隊うちの一人が、セルジオの急所めがけてナイフを突き刺しに向かってきた!!
しかし彼は動じる様子はなく、ただナイフが刺さるのを待っているように見える・・・だがその刹那、セルジオが不気味に笑う!!!
「・・・ニヒ、引っ掛かったな!?汚してやんよ、スポイルドウォータァ――――――っ!!!」
足元に作って置いた灰色の沼が爆発し、相手の部隊全員に直撃した。まさに爆弾級ともいえる威力の前に、すべての敵が木っ端微塵に吹き飛んでいる。
「ん〜ん〜・・・オレ様の汚水爆弾、とんでもねぇ威力になっちまったなぁ〜。こりゃ直径30メートルは巻き込んでやがらァ・・・」
彼がボヤくとおり、辺りの木々は彼に近づくにつれて原型を留めていないほどに破壊され、ドライアイスが付着するほどの冷気が漂っている・・・

同じくシンバも敵の一部隊を壊滅させていた。
血に濡れた棍棒を肩に担いで、何も言わずにその場を後にしたところらしい。
彼の後ろには土が盛り上がったようなものが出来ており、その頂上には「戦士達よ、安らかに眠れ」と書かれた
敵とはいえ相手を労るつもりなのか、墓標のようなものが立てられていた。

「・・・これも、無垢な民を救うためのことなんだ。奴さんには悪いことをしちまったぃ・・・すまねェ」
呟きながら、シンバは月明かりが照らす小道をゆらりと歩いていく。

180ESCADA a.k.a. DIWALI:2008/01/29(火) 18:21:59 ID:OhTl4zsk0
そしてエルフの村の郊外・・・バーソロミューと魔老ディアスが一対一で対峙している!!
「ホホ・・・いいのですかな、お若いの?若者程度の力で、無限の魔力を持つ私に勝てるとでもおっしゃるのですかな?」
「さァ、それはやってみないことにはわかりませんよ・・・それに、僕は酔狂でしてね。因縁ある者同士の戦いが
 一番絵になると思うんですよ。今の状況に例えるなら、まさしく僕とあなたの魔術勝負、といったところでしょうか?
 ルシフェル夫妻に退席して頂いたのもその一環です。」
バーソロミューが冷ややかに笑う・・・彼もまた、足元に魔法陣を描いている・・・。
「ふむ・・・これは面白い若人と出会えたものですな。これも何らかの因縁なのでしょうに・・・まずは我輩の魔法を披露しましょうぞ。」
先程から宙に描いた数々の魔法陣が一斉に青く光る!!すると空の向こうからオレンジいろの明かりがこちらに向かってきた。
「あれは・・・なるほど、今のでメテオシャワーの10発分を詠唱した訳ですね。」「ハハハ・・・貴方はこれをどう迎え撃ちますかな?」
悠長に会話する二人の上空に、10個の隕石はもう迫っていた!!しかしバーソロミューに焦りは全く無い・・・・
「では、今度は僕の番ですね・・・・・面白いものをご覧に入れましょう。無の世界に通じる闇の扉を開かん、『ブラックホール』!!!」
詠唱したバーソロミューの前に、巨大な漆黒の穴が開いた!!ディアスが召喚した隕石はそこに吸い込まれ、跡形もなく消え去った。
「これはこれは、闇の元素を扱える人間とは!!フフフ・・・我輩と雌雄を決する魔術師なら、そう来なくてはなりませぬなァ。」
「おしゃべりも今のうち・・・冷たく凍てつく空気をこの手に纏わん、『チリングタッチ』!!」
テレポーテーションでディアスの背後に回りこんだバーソロミュー、彼の放ったチリングタッチがディアスを捉えた・・・!!
しかしそれは彼の魔法によって生み出された簡易式のホムンクルス、今度はバーソロミューが背後を取られた!!!
「残念・・・喰らいたまえ、『零距離メテオショット』!!!」「熱っ・・・ぐぁっ!!?」
振り向くも既に遅く、ディアスが放つ小型の隕石をバーソロミューは喰らってしまった!!彼の体が宙に浮き、吹き飛ばされる。
「うぅっ・・・アースヒール!!」何とか着地し、即座にアースヒールで傷を癒した。
「喰らってしまいましたか。だが、我輩も同じく喰らってしまったようですな・・・」そう呟くディアスの右手は氷に覆われている。
「どうやら、お互い魔法の腕前は互角のようですね、魔老ディアス殿。」「ふむ、どうやらそのようですな。バーソロミュー殿?」
二人の間にしばしの静寂が流れるが、バーソロミューがそれを断ち切った。
「では・・・魔法で拉致が空かないようなら、僕はこの肉体を以って、あなたを倒しましょう。」「ほう、それは如何なるもので?」
「今から見せて差し上げましょう。ブラックアートの裏の業・・・闇に染められし魔獣、『漆黒の堅狼』を!!!」

彼は豪語するや否や、服を脱ぎ捨て上半身裸になり、左手に闇の元素を集め、黒い球体を作り上げた・・・
それを自分の胸から体内に押し込むと、彼は蹲り・・・苦しみに悶え・・・屈強なウルフマンへと変貌していく。
だが、その姿は一般のウルフマンのそれとは違う。漆黒でありながらも美しく鋭い毛並み、銀色の瞳、白金の牙と爪。
そしてその背に輝く銀色の魔法陣を象った刺青・・・漆黒の狼男がそこにいた。

「・・・闇の力を授りし野生の力、その目に焼き付けてもらいますよ!!」
彼の放つ鋭い視線に、ディアスは戦慄せざるを得なかった・・・!!

to be continued.

181メイトリックス:2008/01/29(火) 19:00:45 ID:ZWCPfwCI0
Hellfire Salvage
01 : The Decidings Part.1>>9-11 Part.2>>59-61 Part.3>>130-133

「Nonpayment Part.1」

暑さには慣れているつもりだった。
アリアンからさらに西方、荒野の続く大陸中部の出身で生まれ育ったわたしは、厳しい環境にも人一倍強い。
それに何よりも、この一年のほとんど毎日、砂漠を渡り歩きながら過ごしたのだ。
いまさら暑さにやられるなんて。そんな油断があったのだろう。
灼熱のデフヒルズは、わたしのそういった甘い考えを跡形もなく蒸発させてしまっていた。

この地形のせいだ。
そこら中にそびえ立つ丘は、アリアン近郊にある砂漠地域の砂丘とはスケールがまるで違う。
それはもう、山だと言ってしまってもいいぐらいに。
わたしは最初、日を遮ってくれるものがあると喜んだ。過酷な気候に慣れてはいても、やはり快適に過ごせた方がいい。
けれどその数時間後には、空から神様のこぶしが降ってきてそれらをすべて吹き飛ばしてくれるのを期待したい気分になっていた。
デフヒルズの砂は、わたしの知るどんな砂漠の砂よりも白い。
キラキラと輝くその小さな欠片を、状況が違えば綺麗だとさえ思ったかもしれない。
やけどしそうな日差しを浴びながら、その中を歩いた後でなければ。
まばゆく輝くという事は、よく光を反射するという事。白い砂に覆われた地平や丘は、ほとんど鏡と変わらなかった。

頭がぼうっとしてきている。
チャドルとマントを着込んでいても、あらゆる方向から攻めてくる熱と光を防ぐ事はできない。
身に着けたものは焼けるように熱く、露出せざるを得ない目の周りや手は真っ赤になって水ぶくれができている。
めまいがした。ふらふらと踏みとどまったものの、足がゼリーになってしまったように思う通りに歩けない。
絶え間ない照り返しに痛めつけられた眼に映る光景は、何もかもが赤緑がかって見えた。
もう、だいぶ前から汗をかかなくなっていた。
自分がどういう状態になりかけているのか、のろのろと思い至る。
少し前を進んでいる人影に呼びかけようとしたが、喉が貼りついて声が出せなかった。
ニイドはわたしの悲惨な状況に気づかない様子で、スタスタと歩いていく。
この地獄のような暑さだというのに、彼はむしろいつもより元気に見えた。

そもそもの発端はわたしだった。
姉さんの残した情報から真相をたどれないなら、ウルという古き悪魔の方に当たってみるべきだと言い張ったのだ。
ニイドはこの提案に驚いたようだった。わたしをしげしげと見つめた後、それっきり黙りこくってしまった。
彼が尻込みしたとしても問題ではない。手がかりさえ与えてくれれば、ひとりでも行くつもりだった。
その旨を伝えると、彼はもっと驚いて首を振った。
「ウルは第2階位の名士だった。君では渡り合えん」
そしてまた少し考えた後、気が進まなさそうに言った。
「彼奴へ連なる道が無い訳ではない。ただ、信頼できぬのだ。止めておけ」
それでもわたしの意志が固いのを知ると、ニイドは説得を諦めた。
聞いた事のない言葉でぶつぶつと何かをつぶやいた後、同行を申し出たのだった。

ニイドは手を尽くしてくれている。
彼の地下室には、見た事も聞いた事もないような種類の武具がたくさん仕舞われていた。
出発の時はそこから新しい槍や鎧を選び出してくれたし、ボロボロのマントを手放そうとしないのを見ると、新品同様に修繕までしてくれた。
多分、感謝すべきなのだろう。
でも、今はひたすら彼が恨めしかった。
後ろを振り返ってくれさえすれば。そうすれば、同行者がどんなに危なっかしい歩き方をしているかわかるのはずなのに。
無神経なネクロマンサーへの不平を並べ立てながら、わたしは自分の身体がゆっくりと倒れていくのを感じていた。

182メイトリックス:2008/01/29(火) 19:01:20 ID:ZWCPfwCI0
視界一面が真紅に染まっていた。
耳を聾する轟音の中、畑が、街が、人が、すべてが火の海に沈んでいる。
わたしはひたすら逃げ惑っていた。
何から逃げているのか、なぜ逃げているのかも理解できないまま、ただ無心に走り続けた。
かつて人だったものが、たいまつのようにパチパチと燃えながら次々とすれ違っていく。
夜空は炎の色に照らし出され、溶岩さながらのまだら紋様を映して渦巻いていた。
建物が崩れ落ち、色とりどりのレンガや柱が、パニックに陥った人々の上に降り注ぐ。
息継ぐ間もなく、天から数え切れないほどの光の槍が襲来し、大通りにひしめく群集を片っ端から串刺しにしていった。
空気を切り裂く悲鳴、助けを求める絶叫が響く。
それらが消え去り静寂が支配したのち、燃え盛る炎の音だけが耳に残った。
わたしは最後に残されたのだ。
もう、どこにも逃げ場などない。
けたたましい笑い声が、誰もいない世界にこだました。
わたしはその声から逃げようとする。どこか遠くへ、この街から出なくては。
わたしは走る。果てを求めて、何も考えず、走り続ける。
この角を曲がれば、街を出る門がある――
そう確信して突き進むたび、通り過ぎたはずの街路が目の前に現れる。
家々の窓には亡霊が踊り、頭上では口が裂け白目を剥いた天使たちがわたしを指差して嗤っている。その口から赤い涎が垂れた。
何度同じ事を繰り返しただろうか。
引きつったようにくすくす笑う声がすぐ真上から聞こえ、足が止まった。
真上を振り仰ぎ、声の主を見定めようとして――愕然とする。
半壊した教会の鐘塔の上で、背の高い女がこれ以上ないほど楽しげに笑っていた。
姉さん。
どういう事――
自分ではそう叫んだつもりだったけれど、耳に届いたのは不快な哄笑だった。
それが自分の声だと気づくまでに、数秒を要した。
姉さんがくすくすと笑うたびに、わたしの口からも耳障りな笑い声が漏れる。
混乱した頭で、しかし、わたしは気づく。
姉さんの髪は、あんなに紅かっただろうか。
姉さんの肌は、あんなに白かっただろうか。
顔立ちは姉さんそのものなのに、あれはもう姉さんではない。
それでもわたしは、不愉快な笑いを抑えられない。
大声で笑うたび、身体の内に力が満ちる。
大声で笑うたび、身体の外に力が溢れる。
不意に雲が裂け、血の雨が滝のように落ちてきた。
雨に打たれた奇怪な天使たちが、げらげらと笑い転げながら墜落していく。
私はそれが嬉しくて堪らない。
姉が満足気に見下ろす中、私の身体も徐々に変異する。
背は伸び、髪は深紅に染まり、肌からは血の気が失せていく。
どうして自分の力を見ようとしなかったのか。私はかつての私の愚かさを嘲笑する。
そして、それを気づかせた姉の愚昧ぶりが哀れでならなかった。
彼女を見上げ、その紅い瞳を睨めつける。相手が僅かにたじろぐのがわかった。
もう遅い。
鐘塔の上に跳び上がろうと足をたわめて――視界の隅に翻る、空色のコートに気づく。
振り返れば、通りの向こうから小柄な死術士が私を見つめていた。
不遜な態度が気に入らなかった。惨めな生き物のくせに。
瞬く間に殺してやろうと手を伸ばし――そいつのマスクの奥に燃える、二つの火の激しさに怯んだ。
凍りつくような視線が、私の眼を捉える。
お前は誰だ。ニイドは冷ややかな声で吐き捨てた。

183メイトリックス:2008/01/29(火) 19:02:02 ID:ZWCPfwCI0
額に冷たいものが当たる感触に、思わず悲鳴を上げて跳ね起きた。
見ると、ニイドがぎょっとした様子で身を引いている。その手には濡らした布が握られていた。
状況が理解できない。
周囲を見回して、自分が木陰に寝かされている事に気づいた。
あそこに見えるのは……泉だろうか。透き通った水が、なみなみと湛えられている。
「オアシスだ」
いまだ衝撃から立ち直れないのか、ニイドがわずかに上ずった声で説明する。
「君は、その……砂漠の熱に中てられて倒れたようだ」
ようやく記憶が戻り、楽に呼吸ができるようになった。そうだった。わたしは彼と砂漠を歩いていたのだ。
ふぅ、と安堵の息をつくわたしに、ニイドはたずねる。
「悪夢か?」
嫌な夢だった。意味の通らない、気持ちの悪い夢。できればもう思い出したくもない。
「ええ、まあ」
わたしがあいまいに答えると、彼は思慮深げにうなずいた。
「気にかけぬ事だ。砂漠で見る夢は、旅人を惑わすと言うからな」
わたしも同じ意見だったので、特に何も言わなかった。
それっきり、どちらも口をつぐんだ。

「済まなかった」
わたしが泉から水をすくって飲んでいると、出し抜けにニイドがつぶやいた。
振り返ると、彼は砂漠の遠い地平を見つめていた。
「この荒れ果てた地は、驚くほど地下界に似ているのだ」
二度と還れない故郷を思い出しているのか、その声は震えている。
「見渡す限りの不毛の大地、埋もれた骨、我が身を燃やす地の熱――」
手を握りしめ、頭を垂れた。
「浮かれて歩く内に、君が私より脆き存在たる事を失念してしまっていた」
脆き存在。その言葉が胸に引っかかった。
なぜニイドは、いちいちわたしの事を気にかけるのだろう。
いくら力を封じられているとは言っても、わたしと彼の力の差は歴然だ。ゴーストとワイトぐらいに違う。
なのに、どうして。

彼の謝罪には答えず、わたしは話題を変えた。
「わたしたちはどこへ向かってるの?」
「ダメルだ。荒廃都市と呼ばれている」
ニイドはすらすらと淀みなく話す。
「私が唯一所在を知る古き悪魔が、そこに住まっている。奴なら或いはウルの目論見を承知しているかも知れん」
彼の声にためらいが混じった。
「エオローの名を持つ第15階位だ。狡猾で、欺瞞と残忍な策略を好む。油断せぬ事だ」
危険な悪魔だという事だろう。かすかな恐怖心が芽生える。
頭を振ってその感情を押しやると、わたしは決めた。
今言っておかなければ、もう機会はないかもしれない。
「ねえ、ニイド」
彼がわたしの目を見るのを待って、できるだけ気持ちをこめて伝える。
「むりやり連れてきて、ごめん。悪かったと思ってる」
ニイドの目代わりの炎が揺らいだような気がした。
顔をそむけ、ほとんど聞きとれない声で彼は答えた。
「我が意志がこの道を選んだのだ。どんな結末に終わろうとも、私は悔いぬ」

そう、決して後悔なんかしない。わたしは自分自身と姉さんに誓った。
沈む夕日が砂漠を黄金に染める。
ニイドの視線の先に目をやると、あの白い砂が光を反射し、幻想的な金の波濤を作り出していた。

184メイトリックス:2008/01/29(火) 19:02:54 ID:ZWCPfwCI0
――――――――――――――――――――――――
>>ESCADA a.k.a. DIWALI
おー、バーソロミューの変身が格好いいですねぇ!強大な力を持つであろうディアスを相手に、戦い抜けるのか。
しかし……何というか、フィナーアさん逞し過ぎ。某世界の警察国家の特殊部隊コマンドのようです。

>>ワイト氏
相変わらず臨場感のあるバトルシーンです!
スピードとパワーを兼ね備えたヘルアサシンに対して、戦巧者なラータの作戦勝ちと言ったところでしょうか。
最後のブラッドシェーカーは反則でしょう……!それにしても、ヒースは神出鬼没ですね。

>>◇68hJrjtY氏
いつもコメントをありがとうございます。
自分で言っておいて何ですが、特に気兼ねなく感想を述べていただければと。
文章というものは、まず読んでくれる人ありき、だと思いますので。私個人は。
先の展開を言い当てられてしまっても、その見せていく過程を工夫するという楽しみもありますし。
私自身、前回の話から時系列をかなり進めて第二話を書き始めようとしていたのですが、
皆さんからいただいたコメントを読むうち、思うところあって今回の話を挟もうと考えるに至りました。
まぁ、つまりアレです。相互作用って大切デスヨネって事で。

>>白猫氏
むむ、エリクシルはやはりレッドストーンに関係するものだったんですね。
韋駄天、神卸……。降神術でしょうか。頭の悪い私では理解が追いつかなくなってきたようです。
アーティとカリンの戦闘は拮抗して……と思っていたら最後があぁー。ちょっと笑ってしまいました。
強さの表現とか、戦闘技のバリエーションとかが凄いなと思います。手に汗握ってベタベタです。
そしてネル君!どさくさに紛れて何をやってるんだキミは!
本編の緊迫した内容に反比例するような、おまけコーナーが微笑ましいですね。

>>七掬 ◆ar5t6.213M氏
コメントありがとうございます。
登場人物が悶々とし続ける話が好きなので、どうしてもストーリーに進展がなかったりします。
七掬さんの新作もお待ちしておりますよー。また私をウルウルさせて下さい!

>>之神氏
やっぱり武道家は連撃技ですよね!ライト君のシーフらしいトリッキーな動きもラヴですが。
今更ながらに認識したんですが、ライトとブラックという名前は対照を成してるんですね。気づくのおせーです。

>>FAT氏
エイミーさん……大丈夫なんでしょうか。儚げで不安になります。
ジョーイ君は二人を心配して来てくれたんですよね。それをきっぱりと断らざるを得ない胸中を思うと……。
固い決意と出立というものには、やっぱり心を動かされます。
果たして、ラスさんを見つけて連れ戻す事はできるんでしょうか。

>>718
旅する手練れの職人コンビ、といった風情ですね。
考えてみると、ネクロマンサーの風貌はツナギを着ているようで、製造業とかには向いているのかも知れません。
裏方的な日常のヒトコマって、世界観を深める大事なものですよね。

>>◆21RFz91GTE氏
方向音痴って、意外すぎる欠点だ……。何だか親近感が湧いてきました。
コメディチックな騒動を巻き起こしつつも、その裏でしっかりと何かが起こりつつあるようですね。
気になるじぇ。

185◇68hJrjtY:2008/01/29(火) 23:49:19 ID:oILznhIo0
>白猫さん
他の出来事の大きさに気を取られてましたが、ネル君とルフィエががが!
…でも、やっぱり二人の間には色々な障害がありそうな気がします( ´・ω・)
いや、リレッタもそうですが(笑)、ネル君とルフィエが落ち着いて自分を見なおせられれば。応援してます(笑)
以上、二重レスすみませんでしたorz

>ESCADA a.k.a. DIWALIさん
あぁ…折角フィナ姉が久しぶりにカッコイイって思えたのに!
ゲリラ兵士みたいな彼女もまたイイですね、というかコスプレ女王状態のような(笑)
シンバが実は忠義を大切にするタイプ(?)というのが判明してちょっと嬉しかったり。
一方ではバーソロミューとディアスの一騎打ち…まさかウルフマン状態へ闇の魔力を送るという技を出すとは思いませんでした。
実はウルフモードも強いんですよね、ミュー君。しかしディアスも一筋縄ではいかなそうだし。
続きお待ちしてます。

>メイトリックスさん
砂漠の情景やピアースの夢など、分かりやすい表現方法で読み側にも想像が容易でした。
って、ダメルまで徒歩で行くつもりだったんですか((((;´・ω・`)))) 実は私もずっと前に挑戦して途中で即死しました(笑)
ゲーム内ではじゅうたんやらで突っ走ってても、実際考えると砂漠を往くというのは恐ろしいことですね。
ピアースの心にはまだ姉とのわだかまりが残されたままになっているのでしょうか。この旅の行方に姉の何を見出すのか…。
エオローとの出会いとなりそうな今後の展開、楽しみにしています。
---
感想に関するご意見、ありがとうです。
そうですね、もし私が何かしら言い当ててしまったとしても書き手さんの頭の中にあるストーリーはそれよりもっとしっかりしたものでしょうし
メイトリックスさんの仰るようにその過程を読むというのも重要な楽しみ方だと思います。
あまり突っ込んだ追求は控えつつも必要以上に気兼ねせず…やはり中庸は大事ですね。

186之神:2008/01/30(水) 06:58:46 ID:xJDkyE7Q0
1章〜徹、ミカの出会い。
-1>>593
-2 >>595
-3 >>596 >>597
-4 >>601 >>602
-5 >>611 >>612
-6 >>613 >>614
2章〜ライト登場。
-1>>620 >>621
-2>>622
-○>>626
-3>>637
-4>>648
-5>>651
-6 >>681
3章〜シリウスとの戦い。
-1>>687
-2>>688
-3>>702
-4>>713>>714
-5>>721
-6>>787
番外クリスマス >>796>>797>>798>>799
-7>>856>>858
-8>>868>>869
番外年末旅行>>894-901
4章〜兄弟
-1>>925-926
-2>>937
-3>>954
-4>>958-959
-5>>974-975
5冊目――――――――――――――――――――◆
-6>>25
-7>>50-51-54
-8>>104-105-106
-9>>149-150

187之神:2008/01/30(水) 07:28:50 ID:xJDkyE7Q0
α
「とりあえず」
「返してくれ、笛」
シルヴィーは手を差し出し、笛の返還を催促した。

「ああ、これキミのか。いきなり空から降ってきてびっくりしたけど・・・」
「まぁ・・・・・・ちょっと落としちゃって」
んー・・・・位置的には敵・・・・・の少女とのん気に話してていいのかと思いつつ、戦闘になったら勝てないとも思い出した俺だった。
んー、何か忘れてるような・・・・何だろう・・・・
「・・・・・・あ!」思わず間抜けな声を出してしまった。
「どうしました?」
「ミカ・・・・・」と言いかけ俺は、拘束されたミカの所へ向かった。


γ
「んっ・・・・・当てるとは思いませんでしたよ」ダラダラと血を滴らせながら、ブラックは笑った。
「ナメてもらってもな、これでもシーフは真面目にやってきたんだ」
「真面目に泥棒って・・・・・いえ、何でも無いですが」
「オラ、まだ終わってねえぞ・・・・・」
ライトの投擲斧が、風を切ってブラックに向かう。
「・・・・・・・・・・。」
タン!
と、地面を蹴ったブラックは、飛んできた斧を蹴り落とした。
「おお、上手いもんじゃないの」
そう言ったライトからは、既に斧が飛んでいた。
「くっ・・・・・・」
声を漏らしつつもブラックは、まるで空中を舞う紙切れの如くそれらを避け続けた。
一瞬、ライトの攻撃に間が空き、そこを狙ったようにブラックは間合いを詰める。
「オラっ・・・・・・・・?」
蹴りを決めようとしたブラックは、そこにライトが居ないと蹴りを振ってから気がついた。
気がついた時は、遅かったのだが。
「・・・・・・・!」
首筋にナイフが当たっている。それは喉をいつでも掻き切る事ができる角度にしてあり・・・・、当然それはライトに握られたナイフだった。
「後ろ取られるとはな」
「・・・・・・・」
ブラックの背後から首にナイフをかけるライトは・・・・・・、迷っていた。
このまま殺してしまうか、それとも・・・・・・だがその前に聞かなきゃな。
「俺はいつでもお前を殺せる。ちょっと手を手前に引けば、お前の喉笛はいい風穴になるだろうな」
ナイフを握る腕に力を入れる。
「つまりアレだ、勝ちだな俺の。で・・・・・」
「何ですか、殺すなら・・・・・」
「解毒剤」

α
ミカは、弱っていた。
一言で言うとそうなるだろうか。
全身から血を出し、針に蝕まれ、息も細い。
まさに「死に掛け」だった。

「おい・・・・・ミカ?」
「なんだよこれ・・・・・刺した出血もヤバいけど、こんなになるもんなのか・・・・?」
その時、横から手が伸びる。
「これは・・・・・・」
「え?」
「毒」
声の主はシルヴィーで、彼女はミカに手をかける。
「おい、アンタ・・・・・殺すとか考えてねえよな?」俺は出来る限りに睨み付ける。もとは敵だ、こいつは。
「今更・・・・・・もう目的は無いし」
「・・・・・何?」

188之神:2008/01/30(水) 07:56:58 ID:xJDkyE7Q0
γ
「解毒剤」

俺と戦いながらもミカを苦しめる為なのか、こいつは・・・・・ブラックは、ミカに毒を投与した。
「あんだろ?あの毒に対処できるもんが」
「・・・・・・・ハハハ・・・」
「何笑ってるんだよ」
「そんな悪魔に、治療薬なんて準備するわけ無いじゃないですか」
「チッ、お前どこまで・・・・・・!」
「・・・・・・・っ!」突然、身体が浮いたと思うと、そのまま地面に叩きつけられた。
「マズいなコリャ・・・・・・・」ブラックが目の前のライトにナイフを向ける。
先ほどまでナイフを立てていた男が、今度は立てられる男へとなってしまった。
「油断しすぎですよ」
「・・・・かもな」

ライトはポケットにある武器を確かめる・・・・・が
「おっと!武器を出すなんて許しません・・・よっ!」ブラックはナイフを振りかぶる。
ドス、と気味の良い音が響き、血柱は立つ。
振りかぶったナイフは、ライトの肩に突き刺さっていた。

「ぐっ・・・ああああああああっ!」
ギリギリとナイフを捻られる度に、声が響いた。
「面白いですね・・・・・・ここに来た人、赤い悪魔や兄さんも死んでしまうなんて」
「わっ・・・・笑えねえなっ・・・・・ガッ、う・・・・・」

それはとても、兄弟とは思えない光景だった。


α
「私は使われるのに疲れたし、もうしぶとく生きていくのも面倒くさいのよ」
「生きてて良いことなんて、無いから」うつむくシルヴィーは涙目にも、悲壮に満ちた顔でも無かった。
それはただ、絶望し、失望し・・・・・・目的を見失った者のリアルな表情だった。

「だから殺しはしないから安心して。そして」
「ん・・・・?何これ」
「鍵。ここの上の階に、箱があるの。それの鍵」
「いや今はミカを助け・・・・・・・」
「その助ける薬が、その箱に入ってるって言ってるのよ」
「わ、わかった!いい、行って来る・・・・・!」


ミカを助けたい・・・・・・それしか考えて無かった。
戦えないし、戦略立てられるわけでも、絶対死なないワケでも無い。だから俺は、俺に出来ることを・・・・!
会談を駆け上がりながら、俺はそんな事を考えていた。

「ここ・・・・・か?」
ついたその部屋は、箱が山のように積みあがる部屋だった。
うぇ・・・・しまった、どういう箱かくらい聴いとけば良かった・・・・。

どれだ!どれだどれだ!あーっ、わかんねえ!
これか・・・・・違う、これ・・・・・・も違う!
何してんだか・・・・・・もう一度シルヴィーに聞くか・・・・・・・。

と、立ち上がって部屋を出ようとした時だった。


「おースゴっ!何だここ箱いっぱいじゃないかっ!」

189之神:2008/01/30(水) 08:34:15 ID:xJDkyE7Q0
α
「おい・・・・・何だ今更こんなときに・・・・・」俺は敬語なんて忘れて呆れて話しかける。
「いやぁ、一度は帰ろうと思ったんだけどさ、どうせヒマだしとまたここに来てみたんだよねっ」声の主は、ナザルド。
「あー・・・・そうですか。俺はちょっと急いでるんで、またにしてください」
「何をそんなに急いでるのさ?」あーっ、急いでるのに・・・・・・。
「ええとですねぇ・・・・・・・・!」俺は苛立ちながらも物凄く手短に説明した。

「だから・・・・・それでこの部屋に来たんですよ!で、急いでるんで俺はこr・・・」
「アレだ」いきなり、ナザルドは1つの箱を指差す。
「え・・・・?」
「絶対アレに、その薬が入ってる!」
はぁ・・・・・・そんな当てずっぽうな・・・・・。
「空けてみなって、絶対それだよっ」催促するナザルドを放って置いても良かったのだが、俺はとりあえずその箱をあけて見る。

「注射機・・・・・・?」
ナザルドの指差した箱に入っていたのは、2本の注射機だった。

どっちだかわからねえ・・・・・!いいや、両方持っていけば間違いは無いだろ・・・!
またしても急いで階段を下る。
そして部屋に到着した時、俺は見た。

ライトが、やられてる・・・・・・・・


γ
「さて、いつまでも遊んでるわけにはいきません」

「そろそろ、死んでくださいね」ナイフを、ライトのように首筋に運ぶ。
既に倒れているライトは、もう動けなかった。

けっ、もう終わりか俺は・・・・・・・面白かったが、面白く無かったな・・・・・。
そうしてライトは死を覚悟したが・・・・・・・・

α
やられてる・・・・・・!
どうしようか、今すぐこの壁に刺さる斧を投げつけてもいいのだが・・・・・。
考えるより先に、身体が動いて斧を抜き取っていた。
ライトに当たらないように・・・・・・素人なりに狙って・・・・・・る時。
「貸してっ」
といきなりナザルドに斧を奪われた。
「なっ、何すんだ!」
「大丈夫、俺がやると当たるんだよ、絶対!」意味不明の自信に包まれ、ナザルドは笑う。
そして・・・・・・投げた。
――――――――――――――――――――

とりあえず、ミカが先だ・・・・!ライトはきっと・・・・平気だろう。

「シルヴィーさん!これ、どっちですかっ・・・・!」注射機を2本差し出す。
「これです」シルヴィーは2本取り、片方の薄黄色の薬品が入った注射機を構える。
「えっ・・・・・・シルヴィーさんがするんですか・・・・?」
「貴方にできるの?」
「いえ・・・・・お願いします」
信用はできないが、自分の注射の腕のほうが信用できなかった。そうして彼女に任せることにした。

「・・・・・・っ」かすかにミカが動く。ピクリと、少しの反応。

――――――――――――――――――――
αγ

「ぐあっ・・・・・・・!」
「ふっふっふっ、まるで流星のごとく・・・・・・!」
「必殺、シューティングスターだっ!」
「ぐあああああっ・・・・・ガハッ・・・・・うっ」
ナザルドが投げた斧は、ブラックにまさしく『命中』した。
背中に手を当てるブラック。
「何をっ・・・・・・誰が・・・・・・・・ぐっ」
バタっ!と倒れ、そのまま意識が飛んだようだ。
驚いたのはライトもだった。
突然声を上げて倒れる弟を見て、誰がやったのかと思えば・・・・・。
「お前か・・・・・さっきもチラチラ見かけたが」
「おう、俺だ。まさしく俺な!」
「お前・・・・・・えらく運がいいな。素人だろう・・・?」
「そりゃあ当たるさ!」
「運にしか振ってないんだもん!」

190之神:2008/01/30(水) 08:43:59 ID:xJDkyE7Q0
おはようございます。
ちょっといつもより少し多めに載せました。
ちょっと整理。

今はライトもブラックも2人とも倒れてる感じですね。
で、ナザ君は運剣士です。しかも極。

そろそろこの章も終わるところです。
ちょっと時間あるので早めのUPになりそうですが(・∀・

そして、いつも感想ありがとうございます。
では、引きつづき小説スレをお楽しみください。之神でした。

191ワイト:2008/01/30(水) 19:26:47 ID:K6NYKD9I0
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どうにもならない血の真空波が、絶望を誘うように飛んでくるっ!!
「(俺の人生此処まで・・か?)」ラータが、諦めかけた・・その直後!


「コーリングッ!!!!!!」
シュンッ!!!ヒースが!何と、ラータを周囲に呼び寄せたっ!!!
後一歩と言う処で、仕留め損なった「ブラッドシェーカー」は、目標を見失い
その不気味さを漂わせながら、一度決めた目標を探し求め砂漠を徘徊する・・・!

「ヒースッ!!!良くやったぞっ!コールしてくれるなら、してくれるで
逃げる前に、俺に教えてくれても良かったんじゃないか?」
「いやぁ・・ごめんごめん!でも、あれを回避する事は出来ないと思ったし、
2人共助かる為に・・・第一優先にコーリングをする事を心掛けたんだよね。」

・・・・・ピーンッ!(ラータは何か閃いたようです。)

「あ・・・ちょっとまてぃっ!!コールを使えるって事はぁ「エバキュエイション」
とかさ・・たぶん「タウンポータル」も使用できるよなぁ??それってよ、もしかしたら
最初から、こんな事に成らずに無事オアシス都市アリアンに着けた様な・・?」
「まー、そのですね・・(本当に忘れてたなんて回答したら、たぶん凄い事に・・・)
えっとー・・・今は助かってるんですし・・ね?後にしましょうよ、その事は!」
「う〜む・・腑に落ちないが、今の所はとりあえず、それでも良いけどな?
それよりも今度からは、頼むから「コーリング」する時は一言教えてくれよ・・・」
「わかった!それじゃその傷付いた身体を治療するね!「フルヒーリング×5!!!」
見る見る内にラータの身体は修復されて行く・・!そして完全に癒えた直後に!
やり取りをしている間に「ブラッドシェーカー」に運悪く見つかってしまった・・!!

「くそ・・!だけど、さっきみたいに簡単には終わらないぜっ!!」
「この「ブラッドシェーカー」未だに消えずに、この場に残り続けてる・・・・!
もしかしたら・・なんだけど自由に活動出来る意思を持っているのかもしれない!!
「そんな事が、あり得るのか?まさか、俺を殺すまでは消えないなんて・・ねぇ?」
「そうかも・・えっ!!!??」「う!何なんだ・・これは!?」

喋るのをやめてしまう程に誰もが驚く光景を、2人共が目のあたりにしてしまうっ!!!!
見つかってしまったが、先程から動きの無い事に気づいた、2人はそれに見入ってしまう・・!
それは「ブラッドシェーカー」の血の刃が・・見れば見る程にその姿形を変化させていく!!

「おい・・あれってもしかして!?俺が倒した「ヘルアサシン」なのか・・?」
そう・・!断末魔を上げ息絶えたアサシンの死体を2人共確認しているはず・・!
だが、最終的な変貌を遂げた・・その「ブラッドシェーカー」は確実にヘルアサシンの姿を形どるっ!!!
そして・・呆気に取られた、ラータとヒースはこれには、流石に驚く以外は何も出来なかった!!

「ああぁぁぁぁぁっっ!!!!!!!」
血によって完成されたアサシンは突然、歓喜の余り大声を上げるっ!!!
「ヒヒッヒヒヒヒッッ・・・我は滅びぬ!!貴様らを再び地獄に突き落してやろう!
だが・・その前に!先程との大きな違いは何で出来ているかということだ・・!」
「血を・・ベースにして、構成されたと言う事ですか・・?」割ってヒースが言葉を繋げる・・!
「そういう事だ!不思議だろう・・?何故血によって蘇る事が出来たのかな!!!」

「おいおい?そんな事聞いたって出来る事じゃねぇだろ??とっとと
勝負を再開しないか?それは・・てめぇが一番望んでいる事だと思うけどな!!」
「その余裕は何処から出てくるんだあぁぁ!!!?絶対に殺してやる・・!!」

192ワイト:2008/01/30(水) 19:34:32 ID:K6NYKD9I0
ラータは絶対絶命の危機を、ヒースの「コーリング」によって助けられ・・
しかし脅威は、まだ去ってはいなかった!「ブラッドシェーカー」に
見つかってしまう!だが、それは姿形を変化を始め・・「ヘルアサシン」の姿を模しながら、
最終的に血によって完成された「ヘルアサシン」となり・・再び2人を襲うっ!!!

と言った所です!続きはまた時間に余裕のある合間に書きこませて頂きます!!それでは|ω・)また!

193FAT:2008/01/30(水) 20:27:36 ID:i6bpBbJo0
前作 二冊目>>798(最終回)

第二部 『水面鏡』

キャラ紹介 三冊目>>21
―田舎の朝― 三冊目1>>22、2>>25-26 
―子供と子供― 三冊目1>>28-29、2>>36、3>>40-42、4>>57-59、5>>98-99、6>>105-107
―双子と娘と― 三冊目1>>173-174、2>>183、3>>185、4>>212
―境界線― 三冊目1>>216、2>>228、3>>229、4>>269、5>>270
―エイミー=ベルツリー― 三冊目1>>294、2>>295-296
―神を冒涜したもの― 三冊目1>>367、2>>368、3>>369
―蘇憶― 五冊目1>>487-488、2>>489、3>>490、4>>497-500、5>>507-508
>>531-532、7>>550、8>>555、9>>556-557、10>>575-576
―ランクーイ― 五冊目1>>579-580、2>>587-589、3>>655-657、4>>827-829
>>908>>910-911、6>>943、7>>944-945、六冊目8>>19-21、9>>57-58、10>>92-96
―言っとくけど、俺はつええぜぇぇぇぇ!!― 六冊目1>>156

―2―

 魔法都市スマグを出る頃にはもう、太陽は山を離れ、空に輝いていた。二人は半日がか
りでヘムクロス高原南部の険しい絶壁地帯を下ると、鉱山町ハノブを目指した。
「ふひぃ〜、休憩休憩っと」
 二人は神聖都市アウグスタから伸びる道との交差点で腰を下ろした。レンダルは早速腰
にぶら下げた水筒を掴み上げると、がぼがぼと勢いよく飲み干した。
「ぷっはぁ〜、うまいなぁ〜」
 口元からこぼれた水の飛沫が太陽に当たってきらきらと飛び、デルタの服を濡らす。し
かしデルタは何の反応も見せない。
「おい、何落ち込んでんだよ」
 いらいらとした視線でデルタを睨む。デルタはやや陰ったまま、
「だって、だってぇ〜、せっかくジョーイさんが気をきかせてくれたのに、お姉さまがあ
んな態度とるからぁ」とむっつりとした顔をレンダルに向ける。レンダルはさらにイラッ
としてデルタのほっぺたを両手でつまんだ。
「てめぇはエイミーよりジョーイのほうが大事なのかよっ! 俺たちはエイミーのために、
ラスを連れ戻そうって決めて、あいつを置いて出てきたんだろーが! そんなにジョーイ
が恋しけりゃ帰ればいいだろ!」
「ほれひひゃま、しゅこしふぁほちょめこごろふぉふぁかっちょくらさひ」
 ほっぺをつままれたままのデルタの言葉は聞き取れないほど壊れていた。レンダルは少
し面白くなってそのままほっぺを縦々横々に引っ張り、ちょんと手放した。
「あ〜、いっっった〜、ですわ。お姉さま、そうやってすぐ暴力を振るうのはいけません
わ! このデルタの柔らかなはぁとが、でれだけきづついているかわかってらっしゃる
の?」
「うるせえ、言葉も正しく綴れない馬鹿が」
「さ、最後のはお姉さまに痛めつけられた頬が引きつって、うまくしゃべれなかったんで
すぅ!」
 レンダルはくっくっくと笑い、ようやく元気の出てきたデルタに安心した。デルタもレ
ンダルにかまってもらえるのが嬉しく、ジョーイのことなど一瞬で忘れてしまった。

194FAT:2008/01/30(水) 20:28:16 ID:i6bpBbJo0

 二人が鉱山町ハノブに着いた頃にはもう陽は傾きかけていた。周りを高い山に囲まれて
いるハノブに訪れる夜は早い。二人は急いである人物を探した。
「素晴らしい! このジム=モリのエンチャット文章を五回連続で成功させるとは! こ
のジム=モリ、何年も、様々な人物を見てきたが君ほどの強運者は見たことがない! 君
は神の子か!」
「お、いたいた、詐欺師」
 探していた人物とはド派手な驚き方をしている男――ジム=モリ――のことであり、二
人はずかずかと商売の邪魔をした。
「お姉さん、気をつけなよ。こいつ詐欺師だから、こんなうまいこと言ってあんたを喜ば
してるけど、結局最後は全部失敗、破壊させて、あっちの男の売ってるボンドを買わせる
つもりだからな。今が止めどきだぜ」
「そうですわ、さぁ、お姉さん、お逃げなさって!」
「こぉぉぉぉぉらぁあああああ!!」
 ジム=モリの怒鳴り声に驚き、客の女性は逃げるように去っていった。
「あ〜あ、せっかくうまくいきかけてたのになぁ、ジム=モリのおっさん、残念だったな
ぁ」
「うっうっ、かわいそうなジム=モリおじさま……」
「てめえらのせいだろうがぁあああああ!! レンダル! デルタぁああああああ!!」
 顔を真っ赤にして怒りを露にするジム=モリ。しかし怒られても、二人はそんな姿をつ
まみに笑うのであった。
「はっはっは! すぐむきになりやがって! お前ほんとに面白いよなぁ。こいつがエイ
ミーの兄だなんて信じらんねーぜ」
「むっふふふ、むっふっふ。いつ来ても、ジム=モリおじさまをいぢめるのは楽しいです
わ」
「ちっ、全く、教養のない餓鬼どもめ。まあいい、いつものことだ。今日はなんだ? ま
たいつぞやのように一日中俺にひっついてきて商売の邪魔をする気じゃないだろうな」
「のんのん、今日はそんなつもりじゃありませんわっ」
「おめえの家をいただきにきたんだよ」
 盗賊のような柄の悪さで、レンダルはすごんで見せる。
「なっ、家を! だと! ふざけるな、あの家には俺の愛する……」
「ことりがすんでるのぉ〜」
「ぴーちくっ! ぱーちくっ!」
 二人は思いっきり馬鹿にした態度でジム=モリをからかう。そしてジム=モリは再び怒
り、怒鳴りつける。
「ふざけるなぁああああ!! 俺のぱーちくとぴーちくを侮辱するなぁあああああ!!」
「はぁ、調子のんなよ、こら」
 レンダルはずいと上体を反らしてジム=モリを威嚇する。ジム=モリは昔から暴力が苦
手だった。つまり、この性が暴力のような女は大の苦手だったのである。
「おぃっ、レンダル、すまなかった、ぴーちくとぱーちくのことを馬鹿にされてつい……」
「つい、なんだよぉ、おいっ」
 レンダルのまねをしてデルタも上体を反らせ、ジム=モリを威嚇した。ほんわかデルタ
もジム=モリの前ではなぜか強気である。
「ごめんなぁ、レンダル、デルタぁ。もう暗くなってきたし、おじちゃんの家に行こうか」
「今夜から俺の家だがな」
「あっ、お姉さまずるぃい! ぴーちくぱーちくはデルタのものなのぉ!」
「じゃあデルタ、ぴーちくぱーちくはお前の物、家は俺の物でどうだ?」
「賛成ですわっ! ぴーちくっ♪ ぱーちくっ♪」
「はぁ……」

 ジム=モリにとっての厄日が今、始まった。疫病神たちは無残にもジム=モリの平穏な
日々を奪い、彼は不安を抱え、疫病神たちを連れ家に戻った。
「ぴーちく、ぱーちく、お前たちだけが、俺の心の支えだぜ」
 ジム=モリは重い手取りで玄関のドアの鍵を開けた。背後の疫病神たちの怪しく光る目
にも気付かずに……。

195FAT:2008/01/30(水) 22:35:15 ID:i6bpBbJo0
こんばんは。NPCなジム=モリさんですが勝手に設定とかいろいろいぢってます。
ジム=モリファンのプレーヤー様方、ごめんなさい。

>>68hさん
毎度御感想頂きありがとうございます。
私もこの二人を書くのは久しぶりだったので嬉しさのあまりつい暴走を。
次はもっとひどくなる予定です。
タイトル通りの熱い人物もただ今思案中です。戦闘、熱く書きたいです。

>>159さん
感想ありがとうございます。ラスは鉄の道、レンダルたちはハノブなので距離的には
もうほとんどないんですよね。どのように仕掛けるか、じっくりと考えて書いていこう
と思います。

>>718さん
前作もそうでしたが、決してゲームの中の話を書いているのではなく、より現実に
近い目線で作品を書かれているのが素晴らしいです。
もっと色んな職種があって、雇う側、雇われる側の双方に望みがあり、それが互いに
一致したとき、労使関係が成り立つ。RSは選択肢がちょっと……ですよね。
しかし718さんの話は短いながらも完結しており、短編話の理想だなと思います。
次はどんな話が読めるのか、楽しみにしております。

>>白猫さん
チャージングもいいなぁ。基本的に知識ランサーはCP貯めスキルがないので(ラピは物理)
知識が反映されるCP貯めスキルがほしいところです。とはいってもアーティさんのチャージング
はCPがっぽがっぽ持ってかれそうですが。
ネル君、やるときゃやるねえ。デリカシーは足りてなさそうですけど><
なにがともあれルフィエさん、おめでとうっ!

>>21Rさん
タバコ……やめたつもりでもこんな描写読んじゃうとつい吸いたくなっちゃいます。
それにしてもヘビースモーカー。部屋で吸いすぎると目に沁みますよね。
アデルの天然キャラがまさかで面白いです。いい意味でアデルのイメージが崩れました(笑)

>>ESCADA a.k.a. DIWALIさん
敵からすればフィナーアはプレデターのようですね。
突然倒れる仲間、見えない敵、パニックに陥るリーダー。
戦闘が終わった後のフィナーアはエロスでほっとしました。
漆黒の狼男、満月がよく似合いそうでかっこいいです。
ディアスほどの実力者をも戦慄させる力、楽しみにしております。

>>メイトリックスさん
デフヒルズの砂漠は恐ろしいですね。足がゼリーになったなんて足をとられ易い
砂漠の不安定感と暑さでよろめく足元のおぼつかなさを一言で表した素晴らしい言葉選び
だなと感心致しました。メイトリックスさんは非日常的な(ゆとり世代視線)難しい
言葉をあたかも自然に使っており、その語彙力とセンスに毎回脱帽しております。
ピアースの見た夢は暗示なのか、過去なのか、狂っていく彼女が心配でした。
ニイドの知る悪魔、エオローは二人の望むものを知っているのか、次回も期待して待っております。

>>之神さん
ナザルドさん運剣士だったんですか!? おいしいとこどりですがブラックさんの
ドロップアイテムには期待しちゃいますね\\
さぁ、ドロップするのは水色かUかDXUか!?
徹君でも装備できるような現実世界アイテムなんかが出てくればなぁと期待しております。

>>ワイトさん
おぞましいほどの執念。血の塊ってだけでも十分気味悪いのにそれが倒したばかりの
ヘルアサシンに……
以前の暗黒呪術(?)もそうでしたが、恐怖を感じる描写が上手いなぁと思います。
実際に自分だったら……と思うとぞっとします。
続きをぶるぶる震えながら待っております。

196◇68hJrjtY:2008/01/31(木) 12:33:05 ID:GO5BZKE.0
>之神さん
すっかり之神さんも短編専門から長編作家さんですね(*´ェ`*)
しかしなんと、ナザ君は運剣士だったとわ…。実物(?)を見るのはこれが初めてです(恥)
でもその運のお陰でミカの解毒やブラックへの攻撃など突然逆転できましたねヽ|・∀・|ノ ある意味最強キャラだったりして。
シルヴィーも敵だと思いたくないキャラだったので味方になってくれて(?)ちょっと嬉しいです。
ブラックも倒れ、阻む者は誰も居なくなったように思えますが…うーん。次回楽しみにしています!

>ワイトさん
血の呪いといいますか…ただの「ブラッドシェーカー」ではないというのは分かりますが、やっぱり執念めいたものが怖い。
恐ろしいのは血によって作られた身体ということは致命打となる攻撃方法が難しいところですね。
ピンチはコルによって救われたラータですが…どのようにブラッド・ヘルアサシンを攻略するのか。
「いきなりコル」はビビりますが、やっぱりパーティープレイってイイですね(*´д`*)
続きお待ちしています。

>FATさん
おお、ジム=モリさん登場(笑) なるほど、エイミーの兄という設定は面白いです。つながりもありますしね。
ということはリンケンのNPCでエンチャット文章をくれるダニアン君も実は実は…!?(こら
こんな妄想はさておき、レンダルとデルタのほのぼのした旅がランクーイとレルロンドの旅を彷彿とさせます。
ある意味似た者同士な二人と二人。私も彼ら彼女らはとっても好きなので掘り下げた逸話や物語はとっても楽しく読ませてもらっています。
ジムさんのぴーちくぱーちくの真髄(?)も非常に気になりますが(笑)、続きお待ちしてます!

197718:2008/01/31(木) 13:39:08 ID:gXqJ5/rQ0
感想を投稿するときは名無しにしていたんですが、何だか
感想を一つも投稿しない薄情者に思われるかと思ったので
718で投稿することにしますw


>ワイト氏

戦略的撤退・緊急回避時のコーリングですね。
ブラッドシェイカーという技の元々の特性を考えると、この判断はGJと
いわざるを得ないでしょう。
はてさて、呪われた力でほとんど無敵にも思えるヘルアサシンですが
2人に勝機はあるのでしょうか?

>白猫氏

灯台下暗しとは正にこのことでしょうか、数多の冒険者が往来する
アリアンの地下にレッドストーンが眠っているとは。

それにしてもハラハラと、先の読めない展開ですね。毎回、全てが意外な
展開で驚いてばかりです。

>◆21RFz91GTE氏

同じく禁煙中の身としてはニヨニヨしますねー。にしても、吸い過ぎでしょうw
不穏な雰囲気の集団が到来しましたが、これはウワサの敵対ギルドの
面々なのでしょうか。このまま激突してしまうのか、はたまた・・・。

>ESCADA a.k.a. DIWALI氏

シンバのシーンを読んで、シンバに対して今まで持っていたイメージが
ガラリと・・・!責を追うものの悲哀がチラリと覗き、グッと来ます。

>メイトリックス氏

ピアースの夢は、読んでいるこちらとしても「見たくない悪夢」を見せられている
ようでとても苦しくなりました。

まるで夢に干渉してきたかのようなニイドの出現、ピアースの悪夢が何の暗示
なのか気になります。

―――――――――――――――――――――――

感想ありがとうございます。常々ネクロにはハンマーのような丸みのある
武器が似合うなあと思っていたのが今回書き始めたきっかけでした。

裏方的な日常のヒトコマを補完できるのも、二次創作のいいところだと
思っています。


>之神氏

ついにブラックも「思わぬ伏兵」によって倒された・・のでしょうか。
運全振りの命中・回避力は異常ですよね。ザナルド君GJ

>FAT氏

僕は女性の尻に敷かれるのが得意なので、このジム=モリにはひどく
同情してしまいました。かわいそうなジム=モリ。
ひたすらに明るい二人の絵が、ランクーイとレルロンドを彷彿とさせます。
ああ、ランクーイ・・・
―――――――――――――――――――――――

感想ありがとうございます。僕はオンラインゲームの「ロールプレイ」が
好きな人間なので、需要と供給、生活臭じみたものが大好きでして・・
長編を書けるような筆力はないので、楽しみにしてもらえるような
短編を書き続けていきたいです。

>◇68hJrjtY氏

感想ありがとうございます。RPGでの魔法や技術って、たいていは
「戦いの場」でしか描写されないわけですが、敵を焼き尽くす業火も
サンマを焼く火も元々は同じ炎なわけで、その辺が相互に関わり
あっているような描写が個人的に大好きで・・。
し、シリーズ化!?・・調子に乗らない程度に思いつくまま
描いていきたいと思いますw

198ESCADA a.k.a. DIWALI:2008/01/31(木) 17:56:11 ID:OhTl4zsk0
>>180からですよ〜

黒くも美しい毛並み、ダイアモンドのような光沢を放つ鋭い牙と爪・・・そして全身を闇のオーラが渦巻いている。
闇の元素を自身の身体へと送り込み、ウルフマンへと変身したバーロソミューの異形の姿がそこにある。
「なんと・・・この禍々しい風貌と覇気、このような物を見たことはありませんなァ・・・ですが、それで我輩を超えるとでも?」
アゴから長く伸びる白髭をさすりながら、しかし未だ余裕すら感じられる口調でディアスが問う。その間にも魔法陣は生み出されている。
「この姿を見てもその余裕・・・ですが、その余裕もすぐに消え失せるでしょう。この闇の力の前にね。」

冷たく言い放つバーソロミューだが、ディアスはそれを笑って返した・・・奢りと共に相手を見下すように・・・
「フフフハハハハハハハハ、やはりあなたは面白い・・・とても面白い!!滑稽、えぇ滑稽ですよこの大馬鹿がっ!!!
 人狼と化せばんもう魔法は使えない・・・しかしあなたはその状態で私に勝とうとでも!?それは無理なのですよォ――!!!」
先程まで維持していた紳士的な態度はもうそこには無く、高過ぎるプライドを剥き出しにした魔老がいるだけ。
魔法陣が青白く発光しまたも宙から隕石を呼び寄せた・・・!!!今度は50個規模という、もはやアルマゲドン級の災害が襲ってきた!!
「ハハハハハハハハハハハハ―――!!!ガキが強がってんじゃねぇぞぉぉぉおぉぉっ!この魔力は誰にも超えられねぇぇえ!!」

しかし、同じくしてバーソロミューにも変化が現われた・・・ディアスの豹変ぶりに呼応するかのように、キレた!!
「紳士的な方かと思いきや、あなたもアイツと同類でしたか・・・・奢るなよクソジジイが・・・!!!」
「アイツ!?どこの誰だか知らねぇが、テメェに同情される筋合いは無いんだよガキっ!!このクソガキっ!!!」
イカレた老人の高笑いが響く中、超災害級の隕石郡がバーソロミューに襲い掛かる・・・!!

過去に旧世界で使われた「核弾頭」と呼ばれる兵器が生み出すような、しかし小規模なキノコ雲が上がった・・!!




・・・爆発は、炎に包まれた村の中で死闘を演じる者達にもはっきりと見えていた。
「お〜お〜、派手にやらかしてくれるじゃねェかあの爺さん・・・てめぇらと同様、あっちで闘ってるお仲間も
 フルボッコの血祭りに挙げられてるだろうよォ・・・なァ、土いじりがだァ〜い好きな愚弟2号君?」
「ガハッ・・・・はぁっ・・・ちく・・しょぉっ!!!」「ふゃぁ・・・痛いよォ・・・やぅ〜、痛いなのォ・・・」
あからさまにバカにするような猫撫で声を出すミゲル。そして彼の目の前には・・・ひどく流血し横たわる
ミリアとトレスヴァントの姿があった。二人とも苦痛に呻いている・・・

199ESCADA a.k.a. DIWALI:2008/01/31(木) 18:12:53 ID:OhTl4zsk0
そしてかろうじて立っていたのがエディだけだった。多少切り傷ができてはいるが、重傷というほどではない。
「ハッ・・・!てめぇらは所詮この程度、オレに傷を付けようなんざ三千万年早えんだよ!!ヒャッハハハハハハ!!」
傷一つ負っていないミゲルが3人を嘲笑う・・・しかしエディは冷静に相手を見据えたままでいる。
「・・・なァ、ミゲル。まさか、おれっちが出来るのは罠の設置だけとか考えちゃいねぇよなァ?違うか?」
弟が放つ視線とは思えないそれの冷たさにミゲルは思わず身震いしたが、すぐにまた傲慢な態度へと戻った。
「・・・ッ!!そ、それがどうしたってーんだよ、愚弟2号!!まさかてめぇこそオレに単身挑もうとか考えてんのか?あ!?」
「そうだよ。だから何だってぇのさ?」「て、テメェっ!!」軽くあしらうエディ、そしてミゲルはその発言に怒りを露にしている。
「アンタがいなくなってからオレら双子は力を付けてきたんだ、それを忘れてもらっちゃァ困るけどな?
 そんじゃま・・・旧世界から伝わる変幻自在のクールな足技、じっくりと味わってもらうぜ!!」
言い終えたエディは腰を低く落とし、両腕と両足をリズミカルに、交互に動かし始める・・・ジンガを踏み始めた!!
「おい・・・エディ、テメェその構えどこで・・・!?」エディの動きが何かわかっているのか、ミゲルが怯え出す。

「こいつは数ある格闘技の中でも珍しくてね・・・まるで踊るように相手を蹴るんだよ。武術の名は『カポエイラ』。
 ミゲル、あんたほどの手練れでもこの蹴りには付いて来れねェぞ・・・・・・ビートを刻むぜ!!」
いつの間にかエディはヘッドフォンを装着し、そこから流れる音楽に身を任せジンガを踏んでいる。
彼が穿いているブラックレザーのフレアパンツが不気味に黒光りする・・・!!!

200ESCADA a.k.a. DIWALI:2008/01/31(木) 18:35:19 ID:OhTl4zsk0
「クク・・ククククっ!!!ざまァ見さらせクソガキがァっ!!!我輩に勝つなど一生涯掛けても無理なんですよ!!」
嘲笑うディアスの目の前には巨大なクレーターが出来上がっていた・・・!!先程の隕石群が突っ込んだ爆心地では煙が未だ晴れない。
「フフフフフ・・・生き残れるわけがありませんよ、死ね・・・死ね死ね、死ね死ね死ね死ねクソガキィぃぃいぃぃいぃぃ!!!」
もはや理性など全くない魔老の狂った叫びが木霊し、クレーターの煙が晴れる・・・その向こうに一つの影があり、ディアスはそれに驚かざるを得なかった!
全然ダメージを負っていないままの姿、バーソロミューが仁王立ちしていた・・・!!ハリネズミのように鋭い毛が逆立っている。
「・・・魔老ディアス、まさか今のが100%の本気とか言うんじゃないでしょうね?」彼はディアスを睨みながら言葉を紡ぐ・・・
「は・・何で生きてるんだよ!!?何で我輩の魔法を喰らったくせに生き延びてんだァああぁぁぁぁぁぁ!!?!!?!」
本気で焦燥に駆られるディアス、頭を抱え身震いし・・・ゆっくりと歩み寄るバーソロミューに怯えるしかできないでいた。
「I gonna tell you why did I survive・・・・答えは簡単、僕の身を包む闇の元素のおかげなんですよ。闇とは『無』・・・
 つまり闇の元素は全てを無に返す力を持っているのですよ。その力が隕石を無に返した、という訳です・・・」
種明かしを終えたところでバーソロミューは両方の拳を固め、両腕を後ろに引く・・・そして!!!
人狼の驚異的な腕力によって生み出された、爆発的なパンチの嵐がディアスを貫く!!!
「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラぁ――――!!!」
「わ・・・が・・はいが・・・クソガキごときにぃ・・・・ぐぉおああぁぁああぁぁああぁぁぁぁあぁああっ!!!!」
魔老の断末魔が響くなか、拳のラッシュはガトリング砲のように止め処なく乱射される!!!
ラッシュが止むと・・・そこには闇の元素を纏った拳によって消されたディアスの姿はない。
ボロボロに破れた真紅色のローブが風に舞うだけだった・・・・

「・・・人を侮るべからず。父上と対峙しているような気分でしたよ・・・やれやれですね。」
人狼化を解除したバーソロミューが呟く・・・・

to be continued.

201之神:2008/02/01(金) 05:26:00 ID:xJDkyE7Q0
1章〜徹、ミカの出会い。
-1>>593
-2 >>595
-3 >>596 >>597
-4 >>601 >>602
-5 >>611 >>612
-6 >>613 >>614
2章〜ライト登場。
-1>>620 >>621
-2>>622
-○>>626
-3>>637
-4>>648
-5>>651
-6 >>681
3章〜シリウスとの戦い。
-1>>687
-2>>688
-3>>702
-4>>713>>714
-5>>721
-6>>787
番外クリスマス >>796>>797>>798>>799
-7>>856>>858
-8>>868>>869
番外年末旅行>>894-901
4章〜兄弟
-1>>925-926
-2>>937
-3>>954
-4>>958-959
-5>>974-975
5冊目――――――――――――――――――――◆
-6>>25
-7>>50-51-54
-8>>104-105-106
-9>>149-150
-10>>187-189

202之神:2008/02/01(金) 05:59:38 ID:xJDkyE7Q0
γ

「運極かぁ・・・・・まぁ今はどうでもいい話だな」ライトは倒れるブラックに向き直る。

「・・・・・・ったく、どうするかこいつ・・・・オイ、起きろ手前」ペチペチと頬を叩く。
「・・・・・・・・・・ッ!」
「ハッ、いきなりの攻撃にやられるとはな、笑える話だ。生かすつもりは無えからな・・・・覚悟しとけ」
「もう身体が動かない、殺すなら・・・・・・どうぞ」ブラックは冷笑をうかべる。
「せめても、苦しまないで殺してやろうか」
「優しいな、兄さんは」

α
「せめても、苦しまないで殺してやろうか」
「優しいな、兄さんは」

・・・・・・お前ら、もっと兄弟らしい会話しろよ・・・・。
まぁいい。

「うう・・・・ゲホッ・・・・・・!」
「み、ミカ!平気か・・・・・?」
「なんと・・・・・・・か」ミカはぐったりとして、喋るのも辛そうだった・・・。
「いいよ、無理して話すな・・・・・!今は・・・・・寝てていい」
「うん・・・・私も動けないから・・・・・・あー・・・・」
パタッと倒れそうなミカを慌てて支える。ミカの顔は寝てはいるが、薬の苦しみは見られない。きっと解毒はされたのだと・・・・思う。

「それにしても、シルヴィーさん・・・!ありがとうございます、助かりました・・・・・」
「いいですよ、そんなの・・・・・・まぁ最期くらい、いい事しようかな・・・と」シルヴィーは微笑んでいた。
俺はそれが作り笑いだと分かったが・・・・・・・・・彼女の手に残る片方の注射機には気が回らなかった。

γ
「じゃあ・・・・・・そろそろ、だ」ライトはナイフを構える。
「・・・・はい、またいつか・・・・・・」



音も無く、それは振り下ろされた。命を奪うため・・・・・・・では無く。

「ぐっ・・・・ああああああああああぁぁぁああっ・・・!」ブラックの声が大きく部屋を反響する。
「これで死ぬだろ・・・・・・」
振り下ろされたナイフは、片足を貫く。それは神経を断ったのか、貫いた左足は動かない。
「一撃でっ・・・・・・・・殺すんジャ・・・・無いんだな・・・・・」ブラックはライトを弱弱しく睨む。
「死んださ」


「武道家人生は、軸足が命だろう」

「優しすぎるよ・・・・・・・貴方は・・・・・」

そのままブラックは、出血のせいか・・・・意識が無くなった。そして壁に寄りかかるブラックは倒れる。

カラン・・・・・・・・・
鉄が地面に落ちたような、そんな音がした。

203之神:2008/02/01(金) 06:18:36 ID:xJDkyE7Q0
大陸某所、道場。それは数年前の話。

「兄さん・・・・・またそんな事して・・・・・」
「いいじゃないの、カッコいいし!」そういう少年の手には、1本のダート。
「まったく・・・・・、父さんに見つかったら死刑ものだよ?」
「見つからないようにするさ・・・・・それより」ライトはブラックに駆け寄る。
「うん?」
「これ・・・・・クナイって言うんだけど、俺まだ投げられないんだ。だから、いつか投げられるようになった時、返してくんねえ?」
「そんな、そんなもの持ってるの父さんに見つかったら・・・・・!」
「平気平気、持ってろよっ!・・・・・それとも、お兄ちゃんの言う事聞けないのかぁ?」
「仕方ないなぁ・・・・・・まったく」ブラックはやれやれ、という素振りを見せる。

「いつか、絶対返してもらうからな!」



―――――――――――――――――――――――――――――――――――

倒れたブラックから、それは落ちた。
カラン、と音を立てて。
今のライトには簡単に投げられるであろうクナイが。

「・・・・・手前・・・・こんな物まだ持ってたのかよ・・・・・・」


そしてライトは立ち上がる。
そして後ろに向かってそのクナイを投げつけた。

α
「それじゃあ、徹さん。ミカさん起きたらよろしく言っておいて下さいね・・・」
「ああ、言っておくよ・・・・・・・また、違う形で会えるといいけど・・・・・」

「そうですね・・・・・・では」シルヴィーは注射機を構える。
「・・・・・・・・え?それ・・・・・毒薬のほうだよな・・・・?」
「さよなら」

「ちょっ・・・・・待っ!」



シルヴィーは思った。
売られた私。買った雇い主はもうすぐ死んでしまうだろう。
だから賭場の借金の価値の私は、生きてはいけない。

自由に生きれなかった。なら、せめて自由に・・・・・死ぬくらい。
もう疲れたよ、生きるのに・・・・・・。


針がシルヴィーの首に近づこうという時。

204之神:2008/02/01(金) 06:44:46 ID:xJDkyE7Q0
α
針がシルヴィーの首に近づこうという時。
1本のクナイが、注射機を粉砕した。

「へっ・・・・・・・?」間抜けな声を出すシルヴィーに、近づくライト。
「お前・・・・・・・・何が原因か知らねえが、そんなに死にたいのかよ」
「うるさい・・・・・!自由には生きてこれなかったんだ・・・・・生まれてから・・・・」
「ほお、そんな理由で死ぬのか」ライトは倒れて動かないブラックを見て言う。
「くっ・・・・・!」
シルヴィーは舌を噛み切ろうとか、大口を開ける。
シルヴィーの歯は、舌を噛み切る事無く、別のものを噛んでいたのだが。

「イテテ・・・・・・」俺はシルヴィーの口に、自分の指を入れた。
「ほ・・・・徹さんまで・・・・・・」
「可愛い子が、勿体無いって・・・・・・・・って俺何言ってるんだ・・・・」
シルヴィーの唾液が付いている事なんか気にせず、俺は手ポケットに突っ込む。

「うっ・・・・・もういいんだよ・・・・!死んで楽になりたいんだよ・・・・・・もう、殺して・・・・・・」
「俺が、か?」ライトは間抜けに質問する。
「そう・・・・・殺して・・・・・貴方が・・・・・」
「分かった。俺 が ぶ っ 殺 し て や る よ 」
「ちょっと、何言ってんすかライトさん・・・・・・・!」

しかしライトは短刀を首元に近づける・・・・・・だが。

「お前は俺が殺すさ。いつかな。だから、俺が殺すまで自由に生きてろよ。そのうち殺してやるから」
「へ・・・・・・・・・・?」
「いつ殺すかは決まってないけどな。だからお前、俺が殺しにいくまで死ぬんじゃねえぞ?」
ライトはそのまま短刀をポイと投げ捨て、スタスタと部屋を出て行った。

「いっ・・・ヒッ・・・・・ううあ、自由って・・・・」泣いて嗚咽を交えつつ、シルヴィーは一言言った。

「じっ、自由に生きるなんて・・・・・考えたことなかったよ・・・・・」
部屋は、わんわんと泣き続けるシルヴィーの声が響いてるだけだった。

「わぁああああああああぁぁぁぁあああ――――・・・・・・・」


γ
「キミ、なかなかカッコイイ事言うじゃないか」ナザルドが、廊下に出たライトに言った。
「ハッ・・・あれがカッコいいのか?まぁ・・・・・・」
「本気で殺すとかじゃ、無いよねまさかっ!」
「まぁな」ライトは、ナザルドとは目を合わせない。

「人間、生きる道くらい自由じゃねえと・・・・・・やってられねえし、な」

205之神:2008/02/01(金) 06:54:08 ID:xJDkyE7Q0
おはようござーいます。
朝からこんな話ですが・・・・・・。
この章は終了ですかね、一応。
この章はほぼブラックとライト、シルヴィーがメイン・・・・です。
新キャラであるナザルドや、徹やミカはほぼ空気。仕様です・・・・あしからず。
一度誰かに言わせたかった!
「俺が殺してやるから、それまで死ぬな」・・・・・・ヽ(´ー`)ノ
ヒドぃ事言ってますけどね、それでいて優しいというか。
話の流れがグダグダなのは 華 麗 に スルーで。
またちょろっと書いてみます(・ω・´

そして感想、いつもありがとうございます。「また書こう!」と思える、いい原動力となっております(´∀`*

では、引き続き小説スレをお楽しみ下さい、之神の後書きでした。

206 ◆21RFz91GTE:2008/02/01(金) 12:48:17 ID:hnbHyKHE0
////********************************************************************************////
  ■◆21RFz91GTE:まとめサイト(だるま落し禁止)
  ■ttp://bokunatu.fc2web.com/trianglelife/sotn/main.html
  ■Act.1 アレン・ケイレンバック >>44-45
  ■Act.2 少女 3 >>65-67
  ■Act.3 少女 4 >>87-90
  ■Act.4 レスキュー? >>173-174
////********************************************************************************////

 Snow of the Northwind-最終章-

 The last World/It Little story…。

207 ◆21RFz91GTE:2008/02/01(金) 12:48:44 ID:hnbHyKHE0
Act.5 蒼の刻印-SevenDaysWar-



「ひっ!」
怪しげな男達はアジトへと入っていくと受付にいた女性に剣を付き付けた。この騒ぎに何事かと奥からミトが出てくるとその光景に絶句した。
「何者です!彼女を開放しなさい。」
「ミ…ミト様。」
「貴様がミトか、聞け!我ら主の言葉だ!」
相変わらず剣を女性の喉元に付き付けている男の左側に居た者が懐から一つの紙を取り出した。そしてそこに書かれている文面を読み上げる。
「「平和ボケしてる古都の君主ミト・メーベ公、次の満月の日我らアリアン同盟は古都へ侵略を進める。英雄だの何だのと言っている貴様らの街はこの俺様が貰い受ける、期限は七日だ。それまでに傭兵を雇うなり何也したまえ、もっともそれも無駄だと思うがね。」」
そう言うと男は持っていた紙をミトへと投げつけた。そして中央の剣を付き付けている男がニヤリと笑うと一つ
「そうだ、きちんと届けたって証を持って帰らないとな。丁度いい、この女の首を持って帰ろうとするか。」
その言葉を聞いた女性の顔は青ざめた。そして大きく剣を横に振りかぶると一気に女性の首を跳ねようと剣の軌道は円を描き始めた。
「アリス!」
咄嗟に琥珀の人を構えようとしたが矢を装填している間に首が跳ねられるだろうと一瞬のうちにミトは確信した。だが行動を止めようとはしなかった。
「死ねぇ!」
後数ミリと言うところまで男の剣は迫っていた、だが鋭く手入れされている剣はその獲物の首を跳ねようというギリギリの所で金属同士がぶつかる音が聞こえた刹那そこから先は一ミリも進まなかった。
「なっ!」
ギリギリと音を立てながら火花を散らす対象物がそこには有った。シャムシールのように曲がったロングソードより長めの長剣、逆手に持ち変えられているアデルのグルブエルスがそれを妨げていた。
「貴様、何者だ!」
「我より貴様の後ろに居る人間を確認した方がよいのでは無いか?」
「何だと…。」
男は咄嗟に後ろに首をむけた。そこには血まみれで立って居るウィザードが一人。右手には投擲用の槍を握っていた。
「貴様、何故いきてい…。」
そこまで言うとその男の首は胴体と切断された。切断された部分からすさまじい量の血が噴出した。例えるなら噴水のようにこのまま止まることなく永遠と噴出し続けるような勢いだった。だがそれもある一定の量を噴出すとゆっくりと流れるようになり。そして男の体は後ろへと倒れた。
「折角の一張羅が台無しだ、アリスティア。面倒かも知れないけどここの掃除を頼む。死体の片付けはアデルがやってくれるだろう。もし気分が冴え無いようなら他の者と一緒にやるか、もしくは休んで居なさい。」
「は…はい。」

208 ◆21RFz91GTE:2008/02/01(金) 12:49:08 ID:hnbHyKHE0
そう言うとアレンは引き返そうとした。だがそれをミトが止めるべくアレンの左腕を掴んで自分の方へと引き寄せる。
「まってくださいアレンさん!その槍は…なぜアレンさんがその槍を!」
「ミルが使っていた槍とは別の物だ、元々ミルが使っていた槍はそこら中で売られている投擲用の槍。子供の小遣い三か月分で買えるような代物だ。安心してくれ、アイツの槍をまた血で汚すことはしないさ。」
「…そうですよね。」
ほっと胸を下ろし、掴んでいたアレンの腕を放した。ところが今度はアレンが急用を思い出したかのようにキビキを返してミトの肩を掴んだ、突然の事でミトは顔を真っ赤に染めてアレンの体を両手で勢い良く付き飛ばした。
「なななな、何をするんですかアレンさん!」
サッと両手で自分の胸を庇い、顔を赤らめてそう言う。付き飛ばされた時の衝撃が予想以上に効いたのか、頭を抑えながらゆっくりと立ち上がって懐から一つのメモ帳を取り出す。
「何を勘違いしてるんだ、ちょっとお使いを頼もうとしたのに。」
「お…お使い…?」



 「リン三十グラム、マグネシウム四十グラム、鉄一キロ、窒素二グラム、アルミニウム三グラム、アンモニア八グラム、柊の枝八本、鉛四百グラム、アメジストの原石七グラム…後は――。」
クラウスを引きつれてアレンから頼まれた材料を買い揃えて行く二人。これらを使って何を作ろうというのかミトにはさっぱりだったが、隣で何やら笑みをこぼしているクラウスの姿が有った。
「ねぇクラウス、こんな材料で一体何が出来るの?」
「さぁ〜、私にも分かりません。何が出来るかは分かりませんがいいじゃ無いですか。こうしてデートというのもまた一興ですよ。」
クラウスがやけに楽しそうだったのはこれだった、デートって言葉を聞いたミトはまた頬を赤らめて少しクラウスとの間を開けた。
「何を恥ずかしがって居るのですかマスタ、今更じゃ無いですか。」
「そうだけど…でも恥ずかしいよ。」
「そうですか?私はとても楽しいですよ?」
さらに笑みをまして歩くクラウスに対してミトはとうと俯いてしまった。そしてまたメモ用紙を見てそこに書かれていた最後の買い物に絶句する。
「…アレンさん。」
「ん、どうかなさったのですか?」
「…これは、無理です。」



 一方その頃、アレンはアジトの地下室に篭っていた。
幾つかの魔法陣を描きそこに蝋燭を一本、また一本と置いて行く。お使いで頼んだ材料が届くのを最後に後は作り上げるだけの所まで進んでいた。そして一本タバコを取り出すと火をつけて煙を吸う。
「アレンさん!」
突然後ろの扉が吹き飛ばされんばかりの勢いで開いた、それに肩を振るわせたアレンがゆっくりと振りかえるとそこには鬼神の様な表情をしたミトが立っていた。
「あ、お帰り〜。全部買えた?」
笑顔でそう言うと一本の矢がアレンの顔を霞めた、頬に小さな切り傷を作ったその矢はアレンの前方の壁にめり込むように付き刺さった。
「何ですかこのリスト!何かを作るための材料は分かりますが最後の男性用の下着ってどういうことですか!」
「いやぁ〜、生き返ったばかりか俺の下着が無くてね。いいじゃないの、俺も昔ミトの下着を…。」
今度は足元に矢が突き刺さった、サーっと血の気が引く音が耳に聞こえる。いつの間にか三本目の矢を装填し何時でも発射できる体勢を整えているミトはさらに顔を真っ赤にして怒った。
「それは言わないでください!あの時結局アレンさんだって買えなかったじゃ無いですか!仕返しですか!嫌がらせですか!私に赤面させてそんなに楽しいんですか!私を困らせてそんなに楽しいんですか!アレンさんの変態!鬼畜!ロリコン!」
「ミト…何もそこまで言わなくても。」



Act.5 蒼の刻印-SevenDaysWar-
END

209 ◆21RFz91GTE:2008/02/01(金) 12:59:01 ID:hnbHyKHE0
こんにちは〜、21Rです(´・ω・`)ノ
二月ですね〜、もう二月ですねぇ〜、本当に二月ですねぇ〜…。


ヴァレンタインなんて誰が考えたんだ畜生|li:l|;|orz|l|i:|l|


*コメ返し
>>176 :◇68hJrjtY様
リアルでの出来事だったんですが、二人でタバコを部屋の中で吸っていたら30分足らずで部屋が真っ白になりましたヾ(´・ω・`)ノ
そろそろ第二節で散らばらせてた伏線の回収に入ります。
え?唐突?って思いましたら二節を再度ご覧くださいヾ(´・ω・`)ノ
アデルの方向音痴は既にアレンのロリコンと良い勝負かもしれませんね(ぁ

>>184 :メイトリックス様
毎度コメントありがとう御座います、最近暇が出来たものでメイトリックス様の小説読ませていただきました。
感想書くの得意じゃないのでアレですが、表現、文法、写生が綺麗でとても読みやすかったです。
今後も小説スレを宜しくお願いします(何
完璧人間作ってもあれなので必ず欠点を付けてますヾ(´・ω・`)ノ

>>195 :FAT様
あぅ、申し訳ないですorz
書いてると中バリバリタバコ吸ってた俺ですが許してください(ぉ
あ、かなり別件ですがリンク張りましたヾ(´・ω・`)ノ

>>197 :718様
おっと、それ以上はネタバレですよ奥さん(ぉ
一応今回でボケパート終了なのでそろそろ本題の話に進んで行きます。
何度も同じ事いって恐縮ですが、最終話で裏切らないでください(何

210718:2008/02/01(金) 13:44:47 ID:gXqJ5/rQ0
>ESCADA a.k.a. DIWALI氏

触れたものの存在を消してしまう恐ろしい闇の力、それを巧みに使いこなすバーソロミュー。
まるでジョj(ry 

カポエイラとはまたマニアックな格闘技を出してきますねー。エディの華麗な足裁きは
兄弟対決に決着をもたらすのでしょうか。

>之神氏

仮にも武人であるブラックにとって、命を奪うことと、未来の選択支を奪うこと、
どちらが残酷だったのか。
ブラックの「優しすぎる」という台詞も、捉えようによっては痛烈な皮肉に取れます。

次は新章ですね!ザナルド君の活躍に期待しております(^ω^ )

>◆21RFz91GTE氏

なにやら化学な雰囲気になってきましたね。以前は粉塵爆弾も登場しましたが、
今回はどんな仕掛けが登場するのでしょう。
全面対決まであと7日。このまま二大勢力の潰し合いが勃発してしまうのかはたまた!

211◇68hJrjtY:2008/02/01(金) 13:51:48 ID:aKxbQFKY0
>ESCADA a.k.a. DIWALIさん
キレたディアス老も老人とは思えない状態(笑)ですが、キレたら怖いのはミュー君もでしたね。これはミリアが怖がりそうだ(笑)
ついに実戦で解禁された「闇の魔力」。何もかもを無にしてしまうということは、パンチ一発当たっただけで消滅ということですね((((;´・ω・`))))
つくづく敵に回したら恐ろしいミュー君…ともあれ、ディアス老の方はこれでひと段落つきましたね。
さて、エディの方は…なんてカッコイイんだエディ(笑) カポエイラって聞いた事あるような気がしますが、武術だったとは。
ファッションの変化も実はこれを狙ってのものだったのでしょうか。ミゲルとの実質一騎打ちですね。
続き楽しみにしています!

>之神さん
ハッピーエンド…と言い切れないながらも、ひとつの物語が終わったという実感がします。
今回はブラックとライトの過去を語りながら、二人の本当の気持ちが垣間見えたというか…。
あんな別れ方をしていなければ、いや規律の厳しい武道家系の兄弟でなければ親友になれていたのかもしれないとか思うと悲しいです。
シルヴィーもようやく、自由を手にしましたね。でも「自由」って難しいと思います。
「自由」とは自分勝手に生きる事じゃなくて、自らの由(よし)を立てる生き方をすること…某名言ですが私の好きな言葉です。
シルヴィー、そしてライトの物語、堪能させていただきました。また次章など楽しみにしています!

>21Rさん
いきなり戦闘シーン(?)でビビりました…が、まあアレンやアデルにかかればお茶の子さいさいですね!
アレン作の"何か"ですが…下着(笑) アリアン同盟の侵略に備えての行動でしょうか。
アレンのロリコンぶりはもはや言わずともギルドのみんなが知ってそうな気もしますけど(苦笑)
二節というか最初から全部読み直したいくらいなのですが、まったく読むのも遅い&伏線に気がつかないこの性癖。
でも21Rさんの執筆されてる小説が全て終了したら、また最初から読み直すつもりです。
私が出現する以前から執筆されていますしね〜…つくづく長寿ぶりに脱帽。続きお待ちしています。

212718:2008/02/01(金) 17:44:33 ID:gXqJ5/rQ0
こんばんは。また書いてみました。よろしければ読んでみてください。








――――出てきた――――

およそ食用として認知されているそれとは似ても似つかないほどの巨大な
胴体と、毒々しい真っ黄色の甲羅。

海辺に上がってきたサイドウォーカーの姿は、灰色の空と暗褐色の砂浜を背に、
どれほど離れていてもはっきりと分かるほどの奇妙な存在感を放っている。
巨大な甲殻類は、バトルアックスほどの大きなハサミを振り上げ、ゆっくりと
伸び上がった。

その様子を、およそ100メートルほど離れた岩場の陰から、静かに見つめる
一人の女がいた。ドレム付近を拠点に活動するハンターである。

彼女は、ギルド紋章の作成に必要な材料の獲得を目的にドレム川近辺で
キャンプを張り続けている。材料は希少価値が高く、かつ消耗品であるため
供給が需要に追いつかない、彼女のような売り手からすれば、天井知らずの
ウマイ市場なのだ。


――――大きい・・・期待できそうね――――

今まででも見たことのないほどの得物の大きさにほくそ笑みながら、
足、甲羅、鋏。携帯用の望遠鏡を覗き、その様子を隅々まで観察する。
最後に目に照準を合わせたとき、丁度、相手の目と合う格好になり、慌てて
望遠鏡から目を離した。もちろん、得物から女を確認できるわけではない。
が、狩猟者の「見つかってはいけない」という心理が、たまにこういった
間の抜けた挙動をとらせてしまう。

少々バツの悪そうな顔をして、女は海岸線を見やった。特に動くでもなく、
ブクブクと泡を吐き出す目標の姿が目に入る。それを確認すると、女は
岩場を伝って目標への接近を始めた。



『行動は迅速に。髪の毛一本鳴らすな。』

彼女は、師の教えを忠実に守りながら、時に泥の上に這い蹲りつつも、
素早く、静かに距離を詰めていった。

途中、匍匐するハンターの頭上を、殺人蚊の群れが掠めていく。

殺人蚊は、人間や動物の皮膚を食い破り、血肉を啜り、死に至らしめる文字通り危険な蟲ではあるが、
嗅覚以外の知覚をもたないため気をつけていれば被害にあうことはない。
いっぱしのハンターである女にとって、平常の対応は造作もないことである。

213718:2008/02/01(金) 17:45:29 ID:gXqJ5/rQ0

接近と停止、観察を繰り返し、標的までおよそ50メートル。

女は、岩陰から改めて目標を確認した。これより先、標的の視界をさまたげる
ものは何一つない。これ以上の接近は、気取られる可能性を持つ。

ここでやると決めた女は、ゆっくりと深呼吸すると、背中の矢筒に手を伸ばし、鉄製の矢を
掌一杯に掴み取ると、そのまま空中にばら撒いた。矢筒から躍り出た矢は落下することなく、
まるで軽羽のようにフワリと、慣性を無視して空中に留まった。

その中の一本を愛用の弓に番えると、より深い呼吸に合わせて、弦を引き絞り、
標的に狙いを定める。辺りを漂い、思い思いの方向を指していた矢の群れは、
女の挙動に指揮されるように旋回し、列を成し、一塊となって女の脇に控えた。

女の、宝石のように紅い瞳が大きく見開かれ、照準が絞られる。標的の僅かな動き、
風の流れにより起こるであろう着弾点のブレが、彼女の経験に基づく予測により慎重に
補正されていく。そして絶好の状態が訪れた瞬間、

――――ここ――――

そう思考するよりも早く、引き絞った指がスルリと解け、矢が放たれた。
そしてそれを正確に、一塊となった矢の一団が追尾していく。矢を送り出した
弦が、微かに低い唸りを漏らした。

放たれた矢の一団は滑るように飛び、標的の甲殻の隙間、泡にまみれた口の中へ
次々と着弾した。全ての矢は、寸分の狂いもなく最初に着弾した矢の矢尻を叩き、
その鏃を敵陣深く押し込んでいく。標的は抵抗する間もなくその口内を食い破られ、
鏃はその脳漿に到達した。
必殺の一撃を受けた甲殻類はたまらず仰向けに倒れこみ、数秒の後、
ピクリとも動かなくなった。

完全に沈黙した標的を確認すると、女は弓を降ろし、それに駆け寄った。
そして、携帯していた槍を甲殻の継ぎ目に差し込むと、缶切りの要領で
グルリと大きな腹部を裂き始めた。ほどなくして、甲殻が開き中からピンク色の
筋肉や内臓が顔を出し―――その中央に埋もれる目当てのものが見えた。
沸き立つ喜びを抑え、それに手を伸ばす。その時。

214718:2008/02/01(金) 17:45:54 ID:gXqJ5/rQ0
死んだと思っていた標的の鋏が勢い良く動き、女の足を挟むとそのまま逆さ吊りに
女の体を持ち上げた!

――――しまった――――

サイドウォーカーの巨躯は、女にとって「未経験の領域」であった。僅かに覆い
きれなかったそのほころびにより、止めには至らず気絶していただけだったのである。

仰向けの状態で意識を取り戻したサイドウォーカーは女を完全に敵と認識した。
防衛本能の、そして闘争本能の命ずるがまま、女をつるし上げ、咆哮し、その四肢をねじ切ろうと
大きく鋏を開く。開き・・・・・・そして、止まった。

それは、ほとんど無意識に、しかし非常に的確な動作だった。女は逆さづりのまま、咄嗟に槍を
思い切り伸ばすと、眼前でうねる脳漿に突き立て、そして、しこたまに掻き回していたのである。

思考の全てを強制的に断たれ、目標は今度こそ完全に沈黙した。

ようやく安堵した女は、軽業師のように鋏に取り付き、スルリと自身の足を引き抜くと、軽やかに
地面に飛び降りた。一瞬、脛に鋭い痛みが走る。見ると、紅い血筋が浮き上がっていた。鋏に
巻き込まれたときに、切ってしまったのだ。

――――ああ・・・!――――

顔一面の安堵が一変し、悔恨と恐怖に取って変わられる。

傷そのものはなんてことはない。

だが。


背中には冷たい汗が走り、心臓が早鐘のように鳴り始めた。女は得物の死骸から目当てのものをもぎ取ると、
狼狽しそうな自分を必死に抑え、辺りを見渡し、「それ」を発見してしまった。

小さな体を震わせながら、怒涛の勢いで向かってくる殺人蚊の群れの姿を。

殺人蚊の嗅覚は鋭く、遠く離れていても好物の血の匂いを嗅ぎ分ける。
小さなハンターの群れは、女の血肉を求めて飛来する。
魔法を使えない女には、霞のように変幻自在な羽虫の群れを駆逐する術がなかった。
ヒィと声にならない声を漏らすと、必死の形相で走り出した。
それを逃すまいと、羽虫の群れが猛追する。この瞬間、間違いなく彼女は、獲物であった。

一度野に立てば、狩る側、狩られる側などという定義はほんの些細な運命のかみ合わせでしかないのだ。

その後、彼女が無事生き延びたのか、それとも文字通り蜂の巣にされたのか、知るものなどいない。


―おわり―

215718:2008/02/01(金) 17:51:11 ID:gXqJ5/rQ0
今回は、ゲーム中よろしく「狩り」で生計を立てている人の話を書いてみました。

攻防のようなやりとりは難しいですね。
読み手の想像力を掻きたてるような、簡潔な文章はどうすればかけるのでしょ(^ω^?)

216ワイト:2008/02/01(金) 22:08:34 ID:CcwaTelY0
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「その余裕は何処から出てくるんだぁぁ!!!?絶対に殺してやる・・!!」
「口上だけは、相変わらず長げぇんだな!さっさと掛ってこいよっ!!!」
「クッククックッ・・・貴様こそ!威勢だけは一人前の様だな・・!それだけでは勝てんぞ!!」


ドンッッ!!アサシンは深く踏み込み一気に、ラータの側に駆け上がるっ!!
ズバァッ!!!躊躇無く・・首を跳ね飛ばした、アサシンだったが!音も無く崩れ落ちた
ラータのそれは、当然かの様に分身・・・!そして辺りを伺おうとする前に!!

「血により構成されてるって・・ほざいてたけどよ!能力自体は向上してねぇよな・・?」
咄嗟に背後に回っていたラータ・・・!そして首筋にダガーを添える!!!!
「ハハハハッ!どうやら敏捷性に掛けては一流の域に達しているようだな!!
そして・・その質問には答えられんなぁ・・・!だが!これはチャンスだぞ??どうする・・?」
「そうか・・言いたい事はそれだけか!!尋ねた俺が馬鹿だった!今息の根を止めてやるよ!!!」


ズシャアァッ!!!アサシンの首は噴き出る鮮血と共に高らかに宙に舞い上がる!!
グチュズチャァッ!グチュグチュ・・・・!
「何の音だ・・気持ち悪いな・・・・もしかすると・・このまま復活するのか??」
首を飛ばされ、身動きできずに倒れたアサシンの身体が突如起き上がり、
不気味な音を立てながら・・!湧き出る血を凝縮し、予想通り首が再生を始める!!

ズチュズチュ・・グチャ・・グチュ
「あぁあぁぁ!再び蘇ると言うわけだ・・!むしろ首を飛ばした所では、どうにもならんぞ!!
さぁてっ!戦闘を再開しようか!!終わらないこの勝負に決着等は・・望めんがな!!!!」
「やっぱり・・!こうなることは予想はしていたが・・まさにその通りだった訳か・・!
首に血を使って再生を果たした、アサシンの首から頭は、真っ赤な真紅の色に染まっている!!

「(ちっ・・!短期決戦は無理か・・・?にしても、気味がわりぃな・・触りたくもねぇぞ・・!」
ヒュン!ドヒュウゥンッ!!!アサシンは長剣を突如!ラータに向けて2度に渡って振り下ろすっ!!!
だが!それは「ソニックブレード」では無く、血の真空波「ブラッドシェーカー」になっていた!!

「だが、避け切れねぇ速さでも無いぜ!!!」
ラータは最小限の動きで「ブラッドシェーカー」を紙一重に回避する!!
「気を付けろよ!!それは追尾性の能力を秘めた特殊な血の刃だぁ!!!」

ヒュバアァァッ!!ドシュッ!!!!
「え!?」っと驚くのも束の間!!血の刃は、ラータの身体を傷つけながら
同時に視界に飛び散った血が、ラータの眼を!即ち見渡す範囲を限定する!!!!!


「(くそ!!そんな能力があるとは・・思いもしなかったぜ!!チッ・・・しかも
傷は大したことねぇが、眼が見えねぇ!!まさか・・視界を閉ざされるとはな・・!)」
「クハハッハッハハッッ!!!そうなるともう終わりだ!!見えぬまま、我を倒すのは・・ほぼ無理だろう!
結果は既に出ておるわ!!!抵抗出来ぬ貴様を殺しても仕方がないよなぁ・・?だから!ヒース!!!!
貴様から先に殺しておいてやろう・・!言っておくが・・ラータ!目に飛んだ血は、中々に取れんぞ!!」
ドタッ!余りの衝撃に、ヒースは逃げる所か・・その場にへたり込んでしまう!!

「そ・・そんな!か・・か・・・勝てる訳無い!!どうすれば・・!」
ヒースに目標を変えた、アサシンに大声で!ラータが呼びかける!!!
「まて!!てめぇの相手は、このラータ!俺だろうが!!無視する気か??
それとも・・手負いの敵を殺すというのに・・・情けを掛けるつもりか!?」


ピクッ・・・ヒースの方に向かおうとしていた、アサシンの歩みが止まる・・!
それは紛れもない、ラータの挑発に乗ってしまったということ!!しかし
視界は限定されている・・・ラータのその行動は、無謀とも言い換える事が出来る!!

「馬鹿が!!そんなに殺して欲しいか!??助かったかもしれぬと言うのに・・・!
よかろう!だが、今の挑発は自身の寿命を縮めただけの行為に過ぎぬわ!!!」

すいません(T∀T)時間が無くて・・此処で一旦中断です!申し訳ないです@@;
続きの小説は、また時間に余裕のある時に考えて投下したいと思います・・では|ω・)また!

217FAT:2008/02/01(金) 22:29:55 ID:i6bpBbJo0
「友へ」


 信じられないことってあるんだね。

 ギルド戦でもただの一度だって倒れたことのなかった君が、まさかこんな形で死んでし
まうなんて。

 僕はずっと待っていたんだ。
 古都の噴水前で、何時間も、ずっと来ない君を待っていたんだ。
 君が珍しく「一緒に狩りに行こう」って誘ってくれたから、僕は君が手を振って、笑顔
で来てくれるのを待っていたんだ。

 君はいつまで経っても現れなかった。
 当たり前だよね、だって、君はもうこの世にいなかったのだもの。

 木から落ちたんだってね。優しい君だから、子供が打ち上げてしまった遊具の羽根を取
りに、高い木に登ったんだってね。

 ギルド戦でもただの一度だって倒れたことのなかった君が、まさかこんな形で死んでし
まうなんて。

 枝に足を取られたんだってね。
 回転しながら落ちて、頭を打ったんだって。飛んでくる矢さえ軽々かわす君なのに、回
転に平衡感覚が目を回しちゃったのかな。

 僕は怒っていたんだ。いつまで経っても来やしない君に。
 
 僕は自分勝手だね。今更気付いたよ。

 君は死んじゃったのに、その君に対して怒っていたんだ。

 僕は自分のことしか考えてなかったんだ。


 君にお別れを告げに行ったとき、僕は君の前で涙を流さなかった。

 悲しくないわけじゃないよ。辛くないわけじゃないよ。

 ただ、大好きな君の最後の姿を涙で歪めたくなかったんだ。

 最後と知って、君の姿を目に焼き付けていたかったんだ。

 だから今、僕の両目から止めどない涙が溢れてる。

 ほんとは悲しかったんだ。ほんとは、辛かったんだ。

 君の前で涙を流さなかったことに、君は怒っているだろうか。
 君は、僕に失望しただろうか。

 ただのギルド友達じゃなかった。

 もし君が今の僕の姿を見れるのならば、ずっと僕を見ていてほしい。

 戦いだって遊びだって、なんだって君にいてほしい。僕と一緒にいてほしい。

 自分勝手な僕だから、君にいてほしい。

 君がいなくなるなんて、信じられないよ。

 ねえ、見てる?

 聞こえてる? 僕の声が。

 どれだけ君を求めているか、伝わってる?

 この眼に焼き付けた君の最後の姿が、君の全てになってしまう日が来るなんて考えたく
ないよ。

 君は僕の友達なんだから。

218◇68hJrjtY:2008/02/02(土) 09:58:10 ID:tSVRZyCA0
>718さん
弓スキルの描写もさることながら、モンスターの描写に別の意味で舌鼓です。
普段「狩り」と言葉では口にしますが実際それは生々しいもので
冒険者たちはこのように死体から収集品を切り取るなどしているのでしょうね…。それが生活の糧ですし。
予想外のラストシーン、でも弱肉強食の世界ならば咄嗟の敵味方の移り変わりは良くあることなのかもしれませんね。
あっさりとした語り口、ラストシーン含めて「狩り」そのものをリアルに表していると思いました。

>ワイトさん
勝ち目がなさそうな相手でも挑発する姿勢は流石的なものがありますが…ラータ、大丈夫でしょうか( ´・ω・)
しかし、戦闘シーンをこれだけ長く書けるのは凄いと思います。苦戦っぷりが現れてますね。
挑発は成功したようですがラータに策はあるのか。楽しみにお待ちしています。
時間がある時にゆっくり執筆して投稿、というサイクルで構いませんよ(*^ー゚)b

>FATさん
しばらくぶりの短編、ありがとうございます。…やっぱり悲しい(´;ω;`)
『水面鏡』の方のランクーイも同様でしたが、FATさんの死というひとつの終わりをテーマとされた小説が感動深いです。
残された者がどう感じるか、その人の死をどう受け止めるか。微細な感情を悲しく綴っていますね。
「友へ」と銘打たれたこの短編、悲恋話ではないという事が余計に心に染みました。
FATさんの時折の短編は楽しみのひとつです。

219 ◆21RFz91GTE:2008/02/02(土) 10:17:44 ID:hnbHyKHE0
////********************************************************************************////
  ■◆21RFz91GTE:まとめサイト(だるま落し禁止)
  ■ttp://bokunatu.fc2web.com/trianglelife/sotn/main.html
  ■Act.1 アレン・ケイレンバック >>44-45
  ■Act.2 少女 3 >>65-67
  ■Act.3 少女 4 >>87-90
  ■Act.4 レスキュー? >>173-174
  ■Act.5 蒼の刻印-SevenDaysWar- >>206-208
////********************************************************************************////

 Snow of the Northwind-最終章-

 The last World/It Little story…。

220 ◆21RFz91GTE:2008/02/02(土) 10:18:51 ID:hnbHyKHE0
Act.6 緑の刻印-SevenDaysWar-



 「それで、一体何を作るんですか?」
ちょっとしたいざこざの後、部屋を片付けていたミトがもう一度リストを見直してそう言う。一緒に方付けをしているアレンはその問いにゆっくりと顔を向けながら一つの書物を取り出す。
「槍だよ、七日後の戦に向けて自分用の牙がほしいと思ってね。」
「…でも何で槍なんですか?アレンさんには魔法が有るじゃ無いですか。」
「いざって言う時に何か牙があった方がいいだろ?」
「まぁ、確かにそうですが。」
「そう言うこと。さて、取りかかろうか。」
書物を中央のテーブルに置くと何ページか開いて一歩後ろに下がる。そしてお使いで頼んだ鉱物や沢山の材料を右手に持って構えた。
「蒼空を超える七つの紅蓮、彷徨い疑う種族と我らの問いに答え騎士たる力を与えよ…我は汝に問う、汝は蒼空なる力を持って我に知識と知恵を与えん、母なる大地は紅に燃える時汝の力を開放する十六夜と共に蒼空に一つの光をもたらさん!」
手に翳した鉱物達はその詠唱と共に光で包み込まれていく、そしてアレンの周りに幾つかの魔法陣が生まれると足元に描かれた魔法陣が反応し、そこで連鎖反応を起こす。スパーク現象が始めに生まれ、そこから幾つかのルーン文字が出現する。一般的な錬金術での練成をそのまま使用した下級ウィザードでも出来る簡単な物だった。
 だが、アレンが行った錬金術はその基盤を少し弄った練成法による物質具現化法の一つだった。通常の錬金術と少し違うその魔法陣は次第に形を変えていく。始めにあった七つの角は九つに変わり、最後には十二の角を持つ巨大な魔法陣へと姿を変えて行く。
 光に包み込まれた物質は次第にその姿を変えて行く、上下に伸びる柄の部分を筆頭に刃を形取り、アレンの身長を同じほどの長さまで達した。
「かなりの大きさですね、アレン様の身長と照らし合わせても百八十六センチ…それ以上の長さですね。」
「確かにそれぐらいの長さは有りますね、でもそれ程の長さを持つ槍なんて扱うことが出来るのかしら?」
「ランサー達が振るうランスよりは短いですね、振るう事が出来るかもしれませんが重さを考えれば役態無しもいい所では無いでしょうか?」
後方で色々と捜索する二人の会話を聞いてアレンはニヤリと笑みを零す。そして最後の法術を施した鉱物達は完全に槍へと姿を変えて光を収縮していった。
 光が無くなったところには完全に槍になった獲物が現れた、それは二人が話していた通りの長さ、それ以上かもしれないほどのリーチを持った槍だった。市販で売られているグレイプを象った槍は柄の部分だけでアレンの肩ぐらいまでの長さを誇っている。肝心の刃の部分は偃月刀のように曲がった刃をしていた。
「持ってみるかい?」

221 ◆21RFz91GTE:2008/02/02(土) 10:19:17 ID:hnbHyKHE0
そう言うとアレンはさも簡単に作り出した槍をクラウスに放り投げた、それを慌てた様子でゆっくりと飛んでくる槍を受け止めた。そして余りの軽さに驚愕する。
「この長さでこれだけの重さ…不思議だ。」
そして両手で受け止めた槍を左手に持ち変えて手の平で放り投げた。三回ほど放り投げるとアレンに槍を返しに行く。受け取ったアレンは刃を上にして柄を地面にコツンとぶつける。
「世界には幾つ物ロンギヌスの槍が有るように魔槍と呼ばれるグングニルも存在する、一度手から放れても必ず持ち主の元へと戻ってくる事から「スピア・ザ・グングニル」って呼ぶ人も多い。様々な槍がある中伝説上の槍も存在する。」
「その槍が凄いかはまだ分かりませんが、なんと言う名前ですか?」
「特に考えてはいなかったが、そうだなぁ…「ブリューナック」とでも付けておくか。」
「ブリューナック…「貫くもの」ですか。何を貫くのですか?」
クラウスが冗談交じりにそう言うとアレンの動きはピタっととまった、そして一度ミトを凝視する。その熱い視線を感じたミトは咄嗟に自分を庇おうとクラウスを盾にする。
「ロリコン…。」「ダメです、まだ私も食べてません。」



 「OK、何時でもいいぞアデル。」
「…良いのか?」
「あぁ、いいぞ。」
「…怪我をしても我は知らんぞ?」
アジトの中央部、巨大な中庭にアデルとアレンの二人は互いに距離を取ってお互いに正面を向けていた。周りには何事かと騒ぎを嗅ぎ付けたギルド員達がギャラリーを作っていた。
「何が始まるんだ?」
一人のギルド員が言う。
「何でもアレン様とアデル師匠が魔法を使わずの一対一をするそうだ。」
「魔法を使わない?それじゃぁアレン様に勝ち目なんてあるのか?」
「だからこそ面白そうなんじゃないか、英雄とキメラの一騎打ちなんて今後一切拝むことも無い事だろ。」
ざわめきの中そう言う声も聞こえてきた。そして中央広場にクラウスが出てくると二人のほぼ中央に立った。
「準備はいいですか?」
「あぁ。」「うむ。」
二人は同時に返事をして戦闘態勢に入る、それを見たクラウスは一つため息を付いた。右手を上げて二人の顔をもう一度確認し、右手を一気に下ろし、そして一目散に逃げた。
アデルが始めに動く、右手にグルブエルスを逆手に構え地面を蹴った。瞬時にブリューナックを召還すると両手で体の前に構える。空中から降下してくるアデルを左に避け、腰を沈めて槍を突き出す。一直線に突き出された槍はアデルの右腕を狙っていた。地面にグルブスエルスを付きたてた状態で前方へと前転してそれを避けた。続けてアレンが動く、右手にブリューナックを構え柄の先端を握り締めて左腕を目の前に持ってきた。そして自転しその反動と力を利用し槍を左腕に乗せて旋廻する。アデルはそれを左手に構えるツインシグナルで防いだ。アレンに背中を向け逆手に持ち変えられているツインシグナルとブリューナックはぶつかり合い金属音と共に火花を飛ばした。
「流石だなアデル、黒衣の焔…剣聖の二つ名は伊達じゃないってか?」
「お主も、ウィザードにしておくのは勿体無いほどの体術だ。だがお互いまだ二分と行ったところか?」
「へ、流石に見透かされてらぁ…。」
「少しハンデをやろう、強化魔法を使うといい。」
「それはありがたい。」
火花を散らしたまま二つの金属は未だにぶつかり合っている。アデルは右腕を横に伸ばすと手を開いた。するとそこには地面に突き刺さって居るはずのグルブスエルスが突然移動する。
「「二速転換!(セカンドギア)」」
同時に叫びが聞こえた瞬間二人の体はフッと姿を消した、そして何処からとも無く金属音のぶつかる音が聞こえてくる。アデルとアレンの二人は高速で移動しながら互いに武器を交えていた。それを肉眼で捉えることなど並大抵の冒険者には不可能な事。
激しくぶつかり合う闘志と闘志は摩擦熱を起こしその場のフィールドの熱を上げる。一定温度まで上昇した空間は真夏の炎天下の中に居るような感覚さえ引き起こした。



Act.6 緑の刻印-SevenDaysWar-
To be continues...

222 ◆21RFz91GTE:2008/02/02(土) 10:20:14 ID:hnbHyKHE0
Act.7 白の刻印-SevenDaysWar-



 この街は四季を問わず暑い場所、砂漠化した大地の上にひっそりとたたずむオアシスに儲けられた傭兵都市アリアン。古都が始まりの街と言われるのであれば、アリアンは強者の街とでもいえるだろう。並大抵の術者、戦士などでは到達することも難しい高波に到達した物達が暮らす傭兵の楽園。
 商店街は何時ものように活気立ち、鍛冶屋は修理に訪れる者たちで大賑わい。それが何時ものアリアンだった。そしてこの日、一つのギルドに異変が起こった。それは幾つ物ギルドの合併による巨大な傭兵ギルドの誕生である。親となるギルドの名前は舌をかむような長さで、とても覚えずらい名前をして居る。そのせいもあり通称で呼ばれる事の多いギルド。ステレプトと呼ばれるこのギルドは七つのギルドを吸収し、六日後に行われる一つの戦争に向けての準備を着々と進めていた。
 大陸四大ギルドの内ステレプトはこの日の合併により一番強力で巨大なギルドに成長していた、その全てが傭兵ギルドで現段階での加入人口は三千五百人。二番手に来る古都のノースウィンド、ここ数ヶ月誰かが加入したと言う噂は全く流れて来ない。戦を嫌い地域の保守や復興等に力を入れていた。人数は暫定で六百三十人。数字だけ見ればその巨大さが伺えるが実際に戦闘できるのはその半分以下だろう。だが、それは昨日までの話。
 残る二つのギルドの内、貿易都市ブリッジヘッドのシーフギルドは既に壊滅寸前。今は義族たちの復興により力は蓄えたものの、一人のウィザードの力により壊滅状態にまでさせられたギルドを立て直すのには更なる時間が必要とされていた。最後の貿易都市シュトラセトに存在するギルド、ハイカルラルグのギルドマスターであるガズル、「ガズル・E・バーズン」がノースウィンドのアジトまで護衛を引きつれて来ていた。



 「お久しゅう御座います、ミト・メーベ公。」
「お久し振りですね、ガズル伯爵。」
円卓会議室に数名でそこにいた、ノースウィンド側はミトを筆頭にアレン、クラウス、アデルの四名。ハイカルラルグ側にはガズルを筆頭としたお供三名。計八人で円卓会議室にいた。
ガズルは身長こそそこまで高くない物の、生きる賢者と言われるほどのきれ物。極端に大きなメガネに青いニット棒、緑のジャケットを付けた武道家が彼である。
「立ち話もなんです、お座りください。」
「それではお言葉に甘えて。」
八人はそれぞれ椅子に座り話し合う準備をしていた。そこに受付兼執事役のアリスティアがドアをノックして入ってくる。お茶をそれぞれ配り、一礼して会議室を後にした。
「単刀直入に言いましょう、我らハイカルラルグと同盟を結んでいただきたい。」
「同盟…ですか。」
「ステレプトは先刻ほど七つのギルドを吸収、配下に収め強大な力を付けました。このままでは古都はおろかシュトラセトにも脅威が及びます。何よりこの世界を奴に委ねてはなりません、民は苦しみ治安は乱れ、そして我が物顔で殺人を繰り返す軍事国家になりかねません。」
真剣な眼差しでミトを目を見ながら必死に語るガズル、それに対してノースウィンド側は眉一つ動かさずにその話を聞いてる。
「英雄アレン・ケイレンバック様、貴方様の力は先の大戦で承認済みですが些か此度の戦、侮れませんぞ。」

223 ◆21RFz91GTE:2008/02/02(土) 10:20:41 ID:hnbHyKHE0
「毎度の事ながら英雄扱いされるのは馴れないな…して、侮れないとは?」
茶のみに手を出してゆっくりと口元へと持っていくアレン、左目を瞑ってゆっくりと湯を飲んだ後そのままの姿勢でガズルをにらんだ。
「ステレプトには強大な力を持つ四天王が居ます、風の「ウィンド」、炎の「レイヴン」、氷の「ステラ」そして三ヶ月前死亡した無の「ジュミル」。現存する四天王の内至高の力を持つと言われるウィンドとレイヴン。この二名の力は貴方様と等価と言われ恐れられています。そして頂点に君臨するステレプトのギルドマスター…。」
茶のみを手に取ると中に入っている湯を淵ギリギリの所まで傾けると回転させて湯を溢さないように回した。それを幾度か繰り返しそして一口飲んで湯飲みを置き、鋭い目線でアレンを見る。
「それだけでは有りません、先日流れ込んできた噂が何よりも怖いのです。」
「噂?」
今度はクラウスが口を開いた、しきりに議事録を作って居る最中の事だった。一度ペンを止めてガズルに顔を向けてそう言う。
「アリアンの地下には巨大な迷宮が存在します、そこには魔物も住んでおり一度間違えれば襲いかかってきます。その更に奥、一人の冒険者が偶然迷い込み発見したそうです。」
「発見?何を発見したのですか?」
とても恐ろしい者を見たと言う噂、その噂を聞き付けての同盟という意味合いもあるのだろう。人が敵対できるはずの無い古の鬼、魔獣として恐れられ、あまりの強大さに人が無理矢理こじ開けたパンドラの箱を恐怖によって無造作に封印されし者。
「失われし魔獣…バフォメット。」
その言葉を聞いた瞬間ノースウィンド側に動揺が走った。失われし魔獣、神々を滅ぼせし者、一つの闇から生まれし絶望と言うなの鬼神。太古の人々は鬼同様に恐れ、そして神話に存在する名前を彼に与えた。
「アレが…ステレプトに…。」
「詳しい事は私にも分からないのです、あくまでも噂なのですから。」
両手を目の前で組みそこにあごを乗せた、目を瞑り一つため息をついてから口を開く。ゆっくりと目を開いてアデルを見た。
「お話は常々伺っておりますよアデル・ロード。生きる災厄、黒衣の焔、炎の剣聖、マスターキメラ…。どれを取っても貴方に相応しい二つ名だ。」
「…。」
深く帽子を被っていたアデルは少し顔を上げた、左目の所に当る帽子の切れ目からガズルを覗き、そして目を放さなかった。
「私は知りたい、伝承に残るバフォメットの存在と強さを…貴方なら知って居るはずだ。」
「人間よ、太陽に近づきすぎればその羽は燃え尽きるだけだ。知らずして幸せと言う言葉もあるのを覚えておくと良い。」
「構いません、燃え付き地面に落ちるのであればそれも運命でしょう。」
「…。」
アデルは再びうつむいて黙りを始めてしまった。静かな空気が流れ、部屋に設置されている時計の秒針音だけが聞こえてくるような、そんな静けさだった。
「我には分からぬ、だがアレの復活には幾多の命が必要となる。それも十人や百人の命ではなく、千の命を必要とする。本来従者の三つの命があればそれだけで十分賄えた。だが内二体は我らが葬り吸収できたのは恐らく一体、残りの命を人間に置き換えるならば此度の戦、丁度いいだろう。」
その言葉に一同は絶句した、何百と言う命では足らず千物命を代価に復活する魔獣。もしそれが本当であればこの戦の本当の意味は…そう考えざる終えなかった。
「では、此度の戦は…。」
「主らが考えている通り、この戦…ただでは終わらん。」




Act.7 白の刻印-SevenDaysWar-
To be continues...

224 ◆21RFz91GTE:2008/02/02(土) 10:25:44 ID:hnbHyKHE0
寝不足ですヾ(´・ω・`)ノ

おはよう御座います、21Rです。
もう二月ですね、二月入りましたね、二月なんですね…。

ヴァレンタインなんて考えた奴、俺の前でどげざしr(うわなにするやめr

コメ返し

>>210 :718様
期待を裏切ってしまい申し訳無いです;;
特にネタは組み込んで無いです、役体無しで申し訳無いです;;
粉塵爆発かぁ…懐かしいですねぇ(ぉ

>>211 :◇68hJrjtY様
まだまだ回収し切れて無い伏線が多くて困ってますorz
最初から読み返しですかぁ〜…感想お待ちしております(ぁ
あ、言い忘れてました。
アデルは俺のよm(ぉ

次話にてオリジナルスキル発動させますヾ(´・ω・`)ノ

225之神:2008/02/02(土) 14:18:48 ID:xJDkyE7Q0
1章〜徹、ミカの出会い。
-1>>593
-2 >>595
-3 >>596 >>597
-4 >>601 >>602
-5 >>611 >>612
-6 >>613 >>614
2章〜ライト登場。
-1>>620 >>621
-2>>622
-○>>626
-3>>637
-4>>648
-5>>651
-6 >>681
3章〜シリウスとの戦い。
-1>>687
-2>>688
-3>>702
-4>>713>>714
-5>>721
-6>>787
番外クリスマス >>796>>797>>798>>799
-7>>856>>858
-8>>868>>869
番外年末旅行>>894-901
4章〜兄弟
-1>>925-926
-2>>937
-3>>954
-4>>958-959
-5>>974-975
5冊目――――――――――――――――――――◆
-6>>25
-7>>50-51-54
-8>>104-105-106
-9>>149-150
-10>>187-189
-11>>202-204

226之神:2008/02/02(土) 14:49:29 ID:xJDkyE7Q0
番外
α

市内は騒がしかった。具体的に何が騒がしいのかというと、それは・・・・・。
「鬼は〜外っ!福は〜内っ・・・・!」

そう、節分。

鬼が邪気扱いされ、徹底的に追いやられる行事。情けないことに豆ごときにビビって鬼が逃げまとう行事。
そんな行事「節分」が、わが町でも大々的に催される事になった。
正直ダルぃだけのコレだが、俺達の通う学校の男子生徒は皆、強制的に鬼の役をして町内を駆け回る事になっている。
町内会・・・・・という規模で無く、市のほとんどでこれは行われる。

以下、学校放課後。
「ねえ、徹」俺に声をかけてきたのは、同居人の女性、ミカだった。
「なんだ・・・・?」
「美術部の人がね、徹にもこれ・・・・って、渡してきたんだけど。なんなのこれ、お祭り?」ミカが手に持っていたのは、可愛い鬼のお面だった。
「つっ・・・・・とうとうこの時期に・・・・・!」面を叩き割りそうな勢いを堪え、制服姿のミカに説明をする。
「んーと・・・・・・、邪気払いで鬼を追い払って、一年のなんちゃらを祈る行事・・・・だっけな」
「ふーん・・・・。で、徹も鬼になるわけ?」
「ああ、ウチの学校に入学すると、市内の行事に強制的に参加だからな。これもその一つってワケよ」
「女子は帰れるから、男子の間抜けな姿を私は楽観しようかな♪」ミカは悪戯に笑う。
「まぁ、カッコ悪ぃ所は見せたく無いんだが・・・・・」

「普段からそこまでカッコいいワケでも無いわよ?」

・・・・・・・・・・・・・・・・。


そして、収集がかかる。
教師も自ら鬼の面を手にし、生徒に内容を説明する。
「んで、豆を投げられたらそのまま走れ!えーーと、再集合は5時な、お面を返却してから家路につくように・・・・・・以上解散!
 鬼になりきってこーい!」

先公のテキトーな説明が終わると、男子生徒はダラダラと立ち上がり体育館から出て行く。
俺が玄関につく間、どうやってサボろうかと考えている時・・・・・・

「おう、徹!」元気な声がかかる。振り返るのも面倒なので、俺はそのまま声の主に答えた。
「なんだ、啓太」それは俺の仲の良いクラスメートの一人で、一緒に下校をする程の間柄だった。
「今日の鬼さー、どこでサボろうか?」
「ハッ、お前も俺と同じ事考えてたのか」
「いやぁ、こんなメンドーな行事、終わるまで遊んでるが吉だろ」
「まぁ、な」

そのまま啓太と共に、俺は学校を出た。お面を付けず、手に持ったまま。

「鬼は〜外!外!場外!」
突然威勢の良い声が響く。それは俺と啓太にとっては馴染みのある声だった。
「岡田ぁ!お前もまさかこの豆まきに・・・・!?」啓太に岡田と呼ばれたその人物は、同じクラスのソフトボール部の女子だった。
「そうよー?鬼なんて私の豆裁きでコテンパンね!」
「岡田が本気出すと、本当に痛そうだからやめてくれ・・・・・!」冷や汗を流しながら言う啓太に、俺も同意する。

「で、アンタら鬼でしょう、なら・・・・・・・・」岡田の手が、豆の袋に伸びる。
「ヤベぇ・・・・逃げるぞ徹っ!」
「言われなくても逃げるって!」

そうして俺らは、全力失踪で岡田の魔の手から逃れたのだった。このときまでは、フツーの節分大会。
この時点で気づいていれば、俺は啓太と一緒にどこか店でも入って時間をつぶしていただろう。
だが俺達は迂闊にも街をウロついていた。
そして出会った。

227之神:2008/02/02(土) 15:22:44 ID:xJDkyE7Q0
α
最初は、柔道部の奴だと思った。大柄な身体に、それに似合う筋肉質な身体。
しかしその考えは、徐々に消されて行く・・・・・・・。
誰かも分からない奴に、啓太は気軽に声をかける。
「おお、アンタもここでサボってるんですかっ?」啓太の『サボる』に気分を悪くし、何か言って来るだろうと・・・・俺は思ってた。だが・・・・・
「ガルルルル・・・・・グル」 え・・・・・?ガルル?ちょっ、どこの猛獣?
「アハハ、ガルルってアンタ、鬼の鳴き声のつもりか知らないけどさ、もう少し考えようぜー・・・・・」相変わらずな啓太。
「ガルル・・・・・・ここ・・・・・」
「え?」
「ここ、どこだ?・・・・・・・・ガルル・・・・」


β

はーぁ、徹は変なイベントに参加してるし、どこにいるかも分からないし・・・・ヒマだなー・・・・・。
私は制服を脱いで着替えながら、鬼の面を思い出す。
あんな、まるでオーガを可愛くしたようなの付けて走り回ってるなんて、笑っちゃう。


α
その声は、明らかに人間の類が出せる声ではなかった。
ライオンがしゃべったらこんな感じ・・・・っていう、猛獣のワイルドさ溢れる声だった。
そしてもう一つ俺は思った。

・・・・・・・こいつも、またアッチ系なのか・・・・・・。

ここで言う『アッチ』とは、疚しいものの方では無く・・・・・・。
「異世界人」
もう慣れている。日常では無い超常が、既に日常な俺には、ショックなど無かった。
しかし思うのが一つ・・・・・

今までは人間・・・・・・・・・思想や性格や身体能力は置いておき・・・・・、人間の姿の者ばかりだった。
ミカなんて俺から見ても可愛いし、ライトだって普通に街を歩いてても平気だ。
しかし目の前の・・・・・・こいつはどう見ても人間では無かった。
別の種族か、またはゲームみたいなモンスターなのか。

「おーいどうした徹、いきなり黙り込んでよー」
「ああ、ちょっと考え事・・・・・」俺はいい。だが啓太は異世界のことなんて微塵も知らない。
さ、どうするか・・・・・・。

幸い鬼男(仮)は、襲ってくる様子も無い・・・・・面妖だが、節分のリアルなコスプレで通る見た目ではあった。
言語も通じる・・・・っぽい。

「啓太」
「何?」
「ちょっと、俺用事出来たから、一回家に戻るわ」
「え、おい、突然だな」
「ああ・・・・・・突然だよ、本当」


γ
「んー?おいおい、何で今日はこんなに騒がしいんだ」俺は家の屋根から街を見下ろす。
どこもかしこも人が歩き回って、オーガみたいな面をしたやつらを追い掛け回している。なんだ・・・・・祭りか?
とりあえず俺は、適当に漁る為にウロつくことにした。
そうして歩き回ってる時、一人の人影が見えた。
「ん・・・・・・・徹? 路地裏なんかで何してんだ」

α
よし・・・・啓太は居ないか。
「あ、あの・・・・・・・・」
「ガルル・・・・・・・・?」
「何故、ここに?貴方・・・・・たぶんここの人間じゃ無いですよね?」
「ああ・・・・・仲間のキャンプに居たと思ったんだが・・・・・・グルル・・・」見た目とは違い、ちゃんと会話をしてくれる。
「えーと・・・・・・・・いつごろ来たんです?」
「さっき飛ばされたんだ、いきなり。気がついたらここにいたんだが・・・・・・グフ」
「そ、そうですか・・・・・・えーと・・・・お名前は?」

「ナイル。オーガの頭領をやってる。小さいグループだが・・・・・・・・お前さんの名前はなんて言うんだ」鉄槌・・・のような物を地面にドスン、と置く。
「徹です・・・・・長嶋徹。それで・・・・・・」
「なんだ?・・・・・・グルゥ」
「フランデルとかって所から、来たんですかね・・・・?」
「そこの人間はそう言ってるがな・・・・・・そうだ」はぁ、やっぱりか。何でこうもホイホイやってくるんだよ・・・・・・。
「ここの人には見られましたか?」
「ああ、お前とさっきの奴と、それと何人か・・・・・」
「その人たちの反応は?」
「いや、乾いた豆を投げられたが・・・・・・棍棒を掲げたら、どっか逃げてしまったわい」
「えーと、危害は加えて無いんですね・・・・?良かった・・・・・」
その時、黒い影が降りてきた。上から。

「何してんだ徹?」

228之神:2008/02/02(土) 15:47:55 ID:xJDkyE7Q0
α
「あ!ライトさんいい所に・・・・・・・」
「お前、いつの間にオーガと知り合い?」
「いや、さっき会ったばっかですけど・・・・・・」
「グル・・・・・・・・この街の奴らと違うな、貴様」
「ああ、俺はー、ライトって呼んでくれ。フランデルにいたけどこっちに来てな。まぁお前と同じだ」
「人間にお前と呼ばれるのは・・・・・・まぁいい。俺は、どうすれば帰れる?」ナイルは筋肉の塊のような顔を、微妙に歪めている。
「いや・・・・・・俺にも分かりませんし、ならライトさんも帰ってるでしょうし・・・・ね」
「今のところ帰り方は知らねえんだ。行きかたはあるっぽいが」
「グルゥ・・・・・・・どうしたものか・・・・・」


「鬼は外!場外!鬼ヶ島に帰れーーっ!」
「あ・・・・・!岡田・・・・・・・・・ナイルさん、とりあえず逃げて・・・・」
言うとナイルは、のっしのっしと走り出す。大柄な身体のまんまだ、・・・・・・・・ノロイ。

「豆なんて痛く無いから平気だぞ?」ナイルは走りながら先導する俺に声をかける。
「いや・・・・・・じっくり見られたらバレるでしょう、流石に!」
「徹、俺は面倒だから離脱するわー」と言ってライトは笑って飛んでいってしまった。
「えっ?ちょっ・・・・・!あー・・・・・・・人でなしーーっ!」
俺だけに任せてどうするんだよまったく・・・・・・帰ったら言ってやろう、と思いつつ・・・・・このナイルをどうするか考えていた。

「ナイルさん・・・・!とりあえず、ナイルさんは鬼に見えるらしいので、商店街通って一気に抜けましょう」
「よくわからんが・・・・・・俺はお前についていくぞ・・・・・・・!」
傍から見れば、大男に追いかけられる青年・・・・・・にも見えなくない図。見栄えはどうでもいいが。

商店街に差し掛かると、そこは人の通りが激しく、時々鬼の役の者も通る。
ナイルをチラ見くらいしかしないせいか、みんな鬼だと思ってるようだ。バカで助かる・・・・・というか、本来なら俺が常識外だk(ry

「ここをまっすぐ行けば、人が通らない過疎地がありますからー、で」
「俺の家もありますから」
「わ、わがった・・・・・・!」

商店街を流れに沿って進んでいる・・・・・と。
流れの先がなんだかざわめいていた。
なんだーー・・・・・・・・・・?
「あ・・・・・・!」
目線の先には車があった。
遊歩道のこの道に、わざわざ突っ込む車が。
車の外装からして、明らかにマトモな運転手とは思えなかったが、それは無駄にエンジン音を出して進んできた。
市民はすかさず避けるが、中には車に掠ったり、避けて転ぶ人までいた。
「ったく・・・・・なんでこんなやつがこんなときに・・・・・」
俺は危険だが、関わるともっと危険だと思い、スルーを決め込む事にした。
警察がなんとかするだろ・・・・・・その時。

「止めてくる」
そう言うと、ナイルはずかずかと市民に突っ込む車へ向かった。

229之神:2008/02/02(土) 16:09:01 ID:xJDkyE7Q0
α
とめるヒマも無く、ナイルはやってしまった。

「お前、危ねえじゃないか・・・・・・ガル・・・・・」車の15mほど前に立ちはだかるナイル。
運転してる不良と思しき者は、窓から顔を出し笑いながら
「おーいデカいの、そこにいると轢かれるぜー?当たっちゃうよー?ヘヘヘヘ」車には何人かいるようで、他の輩も顔を出していた。
ボックスカーのような、そんな車はナイルに向かってスピードを出していた。
誰もがナイルの巨体が弾かれることを考えていた・・・・・・が。


・・・・・・・・・・・。

「危ねえじゃないか。俺がいるのが見えなかったのか?それとも、止まれなかったのか?」
ナイルは・・・・・・・・車を片手で静止させたのだった。
「は、・・・・・はぁ?」車の不良達は、意味が分からないという顔をしている。まぁ、俺も意味が分からないんだが。

「おい、そのまま押しちまえよ」車の中の男が言った。
「そうよ、ヨユーでしょ?」女も運転している者の頭をバンバンと叩く。
「おっけー、やっちまおう」

男はアクセルを思いっきり踏み込む。
しかし、車は空しくその場で車輪を回すだけだった。

そしてナイルは一言。
「まだ止まらないのか。お仕置きだ・・・・・・ガルゥ」
手に持つ棍棒を思いっきり車のボンネットに叩き下ろしたのだった。

ボコン!

と音が鳴ったかと思うと、車のボンネットが真っ二つに折れ曲がっていた。
「あー・・・・・・ナイルさん、余計な事を・・・・・・・」俺は額に手を当てため息をつく。
「こいつが平気で周りに迷惑かけてんだ、誰かが止めないとだろ・・・・・」得意げにナイルは言うと、棍棒を車から引き剥がす。

車の持ち主は、怪力男に恐れてか・・・・・出てこない。
「とっ、とりあえず逃げよう!もう、余計な事しないで下さいよ本当にっ!」
「グルァ、分かった。気をつける」

そうして逃げるように・・・・・というか逃げたのだが。
俺の家の先までは、無事についた。

「大きなキャンプだな・・・・・」
「いや、家ですって」

俺が家に入れようとしたとき、前に経験したアレが起こった。
ミカが目の前に現れた、あの嵐のような歪み。
「おお、来るときと同じだ・・・・・・・・帰れるのか・・・・?」
「たぶん・・・・・・・」
「そうか、徹。ありが・・・・・・・」
ナイルが言いかけた時、嵐は止み、中に入った大男は消えてしまった。
「な、なんなんだ・・・・・・」

一方的に振り回されて、なんだか疲れた放課後だったが・・・・・・
「あーっ、これからお面も返しに学校行かなきゃじゃねーか・・・・・・!」
そうして俺はトボトボと学校へ歩いていった。

230之神:2008/02/02(土) 16:30:41 ID:xJDkyE7Q0
α
家に帰り、今日の事を話す元気も無い頃。
「あっ、徹!鬼は楽しかった?」ミカが聞く。
「・・・・・・全然」
「そ、そう」

「おーい、2人とも、こっち来てくれ。お土産があるんだ」ライトがそう言って手招きする。
「お土産って・・・・・盗品?」ミカが呆れて質問する。
「もちろん!盗んでナンボ」と、ライトはニヤニヤして答えた。
「・・・・・・・・で、何を?」
「俺もよく分からんが、これだ。街にたくさんあってな、店にも家にも」ライトは差し出した。
「これ・・・・・・・恵方巻か」
「エホーマキ?何だそれは」
「何か知らないで、盗んだんですかアンタ!」
「いや・・・・・まぁ、食い物ってのは分かったけどさ」
「恵方っていう、縁起のある方角を向いて無言で食べる。それが恵方巻。お願い事をしながら食ったり、な」
「へえ・・・・・・願い事かぁ」反応を見せたのはミカだった。
「んじゃあ、盗品ってのがいただけないが、どうせだし食おうか・・・・・」ライトをジロリと一瞥してから、俺は皿に出す。

「一気に齧り付いて食うこと。切ると縁起悪いんだ。あと、無言で願いでもしながら恵方を向いて食う。それだけ」

α
そうして俺はネットで調べた恵方を向き・・・・・齧り付く。
「無ぐ・・・・・・・もご・・・・・ゴクン」
〜疲れる事がこれ以上起きません様に〜

β
ん・・・・・・けっこう太いのね・・・・・食べにくいわ。
「もぐもぐ・・・・・・・・」
〜徹とずっと一緒にいられますように、ついでにライトも〜

γ
無言で食うとか、ワケのわからん催しだな、まったく・・・・・・。
「ガツガツ・・・・・・・・・」
〜手が後ろに回りませんように〜


「食った・・・・・・ね?」
「ああ、食ってる間退屈だった」ライトが言う。
「ところで・・・・・・・、徹とミカは、何を願ったんだ?俺は捕まらないようにと・・・・・」
「ぶっ、捕まるような事してるのに・・・・・・俺は、徒労が増えないように、かな」
「わ、私は・・・・えーと・・・・・・・・・・・・」
「ん?言えないような事願ったのか?」ニヤつくライトを無視して、ミカは言った。
「えっと!もっと可愛くなれますように!・・・・・だよ」
顔を染めるミカ。

「まぁ・・・・・・」
「俺は今も、十分可愛いと思うけど?」と、俺は言ってから微妙に後悔したが・・・・・。

「えっ・・・・・ありがとう」下を向いてミカはもじもじする。

「お前ら熱いなーっ、まったく・・・モゴ!へほうまひをふひいいえうあーーっ!(恵方巻を口に入れるなーっ!」
「うるさい・・・!もう、食べてる間黙ってなさいよっ!」ミカの顔はもう真っ赤になっていた。徹は気がつかないが。

「節分ってこんなに疲れるんだっけ・・・・・」俺はミカとライトの喧嘩を外れて、一人考えていた。



「まぁ、楽しかったけどさ」

231◇68hJrjtY:2008/02/02(土) 16:40:30 ID:tSVRZyCA0
>21Rさん
嵐の前の静けさ…面白くなってまいりましたね(こらこら
アレンの作り出した「ブリューナック」も見事ですが、各ギルドの情勢が手に取るように分かりました。
警戒すべきステレプト、ノースウィンドとの同盟を求めるハイカルラルグ。実際の戦争歴史のようで大好きです(*´д`*)
しかしバフォメットが再び出てくる可能性があるということはただのギルド同士の戦争で終わらないという事ですね。
先の見えない展開、続きお待ちしています。オリジナルスキル…+(0゚・∀・) + ワクテカ +
---
最初から全部読んだ感想なんて書いたら普通に超過レスしそうな気もします(;´Д`A ```
ちまちま感想を書いててもすぐ長くなってしまうしorz

>之神さん
恒例となった(?)之神さんの行事短編、楽しく読ませてもらいました。
なるほどそうか、徹の学校は地域行事に強制参加なのですね(笑)
オーガのナイルが良い味出してましたね。人間がこっちに迷い込むならモンスターもまた迷い込んでてもおかしくないですよね。
最後まで言えなかった「ありがとう」とかちょっと涙モノでしたよ(´;ω;`)ウッ…
徹もミカやライトたちと一緒に行事をやってる時は楽しそうですし、なんか羨ましいです(笑)
そしてミカの願い…|´∀`●) ポッ

232之神:2008/02/02(土) 16:40:49 ID:xJDkyE7Q0
節分ですよねー、みなさん豆まきはするのでしょうか、恵方巻を齧るのでしょうか。
私は豆はまかないものの、恵方巻は食べるつもりです。
オーガが鬼に見えて思いついた、衝動的な短編です。書きながら物語考えて・・・・w
計画性無し、オチ無しヤマ無し(?

ちなみに私の中でのオーガのイメージは、優しい力持ちです。
ええ、本当に勝手なイメージですがw
そんな鬼男(仮 オーガの話でした。
ああっ、バレンタインとかあるじゃないかっ!
今から考えないと・・・・・・・(´д`;

そしていつも感想ありがとうございます。また書いたりします。
之神でした。

233之神:2008/02/03(日) 11:48:00 ID:xJDkyE7Q0
1章〜徹、ミカの出会い。
-1>>593―2 >>595―3 >>596 -597―4 >>601 -602―5 >>611 -612―6 >>613 -614
◆――――――――――――――――――――――――――――――――――――◆
2章〜ライト登場。
-1>>620 -621―2>>622―○>>626―3>>637―4>>648―5>>651―6 >>681
◆――――――――――――――――――――――――――――――――――――◆
3章〜シリウスとの戦い。
-1>>687―2>>688―3>>702―4>>713-714―5>>721―6>>787―7>>856-858
―8>>868-869
◆――――――――――――――――――――――――――――――――――――◆
4章〜兄弟
-1>>925-926 ―2>>937 ―3>>954 ―4>>958-959 ―5>>974-975
◇――――――――――――――――5冊目―――――――――――――――――◇
-6>>25 ―7>>50-54 ―8>>104-106 ―9>>149-150 ―10>>187-189 ―11>>202-204

◆――――――――――――――――――――――――――――――――――――◆
番外

クリスマス  >>796-799
年末旅行>>894-901
節分  >>226-230
◆――――――――――――――――――――――――――――――――――――◆



ちょっと私の小説の目次があまりにも縦長なので、少しいじりました。
こんなので埋めて申し訳ない・・・・・・・・・。

では、引き続き小説スレをお楽しみ下さい。

234白猫:2008/02/03(日) 21:49:53 ID:y8XNfWoQ0
Puppet―歌姫と絡繰人形―

第一章〜第五章及び番外編 5冊目>>992
第六章 -夜空の下で- >>30-37
第七章 -深紅の衣- >>70-81
第八章 -神卸- >>137-139
第九章 -チャージング- >>164-171



第十章 母



 「…………」
 【…………】
 【ヒッ…………】
アリアン地下遺跡、地下二階。
静寂の中、ルヴィラィはゆっくりと手を伸ばす。

   バチン

と、その手がレッドストーンに触れる直前、弾かれる。
火傷のように真っ赤になった手を見、ルヴィラィは目を見開く。

レ ッ ド ス ト ー ン に 触 れ ら れ な い。

 【どーなってんの? パペット。ルヴィぽん弾かれてんじゃん】
 【ヒッ…悪魔系統ノ魔力、寄セ付ケナイ】
 【え、ルヴィぽんって呪術師じゃね?】
悪魔、といえばコウモリの羽、二本の角、狼のような牙と、凄まじく偏った想像しかサーレはできない。
と、そのサーレにルヴィラィが険しい顔で首を横に振る。
 「確かに私は呪術師だけれど…まぁ、半ヒトってところかしら。
 悪魔としての転生の儀を行ったヒト…だから、私はヒトだけどヒトじゃない」
そう呟き、ルヴィラィは目を閉じる。
 「数分あればこの結界は外せるわ――それまで、"そいつ"を食い止めないとね」
 【……?】
そいつ、の言葉にサーレは首を傾げる。
辺りには自分とルヴィラィ、パペットの三人(?)しか見当たらない。
かなり遠方に見える階段も、降りた後破壊した故に、誰かが降りてくることはない。
 【ンジャ、時間ゴリゴリ稼イデチョ。ヒヒッ】
宙に浮くパペットに、ルヴィラィはゆっくりと頷く。
未だに状況を飲み込みかねているサーレは、首を90度傾けた。
 【………?】
 「――来た」

   「『 ――ハウリングブラスト 』」

瞬間、
ルヴィラィ達の後方、4本の石柱に囲まれた舞台が、突如上の階からぶち抜かれた。
凄まじい量の土煙が上がり、その土煙にルヴィラィ達は呑み込まれた。
 「…二日ぶりかしら、フェンリル坊や」
 【…ネルぽん?】
そう呟いたサーレの眼前、
辺りを朦々と舞っていた土煙が、突如渦を巻いて舞台の中心に巻き上げられる。
見る間に晴れていく土煙の中、その暴風にサーレは目を細めた。
 【…………】
 「全く――階段を崩して扉の結界をぶち抜いて、また乙なことをなさるものですね、ルヴィラィ」
 「フフ――[イグドラシル]での傷はもう全快したのかしら、フェンリル?」
カツ、と舞台の床をブーツで叩き、紅い鎧とマントを棚引かせ、ネルはルヴィラィ達の前に舞い降りた。
 「…あの時の続きです」
 「…………」
"あの時"…傷負い血吐き、リレッタを抱え、[イグドラシル]の転送装置へ向かったとき。
あのとき、ネルが言った言葉を思い出す。

   《お前は…お前は必ず!》



 「お前は必ず…僕が、壊します」

235白猫:2008/02/03(日) 21:50:27 ID:y8XNfWoQ0
瞬間、
充分距離を取っていたはずのサーレの眼前に、ネルの体が躍り出た。
慌てて杭を生み出し、瞬時にネルへと放った。
それを右腕の一薙ぎで切り払い、サーレに廻し蹴りを繰り出す。
 【ぅ、わっと!?】
その廻し蹴りを屈んで避け、サーレはバック宙でネルから離れる。
と。

   「『 ――――… 』」

そのサーレに、無数の星形の炎弾が飛ぶ。
が、その炎弾が全て無数の黒い球によって弾かれた。
 「ルフィエ!」
 【ルヴィぽん!?】
舞台の中央、ネルを援護するように杖を構えたルフィエ。
サーレの脇、その援護を威嚇するように笑うルヴィラィ。
 (こいつが…こいつが、ルヴィラィ…!)
 (なるほどね――この子が[歌姫]なの)
その両者を見やり、ネルとサーレはしかし向き直る。
 【ふぅん…リトルウィッチって攻撃もできるんだぁ】
 (今はサーレを撃破しなければ…ルフィエに賭けるというのはこの上なく不安ですが)
と、そのネルの眼前。
 【まぁ、ネルぽん。今は私に集、中】
凄まじく巨大な杭を生み出し、サーレはにっこりと笑う。
 【潰れちゃえ――】
ゴギャンッ、とネルごと、舞台前の石畳が陥没する。
それに反比例するように、サーレとルヴィラィの前に石畳と同じ色の壁が立ち上がった。
 (錬金術…?)
 「ッハァアアアアッ!!」
それを目を細めて見やるサーレの脇、
ルヴィラィが右手に黒球を生み出し、それを目の前の壁に向かって投げる。
風を切る音もなく投擲された黒球は壁に衝突…同時に、大爆発を起こした。
その大爆発の最中、サーレは右手で支えていた直径4mはあろう杭を、朦々と立ち上がる土煙の中の、紅色の光に向かって投げつけた。
が、

   「『 ティタン(巨人族の)―― 』」

ネルの右腕が突如ウルフマン(人狼)のように変化…その質量を何倍にも膨れ上がらせる。

   「『 エッジ(刃)!! 』」
瞬間、
ネルを潰さんとしていた杭が、ネルの右腕によってバラバラに断ち切られる。
 「室内で、こんな危ない玩具を使うんじゃありませんよ」
ドォン、と後方に落ちる杭を見もせずに、ネルは呟いた。
その、巨人族のものかと見紛う大きさの鈍色の腕を見、サーレはふんと笑う。
これが、ネルの新しい術の一つ…[ティタンエッジ(巨人族の刃)]。
瞬時に右腕を巨人族並に巨大化させる単純な術だが、破壊力では右に出る術はない。
それを見やり、サーレはうーんと唸る。
 【[絶望の銑鉄]じゃ相手にならないかな…びっくりびっくり】
そう呟き、サーレはゆっくりと両の手を広げる。

   【来たれ――『デスサイズ(死の大鎌)』】

236白猫:2008/02/03(日) 21:51:05 ID:y8XNfWoQ0

瞬間、
サーレの両手に、身の丈ほどもある巨大な鎌が握られる。
それを見、ルヴィラィは少しだけ驚く。
 (サーレ…本気になったようね)
鈍色の刃、紫の柄の巨大な鎌を握るサーレに、ルヴィラィはゆっくりと手を差し伸べる。
 「援護はするわ…好きになさい」
 【モチ】
その言葉を言い切ると同時、
巨大な鎌を振り上げ、サーレはネルの眼前へ躍り出る。
その力の赴くまま、両の手に握られた鎌を振るう。
その鎌を巨大な鉤爪のような腕で受け止め、ネルは腕力で強引にサーレを投げ飛ばす。
その合間、ルヴィラィへとルフィエが、無数の光弾を放っている。
が、それらは全て、ルヴィラィに到達する寸前に弾け飛んだ。
 「『 ティタン―― 』」
吹き飛ぶサーレを見やり、ネルは小さく呟く。
途端、彼の右腕が眩い紅色の炎に包まれていく。
 「『 エッジ 』」
瞬間、
凄まじい大きさの鉤爪が、サーレに向けて繰り出される。
避ける暇がない、その攻撃にサーレは咄嗟に鎌を振るう。
ガィン、と鎌と鉤爪が激突し、しかし双方共に弾かれない。
吹っ飛びつつもなんとかその攻撃を受けきり、サーレはフワリと着地する。
その、"空中で上下逆さの状態から繰り出した防御の攻撃"に、ネルは内心舌を巻いた。
 (あんな芸当、僕でも出来ないでしょうね…伊達に傀儡ではない、ということですか)
 〈あぶあぶあぶ…もーちょいでやられるとこだった! マジ人間!?〉
お互いに改めて相手の戦闘力を悟り、双方じりじりとにじり寄る。
 (さて、どう攻めるか――?)
 〈ちょっとでも隙を見せたらまずいかな…なんとか状況打開しなきゃ〉
しばらくの、静寂が訪れる。
と、その静寂が、
 【ッヒヒィッッヒヒヒッヒヒヒヒ!!!】
騒々しく、甲高い声に途切れた。
うざったそうに見れば、パペットの触手が、赤く光る石を抱えている。
結界が解かれた、とネルは内心舌を打った。
 「ご苦労様、パペット」
 【やるぅ、パペット】
パペットの脇へ降り立ったサーレに、小さくルヴィラィは耳打ちする。
 「今すぐ[イグドラシル]へお戻りなさい。[グングニル]の破壊を急ぐ」
 【えっ】
 【ヒッ…命令ニハ、忠実二】
 【ぅ、うん】
その言葉に、サーレは腰から懐中時計を取り出す。
それが[イグドラシル]への転送装置だと半秒遅れて気付いたネルは、咄嗟に右腕を振り上げる。
 「『 ――ティタンエッジ!! 』」
 「あら」
突如迫り来る巨大な爪に、ルヴィラィは目を丸くする。
丸くして、軽く手を振るう。
瞬間、
黒と灰、紫の奇妙な盾が立ち上がる。
表面に無数の人々の絵が描かれた、見ただけで気分が悪くなるような盾が。
ネルの爪はその盾に激突する、が。

237白猫:2008/02/03(日) 21:51:31 ID:y8XNfWoQ0
 (…"貫けない"!?)
サーレの杭をいとも簡単にバラバラにした[ティタンエッジ]が、阻まれている。
ルヴィラィの発動したこの盾の術は、それほどまでに防御力が高いのか。
 【ま、ルヴィぽんの[嘆きの壁]は崩れないだろうね】
 【ヒッ。[秘術]クラスデモ防グ難攻不落ノ絶壁。ヒヒッ】
そう言う間に、サーレのパペットの姿が突如掻き消えた。
それを見やり、ルヴィラィは盾点[嘆きの壁]を解除する。
ルフィエの脇へと降り立ったネル、
レッドストーンの台座へと舞い上がったルヴィラィ、
双方、睨み合い。
 「――ルヴィラィ、お前の目的は何です」
 「…ふ、単に終わらせるだけよ。この騒々しくも美しい、[世界]という名の旋律を」
 「そんなこと、させません」
 「阻めるかしら――あなたたちに、私が?」
瞬間、

   「理不尽不条理百承知、最悪最低極悪非道。それでも貴方は結ぶのよ、だって今日は雨だもの。『 裏切りの契約! 』」
   「兵士よ馬よ立ち上がれ、剣よ槍よ敵を裂け、戦よ戦、千軍万馬の見せ所。『 バトルマーチ! 』」

ルヴィラィ・ルフィエ双方の唄が、同時に紡がれる。
一方は、対象の武具を封印する[裏切りの契約]。
一方は、いかなる呪いをも解除する[バトルマーチ]。
双方が双方を打ち消し、辺りには再び静寂が訪れる。
 (速い…唄だけじゃなくて、魔力の統制がすごく速い)
 (流石に唄では勝ち目はないか…まぁ、魔力統御は此方の方が遙かに上だし)
しばらく思考を流し、ルヴィラィはしかし笑みを浮かべる。
その笑みを見、ネルは目を細めた。
 (…"あの時"の、笑いだ)
"あの時"…古都で初めて、ルヴィラィと遭遇したあの時。
まるで自分がナノ単位の小さな生物だと痛感させられる、絶対的な次元の差。
それを象徴したような、余裕を持った笑み。
 (あの時の屈辱は…忘れない)
抵抗らしい抵抗もできず、ルヴィラィに良いように遊ばれ、そして逃げられた。
だが。

今は、違う。
 (不思議だ――あの時ほど、脅威を、恐怖を感じない)
あの時の"どうしようもなさ"が襲ってこなかった。
あの時と、何かが違う。
右腕があるからなのか。
[エリクシル]があるからなのか。
新しい力を手に入れたからなのか。
違う。
 (――そう)
自分の傍にいる、一人の少女。
この少女を、大切なものを護ると、自分は誓ったはずだ。
命を賭して護る…"総て"を護ると、自分は誓ったはずだ。
 ([護る]――護って、見せる)

   「神卸――『 韋駄天 』」

瞬間、
ネルの兜が鈍色から突如蒼く発光――彼の体が、淡く煌めく。
同時に湧き起こる、"この世のものではない魔力"。
 「さあ――始めましょうか。"私"の戦いを」

238白猫:2008/02/03(日) 21:51:53 ID:y8XNfWoQ0

神卸。
自らの器を"イレモノ"として捧げ、神を卸す神術。
[明鏡止水]を極めた者にこそ為し得る、神の力。
卸すは、世界最速、唯一無二の俊速の"神"。
名を――韋駄天。




 「ッハァアアアアア!!!」
 「『 ――嘆きの盾 』」
韋駄天が繰り出す無数の拳を、ルヴィラィの召還した無数の盾が阻む。
[嘆きの盾]――小型の[嘆きの壁]を、無数生み出すルヴィラィの力。
それを見やり、韋駄天は少しだけ目を細める。
が。
鈍色の右腕を思い切り振りかぶり、叫ぶ。
 「『 破砕拳ッ!! 』」
 「!!?」
瞬間、
バギャン、と韋駄天の拳が、[嘆きの盾]を貫いた。
[破砕拳]…相手の装甲を撃ち抜く[武具破壊]の力である。
最も、魔力云々の制御はされておらず、単に"思い切り拳を繰り出した"だけの芸当である。
だがそれで、あの[嘆きの盾]を貫いた。
 (身体能力が異常に上昇してる…一体何を………、!?)
と、その視界の端。
目を閉じ、唄を紡ぐルフィエの姿が見えた。
 (まさか――[勝利の女神]!?)
慌てて黒弾を無数、生み出す。
それをルフィエに向けて全て放ち、追いすがる韋駄天の拳をかわす。
が。
 「遅いッ!」
 「ッ」
めきょ、という音と共に、韋駄天の拳がルヴィラィの背中から胸を、貫いた。
途端に吹き出す鮮血に、韋駄天は少しだけ目を細める。
 (こいつ…速い、わね…私より、凄まじく速い)
血を吐きつつ、ルヴィラィはゆっくりとその腕を指でなぞる。
瞬間、

   ゴバッ

右腕を引き抜き、韋駄天はルヴィラィから離れる。
ふらりと体が傾き、ルヴィラィは地面に倒れ込んだ。
その拍子に、彼女の[リトルサンシャイン]が地面を転がる。
血で真っ赤に染め上がった腕を見やり、韋駄天は小さく息を吐く。
が。
 「少し痛かったわ…今のは、流石に」
 「…!」
倒れていたルヴィラィが、ゆらりと立ち上がった。
胸に空いた大穴からは、鮮血が止め処なく溢れている。
が、起き上がったルヴィラィは特にそれを気にしていない…というより、傷などないように振る舞っている。
 「流石に――ちょっと、頭に来たわ…」
一言、
ルヴィラィが、理解できぬ言葉を呟いた。
瞬間、韋駄天の体を、見えない何かが通り抜ける。
何だ、と体を眺めるが、特に何かが起こったようには見えない。
そう、体には何の影響も与えられていない。
影響を与えたのは――
 「…カ、ハッ…」
体が、締め付けられる。
違う、これは…体を締め付けられているのではない。
締め付けられているのは、彼の――
 「私の、魂、が――」
ネルとの同調が、解ける。
体から、離されようとしている。
 「…おの、れ…[鎮魂歌]か…ッ!」
 「そうよ…この世に縋り付く愚かな魂は、無に還らなければならないのよ――」
ピシ、と韋駄天の兜に亀裂が走る。
 「こ、んなことで、私を殺せると、思ぅな――!」
 「消え去りなさい。人間に肩入れする、狂った神様――」

239白猫:2008/02/03(日) 21:52:18 ID:y8XNfWoQ0
瞬間、

バギン、と兜が、左右真っ二つに割れた。
その兜から、まるで色が抜け落ちるように蒼が消える。
ルヴィラィのように、今度はネルが、地面に倒れ込んだ。
 「…さて、これで二人っきりで話ができるわ」
 「……ネル、くん…」
帽子から解放された栗色の髪が、ルヴィラィの後背に靡く。
顔に無数に走る傷をも"一部"とし、紅の瞳を煌めかせ、ルヴィラィはルフィエの前に降り立った。
その傷と瞳を除けば、その姿は間違いなく、ルフィエそのもの。
 「……私…?」
 「随分唄が上手くなったわね――ルフィエ」
 「…………?」
怪訝そうに目を細めるルフィエに、ルヴィラィはクスリと笑う。
その姿にムッとし、ルフィエは小さく言う。
 「貴方に誉められる筋合は――」
 「あるわよ」
話の途中に釘を刺され、ルフィエはさらにムッとする。
その姿に笑みの色を深め、ルヴィラィは頬に指を当て、言う。

   「だって、私が貴方に唄を教えたんだもの――」




私の古都での生活の中、一番最初に思い出すのは母の姿。
唄がとても上手くて、優しくて、綺麗で、皆に好かれていた母。
自分に唄を教え、発表会での自分の唄に、涙を流してくれた母。
一緒に町中を歩き、唄い、踊り、笑い合った、大切なお母さん。

その母を、私は。

私は、死なせてしまった。


事故だった。

常のように楽しげな行進の中、

暴発したドラゴンツイスターが、自分を襲った。

母は自分を庇い、自分の代わりに、龍に喰われた。

自分は、ただ泣いているだけしか、できなかった。

泣いているだけしか――できなかった。

240白猫:2008/02/03(日) 21:52:39 ID:y8XNfWoQ0

 「…………何を、言って、るの」
 「…私が、貴方に唄を教えた…[ピーアン(賛歌)]から[オルレアンの乙女]、色々な唄を教えたと思うけど」
 「…………っ」
それは母が教えた、と、彼女は言えない。
言えば、何か大切なものを、壊されてしまうかもしれない。
そんな"愛娘"の内心を知ってか知らずか、ルヴィラィは続ける。
 「貴方は12月も終わりに差し掛かった24日の夜、生まれた。
 その日、その瞬間、古都では初めて雪が降ったのをよく覚えている…」
 「…………」
それは、母が嬉しそうに自分へと話していた、自分が生まれたときの話。
 「三歳の頃、貴方はもう小さく唄を紡いでいた――。
 私は驚いたわ…三歳で、貴方は朧気ながら[歌姫]の力を掴んでいたんだもの」
 「……めて」
小さく、非常に小さく、ルフィエが拒絶の言葉を紡ぐ。
しかしルヴィラィは、その言葉を無視する。
 「六歳になって、貴方はとうとう唄を紡いだ。その小さな体で、幾十もの人々の命を救った――。
 私はたまらなく嬉しくなった。自分と同じ道を選ぶと無邪気に言っていたあの子が、たまらなく愛しかった」
 「やめて」
ルフィエの言葉が、より強い拒絶の色を示した。
しかしルヴィラィは、やはりやめはしない。
 「十一歳。貴方は私に唄を教えてくれとせがんだ。
 私が紡ぐ唄を、貴方はすぐに覚え、同じように…いいえ、私以上に、澄んだ音色で唄うことが出来た」
 「やめてよ」
 「十四歳。貴方はとうとう私を越える唄の力を身につけた。
 私は貴方と一緒に唄を唄うことにした…やはり、貴方は私を越える力を身につけていた」
 「やめて…お願いだから、やめて」
 「十八歳。私を完全に越えたかもしれない貴方に、私はふと疑問を抱いた。
 この子はまるで私の生き写し――私と違うものは、瞳の色だけ。
 私は貴方と決別しようと決めた。そして、知り合いの戦士に懇願し、芝居を打ってもらった」
 「やめてよ…それ以上、言わないでよ」
震え出す体を抑え、ルフィエは小さく呟く。
 「そして…あの日、私は貴方と決別し、呪術師となった。
 私の死を悼む貴方の姿を見、しかし私の決心は揺るがなかった。
 私は呪術師となり、幾十年もの時を賭け、そしてパペットを見つけた――」
 「……止め――」
口を開いたルフィエの喉を、ルヴィラィは掴む。
キリキリとその首を締め付けルヴィラィはにっこりと笑う。
 「本当にそっくりね…純粋に唄を追い求め、大切なものに恋い焦がれていた、あの頃の私と同じ」
 「………ッ……」
気管が締め付けられ、息が出来なくなる。
人間の力ではない…このままでは、喉を潰される。
 「でも残念ね…所詮子は、親には勝てぬということかしら」
左手でルフィエの頬を撫で、ルヴィラィは微笑む。
 「消え去れ、ルフィエ=ライアット――」
左手の人差し指で、黒弾を生み出す。
その黒弾を、徐々にルフィエに埋め込めて行く。
 「私はもう、フェレン=ライアットではないのよ…我が愛しの歌姫――」

241白猫:2008/02/03(日) 21:53:03 ID:y8XNfWoQ0
瞬間、











黒い光に呑み込まれ――砕け散った。













 「…………っ…」
 「…レイゼルはん?」
レイゼルの視界が突如目の前が暗くなり、それが突如元へと戻る。
ふらり、と体が揺らぎ、槍でなんとか体勢を戻す。
 (立ちくらみ――か? なんで、こんな時に)
見れば、ルフィエが自分に結わえ付けたミサンガが千切れている。
 (…ルフィエちゃん――?)
 「…だいじょぶか? 事後処理もう終わんねんから気張ってや」
 「――ウッス」






FIN...

えー…デスサイズを出しちゃったのは私のミスです(滝汗
ワイト様が出してるのは知ってました。正宗に変更しようかとも散々悩みました。
でもちっちゃい女の子に鎌ぶん回させて豪傑数多の猛者共を斬り殺させたいじゃないですかッ!!!!!(黙
第十章[母]。ルヴィラィとルフィエの過去をプチ公開です。
次章は恐らく用語解説ビッグ版になるかと思います。
いい加減やらないと拙いかなーというあれです。
数えると

112個

という意味不明な数があったので…頑張ります。(汗

ということで第十一章はしばしお待ちを。実は第十一章はまだ全く手ぇ付けてません(滝汗

242718:2008/02/04(月) 14:34:02 ID:gXqJ5/rQ0
>ワイト氏

ラータの挑発に漢気を感じました。
その一瞬の彼の発言は、正に武人ですね!

基本的に仕事でも何でもないわけで、無理せず
投稿を続けていただければよろしいのではと思いますよ(^ω^ )

>FAT氏

一瞬、噴水の前で待ち続ける「僕」に、忠犬ハチ公を連想し、続けて
噴水前でいつまでも帰らぬ友を待ち続けるウルフマンを想像してしまいました(^ω^;)

これが最後と理屈では分かっていても、やはり現実を完全に受け入れきれない「僕」の
強い悲しみと友に対する深い情愛が後半部から加速度的に濃くなっていって、読むほどに
とても悲しい気持ちになりました。これは本当に悲しい・・・


>◇68hJrjtY氏

感想ありがとうございます。蟹からダートや靴がドロップするというのは疑問もありますけど、
やはり狩りでの採取とはこういう血生臭いことなんじゃないかなと思ってます。
人型モンスターからはきっと身ぐるみ剥いでるんでしょうけどw

モンスターの描写、初めての挑戦でしたがお褒めイタダキ恐縮です(^ω^ )

>◆21RFz91GTE氏

おっと、化学じゃなくて錬金術のほうでしたかw
それにしても、ノースウィンドには「伝説的に腕の立つロリコン」が2人もいることになりますね。
なんというロリコンホイホイ・・。

世界情勢と、見え隠れする陰謀が絡み合って、なんと期待の膨らむ設定。
ご自愛しつつも頑張っていただきたいところ。

>之神氏

そういえば2/3は節分でしたねー。義務教育を外れて幾星霜、日本の暦にどんどん疎くなって
いきます。
非常に知的で一本気の通ったオーガ、集の長として相応しい人格者(?)だったのでしょうか、
無事帰れたのは何よりですね。

さて・・・ついに向こうへの帰還という事例が番外で登場しましたが・・・次章の
動きを予想させられますね!

>白猫氏

氏の詠唱はまるで歌舞伎の口上を連想させます。小粋で小気味良く、まさに「唄」ですね。
そしてついに2人の因縁の一端が判明してしまいましたね・・・ルフィエはどうなってしまうのでしょうか。

243FAT:2008/02/04(月) 18:48:15 ID:i6bpBbJo0
前作 二冊目>>798(最終回)

第二部 『水面鏡』

キャラ紹介 三冊目>>21
―田舎の朝― 三冊目1>>22、2>>25-26 
―子供と子供― 三冊目1>>28-29、2>>36、3>>40-42、4>>57-59、5>>98-99、6>>105-107
―双子と娘と― 三冊目1>>173-174、2>>183、3>>185、4>>212
―境界線― 三冊目1>>216、2>>228、3>>229、4>>269、5>>270
―エイミー=ベルツリー― 三冊目1>>294、2>>295-296
―神を冒涜したもの― 三冊目1>>367、2>>368、3>>369
―蘇憶― 五冊目1>>487-488、2>>489、3>>490、4>>497-500、5>>507-508
>>531-532、7>>550、8>>555、9>>556-557、10>>575-576
―ランクーイ― 五冊目1>>579-580、2>>587-589、3>>655-657、4>>827-829
>>908>>910-911、6>>943、7>>944-945、六冊目8>>19-21、9>>57-58、10>>92-96
―言っとくけど、俺はつええぜぇぇぇぇ!!― 六冊目1>>156、2>>193-194

―3―

「なっ!! おい、開けろ!! ここを開けるんだ!!」
 無情な孤独がジム=モリを襲う。レンダルとデルタはジム=モリが鍵を開けた瞬間、彼
の襟を引っ張り、投げ捨てた。ジム=モリがあわあわしている隙に鍵を抜き取ると、バド
ンッとドアを強く締めた。そして、ドアノブを回そうとジム=モリが手を伸ばすと、その
目の前で内側から鍵がガチャンと掛けられたのである。
「むぅっ、不覚! このジム=モリ、まさかこうもあっさりと家を乗っ取られるとは!」
 明りがついた家の中からは二つの笑い声が響く。ジム=モリは苛立ってけっして回らな
いドアノブを必死になってガチャガチャ揺さぶった。すると中から叫び声が。
「きゃー! ハノブ鉱山を守ろうの会のみなさぁ〜ん! 変な男が入って来ようとするの
ぉ〜! 助けてぇ〜!!」
「くっ、ハノブ鉱山を守ろうの会だと! まずい、非常にまずい! 何故なら俺はその会
に入っていない! これはまずいぞ!」
 ジム=モリは正面突破をあきらめ、家の西側に移動する。
「この窓だ! ここから奴らの行動を見極め、打開策を考える!」
 すると、彼の目に信じられない光景が飛び込んできた。
「ぴっ、ぴーちぃぃぃぃぃぃぃっくぅ!!」
 家の中で放し飼いにされている小鳥のぴーちくが、二人と同じ部屋の棚の上に止まって
いるのである。奴らは野蛮。特にレンダルは昔、ぴーちくを家の外に逃がそうとした前科
がある。ここは窓を割ってでも、奴らに気付かれる前にぴーちくを助けなくては!
「きゃー! ハノブ鉱山を守ろうの会のみなさぁ〜ん! 変な男が窓から覗き見している
のぉ〜! 助けてぇ〜!! 変態よぉ〜!!」
「ちっ、ええい、またしても! それにしても、あのデルタのよく通る声には注意せねば! 
このジム=モリ。初めてレンダル以上にお前が恐ろしく思えるぞ、デルタっ!!」
 デルタの叫び声に怖気づいたジム=モリは窓の前から消えた。
「はははははははは! ひぃーーーっ、ひぃっ、ひぃ! だめだ、息ができねえ、苦しい
よ、デルタぁ。あはははははははははは!!」
 腹をかかえて、床をじたばたと転げまわるレンダル。デルタも自分の演技に酔いしれ、
二人のテンションは笑い声と共にさらに上がっていく。
「お、あの変態消えたぜ。次はどこから来るかなぁ」
「おねいさま、こんなのはどうでしょう。こしょもしょむしょ」
「ぶわぁっははははは! そいつは傑作だ! おいデルタ、早速用意しようぜ!」
 なにかよからぬことを耳打ちしたデルタ。二人は浮き浮き、ステップしながらキッチン
へ向かうと小さな桶に水を張り、勝手口を引いて半開きにし、その上に水のたっぷり入っ
た桶を不安定に乗せた。
「よし、デルタ、奴に気付かれないように物陰に隠れろ!」
「あいん」

244FAT:2008/02/04(月) 18:49:34 ID:i6bpBbJo0

「なんということだ。このジム=モリ、あまりにも戸締りが完璧すぎて自らの家を攻略で
きないでいる! ああ、ぴーちく、ぱーちく、無事でいてくれよ」
 ジム=モリはぐるりと自分の家を一周し、再び玄関先に戻ってきていた。いつの間にか
家の中は静まり返っている。
「む、この静けさ、ただ事ではないな。さて、どうするべきか」
 ジム=モリは玄関のドアを見る。頑丈そうなどっしりとしたドアは、とても自分が体当
たりした程度では壊れそうにない。
「ここは駄目だな。考えろ、ジム=モリよ、考えるのだ」
 ぶつぶつ言いながら家の周り、二周目を歩き出す。と、家の裏側が明るくなっているこ
とに気付いた。さっき回ったときには真っ暗だった家の裏側が明るい。
「ふ、このジム=モリともあろうものがこんな重大なチャンスを見逃していたとはな」
 ジム=モリは、一周目にはここが真っ暗だったことなど覚えていなかった。そろり、そ
ろりと西側の壁面を這う姿は立派な盗人、変態だ。
「はぁはぁ、この先にぴーちくとぱーちくが待っている。早く会いたい。しかし、焦って
はならない。このジム=モリ、焦って起こした行動でいい思いをしたことがないからだ!」
 慎重に、慎重に、光に近づいていく。ようやく家の角に辿りつき、そおっと顔を半分だ
し、様子を伺う。
「なんと! 勝手口が半分、開いているではないか! しかし慎重に、慎重にだぞ、ジム
=モリよ!」
 再び壁に体をへばりつけ、するりするりと半開きの勝手口を目指す。あと一歩、もう勝
手口に手が届く! というところで部屋の中から「ちちちちちち」という小鳥のさえずり
が聞こえてきた。
「ぱっ、ぱぁちくぅぅぅぅぅううう!!」
 愛鳥のさえずりに、居ても立ってもいられなくなったジム=モリは勢いよく勝手口を押
し開け、家に入った。

 バジャァァァァン! ガズンッ!

 二つの音が同時に響いた。ジム=モリは予想していなかった事態にあわてふためき、濡
れた床と衝撃を受けた頭部のダメージのため派手にずっころんでしまった。
「きゃははははははははははははははははは!!」
「あっはっはっはっはっはっはっはっはっは!!」
 キッチンのテーブルの陰で隠れて見ていた二人は崩れ落ちるように笑い転げ、ジム=モ
リの濡れた姿を嘲笑った。
「デルタ、お前の声まね最高だぜ! ぱっ、ぱぁちくぅぅぅぅぅううう!! だとよ、あ
っはっはっはははは!」
「むふふふふ、むふっ、むふん、むふん。飛び込んでくる瞬間のジム=モリおじさまの崩
れた顔が、顔が、面白すぎますわ! きゃははははははははは!」
 二人は予想以上の成功に笑いが止まらなかった。と、そのとき、床に頭をついたままの
ジム=モリの体がわなわなと震え出した。怒るのか?

245FAT:2008/02/04(月) 18:50:01 ID:i6bpBbJo0
「うおぉぉぉぉぉぉぉんんん!! ぴーちくぅっ、ぱーちくぅ!! こいつらが僕をいぢ
めるよぅ!! たすけてぇーー!!」
 なんと、大人気なくジム=モリは泣きだした。泣きながらリビングへ駆けていくと二羽
の小鳥が泣き声と濡れた姿に驚いて羽ばたいた。
「ぴーちくぅ!! ぱーちくぅ!! 僕だよ、ジム=モリだよぉ!! さぁ、いつものよ
うに僕の肩に乗って遊ぼう!!」
 主人の声を忘れたのか、恐れているのか、二羽の小鳥たちはジム=モリの頭上をさっと
飛びぬけ、ふんわりとしたデルタの髪の中に逃げるように潜った。
「よーちよちよち、ぴーちくぱーちく、恐いでちゅねー。デルタちゃんが守ってあげまち
ゅからねー」
 デルタは宣言どおり二羽の小鳥を手に入れた。それも相手のほうから飛び込んできたの
だ。誰も文句は言えまい。
「こら、ジム=モリ! お前ここを誰の家だと思ってんだ! びしゃびしゃにしやがって、
つまみ出すぞ!」
 レンダルもこの家の中での権力を物にしていた。つまりはこの家はレンダルの物。二人
は宣言どおり、欲しい物を手に入れた。
「くそっ、ぴーちく、ぱーちく。必ずお前たちを救いだしてやるからな。だが今は風呂に
入らねばならん。恐い悪女に怒られてしまうからな。このジム=モリ、風呂に入ってくる
ぞ!!」
「ちゃんと床の掃除もしとけよ」
「え〜、ジム=モリおじさまのあとにお風呂入るなんてデルタいやですぅ」
「じゃあ一緒に入る? デルちゃん」
 急に下がる室温、凍る空気。小鳥たちまでもが軽蔑の目を向ける。
「はっはっはっは。ではこのジム=モリ、上がったあとに湯を全て抜くとしよう。それな
らいいだろう? デルタよ」
「きゃー! ハノブ鉱山を守ろうの会のみなさぁ〜ん! 変な男が家に上がりこんできて
一緒にお風呂に入ろうって強要するのぉ〜!! 助けてぇ〜!! ど変態よぉ〜!!」
 外までよく通るデルタの声は、室内で聴くと耳にキンキンと痛い。
「よさないかぁ! デルタぁぁぁぁぁ!! おじさん本当に捕まっちまうだろぉぉぉぉ
ぉ!!」
 こんな調子でジム=モリは夜遅くまでおちょくられ、やがて二人はとても満足気に眠り
についたのだった。

246FAT:2008/02/04(月) 21:30:51 ID:i6bpBbJo0
やっぱりこういうほのぼの話は書きやすいですね。

>>68hさん
そうですね、意識はしていませんでしたがランクーイとレルロンド、レンダルとデルタ
の雰囲気はどこか似ている部分があるかも知れませんね。
互いに男同士、女同士なので書きやすかったり。
それと短編へのレス、ありがとうございます。
今度は楽しいお話に挑戦してみたいです。

>>ESCADA a.k.a. DIWALIさん
ビートを刻むぜ!!カポエイラにヘッドフォンの組み合わせは最高ですね。
ダンサブルにミゲルを蹴倒すエディの姿が早くも頭に浮かび上がりました。
そしてかっこよすぎるバーソロミュー。やっぱり闇の元素のイメージは「無」
ですよね。オラオラーっ!!

>>之神さん
節分!
私は恵方巻食べたのですが、出てきたときには八つくらいに切り分けられてました;;
豆も歳の数以上に食べちゃいましたし。良いつまみです。
あれ本気で当てられるとけっこう痛いんですよね、小さな子は鼻の穴に入れて出せなく
なったりするそうです。
わけわからない感想ですが面白かったです。


>>21Rさん
ギルド間の戦争ですか。兵力何千、北西より来たりなんていう大掛かりな戦闘を
早くもイメージしております。
見方にも花形、敵にも花形という展開は大好きです。アレンとアデル、この二人と
対等の力を持つというウィンドとレイヴン、なんとも楽しみな要素がたくさんです。
続き、楽しみにお待ちしております。

>>718さん
冒頭の殺人蚊が伏線になっているとは!
丁寧な動作の描写がハンターのハンターらしさを強調しているようで、矢を放つ
までの間、固唾を飲んでいました。
これも日常的な描写と呼ぶのかはわかりませんが、とにかく718さんの描写の丁寧さには
毎回勉強させていただいております。
自然界では決して人間が最強ではないのですよね。武器を持ち、家を持ち、その棲み処を
隔てることによって身を守っているにすぎない一生物なのだと再認識させられました。
次回作も期待しております。

>>ワイトさん
血で出来たヘルアサシンなのだからやはり自分の都合で液体にも戻れるのですね。
怨念の篭った血とは恐ろしい……ラータの眼に飛び散った血はヘルアサシンの
故意の攻撃、刃にもなる血は相当に厄介ですね。
挑発するラータに正義はあっても勝機はあるのか、楽しみにお待ちしております。

>>白猫さん
ああ、韋駄天が……
ネルの「護る」という強い気持ちの上をいくルヴィラィの鎮魂歌。
そしてルフィエの母だと語るルヴィラィ。これは真実なのか、リトルウィッチ
の特徴である読心術がなせるワザなのか、どちらにせよルフィエは……
千切れたミサンガが暗示するものはやはりルフィエの死なのでしょうか?
続きがとっても気になります。

247◇68hJrjtY:2008/02/04(月) 22:41:06 ID:.vSJwIY60
>白猫さん
レッドストーン前での攻防…ついにルフィエとルヴィラィの邂逅となったと思いきや。
親子だったという展開はまったくの予想外でした!因縁のライバルにはなりそうだと思ってはいたものの(汗
ネルの神卸すらも解除してしまうルヴィラィ、レッドストーンも手に入れてしまいましたね。
そして彼女の語る目的。そこにはもはや世界そのものを壊すという何もかもを逸脱した思惑が。
この戦い、ネルだけでなくルフィエも無事では済まされなさそうです。ともかく、続き楽しみにしてます!
---
112個ってもしかして用語ですか!凄いなぁ…。
これはやっぱり白猫さんもサイトで用語集など作ってみては(*´ェ`)

>FATさん
ジム=モリとレンダル&デルタの攻防戦…。
ジムさんのあらゆる手で攻略しようとするもことごとく打破されてしまう可哀想さに身もだえしてます(ノ∀`*)
そしてぴーちくもぱーちくも彼から離れ、ハノブ鉱山を守ろうの会は背後に迫り…ダメ押しの一緒に風呂に入ろう宣言。
味気ないNPCがFATさんの手にかかるとここまで楽しい存在になるのですね。面白かったです(笑)
実力で(笑)家を手に入れたレンダル&デルタ。この後の旅の行方はいかに。
楽しみにしています。

248黒頭巾ちゃん:2008/02/04(月) 23:02:45 ID:fou9k2gM0
書き上げてから過去ログ検索したら、既に赤頭巾ちゃんネタあったのですが…オチとか違うので新参者でも投下しても宜しいでしょうか(゚д゚ノ|(ドキドキ)


…昔々のお話です。
ソゴム山脈の麓の村に、とても可愛い女の子が住んでいました。
恥ずかしがりやさんな女の子は、いつも黒い頭巾を被っておりましたので…
皆に黒頭巾と呼ばれていました。


…ある日、黒頭巾がお友達のケルビーと遊んでいると。
いつもニコニコ笑顔で優しい大好きなお母さんに、おつかいを頼まれました。

「お祖母さまの具合が悪いそうだから、
 ケルビーと一緒にお祖母さまの大好きな焼きたてのパンを持っていってくれない?」

黒頭巾はお母さんだけでなくお祖母ちゃんも大好きだったので、コクコク頷きました。

「お祖母さまの別荘までお母さんのウィンディが案内するわ。
 ちゃんと寄り道しないで、おやつの時間までに帰ってくるのよ」

お母さんのエプロンについた甘い匂いからすると…
今日のおやつは黒頭巾の大好きなふんわりパンケーキです。

「はーい」

右手を上げたよい子のお返事をして、黒頭巾はケルビーに跨りました。
黒頭巾の頭の上では、パンを入れた籠を下げたウィンディが
「付いておいで」と言わんばかりにくるりと回りました。

「いってきまーす」

お母さんに手を振って、元気に出発進行。
一人のおつかいは初めてだけど…ケルビーが一緒なら恐くありません。
ましてや、お母さんのウィンディまで付いているのだから百人力です。

「黒頭巾ちゃん、こんにちは」
「おや、黒頭巾ちゃん。お散歩かい?」

赤山を犬乗りで駆け抜ける黒頭巾に、赤山に住むサラマンダー達が挨拶します。

「サラマンダーさん、こんにちは!
 おかあさんにおつかいをたのまれたの。
 おばあちゃんのおうちにいってくるのよ!」

誇らしげに答える黒頭巾を微笑ましく思いながら「それはいい事だ」と皆頷きました。

「あぁ、黒頭巾」

サラマンダーの長、スルタンが黒頭巾に呼びかけます。

「とても大きな狼が我々の仲間を襲っているらしい。
 人間も襲われないとは限らないから、注意して行くのだぞ」

スルタンの言葉に、サラマンダー達も口々に同意しました。

「恐ろしい、恐ろしい!
 黒頭巾ちゃんは可愛いから気をつけないと」
「どうも、人間の言葉を話す狼らしいんだ。
 私の幼馴染が「ポタを寄越せー」と遠吠えしているのを聞いたそうだよ」

驚いた黒頭巾はケルビーと目を見合わせましたが、ケルビーが「僕が護るよ」と
尻尾を振ってくれたので安心してにっこり笑いました。

「だいじょうぶよ、ありがとう。
 じゃぁ、いくけど…みんなもきをつけてね!」
「いってらっしゃい!」

サラマンダー達は、黒頭巾の姿が見えなくなるまで見送ってくれました。

249黒頭巾ちゃん:2008/02/04(月) 23:03:58 ID:fou9k2gM0
…漸く、村とは正反対の山の麓までやってきました。
こんなに遠くまで来るのは、小さな黒頭巾にとっては大冒険です。
ふと、行く先に一人の男が立っているのに気付きました。
人見知りが激しい黒頭巾は少しビクビクしながらケルビーにしがみ付きます。
近付くにつれて、その男の人は魔法使いらしい…という事がわかりました。
絵本の魔法使いの様な長い杖を持っていたからです。
洋服は普通のロングコートでしたので…ズルズル黒ローブの絵本とは、全然違いますが。
もう少しですれ違う時、魔法使いは「こんにちは」と挨拶してきました。

「こんにちは…」

警戒して降りてきたウィンディの後ろに隠れながら、黒頭巾はもじもじと挨拶しました。
いつもお母さんに「挨拶はキチンとしなさい」と躾けられている結果です。

「小さなお嬢さん。独りで何処へ行くんだい?」

その言葉に、このお兄さんは心配してくれてる様だ…と判断した黒頭巾は、
震える声で返事をしました。

「このさきの、おばあちゃんのおうちにいくの。
 でも、ひとりじゃないよ。
 おともだちのウィンディとケルビーがいっしょなの」
「ほぅ…それはいい事だね」

にっこり笑った魔法使いの目が一瞬キラリと光った事に…黒頭巾は気付きませんでした。
顎に手を当てた魔法使いは「いい子にはいい事を教えてあげよう」と行く先を指差しました。

「このまま進むと…横手に綺麗な花があるよ。
 とても珍しい花だから、持って行ってあげると喜ぶんじゃないかな」

魔法使いの提案は確かに素敵に思えました。
お祖母ちゃんはお花が大好きなので、きっと喜んでくれる筈。

「おにいさん、おしえてくれてありがとう」

黒頭巾はにっこり笑って言いました。


…そのまま少し走ると、さっきのお兄さんの言う通り横目にお花が見えました。
お母さんの「遅くなるから寄り道しちゃ駄目よ」の言葉が頭の中でぐるぐる回りましたが、
黒頭巾はケルビーに「止まって」とお願いしてしまいました。 
お祖母ちゃんをいっぱい喜ばせてあげたい。
元気がないなら、尚更です。
そんな必死の想いを感じたケルビーは、少し悩んだけれど止まってくれました。
お空を行くウィンディも警戒する様に上空を回りながら、黒頭巾を待ってくれました。

「ケルビー、ウィンディ、ありがとう」

黒頭巾はニコニコとお花を摘み始めました。

250黒頭巾ちゃん:2008/02/04(月) 23:07:54 ID:fou9k2gM0
…その頃、お祖母ちゃんの別荘では。
ベットの脇には先回りした先程の魔法使いの姿がありました。
ベットの上には石の様に固まったお祖母ちゃんの姿が。

「バアさん、悪く思わないでくれよ」

呟いた魔法使いが身を屈めるや否や…魔法使いは大きな狼の姿に変身してしまいました。

「ぐるるるる」

何と、あの魔法使いは…サラマンダー達の言っていた恐い狼だったのです。
そう、総ては…あの可愛い黒頭巾を(いろんな意味で/自重)食べてしまう為に。

「ババアは守備範囲外なんだけどなぁ」

そうぼやいた狼は、魔法の制限時間が来て石化が解けたばかりのお祖母ちゃんを…
ごっくんと丸呑みしてしまいました。


…暫くして。
そうとは知らない黒頭巾がお祖母ちゃんの別荘に到着しました。
ウィンディはお母さんの所に「無事に着いたよ」と報告に向かいます。
折り返し戻ってくるウィンディのお迎えが来るまでは、お祖母ちゃんの別荘で一時休憩です。
背に籠を載せたケルビーの横でドアをコンコンとノックします。

「おばあちゃん、くろずきんがきたよ」
「黒頭巾ちゃん、どうぞ入りなさい」

返事はすぐに来ましたが…何だか声が変です。
お祖母ちゃんはそんなに具合が悪いのでしょうか。
恐る恐るドアを開けながら、ケルビーを伴って暗い部屋に入りました。

「おぼあちゃん、だいじょうぶ?」

机の上に籠を置きながら、心配になって訊ねます。

「あぁ、お前が来てくれたから大分よくなったよ。
 もっと近くにおいで…お前の可愛い顔を見せておくれ」
「うん!…あれ?おばあちゃんのかみ、のびた?」

近付くと、布団から覗くお祖母ちゃんの頭は何だかモサモサしています。

「寒いから、切らずに伸ばしたのよ」

確かに、毎日どんどん寒くなってきています。
季節はもうすぐ寒い寒い冬です。

「あれ?おばあちゃんのおみみ、おおきくなった?」

ケルビーがふと鼻をフンフン動かしました。

「お前の声がよく聞こえる様にだよ」

イキナリ耳をピンと立てたケルビーが、黒頭巾の前で通せんぼします。
まるで「近付くな」と言っている様です。

「ケルビー、どうしたの?
 おばあちゃんとおはなししてるだけよ?」

止められないと悟ったケルビーは、警戒も顕に牙を剥いて唸りました。
黒頭巾はパニックになって必死にケルビーを止めます。

「だめ、ケルビー!
 おばあちゃんがどうしたの!?」
「ねぇ、黒頭巾。
 お祖母ちゃんは、お腹が空いてお腹が空いて…お口が大きくなっちゃったわ」

言葉に合わせて、布団がモゾモゾと不気味に揺れました。

「さぁ、早く食べさせておくれ!!
 可愛い可愛い…お前自身をな!!!!!」

251黒頭巾ちゃん:2008/02/04(月) 23:08:43 ID:fou9k2gM0
ガバッと起き上がった狼は、息を呑む黒頭巾に襲い掛かりました。
それを防ごうと、ケルビーが騎士の様に果敢に立ち向かいます。
しかし、レベル差がありすぎるのか…ケルビーは次第に防戦一方になってきました。
まだまだ小さい黒頭巾です。
もう少しお姉さんになったら習う筈の、応急処置も治療も出来ません。

「もうやめて!ケルビーをいじめないで!」

大好きなケルビーが傷を負っていくのを我慢出来ず、大きな瞳から涙を零して、
大きな狼のお腹をポカポカ殴りました。

「ぐえ、やめろ!中身が出るじゃないか!」

伊達に黒い服は着ていません。
小さな黒頭巾でしたが、力はそこそこあります。
代々家に伝わる旧時代の遺産、[力固定]バトルリングのお陰です。
トゲトゲのついた指輪で思ったより痛い攻撃をされた事に慌てた狼は、
ボロ雑巾の様になったケルビーを地面に叩きつけ、黒頭巾を押し倒しました。

「きゃー!ばかばか、はなして!」
「食べちゃうぞー、食べちゃうぞー!色んな意味で食べちゃうぞー!」

あの大きなお口で噛まれたら、とても痛そうです。
尤も、狼の言う「食べちゃう」は別の意味(以下、自主規制)

「やー!だれかたすけてー!」
「ぐへへ、こんな郊外で誰も助けになど来るもんか!」

狼の言う通り、周りに建物なんかありません。
大ダメージに倒れたケルビーも消えてしまっています。
黒頭巾はこのまま食べられてしまうのでしょうか。

…その時です。
ドアがバーンと開き、一陣の風が吹き抜けました。
黒頭巾が外から差し込む光の眩しさに目を覆っている間に、
「ひでぶぅ」という悲鳴と共に身体の上に圧し掛かっていた重荷が急に消えました。
恐る恐る目を開くと、そこには見知らぬ少年が黒頭巾を護る様に構えていました。
その向こうには、吹き飛ばされたらしき狼がいます。

「な…何だ貴様は!何をするか!」

ノックバック抵抗の足りない事を棚に上げた狼は、地団駄を踏んで喚きました。

「唯の武道家さ!道を訊ねに民家を訪れたら、女の子の悲鳴が聞こえたから助けただけだ!」

突然の乱入者に慌てる狼に向かって、少年が説明口調で返します。
黒頭巾には少年がヒーローの様に思えました。

「何だよ、迷子かよ…だっせーな」

…狼には違った様ですが。

「抵抗出来ない小さな女の子を襲う方がダサいがな。
 それに、何だ…そのでかい腹は。
 今、流行りの…メタボリックシンドロームとやらか?」
「失礼な!さっき丸呑みしたババアが入ってるだけだ!」

狼の言葉に黒頭巾が息を呑みました。
大好きなお祖母ちゃんが食べられてしまったのです。
如何しよう、如何しよう。
パニックの黒頭巾の瞳にどんどん涙が溢れて来ます。

252黒頭巾ちゃん:2008/02/04(月) 23:09:34 ID:fou9k2gM0
「…返して貰おうか」

怒気が篭った少年の声に、狼がベルセを発動しながら襲い掛かります。

「俺は赤山秘密適正レベルだぜ…こんな半島の海辺付近にいる様な雑魚黒ゴキに負けるかよ!」

吼えながらチェーンを発動しようとした瞬間、狼の目の前で少年が消えました。

「そうか…だが」

その声は、狼の懐から聞こえました。
呟いたその右手は、驚く狼の鳩尾に綺麗にめり込んでいます。

「残念だが…俺はゴールドスワンプ秘密適正、だ。相手が悪かったな」

白目を剥いた狼は「げふり」とお祖母ちゃんを吐き出しながら崩れ落ちました。

「おばあちゃん!」
「ううん…」

慌てて駆け寄る黒頭巾の問い掛けに、微かですが応えがありました。
救出が早かったからでしょうか…お祖母ちゃんは何とか息はある様です。

「これくらいなら…はっ!」

少年は怒号でお祖母ちゃんを一時的に回復してくれました。
顔色が幾分マシになったお祖母ちゃんは、すぐに目を覚ましました。

「嗚呼、黒頭巾…無事だったのかい!」
「このひとがね、たすけてくれたの!」
「たまたまだよ…これくらい気にしないでくれ」

照れながら「飲んでくれ」とフルヒを渡す少年に、お祖母ちゃんは何度もお礼を言いました。

「…さてと、あの狼だが」

振り向いた先には、チェーンの不発でCP−になった元狼の姿が。
情けない格好で伸びている魔法使いを縛りながら、少年はある事に気付いた様子。

「ん?コイツ、古都で指名手配されてた変態ロリコンウィザードじゃねぇか!」

…どうやら、無事に引き渡す先が決まった様です。


…窓をノックする音に目を向けると、お母さんのウィンディの姿がありました。
これ幸いとウィンディにブリッジヘッドのテレポーターまで手紙を頼むと、
すぐに古都から警備兵がやって来ました。
「ご協力感謝します」と敬礼した警備兵は、まだ失神したままの魔法使いと引き換えに、
金貨の沢山詰まった袋を置いていきました。
お祖母ちゃんは自分達を助けてくれた少年に「持って行っておくれ」と言いましたが、
少年は「これで美味い物食って、早く身体治してな」とお祖母ちゃんに袋を押し付け、
受け取ろうとしませんでした。

253黒頭巾ちゃん:2008/02/04(月) 23:11:32 ID:fou9k2gM0
そんなこんなで時は経ち、黒頭巾はそろそろ帰らないといけない時間になってしまいました。

「丁度、ビスルに用があるから送るよ。むしろ…道案内してくれないか?」

少年が頬を掻きながら提案したので、黒頭巾は満面の笑顔で頷きました。
ケルビーの背に乗った黒頭巾と武道家はかなり元気になったお祖母ちゃんに見送られ、
仲良く話しながらロマ村に向かいます。
道すがらに武道家が話してくれたドキドキする様な冒険話に、
黒頭巾は「大きくなったら冒険者になりたい!」と思いました。
楽しくお話したからでしょうか…あっという間に到着した赤山登山路で、
サラマンダー達に「例の狼は捕まった」と報告すると、大変喜んでくれました。
歓声が上がる中、山を下ると…長閑な集落が見えました。

「…ここが、ロマむらビスルよ!」

自分の住む村を背後に、ケルビーから降り立って誇らしげに両手を広げる黒頭巾を
眩しそうに眺めた少年は「案内してくれてありがとう」と笑顔を浮かべました。

「ううん。おくってくれて、ありがとう…たすけてくれて、ありがとう!」

黒頭巾は背伸びで武道家の頬にお礼のちゅーをして、真っ赤な顔のまま村に駆けて行きました。
その後姿を見送る武道家が、真っ赤な頬を押さえてヘタリこんだのは…本人の名誉の為に、
ここだけの秘密にしておきましょう。


…それからというもの。
ソゴム山脈付近にちょこちょこ現れてはメインクエを進める武道家と、
差し入れに来る黒い頭巾の女の子の…仲睦まじい姿が見れたそうです。


…めでたし、めでたし。





お目汚し、失礼しました…(゚д゚ノ|
年の差かぽー大好物ですし、武道家×サマナらぶデス(遺言/待)

254之神:2008/02/05(火) 04:52:15 ID:xJDkyE7Q0
>>黒頭巾さん
古参でも何でも無い私ですが、いらっしゃい。
なんだか絵本風味で和みましたw
別の意味で(略 や、メタボなど、微妙に現代路線も交えているのに絵本チックになってて・・・・w

私、感想は頭弱いのバレるので書かない派なのですが・・・・・・カキコ(´∀`*

255白猫:2008/02/05(火) 19:00:21 ID:y8XNfWoQ0
Puppet―歌姫と絡繰人形―

第一章〜第五章及び番外編 5冊目>>992
第六章 -夜空の下で- >>30-37
第七章 -深紅の衣- >>70-81
第八章 -神卸- >>137-139
第九章 -チャージング- >>164-171
第十章 -母- >>234-241
これまでの主要登場人物 >>38


Puppet―歌姫と絡繰人形―

第一章〜第五章及び番外編 5冊目>>992
第六章 -夜空の下で- >>30-37
第七章 -深紅の衣- >>70-81
第八章 -神卸- >>137-139
第九章 -チャージング- >>164-171
第十章 -母- >>234-241
これまでの主要登場人物 >>38

番外編 いい加減やろうよ用語解説




 「…あれ?」
やけに狭い和室、中央に置かれたコタツに入っていたルフィエがキョトンとする。
 「第十章は…あれ?」
 「いい加減用語解説をしないと拙いという作者の判断でしょう」
やっぱり今日も蜜柑を頬張りながら、ネルが溜息を吐く。
コタツの上に高々と積まれた白い紙を見やり、ルフィエは首を傾げる。
 「…なにこれ?」
 「…ボツを含めたPuppetの固有名詞でしょうか」
 「…ていうか、実際いくつあるの? 固有名詞」
 「…ええ、と」
その書類の山の一番上と一番下の書類を抜き取り、ネルが読み上げる。
 「…[ルヴィラィの乱]から[オルレアンの乙女]まで…ええと、数は…?」
 「いっこずつ上げていこうか。
 ええっと…ルヴィラィの乱、ギルド師団大戦、アウグスタ事変、呪術師リトルウィッチ殲滅大号令、大戦、オベリスク、神器、月影団、シャドウスニーキング、紅瓢、ブルンの影狼、ヴァリオルド家、万華鏡分身、ウルトラノヴァ、運気、黒懺剣…これで第一章終わり」
 「…ウィザードリィ、リトルサンシャイン、パペット、シックスセンス、アウグスティヌス、マペット、歌姫、封呪、ディテクティングエビル、ホーリークロス、ジャッジメントデイ、ホーリージャッジメント、天使、秘術、ホーリーサークル、鎮魂歌、子守歌…これで第三章終わりです」
 「…凄まじいね」
まだ1/3でありながら、数えるのが鬱なほど量が多い。
 「…バトルマーチ、解呪、エリクシル、勝利の女神、傀儡、円舞曲、ラグナロク、懺悔術、円舞、翔舞、暴傷、懺悔、懺残斬、狂想曲、ジャベリンテンペスト、影狼、蒼き傭兵、白の魔術師、グングニル、開闢神話、名も無き最高神、ワルキューレ…なんか疲れちゃったよネルくん」
 「…まだまだありますよ。騎士道、テレットトンネル、スージャネ大陸、FORCE、ZIN、錬金術、スマグの大噴水、タッグバトル-トーナメント、タリズマン、エバキュエイション、イグドラシル、賢者の石、人工生命体、ホーリーエクス・クロス、装備型の術、バスターシャイン、ブレストファイア、深紅衣、ホーリー・ジャベリン、鳥籠、ダークネスイリュージョン、唄、ヘイスト、ファイアー・アンド・アイス・アンド・ライトニング、スターヒール、ドラゴンツイスター!」
 「ええっと…フェンリル、神卸、アイススタラグマイト、韋駄天、鏡映し、黒騎士、碧龍、レヴァンティン、レッドストーン、ビッグバン、神々の石、予見、魔創残龍剣、黒龍剣、マルチプルツイスター、宴影剣、コルセスカ、チャージング、ライトニング・ジャベリン、ハウリングブラスト、巨人族の刃、絶望の銑鉄、死の大鎌、嘆きの壁、裏切りの契約、明鏡止水、嘆きの盾、破砕拳、賛歌、オルレアンの乙女…終わり!」
 「数えましょうか」
 「う、うん」





5分経過

 「34,35…あれ、ここって数えた?」
 「えっと…あ、混ざった!」






15分経過

 「…ねぇ、ここ数えた?」
 「はい」
 「ごめん、混ざった」
 「ルフィエ!」
 「ごめんなさい!」






 「えー…110個ありました。多分」
 「すっごく時間かかりそうだね」
 「頑張っていきましょう」

256白猫:2008/02/05(火) 19:00:44 ID:y8XNfWoQ0
1【ルヴィラィの乱(るう゛ぃらぃのらん)】
呪術師、ルヴィラィ=レゼリアスの引き起こした内乱。
ブリッジヘッド付近で勃発し、この内乱でルヴィラィ=レゼリアスの名がフランテル全土に広まった。

2【ギルド師団大戦(ぎるどしだんたいせん)】
ルヴィラィの乱に誘発され起こった、ギルド単位での内乱。
主に古都ブルンネンシュティング付近で勃発し、古都は壊滅的な被害を受けた。

3【アウグスタ事変(あうぐすたじへん)】
聖職者[アドナ=ルドルフ]によって引き起こされた内乱。
アドナ=ルドルフの所属するギルド、及びビショップ達がアウグスタを占領した事件。
このアウグスタ事変は、聖職者[ルゼル=アウグスティヌス]によって解決された。

4【呪術師リトルウィッチ殲滅大号令(じゅじゅつしりとるうぃっちせんめつだいごうれい)】
ゴドム政府の出した、呪術師とリトルウィッチの殲滅完了の大号令。
当時迫害されていた呪術師・リトルウィッチの殲滅が完了し、大戦は終結した。

5【大戦(おおいくさ)】
ルヴィラィの乱、ギルド師団大戦、アウグスタ事変、三つの内乱を総称した呼び名。

6【オベリスク(おべりすく)】
①古都南西部に存在する、巨大な石塔。
 何の記念に建造されたかはよく分かっていない。
②ファウンティンス・ハイランドに存在する[マペット]を眠らせている石塔。

7【神器(じんぎ)】
魔術師の所持する、己の魔力を増強させることのできる媒体。
神器を所持しなければ発動できない術もあるほど、魔法の発動と密接に関わっている。

8【月影団(つきかげだん)】
西はリンケンから東は古都まで、グレートフォレストを蹂躙する盗賊団。
首領は[アネット=ライラ]。

9【シャドウスニーキング(しゃどうすにーきんぐ)】
ネルを始めとするシーフの使う術。
姿を陰に隠し、その間如何なる物質をも通り抜けることができる。
但し、発動中は他の一切の術を使うこともできなくなる。

10【紅瓢(べにひょう)】
月影団首領、アネット=ライラの異名。
紅の髪、誰よりも速い太刀筋、そこから名付けられた。
名前を付けたのはアーティ=ベネルツァー。

11【ブルンの影狼(ぶるんのえいろう)】
ネルの異名。
古都の警備隊で唯一シーフの力を持ち、夜の古都を支配するとまで言われた影狼の名から付けられた。

12【ヴァリオルド家(う゛ぁりおるどけ)】
ネルの出身家。
[シュトラディヴァディ家の内乱]で有名な、シュトラディヴァディ家の分家であり、
フランテルで現存するただ一つの貴族。
その当主には、機密文書の回覧権や軍内部での大尉相当の地位等、様々な特権が与えられる。

13【万華鏡分身(まんげきょうぶんしん)】
ネルの使う、自分と同じ姿の分身を無数、生み出す術。
当初はその術を制御しきれていなかったが、今では完全にものにしている。

14【ウルトラノヴァ(うるとらのう゛ぁ)】
リトルウィッチで唯一と言って良い、強力な範囲攻撃術。
強力な閃光を一瞬凝縮・解放する凄まじい術である。

15【運気(うんき)】
武道家の扱う、徐々に身体の損傷を回復する力。
しかし、体力は回復することは出来ず、さらに失ったもの(切り落とされた腕など)は回復しない。

257白猫:2008/02/05(火) 19:01:08 ID:y8XNfWoQ0

16【黒懺剣(こくざんけん)】
①アーティの持つ呪いの剣。全長1.8mはある長刀。
②アーティの剣による刺突の名称。その刺突は一度に2つの呪いを相手に掛ける。

17【ウィザードリィ(うぃざーどりぃ)】
魔術を極めた者に与えられる称号。
魔術師だけではなく、剣士や呪術師にも与えられることのある称号である。

18【リトルサンシャイン(りとるさんしゃいん)】
DXU。

19【パペット(ぱぺっと)】
①[災厄]の御伽噺で知られる悪魔の名。
②ルヴィラィの持つ骸骨の名。災厄の御伽噺のものと同一のものであるらしい。
自我を持ち、ある程度の言葉を話す(ネルはこいつの喋り方が嫌いらしい)。

20【シックスセンス(しっくすせんす)】
瞬時に自身の第六感を高める術。
同時にある程度の魔力も補充することができる。

21【アウグスティヌス(あうぐすてぃぬす)】
神聖都市アウグスタの名の由来となった名家。
当主、ルゼル=アウグスティヌスは、現代で最強の冒険者と呼ばれている。

22【マペット(まぺっと)】
パペットと対となるらしい、[聖]の力を封じ込めた十字架。
詳細は続編を待て。

23【歌姫(うたひめ)】
①ビガプールで一世を風靡したというリトルウィッチの異名。
②[唄]を紡ぐことで強力な術を発動する術者のこと。
その唄は人に理解できるものもあればできないものもある。

24【封呪(ふうじゅ)】
魔法の発動を封じる呪いの名。
[狂気]、[混乱]のように[上級の魔法を封じる]のではなく、
[魔法そのものを封じる]呪いである。

25【ディテクティングエビル(でぃてくてぃんぐえびる)】
ある一定の範囲内の敵を察知する能力。
魔物だけを探知するものもあれば、人だけを探知するものもある。

26【ホーリークロス(ほーりーくろす)】
追放天使の中では最強の部類の術。
巨大な十字架を召還し、敵を一掃し味方の傷を治療する。

27【ジャッジメントデイ(じゃっじめんとでい)】
追放天使の中では最強の部類の術。
無数の十字架を召還し、敵を一掃し味方の毒を治癒する。

28【ホーリージャッジメント(ほーりーじゃっじめんと)】
リレッタの持つ、上記二つの術を組み合わせた術。
その力は、アンデットだけを消滅させるという。

29【天使(てんし)】
天上界から追放された天使ではない、神々から敬愛された真の天使。
現在の天使は、知られているのはリレッタ=アウグスティヌスだけである。

30【秘術(ひじゅつ)】
そのあまりの力に秘された術。
リレッタの[ビッグバン]、アーティの[ライトニング・ジャベリン]がこれに当たる。

31【ホーリーサークル(ほーりーさーくる)】
光の円盤を召還する術。
光熱を伴う円盤であり、殺傷力はかなり高い。

32【鎮魂歌(れくいえむ)】
霊(アンデット)を消滅させる唄。
この世に未練のある亡霊をあの世へ昇華させる。

33【子守歌(ららばい)】
生きている者全てを眠らせる術。
ただし、命のない者や[歌姫]には通用しない。

34【バトルマーチ(ばとるまーち)】
リトルウィッチの唄う戦いの唄。
[歌姫]クラスの術者ならば、その者にかけられた呪いをも解除する。
この術のルフィエの歌詞は、[兵士よ馬よ立ち上がれ、剣よ槍よ敵を裂け、戦よ戦、千軍万馬の見せ所]。

35【解呪(かいじゅ)】
対象にかけられた呪いなどを解除する術。

258白猫:2008/02/05(火) 19:02:00 ID:y8XNfWoQ0
36【勝利の女神(しょうりのめがみ)】
身体能力を一時的に上昇させることのできる術。
しかし、多重に使用すれば対象の体にダメージが入る。
ネル、ルフィエの口振りからすると、第二、第三の強化術も存在するようだ。
この術のルフィエの歌詞は、[歌姫の名に置いて、一時の力を。この世に賜る哀れなイキモノに、聖なる加護があらんことを]。

37【傀儡(くぐつ)】
[円舞曲]によって生み出された、意志を持ち動く人形。
シャーレーン、デュレンゼルのように、人ならざる力を持つ。

38【円舞曲(わるつ)】
傀儡を創り出すための術とされている。詳しい効果は一切不明。

39【神々の運命(らぐなろく)】
開闢神話において、神々と英雄達と人間達と魔物達の大戦争。
この大戦によって、天地は滅び去ったという。

40【懺悔術(ざんげじゅつ)】
アーティの扱う、黒懺剣を扱った戦術。

41【円舞(えんぶ)】
懺悔術の一。
黒懺剣を、円を描くように薙ぐ。

42【翔舞(しょうふ)】
懺悔術の一。
胡蝶のように空を舞うことを可能とする力。

43【暴傷(あばれのきず)】
黒懺剣特有の呪い。
相手の傷の治癒を妨害する能力である。

44【懺悔(ざんげ)】
黒懺剣特有の呪い。
切り裂いた相手の動きを妨害し、拘束する能力である。

45【懺、残、斬(ざん、ざん、ざん)】
アーティ最強の技(?)。
威力はルヴィラィを消し飛ばすほどの力だが、どういう術なのかは分かっていない。

46【狂想曲(かぷりっちお)】
自分の分身を生み出す唄の力。
狂想曲を発動中、さらに別の唄を発動可能という特殊能力を持っている。

47【ジャベリンテンペスト(じゃべりんてんぺすと)】
槍を凄まじい勢いで投擲し、その槍を中心に凄まじい烈風を巻き起こす術。
風系統の魔術ではトップクラスの威力を誇る。

48【蒼き傭兵(あおきようへい)】
アーティの異名。
蒼い紫電を操ることから、アーティを皆がそう呼ぶ。

49【白の魔術師(しろのまじゅつし)】
カリアスの異名。
異名の由来はよく分かっていないらしい(多分出で立ちが理由)。

50【グングニル(ぐんぐにる)】
開闢神話において、名も無き最高神が扱っていたとされる槍。
数千年前、とある鍛冶屋が創り出したらしいが――?

51【開闢神話(かいびゃくしんわ)】
名も無き最高神を始めとする神々の伝説。
現在開闢神話の伝説は世界中に知れ渡っているという。

52【名も無き最高神(なもなきさいこうしん)】
開闢神話において最強・最高齢の神。
グングニルを繰る最強の武神だったという。

53【ワルキューレ(わるきゅーれ)】
開闢神話において名も無き最高神の元で邪を祓っていた十一人の半神。
ルヴィラィの言う[ラグナロク]と何か関係があるようだ。

54【騎士道(きしどう)】
自らを犠牲に他を生かす、騎士達共通の精神。
アーティやネルもまた、この騎士道を全うし日々を過ごしている。

55【テレットトンネル(てれっととんねる)】
南のフォーリンロードと古都を繋ぐ巨大な洞窟。
[ZIN]系統の魔物も多く、住民も滅多に此処を近寄らない。

56【スージャネ大陸(すーじゃねたいりく)】
災厄の御伽噺でパペットに滅ぼされたという大陸。
実在し、今から数千年前に滅び去った。

57【FORCE(ふぉーす)】
数十年前、世界最強を誇っていたギルドの名。
現在は解散し、[最強の冒険者]の称号として使われている。

58【ZIN(じん)】
[魔術に酷似した能力]の総称。
ある一部の魔物が、このZINの力を持っているという。
ちなみに、フォーリンロードの99.9%の魔物はZIN系統の魔物。

59【錬金術(れんきんじゅつ)】
あらゆる物質に干渉・形状を変化させる術の総称。
ありとあらゆる分野に深く干渉し、高名な魔術師はこの研究を怠らない。

60【スマグの大噴水(すまぐのだいふんすい)】
スマグの奥に鎮座する巨大な噴水の名。
その噴水に二人で金貨を投げ入れれば、その二人は永久に結ばれるという。

259白猫:2008/02/05(火) 19:02:25 ID:y8XNfWoQ0
61【タッグバトル-トーナメント(たっぐばとるとーなめんと)】
[FORCE]選抜武道会とほぼ同期に行われる大会。
2vs2のタッグ戦で優勝を争う。
間の[-]は白猫のミスらしい。

62【タリズマン(たりずまん)】
ネルの母の形見である正八面体の水晶。
持ち主を防護する能力を持つ宝石だという。
RSで実際にあれば、魔法抵抗+25%、防御+40%程度の首装備だろうか。

63【エバキュエイション(えばきゅえいしょん)】
術者に超速をもたらす術。
ある程度の知識を持つ天使なら体得している術。

64【イグドラシル(いぐどらしる)】
ルヴィラィの本拠地らしい。
リレッタの[ビッグバン]で崩落したらしいが…。

65【賢者の石(けんじゃのいし)】
様々な呼び名があり、卑金属を瞬時に貴金属へと変成する石だという。
ネルの腕の[エリクシル]も、この賢者の石を基に造られた。

66【人工生命体(ほむんくるす)】
[傀儡]の別称らしい。
詳細は一切不明。

67【ホーリーエクス・クロス(ほーりーえくすくろす)】
両腕に小型の十字架を召還する術。
切り裂いた相手にホーリークロスを発動し、
その十字架自体が武器にも防具にもなるという術。
リレッタのオリジナル術。

68【装備型の術(そうびがたのじゅつ)】
単純な攻撃術(垂直斬り・メテオetc)とは違い、ある程度効果の持続する術。
ミラーメラーミストやシマーリングシールドがこれに当たる。

69【バスターシャイン(ばすたーしゃいん)】
対ヒト最強を誇る直線型攻撃術。
決してバスター社員(社員破壊)ではない。

70【ブレストファイア(ぶれすとふぁいあ)】
リトルウィッチの直線型攻撃術。
超高熱を光線で相手を焼き切る。

71【ホーリー・ジャベリン(ほーりーじゃべりん】
光属性のランスを生み出す装備型の術。
一撃で馬車程度なら倒壊させるほどの威力を持つ。

72【鳥籠(とりかご)】
詳細は一切不明。
捕縛型の機器だと思われる。

73【ダークネスイリュージョン(だーくねすいりゅーじょん)】
相手の能力を完全に逆転させてしまう術。
相手が強ければ強いほど弱くなり、弱ければ弱いほど強くなる。
この術のルヴィラィの歌詞は[永遠の闇、極楽の陰、この世の善悪幸不幸、笑って見せよう泣いて見せよう、どう受け取るかは貴方次第、どうぞ一つ堪能あれ]。

74【唄(うた)】
[歌姫]の紡ぐ唄の総称。
鎮魂歌、賛歌がこれに当たる。

75【ヘイスト(へいすと)】
味方の全体速度を上昇させる援護型の術。

76【ファイアー・アンド・アイス・アンド・ライトニング(ふぁいあーあんどあいすあんどらいとにんぐ)】
一方に炎、一方に氷、柄に雷を召還する術。
破壊力等は一切不明。

77【スターヒール(すたーひーる)】
アリアン〜リンケン〜ダメルを蹂躙する盗賊団。
南のアサシン、西のスターヒール、中央の月影団、と呼ばれるほどの勢力を持つ。

78【ドラゴンツイスター(どらごんついすたー)】
氷の龍を召還する戦士の術。
ありとあらゆるものを氷結させる力を持つ。

79【アイススタラグマイト(あいすすたらぐまいと)】
巨大な氷の柱を召還する術。
この術を極めていれば、砲弾にも小揺ぎもしない氷を召還できる。

80【韋駄天(いだてん)】
今は亡い、世界最速の神。
その足は、千里を一瞬で駆け抜けるという。

260白猫:2008/02/05(火) 19:02:47 ID:y8XNfWoQ0
81【黒騎士(くろきし)】
カリンの異名。
その全身の黒い姿から名付けられたという。

82【碧龍(へきりゅう)】
カリンの扱うドラゴンツイスターの名。
効果はドラゴンツイスターと変わらない。

83【レヴァンティン(れう゛ぁんてぃん)】
アーティの特注品である槍。
可能な限り軽く・硬く造られた槍。

84【レッドストーン(れっどすとーん)】
今から約500年前、天上界からこぼれ落ちた石。
アリアン地下遺跡に封印されていたが、パペットによって強奪される。

85【ビッグバン(びっぐばん)】
リレッタの[秘術]。
詳細は不明だが、イグドラシルを爆砕するほどの力だという。

86【神々の石(かみがみのいし)】
如何なる物質も変成し、如何なる生物も創り出し、また壊す、
まさに"神様だけができる悦楽を人がすることのできる"石。

87【予見(よけん)】
未来に起こりうることを見る力。
リトルウィッチでもかなり珍しい力で、ルフィエがこれを使うことができる。

88【魔創残龍剣(まそうざんりゅうけん)】
①[龍を魔によって創り出す剣]の意。
真っ黒の刀身であり、まさにカリンが扱うに相応しい剣。
②カリンの扱う魔剣術(魔力を用いた剣術)の名。

89【黒龍剣(こくりゅうけん)】
その名の通り、黒龍を生み出す術。
アーティのマルチプルツイスターを楽々打ち消す力を持っている。

90【マルチプルツイスター(まるちぷるついすたー)】
無数分身を生み出し、対象を攻撃する術。

91【宴影剣(えんえいけん)】
カリンの扱う、黒い靄を召還し、対象を消滅させる術。

92【コルセスカ(こるせすか)】
[ウィングスピア]と同じ、矛先が三つに分かれている槍。

93【チャージング(ちゃーじんぐ)】
[雷を貯める]の意。
ライトニング・ジャベリンに必要不可欠な準備術。

94【ライトニング・ジャベリン(らいとにんぐじゃべりん)】
チャージングにより貯まった雷を、槍ごと一気に解放する術。
その破壊力は、MAXで城を一撃で倒壊させる(古都北西のアレ)。
リレッタのビッグバンと同じ[秘術]。

95【ハウリングブラスト(はうりんぐぶらすと)】
巨大な咆哮を上げ、大爆発を起こす術。
ウルフマン及び、フェンリル状態のネルが使用可能。

96【巨人族の刃(てぃたんえっじ)】
右腕を超巨大化させ、鉤爪のような指で攻撃する術。
その破壊力は、如何なる物質も突き通す。

97【絶望の銑鉄(ぜつぼうのせんてつ)】
シャーレーンの生み出す杭の名。
形状・重量を自由自在に操り、ネルの鋼鉄の腕をも貫く。

98【死の大鎌(ですさいず)】
刀身が2mはある巨大な鎌。
ヒトを殺戮するべく造られ、製作者もまた、この鎌で貫かれ死したという。

99【嘆きの壁(なげきのかべ)】
ルヴィラィ誇る最強(かもしれない)防御術。
ティタンエッジを軽々と受け止めるほどの強度であり、
[秘術]をも防ぎきるという。

100【裏切りの契約(うらぎりのけいやく)】
悪質且つ不平等な契約を無理矢理結ばせる術。
この術を受けた者の防具は、如何なる防御力・魔力をも無効化される。
この術のルヴィラィの歌詞は、[理不尽不条理百承知、悪質最低極悪非道。それでも貴方は結ぶのよ、だって今日は雨だもの]。

101【明鏡止水(めいきょうしすい)】
澱みの無く、静かに澄んだ心境、の意。
詳しい特殊効果は不明。

102【嘆きの盾(なげきのたて)】
小型の嘆きの壁を無数、生み出す術。
かなり便利な術だが、強度は嘆きの壁にかなり劣る。

103【破砕拳(はさいけん)】
[武具破壊]の力を持つ拳撃。

104【賛歌(ぴーあん)】
詳細一切不明。

105【オルレアンの乙女(おるれあんのおとめ)】
[オルレアンの乙女]――ジャンヌダルクを唄った唄。

261白猫:2008/02/05(火) 19:03:28 ID:y8XNfWoQ0
 「………がんばった。うん」
 「多少抜けてる部分があるでしょうが…もうやりたくないですね」
 「作者の性格上、後100は出てきそうなんですけど…」
 「…………」
 「…………」


 「エリクシルはかなり複雑なので、別個に解説させて頂きます」
 「この物語のキモだろうし…まぁ、頑張ろう、うん…」

106【エリクシル(えりくしる)】
①錬金術において、不老不死の妙薬とされている。
スマグの長老が調合に完成したらしいが…?
②ネルの曾祖父、アラスターの創り出した[天地創造の石]。
ネルの感情によって形状が変化し、現在以下三つの術を発動可能である。
 第一段階:義手である右腕を自由自在に変化させることのできる状態。
 第二段階:以下4つの力を扱うことができる。

107【鏡映し(かがみうつし)】
一度見ただけで相手の術を完全にコピーする能力。
しかし、構成の単純な装備型の術(以下に説明有)や難易度5以下程度の術ならコピーが可能である。
ちなみに、万華鏡分身を始めとするオリジナルの術は、ほぼ全て難易度6以上(コピー不可能)だという。

108【深紅衣(くりむそんろーぶ)】
ネルの第二段階の力の象徴。
深紅の色をした衣であり、如何なる魔力をも断絶する能力を持つ。

109【フェンリル(ふぇんりる)】
ネルのエリクシルの真正解放した姿。
顔の上半分を覆う面覆いのような兜と紅色の軽鎧、深紅衣を纏った姿をしている。

110【神卸(かみおろし)】
今までネルの会ったことのある者の内、既に絶命した者の魂を卸す術。
卸した魂の技能や身体能力までも、ある程度自分のものにすることができる。

補足だが、本編では登場していないネルの父、[カナリア=ヴァリオルド]は、[第三段階]まで開花することができたと言われている。

262白猫:2008/02/05(火) 19:04:11 ID:y8XNfWoQ0
「はい、前回やってねぇだろこのピー(諸事情により伏せ)野郎ということで、コメ返しをやっていきましょう」
「ネルくん、流石にピー(諸事情ry)野郎は言い過ぎじゃない?」
「いいんですよ、ピー(諸ry)野郎くらい言わないと作者がやる気出さないんです」



◇68hJrjtYさん。
いつもコメありがとうございます。励みになっております。
私の無駄に長い文章はもうご愛嬌です(ぉぃ)。神卸の設定はなんとなく作っただけのオマケです(ぅおい)。
ネルくんの能力はどれもこれも[護る]という感情から分岐した術ですので…まぁ、第三段階でなんとなく分かるかもしれません。
第三段階は最終章手前になるかもしれません(オイ)。
レッドストーンについてはしばらく後に語られるでしょうが、この物語はあくまでも[歌姫]と[パペット]を中心に物語が進みます(ぁ
サイト…ですか。
うーん、作ったことは一応ありますが、うーん(ぁ
…一応考えておきます。あどう゛ぁいす感謝です(_ _ *)


メイトリックスさん。
こちらもコメありがとうございます。
その通り、神卸は降神術の派生みたいなものです。
アクションシーンは私の一番好きなシーンの一つですので、多分気合の入れ方が違うと思います。世界観とかと比べて(笑)
理解できない方も他に絶対いるというわけでの用語解説っていうあれです(ぁ


FATさん。
こちらもコメありがとうございます。
チャージングははっきり言ってものすごいCP食います(ぁ
ポーション、心臓等の効果を無効にするというオマケもついてます。鬼です。
威力も鬼です。ミズナなんて多分一撃です。
…あ、カンスト入りますね(笑)
ネルくんにデリカシー…無いんじゃないですかね。恋愛にはたぶん疎いです。
ルヴィラィを始めとする歌姫の力は、ただの人間(実力があるかどうかは無問題)には強すぎるものなんですね。
どれだけ感情が強くても、唄の力はダイレクトに受けてしまうわけです。
最も、術者も同様の効果を受ける(まぁ[唄]だから耳に入るのは当然です)ので、相手にダメージを負わせるような術は無理なようです。


718さん。
こちらもコメありがとうございます。
レッドストーンの所在を知っているのは極一部のシーフや実力者だけだったみたいです。
並の術者じゃ解除できない封印も成されていて、多分並の冒険者なら一生かかっても見つからないくらいだと思いますよ。
毎回毎回意外な設定は入れるよう努力しています。スパイスはちょびちょび。ちびちび。つんつん。
歌姫たちの唄はほぼ即興です。
[口ずさみやすく、そして現実から離れたような歌詞]を心がけています(裏切りの契約あたり)。
多分唄おうと思えばタン、タン、タン、タンのリズムで大抵唄えちゃうと思います(笑)。


皆様いつもコメントありがとうございます(_ _ *)
職人の皆様、いつもコメントをする機会を逃して申し訳有りません(_ _ ;)
これからもツンツン更新して行きますので、しばらくお付き合い下さいませ。

一応最終章までの大体の案は完成してあるのですが…完結したらしばらくはネタ作りに籠もるとします。
借金返済奮闘記とかいいかもしれませんね…一発当てよう無鉄砲少年とケチで守銭奴少女のお話とか(笑)
では、私はこの辺で失礼します。…そういえば、結構スレ下がってきてますね。

263メイトリックス:2008/02/06(水) 16:50:26 ID:ukZhIQhQ0
Hellfire Salvage
01 : The Decidings Part.1>>9-11 Part.2>>59-61 Part.3>>130-132
02 : Nonpayment Part.1>>180-182

「Nonpayment Part.2」

カラン。
氷とガラスのぶつかる音に、さまよっていた意識が引き戻される。
顔を上げると、若いウェイトレスが水の入ったグラスを脇によけたところだった。
わたしと目が合うと、彼女は微笑みながら、片手にささげ持ったお盆をテーブルの上にトンと置いた。
湯気と香ばしい薫りがぱっと広がり、顔を打つ。
油をひかれて黒く光る鉄皿の上で、綺麗に焼き色のついたローストビーフがジュウジュウと音を立てている。
思わず息をのんだきり、わたしは言葉を失っていた。
口を開こうものなら、よだれが垂れてしまいそうだったからだ。
たっぷりとかけられたグレイビーが滴り落ち、熱い鉄の上で跳ねる。
胡桃色に焼けた表面の切れ目からは、肉汁の染みたジューシーな赤身がのぞいている。
ピリッとした胡椒の匂いが鼻をくすぐった。
食べて食べてと美味しそうに訴える肉料理から視線を引き剥がすのは、千匹の怒れるオーガに平和を説くのと同じくらい絶望的な試みだった。
その試練を何とか乗り越え、わたしは歩き去ろうとするウェイトレスを引き止めて言った。
「あの――わたし、何も注文してません……」

パブの照明は明るさを落としてセットされている。
客がくつろげるようにするためだろうか。この街に住んでいるのは、ほとんどが“事情のある”者だとニイドは言っていた。
その薄明かりの下でも、ウェイトレスが自分とあまり変わらない年齢なのは見てとれた。
彼女はわたしの戸惑いぶりを面白がっているように首をかしげた。後ろで束ねられた金色の髪が、さらりと肩に流れる。
聞こえなかったのかもしれない。そう思って同じ言葉を繰り返そうとした時、彼女が口を開いた。
「あなた、初めて来たんでしょ?」
まったく脈絡のない質問に、答えに詰まる。
「ここに住んでる人の顔はだいたい覚えてるもの。何もない街だから、旅人が立ち寄る事もないしね」
わたしの沈黙をどう解釈したのか、わかっているよという顔でうんうんとうなずいている。
「長いお付き合いになると思うから、初めての人には歓迎の意味をこめてサービスしてるの」
そう言うと、彼女は蒼い瞳をきらめかせてウインクした。
「私はシリスティナ。あなたの名前もそのうち教えてね」

店の奥へ歩いていくシリスティナの背中を見つめながら、なんとなく理解できた事があった。
彼女はわたしがダメルに移り住んできたのだと勘違いしたのだ。
他に行く当てのない、流れ者だと。
流れ者の少女なんて――そう考えてから、ふと気づく。
彼女もこの街の住人なのだ。
あの子にはあの子の理由があって、ここにやって来るしかなかったのかもしれない。
そう思うと複雑だった。
ニイドを探して視線を走らせると、彼はカウンターの席でバーテンダー風の男と何かを話している。
その男を見て、わたしは漠然とした不安を感じた。
はっきりとおかしい部分を指摘はできないけれど、どこか――違和感があった。
整った顔立ちをした若い男のはずなのに、100歳の老人のようにも見える。
何を話しているのだろう。耳をそばだてても、断片的なフレーズしか聞き取る事ができない。
……ロシペル……まだ……求めて……いや、諦めない……もう少し……アズラエル……違う……それは君の……私は……
あきらめて、テーブルに向かう。少し冷めてしまったが、料理はまだ十分に美味しそうだ。
わたしはシリスティナの誤解を訂正しなかった。
せっかくの豪華なディナーを、むざむざ逃してしまう手はないのだから。

264メイトリックス:2008/02/06(水) 16:51:07 ID:ukZhIQhQ0
外ではわたしたちを足止めしたものが、亡霊の悲鳴を響かせている。
ダメルに着いてすぐに、砂嵐がこの街を襲ったのだった。
自分の足元も見えない状態で、ニイドとわたしがこのパブに転がり込んだのが昨日の夜。
砂嵐はまだ止みそうになかった。

ローストビーフを半分ほど平らげたころ、やっとニイドが戻ってきた。
「何を話してたの?」
「僅かばかりの世間話だ。我等の尋ね人が、遺跡に宿を定めている事も聞いたぞ」
口いっぱいに脂っこい肉をほおばっているわたしに一瞥をよこし、大して面白くもなさそうにつぶやいた。
「サティロスの肉か。この時期にしては上物だな」
サティロス。その一言だけで、わたしの食欲を失わせるには十分だった。
砂漠では蜘蛛を焼いたり、クラゲを干したりして食べて飢えをしのいでいた。
それで、ようやく街でまともなものを食べられたと思ったら――半人半馬の化け物だなんて。
うんざりして皿を押しやると、ニイドが不思議そうに聞く。
「滋養があるのだが、食わぬのか?」
わたしがコロッサスみたいに大きければ、この鈍感なネクロマンサーをひざの上で真っ二つにへし折ってやるところだ。
そうする代わりに、わたしは溜息をついて言った。
「あのさ、デリカシーがないって言われない?」
「馬鹿げた事を言うな。私は君の心が軽くなるよう取り計らっておるのだぞ」
ニイドは憤慨した様子で腕を振り上げる。
心の動かされる言葉だ。
言い放った当人の目が、皿の上に残ったローストビーフに釘付けにされてさえいなければ。
「欲しいならあげるけど」
皿をつんつんと突いてニイドのほうへ押す。
実のところ、少し興味があった。彼が食事をするのは見た事がない。
いつも、もう済ませたのだとか、今は気分が優れぬとか言いながら、わたしの前では何も口にしようとしなかった。
どうやって食べるのだろう。
あの重たげなマスクを外すのか、それともまったく想像のつかない別の方法があるのか。
「そうか、済まぬな」
わたしが期待して見つめる中、彼の手が肉に伸びて、がっしりとつかみ――


空腹が満たされればどうしても眠くなってしまう。うつらうつらとしていると、ニイドの呼ぶ声が聞こえた。
生返事をして身を起こし、めいいっぱい伸びをする。
身体の節々が痛い。長旅の疲れは簡単には取れてくれないみたいだ。
「それで、休息は取れたか?」
真剣な問いかけに、一気に目が覚めた。
「え、ええ。だから、早く出発しない?」
わたしはあわてて答える。
ニイドは少しの間、考え込むようにマスクの表面をなでていた。
何を悩む事があるのだろう。
危険な砂漠の旅は終わった。帰り道は……その時になってから心配すればいい。
エオローの居場所も突き止めたのだから、後はわたしたちが訪ねていくだけなのに。
やがて、彼はぽつりと言った。
「奴を訪れるは暫し延ばそう。とかく慎重にならねば」
「でも、急がないと――」
思わず声を荒げる。頭が痛くなってきた。いまさら彼は何を言っているのか。
「君の焦りも理解出来るが、急いては過ちを犯す。奴が逃げんとすれば、私には感知できるとも」
わたしを見つめるニイドの声は穏やかだった。
彼なりに心配してくれているのかもしれない。
けれど、彼は気づかないのだ。そうした振る舞いが、わたしをより深く傷つける事を。

265メイトリックス:2008/02/06(水) 16:51:30 ID:ukZhIQhQ0
古い木製のドアは、砂を噛んでしまったせいでなかなか閉まらなかった。
できるだけ素早く、静かに出ていくつもりだったのに、結局かなりの時間を木の板との格闘に費やす羽目になった。
そんな努力にもかかわらず、完全に閉じきった時にはべりりと嫌な音が響き渡ったが。
砂まじりの風が何度も叩きつける中、わたしは小ぢんまりとしたパブを振り返る。
小屋の二階には酔客が泊まるための部屋がいくつかある。わたしたちはそこを宿として借りたのだった。
ニイドはまだ眠っている。
わたしは、彼が朝まで目を覚まさないように願った。追いかけてきて欲しくはない。
彼にはもう、十分に助けてもらったのだから。少し余計なぐらいに。
これ以上一緒にいたら、いつかはどちらかが深く踏み込み過ぎてしまう。
そうすればきっと、わたしは犠牲を払うのが怖くなる。
だから、自分自身の命でさえ軽く扱える今のままが一番いい。そう思った。
――色々とありがとう。そう心の中でつぶやいて、背を向けて歩き出す。
面と向かっては一度も言えなかった。
運がよければ、エオローから何か情報を引き出し、ニイドが目覚めるころにはこの街から去っているはずだ。
運が悪ければ――どちらにしても、誰かが気にかけるとは思えない。

悔しかった。
見透かされてしまった事が。自分の弱さが。
危険に飛び込むのはいい。すべてを忘れていられる。耐えられないのは、じっくりと見つめて――恐れを抱く事だ。
これ以上立ち止まっていたら、きっとわたしは自分が何をしているかに気づいてしまう。
そうなった時、逃げ出さずにいられるだろうか。その答えが怖い。
なぜならそれは、姉さんをもう一度殺すに等しいのだから。

踏み出した足が空を切り、わたしはバランスを崩して落ちた。
ほんのわずかな段差だったけれど、1メートル先さえ見えない砂嵐の中では脅威になりうる。
ぶつけた膝が痛んだ。砂が口の中にまで入り込み、不快な味を残す。
槍を杖代わりに地面に突き立て、どうにかして立ち上がろうとした。
無防備な状態だった。
不意に肩に熱い痛みを感じ、思わず膝をつく。痛めた脚の骨が火花を散らし、わたしは絶叫した。
斬られた。
そう認識した瞬間にはもう、槍を持ち直して構えていた。
たとえ半人前でも、わたしはエリプト傭兵団の末裔だ。
錆びた鉄のような色の骸骨が、砂の霞の中にぼんやりと浮かぶ。手斧が今にも振り下ろされようとしていた。
この体勢では、垂直に落ちてくる斧の一撃を防ぐ事はできない。
血に曇った刃が脳天を襲う直前、わたしは握った槍を勢いよく横薙ぎに払った。
脆い膝関節が朽木のような音を立てて砕け、骸骨はくるりと半回転して派手に倒れた。
危ないところだった。
でも……。
どうしてこんな場所にアンデッドがいるのだろう。
「それはね、砂嵐の夜には遺跡から出てくるから」
風が収まりつつあった。振り返ると、砂に煙る月明かりの下、すらりとした人影がこちらに歩いてくる。
砂を防ぐマントを着込むこともなく、二つに束ねた長い髪を金色になびかせながら。
「だから、砂嵐の間は外に出ちゃいけないのよ」
手にしたロッドをさっと振ると、蒼い瞳をいたずらっぽく輝かせ、シリスティナは微笑んだ。
「ねぇ、探し物なら手伝おうか?」

266メイトリックス:2008/02/06(水) 16:51:59 ID:ukZhIQhQ0
――――――――――――――――――――――――
>>◇68hJrjtY氏
私もコアなダメラーです。も。かの地に行く時は常に徒歩です。帰りは時計でホール経由でヴーンですけれども。
赤石は砂漠マップが多いので、地面に転がってる骨とかを見ると色々妄想を掻き立てられてしまいます。着想はそこですね。

>>之神氏
ナザルド君フィーリングラッキー!昔運極盾投擲剣士を作った事があるのですが、何気に強いんですよねぇ、アレ。100Lvで4000ダメとか。
しかし兄弟愛は泣けますね。同じ血を分けて生まれてるのに。うぅ。関係ないですがシルヴィー萌え。
節分ストーリーも楽しく読ませていただきました。NPCのオーガってこんな感じっぽいですよね。強くて素朴。そして仲の良い三人が微笑ましく。

>>ワイト氏
ヘルアサシン不死身なんじゃあ……。赤いのがうねうねしてるサマを想像すると背筋がゾクゾクしてきます。いや、変な意味ではなく。
ラータ君の挑発は策あっての事なんでしょうか。私だったら一目散に逃げるぜ!……追跡されますね、普通に。

>>FAT氏
手紙……弱いです、こういう独白で綴られる切ない思慕には。心の汚い私でも、目から水が。彼への敬意が感じられてあうあう。身体が震えましたよ。
打って変わって本編のほうはドタバタで明るいですねー。三人ともナチュラルハイな状態じゃないでしょうか。ジム=モリ哀れ(笑)
しかし、これは……ある意味、ジム=モリの攻城戦?守備側はチビッコみたいなイタズラでガード!
次回からはガランとシリアスに戻そうな予感がします。要件に入っていくのでしょうか。続きをお待ちしております!

>>718
こ、こ、怖い……。このギリギリ感は何回読んでもヤバいです。それにしてもニクい終わり方ですね。こういう話は大好きです。
迫ってくる感じと言うのでしょーか。
実際あそこは殺人的に危ない所ですが、こうもリアルな感覚で表現されるとちょっと……もう通れません。

>>ESCADA a.k.a. DIWALI氏
どんな武術の達人でも、異種格闘戦ではアマチュアにも負けると聞いたことがあります。カポエイラは奇抜な分もっとかもしれません。
実はディアスのお爺さんが気に入っていたのは秘密です。いい狂いっぷりでした。バラバラバラ。

>>◆21RFz91GTE氏
コメントありがとうございます。しかし私は会話が描けません。
ですので、アレン君達の生き生きとした掛け合いを見てハッスルしておきます。ロリコンロリコンヾ(´・ω・`)ノ
きな臭くなってきましたねー。急成長した巨大ギルド、至高の戦士達、バフォメット、War!
戦記と呼ぶに相応しい壮大な展開が待ち受けている気がします。続きを期待して待っております。

>>白猫氏
ママだったんですか、ルヴィライのおねーさん!ルフィエさんの運命やいかに!
と、母の記憶をしみじみしながら読んでいたんですが、よく考えると彼女たちは長命なんですよね。つまり、すっごーっく昔の話……。
それだけの時の流れを経ても、ルフィエさんはお母さんの思い出を大事に胸にしまっていたんですね。報われない……。
用語集すごっ!それだけ世界観を細かく設定されているのだと思います。私なんてもう齟齬が(笑)

>>黒頭巾ちゃん氏
サラマンダー達フレンドリーなんだ……と思ったら、彼らは火の神獣なんですね。サマナーと相性抜群!
全体に漂うシュールな雰囲気に、終始爆笑しながら読ませていただきました。ゲームのストーリーへの取り入れ方が面白過ぎます。
胸の温かくなるENDでした……。私も件のかぽーに教化されうわにをするはなせゲールh

ぐへーぃ、私の書くペースが遅いっぽいですね。あるいは感想は分離した方がいいのか。書ききれないので基本的に最新の話について言及してます。断腸。
それでも、皆さんの作品がこんなにいっぱい読めるなんて幸せな限りです。ノベルジャンキーです。脳汁DOBADOBA。

267ワイト:2008/02/06(水) 18:23:23 ID:NWoaSd260
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「馬鹿が!!そんなに殺して欲しいか!??助かったかもしれぬと言うのに・・・!
よかろう!だが、今の挑発は自身の寿命を縮めただけの行為に過ぎぬわ!!!」
「う・・うるせぇよ!だからどうした!?それとも・・喋るだけの馬鹿か?お前も・・・!」
「気に入らんぞ!!!望み通りに貴様から殺してくれよう!!」

ダンッッッ!!!!深く深く踏み込んだ、アサシンはシーフの其れとは、比べモノに
ならない程の速さで、ラータの首を目掛けて勢い良く駆けるっ!!!

「あーあ・・・・如何なる時にでも、冷静沈着に保てなきゃ負けだぜ??」
「クハハッハッハハッ!!!戯言を抜かすっ・・・!?!??」
カチッ・・・・!
・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・
「・・・何だ?我は今・・何かを踏んだのか?いや!確かに「カチッ」と・・」
「足元御留守だぜ??其処に立ち尽してる暇なんて・・!無いと思うけどなぁ・・・??」
ラータに近く付く前に、何かに気を取られてしまう!だが!!それも束の間!!!!





ズッッ!!ドオオォオォオォォオンンッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
「グアアァアァアァァッッッ!!!!!!!」
アサシンの断末魔が、辺り一帯に響き渡るっ!!!!それだけではない・・・!
罠の威力は凄まじく、大爆発を起こしながら!アサシンの身体をバラバラに分解した!!


「ふふぅ・・!流石にやりすぎたか??まぁ・・あのアサシンは、あれ位はしねぇと、
死なねぇだろうしな!!あれだけの爆発だ!恐らく、肉片すら残っちゃいねぇだろうよ!!
(ついでに仕掛けた罠は特大の「エクスプロージョントラップ」だぜ・・!)」
終わったであろう戦いに、ヒースは笑みを零しながら、ラータの傍に駆け寄る!

「ねぇ!ラータ・・!あれだけの大爆発を起こす罠を、どうやって仕掛けたの??」
「んー・・・?それは、アサシンの目標が、ヒースに変った時だな・・!眼が見えないだけで、
罠を設置するくらいの動作なら、そもそも眼を瞑りながらでも、出来るんだよ!!まだ、
(仕留め切れていない相手を、そのままにしておくってのは・・余裕から来る傲慢だったんだろーな・・・・)」


途轍もない威力を誇った「エクスプロージョントラップ」はアサシンの身体をバラバラにし、
跡形も無く、その姿形を完膚無きまでに、葬り去ったかの様に見えたが!!

ギチュッ!グチュ・・!グシュグチュ・・・・・・!グチャァ・・ズチュッ!!
聞き入れたくはない、気味の悪い音を立てながら・・!アサシンの身体を形作って行く!!!
だが・・?まるで今にも腐敗しそうな勢いで、蘇った「ヘルアサシン」は、すでに全身が
大量の血によって真紅の色を帯びつつあるが!??

「ぐぅ・・・!足りなぁい・・!!血を!もっと血を・・!うおぉえっ!!」
唸るアサシンは、血では無い・・!得体の知れない液体を吐き出す!!
そして不可解極りない動き、いや踊りの様な物を始めた!!!

「お・・・おいおい!な・・なんなんだ!????どうなってる?
生き返ったと、思った直後に・・流石にあれはねぇだろ!?」
「恐らく!あの状態は!不完全のまま復活してしまった・・!という事でしょうね・・・
それにしても、み・・見てるだけでも、あれは吐き気を催しそうですよ!気味が悪い・・・!」

「なぁんだとおぉおぉぉっ!??!??我を侮辱!侮辱したなぁぁぁ!??
ヒヒッヒッ!ヒヒッ!!はぁはぁ・・はぁ・・はぁ!ヒャハハヒャハッハッハハハッッ!!!!
そうだぁ・・!足りてねぇ血はぁぁぁ!!貴様等の血を寄こせえぇええぇぇええぇ!!!

我を見失った、荒れ狂い始めたアサシンは、足りて無い血を求め2人に襲いかかるっ!!!!











268ワイト:2008/02/06(水) 18:29:56 ID:NWoaSd260
むぅ・・・最後の辺りを、少しミスしてしまいました@@;申し訳ないです・・!
色々考えた後こう成りました!!読んで頂ければ、凄い嬉しいです!!!
それでは!またお会いしましょう!では|ω・)また!

269黒頭巾ちゃん:2008/02/06(水) 19:33:22 ID:fou9k2gM0
Σ(゚д゚ノ|<…コメント下さりありがとう御座いますあばばばば。
実は数ヶ月ROMって読み逃げしておりました…職人様方、申し訳ないです…orz
ヘタレな私はずっとコメントしたくても勇気がなく、もういっそ投下してしまえば一歩踏み出せるのではないかと浅はかな考えをうわ何をすr(以下略)
漸く一歩踏み出せたので、コメ返しに便乗して感想を述べさせて頂きますヽ(´д`)ノ〜♪


>之神さん
お邪魔致します(ぺこり)
パロった元ネタが絵本なので、絵本調を目指して書いたのですが…散りばめたネタがネタなので、実は少し不安でしたw
メタボなどの時事ネタは後から読み直すとアチャーなカンジはするかと思ったのですが、今使わないならいつ使うと(笑)
連載開始当初から実はずっとwktkとROMさせて頂いておりました之神さんに感想をつけて頂けるとは感激です(ノ∀`*)ペチン
モニターの前でリアルに「もぎゃー」と叫んだのは内緒です(ぇー)
いつも更新早くて尊敬してます(*ノノ)
(チラ裏開始)登場人物に自分と同名のコがいるので名前が出る度にソワソワしたのを覚えていまs(チラ裏終了)
本編でも番外編でも…出てくるキャラ一人一人に個性があって、お話に引き込まれます。
シリウス大好きですシリウス…自キャラでGv中にメテオをぶっ放す度に思い出してしまいますw
シルヴィーには幸せになって欲しい…ライトとシルヴィーがくっつけばいいのにうわ何をすr(強制退場)

>メイトリックスさん
メインクエネタになるのですが、実は山脈のサラマンダーは本来ヒトを襲わないんですよね(笑)
ビスルの村長の言葉でもサラマンダーとの友好関係が感じられるので、小さな子どもやサマナーは特に仲がよいのではないかと妄想した次第です(笑)
ギャグ書きにシュールは最高の褒め言葉…少しでも笑って頂けた様で幸いです(*ノノ)
うふふ、例のカプを広げようの会!(何)
メイトリックスさんの書かれる小説は風景も心理も描写がとても精密で、頭の中に映像が浮かんでくるは釘付けになるわで大好きです(ノ∀`*)ペチン
今回の更新も、初っ端から美味しそうで美味しそうで美味しそうd(以下略)
わざと明記されなかったのでしょうが…もう完璧に術中にハマっております、私。
ニイドが如何やってご飯を食べたのか気になって気になって仕方がないのです。・゚・(ノд`)・゚・。

>白猫さん
用語解説お疲れ様でした。
本編を拝読させて頂いている間は気になりませんでしたが…こうして改めて数えると、恐ろしい数ガクガク((((゚д゚;))))ブルブル
独特の世界観と読み応えのある文章が大好きです。
ついつい影響を受けて、自キャラの姫も最近リトルスキルに手を出し始めてしまいました(笑)
ス○イヤーズなどの呪文を覚え皆で唱え合って育ったオタなので、呪文や歌詞などが大好物です(…)
裏切りの契約の歌詞に移り気な魔性の女性のイメージを勝手に感じてドキドキです(*ノノ)
砕け散ったのがアレじゃないかと勝手に想像しながら続きwktkしております(ノ∀`*)ペチン

>ワイトさん
勢いのある文章で、何だか少年漫画を読んでいる様です(ノ∀`*)ペチン
爆発罠でもダメでしたか…ヘルアサシン強すぎですガクガク((((゚д゚;))))ブルブル
完全復活巻物、一体何枚持ってるんでしょう(違)
私がヒースなら、どりゃーっとTUぶちかましてやりたい(ぇー)


またしょーこりもなく投下しに現れるかもですが、ソレまでは名無しに戻って今度こそずっとやりたかったレス職人させて頂きます(゚д゚ノ|

270◇68hJrjtY:2008/02/06(水) 20:25:48 ID:.vSJwIY60
>黒頭巾さん
同じく古参でもなんでもない私ですがいらっしゃいませ〜(笑)
(と思ったらちょっと感想レスが遅すぎたようですねorz)
絵本風味な話の流れの中にも確かなギャグやRSの世界観が見え隠れしているある意味深い物語でしたね(笑)
でもでも、全体的にはとっても楽しくてとにかく和みました。ラストシーンの武道君に萌え!(違
てかゴールドスワンプ秘密適正ってLv500とか600ですか(((;゚Д゚))
私も武道×サマナのペアは大好物ですよ!和むと同時に色んな意味で萌えさせてもらいました(笑)
また是非、気が向いたら執筆等お待ちしております。

>白猫さん
あわわわ、本当に三桁数の用語解説が((((;´・ω・`))))
サイト開設は私もみやびさんなどに言われつつも開いてないので大きな事は言えないんですけどね(笑)
というわけで(?)この用語集、コピペして個人的に保存させていただきます(*´д`*)
逐一読み返すのもまた楽し。本編の続きもお待ちしています!

>メイトリックスさん
ニイドの人間味溢れる場面(?)にちょっと触れられたような気がして嬉しいですヽ|・∀・|ノ
最初は敵っぽさがぷんぷんだった彼、だんだんと打ち解けていく中で人間っぽさを出してる気がします。
ピアースは眠った、ではなくて催眠術で眠らされた、ような(笑) 実際ネクロマンサーってどうやって食事するんだろう。
食事といえばクラゲを干したものとか蜘蛛を焼いたものとかまたリアルな冒険者食生活描写が(汗
クラゲ干しってカンテンみたいな味するんでしょうか…妄想が、妄想がー!(壊
店娘かと思われたシリスティナの意外な接近。彼女の意図はなんなのでしょう。続きお待ちしてます。

>ワイトさん
ヘルアサシン怖いよー怖いよー。ナウ○カの腐ってる巨神兵を彷彿とさせるくらい怖いです!
そうか、確かにラータって今までの戦いも罠をトドメに使ってますし、実は罠師だったんですね(ノ∀`*)
その特大爆発罠でも効果が無いヘルアサシンが益々もって恐ろしい。
腐ってるだけでなく狂ってすらいるアサシン、もはや目的や感情も持たないただの殺戮マシーンですね。
ラータとヒースはどう抵抗するのか。続き期待しています!

271 ◆21RFz91GTE:2008/02/06(水) 22:02:24 ID:hnbHyKHE0
////********************************************************************************////
  ■◆21RFz91GTE:まとめサイト(だるま落し禁止)
  ■ttp://bokunatu.fc2web.com/trianglelife/sotn/main.html
  ■Act.1 アレン・ケイレンバック >>44-45
  ■Act.2 少女 3 >>65-67
  ■Act.3 少女 4 >>87-90
  ■Act.4 レスキュー? >>173-174
  ■Act.5 蒼の刻印-SevenDaysWar- >>206-208
  ■Act.6 緑の刻印-SevenDaysWar- >>220-221
  ■Act.7 白の刻印-SevenDaysWar- >>222-223
////********************************************************************************////

272 ◆21RFz91GTE:2008/02/06(水) 22:03:00 ID:hnbHyKHE0
Act.8 紅の刻印-SevenDaysWar-



 「主らが考えている通り、この戦…ただでは終わらん。」
想像も絶することが水面下で起こって居るとするのであれば、水上で及ぶ生命はサメの餌食になるやも知れない。まるでそう言わんばかりの脅しにも捉えることが出来るアデルの発言に円卓会議室の面々にどよめきが走った。
「…もし。」
アデルとガズルの対話が始まってから一言も喋らなかったミトが口を開く、青ざめたその表情からどのような言葉が出るのだろう、絶望と言う感情に押しつぶされそうになりながらゆっくりと口を開いた。
「もし、私達が同盟を組まず戦った場合はどうなるのでしょう…。」
「相手にもよるだろうが、民は苦しみ廃墟と化した古都には魔物が住まうだろう。時同じくして我らに残るのは世界に与えた傷の代価と代償。汚名であろう。まずこの大陸で生き延びるのは難しいであろうな。」
「では…同盟を組んだら。」
「先に述べた通りだ。」
その回答を聞いてまた俯いてしまった。当然と言えば当然の答えだった。力を増したのだからこその同盟、世界を保守するために力を合わせて相手に立ち向かおうと言うのにそれすら行わなかったら元もこうも無い。
「…主ら、何をそんなに絶望しているのだ?」
「この状況で絶望しないアデル…貴方が凄いですよ。」
拍子抜けしているアデルが喋ると後に続くかのようにクラウスが口を開いた。だがそれに笑みを溢し口から空気が洩れるような笑い方をアデルはした。
「主ら、何のためにアレンを蘇らせたのだ?何のために我はこちら側についているのだ?」
そう言うアデルに対し、アレンはタバコを懐から取り出して火をつけた。一呼吸置いてからアデルに問いかける。
「しかしだなアデル、先も聞いただろう?その四天王とやらは俺と等価の力を備えて居るというんだ、それにバフォメットが復活したらどうなる?」
「アレン、お主も世迷言を申すようになったか?」
「よ、世迷言…。」
すると突然巨大な爆発音が聞こえた、アデルはスッと立ち上がると窓の側まで足を運び締め切られたカーテンを開けた。そこからはまぶしいほどの太陽の光が差し込んでくる。その光にアレンのタバコの煙が当たり一部分を白く染めた。
外には何やら騒ぎが起きていた、西の城門に一つ巨大な木が歩いていた。木は家々を壊し人々を踏み潰していた。
「イル…ユランと統合した我の力、侮ってくれては困る。我が何故炎の剣聖と呼ばれているか…まぁ見ているが良い。」

273 ◆21RFz91GTE:2008/02/06(水) 22:04:02 ID:hnbHyKHE0

 「た…たすけてくれぇぇ!」
「うわぁぁぁぁぁ!」
「嫌だ!死ぬのは嫌だ!」
様々な声が交差する西の城門、突如として出現した巨大な木の魔物は家々を粉砕し我が物顔で古都を破壊している。そしてその足元、逃げ送れた数人の街人が我先にと逃げていた。
「来るな…来るな化け物!」
一人の青年が崩れた家の瓦礫に足を取られ逃げ遅れて居た。足を怪我しているのだろうか這う様に必死になりながら魔物から逃げている。その声に気づいたのか木の魔物はその男に向けて右腕のように突飛した枝を振り下ろした。
「う…うわぁぁぁぁぁぁ!」
垂直に振り下ろされた枝という大木は男に向かって速度を増して襲い掛かる、そして辺りの瓦礫を吹き飛ばしてそれは落下した。
「っ…!」
「お主、大丈夫か?」
大木は間一髪の所でアデルのグルブエルスによって受け止められていた、それも驚く事に右手一本で巨大な大木を支えていた。
「あ…あぁ…あああ…。」
言葉になら無い恐怖が青年の足を竦めていた、そこに風の中位精霊の力を借りて瞬時に飛んできたアレンが青年を抱きかかえてその場から高く跳躍した。
「…爵位も名前も無い最下級の分際で我にたて突くとは良い度胸だ。」
突如アデルの足元から炎が噴出した、その炎は小さな炎から次第に巨大な炎に変わり、そして爆発した。辺り一面に転がっている瓦礫を吹き飛ばし、そしてアデルに近寄るだけでも熱く、灼熱の炎というに相応しい熱さだった。アデルの吸い込まれそうに美しい髪の毛は一瞬の内に真っ赤に染まり、茶色い瞳も燃える様な真紅の瞳へと変貌する。
 瞬時に左手でツインシグナルを引き抜く、その勢いのまま伸し掛かっている大木を下から切り上げる。ふわっと一瞬だけ巨木の魔物の体が浮いた。アデルは体制を低くして魔物の足元へと瞬時に移動する。そしてツインシグナルを地面に付き刺すとグルブエルスを逆手に持ち変えたまま両手で下から上に切り上げるように一閃。すると魔物は今度こそ空中に浮いた。更にツインシグナルを引き抜き地面を強く蹴った。空中に吹き飛ばされた魔物は体制を崩し、その巨大な体は空に舞う瓦礫のようにゆっくりと落下を始める。それをアデルが下から蹴り上げる。更にアデルは空中を蹴り魔物の上を陣取った。
 両手に構える剣は逆手のまま、グルブエルスを右斜め上から左下に切り下ろし、魔物が落下を始める瞬間にツインシグナルで切り上げる。右、左、上、下…まるで舞うようなその剣武は落ちる事も浮き上がることも許さない衝撃と共に高速剣技から生まれる摩擦熱で次第に炎を生み出す。ある一定の温度に達した時アデルは魔物を蹴って少し距離を取る。同時に詠唱を始め風の上位精霊の力を借り分身を作り出した。本体は地面へと降下し分身は上空で更に速度を増して舞いを始める。まるで踊っているかのようなその剣技にアレンを始めとした街中の人間が見とれていた。数メートル距離を取っているにも関わらずアデルの刃は衝撃波として魔物を貫通する。その時に生まれるアデルの剣技と大気との摩擦熱で衝撃波自身に温度を持たせる。そして貫通すると同時にその温度は魔物の体内に蓄積され起爆温度にまで上昇する。
 地面へと着地した本体は再び腰を落し右腕を後ろへとゆっくりと回した。するとグルブエルスは真っ赤に燃えそこから炎が噴出した。噴出した炎はグルブエルスにまとわり付き巨大な炎を剣を作り出す。
上空で舞いを続けている分身はようやくその動きを止め逆手に持ち変えられているグルブエルスを後ろに大きく振りかざした。
「終いだ!」
叫びと同時に上空の分身は一気に剣を振り下ろす、すると振り下ろされた剣先数メートル先から突如炎が巻き起こり、渦を巻くその姿はまるで巨大な火柱だった。炎は直線的なラインで巨木の魔物を叩き付ける。同時に地面に着地して体制を整えている本体はグルブエルスを下から上へと付き上げるように剣を振るう。すると地面から突如炎が噴出した、それは槍のように鋭く先端はとがっていた。叩き付けられる炎と付き上げられた炎は同時に巨木の魔物にぶつかるとそこで再び巨大な爆発を起こす。巨木に蓄積された炎の温度は臨界を突破し、最終的には体内の細胞を破壊し、亀裂が入ったところから酸素が進入して爆発を起こす。
 空中の分身はゆっくりと残像の様に消えた。そして本体のアデルも剣を鞘に収め振り向いて町の中央部に向かって足を進めた。それと同時に町全体から歓声が吹きあれた。
「黒衣の焔…まさかこれほどの物とは。」
「私も驚きました、これが本来のアデルの力…。」
ガズルとミトがそう言う中、ようやく着地したアレンは苦悶の表情でアデルに向けて険しいまなざしを送っていた。


Act.8 紅の刻印-SevenDaysWar-
To be continues...

274 ◆21RFz91GTE:2008/02/06(水) 22:27:40 ID:hnbHyKHE0
こんばんは〜、関東地区は雪が大変ですねぇ…。
次話でAct.9ですねぇ〜、20以上は続けたいところですヾ(´・ω・`)ノ
そういやぁ皆さんお体には十分に気を付けてくださいね〜、俺みたいにぶっ倒れ無いでくださいね〜ヾ(´・ω・`)ノ
後受験シーズンですね、受験生の皆さん頑張ってくださいね(ぉ

コメ返し

>>231 :◇68hJrjtY様
いやぁ〜、小説書きとして実は禁忌をやらかしてます(汗
本来小説を書くときは登場人物は少なくが基本なのですが、いやはや…ギルド間の戦争orz
そろそろ後戻り出来ないところまで来ました(笑
この後登場してるオリジナルスキルに付いて簡単な解説付けますね〜。

>>242 :718様
「伝説的に腕の立つロリコン」に吹きました(笑
確かにそうですねぇ〜、どっちかをロリコンじゃなくてショタにすれば良かったと少し後悔してます。
毎度本当に感想ありがとう御座います、これからも自重しながら頑張ります(ぉ

>>246 :FAT様
いやはやなんとも…ぶっちゃけ禁忌ですorz
実は後悔してたりしてます、さて…どう動かそうかなぁって普段仕事してる合間に考えたりしてますよぉ〜orz
あ、もちろん仕事も失敗してますヾ(´・ω・`)ノ
それにしてもまた他愛も無い名前付けたなぁ俺…風のウィンド…アホか俺orz

>>266 :メイトリックス様
そう言っていただけると助かります、でもやはり小説の醍醐味は動きですよねぇ〜。
その点考えるとメイトリックスさんには脱帽です。もっと勉強しなくちゃなぁ俺…
ロリコンが多いのは作者がろりこn(うわなにするやめr

個人的コメ

>>269 :黒頭巾ちゃん様
ス○イヤーズ懐かしいですね〜、俺も昔は登場する詠唱全部覚えたもんです(笑
話は変わって黒頭巾被ってる幼女…萌(・∀・)

275 ◆21RFz91GTE:2008/02/06(水) 22:31:08 ID:hnbHyKHE0
オリジナルスキル解説

第二節
Act25 The last of my memory 2
*メルトダウン

 炎と水の複合スキル。
名前の由来はメルトダウン現象より。二つの元素を不安定な状態にさせゆっくりと融合させる。
その時に生じる微量な力を増幅させ一気に爆発臨界点にまで到達させる。
一触触発の状態で高圧電流を外壁に施し滞空させ、鈍器のような物でその外壁を破壊する。その時に生じたエネルギーを
増幅させ術者の魔力でそのエネルギーを貫く。この時の電圧は十万ボルト程にまで及ぶ。

第二節
Act26 The last of my memory 3
*グランドパイク

 全体重を乗せた重たい拳を地面に叩きつけ地割れを引き起こす荒業。
ただし、その後拳は使い物にならなくなり、自身も地割れに巻き込まれる両刃の剣。
硬い決心と強い心が無い限り使えないある意味最終奥義の一つ。
仲間を助けたいと思う心と、もう戻る事も無いと決心したディーの心の強さが具現化した奥義とも言える。

第三節
Act.8 紅の刻印-SevenDaysWar-
*ヴォルカニックレイブ

 術者による魔力供給による炎の力を借りた連続攻撃。
足元から噴出す炎はさほど強く無い魔力から生まれ、同時に高速移動の術式を術者本人に施す。
一度対象物を空中に切り上げ、自身も空中に飛び連武を仕掛ける。その時に生じた剣と大気との摩擦熱を利用し
対象物の体内で熱を蓄積させる。暴走する手前まで熱を蓄積させ、風の精霊の力を借りての分身により自身は
地面に着地して分身と自身に魔力供給を行う。空中の分身と行動を会わせ互いに体内に取りこんだ炎を具現化させ
対象物に叩き付ける。叩き付けられた炎は蓄積された炎と交わり非常に高温な炎を作り出して内側から破壊する。

276之神:2008/02/07(木) 12:11:02 ID:xJDkyE7Q0
1章〜徹、ミカの出会い。
-1>>593―2 >>595―3 >>596-597―4 >>601-602―5 >>611-612―6 >>613-614
◆――――――――――――――――――――――――――――――――――――◆
2章〜ライト登場。
-1>>620 -621―2>>622―○>>626―3>>637―4>>648―5>>651―6 >>681
◆――――――――――――――――――――――――――――――――――――◆
3章〜シリウスとの戦い。
-1>>687―2>>688―3>>702―4>>713-714―5>>721―6>>787―7>>856-858
―8>>868-869
◆――――――――――――――――――――――――――――――――――――◆
4章〜兄弟
-1>>925-926 ―2>>937 ―3>>954 ―4>>958-959 ―5>>974-975
◇――――――――――――――――5冊目―――――――――――――――――◇
-6>>25 ―7>>50-54 ―8>>104-106 ―9>>149-150 ―10>>187-189 ―11>>202-204

◆――――――――――――――――――――――――――――――――――――◆
番外

クリスマス  >>796-799
年末旅行>>894-901
節分  >>226-230
◆――――――――――――――――――――――――――――――――――――◆

277之神:2008/02/07(木) 12:42:50 ID:xJDkyE7Q0
λ

とあるシーフの男に開放され、私は自由となった。
思うままに動ける反面、頼りも無くなるのが自由。でも、今までの束縛に比べればとても価値のあるもの。
そんな自由を手にしてから、2週間後の事。

公園のベンチに腰をかけ、ゆったりと過ごしていた時。ふと隣に、疲れた顔をした男が座った。
その男はベンチに座りもたれかと思うと、そのまま何かをつぶやいた。

「あー…早く帰りたいなァ・・・・・・・・・・」
彼はそう言うと、そのまま目を閉じて眠ってしまった。

「あのー、大丈夫ですか?帰りたいって、迷子なんですか貴方」すると男が反応した。
「フ?安眠の妨害とはやってくれるじゃないか、貴様・・・・・・いつから居た」迫力の無い疲れきった目で睨まれる。
「いえ・・・・貴方が座る前から居ましたけど」
「フ・・・・・下らん嘘を」
「いや本当ですって」
「いいよ、許してやろう」 いつ私が罪を犯したのかも疑問だけど、私は聞いた。
「それで、迷子なんですか?それならこの辺りなら案内できますが」
「いいや、帰れない場所だ・・・・・・。帰るには、多大なエネルギーと偶然が必要なんだ・・・・・」
「あら、そうなんですか・・・・・・・・・まぁ、きっと帰れますよ、貴方なら」根拠も無いことを言っちゃった。

「ところで、貴方のお名前は?」
男は自己の紹介も面倒なようだった。それでも、答えてくれたけど。

「まずは貴様から名乗る方では無いのか・・・・・・・・まぁ答えてやろう」

「シリウスだ」
「シルヴィーです。確かに、名乗るのは私からが礼儀でしたね」


β
「ぐっ・・・・・・・イタタタ・・・・・」傷跡が痛む。
「大丈夫か?あんまり無理しないようにね・・・・?」そう言って、徹は湿布薬の替えを持ってきてくれた。
「うん・・・・・・まぁ平気。毒の解毒も済んでるんだし、もう針の傷跡を直せばいいだけだよ」
「そうか・・・・・、まぁ治るまではずっと部屋にいるからさ」徹はそういってニヒ、と笑った。
「ありがとうね」
「まぁ、俺なんて戦えないんだし。これくらいしか、ね」
「そうね、もう少し強くはなってほしいかな・・・?」
「ん、俺も考えてるよ・・・・・・・、まぁとりあえず今は怪我を治してさ・・・・」
「治して・・・・何?」
「いやぁ!なんでもない。とりあえず安静に、ゆっくりな」
「うん」

ブラックという男から受けた傷は、もうだいぶ治ってきている。深い切り傷も、毒に比べれば軽かったし。
でも安静にって・・・・・・落ち着かないのよねぇ・・・・・。


λ
「喫茶店でも入りませんか?その・・・・・外は冷えますから」
「喫茶店か、わかった、一緒に行ってやろう」
「どうしてそんなに偉そうに話すんですか、貴方は」
「常に相手を上回る為だ」
「ちょっと違う気がしますよ?」
「貴様の意見はどうでもいい」
「私も貴方の事はどうでもいいです」
「・・・・・・・・・・。」

喫茶店の中は小さく、カウンター席と、テーブル席が6つほど。
私達は空いているカウンター席に座った。

「何がいいですか、シリウスさん」
「コーヒーだ。ブラックで」
「私はそれじゃあ・・・・・ホットココアで」
かしこまりました・・・・と、店員の人が注文のメモと一緒に去っていった。

「それで本題なんですが」
「何だ、本題というのは」

「貴方、フランデルの方ですね?」

278之神:2008/02/07(木) 12:49:54 ID:xJDkyE7Q0
ちょっと今回短し。

そして訂正。
その男はベンチに座りもたれかと思うと→その男はベンチに座り凭れたかと思うと  です。

さーさー疲れた男登場ヽ(´∀`)ノ
相変わらずな彼ですよ・・・・・・。
まぁ章が変わります、今回から新章って事で。
番外の節分ではミカの怪我の描写ありませんが、それは番外だから、です。

そして感想ありがとうございます。ガソリンの代用としていい燃料です。



・・・・・・シリウス好きな人多いっすね(-∀-`

279◇68hJrjtY:2008/02/07(木) 14:58:27 ID:.vSJwIY60
>21Rさん
サイトの方で各キャラたちのイラストやFlash等堪能させていただきました(*´д`*)
イラストとか見た後に改めて小説を読むとまた違った面白さがありますね。なにもかもオリジナルというのが凄い。
オリジナルといえば今回発表のオリジナルスキルも良く考えられていますよね。
21Rさんはそう仰いますが、キャラが多かったりギルド戦争とか発展するのは個人的には大歓迎です。
本編の方は…流石、アデル。逡巡するミトたちを尻目にやっちゃってくれましたね!
アデルさえ本気になればこの戦い、多少なりと勝機はありそうですが…アレンの険しい眼差しの真意は。
雪に凍えながらも続きお待ちしてます(((((´;ω;)))))

>之神さん
シリウスは…なんていうか、おっちょこちょいなマッドサイエンティスト(何)って感じでイイんですよ(・∀・)
じわじわと新章に入ってきてるんですね。今回は前回活躍できなかった彼らの雄姿が…!?
しかしシルヴィーとシリウスですか。油と水のような二人の会話、予想通りお互いが引かないですね(ノ∀`)
フランデル大陸からの異邦人たち、思えば何人になるんだろう…?ナイルも含めて(笑)
続き楽しみにしています。

280718:2008/02/07(木) 17:31:38 ID:gXqJ5/rQ0

>FAT氏

やっぱりジム=モリ哀れ(;ω;)
どうも自分は氏のジム=モリに共感しすぎてしまってデルタとレンダルに怒りが沸いて来てしまうw

氏の描くキャラクターは本当に活き活きしていますね。ランクーイといい、激しく移入させられる
キャラクターばかりで物語がとても鮮やかに感じられます。にしても、彼女たちの次のアクションが
気になるところです。

(コメント有難う御座いました。丁寧な描写は心がけているのですが、たまたま功を奏したようで
ニヤリとしておりますw)

>黒頭巾ちゃん氏

遅ればせながら初めまして(^ω^ )
言葉の選び方がとても絵本らしくて、脳内再生が自動的にスローテンポに・・・
凄く面白かったです!途中途中にしっかり差し込まれた赤石ネタ(秘密適正とか鎧グラのこと)も
「ああ、わかるわかるニヤニヤ」という感じで終始ニコニコニヤニヤしながら読ませていただきました。
やっぱりwizはロリコンなんですね・・・(^ω^;)

たまにでも、是非また投稿してください。楽しみにしてますよ。

>メイトリックス氏

くっ、まさか食い物の描写がやってくるとは・・・!誰か、誰かステーキをください!!!

それにしてもまたニクイ描写ですね。ニイドの食いっぷりは結局僕らの想像次第ですか(^ω^ )
ピアースと一緒にwktkしてただけに悔しくもニヤッとさせられてしまいました。

さて、新たな人物が登場しましたね。これまた真意の読めないキャラクター・・

執筆ペースなんぞ気にせず、氏の作風を氏のペースで貫いてください。一読者として楽しみに、
ノンビリ待っておりますよ。

(コメント有難う御座います。あの辺をよく通るレベル帯にとって蚊はかなり脅威ですからねー。
狩場的にハイリスクハイリターンな部分から、今回のイメージが沸きました)

>ワイト氏

「  ←  どうなったのおおおおお!?

失敗なんていいつつ、これ案外新しいヒキの手法なんじゃないでしょうか・・・
どうもアサシンの能力のネタばらしが近づいている予感ですね。呪われた能力の
秘密、気になります。

>◆21RFz91GTE氏

またドエラく派手な技ですね!!多くの二つ名、剣と炎にまつわる二つ名は伊達じゃないと!
でも、彼の出自を考えればこれだけの力はもっていて当然、そしてこれだけの力を持っていなければ
バフォメットと相対することなどできないということですね・・。これはまさに、アデルの言うとおり
ただで済む戦争にはなりそうもありません。wktk!

>之神氏

まさかのシリウス・・・!てっきりあれで退場だとばかり思ってましたw
にしても。最後の終わり方、ちょっとドキッとしますね。相手が相手だけに、場合によっては
シルフィーちゃんに危険が及んでしまうのでは・・・と思いました。
投稿の長さなんぞ関係ないですよ。僕いつも短編ですし(^ω^ )

281FAT:2008/02/07(木) 22:18:39 ID:hRBCQW7.0
前作 二冊目>>798(最終回)

第二部 『水面鏡』

キャラ紹介 三冊目>>21
―田舎の朝― 三冊目1>>22、2>>25-26 
―子供と子供― 三冊目1>>28-29、2>>36、3>>40-42、4>>57-59、5>>98-99、6>>105-107
―双子と娘と― 三冊目1>>173-174、2>>183、3>>185、4>>212
―境界線― 三冊目1>>216、2>>228、3>>229、4>>269、5>>270
―エイミー=ベルツリー― 三冊目1>>294、2>>295-296
―神を冒涜したもの― 三冊目1>>367、2>>368、3>>369
―蘇憶― 五冊目1>>487-488、2>>489、3>>490、4>>497-500、5>>507-508
>>531-532、7>>550、8>>555、9>>556-557、10>>575-576
―ランクーイ― 五冊目1>>579-580、2>>587-589、3>>655-657、4>>827-829
>>908>>910-911、6>>943、7>>944-945、六冊目8>>19-21、9>>57-58、10>>92-96
―言っとくけど、俺はつええぜぇぇぇぇ!!― 六冊目1>>156、2>>193-194、3>>243-245

―4―

 トタン、トタンと食卓に置かれる料理皿が朝の訪れを知らせる。
「いやぁ、わりぃ、昨晩はちとやりすぎだったな、ジム=モリのおっさん」
 寝起きのぼさぼさ頭を掻きながら、レンダルは朝食の用意された食卓についた。
「でも楽しかったですわ」
 ピンクの寝巻き姿がろりっと似合うデルタは、まだ昨晩のテンションが抜けきっていな
いようだった。
「このジム=モリ、あんなに激しくいぢめられたのは昨日が初めてだ。……なにかあった
のか?」
 レンダルはばつが悪そうに下を向き、デルタの体に残っていた昨晩のテンションも一瞬
で抜けた。
「エイミーのことなんだけどよぉ……」
 レンダルは重々しく口を開き、エイミーの実兄、ジム=モリに真実を伝えた。
「ふぅむ」
 ジム=モリは話を聴き終えると、机の縁をトントンと指で叩いた。
「その話が本当なら、このジム=モリ、今だけはナラカスタスマス=ベルツリーを名乗る
のを許していただこう」
「いや、長いからいい」
「いいや、大事な妹の大事だ! このナラカスタスマス=ベルツリー、妹とだけは縁を切
りたくはないのだ!!」
「つまらないし、しつこいのは嫌いですわ」
 しゅんとしぼむナラカスタスマス=ベルツリー。もとい、ジム=モリ。彼がベルツリー
家と縁を断たれたのは、もう十数年も前のこと。エンチャットを文章にし、確率で遊ぶこ
とを当時の家の長、ネイムは許さなかった。彼のエンチャット士としての実力はまだ幼く、
エンチャットが成功する確率は十分の一程度。彼は自身の鍛錬より、今ある実力でできる
ことを熱心に探求した。そして辿り着いた先がエンチャット文章だった。彼は自分の導き
出した答えに絶対的な自信を持っていた。客は失敗する可能性を想定してエンチャット文
章を買う。つまり、エンチャットに失敗しても彼は悪くないのだ。悪いのは客、失敗した
文章を選んだ客が悪い。これなら失敗の多い自分でも商売ができる。彼は希望に満ち溢れ、
あっさりと家を出たのである。そしてその後、正式に縁が切られたという内容の手紙が彼
の下に届いた。それから彼はジム=モリを名乗ることとなったのだった。
「なぜジム=モリって名前にしたかって? 自由に無理せず、モリモリ元気に生きたいっ
ていう俺の願いが込められているのさ」
 それを聞いたとき、誰もがこいつはあほだと確信した。

282FAT:2008/02/07(木) 22:19:19 ID:hRBCQW7.0
「でよぉ、お前んとこに真っ先に来たのはまず、エイミーのことを話しておきたかったか
らなんだが、も一つ、聴きたいことがあるんだ」
「なんだ? このナラカス……いや、ジム=モリに聴きたいこととは」
 ジム=モリは頬杖をつき、顔を斜めに傾けレンダルの目を見る。
「ラスがここに来なかったか?」
「ラス? いや、来てないぞ。このジム=モリ、ラスと最後に会ったのはもう数ヶ月も前
のことになるな」
「そうか」
 レンダルは残念そうにジム=モリから目線を外すと足を組んだ。
「まさか! お前たちはラスを探すためにエイミーを町に置き、このジム=モリを訪ねて
きたと言うのか!?」
「ふつうに考えりゃわかるだろ、ばか」
 面白いはずのジム=モリの大げさなリアクションが、今はうっとおしい。レンダルはぶ
つくさと古都かな、ブリヘかな、アリアンかな……などとラスがいそうな場所を挙げてい
った。
「このジム=モリに一つ、考えがある」
 ジム=モリは右の人差し指をぴんと立て、もったいぶった。
「もったいぶんな」
「おじさま、今日はすべってて寒いですわ」
 ジム=モリは二人の冷たさに少したじろいだ。
「ははは、すまん。実はな、この町のすぐ北西にある鉄鉱山の地下から続いている廃坑が
あるのだが、そこの最深部にとある魔物が棲んでいるというのだ。続きが聴きたいか?」
「だからもったいぶんなって」
「あんまりもったいぶると、ぴーちくぱーちくをこのまま連れていきますわよ」
「デ、デルタぁ。冗談じゃないか。さ、ぴーちく、ぱーちく、僕の肩に戻っておいで」
 ぴーちくとぱーちくはデルタの髪の中で寒そうに二羽、羽を擦り合わせ、寄り添ってい
る。二羽だけの世界だ。
「話をそらすなよ。いちいちイライラさせやがって」
 恐いレンダルに睨まれ、ジム=モリは心して続きを一気に吐き出した。
「チタンとこの町の皆は呼んでいる。まるで金属のチタンのように全身が銀灰色で硬い魔
物だからだ。ここから先は言い伝えによるものだが、そのチタン、体内にある一つの水晶
によって動いていると言う。その水晶、魔力を源に自分の見たい物を見れると言う。俺が
何を言いたいかわかるか? あっ、すみません、言います、話します。つまり、このジム
=モリはこう考える。この水晶があれば、瞬時にラスの居所を掴める。ただ闇雲にこのフ
ランテル大陸を旅するより、この水晶を手に入れ、ラスを追いかけるほうが利口だとは思
わないか?」

 あっ、危なかった。つい、もったいぶってしまうところだった。ふぅ、あのレンダルの
一瞬の目のギラつき、あいつはやばかったぜ! だが俺は見事かわして見せた! ジム=
モリは最も恐ろしいレンダルを超えたのだ!

「おい、てめえは言い伝えなんて曖昧なもんで、俺たちを薄汚い廃坑なんぞに行かせるつ
もりか?」
「デルタほこりっぽいとこきらいですぅ」
「えっ?」
 ジム=モリは勝ち誇っていた。自分の口のうまさに思わず拍手を送りたくなった。そう
だ、今夜は焼肉でも食べよう、と思っていた。しかし、二人はジム=モリの遥か上を行っ
ていた。
「当然、そんなところに行かせようってんなら、お前が道案内してくれるんだろうなぁ」
「頼りにしてますわっ! お・じ・さ・ま」
 ジム=モリの額を流れる汗。いやだ、行きたくない! あんな恐いところ、行きたくな
い!
「レンダル、デルタぁ、後生だ、アイテムいっぱいあげるから、俺を連れて行くのは勘弁
してくれぃ」
 ジム=モリは汗いっぱいの顔をくしゃくしゃにして二人に泣きついた。
「ぷっ!」
「ぷきゅ!」
「ぷはぁははははははは!!」
「ぷきゃあはははははは!!」
 ジム=モリはようやく二人の望むジム=モリになった。この日初めての笑いである。
「いいって、いいって、気にすんなよ、俺はその顔が拝めただけで満足だぜ」
「私もですっ」
「えっ?」
 ジム=モリの顔がにわかに明るくなる。その表情は女神と出会った貧夫のようである。
「お前がそういうの駄目だってことぐらい、知らないわけないだろ」
「ほんと、ジム=モリおじさまは面白いですわ」
 ジム=モリをからかいにからかった二人。エイミーとラスの真実を知り、胸に張り付い
ていた不安や動揺のもやもやが彼女たちをそうさせた。散々からかわれたジム=モリだっ
たが、それでも二人の解放されたような笑顔を見ていると、これでいいのだと自分の道化
っぷりを誇らしげに思い、笑った。ぴーちくとぱーちくがデルタの髪を飛び出し、愛する
ジム=モリの左右の肩に飛び乗った。
「さあ、行こうか、デルタ」
「はい! お姉さまの剣となり、盾となり、がんばりまっす!」

283FAT:2008/02/07(木) 22:19:53 ID:hRBCQW7.0

 レンダルとデルタは颯爽と鉄鉱山に入っていった。彼女たちを見送った後、ジム=モリ
はアイテムを持たせるのを忘れていたことに気付いた。
「ぬぅ! このジム=モリ、なんと重大なミスを犯してしまったのだ! 早急にアイテム
を作り、やつらに渡さなければ!!」
 ジム=モリは急いで家に帰ると、地下室にこもり、真剣に三つの文章をエンチャットし
た。そしてレンダルたちに文章を渡そうと、再び鉄鉱山の前に現れた。
「このジム=モリ、このエンチャット文章に確かな手ごたえを感じた! だが! しか
し! やつらにこれを渡す手段を持たない! このジム=モリが渡しに行くのは恐いから
不可能! どうすればいいのだ!!」
 怪しく鉄鉱山の入り口の前でうろたえていると、一人の女性が鉄鉱山に向かい、歩いて
きた。黒い武道着に前髪の揃った小柄な女性。その黒髪は艶々と輝いていて美しく、小柄
な体に見合った小さな顔が印象的だ。ジム=モリはこの女性の内に秘めた強さを感じた。
それは魔法にも似た波長で、ジム=モリにはその力の大きさがとても頼もしく見えた。
「お嬢さん、突然だが、このジム=モリの頼みを聴いてくれないか」
「ん? あたしに言ってるのか?」
「そうとも、あなたの強さを見込んでお願いをしたい。実は、先刻この鉄鉱山に潜ってい
った女剣士とピンクな女の子の二人組みにこの巻物を渡していただきたいのだ」
「なんだ、そんなことならお安い御用さ」
「おお、このジム=モリ、あなたの寛大さに感動しているぞ!! では、お願いいたしま
す」
 黒髪の女性はくすりと笑った。
「面白い人だな。はいよ、三つね。確かに手渡すから、安心しなよ」
 面白い、と言われジム=モリは嬉しくなった。
「ありがとうございます! このジム=モリ! あなたのご無事を心より祈っておりま
す!!」
 黒髪の女性はまたも笑い、手を振って快活に鉄鉱山へと入って行った。
「このジム=モリ、なぜだかわからない、わからないが彼女を信頼した! ただの一目見
ただけで!! 一目、そう、たった一目で、だ!! ああ、この胸の高鳴り、これはまさ
か!! 恋か!!!!」
 レンダルとデルタがいたなら、間違いなく吹き出したであろう恥ずかしいジム=モリの
一人劇場。それが鉄鉱山の狭い通路に響き渡り、黒髪の女性は恥ずかしそうに顔を赤らめ
ながら二人の女性を探した。

284FAT:2008/02/07(木) 23:25:01 ID:hRBCQW7.0
こんばんは。週末は関東に旅行予定ですが生憎の雪予報。夏の台風冬の雪、ですね。

>>68hさん
NPCはある程度の下地設定があるので一からキャラを考えるよりも楽に描けると
いう裏技的存在だったり。
クエに関わるNPCだけでもある程度の話は書けるかもです。

>>黒頭巾ちゃん(敬称略
初めまして。
なんというか、子供に読み聞かせしてあげたくなるような温かな作品でした。
(一部つっこまれたら危うい場面もありましたが><)
やはりサマナは幼女が似合います。そしてゴールドスワンプ秘密適正の武道家が
かっこいいです。正義がほんと似合いますよね!
ディープな恋ではなく、こういったほんわからぶらぶは本当に心が温まります。
よい作品をありがとうございました。次回作も期待しております。
レス職人としての活躍も期待してますよっ!

>>白猫さん
こ、これはっ!?
なるほど、ここまで事細かに設定されているからこそ白猫さんの作品は深みがあるのですね。
土台がしっかりしているからキャラがその上で縦横無尽に動け、読んでいる側に
面白さが伝わってくるのですね。
あと少しで最終章でしょうか……最後までじっくり読ませていただきます。

>>メイトリックスさん
>危険に飛び込むのはいい。すべてを忘れていられる。耐えられないのは、じっくりと見つめて
――恐れを抱く事だ。
仰るとおりです。待てば待つほど恐れは自己の中で増幅し、逃げ出してしまいたくなりますものね。
小説の良いところはこうした言葉に納得したり、そこから考えられるところですよね。
ニイドとピアースの心のやり取りも回を重ねるに連れてより深いところまで及んでいるようで、
そういった面でも楽しませていただいております。
リトルウィッチ風なシリスティナの登場で物語がどのように進展していくのか、
続きを楽しみにお待ちしております。

>>ワイトさん
ヘルアサシンの全身をバラバラにするほどの「エクスプロージョントラップ」。
大量の血を失ったヘルアサシンは火事場の馬鹿力的にパワーアップしているので
しょうか?
追い込まれた生物は時に信じられない能力を発揮しますものね。
ラータにヒース、二人とも生き残れる可能性はあるのでしょうか?
続きを震えながらお待ちしております。

>>21Rさん
おおっ、やはり21Rさんの戦闘シーンは手に汗握るほど熱いですね。
改めてアデルの凄さを見せつけられた感じです。
しかしアレンの苦悶の表情と険しいまなざしは何故に?
「調子に乗るな」とでも言いたいのでしょうか?
かっこいいだけで終わらせない話の区切り方は流石です。
オリジナルスキルもただの妄想ではなく、理に適った技ばかりでいつ実装されても
おかしくなさそうです。
次回も楽しみにお待ちしております。

>>之神さん
シルヴィーとシリウス。まさかこの二人が組むとは思えませんが、シリウスに
シルヴィーがなにかされたらどうしよう……
徹とミカはもう、なんていうかほのぼのカップルって感じですね。
治るまでずっと部屋にいるからなんて徹の優しさがにじみ出まくってていいですね。
今回の章はどのような話になるのか、今はまだ見えませんが今後に期待しております。

>>718さん
今の時代、女の方が強いですものね。意外とジム=モリタイプの男がモテる時代だったり。
長編を書くにあたって、自分自身がある程度感情移入できなきゃ誰も読んでくれないだろう
と思い、なるべくそのキャラらしさを考えて書いているので活き活きしているなんて
仰っていただけるととても嬉しいです。
最終的には短編で感情移入できるようになれば本物だと思います(エアーマンを目指してっ!)

285ワイト:2008/02/08(金) 00:21:19 ID:NWoaSd260
前RS小説5冊目>>998⇒6冊目>>27⇒6冊目>>83⇒6冊目>>84⇒6冊目>>134⇒6冊目>>154
⇒6冊目>>162⇒6冊目>>163⇒6冊目>>191⇒6冊目>>216⇒6冊目>>267⇒6冊目続き

我を見失い、荒れ狂い始めたアサシンは、足りて無い血を求め2人に襲いかかるっ!!!!
ゴオオォッッ!!!!!先程とは違い、恐るべき速さで2人の間を通り抜けた!!!

「遅いんだよおぉっ!!!」
ドシュウゥッ!!!風を切り裂く勢いで通り抜けたアサシンは、
ラータの身体を見る間もなく!文字通り貫いて・・い!!?

「そっちこそ・・な!そりゃぁ分身だぜ??見分け付かねぇのか?ば〜か!」
ブチィ・・・その一言は、アサシンの怒りに触れてしまう!今でも尚、
狂っているアサシンに、更に火を油に注いでしまったようだ・・!

「殺す殺す・・・血を・・血を!!!!」
ババババシュッッ!!!!切り返して来る前に幾多のダートを投げ打つ!!
ヒュバアァ・・・・だが、それは・・・血で出来たアサシンの身体をすり抜けただけ・・・!

「ヒャハハッハハハハッ!!!!!!!!!!当たる訳ねぇだろぉ!??
我の身体は、何にも受け付けぬわあぁぁぁぁぁっ!!!!!!!」

ヒュンッッ!!!!ドンッ!!一瞬・・・閃光の様な、何かが・・通り過ぎた様な気がした!!
そして何時貫かれたのか、定かでは無いが!!ラータの身体の一部を貫いていた・・!
「ぐはっ!!」ラータは訳が分からないままに血を吐き出した・・それを
アサシンは愉快に見ながら、奇妙な動きを始め・・・歓喜に踊り狂う!!!

「ヒッヒッヒヒヒッ!!!血・・!血を!!!!」
ラータの吐き出した血を取り込み・・・・なんと!身体の腕の部分を血で復活させた!!!
「ハハ・・・ハッハッハハハッハハハッッ!!!!!!血に感謝するぜぇ・・・!
お陰でぇ・・無くなった腕を取り戻す事が出来たんだからなぁ!!!」
「くそぉ・・・!身体がいてぇな・・!まじで、あいつは狂ってやがる・・!
(これ以上は、あいつの為に血を流す事は出来ない・・って事か?)」


ビュルルルルルッ・・・・アサシンは元あった腕の方を片腕に集中させる・・!
「ヒヒッヒッ!ヒヒッ!!これぇでぇ・・武器を使えるんだよぉ!!」
アサシンの凝縮させた片腕は、禍々しい血の刃に変貌する・・・!その代償は
両肩では無く、片腕のみに成ってしまったと言う訳だが、
それとは引き換えに、アサシンはその片腕を武器にした・・・!

「へ〜・・それで??何?武器に成ったからって、もう勝てる気でいるのか??」
「あぁっ!???足りねぇよぉ!もっと・・血を・・・血を寄こせぇ!!!!」

ギュアアァッッ!!!!何事も無かったかの様に、一気にラータに接近する・・!
予想を遥かに上回るアサシンの怒涛の追撃が!!そして凄まじい勢いで血の刃を振う!!!!
ズギャギャギャギャッッ!!!!!!!ガキィンッ!!キン!ガキンッ!!!

「ありえねぇ!!何だ!?この速度は!?捌き切れなっ!!!!!」
想像を絶するその攻撃速度!!次第にラータはこの攻撃を避け切れない!受け切れない!!
そして!等々捌き切れなく成った、ラータに強烈な血の刃が振り掛かるっ!!!!!

ズシャアァッッ!!!!
その一撃は!ラータの頭を横一直線に真っ二つに切り裂いた!!?!?


「残念だったな・・!てめぇは・・・分身と闘ってたんだよ!!」
まだ終わりじゃないって事だぜ??なぁ?そうだろう・・・?」
「ヒャハハヒャハハッ!ヒャハハッッ!!!!・・・まだぁ、楽しめそうだぁ!!
なにがだってぇ??ヒッヒヒヒッ!!全ての血を頂くまでだよおぉおぉ!!!」

キーンッ・・・!!ラータに突如頭痛を感じさせる音が鳴り響いた・・・!
「(どー・・・なってる・・・・?なんだか・・頭がいてぇな・・・!意識が朦朧とするぜ・・
俺の方が・・・・・可笑しく成って来ている様な感じが・・・・・してきたぞ!??)」

286ワイト:2008/02/08(金) 00:29:47 ID:NWoaSd260
今回は、物凄く戦闘シーンを考えまして・・・@@;意外にも結構苦悩しました・・・・その反面
上手く出来上ってたら良いなぁと思います!(でも面白くなかったら如何しよう(T∀T))
続きは、またのお楽しみにお願いします^^それでは|ω・)また!!

287 ◆21RFz91GTE:2008/02/08(金) 02:37:57 ID:hnbHyKHE0
■お久し振り唐突番外編シリーズ

-闇の住人-

 月明かりがとても綺麗な真夏の夜、時折湿った風が血の匂いを運び何処に獲物が居るかを教えてくれる。この日も静かな夜の街を飛ぶ。今までもそうだった。
依頼があればクライアントが動き私に情報が伝えられる。今まで手に掛けてきた者達は貴族から一般市民に至るまで幅広く、中には女子供も居た。
それを無表情で狩り、瞬時に命を奪い去る。何時しか付いたあだ名は数知れず、人々は私の事を恐怖のあまり「暗殺者」と呼ぶようになった。
闇の世界で生きてきた私に家族は居ない、捨て子だったらしい。その当時の記憶は無く、物心付いた頃には人を殺めていた。無表情で狩る私のスタイルは同業者からも恐れられ、常に一人で動くことが多かった。人の命を奪う事になんの疑問も持たず、人としての感情は遠い過去に置いてきた。同業者の中には殺人に快楽を生む者や遊び感覚で殺める者も居た。それでも私は違った。
他の連中と同じと言われればそうなのかもしれない、ポリシーも無ければ人の道を外れてしまった私が出来る事はもはや人外の事。そしてこの日は何時か殺めた貴族の言葉を思い返していた。
「貴様のような奴は地獄すら受け付けぬぞ!煉獄に落ちるがいい!」
取り囲む同業者達、隠しきれぬほどの殺気が私を囲んでいた。思い返せばクライアントの安全が第一なこの世界、邪魔となれば始末して来た者達の事を考えれば、何時かはこうなる日が来るのでは無いかと想像していた。それが早いか遅いか、ただそれだけの事。
ジリジリと間合いを詰めてくる同業者達の数はおよそ十数名、それが一斉に遅いかかってくる。その時を待ち、煉獄と言う場所を思い浮かべながら投げ短刀を何本か両手の指に挟んだ。


 血の匂いは死神を呼び寄せる。烏と言うなの死神を。
傷一つ負うこと無かった私は回りに転がる元人間を見下ろしながらそこに立っていた。亡骸をぼんやりと眺めこの者達がたどり着く場所を想像していた。そこは地獄なのだろうか、それともあの時の貴族が言うところの煉獄なのだろうか。地獄と現世の狭間にあると言われる煉獄に彼らは向かったのだろうか。
そうして亡骸を見て居るときだった、突如腹部に激痛が走り無表情だった顔は苦悶に変わる。背中から付き刺さった刃の先端が鍛えられた腹筋を破り貫いていた。次に激痛が走ったのは足だった。同じように後ろから突き刺さり太ももを貫いている。次に腕、手、肩、足首。次々と走る今まで感じた事の無い痛みに耐え切ることが出来ずにその場に崩れ落ちてしまう。
ゆっくりと首を起こして暗闇を見据える、そこには一人の女性が立っていた。彼女の指には幾つかの投擲用の剣が挟まっていた。刃の部分を指で挟み何時でもこちらに向けて投げられる姿勢だった。
「オヤスミナサイ。」
それが最後に聞こえた言葉だった、頭部に付き刺さった剣は貫通することなく急所を捉えて私の命を経つ。瞬間だが死と言うのが何かを悟る事が出来た、そう言う意味では彼女に感謝している。今まで奪う側だった私から命を奪われる側に回って始めて感じる恐怖。それは想像を絶するものだった。そしてまたあの言葉を思い出す、煉獄と言うの場所は何処なのだろうか。この真っ暗な世界が煉獄なのだろうか。冷たく、淋しい。誰も居ないこの世界が煉獄と言うのだろうか。
なら、地獄はどんな場所なのだろう。ゆっくりと堕ちて行く意識に見えた一つの光。それは決して私を照らす事の無い表の光なのだろう。


 「…。」
死を確認するために近づいてきた彼女は亡骸を二度小突く、そして右腕の動脈を確認し、更に見開いている目の瞳孔を確認してゆっくりと立ち上がる。死を確認したのちゆっくりと向きを変えて歩いてきた闇へと帰っていく。
「さようなら、お兄さん。」
最後に笑顔でそう言った。

288 ◆21RFz91GTE:2008/02/08(金) 02:59:24 ID:hnbHyKHE0
こんばんは〜、夜中にハッスルしてる21Rですヾ(´・ω・`)ノ
718様の短編見てたら久し振りに書いて見たくなりましたよ、718様のように完結に纏めるのが
苦手ですが…orz

コメ返し

>>279 :◇68hJrjtY様
いやはや、本当に恐縮です。
因みにアデルの姿はあんな感じです、元ネタのアデル君はあんな偉そうな人じゃ無いんですよ?(笑
いやぁ〜正直失敗してますよ〜。あまりに多すぎてどう書こうか本当に悩んでたりしますorz
もう少し写生スキルがあればなぁって思いながらプロの作家さんたちの小説読みながら
今夜は枕をぬらしてきますヾ(´・ω・`)ノ

>>280 :718様
どこぞの言葉でこんな言葉があります。
「弾膜はパワー」
まさに文字通りだと思いました、魔法使いなら派手な爆発魔法や地響きを起こすような魔法
剣士ならかっこよく、更に巨大な魔物でも一撃でなぎ倒すような技。やっぱり憧れですよ〜。
脳内アニメーションは基本かっこよさと大規模な魔法を描いてますが、惑星事破壊しそうな
勢いなのであまりド派手な技は使えませんよね(笑

>>284 :FAT様
いやはや恐縮です。
理に叶う…うーん、それはどうでしょうか;;
それっぽく書いてるだけで理に叶う事は何一つないですよぉ;;
まだまだ勉強不足ですorz

コメ

>>238 :白猫様
ようやく仕事が一段落付いたので今回初コメです。
>>ちっちゃい女の子に鎌ぶん回させて豪傑数多の猛者共を斬り殺させたいじゃないですかッ!!!!!(黙
激しく同感です白猫様ぁぁ!
用語説明の方も分かりやすくてとても面白いです、俺も用語説明作ろうかと迷ってます(笑
これからの活躍と反映を期待していますヾ(´・ω・`)ノ

>>263 :メイトリックス様
相変わらずの写生、お見事です。
本当に惚れ惚れするような書き方ですよ〜、俺に爪の垢ください(ぉ
戦闘シーンも臨場感溢れ本当に見習うべき所が万歳です。
これからもお互い頑張って行きましょうヾ(´・ω・`)ノ

289◇68hJrjtY:2008/02/08(金) 12:30:24 ID:.vSJwIY60
>FATさん
ジム=モリさんの毎回の語り出し「このジム=モリ…」が大好きな68hです、こんにちは。
レンダルとデルタの不安も多少解消されて、ジムさんもついに苦難から解放されましたね(笑) でもそのままヴァルハラに行かないように(;゚-゚)†
ジムさん登場のシーンはとても面白おかしくてギャグセンスたっぷりなのが他のシリアスシーン同様印象的でした。
どっちもちゃんと書き分けられるFATさんも流石です! そして女武道キタワァ*:.。..。.:*・゚(n‘∀‘)η゚・*:.。..。.:* ミ ☆
小柄な長い黒髪…なんて、なんて萌えるんだ!ジム=モリさん、負けませんよ!(違

>ワイトさん
確かに戦闘シーンって読んでる方は楽しい(?)ですが書いてる方は頭が痛くなりそうです(汗
このアサシンのように血でできた存在というものを描くだけでも大変そう。ましてそれとの戦闘となると。
分身を駆使して戦うラータも守勢に回ってしまっていますね。でもどうすればダメージを与えられるのか…。
ラータの体力が尽きる前になんとかして状況を変えたいところですね。
続きお待ちしてます。

>21Rさん
読み終えるとどことなく虚脱感というか全てが終わってしまったような気分になりました。
「暗殺者」の諦観したような態度が死の間際、そして死後も続いているのかと思うとなんともいえません。
生死を扱う話は総じて悲しい話が多いものですが、この短編に関しては悲しいというよりも「彼はこれを望んでいたのかなぁ」という気持ちも…。
実の妹に殺されるというのが彼の運命だったのかもしれませんね。
今はまっぴるまですが、夜中に読んでいたらこの話もまた違ったものになったのかなぁ…。ともあれ、短編ありがとうございました。

290名無しさん:2008/02/08(金) 18:24:00 ID:fou9k2gM0
黒頭巾の中のヒトですコンバンワ(゚д゚ノ|
沢山の感想ありがとう御座います(ノ∀`*)ペチン
初回投稿時、つい名前欄にタイトル入れちゃったのでヤヤコシイ名前ですいません…orz
名無しにしてみたものの…コメ職人するにも何かコテハンつけた方がいいのかしら(笑)


>68hさん
お邪魔致しますー(ノ∀`*)ペチン
Σ遅すぎたってコトはないです…ちゃんと見てます(*ノノ)
前出の理由でいつまでも中途半端なコテ名乗るのもなぁと名無しになっただけですので(笑)
RSの世界に絵本があったら…きっとこんなカンジなのかもしれません(ギャグ部分は除く/笑)
誰もが知っている物語や設定は、イメージしやすいので重宝します…そして、ソレを壊すのもまた楽しいものです(やめて)
ほんわかシュール目指します(ノ∀`*)ペチン(そんなジャンルはない)
ギャグは楽しんで貰ってナンボなので、嬉しい感想でした(*ノノ)
レベルに関しては、古い導師服の要求レベルが528なので速度異次元で計算したらこのレベルに…後はどちらの秘密も半島の海辺から近いという地理的条件です(笑)
よく最初の一撃で沈まなかったものだとそのロリコンへの執念に感心します、この犬さん(ぇー)
私の中で、サマナも武道は純粋で奥手なイメージです…不器用なかぽー萌!ヽ(´д`)ノ
ネタの神様が降りて来る様に祈っておきます(ぺこり)

>21Rさん
コメ感謝です…嗚呼、こんな所に詠唱仲間が!(笑)
黒は白とは間逆ですが、ある意味純粋な色だと思うので幼女に被せたら可愛いと思うんですよ(ぇー)
そして…私、大先輩21Rさんの書かれる小説の大ファンです(ノ∀`*)ペチン
嗚呼、如何しよう…憧れの作家さんにレス頂ける日が来るとは…興奮して今晩眠れないかも(笑)
ロリコンでも何でもイイんだ…アレンは俺のよm(アレンはミルのです)
そして、本編ではアデルが遂に本領発揮ですか…、実装してくれないかなぁ!
階級といい炎といい髪や瞳の色といい…地下界の住人を連想されてそわそわです。
アデルの強さはイイお知らせなのに、アレンくんの表情が気になります。
そして、お久しぶりの短編キタ―(*ノノ)―ッ!
彼の末路は自業自得なのでしょうが…ソレが彼の唯一の生き方だったのでしょうから、考えさせられます。
天涯孤独だと思っていた彼の最期の幕を下ろしたのが、彼と同じ道を歩んだ妹だというコトに哀しさを感じてしまいます。
彼女に感謝する彼は…命を奪い続けながらも、命に真摯だったのだと感じました。
彼にとっては、生きているコト自体がある意味煉獄だったのではないでしょうか。

>之神さん
Σもぎゃー、シリウスキタ―(*ノノ)―ッ!
可哀想に草臥れて哀愁が…ソレでもシリウスはシリウスなナイス性格で安心しました!(笑)
何か今のシリウスだと…皆さん心配されてる様に、シルヴィーを如何こうしそうに思えないんですよねぇ。
掛け合いが、イイコンビな気がして…お互いにイイ方向に向かってくれないかと期待(ノ∀`*)ペチン

>718さん
こちらこそ、初めましてです(゚д゚ノ|
言葉の魔術師718さんに絵本らしいと感じて頂けたなら、嬉しい限りです(ノ∀`*)ペチン
718さんのリアルな描写は、文面からでも情景だけでなく匂いや空気まで感じられてドキドキです(*ノノ)
シュトラ←×3時代はよく殺人蚊を擦り付けられたりしたので、逃げている時の恐怖はよくわかります(笑/当時は凄く混んでいて狩場争いが過激でしたガクブル)
ココにもココにもと間違い探しの要領で挟み込んでみました…小さなネタでも気付いて頂ければネタ仕込み師冥利に尽きます(ぇー)
メインがWIZなんで愛はあるのですが…愛があるからこそ可哀想なキャラにしたくなってしまいます(笑)

>FATさん
初めまして…ややこしい名前ですいません(笑)
捻くれているので、子ども向けではない大人向けの絵本な要素を入れてしまいました(ノ∀`*)ペチン
武道家は拳が武器なので、正義とかヒーローモノが似合うと思います…剣士はきっとレッドでWIZが青です(赤石戦隊?)
ディープな恋を書くと如何してもドロドロか悲恋にしてしまう性分なので…折角冬ですので、コタツの様なほんわかを少しでも感じて頂ければ(*ノノ)
では、レス職人として…ジム=モリが言い様にあしらわれていてとても楽しいです(笑)
どれだけ賭けに負けても通ってしまう趣味がエンチャの私には馴染みのNPCなんですが、今度行った時に思い出し笑いしてしまいそうです(笑)
連続失敗しても、こうやってからかわれてるのを思えば溜飲も下がるってものです(酷ぇ)
ジム=モリの名前の由来には盛大に噴きました…そうきましたか!(笑)
果たして二人の手に無事に渡るのか、一体どんなエンチャ文章を作ったのか…続きwktkお待ちしております。

291名無しさん:2008/02/08(金) 18:25:33 ID:fou9k2gM0
>ワイトさん
いやぁぁぁぁ、ヘルアサシン恐ぃぃぃ!。・゚・(ノд`)・゚・。
コッチが傷付くだけでも不利なのに、更に相手がパワーアップするなんてガクブル!
私がラータなら半泣きですよ、コレ(ヘタレ)
そして、この大事な時にラータに起こった異変…この現状を打破する切欠になるのでしょうか。
続き、無理されない程度に頑張って下さいませ(*´д`)


…暇にかまけて、貧乏な剣士くんの話を書き上げてしまったお昼休み(゚д゚ノ|
携帯から打ったのでブログに下書き保存してパソで推敲しようと思ったら、一万文字制限越えてて出来なかったっていう…orz
全角でも原稿用紙10枚分↑だと思うと、このまま上げていいのかとソワソワですあばばばば。
ソレとももうコレあっさり諦めていっそこのままRS絵本シリーズでm(途中で挫折しそうなので強制終了)
やるなら、姫でシンデレラかWIZでラプンツェルでしょうか(後者絶対オカシイ)

文字数制限で負けて悔しかったので、下に即興の小ネタ仕込んでおきます…ではではー(゚д゚ノ|

292名無しさん:2008/02/08(金) 18:26:30 ID:fou9k2gM0
放送をご覧の皆様こんにちは。フランデルニュースのお時間です。本日は芸能レ
ポーターのリトルがお伝えします♪


まずは一つ目のニュースから。
あの大人気売り出し中デュオPT【フル支援】が、限定ユニット【フル支援wi
th火力】として新メンバーの剣士を加え、遂に2ndシングルを発売するコト
を自身のブログで発表しました。
1stシングル【アスヒとフルヒの重ねがけ】での電撃デビューから半年振りの
新曲になります。
気になるタイトルは【薬回復と勇者様〜アスヒが飛ぶ!リザが飛ぶ!〜】…前回
以上の執念を感じさせます。
尚、予約管理者さえ見付かればすぐにでも予約を開始したいとの構えを見せてい
ます。
この発表に、新メンバーの剣士は「うはwおkwwコレで抵抗装備いらねwww
日夜問わずのPTリストやPT申請、古都での三連叫びに耳メテオのフルコース
なんて情熱的ストーカー勧誘の成果だぉ^w^」との見解を示しており、コレを受
けた【フル支援】の二人は「あの凄まじく絶望的な日々は思い出したくもない…
。先が思いやられるが、今回限りなので仕方ないだろう…コレで諦めてくれれば
嬉しいのだが。詳しくは、公式ブログランクから【フル支援】公式ブログへアク
セスして欲しい…投票もついでにクリックを」と各社に文章で声明を発表したと
のコトです。


(ザワザワ…ガサガサ…)

失礼しました…今、緊急で入ってきたニュースです。
新曲を発表したばかりの歌手【フル支援】が、新番組【赤石戦隊ボウケンシャー
】に於いて俳優デビューするコトが正式に決定しました。
この番組は日曜朝のヒーロータイム戦隊枠の新作で、【フル支援with火力】
の新メンバー剣士が主役のレッドを演じるコトは決まっていましたが、他のPT
メンバーは決まっていませんでした。
メインキャストは以下クリップの通りです。

 赤石戦隊ボウケンシャー(搭乗メカ名)一覧
  ・勇者王レッド(ラグパラ1号):剣士
  ・ロン毛ブルー(古都西口2号):WIZ
  ・筋肉イエロー(コロタク3号):BIS
  ・ゴキブラック(分身払い4号):武道
  ・うさぎピンク(ぴょん子5号):姫
  ・謎の博士(GH待機につき無):ネクロ
 合体メカ
  ・廃ボウケンシャーズRS

このタイミングでの発表に、ある関係者は「主題歌は例の新曲もしくはカップリ
ング曲になる筈だ。ゲームオンも真っ青な販売計画になるだろう」と述べている
とのコトです。
リーダーの剣士はメンバー発表を受け「リーダーは面倒だからリログして誰かに
押し付けたいけど、サポミニPが火だってのがイィッ!!(・∀・)応急処置で赤狩
りUMEEEしるぉ!んで、ヒーローとか装備して浮いちゃうぉ^w^」とコメン
トしています。
コレに対し、【フル支援】の二人は「ヒーローでも何でも適当に背中に靡かせて
自由に浮かべばいい。赤と言っても、ツノがない以上、別にスピードが三倍にな
る訳でもないのだし」と諦め混じりの溜息を零していると言う事です。
子ども番組の主人公達が使用するアイテムとして、背Uのヒーローの相場が高騰
するコトが予測されますが、有識者の間では「コレを期にヒーローがNPCによ
って販売されるのでは」などと囁かれており、「そんなコトはない。ただの価格
操作だ」などと反論するしたらば住民との間でまだまだ議論を呼びそうです。


…以上、本日のフランデルニュースはブルン放送局のリトルがお送りしました。
また次回、お目にかかりましょう…では、ご機嫌よう♪

293之神:2008/02/09(土) 10:30:53 ID:xJDkyE7Q0
>>292

飲んでいたお茶を返して下さい。


なんというか、勇者様と支援の芸能(?)情報はPC前で盛大に笑わせていただきましたw
価格操作に関するコメントもなかなか・・・・・・(´∀`*
しかしまぁ良く思いついたものです・・・・・w

そして感想ありがとうございます。

現在バレンタインネタを投下しようと構想中ですが、他の人が書くとどうなるのか気になったり・・・・。
この際小説スレ作家で同じ課題をするとk(ry

まぁ妄言です、はい。

294◇68hJrjtY:2008/02/09(土) 14:44:19 ID:GJmRtkbE0
>292さん(黒頭巾さん(笑))
なんか大好きですよ、こういうノリ!
面白いのももちろんですが「RS内に○○があったら…」という妄想をかきたてられます(笑)
ボウケンジャー(・∀・)イイ!!でもすいません個人的にゴキブラックの忠実なファンなのでその辺は!
…GH待機のみの謎の博士さんも可哀想だけど(ノ∀`)
今はヲチしてませんが、偏見スレではこういうネタが多そうですよね。あちらの職人さんたちにも是非ともこっちにも書いて欲しい限り。
次回放送日が大変楽しみです(笑)

>之神さん
おぉ、ここのスレの書き手さん全員への課題小説ですか!
いち読者に過ぎない私が言うのもアレですが、すっごいやってもらいたいです(笑)
同じネタでも書き手さんの持ちオリジナルキャラとかネタの使い方でだいぶ変わってきそうですし
なにより皆さんの小説で活躍している彼ら彼女らの違った一面が見れそうな…!
手始めに「バレンタインネタ」でやってもらいたいですね〜(・∀・)ニヤニヤw

295白猫:2008/02/09(土) 17:36:47 ID:iwezFGtQ0
Puppet―歌姫と絡繰人形―

第一章〜第五章及び番外編 5冊目>>992
第六章 -夜空の下で- >>30-37
第七章 -深紅の衣- >>70-81
第八章 -神卸- >>137-139
第九章 -チャージング- >>164-171
第十章 -母- >>234-241
これまでの主要登場人物 >>38
用語解説 >>255-261


第十一章 北へ


 「――――」
 「――――」
砕け散った。

真っ黒な光に呑み込まれ。

細かい粒子と成り果て、粉々に、砕け散った。

ルヴィラィの――腕が。


 「馬鹿、な――ッ!」
 「……馬鹿とは、随分な言いようですね、ルヴィラィ」
ルヴィラィの腕を破壊したのは、紛うことないネルの[エリクシル]。
 (エリクシル、で…私の腕を…蒸発させた……ッ!?)
全身の疲労の色も濃いネルは、しかし右腕を剣状に変化させる。
実のところ、ネルは[鎮魂歌]によって韋駄天が消滅させられる寸前、同調を無理矢理に解いていた。
故に[鎮魂歌]による韋駄天・ネルの共倒れという最悪の事態は免れていた。
が、それでも自身の魔力の大半を削がれ、心身共に満身創痍であった。
 「……『 ティタン、エッジ! 』」
 「っちぃ!」
下からすくい上げるように発動したティタンエッジを、ルヴィラィは咄嗟に避ける。
ドサリ、と地面に崩れ落ちたルフィエを庇うように、ネルはフラフラと立つ。
 「…ルフィ、エ」
 「………ネル、ネル、くん…っ」
自分の胸に縋り付くルフィエを見やり、ネルは唇を引き絞る。
ボロボロと涙を流し、ルフィエは自分の顔を彼の胸に押しつける。
その顔を少しだけ撫で、ネルはゆっくりと振り向く。
 「――ルヴィラィ」
 「………ふ、ふふ…やってくれたわね、フェンリル坊や」
消滅した右腕を抑え、ルヴィラィは小さく笑う。
その体からは、まるで何かが抜け落ちるように黒い蒸気のようなものが吹き出している。
それを眺め、しかしネルはゆっくりと目を閉じる。

 (護る――護って、みせる)

瞬間、
胸元のエリクシルが、突如輝きを増す。
その輝きに、ルヴィラィは目を少しだけ細めた。
 (この光、は――)
その光に、ルヴィラィは思い出す。
あの時の光と、同じ。
[カナリア=ヴァリオルド]の…第三段階の開花と、全く同じ。
信じられない。
まだ第二段階が解放されてから、一月も経っていないはずである。
あの戦の天才、最強の武道家と謡われたカナリアですら、この[第三段階(サード)]に到達するまで、数年はかかったはずである。
それを彼はたったの、十数日で。
 (こいつ……は!)
放置しては、ならない。
"こいつ"は必ず、自分の妨げとなる。
いや、妨げなどというレベルでは…ない。
下手をすれば、自分の存在を危ぶむ存在にすら、成りえる。
そんなことを、許してはならない。
 (不安の種は……摘まなければならない、のよ!)
瞬間、
ルヴィラィを中心に、ドス黒い靄が巻き上がる。
まるでルヴィラィを護るように、またはルヴィラィの力の予兆のように、その靄はルヴィラィを中心に踊り、舞う。
そして、紡がれる一曲の唄。
その唄が、ネルの耳に入った瞬間、

   ――――…

ネルの、目が、耳が――世界が、壊れた。

296白猫:2008/02/09(土) 17:37:17 ID:iwezFGtQ0

 「!!」
その旋律に、俯いていたルフィエが顔を上げる。
有り得ない。
唄おうとしている。
唄ってはならないはずの、禁じられた唄を。
有り得ない。
この唄は、奏者をも破壊する唄のはず。
 (……ルヴィラィの核は、他にあるからなの)
横を見れば、既にネルの目も虚ろとなっている。
このままでは、数分、持たない。
彼を、護らなければ。
 (できるかどうかは、分からない)
頭に焼き付けられた歌詞を、
人には理解できるはずもない、しかしひどく美しい旋律を、
全ての者に祝福の光を与える唄を、唄う。
曲名は――[協奏曲(ファンタジア)]。

五感が徐々に鈍ってくる意識の中、ルヴィラィは驚愕する。
ルフィエを中心に、金色の、光の帯が立ち上がっている。
有り得ない。
ルフィエがこの術を使うには、まだ速過ぎるはずである。
無闇に発動しようとすれば、確実に術に自分が食われかねないというのに。
発動、しようとしている。
自分の唄う[嘆きの旋律]に唯一対抗しうる、全ての者に祝福を与える[協奏曲]。
だが、[協奏曲]は自分の唄う[嘆きの旋律]と同じデメリットを持つ。
奏者に必ず術の威力は跳ね返り、確実に、死ぬ。
 (どうして、そこまで――)
と、その視界の端。
虚ろな目で、空を見上げる少年の姿が映った。
 (…………"こいつ"か)
その少年の撃滅、
ルフィエの精神、
その二つを天秤に掛け、しかしすぐに目を閉じる。
 「――やめね」
鋭く指を払い、[嘆きの旋律]を解除する。
意外と高い天井を見やり、ルヴィラィは笑みを浮かべる。
 「……まぁ、今回だけは、ルフィエに免じて許してあげる」
瞬間、
まるで電灯が落ちるように、瞬時にルヴィラィの姿が、掻き消えた。








2月11日。
 「…………」
 「…………」
夜も明け、太陽が昇り切った、真昼。
アリアンの旅館内、BARに到着したネルとルフィエは、目の前の光景に唖然とした。

百戦錬磨のネルにも、怖いものはある。
例えるなら…そう、目の前の、この人。
 「んぁあ〜? 遅かったわねぇ、ルブィエ?」
三本のワインを器用にがぶ飲みしている、アーティ=ベネルツァー。
顔も真っ赤、口から下はワインでベトベト、辺りには無数のボトルが転がっている。
 「あで? そっぢの……えいろー?」
 「…はい。そうです」
だが、アーティはその返事を無視する。
というより、ネルが何と言ったのか頭が回っていない。
完っ全に、できあがってしまっているようだ。
 「…とりあえず、今日は疲れたので先に失礼します」
 「あ、うん」
真っ二つに割れた兜をカウンターに置き、ネルは首をさする。
と、バーを出る直前にその足が止まる。
 「リレッタは戻って来てますか?」
 「リレッタ…あの天使の小娘か」
 「ああ、戻ってきてるで」
昨日の夜からずっと付き合わされているカリアス、そしてもう片方、自分は知らない顔の女性が、一人。
その二人を眺め、ネルはしかし頷く。
 「ありがとうございます」

297白猫:2008/02/09(土) 17:37:45 ID:iwezFGtQ0
 「…………リレッタ」
 「……ネリエルさま?」
真っ暗の小さな部屋に、ネルはゆっくりと入る。
電灯に灯りを灯すと、淡い橙の光が部屋の中を照らした。
と、部屋の奥のベッドの上、3mはある翼を隠そうともせず、リレッタがちょこんと座っていた。
ネルの顔を見、無表情の顔が少しだけ和む。
 「おかえり、なさい」
 「…ただいま、リレッタ」
ネルの元に駆け寄り、リレッタは思い切りその胸に飛び込む。
それを一瞬躊躇い、しかしネルは小さく抱き留めた。
ふと、翼を見やる。
その翼の片方には、丁寧に白い包帯が幾重にも巻き付けられていた。
 「……まだ、痛むんですか?」
 「…? ああ、翼…ですか? もう痛みは取れました」
ネルから少し離れ、リレッタは目を閉じる。
瞬間、淡い光が彼女を包み込み、一瞬後、その翼は彼女の体に吸い込まれていった。
 「ほら、元気満々です」
 「…………」
 「……そんなに辛そうな顔、しないで下さい。ネリエルさまは、私を命懸けで護ってくれました。
 それだけですごく嬉しかった…だから、そんな哀しみに押し潰されたような顔、しないで下さい」
 「…………はい」
頷いたネルの頭をポンポンと叩き、リレッタは腰から一枚の手紙を取り出す。
 「さっき、御父様から手紙が届いてました。まだ、封はされたままです」
朱印の圧されたその手紙をネルに手渡し、リレッタは頷く。
 「きっと、ルヴィラィ達を倒す、何か重要な鍵があると思うんです」
 「…………」
その封をゆっくりと破り、ネルは中に入った手紙を取り出す。
その手紙には、ルゼルのものに違いない達筆で、たった一言書かれていた。

   [ブレンティルへ]

その手紙を閉じ、ネルは小さく息を吸う。
間違いない。
ルゼルは、[マペット]を解放したのだ。
既に、時は満ちた。
ルヴィラィを叩くならば、[イグドラシル]が致命的な打撃を受けている、今しかない。
 「…リレッタ」
その手紙を横で覗き見ていたリレッタに、ネルは小さく呟く。
その顔を見やり、しかしリレッタは笑った。
 「はい。任せて下さい」







2月12日、朝。
死亡者320人、重軽傷6800人越というアリアン襲撃事件は、なんとか収まっていた。
黒騎士カリンの打ち上げた碧龍の被害はかなり大きかったが、なんとかそれをネルは揉み消した。
カリン自身も[ブルンの影狼]の名を知っているらしく、それに"は"何の文句も漏らさなかった。
 「…私に、共に戦えと?」
 「そうです」
魔創残龍剣を肩に番えたカリンに、ネルは頷く。
既に旅支度も整い、これからすぐにブレンティルへと向かう。
最も、これからの戦いには足手まといなレイゼルは、古都へと先に戻ることになっていた。
 「今、僕達はルヴィラィとの戦いで疲労している」
自分の腹、腕に巻かれた包帯、リレッタを見やり、ネルは言う。
その後ろでカリアスにもたれて唸っているアーティは、無視。
 「今、僕達には強力で、絶対的な破壊力を持つ戦士がいない」
やはりこれも、二日酔いなアーティは、無視。
 「アーティさんと対等に渡り合っていた貴方の力が、欲しいのです」
 「…………フン」
ネルの言葉を鼻で笑い、カリンは右手で剣を握り締める。
鋭く剣を振るい、ネルに向かってそれを突き付ける。
その黒い刀身を見やり、ネルは首を傾げる。

298白猫:2008/02/09(土) 17:38:07 ID:iwezFGtQ0
 「…………」
 「……5だ」
 「……2」
いきなり数字を言い出したカリンとネルに、ルフィエとリレッタは首を傾げる。
それをレイゼルは苦笑して見、よいしょとベンチに座り込む。
 「4.8」
 「2と0.3」
 「…4.7」
 「……2と0.8」
 「4.5」
 「3.2」
 「4.3」
 「……4」
 「…………」
 「…………」
ネルの4発言を最後に、双方黙り込む。
首をさらに傾け、ルフィエはくいくいとリレッタの袖を引っ張る。
 「リレッタちゃん、ネルくんとカリンさん何言ってるの?」
 「……さあ」
 「競(せ)ってんだよ」
その言葉に、二人はレイゼルの方を向く。
そんなある意味でかなり初々しい二人に苦笑し、レイゼルは言った。
 「黒騎士カリンは依頼を受けて対象を斬る[殺し屋]だからな。情や義理じゃ奴は動かない。
 んなことネルだって分かってる。だからこそ、今ああやって依頼料を決めてんだよ」
 「…………4って、単位いくらなんですか」
 「……ネルくんのことだから、4000万くらいだろうなぁ」
国宝級の壺をアレックス、シェリルなどのいつもの面子が割ったときも、彼はおやつ抜き(ルフィエは笑いを堪えるのに必死だった)にしただけだった。
その二人の言葉に、レイゼルはプッと吹き出す。
 「単位は、G(ギガ)だよ。G」
 「……G?」
 「国際単位の? あれってお金の単位じゃないんでしょう?」
 「ネルみたいな億万長者だと普通に使ってっぞ」
 「……で、4ギガっていくらなの? リレッタちゃん」
 「…………」
 「…………?」
 「…………よんじゅー、おく?」
 「……………………」
 「……………………」
 「…………………………えっ?」
ルフィエは声が裏返った。





 「有り得ないよ! ぜっっっったい有り得ないッ!!
 なんで40億なんていうすごい金額ポンと出せるわけ!?
 40億あったらね、あったらね! えーっと…………。国が作れちゃうよ!?」
 「作れません」
 「一介の警備兵の年収が300万でしょ!? えーっと…………。百万年かかっちゃうよ!?」
 「1500年かかりません」
 「とにかく凄いの!! ネルくんぜっっっっったい金銭感覚おかしいよッ!!」
 「まぁ毎日幾億幾兆もの財政動かしてるネリエル=ヴァリオルドには40億も微々たるもんだよ」
ルフィエとネルの(聞いているだけで涙が零れる)口論に、レイゼルが煙草をふかしつつ言う。
幾兆、の言葉に、今まで喚いていたルフィエの動きがピタリと止まる。
 「……そもそも、ヴァリオルド家ってどうやってお金貯めてるの」
 「宝石業に運送業、金融、採掘、不動産、酪農、食品加工、医療、教育……他に何かありましたっけ」
 「貿易業とか金属加工業、魔術研究、それから農家もいくつか持ってなかったっけか?」
 「ガリムトの農場ですか…あそこは業者に任せてほぼ放置してるんですよね…収入も気候に左右されて、到底心の底からやる気には」
 「…………」
 「……すごい…」
ポカンと二人の話を眺めていたリレッタが、小さくそう呟いた。
噂では、ヴァリオルド家は一国家を軽く上回る財産を持っているという。
流石は、唯一フランテルで生き残った貴族家である。

299白猫:2008/02/09(土) 17:38:33 ID:iwezFGtQ0

 「――さあ、行きましょうか」
日も高く昇り、ネルは荷袋を担いで言う。
その隣、未だに衝撃を拭い去れないルフィエは、高く昇った太陽をウンザリそうに眺める。
 「あっつーい…」
 「我慢してやルフィエはん。馬車は足付くから使いたくないねん」
その隣、うつらうつらとするアーティを背負い、カリアスが笑う。
すっごい元気だな、と目を丸くするルフィエの頭に、ポフッと帽子が載せられる。
 「ほら、日射病にかかったら大変だ」
 「ありがとう、レイゼルさん」
 「リレッタ、君も」
 「ありがとうございます」
同じように、ネルは被っていた帽子をリレッタに被せる。
自身は、フェンリルの力の証たる面覆いのような兜を被り、言う。
 「いざ――北へ!!」
瞬間、

太陽にも負けない紅色の光が、アリアンの端から立ち上がった。
その紅色の光は狼の姿を象り、凄まじい勢いで飛翔を開始した。
目指すは、伐採と武術の街――ブレンティル。




FIN...



[ルフィエネル主人公二人のおまけコーナー2]

 「今回で二度目となりました! おまけコーナーでーっす!」
 「今回からこのコーナーでは、主要人物の自己紹介を行うことになりました。
 第一回はもちろん主人公、ルフィエ=ライアットと僕、ネリエル=ヴァリオルドです」


 ルフィエ=ライアット(♀) 76歳
 長所:明るい どんなときでも笑う
 短所:おっちょこちょい
 好きな食べ物:子供キャンディー
 嫌いな食べ物:煮魚
 尊敬する人:母
 12月24日生。古都出身のリトルウィッチ。
 心身共に16歳から全く成長していない。無一文で20年間旅をする(ある意味)強者。
 生き残ったリトルウィッチの中で、唯一飄々と町中を歩き回る。
 リトルウィッチの真の力たる[唄]を紡ぐことで、人智を越えた力を発動することができる。
 とりあえず何でも笑って誤魔化すというタチの悪い癖を持っている。
 自分を助けたネルに特別な思い入れを抱いているらしいが、どうも情勢は微妙である。
 得意術:[バトルマーチ]、[ウルトラノヴァ]

 ネリエル=アラスター=ヴァリオルドⅣ世(♂) 16歳
 長所:騎士道を重んじる どんな者の声にも耳を傾ける
 短所:恋愛感情に凄まじく鈍い 金銭感覚がおかしい(ルフィエ談)
 好きな食べ物:ガリムト産最高級ヨーグルト(!?)
 嫌いな食べ物:味のない食べ物(主に生野菜)
 尊敬する人:父
 3月3日生。古都出身。
 名家ヴァリオルド家の当主であり、ブルンネンシュティングの警備兵。
 [大戦]で両親を失い、生き別れになった妹を捜す。
 無双の戦闘力を誇るが、魔力の構成は中の下。[エリクシル]を介してなんとか発動している程度。
 やろうと思えば古都を丸ごとテーマパークにできるほどの権力と資産を持つ。
 毎日のように彼に意見を求める役人たちが押し掛けているという(大半は門前払いかセバスチャンが対応)。
 得意術:[万華鏡分身]、[巨人族の刃]


 「次回はアーティさんとカリアスさんだそうですよ」
 「そういえば、カリアスさんって強いの?」
 「信じられないくらい強いですよ。絶対驚きます」

300白猫:2008/02/09(土) 17:39:00 ID:iwezFGtQ0
コメ返し

>メイトリックスさん
丁度70年ほど前の話でしょうか。ネルはまだ生まれてない勢いです。
ルフィエは母…フェレン=ライアットのことを心から尊敬してたみたいです。
私はそうでもないですが、両親との思い出は何者にも変えられない大切なものなんですね。
用語集は昔からちょこちょこ作っていたのでしんどくはありませんでしたね。
まぁとにかく量が…(苦笑)

>黒頭巾ちゃんさん
Σ私なんぞの小説に影響されちゃだめです!
あ、でも姫とリトルは多少はハイブリになるのかな…?
世界観は現代の十年ほど前…あれ? 前も同じようなこと言ったっけ?
唄は自分も楽しみながら書いています。結構書いてるとなんかもうあれになっちゃいます。(アレ?

>◇68hJrjtYさん
まぁ…用語は慣れれば大したことはないです(笑)
Σ個人的にですか? 私なんぞの駄文でパソコンの空き容量を減らしたら猫神様がお怒りになりますよ!?(意味不
実はこの用語解説はつなぎでしかなかったりします。
だってもう固有名詞出しちゃってますし(苦笑)
ブレンティル編でもどっちゃり出る予定です、どっちゃり。

>FATさん
…あれ? 最終章近し! って分かっちゃってます?(待
たぶんブレンティル編を終えると物語は一気に展開するでしょう。
土台はあくまでもフランテルを使用していますので。私は肉付けしただけ(笑)
設定は…細かいというより、分かりづr(略

>◆21RFz91GTEさん
いつもお世話になっています。コメントありがとうございます。
ですよね! ちっちゃい女の子×大鎌=すごいよ。ですよねッ!!(意味不
用語説明…参考にすらならない参考程度に言うならば、
一つ一つ用語を作るたびに用語解説を追加していった方がいいのかもしれません。
メモ帳って多重窓できるから便利です(笑)


さて、次回は最近話題の(?)う゛ぁれんたいんネタを投稿したいと思います。
入試も終わったのでいざ小説スレを満喫! でっす。
では今回はこの辺で。そしてこっそり300げっと。

301ウィーナ:2008/02/10(日) 01:06:34 ID:PI3MWrYQ0




………





「はぁ………。」

教室に1つ、人の影があった。
薄暗い…部屋。
だが窓側は遠くから指す夕日で煌いていた。
夕日に照らされているそのシルエットは女のように見えた、が。

「全く…ついてねーぜ。」

しゃべり方は男のように荒い。
"彼女"の名前は或琵。
髪は茶色く、少し短かった。
その………"アルビ"は紙にしばらくペンを動かしてから
クシャクシャと丸めた。
そして、深く溜め息をついた。

ガラッ

「ちょっと…何してんの?」

ウェーブヘアの女の子。
下に転がっていた紙を広げる。

「"遠い世界に話されてもきっと貴方を忘れない"」

アルビは顔を紅潮させる。

「ちょ…っと、返せ!!」
「"道のりはきっと長いけれど、心は通じ合ってるでしょう?
あなたと私の日々はもう帰ってこないけど
ずっと心に残ってる
離れても、ずっと会えなくても。
悲しくないよ
きっと、会えると信じて私はここにいる。"
って、アルビ、こんなの描いてたの!?バッヵみたぁ〜い。」

ウェーブの女の子は朗読した紙を雑に丸めると、
隅にあったゴミ箱に投げ捨てた。
そして、馬鹿にしたようにケラケラと笑った。

「別にいいだろう!?」

アルビはカバンをしょい、逃げ出すように歩いた。
後ろからまた馬鹿にしたような声が聞こえても。
聞こえない不利をして教室を出た。

(くそっ。よりによってなんでアイツなんかに…)


ただいまも言わず、家に戻ったアルビはベットに飛び乗った。
家には祖父しかいなかった。
まぁ、元々なのだが。
両親は自分が4つの時から居なくなった。
…理由はしっているのだが、きっと生きてると強く想っていた。
そう想わなければ駄目なような気がしていたから。
いや、駄目になってしまうそうだったから…
だから今は祖父と2人暮らしになる。

ベットにしばらく転がっていたが、ゆっくりと夢の世界へ入り込んでいった。

302ウィーナ:2008/02/10(日) 01:07:48 ID:PI3MWrYQ0
(…あ、ここは…)
見覚えの有る所へでたもんだ。
壁側いっぱいに、薬品みたいなものが詰め込まれている。
他にも、よくわからない機械とか。
その部屋には髪の長い女の子が居た。
4つのころの俺だ。
俺は部屋の隅の壁にもたれかかり、
すやすやと寝息を立てていた。

その日は俺の4つの誕生日だった。
じっちゃんの家に家族で遊びへ行っていたのだ。
俺はじっちゃんの研究室で寝てしまっていた。
バン、という小さな音で目を覚ました俺は外へ出ると…
見たこともない男が、父と母を…

「………。」

彼女の頭には嫌な考えがよぎった。
腹部や、腕などから血を流している母が目の前にいた。
少し遠くへ目をやると、刃物が首に刺さっている父が見えた。
…なんの遊びだろう。
楽しいのかな。
………………。
ただ、泣きも笑いも、表情1つ変えず、彼女は研究室入り口に突っ立っていた。

「アル…ビ…逃げ、て。早…く…。」

 逃げて。
母の言葉が理解できたのは数秒後だった。
…もう遅かったのだが。

まだ4つの彼女は抵抗もできず、そのまま…

俺はその日、大事なものを奪われた。
俺自身も瀕死状態に近かった………



ただ一人、生き残ったじっちゃんは俺の命を繋ぎ止めた。

303ウィーナ:2008/02/10(日) 01:14:35 ID:PI3MWrYQ0



………1998年8月20日
キョウミメイ、………ヨウギシャハ
クライスサンノスンデイタイエニオトコガハイリコミ、
アソビニキテイタムスコフウフトソノムスメノアルビチャンニモッテイタケンジュウデハッポウシタ。
ムスコフウフハシボウ、アルビチャンはイシキフメイノジュウタイ。
ゲンザイ………


という新聞の切り込みにボールペンで付け加えがあった。


ワタシノカガクチリョウニヨリ、イノチハトリトメタガイツマデモツカ…
コノアタラシクハックツシタ"redstone"ハイロイロナチカラヲモッテイルラシイ。
トツゼンノコトデ、ゼンブシヨウシタタメコレイジョウノセイシツハワカラナイダロウ。





「………。」

嫌な夢をみていたきがする。
ひとまず、大きく背伸びをすると下へ降りていった。
台所には既にじっちゃんが夕飯の準備をしていた。
時計は5時半を刻んでいた…。
(まぁまぁの時間だな)

「まだまだできんから部屋でまっとれ」
「ああ、そうするよ」

髪だけはじっちゃんに似ませんように…。

部屋に戻ったが、暇でしょうがないため、
時計と鏡を交互にみた。
この鏡は代々うけつがれているものらしく、
上下左右に赤、黄、緑、青の丸いガラス玉(にアルビはみえた。)
が埋め込まれていた。

時間をみ、適当に髪を整え、また時間をみ…

そんなことをしていても、3分と経っていないのだが。

(………?)

鏡が光った気がした。
近寄ってみるが、なんともない。
カーテンはかかってるので、電気でも反射したのだろうか?
しかし…

『…す……て』
(?)
『…助けて』
『悪魔が、フランテルが…滅んでしまう…』
「悪魔?フランテル?」
『………よ、力をお貸しください…
もう…私…も……長く…も…つま…い』

その瞬間、意識がぶっとんだ。








どうも、
初投票です。
えーと、本当書いて人に見せるのすら初めてだったりするので
文などで変なところや、誤字脱字があったら指摘お願いします^^;


>>白猫s
小説拝見させていただきました、凄いですね^^
私もあそこまでの想像力と文才が欲しいです(´・ω・`)



では、又続き乗せに着ますー…w

304◇68hJrjtY:2008/02/10(日) 09:54:48 ID:GJmRtkbE0
>白猫さん
アリアンでの大事件、などという言葉では到底言い表せないくらいのネルたちの争いがまたひとつ終わりましたね。
前回ラストシーンでルフィエがピンチだと思い込んでいましたがそこはネル君、「護る」力は強い!
ルフィエの「協奏曲」とルヴィラィの「嘆きの旋律」…対存在とも思える歌同士がぶつかったら双方とも無事では済まされなさそう。
ルヴィラィという嵐が去ったのも束の間、ブレンティルで新たな展開ですか。
まだまだルヴィラィの追撃も予想されますし、ネル君たちも少しは休んでください(笑) ネル君の資産は拝みつつ管理しておきますから!(違
今まで移動特化ヘイストしか見せ場が無かった(?)カリアス、実はやっぱり強いんですね!?
本編に続いて各キャラプロフィール、これも保存したいくらいです。ルフィぽん煮魚ダメなんだ(ノ∀`*)
---
之神さんの書き込みで調子乗ってしまいましたが、バレンタインネタ来ますか!?
楽しみにしてます(笑)

>ウィーナさん
初めましてですね、ここで感想書かせてもらっている68hと申します!
現実世界の物語、でも日本ではなくて外国風な現実世界ですね。
悲しい過去を持つ「アルビ」。彼女を救ったレッドストーンはRSでのモノとはちょっと違うのでしょうか。
鏡の向こうからの何者かの接触…現実世界とRS世界の接点がこの鏡のような気もしますが、はたして。
続きお待ちしています。

305名無しさん:2008/02/11(月) 14:55:16 ID:ZgvXL//w0
「ぎゃはははは!、ざまぁねぇな!」
相手のギルマスであろう人物の高笑いが聞こえる。
クロたちは惨敗だった。相手のギルドは10人ほどと聞いていたのに、200人ほどかまえていた。
生き残っているのはクロと、アニルだけだった。
「2対100じゃ、ちと厳しいなぁ…」
苦笑いをしながらアニルが言った。同時に口から血が吹き出たのが見えた。
20人ほど倒した時、たくさんの兵士に囲まれた、相手のギルマスがまた笑った。
「ははは、何人倒しても無駄だ!さっさと降伏しな、火力のない武道家なんかに何が出来る!?」
武道家というのはアニルのことだろう。この言葉を聞いた瞬間、アニルはギルマスに向かって走り出した。
が、すぐに一番手前の兵士たちに取り押さえられた。手足の自由を奪われ、ギルマスの前に連れ込まれた。
「実に愉快だ、親子そろって馬鹿な職業に励んでる!」
アニルはニヤついた顔を殴ろうと、手足を取り押さえる兵士たちに精一杯抵抗した。
「黙れ!俺の父さんは偉大な武道家だった!」
「あいつも同じだ。私に歯向かって無様に死んでいったさ。どうだ?武道家なんてやめて、私の手下になれ」
「嫌だ!俺も父さんみたいにな…!」
言いかけたところでギルマスの拳が飛んだ。アニルは10メートルほど飛ばされた。
「大丈夫か!?」
クロが駆け寄った。
「うう
ギルマスがのしのしと巨体を揺らして近づいてきた。
「何度も言わせるな小僧!てめぇの夢なんて何の役にも立たねぇ!」

306ワイト:2008/02/11(月) 22:33:26 ID:NWoaSd260
前RS小説5冊目>>998⇒6冊目>>27⇒6冊目>>83⇒6冊目>>84⇒6冊目>>134⇒6冊目>>154
⇒6冊目>>162⇒6冊目>>163⇒6冊目>>191⇒6冊目>>216⇒6冊目>>267⇒6冊目>>285⇒続き

「(どー・・・・なってる・・・?なんだか・・頭がいてぇな・・・・!意識が朦朧とするぜ・・・?
俺の方が・・・・・可笑しくなってきている様な感じが!・・・・してきたぞ!!??)」

そして・・・・その頭痛の勢いは止まる気配も無く、痛みを更に!増幅させて行く!!
「うおぉ!!っあ!・・・く・・・・くそが!!頭が!頭がっ!?痛みが、止まらねえぇ!??
痛い!痛い痛いっ!!!あぁっ!うわぁぁぁぁっ!!!!!!!!!!」
「ヒヒッ!ヒヒッヒヒヒヒッッ!!!なぁにを抜かしている!?喚いた所でぇ・・・
貴様の状況は変わらぬわあぁぁっ!!!血を・・・血を寄こせえぇっ!!!!」

ピタッッ!!猛然と駆けて来たはずのアサシンの動きが・・・突然静止する!!!
何を感じたのか矢先ではあるが、直ぐに迎撃するかの構えを見せていた・・・!
だが・・・・アサシンの嫌な予感は的中していた!!予想にも反しない行動を垣間見る!!!!



















「ああああああああああぁぁぁああぁぁぁっあああぁあぁぁぁっっっ!!!!!!!!!!!!!!」
ラータが突如!!鼓膜を打ち破るかの止めを知らぬ、大声を張り上げ!砂漠一帯に轟かせる!!!!

血によって形成されているアサシンではあるが、あまりの叫び声に驚愕し、反射的に耳を覆った!!!!
その時!冷静さを欠いていた、アサシンは我に返った様子を見せ、ラータの姿を再度確認する・・・・!

「ハハハハッ!!!!やあぁっっと・・・・・・出てこられたぁぜぇ!!!!!ククックックッ!!
表の俺を此処まで追いつめたのはぁよ・・・・てめぇで2人目―・・・・・・・!しかも、俺が出て来たって事はぁ・・・・
判るか・・・?究極の苦痛を与えながらぁ!そして悲痛の叫びを上げてぇ・・・・・・死に至る以外ねぇんだぜぇ・・・・?」

アサシンは狂い果てていた自分にも、驚きを隠せなかったが、それ以前に・・・ラータの豹変振りには
恐らく生まれて初めての驚愕な出来事・・・・・!更には人生初めて恐怖を味わった瞬間でもあった!!!

「・・・・・・・貴様ラータなのか??誰なんだ?」
「んあぁ??見て分からねぇのかぁ?さっきまでよぉ、てめぇと殺し合いをしていた、俺以外に誰がいるぅ?」
「我に敵わなかった貴様に負ける気等せんわ!!!クハハッハハハッ!!!!掛ってくるんだなっ!!」
「言われなくてぇも・・・・・殺ってやるぜぇ?ハハハッ!死ぬのはぁどっちかなぁ?いくぜえぇっ!!!!!」

307ワイト:2008/02/11(月) 22:41:42 ID:NWoaSd260
うわ・・・・・大変なミスをしてしまった(T∀T)これじゃ驚いて貰えない・・・
ラータの豹変を告げる大声の叫びを、間の開いた行間に入れるつもりだったのに・・・・
なんていうか・・・・あぁミスッたなこりゃorz次回の続きをお楽しみに〜では|ω・)また!

308ワイト:2008/02/12(火) 00:52:32 ID:x8Wg6fzo0
「言われなくてぇも・・・・殺ってやるぜぇ?ハハハッ!死ぬのはどっちかなぁ?いくぜえぇえっ!!!!」
「貴様に決まって・・・・っ!?なにぃ!!!?」
冷静さを取り戻した、アサシンはまたもや驚愕する・・・!なんと!!
血に染まっていたはずの自分の身体が、元に戻っているでは無いか!!?
そう・・・・それは恐ろしく不死身に思えた能力であったが・・・何らかの制限があるようだ・・・!

「ハハッハハハッ!!!!それってよぉ・・・!言い換えればぁ・・・・俺と対等の立場に立ったって事だよなぁ!!?
ハハハッ!これじゃぁよ―・・・!てめぇの勝機は、ほぼ0%になったみたいなもんだぜぇ!!?」
「何を抜かすか!!この状態にも関わらず、貴様は死に掛けた・・・!と言う事を忘れているようだな!!
元に戻った今でも、その恐怖は拭えまい??我が剣技を身を持って知る事になろう!!」

再び、アサシンは新しい長剣を取り出す!!そして!豹変しているラータに襲い掛る!!!
「今度は、小細工無しでやってやろうでは無いか!!貴様の苦手とする接近戦でなっ!!!!」
ダンッッ!!ヒュアァッ!!強く踏み込み!ラータに猛然と駆け走る!!!

ガキイィイィンッッ!!!!ギャリィッ・・・・!ギギギッ・・・ギギギィッ・・!
重なり合う様にして長剣とダートが、鈍い金属音を奏でながら交じり合う・・・!

「ククックック!やるじゃねぇかぁ!!表の俺が苦戦した事はあるようだなぁ?」
「(こやつ・・・!最初に交えた時とは、明らかに力量が違う・・・!何処にその様な力が!!?)」
「ハハハッ!!そもそも!てめぇと剣を触れ合うまでもねぇんだよ!!!!」
バシイィッッ・・・!何と!!?手の平一つで重なり合っていた、長剣を掴み取るっ!!!
勿論、掴んでいる手からは血が滲み出ている!!血を流すのを恐れていない様にも見えた・・・!

「き・・・貴様っ!?傷ついているのはそっちだぞ!!!このまま、真っ二つにしてくれっ!??」
掴んでいる手は揺るがない・・・!動かそうにも、ピクリとも動かない!!!!
「ヒャハハッ!ハッハハッ!!痛くねぇ・・・痛くねぇんだよぉおぉっ!!!」

ヒュバアァッ!!ドンッ!!ドガァッ!!!ドギャアアァッッッ!!!!!
躊躇無く突如!3連回し蹴りを途轍もない勢いで炸裂させる!!!!
ヒュウウゥウゥ―――ドガアアァッンンンッツ!!!!
一発目を懐に!2発目で宙に浮かし!3発目は蹴り飛ばす!!!!
予想に反したこの攻撃を直に食らってしまった、アサシンは近くの岩場に衝突する!!!

「うおぉえっ!!がはっ・・・!き・・貴様!シーフでは無かったのか・・・!」
「おーおー頑丈に出来た身体だねぇ・・・!ハハハッ!何だ?この程度で驚いているのかなぁ?
別に大した事じゃねぇだろ!!?俺様には、この程度簡単にぃ・・・出来るんだよ!ってかよぉ・・・
追い詰められている癖に質問する立場か!!?調子に乗りすぎじゃねぇかあああぁ!!!!!!!!」
ビリビリビリビリッ・・・・!豹変したラータの剣幕に圧され、正直に驚きを隠せないアサシン・・・!

「そ・・・そうだ!剣を取らなくては!!!」
「ヒャヒャハハハッハハッッ!!おせぇなぁ!終わりにしてるよ!!
「「カルテットスローイングッッ!!!!!!!!」
ドドドッドドドドドドッッ―――ババッバババッババババシュッッ!!!!
数え切れない程のダートを、長剣を手に握る前に一斉に投げ打つ!!!!!
カキイィンッ・・・・!ドドッ・・!ドドドッドドッ!ドドドドッ!ドドドドシュウゥッッッ!!!!!!
長剣は弾かれ!!感情を持たない、無数のダートは蜂の巣状に、アサシンの身体中至る所に突き刺さるっ!!!!!

「ごはあぁっ!!ぐおぉえぇっっ!ごふっ!!!あぁ・・・・あ・・・・」
よろめきながら・・・・全てのダートを受け止め、立ち尽くしているアサシンの身体中からは
鮮血が吹き出し・・・!口からも留め無く溢れ出る血が、一面を覆いつくしている!!!
「ぐあっふぁあぁっ!!!・・・・・・」断末魔を最後にし、アサシンは息を引き取った・・・・・!

309ワイト:2008/02/12(火) 02:37:57 ID:x8Wg6fzo0
前RS小説5冊目>>998⇒6冊目>>27⇒6冊目>>83⇒6冊目>>84⇒6冊目>>134⇒6冊目>>154⇒6冊目>>162
6冊目>>163⇒6冊目>>191⇒6冊目>>216⇒6冊目>>267⇒6冊目>>285⇒6冊目>>306⇒6冊目>>308⇒続き

「ぐあっふぁあぁっ!!!・・・・・・・・・・・」断末魔を最後にし、アサシンは息を引き取った・・・・・!
「ハハヒャヒャハハッハハハッ!!久し振りに出て来られて、結構面白かったぜぇ?
俺様に「カルテットスローイング」を使わせたんだからなぁ・・・!地獄の亡者共に自慢するんだな!!!
(おっと・・・・そろそろ身体が限界っぽいな!最後に言わして貰おうかぁ!!)」


「チェックメイトッ!」ドタンッ!

言い終えたその瞬間!元のラータに人格が戻る!!意識を取り戻した直後に
ラータは死んだ様に倒れ込む・・・この最後の記憶は失われ、頭には残っていない・・・!
本人は、何が有ったのか?何故この様な状況になっているのか?それを知る術は無いのだ!!

そして一部始終を隠れながらも目撃している、ヒースは唖然とした表情を浮かべ、
驚きを隠せずには居られず・・・・唯怯えながらこの戦いを見送っていたのだった・・・!

「あ・・・・!ラー・・・ラータッ?(最後の戦い方・・・何だったんだろう?)
って!急いで回復させないと!間に合わない!コーリングッ!!!」
ヒュンッッ!!安全な場所?に隠れながら、ラータを呼び戻し回復に専念する!!

「これは酷い・・!身体を酷使しすぎてるよ!血も流し過ぎだし・・・!いくよ!!
リゼネレイションッ!!ブレッシングッ!!!パーティヒーリングッッ!!!
ヒーリングッ!フルヒーリングッ!フルヒーリングッ!!ヒーリングッ!リゼ――――」

           ―――――しばしお待ちください―――――

「はぁはぁ・・はぁっ!はぁ!はぁはぁ・・・・ふぅ!とりあえずは、外傷と身体自体は治療したし・・・!
後は本人が目覚めるまでは、特に何も出来ない事だし・・・・待つしかないかな!」

        ―――――――そして2時間後(遅いぞ!?)――――――――

「・・・・・・・・・っ!あ・・!ヒース・・・?え・・?アサシンは?アサシンはどうなった!!?」
「アサシンは、ラータが倒したでしょ??凄かったよ〜?最後の方は鬼神の様な強さだったし!!」
「お・・・おぉ!そうか!?まぁ・・・俺に勝てる奴なんかいねぇ!って事が判っただろ?
(何時・・・アサシンを倒したんだ?まったく記憶に無いんだが・・・しかも追い詰められていたのは、
逆に俺の方だったよなぁ・・?どうやってあの状況を切り抜けたんだっけなぁ・・・)」

「ラーター?どうしたの?何か考え事でもあるの??アサシンはもういないけど・・・」
「い・・・いあ!何でもないぜ!!気にするなってーの!ちょっと疲れちまってな・・っ!??」
「え!?何これぇ!!?」「お・・・俺にも判らねぇけど・・・!何所かにテレポートするみたいだぞ!!」

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

シュウゥンッッ!!ヘルアサシンを倒したからなのか、突然空間が歪み始め・・・!
気が付けば、オアシス都市アリアンの入口・・・ワープ前に突然2人共転送されていた!!!

「おぉっ!苦労した甲斐が有ったじゃねぇかー!やっとアリアンに着いたな!!!」
「絶対正攻法じゃないよね・・・?このアリアンへの行き方・・・・絶対可笑しいよ??」
「最終的に俺ら2人とも、無事に到着したんだしよ!!此処は一先ず良しとしようぜ!」

ラータとヒースは、ヘルアサシンとの激戦を意外な形をもって結末を迎えた・・・!
そしてオアシス都市アリアンでの、新たな冒険が今!!始まろうとしているのだ!!!!


ふぅ・・・此処で一旦中断です!!凄い長く成ってしまいましたね・・・自分でも予想外です・・・が!
まだ続きはありますので、新しい都市での新たな冒険をお楽しみにお待ちくださいな!!
(でも、考えてないんですよねぇ(TωT)戦闘シーン以外は、思った様に考えつかない(T∀T))それでは|ω・)また!

310ウィーナ:2008/02/12(火) 08:58:20 ID:PI3MWrYQ0

前回>>301>>303


く…
熱い…身体が…痛い……


『アルビノ』

………?

『ごめんなさい。手荒な真似してしまって。
『貴方を呼んだのは、貴方の不思議な力を頼ってのこと。
『私の我侭でも有りますが…お願いです。助けてください。フランテルと、皆を…』

………俺の不思議な力?

『貴方は以前瀕死状態に落ちた時があったはずです。』

…嗚呼。

『その時使った"REDSTONE"…。それはフランテルに有るものとは違います、が力は一緒。
『此方に有るREDSTONEは無くなってしまったのです…。』

…へぇ。

『裏切り者によって…ごめんなさい、巻き込んでしまって…』

いや、いいんだけどな。
この…平凡な生活にも飽き飽きしてきたし。
でも、本当に俺なんかで…?

『大丈夫です。貴方は私の……………ですから。』

ん?聞こえないのだが…

『ルチノを…助けて…』


………?

311ウィーナ:2008/02/12(火) 09:00:17 ID:PI3MWrYQ0




おにーさん



おにいさん?


「おにーーーーーーーーさんっっっ!!!!!」
「ッ!?」
「大丈夫ですか?」
此処は…
どこだ…
「ええと、だいじょーぶですかー?」
「…大丈夫だ。心配ない」
目の前には長身の女性。
格好はアイドル、髪も腰まで届くくらいの…所謂ツインテール。
先程の返事に安心したのか、笑顔を振りまいている。
「貴方ね、広場で倒れていたの。」
その女性は俺の手を握ると強く振り回す。
「おにーさん、元気になりましたぁ?」
「おにーさん?」
お兄さん。
俺のことか?
まあ確かに喋り方はそうだが…
髪は結構長いn…
「げっ」
無い。無い。
…とうとう抜けたか


いや、冗談でも嫌だな…
「どうか、されましたっ?」
女性は吃驚したようにおろおろする。
「だ、大丈夫だ…鏡、貸してくれないか?」
はいっ!と元気の良い返事をするとぺたぺたと部屋を出て行く。
数秒立つと戻ってきて、鏡を差し出し、
「どぉぞ!」
んー
髪は…
ショートより短く、少し癖がついている。
おまけに色なんかは銀に少し濃いメッシュが入っているような感じだった。

(どうなっちまったんだ…)

312ウィーナ:2008/02/12(火) 09:05:17 ID:PI3MWrYQ0
髪を弄っていると、女性が黒い帽子を頭に被せ、
「おにーさん、シーフですか?武道家さんですか?」
「シーフ?武道家?」
雑に乗せられた帽子を直しつつ、尋ねる。
「? 知らないのですか?
「ええと、職、です。お仕事というか…なんというか…
「でもジョブ知らない人なんて珍しいですね?」
ジョブ、職…
俺はRPGの世界にでも入ったのだろうか。
「でもー、今は武道家にしておいたほうがいいと思いますー」
「それは、どうしてだ?」
先程までの笑顔は少し曇り、手を後ろで組み、歩く。
「シーフさんは、嫌われ者だもの…。」
シーフ。
訳すと泥棒、盗人。
この女性は過去に何かシーフと関わりがありそうだ…
「ここはね、魔法都市スマグっていうの。で、おにーさんお名前は?」
急に話を変え、無理やりの笑顔はバレバレだった。
「アルビ、だ。」
「アルビさんっ!私はね、メアリー。Mary=blowっていうの。
「苗字はっ?なんてゆうの?」
「クライスだが?」
女性…いや、メアリーは驚いたように俺の手をとると
「女神様と同じなんだねっ。親類とか?」
女神様…夢の…?
「女神様ってなんだ?」
えーとね、というと又部屋を出て行き、1冊の分厚い本を持ってきた。
「女神様はね、Ltino=Craisていう名前でね、この世界が平和でいられるのも女神様のおかげなんだよー。」
ルチノ。
あの夢に出てきた人が言っていた名前…
「ってことはまだ今は平和なのか?」
「一部を抜かせば平和だとおもうよ。」
また、だ
顔を少し曇らせるメアリー。
一部というのはメアリー自身も入れてるのだろう。
「女神様はどこにいるんだ?」
「どうして?」
「会えば、分かるかもしれないから」
自分が何故此処に来たのか
俺の不思議な力は何なのか。
「此処からすごーく遠いのよ?しかも女神様と会えるのは女性だけ。きっと貴方じゃ…」
「じゃ御前一緒に来い」
「え?…きゃっ」
ぽかーんとしているメアリーを引きずりつつ、外に出る。
「なんだこりゃ…」
家の中じゃ分からなかったのだが、メアリーの家は…
「でけえ」
「?」

おじょーさま、か





「はえーよ」
「急いでー」
メアリーは絨毯に乗っている、が
俺は走る…
「対面は5時までなのー。でも今もう4時なのー。急ぐのー!」
というとまた加速していく。
俺は…










2回目ですー
やっぱり文がおかしい><

>>◇68hJrjtY
ご感想有難うございます^^
ええと、そうですね
少し違う…というか
全く違うかもしれませんw

メアリーちゃんがなんかルフィエちゃんみたいになってしまった。
いや…この子私の素のキャラ(笑

次は女神様と対面!?
女神って…リトルウィッチは皆女神ダッタリ…?(

313ワイト:2008/02/12(火) 11:25:13 ID:x8Wg6fzo0
今更になって、職人様方々の感想を述べさせて頂きます(TдT)大変遅くなりました・・・・

>ウィーナ様
お初御目に掛ります。中々職人様方々の小説に感想を書き込まない、ワイトと言います(T∀T)
職業を知らずに「REDSTONE」の世界に引き込まれた、アルビ(シーフ?武道??)
っていうか、「REDSTONE」は複数存在しているのでしょうか??
運良く倒れていた所を、リトル?のメアリーの家で介護してもらってたのは幸いでしたね!
そして!早い展開で女神様とは直ぐに対面出来るとは!続き待ってます!

>白猫様
感想を中々書き込めずに申し訳無いです@@;そしてお初御目に掛りますね!ワイトと言います(T∀T)ホントスイマセン
オリジナルスキルが豊富ですね・・・(正直に覚えきれな(ry)凄い文章の構成が上手過ぎる・・・!尊敬しちゃいます!
まだ、最初から読み直していまして・・・・その、本格的な感想はまた今度に(TωT)ウウッ・・・ツイテイケナイヨウ・・・・
これからも、宜しくお願い致します!

>之神様
お初御目に掛ります・・・今更になって感想を述べさせて頂く、ワイトと言います(T∀T)ホントイマサラ・・・・
シルヴィーとシリウスはこうして出会っていたとは・・・!にしても早々気が有って無い様な・・・w
ブラックは、前からの仲間?ですかね??実は物凄く気に成っています(ぁ
それよりも、バレンタイン企画(ネタ?)は素晴らしいですね!!投下して頂くのを心待ちにしています!
これからも宜しくお願い致します!

>黒頭巾(名無し)様
お初御目に掛ります、是からもどうぞよろしくお願いしたいと願っている、ワイトと言います(感想遅くてすいません・・・
感想をもらっているにも関わらず、返せない愚かな私をお許しください(TωT)ゴメンナサイ・・・感想を述べさせて頂きます。
読んでる途中も読み終わった後も大変面白かったです!!武道家の適正Lvが途轍もない・・・狼何をやっても勝てな(ry
メタボリックシンドロームやノックバック抵抗の足りていない狼に、正直吹いてしまいました(^∀^*)面白過ぎますw
これからも、宜しくお願い致します!

>メイトリックス様
お初御目に掛ります!感想を頂いてるのに返さない唯の馬鹿・・・・ワイトと言います(TωT)スイマセンスイマセンスイマセ―――
最初に・・・途轍もない文才ですね!本当にどう考えて書いているのか、教えてもらいたいくらいです(T∀T)
最初から読み直してまして、話に付いて行けないのですが、ネクロマンサーのニイドが
全ての真相を握っている様に見えて、大変気に成っています・・・!これからも、宜しくお願い致します!

>ESCADA a.k.a. DIWALI様
お初御目に掛ります!新参にも関わらず、感想書き込めずに申し訳無いです(TωT)
どれを見ても興奮してしまいましたwテイマのフィアーナの露出はとんでもない・・・!
その妹のミリアにも少々萌えてしまって・・・っ何でも無いです!
続きお待ちしております!これからも、宜しくお願い致します!!

>FAT様と68hJrjtY様(御二人方様には同じ感想を述べさせて頂きます!!)
お初御目に掛ります!!!これからも、どうぞ宜しくお願い致しますm(_ _)m
書き込む度に何度も感想して頂いて大変嬉しいです!!参考に成りました!
御二人方様の小説を読みなおすと・・・!物凄い書き込んでらっしゃってますね!!
それを最初から・・・っとなると、1日掛けて読み終えるかどうかも・・・?
出来る限り時間の余裕が有れば、御二人方様の小説を読んで行きたいと思います!

>スメスメ様
お初御目に掛ります!今頃になって、感想するという怠け者のワイトと言います!
最後になって、名前の出て来た武道のアル??というんでしょうか・・?祭壇の骸骨共を倒し
そして、同時に殺され掛けた?彼女を無事に救出するとは!火事場の馬鹿力って奴ですかね!?
しかし、此処で「バインダー」の登場とは・・・!続き待ってます!これからも、宜しくお願い致します!

314◇68hJrjtY:2008/02/12(火) 12:42:18 ID:ynRtym2Q0
>305さん
初めましてでしょうか…?もし間違いならすみませんorz
いきなりの四面楚歌ですが武道家が主人公みたいな感じで私は大変満悦してます(笑)
でも次の瞬間視線がフリーズ…2対100ってどんだけ〜!(チョイ古?
武道は火力が無い!痛いところを突かれてしまいましたね(ノ∀`) Theいつまでたっても俺TUEEできない職!
でもそう、夢が!夢があるんですよね!うん。…アニル頑張って(´;ω;`)

>ワイトさん
なるほど、職の変身を表と裏の人格として扱っているのですね。これは面白い上にかつてない設定!
一瞬ラータは多重人格者なのかと思いましたが武道に変身したのだと考えると納得します。
そして武道になる事により戦士だったアサシンとの戦いも対等な立場で展開でき、そして勝利…予想外でした。
アリアンに到着した二人、まだまだ冒険の種はありそうですね。続きお待ちしてます。
---
FATさんはかなりの小説を書かれていますが、私はまったく書いてませんよ(笑)  …すいませんorz
しかし私などは戦闘シーンがダメダメでその他のシーンの方が筆が進むタイプなのですが
ワイトさんはその逆なようで…とても羨ましいです(笑)

>ウィーナさん
俺口調の女の子は好きですが、完璧に性転換してしまいましたね(笑)
とりあえず(?)武道なアルビたんカコイイ。武道はイイですよ、弾切れシフに思われたりするし! …( ´・ω・)
なるほど、RedStoneを扱ったお話でもこれはRS上での設定とはまた違ったものになりそうですね。
現実世界から迷い込んだRS世界というだけでわくわくしますが、女神様とは一体。
続き楽しみにしています。

315ワイト:2008/02/12(火) 12:49:16 ID:x8Wg6fzo0
>>313の感想を述べさせて頂く続きです!(纏まり切らなくて、2つに分ける事にしました!)

>>みやび様
お初御目に掛ります!新参者のワイトと言います!!これからも、宜しくお願いします!!
どうやって考えつくのか・・・・一番気に成ったのは、呪いのNPCですね・・・!物凄く印象に残りました!
INした直後に、目の前に自分と同じ鎧を着ていて、しかも・・・名前が無いだなんて、恐怖ですね(TДT*)アーッ!
例えばの話、本当に存在していたら――――?考えたくも無くなりました(TωT)


>◆21RFz91GTE様
お初御目に掛ります!凄い前から書き込み為さってますね・・・!遅れました、ワイトと言います!
正直話にはまだ付いて行けそうにないです(TωT)本当に申し訳無いです(T∀T)
何時しか、具体的な感想を書き込めれば良いなぁ・・・と思っていますヽ(・ω・)ノ
これからも、宜しくお願い致します!!


>姫々様 >白樺 >NT様 >ドギーマン様>ryou様
  >携帯物書き屋様 >殺人技術様 >プチ様

お初御目に掛ります!不甲斐無き、新参者のワイトと言います!
今はROM中の職人方々の小説を、大変楽しみにお待ちしておりますよ!!!
戻って来た際には、是非とも!是からどうぞ、宜しくお願い致します!!!

他にも書き込んでいらした。職人様達の小説も、凄い期待して待っています!!
以上―――――2つに分けて感想を述べさせて頂きました(TωT*)では|ω・)また!

316ウィーナ:2008/02/12(火) 14:00:34 ID:PI3MWrYQ0
白い鳥と黄色い花
やっと題名決まりました…
アルビノーというのがセキセイインコの白い種類の名前、
ルチノーというのが黄色い種類の名前だから、ということです…w
読んでくれている皆さんThanks!

プロローグ >>301-303
1話 夢のFelt-tipped marker >>310-312




2話 Disguising as a woman


一足早く、メアリーは宮殿に着いていた。
だが、ぷう。と頬を膨らませ、戻ってくる。
この様子からして断られたのだろう。
「1分だけ過ぎたってどんだけええええ!!!」
現在5時1分。
「まあ、明日でもいいんだけどな。」
少し早い夕日に向かって今度は2人共歩きながら喋る。
「ごめんねー。」
「いや、こんな会ったばかりなのにいろいろ頼んでしまって。
「此方のが謝りたいさ。」
そういうとメアリーの肩をぽんぽん、と叩く。
いや、届かなく、空を右腕が切った。
…背伸びしてるんだけどな。
その様子をみながらメアリーはくすくす笑い、
「そういえば、女神様に何て話すの?」
こう聞かれると困るもんだ。
話しても信じてもらえるかわからないしな…
「やっぱ、俺は入れないかな」
「無理でしょ」
即答で返事を返すメアリーにすこし溜めていた息を吐く。
「メアリーのことも話してくれたら話すぞ」
「却下!」
こんのアマ…
まあ、あの表情からしていろいろあるのだろう。
きっとシーフ関係だろうな…
こんな話をしている内にメアリーの家についていた。

メアリーは俺の手を引っ張り、家のドアがピンクの部屋に連れ込んだ。
部屋にはピンクのベット、ピンクのカーテン、白とピンクの衣装台、
赤いバラの壁紙と、たくさんの服が掛かっていた。
「そういえば
「アルビちゃんは知ってるかな?」
1冊の本をぺらぺら捲りながらあるページを指差す。
「第3回女装大会!優勝すればお金もらえるんだよー」



まあもともと女だからそんなの気にしないのだが…
じょそう…
「御前、何考えてる?」
鞄を漁るメアリーに嫌な予感が感じる。
「えへへ〜」
やっぱり…。

317ウィーナ:2008/02/12(火) 14:01:03 ID:PI3MWrYQ0
「これで、いいのか?」
着替え終わり、カーテンを開ける。
「いーねっ!」
メアリーは親指を上にたて、グッという。
これはメアリーの服らしく、
ピンクのドレスにピンクのリボンのついたヘットドレス、
茶髪で肩ほどの長さの鬘など…
「本当に大丈夫なのか?」
ドレスの裾を引っ張りつつ、訪ねる。
「アルビちゃんならいけるよ!」
メアリーと話していると暖かな気持ちになる。
ずっと以前から、友達だったような…
そんな感情が。
無理に聞き出そうとは思わないが、昔のことが気にならないと言ったら嘘になるだろう。
この子は何のために俺を助けて手当てしているのだろか…
自分が女ということすら忘れそうになる。
…恋愛感情が芽生えている、そう感じた。

女神様と会ったら、もしかすると俺は元の世界へ戻るかもしれない。
その時メアリーはどう思うのだろうか
…なかせたくない。
なるべく親しくならないように、しよう…

318ウィーナ:2008/02/12(火) 14:01:35 ID:PI3MWrYQ0
大会当日。
開催場所はビガプール、というところだった。
メアリーに引っ張られて来たのは良いが、
見渡すと…
(おぇ…)
棍棒をもち、髪を真っ直ぐにとかしているゴツイ男や、
腹筋割れているのに水色のツインテールを揺らしている男や、
ロンゲで如何わしいオーラを出している男や…
MCのおにーさんも涙目。
衣装は人それぞれ違うが、メイクは自分でやったのだろうか…
口紅ははみ出し、アイシャドウは不気味なほど濃く、
まつげなんて逆にカールしている。

(吐き気が…)

メアリーは既に気分が悪くなっており、家で応援している、とのことだった。

さて、そうこうしているうちに大会は始まっていた。

「「エントリーナンバー6番!女剣士!」」
という放送の声が聞こえるとすぐに、
「うぇー」「きめぇ!」「カエレ!」などの暴言が行き交い、
女の子の失神は増えるばかり…

自分は70人中56番だった。
これをみていると気分が優れなかったのですこしうろうろすることにした。

少し歩くと浮いている看板を見つける。
(なんぞこれ?)
触ろうとすると、
「おにーさん!だめだよーさわっちゃっ!」
自分と似た感じの格好をした男が手を払いのけた。
「これは、なんだ?」
「はぁ?」
男は不思議そうにこっちをみると、睨み付けるが、睨み返すと渋々と
「これはなー露店っつって物うるんだよ!兄ちゃんが欲しそうな物無いからあっちいけよ!」
嫌な男だな。
まあ、うろうろ歩いていると似たような看板がたくさんあった。
その主は寝ている物もいるが、起きて喋ったりしている人もいた。
少し歩くと、露店の影にいた少女が此方を凝視していることに気づいた。
その少女は赤い頭巾を被り、笛をもっていた。
気のせいだと思い切り、通り過ぎようとする、が
「…アルビノさん」
横に来た瞬間名前を言った物だから、吃驚だった。
「…なんで俺の名前を?」
その少女は表情一つ変えず、俺を凝視する。
「人は1つは山を越えなくては生きていけない。
「それは人によって違うが、何個もの山を越える者もいる。
「その中でも、谷に落ちてしまうものや獣に殺されてしまうものも…
「平地だと思って安心をするな、自分の道を知れ。」
その瞬間、少女と露店は無くなっていた。
(なんだあれは…)

319ウィーナ:2008/02/12(火) 14:02:48 ID:PI3MWrYQ0
そして、とうとう50番近くなってきていた。
「「エントリーナンバー54番!」」

次にいたのは自分と同じ武道家かシーフ。
銀色でストレートの長い髪を下ろしていた。
前髪には濃いメッシュ。
その髪に似合うドレスを纏っていた。
(こりゃ、1位は無理だな…)
その"女性"が出て行くと、観客からの歓声がワァー!!と響く。

そして、自分の番

「「エントリーナンバー56番!ぷりてぃぷりんせす!アルビちゃん〜!」」
このイメージはメアリーが決めたものだ…


俺がでると…

観客は静まり返った。
数秒立つと
「「アルビちゃんありがとうございましたー」」
と、MCが静寂を破った。
(こりゃだめだ。)

一応70番まで見届け、帰ろうとすると
「ちょっと、おねーさん。
「優勝者がどっかいってどーするのっ」
ゆうしょう?
「誰が?」
「おねーさんがだよっ」
MCにひっぱられるまま舞台の真ん中に置かれた台の、1のところに立たされる。
そして、俺が立った瞬間
男共はアルビちゃああん!と叫び、
女共はすてきー!と歓声をあげた。

さっきと全然ちがうじゃねーか!

320ウィーナ:2008/02/12(火) 14:04:21 ID:PI3MWrYQ0
「と、いうことで
「見事に1位とりました」
家へかえると、メアリーがばたばたと階段を下りていた。
そして、右手にひらひらと持っていた賞金を奪い取り、自分の鞄にいれた。
「…メアリーちゃん?」
メアリーはえへへ、と笑って誤魔化した。

「でね!今日ギルドの子がくるのー!」
「へぇ。って、ごまかしやがtt」
ぴんぽーん
「ほ、ほらきた!」





「てっきり俺は一人がそこらだとおもってたぜ?」

メアリーの家のでっけえホールに集まったのは
数十人の人たち…
胸には白い薔薇のバッジをつけている。
そしてその中から、

そう、あの露店巡りの時の少女がでてきた。
「ニナちゃん久しぶりっ!!」
「ん、ああ。」
ニナと呼ばれた少女は無表情のまま空返事を返す。
「月舞もおいで」
そして、もう一人、少女がでてきた。
その…月舞はバッジが皆より輝いている。
ニナに内二つで、違うところは表情と頭巾だった。
"黒い頭巾"の少女はにっこり笑うと、ホールの一番の奥にある台にのり、叫んだ。
「「皆ぁ!今日はWhite roseのために集まってくれて有難う!
「「今夜は紹介したい子がいるの!新しく入り、尚且つ副ギルドマスターとなる、アルビノーちゃんです!」」
と、月舞は俺をひっぱり、台の上に連れてきた。



………

俺!?









ええと、長くなってしまってすみません;

>ワイトさん
初めまして^^
ワイトさんの小説、私は良いと思いますよ!
読みやすい、と素直に感じました。
こんな駄小説にコメント有難うございました;;



アルビちゃん、いつのまにかアルビノって呼ばれるようになっているのは
私のミスです…
次回は白薔薇に加入したアルビのお話と
どじっこメアリーがやらかしてしまった事件のお話ですー。

1日に何度もうpごめんなさいっ

321 ◆21RFz91GTE:2008/02/12(火) 14:11:36 ID:6dA6bWs.0
仕事良く前に覗いて見たら浮上してた…。

>>320 :ウィーナさn
>>1を良く読んでから投稿してくださいな…このスレはsage進行です

322名無しさん:2008/02/12(火) 18:45:51 ID:fou9k2gM0
僕はふぁみりあいーえっくす。
そんじょそこらのふぁみりあとは違うよ!
最近流行りの“のなめちゃん”じゃない、素敵なお名前も持ってる。
僕のお名前は、ごしゅじんさまが「あーでもないこーでもない」って考えてくれたんだって。
僕はそんなごしゅじんさまが大好きだ。
でも、今日はそのごしゅじんさまが最近僕に構ってくれない。
忙しそうにあっちへこっちへぱたぱたぱたぱた。
僕は足が短いから、必死に追い掛けても追い付けない。
いつもみたいにひゅんと飛んだ先では、既にごしゅじんさまの後ろ姿しか見えない。
お台所に留まって何かしてても、僕はちっちゃいから一生懸命背伸びしても何も見えない。
いっつも暖かい炎と大地の癒しをくれるいけめんさんみたいな長い足が、僕にもあればいいのに。
もしくは、いっつもきらきら眩しい光で癒してくれるまっするさんみたいな翼が、僕にもあればいいのに。
こんな調子で役立たずだから、ごしゅじんさまは「あっちでケルビー達と遊んでてね」って言うんだ。
けるびーちゃんやすうぇるふぁーちゃんはたまに呼ばれて暖めたり冷やしたりでお役に立ってるのに!
独りぽつんと槍で遊んでたら、いつも僕に優しくしてくれるいけめんさんが「如何したんだい?」って頭を撫でてくれた。
ごしゅじんさまが構ってくれないの!
必死に身振り手振りで示したけど、ていまーでもさまなーでもないいけめんさんには通じなかったみたい。
でもね、うーんと眉をしかめて真剣に考えてくれた。
そのいけめんさん、僕の目線を追い掛けた先の台所から漏れ聞こえる声に笑顔を浮かべて「成る程ね」と独り言。
ずるいなずるいな。
大好きなごしゅじんさまのことなのに、僕にはわかんないのが悔しい。
もんもんしてる僕に気付いたのか、いけめんさんはまた僕の頭を撫でて「イイコにしてたら、きっと素敵なコトが起こるよ」だって。
むぅー、ぷくーってほっぺが膨らんじゃう。
いけめんさんは、すぐにお友達にお耳で呼ばれて行っちゃった。
僕はまた独りぼっちでぽつーん。
そこにからからからからと音を立ててやって来たのは、ないすばでぃーなおねぇさまのげぼくさん。
何でも、今日はばれんたいんでーなんだって。
大好きなヒトに甘い甘いちょこれーとをあげる日だって。
ちょこれーとって何だろう?
ぱてぃしえぞんびの甘いけーきやくっきーより美味しいのかな。
ごしゅじんさまは誰にちょこれーとをあげるんだろう。
魔法の力でいつも助けてくれるいけめんさんなのかな。
それとも神様のご加護で護ってくれるまっするさんなのかな。
あ、それともそれとも!
僕をお肉でていむした時みたいに、甘いものが大好きなこを新しくていむするのかな。
如何しよう如何しよう、お役に立てない僕はもういらないこなのかな。
泣き声も出ないまま、涙がぽろぽろ零れる。
お膝の上に暖かい水滴がぽつりぽつりと落ちては弾けた。
「出来たー!」
台所からごしゅじんさまの嬉しそうな声がする。
ごしゅじんさまが出てくる前に、背中の布でごしごし涙を拭いた。
待ってたよ待ってたよ、遊んで遊んで!
両手に一杯袋を持ったごしゅじんさまから漂う、甘い匂いにお鼻がぴくぴく。
そんな僕の頭を「お待たせー」と撫でたごしゅじんさまは、机の上に置いた小さな袋を並べだす。
「コレはWIZさんの分、コレはBISさんの分、コレは…」
早く終わらないかな早く終わらないかな。
ごしゅじんさまの足元にちょこんと座ってそわそわそわそわ。
「そして、コレがファミちゃんの分!」
慌てて見上げると、ごしゅじんさまの笑顔と一番大きなちょこれーと。
はーとの中には僕のお顔が可愛く描いてある。
「いつもありがとうね!」
僕の目にはさっきとは違う涙がぽろぽろ溢れてきた。
ねぇ、ごしゅじんさま…そのちょこれーと、半分こして一緒に食べようよ。
大好きなごしゅじんさまと食べるから、きっと二倍美味しいよ!
でもね、ごしゅじんさま…来年は僕も一緒に作らせてね。
大好きだよありがとうって気持ちを込めて、一生懸命ちょこれーと作るから。
小さなちょこれーとはお世話になった人達に…一番大きなちょこれーとはごしゅじんさまに。
ねぇ、素敵でしょ?
ごしゅじんさまのお膝の上、半分こした大きなちょこれーとを齧りながら…僕は神様に感謝した。
大好きなごしゅじんさまと一緒にいれる幸せを。

323黒頭巾:2008/02/12(火) 18:48:12 ID:fou9k2gM0
…皆様に、ハッピーバレンタイン!
バレンタイン企画があるらしいので、ない頭を捻ってみました。
ネタに走ったのとコレと迷って、結局こっちが書き易そうだったので。
ボツになった案は材料に妖しいアイテム集めまくりのテラカオスでした。
チョコって媚薬とも言われてたんですよね…悪魔さんの天下です(ノ▽`)ペチン
しっかし、フランデルにもチョコってアイテムあれば友に配りまくったのになぁとしょんもり。
如何せ、リアルなバレンタインなんて…あげれる人は家族か上司しかいn(ry
そう言えば、前回の投稿は折り返し設定のまま貼付けてしまってました…読みづらくて申し訳ない…orz
…以下、コメ返しです(もうこのコテでいきます/笑)


>之神さん
どぞー>(´・д・`)っ【新しいお茶】(違)
笑って頂けたならよかったです…えぇもう邪道ですいません。
これは前に友人と話していて思いついたネタです。
こんなの如何よと設定を膨らませてみました。
メンテスレや愚痴スレはよくROMらせて頂いているので、価格操作云々はありそうだと…w
変なトコに着眼点が行くもので、シュールさだけが取り柄です(長所なのか?)
因みに、バレンタイン企画に私が乗るとこんなカンジです…参考にならなくてスイマセン(笑)

>68hさん
「○○があったら…」ネタは設定を土台にしつつ、公式を無視出来るので自由度が好きです。
惜しむべくは、この手のネタは回を重ねるごとにマンネリ化するので一発ネタにしかならない件(笑)
愛しいキャラ程貶めたくなるドSなので、武道とかついこんなコトに…愛はあるんです、愛は!
その職メインの方が気を悪くされないかいつもヒヤヒヤです(なら自重しれ)
あー、偏見スレにありそうですね!
昔流し読みしただけで、リトル=クラムチャウダーネタしか記憶に!(何故)

>白猫さん
Σ砕けたのはタリスマンじゃなかったー深読みしすぎた(ノ∀`*)ペチチチ
二人のお互いを護るという気持ちに二人の仲を見守り隊はヒヤヒヤドキドキです(何ソレ)
そして、40億!?Σ(´д`|||)
恐ろしいお金持ち具合…(((・д・;)))ピルピルプルプル
ルフィエの気持ちがわかります…40億なんて持ったコトもないっす…orz
子供キャンディーに煮魚、かわゆ!_| ̄|○ノシ ヒーヒーバシバシ
プリトルはハイブリになるの多いですね…やっとアイドル1覚えました、わーい。

>ウィーナさん
初めましてー(*´▽`)ノシ
鏡のガラス玉もどきは四元素かな…代々伝わる鏡が媒体になったコトと女神様との姓の一致にソワソワ。
昔シーフと何かあった(らしい)のに助けてくれたメアリーちゃん、イイコだ…(ノ▽`)
実際に女装コンがあれば、ネタに走ったキモキャラで参加したいです(おま)
折角の優勝賞金をG資金にされて可哀想に…そのお陰で副マスなのかしら(笑)
次は女神様に会えるといいなぁ。
21Rさんが既にご指摘下さいましたが、mail欄に半角でsageって入力するだけですのでお願い致しますねー(*´▽`)ノシ

>305さん
2vs100は流石に勝てない(((・д・;)))ピルピルプルプル
自分の拳で語るからでしょうか…武道家さんって矜持を持ってそうなイメージなのです。
お父様の仇(命だけでなく誇りを含め)、無事に取れればいいなぁと。

>ワイトさん
ラータ、ヘルアサシン撃破おめでとう(ノ▽`)アーコワカッタ
ヘルアサシン自身も知らなかった能力の制限が何だったのか…ラータ(裏)がやった訳ではないなら、ヘルアサシンに能力を与えた黒幕さんか誰かでもいるのかしらソワソワ。
倒した途端にワープはバフォクエでたまに敵のど真ん中にワープさせられるの思い出します…安全な場所にワープでよかった(笑)
感想ありがとう御座います(*´д`)ノシ<…宜しくですー。
二人のレベルを決める時は世界地図の適正表とにらめっこでした(笑)
ノックバック抵抗って揃えにくいですよぅ(揃えない言い訳/ちょ)


過去スレ検索したら如何も之神さんのお話だけみたいでしたので、次はあの巻物のお話にさせて頂こうと思います(ノ∀`*)ペチン

324柚子:2008/02/12(火) 22:37:26 ID:xH9APUBo0
『Who am I...?』

――――トクン。
それが、私が聴いた初めての音だった。
トクン。トクン。トクン。
それは心地の良いリズムで、一定の間隔で刻まれてゆく。
時間が経つと私の全身の感覚も研ぎ澄まされていき、他の雑音まで耳に入ってきた。
「意識が戻った……? やった、成功だ!」
その雑音に続いて、おおー! という大きな音が次々と続いた。
だんだんと私の意識は覚醒されていき、それと同時に私は1つの疑問を抱いた。
――私は誰だろう?
考えても何も思い浮かばない。私の頭の中で思考がぐるぐると回る。
ぐるぐる。ぐるぐる。
しばらく考えると、私は1つの結論に辿り着いた。
――そうか、私はたった今生まれたんだ。
成長した体があっても、こうやって考えることができても、“前の私”を思い出せないのだから、今の私は新しく生まれたに等しい。
そう考えたら、だんだんと嬉しくなってきた。
そうだ、名前はどうしようか?
そこで私は唯一残っていた、前の私の記憶である名前をもらうことにした。
さて。名前も決まったことだし、久しぶりのお外に出よう。
私は重たい瞼を開いた。眩しい光が差し込んできて、思わず目を閉じてしまう。
しばらく目をぱちくりしているとだんだん慣れてきたのか視界がはっきりする。
私は目をきょろきょろ回し、今の状態を確認した。
私は仰向けに寝ているようだ。なら起き上がらなくちゃ。
起き上がると、腕に繋がっていた何かがぶちぶちと音を立てて千切れた。
視界に、私を囲んでいたらしいたくさんの大きな人達の驚いた顔が映る。
せっかくだからこの人達にも聞いておこうと思った。
「ねえ」
「私は誰?」

それが、私が話した初めての言葉だった。

325柚子:2008/02/12(火) 22:38:36 ID:xH9APUBo0
古都ブルネンシュティグ、王宮。
その1つの部屋とは到底思えない、広大な空間の一室に1人の男性が、これまた豪華な装飾が飾られた椅子に座していた。
その男性の周りには、数人の兵士が取り巻き完全に死角を塞いでいた。
その男性が最寄りの兵士に軽い口調で話しかけ、談笑をしていると遠くから慌ただしい足音と共に1人の男が飛込んできた。
「国王、大変であります! 大変であります!」
「貴様! 国王の御前であるぞ!」
1人の兵士が強い口調で叱責するが、国王と呼ばれた男性が手で制する。
「まずは落ち着いて。で、どうしたんだい?」
それでやっと冷静さを取り戻したのか、男は軽く深呼吸をして呼吸を整えてからその口を開いた。
「国王、大変であります! 地下の、例のあの場所が……」

「……ふむ。それで君は確かに見たのだね?」
「はい。それは間違えようがございません!」
国王ら一同は宮殿の地下へと繋がる階段を下っていた。
そこは宮殿の中でもほんの一部の人間しか知らない、秘密の地下への入り口なのであった。
先導役に先ほどの男、兵士、国王、さらに兵士と続く。
「着きました、ここです」
男の視線に、国王が無言で応える。
「では、開けますよ」
男が取手に手をかけ、扉を開く。
重々しく開かれる扉の先には、見るも悲惨な光景が広がっていた。
国王の周りの兵士が思わず顔をしかめる。
「酷いね」
表情を変えずに国王が感想を漏らす。
そこには、たくさんの人間がいた。
但し、体中を散々に切り裂かれた姿で。
肉片や血、贓物が散らばっている室内へ、国王が足を踏み込む。
「こ、国王?」
男の声も無視し、国王は歩を進めていく。
「やはり……」
国王は何かを確かめると、男へと振り返った。
「どうやら脱走した子がいるみたいだね。君、逃亡した者の捜索隊を編成、直ちに向かわせてくれ。私は私なりに考えたいことがあってね」
「はっ!」
男は礼をし、踵を返すと階段をかけ上がって行った。
国王も出口へ向かい、最後にもう1度だけ振り返った。
その表情は、喜びとも、悲観とも言えない複雑な表情だった。

326柚子:2008/02/12(火) 22:40:12 ID:xH9APUBo0
まだ日も明けて間もない早朝。澄んだ大気はまだ僅かに冷たさを残している。
小鳥がさえずりし、眠たそうな顔をした商人が看板を立掛け開店の準備をしている時間帯。
古都ブルネンシュティグの街、そこはいつも通りの日常を繰り返している。
その街の中を走る、1つの人影があった。
その人影は厚い布のような物の上に腰を預け、冷気を帯びた空気を突き抜けていく。
その人物が駆る物、それはマジックアイテムの1つ、魔法のカーペットと呼ばれる物だった。
カーペットがその上に乗る者の長い髪をなびかせながら古都の街を駆ける。
しばらく走り続けていると、不意にカーペットの主の耳についた耳飾りがブルブルと震えた。
次いで耳飾りの持ち主だけに聞こえる“声”が飛込んでくる。
「おい。今どこにいる」
無機質な男の声。その声を聞くやいなや、その人は途端に嫌々そうな表情に変わる。
その人は耳に手を押し当て、声の主に向かって返事を返した。
「あー、あー、聞こえません。魔力波障害か何かのようです。1度切りますね」
「イリーナ。貴様は不快だ。俺とて朝から貴様の奇声など聞きたくもない」
イリーナと呼ばれたその人物は、特に堪えた様子もなく反撃する。
「なんだルイスか。声が聞き取りづらくて分からなかったよ。もっと人間の言葉を勉強したら?」
「貴様とて他人に助言する暇があるなら男と見間違えられぬ努力をしろ。胸の無い女は醜いぞ?」
その瞬間、イリーナの表情に初めて感情らしきものが浮かんだ。
「死ねルイス! てめーこそ人間に進化する努力をしやがれ」
ルイスと呼ばれる男が更に反撃しようと何か言いかけると、突如違う声が割り込んできた。
「ちょっとアンタ達。朝から口喧嘩すんじゃないわよ」
澄んだ若い女性の声。それはルイスの声と同じところから聞こえた。
その声を聞くと、イリーナの顔から血の気がみるみる引いていく。
「……すいません、マスター」
「分かればよろしい。それと用があるから今から帰ってきてくれる?
  そうルイスに言わせようとしたんだけどルイスには重荷だったようね」
奥からルイスの納得のいかないような声が聞こえてきた。
「分かりましたよ」
そう短く切ると、イリーナはカーペットを反転させた。
慣性に従って振り払われそうになる体を巧みな操作で立て直し、そのまま直進。
擦れ違う人々をすれすれでかわし、続く罵倒もかわす。
イリーナは来た道を風となって引き返して行った。

327柚子:2008/02/12(火) 22:41:12 ID:xH9APUBo0
しばらくカーペットを走らせると、2階立ての建造物が見えてくる。
そこは、イリーナやルイスのギルドの本部、つまり事務所であった。
イリーナはカーペットを畳むと、事務所の正門の扉を開けた。
イリーナの視界に入った景色は、古めかしい造りの建物の内部。
しかし、よく掃除が施されており、清潔感に満ちている。
木製の床に続く階段を上がり、その奥の扉を開く。
次の瞬間、扉を開けたイリーナの目に美貌が飛込んできた。
「遅い」
形の良い口から吐かれる不機嫌そうな声。
その口を有する容貌は、それぞれのパーツが正確に整えられた美貌。
特徴的な蒼と碧の髪と瞳が思わず目を引きつける。その下には屈強そうな肉体が詰められていた。
「来る途中で困っている老人を助け、ついでに悪の魔王を退治してきたんだよ」
「つくのなら、ばれないような嘘をつけと習わなかったか?」
「ごめん。ルイスなら騙せると思った」
「それも面白い嘘か冗談か?」
ルイスの声に殺気が篭り、見事に険悪になっていく雰囲気。
その空気に1人の声が割って入った。
「私を無視して喧嘩なんていい度胸ね。ルイス、イリーナ?」
その声に2人がはっとして振り向く。
そこには笑顔を浮かべた若い女性の顔があった。
しかしその笑顔の目に冷たい吹雪を見つけた途端、イリーナから全身の血が引いていった。
「いや、マスターこれはですね、発声練習というかなんと言うか……すいません」
「よろしい」
女性は満足したように頷くと、ギルドを統べるにふさわしい真面目な表情に戻った。
次に机の引き出しから1枚の用紙とペンを取り出し、2人に突きつけた。
「これは?」
「サインよろしく」
「え、なんでしょーかこれ」
「決まってるじゃない。依頼の証明サインよ」
若いギルドマスターは例の笑顔を浮かべ、イリーナの薄い胸にぐいぐいと押し付ける。
「ご冗談を。昨日行ってきたばかりじゃないですかー」
「黙れ。こっちはこっちで依頼が大量で大変なんだよ。他のメンバーは依頼から帰ってこないし暇なお前ら2人が行け」
「俺はこの女とは組まん」
これにルイスも加わり、女性の表情は次第に笑顔から苛立ちへと変わっていく。
この微妙な変化に気づくことのない2人は次々と不満の嵐をぶつけていく。
「ヤダヤダ。ルイスヤダ」
「それよりもっと興味を惹く依頼を用意しろ」
遂に女性の眉間が痙攣を始める。
それはもう止めようがないほど加速していく。
日々のストレスが苛立ちを呼び、苛立ちが怒りを呼び、怒りがさらに怒りを呼ぶ。
その異変にイリーナが気づいた頃には、何もかもが手遅れだった。


「私、イリーナ・イェルリンはこの依頼を受け、必ずや成し遂げることを誓います」
「……以下同文」
事務所机に置かれた用紙に、イリーナとルイスは証明書のサインを書いていた。
イリーナは書き終えた用紙を持ち上げると、ギルドマスターの女性に手渡した。
「なあルイス、妄想だか幻想だか夢だかをそうだと証明するにはどうすればいい?」
「さあな。だが人間の脳は便利に作られている。悪い記憶は次第に忘れるようにな。それに期待するしかない」
「うるさいぞ、そこ」
イリーナとルイスが小声で話すのを女性が指摘する。
それからイリーナに紙やら何やらを渡した。
「はいこれ。ここに書いてある場所にいる依頼人に渡してね」
「了解。ちなみに、依頼の内容は何なんですか?」
イリーナの疑問に、女性は素っ気なく答えた。
「ああ、確か出没した野生のウルフマン退治よ」
「それってかなりマズいんじゃ……」
「だからアンタら2人に頼んだのよ。単体でもいけるだろうけど、2人なら余裕でしょ」
「そりゃ、まあ……」
納得のいかないイリーナに、女性が付け加えた。
「我等バトンギルド、そしてこのアメリア・バトンに恥の無い働きをしなさいね」
「分かりましたよ」
おどけたような仕草をし、イリーナは早速準備に取り掛かるために出口へ向かう。
「俺も1度人狼とは戦ってみたいと思っていたところだ」
碧色の双眸を輝かし、踊るような足取りでルイスも退室した。
そんな2人の様子を、若きギルドマスター、アメリアは穏やかな瞳で見送った。

328柚子:2008/02/12(火) 22:43:05 ID:xH9APUBo0
古都ブルネンシュティグのとある一軒家。
イリーナはその古びた建物の扉を勢い良く開いた。
薬品臭が漂うその中で、1人の老女が薬品の入った瓶を整理していた。
そこは薬屋だった。
「ようババア。買いに来てやったぞ」
「何じゃ糞餓鬼か。また依頼でも受けたのかい?」
老女はイリーナが次々と注文する品物を手際よく袋に詰めていく。
「まあね。えっとあとはヒールポーションを5つに……」
「知っとるかいイリーナ。最近影で軍が動いているらしいよ。お前らみたいなはぐれ者は気をつけるんだね」
老女がイリーナの目を覗き込む。
このような場所は様々な人種が出入りする。その中には当然イリーナのような者もたくさんいるのだ。
そのため、ここは情報の溜り場となっている。
「そんなのに手を突っ込むかよ。私達一般人は知らない振りが1番だよ。
  バアさんこそ気をつけろよ。その内体が謎の化学反応起こして急死しそうだし」
「相変わらず口の減らない餓鬼だね」
老女は呆れたように言うと、瓶を詰めた袋をイリーナの前に置いた。
イリーナはそれを担ぐと、財布から金貨や銀貨を抜き取り代金を支払う。
「ま、助言はありがたく受け取っておくよ」
イリーナはそう言うと出口へ向かった。

イリーナは店から出ると、待たせていたルイスを探した。
……居た。
美しい青空のように鮮明な蒼髪。薬屋の壁に背を預け、イリーナの帰りを待っている。
傍らに女を添えて。
イリーナはその女に見覚えがあった。確かここに勤めているドロシーという名の娘だったか。
「あ、あの……ルイスさん、これ、よかったら……」
言葉も切れ切れに、ドロシーはルイスに赤い液体の入った瓶を差し出した。
「ま、万が一お怪我をなさったときに……」
「ああ」
オロオロするドロシーの手からルイスがそれを受け取る。
ルイスに受け取ってもらったことで、歓喜と照れが入り混じったような表情でドロシーは俯く。
続く言葉は無く、長い沈黙が流れる。
「おいルイス。朝からイチャイチャすんな、気持ち悪い」
「ひゃっ!?」
可愛らしい声を上げて、ドロシーが跳ね上がる。
「えっと、これは、ち、違……」
顔を真っ赤に染め上げ、必死に弁解しようとするドロシーを無視し、イリーナは続ける。
「準備できたしもう行くぞ。それと無駄に女に貢がせるな。返しておけ」
「そうか、すまなかった」
ルイスは受け取った瓶をドロシーに返すと、背を壁から離しイリーナの方へ向かった。
そしてイリーナが展開したカーペットの後部へ乗り込む。
その瞬間カーペットの浮力が上昇し、弾丸のように発進する。
「あ、えっと、あれ……?」
瓶を握りながら、ドロシーだけが1人残された。
「他人に嫌がらせをして鬱憤晴らしとは相変わらず最低な性格だな」
「うるさい。朝からアホみたいな依頼とアホみたいなパートナーと組まされる私の身にもなってみろ」
そう言いながらも、イリーナはいつの間にか日頃の鬱憤をそういうことで晴らしていることに気づき、内心ドロシーに謝罪しておいた。
いつからこんな性格になってしまったのか考えるが、思い浮かばなかった。
それだけ昔からの悪い癖なのだろう。
「あとは鍛冶屋のおっさんのとこだけだな」
「武器の感触が恋しい。急げイリーナ」
「まだそんなに経ってないだろ、中毒者かよ」
そう言いながらもイリーナはカーペットの推進力を上昇させた。

329柚子:2008/02/12(火) 22:44:37 ID:xH9APUBo0
しばらく走行すると見えてくる、巨大で高い煙突から出るいかにも環境に悪そうな煙。
その真下に小さな建物が建てられていた。
イリーナはカーペットを扉の前に停めると、入口に向かって呼び掛けた。
「おーい、おっさん生きてるかー?」
しばらくして返事が返ってくる。
「死んでるよー」
「元気そうだな。行くぞルイス」
そう言いイリーナ達は建物に入る。
中では様々な武具が陳列していた。
武具達に紛れ、その中に禿頭が特徴的な中年男が居た。
「ようおっさん、引き取りに来たぞ」
「早くしろ」
無遠慮な2人の発言に、中年男が表情をしかめる。
「お前らの頭に感謝という言葉はどこへ行ってしまったの? まあ待っていろ」
そう言うと中年男は奥へと続く部屋に消え、数分後いくつかの武器を抱えて出てきた。
「ほらよ。お待ちかねの品だ」
言い終わるより早く、真っ先にルイスが手を伸ばし、中年男が重そうに抱えていた大振りの大剣をその腕から奪い取った。
そして軽く片腕で持ち上げ、感触を確かめる。
満足したように頷くと、剣を背中のホルダーに収納した。
「お前みたいな反応してくれると仕事してるこっちも嬉しいよ。ほれ、イリーナ」
中年男が投げてよこした銀色の短槍をイリーナが受け取る。
槍の先端に填め込まれた数個の魔石がきらりと輝く。
それはルイスの大剣にも同様に1つだけ埋められていた。
「ルイスのは強度、イリーナのは魔石とのバランスを主に強化させてもらった。これで数%は効率が上がるはずだ」
「相変わらずいい仕事をするね、おっさん」
「代用の量産型には嫌気が差していたところだしな」
ルイスの言葉にイリーナも同意する。
先日、イリーナ達は依頼を受けたクエストを終わらせた後、ついでに長い間大掛かりな手入れをしていなかった武器を鍛冶屋に出すことにしたのだ。
その間は代用の量産型を使っていたのだが、2人程の実力者になると量産型では武器の方がついていけないのだった。
「ルイスはいいんだが、イリーナ、お前もっと武器を大切にしろよ。手入れに手を抜きすぎだ」
「分かったよ。それともう1つのはどうだ?」
「ああ、これか」
そう言って中年男は小型の剣をイリーナに渡した。
それは刀身が非常に細く、尖端が鋭くとがったレイピアと呼ばれる剣だ。
但し魔石が大量に填め込まれており、剣と呼ぶより杖と呼ぶ方がふさわしい。
イリーナは魔導師だった。
先ほどの短槍も、イリーナにしてみれば槍というより杖なのであった。
「刀身が微妙に曲がっていた。直すのに苦労したが今では真っ直ぐだぞ」
「悪いね」
イリーナはレイピアを腰に納め、代わりに財布を取り出す。
決して高くない金額を払うと、イリーナ達は鍛冶屋を出た。

再びカーペットに乗り込むと、2人は外の世界と繋がる門へと急いだ。
「思ったよりも時間を食ったな。予定時間に間に合うかなー」
「『私はそんな小さなことに囚われません』と言えばいい」
「ルイスらしい発想だな。でも一理ありだ」
そんな下らない会話を交していると、外へと出る門が見えてくる。
門前まで進むと、警備の兵士に止められる。
しかし、ギルドのシンボルを見せると嫌々しく通過を許可した。
ギルドという組織は認められてはいるが、中には規模が大きすぎる所もあるので国の軍との仲は好ましくない。
2人はあまり気持ちよくない視線を送られながら古都の国を出た。
古都を出るとそこは既に無法地帯だった。
剣を振るう大男もいれば、遠くでは魔法が飛び交っている。
しかし誰も全く気に留めない。
何故ならそれが当たり前の世界なのだから。
イリーナは懐から地図を取り出すと、おもむろに広げた。
「目的地は……あそこか。案外近いな。1時間もあれば着ける」
イリーナは目的地をもう1度確認すると地図をしまい、カーペットを急速発進させた。

330柚子:2008/02/12(火) 22:51:31 ID:xH9APUBo0
1時間近く走ると、目的地が見えてくる。
そこは森の中だった。
「ここからは歩くぞ」
2人はカーペットから降り、森の中に侵入する。
森の中は静寂に包まれ、外の世界と切り離されたようだった。
「なんかこう……ここだけ時代に取り残されたみたいな場所だね」
「都会よりこちらの方が落ち着く」
そう言い、ルイスはさくさくと足場の悪い森の道を進んでいく。
逆に慣れていないイリーナは小走り状態だった。
十数分歩くと見えてくる山小屋。
そこがイリーナの持つ地図に示された場所だった。
イリーナが扉を軽く2回叩くと、乾いた声が返ってくる。
暫し待つと扉が開かれる。
出てきたのは薄い白髪に細かく皺を刻んだ顔の男の老人だった。
「依頼を受けて参上した者ですが……」
「時間に来ないからもう来ないかと思ったよ。立ち話もなんなので、中へ」
老人に促されてイリーナ達は用意された椅子に腰を下ろした。
老人が来客用の紅茶を差し出し、話を始めた。
「依頼の内容はご存知で?」
「ええ、確か野生のウルフマン退治だったかと。でも何故ここに?」
イリーナが問うと、老人は深いため息をついた。
「それが分からないのです。数日前からでしょうか、奴が現れたのは。実際に見たことはないのですが、
  あの鳴き声は間違いなく人狼です。奴が出てからというもの、怖くて外にも出られません」
「なるほど。それで依頼を?」
老人が頷く。
それからイリーナは依頼の詳しい内容、報酬金などの相談を始める。
老人は捕獲が1番好ましいとのことだった。
ルイスは2人の話を聞きもせず、ただぼうっと外の景色を眺めているだけだった。
「では、準備をしたら向かいます。ルイス、いつでも出られるようにしろ」
「近い」
それだけ言い、ルイスは窓の外を強く睨み付ける。
「は?」
イリーナが返した瞬間、確かに遠くで獣の雄叫びが上がった。
「こ、これです、奴です!」
「イリーナ行くぞ」
ルイスは素早く立ち上がると、立て掛けてあった大剣を掴み外へ踊り出る。
イリーナも慌てることなく立ち上がると、掛けてある緑の外套を着込み、銀の短槍を掴むと遅れて外に飛び出した。
「ルイス、どっちだ!」
「……こっちだ」
卓越した聴力を最大限に利用し、音の方へとルイスが駆けていく。
イリーナも難易度1の魔法、レビテイトを展開し、発生した浮力でルイスに続く。
2人は木の枝を掻き分けながら、均されていない獣道を進む。
険しい道を抜けると、小広い空間に出る。
そこで、先に着いていたルイスが立ち止まっていた。
「そこだ」
イリーナが示された方角へ目線を走らせる。
暗い木々の奥。そこに2人を見つめる2つの輝く瞳があった。
黒茶色の毛に覆われた巨大な体躯。
しかし、その体にイリーナは疑問を持った。
「怪我しているのか……?」
「みたいだな。かなり弱っている」
眼前の人狼は疲労感に満ちていた。
しかも傷に古いものは無く、全てが新しい傷ばかりである。
「弱っている者を狩るなど俺の趣向に反するな」
「だからと言って依頼を無視するわけにはいかないだろ。構えろ、来る!」
それを隙と見たのか、人狼が2人に飛び掛る。
鋭い爪を人狼が振り抜く。
瞬間、高々しい剣戟の音が響く。
ルイスが大剣で人狼の爪を受け止めたのだ。
続けてルイスが踏み込んだ足を軸に強烈な袈裟切りを叩き込む。
人狼はそれを受け止めるが、勢いを殺し切れず大きく後退する。
その瞬間、イリーナが紡いでいた魔法が発動する。
難易度2、ファイアーボール。
5つの火の球が空中に発現し、イリーナの意思に従って人狼へと次々に殺到する!
人の顔ほどの大きさの火の球は、着弾すると激しい爆裂を起こした。
付近の枯れ木も微塵に粉砕し、砂塵が巻き上がる。
「ま、私のサポートがよかったってことで……」
爆裂音。
巻き上がる土煙を切り裂き、人狼が飛び出してきた。
「なっ」
イリーナはとっさに反応し、短槍で人狼の爪を受け止める。
しかし腕力が違いすぎて、そのまま押し倒された。
人狼は片腕でイリーナを押さえ付け、残る片腕で止めを刺そうと大きく振り上げる。
その腕が振られる瞬間、人狼の巨大な体躯が大きく横へ吹き飛ぶ。
「油断するな!」
人狼を吹き飛ばした物、それはルイスの弾丸のような蹴りだった。
蹴り1つをとっても、ルイスなどの近接職が行えばそれは殺人兵器と化す。
「ふん、感謝してあげないこともないぞ」
「貴様に感謝などされた方が気分が悪い」

331柚子:2008/02/12(火) 22:52:50 ID:xH9APUBo0
イリーナは短槍を使い立ち上がると、再び戦闘体勢に入った。
人狼はまだ倒れてはいなかった。
崩された体勢を持ち直すべく後退すると、低く構え再び必殺の機会を窺っている。
しかしそんな余裕を持たせるわけもなく、ルイスが人狼へ突進する。
同時にイリーナがファイアーボールを2重に発動、10個の火の弾丸を同時に発射する。
着弾と同時に炸裂する爆発音。それらは全て命中した。
人狼の奥にある木々に。
均衡を失った木々が傾き、人狼へと倒れこむ。
しかし危険を察知した人狼が上空へと飛翔した。
ルイスもまた飛翔しており、倒れていく木に着地、再び飛翔する。
そして交差する2つの影。
剣と爪がぶつかり合い、不協和音を奏でる。
遂に人狼が力負けし、腕ごと弾かれた。
続くもう片腕の方を放とうとする瞬間、ルイスの鋭い肘が閃き、人狼の腕に刺さる。
人狼は両腕を大きく開いた状態になっていた。
次の瞬間ルイスが難易度1の魔法、マッスルインフレーションを発動。
近接用魔法の中の1つであるそれは、身体中のあらゆる筋肉を限界まで活性化させ、さらに強化する。
腕の筋肉を倍近く膨張させたルイスが、音速をも超える高速の一撃を人狼に放つ!
反応できる筈もなく、獰猛な刃は人狼の左脇から右肩口へと走り去っていく。
それから思い出したように遅れて鮮血が噴き出した。
そして軽やかにルイスが地面に着地、一瞬の後人狼が音を立てて地面に落ちた。
「ルイスさん、捕獲ってことすっかり忘れていませんか?」
イリーナがルイスに詰め寄り、責めるような視線を投げる。
ルイスは視線をそらすと、誤魔化すように剣を一振りし血糊を払った。
「忘れてなどいない。早く帰るぞ」
「気持ち良いくらい豪快に斬ってらっしゃったけどね」
イリーナは倒れる人狼に向き直った。
人狼の胸には烈しい裂傷が刻まれており、そこから止めどなく血が噴き出している。
恐らく数時間もすれば死ぬだろう。
イリーナは胸ポケットから小さな魔石を取り出すと人狼に向けた。
「じゃあ捕獲するぞ」
魔石が光ると、中に籠められていた魔術が発動する。
人狼の真下の土が変形し、人狼を囲む檻となった。

「ただ今戻りました」
イリーナが老人の山小屋を軽くノックする。
暫しの後、扉が開かれた。
「おお、さすがは名高いギルドの隊員です! どうぞ、入って下さい」
イリーナ達は老人に促されるままに山小屋に入ると、椅子に腰を下ろした。
続くルイスが重々しい音を立て、担いでいた塊を床に置いた。
「これが証明だ」
ルイスが中に詰められている人狼に指を差した。
「では報酬へと話を移行させていいですか?」
イリーナが促すと、老人は頷いた。
「ええ、貴女方のお陰で今夜から安心して眠れそうです。受け取ってください」
そう言い、老人は金貨の入った袋をイリーナに差し出した。
イリーナが金額を確認していると、老人が口を開いた。
「あの、良かったら今日はそろそろ日が暮れますし泊まっていきませんか?」
「いえ、遠慮しておきます。迷惑をかけるわけにもいきませんから」
「そうですか……では、これからもお仕事頑張ってくださいね」
「ありがとうございます。では、そろそろ。行くぞルイス」
そう言ってイリーナが立ち上がる。
出口の扉へ手を伸ばしたところで、イリーナが足を止めた。
「ところで、あれはどうするんですか? 放っておいても数時間もすれば死にますが」
「そうですね、国にでも突きつけようと思います」
「それが良いでしょうね」
そう言ってイリーナは今度こそ山小屋を出た。
外でカーペットを展開する。
ルイスが後ろに乗り込むと、カーペットは発進した。
わざわざ外にまで見送りに来てくれた老人は、少し寂しそうだった。
「なんか悪いことしたかな」
「だからと言って世話をかけるわけにもいかないだろう」
暗い森の中をカーペットは走る。
古都へ向かって。

332柚子:2008/02/12(火) 23:06:05 ID:xH9APUBo0
初めまして、柚子と申します。

数年前はここをよくROM専で見させてもらっていましたが、最近ふとここがまた盛り上がっているのを見て、自分も書いてみようと思い立ちました。
初めは短編にする予定だったのですが、いつの間にか長くなってきたので一部を載せます。
いきなり視点が変わりすぎですいません……。
読みにくかったら申し訳ないです。
他の職人様には追いついてから感想レスを付けさせていただきます。

最後に何レスもすいません。

333◇68hJrjtY:2008/02/13(水) 00:52:56 ID:ynRtym2Q0
>ウィーナさん
いきなりの女装大会、そして優勝、そして副ギルマス…
恐ろしいほどの勢いでアルビがRS世界に突き進んでいく様子が分かります(笑)
女装大会…♂キャラが♀化したらどうなるんだろう。凄く妄想をかきたてられますね!(*゚Д゚)=3
さて、女神との出会いもそうですが、にこのギルドそしてギルメンたちのことが気になりますね。
次回予告もありがとうございます。続き楽しみにしてますね。
---
前回に私も言い忘れてしまいましたが(汗)、21Rさんの仰るとおりsage進行でお願いしますね。
sageの方法が分からない場合も>>1を読んでみてください。

>黒頭巾さん
わああああ凄い和みました(*´д`*) ファミたんかわゆす!萌える!
ファミたんの日記風味で「いけめんさん」とか「げぼくさん」とか思わず笑っちゃうかと思いきや
ラストの「ごしゅじんさまに大きなチョコレートを…」のくだりでは和む以上に感動しました。
テイマとペットの関係はやっぱりこうでなくちゃ。
ネクロでやっとテイムした骸骨君が悪魔で狩りしてばかりなので泡吹いてばかりの68hでしたorz
---
バレンタンイ企画、発動してるんですかヾ(´゚Д゜`;)ゝ
なんか調子に乗って言ってしまった感があったんですが、書き手さんたちが反応してくれたのがめちゃ嬉しいです(笑)
しかし この星のバレンタインデーは さむい。orz

>柚子さん
初めまして!元々ROM専の方がこうして執筆するようになってくれるのは私も嬉しい限りです。
ROM専でしたら今までに見たことはあるかもしれませんが改めて、68hと申します。
ギルドで依頼を受け、それをこなす。それだけでも面白そうですがこのイリーナとルイスがなかなかいいコンビですね!
丁々発止とは正にこの事。イリーナの毒舌ジョークが実に小気味良くて物語に色を添えていますね。
ウルフマンを捕獲したこの依頼…これだけで終わるのでしょうか。冒頭シーンと城のシーンも謎のままですね。
続きを楽しみにしています。

334ワイト:2008/02/13(水) 01:14:27 ID:x8Wg6fzo0
>324~332様(大変お恥ずかしいのですが、最初の漢字読めない(T∀T)スイマセン――!)

初めまして!まだまだ、新参者のワイトと言います!これからも、宜しくお願い致します!!
バトンギルドの「アメリア・バトン」というギルドの一つが、気に成ってしまいました。どうなってるんでしょうか??
そして!魔道師のイリーナと、大変仲の悪いルイスの怒りを無事に(?)に収めた、ギルドマスターの権力には圧巻ですね(・Д・;)
無事に人狼を倒せたのは良かったけれど、何か嫌な予感が募ります・・・・!続き心待ちにさせて頂きます!!

335ドワーフ:2008/02/13(水) 17:43:39 ID:AepyIIHk0
天上より地上へ赤い石が落とされる事よりも
地下より地上へ悪魔どもが溢れ出す事よりも前のこと
かつて、地下世界にはドワーフたちの一大国家が存在していた

1.
「陛下、連絡が途絶えてから84時間が経過していた西の第三砦ですが、偵察にやった斥候の報告によるとすでに陥
落したようです」
「第三砦は守りの要、あそこが破られたとなるといよいよ奴らもここに攻め込んでくる可能性が…」
「おかしいな…」
「何がですか」
「ここまで来ておいて、なぜ奴らはさっさと攻めてこない」
「それは、我らの誇る鉄壁の要塞の守りを用心してのことでは」
「だからこそだ。守りを固められる前にさっさと攻撃するのは戦場の鉄則。第三砦が破られたと把握される前に攻
めてくるはずではないか?」
「何か、そうできない理由があったのでは」
「いや違う、何か…何かを待っているんだ。そんな気がする。その斥候を呼べ。直接話を聞きたい」
「…斥候は先ほど死亡しました。外傷は見当たらなかったのですが、突然苦しみだしまして」
「何か不審な点はなかったのか?」
「奇妙な指輪を握っておりました」
「その指輪は」
「ここに…」
「ふむ……む、これは」

336ドワーフ:2008/02/13(水) 17:44:16 ID:AepyIIHk0
 カーン キーン カーン キーン カーン
 地中奥深い闇の彼方。甲高く響いてくる鉄を鍛える鎚の音。岩を砕きミスリル鉱石を掘り出すツルハシの音。
 ドベルグは目を閉じてその音に耳を傾けて笑みを浮かべた。
また、バンダカの奴は歌を歌いながらやってるな。
 鎚の音色が我らの"地下人の歌"のリズムを奏でている。
 石造りの部屋の中、小柄な老人が長椅子に横たわって寝ていた。人間の子供ほどの背丈でありながらその身体は
隆々とした筋肉に覆われており、太い丸太のような腕は彼が百の齢を数える老人であることを感じさせない。
そしてその顔の下半分を覆い隠す白髪交じりの髭は不精な彼の性格を表しているかのようだった。
 口を開いて息を吸うたびに口の中に髭が入ってくるらしく、ドベルグはしきりにぷっぷっと口を鳴らして唾を飛
ばした。そうしてまたいつものように寝ていると、弟子のゴーランが断りもなく部屋に入ってきた。
「先生、まだ寝ているんですか?鎧の納期が迫ってるんですよ。みんな頑張ってるんですから先生もお願いします
よ!」
「んぅーむ、もう少し寝かせてくれ」
 頭を長椅子から離してドベルグはぼやいた。
「受注が立て込んでいるんですよ!」
「分かった分かった。うるさいな…」
 そう言ってドベルグはよいせっと太い腰を上げた。
 いつもより早く動く気になってくれたドベルグにゴーランはほっと息をついた。
「そろそろ行くかの。眠気を覚ましてから行くからお前は先に行っとれ」
「いいえ、また二度寝しないように工房までしっかりとお供させて貰いますよ」
 ゴーランの言葉にドベルグはチッと舌打ちして部屋の奥へ歩いていった。
 鍛冶に対する熱意を買って弟子にしたが、生真面目な性格のゴーランはドベルグにとっては二日酔いとは別に頭
の痛くなる存在だった。また最近の若いドワーフの間で流行しているように、髭を剃っているのも気に食わなかっ
た。昔からドワーフにとって髭は力強さの象徴と言ってもいいものだったのに…。
「全く、最近の若造ときたら…」
 そうしてぶつぶつと内心の不満を小声で漏らしながらも、ドベルグはバシャバシャと顔に水をぶつけた。
「先生、早くしてください」
「わかっとるわい!」
―なんでこんなうるさい奴を一番弟子に取ってしまったのだろうか。
 そう思いながらドベルグは濡れた髭をそのままにゴーランのほうへ戻っていった。そして壁に立て掛けてある大
きな鎚を肩に担ぐとゴーランに一瞥もくれずにさっさと部屋を出て行ってしまった。
 部屋の外の長い廊下をしばらく行くと分厚い扉があり。ドベルグが皮の厚いごつごつした手の平で扉を押し開く
と、むせ返るような熱気が一気に顔に当たり、彼の水気を吸った濃い髭や眉毛を乾かした。
 火を絶やす事を許されぬ炉が眩く輝く灼熱の液を吐き出している。鎚が振り下ろされるたびに金属音と共に火花
が咲いた。ドワーフの栄光と誇りを支えるものがここで生み出されている。
 ドベルグはその光景に安堵にも似た愉悦を感じ、しばしぼうっと眺めていた。
「先生、みんな待ってます」
 背中からしたゴーランの声に醒まされてドベルグは分かった分かったと答えて歩き始めた。
「おい、やっと、きた、か!」
 ドベルグが傍を通ったとき、バンダカが鉄床の上で固まろうと輝くミスリルに鎚を打ちながら言った。
 バンダカはドベルグとは同期で前工房長に弟子入りした男だ。現在は工房長の座を引き継いだドベルグの下で工
員達のまとめ役となっている。
「悪いな、今日は遅刻しちまったわ」
「いつも、だろ!」
 バンダカはそう言って鎚を振り下ろした。怒ったオーガのような顔をしているが仕事の時はいつもこの表情で、
決して怒っている訳ではなかった。
「一人、無断で、休んじ、まって!、手が、足りねえ」
「何?誰が休んでるんだ」
「ジンガ、だ!」
「連絡もないのか。仕方ないな」
 ジンガは所帯持ちの工員の一人で、決して無断で休むような男ではない。きっと何か理由があるのだろう。
「先生、今は時期が時期ですしバンダカさんがおっしゃったように人手も足りません。ですから…」
「わかっとる。わしもやるわい」
 そうゴーランに答えてドベルグは自分の持ち場の方へ再び歩き出した。

337ドワーフ:2008/02/13(水) 17:45:16 ID:AepyIIHk0
2.
「お疲れ様です」
 仕事に段落を付けてようやく腰を下ろしたドベルグにゴーランはお茶と弁当を持ってきた。
「む、気が利くな」
「いえ、お嬢さんが持ってきてくれたんです。ほら、僕の分まで」
 それを聞いてドベルグの丸い瞳がぎょろりとゴーランを睨んだ。
「わしが食う」
「はい、こちらが先生の分です」
「違う!そっちもだ」
「え…」
「わしは今無性に腹が減っとるんじゃ。悪いか!」
「でも、僕の分は…」
 ゴーランがそう言いかけた所でドベルグの有無を言わさぬ無言の圧力が彼の発言を封じ込めた。
「どうぞ…」
「ふん」
 鼻息荒く弁当箱の蓋を開けると、ドベルグの目じりがぴくっと動いた。
―なんで、わしの弁当よりもこいつのの方が良い物入ってるんだ?
「おい」
「なんでしょうか」
 ゴーランが目を逸らしたまま答えた。
「中身が違うぞ」
「そうなんですか?いやぁお嬢さんもマメな方ですから。私達の好物を把握して分けてくださったんでしょう」
「わしは別にコボルト肉は好物じゃないぞ」
「そうでしたか?いや、でしたら何ででしょうね……」
 気まずい沈黙が二人の周囲を包んだ。食堂に行かずにまだ工房に残っている工員達が何か談笑していたが、その
声も二人の雰囲気に阻まれて届かなかった。
「こっちを向かんかぁ!」
「はいぃ!」
 ドベルグはゴーランの顔を正面からじっと睨みつけた。
 確かに真面目だし、仕事も人間関係も丁寧にこなす好青年と言えるだろう。だが…
「こんな髭も伸ばさん若造のどこがいいんじゃ」
「せ、先生、僕はまだお嬢さんと正式にお付き合いしているわけじゃ…」
「なぁにぃ?なら遊びだと……?」
「とんでもない!いや、出来れば交際したいなと思ってますが」
「思ってるが、なんだ?」
「その…」
「わしか?」
「いえ…」
「わしが邪魔か?」
「そんなこと…」
「出て行けぇ!」
「はいい!」
 身を机の上に乗り出して飛び出したドベルグの一喝にゴーランは慌てて工房から走り出て行った。それを見送っ
てからドベルグは椅子に座り直すと食事を始めた。そして一言ぼやいた。
「根性なしめが」

338ドワーフ:2008/02/13(水) 17:46:01 ID:AepyIIHk0
3.
 工員達を帰らせて、ドベルグは工場内の自室に引き返そうとしていた。まだやらなければならない仕事が多く残
っていたが、残業しようとしていた者たちはもう帰らせた。自室へ続く廊下と工房を隔てる重い扉を開こうとして
いたとき、後ろから声がかかった。
「先生」
「なんじゃ、まだおったのか」
 昼休みからずっと口数の少なかったゴーランだった。
「昼に言い忘れていたことがあるんです。お嬢さんからの言伝で、たまには家に帰ってください」
「そんなことか」
 そう言ってドベルグは扉に手をかけた。
「そんなことって、先生はもうずっと家に帰ってないじゃないですか。毎晩何を作っているのですか!?」
 ドベルグの手が止まった。
「このところ悪魔どもが活発な動きを見せているそうです。そのせいで方々の工房に武具調達のお達しが出ていま
す。どこの工房も昼夜を問わず働き続けているのに、みんなを帰らせてまでして一人で何を作っておられるのです
か?」
「ただのミスリルコートだ」
「分かっています。でもそれだけじゃないはずです」
 ゴーランの言葉にドベルゴは振り返った。その目は大きく見開いていた。
「中身を見たのか」
「はい」
 ドベルグの驚きの顔とは対照的に、ゴーランの表情は冷静だった。
「あのミスリルコートに、一体なにがあるのですか。誰に納めているのですか」
 ゴーランのその言葉にドベルグは安心した。
―よかった。気づかれてはいない。
 ドベルグはゴーランから目線を外し、扉のほうへ向き直ると背中越しに言った。
「気にするな。ただ金持ちの道楽に付き合ってやってるだけだ。さっさと帰れ」
「………そうですか」
 ゴーランはそう言ったが、声はちっとも諦めたような感じではなかった。その証拠に彼はドベルグの背後を動こ
うとしない。
「仕方ないな。ついて来い」
 ドベルグはゴーランを扉の中へ招いた。

339ドワーフ:2008/02/13(水) 17:46:40 ID:AepyIIHk0
 ドベルグの工房の奥、そこは長い間弟子として付き添ってきたゴーランがまだ入ったことのない場所だった。ド
ベルグの部屋の前を素通りし、突き当りと思われた場所の隠し扉を抜けた所にそこはあった。
 ドーム型にくりぬかれた空間の中、無数の剣が地面からつき立てられた奇妙な部屋だった。どれも同じ形状の剣
で、大剣と片手剣の中間くらいの大きさのだった。
「ここは?」
 きょろきょろと部屋の中を見回すゴーランを尻目に、ドベルグはつかつかと剣の群れの中を歩いていった。ゴー
ランは辺りの剣に気をつけつつ、ドベルグの後ろを追いかけた。
「見ての通り、“剣の間”と呼ばれる部屋だ」
「剣の間…」
―見たままの名前だけど、この剣の意味はなんなのだろう。
 そう思い、ゴーランが近くの剣に目を落とすと剣の表面に何やら細かい彫りこみがあった。何かと思いしゃがん
で目を凝らしていると、ドベルグが呼んだ。
「おい、こっちだ」
「あ、はい」
「見ろ」
 ゴーランが急いで寄っていくと、ドベルグが今しがた引き抜いたらしい剣を差し出してきた。
 ゴーランは剣を受けとると、さっき気になった彫りこみの辺りに目をやった。それは模様などではなく、字だっ
た。それも人の名前だ。どの名前も同一の筆跡は一つもなく、人物名がただ縦に書き連ねられているだけだった。
そして一番新しく彫られたらしい一番下の名前はドベルグだった。
「これは…」
「分かるか。ここにある剣の群れは代々この工房を受け継いだ者たちの系譜だ」
「お前は真面目だし、腕もかなりのものだとわしも思う。それに、わしもそろそろ歳だしのぅ」
「では、もしかして…」
「だが、まだ駄目だ」
 予想していた言葉とのあまりの落差にゴーランは呆けたように口をぽかんと開けた。その顔を指差してドベルグ
は笑い出した。
「ぶはははははは!」
 大声で笑い出したドベルグにゴーランは怒った。
「からかったんですか!?」
「いひひ、お前みたいな若造と交代するほどわしはまだ老いぼれてはおらんよ」
「もう、趣味の悪い…」
「ひゃひゃ、まあそう怒るな。全部嘘というわけではないぞ。ただお前が儀式を通過せん限り跡目は譲れん」
「儀式?」
「そう、この剣に名を連ねる者達がやり遂げてきた試練とも言えるものかのう」
「それは一体…」
「その方法は自分で探せ」
「え…」
「探し、見つけ、達成する。この三つ全て含めて儀式だ」
「そんな無茶な!」
 ゴーランは声を荒げた。
「無茶ではない。皆やり遂げてきたのだ。それに全くノーヒントという訳でもない」
「ではヒントは…?」
「もう出ておるよ」
「ええ?」
 間抜けな声を出したゴーランにドベルグはにやりとした。
「むっふふ、全く勘の鈍い奴じゃのう。仕方ない、第二ヒントじゃ」
 突っ立っているゴーランの手から剣を取り上げてドベルグは言った。
「バンダカに聞け」
「バンダカさんに?」
「そうじゃ。奴に今日のことを話すがいい。それで分からなければ貴様にわしの跡を継ぐことは出来ん。諦めて他
の兄弟弟子に道を譲ることにじゃ」
「そんな…」
 困惑した表情で立ち尽くしているゴーランの前でドベルグは剣を地面に戻した。
「隠し扉の開け方は教えておいてやろう。好きなときにここに来て考えるがいい」

 工房からの帰り道、ゴーランは儀式について考えていた。考えていたが、いくら考えても分からなかった。
 既に出したという第一ヒント自体も分からないのにどうすればいいのだろうか。とりあえず今日は諦めて明日バ
ンダカが教えてくれるという第二ヒントに賭けるしかない。
 そう思索が至ったとき、ふとあることに気づいた。
「うまく誤魔化された」

340ドワーフ:2008/02/13(水) 17:47:40 ID:AepyIIHk0
4.
 いつも通り朝早く工房に顔を出したゴーランは、軽く工房内の清掃と仕事の準備を始めた。人気のない工房の中
で、ゴーランともう一人バンダカだけがいた。
 バンダカは毎朝誰よりも早く工房へ来ては、炉を数時間かけて温めている。通常はバンダカがやるような仕事で
はないのだが、本人の強い希望によって任されている。
 ゴーランはふいごを動かしながらじっと火を見つめているバンダカに声をかけた。
ーきっとからかわれただけ。先生と話を合わせてるに違いない。笑われるだけだろうけど、一応聞いてみよう。
「あの、ちょっといいですか?」
「なんだね。いまちょっと目が離せないんだ」
「剣の間のことなんですが」
 ゴーランの言葉にバンダカは離せないはずの目を向けた。それでもふいごの手は休めなかった。
「行ったのか。あそこに」
「え、ええ」
「そうか、まあそろそろだろうとは思ってたよ。むしろ遅いくらいだ」
 バンダカはそう言って目を炉に戻した。バンダカの反応にゴーランは驚いて聞いた。
「その、本当なんですか?」
「何が」
「儀式というのは」
「ああ、本当だよ」
―嘘じゃなかったのか。
「まあ、あいつの事だしな。信じられないのも無理ないか」
「いえ、別に信用してなかったわけじゃ…」
「ははは。で、あいつに何と言われたんだね?」
「ヒントは、バンダカさんに聞けば分かると」
 ゴーランの言葉にバンダカはふうむっと唸った。その間も火からは決して目を離さなかった。
「実は、俺も剣の間に入ったことがあるんだ」
「そうなんですか」
「ああ、言っておくがあそこは関係者以外立ち入り禁止だから他人に話しちゃ駄目だぞ。工房内であの場所を知っ
ているのは君を含めて俺とドベルグだけだ」
―そんなこと一言も聞いてませんよ先生…。他の人に相談しなくて良かった。
「それでだ、俺とドベルグは師匠に連れられて一緒に剣の間に入った。そして君がドベルグに言われた事と同じ事
を言われた。それは当時のドベルグには出来て俺には出来ないことだった」
「先生に出来て、バンダカさんに出来なかったこと?」
「あいつも内心では君を後継者にと考えているんだろうけど、君は俺に似ているから不安なんだろう」
「…………」
 すっかり黙り込んでしまったゴーランをバンダカはちらっと見て言った。
「なに、答えさえ分かれば何もたいした事じゃあないんだ」
 そう言われても、ゴーランの頭の中は混乱するだけだった。
 バンダカは炉から離れると頭を抱えて悩んでいるゴーランに近寄り、そして彼の肩に手を置いた。
「不安にさせる事を言ってしまって済まない。だが、君がこの工房でドベルグの下で積み重ねてきた研鑽の日々を
思い返してくれ。それらは君にとって決して無駄なものではなかったはずだ」
「…………」
「『自負なき者は、職人にあらず』師匠が言っていた言葉だ。よく胸に留めておきたまえ」
「自負なき者は、職人にあらず…」
 鸚鵡返しにつぶやいたゴーランに、バンダカの目が笑った。
「さあ、そろそろ皆が来る。仕事を始めよう」

341ドワーフ:2008/02/13(水) 17:48:13 ID:AepyIIHk0
5.
 いつも通り重役出勤のドベルグを起こし、ゴーランはドベルグと共に仕事に入った。
 ドベルグの仕事の特筆すべき点は何と言っても彫金細工による芸の細かさと、武具に込める魔法技術の高さだっ
た。これは他のただ量産するだけの工房では真似できないものだった。
「ゴーラン、わしらの使うこの技術は元はと言えば昔地上の人間達からもたらされ、それをわしらが独自に改良を
重ねたものだ。だが今、わしらは地上との交流を絶っておる。何故かわかるか?」
 鎧に細工を施しながらドベルグは言った。そしてゴーランの答えを待つまでもなく自分から答えを言った。
「奴らは天上から来た天使だとかいう連中を信じ、奴らにひれ伏したからだ。神の使いだとかいうホラ話を間に受
けて、言われるがままにヘンテコな建物まで建ててな!」
「作り物の翼を付けたただのホラ吹きの姿を石に堀り、頭を下げてぶつぶつと祈る始末だ」
「だからわしらは彼らとの交流を絶った。だが理由はそれだけではないんじゃ」
「あいつらは愚直にただ道を誤っただけなんじゃ。愚かな連中じゃがわしらの友人じゃ。地上の友人を守るために
わしらは地上への扉を閉じたのじゃ」
 それはほとんど独り言のような状態だった。当のゴーランは儀式の事とドベルグが毎晩作っているものとの二つ
の謎のせいでドベルグの言葉がほとんど聞こえていなかった。
 そんな状態で仕事をしていると、「おい、何をしている!」と怒鳴り声がしてゴーランはびくりとした。気づか
ないうちにヘマをしてドベルグに怒鳴られたと思った。
 だが違った。騒ぎは完成した製品が置かれている倉庫のほうで起こった。
 どやどやと人が集まっていく、何者かが侵入して製品を盗もうとしたようだった。
「おいどけ!わしに道を開けんか!」
 ドベルグもみんなに続いてどかどかと走り寄っていった。ゴーランもその後に続いた。
 人ごみを押しのけていくと、犯人の顔がようやく見えた。
 倉庫からふらふらと出てきたのは、見知った顔だった。昨日無断欠勤していたジンガだ。血走った目で脇にミス
リルコートを抱え、その手には血のついた剣が握られていた。最初に発見した工員と思われる男がすぐ傍で腹を押
さえて倒れている。
「どけ!どかないと殺す!」
 泣いているらしく、声が裏返っていた。今朝ドベルグに無断欠勤を詫びにきたときの平静さは欠片も感じられな
かった。
「ジンガ、一体どうしたというんじゃ」
「うるさい!どけぇ!」
 ジンガは剣を振り回し出口に向かって突っ走った。出口側に居たドワーフたちは慌てて道を開けた。
「よせ、行かせろ」
 ドベルグが言った。ゴーランが横を見るとバンダカが鎚を手にジンガを追いかけようとしていた。
「しかし……」
「いくら逃げたところでわしらの王国に逃げ場はあるまい。それよりも衛兵に連絡じゃ!ゴーラン、怪我人の応急
手当てをせい」

342ドワーフ:2008/02/13(水) 17:49:04 ID:AepyIIHk0
6.
 ドベルグの言った通り、ジンガはすぐに捕まった。元より王国の外は悪魔達がいる為に行く場所などないし、地
底のドワーフの王国は言わば巨大な袋小路であった。
 だが、ジンガは捕まっても奪われたあのミスリルコートは帰ってこなかった。
 確かあのミスリルコートはドベルグが毎晩作っていたものだ。引き取り先の書かれていない木箱に入っていたの
をゴーランは無断で見たことがあった。引き取り先不明のミスリルコートはどこに消えたのだろうか。
 その日は衛兵たちの検分のために工房は作業を停止せざるを得なかった。工員たち一人一人に取調べが行われた
が、一番長かったのはドベルグだった。
 ゴーランにはドベルグがどんな質問をされたのか分からないが、おそらく奪われたミスリルコートについての質
問だろう。誰に対して作っていたのか。何故あの鎧が盗まれたのか。
 ゴーランが部屋の外でドベルグを待っていると、ようやくドベルグが部屋から出てきた。その顔は少し疲れてい
るようだった。
「先生、大丈夫ですか」
「平気じゃ、それよりもゴーラン」
「なんですか」
「儀式の謎は解けたか」
「いえ…まだです」
「そうか…もしかしたら、あまり時間はないのかもしれん。出来るだけ早くな…」
「時間がないって、どういうことですか?」
 聞き返すゴーランを脇に押しのけて、ドベルグは通路を一人でどかどかと歩いていった。

 ゴーランは帰り道の商店街を歩きながら考えた。時間が無いとは何のことなのか。
 ドベルグの老い先が短いということだろうか。いや、いくら老体とは言えまだまだ衰えを知らないあの人物にそ
れはありえないと思った。
 では、早急に自分に跡を継がせなければならない理由があったのか。それがあのミスリルコートの件と関連して
いるとすれば、あの晩ドベルグがゴーランを剣の間に入れたことも説明が付く。誤魔化したのではなく、関係があ
るからこそ儀式の話をした。そして今急げと言ったのはミスリルコートを奪われてしまったから…。そうだとする
と、一刻も早く儀式の謎を解明しなければならなかった。
 そう思い工房へ引き返そうと来た道を戻り始めたとき、声がかかった。
「あら、ゴーラン様じゃありませんか」
 その声にゴーランはどきりとした。声の主は自分からゴーランの方へ近寄ってきて、ゴーランの前で止まると軽
く会釈した。ドベルグの娘ノーラだった。丸い鼻がチャーミングな可愛らしい女性である。
「今日はもうお仕事は終わりですか?」
「え、ええ。ちょっとゴタゴタがありまして、今日はもう工房は閉まってますよ」
「そうでしたか。父にお弁当を届けようと思ってたのですが、さきほど行きましたら閉まっていたので…あのう、
父は大丈夫なのでしょうか?」
「と言いますと?」
「門の辺りに衛兵さんが立って見張ってました。あんなこと今まで一度もありませんでしたもの」
「心配要りませんよ。ちょっと泥棒が入り込んだだけでして、先生は無事です。犯人ももう捕まりましたし」
「そうですか。あの、父は工房で何を作っているのですか?」
「鎧に決まっているじゃありませんか」
「いえ、その…」
「どうしたのですか」
「閉鎖しているはずの工房に、父が居ると思うのです」
「家に帰っていないのですか」
「ええ、ですからお弁当をと…」
 おかしい事だった。王国からのお達しで現場維持のために閉鎖されたはずの工房に衛兵以外の誰かが居ていい訳
がない。
「きっと、どこかで遊んでいるのですよ。すぐに帰ってくるはずです」
「そうですか。ならいいのですが…」
「そう心配なさらないでください。先生を見つけたら、すぐに帰るように言いますから」
「はい、ありがとうございます。ゴーラン様」

343ドワーフ:2008/02/13(水) 17:50:12 ID:AepyIIHk0
 ノーラと別れてからゴーランは再び工房へ向かった。
 剣の間に行けば何かヒントがあるかもしれないと思ったのもあるが、それよりもノーラが言っていた事が気にか
かった。ドベルグがもし今も工房に居て帰っていないとすれば、いまも工房であのミスリルコートを製作している
のだろうか。衛兵に見張られながら、いや、守られながら。
 ゴーランの中である考えが浮上してきていた。決して表に出せないミスリルコートの取引相手、それは王国の衛
兵をも動かして守るよう命じることの出来る人物。
 だがそう考えると余計に分からなくなった。そんな大物がなぜミスリルコートなどを大量に欲しがるのか。それ
も秘密裏に…。
「旦那、指輪買いませンか?」
 唐突に脇から出てきた声にゴーランは一瞬それが自分にかけられたものだとは気づかなかった。
「僕に言ってるのかい?」
「そウ、あンただよあンた」
 それはゴーランよりも背の低い老人のようだった。ローブを頭からかぶって顔を隠し、爪の伸びきった細い指を
ぶるぶる動かして、小さな手のひらの中の指輪を転がした。
 カッパー製のシンプルな指輪のようだったが、不思議なことにキラキラと銅にない眩い輝きをしていた。その輝
きはゆらゆらと揺れて妖しい得体の知れない魅力を放っていた。
「ちょっと今急いでいるんだ」
「まァま、彼女に持って行っておやり。きっと喜ぶヨぉ」
妙なアクセントの喋り方で老人はゴーランに売りつけようと必死のようだった。
「はは、彼女だって?」
「さっき、話してたご婦人はちがウンですカぁ?旦那、鼻の下伸ばしてらっしゃったじゃないですカぁ」
「見てたのか…」
「ヒヒ、商売になりそうなンだもの」
 下卑た笑いを溢す老人に気味悪い感じを覚えながらも、ゴーランは老人の持つ指輪に不思議と惹かれていた。
―もしかしたら、これで先生のことで悩んでいるお嬢さんを少しは元気付けられるかもしれない。
「分かった、でも値段によるな」
「これでどウ?」
老人の指が“2”を示した。
「2万か、高いな…」
「いンや、200だよ。お買い得ゥ」
「200?紛い物じゃないのか?」
「いやいや、正真正銘の掘り出しもの。旦那は目が利くでしょウ?自分の目で見たものを信じラリないのカい?」
 余りの安さに逆に驚いてしまったが、指輪が魅力的なものであることには変わりなかった。むしろ都合いいこと
だった。
「ヒヒ。ありがとウ!ありがとウ!」
 老人はゴーランから金を受け取ると指輪を握らせるように渡して跳ねるようにさっさと去ってしまった。
 小さくなっていく老人の背中をしばらくぼんやりと見送ってから、ゴーランが手の平見るとそこに指輪はなかっ
た。

7.
 誰も居ない静かな工房の中、ドベルグは完成した最後のミスリルコートを前にして座り込んでいた。
 聞いた話では、やはりジンガは脅されていた。
―どこまでも卑劣な奴らだ。
 ドベルグはミスリルの神秘的な輝きに目を細めた。
―ジンガが持ち出したあれが奴らの手に渡ったという事は、もう奴らにはこちらの手は把握されてしまっているか
も知れない。ゴーランの奴は惜しいが、間に合わなければ見捨てるしかあるまい。
 この仕事はロインが己の命を捨てる覚悟でドベルグに直接依頼してきたもの。決して誰にも話すことはできなか
った。
―ノーラ、わしにはお前を守ることはできん。だが、これも全てのドワーフの命運のためなんじゃ…。
「通してください!先生がいるはずなんです!」
「帰れと言っているだろうが!」
 外から騒がしい声が響いてきた。何事かとドベルグが扉を少し開けて隙間から外を覗くと、門の前で衛兵とゴー
ランが揉めていた。
―ようやく来たか。 
 ドベルグは扉を開けて、愛弟子の前に姿を現した。

344ドワーフ:2008/02/13(水) 17:50:59 ID:AepyIIHk0
 ゴーランは工房の中に招き入れられると、椅子に座って考え込んでいた。
 答えがまだ分からないことにドベルグは落胆した様子だったが、考えをまとめる時間をくれるように言うとあっ
さりと認めてくれた。急ぐ必要はなくなったのか、それとももう手遅れなのかもしれない。それでもゴーランは必
死に今まであったことを頭の中で整理した。
―たぶん、第一ヒントは自分を剣の間に招きいれたことだと思う。
 あの場所が代々工房を受け継ぐ者と、その弟子のみが入れるのだとすれば儀式にはきっとあの場所が不可欠なの
だろう。
―そして、第二のヒントは先生に出来て、バンダカさんには出来なかったということ。
 二人の違いはなんだったのか。ドベルグが豪胆でいい加減な人間であるとすれば、バンダカは繊細で実直な人物
だろう。正反対な二人だが、仕事振りに大きな差があるとは思えなかった。先代の工房長も迷った末に二人ともを
剣の間に入れたのではないだろうか。二人の仕事に差がないとすると、彼らの明暗を分けたのは二人の性格による
ものだったのではないか。
 ドベルグの大胆さが可能にし、バンダカがその繊細ゆえに出来なかったこと…。
『自負なき者は、職人にあらず』
 バンダカの言っていたことが頭の中で再生された。
―まさか。
「先生、あの剣を取ってきてもよろしいですか?」
 ゴーランの言葉にドベルグはにやりとした。
「わざわざ行かずとも、ここにあるわ」
 ガタガタと音を立てて隠してあった箱から剣の間の、あのドベルグの名が刻まれた剣を引っ張り出した。
「先生、僕は思い違いをしていました」
 そう言ってゴーランは剣を受け取ると、目の前の机の上に置いた。
「跡を継ぐ資格を認められて初めてこれに名を連ねることが出来ると思っていました。でも、実はとっくに認めて
下さっていたんですね」
 ゴーランは剣に向かって手を動かした。
「剣の間に入れたこと、あれ自体が跡を継ぐことを認めた証だったんでしょう?」
「ふむ」
 ドベルグは満足そうに笑みを浮かべている。
「そして、弟子はそれに自負を以って応える…」
「その通りじゃ」
「出来ました」
 ゴーランがそう言って剣から離れると、ドベルグは剣を持ち上げて自分の名前の下に彫りこまれた弟子の名を眺
めた。
「本当ならもっと早くお前に引き継がせてやりたかったんじゃが、あれを作るのに忙しくてな」
 そう言ってミスリルコートを親指で示した。
「全く、お前は時間をかけ過ぎじゃ。人をやきもきさせおって」
「すいません」
「がははは、まぁよいわ。答えさえ分かれば何ということもなかったろう。要は積み重ねてきた日々に確固たる自
信を持っておればよいのだからな。バンダカの奴にこれが出来なかったのは、奴は自分の中で『まだ自分は未熟か
もしれない』と自分の腕を疑ってしまったからだ」
 笑うドベルグの顔を見ながら、ゴーランは答えがあっていたことの安堵と達成感を実感していた。だが、もう一
つの謎がまだ残されていた。
「ところで」
「ん?」
「跡を継いだからには教えて下さるんですよね。あのミスリルコートのことを」
「ああ、そうじゃったな。まず事の起こりは3ヶ月ほど前からじゃ」

 西の第三砦が破られ、悪魔の勢力はすでに王国のすぐ傍まできていた。
 偵察から帰ってきた斥候は謎の指輪を手に握ったまま変死した。その指輪を国王が手にしたとき指輪は王の手に
吸い付くように張り付いて、そして手の中に侵入した。それは悪魔どもが作り出した対ドワーフ専用の呪いの指輪
であった。
 オルク征伐で勇名を馳せたロイン王といえど、悪魔どもの卑劣な呪いの前には無力だった。人質となる事を嫌っ
たロイン王は、急遽として王子を即位させて自身は退位することを選んだ。だが、このことは国民にはまだ公表さ
れていない。ただ民を混乱させるだけで、そこをさらに悪魔につけこまれるかもしれなかったからだ。
 だが、時すでに遅かった。王国の内部に悪魔どもの手先がすでに侵入しており、触れた者の体内に侵入して命を
握る指輪は方々にばら撒かれてしまった。道に落ちていたり、あるいは物のなかに紛れ込んでいたり、まだ触って
いない者には悪魔のほうから寄ってきて直接触らせたりした。

345ドワーフ:2008/02/13(水) 17:52:45 ID:AepyIIHk0
 俄かには信じられない話にゴーランは体を震わせた。
―あの老人が売っていた指輪だ。あの指輪は騙されたから無かったんじゃなくて、僕の体内に入ったから消えてい
たのか。
「国民のほとんどはもう指輪の支配下にある。あとは悪魔どもが乗り込んできてわしらを奴隷のようにこき使うこ
とだろう。そう、ジンガのように…」
「ジンガさん…」
「奴は所帯持ちだったからな。嫁を指輪に殺されて、子供の命を盾に脅されたらしい。奴自信も取調べ中に殺され
てしまった」
 ゴーランは自然と手を力いっぱいに握りこんでいた。
―許せない。そんな人の命を弄ぶような奴らがもうすぐここに乗り込んでくるなんて…。
「ジンガさんは、なぜあのミスリルコートを?」
「あのミスリルコートはただのミスリルコートではない。地上の友人たちと、地下の我々の友情の集大成よ。ゴー
ラン、お前は月を知っているか?」
「月?」
「そうだ、地上の夜空に輝く大きな宝石じゃ」
「それがどうかしたのですか」
 ドベルグはゴーランの返事に大きくため息をついた。
「全くロマンのない奴じゃのう。お前の“大きい”はせいぜいこのくらいのもんじゃろう。それよりもも〜〜〜〜
っとずぅ〜〜〜っとでっかいんじゃ!あれを見たとき、わしは初めてミスリル鉱石の精錬を許されたときよりも感
動したもんじゃ」
 ドベルグが体を大きく動かして感動を伝えようとしているが、ゴーランにはいまいちピンときていなかった。
「それが一体どう関係があるのですか」
「まぁったく、これからお前はその月を見に行くのじゃ」
「え?」
「このミスリルコート、いやムーンライトストーカーは月明かりを浴びて神秘の力を持ったミスリルを鍛えて作ら
れた鎧じゃ。悪魔どもの呪いの力を跳ね除けることのできる唯一の鎧にしてこのドベルグ生涯最高の傑作よ」
「では、この鎧で悪魔と最後の決戦を?」
「違う。月を見に行くと言っただろう。この鎧は大量に作ることなど出来んからな。お前は今からこの鎧を着て陛
下たちと共に地上へ脱出するんじゃ」
「皆を見捨ててですか!?」
 ゴーランが声を荒げて叫んだ。その剣幕に一歩も引かずドベルグが切り返した。
「お前一人の力で何が出来る!いいか、今大事なのは王国滅亡という危機を避けることだ。お前だけでも生き残れ
ばドワーフは滅びん!お前はこれから地上の友人に会って助けを求めるんじゃ。そしてわしらを悪魔どもの呪縛か
ら解放するのじゃ」
 ドベルグはゴーランに思い切り顔を近づけて怒鳴った。顔を離すとドベルグの表情はいつになく穏やかなものに
なっていた。
「よいか、お前はこのムーンライトストーカーを着て王宮へ向かえ。この本も忘れずにな」
 そう言ってムーンライトストーカーと分厚い一冊の本を手渡した。
「これは?」
「この工房で代々受け継がれてきた武具の製法をまとめたものじゃ。わしのムーンライトストーカーの製法も最後
のページに入っとる」
 ドベルグに手伝われて鎧を着込みながらゴーランは呟くように言った。
「先生、僕には無理です…」
「無理なものか、お前はわしの跡を継いだんだろう」
「この鎧は、先生が着るはずのものじゃないですか」
「お前が間に合わなければそうするつもりだった。だが、お前はわしの期待を裏切らなかった」
「先生…」
 ゴーランの視界がぐにゃぐにゃに歪んで頬に熱いものが流れた。
 鎧を着せ終えたドベルグはゴーランの正面に回ると笑いながら言った。
「それにお前が間に合ってくれたおかげでようやく家に帰れるわ」
「お嬢さん…心配してましたから…早く帰ってあげてください」
 しゃくり上げながらゴーランはなんとか言葉を搾り出した。
「わかっとる。放蕩爺のわがままも今日限りじゃ。そうそう、これも持って行け」
 そう言って名前を彫ったあの剣も渡してきた。
「弟子はよく考えて選べよ。まったくお前は頭の痛くなる奴だったからな」
「肝に命じておきます…」
「分かったら、さっさと行け。わしは早くここを閉めて帰りたいんじゃ」

346ドワーフ:2008/02/13(水) 17:54:27 ID:AepyIIHk0
 ゴーランを見送ったあと、ドベルグはようやく家路についた。久方ぶりに自宅で休めることに足取りは軽くなっ
た。
 だが、心にかかる一抹の不安があった。ジンガは何故ムーンライトストーカーのことを知っていたのか。工房の
中であれについて知っている者は自分とゴーランだけ。つまり王宮の中にすでに奴らの言いなりになっている者が
居るということだろうか。
 だが悪魔たちがドワーフを隷属させるつもりであるならば、制圧のための時間がかかるはず。王国の中の者はほ
とんど指輪の存在に気づいていないのだから。
―つまり、やつらが王国に乗り込んで来たとしても王宮まで辿り着くのには時間がかかる。必ず脱出は成功する。
 ドベルグの視線の先に我が家が見えてきた。土壁にあいた小さな窓の中、最愛の娘が見えた。
―どれ、ちょっとおどかしてやるか。ひひひ
 ドベルグはこっそりと窓に近づいていった。

8.
 ゴーランは生まれて初めて見るの王宮の中にガチガチに緊張していた。荘厳な石造りの大広間を歩を進めるたび
に、所々にちりばめられた煌びやかな装飾と芸術の数々に心を奪われた。
 間もなくここが地獄に変わるとは思えないほどに静かだった。
 大広間を抜け、複雑に入り組んだ長い通路の果てにその門はあった。見上げると後ろに倒れこんでしまいそうな
ほどに巨大な門。これが恐らく地上への出入り口なのだろう。だが、これほどまでに巨大な門をどうやって開くと
いうのだろうか。
 ゴーランは門の前に集まっている同じ鎧を着た人々を見回した。若いドワーフがほとんどで、男女の割合は半々
ぐらいだった。全てのドワーフの未来を託された人々だ。この中に王子、いや現国王が居るのだろう。
 脱出者全員が集まったらしく、前国王らしい金色に輝く斧を持った人物が言った。
「では、門を開けよ」
 位の高そうな人物が頷くと、その人物は普通は気づかないような壁の小さなくぼみに鍵を挿した。すると巨大な
門とは全くの別方向の壁の一部が四角くせり出して上に持ち上がり、その奥に長い通路が現れた。
 門の方を向いていた全員がぽかんとしていると、前国王は言った。
「行くのだ。我らの運命はそなたらに託した」
 その言葉にゴーランは改めて決心を固めた。
―必ず帰ってきて、先生を、皆を救い出す。
 ゴーランを含めた一団が出口へと進み始めたとき、部屋の入り口の方から叫び声が響いた。
「ぐぎゃあああああああ!!」
 その声に一同がそちらに目を向けた。
「そこが“入り口”カァ!!」
 それはまるで頭から返り血を浴びたかのように真っ赤な悪魔だった。それが何十匹と現れたのだ。
「走れぇ!」
 誰かの声が響いた。
 ゴーランたちは全力で走った。
 衛兵達が悪魔に向かって突進しようとするが、奴らにたどり着く前に前に倒れこんで息絶えてしまった。門を閉
じようと鍵を取り出した大臣もまた同じだった。指輪の呪いに前国王も倒れ伏した。
 ゴーランたちが長い通路を走り抜けているなか、一人、また一人と後ろから追ってきた悪魔達によって頭を砕か
れた。ゴーランもまた、悪魔の放った火球によって右腕を吹き飛ばされていた。
「ドケエエェェ!」
 悪魔の怒号が通路の中に響いた。
 ゴーランは激しく呼吸を乱しながら、消えた腕の痛みに顔を歪めつつ走り続け、そして開けた場所に倒れこむよ
うに飛び込んだ。いや、場所ではなく世界だった。ゴーランのはじめて見る土面に遮られることのない広大な地上
の世界。
「シャアアアアアア」
 ゴーランは倒れたまま後ろを振り返った。悪魔どもが追いついてきたのだ。
「ひぃっ」
 ゴーランは残った腕で頭を抱えてうずくまった。
 すると悪魔たちはゴーランを無視して彼の頭上を素通りし、そのまま空の彼方へと飛び去って行った。
 目を開けて飛び去っていく悪魔たちを見ながらゴーランは大きく息をついた。
「助かった…」

347ドワーフ:2008/02/13(水) 17:55:31 ID:AepyIIHk0
 片腕を失い、足を引きずるようにして闇の世界を歩きながらゴーランは考えた。
 奴らの目的はドワーフの王国を征服して服従させることではなく、最初からこの地上への出ることだったのでは
ないか。指輪は地上への扉を開けさせ、かつドワーフを皆殺しにするための物。
 ゴーランが助かったのは、奴らにとって自分はもうどうでもいい存在だったからに違いない。
「一体、奴らは何のためにここに…」
 果てしなく続く暗い大地にゴーランはひどい孤独感に苛まれた。狭い地下世界に居た彼にとってそこは恐怖すら
覚えるほど広かったのだ。
 血の止まらない肩口を押さえ、ゴーランは地面に膝を突いた。
―これから応援を呼んで戻ったとして、助かる同胞は居るのだろうか?蹂躙された王国に生き残りはいるのだろう
か。先生も、お嬢さんも…みんな…。
 ゴーランは空を見上げた。
『地上の夜空に輝く大きな宝石』は、ゴーランに優しい光を浴びせてくれた。
「綺麗だ…」
 座り込んだままぼうっと月を見上げるゴーランの耳に、狼の遠吠えが聞こえた。

348ドワーフ:2008/02/13(水) 18:01:46 ID:AepyIIHk0
初めまして。
ユニークアイテムの説明文を参考に話を書いてみました。
ペディグリード、ゴールデンクリーパー、ムーンライトストーカー、
それとドワーフバインダーです。

改行のせいで読みにくいかもしれません。
あと、分けて出すべきだったと3分の2まで出してから気づきました。
本当にすいません。

349白猫:2008/02/13(水) 19:58:14 ID:iwezFGtQ0
Puppet―歌姫と絡繰人形―

第一章〜第五章及び番外編 5冊目>>992
第六章 -夜空の下で- >>30-37
第七章 -深紅の衣- >>70-81
第八章 -神卸- >>137-139
第九章 -チャージング- >>164-171
第十章 -母- >>234-241
第十一章 -北へ- >>295-299
これまでの主要登場人物 >>38
用語解説 >>255-261



第十二章 バレンタインチョコレートケーキタワー?


2月13日、古都ブルンネンシュティング。
 「なんで古都に戻ってきたの…?」
古都の西口、巨大な門から中へ入ったルフィエは、脇のネルに問う。
体中に付いた旅塵を叩いて払い、ネルは言う。
 「旅費が尽きました」
 「え」
 「アーティさんに飲み潰されました」
 「えっ?」
ネルの溜息混じりの言葉に、ルフィエの声が裏返る。
渋い顔でネルは、腰から長財布を取り出す。
その長財布の中身は、空。
 「どっかの誰かさんの酒代も加わって軽く8万は飛びましたよ」
じろりと黒髪の女性を睨むが、当の本人はもちろん、無視。
それどころか、
 「それより早く金を寄越せ。報酬の一割は前払いだ」
と金の催促までしてくる。なんとも自分勝手な[騎士]である。
はいはい、と適当に返事を返し、ネルは頭を掻く。
 「とりあえず家まで戻りますか……」
 「私お風呂入りたい…体中じゃりじゃり」
 「私も……」
 「ねー」
 「ねー」
リュックサックを背負ったルフィエ、帽子を被ったままのリレッタは、笑いながら声を揃える。
"こういうところ"では息が合うので、全くこの二人には敵わない。
 「分かりました分かりました。ちゃんと大浴場を用意させます」
 「ヤッタ」
 「一度大浴場貸し切ってみたかったんです」
 「ねー」
 「ねー」
 「…………」
何時の間にこんなに仲良くなったんだ、とネルは少々げんなりする。
今までお淑やかだったリレッタがルフィエに毒されたらどうしようか、と少々まじめに考えてしまう。
 (――そういえば)
ふと、思い出す。
肌寒い気温、凍てつき乾ききった風、白くどこまでも澄んだ空。
この光景を見、ネルはふと聞く。
 「今日は何日ですか?」
 「13日やで。2月13日」
そのネルの言葉に、カリアスが杖をクルクルと回しながら答える。
その背後には、どこから頂戴したのか巨大な荷車が置いてある。
ネルはそれに積まれた幾つもの大会の戦利品と、その中に埋もれるアーティを眺める。
 「アーティさんはまた二日酔いですか」
 「昨日の夜中も懲りずにこっそりカリンはんとレイゼルはんと飲んでたらしいで」
 「つーか、カリンよく二日酔いにならねーな。俺でもちょっと気持ちわりーのに」
カラカラと笑うカリアス、若干青ざめたレイゼルを見、ネルは今日何十度目かの溜息を吐いた。
 「仕様がありません。全員今日は家に泊まっていって下さい」
 「……この大人数で泊まれるのか?」
ネルの言葉に、鞘に手を掛けたままのカリンが目を細める。
その言葉をフンと鼻で笑い飛ばし、ネルは言う。
 「舐めないで下さい」





所変わって、ヴァリオルド邸。
ようやくこの大豪邸に到着した一行は、一旦別行動を取ることとなった。
ルフィエとリレッタは大浴場へ、
ネルとカリンは何故か武器庫へ、
カリアスとアーティは寝室へ、
レイゼルは子供部屋へとそれぞれ向かった。

350白猫:2008/02/13(水) 19:59:21 ID:iwezFGtQ0
武器庫。ネルとカリン。
 「…………此の剣、は」
 「イレギュラーアリアン。魔法剣士である者達…[イレギュラーアリアン]の扱っていた剣です。現存する中で最古のオリジナル品ですね」
 「……こ、っちの、槍は」
 「ナギナタ[薙刀]。東国に伝わる突くよりも薙ぐことに適した槍です。こっちも現存する中で最古のものですね」
 「……じゃあ、こっちの鎧は!?」
 「ブルーベルベット。伝説の[青龍]から抽出した鱗を使用した鎧です。これは今のところ……一作品しか発見されていませんね」
 「……!!!!!」
360度にも渡って並ぶ様々な武具・防具を見やり、カリンは目を剥く。
その予想通りというかなんというか、ありきたりな反応にネルは溜息を吐く。
 「こっちの棚のものはダメですが…こっちの棚の武具は自由に使ってくれて構いませんよ」
 「何ッ!!?」
首は大丈夫か、と心配になるくらい思い切り振り向いたカリンに、ネルはどきりとする。
カツカツカツとネルに歩み寄り、その鼻先に顔を突き出す。
 「…………」
 「…………」
触れようと思えば唇も触れる、吐息も溶け合うその距離に、ネルは目を白黒させる。
が、カリンはすぐに顔を離し、小さく呟いた。
 「……お前、結構いい奴だな」
 「はぁ」
結局カリンは、一日中武器庫ではしゃいでいたらしい。





大浴場。ルフィエとリレッタ。
 「ひっろーい!!」
大理石の床をペタペタと走り回り、ルフィエは声を上げる。
それを苦笑して眺め、リレッタはタオルを片手に大浴場を眺める。
軽くバスケットボールのコートが2面は入るくらいの巨大さ。
シャワーも何故か無駄に多く、蛇口から桶まで、何から何まで煌めいている。
無駄な装飾は一切なされていない辺りは、流石は本物の億万長者というやつである。
実はルフィエ、部屋一つ一つにある浴室を利用していたため、この大浴場に入るのは初めてだったりする。
リレッタもリレッタで、大浴場は一人で使うのは気が引けて入りづらかったらしい。
要するに、二人とも初めての大浴場にテンションが変な方向に上がっているのである。
とりあえず、と二人は端っこのシャワーに並んで座る。
 「なんかワクワクしない?」
 「シャワー捻ったら金色のお湯が出てきたりしそうです」
二人で冗談を交わしながら、蛇口を捻る。
やっぱり金色のお湯は出てこず、何の変哲もないお湯がシャワーから噴き出した。
と、
 「あ、お姉ちゃん」
 「……なんでここにいるの?」
その二人の背後から、幼い声が上がる。
振り返れば、目を白黒させて金髪と茶髪の、二人の少女がこちらを眺めている。
 「シェリルちゃん、メアリーちゃん? どうしたの?」
ルフィエは目を丸くし、二人の元にペタペタと駆け寄る。
 「お風呂……には、早いよね? まだお昼だし」
 「夕方にね、セバスさんがご飯につれていってくれるの」
 「……ネルお兄ちゃん、帰ってきてるの?」
 「へぇ……ネルくんなら、さっきカリンさん……新しいお仲間さんと武器庫に行ったよ」
何しに行ったんだろう、と心中で首を傾げ、ルフィエは微笑む。
 「でもご飯食べに行くんだ。良いなぁ」
 「お姉ちゃんも一緒に行こうよ?」
シェリルの言葉に、ルフィエはクスリと笑う。
 「そうだね……できたら、ね」

351白猫:2008/02/13(水) 19:59:45 ID:iwezFGtQ0

 「ネルくん……ぁ」
 「あ」
ネルの部屋の扉を開き、ルフィエはその途中でピタリと止まる。
丁度上着を脱ぎ終わったネルも、その途中でピタリと止まった。
数秒、止まる。
が。

   バタンッ!!

凄まじい速さでルフィエは扉を閉め、廊下へ飛び出す。
その扉にもたれ、頬の染まった顔で謝る。
 「ごめん」
 「いえ」
その声に少しだけ笑い、ネルは脇のスーツを手に取る。
それを羽織りつつ扉へ歩み寄り、しかしドアノブには手を伸ばさない。
その扉に背をもたれさせ、よいしょとネルは座り込んだ。
 「驚きましたか?」
 「…………うん」
ネルの言葉の意味を思い、ルフィエは頷く。
扉の合間から見えた、ネルの上半身……そこに走っていた、無数の切り傷や刺し傷。
恐らくは、今まで無数に戦ってきた者達との戦いの傷痕。
 「……リレッタやセバスは、この傷を消したがっていたようですが」
目を閉じ、ネルは自分の右腕を額に押しやる。
そこから伝わる、血の通っていない腕の冷たい感触。
あの[大戦]がなければ。
そこには、血の通った、肌色の、肉の腕があったはずである。
だが、それを自分は、不幸だとは思わない。
この忌まわしい腕が、自分に力を与えてくれたのだから。
 「この傷の数だけ……いや、もっとたくさんの数だけ、僕は人が苦しむ姿を見てきた」
ゆっくりと立ち上がり、ネルは天井を見上げる。
巨大なシャンデリアに照らされたこの部屋には、たくさんの人々の、遺品が収まっている。
自分が捕らえた者の土産を、
自分が手を掛けた者の遺品を、
ネルは、どうしても捨てることができなかった。
だが、それを間違ったこととは……思わない。
そう、これからも人々を殺めるのだから。
これからもこの部屋には、様々な品が収められるのだから。
 「これからもたくさんの人々の姿を見るでしょう。それは逃れられないことです」
扉に向き直り、そのドアノブに手をかける。
 「……嫌じゃ、ないの?」
 「嫌ですよ。すごく……嫌です。
 それでも僕は、この道を選び続けます。誰に強制されたわけでもない、自分の意志で」
ドアノブを開き、ネルは小さく微笑む。
 「貴方と皆を、護ってみせます」
その姿に途方もなく惹かれ、ルフィエは少しだけ目を細める。
止めても、彼は絶対に止まらないだろう。
命が尽きるその時まで、彼は皆を護り続ける。必ず。
なら自分にできることは、一つしかない。
 「……うん。だけど、私もネルくんを、護ってみせるよ。ギブアンドテイクだよ?」
 「…………なんですかそれ」
 「なんでもなーいよ」
ネルの手を取り、ルフィエは微笑む。
その手を握り返し、ネルも少しだけ笑った。
 「そういえば今日ご飯食べに行くらしいけど」
 「聞きました。今から広間に行くところです」
頭をガリガリと掻き、ネルは溜息を吐く。
 「これ以上壺を割られると食事を減らさないと拙いですね」
 「いくつ割られちゃってたの?」
 「7つ……6000万ほどはやられました」
 「……どんまい、ネルくん」
ルフィエはたぶん初めてネルの泣きそうな顔を見た。







大広間に入り、途端にネルは溜息を吐く。
目の前で執事・メイド達のバイキング形式の食事が行われていたからだろうか。
横でニコニコしている初老の、執事服を着た男性にネルは言う。
 「セバス、腹が減りました」
 「畏まりました、ネリエル様」
一礼をし、セバスはカツカツと大広間から歩き去る。
それを横目で見やり、ネルは中央の柱の時計に目を移した。
 「6時…半ですか」
 「ネルくん、何か用事でもあるの?」
辺りの見たこともない食事(ルフィエは種類が毎日毎日違うような気がしてならない)に目を輝かせているルフィエが、ネルに問う。
その言葉に少しだけ迷う素振りを見せたが、しかしネルは顔を背ける。
 「……いえ」
 「?」
ルフィエは首を傾げるが、当のネルはそっぽを向いて大広間の中央へ歩いていってしまう。
と、そのネルの足に、

   ぽふっ

小さく、軽い衝撃が走った。
怪訝そうに見れば、自分の足に、茶髪の少女がかじりついている。
 「……メアリー?」
 「……ネルお兄ちゃん、おかえりなさい」
涙目でネルの足にひしっと抱き付くメアリーを見、ネルは笑う。
メアリーの身体を抱き上げ、ネルは言う。
 「ただいま、メアリー」

352白猫:2008/02/13(水) 20:00:20 ID:iwezFGtQ0

 【じゃっじゃじゃーん!】
 【ヒッ】
 「…………サーレ? これは何かしら?」
[イグドラシル]内部、ルヴィラィの部屋。
その部屋の中央に置かれた、馬鹿でかい茶色い塔を眺め、ルヴィラィは目を細める。
一瞬遅れて理解し、その後ろでニヤニヤしているサーレとパペットを睨む。
 【えー、サーレ特製バレンタインチョコレートケーキタワーだけどぉー?
 パペットとデュレに手伝ってもらってさー。これならサイカスとかプリファーたちも食えんじゃん?】
 「それは分かったわ……それを何故、私の部屋の、しかも魔方陣の真上に置いちゃってるのかしら?」
 【ヒッ。イグドラシルデ一番広イ部屋、ルヴィラィノ個室】
 【凄くね? 私もしかして料理の先生とかなれちゃったり?】
 「しないわ。15分あげるからちゃんと処理なさい」
溜息を吐き、ルヴィラィは頭をガリガリと掻く。
 【むー…】
むすっとするサーレを見やり、もう一度ルヴィラィは溜息を吐いた。
その馬鹿でかいチョコレートケーキの塔を見やり、人差し指で表面をすくう。
それをペロリと舐め、ルヴィラィは途端に渋い顔になった。
 「……甘いわ」
 【当たり前じゃん】





深夜の十二時も回り、東の空も白んできた、深夜。
古都の東部、レッドアイの地下監獄のさらに東。
小さな共同墓地の片隅に、ネルの姿はあった。
[カナリア=ヴァリオルド]と刻まれた墓標に小さな花束を置き、ネルは呟く。
 「……父さん」
父が死に、今年で4年。
あの時……ブルン歴4917年2月14日の夕刻。
あの光景を、今まで忘れたことはない。
脳裏に深く焼き付けられ、自分をキリキリと締め付け続けている。
 「貴方と一度、話がしたかった」
そう呟き、ネルは掌を天に翳す。
これは許されないことであろう。
だが、今の自分には、"それ"が必要なのである。
 「エリクシル解放――『 紫電狼 』」
瞬間、
ネルの身体を紅色の衣が覆い、その額を鈍色の兜が飾る。
さらに指を払い、呟く。
 「父さん、お許し下さい。――神卸、『 カナリア=アラスター=ヴァリオルドⅢ世 』」
瞬間、
ネルの兜が蒼く発光し、彼の身体に一つの魂が卸される。
名を、[カナリア]。
紛うことない、ネルの父。

 「…………?」
辺りを見回し、ネル……否、カナリアは目を細める。
自分の左腕を、そして右腕を見やり、そして最後に目の前の、自分の墓標を見やった。
それを目に入れ、カナリアは途端に悲しそうな顔をする。
 「そうか……もう御前は、この術まで体得してしまったのか」
 「……はい」
一つの口から紡がれる、二人の言葉。
だが、それを怪訝に眺める人の姿は、ない。
 「それで……父さんを何故、この世に呼び戻した?」
 「……話したかったのです、もう一度だけ」
そのネルの言葉に、しかしカナリアは叫ぶ。

   「馬鹿者がッ!!」

 「ッ…………」
久々に怒鳴られ、心中のネルは目を白黒させる。
 「一度愛しい者を呼び戻せばどういうことになるか分かっているのか、ネリエル。
 次はより単純な理由で私を呼び戻す。また次も、また次もだ。
 そして次は誰だ? 私の次は母さんを呼び戻すこととなるだろう。絶対にだ」
 「…………」
その言葉に、ネルは唇を引き絞る。
分かっていた。
自分でも、分かっていたのだ。
"だが、それでも"と。
 「……それでも、僕は……聞かなければ、ならなかったのです」
 「…………」
 「父さん……[エリクシル]は一体、何なのですか」
 「……それは私にも、分からない」
溜息を吐き、ネルの身体でカナリアは脇の木にもたれかかる。
 「この私ですら、エリクシルの真の力…[最終段階(ファイナル)]へは到達しなかった。
 あるいはそんな力は存在しないのかもしれん。少なくとも、人の辿り着くべきではない力ではあるだろう」
 「…………父さん、[第三段階]とは一体、どのような力なのですか」
 「それは御前が、何を大切とするかで異なる。
 私の第二段階と御前の第二段階では、[神卸]以外のその能力も全く違うのだ」
それは、ネルの求めていた答えではない。
それをカナリアは重々承知し、しかし答える。
 「ただ御前に必要なものは、一つだ。心に誓う…その一つだけだ」
故に、とカナリアは立ち上がり、胸のエリクシルを握る。
 「御前に見せておこう……私の[生かす]想いの生み出した[第三段階]…『 神々の聖域(サンクチュアリ) 』」
瞬間、
カナリアの周囲を、無数の十字架や剣、槍が覆い尽くす。
さらに奇妙な、翼の生えた人形までが無数に土から生み出され、カナリアの周囲を護るように飛ぶ。
まるで、聖者を護る聖域(サンクチュアリ)のように。

353白猫:2008/02/13(水) 20:00:40 ID:iwezFGtQ0

2月14日、昼。
 「…………」
ヴァリオルド邸に戻ったネルは、目の前の光景に絶句した。
毎日の食事に使う大広間の中央に、巨大な塔が立っている。
しかも茶色。真っ茶色の塔。
 「一体なんですか、これは」
隣でチョコまみれになって笑うセバスに、低い声でネルは言う。
 「ルフィエ様がチョコレートケーキをお作りになったのです。このセバス、微力ながらお手伝いを――」
 「もういいです」
頬をピクつかせ、ネルはその塔へ近付く。
と、その塔の脇に、これまたチョコまみれのエプロンを纏ったルフィエとリレッタがへたり込んでいた。
その二人が自分を見たのを見てから、ネルはぴしっとその塔を指す。
 「これ、は、何、です、か!」
 「ルフィエ特製のバレンタインチョコレートケーキタワーだよ」
 「ごめんなさい、冷蔵庫にあった卵とか牛乳、全部使っちゃいました」
 「…………」
まるでどこかの傀儡と同じ発想だ、と溜息を吐き、ネルはその塔を見やる。
 「…………」
ちょいと表面のチョコレートをすくい、その指を舐める。
 「……甘いんですけど」
 「チョコだもん」
 「甘いのは当たり前です」







 「起きなさい」
 【…………】
未だにチョコレート臭さの残る部屋の中、ルヴィラィは目の前の少女に言う。
魔方陣の中心に眠る銀髪、裸体の少女は、その声にゆっくりと目を開いた。
 【……ここ、は…】
 「おはよう、気分はどうかしら?」
 【……私、は…誰?】
 「…………そうね、まずは名前を決めてあげないとね」
その少女に毛布を被せ、ルヴィラィは首を傾げる。
と、その少女の"遺品"のバッグに、小さな名前が刻まれているのを目にする。
その名前を見、ルヴィラィは小さく微笑んだ。

 「そうね貴方の名前は…セシェアよ」





FIN...

[ルフィエネル主人公二人のおまけコーナー3]

 「はい、今回は番外編のつもりでしたが多少の改変を加え、第十二章として投稿することとなりました」
 「次回は作者がずっと書きたかった章みたい。十三章が楽しみだね」
 「僕の新しい力も見れるようですが……さて、今回はアーティさん、カリアスさん二名のプロフィールをば」


アーティ=ベネルツァー(♀) 21歳
長所:強い
短所:市街破壊常習犯
好きな食べ物:肉全般
嫌いな食べ物:金持ち臭い食べ物
6月14日生。古都出身。
[蒼き傭兵]と謡われるブルンネンシュティングの守護神。
守護神、と謡われるだけあり、実力はネルをも凌ぐという。
蒼い稲妻を繰り、その威力は古城を一撃で倒壊させる。
古都を守ることが生き甲斐というが、何度も古都の市街を破壊させている。
得意術:[ジャベリンテンペスト]、[ライトニング・ジャベリン]


カリアス=ハイローム(♂) 17歳
長所:速い、明るい
短所:口調がおかしい
好きな食べ物:たこ焼き(他の誰にも理解してもらえない)
嫌いな食べ物:特にない
11月18日生。古都出身。
[白の魔術師]と謡われるブルンネンシュティングの守護神。
アーティと同じく、ネルをも凌ぐ実力を持っているという。
凄まじい速さを持っており、その[ヘイスト]の速さは[魔法の絨毯]を軽々と追い抜かすという。
さらに魔術の腕も、その右に出る者はいないという。
得意術:[ヘイスト]

354白猫:2008/02/13(水) 20:01:01 ID:iwezFGtQ0
コメ返し

>ウィーナさん
初めまして、此処で物書きをやっている、白猫です。
文才…ですか。作文は得意ですけど(笑)
想像力はまぁ、RSをやっていてふと思ったことがネタになることが多いですね。

>◇68hJrjtYさん
ラヴラヴなバレンタインじゃなくてごめんなさい!(土下座)
たまにはこういうネタも良いかな、というアレですね。
本当はバレンタインネタは半日で終わらせる予定でしたが、68hさんのお言葉で一日半に延ばしました(笑)
次回から物語は急展開するはずです。布石ももうほぼ完了しました。たぶん。
これから一気にクライマックスに持ち込むつもりですので、どうかお付き合い下さいませ。

>ワイトさん
Σそんなにおだてても何も出ないですよ? 木くらいは登りますが!
オリジナルスキル覚えきれないですか、私も覚えきr(殺
私も今皆様の小説を読み返しているところですので、感想はそのときにまた。
こちらこそ、宜しくお願いしますペコリ(_ _ *)

>黒頭巾さん
そうそう読みは当たらないものです(笑)
私も何度か「次回はこうなる!」って予想してみたりしますが、ことごとく負けていますorz
私も40億なんて持ったことなかったりします。ネルくん半分くらいくれないかなorz
ルフィエの好物の子供キャンディー。ただのキャンディーじゃなく[子供キャンディー]が鉄則みたいです。
実は今回、朝食に煮魚を出してルフィエに渋い顔をさせるつもりだったりしました。



次回予告

ブレンティルへと到着したルフィエ一行。
そこでルゼルと合流したルフィエに、ルゼルはマペットを封じた十字架を手渡す。
その十字架を持ったルフィエとネルに、ルゼルは不条理な提案を行った。
-----
ルゼルの提案の元、二対一の模擬戦闘を行うこととなったルフィエ・ネルとルゼル。
その戦闘の中、とうとうネルの中の[第三段階]が解放された。
しかしルゼルの圧倒的な力に、ネルは圧倒される。
そのネルの危機に、ルフィエの胸の十字架が突如光を放つ――


第十三章『神格化』、その内投稿です。

355◇68hJrjtY:2008/02/13(水) 21:00:24 ID:TOXlWZEo0
>ドワーフさん
初めまして!最近新しい書き手さんが増えて喜んでる68hです。
以前にも個人的にUアイテム説明から連想できる小説ネタを考えたことがありますが、これは凄い。
思わずRSという世界を忘れてしまうほど読みふけってしまいました。
確かにエルフが居るのにドワーフってRSには居ないような?(?) 今ではUアイテムにその名を残すのみ…。
ゴーランがその後地上世界で何を見つけたのか、何を作り出して行ったのか。
また別のお話と知りつつもつい想像してしまいます。またの執筆、お待ちしています。

>白猫さん
白猫さん家のネル君たちもバレンタイン真っ盛り、青春真っ盛りですね!(謎
うんうん、ラブラブじゃなくてもほんのりラブみたいなのがネルとルフィエにはぴったりなような気がします。もちろんラブラブも見てみたいけど(笑)
しかも番外編で終わらせず、それすらも本編とリンクさせてしまうとは。ルヴィラィの名付けた「セシェア」とは。
犬猿の仲っぽかったネルとカリンが「武具コレクション」という繋がりでなんとなく仲良くなってみたり
ネル君の身体に刻まれた傷跡の発覚、そしてカリアスが能ある鷹は爪を隠すを地で行ってる…と新発見の多かった章でした。
父カナリアとの対話もエリクシルの力を紐解こうとする父と息子といった様子で、微笑ましい反面カナリアでも分からない謎もまだ残ってますしね。
でも白猫さんの中で傑作にして苦心の章が次回からいよいよ始まるのですね。
これは見逃せません!楽しみにしています。

356之神:2008/02/14(木) 10:22:08 ID:EljImjJs0
1章〜徹、ミカの出会い。
-1>>593―2 >>595―3 >>596-597―4 >>601-602―5 >>611-612―6 >>613-614
◆――――――――――――――――――――――――――――――――――――◆
2章〜ライト登場。
-1>>620 -621―2>>622―○>>626―3>>637―4>>648―5>>651―6 >>681
◆――――――――――――――――――――――――――――――――――――◆
3章〜シリウスとの戦い。
-1>>687―2>>688―3>>702―4>>713-714―5>>721―6>>787―7>>856-858
―8>>868-869
◆――――――――――――――――――――――――――――――――――――◆
4章〜兄弟
-1>>925-926 ―2>>937 ―3>>954 ―4>>958-959 ―5>>974-975
◇――――――――――――――――5冊目―――――――――――――――――◇
-6>>25 ―7>>50-54 ―8>>104-106 ―9>>149-150 ―10>>187-189 ―11>>202-204

◆――――――――――――――――――――――――――――――――――――◆
5章〜
-1>>277

◆――――――――――――――――――――――――――――――――――――◆
番外

クリスマス  >>796-799
年末旅行>>894-901
節分  >>226-230
◆――――――――――――――――――――――――――――――――――――◆

357718:2008/02/14(木) 10:34:41 ID:gXqJ5/rQ0
ウィーナ氏、305氏、ドワーフ氏、柚子氏、初めまして。
ちょびちょび真似事の短編小説を投下している718です。
同じく元ROM専です。ドウゾヨロシク(^ω^ )

>ウィーナ氏

きもい女装大会の描写、ありがとうございました。
おかげでお腹一杯ですお(^ω^;)

謎の少女の発言が、今後の展開を暗示しているようですね。
冒頭の過去の記録など、一見明るいストーリーの中に微かに差し込む
陰が際立ちますね。さて、帰るどころかどんどん異世界に巻き込まれていく
アルビちゃんの明日はどっちだ!

>305氏

これは、ギルド戦争での火力武道家の復権をかけた展開かっっ
是非ぶちのめしていただきたいところでありますっ

>ドワーフ氏

確かにボリュームはありましたが短編として一括投下でも問題ないレベルだと思います。
何より面白かったです。僕もユニークの説明文から生い立ちを創作しようとしたことが
ありましたけど、投下しないでよかったw
ドワーフの国家という世界観ととユニークの存在感がしっくりと噛みあっていてとても
奥深い物語になっていたと思います。仮に続きがあるとしたら是非また投下してください。
楽しみにしております。

>柚子(ゆず)氏

読めない我らがワイト氏のためにルビ入れさせてもらいました(^ω^ )

言動の端々から、ルイスが生粋の戦士であることが読み取れて、個人的に好みの文体でした。
内容もまたゲームの内容を旨く消化・踏襲していて、これまた僕好みですw
ドロシーかわええのぅ(^ω^ )ルイス憎いのぅ(^ω^ )
冒頭に張られた巨大な伏線がどこで本編と交錯していくのか、楽しみにしてます。


>ワイト氏

結局、ヘルアサシンの謎も解けぬままの辛勝となりましたが・・・シーフ系であるはずなのに
戦士スキルや怪しい能力を駆使するヘルアサシンと、突如人格が入れ替わったかのような
ラータ、どうもこの2人の能力は大元で関連がありそうな気配がしてきましたね。
次はどこに飛ばされるのやらw

>黒頭巾氏

やっぱり黒頭巾氏の文体は柔らかくてあったかいですね。のなめちゃんを理解するのに
大分かかりましたが、この辺もちょびっとだけオツムの足りないふぁみりあいーえっくすらしくて
好きですw
バレンタインノベールの話、実は僕も真っ先にサマナが召喚獣を駆使して手作りチョコを作っている
絵が浮かんだんですが、描かなくて本当によかった。こんなにあったかくならない(^ω^;)

>白猫氏

カリアス若いですな。僕はてっきり30台頭〜半ばのいい感じの男前を想像していたので
17という数字に面食らってしまいました。発言老けてますねぇw
さて、物語も佳境のようですが、今までに張られた伏線の量を見ると次からは1行に
1サプライズありそうな勢いですね。心して読ませていただきます。

358之神:2008/02/14(木) 10:52:29 ID:EljImjJs0
β

2/13、放課後。

「ミカちゃーん!」それは学校のクラスの友達の声だった。
「ん?何か?」彼女に話かけられるような用事があったか思い出しながら、私は鞄に教本をしまう。
「もう、何かじゃ無いでしょ!明日が14日なのに、ミカちゃんはぜんぜん気にしてない風なんだもん」
「14日って、あれ・・・・・・何かあったっけ?」
「何ってそりゃあ・・・・・・・・」彼女は息を吸い・・・

「バレンタインデーでしょう!」


この世界では、思いを寄せる男性、お世話になっている男性などに、女性からチョコレートを贈るみたいで。
「まぁ、渡すとしたら徹しか居ないよねぇ・・・・・・うん」
「ん?どうしたミカ?」
「ううん徹、なんでもないの、なんでもないから、ね」
「変なミカだなぁ・・・・・・」徹はそう言って前に向き直った。
徹との下校中は、どうやって渡すかばかりを考えていて、時々独り言をつぶやき・・・・・の繰り返しだった。

「何作ろうかな・・・・・・・・」
「ねぇ、やっぱミカ独り言多いよ今日」
「もう、ちょっと待ってなさいよ!私考え事があるんだからっ!」
「わ、わかったよ・・・・・・・」


α
おかしなミカの様子もさておきながら、クラスの女子のそわそわ感も、それは14日のせいであろう。
全国の男性諸君には、嬉しくも悲しい日であり、好きな女の子の好きな人が分かる日、なんて言う人もいるくらいだ。
俺は制服をハンガーにかけながら、ミカは俺にくれるのか、とか妄想をしていた。
だが、よくよく考えればフランデルとやらにこんなチョコ会社の陰謀満ち足りた行事があるとは考えにくい。
「はぁ・・・・・やっぱ今年も0かぁ・・・・・・」
ささやかな希望は、一瞬にして消え失せた。

「ちょっとー」 突然母親の声がしたので、俺は飛び起きた。
「な、何?」
「ちょっと用事というか、おつかいを頼みたいんだけど」
「ああ、いいよ別に。何をいつ?」
「これを、明日の夕方に届けてくれない?」
「おっけー・・・・明日でいいのな・・・・・わかった」
その後夕飯のメニューなどを聞き、俺は部屋に戻った。

「はぁ、さらにお使いとはな・・・・・・・」

俺は天井を眺めて、これまでの14日について振り返っていた。


λ
やっぱり、渡そうかなぁ・・・・・・うーん、でも迷惑かなぁ・・・・・・、うーん・・・・。
お菓子を作るのは得意だし、義理名義で渡せば平気かなぁ・・・・・、うーん・・・・・・・。

「とりあえず、沢山作っておこうかな」
私はキッチンに向かって歩き出した。

359之神:2008/02/14(木) 11:26:48 ID:EljImjJs0
2/13、夜中。

β
早速私は、夜のうちに作ることにした。キッチンは徹のお母さんが、
「まぁ、ミカちゃんは誰に渡すのかしらね、フフ」と言って快く貸してくれたので問題無い。

「さて、何を作ろう・・・・・かな」
私は大きな割れチョコを眺めながら、形や素材を考えていた。

「うーん、やっぱりハート型?うーん、もっと面白い形は・・・・・・・・・・」
「クッキーをはさんでも良さそうね・・・・・・マシュマロも、甘すぎるかなぁ・・・・?」

「おい」
と、突然後ろで声がした。
「わっ!驚かさないでよライト・・・・・・・・・」
「いや、ミカこそ夜中に厨房で何をブツブツ言ってるんだ」
「うーん、チョコレートをあげるんだけどね、それをどう作ろうか悩んでたの」
「チョコレート?今いろんな店で売ってるのも、それなのか?」
「なんかこっちではそういう文化みたい・・・・・・まぁ、アンタは男なんだから関係無いでしょ!出てって出てって!」

シッシッ、とライトを追いやると、ライトは割れチョコを勝手に齧りながらどこかへ行った。

「よし、ハート型でやってみよう!」
こうして、私の長い戦いが始まる。

λ

「やっぱり作ろう!ああ、今夜は寝れないなぁ・・・・・・」私は頭巾を被り、キッチンへ向かった。

「ハート型じゃアレだし・・・・・やっぱりあの形で・・・・・よし」
カチャカチャ。
「ケルビー!チョコ溶かすから手伝って下さい!」
コポコポ・・・・・・・。
「ウィンディは換気お願いします!」
コロコロ・・・・・・・。
「スェたんはこれを冷やしておいて下さいね」
トントントン。
「ヘッジャーは鍋動かすのをお願いします!」

「ああ、忙しいなぁ・・・・・・」私は額の汗を拭い、生暖かいキッチンの中Tシャツ一枚で料理を続けた。

β

「型をはめて・・・・・・冷やすだけかな」
カチャ。
「あれっ!分離してるう!やり直しだぁ・・・・・・・」
コトン・・・・。
「あっ、割れちゃった・・・・・・」
ペキン。
「もう!誰がチョコあげるなんて考えたのよう・・・・・」
バン。
「うう・・・・・・・まだ固まって無い・・・・・」


β
「よし!」
λ
「出来た!完成!」

β
「あーもうダメ、眠くて倒れそう・・・・・・」私は器具を片付け終わると、少し寝る事にした。
「うー、もう4時かぁ・・・・・・・起きれるかな・・・・・」私は達成感も混じりつつ、深い眠りについた。

λ
「ふう・・・・・疲れたー・・・・・」私は片付けを終えて、思わず口に出した。
「それじゃあスェたん、チョコの保冷は頼みましたよー・・・・私はちょっと寝ますー・・・・」
そうして私は、渡す時間まで寝る事にした。

360之神:2008/02/14(木) 11:45:03 ID:EljImjJs0
α
「おーい、ミカぁ!朝だぞ起きろー」
「うーん・・・もう少しだけお願いしますうー・・・・・・あと3分」
「さっきもあと3分って言ってたじゃないか。ホラ、起きろおきろー」俺はミカの身体をゆさゆさと揺らす。
「・・・・・!どこ触ってるのっ、もう・・・・・・」
「肩だよ。それより、やっと起きたね・・・・・もう学校だよ」
「あっ、今着替えるっ・・・・・!」
「わかった・・・・・・・ん、何?」ミカがこちらを見ていた。
「いや、着替えるから出てよ」呆れたようにミカはため息をつく。
「そうだった・・・・・」
俺はそう言って自分の部屋で待機することにした。

ふと机の上に目をやると・・・・・・・
「何だ、コレ」

β
「手紙を置いたけど、ちゃんと見てるのかなぁ・・・・・徹は」
私は着替えながら、少し不安になった。
「まぁ、大丈夫かな」私は鞄を手に取り

「徹!もう着替えたわよー!学校一緒にいこ!」

λ
「あっ・・・・もう朝だ・・・・・・・おはようございます、みなさん」私は神獣達に挨拶をすると、チョコの安否を確認する。
「よかった、チョコは無事に固まってるみたいですね・・・・・これで渡せる・・・・・!」

「夕方になったら、渡してきますね!」


α
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――◆
徹へ〜

今日の夕方6時に、私達が最初に会ったあの公園に来て下さい。待ってます。
プレゼントもあるから楽しみにしててね(^-^)/

                         徹の事が好きなミカより。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――◆

「あ・・・・・・俺、お使いもあるんだった・・・・!やべ・・・・どうしよう・・・・」

「とりあえずダッシュでお使いを終わらせて、すぐ公園に行けばいいか・・・・・」俺は登校時間にそう決めると、ミカと並んで学校へ向かった。

361718:2008/02/14(木) 13:24:57 ID:gXqJ5/rQ0
お疲れ様です、718です。
バレンタイン企画に乗っかってみました。駄文ですがよろしければ。
今回は、いつもより少々長くなってしまいまいした。


彼は、とても力の強い魔導師だった。
ギルドの全幅の信頼を受け、どれほど困難な依頼であってもたやすく成し遂げた。
彼は誰にでも優しく、厳しく、暖かく接することのできる人だった。そんな彼も、皆から愛される存在であった。
私は、そんな彼のパートナーを務めることに誇りを感じていた。
彼の矛となり盾となり、槍と弓とを携えて、彼と並んで歩くことに、喜びを感じていた。
どのような任務でも、どのような戦地でも、私達は常に寝食をともにし、命をともにした。
月並みな話だが、私達が愛し合うようになるまでに、時間はかからなかった。

ある暑い日のことだった。彼が珍しく、露天商を見物しようと言い出したのだ。
私は、何もこんな暑い日にと口を尖らせたが、ここアリアンにあって暑くない日なんかあるものか、
いつだって変わりはしないさと、結局強引に連れ出されてしまった。

渋々彼について回りつつ、古代遺跡やスウェブの高塔から出土された珍しい武具を物色していると、
ふいにフワリ、と白い羽が私たちの目の前を掠めていった。あっ、と手を伸ばそうとしたが届かず、
羽はヒラリと遠くへ飛んでいった。こんな砂漠の地で白い羽なんて珍しいな、彼が呟く。ぼんやりと
羽の行き先を見送る私達の背中に、しわがれた声が飛んできた。

「お前さんがた」

振り返った先にあった露店は、多くの冒険者が軒を連ねるアリアンの物騒な露店群の中では異色のたたずまいだった。
上質なビロードの絨毯が砂上に敷かれ、その上には奇妙な透明の製の箱が積み上げられ、
その最も上に載せられた箱からは、砂漠の町にありながら強烈な冷気が漏れ出していた。
この奇妙な様子を観察する私達に、店番の老婆が続けて話しかけてきた。

「お前さんがた、今日は何の日か知ってるかい?」

さも今日が特別な日であるかのような物言いに私達は思案したが、特に思い当たるものは
ない。そうしていると老婆はニコニコと種明かしを始めた。

「今日はねぇ、バレンタインデーという特別な日なんだよ」

老婆は、ある大陸に存在した「恋人たちの守護聖人」のことを、身振り手振りを交えながら
ニコニコと話し出した。そして、その守護聖人の命日であるその日を、聖人の名前をとり、
「バレンタインデー」と呼び、この日は男女が愛の誓いを立てるのだと語った。

私は正直、老婆の話を「良く出来た作り話」程度に聞き流していたが、横の彼は真剣な
眼差しで老婆の話に耳を傾けていた。一通り老婆が語り終えると、彼はフンと一度うなずいて、
その話と、老婆の売り物に何の関係があるのか訊ねた。

「ある地方の習慣でねぇ、この日は互いにプレゼントを贈って愛を誓うのさ。
あたしが売っているのは、そのプレゼントにうってつけの品物だよ。さあ、どうぞ買ってくださいまし。」

老婆が差し出す箱の中身をよくよく見ると、そこには一口大のチョコレート玉がちょこんと
鎮座していた。私が、この常夏の地にあってチョコレートが全く溶けずにいることに驚いていると、
この箱が魔法で出来た氷をくりぬいたものだと説明してくれた。

362718:2008/02/14(木) 13:25:38 ID:gXqJ5/rQ0
結局、私達はひとつずつ、チョコレート入りの氷の箱を購入した。家路の途中判ったのだが、
彼は老婆の話を真に受けて購入したというのだ。よく出来た戯曲の拝聴料のつもりで購入した
私に彼は、そんな理由かよと苦笑いしていた。そして、しばらく遠方、遠くの大陸へ行かねばならないと、
唐突に告げられた。

常に彼と行動を共にしていた私にとって、私の聞き及ばない依頼の話は寝耳に水だった。
今回は単独での任務を強いられるためチームは組めないこと、私がこの話を知れば間違いなく
不服を申し立てること、その「申し立て」によって、間違いなくギルドホールは大規模な修繕か
建て直しを迫られるであろうことを、彼は丁寧に(その丁寧さが逆に腹立たしくもあったが)説明してくれた。
そして、私が渋々承諾すると彼は、この仕事が終わったら結婚してくれないかと言った。私は承諾した。

翌日の夜明けと同時に、彼は任務に向けて出立した。いつも並んで歩く彼の長身を見送るのは不思議な感覚だった。
ギルドの面々は、私が今回のことをよく納得したものだ、怒らなかったのかと驚いていたが、当の私は
ニコニコと舞い上がっていたので回りの者はその理由を知るまで「あいつ、ついに気がふれたのか」と
とんでもない噂がたったそうだ。

チョコレートは、彼が任務から帰ってきたら二人で揃って食べようと約束した。誓いのリングならぬ
誓いのチョコレートは、テーブルの上に並んでその時を待ち、それを覆う氷の箱はいつまでも
冷気を放っていて、肌に触れるとヒンヤリと気持ちよかった。早く彼の任務が終わるのが待ち遠しかった。


彼からの定時連絡が途絶えた。


その報が届いたのは彼がこの街を発ってから4週間後だった。私はとるものもとりあえずギルドに向かい、
そして連絡が途絶えてから既に2週間が経過していることをマスターから告げられた。
なぜもっと早く知らせてくれなかったのか、まさか奴に限って不測の事態などあるはずがない、口論する
私達の元に、一人の若いメンバーが飛び込んできた。震える若者の口元と、彼の手に握られた杖――――
見慣れた杖の残骸を見とめ、私は悟らざるを得なくなった。彼は戻ってこれないのだと。

なぜ無理にでもついていかなかったのか。肝心要の時に役に立たずに何が矛だ何が盾だ。
絶望感と悔恨に打ちひしがれ帰宅した私を待っていたのは、水浸しのテーブルと、その中に浮かぶ二つの
チョコレート玉だった。魔法の力が終わりを迎えたのか、氷の箱は跡形もなく溶けてなくなっていたが、
チョコレート玉は触れると、まだ微かに冷たかった。一つ、口に入れて噛み砕くと、甘くて上品な味がした。
もう一つ口に入れて、私は涙が止まらなくなった。帰ってこない彼の名前を、泣きながら何時までも呼び続けた。


あれから、1年経った。今私は、かつて振るった槍と弓とを、包丁とお玉に持ち替え、毎日の食事を、
息子のために作っている。あの直後、彼の子供を身ごもっていることが判ったのだ。
私は即刻ギルドを退団した。残りの人生の全てを、彼が残してくれた命のために使おうと決めた。
それに、私はまだ、彼はきっとどこかで生きているはずだという思いを捨てきれずにいた。
役に立たない矛と盾でも、いつか彼が帰ってくるかもしれないその日まで、せめてこの子は守り抜いて、
立派に育てて見せると誓った。

先日生まれたばかりの赤ん坊は、よく泣き、よく笑う元気な男の子だった。まだ柔らかな質感の髪は微かに
ウェーブがかって、撫でてやるとキャッキャッと嬉しそうな声を上げる。お乳も良く飲むからきっとスクスク
育つだろう、しっかり栄養を取って、立派なお乳を飲ませてやれというのが、世話になった乳母の言葉だった。
息子に最高のお乳を飲ませるためには、まず私が体力と栄養をつけないと。毎日の食事の量と室に、
やたらと気合が入る。笑いつかれた息子が眠りこけたのを見計らって、私は食事の準備に取り掛かった。

トマトを湯剥きし、玉葱を刻み、ベーコンを炒め、牛骨からとったスープを鍋いっぱいに注ぐ。
ジャアッという音とともに湯気が立ち上り、クセのあるいい香りが広がった。具材に火を通すため、
強火にして沸騰手前まで一気に加熱しつつ、焦げ付かないように木ヘラで鍋を大きくかき回す。
スープの放つ熱気と、元々の暑さのせいで額から玉の汗が流れ落ちる。

363718:2008/02/14(木) 13:26:08 ID:gXqJ5/rQ0
コン、コン、コン。

訪問者だなんて、珍しい。コンロの火を手早く弱め、エプロンを外して玄関へ。どちら様と声をかけると、名乗りの
代わりに、

「今日は何の日か知ってるかい?」

頭が真っ白になって、慌てて扉を開けた。そこにはあの老婆がニコリとしてたたずんでいた。あの日以来、
一度としてこの街で見かけることのなかった彼女。私は息を飲み、カレンダーを見やった。2月14日。

「そう、今日はバレンタインデーさ。」

久しぶりだねぇという彼女の前で、私は当時のことを思い出して思わず泣き出しそうになった。
彼女は何も言わず黙ってニコニコと、私が落ち着くのを待ってくれた。暴れだした記憶と感情を押さえ込み、
ようやく落ち着きを取り戻すと、どうしてここが?と問いかけた。彼女はヒャヒャと笑って、

「何、商売人の勘だよ。それに、あんたにはこれが必要だと思ってね」

そういうと、彼女は、あのヒンヤリとした魔法の箱を取り出し、私の手にしっかりと握らせると、それじゃあと
出て行ってしまった。私にこれが必要?どういうこととまとまらない考えを頭に抱えたまま彼女の背中を追い
外に出ると、すでに彼女の姿はなかった。私の頭の中はクエスチョンマークで溢れかえりそうになった。
ふと手にした箱に目を落とし、ゆっくりと蓋を開ける。そこには、1年前に食べたあのチョコレート玉がちょこんと、
2個、鎮座していた。

ヒラリ。

私の視界をゆっくりと、一片の白い羽が独特の軌道を描いて上から下へ通り過ぎ、フワリと地に降りた。
こんな砂漠の地で白い羽なんて、と手を伸ばそうとして、火にかけっ放しの鍋のことを思い出し、私は
慌てて書け戻って――――次の瞬間、目の前に現れた光景に思わず、握り締めた氷箱をとり落とした。


リビングの真ん中に、かつて私が、いや、今でも愛して止まない、彼の姿があったのだ。頬は窶れ、髪はかつての艶を失い
顔の下半分は伸び放題の髭に覆われてはいたが、その優しげな表情はあの頃のままの彼が、間違いなくそこに居た。

私は目を疑い、ついに気がふれてしまったのかと思ったが、彼がゆっくりと私に歩み寄り、この手を握り締めてくれたとき、
目の前にある全てが現実なのだと知ることができた。
私は、溢れそうになる涙を堪えながら、ようやく一言、なぜ?とだけ振り絞った。彼も声を震わせ、目を潤ませて、こう答えた。
捕えられて奴隷の日々を強いられていた僕の目の前に、天使が舞い降りて、次の瞬間目の前には、君がいたんだ、と。

――天使――白い羽――チョコレート――これが必要――

先ほどまで頭の中で渦巻いていた疑問がするりとほどけていった。嗚呼、疑ってごめんなさい。そして、ありがとう。
貴女の言った通り、間違いなく守護聖人は存在した。とめどなく溢れてくる涙をこらえることはもう私にはできなかった。

ジュワアアアアッ

スープの吹き零れる音が響き渡ったが、私には聞こえない。彼の胸に飛び込むと、お帰りと囁いた。彼の優しい、
ただいまという声だけが、私の耳に届いていた。

<おわり>


途中から無理やりハッピーエンド化させようと頑張ったのでどうもアヤシゲな構成になってしまいました。
駄文ですが読んでいただけたなら幸いです。では、ハッピーバレンタイン!

364◇68hJrjtY:2008/02/14(木) 19:06:14 ID:TOXlWZEo0
>之神さん
意味ありげなおつかいを頼まれた徹ですが、ミカの気持ちとチョコは伝わるのだろうか…
渡す前に終わってしまったところを見るとこれは続きがありますよね!うん!(こら
ミカの本命は徹でも、シルヴィーの本命は…わくわく。
徹は戸惑いながらですが、今編に限らずミカが徹に対して積極的にアプローチしてるのが見てて微笑ましい。
やっぱりこういうのはメールじゃなくて手紙がイイ!さてさて、バレンタイン本番の時間が刻々と…。
どうする徹!(笑)

>718さん
私も一時は悲しい結末かとひやひやしてましたが(それでダメってことはないんですが!)、ハッピーエンドとなってほっとした心境です。
別れ別れになってしまった二人を繋いでくれたチョコレートと商人。夢や幽霊ではなくて現実の出来事だというのが印象的でした。
チョコレートを渡す風習の話もこうした物語を読むとあながち嘘っぱちの作り話ではないと思ってしまいます。
バレンタインにまたひとつ奇跡が生まれて二人が子供と一緒に幸せに暮らしていけたら、これ以上は無いですね。
バレンタインのお話、ありがとうございました!

365之神:2008/02/14(木) 19:54:31 ID:EljImjJs0
α

キーン、コーン。

終業のベルが鳴り、この日の学校の終了が告げられる。

俺は頼まれたお使いを遂行するべく、ダッシュで家に帰ることにした。
「悪いミカ!ちょっとすぐ終わるけど用事あるから先に帰るわ」
「うん、わかった。手紙、読んでくれた?」
「ああ、読んだよ。デートはこの後なーっと」
「で、デートだなんて・・・・・」ミカは顔を染めた。
「うん・・・・・・まぁ後で、すぐ戻るよ」

「うん、絶対だよ」




よし、準備完了・・・・・!さてさてお使い内容はー・・・・・

=―=―=―=―=―=―=―=―=―=―=―=―=―=―=―=―=―=
徹へ、以下の内容を済ませてから最後に公園に行って下さいね。

1.お父さんに、この鞄を届けて下さい。会社にいるはずです。
2.地図に点を打ってある所は届け先です。その住所の人に箱を渡してくださいね。
3.何でもいいので傘を買って下さい。小さい方がいいかもね。

夕飯までには帰ってね。
=―=―=―=―=―=―=―=―=―=―=―=―=―=―=―=―=―=

なんだ、けっこう内容濃いな・・・・・・。とりあえず親父の会社か。
現在、母さんは居ない。置手紙の横の荷物が、静かにリビングに佇んでいるだけだった。

「いってきまーす・・・・・って、誰も居ないんだよな・・・・・」と独り言を呟きつつ、俺は家の扉を押した。
親父の会社は都内で、電車で30分あれば到着できる。そこからちょっと歩けばすぐに会社だ。
俺は目的地までのルートを確認しつつ、駅まで歩いていった。

λ

もうすぐ夕方・・・・・・・。
早く日が傾かないかなぁ・・・・・・。
「ウィンディ、ちゃんと届けてくれた?」
そう聞くと、風の神獣はコクコクと頷き、そしてクルクルとその場で回転を始めた。
「そう、よかった。ありがとね・・・・ポーションは無いけど、チョコレートならあげる」
チョコレートを貰うと、神獣は満足げに飛んでいってしまった。

β

「4時かぁ・・・・・あと2時間だから、5時半に家を出れば平気ね」
家に付くと誰もおらず、自分一人とライトの飲みかけの酒瓶が転がってるだけだった。
「早く夕方にならないかなぁ・・・・・・」
私は服を合わせる為に、自分の部屋へと入っていった。

α

「あー、やっとついた・・・・・・・」
そう漏らした俺は、現在高層ビルを眺めている所だ。現在夕方4時、思ったより早く用事は済みそうだ。
俺は親父の勤める会社へと足を向けた。
都内の大通りは人が多く、コートやジャケットを着込んだ人たちが忙しそうに歩き回っていた。
巨大な交差点を通り過ぎ、人ごみを掻き分けていくと・・・・・・・
「ついたか」
そこには大きなビルが聳え立っており、スモーク加工された窓ガラスに傾いた日が反射している。

ニッコリと微笑む受付嬢に用件を告げ、学生証を見せてから俺は仕事場まで案内された。
親父はゲーム関係の仕事をしているらしいが、詳しい話は聞いて無い。

〜GAME ON〜 と書かれたプレートの壁を通り過ぎ、親父の職場にたどり着く。

「おう、徹か!」
「ああ、仕事お疲れさん・・・・・・これ」俺は鞄を差し出す。
「お、やっと届いたか・・・・・・これで4個目だな」フフ、と親父は笑う。
「もしかしてそれ・・・・・・・」
「ああ、チョコレートだ」

やられた。まったくもって使われた気分だ。
俺は「じゃあまたな」と力なく言うと、とぼとぼと歩き出した。

「あと、2つ」

366之神:2008/02/14(木) 20:27:19 ID:EljImjJs0
α

現在4時半で、そろそろ薄暗くなってくる頃だ。

「3番の傘はいつでも買えるとして・・・・・・いや、今のうちに買っておくか・・・」
都内のブランドショップが並ぶ中、俺は大型店舗の中へ足をやる。

この後この傘がどう使うか、俺はわからなかった。この時は、ね。


1000円程で買った傘を抱えて店を出ると、もう5時でかなり暗くなっていた。
「6時に間に合うかな・・・・・・」
俺は地図を広げて、目的の場所を探す・・・・・・・
「・・・・・ここ、かなり金持ち地帯じゃねえか・・・・・」
地図に赤く打ってある点は、成功者の集まる住宅街の中にあった。

「まぁ、行くしか無いかぁ・・・・・・」

γ
町の女の子はみんな、チョコレートを手に持ってソワソワしている。
現在俺は、大量の女性用下着(少女限定)を抱えて警察から逃走中だ。走る中、そんな女の子が多いと思った。

上手く逃げ切った所に、見覚えのあるやつが飛んできた。

「ウィンディ・・・・・?」
その神獣は俺の目の前に降りてきて、手紙を放り投げてきた。
「俺にか?」
頷くつむじ風。
「わかった、配達ドーモな、おつかれさん」

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
ライトさんへ。

私は自由に生きています。おかげさまです。
自由ついでに、手作りのお菓子を受け取ってください。
この世界での文化らしいのです。口に合うかはわかりませんが・・・・。
6時に、この地図に記した場所へきて下さいね。

                           シルヴィーより。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

んー・・・・・?もしかして、シルヴィーも例のアレか・・・・・・。
まぁタダなら悪い気しないし、行ってやるかな・・・・・・・・ヒマだし・・・。

α
ついた・・・・・・・・。
空気が既に違う、目に見えてリッチな空間が広がっていた。
自分の家もかなり金持ちの部類らしいが、やはりウチが「豪邸」だとしたら、ここはもはや城だった。

「さてさてどんな金持ちの家やら・・・・・・」
記された場所に到着し、俺は目の前に立つ。
当然のごとく付いている画面つきインターホンを押す・・・・・・すると

「お待ちしてましたよ」聞き覚えのある少女の声が流れてきた。画面に写っているのも、幼女だったし。
「えーと・・・・・フィ、ふぃ、フィー・・・・」
「フィアレスです、・・・・・・・まぁお会いしたのは一度でしたからね、無理も無いですが・・・・・・・。
 どうぞ中へ、門を開けますから」
言うと同時に大きな門が開き、家へと続く庭の中の道を俺は進んだ。

そして半分ほど歩かされた後、大きな家の中から幼女が出てきた。
「お久しぶりです。何故ここに住んでいるか、そのほか聞きたい事はあると思いますが、まずは中へ」
言いたいことを先に言われ、俺はしぶしぶ幼女の背中を追う。

「で・・・・・とりあえずこれがお使いの物だ。小箱だから苦労は無かったが、中身くらいは教えて欲しいな」
「中身ですか。中身は・・・・・・お酒です」
「お前、どう見ても未成年だが?」
「お酒とは少し違うんですがね、まぁお酒のようなものですよ・・・・・」
「まぁ、異世界の奴らはワケのわからん事多いから、深くは聞かないさ。俺の頭もこんがらがるし」
「でしょうね」
サラっと言われたが、なぜか傷付くことは無かった。相手が幼女だからなのか・・・・まぁ分からないが。


「じゃあもう一つ・・・・・なんでこんな家に住んでるんだ?」

367之神:2008/02/14(木) 20:53:08 ID:EljImjJs0
α

「ああ・・・・・それはですね・・・・・金を売ったので」
「金だけでここまでとは、そうとう持ってたのか」
「いえ、ちょっと違う代物なんですが」
「ほう、魔法でもしたってか?」俺は笑い飛ばす。差し出された紅茶を啜りながら答えを待つと、

「錬金術です。魔法みたいなモノですが」

おいおい・・・・・マジモンかよ・・・・・・。
「そうだ、徹さんこれを」
差し出された手には、やはり14日の菓子があった。
「あ、ありがとう・・・・・ん?」
「何か?」
「チョコくれたって事は、バレンタインデーを知ってたって事だよね?って事は、フランデルにもあるのか?」
「まさか、無いですよこんな稚拙な行事」
稚拙って・・・・・・とは思ったが、あえて言いますまい。

「あ!」

「今何時だーっ?」
「6時です」

β
時計を見ると6時だった。
「遅いなぁ・・・・・・寒いよう・・・・・」ブルブルと震えながら、ベンチで時計を眺める。
「きっと忙しく飛び回ってるんだろうなぁ・・・・徹」

α

「のん気に紅茶なんて飲んでる場合じゃないっ!」
「何か予定でも?」
「6時から約束あるんだ、フィアレスさん、俺もう帰ります!」
「そうですか、お気をつけて・・・・・・これからもうすぐ・・・・」
「もうすぐ?」
「いえ、傘があるなら平気です。それではまたいつの日か」
「何だ・・・・?まぁ、急ぐのでまた!」

そう言うと俺は、駅までダッシュで向かったのだった。

λ
「待ちましたよ」
「悪いな、ちょっとゴタゴタがあったんだ」
「その下着は関係あるんですか?」
「まぁ、これのせいなんだがな」

「これ、どうぞ・・・・・その、好きとかじゃ無くて、お世話になったから・・・別に貴方が好きとかじゃ無いんですよ?
 ただお礼くらいはしておかないと、私もすっきりしないので・・・・!変な勘違いはしないで下さいね?恋愛対象とかじゃ無いんですから!」

「そんなに否定されてもなぁ・・・・・・いやいいけど。まぁ、ありがとな、酒の肴にするよ」
「はい、・・・・・ちゃんと形も考えたんですから!」
「食えば一緒だろ、形なんて・・・・・・・あ、怒るなよ?」
「いえ、その言葉には怒りません・・・・・・・けど」
「ん?」

「スカート捲って眺めるのは、怒りますよ?」
そう言って私は、目の前の泥棒男の頭ををペチペチと叩いた。
α

「あー、もう7時・・・・!怒られるー!殴られるー!」
疲れるのも忘れて電車を降りた俺は、全力疾走した。

「ハァハァ・・・・・・公園は・・・・・ええと・・・・あっちだ・・・・!」

ダダダダ・・・・・・とスニーカーを履く足を上下させ、俺は公園の方角へと走る。
「・・・・・・ミカがまだいますように・・・・・!」
紅茶を飲みつつ無駄話をしていた自分に後悔しながら、俺はミカが居ることを祈って走り続けた。

368之神:2008/02/14(木) 21:19:52 ID:EljImjJs0
α

到着したとき、既に時間は7時半だった。
流石に居ないかと思ったが・・・・・・・居てくれた。

「ごめん・・・・・・遅れた」
「そんなの言われなくても分かるわよ」どこかミカは怒った口調だ。
「その・・・・・・用事が・・・でも本当はもっと早く来る事も出来たんだけど・・・・ごめん」
「寒い中1時間以上待ったのよ!?もう、プレゼントもあげない!」ミカは微妙な表情で怒鳴りつけた。
「ごめん・・・・・・女を待たせちゃダメだよなぁ・・・・・・」
「もう、バカ!」
「うん・・・・・・・自覚してる」
「許してあげないよっ!約束したのに!」泣きそうな顔でミカは言った。
「たのむ・・・・・許してくれ・・・・・言う事聞くから!」


「本当?」

「うん・・・・・できる範囲なら・・・・」

「じゃあ、手が寒いから手を繋いで・・・・・・」
「わかった・・・・・」俺はミカの震える手に、自分の手を重ねた。

「・・・・・・身体も寒いから・・・・・その・・・抱いてよ」
「えっ・・・・・・・!」
「言う事は聞いてよ」
「わかった・・・・・」俺はミカに近づきぎゅっと抱きしめた・・・・・同時にその時、ミカがこの命令を楽しんでいる事に
気がついた。それでも、そのまま俺は抱きしめ続けた。

「暖まったかな?」抱きながら言う。
「まだ、あと1時間くらい」ミカは悪戯な笑い顔で言った。
「そりゃあ長いよいくらなんでも・・・・・・」


かなり長く抱き合っていた為に、時間の過ぎるのも忘れていた。もう8時だ。
「徹、これ」
「ああ、ありがとう・・・・・・本当、待たせてごめん・・・・」チョコレートを受け取ると、俺は回数も忘れた程の謝罪を繰り返した。
「抱いてくれたからチャラよ♪」エヘヘ、とミカが照れて笑う。
「まったく、なんだかなぁ・・・・・・」

「あ・・・・・・雪だ・・・・・・・」
パラパラと白い粒か、ゆっくりと降ってきた。仕方なく、俺は買った傘を開く。
「ホラ、ミカも入ってよ」俺は開いた傘の下に招き入れる。
「うん・・・・・・って、もっと寄りなさいよっ!私が濡れるじゃないの!」
「こっちも限界だって・・・・・・・」
「だから私達が寄り合えばいいでしょう!もう、考えなさいよバカね」

なるほどね・・・・・・・傘は雪の中の相合傘の為か・・・・・・母さん、策士だな・・・・・。

「あれ、ライトさん・・・・・・とシルヴィーさん・・・・だよね?」
「そうねぇ、一緒に何してるのかしら・・・・・・・」
見ると雪の中、その2人はワイワイと動いていた。

γ
「だからって、白い無地はダメなんだよ!」
「何で私の下着に口出すんですかっ!」シルヴィーは顔真っ赤にしてスカートを抑えている。
「青も合わないけど、キミみたいのは縞々のやつがいいんだよお・・・・・!」
「もう!チョコ返してください!」
「なっ、これは俺からのアドバイスだぞっ!?」
「――――!――――?」
「・・・・・・・・・」


雪は振り続けた。まるで恋人達を祝福するかのように・・・・・、なんてな。

369之神:2008/02/14(木) 21:38:12 ID:EljImjJs0
α

家に帰ると、ミカがチョコを咥える俺に質問してきた。
「どう?なかなか美味しいでしょう・・・・?」
「うん、美味しいんだけど・・・・・・・」
「だけど?」
「厚いな・・・・・これ、噛み切れないや」3センチほどあるハート形チョコを皿に置く。
「割っちゃダメよ?」
「分かってる・・・・・・頑張るよ・・・・・」

γ
「おお、手裏剣の形じゃないか」
「はい・・・・・ライトさんなので、ちょっと意識して」
「凝ってるなぁ・・・・・・おお、これなんかダートの形だ」
「ちゃんと全部食べて下さいね?大変だったんですから・・・・・・」もじもじとシルヴィーは目線を向ける。
「ああ、酒に合うしなー」
「あの人、食べてくれてるかな・・・・・・・」
「ん?誰のこと?」





同時刻。

一人の男の下へ、ケルビーが駆けつけた。
「何だお前は。何の用事だ。悪いが俺はお前の相手をしているヒマは無いんだ」
トレンチコートを着込んだその男は、妙な形の杖を回しながらケルビーに言った。
「ん?これは・・・・・・チョコレート、か」
コクリと頷くケルビーは、手紙も一緒に投げつける。

◆――◆――◆――◆――◆――◆――◆――◆――◆――◆――◆
シリウスさんへ

シルヴィーです。
あまり無理しないで下さいね、弱いんですから。
それはチョコレートです。毒なんか入ってませんから、安心して
食べて下さい。
余計な騒ぎを起こさないように、自己制御もお忘れなく。
では、また。

シルヴィーより義理チョコと共に。
◆――◆――◆――◆――◆――◆――◆――◆――◆――◆――◆

男はチョコレートを手にすると、口へ運び呟いた。
「なんだこんなもの・・・・・・・・・・フン」

「コーヒーが欲しくなるじゃないか」


雪はまだまだ振り続ける。男は缶のコーヒーとチョコを手に持ち、夜道を徘徊するのだった。




fin、ホワイトデーに続く・・・・・・・と思う。

370之神:2008/02/14(木) 21:45:37 ID:EljImjJs0
以上、バレンタインネタ投下終了。
今回のテーマは、手紙と愛です。手紙今回多し。

ミカと徹のイチャイチャ度MAXですが、生暖かい視線で見守ってやって下さい。
宣言をして書いた番外なので、ちょっと期待(? あったかもですが、こんなモンです・・・・。

他の作家さんも書いていただけるのは、けっこう感激!
感想などもありがとうございます・・・・・、活動動力です。



余談。
リアでもチョコを頂いたのですが、必ず言われるのが
「義理」
まぁ余計な勘違い無くていいですけど、きっぱり言うもんだから・・・・って愚痴。(スレ違

さて、こんな番外でした。之神でした。すいませんでした。

371FAT:2008/02/14(木) 23:47:24 ID:ud4ZTT.U0
「ちょこ」

 寒さの厳しい雪国に、北風が雪を乗せ一面を白く染める。
 かつて道として存在していた谷間も今は雪が高く降り積もり、崖の上からいつ振ってく
るともわからない雪とも氷とも言えぬ塊が進入を拒む。
 私は凍てつきそうな腕に無理を言わせ杖を振るった。コートの裾が翻り、杖の先から火
が生まれる。しかし、マッチの火のように北風に押されると靡き、谷間に消えていってし
まった。
 コートにも、フードにも雪は吹き付けられ、白く装飾していく。ブーツは雪に埋もれ、
指先の感覚はとうに失っている。激しく吹き荒れる雪の織り成す雪景は私すらその風景の
一部とせんと懸命に白い装飾を飾り付けているようだった。

――私はどうにかしてしまったのだろうか?

 この先に、本当にあの薬草が生えているのだろうか?
 思えば、見ず知らずの人間の話を真に受けるなど、私らしくない。焦りが私を軽率にさ
せ、見えもしない神にもすがるほど、私は期待に胸を躍らせていた。
 ……その始末がこれか。
 もはや腕を動かすこともままならない。重いとも感じない。いつのまにか杖は私の手を
離れ、雪景の一部となり、渓谷に立っていた。渦巻く雪風がこれ見よがしと突っ立った杖
の側面に吹きつき、縁起でもない、十字架のように私の眼に映った。
 愛するちょこよ、お前は私の帰りを待っているというのに、苦しみに輪をかけることに
なってしまうとは。せめて私でなくとも、誰かがあの薬草を届けてさえくれれば、お前の
苦しみは私を失うだけで済むのに。
 瞼が閉じようと私をなじる。寒さに私の脚は負け、十字架の下に倒れこんだ。舞い上が
る雪の粉が風にさらわれ、再び宙を舞う。
 ちょこよ……
 私は瞼を閉じ、愛するちょこの姿を思い浮かべた。愛くるしいつぶらな瞳が私をじっと
見つめ、鼻をひくひくと鳴らし、それでもちょこんと座っている。
 はは、よしよし、そんな瞳で見つめるなよ。ほら、お前の大好きな鶏肉だぞ。今日は特
別だ、お腹いっぱいお食べ……
「あの、大丈夫ですか?」
 声に意識が反応する。いかん。私は頭を振るい、一瞬で長い髪の上にずっしりと積もっ
た雪を振り払った。顔を上げるとそこには少女の姿があった。少女はこの吹雪の中信じら
れないほどの軽装で、薄いフードを被り、へその見えるほど丈の短い上着にもはやその存
在の意味などないほど短いスカートをはいていた。私の意識はそんな奇妙な少女以上にそ
の隣に寄り添っている暖かな色をした犬に釘付けになった。
「ちょこ……」
 半ば閉じたままの眼でその犬を見つめる。色姿は違っても、私にはちょこに見えた。
「チョコ、ですか? ちょっと待って下さいね」
 少女は腰にぶら下げた薄く雪の積もったミニバッグをがさごそと漁ると、濃い茶色の板
のようなものを取り出した。
「はい、どうぞ、お食べ下さい」
 私が手も足も動かせないと知ってか、少女は私に雪がかからないようその小さな体で私
の上に覆いかぶさると私の口にその板を運んだ。口に入ると、ほろ苦い味が感覚を失った
はずの口内に広がった。私の味覚がその感覚を思い出すように追って甘さを感じた。舌の
上で溶け、ほろ苦さも、甘さも時間を追うごとにその味を増していく。
 失ったと思っていた感覚たちが目覚め、ごうごうと鳴る北風も、しんしんと冷え肌が引
きつるような痛みも、鮮明に感じられ、少女が微笑んでいるその温かな笑顔もまるで暖炉
の火のように暖かく、そして懐かしく思えた。
「ちょこ」
 私は再び呟いた。私の目の前の少女はいつの間にか雪の中に消え、私の顔の前には愛す
るちょこの姿があった。

 ちょこよ、お前だったんだな。

 雪景の中、私の姿は降り積もる雪に覆われ、見えなくなった。しかし私は埋もれたので
はない。こうして降りしきる雪をちょこと共に眺めているのだから。

372FAT:2008/02/14(木) 23:51:36 ID:ud4ZTT.U0
ぎりぎりセーフ!?

危うくバレンタイン企画に乗り損ねるところでした。
しかしなぜ毎回こんな話になってしまうのでしょう、黒頭巾さんのようなほんわか
話を書くつもりが……

次回なにか企画があれば、今度こそほんわか話が書けたらなぁと思います。

373柚子:2008/02/15(金) 01:29:46 ID:p4FGN5aQ0
前回>>324-331

『Who am I...?』

古都の朝。
多くの人種が集まるこの街は、朝から商人の声や人々の談笑の声、或いは喧嘩などで既に賑わい始めている。
街の南東の方角に建っているバトンギルド本部。
その中の一室でイリーナ・イェルリンはまだ眠りについていた。
窓から差し込む光や、聞こえてくる人々の声を遮る為に毛布を頭から被る。
イリーナにとって街の賑やかな声は騒音以外の何者でもない。
「ああーうっさい」
少しでも音を遮る為に耳に手を当てた。
半分起きてしまった意識を戻すべく、羊を数えてみる。
彼女の羊達は柵を跳ばなかったりフェイントをかけたり1匹に重なって実は3匹だったりと、実にひねくれていた。
何で自分はこうなのだろうか。イリーナはその時だけ自分の性格を恨んだ。
何とか眠ろうと奮闘していると、トドメと言わんばかりに呼び鈴が鳴った。
ギルドマスターのアメリアに任せようと思いしばらく放っておくが、呼び鈴は鳴り止まない。
「そっか。マスター今日いないんだ」
イリーナはアメリアの不在を思い出した。
昨夜、2人が事務所に帰ると置き手紙があった。
その内容はアメリアが大きな依頼で遠くまで行き、他のメンバーともそこで合流するためしばらく不在になるとのことだった。
そういう訳で現在も呼び鈴が鳴り続けているという次第である。
イリーナは来訪者が諦めて帰ることを願った。
しかし来訪者は、居るのは分かっていると言わんばかりに鳴らし続ける。
仕方なくイリーナは隣の部屋で寝ているルイスに行かせることにした。
足で壁を蹴りつけ、意思を伝える。
「お・ま・え・い・け」
言葉のリズムに合わせて蹴りつけると、しばらくして返ってくる。
「こ・と・わ・る」
短く4回壁が叩かれる。
苛立ちを覚えたイリーナは、魔力通信でルイスに伝えた。
「お前行け。たまには仕事しろよ」
「断る。貴様の方が半歩近いだろうが」
「残念。ルイスと私じゃ1歩の幅が違うんだよ。よってお前行け」
耳飾りに付いた、小さな複数の魔石による魔力通信で行われる高速会話。
それを使って2人は相手を行かせようと罵り合った。
しばらくしてルイスの通信が切れた。
「あいつ通信拒否にしやがったな」
忌々しく思いながらも、馬鹿らしくなってきたイリーナは自分が出ることにした。
寝起きでまだ所々跳ねている長い髪の毛を掻きながら、扉の前にいる人物に話しかける。
「今開けまーす」
扉を開くと間から覗く漆黒の服装。
それを見て一瞬イリーナの息が止まる。
開けかけた扉を再び閉めようとするが訪問者に足を挟まれる。
「お前はいつまで来訪者を待たせる気だ?」
「ええっと……軍人さんが何の用で?」
訪問者は軍服を着た軍人だった。
軍人の男は1度睨みつけ、イリーナの問いに答える。
「お前ら2人に話があってきた。まあ通せ」
イリーナが仕方なく通すと、軍人は無遠慮にも近くのソファに腰をかけた。
「なんだ。客に珈琲の1つも出せんのか」
思わず罵倒が口から滑りそうになるが、身分の違いを考え大人しく従う。
更に寝間着のままの姿のイリーナを舐め回すように見てくるので、イリーナの気分は最悪だった。
珈琲の準備をするついでに魔力通信でルイスを呼ぶ。
煎れた珈琲を軍人の前に運ぶと、男が口を開いた。
「色気がないな。谷間も見えんとは悲惨だ」
「悪かったな。で、話って何だ?」
「うむ。では話そう」

374柚子:2008/02/15(金) 01:31:07 ID:p4FGN5aQ0
長テーブルを挟み、軍人とイリーナ達が向かい合う。
起きてきたルイスを加えて対談は始められた。
「まず聞くが、お前達は昨日古都から少し離れた森で依頼を受けたな?」
「ああ。それがどうした?」
「どんな内容だった?」
軍人の男が真正面からイリーナの瞳を見据える。
その重圧に耐えきれず、イリーナは目を逸らした。
「言う義務はないな。これはギルドと軍の法で正式に定められている筈だ」
「無理にとは言っていないさ」
「で、それがどうした」
男はしばらく黙り込み、ゆっくりと顔を上げるとその重々しい口を開いた。
「お前らの依頼主の老人が、今朝死体で見つかった」
衝撃がイリーナの体を突き抜ける。
横目で確認すると、ルイスも同様に言葉を失っていた。
「ど、どういうことだ……?」
「それを調査中なのだ」
男が2人を交互に眺める。
「俺とイリーナを疑っているということか?」
ルイスが鋭い視線で男を射抜く。
しかし、男は動じた様子もなく、逆に薄笑いを広げた。
「疑ってはいない。ただ依頼の内容を聞きに来ただけだ」
それだけ言うと、男は立ち上がった。
出口の前まで行くと、ふと足を止めた。
「ちなみに、その老人には無数の裂傷が刻まれていたそうだ」
その言葉に、イリーナ達は再び呼吸が止まる。
「待て、その老人の近くには何か……いや、何でもない」
男は再び歩を進めると街の人混みの中へ消えた。
しばらくして、イリーナが深い溜め息をついてソファに沈む。
「ルイス、まずいことになってきたぞ」
「ああ、知らずの内に厄介事に巻き込まれているようだ」
「それも軍は私達のことを全て把握しているようだしな。あの男の反応を見てりゃ分かる」
イリーナは深い思考の海へと沈んだ。
出来事と男の話を照らし合わせ、思考を整理していく。
軍が自分達の所へ訪ねるのは分かる。1番怪しい人物と言ったらまず自分達だろう。
しかし、疑問は残る。
何故軍が動いている……?
どちらにしろ、国の使者が派遣されるだろう。
だが、言い方は悪いがこれくらいで軍は動かない。
軍が動くときはもっと規模が大きく、国際的な問題に繋がるようなものばかりだ。
そして何よりも、1番疑問に感じることは――――
その時、再び呼び鈴が鳴らされた。
「誰だ?」
「私が出る」
鳴り続けられる呼び鈴を忌々しく思いながら、イリーナが扉の前まで行き、扉を開く。
「え?」
イリーナの目は斜め下に注がれていた。
そこには、見知らぬ少女が立っていた。
一見十代に入り始めた程度の普通の子供。全身を血と泥で汚している以外は。
少女はイリーナ達を視界に入れると、1度安心したような表情をし、意識を途切らせその場に倒れた。

375柚子:2008/02/15(金) 01:34:01 ID:p4FGN5aQ0
「こ、今度は何だ……?」
イリーナの前には見知らぬ少女が倒れていた。
全身をフードコートで包み、その中から覗かせる幼い容貌。
血と泥で汚したその容姿は、早くも美貌の気配を見え隠れさせている。
「ルイス、まさかとは思ったけど隠し子が居たなんて!」
「貴様は引き算もできないのか? どこに俺の年齢でそんな年の娘を持つ人間がいる」
「いや、ルイスなら人間の常識なんて関係無さそうだし」
ルイスの瞳に怒りの炎が灯ったのを確認し、イリーナは素早く目を逸らすと少女に注意を戻した。
少女の表情は苦悶に満ち、小さく唸っていた。
「まずはこの子供をどうするかだ。どうしてここへ訪ねて来たかは置いておくとして、このままだと死ぬぞ」
「俺は知らん。勝手にしろ」
そう言うと、ルイスは客室へと戻っていった。
取り残されたイリーナは溜め息を吐くと、少女を抱き上げ中へと運んだ。
空いているソファまで運び、布を敷くとその上に少女を寝かせる。
少女の下敷きになっている布に血が染み込む。
イリーナはしばらくその様子を見た後、傍らで優雅に腰をかけているルイスに視線を向けた。
「無関係だと思うか?」
「この娘と一連の出来事がか?」
「そうだ」
ルイスはしばらく考え込むように目を閉じると、やがて口を開いた。
「さあな。だが関係があると考えても一連の出来事に結び付かん」
「だよなぁ。やっぱり今朝の事とこれは別か。ああもう、何もかもが不自然過ぎて頭がどうかなりそうだ」
イリーナはうなだれ、本日何度目かの溜め息を吐いた。

寝間着から普段着に着替えたイリーナは、ルイスと少女の今後の対応について話し合っていた。
「やっぱり、孤児院にでも押し付けるのが1番かなあ」
「だろうな。引き取る理由が無い」
ルイスがきっぱりと切り捨てると、事務所内は静寂に包まれた。
唯一、窓からとめどなく入ってくる賑やかな人々の雑音だけが事務所に響く音となる。
その時、雑音の中に他の音が混ざった。
音は事務所の中から発せられた。
「……ん、うん……」
それは、少女の口から発せられていた。
少女の瞳が開かれる。
覚醒した少女は、うなだれた自分の腕を見つめると静かに動かした。
次に辺りを見渡し、見慣れない景色に表情が不安げに曇る。
「目が覚めたみたいだな」
少女は突然かけられた言葉に驚き、声の方へと目を向ける。
「気分はどうだ? 体は痛むか?」
「……」
イリーナの言葉に対し、少女は無言だった。
困ったイリーナは、出来るだけ笑顔を作り、少女に再び問掛ける。
傍らでルイスが小さく失笑したのを忘れない。
「どこから来た、家出か?」
「…………」
「どうしてここに来たんだ?」
「……………………ぁ」
少女の口から言葉にもならない声が漏れる。
再び何かを言おうとするが、咳き込んでしまう。
それはまるで声を出すこと自体に慣れていないかのようだった。
「じゃあまずは体を綺麗にしようか。そのままじゃ流石に悪いし」
少女は己の体へ目を落とした。
自分の体を包むフードコートと体に付着している血を、不思議そうに見つめる。
「おいで。歩けるか?」
イリーナが屈み、優しく少女に手を差し出す。
すると、少女の表情が少しだけ和らいだ気がした。

376柚子:2008/02/15(金) 01:35:20 ID:p4FGN5aQ0
イリーナは少女をギルドの浴場へと連れていく。
イリーナが上着を脱ぎ、浴場に入り水の温度調整をする。
「1人で脱げるよな?」
少女は恭しく頷くと、もぞもぞとフードコートの留具を外していく。
バサリという音を鳴らし、フードコートが少女の足元に落ちる。
少女は、フードコートの下には何も身に付けていなかった。
白い裸体が露になると共に、血と泥も増していた。
恥ずかしそうに浴場へ踏み込む少女を見て、イリーナが重要なことを思い出す。
「あまりに元気そうだから忘れていたけど、体は大丈夫なのか?」
イリーナの問いに、少女は頷いた。
イリーナはその様子を見て安心するが、1つのことに気づいた。
「傷、全く無いじゃないか……」
少女の体は、血で汚れてはいたが全くの無傷だった。
じゃあその血は何だ?
そう言いかけた言葉を飲み込み、イリーナは温水を汲むと少女の頭から被せる。
温水が血と泥とイリーナの思考を流していく。
汚水が排水溝へと吸い込まれ、やがてそれは無色の水に変わる。
次にイリーナが泡立った布を手に持ち、丁寧に体を洗う。
その作業の合間にも話しかけるが、相変わらずイリーナが一方的に話すだけだった。
泡だらけの体を温水で流し、次に頭を洗う。
「ほら、目を瞑れよ」
その言葉に従い、少女が必要以上に強く目を瞑る。
イリーナの言葉に応じることから、無視している訳でも、言葉が分からない訳でもなさそうだ。
仕上げにイリーナが少女の頭上に温水を流す。
艶を取り戻した少女の黒髪が、光を反射し綺麗に輝く。
肩先まで伸びた髪の先から落ちる水滴の音だけが浴場を占めていた。
その静寂を破ったのは、またしても少女だった。
「……ミ、シェ…リ……」
「え? 今、何て」
少女は必死に口の筋肉を動かし、何かを伝えようとしていた。
「……ミシェ、リー。ミシェリー!」
「それ、君の名前……?」
イリーナの言葉に少女が大きく頷く。
「いい名前だね」
イリーナが優しく頭を撫でてやると、ミシェリーという少女はくすぐったそうに笑った。



「で、何故俺の服を貸さなければならぬ」
「しょうがないだろ。私のは全部合わないんだし」
2人の男女が睨み合いながら口論しているのを、困った様子で見つめる少女という光景。
服が無いミシェリーは、代用としてルイスのシャツを着せられていた。
シャツなのだが、小柄なミシェリーが着るとワンピースへと変わるのだ。
「だから、その服を今から買いに行くんだよ。そんな訳で留守番よろしく」
そんなイリーナを見て、ルイスがいやらしい笑みを浮かべた。
「ほう。ついに母親に転職する気になったか。父親は一生できることはないだろうがな」
「死ね。そもそも、母親を探すにしろ、孤児院に預けるにしろ時間がかかるだろ。
とりあえずマスターが帰ってくるまでの間は面倒見るさ。マスターなら人脈も広いしどうにかなるかもしれないだろ」
「勝手にしろ」
あくまで無関係だと主張するルイスを、ミシェリーが気まずそうに覗く。
そのまま自室へ戻ろうとルイスが階段へ向かうが、手を掴まれ足を止める。
掴んだのはミシェリーだった。
華奢な腕を震わせながら、必死にしがみついている。
ルイスは少し力を加えれば簡単に振り払うことができたが、そうはしなかった。
「何のつもりだ?」
「け、喧嘩……だめ……」
ルイスの鋭い視線を、ミシェリーは真正面から受け止めた。
どうやらミシェリーは、先程のやりとりが己のせいで起きた喧嘩だと思ったらしい。
「ミシェリー? さっきのは喧嘩なんかじゃ……」
イリーナの手に、ミシェリーのもう片方の手が乗せられた。
「仲直り」
うんうんと、満足そうにミシェリーが頷く。
若い男女に挟まれて少女が手を繋ぐ光景は、まるで家族のようにも見えた。
ルイスは困惑した様子で、己の手を見つめている。
イリーナも訂正する気も失せ、こんなこともたまには悪くないかなと、小さく苦笑した。
しかしすぐに、間接的にルイスと手を繋いでいるのは気持ち悪いと思った。

377柚子:2008/02/15(金) 02:06:49 ID:p4FGN5aQ0
なんとイベントをやっていたとは!
……完全に乗り遅れました。次回からは参加したいと思います。

>◇68hJrjtYさん
初めまして。感想レスありがとうございます。
はい、ROM専のときよく見かけておりました(笑
それはそうと感想があるのと無いのではぜんぜんモチベーションが違いますね。ありがとうございます!

>ワイトさん
初めまして。柚子と申します。
大丈夫です、自分も漢字は苦手ですから(常用漢字でもよく忘れます)
ちなみにアメリア・バトンは人名です、分かりにくくてすいません。
ギルドの名前にギルマスの家名が入ったのです。

作品の方は時間が無くまだ途中までしか読めていません(すいません!)
ウェアゴートが剣を振り回したり戦士スキル使ったりするのに驚きました。
戦闘を考えるのは楽しいですよね。自分は苦手な方ですが・・・
それとアースヒールには笑わせてもらいました。

>718さん
初めまして。柚子と申します。
感想ありがとうございます! とても燃料になります。
早速バレンタインネタを書かれたようですが、こんなに早くにネタが思いつくのが羨ましい。
作品もまとまっていてすばらしいです。
お婆さんがナイスです。最後の演出はとてもドキドキさせていただきました。
ラブストーリーが書ける人は尊敬します。

>FATさん
初めまして、柚子と申します。
実を言うと、昔からのファンです!
もう双子大好きです。早く出てきてくれることをひっそりと待っていたり。
それとギリギリセーフおめでとうございます(笑
FATさんらしい丁寧な文体でとても良かったです。
ラストのシーンではとても感動。動物ネタには弱いですね・・・
余談ですが自分の飼い猫の名前もなのでちょこが猫に脳内変換されました。
本編の方もあの出てきた武道家はもしや・・・・・・!

他の職人様方の作品はただいま朗読中なので感想はまたの機会に

378ウィーナ:2008/02/15(金) 15:24:39 ID:PI3MWrYQ0
>>◇68hJrjtYさん
わわ;
ごめんなさい><
ちゃんと読んでませんでした;

その他3人の指摘、有難うございました。
そしてご迷惑をかけましてごめんなさい;

これからは気をつけます;

>>白猫さん
ふむ!
私なんか3日坊主でなかなかすすまないです^^;
1回書いたのを消しちゃったりすると
ずーっとやりたくなくなりますね・・・w
そうならないように頑張りたいと思います!


えーと、あげてしまって大変ご迷惑をおかけしました。
そしてご指摘&コメント、有難うございます^^

また、他にもいろいろご指摘おねがいします<(_ _)>

379之神:2008/02/15(金) 17:31:04 ID:EljImjJs0
>>柚子さん

お初でっす(・ω・
ROM専よりようこそ・・・・・!
ずっと他の作家さんのを読んでいたからか、文才か・・・・とても読みやすい(´∀`*
これからもよろしくです。

>>ウィーナさん
age投稿は、私も以前やってしまいましたからorz
ここは比較的平和ですが、やっぱりageると変なのも沸いたりしますしね。
小説内容は私も参考になってたり・・・・・
同じくよろしくです。

>>ドワーフさん
お初です。
ユニークの説明には、歴史や特色があるのでネタとして使いやすいですよねぇ(-∀-
私もネタ切れたらUネタに走ろうかな・・・・・と(コラ

以上、滅多にレスしない之神ですた。
また気が向いたら頭を絞ってレスします(・ω・´)

380スメスメ:2008/02/15(金) 22:22:57 ID:3sEqg9gAo
前スレ>>750 現スレ>>6-7 >>119-121


『どけっ!アルっ!!』

その声でやっと我に返ったオレは、とっさに今の事態を把握して右へ飛び退いた。
襲いかかるバインダー、その攻撃を飛び退いて回避するオレ、そして……
そのバインダーに向かって飛びかかる一人の男!
「うおおぉぉっ!」

男の怒号と一緒に土煙が上がる。
そこから現れたのは180㎝以上の背丈に筋肉の鎧をまとい、左肩に金属製のショルダーパッドを装着し、更にその左手に刀身がポッキリと折れた剣を携えいる男。そして頭から胸の辺りまで真っ二つに割れ、男のであろう剣先が折れて突き刺さり崩れ落ちたバインダーだった。
すげぇな、一撃で仕留めちまったよ。
とにかく助かったのか?


「助かったよ、アイナー」
「……」
男の名前は『アイナー』、オレが古都に来て初めて仲良くなった冒険者なんだけど、
「って、アイナー?」
こんなに無愛想な奴だったか?もっと気さくな良い奴だと思ったんだけどな。
つーかシカトかよ。

まぁいいや。
それはともかくとしてこのバインダーって奴は何なんだ?
これでも、自慢じゃないけどそれなりに腕はあるつもりだし、ちょっとした修羅場は潜ってきたつもりだけどあの殺気は尋常じゃなかった。と言うより殺気の中にある邪気とでも言うのかな?それがもの凄いモノだったのは間違いないと思う。

そんな事を考えながらバインダーの中身を色々と物色していたら……、
ちょうど拳くらいの大きさで紅い水晶みたいなモノが胸元にある。
「何だこれ?」
どうもアイナーが放った一撃を止めて、剣を折った原因はこれみたいだな。そう考えるとエラく固い水晶玉だな、おい。
しかもコレ……、脈打ってないか??
「おい、アイナー。これさぁ、何だ…」
と思う…?って聞いてねぇし!

それどころかアイツ、さっき助けた女の子の所にいるぞ。
「アイナー、何やってんだ……」
おいおい、いきなり胸ぐら掴んでやがるぞっ!
「何やってんだ!?」そう言って奴の肩を掴むけど……
「…を…せよ。……く……」
おいおい、コイツ何言ってるんだ?
しかも息が荒いし、体も小刻みに震えてる。ホントに一体どうしちまったんだ?
それでも、これだけはバカなオレでも解るぞ、うん。

コイツ、ヤバい!!

「止めろっ、アイナー!」オレは掴んでいた手を思いっきり引っ張ったけどビクともしねぇ。アイナーはオレが止めようとしているのをお構い無しに女の子の胸ぐらを掴んだまま持ち上げて、まだ何かをぶつくさ言っていたが、突然…
「早く俺の剣を寄越せェェエェェ!」
その瞬間、女の子の身体から強烈な光と衝撃波が発せられて部屋の壁まで吹っ飛び、眼がくらんだ。体勢を立て直し、眼もやっと見えてきたと思ったらアイナーの右手には真っ黒な片刃の大剣が握られいて、女の子の姿がない。

「ククク…、この感覚たまんねぇなぁ」
「おい、アイナー…」
「あぁ、まだ居たのかアル。この剣、すげぇだろ?」
「んな事はどうでも良いっ、あの子はどうしたんだ!?」
「あの子?…あぁ、キリエの事か。あいつならここに『持ってる』じゃねぇか」
何言ってるんだ?ここに持ってるって、
「まさか、お前の持ってるその剣ががあの子って言うんじゃねぇだろうな…?」
「さっきから言ってるだろう、コレだって」
と、言いながらアイツはキリエという女の子(剣)を右肩にトントンと乗せながら喜々として語ってくる。
その笑みは何処か違和感があってさっきのブツブツ言っている時とは違った不気味さを感じる。
そんな事は今はどうでも良い。それよりも、
「アイナー、その子をかえせ。オレが保護する」
「は?アル…これはオレの『物』だぞ。お前にどうこうされる言われは無いんだがなぁ…」…物?何言ってんだこいつは…。

381スメスメ:2008/02/15(金) 22:26:10 ID:3sEqg9gAo

「あ−…、そうだアル。お前もっと強くなりたくないか?」
そう言うとアイツはさっきよりも更に顔を歪ませながら不気味な笑みを浮かべてオレに一歩、また一歩近付いてくる。あー、いきなりコイツは何を言い出すんだ?
「これさえあればオレもお前も『強く』なれるんだぜ?すげーだろ」と左手を腰のベルトに入れ、そこから小さく深い緋色の石を取り出してオレに見せている。やはり一歩、また一歩と足を進めながら…。
オレは思わず、アイツの違和感に身構えてしまった。
それでもお構いなしにアイツは、
「アル〜、『こっち側』に来いよ…。オマエならきっと強くなれるぞ〜」
オレの前で立ち止まり、やっぱり薄気味悪い笑みを浮かべて問いかけてくる。つーかマジで何を言っているのかわかんねぇぞっ。
「はっ、バカ言うんじゃねぇよ。誰がお前の言う事なんざ聞くかっ!第一そんな簡単に強くなれるわけがねーだろがっ」な〜んて強く言ってみたけど、絞り出す声は少し震えてしまう…。流石に怖いぞっ!
「…なぁ、考え直しやしないか?コイツさえ飲めばお前も強くなれるんだぜ」
「断る。それにその子は『人間』だ、お前の『物』なんかじゃないっ!」
「そうか……。残念だ、よっ!!」
その瞬間、オレの右側が真っ暗になった。
次に判ったことは温かい『何か』がオレにかかったと言うこと。
最後に理解できたのはそれが血だと言う事だった。

…一体誰の?
あ−、オレのか……。


オレのっ!?



と、言う訳で回想終了!!

痛ッテェェェェェ!!
「……っ!マジかよ!?」

「オマエがいけないんだぞぉ、ア〜ルゥ?オマエが俺様に逆らうからこぉんなに痛い眼にあうんだぜぇ?……フヒッ!ふひゃひゃはひゃははは!」

コイツはヤバいっ!判っていた事だけどヤバ過ぎだろっ。
逃げなきゃ…逃げなきゃ殺されるぞ!







…逃げる?どこへ?
こんな壁に追いやられ、剣閃すら見えない程実力差がある奴からどうやって逃げろって?
第一あの子はどうなる?
アイナーの剣として、血みどろになりながらズット使われ続けるのか?
んで、オレはここでこんなイカレた奴に理不尽に殺されるのか…?





「冗談じゃねぇっっ!!!!」

オレは逃げねぇぞっ!
右肩が上がらない?あんなバカ左手と両脚があれば十分だっ!
剣閃が見えない?そんなもん気合いで何とかなるっ!
そんでもってあの子も助けて、アイナーの大バカ野郎に目一杯のゲンコツを喰らわせてやるっ!

「お〜い、こっチ見ろよ。もう少シ遊んでくれよゥ?じゃなイとツマラナいだろう?」と、アイナー…、いやあんな奴『バカ』で十分だ。
そのバカからのご指名だ。是非オモテナシしてやらねぇとなっ!
「そうだな…オレもお返ししてやらねぇと、なっ!」言い終わると同時に奴の足を素早く払い蹴るっ。
転ばなくても少しだけ体制が崩れれば十分だっ。
その間にすかさず奴から離れ、跳躍して距離を取る。
だけど、それで一安心出来る相手じゃない。
案の定オレが距離を取るために飛んだ瞬間に間合いを詰め、獲物を振り下ろして来やがった。
地面に剣がぶつかった途端、地面が割れるほどの威力のある斬撃を何とかかわし、カウンター気味に懐に入って鳩尾(みぞおち)に掌打を打ち込む。打ち込まれた奴が吹っ飛び壁にぶつかった。
「ククク……」
だけどダメージが無いのかっ?普通は、のたうち回るような痛みで呼吸が出来なくなるはずなのにそれどころか…、

「そウダよっ、もっとオれを楽シマセてぐレヨっ!!」
口から血を吐き出しながしながら意気揚々と笑いやがるっ。
うるせー、こっちはお前からの攻撃を避けるので精一杯なんだよっ。
こんなのを一発もらったらお終いだぞっ。つーか普通地面って割れるモンなのか?
そんな事なんかお構いなしに奴は攻撃してくるが、コイツの攻撃も単調だ。振り下ろすか水平に薙ぎ払うか突くかどれかしかない。いくら早い剣速だって言ってもパターンが分かればオレでも避けられるっ!
でも、オレのケガもあまり良くない。とっととケリをつけないと…

…仕方ねぇ。
じっちゃん、使わせて貰うぜ。
13の奥義の一つを…。

382スメスメ:2008/02/15(金) 22:30:31 ID:3sEqg9gAo
どうも、遅筆に益々ターボがかかってきているスメスメです。お久しぶりデスね…。

と、言う訳でかなり前のになりますがコメント返しです。

ワイトさん
大丈夫ですよー、私も皆さんの作品に感想を書きたくても携帯電話なんで書きにくく結局書けてないですし(ぉぃ
えぇ、続き書きたいんですけど相変わらず遅筆で…
もう泣きたくなってきますよ。

FATさん
こ、光栄でありますっ!
実のところ、バインダーを題材に書いたにしてはあまり出てきてないんですよね…
もっと先輩方のみたく書けられる様になりたいです。

七掬◆ar5t6.213Mさん
そう言って頂けると僕としてもこんな文でも喜んでくれてうれしいです。
そ、そこまで深く考えていただけると何か申し訳ない気持ちが…

68hさん
実はこれ、2話目に予定していたヤツなんです。
そこを良く手伝って貰ってる相棒にこの後の方が良いと言う事で変えてみましたがこれで善かったと思ってます。
持つべきモノは心ある理解者ですな♪
僕自身、メインで動かしてるのが武道なので武道ひいきがかなりあると思いますが気長に見てやってくれると嬉しいです。

メイトリックスさん
出来るだけ膨らませていこうと思ったんですけどまだまだですね(-_-;)
た、確かにアルは書いてる本人も正直悩まされました(ぉぃ
きっと器が大きいんです、きっとそうですよ…(明後日の方を見て)


ところで、書いてる皆さんに質問です。
皆さんはどうやって人物やオリジナルの名前を決めていますか?
私はキャラクターならばですけれど、その人物にイメージやそいつの性格、はたまた結末などを意味する言葉を探してます。
と、言っても10割相棒が見つけて貰ってるのが実状ですけど…
因みに今回登場してきたアイナーは、『とある戦士』だそうです。
是非とも皆さんのを参考にさせて下さいませ♪

383◇68hJrjtY:2008/02/15(金) 22:38:53 ID:VU9CmfbA0
>之神さん
バレンタイン短編完結編、不気味に一人にやにやしながら読ませてもらいました(笑)
いやーもう雪がなんだ!って感じで…徹とミカの周囲だけラブパワーで暑くて居られなさそうな!
でも徹ママのお使いにはそんな意味があったのかと思うとなるほど、ママは策士ですな(;・∀・)
そして徹パパが実はゲムオン社員だったということがさらりと。お勤めご苦労様です(笑)
シルヴィーのチョコはライトとシリウスへだったんですね、ライトはもう少し喜ぶべきやΣ(ノд<)
徘徊者シリウスも元気そうで何よりです(笑) フィアレスも登場したしもう言うことナシですね!
なんとホワイトデーネタも考えてられるんですか…本編も同じく、楽しみにしています。

>FATさん
「ちょこ」って誰だろう!?と思いながら読んでいたら…なんと。
チョコレートには脳に栄養を補給するなど、美味しいお菓子という以上の効果がありますし
ウィザードの彼がこうして倒れる寸前にチョコレートを食べられたというのはある意味延命とも言えそうな!
しかしこのサマナたん(?)には結局、彼が本来何を言いたかったのかは分からないままだったんでしょうね(笑)
おっと、そういえば古都のチョキーの飼い犬も似たような名前でしたね。
動物好きな私にも彼の気持ちが痛いほど分かります( ´・ω・)
とても消え入りそうなラストシーンでしたが…彼とちょこがきっと生きていると信じて。。

>柚子さん
イリーナが苦労して作った笑顔というものを見てみたくてたまらない68hです(*´д`*)
そしてやっぱりお互いの本心はどうあれ、イリーナとルイスってお似合いだよなぁ…(・∀・*)
さてさて、なぜか軍が動いているというあの依頼の真相ですが、突然現れたこの少女ミシェリーとは。
自分の血ではないということはいわゆる返り血ってやつですよね。うーん、件の依頼との繋がりはまだ見えませんね。
「ルイスのシャツをワンピース状態にして着ているミシェリー」という姿に妄想が止まりません(*゚Д゚)=3
続きお待ちしております。
---
バレンタインの短編の方は、柚子さんの方で考えがまとまっているなら例え14日じゃなくてもアップしてもイイと思いますよ!
というか、この企画(?)を私が騒ぎ出した頃に柚子さんがここに書き込み始められたと思いますし
本編『Who am I...?』のキャラを使うにはまだ時期焦燥的な感もありましたしね。仕方ありませんよ。
また突発的に企画が発動するかもしれませんし(笑)

>スメスメさん
続き待ってましたよ〜!
あわわ、バインダーがどうにかなったと思ったら狂気の剣士アイナー登場。っていうかアルの友達だったんですか(;・∀・)
なにがどうして彼が変わってしまったのかはともかく、元もとの窮地がさらに濃くなったのは事実ですね。
しかし中盤の
"右肩が上がらない?あんなバカ左手と両脚があれば十分だっ!
 剣閃が見えない?そんなもん気合いで何とかなるっ!"
の部分はもう武道好きにはたまらないセリフですよええ。って、スメスメさんも武ラザーだったとは!ナカ━━(´・ω・`) 人(´・ω・`)━━マ!!
アイナー、やっぱり倒すしかないのでしょうか。そして少女キリエの謎も気になります。続きお待ちしてますね。
---
キャラ名ですか〜…私もRSキャラ含めて毎回名前を考えるのは苦労します。スメスメさんは理解ある相方が居るようで羨ましい(´;ω;`)
最初から小説の大筋やキャラ設定ができていればそれにちなんだ名前にさせてあげることもできると思いますが
私のように突発的に思いついた小説を書いてみたりすると絶対途中で挫折&キャラ名も可哀想なくらい短絡的に…。
個人的にもここの書き手の皆様のキャラネーミングのコツを聞きたいです(笑)

384名無しさん:2008/02/16(土) 04:50:43 ID:nqEysWJo0
aa

385FAT:2008/02/16(土) 13:11:19 ID:mbZV.TiM0
前作 二冊目>>798(最終回)

第二部 『水面鏡』

キャラ紹介 三冊目>>21
―田舎の朝― 三冊目1>>22、2>>25-26 
―子供と子供― 三冊目1>>28-29、2>>36、3>>40-42、4>>57-59、5>>98-99、6>>105-107
―双子と娘と― 三冊目1>>173-174、2>>183、3>>185、4>>212
―境界線― 三冊目1>>216、2>>228、3>>229、4>>269、5>>270
―エイミー=ベルツリー― 三冊目1>>294、2>>295-296
―神を冒涜したもの― 三冊目1>>367、2>>368、3>>369
―蘇憶― 五冊目1>>487-488、2>>489、3>>490、4>>497-500、5>>507-508
>>531-532、7>>550、8>>555、9>>556-557、10>>575-576
―ランクーイ― 五冊目1>>579-580、2>>587-589、3>>655-657、4>>827-829
>>908>>910-911、6>>943、7>>944-945、六冊目8>>19-21、9>>57-58、10>>92-96
―言っとくけど、俺はつええぜぇぇぇぇ!!― 六冊目1>>156、2>>193-194、3>>243-245
>>281-283

―5―

「デルタっ! 丸く反れ!!」
「あいっ!」
 レンダルの短剣と盾に変身したデルタは、レンダルに言われた通り盾の部分を丸く反ら
せ、お椀型になった。レンダルを目指し、飛んできた火の玉はデルタの盾に吸い込まれる
と丸い底に沿って軌道を180°変え、魔術師の方に戻っていった。
「喰らいな! 俺の得意なぁ! デルタ投げーーっ!!」
 レンダルはデルタの剣の部分を思いっきり振りかぶって投げた。空中でデルタの形が変
わり、細長く、突き刺さりやすい直刀型になった。魔道士は突然姿を変えた剣に戸惑い、
左肩にその剣を刺し込まれてしまった。
「デルタ、曲刀!」
 飛びつき、剣の柄を握るとレンダルは叫んだ。すると、またもデルタは形を変え、反り
あがった曲刀となったのである。レンダルは魔道士の肩に刺さったままの曲刀に力を込め、
引き下ろした。魔道士を引き裂いた曲刀を真横に切り返すと、魔道士は倒れた。
「お姉さま、私たちのコンビ、最強ですわね!」
 剣と盾の二方向からデルタの声が発せられる。中々に奇妙なものだ。
「ふっははははは、はっははははは!!」
 突如坑道に響く不敵な笑い声。レンダルはバッと振り返った。
「お前らごときのコンビが最強だと、はんっ、笑わせてくれるわ」
 見れば銀髪に黒いマントを羽織った男と、ひょろ長い杖を持ったひょろい男が立ってい
た。
「誰だ、てめえらは!」
「ふっ、俺か? 俺の名は……」
「ドレイツボォ!」
「だ!」
 銀髪の男と長い杖の男。二人の息はぴったしだ。
「で、そっちの魔法使いそうな雰囲気のやつは?」
「こいつの名はなぁ……」
「ドレイツボォ!」
「じゃない!」
 銀髪の男と長い杖の男。二人の思考は噛み合っていない。
「おねえさまぁ、なんですの、この方々?」
「新手の変態だな」
「おい、てめえ、口の利き方に気をつけな! このドレイツボ、切れるとこえぇぜぇぇぇ
ぇぇぇ!!」
 ドレイツボはマントの裏にさっと手を入れると、二本のダガーを取り出した。
「なんかジム=モリみてえなやつだなぁ。おいデルタ、どうする?」
 レンダルは剣に向かって話しかけた。
「やっちめいましょう」
 盾から返事が返ってくる。小憎たらしいやつだぜ。レンダルは呆れた顔をした。
「やる気か、いいぜ。言っとくけど、俺はつええぜぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

386FAT:2008/02/16(土) 13:12:10 ID:mbZV.TiM0
 ドレイツボが素早く手首を反すと、二本のダガーが地面にボテボテッと落ちた。そして
得意気に腕組みをして見せた。
「はははは、この素早さに身動きの一つも取れまい! 俺は冒険のスペシャリスト! そ
の素早さは全てを制するぜぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
 レンダルは呆れて物が言えなかった。
「なんだ、この気狂いは」
「ジム=モリおじさまをいぢめすぎたせいで、同類が集まってきてしまったのでしょう
か?」
「そらそら、何をこそこそ話してんだ。また俺の番か? 速すぎると攻撃回数が増えちま
って困るぜぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
 またマントに手を突っ込むと、今度は同時に四本のダガーを取り出した。
「わりぃな、さっそく終わりだぜぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
「ドレイツボォ!!!」
 ドレイツボは左手を右下に、右手を右上にかざし、勢いよく腕を振った。それは真正面
から見るとアルファベットのXのように見え、その軌跡に字幕が降りてきそうだ。ダガー
はふらふらと炭坑の壁に当たり、チンと四つのちんけな音を立てて落ちた。
「どうだ! 名づけてアルファベットXの悲劇! お前たちはもう立ってもいられないは
ずだぜぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
 勝ち誇ったドレイツボ。彼の眼前には腹を押さえながら、地面をのた打ち回るレンダル
の姿が。
「はははははははははは、だめだ、立てねえ、立てねえよぉ! ははははははははは」
 腹を痛そうに抱えながら、レンダルの目から笑いすぎて涙が零れた。
「ふっ、無意味な戦いだったぜ。ま、この俺のアルファベットⅩの悲劇を受けて立ち上が
ってきたものはいない。当然の結果だぜぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
「もっ、もうだめですわ、おねえさまぁ! きゃは、きゃははははははははははは」
 ぽんっとレンダルの剣と盾になっていたデルタの変身が解けた。デルタもレンダルの横
で腹を抱えながら、膝をつき、大笑いした。長い杖の男はデルタを見るとせわしなく杖を
回し始めた。
「あ〜、あ〜ぁあ、面白かった」
 涙も流れてすっきりしたレンダルはひょいと飛び起きた。デルタもそれに合わせてすっ
くと立ち上がった。
「う、うわぁおえあえいやぁあ……、まさか、この俺のアルファベットⅩの悲劇を喰らっ
て身も心もぼろぼろのはずなのに、立ち上がれるやつがこの世に存在していたなんて!!」
「ドレイツボォ!!!」
 長い杖の男が悲しげに叫ぶ。そして長い杖をぐるぐる回しながら不気味にデルタに近づ
いてくる。徐々に回転速度を上げていく杖。その速度が最高潮に達したとき、杖がデルタ
のスカートの裾に引っかかり、スカートを激しくめくり上げた。
「ドレイツボォォォォォォオオオオオ!!!!!」
「う、うえあぁぁぁあぁぁぁあぁぁっっっっ!!」
 デルタのパンツから目に痛い、どピンクの光線が放たれた。ピンクの光線は薄暗い坑道
をどぎつく照らし、スカートの裾がふわりと戻ると光線も消えた。
「いやん」
「くっくくくく、かぁっはっはっはっは!! こいつはいいぜ。おい、お前ら。面白いも
ん見せてくれたお礼だ。こいつを喰らえっ!!」
 レンダルはデルタをぐいと引き寄せ、脇に抱きかかえるとスカートをめくってパンツを
露出させた。
「きゃーーーー、きゃーーーーー!! おねえさまやめてぇぇぇぇぇっ!! デルタには
ジョーイさんがいるのーーーー!! お嫁にいけなくなっちゃうぅぅぅぅぅぅ!!」
「ド、ドレ、ドレイツボォほぉほぉほぉほぉほぉほぉ!!」
「うっっっっぎゃーーー!! おっっっっぎゃーーー!! えっっっっぎゃーーー!!」
 目を閉じてもどピンクの光線は二人の視神経を痛みつける。二人は手足をばたばたさせ、
狭い坑道内をのた打ち回った。
「どうだ! 名づけて変態Dの悲劇! お前たちはもう立ってもいられないはずだぜぇぇ
ぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
 レンダルはドレイツボのまねをして、けたけたと笑った。デルタは恥ずかしさに顔を真
っ赤にしながらスカートの裾を押さえ、お嫁にいけない、お嫁に……とぶつぶつ嘆いた。

387FAT:2008/02/16(土) 13:12:59 ID:mbZV.TiM0
「あの、お取り込み中失礼するが、あなたたちはジム=モリと言う人物をご存知か?」
 のた打ち回るドレイツボたちに気を取られていて気付かなかったが、一人の女性が二人
の近くに立っていた。黒い武道着を着た前髪の揃った小柄な女性。その黒髪は力強く輝い
ていて美しく、小柄な体に見合わないたくましさがレンダルたちには印象的だった。
「あ、ああ、知ってるよ。それがなんだい」
「よかった。実は、彼からあなたたちに渡してほしいと頼まれているものがあるんだ」と
黒髪の女性はカバンから三本の巻物を取り出し、レンダルに渡した。
「なんだろうなぁ。ま、あいつの持たせるものなんざろくなもんじゃないだろうけど。わ
ざわざこんなとこまでわりぃな、お嬢さん、お名前は?」
 黒髪の女性が短い髪を少し振ると、しゃなりと上品な音を奏でた。そしてこう答えた。
「マリス=アーモナシーと言う。この坑道には修行のために来たんだ。悪びれる必要はな
いさ」
 明るく爽やかな、坑道という陰気臭い場所に似合わない笑顔。レンダルは一発でマリス
のことを気に入った。デルタも丸く、大きな好奇の目でマリスを見ている。
「俺はレンダル=ヒューストン、こっちはデルタ=ゴッドレム。もし、マリスがよかった
ら俺たちと一緒にこの坑道を進んでもらえないか?」
「え、あ、ああ……」
 戸惑うマリス。誘ってくれるのは嬉しいのだが今は人と一緒になるのが恐い。また同じ
ことを繰り返してしまいそうで、心の闇が制止する。だが今は、今だからこそ人を信じた
い。そんな葛藤がマリスを苦しませる。しかしマリスは、新しい自分にかけてみたかった。
あの双子がくれた温かさを、信じたかった。返事をするまでの時間は一瞬なのに、その答
えを導き出すまでがとても長くマリスには感じられた。
「よろしく……頼むよ」
 手を取るレンダル、跳ねるデルタ。二人はマリスの戸惑いの理由など知りえない。だか
ら素直にマリスの返事を歓迎し、喜んだ。
「ところで、この二人は?」
「変態だ」
「変人です」
 とドレイツボの頭を靴の先でつんつんするデルタ。突如、動かなくなっていたドレイツ
ボの手がデルタの足首を掴み、顔を持ち上げた。
「うぇわぉんぉんぉんうぇぁぁあぁぁぁぁあぁぁ!!」
 再びデルタの閃光の前に倒れるドレイツボ。銀髪を染めるどピンク色が変態っぽかった。
「さいてーだな、女の子のスカートを下から覗き込むなんて」
 マリスが軽蔑の冷たい視線を浴びせる。
「まあ、デルタのパンツなんて見たいと思う奴の気が知れねえけどな」
「おっ、お姉さま、どういう意味なのですかっ!?」
「てめえみてーなピンク一色の妄想変態野郎のパンツを見たがるなんて、相当の変態しか
いねえだろって意味だよ!!」
「まあまあ、かわいいじゃないか」
「ほんとうですかっ! マリスお姉さま好きっ!!」
 デルタはマリスにがっしりと抱きついた。
「よせよせ、マリス。そいつ、勘違いでのぼせ上がるタイプだから、ちょっとキツめに接
してたほうがあとあとのためだぜ」
 レンダルの忠告も、動物のようになついてくるデルタの甘ったるい魔力には敵わない。
「ふふふ、ほんとにかわいいよ。あたし、デルタちゃん気に入っちゃった」
「きゃん、お姉さま、もっと褒めてぇ〜〜!!」
「あ〜あ、あとで後悔するぜ……」
 さっそくレンダルとデルタの空気に馴染んだ、いや、染まったマリス。今回は上を向い
て、楽しく旅ができるかも知れない。そう思うと笑顔が自然とこぼれてくる。三人はじゃ
れ合いながら、不似合いな薄暗い坑道をレールに沿って進んだ。

「言っとくけど、俺はつええぜぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
「ドレイツボォォォォォォォォ!!」
 突如がばっと起き上がったドレイツボとスカートめくり男。その瞳には復讐の炎がめら
っちばりっち燃えていた。

388白猫:2008/02/16(土) 18:15:41 ID:iwezFGtQ0
Puppet―歌姫と絡繰人形―

第一章〜第五章及び番外編 5冊目>>992
第六章 -夜空の下で- >>30-37
第七章 -深紅の衣- >>70-81
第八章 -神卸- >>137-139
第九章 -チャージング- >>164-171
第十章 -母- >>234-241
第十一章 -北へ- >>295-299
第十二章 -バレンタインチョコレートケーキタワー?- >>349-353
これまでの主要登場人物 >>38
用語解説 >>255-261


第十三章 神格化







西の都アリアン、
南の都ビガプール、
東の都ブリッジヘッド、
中央の都、ブルンネンシュティング。

東、西、南、中央の代表的な都と言われれば、町行く人々は十中八九、そう答えるだろう。
そして、その中でも最も栄え、最も活発な都が、[北]にある。

名を、[ブレンティル]。
伐木と戦術、そして商業の都と呼ばれる、フランテル東部一の都である。
大戦では大密林グレートフォレストによって難を逃れ、
さらにその難民達によって著しくこの都は発達した。
北の国々とゴドムとを結ぶ貿易の中心地であるこの地には、
故に古都を遙かに上回る、凡そ十数万人が暮らしていた。
 「……[伐木の町]って言うから、もっと寂れてると思ったわ」
 「昔はフランテル一の木材輸出を誇っていたんですよ。今となっては商業売上高数百億とも言われています」
 「御父様は……たぶん大聖堂でしょうか」
活気に溢れた市場をウキウキと眺めているルフィエとカリアスに、ネルは溜息を吐いて言う。
 「何してるんですか二人とも。子供ですか」
 「だって、こんなに人いっぱいいるところ、見るの久々なんだもん」
 「オレなんか初めてやで。ていうか最年少のネリエルはんの反応一番薄いやんけ」
ぶーぶーとネルにブーイングを送る二人にもう一度溜息を吐き、改めて辺りの景観を眺める。
アリアンのものと同等……否、それ以上の、巨大な鈍色の外壁。
それに囲まれた無数の白い外壁の住宅に、巨大な市場。
恐らくは町中の商人がこの市場に集っているのだろう、と思ってしまうほどの規模である。
というより、市場の向こうが霞んで見える。
市場を行き交う人々も、一市民からネルが知っているような冒険者まで、様々な人々が集っていた。
が、興味が湧かない。
 「……早く行きますよ」
 「ぶー」
口を尖らせるルフィエの頭を小突き、ネルは市場の中に割って入って行く。







ブレンティル大聖堂。
参拝者こそアウグスタに及ばないが、規模は本家にも劣らないという聖堂。
その聖堂にようやく到着した一行は、這々の体でその扉を開けた。
 「しんどい……」
 「人多いわ……」
 「やってられんなぁ……」
 「…………」
バテバテの四人の姿を見やり、ネルとカリンは溜息を吐く。
 「だらしないですね」
 「どいつもこいつも…」
 「オランダもー…」
 「何言ってるんですかルフィエ」
唸るルフィエに言い、ネルは大聖堂の内部を眺める。
木製の椅子がズラリと並び、その奥には[テオトコス(神の母)]と呼ばれるサンタ=マリアの石像が安置されていた。
そしてその下に、金色の長髪を後頭部で結った、初老の男性が礼拝を行っていた。
その男性は扉の閉まる音で目を開き、ネルの方に向き直った。
 「良く来たな、ネリエル君」
 「お久しぶりです、ルゼル様」
その男性を見、ネルは帽子を取り頭を下げる。
 「それに蒼き傭兵、白の魔術師、黒騎士、……やれやれ、恐ろしい面々だ」
 「一番怖いのはアンタじゃない?」
アーティの皮肉に、ルゼル少しだけ笑う。
と、その面々の中で顔を伏せるリレッタと、キョトンとするルフィエにその目が行く。
が。
 「………!!」

389白猫:2008/02/16(土) 18:16:03 ID:iwezFGtQ0
俯いたリレッタに、ルゼルはカツカツと荒々しく歩み寄る。
その腕を掴み、その顔を蒼白にさせた。
 「……リレッタ、翼をどうした」
 「!」
 「……」
その言葉に少しだけ目を細め、ネルは溜息を吐く。
 「それは僕が――」
 「私の、不注意です」
言いかけたネルの言葉を、リレッタが塞ぐ。
抗議の声を上げようとしたその腕を、アーティが掴んだ。
 「アーティさ――」
 「ちょっと黙ってなさい、影狼」
そう小さく呟かれ、ネルは脇の木椅子に腰掛ける。
その姿を怪訝そうに見、しかしルゼルは言う。
 「すると、片翼を失ってしまったのか」
 「失ってはいません…穴が、空いただけです」
 「同じことだろう!」
リレッタの上着を剥ぎ取り、ルゼルはリレッタの背に手を翳す。
ギョッとしたネルとカリアスの頭を殴り、アーティは目を細める。
 「『 ――――…… 』」
ルゼルが、人には理解できない奇怪な言葉を呟いた途端、
白磁のような肌に下着だけのリレッタの上半身、その後背から、眩い光を放つ二枚の翼が現れた。
が。
 「……翼の、色が」
彼女の左翼、
本来ならば眩い白色をしているはずの翼。
その翼が、まるで腐敗したような紫色に変色してしまっていた。
 「何だって言うんですか痛っ」
 「あーいだだだだだだ! アーティはん髪引っ張らんといてーな!」
何がなんだか分からないネルとカリアスの頭を抑えつつ、アーティは息を呑んだ。
リレッタは恐らく、片翼を失い――天使では、無くなる。
 「傷の進行が速い……しかしこれは……リレッタ、お前は――」
 「はい。使いました……[秘術]を」
羞恥に顔を歪ませるリレッタを見、しかしルゼルは溜息を吐く。
 「……『 異常治癒(キュア) 』」
そう、ルゼルが小さく呟いた瞬間。
リレッタの翼が淡い光に包まれ、僅かに翼の色が、通常の状態へと戻る。
 「もう翼を直しても宜しい」
 「…………」
ルゼルの言葉に、リレッタはゆっくりと目を閉じる。
途端、彼女の翼が、まるで吸い込まれるように背中に消えて行く。
その合間に上着を拾い、リレッタはそれを頭から被った。
 「今後一切、いかなる魔術も使用を禁ずる。分かったな、リレッタ」
 「…………はい」
ようやくアーティの手から解放されたネルは、痛む頭をさすりつつ言う。
 「ルゼル様」
 「分かっている、ネリエル君。もう準備は出来ている」
リレッタとルフィエの間を抜け、ルゼルは大聖堂唯一の出入り口へと歩く。
その扉を閉め、ルゼルは言った。
 「来たまえ」

390白猫:2008/02/16(土) 18:16:23 ID:iwezFGtQ0
 「……君達は、[四強]という名を知っているか?」
 「[四強]?」
 「西の[煉獄鬼]アーク、
 北の[吹雪姫]レティア、
 南の[邪姫]ザイザリア、
 そして東の[大教主]ルゼル=アウグスティヌスの四人を、[四強]と呼ぶのです」
 「この四人はフランテルでも最強……右に出る者はいない絶対的・圧倒的な力を持った武術家なのよ」
首を傾げたルフィエに、ネルとアーティが説明する。
ふぅん、と素直に頷くルフィエに、しかしルゼルは言う。
 「だが、[大戦]以前のことを言えば、恐らくは東最強の武術家はカナリア…或いはルヴィラィ=レゼリアスやもしれん」
 「ルヴィラィが、[四強]…?」
ネルの言葉に頷き、ルゼルは言う。
 「ルヴィラィは50年以上も前に、そのときはお遊び程度だった[呪術]を現在の形まで完成させた呪いの第一人者だ。
 さらに自身も強力な呪術師であり、[アドナ=ルドルフ]を唆して[アウグスタ事変]を引き起こしたとまで言われている」
 「あのルドルフ教主が……ルヴィラィのただの駒だった?」
 「その可能性がある、ということだけだ。だがもう既に、東の[四強]は私ではなく、ルヴィラィだというのが公の見解だ。
 何が言いたいか……分かるな?」
ルゼルの言葉に、カリンはフンと笑う。
 「[四強]たるルヴィラィ=レゼリアスと敵対すれば、タダでは済まない…そういうことでしょう」
ネルの言葉に、皆は押し黙る。
その沈黙の中、しかしネルはゆっくりと立ち上がる。
 「関係ありませんよ。例え[四強]を相手にしたとしても、僕は戦う」
右手のエリクシルを見、ネルは言う。
 「僕は逃げない、絶対に」

 「……君ならそう言うと思っていた。だからこそ、私は貴女に、聞きたいのだ」
ネルの言葉に微笑み、ルゼルはルフィエに向き直る。
その眼光に少しだけ目を細め、しかしルフィエは真っ直ぐルゼルに視線を返す。
 「私ももう、逃げない。…もしも、もしも母さんと戦うことになっても、私は絶対に、逃げない」
手に持ったタリズマンを握り、ルフィエは言う。
その言葉にルゼルは今度こそ笑みを浮かべ、ゆっくりと立ち上がった。
 「分かった……ネリエル君、ライアット嬢。君達に一つ、提案がある」






ブレンティル東、グレートフォレストの終わりの地。
ブレンティルとグレートフォレストの合間には、伐採の終わった巨大な広場が残っていた。
今となっては伐木もほとんど行われていないため、この辺りはほとんど放置状態となっている。
煉瓦で舗装されたのが虚しいほどの活気のなさに、ルフィエは目を丸くする。
 「何もないね」
 「ブレンティルは格差が激しいんです。所得の少ない者は、皆鉱山で働いているんですよ」
ネルが指す方向を見れば確かに、カキンという岩を叩く音が、遙か遠くの山から響いてくる。
 「ハノブほどではありませんが、このあたりのソゴム山脈でも、銅と少々のミスリルが採れますから」
 「さて、お喋りはここまでだ」
先頭を歩いていたルゼルが、広場の中程まで行ったところで立ち止まった。
 「ライアット嬢、これを」
その言葉と共に、ルフィエに銀色の十字架が手渡される。
その十字架を手に取り、ルフィエは首を傾げる。
 「これは?」
 「マペットの封じられた十字架……そう言えば、納得いただけるか?」
 「……!」
 「ちょっと待って下さい、どうしてルフィエさんが――」
目を剥いたネルの横で、リレッタが抗議の声を上げる。
その声を手を挙げて妨げ、ルゼルは言う。
 「恐らくこの中で、マペットを操り得る者は只一人……ライアット嬢だろう」
 「何の根拠があって……!」
リレッタの声を妨げ、ネルは小さく首を傾げる。
 「理由を、お聞かせ願いますか」
 「理由?」
その言葉に、ルゼルがフンと笑う。
呆然と十字架を眺めているルフィエを見やり、ルゼルは言う。
 「理由など。神のお導き……その答えだけでは不満かね?」
 「…………」
 「能力的には全く問題はない。それに覚悟は、先も問うたはずだ」

391白猫:2008/02/16(土) 18:16:46 ID:iwezFGtQ0

《私は絶対に、逃げない》

無い。
ルゼルに反論する材料が。
というよりは……ルフィエを"こっち"へ引きずり込まない理由が、無い。
 (引きずり込まない、じゃないのか。もう)
彼女の覚悟を思い出し、目を閉じる。
最早彼女は、何も知らないただのリトルウィッチではない。
自分と共に戦う、一人の立派な同志。
 「……分かりました」
 「ネリエルさま!」
 「ルフィエにマペットの発動が可能かどうかは知りません。"そんなこと"全く問題ではないのだから」
そう言い、ネルは帽子を脱ぎ、放り投げる。
途端に燃え上がる、紅色の衣と瞳、鈍色の兜、巨大な右腕。
紛うことない、[紫電狼]の姿。
 「……提案とは、"これ"なのではないですか?」
 「……ふ、相変わらず察しが良い」
肩甲を外し、ルゼルは小さく笑う。
白いマントを脱ぎ捨て、ルゼルは不敵に笑う。
 「ネリエル君とライアット嬢……かかって来たまえ」






 「マジかいな。勝てるん?」
 「100%無理よ。無理に決まってるじゃない」
10mほどの間隔を空けて立つ三人を見、アーティは言う。
きっぱりと断言したアーティに苦笑いし、カリアスは首を傾げる。
 「でもネルはんかなり成長したんやろ? 1%くらい可能性も――」
 「無いのよ」
カリアスの言葉を、アーティは遮る。

 「ルゼル=アウグスティヌスに、勝てるわけがない」







ネルの後ろに立つルフィエに目を移し、ルゼルは小さく息を吸う。
 「一つ言っておこう。勝てるとは思わないことだ」
その言葉と同時、
ルゼルの両腕に、眩い十字架が出現する。
何時の日かリレッタがネルに向けた術、[ホーリーエクス・クロス]と全く同じ十字架が。
その光を見やり、しかしネルはゆっくりと右腕を構える。
 「勝負するからには、勝ちますよ」
 「プッ」
その余りに挑発的な発言に、カリアスは思わず吹き出した。
背後のリレッタ、脇のアーティ、ついでに目の前のネルから飛んでくる凄まじい眼光をさらりと避け、言う。
 「ほんまにネルはん、オモロイなぁ」
 「どこが。ただの無謀なバカガキじゃない」

392白猫:2008/02/16(土) 18:17:16 ID:iwezFGtQ0


 「…今凄まじく不快な響きがしたんですけど」
 「全然面白くない冗談なのにねぇ」
 「……冗談?」
ルフィエの言葉に、ピクリとネルが止まる。
 「冗談なわけないでしょう。僕は勝ちます」
 「ネルくん、そういう無謀な――」
 「来ますよ」
ルフィエの言葉が終わる寸前、ネルは言う。
そして、一薙。
ルゼルの右手の一撃を、ネルは右手で受け止める。
受けきった状態のまま、ネルは無理矢理にその右腕を押し返す。
 「『 ティタンエッジ!! 』」
瞬時に右腕を巨大化させ、それをルゼルに向けて放つ。
が。

   ――ガギィイイイイン!!!

 「!!?」
その右腕が、二枚の十字架に阻まれた。
鋼鉄をも貫く[巨人族の刃]が、阻まれた。
それに目を剥いたネルに、ルゼルが小さく言う。
 「無駄だ。我が[ディバイン=ホーリーエクス・クロス]は阻めん」
と、その右脇腹に、
ルゼルの十字架が、凄まじい勢いで叩き込まれる。
 「っぐ――」
辛うじてそれを、体勢を低くして避ける。
が、さらに反対方向から、十字架による刺突がネルに向かって放たれる。
 (く、そ!?)
その一撃を右腕で受け止め、しかし受け止めきれない。
その反動でルゼルと再び距離を取り、脇に佇んだルフィエに呟く。
 「ルフィエ、女神を」
 「ま、待って。勝利の女神は多用したら――」
 「勝利の、ではありません。"弾劾"の方ですよ」
ネルの言葉に、ピタリとルフィエが止まる。
[弾劾]。
その言葉をルフィエは耳に入って、しかし理解できなかった。
[弾劾]とは言うまでもない、勝利の女神の第二解放の名。
だが。
 「でも――」
 「ルフィエ…ルゼル様は、手加減すれば死にます。"二人とも"」
 「…………」
ネルの言葉に、ルフィエは唇を引き絞る。
だが、次に開いた口から零れたものは、抗議の声ではなかった。
 「歌姫の名において、一時の力を。草木や森の嘆きを刃に、河川や海の涙を盾に、邪なる者を虐げよ。『 弾劾の女神 』」
瞬間、
ネルの体を、凄まじい量の黄金色の光が覆う。
ルフィエの誇る強化術、勝利の女神第二解放…[弾劾の女神]である。
勝利の女神を遙かに越える強化術であるが、第二解放以上の解放を行えば、対象の体をも蝕む。
故に彼女は、この術を滅多似使えない。使わないのではない…使えないのだ。
 「……命を削り、私と相見えるか…それでこそ、奴の息子だ」
 「奴の息子…ではありません。僕は、ネリエル=ヴァリオルド…それ以外の何者でも…無い!」
そして、一蹴。
凄まじい勢いで飛ぶ十字架を蹴り払い、ルゼルは右腕を振るう。
瞬間、ルゼルの手から迸る鞭のような光が、辺りの地面を薙ぎ払った。
その光を横転して避け、ネルは右腕を振り被った。
 (ティタンエッジか…何度も何度も同じ術を)
先の巨大な爪を思い出し、ルゼルは両腕の十字架を巨大化させ、それを目の前で交差させる。
この盾……[嘆きの壁]と同等の防御力を持つ盾の前に、ネルの右腕は阻まれ――
 (ない!?)
盾に衝突した爪は、その二枚の十字架をいとも簡単に打ち破る。
その盾の先、ルゼルに向かって、紅色の爪が迫り来る。
 「『 ――ホーリーブラスト!! 』」
瞬間、
ルゼルとネルの間に、突如金色の爆発が起こる。
その爆発に押し戻されたネルは、ルフィエの脇へ舞い降りた。
その腕は、以前までの3mを越える巨大な爪ではなく、直径2mほどの爪に縮んでいた。
さらにその爪は深紅に染まり、まるで獲物を仕留め終えた狼の爪のように変化している。
その爪を見やり、ネルは右腕を眺めながらゆっくりと動かす。
特に感覚に支障はない。それどころか、まるで腕が生え直したかのように、はっきりと腕の感覚を感じることができる。
 「…………もう手加減は、しません。一気に[第三段階]まで到達してみせます」

393白猫:2008/02/16(土) 18:17:43 ID:iwezFGtQ0

 「……なんだ、あの腕は……」
紅く染まったネルの腕を見、カリンは瞠目する。
今まで数十、数百という猛者と戦ってきた。
が、あんな術を使う者は、今まで見たことがない。
 「……[フェンリルエッジ(紫電狼の爪)]」
カリンの問いに、リレッタは小さく呟く。
アリアンの旅館で、ネルはリレッタに一つ、頼み事をしていた。
それこそが、あの術……[ネオ(新生術)]の完成のための布石。
リレッタの魔力を幾分か抽出した[元素]を、ネルは右腕に仕込んでいる。
エリクシルの暴発を抑えるために、
より高く魔力を統御するために、
ネルは己の腕に、元素を埋め込んだのだ。
 (今までのネリエルさまの腕は……[強く、巨大]なだけ。
 魔力の統御なんてされてない、だからあんなに無駄な大きさな腕になってた。
 でも今のネリエルさまは違う…。魔力をより高いレベルで統御して、より強い腕を手に入れた。
 それが[ネオ・ティタンエッジ(新生なる巨人族の刃)]……ううん、[紫電狼の爪])




 (本当に、あの子はどんどん強くなっていくわね……)
紅色の腕を振り翳すネルを見、アーティは微笑む。
昔は、自分の足元にも及ばない程度の力だった。
それが今や、自分のすぐ隣…あるいは、さらに上をいくかもしれない力を身に付けている。
 「一体どこまで強くなるのかしらね、影狼……ネリエル」






 (誓うんだ……僕自身の、心に)
 「『 ディバイン=ホーリーエクス・クロス 』」
再び光るルゼルの両腕の十字架。
その十字架を見、次いで少し後方のルフィエを見やる。
 (この子を……護ると)

   ドクン

途端、自分の胸のエリクシルが、まるで生き物のように鼓動した。
その鼓動に目を見開き、しかし今度は故意に動かす。

   ドクン

   ドクン

まるで、エリクシルが自分と繋がり、一つの生命となったようだった。
そしてそのエリクシルは、例えるなら自転車の乗り方のように、一度体得してしまえば、動かすことは容易だった。
 (護る……そう、それが僕の全て)
エリクシルが、まるで自分を祝福するかのように、光を放つ。
その光が自分の身体を包み込み、自分を強化してゆく。
より優れた力を、自分に与えるように。
より過酷な使命を、自分に課すように。
 (エリクシルよ――僕に、[大切なもの]を……仲間を、護る力を)
瞬間、

ネルの身体を覆う軽鎧が、変化を始める。
より硬く、より強く。
[深紅衣]は、ネルの背を護るマントへと。
その軽鎧はより強い、全身鎧へと。
その面覆いのような兜は、彼の両目と右頬を隠すような、奇妙な仮面(バイザー)へと。
紅色のマント、深紅衣を払い、ネルはゆっくりと目を閉じる。
瞬間、
彼の鈍色の右腕が、黄金の長剣へと変化した。
 「…………エリクシル、[第三段階(サード)]」
そして最後に、彼の左腕に巨大な盾が出現する。
形は通常の[ビッグシールド]と変わらない。
が、その左右、下からは合計三枚の黄金の刃が覗いていた。
まるでリレッタの[ホーリーエクス・クロス]のようなその盾に、ルゼルは溜息を吐いた。

394白猫:2008/02/16(土) 18:18:07 ID:iwezFGtQ0
 「第三段階……か。カナリアでも到達したのは26の時だというのに」
 「知ったことではありません…"それよりも"」
左手の盾を見、次いで右手の剣を見、ネルは言う。
 「この[エルアダーク(闇封じの盾)]の実験台に…なってもらいます、よッ!」
 「ッ」
突如ブーメランのように放たれた盾を避け、ルゼルは半歩下がる。
と、その眼前、
 「ッハァアアアアッ!!」
 「っち!」
迫り来る黄金の剣を十字架で受け止め、逆の十字架をネルに向けて放つ。
が。
ガィン、とその十字架が、ネルの身体を覆う鎧に阻まれた。
しかも、阻まれただけではない。
 「!?」
ネルの[ティタンエッジ]を阻むほどの強度を持つ十字架に、亀裂が入っている。
たった一度の衝撃で、その強度が失われた。
と、

   ザシュッ

そのルゼルの背に、黄金の盾が突き立った。
 (ッ……盾を、自由に操るの、かッ!)
咄嗟に身体を旋回させ、無理矢理にその盾を引き抜く。
瞬時に発動したフルヒーリングが、ルゼルの傷を幾分か塞いだ。
 「…………」
 「…………」
再び立ち上がり、十字架を消滅させたルゼル、
盾を左手で受け止め、再び剣を構えるネル、
双方対峙し、ネルは呟く。
 「……どうやらこの[守護鎧(ガーディアン)]の強度は、相当なもののようですね」
 「……守護、鎧か」
先とは比べものにならないその実力に、ルゼルは小さく息を吐く。
そして、呟く。

 「…出し惜しみする必要も、無いな」

瞬間、

ルゼルの身体を、凄まじい閃光が照らす。
彼の姿を直視できないほどのその光に、仮面の下でネルが少しだけ目を細めた。
その光の中、白と金色のローブを纏い、後背に巨大な十字架を据えたルゼルが立ち上がる。
 「……[ディバインアーチ=エレメント(光精霊の聖なる加護)]…」
その姿に、ネルはルフィエの脇まで飛び退いた。
 「あれ……何なの、ネルくん」
 「……[ディバインアーチ=エレメント]……です。ルゼル様の持つ……[神格化]の力」
 「……[神格、化]?」





"それ"は、実在するものではない。



人の力を超越し、神の次元にまで到達する"それ"。



その力は大地を裂き、大海を震わせ、天空をも支配する。



人に成すことは、到底できないはずの"それ"。



故に人はそれを、敬意と畏怖を持って、こう呼ぶ。



[神格化]と。

395白猫:2008/02/16(土) 18:18:37 ID:iwezFGtQ0
 「今のルゼル様は、人の存在を超越し[神格化]しました。
 一切の言語を失い、一切の感情表現を失い、人ならざる力を得る……それが、神格化。
 歳を取ることもなく、空腹も、疲労も、物欲も何もかもが消し飛ぶ。それが今のルゼル様の状態です」
 「……神格化…神と化す、ね…」
背の2.5mは優に越える十字架を構え、ルゼルは目を閉じる。
そして、一跳。
十字架を構え、ルゼルがネル達に向かって飛び掛かる。
その十字架を、目の前のネルとルフィエに向かって振り下ろす。
が。
 「エルアダークよッ!」
瞬時にネルの左手、エルアダークが巨大化し、片膝を地面に付け体制を整える。

   ――ゴギャァアアァンッッ!!!

鈍く凄まじい金属音が響き、ネルのエルアダークの中央部が窪み、しかし砕けない。
ルゼルの十字架はその破壊力でネルの盾を破壊寸前まで追いやり、しかし貫けない。
その恐ろしい一撃を受け、ネルは軽く思考を流す。
 (やはり、本気だ)
ルゼルは、今となって全く手を抜いていない。
だがそれは…こちらも、同じこと。
エリアダークを元の大きさへと戻し、ルフィエを庇うように立ち上がる。
 「ルフィエ、下がって」
 「えっ」
 「巻き込まない自信が、無い」
そう呟き、ネルは右手の剣を軽く薙ぐ。
瞬間、彼の左手のエルアダークの窪みが、見る間に修復されてゆく。
数秒もかからない内に、その窪みは完全に治癒される。
 「行きますよ……ルゼル様」
 「…………」
ネルの言葉はルゼルに届いていて、届いていなかった。
その言葉にピクリとも反応せず、ルゼルは手に持った巨大な十字架を振るう。
 「『 ジャッジメント・デイ 』」
 「『 フェンリルエッジッ!! 』」
無数に湧き起こった真っ赤な十字架を、紅色の爪で瞬時に薙ぎ払う。
尚も執拗に出現する十字架の群を、ネルは巧みなステップで踊り、避ける。
と、その眼前、
 「!!」
視界いっぱいに、巨大な光り輝く槌が広がる。
 ([ヘブンリープレシングか]ッ!)
その槌の怒濤を、ネルは左手の[エリアダーク]でかろうじて受け止める。
が。
その右から、今度は黄金の十字架が唸りを上げて放たれる。
 (っく――)
決して素早い攻撃というわけではない。
だが、お互いの術の威力の差が、ありすぎるのだ。
 (第三段階なんて関係ない……術の統御力が、違い過ぎる…!)

バガン、と鎧越しに殴られ、ネルは堪らず吹っ飛ばされる。
広場から吹っ飛び、脇の雑木林に叩き込まれる。
幾本もの大木を薙ぎ倒し、その衝撃はようやく止まった。
 「ぐ、う……」
頭に御星様でも飛びそうなその一撃に、ネルは痛む頭を抑える。
視界が揺れ、平衡感覚が保てない。
身体の感覚では、頭部からの出血が酷い。このままでは――
 「…………」
 「!!!?」
そのネルの背後、
十字架を振り翳したルゼルが、小さな笑みを浮かべた。

396白猫:2008/02/16(土) 18:19:01 ID:iwezFGtQ0

 「ネルくんッ!!」
雑木林の中から放たれた凄まじい閃光に、ルフィエは胸を抑えて叫ぶ。
 「チェックメイト……かな」
 「ルゼルはんやっぱ強いなぁ」
その閃光を見、アーティとカリアスは声を交わす。
 「あーりゃ私でも勝てないわ」
 「オレとアーティはんでやっとトントンってレベルやろうな。世の中って広いわ」
と、その二人の眼前を、

凄まじい速度で紅色の何かが通り抜けた。
その通り抜けた方を見やれば、襤褸布ようになった深紅衣を引きずりながら、ネルがエルアダークを構えている。
それに数秒遅れて、雑木林から凄まじい速さで十字架が繰り出される。
 「っく、そッ!!」
金色の剣を地面深くに突き立て、その状態で右腕を巨大化させる。
 「『 ティタンエッジ!! 』」
煉瓦どころか地面の岩盤一枚をひっくり返すほどの勢いで、右腕が繰り出される。
地面に埋まっていた煉瓦がその衝撃に掘り戻され、そのままの衝撃でその十字架へと放たれる。無数の土と共に。
目隠し程度にしかならないその攻撃の合間、ネルは即座に前へと跳ぶ。
一瞬後、ネルの放った無数の煉瓦が、十字架の刺突に砕かれた。
 「『 万華鏡―― 』」
 「『 ホーリー、ブラスト 』」
ネルの言葉が言い終わる寸前、
左腕を鎧の胸に突き立てたルゼルが、呟いた。
 「『 ディバイア 』」
瞬間、

ネルの[守護鎧]を砕くほどの衝撃が、大爆発が、ネルとルゼルの二人を呑み込んだ。
その大爆発の衝撃に、白と金の煙の中、ネルがまるで蹴られた小石のように吹っ飛んだ。

 「ッ!」
ルフィエは咄嗟に跳び、そのネルの身体を受け止める。
力無く倒れるその身体に、ルフィエは目を剥いた。
強い。
強すぎる。
最早、強い云々の次元の問題ではない。
"こんなもの"、勝負でも何でもない。
ただの、一方的ななぶり殺しである。
唇を引き絞ったルフィエの前で、平然と立つルゼルが、その十字架を振り上げる。
が。
 「『 ティタン――エッ、ジ! 』」
今まで虫の息だったネルが瞬時に目を剥き、その巨大な腕を鋭く薙ぐ。
その攻撃に少しだけ目を細め、しかしルゼルは十字架でそれを受け止め、弾く。
 「ッハァアアアアアアッ!!」
が、今度はその胸に、
ネルの両足による蹴りが叩き込まれた。
これには堪らず吹っ飛んだルゼルは、しかしクルリと回転し、地面に着地する。
一方、ルゼルに蹴りを叩き込んだネルの方が逆に、両足に走る激痛に顔を歪めていた。
 「ぐ、ぁ………ッ」
 「ネ、ネルくん!?」
 「離れ、ろッ!!」
文字通り血を吐くように、ネルはルフィエに向かって怒鳴る。
その叫びにビクリと震えたルフィエは、しかし胸の十字架を握る。
 (いやだ)
体中の毛穴が開き、体温を逃がしてしまっているように、身体が寒い。
"それだけではない寒さ"が、彼女を包み込んでいた。
 (ネルくんが、殺されちゃう)
他の何者でもない、[大切なものを失う恐怖]。
母を失ったときと同じ……いや、それよりも強い、恐怖心が襲ってくる。
が。
 (そんなの、やだ)
今度は、今度こそは、許してはならない。
絶対に、失うわけにはいなかい……失いたくない。

397白猫:2008/02/16(土) 18:19:25 ID:iwezFGtQ0

    れで い ……ルフ ェ イァッ ……

 「!!!!!」
突如脳裏に響いたその言葉に、ルフィエは目を剥く。

   貴 の想ぃ 、応ぇま 。私の を、 女に……

 (…なに、何を、言っているの)

   私 マペ ト……この十字架、に封じられ 、天使

徐々に鮮明になってゆくその言葉に、ルフィエは目を見開く。
今、確かに、[マペット]と聞こえた。

   貴女は、貴女自身に、誓った……もう二度と、大切なものを失わないと

もうはっきりと聞こえるその言葉に、ルフィエは呆然とする。
間違いない。
喋っているのは自分の胸にある十字架……マペット。
 (どうして……私は、天使じゃないのに)

   私がどうして再び起こされたのか…それは、貴女の想いが、強いから

   貴女の想いが私を呼び起こし、その誓いが、貴女に力を与えた

 (私に、力を……)
力を与えた、と言われても、特に自分が変化したという実感はない。
その声……マペットは、その姿に少しだけ笑ったように、言う。

   フフ…まだ、力の本質を理解していないから……大丈夫、私と、契約を結んで頂くだけで良いのです

 (……契約? 契約って?)

   簡単……です。誓って下さい、私に。あの少年を……ネリエル=ヴァリオルドを、救うと






瞬間、

ルフィエの十字架が、凄まじい光を放った。
先のルゼルの放った[ホーリーブラスト=ディバイア]の比ではないその光に、アーティ達は目を見開く。
 「なに……?」
 「ウルトラノヴァ……にしては、えらい派手やなぁ」
 「……あれ、は…」
言葉を交わすアーティとカリンの横で、リレッタが小さく呟く。
あの光を、自分は一度だけ見たことがある。
父……ルゼル=アウグスティヌスが初めて、自分に[神格化]の力を見せたときと、同じ光。
有り得ない。
ルフィエがまさか、[神格化]しようとしている。
しかも、マペットの力と同調して。

398白猫:2008/02/16(土) 18:20:02 ID:iwezFGtQ0


   カツン


と、広場の床の岩を叩き、舞い降りた。

銀灰色のドレスローブを纏い、その赤みのかかった茶色の長髪を靡かせ、

白磁のような両手で、胸に輝く十字架を握り、

水色の瞳を閉じ、何処か儚げな、しかし決して"か細くはない"、そんな存在感を振り撒き、

その場の誰もが見惚れるほどの姿を、白い光で覆い、


他にどう例えようもない……[女神]そのものの姿で、ルフィエ=ライアットが舞い降りた。






 「……信じられない…どうして、"あれ"が…」
半ば放心状態となったリレッタは、その姿を見驚愕する。

ルフィエのその姿を見、[神格化]を解いたルゼルは小さく呟いた。
"その名"は、遙か古代に実在した者の名。
 「…………[テオトコス(神の母)]、サンタ=マリア……」
 「…………ルフィエ……?」
その姿に瞠目するネルは、半歩、ルフィエに歩み寄った。









瞬間、






そのルフィエを、










無数の肌色の触手が、包み込んだ。






 「ルフィエ!!」
その光景に目を剥いたネルは、咄嗟にネルへ駆け寄る。
が。
 【オイオイ。パペットの邪魔してんじゃねぇ、よッ!!】
 「!?」

凄まじい勢いで、ネルに巨大な剣が振り下ろされる。
それを咄嗟に左手の盾で受け止め、ネルは逆進し、離れる。
 【ハーイ、ネルぽん】
次いで上がるその和らげな声に、ネルは小さく呟いた。
黒と白の髪、人形のような肌、幼い姿だが、決してか弱くはない、そんな少女……否、[傀儡]。
 「…………サーレ……」
 【ちょっとさ、じっとしててよ。ルフィぽんもらうからさ】
 「ック……ルフィエ!!」
 【ダメだよ、ネルぽん…それより、私と遊びま、しょ!!】
 「ッ!!」
凄まじい勢いで迫り来る鎌を左手の盾で受け止め、ネルは飛び退く。
そのネルにさらに黒い三日月の衝撃波を放ち、サーレはネルに追いすがる。
 【ッハアァアアアアアァッ!!!!】
 「っうぉおおおおおおおお!!!!」
サーレの鎌、ネルの右腕が交錯し、しかし双方共に譲らない。
 「サーレ…僕は、君と戦いたくは、無い!」
サーレの鎌を弾き、ネルは[フェンリルエッジ]を繰り出す。
その爪の一撃を鎌の柄で受け止め、サーレはクルリと回転する。
 【そんなこと言われても私は、戦いたい、の!】
返す手で[絶望の銑鉄]を無数生み出し、それをネルに向かって放つ。
それら全てがネルの身体に突き立つ……が、その鎧は、貫けない。
 「その程度で……僕の[守護鎧]は、砕けません!」
 【ならその首…斬るまで!】

399白猫:2008/02/16(土) 18:21:04 ID:iwezFGtQ0
 「ネリエル!!」
 【そっぽ向いてて良いのかァ、女!!】
 「ッ!?」
ネルに向かって叫んだアーティに、巨大な大剣が振り下ろされる。
その大剣を咄嗟に受け止め、アーティはその脚力を頼りに飛び退いた。
 「お前、は…」
その言葉に、オールバックにした白髪の男が眉をつり上げる。
手に持った大剣を肩に番え、言う。
 【お前、じゃねぇ。ベルモンド……[白の死神]、ベルモンドよォッ!!】
瞬間、
白装束を纏ったベルモンドが、凄まじい勢いでその大剣を振り下ろす。
しかも今度は一撃ではない。三本に分裂した、[ハリケーンショック]。
 「っちぃ!」
それを咄嗟に避け、アーティは叫ぶ。
 「退けぇッ!」
 【テメェが死んだらな、女ァッ!!】





 「おいおいおいおい。やばいやんけ」
手に持った杖を肩に番え、カリアスは目を見開く。
突如出現したパペットと謎の傀儡二体。
ルヴィラィの差し金か、或いは……
 【あの二人を相手に、あの人間たちはどこまで保つか…】
 「!!!!」
咄嗟に杖を構え、振り向いた先。
地面にまで付きかねない、長い髪の女性。
東国の武道服であるチャイナ服を纏ったその女性に、カリアスは目を細める。
 「……カンフー使いかいな。ケッタイなモンも持っとるやんけ」
 【この[トンファークロー]のことか? 彼の赤毛の女性が貸してくれたのだ】
両手の武器……東国の武器、トンファーに爪を付けたようなその武具を構え、女性は言う。
 【私の名はプリファー。いざ尋常に……勝負!】
 「ええで…あんた速そうやから、文句ないわ」
杖を払った途端に現れる翼を背に、カリアスは笑う。
 「オレの速さについてこれたら……誉めたるわ」



 「…………ふん、皆揃って忙しいということか」
黒い剣を指でなぞりつつ、カリンは目の前の光景を鼻で笑う。
突如現れた敵に、彼女だけは特に動揺していない。
"こんなこと"は今までに、何十度もあったのだから。
 「……ところで、お前は戦わないのか、デカブツ」
木にもたれかかったまま、カリンは小さく呟く。
"自分の背後にいる人ではない何か"に向かって。
その"人ではない何か"…デュレンゼルは、林の中からヌッと顔を出した。
 【月も淡いこの夜……久々に鮮血が、見たくなった】
 「……お前の鮮血、か?」
瞬間、
デュレンゼルの巨大な一撃を、カリンは側転で避ける。
避け際にその腕を剣で薙ぐ…が、その剣は表面の皮膚で弾かれた。
 「……?」
僅かに刃こぼれした剣を見、カリンは怪訝そうに首を傾げる。
 【驚いたか? 我が[龍の鱗(ドラゴンメイル)]は、如何なる金属をも、弾くのだ。
 怖いか? 恐ろしいか? 我が…姿が! ッキャアアアアアアアアッ!!!】
 「……ふん、一々五月蝿いデカブツめ」
雄叫びを上げたデュレンゼルを見、カリンは剣を小さく振るう。
 「今すぐその生意気な面、叩き斬ってやる」






その光景を見やり、両の十字架をルゼルは解除する。
その背後に降り立ったルヴィラィに向き直り、言う。
 「…………なるほど、お前の謀か」
 「フフ……いい余興でしょう? [聖者ブレンティルで死す]…」
 「さあ、どうだろう」
互いに武器も構えず、ルヴィラィとルゼルは相対する。
 「エリクシルは…奪わぜんぞ」
 「じゃあ……私を殺して御覧なさい」

 「…………聖母よ。我に力を」
 「……闇を恨め、死を憎め。地獄の業火よ敵を焼け。死の使い魔よ、霊を盗れ」




 「『 ビッグ・バン=ディバイア!! 』」
 「『 デリマ・バインドブレイズ!! 』」


瞬間、

凄まじい威力と威力のぶつかり合いで、







ブレンティル東部が丸々――消し飛んだ。

FIN...

400白猫:2008/02/16(土) 18:21:54 ID:iwezFGtQ0



[ルフィエネル主人公二人のおまけコーナー4]

 「今回は第七章に迫るくらいのページ数だったみたい」
 「一気にブレンティル編終わらせようとしたらしいですけど…無理ありすぎです」
 「[テオトコス]の詳しい能力はまだ秘密だよ。次章を待ってね?」
 「今回はアウグスティヌス親子にスポットを当ててみよう!」


ルゼル=アウグスティヌス(♂) 42歳
長所:爆裂に強い
短所:厳しい、怖い
好き嫌いをしない人(じゃあ何でオレのタコ焼き理解してくれへんねん!byカリアス)
出生日不明。アウグスタ出身。
[最強の冒険者]と謡われる、アウグスタの大教主。
フランテルの四強とまで言われ、その実力は誰もが認める。
さらに、現代でたった二人、[神格化]と呼ばれる、[人を超越するほどの力]を呼び込む力を持っている。
普段は温厚だが、実の娘に怒鳴るなど、厳格な面も持つ。
ちなみに、[神格化]を行うことができるのはルゼルの[光精霊の聖なる加護]とルフィエの[神の母]だけである。
得意術:[ディバイン=ホーリーエクス・クロス]、[ディバインアーチ=エレメント]

リレッタ=アウグスティヌス(♀) 15歳
長所:優しい
短所:ちっこい(ほっといてください。byリレッタ)
好きな食べ物:苺ショートケーキ
嫌いな食べ物:乳製品(だから背が伸びないんですよb。yネル)
8月15日生。アウグスタ出身。
ルゼルの一人娘であり、神々から敬愛を受けた正真正銘の天使。
その力は追放天使の比ではなく、その秘術は村一つを焼き払うと言われている。
第七章(>>70-81)で片翼を負傷し、現在は戦えない身となっている。
ネルに好意を抱き、なんとか想いを届けようと四苦八苦している。
得意術:[ホーリー・ジャッジメント]、[ビッグバン]


コメ返し

>68hさん
カリンとネルは実は全然仲良くなかったり。まぁ性格の反りは合わないでしょう。
次回はやっとカリアス君の戦闘シーンが書けます。WIZの戦闘シーンは苦手です(オイ)
次章第十四章でブレンティル編はばっさり終わるつもりです(待)
ルフィぽんの[神の母]を書くのが一番楽しみです。……や、一番はネルくんの[オ(ネタバレにより略)

>718さん
(  д ) ゜ ゜          「30台頭〜半ば」
カリアスくんそんなにいい年じゃないです(ぁ
発言は確かに老けてるのかな……うん、老けてるなぁ…。
1行に1サプライズは無理です不可能です。私の技量では(略
物語もいよいよクライマックス……前15㎞!(微
とにかく頑張りまっす。

>ウィーナさん
私はならないです。(きっぱり
というより、はい別の物語ーって感じですぐに新しい試行錯誤に移りますね。
アリアン編も4,5回は書き換えていますし、
小説に挫折はあるものですよ。

>スメスメさん
実はまだ小説を拝見させて頂いてなかったりします…orz
受験が終わったらきっかりばっちり読ませて頂きますよ!
人物や名前、ですか。
人の名前はリレッタちゃんの名字[アウグスティヌス]の他はほぼ即興…思いつきですかね。
技の名前は大体日本語を英語化してる感じです。思いつきもありますが。
[テオトコス]→サンタ=マリアの尊称、
[ティタン]→ギリシャ神話の巨人族の名、
[フェンリル、グングニル、ラグナロク]→北欧神話の固有名詞etc…
こんなところでしょうか。大半はこんな感じですね。
後は誕生日あたりに、祝日を使っていたりする程度です。
…今思えば、何のひねりもない(苦笑)


次回予告

それぞれの戦いが拮抗し、お互い一歩も譲らない激戦が続く。
その中、パペットに取り込まれたルフィエが、その真の力[神の母]を解放する。
対するパペットもまた、己が力を目覚めさせようとしていた――
---
ルヴィラィから告げられた[333日間]というタイムリミット。
しかし、彼らに落胆している時間は残されていない。
思案の後ネルの出した答えは、[紅瓢]アネットに助力を乞うことだった――
題名未決定な第十四章、その内公開でっす。
…あ、400げっと。なんか100ごとに更新してる気が…orz

401◇68hJrjtY:2008/02/17(日) 09:49:42 ID:VU9CmfbA0
>FATさん
マリスの登場とレンダルたちとのパーティー結成(?)も嬉しいことですが、いやー今回も笑わせてもらいました。
ドレイツボコンビ。名前がまた意味ありげですね…奴隷壷(え
ジム=モリ編(?)もそうでしたが、FATさんはギャグシーンを楽しそうに書いてるのがイイですね(笑)
こういうノリは読んでる方は楽しいですがきっと書いてる方はネタとか流れとか考え抜いてるんだろうなとか。
個人的には冒頭のデルタの武器姫っぷりもイイと思いました。武器姫ってあまり目立たないですが、こうして戦ってたら強いですよねぇ。
ドレイツボとスカートめくりの二人の復讐も気になりますが(笑)、続きお待ちしています。

>白猫さん
今回も圧倒的なページ数でしたね…読み終わったら各シーンの想像に一息ついてしまったくらいでした汗
前半の戦闘、ルゼルvsネル&ルフィエ。ネルのエリクシルもまた進化を遂げていますが、それですらも敵わないルゼル。
そこにマペットを目覚めさせたルフィエもまた女神となって「神格化」したという怒涛の展開。
ネルの「神卸」とは本質が異なる(?)「神格化」ですが、マペットと同調するというのがまさかルフィエ自身の「神格化」に繋がるとは。
盾を手に入れたネル、この小説初期のシーフという職業はもうまったく感じさせませんね。でもあれからそれほど時間も経ってないのも驚き。
戦闘シーンの連続でもまるでその場で戦っているかのような描写には脱帽しました。でもこれはまだ本当の戦いへの序の口でしょうか((( ´・ω・))
ネル以上に進化したルフィエの実力は今後語られるということで…でも既にブレンティル編も終わりでしょうか。
ルヴィラィのリミット「333日」やあのアネットが再登場するという次回、楽しみにしています!

402 ◆21RFz91GTE:2008/02/17(日) 11:08:28 ID:lj0RFLvU0
完全にイベント乗り遅れたorz

お久し振りです、最近仕事仕事でまったく顔出しできなかったですorz
今日から久し振りの休暇なので夜辺りには投下できそうでふ。

次のイベントは絶対のっかるぞー…(バタン

403ドワーフ:2008/02/17(日) 15:22:55 ID:AepyIIHk0
『マルチェドと貴婦人』

俺ぁ見たんだ…、あの通りの突き当たりにあるでかい館…。
そう、とうの昔から誰も住んでいないあの貴族の屋敷さ。
あの晩はひどい雨で、どこの寝床も仲間でいっぱいでよぉ。
かと言って路上では寝られんし、宿に泊まる金もねぇ。
前々からあそこは幽霊が出るって噂があったんだが、
そんなもん関係ねえ、雨風しのげればそれでええ。
そう思っとったんだ…。
屋敷の中は真っ暗で、人っ子一人居なかった。
こりゃあいい、もしかしたら久しぶりにベッドで寝れるかもしれねえ。
そう期待して寝室を探してたんだ。
そしたらよぅ。
二階の廊下の先に、ぼうっと光る何かが見えたんだ。
なんだありゃあって、恐る恐る近づいてみると…。
真っ暗闇の中に青白い火が宙に浮いて燃えていたんだ。
まさかと思ってそれを眺めていたら、
その火の下から二つの目が光って俺を睨んだんだ!!

「出たあああああああぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 バタバタと音を立てて逃げていく浮浪者の背中を眺めながら、マルチェドは少し傷ついた様子だった。その彼

の隣で貴婦人がクスクスと笑っている。
「あら、ごめんなさい」
 彼の心境を察して貴婦人は謝った。
「いえ、いいんです…」
 マルチェドは俯いて言った。
「でも、あなたが居てくれて良かったわ」
「え?」
 俯いたマルチェドの顔が上がった。
「だって、あなたが居なければ一晩中あの方のいびきを聞かされていたんですもの」
 その言葉にマルチェドはあははっと笑った。
「僕なんかでも、役に立つことはあるんですね」
「当たり前でしょう。あなたが居てくれるだけで、私はどれだけ救われていることか…」

404ドワーフ:2008/02/17(日) 15:24:37 ID:AepyIIHk0
1.
 マルチェドは孤独だった。
 青白い火を灯らせた奇妙な兜で顔を隠し、ダボダボのコートに身を包んだその奇怪な風貌はブルンネンシュテ

ィグの街の人々にとって近寄りがたいものだった。
 マルチェド自身もそれを分かっており、自分から人に話しかけたりするのは勿論のこと、近づくことすら無か

った。
 顔の無い彼にとって、他人が自分に対して持つ感情は恐怖か嫌悪の二種類しかなかったのだ。
 貴婦人と出会うまでは…。
 それは五日前のこと。
 マルチェドが来たばかりのこの街を散策していると、歩いている通りの突き当たりに出くわした。
 そこにあったのは今にも崩れそうな程に古びた屋敷。壊れた門と錆びの浮いた鉄柵に囲まれて、長い間手入れ

のされていない様子の庭の中に見上げる者を威圧するように立っていた。
 マルチェドはなんとなしにその館を見上げていた。
 すると二階の窓から自分を見下ろす誰かが居ることに気づいた。誰かと思いじっと見つめたマルチェドとその

人物の視線が合わさったとき、その人物の姿はふっと屋敷の中に引っ込んでしまった。
 また人を驚かせてしまったと思ったマルチェドは、その場を早く立ち去ろうとした。
「お待ちになって!」
 誰かが呼び止める声が屋敷の中からかすかに聞こえてきた。
「お願いします。お行きにならないで!」
 マルチェドは辺りを見回した。自分以外に誰も居ない。
 よくよく考えればおかしな事だった。どう見ても誰かが住んでいるようには見えない廃屋に人が居るなんてこ

とはあり得ない。だが声は確かに屋敷の中から発せられていた。
「どうか、まだそこに居らっしゃるのでしたら…ここを開けて中に入ってきてくださいまし」
 声は玄関扉の中から聞こえてきた。
 マルチェドはそうっと壊れた門を押し開いて玄関の前に立った。そして真鍮がところどころ剥がれているドア

ノブを握った。
 久しぶりに日の光を浴びた玄関にその人は立っていた。
 こげ茶色にくすんだドレスに身を包んだ女性だった。いや、彼女の身体は向こうの景色が透けて見えていた。

そのために白いドレスが茶色く見えたのだった。
 マルチェドは玄関に立ったまま、自分より背の高いその女性の文字通り透き通った肌の顔を見上げた。
 女性は自分を見上げるマルチェドを見ると、急に顔を手で覆って泣き出してしまった。
 その様子にマルチェドは驚いてしおろおろしてしまった。子供に泣かれるのは慣れていたが、それとはまるで

状況が違っていた。
「あの、ごめんなさい…」
 マルチェドは何故か謝っていた。
「ありがとうございます。ありがとうございます…」
 女性も何故か感謝の言葉を繰り返していた。
 これが二人の出会いだった。

405ドワーフ:2008/02/17(日) 15:26:51 ID:AepyIIHk0
2.
 女性は名前をルメーユといった。だが全体としての彼女の名前は余りにも長すぎてマルチェドには覚えきれな
かった。そこで彼女が王制時代の貴族夫人であることから、マルチェドは彼女を名前ではなく貴婦人と呼ぶこと
にした。
 貴婦人はこの館の中に束縛されている幽霊だった。年齢は30代前半ぐらい、背筋をぴんと伸ばした凛とした
立ち姿が美しい淑女だった。
 マルチェドは貴婦人に客間まで通されると、そこに辛うじて残されていた椅子に腰掛けた。
 そして簡単な自己紹介を終えてから延々と彼女の話を聞かされた。
 死んでからずっとこの場所に居ること。誰にも気づかれず、何十年も二階の窓から街の景色を眺め続けていた
こと。そして心的余裕が出てきたのか自分が生きていた時代の貴族の暮らしぶりなども語り始めた。
「最近は若いご婦人方も鎧をお召しになるようですわね。私の生きていた時代には考えられなかった事ですわ。
時の流れというのもあるのでしょうけど…でもあそこまで肌を露出させるのは如何なものかと思うのです。私が
生きていた頃にも胸元を強調したデザインのイブニングドレスはございましたが、あそこまで露骨に殿方を誘わ
れるようでは…」
 どうやら街の女傭兵たちの事を言っているようだった。彼女らは動きやすさを重視するために軽装しているの
だが、どうやら貴婦人にはそれが理解出来ないようだ。そもそも女性は戦うものではないと思っているらしい。
「あら、そういえばずっと私ばかり話しておりますわね」
「気にしないでください。僕には人に語れるほど立派な生い立ちなんてありません。それに…」
「それに?」
「こんな風に僕に話しかけてくれる人は、初めてなんです」
 マルチェドの言葉に貴婦人の表情が固まった。かと思うと、その顔は柔らかく優しい表情に変わった。
 貴婦人は埃まみれの椅子に座っているマルチェドの傍に寄ると、しゃがんで彼の分厚い手袋に包まれた手に触
れた。身体が透けているために、手のひらがマルチェドの手の中に入り込んでいた。
「あなたも、ずっと一人ぼっちでいらしたのね…」
 マルチェドは自分の手に触れている貴婦人の手を見つめた。実際は触れられてなどいないのだが、マルチェド
には確かに人の手の暖かさが感じられていた。
「婦人は、僕が怖くないのですか?」
 マルチェドは膝の上にある手を見ながら言った。すぐ近くにある貴婦人の顔を見ることが出来なかった。
「顔をお上げになって」
 貴婦人の言葉にマルチェドは許されたようにゆっくりと顔を上げて貴婦人の顔を見た。人がこんなにも近くで
自分だけを見ているというのも初めてのことだった。
 貴婦人はマルチェドの兜に隠れた真っ暗な顔をしばらくじっと見つめてから、優しく子供に言い聞かせるよう
に言った。
「ちっとも怖くなんてありませんわ。むしろ、いくら語りかけても私の存在に気づいてすらくれなかった他の人
々の方がどれほど怖ろしかったことか…」
 孤独だった二人は古びた屋敷のなか、互いを求めるように寄り添っていた。

406ドワーフ:2008/02/17(日) 15:28:26 ID:AepyIIHk0
3.
 マルチェドは明日また来ることを貴婦人に約束し、滞在している宿に戻った。
 貴婦人と話している時間は思った以上に長かったらしく、気が付けば辺りは真っ暗だった。
 裏路地に面した小さな宿に戻ると店の女将さんがマルチェドに食事を用意してくれた。彼女は貴婦人と同じよ
うにマルチェドを見ても嫌な顔一つ見せないが、そこには大きな違いがあった。女将さんはマルチェドに全く関
心がないということだった。
 金さえ払ってくれれば誰でも泊める。たとえ札付きだろうと誰であろうと。そんな宿で客の様相がどうかなど
という事はいちいち気にしてなどいられないのだろう。
 マルチェドにとっても、それは煙たがられるよりはずっとマシなことだった。ただ、この宿が安全であればな
お良かったのだが…。
 マルチェドはあてがわれた部屋でただ一人であまり美味しくもない食事を済まし、小さな寝台に横になると貴
婦人のことを考えた。
 今何をしているのだろう、と。また二階の窓から街の夜を眺めているのか、それとも泣いているのか、はたま
た自分と同じ事を考えているのかと…。
 マルチェドは寝返りをうつと貴婦人と今日話したことを思い返した。彼女は生前王族の息女の教育係を務めた
ことがあったこと、優しい夫と一人息子を抱えてとても幸せだったこと、今は枯れてしまった庭の花を眺めるの
が好きだったこと、もっと聞きたかったもっと知りたかった。
―それにしても何故、婦人は死んでしまったのだろう。
 ふと沸いた疑問だった。貴婦人の姿は健康そのもので、外傷なども全く見当たらない。それもマルチェドが始
めに見たときに幽霊だとは気づかないほどだった。
 それに、婦人のような地縛霊は大抵生きていた頃の幻にしがみ付いていて、生前の日常をひたすら繰り返すよ
うな存在だ。それが死後も街の様子を記憶し続け、さらに自分と会話まで成立させた。
 信じられないことだったが、実際に彼女と触れ合ったマルチェドには極稀なケースとしてこの疑問を片付ける
しかなかった。
 マルチェドは再び仰向けになると、明日からの事を考えることにした。
 それは決して楽しいことではなかった。
 貴婦人はマルチェド自身のことを知りたがっていた。だがそれは教えられることではなかった。
―どうしたらいいんだろう…。
 いつまでも誤魔化しては居られない話題だった。だが話さなければ疑われる。その疑いはきっとこの友情を壊
してしまうだろう。だがそれでも話せることではなかった。
 マルチェドが悪魔であるという事は…。それも、死者の魂を弄ぶネクロマンサーであるということは絶対に言
えなかった。
 貴婦人との絆を守るために、マルチェドは嘘をつくことにした。

407ドワーフ:2008/02/17(日) 15:30:20 ID:AepyIIHk0
4.
 翌日、館を再び訪れたマルチェドは待っていた貴婦人に快く迎えられた。
 貴婦人はいつもの二階の窓からマルチェドの姿を見つけるともう1階の玄関で待っていたらしい。玄関に立っ
て、マルチェドが入ってくるなり両手でスカートの裾をつまみ上げてお辞儀した。
「御機嫌よう」
「こ、こんにちは…」
 普段見たことのない挨拶にマルチェドは戸惑ってしまった。
 そのマルチェドの様子を見て貴婦人は少し怪訝な表情になった。
「マルチェド様。女性がカーテシーをしたら、紳士は帽子を脱いで挨拶を返すのが礼儀ですわよ」
 マルチェドはびっくりして兜を両手で押さえた。
 その様子を見て貴婦人は口元に手を当ててくすくすと笑った。
「ちょっとからかってみただけですわ。でも、ちゃんとしたお辞儀をして頂きたいわ」
「ちゃんとしたお辞儀?それにカーテシーって?」
 マルチェドの言葉に今度は貴婦人が困惑した。
「女性のする挨拶のことですわ。ほら、このように」
 そう言って先ほどのお辞儀をもう一度して見せた。
「まさかご存知なかったなんて…」
「すいません…」
「謝ることはありませんわ。知らなければ私が教えて差し上げます」
 そう言われてマルチェドは緊張した。
「ええと、こうですか?」
 マルチェドは貴婦人が今やった挨拶を見よう見まねでやろうとした。
 スカートの代わりにコートの裾をつまみ、軽くしゃがむ様にして頭を下げた。
「ぷふっ」
 すると貴婦人は噴出して、くっくっくっと笑い出した。口を手で押さえて、なんとか笑いを堪えるのに必死な
ようだった。
「やだ…私ったら…でも、くくっ」
 マルチェドは笑う貴婦人をぽかんと見上げていた。
―どこかおかしかったかな。
「ああー、ごめんなさい。でもマルチェド様、先ほども申し上げましたがカーテシーは女性の挨拶ですわ」
「あ…そうでした」
 そう言ってマルチェドは照れ笑いした。
「ではよろしいですか?まず右足を引いて…」
 貴婦人はそう言いながらマルチェドの右側に回りこんだ。
 突然始まった貴婦人のレクチャーにマルチェドは慌てて右足を引いた。
「そう、それから右手を胸の辺りに添えて…。そこから背筋をぴんと伸ばしたまま頭を下げて、それに合わせて
左手を横へ差し出してください」
 マルチェドは言われるがままに動いた。
「よく出来ました。では一連の動作を自然に、しかも綺麗にこなせるように練習しましょう」
 貴婦人の何気ない挨拶から始まったこのレクチャーはこの後も何度も続き、歩き方からテーブルマナーに至る
までマルチェドは貴婦人に徹底的に教え込まれる事になるのだった。
―なんだか大変なことになってきちゃったな…。
 頭を何度も下げながら、マルチェドはそう思った。

408ドワーフ:2008/02/17(日) 15:31:38 ID:AepyIIHk0
5.
 その日の午後、マルチェドは昨日と同じように椅子に座って貴婦人と話をしていた。
 話題はマルチェドが心配していた通り、彼の生い立ちに関するものだった。
 マルチェドはあらかじめ用意しておいた嘘を口から並べた。
 自分はスマグ出身の魔法使いで、この街にはレッドストーンを見つける手がかりを探しに来た。この姿は同じ
スマグ出身の者から正体を隠すためのものなのだと。
 半分は本当で、もう半分は嘘だった。
 嘘をつくマルチェドを貴婦人は少し悲しそうな表情で見ていた。それはまるでマルチェドの心の内を見透かし
ているかのようだった。
「どうかしました…?」
 貴婦人の顔を見てマルチェドは貴婦人の様子を伺った。嘘がもうバレてしまったのだろうかと思ったのだ。
「いいえ、何でもありませんわ。…どうしてレッドストーンを探しておられるのですか?」
 貴婦人は話を逸らすように次の質問をマルチェドにぶつけてきた。
「それは、願い事を叶えられると聞いたからです」
 マルチェドは貴婦人の様子に不安を感じ、貴婦人の顔をちらちらと見ながら答えた。
 おかしな雰囲気だった。楽しいはずの会話もどこかぎこちなかった。
 マルチェドは嘘をついた事を後悔していた。
「その願い事とは、何なのかしら」
「それは…」
 マルチェドは迷った。さらに嘘を重ねるべきか否か。
 どう見ても貴婦人の様子は変だった。数秒間の逡巡の後、マルチェドは口を開いた。
「お金持ちになりたい…から」
 結局、マルチェドは嘘を上塗りした。
 言えるわけがなかったのだ。自分は悪魔だから人間になりたいなどとは…。
「そう…」
 母親に叱られている子供のように怯えている様子のマルチェドを見つめて、貴婦人は短くそう答えた。
 それから二人の会話は止まり、二人の雰囲気はこの暗い館の中のように陰鬱なものになった。
「ごめんなさい」
 突然謝った貴婦人に、俯き加減だったマルチェドは顔を上げた。
 貴婦人は両手で鼻を覆い、今にも泣き出してしまいそうな様子だった。
「あの、大丈夫ですか?」
 マルチェドには何が起きたのか分からなかった。ただ混乱し、目頭を押さえている貴婦人に対してどう接すれ
ばいいか分からなかった。
「ごめんなさい、今日はもう…」
 貴婦人はそう言って席を立つと泣き顔を隠すように後ろを向いてしまった。
「はい…」
 マルチェドも席を立つと、屋敷の奥に歩いていく貴婦人の背中に謝った。
「ごめんなさい」
「マルチェド様が謝ることは…ありませんわ」
 そう言い残して貴婦人は姿を隠した。
 マルチェドがうな垂れて客間から出ようとしたとき、貴婦人の声がした。
「明日もまた来てくださる?」
「はい、必ず」
 マルチェドは館の奥に居る貴婦人に届くように、はっきりと答えた。
 館の外に出ると日はまだ高く、雲ひとつない晴天だった。

 翌日訪れたマルチェドを、貴婦人は昨日の様子が嘘だったかのように明るく迎えてくれた。
 二人の間でマルチェドの過去に関する話題が持ち上がることはもうなかった。

409ドワーフ:2008/02/17(日) 15:33:03 ID:AepyIIHk0
6.
 その日、マルチェドは二階にある貴婦人の部屋に招かれた。
 そこは貴婦人が毎日外を眺めていた窓がある部屋だった。
 初めて入る女性の部屋に、マルチェドは落ち着かない様子だった。
「そう堅くならなくてもいいわ。もう何もない部屋なんですもの」
 貴婦人の言う通り、何もない部屋だった。
 家具は一つも残っておらず、キイキイと音を立てるむき出しの床板、壁紙もはがされていて何もかもが無くな
っていた。
 マルチェドは部屋の入り口に立ったままその寂しい景色を見回した。
 主亡き館に一人残され、自分の部屋から持ち出される愛用の家具の数々を眺めながら貴婦人はどれほど悲しん
だことか。それは想像に難くなかった。
 マルチェドには暗くて分からなかったが、一階のほうも同じような状態に違いなかった。
 貴婦人がなぜ自分にカーテンを開けさせなかったのかがようやく理解できた。
「いつまでもそんな所にいらっしゃらないで、こちらをご覧になって」
 そう言って貴婦人は部屋を明るく照らす大きな窓を示した。
「すごい!」
 窓からの景色を眺めてマルチェドは感嘆した。
 その窓からは街の噴水のある広場から議事堂、遥かの王宮跡まで見渡すことが出来た。
 視界の果てまで続く街の景色に見入るマルチェドの横に立って、貴婦人は街のことを解説し始めた。
「ほら、あそこに見える噴水。あれは私が生きていた頃にこの街の区画整備の一環で作られたものですわ。街の
至るところをはしっている水路もそう。街の通りも煉瓦で舗装されて、あの時代が一番この街が華やいでいまし
たわ」
「そうなんですか」
「ええ、この通りも今では誰も通りませんけど、昔はこの街でも指折りに美しい通りでしたのよ」
 マルチェドに話しながら、貴婦人は目を閉じて懐古に浸っているようだった。
「だけど今はどこもかしこも露店でいっぱいで、あれでは馬車の通る道もありませんわ。まるでこの街全体が大
きな雑貨店になってしまったみたい」
 目を開いた貴婦人は寂しそうにそう言った。
「でも、実際に歩いてみたらさぞかし楽しいのでしょうね。きっと、私の見たこともないものが一杯並んでいる
に違いないわ」
 そう言って今度は笑うのだった。
「ええ、僕も初めてこの街にきたときびっくりしました。今まで見たこともないものばかりで!」
「羨ましいわ」
 興奮気味に答えたマルチェドに貴婦人はそう言って微笑んだ。
「あ…」
「いいのよ。気にしないでちょうだい」
 館の外に出られない貴婦人にとって、自分はどれほど羨ましい存在だろう。
 マルチェドは自分の思慮の浅さを憎んだ。
「ねえ、前から気になっていたことがあるの」
「なんですか」
 塞ぎこんでしまいそうになったマルチェドを助けるように貴婦人は聞いた。
「あの建物は何なのかしら」
 そう言って貴婦人はあまり離れていないところにある立派な神殿のような建物を指差した。
「あれは国会議事堂ですね」
「国会議事堂?」
「えっと、国民に選ばれた議員があそこに集まって、この国の政策を決めているんです」
「議員というのは、大臣のようなものなのかしら」
「いえ、違うと思います。たぶん…」
「どう違うのかしら?」
「えーっと…」
 答えに窮してしまったマルチェドを見て、貴婦人はくすくすと笑った。
「意地悪しすぎちゃったかしら。また今度、調べてきてちょうだい」
「…はい」

 こうして二人の間で役割が決まった。
 貴婦人は昔の王国から現在に至るまでの街の変化や貴族式の礼儀作法を教え、それに対してマルチェドは実際
に外で見てきたことや貴婦人の知り得ない知識情報を教えた。
 こうした二人のやりとりは互いの教養を高め、新たな話題づくりのための重要な基盤となっていった。

410ドワーフ:2008/02/17(日) 15:33:56 ID:AepyIIHk0
7.
 マルチェドと貴婦人が出会ってからもう二週間が経っていた。
 マルチェドにとってその時間はそれまでの人生のなかで一番早く進んだ時間だった。
 しかし、彼のささやかな幸福のなかに影を落とすものは少なからず存在した。その要因となったのは、彼自身
の存在そのものだった。
 館から帰ったある晩のこと、宿のマルチェドの部屋を訪ねる人物がいた。
「まあ、仲良くやろうぜ」
 そう言ってその人物はくぐもった声で笑った。
「はあ…」
 マルチェドはおどおどとした様子で答えた。
 まるで鏡写しのように同じ格好の二人。
 シェンマと名乗ったそのネクロマンサーはたまたま街で見かけたマルチェドを追いかけて部屋を訪ねて来たら
しい。
「それにしてもよ、いい街だよな」
「そうですね」
 マルチェドは少し緊張を解いて答えた。口は悪いがもしかしたら良い人物なのかも知れないと思った。
「ああ、頭の軽そうな人間どもがうようよ居るしよ。すぐ外にはでっけぇ墓場まである。利用のし甲斐があるっ
てもんだぜぇ」
 マルチェドの期待はあっさりと打ち砕かれた。
「さてと」
 そう言ってシェンマは席を立つと、マルチェドに言った。
「また時々訪ねさせて貰うぜ。まだここには同郷のお仲間が少ないみたいだからよ」
「は、はあ…」
「そうそう、良い“ネタ”が見つかったら教えてくれ。仲間同士、仲良く分けあおうぜ」
 そう言い残してシェンマは部屋を出て行った。
 マルチェドは呆然としたまましばらく動けなかった。
 “ネタ”というのはレッドストーンに関する情報のことではない。死んだ者の魂のことだ。
 魂はネクロマンサーにとって魔力の源となる重要な武器である。上質で状態の良い魂ほど貴重であり、ネクロ
マンサーにとって垂涎の的だった。そう、特に貴婦人はその条件にぴったり一致していた。
―婦人が危ない!
 そう思うと居ても立ってもいられなかった。マルチェドはすぐに部屋を飛び出そうとした。
 だが、その足は部屋の出口の手前で止まってしまった。
 貴婦人にこの危機を伝えたとしてどうすればいいのだろうか。彼女はあの館から外には出られないのだ。彼女
を守るにはシェンマと戦うしかない。だがそれもマルチェドには無理なことだった。これまで低級な動物の魂し
か扱ったことがない彼には、シェンマのような残忍な悪魔と戦う力はなかった。
 マルチェドは床の上にへたり込んでしまった。

411ドワーフ:2008/02/17(日) 15:34:47 ID:AepyIIHk0
8.
 夜が明けた。
 マルチェドは眠れない夜を過ごしたが、眠気は全くおきなかった。
 一晩かけてマルチェドが至った結論は、まだシェンマに見つかったわけではないという消極的なものだった。
 マルチェドは寝台から降りると、宿を出て表通りをとぼとぼと歩いた。
 まだ早朝で通りに人はまばらだった。露店を開いたまま路上で寝ている人、朝早くから店の支度を始める人。
 広場の噴水の脇を通ると、あの通りが見えた。ずっと向こうに貴婦人が居る館が小さく見える。
 いつの間にかここまで来ていた。
 まだ貴婦人に会うには早すぎる時間だ。
 マルチェドはそこで立ち止まって、ぼんやりと人差し指の先よりも小さな館を眺めた。
 あの館の二階の窓から、貴婦人はいつも街の景色を眺めて自分を待っていてくれている。自分の姿を見つけた
らすぐに一階に降りてきて玄関をくぐる自分をカーテシーで迎えてくれる。
―僕の、“姿”を見つけたら?
 嫌な予感がした。
 マルチェドの足は館に向かって動き出した。
 マルチェドとシェンマは同じ格好をしている。顔などないのだからほとんど見分けはつかない。もし、シェン
マが館の前まで行ったらどうなるだろうか。
 息を切らせながらマルチェドは屋敷の前まで走り、勢いよく玄関の扉を開いた。
 貴婦人の姿は玄関にはなかった。
「はぁ…はぁ…はぁ…」
 途切れ途切れに息を吐きながら玄関ホールを見渡す。
―まさか…。
 マルチェドはよろよろと館の中に踏み入っていった。
「どうなさったの?」
 マルチェドは顔を上げた。
 階段の上から貴婦人が怪訝な表情でマルチェドを見下ろしていた。
「あぁ…良かった…良かった…」
 そう言ってマルチェドはその場に座り込んだ。
 心は泣いていたのに、涙の雫は出てこなかった。
 マルチェドは、こんな時でも悪魔である自分の身体を怨んだ。

412ドワーフ:2008/02/17(日) 15:35:37 ID:AepyIIHk0
9.
 突然の早朝の訪問に貴婦人は戸惑っているようだったが、それでもマルチェドの様子に只ならぬものを感じた
のか、そのことを責めはしなかった。
 マルチェドは客間の椅子に座ったまましばらく無言だった。
 貴婦人もその間問い詰めたりはせず、ただマルチェドの様子が落ち着くのを待っていた。
 マルチェドはどう説明すべきか迷っていた。
 自分と同じ姿のやつが貴婦人を狙っていると言えばいいのだろうか。そうすると貴婦人は「どうして?」と聞
くだろう。何でそんな事を知ってるのかと聞くだろう。
 真実は絶対に話せない。でも、話さなければ貴婦人が危ない。
「あ…う…」
 どう言えばいいか分からず、マルチェドは椅子の上で嗚咽のような呻きを吐くばかりだった。
 そんなマルチェドを心配そうに見つめていた貴婦人は、彼の前にしゃがむと初めて出会ったあの日のように彼
の手の上に自分の手を重ねた。
 それに反応して顔を上げたマルチェドに貴婦人は優しい声で言った。
「あなたに何があったのかは存じませんが、これだけは言えます。私はあなたを心から信頼しております」
 マルチェドは貴婦人のその柔らかな顔を見つめた。兜の奥の暗闇で、口がパクパクと動いた。
―僕は…僕は…。
 告白してこの葛藤を捨て去ることが出来ればどんなに楽だろうか。
―婦人なら、きっと…。
 心優しい貴婦人なら、例え悪魔でも自分を受け入れてくれるかもしれない。
―でも…。
 マルチェドの中のほんのわずかな引っ掛かりが、彼の口を閉じさせた。
 もし、マルチェドが悪魔であることに貴婦人が恐怖を抱いたとしたら。二人の関係は今日限りで断絶し、もう
二度と修復することはないだろう。
 マルチェドにとってそれは何よりも恐ろしいことだった。
「なんでもないんだ。ただ、ちょっと寝ぼけちゃって…婦人の顔が見たくなっちゃったんだ」
 どこまでも嘘を吐くしか出来ない自分にマルチェドは自己嫌悪に陥った。
「そう…」
 マルチェドのあからさまな嘘にも動ぜず、貴婦人はもう何も問うことはなかった。
「本当に突然なんですもの、驚きましたわ。まったくどんな夢を見て寝ぼけたのかしら」
 そう言って貴婦人は立ち上がり、笑った。
「すいません」
 マルチェドは謝ると貴婦人に調子を合わせるように笑った。

413ドワーフ:2008/02/17(日) 15:37:13 ID:AepyIIHk0
10.
 マルチェドは館を出ると深くため息をついた。
 つくづく自分が嫌いになる一日だった。
 でも、貴婦人には自分が来ても決して外に向かって呼びかけたりしてはいけないと言っておいた。
 マルチェドの今日の様子から何かを感じ取ったのか、貴婦人は理由を問わなかった。
―きっと大丈夫、バレたりしなければ。
 マルチェドは足を踏み出し、館を後にしようとした。
「よう」
 聞き覚えのある声にぞくっとした寒気が身体を走り抜けた。
 振り向くとシェンマが館の玄関脇の壁にもたれて立っていた。
「中々出て来ねぇもんだから、待ちくたびれちまったぜ」
「な…なんで…」
 ギゲゲゲとシェンマは不気味な笑い声を上げた。
「まあ、話は中でゆっくりとしようぜ」
 そう言ってシェンマはマルチェドに近づくと、強引に彼の肩を掴んで館の中へ引っ張り込んだ。
 乱暴に開かれた玄関扉を貴婦人は階段の上からびっくりとした表情で見下ろしていた。二階の自室へ戻るとこ
ろだったらしい。
「おーおー!こいつは予想以上の上物だぁ!」
 品定めするように貴婦人の姿をまじまじと眺めてシェンマは大声で言った。その不快な声が館の中に響き渡っ
た。
「どうなさったのです?その方はどなたですか?」
 貴婦人はシェンマに捕まっている様子のマルチェドに問いかけた。
「俺か?こいつの仲間さぁ」
 シェンマはそう言って掴んでいるマルチェドの身体をガクガクと揺らした。
「どうして…」
「はっ!どうしてだって?お前みたいな周りの顔色を見ながら歩く小心者なんざ、ちょいと突付いてやればすぐ
にお宝の様子を見に行くもんだ。キヒヒヒ」
 マルチェドの問いにシェンマは下卑た笑いを漏らしながら答えた。
 マルチェドは身を震わせて、心配そうに自分を見つめる貴婦人を見上げた。
―僕のせいだ…僕のせいで…。
 マルチェドは内心で自分を責めた。
「さーて、早速…」
「僕のものだ…」
 シェンマの言葉を遮って、マルチェドは言った。
 こうなればなりふり構ってはいられなかった。貴婦人を守るにはシェンマを説得して諦めさせるしかない。
「あ?」
「僕のものだ…だから」
「おいおい、仲間だろう?独り占めはないぜぇ」
「でも…」
「なんてな」
 シェンマはマルチェドの肩を離すとを彼を突き飛ばした。貴婦人が悲鳴を上げた。
 シェンマはもんどりうって倒れこんだマルチェドに言い放った。
「そんなもんこっちからお断りだぜ!全部よこしな」
「な…」
 マルチェドは絶句した。
「こんな上物を分け合う?馬鹿言えよ」
 シェンマは腰を突いたままのマルチェドの方に向き直って続けた。
「お前が焦ってこいつを外に逃がしたところをパクっと頂くつもりだったが、そうしない所を見るとどうやらこ
いつはここから出られないらしいな。ってことはだ…」
 シェンマの兜の中の眼がギラギラと輝いた。 
「邪魔者を始末さえすれば、後でゆっくりと頂けるってわけだ」
 マルチェドは恐怖で膝をガクガクと震わせていた。
「切り刻んで欲しいか?それとも…」
 シェンマの右袖から剣が伸びた。
「叩き割って欲しいか、選びな」
 シェンマの左袖から鎖に繋がれた鉄球がゴトンと落ちた。
「ひっ」
 シェンマはゆっくりとマルチェドに近づいて来た。まるでマルチェドの怯えている様子を眺めて楽しんでいる
かのようだった。
 だがマルチェドは腰が抜けてしまって立つことも出来なかった。
「お待ちなさい!」
 貴婦人の声が響いた。彼女は階段を駆け下りてマルチェドの傍に寄ろうとした。
「おい止まれ。そいつに近寄るんじゃねぇ!食われちまってもいいのか!?」
 マルチェドはびくりと身体を震わせた。貴婦人の足が止まった。
「ったく、教えてねえのかよ。まあ当然か。ビビって突っ立ってりゃいいのに、仕方ねえな」
「や、やめろ…」
 マルチェドは震える声でシェンマを制止しようとした。
「嫌だね。てめぇに取られるくらいなら、多少質が落ちても言ってやらぁ」
 シェンマはマルチェドにそう言い放つと、貴婦人に向かって言った。
「おい、そいつの正体を教えてやるよ」
「やめろ…やめて…」
「そいつはな、お前みたいな死んだ人間を食い物にする悪魔なんだよ!」

414ドワーフ:2008/02/17(日) 15:38:27 ID:AepyIIHk0
 マルチェドは目を閉じた。
―なんて事だ…。
 絶対に守りたかったものを失った絶望があった。それだけがあった。
 だが、シェンマのたった一言で打ちひしがれたマルチェドを貴婦人の言葉が支えた。
「それが何だというの」
 マルチェドは目を開いて貴婦人を見上げた。
 いつものように美しい立ち姿で、真っ直ぐにシェンマを睨みつけていた。
「マルチェド様は私の大切な御方です」
「はあ?そんなもん振りに決まってんだろ。死んだ人間の魂ってのはな、動物のなんかと違ってデリケートなん
だよ。死んだのをそのまま頂いたって何の足しにもならねぇ」
 シェンマは両手を開いて貴婦人をあざ笑うかのような口調で解説した。
「死んでから暫く放っておいてな、寂しさに耐え切れなくなったところで優しい振りをして慰めてやるのさ。そ
うやって気分を持ち上げておいて、食べごろになったところを頂くんだよ」
 マルチェドの心は、貴婦人の支えの甲斐なく今度こそ倒れこんでしまうところだった。
―こうまで言われて、僕を信じられるわけがない。
 今度こそ目を閉じて死を待つつもりだった。
「分かったら向こうで震えてな。後でゆっくり食ってやるからよ」
「お断りします」
「何だと?」
 シェンマの声が怒気をはらんだ。
「マルチェド様、早くお立ちになってくださいまし」
 マルチェドは閉じかけた目を開いて貴婦人の横顔を見上げた。
「早く!お逃げなさい!」
 貴婦人が大きな声でシェンマの威圧を跳ね除けるように言った。
 その声はマルチェドの脚の震えを取り払った。
 マルチェドはすぐさま立ち上がるとシェンマに背を向けて館の奥へ逃げ込んだ。
「てめぇ、何のつもりだ?」
 シェンマの問いを無視して貴婦人も背を向けて小走りに逃げた。
「待ちやがれ!」
 シェンマは後を追ったが、貴婦人の姿は屋敷の壁の中に溶け込んでしまった。
 貴婦人が逃げ込んだ壁に鉄球を叩きつけて、シェンマは怒りの丈をぶちまけた。
「死人ごときが舐めやがって!あのゴミクズをぐちゃぐちゃに叩き殺して、てめぇも必ず食ってやる!」
 シェンマの怒りに任せた呪いの言葉が館のなかを反響した。

415ドワーフ:2008/02/17(日) 15:39:41 ID:AepyIIHk0
11.
 館の奥の物置の中でマルチェドはしゃがみ込んでいた。
 シェンマの怒鳴り声が響いてきて、マルチェドの膝を抱いている手に力がこもった。
―もうじきあいつが来て、僕は何も出来ずに殺されてしまうに違いない。そして貴婦人も…僕のせいで。
「ごめんなさい…」
「何も謝る事はありませんわ」
 つい口から出た言葉に貴婦人の返事が返ってきた。
 マルチェドは辺りを見回した。すると貴婦人の顔が壁から突き出していた。
「すぐに謝ってしまうのは、マルチェド様の悪い癖ですわよ」
 壁の中から這い出すようにして現れた貴婦人に、マルチェドは驚いて口をぱくぱくさせた。
「扉を通らずに部屋に入るなんてレディらしからぬ行為はこれっきりにしたいものですわね」
 そう言ってマルチェドに向かって笑顔を向けた。
 いまその魂を狙われているとは思えないほどの余裕ぶりに見えた。
 驚いていたマルチェドは、すぐにまた俯いてしまった。
「でも、貴婦人が狙われているのは僕のせいなんです。僕のせいで…」
「マルチェド様、今はそのようなことを仰られている場合ではありません。あの不埒な輩を撃退する方法を考え
るのです」
「撃退するって、無理ですよ。あんな奴、僕なんかの力じゃ…」
「すぐ弱気になるのも悪い癖!私に良い案があります」
「良い案?」
 マルチェドは顔を上げて貴婦人を見上げた。
 貴婦人はしゃがむと、マルチェドの両肩にそっと手を置いた。そして顔を近づけて言った。
「私をお食べなさい」
――――――。
 マルチェドの思考はその時停止していた。
 貴婦人が何を言ったのかを理解できなかった。
「何、言ってるんですか」
「早く」
 急かす貴婦人にマルチェドは声を荒げた。
「そんなこと、出来るわけがないじゃないですか!」
「でも、やらなければあなたが殺される!私は上物なのでしょう?きっとあの者を追い払う力になれますわ」
 真っ直ぐに自分を見ながら説得しようとする貴婦人に、マルチェドは首を横に振った。
「なんでそんな事を言うんですか。僕は悪魔なんですよ?早く逃げてください…」
 マルチェドは震える声で言った。
「逃げません。ですから早く…」
 貴婦人は一歩も退かなかった。
 貴婦人はうんと言う気配も見せないマルチェドに、身体を重ねて顔をさらに寄せた。
「あなたはあの者が言うような悪魔なんかではないわ。私の掛け替えのない、大切なお友達よ。私をあのような
輩に渡さないで」
「でも…、そんなことしたら…僕はまた一人ぼっち…」
「あなたなら大丈夫。あなたは人間よりも優しくなれる人。人を怖がらないで、あなたが怖がらずに向き合えれ
ば、きっとみんなもあなたを怖がったりしないわ」
 貴婦人の優しい声がマルチェドの中に入り込んできた。
 それはとても柔らかで、温かかった。

416ドワーフ:2008/02/17(日) 15:41:29 ID:AepyIIHk0
12.
 マルチェドはまるで夢を見ているような心地だった。
 そこはマルチェドの見た事もない大きな屋敷の中だった。いや、見覚えはあった。
 そこは貴婦人の館だ。ただ、あちこちに置かれた立派な家具や調度品の数々は、マルチェドの見知った館の姿
とは全くの別物だった。
 時間は深夜らしく、屋敷の中は真っ暗だった。
 そこに明かりがマルチェドのほうに向かって移動してきた。
 蝋燭の明かりが灯る燭台を片手に、貴婦人がゆっくりと忍び足で歩いてきていた。
 マルチェドの姿は見えていないらしく、マルチェドはその場に居ながらまるで幽霊になった気分だった。
 貴婦人は客間の扉をそっと開けると、中の様子を隙間から覗き込んだ。
 マルチェドは何を見ているのだろうかと、一緒になって覗いてみた。
 客間の中では二人の人物が向き合って何やら話し合っていた。
「…という手はずでよろしく頼む」
「わかった。事後処理についてはそちらに任せていいんだな?」
「ああ。証拠になるものは全て処分する。逃走経路の確保のほうも任せてくれ」
「了解した。暗殺の決行日はもう決まっているのか?」
―暗殺?
 聞き慣れない言葉にマルチェドは耳を疑った。
「それについてだが…」
 ガチャ―――。
 扉が急に開いて、部屋の中の明かりが廊下に居る貴婦人を照らした。
 見上げると、部屋の中にいた3人目の男が扉を開けていた。
「ルメーユ、お前…!」
「聞かれてしまったようだな」
「どうする?このまま寝室に戻すわけにはいかんぞ」
「知れた事。始末するしかあるまい」
「ま、待ってくれ…」
「卿、まさか見逃せと言うんじゃありませんよね?我々はこの計画に命を賭けているのですよ」
「分かっている。しかし…」
「しかしではありません。計画の漏洩は絶対に阻止しなくてはならない。第一このことは卿の責任でもあるので
すよ」
「…………」
「卿はすでに我々と手を結んでしまった。悪魔と一度契約を交わしたならば、もう引き返す事は叶いません」
「それでも見逃せと仰るのであれば、我々は卿と共に行動することはできない」
「つまり、卿にも死んで頂くということになりますな」
「……わかった。だが、苦しませないでやってくれ」
「分かっておりますよ」
 3人の中で一番背の低い、マルチェドに良く似た風貌の奴が怯えている様子の貴婦人に近づいていった。
 そこで景色は暗転し、何も見えなくなった。
 再び視界が蘇ったとき、場所は貴婦人の部屋に変わっていた。
 大きなクローゼットに柔らかそうな絨毯、お洒落な壁紙に花を生けられた花瓶。グランドピアノまであった。
 あの大きな窓以外、部屋の様子は全く違っていた。
 透き通った貴婦人が絨毯の上にへたり込んでいる。その彼女を前にして、マルチェドに良く似たあいつが立っ
ていた。
「苦しませるなと卿は言ったが、我々の計画を愚弄した罪は重い。貴様にはここで魂だけの存在となって残って
いてもらう。計画成功の暁には、貴様を我が血肉として迎えてやろう」
「私の帰りを首を長くして待っているのだな。私の帰還はすなわち貴様にとってこの地獄からの解放なのだから
な。ははははは」
 視界はそこでまた暗転し、そしてすぐに戻った。
 貴婦人は部屋の中で呆然と立ち尽くしていた。その表情はマルチェドが見た事もないほど絶望に塗り固められ
ていた。
 部屋の中を数人の男達が歩き回っている。
 クローゼットを運び出し、カーペットを巻き上げ、花の無くなった花瓶を持ち出し、大きなグランドピアノは
解体されていた。
 その様子を眺める貴婦人を見て、マルチェドは胸を締め付けられた。
 計画は失敗してしまったのだろう。
 館は主人を失い、あの悪魔もまた死んでしまったに違いない。
 貴婦人の前には、解放されることのない永遠の地獄だけが残されていた。

417ドワーフ:2008/02/17(日) 15:42:35 ID:AepyIIHk0
 そこでまた暗転した。
 何も無くなった部屋の中で貴婦人は唯一残った窓から外を見ていた。
 眺めているのでもなく、ただ見ているようだった。
 ずっと、ずっと、いつまでも見ている。
 朝も、昼も、夜も。
 その姿はまるで無機質な人形のようで、美しくも冷たい姿だった。
 気が付けばいつの間にか辺りの景色は灰色に染まって色を失っていた。
 また暗転。
 何日、いや、何年時が進んだのだろうか。
 外の街の様子を見ると割と最近のようだった。
 貴婦人はまだ外を見ていた。
 と、貴婦人の目が外のある一点を凝視した。
 それはマルチェドの姿だった。
 辺りをきょろきょろと落ち着き無く見回しながら歩き、そして館の前までくると顔を上げて見上げた。
 その姿は貴婦人にはきっと自分を殺した悪魔に見えたに違いない。
 貴婦人は突然振り返ると、部屋を飛び出して階段を駆け下りた。
『お待ちになって!』
『お願いします!お行きにならないで!』
 外に居るマルチェドに大きな声で呼びかけながら貴婦人は玄関ホールまで走った。
 そして玄関扉に身をぶつけるように寄せた。
『どうか、まだそこに居らっしゃるのでしたら…ここを開けて中に入ってきてくださいまし』
 貴婦人がそう言うと、外の壊れた門が開かれて軋む音が聞こえてきた。
 貴婦人は一歩一歩後ろに下がり、そして入ってくるであろう悪魔を迎える準備をした。
 玄関扉が開けられ、マルチェドが貴婦人の顔を見上げた。
 貴婦人はその場にしゃがみ込んで泣き出した。
"やっと、この地獄から開放される…"
 全てを見ているマルチェドに貴婦人の心の声が聞こえた。
『あの、ごめんなさい…』
『ありがとうございます。ありがとうございます…』
 マルチェドの中に貴婦人の心が流れ込んできていたが、ひどく錯乱しているらしく言葉にはならなかった。
 貴婦人の心がようやく落ち着きを取り戻したとき、彼女の中でマルチェドに対する疑問がわいていた。
 どうして早く自分を食べてしまわないのか、と。
 あの日の景色を眺めているマルチェドは、悲しみに満ちた目で貴婦人を見ていた。
 貴婦人は寂しかったから自分を呼んだのではない、自分に食べられたかったから、地獄から解放されたかった
から自分を呼んだのだ。
―友達になりたかったわけじゃあ、なかったんだ。
 向き合って会話している自分と貴婦人を、マルチェドはただただ立ちつくして見ていた。
『こんな風に僕に話しかけてくれる人は、初めてなんです』
 過去のマルチェドが言った言葉に、貴婦人の中で何かが揺れた。それはマルチェドにも感じられた。
"違う。この方は、あの悪魔とは違う"
『あなたも、ずっと一人ぼっちでいらしたのね…』
 自分と同じ悲しみを背負ったこの人と心を分かち合いたい。時を共にしたい。
 貴婦人の冷え切っていた心に、暖かい感情が戻り始めていた。
 そこから時間はマルチェドと共に過ごした時だけを切り抜かれて目まぐるしく回り始めた。
 灰色だった景色に鮮やかな色が蘇り輝きだした。
 全てが温かく、眩しく、そして視界を真っ白に染め上げてマルチェドを元の時間へと還した。

418ドワーフ:2008/02/17(日) 15:43:50 ID:AepyIIHk0
13.
 マルチェドは泣いていた。
 真っ暗な自分の顔を、確かに何かの滴が伝っていた。
 それは自分の涙なのか、それとも貴婦人が流したものなのか分からなかった。
 マルチェドの中に溶け込むようにその姿を薄めていく貴婦人は笑顔を浮かべていた。
 その笑顔が完全に見えなくなってしまったとき、マルチェドの中の闇に小さな輝きが生まれた。
 温かな魂の輝きだった。記憶は全て消え去り、純粋な命の輝きだけが残っていた。
「婦人…」
 マルチェドはその輝きを抱くように胸に手を当てた。
「見つけたぜぇ…」
 物置の戸が破壊され、シェンマがそこに立っていた。
 シェンマはマルチェドの中に明星のような輝きを見つけると、声をあらげた。
「てめぇ!俺の獲物をよくも食いやがったな」
 マルチェドは立ち上がると、シェンマを睨みつけた。
「お前の獲物なんかじゃない。婦人は、僕の大切な友達だ」
「わっけ分かんねえ事言ってんじゃねえよ」
 怒りに輝くシェンマの目をマルチェドは怯むことなく見た。
 マルチェドの中で怒りの炎が烈火のごとく燃えていた。
「お前は、絶対に許さない」
「ああ?それは俺のセリフだ。あの生意気なクソアマを食い損ねたこのムカツキ…てめぇで晴らさせてもらうぜ
ぇ!」
 そう言ってシェンマは右袖から剣を伸ばし、マルチェドに向かって走ってきた。
 そして剣を振りかぶると、マルチェドの胸に深々と突き立てた。
「お前みたいなゴミクズが、この俺にちょっとでも敵うとでも思ったのか?」
 剣をひねり上げ、シェンマはマルチェドの身体を引き裂いていった。
「お前は、絶対に許さない」
 剣を突きたてられたマルチェドが言った。
「てめぇ、まだ息があんのかよ。さっさとくたばれ!」
 腕に力を込めて、シェンマは剣をさらにマルチェドのなかに埋めた。
「お前は、絶対に許さない」
 マルチェドの声はシェンマの背後からした。
「なっ!?」
 シェンマが振り返ると、数人のマルチェドが自分を囲んで立っていた。
「ど、どういうことだ」
 シェンマはそこでようやく自分の身体が透けている事に気が付いた。
 先ほどまで剣の先に居たマルチェドの姿も消えていた。
 そこでようやくシェンマは自分に起きている事態に気づいたようだった。
「一体、どこから幻だったんだ」
「「「「お前は、絶対に許さない」」」」
 数人のマルチェドの声が重なって響いた。
「やめろ…」
 シェンマの目が恐怖に震えた。
「「「「お前は…」」」」
「やめ…!」
「「「「絶対に許さない!!!」」」」
 マルチェドの怒りの爆発を表現するように、シェンマの身体が内部から激しく炎を噴き上げた。
 呪いの炎はシェンマの肉体を残らず消し去り、後にはシェンマのコートや兜だけが床の上に残された。
 シェンマの残骸のように残ったそれらを見下ろすと、マルチェドはその場に倒れこんだ。

14.
 マルチェドは目を覚ますと、重たい身体を床からはがすように起こした。
 目の前にはシェンマのコートが落ちていた。
 ふらつく身体で物置から這い出し、館を出た。
 昨日寝ていなかったからだろうか、どうやらマルチェドは明け方まで眠ってしまっていたらしい。
 昇ってきた日の光がマルチェドの目に差し込んできた。
 玄関先で立ち止まったマルチェドは、振り返って館を見上げた。
 もう誰も居ない館だ。
 マルチェドは寂しかった。ずっと続けばと思っていた日々が終わってしまった。
 マルチェドの中の輝きが、彼を慰めるように煌いた。
「うん、分かってる。…僕は一人じゃない」
 マルチェドは館に背を向けて通りを歩き出した。

419ドワーフ:2008/02/17(日) 15:44:37 ID:AepyIIHk0
15.
 ドンとぶつかった衝撃でマルチェドは尻餅をついた。
 曲がり角で向こうから走ってきた人物とぶつかったのだ。
「ちょっと、どこ見て歩いてるのよ!」
 ぶつかってきたのは自分からなのに、その人物は悪びれもせずに言った。
 小さなドレスを着込んだプリンセスだった。
「ご、ごめんなさい」
 マルチェドは謝った。
「もう…、いいわよ。別に気にしてないし」
 そう言ってプリンセスはスカートをパンパンとはたいた。
「じゃあね」
 癖なのだろうか。彼女はカーテシーをして去ろうとした。
 それを見たマルチェドは反射的に貴婦人に教え込まれたお辞儀を返していた。
 マルチェドが下げた頭を上げると、プリンセスはぽかんと口を開けてマルチェドを見ていた。
「あなた、それどこで覚えたの?」
 マルチェドはどこからどう見ても、貴族の教育を受けているようには見えなかった。
「えっと、その…幽霊に教えてもらったんです」
 マルチェドの答えにプリンセスは大きな声で笑い出した。
「あははは。なにそれ!あなた面白いわねー。そうだ、家来にしてあげようか」
「け、家来?」
 突然プリンセスが言い出した言葉にマルチェドは素っ頓狂な声を出した。
「そ、家来。さあ、早く行くわよ」
「行くってどこに?」
 家来になるのは決定事項なのか、プリンセスは勝手に話を進め始めた。
「レッドストーンを探しによ。みんな待ってるんだから早く行くわよ!」
 そう言ってプリンセスは猛スピードで走り出した。
 長いスカートを履いているとは思えない速さだった。
「ま、待って!」
 マルチェドは慌てて彼女の後を追いかけた。
―婦人、あなたの言う通りでした。僕は一人ぼっちになんかならない。
 追いかけるプリンセスの背中の向こうに、新しい仲間達の姿が見えた。

420ドワーフ:2008/02/17(日) 15:52:05 ID:AepyIIHk0
『マルチェドと貴婦人』
書き出しは>>404からです。

こんにちは。性懲りも無くまた載せさせてもらいました。
先週に書いたドワーフの話に感想を下さった皆様、
本当にありがとうございました。
しばらくここを開くのが怖かったため、返事がここまで遅れてしまいました。
あのドワーフの話は最初の勢いに任せて一気に書いてしまったため、
終盤になって勢いが落ちてしまった感がありました。
ですから今回はゆっくりと時間をかけて書いてみました。
是非とも、読んでいただけるとありがたいです。

今回は古都の没落貴族の館をモデルに書いてみました。
2.が変なところで間が空いてしまっています。3.からは修正しましたが…。

421ドワーフ:2008/02/17(日) 15:54:48 ID:AepyIIHk0
連投すいません。
書き出しのアンカーを間違えました。
>>403-419です。

422ワイト:2008/02/17(日) 19:57:41 ID:Xx5zcUIE0
>>ドワーフ様
初めまして!この頃何も思い浮かばない、新参者のワイトと言います(TωT)ウ―
マルチェドとルメーユ(貴婦人)との物語は読んでいて本当に面白かったです!!
しかし、それを邪魔したシェンマは、途轍もなく嫌なネクロマンサーですよね(空気読め!
それに加えて同じ悪魔とは思えない残忍さ・・・・貴婦人自らの魂をマルチェドに捧げたシーンは
とても・・・とっても泣けて来ました・・・・(T∀T)この小説に続きが有れば、楽しみに待ってます!!!

423FAT:2008/02/18(月) 00:04:28 ID:SHH8vO0M0
微妙なタイミングでこんばんは。
覚えていらっしゃる方がどれほどいるかはわかりませんがマリスの登場です。
双子の話を書いたのはもう二年以上も前の話になってしまうのですね。時が経つのは早い……

>>ワイトさん
おお、豹変したラータ強い!!
ジョブチェンジが売りのRSならではの設定、楽しく読ませていただきました。
それにしてもヘルアサシン……何者だったのでしょう。
とにかく強烈な印象の敵でした。次はどんな戦いがラータたちを待っているのか。
楽しみにお待ちしております。
確かに、私の話を一から読むとなると1スレ目からになるので容易ではありませんね。
いつか気が向いたときにでも読んでいただければ幸いです。

>>21Rさん
短いながらも、暗殺者の男の暗殺者としての生き様を見た気がします。
死に行くものの言葉は時として強烈に耳に残り、それが暗殺者の最後に繋がった
ように思います。
最後に感謝した相手が妹だったというのもまた悲痛なストーリーを連想させますね。
重量感たっぷりの短編、面白かったです。
バレンタインの企画はどんまいですっ

>>68hさん
いつも感想ありがとうございます。
「このジム=モリ〜〜」はなんとなく響きが良かったので乱用してます。でもこの
おかげでジム=モリのキャラが確立でき、よかったかなと思います。
レンダルとデルタをセットで書こうとするとどうしても話をちゃらかしたくなるんですよね(笑)
ほっとけばこのまま話が進まなくなりそうです。

>>黒頭巾さん
>フランデルニュース
勇者くおりてぃが最高です。フル支援の二人のコメントがより勇者様を際立たせていますね。
そして【赤石戦隊ボウケンシャー】
み、見たいっ!きっとファンになります。グッズも買い集めちゃいそうです(笑)
>バレンタイン話
ふぁみりあいーえっくすが可愛すぎます><
いぢける姿がペットと言うよりも子供のようで心を掴まれました。
終始ほんわかとした話で、温かな気持ちでまるで日当たりの良い部屋にいるような
気持ちになりました。
ほんとうにハッピーバレンタインです。

>>白猫さん
砕け散ったのはルヴィラィの腕だったのですか、完全に悪い方向に行くと思い込んでました。
ちょ、アーティさん泥酔……
力があるだけに酔った勢いでFILやらチャージングなんて出しちゃいそうで恐いです。
特製バレンタインチョコレートケーキタワーを完成させ、なんだか無邪気な
サーレがかわいかったです。
と思ったらルフィエも負けじとバレンタインチョコレートケーキタワーを!?
なんだか似たり寄ったりの両者ですが、どっちも食べずに片されちゃったのかと
思うと無念でなりません。
ブレンティル編ではルゼルとの戦い、覚醒。
エリクシルの第三段階も、ルフィエの神格化も、いよいよという感じでわくわく
してきます。ここで全ての決着がつくとは思いませんが、レベルアップしたネルフィエ
をはじめ、各々の激闘、楽しみにしております。


>>ウィーナさん
初めまして。現実世界からRSの世界の中へ。アルビが自分の書いた詩を読まれて恥ずかしがっている
シーンにはとても共感しました。私も知り合いに小説なんかを読まれるのが恥ずかしいな
と思うたちなので。
女装大会……アルビ反則じゃ><
しかし似合わない女装の方々には激しく吹きました。頭の中で鮮明に思い浮かべてしまいます。
事情がよく飲み込めないままのアルビですが、メアリーたちと今後どのような
冒険を繰り広げるのか、続きが楽しみです。

>>305さん
初めまして。これはなんという詐欺ギルド。
いや、アニルを仲間に引き入れるためにわざと仕組んだのでしょうか?
武道家らしく信念を貫こうとするアニルの姿勢がいいですね。
この戦いの続きはどうなるのか、期待してお待ちしております。

424FAT:2008/02/18(月) 00:04:59 ID:SHH8vO0M0
>>柚子さん
初めまして。
なるほどっ、魔石を媒体にして耳打ちされていたのですね!
あまりにも当たり前にRSでは耳打ちやギルドチャットを利用していますが、
実際どうなっているんだろう?と疑問でした。
しかし柚子さんの設定なら納得ですね!
話の冒頭がとっても謎めいていて、一瞬で柚子さんの世界に引き込まれました。
ルイスとイリーナのコンビもなんだかんだ言いながらも戦闘になれば息ぴったし、
良いコンビですね。
血だらけだったミシェリー。次回はとんでもないことが起こりそうな予感がします。
続き、楽しみにお待ちしております。

おお、双子の話を覚えて下さっているとは! ありがとうございます。
双子は今作でもちょこちょこっと登場させようと思っています。エキストラ程度に(笑)


>>ドワーフさん
初めまして。ドワーフたちの暮らしが手に取るようにわかり、とても楽しく読ませていただきました。
呪いの指輪を発端に、ドベルグが密かに作り続けたムーンライトストーカー、
それを大切な弟子に託す場面では涙が;;
師弟愛、それも一見不器用な愛が心に響きます。
ゴーランが儀式を理解するまでの流れも、実によく悩み、苦悶しているのがとても
伝わってきました。

そして『マルチェドと貴婦人』のお話。
まさか貴婦人が早く食べてほしくてマルチェドを迎え入れたとは思いもしませんでした。
貴婦人の魂が見せた記憶はマルチェドを立派に成長させたのですね、意気地なしだった
彼がとても頼もしく見えました。
プリンセスとの出会い、明るい気分になれる終わり方でとても良かったです。
また話が浮かんだら、是非とも投稿してくださいね。お待ちしております。

>>之神さん
いいですね、いいですね〜。
ミカと徹の抱擁シーン、チョコも溶けちゃいそうです。
シルヴィーもライトとシリウスにチョコをプレゼント。
バレンタインらしく女の子のがんばる姿、楽しく読ませていただきました。
次はホワイトデーでしょうか?
徹がどれだけがんばれるのか、楽しみにお待ちしております。

>>718さん
すごく感動しました。
魔法が解けてチョコが溶けてしまうシーンでは彼の死を連想してしまい、切なく
なりました。
それでも彼女は子供を産み、彼の生存を信じ、生きようとする強い人なのですね。
苦難を耐えてきた彼女だったからこそ、ラストシーンでの再会に感動しました。
今後の活躍も期待しております。

>>スメスメさん
仲間が助けに来てくれてほっと一安心、かと思いきやバインダーの比にならない
くらい恐ろしい事態になっていますね。武器姫は存在しますがどうもキリエは無理やり武器に
させられたようで、武器姫とはまた違った存在なのでしょうか。
アイナーがなぜ変わってしまったのか、キリエは何者なのか、次回が気になります。

キャラの名前の付け方、私は半分くらい洋楽のアーティストの名前から取ってます。
あと、英和辞書で意味する単語をそのままつけたり、キーボード乱れうちでたまたま
繋がったのをそのまま使ったり、様々ですね。
やはり名前を付けるのに苦労したキャラはなんとなく愛着が湧き、登場頻度も多めな気がします。
なんの参考にもならないかも知れませんが私の場合はこんな感じです。

425 ◆21RFz91GTE:2008/02/18(月) 02:05:22 ID:lj0RFLvU0
////********************************************************************************////
  ■◆21RFz91GTE:まとめサイト(だるま落し禁止)
  ■ttp://bokunatu.fc2web.com/trianglelife/sotn/main.html
  ■Act.1 アレン・ケイレンバック >>44-45
  ■Act.2 少女 3 >>65-67
  ■Act.3 少女 4 >>87-90
  ■Act.4 レスキュー? >>173-174
  ■Act.5 蒼の刻印-SevenDaysWar- >>206-208
  ■Act.6 緑の刻印-SevenDaysWar- >>220-221
  ■Act.7 白の刻印-SevenDaysWar- >>222-223
  ■Act.8 紅の刻印-SevenDaysWar- >>272-273
////********************************************************************************////

426 ◆21RFz91GTE:2008/02/18(月) 02:06:00 ID:lj0RFLvU0
Act.9 封印された九つの刻印-SevenDaysWar-



 決戦二日前、ハイカルラルグとの同盟を決意したノースウィンドはアジトでパーティーを開いていた。ハイカルラルグ幹部とその配下を集めての晩餐会。賑やかで楽しく振舞われた宴会は古都中の人達も呼ばれ町全体を上げてのお祭り騒ぎとなった。
 酒が振舞われ、年に一度しか食べる事の出来ないようなご馳走が光り輝く夜の街を飾り、中央広場では噴水に沢山の蝋燭が積まれ綺麗な光をかもし出してくれる。
 街の人々も、なぜこの時期に祭りなのか、誰一人疑問に思う者はいなかった。人々は泣いて、酒を喰らい、愛しい人を抱き、子供を抱きしめた。それはまるで自分達が生きた証をここに残そうとする儀式、この星に記憶してもらいたい切なる歴史。人間と言う生き物のあり方を記憶し、全てを嘆くことを止めない私達を忘れないで貰いたい。そう願う人々の行為。
 出稼ぎにきている者たちには申し訳無いと思う反面、それでも生き残る為に人を殺し、その人々の思い、願い、思念を超えて行かなければならない。若者たちはグループを作り右手に持つジョッキを空へと高らかに上げて故郷の家族の安否を願い。そして一気に喰らった。中には泣きじゃくる者も居る。全ては明日、数時間後には始まる決戦の時。
「アレンさーん。」
中央広場の一角にある木製のベンチに座ってマティーニ(ジンを使ったカクテル)を飲んでいる時だった、噴水付近で酒を配っていたミトが手にワイングラスを持ってゆっくりと歩いてきた。
「何飲んでるんですか?」
「マティーニだ、それよりもミト…君は確か未成年だった気がするが。」
ベンチに座るとゆっくりワイングラスを回して口に運んだ、少量を飲み始めてのアルコールの味を堪能して喉を潤す。
「クラウスが許してくれたんです、初めてですよ私のわがままを聞いてくれたの。」
「…そうか。」
アレンもゆっくろとグラスを口に運ぶ、飲みなれているのかスルリとグラスに入っているマティーニを飲む。少量飲んで口から離すと中に入っている氷の塊がグラスとぶつかり綺麗な音色を奏でた。
「皆楽しそうだな、この音楽もまた良い。」
辺りの賑やかさを確認してもう一度グラスを口に運んだ、焼けるようなアルコールの強さに喉が麻痺し、強烈な飲み口は不慣れな者には咳を、なれている者には快楽を与えるその魔法のような酒に浸りながら夜空を仰いだ。
「ミトさま〜。」
空を仰いでいたアレンの耳にふと幼い声が届く、声の方向に目をやるとそこには小さなランサーが二人歩いてこちらに向かっていた。
「ミトさま、そろそろお時間です〜。」
「あら、もうそんな時間?ありがとう二人共。」
同じ顔が二つ、まるで鏡に映したような幼い子供だった。一人は髪の毛を右上で小さく纏めボンボンを作っている。髪の色はブロンド、肩に掛らないほどの長さでまだ幼い顔立ちをしている。もう一人はそれを鏡に映した感じだった。
「ミト、この子たちは?」
「あれ、紹介してませんでしたっけ?」
ミトはゆっくりと立ち上がると近くのボーイを見つけて呼ぶ、ワイングラスをボーイに預けると双子の後ろに回り二人の肩に両手を置いた。
「この子たちはギルドの四天王の二人。リリア・アルビスとリリルー・アルビスです。見分け方は右上にボンボンがあるのがリリア、逆がリリルーです。」
正直アレンは驚いた、見た目まだミトよりも幼い子供がギルドの四天王である事を。そしてそれを坦々と説明するミトにも驚いていた。
「まさか…この子たちも戦場に?」
「私は止めたんですが…この子達がどうしてもと言うので。」
「お初目に掛かりますアレン様。」「子供だからって馬鹿にし無いでね?」
同時に言う。声質もまるで瓜二つの彼女達を判断するにはまだ時間が掛りそうだが発言からある程度の察しは付くようになった。リリアはボーイッシュな感じでリリルーは清楚な感じ。性格は似ているようで似て居ない。そんな風に捉えられた。

427 ◆21RFz91GTE:2008/02/18(月) 02:06:24 ID:lj0RFLvU0
「し…しかしだな。」
アレンは二人の安否を気遣い参加を止めさせようとした、だが二人の槍を見てからその考えは一度ぴたりと止まった。
「…その槍は。」
見慣れているはずの槍がそこには有った、小さく小型で投擲用の槍と。それとは正反対の両刃の付いた彼女達の身の丈の倍はあろう巨大な槍。この二つの槍には共通点が有った。それが目に留まったのである。
「…そうか、君達は。」
共通点を見て納得するアレンにミトは背中から琥珀の人を取り出し、目の前に持ってきた。
「そうです、ミルさんの意思を受け継ぐ正統な後継者です。生前、アレンさんと私以外に唯一育てた弟子だそうです。」
ミルリスの紋章と呼ばれる一つの小さな魔法陣、それは持つ者の魔力を増幅させ力に変える魔力増幅装置の一種。アレンより遙に凄まじい魔力を持つミルリスだけが行える武具練成、アレンの武具練成で出来たブリューナックよりも凄まじい力を発揮する。
アレンはゆっくりと双子を両腕で抱いた、二人の頭を優しく抱き撫でる。気が付かないうちに涙していた、この戦いで命を落すかもしれない小さくはかない命。それの宿命に立ち向かう勇敢な二人を愛しくもまるで我が子のように扱った。
「…リリア、リリルー。その槍はなんて名前なんだい?」
泣き声でそう言うと二人はアレンの体を支えるように腕を回して師匠が愛した人を感じた。
「海神(わたつみ)の人です。」「蓬莱(ほうらい)の人…。」
そう声を合わせて言った。



 「アデル?そういえば姿が見えませんね。」
スコッチを片手にメガネを直すクラウスにアレンは聞いた、宴会が始まってからと言うものアデルの姿が全く見えない。何処に居るのかと尋ねても誰も見て居なかった。
「どうされたんですか?何か言付があれば承ります。」
「いや良い、自分で探すとするよ。」
「そうですか、もしかしたら西門の丘にいるかもしれません。城門を出てすぐの所です。向こうも出店などが出ていて中々賑わいが有りました。今は西門が破壊されていて修復作業中ですが、それも意味なす所だと思い作業を中断させています。崩れるかもしれませんのでお気をつけて。」
「あぁ、ありがとう。」
ゆっくりと振り返って右腕を上げた、右手をひらひらとゆらしてクラウスに挨拶する。西門付近も出店等が出回り賑わいを見せている。その楽しそうな行商人達の絵顔を見てアレンは心を痛めた。
西門を潜ると大きな墓が見える、自分とミルリスの墓だった。その墓を横目にゆっくりと丘を上がって行く、そこまできつく無い斜面は歩きやすいように舗装され小さな砂利で出来た簡単な道。この丘の先には二つの墓が有った、丘から眺める風景が好きだった二人の小さな墓。
「…アレンか。」
「いよう。」
二つの墓の前でひっそりと立っていたアデルがいた。来ている黒いコートが風で靡いている、冷たく悲しい風が吹いていた。
「詳しい話は聞いて無いが、統合した後でもユランの記憶は多少ながら残っているのか?」
「あぁ…時々こうしてこの墓に足を運んでは心を痛める。それが我の咎だ。」
一度突風が吹く、バタバタと靡くコートと吹き飛ばされないように左手で抑える黒い帽子。それを後ろから見つめるアレンは何時かの険しい目線でアデルを見ていた。
「俺に何か隠し事あるんじゃないかアデル。」
「…何の事だ。」
「…シラを切るか、俺が気づかないとでも思ったのか?」
「…。」
ゆっくりと歩いてアデルの隣に立った、そこから下を見下ろせば明かりが灯り明るい歌声が流れる小さな古都があった。少し目線を動かせば巨大な墓。
「刻印…全て開放されて無いんだろ。」




Act.9 封印された九つの刻印-SevenDaysWar-
To be continues...

428 ◆21RFz91GTE:2008/02/18(月) 02:19:37 ID:lj0RFLvU0
こんばんは〜、夜更けにダバダバしてますヾ(´・ω・`)ノ
うー…ヴァレンタイン企画逃したぁ…ネタあったのにorz
次のイベントは出席しまっせぇ〜ヾ(´・ω・`)ノ

コメ返し

>>289 :◇68hJrjtY様
短編に感想をしてくださりありがとう御座います。
シフってあんなんだろうなぁって思いながらサブ動かしてた時に思い付いたネタです。
忍者っぽいというか暗殺者っぽいというか素敵キャラというかなんと言うか。
思えばディーの時もそうだったんですが、ボケキャラしかいねぇなぁって思い
今回のネタに踏み切った訳ですが…。
うん、俺にCOOLキャラは似合わないようですヾ(´・ω・`)ノ

>>290 :黒頭巾様
( ゚∀゚)○彡゜ 幼女!幼女!
詠唱仲間ですねぇ〜これからも宜しくお願いします〜ヾ(´・ω・`)ノ
ファンだなんてそんな、こんなヘタレですがそう言って頂けるととても嬉しいですヾ(´・ω・`)ノ
階級ネタはクロノクルセイドより引用です(ぉ

>>300 :白猫様
ですよね!ちっちゃい子に大鎌!個人的には戦斧や大剣、薙刀でもおkですよね!
…げふんげふん、ロリ全開ですが何か?(ぉ
用語というより、ノート一冊丸々資料になってるのでそっちに纏めてあります。
実を言うとこの作品を仕上げた後の作品の初期設定や物語なんかも既に資料として
作成ずm(ry

>>315 :ワイト様
こちらこそ宜しくお願いします〜。
俺もこのスレ長いなぁ…住人というより完全に居座って隠居生活かましてますヾ(´・ω・`)ノ

さてさて、何やら名前の付け方とかで盛り上がってますね。
因みに俺の付け方ですが、呼びやすさやゴロの良さで選んでたりします。
もちろん予め神話とかで登場する名前とかも引用したりしてますね〜。
キャラの名前が呼びやすいと何となく定着してくれるんですよね〜
アレン=変態ロリコンとか
アレン=ロリコンと言う名の紳士とか

名前にインパクトが無くてもキャラに応じて何かしら得点付けるといいですよ〜
パーフェクト人間だと面白みが無いから何かしら欠点を付けるとかロリコンだとかドジッコだとか迷子だとか(ry

429◇68hJrjtY:2008/02/18(月) 12:50:15 ID:VU9CmfbA0
>ドワーフさん
泣きました。ほんとに…。
ネクロという職業を深く掘り下げた物語ですが、それだけでは括れないある貴婦人の霊の話。
感想というものが浮かんでこないくらい読み入ってしまったのでアレなのですが…。
全てを理解していた貴婦人と、マルチェドの魂喰い…もとい、ずっと一緒になった二人。
しかし貴婦人の"死ぬ事もできずただずっと館に居るだけ"という気分は想像を絶するものがありますね。
個人的にも死後の世界、霊魂を扱う話は大好きなのでそれも嬉しかったです。
悲しいままで終わらずに暖かい気持ちになれるラストシーンも最高でした。マルチェドの旅はこれから始まりますね!
また是非執筆お待ちしてます。

>21Rさん
ロリコンなアレンには嬉しい展開(?)的にミルリスの師事した二人の少女登場。
流石アレンさん、一瞬でボーイッシュさと清楚さを少女に見出すとは…!(え
そして、むむっ、やっぱりアデルさん何かを隠してましたか。でもアレンには隠せない。
もし刻印が残っている場合、ただごとじゃ済まない気がしますが…うーん。
色々な謎を抱えつつの決戦前、続き楽しみにしています。

430之神:2008/02/18(月) 13:56:29 ID:EljImjJs0
1章〜徹、ミカの出会い。
-1>>593―2 >>595―3 >>596-597―4 >>601-602―5 >>611-612―6 >>613-614
◆――――――――――――――――――――――――――――――――――――◆
2章〜ライト登場。
-1>>620 -621―2>>622―○>>626―3>>637―4>>648―5>>651―6 >>681
◆――――――――――――――――――――――――――――――――――――◆
3章〜シリウスとの戦い。
-1>>687―2>>688―3>>702―4>>713-714―5>>721―6>>787―7>>856-858
―8>>868-869
◆――――――――――――――――――――――――――――――――――――◆
4章〜兄弟
-1>>925-926 ―2>>937 ―3>>954 ―4>>958-959 ―5>>974-975
◇――――――――――――――――5冊目―――――――――――――――――◇
-6>>25 ―7>>50-54 ―8>>104-106 ―9>>149-150 ―10>>187-189 ―11>>202-204

◆――――――――――――――――――――――――――――――――――――◆
5章〜
-1>>277

◆――――――――――――――――――――――――――――――――――――◆
番外

クリスマス  >>796-799
年末旅行>>894-901
節分  >>226-230
バレンタインデー>>358-360 >>365-369
◆――――――――――――――――――――――――――――――――――――◆

431之神:2008/02/18(月) 14:26:49 ID:EljImjJs0
λ

「フン・・・・・・聞いたことも無・・・・」
「どう見てもそうですよ。その杖といい、服といい、魔力も・・・・・弱いですけど発してますから」
「う・・・・・これでは言い逃れできんな・・・・・・しかし」
「何ですか?」
「この世界にいる一般人の貴様が!何故俺の正体を知っているんだ・・・・・・・!?」

えっ・・・・・・?と思わず言いたくなってしまった。この世界の人がフランデルの事なんて知るハズ無いし、普通に考えて・・・・・・
「私もフランデルの者だからですよ」 って思うのが普通なのに・・・・・・・・。

「何、貴様もそうなのか・・・・・?」
「もっとも、私の場合は意図的に来たんですけどね」
「故意に・・・・・・・・か?」
「そうなりますね」

すると男は、なにやら胸ポケットから紙を取り出し、そして更にそれを私の方へ向けた。
「以前、この方法で帰ろうとしたんだが・・・・・・・」
紙の上に書かれた構図は、大きな塔の頂点にエネルギーを集めて、それを飽和させた時の力での移動方らしい。
「随分、古風な移動式ですね・・・・・・・まぁ移動はできても、これではこちらの世界が危ないですよ」
「構うものか、こっちの世界など知ったことでは無い」 フン、という仕草をしてみせる。
「それじゃあ・・・・・・何で、この方法を実行しなかったんですか?エネルギー不足とか?」
「いや・・・・・・・・」男の顔が曇る。


「凶悪な3人組の邪魔があってな・・・・・・、それで実行前に阻止されたんだ」


α

「へーっくしょい!」 不意にくしゃみが出た。
「まさか、徹風邪ひいたの?」ミカが、あまり心配していなさそうにこちらを見る。


「いやぁ・・・・・、どうせ誰か噂でもしてんだろ・・・・・・・」

λ

「邪魔・・・・・・・ですか」
「そう、邪魔な奴らだ。内容はあまり言いたくないがな・・・・・・」
ははーん、きっとボロ負けでもしたのかな・・・・・・・。

「この方法だと、きっとそのお邪魔な方々がまた気づいて来ちゃいますよ?」 正確には、この男の計画を阻止してくれたヒーローとも見えるんだけど・・・・・・。
「そこでだ」
「教えろ、と?」
「よく先読みできたな。貴様、予言者なのか?」
「冗談なのか本気なのか知りませんが・・・・・・・・そんな者じゃ無いですよ」
「そうか、で・・・・・・・・・教えて欲しいのだが」
「ああ、その事なんですけど・・・・・・・・・・、私達は送られただけなんで、知らないんですよね・・・・」

しばらくの沈黙。
「コーヒーとココアです。伝票はここにおいて置きますね」丁寧に店員が注文の品を置き、去って行った。

「そうか、知らないのか・・・・・・・・・なら」男はコーヒーを手にして、香りを楽しむかのように弄んだ。
「何でしょうか?」私もココアのカップを口元へ運ぶ。

「エリクサーの存在を、知らないか?」

432之神:2008/02/18(月) 14:52:36 ID:EljImjJs0
α

「ねぇ、徹………」
「うん?」
「この世界って、錬金術とかの文化はあるの?」ベッドに座る寝巻き姿のミカが言う。
「んー、かなり昔にはあったみたいだけど、ミカ達みたいな魔法染みた所までは発展せずに終わったよ」
「ふーん……」
「なんか知りたいのか?でも、こっちの錬金術は大した事無かった筈なんだけど……」
「ううん、今度自分で調べるよ。ありがと」
「そうか………、分かった」

γ
ある女に呼び出された俺は、その女の家にいるのだが………。
「どうしました?別に、帰りたいのなら帰ってもいいんですけど」目の前の女………いや、幼女か。
「帰るってお前なぁ、呼んだのはお前のほうだろう」

2日前、俺は不気味な装飾の便箋の手紙を受け取った。
フィアレスという幼女から来たこの手紙の内容は、仕事の手伝いをしてくれたら報酬をよこす、という事だったんだが……。

「まぁ、仕事の内容なんですけどね、材料を取ってきて欲しいんですよ」フィアレスは幼女の外見とは似つかない口調で、言葉を続けた。
「それで、報酬なんですけどね」




「おい、そりゃあ本当なのか!?」
「ええ、成功すればですが、約束しますよ」
「分かった、手伝う!」
「まぁ、そのときになったら連絡しますよ………、ではごゆっくりどうぞ。好きなときに帰っていいですよ」
と、フィアレスは言い残して部屋から出て行った。俺は大きな部屋に残され、一人巨大なソファーに腰掛けている。


ψ
「ねえっ!だからさー、知らないかな?」
「知らないもんは知らねえって言ってるだろう、諦めろっての」話かけられた方の男は、ウザったそうにジャージ姿の男を払う。
「えーっ、図書館のおじさんは何でも知ってたんだよ?こっちの世界じゃ伊達なのかーっ!?」無駄に元気な声が、静かな図書館内に響く。
「だーから、いくら図書館の蔵書に囲まれてようと、物知りでは無いって言ったじゃないかさっき!」
「じゃあいいよ、えーとねっ………」


「霊薬の製造の事が書いてある本はどこかなっ!?」
「霊薬ぅ?ん………、昔の錬金術の本でも漁ってみればいいじゃねえか」接客態度0点の受付の男に対して、元気な男は普通に接していた。
「わかった!どこにあるのかな?」
「D-12のところだ。ちょうど、ここをまっすぐ行って右の階段の近く」
「よしっ、行ってくる!」

「なんだったんだあの男………、いきなり『剣士です』とか言いやがって、ゲームのやりすぎか…?」
残された受付の男はつぶやいた。

433之神:2008/02/18(月) 15:02:30 ID:EljImjJs0
どうも(・ω・`

なんか今まで三点リーダが入力できないと思ったら、設定が……orz
この章は参加人数が多いと思うので、いつもより騒がしくなりそうです。
ええもう、あんなバカやこんなバカが沢山出てk(ry

そして、ボソっと冗談ぽく言った課題小説が、沢山の作家さんに書いてもらえたのは驚きました。
全部読ませて頂きましたが、やっぱりストーリーの味が皆さん独特で飽きない(´∀`*
また思いついたら、課題とか考えてみます………!

それと亀なんですが、キャラ名。
私の場合は、RSのNPCの名前とか、人名辞書、ゲームや本のキャラの名前を参考にしてます。
あと、基本ファーストネームとかミドルネームは意識してないです。ええ、そこまで頭が回りまs(ry

そして、いつも感想ありがとうございます。

では、引き続き小説スレをお楽しみ下さい。之神でした。

434柚子:2008/02/19(火) 00:14:58 ID:JTxiEg960
1.>>324-331 2.>>373-376

『Who am I...?』

街の雑踏に並ぶ3つの影。
イリーナ達は街の中心地に来ていた。
そこには数々の露店が所狭しと並び、商人達の賑やかな声が聞こえてくる。
中央には大きな噴水が置かれ、そこで談笑している人々もいた。
そんな賑わう街を見て、ミシェリーは顔を輝かせた。
「すごい……見たこともない物がいっぱい……」
露店には、数々の業物の剣からアクセサリーまで様々である。
「古都は1番大きな国だと言われているからな。様々な地方の人が集まるんだ。これくらいミシェリーだって見たことあるはずだぞ?」
「え? 私はたぶん田舎娘だから、こういうのは初めてなの」
ミシェリーの言葉には、何か含むものがあった。
「たぶん?」
「うん……。変かもしれないけど、余り覚えていないの。名前とかは分かるのに、大切なことがそこだけ抜き取られたみたいに……」
ミシェリーの表情が曇る。
イリーナは慌てて話題を変えようと何か話題を探した。
「そうだ、服はどんなのがいい?」
イリーナの質問にミシェリーの頭が飛び跳ね、考える仕草をする。
「うーん、可愛いのがいいなあ」
「金額は全てイリーナから出る。遠慮なく選ぶがいい」
無言だったルイスがここぞとばかりに口を挟む。
しかしその目は露店に並ぶ武具に釘付けだった。
「あら、ルイス君いたんだ」
「ああ。貴様のくだらないことに付き合わされているせいでな」
互いに相手を見ずに嫌味を言い合う。
間にいるミシェリーが困ったように2人を見ていた。
「お嬢ちゃん、服をお探しかい?」
そう声をかけてきたのは、傍にある露店の商人だった。
露店にはたくさんの服が並んでおり、商人はその内の1つを抜き取るとミシェリーに差し出した。
「これなんかお嬢ちゃんに似合うと思うんだけど」
それはたくさんのフリフリが付いたドレスのような洋服だった。
服を受け取ったミシェリーに、明るい表情が広がっていく。
「ほお、いいのを見つけたな」
ミシェリーと商人のやりとりに気づいたイリーナが歩み寄る。
しかし、服に付いた値札が目に入った瞬間、高速のスピードでミシェリーのそれを奪い取った。
服を取り上げられたミシェリーが、物欲しそうにイリーナを見上げる。
「ミシェリー、これは無理だ。何故か知らないけど桁が2つ程合わない。てめー商人、子供だからって高いの持たせたな」
イリーナの鋭い視線に、商人がたじろぐ。
「行くぞミシェリー。用があるのはこの先の服の専門店だ」
「ま、待ってくださいよ! 他にも良い品がありますから!」
商人が急いで違う服を取り出すと、イリーナに突き付ける。
それは、見たこともない形状の服だった。
「何だこれ。見たこともない形状だぞ」
「それもその筈です。こいつは、かのエリプト王国の洋服なんです。こういった技術は古都よりも進んでいるんですよ」
商人が胸を貼って説明する。
しかし、イリーナは商人に疑念の視線を向けたままだった。
「本当ですって! 何なら着て確かめていただいてもいいですよ!」
「私、これがいいな」
鈴のような声色が2人に割って入る。
イリーナが振り向くと、ミシェリーがじっとその服に見入っていた。
「すぐに決めると後悔するぞ?」
「ううん、これが気に入ったの!」
こうなってはもう聞かない。
イリーナは商人に服を受け取り、それをミシェリーに渡した。
服を渡されたミシェリーは、商人が用意した試着用の個室へと消えた。

435柚子:2008/02/19(火) 00:18:05 ID:JTxiEg960
「着たけど、出てきていいかな……?」
「いいぞ。ルイスが待ち遠しそうにしているし」
「えっ!?」
「イリーナ。何だか急に剣が振りたくなってきた」
「もう出てきていいですよお嬢さん」
試着室の前は、3人のギャラリーを抱えたちょっとしたお披露目ショーとなっていた。
暫しの躊躇の後、天幕の中から小柄な体が踊り出る。
恥ずかしそうに身を縮こませながら、ミシェリーが3人の前に現れた。
「ど、どうかな……?」
ミシェリーが着る服は、黄色がメインの肩まで露出した上着に、グレーのフリル付きの半ズボンだった。
それはミシェリーが本来持つ可愛らしさを引き立てると同時に、大人しいミシェリーにやんちゃさも加えている。
「とっても可愛らしいですよ、お嬢さん」
「うん、似合っているぞ」
イリーナと商人の称賛に、ミシェリーの表情がぱっと明るくなる。
次にミシェリーはルイスに目を向けた。
「どうかな、ルイスさん……」
少し紅くなりながらミシェリーが問う。
さらに2人の視線も加えられる。
期待の視線に耐えられなくなったルイスは小さく口を開いた。
「……悪くない」
その言葉を聞くと、ミシェリーの表情は満開に咲いた。
「じゃあこれ購入ってことで。他にも2着ほど用意してくれ」
イリーナの指示に商人はてきぱきと動く。
商人が選び抜いた服を付け加え、イリーナに渡す。
「これはお嬢ちゃんに買ってくれたお礼だよ」
そう言って、商人はミシェリーに何かを渡した。
それは、純白のリボンだった。
「わぁ、ありがとう」
そう言ってミシェリーは早速付けて見せる。
それはミシェリーの黒髪に良く映えていた。
「とっても似合ってかわいいよ」
商人が笑って見せる。
その後、イリーナは商人に代金を払いその場を後にした。
遠くで商人に見送られながら街を歩く。
「用は済んだし、ミシェリーはどうしたい?」
「もうちょっとここを歩いていたいかな」
「分かった。じゃあまずは昼食を取ろう。それから古都を案内するよ。それでいいだろ?」
聞くまでもなく、ミシェリーは大きく頷いた。

436柚子:2008/02/19(火) 00:21:23 ID:JTxiEg960
それから、3人は昼食を取った後様々な所を回った。
露店がある度にミシェリーかルイスが立ち止まるので、あまり回ることはできなかったが。
気がつくと、既に日が落ち始めていた。
「そろそろ日も暮れるし戻ろう。残りはまた今度案内するよ」
イリーナの意見にルイスが同意する。
ミシェリーはどこか物足りなさそうだったが、素直に従った。
しばらく歩くと、ミシェリーが足を止めた。
「ねえ、あれ何?」
ミシェリーの指は地面に向けられていた。
「ああ、あれは地下水路だ。ミシェリーの真下にも広がっているぞ」
言った後にイリーナは後悔するが、もう遅かった。
「行きたい!」
「だめ」
「あそこ行ったらもう諦めるから!」
「……うーん、どうするルイス」
「好きにしろ」
ルイスの許可を貰い、3人は地下水路に降りることになった。

カツカツと、靴の音が地下に反響する。
3人は地下に続く階段を降りていた。
「ここは少し危険だからな、気をつけろよ」
そう言い、イリーナは予備の杖である尖剣に手をかける。
ルイスの方は常に剣を背負っているので問題なかった。
階段を降りきると、3人の視界に広大な空間が広がる。
「ここだ。面白くないだろ? 満足したならもう行くぞ」
「まだ来たばっかりだよ。さっき危ないところって言ってたけど、どうして?」
純粋に疑問をぶつけるミシェリーに、イリーナが答える。
「ここは相当前からあった場所なんだが、他に使い道がなく認知度が低いんだ。こんな場所だから変な奴らの格好の溜まり場になってる。
一応戦闘規制もされているが、当然守られていない。後は分かるな?」
ミシェリーが頷く。
ミシェリーの希望により、3人は少し中を回ることになった。
しかし特に変わった様子もなく、景色もつまらない物なので、ミシェリーもすぐに飽きてしまったようだった。
「何かつまらない所だね」
「そう言っただろ。服に臭いが染み込んでもまずいし」
その言葉にミシェリーがはっとして服の匂いをかぎ始める。
ミシェリーをその気にさせた所で、3人は引き返すことにした。
冗談混じりの会話を交しながら歩いていると、最後尾のルイスが足を止めた。

437柚子:2008/02/19(火) 00:23:31 ID:JTxiEg960
「どうした?」
「視線を感じる」
自然の動作でルイスが辺りを見回す。
「自意識過剰だな。お前は自分で思っているほど人気じゃないよ」
「まだ気づかぬか貧弱魔導師が。それも1人じゃない」
ルイスの真剣な表情に気づき、イリーナも周りに気を集中させる。
――――確かに感じる。
何か殺気を帯びた複数の視線を。
それも集中しなければ分からないくらいに小さい。
それを恒常的に感じ取れるルイスは人間としてどこかおかしいとイリーナは思った。
イリーナはミシェリーの手を掴むと、足を早めた。
「こうなったら逃げるが勝ちだ!」
そう言い走り出した刹那、イリーナの足が止まった。
「既に囲まれているようだ」
「愉しそうに言うなよ!」
ルイスの言う通り、3人は既に包囲されていた。
気配が次第に濃くなり、近付いて来ることが分かる。
3人は下手に動くことも出来ず、背を合わせ神経を研ぎ澄ませる。
「我々に気づいたようだな。流石だ」
どこからか声が聞こえる。
壁や床に反響しているので正確な位置が分からない。
「実は結構前から知っていたり。何の用だ?」
なるべく冷静さを装いイリーナが問掛ける。
声の主は哄笑を上げるとその問いに答えた。
「そこの娘を渡してもらおう」
予想外の要求に、イリーナは続く言葉を失う。
ミシェリー自身、己が話に出たことに驚きを隠せない様子だった。
「ミシェリーをどうする気だ?」
「それはお前らに関係ない。命が惜しかったら大人しく渡せ」
「相手の戦力はどのくらいだ、ルイス」
イリーナは魔力通信に切り換え、ルイスに話し掛ける。
「戦う気か? いつもの逃げ腰の貴様らしくもない」
同じく、ルイスからの返答が魔力を伝って返ってくる。
「ふん、渡した所で引き下がると思えるほど平和な脳は持ってないからな。いいから言え」
「正確には分からんが10に近い」
それを確認すると、イリーナは通信を切った。
不安そうに見上げるミシェリーの頭を撫でると、イリーナは声の方角へ向き直る。
「大人しく引き渡したら、見逃してくれるのか?」
「そうだ」
「そうか。なら…………丁重にお断りだ!」
その瞬間、イリーナが腰から尖剣を抜刀。
同時に難易度2の魔法、ファイアーボールを2発同時発動する。
合計10個の火球がイリーナの周りに出現し、全方位へ射出される。
火球は床や壁にぶつかると、激しい爆裂を起こした。
爆裂の後に、次々と黒装束の姿をした男達が現れる。
「やはり盗賊共か、だが気配の消し方が不十分だったな」
先程の魔術は、隠れている相手を暴け出す為のものだった。
案の定、不十分な気配遮断のスキルは爆裂の衝撃で掻き消され、姿を現したのだった。

438柚子:2008/02/19(火) 00:25:12 ID:JTxiEg960
見事に技を破られた男達は揃って苦い顔をする。
しかし、それでも撤退する気配は見せなかった。
「もう1度聞く。目的は何だ?」
「言えんな」
リーダー格の男が厳しい表情をしながらも答える。
「かかれ、相手はたかだか2人に子供1人だ! 臆することはない!」
男の指示の後に、他の団員が次々と3人に飛び掛る。
次の瞬間、銀の閃光が走った。
それは1人の団員の左胴に叩き付けられ、そのまま右へと走っていき両断する。
それはルイスの高速抜刀した一撃だった。
2つにわかたれた団員の脇を走り込んできた男へ、ルイスの拳が閃く。
頭蓋まで粉砕され、男が倒れる。
更に体ごと回転させて剣を振り、前方の2人を同時に両断する。
包囲戦で有利だった盗賊達だったが、一瞬で4人を失い、恐怖により後退していく。
その隙にイリーナが再びファイアーボールを発動。
体勢もままならない盗賊達は、爆裂の衝撃で散っていく。
「き、聞いていないぞ、ここまで強いなんて!」
「落ち着け! まずは体勢を立て直すのだ!」
しかし、完全に混乱した盗賊達が指示に従う筈もなく、それぞれ狂ったようにイリーナ達に襲いかかる。
体勢が崩れた敵は脆く、次々に剛剣と爆裂の前に倒れていく。
「くそ、こうなったら娘だけでも!」
遂に1人になったリーダー格の男がミシェリーへ直進する。
「させるか!」
男が手を伸ばす瞬間、イリーナが難易度3、トルネードシールドを発動する。
ミシェリーの周りに視認できる程の高密度の風が発生、付近に居た男の体を斬り刻む!
男は断末魔も上げることも出来ずに絶命した。

「ふう、相手が弱くて助かった。大丈夫か、ミシェリー?」
尖剣を腰に納めながらイリーナが言った。
ミシェリーは震えていた。無理もない、一瞬だったとはいえ、いきなり目の前に殺し合いが始まったのだから。
イリーナはそれに気づくと、優しく包むようにミシェリーを抱いた。
「すまない、これが私達のいる世界なんだ。ミシェリー、私やルイスが怖いか?」
ミシェリーは、少し迷ったあと首を振った。
「なら良かった。でも、君をこんな世界に連れ込みたくない。だから、一緒にお母さんを探そう」
ミシェリーは1度強くイリーナの外套の裾を握るが、すぐに離した。
「イリーナ。見ろ」
「何だよルイス。というか空気を読めよ」
「ふん、しみったれた空気など読む気にもならん。それよりこれを見ろ」
ルイスは倒れた盗賊達の、比較的綺麗に体が残った男の身体を調べていた。
イリーナはルイスが示した所へ目を移し、次に表情が驚愕に変わる。
「マジかよ」
「そのようだ」
2人が苦々しそうに見つめるのは、男の胸に付いた小さな紋章だった。
「身代金目的の、ただの小さな盗賊の集まりだと思っていたのに、違うのかよ!」
イリーナが吐き捨てる。
男の胸に付いていた物は、ギルドを表す紋章だった。
「どうするイリーナ。目の前の現実を受け入れるならば、俺達は個人で組織に喧嘩を売ったことになるぞ。しかも紋章付きだ」
「あー、どうしたらこんなにも不幸と仲良くなれるんだよ。まだ個人の特定はされていないんだ、逃げる」
「貴様らしい発想だ」
そう言いながらも、今回ばかりはルイスもイリーナの意見に同意のようだった。
個人が組織に喧嘩を売って勝てる道理は存在しない。
イリーナはミシェリーの手を掴むと、出口へ向かって走り出した。
ルイスが後に続き、3人は再び古都の雑踏の中に戻った。
「ルイス、監視している奴はいるか?」
「人が多すぎて判別しづらい。だが殺気のような物は感じない」
ルイスに判断に、イリーナは胸を撫で下ろす。
それからも念のため、気を張り巡らせながら3人はギルドに戻った。

439柚子:2008/02/19(火) 00:53:29 ID:JTxiEg960
書き込む度にIDが変わっている気がします。こんばんは。

戦闘シーンがあまり得意な方ではないので、一瞬であっけなく終わる場合が多いです。
それも当たったら即死。早く終わっちゃう訳ですよね……。

>之神さん
初めまして。感想ありがとうございます。
まだ読んだのは初めの部分だけなのですが、各視点によって同じシーンでもこんなにも変わるとは。
これは少し斬新ですね。
RS住民がこっちの世界にくるというのは何だかいろいろと妄想が広がりますねえ。
どうやらキャラも増えていくようで。引き続き楽しく読ませてもらいます。

>FATさん
おお、感想を頂けるとは光栄です!
あの武道家はやはりマリスでしたか! 前作に出てきたキャラが登場してくれて嬉しいです。
登場してくれたことより生きていてくれた方が嬉しかったりします。
レンダルとデルタコンビも息ピッタリで良いペアですね。
武器姫がここまで面白いキャラだとは……。
それと新しく濃いキャラも出てきて楽しくなりそうです。

双子も出してくれるのですか! それは楽しみですね。
読んだのは数年前ですがシエル様の初登場シーンは今でも鮮明に覚えています。

>68hさん
毎度感想ありがとうございます。
バレンタインイベント……思いついていません(笑
ネタを思いつく早さは遅い方なので。
突発イベントが発動したときは喜んで参加させて頂きます。

それと名前の付け方ということで自分も1つ。
自分の場合特に何も考えてません。
また、ミドルネームやファミリーネームもあまり付けませんね。
外人さんの名前がずらーっと並んでいるサイトを見て、そのキャラにあっていると思った名前を付けます。

あまり参考になりませんが、それでは

440◇68hJrjtY:2008/02/19(火) 12:41:16 ID:s7icIOfA0
>之神さん
シリウスとナザ君再登場に喜んでますヽ|・∀・|ノ
この二人、一見正反対に見えて実は相性良さそうだなぁとか勝手にまた妄想…!
(でも心理学的にも「自分と正反対の性格の人が親友」ってのは良くあるみたいですし!(まだ言うか))
つまりはどっちのキャラも好きなんです(笑) しかし、ナザ君の探す霊薬の製法とはまた新たな単語が出てきましたね。
シルヴィーとシリウスの舌戦(?)もそうですが、フィアレスがライトに託した依頼とは。
新しい章の新しい展開、続きお待ちしています!

>柚子さん
冒頭のミシェリーファッションショーに萌え萌え中です(;゚∀゚)=3ハァハァ
RSにももっとファッション性というか、他人と違う姿になれる装備品等欲しいですよね。でもどうせ課金アイテムになるんだろうなぁ…。
ミシェリーの謎も解明されないままに謎のギルドからの攻撃を退けたイリーナとルイスですが。まだまだ波乱がありそうですね。
全ての発端があのウルフマン退治の依頼と考えると、全く繋がりが見えない分一筋縄ではいかない気もします。
軍隊、謎の紋章ギルド、依頼…謎が解き明かされていくのを楽しみながら続きをお待ちしています。

441名無しさん:2008/02/21(木) 17:00:18 ID:bbuUaBX60
ずーっとROM専です。
みなさんの小説を楽しみにしてます。
特にお気に入りの方に対して、ちょっとだけ気になったことを指摘してもいいでしょうか・・・。
生意気にすみません。

21R氏
壮大なストーリー、キャラの立ち方、深み、すごくおもしろいです。
1点だけ。
ちょっと誤変換・誤字が多いように感じます。
大事なシーンなんかで変換おかしかったりすると、「あぁ、もったいない」と思ってしまいます。
そのことを少しだけ気にしていただければなぁと・・・。

白猫氏
もう続きが気になって気になってしょうがありません。
セリフとか(裏切りの契約とかしびれました)、言い回しとか、wktkが止まりません。
その中で気になっちゃったのが、ひとつ
「瞬間、」という言い回しですね。
ちょっと多用しすぎかなぁ、と。いや、気持ちはすごくわかりますけれども。
同じ意味の違う言葉を選んでみてもいいかなと思いますです。

うああああああ
素人がなんて生意気に・・・
お気に触りましたら申し訳ないです

今後も楽しみにROMってます

442FAT:2008/02/22(金) 23:39:49 ID:JprH30U60
前作 二冊目>>798(最終回)

第二部 『水面鏡』

キャラ紹介 三冊目>>21
―田舎の朝― 三冊目1>>22、2>>25-26 
―子供と子供― 三冊目1>>28-29、2>>36、3>>40-42、4>>57-59、5>>98-99、6>>105-107
―双子と娘と― 三冊目1>>173-174、2>>183、3>>185、4>>212
―境界線― 三冊目1>>216、2>>228、3>>229、4>>269、5>>270
―エイミー=ベルツリー― 三冊目1>>294、2>>295-296
―神を冒涜したもの― 三冊目1>>367、2>>368、3>>369
―蘇憶― 五冊目1>>487-488、2>>489、3>>490、4>>497-500、5>>507-508
>>531-532、7>>550、8>>555、9>>556-557、10>>575-576
―ランクーイ― 五冊目1>>579-580、2>>587-589、3>>655-657、4>>827-829
>>908>>910-911、6>>943、7>>944-945、六冊目8>>19-21、9>>57-58、10>>92-96
―言っとくけど、俺はつええぜぇぇぇぇ!!― 六冊目1>>156、2>>193-194、3>>243-245
>>281-283、5>>385-387

―6―

 ここは鉄鉱山地下三階。薄暗く、荒削りの長い坑道は一本のレールをその中央に引き、
埃っぽい空気はその先を隠す。マリスは数ヶ月前、ここで起こったことを思い出していた。
 からっぽの魔道士と蜘蛛。敵わない敵、ネクロマンサー。あの日、マリスが下した決断
は正しかったのか、間違っていたのか。ここにフランたちが居れば正しかったと言うだろ
うが、マリスは過ちだったと思う。あの日の間違った決断がなければテリーもアンメルも
安らかに眠り続けられただろうし、スレイだって死ぬことはなかった。マリスはあのとき、
自分が死んでいればあの姉妹も平穏な日々を過ごせたかも知れないと思うと生にしがみ付
いていたことが、復讐に身を焦がしていたことが情けなく思えた。
「おい、マリス、どうした? そんな思い詰めた顔しちゃってよ」
「おトイレですか? デルタが陰を作りますから、恥ずかしがらずにしちゃってください
な」
 マリスの暗い表情に不安を感じたレンダルとデルタ。気にかけてくれる二人の生の温か
さに、マリスの傷ついた心は扉を開いた。
「ああ、すまない。……実はな、あたしは数ヶ月前にここでネクロマンサーと対峙したん
だ。そのとき、あたしは奴に死の淵まで追い込まれ、契約を迫られたんだ。悪魔との契約
さ。あたしは親友を失った直後のことでやけになって力を求めた。復讐のための力。強く
なれるためなら手段を選ばなかった。愚かな話さ、あたしはネクロマンサーに魂を売って
しまったんだ」
 ごくりと唾を飲むレンダルとデルタ。坑道を照らす弱弱しい灯火は変わらずに一定の明
るさを保ち、揺れている。
「あたしは今、後悔している。その力がもたらしたものは悲しみ以外の何でもなかった。
親友の死体と旅し、優しい狼男をこの手で殺めてしまい、憎むべき相手を間違えてしまっ
た。あたしがずっと憎んでいたのはとても優しい双子の姉妹だったんだ。彼女たちはそん
なあたしを憎もうともせず、必死になってあたしを止めてくれようとしたんだ。あたしは
最後の最後になってようやく気付けた、ネクロマンサーのいいように利用されていたのだ
と言うことを。すべてが終わった後、あたしには何も残っていなかった。親友は再び骨に
返り、優しい狼男はあたしに殺された。あたしはたった一人。もう自害してしまおうと思
った。でも、あたしが自分の首を短剣で裂こうとしたとき、その憎んでいた姉妹が二人が
がりで、自分たちはその短剣で血を流そうとも、あたしを救ってくれたんだ。あたしはま
た後悔した。こんなにも必死になってあたしの命を救ってくれようとしているのに、なぜ
自害しようなんて思ったのか。なぜこの優しい双子の姉妹の好意を素直に受け入れられな
いのか」
 マリスは天井を優しい表情で顔を上げた。

443FAT:2008/02/22(金) 23:40:29 ID:JprH30U60
「あたしはこの救われた命を、その双子のために使いたいんだ。だからあたしはここへ来
た。過去の自分を乗り越え、さらに強く、優しい強さを身に付けようと誓ってさ」
 マリスは話し終えると、二人が黙ってしまったことに不安を感じた。
「す、すまない。こんな話するつもりじゃなかったのに、つい……」
「ば、ばかやろぉぉぉ! 俺たちはマリスがそんな気持ちでいるっていうのに、馬鹿みた
いにはしゃいでよぉぉぉ! 俺は自分がなさけないぜ!」
 涙をぐしゃぐしゃ流しながら、レンダルはマリスに頭を下げる。
「うぅぅぅ、私もですぅ。マリスお姉さまにそんな過去があったなんてぇ。デルタも悪ふ
ざけばっかりでごめんなさい! こんないけない子は叱ってやってください、お姉さま
ぁ!」
 デルタも大きな目からぽろりぽろりと大粒の涙を零す。そんな二人の姿にマリスの傷は
温かく癒されていく。

 この二人はあの双子みたいに素直で温かいなぁ。こんなにもすんなりとあたしを受け入
れてくれて、こんなにもあたしのために涙を流してくれて……。

 気が付けば、マリスも目から熱い物を流していた。頬を伝い、流れる熱い雫は涙。マリ
スの心は決まった。あの双子がそうしたように、あたしも仲間を守るために強くなるんだ。
この二人を守ってあげるんだ。
「レンダル、デルタ、ありがとう。あたしの命を救ってくれたのはあの双子の姉妹だけど、
あたしの心を救ってくれたのはあなたたちだ。今は楽しい旅がしたいんだ。これからもよ
ろしくな」
 マリスは両手を差し出し、右手にレンダルの手を、左手にデルタの手を取った。
「うおぉおぉぉぉぉん! マリスぅぅぅぅ!! 俺は感動しちまってるよ! こんな馬鹿
みたいな俺たちでよかったら、ずっと一緒に居てくれよぉぉぉ!!」
「マリスお姉さまぁぁぁぁぁぁ!! 心の奥の底のさらに奥の底の奥から好きですぅぅぅ
ぅぅ!!」
「ありがとう、本当にありがとう。あたしも二人が大好きさっ!」
 素直になろう。素直に生きよう。思いやりを持ち、憎むことじゃなくて、愛することで
強くなろう。
 マリスの心は二人の温かな涙で満たされ、この出会いに感謝した。薄暗く狭い坑道での
光景は妙なものだっただろうが、三人の温かな絆は明るく、希望で光輝いていた。

「言っとくけど、俺はつええぜぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
「ドレイツボォォォォォォォォ!!」
 そんな雰囲気をぶち壊すような雄叫びが坑道を駆け抜ける。ドレイツボとスカートめく
り男が鉄鉱山地下三階にお出ましだ。

444FAT:2008/02/23(土) 00:06:03 ID:JprH30U60
>>21Rさん
子供ながらに戦場に赴こうとする姿、いたいけで胸が締め付けられました。
祭りのはずなのに切な思いを抱き、その賑わいを眺めているアレンの姿に
今度の戦いの巨大さを感じます。
アデルの隠している刻印が今後どのように戦況を左右するのか、続きを楽しみにしております。

>>之神さん
視点が更に増え、これから大掛かりな話が展開されそうでわくわくします。
エリクサー、錬金術、霊薬。
皆が探しているものは同じものなのでしょうか?
どんなものを探し求めているのか、続きを楽しみにお待ちしております。

>>柚子さん
ルイスとイリーナの犬猿っぷりにすっかりはまっています。
でもやっぱりやるときはやりますね、息ぴったしで頼もしく思えます。
ミシェリーの洋服選びのシーンでは意外と頑固な(?)姿に子供らしさを感じ、
愛着が湧きました。
地下水路で遭遇した謎のギルド員たち。裏でうごめく何か巨大なものを感じさせますね。
狙われているミシェリーに襲い掛かる敵とは何なのか、続きを楽しみにお待ちしております。

>>441さん
誹謗中傷ではありませんし、指摘というのはしてもらえた側は嬉しいものです。…たぶん。
こういったレスも時には必要だと思います。
ただ、>>1にもあるとおり、
>ここでは技術よりも「書きたい!」という気持ちを尊重します。
ということなので投稿初期の方への指摘は避けたほうがいいのかなと個人的には思っています。

445◇68hJrjtY:2008/02/23(土) 00:12:05 ID:zCitLjdU0
>FATさん
マリスの語るひとつの悲しい過去…
でも一冊目、一部の頃のマリスとはひとまわりもふたまわりも成長しているような気がしてます。
女の子三人で意気投合し、マリスもまた心身ともに救われたと思いきや…。来たか、ドレイツボブラザーズ(笑)
しかもレンダルのセリフの真似だし(苦笑) しかし未だにこの二人の実態がつかめませんね…実は意外な大人物だったりして(え
まあ、レンダルたち三人にかかれば余裕!と思いたいですが、どうも執念がありそうな人たちですしね…。
続き楽しみにしています。
---
ちょこっとお詫びが。
実は三冊目以前の小説スレに投稿されていた小説を時間をかけて読めなかったので
このマリスや双子姉妹のストーリーも詳細を知らないままでした…。こんな感想屋でごめんなさいorz
でも今改めて一部を読んで、そして色々なところに繋がっていると思うとFATさんのこの話も長老小説のひとつですね!
一部の方も今後時間をかけて読んでいくつもりです。他の皆さんの小説もあるし(笑)

446ESCADA a.k.a. DIWALI:2008/02/23(土) 09:53:13 ID:MWAIJMQ.0
Side Episode / OvertureⅠ:Def Hills Rapsody 〜炎の賞金稼ぎと再びお嬢様〜

・・・デフヒルズ。フランデル大陸の南西部に位置する広大な砂漠を、人はそう呼んでいる。
時刻は夕方5時。空が橙色に染まり風が唸り、タンプルウィードが転がる中、一軒の建物がポツンと建っている。
旧世界で言うところの『西部劇』に出そうな風貌の建物、その中は外の砂漠同様に寂しく、客と言える者が一人しかいない。
店の壁には多くのお尋ね者の顔が描かれた手配書が、銃創の残る壁の上で無作法に貼り付けられていた。
それら手配書の内何枚かはバツ印と、その賞金首を仕留めたのはオレだと言わんばかりの豪快なサインが共に上書きされている。

妙な雰囲気を醸し出す壁を余所に、赤い毛色の狼のような生き物を連れた青年とバーテンダーがカウンター越しに会話をしていた。
「・・・プハァ〜っ!!相変わらずいい腕前してるね、おやっさん。砂漠を横断してでも飲みに来たい位だぜ〜」
「ハハ、あんたみたいな若造のおかげで俺もカクテル作りが楽しくなるよ・・・そうだ、新作があるんだがな、いってみるかィ?」
「へぇ、面白そうじゃない。そんじゃその新作とやら、味合わせてもらえるかな?オレの相棒も飲みたがってるしよ。」
鮮やかな空色のカクテルを片手にした青年は、女性なら一発で惚れてしまいそうな明るい笑顔を携えている。
小麦色の焼けた肌に銀色のミディアムヘアがよく似合う、陽気で大柄な兄ちゃんといった風貌だ。
スリーブレスのシャツから覗くその腕は丁度好いくらいに筋肉質で、トライバル調の刺青が彫られている。
「おいおいマスター?酒を楽しんでるところ悪いけど、アンタが来たのは別の目的なんだろ?早く済ませちまおうぜ〜?」
青年の横で座っていた赤い狼が気だるそうに口を開き、バーテンダーはそんな彼に骨付き肉を出してあげた。
「そいつァ俺のおごりだよ、ハハハ・・・んで、若造よ。今日もまた獲物の情報をもらいに来たんだろ?違うかィ?」
「おっと、そういやァそうだったな〜。こちとら風来坊の賞金稼ぎだからよ、ヘヘっ・・・いっちょデカい大物とか頼むぜ〜?」
軽くウィンクをしながら,青年はバーのおやっさんに新しい賞金首の情報を催促している。掌をヒラヒラと、手招きするように。
「おぉ、それなら丁度いいや。実は一週間前に依頼主がここに来なすったんだよ、ここらじゃあまり見ない服を着ていたな〜。
 ありゃおそらく東の異国から来たに違いねぇ・・・しかもだ、奴さん相当の大男なんだよ!店の天井に頭を衝く位だったぜ?」
おやっさんがその時の興奮をそっくりそのまま思い出したかのように、遊具を手にした子供のように話し始めた。
「珍しいお客さんもいたもんだねぇ〜・・・で、そのデケぇおっさんから来た依頼ってのは何だい?人探しってか?」
「ご名答。何でも奴さん、家出した一人娘を探しているらしくてね。しかもべっぴんで腕っ節も気も強いじゃじゃ馬と来た!」
「ヒュゥ♪依頼そっちのけでその娘としけ込んじまおうかな〜?シシシシシ・・・んで?ターゲットの名前は?」
「ん〜と・・・娘さんの名前は・・っと、あったあった。こいつァ・・・名前からして東洋系じゃねぇか。なるほど」
「オイオイおやっさん!!いいからとっとと獲物の名前を教えてくれっつーんだよ、何ブツクサ呟いてんでぇ!?」
一人合点しているおやっさんに苛立ったのか、青年が急かす。彼の相棒の赤い狼も少し苛立ったのか、唸り声を発していた。
「す、すまねぇ・・・ん〜と、娘さんの名は『あやね』、姓は東洋の文字のおかげで読めなかったなァ・・・ん?
 いや待てよ、たしか例の奴さん『トウドウ・シノノメ』とか名乗っていたな・・・じゃぁファミリーネームも同じか?」
「あやねちゃん・・・かァ、風流で可愛らしい名前じゃねぇの。ますます会ってみたいねぇ・・・特徴とかあるかい?」

青年が尋ねると、おやっさんは白髪交じりのオールバックヘアを掻き毟りながら、背後の棚から写真を一枚取り出す・・・
「そうだなァ、例の奴さんの話によれば・・・その娘さんは家宝の大槍を持ち出して失踪したらしいぞ?
 東洋の文字が描かれたかなり珍しい槍だって聞いているがな・・・もしかすればコイツのことかもしれないな。」
おやっさんが差し出した写真には、彼が話したとおりの槍がそこにあった。

447ESCADA a.k.a. DIWALI:2008/02/23(土) 09:54:14 ID:MWAIJMQ.0
「おぉ〜・・・こいつぁ特A級の珍品『青龍偶月刀』じゃねぇか。世界でも5本しか確認されてないし、一本数千万するんだってな?」
「それとこのリストを見てくれ。ブルンネンシュティグの冒険者登録票からパクってきたんだがな、仕事がスムーズになるように
 例の槍を所持している冒険者をまとめておいた・・・と言っても、一人しかいないんだけどな。ハハハ・・・」
「蒼龍のラティナ・・・いや、東雲あやね、か。それよりもバックアップの早さは流石だねぇ、おやっさん?」
「ハハ、元々は義賊の親玉だったものさ・・・今となっちゃ辺境で酒場を切り盛りするただの親父だがな?ハハハハっ!!
ところで若造よ、あんた今さっき娘さんの名前を苗字から読まなかったか?しかもスラスラと読んでいたしよ・・・」
さり気ないところにも的確に突っ込むおやっさんに驚くも、青年はまたも陽気な笑顔を向けて言葉を返した。
「これでも大陸の外にも足を運んでいるんでね、東の異国にも何度か行き来していた時期があったんだよ。だから読めるのさ。」
「ほぉ〜、大した冒険野郎じゃないか!!羨ましい限りだねぇ・・・」「で、おやっさん。そのあやねちゃんはどこにいるんだ?」
「あぁ、一昨日にビガプールに寄ってきた客から仕入れた情報なんだがな、写真のとそっくりな大槍を持ったランサーを
 トラン森の近くで見かけたそうだ。おそらくは森の中にいる可能性が高いかもしれな・・・おいおい何処に行くんだよ!?」
必要な情報を頭に叩き込んだ一人と一匹は即座に寂れた酒場を後にしていたが・・・おやっさんがそれを引き止めた。

「場所と名前がわかればこっちのもんさ。いくぜケルビー、一仕事始めようぜ!?」「あいよマスターっ!!」
「ちょっと待った!!そういや若造、あんたの名前まだ聞いてなかったな・・・いっちょ教えてくれないか?」
「あぁ・・・オレの名はミカエル・ウォン、『熾炎のミカエル』だ。覚えておいてくれよ?じゃァなっ!!」
「なっ、話はまだ終わってないんだってば!!依頼主のトウドウさんに落ち合う場所とかも・・・おいィィっ!!」
おやっさんの制止も間に合わず、ミカエルとケルビーの体はその場で燃え盛る炎に包まれ、炎が収まると同時に姿を消した・・・
「・・・まったくミカエルの野郎。これでツケがいくら溜まってると思ってんだ!?報酬額から2割増で引いてやるか。」
溜まりまくるツケと話を最後まで聞かないミカエルに愚痴をこぼすおやっさんであった。しかし、その場で一部始終を
見届けていた者の影が窓から除いていたのにはまだ気付いていなかった・・・影の主は一人のリトルウィッチだ。
「まァまァ・・・あの平凡女を生け捕るだけで一攫千金だなんて、願ってもない最高の機会ですわ!!
 今度こそあの駄女をヒィヒィ言わせて差し上げましてよ!!フフフ・・・オ―――――ホホホホホホホホホ!!!!」
「何だいお嬢ちゃん、アンタも例のクエストをやりたいクチかぃ?嬢ちゃんべっぴんだしよ、サービスしとくぜ?」
いつの間にかその場に姿を現していたおやっさんに驚きながらも、彼女は幼稚な復讐の第2幕を敢行するために
二つ返事でラティナの捜索クエストを承諾した。仕事の詳細を聞いた彼女の瞳にメラメラと炎が燃え盛る・・・!!
「今度こそ私、エレナ・クレモンティーネをコケにした女に復讐して差し上げますわ!!!
 首を洗って待ってらっしゃい・・・這い蹲らせて辱めてあげますわよ〜、オホホのホ〜!!!」
夕暮れの荒野に似つかわしくない、エレナのお嬢様チックな高笑いがオレンジ色に染まる砂漠に響き渡る・・・!!
そんな彼女を余所におやっさんは酒場に戻り、これから起こるクエスト争奪戦を楽しみにしているようだった。
「ヘヘっ、こいつァ面白くなってきやがったねぇ〜・・・こういうの大好きなんだよなァ〜、ニヒヒヒ」
棚から下ろしたビール瓶を片手に、おやっさんの楽しそうな笑い声もまたデフヒルズに響き渡る。
そして砂漠に吹き渡る風は、ラティナ・・・いや、あやねの顔写真が載せられた手配書を風の便りに乗せる・・・

『WANTED!! 東雲あやね〜ALIVE ONLY 10,000,000G〜』

エルフの村が襲撃される数時間前の話・・・。

to be continued...

448ESCADA a.k.a. DIWALI:2008/02/23(土) 10:01:07 ID:MWAIJMQ.0
お久しぶりでございます〜・・・てかスレ進み過ぎだよちきしゃう;;;
ここ最近ネット接続できる日が少なくなっているので、あまりカキコできないです・・・

今回はこれからの展開に向けての伏線的エピソード、そのPart.1みたいなものです。
どうも荒野の荒くれ者的なネタを書いてみたかったのが本音ですけれども^^;
第2弾もアップしてエディvs.ミゲル・・・そんな流れになりそうで。


読むときのBGMにどうぞ。
http://www.vprecords.com/index.php?page=discs&a_id=276&d_id=382

449柚子:2008/02/23(土) 12:02:23 ID:YHWyznpk0
1.>>324-331 2.>>373-376 3.>>434-438

『Who am I...?』

朝日が窓を照らし、窓掛けの隙間から光がこぼれる。
その光で、イリーナ・イェルリンは目を覚ました。
首だけ横に動かすと、ミシェリーがすぐ隣で寝息を立てていた。
起こさないよう慎重に起き上がり、部屋を出る。小広い客室へ向かうと、そこにはすでに蒼髪の男が居た。
「マスターからの連絡はまだ来ないか」
イリーナが目も合わせずに言い、食器棚に向かう。
そこからティーカップを2つ取りだし、湯を沸かす。
「全然、だ」
ルイスが結果を簡潔に答える。
「あっちも大変みたいだな。帰ってくるのは当分後か」
イリーナはそう言いながら湯をティーカップに注ぎ、それをテーブルの前に置くとソファに腰を下ろした。
ルイスはそれを無言で受け取り、その美しい造形の口へ運ぶ。
「相変わらず微妙な味だ」
「市販の紅茶だからしょうがないだろ。ケチつけるなら製造している組織に言えよ」
組織という単語に反応し、2人の表情が曇る。
「嫌なこと思い出した」
イリーナはティーカップを乱暴に置くと、うなだれるように仰け反った。
しばらくそうしていると、ルイスが紅茶をすすりながら口を開いた。
「いつまで現実逃避しているつもりだ」
「ルイス、古都を出ないか?」
「どういう事だ」
イリーナは身を戻し、少し小声でルイスに伝える。
「考えたんだが、やはりここにいるのは危ない。敵にばれていない確証はないし、
 何より都合の悪いように考えていくのが私達の世界の常道だ。そう考えるとしばらく身を潜めているのが最善だろ」
「相手は地下とはいえ街の中でも襲ってくる連中だしな。だがギルドはどうする?」
「休業するしかないだろ、後が怖いけど。それに……」
そこでイリーナは言い淀む。
その先を、ルイスが言った。
「……ミシェリーの母親探しがしたい、だろ」
言い当てられたイリーナは、恥ずかしそうに顔を背けた。
「ああ、そうですよ」
そこで会話は途切れた。
しばらくそれが続くと、遠くの部屋から物音が聞こえた。
どうやら、ミシェリーが目覚めたようだった。
扉が開き、ミシェリーが現れる。
まだ眠気が取れ切っていない様子で、何度も目を擦っていた。
「おはよう、ミシェリー。よく眠れたか?」
イリーナが笑顔を作る。
それにミシェリーが笑顔で応えた。
階段を降り、イリーナの隣に寄り添うように座る。
「……お腹空いた」
その第一声に、イリーナは思わず苦笑を漏らす。
「よし、朝食としますか」
威勢良くイリーナが立ち上がると、寄りかかっていたミシェリーが倒れた。
「人類が食える物が出来るかな」
ルイスが笑いながら呟く。
「人類と友達程度のルイスにはどれも同じ味だろ」
罵り合いながら、イリーナは調理場へと向かう。
1人旅の経験があるイリーナには、申し訳程度には調理の心得があった。
しかし、そんな経験がこんな所で活きようとは。
食糧庫から卵やら肉やらを取り出し、パンを焼く。
ちらりと後方の様子を覗くと、ミシェリーは倒れたまま眠り、ルイスはつまらなそうに窓の景色を眺めていた。
そんな平和な光景に、イリーナは少し苦笑した。

450柚子:2008/02/23(土) 12:05:06 ID:YHWyznpk0
「ほらよ。餌だぞお前ら」
イリーナが2人の前に次々と皿を置いていく。
その香りに気づき、ミシェリーは目を覚ました。
「わぁ……」
ミシェリーの目が輝く。
並べられていく皿の上には、溶けかけたチーズと肉が乗ったトーストや、サラダなどの朝食の定番ばかりだった。
「こんな物しか作れないけどな」
イリーナが最後の皿を置き、3人で食卓を囲む。
特に何の合図もなく、3人はそれぞれのタイミングで食べ始めた。
「うん、おいしいよ!」
トーストをかじりながら、ミシェリーが笑顔で感想を述べる。
「ありがと、こういうのは不味く作る方が難しいからな」
イリーナは横目でルイスを覗く。ルイスは無言でただ黙々と食事をしていた。

一通り食事が終わり、イリーナは食器を洗う作業に移る。
ミシェリーの手伝いたいとの申し出により、あれこれ指示を出しながらの作業になった。
ルイスは1人、黙々と剣の手入れを行っていた。
それぞれが作業をしていると、来客の呼び鈴が鳴る。
「ルイス、お前出ろ」
ルイスは珍しく指示に従い、重い腰を上げる。
そのまま、玄関の方へと消えていった。
「イリーナ、客だ」
魔力通信により、ルイスの言葉がイリーナに直接伝わる。
「迎えろ」
短く返し、イリーナは作業の手を止める。
「ミシェリー、客が来た。悪いけど少し部屋に戻っていてくれ」
「うん、わかった」
ミシェリーは頷くと、部屋の方へ駆けていった。
擦れ違うかのように、ルイスが客を連れて入ってくる。客は、いかにも役人のような人物だった。
イリーナは丁重に椅子へ誘導させ、自らも向かい合うように座る。
「この度はどのような所存で?」
「はい、お二方に依頼を持ちかけて来ました」
「それで、内容の方は?」
イリーナは慣れない敬語を必死に巡らせながら話を進めていく。
依頼主は1度出された紅茶をすすると、再び口を開いた。
「はい、古都の北西にある川を越えると森がありますよね。そこで蟲型のモンスターが大量発生したらしいのです」
「それを我々に駆除してもらいたいと?」
続く言葉をイリーナが引き受ける。
依頼主はそれに対して神妙に頷いた。
「失礼ですが、報酬金の方は? こちらも商売ですので」
「このくらいでどうでしょう」
依頼主が紙とペンを取り出し、値段をそこに書き込む。
イリーナはそれを受け取る。報酬金は安くもなければ高くもない、妥当な値段だった。
しばらく悩むフリをしてから、イリーナが答える。
「良いでしょう。引き受けます」
「ありがとうございます。では、サインの方を」
依頼主が取り出した用紙に、イリーナとルイスがサインをする。
一通りの作業が済むと、依頼主は丁重に礼をし、2人に見送られながら事務所を退出した。
「良かったのか、受けて」
「値段も内容に合っているし、信用していいだろう。それに、下手に断ってギルドの評判を落とす訳にもいかない」
ルイスの問いにイリーナが答える。
イリーナ自身も内心断りたかったが、立場上そうもいかなかった。
「少しタイミングが悪かったんだ。依頼自体も簡単だしすぐ終わる。街を出るのはそれからでも十分間に合うだろ」
言い聞かせるようにイリーナが呟く。
それから、早速準備の為にルイスが自室へ向かい、イリーナはミシェリーを呼びに行く。
イリーナが扉を開くと、ミシェリーは暇そうに寝台で寝そべっていた。
イリーナの姿を確認すると、ミシェリーの瞳が輝く。
「ミシェリー、仕事ができた。ミシェリーもついてくるか?」
「うん!」
素直な少女の頭を、イリーナはごしごしと撫でる。
ミシェリーはくすぐったそうに、ゴロゴロとじゃれた。
イリーナは、出来ればミシェリーを置いていきたかったが、昨日の1件があるので1人にする訳にもいかなかった。

451柚子:2008/02/23(土) 12:07:40 ID:YHWyznpk0
準備が済み、3人は事務所を出る。まず向かう所は薬屋だった。
古びた建造物の前で3人は止まる。そこから漂ってくる薬品臭が鼻につく。
扉の前に看板娘のドロシーが居る筈だが、ドロシーはイリーナを見つけると怯えた様子で物陰に隠れていた。
特に気にせず、イリーナはミシェリーを連れて中に入る。
中では、相変わらず立ち並ぶ薬品の群に、その中に佇む1人の老女。
イリーナは老女の方へずかずかと歩み寄った。
「ようババア、来てやったぜ」
「何だい不快の塊イリーナ。ここに何の用だい」
まずは挨拶を交す。
それからイリーナは、依頼に必要分の応急薬などを注文した。
「今回はやけに少ないね」
「前と違って簡単だからな」
老女が丁寧に薬品を袋に詰める様子を眺めながら、イリーナが続ける。
「それとすぐ後で大量に必要になるだろうから、確保しておいてくれ」
「大きな仕事でもあるのかい? それと、さっきからそこに居る子は誰さ、ルイスの子かい?」
老女が先ほどからずっと薬品を眺めているミシェリーに目を向ける。
イリーナは老女の反応に思わず吹き出した。
「違うよ、まあ事情は聞かないでおいてくれ」
「いいがね、それよりイリーナ。あんたの所に軍の人間が訪ねてきたそうじゃないか」
その言葉に、イリーナの動きが一瞬固まる。
「情報が早いな。だが大事に繋がるような事はない。ちょっと厄介事に巻き込まれただけさ」
「そうだといいがね。まあ気を付けるんだよ」
そう言い、老女が薬を詰めた袋を置く。
それを受け取り、代金を払うと出口へ向かった。
「バアさんは心配性だな。行くぞ、ミシェリー」
「うん!」
有り余るほどの元気な声でミシェリーが頷き、小走りでイリーナの後を追う。
その様子を、老女は微笑ましく見つめていた。

薬屋を出た所で待っているルイスを呼ぶ。今度はドロシーは居なかった。
「ほら、これはお前の分だ」
買ってきた薬をそれぞれ分担する。
ルイスは戦士で、イリーナは魔導師なので当然使用する物も変わってくるのだ。
それぞれ鞄や外套の内ポケットに詰めるといよいよ出発となる。
イリーナは胸ポケットから小さな魔石を取り出す。すると魔石が急に光り、魔法のカーペットが召喚された。
「うわー、すごーい……」
ミシェリーが感嘆の声を漏らす。
「ミシェリーは初めてだったな。その上に座るんだ」
ミシェリーは神妙な足取りで上に立つと、ちょこんと腰をかけた。
その瞬間、カーペットが浮力で浮き上がり、ミシェリーの均衡が崩れる。
「ひゃあっ!」
ミシェリーの慌てふためく姿を見てイリーナ達は大いに笑う。ミシェリーは恥ずかしげに頬を真っ赤に染めて膨れた。
その後にイリーナが前方、ルイスが後方に乗り込む。
「では、出発しますか」
イリーナのやる気の無いかけ声と共に3人を乗せたカーペットは発進した。
カーペットは人込みを掻き分け、西口の門へ向かう。
「わあー、はやーい!」
ミシェリーの歓声を撒き散らしながらカーペットは進む。
しばらく走ると西口門が見えてくる。門番に止められるが、ギルドの紋章を見せるとすぐに通された。

452柚子:2008/02/23(土) 12:25:07 ID:YHWyznpk0
こんにちは。切りが悪いのでいったんここで切りました。

>FATさん
なるほど、マリスの最後の行動はあの双子が止めてくれたのですね。
昔は騙され続けていたマリスが、今ではとても大きく見えます。
大事な人をたくさん失い不安定なマリスをこの2人の明るさが支えてくれるよう願うばかりですね。
そして雰囲気をぶち壊すように出てきたこの変態コンビ。
何をやらかしてくれるのか楽しみです。


余談ですが、以前みなさんを支援しようと登場人物やシーンを切り取って絵にしようと思ったのですが……
画力がなく断念。やはり絵は難しいですねえ。
チラ裏すいません。

453◇68hJrjtY:2008/02/23(土) 14:16:48 ID:2vHoSVXY0
>ESCADA a.k.a. DIWALIさん
ほんと、小説スレに張り付いてる私が言うのもあれですがスレかなり伸びてますよ〜(笑)
新章突入っぽいノリでいきなりラティナさんの実態が明らかになりそうな気配ですが…東洋人(?)だったとは!
でも確かに青龍偃月刀以外にも和風というかアジアを連想させるアイテムもありますしね、設定的にはありそうな気がします。
またまたあのエレナが登場した…と思ったらなんか性格が危なくなってる(笑)
そしてミカエルが新登場ですね。テイマサマナは幼女設定が多いここで男性サマナ(?)というのはなかなか意外なキャラ。
懸賞金までついて、さらにクエスト化してしまったラティナことあやね探し。どうなることやら、楽しみにしています。

>柚子さん
イリーナが古都を離れる宣言(?)をした矢先の依頼。何かいやーな予感がしますが、初めての三人の遠出ですね。
柚子さんの話は毎回、主要部分の戦闘シーン等以外の食事風景や生活を感じさせるシーンが必ず入っているのが嬉しいです。
今回はイリーナの料理の腕前がそれなりにあるという事実判明となりましたが、ルイス、けちょんけちょんに言われてますね(笑)
イリーナたちのような冒険者は野宿したりもするんでしょうし、そういうシーンを想像するのも楽しいです。
ミシェリーと一緒にじゅうたんとか羨ましい(ノ∀`) じゅうたんの相乗りってできたらいいのになぁ…。
蟲退治の依頼の続き、お待ちしています。
---
おぉ!絵を描かれるんですか(*´д`*)
まったくその方面のスキルが皆無な私は「描こう」と思うこと自体ありえないのでほんとに尊敬します。
頭で考えてる妄想の中の人物イラストとかそのままここに出してしまえたらどんなに良いか…(笑)
でも絵を公開するとなるとやっぱり自サイトとか作ったりするのでしょうか。うーん、柚子さん頑張れー!(こら

454ウィーナ:2008/02/26(火) 10:52:09 ID:PI3MWrYQ0
白い鳥と黄色い花

前回はあげてしまって迷惑おかけしました;
これからは気をつけたいと思うのでまたご指摘等お願いします^^

今気づいたのですが・・・
白猫さんの小説にもメアリーという名前…ありましたよね;
今から変える事も出来ないので…この場で謝罪させていただきます;
ごめんなさいです;
また他の方の小説もきっちり読み、気をつけたいと思います;

プロローグ >>301-303
1話 夢のFelt-tipped marker(サインペン) >>310-312
2話 Disguising as a woman(女装) >>316-320



3話 Facing(対面)


俺は夢にでてきたルチノっつーやつを助けるだけにここ、"フランテル"に来たんだと思ってたのだが…
「新しい副ギルドマスターさんっよろしくねっ!」
…なんでこーなっちゃうのだろうか
月舞は嫌々とする俺を無視し、手をにぎり、振り回す。
「まて、まてよ?なんで俺なんかがいきなりそんなお偉いさんになるんだ?」
あわてて俺は月舞と呼ばれた少女の肩を揺さぶる。
そうすると、少女はくすっと笑い、
「白薔薇では貴方のこと、ずぅっと待ってたのよ」
と言った。
「私はまだ認めて無いけれど?」
露店の少女…ニナはぼそっと呟き、俺を睨む。
…俺この子になんかしたっけかな。
月舞は
「ニィちゃんいつまでいじけてるのさ?
「この子、まだ…なんだから、ね?ってことは……でしょ?」
「…そういうことかよ」
ニナの耳にこそこそっと何かを言う月舞。
その後ニナの頬に軽くキスをする。
「…月舞?」
「ふふ」
「どうかしたのか?」
「ううんっ!!なんでもないのよぅ!」
月舞はぱっとニナから離れ苦笑する。
「でねっ、副ギルドマスターってことで、特別に女神様のこと一番知ってる人に会わせてあげようと思って!」
そういうと、鞄から1枚の写真を取り出す。
そこには赤ちゃん(性別はよく分からない。)を抱っこしている男性が写っていた。
「この人は、女神様のお兄さんなのー!
「力がないから同じ親から生まれたのに、大臣にされちゃったけれどね」
力。
きっと女神様には力があるのだろう。
ということはこの写真に写っている赤子が女神様ということか…。
「明日、お昼に王宮まできてねっ
「これ見せれば入れるから〜」
と、俺にカードを渡す。
そこには黒いペンで最初の一行だけ消されていて、
特別入館証と書いてあった。
「この、消された部分は何が書いてあったんだ?」
たずねると、月舞はぎくっとし、
「ななななななな、なんでもないのよ!きにしないでっ」
と言って、
「さ、さぁみんなぁ!詳しい紹介は今度にして帰るわよぅ!」
と言って、ずんずんと出て行ってしまった。
(怪しいな)
数十人がいっせいにいなくなったが、ニナだけはずっと俺のことを睨みつけていた。
「…月舞はああ言っていたが、御前には本当に不思議な光が見える
「きっといつか私らの力になってくれるでしょうね…」
と二言言うと月舞の後を追いかけるように去っていった。
(………)
「ぅー、私眠くなって着ちゃった。
「そろそろ寝よう?」
「嗚呼…」

455ウィーナ:2008/02/26(火) 10:54:48 ID:PI3MWrYQ0
次の朝。
「こんにちはー」
朝早く、いやもう朝方。
つか朝あけてねーよ。
月舞とニナと、もう一人ビショップ…いや、天使がついてきていた。
「お迎えきたよー」
「………」
「ふわぁあ…」
俺は頭をかきながら月舞を見る。
この間とかなり違い、まずフードを脱いでいた。
テイマーって髪型こんななんだな、とおもいつつ後ろを覗く。
と、見たこともないくらいのでかさのファミリアがとてつもなく大きな槍をもってこっちをにらんでいた。
「これ、月舞さんの子か?」
「ううん、ニナの子」
…やっぱりか。
「私の子は本でねてるよー
「こないだ、道でいきなり悪魔さんにやられちゃったの…」
というと、ファミリアの絵が描いてある本をめくる。
いろいろ字が書いており、一番後ろのページに呪文が書いてあった。
読めるのはどうやら持ち主だけのようだ。
「もうすこし、休ませたいから…」
悪魔という言葉にすこし反応する。
(夢で言ってたのも悪魔だったかな)
女神様に会えば何かわかるのだろうか…

メアリーはまだ寝ぼけており、ふらふらと玄関を出て行くと、そこで待っていた男性にぶつかる。
「あっ」
「おっと。大丈夫かい?お嬢さん…あれ?」
メアリーの顔をみた男性は不思議な顔をする。
「え、なにか?
「あっ!寝癖…ッ」
「い、いや…君、なんていうんだ?」
「メアリーっていいます。」
にこっと笑うと浅くお辞儀をする。
「…女神様に似てるんだな」
「?」
「え、そうかな?」
月舞はメアリーをまじまじとみる。
「もう1年近く一緒だけど、そんな風に思ったことないわ」
「…そうか」
男性は1回、大きく息を吸うと、片方が捥がれた翼を広げる。
と、月舞がこそっと耳打ちをしてきた。
「この人ね、追放天使の中でもすごく力があるの。
「数千kmも飛ばせれるし!しかもね、この人…」
と、話の途中で天使さんが消え、すぐに自分達消えた。

456ウィーナ:2008/02/26(火) 10:57:24 ID:PI3MWrYQ0
「つきました…ってあれ?」
月舞とニナがそろってたっていて、メアリーも月舞の腕を無理やり組んで立っていた。
妙にでかくなったな、こいつら…
…って、俺がぶっ倒れていた。
「コーリング、されたことありません?」
天使さんは俺の腕を持ち、立たせる。
「あ、ああ。ハツタイケン、だ。」
「じゅうたんものったことなかったよね?
「今まで、ずっと自分の足で歩いてきたんだ?」
「いや、自動車とか自転車とか、乗るぞ」
というと、月舞もメアリーも顔を見合わせ、
「「ジドウシャってなーに?」」
と言った。
…そうか、ここの世界の移動システムは絨毯、それに天使さんによる"コーリング"というものらしい。
「ま、まぁ何でもいいさ。じゃあ、ご対面か?」
「あっ!う、ううん、まだよ!ええとね、ええと…」
というと、慌てながら地図を取り出す。
「女神さまは…どこにいるんだっけ?TJ?」
と、TJと呼ばれた天使さんは、塔の天辺にある、窓を指差す。
「そっか!じゃあ、いきましょ!」
というと、月舞はカードを見せ、ずんずんと中へ入っていく。
大きなドアを開けると、塔の天辺まで、いや見えないほどの階段が広がっていた。
…みてるだけで目が回りそうだった。
実際、上ってる間もくらくらした。
何か、不吉な何かが自分の体を潰そうとしている感じもする。
そして、5人はついに天辺のはずれにやってきた。
「ち、ちかれた…」
まずメアリーが息を乱して座り込んだ。
「ここまで上ったの久しぶり…ッ」
「………ッ」
月舞と、平然を装っていたニナも、息を荒げにしている。
勿論俺も。
だが、なぜかTJさんは息を乱すどころか、座り込みも、よりかかりもせず。
「あんた、ねぇ。やっぱり、人間じゃないわよ、ね…」
月舞はニナを支えにして立ちつつ、TJに寄りかかる。
「まぁ、慣れてますし。」
と、TJはいかにもここが俺の家だ。とでも言いそうな勢いで立っていた。
そして、月舞はゆっくりとドアを開け、入っていった。
それに続いて俺らもはいってゆく。ドアは簡単に開いた。
だが、5人を呑み込むとドアは閉じられた。

457ウィーナ:2008/02/26(火) 10:58:36 ID:PI3MWrYQ0
「おいおい、どうなってるんだよ?」
と、俺はつぶやいた。
部屋の中には机、イスなど、家具が散乱、というより浮いていた。
中身も外へ出ており、まるで不思議のアリスがウサギを追って落ちてゆく時の状態だった。
声に出してはいないが、TJ、月舞を除いた3人は驚いているようだ。
…ニナも例外。
そして、そのまま月舞についていくまま、青っぽい風景のところへいった。
そこはあの塔の中とは到底思えないほど広々としており、横には水が流れていた。
「……なんだこりゃ」
と俺はさらにつぶやいた。
そこには布団に顔を押し付けて、ないている女性がいた。
髪は2つで結ばれており、メアリーと同じく、腰まで届いていた。
そして、水色…いや、どちらかというと群青色か。
のドレスを身に着けていた。
なにか、メアリーに似ていた。
そういえばTJも最初に女神様とメアリーが似てるといっていたな。
じゃあこの人が…?
そして、泣いているその女性にTJが声をかける。
「…母上、きっと、ルチノを探してくださる人を連れてきました。
「お顔を、上げてください。」
といった。
その女性が女神様じゃなかったことには勿論吃驚だが、
TJの母上ということにはもっと吃驚とした。
TJは吃驚しすぎて唖然としてしまった俺を引っ張り、その女性の近くに連れてく。
「ぐすっ…よく、いらっしゃいました…」
と、女性は棒読みで言った。
まるで、小さな女の子が自分の大好きな人形を捨てられてしまったような泣き方。
「あなたが…グスッ、ルチノを助けてくださるの…?
「………!」
さっきまで泣いていた女性は、俺の顔を見ると、目を見開いた。
そして、
「きてくださったのね…!
「私の…いいえ、アルビ様。」
そして、泣いていたとは思えないほどにっこりと笑い、俺の手を握る。
「私の名は、オパーリ=クライス。
「そして、あなたを呼んだのは他でもない、私の娘の…女神の力を受け継ぐ、ルチノの捜索依頼です。」
と、言った。
女神様の捜索…
「おい、話が違うじゃないか」
と月舞に耳打ちをすると、
「えへへ…私も、女神様がアルビちゃんを呼んだなんて、初耳。」
と言った。
「娘は…15年前、悪魔に連れ去られてしまいました。
「17年前までは私が女神の役でした。
「けれど、クライス家は女子供を生むと、強制的にその子に女神の力が受け継ぎます。
「だから、もう私にはほとんどといってもいいほど、いえ、もう力はありません。」
というと、またおいおい泣き始めてしまった。
「まて、だから探してほしいと?」
「ええ…娘が18歳になるまでに探さなければ、フランテルは…ぐすっ」
「今17だったな?18になるまで、後どれくらいあるんだ?」
「1ヶ月です…」
1ヶ月か…まだあるな…
って
「1ヶ月!?」
と、2人(メアリーと俺)は声を合わせた。
メアリーは別の驚きがあるみたいだった。
「その、ルチノちゃん。私と同じ月にうまれたのね!」
と叫んだ。
「ほう?メアリー、18だったのか。
「てっきり15くらいだと思ったぜ?」
「まあ、失礼しちゃう!」
女神様…いや、オパーリ様はそのまま泣いてしまっていて、
それ以上話すことはなかった。

458ウィーナ:2008/02/26(火) 11:00:29 ID:PI3MWrYQ0
「フランテルって、どれくらい広いんだ?」
「んーとね」
月舞は地図を広げる。
「メアリーの家1万個分!」
メアリーはすかさず言う。
「ほう、そんなに狭いのか」
「ううん、そんなことないわ。」
月舞はメアリーの家を指差す。
地図でみると、大きな四角で表されていた。
「…こんなでかいっけ?」
「うん、フランテル一大きいよ!」
そういわれると…
もう一度、メアリーの家を外から眺めてみる。
周りを歩いて回ってみる。
すると…
「…でか…」
東京ドームよりでかい。
いや、東京ドーム5個ははいる。
「メアリーって、親どうしたんだっけ?」
「私が物心つく前からいないよ。
「それまでは、お姉さんが一緒に暮らしていてくれたけど、もう3年くらいあってないなぁ。」
「お姉さんって?」
「親戚の。とってもやさしくて、私にリトルのすべてを教えてくれた人だよ!」
ふーん、と俺は空返事を返す。
しかし、1ヶ月で探し出すのは無理じゃないか…
月舞にきくと、フランテルの優秀な捜索隊1万人で探したが、見つからなかったそうだ。
悪魔は18になったら契約を誓い、そしてその女神様の体をのっとり、
世界を壊してしまう、という。
そのために、18になってからじゃ遅いのだ。
信頼を置き、契約を交わさせる。
それは女神様自身が望まなければできないこと。
だから15年前、まだほんの2歳だった女神様をつれさった…
必要なはずなので、殺しはしないはず。
いまもどこかで女神様は生きている、それだけはわかっているのだ。
そして、もうひとつ。
女神様の手がかりは、ペンダントになっているREDSTONEのかけら。
だが、REDSTONEというのは、契約を交わすときしか輝かない。
普段はただの石なのだ。
そのため、そんなものは手がかりにならない。
だから、いくら捜索隊が総出しても、見つからないのだ。
なぜ俺が選ばれたのかは知らないが、どうやら俺には呼ばれたワケがあるらしい。
…そういや、REDSTONEって…

459ウィーナ:2008/02/26(火) 11:02:02 ID:PI3MWrYQ0
…つか
「TJさんて、オパーリ様の子供…なわけ?」
「ああ…力がなくて王兵にされた。
「しかも、母さんは…
「妹が連れ去られたとき、近くで遊んでいた俺のせいにし、
「俺の翼を捥いで王宮から追放された。」
「…へぇ」
じゃあ、月舞がいっていた、写真の女神様を抱っこしている男の子…力がなくて大臣にされたのは、この人なのか?
「追放されて、なぜ大臣になったんだ?」
「嗚呼…月舞が話したんだね。」
と、月舞をちら、と見る。
月舞は無視をしていた。
「それは…
「不思議な力はないが、俺の探知がすごかったらしくて。
「それで母さんは俺を大臣にしたんだと思うよ。」
「…そんな親、憎まないのか?」
というと、TJは暗く顔を濁らして、
「…どんなことをされても自分の親だしな。
「ルチノが連れ去られたのだって、本当に俺が悪いのかもしれない…」
と、言うと家をでていってしまった。
「TJにも、いろいろあるんだよ」
月舞が言った。
「じゃあ、捜索は明日からにして、今日はもう解散にしましょ。」
「ああ」

その夜、俺は胸の痛みに苦しみながら、ベットに横になっていた…



なんか長くなってしまいました!
が、無事に対面…いや、できてなかった!
さあ、女神様はどこへ!?

胸の痛みはなんのかんけいが…?

次回はニナちゃんを壊していこうとおもいます!
では、また><

460◇68hJrjtY:2008/02/26(火) 16:50:20 ID:Tq20zJio0
>ウィーナさん
悪魔、女神様、そして力が無くて追放された天使。RED STONEが絡まなくても成立しそうな世界観ですよね。
童話のような…とまでは行きませんが、やっぱりどこか御伽噺みたいな雰囲気があるような気がします。
さて、副マスターとなったアルビ、メアリー、ニナ、月舞とTJというメインキャラ的な(?)5人が勢ぞろいしましたねヽ|・∀・|ノ
女神様の母に託された女神様探しですが、期限は一ヶ月。もし見つけたとしても簡単には連れて来れないでしょうし…。
話の続き、お待ちしています。
そして蛇足的にコーリングについて。やっぱり現実的に"コーリングされた"という状態は気持ち悪い系を想像してしまいます(笑)

461白猫:2008/02/27(水) 20:31:53 ID:gJ85/34o0
Puppet―歌姫と絡繰人形―

第一章〜第五章及び番外編 5冊目>>992
第六章 -夜空の下で- >>30-37
第七章 -深紅の衣- >>70-81
第八章 -神卸- >>137-139
第九章 -チャージング- >>164-171
第十章 -母- >>234-241
第十一章 -北へ- >>295-299
第十二章 -バレンタインチョコレートケーキタワー?- >>349-353
第十三章 -神格化- >>388-399
これまでの主要登場人物 >>38
用語解説 >>255-261


第十四章 開演、演舞、そして終演




 【さあ、よけきれるッ!?】
 「っち!」
デスサイズから放たれる三日月型の衝撃波を、ネルは前進しながら避ける。
さらにサーレ自身から振り下ろされる鎌の一撃を、さらに左腕のエルアダークで弾く。
 【そー、れ!】
今度は、サーレの左腕から無数の杭が生み出され、それらの全てがネルに向かって放たれる。
が、
急速回転し、ネルはそれを背のマントで薙ぎ払う。
さらに右腕の剣でサーレの鎌を切り上げ、左腕を鋭く突き出した。
 〈速いッ!?〉
以前とは比べものにならないその速さに、サーレは目を見開く。
咄嗟に身体をねじり、エルアダークの刃から逃れる。
と、その脇から今度は紅色の爪がサーレに向かって伸びる。
それを側転で避け、サーレは目の前に迫る盾を蹴った。
 【っち!】
その反動でネルと距離を取り、サーレはフワリと地面に舞い降りる。
自身の攻撃を全て避けられたネルは、それにも(外見だけは)全く動じず、再び黄金の剣を構える。
 (ちっ)
心中でもう一度舌を打ち、ネルはゆっくりとエルアダークの照準をサーレに合わせる。
 (流石に簡単じゃないな…[デスサイズ]を持っただけでここまで変わるのか)
彼女の持つ死の大鎌[デスサイズ]。
鎌そのものにも半端ではない魔力が込められているのか、素手で触ったら全身丸焼けになりかねないほどの熱を帯びている。
さらに彼女自身の能力[絶望の銑鉄]を組み合わされると、常人では手に負えなくなる。
 (さて、どう攻めたものか)

 〈硬いな、あの鎧〉
ネルとの差をじりじりと詰めつつ、サーレはデスサイズをゆっくりと構える。
先からこの鎌で、何度かネルの身体を捉えたことはあった。
だがその鎧が、全く砕ける気配がない。
先の激突では、それを利用されて左手の盾で肩を貫かれた。
すぐに傷は塞がるが、痛みや疲労が消えるわけではない。大鎌を振るっている分、消耗はこちらの方が激しいのだ。
 〈あの鎧、ネルぽんは重さ感じないみたいだし〉
流石はネル、と言ったところだろうか。
先から汗こそ流してるとはいえ、息が荒くなっている様子もない。
痩せ我慢……には、見えない。彼はそんなことをしないような気もする。
 〈とにかく、なんとかエリクシル奪わないとなぁ〉
そのエリクシルは、ネルの鎧…[守護鎧]の胸の部分に埋め込まれている。
あの強度の鎧から取り出すことに少しゾッとするが、とにかく今は、
 〈首を、刎ねる〉
彼女は、多少なりとも好意を抱いている少年を、殺すことに何の疑問も抱かない。
姿形こそ少女であれ、彼女も歴とした[傀儡]である。

462白猫:2008/02/27(水) 20:32:44 ID:gJ85/34o0
 「っはぁああああああっ!!!」
 【ッオォオオオオオオッ!!!】
大剣と槍が激突し、白と蒼の火花が辺りに飛ぶ。
激突の反動で距離を取ったベルモンドは、だがすぐにその大剣を振りかぶる。
が、今度はただ上から下に振り下ろすのではない。
地面と水平に剣を薙ぐ、[水平振り回し]である。
 「!」
その一撃を見、アーティは咄嗟に地面を強く蹴った。
剣の一撃を"跳び越えて避け"、アーティは槍を構える。
が。
 【ッバァン!!】
 「!?」
バガン、と鋲の突いたグローブで殴られ、アーティは3mほど吹っ飛ぶ。
地面に強く打ち付けられ、グラグラする視界の中、アーティはゆっくりと立ち上がった。
その頬の血を拭い、少しだけ顔を顰める。
 「この、馬鹿力め」
 【フツーの人間なら顔面潰れてんだよ、バァーカ!
 俺様が剣だけかと思ったか? 甘ぇな、甘ぇよ、女。白の死神をナメんなよ】
 「……ペッ」
口の中の血を吐き、アーティはゆっくりと槍を構える。
 「白装束の死神など……一人で充分よ」
まるで槍投げのような体勢を取り、アーティは呟いた。
 「…………カリアス=ハイローム一人で充分なの」
 【……あん?】
首を傾げたベルモンドはもう無視し、槍にゆっくりと力を込めてゆく。
もう手加減をしている場合では、無い。
 「ライトニングチャージング――『 ジャベリン 』」
その声を聞き、ベルモンドは不敵な笑みを浮かべた。
 〈無駄無駄ァ……俺様にその術は通用しねぇよ〉
 「『 ジャベリン 』」
アーティの槍に凄まじい量の紫電が帯電されていくのを見、ベルモンドはゆっくりと大剣を構えた。
 「『 ジャベリン 』」
既に槍に貯まった蒼い稲妻は、直視することができないほどの輝きを放っている。
だが、ベルモンドの顔に浮かぶ余裕の笑みは、消えない。
それを不快に思い、しかしアーティは叫ぶ。
 「さあ、四度目よ――『 ジャベリン!! 』」
アーティの言葉と同時、手に持った槍が、巨大なコルセスカへと変化する。
これより[チャージング]は、槍の形状すらも変質させる。
 (前は五回目のチャージング失敗したし…こんなものかな)
 〈物質そのものを変化させるほどの魔力ねぇ……ま、俺には無駄だけど〉
 「受けきれるものなら受け切ってみなさい!『 ライトニング・ジャベリン!! 』」
アーティの手に握られた、青の光を放つ槍が、放たれた。
風を切る音もなく、ただベルモンドへ向けて、凄まじい速度で。
 【ハッ……甘ぇな、女】
そう呟き、ベルモンドが両足を強く踏み込む。
手に持った大剣を"両手"で握り、叫ぶ。
 【――魔力を、食らえッ!!】
 「!!?」
ベルモンドの大剣と、アーティの槍が接触した瞬間、

   バチン

とヒューズが飛んだような音と共に、
元のフィルルムへと戻った槍が、地面に転がった。
 「――バカ、な」
無双の威力を誇る[ライトニングジャベリン]が、吸収された。
その光景に瞠目するアーティに、ベルモンドはニッと笑いかける。
 【この術の名前……なんてったっけか?】
 「……!!」
 【ああ、確か……[ライトニング・ジャベリン]、だっけか?】
その言葉が終わる、寸前、

アーティの胸を、巨大なコルセスカがぶち抜いた。
アーティの稲妻と同じ、蒼い紫電を纏ったコルセスカが。

 【ほら、返してやったぜ……10倍の火力でな】
その言葉は、地面に倒れ込むアーティには届いていなかった。

463白猫:2008/02/27(水) 20:33:07 ID:gJ85/34o0
 「ッヒュ!」
 【!】
カリアスの杖による一撃を避け、プリファーはトンファクローを突き出す。
その爪を首を傾けることで難なく避け、カリアスは左手をプリファーに向けた。
それを見、プリファーは咄嗟に右へと跳んだ。
一瞬遅れて、カリアスの左手から凄まじい量の水の怒濤が吹き出した。
右へと跳んだプリファーは、そのままカリアスとの距離を取る。
 〈速い……私より遙かに。斯くなる上は〉
 (ま、そこそこに速いな……本命装備を使うほどでもないやろ)
お互い再び距離を取り、地面へと着地する。
プリファーは改めてカリアスの技能に不敵な笑みを浮かべ、ゆっくりと距離を詰める。
カリアスの速度は半端ではない。自分の目でも、追いつくのがやっとのレベルである。
しかも彼は、魔術師であるなら必ずあるはずの[術発動時のモーション]が存在しないのだ。
何のモーションも無しに、難易度4だの5だのの魔術を連発してくる。
 〈使いたくは無かったが……仕方あるまい〉
カリアスは驚いた。
プリファーが突如、手に持ったトンファクローを地面へと落としたのだ。
何かの罠か、とカリアスは半歩下がる。

が、カリアスはここで戦局を見誤った。
半歩ではなく、一歩下がるべきだったのだ。
 【[アクセル]、第二段階……[ダブル=アクセル]】
その言葉が終わりきるかという、間際。

充分に距離を取っていたはずのカリアスの胸に、プリファーの拳が食い込んだ。
 「ッ」
メキメキと肋骨の拉げる音に目を見開き、カルアスは咄嗟に身を捩る、
寸前、プリファーの右足が、カリアスの左頬を捉えた。
反応する暇もない、カリアスは堪らず吹っ飛んだ。
トン、と地面に着地し、プリファーは小さく息を吐く。
遙か遠くで木々に激突し、動かなくなったカリアスにプリファーは小さく呟いた。
 【この程度、か……[シングル=アクセル]について来れたというだけ上出来か】








 「『 ――宴影剣! 』」
 【ッヌォオオオオ!?】
カリンの繰り出した靄に包まれ、デュレンゼルは目を剥く。
さらにその腹に食い込んだカリンの廻し蹴りに、その巨体が宙に浮いた。
デュレンゼルの身体が雑木林に埋もれるのを見、カリンは剣を構えた。
 「魔創残龍剣四十四乃巻――」
 【[ブラストハンマー(爆鎚)]!】
カリンの言葉が終わりきる前に、デュレンゼルの言葉が雑木林に響いた。
途端、カリンの真上から、炎に包まれたデュレンゼルの右手が叩き落とされる。
 「ッ!?」
それを全くの反射で、カリンは仰け反って回避する。
が、
デュレンゼルの右腕が地面に接触した途端、凄まじい爆発が起きる。
堪らずその爆風に吹き飛んだカリンは、しかし剣を地面に刺し、制動を掛ける。
 「……馬鹿力め」
数百度の熱風を至近で浴び、カリンの肌は日焼けをしすぎたように真っ赤に染まっていた。
背のマントから布の焼ける嫌な臭いがするのを感じ、カリンは目を細めた。
 「[宴影剣]でも斬れない体表か……一体どうなっている? 御前」
その言葉の途中、ヌッと雑木林の合間から現れたデュレンゼルは、線のような口をUの字に曲げた。
 【我のことを知りたいか、黒き女? 我は十一の[傀儡]の中で最も硬き鎧を持つ傀儡、デュレンゼル。
 我の皮膚は龍のそれを凌駕し、我の[ブラストハンマー]は龍の[息吹]を凌駕する】
その言葉にチッと舌を打ち、しかしカリンは剣を構えた。
 「つまり、だ。御前を斬れば、御前達全てを斬れる……そういうことか?」
 【そういうことになる、なぁ】
 「そうか」
痛む全身に心中で喝を入れ、カリンはゆっくりと剣を構える。
 「その[ドラゴンメイル]とやら……斬らせてもらう」
そうカリンが呟いた途端、その剣の色が、変化してゆく。
まるで絵の具を真っ黒な世界に落としたような、白と白に。
 「……"裏"魔創残龍剣……四十五乃巻」

464白猫:2008/02/27(水) 20:33:46 ID:gJ85/34o0

 「『 ジャッジメント・デイ=ディバイア 』」
 「紡ぐ歌声死の嘆き、嘆く人々愚かな舞曲、唄いの舞いの、今日も宮殿は舞踏会――『 ディープスロウ 』」

ルゼルの放った無数の十字架を、ルヴィラィは[ディープスロウ]によって動きを止める。
まるでそこだけは時間が止まっているような錯覚に陥るほどの見事な呪術に、ルゼルはしかし何の感慨も抱かない。
彼は良くも悪くも[神格化]を発動し、何の感情も、何の言語も持っていないのだから。
 「『 ヘブンリープレシング=ディバイア 』」
瞬時に十字架を回転、ルゼルは無数の巨大な鎚を生み出す。
それら全てを再びルヴィラィに向かって放つ、

が。

それら全てが、ルヴィラィに到達する中程で、停止した。
 「無駄よルゼル――[ディープスロウ]の呪いは、[歌姫]でない貴方には破れない」
 「…………」
ルヴィラィの言葉を聞いても、ルゼルはやはり無言。顔色一つ変えない。
手に持った2mを越す十字架を鋭く薙ぎ、ルゼルはルヴィラィに向かって飛び掛かった。

が、一閃。

 「――っふ」
ルゼルの十字架を、ルヴィラィの鞭が瞬時に捉えた。
 「終わりよ――『 デリマ・バインドブレイズ 』」





 「…………」
恐らくはパペットのものであろう触手に絡め取られ、しかしルフィエは目を細めるだけに留まる。
視界を全てシャットアウトされている状況にあって、しかしルフィエは恐怖を抱かない。
 「――行くよ、マペット」
 〈はい〉
幼い少女のようなマペットの言葉を聞き、ルフィエはゆっくりと両手を目の前の触手の壁に翳す。
そして、一声。
 「『 ――[ノヴァ(新星)] 』」
パペットの触手の壁を、白と黄金の煌めきがぶち抜いた。

 【ヒッ】
ルヴィラィに、ルフィエの捕縛だけを命じられていたパペットは、そこでようやくルフィエから離れた。
再び昼のブレンティルに戻ったルフィエは、宙にフワリと浮きながらにっこりと笑う。
 「使えた」
 〈当然です〉
マペットの言葉にも微笑み、ルフィエはゆっくりとパペットに向き直る。
その姿に無い目を見開き、パペットは心中でルヴィラィに問う。
 〈ドウスンノサ、ルヴィラィ? ルフィポン[神格化]シテルヨ――〉
しかしいくら待っても、その答えは返ってこない。
そこでようやく、ルヴィラィがルゼルと交戦していることをパペットは思い出した。
 〈……マ、殺シテモイイヨネ。ヒヒッ〉
千切れ飛んだ触手をその髑髏の中に戻し、パペットは小さく呟いた。
 【イクヨ――第二解放[ガーゴイル]】

465白猫:2008/02/27(水) 20:34:13 ID:gJ85/34o0
すると突如、パペットの後頭部から、二翼の悪魔のような翼が生える。
さらに、その髑髏の表面から、腐敗した肉のような、紫色の肉が生み出される。
その肉は見る間に増えてゆき、やがて2m近くはあろう、人型の肉塊へと変貌した。
 「…………」
 〈ルフィエ、気を付けて下さい――これから、パペットが真の力の一片を見せようとしています〉
 「一片? 全部じゃないの?」
 〈はい――パペットの[最終解放]は、こんな場所では発動しないでしょう〉
マペットの言葉に頷き、ルフィエはゆっくりと両腕を開く。
まるで胡蝶が羽ばたこうとしているかのような姿に、しかし見惚れる者はいない。
その姿にケラケラと笑い、パペットは言う。
 【マペット……今度ハ人間ノオ手伝イ? 忙シイネ。ヒヒッ】
 〈奴と話すのは時間の無駄です――一気に、決めましょう〉
 「うん」
そして、一跳。

2mはあろうガーゴイルの姿をしたパペットに飛び掛かり、ルフィエは叫ぶ。
 「『 ノヴァ! 』」
流星が如く瞬きがルフィエの両手に現れる。
その手を握りしめ、ルフィエはその腕でパペットの左腕を、

ひっ叩いた。

途端に炸裂する巨大な爆発に、パペットは堪らず吹っ飛んだ。
何の防御態勢も取らなかったパペットを、しかしルフィエは不審に思わない。
吹っ飛ぶパペットに瞬時に追いつき、両手をその後背に翳す。
 「『 ノヴァ 』」
今度は先の二倍の威力の爆発が、背中から直撃する。
上空に打ち上げられたパペットに、ルフィエはさらに追いすがる。
 「『 ノヴァ 』」
その両翼、
 「『 ノヴァ 』」
その右腕、
 「『 ノヴァ 』」
その両足、
 「『 ノヴァ 』」
そして頭部に、流星の瞬きが炸裂した。
黒煙を引きながら地面へと落下するパペットを見、ルフィエは目を閉じる。

力が湧いてくる。

以前までは考えられないほどの、大きな力が。

これなら、これならば。

パペットを、退けることができる。

皆を……護ることができる。

 〈打って、ルフィエ!〉
 「――『 ウルトラノヴァ!! 』」
ルフィエの紡ぐ呪文に呼応するように、ルフィエの両手から先の[ノヴァ]と同じ閃光が、今度は無数に繰り出される。
単体の流星を召還するのが[ノヴァ]ならば、[ウルトラノヴァ]はまさしく流星群。
地面へと落下するパペットに次々と流星が飛び、全弾違わずパペットに命中した。
途端に湧き起こった白と黄金の爆発を見やり、マペットは不審に思う。
 〈おかしい、パペットがこれほどあっさりと――〉
 「マペット、なんだか……おかしくない?」
 〈はい……何か裏がありますね。気を付けて、ルフィエ〉
 「うん」
マペットの言葉に頷き、ルフィエはパペットの姿を見やる。
全身の皮膚が焼けこげ、煤にまみれたパペットはその這々の体でゆっくりと立ち上がる。
 【ヒヒッ……[第二解放]ジャ相手ニナラナイミタイダネ……。
 ダケド[神格化]、コンナモノナンダネ。ヒヒヒッ】
その笑いに目を細め、ルフィエは鋭く手を天に翳す。
 「なんとでも。貴女はここで……私が壊す!」
瞬間、彼女の掌に、[ノヴァ]と同じ煌めきが現れる。
否、同じ煌めきだが、規模が違う。
その煌めき――流星は、徐々にその大きさを増してゆく。
既に直径は1mを越えている。先のテニスボールほどの大きさの球であれほどの威力があったのだから、ここまで巨大になれば、恐らくコロッサスほどの魔物でも一撃で消滅するほどの威力だろう。
それを見やり、パペットも黒こげの身体をゆっくりと起こす。

 「――『 [超新星(スーパーノヴァ)] 』」
 【ヒヒッ――『 [龍の火弾(ドラゴンブレス)] 』】

ルフィエとパペットの術が、一方は上空から、一方は大地から放たれた。
白と黄金に彩られた光球と、黒と赤の混ざり合った炎弾が、双方の中程で激突した。
数秒の間、弾同士は押し、押され、高密度のエネルギーの鬩ぎ合いが続いた。
が、双方やがてその弾の形を崩し、

消え去った。

 (相殺――かな。押し切れなかった)
 〈さて、パペットはどう出るでしょうね〉
一人で二人たるルフィエとマペットは、地面に佇むパペットを注視する。
が。
 【コンナモノダネ、ヒヒッ。今日ノトコロハオ終イダヨ――】
そうパペットが呟いた途端、ガーゴイルの胸から、まるですり抜けるに髑髏が抜け出た。
何かの予兆か、と構えるルフィエ(パペットの呟きは双方の位置上聞こえない)を無視し、パペットはせせら笑う。
 【アッチモ、勝負ガツイタミタイダネ……】
その言葉は聞き取ったルフィエは、パペットの顔が向いている方向を咄嗟に見やる。

と、

その方向――東側住宅街から、凄まじく巨大な火柱が上がった。

466白猫:2008/02/27(水) 20:35:10 ID:gJ85/34o0
 「――さようなら、ルゼル。お終いよ」
棘だらけの鞭を手に、体中煤でまみれたルヴィラィが呟く。
目の前の住宅街は、ルヴィラィの放った火柱によって全壊してしまっている。
それを目に立っているルヴィラィの息も、かなり荒い。
唄によって効果を増した[ディープスロウ]は、いかなる術も停止させる威力を持つ。
しかしその分術の反動が大きく、長時間使用は遮二無二避けなければならない術なのだ。
加えて[デリマ・バインドブレイズ]もまた、難易度を無理矢理ランク付けると[8]の部類に入る術である。
一度発動すればその他の術の発動すらままならず、下手をすれば自身の存在すら消滅するほどの術。
それほど強大な術を、彼女は短時間に二度、発動したのだ。
疲労も当然かなりのレベルまで溜まる。恐らく、しばらく戦闘どころかまともに魔術も放てないだろう。
だが、それほどの疲労を負った甲斐は、あった。
今、最も忌まわしく、最も偉大で、最も厄介な……敵が、死んだ。
 「さよなら――貴方こそ、本気で戦うに価する男だったわ、ルゼル――」
その言葉を聞く者は、既にこの世には、ない。
それを再度確認し、ルヴィラィは叫んだ。

   「撤収よ、傀儡達!!」






 【!】
 【む――】
 【撤収だァ?】
 【ぬぅ】
 【ヒッ……】
ルヴィラィの声を聞き、パペット達はその場の戦いを一斉に放棄する。
全員が雑木林、広場から脱出、ルヴィラィの元へと駆けた。
数秒もしない内に集結した傀儡達を見やり、ルヴィラィは言う。
 「皆、一度戻りなさい。後は私がやる」
 【オイオイ。お楽しみを独り占めかよ】
 【口を慎めベルモンド。彼の赤毛の女性がそう言っているのなら、撤退するのだ】
 【ンだとコラ? 俺に指図すんじゃねぇよ】
プリファーとベルモンドが睨み合うのを見、サーレは溜息を吐く。
手に持ったデスサイズで、二人の合間を掻き分ける。
 【黙りなよ二人とも。喧嘩はイグドラシルでやればいい】
 【…………】
 【…………チッ】
双方サーレの鎌を見やり、視線を相手から外した。
それを見やり、サーレはゆっくりと鎌を下ろす。

瞬間、その姿が掻き消えた。

サーレだけではない。デュレンゼル、プリファー、ベルモンドの姿も、瞬時に掻き消える。
それを見やり、パペットはルヴィラィの手の中へとフワリと収まった。
 「……さて、と」
髑髏を撫で、ルヴィラィは小さく微笑む。
空中を漂い、ルヴィラィはゆっくりと目の前に視線を移した。
その佇んでいた、金色の剣を構えたネルと紫電を纏ったルフィエ。
二人に不敵に笑いかけ、ルヴィラィは人差し指を立てた。
 「まずはおめでとう、と言っておきましょうか。二人とも、新しい力に目覚めたようだし」
 「ええ、お前のおかげですよルヴィラィ。お前は――僕に、致命的な武器を与えてくれたのだから」
目の前のルヴィラィに剣を突き付け、ネルは言う。
 「この[守護神(ガーディアン)]の力で、お前を――斬る」
 「――それはいいけれど、一つどうかしら」
 「…………」
目を細めたネルに、ルヴィラィは首を傾げて笑う。
 「これはゲームよ。双方命を懸けるに値する……ね。
 私の計画[ラグナロク]の発動までには、最低333日間が必要なの」
333日間、の言葉にネルはさらに目を細める。
何かの罠なのだろうか人、蜜月いや、間違いなく、これは罠だ。
 「だから、[ラグナロク]が発動するまでゲームをしましょう。
 簡単なゲームよ……貴方達が[イグドラシル]を見つけ、私を滅ぼすことができれば貴方達の勝ち。
 貴方達の攻撃をかいくぐり、[ラグナロク]を発動することができれば……私の勝ち。簡単で平等でしょ?」
 「傀儡は11体と聞きましたよ。お前達を合わせて13体です。
 こちらは僕、ルフィエ、ルゼル様、アーティさん、カリアスさん、カリン、マペットの7人ですよ。どこが平等ですか」
そのネルの言葉に、ルヴィラィは吹き出した。
そんな反応を不快に思い、しかしネルは押し黙った。
 「…………」
せせら笑うルヴィラィを見、ネルは眉間に皺を寄せた。
 「私はやろうとすればここで貴方達を殺せるの――それをしない理由が、分かる?」

   「私が、あなたの娘だから?」

467白猫:2008/02/27(水) 20:35:36 ID:gJ85/34o0
ルヴィラィの言葉に、ルフィエは半ば挑戦的に答えた。
その言葉に、ルヴィラィは小さく微笑み、しかし答えない。
頭に被ったリトルサンシャインを取り、ルヴィラィは言う。
 「それよりもいいのかしら……貴方達の友達のランサーさん……死にかかってるみたいよ?」
 「!!?」
その言葉にルフィエは目を剥く。
ゆっくりと視線を流したネルは、リレッタに介抱されている、アーティの姿を視認した。
胸からの出血が激しい……否、恐らく心臓を、貫かれている。
 「…………」
 「ごめん、ネルくん」

そう言うが早いか、

今まで宙を浮いていたルフィエが、突如降下を始めた。
それを頷いて見、ネルはゆっくりと目の前のルヴィラィを睨む。
 「あの人が心配じゃないのね? フェンリル」
 「アーティさんは……ここでお前を逃がしたら、アーティさんは絶対に僕を、許さない」
右腕の剣を構え、ネルは言う。

   「勝負です、ルヴィラィ」





 「パペット、[グングニル]の破壊を急ぎなさい」
 【ヒッ……ルヴィラィ、大丈夫カ?】
 「早くお行き」
 【ヒヒッ……死ヌナヨルヴィラィ】
パペットがそう言うのと同時、その姿が唐突に掻き消えた。
それを微笑んで見、ルヴィラィはネルに向き直る。
 「お望み通り、戦ってあげる……本気で、ね」
 「そうですよ」
目の前のルヴィラィに剣を構え、ネルは呟いた。
 「本気で来なければ……お前が後悔することになります」
そう言うが早いか、
ネルは瞬時にルヴィラィへと飛び掛かり、その右腕を突き出した。
その刺突をフワリと避け、ルヴィラィは唄を紡ぐ。
 「……貴方はどんな色が好き? 赤色黄色それとも水色? 私は黒色が好きなの、何でも塗りつぶせる黒が――『 魔の約定! 』」

468白猫:2008/02/27(水) 20:36:01 ID:gJ85/34o0
 「ッ!?」
ルヴィラィが手を突き出すのを見、ネルは咄嗟に左腕のエルアダークを翳す。
途端、凄まじい光と轟音が響き、そのエルアダークに奇妙な文様が刻まれた。
それを見やり、一瞬の判断と機転でネルはエルアダークを身体から分離させた。
一瞬遅れて、ルヴィラィが呟く。

   「『 契約破棄 』」

瞬間、空中に放られたエルアダークが凝縮、大爆発を起こす。
その爆風に吹き飛ばされ、しかしネルはゆっくりと剣を構える。
 (危ない……だけど、弱点もそれなりにあるみたいだ)
目の前に対峙するルヴィラィを見、ネルは思考を流す。
ルヴィラィの姿からは、疲労の色が見て取れる。
恐らくはルゼルとの戦いで相当疲労したのだろう、これならば自分にも勝機は――"ルゼル"?

   "ルゼルは、どこだ"?

 (どこかに潜伏している?)
有り得ない。
ルゼルがルヴィラィを放置したまま、どこかへ消えるはずがない。
 (致命傷を受けて沈黙を?)
これも有り得ない。
ルゼルはビショップである。いくら致命傷を受けても、すぐに治癒することができる。
 (気絶してどこかに倒れてる?)
これも有り得ない。
そんな状態のルゼルを、ルヴィラィが逃がすわけが――"ルヴィラィ"?
 「…………まさか」
思わず、ネルは呟いた。
そのネルの呟きに、ルヴィラィは不敵な笑みを浮かべた。
 「探してごらんなさい……その辺に煤になった死体があるんじゃないかしら」
 「――――!!」
左腕の拳を、肌が白くなるまで握り締める。
その手から鮮血の垂れるのも感じず、ネルは[守護神]の仮面を深く被り直す。
 「お前、は……!」
 「っは!」
言いかけるネルの右腕に、ルヴィラィの鞭が巻き付いた。
咄嗟に振るうが、がっちりと巻き付いた鞭は、びくりともしない。
 「くっ――」
咄嗟に、[深紅衣]を体中に幾重にも巻き付ける。何を考える暇もない。
白と光の世界が閉ざされ、紅と黒の世界にネルは閉ざされる。
そして、来た。

   「『 バインドブレイズ 』」

その、鞭を媒体とした巨大な火柱がネルを瞬時に包み込んだ。
先に空に上がった、天高く上がる巨大な火柱ではない。
だが、その[深紅衣]を蝕み、[守護鎧]まで到達するほどの炎が、ネルの身体を焼く。
自身の防御陣すらも焼き払うその炎に、ネルの意識が、一瞬消し飛ぶ。

   (ここで……ここで、終わるわけには、いかない!)

469白猫:2008/02/27(水) 20:36:24 ID:gJ85/34o0
瞬間、


 「………!!!」
ネルの胸のエリクシルが、突如光を放った。
その光源たるエリクシルは、ネルの身体"ではなく"、ルヴィラィの放った[地獄の業火(バインドブレイズ)]を見る間に呑み込んでいく。
 (――私の[地獄の業火]を、吸収している!?)
見る間に炎の規模は小さくなり、数秒としない内に、その炎は全て掻き消えてしまった。
何事も無かったように空中に佇むネルを、ルヴィラィは小さく微笑んで見る。
 (面白い……レッドストーンを使うまでもない。今ここで、[エリクシル]を完成させてみせる)
そう決意する間も一瞬、
 「ぁあああッ!!」
ネルの右腕が金色の輝きを放ち、その形状が瞬時に変化する。
巻き付いていた鞭を切り払い、ネルはルヴィラィから咄嗟に離れた。
 (……熱、い)
胸のエリクシルが、発熱していた。
触っただけで燃え付きそうなほど熱い熱を、発している。
まるで、先のルヴィラィの炎を吸収してしまったように。
 (いったい、いったい)
胸の宝石を見やり、ネルは瞠目する。
 (一体、"これ"は……エリクシルは、何なんだ…!)

 「休んでいる暇は無いわよ、フェンリル」
 「…………」
無数に踊る黒球を見、ネルは仮面越しにルヴィラィを見据える。
その紅色の瞳で黒球を眺めるのも、半秒。
それらの球が、一斉に煤だらけのネルへと放たれた。
一球一球の大きさは林檎ほどもない。だが、それら一つ一つには、凄まじい量の魔力が込められているように感じる。
 (一体、どこからこれほどの魔力を――)
それら全てを右手の剣で切り払い、ネルは地面へと降下する。
その合間にも、自分の胸のエリクシルが熱を発し続けている。
鎧越しにも感じるその温度に、ネルは目を細めた。

 (どうやらあの[守護神]の状態になると、ローブ、鎧、右腕で捉えた対象からも魔力を吸収するようね)
地面へと降りて行くネルを見やり、ルヴィラィは荒い息をゆっくりと整える。
思ったよりも魔力の消耗度合が早い……集中を切らせば、燃え尽きかねない。
だが、今ここで、逃すわけにはいかない。
ネリエル=ヴァリオルドとの一騎打ち。
これほどの好機を、みすみす逃すわけにはいかないのだ。
 (後一撃もしくは二撃の[バインドブレイズ]を叩き込めば――完成する、のよ!)
鞭を空高く振り上げ、目を見開く。
かなり遠方にネルの姿が見えるが、この術に相手との距離は関係ない。
全てを焼き払い、滅び去せることのできるこの術には。

   「『 デリマ・バインドブレイズ 』」

470白猫:2008/02/27(水) 20:36:47 ID:gJ85/34o0

 〈!〉
その術の発現に最も早く気付いたのは、ネルでもルフィエなかった。
 〈凄まじく巨大な術を放とうとしている…効果範囲は恐らくこの辺り一帯ですね〉
マペットはその術の巨大さに無い目を見開き、小さくルフィエに呟く。
 〈ルフィエ〉
 「なに?」
アーティの胸の傷に手を翳していたルフィエは、マペットの言葉に顔を上げる。
マペットの声はルフィエにしか聞こえない。突如声を上げたように見えたルフィエに、半泣きのリレッタがルフィエを見る。
 「ルフィエ、さん……」
 「……大丈夫だよ、リレッタちゃん」
ゆっくりと立ち上がり、ルフィエは心の中でマペットに言う。
 (なに?)
 〈ルヴィラィを見て下さい〉
その言葉を聞き、ルフィエはルヴィラィの方を見やる。
見やり、目を見開いた。
 (……なに、あれ)
ルヴィラィが右手を天に翳し、その掌の上に膨大な魔力が球状に渦巻いている。
その力だけなら、トラン森で鷲戦士を一撃でぶち抜いたアーティの[ライトニング・ジャベリン]の比ではない。
あそこまで巨大な力を、何処から捻り出しているのか。
地から相対するネルの方は、右腕の剣を構えているだけのように見える。
まさか、ルヴィラィの術を切り払おうとでも言うのだろうか。
 (っく――)
 〈止めて、ルフィエ!〉
マペットの言葉と同時、

ルフィエはクリーム色のドレスローブを払い、ネルの元へと飛んだ。
 (あんなの、撃たれたら――)






 「さあ――受けきれるかしら? あの日私を止めることすらできなかった坊やに?」
 「ええ、止めてみせますよ…。止めて、お前をこの手で裁きます」
ルヴィラィの明らかな挑発に、しかしネルは乗る。
ゆっくりと剣を構え、左手を剣に添える。
まるで右腕に全ての力を込めているようなその姿に、ルヴィラィはゆっくりと左手を翳す。
 「残念ね、フェンリル――もう少し、歯ごたえがあると思ったけど」
その言葉と同時、

ルヴィラィの右手から、巨大な炎弾がネルに向かって放たれた。
直径3mを越えるほどのその巨大な炎弾を見据え、だがネルは逃げない。
 (僕は逃げない――敵からも、自分の運命からも)
その炎弾を見据え、ネルは鋭く跳躍した。
右腕を構え、目の前の炎弾に向かって放つ――

寸前、

471白猫:2008/02/27(水) 20:37:08 ID:gJ85/34o0

   「止めて! ネルくんッ!!」

 「!!!」
突如飛び込み、自分と炎弾の間に割り込んだルフィエに、ネルは目を剥いた。
 (跳躍の最中に制動をかけられない、
 不安定な体勢で切り払うことはできない、
 このままだとルフィエ諸共――くそッ!!)
瞬時に思考を流し、しかしネルはそのルフィエの胸倉を左腕で掴む。
無理矢理にその胸倉ごと自身の身体を空中で回転、右腕の剣で目の前の炎弾を貫いた。

瞬間、

凄まじい爆発がネル、ルフィエを巻き込み、辺りに物凄い温度の爆風が吹き渡った。
爆風は辺りの雑木林を這い、街を吹き抜け、やがて山々の尾に消える。
 「……」
 「く、ぅ……」
意識を失い、[守護神]を解除したネルに覆い被さられる形で、ルフィエは小さく唸る。
爆発が起こる寸前に、彼が自分に無数の[深紅衣]を巻き付け、さらにその上から抱き締めたのを感じた。
[深紅衣]の魔力の断絶能力、[守護鎧]のあの鉄壁の防御力があったからこそ、自分はほとんど外傷を受けていないのだろう。
だが、ネルは――
 〈火傷が酷い――全身にあの爆風を受けたのでしょう〉
こんなときでも落ち着いて呟くマペットを無視して、ルフィエはネルの身体を掴み、ゆっくりと起き上がる。
が。
 (――熱い)
彼の右腕に触れた途端、ルフィエは目を細めた。
あの炎弾を切り払っただけではない熱が、その右腕に――エリクシルから、溢れだしていた。
一体、どういうことなのか。
 「ちっ……貴方が割り込んだおかげで、[深紅衣]の表面積が激減してエリクシルの吸収量が大した量じゃないようね」
地面に降り立ち、ルヴィラィは小さく呟く。
目の前のネルとルフィエを見、溜息を吐いた。
 「いつもいつも、貴方達に邪魔をされるわね……全く」
既に立っているのもやっとのはずのルヴィラィは、しかし常の笑みを浮かべる。
先の術の発動で魔力は完全に燃えつきた。しかもあの威力、自分でも情けない限りである。
 「さて……当初の目的は完遂したし、今日はこれまでね」
 「…………」
ネルを抱き抱えたまま、ルフィエは目の前のルヴィラィを睨め付ける。
しばらくその睨み合い(ルフィエが一方的に睨め付けているだけ)が続いたが、やがてルヴィラィが視線を外した。
 「フェンリルに伝えなさい。このゲームから降りるのは勝手だけど、貴方の一番大切なものを失うことになる……ってね」
 「……大切、な……」
 「必ず、よ――いいわね」
その言葉と同時、

まるで木の葉が裏返るように、ルヴィラィの姿が掻き消えた。

472白猫:2008/02/27(水) 20:37:39 ID:gJ85/34o0


それから数日後。
2月24日、古都ブルンネンシュティング。

ブレンティル東部が丸々消滅し、凡そ8万人の犠牲者の出た[ブレンティル事件]も未だに沈静化していない今日この頃。
一時的な施療も終え、現在はヴァリオルド邸でルフィエ達は旅の疲労と連戦の傷を癒していた。
特に傷の酷いアーティ・ネルの治療には、数字間交代で凡そ数十人が当たっていた。

 「あ!」
 「あ」
消毒液臭い病室に入ったルフィエは、ベッドの上で包帯を巻き取っていたネルを見、声を上げた。
途端にバタバタと駆け寄り、ネルの手から包帯をはぎ取る。
 「ダメじゃない! まだ寝ててよ!」
 「別に良いじゃないですか…もう治りました」
 「……全治3ヶ月の火傷がなんで3日で治るの…」
頭を抱えて溜息を吐くルフィエは、ふとネルの身体を見やる。
いつの日か見た無数の傷は未だに残っている。が、背、両足、左腕に受けたあの大火傷は綺麗に消え去っていた。
自分が施療を施したとはいえ、いくら何でも早過ぎる。
 「……エリクシル?」
 「傷の治りが早いのは[運気]を使ったからですよ」
 「……だよねぇ…」
うーんと考え込むルフィエを余所に、ネルは脇のワイシャツを羽織る。
そのルフィエの胸に包帯を押しつけ、スリッパを履いて部屋から歩き去った。

 「……ッ…」
部屋のドアを閉め、ネルはその扉に背をもたせかけた。
キリキリと締め付ける右腕を――エリクシルを抑え、ネルは苦痛に顔を歪ませた。
 「……暴れ回る赤子だな、まるで…!」
未だに生暖かいエリクシルを握り締め、ネルは歯軋りをしながら廊下を歩き始めた。






ネルがその足で訪れたのは、グレートフォレストの内部、とある洞窟だった。
そう、リンケンから古都を蹂躙する盗賊団、[月影団]のアジトである。
 「…………ん」
 「……」
入り口の見張りに付いていたアレックスは、仮面を装着したままのネルを見やる。
アレックスを完全に無視して洞窟内に入ろうとするネルを見、アレックスは斧槍を構えた。
 「止まれ」
 「……」
突き付けられた斧槍を完全に無視し、ネルは洞窟内に歩み寄る。
と、その斧槍がネルの行く手を塞ぐように構えられた。
 「止まれ」
 「……邪魔です」
その言葉と同時、

一瞬、ほんの僅か一瞬金色の瞬きが、アレックスの視界を過ぎった。

それにアレックスが気付いたときには、もうネルはアレックスを通り過ぎていた。
半秒遅れ、柄を中程で断ち切られた斧槍が、地面に落ち、突き刺さった。
 「…………」
呆気にとられ、アレックスはふとその右腕を見やる。
本来あるはずの肉の通った右腕の代わりに、そこには長身、金色の剣が出現していた。
 「……いつ、抜いたんだ」
その言葉もやはり無視し、ネルは洞窟内を歩いて行く。

473白猫:2008/02/27(水) 20:38:05 ID:gJ85/34o0
 「 ――――… 」
洞窟内の女神像の前で黙想を行っていたアネットは、背後に立ったネルの気配を感じ、ゆっくりと立ち上がった。
アネットの背後に立ったネルは、しかし被っていた仮面をゆっくりと取る。
 「……こんにちは」
 「こんにちは。盗賊団のアジトに盗みに入ったのは、貴方が初めてよ」
ネルの方へと向き直り、しかしアネットは目を白黒させる。
 「……坊や? 瞳の色が違うけど」
 「違います」
首を傾げるアネットを見、ネルはゆっくりと右腕の剣を構える。
その身体が紅色の鎧と衣に覆われいくのを見、アネットは小さく微笑んだ。
ネルが口を開こうとするのを見、脇の長剣をアネットは握る。
 「……[フェンリル]。僕のことは、そう呼んでもらえますか」

そして、一跳。

ネルとアネットの剣同士が衝突し合い、押し、押され、双方は再び離れた。
その合間に、ネルは右腕を紅色の爪――[フェンリルエッジ]へと変化させる。
アネットは脇にあった椅子に足を引っかけ、思い切りそれをネルに向けて蹴り放つ。
それを右腕の一薙ぎで破壊し、ネルはさらにアネットと距離を取った。
 「…………」
 「今日はどうしたのかしら? 喧嘩の押し売りなんてするタチじゃなかったと思うけど」
 「取引をしに来たんですよ」
微笑むアネットに、無表情のネルは呟く。
そんなネルに首を傾げ、アネットは続ける。
 「取引…?」
 「貴方が僕に勝てれば、貴方の今までの罪を帳消しにすると約束しましょう。
 逆に僕が貴方に勝ったとき――僕の仲間になってもらいます」
 「……喧嘩の押し売りだと思ったらそれ? 強引になったわね、坊や」
 「何とでも。貴方が僕に勝てば良いだけの話でしょう?」
ネルの挑発にアネットはクスリと笑い、ゆっくりと身ほどもある長剣、[黒懺剣]を構えた。
 「いいわよ。私は絶対に負けないから――」
 「…………行きます、よ!」
ネルがそう叫んだ、瞬間。
地面を鋭く蹴り、アネットへと一気に飛び掛かった。
右腕の[フェンリルエッジ]を、上下が逆転する視界の中で突き出す。
その爪を伏せて避け、空中で一回転したネルに向けて長剣を切り上げた。
その長剣の一撃をエルアダークで受け止め、ネルは空中から凄まじい踵落としを繰り出す。
が、その踵落としは到達する寸前に、アネットの肘鉄に阻まれた。
さらにその足首を掴み、アネットは左腕の腕力で無理矢理、ネルを洞窟の壁へと投げつけた。
空中でクルクルと回って、しかしネルは壁に、重力などないようにフワリと着地した。
 (少しは上達したようだけど、身体能力に大した変化は見られないわね)
 (っく……身体が思うように付いて来ない――病み上がりっていうのは辛いですね)
まるで模擬戦闘の[死の罰則(デス・ペナルティ)]のようですね、と心中で呟くのも一瞬。
壁を鋭く蹴り、ネルはアネットに向かって今度は剣で斬り掛かる。
その剣を長剣の腹で受け流し、その胸に左手の拳を繰り出す。

が。

474白猫:2008/02/27(水) 20:38:29 ID:gJ85/34o0

   ――ガィイイインッ!!

ネルの腹に拳が食い込み、しかしネルは無表情でそれを見やる。
目を細め、アネットはさらにその腹に両足の蹴りを食い込ませた。
その一撃にネルは堪らず吹っ飛び、洞窟奥の女神像に激突した。
 「――どういうことかしら」
アネットはゆっくりと、自分の左腕を開き、また握る。
岩石を砕くその拳が、痛みで痺れている。
 「その鎧……まさか龍の鱗製、とか言わない?」
 「まさか」
女神像の瓦礫の中から起き上がり、ネルは口に溜まった血を吐き出す。
それを見やり、アネットは不敵な笑みを浮かべ、剣を構えた。

 (エリクシルが――疼く)
[守護神]の状態を展開し、アネットと戦闘を続けていけばいくほど、胸のエリクシルがキリキリと痛む。
幾度と無く失神しかけた場面もあったが、ここからは恐らくそんな程度では済まない。
アネットはどうやら肩慣らしを終え、これから本気で、斬り掛かってくるだろう。
だが今ここで、気を失うわけにはいかない。
 (痛みは酷い……けど、ここで終わるわけにはいかない)
ゆっくりと剣を構え、ネルは頭に上げていた仮面を被り直した。
対するアネットも、[黒懺剣]を両手で構え、ネルへと全神経を集中させる。

そんな中で、ネルの胸の[エリクシル]は、ゆっくりと鼓動を続けている。




FIN...
[ルフィエネル主人公二人のおまけコーナー5]

 「……怒濤の更新だね」
 「無駄に長いです。ブレンティル編の終わり方も随分適当ですね」
 「ていう、病み上がりなのに乱戦しちゃだめじゃない」
 「…………五月蝿いですね」


アネット=ライラ(♀) 22歳
長所:なんでもできる
短所:憲法云々を無視る
好きな食べ物:メロン
嫌いな食べ物:ヌメヌメした食べ物
出生日、出身地不明。
異名[紅瓢]を持つ、盗賊団[月影団]の首領。
ネルやルヴィラィを退けるほどの実力者であり、[大戦]を生き残った歴戦の戦士。
ネルも知らないようだが、ネルとアネットの二人には遙か過去に中があったらしい。
愛剣[黒斬剣]は、一太刀で二の呪いを相手に掛ける呪剣である。
ネルのことを[坊や]と呼ぶ、お姉さん肌な人。
得意術:私に不得意なスキルは無いわよ? 魔術以外はね。(byアネット)

カリン(♀) 21歳
長所:強い
短所:高慢
好きな食べ物:無い
嫌いな食べ物:無い
出生日、出身地不明。
[黒騎士]と謡われる、現代で最も強大な殺し屋と呼ばれている。
かなり高慢な性格であり、私情よりも金を優先する。
外見はほぼ黒一色であるため、町中で歩けば誰もが彼女だと分かる。
得意術:[黒龍剣]

475白猫:2008/02/27(水) 20:38:59 ID:gJ85/34o0
コメ返し

>68hさん
ネルくんは当初武道家という設定だったりしました。
でも警備兵で素手…?とふと疑問を抱き、短剣を持たせました(笑)
[守護神]はあくまでもエリクシルの能力ですね。
近接攻撃、というネルくんの戦闘スタイルは全く変わってないです。外見が外見なのでアレですが(笑)
ルフィエはいつか爆裂に強くする予定でした。予定では最終章でした。(オイ

>FATさん
期待をとことん裏切る猫、白猫と呼んで下さい。(待
チャージングだけならまだ大丈夫ですが、ライトニングジャベリン撃たれるととんでもないことになりそうです。
チョコレートケーキタワーは、ルヴィラィとネルくんが甘いものが苦手なのでほとんど手つかずだったようです(笑)
ルフィエとリレッタのチョコレートケーキは、後日四人の悪ガキたちが綺麗に食べ去ってしまったそうな。
ブレンティル編ではこれでもか、とやってみました。満足です(オイ

>21Rさん
ですよね!やっぱりでっかい武器が一番ですよね!
私的には一番好きなのが二刀流だったりします。両手に鎌。
…両手に鎌。今度やります。ぜったい(オイ
ノート一冊が資料…おそろしや。かく言う私もそういうの纏める主義だったりします(笑)

>名無しさん
唄はもう大好きです。今回もふたつも書いちゃいました(笑)
瞬間、云々の描写については、今回結構消したつもりです。つもり。
…や、最初は10個くらいあったんですよ?消した方ですよ?汗
考える機会にもなりましたので、ありがとうございますです〜


次回は未だに未定。最終章まで一段落させたので、まったり風景でも描く予定です。
333日もありますしのんびりです(オイ

476メイトリックス:2008/02/27(水) 22:44:31 ID:WmXQVHKM0
Hellfire Salvage
01 : The Decidings Part.1>>9-11 Part.2>>59-61 Part.3>>130-132
02 : Nonpayment Part.1>>180-182 Part.2>>263-265

「Nonpayment Part.3」

包み込むようにした指の間から、柔らかな光が漏れた。
少しずつ明るさを増していく輝きは、辺りを木漏れ日のような淡い緑に染め上げる。
シリスティナが優しく手を開くと、光は頼りなげにさまよい出て、わたしの周りを一周した後、ゆらゆらと通路の奥へ漂っていった。
「これで迷わないはずよ」
彼女は満足げにうなずき、光の導くまま歩き始めた。
わたしは黙ってその後に従った。
冷たい空気がじっとりと肌に絡みつく。地下遺跡とはいえ、この湿度の高さは気に障った。
温かみのある緑に照らし出され、欠けた石畳が、朽ちた木の扉が、錆びた蝶番が、次々と姿を現す。
それらにも気を配る必要があるのはわかっていたが、ほとんど習性となっている用心深さが、注意を後ろへと向けさせた。

――暗闇の中を進む者たちは、警戒心の塊だ。
張り詰めた弦のように敏感で、わずかな異変にも過剰に反応する。
けれど、彼らの多くは目をつむったまま歩いているに等しい。なぜなら無知だからだ。
彼らは精一杯目を見開き、前方に立ち現れるであろう危険に備えようとする。
聖なる武器のごとくたいまつを掲げ、隅々まで光のもとに晒そうともする。
まるで、燃え盛る炎が自分たちを守ってくれると信じているかのように。
その思い込みが彼らを殺す事になる。
闇にあっては、光はリスクだ。
事故や不注意による危険から遠ざけてくれる代わりに、自らの居場所を声高に叫ぶ。
“うごめく”脅威は、それを見逃したりはしない。
影に紛れてそっと忍び寄り、一瞬で狩る。正面から堂々と襲い来る敵などいないのだ。
明かりを灯し続ける限り、奴らからは決して逃れる事はできない。
しかし光が道を照らしてくれなければ、どのみち死が待ち受けている――

村でベテランの傭兵から初めてこの話を聞いた時、わたしはあまりに皮肉なジレンマにショックを受けた。
じゃあどうすればいいの?防げないの?
不安になってたずねると、彼女は豪快に笑って、あんたにはまだ早いレッスンだけど、と前置きして話してくれた。
無知なままなら、戸惑って頭を抱えるぐらいしかできないが、知ってさえいれば立ち向かう知恵も編み出せる。
知識とは、多くの仲間たちが犠牲になりながら学んだもの。同じようにして得た教訓はたくさんあるはず。
そんな風に経験を積み重ねていけば、いつかは最高の戦士になれるかもしれない。みんなそう信じてる。
だから強い傭兵なのよ、あたしたちは。そう言ってわたしの頭を鷲掴みにすると、がしがしと撫でたのだった。
彼女の死を知ったのは、その三週間後だ。
発狂した追放天使が丸ごと吹き飛ばしたカフェテリア。彼女は悪い時に悪い場所にいた。そして、すべてを失った。
彼女でも足りなかったのだとすれば――どれだけ強くなれば、自分の身を守れるようになるのだろう。そう思ったのを覚えている。
ましてや、他の誰かを守るなどと。

頭上から、かすかに金属の擦れ合う音が聞こえた。背筋に緊張が走る。
わたしが飛びのいたのと、降ってきた双剣が石畳を穿ったのはほぼ同時だった。
「離れて!」
シリスティナへ叫びながら、ステップした勢いのまま身体をひねり、槍を突き出す。
鋭くきらめく刃が、続いて降り立った骸骨の喉元へと吸い込まれた。
何かが砕ける、確かな手ごたえ。
柄を引くと、カビでぬめった頭蓋骨がごとりと落ちた。眼窩に結露した水滴がこぼれ、まだらに黒ずんだ頬骨を濡らす。
それが恨みの涙を流しているようにしか見えなくて、わたしは思わず目をそらした。

477メイトリックス:2008/02/27(水) 22:45:19 ID:WmXQVHKM0
「へぇ……。思ったより凄いじゃない」
振り向けば、シリスティナが石柱の陰から顔だけを出して様子をうかがっていた。
わたしは少し鼻白んだ。当てにしていなかったのなら、来なければよかったのに。
「そんなに頼りなく見える?」
「うん。細くて小さいし」
彼女はさらりと言ってのけ、こちらへ歩いてくる途中で思い出したように付け加えた。
「まぁ、目つきはちょっと怖いかも」
……ああ、そう。
わたしはあまり我慢強い性格とは言えない。すぐ熱くなってしまうし、答えを急ぐ。
これ以上、正体のわからないこの少女と、他愛のないおしゃべりを続けるのは耐えられなかった。
「ひとつだけ、はっきりさせたいんだけど」
抑えきれない苛立ちが、言葉に滲んだ。
「何でついて来たの?わたしが怪我をして困ってたから助けた、ってわけじゃないでしょ?」
「当然。私も知りたい事があるから来たのよ」
彼女はもったいぶった仕草で人差し指を立てると、左右に振って、チッチッと舌を鳴らした。
「でも、あなたに教える義理はないわね。あなただって何も話してくれてないじゃない」

反論できなかった。確かにその通りかもしれない。
わたしの目には、彼女はとんでもなく謎めいた存在に映る。
逆に、彼女の立場から見れば、わたしだって同じなのだろう。
砂嵐の吹きすさぶ真夜中に、遺跡へ侵入するような人間。怪しまれて当然だ。
どちらも秘密を抱えたまま、相手を利用しているのは変わらない。しぶしぶうなずくと、シリスティナはくすっと笑った。
「わかってくれたならいいけど、せめて名前ぐらいは教えてくれない?呼びにくくて困るわ」
それもそうだ。わたしは手短かに名乗る事にした。
「名前はピアース。アリアン西部の傭兵村から来て、今は人を探してる」
「ふーん、プロの傭兵なんだ」
誤解を重ねながらも、シリスティナは感心したようだった。
プロの傭兵。その響きは、ちくりとした痛みを胸にもたらす。
わたしはもう一度考えた。最強の戦士の条件を。
自分がどれほど、そこから遠く離れているかを。

何となく視線をずらした瞬間、奇妙な感覚に捕らわれた。
緑の輝きが柔らかに照らす回廊の中、わたしたちが歩いてきた道が闇に沈んでいる。
この光は、思ったほど遠くまでは届かないのだろうか。そう思って首を廻らせれば、反対側へ伸びる通路はずっと遠くまで見渡す事ができた。
もやもやした嫌な予感が、みぞおちの辺りに形をとり始める。
もう一度振り返り、今度はじっくりと暗がりを見つめてみる。わたしの動きにつられて、シリスティナもそちらに顔を向けるのが目の端に映った。
影が躍るような闇の中。それは揺れて、伸びて、だんだんと大きくなって――
違う。
大きくなっているのではなく――近づいている。
あれは影なんかじゃない。
わたしたちは顔を見合わせた。まったく同じタイミングで、シリスティナもその正体に気づいた様子だった。
彼女の瞳に、恐怖が蛇のようにとぐろを巻いている。
それが鎌首をもたげて襲い掛かってくれば、二人とも馬鹿みたいに突っ立ったまま、ただ悲鳴だけを上げながら死んでいく事になってしまう。
だから、わたしは力いっぱい叫んだ。
「走って!止まらないで!」
呪縛が解け、わたしたちは弾かれたように駆け出した。騒々しい音の嵐が、背後から追いかけてくる。
気づかれてしまった以上、もう静かに忍び寄る必要はなくなったと言う事だ。
今この瞬間まで、自分がこんなに速く走れるとは思いもしなかった。驚くほどなめらかに脚が振り出され、信じられないほど力強く地面を蹴る。
わたしは、自分が悲鳴を上げている事さえほとんど意識していなかった。
すぐ目の前をシリスティナが、加速呪文のかかったウィザードも羨みそうな、完璧なフォームで疾走している。
分かれ道のない一直線の回廊を、わたしたちは脇目も振らずに駆け抜けた。

478メイトリックス:2008/02/27(水) 22:46:30 ID:WmXQVHKM0
――――――――――――――――――――――――
ご無沙汰です。ネット環境から遠ざかっていた間に、浦島太郎になってしまったようです。
スレの伸びがすごいですね。いえ、いっぱい読めて嬉しいですけれども。賑わってるってスバラシイ!
バレンタイン企画…短編を書き上げはしたんですが、投稿する機を逃してしまいました。ぎょーん。お蔵入りにしますか。残念。
今回は本編が短いので感想が2レス分書けます。嬉しいです。別にテキストファイルが壊れて書き直したからじゃないですよ。ぐすぐす。
バックアップは大切ですね。以下、感想・コメントなど1/2。
毎日少しずつ読ませていただきながら感想を書いていたら、伸びるスピードに追いつかなかったと言う…(汗
コメント後半はまた後ほど。

>>ワイト氏
ヘルアサシンも完全に不死身ではなかったんですねー。とか思ってたら、ラータ君ががが!
アサシンのイカレっぷりに背筋がゾクゾクしていた所のどんでん返しだったので、不意を衝かれました。
狂気と狂気のぶつかり合いはラータ君が制したようですが、彼の裏の人格とはいったい……?
無事アリアンにも帰還でき、物語は節目と言ったでしょうか。
そしてコメントありがとうございます。
感想に関しては、読書狂の私が自己満足で書かかせて貰っているので気にしないで下さい。むしろ読ませていただいて感謝ですよぅ!
ワイトさんの文章には、いつも血の揺さぶられる思いを味わっております。お互いがんばりましょー。

>>黒頭巾ちゃん氏
リトルリポートで腹筋が崩壊です。端々に仕込まれたネタが身に覚えのあるものばかりで、ニヤニヤできました。
バレンタインストーリーは、反転してしっとりした話に……。ファミリア全力で抱きしめたいぃぃぃぃぃ!健気ですねー。
ないすばでぃーなおねぇさまのげぼくさんがピンと来なくて悩んだのは秘密です。各キャラの名づけにセンスが光ってますな……(笑

>>◇68hJrjtY氏
ギャグっぽく持っていっても大丈夫なものかと悩んだのですが、反応を頂けて何よりです。
分かり合う過程って難しいですね。
色々と赤石の世界観を匂わせようと頑張ってるんですが、あまり上手く行ってないような……。

>>◆21RFz91GTE氏
にぎやかなお祭りの中でも、人々の悲壮な覚悟が感じられて胸が痛いです。お互いに対する別れの餞別…のようなものでしょうか。
今回は全体的に物悲しい雰囲気ですね。来る壮絶な戦いを予感させられます…。
短編も読ませていただきました。何と言いますか……無常です。運命の悪戯。
主人公の胸にぽっかり穴が空いた穴は、死をもってしても埋められなかったという事でしょーか。

>>之神氏
ああ、見せ付けてくれちゃって…(*ノノ)
殺伐とした話も好きなんですが、こういうノロケっぽいのも大好きです。チョコ手作りの下りが特にいい感じですね!
しかしライト君、君は何をやってるんだ(笑
バレンタインネタ乗り遅れちゃいましたー。せっかくセッティングしていただいたのにぐふぅ。
そしてやっぱりシルヴィーさん萌え。

>>718
いい話です(ノд・。)  大事な人を失った(と思った)としても、ただ悲しみに落ちるだけではないのが強いですね。
最後の再開の一幕が、何というか幻想的でハッとさせられました。

479◇68hJrjtY:2008/02/28(木) 13:28:46 ID:YyJwkfBQ0
>白猫さん
舞曲…というタイトルすらしっくりと来るほどの各人たちの戦いぶりが見事でした。
惨敗、と言ってしまえばそれまでですが、この傀儡たちとの戦いで様々なものが得られもしましたね。
まずはエリクシル。新たな段階に進む前触れなのか、それとも。まだまだこのエリクシルには謎が秘められていますね。
個人的にはカリアスさんの戦闘シーンが見れたのだけでももう胸が一杯です(*´д`*)
そしてなるほど、ルゼルの神格化とは異なりルフィエはマペットとの対話を経ている神格化なので感情等は失われていない(?)のですね。
大怪我を負ったアーティも心配ですが、傀儡たちもそれぞれが特異な技を持っていますね…これもどうやって攻略するのか。そしてアネットの返答は。
333日という長いようで短いような期限の中、ネルたちの奔走ぶりを楽しみにしています。
---
…しかし、ルヴィラィこと悪魔のスキルに白猫さんはなかなか練った歌をつけてますよね〜。
契約スキルの「だって今日は雨だから。」個人的にお気に入りなセリフですヽ|・∀・|ノ
RSでずっと放置してる悪魔、またやってみようかな( ´・ω・)

>メイトリックスさん
お久しぶりです〜。またまた執筆再開してくれて嬉しい限りです。
バレンタイン小説UPしないんですかショボーン━━(´・ω・`)━━ でも、来年があるさ!(何
今回は姉や先輩の傭兵たちとの自分との差に悩むピアースの心情が特に精密に描かれていたような気がします。
シリスティナもどうやら味方(?)だったようでちょっとホッとはしていますが(笑)
彼女たちの進む地下遺跡というのはあのダメル遺跡でしょうか…迫る危険、逃げるしかない事態。
敵の正体、そして遺跡で彼女たちは何を見つけるのか。続きお待ちしています!

480之神:2008/02/29(金) 07:13:40 ID:TzzaVSXk0
1章〜徹、ミカの出会い。
-1>>593―2 >>595―3 >>596-597―4 >>601-602―5 >>611-612―6 >>613-614
◆――――――――――――――――――――――――――――――――――――◆
2章〜ライト登場。
-1>>620 -621―2>>622―○>>626―3>>637―4>>648―5>>651―6 >>681
◆――――――――――――――――――――――――――――――――――――◆
3章〜シリウスとの戦い。
-1>>687―2>>688―3>>702―4>>713-714―5>>721―6>>787―7>>856-858
―8>>868-869
◆――――――――――――――――――――――――――――――――――――◆
4章〜兄弟
-1>>925-926 ―2>>937 ―3>>954 ―4>>958-959 ―5>>974-975
◇――――――――――――――――5冊目―――――――――――――――――◇
-6>>25 ―7>>50-54 ―8>>104-106 ―9>>149-150 ―10>>187-189 ―11>>202-204

◆――――――――――――――――――――――――――――――――――――◆
5章〜
-1>>277 ―2>>431-432

◆――――――――――――――――――――――――――――――――――――◆
番外

クリスマス  >>796-799
年末旅行>>894-901
節分  >>226-230
バレンタインデー>>358-360 >>365-369
◆――――――――――――――――――――――――――――――――――――◆

481之神:2008/02/29(金) 07:46:02 ID:TzzaVSXk0
ψ

「おおおおおおお!」

静かな図書館内に、威勢のいい場違いな声が響いた。
その男はある本を掴み取るとそのまま外へと駆けていった。


λ

「エリクサーですか…、随分と伝説的な物を信じてるみたいですが」私はカップを置き頬杖をつく。
「ああ、それはフランデルに居た頃から探してる代物だ。話し方からして、貴様も効能くらいは知ってるみたいだな?」

「エリクサー…不死の霊薬、万能の薬、錬金術においては賢者の石に次ぐ重要な物ですね」
「そうだ、その霊薬を私は探している。それはこの世界でも変わらない……目的があるんだ」
「目的云々の前に、この世界の錬金術の文献は見たんですか…?」
「フッ、そんなもの……」


「見てるわけ、無いだろう」


α
ミカに言われた事が引っかかった俺は、錬金術について詳しく調べることにした。と言っても、図書館なのだが。

「すいません…、海外の錬金術や化学の図書はどこにありますか?」貸し出しカウンターの男に、俺は丁寧に聞いた。
「D-12だ。そこの階段の近く」男は図書館職員らしからぬ悪態で、場所を俺に指示した。
「ありがとうございます」 俺は礼をすると、その箇所まで向かっていった。

ひとえに錬金術なんて事でも、やはり様々な蔵書が本棚にあり、俺はその中から適当な物を選んでは中身をパラパラとめくった。
読んでいると…多少使われている言語は難しいものの、ファンタジー的なものが元々好きだった俺はそれなりに楽しめた。
同時にゲームなどで多用される言語も多い事に驚いた。


集中していた俺は、隣に見知った男女が居ることなど気がつかなかったのだが。


λ
シリウスという男が見栄を張ってなのか、それが本人の常識だったのか。素直にお茶代は彼の持ちとなった。

「こちらです」私は男の前を先導し、錬金術についての文献を調べるために図書館へ向かう。
「それにしても貴様、この街に随分詳しいな」
「まぁ半年近く居ますからねぇ…慣れですよ」
しばらく無言で歩いていると、目的の場所に差し掛かった。

「ここですよ」
「そうか」
シリウスはそういうと、礼も言わずに図書館へと歩いていった。

「おい、貴様」
「なんですか?」
「何故、ついてくる」


「いや…貴方だけじゃ不安ですから」

γ
「おーい、この酒飲むからなァ?」
大声で叫び伝えると、俺は冷やしてあった酒に手を伸ばした。
馬鹿でかい部屋の中は接待用か…ほとんど何でもそろっていた。
しばらくはここで寝泊りするかな…徹の家から荷物を取る必要はあるが。
なんて考えていると、またもフィアレスが入ってきた。

「ちょっとした情報ですが」
「ん…?」
「私達と同じ目的の者達がいるみたいですね」無表情の幼女は、淡々と語る。
「人数は5名…皆バラバラですけど、一応気にかけといてください」
「おう…わかった」そう言って俺は酒瓶を傾けた。

「では…いい報告をお待ちしてます」
「あっ、ちょっと待ってくれ」
「はい?」


「お前……白いパンツは似合わねえぞ」
「考えときます」表情を変えず、恥じらいも無く、フィアレスは戸を閉じた。

482之神:2008/02/29(金) 08:04:32 ID:TzzaVSXk0
λ

「それで、錬金術の書があるところを知りたいんですが」
「D-12……」 ダルそうに男は答えると、階段のある辺りを指差した。

お礼を言い終えた私は、シリウスと向かおうとした…時。
「おい、おねーちゃん」 貸し出しの男が声をかけてきた。
「なんでしょうか?」

「錬金術って、流行ってんのか?」


ψ
「よーし!これで明後日あたりにここに行けばOKだなっ」
プロテインの袋を抱えた男は、大声で独り言を言いながら歩いていった。

「向かうは…ミュリエ・ジュール!」


γ
………。
「ミュリエ・ジュール…大企業か」俺はフィアレスから渡された依頼書の中の内容を確認した。

飲料メーカーらしいこの会社の研究部に、目的のブツがあるらしいが…正直本当なのか疑わしい気もする。
一般人、しかもこの世界の奴らが、これを完成させるとは考えにくい。
錬金術は分野外だが、俺はなんとなくこう考えていた。


「まっ、明後日にブツ盗って帰ればいいだけだし…な」

λ
「だから、何故貴様は私についてきたんだ」
「さっき言ったじゃないですか、心配だって」
「この私に不安要素があるとでも言うのか!」


「…ありありですよ」

「なんだと!?貴様ッ……!」
「ほら、D-12です……あっ」見るとそこには、徹さんが本を読んでいるところだった。

「どうした。自分の意見の間違いに気がついたか」
「違いますって…なんでもないです」

声をかけるか悩んだけど、私は邪魔してはいけないと思いやめておいた。集中してますし。
私も読書は好きなので、シリウスと共に少しこの世界の錬金術について勉強することにした。

483之神:2008/02/29(金) 08:09:48 ID:TzzaVSXk0
お久しぶりです。
ちょろーっと内容進みました。5章の内容が想像ついたでしょうか(・ω・`
まだまだキャラが出てきますので、覚悟しておいて下さい(´ω`*

ちょっとリア用で小説UP遅れてますが、勘弁…
>>メイトリックスさん
シルヴィー萌え、私もですお(ぁ
自分で書いてるキャラに萌えるのも何なんだかって感じですがw

機会があればキャラの絵でもUPしたいなーとか思ってます。
では、引き続き小説スレをお楽しみ下さい。之神でしーた。

484◇68hJrjtY:2008/03/01(土) 11:21:28 ID:yWM6P/2Y0
>之神さん
徹、ナザ君、シリウス、そしてライトまでもが求める「エリクサー」。
真剣な展開だと分かっていながら何か借り物競争みたいな雰囲気がイイです(笑)
独断で動いているナザ君が持ち前のラッキーで一番早くに謎の企業"ミュリエ・ジュール"という単語に行き着いたようですね。
しかしエリクサーそのものは知らない(?)ながらライトの方がこのような役目は十八番のような気もしますし…うーむ!(楽しむな
果たしてエリクサーは誰の手に!是非ともオッズが欲しいところです…(ゴルァ
---
之神さんも絵を…!? じゃあリクでシリナザコンビのイラストを!(こら
というのは真面目に冗談ですが、もしキャライラ描かれるならば死ぬほど期待してます!

485之神:2008/03/01(土) 11:34:23 ID:TzzaVSXk0
以前100以下に下がったらageというのがありましたので、ageておきますね。

>>◇68hJrjtYさん
UPするとしたらお絵かき掲示板か絵スレですかねぇ…。

486名無しさん:2008/03/01(土) 16:04:49 ID:EDvXpHuE0
232 :カメコ(北海道):2008/02/07(木) 15:14:24.95 ID:yjdLaxhT0

したらばで某ネトゲの掲示板の管理人してるけど、
「BOT扱いされたんで、その投稿した奴アク禁にしてください」
「荒らしウザイんで、永久規制してください」
「コテハン〇〇ってのが荒らすのでアク禁よろ^^」

専ブラで自分であぼーんしろって言っても全く聞かないで、
「管理サボリすぎ」
「ボランティアだからって働かないのは良くない」
「管理人もBOTerなんだろ」

とかみんな酷すぎワロタ


234 :西洋人形(岩手県):2008/02/07(木) 15:15:09.62 ID:riAu3gwU0

>>232
赤石のことかー!

487R310:2008/03/02(日) 00:14:39 ID:Wq6z33060
オッス、俺の名はブルーノ。
ギルド「セレスト・クルセイダーズ」に所属する剣士だ。
あいつと出会ったのは砂漠のオアシス都市、とても暑い日のことだった。


〜ミニペットがやってきた!(前編)〜


オアシス都市アリアン。
フランデル大陸の砂漠地帯にあるこの大都市は冒険者達の物品交流の要である。
メインストリートは毎日のように、露天商や買い物客たちで賑わっていた。
人々の雑踏の中、ブルーノはギルド戦用品を求め歩く。
鈍い青色の髪に青眼、中肉中背のよく鍛えられた身体はショルダーパットで護られている。
ザンバラ頭で腰に剣を差した、いかにも剣士といったその風貌は、よく言えば野性的悪く言えば粗野である。
ここの所の竜の心臓やフルヒールポーションなどのギルド戦必需品価格高騰のため、彼は少しでも安価で販売している露店を探す。
しかし、必要なものを買い揃える頃には、彼の財布はずいぶん軽くなってしまっていた。
「しばらく節約しないといけないな。」
強い日差しのせいで、にじみ出る汗を彼は腕で拭う。

488R310:2008/03/02(日) 00:15:14 ID:Wq6z33060
今日は何時もにも増して暑い気がする。
ブルーノは日陰恋しさと近道のために表通りから外れて脇道に入った。
表通りのやかましさとは打って変わって、そこは閑散としている。
彼は慣れた足取りで、狭い道をさくさく進む。
この町は冒険者仲間と探索し尽したお陰で知らない裏道は無いのだ。
彼の汗も引き出した頃、前方の道端にある露店が目に入った。
こんな人気の無い場所にある露店をめずらしく思いながら商品に目を向けると、黒っぽいポーチが3つ並んでいた。
この中に商品が入っているのだろうが、外からは中身が何なのかは分からない。
露店主はといえば、見ているこっちが暑くなるような厚手のブカブカの服をまとい、顔は格子のついた仮面をしている。
こちらも中身が正体不明のネクロマンサーだ。
「お兄さん、ミニペットいかがですか?」
露店主はブルーノに話しかける。
「ペット?俺はテイマーでもネクロでもないからなー。」
特定の職業の者は魔物を配下に置き操るが、生憎彼はそんな技とは縁が無い剣士だ。
その上、ついさっき節約しようと心に決めたばかりである。
そのまま通り過ぎようとする彼に構わず露店主は続ける。
「知らないのかい?このミニペットはどんな職業でも使うことが出来る代物さ。」
「へぇ、そんなのあるのか。」
彼は興味津々といった様子で露店に近づきしゃがみ込んだ。
これは脈有りと睨んだ露店主は更に商品を売り込む。
ポーチの一つを手に取って見せると、饒舌にしゃべり出した。
「例えばこの光のミニペット。こいつはスキルレベルが6も上がる優れモノだ!」
「うおお!凄いな姉ちゃん!」
スキルレベルが上がるということは、剣士としての腕も上がるという事である。
より強くありたいと思うブルーノにとって、そのミニペットの能力は魅力的だった。
「だろう。装備を変更することなく、手軽に戦力を上げられる。狩りでもギルド戦でも大活躍間違い無しだよ。」
瞳を輝かせ完全に乗り気なブルーノに露店主は購入を勧める。
しかし、彼はふと不安そうな顔をした。
「でも、俺に育てられるかな。難しくない?」
自分のペットはちゃんと自分で面倒を見るようにと、彼のギルドマスターがギルドメンバーに言い聞かせていたのを思い出したのだ。
しかも、ブルーノ自身、魔物はおろか、犬や猫さえも飼ったことは無い。
なんだそんな事かと露店主は笑った。
「心配ないよ。適当にエサをやって、月一に付属のリフレィティング・シャードを磨いてやるだけだ。」
動物じゃないから散歩もいらないし病気もしないと彼女は付け加える。
なるほど、それなら自分でも飼えそうだ。
「よしっ、買った!」
先程の決意はどこへやら、ブルーノは勢い良く声を張り上げたのだった。

489R310:2008/03/02(日) 00:16:13 ID:Wq6z33060

―セレスト・クルセイダーズ ギルドホール―

アリアンの郊外に佇むギルドホールは食堂兼宿屋だったものを買取り改築したものだ。
少人数ギルドである彼らはここで寝泊りをしている。
「ただいま!」
ブルーノは上機嫌でエントランスのドアを開いた。
「おかえり。」
「おかえりなさい。」
入ってすぐのラウンジ中央には大きい机が一つ置かれていて、その周りに椅子が並べられている。
彼に返事をしたのは、その椅子に座った少女と青年だ。
少女は濃いブロンドのショートヘアに赤眼で、所々金属で補強したウッドアーマーを着ている。
どことなくあどけなさが残るがハッキリとした顔立ちだ。
青年の方はというと、ブラウンのウェーブかかった長髪の緑目で、深緑のロングコートを羽織っている。
細身の長身のせいか、優男の印象を受ける。
「テラコッタ、エムロード、見てくれよ。いい買い物をしたんだ。」
ブルーノは机にミニペットが入ったポーチをそっと置いた。
「何買ってきたの?」
テラコッタと呼ばれた少女は読んでいた雑誌から顔を上げると、そのポーチを眺めながら聞く。
「ミニペットだよ。」
ブルーノがポーチを開けると、中から眩い光があふれ出し、子供の頭ほどの丸い物体が飛び出してきた。
白色をしたそれは、電球にしっぽが生えた人魂のような形をしていて、顔にはパチパチと瞬く大きな目が2つついている。
「へー、古都で流行っているんでしょ、コレ。」
思っていたのより可愛いと、ミニペットを突っつくテラコッタ。
「元素の霊をこの世界に定着させる技術が確立されたと聞いていましたが、これは面白いものを買ってきましたね。」
エムロード彼はアゴに手を当て感心したように言う。
な、可愛いだろ?と、2人のまずまずは反応に満足げなブルーノ。
「もう名前も決めているんだ。光り輝いているから"てるみつくん"だ!」
ビシッと彼が指差し言うと、ミニペットは嬉しそうにしっぽを振った。
「…また、変わった名前を付けたわね。」
呆れ顔をしたテラコッタが苦笑する。
その直後、再びエントランスのドアが開いた。
「「ただいまー。」」
彼らのギルドメンバーが更に二人帰って来た。
彼は早速二人にミニペットを見せながら言った。
「お帰り、ミモザ、アッシュ、俺のミニペット見てくれよ!」

「ブルーノさんもペットを飼うんですか?」
ニコニコしながら聞いたのは、赤いフード付きのマントを羽織った少女ミモザだ。
彼女は緑眼をしていて、薄い金髪を胸の辺りまで下ろしている。
「よくそんなモノ買う金があったよな。」
そう言ったもう一方の少年、アッシュは銀髪黒眼で黒い革の帽子とマント、ズボン、ブーツといった全身黒ずくめの姿だ。
「ああ。育て方簡単みたいだからね。それに、スキルレベル+6の能力を、持っているらしいし。」
答えながら、ブルーノは要らなくなった鎧や盾やらをミニペットに食べさせている。
「元素の霊ってこんなものを食べるのね。」
テラコッタはサイクルシールドをミニペットに差し出す。
すると、自身の数倍の大きさはある盾を大きい口を開けペロリンと飲み込んだ。
その見事な食べっぷりを面白がった彼女は、今度はミモザも誘ってミニペットにエサである装備品を与え出す。
食欲旺盛なミニペットは美味しそうにエサを次々と平らげていく。
その様子をしばし眺めていたブルーノは少し困ったように笑った。
「ただ、効果が良いからか、ちょっと値は張ったけどね。2億goldしたよ。」
「性能を考えるとそれくらいはするでしょうね。」
さっきテラコッタが入れた茶をすすりながらエムロードは言った。
その隣でアッシュは怪訝そうな顔をしている。
「それって安すぎないか?」

490R310:2008/03/02(日) 00:16:49 ID:Wq6z33060
彼の台詞に一同が注目する。
意外そうな顔をしてブルーノは聞いた。
「え?そうなのか?」
彼にしたら今回の買い物は大変な出費だった。
購入時、手持ちの金が足りなくて銀行に下ろしに行ったのだ。
アッシュは答える。
「ミニペットの中でも光のミニペットは珍しくって、一体10億goldほどで取引されているぞ。」
ほおぉと感心したような彼らの眼差しがミニペットに注がれる。
「あんた本当は凄いヤツなのね。」
そう言うとテラコッタはミニペットを抱き上げた。
「…転売したら、イイ儲けになりそう。」
「ダメっッ!絶対ダメだからな!」
ボソリと呟いた彼女の一言をブルーノは聞き逃さなかった。
冗談よとビクついているミニペットの頭をなでながらなだめるテラコッタ。
この怯えようからして、このミニペットは人語を理解しているのだろう。
「アッシュさんて物知りなんですね。」
「シーフとして相場を理解しているのは当然だ。」
ミモザの言葉にアッシュは顔を赤くすると、彼はそっぽを向いた。
「でもさ。相場より安く買えたなんて、俺って運良いよな。」
「いえ、美味しい話には裏があるの間違いでしょう。」
能天気に笑うブルーノにエムロードが言い放つ。
ブルーノにはその言葉の意味が理解できなかったようで、顔に疑問符を浮かべている。
「ブルーノ。てるみつくんをこっちに連れて来てください。」
そう言ってエムロードは席を立つ。
言われた彼もミニペットを連れて机から離れた位置に立った。
「これでいいか?」
彼が聞いた直後。

<ウォーター・キャノン>

一人と一匹に向かってエムロードは魔法を放った。
魔力によって発生した水の塊が勢い良くぶつかり飛び散る。
「ぶわぁ、冷た…!」
「ふむ、やはりそうでしたか。」
水浸しになった彼等を見て納得した様子のエムロード。
「いきなり何するんだよっ!」
突然の仕打ちに吠えるブルーノだったが、今までのやりとりにあっけに取られていたテラコッタ等の驚愕の声に困惑する。
ふるふる震える手で彼女が指差したミニペットを彼は見上げた。
「てるみつくんが…ハゲてる。」
誰とはなしに出た言葉に彼は一瞬にして固まる。
「てるみつくんに光元素を感じなかったので、おかしいと思ったんです。」
冷静なエムロードの言葉にあっと小さく声を上げるミモザ。
どことなくすまなさそうな顔をしたミニペットの体は、無残にも水に流された白い塗料の下に茶色が所々覗いていた。

ショックから立ち直ると早々にミニペットを買った露店へ抗議しに行ったブルーノだったが、すでに露店は影も形も無かった。
アッシュの話によると、高価な光のミニペットと偽って別の種類のミニペットを売るという詐欺が古都でも数件あったらしい。
「一応、露店協会とGameOnに通報しておけよ。」
ギルドホールに戻ってきた彼にアッシュはそう締めくくった。
「…そうします。」
ブルーノは力なく机に突っ伏した。
ミニペットはそんな彼を心配そうに見つめている。
「これ…。よく見ると『土のミニペット』って書いてあるわ。」
「あー、本当ですね。」
テラコッタとミモザがポーチを調べてみると、そこにはしっかりとミニペットの属性が書かれていた。
より一層ブルーノを覆っている空気が暗く重くなる。
「どうしようもないバカだな。」
「良い勉強になりましたね。」
追い討ちをかけるアッシュとエムロード。
そのまま空気に押しつぶされそうなブルーノだったが、突然ガバっと起き上がった。
「ええい!落ち込んでいても仕方がない!」
そう言うと彼は力強く続ける。
「要はまたお金を貯めれば良いだけじゃないか!てるみつくん狩りに行こう!」
呼びかけられたミニペットは分かったばかりに彼の周りをぐるぐると回った。
そしてそのまま、ギルドホールから飛び出す一人と一匹。
こうして、彼らの『狩りでお金ガッポリ大作戦』が始まったのであった。

491R310:2008/03/02(日) 00:18:59 ID:Wq6z33060
はじめまして、いつも楽しくこのスレを拝見させていただいています。
短くするつもりだったのに、いきなり前編後編です、ハイ。
最期までお付き合い願えたら幸いです。

492◇68hJrjtY:2008/03/02(日) 01:43:43 ID:yWM6P/2Y0
>之神さん
おおぅ、では本格的にイラスト描かれるのでしょうか…!
なるほどでも、絵となるとUPする場所も問題ですよね〜。自サイトが無い、または作る予定が無い場合。
私は絵スレの方は時折しか行ってないのですが、もし描かれるならヲチはしますよ。
でも、他の人に見せるのはちょっとって場合はその辺にあるうぷろだとかでUPする手も。パスつけて。
内輪ネタ(?)みたいなものですしね。でも、もしUPされるなら場所がどこでも見に行きますゆえ(笑)

>R310さん
初めまして!実はこのスレってROM専さん含めたら相当な住人が居たりして…(笑)
ミニペットを主軸としたギルメン同士のワイワイ話、面白かったです。
私は生来無課金なのものでミニペットとは縁が無い=無知なのですが、ゲーム内で見かけると可愛いですよね。
でも一目ぼれで2億出しちゃうブルーノスゲェヽ(゚Д゚:)ノ まあ、アッシュの言うとおり相場からすれば安い…のかもしれませんが…(´;ω;`)
ブルーノと愉快なギルメンたちのお金稼ぎ道中、後編で楽しみにしています。

493之神:2008/03/02(日) 02:43:10 ID:TzzaVSXk0
気まぐれの感想…

>>R310さん

ミニペットネタ、いいですねぇ(´∀`*
私も課金アイテムの小ネタはしたことありますけど、その時は今よりもっと文が酷かったので今となっては恥ずかしい…。
なかなか読み応えがあって、時事ネタで、読み入ります。
またのUP期待しております、ブラザー!




サーセン

494FAT:2008/03/02(日) 10:28:10 ID:NYHK96..0
前作 二冊目>>798(最終回)

第二部 『水面鏡』

キャラ紹介 三冊目>>21
―田舎の朝― 三冊目1>>22、2>>25-26 
―子供と子供― 三冊目1>>28-29、2>>36、3>>40-42、4>>57-59、5>>98-99、6>>105-107
―双子と娘と― 三冊目1>>173-174、2>>183、3>>185、4>>212
―境界線― 三冊目1>>216、2>>228、3>>229、4>>269、5>>270
―エイミー=ベルツリー― 三冊目1>>294、2>>295-296
―神を冒涜したもの― 三冊目1>>367、2>>368、3>>369
―蘇憶― 五冊目1>>487-488、2>>489、3>>490、4>>497-500、5>>507-508
>>531-532、7>>550、8>>555、9>>556-557、10>>575-576
―ランクーイ― 五冊目1>>579-580、2>>587-589、3>>655-657、4>>827-829
>>908>>910-911、6>>943、7>>944-945、六冊目8>>19-21、9>>57-58、10>>92-96
―言っとくけど、俺はつええぜぇぇぇぇ!!― 六冊目1>>156、2>>193-194、3>>243-245
>>281-283、5>>385-387、6>>442-443

―7―

 ここは鉄鉱山地下三階。デルタ&レンダルの必殺技【変態Dの悲劇】によって身はぼろ
ぼろのドレイツボとスカートめくりの男は突如現れた魔道士にその行く手を阻まれ、雄叫
びを上げた。
「やる気か、ジジイ。言っとくけど、俺はつええぜぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
「ドレイツボォォォォォォォォ!!」
 魔道士は無表情で杖の先に火の玉を発生させるとドレイツボに投げつける。ドレイツボ
はそれをかわそうとしたが、小石に足を乗せてしまい、体のバランスを崩し、ズデンと尻
餅をつく。火の玉はドレイツボの頭上を越えて坑道の壁に当たり、弾けた。
「俺は冒険のスペシャリスト! その素早さは全てを制するぜぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ
ぇぇ!!」
 すっかり実力でかわしたと思い込んでいるドレイツボ。彼の脳みその半分は幸せででき
ている。
 魔道士は次なる火の玉を発生させ、スカートめくり男目掛けて撃つ。スカートめくり男
は自信満々に手首をぐにゃんぐにゃん曲げて杖を回す。回転数が上がっていく。火の玉は
回転する杖の合間を縫ってスカートめくり男に直撃した。
「ドゥ、ドゥレイツボォォォォ!!」
 スカートめくり男は凶弾に倒れ、杖を回したまま、足をピンと伸ばして坑道の天井を仰
いだ。
「どこを見てる! 俺はここだぜぇぇぇぇぇぇぇ!!」
 スカートめくり男を囮にドレイツボはいつのまにか魔道士に肉迫していた。そして出
る! 必殺っ!
「アルファベットXの悲劇!!」
 四本のダガーは超至近距離の魔道士には一本も当たらずに、つまり全てのダガーが真横
に飛び、坑道の壁をちちちちんと鳴らした。風鈴の音のようで夏なら気持ちのよさそうな
音だった。
「エーーーーーーーックス!!」
 ドレイツボは超至近距離からの火の玉攻撃に吹き飛ばされ、坑道の中央を通るレールの
間にすっぽりと倒れこんだ。変態パーティーは全滅した。

495FAT:2008/03/02(日) 10:28:47 ID:NYHK96..0

「お、あの変態共やられてんじゃん」
 悲鳴を聞き、駆けつけてきたレンダルは楽しそうに言った。
「私のスカートをめくったりするから、ばちが当たったんですわ」
 デルタはぷんぷんとご立腹だ。
「それにしてもよくここまでこれたものだ。こいつら、弱さをカバーするなにかを持って
いるのかもな」
 マリスは一撃で魔道士を壁にめり込ませ、変態たちをフォローする。
「どうするんだ? まさか見捨てて行くわけにもいかないし」
「やっさしいなぁ、マリスは。俺ならトロッコでひき殺しちまうけどな」
 レンダルはトロッコを押すまねをしてさりげなくドレイツボを踏んでみた。
「優しいマリスお姉さまっ! 私、ポーションなら持っていますわ」
「俺はキャンデーなら持ってるぜ!」
「あたしに任せてよ」
 そう言うとマリスはドレイツボの胸に人差し指と中指を沿え、ハッ! と気合を入れた。
「まだまだ俺は終わらねえぜぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
 ぴょんと元気になるドレイツボ。彼の脳みその半分はやはり幸せでできている。
「そら、そっちのも……ハッ!」
 活動を停止していた変態の手首が息を吹き返し、杖の回転が再び始まる。
「ドレイツボォ!」
 回転速度を速める杖。その速度が最高潮に達したとき、狙い澄ましたように杖の先端が
マリスの胸に触れた。
「あんっ!」
 漏れた声と共に何かが胸元から飛び出した。少し硬めの布で出来た白いお椀型の物体。
全員の注目がそれへと集まった。そしてマリスの全身からは恥ずかしさと怒りのオーラが
煙のように立ち昇った。
「貴様は殺すっ!!」
「ドゥ、ドゥ、ドレッ! ツボォヤォヤォヤォヤオオオオオオオ!!」
 地面を抉るほど強烈な衝撃が胸パット男の杖の回転を再び止める。憐れに思ったレンダ
ルはぱっかりと開いた変態の口にキャンデーを詰め込んであげた。

496FAT:2008/03/02(日) 13:11:29 ID:NYHK96..0
>>68hさん
いえいえ、お詫びだなんて……
このスレ一冊読むには丸一日あっても足りないでしょうし、むしろそんなこと
よりも毎回投下した話への感想を頂けているということへの感謝の気持ちのほうが
大きいのです。
いつも本当にありがとうございます。

>>ESCADA a.k.a. DIWALIさん
ほんとですよね。毎日のように新しい話を読めて私としてはほくほくな気分です。
荒野の荒くれ者、危険な香りがぷんぷんします。
登場人物を対象にしたクエスト、いいですねっ。こんな風に実際のゲームの
中でも自分や誰かを対象にしたクエストがあれば……迷惑ですかね。
狙われたラティナこと東雲あやね、無事にクエストを失敗させることができるのでしょうか。
続きを楽しみにお待ちしております。

>>柚子さん
>何より都合の悪いように考えていくのが私達の世界の常道だ。
この表現、常に死と隣り合わせのイリーナたちの住む世界感を描いた
素晴らしい一文ですね。いかに危険な世界かが伝わってきました。
なんだか朝食を作るイリーナとそれを待つルイス、ミシェリーの三人が家族の
ようで胸が温かくなりました。イリーナの「ほらよ。餌だぞお前ら」には思わず
笑ってしまいましたが(笑)
蟲退治を軽視しているイリーナですが、果たしてどうなるのでしょうか。
カーペットの上ではしゃぐ楽しそうなミシェリーの姿を思い浮かべながら
続きを楽しみにお待ちしております。

絵は難しいですよね。まぁ私の言う絵の難しさはろくにアンパンマンすら描けない
ほどひどいですが。
68hさんのおっしゃるように自分の思い浮かべている景色や人物を絵で表現できたら
もっと話を書くのが楽しくなりそうですね。

>>ウィーナさん
物が浮遊する不思議な空間、面白そうですね。そんな楽しいところへ行けるなら、
終わりが見えないほど長い階段も上ってみたくなります。
女神様の捜索ということですが、その女神様に似ているというメアリー。
メアリーと女神様の関係は一体なんなんでしょうか?
続きを楽しみにお待ちしております。

>>白猫さん
戦闘!戦闘!戦闘!
熱い戦闘の連続にテンション上がりまくりです。しかし傀儡たちの強さは半端ない
ですね。あのアーティさんがこんなにあっさりと……
ルゼルも本当に灰になってしまったのでしょうか。神格化しても傷すらつけられない
ルヴィラィ、恐ろしすぎます。
[ラグナロク]発動までの333日、ルヴィラィはゲームだと馬鹿にしてますが人類に
とっては巨大な死のカウントダウンのようですね。
アネットにネルの想いは届くのか、次回も楽しみにお待ちしております。

>>メイトリックスさん
ベテラン傭兵の話になるほどと感服致しました。しかしそんな彼女の結末が
この世界の厳しさを嫌というほど知らしめていますね。
倒した骸骨の眼窩から零れた雫を涙に見立ててしまうピアースは倒した相手にも
同情してしまうような優しい娘なのですね。
なんとなく馬の合わなさそうな二人ですが、迫り来る恐怖に協力して立ち向かえるの
でしょうか、続きを楽しみにお待ちしております。

>>之神さん
ここは運剣士の見せ場ですね!
さりげなく何度も登場する貸し出しの男がいい味出してますね(笑)
まさかっ、この貸し出しの男が新登場のキャラだったり!?
おお、之神さんの絵、見てみたいです。絵と小説があるなら個人のサイトを
立ち上げてみてはいかがでしょうか。作中に絵を挿入したり、色々アレンジ
できるでしょうし、読み手としても挿絵があると読む楽しみが一層も二層も
増しますものね。
楽しみにお待ちしております。

>>R310さん
初めまして。
おお、このスレ初のミニペット登場ですね。
てるみつくんという可愛いネーミングセンスを持つブルーノ、茶目っ気があって
いいですね。
てるみつくんがまさか白い塗料で塗りたくられていたなんて……動物愛護団体も真っ青の虐待ですね。
種類はなんであれ、ブルーノの良きパートナーとなることを願いつつ、続きを楽しみにお待ちしております。

497したらば初心者:2008/03/02(日) 16:58:38 ID:14xdaVug0
ここって……今から新しい話始めるにはやはり過去全部読むべきでしょうか……
今一冊目を見ているのですが、終わらない〜;;
(今の時点ではFATさんと21Rさんのファンです>▽<b

498◇68hJrjtY:2008/03/02(日) 19:31:57 ID:wyfN4mBQ0
>FATさん
…(;´Д`)ウウッ… 慰めてもらってしまった…!
これからも現行スレを主体に、もちろん過去スレも含めて小説スレに張り付かせてもらいます!(笑)
さてさて。変態PT二人…個人的にはほとんどものというものを喋らないスカートめくり改め胸パット男の実態が気になりますね!
ドレイツボの方もなんかただならぬものを持ってる気がしますし…いや、過大評価とかじゃなくて(;・∀・)
でも「へんたいパーティーはぜんめつした」って○Q的な空気が笑いを誘います(笑)
イマイチ分からなかった怒号手法(?)が明らかになったり、マリスが実は萌えキャラでもあったりと楽しいシーンでした(*´д`*)
レンダル、デルタ、マリス、そしてこのままPT加入してしまうのか否か、ドレイツボコンビ…。続きお待ちしています!

499白猫:2008/03/02(日) 20:39:38 ID:gJ85/34o0
>したらば初心者さん
どうも、お初にお目に掛かります。
此処で物書きやってる白猫です。お見知り置きを。
普段は小説を投稿するだけの薄情な人ですがご勘弁下さい。
1冊目から絶対読め!とは言わないです。私も5冊目からしか目を通してないです(オイ
此処は小説を読みたい人、書きたい人が集まる場所なので、
無理にこうしろ、ああしないといけない、ということはないのですよー。
…えっと、要するに読みたければ読めば良し。ということです。
え?その一行だけでいいって?いや、前置きとかあるじゃないですか?多分。
しかし500ゲットならず。300400両方ゲットしたが連勝はここまでのようです。

500したらば初心者:2008/03/02(日) 20:50:07 ID:14xdaVug0
では500いただきます
なるほど……同じようなネタがないかと心配だったのでの質問でした。。
ではゆっくり推敲でもしながら過去作品読んでいってみます

501之神:2008/03/03(月) 01:03:35 ID:TzzaVSXk0
1章〜徹、ミカの出会い。
-1>>593―2 >>595―3 >>596-597―4 >>601-602―5 >>611-612―6 >>613-614
◆――――――――――――――――――――――――――――――――――――◆
2章〜ライト登場。
-1>>620 -621―2>>622―○>>626―3>>637―4>>648―5>>651―6 >>681
◆――――――――――――――――――――――――――――――――――――◆
3章〜シリウスとの戦い。
-1>>687―2>>688―3>>702―4>>713-714―5>>721―6>>787―7>>856-858
―8>>868-869
◆――――――――――――――――――――――――――――――――――――◆
4章〜兄弟
-1>>925-926 ―2>>937 ―3>>954 ―4>>958-959 ―5>>974-975
◇――――――――――――――――5冊目―――――――――――――――――◇
-6>>25 ―7>>50-54 ―8>>104-106 ―9>>149-150 ―10>>187-189 ―11>>202-204

◆――――――――――――――――――――――――――――――――――――◆
5章〜
-1>>277 ―2>>431-432>>481-482

◆――――――――――――――――――――――――――――――――――――◆
番外

クリスマス  >>796-799
年末旅行>>894-901
節分  >>226-230
バレンタインデー>>358-360 >>365-369
◆――――――――――――――――――――――――――――――――――――◆

502之神:2008/03/03(月) 01:40:24 ID:TzzaVSXk0
κ

暗い、雰囲気の悪い部屋――。
高層マンションの上階だろうか…夜景が一望できるこの部屋に、人影が2つ。
この広い部屋にはカーテンはおろか、最低限の家具すら見当たらない、生活観のかけらも見出せない部屋。

「ふんふん、なーるほど…ミュリエか」少女の声…それでいて艶のある声が、暗い部屋に響く。
「ねぇねぇ、アルシェはさ、成功すると思う?」
アルシェと呼ばれた男は、外の夜景を見渡すようにして窓際に座り込んでいた。

「馬鹿野郎…俺がやるんだ、失敗なんてありえない」自信に満ちたその声は、カタギでは無い空気を纏っている。
「野郎じゃないよ、女の子だよ私?」
「俺には関係ない事だ」
「野郎って言ったのはアルシェじゃないかー」
「うるさいな…いちいち野郎くらいで俺に口答えするな」男は床から立ち上がる。
「ねぇねぇアルシェー、今回はねぇ、あのすっごい泥棒も居るみたいだよ?」
「…プサージュの奴か………?」
「うん、あの人カッコイイから私また見たーい」
「馬鹿野郎…あいつは面こそいいが、中身はただの下着ドロボーだ」
「だから野郎じゃなくて女の子だってば私は!」
「うるさいな…エトナ、お前は偵察に行って来い」
「えー♪外は寒いよう?私女の子だよう?アルシェ男の子なんだから代わってよー♪」
「妙な音程でしゃべるな。そして俺を男の子と呼ぶな」
「アールーシェー♪」
「馬鹿野郎…いってこい」


「だから、野郎じゃ無いってばー!」



―ミュリエ・ジュール―
                        社内研究部

「完成したモノは、実験にかけたのか?」メガネをかけた理知的な男が、研究員らしき者に問う。
「マウスでの実験では、バ ラ バ ラ に し た 状 態 か ら 見 事 に 蘇 生 し ま し た 」
「そうか…人間への応用は?」
「いえ…まだ実験体が………」
「わかった。まぁ、それほど急ぐ物でも無い。気長に実験を繰り返せ」
「了解しました、ガゼット所長」



α
「マース=ガゼット……?」
めくったページの所に、そう書いてある。
「何々…現在も錬金術の研究を行っており、企業での商品開発、本の執筆など様々な分野で活躍…?」
なんだこいつは。廃れた筈の錬金術を現在でも研究って…よくそんな奴に商品開発を任せたもんだ。

「えーと企業は………ミュリエ・ジュール……って!飲料メーカーじゃねえか!」
静かな図書館内に、俺の声が大きく響いた事に気づく。

「あ…ゴメンなさい…」

とにかく、調べ物はこれくらいでいだろ。肩も凝ったし、ミカの為に使えそうな本を持ち帰って…と。
俺はまた厄介な事に巻き込まれるとは、ちーっとも考えちゃいなかった。
その事件は、俺が本を借りた数日後の話なんだが…。

503◇68hJrjtY:2008/03/03(月) 16:08:22 ID:jdc0Xd4I0
>之神さん
アブなそうな研究所所長の会話が出てきたと思ったら、飲料メーカーって((((;゚Д゚)))ガクガク
そして冒頭部分でまたまたRS世界からの闖入者(?)らしい二人組の会話。こっちもこっちでアブなそうですね。
アルシェとエトナ…今回の章の鍵を握る人物のようですが、果たして。向こうさんはライトやミカたちのことも知ってるようですしね…。
もしかしてこのガゼット所長の専門分野とする錬金術というのもキーワードなのでしょうか。オラ、わくわくしてきたぞ!
続きお待ちしています。

504復讐の女神:2008/03/03(月) 17:19:20 ID:SNB7lrqY0
小説upスレッド4冊目からの続きです

倉庫の前には、一人の少女と3匹の蜘蛛、一匹のエルフに狼が一匹。少女と
狼が、倉庫を守るようにして蜘蛛とエルフの前に立ちふさがっている。
「あっはは! エルフちゃ〜ん、そろそろ降参しない?」
少女口元には両手で構えられた笛が添えられており、時々少女が笛を鳴らす
だけでエルフは呆然と立ちすくんでしまう。
エルフの命令のない蜘蛛たちは連携の取れていない攻撃を仕掛けてくるが、狼
が的確な牽制と軽快なステップで全て無駄にしてしまい、さらに隙を見ては攻
撃を仕掛ける。
「ガゥ!!!!」
今また一匹の蜘蛛が、狼の牙にやられ重い体を地面に押し付けるように倒れ、体
液を垂れ流す。
「あのね、もう分かってるんでしょ? 森の中でもそうだったけど、あんたの蜘蛛
程度じゃ私の相棒”スティ”には適わないの。それこそ10匹束になってかか
ってきても、なーんも問題ないわけ!」
動きかかったエルフを見て少女が笛を吹き鳴らすと、またエルフの行動が停止
してしまう。
その間に、狼は残りの2匹を簡単に噛み切ってしまった。
「さあさあ、私の物になっちゃいなさい! ん〜、それにしても私ってば運が
いいわ。エルフって、なかなか会う機会が無いのよね。おまけに、こいつった
ら怪我してダメージ負ってるし」
余計な取り巻きのいなくなったエルフの周りを、狼が周回する。エルフは牽制に
剣を振るおうとするのだが、そのたびに少女の笛の音に行動を止められてしまうのだ。
そのうちに、少女の笛から違う曲が鳴り出し、それを合図に狼がエルフに噛み付
いた。深々と突き刺さった牙は、どのようなことをしても外れることは無いだろう。
「オーケーオーケー。そのまま捕まえててね、スティ!」
曲がまた変化した。今度は曲が進むに連れて、笛から緑色の光があふれて輝き始める。
思考が元にもどったエルフは、自分の足に噛み付く狼に気づき、手に持つ剣で
払おうとして…すぐさま、それどころではないことに気づいた。少女の笛の音が、
鳴り止んでいたのだ。
笛の先にはいまにも零れんばかりの緑の光が輝いており、その後ろにたたずむ少女
が笛をエルフに向けていた。
「さあ、これでチェックメイト!」
笛を振り、緑の光をエルフに向かって投げる。光はボールのようにエルフに飛んで
行き、エルフの体に接触すると、前進を覆うように包み込んだ。
「ウガ・・・・ガ・・・ぎぃ・・・アアアアアアアアア!!!!!」
悲鳴はすぐに無くなった。
緑色の光はいつの間にか消え去っており、そこには一回り小さくなったエルフがたた
ずんでいた。

505復讐の女神:2008/03/03(月) 17:20:07 ID:SNB7lrqY0
エルフは呆然としており、視線は空を向いているが…何も見ていないことは、一
目瞭然だ。
「うわ、やったぁ。まさか本当にゲットできるなんて、私ってなんて幸運!」
大人しくなったエルフの周りで一通りはしゃいだ後、少女は本を取り出した。中に
は、様々なモンスターたちの絵が詳細に描かれており、一匹一匹の名前から特徴、
性格まですべて記載されていた。
「でもね、さすがにここであんたを外に出しとくのは、まずいのよ。村をつぶした
張本人だしね。だから、狭いだろうけどちょっとここに入っててね」
エルフは始めて少女に気づいたかのように振り向いたが、その視線には敵意はなか
った。それどころか、親しい友人を見つけたかのように穏やかですらある。
少女が何も書いていないページを開くと、少し残念そうに落ち込み、静かに頷いた。
「うん、さすがエルフね。理解が早い。我此処ニ我ガ友ヲ封印スル・アグス・テル・ウ
リアナ・ロマ」
不思議な旋律だった。
そこには、このフランデル大陸で使われている共通語にはない音が有り、聞くも
のを不思議な気持ちにさせる。
呪文の詠唱が終わると、エルフは粒子となり本に吸い込まれていく。
エルフが消えた後には、先ほどまでなにも書き込まれていなかった本のページに、エ
ルフの項目が追加されていた。
「あとで、ちゃんと名前つけてあげるから、ちょっと待っててね。さて、そこの
家の影に隠れている人…いるんでしょ。出てきなさいよ、誤解を解かないといけ
ないかも知れないじゃない?」
少女の呼びかけに出てきたのは、女性の槍使いであった。
身のこなしから察するに、かなりの使い手と思われる。なにより、隙が無い。
「よくわかったわね…でも、安心して。あなたに危害を加えるつもりは無いわ」
甲冑に身を包みこみ、それでいながら軽やかな身のこなし。手に槍を構え、背中には
いつでも抜き放てる弓が備えられている。だが殺気の無いところを見ると、いまの
台詞は本当のようだ。
「何時から見ていたの?」
「何時からというほどでもないわ。貴方のお仲間が”辞書”に仕舞われるところか
らよ。倒したのは、仕舞いこんだエルフ?それとも、そこで私を威嚇してる怖い狼?」
「スティ、彼女は敵じゃないわ。周りを警戒して」
笛を一吹きすると、鳴き声一つで槍使いへの警戒を解き周囲に警戒し始める。
「初めまして、槍使いさん。もしかして、この村の人間?」
「初めまして、ビーストテイマーさん。残念ながら、私はただの傭兵よ。ねえ、村人
を見なかった? 村が襲われたとき、私達は村にいなかったの。無事に逃げていて
くれないかと、探しているの」
身軽に近寄ってくる槍使いは、探していると言いながらもある程度の目算で此処

506復讐の女神:2008/03/03(月) 17:20:53 ID:SNB7lrqY0
に来たことは、少女にとっては当然だった。なにしろ、少女が此処で戦っていた
のは、この槍使いの目的と似たものだから。
「もういいわよ、でてきて! 貴方達の傭兵さんが、戻ってきたわ!」
少女が叫ぶと、倉庫から4人の人間が出てきた。
全員、この村の若者で、武器を構えている。
「ジェシさん!」
若者達は、ジェシの元に駆け寄った。
その後ろから、続々と村人達が出てくる。
「よかった、無事だったのね。本当に……よかった」
「えぇ、ここにいる者は全員無事ですよ。逃げる際に怪我をした者もいますけど、モ
ンスターにやられた人はいません」
「この方が、助けてくださったのですよ」
無事を喜び合う村人に紹介され、少女は照れくさそうに指を2本立てて見せている。
子供達は、今まで怖くてしょうがなかったのだろう、反動で元気いっぱいに廃墟と
なってしまった家の上に飛び乗ったりしてはしゃいでいる。
「なんとお礼を言えばよいか……」
倉庫から出てきた老人が、少女に頭を下げている。
「ちょっと、やめてよ! 私、ただ自分の身を守っただけなんだから」
少女は照れたようにかしこまっているが、後ろ手で”辞書”をカバンの中にするり
と潜りこませているのを、ジェシは見逃さなかった。
「それに、がんばったのはスティ。だから、褒めるならスティにしてちょうだい」
少女が笛をひと吹きすると、スティと呼ばれた狼は警戒を解き少女の下へと嬉しそ
うに近寄った。
優しく少女に撫でられるのを、本当に気持ちよさそうに受けている。
その様子を見て興味を抱いた子供達が、こわごわとした様子でスティに近づいていく。
「やはり大丈夫でしたか、良かった」
ジェシの隣から突然声が上がり驚いて振り返ると、ボイルが腕を組んで立っていた。
近づく気配すらしなかったところを見ると、テレポートでも使って村中を駆け回っ
ていたのではないだろうか。
他の場所にまだ人がいることを、ジェシはすっかり忘れていた。
村の状況をボイルに聞こうとしたところ、村の生き残りが歩いてくるのが見える。
幾人か怪我をしている者もいるようだが、どうやら全員無事だったようだ。
「村中を周っていたの?」
「そうとも。急な襲撃で、予定箇所に隠れられなかった人もいただろうしね。それ
に、残党が残っている可能性もあった」
「それなら、私の返答を待ってくれてもよかったのではないかね、ボイル君」
落ち着いた足取りで横に並ぶのは、ジェシよりだいぶ遅れて到着したフェリルだった。
フェリルの後ろにも、2人の村人が付いてきている。

507復讐の女神:2008/03/03(月) 17:21:33 ID:SNB7lrqY0
「村中を駆け回っても、瓦礫の下敷きになっていたら君では発見できなかっただろう」
「そこはフェリル司祭に期待してましたからね。私は目に見える範囲での、急を要す
る場所の救助と考えたまでのこと」
二人の台詞がどこか芝居じみているのを感じたジェシは、これが自分に向けられたも
のだと察した。
「ところでジェシ、そちらのお方はどなたかね? とりあえず敵ではなさそうだが」
フェリルの促しで、そういえばこの少女の名前を知らないことに気づく。
「喜んでるところ、ごめんなさい。私はジェシ、この村に雇われた冒険者よ。あなたは?」
村人達と一緒に喜んでいる少女は、くるりと1回転して振り向いた。
上下一式革の服は、活発な少女らしく半そでミニスカートとなっており、すらりと
した細い腕や足が健康的に日に焼けている。
赤い外套をかぶってはいるが、そこから覗かれる瞳には強い生気が宿っており、口元
には軽く笑みが浮かんでいる。
一目見ただけで、美少女と認識できるであろう。
だが、ジェシが注目したのは、腰につるされた笛だった。
一見ただの木で出来ているように見えるが、普通とは少々違った形をした先端。遠く
からなら勘違いしてしまいそうな、笛に描かれた文様。そして、笛を収めるためのポ
ーチに描かれた文様。
「私はテル。ビーストテイマーの冒険者よ! そちらのお二人は?」
少女の指が示す方向、フェリルとボイルは、けが人の治療に当たっていた。
「ふむ。私はフェリル、見ての通り司祭だ」
「ジェシの恋人、ボイルだ。杖を見れば分かるかな、ウィザードだよ」
最後にジェシに向かってウィンクをするが、ジェシはそれを無視した。
「あはは、面白い人だね、お姉さんの彼氏さんは」
「彼氏じゃないわ、 た だ の 仲間よ」
後ろの方で、なにやら慰めの声が飛び交っているが、ジェシはそれも無視した。
「それより、私からも感謝するわ。貴方のおかげで、村人が助かった」
「ん〜ん、いいのいいの。大きな声じゃいえないけど、私も役得だったしね」
先ほど”辞書”にしまったエルフのことを、言っているのだろう。ビーストテイマー
は、その不思議な魔力により魔族や動物を魅了し
操る術をもっている者のことを言う。中でも特に強いと言われているエルフを手に入
れたのだ、確かに役得だといえる。
「あのエルフの傷、あんた達がつけたんでしょ。アレが無かったら、私も苦戦してたと
思うわ」
ジェシにしてみれば、それはどうかなと思うところだった。捕獲することを考えさえ
しなければ、エルフを倒す手段は持ち合わせているだろう。
「ジェシ殿、それにフェリル殿、ボイル殿、本当にありがとうございました」
村人が全員無事であることを確認した村長が、声を張り上げた。

508復讐の女神:2008/03/03(月) 17:24:30 ID:SNB7lrqY0
お互いの無事を喜び合っていた村人達も、そしてけが人の治療をしていたフェリル
たちも、全員が黙って村長の声に耳を傾ける。
「あなた方の勇気のおかげで、村は救われました。あなた方がいなければ、我々は
長く不安な日々を過ごしていたでしょう。そしてテル殿、あなたが導いて下さったおか
げで、私たちは生き延びることが出来ました」
村中の者が、一斉に拍手を始める。感謝の声が何十にも重なり合い、まるでコン
サート会場のようだ。誰も彼もが笑顔であり、そこには生きる希望が湧き出していた。




作者のモチベーション&帰宅時間次第なのですが…まだ続きます。
もし、待っていてくださった方がいらっしゃいましたら、大変遅くなりましてすみません。
おそらく、これからも遅筆になると思いますので、気長によろしくお願いします。

509名無しさん:2008/03/03(月) 18:56:24 ID:SzbeIaBc0
高校の入学式のあと、新しい一年生達はそれぞれ振り分けられた教室に行くことになった。
その一人である浩助(こうすけ)は親友の慎二(しんじ)と同じクラスで前後続いた席になった。
「ラッキー窓側の席だぜ!いや〜緊張したなぁ、浩助。ついていけるか心配だよ。」
慎二が座ったまま、首だけ振り向いて話し掛けた。
慎二の言葉に対し、ダラっと座っている浩助は嘲笑を込めて返した。
「ま、必死で勉強して入学できたのは認めるが、卒業できるか見ものだな」
「てめぇ〜自分が頭いいからって…。おい、それより一年生にも"悪能力者"がいるんだってよ。」
途中からヒソヒソ話のように声が小さくなった。この話を聞いた途端、浩助の表情が険しくなった。
慎二は中学のときからいろいろな情報を知っていて、浩助が能力者であることも知っている。
「なんでお前はそう、くだらねぇ情報を教えてくれやがる。おい、それよりあの娘の名前分かる?可愛いなぁ」
「コラ、関係ない話しでごまかすな!ちなみに名前は四条可奈、どっかの金持ちの娘さんだよ。そんなことより、なんで悪の能力者なんかがこの学校にいるんだ?校長でも脅したか…。」
能力者には、力、敏捷、知恵などいろいろな種類があり、それぞれ得た分野が普通の人間の3倍ほど長ける。悪の能力者はそれが5〜10倍も長けてしまい、自身をうまくコントロールできずに殺人などを起こす。
「へぇ、貧乏人にゃ関係ねーか…。で、そいつ倒せばいいんだな?」
「やる気満々じゃんか。確か1-Cだぜ…って俺たちのクラスだよ!」
つい声が大きくなり、クラスの何人かが浩助たちを見た。
「そっか、じゃああとは、そいつがいつボロを出すかだな。でも、しばらくは平気だろう。」
「だといいけどなぁ……。」
明らかに慎二の顔色が悪くなっていた。ちょうど担任らしき先生が入ってきて、慎二は前を向いた。
窓から眺める曇り空は何か悪い事の前触れのようだった。

なんとかあかいしっぽくなりました。はいいつかつずけます。

510之神:2008/03/03(月) 19:23:17 ID:TzzaVSXk0
雛祭


α

――其方、待つのじゃ…
――私の命を聞いてくれないか…
――女雛が…私には居ない。
――どうか…私の相手を探してきてくれないか…。


「わっ…!」俺は不気味な声を夢の中で聞いた。また…また何かあるのかと考えてしまう。

早朝に目が覚めてしまった俺は、そのまま下の階へ行った。
今日は3月3日…雛祭。
ウチには母さんとミカくらいしか女性は居ないのだが、豪華な雛壇が和室に飾ってあった。
母さんが言うには、
「あら、私はいつまでも女の子よ?」
などとほざいている。まぁ、いつまでも若々しいのはいいことだが。


だが、我が家の雛壇にはとある曰くが付いている。

――数年前――
「わー!お雛様だー!今年も飾るんだね!?」
「ええ、飾るわよ…。それにしても、徹は男の子なのに雛壇が好きなのねぇ…」
「だって、すっごいごうかじゃん!」
「そうねぇ…」


母さんと雛壇について一通り語った幼き俺は、雛壇の前からそのまま離れなかった。
「いいなー、あんなたかいところにおれも行きたいなー」と、ここで馬鹿な俺は考えた。
「おお」
「のぼっちゃえばいいんだ!」
そうと決めた俺は、母さんの目が向いてないのを見計らって雛壇を階段のようにあがり始めた。
「とっと、ととと…」
当時、当然歳相応に背の低かった俺からすると、雛壇の頂上はとても高く、眺めも良かった。
「いいなーおまえら、こんな高いところから見下ろせて」当然、話しかけても反応などある筈も無い。
「じゃあ、おれもうおりるよ。おじゃましました」

そう、降りようとした時、俺はやらかした。
「あっ…!」
降りようと下に向き直った俺は、余らせた手で女雛の方を弾き飛ばしてしまった。
しばらく宙を舞ったお雛様は、ガチャ、と音を立てて大破した。

――――
それ以来、ウチの雛壇には天辺にいるはずの女雛が居ない。俺は毎年片方だけの男雛を見るたびに、馬鹿な事をしたと悔いている。


俺はしばらく雛壇を眺めていたが、そろそろミカの起きる時間だと朝食の準備をした。
トースターでパンを焼いたりしていると、ミカが眠たそうに起きてきた。
「ああ、おはようミカ」
「うーん…徹今日は早起きねぇ……んー?あれは?」
「それは雛壇って言って、毎年この時期に飾られるんだよ…ウチはちょっと、装飾の足りないところがあるんだけど」
俺はそういうと、また幼い頃の過ちを振り返る。
「へぇ…豪華ねぇ。顔はみんな真っ白だけど」
「ああ、そういう風にできてるんだ。っと…、パン焼けたよ」
「うん、ありがと」


ミカと並んで学校へと向かい、俺にとってはわからなくて退屈な、ミカにとってはレベルが低すぎて退屈な授業が始まる。
俺は退屈が過ぎて、眠気が差してきた。うとうとと、身体の自由が次第に利かなくなり、俺は眠りに付いた。

――女雛が…私には居ない。
――どうか…私の相手を探してきてくれないか…。

朝もいましたよね…誰ですかね?

――其方に女雛を取られた哀れな男雛よ…

えっ…

――其方、用意ができぬと言うならば、余は其方の女雛を貰う事になるが

待て、ふざけるな…

――なら、用意してくるのだな…楽しみにしているぞ

511之神:2008/03/03(月) 19:44:18 ID:TzzaVSXk0
α

そこまで夢を見て、俺は授業の終了ベルと共に目覚めた。
授業中の居眠りは普通の眠りより疲れが取れるような気がするのだが、今日は何かと悪い夢を見るので気疲れしている。
「なんなんだ、朝から…」
「どうした徹」と、声をかけてきたのはのん気な俺の悪友だった。
「いや…お前に話すと面倒だ、この間の節分も……いや、なんでもない」
「なんだなんだ、徹、お前今日おかしいぞ?いや、普段からおかしいけどさ」
「余計だ阿呆。いいから、俺は平気だ」
「ったく、あんまり悪いようなら病院でも行けよ?」


学校も終わり、俺はやっとの下校…!
しかし、今日2度も見たあの夢が気になって仕方ない。
「なぁミカ…」
「なぁに?」
「ちょっと今日、俺フィアレスさんとこ行ってこようかなって」
「んー、私も行くよ?」
「いや、すぐ済む筈だしぱっと行ってくるよ」

俺は家までミカと歩き、そのまま帰宅した。
「あれ?」
ふと見ると、玄関にある靴が一足多い。
「ただいまー。母さん、お客さん?」
「そうなのよ、いつもお世話になっててねぇ…」と、母さんが笑いかけた方を向く。


「………。」そこには、あの幼女がいた。相変わらず、瞬きをしているのかわからない目で冷たく辺りを見回している。
「どっ…どうも」
「いつ、行使すればいい」抑揚の無い棒読み声が、俺へ語りかける。
「えっ?」
「貴方の家の、雛壇の事」

流石…というか不気味というか。
俺の用件をちゃんと分かっている。俺はそのまま話を続けた。
「男雛とペアの女雛が居なくて、俺に女雛を探して来いって夢を見たんだが」
「知っている」
「あ…そうですか」
「で、こりゃマジモンの呪いとかなのか?」

「正確には、憑依」口元だけを動かし、幼女は続けた。

「この世界の昔の人物が関わっている。強い霊。この問題の解決には、この3月3日の今日だけ、女雛が必要。
 そしてその女雛の適任は、女雛を壊した貴方とかかわりの深い女性。例えば、ミカやシルヴィー、そして私も。
 そのいずれかが、1日だけ女雛として囮にする必要があり、そうして油断した男雛に憑依した霊的何かを払う」

「な…長いな」
「とにかく貴方は、女雛の適任者を選ぶこと」

512之神:2008/03/03(月) 20:35:20 ID:TzzaVSXk0
λ

プルルルル…
「はいー、シルヴィーですよ」
「えっ、今からですか?んー、今シャワー浴びてあがったばかりなので、ちょっと待っててくださいね」
「はい、はーい、失礼します」
ガチャリ。

徹さんからの電話では、急いでウチに来て欲しいとのこと。
バスタオル一枚のままなので、私は着替えるために部屋へと向かった。


β
「んでさ、ちっと雛壇の事で用があるんだけど…」徹が私の部屋に入ってきて、最初に言ったのはこれだった。
「んー、いいけど何かあったの?」
「いやぁ…フィアレスさんに聞けばわかるけど、俺はどうもよく分からなかった……」
「そう…ちょっと待っててね」


α

「とりあえず、フィアレスさんの言った2人をそのまま呼びましたよ」
「あれは具体例…かまわないけど」
「それで、囮だのお払いだの、一体どういう…?」
「それは2人が到着したら説明する」
「そうか…あまり危ないことにはならようにして下さいね?」
「分かっている」

数分後〜

「お待たせしました、シルヴィーです」インターホン越しに、シルヴィーの笑顔が見える。
春のように暖かいこの日、シルヴィーは水色のワンピースを着てウチへやってきた。
胸元が少し開いており、普段のミニスカート姿とは違った可愛さがあった。
「あ…それで早速なんですが、フィアレスさんとこへ…」
「はいー、お邪魔します」

「徹ー、準備したわよー?」
ミカはタイトなジーンズと、キャミソールを着て降りてきた。
長い足が強調されて、胸元も開き……

と、ここで気づく。なんか皆いつもよりオシャレじゃね…?
雛祭だからか、無意識か、俺の勘違いか…。まぁ、これなら雛娘として十分魅力を発揮しそうだが。

フィアレスは、当然来たときのまま子供服である。大人びたしゃべり方とのギャップg(ry

「説明する」フィアレスが、表情を微塵も変えずに語る。
「女雛の役に抜擢された者は、そのまま雛壇の頂上にいる男雛を下ろし、向かい合う。そのまま女雛となったものは待機すればいい。
 残った者は、囮に釣られて出てくる所をしとめればいい。後は私が処理する。女雛は向き合う間に何かしら影響があるかもしれないが、それは一時的なもの」
「そしてまずは、誰が囮になるかを決める」そういうとフィアレスは俺へ向き直る。
「誰?」

んー…。迷う。ミカはワケのわからん悪霊の餌になんかしたくないし、シルヴィーも…フィアレスは囮にすると仕事ができるかわからない…。
むー……。

「よし」
「ミカ、やってもらえる?」

「任せて頂戴」と、ミカはニヤっと笑った。

513之神:2008/03/03(月) 21:05:16 ID:TzzaVSXk0
α

「それでは、始める。ミカ、貴女はその男雛と向かい合い、目を見つめていてほしい」
「わかった」
俺は仕事が無いと思い、傍観を決め込もうとする…と。

「貴女にも、仕事はある」
「えっ、俺に出来ることなんて…」
「ミカの手を握って、隣に座る。そうして、後は私の言うとおりにすればいい」
「そ、そうか…」

俺はミカの座る横へ行き、そのまま座り込む。
「手…握るよ?」
「…うん」俺はミカの右手を優しく握った。

「では始める」とフィアレスが言った瞬間、昼間の明るい部屋だったはずの和室が、一気に光を失った。
完全にブラックアウトした部屋も、ミカの手を握っていることで感覚が戻る。
「―ιηδ×〜」
意味の分からない不気味な声が、真っ暗な部屋に通る。

すると突然、夢で聞いた声がした。

――おお、其方連れて来てくれたのだな…
――うむ、可愛い娘じゃ…
――どれどれ、早速私の女雛として向かえてやらんとな

と、声がした後、部屋の明るかった時に人形があった位置から、真っ白な光の煙のようなものが出てきた。
その煙は巨大な手のような形になり、次第にミカを包み込むように囲い始めた。

「フィアレスさん…指示は…、指示はまだですかっ?」
「まだ。完全に人形から離れてから」
その煙は完全にミカを包み、そのまま飲み込んでしまうと俺は思った。

「うっ…寒い」ミカの手が震えている。
――ほう、立派な身体だ…なんとも幸せなことか
――其方よ、感謝するぞ。存分にこの女雛で楽しむとしよう…
光は完全にミカを包んだ。

「人形から離れましたね…シルヴィー、帰れないように人形を遠ざけて下さい」
「では、貴方は何か主張して下さい。そのまま持っていかれないように…」

「そんな、主張って…」俺は何を言うべきか考えたが、もう口が勝手に開いていた。


「ンのバカ内裏…!とっとと消え失せろ、ミカは俺の大事な人だ…」と、暴言。あーあ。

――なっ、其方、裏切るのか!
するすると光がミカから離れた。しかし、戻るアテの人形は無い。

――やめろ…!余はまだ諦めきれんのじゃあ……!
「そのしつこさじゃ、結局恋仲の人は出来ませんよ…」と、フィアレスが言うと同時に、不気味な断末魔と共に光は消えた。

突然、また日の差す明るい和室へ戻った。ミカはかなり疲れた様子だったが、こちらへ笑いかけてきた。

「大事な人って…もう彼女でもいいんだけど?」と、そのまま手をぎゅっと握ってきた。

フィアレスは、手に黒い煙の入っている瓶を抱えている。
「それが…さっきの奴?」
「そう。この子はこのまま私の実験に使わせてもらう」
何百年前のおっさんを、この子呼ばわりとはな…。

原因である男雛を見ると、それは変わらぬ表情で佇んでいた。
「女雛…壊して悪かったな」と、返事もあるはずの無い人形に話しかけた。

――気をつけろ。次は無いぞ。

「えっ?」俺は男雛を見るが、空耳かとそのまま雛壇へ戻した。

514之神:2008/03/03(月) 21:22:40 ID:TzzaVSXk0
相変わらずの、番外編。
之神ですよっと…。
ウチでは雛壇も飾りませんし、これといって何もありませんが、書いてみました。
シリウス、ザナ、ライトいませんけど、まぁ雛祭ネタだし男はいらないかなぁと。
――
今度また、こんな季節行事ネタで面白そうなのあったら、課題小説として設定してみようかなーと。
そしして言いだしっぺが面白く無(ry
では、コメ返しとか。

>>FATさん
まぁNEWキャラがイパーイになると思うので、誰が一番かはまーだわかりません(´∀`*
そうですねー、ライトは「フランデル1番の泥棒」という設定なので、確かに彼が取りそうですけど、ナザも運極だし徹は主人公だし…。
まぁ、結局ワカランのですよ(ぁ

>>◇68hJrjtYさん

上記の通り、NEWキャラ揃いです。エトナやアルシェー♪(笑) もゴタゴタやってくれます。
飲料メーカーに何故決まったかと言いますと、サントリー発売のFFポーションの影響ですかね…(オイ
まぁきっと自分の小説は登場人物が覚えきれない程増えると思いますよ。

そして復讐の女神さん、したらば初心者さん。
之神って言います。神様ではありませんよ。目指してますけど(ぉ
お互いUP頑張りましょーう。

気まぐれあとがきでした。
引き続き、小説スレをお楽しみ下さい。

515◇68hJrjtY:2008/03/04(火) 13:22:24 ID:LLGcTyJI0
>復讐の女神さん
四冊目からの続き、待ってましたよ!
新登場のテイマっ子、テルを中心にしたシーンでしたね。
なるほど、モンスターを支配下に置くためにはあんな風なんだなぁ、と個人的には意外なテイマのワンシーンでもありました。
狼をPETにしたことはありますが、そうそう、この食いつき多段攻撃足止め(?)がイイんですよね(笑)
テルのお陰で村人も救われ、ジェシたちも一息ついたといったところですが…これで終わったのかは謎ですね。
続きはゆっくりで構いません。お待ちしています。

>509さん
初めまして。投稿ありがとうございます。って別にここの管理人とかじゃないですが(;´Д`A
これまた現実世界と密接すぎるほど密接に繋がったRS的なお話…。
「能力者」と呼ばれる者が敏捷や知恵が3倍あるという設定は面白そうです。そして悪の能力者も。
そしたら運が通常の3倍ある人は宝くじなんか大当たりなんだろうな〜…っと、妄想すいません!
浩助の持つ能力とは、そして同じクラスになってしまった悪の能力者とは。
続きを是非ともお待ちしています!

>之神さん
ひな祭り短編、ありがとうございました!
華やかなイメージのひな祭りがこのような霊的なお話になるとは思いもしませんでしたよ(;・∀・)
でも、人形というと怖い話も多いものですしね。長い年月が経った人形には意思が宿るというのも良く聞く話です。
もうミカと徹は自他共に認めるラブラブカップルですね(*´д`*) ご馳走様!
そしてなんと、キャラ構想がまだあるんですか(笑) 各キャラの登場、そして本編の続き。楽しみにしています!

516名無しさん:2008/03/04(火) 17:55:50 ID:g1Dwsz960
入学してから約2ヶ月が経った。みんな学校に慣れてきたようで腰パンやワイシャツのはみ出ているのがちらほら見られた。
浩助のクラスは今日は体育の授業がある。バスケの試合をやる予定だ。
3時限目の終わりのチャイムが鳴ると男女それぞれ着替える場所へ移動した。
「やったな、浩助!とうとうバスケの試合だってよ」
体操着の入った袋を逆さまにして揺さぶりながら慎二が言った。
「浩助…?」
慎二が言葉を続けた。浩助はボーっとしていて、慎二の言葉に反応しなかったからだ。
「え?」
「え?じゃねーよ。どうしたんだよボーっとして」
「あいや、なんでもない。ちょっと怪しいやつがいてな」
右手で後頭部を掻きながら、目でその人物をさした。すぐに慎二がその目線の先を辿った。
「アイツか?ヒョロヒョロだし、特に悪そうには見えないぞ」
「ああいう奴ほど、心の底にバケモンを飼ってるってもんさ。悪かはどうあれ、あいつが能力者なのは間違いなさそうだ。」
慎二は首を傾げていたが、ニヤニヤしながら返した。
「そうかなぁ…。でも、あんな奴が悪能力者だったら俺でも倒せそうだぜ」
「笑ってられるのも今のうちだぞ。まあ、どんな能力か楽しみだな…」
二人とも着替えが終わり、体育館へ向かった。

「じゃあ、この前決めたチームで試合をするぞ!覚えているな!?まずはAチームとBチームだ。すぐに準備しろ」
体育の教師が大声をあげて説明した。Aチームは浩助と慎二のチームだった。クラスメイトたちが準備に取り掛かっているとき、慎二が浩助に声をかけた。
「おい、同じチームにさっきのヒョロヒョロがいるぞ」
「わかってる。そんなことより四条さん、体操着でも可愛いなァ…。あ、今こっち見た!?」
慎二は呆れた顔をして、試合で運ぶボールを取りにいった。
「おい、旭谷!ちゃんと準備せんか!」
「は〜い」
浩助だけ、体育の教師から注意された。その不満げな顔を遠くから眺めていた慎二が笑った。
「気付いてたな、このヤロウ…」
「そう怒るなって、プレーに支障をきたすぜ」
そんなやり取りをしているうちに、試合の準備が整った。
「では、始め!」
教師がボールを真上に投げたと同時に開始のサイレンが鳴り響いた。

試合の前半が終わり、休憩時間になった。勝負はついたも同然だった。圧倒的点差でAチームがリードしていた。
「くそ、なんだよ。あいつのジャンプ…高すぎる!」
相手チームの選手がボールを叩きつけながら叫んだ。
「ははは、敏捷の能力を得た浩助は誰も止められん!」
慎二が偉そうに返した。もちろん慎二の言葉の意味は相手チームには理解できなかった。
「おい、あんまり大声で言うな。ヒョロヒョロにバレんだろ」
慎二の背後から小さい声で浩助が呼びかけた。そのとき、浩助の耳に聞きなれない口調の声が入った。
「どうもこんにちは、三井です。あなた能力者なんですね。」
浩助は声の主の方をみた。声の主は不適な笑みを浮かべた少年で、さっき話していたヒョロヒョロだった。
「知ってるのか。ていうか、お前もそうなんだろ」
浩助は若干戦闘態勢に構えて返した。
「ああ、もう知っていたんですか。ただ、僕は悪ですけどね…」
三井の顔がさらにニヤついた。
「この学校の悪能力者ってのはお前のことか…」
「いやだなぁ、僕一人だけみたいな言い方…しないでくださいよ」
話し終えた瞬間、体育館に雷鳴が響いた。クラスメイト達は叫んだり、耳を塞いだりしていた。
雷鳴の後、次々に浩助のそばにいたクラスメイトたちが倒れた。もちろん慎二も倒れた。
浩助は片足だけ跪いて、三井を睨み付けた。
「いきなり何しやがる。知識か…」
「こんなの序の口ですよ。バスケでは勝てても、僕の魔法には誰も勝てません。」
浩助は地面についた手を握り締めた。

みんあ、しょうせつ書くのうまいんだなあ。ストーリーもこってるだなあ。
おれの読んでくれてありがと。みんあよろしくね。

517柚子:2008/03/05(水) 01:02:41 ID:Wj6da..U0
1.>>324-331 2.>>373-376 3.>>434-438 4.>>449-451

『Who am I...?』

古都を出ると、視界いっぱいに大自然が広がった。
「どうだ、ミシェリー」
「初めての外の世界……すごく大きくて、すごく綺麗……」
誰でも初めての外側の世界には感動するという。もちろん、ミシェリーも例外ではないようだ。
しかしその美しさとは裏腹に、そこには様々な危険が潜んでいるのだ。
「そういえばミシェリー、前に自分が田舎娘だと言っていたが出身は古都じゃないのか?」
イリーナの質問に、ミシェリーはしばらく考え込むように黙り込んだ。
「よく分からない。だけど、ここではない気がするの。なんとなくだけど……」
「そうか。でも、そう考えると何で古都に居たかがよく分からないな。記憶があるのは古都に居る所からなんだろ?」
「そうだよ」
今度はイリーナが考え込む番だった。
「でも、記憶という物は戻る物だ。この仕事が終わったら、じっくりとお母さんを探そう」
「ありがとう……」
イリーナが優しく少女の頭を撫でてやると、ミシェリーは少し涙を浮かべながら微笑んだ。
「そろそろだ」
ルイスの指摘通り、3人を乗せるカーペットは川の上に架る橋に差し迫っていた。
その橋を越えたら、後は出迎える木々の中を通り目的地の森へ一直線で着く。
カーペットは森の入り口で止まった。
「ここからは徒歩だ」
イリーナの指示で、ルイスとミシェリーはてきぱきと動く。
2度の確認を終え、3人は森に踏み入った。

「うえ、たくさん居るなー」
それが第一声だった。
森に入るや否や、大量の蟲型モンスターが3人を出迎えた。
しかし、攻撃は仕掛けてこない。
蟲達にも分かるのだ。相手と己との絶対的な差が。
そういった直感は、人間より動物やモンスター達の方が高い。
「気持ち悪いよう……」
「はは、ミシェリーも女の子か。女の子ってのは虫が嫌いって決まっているからな」
「イリーナも女の子じゃないの?」
その純粋な問掛けに、ルイスが小さく笑った。
イリーナはとりあえずルイスを睨んでおき、ミシェリーの問いに答える。
「女の子かどうかは分からないけど、こういう仕事をしていると慣れるんだ」
「へえー、イリーナってすごいんだね」
尊敬の眼差しに、イリーナは眩しさのあまり目を逸らした。
それから一行は森の奥へと進んでいく。
しかし、どこもかしこも蟲でいっぱいだった。
「本当に大量発生しているな。次からは森以外の依頼を受けよう」
「俺はこちらの方が落ち着く」
「動物寄りの人間は巣へ帰れよ。それよりどうする、これは繁殖している元の巣へ直接攻撃する他なさそうだが」
「それしか無いだろうな」
一瞬にして意見が合致し、3人は森の最深部にある巣へ向かうことになった。
何より、無駄に攻撃し、数を減らし過ぎてもいけない。
それは狩る者の、自然に生きる者のルールだ。
歩いている途中、ふとイリーナが足を止める。
「ミシェリー、ここから先は私達の世界だ。あまり気持ち良い物じゃない。出来れば、目を瞑っていてくれ」
「分かった」
イリーナが言いたい事を、ミシェリーも察したようだ。
意思も交した所で、3人はいよいよ森の最深部へと踏み込んだ。

518柚子:2008/03/05(水) 01:04:16 ID:Wj6da..U0
3人の目に飛込んだ光景は、余りにも想像を逸脱していた。
「まじかよ……」
イリーナが顔を引き吊らせ、ミシェリーが恐怖し、ルイスが闘争の予感に奮起する。
3人の前には、大量の蟲と、それと比べ物にならない程の巨大な蟲型モンスターが立ちはだかっていた。
「よりにもよって森の主とはな……クリーパーって奴か?」
「らしいな。噂上でしか聞いたこともないが。中々楽しめそうだ」
早くも剣を構えるルイスの後ろで、イリーナは怖がるミシェリーを抱き寄せる。
「どちらにしろアレと闘うのは避けられないか。くそ、あのおっさん後で報酬を数倍にしてやる!」
「俺はこのデカいのとやる。貴様は周りの雑魚をやれ!」
そう言い、ルイスが突進を開始する。
踏み込みだけで一気に距離を詰め、敵に感付かれる前に間合いに入る。
その時だった。森の主が侵入者に気づき、その巨大な口が開かれる。
そこから、超音波とも言える不快な音が発せられた。
「ぐっ――――」
ルイスが思わず減速する。
巨大過ぎる空気の振動は、凶器として人体に干渉出来るのだ。
更に、常人の数倍もの聴覚を持つルイスにとってこれはかなりの痛手となる。
周りの蟲達もこれに共鳴し、巨大な不協和音は更に威力を増す。

その音を――――より巨大な音で打ち消した。

爆裂音が響く。
それはイリーナが放った難易度2の魔法ファイアーボールだった。
槍の先端から射出された火の弾丸は、1度で10以上の蟲達を蹴散らした。
今とばかりにルイスが疾走し、森の主の懐に飛込む。
反応するより速く、ルイスは大剣で森の主の顔面を薙ぎ払う!
「ぴぎゃあぁあぁあぁあぁ――!」
巨大な苦鳴と共に顔面から噴出した緑色の血潮が、ルイスの全身を汚す。
次の瞬間、ルイスが片膝を着いた。
その大きな隙を狙い、森の主がルイスを踏み潰そうと巨大な体躯を持ち上げる。
数トンの巨大な質量が降り掛る寸前で、ルイスが後方へ跳躍しイリーナの所まで退避した。
「どうしたルイス――」
そこでイリーナの息が止まった。
ルイスの顔はただれていた。顔だけではない。肌が露出している部分全てが溶けていた。
「どうやら奴の血には肌を溶解する程の毒が含まれているようだ。液状ゆえ鎧の中にまで入ってくる。厄介だ」
痛みを感じないのか、それとも闘争による興奮で痛みを忘れているのか、ルイスは獰猛な笑みを浮かべる。
それから赤い液体が入った瓶を取り出し、一気に飲み干した。
すると全身から湯気が立ち昇り、傷が治癒されていく。
「仕方ない、俺が攪乱する。貴様の大型魔術で一気に残滅しろ」
「無理言うな、あんなデカいのを一撃で倒す魔術なんて持って……」
言い切る前にルイスは再び森の主の方へ飛び出した。
イリーナは舌を打ち、腰から尖剣を抜き放つ。もう一方で握る槍を掲げ、杖を2つ構える格好となった。
「くそ、こうなったら物量戦だ!」
イリーナは難易度1、ファイアーボルトを両の杖で発動。更に立て続けで発動し、蟲達に火炎を横殴りの雨の如くぶつける。
その雨の中を、青い閃光が駆け抜ける。
ルイスがクリーパーの脇を疾風の如く疾駆し、走りながら斬りつけた。噴き出す血の飛沫をかわし、再び疾走する。
クリーパーが反撃しようとするが、その速さに翻弄され捉え切れない。
その隙だらけの横面に、無数の炎の弾丸が降り注いだ。
何重もの爆裂の衝撃に、クリーパーの巨体が揺らめく。しかし、それにとどまり、森の主は攻撃対象を貧弱な魔導師へと変えた。

519柚子:2008/03/05(水) 01:05:50 ID:Wj6da..U0
「いかん!」
遠くの方でルイスが急停止し、足止めをするためにクリーパーへ接近する。
しかし、大量の蟲共が道を塞ぎ、逆に足止めされてしまう。
「掴まれ、ミシェリー!」
イリーナが大声を上げ、ミシェリーに腕を掴ませる。そして、安全な場所へ避難すべく走り出した。
しかし、足に違和感を覚えると共にイリーナの足が止まる。
イリーナは目を落とし、足につかえている物を見る。
「つ、土!?」
果たしてイリーナの足を止める物は隆起した土だった。
それは難易度1、ロックバイディングの束縛魔法による物だ。クリーパーはただ巨大なだけでなく、土系統の魔法も使えたのか。
「くそ、こんな細かい芸も出来たのかよ!」
イリーナは必死にもがくが、土の檻は中々外れない。
そうしている間に、既にクリーパーはイリーナ達を捉えていた。
轟音を撒き散らし、クリーパーが突進を開始する。木々や蟲達を蹴散らしながら、巨体がイリーナ達に迫る。
「ミシェリー逃げろ!」
腕にしがみつくミシェリーを、イリーナは思い切り押し飛ばし安全な所まで転がす。
もう片方の腕を縛られた左足に向け、イリーナは爆裂魔術を発動した。
その衝撃で足に絡まった土が弾ける。そして解放されると同時に爆風を利用し、横跳びで突進をかわす。
そのすぐ脇を、巨大な質量が走り抜けていった。
「ぐっ……」
「大丈夫、イリーナ!」
ミシェリーが駆け寄り、イリーナの腕を握る。そこである事に気づき、ミシェリーは小さな悲鳴を上げた。
「イリーナ! その足……」
ミシェリーが泣きそうな表情でイリーナを見つめる。
イリーナの足は、爆裂によって肉を裂かれ、白い骨が見える程の大怪我だった。
「悪いが肩を貸してくれないか、ミシェリー」
それでも、ミシェリーの肩を借りイリーナは立ち上がった。
激痛で視界が深紅に染まる。
このような体験は何度もあるが、やはり慣れる物ではない。
イリーナは内ポケットからポーションをいくつも取り出し、それらを飲み干した。
傷が癒えるが、回復量が圧倒的に足りず気休め程度にしかならない。
「もう大丈夫だ。耐えられない痛みから、発狂しそうな痛み程度には落ちたから」
気の効いた冗談を言う余裕さえ、もはや残されていなかった。
遅れて、他の蟲共を残滅し終わったルイスがイリーナ達の元へ駆け付ける。
「ルイス、一旦引くぞ。巣だけ破壊出来れば十分だ」
「それも面倒だな。どうやるのだ」
「私とミシェリーを抱き上げろ。私が砲台になる」
ルイスはそれに従い、大剣を背中のホルダーに納剣すると、イリーナとミシェリーをその逞しい両腕で抱える。
「変な所触るなよ」
「当たり前だ。来るぞ」
ルイスが囁き、注意を促す。
遠くから轟音が近付いてくる。森の主は再び突進を開始していた。
しかし、その轟音が突然止む。その瞬間、3人の頭上に巨大な影が現れた。
「上だ!」
ルイスが跳躍し、巨大質量をかわす。
クリーパーが着地した地面は、強大なエネルギーによってクレーター状に穿たれた。
更に土魔法の追い討ちが襲うが、それをルイスは軽快な身のこなしで避ける。
四方向からの攻撃を飛翔してかわすと、クリーパーの頭上に躍り出た。
そこでイリーナがファイアーボールを発動した。5つの球が1つに収束され、巨大な火の球を形成する。
それをクリーパーの顔面目掛けて放った。
火球は見事に命中し、そのままクリーパーの全身の8分の1を消失させた。
しかし、一撃で仕留めなければ圧倒的な魔力によって復元されてしまう。
「切りがない。ルイス、巣へ急げ!」
「ああ」
落ち着き払った声色で返し、ルイスはクリーパーの上に着地。
続けて飛翔。蟲共に何重にも守られている巣の上空へと踊り出た。
「いっけぇええ!」
イリーナは己の持つ最大火力の魔術を唱えた。
難易度4、ファイアーストーム。火と風の両属性であるこの魔術は、超高熱の炎の嵐を生み出しあらゆる物質を燃やし尽す。
炎の嵐は無数の蟲共を巻き込み、文字通り巣を焼失させた。
「よし!」
歓声を上げ、3人は着地する。その衝撃で、イリーナに再び激痛が走る。
「お前、わざとだろ?」
イリーナが、涙目になりながらルイスを睨みつける。
「半分な」
「お、鬼め!」
その時、そんなやりとりを掻き消す、激しい轟音が走った。
それは森の主の怒りの咆哮だった。

520柚子:2008/03/05(水) 01:07:30 ID:Wj6da..U0
あまりの衝撃に、3人は思わず耳を塞ぐ。
「に、逃げるぞ!」
イリーナ達が出口へ走り出そうとした刹那、そこが巨大な地面の隆起に塞がれた。
「出口が……」
「どうやらこれを片付けなければいけないようだな」
ルイスが冷静に、苦渋の判断を下す。
「イリーナ、何か策は」
ルイスが横目でイリーナを覗く。イリーナは激痛で揺れる脳で、必死に生き残る術を検索していた。
――――あった。イリーナの瞳に閃きの光が灯る。
「ルイス、お前は魔力を溜めていろ、通常のじゃなくお前“独自”のだ。ミシェリー、お前は下がれ。前方は任せろ」
各自に命令すると、イリーナは外套のポケットに手を突き入れた。
「成功する可能性は?」
「良くて半分。失敗したと分かったらミシェリーを守ってくれ」
覚悟を決め、イリーナと森の主が対峙する。
そして、イリーナは突き入れた手を抜く。その指には、いくつかの魔石が挟まれていた。
イリーナがその魔石に魔力を注ぐと、それらは虹色に輝いた。
「来るぞ、イリーナ!」
ルイスが叫ぶ。
クリーパーが巨体を揺らしながら猛進を開始した。それをイリーナ達は真正面から迎える。
イリーナは構え、タイミングを見計らう。
焦り過ぎて早まってはいけない。じっくりと引き、間合いに入れるのだ。
その一瞬の時間は……。
「今だ!」
イリーナが叫び、同時に左手に握る3つの石を投擲する。
放たれた魔石は上空で弾けると、空に魔法陣を描いた。
イリーナが用いた術は、いわゆるインスタント魔法と言われる物であった。
それは特定の原石や宝石に魔術を籠める術の名称で、その石を放てば、誰でも容易に魔術行使を行うことが出来る。
しかし欠点として、籠められる神秘は1個につき1つ限りの上、魔石の質によって籠められる魔術のランクも変わる。
更に回数まで制限されていて、使い時はよく考えなければいけない。
上空に描かれた魔法陣から、無数の黒い矛が放たれた。
イリーナが選んだ魔術は、地獄の矛と呼ばれる、反撃用の下位魔術だった。
それを3連。無数の黒い矛がクリーパーの巨体に殺到する。
矛はクリーパーを貫き、緑の飛沫を上げさせる。すぐに傷が修復されるが、刺さったままの矛が治癒を妨害する。
しかし、それだけでは当然クリーパーの突進を止めることなど出来ない。
「まだまだ!」
続けて、イリーナがもう半分の魔石を投擲した。
同じように魔法陣が描かれ、籠められた神秘が発動する。
瞬間、3条の光の鎖が現れ、クリーパーの体を拘束した。クリーパーが抵抗し、力と力が拮抗する。
「まだだ!」
更にイリーナが外套から魔石を取り出し、一気にそれらを投げ上げる。
それは全て同じ、ホールドモンスターの魔術。何条もの光の鎖が、次々と森の主へと畳み掛ける。
何重もの鎖が巨体を拘束し、遂にクリーパーは力負けした。
「今だ、ルイス!」
イリーナの後方に控えていたルイスが、溜めていた魔力を一気に解放し、魔術を発動する。
それは武器に魔力を付与するエンチャント魔法。
それをルイスの魔力の属性である“雷”で発動し、剣に籠める。
雷の力を帯びた剣をルイスは投擲した。小さな放物線を描きながら、ルイスの大剣が宙を舞う。
それは見事に森の主の頭上に突き刺さった。
その瞬間、雷の力が本領発揮する。
体内の血流にまで達した雷を帯びた大剣が、クリーパーの血に反応し、凄まじい雷撃を起こした。
「ぴぎぃいぃいぃいぃいぃいぃいぃいぃいぃ――――!」
口から血反吐をこぼしながら、クリーパーが絶叫を上げる。
無理もない、全身の血潮が雷によって沸騰したのだから。
「更に!」
イリーナが銀の槍を掲げ、再びファイアーストームを発動する。
超高熱の炎がクリーパーの顔面を消し飛ばし、更に尾の方までを炎に包む。
超強力な大打撃を受け、遂に森の主は活動を停止した。

521柚子:2008/03/05(水) 01:08:20 ID:Wj6da..U0
「終わったみたいだな」
「ああ」
イリーナは安心したように息を吐くと、そのまま後方に傾いた。
倒れる所を、ルイスの逞しい腕によって支えられる。
「イリーナ!」
泣き声にも似た声を上げ、ミシェリーが駆け寄る。
その頭を、ルイスに支えられながら撫でた。
「怖かっただろ? 悪い事をしたな……」
「それよりイリーナの方が!」
言葉に詰まり、ミシェリーがぐずる。
「ミシェリーは優しい子だな。私は大丈夫だよ、こんなの日常茶飯事だ」
「そうだな、この程度で倒れる貴様が貧弱なだけだ」
2人の間にルイスの冷酷な言葉の刃が突き刺さる。
「人間らしいと言えよ。正直に言っていいんだぞ、俺は人間ではありませんでした、って」
「人に支えてもらっておいてそれか」
ルイスがイリーナを支える腕を離す。均衡を失って倒れる体をミシェリーが受け止めた。
「危ねーな!」
「ふん、帰るぞ」
ルイスが踵を返し、空いた出口に向かって歩き出す。ミシェリーに支えられながらイリーナが続く。
その時、微かにだが、イリーナは後方に何者かの視線を感じた。
はっとして振り向くが、当然誰もいない。
「なあルイス、今誰かの気配を感じなかったか?」
「いいや。貴様が感じて俺が感じない筈がない。気のせいだ」
きっぱりと断言し、ルイスは更に進んでいく。
その足がふと止まる。ルイスは立ち止まると辺りを見渡し始めた。
「どうした?」
「いや、感じるぞ。何か……」
その言葉を断ち切るように、3人の後方に巨大な何かが落ちた。
それを見て、3人の表情が絶望にも似た色に変わった。
「嘘だろ!」
3人の前に立ちはだかる物、それは巨大なクモだった。

522柚子:2008/03/05(水) 01:10:03 ID:Wj6da..U0
「どうするイリーナ、道具は全て使い切ったぞ」
楽な依頼と見栄を切った事がこんな所で裏目に出る。
2人は道具を全て使い切り、更に加えて体力の消耗にイリーナの負傷と、状況は最悪だった。
「ミシェリー、離れろ!」
ミシェリーを後ろに回し、槍を支えにして何とかイリーナは自立する。
「貴様はもう役に立たん。俺1人でやる」
ルイスが剣を抜き、巨大グモと対峙する。
「正気で言っているのか? それにこいつの魔力はさっきのクリーパー以上だぞ」
「知っている」
目の前の巨大グモは、魔力の強さだけならクリーパーより1回りは高い。
それでも、生き残りたいなら戦うしかなかった。例え絶望的な状況下でも。
突然、巨大グモが口腔から白く太い糸を吐き出した。ルイスはそれを大剣で受け止める。
白い糸は剣に絡まり、ルイスから自由を奪う。
「ぬ……」
巨大な力で引かれ、徐々にルイスが引かれていく。
イリーナは尖剣を抜剣し、難易度3、ファイアーエンチャントを内側へ発動する。
加熱された刀身が赤く染まり、その熱せられた剣で、熱に弱いクモの糸を断ち切った。
「ぐっ……」
足の激痛でイリーナが膝を折る。
その好機を巨大グモが逃す筈がない。獲物を狩るような動作で、巨大グモがイリーナ達に向かって猛進を開始した。
ルイスが飛び出し、イリーナの前に立ちはだかる。
しかし、いかにルイスと言えどあれ程の巨大質量を受け止められる筈がない。まず間違いなく押し潰されるだろう。
「ルイス、ミシェリーを連れて逃げろ!」
「うるさい。あれくらい止める」
ルイスが難易度1、マッスルインフレーションを発動。各筋肉が限界まで強化され、腕や足が膨張する。
しかし、そうしたところで結果は変わらない。
イリーナは踏み潰される瞬間を、その時まで待った。

――――時間が、止まる。

いや、実際には時間はしっかりと動いている。
止まった物は突進をしていた巨大グモだ。
イリーナは何が起こったのか一瞬理解出来なかった。ルイスも同じく、不可解な表情を浮かべている。
しばらくしてから、巨大グモは恐怖により立ち止まったのだと理解した。
何故なら、空間を圧倒するほどの超巨大な魔力が立ち込めていたからだ。
むせる程の魔力が、空間を満たす。
しかし、イリーナはこの魔力がどこから現れたのか分からなかった。
いや、知らない筈がない。必死で知らないふりをしているだけだ。今現在も。
その事実を否定しているだけで、本当は知っている。
そう。イリーナは、この超巨大な魔力を己のすぐ背後から感じていた。
「ミシェリー……?」
イリーナが、呟く。
イリーナの背後にいるミシェリーは、イリーナの知っているミシェリーとは全くの別人だった。
ミシェリーが俯いていた顔を上げる。そして、ミシェリーは“笑った”。
「ケケッ――――」
その刹那、瞬間移動したかと思える程の速さでミシェリーは巨大グモへ疾駆した。
反応など出来ず、巨大グモは立ち呆けたままだ。
ミシェリーは巨大グモを飛び越え、その向こうの地面に着地する。
その瞬間、遅れて巨大グモの背中から血流が滝のように噴き出した。
「ケケッ」
ミシェリーの左腕が隆起する。それは別人の腕のように膨れ上がり、更に毛が生じ、爪が鋭く伸びる。
それに連れて、魔力の重圧も密度を増した。
傷を修復した巨大グモが攻撃対象をミシェリーに変える。そして、恐怖を押し殺して突進した。
生き残りたいのならそうするしかない。
ミシェリーは動く様子もなく、ただ左腕をクモに向ける。すると、ミシェリーの掌に巨大な火の球が形成された。
それを放つ。火の球は巨大グモの右側に当たり、右半身を消し飛ばす。
均衡を崩した巨大グモが目標を失い、ミシェリーの脇の木々に衝突した。
それでも、魔力ですぐに修復される。
しかしそれは苦しむ時間を増やすだけにしかならなかった。
ミシェリーの左手が巨大グモに向けられる。
その瞬間、巨大グモの全身がビクリと痙攣した。必死に抵抗するが、すぐに固定される。
それが、巨大グモが己の意思で動いた最後の行動になった。

523柚子:2008/03/05(水) 01:11:09 ID:Wj6da..U0
「ケケッ」
ミシェリーが、開いていた拳を握り締めた。
すると、再び巨大グモの巨体が痙攣し、激しく動き始める。
イリーナ達は信じられない光景を見る事となった。
「なんだよ、これ。これじゃまるで……」
ただの子供の遊びではないか。
巨大グモは、急に自らを食い始めた。聞かなくても分かる。
これは操られているのだ。
「この技、ディスプレイメントか? それにしてはミシェリーの方は意識があるように見えるが」
「ああ、ディスプレイメントは相手の精神を己の精神で乗っとる技だ。だがこれは違う」
ミシェリーは巨大グモを操作し、玩具にしていた。
決してすぐには殺さず、じっくり、より残酷に、より残虐に殺す。
しかし次第に飽きたのか、ミシェリーは巨大グモを固定させたまま止めた。
そして、左腕に先程の倍以上の大きさの火の球を形成する。
その半分で右半身。ならその倍なら……。
ミシェリーが火球を放つ。火の球は一直線に巨大グモに向かい、一瞬にしてその巨体を蒸発させた。
「ケケケケッ! ケケケケケケッ!」
ミシェリーが謎の奇声を上げる。それは笑い声のようにも聞こえた。
やがて笑い声がプツリと途絶え、ミシェリーはその場に倒れた。
その瞬間、空間を占めていた魔力がみるみると退いていく。
イリーナは動くことが出来なかった。ルイスもまた、動きを完全に停止したままだった。
この空間には、立ち尽くす2人の男女と倒れる少女が存在するだけだった。

524柚子:2008/03/05(水) 01:28:50 ID:Wj6da..U0
こんばんは。少し遅れてしまいました、すいません。
今回は初の長い戦闘。どうやら自分にはこの長さが限界のようです。

>68hさん
いえ、絵など描けません……。
昔1度描こうと思い立ちましたが即刻挫折しました。
絵が描ける人が羨ましいです。

>R310さん
初めまして。楽しく読ませていただきました。
なるほど、ミニペットですか。
長い間RSから遠ざかっているもので初めてその存在を知りました。
あっさり騙されたブルーノ君、ガッポリ作戦成功するのでしょうか。
後編もお待ちしております。

>FATさん
ニヤニヤしながら読ませていただきました。
魔導師じいちゃんにあっさりやられた変態2人。
マ、マリス……これは恥ずかしい。
このままだと本当に殺されかねない勢いですね、2人の無事を祈りつつ、続きをお待ちしております。

525◇68hJrjtY:2008/03/05(水) 07:37:02 ID:LLGcTyJI0
>516さん
一見するとそんなでもなさそうな人が実は…浩助君が敏捷ならヒョロヒョロ三井君が知識。
三井君の言葉はまだ他にもこの学校に悪能力者がいるような言いぶりですね。
でもこんなして魔法みたいなのバンバン打たれたら恐ろしい。。知識vs敏捷、どうなるんでしょうか。
続きお待ちしています。

>柚子さん
戦闘シーンもさることながら、ミシェリーとウルフマンの繋がりがついに見えましたね。
まずは今回のクリーパーと蜘蛛の二連戦…しかしこうして見ると難易度1、2クラスのスキルでも結構怖いですよね。
ロックバウンディングとかはGvでも使われるとは聞きますが、撤退する瞬間に使われると実に厄介。
柚子さんオリジナルな魔石での魔法行使も面白かったです。帰還の魔石みたいな感じでRSでも実際欲しいですね、コレ。
ミシェリーがウルフマン(マン、でいいのか(笑))だったとすると、以前出てきた軍関係者との繋がりも気になってきますね。
続きの方、期待しています。

526ウィーナ:2008/03/05(水) 08:35:50 ID:CsB/nrlQ0
「………」
「……クッ」

狭く、暗いある家の一角。
2人の少女が睨み合っていた。
東方、黒頭巾少女。
西方、ツインテールガール。

「貴方がそんな腹黒いとは知らなかったですよ」

睨み合っていた2人の沈黙を切り裂いたのは黒頭巾の少女…
ニナ=ハィタム

「ふーんっ
「ニナちゃんには負けないよ?」

そして、ツインテールガール、メアリーの右手がすっとニナの前に持っていかれる。

「くっ…」

ニナは少し声を漏らすと、自分の両手を添えてある"何か"をさっと動かす。

「あーずるい!!!」

メアリーは無理やり、元狙っていた"トランプ"を引き抜く。

「やったー!勝ったー」
「………。」

そう、2人がやっていたのはトランプのばば抜き。
2人だけじゃなく、周りにいたアルビと月舞を顔をだす。

「はは、ニナの負けだな」
「じゃあ、ニナ後は頼んだわよ!」

と、1人一言残すと3人は立ち去ってしまった。
その瞬間、広い部屋全体が明るみになる。
そこには、山盛りのゴミと、食器と、洗濯物が天井まで着いていた。

「………。」

ニナは今日のお留守番&家事を任された。

527ウィーナ:2008/03/05(水) 08:36:23 ID:CsB/nrlQ0
成り行きはこうだ。
まず女神様を探すことにした。
だが家には昨夜3人(まあニナも入れておこう。)…4人が盛り上がった形跡がたっぷりと残されていた。
だがそれを片付けてると時間が勿体無い、とのことで何故かトランプはあるらしいので、
ばば抜きで決めることにした。
どうやら月舞とアルビは桁はずれて強く、
メアリーとニナは同じくらい弱かった。
何故1回プレイしただけでそんなことが分かったかって?
…表情に表れるのだ、この2人は。
メアリーはもう一目瞭然。
ばばに手を添えると効果音が聞こえそうなほど笑顔になり、
他のカードだとしょぼくれる。
ニナは無表情だからそんなことないのでは、と思ったが
ばばだと自信に満ち溢れた表情になる。
…だから分かるのだ。
そして、ばばを引き合った末、メアリーは勝利を収めた。


「…私そんな散らかしていないのに」

確かに、ニナは前夜、ぼーと本を読んでいただけで、散らかしていない。
だが、そういう運命なのですよ。

「………。」

しょうがない、と割り切り、ニナは洗濯物を持つ。
と、後ろにいる目つきの悪いファミリアも数枚抱える。

「…ん、ありがと」

どれだけ多いのかというと、洗濯機に8回お世話になるくらい多い。
(洗濯機もあるのか。)
1回分を放り込むと、手馴れた手つきで洗濯機を操作する。

「…懐かしいな。」

と、ニナはぽつりと言う。
食器洗いも、普通の人なら1,2時間はかかるだろうの量を30分で済ませた。
隅まで、きっちりと。
次は客間にでた。
客間はテレビが1台、大きな机などが置いてあり、
もちろんここは昨夜の嵐が過ぎ去った跡形がある…。
ニナは菓子袋をゴミ箱に、ペットボトルは洗って乾かしておき、
掃除機まできちんとかけた。
気がつくと、散らかっていた部屋だけではなく、他の部屋まで掃除をしていた。
そして、すべて終わるとニナは一息吐いた。
時計を見ると、まだ2時回っていないところだった。

「………。」

ニナは客間のソファに座ると、目を瞑った。

528ウィーナ:2008/03/05(水) 08:36:57 ID:CsB/nrlQ0
…自分は家族を、家族に殺された。
その家族は自分を売り払い…それからもう会ってないだろう。
買い取った人は、優しかった。無論、最初だけだ。
ぼろぼろのエプロンと、汚い三角巾を毎日使っていた。
そんな生活はいまのニナの性格に影響しているのだろう。
…誰も信じられない
誰も、家族も、友達も。
もし自分に都合の悪いことが起こったら、問答無用で殺すだろう。
そんなメイドみたいな生活はニナが12の時まで続いた。
同じ1日を繰り返していたある日、主人は突然ニナにこう言い放った。

「どっかいけ。もう帰ってくるな」

と。
ニナは何が起こったのかわからなかったが、少し嬉しかった。
だが、知らなかったのだ…
無職、15歳以下の少年少女は戦いへ連れて行かれる…
もちろん、自由になり1日もたたないうちにニナは捕まった。
そして、殺戮人形へと、成り果てたのだ。
ただ、相手を殺せばいい。
そう軽く見ていた。だけど
初めてもった刀は重く、何度も木刀で殴られた日々。
ずっと使った剣は錆びていき、それと同じくニナの心も黒く、そして硬い扉に閉ざされていった。
そんな抵抗も何もなかった毎日を一転させ、15歳になった夜…
警備員を斬り、逃亡した。
それは自分でも予想外のことだった。
抵抗しなければ、斬らなかったのに。
まあ、そんな考えは最初だけだったのだが。
逃げ出して、人を殺してはご飯にありつく毎日だった。
これではニナは剣士じゃないか、とお思いだろう。
だが、そんな殺戮人形のニナに、ある出会いがあったのだ。
それはニナに最初で最後のぬくもりを与え、そして、
開きかけていたニナの扉をまた、完全に閉ざしてしまった事件でもあった。

529ウィーナ:2008/03/05(水) 08:37:36 ID:CsB/nrlQ0
ニナは毎晩、人を遅いご飯を取得していた。
ある夜、小さな村の、その中でも小さな家に入り込んだ。
小さな家は人がいないもしくは、少ない人数なので殺せる、ということだった。
予想は的中、家の中にはもう70は超えているような老婦人だった。
そして、ニナは刀を突きつけ、

「…命が惜しくばご飯をだせ。」

といった。
いや、言おうとしたのだ。
だけど…

「…まぁ。
「お譲ちゃん、おなか減ってるでしょう…?
「どうぞ、召し上がっていらっしゃいな。」

と言ったのだ。
刀は突きつけたままだ。
何故そんなこと言ったのか、ニナには分からなかった、
ただ、ご飯を食べていただけ。

「私はもう、短い命ですから…
「食べなくても、食べても、死ぬのです。」
「………」

ニナは一言も発せず、そのまま寝る場所までもらった。
久しぶりの布団の感触。
メイドのときも、殺戮人形になってからも、布団なんてもらえなかった。
ふかふかで、そしていい香りのする布団はニナをすぐ眠りへと連れ込んだ。

「…まだ15くらいでしょうのに、おかわいそうだわ…」

老婦人は少しつぶやくと、自分のシワシワとなった手に、ぽつりと涙を落とした。

次の日、ニナはゆっくりと、老婦人に問いかけた。

「なんで、私みたいな人殺し、匿うのです?」
「…あなたは本当はやさしい子。
「よほどつらいことがあったのでしょうね…
「私は、すべて分かりますよ。」

と簡潔に3行で答えた。
その率直で素直な意見は、そのままニナの心にはいっていった。

「ありがとう…」

ニナは剣を捨て、老婦人に抱きついた。
老婦人も、優しくニナを包み込んでいた。

530ウィーナ:2008/03/05(水) 08:38:03 ID:CsB/nrlQ0
ニナに幸せは合わないのだろうか…
ある日、ニナはもう殺戮をやめ、老婦人の手伝いをするようになっていた。
そして、ここがロマ村ということも知った。
老婦人は調教師のすべてを教える人で、
ニナに自分の術を全部教え込んだ。
すぐにファミリアを後ろに引きつれ、ニナは立派なテイマーとなった。
ある日、老婦人のところへ客人がきた。
それが、月舞である。
月舞もテイマーを習いに来たのだ。
久しぶりに同世代の女の子にあったため、ニナは何も話せずにいた。

「ニナちゃん、だっけ?
「私月舞っていうの。
「よかったら、よろしくね!」

と、月舞はニナの手を握り、ぶんぶんとふった。
…どうやら月舞とニナの人格は真逆のようで、
2人とも同じ美であらわせたとしても、
ニナは美しく、月舞は可愛い、となるだろう。
まあ、そんなこんなでニナは初めて友達ができた。

そして、準備の終えた魔は一斉に降りかかってきた。

轟々と燃える家々、皮膚を炙られる嫌な匂い
人々の叫び声、血が流れ出る瞬間
全てが殺戮を繰り返していた日々に重なった。

そして、その魔はこの家までも。

「生き残りはっけーん♪
「私の手柄にして見せるんだから…うふっ」

目の前には、どこからどう見てもかわいらしい少女だった。

「おいで、イクリプス」

そう流麗に呟いた瞬間。
紫色の粒子が少女の右腕へと収斂し、赤い炎を取り巻いた鞭が現れた。

「なん、ですかそれは…」

ニナはその気持ち悪いほど赤い鞭をみ、ぽつりと呟く。

「なにって…ロシペルの足とたっくさんの血を取り巻いた鞭、
「可愛いでしょう?イクリプスっていうの…」

これが敵じゃなかったら、気持ち悪いな馬鹿野郎、とつっこんでやるところだが、
今はそんなことができるわけがない。

「あら…あなた、好み。」

と、少女はニナに近寄る。

「ばっばかですか!?
「私に同姓愛(レズ)の趣味は…」

言い終わる前に、ニナの目の前に鞭が出される。

「貴方みたいな子、泣かしてみたいわ…
「汚い地面に顔をこすり付けてみたい…」

と、気持ちの悪い台詞を言うと、少女は一言、名乗った

「私の名前はフェレス・B・ロイ…
「まあ、名乗ったって、貴方はここで死ぬのだから、意味ないでしょうけ…
「…ッ!?」

いきなり飛んできた笛を見て、左手を押さえながら飛んできた方向をみる。
と、老婦人が怯えながらこちらを見ていた。

「ふっふーん…」

ニナを離し、頭をかく。
そして、素早く老夫婦の前へいく。

「後60年はやかったら相手してあげてもよかったんだけど…なっ」

といいながら老婦人を鞭で締め上げる。
締めるだけでかなりの致命打なのだが、それにプラス、鞭の熱さが。

「おばあさ…っ」
「ふふふ」

苦しむ姿を見、フェレスと名乗った少女は喜ぶ。
その笑顔は悪に満ち溢れていた。

「や…だあああああっ」

叫びも届かず、老婦人は顔が真っ青になり、とうとう…

531ウィーナ:2008/03/05(水) 08:42:50 ID:CsB/nrlQ0
「はーぁ、つまんないの…」

フェレスはそのまま老婦人を投げ飛ばす。

「今度こそ、貴方に接吻してあげるわ」
「そんな…のっ
「死んだって嫌ですね、吐き気がします」

とはき捨てる。
フェレスはニナをまじまじと見る。
そして少し驚くが、その表情はだんだん邪悪な微笑みに変わる。

「久しぶりね、ラミア…
「またお会いできて嬉しいわ」

とフェレスは両手でスカートの裾を掴み、上品に一礼して見せた。

「ラミ、ア?」
「そう、貴方は剥落四魂ラミア・ハィタム博士。
「私と同じ、下界から来たヒトではないモノ。」
「下界、から…」

ニナは言葉を噛み潰すように歯を軋らせる。

「な、なにいってるんですか貴方
「さっぱり理解できませんね。
「…人違いじゃないんですか?」
「人違い?あは、そんなはずない。
「だって、貴方の肩に刻まれている刻印は下界のモノ。
「ほら」

と、魔法のようにニナの肩を出す。
そして、自分の胸に刻まれているモノと比べる。

「………」
「ふふ。まさかこんなところでまた会うとは思わなかったわ。」
「貴方の、仲間なわけですか?私は…」
「いえ…逆ね。敵よ」

というと、右手に握り締めていた鞭を大きく振りかぶって突き出した。
だがその攻撃は棚に直撃した。

「…ふふ、そうでなくちゃ。」

ニナは、月舞の腕に居た。
月舞は笛をフェレスに突き出す。

「月舞…貴方も居たのね
「奇遇…」

と、以前から知り合いであったようににこやかに笑う。

「この子を目覚めさせてはいけない。
「貴方はこの世界と下界を滅ぼすつもり?」
「ええ…そういうつもりだわ」

フェレスは右手の鞭を自分の左足に巻きつける。

「…逃げるよ」

というと、月舞はフェレスにむかってファミリアを送りつける。
フェレスが数秒、ファミリアに気をとられてるうちに月舞とニナはもういなかった。
そして、2人は古都へでた。






最初の投票ミスしました><
ここで前回をだしとこうとおもいます^^;

白い鳥と黄色い花

前回はあげてしまって迷惑おかけしました;
これからは気をつけたいと思うのでまたご指摘等お願いします^^

今気づいたのですが・・・
白猫さんの小説にもメアリーという名前…ありましたよね;
今から変える事も出来ないので…この場で謝罪させていただきます;
ごめんなさいです;
また他の方の小説もきっちり読み、気をつけたいと思います;

プロローグ >>301-303
1話 夢のFelt-tipped marker(サインペン) >>310-312
2話 Disguising as a woman(女装) >>316-320
3話 Facing(対面) >>454-459

そしてこれが4話、イクリプス。

イクリプスはフランス語?だかで炎の怪物とからしいですw
ニナちゃんを襲った悪魔さん、もう薄々誰かわかるんじゃないんでしょうか!
次は古都に逃げた2人がどうなったかお話します☆

ではではヾ(゚ω゚)ノ゛

532ウィーナ:2008/03/05(水) 08:45:52 ID:CsB/nrlQ0
↑コピーでしてしまったのでまたミスしました><
なんかドジだな;
正しくは

白い鳥と黄色い花

前回はあげてしまって迷惑おかけしました;
これからは気をつけたいと思うのでまたご指摘等お願いします^^

今気づいたのですが・・・
白猫さんの小説にもメアリーという名前…ありましたよね;
今から変える事も出来ないので…この場で謝罪させていただきます;
ごめんなさいです;
また他の方の小説もきっちり読み、気をつけたいと思います;

プロローグ >>301-303
1話 夢のFelt-tipped marker(サインペン) >>310-312
2話 Disguising as a woman(女装) >>316-320
3話 Facing(対面) >>454-459
4話 イクリプス >>526-531

です^^;
ご迷惑おかけしました;;

533したらば初心者:2008/03/05(水) 15:44:21 ID:/KDhp5.60
まだ半分も読み終わっていませんが、反応を見る意味で恐る恐る投下。
いいもの読んでて目の肥えた人たちの反応が怖いよぅ;;
名前にあるとおりしたらばかきこむのはこれが初めてなんでルールなどありましたらご教授お願いします><
では投下↓

534したらば初心者:2008/03/05(水) 15:45:10 ID:/KDhp5.60
長編(予定)小説 旅路


(プロローグ)両親からの贈り物




先月、父が死んだ

享年は、48

英雄ではなく

かといって平民でもなく

弱者にあらず

かといって強者にもあらず

自らのため剣を取り

家族でもないもののために、散る

そんな数多のの傭兵の一人にすぎなかったであろう父の葬儀には、それでも数多くの仲間が集まってくれて。

父が死んだという事実より、そのことが私を泣かせた。

あるものは、ギルドの仲間からの寄付金だと言って、葬儀の費用をすべて負担してくれた。

またあるものは、ただ一度ともに戦ったというそれだけで、葬列に参加してくれた。

みな一様に、父の生きざまをほめたたえた。

父は、家ではとても寡黙な男だった。

まるで語るべき言葉を持たぬかのように、戦場と家を渡り歩く。

家族が話しかけても必要最低限の返事しかしないため、幼心に父のことを怖いと感じることも多かった。


そんな父だったから、その戦いを目撃したのは、実は先月、父の命日となるその日が初めてだった。

我が家の位置する街は、農村ガリムト。

農業とエルフたちとの行商で成り立つ、本当に小さな村である。

人口よりも家が多いと揶揄されるこの村で、父はモンスターの財宝目当てで集まる冒険者たちを対象とした傭兵業で生計を立てていた。

報酬など、ほぼゼロに等しい。

モンスターたちの落とす財宝は全て冒険者たちのもので、父への分け前はほんのわずか。

そんな家業だからギルドからお金を借りざるを得ないことも多く、母は常に愚痴をこぼしていた。

だが、その日だけは違った。

きっかけは、一人の冒険者。

いつもと同じ財宝目当てのチンピラまがいの男だったのだが、どうやらしくじったらしいのだ。

らしいというのは、その男が結局森から出てこなかったから想像でしかないのだけど。

確かなのは、手負いのモンスターたちが、村へ押し寄せてきたという事実。

普段は森の外には現れないはずの森のモンスターたちが、追いやられるようにして村に押し寄せてきたのだ。

それはどこの町にもよくあるありふれた光景であっただろうが、守るべき力を持たぬこの街にとっては致命的なことであった。

駆け出しの冒険者はおろか、ある程度熟達した冒険者であっても一撃で屠る凶悪無比なモンスターが、総数十五。

村中の屈強な男達が総出でモンスターの相手をしても、一人、また一人とひざを折っていく。

その中に、父の姿はあった。

自らの不手際が招いた事態に、引けめもあったのだろう。

半ばほどで折れた剣をふるい、剛の獣をさらなる力で押し返す。

その力も、響き渡る咆哮も、そのすべてが普段見る父以上に恐ろしく――だが、不思議と安心することができた。

すべてが終わったのは夜の帳が街に降り始めるころ。

残ったのは、幾重にも重なるモンスターと、無残に引き裂かれた私の父の姿だった。

母は、その姿に何も言わなかった。

普段は感情を表に出す母が、何も言わずにじっと躯を眺める様は、異様で、だが、かすかに残る赤い陽射の中に光る涙は、何かのおとぎ話のように美しく思えた。

そしてその母も、先日後を追うようにして逝った。

医者の診断は病死だけど、人々は父が母を連れていったのだとささやいている。

私は父と母の馴れ初めを知らないし、聞きたいと思ったこともないが、私も、そうであってほしいと思う。

それがどのようなものであれ、その死にざまを美しいと感じたから。

私もそのような死に方をしたいと願ったから。

535したらば初心者:2008/03/05(水) 15:47:18 ID:/KDhp5.60
まだプロローグだけですが……
他の人への感想は読み終わってから><

536◇68hJrjtY:2008/03/05(水) 16:14:49 ID:LLGcTyJI0
>ウィーナさん
ニナと月舞の過去がおぼろげながら、しかし確実に明らかになりましたね。
ポーカーフェイスを隠せない黒頭巾ニナにこんな悲しい過去があったとは。月舞とはある意味姉妹という感じですね。
フェレス・B・ロイという悪魔(?)は二人にとっては仇ということになるのでしょうか。今後また登場しそうでわくわく。
そしてフェレスの語った「下界から来たヒトではないもの」であるニナの実態とは。月舞は知っていそうですが…。
女神探しの傍ら、またまた別の方向へも物語が展開しそうですね。続きお待ちしています!

>したらば初心者さん
おぉ、投稿ありがとうございます!こうして書き手さんが増えていってスレが賑わってくれるのは最高です(*´ェ`*)
傭兵だった父の死をひとつの始まりとして物語がスタートする。主人公の内情が伝わるプロローグですね。
農村ガリムトというとあそこですか…新マップはなかなか訪れる機会が無いのですが、確かに家より人口の方が少なそうですね(苦笑)
父を、そして母を失った主人公がどのような"旅"という物語を始めるのか。
淡々とした語り口調も印象的でした。続きお待ちしています。

537黒頭巾:2008/03/05(水) 17:54:14 ID:fou9k2gM0
こんばんわ、感想投下にきた黒頭巾です…パソ新調したからID変わるのかしら?(゚д゚ノ|


>柚子さん
耳打ちのマジックアイテムな設定が素敵です!
確かに何かアイテムないと…テレパシーとかリトルのマスクエじゃないんだからって話で(笑)
アメリアさんくらいの恐怖政治でないとこの二人を如何こう出来ないのでしょうね。
Gに恥の無い働き、という一言が心に刺さりました…気をつけよう(´д`)
主人公二人の喧嘩する程仲がイイといったカンジが(本人達は否定するでしょうが)好きです。
絨毯相乗りは本当に楽しそうでやってみたいですよ(´▽`)
そして、ミシェリーが!Σ(゚д゚;)
最初の逃げ出したコがミシェリーなのでしょうが…まるで別人格の様な、無邪気に残酷な姿に心が痛みます(;ω;)
ミシェリーが目覚めた時、その記憶があってもなくても…哀しいコトなのでしょうね…。

>68hさん
ありがとうです(ノ▽`*)ペチン
自分のファミのイメージってこうなんですよー(笑)
忠誠を誓うってより、懐いてるイメージなんです(´▽`)
呼称も誰かが言ってたのを素直に覚えたカンジだと思います。
使ってみてるけど、その言葉の意味わかってないみたいな(笑)
ああぁぁぁ、骸骨君可愛いですよねーネクロ持ってないけど!(駄目じゃん)
ネクロスキルのPの上にぴこぴこするのが出るスキル大好きな黒頭巾でしたー(*ノノ)

>ドワーフさん
Σ大作が二つも…読み応えありました(*´д`)ハァハァ
月光の方、キャラクター達が生き生きと人間味(ドワーフ味?)溢れていて、引き込まれました。
その後、ゴーランは如何なったのか…月光があれだけ出回っているので地上で生きる術を見付けたのでしょうね(ノ▽;)
マルチェド、哀しすぎます(;д;)
ずっと独りだった二人ですが、コレからはずっと一緒にいれると考えたら涙が…(ノд;)
カーテシーの授業が最後への伏線だったとは…ドワーフさんの作品は読み終わってからも伏線拾いに読み返す楽しみが(ノ▽`*)ペチン
貴婦人は記憶も感情もなくなりましたが、コレからはマルチェドと一緒に世界を見て回れるのでしょう。

>白猫さん
あれだけの財力のネルの財布を一時的にとは言え空にするだけの酒代((((゚д゚;))))プルプルピルピル
チョコタワーイイなぁチョコタワー…一度でイイから見てみたい食べてみたい。
50人前パフェを集まった35人で食べた私にはハァハァです(ちょ)
因みにカリアスは私も25〜27だと思ってました(ノ▽`*)ペチン
カリアスのスキルにはモーションがないとか…スキルレベルいくつくらいあればイイのか!(笑)
ルフィエがマペットに貴女と言っているのに驚きました…マペットは男だとばかり!読み返さないと(ノ▽`)ペチン
しかし、神格化TUEEEEですらルヴィラィに及ばないなんて…リレッタを思うと、ルゼルさんの退場が切ないです(;д;)
ああぁぁぁ、新傀儡のセシュアってあのセシュアですか!
うわーん、死んでたんですね…人質も同然じゃないですか…おおぉぉぉ…orz

>718さん
のなめちゃんに関しては、実は一年位前にあるテイマさんのPの名前を見たコトからで。
支援の自分はまたnonameかよと思っていたら…「noname」と「naname」一匹ずつの罠な名前だったのですよw
Σななめちゃん!と衝撃を受けた自分は、ソレ以来nonameものなめちゃんと見えて仕方がなく…orz
718さんの描写のサマナバレンタイン、きっと美味しそうで可愛かったんだろうなぁ(*´д`)ハァハァ
そして、718さんのバレンタインのお話はうっかり半泣きになって家族に不振がられました(…)
「申し立て」の被害のレベルといい、舞い上がっていた時の周囲の反応といい…この彼女凄く素敵なキャラです(*ノノ)
718さんの食べ物の描写はやっぱり神ですよぉぉぉ美味しそうだぁぁぁ(涎だらだら)
最後ハッピーエンドになってよかったです…アンハッピーも好物ですがやっぱり幸せになってよかった(ノ▽;)
帰ってきたらいきなりパパになってたWIZですが…きっと優しいからイイパパになるんだろうなぁ(´▽`*)

538黒頭巾:2008/03/05(水) 17:55:21 ID:fou9k2gM0
>之神さん
バレンタインも雛祭もらぶぃぃぃぃ!Σ(*ノノ)
二人のらぶっぷりに見てて恥ずかしくなるくらいです(笑)
雛祭の、彼女って彼女って…きゃー!
じたばたじたばたしてしまいそうになりました(ノ▽`*)ペチン
華やかさとは裏腹に、夜中に見る雛人形ってホラーですからね…あの表情だけでなく、滅びた都を連想させるからというのもあるかもですが。
うぅ、恐くて来年から出せない…ココ数年出してはいませんでしたが(笑)
そして、シリウスのドジっ子っぷりがもうたまりません(*´д`)ハァハァ
天然というか何というか…このうっかりさんめ!(笑)
エリクサー、まるでお宝争奪戦の様な状況ですが…果たして誰が手にするのか、そしてその用途は!
続き楽しみにしておりますねー(*´▽`*)

>FATさん
ちょこらぶ(笑)なWIZさん可愛ぇぇぇ!(*ノノ)
うぅ、カワイソス(´;ω;)…でも、最期は本人幸せだからハッピーエンドなのかなΣ(・д・;三;・д・)
WIZって何か何処か抜けているというか…方向性がずれているイメージです(笑)
普段は冷静なのに、大事なモノとかのコトになると判断を誤るみたいな。
このWIZさん、自分の中のWIZのイメージのまんまでニマニマしちゃいました(*ノノ)
本編はもう新キャラのあの二人(笑)がツボすぎて…!(爆笑)
ドレイツボォォォって打とうとしたら奴隷壺と変換して微妙な気分に(イイから)
武器姫もこうやって途中で形状を変えれると楽しいですねー!
双子の話、この間から読み出して、狼男さん出てきたトコです…もっと読書スペース上げておけばよかった(ノ▽`)ペチン
感想もありがとうです(*ノノ)
勇者様にも二種類いると思うのです…自覚のない勇者様と開き直った勇者様の(どっちが性質が悪いのかは以下略)
仰られる通り、ふぁみりあいーえっくすは就学前くらいの子どものイメージで書きました…そう感じてもらえてよかった(ノ▽`*)ペチン

>スメスメさん
武道さん続きキタ――(*ノノ)――ッ!
アイナーが豹変したのは、何かに憑かれたからなのかソレとも本性だったのか…。
追い詰められたアルくんがとてもカッコイイです…男前な武道家イイッ!(・∀・)
バカにゲンコツって辺りが少年漫画っぽくて素敵です(*ノノ)
13の奥義の一つ、気になって気になって…続き楽しみにしてますね(ノ▽`*)ペチン
亀すぎますが、キャラの名前はまんま職業名やイメージですね、私の場合。
そうだなぁ、たまには名前つけてあげないとなぁ(笑)

>21Rさん
21Rさんの作品は名前もないモブの背後にも人生があるカンジがして、壮大なドラマを見ている様で。
クラウスがミトの初めてのワガママをきいてくれたのが死亡フラグじゃないのを祈ってやみませんガクブル!
そして、やっぱりコレをやらないと。
( ゚∀゚)○彡゜ 幼女!幼女!(ぁ)
戦いの前という今、ミルの忘れ形見の幼女二人に会ったコトが尚更よかったんだと思います…今までうっかり紹介してなかったミトGJ(ぇー)
小さくてもやっぱりミルの弟子ですね…戦いに犠牲はつきものなのはわかっていますが、生き残って欲しいなぁ…orz
もし、はないですが…ソレでも、もし、二人が先の大戦で生き残っていたなら、きっとイイ家族になったんだろうなぁと(;д;)
アレンくんは筋金入りのロリコンでしょうから、きっと娘を溺愛しそうです…娘は嫁には出さん、みたいな(待って)
アデルの封印の件、お見通しなアレンくん流石です…戦局を左右する事項なんでしょうね…うずうず。
クロノクルセイドは気になりつつ読んでなかったので今度読んでみよう(ノ▽`*)ペチン

>ESCADA a.k.a. DIWALIさん
男サマナー!!!!!
サマナは華奢な幼女のイメージがあるので、いかつい男性サマナーという発想はなかったです(笑)
アイテムの名に漢字のものがあるのですもの…東洋系があってもおかしくないですよね。
リトルさんがとても素敵なキャラで!
そうですよね…リトルさんは姫の変身キャラですからお嬢様でしたね(ノ▽`*)ペチン
続き物みたいですので過去ログ漁ってこないとなぁ…(笑)

539黒頭巾:2008/03/05(水) 17:56:54 ID:fou9k2gM0
>ウィーナさん
特別入館証の消された一行が気になって仕方がないのですよ!(笑)
コルって確かに初体験だと酔ったり平衡感覚なくなりそう…一回体験してみたいものです(恐いものみたさに)
メアリーと女神さまの符合の一致が物語の鍵を握りそうですが…お母さまが反応しなかったというコトは別人なんでしょうし…。
女神さまのお兄さん…天使の中でも力はあっても、女神さまの力とはまた違うのですね。
女神さまの力ってどんなのなのでしょう…明かされるのが楽しみです(ノ▽`*)ペチン
しかし、ニナが(月舞も?)地下界の悪魔だったとは!
ニナと老婆のエピソードは胸が暖かくなると同時に、終わりが哀しくて(;д;)
ニナの過去の記憶と食い違うラミアという悪魔の存在の秘密が明かされるのを楽しみにしています。

>メイトリックスさん
傭兵の心得は成る程なぁと思いました。
元々が暗闇に生きるモノと明かりの中で生きる者の違いでしょうか。
暗闇に恐怖を感じる人間には、明かりは生命の綱の様に感じますが…諸刃の剣でもあるのですね。
真面目なシーンなのに、シリスティナのダッシュの描写に笑ってしまいました。
WIZは運動神経がないイメージなので、確かに羨ましがりそう!(笑)
テキストファイルの破損は哀しいですね…私もよく保存忘れたまま閉じてorzになります(;ω;)
うふふ、笑って頂けたようで嬉しいです(ノ▽`*)ペチン
常日頃こんな風に考え(妄想?)ながらプレイしていると、アレな叫びなどを見てもニヨニヨしてしまいます(歪んでる)
テイマのペットはピクミンのイメージが少し…テイムされてー貴女だけにーついていくー♪(ちょ)
例のげぼくさんは、女王様とその下僕のイメージから…色々とわかりにくくてすいません(笑)

>R310さん
ミニペットSSキタ――(゚∀゚)――ッ!!
噂の露店詐欺ですね、コレ…ブルーノくん可哀想に(笑)
初めて見たとは言え、ブルーノくんちょっとうっかりさんで可愛い(´∀`)
節約しなきゃと言っている割に、さくっと2億も出せる辺りが凄い!
お試しに買った風、45Mで散々悩んだ末だった貧乏な自分には考えられないです(笑)
てるみつくんとの命名に盛大に噴きました。
可愛いけど…可愛いけど…!(笑)
怯えたり回ったりする霊形態のミニペットを想像したら萌えました(*ノノ)
実際のゲームでも定位置じゃなくて動けばイイのに!(*´д`)ハァハァ
頑張れブルーノくん…土だからお金ブーンできっとすぐ貯まりますよ!(多分)

>したらば初心者さん
初めまして、私も最近このスレに現れだした者です。
ネタ被りが気になるのでしたら、過去スレを全部出してCtrl+Fで思いつくキーワードで検索してみたら如何でしょう。
私もソレで調べて投下してるので…キーワードの選択を失敗すると乙ります(ノ▽`*)ペチン
本当は読みたい、全部読みたいのですが…モニターで文章を読むのって長ければ長い程、紙媒体よりキツイんですよね…orz
時間をかけてじっくり読む間にスレも伸びるから追いつけない…投稿が多いのは喜ばしいコトですがね(笑)
そして、反応してみます(ノ▽`*)ペチン
タイトルの両親からの贈り物、ソレは想い出や人生観だったのかなと受け止めました。
人生の最期を飾る死に方は、その人にとってとても大事だと思うのです。
Gに借金ばかりしていたのに寄付金が集まったり、参列者が生き様を褒め称えたり…彼女の父は、何処にでもいる、でも平凡であるが故に何処にでもいる訳でもない、立派な人柄の方だったのでしょう。
今後、彼女がどんな人生の旅路を行くのか…。
私も実際のカキコは若葉マークで勉強しながらなので、一緒に頑張りましょうね(*´∀`)ノ

540黒頭巾:2008/03/05(水) 17:57:56 ID:fou9k2gM0
>復讐の女神さん
ボイルくんのナイスキャラぶりが気になって、さくっと検索して全部読ませて頂きました(´∀`)
ゴーイングマイウェイなカンジのボイルくんが素敵です(ノ▽`*)ペチン
そして、そのボイルくんをぺしっと切り捨てるジェシも(笑)
フェリルが冒険者を辞めた理由とジェシのお母さんの亡くなった理由に関わりがありそうだなぁとか勝手に妄想してみたり。
この三人組の漫才の様な関係がたまりません(*ノノ)
狼テイマもイイなぁと思ってしまいました…今度テイムしてみよう(笑)
新登場のテルが村人を導いたとのコトですが、タイミングのよすぎるこの少女との今後如何いった関わりを持っていくのか楽しみにしております。

>509の名無しさん
現実世界に能力値設定を組み込むと敏捷だと運動神経になるのですね。
健康なら風邪ひかない、とかでしょうか(笑)
能力者はそれぞれの能力が三倍ほど↑というコトは、極振りよりバランス型!
ましてや、更に倍の悪の能力者…コレは手強そうです。
コントロール出来ないほどの強大な力…大きすぎる力は身を滅ぼす、ですね。
命中率↑の敏捷物理と絶対命中の知識魔法、不利な気もしますがきっと乗り越えてくれると。
敵は他にもいるといった口振りがガクブルですが…ソレを如何クリアしていくか楽しみにしております(´∀`)


やっと終わった…まさかの4レス分…orz
レス打ってる間に新作が、そのレス打ってる間に以下略…で、二週間かけて書き足し書き足しやっと追い付きました…げふり。
少し目を離すと大変なコトになりますね、このスレ(笑)
課金切れでINが減り、その時間で詰め込みすぎて大変なコトになってますが…消費お許し下さい…orz

541黒頭巾:2008/03/05(水) 18:18:09 ID:fou9k2gM0
そして感想カキコ出来たので剣士モノ投下します(ノ∀`*)ペチン



…この世界で冒険者の道を選んだ人間には、何種類かいる。
例えば、クエストをこなすのが好きだ。
例えば、一人で淡々とソロ狩りをするのが好きだ。
例えば、PTで皆でわいわい狩るのが好きだ。
例えば、Gメンと皆でお喋りをするのが好きだ。
…etcetc…。

…そんな俺は、Gvが好きな一介の剣士だ。
ソレなりに有名な中堅Gに所属する、G内でも中堅レベルの何処にでもいる量産型剣士だ。
この国全体で言えば、レベルも強さも中の中。
最近、俺のGは新秘密実装で上位Gによる後入れTUEEEで空を仰ぐ日々を過ごしている。
今日のGvでも…BISやWIZに烈火粘着されながらの花+心臓雨×数名で火力を一掃された後、烈火切れ支援職を集中砲火で…全滅させられたばかりだった。
「やっぱ花無理ぽ…しかも、今日のはドラツイのドラツイだってさ^p^」
「次回までに90目指しま…ソレでもDXUの神性能には適わないけどさ…orz」
「ウチなんて…アーチなしでも現地90,90あったのに。・゚・(ノд`)・゚・。」
Gv後の反省会、GHではお互いに傷を舐め合う仲間達の姿が。
「あーあ」
伸びをしたアチャがそのまま後ろにぱたりと寝っ転がる…身を包むのは簡素な木鎧だけだってのに危機感がないと言うか何と言うk(ry
「やはり知識範囲皆無は…しんどいですからねぇ」
苦笑したWIZが言う…あぁ、コイツは健康WIZだからメテオとか地震とかねーんだ。
「折角…此処には姫…いるから…知識範囲欲しい…ドラツイとか氷雨とか…」
消え入る様なネクロの言葉に、姫が続けた。
「折角、低下仲間の貴女もいますもの…ね?」
ぼやく俺らに、GMの葡萄農家…じゃなかった、武道家が肩を竦める。
「ま、無い物強請りしても…な。それに…」
言葉を切った彼は、真剣な目で俺らを見回し…こう言ったんだ。
「…俺は、お前ら自身の力を信じてるさ。皆もそうだろう?」
俺らは「もちろん!」と一斉に頷いた。
嗚呼、流石だぜ、武ラザー。


…反省会も終わったので、装備を換えに銀行に向かう。
係員に申請すると、すぐに我が家の口座を開いてくれた。
口座には、剣士装備に必要物資…下の方にはオンナモノの衣装まである。
あ、俺が着るんじゃねぇぞ!
この国の銀行システムは家族共有なんだからな!
最初は面食らったが、暫く共同で使っている内に…何列目から何列目までが自分のスペース、という風な暗黙の了解が家族間で出来ていた。
管轄外の場所を触ってはいけない…すぐに両親からお叱りの連絡が来る。
しかし、たまに俺の空いてるスペースに見知らぬ物が入っているコトがある…今、目に入ったこの真新しい剣みたいに。
如何やら、これらは…職業も性別も年齢も、はたまた名前すらも知らない俺の兄弟が、使ってくれと入れているらしい。
他のスペースに入ってる物が基本的に弓子や姫、ネクロ用品だから…多分、姉貴か妹なんだろうが。
いつものコトかと軽い気持ちでその両手剣を手に取った俺は…うっかり取り落としそうになった。
輝く水色の文字は、[攻撃速度Lv3]…ベースも1.2秒で速度も高補正の神両手剣だった。
俺の心臓がドクドクと凄い音をたてている…今にも口から飛び出しそうだ。
それを抑える様にゴクリと唾を飲み込んだ俺の脳裏に、Gメンの言葉が甦る。

ピッ [> リプレイ
「ウチにも知識範囲欲しいよね…ドラツイとか」

ドラツイとか…ドラツイとか…ドラツイとか…(エコー)
Σ( ゚д゚)ハッ、ついウットリしちまったぜ。
もし俺がドラツイなら…皆の役に立てるだろうか?
そう考えて、無意識にまた喉がゴクリと鳴った。

542黒頭巾:2008/03/05(水) 18:19:38 ID:fou9k2gM0

しかし、ソコで俺の前に現実が立ちはだかる…物理剣士の俺が知識戦士になるには、幻の再振り巻物が必要…という現実だ。
再振り巻物は実家が裕福かつゲームオンという名の秘密結社に所属登録しており、更に課金者という上位称号を持つ家系でしか手に入らない。
寄附の額により、ポタや再振りなどの特殊アイテム…桁外れに効果が高い“世の中を少ーし有利に渡っていけるモノ”が下賜される。
実家からの仕送りが流行りのロトはおろか…かなりの冒険者が持つと言うポタすら

○ございません

な俺には…再振り巻物を手に入れるなど、到底無理な話だ。
そこまで考えて項垂れた俺は、銀行のカウンターに剣を返した。


…装備を整えた俺は、本来の目的だった心臓狩りへと向かった。
目指すは、モリネル外周。
横を通過しただけで「使ってます^^;」なんて耳が来るデフを足早に抜け…鬼の様に強いミイラを振り切ろうと必死に走る。
気を抜くと砂漠のど真ん中に飛ばされるから…注意深く、だ。
砂漠の暑さに喉が嗄れそうになった頃、遠目ですら馬鹿でかく目立つ塔に到着した。
砂漠の太陽から逃れる様に急いで中に入ると、ソコは様々なスキルの音で満ちていた。
「相変わらず混んでんなぁ…」
一つぼやいて、開いている狩場を捜す。
折角用意したタゲ回避指が必要ないくらい、MOBの姿はなく…目につくのは、床に散乱したアイテムとお金だけだった。
右周りに探しても結局狩場は見当たらず、入ってすぐ左側の2匹沸きと右角のリプの合計3匹をちまちま狩る。
余裕で沸き待ちになったが…その間に精神を統一し、流れる汗も拭う。
建物の中なのに暑いのは…燃え盛る火の神獣、サラマンダーの所為だ。
コイツが心臓や油を落とすからな…火抵抗完備でこんな遠くまで来た訳だ。
無課金な上に、運も固定な俺だ…落ちるアイテムなんて、たかが知れてる。
それでも、たまーにだけ出る高額アイテムは鍛冶屋のオッサンに売っぱらう用に懐に仕舞い、油と心臓をひたすら狙う。
やっと落ちたと思ったら80%とか補正乙だった油は即座に使い、目の前の敵目掛け八つ当たり気味に強烈な一撃を放ってやった。
崩れ落ちた敵の足元に転がるのは、目指していた心臓で。
16秒なんて乙補正でも、俺には嬉しかった。
結局、その日の成果は心臓5つに油が3つ…まずまずだった。


…その晩のコト。
俺は、久しぶりに親父の夢を見た。
親父は、身寄りも記憶も所持金も装備も…何もかも持たなかった若葉の俺に、名前を付けて養子にしてくれた恩人だ。
その親父が、泣いていた。
姉妹に何かあったんだろうか…それとも?
焦る俺に、親父は涙を流しながらイキナリ謝りだした。
「我が息子や…今までホンマにすまんかった…俺がニートなばっかりに、お前にキムチTUEEEもさせてやれず…」
いきなり何を言うんだろう…むしろ、ニートの意味も知らねーし、キムチが如何とかそんなの気にしてねぇしな!
止めようとする俺をがっつり無視して、親父が続ける。
「折角DXUも実装されたと言うのに…そんな微妙な装備ではPTにも入り辛かったろう…」
微妙は微妙なりに範囲に盾回しながら適量の釣りもして支援に絡むタゲをデュエで奪いまくるとか頑張ったんだ…それなのにその言い草…orz
てか、DXUなんて100キムチでも装備出来ねぇし!
「お父さんがヒキコモリな所為で…本当にお前にはすまないコトをしたわ…」
いつの間にか隣にいたお袋もお袋で、貰い泣きしてるし。
そんなお袋の背中を摩っていた親父が、いきなり俺の肩を掴んで揺さぶった。
Σ( ゚д゚)ハッ、頬に涙の跡もねーとか…姫でもねぇのに、そんな嘘泣き小芝居いらねーよ!
「だが、もう違うぞ…今月は臨時収入があったから奮発して3000GEMもカミオンさまに貢いだんだ!」
「カミオンさまは貴方に再振り巻物二種セットを授けて下さったのよ!」
ポカ―(゚д゚)―ン。
目が点になる…とは、こんなコトを言うのだろうか?
あの再振り巻物を…それも二つともだって!?
「我が息子よ、花も仕様になったコトだ…コレで、うはwおkww花ドラツイTUEEE!!!うぇうぇwwwしてくれたまえ!」
「期待してるわよ、息子!」
おいおい、待ってくれよ…何だその恥ずかしい注文は!
言いかけた言葉と伸ばした手の届かない距離へと、満面の笑顔を浮かべた両親は鬼の様な速さで走り去っていった…後ろ走りのままで。

「…キモいわぁぁぁ!」
自分の叫び声で目を醒ました俺の枕元には…帰還でも復活でもない巻物が二本。
俺にはソレが…とても輝いて見えたんだ。

543黒頭巾:2008/03/05(水) 18:20:41 ID:fou9k2gM0
…朝食を食べて幾分か落ち着いた俺は、幾度も脳内シュミレーションを繰り返した。
そして、深く息を吸い…遂にスキル再振り巻物を開いた。
まばゆい光と共に巻物が消えると、今までわかっていた筈の大切な何かがこの掌からぽろぽろと零れ落ちていった様な気がした。
使い慣れた盾を放っても、もう俺を護るコトなく地に落ちて悲しげな金属音を響かせるだけだったし…使い慣れた剣を持っても、もう俺の身体は相棒の振り方すら忘れてしまっていた。
それが哀しくない訳じゃなかったけれど…それでも、新たな力を欲したのは俺自身だ。
頭を振って、気持ちを切り替える。
慎重に、慎重に…俺は震える手で、遂にあの蒼い龍と契約を結んだんだ。

後はシュミレーションした通りにスキルも振り、能力も再振りした。
慎重にやり過ぎたのと寝坊した所為で、辺りは既に暗い。
その甲斐あって、スキルも能力もバッチリ理想的だ。
立ちはだかる敵を力ずくで倒してきた俺の自慢の力は無くなったが、代わりに世界の真理に迫る知識を得た。
あの蒼い龍を呼び出す際、この知識はきっと役に立つだろう。
現に、契約したての時は拙かった小さな龍も…再び試しに呼び出すと、立派なバロン髭が生えた貫禄あるナイスミドルになっていたのだから。
「折角だから、決め台詞でも考えておくか」
あーでもないこーでもないと考える内に、暗かった筈の空が明るくなったのだけは…確実に失敗だったが。


…結局、一睡も出来ないままでGvの準備に奔走するコトになってしまった。
先日出した、もう不要になった刃油を剣士仲間やアチャの姐御に渡す。
俺が無課金なのを知ってる仲間達は物資を分けた俺に慌てたけど…蒼い龍を呼び出して見せたら、歓声をあげてくれた。
そして、油のお礼とドラツイデビューのお祝いだと…心臓を分けてくれたんだ。

今日の相手は、少し前にも後入れTUEEEでコテンパンにのしてきたランカーGだった。
目を付けられたのか…今回も後入れだったらしい。
「実家の用事で本来予定していた対戦相手のGMと待ち合わせれなかったから、5分の差ならと先入れしたのが悪かった」
項垂れるGMの肩を、皆でドンマイと叩いて転送フィールドへと向かう。
時間になり魔法陣の輝きが増すと同時に、周りの世界が歪む。
再び目を開けた時には、俺達は屋外にいた。
夜の筈なのに、空は明るい。
一体どんな魔法を使っているのだろうか。
「宜しくお願い致します」
「よろしくです」
と口々に叫べども、返答は対照的で。
「よろwwwww」
「yoro^w^」
相変わらず緑化運動が大好きだなぁと、いっそ感心した。

PTを組み、奇襲避けに移動しながら試合開始を待つ。
試合開始と共に手早く支援をかけて、転送地点に向かうと…案の定、前回同様に奇襲に来たであろう相手がいた。
まだ支援をかけ終わっていない敵BISに、すかさず味方の天使のディスペが飛ぶ。
その天使に向かって、怒りで顔を真っ赤にした敵の剣士が突っ込んで来た。
回されたシマーをあっさり貫通するラグパラに、天使の体力ががっつり削られていく。
戦場の剣劇の中をフルヒが飛び、アスヒが飛ぶ。
敵に突っ込みながら、横目に我らの姫が花をぶん投げるのを見た。
そして、知識範囲はいないと思い込んでいる敵がニヤリと笑っている姿も。
油断している今だ!
俺は、敵陣のド真ん中で虎の子の心臓を使用する。
おっと、如何やって使用するかなんて聞かないでくれよ?
そんなのは、グロすぎて口に出したくもないんだからな(遠い目)
竜の心臓と引き替えに龍を召喚するなんて…何だか運命を感じるぜ。
…なーんて現実逃避がてら自分に酔いしれつつ、俺は叫んだ。
「我が前に立ち塞がる愚かなる者達に、凍える鉄槌を…唸れ、ドラゴン・ツイスt(ry」
俺の精神力によって召喚された、南の海の色よりも綺麗な蒼の龍が立ちはだかる敵に向けてそのあぎとを開いた瞬間…重なる多重音。
聞き慣れた弓矢の音が異様なエコーで響いたのが、俺の最後の記憶。
徹夜で考えた決め台詞も最後まで言えないまま、息も出来ない程の重力に襲われた俺の世界は…暗転した。

544黒頭巾:2008/03/05(水) 18:23:37 ID:fou9k2gM0
永遠とも思える時間の後、再び浮上した俺の意識には…ただ、一文が浮かんだ。

『間違ったフィールドに接ぞk(ry』

その言葉を理解するより早く…次の瞬間には、俺は古都の喧騒の中にいた。
「……は?」
思わず固まる俺に、Gメンが遠いフィールドから声をかけた。
「お帰り。・゚・(ノд`)・゚・。」
「古都乙(´;ω;`)ウッ」
「つ、次があるよ!;w;」
…一瞬遅れて漸く現状を把握した俺、古都\(´∀`)/オワタ
「<!>○○○ バグ放置すんなダメオォォォン!俺の心臓と青POT代返せぇぇぇ!!!」
夜でも明るい古都の空に、俺の神を呪う悲痛な叫びが木霊した。


…何処にでもいる剣士の、何処にでもある話。



自分のメインキャラはWIZなんですけどねヽ(´д`)ノ
誰かのダブスロやビットと自分のテレポが重なると…次の瞬間には画面が暗転するコトが多々…orz
マウスポインタが小さくなる瞬間、嗚呼もう\(´∀`)/オワタと思いマス。
運初期値+G補正だけでコツコツ狩って心臓集めてるのに(´;ω;`)ウッ
ではでは、失礼しましたー(゚д゚ノ|

545之神:2008/03/05(水) 20:01:15 ID:TzzaVSXk0
>>◇68hJrjtYさん
感想どうもです。
そうですねぇ、書き手さんが増えていっているので、以前よりスレの伸びが早いです(´ω`*
最近、むしろ目を通せてない小説もあったり…orz
書き手としてはある意味ライバル(? なので、競争相手が増える事は良いことです。


>>黒頭巾さん

感想ありがとうございます…。
というか再振り巻物ですか…私も以前やりましたが、黒頭巾さんのは笑い要素とゲーム表示要素が多用されててニヤけますw
久々に私も、課金アイテムとかその他アイテムの短編書きたいなぁ…と。

>>したらば初心者さん

傭兵モノ、いいですねぇー。ランサーやアーチャーが連想されがちですが、父が傭兵ってのも味がありますね。
リザレクションなんてありますけど、実際そんなに死は軽くないですからね。
そして長編ワールドへようこそ!(?

それと初心者さんに提案が。しばらく書き込んでいれば初心者で無くなると思うので、改名とか……あ、お節介かなorz

>>ウィーナさん
文体…ステキ(´∀`*

-家族は私を売り払い-というところで、私トコのサマナちゃんですが…被るところがあって、設定に共感できます。
ニナ…ちょっと応援したくなります…。

他にも感想を書きたい方々はいますが、今回はここまでに…。

では引き続き、小説スレをお楽しみ下さい。

546したらば初心者:2008/03/06(木) 13:06:14 ID:/KDhp5.60
まずは謝礼

>◇68hJrjtYさん
お早い感想ありがとうございます。ちなみに当方トランでの狩りなどとてもできる状況ではないため、森のモンスターについては完全な妄想だけです。もちろんあんなマップには縁もゆかりもありません><
口調……維持できるんだろうか;;

>黒頭巾さん
感想ありがとうございます。
そして呼んだので一応こちらからも感想を……再振り巻物を使った剣士(今は戦士)s、ドンマイです><明日は明日の風が吹くってか戦士sみんなこんな性格ならラビットラッシュなんかされた日には……そりゃドラツイなんてうてませんよね;;

>之神さん
感想ありがとうございます!
ってかさっきから感想を乾燥と変換ミス連発する自分のPCに激しく鬱><
名前については……きっと万年初心者です><


なんか激しく叩かれてる感じはない(と信じつつ)今日の分投下しま〜
ところで萌えってなんですか?おいしい?


547したらば初心者:2008/03/06(木) 13:08:26 ID:/KDhp5.60


長編(まだ予定)小説 旅路


(プロローグ)両親からの贈り物>>534


(第一話)出立



農村の朝は早い。
農作物の収穫に出向く農夫たちが起きだすこともあり、森の木々のかげから朝日が昇るころには村のほとんどのものが起きだしてくる。
そして、男たちは朝の仕事のために畑へ出向き、女たちは彼らのための朝食を作る。
だからこの時間、この村で家の外に出ればせわしなく働く男衆と、さまざまなスープや煮物のおいしそうな匂いをそれこそおなかいっぱい堪能できるのだ。
生まれてからずっとかけることなく続いてきたそんな朝の光景も、今日が最後だと思うと少しだけさみしい気がした。

「本当に、行っちまうのかい?」

馬車にまとめた荷物を載せている時、隣の家の窓から声をかけられた。
少し手を止めて振り返ってみると、中年のおばさんが割烹着姿で手を振っている。

「ブレアさん……ええ、もうこの村に私の居場所はありませんから」
「そんな悲しいこと言わないでおくれよ。なんだったらいつまでもいてくれたって……」
「いえ、もう決めてしまったことですから」

この人は、ブレアおばさん。
父の遠縁の親戚にあたるひとで、私と同年代の息子がいたこともあって親しくさせてもらっていた。
具体的な話をすれば、母の葬儀も父の葬儀も、そのほとんどは彼女が段取りをしてくれているし、私が村を出ると言ったとき真っ先に反対したのもこの人なら、その決意がゆるぎないと知って家(これはもちろん私たち家族が今まで暮らしていたもの)を面倒みると言ってくれたのもこのおばさんだった。
私自身はこの家に未練なんかないから売り払ってしまうつもりだったのだけど、おばさんに帰る場所もないと困るからと説得され、結局彼女に預けることとなった。
お金に困っている旨を話した時まっさきに案を出してくれたのも彼女で、我が家はしばらく冒険者たちの仮住まいとして貸し出そうということになった。
その際に出る賃貸料を私の口座に振り込めば、当座の金には困るまいとのことで、その間の世話も彼女がしてくれるのだという。
まあ要するに、世話好きなおばさんなんだと思う。
実際今だって、頼んでもないのに家から出てきて荷物の積み込みを手伝ってくれている。

「……ふぅ。あんた、トッドさんが死んでからだんだん彼に似てきたねぇ」

ただ、しばらくはだまって私の作業を手伝ってくれていたのだけれど、次に口を開いたとき妙なことを口走った。
ちなみにトッドというのは私の父の名前。
聞き流してもよかったのだけど、なんとなく気になって手を止める。
おばさんは、それを見越していたかのように先に手を止めてこちらを見ていた。
その芽がどことなく母の目に似ていて、安心した。

「似てきた……ですか? 自分ではそうは思わないのですが……」
「似てきたともさ。自分にわからないことがあった時に見せるその顔! そっくりそのままじゃないか。この場に鏡がないのが残念なぐらいだよ」
「……はぁ……」

正直、そんなことを言われても困る。
私は女で、父は男だ。
当然顔かたちも、挙動もまるっきり違ったものの筈なのだけど……

「ま、強情張るのもいいけど、途中でのたれ時ぬようなことだけはないようにね。このブレアおばさんが掃除しとくっていってるんだから、裏切るようなまねするんじゃないよ」
「……はい!」
「わかったら手を休めない!ほら、あと少しじゃないか」

ぽん、とお尻をたたかれ、わけのわからないままに再度手を動かし始める。
一体何を言いたかったのだろうとひとしきり考えてみても、やはりわからない。
だが、もしかしたら彼女なりの気遣いだったのだろうか、と。
そんなことを考えると、少しだけ笑みが漏れた。

548したらば初心者:2008/03/06(木) 13:10:14 ID:/KDhp5.60


「それじゃ、気をつけてね」
「故郷に錦を飾っとくれ!」
「馬鹿!負担掛けてどうするんだい!……無事で戻ってくるんだよ。それが私らの一番の望みなんだから」

結局、出発は村のみんな総出での見送りになった。
村を出てのんびりと進んでいく馬車に揺られながら、その一言一言を胸に刻み込んでいく。
ソレム姉さん
ライトおじさん
そしてやはり、ブレアおばさん。
どの人も、私の大切な人。
でもきっと、私は戻らないだろう。
今回の旅路の結末なんてわからないけれど、その終着点はここではない。
包丁ではなく、武器を。
ドレスではなく、鎧を。
手にすると決めたその日から、私の眼はもうずっと遠くを見ていた。
それは、物理的な距離であり、今という時からはかる時間であり、目標とする理想。

私は母のような一途な人にはなれないだろう。
私は父のような生き方はできないだろう。
だが、あの人たちのように生きてみたい。
意味のある生であったと誇ってみたい。

「それで突然家を出るなんて言い出したってわけか、このオタンコナス」
「!?!?!?」

なんて考えていたら、突然どこからともなく声をかけられた。
あわてて声の主を探しても、積み上げた荷物のかげにそれらしい姿は見当たらない。
馬車の周囲にも、人影はおろか隠れるようなところも見つけられない。

「ちょっと!どこ??」
「ん? ああ、そっか、お前からも見えないのか。やっぱ便利だな、これ」

声はすれども姿は見えず、とはこのことだ。
が、声の主が誰かはもう見当が付いている。

549したらば初心者:2008/03/06(木) 13:10:44 ID:/KDhp5.60

「ギール! どこに隠れてるの、出てきなさい!」
「隠れてなんかねぇよ、ずっとお前の前にいるだろうが」

言葉と同時に、空間そのものが小さく歪んだ。
歪みはだんだんと大きくなり、同時に質量や色を持ち始める。
その効果を、私は知っている。

「透化魔法のエンチャント……あんた、それ……」
「へへっいいだろ。結構大変だったんだぜ〜親父とお袋が寝静まってからさ、金庫のかぎ開けて持ち出してきたの。前にも一度見せたよな」

変化が終わったとき、目の前に立っていたのは――やはりというかなんというか、私がよく知る小柄な青年だった。
彼の名は、ギール・アートファイン。
ブレアおばさんの実の息子で、私とは幼いころからの悪友でもある。
そしてその彼が手元に光らせているのが……

「あんた、それ家宝じゃなかったの?」
「ん?いや、だってせっかくの透化エンチャントだぜ?使わなきゃ損じゃん」

透化エンチャントのかけられた、大粒のルビーの指輪。
たしかそれは……ブラーおばさんが結婚するとき夫から渡された大事な指輪の筈だ。
正確な価値は私にもわからないけど、それ一つで家も立つほど価値のある代物だとか……。
それをよくもまぁいけいけしゃあしゃあと……。

「今すぐ返してきなさい!」
「無茶言うな!あのお袋だぞ?お前だって知ってるだろ!前に俺がいたずらしたときどうなったか……今度こそ殺されちまうよ」

ガタン!と音を立てて身を乗り出してきたが、その勢いは最初だけだった。
思い出すにつれ、目をそらし、頭を垂れ、声も先細りに小さくなっていく。
最終的に涙まで流し始めて、追及はそこで断念した。
それもそのはずで、以前彼がこの指輪を持ち出した時のブレアおばさんの怒り様は尋常なものではなかったのだ。
ギールに言い渡された刑は、三日間地下牢に幽閉。
日の光が一切ささず、食料はおろか水の確保さえできない地下牢での幽閉生活は彼の心に大きなトラウマを残したし、同時に村の語り草にもなった。
曰く、「天と地のすべての神にそむいても、ブレアだけは怒らせるな」と。
そんなこともあったわけで、こんな馬鹿な真似はもう二度とするまいと思っていた……私がばかだったらしい。

「ちょっと、ギール……?」
「あ〜〜ってか頼む! 一生のお願い! 炊事だろうが洗濯だろうが何でもすっから、一緒に連れてってくれ! ってか連れてってくれなかったら死んでから化けて出るからな!」
「いや、だからさ……今すぐ返しに行けばブレアおばさんだって鬼じゃないんだし……」
「鬼じゃないだと?!お前お袋の本性知らないからそんなことがいえるんだ! 物心ついたばっかのガキを、右も左もわからないくらい檻に閉じ込めるような奴のどこが鬼じゃないってんだよ!!」

そこまで言われては、引き下がるしかない。
なるほど、たしかに返しに行くのは無理があるだろう。
幼馴染の哀れな死体を見て笑う趣味はない。
……ないと思う。
けど……

「てかあんた炊事も洗濯もできないじゃない。 何? 石潰し要因で入るつもり??」
「あ、いやいやいやいや、さっきのはちょっとした語弊だって!ほら、冒険する時はトラップとかもあるだろうしさ! そんなときは俺の特技だって役に立つだろうし……ってかお前だって剣なんてろくに使えねぇくせに親父さんの剣帯刀してるじゃねぇか! 今まで素手の俺に勝ったことさえない癖にさ!」
「う、うるさいわね! いいじゃない別にそれに勝ってないけど負けたわけでもないもん!!」
「いいや負けだね! 俺は素手で、お前は木刀ってだけでもハンデだったのにさ! お前結局一度も俺に攻撃あててねぇじゃん! ちょっと体が頑丈で一度もダウンしなかったからって、そんなの言い訳になるわけないだろ!」
「何よ! あんたこそ男のくせに貧弱すぎるのよ! だいたいあのときだって……」

静かだった馬車の中が、とたんに騒がしくなる。
そんな何の意味もないばか騒ぎは、馬車がシュトラセラトにつくその時まで延々続いていた。

550したらば初心者:2008/03/06(木) 13:22:45 ID:/KDhp5.60
……王道を、歩みたかったんだ……
それだけなんだ……

551◇68hJrjtY:2008/03/06(木) 13:47:25 ID:LLGcTyJI0
>黒頭巾さん
お久しぶりです、でも黒頭巾さんの物語の書き方は変わってないようで何よりです(笑)
作り話とは思えないほど真に迫ったある無課金剣士の物語…うーん、経験を感じます!(何
Gvはほとんど聞き知ることしかない私でもGvシーンは手に汗握ってしまいました。
両親の夢から授かった(?)再振り巻物の大事な大事なドラツイ…それが、それがっ(´;ω;`)ウッ…
彼のその後に幸せあれ!…またの投稿お待ちしています(笑)

>したらば初心者さん
プロローグも終わり、いよいよ物語開始…と、いきなり凄く楽しそうですね(ノ∀`*)
幼馴染ギールも同行することになったこの旅路。なかなか良さそうなコンビですね!仲良きことは良き哉良き哉。
しかし彼女の決意の中には「もう村に帰らない」という意味も含まれていると思うとやはり思うところは大きいのでしょうね。
シュトラセラトに到着する馬車の轍。彼女とギールの二人旅の続き、お待ちしています。
---
王道を書いてみたい…時には初心に戻ってみることも小説書きさんに留まらず重要なことですよね。
でも本当はそういう王道こそが奥が深かったりするんですよねぇ。面白いことに。

552白猫:2008/03/06(木) 21:30:30 ID:gydtjVTc0
Puppet―歌姫と絡繰人形―

第一章〜第五章及び番外編 5冊目>>992
第六章 -夜空の下で- >>30-37
第七章 -深紅の衣- >>70-81
第八章 -神卸- >>137-139
第九章 -チャージング- >>164-171
第十章 -母- >>234-241
第十一章 -北へ- >>295-299
第十二章 -バレンタインチョコレートケーキタワー?- >>349-353
第十三章 -神格化- >>388-399
第十四章 -開演、演舞、そして終演- >>461-474
これまでの主要登場人物 >>38
用語解説 >>255-261


第十五章 月光の中に煌めく紅


(本編執筆中に気付きました。解説ページの40〜42に間違いがありましたです。
×40【懺悔術(ざんげじゅつ)】アーティの扱う、黒懺剣を扱った戦術。
○40【懺舞術(ざんぶじゅつ)】アーティの扱う、黒懺剣を扱った戦術。

×41【円舞(えんぶ)】懺悔術の一。黒懺剣を、円を描くように薙ぐ。
○41【円舞(えんぶ)】懺舞術の一。黒懺剣を、円を描くように薙ぐ。

×42【翔舞(しょうふ)】懺悔術の一。胡蝶のように空を舞うことを可能とする力。
○42【翔舞(しょうふ)】懺舞術の一。胡蝶のように空を舞うことを可能とする力。
今ここで訂正しておきます。申し訳ありませんでしたorz)

553白猫:2008/03/06(木) 21:31:04 ID:gydtjVTc0

 「惑え、『 万華鏡分身 』」
 「第十六懺舞――『 弓舞 』」
ネルとアネットの言葉が交錯する、その間。
無数の分身がアネットに向かって飛び掛かり、その中ほどで、真っ黒な無数の矢がそれら全てを射抜いた。
その、崩れ去る無数の分身の中、
仮面を深く被ったネルが、無数の矢の雨をかい潜り、アネットに向けて飛び掛かる。
それを微笑んで眺めていたアネットは、掲げた剣を鋭く突き出した。
溜め込みも何もない、腕だけの刺突。しかしその刺突に、ネルは咄嗟に身体を仰け反らせた。
ピリッ、とその刺突がネルの[深紅衣]を裂き、途端にその色が黒く腐敗した。
それを見やり、ネルはゆっくりとエルアダークを構え直した。
 (やはりあの呪剣は厄介ですね……長剣の部類の筈なのに、なんであんなに速いんですか)

   ビキッ

 (――っち)
見れば、その胸のエリクシルから、無数に奇妙な文様が浮かび出ていた。
一定の間隔毎に疼くそのエリクシルは、その痛みも、鼓動も、徐々に強まっている。
一体どういうことなのか。
 (考えても……答えは、出ない)
剣を再び構え直し、ネルはゆっくりとアネットと対峙する。
流石は流石は、盗賊団[月影団]の首領。
此方の手を正確に把握し、その一歩先を行く戦術で攻撃を行ってくる。
その扱う術[懺舞術]もまた、単一箇所での戦闘では恐らく最強を誇る戦術の一つである。
恐らく戦闘の技術面ではアネットの方が数枚上手。
 (さて……このままじゃ埒が開かない)
そもそもネルは広範囲に攻撃する術を持たない。
肉弾戦では恐らくは同等。だがアネットには[懺舞術]がある。
一度でも[秘術]クラスの術を発動されれば……負ける。
 「さあ、受けてご覧なさい。第三十一懺舞、第一奥義」
と思う間に、来た。
仮面越しにも分かるほどの膨大な魔力が、アネットの剣に集中している。
ゆっくりと体勢を低くし、左腕のエルアダークを胸の前に構える。
 「『 月神剣舞 』」

アネットの言葉と同時、
水色の波紋を残しながら、凄まじい速度でアネットが剣で弧を描いて斬り掛かってきた。
その剣を盾の表面で受け流し、ネルは咄嗟に右に避ける。
と、その眼前。
アネットの剣の波紋が、三日月の形を象っていた。
 (……おかしい。彼女の奥義が、この程度の攻撃のはずがない)
アネットの今の攻撃。
通常の攻撃と、特に違いが見られなかった。
 「おかしいと思ったかしら?」
 「!」
アネットの言葉に、ネルは仮面の内で目を見開いた。
その反応を満足げに見やり、アネットは剣をクルクルと回す。
 「これで良いのよ……この術は、[第三奥義]の準備術だもの」
 「……」

554白猫:2008/03/06(木) 21:31:29 ID:gydtjVTc0
その言葉に、ゆっくりとネルは盾を構え直した。
今までの経験で分かっていた。
アネットは、ハッタリなど使わない。
 「……第三十三懺舞、第三奥義」
途端、アネットの後ろの三日月が、徐々に形を変形させ始めた。
思わず見惚れてしまうほど美しい、見事な満月に。
 「『 月光斬 』」
そんな言葉が聞こえた、瞬間。
アネットの背後に輝く満月が、アネットの剣に凝縮された。
その瞬間、ネルは悟った。
この術はエルアダークでは、防ぎきれない。
それどころか……この[守護鎧]ですら、貫くだろう。
咄嗟に左腕のエルアダークを外し、右腕の剣を構える。
その剣を解除し、瞬時に紅色の爪へと変化させた。
 (エリクシルよ……頼むぞ)
 「さあ、受けて御覧なさい――」







三度のノックの後、リレッタは部屋の中におずおずと入った。
その部屋の中、ソファに座っていた長老はその姿に微笑む。
 「……こんばんは」
 「おう、久方ぶりじゃのう。リレッタ」
飄々と笑う長老に、リレッタは頭を下げた。
それを手を挙げて制し、長老は哀しみの込められた笑みを浮かべる。
 「ルゼルが、神の元へ召されたそうじゃの」
 「…………」
黙り込んでしまったリレッタに、しかし長老は頷く。
 「辛いのはよう分かる。して……今日は、お茶話をしに来たのかのう?」
 「……いえ」


 「エリクシルの秘密……とな?」
 「……はい」
ソファに座ったリレッタに御茶を差し出し、長老はよっこらと座る。
その御茶を少しだけ啜り、リレッタは小さく呟く。
 「御父様が……自分にもしものことがあったら、長老さまのところに行けって…」
 「……ふぅむ。やはりルゼルめ、気付いておったか」
リレッタの言葉に頷き、長老は杖をついて立ち上がった。
その足で脇の本棚へと歩き、そこで二度、杖を床に叩いた。

   コッ   コッ

その途端、目の前の本棚が、突如床の下へと吸い込まれていった。
呆気にとられるリレッタを後目に、長老は新しく出現した"二つ目の本棚"から、一冊の本を取り出した。
その本の題名には、紅色の文字で[ELIXIL]と書かれていた。
 「……エリクシル」
 「そうじゃ。アラスターの遺した、エリクシルの全てが書かれておる本じゃ」
 「どうしてこれを、以前ネリエルさまと来たときに」
リレッタは不満めいた口調を隠しきれなかった。
だが長老は気にした風も無く、飄々と言う。
 「カナリアは、この本はネリエル殿が[第三段階]まで到達しなければ渡すな。
 エリクシルの本当の力は決して語るな。ネリエルのためにならない――と言っておったからの」
 「…………」
 「さて……それでは明かそうぞ。エリクシルの秘密を」

555白猫:2008/03/06(木) 21:32:37 ID:gydtjVTc0
これは私の、長きに渡って研究を続けたエリクシルについての、最初で最後の研究書である。

この本を手にした、我が子孫へと告ぐ。
其方の身体のどこかにある宝石。
その名は[エリクシル]。又の名を[天地創造の石]である。
完成すれば、エリクシルは如何なる物質をも生成し、如何なる物質をも変質させ、如何なる物質をも消滅させる。
まさに[神々の石]と呼ぶに足る石となるであろう。
この石…エリクシルを其方がどう使うかは、私の知ったことではない。

だがこの石は未だに完成していない。
私の持つ魔力を持ってすら、この石を完成させることができなかった。
私は今後このエリクシルが完成する期待などは全くしていないとまずは言っておこう。
それでもエリクシルを求めるというのなら、ここに精製方法を記しておく。

このエリクシルを完成させるのに必要なものは二つ。
強い[意志]と、莫大な[魔力]である。
持ち主の強い意志がエリクシルに及んだとき、その魔力を操ることができる。
その意志の強さにより、エリクシルは
[第一段階(ファースト)]、
[第二段階(セカンド)]、
[第三段階(サード)]、
[第四段階(フォース)]、
そして[最終段階(ファイナル)]へと姿を変える。
或いは[第五段階(フィフス)]、[第六段階(シックスス)]が存在するのかもしれない。
しかし私が確認したのは[第三段階]までであり、それ以上はエリクシルの完成したときの状態、[最終段階]しか存在しないと思われる。
さて、第二に必要な[魔力]。
この魔力は、具体的にどれほど必要なのか?
それは全く分からず、とにかく莫大な魔力だ、とだけお伝えしておこう。

さて、ここで一つ、忠告がある。
エリクシルを扱う[意志]。
それに背いた場合、もしくはエリクシルが完成に近付いたとき、エリクシルは正常に作動しない。
通常の発動が[真正解放]ならば、正常に発動しない場合は[邪道解放]とでも呼ぶべきだろう。
その[邪道解放]。
この邪道解放を行った場合、エリクシルは宿主に対して通常に作動することができなくなる。
真正解放の数分の一程度の力でしかそのエリクシルを扱うことができず、さらに長時間の発動は宿主の寿命をも縮めかねない。
だがこの邪道解放…この邪道解放でしか、発動できない解放がある。

それこそが、[第四段階]。
この第四段階だけは、邪道解放を通してでしか発動することはできない。
実のところ、この第四段階を第四段階と呼ぶべきか、私は悩んだ。
これは紛れもない邪道解放によるものであり、故に装備として使用することはできないのである。
だがこの第四段階は、第一段階、第二段階、第三段階を遙かに上回る力を誇る。
故にこの本を読んでいる其方に忠告しておく。
第四段階を多用してはならない。
第四段階の力は恐らく、古代民にも迫る。
だがこの第四段階は諸刃の剣。使い続ければ、必ず其方にしっぺ返しが来るであろう。

556白猫:2008/03/06(木) 21:33:18 ID:gydtjVTc0

 「ここから先は、各段階で使うことのできる能力の説明を殴り書きしてるだけのようじゃ」
 「……[第四段階]」
 「己の意志に背いたとき、エリクシルが完成したときに目覚める力のようじゃの」
長老の言葉に、リレッタは思い出す。
スマグで見せた、紅色の瞳と深紅の衣。
恐らくはあれが……[第二段階]の邪道解放だったのだろう。
あの時の力は、[己の意志に背いたとき]という条件に当てはまる。
そして、もう一つの条件――
 「!!!」
そこまで考え、リレッタは立ち上がった。
思い出したのだ。

   《ネルくんのエリクシル、最近おかしいの……。毎晩毎晩疼いてるみたいで……もしかして、エリクシルが[デリマ・バインドブレイズ]で、何か変化したのかな》

あの時の、ルフィエの言葉。

[デリマ・バインドブレイズ]を受けて以来、エリクシルが疼く。

今までそんなことは無かったという。

エリクシルの完成には、膨大な魔力が必要。

エリクシルは触れた対象から微量、宿主が望めば莫大な魔力を吸収する。

あの時ネルは、確かに[デリマ・バインドブレイズ]を斬ろうとした。


 「……エリクシルが、完成しかかってる…?」
 「?」
ゆっくりと呟いたリレッタに、長老は首を傾げた。

557白猫:2008/03/06(木) 21:33:38 ID:gydtjVTc0

 「――――」
 「――――」
蒼と紅の入り交じった光が消えてから、数秒。
ネルとアネットは、双方爪と剣を構えたまま、互いに背を向けてピクリとも動かない。
先の激突、洞窟を揺るがし、危うく崩壊させるところだった強烈な激突は、今は影を潜めている。
双方、一方は仮面の内に、一方は赤毛の内に、表情を潜めていた。
その、半秒後。
 (……強くなったわ、ね。坊や――)
ガクン、とアネットの片膝が、地面へと着く。
頬を汗が伝い、込み上げてくる激痛を、下唇を噛んでアネットは堪える。
その左肩には、ネルの巨大な爪痕がハッキリと残っている。
 (まさかここまでとは……正直驚きだわ)
と、その背後。
ドサリ、とネルの身体が、地面に倒れ込んだのを聞く。
 「全く、身の程知らずの坊やねぇ」
ゆっくりと立ち上がり、アネットは頬を伝う汗を拭った。
激突の瞬間、
彼は全く防御の態勢を取らず、無理矢理に身体を超低空で滑空させ、その腕で自分の左肩を切り裂いた。
その間、自分の[月光斬]が彼の鎧を砕き、身体を貫いたのにも構わず。
 「私が咄嗟に調整しなきゃ、坊やを殺しかねなかったじゃないの」
ネルが気絶しているのを承知で、アネットは小さく微笑む。
事実、彼がこんな攻撃をして来るとは、アネットは全く予想だにしていなかった。
自分の[月神剣舞(つきのかみのけんぶ)]は紛うことない[月光斬(げっこうざん)]の準備術。
だがその攻撃自体も強力な斬撃である。アネットは、この一撃でネルの盾を消滅、或いは破壊できると踏んでいた。
が、彼はその攻撃を盾の表面を滑らせるだけで難なく回避した。
それだけではない……彼女の[月光斬]。
[月光斬]は紛れもない彼女の最強術。
一撃で全てを消滅させ、防御・回避共に不可能な術。
それを彼は咄嗟に看破し、"防御も回避できない術"に対して"防御も回避もせず攻撃"に転じた。
まさに格闘の天才。一体どこで、これほどの体術と経験を。
 「……約束は[私に勝てたら]だったけど……まぁ、いいわ。力を貸すわ、坊や……私の可愛い弟」

558白猫:2008/03/06(木) 21:34:07 ID:gydtjVTc0

此処は、何処だ?


僕は、死んだのか?


――"いや"、


そうではない。


何故かは分からないけど、そう確信できる。


僕はまだ死ねない。


セシェアを見つけると、あの日誓ったはずだ。


たった一人の、僕の妹。


彼女には、もう僕しかいない。


彼女を見つけ、そして両親に、全てを話す。


どこかへ行ってしまった父違いの姉さんのことを、あの子は知らない。


その姉さんとこの僕が、互いに刃を交え、命を取り合っていることを、母は知らない。


決して人殺しをしないと誓っておきながら、数多の人の命を奪ったことを、父は知らない。


全てを話さなければ。


セシェアを見つけ、必ず全てを……





   「遅かったわね、フェンリル――」

559白猫:2008/03/06(木) 21:34:35 ID:gydtjVTc0


 「!!!」
消毒液臭い部屋の中、ネルはガバッと起き上がった。
既に外も暗く、月明かりも見えない。恐らくは曇っているのだろう。
見れば、自分の身体は汗でびしょ濡れになっている。
身体を包帯でぐるぐる巻きにされ、その上から毛布をこれでもかと乗せられ、その上"暖房器具"が自分のベッドに寄りかかる形であった。
 「……この包帯の巻き方は、ルフィエですか」
ネルの声は、無駄に広い部屋に響き渡り、消える。
眠っているのか、とネルはゆっくりと毛布を退けた。

 「――せやかて――」
 「――つこいわ――」

と、隣の部屋から小さく声が聞こえてくる。
この屋敷には防音がしっかりと為されている。それでも聞こえるということは、相当大声で怒鳴り合っているのだろう。
ゆっくりと立ち上がり、ベッドから音もなく飛び降りる。
部屋を出ようとし、途中で止まった。
視線を流せば、ベッドに寄りかかり、手に包帯と消毒液を持ったままルフィエが眠りこけている。
少しだけ考え、ネルはその身体に、ベッドの上の毛布を一枚かける。
 「……床で寝られるのも困りますね」
と(何故か言い訳がましく)呟き、ルフィエの身体をゆっくりと横抱えの体勢で持ち上げる。
今この状況で起きられたら動転して蹴られかねないな、とネルは小さく苦笑した。
その身体――自分と大して身長も変わらない、小さな少女は、やはり軽かった。
強く握れば壊れてしまいそうなほど柔らかく、どこか温かい。
遠い昔、いつかこの温もりを、自分は感じたことがある。
 「……母、さん…」
目を細め、その体勢で佇むのも、数秒。
ベッドに歩み寄り、ルフィエの身体をゆっくりと下ろす。
隣の部屋からの口論は、さらに激しいものとなっている。面子からして、レイゼルとカリアスあたりだろうか。
ひょっとするとアーティが目覚めたのかもしれない。とネルは早々に部屋を後にした。

 「……ネルくんの、バカ」
毛布にくるまったまま、ルフィエは小さく呟いた。
今の今までネルの眠っていた布団からは、消毒液の臭いに混じって、仄かにネルの匂いを感じられた。
 「ほんとに、バカよ……人に、どれだけ心配させてるかも知らないで…」

560白猫:2008/03/06(木) 21:35:01 ID:gydtjVTc0


 「何の騒ぎで――」
 「だーかーらー! そのネルはんをブッ刺したはお前やろ! 紅瓢ッ!!」
 「だーかーらー! それは坊やが勝手に喧嘩の押し売りしてきたんだって言ってるでしょうが!!」
 「んなもん信じれるわけないやろ、このスカタンッ!!」
 「ちょっとは人を信用しなさいよ、この万年病人ッ!!」
 「びょッ……確かにオレは白装束来てるけどな、ひ弱やないぞ!」
 「あら、誰がひ弱なんて言ったのかしら? 被害妄想が激しいんじゃないのかしら!?」
 「こんのッ……表出ろや紅瓢ッ! 今までの罪、公衆の面前で全部吐かせてやるやんけッ!!!」
 「だからそれは全部坊やが帳消しにするって約束したのよッ!!」
 「信じられるわけないやろ、このスカタンッ!!」
 「それしか言うことないの、この万年病人ッ!!」

   バタンッ!

 「………しばらくほっときましょうか」
ネルは水を差せばとんでもないことになると悟った。








 「…………ッ……」
全身を包帯で巻かれたまま、ネルは這々の体で庭園に出た。
先から、エリクシルの痛みが一層激しくなっている。
それを、はっきりと感じる。

   ドクン

エリクシルごと、まるで全身がねじ曲がってしまうような錯覚に陥る。
ゆっくりと、ゆっくりと彼の髪が、紅色に彩られていく。
彼の前髪がゆっくりと紅色に染められていくのを感じ、ネルは歯を食いしばる。
 「何だ……お前は、何だ……ッ!!」
紅と銀の入り交じる髪を月光が照らす中、ネルは汗で濡れた頬を拭う。
ドクン、ドクン、ドクンと、まるで右腕に第二の心臓が出来たと錯覚するほどはっきりと、エリクシルが鼓動している。
これは、間違いない。
エリクシルが、何らかの変質を起こそうとしている。
無意識に、口が開く。
あまりに巨大な力に、抗うことが出来ない。
 「……エ、リク、シル…[第、四……段階]――[狂戦士(バーサーカー)]、発、ど……」

561白猫:2008/03/06(木) 21:35:37 ID:gydtjVTc0

ヴァリオルド邸が一望できる、国会議事堂の屋根の上。
そこに、二体の傀儡……サーレともう一人、金髪金目の青年が立っていた。
 【月夜に襲撃……これもまた一興】
 【…サイっちの性格よく分かんないや】
目を閉じて蒼いコスモスの束を持つ青年に、サーレは溜息を吐く。
青年――サイカスは、サーレに困ったように微笑む。
 【サーレ嬢にはお分かり頂けない……実に残念】
 【……勝手に残念がってていいよ】
溜息を吐くサイカスにもう見向きもせず、サーレはゆっくりと両の手を空中に翳す。
 〈[ラグナロク]発動まで残り329日……ここで、決める〉
そして、一言。

   【来たれ……『 ツイン・デスサイズ 』】

途端、サーレの"両手"に、デスサイズが現れる。
二本共に、何時の日かネルが見たあの大鎌と全く同じもの。
 【一対の大鎌……何時見ても美しい】
 【趣味悪いね、サイっち……】
そして、一躍。
月光の夜空に、サーレが舞い上がった。
物凄い速さで遙か上空へと打ち上がったサーレに、サイカスは少しだけ肩をすくめる。
 【スカートを穿いて跳躍は、美しくない……】
と意味不明な言葉を呟き、手に持ったコスモスの束を取り落とした。

   【蒼き花弁――『 ブルーコスモス 』、発動】







FIN...

562白猫:2008/03/06(木) 21:36:14 ID:gydtjVTc0

今回は色々ややこしい都合上、オマケコーナーは中止です。
実のところキャラ紹介が残るは傀儡やアネットあたりだけになってしまいそうなのd(斬


コメ返し
>68hさん
今回の[邪道解放]で、エリクシルについてはもうほぼ完了しましたです。
後はノリで第五解放でも……げふんげふん。
カリアスさん始め、魔法使いって実は描写が苦手だったりします。
動きが少ないキャラってどうも苦手orz
以前名前のみ登場した[サイカス]。次回からはこのキャラとその能力を書こうと思っています。
もちろん[第四段階]もがっつりやります。がっつり。
---
唄は以前にも何方かのコメ返しに書いた通り、95%即興ですね。
「だって今日は雨だもの」や「千軍万馬の見せ所!」等、結構私も気に入ってるのは多いですね。
ひょっとすると全部好きかもしれないです(笑)

>FATさん
前回の大戦でも猛威を振るった[傀儡]。
実力は単一で一つの街を壊滅するに足るかもしれません。
ルゼルがどうしてルヴィラィに敵わなかったのか。それは後々明かされると思いますね。
残り329日となりました。[ラグナロク]は一体どのような術なのか。
今度じっくり封を開いていこうと思っています。のんびり付き合ってあげてください(笑)

>黒頭巾さん
ネルくんのお財布には常に数百万ゴールドが潜んであるみたいです。
当時はまだ品物も流通していない時代(現代の十年前)ですので、数百万を持ち歩く人はいないんですね。
古都は治安も悪いので、数万ゴールド持ってる人だけでお金持ち!っていうレベルです。
カリアス……そんなに老けてる?今度ガキっぽい描写でも入れます。たぶん。
モーションが消える…コロとかでは可能かもしれなi…げふん。失礼しました。
ちなみにネルくんの妹はセシ「ェ」アでセシ「ュ」アではなかったりします。よく間違えられる名前なのでしょう。
ちなみに私は臼猫ではなく白猫です。間違えられたことはないです(オイ


え?次回予告ですか?
ありませんよ?行き当たりばったりの白猫です(オイ
では今回は短いですがこの辺で。

563R310:2008/03/06(木) 22:55:05 ID:Wq6z33060
〜ミニペットがやってきた!(後編)〜


前編:>>487-490

前回のあらすじ: 光のミニペットだと思ったら土のミニペット買っちゃった


ギルド戦や秘密ダンジョン捜索パーティに入ることも無く、ブルーノと土のミニペットはソロ狩り生活を送った。
竜の心臓や刃油といった露店で高く売れる物を狙って狩る彼らの作戦は幸をせいする。
テラコッタ等の協力もあり、ソロ生活一ヶ月を迎えようとする頃には彼の貯金額は元に戻りつつあった。
今晩、セレスト・クルセイダーズのギルドホールでは、ブルーノのギルド戦復活祝いとの名目で飲み会が行われている。
「明日のギルド戦楽しみだな。」
「一時はどうなるかと思ったけど、良かったわ。」
ブルーノの隣でテラコッタはグラスに入った果実酒を傾ける。
「てるみつくんも頑張っていたしな。」
一生懸命落ちたgoldを拾ってきたり戦闘のサポートをしていたミニペットの姿を思い出しながらブルーノは彼(?)の頭をなでた。
ミニペットはくすぐったそうに目をつむる。

長いソロ狩り生活はこのミニペットには過酷だったのか、いくらかやつれたように見えた。
自分一人だけでは、こんなに早くお金を貯めれていなかっただろう。
彼は思い思いの場所で飲んでいる仲間たちに向かい直るとあらためて礼を言った。
「みんなのお蔭だありがとうな!」
「この分は、明日たっぷり働いてもらいますよ。」
「おうよ。」
エムロードにブルーノは元気良く答えた。


―翌日―

ギルドホール二階にある自室でブルーノはギルド戦のための準備をしていた。
ベットと小さいテーブル、椅子が置かれているだけの簡素な作りだが、ギルドメンバーには個室が与えられている。
「ギルド戦用の剣、どこにやったっけ?」
いつもベットの横に立てかけてあるのに、今日に限って見当たらなかった。
狭い部屋の中を隅から隅から隅まで探しても見つからない。
「ギルド倉庫にいれたんだったかな。」
彼は部屋から出るとギルド倉庫へ向かった。
ミニペットも彼の後をピッタリと着いて行く。
廊下を抜けるとラウンジが吹き抜けになっており、脇ある階段を下るとラウンジからギルド倉庫へ行ける。

ラウンジにはミモザがいた。
うろうろしては椅子や机の下を覗き込んでいる。
彼女の傍には彼女の召喚獣である、犬の姿をした火の神獣ケルビーとモグラの姿をした土の神獣ヘッジャーの姿があった。
二匹は同じように床に目を向け鼻をふんふん鳴らせている。
「おはよう、ミモザ。探し物かい?」
「おはようございます。ええ、ペンダントが見つからなくって…」
彼女は彼のほうを向くと困った顔をしてそう言った。
「手伝うよ。」
彼はしゃがみ込んでペンダントを探す。
ミモザは礼を言うと再び探し物を開始した。

「そう言えば、俺の剣も見当たらないんだよね。」
棚を退かしながら彼は言う。
「そうなんですか…。テラコッタさんも弓がないって言っていましたし、泥棒でも入ったんでしょうか?」
彼女がそう言うと、ちょうどアッシュが2階から降りてきた。
ブルーノがアッシュを見ながら呟く。
「泥棒…。」
「なんだよ、オレはお前らのものに手を出すほど貧乏じゃねぇよ。」
彼は腕を組みながら不快そうな顔をした。

564R310:2008/03/06(木) 22:55:36 ID:Wq6z33060
「オレもやられた。」
挨拶も早々に椅子に座るとアッシュはそう切り出した。
一旦探し物を打ち切ってブルーノとミモザも椅子に座る。
「これはクロマティガード行きかな。」
ブルーノがテーブルの上に置かれた水入れからコップに水を注ぎながら言った。
その時、バタバタと階段を駆け上がる音がして、テラコッタが慌ててラウンジに入ってきた。
「大変よ。ギルド倉庫の荷物が無くなっているわ。」
彼女の言葉に3人は顔を見合わせた。


地下にあるギルド倉庫は万病治療薬や火の元素といった道具類は無事だったが、武器や防具といった装備品がゴソっと無くなっていた。
「これはヒドイな。」
「見事にすっからかんですねぇ。」
ブルーノとミモザはギルド倉庫内の惨状に目を見張った。
「プロ… これはプロの犯行よ。」
何やら自信たっぷりに言うテラコッタ。
「オレから物を盗むとは、どこのどいつか知らないがいい度胸だ。」
怒り心頭なアッシュ。
ブルーノの傍で浮いているミニペットも何やらオロオロしている。


「どうしたんですか?」
「騒がしいな。」
ギルド倉庫にエムロードと色黒の男性が入ってきた。
この男性こそ、このギルドのマスターであるグロウだ。
彼は銀髪赤眼で長い髪を後ろでひとくくりにしている。
「マスター、一大事だ。」
ブルーノは事の一部始終を二人に話した。
「なるほど、どうりで私の物も見つからないはずだ。」
「グロウさんは何を盗まれたんですか?」
意外と落ち着いている様子のグロウにアッシュは尋ねた。
「ついさっきまで磨いていた鎧と一緒に置いてあったフンドシだ。」

そのフンドシはグロウの一張羅だったのか、彼が身に着けているのはシーツを腰巻のようにしているもの一枚だけである。
これはまた大変な物を盗まれたなと一同が思っていると、ヘッジャーとじゃれ合っていたミニペットが突然えづき出した。
「どうしたんだ?てるみつくん!」
驚いたブルーノが駆け寄ってミニペットの背中をポンポン叩いてやると、青い顔をしたミニペットは布をオエっと吐き出した。
吐き出された布は白い木綿製で、まるでフンドシのように長かった。
ギルド倉庫内の空気は凍り、一同はその布に釘付けになる。
その空気を知ってか知らずか、グロウは遠目で吐き出された布が自分のものであると確認する。
「あ、私のフンドシ。」
彼はひとりごちた。

565R310:2008/03/06(木) 22:56:01 ID:Wq6z33060
テラコッタは矢をダーツのように次々とブルーノに投げつける。
「あんたね〜。てるみつくんにちゃんとエサやらなかったんでしょ!」
「わっ、ちょっと、やめて!」
間一髪のところで避ける彼だったが、アッシュの短剣も彼目がけて飛んできた。
「オレがあの指輪にフルエンチャ付けるのどれだけ苦労したと思っているんだっ。」
「あぶなっ! …お前、これ即死効果が付いているヤツじゃないか。」
彼を逃して壁に突き刺さった短剣を見てブルーノは悲鳴を上げる。
しかし、その声はすぐさま矢と短剣の風きり音にかき消された。
エムロードも杖に魔力を溜めつつ薄ら笑いを浮かべる。
「心配せずとも、痛くないよう一発で楽にしてあげます。」
これにはサッと顔が青ざめるブルーノ。

一方、ミモザはミニペットの背中を叩いて食べたものを吐き出させようとしている。
だが、ミニペットはこれ以上は無理という風に体をぷるぷると横に振った。
休む間もなく次々とブルーノに刃の雨が襲い掛かる。
アッシュはブルーノに叫んだ。
「だいたい、アレは間違えて買ってきたものだろ!だったらさっさと売るか捨てるかすれば良かったじゃねぇか!」
「そんな、こと、できる、わけ、ないだろっ。」
怒涛の攻撃を避けつつもブルーノは反論する。
その時、バターンと上の階からドアが開く音がした。
「てるみつくんが外に出て行っちゃいました!」
ミモザの声が階段の方から聞こえる。

「何っ!待つんだ、てるみつくん!」
ブルーノはミニペットを追いかけて飛び出していった。
「こら、待ちなさい!」
一拍遅れて彼を追いかけるテラコッタ、アッシュ、ミモザ。
ギルドホールは今しがたまでの喧騒が嘘のように静まり返る。
取り残されたエムロードとグロウは四人と一匹が出て行った出入り口を見つめていた。
ふいにグロウが訪れた沈黙を破る。
「うむ、今日のギルド戦は裸で突撃か。」
「今時、冗談でもそんなこと言いませんよ。」
静かに外からの熱い風が吹きぬける中、エムロードは溜め息をついた。

566R310:2008/03/06(木) 22:56:28 ID:Wq6z33060
時間が経つにすれ活気付いていく街中をブルーノは駆け巡っていた。
しかし、依然としてミニペットの姿は見えない。
彼は立ち止まり、荒い息を整える。
ミニペットが好きな武器屋や防具屋もお気に入りだった広場にも行った。
他に行きそうな場所を彼はもう一度思い返す。
(もう、戻って来ないつもりなのだろうか。)
もし、街の外へ出てしまったら、たいした力があるわけではないミニペットには危険だろう。
太陽は徐々に日差しを増し、容赦なく彼に照りつけた。
ジリジリとした暑さに一筋の汗が彼の額から流れる。
(あいつと出会ったのは、今日みたいに暑い日だったな。)
その刹那、彼の脳裏にある場所が閃光のごとく思い浮かんだ。
「そうだ、あの裏路地。」
ブルーノは再び走り出した。


ミニペットを露天商から買ったあの日のように、この場所はひっそりしていた。
入り組んだ裏路地のそのまた奥、地元民でも立ち寄らない狭い道の路上に土のペットはポツンと浮かんでいる。
俯きながら元気なく浮かぶミニペットは、強い風が吹くとそのまま飛ばされそうだ。
ブルーノはそんなミニペットの姿を見止めると、ゆっくり近づきその隣に腰を下ろした。
ミニペットの体がわずかに強張る。
「てるみつくん、みんなの所に帰ろう。」
静かに彼は言うが、ミニペットはふるふると体を左右に振った。
彼はミニペットから視線を外すと、路地から見える細長い空を見上げる。
「オレがあげたエサ、食べずに売り物にしてくれていたんだね。」
ミニペットは小さく頷いた。

実際、知らないうちにお金が十万単位で増えていることがたびたびあったのだ。
その時は数え間違えていたのかと思っていたが、ミニペットが売っていたのだとしたら合点がいく。
「少しでもお金を返そうと頑張ってくれていたんだろ。でもさ、無理しちゃダメだよ。」
俺みたいに大きくなれないからね、と彼は笑いかける。
「食べちゃったものは、また稼いで返そう。大丈夫さ、俺達2億も稼げたんだぜ。」
ブルーノは立ち上がるとミニペットをなでる。
しかし、ミニペットは不安げに彼を見上げた。
「アッシュもちゃんと返したら、きっと許してくれるよ。」
ああ見えて良いヤツなのだと、ミニペットの頭を安心させるようにポンポンと叩く。
「その前にみんなに謝らなきゃ。大切なものがなくなると悲しいからね。」
ミニペットは頷くと、彼の肩に飛び乗った。

567R310:2008/03/06(木) 22:56:55 ID:Wq6z33060
「本当にすみませんでした。」
ギルドホールに帰った一人と一匹はギルドメンバー達に頭を下げた。
今ある金で食べてしまった物を急いで買い戻したが、とても返しきれる額ではない。
それなので彼らは、残りの借金は少しずつでも必ず返すと約束した。
「まぁ、そこまで言うなら許してあげるわ。」
テラコッタは彼から手渡された弓を持つと、観念したように言う。
他のメンバーもそれで許してくれたようだ。
約一名愚痴をこぼしていたが、誠意は伝わったと信じたい。
「さて、僕達の持ち物は い つ か 全て返していただけるとして、今日のギルド戦はどうするんですか?」
皆の顔を見回しながらエムロードは聞いた。

しーんと静まり返るギルドホール内。
無理もない、各人銀行に預けてあった物は無事とはいえ、ギルド関係で使用する物はギルド倉庫に入れていた者が多かったのだ。
「やっぱり、中止かな… ゴメン。」
ブルーノが本日何度目かの謝罪をする。
「今回は仕方がなかろう。」
とても残念そうにグロウは言った。
その実に無念そうな様子にブルーノ達も気落ちする。
ただ一人、エムロードは本当に裸で突撃するつもりだったのではなかろうかと冷や汗をかいた。
「じゃあ、ブルーノ。今日はとことん狩りに付き合ってあげるわ。」
テラコッタは狩猟の弓の張り具合を確認しながらウィンクする。

「え?いいの?」
ブルーノは驚いたように彼女をまじまじと見た。
「だって、あなただけだったら、全部返してくれるまで何年かかるか分かったもんじゃないわ。」
「…ありがとう。」
彼は胸が熱くなるのを感じると、自分の肩にいるミニペットに向き直った。
「良かったな、てるみつくん! …てるみつくん、どうした?」
さっきまで元気良く飛んでいたミニペットは徐々に浮かぶ高度が落ちていく。
そのまま、重力に逆らうことなくコトリと床へ落下した。

568R310:2008/03/06(木) 22:57:48 ID:Wq6z33060
目を閉じ、ピクリとも動かなくなったミニペットの体がどんどん透明になってゆく。
ミニペットの異変に彼らは騒然とした。
「どうしたんだ、てるみつくん?!おーい!おーーい!!」
中でもブルーノの取り乱しようは激しい。
彼はガクガクとミニペットの小さな体を揺さぶる。
「落ち着きなさい、ブルーノ。」
そんな彼とは対照的にエムロードは落ち着きはらって言うと、ミニペットの体を調べた。
「ミニペットの魔力が急激に弱まっていますね、このままでは消滅してしまうでしょう。」
いたって冷静な彼の分析に、ブルーノは落ち着くどころか更にパニックになる。
その様子を見かねたように、アッシュは口を出す。
「おい、シャインパウダーを使え。そうすれば、ミニペットがこの世界に存在し続けれる。」
「なんだ、そうか。」
アッシュの言葉に一安心するブルーノ。

「ところで、社員パウダーって何?」
のほほんと尋ねるブルーノに一同盛大にズッコけた。
なんと彼はミニペットをこの世界に繋ぐための方法を知らなかったのだ。
「お前、そんなことも知らないでミニペットを買ったのか?」
「本当に計画性がないんだからっ!」
「消滅のスピードが速いですね。 これは手遅れでしょうか…」
「…ダメだ。回復魔法も効果がない。」
そうこう騒いでいるうちに、ミニペットの体は輪郭が判別することが難しいくらい透けてゆく。

すると、今まで黙っていたミモザがそっとミニペットの傍に寄り添うと口を開いた。
「ありがとう…今までボクと一緒にいてくれて…」
彼女は悲しそうな顔をして、ミニペットを見つめ続ける。
混乱していた彼らは一斉に彼女とミニペットに視線を向けた。
「ミモザ… 君はてるみつくんの言葉が分かるのか?」
恐る恐るブルーノが聞くと彼女はコクリと頷いた。
神獣や魔物の心と共感することが出来る少女は消えかかっているミニペットの意識を言葉にする。
「悪いことをした…ボクを許してくれたのに…約束を守ることが出来なくて…ごめんなさい…」
つーとミニペットとミモザの頬に涙が流れる。
ミモザは耐えられなくなったかのように、その場に泣き崩れた。

むせび泣く彼女の肩をそっと抱くテラコッタ。
エムロードらも沈痛な面持ちで佇む。
「しっかりしろ!消えるんじゃない!」
だが、ブルーノはミニペットに必死に呼びかけ続けた。
「言ったじゃないか、大切なものがなくなると悲しいって。俺はお前がいなくなったら、すっごく悲しいんだぞ!」
彼の絶叫がギルドホール内に響く。
最期にミニペットは力なく微笑んだ。
刹那、しゅんと音を立てて彼の手の中からミニペットの姿が消え去る。
キラキラとミニペットがいた所から燐光が飛び舞った。
「いらっしゃいませ。どこでモールサービスです。ご用件は何でしょうか?」
明るいアナウンスがギルドホール内に流れたのとミニペットが残した燐光が見えなくなったのは、ほぼ同時だった。

569R310:2008/03/06(木) 22:58:11 ID:Wq6z33060
―数日後 セレスト・クルセイダーズ ギルドホールー

ミニペットが消えた日からブルーノはソロ狩り生活を再開した。
あの日、皆で散々騒いだが、ミニペットは死んだのではなく、シャードをシャインパウダーで磨けさえすれば、また呼び出すことが出来るそ

うだ。
(ちなみにブルーノは毎日ボロ布でシャードを磨いていた)
その時、アッシュが呼んだどこでモールでのシャインパウダー購入を断ったブルーノは、こう言った。
「自力でそのシャインパウダーを買うよ。これ以上借金を増やす訳にはいかないからね。」
すぐにでもミニペットを呼び戻したいところだが、それでは彼の気がすまない。
そうして、彼は協力するというテラコッタと共にアリアンを出て本日に至る。

「本当にバカ正直よね、ブルーノは。」
テラコッタはラウンジでミモザとお茶を飲みながら言った。
「そこが彼の良いところなんですよ。」
笑顔でフォローするミモザに、そう?と返し、彼女は茶請けのクッキーを頬張る。
「テラコッタ、あなたは、とことん彼に付き合うのではなかったのですか?」
どう見ても油を売っているとしか見えない彼女にエムロードは言った。
彼の視線は分厚い魔術所に向けられたままだ。
「今日は補充のために町に寄ったのよ。今、ブルーノが買出しをしているわ。」
エムロードの皮肉をさらりとかわすテラコッタ。

しばらくすると、エントランスのドアが勢い良く開きブルーノが入ってきた。
「なぁ、見てくれよ!金の卵を産むスッポンだってさ! これですぐ皆への借金を返せるよ!」
嬉しそうに言うブルーノは自分の体と同じくらいの巨大な黄金色に輝くスッポンを抱きかかえている。
しばしの間、沈黙がギルドホール内を支配した。
「…少しは学習しなさーいっ!」
ピクピクと青筋を立てながら、テラコッタはクッキーが入っていた空き缶を彼に投げつけた。
缶は小気味良い音を立てて彼の頭に命中する。
ブルーノがてるみつくんと再開できる日は遠い。



おわり

570R310:2008/03/06(木) 22:58:39 ID:Wq6z33060
色々つっこみどころ満載ですが、どうにか書きあがりました。
お付き合いありがとうございます。


>>◇68hJrjtYさん
実は私もミニペットは公開テスト中しか飼ったことがないのです。
あんまり長く書いちゃうとボロが出ちゃうので短くorz
楽しみにされていた、お金稼ぎ道中が3行で済んじゃいました! …すみません。

>>之神さん
いつも季節物の出筆お疲れ様です。
今だから言えます、バレンタインお題も楽しませていただきました。
本編のエリクサーをめぐる物語の方も楽しみにしています。


>>FATさん
私の憧れるハイテンションギャグを難なくこなしてしまう所が素敵です。
色付きミニペットネタは昔の露店のヒヨコをモデルにしました。
まったく許せませんね。


>>復讐の女神
続きお待ちしていました、無理せずご自分のペースで書いてください。
エルフテイム時の大変さを思い出してしまいました、エルフブロックしすぎです。
テルはジェシらと共に旅をするのか、はたまた…! 楽しみにしています。

>>柚子さん
ブルーノのガッポリ作戦は成功しましたが、同じくらいお金が減っていくので貯金は難しそうです。
柚子さんのような緊迫感が溢れる戦闘シーンを書けるようになりたいです。
マッスル発動時がリアルでカッコイイ!


>>したらば初心者さん
同時期に小説書き始める方がいて嬉しいです。
王道いいですよね王道… 大好きです。 王道 is the best.
故郷の村を旅立った二人の織り成す物語を心待ちにしています。


>>黒頭巾
ミニペットはもっと動き回ってくれたら、今からでも買っちゃいそうです。
登場人物のしゃべり口調はリアル的なのに、生きている世界はゲームの中というギャップが堪りません。
何処にでもある話なだけに凄く共感してしまいます。

>白猫さん
エリクシルの神秘的な設定にドキドキします。
ネルがこれからどうなってしまうのか心配しつつ、次回を楽しみにしています。

571R310:2008/03/06(木) 23:00:48 ID:Wq6z33060
ぎゃぁ、うっかり復讐の女神さんと黒頭巾さんの敬称が抜けていました。
次からはよく見てから投稿します。
どうもすみません。

572柚子:2008/03/07(金) 01:26:59 ID:OhvuEEdY0
1.>>324-331 2.>>373-376 3.>>434-438 4.>>449-451 5.>>517-523

『Who am I...?』

古都の南東に位置するブルネン民間病院。
そこはもう1つの古都の病院であるブルネン公共病院とは違い、国からの支配を受けない病院だ。
よって、この病院は魔術師や悪人が好んで利用する。
イリーナも、当然その中の1人だ。
「もう痛みは無くなったな。両足で立てるって素晴らしいね」
「俺の治療を受けたんだ、それくらい当たり前だ」
イリーナは足の治療を受けにこの病院に訪れた。
魔術による治療はすぐに終わり、10分と経たない内にイリーナの足は全快した。
中年男の医師がイリーナの足に包帯を巻いていく。
「いやらしい目で見るな、変態医」
「まあそう言うな。こんな病院だ、来るのはムサい男共ばかりでね。女のお前が来てくれて嬉しいんだ」
中年の医師が最後に包帯の結び目がほどけないようにしっかり結ぶと、イリーナの足を軽く叩いた。
「これで良し。しばらくは安静にしていろって言っても、誰も聞いてくれはしない」
「いや、私自身はそうしたいけど、周りがね……」
2人の間に妙な親近感が沸き、2人は溜め息を吐いた。
中年医は胸ポケットから煙草を抜くと、おもむろに火をつけた。
「病院で煙草ってホラント、お前医者の自覚あるのか?」
「あるさ。でもやめられなくてねえ」
ホラントと呼ばれた中年医が美味そうに煙草を吸う。
ホラントがイリーナにも勧めるが、イリーナはそれを断った。
「それより、あっちはどうだ」
イリーナの言葉で中年医の表情が硬い物に変わる。
「こっちだ。ついてこい」

573柚子:2008/03/07(金) 01:30:08 ID:OhvuEEdY0
ホラントが案内した場所は小さな個室だった。
中に入ると、既にそこにはルイスが待っていた。
「ルイス、様子はどうだ?」
「特に変化は無い」
イリーナが寝台の方へ目を向ける。そこには1人の少女が眠っていた。
「俺が調べた結果、この子の体内にある異常を発見した。それをどうしても聞きたいか?」
イリーナの答えは決まっていた。イリーナは真正面からホラントの目を受け止める。
「ああ、言ってくれ」
ホラントは眠っている少女――ミシェリーの方へ目を向けると、つらつらと述べ始めた。
「俺は治療をしている過程でこの子の体に、ある異常を見つけた。それは細胞だ。この子の体には自分ともう1つの細胞が混在している」
「それは、やはり」
「分かっているだろうが狼の細胞だ。それも人狼のな」
イリーナ達は特に驚きはしなかった。
何故なら見ているからだ。ミシェリーのあの行動や、左腕に生えた人狼の腕を。
「ミシェリーはやはり先日現れた人狼なのか?」
「その可能性が高いだろうな。だがおかしい所は、この子はウィザードではないことだ」
イリーナは頷き、知っている事を述べていく。
「それだけじゃない。ミシェリーは自分が人狼である事を知らなかった。それに、以前の自分の記憶すら曖昧だった」
「そうだろうな。この子とその人狼の細胞は全くの別人の物だ」
それにはイリーナも驚きを隠せなかった。
「そんな話、聞いたことも無いぞ」
「俺も初めてだ、だから驚いている。こうは思いたくないが、恐らく人為的な物だろう」
「一体何の為に!」
イリーナが叫ぶ。
しかし、すぐに落ち着き、恥じ入るように腰を下ろした。
「……すまん」
「いや、いい。それより、重要な事はこれからだ」
ホラントは一旦間を置くと、再び語り始めた。
「この子は言わば、人為的に造られた不完全な人狼だ。故に体内のバランスを上手く保てない」
「どういう事だ?」
「つまり、侵食するんだよ。強い細胞が弱い細胞をな」
ホラントは再び言葉を切る。
イリーナ達はその時間で状況を理解しようと必死に頭を巡らせていく。
しかし、どう考えようともその先は残酷な結果しか思い浮かばなかった

574柚子:2008/03/07(金) 01:32:56 ID:OhvuEEdY0
「人狼の細胞がこの子の細胞を侵食し破壊し尽した結果、この子は自我が保てなくなるだろう。
 いや、この子の体が耐え切れなくなって死ぬのが先か」
イリーナはその事実の衝撃に耐えられず、へなへなと床にへたれこんだ。
「昔の記憶が曖昧ということも侵食によるものだろう。人格やこの子を成り立たせている物は生き残っているが、それも時間の問題だ」
ホラントは、更に追い討ちをかけるように事実を打ち明けていく。
「侵食は以前から続いていたようだが、今日1日で一気に侵食を早めたようだ。何故かは言わなくても分かるだろう?」
「なら何故ミシェリーは以前完全な人狼から人間に戻れた。今日にしても何故不完全だろうと人間に戻ることが出来た」
イリーナの代わりにルイスが疑問を中年医にぶつける。
「推測だが、以前は侵食が弱かったのだろう。今回は、単純に彼女の意思の強さで押し返したとしか……」
ホラントが言葉を濁す。そこには彼も疑問を持つようだ。
「ミシェリーを……ミシェリーを救える方法はあるのか?」
弱々しい声で、イリーナが1番知りたかった事を告げる。
逆に、それは1番聞きたくない事でもあった。
「何とか早まった侵食を元の早さに戻すことは出来た。だが完全には止められない。
  俺や、ここの設備では限界がある。もう1つの病院の方でも同じだろうな」
ホラントが残酷な事実を告げる。
その言葉に、イリーナは崩れ落ちた。
ルイスは平然を装うが、その顔にはしっかりと苦い物が浮かんでいた。
「……1つだけ希望がある。アウグスタの医療技術ならば、何とかなるかもしれない」
イリーナの目に希望の火が灯った。
「なら早くアウグスタへ連れて行こう! 今からポーターに頼めばすぐにでも……」
「待て、俺の話を最後まで聞け」
ホラントが今にもミシェリーを抱き上げようとするイリーナを止める。
ホラントはイリーナを落ち着かせるようにゆっくりと話した。
「お前はどうして今日この子が人狼化したか分かっているのか?」
「それは……」
イリーナが言葉を濁す。それはイリーナにとっても不可解なことだった。
「これは俺の考えなのだが、巨大な魔力の干渉によるものだろう。
 精神が不安定な時に付け入る隙ができ、そこに巨大な魔力が人狼の力を引き出した」
イリーナがはっとする。
その条件は、昼の出来事の状況にぴったりと当てはまるではないか。
死の恐怖が付け入る隙を作り出し、巨大グモの強大な魔力が人狼の魔力を覚まさせた。そう考えれば辻褄が合う。
「でもそれがどうしたんだよ」
「分からないか? ポーターの使うタウンポートは強力な魔術だ」
イリーナは再びはっとする。自分がどれほど冷静さを欠いていたかをホラントに気づかされた。
「すまん、少し興奮していたみたいだ。つまり、ミシェリーを助けるには自分の足でアウグスタに行くしかないってことか?」
「そういう事になるな……」
イリーナは、今は眠っているミシェリーの頬を撫でると、ホラントに向き直った。
「なら行くさ。ミシェリーが助かるならな」
「しかし侵食は続いている。それまでこの子が耐えられるかも分からんし、もう1度人狼化すればその時こそ彼女は崩壊するだろう」
それでもイリーナの表情は揺るがなかった。
「諦めるよりはいいさ。ミシェリーが目覚め次第、古都を出るよ」
そう言い、イリーナはミシェリーを抱き上げた。
ルイスが後に続き、2人は自分達の事務所へ向かった。

575柚子:2008/03/07(金) 01:35:17 ID:OhvuEEdY0
古都の街に夜が訪れる。
人々が眠りにつく時間帯。イリーナは、客室のソファに座り空を眺めていた。
近くで人影が現れる。
「恐らく明日には古都を出るのだろう? 寝なくて良いのか」
「ルイスか。人事みたいな言い分だな。お前も来るんだろ」
イリーナの言葉に、ルイスが不敵な笑みを浮かべる。
「まあな。あの娘についていれば面白い事に遭えそうだからな」
「ふん、勝手にしろ」
「それより面白い事実が分かったな。あの時の人狼がミシェリーだったとは」
「やめろ、その話は」
しかし、ルイスは話を止めようとはしなかった。
「偽善ぶり重要な所から目を背けたいのならいいだろう。しかし今は考える事があると思うが」
ルイスは残酷な訳ではなかった。
イリーナは、ルイスはルイスなりにミシェリーの事を考えているのだと分かった。
「貴様も分かっているだろうが、そうだとすると軍が動くことや盗賊共が狙うことも理解できる」
ルイスが朗々と述べる。
「ああ、だが疑問は残る。何故あの傷でミシェリーは生きていたのか。それにどうしてここに来たのか。
  それにどうやって盗賊共がこれを知ったのか、だ」
イリーナが指を折りながら疑問を並べていく。
「盗賊共に関しては、奴らは独自の情報ルートがあると聞く。そう考えれば他にも知っている盗賊がいるとも限らん。
  何せあれほどの魔力だ、喉から手が出るほど欲しいだろうな」
「他はどうだ、ミシェリーの傷は相当深かった筈だぞ」
それは分からないと、ルイスが首を振る。
しばらくの沈黙の後、イリーナが口を開いた。
「傷の回復は、あの魔力の力じゃないか? あの蟲共を見て思ったんだが」
イリーナは、人狼は魔力が尽きると人間の姿に戻ると聞いた事を思い出した。
そう考えれば、回復で魔力が尽き人間に戻ったと辻褄が合う。
「なるほど」
ルイスが納得し頷く。
「だが何故ここに来たかは分かりようがないな。お前はどう思う?」
知らないとルイスが首を振る。
この疑問ばかりはどうしようもなかった。
都合良く考えるなら、ミシェリーにも人狼の力の恩恵を受け、嗅覚が上昇し2人の匂いを覚えていたと考えるしかない。
そして記憶を失い訳も分からないミシェリーは、唯一残っていたイリーナ達の匂いを辿って来たのだ。
「考えるのはやめだ。ミシェリーの様子を見てくる」
話を切り上げ、イリーナが立ち上がる。
そのまま階段を上がり、部屋に入ろうとした時、ルイスが呼び止めた。
「貴様、やけにあの娘の肩を持つが、何か理由でもあるのか?」
「何だ、私に構ってもらえなくなって焼きもちか?」
「話の腰を折るな」
イリーナは急に黙りこんだ。それは、これ以上知る必要はないという否定の意思。
イリーナは扉の取手に手をかけると、小さく呟いた。
「お前には分からないだろうさ」
そう言い残し、イリーナは扉を静かに閉めた。

576柚子:2008/03/07(金) 01:36:46 ID:OhvuEEdY0
古都に朝が訪れる。
街が賑わい始めるにはまだ少し早い。そんな中、イリーナは目を覚ました。
まだ眠気が残っている。寝付きはあまり良くなかった。
ふと、隣から幼い寝息が聞こえる。
イリーナは、自分が昨夜ミシェリーを付きっ切りで看病していた事を思い出した。
そっと毛布を掛け直し、寝台から抜け出す。
1階へ降り、外にあるポストを覗くが、ギルドマスターのアメリアからの連絡は見当たらなかった。
イリーナはなんとなく調理場に向かい、朝食を作ることにした。
食料棚に手を伸ばした所で手が止まる。
イリーナは、ミシェリーが自分の作った朝食を美味いと言った事を思い出した。
それがつい昨日の出来事だとは到底思えなかった。昨日とのギャップが、イリーナの心を深く沈める。
一体どこから狂いだしたのだろうか。少なくとも、昨日あんな依頼を受けなければこんな事にはならなかった。
あんな依頼は断り、さっさと古都を出れば良かったのだ。
そうしていれば、こうなるどころか今日だって笑顔に溢れた1日を送れた筈だ。
「何を考えているんだ私は……」
イリーナは自分が典型的な駄目人間と同じ思考をしていることに気づいた。
なってしまった事はもう変えられない。それは世界の当然の条理。
それに、あのまま依頼を断っていてもミシェリーの細胞が侵食されていく事に変わりはない。
そうなっていれば、いきなりミシェリーが狂いだして自分達を襲っていたかもしれないのだ。
そう考えていると、階段から誰かが降りてくる音が聞こえた。
一瞬希望を込めて振り向くが、その期待は裏切られた。
「なんだルイスか。おはようって言って欲しい?」
ルイスはいつものように冷たくあしらおうとしたが、少し考えてから口を開いた。
「ああ、言って欲しい」
予想外の反応に、思わずイリーナは赤面する。
からかおうとしたら逆にからかわれてしまったのだ。
「お、おはようと、言ってやらんこともない」
震える声でイリーナはルイスに朝の挨拶を交す。
そんな様子のイリーナを見て、ルイスが不敵に笑う。
妙な空気が出来上がり、2人は沈黙した。

577柚子:2008/03/07(金) 01:37:46 ID:OhvuEEdY0
朝食が出来上がる頃、街にも活気が現れ始めていた。
朝食の暖かい匂いが部屋を占める。イリーナは食器を並べ始めた。
全ての食器が置かれ、朝食の準備が仕上がる。
イリーナとルイスが料理を囲み、無言で食べ始めた。かちゃかちゃと食器が擦れ合う音だけが響く。
「ルイスは野菜も食べなきゃ体に悪いってお母さんに教わらなかったんだね」
「幼少の頃は毎日が死と隣り合わせだった」
噛み合わない会話を時折交ぜながら朝食が進んでいく。
しかし会話は続かず、すぐに途切れてしまう。
イリーナがサラダを盛ろうと手を伸ばした時、階段の上から物音が聞こえた。
弾かれるように2人は階段を見上げる。そこには、幼い黒髪の少女が立っていた。
「ミシェリー!」
イリーナは急いで立ち上がり、階段を駆け上がる。
「ミシェリー、もう起きていて大丈夫なのか?」
「どうしたのイリーナ。何か変だよ?」
きょとんとした様子でミシェリーが答える。
イリーナはミシェリーが昨日の出来事を知らないことを思い出した。ならば悟られてはいけない。
徹底して自然な振る舞いをするしかないのだ。
「いや、何でもないんだ。それよりよく眠れたか?」
「うん! ばっちりだよ! でもなんだか昨日の事あんまり覚えてないみたい……」
「ミシェリーは怖がりだからな。気絶しちゃったんだよ」
イリーナは笑って誤魔化し、ミシェリーを食卓へ誘導する。
「うわー、いい匂い!」
「ミシェリーは甘い物が好きみたいだからな。昨日はたくさん報酬金貰ったし果物を多目に買ったんだ」
イリーナがそう説明している間にも、ミシェリーは早くも1つ目を頬張り始めた。
「うんうん。美味しいよ!」
頷きながらミシェリーが感想を述べる。
イリーナはそんな様子を暖かく見守るが、現実と向かい合い話を切り出した。
「ミシェリー、それを食べ終わったら外出の準備をしてくれ。すぐに古都を出る」
「どうして?」
「……君のお母さんの情報がアウグスタの街で見つかった。急がないと間に合わないかもしれないんだ」
「え、本当!」
ミシェリーは驚嘆と歓喜を足し合わせたような表情を浮かべる。
清純な少女の心を騙すことには心が痛かったが、ミシェリーを一刻も早くアウグスタへ連れて行くためには手段を選んではいられなかった。
「本当だ。私は先に買い出しに行ってくる。長旅だからな。ルイスと2人切りだけど大丈夫だよな?」
「うん、頑張る!」
「貴様ら、どういう意味だ?」
イリーナは先程の仕返しも踏まえて無視をした。
それから外套を羽織り、ミシェリーに見送られながら、イリーナは早速長旅の買い出しに出かけた。


「これでよしっと!」
どさりという重い音を立てて、荷包みが地面に置かれる。
「よくもこんなにも入れたものだ。女は荷物が多い」
「私は少ない方だ。この中には携帯食料やらが入っているからな。それより武具と着替えしか荷物がないルイスは原始人ですか?」
ルイスが持つ荷物は他と比べるととても寂しい物だった。
「ほら、男は荷物持ち」
「こんな時に限って女だと主張するというのか」
イリーナがどさどさと大量の荷物をルイスに持たせていく。ルイスは軽々と持ち上げると、カーペットに乗せた。
「準備は出来たし、そろそろ行こう。ミシェリー、私の後ろに乗り込め」
そう言われ、ミシェリーはイリーナの後ろ、ルイスの前に腰を下ろした。
「お母さんかぁ……。ちょっと怖い気もするけど楽しみだな」
「何せミシェリーのお母さんだ。ミシェリーに似て美人で良い人に決まってる。それじゃ行くとしますか、アウグスタへ」
応じるミシェリーの元気な掛け声と共に、3人はアウグスタへ出発した。

578柚子:2008/03/07(金) 01:38:59 ID:OhvuEEdY0
同時刻、古都王宮前。
その広大な庭園に、2人の人間が並んで歩いていた。
1人は白と黒の髪が混じった壮年の男。もう1人の方は大柄で鮮やかな青髪の、美貌を持つ男だ。
ふと、青髪の男が口を開く。
「無礼ながら……国王、何故このような重要な任に信用ならない人物らを雇ったのですか?」
「君が統べる聖騎士団を使う必要もないからだよ。それに私の部下は皆自分勝手でね」
壮年の男が苦笑混じりに答える。
そう答えた男は紛れもない、この国を統べる大陸中でも3本の指に入る権力者である古都ブルネンシュティグの国王だ。
「国王は私を買い被り過ぎです」
「そんな事はない。君はその若さでこの地位まで上がってきた実力者だ。いずれは私の近衛師団にも並ぶ逸材だと私は見ているよ」
国王から直接の誉め言葉を貰い、青髪の男は感動したように何度も頭を下げた。
国王は困ったように苦笑する。
「ほら、そろそろ着くよ」
「はい」
2人の向かう先の階下には小広い空間が広がっている。その中に、10人前後の人間が並んでいた。
しかし、その誰もが異なる服装、異なる武具を持っている。
国王と青髪の男が階段を下りていき、その団体の前で止まる。
国王が頷き、青髪の男が口を開いた。
「君達に集まってもらったのは外でもない、軍の極秘任務に助力してもらう為だ。成功の暁には約束通り莫大な報酬金を受け渡そう」
集まった人々にそれぞれ欲深い笑みが浮かぶ。
「自己紹介が遅れた。私は国の正式軍隊、聖騎士団隊長のヘルムートだ。
  そしてこちらのお方が、彼の有名なこのブルネンシュティグの国王様だ」
ヘルムートと名乗る男の発言に、集団の間で騒めきが起こる。
その反応だけで、国王はもちろん、ヘルムートの偉大さが見て取れる。
ヘルムートは咳払いをし、騒めきを静まらせた。
「これから君達は私の元で動いてもらう。では、その任務について説明しよう」
そう言って、ヘルムートは説明を始めた。

「……これで終わりだ。意見の有る者は?」
説明をやり終え、ヘルムートが周りを見渡す。
誰も意見の有る者がいないことを確認すると、ヘルムートは全員に告げた。
「では各個人、目的地へ散開!」
ヘルムートの号令と共に、それぞれの傭兵が各地へ散っていく。
「では私も向かいます」
ヘルムートが、記憶した座標へ瞬時に移動出来る魔石のクリスタルを取り出す。
「健闘を祈るよ」
「はい!」
最後に国王に頭を下げ、ヘルムートは光と共に消えた。

579柚子:2008/03/07(金) 02:05:23 ID:OhvuEEdY0
びっくりするほど説明口調! みなさんこんばんは。
明日(実質今日)から家をしばらく離れるので早い投稿となりました。
ログ流し気味すいません……。

ちなみに前回のクリーパーやクモ。あれは私の妄想です。
実際会ったことすら……。本物はかなり小さいのですかね。

>黒頭巾さん
おお! 感想ありがとうございます!
やはり感想をもらえるとモチベーションが上がりますね。感謝感謝。
そして剣士君の物語。これも面白かったです。
表現や台詞が実際のRSをよく表していてとてもリアルに感じます。
銀行の描写ではなるほど、と思いました。
そして戦士に転職したもオチがなんとも……。
実際こうなのでしょうね。

>したらば初心者さん
初めまして。柚子と申します。
プロローグの入り方。そして旅立ちの雰囲気と言いますか。
何だかとても自分好みの匂いがします。
まだ名が明かされていない「私」にこれからどんなことが待ち受けているのだろうとワクワクしながら待っています。
王道ですか。主人公が仲間を連れて旅に出る。
これだけで自分は満足だったり。
それと村の名前……新マップなど全く知らない単語がorz

>R310さん
続編待っていましたよ!
てるみつ君……なんていい奴なんだ。
借金返済は遠くなりそうですがいつかまた復活できるとよいですね。
そしてまた知らないアイテム名orz
課金アイテムはどんどん増えているのでしょうか。
オチのブルーノ君、あんた……。この騙されやすさはある意味天然ですね!
てるみつ君が遠い……。
それと感想ありがとうございます。
戦闘シーンは苦手なほうなので誉めてもらえると嬉しいです。
妄想って楽しいけど疲れますよね。

580 ◆21RFz91GTE:2008/03/07(金) 02:12:56 ID:ZAmwz8o20
////********************************************************************************////
  ■◆21RFz91GTE:まとめサイト(だるま落し禁止)
  ■ttp://bokunatu.fc2web.com/trianglelife/sotn/main.html
  ■Act.1 アレン・ケイレンバック >>44-45
  ■Act.2 少女 3 >>65-67
  ■Act.3 少女 4 >>87-90
  ■Act.4 レスキュー? >>173-174
  ■Act.5 蒼の刻印-SevenDaysWar- >>206-208
  ■Act.6 緑の刻印-SevenDaysWar- >>220-221
  ■Act.7 白の刻印-SevenDaysWar- >>222-223
  ■Act.8 紅の刻印-SevenDaysWar- >>272-273
  ■Act.9 封印された九つの刻印-SevenDaysWar- >>426-427
////********************************************************************************////

581 ◆21RFz91GTE:2008/03/07(金) 02:13:40 ID:ZAmwz8o20
Act.10 封印された九つの刻印2-SevenDaysWar-



 「刻印…全て開放されて無いんだろ。」
「…何故刻印の事を?」
北風が吹く西門の丘に二人の男が居た、一人は黒い衣を纏、腰には二つの剣が納まっている。全身黒尽くめで帽子を被っている。左目の所に切れ目がありそこから覗くように見える眼。隣には茶色い肩辺りまで伸びている髪の毛に青い瞳、首には茶色のマフラーを巻いてその上から蒼のローブを羽織る男性。
「あの時のレイブを見てさ、本来レイブは九つの力を自在に操る剣技。炎、風、雷、光、闇、風、氷。そして無の八つの魔法を使う高等技術、あの時炎と風、そして無の開放は分かったが残る五つの刻印がまだ封印されている、そう思ったんだ。」
「…。」
黙ったまま右手でグルブエルスを鞘から引き抜くとそのまま地面に付きたてた。同じようにツインシグナルを取り出して付きたてる。
「鋭いな、流石英雄と呼ばれるだけはあるな。」
「呼び名は嫌いだが、ありがとうとだけ言って置くよ。」
再び風が吹く、上空に響く轟音にも似た風の音は地上に居ても響くほどの音だった。その音と古都の宴会での賑やかさで聞こえが良いと言うほどの物ではなかった。
「誰にも気づかれずに出れると思ったのだがな…、決戦の朝には戻ろう。」
「残りの刻印を開放しに行くのか?」
「あぁ、今のままでは分が悪い。」
アデルの周りにゆっくりと風が集まってきた。先ほどから吹いている突風はアデルが集めたものだった。ゆっくりと地面から足が離れて行くと一度だけ完全に空中に浮いた。
「アレン、お主にまだ話してい\なかった事がある。」
「…ん?」
ゆっくりと振りむいたアデルが眉間にしわを寄せていた。
「本来刻印と言うのは誰にでも有る物だ。それが何故だか分かるか?」
「…。」
「有終以来、様々な進化を遂げてきた我らだが…それは何も人間だけの物では無い。植物、動物、ありとあらゆる物に刻印は存在する。先に述べた八つの刻印とは別にもう一つの刻印も存在する。」
「…もう一つの刻印?」
ポケットからタバコを取り出して火をつけた。強風のなか風をコントロールして自分の周りだけ無風にさせる、それから何時ものように指を弾いて人差し指の先端に炎を付ける。
「主観となる刻印は全部で八つ、だがそれ以外にも誰もが持っている封印された刻印が存在する。それは絶対の力となり、絶対の絶望となる刻印だ。」
「”封印されし九つ目の刻印”…俺に何が言いたい。」
「我もその刻印を開放する事は出来なかった、キメラ故なのかもしれない。だがアレン、お主なら開放できる。九つ目の刻印が開放されたとき…そこにはお主の望む世界が待っているだろう。」
一度タバコを深く吸い込み目を閉じた、煙を吐き出しながらアレンの口元は次第に微笑を増してきた。

582 ◆21RFz91GTE:2008/03/07(金) 02:14:04 ID:ZAmwz8o20
「分からないな、何が言いたいのか…そもそもそれを俺に教えてどうする?お前は一体何を望む。」
「今は分からずとも良い、時が来れば分かる。」
「…。」
一度だけ、たった一度だけアデルは絵顔を見せた。その笑顔はとても微笑ましく、そして爽やかだった。その笑顔の裏側には何があるのか、今のアレンには見当も付かなかった。
「我は嬉しいのだ、千年の時を超えて主らに会えた。生きるという希望を失ってからと言うもの我の存在意義はアレを討伐するだけの物となっていた。忌み嫌われ、恐れられ…鬼の末裔とまで言われた古き人―それが我だ。そんな我をお前たちは必要だと言ってくれた、そしてこんな気分は人を捨てたとき以来久し振りなのだ。」
「…。」
「封印されても尚人間と接触し、そして神のようにお主等人間を見守ってきた。それ故にお主が知らぬ事も知って居る。」
笑顔のままアデルはゆっくりと浮上して行く、ゆっくりとゆっくりと浮かび上がってアレンの頭ほどまで浮くとそこで止まった。
「そもそもどうやって刻印の封印を解くつもりだ?」
タバコを咥えたまま仰ぐ、その問いにアデルの顔からは笑みは消え険しい表情へと変わった。
「我と同じように封印…いや、歴史から抹消された一人のネクロマンサーが居る。そいつなら我の刻印も解いてくれるだろう。」
「もし、会えなかったら?」
「…。」
アレンはタバコを右手に取って口から煙を吐いた、次に何も無い空間からブリューナックを取り出すとそれを地面に突き立てる。
「その時はこの槍の力を開放するしかないか、あまり載り気じゃない話だな。」
「…すまない。」
「謝る事は無いさ、そう言う時のための「保険」だ。」
二人はまた絵顔を作った、そのままアデルは向きを変えて地面に突き刺さっている剣に向かって両手の平を向ける。すると剣は振動を起こし勢い良く地面から飛び出してアデルの手の平に収まった。そのまま鞘に戻して帽子を深く被った。
「行って来る…。」
そ言うと同時に轟音が鳴り響いた、まるで大量の火薬に火をつけた時のような音にも似ている。その音と共にアデルは北西の方角に飛び去っていった。
「気を付けてな…。」
アデルの姿が見えなくなったところでアレンはそう呟いた。



Act.10 封印された九つの刻印2-SevenDaysWar-
END

583 ◆21RFz91GTE:2008/03/07(金) 02:33:00 ID:ZAmwz8o20
激しくお久し振りですヾ(´・ω・`)ノ
最近親戚に不幸が立て続けに有ったためリアルで死んでました|li:l|;|orz|l|i:|l|


さて、コメ返しです
>>429 :◇68hJrjtY様
幼女二人でギルド側は全員揃いました、後は前日と決戦当日になります〜。
あの子のロリコン具合は実は執筆主うけうr(うわなにするやめr

>>441 :名無しさん
指摘どうも

>>444 :FAT様
真冬の寒空の中外でドンちゃん騒ぎ…酒冷えてて美味いだろうなぁ(ぁ
刻印刻印って騒いでますが、そんな大したもんでも無いですヾ(´・ω・`)ノ
ほらあれですよ、くぁwせdrftgyふじこ(ry

>>475 :白猫様
でっかい武器最高ですよ~ヾ(´・ω・`)ノ
完全なオリジナルの話になるのですが、主人公の持っている武器は横幅30Cm、柄から剣先まで3Mとか
無駄にデカイ武器持たせてたりしてますヾ(´・ω・`)ノ
両手に鎌…戦国バサラを思い出したのは内緒ですヾ(´・ω・`)ノ
話は変わりますが、鎌を使用する登場人物って珍しいですよね。
もう20年以上前の話になるのですが、房総里見八犬伝の実写映画で登場する主人公が
両手に鎌を持っていたのを思い出しました、残念ながら普通の大きさですorz

>>478 :メイトリックス様
短編の話ですが、ヴァルキリープロファイルってゲームの「素敵でかっこよくダンディー」(ここ重要)なキャラを参考に
させていただいてます。
え?もちろんちっちゃい女の子も好きです(うわなにするやめr

>>497 :したらば初心者様
ファンだなんて…ありがとう御座います(ジャンピング土下座
他の方もおっしゃる通り簡単にお読みいただければと思います。全部目を通したらエライ時間掛かりますよ(笑
思えばこのスレ…最初は短編オンリーだったなぁ…(遠い目

>>538 :黒頭巾様
( ゚∀゚)○彡゜ 幼女!幼女!
ありがとう御座います、やっぱりちっちゃい女の子にセクシーでダンディーなおじ様は付き物です(ぉ
違うんです、うっかり紹介してなかったミトは確かにGJかも知れませんが
俺が出さなかっただけなんです、むしろ忘れてただけなんです(ぁ
因みに片方は投げ槍、片方は斧槍装備です。ちっちゃい女の子に無愛想な巨大な武器…ハァハァ(自重

さぁって、今日から遅れた物色々と埋めて行きますよ〜。
同時の俺も土に埋まりたいところですヾ(´・ω・`)ノ

別件:所属ギルド(自己創設)が三周年とっぱしましたヾ(´・ω・`)ノ

584ウィーナ:2008/03/07(金) 09:50:22 ID:gkY.Fofg0
白い鳥と黄色い花

プロローグ >>301-303
1話 夢のFelt-tipped marker(サインペン) >>310-312
2話 Disguising as a woman(女装) >>316-320
3話 Facing(対面) >>454-459
4話 イクリプス >>526-531


5話 幻想の闇

「私は何だって言うの?
「あなたは誰?」

月舞のケルビーに跨り、致命傷ではないが、右足の火傷の跡から吐き捨てる様に視線を逸らす。
もう時は夜明け。その薄明るい闇にニナの声が響く。
風の音が耳からはいり、轟音を立ててる様に聞こえる燃える町。
月舞によるとフェレスを含め下界からきた悪魔達は夜が明けると此方の世界では行動できないらしい。

「私は人じゃないの?悪魔なの?」
「………。」

町から逃げてから1時間経つころ、月舞は一言、こういった。

「貴女も私も"いまはもう悪魔ではない"」

意味有りげの言葉は、ニナの頭の中で駆け巡った。
いまはもう。
ということは、昔はどうだったのだろうか?
自分はラミアという悪魔で、目覚めると下界とこの世界を滅ぼす、とでもいうのだろうか

「貴女が笑うと不幸が降り注いだでしょう?」
「………ッ!」
「周りが暗い闇に包まれるでしょう?
「貴女は…いつか、この世界を滅ぼす者となるかもしれない。
「それは、1ヵ月後か、1年後か、10年後か、100年後か、もしくは目覚めないかもしれないけれど
「…目覚めなければいいんだけどね。」


そして私たちは古都でWhite roseというGを作った。
月舞が女神様の使いとしったのは、それから少し経った日。
表面ではただの賑やかGだけれど、このGにはたくさんの謎がある。
それは…

585ウィーナ:2008/03/07(金) 09:51:00 ID:gkY.Fofg0
「ニーナ!ただいまー。」

そのとき、月舞の声が玄関から響いた。
ニナはソファに座ったまま、ふぅ、とため息をついた。

「一人で居ると碌な事がないな…」

もう刻時は夕方、情報収集をした3人は、本や、メモなどを山ほど持って帰ってきた。

「で、何か見つかったの?」
「まずREDSTNEは真紅の石…偽のREDSTONEというか、ある科学者が作った石と
「共振反応を放つこと。」

本を捲りながら説明する。

「科学者の名前はアレク・フォング。
「50年前、REDSTONEに不審反応が起きたとき、真紅の石を作り、平常にした。
「その石は封印されたとしてるの。
「その場所は…」

月舞はテーブルに地図を広げた。
そして、その一番高いところに指をさす。
呪いを受けたミズナの洞窟…

「馬路、ですか」

500過ぎでも死ぬことがあるミズナ…
倒せ?無理に決まってるだろう!

「そんな凄い所に平然な顔して行こうとするなんて、実に月舞らしいな」

アルビは嫌みを言うときですら口調がまったく変わらない。
故にこそ、彼の言葉に裏表がなく、信用できるのだが。

大きな模造紙に、何かを書き込んでいく月舞。

「おい、これはなんて書いてあるんだ?」
「ミズナ討伐!だっいさっくせーん」
「伐が代になってるぞ」

指摘された伐の字に棒をつけ"足していく"

「…これじゃ我じゃないか」
「え」


ミズナ討伐の朝。
メンバーは6人。
月舞、ニナ、メアリー、アルビ、TJ、そして灰色のロングコートを着たウィザードが一人。

「誰?」
「白薔薇のメンバーさん!」

ウィザードは長い髪を耳に掛け、小さくお辞儀をする
mionと刻んである裾を摘み、

「私は…魅穏と申します」

と、薔薇を背負ったウィザードさんは名乗った。

「みょんちゃんはね!めずらしー女ウィザードだよ」

月舞は背の高い女性に抱きついた。
女性は右手で月舞をぽん、ぽん、と撫でた。

「みょんちゃん…」

メアリーが魅穏さんを愛おしそうな目で見る。
メアリーと月舞って似てる…

まぁ、なんだかんだでミズナの洞窟。
ここも飛ばしてしまえ(

586ウィーナ:2008/03/07(金) 09:51:32 ID:gkY.Fofg0
「…いくの?」

月舞は奥へ進むことを嫌がった。
アルビが連れて行こうとすると、

「ねぇ、なんだか雰囲気おかしくない?」

ミズナの部屋の異変に気づいたのは、メアリーだった。
確かにおかしい。
ディープウィドウは討ち果てたまま。
そして冷え込む様な冷気

「…ちょっと奥行ってみましょうか」

部屋の一番奥まで進む、すると

「…これ、は」

そこには、討ち果てたミズナが、と大量の液体を流しながら…
此方を振り返った。
だが、その瞬間紫の粒子になり…

「…ッ!」

息を呑む6人の前に、悪魔が現れる。
そう…

「私の名前はフェレス・B・ロイ
「お会いできて嬉しいわ。」

紫色の髪を靡いた悪魔だった。


「ニナ…貴女に全部、思い出させてあげる」
「何を企んでる、お前」

何もしらないアルビはフェレスに唾を吐くように睨み付ける。

「なぁに、貴女…自分の立場考えなさ…」
「ッ…?!」

驚愕は2人…アルビとフェレスの物だった。
アルビは心臓を押さえ、フェレスは頭を抱えた。

「あ…なた、何者…!?」

それは紛れもなく、REDSTONEと真紅の石の共振反応。
小さな頃、心臓を穿たれ、もう二度と動くことのないはずの骸となったアルビに使われたもの、
それはREDSTONEではなく、真紅の石だった。
…そう、祖父はフランテルのアレク・フォングと同一人物であった。
時も空間もまったく違うが、あの鏡を通して来たらしい…

587ウィーナ:2008/03/07(金) 09:53:24 ID:gkY.Fofg0
痛みも慣れ、フェレスが立ち上がる

「あなた…
「…ふふ…お前は糞爺の家族なのね…」
「アルビ…?」
「お前の力を引き出してあげる…」

紅い双眸が怪しく光った瞬間、紫色の粒子がフェレスの周りに集まってくる。

「おいで─イクリプス!」
「!?」

眩い光輝の只中から異形の武器が出現した。
手のひらサイズの長柄の先に、5フィートはあろうかという炎を取り巻いた紐が姿を顕わす。

「な…」

極大のウィップだった。
全体に仰々しいオカルティックな装飾が施されており、柄部分を除き色は黒に近い濃紫。
さながら悪魔が世界を滅ぼすのにもってこいな外連味たっぷりの禍々しい威容が、
細腕の先で煌いていた。

「ほうら、ちゃんと避けてよ?」

フェレスは巨大なウィップを片腕一本で無造作に振り回し、軽い紐でも振るような調子で一旋する。
アルビは脊髄が凍結したような錯覚に襲われ、

「……っ!?」

咄嗟に飛び退いた。が、
確かにかわしたはずなのに、アルビの身体の側面に強い熱さを感じてよろめいた。
フェレスが振るった異形の鞭が発生させた紫の粒子が、暴風と化して吹きつけてきたからだ。

「かはっ」

致命的な隙を見せてしまったアルビは、もう一度、振りかぶる鞭を避けることが出来なかった。
だが、TJのコルで攻撃はかわした。

「…一対六ってずるくなーい?
「まあ、いいけどねっ」

と、数十メートルある距離から鞭を振り回す。
そこから巻き起こる突風が身体に打ち付けられる。
そして、一気に距離を縮め、メアリー目掛けて鞭を振るう。
だが、そこでフェレスの手が止まる。

「…あんた、ここで何してるの?」

メアリーは疑問符を浮かべる。
どういうことだろうか…?




風邪に悩まされ、咳をすると誤字たくさん!
だしながら打ちました…w
さぁ、フェレスが呟いた言葉の意味はっ
やはりメアリーが関係あるのかっ
アルビは何者だ!

こんなそんなで続きます・・・

588ウィーナ:2008/03/07(金) 10:21:31 ID:gkY.Fofg0
コメント返し
>◇68hJrjtYさん
2人というよりニナの仇さんかな!
月舞はぴっかぴかのていまーさんだと思わせて実は結構熟年テイマしゃん(*´ω`*)
歳?禁止事項です☆(ちょ

>黒頭巾さん
あの一行は"女神様捜索許可証"
と書かれていたのですw
きっとアルビはそんな文字みてもおかーさまと会ったでしょうが
月舞ちゃんは新しいシーフさんなら探知能力たくさんふってもらえれば女神様が探せれるかも!
とおもったので消しといたのです(
さて、メアリーちゃんは女神さまなのでしょうか!w
確かにメアリーのステッキの一部には赤い石の装飾がありますが…w
月舞ちゃんは悪魔ではないのです!
だがテイマーでもない・・・
ヒントは月舞とメアリーの性格が似ているところ。
これだけでもネタバレですね!w

>之神さん
えええ
こんな糞文体が素敵ですと…
お世辞ありがとうございます!w
ニナちゃんはクロサギの映画予告みてて思いつきました(
というよりぱくりですね・・
応援ありがとうございます!
被りごめんなさい<(_ _)>


もうネタバレ豊富ですが…
次回は意外の意外なストーリー。
実は○○は○○じゃなく、○○だった!
そして、お話は急展開

○○を適当に当てはめて遊んでくださいな。

例(あくまでも例です。本気にしないでください

メアリーは女じゃなく、男だった!(



ではではー。+゚((ヾ(o・ω・)ノ ))。+

589◇68hJrjtY:2008/03/07(金) 19:45:03 ID:LLGcTyJI0
>白猫さん
エリクシルへまた一歩近づいた第十五章、読ませてもらいました。
著者カナリア以外では現時点でリレッタと長老のみが知る「エリクシル第四段階への移行の実態」。
ネルも薄々気がついてるのかもしれませんが…。あのスマグでの第二段階発動の時のネルの変貌ぶりが邪道解放とすると、
ネルにはまだ越えなければならない壁があるということですね。色んな意味で。
そしてネルの妹である「セシェア」と、ルヴィラィの傀儡である「セシェア」…これが単なる同一人物とは思えません。
アネットの協力も何とか(?)望めるようにはなりましたが、夜陰に乗じる二つの影。まだ安息はできませんね。続きお待ちしています!
---
やっぱり白猫さんはアクロバティックな戦闘シーンが十八番なんですね(笑)
逆にそういうシーンは不得手な私はただ尊敬するばかり。もっと言えば魔法対戦みたいなのも苦手ですけど!(死
でもカリアスさんは戦闘面以外でもあの関西弁でじゅうぶん存在感ありますし、バランスが取れてるのかもしれませんね(*´ェ`)

>R310さん
後編執筆、そして完結お疲れ様です!
ブルーノのお人よしっぷりとてるみつ君の消滅時のセリフに悶えてます(ノ∀`*)
てるみつ君とブルーノだけの話からセレスト・クルセイダーというひとつのギルド全員を巻き込んだ感動と笑いの物語。
しかしピン差のどこでモールのアナウンスが折角の場面を台無しに…いやこれも面白いですけど(笑)
お金稼ぎ道中は気になさらず!むしろそっち主軸にしていたらてるみつ君が浮き上がってこないですしね。
いや違いました、お金稼ぎ道中は今もまだ続いてるようですからね(笑)
また気が向きましたら是非とも小説UP、お待ちしていますよ。

>柚子さん
ルイスの「おはようって言って欲しい」発言に戸惑ってるイリーナがカワエエ(*´д`*) っと、こんばんは68hです。
ミシェリーの実態について明らかになった途端のアウグスタへの大移動。
無課金ライフでも古都→アウグの徒歩移動はちょっと遠慮したいですね!
しかしミシェリーの無邪気さがとても見ていて悲しいです。何も知らない彼女が人為的に殺されるのは避けたいところです…。
そしてイリーナたちの移動開始と同時に、古都の方ではヘルムートなる騎士たちが謎の任務に。
やはりミシェリーと関係があるのでしょうね。イリーナたちの道中、無事では済まなそうです。続き、お待ちしています!
---
妄想の中のクリパと蜘蛛だけであそこまで書いちゃった柚子さんに改めて敬礼!

>21Rさん
「誰もが持っている九つ目の刻印」。アデルの語るこの言葉には深い意味が隠されている気がします。
アデルのキメラとしての身体では解放できないということは、全ての人間が持っているこの力がキーワードになっていそうですね。
単独で他の刻印を探しに出かけてしまったアデルさんですが…決戦の日に間に合うようにとの彼の言葉が成就されて欲しいです。
今の彼にとって最強の敵はきっと方向音痴なんでしょうけど!(笑)
アデルの安否を心配しつつ決戦を楽しみにしつつ、続きお待ちしています。
---
おぉ、VPに出てきた「素敵・カッコイイ・ダンディー」なキャラって色々思いつくわけですが!
も、もしかしてガノッ○!なんとなく違いそうですけど個人的にはあの人VPで結構好きです(ノ∀`*)
「首をかききられる覚悟はできているのであろうな?」ヾ(´・ω・`)ノ←真似 インテリヤクザ万歳。

>ウィーナさん
女ウィザードのみょんちゃんが加入ヽ|・∀・|ノ 女WIZって妄想すればするほど実装して欲しいひとつです。リトルウィッチは居るけどさー。
そしてミズナKOEEE!あそこも冒険しに行って死因不明で終わった場所のうちのひとつですよ!モリネルも入口のローディング中に死にましたが…。
しかしそんなミズナをいとも簡単に屠ってしまうフェレス…アルビの祖父との繋がりが遂に暴露されてしまいましたね。
いきなり力の差を見せ付けられたアルビたちですが、せめて互角状態へ導くことはできるのでしょうか。
アルビの謎やそもそもの赤い石のこと、そしてアレク・フォングと同一人物だったアルビの祖父がしてきたこととは。
続き楽しみにお待ちしています。
---
実はTJは男ではなく、女だった!(違うってか色んな意味でダメ!

590之神:2008/03/08(土) 09:54:38 ID:/RjtWctQ0
1章〜徹、ミカの出会い。
-1>>593―2 >>595―3 >>596-597―4 >>601-602―5 >>611-612―6 >>613-614
◆――――――――――――――――――――――――――――――――――――◆
2章〜ライト登場。
-1>>620 -621―2>>622―○>>626―3>>637―4>>648―5>>651―6 >>681
◆――――――――――――――――――――――――――――――――――――◆
3章〜シリウスとの戦い。
-1>>687―2>>688―3>>702―4>>713-714―5>>721―6>>787―7>>856-858
―8>>868-869
◆――――――――――――――――――――――――――――――――――――◆
4章〜兄弟
-1>>925-926 ―2>>937 ―3>>954 ―4>>958-959 ―5>>974-975
◇――――――――――――――――5冊目―――――――――――――――――◇
-6>>25 ―7>>50-54 ―8>>104-106 ―9>>149-150 ―10>>187-189 ―11>>202-204

◆――――――――――――――――――――――――――――――――――――◆
5章〜エリクサー
-1>>277 ―2>>431-432―3>>481-482―4>>502

◆――――――――――――――――――――――――――――――――――――◆
番外

クリスマス  >>796-799
年末旅行>>894-901
節分  >>226-230
バレンタインデー>>358-360 >>365-369
雛祭>>510-513
◆――――――――――――――――――――――――――――――――――――◆

591之神:2008/03/08(土) 10:24:26 ID:/RjtWctQ0
β

「おかえりー」
「ああ…ただいま。どうミカ、調子は」と言い、徹はドサっと本を置いた。
「そんな、1日ちょっとじゃ変わらないわよ…、で…その本は?」古い本から、新しい雑誌まで…10冊程か。
「いやぁ…錬金術がどうこうって言ってたじゃん?それで、ずっと寝ててヒマだろうし、本借りてきたんだよ」
「ああ…ありがと…」
「それにしても、何で錬金術なんて?」徹は持ってきた本をパラパラとめくりながら、私へ聞いた。
「うーん、もしこっちにその文化があるなら、薬を作って早く傷を治したいなぁ…って」
「そうか…まぁ、無理しなくても薬塗って包帯して、安静にすれば平気…だと思うけど」

「まぁ、そうなんだけどね」

κ

「うーん、うーん、偵察っていってもなぁー…何すればいいんだろー」

エトナはアルシェに言われた通り、ミュリエ・ジュールの周りを徘徊していた。
「退屈だよぅ…どうせアルシェがパッパと終わらせちゃうのに…」あたしは高いビルを見上げ、ため息を吐いた。

ホッホッ

「何か面白い物、無いかなー…」

ホッホッ

「退屈で死んじゃぅ〜…」あたしは大きなビルの角を曲がった、時。


ドンッ!


「痛ったーい、もう!ちゃんと前見なさいよう!」ぶつかった男に向かって、あたしなりの暴言を吐いた。
「ああ、ゴメンっ!ちょっとジョギング中でさ!キミも一緒に走らない?」青い髪のその男は、ニコニコと快活に笑いかけた。
「ちょっとー、何でいきなり走る話になるのよー!」
「ええ?走ると体力つくよ?楽しいよ?」
「あたしは今、任務中なのっ!」
「そうかーっ、大変だねぇ。でも、任務は大声でアピールするものじゃないよ?」と、的を得た指摘が来た。ただのおバカじゃ無いみたいねぇ…。
「うーん、そうねー」
「ところで、さっきからキミ笑ってないよ?何かあったの?」元気だなぁもう!
「退屈なの…ヒマで仕方ないの…」
「任務なのにヒマなの?」
「違う!だから…退屈な仕事なのっ!」
「じゃあ、一緒に俺も手伝うよ!?2人なら、話も出来て退屈しないさっ」ジャージの男は、背の低いあたしの肩をポンポン叩く。痛い…。

「一緒に…いいけど、貴方何者?」すると男は…


「剣士!」と、ガッツポーズを決めた。

γ
「さって、そろそろ準備するかね…」俺は進入のために、小道具を揃えることにした。

「んーと、ナイフに…ワイヤー…ミラー…煙幕と…えーと」
道具をベルトにくくりつけ、次第その姿は作業員か、泥棒かどちらかの姿へと変貌した。
忘れずに、酒も鞄に詰める。
無線機での連絡になるため、フィアレスの指令はいつでも聞ける。俺は万全の体制で、残りの数時間を待つことにした。

「おい…俺だ、ライトだ。残り数時間だが…その時間に行けばお前が指示するんだろ?」ヘッドホンのような形のスピーカーから、幼い声が聞こえる。
「はい、準備ができましたら、車でお送りしますよ…」
「車?あの鉄の塊か?」
「ええ、まあ、流石にスピードが出るのでね」
「んじゃ、酔わない程度に酒でも飲んで待ってるわ」
「了解」
ブッと音がして、無線は切れた。

592之神:2008/03/08(土) 10:50:55 ID:/RjtWctQ0
λ

「シリウスさーん、もう閉館ですよー?」
「何!?勝手な書庫だな…自分勝手に休むとは…」
「いやぁ、違いますよ。もう終わりなんです。本借りて帰ったらどうです?」
「借りるのか…わかった、私はこの本を持ってもう帰るが…貴様は?」
「私はもう自宅に戻りますよ。特にすることもありませんけど」と、私はシリウスに背を向け、さっさと帰ることにした。

「おい、ちょっと待ってくれ」
「はい?まだ何か私に手伝わせる気ですか?」
「…え」
「ん?」
「家に、連れて行ってくれ」負けたような顔をして、シリウスは言った。

「えっ?何で私が貴方を?というか、何しに来るんですかっ?」
「私はこっちに着てから宿屋をとっていたんだが…追い出されてしまってな」
「何したんですか…」
「生意気な輩を、我が劫火で脅かしただけだ」
「…その程度でスキルを乱発しないで下さいよ…」
「まぁ宿でそういう事をしたのだ。それで追い出すとは、小さい店主め…」


貴方も小さい男ですけどね。

「わかりましたよ…ウチの部屋、玄関の近くの部屋がカラッポですから…そこ使ってください」
「ん…貴様、優しいところもあるじゃないか」
「ナッ…!貴方見てますとねぇ!こっちがハラハラするんですよっ!もう、じっとしてて下さい!」
「貴様、私がいつ不安に…」
「あら?そんな事言ってると泊めませんよ?」
「くっ…」


κ

「へぇー、それで、キミはそこのメンバーなんだねっ!?」
「うん!もうそこのアルシェっていう先輩がパシらせるから、私退屈でー」
「いいんじゃない?キミが先輩になったらコキ使ってやりな!部下を!」
「いいね!頑張るよ私!」

「ところで、このビルを回るのは何の意味があるの?」
「うーんと、そのアルシェって人の命令でね、明日に進入するから、その為に確認してるの!」
「ふーん、この大きなビル、なんてとこ?」

「ミュリエ・ジュール!そこからエリクサーを盗るのよ!」
「あっ、そこ俺も明日行くんだよーっ!」
「へぇー、奇遇だね!」


β

「これっ…」
「ん?どうしたの?」
「エリクサーの研究って…しかも飲料の会社…!」
「なぁ、エリクサーって何なのさ?」徹は首をかしげて聞いてくる。
「うーんと簡単に言うと…飲むと不老になる」
「へー、そんなすごい研究してるのか…」

「うん…でも」
「でも?」

「これが完成したとして、世界にもし広がったら、世界のバランスがおかしくなる…」

593之神:2008/03/08(土) 10:56:58 ID:/RjtWctQ0
こんにちWA

えー、まず元気×元気(バカ×バカ)。
アノ剣士とエトナは馬が合ってか、べーらべーらとしゃべってます…。

そしてシリウスがシルヴィー宅へ同居の願い。うらやましい奴め!

ライトは準備万端ってトコですかね。やっぱシーフはルパン連想しちゃうヨ(・ω・

ミカはエリクサーによる被害を危惧。ちょっと話が展開してきますた(´∀`*

まぁたチマチマと書いていきます。

594ESCADA a.k.a. DIWALI:2008/03/08(土) 11:04:58 ID:m9.8MgE20
Side Episode / Overture Ⅱ:Gran Bleu 〜深海の天使の子〜


・・・何も・・何も見えない・・・・・恐いよ・・・助けて・・・・死にたくないよぉ・・・助けて、ミゲルっ!!!


どれ位の時が経っているのだろう、少女の目に映るのは闇だけの黒い無の世界・・・彼女はその前に怯え続けていた。
しかし目には映らずとも、肌に触れる感触がとても心地よいものだというのは理解できていた・・・水、この上なく綺麗な水。
生まれたままの姿の自信を優しく包む、どこか懐かしいその感覚に少女はふと思った。

・・・わたし・・・生きてるのかな・・・・水が、とても心地いいの・・・スウェルファー、聞こえる・・・・?

心の中で、少女は相棒の召喚獣の名を呼んでみた。自身を包む水のように、優しく温かい声で・・・

「聞こえるよ、ニーナ。君はまだ死んでいない・・・さぁ、勇気を持って目を開けてごらん。恐がらないで・・・」

友の声に導かれるまま、ニーナは恐る恐るその目を開く・・・そして目の前には蒼い光景が広がる。
少女が体で感じたとおり、裸のままの彼女を包んでいたのは汚れなき深海の水だった。だが、そこは完全に海の中ではない。
透き通る水の向こうに何かが見えた・・・まるで神殿のような純白の建物、そして彼女を見守るかのような巨大な影が。
もっとよく見てみようと、彼女は何年かぶりに体を動かしてみた。向こうのものがよく見えるまで泳ぎ続ける・・・ゴツン!
「ふゃっ!?!・・・あぃたたたたたぁ〜、何かにぶつかっちゃったぁ〜・・・はうぅ〜、ガラスなのかな??
 ・・・って、何で水の中なのに喋れるの!?しかもわたし水中でちゃっかり息しちゃってるよ!!?!何でぇ〜!?」
ぶつかった透明なものに手を伸ばしてみる・・・確かにガラスだ。そしてその音に気付いたのか、周りにいたマーマンらが
何事かと彼女のいる巨大な水槽の下へと集まってきた。だが、彼らには邪悪な表情はなく、彼女の目覚めを心から喜ぶような
温かな笑みを浮かべていた。しかし、いきなり現れた大勢のマーマンを目にしたニーナは驚いて水槽の隅っこへと逃げてしまう。
「いやぁああぁぁぁああ!!?!わわ、わたしなんて食べてもおいしくないですよ〜!?あ、別にエッチな意味じゃないんですよ!?」
水槽の隅で丸くなりながら片腕を振り回す彼女だが、そこにスウェルファーが付け足した・・・
「あのねニーナ・・・ゴニョニョ」「・・・ふぇ!?えとえとえと、それじゃこのマーマンさん達、わたしを助けてくれたの?」

「・・・そういうことだ。我ら水の神獣は、いつも君のことを見守り続けていたのだ。ニーナ・ガブリエルよ。」
野太い声が聞こえると同時に、水槽に向かう道を空けるようにマーマンたちが整列した・・・そしてその花道を通るのは・・・
「(あれは・・・水の王、と・・トリトンっ!!?!まさか・・・彼がニーナを助けようとした者たちの指導者なのか!?)」
悠然と歩み寄る者の姿に、スウェルファーは戦慄を隠し切れなかった。声の主はマーマン系統の魔物の頂点に君臨する王者だった。
『水の王』トリトン、フランデルの海を支配する大物がニーナたちの前に仁王立ちしていた・・・が、ニーナに怖れるような表情は
全く無く、むしろ滅多に会えない神獣の王を間近で見ることに集中してばかりだった。そして王も彼女を凝視している。
「・・・ふぅむ、似ている。やはり母親に似ているなァ。」「・・・?知っているのですか、お母さんのことを・・・」
「うむ。君の母親だけじゃない、その先代や先々代、何百年も前から君たちの一族を見守ってきたのだ。何でも知っているぞ?」
魔物らしからぬ優しくも誇り高い口調を伴い、トリトンが話す。彼によれば、ニーナたちの一族はとある理由により水を崇拝しており
海の民との交流も盛んに行ってきたと言う。その一環で、マーマン族もまたガブリエル家に力を貸しているのだそうだ。
「・・・とまぁ、おおまかに言えばそういう訳なのだ。もっとも、君が水のおかげで治癒されたことや水の中でも平気で話せるのは
 もっと深い理由があるのだが・・・君の母親から聞かされていないかね、ニーナ?」

595ESCADA a.k.a. DIWALI:2008/03/08(土) 11:05:49 ID:m9.8MgE20
「えと・・・ごめんなさいトリトンさん。私がお母さんと一緒に暮らしていた頃は、わたしはまだ小さかったので覚えてないんです。」
少し困ったような仕草をしながらニーナが応える・・・すると彼女の背に蒼白く光る紋章が浮かび上がってきた・・・!!
肩から腰にまで広がるそれは、まるで翼のような美しいピンストライプ模様となって彼女の体に刻まれていた。
「きゃっ!?・・・・わぁ、綺麗・・わたしの背中、青く光ってるよ。見て、スウェルファー!!」「すごい・・・綺麗。」
発光する背中に無邪気に喜んでいるニーナだが、その一部始終を見ていたトリトンやマーマン達は驚嘆の声を挙げていた・・・。
「おぉ・・・それは『聖紋』!!その紋章が浮かぶということは・・・・ニーナ、今から私が言うことをよく聞いて欲しい。
 君の背に浮かんだその模様だが、実は・・・」言葉を紡ぐトリトンだが、それもすぐに遮られた。一匹のマーマンが傷だらけで
その場に駆け込んできたのだった・・・!!「とっ・・・トリトン、様っ!!奴ですっ・・・奴に我々の居場所がバレましたっ!!」
「何!?もう割り出されたというのか!!?!・・・くそっ、何と間の悪い!!!」牙を噛み締めてトリトンが憤慨する。
しかし状況を呑み込めないニーナに気付き、トリトンが手短に事態を説明した。

「よいかニーナ、実は君がこの神殿に運ばれてきた・・・いや、奪取されてきたのは2ヶ月前のことなのだ。信じられないだろうが
 瀕死の君を10年近く保護していたのは我々ではなく、大陸を震え上がらせている殺人鬼だったのだ。君の能力を悪用するためにだ。
 奴の目的がわかった我ら海の民は、決死の覚悟で君の身柄を奴の下から保護したのだ。今ここで奴の手に戻させはしない!!
 ニーナ、君はここから逃げるんだ!!私の部下を君と共に行かせよう、スノーヴィルっ!!」「はっ!!」
「スノーヴィル、君はこれよりニーナの仲間として行くのだ。我々はここで死ぬ覚悟はできている、振り返らずに行くのだ!!」
「・・・っ、承知致しました、殿下!!あなた様にお仕えできたことを、誇りに思いますっ!!!」
王に敬礼をしてスノーヴィルは呪文を唱えた。どこからともなく水が集まり、一つの巨大な水球となって自らを包み込んだ。
さらに別の呪文を唱えると、水槽の中にいるニーナとスウェルファーを自らの水球の中へと瞬間移動させた・・・
「・・・よろしくニーナ、私の名はスノーヴィル。スノウと呼んで欲しい。」「うんっ、スノウ・・・よろしくね。」
「よし、準備は整った!テレポートするぞニーナ、いいか!?」「うん!!行っけぇ〜!!!」
ニーナが叫ぶと水球は光に包まれ、一瞬でその場から消えた・・・トリトンは彼女らを見送るように天井を見上げていた。
そして音沙汰の無い奥の通路から、一匹のウェアゴートが不気味に歩いてくる・・・『首狩り』の異名を持つ殺人鬼、ザッカルだ。
首にぶら下げた3連の髑髏、血糊がこびり付いた巨大なデスサイズを持ち・・・マーマンの首を左手に掴み、ぶら下げていた。
相変わらずどこを見ているのかわからない目に、よだれを垂らしまくる姿は酷いおぞましさを漂わせている・・・。

「うひゃひゃはは・・・あァ〜久々の血の味だぜぇえぇ〜、たまんねェ・・・たまんねぇえぇええぇえよォォオォオォオォオォ!!!」
「・・・黙れ、この狂獣めが。貴様が我らの友を辱めようなど甚だしいわ!!」怒りのままにトリトンが言葉を投げつける。
「あぁ〜!?何か言ったかぁ、このサカナ野郎が!!オメーら大人しく捌かれて刺身になってろっつーのォ!!ギャハハハハハハハ!!」
「・・・・っ、いい加減にしろ!我らを愚弄するなっ、その下衆な口を閉じろと言うのだぁっ!!喰らえぇっ!!!」
冷気を宿したトリトンの鉄槌がザッカルにクリーンヒットした!!そのまま後ろへ吹き飛ばされ、ザッカルは地面に這い蹲る。
「フン・・・この程度で私に勝つだと?笑わせるな!!」王の一喝が神殿内に木霊するが、その直後にザッカルは起き上がった。


「痛ぇ・・・・・痛ぇ痛ぇ〜、痛ぇ痛ぇ痛ぇ痛ぇ痛ぇ・・・・いィってぇえぇええぇエェエエェエエエエェェぁあぁぁあ"あ"
 あ"あ"あ"ぁあ"ぁぁあ"あ"あぁぁあ"あ"ぁあ"あ"あ"ぁぁ死にさらせぇえぇヴォケがぁああぁぁああァアアァア!!!!!!
 うぉぇえぇっ!!おぇえぇえっ!!うぼぇえぉあぁあぁっ!!!?!!ギャ〜ハハハハハハハハハハハハハハっ!!!!!」

「いかんっ・・・皆の者っ!!早く逃げろぉっ!!にげ・・・ぐぉぁあっ!!?!ガハっ!!ぐあぁあああぁああっ!!!!!」
攻撃のショックで発狂したザッカルは闇雲に鎌を振り回し、嘔吐物を撒き散らし・・・神殿内を血の海に仕立て上げた・・・。

596ESCADA a.k.a. DIWALI:2008/03/08(土) 11:06:45 ID:m9.8MgE20
・・・一方、こちらはダイム内海沿岸の砂浜。無事に逃走に成功したニーナとスノーヴィル、スウェルファーがそこにいた。
「あのね、スノウ?」「何だい、ニーナ?」怪訝そうな表情を浮かべて、ニーナがスノーヴィルに尋ねた。
「トリトンさんが私に伝えようとしたことって、一体何なのかな・・・?わたしの背中に浮かんだコレ、何なの?」
背中にくっきりと残るピンストライプ模様に目を向けるニーナだが、スノーヴィルは目を背けていた。何故なら・・・
「その・・・すまないニーナ、服を・・・着てくれないかな?」「ふぇ?・・・あっ、いやあぁ〜んっ!!////////」
後ろを向いて片方の手で目隠しして、もう片方で彼女の胸を指差す。実は裸のままニーナを連れ出してしまったのだった。
「しょうがないな〜、こんなこともあろうかとスペアの服を用意しておいたんだよ?ほいっ!!」スウェルファーが懐から
ニーナ用の服を取り出した・・・しかも最新モデルと名高い『エリプト・スタイル』を取り出したのだ。
「うわぁ〜い!!ありがとうスウェルファーっ、大好きだよっ!!えへへ〜」「いやそれほどでも〜、てへへ〜」
「こらこらニーナ・・・喜んでるところ悪いが、私の話を聞くんじゃなかったのか?」「あ!そうだった〜・・・」
はにかみながらニーナが謝ると、やれやれと呟きながらスノーヴィルは真実を語った。
「よく聞いて欲しいんだ。まず君の背に浮かんだのは『聖紋』と呼ばれるものだ。それは天使の子孫にだけ現れる
 特殊な傷痕なんだよ・・・しかもだ、君はただの天使の子孫じゃない。四大天使の一人、ガブリエルの血を引いているんだ!!」
「え・・・スノウ、それって本当?わたし、ガブリエル様の血を引いているの??お母さんもそうだったの??」
「そうとも。だから君たち一族は水に愛されているし、水の神獣と心を通わせる事だってできるんだよ。わかってくれたかな?」
「そっかぁ〜・・・うん、わたし頑張る!!ガブリエル様の子孫として、い〜っぱい頑張っちゃうんだからっ!!」
両拳を握り締めて、ニーナは明るく答えた。スノーヴィル、そしてスウェルファーも微笑み返した。
「うんうん、それでこそニーナだよ・・・あ。そういえばこれからどうするのさ〜、ニーナ?」
「そうだな〜・・・せっかく地上に戻ってきたんだもん、ミゲルに会いに行こうかな。」「彼の居場所、わかるのかい?」
「うんっ!!わたしにはわかるんだ、ミゲルがどこにいるか・・・何してるかはわかんないけど、それでも感じるの。」
「そうか、それじゃぁ行ってみようよ!ニーナの気が向くままに〜、ってね。」「もう〜スウェルファーってばァ〜!!」
「そういえばニーナ、天使の子孫はその能力の一部を自在に仕えるようになるそうだ。早速使ってみてはどうだい?」
スノーヴィルの発案により、ニーナはすぐに天使のみが扱えるという移動魔法を使用してみることにした・・・
意識を集中させ、愛する人のいる場所を思い浮かべ・・・ニーナの背の紋章が蒼白く発光すると、彼女の背に水が集まり始めた。
水滴はだんだん集まって、大天使が持つような三枚六対の巨大な翼を織り成し、羽ばたいた・・・!!
「・・・水よ、私たちを彼の地へ運んでください!!アクア・コーリングっ!!」「やっほ〜ぅ!!出発だ〜!!」
「殿下、どうかご無事で・・・行って参ります!」それぞれの思惑を胸に、一人と二匹は水球に包まれて西へと飛んでいった。

そして海の神殿・・・・

ズタズタに切り刻まれたトリトンやマーマンの死骸を、ザッカルは踏みつけて立っていた・・・。
「ちくしょうがァ・・・あの小娘に逃げられちゃぁよォ、ミゲルに裏切られる可能性ができちまうじゃねぇかオイぃぃ〜・・・
 あぁ〜ムシャクシャするぜぇ〜、ここいら一帯は狩り尽くしたしィ・・・今度は何処を荒らしに行こうかなァ〜ぁ!?
 ギャハ〜ハハハハハハハハ・・・うぉぇえっ!!おぇっ!!?ヒャハハハハハハハハぁああぁぁああぁァァアアァァ!!」
嘔吐してマーマンの死骸を蹴りつけた後、ザッカルは空間を切り裂いて何処かへと姿を消した・・・。

「(不覚っ・・・!!海の王ともあろうものがっ、あのような狂獣に敗けるなど・・・・情けない・・・・)」

トリトンは己の不甲斐なさを嘆き、静かに涙していた・・・血に塗れた海の神殿に、青白い月の光が差し込んでいる。


to be continued...

597ESCADA a.k.a. DIWALI:2008/03/08(土) 11:28:50 ID:m9.8MgE20
あとがき。

親がPCカードを奪取するせいでなかなかネットに接続できないし皆さんの素敵作品に目を通せない;;;
時間があるときにでも読破してコメントさせてもらいたいです・・・

そんで次回はお待ちかね(?)エディvs.ミゲルでござい。後々ニーナやミカエルも乱入する予定b

598◇68hJrjtY:2008/03/08(土) 15:37:00 ID:LLGcTyJI0
>之神さん
シリウス×シルヴィー方面もなかなか楽しそうですが、ナザ君×エトナの竹馬の友っぷりは凄いΣ(゚∀゚*)
初対面ですよね…それがどうしてあんなに楽しそうになれるんだー(笑) シリウスもいきなりシルヴィー家に行ってますけど(;・∀・)
徹×ミカを筆頭に、ライト×フィアレス、シリウス×シルヴィー、ナザ君×エトナ…とほっとけない♂♀二人組みたちが!
明日に迫ったエリクサーの争奪戦ファイナルデー、栄光は誰の手に!(何
しかし、ミカの杞憂ももっともなものですね。誰の手に渡るかが重要なポイントとなって来そうです。
と、ともかく続きお待ちしています!

>ESCADA a.k.a. DIWALIさん
水を崇めるガブリエル家一族のニーナの顕現。しかしそれはトリトンたち海の一族の全滅という悲劇も生みましたね。
ザッカルさんも相変わらずのようで。でも、部下を使わず直接自分一人で来たというのはちょっと尊敬(?)。
スウェルファーとそしてスノウという二人の仲間と共にニーナが逃げるために向かったのはエルフたちの集落…なのでしょうか。
そうだ、ザッカルを何とかしなければ…の前に、エルフ集落の方での激戦にまずは一区切りつけなければなりませんね!
次回予告エディvsミゲル戦含め、楽しみにしています。
---
PCカード没収ですか(ノ∀`)
私はやった事ないのですが、携帯で書いて携帯で投稿ってのは無理なんでしょうかねぇ。
でも携帯物書き屋さんも携帯で書いてはいても投稿はPCから、と言ってましたから無理なのかなぁ( ´・ω・)

599柚子:2008/03/10(月) 16:18:16 ID:ewfk6vnI0
1.>>324-331 2.>>373-376 3.>>434-438 4.>>449-451 5.>>517-523
6.>>572-578

『Who am I...?』

カツカツと蹄の音が聞こえる。
冷たい風が頬を撫で、まどろみから覚まさせた。
「う、うん……」
イリーナは目を覚まし、軽く伸びをした。
「目が覚めたかい?」
「ええ、お陰様で」
イリーナは馬車の荷台の中に居た。
昨日イリーナ達はカーペットで移動している途中にハノブへ向かう商人と出会った。
そこでイリーナはハノブまで護衛する代わりに馬車に乗せてくれるように頼んだのだ。
交渉の結果は成功。3人は寝ている間も移動する事が出来た。
一晩中移動し続けただけはあり、馬車はハノブまでかなり近付いていた。
イリーナが商人に話し掛ける。
「ハノブに着くのは昼頃ですかね」
「だろうね。それまでしっかり護衛を頼むよ。ここらはよく盗賊が出るからね」
それを知っておいて、護衛も雇わないで移動していた商人に呆れながらも、イリーナは社交辞令の笑みを浮かべる。
一睡もしていない商人が、眠たそうに欠伸をした。

600柚子:2008/03/10(月) 16:19:14 ID:ewfk6vnI0
「うん……」
イリーナはすぐ脇から何かが身動きするのを感じた。
イリーナを風避けにし、寄り添うように寝ていたミシェリーが小動物のような仕草で伸びをする。
続いて目を覚ましたルイスに至っては、商人の荷物の袋を風避けにしていた。
「イリーナ、貴様の声と呼吸と心音がうるさい。少し心臓を黙らせろ」
「努力するから寝てろ。お前が起きていても迷惑なだけだから」
「そうしよう」
そう言うと、ルイスはすぐに寝息を立て始めた。
イリーナは商人がこちらを見ていることに気づく。
「君達2人はいつもこんな感じなのかい?」
「ええ。訳すとおはようとおやすみです。それよりこの袋の中って何が入っているんですか?」
ぎくりと、商人が目を泳がせる。
「それは……内緒さ!」
商人が指を立てて言う。
しかし、いい年の男がしても気持ち悪いだけだった。
商人の反応からすると、この袋の中には怪しい商品が入っているに違いないだろう。
だとすると余り触れない方がいいかもしれない。イリーナは話題を変えようと商人に話し掛ける。
「一睡もしていないようですし体もつらいでしょう。馬車、代わりましょうか?」
「大丈夫だよ、慣れているからね。それに美人にそんな事させるなんて私の人道に背く!」
「はぁ……」
イリーナは笑顔だけ送り、再び荷台の壁に背を預ける。
時折じゃれてくるミシェリーを軽くいなしていると、ふとルイスが口を開いた。
「近い」
その言葉の意図を瞬時に読み取ったイリーナが声を上げる。
「おじさん、速度を上げて!」
そう言われた商人が慌てて鞭を叩く。
「もう遅い。囲まれている」
「盗賊か! くそ、おじさんはそのまま速度を上げて! ミシェリーは荷物の影に隠れろ!」
指示を出しながらイリーナは立掛けていた銀の槍を掴み、立ち上がる。
ルイスは片手にパンを数個掴むとその1つを口に頬張り、荷台から飛び出した。
連動して大剣を抜き、同時に飛び出してきた盗賊の頭上に振り降ろす。
大剣は盗賊の頭から股へと走り、そのまま両断する。
パンを飲み込んだルイスがイリーナ達の方へ叫ぶ。
「貴様は馬車の周りを護衛しろ。それ以外は全て俺がやる」
そう言うと更に1つパンを頬張り、片手だけで盗賊達を蹴散らしていく。
イリーナは遠くなっていくルイスを確認すると、自分も魔術を紡ぎ始めた。
「この一帯を狙う盗賊か? ともあれおじさん、もっとスピード出ないの?」
「馬も一晩中走って疲れているんだよ。無理言っちゃいけない」
イリーナは苛立ちを隠すように周りを見渡そうとすると、突然馬車が激しく揺れながら停止した。
イリーナは揺れで均衡を崩し、尻餅をつく。
「何が起こった!」
「埋め込み式の罠です。馬が踏んでしばらく動けません」
まずいと感じる瞬間、四方から無数の短剣が飛んでくる。
イリーナは予め紡いでいた難易度3、トルネードシールドを馬車の周りに発動した。
視認出来る程の強風が短剣をそらし、あらぬ方角へと受け流す。
更に難易度2、ファイアーボールを2重同時発動。10の火球を上空へ放つ。
イリーナの予測通り、風の盾を飛び越えて来た盗賊達が火球に命中し、空中で爆散した。
遅れて空中で散った肉片が雨のように降ってくる。
「ミシェリー、いいって言うまで目を閉じていろ!」
「う、うん」
ミシェリーは荷物の影で震えながら隠れる。
イリーナは続けて火球で応戦し、馬車を守った。

601柚子:2008/03/10(月) 16:20:16 ID:ewfk6vnI0
音より速い銀の閃光が走り、風と首を切る。
ルイスが斬った盗賊達は既に10に達していた。
敵わないと判断した盗賊達が、じりじりとルイスから遠ざかる。
近づけば殺されるなら、遠くから囲むしかない。そもそも接近しての戦闘は彼等のスタイルではないのだ。
「何ビビってんだよオメーら。俺がやるから下がってな!」
若い盗賊の青年が集団の中からルイスへ飛び掛った。
突き出された直剣がルイスの喉に迫る。ルイスは大剣を振り上げ、剣を弾く。
更に足を踏み込ませ、振り上げた大剣をそのまま振り降ろした。
鈍い音が鳴り響く。ルイスは手元に違和感を覚えた。
「ぬ……」
「オメーの大剣は剣ごと砕くみたいだからな。フツーには防がないぜ」
青年はルイスの剛剣を分厚い盾で防いでいた。得物を隠し持つことは盗賊の基本だ。
それでも構わずルイスは片手だけで青年をその剛力で押していく。
青年はとっさに後退し、剛力から逃れる。
「なんつー馬鹿力だよテメー!」
青年の罵倒を無視し、ルイスは難易度3、サンダーエンチャントを発動した。
雷の魔力で編まれた魔術が、大剣の刀身に宿る。
ルイスが疾走し、剛剣を青年の頭上へ叩き付けた。それを青年は得意気に、同じように盾で受ける。
それが彼の敗因だった。
防いだ筈の青年が全身を痙攣させ、口から血泡を吹き出す。
そのまま青年は地面へ崩れた。
それは紛れもなくルイスの剣の仕業だった。剣に帯びた電流が、盾を通じて青年の脳を焼いたのだ。
避けることも受け止めることも許されない、ルイスの剣。
そのルイスに盗賊達は恐怖した。束になっても勝てる気がしない。しかも相手は片手しか使っていないではないか。
「ひ、ひぃ……」
盗賊の中の1人が悲鳴を上げながら逃走する。それに釣られるように他の者達も次々と逃亡を開始した。
遂にルイスに向かってくる者は居なくなり、ルイスは大剣を背中のホルダーに収納する。
それからパンを口に運ぼうとするが、その手が止まる。左手に握るパンは、べっとりと血で染まっていた。
「これでは食えんではないか……」
残念そうに手に握るパンを見つめ、放り投げる。
ルイスは既に遠くの方にある馬車に向かって歩き出した。

602柚子:2008/03/10(月) 16:21:18 ID:ewfk6vnI0
何度目かの爆裂がイリーナの鼓膜を揺らす。風の盾はそろそろ限界に近付いていた。
「くそ、気持ち悪い手を使いやがって」
馬車を囲む盗賊達は絶えず短剣を投げ続けていた。だが当然短剣は風の盾に阻まれる。
しかし、投げ続ける限りイリーナは風の盾を解除する訳にはいかない。
つまり、盗賊達はイリーナが息切れする瞬間を狙うつもりなのだ。
イリーナ自身、限界が近付いていることを身に感じていた。
ならば賭けるしかない。一か八かを。
短剣が飛んでくる位置から、場所はほぼ把握している。
問題は、予測が外れた時のリスク。
そうなった場合、イリーナは慣れない接近戦をしなければいけなくなるだろう。
しかし、いつまでも相手の策に乗るわけにはいかない。
ならば――――賭ける!
イリーナはトルネードシールドを解除と同時にファイアーボールを3重に発動した。
15の火球を指定した方向へそれぞれ放つ。瞬時に飛込んで来た盗賊達が面を食らい、爆裂の洗礼を受けた。
「やった、成功……」
そう言いかけた時、イリーナに悪寒が走った。
見もせずに短槍を背後へ振るう。すると、重い感触と共にかん高い金属音が鳴り響いた。
「よく防いだな」
首元で囁かれる低い声。イリーナは背中に嫌な汗が流れるのを感じた。
背後から襲った男が、イリーナを壁際まで押し切る。
女性で非力な魔導師のイリーナでは、力で攻められては勝機は無い。
男の腕がイリーナの胸を圧迫する。
「む、貴様女か?」
「悪いか女で」
「女ならば我々が頂く」
そう言うと、男は更に力を込めイリーナを荷台から振り落とした。
着地しようとしたイリーナを男が押し倒す。
「武器を放して降参しろ」
「お前……女をなめすぎだよ」
イリーナは瞬時に腰から尖剣を抜く。そしてそのまま鋭い剣先を男の肩に突き刺した。
苦鳴を上げて男が後退する。
「貴様……!」
「お前この盗賊の頭だろ。なら答えろ。何故この馬車を狙った?」
イリーナの問掛けに、リーダーの男は不敵に笑みを浮かべた。
「ここ一帯は我々のテリトリー。そのテリトリーに足を踏み入れた愚かな馬車を襲ったまでだ!」
「ならもう用はない」
イリーナは難易度3、ジャベリンテンペストを発動する。
槍の周りに旋風が発生、それを男へ放つ。
視認不可能の風の矛が、男の胸に風穴を空ける。
訳も分からず絶命した男は、血潮を吹きながら後方に倒れた。
リーダーを失った盗賊達は次々と逃亡し、一帯は一瞬にして静寂が帰った。
「……ふう。終わったか」
イリーナが細く長い嘆息を吐く。
「ミシェリー、もういいぞ」
それを聞いて、ミシェリーが物陰からひょっこりと顔を出した。
ミシェリーは周りを見渡し、安全かどうかを再確認する。
「イリーナすごい、1人でみんなやっつけちゃった」
「本当です、お陰で命拾いしましたよ」
罠を外し終えた商人が荷台に上がり、イリーナに礼を述べる。
「これも無事なようですし、言うことなしです」
商人が怪しい荷物を安心したように撫でる。
その直後、帰還したルイスが荷台に飛込んで来た。着地の衝撃で馬車が揺れる。
「こっちの方も片付いたようだな」
「ルイスお前、援護しに来る気全く無かっただろ。お陰でかなーり大変だったんだけど?」
涼しい顔で無視するルイスをイリーナが睨む。
「まあまあ、誰も怪我をしなかったので良かったじゃないですか」
商人がとりなし、場の空気を和ませようとする。
それでも一向に良くならず、商人は逃げるように御車台の方へ戻った。
「では、行きますよ」
商人が鞭を叩き、一行は再びハノブへ向けて出発した。

603柚子:2008/03/10(月) 16:37:49 ID:ewfk6vnI0
こんにちは。書き溜めていた分がそろそろ無くなって来ました……。
またシーフがやられ役ですが、あれは敵で出てくるシーフのイメージです。
決してシーフが嫌いな訳では……。

>白猫さん
恐らく、初めまして。
ようやく先日5冊目の部分まで読ませていただきました!
いやぁ、オリジナルみたいですけどとてもよく設定や世界観が練りこまれておりますね。
そして世界をも動かす膨大なストーリー!
自分のキャラとは正反対だ。自分のは恐らく主人公たちが動いても世界はちっとも動く気配がありませんね……。
まだまだ話が展開していきそうでワクワクしながら続きを読ませていただきます。

他にも1度も感想書いたことのない職人さんもいますが、それはまだ読みが全然追いついてないだけなのです。
いつか読破したいです。

604◇68hJrjtY:2008/03/11(火) 13:14:29 ID:7Tj31H/w0
>柚子さん
のんびりまったりの行程、とは思えなかったまでもまさかバトルになってしまうとは、アウグスタ遠征。
でもこのシーフたちはミシェリー関係ではなくてあくまでも普通の盗賊、なのですよね。彼らの言葉を信じればですが…(信じろ
いやいや、シーフがやられ役がはまり役っていうのは私も同じく思ってました(笑) やられ役っていうかいじられ役?(何
イリーナとルイスの戦闘シーンもなかなかでしたが、ルイスのサンダーエンチャント怖っ!感電死ですか(;・∀・)
きっとRSで同じスキルがあったらスタンとかしそうですよねぇ。確かに炎と光の属性付与魔法しか無いのはつまんないです。
っと、また妄想が始まる前に…続きお待ちしてます!

605ウィーナ:2008/03/11(火) 17:20:14 ID:3RWVAaPc0
白い鳥と黄色い花



プロローグ >>301-303
1話 夢のFelt-tipped marker(サインペン) >>310-312
2話 Disguising as a woman(女装) >>316-320
3話 Facing(対面) >>454-459
4話 イクリプス >>526-531
5話 幻想の闇 >>584-588



6話 フェレス



「メアリー…こんなところで、なにしてるの…」

フェレスはメアリーを大事そうに抱える。

「メアリーに近づく……」
「…ねぇさん?」

アルビが叫ぼうとするが、メアリーがフェレスに近づく。
いつもと違う姿なのだろうか、メアリーはフェレスをまじまじと見つめてから理解する。
フェレスはメアリーを少し愛でると、透明な球をメアリーに近づけた。

「?………」

メアリーは不思議そうにその球を触ると、かくん、と眠りに入った。

「なんで…可愛い私の………」

フェレスはそして眠る少女を大事そうに抱きしめると、何か呟いたが、よく聞こえなかった。
怒りを燃やすように此方を睨むと、

「可愛いメアリーにこんな危険な目合わせたお礼、しっかりしてあげるわ」

と叫んだ。

606ウィーナ:2008/03/11(火) 17:21:36 ID:3RWVAaPc0
「ふふ…貴方の歪む顔はアレクに似てるわね、
「流石、とでもいいましょうか?」

フェレスの鞭はアルビの足首に巻きつき、
じんじんと響く足の痛みに顔を引き攣らせる。
…そう、もう皆この悪魔にやられた後だった。
軽く弾き飛ばされたニナはどこかへ飛ばされ、
月舞・TJ・魅穏はぐったりとしている。
そして、今アルビにも魔の鞭が足首を圧し折ろうとでもいう勢いで締めていっていた。

「こんなことして…ッなんの得になるの…ッ」
「覚醒よ」
「………ッ」

フェレスの発した言葉の意味を飲み込む前に痛みが限界を超え、アルビは崩れ落ちた。

「おやすみ…永遠の眠りに…」

口の片方だけ吊り上げ、邪悪な笑みを残すと、フェレスは壁にある、暗いモノの中へ入っていった。

607ウィーナ:2008/03/11(火) 17:22:13 ID:3RWVAaPc0
「…ッ」

右腕を押さえながらニナは、トランの森をさまよっていた。
拳だけではなく、チャームポイントの黒頭巾はズタズタに引き裂かれ、
左足からは致命傷ともいえる傷跡から無残に血が流れている。
その血はまるで目印を残すかのように点々と続いていた。

「あの…悪魔から…逃げな…きゃ」

向かう方向なんてお構いなしに、この胸のもやもやしたものが納まる様に心をなだめていた。
だがその痛みはひどく、途中で歩けなくなっていた。
腰を下ろした場所からは鳥の囀りと轟々と鳴る水の音が聞こえていた。

「…みんな大丈夫かしら」

そんな心配をしつつしばらく休むことにした。
ふぅ、とため息をついた、そのとき。
途轍もなく大きい青い鷹が3羽、此方に向かって刃物を出してきた。

「…ここは中部なのね」

そして、振りかぶる。だが、鷹の動きが止まる。

「あぶなかったな、お嬢さん?」

鷹が崩れた折れると、奥に剣士が突っ立っているのが見えた。

「…どうも」
「いえいえ。」

汚れた剣を布で拭くと、ニナを凝視する。

「鷹に、やられたのか?」
「いえ。」
「…まあ、こい。」

剣士はニナの手をとると、そこも酷く怪我していたので軽々とニナを持ち上げる。

「…」
「何もしないから緊張すんな。」

ズタズタに切り刻まれた少女を背負った剣士は巻物を読み上げると、町の自分の家に入った。
そこはいろいろな剣や、盾、後鎧などがたくさん並んでいた。
少女をベットに下ろすと、棚から救急箱を取り、少女を介抱した。

「…痛いか?」
「いいえ、慣れてますから。」

その言葉に疑問を持ったか持ってないかはわからないが、少年は包帯を綺麗に巻いていく。
少年もなれているようだ。

「この傷跡…刃物じゃねぇな。悪魔あたりか?」

そう、ニナの傷跡は刃で傷つけられたのではなく、鞭の圧力と火力によって火傷になっていたのだ。
だが、火傷になる武器を使うような職はほかにもいるにもかかわらず、少年はぴたり、と当てたので流石のニナでも少し驚く。

「よく、分かりますね。」
「ま、ぁな。」

治療を終えると剣士は今まで使っていた大型の剣を壁にかけると、小型の剣を腰につける。
ニナは目だけ動かし、部屋を見渡す。
そしてある一点を見ると、いきなり

「あなた…」
「?」

ニナは俯き、首を振る。
有り得なかったから。いや、有り得るはずがないのだ。
老婆の持っていた笛に似たものが置いてあるなんて、
そんなはずないのだから。
あの時、笛はフェレスに破壊されたのだから…。

「何でも、ないわ」
「お前、名前は?」
「先に名乗ったらどうですか?」

ニナの無表情に少し苦笑するが、手を引き、家の前まで行くと

「俺の名前はイリア。
「イリア=リズナ だ。」
「…私はニナ。よろしく、イリアさん」

イリアは自分の左手を出すと、アイコンタクトを出す。

「ん。」

数秒送れてニナが気づき、左手で軽くたたく。
そして2人でくすっと笑った。

608ウィーナ:2008/03/11(火) 17:23:09 ID:3RWVAaPc0
「…うー…」

ミズナの部屋奥。
月舞が唸りながら体を立てる。
辺りを見渡すが、もうそこにはフェレスはいなく、横にはTJが倒れていた。

「TJ…大丈夫?TJ!」
「くっ…あの人は…何でしょうね、まったく…」

そんなに傷が深くないのか鈍感なのか知らないが、TJはすぐに立ち上がり、
自分の翼を優しく撫でる。

「…ほかの皆は?」
「さぁ、私最初の突風で倒れてしまったので…」
「回復は専門外なのね」

TJはニナを立ち上がらせると、そんなに強くないヒールをかける。

「ん…わ、わたしもいるよ…
「でも、立ち上がれないの…」

静かじゃなければ聞こえないくらいの声がする。
魅穏らしく、足を怪我したようで立ち上がれないみたいだ。

「結構がんばったんだけど…ね
「あの悪魔、かなりの力持ってるよお…」
「大丈夫?他の人は?」
「何とか大丈夫。ニナちゃんは最初にどこかに飛ばされちゃって、
「アルビちゃんは…分からないや…」
「そっか…まずニナ探そうか…」
「う、ん」

TJは魅穏を降ろす。

「ごめんね、こんなで…」

姿はもっとズタズタになっており、TJが何故こんなに傷が浅いのか不思議だった。

「まず街へ戻ろう。
「このままじゃいつ倒れてもおかしくない。」

うん、と2人がいうとTJは古都行きのホールを出し、魅穏を抱えたまま入っていく。

「メアリー…」

月舞はさっきまでフェレスのいた場所を見、呟く。

609ウィーナ:2008/03/11(火) 17:24:58 ID:3RWVAaPc0
「げほっ…げほ…」

暗闇の中、咳き込む1つの影…
その影は羽つき帽を被り直すと、徐に立ち上がる。

「…ここは」

忘れるはずもない、自分が1ヶ月前にはいた、普通の世界。
戻ってきたのだろうか、それともフェレスの罠なのか。
だが一つわかることは…

「…廃墟…」

崩れ落ちるビル、ひび割れている道…
フェレスの言葉を思い出す。
"アレク・フォングの家族なのね…"

「…爺さんが危ない…」

久しぶりのリアルワールド。
足元なんて気にせず思いきり走る。
自分の始まった、あの家へ。

「………」

唖然とするほど別世界のその扉。
そう、この、自分が育ったこの家だけが、傷一つないのだから。
ノブを回せばあの日と同じ家の風景。
何一つ変わってないだろう。
時は自分がこの家からいなくなった、5時半。
台所からはまな板を包丁でたたく音が聞こえていた。
だが…窓からのぞく外は廃墟と化している。
恐る恐る、音のする方向へ…台所へ進む。

「…ッ!」

そこには…

「ふふ、少し、遅かったわね。」

フェレスが包丁の代わりに鞭を持ち、立っていた。

610ウィーナ:2008/03/11(火) 17:25:49 ID:3RWVAaPc0
下には爺さんが、背を向けて倒れていた。
腕や脚には焼けた跡がたくさん残っており、白いシャツも焦げていた。

「…老いたわね、アレクも。
「これだから人間は嫌いなのよ…だから私は、可愛い妹…
「メアリーを不死にさせるの…私の、何倍も、ずっと…可愛いあの姿のまま…ふふ」
「…、メリーナは、女神様なのか…?」

想像に顔を歪ませるフェレスに、アルビは問う。
しかし、予想外の反応が返ってきた。

「?あははっ!あんな生き物のはず、ないでしょう?
「メアリーはただの女の子よ。」
「じゃあ、女神様は…」

くすっとフェレスが顔を輝かせる。

「女神は…あたしよ。といってももうやめたけどねっきゃはっ」
「…は?」

女神様が、悪魔だった…?
しかし、フェレスは確かに首からペンダントを提げていた。
それはアルビの胸に埋め込まれた紅い石と共振し…
そう、REDSTONE…。

「これを使えば可愛いメアリーは、不死になれるの…。
「そして、憎いお母様達は滅ぶのよ…ふふっ…楽しみね」

邪悪な微笑みを浮かべるフェレス…いや、ルチノ…

「…何故憎い?可愛がられてたんじゃ…」

言葉の途中でルチノは目を細め、鞭を振るう。

「…あの人は自分の勝手で兄さんを…」
「ッ… 追放した、のか」

振るわれた鞭から突風が巻き起こる。その突風はルチノとアルビだけを傷つけず、一瞬の内に家を廃墟とした。
しかし、まだフェレスは鞭をつかみ、震えている。
…ないていたのだ。

「追放…?
「きゃはっ…そんな生ぬるいものじゃない。
「あの人は、兄さんを、1回殺したのよ?」

アルビにはその言葉の意味は理解できていなかった。
ルチノの兄さん…TJは、生きているから。

「それで私が王宮を飛び出した。
「…それを悪魔のせいにし、世界から悪魔を批判して滅亡させたのもあいつ。
「被害者ぶって私を探させてるけど…実際被害者は悪魔の全員よ…
「兄さんは、私の力で生き返らせたけれど…
「酷いわよね、私のことだけすっかり忘れてしまったのだから…」

その時…
ルチノの周りから茨が突き出し、2人の周りを柵のように囲っていく。

「メアリーは…そんな私に笑顔をくれた可愛い子…
「…あの子だけは、こんな腐った世界のために死なせない…
「だから、ね
「母さんを支持し、まだ危険を持ってるあなたを…」

ルチノは鞭を振り回し始める。
狭い茨の柵の中で紫色の粒子が飛び交う。

「殺す!」

611ウィーナ:2008/03/11(火) 17:26:22 ID:3RWVAaPc0
えーと、以外な発展!びっくりー(
フェレスが、悪魔のフェレスが女神様でした。
本文の中で理解できない人もいるでしょうから、細かく訂正。
まずオパーリ=クライスの第一児がTJ…本の名がロイ=クライス だったのですw
だけれど力がなく、可愛いルチノに尊敬されていたため殺された。
最初からルチノはオパーリを憎んでいたようですねw
そしてルチノ…フェレスは王宮を飛び出した。
しかしオパーリさんはそれを表面で公開したとき、悪魔にルチノはさらわれた、そしてロイはそれに協力したため死刑とした。
としてしまった。
それでフェレスはもっと怒ったんですねーw
フェレスはロイを生き返らせたけど、フェレスのことだけを、全部忘れてしまった。
それにショックを受けたフェレスは悪魔になることを決意。
その時、悪魔の間で有名だった月舞というテイマーの噂をきく。
(ニナのこと、そして↑は後々お話します!)
そして悪魔にとって邪魔で、王宮へ支持をもっていたロマ村を襲う。
そこで月舞・ニナと再び会う。
だけど何者かに致命傷を与えられ、休眠する。
(ここも次くらいにお話します!w)
目覚めて、ミズナの洞窟からリアルワールドに飛ぶところで、6人と対決
そしてリアルワールドでアルビと戦うことに。


次回予告をすこし。
フェレスがいっていた、ニナが剥落四魂ラミア・ハィタム博士
私と同じ、下界から来たヒトではないモノ という意味は…?
そしてリアルワールドらしき場所でのアルビとフェレスの戦い…
謎の剣士、イリアとは?



前回の穴埋めの答え…w

実はフェレスは悪魔ではなく、女神様だった!

でーす・・・w

コメ返し
>◇68hJrjtYさん

あーw
わかります!w
Wiz=リトルといわれてもしっくりこない…
ロンコの女Wizつくってほしいですね!w(ぇ
TJは男ですっwwwww
続きの感想も人(*゚ω゚`*)オネガイシマス☆.:゚+。ッ

612◇68hJrjtY:2008/03/12(水) 05:42:27 ID:7Tj31H/w0
>ウィーナさん
うーん、成る程!文中では語られないまでもフェレスの遍歴(?)はアルビやニナ、TJと複雑に絡まってるんですね。
なんとあれほど探し求めていた女神が悪魔だったとは…単純に意外ってだけでなく、「女神」と「悪魔」という対照的なものが皮肉も感じさせます。
もうひとつ驚いたのはTJが実は一度死んでいたということ。本人にはその辺の記憶はあるのか、それとも隠しているのか。
今回は色々なところで発見がありましたね。剣士イリアもまたニナや彼女の"おばあちゃん"と関わりがあるのでしょうか。
離れ離れとなってしまったアルビとニナ、そして他のメンバーたち。それぞれの方面での話の続き、お待ちしています。

613ワイト:2008/03/12(水) 20:35:11 ID:f97kaNBM0
職人様達の書き込みが、凄まじい勢いで展開されていますね・・・・
既に置いてけぼりに、なってしまっている自分・・・・・・
まだ続きすら考えていないんですよね・・・何が何やら!
小説自体に関係ない書き込みですので、無視して頂いて良いので・・・では|ω・)また!

614白猫:2008/03/12(水) 21:48:14 ID:oI8nmhFg0
>ワイトさん
おぅ!仲間がおらっしゃった!
安心して下さいワイトさん、私も似たような状況です(苦笑)
ネタは浮かんでいても文章が進まなかったり、文章書いても気に入らなくて消去してしまったり、
ついには先日腱鞘炎にもなってしまいました(笑)
職人の皆様の仕事の速さには驚かされるばかりですね……こまめにコメントを返してらっしゃる68hさんには脱帽!
小説は早ければ今週末あたりに投稿できるでしょうか…明日に卒業式を控えているので若干カタくなってます(ぁ
私の書き込みも小説には特に関係ありませんのでスルー推奨でっす。
それではまた次の機会にお目に掛かりましょう。白猫でした!

615名無しさん:2008/03/12(水) 23:10:01 ID:0sYQHaeo0
「ふふふ、随分辛そうですね。大切な仲間を守るのに」
三井の不適な笑みと共に、天井に現れた無数の火の粉が体育館中に降り注いだ。
「みんな!伏せろ!」
浩助は大声を上げてクラスメイトに指示を出した。悲鳴が飛び交う中、浩助は手にしたモップでひたすら火の粉を防いだ。
三井はそれをそびえ立つ氷の柱の上から眺めていた。
「ほー、やりますね。グラビティアンプリファー!」
氷柱の根元から黒い闇が床を這う様に広がった。浩助や生徒の何人かがその闇の中に入った。
「ぐっ…なんだよこれ」
闇の中に入ってしまった生徒が次々に倒れた。顔を歪める浩助に三井が杖を回しながら言った。
「重力場を発生させました。能力者でも立っているのが精一杯でしょう。これでさよならです。」
三井の杖を持った手が上に伸びると、今度は大きな光の玉が出現した。
浩助は必死で足を動かそうとするが、余計にバランスを崩しそうになるだけだった。
「ライトニングサンダー!」
玉から放たれる光がさらに強くなり、浩助は思わず両腕で顔を隠した。
(殺される…)
余計な考えが浮かぶ。体育館に大きな雷鳴がとどろき、浩助の意識は薄れていった。

「まったく、能力者なのにひでェザマだな」
ユルんだ低い声で浩助は目を覚ました。浩助の狭い視界に浩助に背を向けて立つ男が入る。自分が横たわった状態だからか、その男がとても大きく見えた。
「お、起きたか。消費期限切れでも意外と効くもんだな。」
ようやくはっきりと意識を戻し、上半身だけ起こした浩助だが、いまいち状況が掴めない。そんな浩助にはお構い無しに男は言葉を続けた。
「おおっと、いろいろ聞きたいことがあるようだが、それはあのヒョロヒョロをぶっ飛ばしてからだ。」
名も知らぬ男の股から炎を身にまとった三井の姿が見えた。

けんしょうえんとは大変ですね。おだいじに
もうすぐ卒業なんですね おめでとうございます

616◇68hJrjtY:2008/03/13(木) 12:19:43 ID:RWpy3jWI0
>白猫さん
いやいや、スレヲチに余念がない暇人&キモい人なだけです(;´Д`A ```
それに感想よりもひとつの作品を執筆するということは、例え1レスでも大変な苦労があると思いますよ。
このスレのお陰でいつも泣いたり笑ったりさせてもらってます(笑)
白猫さん含め、執筆されてる皆さんの作品をいつも心待ちにしております!
ってか腱鞘炎治すほうが先です( ´・ω・)

>615さん
あわわ…普通のリアルワールドin体育館が一瞬にしてRSのGvフィールドのように(;・∀・)
三井君、知識能力者というよりはもはやWIZ様ですね((((;´・ω・`)))) グラビって怖い。
やはり魔法攻撃に対して敏捷能力はさほど効果的ではなさそうですが…思わぬ助っ人(?)参戦。
この人もやはり能力者、なのでしょうか。だとすると一体どの能力だろう。
でも2対1になっても相手は範囲攻撃も使えるようですしね…戦いの行方はいかに。続きお待ちしてます!

617黒頭巾:2008/03/13(木) 18:11:45 ID:fou9k2gM0
やっぱり凄い流れに溺れそうだけど、がんがれ自分←
てコトで、コメをー。


>之神さん
バカ×バカに盛大にふきました。
彼らが天然コンビなら、シリウスとシルヴィーは毒舌コンビ…彼らの漫才も気になるところ(ちょ)
ミカの危惧するところが現実になってしまうのか、はたまた…。
そして、投下前の過去ログ検索で之神さんの再振り巻物話は読ませて頂いておりました(ノ∀`*)ペチン
思ったよりも課金アイテムネタが少ないのは、このスレは基本無課金さんが多いのかなぁとか。
いぁ、私も使ったのは後にも先にも1stキャラのカオス振りに耐え切れずの一度だけですが!
こんな文体メインなモノで…今度しんみり系に手を出してみるかなぁ(やめとけ)
之神さんのアイテム短編、楽しみにしてますねー(´∀`)ノ

>したらば初心者さん
ブレアさん最恐伝説(ぇー)
王道イイですよねぇハァハァ。
このちょいとヘタレな幼馴染くんとどんな旅になるのか、凄く楽しみです(*´∀`)
そして、こちらこそ感想ありがとうです(ノ∀`*)ペチン
どんまいして貰ったコトで、戦士くんも草葉の陰で喜んでいるでしょう(注:まだ生きてます←)
Gvでは敵からの妨害なんかもありますが、ソレはソレで戦略の内だと思っています(笑)
でも、バグや鯖切断やフリーズだけは…!orz

>68hさん
お久しぶりです(ノ∀`*)ペチン
たまには違う風に挑戦してみないとマンネリ化しそうで…!(笑)
課金が切れた後、次に課金するまでが地味に長いので、そのあまりの落差に無課金のマゾさは純無課金さんより身に沁みて(´;ω;`)ウッ
Gvは参加する様になって一年ちょいになりますが、99%は支援キャラで出てるので描写が少し心配でした。
本当はもっと楽しいのに…うーん、戦闘シーンを書ける方を尊敬します!
そんな私、この間出来心で剣士を初めて作ってみました…今、他鯖で沼秘密適正です(ぇー)
両親はキャラの背後の我々プレイヤーのつもりでしたので、きっとGvの時はモニタの向こうで歯噛みしてたコトでしょう(笑)
両親の実家が裕福になれば(パソ買い換えれば)、彼はきっと活躍出来ると思います(ちょ)

>白猫さん
お姫様抱っこぉぉぉ!Σ(*ノノ)
お姉さんだった事実にも驚きましたが、ルフィエが狸寝入りで大人しく姫抱っこされたコトに驚きを隠しえません…成長したわねぇ(違)
カスターの洞窟以外だとあまり気にしませんでしたが、持ち歩く金額は裕福さだけでなく治安にもよりますね…そう言えば!
カリアス、老けてると言うか貫禄があると言うか(?)
ただ、自分が年上WIZふぇちなだけだと思います、はい。
子どもっぽい描写楽しみにしておきますハァハァ。
モーション消えに関しては私もコロやパブルならって書きかけて慌てて消したのは内緒です(ちょ)
妹さんのお名前は早とちりでした…しょっちゅう横文字読み間違える癖直さないと(ノ∀`*)ペチン

>R310さん
RSの世界観にあった口調って考えてみたのですが、NPCを参考にすると誤訳まみれの日本語になってしまうので(…)
ギャップ萌の世界は続くよ何処までも。
少しでも共感して頂けて幸いです(ノ∀`*)ペチン
まず、前回のあらすじに盛大にふきました…あの前編がたったの一行で!(笑)
てるみつくん、いくら空腹でも流石にフンドシはぺっしちゃいましたね。
…早く実装しないかなぁ、フンドシ(笑)
雑食しちゃう程空腹になるまでご飯を我慢して店売りなんて…てるみつくん、健気なえぇコや(´;д;`)
売るか捨てて来ればよかったと口走ったアッシュが、どこでモールを開いてくれたコトにまた泣けてきます。
そして、学習能力のないバカ正直なブルーノ可愛い…うぅ、早くまた一緒に狩れる様になればイイなぁ。

618黒頭巾:2008/03/13(木) 18:12:24 ID:fou9k2gM0
>柚子さん
こちらこそ感謝感謝です(ノ∀`*)ペチン
自分の中のイメージが現状のRS固定なので、如何してもこうなってしまいます。
自分の周りの、が頭に付くので…RSはこんなじゃないから!って逆に思われる方もおいでるでしょうが(笑)
生きているキャラクターの視点から見ると、銀行って謎だと思うのですよね…勝手に中身入れ替わりますから。
オチに関しては、我がGのTOP剣士がよく鯖落ちして古都乙しているので使わせて貰いました(´;ω;)カワイソス
そして、おはようの挨拶のやり取りがたまりませんでした(*ノノ)
喧嘩する程仲がイイ…普段は喧々囂々なのになギャップ萌(自重)
感電死、地味に恐いです…冬は盛大にバチっと来る私です(レベルが違う)
追っ手が大きく動き出しましたが、無事にアウグスタについてミシェリーが幸せになれます様に。
…追っ手が追いついたら追いついたでドキドキの展開にハァハァですが!←

>21Rさん
( ゚∀゚)○彡゜ だんでぃ!だんでぃ!(もうイイ)
おじ様と幼女のコンビは何かもうどっちもメインな両A面CDの様n(ry
では、ミトと同時にうっかりさんな21RさんもナイスドジっコGJで(ちょ)
知識ランサと物理ランサの幼女ハァハァ…二人まとめてお姉さんのトコに嫁においd(自重)
無骨な男性に無骨な武器は似合いますが、幼女にソレはかなりのギャップ萌ですよね!
そして、希望であり絶望であるという封印されし九つ目の刻印をアレンが開放した時、彼の目の前に広がる世界は何なのでしょうか…パンドラの箱みたいですね。
ミルのコトしか思い浮かばないのですが…いっそ、ミルが幼女に生まれ変わってくるとか(待って)
アデル、方向音痴が災いしないのを切実に願っています。
ヒーローは遅れてやってくるものですがね!(ちょ)
Gおめでとう御座いますー、まだ二年目の私には大先輩です(ノ∀`*)ペチン

>ウィーナさん
女WIZキタワァァァハァハァ!(自重)
みょんちゃんの実力、見れませんでしたが…きっとその内活躍してくれると信じて!
ソレにしても、まさか女神さまがメアリーのお姉ちゃんでフェレスだったなんて…お姉ちゃんは悪魔じゃないかなぁとは思ってましたが、女神様本人だとは思ってませんでした(ノ∀`)ペチン
そして、TJが死んでいたなんて…女神さまママン恐いよぅガクブル(´;д;`)
アルビもフランテルの血を引く家系だったのですね…まさかお祖父ちゃんが同一人物だとは思いませんでしたが!(笑)
アルビの久々のリアルワールドが現実なのか夢の中なのか…どちらにせよ、戦いは避けれそうにありませんが。
ニナが出会ったあの老婆と関りのありそうなイリアといい、続くアルビの戦いといい、目が離せません。

>ESCADA a.k.a. DIWALIさん
天使の血を引くサマナーさん!
サマナーとしての能力だけでなく、天使としての能力まであるとは強そうです(ノ∀`*)ペチン
大天使のガブリエルまで追放していたなんて…それだけ赤き日の事件は展開に波紋を広げたのでしょうねガクブル。
ソレにしても、水の羽ってきっと綺麗でしょうね…うーん、見てみたい!
無事を祈られつつも、現実は残酷で。
神殿のトリトンさん達が不憫で不憫で…うぅ、いつも神殿で虐殺してごめんなさい(違)
10年近くも眠ったままだったニーナの目覚め…ミゲルも驚くだろうなぁ(笑)
PCカードがある時に接続してテキストファイルか何かにスレをまるっとコピペすれば楽々読書…嗚呼、でもこの流れの速さだとその間にきっとまた!(苦笑)

>509の名無しさん
あわわ、一気にかなり盛大なバトルに…こんな命がけの体育の授業は嫌だ!(違)
このバトルを終わらせるコトもですが、その後のクラスメイトへのフォローを如何するのかも問題として立ち塞がりそうで!(笑)
突如現れた謎の助っ人の登場がこの不利な状況を乗り越える力になるのか。
続き楽しみにしてます(ノ∀`*)ペチン
そして、賞味期限切れの回復アイテムでお腹壊しません様に!(笑)



携帯で投稿云々に横レスがてら〆の言葉。
私の場合は携帯で打ったりパソで打ったり気紛れです。
ただ、携帯で打っても最後の推敲は基本的にPCでやります…小さな画面だと如何しても見直しにくくて(´・ω・)

…そんな携帯がバグって書きかけや送信済のメールデータ消えるわ受信メールも???しか表示されないわ消せないわで結局初期化する羽目に。
書きかけのSSのデータがいくつも吹っ飛んで泣きそうな黒頭巾でした。
もう内容覚えてないのもあるよ、ママン…orz

619黒頭巾:2008/03/13(木) 18:15:23 ID:fou9k2gM0
僕はふぁみりあいーえっくす。
とっても素敵なごしゅじんさまのぺっとだ。
僕のごしゅじんさまがどれだけ素敵かってのは、語りだしたら一晩でも足りないくらい!
だから、ちょっとだけ自慢させてね。

僕のごしゅじんさまは、びーすとていまーさん。
僕みたいなもんすたーと仲良しのお友達になって、ご一緒に闘うのがお仕事の冒険者さん。
狩りの間のごしゅじんさまは、とっても忙しい。
僕に攻撃しなさいって命令だけして座ったりしない。
ちゃんと褒めてくれるし、励ましてくれるし、傷のお手当てだってしてくれる。
座ってお喋りしてばっかりの低まーさんみたいに、瀕死なのに気付いて慌てて「Pにあすひおね><」なんて言わない。
お腰につけたきび団子…じゃなくて、おれんじ色のふるひーるぽーしょん(美味しいから大好き!)もちゃんと飲ませてくれる。
そんな風に一生懸命だからね、まっするさんもいけめんさんも、何も言わなくても喜んで僕を癒してくれるんだ。
そんな風に一生懸命だからね、僕も一生懸命ごしゅじんさまを護ろうと思うんだ。
…ご一緒にお外にお出かけすると、暴風雨が酷くてあんにゅいな気分になっちゃうのが玉に瑕だけど。

この間のばれんたいんでーには、その素敵なごしゅじんさまがおっきなちょこれーとをくれたんだよ!
その味は甘くてくりーみーで、こんな素晴らしいちょこれーと貰える僕は、きっと特別な存在なのだと感じましt(ry
物思いに沈みかけた僕の目に、ばれんたいんでーを教えてくれたないすばでぃーなおねぇさまのげぼくさんが、またからからからからと音を立ててやってきたのが見えた。
げぼくさんげぼくさん、ごしゅじんさまがちょこれーとくれたよ!
そうご報告したら、よかったのぅって喜んでくれた。
そしてね、新しいことを教えて貰ったよ。
何でも、今日はほわいとでーなんだって。
大好きなヒトにばれんたいんのお返しにきゃんでぃーやくっきーをあげる日だって。
ごしゅじんさまへのお返し、来年まで待たなくていいんだ!
喜びにお耳がぴくぴくしちゃったけど、はっと気付いた大事なこと。
僕お金持ってないからぎるどほーるや古都ぶるねんしゅてぃ…痛っ、舌噛んじゃった。
えっと…要するに、えぬぴーしーさんの売ってるあいてむは買えない訳で。
ごしゅじんさまみたいに材料を集めて作るにも、お金がいる。
古都で美味しいお菓子を売ってるお店は知ってても、これじゃぁ宝の持ち腐れ。
如何しよう如何しよう、ほわいとでーは今日なのに!
でも待って。
一ヶ月前にちょこれーとって何だろうって思った僕の脳裏に浮かんだのは?
…そう、ぱてぃしえぞんびのお菓子!
思い立ったら吉日生活。
そうだ、あじとに行こう。
ご自慢の槍を持って、お出かけ準備は完了だ。
ごしゅじんさまはお昼寝中だし、今日はもう狩りに出ないって言ってたからね。
…目指すは、路上盗賊団のあじとびーいち!

620黒頭巾:2008/03/13(木) 18:16:04 ID:fou9k2gM0
ごしゅじんさまの元に飛びそうになる衝動を必死に堪えながらも、あじとびーいちには迷わず来れた。
だって、僕の故郷は一階下のあじとびーにだもん。
ごしゅじんさまにていむされてから初めて足を踏み入れたけど、やっぱり懐かしい空気。
でも、違うのとこもやっぱりあって。
昔はもっと混んでた狩場だったのに、今は閑散としてる。
僕としたら、お邪魔になる人がいないのは嬉しいけどね。
僕は深呼吸すると目に付いたぞんびに、えいやって槍を繰り出した。
れべる差はあるけど、いつもの様にごしゅじんさまの笛の音がないから、ちょっぴり痛い。
ぺちぺち、つんつん、ぺちぺち、つんつん。
ひっそりとした狩場に、僕の闘う音だけが響く。
もう何匹倒したのかな…けーきもくっきーもきゃんでぃーも、お金すらすらも何も出ない!
いつも白いあいてむばっかりでごめんなさいした僕に、ごしゅじんさまが言った言葉が脳裏に浮かんだ。
「ペットのドロップは本体の運依存なの。ファミちゃんは悪くないから気にしないでいいんだよ」
運ていまーじゃない、健康ていまーのごしゅじんさま。
それでも、白くてもあいてむが落ちたのは…ごしゅじんさまが持ってた青いぽーたるすふぃあのお陰だったのかな。
ごしゅじんさまがいないと、僕はお菓子すら拾えないんだ。
いつもありがとう、したかったのにな…。
僕の頬を暖かな涙が伝う。
そんな僕のせんちめんたるな気持ちに沈んでた意識を我に返す言葉が聞こえた。
「ちょw何でB1にファミいんのww」
「別にいいじゃんwエンヘイあるし殺っちゃえw」
振り返った先にいたのは、ぶれえびえんへい霧ばりあ完全ふる支援の若葉ぱーてぃーさんご一行だ。
身の危険を感じて頭を抱えた僕に振り下ろされた剣は空中で止まって。
「えw攻撃出来ないしwwバグ?www」
「てかコイツちっちぇーし誰かのPじゃね?」
「じゃ、どっかこの辺に幼女の死体落ちてんの?」
失礼な!
僕のごしゅじんさまは健康ていまーだから死んだことなんてないのに!
憤慨する僕を余所に、続く会話は僕にとって地獄の言葉。
「てかさてかさ、ペット奪取って使ってみたいんだけどw」
「やっちゃえやっちゃえww」
やだやだ、やめてー!
ごしゅじんさま以外のごしゅじんさまなんてやだよー。
後ずさりする僕ににじり寄る若葉ていまーが、壁に背をついてしまった僕に笛を振り下ろす。
ごしゅじんさまー!
目を瞑った僕に振り下ろされる筈だった笛は、その背後から伸びた手に掴まれて振り下ろされることはなく。
「こらこら、ペット奪取は未実装だよ。ソレにそのコは知り合いのPなんだ…苛めないでやってくれないかな?」
聞き慣れた声に恐る恐る目を開けた僕の目に、ごしゅじんさまのぎるめんのいけめんさんの姿が飛び込んできた。
た、助かった…へたりと座り込んだ僕の目の前で、いけめんさんが若葉さん達と何やら交渉中。
いけめんさんの説得の結果、若葉さん達はやっと何処かに行っちゃった。
「ソレにしても…如何してこんな所にいるんだい?迷子かな?」
いけめんさんは、僕のえっちぴーを見て、あすひをかけてくれた。
暖かな大地の癒しが、疲れた身体に心地いい。
何もない空中を見てぶつぶつ呟いたいけめんさんは、しゃがんで目線を僕に合わせてこう言った。
「君のご主人様、君を探してる。ファミちゃんが家出したってGチャで泣いてるよ」
がーん、心配させちゃった!
途端にあわあわしだした僕を余所に、いけめんさんは笑って僕の隣に腰を降ろした。
「急いで迎えに来るって。それまで一緒に待ってようか」
のんあくてぃぶだしれべる差があるから、もんすたーの群れのど真ん中でもいけめんさんは余裕だ。
「それにしても、家出なんて…ホームシックにでもなったのかい?」
違うの違うの。
ぷるぷる首を振って、必死にあっぴーる。
目の前でうねうねしてるぞんびを指差して、何とか伝えようとしたけど…やっぱり伝わらない。
困ったなぁ。
再び訪れた静寂の中、遠くでさっきのふる支援ぱーてぃーめんばーの「リザおね^w^」の叫び声が聞こえた気がした。

621黒頭巾:2008/03/13(木) 18:18:14 ID:fou9k2gM0
「ご主人様、もうすぐ着くって」
再び虚空に向かって呟いたいけめんさんが、楽しそうな顔で僕に言う。
めって怒られないかな、悪い子はもういらないって言われないかな。
如何しよう如何しよう、恐いな恐いな。
そわそわしながら待ってると、いけめんさんの背後に沸いたぞんびが急に腕を振り上げた。
おかしいな、ここのぞんびはこっちから攻撃しなきゃうねうねしてるだけの筈なのに。
あ、ぞんびじゃない…ぱてぃしえ長のぞんびどだ!
いけめんさんはごしゅじんさまの大事なお友達…僕が護るんだ。
我が槍にかけてぇぇぇ!
「キェェーック!」
…どんだけかっこよく決めても、いけめんさんにはこう聞こえるみたいだけど。
ぺちょんと地に伏せたぞんびどの近くに、きゃんでぃーがぽとりと落っこちた。
わわ、落ちたよ落ちた!
慌ててきゃんでぃーを拾った僕の身体が、ぐぃーっと持ち上がる。
猫の様に首根っこを掴まれて、恐る恐る振り向いた先には…泣き腫らした目のごしゅじんさまのお顔。
さっきのきゃんでぃーは、想いが通じたんじゃなくて、ごしゅじんさまが近くに来たから落ちたんだ。
「やっと見付けた!」
ほっとしたのと、自分が情けなくなったので、僕の目にも涙。
「無事でよかった…心配したんだからね」
ごしゅじんさまは僕を地面に降ろして、ぎゅーっと抱きしめた。
ごめんなさいごめんなさい、心配かけて泣かせてごめんなさい。
泣きそうなお顔でごしゅじんさまが僕の目を見つめて訊いたのは、思いも寄らないことで。
「私のこと、嫌いになっちゃった?お家に帰りたい?」
違うよ違う、ごしゅじんさま!
僕にはごしゅじんさましかいないのに!
ぷるぷる首を振りながら、必死に握り締めてたきゃんでぃーをごしゅじんさまに差し出して。
「コレ、私に?」
うんうん頷いた僕に、今まで後ろで見守ってたいけめんさんが成る程と呟いた。
「もしかして…ホワイトデーのお返し、ですか」
いけめんさん、いいこと言った!
いいのはお顔だけじゃなかった!
「…ありがとう」
ごしゅじんさまは笑顔で僕の頭をいいこいいこしてくれた。
僕のごしゅじんさまは、戦闘終了後にいつも治療とご一緒にお手々を当てて「痛いの痛いの飛んでいけー」ってしてくれる。
暖かいお手々で撫で撫でして貰ったら、早く治る様な気がするもんね!
僕の傷はあすひでもう治ってたけど、心がほわんと暖かくなるのを感じた。

ねぇ、ごしゅじんさま。
僕、もうごしゅじんさまを置いて勝手に何処かに行かないよ!
だってね、ずーっとお傍にいれることが、きっと一番のぷれぜんと。



皆様に、はっぴーほわいとd(ry

皆様コンニチワ、黒頭巾です。
感想レスで満足しそうになって忘れかけたのは内緒デス(ちょ)
元々、ふぁみりあいーえっくすの話はバレンタインとホワイトの二本立の予定でした。
後編のホワイトデー、無事に間に合ってよかった(ノ∀`)ペチン
日本語の使い方があやしいのは、幼児(をイメージした)キャラのファミたんの所為です…えぇ、背後の人の所為じゃないですったら(ぇー)

622幕間・WIZとテイマ:2008/03/13(木) 21:30:00 ID:of5VjV0.0


WIZ「我が黄泉の炎(ry

テイマ「エンチャくらい普通にかけてくれ・・・」

623幕間・WIZとテイマ:2008/03/13(木) 21:31:23 ID:of5VjV0.0


WIZ「紫色の触手が這い回ると回復ってwww」

テイマ「アスヒをそんな風に言うなよ・・・ 自分のスキルだろが・・・」

624幕間・WIZとテイマ:2008/03/13(木) 21:32:59 ID:of5VjV0.0


WIZ「チリングタッチ!チリングタッチ!」

テイマ「エンチャかかったクリティカルヒットだろ・・・ しかもそれでチリならゴミダメにもほどがあるぞ」

625幕間・WIZとテイマ:2008/03/13(木) 21:35:02 ID:of5VjV0.0


WIZ1「せーの・・・」

WIZ1・2・3・4・5「パラレルスティング!」

テイマ「遊んでないで普通に攻撃してくれ・・・」

626幕間・WIZとテイマ:2008/03/13(木) 21:36:28 ID:of5VjV0.0

WIZ「隕石ドーン!」

テイマ「いや・・・まあ隕石っちゃ隕石だけどさ・・・ 普通にメテオって言ってくれよ・・・」

627幕間・WIZとテイマ:2008/03/13(木) 21:39:02 ID:of5VjV0.0

WIZ「フル支援完了^^ テイマs後は任せた」

テイマ「ペアハンでそんな事したらお前・・・」


後日・2PC疑惑で晒される




WIZ『2PCじゃねえだろぼけ!』

住人『本人乙^^』

テイマ「はぁ・・・」


『』の中は掲示板への書き込みだと思ってくれ

628幕間・WIZとテイマ:2008/03/13(木) 21:40:22 ID:of5VjV0.0

WIZ「アイススタラグマイト!」

テイマ「あれ?お前確か・・・」



WIZ「こんどこそ高所恐怖症克服したと思ったのに・・・ (((; ゚Д゚)))ガクガクブルブル」

テイマ「・・・」

629幕間・WIZとテイマ:2008/03/13(木) 21:41:30 ID:of5VjV0.0

WIZ「アースクエイク!アースクエイク!」





WIZ「酔った・・・」

テイマ「それ何回目だよお前・・・」

630幕間・WIZとテイマ:2008/03/13(木) 21:44:46 ID:of5VjV0.0

WIZ「男言葉直さないの?」

テイマ「いくら俺がひょろくてテイマが女ばっかりだからってんな事いうんじゃねえ!」




テイマ「俺だって気にしてるわ・・・orz  いっそオカマになtt・・・ ハッ!俺は何を!?」

631幕間・WIZとテイマ:2008/03/13(木) 21:46:30 ID:of5VjV0.0

WIZ1「ブラック・サンダー!」

WIZ2「ホワイト・サンダー!」

テイマ「色同じだろ! あとキモイわ!服まで着替えやがって!」

632◇68hJrjtY:2008/03/14(金) 00:15:36 ID:RWpy3jWI0
>黒頭巾さん
うーん、またも心がほんわか、和みました…。
黒頭巾さん特徴(?)の少しブラックネタを混ぜた童話のような語り口と世界、堪能しました(´¬`*)
なるほど、前回のバレンタインデーの続きということでファミたんが一人でお菓子探し…しかし意外なハプニングが(笑)
ぱてぃしえぞんび、って誰かなーとか妄想し始めたらなんと、お菓子系アイテムを落とすという意味だったんですね(*´д`*)
そして前回もそうでしたがいけめんさん、なかなかアジな真似をしてくださる。「いいのは顔だけじゃなかった」って言葉に思わず苦笑。
SSデータ消滅、ご愁傷様です( ´・ω・) めげずに再執筆もお待ちしてますよ!

>622-631さん
WIZとテイマの一発芸風漫才(?)、面白かったです(笑)
やっぱりWIZがボケ役ってイイ…。普段のスキル万能ぶりや理知的イメージをかなぐり捨てたような。
対するテイマも幼女姿で男言葉っていうギャップがまたイイ。突っ込みも的確で厳しいですし!
アイススタラグマイト=高所恐怖症で怖い、というのに目からウロコ。確かに面白いスキルですが落っこちそうですよね(笑)
そしてアースクエイクはおろか骸骨や熊ペットのスキル攻撃での画面揺れ2、3回程度で酔い始める68hでした( ´・ω・)
別の職を使ったりも面白そう。次回作も期待してます!

633名無しさん:2008/03/14(金) 10:10:05 ID:gXqJ5/rQ0
>黒頭巾氏

ウェルダーズオリジナルww
相変わらず端々の小ネタが光ってますねw

>622-631氏

これは面白いw
目の付け所がいいですね。

634之神:2008/03/14(金) 15:54:58 ID:etjoMCyo0
θ

2/14
◆――◆――◆――◆――◆――◆――◆――◆――◆――◆――◆
シリウスさんへ

シルヴィーです。
あまり無理しないで下さいね、弱いんですから。
それはチョコレートです。毒なんか入ってませんから、安心して
食べて下さい。
余計な騒ぎを起こさないように、自己制御もお忘れなく。
では、また。

シルヴィーより義理チョコと共に。
◆――◆――◆――◆――◆――◆――◆――◆――◆――◆――◆


「こっ…これは…!」

男の持つチョコレートの中には、唐辛子が混ざっていた。
「おのれ…あの女……菓子で気を許した所を突く作戦かっ…!」

涙目の男は、缶コーヒーと共に雪道を歩いていった。


3/14

―いらっしゃいませぇ。本日ホワイトデーのキャンペーン対象商品、全品半額で〜す!

店内アナウンスの女性は、慣れきったマイク操作で声を響かせていた。

―いらっしゃいませー!本日ホワ…
「おい、貴様」
アナウンスを遮られた彼女は、少し不機嫌な顔で男を見た。
メガネにトレンチコート、変な形の杖…長い髪。
完全に周囲から浮いている男は、さらに言う。

「貴様…ホワイトデーとは何なのか説明しろ。でないと我が雷で貴様を打ち抜く事になるが」

さっぱり意味の分からない女性店員は、だんだん不思議な気分になってきた。
―この日の行事の説明をしないと、どうやら殺されるらしい。―

女性店員は、これも接客だと対応をすることにした。

「お客様…ホワイトデーの内容を知らない…ということでしょうか?」
「そうだと言ったろう。教えろ」
「ええと…2/14のバレンタインデーで、チョコレートなどをもらった女性へ3倍でお返しする日です」
「何!?そうなのかっ…3倍、返し…」男は拳をギリギリと握り締める。

「世話になったな。貴様はいつか成功する」
「は…はぁ…」


「あの女め…3倍返しで足腰立てなくしてやる…」

この男、シリウスは…前回のバレンタインデーで恐怖を味わった。
小さい頃から辛い物だけは苦手だったシリウスにとって、唐辛子など言語道断であった…と同時に、
ある少女はその怒りに触れてしまった。

「さて、どうやって苦しめてやろうか…」
シリウスはまず、女の子の嫌いな物を考える。

「ゲテモノ…にするか」

635之神:2008/03/14(金) 16:14:25 ID:etjoMCyo0
「よし…ゲテモノと言ったらやはりこいつ等か」

というシリウスの目の前には、ムカデなどの多足類、カエルなどの両生類、イモ虫類、ヘビ…。
どこから集めてきたのかはわからないが、そんなキモチワルイ者達がバケツいっぱいに詰まっていた。

「フン…これで3倍返しってところだろうか…」

こうしてシリウスは、シルヴィーを呼び出しこれをぶちまけることにした。
「もしもし…私だ……貴様、忘れたのか、シリウスだ」
「そうだ、貴様にもらったあの忌々しい…ではなくチョコレートのお返しをするのだ」
「フッ、私だってそれくらいのマナーは守っているのだよ」
「そうだ、この時間に、ああ、ここにだ」


シリウスは、とある路地の裏で待ち合わせをした。
「フッ…まんまとやってきたな」
シリウスの視線の先には、少女がいた。

λ

「あの…どうしたんですか?貴方ってそんな人柄じゃ無いですよねぇ?」
「フン…それは、偏見だ」
「そうですか…それで、何を私に?」
「ああ…これをな」シリウスの手には、キャンディーの詰まったお菓子箱があった。

「あら…ありがとうございます…」

彼は今日、そわそわしてる…。このお返しでは無いたくらみでもあるのかな…?
まぁ、たいした事じゃ無いだろうけど…。


θ
フッ…菓子だけだとでも思っているのか…。
さぁくらえ!ゲテモノで泣き叫ぶのだ…!

と、シリウスはセットしていた仕掛けを解除した。

突然、どこからか大量のキモチワルイが沸き始め…やがてそれは少女に詰め寄っていく。
「どうした、この菓子箱では足りないのか…?」と、笑うシリウス。

シルヴィーは沢山のキモ(ry に囲まれ、動けずにいた。そして。


「わーっ!いっぱい動物いますねぇ!どこから出てきたんでしょう?」

(´・ω・`)と肩を落とすシリウスを横目に、シルヴィーはキm(ry と戯れる。
「そうか…忘れていた」

彼らは動物と生物体を愛しながら、それらを理解して抱擁する知恵を磨くことにたくさんの時間を費やす。

636之神:2008/03/14(金) 16:28:14 ID:etjoMCyo0
θ

結局、お菓子箱を貰い、動物と戯れて満足したシルヴィーは帰ってしまった。
さて、どうしたものか…。

「女は…女は…!冷えに弱い!」
しめた!とシリウスは、冷気の魔術を輪唱した。

「フン…今度こそ3倍返しだ…!」

λ

「うーん、あの程度で私を脅かそうっていうのが間違いですよね、スェルファー」
と、呼ばれた青くふわふわと浮遊する魚は、コクリと頷く。
帰り道、ケルビーに乗りスェルファーを連れていたシルヴィーだが、嫌な予感がしてならなかった。

「また…あの人が変な事しそうです…」

θ
「よし…これで極寒だ」
シリウスは小さく結界じみたものを張り、中で冷気をため続けた。
テレポートによって先回りしたシリウスは、シルヴィーの通過を待つ。

「これで奴も『たすけて』三唱で3倍返し成功だろう…」
「んん、来たか」
ケルビーに乗った少女が、魚を連れて駆けてきた。

「よし、通過だ!」
そうしてシルヴィーは、小さな結界の中へ入っていった。

(´・ω・`)

普通に通り過ぎられてしまった。何が…何がいけなかった…!

ウィザードが4種類の元素を直接に扱ってその力を特別な形に具現する人といえば、
サマナーは4種類元素の属性を持つ神獣と共感して4元素の力を発現、内包するということになる。

637之神:2008/03/14(金) 16:43:22 ID:etjoMCyo0
θ

「おのれ!いつになったら3倍返しになるというのだ!」
街中で地団駄を踏むシリウスを、街の人たちは華麗にスルーする。

「あの女め…今度はどうやって…」

無い頭をしぼり、思いついた。

「これなら…奴を足腰立たせなく…」

λ
「まったく、弱い結界に加えて次は何をしてくるのやら…」
普段、相手を下に見てバカにしたような目で見る、あの彼は…絶対言わないんだろうなぁ…。

あの人がこんなこと言ったら、私腰抜けちゃう…。

家が見えてきたので、そんな考えもやめにした私は、家の前に人影を見つけた。
「うわぁ…また、居る」

θ
「遅かったな」
「そりゃ、テレポートと比べたら」
「まぁいい」フッ、とシリウスは鼻で笑う。

「良くないですよ!さっきから纏わり付いて、ストーカーで訴えますよ!?」
「悪いがな、私は貴様に3倍返しという恐ろしい計画を実行しt…
「もう、あの動物とかヒンヤリした空間とか、その程度で私をどうしようと…」

「最終手段だ、貴様を立たせなくしてやろう…」
「その前になんで3倍返しって、…まさかホワイトデーの事ですか?」
「ええいうるさい!私はあの唐辛子の入った忌々しいカカオの塊を受け取ったときから、復讐を誓ったのだ…!」
「その程度で復讐とか怖い事言わないで下さいよ…」

「貴様、いちいち突っ込むな」
「じゃあ突っ込みどころを無くしてくださいよ」
「……。とにかく、貴様を立てなくしてやる…」と、風が横切る。



「2/14 ありがとう…美味かった」
「へっ…?」
と、シルヴィーは腰を抜かした。


サマナーに限らず、意外な事があれば驚き、相応の反応を見せる。

638之神:2008/03/14(金) 16:47:58 ID:etjoMCyo0
ホワイトデー、シリウス短編。
嫌がらせでしか3倍返しを思いつかない彼ですけど、自分の特性わかってるんですかねぇ…最後のセリフ。

流行の言葉で言えば「ツンデレ」になるのでしょうか、それとも…?

「ホワイトデー」、と言うよりも、「ホワイトデーの3倍返し」ネタと言ったところでしょうか。
まぁそんな読みきりでヾ(´ー`)ノ

課題小説とか、また設定目論んでます。
では引き続き、小説スレをお楽しみ下さい。之神でした。

639◇68hJrjtY:2008/03/14(金) 18:01:50 ID:RWpy3jWI0
>之神さん
こ、これは…!シリウスファンにとってみたらたまんない短編でした(*´ェ`*)
あの手この手を使っても屈しないシルヴィーの腰を抜かすためにはたった一言でよかったんですね!
普段の仏頂面とか変態ぶり(いい意味で!)に余念が無いシリウスに一瞬でもこのような表情を取られたらイチコロですよ(ノ∀`*) ツンデレ万歳。
しかしホワイトデーはバレンタインの3倍返しっていうのは知らなかった…これは徹やライトたちの「ホワイトデー」も妄想してしまいます。
私の想像通りシリウス=甘党というのがピッタリで良かった!本編、次回作も楽しみにしていますー。

640名無しさん:2008/03/14(金) 21:59:18 ID:O.ZGNKLk0
(敵じゃ無いみたいだな、良かった〜…)
浩助は立ち上がり、男の顔を覗き込むように右側に並んだ。立って並んでみると、確かに浩助よりは大きかったが、そんなに差はなかった。
そばかすが特徴的な顔はいかにもやる気なさそうだった。髪は長めでワックスでもつけているのだろうか、それなりにぐしゃぐしゃになっている。
「君のオトモダチは下に避難させといたから、存分に暴れていいよ」
気付けば体育館には三井と浩助とそばかすの男しかいなかった。
「すいません、とりあえず名前だけでも教えてください」
なかなか肝心なことを言ってくれないので、浩助の方から無理やり質問した。
「あ、そうそう、これ使えよ。俺の剣、切れ味バツグンだぜ。名前?ふじわら」
藤原はそう言いながら右手に持った木刀(?)を差し出した。呆気に取られながら、浩助はその木刀を手にした。木刀じゃん、というツッコミをいれる前に浩助たちへ火の粉が降り注いだ。
「さっきから何をコソコソと話しているのです。まったく不愉快だ。」
ちょっと怒ったような三井の声が聞こえる。氷の柱がさっきより高く感じた。浩助たちは左右に分かれるようにジャンプし、火の粉をかわした。
「はえーとこ倒そうぜ、これ以上授業サボると、ダブる」
藤原は浩助の反対側にいるはずなのに、天井の方から声がした。浩助が声のする方へ目をやると、三井の真上あたりで落下している藤原が見えた。両手をポケットに入れたまま、右足を大きく上に伸ばしていた。三井はまだ藤原の場所を見つけ出せていないようで、焦った表情であたりを見まわしていたしている。
「くらえ!ふじわら流かかと落とし」
三井がようやく上を向いた瞬間、藤原の右足が振り下ろされた。鈍い音と共に三井は倒され、仰向けの状態でなんとか柱の上に乗ったままだった。藤原は少し前かがみになりながら、氷柱の根元へ着地した。
すると、氷の柱は地面へ沈むように消え去り、元の場所には仰向けの三井だけが残された。藤原は
「あれ?もう終わっちったか?悪いねェ、出番なくしちゃって」

うう〜、せっかくがんばって書いたのに、長いって言われました。コピーしてたところまで…
ホワイトデーって3倍返しなんですか? ぼくは昨日 かのじょに返しましたけど 3倍どころかもらったのより安いかも…。

641幕間・農業組合:2008/03/14(金) 23:35:25 ID:of5VjV0.0

ハイブリ「おまえらちょっとこっちに集まってwww」

農家1・2・3「何々?」

ハイブリ「分身www」

農家1・2・3「後ろ回し蹴り!」

ハイブリ「がはぁっ・・・」

※後ろ回し蹴り・・・シフ・武道唯一の範囲攻撃スキルで[対象が敵じゃなくても]攻撃してるようなグラが見える唯一のスキル
知ってる? サーセンw

642幕間・農業組合:2008/03/14(金) 23:37:00 ID:of5VjV0.0
しまった 

↑分かりにくいな

以下訂正


ハイブリ「おまえらちょっとこっちに集まってwww」

農家1・2・3「何々?」

ハイブリ「分身にみえねwww  農家たちも分身してくれれば完璧www」

農家1・2・3「・・・  後ろ回し蹴り!」

ハイブリ「がはぁっ・・・」

643幕間・農業組合:2008/03/14(金) 23:39:30 ID:of5VjV0.0

ハイブリ「貫顎ってさ」

農家「ん?」

ハイブリ「なんて読むの? わかんねえwww」

農家「腹ン中からやり直して来い! バカモン!」

ハイブリ「ひでぶ」




この場合ハイブリ=俺と考えてくださいw

644幕間・農業組合:2008/03/14(金) 23:41:10 ID:of5VjV0.0

ハイブリ「罠セット完了ww うぇうぇwww」

農家「飛び蹴り!」

ハイブリ「まごふっ! 飛び越えられた上に蹴られた・・・」

645幕間・農業組合:2008/03/14(金) 23:45:46 ID:of5VjV0.0

ハイブリ「分身ってさ」

農家「分身がどうかしたか?」

ハイブリ「別に本体と同じ動きしなくてもよくね? どうせダメ受けてないしMOBには分からないしwww」

農家「逆に考えるんだ アレは分身じゃなくて質量のある残像と考えるんだ」

ハイブリ「じゃあダメくらいのるのか?www ダメ増えてねえぞwww」

農家「アレはダメが乗った上でのダメだ つまり分身すると威力が落ちるんだと考えるんだ」

ハイブリ「つまり質量のある意味は無いのかww」

農家「(論破された・・・ もう言い返せねえ・・・)」

646幕間・農業組合:2008/03/14(金) 23:49:26 ID:of5VjV0.0

ハイブリ「なんでいつも一日一回は怒号使ってくるのwww 今露店中だぞww」

農家「さすがの怒号もお前の知能の低下は防げないのか・・・」

ハイブリ「ん?w なんかいった?w」

647幕間・農業組合:2008/03/14(金) 23:51:34 ID:of5VjV0.0

ハイブリ「ヒー!w 死ぬ死ぬwww」

農家「武道にもどれ武道に!」

ハイブリ「わかめっ!(断末魔)  仰け反るONにしてなかったw」

農家「ハイブリの意味が無いじゃねえか! バカ!」

648幕間・農業組合:2008/03/14(金) 23:55:16 ID:of5VjV0.0

ハイブリ「踵放置〜♪」

農家「三連ぐらいしろ! CPあまりまくりだろが!」

ハイブリ「だって目が回りそうだもんwww」

農家「踵放置だって左足で立ちっぱなしでそろそろ限界だろ!」

ハイブリ「大丈夫大丈夫ww いつもこれだから左足かなり鍛えられてるしww」

農家「その鍛えられた足で攻撃しないんだから意味ねえだろうが」

ハイブリ「にょろーん」

649幕間・農業組合:2008/03/14(金) 23:59:46 ID:of5VjV0.0

ハイブリ「DF用に釣ってきて〜w」

農家「承知したでござる」

ハイブリ「w」

--------------釣ってきた-----------------

ハイブリ「だぁてぃいふぃいばあ〜♪」

農家「エイド切れてるぞ!」

ハイブリ「するめっ!(断末魔)」

農家「アホかあいつ・・・  違う 実際アホだった・・・」

650幕間・農業組合:2008/03/15(土) 00:04:10 ID:of5VjV0.0

農家「なあハイブリ」

ハイブリ「ん?w 何々ww」

農家「ダブスロとかDFの消費する一本以外ってどこからでてるんだ?」

ハイブリ「ああw あれは空中でバラバラに砕けてるだけww」

農家「実は失敗かよ! …いやむしろ大成功か」

651幕間・農業組合:2008/03/15(土) 00:08:23 ID:of5VjV0.0

農家「なあハイブリ お前ダートとかって投げた後回収しないのか?」

ハイブリ「しないwww てかできないwww バラバラになるって説明したでしょww」

農家「でもスローイングダガーとかはもともと一本で投げるんだろ?」

ハイブリ「ちがうよwww それとダブスロって同じスキルだよwww」

農家「え?」

ハイブリ「集中なしで投げたら一本しか当らないからスローイングダガーで集中して全部当てる気だったらダブスロww」

農家「つまりお前はどう投げてもばらばらになると言う事か  というかそんな落ちかよ・・・」

652ウィーナ:2008/03/15(土) 03:29:41 ID:3RWVAaPc0
>黒頭巾さん
ふぁみちゃんネタきたぁああww
バレンタインデーのでファンになりました!w
えっちぴー…
いけめんさん…かっこよすww

>幕問さん
おお、Wizのネタに続いて農家!w
面白くていいですね!w
シリアスなネタもいいですが笑いがあるのが一番(*´ェ`*)
今度は男女でお願いします…w(

>之神さん
過去のは読んでいませんが、少し理解できました!w
シルヴィーちゃん…つんでれぇw
そしてシリウスさん、ちょっと心にきたよ…w


遅れてるけど、私もバレンタインデー&ホワイトデーネタかこうかなぁ

653ウィーナ:2008/03/15(土) 04:52:19 ID:3RWVAaPc0
白い鳥と黄色い花



プロローグ >>301-303
1話 夢のFelt-tipped marker(サインペン) >>310-312
2話 Disguising as a woman(女装) >>316-320
3話 Facing(対面) >>454-459
4話 イクリプス >>526-531
5話 幻想の闇 >>584-588
6話 フェレス >>605-611



最終話 バレンタインデーの罠、最終決戦

雪積もる、冬のある日。
それは、現実世界でいう"バレンタインデー"の日。
1人の少女は噴水の淵に座り、腰まで伸ばした長いツインテールを揺らしながらそわそわと辺りを見渡していた。
人が行き交う中、黒い帽子をかぶった少年が少女に走り寄った。

「すまん、まったか?」

少年に気づいた少女は冷たい手に白い息をかけて、少し微笑むと

「ううん、だいじょーぶ。」

と言った。
少年の名前はアルビ。
現実世界では女の子だったのだが、何者かの手でこの世界へ飛ばされ、シーフにされてしまった。
少女…メアリーはヘットドレスをつけ、いつもは露出の多い服を白いジャンバーで隠している。

「あるちゃん、今日ってね…」

嗚呼、と頷くアルビに頬を朱に染めたメアリーはつぶやく。

「ばれんたいん、でーだよ」
「うむ」

元々女であったアルビにとっては、絶妙な上目遣いをされても全く気にしない。
おねぇちゃんならこれで落ちるのにな…などと戯言を呟きながら、鞄から明らかに義理ではなさそうな箱が姿を出す。

「ハッピー、ばれんたいんっ」
「俺、に?」
「うん。」
「…ありがとう」

リボンのついた箱を開けると、手作りらしきチョコレートが沢山入っていた。
アルビは料理が苦手で、バレンタインデーなんて1度も上げたことがないのだが、
どうも昔から"友ちょこ"が多かった。
だからそれにホワイトデーでお返し…って、男そのものだった。
あるいは男性よりやさしいだろう。
その"友ちょこ"は義理だが、これはどう考えても義理とは考えにくい…

(俺…女、だよな…)

ふと不安になるひと時。
だがメアリーは瞳を輝かせて反応に期待しているので1つ、ホワイトチョコレートを口に放り込む。
その味は絶賛してよいほどだった。
アルビも甘いものは好きなので、素直に

「うん、美味いよ。ありがとな」

といったのだが…

「や…やだああ!もう…ッ」

こう叫び、メアリーは真っ赤になった頬を押さえながら掛けていった。
そしてギルドチャットで

「もう恥ずかしかったよお!!!」

と叫んだのであった。

654ウィーナ:2008/03/15(土) 04:53:33 ID:3RWVAaPc0
一方変わってフェレス宅。

「あら…メアリーちゃん!おかえり!!」

走り駆け込んできたメアリーを盛大にお迎えする。
フェレスは真っ赤なほっぺたをみて、寒かったのかな、などと思い、メアリーを強く抱きしめた。

「んぅ…おねぇちゃん、はっぴー…ばれんたいん。」

と、アルビのには劣るが、十分リボンの巻きつけられた箱が差し出される。

「…毎年ありがとうね。」

いつもと違って、髪をまっすぐ伸ばしたフェレスは、リトルウィッチにも見えた。
…まぁ元々リトルなのだから、それは当たり前なのだけれど。
先ほどのどきどきが残っているメアリーは胸を押さえてアルビのことを考えていた。
誰かはわからないが、フェレスだって女なので、気づいた。

(私のメアリーちゃんに好かれてる男は…誰なのよ…)

「ね、メアリー。誰か気になる人でもできた?」

ちょっとした質問だったが、それに対してもメアリーは頬を赤くし、

「べ、別に…ぃなぃよ…」
「嘘おっしゃい。おねぇに話してみて?」
「…前にね、玄関の前で倒れてたシーフさんの話、したでしょ?」
「ぇえ。アルビちゃんだっけ?」

こくん、と頷くとメアリーは話を続けた。

「あの子なんだけどね…、最近ニナちゃんのことすきなのかなぁ、って思うんだ」
「…へぇ」
「だってね、2人で話してるところ見たしね、ニナちゃん抱きしめてるところだって、見たんだ」

そう、あれはバレンタインデー数日前…

655ウィーナ:2008/03/15(土) 04:54:47 ID:3RWVAaPc0
女神様探しに一息ついたころ、1度アルビはニナを呼び出した。
それをメアリーは追いかけていって、ウサギのまま見ていたのだ。
だが遠くからだったので、姿しか見えず会話は全く聞こえなかった。

2人は少し会話をすると、アルビはニナを強く抱きしめた。

…それは会話が聞こえなかったメアリーにとっては愛情で抱きしめたと思ってしまったのは当たり前のことだった。
いつの間に解けていた兎変身も気にせず、少しぼーとしていると、湛が切れたようにぽろぼろと、涙が零れ落ちてきていた。


まあ真相はこうだ。
以前のコスプレ大会(ry)の時に、ニナの言った言葉が気になったので呼び出した。

「なぁおい」
「…なに?」
「俺ってさ、なんだろうな」
「…なにが?」

いつまでたっても無表情のニナの肩をつかむ。

「お前気づいてるんだろ?俺が普通のシーフじゃねぇってこと」
「…そりゃあね。」

はぁ、とため息をつくと、ニナは何かを見据えたようにアルビに

「リアルワールドでは女だったんでしょう?
「だけどね…あなたは元々こちらの世界の者。
「いままでリアルワールドでおきたことはすべて、うん全てといっていいほどあなたをこちらに来させる為の動きだったの」
「…親が殺されたのも?」
「そうね、…アレク氏があなたに紅い石を使ったのだって、こっちにくるための前兆に過ぎなかった。
「そして、あなたは今ここにいる。
「…けれどね、1つだけ間違いが起きた。」

「…あなたがメアリーと出会ってしまったこと。」
「…あいつと出会っちゃいけなかったのか?」
「あの子は…女神様となんらかのかかわりがある。
「その関わりは…そうね…ものすごく深いもの。
「女神様はメアリーをものすごくかわいがってるでしょうね」
「へぇー……だから?」
「だから、あなたは憎まれを買うことになるでしょうね」
「別に俺はメアリーに恋愛感情なんてないけ…」
「あなたがそう思っていても、ほら、あの子はそう思うかしら?」

ニナが目で指示した場所には、メアリーがつったってこちらをのぞいていた。
それを横目でみたアルビは、

「…そうか」
「ええ」
「ありがとな、いろいろ教えてくれて」

というと、アルビはニナを抱きしめた。
もちろん、恋愛感情なんてこれっぽっちもなかった。
ただ、お礼を兼ねてした"ハグ"ということだ。

だけれど、メアリーは目の前でおきた衝撃にショックを隠せなかった。

656ウィーナ:2008/03/15(土) 04:55:50 ID:3RWVAaPc0
こんな感じに、フェレスの憎まれを買ったアルビだったが、自分の中でもメアリーに友達とは違う感情があるのは気づいていた。
自分は…元はこちらの住民…
ニナの言った意味が理解できないまま、日は夕刻へと近づいていた。
フェレスはぼーっと突っ立っているアルビへ近づいていくと、

「アルビ、さんですよね?」
「…?ああ、そうだが」

ぺしんっ
いきなりフェレスの拳がアルビの頬を直撃した

「…へっ?」
「…さいってい、あんたなんか死んじゃえばいいのに…」

というと、フェレスは走りかけていった。

「…なんなんだ…」


まあそんなこんなでフェレスは1回アルビに勝負で勝っていました(

657ウィーナ:2008/03/15(土) 04:57:30 ID:3RWVAaPc0
そんなことが2/14にあったのですがっ!
そして…
廃墟と化したリアルワールド、アレク宅…
そこには、茨の中に2つの影が争っていた。

「ほら…もっと顔を歪ませなさい…傑作よ…」

紫色の粒子を飛ばしながら鞭を振り回す。
その攻撃は的確に、アルビに直撃していった。
体中のアザの痛みにこらえるが、痛みが限界に達し倒れこむ。

「力出さないと、頭…踏み潰しちゃうわよ?」

頭を踏みながらフェレスは高笑いをする。
アルビはその足をつかみ、立ち上がろうとする。
しかし体中の痛みは、引くこともなく、そして増えていった。

「…なんで反撃しないのよ、その斧で殺してしまえばいいじゃない…」

フェレスは顔を先ほどとは違う感じに歪ませる。
その表情には哀が表れていた。

「いくらな…事情があったって、女は傷つけられないだろう…」
「…ッ」

今まで、ずっと。
家を飛び出してから本当、ずっとだった。
自分に接する男は私に刃物を向け、お前を倒せば!と襲い掛かってくる。
こちらは何もしていないのに…
仕方なく鞭を振るう毎日を過ごしていくうちに、だんだんその感触が快感に変わっていった。
…だから、自分は男性になんて恋をしない、と思っていた。

だけど、この男は…
こんな甚振っても、何もしてこない。
こいつは死にそうなのに、私を殺そうとしない。

…恐れちゃだめ、誇りをすてちゃだめ…

何度も頭の中で呟いた、けど

(女は傷つけられない…)

私を女扱いしてくれるこいつは、私を救ってくれるのだろうか?

…いつの間にか頭を踏みつける足は引いていた。

何度も、何度も、何度もアルビの声が頭を駆け巡る。
私はなぜこんな悪魔になってしまったんだろう?
…私だって、幸せがほしかった。
こんな殺戮を繰り返しているのだって、いつかきっと幸せが来るからだろうと…

けど、今胸にこみ上げてくる熱くて激しい感情は何?

「おい…」

柱を支えにして、立ち上がると、アルビはふらついた足でフェレスに近寄り、
そしてやさしく抱きしめた。

「……ッ!?何するの…」
「ずっと悲しかったんだな」
「………」

涙を見せちゃだめ、だめだよ…
でもあふれる感情は抑えられなくて。
この目にあふれるモノはぼろぼろと落ちていった。

「…俺がいる。なぁ、戻ろう?」
「うん…」

そっか、メアリーがコイツを選んだ理由が、今やっと、わかった気がした。
安心をくれるんだね、コイツは
でも…きっと、家にいたあの楽しい日々は帰ってこない。
そう、思っていたのに。

658ウィーナ:2008/03/15(土) 04:59:16 ID:3RWVAaPc0
廃墟の中で、ルチノは座りながらいろいろな話をしていた。

「じゃあ、お前を休眠させたのはイリアっつー、剣士で、
「そいつのばーさんを殺したからなんだな?」
「…ええ。謝らなくちゃ、ね」
「…謝っただけでいいんだろうかな」
「今の私じゃ、ただ謝ることしか、でない…」
「十分さ、まあ、とりあえず帰ったらイリアさんとやらを探すか」
「まって」

立ち上がるアルビをとめるルチノ、

「…月舞とニナについてなんだけど…」


「…ッる、ちの…?」
「母さん…」
「ごめんね、ごめんね…ロイは、もうお前と同じように接するから…ッ
「2人とも、私の大事な子供だから………」
「……」

泣き崩れ、抱きつく母親に、娘は一言、願いを言った。


「…にいさん」
「久しぶり、だな」
「私のこと、忘れたんじゃなかったの?」
「…ごめんな、こんなことになるとは思わなくて…
「あの時は、ただ…」
「……ううん、大丈夫。
「もう、あの人がいれば大丈夫だと思うの」

ルチノの見つめる先には、
メアリーと戯れるアルビの姿がいた。


「…俺が、国王?」
「そう!私と一緒にこの腐った世界を変えましょう!ねぇ?」
「まじかよ…」

ルチノは立派なリトルウィッチになり、
赤い髪をまっすぐ腰まで下げて、アルビを上目遣いしていた。
…まったく、メアリーにそっくりだ。

「あ!ねぇさん!」
「あーメアリーおはよー!」
「アルちゃんはメアリのだよ!?」
「っざんねーん、私がもらっちゃったよー」
「いつ、お前らのものになった?」

そして、2人は笑顔で声を合わせこう叫んだ。

「「今!」」

659ウィーナ:2008/03/15(土) 05:00:00 ID:3RWVAaPc0
こうして、女神様…いや、ルチノが戻ってき、
世界の危機は免れた。
そして…
3/14 ホワイトデー。

ホワイトデーって、チョコレートもらった人に返すんだから、
メアリーにしか返さないんじゃ?
と思うでしょう!

実は、あの後ルチノも高級チョコでつくった手作りをあげているのだ…
そして、この姉妹のような2人は今日もアルビを巡って争っていた…

「おねーちゃん、今日は何の日かしってる?」

勝ち誇ったような笑顔を振りまきながらルチノに負ぶさるメアリー。

「ふふふ、もちろん。きっと私のほうが本命よっ」

両手をあげ、ぴょんぴょんと飛び跳ねるルチノから落ち、しりもちをついたメアリーは嫌な顔をする。

「あ、あたしが本命だもん!」
「おこちゃまにはまだはやい!」

なんだかんだいって、仲のいい2人をロイとニナがいい雰囲気で眺める。

「…元気よね、あの2人。
「ルチノだってついこの前まで世界を壊そうとしていた悪魔とは思えないもの」
「そうですねー」

実は、ニナ、"あの日"、ロイに棍棒をあげていた…
ロイがどう勘違いするかも皆さん、わかるだろう。

「今日はホワイトデーですねーっ」
「私は誰にもあげてないもの、関係ないわ。」

おや、そうでしたっけ。とロイは呟くと、花束をニナに渡す。

「…私、に?」
「ええ。ニナさん、今は受け入れられないとおもいますが…」

翼の生やした天使は、少女の右頬に軽くキスをする。

「…ッ!?」

ニナは失神寸前だったという。



さて、こちらのバトルは…

「アルビは私のモノ!」
「やーだああ!!!あたしのだもんっ」

と続いていた。
あきれているアルビは、2人に全く同じ、綺麗な宝石の埋め込まれたステッキを渡した。

「これでもかじってな。」
「「!!!」」

はしゃぎまわる2人を、妹のように撫で、あっけなくこのバトルは終わってしまった。


「ねぇみょんちゃん」
「はい?」
「何か私たち、素朴だね」
「…そうですね」



『ニナは…私の次に、世界を脅かすかもしれない…』

660ウィーナ:2008/03/15(土) 05:01:38 ID:3RWVAaPc0
さて、バレンタイン&ホワイトデーを練りこんだ、1章最終話がなんとか、終わりましたよっ
本当になんとか、ですよ…
練りこもうとしたら変に練りこまれ…
もうどーにでもなれ!とニナとロイくっつけちゃうしorz
まあ…次回予告です

廃墟でルチノが発した、ニナについての言葉の意味は?
2章で解き明かされる、月舞の力とニナの真実。
そして、魅穏の恐れていたことが、ついに起こってしまう。
ロイの隠された力とはッ

次回{夢見るロリータガール}

題名自重((

ではでは!

661◇68hJrjtY:2008/03/15(土) 12:32:31 ID:RWpy3jWI0
>640さん
新登場の藤原君、もしかして武道!?(*゚Д゚)=3 (かかと落とし使っただけで
ということは能力としたらやっぱり、「力」でしょうか…まだ明らかにはなってないみたいですけども。
でも知識武道というタイプが皆無な点を考えればやっぱり力かなぁ…それとも、うーん(妄
浩助の出番なしで三井君撃沈しましたが、彼の正体はいかに。
---
ホワイトデー3倍返しってやっぱり初耳ですか!( ゚∀゚)人(゚∀゚ )ナカマー!
これからは彼女さんに3倍返ししてあげてくださいよ(笑)
それと、文章が長いと表示されたら2レス、3レスに渡っての投稿でもOKですよ、というか皆さんそうされてますし(笑)

>幕間さん
武道ネタキタ━((((((っ・ω・)っo((・ω・))oc(・ω・c)))))))━!!!
今回はボケがハイブリ君で突っ込みが武道君。各シフ武道スキルの謎点が解明されつつありますね(笑)
しかしハイブリ君の断末魔悲鳴が楽しすぎる…それと個人的に武道君の「承知したでござる」はツボったァ!今度RS内で言わせて貰います(゚ェ゚*)
でも三連とか連発してると確かに三半規管がおかしくなりそうな気もします。見てるだけで目が回りますよね。
集中しないで投げるとTH、集中するとDTH、もっと集中するとDF。うーん、シフさんって集中しまくりなんですね。頑張って下さいブラザー!
次回作もお待ちしてます(笑)

>ウィーナさん
バレンタイン&ホワイトデーネタ、しかも単品ではなくて本編に混じりこませるとは…流石!
そしてアルビの中でも何かが変わっていく様子が良く分かりました。
戦いそのものではなく、いうなれば「愛の力」で決着をつけたルチノの改心。改心というよりも本来の姿に戻ったという感じですね。
アルビモテモテですね(*´д`*) 本人は迷惑そうにしてるのにメアリーとルチノが大騒ぎしているのが目に浮かびます。
そして一方ではニナに告白しちゃったロイ、でもお似合いだと思います。冷静な二人の恋愛模様の行方も個人的に気になりますヽ|・∀・|ノ
第一章の執筆お疲れ様でした!第二章の方も楽しみにしています。みょんちゃんガンバ!(何

662柚子:2008/03/15(土) 15:20:13 ID:ewfk6vnI0
1.>>324-331 2.>>373-376 3.>>434-438 4.>>449-451 5.>>517-523
6.>>572-578 7.>>599-602

『Who am I...?』

馬車に乗ってどれくらいの時間が経つだろうか。
カツカツと鳴る蹄の音もそろそろ聞き飽きてきた。
「見えてきましたよ」
商人がイリーナ達に声を掛ける。
しかしイリーナは今朝の戦闘の疲れで動こうとせず、ルイスは暇そうに欠伸をするだけ。
そんな中、ミシェリーだけが反応した。
「わあ、ここってどんな国なの?」
反応してくれたことに気を良くした商人がミシェリーの質問に答える。
「ここは国というより町に近いですね。古都ほど大きくもないですし。ここハノブは鉄鉱の町だと言われているんですよ」
幼いミシェリーに対しても敬語な所が商人らしい。
商人が丁寧に答え、それに対してミシェリーは興味津々に頷いた。
「私は土臭くて嫌いだ。地味な町だからあまり期待しない方がいいぞ」
水をさすようにイリーナが会話に割り込む。
それで興味を無くしたのか、ミシェリーは浮かせた腰をそのまま降ろした。
「つまんなーい」
「もう数分もすれば着くだろ、それまでの辛抱だ。暇なら空気食え、空気」
イリーナに冷たくあしらわれ、ミシェリーは膨れた。
ミシェリーはどうしても構ってもらおうとゴロゴロと荷台の上を転がる。
その時、車輪が悲鳴を上げながら馬車がその場に停止した。
慣性に従って転がるミシェリーを、ルイスが襟首を摘み上げて止める。
「着きました」
商人が御者台から顔を覗かせ、3人に降りるよう促す。
一行は、ついにハノブに到着した。

「地面が懐かしー!」
ミシェリーが力いっぱいに伸びをする。
「ほぼ丸一日馬車の中だったからな、無理もないさ。よっと」
イリーナが答えながら、荷台から自分達の荷物を持ち上げる。
商人の荷物を運ぶのを手伝っていたルイスが、いくつも荷物を抱えながら顔を出した。
「ハノブか。久しいな」
「ハノブに彼女でもいるのか?」
「ああ、2人程」
思いもしない応答にイリーナが言葉を失う。
「良いですねえ、羨ましいものです」
荷物を運び終わった商人が姿を現した。
「ルイスはいつか女に殺されるな」
ルイスが受け流し、会話が途切れる。
すると嫌な空気になり始め、商人が逃げるように3人に喋りかけた。
「それでは、私はここで失礼させてもらいます。お二方の護衛、深く感謝します」
商人が丁寧に礼を述べ、3人に別れを告げる。そして商人は先にハノブの町へ消えていった。
商人が人込みに紛れ見えなくなるのを見守った後、イリーナが口を開く。
「よし、私達も行くとしますか」
「おー!」
ミシェリーが元気良く言い、3人はハノブに入った。

663柚子:2008/03/15(土) 15:21:38 ID:ewfk6vnI0
人々が談笑する賑やかな声。
その声に混じり、より特徴的な物はカンカンと響く岩が叩かれる音だ。
「へぇ、古都と全然違うね」
ミシェリーが興味深そうにきょろきょろと周りを見渡す。
「古都は特に都会だからな」
イリーナもまた周りを見渡し、目的の建物を探した。
「繋ぎを着た人がたくさんいるだろ? あの人らは皆、鉱山を掘っている人達なんだ」
イリーナがハノブの町について細かく説明していき、その1つ1つにミシェリーが頷く。
目的の建物を見つけたイリーナが、ハノブの細道を左へ曲がる。
狭苦しく立ち並ぶ建造物の群れの、その中でも小綺麗な建物の前にイリーナが立ち止まった。
「やっと見つけた。宿」
「え、でも目的の街はアウグスタって所じゃないの?」
ミシェリーが疑問を投げ掛ける。そのミシェリーにイリーナは意地悪じみた笑みを向けた。
「ミシェリー。分かっていないようだが古都からアウグスタはとても遠い。もう昼だし、今日を逃したらアウグスタまで野宿だぞ」
「ええ、それは困る! だけど……」
「お母さんが心配なんだろ? 大丈夫、これくらい時間を取っても支障は無いよ」
最後には優しい笑顔になり、イリーナはぽんぽんとミシェリーの頭を撫でる。
ミシェリーは安心したようにほっと一息ついた。
「分かってくれたみたいならもう入るぞ」
そう言い、イリーナは宿屋の扉を開いた。
中に入ると、若い女性が3人を迎え入れた。
「ようこそ。本日はお泊りですか?」
「はい。3人部屋でよろしくお願いします」
「かしこまりました。ちょっとお待ちくださいね」
そう言うと、若い女性は奥の部屋に消えた。
空いた時間を利用し、イリーナが中を見渡す。
宿の中は洒落てなく、旅人たちが好みそうなシンプルな造りだった。
しばらくして女性が帰ってくる。
出てきた女性は先ほどの若い女性ではなく、少し年を取った貫禄のある淑女だった。
「待たせたね、私が宿主だよ。さっきのは1人娘でね、まだ上手く事務ができないんだ。許しておくれ」
「いえ、しっかりした娘さんで。今日は宿の予約をしに来たのですが……」
イリーナが切り出し、宿の手続きを行う。
手続きは数分で終わった。
「では、この荷物を先にお願いします」
そう言い、イリーナは持っている荷袋を台に乗せた。
イリーナが促し、残りの荷物をルイスが乗せる。鎧などの武具が入った袋が鈍い音を立てた。
荷物を運ぶルイスを目に入れると、宿主の淑女は目を丸くさせた。
淑女はイリーナに顔を寄せ、周りに聞こえないよう小声で囁く。
「えらい男前だね。ありゃアンタの彼氏かい?」
そう聞かれ、イリーナは慌てて否定した。
「ち、違いますよ。アレとは同じギルドの団員というだけの仲です」
「そうなのかい。ならぜひとも娘を嫁にやりたいねえ」
女性は、すっかりルイスの容姿が気に入った様子だった。
それは珍しい反応ではない。大半の女性は、ルイスを見た途端目を釘付けにされるという。
その本人はあまり気にしていないというのだから、それが1番罪深いと言えるだろう。
「やめておいた方が娘さんの為ですよ」
「そりゃどういう……」
「イリーナ。終わったぞ」
淑女が疑問を吐き終わる前に、ルイスの声が割って入った。
「それでは私たちはこれで。夜まで町の中でも回っています」
腑に落ちない様子の淑女を残しながら、3人は宿をあとにした。

「さて、宿もとったことだし昼食でも食べるか」
「うん、お腹すいたー!」
イリーナの意見に、他の2人も賛同する。
イリーナが歩き出そうとすると、ミシェリーがイリーナの外套の裾をくいくいと引っ張った。
「ねえイリーナ。明日はどうするの?」
「そうだな。明日は起きたらすぐに出発するかな。それがどうした?」
それを聞くやいなや、ミシェリーはイリーナの手を掴んで走り出した。
「なら今日はいっぱい遊ぼ! ルイスさんも早くー!」
ミシェリーがイリーナの手を引っ張りながら駆ける。
どんどん進んでいく2人を、ルイスはゆっくりと追いかけた。

664柚子:2008/03/15(土) 15:22:39 ID:ewfk6vnI0
ハノブの町に夜が訪れる。
イリーナたちは昼食をとった後、散々ミシェリーに振り回され疲弊し切っていた。
「よし、後は夕食だけだな。近場で言うとあそこか?」
イリーナが近くの店に指を差す。
「どこでもいいからさっさと行け」
イリーナと同じくミシェリーに振り回されたルイスも、疲れた様子で早く済ませたいようだった。
ルイスに促され、イリーナはその店に入る。
店の中は思った以上に賑わっていた。
「何だか賑やかなお店だね」
「酒臭い店だな。ミシェリーは他の店がいいか?」
イリーナに聞かれて、ミシェリーは首を横に振る。
「そんなことないよ。私もお腹ぺこぺこだし」
ミシェリーが腹に手を当て、空腹を強調する。
イリーナ自身も空腹を感じていたので、この店で済ませることにした。
店の客は中年の男性客ばかりで、大半のテーブルに酒が並べられていた。
恐らく、鉱山の仕事が終わった帰りなのだろう。
3人は空いている席に座り、注文を取る。
まもなくして、料理が運ばれてきた。
「わあ、おいしそうだね!」
空腹で待ち切れない様子のミシェリーが歓声を上げる。
料理が置かれると、ミシェリーは間髪入れずに食べ始めた。
「うん、味もおいしいよ!」
口の周りを下品に汚しながらミシェリーが笑う。
それをイリーナは微笑ましそうに見つめた。
「イリーナの作った飯より美味いのは確かだな」
傍らで黙々と食べていたルイスが水を飲むついでに口を開く。
「作ってもらっておいて文句を言うな。でもまあ、飯は美味いな」
出された料理の意外な美味さにイリーナが頷く。
3人が食べ終わる頃、近くの席の方で賑やかな歓声が聞こえた。
イリーナが目を向けると、そこでは数人の男が卓を囲み何やら騒いでいるのが見えた。
「イリーナ、あの人たち何しているの?」
「さあ。飯も食ったしそろそろ宿へ戻らないとな」
イリーナが席を立ち上がる。
すると、例の集団の方で見知った顔が目に入った。
イリーナはそこへ歩み寄り、その人物に声をかける。
「やっぱり。あんたは今朝の」
「おお、何と。貴女は護衛の方」
その人物は果たして昼に別れた商人であった。
「別れたその日に会うとは。ハノブは狭いですからねえ」
「全くだ。ところで、何しているんだ?」
イリーナが商人に疑問を投げかける。
商人を含む数人の男は、何やら数枚のカードを握り、それぞれカードを出し合っている。
どうやら賭け事のようだ。
「大人の遊びですよ。どうです、イリーナさん方も参加しませんか?」
「俺はパスだ」
いつの間にか近くに寄っていたルイスが即座に答える。
「釣れない奴。ミシェリー、ちょっといいか?」
イリーナの脇に来ていたミシェリーが縦に首を振る。
すると席が1人分引かれ、そこにイリーナが座った。
「ほお、お嬢ちゃん。いい度胸だねえ」
「後で泣いても知らねえべ」
卓を囲む男たちが、イリーナの突然の参加に好き好きに口を出す。
それをイリーナは無言で受け流し、カードを数枚引く。
完全に勝気な男共は、イリーナの口が吊り上っていたことになど気づく筈もなかった。

665柚子:2008/03/15(土) 15:23:49 ID:ewfk6vnI0
小さな店の中に大歓声が上がった。
いつの間にか席についていた客も様子を見ようと周りに加わり、卓の周りは大盛り上がりだ。
「よし、これでどうじゃい!」
男性陣の内の1人が強力なカードを繰り出す。全員の目は1人の女性に向けられていた。
その女性が不敵に笑みをこぼす。
「悪いな、おっさん。私の勝ちだ」
不敵に笑うイリーナが更に強力なカードを繰り出し、男性陣を打ちのめす。
見事な勝利に、周りを囲むギャラリーから歓声が沸きあがった。
清算の時間になり、男たちが悔しげに金を差し出す。それをイリーナは満足気に受け取った。
「いやぁ〜、全く歯が立たないですねえ。これは意外でした」
商人が苦笑しながらイリーナを賞賛する。
「ええ、こういった物は得意なんです。これ以上いたらまずいですしそろそろ退席させて頂きますね」
「そうして頂けるとこちら側も助かりますねえ。全員がかりでも勝てないのですから」
照れくさそうに商人が笑う。
「それじゃ、そうします。ミシェリー、帰るぞ」
そう言い、イリーナが立ち上がる。
店の人々に様々な声をかけられながら3人は店を出た。

「いやー、稼いだ稼いだ」
上機嫌にイリーナが笑う。
イリーナは大勝ちだった。男たちを完膚なきまでに叩きのめし、賭け金を全て手中に収めたのだ。
「だから参加したくなかったのだ」
不満気にルイスが呟く。
「よくもまあ、あの団体の中で堂々と。やっていて恥ずかしくないのか?」
「全然。だってあいつら分かっていても引っかかるし」
それを聞いていたミシェリーが、何かに気づいたように顔を上げた。
「え、もしかしてイリーナのやっていたことって……」
「イカサマだ」
ミシェリーの疑問にルイスが答える。
それを聞いたミシェリーは驚愕の表情を浮かべた。
「何だ、今頃気づいたのか? まともにやってこの手のゲームで1人勝ちするなんてまず無理だぞ」
「でも、全然分からなかったよ!」
それに対してイリーナが得意気に笑う。
「魔導師は、器用じゃなくちゃやっていけないからな」
そう言って、誇示するようにイリーナは胸を張った。
それを見て、ルイスは呆れたようにそれを嘲笑していた。

666柚子:2008/03/15(土) 15:25:29 ID:ewfk6vnI0
しばらく歩き、3人は宿に到着した。
宿の中は未だ明かりが灯っている。
3人が中に入ると、再び若い女性が3人を迎え入れた。
「お帰りなさいませ。すぐに準備するので待っていてくださいね」
初々しい動作で若い女性が棚の中を探り、何かを取り出す。
女性が持ってきた物は部屋の鍵だった。
「お待たせしました。では、こちらへどうぞ」
女性に誘導されるまま、3人は部屋の前に着いた。
「では、ごゆっくり」
鍵をイリーナに受け渡すと、若い女性は元の玄関の方へと消えた。
「イリーナ、ふかふかだよ!」
既に宿を堪能しているミシェリーがベッドの上で跳ねる。
それを見てイリーナは苦笑した。
「やると思った。あんまりやると他の客に迷惑だからやめておけよ」
注意を促し、イリーナも早速ベッドに横たわる。
ベッドは吸い込まれるようにやわらかく、こうしていると1日の疲れが抜き取られるようだった。
そのまま寝てしまう前に身を起こし、イリーナは2人に明日の動向を説明する。
「明日は早朝にここを出る。宿をとれるのはこれが最後だろうから各自覚悟しておくように」
イリーナは地図を取り出し、それを広げると更に続けた。
「それで、これが明日からの進行ルートだ」
地図上に指を這わして、イリーナが分かりやすく説明する。
「そうは言ってもお前らは見ても分からないだろうしやっぱりいいや。早く寝ておけよ、以上」
意味のない会議が勝手に閉められ、3人は疲れも溜まっていることからすぐに寝ることにした。
イリーナがランプを消すと、部屋が暗闇に包まれる。
3人は横に並べられた寝台にそれぞれ横たわり、就寝した。

しばらくして、弱々しい声がイリーナの耳に入った。
それは、真ん中のベッドにいたミシェリーの声だった。
「どうした、ミシェリー。眠れないのか?」
「うん、ちょっと……。2人が傍にいると頭では分かるんだけど、見えないと怖いの」
ミシェリーは素直に胸中の思いを吐き出した。
「なんかね、こうした暗闇の中にいると私が私じゃなくなるような気がして、とっても怖い……」
「そうか。ならこうしたら怖くないだろ?」
そう言い、イリーナはミシェリーの手を掴んだ。
掴んだ手から、ミシェリーの熱が伝わってくる。
「ルイス、お前もだ」
イリーナが妙に語尾を強めた。
ルイスはその意図を読み取ったのか、反対の方でもルイスがミシェリーの手を握ってやったことが分かる。
「今回だけだ」
ミシェリーは掴まれたその手を決して逃がさまいと、僅かに握る手の力を強めた。
「えへへ、こうしていると家族みたいだね」
ミシェリーが照れくさそうに笑う。
イリーナは、この平和が決して壊れないことを、1人そっと願った。

667柚子:2008/03/15(土) 16:04:21 ID:ewfk6vnI0
こんにちは。自分が言うのもアレですが本当にすごい勢いで進んでますね、このスレ。
果たしてこのスレ中に終わらせられるかどうか……。

>黒頭巾さん
感想ありがとうございます。
ホワイトデーの話のファミネタ、読ませてもらいました。
しかしファミリアかわええ……。実際にいたら盗んで逃げたいですね。
若葉たちが憎いですなあ。攻撃不可でよかったです。
そしてWIZさんも良い人だ。この人いなかったらどうなっていたやら。
ファミも良い主人に拾われて幸せ者です。

>幕間さん
初めまして。
どちらも読ませていただきましたが、妙にWIZとテイマがツボに入りました。
ハイテンションのボケと冷静なツッコミがとても良いです。
そしてさりげなく細かいネタが入っていて笑いました。
それとこれは個人意見ですが。
もう少しレスをまとめてみるとどうでしょうか。
ほとんどの人が1レスだけでもかなりの時間をかけていると思うので。

>68hさん
毎回感想ありがとうございます!
とても燃料になりました。
自分も初めは戦闘にするつもりはなかったのですが、戦闘増やしたほうがいいかなと思い無理やり入れました。
今回は全く戦闘は皆無ですが、こちらのほうが楽しんで書けるようです。

668幕間・戦士と槍子と時々姫:2008/03/15(土) 23:56:05 ID:of5VjV0.0
やあ、僕は戦士。  フリーのソリストをしてるんだ
このこのリア友のGにはたまに来るんだ。

低マ「レベ上げ手伝いオネ^^」

戦士「・・・」

---------------------------------------------------------------------

突然だが俺には彼女がいる
この槍子だ
少し変態なのが玉に瑕

槍子「あ、戦士おはよー」

戦士「おはようはいいが服を着ろ 話はそれからだ」

---------------------------------------------------------------------
そして俺に付きまとう謎の姫がいる
どこの国の姫だよ 世話係もこいつを逃がすな

姫「ねえ、槍子と別れて私と付き合ってよ。 ほら、私槍子さんよりスライダーでしょ」

戦士「確かに外角にキレのいいのを決められるとまず手は出ないな。 それを言うならスレンダーだ。」

---------------------------------------------------------------------
俺はソロの合間に槍子とデートをするのだがどういうわけか8割以上の確立で姫と遭遇する

姫「アッー! 戦士はっけーん!」

俺の腹 というか鳩尾めがけてのタックル

戦士「ぐはっ」

もろに入った こん畜生 いっぺんしばいたろか

戦士「いつも思うが何故お前は俺たちのデートに必ずと言っていいほど割り込んでくるのだ。」

姫「デートに古都で露店めぐりなんてしてたら普通見つけるよ!」

戦士「あ・・・ それもそうか」
----------------------------------------------
衣擦れの音
槍子「で、いつもいつも姫ちゃんは何の用?」

戦士「言ってることはわりかしまともだが道端で服を脱ぎながら誰かに話し掛けるな」

姫「あのねー、私戦士さんが好きだからどうにかして愛人にしてもらえないかなと思って〜 えへへ」

戦士「誰だこいつにこんな言葉を教えたの!」

槍子「あらあら、でも戦士君はあなたの事は嫌いみたいだからあそこのホテルでお姉さんと気持ちいいことしない?」

姫「ふぇ?」

戦士「そこ!相手は子供だ! 道を踏み外させるような事をするな!」
---------------------------------------------------------------------
>>柚子
レスを纏めるってこうですか、わかりません><

669幕間・戦士と槍子と時々姫:2008/03/15(土) 23:57:18 ID:of5VjV0.0
>>668で柚子さんに「さん」をつけるのを忘れてました
この場を借りて謝罪します

幕間の次回作にご期待ください!

670◇68hJrjtY:2008/03/16(日) 06:45:04 ID:RWpy3jWI0
>柚子さん
旅の中でのほんのひとときの安らぎ。やっぱりこういうシーンを見るととってもホッとします。
ルイスのモテモテ伝説(謎)とイリーナのイカサマ伝説も明らかになったし(*´д`*)
ファンタジー小説は戦闘シーンが醍醐味といえど、もうひとつ決して欠かすことのできないこういった「のんびり日」。
それぞれのキャラへ愛着が沸くと同時に読んでるこっちも旅してる気分にさせてもらいました(笑)
明日はいよいよ、アウグスタへの最後の道のり…何が待っているかは分かりませんが、楽しみにしています!

>幕間さん
なにやら短髪モノから主人公役が決まりましたね!ともあれ、楽しませてもらいました(笑)
いやー凄いですね道で服を脱ぐ彼女なんて(ノ∀`) デートが露店めぐり…でもまあ、古都なんて他に遊べそうな場所は( ´・ω・)
そして戦士君を狙う姫の言動も、本人は意味分かってないような単語を連発してたり。
戦士君、可哀想だけどでもやっぱり羨ましいぞー!(違 次回作もお待ちしてます(笑)
---
レスまとめはこれでOKだと思いますよ!ライン使っていてとても読みやすかったです( ̄ー ̄)b
まあ、ぶっちゃけた話を言うと何レスも一人の書き手さんが使用してしまうとスレがすぐに終わってしまうんですね(;・∀・)
特に長文すぎて投稿できない場合以外は極力レスをまとめてもらえると嬉しいです。

671幕間・マゾ職戦隊ソロレンジャー:2008/03/17(月) 00:13:20 ID:of5VjV0.0
【マゾ悪魔と予備軍ネクロ】

悪魔「ほら〜 エルフさんたち〜 弱いにも程があるエルフちゃんたち〜(はぁと)」

エルフ「この森から去れ…」

ザクッ!ザクッ!

悪魔「ああ〜! 気持ちい〜! もtt…」

バインド発動

エルフ「??!」

悪魔「あら でちゃったわね しかたないわ あそ〜れポイズ〜ン♪」

エルフ「キエエック〜!」(←何かが違う)

悪魔「あ〜あ この子たちじゃだめね… 嗚呼、もっとあたしを満足させる火力のMOBいないかしら・・・」

悪魔「もっとこの快感を高めてくれるようなマッチョで攻撃力の高いナイスガイなMOBを時間をかけてでもいいから狩りたい倒したいヤりた・・・ あらいやだ何いってるのかしらw」

通りかかったネクロ「も、モンスターに攻撃されるのって。 き、気持ちいいのかな。」

ネクロ「と、とりあえず あの人に話し掛けてみようかな…」




ある一人のあどけない少女が道を踏み外した瞬間であった。

---------------------------------------------------------------------
【メインは野鳥の撮影】
シルフラBIS「こっちだよ〜 よいこのみんな あつまれ〜!」

シフMOB1「バカにすんじゃねえ! ぶっ殺す!」

シフMOB2「体操のお兄さんみたいな事いってんじゃねえ!」

シフMOB3「お前のセリフはMOBとして何かまちがってる!」

シルフラ「●竹フラッシュ!」

シフMOB1・2・3・4・5・6「うおっ まぶしっ」

シルフラ「HAHAHA☆ 弱い 弱すぎるよキミたち まったく、倒した実感が沸かないじゃないか」

シルフラ「もっと楽しい死ぬ瀬戸際の狩りがしたいよまったく 友達がいないのは考え物だな どこがいいかがさっぱり分からない」

---------------------------------------------------------------------
【サっちゃん】

サマナ「ゲイルにインシナに噴水〜♪」

雑魚MOB連合・友の会「痛っ!熱っ!鼻に水がっ! ぐはぁ・・・」

サマナ「フハハハハ、見ろ!MOBがゴミのようだ! この効率は誰にも教えねぇゆずらねぇ寄生させねえ!」





サマナ「独り言アホらしいな・・・orz こんなのだから彼氏どころか友達も出来ないのかな・・・」

サマナ(どうやら女の子)「あ〜あ、私と話しの会う人いないかしら・・・」

---------------------------------------------------------------------

とりあえず今日はここまでw
大体のキャラを出したからこれからはこいつらを動かして話を作ってこうかと思うb

え?天使?

ここに出てないって事はつまりそういう(影の薄い)キャラだとお考え下さい・・・

ちなみに中途半端なのはこいつらに明日友達を作らせるためです
伏線にもならねえw ほんとはこういうの嫌いなんだけどなw

明日、期待しててくださいね
大体どうするか決めてるけど明日(もう日付変わって今日かなw)は卒業式に出るから時間が無いんだw

この時点での感想はなしでお願いしますねw

あ〜あ やっぱり最初のWIZのテイマが一番面白かったなw

672之神:2008/03/17(月) 16:59:19 ID:Qvwd4z.60
1章〜徹、ミカの出会い。
-1>>593―2 >>595―3 >>596-597―4 >>601-602―5 >>611-612―6 >>613-614
◆――――――――――――――――――――――――――――――――――――◆
2章〜ライト登場。
-1>>620 -621―2>>622―○>>626―3>>637―4>>648―5>>651―6 >>681
◆――――――――――――――――――――――――――――――――――――◆
3章〜シリウスとの戦い。
-1>>687―2>>688―3>>702―4>>713-714―5>>721―6>>787―7>>856-858
―8>>868-869
◆――――――――――――――――――――――――――――――――――――◆
4章〜兄弟
-1>>925-926 ―2>>937 ―3>>954 ―4>>958-959 ―5>>974-975
◇――――――――――――――――5冊目―――――――――――――――――◇
-6>>25 ―7>>50-54 ―8>>104-106 ―9>>149-150 ―10>>187-189 ―11>>202-204

◆――――――――――――――――――――――――――――――――――――◆
5章〜エリクサー
-1>>277 ―2>>431-432―3>>481-482―4>>502―5>>591-592

◆――――――――――――――――――――――――――――――――――――◆
番外

クリスマス  >>796-799
年末旅行>>894-901
節分  >>226-230
バレンタインデー>>358-360 >>365-369
雛祭>>510-513
ホワイトデー@シリウス >>634-637
◆――――――――――――――――――――――――――――――――――――◆

673之神:2008/03/17(月) 17:24:14 ID:Qvwd4z.60
γ

ガーガー…ザーザー……

「…ちらrイト、こtらライト…」無線機の電波の入りは悪い。

「ライトだ、聞こえるか?」しばらくして、少女の声が返ってくる。

「聞こえてます…少し電波状況が悪いようですが、問題は無いでしょう…」幼い声は、今度は説明を始めた。
「目の前にビルがありますね?」

「ああ、デカいのがな」

「そこを最上階まで上がっていって下さい…そうすると、地下まで続くダクトがあります」

「そっから地下まで降りてけって?」

「そういうことです。そのダクトは地下の研究室…いえ、研究所と言ったほうがいいですかね…、そこの南口に繋がってます」
「南口?」
「そうです…研究所はほぼ正四角形、そして4方全てに扉があり、その扉から出る廊下が研究所を囲ってますから」

「それは何の為の通路だ?」
「その4つの扉から出た廊下は、社員用のエレベーターに繋がってます」
「当然、社員しかそのエレベーターは使えないんだろう?」
「なのでダクトを通ってもらうんですよ」

「分かった…んじゃ30分後、始める」
「幸運を」


κ

「はい、これー」
「社員証か…よくやった」低い男の声は言った。
「エヘヘ…たまには頑張らなくっちゃね!」

「エトナ…お前も来るんだからな」
「分かってるよー、どうせアルシェが片付けちゃうだろうけど」ぷう、と頬を膨らませそっぽを向く。
「お前の技も要だ…」

「えっ?ホント!?」

「ああ…とにかく、30分後にまたここへ来るからな…お前は社員の制服でも奪って来い」
「わかったー、30分後ね!」手をぶんぶんと振り、少女はビルへと入っていった。

α

「ええとなんだ…?これを飲んだら死ななくなる、んで人口がそのまま増える?」

「わかるわよね?どうしておかしくなるか」
「つまり…人口の増加と、それに伴う色んないざこざ…それに死ななくなるから医療技術も発展しないし…」

「それに飲料メーカーじゃ、これが完成したとして広めようとするのも簡単だしね…」
「でもそんな簡単に行くか?そもそもこっちの世界の奴が魔術的なモノを使いこなすとは…」

「バカ」と言って、ミカは自分を指差す。

「私みたいのが、他にいてもおかしくないでしょう?前例があるんだもの」
と言われて、阿呆なロン毛や狂った黒い男が頭をよぎる。

「つってもなぁ…どうするか」と言いながら、俺は何も考えずにミカの部屋のTVをつけた。

――新発売!これで貴方も若さをキープ!4月発売予定、ご期待下さい!――

674之神:2008/03/17(月) 17:41:11 ID:Qvwd4z.60
λ

「はい、こちらですよ…」私は玄関へ男を通す。

「質素だな…まぁいい」

「貴方が言う立場では無いでしょうに」
「わざと言ってみたのだ」
「知りませんよそんなこと」

ハァ、とため息を吐き、部屋へ通した。

「この玄関の真横の部屋、使ってないですから」
「狭いな…」
シリウスの言う事はスルーし続けた。

「ここならすぐに家から出れますし、私も貴方を見ないで済みますから」
「それと、お風呂とかキッチン、リビングは、私が許可するとき以外は来ないで下さいね。基本的に進入禁止」
「貴方が入っていいのはこの部屋と廊下、玄関だけ!以上ですっ!」
ハァハァ…と言い切った後の息切れをしている間、シリウスは何も言わずに部屋に入っていった。

「わかった、しばらく世話になる」
「世話なんてしませんよ」


ψ
「よぉし、んじゃちょろっと入ってサクっと取ってくるかな!」
ナザルドはビルへと大股で駆けて行き、まっすぐ受付をスルーし走っていった。

「どっから入るんだろう?地下ってのは知ってるんだけど…」
キョロキョロと辺りを見回し、階段などの上下連絡手段を探す。

スーツ姿が歩き回る中、ジャージ。

彼はしばらく案内書きなどと格闘し、そうして今もそのままだった。




「所長」
「何だ…?」
「一人、怪しい男がロビーにいるようですが」
「何故私にそれを報告する?」
「それが…」

「地下ってどう行くの?と騒いでるようで…」

675之神:2008/03/17(月) 17:57:40 ID:Qvwd4z.60
さぁ始まりました。
盛大な借り物レース、之神です。

時間軸はほとんど同じですが、シリウスとシルヴィーはちょっとだけ遅れているかな?
まぁ平気ですが(`・ω・´)
―――――――――――――――

以前、絵を書くー、と発言しましたが、進んでおります。
UPする自分のサイトや、ファイル置き場が無いので、お絵かき掲示板の方をお借りしようかな、と。
4月になるかもですがねぇ…。

>>黒頭巾さん

やっぱ和みイイ(・∀・)!
そして特別な存在だk(ry
見習いたいもんです…

>>ウィーナさん

ホワイトデーネタ、乗ってくれましたな!(´∀`*
『ニナは…私の次に、世界を脅かすかもしれない…』
脅かしちゃえ(ぉ
まーた大きい行事あれば課題とか提示できるんですがねぇ…思案。

>>柚子さん
イリーナいいよイリーナ。
肝が据わってる子は大好きですからb
そしてスレの伸び、すごいっすよねぇ…。書き手さん増加中!

>>幕間さん
短編というか、ショートなんちゃら的な。之神って奴です。
私もそんな感じからやってたので、長編とかに手を出すのも大変かもですが、ちょっと期待…!
それと、やっぱレスはまとめた方がいいですね、スレの伸びが加速するので(・ω・`

676幕間・人物設定:2008/03/17(月) 22:59:18 ID:of5VjV0.0
あれだ いままで頑張って一々文章にしてるからつまらない事になるんだ

人物設定を作ってそれを適当に組み合わせるだけでも小説を作る練習にはなるジャマイカ

ということで
キャラ紹介〜
---------------------------------------------------------------------
戦士:割りと常識人 突っ込み役だがボケにもなれる万能タイプ 好みの女性のタイプ:変態

ランサ:その辺の露出狂がはだしで逃げd・・・ もとい よだれをたらしてよってくるほどの変態
    レズにロリショタなんでもいけます 戦士をゲットしたから次の狙いはプリ

テイマ:あくまで♂ 口は悪いが自分が今考えてる中では一番の常識人 チビでナヨいしテイマ自体が主に女の子だらけなので女に見間違えられる事も
    好きなことはペアハン 嫌いなものは8人PT狩り 好きでも嫌いでもないのは消しゴムだよ

ハイブリ:DQN これ以外になんと説明すれば

農家:ホントは常識人 普通は人を殴らない だが相手がハイブリだと話は別 容赦が無くなる
   好きな髪形は弁髪 嫌いな髪型はリーゼント

悪魔:マゾ 第二の変態 どうやら俺には女キャラ=変態という謎の図式があるらしい
   彼氏は絶賛好評募集中

ネクロ:哀れにも悪魔の毒牙にかかりに行った レスしだいでは変態にもノーマルにも成長可能

BIS:富●。体操のお兄さん。歩くPOT。でもPT組まないからPOT役にはあまりならない
    ドラケが唯一の友達

サマナ:あくまで♀ 男言葉だけど♀ 時々ムスカだけど♀ BWHが誤差5cm以内だけど♀
    少し可哀想な子

WIZ:スキルを見て何か変な感想を持ったりスキルでいろいろ遊んだりするPTに一人は欲しいオバカさん
    割りとすぐにみんなと仲良くなるようだ 要するに子供
    好きな言葉は「びっくりするほどユートピア」

天使:どれだけ近くにいても気づかれないある意味一番可哀想な子
   トラウマスイッチ入ったりとか特殊部隊「アサシン」に入ってたりとかアサシンマジックを使ったりはしません 念のため

姫:戦士大好きッ子 すでに廃れた王国の末裔 …だったりしたらいいけど実はお城を抜け出して迷子になって帰れなくなっただけ
  いいまつがい多し 多分一番扱いやすいキャラ

病気のコボルト:登場予定?あるわけありません ここに書いた意味?あるわけありません
        …やる気? あるわけ(ry
---------------------------------------------------------------------
よし、ここまで書けばおkでしょ
明日からは適当に絡ませて遊んで行くかな

徐々に一つのネタを長くしていけばいつか長編物語になるべ

最初のWIZとテイマの面白さをもっかい出したいなw

677幕間・小ネタ:2008/03/17(月) 23:05:59 ID:of5VjV0.0
サマナ「よっ はっ! とりゃ! うりゃ! そいやぁぁぁぁぁああ!」

エルフZIN「痛っ!熱っ!鼻に水がっ!アッー!」

サマナ「フン 雑魚g・・・」

テイマ「ジー…」

サマナ「な、なんだよ」

テイマ「…喋り方にコンプレックスとか体系にコンプレックス持ってない? 『女の子』なのに喋り方がおかしいとか」

サマナ「そっちこそ『男なのに女みたい』とか言われてるやつか?」

サマナ&テイマ「・・・ ちょっと、酒でも飲んでゆっくり話し合おうじゃないか・・・」

678名無しさん:2008/03/18(火) 13:44:34 ID:fvg9dDlU0
三井との対戦が終わった次の日 昼休みの食堂
クラスで浮いているかと思っていた浩助は、未だに動揺していた。
誰も昨日のことや三井のことを話していなかった。浩助は中学校の時も同じような現象が起きていたことを思い出した。
(誰かが記憶を消しているのか…いや、それだと大きな矛盾が残るんだよなぁ…)
中学の時と同じ推測をしていると、向かいの席の慎二が話し掛けてきた。
「よう、浩助!昨日は気絶しちまったけど、三井はどうなったんだ?」
なぜが慎二だけは能力者のことを覚えているのだ。
「なあ慎二、お前は昨日の事を覚えているのか?」
「ああ、だから覚えてるって…なんでか知らないけど。」
「そうか…。じゃあ俺は用があるんで、これで」
浩助は食器の乗ったトレーを手に立ち上がり、返却するカウンターへ歩き出した。それを追うように慎二が慌ててご飯をかき込む。
「ちょっと待てよ!どこいくのさ!?」
頬を膨らましながら浩助のそばへ走ってきた。
「食いながらしゃべるんじゃない。三井を殺したやつに会いに行くだけだ」
「え?どういうこと?三井を殺した?なんで?どうやって?この学校の人?」
「うるせぇなぁ…ついてくりゃ分かる」
返却カウンターに乱暴にトレーを置くと浩助は早歩きで食堂をあとにした。

679名無しさん:2008/03/18(火) 13:45:46 ID:fvg9dDlU0
2-C…ここか」
「そうだけど…あ、わかったぞ!ここに三井を倒した奴がいるんだな?!」
何故か異様に興奮している慎二を無視して教室に入った。2年生の教室だけあって、だいぶ荒れていた。
そんな中に偉そうに机に足を乗っけている男がいた。藤原だ。なにやらゲームをしているようだった。
浩助達は近寄って声を掛ける。慎二は目が輝いていた。
「あのー…」
藤原はゲームから目を離さない。浩助は確かに少し小さい声だったと思った。そして、もう一度声を掛けようと口を開いた時
「聞こえてる!今いいとこなんだ!」
といきなり大声を出されて浩助は少しあとずさった。その直後、ゲーム機から情けないメロディが流れてきて、藤原はため息をつきながらゲームの電源を切った。
「あ〜もう少しで記録更新できたのにな〜…」
藤原はゲーム機を机の上に放り投げて伸びをした。気を抜かずに浩助は話し掛けた。
「藤原さん、昨日のことで話しがあるんですが」
「ん、おう、お前は確か昨日の…話しって何?」
藤原はそう言いながら、立ち上がると、誰も座っていない席から椅子を2つ持ってきた。
「クラスのみんなが三井にのことや昨日のことを忘れているんです。どうしてですか?」
「あ、座っていいよ。忘れてるってそりゃあ、本部がテキトーにやってくれたんだろ。」
「本部?」
「知らない?じゃあお前は珍しいやつだなぁ、自然に能力を得たのか、なら知らなくてもいい。とにかく能力者以外の記憶は消される」
どんどん話の規模が大きくなっていく気がして、浩助はあえて無駄なことにはつっこまずに本題を持ちかけた。
「でも、慎二は能力者じゃないのに覚えているんです」
「そりゃこいつが能力者だからだろ。」
当たり前のように言われ浩助も慎二も目を丸くした。慎二が身を乗り出して聞き返した。

680名無しさん:2008/03/18(火) 13:57:28 ID:fvg9dDlU0
俺が能力者!?そんな力ないですよ?」
「まだ貰ってないだけだろ、それに職業の訓練もしてないし。そのうちスカウトがくる」
「まじっすか!うわぁ〜やったー……!」
自分が昨日のことを覚えているということでさっきから勘付いていたのか、と浩助は察した。
「気を付けろよ?能力も職業も選ぶときは一つだけだ、欲張ると俺みたいになる。」
「と言いますと?」
浩助が首を傾げて聞き返す。
「いやあ、力と敏捷 二つよこせっつって騒いでたら知識にされちまって…。武道家の訓練は受けちゃったからウィザードにもなれねーし…で中途半端になっちまったっていう…。」
「うわぁ…ひどいですね…」
完全に自業自得の失敗談を聞かされながら、浩助達は適当に相槌をうった。
「いやでも…俺は世にも珍しい知識武道家!炎の拳で敵を倒す!って考えると良さそうじゃない?」
藤原は勢い良く叫び、右手から炎を出して高く突き上げた。
「はぁ…まあ確かに…」
「あ、そうだ。俺らギルド作ったんだけどどう?入らない?この学園限定だぜ」
「良さそうですね!お願いします!」
即決したのは慎二だった。すかっり乗り気らしい。浩助も小さく返事をした。
「じゃあ決まりだな。本部から紋章のバッジをパクってきたからこれ付けて。あとこれメンバー表ね」
机の中から取り出されたぐしゃぐしゃのプリントを渡される。さっと見ても20人ほどしかいないようだった。そして浩助は身震いした。
表の最後の方に四条香奈の文字があった。

ありがとうございす6h8さんすぱすぱわけてとうこうしました
次回さいしゅうわです ウィーナさんのホワイトデーはきざですねぃ

681◇68hJrjtY:2008/03/18(火) 18:37:39 ID:.gsBpfuE0
>之神さん
スタートしちゃいましたね、エリクサー争奪戦。
一体誰の手に、というのも気になりながらそれぞれの侵入方法やトラブル対処法なんかも気になります(*´д`)
一番"それらしい"侵入方法をしているライトはダクトから…アルシェとエトナはタッグでの侵入。
そしてナザ君ー!(笑) 意外と盲点的に気づかれにくいのかもしれませんね、真正面からっていうのも。
時間軸がほとんど同じということはどこかの誰かと誰かが鉢合わせ、なんてのもあるのでしょうか。('-'。)(。'-')。
シリウスとシルヴィー、徹たちも今後参戦してくるとなるとどうなってしまうのか…。楽しみにしています!
---
おーイラスト描かれてるんですか。小説投稿の傍ら描けちゃうって、21Rさんもそうですがほんと多才ですね(;´Д`A
ふむふむ、それではお絵かき掲示板の方も今後報告があり次第ヲチすることにします(笑)
以前はちょこちょこ見てたんですが…専ブラで覗けない場所はどうも疎遠になっちゃって( ´・ω・) 之神さんのイラ、楽しみにしてます!

>幕間さん
おぉ、キャラ紹介(?)キタ━o┃*´・ω・┠o━!
テイマとサマナが何か色んな意味で萌え。相性は良さそう(笑)
と思ったらさっそくこの二人のネタが…♂なのに男言葉で♀っぽく、♀なのに男言葉で♂っぽいって!
幕間さんはWIZテイマが自慢作ですか、いやいや私個人は武道君とハイブリ君のネタもなかなか(´¬`*)
悪魔&ネクロ、戦士&ランサ&姫と存在感のない天使に体操お兄さんのBIS。他のコンビ&キャラの活躍も楽しみです(笑)
次回作もお待ちしてます。

>680さん
今回は藤原のことみならず"本部"という単語が。そして能力者たちの実態も明らかになりましたね。
なるほど、能力と職業は別々に渡される(?)のですね。個人的に妄想が突き進んでます(;゚∀゚)=3ハァハァ
藤原君の「力と敏捷どっちもよこせって言ったら知識になった」ってお茶目っぷりは萌えました。流石武道家!(何
しかし慎二君も能力者だった事実と同時にあの四条さんまでが能力者ということが判明…これは一体どういうことか、そして彼らの能力とは。
次回最終回という宣言がされてしまいましたが、最後まで楽しみにしています。

682したらば初心者:2008/03/18(火) 21:04:53 ID:vNcRDJtY0
数日事情でPC触れないと思ったら自分が過去の人になっているという事実……
このスレッド怖いよ〜;;

683したらば初心者:2008/03/18(火) 21:05:55 ID:vNcRDJtY0

長編(にしたい)小説 旅路


(プロローグ)両親からの贈り物>>534
(第一話)出立>>547-549


(第二話)港町


シュトラセラトという街がナクリエマ大陸でもっとも大きな貿易の要所と呼ばれるのには、大きく分けて二つの理由がある。
一つ目は誰もがよく知る理由で、ここが巨大な港町であるということだ。
港町には船が集まる。
船が集まれば、人が集まる。ものが集まる。
人が集まり、ものが集まれば、結果的に商いをするものも増える。
それが、一つ目の理由。
では、なぜ同じく港町であるブリッジヘッドが荒廃したのに対し、この街が栄華を極めたのか。
その理由が、この街の徹底された内部管理にある。
街の内部の紛争を管理するための組織はもちろんのこと、外部から不審なものが入りこまないか、怪しいものが持ち込まれたりはしていないか、そのようなことをチェックするための組織が陸路回路ともに几帳面に配備され、またそれらすべてが巨大な自警組織と化しているのだ。
ちなみにこれらはすべてギールからの受け売りで、私の知識じゃぁない。
まあ、何がいいたいのかというと……。

「疲れたぁ……」
「あいつら、荷物の一つ一つチェック入れやがって……いくら何でもやりすぎだろ……」

私たちがシュトラセラトについたのは、お昼を少し過ぎたころだった。
それが検問を二つ抜け、街に入るころには夕刻になっていたのだ。
高かった日は沈み、空にはもう気の早い星が光り始めている。

「いつもあんな感じなの?」
「いや、いつもより厳しかったと思う。まあその武器と俺の持ってる指輪が主な原因だと思うけどな。……大方どこかの盗賊団にでも間違えられたんだろう」
「その盗賊団、見つけたら絶対殺す……」
「おいおい、物騒なこと言うなって……しかしちょっと予定が狂いすぎたな……」

沈みゆく日を眺めながら、ギールがポツリとつぶやく。

684したらば初心者:2008/03/18(火) 21:07:03 ID:vNcRDJtY0

「予定?」
「気にするな、こっちの話だ……それよりほら、ここがナクリエマでも有数の巨大都市、シュトラセラトだ……感想は?」
「大きい街だよね〜」
「………案内しがいのねぇやつ」
「うっさいわね!しょうがないじゃない、村の外でるのも初めてなんだから……あ、ねね、あの建物何かな?」
「おまえ、おのぼりさん丸出しだな……あれはこの街でも一番大きい高級ホテル。なんでも相当有名な建築家が建てたんだそうで、かなり高額な宿泊料ふんだくってるらしい」
「へぇ……あ、じゃああっちは?」
「あっちは……」

ギールは両親の仕入れや出荷の付き添いで何度か来たことがあるそうだけど、私はほとんど街から出たことがなかったため、巨大な建物の群れに完全に圧倒されていた。
本当にこれが同じ人間の住む街なのか、と、どうしても周囲を見回してしまう。
例えばガリムトではこの時間、ほとんど外を出歩くものなんていない。
帰宅の遅れた幼子が、夜の闇の深くなる前にとわれ先に走るのが時たま眺められる程度。
だが、この街は日もまだ出ているというのに煌々と明かりをともし、近づく夜を必死に遠ざけているように思える。
それにこの街には地面がない。
見事に舗装された石畳や所狭しと並ぶ街灯、そして小奇麗でしゃれた建物。
けれど畑がない。
木が植わっている場所に少し土はあるけど、あれじゃ野菜は作れないだろう。
本当にガリムトからの出荷物だけで食材は足りているのだろうか?と、あらぬ心配もしてしまう。
そして、これは来る道中のほうが強いのだけど東から吹きこむ風の中にはやはり潮の香りが混じっていた。

「海だ〜」
「お前、記念公園の近くでも似たようなこと言ってたよな……あ、ちょっと馬車止めろ」

言われるがままに馬車をとめ、往来の端に寄せる。
見ると、道行く人たちも歩みをとめ、端の方へ寄っていた。

「……何が来るの?」
「この街の名物みたいなもんだよ……お、来たぞ」

指さされた先を見ると、ものすごいスピードで走ってくる男が見えた。

「ブリッジヘッド行き、ビッグシェル号、間もなく出航するぞ〜」

男は叫びながら往来を駆け抜けていき、しばらくすると船の出航を告げるベルが大きな音を立てて打ち鳴らされ、まるでこの街との別れを惜しむように汽笛が一声鳴く。
なるほど、これがきっとこの街の日常なのだろう。

685したらば初心者:2008/03/18(火) 21:08:07 ID:vNcRDJtY0

「船、かぁ……」
「そ、すげぇだろ、あいつら。船が出るたびにああやって街中駆け回ってんの」

まあもちろん一人でやってるわけじゃないけどな、と言ってギールが笑う。

「いいなぁ、私も乗ってみたいかも……」
「あれ?お前船のったことなかったっけ?」
「あるけど、私が乗ったのは川舟だし……」
「そだっけか?」
「そうだよ。あ、あの船何かな?」

遠目に見える港には、巨大な帆船、汽船はもとより、それらの動力らしきものが一切確認できない不思議な船も見られる。
その一つを指さすと、ギールが深くかぶった帽子の下の目を細めた。
彼は、私ほどは目がよくない。

「あの船ってどれだよ……」
「ほら、あの真っ黒な船、あの船どうやって進むんだろう……」
「どれだよ……あ〜〜〜〜ありゃ魔道船だ。どんな仕組みかは知らんが、ウィザードの技術協力で作られてるんだとか親父がいってた。悪魔の船らしいぜ」

言われてすぐに納得した。
なるほど、悪魔の船とはいいえて妙だ。
あの船には動力が一切ないばかりか、船腹の穴からはいくつもの弩弓が覗いている。
あの船がどのような意志をもってあそこに浮かんでいるのかは知らないけれど、ひとたび牙をむけばその時はこの街も廃墟と化すのかもしれない。
だけど、船はただ浮かんでいるだけ。
どのような材質でできているのか、黒光りする船体は夕陽の最後の照り返しを受け、赤黒く光って見えた。

「悪魔の船、か……」
「ま、俺も詳しくは知らん。どうしても聞きたきゃそのあたりの水夫にでも聞いてみろ……ってか船もいいけどさ、腹減ったしとりあえず飯にしないか?このままじゃ空腹で死んじまうぞ」
「え?あ……ちょっと待ってね、ブレアおばさんからお勧めの店を紹介されてるから……」
「あ〜〜おふくろの紹介なら多分あそこだろ。ブルースビストロ」
「え?あ、うん……」

村を出る時にもらったメモには、たしかにその名前が刻まれている。

「やめとけやめとけ。あんな店いってもろくなことないから」
「え?でもすごく安くておいしいからぜひ行くようにって……」
「そりゃ確かに安くてうまいけど……ちょっと手綱借りるぞ」
「わかった」

686したらば初心者:2008/03/18(火) 21:09:11 ID:vNcRDJtY0

ギールに手綱を任せ、馬車の歩みを進めていく。
その間も目につくのは、人、人、人。
幼子を連れた母が、雨も降っていないのに傘をさして歩いていく。
武器を帯刀した傭兵が、そこここに見える。
私の父が相手していたような冒険者も見える。
その人波をかき分けるようにして、車輪を軋ませながら馬車が進んでいく。

「ギール」
「ん?」

その途中、ふと今まで考えもしなかったことが頭に浮かんだ。
村を出るとき、あまりにも騒がしくて忘れていた。
いや、忘れさせられていた。
それはきっと、ギールの知略だったのだろう。
少なくとも私は、ギールほど機転の回る少年をあの村では知らない。
でも、もう教えてくれてもいいだろう。

「なぜ、付いてきたの? ギールが村を出なきゃいけない理由なんてないでしょ?」
「あ?だから指輪盗んだんだから、帰れるわけが……」
「嘘。だってそれじゃ理由が後付けだよ。時間がおかしい」
「……」

一瞬、ギールの口元が歪んだ。
それは、まぎれもない笑い。
でも私にはその笑みの意味が、わからない。
わからないから、不安になる。

「何よ」
「何でもねぇよ、お前が根っからのバカじゃないってわかって安心してただけだ。そんなことより飯だろ。……ブルースビストロ……記憶に間違いなけりゃ……お、あったあった」
「ちょっと、はぐらかさないでよ……って、え……」

687したらば初心者:2008/03/18(火) 21:10:20 ID:vNcRDJtY0

不覚にも、言葉を失った。
いや、言葉を失うだけのものがあった。

「ここ、料理屋?」
「……だからやめとけと言ったんだ」

馬車の上からその店を見つめる。
いや、店なんて見ていない。
見ていたのは、今までに出会った人の大半がここにいるのではないかというぐらい圧倒的すぎる長蛇の列。
道の半分を完全に通行不能にしてしまっているその列に加わる勇気は、私にはなかった。

「すげえだろ、これがシュトラセラト名物、ブルースビストロ。……どうする? 待つか?」
「……どうしよう……」

待てるわけがない。
おなかもすいているし、食事のためにこれほどの長蛇の列に加わるのはまっぴらごめんだ。
というよりも私にとって食事とは完成を待つものでありこそすれ、他人が食べ終わるのを飼い犬よろしく指をくわえて待つようなものではないのだ。

「ち、ちょっと……どこかほかにお店ないの?」
「いや、それがな、この付近一応料亭立ち並ぶ通りだったはずなんだけど、ここが安くてうまいってことで評判がうなぎ上りになるにつれてほとんど消えちまったんだよな〜」
「は? って、うわ、ほんとだ……」

言われて周囲を見回して、ギールの言葉の意味がわかった。
この店の活気が異様であるため気づくのが遅れたが、なるほどこの店をのぞくすべての店が門戸を閉ざしてしまっている。
そしてわずかに残る門戸を開いている店は、ここほどではないもののやはり長蛇の列ができていた。

「ことの発端は、ここじゃなくて別の店だったんだけどな。このブルースビストロがうまくて安いってことで評判になりはじめたとき、経営が苦しくなり始めたどっかの店の主人が利益ぎりぎりまで値を落としてそれに対抗しようとしたらしいんだわ」
「へぇ……」
「まあ、一時的には作戦が成功して、その店は盛興を極めたんだけど、当然そのあとはぐだぐだの値引き合戦になって、結局ほとんどの店が退陣。残ったのはその期間を店の自力で耐え抜いた名店ばっかだったってわけ」
「へぇ……」
「ま、こっちじゃ有名な話だよ。シュトラセラトに飲食店はない、あるのは海とホテルと人の列……ってな」
「へぇ……詳しいのね、それで私たちは何を食べるの?」

大事なのは、そこだ。
私はシュトラセラトの歴史なんて興味がないし、ここが今どんな状況なのかなんて興味もない。
問題は、私たちが今空腹であり、食事屋がここにないという点なのだ。

「……」

沈黙が、痛い。

「まさか、考えてなかったとか?」
「いや、考えてはあったんだが……おまえ、あと二時間ぐらいなら動ける?」
「ん?動けるよ?なんで?」
「ああ、じゃあ狩りはお前に任せるわ。俺もう限界、動けねぇ……」
「????」

688したらば初心者:2008/03/18(火) 21:11:39 ID:vNcRDJtY0

言い終えると同時に、ギールの体が溶けたようにへなへなと崩れ落ちる。
よく見ると顔色も悪い。

「ちょ、なんなのよ?!」

焦燥感がこみ上げてくる。
私は村を出たことなんてなかったから、この街のどこに病院があるかなんて知らないし、こんな時どうすればいいのかもわからない。

「何か悪いものでも食べたんじゃないでしょうね? ただの腹痛なら薬あるよ?」
「大げさだな、おい。大丈夫だって……俺今朝から何も食ってないからさ、腹減って死にそうなだけ……」
「え?」

目が点になったかと思った。

「そういえば、あんた空腹になると動けなくなっちゃうんだっけ」
「そうそう。昨日の夜この馬車に忍び込んで、それきりずっと息を殺してたからなぁ……いくら透明エンチャントでも動けばばれるしさ」
「………馬鹿……心配させないでよ全く」

浮かしかけていた腰をおろし、再度席に着く。

「いや、俺としてはここの到着予定時刻が遅すぎるんだって。あ、この通りとりあえずまっすぐ。すぐに街の外に出るから……」
「大丈夫なの?」
「ん?ああ……」
「あんた、本当になよっちぃよね。一日食事抜いたぐらいで倒れてどうするのよ」
「うっせ、お前が頑丈すぎるんだよ。俺は普通」

言われるがままに手綱を取り、馬車の歩みを進めていく。
もう一言二言小言を言ってやろうと思っていたのだが、次第に青ざめていくギールの顔を見ているうちにそんなことはどうでもよくなった。

「あんたさ、そんな体でよく旅についてこようなんて考えられたわね……」
「いいだろうが、知りたいことがあったんだよ……」
「へ? 知りたいことって……あ!あんたまさかまだ信じてるの? 赤い悪魔の伝説」
「うっせぇ」

この世界に生きる者ならだれもが知る伝説。
世界のすべてをつかさどるという天界の六つの魔石と、そのうちの一つ、赤の宝玉を盗み出したという赤い悪魔のおとぎ話。
ある日この世界に落とされたというそれはすべての冒険家のあこがれであり、未だ数多の人をひきつけてやまない。
どういったわけか、幼いころからギールはその石の伝説を信じ続けているのだ。

「じゃあさ、今回ついてきたのって……」
「……ああ、そうだよ!お袋達に、レッドストーン探すために冒険者になるなんて言っても聞き届けてもらえるわけがないからな。お前が村を出て各地を回るって聞いて、都合がいいから便乗しただけ。朝のご指摘通り俺は炊事洗濯なんてできやしないし、一人で旅するにはこの体質はあまりに厄介だ……けど、二人ならこうやって補えるだろ?」
「ッ!人を家政婦みたいに言わないでよ!!」
「言ってねぇよ。それにどこの世界にこんながさつで計画なしな家政婦がいるってんだ……」
「がさつで悪か……」
「けどその分自分の身を自分で守れる。旅のパートナーとしてこれ以上の仲間もいないさ」

ギールがけだるそうに体を起こし、こちらを見る。
その眼に、嘘はない。

「お前からしてみれば、夢物語かもしれないけどさ。レッドストーンは実在するし、その確実な証拠とも言うべき追放天使たちもいまだ各地をうろついている。俺は……見たいんだ。世界が求めた希望ってのがどんなものなのかを……さ」
「私は、絶望だと聞いたわ」
「同じことだよ。悪魔も、天使も、人間も……誰もが探してるんだ。希望にもなれば、絶望にもなる」
「……」
「お前だって、冒険者になるって決めたんだろ?なら……」
「今は、食料の確保が先決よ」

ギールの言葉を、私は途中で遮った。
青ざめた顔で、夢としか思えない出来事を話すギールが怖かったのかもしれない。
それとも、それほどに真剣に打ち込めるものが、羨ましかっただけなのか……。

「そう、か……」

幸い、馬車はもう街から外へ向かっている。
外から入るのにはあれほどに厳重だった検問も、中から外へ出る分には驚くほどにゆるい。
もうすぐそこに波の音が聞こえている。

「それで、何を狩ればいいの?」

さやの中から武器を抜き、問う。
刃が月光を照り返し、鈍く光った。

689したらば初心者:2008/03/18(火) 21:23:50 ID:vNcRDJtY0
最後の書き込みでようやくもう少しまとめられることに気づいた……ごめんなさい、次から気を付けます;;
そして今回、いろいろあって全然読めてないんですが……とりあえず幕間さん、グッジョブb当方姫フェチですがこの姫かなりいい感じです><
こんな姫いたら是非ともうちのGに来てほしいin橙鯖
ではでは、口下手で申し訳ないですがこのあたりで><

690幕間・酒場にて:2008/03/18(火) 23:04:54 ID:of5VjV0.0

テイマ「大体よぉ…ヒック 偏見にもヒック、程があるじゃねえか… 俺だってヒック、テイマやったっていいじゃねえかよオボrくぁwせdrftgyふじこlp…」

サマナ「そうだそうだ こっちにも職を選ぶ権利はあるんだぁ… 好きでやってるから別にいいけどいちいちこっちを見て立ち止まるんじゃねえよ… オゲロくぁwせdrftgyふじこlp…」

天使「俺なんて誰も気づいてすらくれねぇよぉ・・・ うぅ・・・」

テイマ「それにGに入ってもみんな 「女の子?」 「女の子?」 だなんてよぉ・・・ 信じられるか? 危うくこの年で女風呂に行かされるところだったぞ・・・」

サマナ「こっちなんてGに入ってもみんな 「テイマ?」「テイマ?」だぞ ギルド名簿くらい見てみろってんだこんちくしょう・・・」

天使「俺なんて声かけても無視さr」ランサ「マスター!おかわり!」マスター「あいよー!」

シュー・・・ ゴッ バッシャァ!

天使「うぅ・・・;;」

テイマ「なんか俺のすぐとなりでマスターの滑らせたコップ倒れたな・・・」

サマナ「ああ・・・ この辺で一番アレがうまいマスターが失敗するなんて 何かぶつかったか?」

---------------------------------------------------------------------

WIZ「アハハ〜♪ アースクエイクアースクエイク〜♪」

戦士「何だあのバカは? 酔った状態であんな事すりゃ・・・」

WIZ「もっと酔った・・・ おえぷくぁwせdrftgyふじこlp」

農家「ギャー! 俺のから揚げがー!」

シフ「wwwww」

戦士「か、関わらないようにしようなランs…」

ランサ「そこのテイマちゃんふたり〜っ♪ お姉さんと一緒に遊ばない〜?」

戦士「い、いつのまに??!」

テイマ「ちゃんをつけるな!」
サマナ「テイマっていうな!」
    ゴッシャァ!
ランサ「グッハァ・・・」

戦士「・・・」



天使「ゲロがすこしかかった・・・」

---------------------------------------------------------------------

悪魔「どうせあたしは友達もいなくて彼氏もいないから一人でのみにきてますよーだアハハハハ〜♪」

BIS「そうだそうだ〜! 友達も彼女もいなくても飲みにきたっていいじゃ無いかアハハハ〜♪」

悪魔「あら、気が合うわね 一緒に飲まない?」

BIS「お、いいねえ それよりもうどうせなら暴れないかい?」

悪魔「それいいわね〜キャハハハ〜!」

BIS「じゃあまず僕から〜♪ 一番ものの壊れないTUから〜♪」

悪魔「キャァァァァァ!」

BIS「あれ?さっきの人どこいっちゃったんだろアハハハ〜♪」

WIZ「え?暴れる?俺も俺もwww」

WIZ「隕石ドーン!アースクエイク!グラビティアンプリファー!アイススタラグマイト!」



WIZ「高いよ怖いよ(((; ゚Д゚)))ガクガクブルブル」

BIS「じゃあ僕が降ろしてあげるよ〜♪」

 氷 柱 破 壊 

WIZ「ギャン!」(頭から落ちた)

WIZ「か、体が毛むくじゃらに〜!」

BIS「アハハハ 不運な事故によって呪われた力が備わったようだね〜アハハハ〜♪」

691幕間・酒場にて・三角関係+α:2008/03/18(火) 23:20:30 ID:of5VjV0.0

リトル「アッー! 戦士はっけ〜ん!」

戦士「な、何事??!」

リトルが思い切り戦士に抱きつく

戦士「だ、だれだ??!(む、胸が当って・・・(*´Д`))」

リトル「あたしだよ あ・た・し(はぁと)」

戦士「そんなこと言われても誰かわかんねえよ!」

リトル「何かニヤニヤしながら言ってる〜 いつもはもっとかっこいいのに〜」

戦士「え?」

ランサ「なんですって?」

戦士「に、にらむなランサ! 仕方ないだろ! これが男のサガだ!」

ランサ「あとでゆっくりお話しましょ・・・ せっかくだから新しい快感にも目覚めさせてあげる・・・」

リトル「ランサさんまで変〜 いつもは二人して無視してるのに今日は構ってくれてる〜」

ランサ・戦士「へ?」

リトル「あ、これじゃ分からないか もとの姿に変身し直すね〜」

戦士「は? もしかしてお前」

リトル「ぴぴるぴるぴるぴぴるぴ〜」

戦士「何だその呪文は??!」

姫「変身完了! つるぺた戦隊ロリンジャー! って誰がつるぺたよ!」

戦士「俺は言ってねえ! 自分で言っただけだろ!」

ランサ「戦士くんもついに分かってくれたの??! 一晩語り明かしましょう!!」

戦士「だから違うと言ってるだろ! 人の話を聞きやがr」
姫「そんなことよりお酒飲もうよ! あたしお酒はじめてなの!」

マスター「はいはいおじょうちゃん お酒はもう少し大人になってからね」

姫「ふぇ?」

ガシッ スタスタスタ… バタン!

姫「つ、つまみ出されちゃった・・・」
ネクロ「な、仲間だね・・・」
姫「(…誰?)」
ネクロ「(悪魔さん遅いなあ・・・ 尾けてきたけど酒場に入っちゃったらどうしようもないや…)」

692幕間・書ききれなかった事:2008/03/18(火) 23:32:16 ID:of5VjV0.0
なんかこうしてみると俺の書いた奴読みにくいなぁ・・・

なにか改善点とかあれば是非お願いします

あとあんまり会話して無くてスイマセン>< 急に思い立って書き込んだものですから何をどう挨拶すれば分からなくて・・・ 申し訳ない

過去スレ見るにもちょっと量が多すぎて;;

ちなみに自分へのレスはニヤニヤしながら読んでます

ざっと見た感じでいいので何か足りないところを教えてください
どうも自分が書いた奴なのにどういう状況で話をしてるのか分からないようなので
改善点を教えてください お願いしますm(_ _)m

693ESCADA a.k.a. DIWALI:2008/03/19(水) 09:27:34 ID:El.1URUk0
Episode 03:Emergency 〜決着、同時に失踪者発生〜

・・・トラン森の中にあるエルフの村「サニー・ガーデン」。しかし、殺人鬼のザッカルの刺客によって村は壊滅に近い状態にされていた。
森の郊外ではバーソロミューが刺客の一人「魔老ディアス」を撃破したところだが、炎に包まれた村での戦いはまだ終わっていなかった・・・。

「(・・・っ、マズいな。エディの奴が本当にあの武術をマスターしたとなると、俺に勝ち目はあるかどうか・・・)」
旧世界から伝わる足技中心の格闘術の構え、「ジンガ」を小気味よくエディは踏んでいる。波打つように体を揺らし、踊るように手足を交互に動かす。
耳を塞いだヘッドフォン、そこから流れる音楽に身を任せ・・・獲物を狩る獣の目つきを従えたエディの視線がミゲルに恐怖感を与えていた・・・。
「・・・どうしたよミゲルぅ?アンタから来ないってぇんなら、オレっちの方から仕掛けさせてもらう・・・・ぜっ!?」
硬直状態をエディの方から破った・・・!!飛び掛って身体を捻り、そこから生まれた遠心力で両足を振り下ろす・・・カベイリンニャだ。
右方向にミゲルは避けた・・・同時にエディの足が地面に付き、『バゴォっ!!』と重い音を残す・・・靴底がめり込み、ヒビ割れができた。
「(なっ、何つー威力!?!今のはヤバかったぜ・・・だが避ければオレの有利、しかもあいつ逆立ちに移行しやがった!!・・・勝ったな!)」
先の着地状態から、エディは地面に手を付いてから逆立ちをしていた。すかさずミゲルのミドルキックが襲い掛かってくる。「もらったァ!!」
勝利を確信したミゲルの声が響き、蹴り足は逆立ちしたエディの左脇腹へ吸い込まれ・・・なかった!!蹴りの方向に沿って横に避けたエディ。
右肘と右足のつま先で胴体を支える姿勢を取っている・・・予測を超えた動きに、ミゲルの顔に冷や汗が滴っていた。

「・・・おいおいミゲルぅ、言ったよな?『この動きには付いて来れねぇ』ってな・・・あらよっとォ!!」
すぐさま逆立ちに戻り、今度は折りたたむように身を屈めた・・・「(こいつはアレだ、足元を攻撃するに決まってる・・・捌いて潰してやるっ!)」
今度はミゲルが攻撃に出た!!左足を軸にして、奇妙な姿勢を維持するエディに水面蹴りを当てようとし・・・・たがまたも読みは外れた!!
水面蹴りが当たる直前、屈んだ反動を利用したエディはまた身体を捻りながら蹴りを放つ・・・!!蹴りはミゲルの顔面にクリーンヒットだ。
「ぶぉあぁっ!!?!」鼻血を吹きながら、ミゲルはそのまま吹き飛ばされた。だが宙返りして受身を取って着地し、体勢を立て直す・・・!!
一方のエディは、意味も無くその場でブレイクダンスのような回転技やバク宙を乱舞してるようだった。チャンスとばかりにミゲルが飛び込む!!
両手にはバタフライナイフを持っている・・・そして得物はエディ目掛けて放たれた!鋭く素早く襲い来るナイフの嵐を、エディは踊るように避ける。
そしてミゲルの懐に潜り込み、彼の身体を掴んだ!!さらにそこからするりと、ミゲルの肩周りに乗って・・・彼の首を軸に回転を始めた。
「ぐっ、前が・・・離れやがれこのっ!!がぁっ!!?!」「さ〜て遠心力も十分溜まってきたぜぇ〜?イャッハァ〜ウ!!!」
陽気な雄叫びと共にまたもするりと肩から離れるが、ミゲルの右肘に自身の右腕を引っ掛けて地面に付いた上半身を捻って彼を投げ飛ばした!!
かなりの回転によって生まれた遠心力を利用した投げにより、ダメージは相当な威力になっている。そんな大技をミゲルは喰らってしまった。
だがそれだけでは無かった・・・投げ飛ばされた場所は、さっきエディが乱舞していたところだった。だがエディもただ遊んでいたわけではない。


『カチリ・・・』


無機質で軽い音がしたと思っていたら、もう遅かった。


地面から有刺鉄線が飛び出し、ミゲルはそれらに切り裂かれながら縛られ・・・・

バチバチチ・・・チッ・・・BAGOOOOOOOOOOON!!!

炸裂する黄金色の火柱に全身を焼かれた・・・・!!!

694ESCADA a.k.a. DIWALI:2008/03/19(水) 09:28:05 ID:El.1URUk0
「うぉおぁああああぁあぁああぁっ!!?!」

地面にセットした炸裂型の地雷に引っ掛かり、ミゲルは断末魔を上げながら爆炎に包まれた・・・。

硝煙は晴れ、火傷と流血に彩られたミゲルの身体がそこにあった。死んではいない、だが息も絶え絶えの状態だった・・・。
「・・・どうだよ兄貴、ゼェ・・・これがオレっちの爆殺トラップスペシャルだ・・・ゼェ、まだヤるかぃ?」
兄を見下しながら、エディは中指を突き立てて挑発した・・・だが当のミゲルは目も虚ろになっており、とても戦えるような状態ではない。
「とりあえず・・・クソったれな兄弟喧嘩はオレっちとトレスヴァントの勝ちだわな。ちっ・・・勝ったのに気分悪いぜ。」
舌打ちしながら、俯いてエディはボヤく・・・だが決着はまだ付いていないのに彼は気付いていない。地面に伏しているミリアとトレスヴァントを
治療しようと背を向けたその時だった!!シュー・・・と、蒸気があがっているような音が微かに聞こえた。振り向くエディにあるものが映った!

「・・・ふぅー・・・ふぅぅー・・・・・ぐぅ・・・うぉぁあぁあ・・・・」

ミゲルの呻き声が聞こえたエディが振り向いた・・・そして信じられないことが起きていた。ミゲルの身体から湯気が出ているのだ・・・!!
「なっ・・・何だ!?(まさか・・・オレっちの予感が外れてくれりゃいいんだけどよぉ、瀕死の人間が蒸気を出すってことは・・・こりゃヤベぇ!!)」
エディの悪い予感は外れることは無かった。むしろ外れるべきだった・・・今度はミゲルの皮膚が徐々に赤くなり、筋肉は盛り上がって青筋を浮かべた。
さらには彼を束縛していた有刺鉄線をも破って、ミゲルはゆっくりと立ち上がった!!!目は白目を向いており、獣のような唸り声をあげている・・・。
「(マジかよ・・・こいつァ・・・・・・ささ、さ、サバイヴァー症候群じゃねぇか!!?!兄貴のヤロー余計なアビリティ身に付けやがって!)」

・・・ここで説明の時間。

・サバイヴァー症候群とは?
A:一部の冒険家に見られる精神分裂に近い症状で、理性が吹っ飛んで戦闘狂になっちゃうケースのことですね。
  発症した場合は身体が赤くなって目がイッちゃって、泡も吹いちゃう事例もあるんですよ。ではメカニズムの説明をば。
  例えばあなたがモンスターがうじゃうじゃいるダンジョンの中にいるとしますよ、想像できますよね?できますね?
  そしてモンスターの襲撃にあって死ぬ一歩手前になったとしますよ?死ぬのは恐いですよねぇ?その恐さがMAXに達したとしましょう。
  するとどうでしょう、『何とか生き延びよう』と思い込む内に肉体にも変化が現れちゃうんですねぇ〜、でも精神はパニック症状のままです。
  しかし、おかげで脳のリミッターは解除されてるので本来なら出せないはずのパワーが思う存分発揮できる、いわば無敵状態になれちゃうんですね。
  これがサバイヴァー症候群というわけです。おわかりですね?あ、よろしければブルンネンシュティグの東にいる病気のコボルトの衣服を
  採取してきてもらえませんか?もちろんお礼はちゃんとしま(以下省略

(ブルンネンシュティグ治療病院院長 F氏のインタヴューより。)

と、某病院のF氏の解説はここまでにしておいて話に戻ろう;;;

サバイヴァー症候群が発症してしまったミゲルがエディに襲い掛かった・・・!!何とか両腕で猛攻を防ごうとするエディだが、リミッターが外れた
ミゲルのパワーの前では突っ立っているも同然だった。重い回し蹴りを喰らい、地面に転がるエディ・・・しかし追い討ちはさらに続き、ミゲルは
エディの上に馬乗りし、無我夢中で彼の顔面を殴り付けた・・・パンチの嵐が収まり、『ヌチョリ』という気持ち悪い音と共に拳を抜くミゲル。
ボコボコに殴られたエディの顔は鮮血に染めあげられていた・・・。「(ぐっ・・・痛ってぇぇぇ〜・・・・オレっちの負けかよ、ちっくしょぉ〜)」
内心呟くエディだが、ミゲルはふらふらと何処へ行くわけでもなし、ただその場をうろついているだけだった・・・が、その動きもすぐ止まった。
目の前には天使と悪魔が・・・大天使ルシフェルと悪魔マリアの夫婦が立っていた・・・・

695ESCADA a.k.a. DIWALI:2008/03/19(水) 09:28:40 ID:El.1URUk0
正確にはミゲルは止められていた・・・ルシフェルが持つ能力の一つ「サイコキネシス」によって。
右腕を突き出し指を折り曲げて手をかざしながら、彼は妻のマリアに倒れこんでいる3人の介抱を促す・・そしてルシフェルが口を開いた。
「・・・恋人を失わせてしまったのは済まなく思っている・・・だが、その悲しみを罪無きエルフの民にぶつけるのは愚行そのものだ。
 お前が奪った無垢な命は、あまりにも大き過ぎる・・・悲しいが・・・俺はお前を裁かなくてはならない。」慈愛と悲哀を込めた瞳で
ルシフェルはミゲルを見つめていた・・・しかし理性を殆ど失ってしまったミゲルには言葉は伝わらずに終わった。

「そうか、やはり許してはもらえないか・・・・だが、裁きは与えなければいけない。」そう言うとルシフェルの背の聖紋が輝き、
足元には魔法陣が浮かび上がった・・・!!「神よ・・・この者の魂に聖なるお導きを・・ラスト・ジャッジメン・・」
大天使のみが使える裁きの大魔法『ラスト・ジャッジメント』が発動するその刹那・・・上空から何か球状の物体が落下してきた!!

「いやぁああぁああぁ〜んっ!!!?!」と可愛らしい女の子の声が・・・
「うわぁああぁぁ!!危ないニーナぶつかる〜!!!!」「わぁああぁああぁあぁ!!!!避けて下さい〜!!」

だがあまりにも唐突過ぎる事態にルシフェルやマリア達は避けきれず、高速落下してきた水球に激突された・・・しかも球体は破裂して水に戻り
おかげでその場にいた全員がびしょ濡れになってしまった・・・突如落ちてきたのは一人の美少女サマナーと一匹のスウェルファーとマーマンだった。
「あぅあぅ〜・・・着地に失敗しちゃったぁ〜、せっかくのエリプト・スタイルが濡れちゃったよぅ〜」「あの・・・済まないが、お嬢ちゃん?」
ニーナの下敷きになっていたルシフェルが尋ねた。そしてふと下を向くニーナだが・・・彼女は彼の顔面にまたがった状態でいたのだった!!!
「早くどいてくれないかな・・・つーか何つーモン穿いてやがるんだィお嬢ちゃん、縞パンっつーのか?可愛い趣味してるじゃないの////」
大天使とは思えない、むしろ変なおじさん的なニヤけた口調でニーナをからかう。一方のニーナはめちゃくちゃ恥ずかしがっていた・・・可愛い。
「はぅう〜・・・お願いだから放して下さい〜!!あっ・・・鼻息荒くしないでぇ〜、何か色々と濡れちゃいますぅ〜!!!/////////」
もの凄く顔を真っ赤にするニーナだが、ルシフェルのオヤジ的悪戯は止まらない・・・!!さらに色々とエスカレートするルシフェル・・・
「ダメだよぉ〜、あと10秒くらいはおじさんにパンツを見せてもいいじゃないかよぉ〜、頼むから・・・」

だがそこに良き妻(?)マリアの嫉妬の込められたツっ込みが入る・・・彼女の背後には当然、メラメラと燃え盛る炎が。
「なぁ〜にぃ〜がぁ〜頼むからでっすてぇ――!?あなたには私がいるでしょうっ!?ちゃんとっ、振り向いてよっ、ねっ!?」
ワームバイトを発動して愛する夫にお仕置きを喰らわせるマリア。夫であるルシフェルと彼女の子供も、父親のすねを蹴っていた。
「あぉっ!!痛い、痛いけどイイ鞭裁き!!?!あ、そこイイっ・・・って、ラシエル!!とーちゃんのすねを蹴るな・・・あいだっ!!」
「おいらもとーちゃんにおしおきするのじゃー!!げっげっげ〜、ぐるぐる〜!!!」幼い一人息子のラシエルも鼻水垂らして父をいじり倒す。
某リプリートマーキや某ディムジェスターも顔負けの竜巻モードで弁慶の泣き所をゲシゲシと蹴っていた・・・

しかし、そんな色んな意味でほのぼのな家族を余所に、ニーナはミゲルと対峙していた・・・・
「・・・ミゲル・・・やっと、やっとあなたに会えたんだね・・・」「・・・ヴぅ・・ぬぃ・・・ニひ・・ナ??」
「うん・・・そうだよ。わたしは本物だよ、わかるでしょ?」「・・・ニー・・ナ・・・ニーナ?お前、なのか・・・・!?」
赤かった彼の身体が徐々に元に戻っていく・・・筋肉も収縮し、青筋も消え失せた。一人の青年が、10年振りに再開した恋人を見つめていた。
「ニーナ・・・・でも何で・・・お前はザッカルさんが蘇らせてくれるって、どうしてここに・・・??」しかし、いきなり訪れた現実にも戸惑う。
「考えないでいいの・・・わたしは、ちゃんとここにいるから。ずっとずっと、ミゲルの側に・・・・・いるんだからね?」

静かに涙を流しながら、恋人に言い聞かせるニーナ。ミゲルも彼女を受け入れ、抱きしめていた・・・だがしかし、その背後から
不気味な影と微かに光る何かが音も無く襲い掛かっていた・・・!!!誰よりも早く感づいたルシフェルが叫んだ!!
「おい二人とも!!逃げろ、すぐにそこを離れるんだァ――――――――!!!!!!!!」

696ESCADA a.k.a. DIWALI:2008/03/19(水) 09:29:09 ID:El.1URUk0
「な・・・おい天使のおっさん、いきなり何を・・・ハッ!!?」

ルシフェルを普通に「天使」と呼ぶミゲルは何事かとキョトンとするが、気付いた頃にはもう遅かった・・・ブスリ!!と鈍い音が一瞬だけ響く。
ニーナを抱きしめていた腕が、ゆっくりと彼女の身体から離れ・・・そして彼の体ごと地面へと倒れていった。すぐにニーナが駆け寄る。
「ミゲル!?どうしたのミゲル!?お願い、返事をしてよォっ!!せっかく会えたのよ!?勝手に死んだりしたら許さないんだからァっ!!!」
瞳から大粒の涙が溢れる。彼女は愛する人の名を必死で呼び続けた・・・するとそこへ、ルシフェルがビショップとしての姿に戻った状態で
歩み寄ってきた。光の元素を手に宿し、ミゲルの体へとそれを入れた。「大丈夫だ、お嬢ちゃん・・・こいつは回復魔法だ。すぐに良くなる。」
そしてルシフェルの言うとおりにミゲルは意識を取り戻した。「う・・・ぅっ、すまねぇ・・天使のおっさん。助かったぜ・・・」
ミゲルの回復に安堵した二人だが、ニーナはすぐに後ろを振り向いた。少女の目つきとは思えない鋭い視線で睨んだ先には、一人のアサシンが。
「・・・ちっ、毒を仕込んだナイフならすぐにあの世逝きのはずが・・・ビショップがいるたぁ予想外だな、全員消すか。」男が冷たく言い放つ。
「そうはさせないわ!!もう誰一人・・・わたしの目の前で死んでほしくないから・・・それだけは絶対にさせないっ!!」力強く叫ぶ彼女の背が
眩いばかりに青白く発光しだした・・・!!同時にスウェルファーはバブルバンブーを発動させる。ルシフェルはその様子に驚愕を隠せなかった。
「(あ、アレはまさか・・・しかもあの模様はガブリエルの背に浮かんでいたもの!?あのお嬢ちゃん、ガブリエルとどういう関係が・・・)」
バブルバンブーによって彼女の足元に水が無尽蔵に湧き出る・・・そして水は彼女の背に集まり、三対六羽の美しい翼へと形を変えていた。
そして彼女の右手にも水は集まり、手の平に収まる程の大きさの球体になっていた・・・彼女はそれを天高く飛ばした。

「水よ・・・彼の者に裁きをお与え下さい・・・・『フロスト・フォール』っ!!!」

上空に打ち上げられた水球は破裂し、さらに瞬時に状態変化を起こして氷の矢へと変化する・・・重力によって矢が落下を始めた!!
鋭い切先を携えた氷はアサシンの体を止め処なく貫いた・・・だが十分なダメージを与えるには至らず、攻撃が収まると同時にニーナに襲い掛かる。
「このガキ・・・死ね。」感情も篭っていない台詞を吐いて、男の匕首は彼女の急所へと伸びていく・・・だが、そこへミゲルが躍り出た!!!
素早く踏み出し、二人は交差した後その場で停止する・・・時間が止まったように思える、だがミゲルが決め台詞を吐くと同時に決着は付いた。

「・・・悪ィな。もう切り刻んじまった。」

一方の男は大量に血を噴き出し、絶命した・・・ミゲルは振り向かずにその場に立ち尽くすが、ニーナは歩み寄って彼を再び抱きしめた。
「ニーナ・・・それに天使のおっさん、この10年・・・俺はとんだ間違いを犯したみたいだ。どう償えばいいんだ・・・」
俯くミゲルだが、ルシフェルは間髪入れずに彼を殴った!!しかしその拳に怒りや憎悪は込められていない・・・まるで父親が放ったような
そんな鉄拳がミゲルの頬を貫いた。そしてルシフェルはそのまま彼に強く言い放った。

「何が『どう償えば・・・』だコノヤロー、格好付けてんじゃねぇぞ少年!?答えは簡単だ、テメェが命を奪った奴らの分だけ生きろ!!
 ただフラフラと生きればいいって訳じゃない、誰もが認めるくらいに立派な生き様を貫け!!それがお前の償いだ、少年っ!!!」

「立派に・・・生きる?この俺に、そんなことが・・・できるのか?」「できるもんっ!!ミゲルだったらきっとできるよっ!!わたしも手伝うよっ」
ニーナは彼に強く促し、そしてミゲルは顔を上げ、「そうだな・・・やってみるよ、死ぬまでやってみるさ。」と優しく話した。ルシフェルやマリアも
うんうんと頷いて一部始終を見守っていた・・・

697ESCADA a.k.a. DIWALI:2008/03/19(水) 09:33:18 ID:El.1URUk0
一方、エルフの民が避難した森の中・・・
「あっ・・・はァあっ!!?!・・・・んっ・・・あぁんっ、いやぁあぁん!!この人の××××・・・き、気持ち良過ぎるわぁ〜んっ!!!
 んんっ・・・(チュッ)・・・・もっと、もっとォ〜!!!イカセてちょうだァ〜いっ!!!!あふぁ・・・んぁああぁあぁあぁあぁんっ!!!」
・・・・またもやサービスタイム。相変わらずなフィナーアはというと、ザッカルが送り込んだ刺客の1グループを壊滅させたところなのだが・・・
そのリーダーがなかなか良いガタイをしてるという理由で情事を愉しんでいるというわけだ。マッチョな男の肉体はキスマークだらけになっている。
「はふぅ・・・久々にフィナちゃんてばイっちゃったわ〜、うふふっ!!・・・あっ、そういえばセルジオにシンバはどうしてるかしら?
 そろそろラティナちゃんたちの所に戻った方がいいかもしれないわね・・・それじゃフィナちゃん帰還しまァ〜す!!あはん☆」
何処かにウィンクと投げキッスを飛ばした彼女は、またも裸のままで来た道を戻ろうと猛ダッシュした・・・・
「(・・・謎のエロい姉ちゃん、青春をありがとうよ・・・・うぅっ)」刺客のリーダーは意識が戻っていたのか、内心泣きながら感謝していた。

そして森の中の別の場所・・・エルフの民の間に動揺が走っていた!!!
「エストレーアっ、ラティナさんが消えたって本当なのですか!?」エルフ魔術師の少年、マスケーロが焦燥に駆られながら話している。
「残念ですが・・・本当なのです。見てください、このメモを。何者かが彼女を誘拐したみたいで・・・筆跡からして女性の線が強いです。」
一方の美少年エルフで医者のエストレーアは、取り乱す様子もなく冷静に状況を判断していた・・・しかし殆どの者は動揺を隠せなかった。
しかしその場に突如炎が燃え盛った!!眩く燃え盛る炎に誰もが目を覆うと、そこには大柄でラフな服装をした青年と赤い狼がいた。
青年自身、複雑なトライバル模様の刺青を彫った腕をノースリーブのシャツから覗かせ、小麦色の肌と銀色のミディアムヘアをしている。
「ふぃ〜・・・ファイア・コーリングも無事に成功したみたいだな。おっ、どうもどうもエルフの皆さん!!こんちわ〜っす!!」
いきなり現れるなり陽気な挨拶をかます青年だが、突如現れた謎の人間にエルフ達の戸惑いはさらに混迷を極めた。
「おいおい、いきなり現れやがって何だテメェ!?お前もザッカルの命令で俺らを殺しにきたのか?あぁ!?」
一部のエルフが血相を変え、青年の胸倉を掴んで尋ねる・・・青年の方はというと、若干驚きながらもザッカルとの関連を否定した。
「はぁ!?いきなり何なんだよアンタぁ、俺ぁザッカルとか誰だか知らねぇし、用があるのはここにいるはずのラティナって娘なんだがよォ」
青年がラティナの名を口にした瞬間、エルフ達の間に気まずい空気がほのかに漂う・・・「へ?なになに??ここにはいないの・・!?」
「・・・実はついさっき、そのラティナさんは消息不明になったんです。謎の女性に誘拐されたらしくて・・・」
「な・・・クエスト!?ちっくしょ〜、俺以外にも同じクエストを受諾した奴がいたなんて・・・おっと。」「マスター・・・あんたなァ。」
「あの、人間のお兄さん?『クエスト』ってどういう事なんでしょうか・・・話してもらえますか?」エストレーアの潤んだ美少年アイが青年を
見つめていた・・・当然逆らえるわけでもなく、自分とラティナを誘拐した女性もといエレナが受諾したクエストのことを全て話した。
「なるほど・・・つまるところ、あなたは風来坊の万事屋。そしてデフヒルズのクエストバーで仕事を引き受けた。だけど女性も同じ仕事を
 請け負ったと、そういう事なのですね?」「そういうこった。俺ぁ他人に仕事を横取りされるのは大嫌いなんでね、彼女を取り返してやんよ!」
「ありがとうございますっ!!あ・・・フィナーアさん、丁度いいところに来ました!」
ちょうど裸の女性がその場に戻ってきたが、その姿に青年は驚きを隠せなかった・・・・!!
「・・・へっ!?フィナーアって・・・まさか、あ・・・姉貴ィ!?」「あらあらぁ?もしかして・・・もしかしてミカエルちゃんっ!?」
「ひぃっ・・・まままマジかよ、何でアンタがこんなところにいるんだよオイぃぃぃぃぃぃぃぃ!!?!」姉フィナーアを前にミカエルはビビる。
「いやぁ〜ん久しぶり〜!!!お姉ちゃんがKissしてあげまちゅからねぇ〜ん!!さぁお姉ちゃんの胸に飛び込んできてもイイのよ?ね?」
もの凄いスピードで弟に抱きついてキスをしまくり、さらには豊満なバストに弟の顔を挟み込んでパフパフをかますフィナーア。
一方ミカエルは「ぎゃぁああぁああぁぁぁぁ止めれぇええぇぇぇぇえぇぇええぇ!!!」と叫んでいた・・・・

to be continued...

698ESCADA a.k.a. DIWALI:2008/03/19(水) 09:40:28 ID:El.1URUk0
あとがき

ん〜・・・親父め、オレから楽しみを奪いやがって(ry
相変わらずネットに接続できる機会がなくてもうアレです、orzなDIWALIです;;
メモ帳にノリノリで書き込みまくったせいか、結構ボリューム満点ですね・・・

とりあえずエルフの村襲撃事件編は一件落着っす。
次回からは「ラティナ奪回作戦編」のスタート、トレスヴァントが目立ちまくる・・・予定。
つーかミリアちゃん最近セリフ少ないな〜・・・もっと「うにゅうにゅ」言わせたいw

699◇68hJrjtY:2008/03/19(水) 17:01:35 ID:KXNE.nRg0
>したらば初心者さん
意外にも見聞が広く、世渡り上手(?)なギールの案内でシュトラセラトスタートですね。
田舎生まれの田舎育ちという主人公(そういえばまだ名前が出てませんね!?)視点で語られる都会風景。逆の立場の私には新鮮でした。
そういえばブルービストロって長蛇の列なのは印象深かったですが、他のレストランは無かったですよね。こんな裏話が(笑)
ブリッジヘッドとシュトラセラトの町事情というのも小説の傍ら考えてしまいました。ブリヘはシーフギルドのせいもありそうですよね。
ギールの空腹衰弱(笑)のお陰(?)で改めて仲間というものを意識し合った二人ですが、狩りで食べ物を獲得するとはまたまたリアルな。
続きお待ちしています。
---
過去の人なんて滅相も無い!
個人的には1スレ目でしか執筆されてなかった書き手さんにも是非書いてほしいくらいですよ(笑)

>幕間さん
漫才風で各キャラの酒場での一面が面白かったです(笑)
BISは最強ですね。他のキャラが何かしらのダメージを負ってるのに一人だけアハハって(;´Д`A
そしてついに認めてもらった(?)リトルこと姫。リトルになったら誤字もなくなるんでしょうか(笑)
しかし、天使が(´・д・`)・・・しかし、意外と天使は酔ったら性格が180度変わったりして…。
次の舞台はどこでしょう、楽しみにしてます(笑)
---
改善点、ですかぁ…うーん。
幕間さんのお話は小説形式ではなくてセリフ(&効果音)だけの漫才みたいな風に読ませてもらってるので、文章的には特に気になりませんよ。
逆に言えばこういった形式でものを書いたことが私には無いので指摘できることが見当たらない(苦笑)
お力になれず申し訳ないです。

>ESCADA a.k.a. DIWALIさん
エルフ村襲撃編ラスト、感動させてもらいました(*´д`*)
でもやっぱりルシフェルのおっちゃんは荘厳な空気よりもぶっちゃけた空気の方が似合います(笑)
ミゲルへの諭し方も彼らしいというか、いいオヤジだなぁ(´;ω;`) やたらと説得力ありますし。
しかし水のサマナー、ニーナと火のサマナー、ミカエルの集合と同時にミカエルがフィナ姉の弟だったことが判明とは(;・∀・)
エルフ村編が終わったと同時(というか同時進行気味)にラティナ編スタートしましたね!楽しみにしています。

700之神:2008/03/19(水) 17:21:58 ID:Qvwd4z.60
>>幕間さん

会話形式も面白いので、幕間さんの芸風(? としてやっていけばいいかと。私も以前やってました(´∀`
改善点というか、オヌヌメは。

会話形式は基本的に、誰が何を言っているのか提示しないとわかりません。

例えば、

戦士 「  」

みたいな。これは幕間さんやっていますが。個人的に、「」の始まる位置を合わせると、かなり見やすくなるかなぁ、と。

ランサー  「      」
戦士    「      」
ウィザード 「      」

みたいな。まぁこれは趣味とかの問題ですけどw

そして700ゲット、ちゃかかり…b

701之神:2008/03/19(水) 17:26:25 ID:Qvwd4z.60
って↑、「」の位置ズレとるがなorz

連投サーセン('A`

702幕間・「」をあわせるテスト:2008/03/19(水) 17:49:00 ID:of5VjV0.0

ハイブリ「知識範囲といえばぁ!」

悪魔  「あたしよ!」

.WIZ 「俺だ!」

ランサ 「あたしだってぇ!」

天使  「(目立つチャンス!)ぼ、ぼくだtt…」

戦士  「やかましぃぃぃい!ドラツイでも食らいやがれぇぇぇぇええ!」

全員  「ぎゃぁああぁぁぁぁぁああああ!」





姫   「なんであたしまでぇぇぇぇええ!」(←戦士についてきてた)

703FAT:2008/03/19(水) 20:48:26 ID:.lxafIeQ0
前作 二冊目>>798(最終回)

第二部 『水面鏡』

キャラ紹介 三冊目>>21
―田舎の朝― 三冊目1>>22、2>>25-26 
―子供と子供― 三冊目1>>28-29、2>>36、3>>40-42、4>>57-59、5>>98-99、6>>105-107
―双子と娘と― 三冊目1>>173-174、2>>183、3>>185、4>>212
―境界線― 三冊目1>>216、2>>228、3>>229、4>>269、5>>270
―エイミー=ベルツリー― 三冊目1>>294、2>>295-296
―神を冒涜したもの― 三冊目1>>367、2>>368、3>>369
―蘇憶― 五冊目1>>487-488、2>>489、3>>490、4>>497-500、5>>507-508
>>531-532、7>>550、8>>555、9>>556-557、10>>575-576
―ランクーイ― 五冊目1>>579-580、2>>587-589、3>>655-657、4>>827-829
>>908>>910-911、6>>943、7>>944-945、六冊目8>>19-21、9>>57-58、10>>92-96
―言っとくけど、俺はつええぜぇぇぇぇ!!― 六冊目1>>156、2>>193-194、3>>243-245
>>281-283、5>>385-387、6>>442-443、7>>494-495

―8―

 先の折れたピッケルや割れたヘルメットが散在している。そのいずれも煤と埃でくすん
でいた。錆付いたレールの上、壊れたトロッコを引くように重たそうにスカートめくり胸
パット男を引きずりながら、ドレイツボはレンダルたちの後を追う。レンダルたちは顔を
潜めこそこそと内緒話をする。
「ねえねえ、お姉さま方、あのお方々本気でやばくないですか?」
「やべえやべえ、おい、魔物でも引っ掛けて殺させちまうか」
「あの杖の男だけなら反対はしないぞ。むしろあたしが殺ってやりたいくらいだ」
 三人は一度に振り返り、ドレイツボを睨む。彼の額には大量の汗がこれでもかと言わん
ばかり、一面に噴き出していて離れていてもその煌きは褪せない。
「なんであいつはあたしらを追いかけてくるんだろう?」
「マリスよぉ、お前惚れられてんじゃねえの?」
「女の人に触られたのが、実は初めてで、それでマリスお姉さまにきゅんってなってしま
ったとか!? そうですわ! 初めて触れられた相手がマリスお姉さまで、さらに命を救
ってくれた恩人なのですもの! 絶対マリスお姉さまに恋一直線なのですわ!!」
 恋愛のこととなると急にテンションの上がるデルタ。妄想も風船のように一気に膨らむ。
「えー、やだよー」
「おいマリス。こいつの妄想話に付き合ってると頭おかしいのがうつるから、気をつけろ
よ」
「ああ、そしてマリスお姉さまに恋焦がれたドレイツボさんは、変態スカートめくり男さ
んを引きずりながらも、一分一秒でもお姉さまのお顔を見ていたいと、汗だくになるのも
構わず、このレールを自分の恋の道だと思って歩いているに違いありませんわ!! ああ、
美しい恋ですわ! ドレイツボさん!!」
 そのとき、ガツンと鈍い音がした。レンダルの拳がデルタの頭を殴り、びぇーびぇーと
泣き出すデルタ。両手で目を擦りながら、その涙は左右に飛ぶほど勢いよく流れ出る。
「お、おい、デルタちゃん、大丈夫か? ほら、殴られたところを見せてみなよ」
 心配そうに体を屈めてデルタを覗き込み、マリスは頭を撫でてあげた。
「心配いらねえよ。こういうときのはうそなきなんだ。なんたってこいつ石頭だからなぁ。
俺のほうが拳が痛くって泣きそうだぜ」
 びぇーびぇーと涙を飛ばし、うぇーんうぇーんと金切り声を上げて泣き続けるデルタ。
そうこうしている内にドレイツボが三人に追いついた。

704FAT:2008/03/19(水) 20:49:03 ID:.lxafIeQ0
「はぁっ、はぁっ、はぁっ。……よ、ようやく追いついたぜぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
 ドレイツボの声に反応しぴたっと止まるデルタの涙。そしてこれから起こることを想像
しながら楽しそうに汗だくのドレイツボに微笑んだ。
「やりましたわねっ! ドレイツボさん! さぁっ! 憧れのマリスお姉さまに告白する
チャンスですわよっ!!」
 はしゃぐ恋愛妄想中毒者デルタ。しかし、ドレイツボの口からは思いがけない言葉が。
「俺はよぉぉぉぉぉぉ!! 惚れたぜぇぇぇぇぇぇぇ!! あんたの刺激的なピンクのパ
ンツによぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
 突然の告白に時が止まる。いや、レンダルは馬鹿笑いをしている。止まったのはデルタ
の時だ。
「惚れたんだよぉぉぉぉぉぉ!! もう一度見せてくれよぉぉぉぉぉ!! どピンクのや
つをよぉぉぉぉぉぉぉ!! 見てぇぜぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
 彼の脳みその半分は変態で出来ていた。変態と幸せ。この二つの要素だけで生きている
男は強い。それがこのドレイツボという男の強さの秘密だ。
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
 変態と書いてロマンテックと読ませるような恥ずかしい告白にデルタのビンタが激しく
ドレイツボの横っ面をひっ叩く。
「うぐっぽぁぁぁぁぁぁぁ!!」
 ドレイツボは引きずられていた変態スカートめくり胸パット男の上に弾き飛ばされ、
共々レールの上を跳ねるように数回転がった。焦がれたピンクは遠く、ドレイツボの手か
ら離れて行く。再びパーティーは全滅した。
 憐れに思ったレンダルはぽっかり開いたままのドレイツボの口にお子様キャンデーをく
わえさせてやった。きっと彼はいい夢が見れるだろう。
「ほんとになんなんだ、こいつらは」
「変態だろ」
 今度はマリスにも見捨てられ、三人は再び地下を目指した。

「まだまだまだまだ俺は終わらねえぜぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
「ドレイツボォォォォォォォォ!!」
 変態と幸せで生きている男は強い。短い眠りから覚めたドレイツボと変態スカートめく
り胸パット男。またも坑道に響いた雄叫びに三人は恐怖を覚え、地下への道を急いだ。

705FAT:2008/03/19(水) 20:50:35 ID:.lxafIeQ0
―9―

「今さらだけどさ、何で二人はこんなとこにいるんだ?」
 マリスは先頭を進みながら、黒い髪に指を絡ませながら顔を振り向かせた。
「ああ、言ってなかったっけ」
「デルタの目を見て、分かってください、お姉さまっ」
 マリスは立ち止まり、デルタの大きくて可愛い目をじっと見つめた。
「ごめん、わかんないや」
「こういうときはわかるか、ばかっ! って叱ってやるんだよ」
 ゴツンとデルタの頭をぐーで殴るレンダル。しかしデルタはケロッとした顔ですまし、
頬に指をあてる。
「あのね、私たちの大親友のエイミーお姉さまにはラスちゃんっていう子供がいるの。そ
の子を探しているんですけど、どこにいるかさっぱりで」
「ここの最深階にチタンって魔物がいるらしいんだけどよ、そいつが水晶を持ってるらし
くて、んでもってその水晶で見たいものを見れるって言うんだ」
「その水晶でラスちゃんを見つけようってことなんだね。それでこの鉄鉱山に潜ってるっ
てことか」
「ですです」
 マリスは再び前を向いた。
「チタンかぁ。聞いたことないなぁ」
「ま、ガセだったらジム=モリが死ぬはめになるだけだがな」
 はははは、と三人は笑った。乾いた笑いがよく響いた。

 現在地は地下四階だろうか。三人はさらに地下へと伸びるはしごに足をかけた。すると、
はしごの下でマリスたちを見上げ、待ち構えている一体の魔物の姿が。
「とうっ!」
 マリスははしごを蹴ると、待ち伏せしている魔物の頭を踏みつけ、猫のようにしなやか
に着地すると背後から堅い拳で一撃を見舞った。魔物は長身、がっちりとした人型の化け
物。頭には兜のようなものを被り、首は金属製の板で覆われており、その表情はうかがい
知れない。
「こいつはコロッサスか、この鉄鉱山にもいるんだな」
 マリスの鉄拳が背中を強打し、コロッサスははしごに打ちつけられた。はしごがぐらぐ
らと揺れ、しがみついているレンダルとデルタが悲鳴を上げる。
「おおい、おおおおい! マリス、恐がらせんなよ」
「きゃっ! きゃっ! ぶーらんぶーらん楽しいですわ」
「いやぁ、すまない、すまない」
 マリスはよろけるコロッサスの手を強引に引くと、ぶんと反対方向に投げ飛ばした。マ
リスを優に越える巨体が空に弧を描き、コロッサスは地面に叩きつけられた。小柄なマリ
スだが見た目からは想像できない程の剛腕だ。

706FAT:2008/03/19(水) 20:51:29 ID:.lxafIeQ0
 レンダルとデルタはこの隙にはしごから降りると、デルタを短剣と丸盾に変身させ、戦
闘体勢に入った。
「しっかしマリス、見た目によらず剛腕だな」
 と目を凝らして見てみると、マリスの全身からはもやのようなオーラがほとばしってい
た。
「魔法みたいなものさ、私たちは“気”と呼んでいるけどね。そこまで筋肉はないよ」
 笑いながら、マリスは怒り狂ったコロッサスの鋭い前蹴りを拳でいなすと、流れるよう
な動作で金属板で守られている首に反撃の肘打ちを入れる。べこっと金属板がへこみ、コ
ロッサスはよたよたと後退した。
「よっしゃ、デルタ、斧だ!」
 デルタはその形を片手斧へと変え、レンダルはよたったコロッサスの腹部にデルタを叩
きつける。が、カキーンという乾いた音と共に弾き返され、衝撃に手が痺れる。
「げっ、傷一つ付いてねえ」
「いっったーー。私が刃こぼれしましたわ、お姉さま」
 二人の会話を妨げるように、コロッサスは左足を踏み込み、力を溜める。そしてお返し
にと言わんばかりの強力な前蹴りがレンダルを襲う。盾となったデルタで受け止めるもそ
の衝撃の強大さにレンダルは吹っ飛ばされ、壁にしこたま体を打ち付けた。レンダルの額
に青筋が浮かび上がる。
「うっがぁ! てめ、なめんなよ!!」
 憤慨するレンダルの対面で身を屈めたマリスは素早い足払いでコロッサスの足を薙ぎ払
い、転倒させる。レンダルの足元に巨体が倒れこんできた。
「デルタぁぁぁぁぁ!! でっけーーーー斧だっ!!」
 デルタの盾になっていた部分を剣に吸収すると、デルタは一本の大きな斧へと姿を変え
た。レンダルはそれを両手でぶれない様しっかりと持つと、坑道の天井まで届くかと思う
くらい高く振り上げ、一段と青筋を膨らませながら一気に叩き下ろした。
「ぶごぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
 ざっくりとコロッサスの背中に斧が突き刺さり、苦汁が噴き出す。
「もいっちょーーーーー!!」
 腰を入れ、斧を引き上げると、今度は兜目掛けて渾身の力で振り下ろした。斧の刃は簡
単に兜を真っ二つに割り、弾けた。斧を引き抜くとコロッサスはぴくぴくと痙攣を始めた。
「はぁ、いってー」
「痛いのは私のほうですわ、お姉さまっ!」
 ふわんと元に戻るデルタ。肘が少しすりむいている。刃こぼれしたのは肘の部分だった。
「いやあ、それにしても二人とも強いな。あたしなんて用なしじゃん」
 謙遜するマリス。レンダルとデルタは照れ笑いを浮かべながら、
「いやいや、マリスのほうが俺たちの数倍強いさ。俺なんてあんな風にこいつを投げ飛ば
したりできねえぜ」
「なんたって、私じゃ刃が立たない魔物さんをぼかすか殴っていたじゃありませんか」
 互いを褒め称える。互いを認め合っているからこそのセリフ。
「ふふ、本当に二人と一緒に冒険できるのが嬉しいよ。さ、行こうか」
 マリスはつやつやと輝いた笑顔で先陣を切って歩き出した。上を向いて歩ける幸せを噛
み締め、この優しく何とも温かな二人の女性と共に居れることを感謝しながら。

707FAT:2008/03/19(水) 20:55:24 ID:.lxafIeQ0
>>之神さん
お雛さま、さすがな季節ネタでした。ちょこっとホラーなお話でしたね。子供の頃の記憶
を遡れば西洋人形を壊してしまったり、ぬいぐるみの一部が破れてしまったりと色々あっ
たなぁなんて思い出したり……
しかししかし徹ミカカップルの熱さは霊をも霊界に送り戻すほどですね。
ホワイトデーの話ではシリウスの子供っぽさがよかったです。なにがなんでも仕返しした
いって、なんか可愛いですね。
本編ではついにエリクサー捜索が本格化、不法侵入開始ですね!
誰が栄冠を手にするのか、それぞれのペアの特徴を生かしてはちゃめちゃしてほしいです。


>>復讐の女神さん
お久しぶりです。ジェシたちの物語の続き、ずっと待っていました!
冒頭のテルによるテイムの描写は新鮮に感じられて、実際は仲良しテイムじゃなく、この
ような魔力による服従に近いものなのかも知れませんね。
ゲームの中の本とは違い、テルの本は一匹一ページなのですね。これならコレクター的な
テイマーもいそうですね。ゲーム的にもそのほうが面白そうで、実装してほしいなぁと思
ったり。
ええ、無理なくご自分のペースで執筆を続けて頂ければ嬉しいです。いつまでもお待ちし
ております。

>>509さん
現実世界とRSの世界が完全に融合していて面白いですね。
特別な能力者は能力値の特化型になるのでしょうか、RSのいう知識は頭の良さというよ
り魔法の優劣(強弱)を数値化したものですからヒョロヒョロの三井君も実がおつむが弱
かったりするのかなと勝手に想像しています。
なにやら本部という謎の機関の存在も明らかになり、能力者の数も増えてきましたね。親
友の慎二とアイドル四条香奈も実は能力者だったということで、各々がどんな能力を持っ
ているのか今から楽しみです。
余談ですが三井は死んでしまっているのでしょうか?
個性的な物語の続き、お待ちしております。

>>柚子さん
すごい、戦っているイリーナとルイスの表情まで見て取れるような戦闘シーンの連続でし
た。いつ命を失ってもおかしくない戦闘というものの緊迫感と傷一つで自由を失う人間の
脆さが感じられました。
そんな戦闘の最中で目覚めたミシェリーの中の人狼。まさかあのときの人狼がミシェリー
だったとは思いもしませんでした。普段が愛くるしいだけにその残虐性に呑まれてしまう
のかと考えるとイリーナ同様、胸が切なくなります。
パンを片手に盗賊を駆除するルイス、かなりかっこいいです。オリジナルスキルのサンダ
ーエンチャントも今回の戦闘でのルイスを更に輝かせていますね。一方のイリーナは苦戦
しながらもなんとか馬車の護衛に成功。やはり護るものがあると実力は発揮しにくいです
よね。あやしい商人と襲い掛かってきたシーフたちとの関係はあるのでしょうか?
ハノブでの描写はどれも柚子さんの世界観と微細な心模様が描かれていて興味深く読ませ
ていただきました。特にイリーナがイカサマをしていたという場面での一言、「魔導師は、
器用じゃなくちゃやっていけないからな」これには納得です。手品師のことをマジシャン
とも呼びますし、魔法を使いこなすことと手先の器用さは密接に関わりあっているのかも
知れませんね。
今後も柚子さんのますますの活躍を期待しております。

>> ウィーナさん
謎いっぱいのニナ、というかGメンバー全員がなにか謎めいたものを秘めていて、読み進
めるほどにもっと色々なことを知りたくなります。
フェレスが女神様だったとは、思いもしませんでした。意外な展開に読み進めるのが楽し
かったです。
ニナとロイがくっついたり、アルビがモテモテだったりと皆が幸せそうですが、実はまだ
イリアさんとか危険因子がいるんですよね。続編も楽しみにしております。

>>したらば初心者さん
初めましてっ!
父と母の死。それを美しいと感じ、自身もそうなることを望んだ少女。
旅の目的が意味のある生であったと誇れるようになること。主人公の強い決意が前面に出
ていて、これからどう成長していくのかが楽しみです。
シュトラセラト名物のブルースビストロ。その圧倒的な人気が目に浮かぶようです。実際
のRSの中でも中々の長蛇具合ですものね。
ギールの言うように、二人で旅すれば色々な部分を補えるんですよね。二人の実力はまだ
未知数ですが、二人の意志の強さでなんでも乗り越えていってほしいです。

708FAT:2008/03/19(水) 20:55:56 ID:.lxafIeQ0
>>黒頭巾さん
>剣士の話
随所に仕込まれたネタに度々顔が綻びました。課金者という上位称号、なんてくすっと笑
ってしまいましたよ。ニートな親父もいい味出てますね。キムチ!キムチ!
決め台詞が虚しくて、古都落ちしてしまった元剣士君が哀れで……(´;ω;`)ウッ

>ほわいとでーいーえっくす
心が洗われるとても純粋な話で、思わず感動してしまいました。
純真無垢なふぁみりあいーえっくすの語り口もつぼで、面白かったです。雨風のせいであ
んにゅいとか(笑)
ほどよいギャグと心に迫るストーリー。黒頭巾さんの短編はどれを取ってもこのバランス
がよくって大好きです。次回作も期待しております。

>>白猫さん
あれ?アネットがセシェア?と一瞬勘違いしてしまいましたが、アネットはネルの姉でセ
シェアは妹でしたね。うっかりうっかり。
エリクシルの研究書によって明らかにされたネルの異変。第四段階の真価はいかほどなの
でしょう。
それと並行して剣を交えるサーレとサイカス。ブルーコスモスとはどんな技なのか、わく
わくするところで次回っ!
続きが気になりすぎます。続き、楽しみにお待ちしております。


>>R310さん
簡潔なあらすじに吹きました。
しかしてるみつくんのブルーノに早く借金を返してほしいという思いやりやその気持ちを
理解し、皆に謝罪するブルーノの主従関係に感動しました。
私もミニペット買いたくなっちゃいました。これが社員パウダーの効力ですね(笑)
次回作も期待して待っております。

>>21Rさん
誰もが持っている封印された九つ目の刻印。う〜む、一体なんのことなんでしょう。
この九つ目の刻印が決戦の勝敗を左右しそうですね。でもキメラであるアデルがその封印
を解けないということは一度死んでいるアレンも封印を解けないのでしょうか?それとも
アレンはやはり特別なのでしょうか?
続きが激しく気になります。

>>ESCADA a.k.a. DIWALIさん
海の中の幻想的な神殿を思い浮かべながら読ませていただきました。
マーマン一族に愛されるニーナの血統。水の翼とはまた天女のイメージにぴったりでいい
ですね。
げろってもやることはやるザッカル。海の中の血溜まりって青と赤が混じって不気味な光
景ですね。
ニーナ参戦でさらににぎやかになった一向。ザッカルの送り込んだ刺客たちとの死闘、そ
れに人間劇、とても読み応えがありました。
閑話で取り上げられていたラティナ捜索クエスト、ばっちし発動されていたんですね。彼
氏のトレスヴァントの男気、期待して待っております。

>>幕間さん
WIZとテイマのショートコントに始まり、様々な組み合わせのショートコント、面白か
ったです。
やっぱりこのスレはこういった一発もの的なネタも必要なんだと再確認させられました。
徐々に繋げて長編にとのことですが、こういった形式の話は今までになかったと思うので
期待しております。

709 ◆21RFz91GTE:2008/03/20(木) 02:31:40 ID:ZAmwz8o20
////********************************************************************************////
  ■◆21RFz91GTE:まとめサイト(だるま落し禁止)
  ■ttp://bokunatu.fc2web.com/trianglelife/sotn/main.html
  ■Act.1 アレン・ケイレンバック >>44-45
  ■Act.2 少女 3 >>65-67
  ■Act.3 少女 4 >>87-90
  ■Act.4 レスキュー? >>173-174
  ■Act.5 蒼の刻印-SevenDaysWar- >>206-208
  ■Act.6 緑の刻印-SevenDaysWar- >>220-221
  ■Act.7 白の刻印-SevenDaysWar- >>222-223
  ■Act.8 紅の刻印-SevenDaysWar- >>272-273
  ■Act.9 封印された九つの刻印-SevenDaysWar- >>426-427
  ■Act.10 封印された九つの刻印2-SevenDaysWar- >>581-582
////********************************************************************************////

710 ◆21RFz91GTE:2008/03/20(木) 02:32:01 ID:ZAmwz8o20
Act.11 科学と錬金術とその未来と -SevenDaysWar-



 アデルが飛び去ってから一時間後。
未だ賑わっている古都を尻目にアレンはゆっくりとアジトへ足を運んでいた。入り口を潜ると最初に少し大きめなカウンターが見える。その左右奥にドアが設置されていて左のドアは男性寮、右のドアは女性寮となっている。男性寮ドアから更に左側にもう一つのドアがある。そこにはアレンが持ち込んだ幾つかの小道具と実験用に使うフラスコや試験管等が置いてある実験室になっていた。元々は使われて居ない地下倉庫だった場所を改造して作られた場所で湿気はもちろんの事ながらジメジメしていて暗い。
 実験室のドアを開けて小さな階段を下りる。ポケットに入れていた左手を顔の前に持ってきて指を鳴らした。その時に発せられた微量な摩擦熱を魔力で増幅させ、近くの蝋燭に火を灯す。その作業を幾度か行い、最後に油が敷かれている溝に火を灯し部屋を明るくさせた。
「さてっと…。」
羽織っているコートを脱いで近くの椅子に掛けた、次にマフラーを取りコートの上に被せる。少し薄着になったところで左肩に右手を乗せてゆっくりと首を鳴らし、次に左肩を反時計回りに二度回転させた。
「えーと、確かこの辺に。」
昨夜持ち込んでいた本棚の中から一冊の本を取り出して中身を確認する、数ページめくった所でテーブルに置く、また一冊、もう一冊と何冊か取り出しては中身を見る。目当ての物で無ければすぐに本棚へと戻し隣の本を掴む。
「こんなもんかな?」
十冊以上はテーブルの上に置かれていた。薬物に関する本から毒薬、錬金術基礎、連鎖反応書、魔道書、そんな本が置かれていた。次にメガネを取り出して目にあてがう。度が合わないのか何度か眉を顰めて遠くの物と近くの物を交互に見た。
「また視力落ちたかな?」
独り言のように呟いて椅子に腰掛けた。テーブルの上には既に幾つかの実験器具が揃っている。フラスコにビーカー、試験管等錬金術に欠かせない必要最低限な物からちょっとした実験に使用する鉱物と素材。
「アンモニア八グラム、炭素七グラム、ニトログリセリン八ミリリットル、鉄鉱石二キロ……ニトログリセリンって何だろう。」

711 ◆21RFz91GTE:2008/03/20(木) 02:32:38 ID:ZAmwz8o20

 「クラウス、アレンさん見なかった?」
「アレン様ですか?先ほどアジトの方へと歩いて行かれたのを見ましたが…二時間程前になります。」
アルコールで火照った体は既に酔いから覚めて少し肌寒いと感じるような空の下、ミトは先刻から姿を見ないアレンを探していた。特に用事があると言う訳でも無さそうに見える。
「アジトかぁ、うん、ありがとう。」
「いえ、私はもう少しここで楽しませて頂きます。」
クラウスも酔いが醒めて来ているのか、タバコを吸いながら満天の星空を眺めていた。その顔は絵顔で子供の頃に戻ったような清清しい笑顔だった。それを邪魔するのも癪だと考えたミトは早々にクラウスの側を離れアジトへと足を向けた。
「ロビーに明かりが付いて居ないから誰も居ないのかな?」
ゆっくりとアジトに入って最初のフロアで足を止めた。腰の道具袋からマッチを取り出して近くの蝋燭に火をつける。その蝋燭を筒抜けの瓶に入れて持ち運び可能な照明器具を作った。蝋燭の明かりでは然程視界は良好と言う事でも無いが月明かりもあって程よい明るさになる。
「実験室に明かり?」
辺りを見回して居ると実験室のドアが開いている事に気づく、ドアの隙間から少しだけ顔を覗かせて中をみるとそこはいつも暗い実験室ではなく、とても明るい部屋になっていた。
「何時の間にこんな改造したんだろう…。」
普段用事も無いこの部屋に入る事は無いミトの率直な感想だった。一度笑って階段を下りていくとそこにはアレンの姿があった。
「ん、ミトか。」
「何をしてるんですかアレンさん。」
人の気配に書物を読んでいたアレンは入り口に目だけを向けた。左に流すようなその目線は少し鋭くて睨まれている様にも感じられる。
「ちょっとした物を作ろうと思ってね。」
「…ちょっとした物?」
アレンはゆっくりと椅子から立ち上がって一度大きな伸びをする。メガネを外してテーブルの上に置くとすぐ側のタバコを取り出して咥えた。
「前一緒に旅をしていた頃ブリッジヘッドの倉庫を爆発させたのを覚えてるか?」
「はい、あの爆発は凄かったです。隠れる場所が悪かったら私も一緒に吹き飛んでいましたよ。」
「あの時に思ったんだ、俺たちウィザード以外は簡単な魔法すら使えない。でもあの爆発は魔法で引き起こした物じゃない。あの爆発並の破壊力をもっと簡単に且つ人工的に作れないかってね。」
「…はぁ。」
咥えたタバコの先端に右手を持ってきて指を鳴らし火をつけた。深く煙を吸い込み肺に通し、二酸化炭素と共にゆっくりと煙を吐き出した。煙は小さな通気口からの月明かりに照らされ白く濁る。姿を見せた煙は静かに実験室の中を漂い、一部は外へと逃げ出した。
「俺もタバコの煙みたいになりたいな。」
「……え?」
「時にはその場に漂い、時には逃げ出してしまう。風に作られた道に身を任せて従う。そんな冒険者でありたかった。」
漂う煙をうつろな瞳で見つめる。そっと息を吹き掛けると舞い、作られた道に沿ってゆらゆらと漂う。まるで静かな水辺に浮かんでいる葉っぱのようだった。
「良いかミト…これから言う事をしっかりと心に刻め。」



Act.11 科学と錬金術とその未来と -SevenDaysWar-
To be continues...

712 ◆21RFz91GTE:2008/03/20(木) 02:52:09 ID:ZAmwz8o20
こんばんは〜…出現頻度が低くて申し訳ないです|li:l|;|orz|l|i:|l|
今MADの勉強中で最近RSどころか小説にも全く手を付けられてない情況ですorz

コメ返し

>>589 :◇68hJrjtY様
あえて言いますが…皆「九つ目」に付いて突っ込みすぎですよ(笑
過度な期待はしないでくださいなヾ(´・ω・`)ノ
68さんに関してはもう一つ、ネタバレになりそうな文章が出て来てるから怖いです(笑
伏線拾いすぎですよヾ(´・ω・`)ノ
----
VPネタは奴です、バドラックでしたっけ?あの銃つかうオッサン。
あいつのネタを少々かじってます。

>>618 :黒頭巾様
この間、リアルでのお話ですが。
ゴミ収集車に載ってるおっさんに惚れましたヾ(´・ω・`)ノ
パーマに黒のサングラスは卑怯です、ついでに言うと繋ぎ…うh(ry
幼女には大きめな武器を、おじ様には素手で戦っていただくのが主義です。
何と言ってもギャップいいですよね、最近お気に入りなのはブラックラグーンの双子(♀の方)の巨大マシンガンですヾ(´・ω・`)ノ
後ネタバレ自重(笑
あ、Gありがとう御座います(汗

>>708 :FAT様
なるほど、その考えもありましたか(何
いやはや、皆さんには頭が上がらないです。皆こぞってねたばr(自重
アレンは特別でも何でもないですよー、ただのロリコンですから(笑

>>692 :幕間・書ききれなかった事様
そうですねぇ、ざっと見た感じなのですが。他の皆さんも上げていらっしゃる通り
会話だけの構成なのである意味仕方ない事だと思います。
一つ、キャラに個性を付けて見てはいかがでしょう?
と言うのも、殆どのキャラがハイテンションなので個性が見つけられないという点ですね。
キャラに個性や喋り方、癖等を付ければ冒頭の職名を付ける必要も無くなるので見やすくはなります。
例えば、一人を大阪弁にして見るとか、一人をかしこまった喋り方にするとかですねぇ〜。
後は!の多用ですとかも目に留まる所になりますね〜ヾ(´・ω・`)ノ
最後になりますが、略語にするのもあれですね。「ry」ですとか「そうだったkk」ですとか。
チャットと同じノリですとアレなので、その点を考慮すると良いかも知れません。

会話だけの文章と言うのもまた味が有るものです、それを生かした作りを考えて見てはいかがでしょうか?
とりあえずネタとしてΣd(дゝ)グッジョブです、深夜に笑わせて頂きましたヾ(´・ω・`)ノ

713幕間・バカ三人組:2008/03/20(木) 11:04:20 ID:of5VjV0.0

ハイブリ「トリプル!」

WIZ 「スーパー!」

BIS 「ハイテンション!」

説明しよう!【トリプルスーパーハイテンション】とはこのバカ三人組が適当に範囲攻撃をするだけの技だ!
しかし、ここにはMOBがいないためハイブリは何も出来ず、BISはTUでお茶を濁し、実質WIZが一人で暴れているだけなのだ!!





テイマ 「効果はいまひとつのようだ(ボソ」

バカ三人「むしろその一言は『こうかはばつぐんだ』だぁぁぁぁああ!」

悪魔  「小田マリ!(お黙り!) ゆっくりお酒も飲めないじゃ無いの!」

ピシッ!
ハイブリ「ぎゃっ!」

ピシッ!
WIZ 「OUCH!」

ピシッ!
BIS 「なんの!シルフラ!   ・・・なに??!グラサンだと??! 完成していたのか??!」

悪魔  「反撃なんていい度胸ね・・・  文字通り地獄を見せてあげましょうか・・・?」

BIS 「ヒィィィィィ! 全国のよい子よ!キミたちはこうならないようにギャァァァァァ!」


---------------------------------------------------------------------
ダメだ どうしてもみんなハイテンションじゃ無いとネタがつまらぬ
皆さんにアドバイスをいただいたのに申し訳ないorz

どうしても会話にWIZが入るとノリノリになってしまう
ある意味WIZTUEEEEE!

そしてみなさんの作品についてレスをつけれなくてごめんなさいm(_ _)m
なんかこう、思ったことは口に出さずにそのままにしておいた方が作品を楽しめるのでw



実際はしっかり見れて無いだけですすいませんorz

すべてのSS職人に幸アレ!

714◇68hJrjtY:2008/03/20(木) 11:11:46 ID:KXNE.nRg0
>FATさん
そういえば鉄鉱山にコロ居ましたね!廃坑への移動くらいにしか使ってなかったので忘れてました( ´・ω・)
でもあそこのコロもそれなりに強かった気が。そんなコロを軽く倒してしまう三人娘、やっぱり強い。
マリスの武道スタイルもなるほどと思ってしまいました。気を使うという意味では武道もやはり魔法に似た要素を取り入れているんだなぁ。
ドレイツボの二人も…(笑) 惚れられたのはデルタの方だったという。撃退されてもまた出てきそうで楽しみ(何
さて、チタンまでの道中を順調に(?)経てきましたが…無事に済むのでしょうか。続き楽しみにしています。

>21Rさん
アレンさん何を作ってるのかと思ったら…ニトロって爆弾ですかガクガk((((;゚Д゚))))
魔法以外の物質で魔法と同規模の爆発を生み出す。これが使われたら相当な戦力増加ですが…材料を知らないアレンが何か怖い!
そしてアレンの言葉「時にはその場に漂い〜そんな冒険者でありたかった。」という言葉が印象的でした。
最後の戦いを前にした各人の心境。一番戦いへの思いが強いのはやっぱり全ての戦いという歴史を経てきたアレンなのでしょうか。
犠牲者が出ないはずはない戦いへの準備段階、もう少し続いて欲しいと思いながら続きをお待ちしています。
---
えぇ、伏線指摘しちゃってたんですか!?…でも、私個人は気がついてないので大丈夫ですよ(何
ちょっとした行動や仕草、その細かい動きが明確に描かれている21Rさんの文はひとつひとつに意味がありそうなんですもの(ノ∀`*)
バドラック、居ましたね!BADとLUCKで不運と幸運を意味してるって名前の由来しか覚えて無かったですが( ´・ω・)
MADってもしや動画の…もし完成したら見に行きますよ!そっちも楽しみにしてます(笑)

715◇68hJrjtY:2008/03/20(木) 11:23:48 ID:KXNE.nRg0
おっとと。リロード忘れ&スレ消費申し訳ない。

>幕間さん
WIZやっぱりTUEEEですね…でも今回のは悪魔さんが最終的には全員をのしてしまったですけど(笑)
一番心配なのは天使もそうですが酒場のマスターですね!酒場の修理費は相当な額になりそうな。隕石出してたし。
隕石や地震にアチャの火雨、悪魔の毒+ワーム、とか混ざると私のPCは炎上します(´;ω;`)
シルフラってグラサンで防げるのか!これは全国のシルフラBISさん涙目ですね!次回作お待ちしてます(笑)
---
うーん、素直にどんどんアドバイスされたポイントを改善する幕間さんは凄い!って、それが普通なんですけど。
私なんか多分アドバイス・指摘されてもすぐ直せなかったり或いは直しても余計おかしくなったりしますよー(;・∀・)
ここに書いてる書き手さんたちは歴戦の勇者たちばっかりですから、色々アドバイス貰うといいと思います!(他人任せ

716ウィーナ:2008/03/20(木) 18:56:26 ID:3RWVAaPc0
白い鳥と黄色い花

〜1章〜
プロローグ >>301-303
1話 夢のFelt-tipped marker(サインペン) >>310-312
2話 Disguising as a woman(女装) >>316-320
3話 Facing(対面) >>454-459
4話 イクリプス >>526-531
5話 幻想の闇 >>584-588
6話 フェレス >>605-611
最終話 バレンタインデーの罠、最終決戦 >>653-660


〜2章〜
プロローグ

雪の降る、薄暗い夜。
大きな平地には雪が積もっており、そこを歩く2人の影が見えた。

「ラミア様寒いでしょう、帰りましょう…」

一人の、紫色の羽を生やした青年はそばにいた少女に話しかける。

「あなただけ帰ればいいわ
「クロゥ…恋人が来ているのでしょう?」

少女は振り向きもせず、じっと何もない白い平面をじっと見つめながら言った。
そして口に手をあて、そうっと動き始める。

(彼は帰れっこない…私がここにいるかぎり…
(寒いのはあなた 私は寒くなんかないの…
(こうしてもうしばらくあなたが私だけを見ていてくれるならば………)



「ッ!?はぁ、…はぁ…」

1人の少女がベットから勢いよく起き上がった。
切らしていた息を少しずつ整え、鏡を見た。
世の中は平和、例の悪魔騒動も完結し、自分も月舞たちと別れ、1人あのロマ村で暮らしていた。
そう、少女の名前はニナ=ハィタム。
ただのテイマーを職としている女の子だ。

(夢を、見ていたがする。それも…私が私じゃないような夢…)

ニナは鏡を見、水をつけ寝癖を直すと、テイマーにしては眺めのスカートをはき、黒い頭巾をかぶり、笛を持った。
そして、ドアを開けた。
ロマ村も少なくはあるが、だんだん人が集まってき、ニナは村の中心にある炎に手を合わせた。
しばらくすると、後ろから息を切らしながら青年が走ってきた。

717ウィーナ:2008/03/20(木) 18:58:14 ID:3RWVAaPc0
「ご、め、まった?」

青年の名前はロイ=クライス。
国の女王、オパーリ=クライスの息子であり、特攻隊の隊長でもある。
そして、ルチノの兄である、フランテルの王子様ってことだ。
ニナはロイをみ、呆れたような顔をすると、

「別に、今来たばかりだけど?」
「そ、そう、よかった」
「よくないけどね」

意地悪を言うようにニナはふふっと笑い、ロイの頭をなでた。

「毎日、ありがとう」
「い、いやっ!!あの、ロマ村が下界の悪魔に狙われてるっていう情報をルチノからきいたから、だから、ただ…」

この間のキスのときと打って変わり、ロイは顔を紅潮させる。
そしてふらふらと炎の方へ進んでいく。

「あ、そっちは…」
「……?   …!!!」

どうなったかは、想像にお任せします。(ぇ


そう、いまロマ村は下界の悪魔に狙われているのだ。
ちゃんと下界との境には結界が張ってある、が
この間ルチノがリアルワールドへの道を開いたとき、ちょっとしたことから下界へ繋がる穴が開いてしまったという。
そして、いつ、どこから襲ってくるかはまったくわからないが、ルチノによると

「ニナさんを、襲ってくる可能性があるの…
「私に悪魔の刻印を押したのは暁という悪魔なんだけど、
「その人に聞いた話によると、ニナさんは下界にいたとき、悪魔のある秘密をしっていたというの…
「それが、転生してこちらの世界に来たのは考えにくいけれど、それしかないの。
「確かにニナさんには、私と違うものだけど悪魔の作った刻印があったから…」

ということらしい。
悪魔の刻印というものは、下界で生まれた悪魔には必ず押されるもので、
REDSTONEを握っているルチノは利用できると考えた暁という悪魔が押したらしい。
そして、その刻印を押せるのは下界の中でも2人しかいなく、
暁ともうひとり、ということ。
ルチノはREDSTONEの力を利用して、刻印を消したがなぜだがニナのは消せなかった。
そのニナの刻印というのはルチノの元とは違い、なにか…特別なものらしいのだ。

「私が悪魔なんて、今でも信じられない。
「けど、いまは違うのよ、ね」
「ええ…多分…」

曖昧な返事に少しため息をつくが、悪魔という言葉になにか引っかかるものを感じ、ニナはつないだ手を強く握った。
震えるニナの手に気づいたロイは

「…大丈夫です。ニナさんはニナさんなんですから。
「私はずっとそばにいますから…」
「ずっと…?」
「ええ、は…うわ…俺なにいってるんでしょうかね…っ」

ロイが顔を大きな手で隠すと、少女はその姿に少し微笑した。
まだ人を完全に信じられない。笑顔をうまく作れない。
ずっとそばにいるといっても、どうせ自分が不利な立場になったらいなくなってしまうんだろう、と。
少女は高い空に、願いをかけていた。

718ウィーナ:2008/03/20(木) 19:00:29 ID:3RWVAaPc0
天空が、暗闇の雲で覆われいている。
雄大なる山脈を指差す切り立った断崖に、陰鬱な趣で古い洋館が建っていた。
外壁には蔦が茂り、さびた門扉から除く庭園は荒れ果て、建設当時はさぞや豪奢であっただろう邸宅も、今は廃墟と見粉うばかり。
その中からは老人が怒る声が響き渡っていた。

「くそぅ!フェレスが裏切るなんて、予想外じゃ。
「なんであんな奴を呼んだのか、暁説明してみぃ!」
「ご、ご主人様だっていいって言ったじゃないですかぁ…きゃぁんっ!」

老人…いや、老人のような口調だが、はりのある美声で…杖をつき、裾の長い白衣を着用した、端正で甘い顔立ちの青年である。
白衣の胸にはハインツ=フレイと書いてあった。

「うるさいわ、お前はワシに逆らう出ない!」
「な〜…ご主人様のハゲはREDSTONEの力を使っても直りませ…ひぁんっ!」

また、老人は手にもっていた杖で暁の手を叩く。
侍女服を着た、暁は叩かれた手を優しくさすると、

「う〜っだ…私はロボットですからこのくらい痛くありませんわっ」
「怪物染みた胃袋を持つロボットか。毎日ピザやらケーキやらばくばく貪り喰うて…」
「酷い、ご主人様。
「わたくしがこの体を動かすのに、1日二万キロカロリーのエネルギーが必要なのはご主人様だってご存知でしょう?だから、どうかはしたないなんて思わないでくださいませ」
「貴様は毎日3万キロカロリーはくっとるわ、たわけが」

ハインツは冷たく言い放ち、暁の額を杖で突いた。

「うっ…」
「今朝も、ピザのLサイズを軽く5枚は平らげたじゃろう。
「正直、わしはそのうち貴様が太りすぎで戦えなくなるんじゃなかろうかと心配でたまらん」

暁の体の大部分は厚手の黒いワンピースで覆われているため、細やかな体系まではうかがい知れない。
一見したところではしょどふくよかという印象はないのだが。

「だい、大丈夫ですっ。わたくし、ぽっちゃり系ですもん」
「ほう、可愛く拗ねたつもりかデブ。ぽっちゃり系で許されるのは60キロまでよ。
「─貴様、己の体重を言ってみい。ほれ、言ってみい。」

主の命に絶対服従である人造人間の悪魔が、抵抗虚しく乙女の秘密を自ら暴露する。
俯き、消え入りそうな声で、

「れ………0.18、くらい……でしょうか………?」
「単位を変えてごまかしても無駄じゃ。トンだな、0.18トン。180キロ、成人デブ2人分。」
「酷ッ!?なんでそんな、わたくしが傷つくように傷つくように言葉を選択するのですかご主人様!」

このまま2人は、フェレスのことなんて忘れ朝まで騒いでいたという。

719ウィーナ:2008/03/20(木) 19:02:34 ID:3RWVAaPc0
なんか、ハインツと暁は漫才コンビみたいですね…
2章はニナちゃん主ですw
そして、この人の手によって作られた悪魔、暁とは?
その主人、ハインツは悪魔ではなさそうですが…
次くらいに、ニナの秘密を握っているネクロマンサー登場!
お楽しみに((((o´ω`o)ノシ

コメント返し

>FATさん
コメント、ありがとうございます('-`*
そうですねー、まだ謎を解き明かしていないキャラがたくさん…
月舞は2章で一緒にあかすとして、
みょんちゃんもいじらなきゃいけないし、
結構続きそうですアセアセヽ(;´Д`A・゚・。

>之神さん
ふふふ、乗せましたよっw
寝ぼけてたのでなんか文章がおかしいですが…w
見逃してくださいな…w

>◇68hJrjtYさん
流石も糞もないですアセアセヽ(;´Д`A・゚・。
アルビはルチノかメアリーか、どちらをえらぶんでしょうかねーw
ロイは毎朝ニナを守りにきます…w
どこぞのラブラブカップルかしら(#´_ゝ`)

>幕門さん
私はいいとおもいますよ〜^^
今回、私もわらいをとりいれてみた…w
ハインツと暁の漫才、わらえたかしら('-`*


春休み入ったので時間をがんがんかけて描いていきたいと思います^^
ではフリフリ ヾ(・д・。)マタネー♪

720ニートの中の人:2008/03/20(木) 21:48:06 ID:cZ5/OlM60
REDSTONE―直訳すると赤い石。天界から悪魔が盗み出した盗品である。
その宝石は、ルビーより赤い、烈火の如き灼熱の色。
宝石の伝説を人々は追い求め、時には狂信し、冒険する。
手に入れた者には富と栄光が手に入るという話を信じて。

だが、人々は知らない。赤き宝石にも匹敵する神秘の物質が存在することを。


【ヴァンパイア】(ゔぁんぱいあ)名詞-フランデル大陸に存在する不死者の種のひとつ。
犬、狼を操る能力に長ける。階級があり、下級ヴァンパイア、上級ヴァンパイアが存在する
上級ヴァンパイアの中に古代から生息する「古代ヴァンパイア」、ヴァンパイアの王である「ヴァンパイア総帥」が存在する。

【不死者】(ふししゃ)名詞-アンデット。屍。死体に魂が入り込み蘇ったもの、魂が物質化したもの
魂を悪魔に受け渡したものなどの総称。

【古代ヴァンパイア】(こだいゔぁんぱいあ)名詞-ソルティケープB8に古代から生息するヴァンパイア。
他のヴァンパイアとの能力差は歴然であり、長年にわたって護られてきた心臓を求める者は少なくない。

【ヴァンパイア総帥】(ゔぁんぱいあそうすい)名詞-別名不死者王。ヴァンパイアの先祖であり子孫、全てのヴァンパイアを統べる者。
全ての不死者はヴァンパイア総帥を畏怖と敬愛と憐憫の眼差しで視る。
ヴァンパイア総帥の心臓は「REDSTONE」と同等の価値を持つと謂われるが、伝説を知る者は今では少数である。


私は誰なのだろうか。そもそも生命があるのだろうか。私は今どこに居るのか。
私は一体何なのだろうか。私は何者なのだろうか。
見慣れたはずの闇が私を包み込む。奈落が口を開け私を待っている。私は深い穴の底へ落ちていく。
私は今右を向いているのか、左を向いているのか、上なのか下なのか。
私は肢体を持つのだろうか。私は闇なのか。私は粒子なのだろうか。

全てが体を突きぬけ、フラッシュバックし、彼は一筋の閃光を視界に映して、闇に消えた。


-----あとがき------
そういえば辞書の表示はあっているのだろうか。
そんなことを考えましたがどうでもいいです^w^
初投稿になります。題名は「死せる者への鎮魂歌-とある心臓の行方-」
読みは「しせるものへのレクイエム-とあるライフのゆくえ-」です。
ルビふれたら一番いいんですけどね……。
とりあえず用語説明を加えたプロローグを作ったのは初めてだ……
ではまたノ

721ニートの中の人:2008/03/20(木) 21:48:40 ID:cZ5/OlM60
sage忘れすいません…

722幕間・まくもんじゃなくてまくあいです:2008/03/21(金) 02:55:28 ID:of5VjV0.0

むか〜しむかし あるところに おじいさん(戦士)とおばあさん(ランサ)がいました

おじいさんは山へガキをしばk・・・ 芝刈りに

おばあさんは川へおよg・・・ 洗濯に行きました

おじいさんが山を進むと一本の光る太い竹がありました

せっかくなのでおじいさんはきることにしました

おじいさん「薪割り斧の性能を試すときが来た!! オラオラオラオラ…」

竹は見る見るうちに無残な姿へと変わり果てていきました

おじいさん「しまった!やりすぎた!」

おじいさんはギリギリで踏みとどまりました

おじいさん「ん? なんだこれ・・・? 人?」

竹の中には服の切り刻まれた女の子が入っていました

おじいさん「なんとむごい・・・ せめて露出は抑えた服を着させてあげないと・・・」

おんなのこ「あんたが切り刻んだんでしょ!」

竹の中から鋭い突っ込みが入りました

おじいさん「ばれては仕方ない 少し眠ってもらうぞ」

おじいさんは混乱しています

おんなのこ「え?ちょっと、何、やめ、」

ガン!

おんなのこ「ガクッ」

おじいさんはおんなのこをつれてかえることにしました

723幕間・RS昔話:2008/03/21(金) 03:02:33 ID:of5VjV0.0

川でおばあさんがすもぐりをしていると上流からどんぶらこどんぶらこと切り刻まれた竹と大きな桃が流れてきました

おばあさん「あら、ちょうど物干し竿が古くなってたのよね アレはちょうどいい太さだわ」

おばあさんは大きな桃に目もくれません

そのまま竹を回収し水で適当に洗った洗濯物をもって帰ろうとすると桃が言いました

もも?  「―――! ――!」

くぐもっているのでよく聞こえません

おばあさん「やかましいわねえ・・・ ていっ!」

おばあさんはももを思いっきり持ち上げ地面に叩きつけました

もも?  「――!?」

ももは動かなk・・・ 訂正、喋らなくなりました

おばあさん「変な音がするなんて珍しいわね 物売りにでも売って金にしましょう」

おばあさんは桃と竹とぬらしただけの洗濯物を持って帰ることにしました

724幕間・RS昔話:2008/03/21(金) 03:17:16 ID:of5VjV0.0

その夜の事です

おじいさんとおばあさんの家ではある壮絶なケンカがとりおこなわれていました

おじいさん「あの竹は切り刻んであとで回収する予定だったんだ!働いてないわけじゃ無い!」

おばあさん「嘘よ!結局私が持ってきたしあんたは服が破れまくってるガキをひろってきただけでしょ!」

おじいさん「嘘じゃ無い!そのガキが証明してくれる!」

おばあさん「この頭にでっかいたんこぶ作ってあんたに助けられたと思って擦り寄ってるガキのこと?!」

おじいさん「そうだ!黙らせるときにちょっと失敗して足りない子になっちゃったけどきっといつか思い出して復讐くらいしてくるはずだ!」

おばあさん「それまであんたが働いてない事を証明するのを待ってなきゃいけないわけ!?こっちはお金になるものまで仕入れてきたのに!」

おじいさん「この異様にでかくてときどきうごめいてる桃か??! ――こんな物ぉっ!」

スパンッ!とおじいさん必殺空手チョップ(ある農家に教わった)で桃は真っ二つになりました

おばあさん「アッー! せっかくの金づるがあっぁぁぁああ!  ・・・あ?」

おじいさんの秘伝中の秘伝空手チョップ(特許出願中)で真っ二つにわれた桃から男の子が出てきました

しかし、男の子は体の中心から徐々に両側にはがれていきます

おじいさん「しまった!こいつまで真っ二つにしてしまった!しかたない、こうなったら!」

おじいさんは男の子に近づき

おじいさん「ぬぉりゃぁぁぁぁぁあああ!!」

近くにあった紐でグルグル巻きにして男の子の体が二つになるのを防ぎました

725幕間・RS昔話:2008/03/21(金) 03:35:56 ID:of5VjV0.0

その後、ちかくに住んでいたBISに男の子にリザをしてもらい(結局ダメだった)家族会議が行われた

おじいさん「それで、お前ら二人はなんなんだ?」

おばあさん「そうよ、名前と年齢とスリーサイズと性感帯を今すぐ教えなさい。快楽におぼれされてあg(ry」

ガンッ!とおじいさんはおばあさんを殴りました

竹少女(仮)「わらわは月の姫じゃ ゲートグローブでここに来たら竹の中というハマリスポットに入ってしまっただけじゃ。どうやらそこをそこの男に助けてもらったらしいんじゃがよく覚えておらんでのお」

桃少年(仮)「俺はなんだかよくわからんが鬼を退治しに行かないといけない気がする」

おばあさん「あまりよく分からないけど大体分かったわ。とりあえずうちに居候なさい、そして私の言う事に従いなさい、まずはちょっと寝室にきなさギャンッ!」

おじいさんが鍋を投げた

おじいさん「最後の事には同意しかねるが居候に関しては文句は無い 人手が足りないところの手助けにいってくれるか?」

竹桃少年少女「はい」

こうして初々しい初夜はふけていった・・・
---------------------------------------------------------------------
ふう、今日はここまでw
次回は愛と憎しみのサスペンスが繰り広げられます!(嘘)

夜遅いってか朝早いとも言える時間帯に書くのはきついやww

>>ウィーナさん
自分なんかに影響受けて漫才ってw
おもしろかったですよーw

体重関係は自分も聞かれなくないです(ノ∀`)
そこそこ痩せてるとは思うんだけどねw

>>ニートの中の人さん
おお、新連載(?)ですかw
期待してますb

あとsage忘れですが荒れなかったし問題ないと思いますよー^^
自分もあまりメ欄に文字を入れたりしないので忘れそうになりますw

最後に一言
幕間←これは「まくあい」と読みます
「まくもん」だったり「まくかん」だったりはしないのでご注意をw

726ウィーナ:2008/03/21(金) 12:04:48 ID:3RWVAaPc0
前回のプロローグ…
誤字が2つほどありました(ノω・、) ウゥ・・・
まずテイマーにしては眺めの…
というところは、
テイマーにしては長めの
でした。
次に
一見したところではしょどふくよかという印象はないのだが。
というところは
一見したところではさほどふくよかという印象はないのだが。
でした。
ご迷惑おかけしましたー;
あとコメ返しのところで
幕間さんのことを幕門さんとかいていました;
ごめんなさい、これから気をつけます><

727◇68hJrjtY:2008/03/21(金) 18:01:16 ID:XaZPHB520
>ウィーナさん
女装大会以来のお笑いネタ、まだまだ謎にまったく包まれている暁とハインツの登場と同時とは(笑)
若いようで老人のようなハインツはともかく、悪魔でありつつロボットであるという暁…しかもなんかメイドロボットみたいな(萌
恋するロイも性格が変わっちゃって尽くすタイプっぽくなって…!ニナのかたくなな心もいつかほぐされると信じてます|ω・`)
ニナの身体に刻印をしたのは暁なのか、それとももう一人の悪魔なのか。次回予告の通りハインツはそんな感じではなさそうですしね。
みょんちゃん登場も期待しながら続きお待ちしてます!

>ニートの中の人さん
ヴァンパイアと一概に言っても色々と種類や性質が違うものですよね。
RSでは同じ魔物でもレベルや出てくる場所によってだいぶ強さが違いますが、ヴァンパイアは本当に色々な種類が居る気がします。
古代ヴァンパイアはテイマのマスクエで狩ろうとしてあぼんした記憶しかありませんけど(´;ω;`) いまだ未クリアorz
ヴァンパイア総帥とは初めて聞く名前が。心臓がレッドストーンと同価値というのも実は初耳でした!
文章の中で「私」と名乗っている人物がヴァンパイアなのでしょうか…彼がヴァンパイアとなってしまった理由も含め、続き楽しみにしています。

>幕間さん
一変して昔話形式になってる(ノ∀`) これは色んな意味で面白そうです(笑)
桃太郎とかぐや姫が混ざったようなストーリー…なのはいいのですが、この戦士君とランサさんはいつもどおりですね…。
かぐや姫がたんこぶを作ってしまい記憶が曖昧になった、とかチョップで桃太郎ごと両断したという表現は吹きました(笑)
ロリショタなおばあさんことランサにとっては最高の一日になりましたね!(笑)
愛と憎しみのサスペンスですか((( ´・ω・))) とりあえずかぐや姫と桃太郎が無事には済まない気はします。。続きお待ちしています。

728幕間・RS昔話:2008/03/21(金) 20:48:43 ID:of5VjV0.0
おばあさんの執拗な迫り方もきにせず桃少年と竹少女はすくすくと育ちました
  桃少年「ねえおじいさん」
おじいさん「なんじゃ?」
  桃少年「何で俺たちには名前が無いの?」
おじいさん「あ〜・・・。え〜っと・・・」
桃少年は絶句するしかありません。
  桃少年「じゃあ自分で考えるよ 俺は動物とすぐ仲良くなれるし動物を扱う仕事をしてる人をビーストテイマーって呼ぶらしいから俺の名前は…」
おじいさん「梅昆布茶じゃな」
  桃少年「なんでそうなるの??! お願い!テイマって名乗らせて!」
おじいさん「仕方ないのう・・・」

桃少年の名前は梅昆bガンっ!(どこからか鍋が飛んできた)

桃少年の名前はテイマに決まりました
---------------------------------------------------------------------
  竹少女「ねえおばあさん?」
おばあさん「なあに?」
  竹少女「なんで私たちには名前が無いのかしら?」
おばあさん「あら、すっかり忘れてたわ」
おばあさんは正直です
  竹少女「なにかいい名前ないかしら?」
おばあさん「そうねえ・・・竹に入ったんだからそれをもじりたいわねえ・・・」
  竹少女「う〜ん・・・」
おばあさん「そうだ!」
  竹少女「思いついたの!?」
おばあさん「竹と言えばパンダ!パンダといえばランランとカンカン!貴方はこれからランランよ!」
  竹少女「パンダは笹です!」
おばあさん「あらやだ!そうだったかしら!?」
  竹少女「もしかしてバカなの??!」
おばあさん「あ!思いついたわ!」
  竹少女「うむ、話すがよい」
おばあさん「御意。 話し方がお姫様口調だし姫 作者の書きやすさ敵に英語に変えてプリンセス 縮めてプリなんていかがでしょうか」
  竹少女「喋り方が下手だが案自体は悪くない それに決定だ」

竹少女 は プリ にジョブチェンジ!(?)

無事に名前が決まりました

729幕間・RS昔話:2008/03/21(金) 21:07:33 ID:of5VjV0.0
ぎゃぁぁぁああああああああああ!!!!!!!!

まちがえてかなりの量かいたやつをリロードしてけしてしまったぁぁぁぁああああああああああ!!!







orz

730柚子:2008/03/21(金) 22:12:27 ID:aIl1o0QQ0
1.>>324-331 2.>>373-376 3.>>434-438 4.>>449-451 5.>>517-523
6.>>572-578 7.>>599-602 8.>>662-666

『Who am I...?』

ハノブの朝は古都とは違い、とても静かに訪れる。
古都ならそろそろ賑わい始める早朝。ハノブではほとんどの人がまだ眠りについていた。
しかし町間を渡り歩く行商人や個人商店を営業する商人にとって早起きは必須。
何故なら商人達にとって時間は金と同じ。時間が長ければそれだけ稼げるからだ。
その言葉通り、既に町のあらゆる場所で商人達が開店の準備を始めている。
商人で成功させたければ裏での努力が不可欠だ。
そんな事は欠片も知らず、幸せそうに眠る寝顔の並ぶ中、イリーナはただ1人目を覚ました。
イリーナは上半身だけ起こし、現在の時刻を確認する。
うむ、実に予定通り。
イリーナは予定していた時間にぴったりと起きる己の正確さに思わず感心する。
それからしっかりと繋がれているミシェリーの手をそっとほどいた。

階段を降りると既に宿主の娘が働いている姿が見えた。
早朝から深夜まで続く宿屋の仕事は思った以上にハードだ。
「おはようございます。お早いですね」
イリーナがそう声を掛けると、宿屋の娘は営業用の笑顔で答えた。
「ええ、お客さんの中には起床が早い方もいますから」
それが自分達のような人種を指しているのだと気づき、イリーナは思わず苦笑する。
「それは申し訳ない。これからすぐに町を出ようと思うのですが、何か朝食のメニューはありませんか?」
「朝食、ですか。追加料金を支払っていただければお作り致しますが?」
事務的な態度で答える娘に対しイリーナは笑顔で答える。
「それならお願いしたい。できれば手に持てる物が好ましいです」
「かしこまりました。そういった類の物にしますね」
そう言うと、娘は宿の調理場へと消えた。
それからイリーナは1度大きく欠伸をする。
そして再び自室へと戻った。
一定の間隔で立てられる大小の寝息の中、出発の支度を始める。
その物音に気づいたのか、ルイスが身を起こしたのが分かった。
「早いな」
「お前は支度する物なんてほとんどないんだからまだ寝ていていいぞ」
本当のことだったので、ルイスは再び寝息を立て始めた。
イリーナは荷物をまとめ、最後に再度進路を確認した後地図をしまう。
そしてそろそろ朝食が出来上がる頃だと思ったので受け取りに再び部屋を出た。

731柚子:2008/03/21(金) 22:13:28 ID:aIl1o0QQ0
「おい、ミシェリー、ルイス起きろ」
支度が終わったところで2人を起こす。
ゆさゆさと揺さぶると2人共々唸りながら目を覚ました。
「もう朝……?」
寝足りない様子のミシェリーが目をごしごしと擦りながら呟く。
「言っただろ、早いって」
半ば叩き起こされたミシェリーが不服そうに膨れる。
しかし、それでも黙々と支度を始めていた。
「終わったぞ」
服を着替え、大剣を背負っただけのルイスが早く行くぞと言わんばかりの表情で言うのでイリーナは思わず呆れる。
「お前は先に荷物持って入口の前にいろ。こっちもすぐに向かう」
「うむ」
それだけ頷くと、ルイスは大量の荷物を担いで扉の外へ消えた。
ルイスが出ていってから間もなくミシェリーが着替え始める。
それを見てイリーナはにやにやと頬が吊り上がるのを抑えられなかった。
「な、何?」
怪訝そうにミシェリーがイリーナに聞く。
「いや、ミシェリーも女の子だなって」
「それ、前にも言われた。もしかしてイリーナって私のこと子ども扱いしてる?」
「うん」
即答されてミシェリーは怒りのあまり勢い良く立ち上がる。
しかし、その行動そのものが子どもだと証明しているような物なのでそのまま大人しく腰を下ろした。
それを判断できる程度には頭が回るようだ。
「うふ。ミシェリーは将来きっと男共を惑わす素敵な女性になるよ」
「ほ、本当!」
回答の代わりにがしがしと頭を撫でる。
ミシェリーは猫のようにごろごろとじゃれた。
それから支度を済ませ、イリーナたちもルイスの待つ入口へ向かう。
下の階へ降りると、ルイスと宿主とその娘が雑談しているのが見えた。
そうは言っても宿主が一方的に話しているだけなのだが。
イリーナたちが来たのを確認すると、ルイスは助かったとばかりに近付いてきた。
その行動で宿主がイリーナたちに気づく。
「あら。夜はよく眠れたかい?」
「ええ、お陰さまで」
イリーナが答えると、宿主は豪快に笑った。
「そろそろ出るので代金を」
そう言ってイリーナは銅貨が入った袋を宿主に差し出す。
「やけに早い出発だね」
「急いでいるので。では、そろそろ」
「気を付けるんだよ。ハノブに寄ることがあればいつでも歓迎さ」
2人の女に見送られ、イリーナたちは宿を出た。

732柚子:2008/03/21(金) 22:14:25 ID:aIl1o0QQ0
この時期、朝はとても冷える。
イリーナは得意な方だが、ミシェリーはどうやら寒いのは苦手なようだ。
「ううぅ。寒い」
「朝は冷えるからな。そうだ、ミシェリーは雪を見たことがあるか?」
「雪?」
「そうだ。冬の時期、北の大地に行くと見れる。とても綺麗だぞ」
ミシェリーが想像を膨らませ、顔を輝かせる。
「お母さんが見つかったら、改めて連れていってやるよ」
「やったぁ! 約束だよ?」
ミシェリーがイリーナの腕に抱きつく。
そうしてじゃれ合っていると、不意に声を掛けられた。
「そこのお嬢ちゃん2人に格好良いお兄さん。ちょっと寄っていかないかい?」
そう声を掛けたのはイリーナ達のすぐ傍に居た男性だった。
見たところ商人のようだが、付近に商店らしき建物がなく見るからに胡散臭い。
特別興味も惹かれなかったので、イリーナは無視して通り越した。
「おいおい無視はないだろ」
商人が止めようとするが、イリーナは構わず進む。
「ねぇイリーナ。あのおじさん困ってるよ?」
それを見かねたミシェリーがイリーナに声を掛ける。
イリーナは聞こえないふりをしようとするが、それを聞いた商人がここぞとばかりに近寄ってきた。
「俺は長年ここでエンチャントってのをやってんだ。どうだい、お嬢ちゃんも1回やってみるかい?」
恐らくイリーナ単体では釣れないと判断した商人の作戦だろう。
何にでも興味を持ちそうな年頃のミシェリーを使ってイリーナを釣ろうとしたのだ。
商人という生き物は、きっかけさえ作ってしまえば後は言葉巧みに事を運んでしまう。
イリーナは諦め、やっと商人に反応を示した。
「エンチャント師か。商店がない訳だ」
「はっは。俺の仕事はこれさえあれば可能だからな」
商人が得意気に1枚の紙切れをイリーナに突きつける。
その紙の表紙には数行にも及ぶ難解な文字か書かれていた。
「エンチャント文書ってんだ。試しにエンチャントしてやるから何か出しな」
「有料で、だろ?」
イリーナが語尾を強め、詰め寄るので商人は思わず後退してしまう。
「以前聞いたことがある。成功すれば特殊な能力が付加されるが、失敗すればその媒体は使い物にならなくなるとな」
「ね、姉ちゃん、よく知ってるな……」
言葉を詰まらせる商人の隙を見逃さず、イリーナが続ける。
「お前は先程そのリスクを言わずにやらせようとした。それは商法とやらに引っ掛からないのか?」
思わぬイリーナの反撃に、商人はぐうの音も出ない様子だ。
イリーナは勝ち誇ったように微笑を浮かべる。
しかし、ここで引き下がっていては商人ではない。
「悪かった。ではその詫びに半額でサービスしよう」
「ほう。それで、いくらだ?」
イリーナは完全に勝ち気になっている様子だ。
しかし、返ってきた言葉はそのイリーナを一瞬にして黙らせてしまった。
「通常では1万だがその半額、5000ゴールドだ」
予想外の値段に黙り込むイリーナ。
しかし、今になって高いから出したくないとは言えない。
それに桁が1つ減るとつい手を出したくなるのが人間の心理。
この商人、分かっている。
金の価値をよく知らないミシェリーがイリーナに囁いた。
「ねえ、これって高いの?」
「いや、安い方なのだろう。だが……」
始めの言葉を聞いたミシェリーが、後に続く言葉も待たずに口を開いた。
「おじさん、1回お願い!」
「へい。じゃあ媒体になる物を出しな」
完全に商人のペースに持っていかれ、今更遅いと悟ったイリーナは溜め息をついた。
しかし、大事な武具を出す訳にはいかない。
出すのならいつでも替えがきく物でなくては。
「ミシェリー。お前の持っている物で好きな物を出していいぞ」
ミシェリーの顔が輝き、体中をぺたぺたと探るが、中々見つからず困ってしまう。
「無いようなら止めて町を出るが」
「待って、今出すから!」
とっさに伸ばしたミシェリーの手は己の髪を束ねる純白のリボンを掴んだ。
それをほどくと黒髪がふわりと肩にかかる。
「これでお願いします!」
そう言われた商人は困ったような表情を浮かべる。
「ただのリボンかい? 魔力を持たない媒体は付加される能力も低いよ」
商人は確認を取るようにイリーナを見る。イリーナはそれに応じた。
「構わない。やってくれ」
「では、まずはこのエンチャント文書を買ってくれ」
そう言い、商人が1枚の用紙を差し出す。
イリーナは昨晩賭けで儲けた金の半分近くを一瞬で失うこととなった。

733柚子:2008/03/21(金) 22:15:26 ID:aIl1o0QQ0
カーペットが朝の冷たい空気を切りながら駆け抜ける。
イリーナたちはハノブを出て本格的にアウグスタへ向かう途中だった。
イリーナは背後からの、機嫌の良さそうな鼻唄の聞こえる方へ声をかける。
「機嫌が良いな、ミシェリー」
「えへへ、そう?」
ミシェリーはにこにこ顔で言葉を返す。
その上機嫌の理由は他でもないエンチャントの件だ。
イリーナはエンチャント文書を買った後、商人にエンチャントを頼んだ。
結果は成功。ミシェリーのリボンには微弱ながら魔力が宿った。
だが、ミシェリーの上機嫌の理由はそれだけではない。
付加された能力がそこまで上機嫌にしているのだ。
付いた能力は中でも珍しく、全魔法抵抗という物だった。
それをイリーナから聞いたミシェリーは飛び跳ねるほどに上機嫌になった。
実のところイリーナもその能力は欲しかったが、あまりにもミシェリーが嬉しそうなので取り上げる気にはなれなかった。
「だけど、何でそんなに嬉しそうなんだ?」
イリーナはさりげなく聞いてみた。ミシェリーにとってそういった類の物は必要ない筈なのだ。
「だって、これでこのリボンはどこにも売っていない私だけのリボンでしょ? そう考えたら嬉しくって」
「うふ。確かにただのリボンにエンチャントしようって輩はいないだろうな」
イリーナは笑いながらついでにミシェリーの頭を撫でてやる。
すると僅かにリボンに触れた手の先が弾かれた気がした。
なるほど、高位の魔導師であるイリーナの手には常に魔術が発動しているのと同じか。
そう1人納得したイリーナはカーペットの推進力を上昇させ、アウグスタへと奔走した。


日が傾き始め、昼から夜へ変わり始める頃。
イリーナは徐々にカーペットの推進力を減少させ、やがてそれを停止させた。
「よし、今夜はここら辺で一晩過ごすぞ」
イリーナが止めた場所は、本道から僅かに外れた川の畔だった。
その本道をずっと辿るとやがてアウグスタに着く。
「え、こんな場所で? それにまだ明るいよ」
納得いかない様子でミシェリーが不平を漏らす。
無人のカーペットを巻きながら、イリーナは指を立てて説明してやった。
「あのなミシェリー、夜の道ってのは想像以上に危険なんだ。襲われてからじゃ遅い。
魔物達は目が効くがこっちは効かないしな。急ぎたいのは分かるけど、いろいろとリスクが多すぎる」
「ご、ごめんなさい……」
己の無知な発言に、文字通りミシェリーがしょんぼりと頭を垂れる。
「あ、いや、そんな意味で言ったんじゃないんだ」
イリーナが慌てて訂正する。
そして話題を変えようと、ミシェリーに笑いかけた。
「それじゃ、そろそろ食材集めに行くぞ。付いてこい」

「やっほー!」
その声に続いてバシャリと水が弾ける音が響く。
「ミシェリー、あんまりはしゃいで流されるなよ」
「はーい」
それを聞いてか聞かずか、ミシェリーはスイスイと泳いでみせる。
そして水から顔を出し、はち切れんばかりに手を振った。
「イリーナもおいでよー!」
「馬鹿、できるかそんなこと。私の服の替えは少ないんだ。それに遊びに来たんじゃないんだからな」
2人は魚を捕まえる為に、すぐ脇に流れる川に来ていた。
それを見てミシェリーが泳ぎたいと言うので、イリーナが許可したのだ。
衣服を脱ぎ、あまり恥ずかしげもなく下着だけになれるのは子供の専売特許とも言えるだろう。
「イリーナ。雑木の準備ができた」
焚き火の為の木を集めに行っていたルイスが帰ってきた。
イリーナは片手を上げ反応を示す。
「なら次は全員分の魚を頼む」
「自分は座って観賞か。良い身分だな」
ルイスが皮肉を言いながら、川の水際へ向かう。
「よく見ろ、この槍の先端を」
イリーナが銀の短槍の先を指す。
そこには細長い糸が真っ直ぐ川へと垂らされていた。
しかし、一向にその糸が引かれる気配はない。
「ふん、待っていても始まらん。狩りとは己から出向くものだ」
そう言って、ルイスは川に飛込んだ。
高く上がった水しぶきが波となってミシェリーに降りかかる。
そのままルイスは川の深い所へ潜っていく。
イリーナはこのまま一生浮いてこなければいいのに、と思った。

734柚子:2008/03/21(金) 22:17:39 ID:aIl1o0QQ0
準備ができた頃には、太陽は完全に沈み、代りに冴え冴えとした月が3人を照らしていた。
イリーナの魔術で焚いた火を3人で囲む。
近くにはルイスとミシェリーの衣服が干されていた。
「ねえ、まだ駄目?」
ミシェリーが火あぶりにされている串付きの魚を眺めながら言う。
その魚はルイスが捕まえた、というより狩猟した、という表現が近いだろう。
どうやって捕まえたかは知りたくもないが、ルイスが集めてくれた物だ。
「まだだ。火を十分通さないと菌が死なないからな」
ミシェリーが膨れ、暇を持て余し土をいじりだす。
「ハノブで購入したパンと野菜ならあるぞ」
「温かい物が食べたいの」
ミシェリーが今度は土をなぞり、絵を描いて暇を紛らせる。
イリーナはそれを見て、人間は空腹になると不機嫌になるとは本当なのだと思った。
しばらく時間が経ち、焼き魚から香ばしい匂いが漂う。
それを嗅ぐだけで食欲を誘いそうだ。
「わぁ、いい匂い!」
待ち切れない様子のミシェリーが体ごと乗り出した。
「慌てるなって。ほら、骨と熱さに注意しろよ」
イリーナが串を持ち、ミシェリーに渡してやる。
早速豪快にかぶりついたミシェリーは、案の定熱さに悶えた。
はふはふと口の中で冷まし、ゆっくりと飲み込む。
「んん! 熱いけど美味しい!」
口の周りを汚しながらミシェリーが笑う。
「それは良かった」
イリーナも自分の分の魚を取る。
うむ、確かに脂が乗って美味そうだ。
横目でルイスを見ると、1人で2本も3本も持ち、黙々と食に興じていた。
「そういえば、イリーナ達の魔法ってどういう仕組みになっているの?」
ようやく落ち着いたミシェリーが意外な質問をぶつけてくる。
イリーナはしばらく考え込んでから口を開いた。
「そうだな、簡単に説明するとまず各魔法元素の中にも属性があり、それを化学方程式のように組み合わせた物がいわゆる魔術だ。
 その方程式が難しければ難しいほど難易度と呼ばれる物が上がる。
 だが、勘違いしてはいけないのは難易度が高いからといって強いとは限らない。確かに強力だが使い勝手も悪いんだ」
そこで1度イリーナは言葉を切った。
ミシェリーは必死に理解しようとしているが、どうやら無理なようだ。
構わずイリーナは続ける。
「そこで大切なのはその魔術の理解力だ。いくら魔力が高くたって理解していなければ意味がない。
 魔力は威力を上げ、理解力は魔術を安定させる。だが、例外もいる。
 圧倒的な魔力で魔術を形成する魔物や亜人、巨人なんかがそうだ」
もちろんその中にはミシェリーの人狼も含まれるが、イリーナは故意に除外した。
「その理解力が高ければ当然魔術の質も上がる。それがいわゆるスキルレベルってやつだ。
 50が限界値と言われているが、それを優に超す者も世界にはいるだろう。
また、難易度が上がれば理解も難解になり、スキルレベルは上がりにくい。
私だって使おうと思えば最高の難易度5も使えるが、まだまだ実用的じゃない。
 スキルレベル同様難易度5を超す魔術を扱う者がいると聞くが、目にしたことはない。それは恐らく……」
そこまで言いかけ、イリーナは止めた。
ミシェリーは既に理解しようとする仕草さえ放棄していたからだ。
「イリーナの説明、全然分かんない」
「貴様の説明はいつもそうだ。無駄が多い」
焼き魚をくわえるルイスにまで指摘され、イリーナは溜め息を吐いた。
これでも簡単にしたつもりだったのだ。
これが分かりやすいと言う者がいれば、その者とは良い酒が飲めるだろう。
良き理解者はいないものかとイリーナは思った。

735柚子:2008/03/21(金) 22:19:02 ID:aIl1o0QQ0
「それじゃあ、もっと簡単に言うとだな」
イリーナは指を立て、再び説明を開始した。
「まずは魔術の出し方だが、まずは杖に魔力を籠め、そして魔術方程式である魔法陣を地面に描く」
実際に描いて見せ、イリーナは簡易の魔術を発動させた。
ミシェリーから歓声が漏れる。
「ここまでは分かるな? つまり、難易度が上がるとこの魔法陣も難解になるんだ。
だが、いちいちこうやっていては話にならない。そこで作られたのがこれだ」
イリーナが槍を立て、指を差す。
その場所には何種類かの球体の魔石が填め込められていた。
「さっきの文字を地面ではなくこれに描く。魔力でな。そうすることで魔術の発動は何倍にも早くなるんだ」
説明を聞いていたミシェリーがなるほど、と手を叩く。
「これなら私にも分かるかも!」
イリーナは満足したように頷いた。
しかし、暫しの後ミシェリーが疑問を口にする。
「イリーナはたくさんの魔術を使うけどルイスさんはあまり使わないよね。それは何で?」
そのあまりに純粋な疑問に思わずイリーナは吹き出した。
ルイスの方から本気の殺気を感じたので説明してやる。
「私は魔導師、ルイスは戦士だしな。それに使える技が少ないのは必ずしも悪いことじゃない。
 少なければそれだけ各技を深く理解できるからな。まあルイスは単に頭が悪いだけだけど」
ミシェリーは再びなるほど、と手を叩いた。
「貴様は頭が回るだけで体が動かんがな」
ルイスがすかさず嫌味で反撃した。
「ルイスはただ剣を振っていればいいからな。だから魔術を2重で発動できないんだよ」
イリーナが苦もなく返すと、急に剣呑な雰囲気になってきたのでミシェリーは慌てて割って入った。
「イリーナ説明ありがとう! 明日も早いしそろそろ寝ようよ」
「そうだな」
イリーナが立ち上がり、焚き火を消す。
途端に暗くなり、月明かりだけが頼りとなる。
それから予め立てておいたテントに入ると、風避けが効いているせいかほのかに暖かかった。
イリーナとミシェリーは並ぶように寝そべる。
ミシェリーが甘えるようにくっついてきたので、イリーナは優しく撫でてやる。
「うふ、イリーナお母さんみたい」
「お姉さんって言ってくれた方が嬉しいかな」
そう言うとミシェリーがくすりと笑う。
半分は本気で言ったので、少し心外だった。
「アウグスタまではあとどれくらいなの?」
「そうだな……あと2、3日ってところか。だがあくまでカーペットでの移動を考慮したもので、馬車を捕まえれば――」
気付けば、ミシェリーは既に寝息を立てていた。
「まったく」
イリーナは溜め息を吐き、ミシェリーの頬を撫でる。
「ん……?」
イリーナはミシェリーの頬が湿っていることに気付いた。
「泣いて、いるのか?」
それはミシェリーの瞳から流れ出た涙だった。
何か怖い夢でも見ているのだろうか。
しばらく見ていると、ミシェリーの唇が僅かに動いた。
「お母さん……」
確かにそう呟いた。
それを聞き、イリーナは少し寂しい気持ちになった気がした。
どれだけ近くても、本物の母親には敵わない。
イリーナはもう1度ミシェリーを強く抱き締めた。
実際アウグスタに行っても母親はいないだろう。
しかし騙していてでも治療を受けさせなければいけない。
イリーナは一刻でも早くアウグスタに到着することを強く誓った。

736柚子:2008/03/21(金) 23:07:52 ID:aIl1o0QQ0
こんな女の子は嫌だなあ、とか。こんな男とは友達になりたくないなあ、とか。
そんな男女が主人公やってます。大丈夫なんでしょうか。
こんばんは、少し目を離していたらまたすごい伸びですねえ。このスレ内に終わらせられるよう努力します。
途中で長い台詞がありますが、読み飛ばしても結構です。作者の妄想です。

>68hさん
感想ありがとうございます。
すいません、アウグスタ着くまでしばらく掛かりそうです……。
こういったのんびり日の方が筆も早いですしね!

>幕間さん
おお、早速自分の意見を取り入れてくれてありがとうございます。
執筆の早さもですが、こうもぽんぽんネタが思いつくところがすごいっすね。
たくさんの個性的なキャラが出てきましたが、個人的にはサマテマの組み合わせが好きですね。
男勝りの女の子と女っぽい男の子という組み合わせがなんとも。
改善点についてですが。既にたくさんの職人さんが言っているので自分が言うこともないみたいですねえ。
?や!の後の文字には1つ空欄を入れるとか、〜〜た。を連続で使わないとか(これは自分も怪しい)などの基本的なことができてれば良いと思いますよー
それと……文章消えドンマイです!

>ニートの中の人さん
初めまして、柚子と申します。
ヴァンパイアの話でしょうか、それにしても総帥の心臓がなんという高価!
古代ヴァンパイアには嫌な思い出しかありませんね……。何度ペットが殺されたことか。
ヴァンプネタは自分も考えたことがあるのでとても興味が惹かれます。
ヴァンパイアが主人公の話かな? ワクワクしながら続きを待っています。

>FATさん
わざわざ感想をありがとうございます。
手品師=マジシャンの部分は自分でもなるほど、と思っていたり。
そこまで考えて台詞書いていないので、FATさんの想像力に脱帽です!
名言や深い台詞にあこがれます。いつか吐かせてみたいものです。
さて、チタンまであと少しといったところでしょうか。
変態コンビはやられっぱなしですが、何か重要な鍵を握るのかな……。
下着に惚れるとは、持ち主のデルタも困ったものですね。
いや、仮に普通に惚れられても相手が変態じゃ困るのでしょうが。
レンダルデルタのコンビも強いですが、マリス強すぎる!
でもこの強さもネクロが関わっていると考えると切ない気持ちになりますね……。

>之神さん
やっと追いつくことができました!
と思えば、何だかすごい展開に。果たして誰が取るのでしょうか?
どの人物もとても個性的で、1番は選べませんねえ〜
女性陣ではミカも良いですけどやっぱりシルヴィーが……。
ああいう子は大好きです。というかサマナーとかテイマーとかいうだけで大好きです。
男性陣の方も主人公の徹は一般人の視点として感情移入しやすいですしね。
でも最近影が薄くなり気味?
でもやっぱりライト好きです。明るい中にどこか暗いものを持っているキャラは良いです。
絵の方も描いているようで。描けるのが羨ましい……。
絵板は現在とても投稿できる状態じゃないでしょうし、どうしたものか。


他の職人さんの感想はまた次の機会にお願いします!

737 ◆21RFz91GTE:2008/03/22(土) 02:49:43 ID:ZAmwz8o20
////********************************************************************************////
  ■◆21RFz91GTE:まとめサイト(だるま落し禁止)
  ■ttp://bokunatu.fc2web.com/trianglelife/sotn/main.html
  ■Act.1 アレン・ケイレンバック >>44-45
  ■Act.2 少女 3 >>65-67
  ■Act.3 少女 4 >>87-90
  ■Act.4 レスキュー? >>173-174
  ■Act.5 蒼の刻印-SevenDaysWar- >>206-208
  ■Act.6 緑の刻印-SevenDaysWar- >>220-221
  ■Act.7 白の刻印-SevenDaysWar- >>222-223
  ■Act.8 紅の刻印-SevenDaysWar- >>272-273
  ■Act.9 封印された九つの刻印-SevenDaysWar- >>426-427
  ■Act.10 封印された九つの刻印2-SevenDaysWar- >>581-582
  ■Act.11 科学と錬金術とその未来と -SevenDaysWar- >>710-711
////********************************************************************************////

738 ◆21RFz91GTE:2008/03/22(土) 02:50:06 ID:ZAmwz8o20
Act.12 EDELWEISS -SevenDaysWar-



 「…それって、どう言う意味ですか?」
タバコを再び咥えたアレンはテーブルに置かれた書物の中から一冊の本を取り出した。古びていて少し汚い本だった。
「アデルが持っていた古文書の一つだ、そこに書かれている手法で俺は千年前のロスト・テクノロジーを作り出す。それはブルンネンシュティング全土を破壊するかも知れない代物か…はたまた小さな家を吹き飛ばす程度の破壊力か。俺には分からない。」
「答えになっていませんよ、さっきの言葉はどう言う意味なんですか?」
「…。」
先に述べた言葉の意味を理解出来ず、ただ心に刻み込んだミトの目は虚ろなアレンの姿を捉えていた。音をたてて燃えるタバコの先端には白い灰が一センチほど出来ていて、通気口から流れてくる風に煽られテーブルの上に落ちた。
「時が来れば分かるさ…ほれ。」
タバコを右手で口から離して灰皿にこすり付けた。次にテーブルの上に置かれていた試作品と思われる小さな置物をミトに放り投げる。
「…これは?」
「試作品だが、それなりの破壊力はあるだろう。使い時は任せるよ。円状の上に小さなボタンがあるだろ?それを強く押せば爆発する。」
「はぁ…。」
爆弾をじろじろと眺めた後それを腰に備え付けているポーチにしまった。
「いいかミト、今回の戦で古都に被害を加えない為に俺は全力でこの町を守る。ほぼ全部の魔力を使う事になるだろう、だから俺の支援はあまり宛にするな。」
「…分かりました。」
少ししょんぼりとしたミトを見て一つため息をつく、右手で頭を掻いてミトの側に来てから左手でミトの頭の上に手を置いた。
「お前の背負ってるもん…確かに重いよな。でも…それはミルが作り出した因果律だ、それを俺達は受け入れ、背負って行く。どれだけ重いか分かるよ…何万って人の命だ。きっと軽くない、軽いはずは無い。」
「…。」
「だが、それらはお前だけが背負っているもんじゃない。同じ重さを俺やクラウス、アデルにミト…他の皆も背負ってるもんだ。」

739 ◆21RFz91GTE:2008/03/22(土) 02:50:31 ID:ZAmwz8o20
「…。」
「約束するよ、この戦いが終わった後の世界で―――。」
上辺だけの笑顔に気が付いていたと言えば嘘になる、時折見せる辛そうな表情を見てからだろうか。これほどまで押し潰されそうになるミトの表情を見たのは久しい。人の思い、信念、命、様々な考察がどす黒い球体のように円を描いて周囲の物を引き寄せて自らを巨大な物質に染める。まるでブラックホールのような力を働かせているミトの内なる思い。
「英雄なんて要らない、必要とされない世界を約束する。だから…泣くんじゃない。」
「…アレンさん。」
「これ以上お前に悲しい思いをさせない、アイツが望んだように…アイツの因果律に縛られた咎を刻むのは俺だけで十分だ。」
通気口から差し込む月明かりがミトの顔を照らしていた。今までの空っぽの笑顔から昔の無邪気だった頃の表情に戻り、そして涙を浮かべた。
「アレンさん…アレンさん…アレンさん!」
「辛かったな…ユランの事やディー…イリア。アイツらの事も一緒に背負って今までよく耐えてきたな。」
その場で泣き崩れたミトにコートを一つ背中にあてがった。今まで見せた事の無い笑顔でミトを見つめ。そして同時に心の中で泣いた。
「今まで…このギルドを支えてくれて、本当にありがとう…。」



 人は決して一人で生きているのでは無い。
必ず誰かと支え合って今を生きて、二人の共同作業で子孫を残す。未来永劫続けられてきた儀式とも言える人生の終着点。何時からか見えなくなっていた争いから生まれる咎。
 それをまだ成人して居ない一人の少女が背負うにはあまりにも重く、あまりにも辛い十字架(クロス)。人はそれを振興と称え、崇め祭ってきた。そしてこの日、十字架から開放された少女に笑顔が戻ると同時に、幻想に思いを馳せて飛ぶ一人の青年に伸し掛かる咎が生まれた。


 ブルン暦4983年12月28日―
古都ブルネンシュティング統括ギルド―NorthWind―の政権交代。
三代目ギルドマスター、ミト・メーベ公爵はその任務を終え元帥へと移行すると同時にアレン・ケイレンバックへとギルドの全政権を移す、四代目ギルドマスター、アレン・ケイレンバック就任。
 これを期にアレン・ケイレンバックは英雄の称号から三叡人(さんえいじん)の称号を得る。尚アデル・ロードは咎人の称号を剥奪され、嘗ての王室直轄機関「レッドアイ」の称号を得る。
 クラウス・アルフォードはアレン・ケイレンバックより英雄の称号を受け継ぎ、今までの活躍を評価されギルド最高幹部会のメンバーへと昇格。貿易都市シュトラセト直轄ギルド「ハイカルラルグ」初代ギルドマスター、ガズル・E・バーズンはこの日緑園地をシュトラセトからブルンネンシュティングへと移転する文章をアレン・ケイレンバックと交わし、同盟ではなくNorthWind直属の傘下ギルドとして籍を入れた。
 ここに二つのギルドは統合し、名を「エーデルワイス」と改めた。



Act.12 EDELWEISS -SevenDaysWar-
To be continues...

740 ◆21RFz91GTE:2008/03/22(土) 03:00:43 ID:ZAmwz8o20
季節の変わり目、ばっちり風邪引きましたヾ(´・ω・`)ノ
こんばんは、21Rです。
最近仕事が忙しくて顔出せずに申し訳無いです|li:l|;|orz|l|i:|l|

と言うわけでコメ返し

>>714 :◇68hJrjtY様
そこはアレン君ですから(ぉ
もう少しで完結ですねぇ〜、最初の話を投下してから随分と経ちました。
思えば最初は「雰囲気」の変換で話が埋まってた時期が懐かしく思えます。
本当に後少しで俺の話も完結ですね、他の職人様達と違いかなりの長編になりましたが
今も書き続けてる職人様達へ、この場をお借りして今まで応援してくれた事。コメントしてくれた事
深く感謝いたします。本当にありがとう御座います。
そして永遠のライバル(笑)FAT様、これからも執筆活動頑張ってくださいね。
何か最終回っぽい内容ですがまだ続くのでもう暫く御付き合い下さい(笑

>>全職人様へ
今度何かお祭りじゃ無いですがイベントやりませんか?
もちろんこのスレ内でも良いですし、RSの中で集まるというのも良いかも知れません。
一度皆様と一緒にチャットしたいと常々考えております、もし可能であればチャットしたいですね。

741ウィーナ:2008/03/22(土) 03:49:45 ID:3RWVAaPc0
コメント等々返し。

>◇68hJrjtY様
暁は当初、
「あなたの肩にあつぅい刻印を強くおしつけてあげる♪」
な感じのしゃべり方にしようとしたのですが
それだとフェレス時代のルチノとかぶったので
ハインツに尽くすタイプにしました。
ちなみにハインツは・・・暁の言っているとおりハゲです。
ええ。
小説には入らなかったのでここに少しうp・・

暁「ご主人様」
ハインツ「なにをたくらんでおる?」
暁「なっ…!邪推は髪の寿命を縮めますよっ!?」
ハインツ「き、貴様何を言う。これ以上生え際が後退することは、ない。
「…はずじゃ。」
暁「それはないですわ。」
暁「何故なら、ご主人様の頭髪はウィッグです。キチンとこういいなおしますわ。」

暁「つるっパゲと。」
洋館の外で特大の雷が轟いた。
稲光を額に反射させ、電球のように光を放つハインツ。
彼は極めてにこやかな笑みをうかべ、侍女の肩に片手を置いた。
ハインツ「今日からお前の名前はポンコツな。」
暁「そ、そんなぁ…」

あ、そういえば刻印を持っているのは暁ですが
操っているのはハインツです。

>◆21RFz91GTEさん
イベント、いいですねー
まだ新入りの私がそんなのでていいかわかりませんが;
でも、皆さんお忙しくないでしょうか?時間が合う日があるかな・・?
時間があえば、私はぜひ参加したいです^^

ちなみに自分は黄鯖ですー

742◇68hJrjtY:2008/03/22(土) 13:11:57 ID:tG41QpL60
>幕間さん
テイマとプリに名前が決定…、かぐや姫の方はプリですぐ分かりましたが、桃太郎がテイマだったとは(ノ∀`)
でも確かにペット(?)の犬猿雉連れて鬼退治、ですもんね。改めてテイマって言われたら納得できる気もします(笑)
でも梅昆布茶って名前も個人的には…!さりげに日本茶の数々が大好きな68hさんでした(何
精神的に劣悪な環境(?)にもめげずに、プリちゃんとテイマ君が純粋に育ってくれてて何よりです(苦笑)
鬼退治になるのか、はたまた月の国から使者が来るのか。続き楽しみにしています。
---
書いた文をリロードして消しちゃったんですか( ´・ω・)
やっぱり直接書いてると色々なハプニングで消えてしまいますよね…メモ帳保存最強ですよ!

>柚子さん
野宿というひとつの休息のおかげでイリーナとルイス、そしてミシェリーへの感情移入がまた深まりました(*´д`*)
こんな男女が…なんてとんでもない!イリーナもルイスも魅力あふれるキャラじゃないですかー。
イリーナが普段ルイスたちに見せる男勝りっぷりと時折ミシェリーに見せるお姉さんみたいな優しい女性らしさは憧れますし
そしてルイスは普段のぶっきらぼうで粗野な姿とたまーに見せてくれる優しい言葉がもうなんというかダメです!(謎
二つのギャップが全然不自然ではなくて上手くひとりのキャラを立てるのに役立てている、凄いなァ…。
今回は柚子さんオリジナルな魔法(スキル)原理と以前の蜘蛛&クリパ戦で見た魔石の説明がありましたが
スキルレベルと難易度という別々の要素が実は密接に関わっていたというのも面白い設定だと思いました。
その説明じゅうぶん分かりやすかったですよ、イリーナさんー!(笑) 続き楽しみにしています。

>21Rさん
(´;ω;`)ウッ…
なんだかこの「物語」と一言でくくれないほどの歴史が本当に終わってしまいそうな気がして、放心しそうです…。
思えば本当に長期連載でしたよね。それまでの登場人物が一人二人とまた登場してきてまた戦いがあって…読んでる方も悲喜交々でした。
って、まだ終わりじゃないです!アレン、ミト、クラウス、アデルの四人がそれぞれの称号を手にし、
ガズルのハイカルラルグが傘下となって結成されたエーデルワイス。花言葉は「尊い思い出」ですか…ってなに調べてるんだろう私は!(壊
でも花言葉はともかく、最後の戦いに向けて全てが動き出しているのが分かります。
十字架から一人が解放されるたびに再び背負わされた者が紡いできた物語。最後まで読ませてもらいます。
---
コメントありがとう、なんてもったいないお言葉!
21Rさん初めたくさんの書き手さんたちにいただいた笑いや感動や涙や嬉しさはこちらこそ感謝したりないです。
特に常連であり長老である21RさんやFATさんたちからすれば私はまだまだ新参者の若輩者です( ´・ω・)
そしてRS内orスレ内イベントは大賛成!RS内でチャットっていうのも楽しそうですね〜。

>ウィーナさん
暁とハインツって主従関係っぽいのになぜか漫才コンビに見えてしまいます(笑)
つるっパゲで甘い顔の青年…とっても想像しづらいですが、ここは持ち前の妄想力全開で妄想させてもらいます(何
刻印を押すのが暁で操るのがハインツということはハインツも悪魔ではなくても似たような力を持っているのでしょうか。
この辺はでも本編でだんだん明らかになりそうですし、想像するだけにしておきます(笑)
いつもいつも書き手さんの話を急かしたり予測しようとしたりしてウザくてすいませんorz

743ニートの中の人:2008/03/22(土) 15:07:08 ID:cZ5/OlM60
第一話-ボーイ・ミーツ・ガール-

 青年はふらりと酒場にやってきた。彼女は彼に何か異質なものを感じた。
 歩き方・雰囲気・行動、他のもの全てを見ても何か高貴なものを感じたのだ。
 だがそれでいてどこか不気味で、血を吟味するイメージを想像させた。
 喩えていうのなら、聖職者と悪魔、両方を足したようなものなのである。
 「マスター、水をくれないか」
 ふわりと椅子に体を乗せた青年は言った。その声は落ち着いたバスで、どこか人々を魅了する響きがあった。
 彼女は一口酒を飲み―大好きなアウグスタ製のワインではないが―青年をじっと見た。
 端整な顔立ち。すっきりとした鼻。程よい赤みを帯びた唇。猫を思わせる鋭い双眸。
 あまりにも完璧なその顔立ちは、逆に不気味なものであった。
 彼女の値踏みするような視線を感じたのか、青年は彼女をちらりと見て、微笑した。
 陽光を思わせる暖かい微笑み。彼女ははっとする自分に気付いた。
 「何か……用でしょうか?」
 青年から悪意や威嚇の色は無かった。ただ自分を見ている相手に対する純粋なコミュニケーション。
 彼女は片隅に警戒心を置きながら、柔らかに相手と対話することにした。
 「ええ、ちょっと。少し名前を聞かせてもらえる?」
 彼女の会話術は見事なものであった――が、青年は少し困った顔をし、俯いた。
 「それが……分からないんです」
 青年の声から嘘は感じられない。
 「何も……覚えてないんです。自分が誰で、どこから来たのかも」
 青年は俯いたまま声を震わせた。自分が誰かという恐怖は、記憶喪失者誰もが持つものである。
 彼女は後悔し、自分を叱咤した。自分の会話術が相手へマイナスだったという驚きも隠せなかったが。
 「ごめんなさい……そんなつもりじゃなかったの……」
 心の底から謝罪した。彼のために何かできることはないか……。彼女は考えた。
 だがバカらしくなった。バカバカしい。青年はアレなのかもしれないのだ。放っておけ――。
 いや、ここは自分の傍に置いて出方を伺うべきだ。何か怪しいことをすれば、すぐに殺せばいい――。
 彼女ははっとし、いつの間にかこんな事を考えるようになった自分を恥じた。
 結局彼女は後者を選択した。この選択は罪の償いだ。彼に恐怖を与えてしまった事に対しての――。
 いつから慈悲の女神になった。そうやってお前はいつも自分に嘘をつく――。
 自分の中の冷たい声を無視して、彼女は青年にそっと囁いた。
 「よかったら私の家に来ない?行くあても無いんでしょう?」
 「そんな……悪いです……。女性の家に上がりこむなんて、とても」
 青年はそう言って顔をそらした。心なしか、頬が赤い。
 「いいのよ。どうせ独り身だし。少し手伝って貰いたいこともあるから」
 「でも……」
 「ならこうしましょう。三色寝室付き住み込みのアルバイトよ。ちょっとしかお金は渡せないけども……」
 青年はいくらか悩んだ様子だったが覚悟を決めたように、彼女を見た。
 「分かりました。そのアルバイト、引き受けます」
 「そう、良かった。私の名前はレリア。貴方―じゃ呼びにくいわね……。ロースターで、どう?」
 「ロースター……?」
 「そう。『失われた者』って意味。あんまり縁起のいい名前じゃないけど、ぴったりね」
 「ロースター……」
 青年は自分につけられた名前を復唱する。その顔は、母親に抱かれた子供のようだった。
 「よろしくね。ロースター」
 「こちらこそ」
 二人は微笑み合って握手した。酒場の喧騒は、二人の出会いを祝福するようでもあった。


――あとがき――
ロースターが失われた意味ってのは創作。
ロストが失うでerがついたらそういう意味じゃないかなと
学歴無いんで知識ないですサーセンwwwwwww

私の駄文にコメントを下さった方々に雑なものですが返事を

>幕間さん
初めまして。sage忘れた時は吊ろうかと思いました;
新連載です、ガンバリマス

>◇68hJrjtYさん
初めまして。
ヴァンパイア総帥は創作です。
勿論設定も。だって黒エルフ総帥もいるs(ry
忘れられた存在を狩る者と―この先はアウアウ。

>袖子さん
こちらこそ初めまして。
やはりヴァンプネタはオリジナリティに欠けますかね……
そのためのヴァンプ新設定と総帥だったんですけども……
ご期待に応えられるようガンバリマス

744幕間・RS昔話:2008/03/22(土) 19:18:19 ID:of5VjV0.0
  テイマ「おじいさん、おばあさん」

おじいさん「うるさい」

おばあさん「静かにしろ」

  テイマ「ええ??!」

おじいさん「よし 話すがよい」

おばあさん「そうよ、さっさと用件を言いなさい」

  テイマ「(黙れって言ったのそっちだろ…)実は旅にでようかと思いまして」

おじいさん「何??! そうと決まれば早速したくしろ!」

  テイマ「え?」

おばあさん「そうそう!さあ服とふんどしと剣・・・ はないからこの笛で頑張って!」

  テイマ「あの、まず理由説明しなくても・・・?」

おじいさん「邪魔なガキが出てくんじゃから早くせんでどうする!(お前が旅立つ理由など聞かなくてもわかる)」

おばあさん「おじいさん、本音と建前が逆になってますよ」

おじいさん「ナント??!」

  テイマ「それでおばあさん、だんごをもらえませんか?」

おばあさん「わかった それ」
  ∧_∧     ○
 ( ´∀`)   ○○
 ( つ  つ  ○○○
 と_)_)  ○○○○
おばあさん「さあ持っていけ」

                     ○  ○
                    ○  ○    ○
  ∧_∧         A__A     ○  ○
 (; ´∀`)      (´∀`∩)彡サッ○  ガ シ ャ ー ン
 ( つ  つ      (つ  丿     ○
 と_)_)       ( ヽノ  ←じいさん
 ↑ばあさん        し(_)
おじいさん「あそーれ♪」

  テイマ「なにしてんだ??!」

おじいさん「なぜか・・・ 崩さないといけない気がしたんだ・・・」

  テイマ「はぁ・・・ とりあえずこれまとめて袋に詰め込んでもってく じゃあ いってきます」

おばあさん「まった!」

  テイマ「何?」

おばあさん「金銀財宝を鞄一杯に持ち帰ってきて 入りきらないなら記憶して往復よ!」

  テイマ「・・・」



とりあえずテイマは旅立ちました

745幕間・RS昔話:2008/03/22(土) 19:30:13 ID:of5VjV0.0

   プリ「ただ飯ぐらいが一人減ったね〜」

おじいさん「そうじゃの〜 後一人じゃ・・・」

おばあさん「そうそう」

   プリ「何?こっちを向いて あたしがただ飯ぐらいとでも?」

おじいさん「そうだ」

おばあさん「そうよ」

   プリ「眼福を受けといて何よ 絶対にあたしは出て行かないわよ」

おばあさん「そう・・・ だったら私にも考えがあるわ・・・」

   プリ「え?ちょっ、何、血走った目で酔ってこないでよ、あ、変なとこ触らな、い、いやああああああああああ!!」

おじいさんは見てみぬ振りです

--30分後--

   プリ「うぅ・・・ こんなところ出て行ってやる・・・」

おばあさん「あら?私はもう考え直したところよ?」

   プリ「こんなところにいたら次は何をされるか分かったものですか! 適当に男を見つけて結婚して出てってやるんだから!」

おじいさん「それより梅昆b、もといテイマを追いかけたらどうだ?」

   プリ「m9(゚Д゚)<それだ!」

プリは兎変身をこれでもかと繰り返しながらテイマを追いかけました



ちなみにプリにはおじいさんとおばあさんはなにも持たせませんでした

おじいさん「よし、これ以上家のものがなくなる事態は避けた・・・」

おばあさん「ランランがバカでよかったわ・・・」





おじいさんとおばあさんはどこまでも果てしなく酷い人です

746幕間・RS昔話:2008/03/22(土) 19:52:11 ID:of5VjV0.0

鬼が淵 もとい 鬼が島へ向かう道中テイマとプリはいろんな人に会いました

BIS 「女の子二人で大丈夫かい?」

WIZ 「女二人旅wwwいいねぇwwww」

農家  「女の子だけで旅かー? 気をつけろよー」

テイマは少し不機嫌になりました
---------------------------------------------------------------------

テイマとプリは海辺を歩いていると子供達にいじめられている亀を見つけました

テイマは子供達を追い払い、亀を助けてあげました

亀は、何かお礼がしたいと言い出しました





その日の晩御飯はすっぽん鍋でした

---------------------------------------------------------------------
山の中を歩いているとなぜか蟹がおにぎりをもって歩いていました

テイマはおなかのすいたプリにペットに命令させて奪ってこさせてと頼まれました

テイマはしぶしぶ猿にどうにかして奪ってこいと命令しました






その日の晩御飯は蟹鍋でプリだけおにぎりがついていました

---------------------------------------------------------------------
>>みなさん
自分はこの「RS昔話」を書き終えたらRSを引退し、したらばにも来なくなる事になりましたー

これからすこしいろいろとメンドイことになりそうなのでの引退です

RS自体も惰性で続けていたのでこの方がキリがいいかな、と思いまして

イベントに関してはやるなら最後に参加させてくださいb

>>ニートの中の人さん
lostにerならlosterで多分ロスターと読むのが正しいかと
あと失った人ではなく失う人(?)だと思います

ではノシ

747◇68hJrjtY:2008/03/23(日) 00:04:27 ID:tG41QpL60
>ニートの中の人さん
この青年…ヴァンパイアそのものなのか、それとも今は別の存在なのかは分からないですが彼が彼女と出会った夜。
文章で美しさを表現するというと色々手法があるとは思いますが、たった2、3行で既に彼が見えたような気分になってます(*´д`*)
確かにヴァンパイアってRSやいくつかのファンタジー小説でも敵として登場しますが、見目麗しい存在であるのもまた事実。
レリアとロースターの出会いはただの序章に過ぎないのでしょうね。これからどんな物語になっていくのか。
どこか悲しげな書き方も読む側としては印象に残りました。続き楽しみにしています。

>幕間さん
浦島太郎に猿蟹合戦。古今東西の昔話がテイマのプリの手で侵食されていく(笑)
ってかおじいさんおばあさん酷ッ!最初と全然態度と対応が違いますね(´;ω;`)
テイマって男の子…ですよね?そうか、あんまりにショタ過ぎて女の子と間違えられてるんですね…†o(・・;)
うーん、二人の道中はまだまだ続きそうですね。楽しみにしています。
---
なんと幕間さん、RS引退ですか…。私もほとんど半引退みたいなもんですけど。
それならお祭りイベント是非とも企画したいところですね〜。

748ドワーフ:2008/03/23(日) 11:43:42 ID:AepyIIHk0
 それは良く晴れた春の日のこと。
 ビガプールにて小さな協会を営む神父のもとに、一組の母子が訪ねて参りました。
 それは丁度昼の休憩の時間で、協会にはその神父以外に誰一人おらず、神父自身も昼食を取ろうと協会の奥へ行こうとしていたときのことでした。
「この子に洗礼を受けさせてやってください」
 母親はそう言って。連れてきた小さな女の子を示しました。
 あまりに半端な時間の来訪者に神父は困惑してしまいました。
 子供は歳は5歳前後といったところで、神父を見るのが初めてなのか母親の手をすがるように小さな両手で握り、不安げな目で神父を見上げておりました。そしてその母親は深くフードをかぶって顔を俯いており。顔の上半分、特に目を隠しているようでした。
 フードの奥に覗く母親の白く艶のある肌は彼女がまだ若いことを示しており、またとびきりの美女でもあるようでした。
 神父は二人の様子をまじまじと眺めました。神父は先ほどから何やら妙な違和感をこの不審な母親に感じておりました。
 そこでまず尋ねました。
「お名前をお願いします。あと、お顔を拝見させて頂いてもよろしいですか」
 すると母親は先ほどよりもさらに顔を伏せました。女の子の顔を見下ろしているようでした。女の子もまた不安そうに母親の顔を見上げました。
 そうしてしばらくの間母親は躊躇するように沈黙し、やがて口を開きました。
「…ドゥーマです。顔は…ひどい火傷の痕がありまして…どうか、フードを被ったままで居る事をお許しくださいませ」
 神父はじっと母親を見詰めました。母親の我が子を握る手は、何かを恐れるように小さく震えていました。
 神父はその母親の得体の知れない違和感に、ますます疑念を深めました。
 しかし、その脇に立つ女の子が未だ洗礼を受けていないと言うのならば、そして母親がそれを望むというのならば受けさせてやらねばなりません。
「この国の者であれば、幼児洗礼を済ませていると思うのですが。何故今になってその子の洗礼を?」
 母親は神父の問いにまたしばし、答えに窮したように沈黙しました。
「…この子が生まれた折、身内に不幸がありまして。洗礼を受けさせる機会をずっと失っていたのです」
 神父は俯いたままの母親を見つめて思いました。
 考えすぎかもしれないと。子供の魂を清めて神の加護を与えてやって欲しいという願いを、どうして拒むことができようか。
「わかりました。しかし準備がありますので、また後ほど訪ねてきて貰えませんか」
「今すぐには、無理でしょうか」
 神父の答えに母親は少し取り乱した様子で聞いてきました。
「簡略した形式のものもございますが…」
「では、その簡略した形式でお願いします。どうか、今すぐこの子に洗礼を」
「しかし…」
 洗礼は一生に一度の儀式。神父は簡略するよりは、やはりこの女のこのためにしっかりとやっておきたいと思っておりました。
 しかし母親は何かに追われているように焦っていました。
「何かお急ぎのご都合が?」
「はい」
「それは、この子の洗礼よりも重要なことですか」
「…………」
 母親はまた黙り込んでしまいました。そして、次に口を開くと今度は変な条件をつけてきました。
「わかりました…。しかし、洗礼は神父様お一人で行って欲しいのです」
「一人で?」
「はい。出来れば他に人の居ない時間に、神父様お一人だけの手でこの子の洗礼をして欲しいのです」
「それは、修道女の手伝いなどもならぬということですか?」
「そうです」
 この母親の出してきた不可解な条件に、神父は先ほどまで抱いていた疑念を再び持つ事になりました。

749ドワーフ:2008/03/23(日) 11:45:40 ID:AepyIIHk0
「失礼ですが、ご身分を確認させて頂いてもよろしいですか」
「…この街の外れで母子だけで暮らしています。ですが、決して乞食などではありません」
「いえ、乞食かどうかではなくてですね…」
 神父は真っ直ぐにこの問いかけをしていいものか迷っていた。
 あなたは何者ですかと。この問いに、母親は果たして答えるだろうか。
 神父が相変わらず顔を見せない母親を見ながら考えていると、ふとあることに気づきました。
 母親の印象は、見た目はとても美しく清楚なようでいて、しかしその立ち姿の雰囲気は色で表すと“黒”。
 どういうことなのか。神父はいつの間にか怪訝な表情になっていました。
「おねがいします。どうか…」
 母親はそう言って突然跪くと、神父にすがるように懇願しました。
 驚いて一歩退いた神父の足にすがるように、母親はひどく取り乱した様子で、涙交じりの声で言いました。
「この子は人間です。ですから…」
 神父はこの母親の言葉にそういう事かと納得しました。
 きっと、この母親のフードの下には角が生えているのでしょう。
「お母さん、泣かないで」
 女の子が泣き崩れた彼女に言いました。彼女は慰める幼子を抱きよせて何度も神父に懇願し続けました。
 しかし、揺れる彼女の声から涙の滴が零れ落ちることはありませんでした。
 神父は迷いました。彼女は黒い。涙さえ流せないほどに。それは祓い退けねばならぬ存在。
 だが、彼女の言葉に偽りはない。彼女のその子を思う言葉には確かな信仰と愛がある。
「わかりました。しかし、一つこちらからも条件を付けさせて下さい」
 神父のその言葉に、母親の顔が持ち上がってその眼がついにフードの下から覗きました。
 血のように赤い眼。神父はその眼を真っ直ぐに見て言いました。
「洗礼後、その子を我が協会に引き取ります」
 この言葉が彼女達にとってどれほど残酷なものか、神父にはよく分かっていました。
 ですが、やはり女の子は人間であり。洗礼によって浄化された後、彼女と共に生きる事は出来ぬだろうと思ったのです。
 彼女は神父から眼を反らすと、女の子の頭を撫でました。
 女の子は神父の言葉を理解したのか、離れまいとするように彼女に抱きついていました。
「お願いします…」
 母親はそう答えた。

750ドワーフ:2008/03/23(日) 11:46:20 ID:AepyIIHk0
 神父は修道女エレミアを見るとあの頃の事をふと思い返すことがある。
 果たして、あのとき自分がやった行為は正しかったのかと。
 あの悪魔は洗礼の儀式に立ち会うこともなく、あれきり現れていない。
 彼女がどういった経緯で人間の子供を自分の子供として育てたのかは分からない。
 エレミアに尋ねてもきっと覚えてはいないだろう。
 そして、何故彼女はエレミアに洗礼を受けさせる気になったのか。
 幼いエレミアに悪の道を歩ませる事も出来ただろう。その魂を弄ぶ事も出来ただろう。それなのに、何故それらとは真逆の行為を望んだのか。
 やはり人間らしく育てるべきだと考えたからなのか、それとも他の悪魔に狙われたために仕方なくそうしたのか。
 神父は自身に問う。
 あの時、こう言ってやれはしなかったのかと。
 神の加護が無くとも、あなたがその子を守ってやれば良い、と。
 神父は考える。
 何故、神は悪魔をその祝福の道から外されたのかと。
 悪魔には血も涙もないという。しかし、それらが無くては誰も愛せないと言うのだろうか。
 神父は跪いて祈った。
 神よ…修道女エレミアに祝福を。そして、願わくば彼女の母親にも…。

751ドワーフ:2008/03/23(日) 11:56:50 ID:AepyIIHk0
以上です。
前に話を載せてから1月ほどでしょうか。
ようやく話を書く暇が出来ましたので短くはありますが、
書きあがったものを載せさせて頂きます。

今回も悪魔の話ではありますが、
前に書いたマルチェドとは違って変身後の女悪魔をネタにしております。
詳しい背後事情の話などは読み手の想像に任せる形になっております。
というか、投げてしまっていると言った方がいいでしょうか…(汗

遅筆ではございますが、これからも他の職人の皆様の作品を参考とさせて頂きつつ、
地道に話を書いていこうと思います。

752之神:2008/03/23(日) 16:06:05 ID:Qvwd4z.60
1章〜徹、ミカの出会い。
-1>>593―2 >>595―3 >>596-597―4 >>601-602―5 >>611-612―6 >>613-614
◆――――――――――――――――――――――――――――――――――――◆
2章〜ライト登場。
-1>>620 -621―2>>622―○>>626―3>>637―4>>648―5>>651―6 >>681
◆――――――――――――――――――――――――――――――――――――◆
3章〜シリウスとの戦い。
-1>>687―2>>688―3>>702―4>>713-714―5>>721―6>>787―7>>856-858
―8>>868-869
◆――――――――――――――――――――――――――――――――――――◆
4章〜兄弟
-1>>925-926 ―2>>937 ―3>>954 ―4>>958-959 ―5>>974-975
◇――――――――――――――――5冊目―――――――――――――――――◇
-6>>25 ―7>>50-54 ―8>>104-106 ―9>>149-150 ―10>>187-189 ―11>>202-204

◆――――――――――――――――――――――――――――――――――――◆
5章〜エリクサー
-1>>277 ―2>>431-432―3>>481-482―4>>502―5>>591-592―6>>673-674

◆――――――――――――――――――――――――――――――――――――◆
番外

クリスマス  >>796-799
年末旅行>>894-901
節分  >>226-230
バレンタインデー>>358-360 >>365-369
雛祭>>510-513
ホワイトデー@シリウス >>634-637
◆――――――――――――――――――――――――――――――――――――◆

753之神:2008/03/23(日) 16:22:21 ID:Qvwd4z.60
κ

「おじさーん!ちょっとこっち向いてー?」

ビルの裏口付近で、少女の元気な声が通る。その声に反応して、呼ばれた男は振り向いた。

「なんだ…ここは女の子の来ていい場所じゃ……ガハッ…!」
「エヘヘ、ちょっとお洋服借りるよーっ?あ、文句はアルシェに言ってね!?」

「ゲッホゲホ…ゴッホ…まっ…」催涙弾を投げつけられた男は、咽ている間に身包みを剥がされてしまった。

「おじさん、引っかかってくれてありがとー!」ブンブンと元気良く手を振るが、きっと男には見る余裕など無かっただろう…。


γ

「……それじゃ、行ってくる」
「スニーキングはしないのですか?」幼女が聞いた。

ライトはポケットからモヤモヤとした指輪を取り出した。
「ホレ、透明…な?」
「なるほど」
「それじゃ、10分もかけねえから…報酬、準備よろしくな」
「気が早いですよ」

ライトはシュッ!、と音を立てて消えていった。

λ

「シリウスさーん、今は許可しますから、ちょっとリビング来て下さーい!」
「シリウスさーん?」

あれ…部屋に居ないかな…?

私はドアに近づき、また声をかけた。
「もう、返事くらいして下さいよ!開けますよー?」

キィ…

「あれ……居ないし」
そこにはシリウスの姿は無かった。代わりに…
「手紙…?マメな事するわねぇ……」

――――――――――――――――――――――――――――――――

ミュリエ・ジュールという場所に行ってくる。見知った男がいるのでな。

――――――――――――――――――――――――――――――――

「えっ?これだけ…!?」

754之神:2008/03/23(日) 16:55:44 ID:Qvwd4z.60
α

「わかった」俺は決意した。

「えっ…何?」ミカはキョトンとしてこちらを見ている。
「ミュリエ・ジュール…行ってみるよ」
「そんな、徹が行っても仕方ないって!」
「いいよ、ダメ元でやってみる…」

そう言って、俺は部屋を出た。
「もう…徹らしくない…」


俺はここ最近、変な奴らと関るようになった。
ゲームの中から出てきたような容姿、発言、出身地…そして能力も。
面倒な事が多かったが、俺はそいつらに付いていくだけで、自ら動いてはいなかった。
関ると決めた以上、俺も動かなきゃな……そうして今回、少し出しゃばってみようと思ったワケだ。

「とりあえず…お偉いさんと話でもできればいいんだけど…」

ジャケットを羽織ながら、どうやって話まで持って行くか考えていた。


κ
「上出来だ…エトナ、俺はこれを着る…お前はそうだな……先に行って、ちょっと惑わして来い」
「わかったー!ビックリさせればいいんだね?」
「まぁ…そうだな」

「それじゃ、私が入って20秒くらいしたら入ってきてー!」

ψ

「ちょっとキミ…地下の研究部の事を何故…」

ナザルドは、その奇行が目だってか、警備員3人に囲まれていた。
「えーとね、調べたんだよ!ところでおじさん達、体つきいいね!鍛えてる?」

「ふざけるな…お前、こっちに着てもらおうか…」と、警備員の1人が手錠を取り出した。
「待ってよー!俺はただ地下の薬を盗もうとっ…!」
「何ぃ?お前、盗み目的なら見逃しはできん…おとなしく捕まれ!」

警備員3人の手を潜り抜け、ナザルドは逃げていった。

「鬼ごっこ!鬼はここのみーんなかな!?俺はなかなか捕まらないよっ!」
「捕まえろ!」と声が響き、静かなロビーが一転してガヤガヤと騒がしくなる。

「鬼さんこちら!ヘッヘッヘー!」


γ

なんだかな…。
天井から続くダクトには普通に進入できたが……

「うるさい…」

下…つまりロビーフロアか。やけにドタドタと騒がしい。何をしてるんだか…。
だが、そんなことも気にしてはいられない。すぐに盗って終わらせる、これが目標だ。
俺はそのままロープを使い、ダクトをスルスルと上っていった。


κ

「うわぁ!みんな走ってるー!」ロビーに入ったエトナは、思わず声をあげた。

「んー?誰かを追いかけてる…?」

だだっ広いロビーの中は、混沌とした風景だった。
警備服、スーツ、OL服…なぜか全員が同じ方向へ走っている。それも、一心不乱に。

エトナは悩んだ。これでも十分混乱しているし…でも。

「もう、やっちゃうから!」
と、少女は叫んだ瞬間…

背の高く…長い足、スラリとくびれた身体の女性が現れた。

「スーパーアイドルっ!」と、ポーズも空しく誰も見なかったが。

「それじゃ、皆踊ってねっ!踊るのは楽しいよーっ!」

突然、空中にミラーボールが現れ、ロビーの人間全員が照らし出された。

「レッツ、ダンシング!」
すると、そこにいる人間は皆狂ったように踊りだした。回転したり、跳ねたり…と。

「おい…なんだこれは」
スレンダーボディへと変身したエトナは、そのまま一緒に踊っていたが、低い声によりまた現実に戻された。

「あっ、アルシェー!これでいいでしょ?みんな踊ってるの!」
「……惑うというのか?…これは」

アルシェは見ていられない、と言うポーズをとった。

755之神:2008/03/23(日) 17:23:58 ID:Qvwd4z.60
こんにちわ、之神です。
見直したら誤字多かったorz いつもの事ですけど(´・ω・`
だいぶ展開が広がっております。まぁ、ちょっと変なところもありますがスルーでおk…

何やらRS内でチャット…という話が上がってますね。私も参加してみたいものです…。
それをする場合、やはり…

・全員が同じ鯖に集まる。
・時間、集合場所を決める。
・キャラ名はスレのコテハン。

とかになりますよね?
まぁ、少しずつ皆で話を進めて行きたいものです…。

>>◆21RFz91GTEさん

いつも読ませていただいてます…ROM専時代からb
スレでの大先輩ですので、とても参考にしています(´ω`*
是非、どこかの鯖でチャットしてみたい…!

>>ドワーフさん
悪魔の話、なかなか無いので読み応えあります。
遅筆とか速筆は、あんま関係無いですよ。やっぱ中身の濃さですかね…その辺り、私は薄かったりorz
次回も楽しみにしてまふ!

>>幕間さん
引退ですか…私は一応続けていますが、リアルが忙しいかったりすると引退が頭によぎります。
私も1度引退…というか休業?したんですが、今はまた復帰してます。
引退前にお会いしたいですね…

>>柚子さん
あ、追いかけてくれたんですか、ありがとうございますw
gdgdで目も痛い文ですが、地道に改善はしている…つもり。
話の濃さを重視したい今日この頃…。

>>ニートの中の人さん
コテハンも気になる所ですが、感想を…。
酒場…私も大好きなスポットです。物語だと酒場は話の生まれる事が多いですからねぇ…。
ロースターもそうですけど、異様なキャラはやっぱり目に付きますよね…展開も楽しみです。

>>ウィーナさん
ああ、やっぱ他の作家さんの影響ってありますよねーw
そんな意味で小説スレは、参考文も、指摘も、感想もあるので書いてて楽しいです。
デブ…ポッチャリ…微妙な境界。

>>FATさん
戦闘シーンの迫力の描写、参考にしてます。
自分、そういうの書くの苦手で…('A`
以前、私の小説で兄弟偏ありましたが…あれくらいの描写が精一杯。
そちらの勉強もしたいなぁ…。


おー、自分にしてはけっこう感想書いたぞっ! (満足げな表情をご想像下さい。

では引き続き、小説スレをお楽しみ下さい…之神でした。

756◇68hJrjtY:2008/03/23(日) 18:28:30 ID:BEfQsoRc0
>ドワーフさん
短いながらも心に残る物語。ドワーフさんの小説は昔語り風なのもイイですよね。
この悪魔の母親と娘はもし血が違っていても本当の母娘だったんだなあ、と思いました。
個人的には、娘が愛しくなって人間として、悪魔から離れたものとして育って欲しいと思ったから…というハッピーエンドを思い描いていますが
もちろん他の読み取り方や感じ方もあると思いますし、「詳しい想像は読み手に任せる」というドワーフさんの意志もありますしね。
心の中だけにしまっておきます…って、もう言っちゃってますけど(笑)
次回作も期待しています。

>之神さん
おっ、競争してますねー(高みの見物
ナザ君の「鬼ごっこ」が実はライトやエトナたちの手助けをしているような…(笑)
エトナは今回で初暴露でしょうか、リトルウィッチだったんですね!
「邪魔する〜」って言葉からネクロを想像してましたが、そういえばネクロはフィアレスが居ますしね。
ここに破壊魔(?)シリウスとごく平凡な学生の徹が参戦するとなると…次回あたりは修羅場でしょうか(・∀・)ニヤニヤ
楽しみにしています(笑)
---
キャラ名はスレのコテハンですか!(;・∀・) この名前入るかなぁ(笑)

ところでこの場で言ってもいいのかちょっと分かりませんが、みやびさんが先日(今月頭くらいですが)既にRS引退されました(ノД`)
(みやびさんのサイトに訪問されてる人が居れば知ってるかもしれませんが…)
GG(ゲームガード)関連でゲーム起動できなくなった、とのことでしたからたぶん参加は無理っぽそうです…。
もしRS以外の場所(ハンゲとか普通のチャットとか)だったら来てくれるかもしれませんが、…まあ、この辺も話し合いでしょうか。

757FAT:2008/03/23(日) 23:18:53 ID:PHT30QwA0
前作 二冊目>>798(最終回)

第二部 『水面鏡』

キャラ紹介 三冊目>>21
―田舎の朝― 三冊目1>>22、2>>25-26 
―子供と子供― 三冊目1>>28-29、2>>36、3>>40-42、4>>57-59、5>>98-99、6>>105-107
―双子と娘と― 三冊目1>>173-174、2>>183、3>>185、4>>212
―境界線― 三冊目1>>216、2>>228、3>>229、4>>269、5>>270
―エイミー=ベルツリー― 三冊目1>>294、2>>295-296
―神を冒涜したもの― 三冊目1>>367、2>>368、3>>369
―蘇憶― 五冊目1>>487-488、2>>489、3>>490、4>>497-500、5>>507-508
>>531-532、7>>550、8>>555、9>>556-557、10>>575-576
―ランクーイ― 五冊目1>>579-580、2>>587-589、3>>655-657、4>>827-829
>>908>>910-911、6>>943、7>>944-945、六冊目8>>19-21、9>>57-58、10>>92-96
―言っとくけど、俺はつええぜぇぇぇぇ!!― 六冊目1>>156、2>>193-194、3>>243-245
>>281-283、5>>385-387、6>>442-443、7>>494-495、8>>703-704、9>>705-706

―10―

 コロッサスを倒し、しばらく進むと、ずっと続いていたトロッコを走らせるためのレー
ルが無くなった。同時に破棄されたピッケルや黒ずんだ手袋などの人工物も見られなくな
った。この鉄鉱山の歴史はここで終わっていた。
「この先がジム=モリの言ってた廃坑か。チタンはこの奥か?」
 レンダルは急に歩きにくくなった坑内にじゃりじゃりと足音を立てる。
「けっこう長いのですねぇ」
 のんきなデルタの口調にレンダルは靴で地面を鳴らす。
「ここは廃坑で言ったら地下四階くらいかな。地下九階まではよく冒険者が行くって言っ
てたけど、何階まであるんだろう?」
「うへえ、まだ半分も来てないんかよ」
 不満気なレンダル。
「もしガセだったらジム=モリおじさまを目いっぱいいぢめてあげますわ」
「むしろ殺す」
 荒々しく肩を怒らせ、殺気立つレンダル。
「ははっ、まあ、九階までは冒険者たちの足跡で道には迷わないだろうから、気楽に行こ
うよ」
 不機嫌になるレンダルの気を揉み、宥めるマリス。
「そうだな、リラックス、リラックス」
 単純なレンダルはすぐに和んだ。
 冒険者たちが頻繁に廃坑地下九階まで行くとはいえ、厄介な魔物の多い鉄鉱山回りのル
ートを選ぶものはほぼ皆無。三人は度々行き止まりに遭い、引き返しては進み、引き返し
ては進みを繰り返した。足が痛くなるほどそんなことを続けていると、ようやくたくさん
の足跡のついた道に辿り着いた。
「おっ! これかぁっ!!」
 行き止まりばかりの進路に苛立っていたレンダルは歓喜の声をあげる。
「間違いないだろうね。ふぅ、これで何の心配もなく歩けるよ」
「私、疲れてしまいましたわ」
 言われてみれば、レンダルもマリスも体に疲労を感じていた。三人は少し広くなってい
る通路の一角を見つけるとポーチから取り出した布を敷き腰を下ろした。
「なあ、なんで二人はその親友の子供を探しているんだ」
 マリスは水筒のキャップを開けると、口にちょこっとつけ、水をちょびちょび飲んだ。
「ああ、色々とややこしいんだけどよ」とレンダルはラスとその父親のこと、エイミーの
過去を説明した。

758FAT:2008/03/23(日) 23:19:25 ID:PHT30QwA0

「地下界か。……嫌な響きだ」
 マリスはあのネクロマンサーも地下界の者だと言うことを聴かされていた。自分は親友
だった。エイミーは愛する息子だ。自分同様、地下界の者によって人生を翻弄されている
エイミーに同情し、何とかエイミーを助けたいと思った。
「なんだか他人事に思えないな。全く、なんで地下界の奴らってこうも悪人ばかりなんだ」
「ま、地下界だ。昔は地獄なんて呼ばれてたんだし、ろくな奴なんていっこないぜ」
 デルタは二人に賛同しかねた。なぜならあの時、地下界のラスと対峙したとき、デルタ
は確かにラスに温もりを感じていたのだから。大好きなエイミーをあんな風にしたラスは
許せない。しかし、デルタはその温もり故にラスを憎みきれずにいた。そんなことは口が
裂けてもレンダルには言えない。デルタは密かに心を痛めていた。
「おい、ピンクだるま、何しけた顔してんだよ」
 こつん、とデルタの頭をこづくレンダル。ちょこんと座ったデルタのほわほわのスカー
トが雪ダルマの胴体のように丸くて、思わずマリスは水を吹き出した。
「おねぇさまぁっ! だるまだなんてひどくありませんか! デルタはぼんきゅっぼんの
スレンダーボディなのですよ!」
「はぁ? ばんぼんでんのすっとこどっこい体形だろ、この勘違い野郎が!」
「ひどいーーーー!!」
 ぽかぽかとレンダルを叩くデルタ。これでいいのだ。この雰囲気こそがデルタの求める
もの、デルタの宝物。レンダルのご機嫌を取りたいわけではない。でも、これだけは、こ
のことだけは言ってはならないことなのだと、デルタは理解していた。この心の苦しみを
与えるのもレンダルだし、取り除いてくれるのもレンダルだ。デルタにとってレンダルは
居なくてはならない存在。消えれば、デルタもまた消えてしまう。ちょっとやそっとじゃ
切れない絆。切れるとしたら、それは二人の愛するエイミーを否定すること。つまり、地
下界のラスを肯定すること。だからデルタは言わない。きっと言わない。
「はははは、ぜんっぜん痛くねーぜ、このデブタ!」
「ひどひどひどいーーーーー!!」
「くっっっっははははは、ごめんデルタ、面白すぎてっ、あっはははははは」
 和やかに過ぎる時。ここにエイミーが居たらどんなに幸せだろうか。早く元気なエイミ
ーに戻ってあの柔らかな笑顔で、微笑んでほしい。包んでほしい。エイミーがほしい。
 笑いあい、疲れも抜けるほど体の内から元気のみなぎる三人。
「さぁ、さくさく行こうかっ!」
 景気よく立ち上がるレンダル。つられてデルタとマリスも立ち上がる。三人の気持ちは
一つ。
 エイミーのために、ラスを見つけ出す!

759FAT:2008/03/23(日) 23:19:51 ID:PHT30QwA0
―11―

 本当にたくさんの足跡がついている。この無数にある足跡をつけた人々は一体どんな気
持ちでここを歩いていたのだろうか。ある足跡の主は仲間たちとの冒険に胸を躍らせてい
たかも知れない、ある足跡の主は独り、孤独に耐えながらこの通路を歩いていたかも知れ
ない。そして今の三人のように、強い意志を持って歩いていた者もいたかも知れない。
 レンダルたちは一度も迷うことなく、地下九階に到達した。入り口には数人の冒険者が
腰を下ろし、何かを待っているようだった。一体のコロッサスを何人もの武芸者たちが囲
み、協力し合って戦っていたり、一対一で己の力量を試している者もいた。中には、数人
のパーティーの中、飛びぬけた能力を持つ者がいて、コロッサスを瞬殺している光景も見
られた。
「こんなところまで、ご苦労なこった。しかし、なんでこんなに人が集まるかな」
「コロッサスはタフだが動きがとろいから、皆、技を磨きにくるのさ」
「サンドバッグですねっ」
「ふぅん。そんな理由で殺されるコロッサスもなんだか哀れだな。奴らから見れば俺たち
は地下界の奴ら以下ってことか」
 何気なく言ったレンダルの言葉が重い。人間は自分勝手な生き物だ。食べるために殺し
たり、着物にするために殺したり、武器にするために殺したり、挙句の果てにはただ鍛錬
のためだけに殺される。遊びで殺す者もいるだろう。
「それを考えると、あたしらは残酷なもんだね」
「ですねぇ……」
 しんみりと顔を見合わせるデルタとマリス。言葉がでないような見えない重さがあった。
「わっ、わりい、そんな気持ちで言ったわけじゃないんだ。忘れろ、忘れろ!」
 レンダルは手を頭の上でばたつかせて重い空気を払った。
「さぁ、チタンチタン! 金色のチタン様はどこにいるのかなぁ〜っと」
「お姉さま、チタンは銀灰色の金属ですわっ」
 ちくりとつっこむデルタを睨む。
「うるせっ! んなこたぁどうだっていいだろ! 今の俺の気分は黄金色なんだよ!」
「まぁ、黄金色だなんておねえさま、金に飢えているのですねっ」
「レンダル、目がGになってるぞ」
「ばかにすんなよ、てめぇらっ!!」
 ぺしぺしとデルタとマリスの頭をはたくレンダル。初めてのつっこみに、マリスはなん
だか嬉しくってにやけた顔が戻らなかった。

 ぐるっと一周してはみるものの、チタンらしき魔物はいない。三人が途中で見つけたさ
らに地下へのはしごに手をかけた、そのときだった。
「言っとくけど、俺はつええぜぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
「ドレイツボォォォォォォォォ!!」
 何という大声。広いマップの端から端までドレイツボと変態スカートめくり胸パッド男
の声が響いた。
「あ、やつらまだ生きてたんだっけ」
「すっかり忘れてたな」
「いやーーーーーーーーっ!!!」
 デルタはせかせかとはしごを降った。残る二人もそれに続く。
「エーーーーーーーックス!!」
「ドレイツボォォォォォォォォ!!」
 二人の変態の断末魔が虚しくマップを駆け巡る。その声は三人には届かなかった。

760FAT:2008/03/23(日) 23:22:07 ID:PHT30QwA0
>>68hさん
あそこのコロは存在感危ういですよね 笑
RSの世界では純物理<魔法職(魔法で何でも出来てしまう)になってしまいそうなので、
今回は気という形で魔法の代わりになるものを取り入れてみました。バランス取るのが難
しいです。

>>21Rさん
独り研究室に籠るアレン。なるほど、確かに魔法を使える者と使えない者との戦力差を考
えると化学的な武器は必須ですね。
しかし、様々な鉱物や素材が置いてある部屋でタバコを吸うとは、恐るべしアレンの愛煙
心です。
共に旅をしたミトにだからこそ話せるアレンの思い。ミトの背負ってきたものの重さを考
えるとアレンの言葉に感動してしまいます。
エーデルワイスと名を改めたNorthWind。決戦に向け、私も覚悟ができました。この歴史
の最後の最後まで、見届けさせていただきます!

そうですね、私の話はまだ終わりが見えないので、まったり書き続けたいと思います。
イベント、楽しそうですね! 私も時間が合えば参加したいです。

>>幕間さん
昔話のパロディ、サイコーに面白いです。
元ネタがわかるだけに面白さが伝わってきます。
おじいさんとおばあさんの鬼畜ぶりが童話らしからなくて登場する度に笑ってしまいます。
RS引退とのことですが、たまにはしたらばも覗いてやってくださいね。

>>ウィーナさん
ニナの過去、人間不信。
ロイほどの優男ならいつかニナの心を開けるような気がします。もちろん一筋縄ではいか
なそうですが……
一方愛嬌のある敵役暁とハインツ。ぽっちゃり系の悪魔、なんだか想像できません(笑)
漫才じみた二人の登場も嬉しいところですが、次回はネクロマンサーも登場ということで、
ますます楽しみにしております。

>>ニートの中の人さん
初めまして!
ヴァンパイアの心臓と赤い石の物語でしょうか?
思慮深いレリアと名すらも忘れてしまったロースター。彼の失われた記憶は彼女をプラス
に向かわせるのか、マイナスに向かわせるのか、二人の未来はどのように動いていくので
しょうか。
設定がしっかりしている方の小説は筆者らしさというのが前面に出てくるので今後に期待
です。続きを待っております。

>>柚子さん
一つ一つの行動を丁寧に描写されていて、そこに息づく者たちの鼓動まで聞こえてきそう
なほど、動きを感じます。
子供扱いされたくないミシェリーですが、やっぱり子供らしさが出てるところなんか大好
きです。
エンチャントの商人も、ただエンチャントするだけではなく、取引に至るまでの駆け引き
があり、その中身も現実的でうまいなと思いました。
イリーナの魔法解説、とっても解り易かったですよ! 魔法というものが漠然とあるもの
ではなく、このような定められた原理の基にあるものだとすると魔法は自然なものになる
のですね。
アウグスタで無事にミシェリーの治療ができるよう、切に願っています。

>>ドワーフさん
悪魔の子供、でもその子は本当に人間の子だったのですね。
問答を進めるに従い不信感を募らせる神父と洗礼を受けさせたいと懇願する悪魔のやりと
りはさすがですね、互いの立場、主張がひしひしと伝わってきました。
成長したエレミアを見ながら神父が思うこと。悪魔という肩書きだけで人としての幸せを、
子を育てるという権利を奪ってしまったこと、悪魔の決意を考えると切ないです。
ドワーフさんの短編、とても楽しみにしています。またの投稿お待ちしております。

>>之神さん
ナザルドが引っ掻き回し、エトナが踊らせ、ライトがおいしいとこ取り! っと、徹とシ
リウスはこの騒動の中に飛び込んでいませんね。
シリウスがきっと何かしてくれると信じてこのミュリエ・ジュール篇楽しませていただき
ます!
いやぁ、私も戦闘シーンは苦手なので勉強中です。しかし身につけるのは困難ですね。
もっと読み手さんの想像を刺激するような迫力の戦闘シーンを描けるようになりたいもの
です。

761 ◆21RFz91GTE:2008/03/24(月) 00:11:45 ID:ZAmwz8o20
こんばんは〜、21Rです。
今回は作品投稿では無いのですが、皆様へ一言。

先日RSを引退し、現在他のMMOへと移りました。
小説は最後まで書き上げて多分俺は終了となります。
もう暫くは小説書き上げるためにこのスレに居ますので、それまで御付き合いくださいませ。

762白猫:2008/03/24(月) 00:26:29 ID:MsoYOISQ0
Puppet―歌姫と絡繰人形―

第一章〜第五章及び番外編 5冊目>>992
第六章 -夜空の下で- >>30-37
第七章 -深紅の衣- >>70-81
第八章 -神卸- >>137-139
第九章 -チャージング- >>164-171
第十章 -母- >>234-241
第十一章 -北へ- >>295-299
第十二章 -バレンタインチョコレートケーキタワー?- >>349-353
第十三章 -神格化- >>388-399
第十四章 -開演、演舞、そして終演- >>461-474
第十五章 -月下に煌く紅- >>552-561
これまでの主要登場人物 >>38
用語解説 >>255-261


第十六章 禁術、その名は[ルリマ]


 【広いなぁ…ほとんど要塞じゃん】
遥か上空から、サーレはヴァリオルド邸をゆっくりと眺める。
素人目に見ても、古都の銀行が100個はすっぽりと収まってしまうほど広い。
これはシュトラセトの超高級ホテル庭園以上だな、と苦笑するのも数秒。
ゆっくりと両手の鎌を交差させ、小さく息を吸う。
 【『 竜 』】
サーレの言葉と同時、
突如凄まじい烈風が、サーレを中心に吹き荒れる。
その凄まじい旋風の中、サーレは次の言葉を紡ぐ。
 【『 巻 』】
途端、先まで縦横無尽に吹き荒れていた旋風が、サーレの両手――デスサイズへと集結する。
いつしか、サーレの右手の鎌には白い竜巻が、
サーレの左手の鎌には黒い竜巻が、それぞれ発生していた。
 【『 堕落――旋風! 』】
そして、一振。

白と黒の濁りあった竜巻が、上空から一気に放たれた。
あたりの空気を呑み込み、巨大化し、ヴァリオルド邸へと迸る。
それを眺めていたサーレは、しかしクスリと笑って鎌を振る。
 【これくらいじゃ倒せないかな…ま、いいかぁ】
クルクルと器用に鎌を回し、サーレは首をかしげた。
 【開幕の楔は打ったよ……サイっち、しっかり働いてね】





 「!!!」
 「!!!」
アーティの眠る部屋の中央、無駄に長い机越しに怒鳴りあっていたカリアスとアネットは、突如発生した"並ではない不穏な気配"に立ち上がった。
その気配は凄まじい速度で上……つまり上空から、近づいてくる。
外に出て太刀打ちする時間がないと判断した二人は、それぞれ駆け出す。
カリアスは眠っているアーティのベッドへ。
アネットは同じく眠っているアレックスたち四人のソファへ。
その合間に、来た。
凄まじい轟音と共に天井に激突した"それ"は、天井を破り、柱を折り、壁を崩し、装飾を砕き、
ヴァリオルド邸本邸を、丸々ぶち抜いた。

763白猫:2008/03/24(月) 00:26:51 ID:MsoYOISQ0

 「っく――」
サーレの放った竜巻が屋敷に直撃する寸前、ルフィエは[神の母]を展開し外へと脱していた。
銀灰色のローブにかかった埃を払い、ルフィエはゆっくりと辺りを見回す。
 (突然あんな攻撃――いったい誰が、どこから)
 〈常識的に考えれば、"傀儡が"、"上空から"……でしょうね〉
 「そんなこと分かってる! 私が聞きたいのは――」
思わず怒鳴ってしまったルフィエは、それを自覚し、小さく黙る。
ルフィエが何も言わなくなったのを確認したマペットは、小さく続ける。
 〈狙いは十中八九エリクシルの強奪と邪魔者の始末……パペットにはどうしてもエリクシルが必要ですから〉
 「どうして?」
 〈それは――〉
 【パペットとマペットは、エリクシルから造られた人工生命体だからですよ】
 「!」
 〈……〉
突如上がった青年の声に、咄嗟にルフィエは振り向いた。
そこに立っていた、金髪、金眼、騎士団の纏う鎧を着込んだ青年。
蒼いコスモスを持っている姿は、明らかにその場とマッチしていなかった。
 (ていうか、コスモスって木じゃなかったっけ――)
 〈余計な事を考える暇があったら、[ウルトラノヴァ]の一つでも放ちなさい〉
 「……」
厳しく叱咤されたルフィエは、しかし反論せずゆっくりと両の手を目の前の青年に向ける。
それを見た青年――サイカスは、フワリと宙に浮かび、首を傾げる。
 【喧嘩の押し売り――また乙なことをなさる】
 「『 ――ウルトラノヴァ 』」
サイカスの言葉は欠片も耳に入れず、ルフィエは両の手から無数の閃光を放つ。
流星群の殺到とも見えるその怒涛を、しかしサイカスは避けないどころか、その微笑みも崩さない。
そのサイカスに向けて、流星群が一挙に押し寄せ――

   〈しまった――ルフィエ! 罠です!!〉

 【もう、遅いのですよ】
一挙に殺到した流星群は、一発も違わず、それに命中した。
凄まじい爆音が古都中に響き渡り、辺り一帯に爆風が吹き荒れる。
庭園の端の木々が倒れかねないほどの爆風の後、ルフィエはゆっくりと伏せていた体を起こす。
 「マペット、今何か言った?」
 〈…厄介なことになりました〉
 「……なに?」
 〈……〉
ルフィエの言葉に返事を返さず、黙ってしまったマペットにルフィエは首を傾げる。
と、

   ――――…


 (――!!!)
その体中に、突如"絶対にこの世のものではないと確信できる魔力"を感じる。
凄まじく大きく、そして或いは[邪悪]とも言える、そんな魔力を。
思わず左手で胸元を掴み、込み上げる吐き気を堪える。
 (気持ち、悪い……)
 〈ルフィエ、ひとまず離れ――〉
 「ぅ、あ」
マペットの言葉が終りきる前に、ルフィエは咄嗟に[ウルトラノヴァ]の爆心地から離れる。
一秒でもその場に留まりたくなかった。
"それ"から、一センチでも遠くに離れたかった。

 〈っく……一度[神の母]を解除しなければ〉
ルフィエの錯乱状態を見やり、マペットは心中で呟く。
元々[神の母]にはいくつか能力がある。
通常の身体能力や魔力を極限まで強化する[神格化](これにより他の一切の強化魔法が通じなくなる)、
ある一定の自我を保ち、さらに[禁呪]と呼ばれる術をも発動可能とする[古代民の知恵]、
そして、"この世にあってはならないもの"を認識し、排除する[断罪者]。
この[断罪者]により、ルフィエは強い錯乱状態となっている。
それを防ぐためにマペットはなんとか[神の母]を解除しようとしているのだが、
 〈といっても、私の力では契約破棄ができないという――〉
何も、打つ手立てはなかった。

764白猫:2008/03/24(月) 00:27:38 ID:MsoYOISQ0

 【ちぃ――こんな至近であんなものを放たれるとは思いませんでした。"あなた"の介入がなければ間違いなく致命傷……】
隕石のクレーターのようになってしまった自分の周囲を見やり、サイカスは小さく苦笑する。
実のところ、彼は[ウルトラノヴァ]の瞬きを"ただ見ていただけ"だった。
何の魔術の発動も、何の対抗手段も取らず、ただ見ていただけ。
[ウルトラノヴァ]への対処は――そう。目の前の"彼"が行ったのだ。
その目の前の彼……赤髪、赤目の青年は、凹凸の地面の上でゆっくりと立ち上がった。
 「…………」
 【いや、助かりました。もう少しであの爆発に巻き込まれることに――】
カツカツと自分に歩み寄ってくるサイカスを見、青年はその紅色の瞳を細める。
その瞳に奇妙な光が抱かれるのを見やり、サイカスは咄嗟に言う。
 【お待ちなさい、[狂戦士]。私を殺しても、あなたの求める魔力は手に入りませんよ】
 「…………?」
そのサイカスの言葉に青年……狂戦士は首を傾げ、しかしその足をゆっくりと踏み出す。
それを見焦ったサイカスは、自分の斜め後方を指し、叫ぶ。
 【あなたの敵はあちらです。あなたの求める魔力なら彼女から奪いなさい!】
 「……」
サイカスの指す先――胸を抑えて震えるルフィエ――に視線を移し、青年は目を細める。
途端、感じる。
凄まじく巨大な魔力。
他に例えようもない、まさに"偉大な魔力"。
 「……」
ルフィエに目線を移した、一拍後。
既に狂戦士は、ルフィエの眼前にまで躍り出ていた。
 「っく――」
咄嗟に跳躍し青年の上空へ脱したルフィエは、両の手を地上へと向ける。
 (嫌だ、嫌だ、嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!!)
心中で叫ぶルフィエの声に呼応するように、凄まじい量の光がその手に集束する。
相対する青年はそこでようやく上空に視線を移し、体勢を低く、跳躍の形を取った。
 〈ルフィエ、待ちなさい――〉
 【フフ……もっともっと、お暴れなさい――】
マペットとサイカスの静止と煽りの声すら耳に入らない、
 「『 ウルトラ 』」
 「 ――――…… 」
両の手に集束した光を額に翳し、ルフィエは呟く。
それを微笑で眺める青年は、その両の手を交差させ、人には理解しえない言葉を紡ぐ。
途端、その両腕に巨大な紅色のバグナク(鈎爪)が出現した。
 「『 ――ノヴァ 』」
 「『 グランド、クロー 』」
一方は両の手を振り上げ、
一方は両の手を地に刺し、
全く同時に、双方呪文を唱えた。
二人の腕から放たれた閃光と土砂が、双方の中ほどで激突する。
白と茶の衝撃が混ざり合い、巨大な魔力の鬩ぎ合いが数秒続き、
やがて茶が霧散し、白の閃光が地面に向かって迸ってゆく。
それを見上げ、青年はゆっくりと両の手を突き上げる。
 「――――ェリ、ク、シル」
そんな青年の呟き諸共、
白の閃光――ウルトラノヴァが庭園に直撃、大爆発を起こした。

765白猫:2008/03/24(月) 00:28:07 ID:MsoYOISQ0

 「マペット……あいつ、なに」
 〈……言っても信じません〉
空中でその大爆発を見ていたルフィエに、マペットは言う。
その言葉にムッとしたルフィエは、しかし表に出さすに食い下がる。
 「信じるから、言って」
 〈……あれは――〉
 「来る!」
マペットの言葉の途中、
硝煙の中を飛び出してきた青年は、奇妙な文様だらけの腕をグッと突き出してくる。
その腕に凄まじい魔力が集まってゆくのを感じ、ルフィエは咄嗟に右手を払う。
途端、無数の光弾が発生、次々に青年へと襲いかかる。
その光弾を避けようともせず、青年はその右腕で弾き、薙ぎ、消し飛ばしてゆく。
 (足止めにもならないか)
と思考を流すのも一瞬、
今度は両の手を青年に向け、口早に唄を紡ぐ。
 「一十百千万億兆、この世に賜る愚かな生命、今ここに我断罪せん――『 ジャッジメント 』」
ルフィエの唄と同時、
本来なら天使たちの扱うはずの[十字架]が、突如空中に出現する。
その十字架を右手で操り、ルフィエはその右腕を振り下ろす。
その右腕に誘われるように、直径数メートルはあろう十字架が、青年に向かって打ち降ろされた。
が、
 「な!?」
と術を放ったルフィエ自身が驚くほど呆気なく、青年の右腕がその十字架を真っ向から受け止め、捉えた。
この[断罪の十字架(ジャッジメント)]は、決して弱い術ではない。
魔力を凝縮し、邪なるものを瞬時に消滅させる、冒険者の中でも一握りの者しか使うことのできない術。
さらに、ルフィエは唄により威力を底上げしている。片手で受け止めるどころか、並の防御術ならそれごと消し飛ばせる威力なのだ。
その十字架をあの青年は、片手で軽々と受け止めた。
いったい、どうなっているのか。
 「マペット、あいつ……なに」
 〈――恐らく"あれ"はエリクシルの第四段階、[狂戦士(バーサーカー)]です。彼奴に魔力による攻撃は一切通用しません〉
 「狂戦士、エリクシル――って、じゃあ、あいつは」
 〈はい。十中八九彼はネリエル=ヴァリオルド。しかしどうやら、邪道解放により意識を失っているようです〉
 「そんな、じゃあ、ネルくんが」
ルフィエの心中を察し、安心させるようにマペットは言う。
 〈いえ、敵ではありません。彼は――いえ、エリクシルは、魔力を求めているだけなのですから〉
 「…………魔力?」
マペットの言葉に、ルフィエは目を細めて青年――ネルを見やる。
既に[断罪の十字架]をも消滅させ、顔色一つ変えていない。
彼がネルだとはとても思えない……髪の色や瞳の色、というわけではない。
雰囲気が、違うのだ。
今の彼からは、ひたすら貪欲な"なにか"を感じる。
他のことは何も考えていない――というより、頭の片隅にすら存在しないように見える。
 「エリクシルが、どうして魔力を」
 〈……それが第四段階の能力。エリクシルが完成へと近づき、魔力を求めるようになったのです〉
 「エリクシルが、完成――」
と、その眼前。
再びネルがこちらを捉え、再び跳躍の態勢を取ろうとしている。
これ以上、彼と戦いたくはない。
 〈どうやら[断罪者]は解けたようですね……最初からネリエル君の名前を出すべきでした。しかしこれなら話は早い〉
 「えっ」
いきなり断罪者云々と言われ、ルフィエは目を白黒させる。
そんなルフィエの反応は完全に無視して、マペットは口早に言う。
 〈[ルリマ]でネリエル君を撃ちなさい。それであの狂戦士は解ける〉
 「……ルリマ、って――そんな、ネルくんが死んじゃう」
 〈彼は魔力を吸収する。[ルリマ]級の術を撃ち、早く戦いを終わらせなければ。先の傀儡の動向も気になります。
 ……大丈夫、ネリエル君なら生き延びますよ。その程度で死ぬはずがない〉
その言葉に少しだけ微笑み、ルフィエはゆっくりと両の手をネルに向け、構える。

766白猫:2008/03/24(月) 00:28:29 ID:MsoYOISQ0

[ルリマ]。
ルヴィラィの繰る[デリマ]と同じ分類に分けられる、遥か古代に禁じられた術。
[秘術]などというレベルではない……[禁術]と呼ばれる力。
個人どころか、一個師団をも軽く壊滅させることのできるほどの、強大すぎる力。
 (できる、大丈夫、できる、大丈夫――)
心中で呪文のように唱え、ルフィエは小さく息を吸う。
相対するネルも、ルフィエの"巨大な魔法を発動する気配"を感じ、ゆっくりと構え直す。
それを視界の中央で見据え、ルフィエは盛大に息を吸い、叫ぶ。
 「『 ――ルリマ・ウルトラノヴァ 』」





FIN...

どうも、最近スランプ気味の白猫です。
よくよく見なおすときにいらない部分もたくさん。投稿するんじゃなかったorz

イベントがあるみたいですがRS内とは。私参加できないじゃないかorz
新しいPCになって心機一転、RSも引退しちゃった白猫です。こんにちは。
イベント、なんとかほかのチャットとかでできないだろうか…ごにょごにょ。

さて今回の第十六章、実は十数回の削除、やり直しを行っています(だからこんなに投稿が遅れたという…)。
にっくきケンショーエンのこんちくしょうも治りましたが、
新しいPCへ変更した際、完成間近の第十六章を削除、
やる気がなくなって数日間のスランプ、
いざ書き始めても納得の作品ができない、
削除、
三つ上に戻る、を繰り返しておりました。
なんとか投稿までこじつけましたが……目的の[エリクシル完成]までもっていけなかったorz


コメ返し

>R310さん
神秘的……?(オイ
エリクシルの設定は錬金術をも用いていますので、科学、魔法、相容れないはずの二つの技術が合わさっているわけですね。
前回からかなり期間もあいてしまいましたが……これからも応援よろしくお願いします。

>◆21RFz91GTEさん
親戚に不幸……かなり期間が空いていますが、ご愁傷様です。
3Mですか、振れないですそんな武器(笑)
鎌は死神や悪魔などのマイナスのイメージが多いですし、登場人物が持ってるっていうのは少ないかもしれませんね。
私みたいに巨大な鎌を二丁も持たせる変態なんてほんとごくわ(略
房総里見八犬伝……見たことはありませんが聞いたことはあるようなないような気がします……?
スミマセンすぐググります(オイ
---
最近RS引退増えていますね……。
夏に2が開始されるそうですし、そろそろサービス停止の時期なのかしら。。。
小説を書き上げると終了ですか……私にとって先輩に当たる方なので、止めたいという気持ちもないわけではないですが、
我侭はなるべく言わないようにしなければいけませんしね。
改めての挨拶は時節が来れば。[もう暫く]の期間、どうぞよろしくお願いします。

>◇68hJrjtYさん
……説明不十分っ!!orz
[エリクシル]の著者はアラスター=ヴァリオルドだったりします。
代々エリクシルを継いでいるのはヴァリオルド家の当主なので、最後に読んだのはカナリアということになるのでしょうか。
アラスターは当代[賢者]と呼ばれたほどの魔術師だったのですが、
カナリアにそんな知識はなかったりします。ネルくんを想像してくれれば……(笑)
アクロバティックな戦闘は小説の醍醐味だと思うんですよね!(何
確かに漫画やアニメでは表せれない[登場人物の心理描写]こそ最も評価すべき点なのでしょうが、私はそんなもの糞喰らえです(コラ
小説では表しにくいアクロバットな戦闘。これからも精進しようと思います。

767白猫:2008/03/24(月) 00:28:50 ID:MsoYOISQ0

>柚子さん
はい、恐らく初めまして。
5冊目……ということはアーティ登場あたりでしょうか。
アリアン編から一気に物語は展開しますので期待してくれて大丈夫です(笑)
オリジナル……といえばそうなのかな。舞台は完全にフランテルですね。
次回作は世界を動かすつもりはありません(笑)。メンツがメンツなので話が膨らむのも無理ないのかな…。

>黒頭巾さん
おとなしくしていたというか、硬直していたというか(コラ
カスターの洞窟ですか。RSをしてた時も私はあまり通りませんが、確かお金をとられるんだっけ……?
カリアスが子供っぽい……関西弁のガキっぽい描写ですね。心得た(オイ
私も横文字はよく間違えますね……。
最近までアチャU、「ゴア・スパウト」を「ゴア・スバウト」だと思ってました(笑)
カタカナって難しいですね……英語はもっと難しいですね。

>FATさん
アネットがネルの姉、ということは本人とアネットしか知らないことです。
それを説明すると軽く一章分使ってしまいますので、またの機会に。
第四段階はあまり重要なものではなかったりします。あまり言い過ぎるとアレなので黙っておきます。
---
実のところブルーコスモスは別の私の小説、[Blue Cosmos]という小説の主人公の技だったりします。
まさか赤石で使うことになろうとは……サイカスもともと騎士っていう設定だったのになぁ……(オイ

今回はこのあたりで失礼します。
イベント云々の話題にはまた顔を出させていただきますね。
では、失礼します。白猫でした。

768ウィーナ:2008/03/24(月) 02:01:42 ID:3RWVAaPc0
白い鳥と黄色い花

〜1章〜
プロローグ >>301-303
1話 夢のFelt-tipped marker(サインペン) >>310-312
2話 Disguising as a woman(女装) >>316-320
3話 Facing(対面) >>454-459
4話 イクリプス >>526-531
5話 幻想の闇 >>584-588
6話 フェレス >>605-611
最終話 バレンタインデーの罠、最終決戦 >>653-660

〜2章〜
プロローグ >>716-719



1話 残される新記録。

「あいつはどうした、フィーズだかコーグだかという糞餓鬼は。」
「あー…フェーグですね。あの方は…如何したんでしょうかね…最近みてないですが。」

ウィッグを被ったハゲじじい…ではなかった、ハインツは頬杖をつきながら

「あの糞餓鬼がラミアから手を引くのは考えられないが………だが姿を消したということは……」
「もう、なんらかでラミアに関わりを持っている……?ということでしょうか?」
「ふむう……それも考えられる。」

フェーグ…その悪魔こそ、ニナに刻印を押した張本人。
だが…彼は悪魔でもあるが、元はネクロマンサー。
暁、ハインツを含め大半の悪魔は彼を批判している。
以前も、彼が持っている刻印を巡った戦争が勃発しているほどなのだ。
だが、彼こそが下界でトップクラスにはいる力の持ち主。

昔…ユーク=レインという悪魔が下界を占めていたころ、自分の下僕には刻印を押していた。
だが、少しずつユークを狙う悪魔が増えてきて、もう1つ刻印をつくった…。
それは…堕天使ならぬ、堕悪魔の刻印…
それを、逆らったものには押していく。
一生消えない、火傷の傷…。
それを押されたものは、全悪魔から攻撃を受けて、死んでいく。
だが、ユークには妻がいず、その後2つの刻印は次期の者に受け継がれた。
その者の名前はローラン=ハィタム。
誰にでも好かれ、そして強い。
その者を批判するものも、逆らう者もいなかった。
ローランの時代は長く続き、そして──



「暁」
「はい?」

主に呼ばれた暁は、ピザを頬張りながら振り向く。

「ラミアと、そしてフェーグを探し出せ。」
「ええ、上界にいくのですか…?」
「ワシもすぐに出発の準備をする。だが、その悪魔チックな服装をやめておけよ」
「で、でもぉ、まだピザ3枚しか…」
「いいからいけ!」
「きゃぁんっ!わかりましたぁ…」

暁はとぼとぼと部屋のドアを閉める。
暁がいなくなった後、ハインツがぽつり、とつぶやいた。

「…ラミアは抹殺、フェーグからは刻印をうばわなければ…」

769ウィーナ:2008/03/24(月) 02:02:31 ID:3RWVAaPc0
翌日、朝
いつもどおり、ニナは中心の炎に手を合わせていた。
だが、その額や頬には汗がじっとりと、流れていた。
もう、2時間ほどは待っているだろうに、一向にロイがこないのだ。
その日、ロイは来なかった。
ニナはぽすり、とベットに顔をうずめる。

(きっと、なにか用があったのよね。)

そう思う、けど…
眠れない。全く眠くならない。
心配するファミを膝に乗せ、少し撫でる。
クリスチャンだったら、あのほっぺにされたキスだって、ただの挨拶。
特殊部隊として、毎日ロマに来ているだけ。
…私のためじゃないの。
ねぇ、クロゥ…
!?
ニナはベットから起き上がると、

「クロゥ…って、誰だっけ…」

とつぶやく。
確か、遠く昔に、あったことのある…
クロゥ…
翌朝、ニナはいつの間にか寝てしまったのか、扉を叩く音で眼が覚める。
軽くあくびをして、扉へ向かう。

(ロイ、かな)

そんな想いを持ちつつ、髪の撫でながら扉を開ける。
だけど、扉の前にいたのは

「おはよう、ニナさん」

と、ロングウェービーの髪を揺らした、魅穏だった。
魅穏は軽くお辞儀をすると、

「あのね、ニナさん…ロイは今日から月舞さんの守備に回るから、今日から私がニナさんの守備に回るね。」
「ロイが、月舞に?」
「うん、王女様が月舞も狙われる可能性があるっていったから、ロイはそっちに回ったの。」

ふぅん…と興味のなさそうな返事をするが、少し気になる。
やっぱり、ただ特殊部隊だから私のところに来ていただけなんだ、と心で理解する。

ニナが狙われてる…
自分、私の大切な親友だけど
でも、嫉妬の気持ちが溢れて来る。
気になる、すごく…

「ごめん、ちょっと用思い出した」
「あ、気をつけてくださいね。いつどこから悪魔が来るかわかりませんから・・」
「…うん」

きっと、きっとただの護衛…そうだよね?ロイ…


月舞の…家の前。彼女は特攻部隊の女指揮なので城の一部にすんでいた。
もちろん、ロイも王子なので城に住んでいる。
まあ、一言に城といってもとてつもなくでかいのだが。

「あっれ?ニナちゃんおはよ!」
「おはよーッ!」

階段で遊んでいたのはメアリーとルチノ。
ニナに向かって手を降る。

「ん、もうおはようの時間じゃないよ?」
「うちらさっき起きたばっかりだもん」
「「ねー☆」」

あの日からアルビの取り合い云々でよりいっそう仲良くなったため、毎日のように一緒に遊んでいるらしい。

「あ!アルちゃん!」
「え、あっ!アルビー!」

門の方向からアルビが歩いてくると、風のような速さでメアリーとルチノが走っていく。

「あのね!あのね!今日ねー」
「はいはい」

2人の少女をあやす様に頭をなでるアルビ。
相変わらずね、と思いニナはそのまま3人と会話をしていた。

770ウィーナ:2008/03/24(月) 02:05:49 ID:3RWVAaPc0
空は快晴で、風が強く、雲一つない。抜けるような青空とはこのことだろう。
城下町、住宅街がある中に『リトルフェアリー』という名前のカフェがある。
童話に出てくる御菓子の家をイメージさせる、かわいらしい店構えである。
ここでしか味わえない腕利きのパティシエBIS手作りのケーキや、薫り高いお茶の類は町の人はもちろん、城に住んでいる偉い者たちからも好評を博していて、午後となれば広々とした店外テラスの席までもが、人で溢れ返るのが常であった。
そんな店外テラスの片隅、木製の卓を挟み、奇妙な男女の二人連れが向かい合わせに座っている。

「うむ、なかなか悪くない。あたりじゃな、この店は。」

張りのある若々しい声とは裏腹の、老紳士とした口調である。
湯気立ち上るティーカップに口をつけ、満足の息を吐いたのは、濃茶色のスーツを着た、金髪碧眼、単眼鏡の美青年─ハインツだった。

「はい、そりゃあもう大当たりで御座いますよ─」

彼の対面、瞳を潤ませて頬張ったケーキを租借しているのは、侍女服姿の少女─暁。
下界の時の真紅系統の服とは違い、白いヘッドドレスにピンクの髪を揺らしている。
提灯袖の黒いワンピースは厚いウール地で、ぴしっと糊付けされた襟と袖口が清潔な印象。
スカートは長く、ぴったりと脚を覆う黒いストッキングが、僅かに足下を露出している。
ワンピースの上には、地味な白いエプロンをかけている。

「このシフォンケーキの美味しさなんてもう……ああっ、舌が蕩けてしまいそう。暁は幸せです………!」
「やかましい。食べ物のことになると大袈裟になりおるな、貴様は。」

美食に舌鼓を打ち、食べ放題のケーキ皿を卓にうず高く積み上げていく人造人間に、ハインツは辟易した様子で文句を述べた。

「ご、ご自分が話しかけてきたんじゃありませんか……。もぅ。もぐもぐもぐもぐ……はふぅん、美味しゅう御座いますぅ」

不平を漏らした暁は改めてケーキに視線を落とし、ご機嫌で食事に専心し始める。

「ったく……緊張感の欠片もないのう」

裏切り者ラミアを追ってフランテルにやってきたハインツ。
死霊魔術師たちが拠点となる『遺跡』に必要な機材を運び込むまでの間、彼は腹が減ると動けなくなるポンコツマシンを引き連れ、まずは食事を摂る事にしたのだった。

「まぁ……まだ時間はある。どうせあの遺跡はハズレじゃろうし、この機会に"久しぶりの"フランテルを探索するのもよかろう。…ワシも元は人間。お前も人間を元にした人造人間かて、怪しまれることはなかろう。」
「ひゃ、ひゃたくしはひゃくひゃでひゅ(わたくしは悪魔ですぅ)」

771ウィーナ:2008/03/24(月) 02:06:44 ID:3RWVAaPc0
この城下町にはラミアがいる─ハインツの勘が、そう言っているのだ。
彼の足下には、雑誌類が満杯のビニール袋が置かれている。
参考資料として、先ほど暁に購入させたものだ。
彼は袋から観光マップを取り出して、なにか──直感に引っかかる怪しい場所がないものかと、真剣な表情でぱらぱらとページを繰る。その手が、とあるページでぴたりと止まった。

「ほう、西には温泉が湧くのか。何々…イフィリト温泉?
「此方の露天風呂に久々に行って見たいものよのう。」

一気に顔を緩め、嬉しそうに夢を語った若作り老人に、侍女からの一言。

「ご自分だって緊張感ないじゃないですか。ジジイ丸出しじゃないですか。温泉に浸かってもご主人様のハゲは治療不能で御座いますよ?」

アレクの杖が唸りを上げて、暁の頭をひっぱたいた。

「黙って喰っとれメカデブゴン、川に沈めるぞ………!」
「ひぃん………わたくしそんな大怪獣みたいな名前じゃないもんっ」

そうやって騒いでいたら、女性店員がやって来て注意された。

「あの、お客様……お静かに願います」

リトルフェアリーの制服は、薄いピンク色の半袖ワンピース。
襟と袖口だけが白く、細いピンク色のリボンが胸元を飾る。
スカート丈は短く、純白のニーソックスとの相性もいい。
白いエプロンは肩にフリルが付いたデザインで、腰の後ろがリボン状に結ばれている。
着こなしているのは身長も体系もまあまぁのビーストテイマー。
まさしく、妖精のような愛らしさであった。

「申し訳ない」

片手を頭の上に乗せ、へりくだった上目遣いで素直に頭を下げるハインツ。
鼻の下がだらしなく伸びている。

「あー、ご主人様、視線がえろいです。そのモノクル、透視機能が付いているんじゃないですか?」

ジト眼の侍女から糾弾を受け、しかしロストテクノロジーを扱う天才博士は冷静だった。

「貴様余計な、もとい人聞きの悪いことを言うでない。そんな夢のような機械があるはずなかろう」

演技がかかった低い美声で、非常識の塊である人造人間を前に平然と常識的な回答を返す。

「で………では、ごゆっくりどうぞ」

エプロンドレスのテイマーは、にっこりと一礼し、そそくさと早足で遠くへ行ってしまった。

「ふふん………この時代の淑女は奥ゆかしいのう。──貴様も見習わんか、おい」

言われた暁はむっと拗ね顔になり、当てつけのようにモンブランを一口で頬張る。
ばくんごくん。二秒で嚥下し、お茶を一口飲んでから厳しく反論。

「んっく。お言葉ですがご主人様……よろしいてすか?あんなのは所詮アルバイトの小娘です。真の侍女であるわたくしに及ぶはずが御座いません。それに……わ、わたくしだってああいう可愛い服を着れば、そりゃもう素敵なメイドさんが出来上がりますよ……!」

俯き、地味な黒い侍女服を涙目で眺め……そして、ちらっと視線を上げて主を見る。
しかし、ハインツはまったく聞いておらず、温泉の特集記事を熱心に読みふけっていた。

「ご……ご主人様の馬鹿ぁっ……」

滂沱と涙を流した暁は、食事のペースを一気に上げた。
そしてその日──人造人間の自棄食いによって、リトルフェアリーのバイキングメニューは余さず食べつくされ、今までの大食い記録を大幅に塗り替えるという伝説になったのである。

772ウィーナ:2008/03/24(月) 02:15:28 ID:3RWVAaPc0
ヽ(´・∀・`)ノ〔*.....**★Good Evening★**.....*〕
というよりもう真夜中です。
眠くならずかたかたと打ち込んでいきましたら、カフェ(暁&ハインツ)
ネタが長くなってしまいました。
まあ、いいでしょう!二人ってこんな人。
まずハインツはエロジジイっと☆
次に大食い暁。
この日いくつのケーキをたべたかって?
ケーキ1個のカロリー300〜400。暁1日の摂取カロリーは3万。
1食1万として10000÷350=28,5
ということは28個、もしくは自棄食いのためそれ以上…
人間じゃないですね、いや悪魔ですが。その前に人造悪魔ですが。
というかロボットが食できるのか、という疑問点がありますが置いておいてください。
私はケーキ、最高でも3つ・・・うーん、4個いけるかな!(
まあ、次回は月舞とロイの密接をニナが追う!な感じです。
すぐ仕上げますので
((((o´ω`o)ノシ

773ウド鈴木です:2008/03/24(月) 05:33:24 ID:65siYsZo0
aer

774◇68hJrjtY:2008/03/24(月) 13:17:39 ID:Lmfd0Nj20
>FATさん
時折FATさんのSSブログを見に行ってます(*´д`*) って、こんなトコで言うのもなんですが。
でもこっちで逐一コメしてるようなものですし、改めてコメはしませんでした(笑) ブログ形式で小説ってのも気が楽で良さそう。
さてさて、それはともかくとしてレンダルたちのチタン探し。ジム=モリさんのお陰で普通の楽しい旅(?)を予想してましたが
楽しいだけではなくて三人の語らいとかデルタの内緒の気持ち、レンダルの重い言葉など色々な面が見え隠れしていますね。
それぞれの胸中はおもんぱかる部分もあるところですがやっぱり楽しそう、この一言に尽きます。もう一緒のPT入れて欲しいです(何
ドレイツボも忘れてはいけない気がしますが…チタン探し、まだまだ何かありそうな予感。続き楽しみにしています。

>21Rさん
21Rさんも引退ですか( ´・ω・)
サイトの方は更新継続されるのでしょうか?でも、21RさんのサイトはRS関係以外にも色々コンテンツありましたしね!
イベントの方もできれば21Rさんがここに訪問している間に色々決まると良いのですが。
ともあれ小説が完結するまでは楽しみにお待ちしています。

>白猫さん
冒頭のサーレが「竜巻」を発動した部分を読んでいた瞬間、リアルで地震が発生して死ぬほど怖かったです(((( ´・ω・))) →12:50 神奈川県震度2
遂にネリエルのエリクシルも第四段階。グランドクローを使っているというのは狂戦士になったせいで本来の武道面が露出してきたということでしょうか。
今回はルフィエとマペット視点での話の展開でしたが、お陰でネリエルの豹変ぶりがよく伝わりました。
デリマと同レベルの禁呪、ルリマ。名前的になんか可愛いくてルフィエが使用者というのも頷けます(ノ∀`*)
ルフィエの思いが篭った一撃、ネル君受け止めてー!(コラ 
エリクシル最終段階の解放が予想される今後の展開、続きお待ちしています。
---
おっと!エリクシル著者はアラスターさんの方でしたかorz
どうやらカナリアさんとアラスターさんが混ざってた模様。読み取り不足申し訳ない。でももう大丈夫です!うん!
戦闘面のアクロバティックさももちろんのこと、登場人物の心理描写も白猫さんしっかりやってるじゃないですか(笑)
戦闘面と心理面とがちゃんと書き分けられていると思いますよ。

>ウィーナさん
ユーク=レインとローラン=ハィタムという悪魔の歴史が深いなぁと思っていたらいきなりハインツ&暁のコンビが(ノ∀`)
この二人にかかれば地下界の歴史も午後の茶飲み話にしかなりませんね(笑)
とはいえハィタムという姓を持つニナとローラン、しかしフェーグがニナに「刻印」をつけた…まだ謎めいてる部分もチラホラですね。
謎めいた部分といえば「ラミア」と「クロゥ」もそうですね。2章の冒頭に名前だけが出てきたクロゥはともかく、ラミアも重要人物の予感。
イフリィト温泉とか凄い行ってみたいんですが(何)、この町にラミアが居ると確信しているハインツ。月舞を守護するロイ。
二つのシーンがとっても気になります。次回楽しみにしています!

775ニートの中の人:2008/03/24(月) 17:11:11 ID:cZ5/OlM60
-第二話-夜明け

 見渡す限りの血の海。そこに浮かぶちっぽけな孤島。それが僕。でもそれに恐怖を感じない。見慣れているからだ。
 血の海からうめき声が聞こえる。僕は声の主を見ようともせず踏みにじる。残虐に。冷酷に。ただ無表情に踏みにじる。ただ虫を踏み潰すと同義だ。感情など沸くわけがない。
 ―そろそろ後退しないと不死者共が集まってくるな。僕は身を翻す。下種な屍烏などがくると厄介だ。ほら、血の匂いを嗅ぎ付けた餓鬼がやってきた。
 生臭い鉄の匂いがする。僕の心臓は鼓動を速くした。鉄の匂いがするとすぐこれだ。陳腐な屍烏と同じじゃないか――。そんな考えは一瞬で捨てた。
 僕とあろう者が何を考える――。僕はそう思う。僕はそこらの不死者とは違う。僕は不死者の――。
 
 

 ローストはベッドから跳ね起きた。心臓が痛い。服が水を被ったように体にまとわりついてくる。無意識にロースターは心臓に手を当てた。
 何だ今の夢は――。
 冷や汗が額を流れ落ちる。まだ鮮明に思い出せる。血の匂い。グロテスクな不死者の群れ。そして――その中に立つ自分。頭が痛い。脳を抉られたような痛みに、ロースターはベッドに顔を埋めた。
 呼吸を落ち着かせる。夢魔の仕業かもしれない。ロースターはそう決め付け。自分に言い聞かせた。
 とりあえず風呂に入らなければ――。ベッドから這い出し、汗で重くなった体を引きずりながらバスルームへ向かった。
 レリアがバスルームに居るか確認する。居ない。ロースターは服を脱いで湯船に漬かった。入る瞬間、自分の体が氷のように冷たいことを知った。
 お湯の効果はてきめんだった。芯まで冷えた体を暖め、思考を柔軟にしてくれる。忘れよう。夢魔に構っていたら限がない――。ロースターは今後の事を考えることにした。
 レリアとの出会いから一夜。引き受けたものの、『バイト』の内容は聞かされていない。体が疲労困憊で、考えるゆとりもなかったからだ。
 彼がブリッジヘッド―大陸有数にして最大の港街だ―の酒場に辿り着けたのは幸運だった。何しろ、ソルティケープの地下で記憶を失って呆けていたのだから。
 通りすがりの旅人に会ったのは本当に幸運だった。自分が居た場所がソルティケープといい、怪物や幻術を使い、外部との接触を絶ったケープ族の巣窟と知ったのはその後である。
 スマグで限定発売されている移動魔法のかかった浮遊絨毯に乗せられ、彼は考えた。
 俺はいったい誰なんだろうか――。
 思い出そうとすると、頭痛がする。吐き気がする。どこからか、血の匂いもした。彼は記憶を取り戻すことより、身の安全を確保しようとした。
 だから情報が行きかう酒場へ行き、何かしらの情報が掴めれば、と思ったのだ。実際にそう提案したのは親切な旅人であったが。
 幸い内部・外部に限らずすべての情報を失ってるにしろ、彼には思考能力が健在していた。旅人にお礼を言い、彼は街中で聞きまわった。―俺の顔に見覚えはないか―と。
 だが実際は悲惨だった。大抵は狂人と見、残りは笑うか烈火の如く怒りだした。「俺を馬鹿にしているのか」、と。ほんの少数に満たない親切な人も、首を横に振るだけだった。
 つくづく幸運な男だ――。ロースターは思った。レリアとの出会いも奇跡だった。こう偶然が重なると、気味が悪いものではあるが。
 ただ――。天井を見上げてロースターは一息ついた。自分の手をかざし、電灯を掴む姿勢になった。
 この手で彼女に何がしてあげられるのだろうか――。彼は血の匂いがする自分の手を見つめた。

 ――あとがき――
 進展がないのは仕様です。早くしようとは思っても手が止まらん\(^o^)/ミジカイケド
 よく考えれば自分の駄文にコメントを下さったのに自分は他の皆様の素晴らしき小説に対し
 まったく自分の感想を言っていない事に気づく。
 自分は小説は楽しむがそこにコメントをするほどの文章力もないし、そんな僭越なことはっ!
 と言い訳。慣れてきたら皆様の小説にも自分の腐れコメントを…と。ほんと申し訳ないです。


 自分の駄文に素晴らしいコメントを下さった皆様方へ雑なものですが返事を。
 

 >幕間さん
 lestでしたっけ……過去形。
 気にしては負けだと思ってる。もう名前の変更は\(^o^)/
 
 >FATさん
 初めまして。
 一応ワナビ(ライノベ作家志望)ですが……
 自分のような陳腐がなれたらこのスレの皆様方なれますよね……
 ご期待に応えられるようガンバリマス

 >皆様方へ
 これからもこんなgdgdで物語の進展のない駄文ですが
 温かい目で見て下さると作者が飛び上がらんばかりで喜びます。
 どうぞこれからもよろしくおねがいします。

776幕間・RS昔話:2008/03/25(火) 19:05:03 ID:of5VjV0.0
プリ 「あ、質屋だ なんか売ってお金にしよ 金なくなっちゃったし 貧血だよ」
テイマ「それを言うなら金欠 それよりもっと大きな問題がある」
プリ 「何?」





テイマ「売るものも無い」
プリ 「お腹すいた・・・(´・ω・`)」
---------------------------------------------------------------------
テイマとプリが森を歩いていると薄気味悪いおばあさんが若い女性にりんごを渡していました

プリ 「あ!あのおばあさんにりんごを分けてもらおうよ!」
テイマ「まて! …ちょっと見てろ」

若い女性がおばあさんからりんごをもらい口にすると・・・

女性C「―――っ!!」

女性は急に倒れてしまいました

プリ 「あのババァ りんごに毒を??!(「女性C」ってなんだ? 「A」じゃないの?)」
テイマ「そうみたいだな・・・(「C?」)」

プリ 「テイマいきなさい!あのババアをとっちめてりんごの毒を全部ぬいてもらうのよ!」
テイマ「YES,BOSS」

テイマはおばあさんをまるで寺や霊媒師ののご厄介になってそうな姿へと変えていきます

ババア「後生だ!許してくれ!」
テイマ「じゃあこの毒を全部抜け でないと・・・」
ババア「今すぐやります今すぐやります!」






テイマとプリはりんごをおいしそうにかじりながら山を下ります

毒入りりんごを食べてしまった女性を置いて
小人共「白雪姫ー!」
---------------------------------------------------------------------
テイマとプリは夜中にある町にたどり着きました
どうやらこの町では舞踏会があったようです

テイマ「ん?」

テイマが歩いているとその目の前に綺麗な透き通った靴が転がり落ちてきました

テイマ「これは・・・」

テイマはその靴を拾い上げ…





靴をダイヤだといって質屋に入れ、そのお金で豪華な食事をとりました
---------------------------------------------------------------------

おばあさん「おじいさん、バカ二人から手紙が届いてたわよ」
おじいさん「ん?どれどれ・・・」

おじいさん「『じいさん、ばあさんいまだに年甲斐も無くお元気ですか?僕達は予定の道の半分を超えてあと少しでおじいさんとおばあさんの家よりも幸せな鬼が島に着きます。奪った看板もとうとう100の大台を越え、どんどん貴方たちを殺スための力がついてきたと感じられるようになってきました。次に会うときは貴様らの命は無いものと思ってください。それではまた』」



おばあさん「プリにきびだんごを上げなかった事をまだうらんでるのかねぇ…」
おじいさん「それは、ないだろ」
---------------------------------------------------------------------

>>ニートの中の人さん
過去形はedじゃない? play→played って感じに
変化するのもあるけどestは最上級じゃ・・・(tall→tallest)

>>ウィーナさん
ケーキのサイズはどんな大きさでしょうか?
自分はホールなら3個まで食べた事がありますw

そして一つ反省
2〜3日書いてないだけでテイマとプリの喋り方忘れてしまったwww
やべw喋り方おかしいかもwwww

777名無しさん:2008/03/25(火) 19:10:06 ID:ylB6ENkg0
赤石じゃないけど
ネトゲ関係の小説で一番印象に残ってるのは
メイプルの初心者物語だった

778ウィーナ:2008/03/26(水) 00:19:46 ID:3RWVAaPc0
白い鳥と黄色い花

〜1章〜
プロローグ >>301-303
1話 夢のFelt-tipped marker(サインペン) >>310-312
2話 Disguising as a woman(女装) >>316-320
3話 Facing(対面) >>454-459
4話 イクリプス >>526-531
5話 幻想の闇 >>584-588
6話 フェレス >>605-611
最終話 バレンタインデーの罠、最終決戦 >>653-660

〜2章〜
プロローグ >>716-719
1話 残される新記録。 >>768-772


2話 刻まれる亀裂



城下町にあるカフェ、『リトルフェアリー』の店外テラスには、お茶を愉しんでいるニナの姿があった。
木製の卓に行儀よく腰掛けて、チョコレートシロップのかかった焼きたてのシフォンケーキと、紅茶をいただいている。
対面ではアルビがアイスコーヒーのストローに口をつけていた。
その横に、ルチノとメアリーの姿もあった。
2人はケーキを美味しそうに頬張っていた。
そして、ケーキを一息早く食べ終わったルチノはニナの方を向き、

「あのね、るち、いめちーんしたの、どおかな、ニナちゃん」
「ツインドリル」

アルビは見たままの感想をいった。

「もぅっ、アルちゃんには聞いてませんよーだ」

べーっと舌を出して、ルチノはおどける。

「それをいうならイメチェンだけど…うん、そうね──」

ニナは苦笑して、ルチノの新衣装を吟味した。
ツインテールをベースにして、螺旋状にロールをかけた艶々の髪。
髪を飾るリボンは、メアリーとおそろいの赤色だ。
少し小さなを包むのは、ノースリーブのワンピース。
アクセサリーを含め、赤系統のゴシックロリータで纏められている。

「うん、可愛いよ」
「えへへ……そう言ってもらえると嬉しいーっ」

ルチノは服と同色に頬を染めて、もじもじと照れる。

「でも、そろそろ帰らなくて平気?あ、あのお母さんとか心配するよ」
「えっ?まだ午後の2時だけど…ね、居ちゃだめ?」
「いや、俺たちはお茶をしているわけではなく監視を─」

アルビが何か言いかけたが、途中でニナが遮った。

「アルビ!?な、なにいってるの?私たちはたまたまここで待ち合わせしているだけで…」
「ふふ、すまない。そういう設定だったな」
「設定じゃなくて、実際そうなんです!」

意味ありげに含み笑うアルビと、狼狽した姿で怒っているニナ。

「なんのことなの?」

首をかしげたルチノとメアリーの頭に疑問符が浮かぶ。慌ててニナが取り繕った。

「いいえ、なんでもないわよ?気にしないで。アルビはちょっと頭がおかしいの」
「う、うん、それはよく知ってるけど……」
「………お前等はあれだ、本当自然体で毒を吐くな」

アルビは眼に不満の色を浮かべてストローを咥え、ぴこぴこ動かしている。

779ウィーナ:2008/03/26(水) 00:20:47 ID:3RWVAaPc0
「あー、ニナちゃんもここのシフォン好き?」
「うん、美味しいよね、これ」
「実はルチもすっごく好きで──ここで午前中だけ開催してるケーキバイキングによく行くの」
「へぇ、それは初耳」

憧れのニナが会話に乗ってきてくれたのが嬉しいのか、ルチノは大きな瞳に星々を煌かせた。

「うんっ、それでね、たくさんケーキを食べて新記録を出すと、お店の一番目立つところに記念写真を飾ってもらえるの!えへへ……実はるち、恥ずかしいけどこの前記録を更新して…」

ルチノは意外にも大食いの子らしかった。
こんなに小さな身体に何十個ものケーキが収まるのかと思うと、人体の神秘を感じてしまう。

(……太らないのか……そんなに食べて)

そういう体質なのかもしれない。とてもとてもうらやましい話だった。

「じゃあ、今はルチノの写真が飾られているということね」
「うんっ、ほらあそこに───あれぇっ!?」

ルチノが指差したのは、扉の脇に飾られている額縁だ。
しかし写真に写っているのは彼女ではなく──どこかぼんやりとした雰囲気の、侍女服を着た少女だった。

「あら、記録……更新されちゃってるね…」

残念そうな声で、ニナは呟く。

「う、ううっ……せっかくがんばって二十個以上食べたのにぃっ」

ルチノは涙目で肩を落とし、たったいま運ばれてきたシフォンケーキをフォークでぶすりと刺し貫いた。
そして悲しみを甘味で紛らわそうとでもいうかのように、パクッと一口で小さな口に放り入れてしまう。
モグモグと租借し、あっさり嚥下。

「うわ」

可愛いプリンセスの意外な一面を直接目の当たりにして、ニナは唖然と口を開けた。

(この子より大食いって……上には上がいるのね──特に目指そうとは思わないけど)

感心しながらも、意気消沈する彼女の肩をそっと叩いた。

「元気出して、ルチノ。負けるのも仕方ないよ、ほら」

ニナは新チャンピオンの写真を指差して言う。

「あの写真の人をよく見て、長袖でわかりにくいけど、二の腕ふといじゃん」
「えっ……?」

ルチノは顔を上げ、改めて写真を見詰め、高い声を出した。

「あっ、そうだねっ!よく見たらおでぶさんだねっ、こいつ!──なぁんだ」

ざまーみろだねぇ──ルチノはマシュマロみたいなほっぺたを緩ませて、ご機嫌の様子だ。

「……嫌なコンビが誕生した。どうしたものか」

ずっと黙っていたアルビがぼそりと呟く。

「「なにか言った?」」

二人の少女が声をそろえてアルビを睨む。

「いいや?なにも」

どうもニナとルチノは、性格的にウマが合うようだった。非常に話がかみ合って盛り上がる。

780ウィーナ:2008/03/26(水) 00:23:00 ID:3RWVAaPc0
そうやって気の合う友達とのティータイムを満喫しつつも、ニナは周囲への気配りを忘れない。

(……ようやく来たか……)

ニナの双眸がきらりと光った。
視線はニナの家、そこへ向かう坂道の方から一人の青年が歩いてくるのを確認した。
ロイだ。彼はいつもどおり、簡素な私服に着替えている。

(興味なんてなかったのよ?た、たまたまお茶しているだけ…)

などと自己弁護しつつ、ニナの護衛、この未曾有の危機に対し、ニナはこう結論した。

(ふんっ、私はロイを信じてる……。尾行なんて浅ましいこと、するわけないわ。そんなのは、私の流儀ではないからね)

どんな誇り高きニナが今、どうして護衛を遠くから観察できるベストポディションに陣とっているのかというと、それには深いわけがある。
ルチノとメアリーと話をくぎってニナの家に行こうとしているとき、アルビが耳元に来て

《ニナ。どうせお前はロイたちの後を尾けるんだろ?俺も行こう》
《な、なんのこと?私は今日ショッピングに出かけなきゃいけないから、い──忙しいんだけど》
《じゃあそれでいい。ショッピングとやらに付き合おうと言っている。なんでもいいから、さっそく待ち合わせ場所を決めよう。そうだ、双眼鏡が必要だろうか?》

などと勝手に話を進めてしまったのだ。

(そして……適当に決めた『ショッピングに行くための』待ち合わせ場所が、なぜかニナの家の近くになっただけ。とんだ偶然よ)

きっとそれはニナの家の前にカフェがあるのが悪いのであって、それ以前に理由はない。ないったらない。
ロイを凝視していたニナの思考が迷宮から現実へと帰還すると、席から立ち上がったルチノがメアリーを起こして、ニナの家の方を見ていた。アルビは座ったまま身体を捻り、後方に向けて双眼鏡を構えている。
今や八つの瞳が、青年を熱心に見詰めているわけだ。

「あれってロイくんだよね」
「にーさんだ」

ちょこんと指を傾けて、ルチノとメアリーがロイを指差す。

「え、ええ。そうみたいだね。ニナの護衛じゃないかな」
(で、なんでニナの護衛のときだけ、ニナより早く来てるの?)

ロイをムッとした顔で睨み付ける。

「おい、ニナ見ろ。──ターゲットが出てきたぞ」

探偵か殺し屋のようなアルビの台詞に顔を上げると、ニナが扉から顔をだして話しかけていた。
そして、ニナの家へ入っていった。

「うわっ!な、なんか凄い展開にっ……!」

ルチノは興味津々の様子である。
この動きにはニナも少し驚いた。

(なんで、ただの護衛なのに家へはいるのかしら…?)

と思ったら、荷物をとりにいっただけで、二人はすぐに家を出た。
そして二言三言楽しげに言葉をかわし、『リトルフェアリー』の店外テラスへ入ってきた。

「ロイ、今日はありがとうね」

月舞は、ふと真顔になって礼を述べた。

「しょうがないから、護衛は…」
「でも、荷物まで持ってもらって、なんか悪いね」
「へっちゃらですよ、これくらい…」
「そう?ありがと」

うん、とロイは小さな首肯で応え、新しい話題を探して口にする。

「あの、聞いてもいいですか?」
「ん?なに?」
「月舞の眼って赤いですが……カラーコンタクトかなにかを嵌めているのですか?」

問いを受け、少し大きくなった真紅の双眸に、青年の姿がうつっている。

「…………」

しばし沈思していた月舞は、ふとロイから視線を外し、彼の後方を見詰めた。

「なに……?私の後ろに……なにかあります?」
「ふふ、いや?なんでもないよ。それより、あたしの眼……だったよね?いいよ、特別に教えてあげる」

月舞は卓に片手をつき、身体を乗り出してきた。

「近づかないとわかんないよ、ロイ」
「はい」
「この眼は──カラーコンタクトなんかじゃ、ないの」

吸い込まれるように深く濃密な色彩を湛えた、真紅の水鏡。それがゆっくりと近づいてくる。

「わ……」

じっと、月舞の眼を覗き込むロイ。綺麗だな、と素直にそう思う。

「ほら……もっとよく見て?」

彼女の美声は芳醇な葡萄酒のように、青年の心を惹きつける。
言葉とは裏腹に、真紅の瞳はすっと細められていく。

「は、はい……」

促されるまま、ロイは身体を乗り出して──

781ウィーナ:2008/03/26(水) 00:30:12 ID:3RWVAaPc0
ニナたちは、若い女性客で賑わう『リトルフェアリー』の店外テラスの、ロイが座る席の後方──6メートルほど離れた席に座り、二人の趨勢を見守っている。
太い樹木が陰になって、二人からは気づかれにくい位置だ。
店内は混んでいる。いかに地獄耳のニナといえど、この距離では二人の会話を拾うことはできない。
そしてたった今──歓談する二人の様子を、厳しい視線で睨みつけていた一行の前で、信じられない状況が展開しつつあった。

「なっ!」「む……!」「「ふわわっ!」」

その原因は、彼女たちの視線の先にある。
いましも片手を付いた月舞が身を乗り出して、そっと眼を瞑ったのだ。
まるでキスをせがんでいるように。

(ちょ、ちょっと!!)

ニナは無意識のうちに立ち上がった
抗いがたい寒気を感じる。胸が苦しい、心臓がガンガンと早鐘を打つ。

「……っ、く」

金縛りにあったように硬直し、涙さえ滲ませているニナの眼前で、ロイもまた卓に片手をついて、キスをせがむ少女のに応えるかのように身体を乗り出してきた。
月舞とロイ、二人の顔がゆっくりと近づいていき──

「ひ……っ」

息が詰まって、声は掠れた悲鳴にしかならなかった。

「あ〜〜あ。やっちゃったね、これは」

ルチノが呟いたとおり、二人の顔は密着している。そしてそのまま動かない。
一秒、二秒、三秒、四秒を経て、ようやくロイは仰け反る様に少女から身体を離した。
月舞はいまだ身を乗り出した体勢のまま静止している。彼女の顔は色めいた赤みを帯び、陶然と表情を蕩かせている。ふとこちらをみて、くすりと微笑みを浮かべた。
勝ち誇るように。

「っ……そんな……」

身体を掻き抱いて、ニナは震える。顔色は真っ青だ。

「落ち着け、ニナ。まだそうと決まったわけでは──」
「ううん」

アルビが口にした希望的観測を、ルチノが打ち砕いた。

「如何見ても、完っ璧、ちゅーしました、ちゅー」

さも面白そうにはしゃいでいる。

「……すこし黙れルチノ。この角度からでは──」

珍しく強い声でルチノを窘めるアルビ。だけど…

「…………っ!」

唇を血が出るほどかみ締め、前方を凝視した。
張り詰めていた糸が切れたかのように、全身から力が抜ける。
呆然とした表情でニナはくずおれ、地面にぺたりと座り込んでしまった。
澄み渡る湖面のようだった青瞳はいまや暗く濁り、焦点が合っていない。

「お、おい……ニナ……!」
「えっ……!?ニナちゃんっ!?大丈夫、ニナちゃんっ!?」

ルチノ、メアリーとアルビが、突然座り込んだニナに驚きの声を上げて立ち上がる。
この騒動で卓が揺れ、アリスのティーカップが地面に落ちて割れた。
それは、なにか大切なものに亀裂が走るような音で……喧騒の中でも、不思議とよく響いた。

「えっ……!?あっニナ………?」

カップが割れる音に気づいたトイが、こちらを振り返った。
彼と眼が合ってしまったニナは、こみ上げてくる感情を如何することもできなくて、

「ひっ」

じわっ……
弱々しく座り込んだニナの瞳から、涙が零れる。

「ど……どうしたっ!?」

ただならぬ彼女の様子を目の当たりにしたロイは、慌てて駆け寄ってくる。
その後ろから、月舞が勝者の余裕をもって歩み寄ってきた。
彼女は、ロイの呼びかけにも反応を示さぬニナを見下して、

「あら、ニナちゃんったら……覗き見なんて、はしたないね?」

その一言が、自失をしていたニナの激情に火をつけた。

「っ、あんたは……っ!!」

プチンと、心の枷が千切れる感触。心臓が大きく脈打って、濁った青瞳の中で暗い炎が燃え上がる。湧き上がってくるものは殺意と呼ばれる破壊衝動だ。
そして、何かが音を立てて砕け散った。

「「ッ!?」」

驚愕は二人のものだった。
ニナは肩を、月舞は左手の平を押さえている。

「っ……あたしのまで壊しちゃうなんて」
「……っ!」

月舞が聞き取れぬほどの声で何事かを呟いた瞬間、ニナは肩を押さえて前傾した。

782ウィーナ:2008/03/26(水) 00:31:10 ID:3RWVAaPc0
「っ──はっ──」
「ニナ!どうしたっていうんですか、ニナ!」

尋常でない様子の彼女に、ロイは肩を掴んで呼びかける。
ふらりと顔を上げたニナは、青年の顔を間近で見てしまい、

「ッ……!!」

激情に顔をゆがめて身を捩った。
痛む肩を鷲づかみにしたまま、勢いよく立ち上がり、そして──

「うあっ!?」

自分を裏切った青年を突き飛ばして、街中へと駆けていく。

「待って!待ってくださいニナっ!」

倒れかけたロイは辛うじて体勢を立て直し、その後を追っていった。



『リトルフェアリー』から走りさったニナは、夕暮れから夜色に染まりつつある町を走る。

「……っ……っ……」

駆ける速度が人並みで、走行フォームはぐちゃぐちゃだ。唇を強く噛んで、目から滲み出る何かを必死に堪えている。悲痛な表情だった。

(嘘……嘘だ……!あんな、あんなこと……!)

脳裏には、ロイと月舞がキスをしている──あのシーンが何度も何度も再生されている。

(どうして!どうしてなの……!?私よりも、月舞の方がいいていうの!?そんな、そんなのって……許せない……!!絶対……っ)

──ずっと一緒だって、言ったのに。

ふと気が付けば、噴水の前──この間花束をもらった場所が目の前にあった。あの時も──一緒にいたのだったか。
ロイと、二人、一緒に。

「は……ッ」

ズキンと強く肩が軋んで、ニナは胸を押さえて前傾する。
辛くて、痛くて、泣いてしまいそう。
そこに──

「待って……ニナ……!!」

後方からロイの声がした。

(──っ)

そう──いつだってそうだった気がする。彼はニナが泣きそうなとき、いつも傍に来てくれる。
城にはいってすぐ、親に殺されそうになったり、ロマのお婆さんが殺されたと泣いていたときも、いつだったかブラウンベアーに襲われ死にかけたときも、そして──つい先日、人間じゃないかもしれないと嘆いたときも……いつだってロイは傍にいて、ニナの味方になってくれた。だから、だからこそ今までずっと、ニナはやって来られたのに……
なのに。

「ちょっと……待ってください……っ」

肩にロイの手が触れた。

「離してよ!!」
「ッ!?」

ニナは、青年の手を振り払って、きっ、と向き直った。涙を堪え、怒りだけを面に出して。

「あ、貴方──よくもぬけぬけと、私の前に顔を出せたわね……!」
「はぁ……はぁ……そんな……だって、いきなり走って行くから……如何したのかと思って」
「この期に及んでそんなことを!?この……裏切り者っ!!」
「……う、裏切り、もの?」

ロイがびくりと立ち竦む。
そんな嗜虐心をそそる様子を見ても、ニナは全然嬉しくなかった。辛くて、辛くて、痛くて、痛くて、自分の胸に自分で刃を突き立てているようだった。
ニナは彼に、今まで何度も罵声をぶつけてきたけれど、それでこんなに苦しい気持ちになったのは、初めて。なのに言葉は止まらない。止められない。

「そう──裏切り者だ、貴方は!よりにもよって、私の目の前であんな……っ!私が今、どんな気持ちでいるか……っふ……わっ……分から、ない、でしょう……っ……っ」

激情を乗せた糾弾が、最後には辛酸な泣き声に変わっていた。

「……っ……ぅ……」
「ニナ……」

ぎりぎりで涙を堪え、唇を噛むニナを見たロイは、困惑した様子で立ち尽くしている。
もう──限界だった。
涙腺が決壊しかけたニナは、勢いよく踵を返し、道を早足で進む。

「待ってってば……!ニナ──」

ロイは必死で彼女に追いすがろうとするが、
パシッ──
振り返ったニナは怒りのままに、彼の頬を平手で叩いた。

「あ……」

なにをされたのか分からない──そんな呆然とした顔で、青年は腫れた頬を押さえる。
ニナは一杯に涙をためた瞳で真っ直ぐにロイを見据え、

「──さようなら」

決定的な拒絶。二人の絆を断ち切って、その場から走りさる。
掌には、ずっと熱い痛みが残っていた。

783ウィーナ:2008/03/26(水) 00:39:22 ID:3RWVAaPc0
月舞はなにをかんがえてるのでしょうね!
私にもわかりません(
兎に角、ロイを利用してニナを陥れようとしてますが・・w
次回、暁とニナ急突撃っ

コメント返し。

>◇68hJrjtYさん
暁とハインツは私があそんでますねww
でも次回、おばかで大食いの暁の本領発揮。
ラミアは…ニナですね、うん
自覚はないのですが…
クロゥは内緒・b・
ここで月舞がとんでもない行動にでましたが、どうなんでしょう!

>幕間さん
ホール3@@?
すごいですね…
大きさはお店でうって6切くらいでしょうか・・・
ルチノの食べている数からしてきっと暁は40個くらい、いったんじゃないでしょうか・・
しかしホール3個・・・・

784R310改め国道310号線:2008/03/26(水) 01:29:17 ID:Wq6z33060
第一話 〜ミニペットがやってきた!〜

前編 >>487-490 後編 >>563-569





こんにちは、僕の名前はエムロードと申します。
ギルド「セレスト・クルセイダーズ」の副ギルドマスターをしています。
彼とはもう一生会うことは無いと思っていましたが、まさかあちらから会いに来るとは思ってもみませんでした。


第二話 〜狼男と魔女 1 〜


オアシス都市アリアンの昼下がり。
街の大概の者が昼食を終え、一息をつく時間である。
セレスト・クルセイダーズのギルドホールも例外ではなく、エムロードは読書をしながら午後の穏やかな時間を満喫していた。
ブラウンのウェーブかかった長髪に緑目。
ロングコートを纏った細身の長身のせいか、優男の印象を受ける。
彼が読んでいるのは分厚い魔術書、彼はこのギルドに所属するウィザードだ。
ギルドホールのラウンジには彼の他に、テラコッタとアッシュがいた。
テラコッタは濃いブロンドのショートヘアの赤眼の女性で、所々金属で補強したウッドアーマーを身につけている。
どことなく幼さが残るがハッキリとした顔立ちをしていた。
アッシュは銀髪黒眼の少年で、黒い革の帽子マントとズボンにブーツといった全身黒ずくめの姿をしている。
二人は三日後に町の一般倉庫で開かれるオークションについて熱心に話し合っていた。
街中はやかましいアリアンでも、その郊外にあるこのギルドホール周辺は静かで、サボテンを啄ばみに来る小鳥の鳴き声がよく聞こえる。

ホールの入り口の扉がバタンと開き、ブルーノが入ってきた。
彼もこのギルドに所属している少年だ。
にぶい青髪に青眼、中肉中背の良く鍛えられた身体はショルダーパットで守られている。
ざんばら頭をしたその風貌は、良く言えば野性的、悪く言えば粗野である。
「ただいまー。小犬連れてきたよ。」
元気にそう言った彼は胸にこげ茶色の小犬を抱いていた。
両手で持ててしまえるほどの大きさの小犬は、つぶらな瞳に耳をピンと立てている。
ピンク色の舌を出し、ハッハッハッとリズム良く息をしていた。
「ブルーノ…。また何か持って帰って来たの?」
半眼のテラコッタが彼に近づくと、小犬は彼女にぴょんと飛び移り、しっぽをパタパタと振った。
アッシュは呆れ返って何も言えない様だ。
そういうのも、つい先日、ブルーノは光のミニペットと偽られて土のミニペットを買ってきたり、金の卵を産む黄金のスッポンと偽られて只のスッポンを買ってき

たばかりだったのだ。

既視感に眩暈を覚えつつも、エムロードは彼に注意すべく立ち上がった。
「あなたって人は、本当に懲りませんね。」
わずかに怒気を含んだ言葉とともに、彼は周囲に魔力を渦巻かせブルーノに歩み寄った。
「バカは死ななきゃ直らないな。」
アッシュはブルーノに助け舟を出す気は更々無い。
そんな彼らの様子にブルーノは慌てた。
「だ、だって、その小犬が俺にここのギルドホールに連れて行けって言っているような気がして…」
「犬が喋りますかっ!」
言い訳をする彼にエムロードはきつく言い放つ。
「兄貴!」
「うひょうっ?!」
突然テラコッタの方から男性の声がした。
その声に驚きエムロードはすっとんきょうな声を出す。
同じく驚いた様子の彼女は自分の手元を凝視している。
彼女の視線の先を辿ると、そこには彼女に抱かれた小犬がエムロードを見つめていた。
「兄貴っ! 俺だよ俺!」
その小犬の口から声がしている。
「…しゃべったわね。」
テラコッタがポツリといった言葉に彼らは無言で返した。

785国道310号線:2008/03/26(水) 01:30:20 ID:Wq6z33060
「僕に犬の知り合いはいませんよ。」
キッパリと言うエムロード。
彼らはラウンジのテーブルを囲んで、小さな来客者を物珍しげに見た。
小犬はテラコッタの胸に抱かれたままである。
「俺だよ、兄貴の弟のトパーズだって!」
一生懸命に小犬はエムロードに訴えかけるが、エムロードはすかした顔のままだ。
「確かに、僕にはトパーズという名のウルフマンの術を心得ている弟がいますが…」
彼は閉じていた目をすっと開と半眼にする。
「とうとう身までも犬に成り果てましたか?」
「…兄貴、あいかわらず冷たいぜ。」
可愛い弟の非常事態に対するあまりに酷い態度にトパーズは嘆いた。
一方、自分が小犬の声を聞き間違えたのではなかったことに安心していたブルーノ。
彼はその小犬ことトパーズに尋ねた。
「どうして犬になっちゃったんだ?」
至極当然な疑問に皆はトパーズに注目する。
よくぞ聞いてくれたとばかりに、彼はテラコッタの腕から身を乗り出した。
「あれは三日前、俺がアラク湖へ狩りに行った時の事だった…」
彼は身に起こった事を語り始める。


―三日前 アラク湖付近
ヘムクロス高原にあるこの巨大な湖は、タトバ山から流れる水を並々と湛えている。
高原南部には魔法都市スマグがあり、湖は人々の貴重な生活源だ。
その恵みは人間だけではなく、勿論付近の動植物にももたらされる。
トパーズはそこに生きる動物を狩ることで生計を立てていた。

湖をぐるっと囲む針葉樹の森の奥をトパーズは駆ける。
「こっちだな。」
ウルフマンである彼は優れた嗅覚で獲物を探していた。
狼の頭に人の身体、全身こげ茶色の毛に覆われた姿。
スマグに住む者達の中には、その異形に変身する能力を持つ者がいる。
トパーズもその一人であった。

獲物の臭いが近い。
彼は慎重に繁みの中を進み、どんな物音も聞き逃さないように意識を集中させる。
すると、女性の金切り声が彼の後方から響いた。
追っていた獲物に構わず、急いで彼はその声がする方角へ走っていく。
鬱蒼たる木々の間を風のようにすり抜けていくと、すぐそこの繁みの向こうから声がした。
「大丈夫ですか?!お嬢さん!」
ガサっと繁みをかき分け、助けを求めているであろう女性の元へ馳せ参じるトパーズ。
しかし、繁みを抜けるとすぐにブラウンベアーが飛び掛ってきた。
「何ぃ!」
ベアーの前足の一撃を彼はとっさに半身をねじって避ける。
かなり気が立っているベアーは攻撃の手を休めず、その巨体を起こすと彼を押しつぶそうとした。
だが、トパーズは立ち上がったベアーの胴体にタックルを叩き込む。
よろけたベアーに畳み掛けるように、彼は鋭い爪を連続で繰り出した。
「ドリャリャリャリャリャアッ!」
断絶魔を上げ、倒れ付すベアー。
巨体が倒れたことでズズンを地響きが森に響く。
彼は爪に付着した血を振り払った。

「フッ、お嬢さん、もう大丈夫ですよ。」
格好をつけながら、トパーズは奥の繁みに向かって声をかけた。
ガサガサと繁みは揺れるものの、女性は姿を現さない。
「フッ、恥ずかしがりやなお嬢さんだ。」
トパーズは自ら繁みの中に分け入る。
しかし、そこにいたのは震えている白ウサギだけだった。
確かに声と香りがしたのに、目当ての女性は影も形も無い。
「もう出てきても大丈夫ですよー。恐いベアーは退治しましたー。」
辺りを探すが誰かがその場から逃げた形跡は無く、匂いもそこで途切れていた。

すでに帰還の巻物などで去った後なのかもしれない。
折角の出会いのチャンスを逃したこと残念に思いながら、彼はさっき仕留めたベアーの所へ戻る。
巨大なベアーを軽々と担ぎ上げると、彼は家路につくことにした。
「あのぅ…」
足元からの声に彼は下を向く。
そこにはさっきの白ウサギがまだ逃げずにいた。
よく見るとと後ろ足を怪我している。
ニヤリとトパーズは笑うと、白ウサギをむんずと掴んだ。
「ベアーはジャーキーにして、ウサギはスープだな。」
そうして彼は意気揚々と歩き出した。
白ウサギは宙ぶらりんのまま手足を思いっきりバタつかせる。
「わっわっ、食べないでください〜。」
「ウサギがしゃべった?!」
トパーズが驚いていると、ウサギから爆発音と同時に煙が上がりその姿を隠した。
そして、煙の中から現れたのは――

786国道310号線:2008/03/26(水) 01:33:05 ID:Wq6z33060
「あれは魔女だ… 恐ろしい魔女だ。」
「魔女?」
語り終えたトパーズは身震いをする。
エムロード達は彼の言葉を反すうした。
オーバーアクション気味にかぶりをきって彼は続ける。
「そうとも、ベアーから助けてやった俺をあろうことか、小犬にしちまったんだぜ。」
彼はしょんぼりと耳としっぽを下げた。
「ひどいヤツだな。」
ブルーノは腕を組むと怒ったように言った。
「元に戻る方法は無いの?」
テラコッタも心配そうに、膝の上に乗せている彼に問いかける。
彼は首を左右に振った。
「分かんねぇ。 俺、昔から魔法は苦手なんだよ。」
「それで、エムロードを頼って、わざわざここまで来たってのか?」
アッシュは驚いた。
トパーズが小犬にされたアラク湖とアリアンではかなりの距離があるのだ。
「スマグのウィザード達に相談はしなかったのですか?」
遠い自分より近くのスマグの者に頼るのが筋であろう。
エムロードは訝しげに彼を見た。
「もちろんしたさ。けど、あいつら、隙あらば俺を魔法の実験台にしようとしやがるんだ。」
嫌なことを思い出したのかトパーズはぶるぶる震えた。
逃げるようにスマグからハノブへ行き、テレポーターを捕まえてアリアンに来たのだと言う。
「エムロード、助けてやれないのか?」
頼み込むようにブルーノは彼に聞いた。
彼も魔法の事はよく分からないが、何とかしてやりたかった。

このままトパーズを帰せば、ギルドメンバーは黙っていないだろう。
下手に突き放して、ブルーノ辺りが面倒見ると言い出したらかなわない。
ここは調べるなり何なりして、彼に帰っていただくのが最善だ。
そこまで打算すると彼は渋々口を開く。
「分かりました、調べてみましょう。」
それを聞いて、トパーズの身を案じていた者達はほっと安堵する。
「さすが、兄貴は頼りになるぅ。」
「調子の良いことを言わないでください。」
先程は冷たいなどと言っていた彼にエムロードは毒づく。
エムロードはテラコッタから小犬を受け取ると調べ始めた。

787国道310号線:2008/03/26(水) 01:33:36 ID:Wq6z33060
しばし後、トパーズの体をチェックしていたエムロードはその手を止めた。
「これは僕たちが普段使っている魔法とは別のものですね。」
トパーズにかけられている魔法は魔力の質も違えば術の組み立て方も違っていた。
自分達ウィザードが使役する魔法は自然界の元素を直接扱っているが、その魔法からは全く異質物が感じられる。
「解呪法は分かるか?」
縋るような気持ちでトパーズは聞くが、エムロードは首を横に振る。
「仕組みの分かる術なら手の施しようがありますが、これは専門外です。」
「そんなぁ…」
ペタリと机に座り込むトパーズ。
自分とは違って魔法については博識な兄がさじを投げたとなると、他の者でも解呪は困難だろう。
「トパーズはずっとこの姿のままなのか?」
ブルーノは哀れな様子の彼を痛々しく思った。
しかし、エムロードは事もなしげにブルーノに言う。
「元に戻る可能性が無いことはありませんよ。」
「本当か?!」
彼の言葉にトパーズは即座に反応した。
「術をかけた者に、その術を解かさせれば良いのです。」

「それって、彼を小犬にした魔女に直接魔法を解呪させるってこと?」
テラコッタは難しそうな顔をした。
それは確実な方法去ろうが、果たしてそう素直に魔女が言うことを聞くのだろうか。
「恐らく、力ずくになりそうですがね。」
彼女の言わんとしたことを汲み取り、エムロードは答えた。
「よし、そういうことなら協力するよ。」
「お前、こういう事に首を突っ込むの好きだな。」
ガタリと椅子から腰を上げるブルーノにアッシュは皮肉る。
困っている人は見捨てられないと言うブルーノにトパーズは感激した。
「お前イイ奴だな。」
「大丈夫よ。魔女が渋ったら自慢の矢をご馳走してあげるわ。」
テラコッタは乗り気だ。
「ほどほどに暴れてきてくださいね。」
「えっ、兄貴は行かないのか?」
トパーズは意外そうにエムロードを見つめる。
「自分の不始末くらい自分でつけなさい。」
エムロードの突き放すよう様な一言に彼はぐっと言い詰まった。
しかし、彼は一瞬後、不適な笑みを浮かべる。

「いいのか? 兄貴。そんなことを言って…」
何のことかと怪訝な顔をするエムロードを尻目に彼はブルーノらに振り返ると大声で喋り始める。
「兄貴は昔ー。スマズにあるプロテリング噴水でー。」
「わああぁあぁぁっ!」
叫びながら、急いでエムロードはトパーズの口を塞いだ。
「エムロードがどうしたって?」
「何? 何? 気になる。」
普段の彼らしからぬ焦りように、続きを聞きたがるブルーノとテラコッタ。
だが、塞がれた彼の口はフガフガと音を出すだけだった。
「…分かりました。行けば良いのでしょう、行けば。」
折れたエムロードにトパーズはにんまりと笑みを漏らす。
「バカバカしい、オレはパスするからな。」
アッシュは関心なしといった様子で、両手を頭の上で組むと伸びをした。
「おい、坊主。 ケチケチしていたら女の子にモテないぜ。」
「うるさいっ。」
軽いトパーズの一言にアッシュは怒鳴った。

外出する断りをギルドマスターのグロウに話すと彼も手を貸すと言ってくれた。
彼は色黒のガタイの良い男性で、伸ばした銀髪を後ろで一くくりにしている。
こうして、エムロード、トパーズ、ブルーノ、テラコッタ、グロウの五人はアラク湖近隣の魔法都市スマグへ向かった。


つづく

788国道310号線:2008/03/26(水) 01:34:22 ID:Wq6z33060
はじめましての方もお久しぶりの方もこんにちは。
名前は21Rさんとややこしいので変えさせていただきました、お騒がせしてすみません。
初めて書いた戦闘シーンがゲストキャラってどんなけ〜。


以下コメ返しです

>>柚子さん
道中ほのぼの話しに和みましたが、夜泣きするミシェリーが切ないです
サントラに付いていたアイテムは課金じゃないと意味が無い代物だとか…
サービスポイントをせこせこ貯めている私には縁の無い話ですとも!
ミニペットは期限が切れてもデータはそのまま残っているので、てるみつくんは見えないけど彼の傍にずっといるので

しょうね。

>>◇68hJrjtYさん
笑いあり涙ありのストーリーを目指していたので、そう言っていただけると嬉しいです。
話の中に色々要素を盛り込みたいのですがグダグダになりそうで…
小説を書くのって難しいですね、精進します。

>>黒頭巾さん
ペット奪取は未実施など、そういう小ネタがツボにきます。
文章に日本語を入れる度合いによって、世界観がガラリと変わってしまうので気を使ってしまいます。
余談ですが、今回の話を書くためにスマグへ取材に行った時、酒場のゴージンが綺麗な日本語になっていて感動しまし

た。
てるみつくんは出来ればいつか再登場させたいです。

>>FATさん
コロがサンドバック… 言いえて妙ですね。
予想外にあらすじが好評でニヤニヤしております。
主従関係いいですね、カッコイイ主従関係を書けるようになるのが夢です。
今回は調子に乗って前より長くなりそうなので、へばらないようにします。

>>白猫さん
もちろん応援していますよ!
文章を書くのが遅いのは私も同じなので(笑)、他の人のコメすらままなりませぬ。
なかなか進まない自分からするとこのスレのスピードが恐ろしいっ。
なんとか着いていけるように頑張ります。

789ウィーナ:2008/03/26(水) 14:29:54 ID:vvS1J3YA0
何度もすみません><
誤字がありました・・・ロイがトイになってました;;
あと、暁ちゃんの絵(色黒ですが…
かいたのでよければどうぞ><
ttp://www.geocities.jp/rutino_rs/akatuki.html
最初のhけしておりますので、いれてからお願いします^^
指摘当まってますヾ(・ω・`)ノ

790名無しさん:2008/03/26(水) 16:23:43 ID:HH40Kr660
http://ladfree.blog84.fc2.com/
無課金が1日でミニポタ
買えました!!やり方も簡単でしたw

791◇68hJrjtY:2008/03/26(水) 16:59:55 ID:BqXyeDos0
>ニートの中の人さん
「彼」がヴァンパイアの中でも特別な一人だったという伏線めいたものが…。
でも、読んでる方としては記憶が戻って欲しいと思う彼の心とは裏腹にこのままの状態が続いて欲しいとも思ってしまいます。
というのも、ロースターが修羅の如き不死者たちの世界に戻ってしまうのが見てらんないというか(´;ω;`)
その一方で記憶を失ってしまった彼自身のこれからの展開にも興味津々です。
ただの記憶喪失じゃないみたいですし心情描写は大事、話をどんどん進めるのばかりが良いとは思いませんよ!
じっくりと続きお待ちしています。

>幕間さん
洋物(昔話)キターと思ったらやっぱり普通の展開じゃない…。
女性Cって白雪姫でしたか…シンデレラもそうですが、ヒロインたちの扱い凄いが可哀想なことに(笑)
そういえばきびだんごもらってないですし、お供のはずの犬猫雉はまったく姿を見せませんね。
このまま鬼ヶ島に突撃してしまうのか、もうひとイベント(?)あるのか。お待ちしています。

>777さん
スリーセブンおめでとう!(笑)
うんうん、それは本当にそう思いますー。やっぱり初ネトゲの小説とかは心に残るものなのかもしれませんね。
私もラグナロクオンラインの小説、「あるアサシンの物語」がホントに忘れられない…Flash小説なんですけど。
思えばあの小説のお陰で"ネトゲという世界を拝借した小説"というのがある事を知った気がします。
それと昔の話ですが「ありがとうFlash」も色んなネトゲやネタで職人さんたちが課題製作されてた時期もありましたね…。
歌込みであれも好きです。って、脱線しまくってすいませんorz

>ウィーナさん
ラミアとかクロゥとか本編の方をもっさりと忘れるほどの爆発恋愛展開に読み入ってます(;´Д`)ハァハァ
ロイのことはなんでもないと言いつつ気になって監視(笑)してたり、そのロイが自分を裏切ったと思って走り出してしまうニナ…という
本物の恋愛ストーリーを堪能したと同時にこういう話を書けるウィーナさんが羨ましい。
そしてやっぱり気になるのが月舞の思惑。なにやら女同士の争いめいたものまで感じてしまいますね((( ´・ω・))
ニナとロイがいい関係に戻って欲しいとか色々期待しながら続きお待ちしています!
---
キタ━━━゚.+:。ヽ(*゚ロ゚)人(゚ロ゚*)ノ゚.+:。━━━━!!
暁イラスト、見ちゃいましたよー!うーん、やっぱり絵を描けて小説も書けるってのは凄い。思ったシーンを絵にできるってだけでも違いますよね。
21Rさんのサイトの掲示板もアデルやガズルの自作アイコンがいっぱいで感動しましたが、こうした一枚絵も素敵。
今後1キャラずつうpしてくれるのでしょうか!?ワクo(゚ー゚*o)(o*゚ー゚)oワク 良いもの見せていただきありがとうございました!

>国道310号線さん
コテハン改変了解しました!国道310って大阪〜奈良の道路ですか(笑) って、思えば私の名前も21Rさんと被りそうな気はしますねorz
さてさて、ミニペットがやってきたの小説の続編ですね。ブルーノ初め、エムロードやテラコッタたちの活躍がまた見れそうで嬉しいです。
今回の主役は魔法にたけた兄エムロードとウルフな子犬の弟トパーズ。いやーもうなんていうか抱っこしたい(壊
ブルーノの動物(ってか生き物?)好きも相変わらずのようでちょっと安心です!そしてフンドシギルマス、グロウの参加(笑)
続き楽しみに待ってます!

792柚子:2008/03/26(水) 20:47:37 ID:N.Cx4G8A0
1.>>324-331 2.>>373-376 3.>>434-438 4.>>449-451 5.>>517-523
6.>>572-578 7.>>599-602 8.>>662-666 9.>>730-735

『Who am I...?』

昼の太陽が1番高く昇る時間帯。
太陽からの暖かい日差しがとても心地よい。
夏はまだ1歩先の話だろうか。
脇で緩やかな波を立てるダイム海が見えるのは、いよいよアウグスタに近づいてきた証拠だ。
「イリーナ、お尻が痛いよう。そろそろ休憩にしようよ」
イリーナとルイスに囲まれたミシェリーが、カーペットの上で騒ぐ。
3人は今朝、朝食を取るとすぐに出発した。
それから1度も休まずに走り続けてきたのだ。疲れるのも当たり前だろう。
しかし、イリーナはそんな甘い人間ではない。
「ダメだ。今日はずっとこんなのが続くと思え」
「ええー、やだよう。アウグスタにはまだ着かないの?」
旅を始めてから3日が経ち、今日で4日目だ。
精神年齢がまだまだ幼いミシェリーにはそろそろ辛くなってくる頃だろう。
どこか立ち寄れる場所があればいいのだが、生憎そんな場所はどこにもない。
ハノブからアウグスタまでを繋ぐ道のりには山脈や林くらいしかないのだ。
「急げば明日の正午にでも着くって。それとも無理に休んで野犬にでも襲われた方がましか?」
「そのときはイリーナとルイスさんが助けてくれるもん……」
ミシェリーはどこか不機嫌そうに呟いた。
ミシェリーは母親がアウグスタにいると思っている。
しかし、なかなか着かないことから焦りや不安が募るばかりなのだろう。
イリーナはミシェリーの気を少しでも晴らす為に話しかけてみた。
「焦っても着く時間は変わらないって。落ち着いてみれば潮風が気持ち良いぞ」
ついでにミシェリーの頭に手を乗せ、笑ってみせる。
「……うん、そうだね!」
そう言い、ミシェリーは笑顔を取り戻した。
「それじゃあ、元気が戻ったところで暇つぶしのルイスの七不思議コーナー!」
イリーナが声高らかに言い、両手で指を7本立てる。
ミシェリーが期待の眼差しを向け、ルイスの眉が吊り上った。
「では1つ目。なんとルイスは卵から生まれてきた!」
「ええ!」
ミシェリーが驚き、恐る恐るルイスの方を覗き見る。
「ミシェリー。俺は子供とはいえど手加減はしないが」
静かな殺気がこもった言葉をルイスが放ち、ミシェリーは小さな悲鳴を上げてイリーナの膝に逃げ込んだ。
たちまちカーペットの均衡が崩れ、ぐらぐらと揺れる。
「ミシェリーが怖がっているじゃねえか!」
「貴様が悪いイリーナ。大人しく剣の制裁を受けろ」
ルイスが本当に大剣の柄に手をかけるので、イリーナは必死で止める。
「馬鹿、正気かお前!」
「やめてルイスさん、イリーナが死んじゃうよう!」
女2人に止められ、さすがに大人気ないと悟ったのか、ルイスは渋々剣を引く。
それでもまだ納得いかないのか、ルイスはしばらく考え込んだ後にゆっくりと口を開いた。
「では次はイリーナの七不思議。なんとイリーナは女だった」
抑揚が感じられない声でルイスが言い放った。
その意図を瞬時に理解したイリーナは、1度己の胸元に目を落とし、顔を上げてルイスを睨む。
「黙れよ爬虫類。哺乳類に逆らうとは生意気だ。それに性別を見間違えられたときはあまりない……筈だ」
語尾に連れて弱々しい声になり、イリーナは勝手に落ち込む。
ミシェリーはイリーナが何故落ち込んでいるのも分からないまま、それでも必死に励ました。

793柚子:2008/03/26(水) 20:49:16 ID:N.Cx4G8A0
しばらくカーペットを走らせ続けていると、イリーナも大方立ち直っていた。
脇に林立する木々の隙間からは、時折野生の狼が見える。
しかし、彼らはカーペットに追い付くことはできない。
それは彼らも知っていることだ。
だから警戒する者はいれど、襲おうとする者は皆無だった。
「順調なペースだな。現在地が道の中間地点だから、明日にはアウグスタ領に入れそうだ」
イリーナが地図を広げながら言う。
イリーナ達が進む鉄の道はハノブからアウグスタまでを最短距離で結んだ道で、早ければ3日で着く。
また出現する魔物や獣も比較的退けることが容易く、旅人に好まれて利用されている。
しかし大抵の物は町間の移動を町にあるポーターで行う為、徒歩で来る人間は物好きか金が無いかのどちらかだ。
ポーターで発生する金も決して安くないのだ。
イリーナ達といえば、そのどちらでもない。
同じ理由でポーターを利用しない者は他にはいないだろう。少なくともイリーナはそう確信していた。
「平和なものだな。これなら安心してアウグスタまで行けそうだ」
ふう、とイリーナが息をつく。
脇目を振ると、ルイスはどこか不満そうだった。
そうは言っても、ルイスの機嫌が良い時など戦闘している時か食事の時かイリーナが不機嫌の時くらいしかないのだが。
「昨日も今日も剣を振っていないとどうも鈍る。どこかに斬られてくれる者はいないものか」
ちらちらと視線が痛いのは気のせいか。イリーナはさっと目を逸らした。
「自分の胸に突き立てれば? 第二候補は首で第三候補は脳」
興味もなく言い放ち、イリーナは再び地図に目を落とした。
この道は安全と言っても、気を抜きすぎて道を外してはいけない。
何故なら近くにはある危険な場所が存在するからだ。
「ねえイリーナ。この点って何?」
地図上の現在地辺りに置いているイリーナの指の隣に、白く繊細な指が置かれた。
そのミシェリーの指はまっすぐにある場所を指している。
「ああ、ここか。ここはやぶ森と言って人間の手が及んでいない珍しい土地だよ」
そう、その決して近付いてはいけない危険な場所とはやぶ森のことだ。
そこには人間とは違う生物が文明を築き上げている。
彼らと人間は互いに不可侵の協定を結んではいるが、領地に足を踏み入れれば容赦はされない。
それは両者とも同じことだ。
「それがあそこだ。ただし危険だがな」
イリーナが遠くに見える、深く木々で覆われた場所に指を向ける。
「え、こんな近くにあるの?」
ミシェリーが地図と森とを交互に見比べる。
興味を持たれる前に、イリーナはそっと地図を閉じた。
「あそこにはエルフが住んでいるんだ。例え依頼だとしても行こうとは思わないね」
イリーナがきっぱりと言う。
それだけでどれだけ危険かは言わなくても分かるようだ。
ただし、例外がいた。
「イリーナ、暇潰しがてらに寄らないか?」
振り向くと、ルイスが身をうずうずとさせているのが分かった。
「ルイス。さっきの候補がなんと大逆転を起こした。まずは脳を殺せ」
呆れ返ったイリーナが冷たく言い放つが、ルイスに意思を変えようとする様子は見られない。
それどころか、ホルダーから抜刀と納刀を繰り返し今にも大剣を振りかねない勢いだ。
「気が狂ったか? まずはアウグスタに決まっているだろうが。道連れは御免だね」
言葉に念を押し、カーペットの推進力を上昇させる。
更に海寄りにずらし、やぶ森から遠ざける。
徐々に小さくなっていく森を見て、ルイスは幼児のような様子で物欲しそうにやぶ森を眺めていた。
「ほら見ろミシェリー、ルイス。カニさんだ」
浜辺までカーペットを寄せていたので、カニや亀型の魔物が見える。
それらにミシェリーは反応を示したが、ルイスはと言うと聞こえていないかのように見向きもしなかった。
それに対しイリーナは大きく溜め息を吐く。
「あのなルイス、優先順位を間違えるな。今はアウグスタまで無事に到着するのが先ぎゃ――!」
イリーナの声が間抜けのようにくぐもった物に変わる。
何故なら口をルイスの分厚い掌で塞がれていたからだ。
「何しやがるっ!」
両手を使い、やっとの思いでルイスの掌を口から剥がしたイリーナが叫ぶ。
しかしルイスの様子は妙だった。ただの嫌がらせとは思えない。
イリーナはルイスの顔を見上げる。
彫刻のように美しい造形の表面には、ひったりと笑みが張り付いていた。
それを見た瞬間、イリーナの脳裏に表現し難い嫌な予感が電光石火の如く駆け抜ける。
「斬りつける相手が見つかったぞ、イリーナ」

794柚子:2008/03/26(水) 20:52:03 ID:N.Cx4G8A0
嬉々として言い、ルイスが剣の柄に手を掛けた瞬間、何かが近くの林から飛び出してきた。
それとルイスが剣を振るうのはほぼ同時。
キン、と何かが弾かれ、宙に踊り、舞う。
イリーナはそれに目をとられ、それが砂浜に刺さる間もなく次が来る。
だがそれらはルイスの嵐のような剣捌きによって進行方向が無理矢理変えられてしまった。
即ち、空中へ。
打ち上げられた物を見て、イリーナはようやくその正体が分かった。これは、矢だ。
「速度を上げろ、イリーナ」
その間も矢は飛び続ける。
「振り落とされるなよ!」
イリーナはカーペットの端を掴み、最大出力でカーペットを走らせる。
すると、物凄い引力で体が引かれ、思わず落ちそうになる。
己の腰にしがみついているミシェリーの手にも力がこもった。
追撃の矢も、カーペットの速さに追い付けない。
「そこへ運べ」
ルイスが指定した場所へイリーナがカーペットを滑らせる。
曲がった時の遠心力で再び吹き飛ばされそうになるのを耐えながら、イリーナは必死で均衡を保つ。
指定した場所へ到達すると、ルイスはカーペットから飛び降りた。
次いで大剣を一閃し、正面の大木を一撃で両断する。
均衡を崩した大木が横へ倒れ、隣の木々が軒並みに倒れていく。
轟音が耳を揺らし、土煙が舞った。
倒れゆく木々の中から何かが落ちてくるのが分かる。人間だろうか?
それは空中で体を反転させ、両足で着地した。見事な体術だ。
しかし、その感心はすぐに驚愕へと変わった。
土煙が晴れ、その者の輪郭が露になっていく。
燃えるような深緑の頭髪に、鋭い眼光。そして決定的な物が、特徴のある尖った耳だ。
「エルフ、だと?」
カーペット上のイリーナが、驚愕と恐怖を足し合わせたような声を漏らす。
果たしてそれは話に聞くエルフそのものだった。
だがここはエルフの巣であるやぶ森から離れている筈だ。なのに何故?
疑問符がイリーナの頭の中でぐるぐると回る。
「構わん、斬る」
そう言うと、ルイスはエルフへと疾走を開始した。
思考を放棄したのかと疑ってしまう発言に、イリーナは止める気力も削がれてしまう。
ルイスは間合いへ詰め寄ると、剣を大きく振りかぶった。
エルフは手に握る弓を投げ捨てると、両腰から短剣を抜く。
それらを十字に交差させ、なんとルイスの一撃を受け止めた。
思わずルイスの顔から驚きの成分が滲み出るが、それはすぐに笑みへと変わっていく。
「そうでなくては楽しめん」
長身のルイスが体重を乗せ、更なる剛力を剣に注ぐ。
想像を絶する剛力に、エルフから苦渋の表情が浮かんだ。
顔中に血管が浮き出るほどのエルフの足は、剛力に耐えたせいで地面に埋まりかけている。
よく耐えたが、そこまでだ。
ルイスは必殺のサンダーエンチャントを発動する。
ルイスの魔力がそのまま電力に変換され、蒼い電流が刀身に巻きついていく。
電流が大剣から短剣に伝い、蒼い牙が獲物の脳を灼く寸前、ルイスの剣が短剣から離れた。
事もあろうか、ルイスはそのまま後退してしまう。
すると、寸前までルイスが居た場所に無数の矢が降り注いだ。
敵は1体だけではなかったのか。
その隙を見逃す筈もなく、エルフは武器を拾い林の中へ後退する。
逃がしてしまったという思いより、しまったという焦りの気持ちの方が今のイリーナの感情を占めた。
何故なら、矢が飛んで来た場所から次から次へと何体ものエルフが出てきたからだ。
3、4、5……まだいる!?
今度はイリーナ達が固唾を飲む番となった。
確かにエルフは魔力、筋力、体力、生命力などの様々な点において通常の人間のそれを上回る。
しかしエルフの脅威はそこではない。
それは、エルフは集団で行動するところだ。
エルフが難敵として扱われている理由はそこにある。
まともにやり合えば滅ぶのはこちらの方だろう。イリーナはそう確信していた。

795柚子:2008/03/26(水) 20:53:05 ID:N.Cx4G8A0
ならば、人類の唯一の武器である知恵を駆使して乗り切るしかない。
しかし、打開策が見つからない。
如何にルイスといえどあの数とやり合うのは自殺行為だ。
自分が後方支援したところで各個撃破に集中されたら一瞬で全滅してしまう。
考えろ、こちらは3人。その内戦力になるのは2人だけ。
1つ、最後の手段として、ミシェリーの力に頼るという手がある。
あの人狼の力なら退けることは容易い筈だ。
そこまで考えて、イリーナは己の思考に嫌悪した。
何を考えているんだ自分は。ここまで来たのはミシェリーを助ける為じゃなかったのか。
そのミシェリーを犠牲にして生き延びようなど何たる愚行だろうか。
考えろ、殲滅ではない、生き延びる事を考えるのだ。
このままの包囲戦では負ける。混戦になる方法を考えろ!
イリーナの頭の中で様々な思考が巡りに巡る。
その時、エルフの集団の内の1体が大声を上げた。
「貴様ら、アウグスタの軍人か!」
魔物の中でも比較的知能が高いエルフには、人語を解する者も居ると聞く。
「いいや、違う。ただの通行人だ」
同じように叫び、エルフ達の反応を窺う。
「ただの旅人か。ならば荷物を全て置いていけ。そうすれば命だけは見逃してやる」
暫しの間の後に声が返ってくる。
分かりやすい返答だ。無論、そんな条件を呑む気はない。
呑んだところで武器が無いまま襲われて殺されるだけだ。
それにルイスが仲間の1人を殺しかけたのだ。答えは決まりきっている。
しかしイリーナはわざとらしくも悩む動作をし、中々返答をしなかった。
十分に待った後、イリーナは答えを返す。
「その条件は呑めない。他の方法は無いのか?」
「無い。どうしても呑めぬと言うのなら――」
エルフの1体が片手を上げ、戦闘体勢を整える。
「待て。そもそもここは我々人間領の筈だ。エルフと人間は協定を結んでいると聞いたが?」
その片手が振り下ろされる寸前に、イリーナが声を上げそれを制止する。
「人間領にいるお前らが我々を襲えば一方的にお前らが悪くなる。それはお前らの長もさぞ困ることだろう。
 仲間の1人を襲ったのは悪かった。しかしそれは自己防衛に過ぎないんだ。そこでだ、両者手を引くということで手を打たないか?
因みに言っておくが私とこいつは共に最高ランクに届く実力者だ。
戦えば少なくとも、そちらも半数は失うことになるだろう。……どうだ?」
そこまで言い、イリーナは言葉を切った。
矢継ぎ早に放たれるイリーナの言葉に、エルフ達は少々戸惑っているようだ。
よくもこの状況でここまで屁理屈が出てくるものだと我ながらイリーナは感心した。
だが、交渉の結果は分かっている。
「それは我々エルフの誇りが許さん。それに……」
エルフがゆっくりと、噛み締めるように言葉を吐く。
「我々は平和ボケした共存派ではない。我々は誇り高き統一派だ!」
己がそうであることに誇りを持つかのように、エルフは声高らかに叫んだ。
「どういう意味だ?」
大体予想はつくが、イリーナは問うてみた。
これでいい。徐々にこちらのペースに引き込んでいる。
「我々は人間共から土地の奪回という野望の元に動いている。そこに協定も何も無い。
 その野望達成には物資も大量に必要になってくるのだ」
なるほど、大した野望だ。しかしそれは社会を知らなさすぎる。
馬鹿らしすぎてイリーナは溜め息が出るほどだった。
だがここで終わらせてはいけない。これではまだ勝気は薄い。
次は奴らを煽ることが必要だ。
丁度良い、これを利用しない手は無いだろう。
「馬鹿げた理想だな。知っているか? 人間はエルフの何千、何万倍も居るんだぞ。
 それを知っていて言うのならとんだ馬鹿だ」
馬鹿にしたように顔をニヤつかせ、鼻で笑う演技まで付け加えてやる。
己の理想を馬鹿にされ、それも憎き人間にされたことが重なり、エルフ達は見て分かる程に怒り狂った。
「許さん、許さんぞ人間!」
エルフの内の1体が片手を振り下ろし、攻撃の号令をかけた。

796柚子:2008/03/26(水) 20:54:50 ID:N.Cx4G8A0
瞬時に陣形が形成され、前方から3体のエルフがルイスに向かって飛び出す。
「まずは厄介な男の方から殺せ!」
飛び出したエルフの6つの短剣が全てルイスへ向けられる。
ルイスは剣を構え、迎え撃つ体勢に入った。
この瞬間をイリーナは見逃さない。
「ルイス、下がれ!」
魔力通信によって事を伝える。
イリーナが口ではなく魔力通信を選んだ理由は単純にエルフ達に聞き取られない為でもあるが、それだけではない。
口で伝わる、つまり音速はたかだか340m/s程度だが、魔力通信の伝達速度はその数倍を誇る。
よって、高速戦闘において致命的な時間の誤差が生まれにくい。
イリーナは会話の間に紡ぎ続けていた難易度4、クレイムストームを飛び出して来たエルフ目掛けて放つ。
それとルイスが横跳びで避けたのは同時だった。
炎と風で形成された超高速の炎の嵐がエルフ達に殺到する。
この距離なら避けることは不可能だ。
しかし、エルフの身体能力は想像を逸脱していた。
避けられないと瞬時に察した中心のエルフが両端のエルフを押す。
更に左右のエルフは空中で体を捻り炎をかわすという離れ業をやってのけたのだった。
しかし、逃げ遅れた片腕と身代わりになったエルフは消し炭に変えられてしまう。
それでもイリーナの詰めはそこまで甘くなかった。
腰から尖剣を抜き、同時に詠唱していた難易度2、ファイアーボールを2重同時に発動する。
着地する瞬間を狙い、10の火球を1体だけに絞って狙い撃つ。
完全に虚を突かれたエルフは、なすすべもなく爆裂に散った。
「ルイス!」
再び魔力通信で伝達する。
言われるまでもなく、ルイスは既にもう片方のエルフへ動いていた。
電流を伴う蒼い刃が牙を剥く。足へ放たれた刺突は見事に突き刺さり、電流が走り回る。
エルフは口腔から煙を上げながら絶命した。
この技の恐ろしいところは急所でなくても死に到らしめる殺傷力だ。
イリーナの策謀にはまり、一瞬の攻防で1度に3体の仲間を失ったエルフ達の動きが固まる。
しかし、問題はこれからだった。
これで怒り狂わず、むしろ冷静になったところが強敵と言えよう。
エルフ達は林の中に戻り息を潜めた。
気配が遮断されて居場所が全く掴めない。
その時、林の中から無数の矢が一斉に打ち上げられた。
次いで、直線的な矢も次々と飛んでくる。
これはアーチャーのスキルである難易度2、マシンアローか。
イリーナは慌ててカーペットを発進させ、振りかかる矢をかわす。
しかし狙いは自分ではないようだ。
ルイスは脅威と捉えられたのか、矢は明らかにルイスを集中して狙っている。
接近戦で圧倒的に上回るルイスでもこの距離ではただの的。だからと言って林へ入るのも自殺行為だ。
ルイスは大剣を振り回し、近付く矢を悉く弾いていく。
だが剣の性質から小回りが利かず、何本かが通る。
このままでは力尽きるのも時間の問題だろう。
何か策は、策は無いのか。
イリーナは矢をかわしながら頭をフル回転させる。
その時、イリーナは己の腰をぎゅっと握る暖かい手の感触を思い出した。
まだ、手はある。
イリーナはその策に全てを賭けた。

797柚子:2008/03/26(水) 20:58:01 ID:N.Cx4G8A0
降り頻る矢を防ぎながらルイスは必死に駆け回る。
そうしなければ数に圧倒されてしまうからだ。
それでも先は目に見えている。
ルイスは戦いに喜びながらも、その反面苛立ちを感じていた。
このような戦闘は無粋だ。剣と剣を交える戦闘こそ戦いと呼ぶに相応しい。
それがルイスの考えだった。
どうにかして奴らを林から引っ張り出さなければ負ける。
だがルイスの頭では当然策など思いつくはずがなかった。
浜辺の砂が足を引っ張り、走行速度が格段に落ちているのは確かだろう。
それでもエルフの矢は正確過ぎた。
上から前から横からと飛んでくる矢に手も足も出ない。
その苛立ちから舌を打つ。
そんな時、不意に声が聞こえてきた。魔力を伝ってきたイリーナの声だ。
その声に振り向くと、カーペット上に居るイリーナが林の中に火球を放っているのが見える。
ルイスは指示された通り、送られてきた座標へと駆けた。

ファイアーボールを林の中へ放つ。
闇雲に撃つのではない。確信を持って放つのだ。
案の定、爆発から逃げてきた1体のエルフが林から飛び出してきた。
そこを狙い、死角から走り込んできたルイスがエルフを襲う。
反応より速く、ルイスの大剣が振り抜かれる。
獰猛なその一撃は、一太刀でエルフの胴を2つに分けた。
「ミシェリー、次はどこだ!」
「え、えっと……そことそこの木の上から変な匂いがする!」
ミシェリーがその木を指してイリーナに伝える。
イリーナの策とはミシェリーの鼻を使うことだった。
良くも悪くもミシェリーは人狼の力の一部を受け継いでいる。
その嗅覚がそうだ。
如何に気配を消そうと匂いだけは隠せない。そこを利用したのだった。
「ルイス、あの2本の木に雷を落とせ!」
言われた通りにルイスは詠唱を開始する。
難易度が高いので発動までの隙が生じてしまう。
その隙を補う為、イリーナは難易度3、トルネードシールドを展開し、殺到する矢の大群を逸らす。
1度矢が収まると入れ違うようにルイスが難易度4、ライトニングサンダーを発動した。
上空で発生した雷が2本の木に落ちる。
すると間もなく黒く焦げた2体のエルフが木の上から落ちてきた。
「これで6体。ミシェリー、後はどこだ!」
ミシェリーはくんくんと鼻をかぎ、見つけたのかぴくりと耳が反応した。
「えっとあそことあそこ! それとあっちも!」
ミシェリーが次々とそれぞれの場所を指していく。
イリーナはファイアーボールを展開すると、エルフ達が隠れている場所へ射出させた。
遠く聞こえる爆裂音の後に、残りのエルフ達が飛び出してくる。
望んだ通りの混戦だ。
「よくやったイリーナ。これで戦える」
ようやく望んだ形になり、ルイスが武人の笑みを漏らす。
そしてエルフが陣形を整える前に、ルイスはそこへ切り込んだ。
エルフ達は弓から短剣に持ち換えそれを迎撃する。
ルイスは難易度1、マッスルインフレーションを発動。
それは筋肉の超強化。強化された腕は膨張し、限界を超えた筋力を叩き出す。
ルイスはその超強力な一撃を1番前方のエルフに放った。
エルフは短剣で受けるが、大剣はその短剣ごと砕き、エルフを頭から股にかけて両断する!
真紅の鮮血を浴びながら、ルイスは次の獲物へと駆ける。
しかし、エルフ達は接近戦を恐れ散開した。
「させるか!」
後方に居るイリーナがカーペットを素早く移動させ、ファイアーボールを連続で発動する。
爆裂に1体が巻き込まれ、更に数が1つ減った。

798柚子:2008/03/26(水) 20:59:35 ID:N.Cx4G8A0
続けて追撃をかけようとイリーナが詠唱を開始する。
「イリーナ危ない!」
イリーナはその声の主がミシェリーだと気付いた瞬間、背中が引かれるのを感じた。
それとほぼ同時に何かが腕をかすめる。
それが短剣だと理解した刹那、激痛が走りカーペットの均衡が崩れる。
更に短剣が投げ込まれ、避けた反動で揺れが大きくなり2人は振り落とされた。
地面が砂浜のお陰で衝撃は弱かったが、細かい砂が口や衣服の中に入り込んでくる。
「くそ、まだ隠れていやがったのか!」
短剣が飛んできた方向は他と全くの別方向だった。
未だに林に潜んでいたエルフが隙を窺っていたのか。
虚を突かれたイリーナは立ち上がることすらままならず、闇雲にファイアーボールを放つ。
しかし簡単に避けられ、逆に短剣を放たれた。
とっさに防御魔術を唱えようとするが、間に合わない!
イリーナが死を覚悟したとき、視界が銀に包まれた。
続いて金属音が響き、イリーナは上を見上げる。
「ルイス!」
銀はルイスの鎧だった。
「難を逃れたのは良いが暫く続きそうだ」
イリーナは視界をずらして奥を覗くと、エルフ達が弓を構えているのが見えた。
エルフ達が一斉に矢を放つ。
ルイスは2人の盾となって矢を弾くが、防ぎ切れずに何本も鎧ごと貫かれた。
体中に矢を浴びて血を吹きながらよろけるルイスに、更に矢が撃ち込まれる。
イリーナは今度こそ難易度3、トルネードシールドを展開し、ルイスを矢から守った。
「ルイス、私達を抱け! ……いや、変な意味じゃなくて」
「分かっている」
ルイスがイリーナとミシェリーを両腕で抱えると同時に風の盾を解除し、攻撃の範囲外へ逃げた。
追撃が追い付く前に2人はポーションを一気に飲み干し体勢を整える。
「いいかルイス、私がまず散らせるからお前は各個撃破を狙え。いくぞ!」
返事も待たずにイリーナは予め紡いでいた難易度4、クレイムストームを発動する。
反応が遅れた何体かが炎に飲み込まれ、他は散開し二手に散った。
エルフの数も既に3体となり、その内の2体の方へルイスが走り込む。
残りの1体もルイスの方へ向かうと思ったが、そのエルフは標的をイリーナに絞った。
エルフは両腰から短剣を抜き、片方を投げる。
大型の魔術の反動でまともに動けないイリーナは、片腕を短剣に抉られつつも難易度3、ジャベリンテンペストを放った。
視認不可能の透明な風の槍がエルフを襲う。
それがエルフの胸板を貫く寸前、エルフはそれを軽くかわして見せた。
まずい、と思った時には既に蹴り飛ばされていた。
「我々は自然と共に生きる存在。ならば風の動きなど読めて当然」
エルフは勝ち誇り、短剣を大きく振り上げる。
しかし、それが振り下ろされることはなかった。
エルフは恐怖の眼差しで前を見つめている。それもイリーナではなく、その後ろを。
イリーナの背後から、ほんの一瞬だけ強大な魔力が発せられた。
(ヤメロ――!)
言葉ではない、強烈な意思がエルフを束縛する。
文字通り、エルフの動きが固まった。
「やあぁあぁあ!」
その大きな隙に乗じイリーナは難易度3、ファイアーエンチャントを発動し短槍に付加した。
強化された槍の穂は容易にエルフの胸板を貫く。
胸を貫かれたエルフは、後方に倒れそのまま絶命した。
イリーナは荒い息を吐きながら、慌ててミシェリーに駆け寄る。
「大丈夫かミシェリー!?」
「ふぇ?」
しかし、その当人は間抜けな声を漏らすだけだった。
「なら良かった」
イリーナはほっと一息ついた。

799柚子:2008/03/26(水) 21:00:19 ID:N.Cx4G8A0
暫くして、多少傷を負ってルイスが戻ってきた。
「何だ生きていたのか」
それが両者の第一声だった。
「奴らは弓の腕は立つが、接近戦は二流レベルだ」
そう言いながら、ルイスはポーションを口に含む。するとたちまち傷口が癒えていく。
イリーナは上着を脱ぎ、包帯を腕に巻いている途中だった。
「見るなよ」
「興味無い」
戦闘が終わると2人はどうして組んでいるのか疑ってしまうほどに仲が悪い。
いつものことながら、それは不思議なことだった。
包帯を巻き終わったイリーナが立ち上がり、尻に付いた砂を払う。
「思わぬ敵に足止めされたことだし、ここらで夜の支度をするか」
「賛成!」
ミシェリーが元気に手を挙げる。
正直イリーナは今自分が生きていることが不思議でならなかった。
本来なら腕や足の1本や2本どころではなく命すら失ってもおかしくない状況だったのだ。
この程度で済んだのは奇跡と言えよう。
イリーナは己の強運に感謝した。


浜の夜風が頬を撫でる。
さざ波の音を脇で聴いていれば飯も美味くなるというものだ。
イリーナ達はダイム海の浜辺で一晩を過ごすことにした。
ルイスが近くで狩ってきた亀や蟹が意外と美味く、思わず口が綻ぶ。
「イリーナ、これ何てカニさんなの?」
「え、いや、まあ……蟹は蟹だろ」
イリーナは適当に誤魔化し、食を続ける。
それが蟹の姿をしただけの魔物だとはとても言えない。
イリーナやルイス達冒険者は時に魔物も食うから平気だが、ミシェリーには黙っていた方が幸せというものだろう。
腹も膨れたところで、イリーナは寝る支度を始める。
あれだけ派手な戦闘をしたので、周りに居た魔物達も今は遠くに避難しているだろうから安全な筈だ。
「ミシェリー、そろそろ寝るぞ」
「うん!」
イリーナが火に土を被せ消火する。
テントの中に入ると、戦闘疲れかすぐに睡魔が襲ってきた。
傷はあまり負っていないが、魔力の消費が激しい。これは寝て回復するしかない。
体を横にすると、毎度の如くミシェリーがくっついてきた。
「どうした、その年で夜這いか?」
「イリーナの意地悪」
むすりと膨れるミシェリーに、イリーナはくつくつと笑った。
「明日はいよいよアウグスタだ。しっかり眠っておけよ」
「うん、楽しみだね!」
見ているこちらが嬉しくなるほどにミシェリーは上機嫌だ。
いざアウグスタに着き、それがそのまま返って来なければ良いのだが。
ミシェリーは不意にそうだ、とイリーナを見つめる。
「明日は本当のお母さんに会えるから、今夜はイリーナがお母さんになってよ」
「まあ、いいだろう」
「それじゃあ何か子守唄でも歌って」
「調子に乗るな」
軽く小突いてやり、イリーナは顔まで毛布を被る。
「イリーナの意地悪、結構本気だったのに〜」
恨めしい声が聞こえてくるが、毛布のお陰でだいぶ気にならなかった。
やがて声は止み、次第にそれは寝息へと変わる。
「いよいよ、明日か」
イリーナは1人呟き、それから深い闇に落ちた。

800柚子:2008/03/26(水) 21:41:33 ID:N.Cx4G8A0
こんばんは。戦闘をメインに書いたら案の定力尽きました。
しかもダラダラ続いて無駄に長い。
そしてクレイムストームをファイアーストームだと最近知りあわてて訂正しました。
ちなみに次からラストスパートはいります。

それと最近引退がスレ内で流行ってるようで。ちなみに自分は1年以上INしてません。
それなのにここにいるのは謎ですねえ。

>之神さん
さあさあ始まりましたねエリクサー争奪戦。
まともに動いているのはライトとアルシェだけですが。
レッツダンシング! 何だか楽しそうですがいい歳した男女が踊っているのを想像すると……。
徹も決意を決めたようですが間に合うのでしょうか。
それとどうやらあの男も動き出したようで。

>FATさん
そろそろチタン間近でしょうか。
デルタとレンダルは切っても切れない関係ですが、ひょっとした拍子に壊れてしまいそうで怖いですね。
軽い気持ちで言ったレンダルの言葉が重いです。
魔物からしてみれば人間は皆自分たちを殺す敵でしかないのですからね。
そして変態コンビは生命力だけならずば抜けているかもしれませんねえ。
続きをお待ちしております。

>ニートの中の人さん
いえいえ、吸血鬼の話はよくありますが、ここではあまり見られないと思うので良いと思います。
ロースターはやはりヴァンパイアのようで。
どうやって記憶を失くしたかが物語の鍵になりそうですねえ。
これからの彼女とどう過ごすのか、楽しみにしています。
それとlostの過去形は、というよりlost自体が過去形でloseが原型だったかと。
losterの意味としては失敗者とかが妥当だと思います。
と、偉そうに言っておいてあまり自信ないです。英語苦手です……。
それと作家志望ガンバです!

>R310さん改め国道310号線さん
お久しぶりです。まさか続きを作って頂けるとは。
物語のきっかけはやはりこの人ですねえ。まだこの癖は直っていないようで。
エルムードの恥ずかしい隠し事が知りたいですね。
次はいよいよPTで行動。みんなの戦闘が見れそうで楽しみです。
それとテイマのあの子はお休みでしょうか。テマサマは無条件で好きなので少し残念。
続きお待ちしております。


それとイベントをするそうで。
自分もできれば参加したいのですが、するとなるとRS再DLとなりそうなので少し厳しいかもしれません。
暇人ですので都合が合えば参加したいと思っております。

801柚子:2008/03/26(水) 22:13:21 ID:N.Cx4G8A0
>クレイムストームをファイアーストームだと最近知り
完全に逆でした……。

>白猫さん
復活おめ!
まだ読みきっていないので大した感想は言えないのですが、続編を考えているのですか。
自分は全く考えていなかったので思わず脱帽です。
それから造語辞典を見たらこれまたすごくて再び脱帽しました。
そして体も復活おめでとうございます。

>幕間さん
RSともう少しでここも引退ですか、お疲れ様です。
日本昔話のパロかと思えば洋物とか混ざりすぎで思わず吹きました。
さりげなくしたらばのネタも入っていてネタが細かい。
相変わらずキャラの性格が良い意味で壊れていてなによりです。

>ウィーナさん
初めまして!
と言ってもまだ読めてません。すいません追いつきます……。
全員の職人さんの話をそれぞれ同じだけ読めるほど器用な人間ではないのですorz
でも絵は見させてもらいましたよ。
なるほどこういうUPの仕方もありましたか。
自分より全然上手いです。羨ましいです。

>21Rさん
挨拶が遅れました、初めまして。
引退ですか、お疲れ様です。
小説の方はまだ初めのほうしか読んでないので大した感想はいえませんが。
しかし数年前、今の元になるミルたちの話はしっかりと読ませていただきました。
当時に感想いえなかったのでこの場で。
とても感動したことを覚えています。
細かいところは記憶が曖昧になりがちですが、各キャラの立て方や情景の描写がとてもすばらしいと思った記憶があります。
何だか思い出しながら書いていたら当時の思い出まで復活して涙腺が緩くなってきたのでここらへんで。
それと21Rさんもついにここをもう少しで去るのですね。
さびしくなりますが、これからも頑張ってください。
これだけの長編を書き続けられるのはとても書き手として尊敬します。
FATさん同様21Rさんは自分が尊敬する職人さんです。

自分でも何言っているのか分からなくなってきたのでこれで。
これも頭痛のせいだ。
イベントをもしRS内でやるのでしたらキャラ名は自分コテだと無理そうですね。
自キャラこれではないので違う名前になりそうです。
それでは

802◇68hJrjtY:2008/03/27(木) 16:48:37 ID:MKXWQBiQ0
>柚子さん
またも敵が出現…ですが、こちらは何か伏線がありそうなエルフという敵。前回の盗賊も気にはなってますが…。
今回はルイスの雄姿よりもイリーナの機転と知恵、そしてミシェリーの隠れた能力が良く描かれていた気がします。盗賊戦とは対照的な。
エルフたちの思惑やその動きも別筋の話ながらちょこっと気になってみたり…アウグスタ軍を警戒してるのもありますしね。
さてそのアウグスタですが、ミシェリーの状態はどうなるのでしょうか。ついに到着となりそうで楽しみです。
---
スキルの名称ですがファイアーストームでもなくてフレイムストーム、かな?WIZスキルはあんまり詳しくないんですけども。
wikiあたりに正式名称が色々載ってるとは思います(笑)

イベントですが既に引退されている方が意外と多いことですし、RS以外の場というのが良さそうな気がします。
今すぐに思いつくのはハンゲですが、あれもそんなに詳しくないんだよな(笑) ただゲームには人数制限あるような記憶はあります…。
ごく普通のチャットならばすぐ確保できそうですが。

803之神:2008/03/28(金) 04:14:27 ID:Qvwd4z.60
1章〜徹、ミカの出会い。
-1>>593―2 >>595―3 >>596-597―4 >>601-602―5 >>611-612―6 >>613-614
◆――――――――――――――――――――――――――――――――――――◆
2章〜ライト登場。
-1>>620 -621―2>>622―○>>626―3>>637―4>>648―5>>651―6 >>681
◆――――――――――――――――――――――――――――――――――――◆
3章〜シリウスとの戦い。
-1>>687―2>>688―3>>702―4>>713-714―5>>721―6>>787―7>>856-858
―8>>868-869
◆――――――――――――――――――――――――――――――――――――◆
4章〜兄弟
-1>>925-926 ―2>>937 ―3>>954 ―4>>958-959 ―5>>974-975
◇――――――――――――――――5冊目―――――――――――――――――◇
-6>>25 ―7>>50-54 ―8>>104-106 ―9>>149-150 ―10>>187-189 ―11>>202-204

◆――――――――――――――――――――――――――――――――――――◆
5章〜エリクサー
-1>>277 ―2>>431-432―3>>481-482―4>>502―5>>591-592―6>>673-674
-7>>753-754
◆――――――――――――――――――――――――――――――――――――◆
番外

クリスマス  >>796-799
年末旅行>>894-901
節分  >>226-230
バレンタインデー>>358-360 >>365-369
雛祭>>510-513
ホワイトデー@シリウス >>634-637
◆――――――――――――――――――――――――――――――――――――◆

804之神:2008/03/28(金) 04:39:27 ID:Qvwd4z.60
ψ

「おお、ラッキー!みーんな踊りだしたっ!」
ナザルドは踊り狂う人を掻き分けて、エレベーターホールへと向かった。
「ラジオ体操の代りかなぁ?ダンスもいい運動だけどっ……と?」

立ち止まり、階層の表示機を見た。

「あれぇ…?地下に行けないの…これ」
「んー…どうしようかなぁ、下に行かなきゃ行けないんだけど…」

ポリポリと頭をかき、どうやって下へ行くか考えた後ナザルドは…

「いいや、上、行ってみよう!」

κ

「アルシェー!こっち!」
「ああ、今行くぞ」
少女と背の高い男が、ダンスホールと化したロビーを駆け抜ける。
タッタッタッと、ダンスにあわせるかのように…。
しばらく走ると、エレベーターホールへ到着した。

「あれぇ…タイミング悪いなぁ。今、ちょうどエレベーターが上に向かってるや…」
「エトナ…お前のアレは、いつまで持つんだ」
「んー、あと10秒くらい?」
「何ッ…!畜生、流石に大人数相手に殺し以外で出し抜く方法が…」
「んー、困ったねぇ!」と、満面の笑み。困っているのか。

「おい、馬鹿野郎!他に上がる手段は?」
「野郎じゃ無いってばっ! …えーと、……非常階段が」
「案内しろ」サングラスを、アルシェはくいっと上げた。

「こっちー!」

γ

「うっし…この辺か…あれ?」
俺の目の前には、大きな空洞が広がっていた。暗い。

待て…地図にはこんな風には…迷ったか…?
俺はトランシーバーをフィアレスに繋いだ。

「おい…今エリアU-5辺りなんだが…目の前に空洞があるぞ?」
『hい…sこはそれでいいんですy…。その空洞、上下に伸びているでしょう?』
「ん…確かに。これ、どうすればいいんだ?」
『そこはですね…エレベーターの通r道でs』
「ほう…それで?」
『貴方のいる場所の反対側、更にその10m上に、またダクトが伸びています。そこkら入っt下sい…』

また、そんな危ないことを平気で頼むか…。

「普通にロープを渡して、上っても平気だよな?」
『ええ、平気でしょう。そこを渡って向こう側のダクトへ上れば半分はクリアですよ』
「わかった…やってみる」


さて…ちょくちょく渡ろうかね…。
俺はロープの端を小型投擲斧にくくりつけ、輪投げの要領で上へ飛ばした。

「せーのっ…オラっ!」

カラン…カラカラ……

上手く引っかかったな…。
張りを確認し、俺はそのままロープに手をかけ上っていった。

ゴゴゴゴゴゴゴゴ…

「ん?」

ψ

「おおおおお!すっごい、早いねー!もうこんな階!」
ナザルドは一人エレベーターを楽しんでいた。

「問題は上に上がってどうするかなんだよねぇ…。下に行きたいのに、なんで上に来たんだろ俺…!」
んー、と考え込み、そして考えるのに疲れ止めた。
「まっ、なんとかなるか!」

ゴゴゴゴゴゴゴ…と、音を響かせエレベーターは昇っていく。

805之神:2008/03/28(金) 05:06:16 ID:Qvwd4z.60
Θ

「フッ…ここか」

コートを着た長髪の男は、大きなビルの前でニタリと笑った。
「まったく、この世界でよくも暮らしていけるな…ガゼットめ」

ロビーに続くドアに手をかけ、シリウスはまず目の前の光景に驚いた。

「何故…何故踊っているんだ…」

「まぁいい…通り過ぎれば熱さ忘れる…」と、杖を取り出した。

「魔人よ…我に風の速さを与えよ…!」と、唱えた瞬間…

大きな光の翼が、シリウスの背後に広がった。

「さぁて、待っていろよ…ガゼット」
そう言って、シリウスは風のようにロビーを駆け抜けた。


α

「ここ…か」
ミュリエ・ジュール。
何か力になりたくて…俺は特に何も考えず、ここに来た。
もしミカの勘が当たっているなら、阻止しなければならない。俺にできるかは分からないが。

俺は会社の回転ドアの中にタイミングを合わせて入った。

「あれ……大手の会社は」
俺の視線の先には、ハァハァと息を乱した社員と思われる人々が突っ伏していた。
「こんなにダラけてるのか…」

俺は受付に近づき
「すいません…ちょっとこの会社の上の人…に……」
アポを取ろうにも、受付嬢が倒れこんでいる。
病気や深刻な何かによるモノでは無い…と俺にもわかった。

「どうすりゃ…いいかな」と、周りを見回した。

広いロビーの全域に、誰かしらゼェゼェと息を乱した社員が倒れている。

「…これが混沌ってやつ…?」


λ

「あーもう!一人じゃまた何するか分からないんだからっ!」
私はシリウスの心配より、シリウスによって起きる迷惑の数々を心配した。

「私が…行って止めなきゃ…!」

ブラウスの上に薄手のアウターを羽織り、歩きやすい靴を選んで家を飛び出した。

「もう、どこまで迷惑かければ気が済むのよっ!」
今の私を擬音語で表せば、プンプン、だわ…。

γ

「おい…マジか…」
エレベーターが、上に向かって…否、俺に向かって上ってきた。
「待て待て待て待て待てーいっ!」
意味も無くテンションが上がり…だがどうすればいいかが先決だった。

コマンド?
1.エレベーターに飛び乗る。
2.エレベーターのワイヤーを断ち切る。
3.生涯を諦める。


「くっ!1と3は却下だっ!俺は…生きるからなーっ!」
自分でも、誰に言っているか分からない。

「来るなぁぁっ!…コノっ!」ガギィン!と音が響き、ワイヤーが少しずつ解れていく。

「ヤバいヤバいヤバい…あと数メートル…!まだ、切れないのかっ!」
カリカリ…と、少しずつ切れるが、埒が明かない。
「こうなったら…!」
と、俺はロープを足で挟み、逆さにぶら下がった。
残り5mくらいか……当たるかな…。

意識を集中して…。

「うおおおぉおーらッ…!」渾身の力で、小型斧を投げた。

ブツッ!

と小気味良い音を鳴らし、8本の小型斧がワイヤーを断ち切った。


「…ああ、死ぬかと思った…」
エレベーターは、重力に任せてそのまま下っ…、堕ちていった。

806之神:2008/03/28(金) 05:24:04 ID:Qvwd4z.60
ψ

「うあああああああああああっ!」

「ちょっ!ちょっと待ってよっ!キミ、上るのが仕事でしょっ!」
ドンドン、とボタンを叩くが…当然対応などしてくれない。

「どうすればー…あ!」と、閃いたナザルドは上を見上げる。

「落ちたら死んじゃうし、出るしか…無いかーっ!」
天井に向かって、ナザルドは構えた。

「とぅ!」

ダンボールかのように、鉄で作られた筈の天井が破れた。
「うーん、さすがハードフィスト…!」
痛そうに指をさするが、堕ちてる途中、そんな余裕は無い。

「どこかにつかまらないと…何かっ…!」
しかし見渡しても、出口は無い…

「あれ?なんだろ…たまに通り過ぎてく…穴?」

堕ちていく途中、何度も人が通れるほどの穴が見える。
「これにうまく入れれば…!よーし腕の見せ所!って、誰も見てくれなーい!」

ナザルドは集中し、穴が出るタイミングと呼吸を合わせる。
「ヒュッ!…ヒュッ!…ヒュッ!」と、通り過ぎるタイミングに合わせ…。

「ヒュッ…!今だーっ!」
突然、ナザルドは炎に包まれたかと思うと、弾丸のようなスピードで穴に突進した。
「ファイナル…チャージング!」

スポッ!と見事に穴…ダクトにナザルドは入った。

「ふーう、やっぱり…」額の汗をぬぐい…

「俺って、運いいなぁっ!」と叫ぶナザルドだった。

κ

「アルシェー!見てみて!エレベーターがすごいスピードで降りてくるよ!」
「本当だな…ん」
「私達を迎えに来たのかもねっ!」はしゃぐエトナを横目に、アルシェは不審さに気がついた。

「馬鹿野郎…降りてんじゃねえ…堕ちてんだっ!」と言い放つと、エトナを抱き寄せエレベーターホールから飛び去った。


ドオオオオオォォン!!!
と、轟音がイヤと言うほど響き、同時に火の手と煙が上がった。

「びっくりしたー!アルシェ、ありがとーっ!」
「…何で堕ちてくるんだ…これが」

アルシェはズレたサングラスを戻しながら、今後のことを考えた。

807之神:2008/03/28(金) 06:02:29 ID:Qvwd4z.60
おはようございます…?
いやはや、もう眠れずにそのまま投稿…。
――◆
現在キャラの絵はラフ画まで終わり、現在ペン入れをしている所です…。
これまでのメインとなるキャラクターや、アルシェ、エトナも書いております。
そしてまた、どこにUPするかが…orz

>>◇68hJrjtYさん
いやぁー、確かにRSでの会合は難しそうですねぇ…。
レッドストーンチャットへ…ってダメだなぁあそこじゃ…orz
そして、小説の方はまだまだ絡み合っていきます…感想、いつもありがとうございます。
そして、絵のほうは4月になると思いますが、読み手としてはキャラの姿は需要ですからね…。
とっとと書いていきます(`・ω・´

>>柚子さん
戦闘をメインにして力尽きる…同じですorz
なんか効果音や周りの情景を入れようとすると、どうしてもgdgdになる私…。
私の章はエリクサーの争奪となっていますが、いやはや上手く皆を絡ませたいものです…。
柚子さんの作品はキャラ同士の会話、やりとりの流れを参考にしてます。
これからも連載頑張りましょう!

>>国道310号線
RS内での物語、実在(ゲーム内)するMAPでのストーリーは、プレイヤーとしてとても惹かれます。
そしてトパーズ君、いいキャラしてる…(´∀`*
魔女とかの話は、私もいつか書いてみたいので、参考に…と読ませて頂いてます。

>>ウィーナさん
ルチノ萌えーーーっ!

…サーセン。
ウィーナさんの作品は、情景の表現や、キャラの反応の描写がお気に入りな私です…。
やっぱ大事ですよねぇ…描写の表現。
これからも楽しみにしています…!ルチノ萌え!

>>ニート中の人さん
不死者…。
様々な作品に登場する設定ですが、展開が他とは違いますね。
書き方もカコイイ…そして流れが遅い、これは中身が濃いのですよ(´ω`
これからも楽しみにしてます。

>>白猫さん
私はあまり「」以外の囲いを使わないので、他の物を上手く使える人はうらやましいです…。
ネルと完成を求めるエリクシル…これからの展開、楽しみです。

…あれ、エリクシル…私のエリクサーと近いものが(・∀・!

>>FATさん
コロで腕磨き…確かに切れ味や殲滅練習は鍛えられそうですねw
最近はPS鍛えることができたアルパPTが無くって(ノД`。+
地下へと降りていくレンダル達…ジム=モリの言う事は真か…!?

>>◆21RFz91GTEさん
ゲームクリア、おめでとうです。
ROM専の頃、連載をしていた21Rさんも、作品を最後に引退なのですね…。
フラッシュやサイトも見ていましたが、やっぱスレの先輩といいますか…(´∀`*
最後まで力筆、期待してます…!

それでは現役之神、頑張ります…!
引き続き、小説スレをお楽しみ下さい。
之神でした。

808白猫:2008/03/28(金) 16:30:36 ID:MsoYOISQ0
Puppet―歌姫と絡繰人形―

第一章〜第五章及び番外編 5冊目>>992
第六章 -夜空の下で- >>30-37
第七章 -深紅の衣- >>70-81
第八章 -神卸- >>137-139
第九章 -チャージング- >>164-171
第十章 -母- >>234-241
第十一章 -北へ- >>295-299
第十二章 -バレンタインチョコレートケーキタワー?- >>349-353
第十三章 -神格化- >>388-399
第十四章 -開演、演舞、そして終演- >>461-474
第十五章 -月下に煌く紅- >>552-561
第十六章 -禁術、その名は[ルリマ]- >>762-766
これまでの主要登場人物 >>38
用語解説 >>255-261


第十七章 


そして、
 「『 ルリマ 』」
来た。
 「『 ウルトラ――ノヴァ 』」
エリクシル、完成の時が。

ルフィエの両の手から繰り出された巨大な光の怒涛を見据え、ネルはゆっくりと右手を差し出す。
まるで掌でその怒涛を受け止めようとしているかのように。
その姿を見やり、マペットは小さく言う。
 〈あの右腕に全てを集中なさい〉
 (うん)
二人だけに通じる言葉を交わし、マペットの指示通りにルフィエはその怒涛の矛先を僅かにずらした。

 〈敵の狙いは[エリクシルの強奪]と考えてまず良いでしょう……パペットめ、とうとう[アトム]を使うつもりのようですね〉
と心中で呟き、マペットは辺りを見渡す。
先の金髪の青年の姿はどこにもない。どこかへ避難していると考えるのが妥当だろうか。
 〈ラグナロク発生装置、通称[アトム]……起動には最低"ふたつ"のエリクシルが必要だったはず――〉
思考を流す合間、
 〈!〉
思い出した。

 〈まさ、か……[レッドストーン]? いや、ルヴィラィ=レゼリアスもそこまで愚かでは――〉
レッドストーン。
エリクシルと同じ――或いは、それ以上の力を持つ天上界の至宝。
しかしあの至宝はアリアンに安置されている。強奪される心配はない。
 〈そう――下らない危惧を行っても結局は、杞憂に終わるのです〉
マペットは知らなかった。
既にルヴィラィの手に[レッドストーン]が渡っていることに。
そしてマペットは知らなかった。
既に[エリクシル強奪]の布石は、打ち終わっていることに。

そしてそのマペットの思考の間、
凄まじく膨大な魔力の込められた怒涛が、ネルに直撃した。
一瞬、その右腕がその怒涛を押し返したかに見えたが、次の瞬間ネルの体を、丁寧に整えられた花壇ごと怒涛が飲み込んだ。
その光の怒涛はネルを飲み込んでも全く勢いを衰えさせず、凄まじい勢いのまま、ヴァリオルド本低に直撃し、ようやく止まった。
 「…………」
盛大に空いた大穴を見据え、ルフィエは頬を伝う汗を拭う。
 〈初めての割には…素晴らしい統御でした〉
 「うん」
マペットの言葉に少しだけ微笑み、ルフィエは煙の立ち上る邸宅を見やる。
破城槌でも衝突したようなその大穴に頬を引きつらせ、その穴にゆっくりと歩み寄る。
 「ネルくんに怒られちゃうかなぁ、これ」
 〈壁の一枚や二枚問題ありません〉
 「……壊滅状態なんですが、本邸」

二人の会話に突如割り込んできた聞き覚えあるの声に、ルフィエは顔を上げる。
濛々と立ち込める煙の中、襤褸布のような服を引きずりながら、這々の体のネルが顔を出した。
 「何の騒ぎですか、これは」
 「……〜〜っ!」
そのネルの問に答える前に、ルフィエは思い切り、ネルの体に飛びついた。
 「っ!?」
いきなり飛びつかれ体制を整えられるはずもない、ネルはあえなく地面に倒れこんだ。
ぐしゃ、と何かの潰れる音がしたが、それにも構わず、ルフィエは自分の顔をネルの方に埋める。
 「ネル、ネルくん……生きて、生きてた…」
 「し、死ぬ……潰れまず、ルブィエ……」
 「あ、ごめん」
ネルの言葉に、ルフィエは慌ててネルから離れる。
ようやく自由になったネルは、痛む体をよいせと起こす。
 「良かった…元、戻った」
 「戻った? 何のことです」
目を丸くするネルに、しかしマペットは言う。

809白猫:2008/03/28(金) 16:31:02 ID:MsoYOISQ0

 〈ネリエル君、エリクシルを見せてください〉
 「……」
マペットの言葉に、ネルはゆっくりと右腕を持ち上げる。
血を零した様な紅色の宝石――エリクシルはしかし、特段変わった様子はない。
 〈それで、完成したエリクシルの心地はどうですか〉
 「……いや、別に」
 〈…別に?〉
 「特に何も……」
プッと吹き出したルフィエを無視し、マペットは焦った風に言う。
 〈そんなはずはありません! 完成したエリクシルは人智を超えた力が込められ――〉
 「全く全然なーんにも、感じません」
笑いを堪えるルフィエをやっぱり無視し、マペットは小さく問う。
 〈……本当に、何も?〉
 「はい、何も」
 〈…………〉
 「どういうこと? エリクシルはまだ完成してないの?」
黙ったマペットに、ルフィエは小さく耳打ちする。
が、マペットは震える声で呟く。
 〈有り得ません――第四段階が解除されたということは、エリクシルが完成したということ――。
 それなのになぜ、エリクシルに何の変化もないのです――〉
明らかに動揺しているマペットの声を聞き、しかしネルは溜息を吐く。
 「どうでも良いでしょう、そんなこと」
 「ネルくん、ほんと自分のことについては適当だよね……」
 「悪いですか」
 「いや否定しなよそこは」
ルフィエの言葉に頬笑み、しかしネルは言う。
 「まぁ事実ですからね……で、話を戻しますが」
顔に浮かんでいた笑みを0コンマ1秒で消し去り、厳しい目つきで自分の真下を指す。
その先にあるのは、完全に粉々になった――ヴァリオルド邸の壁。
さらにウン百万円はしそうなカーペット、壁画、花瓶エトセトラが、見るも無残な姿になっている。
 「これは、一体どういうことなのでしょうか?」
 「……えーっとね」
 「まさか敷地内でウルトラノヴァ!なんてやらかしてないでしょうね……?」
 「ぎっくり」
 「……」





古都南西部、オベリスク跡地。
その地に、大小二つの影が、あった。
 【エネルギーチャージ、97%――】
そのうち一つ、大きな影――デュレンゼルは、両手に抱えた巨大な筒をじっと見やる。
それを眺めていた小さな影――ルヴィラィは、小さくその足を叩く。
 「いいわ、デュレンゼル」
その言葉に首を傾げたデュレンゼルは、筒に据え付けられている双眼鏡状の器具に顔を押し付けた。
 【グ? まだ100%では、ない】
 「それだけあれば充分――撃ってやりなさい、[射手座(サジタリウス)]」
不敵な笑みを浮かべるルヴィラィを眺め、デュレンゼルは耳まで裂けたような口をU字に曲げる。
 【[射手座]発射カウントダウン――アルジ、して、くれ】
 「いいわよ――5秒前。4、3、2――」
カウントダウンの途中、ルヴィラィは顔に浮かぶ笑みを深める。
 (この攻撃でエリクシルは完成する――もう完成していれば、フェンリルは死ぬ)
 「1……ッ撃ェ!」
そして、一撃。

デュレンゼルの持った筒から、凄まじい勢いで金色の衝撃波が吐き出された。
物凄い速度で北東部へと飛ぶその衝撃波を見やり、ルヴィラィは夜空を見やる。
 「ルフィエ――あなたなら、どうするのかしらね」

その言葉と同時、
古都北東部、ヴァリオルド邸方向から、凄まじい爆炎が立ち上がった。

810白猫:2008/03/28(金) 16:31:23 ID:MsoYOISQ0

 「ぅ、く――」
突如ネルに蹴っ飛ばされたルフィエは、ふらつく体をゆっくりと起こす。
ガミガミとルフィエに説教をしていたはずのネルが突如顔色を変え、自分の体を邸宅の中に蹴り込んだ。
その後、突如視界が黄金に包まれたのを覚えている。
 (なに――?)
 〈この遠距離攻撃は[射手座]――パペットめ、アトムの起動はもう終わらせたようですね〉
 「ネルくん、だいじょ――」
マペットの言葉に取り合わずに顔を上げたルフィエは、

目を見開いた。


炎に焼けた庭園の端、大穴の空いた邸宅の脇、
 「ネルくん――その、槍」
荒い息使いで立っていたネルの左手に握られていたもの。
 〈まさか――どうして〉
ルフィエとマペットが驚愕に目を見開いた眼前、
真っ白の紫電が、辺りを蛇のように這った。
その紫電の中央、息荒く仁王立ちするネルは、ゆっくりと自らの手に握られたものを見やる。

それは、槍。
柄から刃先まで白に統一され、唯一その柄先に付いた紅色の鈴だけが、その槍を飾っている。
辺りに飛び交う白の雷に、マペットは小さく呟いた。

 〈――グングニル……〉







グングニル。
又の名を、[白き神々の槍]。
その一撃は総てのものを爆砕し、
その一撃は総てのものを滅び去る、
唯一無二の、[破壊神の槍]。
名も無き最高神の持っていた頃、その槍は天地を揺るがし、邪なる者を只の一撃で薙ぎ払ったという。

その槍が今、ここに在る。


 「……"これ"、が、グングニル――」
紅色の目でその槍を見やり、ネルはゆっくりと右手で頬を拭う。
右手に残る汗と砂の嫌な感触に目を細め、

ピタリと止まった。
 (――ん?)
試しに、右手を強く握ってみる。
痛い。
右手の爪が肉に食い込み、ほんの僅かだが痛みを感じる。
 (……は、は)
一体、どうなっているのか。

 (――右腕が、再生している……!)






 「……これがグングニル……ルヴィラィを倒す、切り札――」
 〈あの槍はナクリエマの王族が持っていたはずですが……〉
そのマペットの言葉に、ルフィエはふと思い出す。
初めてネルと共に事件へと挑んだ、ビガプールの怪奇事件。
あの時[歌姫]は確かに、[グングニルを破壊する]と言っていた。
その時は歌姫の言っていた言葉の意味は分からなかったが、今のマペットの言葉で理解した。
ルヴィラィはこの槍を破壊したがっていたのだ。
この戦技無双の槍、グングニルを。
 〈ネリエル君〉
 「…………」
槍を凝視するネルに、マペットは冷静に言う。
この槍がエリクシルによって[召喚された]ということは、恐らく彼は――
 〈グングニルの扱い方は体で覚えて下さい。仮にあなたが[ワルキューレ]なのなら、それを扱えるはずです〉
マペットの言葉に目を細め、しかしネルは頷いた。
手に持ったグングニルを両手で握り直し、荒い息を整える。
 (――グングニル、か)
そう心中で呟いた、瞬間。
ネルの姿が、突如掻き消えた。

811白猫:2008/03/28(金) 16:31:46 ID:MsoYOISQ0

 「っえ――」
突如ネルの姿が消え、ルフィエは唖然とする。
慌てて辺りを見渡すが、ネルの姿はどこにもない。
 「ど、どうなって――」
 〈グングニルの能力――[先制攻撃(アクティブ)]です〉
[先制攻撃]。
自身を中心に小さな結界を発動し、その内部の敵を瞬時に察知する能力。
しかも内部の敵、その者の持つ武器や身体能力、さらには健康状態なども手に取るように分かってしまうという。
 〈恐らく先の傀儡の元へ……ルフィエ、彼の気配を探れますか〉
 「う、うん」
マペットの言葉に頷き、ルフィエは慌てて眼を閉じる。
自らの意識を外へと向け、辺りの大小様々な魔力を感じ、探る。
そして数秒経たずに、察知した。
 「――倉庫の方だ」
 〈急いでください。あの傀儡、何かやらかします〉
 「うん」
そう言うが早いか、ルフィエは地面を強く蹴り上空へと舞い上がる。
強風が体を一瞬叩き、その後、黒と黄金(コガネ)に彩られた古都の全景が、その眼下に広がった。
 〈風景に見とれている場合では――〉
 「分かってますよーだ」
いたずらっ子のように舌をペロリと出し、ルフィエは自分の下方を見やる。
時たま上がる黒と濁り色の炎は、恐らくはアーティとサーレのものだろう。
傀儡が二体も襲撃に加わっていることを悟り、ルフィエは渋い顔になる。
 「――よし」
そう呟き、一跳。
まるで空中から打ち出された弾丸が如き速度で、ルフィエは下降を開始した。







 【[射手座]も無事発射完了……ようやく作戦開始ですね】
ヴァリオルド邸の敷地内、"六番目の"倉庫の入り口に佇んでいたサイカスは、手に持ったコスモスの花弁を弄びながら笑う。
 【と言っても私にはもうやることがあるわけでなし――後はベルモンド達に任せて帰りましょうかね】
 「それは困りますね」
 【!?】
サイカスの呟きに答えたその声に、咄嗟に周囲を見渡す。
が、周囲には何かの気配があるわけでもなく、また何者かの姿もない。
空耳か、と再び視線を邸宅の方に向けたサイカスは、
凍り付いた。

まるでそこにいるのが当然であるかのように、白い槍を掲げたネルの姿があった。
目を細めてサイカスを眺めるネルは、しかしやがて視線を逸らす。
 「今の口ぶりだと他に傀儡がいるんですね……さて、どこでしょう」
 【っく――まさか、"これほど早く"……】
 「……行くぞ、グングニル」

意味深なサイカスの言葉には取り合わず、ネルはサイカスに向かって飛び掛かった。
それを冷や汗の浮かぶ笑みで迎えたサイカスは、鋭く右手を払う。
途端、無数の花弁が双方の合間に出現、その行く手を塞ぐ。
が、
 「ッおぉおおお!!」
その無数の花弁を瞬時に薙ぎ払い、ネルはグングニルを鋭く突き出す。
 【『 ブルー、シールド 』】
しかし、サイカスの呟きと同時、
ネルとサイカスの間に、さらに巨大な盾が出現する。
それを見、ネルは瞬時に槍を旋回、両手でグングニルを掴み、
 「っあぁああああ!!」
まるで薙刀のように一閃、その盾を左右真っ二つに裂いた。
途端、

 「――!」
 【っな!?】
と二人が驚くほど、凄まじい閃光が辺りを包んだ。
その閃光の中、裂かれた盾がほんの僅かに凝縮し、

大爆発を起こした。

812白猫:2008/03/28(金) 16:32:08 ID:MsoYOISQ0


 「――あれは」
倉庫から上がった白い大爆発を見やり、ルフィエは目を見開く。
何か魔術を発動した気配はなかった。ネルはカリアスのようにモーション無しで術が発動できるわけではないはず――
 〈なんと。もう[爆風(ブラスト)]まで扱えているのですか〉
 「……[爆風]?」
マペットの言葉に、滑空を続けるルフィエは首を傾げる。
はい、とルフィエに頷き、マペットは言う。
 〈[爆風]。グングニルの刃で切り裂かれたものは、全てあの呪いが掛かります。
 [爆風]が掛かった対象は瞬時に物質を変換、爆発物へと変成されます。
 変成されれば最後、瞬時に空気中の酸素と結合し――〉
 「――爆発する」
そのルフィエの言葉と同時、
先に爆発の起こった倉庫から、さらに二度三度と白の爆発が起こった。
 〈あの様子だと傀儡は任せても良さそうですね――先の金色の衝撃波を放った相手を探しましょう〉
 「うん」







古都東門からさらに東、アルパス地下監獄。
その入口に次々と集結する魔物たちを見やり、大剣を肩に番えた戦士――ベルモンドが笑う。
 【スッゲェ量。超キメェ】
 【口を慎めベルモンド――今頃アンドレ殿の準備もできている頃。
 まだ我々は予定の1/3の数しか魔物を集結させていないのだぞ?】
チャイナ服の長髪な女性――プリファーの言葉に、ベルモンドはチッと舌を打つ。
 【ウゼェなぁ……アンドレが出てんだから適当にしてもいいだろーが】
 【アンドレ殿の[槍投擲機(カタパルト)]がもし一台でも破壊されれば、彼の赤毛の女性は我々をどのように処罰するのだろうな?】
ガリガリと頭を掻いたベルモンドに、溜息を吐いたプリファーはそう呟く。
ギクリと肩を震わせたのを見、プリファーはさらに言う。
 【予定時刻まで残り15分……さて、このような愚鈍を見せている我々だ。きっとタダでは済まないだろう――】
 【さ、さーて。さっさと残りの魔物を出しちまおうか】
 【それでよいのだ】
些か以上に緊張感のない会話の中で、確実に魔物の数は増え続ける。
その数、数千体。







所変わって、古都南門のさらに南、テレットトンネル北側出口。
普段は滅多に冒険者の通らないこの地(時々炎を纏った初心者マークの冒険者が魔物を虐殺しようと目論んで来るが)に今、尋常ではない量の"あるもの"が集結していた。
真っ茶色の外装の前方に、ポッカリと空いた3つの穴。
さらに後方には、迫り来る敵を排除せんとする巨大な刃まで据え付けられている。
その胴体の下には6つの車輪が据え付けられ、可動式であることを物語っていた。
その奇妙な機械が凡そ数十機、テレットトンネルの入り口の前にズラリと並んでいるのだ。
 【ふぅ――運ぶのに疲れましたなぁ】
そんな機械たちの前方、それらを愛おしそうに眺めていた男は、小さくそう呟く。
その男の肩に乗っていた小さな木でできたツバメは、まるで機械細工のようにカクンを首を傾け、言う。
 【アんドレ、[槍投擲機]、出発できル】
 【そうですな、ムームライト。ではそろそろ参りましょうか――】
眼鏡をかけた男――アンドレの言葉に、機械細工のように頷き、木造ツバメ――ムームライトが呟いた。




 【[古ト殲めツ作戦]、かぃ始……】









FIN...

813白猫:2008/03/28(金) 16:32:33 ID:MsoYOISQ0
[ルフィエネル主人公二人のおまけコーナー(たぶん)6]

 「久々のおまけコーナーだよ、ネルくん」
 「って言ってもやること無いでしょうに――やることあるんですか?」
 「なんでも今回、ちっちゃなおまけ物語があるんだって」
 「要するにアレですか。僕らの出番はないんですか」




おまけの番外編


   よねんまえのこと

 「どうもこんにちわ」
どこかアクセントのおかしい挨拶と共に、白装束の青年――カリアス=ハイロームが頭を下げた。
それを胡散臭そうに見た蒼髪の女性――アーティ=ベネルツァーは、手元の資料を胡散臭そうに見、言う。
 「ふぅん……ナクリエマ出か。魔術師歴は長いのかしら」
 「生まれたときから叩き込まれたと思いますわ。親父がケッタイなこと言いはるもんで」
ケッタイだの言いはるだのよく分からない単語も出てきたが、大よその意味は理解できた。
中等学校での成績もトップクラスで飛び級卒業している。13歳とは思えない。
 「――っま、大戦でゴタゴタしてるからアンタみたいなガキも採用されるのよ。感謝なさい」
 「アンタもガキやん」

   めきょ

減らず口を叩いたカリアスの顔面に、さっきまで壁にかかっていたはずの盾が見事に食い込んだ。
堪らず地面に突っ伏したカリアスに、アーティは睨みを利かせて言う。
 「あのね。私はもう17歳。王国法では立派な成人なわけ。アンタと一緒にしないでくれる?」
痛そうに顔を抑え立ち上がったカリアスは、胡散臭そうに頭を掻き、言う。
 「王国法もあんたのことも知っとるわ……。アーティ=ベネルツァ―。若干15歳で[月影団]首領アルデンテス=ルードワンを捕まえた天才少女……やろ?」
自信ありげにそう答えたカリアスに、しかしアーティは首を振る。
キョトンとしたカリアスに槍を突き付け、アーティはまさに、誇るように言った。
 「違うわよ。天才"美"少女。おわかり?」
 「……へ」

   バキッ

鼻で笑ったサイカスに、今度はアーティの鉄拳が見事に直撃した。






 「それじゃ、とりあえず採用試験でも受けてもらおうかしら」
 「なんでや」
この小生意気なガキ、と頬をピクつかせ、しかしアネットはにこりと笑う。
 「あんたみたいな子供をホイホイと戦場に送るわけにはいかないもの。最低限の実力があるかどうか、審査させてもらうってわけ」
 「建前やなぁ……6歳のガキが剣持っとる時代やで」
 「あーうるさいわね。さっさとやるわよ」
ほんとに生意気、と溜息を吐き、アーティはズカズカと兵舎の廊下を突き進んでいく。
時折聞こえてくる呻き声にカリアスは目を細め、アーティの後に続いた。
 「……怪我人がなんで兵舎におんねん」
 「病院はもう手一杯。ギルド師団大戦の現在の総被害者数、何人だと思ってるわけ?」
 「4700人」
 「それは死者の数。重軽傷者合わせて100000人は下らないわ」
 「…………」
カツカツと廊下を進む中、アーティはカリアスに小さく言う。
 「[戦争]はね、相手を殺せば勝ちじゃないの。それはお子様や騎士の遊びである[決闘]。
 戦争は一瞬でも気を抜けば死ぬ。気を抜かなくても死ぬ。殺すか殺されるか、一分一秒、そこでの時間は全て、命綱のない綱渡りなの。
 こんな世の中でアンタみたいな子供が兵士として駆り出されるのは別に珍しいことじゃない――それどころか、それを止めることが、犯罪になりかねないの」
 「だから、採用試験で時間稼ぎしとるんか? 一秒でも出陣を遅らせるために?」
 「勘違いすんじゃないの」
ようやく到着した兵舎の奥、模擬戦闘場の入り口で、アーティは立ち止まる。
その瞳には小さく、ほんの小さく、悲しみの色が宿っていた。
 「私はもう、無下に死者を作りたくないだけ……もう、レティアみたいな子を作っちゃダメなの」
 「……レティア……若干6歳で戦場へと出陣し、たった一日で数百人

814白猫:2008/03/28(金) 16:33:36 ID:MsoYOISQ0
(文章が途中で切れてるし!orz)
 「……レティア……若干6歳で戦場へと出陣し、たった一日で数百人を切り伏せた戦の大天才」

十一年前、ブルン歴4905年に勃発した[ギルド師団大戦]。
その戦を鎮めるために投入された機動部隊、その中に後の[吹雪姫]と呼ばれることとなる少女がいた。
それこそ[レティア=ルーグナッド]。[戦場の美姫]と謡われた、当代最強の剣士。

 「……レティアは私の無二の親友だった。あの時、レティアが戦に召集されなければ……あんなことには、ならなかったのよ」
 「…………」
アーティの言葉に籠る痛恨の感情に、カリアスはガリガリと頭を掻く。
 「オレにはよう分かれへんけど――とにかくアンタは、俺を戦場に出したくないわけか」
 「……」
 「残念やけどオレは戦うで。そう決めて此処まで来たんや」
俯いていたアーティは、カリアスの言葉に顔を上げる。
 「オレは絶対に逃げへん。敵からも戦いからも自分からも。家を出るときにそう決めたんや。こんなところで立ち止まるわけにはいかへんねや」
 「…………そう」
カリアスの言葉に少しだけ微笑み、アーティは戦闘場入口のドアノブを掴む。
 「採用試験の内容は簡単。私に一撃喰らわせる。分かったわね」
 「はいよ」
アーティは思い出した。
十一年前、自分の無二の親友――レティアの言っていた言葉を。

   《大丈夫だよ、私逃げないもん。アーティちゃんと指きりしたから!》

 (逃げない――か)
戦闘場の中心、雑に引かれた二本の線の上に立ち、双方は武器を構える。
 (口に出すのは簡単だけど、それを実践するには相当な覚悟が必要)
 「ほんなら行くで――アーティはん」
 「ええ」
カリアスの構える杖を見やり、アーティは槍をゆっくりと構え直す。
 (あなたの覚悟――見せてもらうわよ。カリアス)






その、数年後。
古都で絶大な勢力を誇っていたギルド、[アンタレス]を崩壊させ、
[ギルド師団大戦]において[陣風隊]を結成、一気にその戦火を縮小させた英雄、
カリアス=ハイロームは、いつしかこう呼ばれるようになっていた。

戦場において白き装束を纏い、疾風(はやて)が如く速度で魔術を繰る英雄、


曰く、[白の魔術師]。




---
どうも、白猫です。
次回にとんでもなく忙しくなりそうな伏線をしてしまいちょい後悔中です(オイ
今回はグングニル登場、新技いろいろ、新傀儡二名、激戦開始と、なかなか忙しいスケジュールとなっております。
しかし新しいPCだとまだいろいろ慣れません。特に変換がバカになってますorz
単語登録も全部消えたので最初から登録し直し…しねますね。はい。
チャットの方は当ては一応ありますです。部屋を作れたらの話ですが。

コメ返し

>◇68hJrjtYさん
地震ですか……震度3~4でも普通にアイスを食べてやりすごすくらい図太い白猫です。
第四段階。やっぱり言ったとおり登場がすさまじく少なかったですね(コラ
第三段階はまだ少し登場するのかしら、しないのかしら……まだ、どっちでもいいですね。たぶん。
ルリマは可愛いっぽく感じるけど一応爆裂危険な術なのですね、たぶん。(どっちだ
最終段階はー……まだちゃんと決めてなかったりします(コラ
---
心理描写はあまり得意ではなかったりします。書けないわけではないですが……。
私は戦闘を書くのが一番好きですね。今回もグングニルの部分を書きたくてウズウズしてた白猫です。
まぁ、ちょっと[爆風]の描写も変更になりましたが。。。それはドンマイですよ。

815白猫:2008/03/28(金) 16:33:58 ID:MsoYOISQ0

>国道310号線さん
応援ありがとうございますです。
文章が書くのは御互い様ですね。私も未だに全くついていけない(苦笑)
これも本当はもっと早く投稿するつもりだったんですが、番外編に思ったより時間を…orz
私もがっちり応援しています。頑張ってください〜!

>柚子さん
復活あり!
続編と言いますか――まぁ、古都で繰り広げられるちょっとした中編小説と言いますか。
ちなみにPuppetとはあまり関連付けない予定です。ちょっとした固有名詞は拝借しますが。
すごいですよね。すごい気持ち悪い。(え
まだまだ用語も増えてますし…最終章が終わったらまたやり直すべきかしら。。。

>之神さん
「」は……某小説板で活動していたときの名残でしょうか。使い分けてしまうのは癖ですね。
エリクシルはやっぱり被っちゃいますかねぇ……でも一応ファンタジー小説の集大成みたいな感じですし。
まぁ私の小説のエリクシルはいろいろ妙な設定がくっついちゃってるのでグチャグチャになってます(コラ
ファンタジーだと錬金術も出してみたくなります。そんなふいんき(←なぜか変換できない)がありますもんね。


さて、いろいろgdgdなところもありますが今回はこの辺で。
また次回お会いしましょう。白猫の提供でお送りしました。

816◇68hJrjtY:2008/03/28(金) 20:03:12 ID:pSnoKXU60
>之神さん
エレベーター。それぞれがアレコレで足止めし合っている姿が凄く楽しそう(ノ∀`*)
コマンド?に思わず吹きました…初代ファミコン版DQ1のプレイ経験がある私には感涙モノ。
ライトとナザ君がそれぞれの窮地を脱したものの、高みの見物予定(?)だったアルシェたちも巻き込まれてしまいましたね…。
シリウスがでも一番所長のガゼットに接近成功したようですね…って、踊ってる?(;´Д`A
しかし一番怖いのは見ないでもしっかりビルの様子を指示できるフィアレスかなぁ…(汗 続きお待ちしてます!
---
イラストはあせらずに!各キャラの姿の妄想はちゃんと進んでますし(笑)
そして実際之神さんの想像の中のキャラとのギャップに悶えるというのもひとつの楽しみ方ですし。
キャライラもそうですが、是非ともミュリエ・ジュールの全体図が欲しい(殴

>白猫さん
毎回UPされるたびに新しい単語、新しい展開に一喜一憂している68hです(笑)
ネルの手に入れた「グングニル」。意味ありげなルヴィラィの言葉。気になる要素は色々ありながらも、エリクシルは完成した…?
でもあの本の言葉もありますしこれが完全体かどうかはまだ分からないところですね。
傀儡二つとの戦いに目が行ってしまいますが、なんと古都殲滅作戦なんてものが展開されていたとは(汗
各方面からの残りの傀儡たちの攻撃が予想されますね。神々の黄昏…発動してしまうのでしょうか。
---
カリアスとアーティの外伝もありがとうございます(*´д`*)
カリアっさん13歳で戦争!?とか思ってたら、二人の知る今はいない少女レティアは6歳でしかも超強かったとかって(;・∀・)
なにやらレティアという少女もちょっと気になってみたり…また外伝UP期待してます!

817国道310号線:2008/03/29(土) 12:57:41 ID:Wq6z33060
第一話 〜ミニペットがやってきた!〜

前編 >>487-490 後編 >>563-569

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第二話 〜狼男と魔女 2 〜

>>784-787


前回のあらすじ: 魔女に小犬にされてしまったトパーズを助けてあげよう


―魔法都市スマグ

その町は深い森を背景にひっそりとあった。
都市というには小規模なスマグは、昔は古都ブルンネルシュティングと並ぶほど繁栄していたらしい。
しかし、今は町の名にその面影を残すだけである。
町から北に見えるスェブタワーから強い魔力が降り注ぐこの町は魔法研究が盛んだ。
そのためここはウィザードが多く、同じくウィザードであるエムロードの故郷でもある。


もうスマグが目と鼻の位置に到着したエムロードらは魔女捜索を開始する。
「まずは町で聞き込みね。」
「闇雲に探すよりはいいだろう。」
テラコッタの提案にグロウは同意した。
トパーズを犬にした魔女と遭遇した湖畔の森は広い。
他に魔女を目撃者した者がいないか探す方が得策だ。
「それじゃあ行こう。 俺スマグって初めてなんだ。」
何やらブルーノはウキウキしている。
彼らが朝霧に浮かぶスマグへ足を向ける中、エムロードとトパーズはその場に留まったままだった。
「僕はここら周辺で異質の魔力が無いか探ってみます。」
「俺もこの姿のまま町へ帰りたくないんだよな…」
エムロードに続いて、トパーズはバツが悪そうに言った。
立ち止まると彼らの方を向いたブルーノは残念そうな顔をする。
「折角だからスマグを案内してもらおうと思ったのにな。」
「何、のん気なこと言ってるのよ。」
ブルーノに突っ込みを入れるテラコッタ。
今回の目的は観光ではなく人探しなのだ。
魔女がアラク湖から離れている可能性もある、出来るだけ急いだ方がいいだろう。
「町の方は私たちに任しておけ。」
「よろしくお願いします。」
グロウの申し出をエムロードは有難く受け入れる。
こうして、彼らは二手に別れ、手がかりを探すべく動き出した。

ブルーノたちの姿が町に消えてゆくのを見送ると、エムロード達は町に背を向けて歩き出した。
ハノブから通って来た道を戻り、湖方面へ向かう。
「やっぱ兄貴もスマグに入らないのな。」
小犬の姿のトパーズは早足でエムロードに並ぶと彼を見上げた。
「僕は町から追放処分になった身ですよ。」
エムロードはチラリとトパーズを見やる。
先程、理由をつけて町に入らなかったのはそのためだった。
彼は道端に座りやすそうな巨岩を見つけると、それによじ登る。
頂上に座ると意識を集中させ、魔力の流れを読み始めた。
その岩にトパーズもよじ登ると彼の近くに座る。
「親父とお袋の墓参りくらい、帰ってきたらいいのに。」
トパーズは遠くの方を見ながら言った。
切り立った崖になっている高原の麓の森は青々としており、彼方遠くには海が霞がかって見える。
爽やかに吹く涼しい風は懐かしい木々の匂いがした。
「お前こそ、ウィザードばかりのこの町から出ようとは思わないのですか?」
眼下の情景をボンヤリと眺めながらエムロードは彼にたずねる。
自らの血統と歴史に誇りを持つウィザード達は他のものを侮蔑する傾向がある。
スマグに産まれ育ちながらも魔術の道に進まず、ウルフマンとして生きる、ある意味異端な彼にとって、
この町は決して住みやすい場所ではないだろう。
その上、自分と密かに会ったことが知られたら、どんな噂をされるか分かったものではない。
「だってまだ、メズンヘンナちゃんと、カリンちゃんと、ラティティアちゃんと、ハイハイちゃんと、
ミツさんからデートのお返事もらっていないし…」
「そうですか。」
真剣な声色で言うトパーズにエムロードはそうとだけ返す。
相変わらずこの男は町中の女性に声をかけ回っているようだ。
この調子では彼はしばらくこの町に居座り続けるのだろう。
対する自分はスマグを離れてから各地を放浪し、ギルドを転々としていた。
もう故郷には戻る気は無かったし、知人と連絡を取ったことは一度も無い。
そう、たった一度も…。
「ところで、よく僕の居場所が分かりましたね。」
もちらん、弟とも一生会うことは無いだろうと思っていたのだ。
生死さえ分からない自分の元へ、どうして彼は真っ直ぐやって来れたのか。
事も無さげトパーズは言う。
「ある天使から兄貴のいるギルドを聞いたんだ。」
「天使から?」
彼の予想外の回答に思わずエムロードは聞き返した。

818国道310号線:2008/03/29(土) 12:59:04 ID:Wq6z33060
レンガ造りの家が多いアリアンとは違い、木製の家々が立ち並ぶスマグは落ち着いた雰囲気がある。
町中を行き交うのは冒険者や商人、学生と思しきウィザード、そして意外と傭兵の姿が多い。
「数週間前にスマグからブルン連合に要請があったのよ。」
彼らはブルン連合に雇われているのだと、テラコッタは説明した。
傭兵上がりの彼女にはその手の情報網があり、情報のやり取りを頻繁に行っている。

数時間、町中を歩き回ってはいるものの、今だ魔女を見たという人は見つかっていない。
それでも、彼らは根気良く聞き込みを続けた。
「魔女…、ですか。」
「この近くの森にいたらしいんだけど、知らないかな?」
ブルーノは二人組みのウィザードに話しかける。
彼女らは顔を見合わせた後、一人が自分の胸に手を当てた。
「それは私達の事ではなくて?」
彼女が言うように、魔法を使う女性の事を魔女と称する場合もある。
「いいえ、あなた達ウィザードとは別の魔法を使う魔女よ。」
補足しながらテラコッタはしきりに両腕を擦っている。
砂漠の環境に慣れている彼女にとって、ここの気候は肌寒く感じられた。
トパーズから聞いた魔女の特徴をブルーノは述べる。
案外若くて、短めの杖のような物を持っていたらしい。
「それって、リトルウィッチの事ですか?」
もう一人のウィザードの少女が首をかしげながら聞いてきた。

リトルウィッチ、何時の頃からか冒険者の中にそう呼ばれる者たちが現れた。
ステッキを振るい、軽やかに舞い戦う彼女達も魔法を使う。
しかし、その魔法がウィザード達が使うものと全く異なるものとは気が付かなかった。
「リトルウィッチか、案外そうかもしれんな。」
思案顔でグロウはうなずいた。
「最近、アラク湖の東にある山小屋にリトルウィッチが住み着いているんですよ。」
ウィザードの少女がその山小屋がある方向を指差す。
その者がトパーズを犬にした本人だろうか。
もし違っていても彼がかけられた魔法について何か知っているかもしれない。
「行ってみるよ、どうもありがとう。」
これまでに無い有力な情報を手に入れ、ブルーノは喜んだ。
「もし、差し支えなければ、どうして魔女を探しているか教えていただけませんか?」
「実はエム…うぐっ!」
ウィザードに答えようとしたブルーノの口をグロウがいきなり押さえつけた。
ブルーノは目を白黒させたが、グロウはそのまま彼の代わりに答える。
「知人が動物に姿を変える魔法を魔女にかけられてな。その解呪法を聞き出すために探しているのだ。」
その様子に戸惑っていたウィザードだったが、理由を聞くと懐から小瓶を取り出した。
「よろしければ、これを使ってください。」
差し出された小瓶には液体が入っていた。
「変身魔法の解毒剤です。 効くかどうか分かりませんが、前に作っていたものが余っていますので。」
「魔法解けるといいですね。」
テラコッタは礼を言ってそれを受け取る。
そして、グロウに口を塞がれたままのブルーノらと共に、二人組みのウィザードと別れた。

町の中央にある広場の周りは商店が並んでおり、スマグで一番賑わっている場所だ。
子供の遊び場にもなっているようで、かん高い歓声や、バタバタ走り回る音が聞こえる。
広場の噴水までブルーノを引きずると、グロウはやっと彼を解放した。
「ぶはー、息止まるかと思った。」
グロウの大きい手からようやく逃れることが出来た彼は深呼吸をする。
「奴の名をここでは出さない方がいい。」
「どうしてなの?」
さっきから不可解な言動を取るグロウにテラコッタは腑に落ちない様子だ。
彼は少し考える素振りを見せる。
「人には、何かしら触れられたくない事がある。そういうことだ。」
それだけ言うと彼は黙り込んでしまった。
確かに、誰しも人に言えない秘密はあるだろう、だが、名前を言うだけでいけない秘密なんて余程の事だ。
しかも、ここはエムロードの故郷でもあるのに。
彼はどういう気持ちでこの土地を訪れたのだろうか。
そんな事を思いながら、ブルーノはテラコッタの顔を見る。
彼女も何とも言えない表情をしていた。

819国道310号線:2008/03/29(土) 13:00:40 ID:Wq6z33060
「分かったよ、気をつける。」
ブルーノが力強く言うと、グロウは優しく頷いた。
「マスターも、もっと早く言ってくれたら良かったのに。」
おどけた様にテラコッタも笑顔をつくる。
大の男がずるずると引きずられていく様は人目を引き、実を言うと恥ずかしい思いをしていた彼女だった。
「あぁ、すまん。 忘れていた。」
今気付いたと言わんばかりに、グロウは両手をポンと叩いた。
えっ、と呆気に取られるブルーノとテラコッタ。
「とりあえず、有力な情報が手に入ったので、奴に伝える。」
早速グロウはエムロードにテレパシーの一種である耳打ちを始めた。
それは相手の名前が分かってさえいれば、どんなに遠くにいても言葉を交わすことが出来る術である。
簡単に誰でも使えるので、冒険者の間では広く浸透していた。
L&K という組織が編み出したと言われているが詳しい仕組みは分かっていない。
神経を集中させ対話をしているグロウを余所に、ブルーノとテラコッタはひそひそ話し合う。
「忘れちゃうくらいなら、大した事なさそうね。」
シリアスな顔をして『触れられたくない事』と言うものだから、エムロードに悲しい過去の一つや二つあるのかと思ったが、
どうも怪しく感じる。
彼女にブルーノも同意した。
「あいつ怒るとすぐに魔法発動させるから、きっとここの噴水を大破させた、とかなんじゃないかな。」
二人して件の噴水を見上げる。
じょぼじょぼと水を吐き出し続ける噴水は何も語らず、ただ、彫刻の人物像が広場で遊ぶ子供たちを見守るだけだった。


グロウからの連絡を受け、エムロードとトパーズはリトルウィッチが住みついたという山小屋で彼らと合流した。
その際、スマグのウィザードから貰った解毒剤を試してみたが効果は見られなかった。
元からウィザードの薬には期待していなかったと言うトパーズだったが落胆は大きく、最後の希望とばかりに山小屋を見据える。
「ごめんくださーい。 誰かいませんかー?」
ブルーノは山小屋の扉をドンドンと叩いた。
山小屋の周りは掃除されていて、真新しい蒔き木も積み上げられており、人が住んでいる形跡はある。
しかし、いくら呼んでも返事は無かった。
「留守なのかしら。」
窓から小屋の中を覗くテラコッタ、中は人影も無く静かだ。
「この場所から、異質な魔力を感じるんですがね。」
スウェブタワーの影響で魔力が濃い土地であるため、紛れてしまい分かりにくかったが、
微弱ながらもその魔力はドアの隙間からにじみ出ていた。
「おい、本当に誰もいないのか?」
居ても立ってもいられないようにトパーズはドアの前に歩み出た。
「ほら、この通り鍵も… って、あれ?」
ブルーノがノブを捻ると、ガチャリと音を立てて扉が開いた。
「…開いてる。」
「おぉ、でかした、ブルーノ。」
僅かに空いた扉の隙間をすり抜けて、トパーズは小屋の中に入っていった。
「あ、待てよ。」
ブルーノも彼を追うように扉を開き中へ入る。
「もう、勝手に入るんだから。」
「かまいませんよ、元々は木こりや猟師の宿泊所でしたし。」
両手を腰に置き、怒った顔をするテラコッタをなだめると、エムロードは扉へ向かった。


「お邪魔しまーす。」
律儀に挨拶をして、テラコッタは山小屋に入った。
エムロードとグロウもそれに続く。
太い丸太で建てられた山小屋はレンガ造りの暖炉があるだけだったが、八人が余裕で寝れそうな広さがある。
そして、予想していた通り誰も居なかった。
「あら、ブルーノとトパーズは?」
何故か先に入った筈の二人の姿まで無い。
テラコッタは部屋の中をきょろきょろ見渡した。
「おそらく、この先だ。」
グロウは片膝をつき、暖炉の前の床を触る。
そこには円形の平べったい紋章があった。
縁と中央に描かれた白い文様が淡く点滅している。
「転送用のポータルですか。」
「何で山小屋にこんな物が?」
エムロードとテラコッタもポータルの元へ行く。
急に淡く光る文様が輝きを増したと思うと、突然目の前の景色がぐにゃりと歪んだ。
ポータルの転送魔法が発動したのだ。
次の瞬間、3人は山小屋から姿を消していた。

820国道310号線:2008/03/29(土) 13:01:32 ID:Wq6z33060
投げ出されるように転送先に飛ばされたエムロードは腰を強か打った。
「もう少し、丁寧に送って欲しいですね。」
彼は腰を擦りながら愚痴をこぼす。
下には真っ赤な絨毯が敷かれていたため、有難いことにそれほど痛みは無かった。
どうやら、何処かの屋敷の廊下のようだ。
他の二人も同じような格好で尻餅をついている。
「一体なんなのよ。」
頭を軽く振りながらテラコッタは立ち上がる。
彼女がふと前を見るとブルーノがこちらに背を向けて立っていた。
彼の後ろに隠れるようにトパーズの姿もある。
どうやら全員同じ場所に飛ばされたらしい。
「早速で悪いけど、トパーズを頼む。」
ブルーノは腰から剣を抜くと、盾と共に構える。
彼が睨みつけている先には、斧を持ったアンデットの魔物、防御骸骨戦士が三体、獲物を光らせていた。

ブルーノは骸骨戦士に突進して一気に距離を詰めると、手前の一体に斬りつける。
一撃は相手の胸を切り裂き、乾いた音を立てて骨の破片を飛ばした。
素早く剣を引き戻すと、更に速度を上げ剣を振るう。
ほぼ同時に2回繰り出された斬撃は十字の軌跡を骸骨戦士に描いた。
魔物達がブルーノに気取られている間に、テラコッタは弓を引き、エムロードは魔力を溜める。
「トパーズ、こっちに来い!」
グロウの呼びかけにトパーズは急いで踵を返すと、彼の足元へ駆け寄った。
崩れ落ちた仲間に臆することなく、骸骨戦士はブルーノ目がけて左右から迫る。
彼に達する前に、右の骸骨は一筋の光に貫かれる、光の衝撃は骸骨の身を躍らせた。
テラコッタの放つ魔力の矢が連続して骸骨戦士を射抜くと、その動きを完全に停止させる。
左の骸骨が振り下ろした斧をブルーノは盾で受け止めた。
ぶつかり合う金属の鈍い音、強い摩擦により火花が散る。
ふと、火の魔力が体を螺旋状に駆け上るのを彼は感じた。
「終わりだっ!」
彼は全身を使って盾ごと骸骨を押しのけると、エムロードの補助魔法で火の力を得た剣を叩き込んだ。


「ナイスコンビネーション。」
流れるような連係で三体の防御骸骨戦士を倒した彼らにトパーズは称賛を送る。
「まったく、ずいぶんなご挨拶ですね。」
エムロードは持っている杖で床を打ち鳴らした。
「いきなり飛ばされたと思ったら、すぐそこに魔物がいてビックリしたよ。」
近くに他の魔物の気配が無いことを確認してから、ブルーノは剣を鞘に収める。
「ここは、どこなのかしら?」
「長距離の移動はしていないようだが…。」
テラコッタが周囲に首をめぐらせていると、グロウは冒険者用のマップを取り出した。
このマップはフランデル大陸が載っており、大まかな自分の現在位置が分かる優れものだ。
マップのアイコンはアラク湖付近を指している。

改めてエムロードは周りの様子を見た。
通路は広く、馬車が二台並んでも通れそうだ。
壁は白を基調としていて、金の装飾や美麗なレリーフ、絵画で飾られている。
同じく白い円柱はゴテゴテした彫刻をされていて、幾本も通路を支えていた。
ドームのように緩やかな曲線を描く天井は高く、豪華なシャンデリアが輝きを放っている。
そして、大理石の床には赤い絨毯がずっと続いていた。
「雑誌で見た、お城の中みたい…。」
テラコッタは感嘆の溜め息を漏らした。
先程の魔物が不釣合いなほど、この場所は華やかであった。
「スウェブタワーとも違うようですし、一体何処なんでしょう。」
スマグ周辺にこのような場所があるとは、エムロードは思い当たらなかった。
彼は背後を振り返る、ポータルは一方通行だったようで、そこは行き止まりになっている。
「進むしかなさそうですね。」
「行こう、この先にきっと魔女がいるよ。」
ブルーノの掛け声に、彼らは前へ歩き出した。


つづく

821国道310号線:2008/03/29(土) 13:02:34 ID:Wq6z33060
分かった! メモ帳から文章をコピペする時に、右端で折り返すにチェックいれていたから
変なところで改行されていたんだ! 今日は綺麗に投稿できていたらいいな。
ちょこっと出たスマグのウィザード二人組みは初心者クエでお世話になるあの方々です。


>516さん
初めまして、RED STONE の能力が現実に! 楽しそうと思う反面、ヘタレな私はすぐに参ってしまいそうです。
悪や善の能力者というとステータスで見れる善悪値を連想してしまいます。
ゲームにも善悪値が絡んできたら面白そうです。

>ウィーナさん
初めまして、ご挨拶が遅れました国道と申します。
こんなに維持コストが大変な暁にはきっと凄い隠された能力があるんだ! と勝手に妄想しております。
狙われるニナ、今一緊迫感がないけど、それがまた良いです。(笑) 続き楽しみにしてます!

>21Rさん
初めまして、ご挨拶が遅れました国道と申します。
ニトログリセリンはヤバイ、ヤバイよアレン。
引退なされるのですね… 慣れ親しんだ大先輩がいなくなるとやはり寂しいものがあります。
今まで沢山の作品楽しませていただきました、ありがとうございます! ラストスパート頑張ってください!!

>幕間さん
初めまして、個人的に存在感の無い天使がツボです。
昔話はほのぼのかと思いきやシュールなネタ満載で笑わせていただきました。
自分の周りも引退ラッシュで寂しい国道です、残りの昔話楽しみにしております。

>之神さん
エリクサー争奪戦は誰かが事を起こすとそれが他の誰かの行動に絡まりあってゆく。
混沌としたドタバタ劇は当人達にしたら大変でしょうが、読んでいるこっちは楽しくなります。
そして、現在ナザルドが一番目的に近そうですね、流石運剣士!
トパーズは書ていて楽しいキャラなので、そう言っていただけると嬉しいです。

>ESCADA a.k.a. DIWALIさん
初めまして、ご挨拶が遅れました。
フィナーア姉の大胆な行動にドキドキしている国道です、感動劇の裏で何やっているんですか。(笑)
ルシフェルの激に胸が熱くなりました、父性の愛も母性とは違う優しさが素敵ですね。

>ニートの中の人さん
初めまして。ダークな話し展開に憧れております。
何故ロースターは記憶を無くしてしまったのか? 続き楽しみです。
あんまり本筋と関係ないですが、スマグ限定販売の絨毯欲しい!

>柚子さん、
MOBに突っ込んでゆくルイス凄い! 徒歩での町間の移動は、道に乗り出したMOBにビクビクしながら通っていました。
エルフとアウグスタの関係も気になるところですね。
引き込まれるような戦闘シーンは参考にさせていただいています。
テマサマことミモザは… 最後の方にちょこっと登場するかもです。

>ドワーフさん
初めまして。読み手の想像に任せる物語は読んでいて印章に残ります。
こういう人間と異種族の話は相容れない無常さが悲しくもあり魅力的でもありますね。
他の作品も楽しみに待っています。

>白猫さん
ネリエルが無事で良かったと、ルフィネと共に胸をなでおろしました。
[射手座(サジタリウス)]… 恐ろしい兵器ですね。
北欧神話は好きなので、新しい用語が出るたびワクワクしています。

>68hさん
一発で言い当てられてちょっと動揺しました、それにしても案外長いんですねビックリです。(笑)
ギルドを中心としたこの話は、登場人物がごちゃごちゃしていますので、ちゃんと書き分けられるように頑張ります。

822◇68hJrjtY:2008/03/31(月) 16:11:35 ID:6qr6uuNM0
>国道310号線さん
片や魔法の道を歩みながらも何かの理由で追放されたウィザード。片や狼男の道を歩みながらもスマグに居続けるウルフマン。
この二人の過去や話の端に出てきた「天使」も気になりながらもそれはちょっと置いといて、まずはトパーズの魔法解除ですね。
そういえば前回の話でもリトルウィッチ(?)側は特にトパーズに敵対意識とか無かったみたいですしね。何かそこにも理由がありそう。
それともしかして、この骸骨戦士戦が国道さん初の戦闘シーン描写でしょうか(*´∀`)b プルーノの姿が勇ましい!
小屋から転送された先はどういう空間なのか…思い浮かぶのはやっぱりタワー洞窟地下道とかスウェブですが…うーん。
続きお待ちしています。
---
私もメモ帳スキーなんですが使い慣れているせいか右折り返し設定しないとどうも気になって仕方ないんですよね(ノ∀`)
だからって専用のエディタとか使うのもPCボロいせいで重いし…ワードすら重いって何orz
国道の場所はたまたま知ってたんですよー。大阪はほとんど行きませんが、その近辺に住んでる人だったらもっと詳しいのかも(笑)

823名無しさん:2008/03/31(月) 17:44:24 ID:.SlwqRq60
こんにちは、前スレ473です。

始めに…。
申し訳ありませんでした…orz
思わせぶりなことを書いておきながら半年の間全く音沙汰なしの状態になってしまいました。
ちょっとでも期待してくれていた方々、本当にすみませんでした。

今回は短く、更に展開もあまり進んでいません。
いつもと同じく時間の割りに内容が薄い点にご注意ください。

824名無しさん:2008/03/31(月) 17:44:58 ID:.SlwqRq60
赤に満ちた夜

前話 >>344-351(五冊目)

4:Avengers Ⅱ


白昼の碧空は何処へ往ってしまったのか。
天を仰いでも夏空を見出すことはできず、在るのはその一面を覆う分厚い黒雲のみとなった。
次第に持ち前の粗暴さを外へと向かわせていく風が、迫り来る酷烈な嵐を予感させる。
如何なる力をもってしても、自然のそれを統御することはできない。

一際烈しい疾風が森を駆け抜けると、青年は頭を少し低く屈めた。
疾風はいくつもの影となって草の上を走り、一層速さを増して駆け抜けていった。
しかし青年の目の前を進む頼もしい背中はそれに動じることもなく、森の木々の間を縫って進んでいく。
木の葉同士の擦れる音は緊張した青年の神経をすり減らし、彼の胸の締め付けは酷くなる一方だった。
心を無にしようとすればするほど、整理のつかない沢山の記憶が頭の中を駆け巡る。
記憶の年輪を外側へ辿るほど、自分がズルズルと堕ちていく様を突きつけられる。
そんなイメージを見れば見るほど、全ての物事が暗い方向に進んでいくように思える。
青年は今、任務の前にしてはいけないことをしてしまっていた。

あの日。
この人の下に就く機会を逃すまいと選んでしまったこの道は、果たして正解だったのだろうか…。
一瞬、青年は自分のカーペットから飛び降り、一目散に逃げだしたい衝動に駆られる。
自分が逃れたいのは迫る敵か、それとも…。

無意識のうちに、青年は戦士の後姿をいつも以上にはっきりと捉えていた。
そのときの青年の気持ちは、恐らく一生のうちで再び経験することがないほど奇妙なものだった。
何しろ青年は戦士の背中を見ただけで、それ以上のことは何も起こっていないのだ。
青年は最初に、その壁が高く、そして威圧的であるということを再認識する。
さっきの戦闘で相当な量の魔力を使っていたのに…
自分の遥か先にある絶壁。そこに疲弊の色はほとんど見られなかった。
次の瞬間、青年は自分が恐ろしく鈍いことに気付かされた。
自分はいつも戦士のことを見ていて、生涯彼を目標にすると心に決めた。
だがそれは全くの思い込み、自分への暗示であるということを、彼の背中に告げられた。
鍛えられた戦士の背中はまさに「語って」いた。
まるで青年が何を考えているのかを全て知っているかのように冷静で、その割には正面を向いているのと同じように高慢に。
しかも青年の悩みなど知っていても気にせず青年を見下し、手厳しい無言の罵声を全力で浴びせてくれる。
そして、それを受けた青年は――

自分の意思で『任務が同じ部下』のラインに立つことが出来た。

他人を勇気付けてくれる人格の対極に生きていると言ってもいいような戦士。
普通の人間がとる行動とは完全に別の方法で、割と普通の思考を持つ青年を、本人も意図せぬうちに立ち直らせていた。

825名無しさん:2008/03/31(月) 17:45:30 ID:.SlwqRq60

「オイ、着いたぜ」
唐突に戦士の一声が耳に入ってきて、青年ははっと我に返った。
戦士は既にカーペットを回収していて、この任務の目的地であると思われる石造りの小さな建物の前にいた。
相当昔に造られたモノのようだ。壁の至る所に植物の蔓が這い回り、日の当たらない部分には苔がびっしりと蔓延っている。
「…ここ、ですか?」
「ああ。陰気臭ぇ建物だなぁ、オイ…」
不安げな青年と、不快そうな戦士。二人は今、納骨堂の前に立っていた。

心臓の鼓動はやはり、いつもより速いペースで血を全身に送り出している。
だが今までとは心構えが違った。
できる限り、自分の役目を果たす…!
青年は張り切って、あまり重要であるとは思えない最初の仕事をこなそうとした。
自分には見えているのだから…。
「先輩、扉に罠――」

バチチッ!

激しい音。戦士が扉に触れた途端、電撃状に変化した魔力が触れた指から手の甲を走った。
その刺激に戦士の腕は跳ね踊り、掴みかけた右手は引き剥がされるようにノブから離れた。
戦士は咄嗟に自分の武器を手にとって身構え、周囲の草むらや足元にも目を光らせた。が、それ以上は何も起こらないまま時は過ぎた。
…十秒……二十秒……三十秒……。
どうやら第二撃が打ち出されることはなさそうだと判断した戦士の目に、この任務に充てられた自分以外のもう一人である部下がちらりと映った。
丁度扉の真横にいた青年は何もできないまま、その刹那の光景を見て呆気にとられていた。
そんな無防備な状態で突っ立っている部下を見れば、普段の戦士ならそいつを二、三発ブン殴って当たり前だった。
しかし今回はそうもいかない。何しろミスを犯したのは紛れもなく自分であり、戦士にとって久しぶりに言い訳を必要とする状況が展開しているのだ。

「…分かってる」

戦士の口からその一言が出るまでに数秒の時間を要した。
当然のことながら、青年は万が一にも戦士と目を合わせないようにすることに最大限の努力を費やしていた。
今戦士の視線を正面から受け止めることは死を意味する――…そんな気がしたからだ。
「試したんだよ、どの程度の罠かをよ!!」
そんな苦虫を噛み潰したような顔で怒鳴られてしまうと、青年としてもフォローのしようがなかった。
「は、はぁ……」
曖昧に返事をするだけに留める青年、しかしその声色は動揺を隠せていなかった。
「だっ、大丈夫でしたか!?今の…」
青年は前の言葉を覆い隠すために慌てて言葉を付け足した。
折角自分が少し立ち直ったというのに、一方の戦士の機嫌が悪くなるような刺激は避けたいからだ。
「…ああ、今はなんともねぇ」
戦士は手が痺れて上手く動かせないもどかしさに苛立ちを募らせつつ、右手を握ったり開いたりする動きを繰り返した。

やがてその動作を止めると、戦士は再び扉へと歩き始めた。
「おい、下がってろ。ちょっとこいつを見てみるからよ」
そう言って、自らも近づこうとする青年をいかにも面倒臭そうに制した。
「お前はここいらに敵が潜んでないか探査してろ。…いいな?」
いつもの通り、戦士は青年の返事を待ちはしなかった。
ストレスが一杯に詰まった溜息を大きく吐いた後、少し遅れた返事も探査のための精神統一も気にせず、自分の定めた標的に向かって歩いていった。

826名無しさん:2008/03/31(月) 17:46:14 ID:.SlwqRq60
扉の目の前まで来ると戦士は膝を折り、ノブに顔を近づけた。そして何かを確認した後、魔法を利用した判別を開始した。
青年には戦士の使う魔法が二三理解できたが、それ以外は判別できないものばかりで、中には一度も聞いたことがないような詠唱まで含まれていた。
数分後、戦士はもう一度大きなため息をつきながら青年のほうに向き直った。
心なしか、青年には少し機嫌が良くなっているようだった。
「魔力の網みたいなモンだ、だがこれは並の奴なら破れねぇだろうな」
「解除できるんですか?」
青年はホッとして尋ねる。
「当たり前だろ。解除出来ないなら誰も入れねぇよ。この魔法は外側から掛けるタイプのヤツだからな…」

言いながら戦士は考え込む。
果たして魔法の種類も解除方法も掴むことが出来た。
ここで直ぐに解除を選ぶべきか。解除するためには両手が必要、即ちそれは戦士の完全な無防備を意味する。
辺りに敵が隠れていたとしたら?俺が武器を使えなくなる数分を狙っていたとしたら?
彼の目はただ一人を追っていた。そして捉えた、今はただ一人の部下を。
…だがこいつは護衛として使えるような奴じゃない。
まったく、人間どうすればここまで使えなくなれるのか。ある意味興味深いかもな。
フン、と軽く鼻を鳴らし、戦士は視線を青年から外した。
まあ…。……そうだな…。
一瞬で俺が殺られなければ、こちらも対応することができる。
とすると、厄介なのが来ないことに賭けるしかないな…。
妥協の末に戦士なりに結論を出し、横目でジロリと青年を睨んだ。
「解除する。お前はこの辺りを見張っとけ」
結局ノブの観察と同じ方法をとることにするわけだが、それが一番単純で手っ取り早く、後ろの部下を有効に使える手段だと考えてのことだった。
裏を返せば、それ以外に青年の使い道が無かったという意味を明確に表している…かもしれない。

「相当集中力使うから、やってる最中に話しかけんじゃねぇぞ」
「先輩」
…今「はい」以外の別の返事が返ってきたような気がしたが、気のせいだと確信する。
聞こえなかったことにして、戦士は迅速に魔法鍵の解除を始めた。
両手の指先に魔力を集め、そのままノブにゆっくりと滑り込ませていく…。
「先輩?」
今度は戦士にもハッキリと耳に届いてしまった。
口にするのも腹立たしかったが、やはり言わずにはいられなかった。
「てめぇ、馬鹿にしてんのか?黙ってろってんだよ…!」
「すみません、でもどうしても今聞いておきたいんです…」
「ッッッ………!!!」
もしこの瞬間に戦士が腕を自由に動かせたとしたら、青年を全力で殴り飛ばし、それから――
数分後のこの場所には見るも無残な光景が広がっていただろう。
しかし青年にとっては幸運なことに、戦士は既に作業を始め、手を離せない状況にある。
戦士は上下間でどちらか力負けした側の歯が全部折れそうな程に歯を食いしばり、その怒りは無言で堪える程度までに収められることになった。

しかし。
また聞こえる。あの忌々しい声が。
「あの…先輩?」

827名無しさん:2008/03/31(月) 17:47:02 ID:.SlwqRq60
追い討ちとなるこの言葉を聞いたとき、いよいよ戦士は我慢の限界に近づいていた。
『あの…先輩?』だと?…『あの…先輩?』だと!?
本当に殺してやろうかと思うくらい、人間はここまで残忍になれるのかと思うくらい、青年が憎く思えた。
その一方で、戦士は青年の呼びかけに応じなければならないということに気付いていた。
最近の数日間で、戦士は青年を多少は理解していた。
その中で最も印象的だったのは、言い出したら自分の気が済むまで質問するという間違った根性と忍耐力の持ち主だということだった。
そう。詰まるところ、返答の億劫さが怒りに勝った。

「…何だッ!!」
両手を複雑に動かしながら――自分の中の怒りが少なからず薄れていることを不思議に思いつつも、戦士は荒々しく怒鳴った。
青年はそれに一瞬怯んだ様子だったが、やがて怖ず怖ずと口を開いた。
「先輩は、人にものを教えない人だと聞きました…。でも、さっきはなんで…?」
必要なことは全て口に出したと判断した青年は自然に聞こえるよう言葉を切り、戦士の反応を窺った。
目の前の男は相変わらず開錠作業を続けている。手元に集中していて聞こえなかったのかと思い、青年は更に同じ言葉を繰り返すことにした。
「先輩…?」
「あァ!?聞こえてるんだよ、馬鹿が!」
相変わらずの怒鳴り声が青年に飛んでくる。
その返答の感触から、彼は戦士が又も自分を小馬鹿にした顔つきで長々と説教を始めるのだろうと予想した。
結論から言うと、それは全くの見当違いだった。
「…んなこと、決まってんだろ」
正直、意表を突かれた。
まるで自分と青年が対等であるかのような口調で語りかけてくる戦士。こんなことは前代未聞だった。
しかも今の角度から戦士の表情を窺うことはできないことに反して、青年はそれをぼんやりと想像することができた。
そんな表情を一度も見たことがないにも関わらず、だ。
待ち望む青年に応えるかのように、戦士は再び普段と違う口を開いた。ゆっくりと。
「お前――…」


その後の言葉は誰にも一切聞き取れなかった。
強い魔力同士の衝突で不安定になった戦士の指先で魔力が釣り合いを崩したため、鍵側の魔力の拒絶反応が戦士の魔力を大きく上回った。
その結果最初のような電撃状の魔力が戦士の腕を走り――後はお察しの通りである。

「…あっ…」
「……………」

今までで最低最悪の沈黙は一気に走り去った。
そして、その沈黙ですら生易しいと思える事態が青年に襲い掛かった。
「オイ…てめぇ…ッ!」
戦士に問う前の荒々しい声でも、問うた後の不似合いな声でもない、地獄の底の化け物が唸り吼えているような轟音が周囲の空気を制圧した。
遂にその音が消える。目の前には…鬼か悪魔か。
…恐ろしい存在がそこにいた…。
後退りしようにも最早足を動かすことすら許されない。
「す…すみま――…」
震える声で許しを請うが、当然の如く問答無用。
自分との距離を確実に縮めていく憤怒の形相、天国の扉。
恐怖が一周したためだろうか、青年は自分の顔に笑みが浮かび上がるのを感じた。
最期は戦士の繰り出した武道家顔負けの蹴りにより、哀れな青年は空を舞った。

828名無しさん:2008/03/31(月) 17:51:17 ID:.SlwqRq60
書き込んでから気づきましたorz

>>826 l4
× 心なしか、青年には少し機嫌が良くなっているようだった。
              ↓
○ 心なしか、戦士は少し機嫌が良くなっているようだった。

に訂正します。

829柚子:2008/04/01(火) 00:56:15 ID:82grQyuE0
1.>>324-331 2.>>373-376 3.>>434-438 4.>>449-451 5.>>517-523
6.>>572-578 7.>>599-602 8.>>662-666 9.>>730-735 10.>>792-799

『Who am I...?』

広い道の上を、3人を乗せたカーペットが駆ける。
真下の地面は今までの砂利道とは違い、よく踏み固められていて平坦だ。
これは馬車が走りやすいようにと施した物で、アウグスタが目と鼻の先であることを示している。
もう少し走れば平坦な道から石造りの道に変わることだろう。
アウグスタはすぐそこだ。
そんな時、1人の少女が大きく欠伸をした。
「ふぁ〜」
その少女は伸びをして、目尻に溜った涙を手で拭う。
「暇だよう」
「もう少しだから我慢しろ。今夜はふかふかのベッドだろうから妄想で脳でも満たしていなさい」
そう言われた少女――ミシェリーはその通りにして何を思い浮かべているのか、幸せそうに頬を緩ませている。
旅も5日目となり、一行の口数も減ってきていた。
何日も同じような景色ばかり見せられたら誰でも飽きるというものだ。
いざ街に着いたとしてもアウグスタは神聖都市。
巨大な教会が特徴的なその街は、イリーナにとってみれば退屈以外の何ものでもない。
治療を済ませたら有休を取ってミシェリーとどこか楽しい街にでも行こうかなどと考え、イリーナは退屈を紛らわすのであった。

1時間ほど走らせていると、ピクリとミシェリーの耳が動いた。
「どうした?」
「うんとね、遠くの方でたくさんの人の匂いがする」
ミシェリーの嗅覚は人間のそれではない。
人狼の恩恵を受け、今では狼と同等の嗅覚を誇るのだ。
「それは生活の匂いだろう。アウグスタがそろそろ見えてくる筈だぞ」
商人は商談が決まる時と新たな街が見えた時が1番心躍ると聞いたことがある。
イリーナは移動の際ポーターを使って移動することがほとんどなので、こんな気持ちは久々であった。
すると、イリーナの隣でわっと声が上がった。
「街が見えてきたよ、イリーナ!」
遠くで見える建物の群れを指差し、ミシェリーがきゃっきゃと騒ぐ。
少し先にある架け橋を渡ればいよいよアウグスタ領だ。
「ん? 何だアレ」
架け橋の前に兵士が立っているのが見えた。その兵士はカーペットを止めるよう指示を出している。
イリーナは速度を落とし、兵士の前で停止させた。
「どうしたのですか?」
イリーナが問いかけると、兵士はうむ、と頷いた。
「これからそこでパレードの準備が始まるんだ。できれば正門からの入国は控えて欲しい」
「はあ……。それですと街はどちらから入れば良いでしょうか?」
兵士は手に握る長槍を脇にある大きな木の群れに向けた。
「遠回りで悪いが、そこの茂み地帯から回って入ってくれ」
「分かりました」
イリーナは兵士に頭を下げ、進路を変えて再びカーペットを発進させた。
内心不満を抱いていても、兵士に逆らえば直ちに反逆者として扱われる。
アウグスタに着く時間はもう少し延びそうだった。

830柚子:2008/04/01(火) 00:56:51 ID:82grQyuE0
茂み地帯の中はただ木がそびえているだけで、森とそうさして変わらなかった。
おまけに手入れも全くされておらず、通路には最悪の道だ。
「全く。まだ準備は始まっていないのだから通してくれても良いだろうに」
イリーナが溜め息と一緒に愚痴を吐き出す。
「兵士というものはいつの時代も頭が固いからな。イリーナの次に嫌いな生き物だ」
「私も今まで隠していて言えなかったけど、ルイスのことがずっと嫌いでした。個人的な度合いで言うと、お金と正反対な位置です」
気分晴らしに皮肉を言い合う。
そんな会話を続けていると、隣から幼い溜め息が聞こえた。
「2人って時々、私より子供っぽいところがあるよね」
「う……」
ミシェリーにそんなことを言われてしまい、イリーナは思わず言葉に詰まった。
「み、ミシェリーは雲の数でも数えていなさい。数えたらその数を掛けて、更に割って、最後に引く。数字の勉強です」
意味不明なことを言い、イリーナは誤魔化す。
「でもほとんど曇っていて数えられないよ」
「本当だな。これだと一雨降ってもおかしくないな」
上空は一面に雨雲が張っていた。降り出す前に街に着かなくては。
少し急いだ方が良いだろう。
雨もあるが、少し不可解なのだ。
あの時は大人しく引いたが、橋の向こうに何かを準備するという気配は見られなかった。
それにこんな雨がいつ降り出しても分からない日にそんなことをするのだろうか。
そんな疑問が、イリーナの頭に引っかかっては取れない。
そもそも、これから街に訪れる人物にこんな道は普通薦めない。
カーペットならともかく、馬車なら走れたものではないだろう。
考えすぎか。そう思い、イリーナは地図を開いて現在地を確認した。
「これは……」
イリーナは己の目を思わず疑った。
ここ、茂み地帯の地点には線が引かれている。
その意味。それは、ここがアウグスタ領から外れているということだ。
イリーナはカーペットを反転させ、一気に速度を上昇させた。
「どうした」
「何かがおかしい。1度橋まで戻るぞ!」
その時、イリーナの背中に怖気にも似た感覚が駆け抜けた。
咄嗟にカーペットを曲げると、近くの地面や木々が炸裂を起こす。
爆裂を避けたカーペットは、しかし近くの大木に衝突し、3人を振り落とした。
「やっと見つけたよ」
聞こえるのは、若い男の声。
イリーナ達の眼前には1人の男が立っていた。
イリーナとルイスは直ちに武器を握り、戦闘体勢に入る。
「何者だ、お前」
イリーナが問いかけると、その男は不敵な笑みをこぼした。
「古都ブルネンシュティグ所属聖騎士団隊長、ヘルムートだ!」

831名無しさん:2008/04/01(火) 00:57:53 ID:QjzT5mrY0
前スレからずっと続きを楽しみに待っていました。
青年も戦士もいいキャラをしていますね。

また続きをひっそりと楽しみにしています。

832柚子:2008/04/01(火) 01:08:07 ID:82grQyuE0
こんばんは。これからラストスパートに向けて投稿間隔が短くなると思います。
それにしてもこの男、忘れられている気がしてならない……

>68hさん
感想&ご指摘ありがとうございます。
クレイムって……自分何度間違えれば気が済むんだか。
恐らくあと2・3回で終わると思うので、それまでお付き合い下さい。

>之神さん
それぞれ自分のやり方で行われているエリクサー争奪戦。
それにしてもナザルド、運が良い。だから運剣士なのでしょうが。
徹も参戦、シリウスも参戦と楽しくなってきましたね。
でもやはりアルシェとライトが良い勝負をするのでしょうか。
続きを待ってます。

>国道310号線さん
エルムードの過去が少し明らかになりましたね。
それにしても一筋縄でいかないトパーズ復活。
魔女と天使と、謎が深まっていきますねえ〜。
戦闘シーンも自分なんかよりだいぶまとまっていて良いと思いましたよ。
続きをお待ちしております。

833◇68hJrjtY:2008/04/01(火) 16:54:10 ID:yq96.qOY0
>824さん
お待ちしてましたヽU´。・ェ・)人(・ェ・。`Uノ
当初は砂漠から来たある青年を主軸としていましたが、前回あたりからこの二人組視点が多くなりましたね。
二人の経歴やなんかも気になるところですが、なかなかの「良いコンビ」っぷりが読んでいて楽しいです。
頑固で意地っ張りで強い戦士と口数が多い心配性のシーフといったところでしょうか(*´д`*)
罠で自爆した時の戦士の態度がやたら萌えました…そういうシーンじゃないとは思いますがorz
シーフ君、スネ夫みたいで応援したくなるよ!頑張れ!(笑)
さて、開いた扉の先には何があるのか。あのウィザードの力を持った謎の青年は何処へ。続きお待ちしています。
---
スレや日にちがあいても気にせずにUPしてください!
前回の話のリンクをわざわざ書いてくれてますし、全然大丈夫ですよ。

>柚子さん
いやいや忘れてませんよヘルムート!王様の放った冒険者風情の騎士ですよね。
個人的イメージではまたドラえもんネタですみませんが外見は出木杉で中身はジャイアンみたいな!(聞いてない
もしかしてアウグスタ兵士とヘルムート(というかブルネ聖騎士隊)は手を組んでいた…?などと、余計な詮索までしてしまいそうです。
その辺の謎は今後分かるとして、目下のところはヘルムートと一戦交えそうな雰囲気ですね。
ルイスとイリーナはどう出るか。アウグスタ目前にして、続き楽しみにしています。

834幕間:2008/04/02(水) 01:03:41 ID:of5VjV0.0
クソ 書きたいネタがドンドンでてきて逆に書けねえ

新しいシリーズ始めたいんだが昔話を終わらせるために続き考えてたら途中から新しいシリーズのを考え始めてしまう

①RS昔話
②テイマの話
③コボとかのモンスターの話


みんなはどれが読みたい?
正直昔話がグダグダでアレな気がしてきたから本気で悩んでる
俺の書く奴に興味持ってない人もいそうだし最初についたレスのをやるね

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テイマと姫がとっくに眠りこけた時間帯、本来なら話し声は聞こえませんが今日はひそひそ声がきこえます

犬「ボソボソ…」
鳥「ボッソボソボソ…」
猿「ボソボボッソボ…」

どうやらテイマのペットが話し合っているようです

犬「なんで俺たちはこんなに出番が無いんだ?」

鳥「キャラ設定が思いつかない作者の都g…  大人の事情って奴だよ」

猿「というかお前らは召還獣だよな? なんでペット扱いなんだ?」

ケル「しるか。ああみえて我らがご主人は頭が弱いんじゃないのか?」

ウィ「というか後から作者が気づいt… まあ大人の事情だろ」

猿「しかも俺だけなんだかみんなに姿をイメージされて無いみたいなんだが… なぜだ?」

ケル「わからん、俺にもお前はよく見えないし」

ウィ「多分RSに猿MOBがいないかr…  大人の事情って奴だ」











猿「なんで最近書き込まないんだ?」

ケル「知らん ↑に書いてたとおりじゃ無いのか?」

ウィ「 実 は 玉 切 r …   大 人 の 事 情 だ 」

猿「ほんとにこの世はご都合主義だな」

ケル「まったくだ」

ウィ「大体俺たちなんて文字の中だけだs…  ほんとだよな」

835之神:2008/04/02(水) 07:26:52 ID:H2nyjsZk0
幕間倶楽部の私は全力で
③コボとかのモンスターの話…d(・ω・`

836幕間@新シリーズ:2008/04/02(水) 14:23:49 ID:of5VjV0.0
ゴソゴソッ

「(よし、やるぞ)」
心の中でそう言い、呼吸を整える
「え〜っと、この花だよな…」
若葉ランサーがやってくる
「(今だ!)」
一気に息を吐き出し花の陰から飛び出す!
「キエエック〜!」
気合を入れるためにいつものこの言葉を叫ぶ
「え?何?何なの?!」
よし、こいつはまだ始めたばかりでよく分かってない、今がチャンスだ

「あ、ちょっ、やめ、 …」

「任務、成功・・・」
--------------------------------------------------------------------------------------------------
友達来たからまずはここまでw

837柚子:2008/04/02(水) 14:52:17 ID:U4Y80Fag0
1.>>324-331 2.>>373-376 3.>>434-438 4.>>449-451 5.>>517-523
6.>>572-578 7.>>599-602 8.>>662-666 9.>>730-735 10.>>792-799
11.>>820-830

『Who am I...?』

上下共に白銀の鎧に、その上を走る真紅の十字架。
それはまさしく聖騎士団であることを示しているに等しい。
聖騎士団の隊長と名乗るその男は、2人に武器を向けられていても余裕な表情を浮かべていた。
「古都の軍だと? そのお偉い聖騎士団様が何の用だ」
皮肉混じりにイリーナが男を睨み付ける。
イリーナが知る限り、聖騎士団は古都の数ある軍隊の中で最も有名で高貴な軍隊だ。
少数精鋭で実力も折紙付なその軍隊は、本来表向きで活躍する存在な筈なのだ。
その隊長がこんな場所に居るなど誰が予想出来ようか。
その男――ヘルムートはイリーナの言葉にも眉1つ動かさない。
それだけ己に自信があるということなのだろうか。
「貴様らにもう用は無い。用が有るのはそこの子供だけだ」
そう言い放ち、ヘルムートはミシェリーに指を差す。
それを聞き、イリーナは顔を怒りに歪ませた。
「やはり軍が関わっていたか。どいつもこいつも……私は今世界の裏を垣間見た気分だよ」
「貴様の意見などどうでもいい。そこの子供をこちらに引き渡せ」
あくまで表情を変えず、ヘルムートが言い放つ。
イリーナは1度ルイスと目を合わせ、次に不安顔のミシェリーを見る。
そうして最後はヘルムートに向き直った。
全ての視線がイリーナに収束される。そしてイリーナは言った。
「少し考えたい。交渉を要求する」
「良いだろう」
ヘルムートが静かに頷く。
背後から感じる失望の視線が少し痛かった。
普通の人間なら死にたいなどとても思わないだろう。
自分が死の淵に追いやられた時、どんなに仲の良かった親友や親、子供でも売るのが人間だ。
自分より他人の方が大切だ、そう主張する人間はただの偽善者だとイリーナは考えている。
イリーナとて命は惜しい。
それに相手は戦闘のプロ。2人掛りでも勝てるか怪しいところだろう。
「先に貴様らの要求を聞こう。それより武器を下ろしてくれないか」
「分かった」
2人はヘルムートの言葉に頷き、向けていた武器を下ろした。
イリーナは更に信用させる為、持っていた短槍を地面に突き立てる。
その瞬間――腰から尖剣を抜き放った。
同時に難易度2、ファイアーボールを発動。5つの火球をヘルムートへ向けて射出する!
それらは全てヘルムートの足元へ。
突然の攻撃に驚きながらも、ヘルムートは跳躍して爆裂から逃れる。
しかし、死神の影がヘルムートの体を覆った。
先に動いていたルイスが上空で剣を振りかざす。その刀身には既にサンダーエンチャントが付加されていた。
この空中で避けることは不可能。更にサンダーエンチャントの効果で受けることも許されない。
イリーナの策に乗ったのがそもそもの間違いだ。
遂に2人は交錯する。ルイスの雷槌がヘルムートの頭から股へかけて振り下ろされる。
しかし、ルイスの剣は空を切った。
「な、に……?」
隠すことのできない驚きがルイスの口から漏れる。
「何のつもりだ」
優雅に着地したヘルムートが冷静に問うてくる。
イリーナは下がり、ミシェリーを背中に隠した。
「どうやら私達は普通じゃないみたいでね。それに私は嘘つきだ」
イリーナは出来るだけ余裕を保ったが、内心では混乱しきっていた。
――何故あの攻撃が外れた? あの状況で避けるのは不可能だった筈だ。
イリーナはあの攻防で決めるつもりだった。しかし、この状況は想定外だ。
だからといって大人しくミシェリーを引き渡すイリーナではない。
あんな集団にミシェリーを引き渡したら、その後のことは容易に想像できる。
「もう1度だ。行くぞルイス!」

838柚子:2008/04/02(水) 14:53:46 ID:U4Y80Fag0
イリーナは地面に刺さった短槍を抜き、尖剣と一緒に魔術を紡ぐ。
尖剣の剣先からは難易度2、ファイアーボールを。短槍の穂先からは難易度3、ジャペリンテンペストを同時に発動する。
「いけっ!」
5つの火の弾丸が飛んでいく。全てヘルムートの周辺へ。
高速の弾丸は地面や木に着弾すると、土煙を巻き上げながら炸裂を起こした。
それにもヘルムートは微動だにしない。
そんなことは百も承知だ。こんな脅しに驚く男とは初めから思っていない。
だから放った。
爆裂の中を、不可視の槍が駆け抜ける。その正体は同時に紡いでいたジャベリンテンペストだ。
それが胸に到達する寸前、ヘルムートが背に差している剣の柄に手を掛けた。
その刹那、ヘルムートの手が閃く。
迫っていた風の槍は2手に分かれヘルムートの背後にある木を貫いていた。
「るぁぁあああ!」
咆哮を上げながらルイスが斬り掛かる。
だが、またも空振り。気付くとヘルムートは既に後退していた。
何なのだ、あの速さは。とても捉えられる気がしない。
「良い剣筋だ」
そう言い、ヘルムートが踏み込む。しかしあの遠さから?
ヘルムートが1歩を踏み込んだ瞬間、彼はルイスの背後にいた。
「っ――――!」
ルイスは咄嗟に大剣を後ろに振り上げる。だがあちらがルイスの首を落とす方が刹那の分だけ早い。
イリーナは体の負担など気にせずに、再びジャベリンテンペストを高速で発動した。
だが不可視の槍はまたも貫く寸前でかわされてしまう。
その代わりルイスを死なせずに済んだ。
「ぐっ」
限界を超えた行為は必ず自分に返ってくる。
イリーナは先ほどの魔術の速すぎる詠唱で腕に燃えるような痛みを味わっていた。
しかし今は痛みを気にしてはいられない。奴はどこにいる?
……居た。ヘルムートは初めの立ち位置に戻っていた。
それにしても彼の動きは速すぎる。異常と言ってもいい。だが、何か種がある筈だ。
また、その種が解けなければこちらの勝気は薄いだろう。
初めは座標記憶型の魔石を使っていると思っていた。だがそのような物を使う仕草もなければ使う隙もない。
何かある筈だ。何かが……。
「これが最後だ。その子供を引き渡せ」
ヘルムートがこちらに剣を向けながら引き渡しを要求する。
向ける剣は非常に細く、長い。刃も片方だけで特殊な形状だ。
恐らく切れ味だけを考えた造りだろう。それならルイスの攻撃を剣で受けようとしないのも頷ける。
その時、イリーナは彼の剣の表面に輝く無数の魔石を見た。
剣士や槍兵などの接近職は普通、詠唱短縮の魔石をあまり必要としない。通常で1つ、多くても3つが妥当だろう。
だが彼はどうだ。いくらなんでも多すぎる。通常の剣士の倍はあるではないか。
それはつまり――――
「分かったぞルイス、奴の動きの仕組みが」



「早く答えろ。引き渡すのかそうでないのか」
ヘルムートが絶えず剣を向けながら、語尾を強める。
「断わる」
イリーナは静かにそう答えた。
どちらにしろそう答えただろうが、今は余裕を持ってそう言える。
何故ならあの特殊な移動の仕組みが分かったからだ。
分かってしまえばこちらのもの。後はその弱点を突けば良い。
「そうか、残念だ」
全く残念そうに聞こえない声でヘルムートが呟く。
そうして彼は剣を握る手ではなく、その逆の手を空に掲げた。
「ならば、こちらも実力行使でいかせてもらう」
次の瞬間、周りから大量の気配を感じた。
隠れていたのか、それとも呼び寄せたのか。
何人もの人間が次々とイリーナ達を囲むように現れた。
「どうするルイス。数えられるだけでも10人はいるぞ。今の内に土下座でもしておく? 主にルイスが」
「答えたのは貴様だろうが」
勝気があると思ったのも束の間、一瞬で絶望的な状況に追い込まれる。
敵はヘルムートだけではなかったのか。
幸い、現れた人間は聖騎士団の隊員ではない。様々な服装や武装から傭兵と考えるのが妥当だ。
これが聖騎士団なら戦いにもならないだろう。
しかし相手が傭兵と分かれば話は別だ。互いに慣れていない仲間は時に実力を大きく落とすことになる。
イリーナは耳に付いている通信用の魔石に手を当て、ルイスに事を伝えた。
「こいつらの実力は恐らく大したことはない、脅しに過ぎないだろう。問題はヘルムートだけだ」
その間も傭兵達はじりじりと詰め寄り、攻撃の機会を窺っている。
正に一触即発の状況だ。
更にイリーナは続ける。
「ヘルムートの動きの正体と弱点をこれから伝える。それは――」

839柚子:2008/04/02(水) 14:54:57 ID:U4Y80Fag0
全てを伝えた後、イリーナは通信を切った。
「いいかルイス、出し惜しみはしない、初めから全力でいくぞ」
「分かっている」
イリーナとルイスが背中を向き合わせ死角を減らす。
「イリーナ……」
心配そうな表情で見上げるミシェリーに、イリーナは小声で励ました。
そして優しい表情から一転、イリーナの顔がこれから殺し合いをする人間の顔に変わる。
「まずは初手を潰す。いくぞルイス!」
イリーナは銀の短槍を掲げ、難易度3、トルネードシールドを二重で展開する。
更に空いた手を外套のポケットに滑り込ませ魔石を握る。
それを地面に投げつけ、難易度4、ファウンテンバリアを発動した。
視認できる程の風の防御と強力な水の防御膜が3人の周りに形成される。
イリーナが持ち歩く魔石はほぼ全て不得意な元素である。
イリーナが得意とするのは火と風。その正反対の水属性でも、魔石を介すれば発動を可能とするのだ。
もちろん難易度4の魔石は高価なのだが、今はそんなこと言っていられない!
突然のイリーナ達の動きに釣られ、予想通り傭兵達が次々と紡いでいた魔術や得物を放った。
しかし短剣や矢は風に跳ね返され、それを抜けた火球や光の矢は水の防御膜に弾かれる。
特に光の魔術は強力だが、1つ弱点がある。それは水だ。
速く強力な光の魔術でも、その特性には逆らえない。
即ち、光は水で屈折する。
まず第一手を防ぐことには成功した。彼らは焦りで自ら勝気を逃したのだ。
「防御成功。行けルイス!」
イリーナは防御膜を解除する。
その瞬間ルイスが飛び出し、剣士の姿をした傭兵に斬り掛る。
その傭兵はルイスの動きに驚き、盾で防御の体勢に入った。
ルイスは難易度1、マッスルインフレーションを発動。各筋肉が活性化し、限界を超えた筋力を得る。
ルイスは盾にも構わずに大剣を振り下ろした。
大剣は盾など無いかのようにそれを粉砕、更にその奥の兜を叩き割る。
獰猛な刃はそれだけにとどまらず、頭から股までを両断した。
一瞬の殺人に傭兵達の動きが固まる。
しかし彼らも数多くの死を目に焼き付けてきた冒険者。固まるのは一瞬、すぐに次の行動へ移る。
だが詠唱の速さはイリーナの方が上だ。
イリーナは牽制のファイアーボールを発動、拡散させて射出する。
傭兵達は柔軟な対応でそれをかわしてみせた。
やはりこの程度では簡単に避けられてしまうか。
イリーナは外套に手を入れ再び魔石を取り出す。そしてそれを放った。
魔術は先程の牽制で木の上から飛び降りた男性魔導師へ発動される。
何も無い空間から光の触手が男を束縛、身動きの取れない男は頭から地面に落下した。
「もう1人!」
イリーナはもう1度魔石を取り出し、それらに魔力を籠める。
「やぁぁああっ!」
その時、背後から槍術師がイリーナに飛び掛った。
イリーナは短槍で受けるが、その衝撃で魔石を落としてしまう。
「しまった!」
「もらったぁぁあああ!」
勝利を確信した槍術師が長槍を振り上げる。
イリーナは一か八か、短槍を捨て無手のまま槍術師の懐へ飛込んだ。
「むっ!」
槍術師の腕が止まる。
予想通り。長く扱いづらい長槍ではこの距離まで詰め寄られては攻撃できない。
それに他の傭兵達も安易に攻撃できない筈だ。
「この、どけ!」
槍術師が柄を使いイリーナの頭を強打する。
その激痛にも構わず、イリーナは新たな魔石を取り出してそれを発動した。
難易度2、チリングタッチ。
通常では杖に付加する魔術だが、イリーナは己の掌にそれを宿した。
冷気を伴うイリーナの手が槍術師の首を掴む。瞬間的に喉を冷やし、槍術師の呼吸を止める。
イリーナは槍術師の首を押し密着した状態から僅かな空間を作った。
そこへ腰から抜いた尖剣を滑り込ませる。
槍術師は心臓を貫かれ、一切の活動を永久に停止した。
しかし傭兵達は休む間も与えてくれない。
倒れる槍術師を飛び越え、漆黒の外套を纏ったシーフがイリーナに飛び掛る。
その瞬間、上空に発生した稲妻がシーフを撃ち抜いた。
漆黒の男は更に黒くなり、塵のように落下する。これはルイス唯一の遠距離魔術のライトニングサンダーだ。

840柚子:2008/04/02(水) 14:56:07 ID:U4Y80Fag0
認めたくないが、イリーナとルイスの連携は完璧である。
互いが互いの隙や弱点を補い合うことで、それぞれの実力を十二分に発揮するのだ。
イリーナは落とした短槍を拾い上げ、ジャベリンテンペストを発動。
風の槍が木の幹を貫き、その奥に隠れていた弓使いの胸に風穴を空けた。
「ルイス!」
走り込んできたルイスにイリーナが叫ぶ。
反応したルイスは軸足を踏み込ませ急停止、続いて体を捻り、何も無い背後に剣を振るう。
すると、何も無かった空間から剣戟の音が響いた。
「そこまでだ」
いつの間にかルイスの背後に迫っていたヘルムートがそう囁く。
しかしその表情はルイスに受けられたことで動揺を隠し切れていない。
キリキリと剣が鳴く。次にヘルムートは剣を滑らせ受け流した。
ルイスとまともに鍔迫り合いなどしたらヘルムートの剣など簡単に折れるか曲がるかの運命を辿ることだろう。
「これ以上好きにはさせん!」
ヘルムートは一蹴りで大きく距離を取ると、一瞬で間合いまで詰め寄った。
速すぎる連撃にルイスは後手に回るしかない。
この攻防にヘルムートが参戦するとなると圧倒的に分が悪い。
ならば、少しでも勝気が高い戦闘にするだけだ。
「ルイス、ヘルムートは任せた。残りは私がやる」
30秒程度とはいえ、ヘルムートが傍観してくれていて助かった。
お陰で傭兵を残り6人まで減らせることに成功したからだ。
その代わりヘルムートを本気にさせてしまった。
「舐められたものだ!」
ルイスを押し退けたヘルムートがイリーナに急接近する。
イリーナは魔石の力も含め、難易度3、トルネードシールドを3つ同時に発動した。
1つ抜け、2つ抜ける。3つ目の半分のところでヘルムートの斬撃は止まった。
何という攻撃力だ。イリーナは恐怖を感じずにはいられなかった。
隙だらけのヘルムートの背後にルイスが無言で襲来する。だがやはり剣は空を切った。
「ルイス、敵の狙いはミシェリーだ。私はミシェリーを連れて少し離れた所へ移動する。
 お前は全力でそいつを引き留めろ」
これが正しい采配だ。
接近職のルイスでは複数の相手には分が悪いし、逆にイリーナでは絶対にヘルムートに勝てない。
どちらにしろ分が悪いのは確かだが、勝てる可能性はある。
そこは運に任せるしかない。
しかし2人のどちらかが倒れたらそこで敗北が決まってしまう。
だから、どちらも全力でそれぞれの敵を倒すしかない。
「行くぞミシェリー!」
ミシェリーの手を取り、イリーナが駆け出した。
「仕方ない、追え!」
ヘルムートが指示を出し、傭兵達はイリーナ達の追走を始めた。


ミシェリーと手を繋ぎ、木々を掻き分けながら疾走する。
後方から聞こえるいくつもの足音がイリーナに嫌な汗をかかせた。
レビテイトによって足場の悪さは克服している。
問題はミシェリーだ。
ミシェリーの歩幅ではどうしても遅くなってしまう。
相手は6人。格下とはいえこの人数はかなり厄介だ。
それに対しこちらは1人。……いや、2人だ。
ミシェリーは間接的に戦力になる。
前と同じ嗅覚に頼るからではない。もっと違うところで役に立っている。
イリーナはファイアーボールを紡ぎ、牽制程度にそれを放つ。
傭兵達は木を盾にし、それをやり過ごした。
お返しとばかりに短剣や矢が飛んで来るが狙いが甘く、全て外れる。
移動しながらなので狙いが定まらないのだろうか?
いや、それは否だ。
これで確信した。彼らはミシェリーを狙わない。ミシェリーを傷付けることに恐れ、大きく出られないのだ。
これなら彼らが1度も大型魔術を使わなかったことにも頷ける。
そうと分かればこちらのもの。イリーナは魔石を取り出して難易度1、ミスティックフォッグを発動した。
発生した霧が2人を覆い、姿をぼやかせる。
これで相手は更に手出し出来ない。
恐らく彼らはミシェリーを傷付けないよう言われているのだろう。
このままアウグスタ領に入れたらこちらのものだが、彼らに囲まれる方が少し早い。
彼らとていざとなればミシェリーを多少傷付けることになろうとも実力行使に走る筈だ。
ならば、そうなる前にケリをつければ良い。
十分に時間も稼ぐことができた。そろそろ良い頃合いだろう。
イリーナは近くの小広い空間に駆け込んだ。
すぐに傭兵達もそれに追い付く。
イリーナはその中心に立ち止まると、身に纏う霧を解いた。
「私が、今まで無駄に逃げているとでも思っていたか?」
イリーナの口から不敵な笑みがこぼれる。
イリーナは無駄に逃げていた訳ではなかった。それは時間を稼ぐ為。
たった1つの魔術の為に。
「お前らに難易度5の魔術を見せてやるよ。良く眼に焼き付けろ!」
そう言い放ち、イリーナは遂に紡いでいた魔術を解放した。

841柚子:2008/04/02(水) 14:57:17 ID:U4Y80Fag0
森の中に激しい剣戟の音響が木霊する。
その音からは誰も2人の人間が争っているなど考えもつかないだろう。
いや、そこは既に戦場であった。
ルイスが大剣を振りかざし、嵐のような連撃を繰り出す。
それをヘルムートは逸らし、受け流す形で剣を受けた。
今までルイスの剣を正面から受けた人間はそう何人もいない。剣で受けるとなればなおさらだ。
それを、彼はやってのけた。
まともに受け止めれば剣は折れるが、ヘルムートは受け流すことで打ち合うことを可能にしていた。
ルイスから思わず笑みがこぼれる。自分が今まで欲していた戦いは、これだ。
ルイスは難易度1、マッスルインフレーションを発動。強化した筋肉で更なる強力な一撃を放つ。
しかしそれは空を切る。ヘルムートは超反応で上空に跳躍していた。
ヘルムートはそのまま体を回転させ、ルイスの頭上に襲来する。
ルイスはもう1度マッスルインフレーションを発動。今度は脚の筋肉を強化し、間一髪のところでそれを逃れた。
避けた勢いでルイスが奥の大木に横向きで着地、そのまま蹴りつけ、着地した直後のヘルムートを襲う。
蹴られた大木が大きく揺れた。
その攻撃はまたも空振り。いつの間にかヘルムートは離れた場所に居た。
例の移動術を恐れ、隙を与えることなく攻撃を続けたのだが、どうも使えるときは自由なようだ。
やはり、イリーナの予想は正解か。
「中々良い腕をしているようだが、そろそろ決めさせてもらう」
ヘルムートが剣を正眼に構える。
対して、ルイスは中段に構えた。
イリーナなどの意見を聞くのは非常に癪だが、ここは大人しく従う他ないようだ。
「2度目はない」
ヘルムートの足が一歩踏み込まれる。
来る――――!
予想通り、ヘルムートの姿がそこから消えた。次に現れる場所は――
「らぁぁあああ!」
ルイスは声を上げ、思い切り大剣を背後に振り上げた。
大剣は振り切ることなく、途中で何かに阻まれ動きが止まる。
「何っ!?」
背後で、驚愕するヘルムートがいた。
ルイスは剣を押し上げ、大剣をヘルムートに叩きつける。
ヘルムートは必死の形相でそれを受け流し、ルイスから逃げるように後退した。
「何故あれを……そうか、あの女か」
ヘルムートは1人呟き、納得したように顔を上げる。
「その様子だと、イリーナの予測は当たっていたようだな」
イリーナの予測はこうだった。

ヘルムートの移動は速く動いているのではない。文字通り、瞬間移動で接近しているのだ。
あの踏み込みも走っていると思わせるための罠だろう。
相手が消えたとき、人間はどうしても目で追おうとしがちだ。
あの技は即ち、その隙を突いた技なのだ。
しかし種が分かったところで対応できなければ意味が無い。
あの技にも弱点はある。あれは魔導師が使うテレポテーションの応用技。移動限度は10m前後だろう。
そして、どんな人間だろうと瞬間的に移動した直後には誤差が生まれる。
その誤差の時間で場所を掴めれば対応が可能だ。
その対応方法、それは相手の影を見つけることだ。そうすれば――

「その技はもう効かん!」
ルイスがヘルムートに剣を向ける。
使用する技から考えて、ヘルムートは珍しい魔法剣士だ。完全な接近戦ならルイスが有利。
ルイスに、やっと光明が見えた。

842柚子:2008/04/02(水) 14:58:15 ID:U4Y80Fag0
ルイスは難易度4、ライトニングサンダーをヘルムートのいる木目掛けて発動する。
上空に現れた稲妻が大木を叩き割った。
同時に木から飛び降りたヘルムートを追って走り出す。
ルイスは斬り掛ろうとした刹那、ヘルムートの剣の周りに渦巻く魔力を感じ取った。
ルイスは直感に任せ横跳びする。
その予感は的中。ヘルムートの剣先からは冷気を含む嵐が放たれた。
嵐が通った場所は凍り付き切り裂かれ、正に死の世界だった。
威力はイリーナのフレイムストームと匹敵するだろう。
ルイスは嵐の余波を身に受けながら走行を続けていると突然目の前にヘルムートが現れた。
高速の斬撃を剣で受ける。
続いて力で押し返そうとすると、剣が凍り付いていることに気付いた。
それが手に到達する前にルイスは後退する。
ヘルムートは虚空に剣を振り、視認できるほどの剣圧をルイスに放った。
その剣圧はルイスの鎧ごと肩口を切り裂いていく。
それを無視しルイスはサンダーエンチャントを発動、剣に張り付いた氷を雷で砕く。
その瞬間、ヘルムートがルイスに斬り掛ってきた。
しかしそれがヘルムートの仇となる。
ヘルムートの斬撃をルイスは当然の如く受け止めた。
剣が触れた刹那、蒼い電流が牙を剥く。電流は刀身を伝い、柄を伝う。
更に柄を握る篭手から鎧まで達し、電流はそこで弾けた。
「何っ!?」
「相手の戦力も分からぬまま仕掛けるとでも思ったか?」
ヘルムートが身に纏う鎧は耐電性が高い素材で作られた物だった。
これでは電気は効かない。
「くっ……」
ルイスは舌を打ちサンダーエンチャントを解く。
本来ルイスのサンダーエンチャントやヘルムートのテレポテーションからの斬撃は必殺と呼べる類の技だろう。
しかしそれは初見に限る。予め情報を知り対策さえ練ればそれは脅威ではなくなる。
この場合ヘルムートは情報が、ルイスはイリーナが対策を練らせたのだ。
ルイスとヘルムートの腕力と膂力が拮抗し剣がひしめき合う。
ルイスは再びマッスルインフレーションを発動し、ヘルムートを押し返した。
ヘルムートはその力を利用し後方へ跳躍する。そして着地と同時に魔術を発動した。
ルイスは足元が膨れ上がるのを感じる。それはすぐに確信となり、ルイスは後方へ跳ぶ。
その直後、ルイスの足元だった場所から先の尖った氷柱が地面から突き出した。
その正体は難易度3、アイススタラグマイト。
本来は足場を形成する為に使われる魔術のはずである。
難を逃れたルイスだったが、次の瞬間、氷柱に反射して写るヘルムートの姿を見た。
振り向いて剣で受けるにも間に合わない。高速で判断したルイスは致命傷を避けるため身を反転させる。
素早い判断のお陰で致命傷は避けたが、脇腹に激しい裂傷を負った。
ルイスは斬られながらも剣を振るい反撃するがまたもそれは空を切るだけ。
治療薬を飲めば治る傷だが、そんな隙を与えるヘルムートではない。
傷を負ったルイスは不満だったが、与えたヘルムートも不満の様子が表れていた。
「手間を掛けさせる奴だ。次で決める」
そう言うと、ヘルムートは剣を下げ下段に構える。
「良いだろう」
ルイスは何度目かのマッスルインフレーションを発動する。
強化のしすぎで筋肉に限界が来ているのも無視し、最大にまで強化した。
2人の剣士が向かい合う。
2人の間に静寂が流れ、まるでそこだけ時間が止まっているようにも見える。
そして、2人は同時に疾走した。

843柚子:2008/04/02(水) 14:59:17 ID:U4Y80Fag0
体の負担は想像を遥かに超える苦痛だった。
全身の神経が悲鳴を上げ、槍を握ることや、さらには呼吸をするだけで痛みが走る。
皮膚の1つ1つが動くだけで今にも発狂したくなるほどの激痛が襲った。
まだ難易度5はきつかったか……。
そんな後悔がイリーナの頭に生まれては消える。
しかし、こうでもしなければ生き残ることなど出来はしない。
私達は、生き残るのだ。
痛みのせいで長い時間に感じられたが実際はほんの数秒間だったらしい。
術が完成し、難易度5に相応しい魔力の強風が辺りに舞い踊る。
次第にそれはイリーナの体を護るように包み込んだ。
その瞬間体が羽毛になったかのように軽くなり、今にも空を飛んでいけそうな爽快感を感じる。
思えば痛みは完全に引いていた。
イリーナが紡いだ魔術は難易度5、ヘイスト。
規格外の魔力を必要とする故、高位の魔導師しか発動できない超難解な魔術で、数ある魔術の頂点の1つとして数えられている。
その多くの魔術は攻撃性に偏っているが、これは補助の魔術。
効果は指定した人物の身体能力や反応速度の大幅向上と非常にシンプルではあるが強力だ。
そうすることで非力な魔導師であるイリーナでも平均的な近接職と同等の身体能力を得ることができる。
イリーナは短槍を両手で握り、ミシェリーを己の背後に隠した。
そして視線を流し、現在の条件を再確認する。
敵は中位の傭兵が6人に対し、こちらは1人。更にミシェリーを守りながら戦わなくてはいけない。
ヘイストの効果も無限じゃない。もって150秒といったところか。
それまでに最低でも3人は倒す必要がある。
その為にも、こちらが先に動く!
イリーナは外套から魔石を取り出し、ミシェリーに難易度4、ファウンテンバリアを掛ける。
水で出来た防御膜がミシェリーの周りに形成された。
「イリーナ!」
「そこから絶対に動くなよ!」
これで戦いだけに集中することができる。
しかし、それはイリーナに限ったことではなかった。
走り出したイリーナに傭兵達の攻撃が波のように押し寄せる。
光の矢に火の球や短剣。そのどれもが今までよりも強くなっている。
イリーナには避けられない攻撃。だが、今は違う。
イリーナは横跳びでそれらをかわす。そして同時にファイアーボールを放った。
それは奥に隠れている弓使いや魔導師に向かって飛んでいく。
回避を許したが牽制にはなった。
心なしか、魔術を紡ぐ速度も上がっている。今だって相手の攻撃が遅く感じた。
これが、ルイス達近接職の感覚。
これなら……いける!

844柚子:2008/04/02(水) 15:00:20 ID:U4Y80Fag0
イリーナは疾走し前方の剣士に刺突を放った。しかし強くなったとはいえ平均程度、簡単に盾で弾かれる。
剣士は剣を振りかざしイリーナに叩きつける。イリーナは柄で防ぎやり過ごした。
残念ながら筋力は元のまま。まともに打ち合うどころか当たったとしても鎧を貫けるかさえ定かではない。
「オオオオオォォッ!」
イリーナの背後から槍術師が襲いかかる。
薙ぎ払うような旋風。それをイリーナは咄嗟に屈んで避ける。
攻撃動作直後の隙を突いて短槍を放つが、槍術師特有の体術でかわされた。
反撃が来る前に後方へ跳躍する。すると狙い澄ましたように短剣や魔術が飛んできた。
イリーナは2重でファイアーボールを展開し、それらを相殺する。
休む間もなく次弾が来る。イリーナは前方に疾走してかわした。
だが前方には近接職が待っている。しかし退けば魔術の嵐。
イリーナは前者を選んだ。
待ち構えていた剣士がイリーナに剣を振り下ろす。
イリーナは外套から最後の魔石を取り出し、それを発動した。
難易度1、マッスルインフレーション。
ルイスの技を借り、イリーナは筋力の瞬間的強化を行う。
迫る剣を右手に握る短槍で受け、さらに弾く。想像以上の筋力に剣士から驚愕の表情が走った。
「あぁあああああっ!」
イリーナから雄叫びが上がる。イリーナは逆の手で尖剣を抜き、剣士の眼前に突きつける。
そして難易度3、ジャベリンテンペストを発動。不可視の槍は剣士の首から上を吹き飛ばした。
全身を返り血で汚しながら、奥の槍術師へと距離を詰める。
「うっ」
イリーナの気迫に呑まれ槍術師の動きが一瞬固まる。この好機を逃すものか!
イリーナは踏み込み、全力をこめて短槍を槍術師の首に突き入れる。
しかしその瞬間、短槍は別の槍に弾かれた。
それはビーストテイマーが所有するペットである、ゴブリン系の魔物のファミリアだ。
魔物だからといって侮っていると痛い目を見ることになる。
テイマーのペットは鍛えられていて技術ならイリーナの数倍は上だろう。
「くっ……」
もう1体が飛び掛ってくるのでイリーナは仕方なく後退する。
地面に着地すると、太股に痛みが走った。
僅かに目線を傾けると、そこに光の矢が刺さっているのが見える。
光の矢はさらに飛んでくる。今度は命を奪うために。
イリーナは難易度4、フレイムストームを発動。
炎と風で形成された灼熱の嵐が光の矢を蒸発させ、さらにその奥の弓使いをも飲み込む。
続けて尖剣を突き出しもう1発放とうとするが、それは叶わなかった。
風切り音と共に飛んできた短剣が左腕に深々と突き刺さる。
紡いでいた魔術が虚空で弾け、尖剣が地面に落ちた。
拾おうにも腕が一向に上がらない。神経をやられたか。
足と腕の痛みでふらつくが、まだ倒れるわけにはいかない。
「うわぁああああっ!」
イリーナは叫び、短槍を片手に疾走を開始する。
その時、遠くの方で大きな剣戟の音が森全体に響き渡った。

845柚子:2008/04/02(水) 15:01:44 ID:U4Y80Fag0
剣戟の残響を残しながら、森に静寂が帰る。
その森の中心には2人の男が静止していた。
「き、貴様……」
そう声を漏らす男はヘルムート。
彼の十字架を模った鎧の胸部分には激しい裂傷が走り、止めどなく血が溢れかえっている。
しかし、それでもルイスの傷に比べれば軽傷と言えるだろう。
「ぐ……」
ルイスの口から血潮が漏れる。
ルイスの胸には剣に貫かれた穴が空き、そこから血が滝のように流れている。
さらに左腕の肘から下が消失していた。
「貴様、何故……」
ヘルムートが呟く。

あの時、ヘルムートは難易度4、ハリケーンショックを発動した。
高位の近接用魔術であるそれは、分身術を利用し3つの多段攻撃を可能にする。
1つは垂直斬りに、1つは水平斬りに、1つは刺突に。
3段同時の攻撃はかわすことを許さない。それはルイスも例外ではない。
刺突がルイスの胸を鎧ごと貫き、垂直斬りが左腕を切り落とす。
しかし、本命である最後の首を狙った水平斬りだけが弾かれた。
動揺するヘルムートにルイスの返す刃が放たれる。
それは初めてルイスがヘルムートに与えた傷であり、致命傷であった。

「本体を攻撃すれば分身も消える。そう思って斬った」
瀕死の傷を受けながらもルイスが前進し、剣を振るう。
ヘルムートはその気迫に恐怖を感じ、思わず後退した。
それが彼の自尊心をひどく傷つける。しかし、彼は己のプライドより任務を優先した。
「……貴様にこれ以上時間を掛ける暇は無い」
突然ヘルムートは踵を返したかと思うと走り出した。イリーナ達がいる方角へ。
「待て!」
ルイスが追おうとするが思うように体が動かない。左腕を失ったことで平衡感覚も失っている。
それでもルイスはヘルムートを追走した。


ヘイストの残り時間が1分を切る。
だがこの体では相手の攻撃を避けるだけで精一杯だ。
何とかしてあと1人は――――!
イリーナは難易度3、ファイアーエンチャントを発動し、短槍に炎の加護を付加した。
「ああぁぁあああっ!」
槍を地面と平行に立て、前方の槍術師に向かって突進する。
完全に力任せの攻撃だが、これが今できる最大の攻撃だ。
エンチャントの効果を一点だけに集中させ、一瞬だけ爆発的に攻撃力を飛躍させる!
その時、イリーナは遠くから巨大な魔力を感じ取った。
「なん……」
そう言いかけた瞬間、イリーナは何かに全身を裂かれながら横へ吹き飛んだ。
激痛に悶えながらもイリーナは立ち上がる。
イリーナが目線を上げると、そこにはヘルムートがいた。
「何故お前がここに……」
先ほどの攻撃はヘルムートの魔術か。
胸の傷から、ルイスの攻撃を受けたのだと分かる。だがルイスはどこにいるのか。
「くそ、こんなときに……」
先ほどの攻撃のせいでヘイストの効果が消え、相手は5人。絶望的な状況だ。
すると、木々の中から人影が現れた。
「ルイス! その傷は……」
木々の中から現れたのは傷だらけのルイスだった。
しかし、見るからに戦える状況ではない。
固まる傭兵達を他所に、ヘルムートが前に出る。
……ここまでか。イリーナはそう思った。
どんなに頭を巡らせても、この状況を打破する手が思い浮かばない。
それでも、最後に聞いておきたかった。
「1ついいか?」
「何だ」
ヘルムートが反応する。
「何故ここで私達を襲った。襲いたいならいつでも可能だったはずだ」
それがイリーナの1番聞きたかったこと。
襲う理由は分かっている。しかしこれだけは分からなかった。
「そうか。知りたいのなら教えてやろう」
そう言ってヘルムートは説明を始めた。

846柚子:2008/04/02(水) 15:02:43 ID:U4Y80Fag0
「全ては国王の思惑通りなのだ」
そうヘルムートは切り出した。
国王。その単語の大きさにイリーナは恐怖する。
ヘルムートの言う国王とは古都の国王のことだろう。
彼は大陸中でも有数の権力者。その国王と自分のような小さな存在が知らない内に関わっていたというのか。
「貴様らは己の意思で動いていると思っていたのだろうが、それは違う。
  貴様らに人狼退治の依頼が来たときから既に計画は始まっていた」
その事実にイリーナは驚きを隠し切れなかった。
何故なら、その時はまだミシェリーと出会ってすらいないからだ。
ヘルムートは続ける。
「国王は人狼退治の依頼が貴様らにいったと知ると、直ちに使者を使い、架空の依頼を貴様らのギルドメンバーに与えた。
  そして貴様らだけになった事務所に向かうその娘をあえて捕まえず保護させたのだ」
信じたくないが、ヘルムートの説明と合わせれば不審だった点も辻褄が合う。だが。
「私達がミシェリーを引き取るとは予想できないはずだ」
この1点だけは納得がいかない。
すると、ヘルムートが小さく笑った。愚かな者を見るような目で。
「イリーナ・イェルリン。国王は貴様の性質を考慮して計画を実行している」
「何……?」
イリーナの思考が一瞬止まる。
「次に、娘に町を案内する貴様らを知った国王は地下水路に傭兵を忍ばせ、襲わせた。架空の紋章を付けさせて。
  そして貴様に警戒心を抱かせ、古都から離れるように心理を誘導させた」
次々と明らかになっていく事実に、イリーナは驚愕するしかない。
「その後、実行に移される前に国の使者を再び使い、架空の依頼を作り出し依頼した」
イリーナは驚愕から恐怖を感じ始めていた。
あの時依頼を頼みに来た役人が国の使者だと、誰が予想出来ようか。
「待て、私は何故ここにきて襲ったのか聞いているんだ」
「ふん、分かっていないようだな。何故、あえて貴様らにその娘を保護させたのかを」
ヘルムートは続けた。
「即ち能力を発現させる為の道具。まず倒されるだろうクリーパーを襲わせ、力を浪費させたところで2体目を襲わせた。
  そして能力の発現を待った。結果は成功。見事に能力は開花した」
そこまで言い、ヘルムートは1度言葉を置く。
何という道化ぶりだ。自分は今まで国王の操り人形のように動いていただけではないか。
「治療の為アウグスタへ向かうと知った国王は、我らを派遣しアウグスタへ向かわせた。
  そして傭兵を使い、既に用済みの貴様らをこのアウグスタ領から外れる森まで誘導させ襲ったのだ」
驚愕がイリーナの全身を貫き、身を硬直させる。隣に居るルイスも同じだろう。
そう。こうなることは偶然じゃない、必然だったのだ。
そして、次に自分がどういう運命を辿るかも。それはほんの数日前から決まっていたこと。
その時、突然ヘルムートの雰囲気が変わった。

847柚子:2008/04/02(水) 15:04:00 ID:U4Y80Fag0
周りの空気が重くなったかのように、ヘルムートは神妙な面持ちになる。
「だが、国王でさえ予想し得なかったことが1つある」
イリーナに、何か嫌な予感が走った。その次を言わせてはいけない。
それを言ったら、全て終わる気がした。何もかも。
「い、言うな! その先は――――」
「それは、ミシェリー。国の実験体で一般人に人狼の細胞を植え付けられてなお生き残った、唯一の成功体。
  その規格外の巨大な魔力量とその能力だ!」
イリーナの頭の中で、何かが崩れ落ちる音がした。
積み重ねてきた大切な何かが崩れていく。容赦もなく、無慈悲に。
「う、うそ……。そんな、私……」
イリーナの後ろで、絶望の悲鳴が聞こえた。
真実を聞いてしまったミシェリーは狂ったように否定の言葉を繰り返す。
遂に体も支えきれなくなり、地面にへたり込む。
それでも小刻みに震えながら、小さく否定の言葉を言い続けていた。
そんなミシェリーを眺めながら、ヘルムートが前進し、傭兵達を下がらせる。
「貴様は我々の同胞を何人も殺してきた。初めは研究員、次に追手。その中には私の部下も含まれている」
絶望に苦しむミシェリーにヘルムートがさらに追い討ちをかける。
これで、森の中で初めてミシェリーと対面したとき何故ミシェリーは弱りきっていたのかが分かった。
ミシェリーは逃げていたのだ。己を追う何人もの兵士から。
「そして、貴様は危険過ぎる」
突然ヘルムートの剣から激しい魔力が発せられた。それは次第に冷気へと変わっていく。
「イリーナ、これは」
ルイスが言葉を漏らす。間違いない、ヘルムートはこれで決める気だ。
これを食らえばミシェリーといえど無事では済まないだろう。
これを防ぐ術など、ない。数瞬後に自分達はあの魔術に飲まれて息絶えるだろう。
これもまた、必然。
「イリーナ、俺が盾になって時間を稼ぐ。その間に貴様はミシェリーを連れて逃げろ」
ルイスがイリーナの前に出て、剣を構える。
「どう、して……」
イリーナから思わず疑問が漏れる。どうしてそんなことが言えるのか。片腕を失っているというのに。
どうしてこの人間はこんなにも強いのだ。
前にも1度こんなときがあった。巨大グモと対峙し、イリーナが諦めかけたときだ。
この男は、諦めるということを知らないのか。
そんな姿を見ていたら、諦めかけている自分が馬鹿らしいじゃないか。
「死人間近は下がっていろ。私がやる」
イリーナはルイスの更に前に出た。
「ただ、何だ。後ろで支えていてくれ……」
「分かった」
防ぐ術ならある。ずっと紡ぎ続けていたではないか。こうして今も。
イリーナは短槍に魔力を込め、一気に展開させていく。
全身を蝕むような痛みに思わず体が仰け反るが、ルイスが押さえてくれるお陰で何とか倒れることはなかった。
イリーナを中心に熱気が放たれる。その熱気を、違う冷気が飲み込んだ。
遂に完成したヘルムートの術式が牙を剥く。それは難易度5、ドラゴンツイスター。
氷属性で最高クラスのそれは、龍を象った氷の塊。
命を吹き込まれた氷は、触れたもの全てを氷結させ、それから永遠に時を止める。
同時にイリーナの魔術も完成した。
それは難易度5、メテオシャワー。宙界より召喚されし隕石が、氷龍に突撃する。
魔力と魔力、力と力、熱気と冷気が激しくぶつかり合う。
「あぁああああああああっ!」
「おぉおおおおおおおおっ!」
圧倒的なエネルギーに形を維持できなくなった2つの魔術が相殺し、崩れる。
中心に巨大なクレーターを残し、隕石と氷龍は消滅した。

848柚子:2008/04/02(水) 15:05:18 ID:U4Y80Fag0
魔力の余波が全身を叩きつける。
「はあ、はあ……」
限界をとっくに超えたイリーナは地面に崩れた。
無理もない、2度の難易度5の発動に加え全身の傷。立っていられる方が不思議だ。
しかし、まだ終わったわけではない。攻撃は防いだが、敵はまだ残っている。
「まさかあれを防ぐとはな」
そう言うヘルムートも既に限界が近づいている。
ルイスの攻撃で負った裂傷に先ほどの魔術の発動。魔力も体力も空に近いはずだ。
それでも彼は傷を庇うように近づいてくる。
なんとしてもミシェリーを殺す気か。今度は直接その手で。
ふと、ヘルムートの足が止まる。いや、止まったのはヘルムートだけではない。
ヘルムートの後方にいる傭兵も止まる。ルイスも止まる。イリーナも、止まる。
唯一動いていたものは、幼い少女だけだった。
ミシェリーの雰囲気が一転し、圧倒的な存在感を放つ。ミシェリーの前に、誰も動くことができなかった。
ミシェリーが立ち上がる。すると周りに張られていた水膜が弾けて消えた。
これは、前と同じだ。イリーナは病院で聞いたホラントの話を思い出す。

――ミシェリーが人狼になる条件。それは精神が不安定の時に巨大な魔力が干渉すること。

その条件は現在の状況にぴったりと当てはまるではないか。
そしてこうも言っていた。もう1度人狼化したらその時は――――
「やめろ、ミシェリィイイイッ!」
イリーナが動かない体を無理やり動かして叫ぶ。
しかし、その声はミシェリーの耳には届かなかった。
「みんな……」
ミシェリーが何かを呟き続けながら顔を上げる。その目は虚ろで、どこも見てはいなかった。
「みんな……消えちゃええええええええええっ!」
この世に絶望した少女の口から憎悪の言葉が吐き出された。
その瞬間、少女の体から途方もない魔力が放たれる。
目的を持たない魔力は消滅するだけだが、これは桁が違う。
巨大な魔力がミシェリーの周辺に広がっていき、無差別に圧力をかける。
近くにいるイリーナ達はその圧力に押し潰され、立っていることさえできなかった。
そればかりか、巨大な魔力に自分自身の魔力が掻き回され、今にも発狂しそうだ。
その時、後方で悲鳴が上がった。
次いで血が舞う音。魔力に対して抵抗が低いファミリアが遂に発狂し共食いを始めたのだった。
ファミリア達は互いが仲間だったことも忘れ去り、殺し合う。
飼い主であるビーストテイマーの制止も無意味だ。
次にファミリア達は標的を変えた。同種から、飼い主へと。
「や、やめ……」
テイマーの必死の制止にも聞かず、ファミリアはその手に持つ槍で己の飼い主を突き刺した。
「いやぁあぁあぁあぁあぁあ」
何度も槍を突き入れられ、苦痛のあまり絶叫する。やがてそれは断末魔となり、ビーストテイマーの声が消える。
死んでもなお突き続けるファミリア達も、ミシェリーの魔力に体が耐え切れなくなり地面に倒れ伏した。
それが発端となり、他の傭兵達も次々と狂いだす。
槍術師が己の槍で胸を貫き、口から血を溢れさせながら息絶え、魔導師が爆裂魔術で爆散する。
森の中は、一瞬にして地獄の光景に変わった。

849柚子:2008/04/02(水) 15:06:36 ID:U4Y80Fag0
「くっ……これ以上はやらせん」
ヘルムートが魔力の圧力に抗い、立ち上がる。
そして剣を、今もなお途方もない魔力を放ち続けるミシェリーに向けた。
「国王にとっての危険因子は私がこの手で滅ぼす!」
ヘルムートがミシェリーに向かって疾走を始める。
イリーナは止めようにも体が全く動かない。ルイスも同じ。
ヘルムートはイリーナ達を過ぎ去り、その奥のミシェリーへと駆ける。
そして剣を振り上げると、ミシェリーの頭上へと振り下ろした。
しかし、剣は寸前のところで停止する。何故ならミシェリーがその手で受け止めていたからだ。
「……ケケッ」
ミシェリーが嗤う。
ミシェリーは掴んだ剣をそのまま地面に叩き付けた。衝撃で剣が折れる。
続けて魔力の塊をぶつけ、ヘルムートを吹き飛ばす。
「がっ!」
奥の大木に叩きつけられ、ヘルムートの動きが止まる。
そのヘルムートに向かってミシェリーが手を向けた。
すると向けた手から毛が生じ、腕が膨れ上がり人狼の腕が現れる。
そしてミシェリーはその手から巨大な火の球を形成した。それはあの巨大グモを一瞬で蒸発させた魔術。
火の球をヘルムートに向け、ミシェリーが残酷な笑みを浮かべる。
その瞬間、ミシェリーの口から血が溢れた。
「がふっ」
ミシェリーが咳き込み、大量に吐血をする。
ミシェリーの目がゆっくりと下へと向けられる。ミシェリーの胸には何本もの短剣が突き立っていた。
「ひ、ひひ……」
それは発狂したシーフの投げた短剣だった。シーフはさらに短剣を放つ。
ミシェリーの胸に再び短剣が突き立ち、ミシェリーは鮮血を咲かせる。
全身から血を流しながら、ミシェリーは向ける手をヘルムートからシーフに変え、火球を放った。
それはシーフに直撃し、シーフは断末魔を残すことなく蒸発する。
それを見届けたミシェリーは遂に力尽き、その場に倒れた。

850柚子:2008/04/02(水) 15:07:26 ID:U4Y80Fag0
ミシェリーが弱ったことで圧力をかける魔力も止んだ。
イリーナは短槍を杖にして立ち上がり、ミシェリーの元へ向かう。
「ミシェリー! ミシェリー!」
イリーナが何度もミシェリーに呼びかける。
ホラントは言った。もう1度人狼化すればもうミシェリーは元に戻らないと。
ミシェリーの体は完全に人狼に乗っ取られているはずだ。
それでも何度でも呼び続けた。
ミシェリーの体の傷が自動で修復され塞がっていく。
しかし魔力が働いたことでそれはさらにミシェリーの体を蝕んだ。
人狼の力で体の傷は治るが、ミシェリー自身がそれに耐え切れずどんどん弱っていくのが分かる。
それをも回復させようと力が働き、悪循環に繋がる。
遂に魔力を切らせたミシェリーは腕が元に戻り、完全な人間の姿に戻った。
それでもミシェリーの人格は戻らない。
「ミシェリー、起きてくれ! ミシェリー!」
イリーナが必死に呼びかける。それでもミシェリーの意識は戻らない。
「イリー……ナ」
その時、僅かだがミシェリーの口から言葉が発せられた。
イリーナがさらに何度も呼びかけると、ミシェリーは小さく言葉を発する。

「今の……私は……いったい、だれなのかな……」

息をすることさえ苦しそうに、ミシェリーが続ける。

「今の私は……化け物、なのかな……。でも、私だと、いいな……」

そして、ミシェリーの瞼はゆっくりと閉じた。
「お前はっ! お前はミシェリーだ! 化け物なんかじゃ……」
そこでイリーナはルイスに止められる。
ミシェリーは既に息を引き取っていた。
「あ……あ、あ……」
イリーナの体が小刻みに震える。目の前の事実を否定しようと脳が告げる。
しかし、目の前のミシェリーを見て現実に引き戻された。
森の木々の間から覗く教会の十字架。ここまで来たのに、こんなにも近いのに間に合わなかった。
やがて雲が泣き出し、大粒の雨を降らせる。
雨が血を洗う。イリーナはミシェリーの小さな体を抱き寄せた。
あんなに気に入っていた服も今はぼろぼろである。
さっきまで温かかった体が嘘のように冷たい。その事実がイリーナを現実から決して逃がさなかった。
世界に、運命に、現実に絶望しイリーナは慟哭する。
声無き叫びが、森の中に長く響き続けた。

851柚子:2008/04/02(水) 15:08:23 ID:U4Y80Fag0
古都ブルネンシュティグ王宮内部。
そこでは何人もの人間が働き、生活をしている。
当然来客は貴族がほとんどで、一般人は何重もの許可を得なくては立ち入ることさえできない。
そんな王宮の中にヘルムートは居た。
「失礼します」
ヘルムートは先日の任務の報告をしに来ていた。
当然国王は結果を知っているのだろうが、これも義務だとヘルムートは考えている。
静かに扉を開き、中を見渡す。
広い部屋の中心に国王はくつろいでいた。しかし、警備の兵士が1人もいない。
その代わり国王の隣に幼い少女が1人居た。
ヘルムートは中に入ると姿勢を正し、軍人特有の敬礼をする。
「国王、先日の任務の報告をしに参りました」
そう言うと国王は苦笑いを浮かべ「崩して良いよ」と言った。
「国王、何故警備を?」
「ああ、警備を付けるとどうしても空気が固くなっちゃうからね」
そんなことを言うものだからヘルムートは適当に相槌を打つ他なかった。
ふと、ヘルムートは他の視線に気が付く。
その視線は国王の隣にいる銀髪の少女からだった。
「国王、その少女は?」
「ああ、この子かい?」
国王が視線を隣の少女に移す。
「この子はエレナ君だよ。今は警備謙話し相手をしてもらっているけど」
「お1人で、ですか?」
ヘルムートがそう聞くと、国王はさらに付け加えた。
「そう。ヘルムート君は会ったことなかったかな、彼女は近衛師団の一員だよ。こう見えても年齢は――」
そこで国王の言葉が途切れる。いや、中断させられたのだ。
何故ならその少女が国王の口を塞いでいたからだ。
「なっ……」
あまりの光景にヘルムートは言葉を失う。
国王の口を素手で塞ぐなどヘルムートの地位でも出来たものじゃない。
それをこの少女は軽くやってのけたのだ。
「おい国王あまり人の情報を漏らすなよ。言っておくが今この空間で1番強いのはあたしだぞ」
饒舌にエレナという少女が言い放つ。しかしその声色はまだ幼いままだ。
エレナの手から解放された国王が苦笑いを浮かべる。
「悪かったよ。じゃあヘルムート君と話があるから2人にさせてくれないかい」
「うん、分かった」
素直に従い、エレナは出口に向かう。途中でその足がふと止まった。
「あたしの可愛いクリーパーとスパイダーを犠牲にしたんだ。報酬は覚えているだろうな?」
「巨大サソリだろう?」
国王が言うと、エレナは満足して頷いた。
「忘れるなよ!」
最後に指を差して叫び、エレナは退室した。

852柚子:2008/04/02(水) 15:09:11 ID:U4Y80Fag0
エレナが居なくなり、室内は急に静かになる。
「話は聞いているよ。残念だったね」
そう国王が切り出した。
「申し訳ありません。私の力が及ばないばかりに……」
悔しそうにヘルムートが俯く。
「それに部下も失いました。あの人狼、とても私の手に負えるものでは……」
ヘルムートは拳を握り締め、己の無念をぶち撒ける。
ヘルムートはどんな処分も覚悟の上だったが、返ってきた言葉は意外な言葉だった。
「君には悪いことをしたね」
「え……」
国王がこれ以上ないほどの優しい言葉をヘルムートにかける。
ヘルムートは意外な返答に思わず顔を上げた。
「こうなることは予想の上だったんだ。だから隊長を優秀な君に選び、部下は替えが効く傭兵を選んだ。それにね」
国王が続ける。
「実はあのミシェリーという少女に植え付けた細胞は、ただの人狼のではなく古代の強力な人狼の細胞だったんだよ」
国王の告白にヘルムートは言葉が出なかった。自分がただの駒に過ぎなかったという事実に。
国王は自分をも欺いていたというのか。
イリーナ達を道化呼ばわりした自分自身も同じ道化である事実に、笑いさえ沸いた。
そして同時に恐怖した。自分ほどの地位の人間を軽く駒の1つに考えられるこの男に。
その時、急に扉が開いた。
「国王、来客です」
「うむ」
国王は立ち上がると、この場を去ろうと出口に向かった。
「待ってください、国王」
ヘルムートは勇気を振り絞り、無礼ながら国王を呼び止めた。
国王の足が止まる。
「何だい?」
振り返えりもせずに国王が問い返す。
まるでそれが分かっていたかのように。
ヘルムートは悩んだ末、それを言った。
「国は……いえ、国王はこれからもこのような実験をお続けになるのでしょうか」
その言葉が国王に聞こえているのかどうかすら分からなかった。
出すぎた事を言ったと思い、ヘルムートは国王に謝罪する。
「申し訳ありません。今の発言は……」
「世界は遠くない未来、再び戦争の時代が訪れるだろう。その時はこのような悲劇が起こらないと良いね」
ヘルムートの言葉を打ち消すように国王が優しい口調で言い放つ。
ヘルムートは何も言えなかった。
このような実験は賛同できないが、これが成功すれば国力は格段に上がるだろう。
そうすればその時、古都の被害は減りこのような悲劇は起こらないかもしれない。
それもまた事実だったからだ。
「国王、私は……」
ヘルムートが顔を上げると、そこには既に国王はいなかった。

853柚子:2008/04/02(水) 15:09:56 ID:U4Y80Fag0
ブルネン民間病院。
その病院の1室にイリーナは居た。
イリーナは寝台の上で上半身だけ起こし、窓の外を眺める。
あれから数日が経ち、傷も順調に治っている。恐らく戦闘もそつなくこなせるだろう。
「ちょっと、聞いてるの?」
隣から声をかけられる。若い女性の声だ。
「あれ、マスター居たんですか」
イリーナが見上げる視線の先は黄金の髪に赤い瞳の若い女性、ギルドマスターのアメリアだ。
アメリアや他のメンバー達は国の架空の依頼を受け、遠くのアリアンまで飛ばされていたらしい。
それがつい先日終わったそうだ。
「居たんですかじゃないわよ! 人が折角見舞いに来てやったのに。ルイスを見なさい、ぴんぴんしてるわよ」
そう言い、アメリアが隣のルイスを叩く。
ルイスの傷は信じられない早さで治った。切り落とされた左腕もあの後拾ってホラントにくっつけてもらったのだ。
そして今アメリアとルイスが見舞いに来たという状況である。
「わざわざどうも。見舞いの果物が無いのが非常に残念」
「それだけ言えれば大丈夫ね。私は用事があるからもう行くわよ」
そしてアメリアは病室から退室した。
次に無言でルイスも続こうとするが、イリーナが呼び止める。
「あのさ……」
無言でルイスが頷く。
これからイリーナが話そうとしている話題を分かっているからだろう。
「ルイス、何故私がミシェリーを拾ったのか、分かるか?」
ルイスは答えない。イリーナは続けた。
「お前には分からないだろうが、それは頼る者が居ない辛さ、手を差し延べてくれたときの嬉しさを知っているからだ。
  私はこのギルドに救われたからな」
「そうか、だから貴様古都を出る前夜あのようなことを……」
イリーナは頷く。
イリーナはミシェリーの安心できる場所になってやりたかった。
知らない内にミシェリーと自分を重ねていたのかもしれない。
それでも自分はミシェリーを救えなかった。これは一生忘れることはないだろう。
イリーナは続けて問う。
「あのヘルムート、いや、国王が私達に全ての真相を明かしたのは何故だと思う?」
答えも聞かずにイリーナは続ける。
「知っているからだ。全てを知ったところで私のような人間が何もできないことを。私は無力だ!」
イリーナから感情の激流が吐き出される。
イリーナは命を捨ててまで、ミシェリーの為に国と敵対することはできなかった。
また、完全にミシェリーの全てを受け入れることができない自分がいることを知っていた。
ルイスが静かに呟く。
「人は、人の命をただの数字として捉えた瞬間に人ではなくなる。俺から言わせればあの国王は魔人とも言える存在だ」
しばらくしてルイスが「忘れろ」と呟く。
そして会話が途切れた。
ルイスが再び立ち上がり、出口へと向かう。
「ミシェリーは私達を恨んでいるかな」
イリーナはルイスの背に問掛ける。
ルイスは「さぁな」とだけ答えた。
お互い顔も合わせずに言葉を交す。また、今の表情を見られたくもない。
ミシェリーはあの後アウグスタで埋葬させてもらった。
古都だと危険だし、何よりミシェリーの墓を見ることに耐えられる自信がなかったからだ。
「それでも」
イリーナが言う。
「それでもミシェリーは私の中で生きている。生きているんだ……」
ルイスは何も言わなかった。
イリーナ自身これが最低な人間がする自己満足だと知っている。ルイスも分かっているだろう。
だから何も言わない。
ルイスは無言で退室した。
イリーナはそれを見守り、ふと窓の外を覗く。
そこにはいつもの日常。何1つ変わらない。
明日も同じ光景だろう。その次の日も、さらに次の日も。恐らくずっと先も。
例え今誰かが世界に絶望し慟哭しようとも、世界は何1つ変わらないだろう。
もし明日イリーナが死のうとも、世界は見向きもしないだろう。
それでも下らない日常は続く。それは変えようのない事実だ。
ふと、窓から見える公園から、幸せに溢れた親子が見えた。
その光景が眩しくて、イリーナは思わず目をそらす。
自分はもうあの輪の中には戻れない。
そう思い、視界から追い出すように窓掛けを閉めた。
次にイリーナは立ち上がり、外套を羽織る。そして台に乗っている白いリボンに手を伸ばした。
それはミシェリーが遺した唯一の遺品。それを使いイリーナは髪を束ね、短槍を掴んだ。
最後に窓掛けで隠れた外を眺め、イリーナは静かに退室する。
今日もイリーナ達には依頼が待っていた。

〜FIN〜

854柚子:2008/04/02(水) 15:10:56 ID:U4Y80Fag0
みなさんこんにちは。
2・3回に分けると言いましたが、切りが悪いので1度に投稿……大量になってすいません。
戦闘をもう少しまとめたかったのですがこれが限界でした。
それとこんな救いのない終わらせ方ですいません。
プロットを作った当時の自分の気分がこんな感じで落ち込んでいたのでこうなったのだと思われます……。
ちなみにこれの続編はありません。これで完結です。
当初作った設定で死に設定が多いせいかギルドマスターや他のメンバーが空気だったり。
ラストで新キャラいましたがあれも消えた設定の名残だとでも思ってくれるとありがたいです。

初めての投稿から1ヶ月半と少しくらいでしょうか。
これまで自分に感想をくれた方、本当にありがとうございました。
感想間に合わなかった方、すいませんでした。
自分はこれでまたROM専に戻るかここを去るかします。
また書きたくなったらひょっこり現れるかもしれませんが。

それでは。

855幕間・モンスター外伝:2008/04/02(水) 20:01:10 ID:of5VjV0.0
中途半端なプロローグ>>836
--------------------------------------------------------------------------------------------------
俺の名はコビー。コボルトのコビーだ。
ここは古都西の通称お花畑
俺はここの中の一輪を守る事を勝手に自分の任務としている。
今日も一人バカな奴を葬った。

俺は他のコボルト達と違い、ニンゲンがやってくるだけで攻撃を仕掛ける。
だが大抵は実力の差で返り討ちにされる。まあ俺の実力じゃ始めたばかりで回復の仕方が分からない奴しか倒せないがな。
かなわない戦闘をいつまでも続けているといつのまにか「生意気だ」と言われるようになった。
正直ニンゲン共からどう呼ばれようが関係ない。俺は俺のやりたいようにやるさ。
お、また別のニンゲンがやってきたな…。
--------------------------------------------------------------------------------------------------

「でさ〜 マジあれ臭くね?w」
「そうそうww臭ぇよなwww」
バカな話をしているニンゲン達を見つける
「チッ」
俺は今まで気づかなかった自分に腹をたて小さく舌打ちをする。
大体俺のこの花の近くで臭いだのというな。お前たちも十分血なまぐさい。

槍を握り締め相手をよく見る

「…」

敵は上半身裸の男と長い杖を持った男。
もはや見るだけで分かる。相当な経験を積んできた者たち

だがそれでも、俺のやる事に替わりは無い。
見つけたのなら、襲い掛かるまで。

「キエエック〜!」
俺は掛け声とともに杖を持った男に襲い掛かる

「おおwでたでたww」
裸の男がなぜか喜んでいる

「いっちょやるかww」
杖を持った男も喜びながら返事を返す。すると次の瞬間には全身毛むくじゃらになっていた

「!?」
杖を持った男や毛むくじゃらの男は今まで何度か見ていたが変身するのを見たのはこれが初めてだ。
だが俺は驚くだけで攻撃の手は休めていない。だが、相手も動いていないのになぜか当らない!

「――ッ!?」
毛むくじゃらの男がなにかした。それだけは分かった。
次の瞬間には俺の意識は遠のいていた・・・
--------------------------------------------------------------------------------------------------

「・・・」
気づくと俺は花畑の西の方にいた

毛むくじゃらの男がさっき俺に使った技を鎧に使っては俺に襲い掛かってくる
だが俺は一撃で葬る、俺はこんなに強かったか?

疑問を感じながらも何度も鎧を粉砕する。途中何度も体から力が湧きあがる感覚に襲われる。
不思議とこうやっているのも悪くない気がした。俺はそのまま何度も鎧を破壊する。

そして、毛むくじゃらの男がさっきの技を使い、俺の意識はまた遠のいていった…
--------------------------------------------------------------------------------------------------
気が付くと俺は古都の入り口にいた。
周りには人間がいる。手当たりしだい攻撃していくといままでは若葉すらてこずっていたのに豪華な紋章をつけたものまで一撃で倒している。

俺が喚起に打ち震えつつ、入り口にいる者ほぼ全員倒したところで町からファミリアを連れた女がやってきた。
ファミリアめ、この裏切りもの共め、お前らも殺してやる!

だが、死なない。
何度突いても、死なない。

そのうち豪華な紋章をつけた者たちが戻ってきた。
それに気づいた俺はそいつらから殺ろうとしたが、なぜかファミリアばかり攻撃してしまう。

やがて、ニンゲンたちの攻撃によって、俺の体力は奪われ、


     俺は、力尽きた…

--------------------------------------------------------------------------------------------------
--------------------------------------------------------------------------------------------------
はい、西口で稀に行われるお犬様の最低な行いを生意気なコボルト視点で描いて見ましたw

不遇ですね〜可哀想ですね〜

というわけで西口最強・コビーのお話でした。





俺も高レベWIZがいればしたいのに・・・
え?ダメ? サーセンw

856幕間・モンスター外伝:2008/04/02(水) 20:11:43 ID:of5VjV0.0
読みづらい!書き直し!
--------------------------------------------------------------------------------------------------
俺の名はコビー。コボルトのコビーだ。
ここは古都西の通称お花畑
俺はここの中の一輪を守る事を勝手に自分の任務としている。
今日も一人バカな奴を葬った。

俺は他のコボルト達と違い、ニンゲンがやってくるだけで攻撃を仕掛ける。
だが大抵は実力の差で返り討ちにされる。まあ俺の実力じゃ始めたばかりで回復の仕方が分からない奴しか倒せないがな。
かなわない戦闘をいつまでも続けているといつのまにか「生意気だ」と言われるようになった。
正直ニンゲン共からどう呼ばれようが関係ない。俺は俺のやりたいようにやるさ。
お、また別のニンゲンがやってきたな…。


「でさ〜 マジあれ臭くね?w」
「そうそうww臭ぇよなwww」

バカな話をしているニンゲン達を見つける

「チッ」

俺は今まで気づかなかった自分に腹をたて小さく舌打ちをする。
大体俺のこの花の近くで臭いだのというな。お前たちも十分血なまぐさい。

槍を握り締め相手をよく見る

「…」

敵は上半身裸の男と長い杖を持った男。
もはや見るだけで分かる。相当な経験を積んできた者たち

だがそれでも、俺のやる事に替わりは無い。
見つけたのなら、襲い掛かるまで。

「キエエック〜!」

俺は掛け声とともに杖を持った男に襲い掛かる

「おおwでたでたww」

裸の男がなぜか喜んでいる

「いっちょやるかww」

杖を持った男も喜びながら返事を返す。すると次の瞬間には全身毛むくじゃらになっていた

「!?」

杖を持った男や毛むくじゃらの男は今まで何度か見ていたが変身するのを見たのはこれが初めてだ。
だが俺は驚くだけで攻撃の手は休めていない。だが、相手も動いていないのになぜか当らない!

「――ッ!?」

毛むくじゃらの男がなにかした。それだけは分かった。
次の瞬間には俺の意識は遠のいていた・・・




気づくと俺は花畑から遥か西の方にいた
巨大な鎧が大量にいる場所だ
毛むくじゃらの男がさっき俺に使った技をその鎧に使っては俺に襲い掛からせてくる。
それに大して俺は槍を突き出す、すると鎧は一撃で瓦解した

「?」

俺はこんなに強かっただろうか?仲間のコボルトとケンカしても勝つか負けるかは五分五分なのに…
疑問を感じながらも何度も鎧を粉砕する。途中何度も体から力が湧きあがる感覚に襲われる。
不思議とこうやっているのも悪くない気がした。俺はそのまま何度も鎧を破壊する。

しばらく繰り返していると、毛むくじゃらの男がさっきの技を今度は俺に使い、俺の意識はまた遠のいていった…


気が付くと俺は古都の入り口にいた。
周りには人間がいる。手当たりしだい攻撃していくといとも簡単にニンゲンたちが倒れていく

「――ッ!!」

俺が喚起に打ち震えつつ、入り口にいる者ほぼ全員倒したところで町からファミリアを連れた女がやってきた。
ファミリアめ、この裏切りもの共め、お前らも殺してやる!

だが、死なない。
何度突いても、死なない。
なぜだ、今の俺にはかなりの力がついているはず・・・

そのうち豪華な紋章をつけた者たちが戻ってきた。
それに気づいた俺はそいつらから殺ろうとしたが、なぜかファミリアばかり攻撃してしまう。

やがて、ニンゲンたちの攻撃によって、俺の体力は奪われ、俺は力尽きた




だが気づくとまた花の前にいた。
なんだったんだろう、今までのは夢だったのか?
だがなんでもいい、俺は今までどおり花を守るんだ。
そして、俺はまた花の周りを巡回し始める。

857幕間・モンスター外伝:2008/04/02(水) 20:12:57 ID:of5VjV0.0
って今更おかしいところ見つけた!

>お、また別のニンゲンがやってきたな…。
これ脳内削除お願いします

858◇68hJrjtY:2008/04/03(木) 18:45:00 ID:yq96.qOY0
>柚子さん
二人の傭兵と、人狼となった少女の物語。遂に完結となりましたね。
今回スレをひらいてみたら一気に完結までUPされていて、それでも怒涛のように読んでしまいました(苦笑)
ヘルムートや敵傭兵たちとの戦いから始まり国王の思惑、そしてさらにミシェリーの最期から全て読み通してみると
この二人のしてきたことは確かに国王が用意した舞台の上での踊りだったのかもしれないと思いつつも無駄という言葉で片付けたくないです。
ミシェリーはきっと天国で幸せに暮らしている…などという陳腐な言葉でしかその気持ちを表せない私もやっぱり偽善者なのかもしれません。
ミシェリーという少女を扱ったストーリーの大筋だけでなく、黒い舞台裏など色々と考えることも多かったお話だと思いました。
しかし関係ないですが王様って一見フランクな人で第一印象は良かったのに実は…(笑) エレナもちょっと妄想(´¬`*)
もし気が向いた時はまたの執筆、お待ちしております。まずは、完結編お疲れ様でした!

>幕間さん
モンスター外伝というか花を守る生意気なコボ君の一日というか(笑)
コボ君が言うように私もRS初心者の頃、ウィザード⇔ウルフマンという変身は思っても見ませんでした。
ということはコボ君が受けたのはあのやったままログアウトすると凶悪スキル化するやつですか(笑)
最後のシーンがなんだか天国のお花畑と被らせてるようで、それでも花を守るコボ君にちょっと感動しました。
次回作お待ちしています。

859黒頭巾:2008/04/05(土) 00:51:56 ID:fou9k2gM0
|゚д゚)<…こんばんわ、黒頭巾です。
あばば、いつの間にか200レスも進んでるガクガク((((゚д゚;))))ブルブル
ちょっぱやでいかないと大変なコトになりそうなので、以下、手短にレス。


>幕間さん(Σ「まくま」さんだと思ってました!)
ショートコント形式でテンポよく読めて楽しいです(*´∀`)
高所恐怖症WIZ、爆笑しました(ノ∀`*)ペチン
ネタが色々で何処をコメントしようか迷いましたが、一番好きなのはコレなのでw

>68hさん
Σいつの間にかダークメルヘンジャンルが特徴に!笑
パティシエゾンビはRSを始めたばかりの頃にお世話になったのですよ(ノ∀`*)ペチン
イケメンさんは策士だと思います…てか、ファミたんはイケメンさんを何だと思ってるのかと小一時間(ry
横レスですが、どちらのFLASHも心当たりがあってうずうずです!笑 ありがとうはkokiaの曲がまたイイんだ(ノд;)

>718さん
ええ、思いっきりソコ突っ込み待ちでしたw
小ネタを詰め放題に大量に仕込むのが趣味です。
いくつ気付いて貰えるかとニヨニヨしています(ぇー)

>之神さん
続き言ってくれた(*ノノ)<…あ、サイトやお絵描き掲示板がアレなら、手軽にブログって手もありますよー。
唐辛子はか弱いシリウスを強化しようという親心だと勝手に解釈…って、ツンデレキタ―(*´д`*)―ッ!!
本編、総出演で何かミュージカルや舞台を見てる気分です…冒険者の中、一般人代表@徹くん頑張って!笑

>640の名無しさん
ふじわら流かかと落としのネーミングセンスにに盛大に噴きました。
知識武道…烈風が知識スキルだと思っていた昔を思い出しました(ちょ)
Σ( ゚д゚)ハッ、同じGとか憧れのマドンナ(古)の四条さんとお近付きのチャンス!笑

>ウィーナさん
性懲りもなくファミネタです…実はエイプリルフールも考えてたけど余裕で間に合わなかったのは内緒(ry
自分もおにゃのこだったのに女は傷つけれないって言うアルビのフェミニスト振りに萌えました(*ノノ)
ロイとニナのすれ違いっぷりにもうヤキモキですよ、あばばばば…そして、暁がある意味かっこよすぎますw

>柚子さん
健気なファミたんが実際にいたら、ソレこそペット奪取して可愛がろうと思いまs(ry
そして、完結お疲れ様でした…一気に読ませて頂きましたが…が…! ああぁぁぁ、ミシェリィィィ。・゚・(ノд`)・゚・。
努力虚しく最悪の結果になってしまいましたが、きっとソレでもイイ意味でも悪い意味でも、二人の心の中に残ったミシェリーは生きていけるんだと思うしか(´;ω;`)ウッ

>したらば初心者さん
ねー、怒涛の流れですよね…隅っこの方で一緒にプルプル((((゚д゚;))))ピルピルしませんか、橙仲間!(誘うな)
ブルースビストロの行列凄いですよね…この間、思いを馳せつつ後ろに一緒に並んで放置してみました!笑
うっかり腹黒だった(?)ギールの目的が赤石の捜索だったなんて…一部では夢物語だと思われていても、夢に向かって真剣に冒険する男の子はイイです(ノ∀`*)ペチン

>ESCADA a.k.a. DIWALIさん
Σ罠シフktkr…三桁になったばかりレベルの罠シフ持ちには、一撃で倒せるその威力が羨ましい(ノ∀`*)ペチン
F氏の解説に大爆笑でした…そんな愉快な彼の為に喜んでコボルトの服引っぺがしてきます!笑
ただのエロ親父かと思いきや、熱い方だったルシフェル氏の修正パンチ(ぇ)と台詞が沁みました。・゚・(ノд`)・゚・。

>FATさん
キャラ視点だとプレイヤーって名付け親なのかなと…きっと親父はしたらばに張り付いているリアル自宅警備員です←
ファミテイマのパッシブが風雨と憂鬱なので、きっとお出かけの度に気が重いだろうなぁと思うのですよー笑
忘れがちですが、MOBからしたら冒険者は生息地に攻めてきて虐殺する非道な敵なんですよね…弱肉強食の生態系って残酷です(´;ω;`)ウッ
ドタバタ珍道中の中でも、ドレイツボの告白がツボにハマってもう笑いが止まりません!_| ̄|○ノシ<…ヒーヒー ベシベシ

860黒頭巾:2008/04/05(土) 00:52:30 ID:fou9k2gM0
>21Rさん
Σ(・д・ノ)ノ<…もぎゃー、今度から思っても言わない様にしますぅぅぅ(自重的な意味で)
凄く素敵なゴミ収集車なイイ男(ryですね…うわー、羨ましい! 素手のオッサン激しく萌です(*´д`)ハァハァ
アレンが引き継ぐまで、ミトは凄い頑張って…上に立つってコトは、下の人間の人生を預かるんですから少女には重すぎますよね(´;ω;`)ウッ
そして、引退なのですね…お疲れ様でした(´・ω・`) 私も最近別のMMOに浮気中なのでこのまま引退になりそうで恐い…orz

>ニートの中の人さん
ヴァンパイアのお話! 死と生が同じ彼らの存在は、何処か哀れで考えさせられます(´;ω;`)ウッ
夢の内容的にもローストは伝説の以下略なのでしょうが、その彼が記憶を失った理由と彼女との出会いが偶然でないなら、何が起きるのだろうとwktk。
続きも気になりますが、じっくり心理描写なさって下さるとソレだけそのキャラを深く理解出来るので嬉しいです(ノ∀`*)ペチン

>ドワーフさん
辛くても涙も流せない悪魔さん、娘を思ってきっと心の中で泣いていたんだろうなぁと思うと(´;ω;`)ウッ
読み手に任されるとの事だったので、思う存分感情移入して妄想して(自重)読み返してきました。
ドワーフさんの作品は心理描写といいキャラクター描写といいとてもリアリティがあるのが羨ましい…深く引き込まれます。

>白猫さん
Σお姫様抱っこは硬直していたとか…初々しい青い春ですね(ぇ) 可愛いなぁ(*´д`)ハァハァ
カスター洞窟はお金掏られちゃいます…ひたすら数も多いので適正時代は用事で通る度に凄く恐怖でした(ノ∀`)
本編が凄い怒涛の展開になってる…あばばばば! 二人の成長速度が凄いです…古都を守りきれるのか、目が離せませんよ!(*ノノ)
おまけ話のカイアスの恐い者知らずな様にもう笑いが止まりません…コレなら若く(むしろクソガk(ry)見える!笑

>R310改め国道310号線さん
RSやりながら気付いた小ネタは仕込んでこそだと思っております(笑)
もぎゃー、続きキタ―(*ノノ)―ッ!! そして今回も簡潔な前回のあらすじは素敵すぎます!笑 メモ帳の罠は私もよくやります(ノ∀`*)ペチン
スマグ周辺の謎のお城とか、流石異星のお姫様の根城ですね…小屋の近くのリトルウィッチってフローレンスなのかな!笑

>824さん
初めましてー(*´∀`)ノ<…続き物みたいなのでログ辿って来ました(ノ∀`*)ペチン
この二人組は主人公の敵さんなのかな…戦士が何を言いかけたのか気になって!
この凸凹コンビの関係が師匠と駄目弟子みたいで面白いです(*´艸`)<…失敗しちゃった先輩萌(…)


で、イベント。
宜しければ私も参加したいですー(*ノノ)
既に引退された方々も多々おいでるというコトで、RS以外で決定でいいのかな(私も先日からRSは半隠居組ですがorz)
チャットやお絵描きチャットなら、レンタルの持ってるのでご用意出来ますよー(*´∀`*)ノ
そして、みやびさん引退されておいでたのですね…安否を気にしながら再び降臨されるのを楽しみにしていただけにショックが…orz

861黒頭巾:2008/04/05(土) 00:55:47 ID:fou9k2gM0
…魔法都市スマグの朝は早い。
何しろ、魔法使い達は朝も夜も関係なく研究に没頭しているのだから。
この町を代表する魔法使いである長老も例外ではない。
知識の探求者の誉れ高い長老は、目の前にいる小さな生き物を起こす事に躍起になっていた。
その小さな生き物は…長老の初孫にして、唯一の孫息子。
齢5つのその彼の名はローランド…通称、ランド。
偉大な長老の力はその血脈に受け継がれたのだろう。
彼が最初に魔法を発動したのは3つの時。
それは拙い小さな霧ではあったけれども、長老を大喜びさせるには十分だった。
「ランドはワシを超えた偉大な魔法使いになるだろう」
そう自慢して回る長老の姿はただの孫フェチのお祖父ちゃんで、厳格で有名だった長老に周囲が初めて親しみやすさを感じる要因となった。
周囲からも神童との誉れを受け、期待の高かったランドの欠点はただ一つ。
…魔法に全くの興味がない事である。

初めて魔法を発動した日から二年…既にランドの評価は、周囲からの期待が高かった、と過去形になってしまっていた。
それでも諦めきれない長老だけは、叱り付けたり宥めたりしながら、何とかランドに魔法を教えようと必死だった。
全く興味のないランド相手では、空回りするだけの情熱ではあったが。
今日もそんな繰り返しの毎日の中の一ページである筈…だった。
「ほれ、今日も魔法の授業を始めるぞ。アルが来る前に補習じゃ、補習」
総じて、老人の朝は早い。
一人元気な長老とは逆に、目の前のランドはまだ半分寝ている状態だ。
「たりーし、ねみー」
眠そうに目を擦るランドの寝癖だらけの頭に、コンコンと長老の杖が下ろされる。
タンコブすらも出来ない、目を覚ます程度の刺激しか与えない様に調整されたソレを、ランドは嫌そうに避けてぼやいた。
「やだよー、あさっぱらからあちーじゃんかー。みずあびしよーぜー」
反抗的な孫息子の姿に、長老のコメカミに青筋が浮かぶ。
「……先日、噴水に飛び込んで泳いだ件の説教がまだだったな」
一段落ちたトーンで呟かれた言葉に、ランドの顔が「しまった!」と引きつった。
「涼しければいいんじゃな?その言葉、忘れるなよ」
げっと呟いたランドにニヤリと笑って長老は短く呪文を唱える。
「アイススタラグマイト!」
途端に長老の足元から氷の柱が聳え立った。
冬に地面から顔を覗かせる霜柱が巨大になった様なその氷柱に、ランドの目が驚きに見開かれる。
暑い空気の中でも、その氷柱はひんやりと存在感を主張していた。
小さなランドにとっては、普段の祖父の背の高さだけでも見上げるしかないのに、長老の顔は今ではもう遥か遠い高さにある。
正直、首が痛い。
でも、そんな事すら気にならないくらい興奮したランドが長老に賛美を送る。
「じーちゃん、SUGEEEE!」
「ワシの氷柱は前提分+補正しかないが中々のものじゃろう」
気紛れな孫の珍しい好感触に、ガッツポーズしたい衝動を堪えながら長老がここぞとばかりに畳み掛ける。
長老の努力は、今日こそ実るのか?
「じゃーさ、じゃーさ、レベルあげたら、もっとたかくにいけるのかー?」
ランドはキラキラと輝く瞳で祖父を見つめて、教えてくれとせがむ。
本当の事を教えるべきか、濁すべきか…孫に嘘をつく罪悪感と今までの努力が心の天秤に揺れる。
瞬間に脳内で広がる、小さな小人さん達の討論。
追放天使のコスプレの長老A「可愛い孫に嘘をついてはいけません!」
悪魔のコスプレの長老B「それがヤツの為になるんだぞ!」
追放(ryの長老A「それでも、小さな純粋な魂を穢してまで、その価値はあるのでしょうか?」
悪魔(ryの長老B「大人になれば自然と穢れるものさ…こんなチャンス、滅多にねぇぞ。嘘さえつかなきゃいいんだ、嘘さえ」
そんな脳内サミットの結果は…。
「……そうだといいのぅ」
嘘ではない、嘘では…例え、誤解を受けそうな回答であっても。
長老は自分に言い聞かせる道を選んだ…挫けたとも言う。
そんな長老の答えるまでの間が少し気になったけど、ぐだぐだと気にしないのがランドである。
氷柱のレベルを上げれば上げる程高くに行けると思い込んだランドの夢は決まった。
それは、氷柱のレベルを上げる事。
目指すは、青いお空にぷかぷかと浮かぶ、巨大で美味しそうなワタアメだ。

862黒頭巾:2008/04/05(土) 00:58:26 ID:fou9k2gM0
その後、珍しく真剣に長老の講義を聴いていたランドは長老の後ろからやってきた姿に気付くと、「よっ」と手を上げた。
「おはようございますです」
やってきたのは、ランドの幼馴染のアーロルド…通称、アルだ。
ストレートヘアーなのに頭も服装もくしゃくしゃのランドと違って、アルのふわふわとウェーブした髪はきっちりと梳かれて服装もきちんとしている。
その早朝であっても完璧な彼の姿は、几帳面な性格の賜物だろう。
家族ぐるみの付き合いのアルとランドは、赤ん坊の頃から一緒にいる。
正反対な性格なのに、仲がよいのは…物心付く前からずっと一緒にいるからなのか、逆に正反対だからなのか。
「おじぃさま、きょうもまほうおしえてくださいです」
魔法への興味に関しても、正反対の二人。
「おぉ、おはよう、アル。勤勉なのはよい事だ」
長老が好々爺の笑みを浮かべて、アルの頭を撫でる。
長老にとっては、アルも孫みたいに可愛いものだ…しかも、魔法の勉強を好むのだから尚更で。
勤勉さと、物覚えのよさ、それに見合った才能があったのだろう。
今ではスマグの神童の称号はもうアルの物であるのは周知の事実だった。
(このバカ孫にアルの爪の垢を煎じて飲ませてやりたいわ!)
そう心の中で愚痴りながらも、何だかんだでランドが可愛くて仕方がない長老ではあったが。
珍しくやる気満々のランドの姿に、アルの目が驚きに開かれる。
小さな桜色の唇から毀れるのは、厭味でも何でもなく…ただ純粋に驚いて口から出ただけの言葉。
「あれれ、ランドがまほうのおべんきょうですか?めずらしい!」
普段なら、ランドは寝坊してこの場にいないか途中で逃亡するか居眠りするか…兎に角、真面目ではないのだ。
アルの驚きも尤もであろう。
「そらにうかんでるでっけーワタアメくいてーから、こおりばしらマスすんだー」
空の雲を指差して、ランドが高らかに宣言する。
そんな脳内変換だったのか…長老は頭を抱えたくなった。
それでも頑張っているのだから、終わったらキャンディーでもご褒美に買ってくるか、などと考える。
喜ぶ顔を想像しただけで、少し幸せになった。
そんな長老の心の内を知らず、ぽかーんと黙ってしまったアルにランドは続ける。
「あんしんしろ、アルのぶんもとってきてやるからなー」
俺に任せとけ、と胸を張るランドに、我に返ったアルが口を挟んだ。
「あれはくもってゆって、ワタアメとはちがってたべれないんですよ、ランド!」
「えぇー、うそだろー!?」
スマグの空に、ランドの叫び声が響く。
途端に杖を放り出した孫息子を眺めながら、長老は「今日も失敗か…」と溜息をついた。
長老の戦いは明日も続く…。


…皆様の幼女に対抗してショタ投入してみました。
反省はしている。
だが後悔はしていない←

863之神:2008/04/05(土) 05:16:13 ID:H2nyjsZk0
1章〜徹、ミカの出会い。
-1>>593―2 >>595―3 >>596-597―4 >>601-602―5 >>611-612―6 >>613-614
◆――――――――――――――――――――――――――――――――――――◆
2章〜ライト登場。
-1>>620 -621―2>>622―○>>626―3>>637―4>>648―5>>651―6 >>681
◆――――――――――――――――――――――――――――――――――――◆
3章〜シリウスとの戦い。
-1>>687―2>>688―3>>702―4>>713-714―5>>721―6>>787―7>>856-858
―8>>868-869
◆――――――――――――――――――――――――――――――――――――◆
4章〜兄弟
-1>>925-926 ―2>>937 ―3>>954 ―4>>958-959 ―5>>974-975
◇――――――――――――――――5冊目―――――――――――――――――◇
-6>>25 ―7>>50-54 ―8>>104-106 ―9>>149-150 ―10>>187-189 ―11>>202-204

◆――――――――――――――――――――――――――――――――――――◆
5章〜エリクサー
-1>>277 ―2>>431-432―3>>481-482―4>>502―5>>591-592―6>>673-674
-7>>753-754―8>>804-806
◆――――――――――――――――――――――――――――――――――――◆
番外

クリスマス  >>796-799
年末旅行>>894-901
節分  >>226-230
バレンタインデー>>358-360 >>365-369
雛祭>>510-513
ホワイトデー@シリウス >>634-637
◆――――――――――――――――――――――――――――――――――――◆

864之神:2008/04/05(土) 05:40:11 ID:H2nyjsZk0
γ

「ハァ…ハァ……なんか余計に体力使っちまった…」俺は腰に投擲斧を戻し、かけたロープに手を掛けなおした。

グッ、とロープを力強く握り締め、そのままスルスルと反対側のダクト口へと入っていった。

プーッ、プー…。
無線機の受信音が鳴り、ライトはボタンの1つを押す。

「なんだ?」
『先ほどエレベーターの落下事故がありましたが…大丈夫でしたか?』

「いや、あれは事故だったんだ!そう…俺は悪くないからさ……」
『何を言ってるんですか…?』

「いや、こっちの話だ、なんでもない…」俺は自分に向かってきた鉄の塊の事を思い出していた。
『さて、今後の動きですが…、現在の貴方は…30階辺りですね」

「そうだな…半分より少し上くらいだ」
『そうですか…そこから、少し上れば折り返しですよ』

「ん、了解。とりあえずサクっと昇るから、その後また連絡する」
『わかりました…引き続き、慎重に』

κ

モワモワと、辺りには煙が立ち込めていた。

「おいエトナ…聞け」
「なぁに?」

少しチリを被った2人は、服についたそれらを払いながら遣り取りをする。

「今の…エレベーターの落下によって、地下まで穴が開いた可能性がある…」
「そう?でも何でそう思ったのー?」

「空気が…流れてきているだろう…そこからだ」と、モクモク煙が出てくるエレベーターホールを指差す。
「うーん…見てみないと分からないよう?」

「じゃ…善は急げだ…」
「あれー?私達のすることってー、善い事だっけえ?」


「そこに突っ込むな…馬鹿野郎…」


α

「オイ…キミ……ハァハァ…何の用…だ?」膝に手をつく男が、話しかけてきた。…今にも倒れそうなのだが。
「あ…ちょっとお話したいことがありまして、お伺いした次第で…」

「何の話だ…?」
「ちょっと、発売される商品について…少し意見がありまして…」

「商品開発…部の人間にはたぶん会えない…が、いいのか?」
「構いません。とりあえず、上の人に伝えてもらえれば」
「悪いが今この状況だ…俺の上司に対応してもらって……う」過労か、男はまた倒れこんだ。

「と…言われてもなぁ」俺は仕方なく、その場を立ち去りウロウロと歩くことにした。
「どっから行けるかも知らな…えっ?」

突然、モクモクと煙が出てきた。

「おいおい…社員倒れて更に…火事?」

865之神:2008/04/05(土) 05:57:32 ID:H2nyjsZk0
ψ

「あれぇ…逃げたはいいけどさぁ…」




「どこだろここっ!」
ナザルドはダクトを見回し、そしてまた混乱した。

「通路…?いやぁでも狭いしなぁ…あっ!」

「風が流れてるっ!」


λ

「ハァ…ここね……ミュリエ…ジュール」
回転ドアにタイミングを合わせて、シルヴィーは中へ入った。

「えっ…またあの人何かしたの…?」

そこには、グッタリと倒れこむ社員一同、そして薄く煙も立ち込める…。

「あのー、大丈夫ですか?何かあったんですか…?」ユサユサと手近にいた一人に聞くが…
「反応が無い…ただの屍のようだ……」

「もー、来て早々これって何よ……」と、ため息をつき回りを見回すと、見覚えのある人物がそこにいた。
「あ…徹さん?」


Θ

ドオオオオオォォン…!!

「む…爆発音か…?」シリウスは既に20階に居た…その経路は。

「非常階段…と記されていたが、安心できるのだろうな…」階段を上がっていた。

シリウスは考え事をしながらも、颯爽と風のように駆けていった。
タタタタタタ…
「…通路をまっすぐ進んで」
タタタタタ…
「ここを右に…そして左に…む」
タタタタタ…
「ん…通路の横の通気口が動いている…?」
タタタタタタ……ドン!
豪快な音が鳴り、失速…停止をしたシリウスは、真っ先にぶつかった物を睨むことにした。

「ぐっ…ダクトが行き成り飛び出すとは…!」と、見上げるそこには、運動着の男がニヤニヤと笑っていた。


γ

ガガーザーザー…

「ライトだ…」
『はい』
「到着した。65階だ」

866之神:2008/04/05(土) 06:15:15 ID:H2nyjsZk0
ψ

「風が…こっちかっ!」
「あっ!これ昇れる!」
「おお!なんかちょっと面白いかも!」ナザルドはダクトの中を駆け回り、適当に進んで行った。

「でもこれじゃあ到着できないよなぁ…地下に」
うーん、とナザルドは腕を組み考え込む。

「どうしようか…この迷路から抜けられればいいんだけど…」
こうしてナザルドは、光の漏れる場所を探すことにした。

「おーっ!ここかっ!」
「甘いほうが好きだけど……ビターシールドッ!」

ボコン、と音を立てて金網が外れる。

タタタタタタ……ドン!


α

「ああもう!来ても出来る事がねーっ!」
本当に、やることが無い。案内も無し、煙は出てるし、みんな倒れてる…。

「通報…?」と考えていると、突然後ろから声がかかる。

「徹さん!」
「ん…、この声は…?」振り返ると、シルヴィーが居た。

「ああ…お久しぶりですね」笑っても居られない社内だが、微笑んで対応する…俺。
「どうされたのですか?」

「ちょっと…会社の人とお話がありまして……シルヴィーさんの方は?」
「えっと…シリウスさんを…」シルヴィーの表情が、げんなりとする。


「シリウスさんを、止めに来ました」
「えっ…あの人と繋がりが……?」俺はかなり意表を突かれた。


κ

「アルシェー…煙がぁ…煙がぁ…」うううう、と目をこするエトナ。

「少し我慢しろ…これくらい戦場の爆炎に比べれば…」
「少しって言ったなーっ!もう、5分も煙の中だよーっ!」

「……あった」煙の中で見えないが、アルシェの気持ちが高揚する雰囲気が伝わる…。
「出れれば何でもいいよー…早く…」

「こっちだ」
アルシェはエトナの手を優しく握り、そのまま下へと誘導した。

タン、と地面に降り立ったアルシェとエトナはまず周りの風景に驚いた。


「何だここは……水族館か…?」

867之神:2008/04/05(土) 06:27:45 ID:H2nyjsZk0
甘いほうが好きだけど……ビターシールドッ!
こんにちは、甘いのも苦いのもイケます、之神です。

ちょっと絵とかバイトとかで書けてないです(´ω`;;
以前の更新率よりガタ落ち…。

なんか最近、呼んでてまだまだだなーと実感してきました。なのでここでお勉強。
5冊目からお世話になってます執筆も、ザクっと見ていて変わったな、変わってないな、と色々です。

68hさんや黒頭巾さん、国道さん、その他の作家さん…感想コメ書きたいですが疲れたので今回は割愛……サーセン

でも1人返信…(・∀・!
>>柚子さん
執筆お疲れ様です…連載、と言うか一つの作品を完結させるのは、とても大変な事。
正直ネタ不足よりも、どうやってシメるかの方が大変です…。
また、気が向いたら書いてみて下さい。そしてROMでも感想屋でも、このスレに居てくれると嬉しいです。

868◇68hJrjtY:2008/04/05(土) 18:13:05 ID:ZlW1sp0M0
>黒頭巾さん
幼女もオッケーですがショタもオッケーです(*´д`*)(節操なし
ダークメルヘンですか、しかしピッタリですよ。確かに黒頭巾さん小説はそのジャンルだあ(笑)
今回はでもその系統というよりか長老と孫の短編という感じで。ランド君の「氷柱で空のワタアメを取りに行く」ってセリフは萌えた…。
長老の悪魔コスプレっていうのもちょっと妄想したら怖くなってしまったんですが((( ´・ω・))
アルのKY発言で一気にその別々の夢は崩れてしまったランドと長老ですが…なにやら続きそうで、楽しみです。
次回作お待ちしていますね。

>之神さん
ナザ君とシリウスが出会い、そして徹とシルヴィーが出会い。徹はでも今回の借り物競争は知らなかったんでしたね(苦笑)
猿みたいなナザ君とライトのルート、裏道のシリウスのルート、正面突破な徹とシルヴィー…とアルシェとエトナは水族館?(汗
しかし…何も知らなかった一番の被害者はやっぱり社員か(ノ∀`) エリクサー調べの時の図書館職員もですが(笑)
今のところ一番無難に、事故の被害を食らわない立場で動けているのはライトでしょうか…?そう簡単にいくかは置いといて。
バイトなどもお疲れ様です。絵も楽しみにしてます、いつでもOKですよ!続きもお待ちしていますね。

869ESCADA a.k.a. DIWALI:2008/04/06(日) 10:53:16 ID:Mz.67ito0
Chapter 03:Episode 04-邂逅〜それでも、譲れないものがある〜

「うぅ…うっ、あれ……あたし何でこんなところに?たしかエルフの皆に断って、森で哨戒活動をしてたはずなのに……それにここは一体」
朝日が差し込むボロ小屋の中で、ラティナは上半身の殆どを椅子に縛り付けられていた・・・しかも逃げられぬよう、ご丁寧に鎖まで巻き付けられている。
顔をうつむかせて自分の体に何かされていないか確認したが、目立った傷も何一つ無かった。だが、いつの間にか一人の女性がその場に仁王立ちしていた。
「何故こんなことになっているのかお答えしてもよろしくてよ、この美しすぎる私をコケにした平凡女、ラティナ・シノノメこと、東雲あやねさん?」
自らの肢体を見せ付けるようなポーズで立っているこの女、名前はエレナ・クレモンティーネ。数日前にラティナとその彼氏トレスヴァントと
確執があり未だにそのことを怨んでいるリトルウィッチだ。この事を話せば、彼女がラティナをこのような状態にしている理由も頷ける。
「ちょっと……何で、何であたしの本名を知ってるの!?それにあなた、あの時のキャピ子ね!!?!こんな事してどうなっても知ら・・・」
「誰がキャピ子ですってぇええぇぇ!!?!だいたい私にはエレナというエレガントな名前があるんですのよ!!!訂正なさって!!」
ラティナの放った『キャピ子』という単語にエレナがブチキレた・・・その辺にいるゴロツキも顔負けの怒り面に、思わずラティナも怯む。

「はっ!!?!……あらあら、私としたことがはしたないですわ。ごめんあそばせ、オホホホホ……まぁ話を戻しますわ。事は数日前に遡りますわ。
 あなたのお仲間の下品な露出狂女に投げ飛ばされて、いざ落ちてみたらそこはデフヒルズ。ですがそこにあったクエストバーという場所がありまして
 そこであなたを探している人物からのクエストを受諾してきましたの…その依頼主様が誰なのか、ラティナさん。お察しが付くはずでしてよ?」

「……まさか、そのクエストの依頼主って!!!」「……あなたのお父様であり、東の異国では名高い武人…東雲燈道(とうどう)様その人ですわ。」
「(……っ!!さすがにこの偽名を使えば追われる事は無いと思っていたけど、そこまであたしを連れ帰りたいだなんて……お父さんの、バカっ……!!)」
予想が的中したラティナは表情を曇らせ、内心呟いていた。だが追い討ちをかけるように、エレナはさらに言葉を紡ぐ・・・!!
「フフ……それに、あなたがお父様に連れ帰られることになれば…あなたの彼氏であるバカ筋肉ダルマに私の美しさを教え込むのも容易ですわ、オホホ」
「・・・何ですって!?もう一度言ってみなさいっ!!!」「何度でも言って差し上げますわよこのバカ女っ!!!あなたの彼氏を奪ってもよろしくてよ!?」
両者とも凄惨な舌戦の応酬を繰り広げ、同時にボルテージは急激に高まってゆく・・・!!そして先に怒りが頂点に達したラティナが、自身を拘束する鎖や縄を
己のパワーで破壊し、空間転移魔法で取り出した青竜偃月刀を手に、その切っ先をエレナに向けて構えた。同時にエレナも対抗するようにステッキを構える。

「んぅ〜!!!!もうアッタマきちゃったんだからっ!!!表に出なさい、叩き潰してあげるっ!!」

「上等ですわ、ケチョンケチョンのコテンパンに潰されるのはあなたでしてよっ!!覚悟なさい!!!」

山脈の影から微かに差し込む朝日が、草原で火花を散らす気高き女の戦いを照らし出そうとしている・・・

870ESCADA a.k.a. DIWALI:2008/04/06(日) 11:03:04 ID:Mz.67ito0
あとがき(え,いきなりかよ早ぇなオイ!!)

ん〜・・・一行の間に入る文字数がいまいちわかんないせいか変なところで区切られるorz
ラティナ(あやね)編のプロローグ的エピソード,森の中での仲間やエルフ,そして改心したミゲルたちとの
会話シーンへと続くわけですが・・・最近ボキャ貧になりつつあるのでしばしお待ちを;;;;

>国道さん
どうも,こちらこそはじめましてです^^
フィナーアはあれです,基本的にエロデレ系なのでw
テイマが大人になった場合を妄想した結果です;;

>黒頭巾さん
エディの戦闘スタイルは「カポエイラ+罠」という奇妙な組み合わせ,
足技でかく乱させつつ罠に誘う戦法ですb

そしてスマグでの爺ちゃんと孫の一こまが面白いですbb
爺ちゃんの脳内会議シーンはめがっさ吹きましたwww

871国道310号線:2008/04/07(月) 01:34:26 ID:Wq6z33060
第一話 〜 ミニペットがやってきた! 〜

前編 >>487-490 後編 >>563-569

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第二話 〜 狼男と魔女(3)〜

>>784-787 2 >>817-820


前回のあらすじ: 魔女を探していたら変な所に飛ばされた

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廊下はいくつかの部屋に繋がり、また別の廊下へと繋がっており、まるで迷路のようだ。
いたる所に魔物がいて襲ってきたが、エムロードらはそれを危なげなく倒していった。

「また、行き止まりですね。」
いくつ目かの部屋を出て、廊下を曲がったところでプッツリと道は途切れていた。
先程から彼らは詰まっては戻り詰まっては戻りを繰り返している。
「これですべての場所は通ったな。」
グロウは険しい顔をして、前方に立ち塞がる白壁を見る。
「マジか〜。 勘弁してくれよ…。」
うんざりした声をトパーズは出した。
体力が無い小犬の体でウロウロしたので、普段猟師をしている彼も流石に疲れたのだ。
彼はテラコッタの元まで行くとしっぽを振った。
「テラちゃーん。 だっこしてー。」
猫なで声でトパーズは彼女にねだる。
「私よりマスターの所の方が安全よ。」
笑顔で彼女はトパーズをあしらった。
実際、どこに魔物が潜んでいるか分からない上、戦闘時には弓で戦う彼女の傍にいるのは危険だ。
「残念だったな。」
いじけているトパーズをグロウは彼女の代わりに抱きしめると慰めてやった。
色黒の太い腕の中でトパーズは必死にもがき続ける。
「おっさん、やめてくれっ! 歩く! 自分で歩きますから!」
名残惜しそうにグロウは嫌がる小犬を手放した。

「この壁壊せないかな。」
行き止まりになっている壁をブルーノは指差す。
よく見るとその壁は、左右に接している壁と微妙に色が違っていた。
「怪しいわね。」
「確かに。」
気付いたテラコッタとエムロードも訝しむ。
テラコッタは壁に近づくと、床の赤絨毯を調べた。
絨毯は壁で終っておらず、その下に潜り込んでいる。
この壁の向こうに何かがあることは明白だった。
「よし、壊そう。 マスター、モール貸して。」
グロウは持っていたモールをブルーノに投げる。
ずっしりと重量感がある巨大な金槌を、彼は力いっぱい両手で持ち上げた。
「待ってください。 不用意に触ると危険ですよ。」
「え?」
エムロードの警告は時すでに遅く、モールは振り下ろされていた。
モールは重力に逆うことなく勢いをつけ壁に接触する。
その瞬間、扉は熱と衝撃を伴う大爆発を起こした。

<トラップが爆発しました>

爆発に巻き込まれ、トパーズの小さい体は吹き飛ばされる。
彼は床に叩きつけられると数回バウンドし、そのまま動かなくなった。
「俺は…、もうダメだ…。」
「しっかりしろ。」
ぐったりしている彼をグロウは抱き上げる。
「さ、最期はべっぴんの姉ーちゃんの膝の上で死にたかったぜ…。」
だが現実は、何やら祈っているおっさんの腕の中。
世を儚びながらトパーズはガクリと首をうなだれる。
爆塵収まらぬ中、こうして一つの命が失われた。

「……遊んでないで行きますよ。」
いつまで経ってもグロウの胸の中で目を閉じたままのトパーズにエムロードが言った。
ガバリとトパーズは起き上がる。
爆発で受けた傷はすっかり癒えていた。
「おーい、壁壊したぞー。」
大穴が開いた壁の向こうからブルーノが呼びかける。
ブルーノは爆発によって空いた壁の穴を崩し広げていた。
「おっさん、ビショップだったのか。」
「そうだ。」
驚くトパーズを抱きかかえたまま、グロウは壁の穴をくぐり抜けた。

872国道310号線:2008/04/07(月) 01:35:14 ID:Wq6z33060
爆発で乱れた髪をテラコッタは手櫛で直す。
「もう少し気を付けてよね。」
「ははは、悪い悪い。」
ジト目の彼女に笑って誤魔化しながらブルーノは先を進む。
廊下は依然として赤絨毯が続いていた。
「他にもトラップが張ってあるとしたら厄介ですね。」
今のメンバーの中に罠を探知したり解除できる者はいない。
「アッシュがいれば良かったのだが。」
グロウは黒ずくめの少年のことを思い浮かべた。
シーフである彼の力があれば、罠など難なく進めるだろうが、生憎と彼は留守番をしている。
ブルーノは首だけ振り返ると笑顔を見せる。
「大丈夫だって、罠は俺が壊すし、もしもの時はグロウもいるし。」
彼は自分の耐久力には自信があった。

後ろを向いたままの彼が踏んだ床からカチャリと音が鳴った。
すると廊下が揺らぐほどの轟音が響き渡り、彼等を取り囲むように数十匹の魔物が一気に召喚される。
召喚されたのは曲刀盾を持った青き鳥頭人身の魔物、鷲狂戦士だ。
「鳥ぃーーーっ!!」
広い廊下を埋め尽くすほどの魔物にテラコッタが悲鳴をあげる。
「ブル〜ノ〜〜。」
「ご、ごめん。」
本来なら魔物に向けるべき殺気をブルーノに放つエムロード。
魔物たちは甲高い雄叫びをあげると、彼らに襲いかかった。

雪崩れ込んでくる青い群団。
それらを殲滅させるほどの魔力を貯める時間は無い。
エムロードはベルトから魔力補給のためのチャージポーションを取り出すと蓋を開けた。
「私っ、鳥は大嫌いなのよーーっ!」
目をきつく閉じたまま、ヘイストを上回るスピードでテラコッタは頭上に魔力の矢を幾本も放つ。
矢は上空で幾重にも別れると、火の雨となって魔物達に降り注ぐ。

<グライディングファイアー>

その炎は一瞬にして魔物達を飲み込むと焼き尽くした。
焼け付くような熱気と魔物の断絶魔で廊下は溢れかえったが、スコールはいつまで経っても止まない。
「テラコッタ! もう鳥は全滅したよ!」
ブルーノが矢を放ち続ける彼女に呼びかけた。
ピタリと雨は止み、そこには肩で息をするテラコッタの姿があった。
彼女の足元には熱で溶けかけたポーションの空き瓶が散乱している。
一同を取り囲んでいた魔物は原型が分からないほど消し炭になっていた。

一人ですべての魔物を倒してしまった彼女にエムロード達は拍手を送る。
「あ、あんた達… はぁ、ボーとしていないで…、はぁ、はぁ、ちょっとは手伝ってよ…」
息も絶え絶えに彼女は彼等を見やる。
エムロードは開いたままのチャージポーションの蓋を再び締めると、彼女に投げた。
「手を出す間もありませんでしたよ。」
「なんだか邪魔したら悪いような気がして…」
「うむ、見事な火雨であった。」
ギルドメンバーたちのふざけている様な台詞にガックリ項垂れるテラコッタ。
この疲労感は大量に消費した魔力のせいだけでは絶対無いと、彼女は受け取ったポーションを飲みながら思った。
「俺は強い女も好きだぜ。」
「…ありがとう。」
白い犬歯を光らせながらのトパーズは口説き文句に、彼女は頭を片手でかかえながら礼を言う。
突然、彼女はハッとすると身の回りの物を確認し始めた。
「…マズイわ。」
未だに荒い息のまま彼女はバツが悪そうな顔をする。
「今ので青ポ全部使っちゃった。」

873国道310号線:2008/04/07(月) 01:37:09 ID:Wq6z33060
エムロード達にチャージポーションを分けてもらったテラコッタは礼を言った。
こういう道具類は無くても戦えるが、臨機応変な対応を迫られる時にはその存在は大きい。
「あまり長居するのはこちらの不利ですね。」
エムロードは豪華な迷路に厳しい顔をした。
いつ終るとも知れない通路と部屋の連続は精神が滅入ってくる。
物資もある程度の準備をしていたが、長期戦となると少々心とも無い。
「この壁を真っ直ぐに壊していけたらいいのにな。」
ブルーノは真っ白な壁を触れずに空中で叩いく。
ここの壁は意外と丈夫で、隠し通路がある場所以外は壊そうとしてもビクともしなかった。
「恐らくこの場所全体に魔力が込められている。」
壁を見回しながら言うグロウの言葉にテラコッタは納得する。
「だから、さっきもコゲ目一つ付かなかったのね。」
現に彼等はこの通路で戦闘を繰り返しているが、絨毯や絵画でさえ火が燃え移る事無く傷一つ付かない。
何事も無かったように元の美しい姿を保っている様は少々不気味でもあった。
「魔法が掛かった通路ってスマグの地下道みたいだな。」
「へぇ、そうなのか。」
同じく壁を見回すトパーズにブルーノが聞く。
彼はスマグにいる時にそんな物あるなど気が付かなかった。
「険しい山道を避けるために作られた通路で、強度強化の魔法が掛かってあります。」
問いかけに肯定するトパーズ、更にエムロードは詳細を述べた。
地下道はスマグと他の町を繋いでいたが、今はレッドアイという集団が占拠されているため使えない。
風の噂では、ここら一帯の魔力の源であるスウェブタワーもそいつらに乗っ取られたと聞く。
まったく、スマグのウィザード達の腕も落ちたものだ。
「ここって窓が無いみたいだけど、その地下道なの?」
テラコッタの言うように、この場所に来てから太陽の光を見ていない。
スマグの地下には数多くの通路があり、その中の一つに飛ばされたというのは十分ありえる。
「しかし、こんな煌びやかな内装ではありませんでしたよ。」
エムロードは薄暗い石畳の地下道を思い出す。
湿気の多い淀んだ空気のあの場所と華やかなこの場所は結びつかなかった。

先頭を歩くブルーノの足が止まった。
続いて全員の足もパタリパタリと止まる。
「なぁ、これどう思う?」
彼の前方には一枚の扉があった。
扉には鉄製のプレートが付いていて、大きく『ゴール』と彫られていた。
この迷路が終るのならありがたいが、ここまでデカデカと書かれていると逆に怪しく感じる。
今まで痛い目に遭っているので、罠を壊していこうとした彼も流石に警戒しているようだ。
「罠の可能性が高いでしょうね。」
「やっぱり?」
即答するエムロードにブルーノは苦笑いを浮かべた。

ブルーノはエムロード達を後ろに下がらせると、取っ手を捻り一気に扉を押し開ける。
ギィィと重い音を立て、開かれた先は暗闇。
彼は目配せすると剣を構え一歩中へ踏み入った。
そのまま部屋に完全に入っていっても、何も起こる気配は無い。
部屋は広く、奥の方が舞台のように一段高くなっているのが入り口からの光で辛うじて分かった。
「僕たちも行きましょうか。」
ブルーノが部屋の中ほどまで進んだあたりで、意を決したエムロード等も漆黒のゴールに入る。
全員が部屋に入りきると、勢い良く入り口が閉まった。
わずかな光源が無くなり、部屋は完全に闇に包まれる。
「さて、鬼が出るか蛇が出るか。」

彼等が四方に注意を配り身構えていると、一筋のスポットライトが部屋の隅を照らす。
ライトの先には一人の少女がこちらに背を向け立っていた。
すると天井から勇ましいマーチが流れ出す。
少女は身軽に空中でくるくる回転しながら舞台へ跳び上がった。
スポットライトも彼女の動きに合わせ後を追う。
「遠い銀河からやって来た、ラブリーキュートな愛と正義の戦士―」
先端に赤い宝玉と翼の付いたステッキを振るいながら少女はステップを踏み舞う。
「メイド服魔法美少女! アルストロメリア!!」
名乗りあげるとビシリとポーズを決める少女。
同時に彼女の後ろで派手な音と共に火薬が炸裂し、カラフルな煙がもうもうと上がった。
どこから現れたのか白いハトやウサギも飛び回っている。
ハトを見て、テラコッタは思わずブルーノにしがみ付いた。

874国道310号線:2008/04/07(月) 01:37:59 ID:Wq6z33060
暫し後、部屋のライトが灯された。
一同の視線を一身に浴びる少女は決めポーズのまま可愛らしく微笑んだ。
彼女が身に着けているのは赤い生地に白いフリルが沢山付いたミニスカートのエプロンドレス。
メイド服にしては露出度が高く、前も大きく開いており胸を強調したデザインになっている。
長い金髪はツインテールにし服と同じ赤いリボンで結わえ、白いフリルのメイドキャップをしていた。
ステッキを持ち魔法を操るその姿は、彼等が知るリトルウィッチそのものだ。
「メリアちゃん、カワイイーッ!」
皆がポカーンと彼女を見つめる中、トパーズは一人拍手喝采を彼女に送った。
彼に気付くとアルストロメリアは手を振る。
「狼さん、久しぶりー。」
「俺様、こんな姿だからここまで来るの苦労しちゃったよ〜。」
「エヘヘ、冒険者さん達のために秘密ダンジョン風にしてみましたぁ。」
和やかに会話をしだす二人。
そんな状況に付いて行けないエムロードらは沈黙したままだ。
「まさか、あの娘がお前を小犬にしたのか?」
ブルーノが恐る恐るといった感じでトパーズに尋ねる。
「うん、そうだよ。」
ニコニコしたままトパーズは答えた。
エムロードはグイっとトパーズの胸倉を掴むと彼に詰め寄った。
「あれのどこが『恐ろしい魔女』なんです?! 只の電波女じゃないですか!」
「あー、ヒドイー! 本当に銀河の彼方から来たんですよー。」
彼の暴言にアルストロメリアは思いっきり反論する。
「兄貴っ、首っ。 首が絞まるって!」
トパーズは苦しそうに手足をバタバタさせるが無駄な抵抗に終った。
「確かに、違った意味で恐ろしいわね。」
白昼堂々人前で、どこかの変身モノのような台詞を平然と口走る彼女にテラコッタは戦慄を覚えた。


つづく


824さんと罠扉ネタ被ってしまったけど気にしないで投稿してやるぜ!
すみません、調子乗りました、ナマ言いました。
次で第二話はラストになります。

以下コメ返しです。

>68hさん
いつもコメありがとうございます。
変身関係にあるウィザードとウルフマンですが、こいつらを兄弟にしたら正反対で面白そう!
との思いつきで、折角やるならとことん正反対なキャラ設定にしました。
初の戦闘シーンは2話前ですね、ゲストのトパーズが掻っ攫っていってしまいました。(笑)

>柚子さん
完結お疲れ様です、食い入るように読みきりました。
人間個人の無力感、争いの中で起こった悲劇… と色んな言葉が浮かんでは消えていって、一言じゃ言い表せませんです。
それでもミシェリーはイリーナたちと出会えて、少しでも楽しい時間を過ごせたと信じたい…
コメありがとうございます。
いやいや、私の戦闘シーンはまとまっていると言うより臨場感が無くて迫力が…orz

>黒頭巾さん
微笑ましい二人に和みつつも、長老の涙ぐましい姿に新たなるじいちゃん萌えを感じてしまいました。
子供の発想力って素晴らしいですよね、あぁ、子供の頃の自分にネタ出しして貰いたい。
フローレンスに目をつけるとは流石黒頭巾さん! 彼女はアルストロメリアのモデルとなったキャラです。
勿論モデルなだけなので魔法美少女とはなんの関係もございません。

>ESCADA a.k.a. DIWALIさん
ちょっと、高レベルテイマを育ててきまs(ry
私も充電期間は無いと辛いです、今はストックがあるので何とかなっていますが、そろそろヤバイ状態です。
女の戦いと聞くだけでガクブルものですね、果たして勝負の行方は?! 続き楽しみにしております。

875ウィーナ:2008/04/07(月) 10:41:15 ID:3RWVAaPc0
白い鳥と黄色い花
〜1章〜
プロローグ >>301-303
1話 夢のFelt-tipped marker(サインペン) >>310-312
2話 Disguising as a woman(女装) >>316-320
3話 Facing(対面) >>454-459
4話 イクリプス >>526-531
5話 幻想の闇 >>584-588
6話 フェレス >>605-611
最終話 バレンタインデーの罠、最終決戦 >>653-660

〜2章〜
プロローグ >>716-719
1話 残される新記録。 >>768-772
2話 刻まれる亀裂 >>778-783

四番目(フォース)の殺戮人形

同時刻。『リトルフェアリー』に残されたのは、月舞、アルビ、ルチノの三人。
メアリーは方向音痴にもかかわらずニナを追いかけていきました(
三人は三者三様の様子をもって、その場に立ち尽くしていた。
月舞は左手を顔の傍に揚げ、砕け散った指輪を眼を細めて見詰めている。
(……困ったな……まさかうちの抑制機まで壊しちゃうなんて……予備は今、手元にないのに)
ニナの特性を此方の予想どおりのものか否かを確認するためには、ニナ=ハィタムの精神を追い詰めて、揺さぶってやる必要があった。これである程度のデータは取れたと思うが、ラミアの戦闘データを含めても、まだ足りない。可能ならば、走り去ったニナを追い掛けたいところではあるが──
(今日のところは、ここで切り上げるしかないか。抑制機の効果がなくなった以上、できるだけ早くかの場から離れないと……彼女が来てしまう)
月舞は内心で舌を打つ。
その隣では、ルチノが愕然と立ち尽くして、憧れのニナが走り去った方角を見詰めている。

「……嘘。ど、どうして……ニナ。見る目のない浮気者なんて、要らないんじゃ……ないの?」

強い衝撃を受けているようだ。
残る一人、アルビはなにを考えているのか分からない無表情で、月舞の姿を見据えている。

「月舞。君はニナを挑発して、なにを企んでいる?」

抑揚のない声を投げかけられた月舞は、背の高いシーフに向き直る。
眼中にない相手に向けるのは、韜晦の微笑。

「ん……企むなんて。なにいってんの?」
「惚けないで欲しい。そもそも……君は本当に、ロイに好意を持っているのか?君のやりようはまるで、彼を利用しているようだ。……そう、そうやってニナを追い詰めて……なにか試している、ような」
「…………」

そこで月舞の、アルビを見る目が変化した。
(この子……意外と鋭いのね……)

「……考えすぎだよ……アルビ」
「そうだろうか、俺の勘はよく当たるんだがな。月舞……俺は、今の人間関係をそれなりに気に入っているんだ。君の意図がどうであれ、いたずらに壊すようなことはしないでくれ」
「そんな……あたしは、心からロイのことを慕っているよ……?いたずらになんて、心外だよ」

それはあながち、嘘でもなかった。
(うん……本当にごめんね、ロイ……)
ニナ=ハィタムの正体が予想通りのものであれば、月舞は彼女を破壊しなくてはならない。
(最初は、問答無用でそうするつもりだったけど……)
それもすべて……
(……悲しんでしまうもんね、貴方は)
そう思うが故。
あの青年に恨まれることになったら、きっと、とても胸が痛むだろうから。
可能性は低くとも、そうではない可能性に掛けて、自分の目で正体を確かめようと思った。だからこそ今こうして、慣れぬビーストテイマーなどを演じている。

「…………」

黙したまま佇立するアルビの前で、月舞はしばし沈思していた。
そのとき──

「!?」

胸に激痛を感じた月舞は、アルビから視線を逸らし、西の空を睨み付けた。
(やっぱり来たね──)
太陽が沈む。西方が黒く黒く染まっていく。
黄昏を塗り潰す染料は宵闇の黒。そして、雷を孕み、驟雨を降らせる暗黒の雲。
(──『四番目』)
それは、月舞を狙う狩人だ。
懸念していたとおり、抑制機が壊れてしまったせいで彼女に共振が行き、また、目覚めてしまったらしい。
(敵が来てしまう──このままでは、ここに)
迎撃すべく西へ一歩足を踏み出した月舞の背に、声が掛けられる。

「どこへ行く、まだ俺の話は終わっていない」
「ごめん、アルビ。それはまた今度にしてくれる……?悪いけど、あたし──」

月舞はアルビに言葉を残し、雷雲に向かって駆け出した。

「──急用ができちゃったの」

甘くて苦い恋愛物語は、これで中断。
たった今からは──血腥い闘争の時間だ。

876ウィーナ:2008/04/07(月) 10:44:25 ID:3RWVAaPc0
アルビの静止を無視し、『リトルフェアリー』を後にした月舞は、あくまで少女の姿に相応しい速度で日が落ちた町へ走る。彼女は手近な路地裏の角を曲がり、人々の視線をカットした上で、一気に加速した。
銀髪が翻った、と思いきやその姿が忽然と掻き消える。
極めて静やか、そして優雅かつ迅速。
重量法則を無視し、縦横無尽に月舞──十二番目は駆けた。
時には壁を足場に変えて、閉所で炸裂する跳弾のごとく。
あっという間に路地裏を抜ける。大通りに戻っても、高速機動する少女の姿を見咎めるものはない。人々が察するのはせいぜい彼女が通った後ろで逆巻く、疾風の残滓のみだ。
馳せる、馳せる、いましも敵が迫り来る、西を目指して。
(町中で戦闘になることだけは、避けなくては……)
『下界』の刺客である"キリングドール"たちは原則として自ずから人目を憚り、無関係の人々を巻き込まぬよう、無用の騒ぎを起こさぬように配慮する。
だが──『この相手』は話が違う。
慎重に、秘密裏に行動するといった、他のキリングドールたちが弁える当然の常識が存在しない。
(欠陥だらけの失敗作──あの『四番目』に、町中だから攻撃をやめようなんて、しんなまともな思考はないな。……あたしの方で、戦闘可能地点まで誘導してあげないと)
そう、もはや戦闘は不可避だった。彼女──四番目とはこれで三度目の邂逅となる。
厄介な……酷く厄介な敵だ。だが、
(今度こそ、仕留めてあげる)
必滅の決意を胸に、月舞はフランテルの俯瞰図を脳裏に描いた。
戦闘状態に入れば"LTスフィア"が発する共振によって、急速に人気が引いていく。それでもやはり、古都やアリアンなどで戦うのはリスクが高すぎる。全力を出して戦えそうな場所は、幾つかのポイントに限定されていた。
(このまま進めば……クェレスプリング湖で四番目とぶつかるな)
古都を西に抜け、少し北に抜けたところにはブレンティルという町がある。
そこのすこし手前に、あまり盛況とはいえない湖があった。
(障害物は多いものの、敷地が広くて、人目に付き難い……打って付けね)
速度や道程をうまく調節し、尽きまいは決戦場へと敵を誘導する。
ほかの敵ならばともかく、この四番目を誘うのはとても容易い。
四番目の行動法則は酷く単純だ。敵に向かって単騎突撃、単独撃破、邪魔するものは皆殺し。一度戦場が解き放たれたが最後、誰の命令も受け付けず、味方を一切連携せず、敵が消滅するか自らのエネルギーが切れるまで、一人戦闘本能のままに暴虐の限りを尽くす──
欠陥だらけの"キリングドール"。ただしその戦闘能力は、極上。

「さて……着きますな」

目標地点まではもう幾許もない。
(そろそろ、なんらかのアクションを仕掛けて来てもおかしくはないのだけど……)
そんな思考を巡らせながら、クェレスプリング湖の入り口である洞窟に足を踏み入れた瞬間──奥から三つの影が躍りかかってきた。

「!」

襲撃を速やかに察知した月舞は、縦横にステップを繰り返し適切な回避運動を取りつつ、頭上を振り仰いで敵の正体を検分する。
(『ディフェクティヴ・ドール』)
LTスフィアから抽出された技術を基に、劣化複製された機械仕掛けの模造品。
無制限に『生産』される、魂なき少女人形。
着地した三体のドールたちは、すぐさま跳躍散開して月舞を包囲した。黒のオーブを着用し、右肩に『Ⅳ』のエンブレムを刻んでいる。
第四研究室のドール部隊だ。
包囲網を完成させた人形たちは、三対同時にこちらへ向かって突進を開始した。
(三方同時攻撃──悪くない策ね。だけれど)
月舞は一体の標的に狙いを定め、いつの間にか右手に持っていた斧を擲った。
ヒュッ──
まるで気負いのない動作で投じられた八本の斧は、一切のタイムラグなしでドールの全身に突き刺さり切断、人形は一瞬のうちに肉と鉄の残骸となって倒れる。
(まずは、一体)

877ウィーナ:2008/04/07(月) 10:47:56 ID:3RWVAaPc0
続いて月舞はその場で踊るように回転し、左腕による裏拳を繰り出した。
投擲動作から連携する、無駄のない連続攻撃──
繊細な腕が凶器と化して、尽きまいの背後を薙ぎ払う。カウンターヒットした子武器がメキメキと敵の顔面に減り込み、機械人形の首を無残にヘシ折って粉砕した。
(これで二体──あれ?)
残る一体を迎撃せんと身構えた月舞の表情に疑問が浮かぶ。
最後のドールが突進を途中で止め、こちらに向かって右腕を突き出していたからだ。
(なんだ?)
初めて見るドールの行動パターンに、月舞は攻撃を躊躇して様子を見る。
すると──少女人形の手首が外れて、そこから黒い砲口が現れた。
右腕を砲身に見立て左手で支えていると、まるでランチャーの発射体制だ。

「んぁ……!?」

ドゥンッ!砲口が眩く発光し、手首と同程度の太さを持つ青い光条が発射される。
月舞は僅かに目を眇め、咄嗟に開いた右手を翳す。掌に直撃した熱線はたったそれだけの動作で射線を阻まれ、規定の放射時間を終えて攻撃を終了した。

「腕に武器を仕込んでるなんて──新型だったんだ。そういえばずいぶんと動きが早くてスムーズだったな」

月舞は、ぴりぴりと痛む掌ほチロリとなめて悠然と敵に歩み寄っていく。
ノーダメージ。

「武器の威力も上々──数を揃えられると嫌だな。あたし、苦戦してしまうかも」

言い終えたときにはすでに、新たに手に持っていたカードによって、最後のドールは微塵切りになっている。
最高の性能を秘めると目される『十二番目』が、新型といえど出来損ないに後れを取るはずはなかった。
三体のドールを片付けた月舞は、湖の洞窟を進む。
途中数体の新型ドールを蹴散らした彼女だったが、どうも釈然としないことがある。
(敵の数が、少なすぎる)
『十二番目』の性能を知らしめるはずの組織が、自分を甘く見ているはずはない。
いかに非常識な攻撃性能を誇る『四番目』を放ったといえど、本気で月舞を抹殺するつもりがあるならば、もっと大量のドールを動員して攻めにかかればいい。
(確かに、四番目は単独で突撃するばかりで、まったく味方と連携しないけど。それに──そう、本当ならドールよりも先に四番目と接敵するばずなのに……)
どうしていまだに現れないのか──

「!?」

そこまで思考を進めたとき、月舞の目前に驚くべき光景が飛び込んできた。
湖の辺に、新型ドールの残骸が打ち棄てられていたのである。
全身が黒く焼け焦げて、半ば消し炭になっているという──心当たりのある破壊痕。

「これは……!?」

洞窟が開けた先に、湖がある。何もない、音も。あるのは風と空気だけ。
そこは──焼け焦げたドールの残骸が無数に散らばる、惨劇の舞台となっていた。

「なんて、こと。同士討ちなんて……」

慄然と呟く。なるほどこれでは、敵の数が少ないわけだ。
(『彼女』の仕業……!)
新型ドールたちは、月舞の元に辿り着く前に、こうやって虐殺されていたのだから。
中でも、たった今破壊されたばかりだろうごく新しい残骸は、パチパチと紫電の残滓を帯びて夜の平原にその骸を浮かび上がらせている。
もはや事態は瞭然だった。こんなことができるのは──一人しかいない。

「くっ!?」

刺し貫かれるような殺気を感じた月舞は、後方に跳躍してその場を逃れる。
直後、耳を劈くような雷鳴が轟き、青い閃光が視界を灼いた。
一刹那前まで彼女が立っていた場所に、雷が落ちたのだ。
無論、これは自然現象などではありえない。
着地した月舞は、いまだ網膜を灼く光に目を細めながらも、頭上を振り仰いで言った。

「さっきぶりね──四番目…みょんちゃん?」

878ウィーナ:2008/04/07(月) 11:03:56 ID:3RWVAaPc0
やー、月舞と魅穏は"キリングドール"…殺戮人形だったのです
そして月舞が使った…イクリプス。
あれは紛れもない、ルチノの武器。
それを取り込んだんです・。・
そして、次回はニナと十番目…暁の衝突。

なんかだんだんRSのストーリーとかけ離れていくような…まあいいでしょう!(
LTスフィア…ポータルスフィアとはまったく違う、力を引き出す道具…
月舞のつかった迅速、フェレスの武器、イクリプスなどの災厄(カラミテイ)
LTスフィアを求め、殺戮人形を壊していく月舞はニナと衝突してしまうのか?


月舞かっこよかー(

コメント返し

>>◇68hJrjtYさん
下手です・・・orz
今思うとえんぴつの線がきえてないところがあったり、
ポットとカップの形がいびつだったりorz
だめですね、まじめにかかないと・・
落書きなんか見せられたものじゃない;。;
ンー要望あったらほかのキャラもかこうかなっとおもってます
要望あったら・・・ね

>>柚子さん
はじめましてヾ(・ω・。)ノ
文章ゴミですみませんw
柚子さんの小説、完結オツカレさまです!
といってもまだよみきれてませんがorz
書くのだけで精一杯;;
がんばってよみまし;。・

>>国道310号線さん
こちらもはじめまして!
これから小説読むのでまっていてください・。・;;(

>>之神さん
ルチノ萌えっー
わかりますわかりますww
アルビのことすきなのに今回ツンデレ系でいかせてもらいました(*´ω`*)(ぇ
うん・・・ツインドリル。(

>>黒頭巾さん
えいぷりる編・・・っ
みたい・・ものすごくみたい・・
後れてでも見たいですよ・。・;;
ふぁみりあいーえっくすくんよもう一度!(

879◇68hJrjtY:2008/04/07(月) 16:44:28 ID:N62ba.4E0
>ESCADA a.k.a. DIWALIさん
あのエレナとラティナの女バトル…はともかく、やっぱりエレナさん執念と妄執のあまり人が変わってるような(ノ∀`)
エレナにとってみたらクエスト以前に私怨の方が強そう。キャピ子とは、また煽りの上手いラティナさんですね(笑)
一方ラティナはラティナで本名発覚の寸前ですね。彼女が逃げ回る理由ももうひとつありそう。
和の空気は個人的に好きなのでRSにどのようにこれらが絡むのかも楽しみにしています。

>国道310号線さん
うっ、戦闘シーン既に出てましたかorz でもでも、今回の話は前話よりも戦闘シーン多めだと思います!
戦闘シーン、書くのは苦手だけど読むのは好きですよ(*´д`*) って、魔女と戦闘と思ったらなんだか違う展開になってますね(笑)
道中のトパーズが鞠みたいに可愛く(?)吹っ飛ばされつつもグロウの旦那に抱えられてうなだれるシーンとか萌えました。ワンコラブ。
そのトパーズもアルストロメリアたんの前では逆に萌え萌え…なんか敵なのか味方なのかもはや分からなくなってきましたね(ノ∀`*)
銀河の彼方からやってきた魔女っ娘アルストロメリアの実態は…続きお待ちしています。

>ウィーナさん
「四番目」であるみょんちゃんと「十三番目」である月舞…新たな展開になってきたことが分かってきましたね。
戦闘中の意外な邂逅をする二人ですが…壊れてしまった他のドールたちを見るに「四番目」の思惑は謎ですね。戦いは避けられなさそうでもありますが。
そして全てを統括しているであろう組織とは。アルビや部外者たちはキリングドールたちの話にいつ関わってくるのか、非常に楽しみです。
恋愛話の方も気になる(*´д`*) 月舞のロイへの行動もただの遊びというわけではないようですしね!三角関係キタコレ。
---
リク可とか言われたら際限なくリクしまくる性格なので迷惑が掛かりそうですが(笑)
やっぱり主役のアルビを是非描いて欲しいとか思います!時間がある時で結構ですよ(*・ω・)ノ



●○●○●○●○●○●○●○ チャットイベントについて ●○●○●○●○●○●○●
えーっとまた間があいてしまいましたが、チャットイベントどうしましょー?(;・∀・)
私が仕切るのも何様かと思われそうなんですが誰かが何か行動しないととか思いまして。すいません出しゃばって。
前々からうるさく言ってますがRS外、つまりは普通のチャットとかで話ができればいいと思ってます。RSがPCに無い人も多そうですし。
他に思いつかないので普通のレンタルチャットを借りてくるということでよいでしょうか?
日時なんかも決めたいところですが、参加希望者さんが何人くらいいるのかも分からないトコですね。
とりあえず21Rさんと之神さんは参加でしょうか。

880ESCADA a.k.a. DIWALI:2008/04/07(月) 17:11:00 ID:OhTl4zsk0
>68hさん
なんと、チャットイベントやるんですかwww
もちろん参加希望でお願いします、でも予定入ってできない場合は・・・;;;

881白猫:2008/04/07(月) 18:42:05 ID:HRl.XN6k0
ttp://chat.no-cost.no-ip.org/?ajax=&roomkey=nekokaigisitu
チャットならここどうぞ?
私と友人が昔使っていたチャット場なんですが、最近はみんな別のチャット場に避難しているので。
PWはあえて秘密にしておきます。ヒントを出すならば
「私の名前に入ってる動物」です。簡単?知ったことじゃないです。(コラ
私はたいていここに湧きます。たぶん。
とりあえずチャットは私の部屋を使っていただいて問題ありませんよ♪
……え?小説?
も、もうちょっと待ってください…orz

882ウィーナ:2008/04/08(火) 01:29:56 ID:3RWVAaPc0
あれアセアセヽ(;´Д`A・゚・。
投稿したはずのみょんちゃんシーンがないじゃないか・・
な、なんてこったい・。・

てなことで書き直し・・・


-----------------------------------------------------------------

頭上に、少女の輪郭が浮かび上がる。半ば目が眩み、黒い影にしか見えないが──長い頭髪、獣のような耳朶、臀部から生える尻尾だけが辛うじて判別できた。
頭上の影は、口に少女(ドール)を咥えている。さながら獲物を狩った獣のごとく、頸椎に食らいついて口元にぶら下げているのだ。ごきりと不気味な音がして、噛み砕かれた骸が月舞の足元に落ちてくる。
見なくともわかる──影は牙を剥いて擰悪に笑った。

「あぁ──逢えて嬉しいぜ『十二番目』。コソコソコソコソゴミ虫みてぇに逃げ隠れしやがって……いい加減イラついてたとこだった。なァ教えろよ……こんなちッぽけな島国で、アンタいったい何をやって遊んでたんだ?」

低く、粗暴な声には濃密な殺意と、隠しもしない喜悦がある。
視力の回復に努めながら、月舞は微笑をもって応えた。

「色々と、ね。ああ、そうそう……最近は、殿方との恋愛などを。それよりみょんちゃんこそ、味方を皆殺しにするなんて、相変わらずこうなると狂ってるね」

四番目は今度こそ、声を立てて哄笑する。

「はぁン恋愛?アハッ──じゃあ次はオレの相手もしてくれよ。見てのとおり、オレとアンタの勝負を邪魔する糞人形は、纏めて黒コゲにしてやった。──さぁ、始めようぜ。今すぐアンタをブチ貫いて──今度こそ消し炭にしてやんよ」

四番目は空中から跳躍し、平野へと着地した。つまびらかになったその体からは青い粒子が立ち上がっている。彼女は右腕を避雷針のように天高く翳し──武装を召喚した。

「────!!」

雷鳴で召喚音声は聞こえない。四番目の右腕に雷が落ち、武器の輪郭が形成されていく。

「みょんちゃんはいつ見ても派手で──荒々しいね…ッ」

その光景を眼前に、月舞はおもむろに右腕を振った。
瞬間、彼女の右腕に巻き付くように無数の粒子が顕れる。
腕の周りをくるくると高速で回るそれらは、銀色に光り、虚空で舞いだされた粒子が月舞の指先で1個に収斂する。

「おいで──"イクリプス"」

選択された粒子が眩い光を発し、少女の右手で武器の形に変形する。
顕れたのは極大のウィップだった。紫色の燐光を帯びた鞭は、柄を握った手元まで届くほど奇妙な形状に湾曲している。全体に仰々しいオカルティックな装飾が施されており、柄部分を除き色は黒に近い濃紫。

「四番目……みょんちゃんのすべてを溶かしてあげる」

月舞は柄を片手で掴み、左手で振り回す。唸りを上げる鞭から毒の旋風が発生し、周囲の木々を刻みながら腐食させていく。


『十二番目』と『四番目』──二体の殺戮兵器はともに武装を召喚し、戦闘状態に突入した。

883ウィーナ:2008/04/08(火) 01:40:58 ID:3RWVAaPc0
みょんちゃんはLTスフィアの振動により壊れてしまう欠陥品。
なのでいつもは月舞と友達ですが、もう理性を失っている。
さてさて…
この2人のバトルシーンは1回おいときます。
次は…涙を流し走り去ったニナと、その”共振”に気づいた暁の戦い。
ニナの体内に埋め込まれた…"十二番目のLTスフィア"より性能のわかっていないもの…
番号付けすると十三番目のLTスフィア。
1つだけわかっているのは…いまのいままで共振を返さないスフィアだった。
それが月舞によって禁断の箱の鍵は壊されてしまった。
狙われるニナと、月舞の謎…そして何より恋愛物語はどうなるのか!
こうご期待!



コメ返し

>>◇68hJrjtYさん
十二番目ですねっ
暁しゃんの戦い方を考え中…

①ピザパンチ
②鋼鉄の体で防御は最大の武器
③腕から肉まん発射

…どれがいいでしょう?(
まあ無論②でいきますが!(ぁ

絵はーっと…
頑張って描きますwシーフは苦手ですがw(
今度は色付けも挑戦してみますヾ(・ω・。)ノ

884幕間・モンスター外伝:2008/04/08(火) 16:52:49 ID:of5VjV0.0
俺の名はコビー。
古都西の「お花畑」で花の警備を勝手にしている。
たいがいフルボッコにされるがこれだけは絶対止めない。
俺の人生(コボ生?)好きに生きるさ。
--------------------------------------------------------------------------------------------------

今日はあまり人が来ない。
いつもは人が多くなる時間帯なのだが誰もよってこない。
こんな日もあるかと思い、少しのんびりしていると「ようじょ」がやってきた。
「えっ・・・と、花は・・・  あ、あった!」
こいつも花を取りにきたのか、あのおっさん自分に出来ないからって子供に頼んでるのか、それともロリコンか。
そんな事を思いながらも「ようじょ」に近づき攻撃を仕掛ける。
「痛っ、痛いって!」
虫歯になりそうな勢いで飴を食べながら怒鳴り始めた、回復の仕方は知っているようだ。
「むかつくぅ…。でもなんとなく気に入ったからクエのついでにテイムしちゃお」
テイム?なんだそれは?
疑問に思いつつ攻撃を続けると「ようじょ」も俺を笛で叩き始めた。
正直あまり痛くない。まあこんなものか…
「!?」
何が起こったのかわからなかった。
急に頭の中がかき乱された。
「ほぉ〜ら、段々あたしに従いたくなる〜♪」
何をいっているのか分からない。意識が定まらない。
そしていつのまにか俺は「ようじょ」のペットになるという契約書にはんこを押していた。






連帯保証人がなぜか「ベンテルカンプ」だった。

--------------------------------------------------------------------------------------------------
そして俺は「ようじょ」についていくことになった。
「ようじょ」はテイマーと呼ばれる職業で、俺にしたようにモンスターを従えて戦うらしい。
俺は花が気がかりで、テイマーの隙を見て花畑を見に行くとなぜか俺がもう一人いた。
その事をテイマーに聞くと
「あれは過去の貴方を具現化したもので、あの状態なら殺されてもしばらくするとまた地面から沸いて出てくるのよ」
と、いうことらしい。正直さっぱりだ。
「でね、あの具現化したやつでもテイムすれば実体になって本物と同じように成長する事ができるようになるの」
もう何がなんだかさっぱりだ。ようするに影武者なんだと無理やり納得する。
「でもね、そんな風に実体化したモンスターはテイマーと別れるとこの世から消えちゃうの。【本】って言う形にはなれるけどそれも似たようなものなんだよ」
もっとよく分からなくなってきた。日本語でおk
「さ、おしゃべりはこのくらいにして冒険にいこっか」
そして、俺はお花畑に別れを告げた。









テイマーがベンデルカンプのクエを終わらせ、報告しに行くたびに戻ってきていたが。

885幕間・モンスター外伝:2008/04/08(火) 17:05:02 ID:of5VjV0.0
そうして俺はいろんな場所をテイマーといっしょに冒険した。
他のテイマーはペットたちとも同じPTになり、一緒にモンスターを殺してまわった。
昔はこのことに嫌悪感を抱いていたが今ではもう何も感じない。
俺以外のコボルトもそんな感じだった。
というかペットになったコボルトたちはみんなほぼまったく同じだった。








ただ一つ、俺以外のコボルトはみんな病み上がりだった。

--------------------------------------------------------------------------------------------------

テイマーはいろんなことを笛で解決しようとするらしい。
敵を攻撃する事以外にも、
攻撃するよう命令を出すときにも笛を使う
俺の能力をあげるときにも笛の音を使う(そんな事で強くなる自分が信じられない)
極めつけは笛の音だけで召還術まで使いだす。
正直、いっつも耳障りだ。
--------------------------------------------------------------------------------------------------
どうやらテイマーは新しい技を覚えたようだ。
「よし、コボちゃん!特技をつかうんだ!」
特技命令と言うらしい。だが俺には特技なんてものは無い。
しばらく悩んだ後、俺は槍の先から花を出したり口から大量にトランプを出したりしてみた。

使うたびに敵からの攻撃を受ける。そんなに下手じゃ無いはずだが…

886幕間・モンスター外伝:2008/04/08(火) 17:24:08 ID:of5VjV0.0
今日から拠点にする町が変わる。
これからは「神聖都市アウグスなんとか」と言うところと狩場を行ったりきたりして経験地とやらを稼ぐそうだ。
さっそくアウグスタを出、狩場へ向かう。

「PTあいてませんか〜?」
テイマーが狩をしているPTの人たちに問いかけている、少しなれなれしい気もするがこいつはいつもこうだ。
「あいてるよ〜!はいってはいって〜!」
相手も少しなれなれしい。まあどうでもいいか。
「よろしく〜」
「よろ〜」
「よろしくね〜」
テイマーが挨拶をして狩りに加わる。
今日から俺はこのヴァンパイアをひたすら狩り続ける毎日になるようだ…





「神聖」都市の近くなのになんでヴァンパイアがいるのだろうか・・・とも思ったが言わないでおいた
--------------------------------------------------------------------------------------------------
「やった〜!やっと説得覚えた〜!」
どうやらテイマーが目標にしていた技を覚えたようだ
「おめでと〜」
「おめ〜」
PTメンバーが祝福している。
「ありがと〜!これでボスファミテイムできるよ〜」
ファミリアか。町で見かけたテイマーは大体ファミリアをつれていたしこいつもそいつらと同じ道を歩むようだな・・・


…まて、それなら俺はどうなる?
「じゃあさっそくテイムしてくるね〜」
町で見かけるやつらはファミリアのみを連れていたよな・・・?
「おつかれさまでした〜」

・・・そうか、これで俺は自由になってまた花を守れるんだな。

「コボちゃんもいままでありがとうね〜」

だが、何かが引っかかる。俺は重要な何かを・・・。

「じゃあね、バイバイ^^」

そうだ、思い出した。
たしか『モンスターはテイマーと別れるとこの世から消える』みたいなことを行っていた気がする。
だが俺はその条件に当てはまっていないは

''コボちゃん''ペットと別れました





今日も西口のお花畑ではコボルトがお花を守り続けています。
たとえどんな事になろうともかわりがいくらでもでてきます。

887◇68hJrjtY:2008/04/08(火) 18:52:05 ID:e1pWbA7.0
>白猫さん
おぉ、というわけでさっそくチャット見に行ってみましたー。全然これでオッケーそうじゃないですか!
パスつきっていうのが最高。途中で白猫さんの知り合いの方が乱入なんて事件も期待したり…(え
会場はじゃあここを使わせてもらうということでいいとして、あとは日時ですかねィ。

私個人は後に置いといて、とりあえず他の参加希望者さんと希望日時なんかを聞いておきたいかもです。
日はともかく時間の方は夜が良さそうな気がしますね。20:00〜くらいが妥当?

>ウィーナさん
なんと…投稿されなかったその1レスにみょんちゃんの変貌振りがこんなに如実に(ノ∀`)
つまりはみょんちゃん、ウルフに変身している状態でもあるわけでしょうか。しかも魔法も使ってるし(怖
なんかみょんちゃんという名前が合わないような気もしてきましたが、どちらが地なんだろう(;・∀・)
えーっと個人的には3が凄く見たいです!肉まんってなんだー(笑)
絵は。色つけてくれるなんて嬉しすぎ。でもシフってほとんど白黒ですけどね(苦笑)

>幕間さん
(´;ω;`)ウッ… コボちゃんに幸あれ…。
私もテイマやってたりすると説得までにテイムしてきたモンスター飼育書を銀行で見るたびに悲しくなります。
ネクロとかでペット連れている人は少ないとは聞きますが、他の職でもペット欲しいなーとか思うこの頃。ミニペットじゃなくて(苦笑)
倒されたり別れたりしたモンスターがその後どうなるかという盲点を突いた小説でもありましたね。
特技命令で手品を披露するコボちゃんは吹きました(笑) 確かに病気コボとか、特技どういうのやってるんでしょうね。
次の作品またお待ちしています。


●○●○●○●○●○●○●○ チャットイベントについて 2 ●○●○●○●○●○●○●
またも仕切ってる68hです。すいません。
白猫さんのお陰で会場の方は確保できたようですが、次は日時の方を決めたいかなとか。
時間はやっぱり皆さん夜の方が良さそうな空気でしょうか?20:00〜くらいでしょうかね。
参加希望の方はその旨と、できれば希望日時の方をお書きくださいませ〜。ROM専の方も参加希望でしたらカキコの方お願いします。
とりあえずは5月中ごろまでの中で希望日時を出してくださいということで、お願いします。(o*。_。)o
締め切りはある程度出揃ったくらいまでという事で(笑)

888白猫:2008/04/08(火) 19:18:18 ID:HRl.XN6k0
>◇68hJrjtYさん
希望日時…基本的にいつでもOKです。
たいていの時間(今も)はチャット場にいますし(流石ににらめっこはしてませんが)、
イベント以外のときにも雑談場として使用していただければ幸いです。
職人さんたち読者さんたちに定着したらPWも消すつもりですし笑。

とりあえず参加希望一号いただきます。そしてぞろ目ゲット〜
では失礼します。白猫の提供でお送りしました。


…や、小説ですか? ……いや、進んでることには…(汗

889幕間:2008/04/08(火) 19:39:38 ID:of5VjV0.0
>◇68hJrjtYさん
病気じゃ無いです生意気なやつなんです

参加2号いただいていきますね

>白猫さん
ぞろ目おめw

890幕間:2008/04/08(火) 21:17:53 ID:of5VjV0.0
今ごろ気づいて恥ずかしさで死にそうです

891ウィーナ:2008/04/09(水) 16:37:35 ID:3RWVAaPc0
あー・・
私8時半以降は無理そうです;;
後4月14日くらいから1週間〜2,3週間これないかもしれません・・・
変更できるなら変更してもらいたいです><
個人の勝手ですみません;

892◇68hJrjtY:2008/04/10(木) 18:00:58 ID:4XE5wIjI0
>白猫さん、幕間さん
参加の方了解しました〜。


>ウィーナさん
ふむふむ、時間はともかくとして日の方が難しそうですね…。
ウィーナさんの都合に合わせるとして4/14前にしたいところですが、今のところ参加希望の人もまだ出揃ってないようですし。
個人的にはだいたいの人があいてそうな土曜の夜あたりを狙ってますが、12日にするにはまだちょっと無理がありそうな(汗
曜日関係なしに開催しちゃうっていうのであれば14日前(14日込み)までに希望が出揃えば嬉しいところですね。

時間ですが、これも今後の皆さんの希望次第となってしまいそうですが…。
18:00、19:00くらいだとまだ夕飯だったりする家もあるのかな(笑) 希望出次第少しずつ調整したいと思いますー。
最悪5月になっても大丈夫かなぁ。

893姫々:2008/04/11(金) 01:05:46 ID:VbnAj5DM0
――あった‥‥
 捜し求めていた物、無くしてしまったと思っていたそれはすぐ私の前にあったのだ。
大切と思った事は無かったわけではない、ただ手元にある内は大切という事に気づかない
のだ。
 何故ならそれは振り向けばあっさり自分のものだと認識する事が出切る場所にあり(ry

ごめんなさい凄く調子に乗りました。久し振りなので許してください。
あ、ダメですか、そんな事言わないで。
 こんばんは、姫々です。物凄く久し振りです、大学入試終わりました。
一応大学生です、てな訳で置き去りにしてた小説を書こうかなと思って
帰ってきました。個人的に楽しみつつ書いているので自己満足感が強いですが
読んでくれる人がいたら嬉しいなー‥‥(´ー)
 まあちょっとずつ書いていくので気が向いたら「姫々」で検索してあげてください
 いきなり途中からなので流れが分からない人多数と思いますけど許してくださいね。
 では、長々と書きましたが今日は挨拶だけです。姫々でした、今後ともよろしくお願いします><

894◇68hJrjtY:2008/04/11(金) 16:30:21 ID:B8uInjT.0
>姫々さん
おおっ、お帰りなさいましー!大学入試の方お疲れ様です。そして合格したんですね、おめでとう!
当然小説、楽しみにしていますよ。ルゥとリリィの二人とその精霊や仲間たちの波乱万丈ストーリー(笑)
新生活中(?)でしょうしゆっくりでも構いません、UPはいつでもお待ちしているので!

ところでちょっと↑を見てもらうと分かると思いますが、21Rさん提案でチャットイベントを企画してます。
タイミングも抜群ですし(笑)、是非とも姫々さんにも参加してもらいたいとか思ってます。
もちろん姫々さんに限らずまだチャットイベントの存在を知らないここの住人様各位も参加してもらいたいです。
現在のトコ、希望日時を聞いてる段階です。既に出た希望に則ると5月中ごろになりそうです。5月3週目くらいかな。

895ワイト:2008/04/11(金) 21:25:27 ID:Fpnpd7mw0
前小説6冊目>>27⇒6冊目>>83⇒6冊目>>84⇒6冊目>>134⇒6冊目>>154⇒6冊目>>162⇒6冊目>>163
⇒6冊目>>191⇒6冊目>>216⇒6冊目>>267⇒6冊目>>285⇒6冊目>>306⇒6冊目>>308⇒6冊目>>309⇒続き

オアシス都市アリアン…通称アリアンは古都ブルネンシュティグを超える程、産業が発展している都市の一つである。
情報収集又は狩りやクエストにおいて取得するアイテムを売買する等、中級者以上の冒険者には最適な都市と言える。
そしてラータとヒースは数々の苦難を乗り越えて、ようやくオアシス都市アリアンに辿り着いたのだ。

「ふぅ…やっと此処まで来たな!一応無事に辿り着いたよ…な?ヒース」
「そうだねぇ…無事と言えば無事かなぁ?終わって振り返ると微妙な感じだけど…」
「んじゃ、早速俺の右腕を治療してくれる奴がいるのか、それについて聞いて回ろうぜ!」
「情報収集するなら、二人に別れて聞き込みした方が効率考えると…良いと思うよ?それと
意外にアリアンは広い都市だから、一人一人に聞いてたら時間消費するだけだし、考えて行動しないと…」
「そうだな…それじゃ此処に3時間後に集合するってことでどうだ?(ヒース…正直聞き取れなかったぞ)」
「判ったよ!じゃ…一時解散!(ラータの事だし、どうせ何も聞けず仕舞いに終わると思うけど…)」

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「よし…やっぱ、情報収集と言えば酒場に行くってのが普通常識だよなぁ…?行ってみるか!」
カランカランカラン……
考えるのをやめ、酒場を訪れるラータ。何故か主人の立つカウンター前に座り始める。
見たところ客で賑わっているように見えるが、密かにラータを盗み見る客も少なくは無い。

「お客さん、何にします?」
「いや、酒は今いいからよ…ちょっと訊きたい事がある。」「私が答えられる範囲でお願いしますよ。」
「見ての通りだが、俺の右腕が無いだろ?理由は聞かないで欲しい。んで…右腕を治療して元に戻せる…
そういうことが、出来る奴を聞いたことないか?知ってたら教えて欲しいんだけどよ…」
「腕を治療する…お客さんが何らかの理由によって、切り落とされている右腕を元に
治療する事が出来る人物…うぅむ…!すいません…聞いたことが無いですねぇ…」
「そうか…すまねぇな!ありがとよ!他を当たってみるぜ…また来るかもだけど。」

「また来る…そうですね。おい…お前ら全員この男を逃がすな…!」
ガタッ!ダンッ!ガタッ!主人の合図で、腰を掛けていた客達が突然立ち上がる!!
勿論出入り口は封鎖。酒場に居た半数以上の客が、ラータ一人を囲み始めた!!
瞬く間に状況は一変する。そして、突如合図を出した主人がラータに口を開いた。

「いやぁ…貴方がラータとなれば、逃がす訳には行かないんですよ!こちら側の情報によると
ウェアゴート…そしてヘルアサシンを倒したんでしょう?だからこそ、此処は譲れ無いんですよ。」
「おい…何故そいつ等を俺が、倒した事を知ってるんだ?まぁいいがな…どちらにせよ、俺の方こそ、
てめぇを此処で逃がす訳には行かなくなってきたぜ!!(しかし数は圧倒的に不利だけどな…)」

896ワイト:2008/04/11(金) 21:42:49 ID:Fpnpd7mw0
長い間続きを考えていませんでした…正直忘れられたと思いますが、久し振りに
書き込んで見ました。皆様に楽しんで貰えれば、こちら側としても嬉しい限りです。
そして、気付いてみると既に900近い書き込み数…(正直進み過ぎて焦ってます(TдT)やばいぞ!)
一番驚いたのは姫々様の復帰!実は昔から楽しみにしていました…!書き込みお待ちしています!
感想を述べることは出来ないですが、皆様今後とも宜しくお願い致します。それでは|ω・)また!

897復讐の女神:2008/04/12(土) 04:35:29 ID:3AwO8dlk0
 依頼解決後、ジェシたち一行は古都ブルネンシュティングに帰ってきていた。
 テルもブルネンシュティングへと向かうということだったので、フェリルの申し出で一緒にきている。
「いやー、お疲れ様! あなた達の冒険成功に祝福を!」
 テルに宿を紹介すると、そのあしで祝宴を開始した。
 もっとも、祝宴を提案したのはテルだったのだが。
「はいはい、わかったわよ、ありがとう。テル、あなた顔が真っ赤よ」
 そして、そんな状況につかれきっていたジェシがいた。
 普段一人旅が多いせいか、こういうノリについていけないのだ。
 もっとも、原因はそれだけじゃない。
「うむうむ、ジェシと飲む酒は格別だ! おぉ、我が愛しのジェシ! 君への愛に乾杯!」
 安酒に悪酔いしたボイルが、いつも以上のテンションでジェシに絡んできていたのだ。
 フェリルに助けを求めたいところだが、ニコニコと幸せそうに酒を飲む姿を見ると、そんなことできない。
「ちょっとボイル、肩に腕を回さないでよ!」
 ジェシも相当に酔ってきているのだろう、手加減を忘れたこぶしを振り回したら子気味良い快音が鳴った。
 何に当たったのか見てみると、机につっぷして気持ちよさそうに寝ているボイルがいる。
 頭に大きなたんこぶを作っているところをみると、どうやらボイルに当たったようだ。
「あはははは! ボイルさん、なっさけなーい」
 テルはどこまでもおかしそうに笑っている。
「ねえテル、あなたってロマ出身よね。あの火精霊の山を抜けてきたの?」
 何かごまかすべきかと迷ったジェシは、そんな質問を投げかけていた。
「うん、そうだよ。いやー、あの山にはまいったわ。なにせ、どこから炎が飛んでくるかわからないんだもん」
 ロマとは、古都より東にある火精霊の山のふもとにある小さな村の名前だ。
 あらゆる生き物を使役する術を伝える一族であり、精霊たちとも密接なつながりを持っている。
 噂では、ロマの村長は精霊の王と契約を交わしているとか、村の中に精霊界につながる扉があるとか。
「でも、よく私がロマの生まれだって気づいたね。いま時ビーストテイムなんて、どこでも教えてるでしょ」
 テルの言うとおり、この古都でもビーストテイムの方法は教えている。
 全ての者がなれるわけではないが、ロマ出身者以外でも、ビーストテイマーにはなれるのだ。
「あなたの笛よ。その紋章は昔に見たことがあるわ。ロマ出身者が持つ笛には、特殊な刻印がなされてるのよね」
「あぁ、これ? 一応外来の人向けにも売ってるんだけどね…なにぶん、あそこまで来る人が少ないから」
 テルが取り出した笛には、やはりジェシの記憶にあるものと似た紋章が刻まれていた。
「んふふー、かっこいいでしょ」
 得意げに笛を振り回したかと思うと、口に当てた笛から陽気な音楽が流れ始める。
 日が沈み酒場として盛り上がってきていたため、店中からテルに注目が集まり始める。
 笛の音にあわせる様に手拍子が鳴り、即興の歌がつむがれた。
 店員の視線が痛いが、ジェシには愛想笑いを返すしかない。
「どもどもー!」
 1曲吹き終えて満足したのか、演奏をやめたテルには完成と拍手が送られた。
 中には吟遊詩人と勘違いしたのか、おひねりを飛ばすものもいた。
「やっぱり都会はいいね、ノリからして違う。お酒の席はこうでなくちゃ」
 興奮冷めやらぬテルは、酒をおいしそうに飲み干す。
「ところでさ、あなたたちってパーティーなの? 私、色々と旅をしてるけど、あなた達のように理想的なパーティーはなかなか
 お目にかかれないわ! 攻撃役がいて、補助役がいて、回復役がいて。少なくともこの街では、なかなか名前の知れているでしょうね」
「我が愛しのジェシなら話は別だが、私達はそうでもない」
 突然ガバッと起き上がったボイル。
 予想していなかった場所からの発言に、さすがに驚きを隠せないテル。
 ジェシやフェリルはこういった奇行に慣れているので、特に驚きはしない。

898復讐の女神:2008/04/12(土) 04:37:16 ID:3AwO8dlk0
「聞いてくれたまえテルさん。私のジェシは、それはすばらしい槍の使い手でね、強さの中に美しさがあるのgげふっ……?!」
「あんたは沈んでなさい」
 おきて早々テンションの高いボイルを叩いて黙らせたジェシは、ジョッキの酒を一気に飲み干した。
 清涼感や味わいなどは期待できないが、安っぽさが酔いやすくさせてくれることで人気な酒だ。
 ウェイターに酒の追加を注文して落ち着いたジェシを、テルは不思議そうに見ていた。
「あなた達、不思議な関係ね。恋人なのかと思ってたけど、どうも違うみたいだし。ま、私は楽しければいいけどね」
 笑みの中にからかうような部分を見つけ、ジェシは居心地が悪くなった。
「………そうそう、古都に用事って、何かしら? 私に案内できそうなら、協力するわよ。ボイルもこの街ではなかなか大きな家に
住んでるから役に立つと思うし」
 ジェシとしてはほんの軽い気持ちと、依頼のときに生じた借りを返したいという気持ちが働いた言葉だった。
 テルは深く考えていない様子だが、ジェシとしては仕事の途中で生じた障害を手助けしてくれたというのは大きな借りだ。
 テルが報酬をまったく受け取っていなかったのも、ジェシの借りを助長している。
「ん〜とね、そうだね、じゃあ仕事探し手伝ってくれる? お金がなくちゃなーんにもできないし、旅のせいで路銀も心配になってきてるし」
 悪いモンスター退治がいいという言葉を受けて、ジェシはお酒の回っている頭で考えてみた。
 古都は様々な人間が集っている街だから、当然仕事も多い。
 モンスター絡みの依頼で多いのは、やはり…。
「悪いかどうかは別にして、モンスター関連なら採集が一番多いわ。この街ではモンスターを研究したり、その一部から武器防具を作る
職人もいるから、常に不足状態。報酬はまちまちだけど、装備品をくれるものもあるわ」
 初心者冒険者にありがちなことだが、報酬は現金がいいとは必ずしも言い切れない。報酬として受け取れるアイテムの中には、魔力を
帯びた貴重なものも数多くあり、たとえ自分で使わないとしても、それをうまく売れば莫大な金が手に入るのだ。
「むむぅ、生体採集か…」
 テルがビーストテイマーということを、ジェシは失念して考えていた。もしかしたらこの手の話は避けたほうが良かったのかもしれない。
ビーストテイマーは、モンスターを家族や友人として見ることが多い。それは、多くの冒険者が武器をどんどん乗り換えるのに対し、一生の
相棒として付き合っていくからというのが定説だ。
「じゃあ、手ごろなの紹介してよ。あの子の使用感も試してみたいし」
 しかしジェシの思案は杞憂だったようだ。テルはあっけらかんとして、ジェシにそれでよしと返事をかえしてきた。
「え、ええ。そうね、じゃあ”指輪”を紹介するわ。ただ、彼は今の時間会いに行ってもいないだろうから、明日ね」
「うふふ、明日が楽しみ!」

 気絶から睡眠へと移行したボイルをしりめに盛り上がる二人を、フェリルはただ苦笑して見ていた。
 そのやりとりは、ジェシの母親と出会った頃をフェリルに思い出させたからだ。
(おそらく、この二人は近いうちにパーティを組むのが常になるだろう)
 フェリルはジェシが生まれた頃から知っているが、人見知りをするジェシと会ってすぐに打ち解けた人間は、ボイルの他にはテルしか
いない。もっとも、ボイルの場合は打ち解けたと言うべきか悩むところではあるが。
(本当に、母親に良く似ている)
 酒に酔う前にスキルで浄化してしまうのが常だったフェリルだが、この夜はそれを行わなかった。
 それは、いつになく感傷にひたってしまったせいなのかもしれない。






…こっそりと登場。
いわゆる幕間というやつですかね?
日時とかがあえば、チャットは参加してみたかったり。
就活中なのでどうなるかはわかりませんががが。
あと、sage忘れごめんなさい。

899名無しさん:2008/04/12(土) 07:00:45 ID:MwyK12TU0
ニートの人が、
RMTをして、
生活しているブログです。

他にもインターネットでの稼ぎ方が
書いてあります。

ちょっとしたことで

課金代ぐらいは、十分まかなえる。

結構、為になるかも。

http://neoneetlife.blog.shinobi.jp/

900之神:2008/04/12(土) 07:24:13 ID:rEtmRg9E0
おはこんばんちわー、之神です。

絵が書き終わりました、今朝w

なのでどっかしらに、うpをしたいなーと…。
うp場所決まりましたら、ここにURL載せときます。

あと、チャットイベントですが。
私は日にちはいつでもおkです…たぶん。
昼間とか朝はちょっと居ないですねー、なので夕方〜夜がいいかなーと。

んじゃ68hさんに司会進行任せt(ry

引き続き、小説スレをお楽しみ下さい。之神でした。


                                 …900get目的なのは内緒だからねっ!

901ワイト:2008/04/12(土) 11:27:29 ID:Fpnpd7mw0
前小説6冊目>>27⇒6冊目>>83⇒6冊目>>84⇒6冊目>>134⇒6冊目>>154⇒6冊目>>162⇒6冊目>>163⇒6冊目>>191
⇒6冊目>>216⇒6冊目>>267⇒6冊目>>285⇒6冊目>>306⇒6冊目>>308⇒6冊目>>309⇒6冊目>>895⇒続き

「おい…何故そいつ等を俺が、倒した事を知ってるんだ?まぁいいがな…どちらにせよ、俺の方こそ
てめぇを此処で逃がす訳には行かなくなってきたぜ!!(しかし数は圧倒的に不利だけどな…)」
「逃げれないのはむしろ貴方の方なのに…この酒場は現実の建造物に見えますかぁ?よぉく見て下さい。
この空間は私が作りだした仮初の幻…そう、既に貴方は私の術中に囚われているですよ…?」

「ハハッハハッハハッハ!」「ヒャヒャハッハハッハ!」「ヒャーヒャヒャハハハッ!!」
ラータを囲む大勢の客達が、気味の悪い高笑いを始めた。しかし…攻撃する仕草は見せない。

「何を…!やめろ!!ダーティフィーバーッ!!!」
無意識に周囲を囲む客達に向け、ダートを全方位に放つ!!
ズッ!ドッドドドドドッドッ!ドシュッッ!!!

「でぇ〜?今の何かな?」「ハッ!ハハハ!お前弱い?」「それじゃ効かないなぁ…!」
「な…何だと!?てめぇ等一体…(何かが違うのは判ってる…は!こいつ等もしかして…!)」
手応えは有った…見た限り、周囲に投げたダートは全て命中しているのに…!
ダーティフィーバーを食らった客全員が、皆余裕の表情。それでいてラータを挑発している状況。

パンッ!パンッ!この状況を気に掛けた主人が、ラータをよそに大きく手を二度叩いた。
「いやぁ…面白く無いですねぇ…!考え無しに、私の手下共を倒せる訳が無い。
物理的な攻撃は一切効果無いですよ?もっと考えて見て下さいよ…ラータ?」

「あぁ…大体分かったぜ!俺のダートを食らっているのに、平然と立ち尽くしているのが
そもそも可笑しいんだよな。だからこの幻術を叩くには…本体を殺る以外無いんだろう?」
「その考えを実践に移して見なければ、到底答えには辿り着けないと思いますが…?更に!
私の術は全て幻では無い。一部は仮初の姿…!そう、勿論…此処にいる客全員!本物ですよ!!!」

「それ言っちゃって良いのぉ?」「言ったって事は殺しても…」「要するにラータには死んで貰うから!」
繋げる様に客達は言葉を並べ始めた。そして、そう言い始めたのも束の間。高笑いしていた客。挑発していた客。
ラータの周りを囲み逃げ場を無くした客。人間の姿を形取っていた、客の姿は皆モンスターに豹変する…!

「!!そう言う事か…!流石に全員モンスターなのは予想外に程が有ったぜ…!」
「驚きですよねぇ…?何故なら私の手下全員、正体は死の騎士…デスナイト!!!」
「言っちゃったねぇ!」「ラアァタァァ…殺す」「カッ!カッカカッカカッカッ!!」
「只の雑魚じゃ無いのかよ…こりゃちょっと殺るのに手間ぁ…掛りそうだぜ。」

一旦中断(TωT)また何時か書き込みをする予定です。それでは|ω・)また!

902◇68hJrjtY:2008/04/12(土) 16:31:15 ID:HLbStRc.0
>ワイトさん
姫々さんに続いてワイトさんも執筆続行、ありがとうございます!
さて、アリアンに辿り着いた二人ですが…またもラータが狙われの身に(ノ∀`)
でも確かに腕をなくしているということがバレた以上、ラータは元々狙われていたらしいですし当然でしょうか…それにしても怖い。
前回のヘルアサシンのようにこのマスターもなにやら不思議な空間使いですね。
ウェアゴートは別としてもこの能力、敵さんに共通してるのは何かあるんでしょうか。うーむ。
続きお待ちしています。

>復讐の女神さん
お久しぶりです〜。ジェシたちもようやっと古都で落ち着いたようですね(笑)
さっぱりしているテルに萌えです。こういう性格だからジェシもフェリルが思うようにすぐ打ち解けられたのかもですね。
でもジェシとボイルの仲はほんとに気になる(笑) この二人のやり合いも話を面白くしてくれているのですが。
そしてお金稼ぎ。確かに収集品を持ってこいってクエ依頼者さん多いですよね。指輪のクエストというとやっぱりアレですか!
のんびりした冒険風景は大好きです。続きお待ちしています。
---
おっ、チャットイベント参加ですか!
まだまだ日時の方が確定してきてないのでアレですが、是非ともお待ちしています。まだちょっと先になりそうですけども。

>之神さん
900ゲットおめでとう(笑)
そして絵、完成ですか!お疲れ様です。なんだか無理言って描いてもらったようですいませんorz
UP場所ですか…色々場所はありそうですが、之神さんのURL待ちということで、お待ちしてます〜。
司会進行ですかΣ(゚口゚ そういうのやった事一回も無いですよ! というわけで之神さん助けてください(苦笑)
私も午前中や午後早くはちょっと長時間とかは無理そうなのでなんとか頑張って夜にしましょう(笑)

903名無しさん:2008/04/13(日) 02:16:00 ID:P9Gk3L/o0
age

904名無しさん:2008/04/13(日) 02:16:42 ID:b0s8qDMI0
なんだこのオナニースレ

905名無しさん:2008/04/13(日) 02:25:00 ID:NVyftFbU0
誇りが後悔に変わる日


『DEAD STONE』配信終了メンテナンスのお知らせ

『DEAD STONE』では以下の日程で全鯖閉鎖のメンテナンスを行います。

■日時
2008年x月xx日x曜日 10:30 〜 14:00

■内容
サーバー終了
ネットワーク切断

■注意事項
終了メンテナンスは規約内容により、全鯖無期限閉鎖・購入済GEM有効期限切
となります。補償は一切○ございません。
こちらで告知を行いますので、必ずご覧ください。
引き続きDEADSTONE2の世界をお楽しみ下さい。
(※DEADSTONE2は現在無期限開発中断しています)


2008年b月bb日(x)
2008年x月xx日(x)更新 『DEAD STONE』運営チーム

906名無しさん:2008/04/13(日) 06:04:34 ID:OFCIj8vg0
きもちわるいスレですね

907之神:2008/04/13(日) 17:06:44 ID:rEtmRg9E0
お待たせしましたーっ!

一つずつですが、ここでキャラクターの絵を参考にうpしておきます。

徹→ttp://www7.axfc.net/uploader/90/so/Img_10452.jpg.html
ミカ→ttp://www7.axfc.net/uploader/90/so/Img_10453.jpg.html
ライト→ttp://www7.axfc.net/uploader/90/so/Img_10454.jpg.html
シルヴィー→ttp://www7.axfc.net/uploader/90/so/Img_10455.jpg.html
シリウス→ttp://www7.axfc.net/uploader/90/so/Img_10456.jpg.html
ナザルド→ttp://www7.axfc.net/uploader/90/so/Img_10457.jpg.html
フィアレス→ttp://www7.axfc.net/uploader/90/so/Img_10458.jpg.html
アルシェ→ttp://www7.axfc.net/uploader/90/so/Img_10459.jpg.html
エトナ→ttp://www7.axfc.net/uploader/90/so/Img_10460.jpg.html


それぞれ文頭に半角hを…。
このURLはダウンロード画面に進むようになってます、一応…仕様ですw
これはまだペン入れ段階なので、色をつけるとなるとまだまだ後になりますが…。

もしこれを転載しようものなら……んー、青鯖で戦士が斬りかかってきます…!

これで少しでも小説が読みやすくなれば…。
では引き続き、小説スレをお楽しみください。

之神、絵でした。

908◇68hJrjtY:2008/04/13(日) 18:10:34 ID:HLbStRc.0
>之神さん
キ、キタ━━━(゚ロ゚*(゚ロ゚*(゚ロ゚*(゚ロ゚*(゚ロ゚*(゚ロ゚*(゚ロ゚*(゚ロ゚*(゚ロ゚*)━━━!!!
うはー凄いですねー、もしかして元絵描きさんだったりするんでしょうか?
なんか色々仕上げして一枚絵として完成してもらいたいとか之神さんの忙しさを無視して思ってしまいます(ノ∀`*)
徹はカッコイイし、他の面々もRSキャラなのにしっかりどっぷり現実世界服が似合いすぎ。ミカとライトなんかホントに溶け込んでる(笑)
シルヴィーはでもニーソの部分とかは黒テイマ服のだし、上半身のヒラヒラ服もカワエエ…。フィアレスはもう萌え萌え幼女ですね。
シリウスさんあんな知的美形で変態行為はある意味もったいないぞー!ナザ君もヘソ出してそうで出してないのがエロい!(違
まだ実態不明のアルシェとエトナ絵まで。アルシェさん黒眼鏡もイイけど顔の刺青もイイ。
いやはや、堪能させていただきました…もちろん個人的にDLさせてもらいました!転載なんかしませんしする場所も無いので斬らないでください(笑)

909ウィーナ:2008/04/14(月) 00:50:57 ID:3RWVAaPc0
あ、
チャットイベントに関してですが。
もうちょっと大丈夫になりました^^
エーっと、いつになるのかわからないですが、ネット回線をつなぎなおすので
できる限り参加しますー


ルチノとアルビノのイラスト、授業中にかきかきしました。
今度すきゃなってうpしますーね

910国道310号線:2008/04/14(月) 02:12:14 ID:Wq6z33060
第一話 〜 ミニペットがやってきた! 〜

前編 >>487-490 後編 >>563-569

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第二話 〜 狼男と魔女(4)〜

>>784-787 2 >>817-820 3 >>871-874


前回のあらすじ: なんと魔女の正体は電波女だった

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―再び4日前 アラク湖付近

ベアを倒した後、捕まえたウサギが暴れ喋ったのに驚いていると、ウサギから爆発音と煙があがる。
その煙がはれると、そこにいたのはまだ幼い少女だった。
栗色のショートヘアに青い瞳。
オレンジと黄色のプリンセスドレスに頭には黄色の羽を挿していた。
少女はその場にちょこんと座るとトパーズを見上げる。
白いウサギは彼女が変身した姿だったのか、危うく晩飯にしてしまうところだった。
彼は内心ドキマギしながら彼女を見る。
「あの、助けてくれてありがとう。」
少女は彼の手を取った。
「お礼に貴方の願いを叶えてあげます!」
そう懸命に話す少女に目線を合わせるように片膝をつくとトパーズはフッとかぶりをきった。
「悪いが、俺は14歳以下は守備範囲外なんだ…。」
深い溜め息をつく彼に少女は瞳を瞬かせる。
彼は彼女の手を振りほどくと、彼女の足の怪我に処置を施す。
「ママが心配しているぜ。 一人で帰れるか?」
まともに取り合おうとしないトパーズに少女は声を荒げる。
「本当に願いを叶えてあげます!」
「分かったから早くお家に帰ろうな。」
尚も相手にしない彼にムッとした表情をすると、少女はポーチから小さい棒を取り出した。
棒は一振りすると先端に赤い宝珠と翼が付いたステッキに変化する。
「仕方ありません、貴方には私の本当の姿を見せてあげます。」

彼女はすくっと立ち上がると、足の怪我もなんのその、クルクルとステッキを回しながら踊りだす。
すると、ステッキから眩い光が溢れ彼の視界を奪った。
「うおっまぶしっ!」
閃光にトパーズは腕で目を隠す。
「マジカル・プリンセスパワー・アストラル・アーップ!!」
少女の掛け声と共に、どこからともなくマーチが流れてくる。
光に包まれた彼女は見る見るうちに、その姿を変えてゆく。
幼い身体は五歳ほど成長し、胸は膨らみウエストが括れる。
短かった髪は長く伸び、着ていたドレスは露出度の高いフリル付きのエプロンドレスになった。
「銀河の彼方から(以下略)、アルストロメリア!」
ビシリとポーズを決める少女。
「おおーー!!」
先程の態度とは一遍して、トパーズは歓声を上げた。
そこに立っていたのは彼のストライクゾーンの少女だったのだ。
青い瞳はそのままだが、その他は全くの別人に変身しており、本人が同一人物だと言っても信じる者は少ないだろう。
「どうです、信じてくれますか?」
「するする! しまくりまくります!」
しっぽを振らんばかりの彼の喜びように、すっかり気を良くしたアルストロメリアは再度催促した。
「さぁ、貴方の願いは何ですか?」
「そんな事、決まっているさ。」
彼は彼女の手を握ると、何の迷いもない瞳を彼女に向ける。
「俺を君に相応しい狼にしてくれ。 君のためならどんなに強い魔物も打ち滅ぼし、どんな愛くるしいペットにも身を堕とそう。」
歯の浮くような告白とも取れる台詞にアルストロメリアは感動し瞳を潤ませる。
「狼さん…」
手を取り見つめ合う二人。
二人の間にはキラキラとした空間が出来上がっていた。

911国道310号線:2008/04/14(月) 02:13:12 ID:Wq6z33060
「分かりました! 魔法美少女に相応しい狼になりたいですね!」
彼女はキラリと瞳を輝かせると、呪文の詠唱をした。
「アストロ・メリリン・メルメリリ・リン!」
ステッキをバトンのようにくるくる回し、トパーズに向けて振るう。
光の粉がステッキの宝珠から零れ落ち、彼を包み込むこむとその身体を黄金色に輝かせた。
ポンと爆発音と同時に発生した煙に彼は飲み込まれる。
「何だぁ?!」
彼は身に起こった異変にすぐさま気がついた。
いつもに比べてやけに視界が低い。
急いで彼は自分の身体を確認した。
こげ茶色の毛並みはそのままだが、完全に四つんばいになっている。
腕はか弱く、自慢の爪も毛に隠れてしまって見えない。
さっきまで屈強なウルフマンだった彼の身体は、いたいけな小犬になっていた。
「古今東西、魔法美少女のパートナーは小動物と決まってます!」
満足げに小犬を見下ろすアルストロメリア。
確かに宅急便をしている魔女やプリティでキュアキュアな魔法少女達はネコやら謎の小さい生物を連れている。
しかし、自分は魔法美少女の相方ではなく、アルストロメリアの狼(男)になりたいと望んだのだ。
彼女は多大な勘違いをしている。
「では、さようなら狼さん。 貴方の願いは叶えました!」
「あぁっ、ちょっと待って、メリアちゃん!」
立ち去ろうとする彼女をトパーズは引き止めた。
何としても彼女に真意を伝えなければならない。
「いけません、私は私の助けを求めている人の所に急がないとダメなんです。」
トパーズの静止を振り切り、彼女はステッキを掲げ身体を回転させるとポンと煙と共に忽然と消えてしまった。
鬱蒼たる森の中にトパーズは一人取り残される。
「マジっすか…」
途方にくれた彼は暫くその場から動くことが出来なかった。


「…つまり、あんたがややこしい事を言ったから悪いんじゃないの。」
事の全容をアルストロメリアとトパーズから聞き終ったテラコッタは早々に突っ込みを入れた。
一同は冷ややかな視線をトパーズに送る。
「自業自得ですよ。 しかも何が恐ろしい魔女ですか。」
「俺は嘘を言っていないぜ。」
エムロードの言葉に開き直るトパーズ。
「一番大事な所を端折って話すあたり、より性質が悪いです。」
丁寧な言葉とは裏腹にエムロードは再びトパーズを締め上げる。
「えええ〜、この姿は気に入りませんでしたかぁ?」
一連のやり取りを見ていたアルストロメリアは涙目になっている。
彼女にとっては善意でやった事なので、彼等の反応は予想外だったのだろう。
「フッ、そんな事無いぜ。」
上手くエムロードの手から逃れてトパーズは彼女の元へ走る。
「言っただろ、君と共に歩めるならどんな姿でもかまわないさ。」
「狼さん…」
彼の言葉に彼女は涙を拭い、膝を着いて彼の小さな手を取った。
アルストロメリアは魔法美少女に対する彼の一途さに心が震えた。
見つめ合う二人の周りだけ、キラキラした空間が広がる。
この二人に振り回されていたかと思うと、あまりに阿呆らしくなってエムロードは溜め息をついた。
「俺さ、いきなり魔物をけしかけて来るから悪いヤツかと思ったけど、相手のことを思いやるいい娘だったんだな。」
うんうんと一人頷くブルーノ。
彼の楽天的さはこういう時に限って羨ましくなる。
小犬の件は下心があったトパーズに非がある。
だが、自分達のためにこの魔物と罠有りの凝ったダンジョンを用意したとなると、それはありがた迷惑というものだ。
「もうトパーズは元の姿に戻れないのか?」
「それが…」
グロウの問いかけにアルストロメリアは眉を下げる。
「私、動物化魔法は苦手で、10日で解けてしまうんですよ。」
「それは残念ですね。」
恥ずかしそうに言う彼女にエムロードは相づちをうった。
この際、彼を一生犬の姿のままにさせようかと思ったが叶いそうに無い。

912国道310号線:2008/04/14(月) 02:13:57 ID:Wq6z33060
「ではっ、私はこれで!」
アルストロメリアはステッキを取り出し立ち去ろうとする。
トパーズは慌てて、彼女に縋りついた。
「そんな! またどこか行っちゃうの〜?!」
「秘密基地を知られたからには、ここにはもう居られません。」
彼女はトパーズを優しく抱き上げた、より近距離で二人の視線が交差する。
「それが… 魔法美少女の宿命なのです。」
そう告げる彼女の瞳にはうっすら涙が溜まっていた。
「メリアちゃん…」
そんな彼女の様子にトパーズは言いどもる。
彼女の真剣な眼差しは魔法美少女への並々ならぬ覚悟の表れに思えた。
「地上へは隣の部屋のポータルで出れます。」
彼女はエムロード達が入った扉とは別の扉を指し示す。
「と言うことは、ここは地下だったのね。」
かねてからの疑問にテラコッタはやっぱりというように納得した。
「ええ、誰も使っていなかった地下道をリフォームしたんです。」
「リフォーム… ですか。」
エムロードは白壁、赤絨毯の装飾過剰な部屋を見渡す。
この地帯はスウェブタワーから大量の魔力が降り注いでいる。
魔力には困らないだろうが、無骨な地下道をよくもここまで貴族風に仕立て上げたものだ。
地下道を作り上げたウィザード達に見せたらどんな顔をするだろうか。
彼は苦虫を噛み潰したような顔をするウィザード達を想像し、吹き出しそうになった。
「みなさん、さようなら!」
アルストロメリアはステッキを掲げると身体を回転させる。
「俺も連れて行ってくれよーーっ!」
トパーズの叫びは虚しく、またしても忽然と彼女は姿を消した。
彼の叫びはエコーとなって、暫くの間部屋に留まった。

ほんの今までアルストロメリアが立っていた場所をトパーズは見つめる。
「フッ、短い恋だったぜ。」
哀愁溢れる表情で彼は天井を仰ぐ。
彼女の笑顔が虚空に見えた気がした。
「なぁ、あいつどうする?」
「樽に詰めて湖に流すというのはどうでしょう。」
「いいわね、それ。」
「樽ならここにあるぞ。」
どこから持ってきたのかグロウは樽を小脇に抱えていた。
満場一致で湖流しの刑を決定させたセレスト・クルセイダーズの面々は、すっかり自分の世界に入り浸っているトパーズににじり寄る。
彼が自分たちに与えた迷惑を考えると、これでも軽いくらいだろう。
背後に不穏な気配を感じたトパーズは引きつった顔をして振り返った。
「待て、お前ら、話せば分かる!」
「問答無用ー!!」
今度はトパーズの断絶魔が地下通路内を響き渡った。

913国道310号線:2008/04/14(月) 02:14:37 ID:Wq6z33060
―翌日 セレスト・クルセイダーズ ギルドホール

ギルドホールに帰って来た一同は、留守番をしていたアッシュに今までの出来事を話していた。
「―という訳でさ、後三日くらいで元の姿見戻れるみたいなんだ。」
ブルーノの身振り手振りを交えながらの冒険談を聞いて、やっぱり行かなくて良かったとアッシュは思った。
結果的に苦労するために行ったようなものではないか。
「それで…、何でアイツがここにいるんだ?」
ラウンジでくつろいでいるトパーズにアッシュは視線を投げかける。
「いいじゃねぇか、後三日くらい。」
彼は我が家のようにソファの上をゴロゴロしていた。
「あの後、アラク湖にトパーズを投げ入れたんだけど、投げた衝撃で樽が大破したの。
 そうしたら、湖の精ってのが現れて『あなたが落としたのは金のトパーズですか? 銀のトパーズですか?』って尋ねてきて、
 ブルーノが正直に『茶色のトパーズだって!』って言っちゃたもんだからトパーズが湖に引きずり込まれそうになっちゃって、
 それで結局助けてきたのよ。」
「なんだそりゃ。」
解せないという感じにアッシュは肩眉を上げた。
湖の精なんて聞いたことが無いが、スマグ周辺は不可解なことが起こるという。
テラコッタの話の真偽は分からない、しかし、この厄介者がギルドホールにいるということは事実だ。
「湖のねーちゃんもべっぴんだったなー。」
思い出し笑いならぬ、思い出しニヤけをするトパーズ。
「元に戻ったらさっさとスマグに帰ってください。」
「兄貴、冷たいぜ。」
依然としてつれない態度のエムロードに彼はブーたれた。

「ただいまー。」
エントランスの扉が開きミモザが帰って来た。
彼女は緑眼をしていて、薄い金髪を胸の辺りまで下ろしている少女である。
羽織っている赤いフード付きのマントは彼女のトレードマークだ。
皆口々に彼女に迎えの挨拶をした。
「お疲れ、今回の狩りは長かったんだね。」
ブルーノは彼女に労いの言葉をかけた。
アッシュの話では、彼等がスマグ周辺へ行っている間もギルドホールには帰ってきていなかったそうだ。
「はい。 でもいっぱい紋章品取れましたよ。」
ミモザは彼に鞄に入れていた昆虫の入っている瓶を見せた。
深緑色の光沢がある昆虫は光を反射して宝石のように輝く。
この虫から取れる色素は上質の塗料になる。
紋章品と呼ばれるいくつかの画材を集め、紋章職人に渡すことでギルドの紋章が作られるのだ。

「あっ、かわいいー、その子どうしたんですか?」
ミモザはソファにいたトパーズを見とめるとぎゅっと抱きしめた。
彼女は彼の守備範囲内だったのか、ニヤけたまま大人しく抱かれている。
「は、離れろミモザ! そいつはただの犬じゃない!」
小犬らしく振舞っている彼の様子にアッシュは激昂した。
「…ただの犬じゃない?」
ミモザは言葉の意味を分かりかねて、きょとんとしている。
やがて、彼女は抱いている小犬をまじまじと見つめた。
「あっ! この子ヘルハウンドなんですね!」
小犬を鑑別した彼女は驚く。

【ヘルハウンド(へるはうんど)】
動物型イヌ系の魔物の中でも最強に名を連ね。火の魔法を操る。
目撃例は少ないが、大変凶暴で危険なイヌ。

「ヘルハウンドといえば、都市伝説があるんです。」
ミモザは人さし指を立てると楽しそうに話す。
「隣のリンケンの宿屋に出没するという小さいヘルハウンドがいて、
 それは歴戦の猛者をも一撃で噛み殺しちゃうくらい強いそうですよ。」
怖ろしいですねー、と言う彼女の表情は笑顔だ。
説明を聞いていた彼等はトパーズに注目した。
そう言えば、アルストロメリアに言ったトパーズの願いは『強くなりたい』とも受け取ることが出来る。
「お前、砂漠のミイラと戦ってこいよ、ダメージカンストするかもしれないぜ。」
ミモザからトパーズを引き剥がすと、アッシュは彼をソファに落とした。
ボスンと音を立て、ソファの上で小さい体は軽く跳ねる。
「恐いからヤダ。」
彼は即答した。
アルストロメリアはその噂を知っていて、彼を小犬のヘルハウンドにしたのか。
真相は魔女のみぞ知る。


おわり

914国道310号線:2008/04/14(月) 02:15:18 ID:Wq6z33060
いくつかの伏線を残しつつ第二話終了です。
前に之神さんが魔女モノの参考に… と仰ってくださりましたが、参考になるか甚だあやしい話です、ハイ。
最近引退ラッシュでしたが、復活された書き手さんが多くてテンション高くなってしまいます。


以下コメ返しのみですが失礼します。

>ウィーナさん
流れが速いスレなので私も追いつくの大変です。
私の文は… 暇な時にでも流し読みしていただいて全然かまいません。(笑

>68hさん
ワンコラブ仲間発見。(笑
ついつい好きなキャラはいっぱい活躍させたくなるので、自重しないといけませんね。
今回の反省点はそこだったりします。

915◇68hJrjtY:2008/04/14(月) 17:20:10 ID:B8vKyaZk0
>ウィーナさん
おっ?日にち調節できそうですか?
でもまだ提案者の21Rさんも見えてないですしやっぱりまだ決まらなさそうかなぁ…。
それとも先に日時を指定してその日に問答無用で開催ってパターンの方が良いのかもしれませんね。
まあ、ウィーナさんはまだ少し平気とのことですし、今週いっぱいは希望を聞くということでいいでしょうか。
来週の月曜になったら全員の希望が出ていなくても既に出た希望の中で日時決定しちゃいましょー。
(こんなやり方でいいんだろうか(;´Д`A )

>国道310号線さん
やっぱり国道さんの小説は戦闘よりもその他のシーンに見どころあり、ですね〜。
アルストロメリアのメルヘン気質(?)やそれに魅了されまくりのトパーズという二人の世界が何もかもを塗りつぶすというか…。
呆れるテラコッタたちの中で唯一のん気で天然なセリフをかましてくれるブルーノがやっぱり好きですが(笑)
魔女モノという意味であればこれは面白いと思いますよ。リトルウィッチはどうも性格や言動が連想しにくいのですが、こういうキャラなら納得できます。
なんだか自然と次回の事件は何だろう、と思ってしまいます(笑) ということで、次回も楽しみにしています!
---
好きな職は本当に出しまくっちゃいますよねー。本当にそれは同意。
やったことのない職を書くとその半分は想像や妄想やイマジネーションで書いてしまうので十中八九本物と異なったりとかザラ(笑)
そして後になって読み返して悶絶死する、という…orz

916ESCADA a.k.a. DIWALI:2008/04/15(火) 13:14:39 ID:OhTl4zsk0
前回からの続きですよ〜

「…天使のおっさん、俺はまた…一からやり直すことができるんだよな?」「おうよ、その気がありゃぁできるってもんよ?」
朝日が差し込む、廃墟と化したエルフの集落。ミゲルは恋人のニーナを抱きしめながら、己の罪を悔いていた・・・。
いくら瀕死だったニーナを救うためとはいえ、これまで彼は多くの命を奪ってきた。その類稀な殺しの腕を以ってして・・・
「・・・何が、何がやり直せるかだと!?フザけんじゃねぇぞ、この悪党っ!!」「クレイグっ!!目が覚めたか・・・」
意識を取り戻していたクレイグがミゲルに突っかかった。エルフの村を壊滅状態に追い込んだミゲルに、怒りの篭った視線をぶつける。
「村を…花を…エルフの皆をっ……!!俺はっ・・・俺はザッカルの部下だったあんたを許さねぇからなっ!!!!!」
「待ってくれ、エルフの戦士。俺は襲撃はしたが住民の息の根は止めていない!気絶してもらっただけなんだ・・・」
「何が気絶させただけなんだよっ!!?!じゃぁそいつらはどこに行ったってぇんだよ!?!教えてくれよ!!?」
感情が昂ぶったクレイグはミゲルの胸倉を荒く掴んで問いただす・・・だが、森の中から聞こえてきた声に彼は驚かざるを得なかった。
「人間の皆さんっ!!クレイグっ!!無事か!!?!」エルフの長老、エドワードが声を張り上げてこちらへと向かってくるのが見えた。
彼に続いて非難した一般の住民や、エルフ戦士の面々も姿を現した。誰一人姿の見当たらないものはいない、全員無事らしい。
「・・・皆?どうしてっ、この悪党の殺し屋にヤラれたはずなのに・・・」「違うよクレイグ、ボクが理由を話してあげるよ・・・」

戦士の一人、エストレーアの話によれば・・・襲撃が起こる3時間前、時刻は19:00のことだった。
夜風を当たりに外を散歩していたエストレーアの前に、一人の男が現れたという・・・ミゲル本人なのだ。
その時に彼は「3時間後にはこの村を襲わなくてはならない、時間が来るギリギリになったら、住民を避難させてやってくれ」
とエストレーアに頼んだらしい。話を聞いた当の本人も最初は理解に苦しんだが、ミゲルにも何か事情はあるのだと察して
そのまま彼の頼みを実行に移した、ということだ。

「・・・さらに話したところ、彼はザッカルの刺客の一人という事がわかりました。ですが・・・どうも不可解な点があるのです。
 ミゲルさん、あなたは本当は優しい人のようですが・・・何故、あなたのような方がザッカルさんの下に付いたのですか?」

917ESCADA a.k.a. DIWALI:2008/04/15(火) 13:31:11 ID:OhTl4zsk0
「…わかった、全てを話そう。エルフの皆も、弟やその仲間たちに…天使のおっさんも聞いて欲しい。」
その場にいる全員の顔を窺がうように見渡して、ミゲルはニーナと別れた10年前から今までのいきさつを打ち明けた。

・・・10年前、俺とニーナ、そして天使と悪魔の夫婦は砂漠の地下に眠る巨大な墓地を探検していたんだ。
だがそこにはレイスやワイトといった古代の魔術師たちが巣食っていて、そいつらの猛攻でニーナは一度死んだ。
その時から、俺は怒り狂っちまった・・・ニーナを失いたくない思いと現実のギャップに苦しめられてな。
しばらく俺は当てもなく砂漠を放浪していたが、そこでザッカルさん・・・いや、殺人狂のザッカルに出会った。
あいつは「何かをなくしたってぇんなら、オレ様が取り戻してやる。仲間になれ」って言ってきたんだ。
その時から俺はあいつの下で働くようになったんだ、ニーナを蘇らせてもらうためにだ・・・。
だけどもやらされることといったら要人の暗殺や強盗だとかの汚い仕事ばかり・・・でも耐えるしかなかったさ。

そして今、こうしてニーナと再会できた俺は、もうザッカルの下を離れようと思っている。


「なるほど…ですが、あなたが犯した罪はそんなことを打ち明けた程度では消えない。どう償ってくれるのです?」
美少年とは思えない冷たい視線がミゲルの瞳に映りこむ。そしてそれを逸らすようにミゲルが俯くが・・・
「エストレーア、よしなさい・・・ミゲル、といったかな?もう起こってしまったことは仕方がない。
 だが、それを覆すだけの行いを君はこれからやろうという意思があるのかな?」エドワードが穏やかに尋ねる。
「はい・・・その覚悟はできています!!ニーナと・・・愛する人と共に、償いの道を歩みます。」
「わたしも、わたしもミゲルをサポートするよっ!!これからもずっとず〜っと、一緒だもんっ!!」
ミゲルの腕に抱きついて、ニーナも返事をした。エドワードはそれに頷き、微笑んだ・・・
「うむ、これで全てを清算しよう・・・クレイグ、怒りを納めなさい。」「…わ、わかりました。長老…」

918ESCADA a.k.a. DIWALI:2008/04/15(火) 13:52:25 ID:OhTl4zsk0
「よし、エストレーア。トレスヴァントとミリアの怪我がひどいから、私の館の壊れていない部屋へ運んで応急処置をしてもらいたい。」
「はっ、了解しました。ジャファイマさん、二人の運搬をお願いします〜」「あいよ〜、任せてけろじゃ〜」

ジャファイマとエストレーアはそのまま長老の屋敷へと移動し、ジャファイマはミリアを、エストレーアがトレスヴァントを
それぞれ看病する形となった。村の外では長老の提案で、早速建物の再建工事が始められようとしていた。
ミゲルは当然償いの一環として率先して参加、ニーナも後を追うようにして手伝いに混ざるのであった。



一方、こちらは森の中。
魔老ディアスを撃破したバーソロミューは、相棒で親友のエルフ魔術師、マスケーロと合流していた。
工事で忙しいほとんどの者を他所に、彼らは失踪したラティナの手掛かりを掴むために森を徘徊している最中だった。
「バーソロミューさん、この事はどうかトレスヴァントさんには内密に・・・彼が怒って暴れるかもしれません」
「えぇ…僕もそうするよう心掛けていますが、一刻も早くラティナさんを探し出さなければ。それにこの一件、
 下手をするとラティナさんとはもう会えなくなるような気がするんです…ん、この声は…フィナーアさん?」


「あはァ〜んっ!!久々に会えたんだからァ、お姉ちゃんにたっぷり甘えてもいいのよ〜ん?ねっ?」
「やだぁああぁああぁぁぁっ!!!こんなスケベな姉貴、オレは絶対認めねぇええぇぇぇぇぇぇぇっ!!」
ヌードで乳房を寄せて上げて迫りくるフィナーア、そして彼女の実弟、ミカエルが茂みの奥で会話をしていた。
大木に背をつける様にミカエルはビビっており、フィナーアはというとセクシー目線で弟を見つめ続けている。
「そんなこと言っちゃイヤ〜ン!!お姉ちゃんホントにミカエルやミリアちゃんのこと愛してるのよ?信じてぇ?」
「あんたの愛はただの『エロ精神』だろーがっ!!?いい加減逆セクハラで訴えるぞチクショー!!」


「・・・手掛かりは特になし、と」「さ〜て急いでラティナさんを探しましょう〜っと。」
何も見ていませんよ?と言わんばかりの白けた表情で、一部始終を見ていたバーソロミューとマスケーロは
姉弟の愛溢れる(?)やり取りを後にしていた・・・

to be continued.

919ESCADA a.k.a. DIWALI:2008/04/15(火) 13:58:50 ID:OhTl4zsk0
後餓鬼?あとがき。

ん〜=、ブランクって怖い怖い;;;ちょっと書かないでいると文章がまとまりなくな〜るorz
やっぱりストック溜めて溜めまくって放出するのがいいんでしょうかねぇ・・・
次回も「ラティナを探せ」編ですよ〜、ラティナとエレナのバトル中心になりそうだィw
最近ランサが可愛く思えてしょうがない、オーサムのボイスに激萌えですb


それとチャットイベント、オレは平日のPM21:00くらいからならいつでも大丈夫です^^

920◇68hJrjtY:2008/04/15(火) 16:24:39 ID:OFGZSD5Q0
>ESCADA a.k.a. DIWALIさん
今回はドタバタ劇というよりもシリアス路線だったミゲル編、終わりましたね。
確かに彼がしてしまったことは許せないものもありますが…生きてこそその罪が清算できるってなもんです。月並みですけどね。
エドワードの仲介がなければクレイグあたりは許さないままだったのかもしれませんけどね(・´ω`・;A
一方フィナ姉&ミカエルも再会を喜び合ってるようで。こういう姉を持ったミカエルの苦労が忍ばれます(笑)
間を置かずにラティナ編突入ですね。楽しみにしています。
---
チャットイベントの時間希望ありがとうございます。了解しました〜…と言いたいところなのですが
確かウィーナさんが20:30以降は無理とのことでしたのでどちらかに譲歩をお願いするようになるかもです(汗
今の構想での時間は19:00頃開始(終了は不明(笑))を狙っているのですが、どうでしょうかー。まあ日にちによるとは思いますが…。
どうしても絶対無理!っていうのであればまたその旨を書いてくださいな。

921ESCADA a.k.a. DIWALI:2008/04/15(火) 16:36:23 ID:OhTl4zsk0
19:00ですか、それでも問題ありませんよ〜^^
とにかくこのスレの住人たちとわいわいトークしまくりたいもんですw

922◇68hJrjtY:2008/04/18(金) 16:22:22 ID:lvXuG.AI0
暫定ですがチャットイベント、日時の方を勝手に決めてみました。

    4月 26日 土曜日 17:00(午後7時) 開催

じょーだんじゃねーぞゴルァ!って人が居ましたら遠慮なく文句をどうぞ!
なんでお前がやってんの?って人が居ましたら申し訳ないです!勝手にやってます!
…ちなみに、21Rさんとみやびさんはサイトの掲示板に直接お知らせしましたがいまだ返事はありません( ´・ω・)
ただ、みやびさんはその前のお話ではイベント参加はしたいとのことでした(*・ω・)b

923◇68hJrjtY:2008/04/18(金) 16:24:38 ID:lvXuG.AI0


(((( ;゚д゚)))アワワワワ

訂正。

    4月 26日 19:00(午後7時) 開催
           ~~~
バカを露呈してしまいました!脳内変換の方宜しくお願いします。

924白猫:2008/04/18(金) 18:05:52 ID:SYaFRg8Q0
Puppet―歌姫と絡繰人形―

第一章〜第五章及び番外編 5冊目>>992
第六章 -夜空の下で- >>30-37
第七章 -深紅の衣- >>70-81
第八章 -神卸- >>137-139
第九章 -チャージング- >>164-171
第十章 -母- >>234-241
第十一章 -北へ- >>295-299
第十二章 -バレンタインチョコレートケーキタワー?- >>349-353
第十三章 -神格化- >>388-399
第十四章 -開演、演舞、そして終演- >>461-474
第十五章 -月下に煌く紅- >>552-561
第十六章 -禁術、その名は[ルリマ]- >>762-766
第十七章 -エリクシル、完成- >>808-814
これまでの主要登場人物 >>38
用語解説 >>255-261


(前回の題名抜けてるじゃん!orz)

第十八章 再会と混戦 古都に瞬く無数の戦火





 「っつつ……」
強く頭を打った衝撃で視界が揺れるカリアスは、しかし眠ったままのアーティを抱えたまま離さない。
手探りで自分のそばに転がっていた杖を掴み、その先に灯りを灯し、辺りを照らす。
途端、杖灯りに照らされた壁の残骸や梁の残骸、彫刻品の欠片などが、カリアスの目の前に広がった。
 (本低はほぼ壊滅しとるやないか……[紅豹]の奴もおらへん)
痛む体を起こして適当な瓦礫をどけ、床に眠ったままのアーティを横たえる。
コン、コンと二度続けて地面を叩き、カリアスは瞳を閉じる。
 「『 ヘイスト 』」
瞬間、二枚の巨大な翼が彼の背を飾り、空駆ける力を与える。
それを見やり、カリアスは再び視線を移し、蹲った4つの影を見、言う。
 「四人とも平気か? 怪我なんかしとらんか?」
カリアスの言葉に、しかし返事は返ってこない。
まさか、と咄嗟に駆け寄ろうとするが、
 「っすぅ――」
という、ほんの僅かに、小さな吐息が聞こえてきた。
地面に蹲った形で眠ってしまったのか、と思い、眠ってしまっているアレックス達に自分の上着をかけてやる。
 「……げ」
気づけば、自分の自慢の白コートが、見るも無残な土色に汚れてしまっている。
クリーニング代を惜しんで悔やむのも一時、すぐに戦況を確認するべく、まずは"自分が気絶していたときから戦っていたであろう"上空を見やる。
その視線の先で、白と黒の濁りあった炎と蒼の瞬きが激突し、縺れ合い、消滅する。
それに数秒遅れ、金属と金属のぶつかり合う鋭い音が数度連続して起こり、一際大きな音が鳴ったかと思うと、再び静寂が訪れる。
ヘイなしであの速度はありえへんやろ、とその応酬に溜息を吐き、しかしすぐに頬をぺちんと叩く。
 「――さて、オレの遊び相手はどこやろか」

 「あら、あなたはお兄様のお友達」
戦人として仕切り直した途端、カリアスにそんな甲高い声がかけられる。
思わずがっくりと膝をついたカリアスは、髪をガリガリと掻き、振り向く。
と、
 「――――あんたは」
カリアスはその声の主を見、わずかに目を細めた。
このタイミングで、どうしてここに彼女がいるのか、と。
 「久々に帰ってきたのですけれど……これは何事なのでしょうか?」
カリアスの目の前に、銀髪の長髪を夜風に靡かせ、一人の少女が立っていた。
数年前、立て続けに起こった戦によりネルと生き別れた少女――セシェア=ヴァリオルドが。








 「……やれやれ、ホラーですか」
 【ぐ、ぉ……おのれ、ここまで、一方的、にッ――ぐ……!】
地面に崩れ落ちる金髪の青年――サイカスを見やり、しかしネルは溜息を吐く。
下半身と右腕が消し飛び、立つどころか起き上がることすらままならないその哀れな傀儡に、しかしネルはグングニルを突き付けたまま動かない。
先から数度どころではなく数十度と彼の体を突き刺し、切り裂き、焼き払い、爆砕し続けている。
だが一向にサイカスが斃れる気配はなく、今もまた、至近で爆風を数度浴びせたというのに――
 「あなた、あと何回生き返るんですか」
 【……く、く――いくら私を斬り、刺し、焼こうとも無駄です……私は何度でも、蘇る】
ネルの皮肉に、サイカスは不敵な笑みを浮かべて答える。
だがやはり、ネルにはサイカスの返答はどうでもいい。
 「――そうですか」

925白猫:2008/04/18(金) 18:06:18 ID:SYaFRg8Q0
瞬間、

まさに神速、サイカスが反応する間もなくその首に槍が突き刺さる。
途端に刃先を中心に[爆風]が発動し、サイカス、ネルを巻き込んだ大爆発が、夜の古都中に響き渡る。
その爆炎を至近で――というより内側からモロに浴び、辺りに黒く焦げた花弁が舞い落ちる。
それらの花弁は地面に落ちる前に燃え尽き、灰も残さず消え失せる。
その中でただ一人、先の神速の刺突を何ともなかったように、ネルがフワリと地面に舞い降りた。
 (この傀儡にも何らかの特殊能力があるのは間違いない――けど)
 〈おのれ――私の能力は一度発動すれば、この程度の攻撃など防げるというのに――〉
図らずもネルとサイカスは、同じことを考えていた。
ネルにとって目の前の青年は[傀儡](言動から判断しただけで戦闘に入るまで確証はなかったが)。
サーレのように無数の釘を生み出したり、デュレンゼルのように無双の破壊力を持っていたり、もしくはルヴィラィのような呪術を発動する可能性もある。
だが、彼は先から一方的な攻撃を繰り返していた。
まるで取り付かれたかのように、攻撃、攻撃、また攻撃と、全く休むことなく攻撃を行っている。

理由は3つある。
一つ。傀儡と言えども命には限りがある。攻撃を繰り返していれば傀儡そのものを消滅させることができる。
二つ。目の前の傀儡の直接的な戦闘力は皆無。花弁に注意してさえいれば、攻撃も容易に察することができる。
三つ。これは数多の戦場を切り抜けてきたネルなどのいわゆるプロにしか言えないことだが――各々には、そのものが持つ[戦闘スタイル]というものが存在する。
アーティやカリンのように魔術と武器を使用して戦う[魔闘士]は例外として、それぞれには戦闘スタイルが存在する。
ネルのように短剣など、速攻の可能な速度重視の攻撃スタイル、
カリアスのように圧倒的な速度により敵を圧倒する速度スタイル、
ルゼルのように一撃一撃が強烈な威力重視の攻撃スタイル、
アネットのように我流の戦術を繰り、奇天烈な戦術で相手を惑わす変則スタイル、
大多数のシーフの行う、闇に紛れて敵を仕留める暗殺スタイルなどが挙げられる。
ネルの身近にも様々な戦術を行う冒険者がいるのだ。世界には数百、数千、数万――或いはそれ以上の戦闘スタイルが存在する。
ルフィエのようにある特定の一語だけで術を発動し、その一撃が圧倒的な威力を誇るどうしようもないスタイルは例外中の例外。

そしてネルは数秒の合間に――というより、[先制攻撃]を発動した瞬間、サイカスの能力を既に察知してしまっていた。
サイカスの能力は、[発動するまでに時間が掛かるが発動すれば手に負えなくなる重火力スタイルの魔術]。
それがこの花弁――しかも傀儡ともなれば、発動にかかる時間も恐らく数秒程度。
 (ならその数秒を使って攻撃を続ければ、サイカスは攻撃のチャンスを失う)
まさに[攻撃は最大の防御]。ネルは以上3つの理由をもって、防御をそっちのけで攻撃ばかり続けていた。
 〈ここまで、だったか――ここにグングニルが現れただけで、ここまで事情変化が可能とは――!!〉
 「む」
と前方、肉片レベルにまで砕け散ったサイカスが、まるで粘土細工のようにうねり、膨張し、人の姿を形作ってゆく。
その白色の粘土細工のような気色悪い光景をいつまでも眺めているわけもない、
ネルはグングニルを肩に番え、瞬時にその粘土細工に向けて投げ放った。
ガシュ、と突き刺さったグングニルはやはり、一瞬後に凄まじい大爆発を起こす。
その爆発に呑まれたサイカスは、一瞬蒼の瞬きを見せたが、凄まじい白の怒涛に巻き込まれ、消え去った。
 〈主、せめて、こ奴だけは……始末、して――〉
白の瞬きの中、小さな藁人形の核があらわになったサイカスは、それでも術を発動しようと魔力を凝縮させる。
今ここで、これほど簡単に斃れるわけにはいかなかった。
せめて――せめて、あの作戦――[古都殲滅作戦]まで、彼に時間を食わせなければ。
一度でもいい、ブルーコスモスを展開し――
 (――見えた)
そのサイカスの思考の間際、
[先制攻撃]により、爆発圏外へと脱していたサイカスを捉えたネルは、鋭く跳躍しその腰の短剣を抜く。
 〈一拍、間に合わな――〉
 「っあああぁあああぁあッッ!!!」
そして、一閃。
ネルの短剣の一撃が、小さな藁人形を横一文字に切り裂き、[傀儡]サイカスは消滅した。

926白猫:2008/04/18(金) 18:06:40 ID:SYaFRg8Q0

 「おーにーいーさーまーはーどーこーでーすの――――――ッッッ!!!」
 「だーかーらーオーレーはー知ーらーんーわ――――――ッッッ!!! とりあえず髪引っ張るのやめろや――――――ッ!!」
自分の髪をぐいぐいと引っ張る背のセシェアに、カリアスは同年代のように怒鳴り返す。
当初は「浮けるから」の一言でセシェアを背負うことになってしまったカリアスだったが、今その選択を彼は心の底から後悔している。
[背]部分に装備されたセシェアはまさに凶暴。いや狂暴。
暇あれば自分の滅びゆく草原――もとい毛根にメテオシャワーを750万ジュールほど上回る火力で攻撃してくる。
そんなネリエルはんのことが大切か、と溜息を吐き、改めて屋敷の全景を見やる。
上空ではアネットと傀儡の(カリアスは誰が戦っているのか分からない)戦いが未だに続いている。空中戦でどちらも相当の魔力を浪費するはずなのに、である。
流石に派手なスキルの光は見えなくなったが、時たま響く金属音が、戦いが収まるどころか激化していっているのを物語っている。
 (ネリエルはんはどこや……? そういえばルフィエはんも見当たらへん)
 「カリアスさん、どうして私の庭園が荒らされているんですの」
隠そうともしていないセシェアの不機嫌な声が、カリアスにグサリと突き刺さる。
自分は関係がない。壊したのは恐らく傀儡である。
が、この状況で誰がその言葉を信じるのであろう。そもそも庭園を壊した"かもしれない"傀儡の姿は、上空の一人を除きどこにも見えない。
 「あー……最近ちょっと過激な奴らが出てきたんや。ルヴィラィ=レゼリアスの手下どもや」
 「……ルヴィラィ」
 「せや」
ルヴィラィの言葉を聞いた途端に元気のなくなったセシェアを見、カリアスは小さく苦笑する。
戦争当時、愛しい者を失った人々は多い。
ただでさえ今の世は、呪術師とリトルウィッチは迫害されている。その呪術師の名を口にするということはタブーなのである。
そしてルヴィラィは大戦の発端であり、セシェアとネルの両親を殺害した張本人(らしい)。
 「ち……ネリエルはん、ほんまにどこにおんねん」
 「お兄様……」









 「――まさか、とは思ったけれど」
 【グ?】
デュレンゼルの左肩の上で夜空を見上げていたルヴィラィは、帽子を深く被り直して溜息を吐く。
その言葉に首を傾げたデュレンゼルに、しかしルヴィラィは答えない。
今――そう、今、たった今。自分が魂を分けた子の一人が――壊れた。
 「サイカスの命がすごい勢いで短くなってたから――ね。今、あの子が壊れた」
 【ホント、か? 傀儡がまた一体、欠けたの、か?】
 「本当、よ――忌々しい、ことにね」
その声にデュレンゼルは驚愕する。
正確には声ではない――声色に、驚愕したのだ。
今まで彼は、ルヴィラィのこんな声を聞いたことがなかった。
ひたすらに純粋な[憤怒]の感情が、その声には込められていた。
あの、敵をあざ笑い、まるで人形劇のように戦い、そしていつも勝つか、敵を欺いて帰ってしまう呪術師である彼女が。

 「忌々しい……小僧供が――ッ!!」

そのルヴィラィの声に巨大な体を縮め、デュレンゼルは右肩に先の筒――[射手座]を番え、構える。
目標は、空。
 「打ち上げなさい――あの日古都を焼き尽くしたように、炎の雨を、降らせてあげなさい」
 【[射手座]、エネルギーチャージ100%――ファイア】
打ち上がった。
凄まじい号砲と共に、高く、高く、高く打ち上がった。
その砲弾は天高く昇り、轟音と共に爆発し――そして、作戦が開始された。

後に[古都壊滅事件]という名でゴドム共和国の歴史書に名を刻むこととなる、[古都壊滅作戦]が。








 「おい、お前たち! ここは立ち入り禁止――」

   ピッ

一人の警備兵がルヴィラィとデュレンゼルの姿を視認した、数秒後。
その警備兵がルヴィラィとデュレンゼルに向けて声をかけた、一瞬後。
無数の棘の付いたルヴィラィの巨大な鞭が、その警備兵の胸の肉を抉り取っていた。
ドサリ、と倒れる警備兵には何の興味持たず、左手に持った鞭を払って肉を落とし、言う。
 「さあ傀儡たち――作戦開始よ。暴れなさい」

927白猫:2008/04/18(金) 18:07:33 ID:SYaFRg8Q0

古都東口、オート監獄入口。
ここでもやはり凄まじい量の魔物たちが集結し、出陣の時を待っていた。
以前の大戦のときと同じ、人と人との戦いの最中に、魔物たちを乱入させ、殺す。
 【げ】
 【む――】
突如古都の上空に巨大な光球が打ち上がったのを見、ベルモンドは顔をしかめ、プリファーは目を細める。
(誰がどれくれい頑張ったのか)魔物は既に9割方召集が完了している……が。
 【あのババア、この数で納得すると思うか?】
 【彼の赤毛の女性のことだ――納得などしないだろう】
 【あー……でも作戦開始しちまったぜ】
 【兎にも角にも……出陣する以外選択肢もなかろう】
 【あああー……殺されるー……】
頭を抱えて唸るベルモンドを見、彼の手際の悪さにか自分の詰めの甘さにかプリファーは溜息を吐いた。
 【さっさと行くぞ、ベルモンド】
 【チッ……精々殺されんなよ】







同刻、古都南口。
先の二人とは違い悠々とカタパルトを出撃させたアンドレとムームライトは、カタパルトたちを先導、今ギルディル川を越えようとしていた。
 【さて、と……作戦開始なわけですが】
 【むームラィとは、はァピぃをつカう】
まるで戦車のように凄まじい速度で滑走するカタパルトの前方、常人ではない速度で"足だけを"動かして走っていたアンドレは、ムームライトに小さく微笑みかける。
 【ハーピー……鳥人ですかな? 以前の大戦で[陣風隊]に全滅させられたと聞きましたが】
 【まダ残っテる。半分くラい、あんデっとだケど】
その言葉にプッと吹き出したアンドレは、"足だけを動かしながら腹を抱えて"笑う。
 【やれやれ、先日薬を大量に頼まれたのは、そのせいですか】
 【そゥだよ。はあピイの数ハ、前回のおォ戦で死ンでほトんど残っテない】
 【だからこそ、このカタパルトを使う――前回の戦ではたったの三隻しか用意できませんでしたからなぁ】
 【とにかク、ムームらィと、いってクる】
 【はい、いってらっしゃい】
少々長い会話の後、アンドレの肩に止まっていたムームライトが羽ばたき、上空へと飛びあがる。
途端、先までの木造の小鳥とは違う、数メートルはあろう巨大な鷲へと姿を変え、凄まじい速度で西へと飛び去る。
それを笑顔で見やったアンドレは突如走るのを止め、戦闘を滑るように走っていたカタパルトへと飛び乗る。
 【今日流される血が、喪われた同志への餞となるでしょうな――ルード、ギゼルド、今日のこの日が、あなたたちが喪われた時への喝采にもなるでしょう――】
そのアンドレの呟きと共に、無数のカタパルトは凄まじい速度で古都へと向かう。
古都に壊滅的な打撃を与えたあの事件が、今再び開始されようとしていた。








 「――――!」
 〈感じましたか〉
古都の上空を駆けるように飛んでいたルフィエは、突如感じた魔力に目を細めた。
古都の南からそれは発せられ、考えられない速度で西へ西へと向かっている。
一体これは、何だ。
 〈敵――でしょうか、また一体。しかもこれだけの魔力を撒き散らすということは相当の術者ですね〉
 「うん、でも――」
 〈人の形をしていない。鳥――或いはそれに酷似した姿をしていますね。鳥人のような〉
 「……鳥人も獣人も、南に住む魔物でしょ」
 〈[森の中の人(エルフ)]がグレートフォレストにいるほどです。鳥人――ハーピーがいても不思議ではない〉
 「……さっきの光線とあの敵、どっちを優先すべきだと思う?」
 〈あれほどの威力の光線、先の私たちへの攻撃と空への一発。二連式だと考えるのが妥当です。一発目を手加減した状態で放ち、二発目は通常の威力で放った。
 つまりあの光線は十中八九[囮]と[合図]。空中の敵の方を追いましょう〉
 「うん」
やっぱりマペットは正しいことしか言わないな、と溜息を吐き、ルフィエは空中で突如軌道を変え、南へと駆ける。
凄まじい違和感を撒き散らす敵は、幸いこちらより足が遅い。これならばすぐに追いつける。
 「っすう――」
風が全身を叩くのも気にせず、ルフィエは肺いっぱいに空気を送り、唄を紡ぐ。

928白猫:2008/04/18(金) 18:07:57 ID:SYaFRg8Q0
 「――歌姫の名において、一時の力を。古今東西老若男女、我ここに総ての者を断罪する力を授けん。『 断罪の女神 』」
瞬間、
先まで白い光に彩られていたルフィエの体が、黄金色に包まれる。
ルフィエの誇る強化術、勝利の女神――その、最終解放。それが[断罪の女神]。
常人の体ならば数分と保たないこの術を、しかしルフィエは何の躊躇もなく発動した。
寿命を縮めかねないことだろう、とは理解している。
が、リトルウィッチの平均寿命は700歳だから、と楽観もしている。
しかし何より、もう何からも逃げないと、覚悟を決めている。
 「飛ばすよ」
 〈は――〉
い、の言葉が終りきる直前、
まさに超速のスピードで、ルフィエ=ライアットが驀進を開始した。








 「――[先制攻撃]、か。かなり便利な力だな」
傀儡――サイカスを撃滅した余韻に浸る間もなく、ネルは新たな敵を察知していた。
上空で、自分のよく知る人物と激戦を続けている敵――シャーレーン。
 (サーレ……君とは、戦いたくない)
勝負に水を差すのは悪いか、という建前の理由を呟き、ネルは瞳を閉じ、顎を引く。
[先制攻撃]の範囲は思ったよりも広い。ここから国会議事堂――もう少し先、東口付近まで探知できる。
半径数キロといったところだろうか、此処、古都の南東の奥地でも、町の中心、噴水前広場まで探知できてしまう。
と、
 「――!?」
自分と十メートルほど離れた場所――カリアスの近くに、一人の少女がいる。
どこか懐かしく、どこか寂しい雰囲気の、一人の少女が。
自分はこの少女を知っている――それも、ずっと昔、昔から。
この感覚は間違いなく……   自分の妹、セシェア=ヴァリオルドのもの。

   「――い、リエルは――」

と(なぜか悶え苦しんでいるような)カリアスの声が、ネルの耳に入る。
続いて上がる何かを引っ張る音と甲高い悲鳴。
間違いない。
セシェアが、いる。
思わずグングニルを取り零し、前のめりになりながらネルは叫んだ。

 「――セシェア!!」






 「お兄様ッッ!!!」
カリアスの体を踏みつけ飛び越し、セシェアはネルに向けて駆け寄る。
自分の肩に勢い良く、というよりほとんど飛び掛かる勢いで抱きついてくるセシェアを抱き止め、ネルはその肩に顔を埋める。
 「お兄様……おにいさま……」
 「…ッ……」
セシェアの体を力一杯抱き締め、ネルは下唇を噛み締める。
胸が張り裂けそうなほどに痛む。
呼吸が酷くつらい。
止め処なくあふれる涙を必死に隠し、どうしようもなく震える体を抑え、嗚咽が零れてしまいそうな唇を噛み締め、
ネルはしばらくの合間、自分の胸の小さな妹を抱きしめていた。

929白猫:2008/04/18(金) 18:08:45 ID:SYaFRg8Q0
 「それで――この騒ぎは何ですか」
 「私の庭園がメチャクチャですわ」
ようやくボロ泣きの対面から一段落つき落ち着いたヴァリオルド兄妹は、辺りの悲惨な光景に口を揃えて文句を言った。
まぁまぁ、と両手で二人をなだめ付かせ、頭をガリガリと掻く。
 「ルヴィラィの襲撃、ってのは間違いなさそうや。死者は今んとこゼロ。重軽傷者は約一名。毛根に致命的なダメージを食らったわ」
恨めしそうに頭をさすりながらセシェアを睨むが、当の本人はネルの方ばかり見て完全に無視している。
そういえばそうだった。
昔から――といっても戦争中のことだが――セシェアはネルの服を掴んで片時も傍を離れなかった。
傍から見ても、しっかりした兄と人見知りをしてしまう妹の仲良い兄妹。
兄以外の人間との接触を極端に嫌い、ヴァリオルド一家を北西の城跡へ避難させたときも(カリアスは誘導係)気さくに話しかけた自分を完全に無視していた。
たった一言自分に言った言葉と言えば――そう。

   《お兄様はどこ》

 (天晴な兄妹愛やなオイ)
どうやら4年ほど離れ離れになってもそのブラコンっぷりは治るどころか……悪化している。
しかし今はとりあえず、セシェアがどの程度兄を溺愛している云々の話題はどうでもいい。
 (ルフィエはん、リレッタはんが入ったらそれなりに面白そうやしな)
ちなみにカリアスは知らないことだが、リレッタは以前セシェアと逢ったことがあり、恋敵(?)と察知したのかセシェアが猛烈にネルにくっついてリレッタに喧嘩をふっかけたという話があったりなかったりする。
 「――とりあえず今は、傀儡を探しましょう。ルフィエも先刻、オベリスクの方へ向かいました」
ネルの言葉に小さく頷き、カリアスは軽く地面を蹴り、跳び上がる。
その体はやがてカリアスの脚力で到達し得る高度まで到達し、
静止する。
 「オベリスク……ね。とりあえずオレは東の駐在所へ武器とか取りに行ってくるわ」
 「久々に本気装備ですか?」
ネルの期待の言葉に笑い、カリアスはふとネルの腕にからみついているセシェアを見やる。
 「せやな……セシェアはんはどうすんねや」
 「お兄様、シュトラセトに観光に行きたいですわ」
 「人の話聞かんかいコラ」
額に青筋を浮かばせたカリアスにか能天気なセシェアにか笑い、ネルはゆっくりと立ち上がる。
腕に絡んでいたセシェアの体を優しく解き、少し遠くに落ちていたグングニルをゆっくりと拾い上げる。
 「セシェア、第二邸にセバスがいる。そこでじっとしておいてくれない?」
 「ぇ――」
 「僕は急いで行かなきゃいけないところがある。すぐ戻るから、大人しくしてて?」
 「……ぅー……」
カリアスには、セシェアの心中で「兄の言いつけ」と「兄と一緒」が天秤にかけられているのが垣間見えた。
第二邸の方と兆手を合わせているネルを交互に見やり、やがてセシェアは溜息を吐いてこくんと頷いた。
それを微笑んで見、ネルはゆっくりと槍を両手で掴んで言う。
 「では僕はギルディルの方へ向かいます。そちらから何か――妙なものを感じます」
 「集合時刻は?」
 「――夜明けです」
そして、一躍。
カリアスは東へ、ネルは西へ、それぞれ走り出した。

遠ざかるネルの姿を見やり、セシェアはゆっくりと地面にしゃがみ込む。
自分の両肩を抱き、目を閉じて小さく呟いた。
 「……お兄様――」






 「あぁあああああッ!!」
 【っぐ!?】
アネットの一撃に吹き飛ばされたサーレは、クルリクルリと空中を回転し、その途中でピタリと止まる。
上下逆さで静止したサーレに苦笑し、息も荒いアーティは剣を構え直す。
同じく息の荒いサーレは、しかし鎌を構える力を強め、言う。
 【強いんだね、おまえ】
サーレの言葉――"人間のものでは決してない声"に目を細め、だがアネットは笑う。
 「お嬢さんもなかなかよ……坊やと戦ったらどっちが強いかしら」
 【坊や?】
 「ブルンの影狼ネリエル=ヴァリオルド――」
アネットの言葉に、ピクリとサーレの体が動く。
それを少しだけ見やったアネットは、しかし剣を構えたまま問う。
 「知り合いだったかしら?」
 【…………】
目を閉じてしまったサーレを見やり、アネットはゆっくりと跳躍の態勢を取り、言う。
 「まぁ、次で御仕舞。必殺技――行くわよ」
 【……ネルぽんは、嫌いだ】
 「?」

930白猫:2008/04/18(金) 18:09:26 ID:SYaFRg8Q0
今まさに飛びかかろうとしていたアネットは、その言葉に目を白黒させる。
それを見もせずに、小さくサーレは呟く。
 【ネルぽんと戦ってると、調子が狂う……変な記憶が私の頭の中に現われてくる】
 「…昔のことを覚えてないの?」
 【……ふん】
鼻で笑ったサーレに、アーティは微笑みを浮かべながら剣を肩に番える。
何も答えない、ということはそれが肯定に他ならない。アネットは大体の見当は付いていた。
 (好きとかそういう感情じゃない……坊やを通じて失くした記憶が呼び起こされようとしてるのかしら)
そして剣を両手で握り、言う。
 「じゃあ坊やの知り合いってことに免じて手加減してあげる。でも避けないと死ぬから、頑張って避けて頂戴」
 【……いいよ。こっちも飽きてきたところだから、決める】
二本あったはずの鎌の片方を投げ捨て、サーレは両手で鎌を握る。
御互いに会話の途中に魔力を練り上げていたことは双方ともに筒抜けだった。
時間稼ぎが見え見えの言葉だったが、しかしアネットはサーレの言葉が真実だと直感で思っていた。
 (嘘じゃあんな言葉、言えないだろうしね)
双方対峙し、風の音だけが二人の耳に入る。
そして、一瞬後。

   「『 ――月光斬ッ!! 』」
   【『 デス・スラッシュ!! 』】









 「……来よったか」
古都東口の駐在所、真白のミスリルコートを着終えたカリアスは、ゆっくりと近づいてくる気配に目を細める。
とてつもない数の何かが、こちらへ近づいてくる。
ゆっくりと、だが確実に。
壁に立ててあった水色の杖を掴み、カリアスは窓の外を見やる。
ここからは街へと通じる街道を見ることはできない。だが、己の感覚が告げている。
とてつもない数の何かが、近づいてくる。
ふと脇の本棚を見やり、丁度目線の高さに置かれている一冊の本を手に取る。
しばらく考えた後、カリアスはその本を両手で持ち、本を開けようと力を込める。
バリッという音と共に接着剤が剥がれ、カリアスの足元に一つの小さな円状の物体が転がった。
"2ページしかない本"を捨て、カリアスは地面に落ちたそれを拾い上げる。
巨大な悪魔――ガーゴイルの描かれた小さなブローチ。
 (できれば、これは使いたくなかったんやけどな)
しばらくそのブローチを眺めていたが、諦めたようにカリアスはそのブローチをマントに付ける。
 「――さて、行くか。[陣風隊]の再結成や」







 (ま)
古都南口前、用水路付近。
ここに到着したネルは、目の前の光景に唖然とした。
 (ず)
前回の大戦で使用されたという、書物でしか読んだことのない[槍投擲機]……それが目の前に、数十隻停まっている。
大戦では確か、たったの数隻だけで古都に甚大な被害を及ぼしたという。
 (い……!)
しかも目の前には、ひょろ長いひ弱そうな眼鏡の男が一人、自分に微笑みかけている。
雰囲気だけで彼が人ではないと理解していた。"人であるはずがない"と。
しかも、悪いことに、
彼の後方、そう遠くない距離に、凄まじい殺気を二つ、感じる。
[先制攻撃]で察するだけでも片方の全長は6mを超える……恐らくビガプールで遭遇した傀儡、デュレンゼルであろう。
だが、もうひとつ。
こちらは、どうしようもない。
ほんの少し意識を集中しただけで分かる、凄まじい殺気と魔力。
間違いない――ルヴィラィ=レゼリアスか、マペットのどちらか。
目の前の数十隻のカタパルトと一人の傀儡を相手にするだけで骨だというのに、後ろにはさらに傀儡が1、しかもラスボスまでいるという。

931白猫:2008/04/18(金) 18:09:48 ID:SYaFRg8Q0
 (今の僕の進化した力で、勝てるか?)
思わず右手のエリクシルを見やり、しかしその考えをすぐに打ち消す。
エリクシルが完成し、[最終段階]は恐らく発動できる状態となっているだろう。
だがいったい、発動したらどうなる?
彼はなぜか、スマグでの[第二段階]開化の時を思い出していた。
あの異様なまでの充実感、そして充実感。
あれがもう一度来れば、今度こそ自分は元に戻れない。
そんな不安が、彼の中に渦巻いていた。
 (グングニルだけでなんとかなるものじゃない――でも[第三段階]を発動しようとして、力が目覚めないとは限らない)
そんなネルの思考の合間、
目の前に突然現れた人間に"微笑みながら驚いていた"アンドレは、ふと少年の手に握られたものを見やる。
 〈なんと。あれはグングニル……レッドストーンを使って破壊したグングニルはまさか、偽物だったということですか〉
心中でがっくりとしつつ、しかし表面上は笑ってネルに話しかける。
 【今晩は、良い夜ですな】
 「……あなたは、敵ですか。味方ですか」
明らかな臨戦態勢に入っているネルに、しかしアンドレは人がいいようにしか見えない笑みを崩さない。
サッと右手を上げ、カタパルトの向きをネルの方向へ向けても、笑みは浮かべたまま。
 【誤魔化しても仕様がないので言いますぞ――私は君の敵だ】
 「…………傀儡」
 【ご明察。では話が早い――その槍をこちらへ渡してもらいましょう】
そのアンドレの表情に溜息を吐き、しかしネルはグングニルをゆっくりと掲げる。
それを見前のめりになったアンドレに、ネルは微笑んだ。
途端、

 【ッ!?】
とアンドレが驚く間に、その姿が突如掻き消える。
何処だ、と辺りを見回すアンドレに、どこからかネルの声がかけられる。
 「グングニルが欲しい――でしたか」
その声に空を見上げたアンドレは、上下逆さに宙を舞うネルの姿をようやく捉える。
 〈この少年…ッ! いつの間に私の真上に――〉
 「あげますよ」
その言葉と同時に放たれた一擲、
ネルの左腕から繰り出された凄まじい投擲が、アンドレの乗っていたカタパルトごと、その体を貫いた。
同時に起こる大爆発の中、
まるで何もなかったように、平然とネルはゆっくりと地面に着地した。
一瞬で炭のようになったカタパルトの残骸の上、地深く突き刺さるグングニルを握り、小さく目を細める。
呆気ない。
一瞬で灰のように砕け散ってしまった。
傀儡にもこれほど弱い者が存在するのか。
と、グングニルを掴んだその目の前、
バサッと灰が盛り上がり、その中から左半身が崩れたアンドレが飛び出した。
 【おやおや、いただけるのでは無いのですか?】
 「……!!」
咄嗟にグングニルを地面へ突き刺し、[爆風]を発動させる。
凄まじい爆風の中、上空へと脱したネルはグングニルを掴み、思考を流す。
 (なんだ、こいつ……!? 今、体が砂みたいに……)
 【驚いているようで何より……これが私の能力。体を自在に砂へ変換する力】
爆風の中顔を出したアンドレは、笑顔で右腕をネルへと差し出す。
と、その右腕が突然ボロボロと崩れ、夜風に吹かれ砂として散ってゆく。
 「――!」
 【私の核は万、億、或いはそれ以上の砂粒のうちの一つ――あなたはそれを壊すことはできるでしょうか】
傀儡――カラクリでできた"人形"とはよく言ったものである。
ネルの持つグングニルでは、それこそゼロコンマ何ミリという砂粒を破壊することなどできない。
そんな高度な術、それでこそリレッタやルフィエのような魔術師にでもできるかどうか――
今まで遭遇したこともない奇妙な敵に、ネルは頬を伝う汗を拭う。
 【グングニルをくれるのではなかったのですか?】
 「……気が変りました」
 【そうですか。では直接奪うとしましょう】
不敵な笑みを浮かべるアンドレは、自分の後方のカタパルトに飛び乗って首を傾げる。
いつの間にか自分を中心に半円状にカタパルトが配置され散るのを見、ネルは槍を構え直した。

932白猫:2008/04/18(金) 18:10:11 ID:SYaFRg8Q0
古都南西部、地下墓地上空。
 (見つけた)
 〈一気に叩きましょう〉
空中を凄まじい速度で駆けるルフィエは、視界の端にちらつく赤銅色の光に細める。
マペットの言葉に小さく頷き、ルフィエは両の手を遥か遠方の光へと向ける。
 「『 ――ノヴァ 』」
その呪文と共に放たれた林檎大の大きさの光弾が、緩やかなカーブを描きながらその光へと伸びる。
当たった、と確信したルフィエの前、
その弾が光の直前で、あらぬ方向へ弾かれた。
 「!?」
 〈…………〉
ルフィエが目を見開き、マペットが黙り込む目の前で、弾かれたノヴァが地面に直撃――大爆発を起こした。
遥か上空に浮かぶルフィエにまで到達する爆風に目を細め、小さく呟く。
 「ノヴァが妨害を受けた……? 有り得ないよ」
 〈…………〉
ルフィエの持つ力、[ノヴァ]。
星の力を使い放たれるこの術は、文字通り[絶対命中攻撃]。
いくら相手が逃げようとも、いくら相手が妨害の魔法を発動しようとも、
この術は相手に命中まで、追い続ける。
だが今確かに自分の術は妨害を受け、弾かれた。
 「なら――こうよ!」
両の腕を広げ、その両腕に光を凝縮させる。
まるで腕の光る不格好な案山子のようなその姿に、しかしマペットは淡々と言う。
 〈警戒を怠らないで〉
 (分かってる)
それと同時、
ルフィエの両腕から、無数の光弾が繰り出される。
一発は上空へ、一発は地面へ、一発は右へ、一発は左へ。
何発も何発も何発もしつこくしつこく撃ち続け、やがてルフィエは両の手を握る。
途端、空中を疾走していた無数の光弾が突如静止し、フワフワと空中を浮かぶ。
謎の赤銅色の光を中心に光弾を配置させ、ルフィエは両腕を一気に開いた。
一瞬遅れ、先まで滞空していた光弾が、全て疾走を開始する。赤銅色の光目掛けて。
 (どう、この数のノヴァを全て妨害することは――)
が。

放たれた光弾は全て、光に到達する寸前に――止まった。
しかも、止まっただけではない。
 (――術の制御を、乗っ取られた)
ここでルフィエは、ようやく気づいた。
先のノヴァも、そうだったのだ。
妨害など受けない――受けていない。
術の統御を、あれに乗っ取られたのだ。あの光に。
 (っく――)
 〈来ますよ〉
マペットの言葉と同時、
空中に浮かんでいた無数の光弾が、今度はルフィエ目掛けて放たれる。
幾十の光の瞬きを見やり、しかしルフィエは小さく人差し指を光弾に向けた。
 「『 ノヴァ 』」
指からまるで弾丸のように放たれた光弾が、無数の光弾を全て貫き――諸共に大爆発を起こす。
空中に巻き起こる大爆発を見もせず、ルフィエはその爆発を飛び越えるように飛ぶ。
 (術が乗っ取られるのなら――乗っ取る隙を、与えさせない)
右の手に光を凝縮させ、最初の一撃目から静止してしまった光へと飛ぶ。
そして、呟く。
 「『 スーパーノ―― 』」

   【うザぃよ、さっキからおマぇ】

さっきまで、姿を捉えていたはずだった。
それなのに、一瞬後には自分の背後に、その光があった。
 (な――)
 〈ルフィエ!!〉
 【邪魔だ、おまえ――『 ウルトラノヴァ 』】
ルフィエが振り向き、マペットが叫んだその一瞬。
その一瞬の合間にその光は、無数の光弾を生み出していた。

それらの光弾が自分に次々と命中し、吹き飛びそうになる意識の中、
ルフィエは紫色の髪と二枚の翼を持つ、傀儡の姿を捉えていた。

933白猫:2008/04/18(金) 18:11:02 ID:SYaFRg8Q0
煙を引いて地下墓地へと落下してゆくルフィエを見、傀儡――ムームライトがフンと鼻で笑う。
 【ウザったい奴。私が"元に戻る"ときに攻撃してくるとか】
蛇のような緑の目でルフィエの姿を見やり、翼なのかどうかのか分からない腕を羽ばたかせたまま溜息を吐く。
 【ま、いいか。あいつの術盗めたし。早くハーピーども集めないとルヴィに怒られるし】
と、眼前のルフィエが落ちていった密林の中。
その中から、凄まじい速度でルフィエが飛び出し、ムームライトへと飛び掛かった。
 【ん】
 「っはぁあああ!!」
ドレスローブを纏っているのにも関わらず、ルフィエはムームライトの脇腹に蹴りを食い込ませた。
な、と目を見開くムームライトを見もせずに、"足の表面で"ノヴァを発動して距離を取った。
はずだった。

 【……ちょっとお前、今のムッチャ痛かったんだけど】

またもや背後から声がかけられ、ルフィエは今度こそ目を見開く。
有り得ない。
[神の母]を発動しているルフィエにも、欠片も姿を捉えることができない。
速過ぎる。
 【おかえし、だッ!!】
繰り出された蹴りを咄嗟に避け、ルフィエはクルリと反回転、右手をムームライトへと向ける。
 【おっと】
咄嗟に上空へと飛び上がったムームライトに、しかしルフィエは術を撃たない。
どの程度の時間で術を乗っ取られるかまだ分からない。
ギリギリまで近付いて撃つしかないのだ。
だが近付きすぎれば――先のように瞬時に背後を取られ、やられる。
 (考えるの、ルフィエ――何か、何かタネがあるんだ)
しばらく上空のムームライトを見やり、しかしふと気付く。
"どうして、距離を詰めてこない"?
先の凄まじい速度ならば瞬時に距離を詰めることができるはず。
それなのに、なぜ?
何か裏があるのか? 無ければあの超速でさっさと決めにかかってくるだろう。
使用制限――これはない。逆にもし制限があるのなら、とっとと連発して決めにかかればいい。遠距離からじりじりと距離を詰めるなどという悠長な真似はしない。
クールタイム――これもない。仮にあたっとしても、先の戦闘からその時間も凡そ一分。既に発動できるはずだ。クールタイムがあるならば出し惜しみする意味がない。
膨大な魔力が必要――考えにくい。あの傀儡は先から変わらない、膨大な魔力を纏っている。さっき感じた違和感は――これだ。
女神のようにデメリットがある――体に目立った外傷も傷を庇う仕草も、何より顔に浮かんでいるうざったそうな表情も最初見た時から変化していない。
ここまで考えて、ルフィエはふとネルの言葉を思い出した。

   《術にも様々な形態が存在します。強力である代償に、自分へとその矛先が向いてしまう可能性のある術――[暴発(リバウンド)]。魔術だけではなく、精霊術や拷問学にも存在する概念です》

発動し続けられない力。
必要最低限しか使いたくはない力。
だから、使わない。
使えないわけではない――使わない。
 (もしも、あの超速の正体がそれなら)
空中でゆっくりと体勢を低くし、ルフィエは小さく息を吸う。
ならば遠慮することはない――"使わせてやらなければいい"。
そう思い立ったルフィエは即座に、黄金の光を纏ったままムームライトへと突撃する。
 【ちっ】
それを見やったムームライトは、ルフィエから遠ざかるように下降、地面スレスレを滑空する。
が、ムームライトとルフィエなら、僅かだがルフィエの方が速さは上。二人の距離はじりじりと詰められてゆく。
 【四の五の言ってらんないね――『 風陣 』】
と、

934白猫:2008/04/18(金) 18:11:24 ID:SYaFRg8Q0

 「っまた!?」
 〈…………〉
とルフィエが驚くほど簡単に、ムームライトを見失った。
目の前を滑空していたはずのムームライトが、瞬きをした間に。
にわかには信じられないことに、あのスピードはルフィエでも、ネルでも、恐らくカリアスでもどうしようもない。
だが、それを"攻撃に使わない"。
それで、ルフィエの推測は確信に変わった。
間違いない――決まりだ。
この傀儡の能力は[術への干渉及び乗っ取り]と[暴発可能性のある神速]。
だがこれならば――勝てないわけでは、ない。
あるのだ。
たった一つ、妨害も干渉も乗っ取りも、何もかもが通用しない術が。
 「一日に二回発動しちゃ、いけないかな」
 〈いけません。……と言っても、あなたは発動するのでしょうね〉
 「うん。もう逃げないから」
マペットの言葉ににっこりと笑い、ルフィエはムームライトの後を追いながら唄を紡ぐ。
歌うのは初めてのこの曲。
だが自然と、歌詞が口から紡がれる。

   「――昔々の物語」


 そこには二人の姫がいた


 一人はルリマ、一人はデリマ


 ルリマは優しく天真爛漫   デリマは恐ろし神出鬼没


 二人は姉妹、二人は歌姫


 ルリマは紡ぐ、癒しの歌を   デリマは紡ぐ、戦の歌を


 やがて二人は歌を止めた   やがて二人は歌を作った


 ルリマの楽譜 癒しの楽譜   デリマの楽譜 戦の楽譜


 私はルリマ 私はルリマ   だから紡ごう癒しの歌を


 生ける者に祝福を 魂を救済し 永久の癒しを賜らんことを――




 「『 ――ルリマ・ウルトラノヴァ 』」

FIN...

935白猫:2008/04/18(金) 18:12:43 ID:SYaFRg8Q0
---
どうも、白猫です。
引っ張ります。
引っ張れるだけ引っ張ります。引っ張りすぎてちぎれそうですが引っ張ります。
今回をまとめると「傀儡死んで傀儡出てきていやっふう」です。すみません嘘です。
あとすこしで六冊目が終わるわけですね。時が経つのは早いです。
もう高校生だって言う自覚が……((((・ω・`))
誰か数学α教えてくれないかな……((((・ω・`))


コメ返し

>◇68hJrjtYさん
単語を出してしまうのは癖ですorz
やっぱり今日もハーピーとかいう単語を使ってしまいました。もうこれは仕様ですorz
しかしこれほどおっきな設定、ちゃんと最終章でまとめられるかしら……
次回は星の御姫様とキレた呪術師が激突する予定です。砂人間は絵ヅラがキツいですね。
カリアスの外伝で設定だけ登場した「レティア」、四強を思い出してくれるといいかもです。
さて、いつ出そうかな(コラ
---
えーっと26日というと…来週の土曜日でしょうか?了解しました。
チャットのアド等は[ttp]で検索すれば引っ掛かるでしょうし載せるのは控えましょう。

>国道310号線さん
実は北欧神話はうわべしか知らなかったりします(汗
神話や伝記とかいうのは本によってまちまちなので、[これぞ北欧神話の総て!]みたいな本ないかしらorz
[射手座]もグロいですが楽々それを弾いたグングニルはもっとグロいと思います。たぶん。
これ以上単語が出てきたらどうしよう……って、出るか、出ちゃうか、私の性格上orz

>黒頭巾さん
そうなんですか……運営も色んな方法でインフレ防いでるんだなあ。
ネルの成長は異常です。ルフィエはそうでもないかもしれません(オイ
そうですよね、ちっちゃいころのカリアスってなんかクソガk(ry に見えますよね!笑

では今回はこの辺で失礼します。チャット会、楽しみにしていますね。
では、白猫の提供で御送りしました。

936之神:2008/04/19(土) 15:46:43 ID:KiavbBqI0
1章〜徹、ミカの出会い。
-1>>593―2 >>595―3 >>596-597―4 >>601-602―5 >>611-612―6 >>613-614
◆――――――――――――――――――――――――――――――――――――◆
2章〜ライト登場。
-1>>620 -621―2>>622―○>>626―3>>637―4>>648―5>>651―6 >>681
◆――――――――――――――――――――――――――――――――――――◆
3章〜シリウスとの戦い。
-1>>687―2>>688―3>>702―4>>713-714―5>>721―6>>787―7>>856-858
―8>>868-869
◆――――――――――――――――――――――――――――――――――――◆
4章〜兄弟
-1>>925-926 ―2>>937 ―3>>954 ―4>>958-959 ―5>>974-975
◇――――――――――――――――5冊目―――――――――――――――――◇
-6>>25 ―7>>50-54 ―8>>104-106 ―9>>149-150 ―10>>187-189 ―11>>202-204

◆――――――――――――――――――――――――――――――――――――◆
5章〜エリクサー
-1>>277 ―2>>431-432―3>>481-482―4>>502―5>>591-592―6>>673-674
-7>>753-754―8>>804-806
◆――――――――――――――――――――――――――――――――――――◆
番外

クリスマス  >>796-799
年末旅行>>894-901 」5冊目
節分  >>226-230
バレンタインデー>>358-360 >>365-369
雛祭>>510-513
ホワイトデー@シリウス >>634-637
◆――――――――――――――――――――――――――――――――――――◆
キャラ画>>907

937之神:2008/04/19(土) 16:04:29 ID:KiavbBqI0
>>864-866 これ入れるの忘れてたorz




α

「あのバ…シリウスさんは見てないんですよね?」シルヴィーはあまり周りの状況に関心が無いようだ。

「まぁ…見てないですけど……何故?」
「ああ…ちょっとあの人と繋がりができてしまってですね…今度お話します」
「そうですか…」

結局、何故シルヴィーがシリウスと繋がってるのかも分からないまま…。

「で、ですねシルヴィーさん…」
「ハイ、なんでしょう…?」


「見ての通りなんですが、こんな状況で…ちょっと協力お願いします…」
俺は苦笑いで周りを見るように促した。


κ

「何だここは…水族館か…?」アルシェはサングラスをかけ直す。
「違うでしょー…うーん、クラゲと蟹しかいないよう?」エトナは身体に付着した塵を払いながら言った。

「まぁ…こいつら特に害は無さそうだ…進むぞ」
「うん!」

アルシェは前を見据え、そしてそのまま駆けていった。

2人が落ちた場所は長い円周状の廊下、そして周りには延々とクラゲと蟹がいる水槽が続いているだけだった。
「アルシェ待ってよー!」
「お前はウサギにでもなって追いつけるだろう…」息切れの様子が見えない会話。

「そうじゃないよー!」追いかけるエトナは少し不安そうな雰囲気だった。
「何だ。用件は短く済ませろ…!」


「この水槽にいるの、みんなモンスターだと思うんだけど…!」

938之神:2008/04/19(土) 16:19:51 ID:KiavbBqI0
ψ

「おおおおおおっ!」ナザルドは目の前に現れた男を見てニヤニヤした。

「キミっ!ウィザードだな?あー、けっこう皆いるもんだねぇ…俺感動」

「…まれ」シリウスはやっと落ち着き、口を開いた。
「ん?聞こえないよう」

「謝れっ!そして道をどけっ!」


γ

「ついたぞ」
『流石、仕事が速いですね』
「まだ仕事はしてないがな…で」
『鍵の事ですね』
「話が早いのはいいが、説明してくれ…」

無線で話すライトの目の前には、大きな扉、そして無数の鍵穴があった。

「見た感じだが…どれか1つ開ければ開きそうな扉だな」
『そうですね。でもその108個の鍵穴の内、違う鍵穴はいじらない方がいいですよ』
「何かマズいことが…あるって事だよな?」
『そうですね…間違えてしまった場合』
「場合…?」

『天井を見て下さい』

ん…どれどれ…

……ちょっ…おま…。

「オイ」
『はい』
「何だ、いかにも「排除しますお^^」なコレはよ…」
『えーと、手元の資料によるとですね、熱線砲って書いてありますね』
「避けられる?それ」
『フレは一以下ですが』
「じゃあミスったら死って感じかね…ハァ」ため息を大きく吐くも空しく、あまり緊張感の無い…

『それでは、頑張って下さいね』
「……。」

939之神:2008/04/19(土) 16:37:38 ID:KiavbBqI0
α

「構いませんよ?」
「ああ…メッチャ助かります」とりあえず安心した。

「何をお手伝いすれば?」
「とりあえず…煙が出てるので消火と、あと上階に連れて行って欲しいんですが…できますかね?」
「できますよー、ちょっと待ってて下さいね…」

そう言ってシルヴィーは、目を瞑り両手を前に突き出した。

ゴゥーゴゥー…と音がしたかと思うと、目の前につむじ風と魚が現れた。

もう慣れきったこの反則パワーっぷりだが、はやり初めてなので珍しい…。
「この2つは…?」
「召還獣ですね。んーと、モンスターとはちょっと違いますけど…まぁこの子達が協力してくれます」
「ハハ、可愛いですねぇーこの魚…」

近づき触れようとした瞬間、魚が発光した――。

…え

「あの、これは…」
「さっきのスェルファーですよ?」そういってシルヴィーは、人のような形になった元魚に指示を下した。


「それじゃ、ここはスェたんに任せて…行きましょう!」
スェ…は置いておき。
「どうやって行けば…」と聞く間も無く、もうシルヴィーは呪文を唱えていた。

つむじ風は発光し…広げれば5メートルには成る翼を持った鳥が現れた。

「捕まって!この足に!」慣れた手つきで片腕を足に絡ませたシルヴィーは、俺にもこうするように催促した。

見よう見まねで捕まった俺は、足が地面から離れているのにしばらく気がつかなかった…。

「うわ…飛んでる…」
横にいる少女はといえば、スカートを抑えながら器用に片手で足に捕まっていた。
「飛ぶのは久々だなぁ…」
「あ、シルヴィーさんしょっちゅう飛んでるんじゃ無いんすね…」
「そりゃ、一般人に見られては困りますからね…」

こんな会話をしている内に、吹き抜けビルの天井までたどり着いた。

940之神:2008/04/19(土) 16:45:45 ID:KiavbBqI0
めがっさ久々に小説投下、と言うより久々にPCの前に来た…之神です。

リア多忙につき更新率gdgdですが、読んでくれる人が1人でもいれば本望。
さーて、みなさん…あっしが書いた絵はどうだったでしょうか。
というか落せましたか…?('A`

ラフ〜ペン入れなので、あんまり凝ってはいないですが。

そして…ちょっと作家の皆さんに感想返す元気が無いですorz


―――――――――――――――――――――――――――

あとチャットイベントですが、たぶん参加できます。
司会さん(68hさん)、頑張って下さいね(-ω-*

当日近くなったら、チャット場への誘導と、その他詳細をお願いしたいです…。

んでは、引き続き小説スレをお楽しみ下さい…。

941◇68hJrjtY:2008/04/19(土) 23:48:15 ID:lvXuG.AI0
>白猫さん
サイカスの破壊も勝利には繋がらず、続いて即座に古都襲撃が…!むしろサイカス撃破が引き金のように…(;・∀・)
ネルを始めカリアスやルフィエがその迎撃に当たるという展開が物語られた今回、やはり各戦闘が面白いです。
集団の戦闘もさながら、このように各々が一対一の戦闘を繰り広げるというのは個性が光ってよりキャラ本人にも迫れますね。
もっとも、ネルやルフィエのように一人ひとりが強力すぎる力を持っていると各個撃破戦じゃないと危険そうですが(汗
そしてあまりにも唐突に登場したセシェア…ルヴィラィとの辛みが以前出てきていましたが、この辺の実態も気になりますね。
白猫さんの小説のあまりの物語性、世界観の壮大さに毎回嘆息しています。次回も楽しみにしていますよ!
---
チャットイベ。
4/26は暫定ということですが、これ以上希望が出ない限りはこの辺で決めてしまおうと。その方が皆さんもやりやすいかなとか(笑)
むしろこちらこそチャットルームの提供に感謝しております。URLはこれ以降は載せない方向で、了解しました。


>之神さん
そういえば忘れてましたがナザ君とシリウスって今回初顔見合わせでしたっけ…開口一番犬猿っぷりが(笑)
でも私の中では永遠に(?)シリナザはベストコンビに落ち着いてますのでご安心を!(待
シルヴィーのサマナ姿もなんだか新鮮というか。普通の女の子なシーンを読み慣れたせいでしょうね。
ライトの方は煩悩の数(108個)と対決中。シルヴィー同様、ライトのシーフとしての腕がものを言いそうですな。
佳境に入ってきたミュリエ・ジュール・ビルの攻防、各方面の続きお待ちしています!
---
いやー司会よりもそもそもその日に遅刻しそうでしなさそうで(え
もちろん当日前にもう一度告知の方はします…が、招かれざる客さん(笑)もいることですし控えめに。
日時は書きますがチャットルームのURLは再度晒しではなくてアンカーリンクで済ませようかと。その辺は後日。
まあ別に話すテーマとかはないと思いますし、雑談目的でお気軽にーと考えています。

個人的に21Rさんとみやびさんのサイト掲示板にお知らせしてきたんですが、どちらも日時了解いまだ取れず…。みやびさんは参加したいそうですけども。
提案者であり楽しみにされていた21Rさんが来ないとなんかイベントを開催するのも気が引けるのですが( ´・ω・)
当日間際まで待ってみることにします。

942ウィーナ:2008/04/20(日) 02:28:46 ID:3RWVAaPc0
白い鳥と黄色い花
〜1章〜
プロローグ >>301-303
1話 夢のFelt-tipped marker(サインペン) >>310-312
2話 Disguising as a woman(女装) >>316-320
3話 Facing(対面) >>454-459
4話 イクリプス >>526-531
5話 幻想の闇 >>584-588
6話 フェレス >>605-611
最終話 バレンタインデーの罠、最終決戦 >>653-660

〜2章〜
プロローグ >>716-719
1話 残される新記録。 >>768-772
2話 刻まれる亀裂 >>778-783
3話 四番目の殺戮人形 >>875-878 >>882-883


4話 鋼鉄の少女

ブリッジヘッド北部山中。落差五十メートルという大滝の裏側に、ぽっかりと鍾乳洞が口を開けている。喩えるならば、古の財宝が眠っているような──どこか神秘的な趣のある洞窟だ。
意外にも広い内部には光蘚が群生し、ぼんやりと明るい。
天井からは年月を経て長く伸びた、槍ごとき鋭さの鍾乳石が垂れ下がり、足下にはごつごつとした石筍が幾つも幾つも生えている。
この洞穴に踏み行った者は例外なく、がばりと顎を開いた巨大幻獣の口腔内にいるかのような、薄ら寒い錯覚に襲われるだろう。
滝裏の鍾乳洞はこのように、子供ならずとも冒険心を刺激される、いかにもな様相を呈している。が、いまや国内に未踏の地などありはしない。
地形的な理由によって人を寄せ付けぬ、秘境と言えるこの洞穴であってもそれは例外ではなく、中は隅々まで調べつくされた後であろう。
そう思われていた──数ヶ月前までは。
現在この洞穴は、『極東第二遺跡』と呼ばれている。
『組織』によって。

「ご主人様ぁ──大変でございますよ──ご主人様ぁ──」

甘ったるい、間延びした少女の声が、おんおんと谺する。
洞窟の『元』最奥部付近、さらに奥深くと続く新しい横穴から、侍女服姿の少女──暁が姿を現した。

「ご主人様、こちらにいらっしゃいますか──?」

彼女は洞穴入り口に向かってゆっくりと足を運びながら、両手をメガホンの形にして口に当て、緊迫感感のない口調で主を呼び続ける。

「ご主人様ぁ──ご主人様ぁ──? ふぅ……聞こえておられないのですか糞ハゲ」
「よぉっく聞こえとるよポンコツ」
「ひゃああ──!?」

暁の悲鳴は洞穴の至る所で反響し、長々と尾を曳いた。
暁は主の声が聞こえてきた方を、首間接が錆びているかのようなぎこちなさで振り向く。
ハインツは洞穴の片隅、上手く椅子状になった岩場に腰掛けていた。
先ほど暁が購入してきたグラビア雑誌を一心不乱に読みふけっており、こちらに一瞥すら寄越さない。
暁はエプロンに両手を揃え置き、主に向かって職務を遂行した。

「な、なぁんだぁ──そこにいらっしゃったのですね、ご主人様。……どうか暁をびっくりさせないでくださいまし」
「あのなポンコツ。わしはたった今、貴様の新しい名前を思いついたんじゃよ、聞いておくれ。①ドム美、②ピザ子、③魔人ブウ華。──どれがいいかのう?」
「どれもイヤですっ!?どうして全部デブの暗喩が込められた名前なんですかぁっ!?」
「ほう、分からんのか?では鏡を見ながら自分の体重を三回唱えてみるがよい」
「酷っ!?そ、そりゃあわたくしピザを愛しておりますよ?心からお慕いしておりますよ?でもだからって名前にされるのはちょっと違うっていうか……それよりご主人様③ってどういうことですか!わたくしと共通点がまったくないじゃないですか……!?」

そのとき、怒れる暁の全身から、プシューッ!という独特の排気音が鳴った。
義体の至る所に空いた排熱用の孔から、沸騰した薬缶のように蒸気は噴出したのである。

「いやん……失礼しました」

赤面した暁はごまかすように微笑した後、突っ込みがこなかったことに安心の吐息をつく。
侍女の陳情にも、ハインツは視線を上げはしない。

「やはりブウ華が会心の出来……いや、ピザ子も棄て難いかのう──」

などと明らかに適当な応対をしながら、懊悩する哲学者の表情でグラビアモデルを凝視している。
(ああ……あああああ……わたくしこのままではピザ子になってしまうのですね……)
暁はうるうると眼に涙を溜める。

943ウィーナ:2008/04/20(日) 02:31:06 ID:3RWVAaPc0
「む、これは……!」

ハインツがさらに真剣な顔になり、読んでいた雑誌を縦に90度高速回転させた。
巻頭グラビアの見開きページである。
こっそりと暁が横から除き見ると、巻頭の見開きでは、侍女服姿の女性が笑顔でスカートをたくし上げ、黒い下着を僅かに露出させているところであった。
(まさか……まさかわたくしのルーツはこれだったのですかご主人様……!?)
己の原型を知らしめられた人造人間はしばし煩悶し、主の嗜好を記憶領域に記述する。
『え・ろ・じ・じ・い』と。
(よ、よし……っ!暁、頑張っちゃいます!)
禍々しい新ネーミングをなんとか回避すべく、人造人間は主のご機嫌を取る方向で行動指針を定めた。悲壮な覚悟を宿した顔で主へと声をかける。

「ご主人様、ご主人様、こちらをご覧ください。──ほぅら、ご主人様の大好きなポーズ」

暁は笑顔を羞恥の色に染めながらも、震える手でグラビアと同じ格好になった。
アレクは雑誌から、ちら、と一瞬だけ視線を上げて、

「──脚太いのう、貴様」

がっかりした声を出した。

「ど、どっくーんときちゃいましたぁっ!?あんまりですっ!それが一大決心で太腿を晒したわたくしへの感想なのですかご主人様っ!」

暁の慟哭など知ったことかという態度で、ハインツは再び雑誌に目を落とした。

「わしがせっかく神秘の研究をしておるというのに、そんな太腿見せてわしの幻想を壊さんでくれ──」

(し、失礼なぁっ……)
暁はぷりぷりと頬を膨らませ、唇をを尖らせ、拗ねたことを可愛くアピール。

「……ご自分でそういう風に造ったくせに、文句言わないでくださいな。わたくし、哀しくて泣いちゃいます」

暁はエプロンのポケットからハンカチを取り出して、涙を拭った。

「ちょうどいいサイズに造ったはずなのに、いつの間にか一回り太くなっておるのはどういうことなんじゃろうか?」
「わたくし、成長してる……!?」
「太っただけじゃ、バカモン。頭脳を水洗いされたくなかったら少し黙れデブ」
「う、ううっ……なんて酷い扱い……」

暁は地面に両手をついて、がっくりと崩れた。
(ご主人様なんてハゲのくせに……つるっパゲのくせに……)
そこにハインツがうんざりと声をかける。

「──で。貴様はこんなところで何を油売っておる。さっさと探索作業に戻らんか。共振反応を感知できる貴様でなくば、新たなスフィアを発見することはできん──何度も言わせるな」
「あ──そうでした」

暁は地面に正座した体勢になって、ぽんと拍手を打った。

「大変で御座いますよ、ご主人様」

のんびりとした口調のせいで、まったく大変そうには聞こえない。

「なんじゃ、用があるなら、早う言え、早う」

ぱらりとページを繰って新たなグラビアに注視しつつ、ハインツが急かす。

「少し前に、協力な共振反応を複数感知いたしました。現在、古都の北部にて交戦中かと存じます」
「ほう、それを早く言わんか」

侍女の報告に興味を引かれたのか、ハインツが雑誌から顔を上げる。

「すると『十二番目』と『四番目』か」
「はい、然様で御座います」
「何かあると期待してきてみれば、さっそく騒がしいことになり追ったなさて──」
「如何いたしましょう」
「捨て置けばよかろう。下手に干渉して、彼奴らの派手な戦闘に巻き込まれてはかなわん。──あの獣娘は敵も味方も区別せん、それでも助太刀に行くというなら、止めんぞわしは?」
「あ、あの御方は苦手ですっ!ビリッて、ショートしちゃいますぅっ!」

意地悪を言われた暁は座ったまま、全身を使っていやいやをした。
確かに四番目は、暁にとって相性の悪い相手ではあった。
仮に一対一で戦ったとして、勝機がないわけではないのだが、確実に倒そうと思えば大破を覚悟せねばならないだろう。

944ウィーナ:2008/04/20(日) 02:33:09 ID:3RWVAaPc0
「ところで──ご主人様」

何か言いかけた暁を遮って、ハインツは言う。

「勘違いするなよポンコツ。わしは貴様が、未完成の『十二番目』や、欠陥だらけの『四番目』に劣るとは些かも思っておらん。単にリスクの問題じゃ。今出張っても、最悪二体のキリングドールを敵に回すことになろう。それよりは、ここで新たな未知の物質の発掘に専念したほうが幾らかましじゃ」

LTスフィアに代表される道の物質からは、研究解析することによって、さまざまなロストテクノロジーを抽出することができる。
ハインツの研究課題は『真なる人造人間の作成』。
人の常識では計りきれる外法の研究を加速するためには、ぜひとも新たなる未知の物質が必要だった。それがLTスフィアであるならば、なおのことよい。

「しかしご主人様」

主の長台詞が的を射てないと判断した暁は、先ほど言いかけた言葉の続きを述べる。

「交戦中の二つの他に、かなり離れてもう一つ──やや小さい共振があるのですよ。『十二番目』によく似ていますが──わたくしのデータにないパターンの反応です」
「なにぃ……?」

思いもよらぬ報告に、今度こそハインツは目を剥いた。

「どういうことじゃ……!」
「ですから──『十二番目』と『四番目』の他に、もう一体いるってことじゃないでしょうか──未知のキリングドールが」

地べたに座り込んでいる暁の口調は、あくまで暢気だ。
雨が降ってきたので洗濯物を取り込みましょう──その程度の緊迫感である。

「だから、なんでそれを早う言わんのだ貴様!!」

もちろんそれを聞かされたハインツは穏やかではいられなかった。
エロ本読んでる場合ではないと、岩場から勢いよく立ち上がる。

「それで──如何いたしましょうか」
「決まっておろう。その未知のキリングドールとやらに直接接触を試みて、招待を調査せい。可能ならば戦闘データを収集後、撃破、LTスフィアを奪取する」
「──かしこまりましたご主人様(イエスマスター)」

洞穴の外が眩く光り、間をおいて雷鳴が轟いた。
遠方の落雷。
薄闇を取り戻した洞穴の中、少女の形をした人口の怪物がゆらりと立ち上がる。

「ようし、征くぞピザ子!」
「だ……だから、ピザ子じゃないもん……」

十番目の殺戮兵器は、目尻に涙を浮かべながら出撃した。



あれほど晴れ渡っていた空は、今や黒雲に覆われている。
ロイを追い返したニナは当て所もなく町を彷徨い、古都を離れ小さな川の流れている場所に辿り着いた。川辺の草原に座り、天を振り仰ぐ。星は一つも見えなかった。

「…………っ」

ひざの上でぎゅっと両手を握り締め、泣きそうな顔でニナは俯く。
ぽつり、ぽつりと水滴がスカートに落ちて、染みを作った。
(……雨、ですか)
帰らないと……そう思うものの、萎えきった足は動くことを拒否している。

「……痛……っ」

胸が、軋む。まるで悪魔に心臓を圧搾されているようだ。
頭の中で巡るのは、瓜二つの少女の姿。
月舞…姓は知らなかった。
会った時からずっと、助けられてきて。
たった一人の友達で。
すごく……美人で……
(でも、私のほうが……)
私のほうが…………
月舞にはなにか──ニナにはない、精神的な経験とでもいえばいいのだろうか──そんな大人びた余裕が感じられる。
ニナ=ハィタムは、月舞よりも、ずっと劣っている……?
(そんな……)
だから……大切なものを、奪われてしまった。もっと大事にしていれば、しっかり握り締めて硬く抱きとめておけば──こんなことにはならなかったのかもしれないのに。

「でも……もう、遅いのね」

幾ら後悔しても、なにもかもが今更だった。もう時は戻らないし、追い掛けて来てくれた彼を拒絶したのも、自分自身なのだから。

「……私、これからどうすれば……いいの?」

呟く声に、応えるものはない。
身体中から力が根こそぎ抜け落ちて、不快な倦怠感に支配されている。風邪をこじらせたみたいに頭が熱く、ぼうっとして……何もやる気が沸いてこない。

「ふ……ん」

いまにも泣き出しそうな黒雲、西方で轟く遠雷、ニナの心情を、そのまま具体化したような光景だ。
締め付けられているように胸が痛い。とても、苦しい。
(もう──いまはなにも考えたくない……!)
ぎゅっと強く眼を閉じて、スカートのすそを両手で握り締める。

945スメスメ:2008/04/20(日) 18:20:31 ID:DIvoZ0q.o
前スレ>>750 現スレ>>6ー7 >>119ー121 >>380ー381


「いっくぜぇ!13の奥義が一つ『気装術』!!」
悪いけどここが使い時だと思うんだ、じっちゃん…良いよな。





ーきそうじゅつ?ー

もう何年か前に、オレがまだブリッジヘッドでじっちゃん達と暮らして修行の日々を送っていたときの話だ。

「そうだ、これからお前に教える技だ」
「何かカッコ良い名前だな、じっちゃん!」
「そうか?そうだろっ、やっぱりお前はセンスが良い!」
そう言ってじっちゃんは、嬉々としてオレの肩をバンバン叩いていた。

が、
「…だがな、名前がカッコいいだけじゃないぞ。これは今までの技の中で最も強力で危険な技だ。だから約束してくれ…」
「何を、じっちゃん?」

「これはお前がもっと精神(こころ)も肉体も『強く』なるまでは決して使うな。そして…」
「そして?」

「間違っても絶対に悪用してはいかん!」

いつもはヘラヘラしててお姉さんが大好きで、特にする事もなく日がな1日をのんびりブラブラと過ごす様なじっちゃんが、この時だけは真剣な表情でちっちゃい頃のオレに言ったんだ。

「…分かったよ、じっちゃん」
オレは思わず唾をゴクリと飲み込んでうなずいた。

「俺達『武道家』の拳は決して他を『傷つける』為にあるんじゃない。相手が誰であろうと『救う』為にあるんだ。その事は例えどんな事があろうと忘れるなよ」
そう言うと、またいつもの顔になりその手でオレの頭をナデながらニッコリとオレに説いた。
「よし、それじゃあ始めるか」
「応っ!」


「…さて本題にはいるぞ。
この『気装術』だが今までお前に教えてきた『体術』とは全く違う物になる。コイツは本来万物に存在する力がある、これを『気』という。これを借りる事であらゆる事を可能とする技だ。」

「あ〜、元素の事ってやつの事だなじっちゃん。それくらいはオレでも分かるぜ」

「いや、それでは唯の魔法と何ら変わりないだろう。そもそも元素なんてもんは本来この世界に在るはずの無いもんだからな。…まぁ、この話は難しいからお前は覚えんで良いぞ」

分かった、と頷くとそのままじっちゃんは説明をオレにでも分かりやすい様に教えてくれた。
「兎に角だ。コレさえ出来ればお前は漫画のヒーローの様な事が色々とできるって事だ!」
「て事は、気合いさえ入れれば突然髪の毛が立って金髪になれるようになるんだな!?」
「アルよ…。それ以上はアウトだからな?」
「分かってるって、じっちゃん」




今思うと完全にアウトだろコレ…。





『気装術』

それはじっちゃんから教わった技の中で最も実践的な術で、じっちゃん曰わく「元々、万物に元素以外にも存在し、無論生物や人間に備わっている能力。即ち『気』を具現化し、それを纏う事で練度によって差異があるが運動神経、陳新代謝の向上、それ自体を鎧や武器にして戦う戦闘術」だそうな。

…未だに理屈はよく分かって無いけど、要は火事場の馬鹿力で戦闘能力を高める事が出来るって事なんだってさ、うん。
てか分かりやすく説明してこれかよっ!?


「破ァァァ!」

な〜んて解説している間に自分に活を入れ、体内で気を練り上げてそれを装着する。
装着と言っても何かが自分の躰にまとわりつく感じなんだけどね。でも効果は凄いんだぜ?
ほら、発動した側から右肩の出血がすぐに止まって、痛みも無くなって怪我をした部分も動かせるようになってきた。実戦で初めて使ったけど凄ぇな…。

流石に訓練じゃこんなに酷い怪我はしないから改めてこの技がじっちゃん曰わく『もっとも実践的な技』だと言うことをを思い知るぜ。

でもこれを使うのは良いけど全身にこの『気』ってヤツを身に纏って、なおかつ『気』がバランス良く行き渡るようにコントロールしないといけないから神経を使って疲れるんだよね。
それに血が止まってるとは言ってもオレ程度の技じゃまだ出血を止める事が精一杯。
いつまた傷口が開くとも分からないし早くケリをつけないと…。

946スメスメ:2008/04/20(日) 18:24:28 ID:STA8P/9Eo

そう、気を入れ直した時だった。
「イイゾもっどだ、もっど楽じまぜろ。ぞじてもっど力を寄ごぜ〜っ!」
アイナーが口から血を吐いて叫んでいる。
そしてヤツの握っている剣からドス黒いモヤみたいなモノが現れ、ヤツに纏わりついていった。

「何だありゃ!?」
そう叫ぶ暇もなく黒い塊が突進してくる。
もう剣術も何もない、ただ突進して右へ左へと無茶苦茶に剣を振り回してきやがった。

だが一部の例外を除いて戦闘で動きがでたらめなヤツほど読みやすく、捌き易い。
でも、いくら動きが無茶苦茶で太刀筋が読みやすいと言っても今のアイツの破壊力は地面すら割るほどだ。
それに剣の振りがさっきよりも早くなってきてる、まだ反応できるスピードだが一発でも喰らったら命はないだろう…。
かと言って、避けながら軽い一発一発を奴に打ち込んでいくにしてもあんなイかれている様な状態じゃあそんなに効果がなだろうし…。
とにかく避けて避けてスキを伺って問答無用で戦闘不能に出来るほどのデカい一撃を打ち込むチャンスを伺うしかない。

「もット、モッどオレを楽しマゼろおォぉぉッ」
もう、何言ってるのか判らなくなってきてるよ。
まったく、何がどうなったらこんなになるんだ?
なんて事を考えながら右へ左へと広い室内を跳び回るオレ、もう口から血や涎を振りまき、半狂乱になりながら剣を振り回し、この部屋の壁や地面を砕いていくアイナー。そんな感じでちょっとした鬼ごっこを続けていると、

「逃げルなあぁァアぁぁ、アルぅゥぅぅぅぅ!」
「誰が逃げるか、誰がっ!」
そう、アイナーの方を振り向くと…
アイナーにまとわりついてたと思われる黒い物体、それがオレに向かって抉る様に地面を削り、巻き上げながら襲いかかる。
「な、何じゃありゃっ!?」
ギリギリのところで仰け反り、避けたと思ったら後ろから響いてくる轟音、呆気に取られてふと後ろを見ると遠くで粉々に壁が崩れ落ちて向こう側の部屋が見えてるんだけど、気のせいかな…?エヘ


って、おいおいおい!
こりゃ何のジョーダンだよっ!?


「ドコを見てるっ!」
たたみかけるように飛びかかり大きく剣を背に反らして振りかぶるアイナー。
いかん、紙一重で避けるだけじゃさっきのお黒いのにヤられちまうっ。
避けるのは…間に、合わないっ!

947スメスメ:2008/04/20(日) 18:27:25 ID:STA8P/9Eo

「ッなら!」

振り下ろされる剣、飛び散る石畳、そして頭から真っ二つにされてオレ。
もう放送禁止なまでに脳天からいっちまってるよ…。

…ん?
何でこんな事言ってるのかって?
もちろん、お化けじゃないぜ。

こいつは『分身術』って言って、『気装術』の一つさ。
もう一人の自分を一時的に作り出して相手を困惑させる技で、達人になると一回の分身で何人も現れたり、分身自体が攻撃したりするらしいが、所詮オレなんかじゃあ一回の分身で一人。しかもまぼろし程度の物が限界だ。

と、言う訳でとっさに分身を使って近くの柱の陰に逃げ隠れした実況のアル君でした。

さぁて、本格的に分が悪くなってきたぞ。
どうしたもんかねぇ?

何て考えてたら、スゥっと消えていくオレの(真っ二つになった)分身。
それを見てアイナーは、
「ドコだぁあァぁ、アルぅぅぅぅぅ!!?でテコぉいッ!!」と、偽物だったと気付いて持っている剣を右へ左へと無闇に振り回し、周りのガレキを更に粉々にしながら暴れている。
あんなに暴れたら出たくても出れねぇってーの。

つーかどんどんヤバい感じになってきてないか?見境が無くなってきてるって言うか、なんて言うか…。
それ以上にアイツは本当にアイナーなのかが疑問に思えてきた。
…まぁ、それもアイツを止めてみれば全部判ることだ、今は目の前の問題に向き合おう。
アイツを止めるための今一番の問題は、あの剣だな。
ただの剣ならまだ打つ手はあるけど、あんな破壊力を持った剣。
しかも長距離攻撃が可能と言う反則エンチャント(技)付きときたもんだ。
あんなのとマトモに闘り合ったら命がいくつ合っても足らないぜ?

つー事はだ。
アイツの懐に入ってサッサと奪い取らないといけない…。
って、近付きたくてもあの黒いモヤモヤを何とかしない事にはどーしよーもねぇじゃねぇか。
かと言ってアイツの剣を素手で止めたり、相手の太刀筋に合わせて剣をたたき落とすなんてマネはできねぇし…。
更に言うと暴れすぎて気装術で何とか止まってた傷もまた開きかけてきてるからなぁ…。
と軽く頭を掻きながらあれやこれやと無い頭をフル回転させて…


しゃーない、
「イッチョ賭けに出るかっ!」



「ガアァアァァァァァァ!!」もう興奮しきって狂気状態のアイナー。
もはや手がつけられない程になってしまっていて、そろそろ何とかしないとヤバい感じだ。
「うおおぉぉい、オレはこっちだよ」と、挑発してみる。今思うと流石にワザとらしかったかな?ま、向こうは見境無くなってきてるし大丈夫だろ。

…へへっ、案の定突っ込んで来やがった。
当然、鋭く打ち下ろしてきたのに合わせてサイドステップで避ける。
そしてそのままアイツの左脇に潜り込もうとする。
が、まだ働く脳みそはあるらしい。
動きを読んで間髪入れずにそのまま横薙ぎをいれてくるっ!
ものの見事に胴体から真っ二つ…、なんて事にはならない。
当然、避けたと同時に分身を逃げる方向と反対側に移動させる。だから今オレはヤツの右側にいるわけだ。
やっぱりね、いくら動きが速くだってそれほど頭がうまく働いてないヤツの読みじゃ分身と本体の見分けは付くはずがない。そこをうまく利用すれば、こんな感じで追い込むことが出来る。
「またダマしたなぁぁぁぁぁ!!?」んなもん、騙される方が悪い。

怒り狂ったアイナー、しかし左に横薙ぎを入れたためにどうしても反応できない。
ここが最大のチャンス!

948スメスメ:2008/04/20(日) 18:31:31 ID:wSDL.nU6o

「オオォォオォォォ!!」

怒号を上げながらヤツのガラ空きの背中と言うより腰だな、やや中心より右下へ右肘を鋭く打ち込む!
肝臓打ちだ。
普通は人体の急所にこんな技を打ち込まれたら動けなくなるがコイツは違う、手を抜くなっ!ここで畳み掛けないと死ぬのはこっちだぞ!

ここは間髪入れずに、左足でヤツの右膝へ体重を乗せながら蹴り込む!

鈍い音と一緒に体制がガクッと崩れ、膝を着くアイナー。だがそれでも畳み掛ける!

蹴り込んだそのままの勢いで更に鳩尾へっ!

更に蹴り込んだ左足を振り抜きそのままヤツの顔面へ回し蹴りを打ち込む。

最後はその勢いのまま右腕へ飛びつき捻って倒れながら腕ひしぎっ!

骨の折れる鈍い感触と音と一緒に一気に地面へ倒れ込んだ。
やっぱり骨を折る感触は良い感じはしない。
だけどこれでフィニッシュだ。

「ふぅ、流石にこれで動けんだろう…」とつぶやきながらアイツの持っていた剣を奪い取る。



それにしてもこの剣、人間なんだよな?
人間が別の生き物になったり大きくなったり小さくなったり出来るのは聞いたことがあるけど、まさかこんなものにまで変身できるとは…。
とマジマジと見ていたら、ポンっと小さく煙を上げてもとの女の子に戻った。
それも生まれたままの姿で…

って、うわあぁぁぁぁぁぁ!

オレは急いで自分のカバンの中から毛布を取り出し、それで女の子をくるんでから近くの柱に寄っかからせた。

ふぅ、危ない危ない…。
ここは健全で善い子の為の小説スレ、コレ以上はヤバいからねぇ。

軽く冷や汗をかきながら改めて女の子に視線をやる。
彼女の真っ白な髪にオレのだろうか、血で一部が赤く染まってしまっている以外は疲れて眠っているだけのようだ。


さて、問題はこっちだな。
あれだけの人体急所に攻撃して、なおかつ関節もバッキボキに極めたんだ、流石に起きあがることはないだろうけど…。

不安になってアイナーの方に目をやってみた。
…良かった、ノビてるな。
でも、いきなり何であんなにもおかしくなったんだろうか…?
やっぱりさっき見せてた紅い石が原因なんだろうか?
んでもって何であの子と一緒だったんだ?
更に言うとあの紅い石がどうもバインダーの胸にあった水晶に似ているのが気になる。

………。


あー、もう!考えたって判るかあぁぁ!

とにかく、あの子を助けることが出来たんだ、それでOKにしようじゃないか、うん。

そう言えば、オレってバインダーを倒しに来たんだっけ。
ってアイナーのヤツが真っ二つにしちゃったし…、どうしよう?



ま、いっか。
何か証拠になるものだけ手に入れてとっととここを出よう。
と、バインダーの胸元で光る水晶玉が目に入った。
「お♪」良いものメッケ。コイツを持って行けば、まぁオレが倒したじゃないにしろ証拠にはなるか。そう考えて水晶玉を手にとって、更にアイナーの方に目が行く。おし、まだノビてるな。
あとで沢山聞きたいことがあるけど、取り敢えず暴れるといけないから手足を縛っておこう。
と、背負っているリュックに手を突っ込んで縛るためのロープを探していたときだった…。

なんと、アイナーが急に目をカッと開きゆっくり立ち上がった!
えっと…、膝が折れてるはずなのになんで立ち上がれるのかな?
てか普通なら、何週間もベッド上だぜ?

しかもアイナーはさっきまでとは一変して、眼に今までのような狂気じみた感じはなく人形のような無表情のままこっちを見てくる。
ふとオレの右手に持っていた物を見るや否やニィっと笑み、
「なんだ、オマエが持っていたのか」

949スメスメ:2008/04/20(日) 18:35:36 ID:wSDL.nU6o
…また訳の分からないことを言い始めたぞ、コイツは。
「オレはそいつを探しにこんな所にまで来たんだ。そいつを渡してくれないか?」
「…ソイツってなんだよ?」うん、至極当然の疑問だよな。

「お前の持ってるその紅い水晶玉の事だよ。お前だって冒険者の端くれなら『RED STONE』の事位は知っているだろう?」


…ハイ?

これが?

あの伝説の『RED STONE』デスカ?

「まさか。こんな所にそんなもんがあるわけ無いだろう」そう軽く笑い飛ばしながらオレは右手の水晶をポンポンと軽く宙に上げながら答えた。

「その『まさか』なんだよ。オレだって最初は疑ったさ、だがある魔導士に貰った赤石の欠片を貰ってな。『それを飲み込んでみろ』って言うもんだから言われるままにしてみたんだよ。そうしたらどうだ?身体中に力がみなぎって来るじゃないか。そんなモン見せられたら信じるしかないだろ?」
少しだけまともになったと思ったら、今度は何か押し売りの人みたいな感じで語ってきやがるな。

「オレはもっと強くなりたかった。そうしたらそいつが言ったんだ『自分の言う通りにすればもっと強くなれる』ってな」
「…そんなうまい話あるわけないだろーが」
「あぁ、なら証拠を見せてやるよ…」そう言うとヤツはちょっと前に見せた紅い石を口含んで飲み込んだ。
そしたらナント、アイツの身体が膨れ上がった。

へぇ…、これが剣士達が使う『マッスルインフレーション』ってやつかぁ…
って、そんなレベルじゃねぇ!普通、人の技で体のサイズが2倍に膨れ上がる事なんてあるわけがない。

まるで化け物だ。

てか、おかしいだろ!?
「どうだ〜、アルぅ?これで分かったろ。この身体、この赤石さえあればオレは無敵なんだよ」と全身に血管を浮き上がらせ、血走ってる目をオレに射抜きながら語りかけるアイナー。
もうオレの危険センサーが体の中でワンワン鳴り響いてるぜ。

「だからな…、その石をオレに…」と話し始めた直後だった。

鋭い光線が目の前を通り過ぎたと思った瞬間に突然オレの身体がふわっと浮き、同時に背中へと突き抜ける衝撃。
気が付いたときには勢いで近くの柱に吹っ飛ばされていた。

「ガッ!!」壁に打ち付けられ、一瞬痛みで息が止まる。
また斬られちまったのか?
打ち付けたときの痛みでか全身が痺れたような感覚に陥って自分の身体がどうなっているのかが分からない。
ただ痺れるような痛みの他に灼けるような痛みが走り、辛うじてこれが斬られた痛みだと言う事を否が応でも分からせる。
軽くパニックになった状態でふと、アイナーの方へ目をやるとさっきまでオレが持っていたはずの紅い水晶を血に塗れた手が握っているじゃないか。

「てめっ、いつの間に…」痛みでむせびながら聞くと…

「ふふふ、これで最高の肉体がオレの物に…これでオレは最強になれるんだ」
ダメだ、アイツ。
もう完全に目がイっちゃってやがる。

ヤバい、こっちはこっちで痛みのせいか、血が足らないせいか視界がボヤケてきた。
ここで初めて自分の体に目がいくと今まで術で止めていた傷と鉤爪で斬られたような別の傷があり、尋常ではない量の血が出ている。
こりゃマジでやばいぜ…

くそっ、身体に力が入らねぇ…。
流石にここでオレの人生も終わっちまうのか?

ごめんよ、じっちゃん。オレ、立派な武道家になれそうにないや…。

ドクン…

身体が熱い、全身が脈打ってる感じだ…。
『死ぬ』ってこんな感じなのかな?

ドクン…

ああ、アイナーがこっちにくる…。
放っておいてもこの傷じゃすぐ死ぬのに…ご丁寧なこった…。

ドクン…

ってかあの子は無事だろうか?
もしまたアイナーに捕まったらただの武器として使われ続けるんだろうか?
何とか気が付いて逃げてくれてたら良いんだけど…。


ドクン…


イヤだなぁ…、こんなにあっさり死ぬなんて…。


ドクン…


あぁ…だ、め…だ…。
も…ぅ…いし、きが……。


ドクン…

950スメスメ:2008/04/20(日) 18:49:36 ID:CnSSQNXYo
どうも(自称)小説スレ界の浦島太郎ことスメスメです♪
いつの間にやら900も後半になってきますね。
オレもPCで書いて投稿したいぜ(いつもは携帯電話から投稿)
何やらイベントをたくr…もとい、考えているようで羨ましい限りですたい。

と言う訳(どう言う訳だよ)で駄作ながら根気よく投稿です。
目指せ小説スレ常連客!


…さてか〜なり昔のですがコメント返しでっす。
68hさん
ナカーマ!
もっと話が作り込めたらアイナーも突然現れたりいきなり友達だと言う話がさりげなく出せるんでしょうけれどもね…(´・ω・`)
相方に関してはホント自慢しようと思えばひたすらできますねっ!
因みに私もフッと思いついて行動していくタイプなのでで、できるだけ最後まで書き上げたいです(いつになるやら…)

白猫さん
いや、もう先生の作品は毎回読ませて貰ってます(感想書いてない癖にぬけぬけと…)
まぁ、自分のは読み込むほどの質と量がありませんが駄作でも読んで感想を貰えれば狂喜乱舞します(ぉぃ

黒頭巾さん
少年マンガですか。
自分としては意識せずに書いてるつもりなのですが中々どうして…
余談ですが13の奥義は実際に考えついているのだけだと14個なんですよね…。
やばい、数が合わない…。



名前の件ですが沢山の方からお返事を頂けました。
正直ここまで返事を貰えると思っていなかったのでびっくりしてますよ、えぇ。
なんつーか自分が無闇に考え過ぎなのだと言う事が分かっただけ十分な釣果だったのですが、やはりこれも自分の一つの『味』と言う事でこれからも無い頭を振り絞って相方任せに考えていこうかと思います(マテ

さて、調子に乗って質問シリーズ『第2弾』ですよ、皆さん!
今回は

『どうやって話の構成を考えていくか』ですっ!

ぶっちゃけ自分は妄想族(自分で言っておいて痛いなコレ)なので妄想に任せてあらすじだけ考えてあとはノリです。
…きっとこんな事だから遅筆なんだな(それ以外にも沢山要素はあると思うが)
と言う訳で是非皆さんの知恵をお借りしたい!と言う訳です。
まぁ、すこし盛り上げのためのネタにでも是非お返事待ってますデス。

951◇68hJrjtY:2008/04/20(日) 23:06:35 ID:PdgPmluc0
>ウィーナさん
ハインツとピザ子…もとい、暁との漫才が楽しくて仕方ありません(笑) 魔人ブウ華って…DBですか(ノ∀`)
「十二番目」と「四番目」の交戦すらもこの二人の既知するところなると、二人もやはり黒幕か或いはそのひとつなのですね。
激戦を繰り広げているであろう月舞とみょんちゃん、そこに現れた謎の"キリングドール"。これは一体誰なのか。
悲しみに暮れるニナがもしや、とか思ったりしてますがそれはあまりに唐突か。
でもニナもどうなってしまうのか分からない状態ですね…。何やら事態が悪い方向へ向かっていそうですが、続き楽しみにしています。
---
今回のイベントで一番譲歩してくださったウィーナさん、4/26は大丈夫でしょうか…?
結構勝手に決めてしまいましたが、無問題ならば感謝の限りです。


>スメスメさん
「怒号(?)」、「分身」、「仰け反る」…と、武道マニアならたまらないスキルの応酬の数々。
アルのじっちゃん直伝の技「気装術」というオリジナルスキルに基づいているこれらスキルの戦闘シーン、読み応えありました。
ウィーナさんの魔人ブウ華に次いで"気合を入れると髪の毛が逆立って金髪化"とは(ノ∀`*) なんてシンクロ(笑)
アイナーも心配ですが武器化していたであろう少女も心配…。しかし同時に「紅い石」の実態も明らかになりつつありますね。
それより何より意識が飛んでいくアルが一番心配です(汗) ともあれ、続きお待ちしています!
---
チャットイベント企画してますよ〜!スメスメさんも希望日あればどうかお書きください。今のところ4/26(土)17:00〜開催と暫定中。
このスレの住人様全てにイベント参加お願いしたいくらいなので気にせずに参加してくださいね♪
はてさて、今回の質問…。話の構成の考え方。
私も妄想型(笑)なのでひどい時は主要キャラだけで物語を展開させようとしたり、
たまたま思いついたたったワンシーンのためだけに壮大な長文小説にしようとしたり。多くはそのシーンまで書けないんですけどね(笑)
皆さんの後書きでちらほら耳にしていますが、プロットを組み立ててしっかり構成する皆様にはただただ尊敬するばかり。
感想屋の分際で調子に乗って質問に答えてしまいました!(/ω\*) 失礼しましたー。

952◇68hJrjtY:2008/04/22(火) 10:40:43 ID:PdgPmluc0
>スメスメさん
しかし何故に間違うのか…相当なバカですねorz
19:00開催です(汗

一応21Rさんと連絡取れまして、チャットの方は参加できるそうです。
FATさんとみやびさんは連絡取り中…

953ウィーナ:2008/04/23(水) 17:15:19 ID:3RWVAaPc0
(。・ω・)ノ゙ コンチャ
時間も日にちも大丈夫だとおもいます〜
すみません、私に合わせていただいて;;

前回の小説で時間がなく、コメントかえせなかったのでまた次回かえさせていただきます。


あと、絵なんですが、前うpしたところにアルビ、メアリー+α追加させたので、
ハンズフリーでよかったらどーぞ!

色つけたりすると軽く3日かかるので希望があったらしたいとおもいます。
男キャラはアルビでこりごりですorz

ルチノ、メアリー、ニナ、月舞、暁の5人から
1人描くので、希望どーぞ・w・

954之神:2008/04/23(水) 18:08:59 ID:KiavbBqI0
>>ウィーナちゃん

ルチノーっ!を希望しまふ…。


小説どうしたかって…?
それはチャットイベ終わったらにします(´ω`*

そして…他の作家さんのキャラを書きたくなってきたなーという今日この頃(-ω-`

955白猫:2008/04/23(水) 22:41:39 ID:sO59c5e.0
えー、チャット会まであと三日となりました。
当日テンパってできないであろう注意事項を書いておきます。

①チャットでの名前は原則小説スレのものを使用してください(小説スレ住民でない方は適当に(コラ)。

②背景は非常に明るい色ですので、黄色や水色等、読みにくい文字色は控えるようにしてください。

③「秘密の鍵」という欄は必ず空欄にしてください。

④他人を中傷するような発言・荒らし行為はもちろん禁止です。

⑤誤って知られてはならない情報等が漏れてしまった場合は削除いたしますので白猫に報告お願いします。

⑥アニメやゲーム等、他の参加者様が会話に入れないような話題は控えるようにお願いします。

⑦無理しないでください。パソコンは一日二時間以内に収めましょう。

⑧職人の皆様は「自分の小説がどう評価されているか」知りたいでしょうが、個人の小説に関する話題は感想屋の方や読んで楽しんでいるだけの方、他の職人の皆様のことを考慮するようにお願いします。
するなとは言っていませんが、二十分も三十分も自分の小説について語る、などという行為は控えてください。

⑨皆さん楽しんでください。


以上9つを守っていただけると幸いです。
…え、あ、いや、仕切っているわけでなくチャットの管理人としての最低限のお願いをですね(汗)


さて、これだけではさみしいので今回はスメスメさんの質問にお答えすることとします(六冊中に19章を投稿不可能と判断したため

>スメスメさん

さて、話の構成をどうやって考えるか…ですか。
要するに私の小説執筆に至るまでを語ればよいのでしょうかね?
私の場合、RSS作品はこれで三作目となるのでガチで冒険ものにする予定でした。
…あ、これは余談ですね。さて…?

世界観云々はRSの世界をそのまま使用しましたので特に苦労はしませんでしたね。
後の肉付け的な設定は

「時たまふっと思いつく」

のが大半です。食事中や授業中やクラブ中に。
技もほとんど思いつきで、これらに設定を付け加えると「これはイケるorイケない」というのが見えてきますね。
私の場合「削る」行為を行わずに「加える」行為を行う人間なので、
「不必要なものがあれば必要に応じて削る」というわけではなくその「不必要なものに周りを合わせて肉付けする」という構成方法を取っています。
だから最初はクリスマスSSになるつもりがこんなどデカい話に……orz
最初は「パペット」のぱの字も出てなかったのにorz

では今回はこの辺で失礼します。白猫の提供でお送りしました。

956之神:2008/04/24(木) 00:30:09 ID:KiavbBqI0
>>白猫さん

ハーイ、注意します…!そして提供ありがとうございます。

>>スメスメさん

私も答えておきます。

私の場合は、
敵(話題)登場→サブキャラや新キャラ登場→主人公ら参入→誰かしら活躍→誰かしら問題児→収まる
みたいな流れが多いですねー。
なんかいつもこの展開にストーリーを乗せてるような感じになっちゃいます…ちょいマンネリ(´A`
あとはキャラのダメなところをいじくってストーリー面白くしたり…とかですw

>>ウィーナさん
ウィーナちゃん…って何だよなorz
     ここまでヴァカな誤変換は久々…


それと、あれだけ青鯖の戦士で脅したにも関わらず、転載されたのには吹きました(-ω-
脅し足りない?いやいやいや…

957◇68hJrjtY:2008/04/24(木) 06:58:33 ID:NKfHSvEE0
>白猫さん
凄いっていうか流石!チャットの注意事項を改めて書くという手回しの良さ。ありがとうございます。
普通のチャットってあまり行ったことのない私ですが、白猫さんはチャット常連様だった雰囲気が…。実際そうなんでしょうけども(*´д`*)
そして⑧。「自分の小説がどう評価されているかを…」という項目ですが、
もちろん読み手側もこのスレ同様やたらな催促やリクエストは控える方向でいきましょう…とか偉そうなこと言ってる自分が一番怪しいのですがorz

>之神さん
えぇ、イラスト転載されちゃったんですか…?
どこのサイトか分かれば文句言いに行きますよ(怒
やはりパス付きのアップローダーがいいかもとか思いましたが、このスレ内でパスを言うとしたら意味ないのかもですね…。
或いはイラストの端っこに直接「之神」ってマークを描いてしまうとか。しかし、転載なんてする人が居るのかヽ(`Д´)ノ

958◇68hJrjtY:2008/04/24(木) 16:49:28 ID:nGghKIB.0
  
      l> 第一回チャットイベントの告知 <l

 改めてチャットイベントについて告知させていただきます。
 21Rさん提案、白猫さん場所提供によりチャットイベントを開催します。
 参加資格などは特にありませんが、このスレの住人様を優先します。
 それについては書き手さん、読み手さん、ROM専さんは問いません。


   日時:4月 26日 土曜日 19:00(午後7時)より   (終了時間未定)
   場所:>>881  他のスレ、掲示板などへのURL転載は遠慮ください。
   心得:>>955  参加希望者様はご一読ください。特にチャットでのHNについては重要。

 各人の当日の参加を楽しみにしております♪出しゃばり68hでした〜。

959名無しさん:2008/04/24(木) 20:36:13 ID:Peb/s6ks0
ageますね^^;

960名無しさん:2008/04/24(木) 21:34:11 ID:KqJ..EUs0
http://moppy.jp/top.php?XWLeS このサイトは今人気の携帯お小遣いサイトです。
ここは会員登録して貰える広告サイトが豊富で、Webmoneyにもできて、月3000円も結構楽に出来ます。

961名無しさん:2008/04/24(木) 21:37:41 ID:nx3vTAeA0
>>960
age効果大きいな

962之神:2008/04/25(金) 00:15:27 ID:KiavbBqI0
せっかく一番下まで下げたのに…orz

963黒頭巾:2008/04/26(土) 20:46:30 ID:fou9k2gM0
レス出来てないですが、埋まるまでにカキコ出来るか怪しいのでテンプレの修正について一言。

sageについての参照URLが現状では上手く作動していない様です。
おそらくコレで飛ぶと思いますので、次回テンプレ作成時にご利用頂ければ幸いです。

http://jbbs.livedoor.jp/game/19634/storage/1117795323.html#562

重いとすぐに反映されない場合もありますが、暫く大人しく待って頂ければ目的のレスに飛びます(`・ω・´)ノ

964之神 @チャットイベント後カキコ:2008/04/26(土) 23:37:01 ID:kGOOfRts0
l> 第一回チャットイベント <l


別に義務ではありませんが、書き込みしておきます。

えー、チャットイベント…それぞれ作家さんの話が聞けたり、口調は性格を垣間見たりと、とても充実していました。
なんと私の場合、6時〜11時w
会話のネタが尽きないことも驚きですが…やっぱり話を書く作家さん、個性的でした。

途中、少し事件が発覚しましたが、チャットイベント成功と思っていいのでは、と。

68hさん始め、21Rさん、スメスメさん、ウィーナさん、白猫さん、黒頭巾さん、国道310号さん、ESCADAさん、白龍さん。(書いてない人居たらゴメンナサイ…
沢山の作家さん、感想屋さん、ROM専さんが参加してくれました。
参加できなかった方も、第2回、あれば参加して欲しいものです。

新しい企画や、絵、小説についての話についてかなり濃く話せたと思います。

いろいろネタバレや、リアについての暴露もありましたがw

参加者の皆さん、ありがとうございました。参加して無い方も、次回、機会があればよろしくです。

では引き続き、小説スレをお楽しみ下さい。
                                                          チャットイベント後、之神。

965◇68hJrjtY:2008/04/27(日) 01:43:48 ID:xHVy/wZw0
l>チャットイベント終了のお知らせ〜。

皆さんありがとうございました。無事終了しました。
まだチラホラ残ってますがもうお開きムードです。今から参加したいって人は残念ですがまたの機会に!
予想外に深夜まで続きましたが、皆さんの絵や話などスレでは見えないモノが見えて大変楽しかったですヽ|・∀・|ノ

チャット提供の白猫さん、そして提案者の21Rさんを始め、たくさんの参加者様ありがとうございました。
ROM専さんの参加もあったのが個人的には嬉しかったです。
白猫さんからは毎週定期的にチャットしようかという話も出ています。また企画が出次第告知させて頂きます。

企画といえばチラッと「ハロウィーン・リレー小説」や「各主人公天下一武道会」なんかも出てました(笑)
この辺も期待しながら、それでは。68hでした。

966幕間:2008/04/27(日) 10:44:00 ID:of5VjV0.0
兄弟に見られるのが嫌で参加するにもできなかったって愚痴


・・・愚痴?ここ小説スレだぞ落ち着け俺

967姫々:2008/04/27(日) 12:02:40 ID:VbnAj5DM0
やっと大学落ち着いてきたのでおとつい辺りから書き始めたわけですがチャットイベント終わってた‥‥(´-ω-`)
ちょっと、いや結構、いやいやかなり残念です。またの機会には参加したいのでまたの機会を作t(ry
 半端な所で切っていたのできっと知らない人はまったくわからないと思います。
まあ、全回の流れを言うとスウェブタワーの近くに住み着いている盗賊団の
棟梁がセラの妹だったって言う所で昔話が完結したところだったと思います。
と言うわけで前スレ>34-37から続きます。


「セラ、泣かないで‥‥。」
 私が何を言っても目を伏せて首を振るのみ、私には何も出来ない。苦労を知らない、気持ちも分からない。
弟も妹もいない。お父様もお母様も私をちゃんと見てくれる、リリィやスピカだっている、家族に見放されるという
事が、どういう気持ちなのか私には分からない。
 分からない‥‥、けれど――
「セラ、気持ちは分かるけど‥‥」
 嘘しか口に出来ない‥‥。セラの気持ちなんか分からない、なんていえる雰囲気ではない。
リリィならなんて言う?タスカも早く帰って来てあげて‥‥、私じゃ力になってあげられない‥‥。
「譲ちゃん」
不意に盗賊さんの一人が話しかけてきた。私のほうではなく、セラの方を真っ直ぐに見ている。
「妹さんを嫌いにならないでやってくれ。知ってるんだろ?あの子の眼の事」
「‥‥」
セラは無言で頷く。眼とはなんの事だろう?少なくとも私が知らない理由でタスカはここにいるんだろう。
「まああの子がここにいる原因は多分半分はあんたの母親にあるんだろうが‥‥、まあなんにせよあの子には
助けられた。あの子はいい子だよ、少なくとも1年前から世話焼きな所は何にも変わってない。」
 助けられたとはどういう事だろうか?
「助けられたって何してもらったの?」
 私がそう訊ねると、今私に気づいたような表情でこちらを見て言う。
「ああ‥‥。あれは1年くらい前か。盗みが失敗続きでな。この通りの追いはぎ業、身より何か無いし
 仕事がうまく行かなきゃ金もない、盗みが成功しなきゃ食べ物さえ無い。ついに動ける奴は全体の
 半分を切っちまった。そんな時にふらりと現れたんだよ。」

968姫々:2008/04/27(日) 12:04:46 ID:VbnAj5DM0
『「もっとうまくやりなよ。人数はいっぱいいるんだから‥‥。」
 「食べ物取ってきてあげるよ。水も汲んでくる。」
 「ブラウンベアー狩ってきた。毛皮剥いで、明日スマグで売って来るから。え?肉は食べる?じゃあ今から
  薪も拾ってこないと。おなかすいてると思うけど待っててね。」』


「こんな具合にな。屈辱だったぜ?何で俺達はこんな子供に助けられてるんだ?ってな、けどブラウンベアー相手に
 かすり傷一つ付けられずに狩ってきた、こんな芸当俺達には出来ねえ。見た目の数十倍強いって位すぐ分かった。」
「もしブラウンベアーを狩って来なかったら襲う気だった?」
 私は尋ねる。すると盗賊さんたちは一瞬目を逸らし、バツが悪そうに「ああ‥‥。」と頷くのだった。
「あの子はここに一晩泊めてくれ、そう言ってきた。明らかに冒険者、金はそれなりに持ってるだろう。
 そう思ってな、寝るのを待って身包みを剥いだ。」
「最低‥‥」
 助けてもらってそれはあんまりじゃないか。
「なんとでも言え、あの子も無一文同然だった。そしたら流石に目を覚ましてな、自分の姿を見てさ、
 ちょっと恥ずかしそう笑ってに言ったんだよ‥‥「そんなに困ってるなら言えばいいのに。」ってな。」
 正直タスカもお人よしだな‥‥と思った、私はそうはなれそうにない。いきなりそんな事をするのは軽蔑
の対象にはなっても庇護の対象にはならない。許せない、私ならそうだった。
「そしたら日が昇る前に出かけて行ってな、逃げたかと思ったが日が昇ると同時に帰ってきたんだよ。
 今度は色々食べ物を取ってきて料理を作ってくれた、前日の残りの熊の肉、近くで取れる木の実、
 食べられる草‥‥、衰弱が酷いやつには前日毛皮を売り払った金で米を買ってきて
 粥まで作ってくれた。」
「タスカもよくやるねえ‥‥」
 今度は口に出てしまった、しまった‥‥そう思ったけど盗賊さんは首を振る。
「まったくだ‥‥。俺達は全員で謝った。許される事じゃない、けどあの子は笑ってた、
 「許してあげる、けどここに居させてくれないですか?目、離せないから。」そう言ってな‥‥。」
「断らなかったの?」
 私は尋ねる。
「もちろん断った。もしかしたらこいつは俺達の仕事を分かっていないんじゃないかと思ってな。
 けど笑って言ったんだよ「手の掛かる人の面倒は慣れてるから。任せて、でも剣は教えて」ってな。」
「それで?」
「ん?ああ‥‥、目が笑ってなかったからな‥‥」
 タスカもいっぱいいっぱいだったのだろう。無一文で旅を続けてきたのだ、セラによればロマの村はここから
ずっと南、それだけの距離を移動してくれば流石にそろそろ諦めが出てくる。
「俺達は頑張ったよ、こんなんだから職は無い、けどあの子の食い扶持くらいは集めないといけないだろ?
 幸いここを通るのは全て冒険者、襲っても誰も文句は言いやしない。」
 クリスティラさんが言ってた急に団結力が上がったってのはもしかして‥‥。
 まあ‥‥、そう言うことなんだろうな。
「まあもっとも、剣の腕まで抜かれちまったがな‥‥。譲ちゃん、あの子だってあんたを嫌いにはならないさ。
 盗人をしている所を見られたく無かったか、それとも聞かれたく無かったんだろうよ、あの口調をな。」
「口調?」
「ああ、普段はあんなのじゃないよ、さっきも言ったが一年前と変わってない。ただ盗人をする時は相手に
 舐められるってんであの口調なのさ。」
「ふーん、でさ。あと一つ聞いていい?」
「ん?」
 盗賊さんに尋ねる。最初の言葉、もう一つの疑問
「タスカの眼って?」
「それはそこの譲ちゃんだって知ってるだろ。見ちまったんだよ、会った最初の日の事だ、熊を獲ってきた
 あの子の眼は忘れねえ‥‥。だってあれは――」

969姫々:2008/04/27(日) 12:05:17 ID:VbnAj5DM0

「言うなっ!!」
 岩陰から飛び出してきたタスカが盗賊を制す。すると岩陰からリリィも出て来て言う、
 ずっと隠れていたのだろうか。
「言わないであげてください。きっとその内分かる事でしょう。」
「あ‥‥ああ。すいません‥‥」
盗賊さんは振り返り、大きな岩へもたれ掛った。
「お帰り、タスカ。」
「うん、ただいま。」
 雰囲気がまるで違った。乱暴なイメージは失せ、目を伏せてただそこに立っていた。
 私と同い年か、もしかしたら年下か‥‥。私にはああはなれない、襲われかけてなお、笑う事は出来ない。
「リリィもお帰りなさい。」
「ええ、ただいま戻りました。ルゥ様、こちらへ。あなた方もいらしてください。」
 そう言って盗賊さん達の方を向いて左手で合図する。
「あー、いや。こっちに来てくれ。部屋に案内するよ、もう辺りは暗い。泊まっていきな。」
そう言って今度は向こうが手で合図する。
「ああ、ではそうさせていただきます。」
「リリィ、セ――」
 セラはどうするの?そう訊ねようとして振り返ったとき、言葉に詰まった。
 座り込んでいるセラを、タスカが見つめていた。
 何か話したくてもきっと私達がいると話せない、と言う事なのだろう。私は無言でリリィに手を引かれ、その場を
離れた。

970之神:2008/04/27(日) 16:49:44 ID:2rpozRt60
1章〜徹、ミカの出会い。
-1>>593―2 >>595―3 >>596-597―4 >>601-602―5 >>611-612―6 >>613-614
◆――――――――――――――――――――――――――――――――――――◆
2章〜ライト登場。
-1>>620 -621―2>>622―○>>626―3>>637―4>>648―5>>651―6 >>681
◆――――――――――――――――――――――――――――――――――――◆
3章〜シリウスとの戦い。
-1>>687―2>>688―3>>702―4>>713-714―5>>721―6>>787―7>>856-858
―8>>868-869
◆――――――――――――――――――――――――――――――――――――◆
4章〜兄弟
-1>>925-926 ―2>>937 ―3>>954 ―4>>958-959 ―5>>974-975
◇――――――――――――――――5冊目―――――――――――――――――◇
-6>>25 ―7>>50-54 ―8>>104-106 ―9>>149-150 ―10>>187-189 ―11>>202-204

◆――――――――――――――――――――――――――――――――――――◆
5章〜エリクサー
-1>>277 ―2>>431-432―3>>481-482―4>>502―5>>591-592―6>>673-674
-7>>753-754―8>>804-806―9>>864-866―10>>937-939
◆――――――――――――――――――――――――――――――――――――◆
番外

クリスマス  >>796-799
年末旅行>>894-901 」5冊目
節分  >>226-230
バレンタインデー>>358-360 >>365-369
雛祭>>510-513
ホワイトデー@シリウス >>634-637
◆――――――――――――――――――――――――――――――――――――◆
キャラ画>>907

971之神:2008/04/27(日) 17:23:01 ID:2rpozRt60
α

「ふう…。ウィンディ、ありがと」シルヴィーは最上階のフロアに降り立つと、巨大な鳥に向かって言ったのだった。

ここから、下に行けば降りれるらしいが…さてどうやって降りるのやら。
「徹さん?」
「ハぃ?」 
「来たはいいですが、この先は?」笛を手で弄びながら、緑の瞳はこちらを見ていた。

この後どうするか、それは下層へ行きなるべく社内で偉い人と会合…問題は、どうやって行くか、そして会っても話せるのか。
後者はいいとして…今の難題は行く方法だな…。

「ちょっと…待って下さい」俺は辺りを見回した。

ビルを中心から貫く吹き抜け天井。それを中心に周囲には廊下…見た感じ部屋はあるがエレベーターのような物は
見当たらない。シラミ潰しに部屋を回ってみるか…いや。

下を見遣ると、今もぐってりと倒れこむ社員らが、アリのような大きさにしか見えない。
フロアの赤い絨毯は、俺を急かすかのようだった。

κ

「…!」アルシェは驚き立ち止まった。
「ねぇ、襲ってこないよねー?」エトナは散々走ったにも関わらず、疲れた様子は無い。

「襲ってきても構わん。だが…」
「だがー?」

「何でここにいるか…だな。モンスターをわざわざこちらへ持ち込む意図が分からない」
「ペットとかじゃないかなー!?」
「そう安易な意味でだと思いたいがな…とりあえず、進むぞ」

アルシェが走るそのフロアは、不気味なライトアップにより、モンスターを余計に狂気的に見せている。
フロアの外周は水族館。内側に廊下。そしてその内側にはただ、打ちっぱなしコンクリートの壁があるだけだ。

「ん…?」
走り終わった終着点。そこには…

「アルシェー…これぇ、廃人…?」
「学名はアライブコープス。生ける屍の一つだ。通称廃人…そして」

「ここを通してくれないようだな」

―ゲヒヒヒ、ヒサビサ、フツウノニンゲンダ…ゲヒ

「通りたいんだが?」アルシェは無視して廃人に言った。

―バーカ、トオスワケネエダロ。オレハオマエラモ、オレミタイニ、シテ、ヤリタイカラ、ナ。

「え、アルシェがあんなふうになっちゃうの!?」
「ならん」

―ソレハオマエノウデシダイダロ

「戦闘は、何日ぶりだろうな、エトナ」
「うーん、2週間ぶりくらい?」

厚いコートがアルシェの身体から離れ、フロアに投げ捨てられた。
細身のスーツのような格好になったアルシェ。サングラスは外さないが…その眼力は、レンズ越しにも伝わる勢いだった。


「退屈だろう、門番は。成仏させてやろう…」

「私も見張り退屈だったよーう!」
そうエトナは言うと、身体が光に包まれた。
グラマラスな体系の美少女が現れ、それはまた話を続ける。

「たまには、アルシェも見張りやってよね!」

972之神:2008/04/27(日) 17:47:34 ID:2rpozRt60
γ

「開けないと、仕事の苦労は水の泡!」

「でも開け方ミスると死ぬ!」

「でも開けないと…どうするよライト!」

…こんな事やってる場合じゃないな('A`

108個…何かの数字だった気がするが…んー…?

上に目をやると、詩のようなものが書いてあった。

――――――――――――――――――――――――――――――
九十八もの年数を気ままな睡眠に費やした、そんな奴を愚か者と思うか。
修得の義務も惑わされることも、この色の無い世界では無い。
欲が深い者には向いて無いであろうな。

さて、こんな世界にいる奴だが、もう一度問う。愚か者と思うか。
――――――――――――――――――――――――――――――

「なんだこりゃ…意味わかんねぇし…」
俺は考えるよりも先に、また無線機に話しかける。

「オイ」
「はい」
「今読んだのが書いてあった。鍵は108個。鍵穴に番号が振ってある…」
「解け、と」フィアレスが、少し考え込む。

「そういう事だ。そもそも何で108なのかもわからん俺が、適当に鍵穴空けても当たらないと思うし」
「少し…」 ん?

「少し考えます。すぐ返事を返せると思いますが」

「頼んだぞ」
俺はそうして、しばらく返事待ちをすることにした。

973之神:2008/04/27(日) 17:52:33 ID:2rpozRt60
こんにちわい、之神です。

なんか素人が手を出していいのか、108煩悩。
皆さんもググるなりで推理してみては、この鍵穴No当てクイズ(笑

答えは次回小説でしょうかね…。

では、引き続き小説スレをお楽しみ下さい。
之神でしーた。

974◇68hJrjtY:2008/04/27(日) 20:10:28 ID:xHVy/wZw0
>姫々さん
タスカとセラの過去も悲しい話でしたが、続いてタスカが盗賊団のひとりとなる顛末もまた覚悟が覗えますね。
「見ていられないから」という理由だけで彼らの元に転がり込む。そして、今の今までリーダーとして立派に生きてきた。
前回も言ったものの改めて、あそこのカスターに会うたびに別の思い入れをしてしまいそうです( ´・ω・)
タスカがセラと交わしたい言葉。この二人にあるわだかまりが晴れることを祈りながら、続きお待ちしています。
---
物語再開、改めてありがとうございます!
チャットイベントですが、今後も定期的に開催しようという話が出ています。毎週、或いは隔週とか。
URLさえ押さえておいてもらってたまに覗けばチャットルームには誰か沸いてるかもしれません(笑)
ただ入室しないとログが読めない(参加者確認はできます)というチャットなので、ご注意を。

>之神さん
徹とシルヴィーは順調ながら、アルシェとエトナは戦闘シーン突入ですか…!
廃人がこんなところに居るということは各パートの先にも何かしら居るのかもしれないですね。
実はきっと強いんだろうなぁとか色々妄想していましたが、次回戦闘シーン出るのでしょうか。わくわく。
そしてライトの方は煩悩謎解き…個人的な話ですがこういう謎解きとか好きです!
しかし難しい…98とかそれらしい数字は出ていますが、108の煩悩って自体名前しか知らないというorz
ライト、そしてフィアレス、頑張れ!(何  続きお待ちしています〜。

975ワイト:2008/04/27(日) 22:27:39 ID:H2lAB4Qk0
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「只の雑魚じゃねぇのかよ…!こりゃちょっと殺るのに手間ぁ…掛りそうだぜ。」
「何抜かしてんのぉ?」「弱い癖に粋がるなよ!」「カーッ!カッカッカカッカカッカッ!」
「ふふふ…私の忠実なる手下共よ…!命令を下します!ラータを八つ裂きにしてしまいなさい!!」
主人から下された命令には、ラータを葬る以外に無い。それを合図にデスナイト達は大剣を構え始める!

「主人の命令は絶対って訳か?仕方無いな…!片付けてやるぜ!」
ダンッ!ラータは言い終えると同時に近くのテーブルに飛び乗った!
ダッ!ドドッ!ダダッ!ドドッドドッド!ダダダッ!ドドドッ!!
即座に大勢のデスナイト達は我先にと、ラータの飛び乗っているテーブルに襲い掛る!!

「格好の餌食だよぉ?」一匹のデスナイトのみ、主人の護衛に回っていた…!そして
主人はラータが、この状況を如何にして覆し、逆転するのか…?その様子を伺っていた。
しかし…ラータは、一向に反撃する気配を見せようともしない…!

「高みの見物って訳か?まぁ…今俺の側に近寄れば、今頃吹き飛んでたと思うけどな?」
「ふふふ…何を負け惜しみを…!この人数の差を、覆すのは不可能ですよ?」

カチッ!カチンッ!カチッ!
大勢のデスナイト達が、ラータに一太刀入れる範囲にまで達したその瞬間!
ヒュイィイイイィイイィイインッ……!
「――――――!!」「嘘だろぉおぉぉ!!?」「何時の間に仕掛け…!」

ズッ!!ドオォオォオオォオオオンッッッ!!!!!
一瞬の内に眩い光に目を奪われ…!息を吐く間も無い!凄まじい大爆発を引き起こした!!!
周囲の有るもの全てを巻き込み、デスナイト達は絶命し…数秒立った後、その姿は完全に消滅していた…!

未だに周囲は爆発音と黒煙に包まれ…!主人は爆発自体は逃れたものの、眩い光を直視した所為か
数分視界を奪われ、行動出来ない状況だった…!その数分の内に!ラータは次の攻撃に出ていた!!

「後は…行くぜ!!ダブルスロー!!!」
ヒュバッ!!掛け声と共に、黒煙の舞い上がる中に数本のダートを放り込む!!
キンッ!キィンッ!幾つかのダートは、堅い金属の様な何かに命中した…!
ラータは身の危険を感じ、一本のダートを手に取る…その刹那!!!

ドドドドドドッ!!ヒュンッ!!!カキィィイインッッ!!!!
其処には、ラータと一匹のデスナイト…両者対峙し立ち尽くしている状況…!

「うぁ…ぐぁ…!」やっと視界の回復を果たし、主人が最初に目にした光景は、
ラータは平然と立ち尽くし、デスナイトは崩れ去ろうとし、今にも消滅寸前だった…!
「ご…ご主人様あぁ・・・・・・」「え…あ…?」主人は声を掛ける間すら無く…塵と化し散って逝った…

976ワイト:2008/04/27(日) 23:09:06 ID:H2lAB4Qk0
久し振りに書き込んで見ました(^ω^*)随分書き込まない間に…
自分自身、凄い下手な文章に成って来ている様に感じているのは秘密…
そして続きとなると、其処まで考えて無いんですよねぇ…何時に成る事やら?

>>姫々様
お初御目に掛ります。中々感想を述べられない、新参者のワイトと申します。
実は随分前から、物凄い物語の展開が気に成っていた一人なのです(・ω・)ノ
久し振りに、とても面白みを増した、物語を読ませて頂いて堪能出来ました!
非常に続き心待ちにしてます!これからも、どうぞ宜しくお願い致します!

977黒頭巾:2008/04/28(月) 09:56:45 ID:LQZaQcDIO
携帯からコンニチワ、黒頭巾です。
チャットイベント楽しかったデス…お話して下さった皆様ありがとう御座います(*ノノ)<…またやりましょーね!笑
特に最後までお付き合い下さった68hさんには多大な感謝とぐだぐだでごめんなさいの謝罪を。

携帯から全部書く気力はないので、感想レスはまた後日!
之神さん更新早いから乗り遅れない内にいけめんさんから一言。
「成る程…ね。そうだな、答えは97かな?」
合ってるとイイなぁ…笑

978ESCADA a.k.a. DIWALI:2008/04/28(月) 11:41:07 ID:OhTl4zsk0
続きですよ〜

「フフフ…あなたとは一度このやり方で決着を付けたいと思っていましたのよ、覚悟はよくて?」
瞳孔は見開き状態、冷たい視線を携えたエレナは、ステッキの先端をラティナへと威嚇するように構える…
対するラティナも一瞬だけ怯むがすぐに気を引き締め、彼女も青龍偃月刀の切っ先をエレナの喉元へと向けた。
「お父さんが何考えてるのかはどうでもいい・・・でもあなたは私の愛する人を侮辱したッ!!それだけはっ、許さないッ――!!!」
槍をその場で豪快に旋回させると、辺りに強い風が巻き起こった・・・!!その勢いに乗り、彼女はエレナに向かって突撃を仕掛ける。
弾丸のような速度での突撃、喰らえば一溜まりもない一撃がエレナに襲い掛かる・・・!!!

「・・・ムーンウォーク。」エレナは呟くと、滑るような足取りでラティナの突きをヒラリとかわした。
さらにステッキの先端を虚空に向け、クルクルとそれを振り回し、叫んだ・・・・「数多の星々よ、来たれ!!クエーサーシャワーっ!!!」
突如、黄金色の小さな流星群がラティナの頭上から降り注いできた!!こちらも当たればただじゃ済まない・・・!!
「甘いわ!!槍使いの機動力、見せてあげる・・・疾(しっ)ッ!!」彼女は無数に降り注ぐ流星群を立て続けに回避した。
10以上の彼女の残像がはっきりと、しかし足音が全く聞こえないほどの流麗なステップで全弾を避けきった・・・。
「どう?あなたの攻撃なんか全然掠りもしないわよ、甘く見ないでちょうだい?」少し勝気で自慢げな笑みを浮かべ、ラティナが挑発した。
「くっ…やはり槍使いの機動を捉えるのは難しいようですわね、でも…これを前にして、あなたは動けることができて?」「ほぇ…あっ!?」
ラティナが足元に気がつくと、そこには彼女を囲むように大量の白いウサギが・・・リトルウィッチの妨害魔術、ラビットラッシュだ。

「はぅ・・・う、うう、ウサたんかわいぃ―――――――っ!!!!!いやぁ――――――んっっ//////////////////」
これがエレナの策とも知らず、ラティナは足元で無邪気に跳ね回る白ウサギに見とれている・・・完全に無防備になってしまった!!!
「(ホホホ…こんな子供騙しに引っかかるなんて、彼氏同様におバカ極まりないですわねぇ…とにかくっ、勝たせてもらいますわよ〜!!)」
彼女に気付かれないようにエレナはステッキを振り回し・・・またも流星群を呼び寄せた!!!

979ESCADA a.k.a. DIWALI:2008/04/28(月) 12:03:05 ID:OhTl4zsk0
一方、村の復興に追われるエルフの集落・・・エルフの長老エドワードの屋敷の一室で、トレスヴァントとミリアが手当てを受けている。
「あちちち・・・ちっくしょ〜兄貴の野郎、いくらヒールを演じていたからって本気でやるこたァねぇだろうが〜、いでっ!?」
「あぁ悪ぃ悪ぃ、少しノリノリになっていたんで…あ、すまねぇなエルフ君。別に本気で村を破壊するつもりは…」
「いいんです、過去に起こったことはもう忘れましょう…それよりもミゲルさん、そこの薬の瓶を取ってもらえますか?」
「おう、これか?」「あ、はいっ!その緑色の液体が入ったやつです。それを彼とミリアちゃんに縫ってあげて下さいな。」
「やぅ〜!!!ミリアお薬イヤなの〜っ、染みるの塗っちゃヤダヤダヤダぁ〜っ!!ふゃぁあぁ〜んっ!!!!」
薬全般が苦手な彼女は、怪我をしているにも関わらずダダをこねてベッドの上で暴れまくる。しかも子供顔負けの大泣きぶり・・・。
エストレーアが諭して何とか薬を塗ることに成功したが、14歳とは思えないほどの子供っぽさに男どもは萌えていたとか・・・。
「ふぅ…はいっ、これで大丈夫ですよミリアちゃん。3分もすれば全ての傷が完治するはずですから、お大事に〜」
「やぅ、うゅ〜…エストレーアのお薬染みるからイヤなのぉ〜、ふやぁ〜…」まだベソを掻きながらミリアがボヤく。

するとそこへ、長老のエドワードが姿を現した。部屋に入るとミリアに用があると言い、柔和な笑顔を携え、彼女の元へ歩み寄った。
「やぁミリア、怪我が治りそうなところを済まないのだが、君にちょっとしたお遣いを頼みたいんだ。いいかな?」
「ふみゅ、ミリアお遣いやっちゃうのっ!!ファミィとサーファイユと一緒に行きたいの〜、だめぇ?」
「もちろんいいとも!!あ、それとね。君のお姉さんが森で不審な青年を捕まえたらしい…ミカエルという名で彼女の弟だとか」
「ほえぇ!?ひょっとしてお兄ちゃん!!?!わ〜いっ、ミリアお兄ちゃんに会えるのよ〜!!待っててねお兄ちゃァ〜んっ!!」
大喜びでミリアは部屋から飛び出して、外へと駆けていった・・・一方部屋では、長老の表情が徐々に曇っていく。

980ESCADA a.k.a. DIWALI:2008/04/28(月) 12:21:29 ID:OhTl4zsk0
「長老・・・」「あぁ、例の件を話そうと思っていたところだ・・・・。」
物々しい雰囲気が部屋を包む中、長老はトレヴァントを一瞥し、ついに重大なことを彼に打ち明けた・・・
「な…何ですか長老、オレが何か・・・??」「実は・・・数時間前のことだが、ラティナが…彼女が何者かに誘拐されたっ!!!」
一瞬、部屋の空気が凍ったように感じた・・・・しかしすぐに、トレスヴァントに変化が現われた。唇を噛み締め、拳を握り締め
額に青筋を浮かべて、長老の胸倉を荒く掴み上げた・・・!!!愛する人が攫われたと聞いて、完全に頭に血が上ってしまっている。
「何でそれを早く言わないんだぁああぁぁぁっ!!?!ラティナは・・・あいつの無事はどうなるんだよぉぉっ!?」
「落ち着きなさいッ!!!!・・・・トレスヴァント、落ち着くんだ。我々エルフは木々の声で周りの状況を確認できるが、
 彼女はまだ近くにいる。・・・ん?どうやら誰かと戦っているようだ・・・相手はリトルウィッチ、彼女に怨みを持つ者のようだ。」
「リトルウィッチ…怨み…もしかすると、キャピ子のやつかもしれねぇ……長老、ラティナとキャピ子が戦っている場所は!?」
「まだこの森の入り口付近だ、彼女を取り戻したければ今行くしかないようだ・・・行ってきなさい、無事を祈っている!!!」
部屋の机に立てかけていた大剣、ビッグセイジを掴み取り、トレスヴァントは窓を開け、そこから飛び降りた・・・!!

「長老っ!!まだ彼の怪我は治癒していないのにっ!!!大丈夫なんですか!?」
「エストレーア・・・科学で物事を解析する君にとっては、少し不可解なことかもしれないが・・・」「何です?」
「愛するという気持ちは、決して・・・何にも負けないのだよ。愛は人を強くするんだ・・・!!」

「(待っていてくれよラティナっ!!!お前がいない人生なんて考えたくねぇっ・・・それに、決めたんだ。オレはお前と・・・)」
思いを巡らせて、彼は怪我のことも気にせずに、無我夢中で森の中を走り抜けていく・・・愛する人を、もう一度抱き締めるために。

981ESCADA a.k.a. DIWALI:2008/04/28(月) 12:26:21 ID:OhTl4zsk0
どうも、先日のチャットに参加してきた者の一人、ESCADA a.k.a. DIWALIデス。
いやぁいろいろハッチャけた会話ができて脳汁分泌最高潮にゃんぱらりでございますww
本スレでのコラボイベントなど、次スレでのお楽しみにwktkしてます^^

そして本スレ最後になるであろう続きのうp、ラティナとエレナの決闘、戦いの勝者はどっち!?
お楽しみに〜

982◇68hJrjtY:2008/04/28(月) 20:32:37 ID:xHVy/wZw0
>ワイトさん
お久しぶりです。前回からまたもスレが進んでしまいましたね(笑) この勢いは毎回ヲチしてる私も驚きですよ。
普通の酒場で起きていることとは思えないような戦闘ですが…相手はデスナイトだったとは。
ヘルアサシン戦に続いて孤軍奮闘したラータ、またも勝利をつかめたようですが…ご主人様…?
これはただの前哨戦に過ぎなかったようですね。ラータ頑張れ! 続きお待ちしています。

>黒頭巾さん
こちらこそあんな時間(笑)までありがとうございましたー。
久しぶりにチャットで夜明かししてしまったら、生活パターンがまた崩壊しました(笑) 毎度の事ですが。。orz
チャットで話されていた小説の方、楽しみにしてます…って、言っちゃった(ノ∀`)

>ESCADA a.k.a. DIWALIさん
ついに戦闘開始…!リトルウィッチvsランサーという図式、ここまでのタイマンはなかなか見れませんね。
ラティナさんも本気モードかと思いつつラビットラッシュで足止めされてたりで勝敗はまだまだ分かりませんが(笑)
そしてここに参戦するかのようにトレスヴァント発進!愛のパワーは偉大だ…。この二人のラブラブっぷりはある意味羨ましい(苦笑)
一方フィナ姉も居るであろうミカエルの元に走るミリア、そしてエルフ長老が隠すなにかの話とは。
またもドタバタの予感がしながら続きお待ちしています。
---
チャットイベント、ESCADA a.k.a. DIWALIさんも参加の方ありがとうございました〜。
なかなかスレではできないリアルタイムな会話ができて、さらに皆さんに一歩迫れた気がしています(笑)
コラボイベントも楽しみ。チャットに参加してない書き手さんにも参加してもらいたいくらいですね。

983黒頭巾:2008/04/28(月) 22:28:35 ID:fou9k2gM0
――其処には闇があった。
総てを埋め尽くす、漆黒の闇が。
その闇を祓う様に、赤い大きな宝石が輝く。
暫くの後、石自身に秘められた力を表す様な赤い赤い光の瞬きを遺し、
その赤い宝玉は何処かへと消えた。
そして、再び闇が訪れる。
違うのは、石と入れ替わる様に四人の男女の姿が現れたという事。
一人は、亜麻色の髪に暖色系のドレスを纏った幼女。
一人は、栗色の髪に緑色のコートを羽織った青年。
一人は、漆黒の髪に十字を配した聖服の年齢の測れない男性。
一人は、銀色の髪に黄色の質素で露出度の高い服の少女。
闇の中に佇む四人の中、身に纏うコートと同じ色の緑の瞳に知性的な輝きを秘めた青年が
一歩前に進み出る。
天の意思を受け、瞳を閉じた彼の姿がふとかき消え――暗闇には三人の姿だけが残された。

――古都ブルンネンシュティグ。
フランテル大陸の極東地方で一番大きな都市。
フランデル大陸とは何処か?
その答えは、パソコンの中にある。
数あるオンラインゲームの一つである、REDSTONEの始まりの街。
キャラクターや露店で賑わい、叫びが木霊するこの都市の片隅で、
0と1の羅列――データの海の片鱗が姿を現し、素早くあの青年の身体を形作る。
あの暗闇に佇む四人の依代は総て同じ――総ては0と1が形作るデータの集合体なのである。

――久方振りに降り立った古都の喧騒の中、私の足は真っ直ぐに銀行へと向かう。
本当は、向かわさせられている、が正しいのだろう。
私の“下界”での言動は総て、見えざる神の意思によって操作されているのだから。
この忌々しい現象によって、私の人生そのものだったギルドからも先日脱退させられていた。
その後、ギルメンが元気にしているのは見ていたし知っていた。
それも、私の代わりに加入させられた姉の目を通して。
暗い闇の中、私はかつての仲間達の姿を手の届かない場所から見続けたのだ。
自由にならない意識と行動。
これならいっそ、意識なぞなければいいのにと何度思った事か。
そんな私が、久方振りに味わう下界の空気。
必死にBISを探す秘密PTの募集主の叫び。
空中に浮かぶ露店看板の下で客を呼ぶ露店主の陽気な声。
擦れ違ったテイマーのふわりと揺れたマント。
――例えその総てがデータによって構成されていたとしても、私にとってはそれが唯一であり、総て。
銀行のカウンターは前に来た時と同じく混んでいた。
受付は一人しかいないのにスムースに取引が出来るのは、流石データで出来た世界といったところだろう。
銀行から消耗品を引き出し、代わりに私の自慢の装備を預ける。
それを幾度か繰り返し、私の鞄はすぐに消耗品で一杯になった。
口座を閉じて、再び古都の喧騒の中へと歩を進める。
大きく息を吸った私が天の声をそのまま叫ぶ。
 <!>クリストファー 売)25秒↑心臓(秒×3万)計230秒(バラ売可)、200%150秒↑刃油1M…
Gv時間帯だったからだろうか、鞄一杯だった物資は次々に飛んできた耳によりすぐに売りきれた。
暖かくなった懐に少し気持ちをよくしながら、銀行へと戻る。
替えの装備を再び鞄に戻して少しは狩にでもいけるのだろうか。
しかし、私を待っていたのは期待を裏切る結果で。
総てのゴールドを預けた私の手は、替えの装備を受け取るどころかメインの装備を次々と銀行へと預けていく。
――この状況は、あの時と同じではないのか?
頬を冷たい汗が伝い、自然と喉が鳴った。
声もなく涙を零すしか出来なかった小さな妹を永遠に失った瞬間が、脳裏を過ぎる。
激しくなる動悸と震える手を余所に、私の全財産は銀行へと預けられた。

984黒頭巾:2008/04/28(月) 22:40:12 ID:fou9k2gM0
…後半を貼ろうとしたらNGワードが入っていますと出て投稿出来ない!orz
ココの掲示板のNGワード一覧って何処かにありましたっけ…どの言葉が引っかかっているのかわからな…o... rz コロコロ

…以下、ちょっぱやで皆様へのレス。

>之神さん(先走って携帯で答え予想だけレスのに結局レス間に合ってしまった!←)
ナザシリコンビはどっちも人の話聞かなさそうで楽しい(シリウスには苦痛な)珍道中になりそうですね!
頭の体操、楽しかったです…そして、ライトの独り言も可愛かったです(*´∀`)

>68hさん
私は寝坊はしませんでしたけど、バス乗り間違えました…如何も頭がぼーっとしてた様です(駄目すぎる)
もぎゃー、生活パターンが早く戻ります様に!。・゚・(ノд`)・゚・。
続きはアレです…結局こっちを先に持ってきてしまいましたよ!(ノ∀`*)ペチン

>ESCADA a.k.a. DIWALIさん
笑って頂けてよかった…お茶目な爺ちゃん大好きなので(*´艸`)
ウサギは可愛いですから、思わず油断するラティナの気持ちはわかります!笑
トレスヴァント、無事に間に合って( ゚д゚)ホスィ

>国道310号線さん
じぃちゃん萌を広めようの会なのです(次回開催未定←)
国道さんのキャラは本当にどのコも個性的で賑やかで、読んでいて楽しいです(*ノノ)
トパーズ可愛すぎますよ、トパーズ…持って帰っていいですか(*´д`*)ハァハァ(逃げて)

>ウィーナさん
えいぷりる編は書きかけのまま放置してるので来年まで寝かせておきます(そしてそのまま忘れるフラグ)
取り敢えず、次の投下物はふぁみりあいーえっくすシリーズの予定です。
みょんちゃんの正体にはかなり驚きました…豹変振りにガクガク(((((゚д゚;)))))ブルブル

>幕間さん
知らぬが花のコボちゃん(´・ω・)カワイソス
手品は盛大に噴きました…このコボちゃん( ゚д゚)ホスィ

>姫々さん
お帰りなさいませ…チャットはきっとまたやると思うので、お会い出来たら嬉しいです(*´∀`)ノ
タスカちゃんがイイコすぎて切ないです…カスター洞窟通り辛く…!(大抵邪魔なのでメテオってしまうかr(ry

>ワイトさん
一難去ってもまた一難…本当に心休まらない旅ですね。
ラータがいつか過労死してしまうんじゃないかと心配です(ぇー)

>復讐の女神さん
冒険の間の日常話、楽しく読ませて頂きました…ボイル大好きですボイル!(告白するな)
あの指輪クエは適正時代に本当にお世話になりました…懐かしい(ノ∀`*)ペチン

>白猫さん
帰還のタイミングがよすぎの妹さんのキャラが素敵すぎる…お兄様って呼んで( ゚д゚)ホスィ(帰れ)
今回イイトコなかったヘタレカリアスの本気装備での活躍に期待です!(*´д`*)ハァハァ

>スメスメさん
素敵じぃちゃん直伝の気ってもしかして…ねn(ry
大ピンチのアルくんが何やら覚醒しそうでwktk…14個目の奥義は、超奥義とかにしてしまえば数が合うよ!(ぇ)


…第二回質問大会の話題。
私の話の構成の考え方は基本的にはシーンとシーンを繋げる穴埋め肉付け方式です。
書きたいシーンがふと脳内に浮かんでくるので、ソレをどんどん妄想で広げるカンジかな。
浮かんだシーンシーンを書きながら、大方のストーリーを脳内で組んでソレに沿って埋めていきますよー。

それにしても、NGワードの罠を如何にかせねば…!

985復讐の女神:2008/04/30(水) 04:03:02 ID:XM1BquyU0
 古都ブルネンシュティングにおいて、特に有名な人間が何人かいる。その理由は様々だが、この街で1月も暮らせば全員が知ることに
なるくらいには、彼らは個性的だった。
 いまジェシとテルは、そんな人間に会いに来ていた。
「やあジェシさん、お久しぶりです」
「久しぶりね、相変わらずで何よりだわ。テル、紹介するわ、彼がリザードの皮を収集しているパスィバル。通称”指輪の人”よ。パ
ィバル、彼女はテル。ビーストテイマーよ」
「テルよ、よろしくね! こっちの子は相棒のスティ」
「ははは。はじめまして、指輪の人です。テルさんですね、話はボ…フェリル司祭から聞いてますよ。ジェシさんが言っていましたが、
私はリザードマンの皮を収集し加工する仕事を営んでいます。本来なら私が直接行った方がお金はかからないのですが、私はどうも戦闘
が苦手でして、そこで冒険者の方々にお願いしているしだいです。報酬として、その皮で作った指輪を差し上げています」
「彼、昔は個人的に集めてたんだけど、故郷の店長から言われてこの街に残っているみたいなのよ」
「ははは。皆さんのおかげでそれなりに量も確保できますし、なかなかに評判が良いのですよ。それに、報酬としてわたしている指輪の
方もなかなかに評判で…一度休業したのですが、再開して欲しいと声が多かったので、再開して今に至ります。さて、集めていただきた
いのは、この街を南に出てすぐに見える沼の中心、そこにある洞窟の中で生息しているリザードマンの皮です。別にそこじゃなくても良
いのですが、届いたときできるだけ新鮮でないと加工が難しいので、そこを指定しています。この街は定期的に兵を出してモンスターを
掃除しているので、この街の近くならばそう強いモンスターも少なく、この依頼は初心者冒険者がよくこなすのですが…テルさんは初心
者というわけではなさそうですし、あまり忠告は必要ないかもしれませんね。ジェシさんもいらっしゃいますし。一緒に行かれるのです
よね?」ジェシはもちろんとうなずく。「では、私からは特に何もありません。日が落ちるまで私はここにいますので、焦らず気をつけ
て行ってきてください」
 手を振って見送られたジェシとテルは、さっそく行こうと街の南門にやって来た。
 古都ブルネンシュティングの南はすぐに沼地が広がっており、そこからさらに南へ向かうと最近開通したばかりのティレットトンネル
へと一直線の道が通じている。余談となるが、このトンネルを使うことでシュトラセラトなどへ短時間で行けるようになったのだが、す
でにモンスターが住み着いており、一般市民が通り抜けるのは困難なのが現実だ。もともとあった大空洞に穴を空けただけで、モンスタ
ーは最初からそこに住んでいたというのが、街での噂だ。
 さて、軽い準備を終えた二人が南門にたどりつくと、見慣れた人物がいた。
「待っていましてよ、ジェシお姉さま!」
「あ、あはは…どもー」
 すっかり準備の整った元気なビシュカと、疲れて元気のないラディルだ。
 ビシュカは最近覚えたらしい笛を手に、可愛らしいがしっかりとした軽装で固めている。ジェシはビシュカの装備は初見だが、おそら
くラディルの見立てなのだろう。それなりに着こなしているところを見る限り、ラディルとのデートもそれなりにこなしているようだ。
 一方のラディルだが、ビシュカに合わせたのかこちらも軽装。盾が体を隠すくらいに大きいのは、ビシュカを守るためだろう。
 得意そうにVサインを向けてくるビシュカに、ジェシは頭の痛くなる思いだった。

986復讐の女神:2008/04/30(水) 04:03:47 ID:XM1BquyU0
「あ、あなたね…どうしてここにいるのよ。ラディル、あなたも止めなさいよ!」
 とはいっても、ラディルは苦笑しか返してこないのはわかっている。
 ジェシの知り合いで、ビシュカを本当に止めることができる人間なんていないのである。両親に至っては、可愛い娘のためならばと最
高級の装備を整え始めかねない。
「かわいいだなんて、ジェシお姉さまそんな本当のことを言われると照れちゃいますの♪」
 ビシュカと話してても埒が明かないので、ラディルをにらんで説明を求めるとあっさりと話し始めた。
「昨日の夜、突然手紙が届いてね。明日は南門で待ち合わせして、ジェシと冒険だと書いてあったんだよ。自重するよう手紙を書こうか
迷ったんだけどね、何往復させるのも悪いと思って。それに、どうせ聞きゃしない」
 ぐいっとビシュカの服を引っ張りながら、ラディルはため息をついた。先ほどからビシュカは、隙を見てはジェシに飛びつこうとして
はラディルの妨害をうけ、なにもできないでいる。
「沼ならラディルを連れて何度か行っていますのよ、モンスターだって一人で倒してますの。何も心配いりませんわ!」
 笛を突き出し高らかに宣言するビシュカだが、ラディルの様子からすると弱ったものを相手にしたのだろう。もしくは、ラディルが
ターゲットとして注意を常に引いていたのかもしれない。
「………わかったわ、一緒に行きましょ」
 どうせついてくるなと言っても、隠れてついてくるなり堂々とついてくるなりするのだろう。下手をすると、ビシュカのなんらかのア
クションによって、こちらが危機に陥る可能性も否定はできない。
「一緒にいくなら紹介しないとね。こちらはテル、今回一緒に依頼をこなす仲間よ。ビーストテイマーとしての実力は、以前に見せても
らったけど、なかなかのものよ。テル、こっちはボイルの妹でビシュカ。どんな戦闘スタイルなのかは、謎。隣の男性はラディル。剣な
らどんなものでも扱うわ」
「よろしくですの!」
「よろしくな」
 仲良く挨拶をする二人の前、テルはボーっとしている。
 ジェシとしては、自分が紹介している途中で割り込んでくるものだと思っていただけに拍子抜けしていた。自分達と合ったときが偶然
で、本来ならテルは人見知りをするのかもしれない。
「テル、どうしたの? テル?」
「!?………あ、あはは、よろしくね、テルよ」
 ジェシの後ろに隠れるように動きながらの返事は、尻すぼみだ。
「ささ、ジェシお姉さま、行きましょう! 私、この日をどんなに待ち焦がれていたことか」
 テルの様子を伺っていたラディルの隙を突き、ジェシの横に並んだビシュカ。テルとビシュカに両腕を抱え込まれ、ジェシは今日は疲
れるだろうと覚悟を決めるしかなかった。
「ははは、モテモテだなジェシ。うらやましい限りだ」
 ラディルは地面においていた剣と盾、そして他の道具の入ったかばんを担ぎなおし、先頭を切るように歩き出した。それに続いて歩き出
すジェシとその両側。

987復讐の女神:2008/04/30(水) 04:04:26 ID:XM1BquyU0
「ジェシお姉さま、ひどいですわ。戦闘スタイル謎だなんて、そんな紹介あんまりですの。私はこんなにも、ジェシお姉さまを知っている
のに」
 小さく抗議をしだすビシュカ。
 しかし、その顔は満面の笑みであり、文句はあっても機嫌は最上のようだ。
「だって、あなた私になにも教えていないじゃない。大体が、あなたと街の外に出るのは今日がはじめてよ、知らなくて当然でしょう?」
「お兄様が全部知っていますの。お兄様との会話で、私のことをお聞きにはならないんですの?」
 ジェシとしては、ボイルとまともに会話をすること自体が少ないのだから、そんな無茶なといいたいところだが、きっと受け付けてはく
れないのだろう。
「まったく、ジェシお姉さまはもう少しご自分の周りに目を向けるべきですわ。そうは思いませんこと、テルさん」
「へ? あ、あはは、私、ジェシと会ってまだ3日目だからなんとも言えないわ」
 テルの声には緊張の度合いが高く出ている。ためしに顔をちらりと盗み見てみると、心ここにあらずというところだ。
「うふふ、安心してくださいませ、ジェシお姉さま。今日は私の戦う姿をたっぷりとお見せしますわ」
 グッと手を握るビシュカの目には、すばらしい活躍をする自分の姿が写っているのだろうか。
 古都を南に出てしばらく、ビシュカのおしゃべりは鳴り止むことをしならない様子だ。警戒するそぶりも感じられない。
 ジェシ程度のレベルになると、この辺りで出てくるような敵など警戒するまでもないが、ビシュカにはまだまだ脅威となりえる存在だ
ろう。まだまだ、ビシュカは冒険者として甘いといわざるを得ない。
 もっとも、ラディルの持ち歩いている鞄を見る限り、ヒールポーションの準備は万全のようだ。
 ただし、報酬を考えると完全に赤字だろう。
「それにしても、この辺りはのどかね」
 落ち着いてきたのか、周囲を見渡したテルがつぶやいた。
 古都警備隊の活躍もあるが、この辺りのモンスターは自分から攻撃を仕掛けてくるものが少ない。
 そのせいか、薬草を摘みに出る者もよく現れる。
「街を出てすぐにあったお花畑になら、私よくお友達と行くんですのよ」
 自分と同じくらい大きな亀の横を通りながらの会話など、本来ならテルにとって緊張の一言なのだが、攻撃の意思が感じられないため
戸惑うばかりだ。
「綺麗な水ねぇ。ここ、本当に沼? 泉の間違いじゃないの?」
「沼ですの」
「本当、治安が良いというか、なんというか。私が知っている沼は、こんなに綺麗じゃないよ」
「ふふふ。そうね、テルにはこの光景が、受け入れづらいかもしれないわね。私も、初めて他の土地に冒険に行ったときは、驚いたわ」
 時折吹く風に髪が梳かれるのを、ジェシは心地よく受け入れていた。
 このようにゆったりとした依頼をこなすのは、本当に久しぶりなのだ。
「見えてきましたの! あそこの入り口から、洞窟へ入れるんですのよ」
 ビシュカの指し示す先には、比較的大きな洞穴が開いていた。中から噴出してくる風が冷たいのは、沼地の中央にあるせいで内部が
湿っているからだろう。
「うふふ、ワクワクが止まりませんの! 私とジェシお姉さまの冒険譚が、いよいよ幕を開けるんですのね!」
 洞窟に入る前に、ラディルがビシュカの装備を確認している。
 ヒールポーションのベルトへの装備や、武器の確認、鎧の止め具確認。
 一つ一つ丁寧に二人で確認しあっている姿は、ジェシとテルに懐かしさと微笑ましさを感じさせた。
 自分達も、昔はこうだっただのだろう。
 鎧を装備するだけでも時間がかかり、その時間がこれからの冒険へ緊張を持たせていたのだ。
「ビシュカの装備も大丈夫ね? じゃ、行きましょう」

988復讐の女神:2008/04/30(水) 04:20:31 ID:XM1BquyU0
チャットに出席するつもりだったのに、寝過ごした私が通りますよ。
楽しみにしていたので自分が情けない限りですが、イベントは盛況だったようで何よりです。
ちょっとしたネタ晴らしや裏設定、今後の展開に対する簡単なアンケートとか
色々としてみたかったんですが、次の機会があるならそのときにでもしてみたいですね。

以上、次回開催日などを毎日チェックしに来ている復讐の女神でした。

989◇68hJrjtY:2008/04/30(水) 18:13:35 ID:ZnJ5G4LU0
>黒頭巾さん
これは、あの懐でずっと温めていたという小説ですね!?
キャラ視点とのことでしたがなんだか単純なキャラ視点ではなくて奇妙な視点というのが私の方の感想です。
RSをゲームとしてとらえている部分は面白いながら、ともすれば現実味を帯びてくる…なんだか危険な香りが。
「小さな妹を永遠に失った」などの気になる回想が出たりなんかして非常に続きが気になりますが…NGワード!?
個人的に調べてみましたがどうやら管理人さんが決めたNGワードは不明なようですね…どこかに載ってるとは思ってたのですが。
問題解決の方、お祈りしています。

>復讐の女神さん
レザリンクエ…ビシュカとラディルの姿を見てジェシとテルが思うように、私も懐かしいの一言です。
前回の蜘蛛とエルフとの戦いの後だからこそ余計に感じるのかもしれませんが、のほほん和みデーのようですね。
ジェシへの首っ丈さは兄のボイルと同等のビシュカ…めくるめく萌え萌えの予感が(*´д`*)
一方突然緊張を露にしたテル。つい何か理由があるのかとか勘繰ってしまいます。うーむ。
リザード討伐とその皮集め、上手くいくのでしょうか。続きお待ちしています。

990黒頭巾:2008/04/30(水) 20:04:36 ID:fou9k2gM0
――次の瞬間、私は暗い闇の中にいた。
遠くに見える姉の目には、絶望と諦めが同時に浮かんでいる。
嗚呼、同じ事を考えましたか、姉さん。
その後ろには、何が何だかわからないという顔をした妹と弟の姿。
――嫌だ、やめてくれ、消えたくはない!
叫びたくとも、私のこの口は自由に言葉を紡がない――紡げない。
ぼやけだした視界、姉さんの頬を涙が伝うのが見えた。
きっと本人はその涙に気付いてないのだろうけれど。
ごめんね、姉さん――それが、私の最後の記憶。

――泣きじゃくる妹を宥める弟を横目に見つつ、
私はさっきまで私の一番“古い”弟がいた空間を呆然と眺める。
まだだ、まだ望みはある――例え、1%しかなくとも。
前にも一度、闇へと葬られた弟が暫くの後に帰ってきた事があったのだから。
しかし、そんな淡い期待は即座に打ち砕かれた。
目の前に降り立ったのは、弟と全く同じ名前の全くの別人で。
少女が流した再び涙は――その手に持った剣の使い方も自らの事もまだ何も知らない弟に対してなのか、
消え去った哀れな弟に対してなのか、それとも自分自身の運命に対してなのか。
――それは、誰も知らない。

「――お兄様?お兄様ってば!」
「あ、ああ、ソロルか」
いつの間にか背後に立っていた少女の声に我に返ったのだろうか、
作りたての剣士でゲームに接続するのを諦めた少年が一人。
「ソロルか、じゃありませんわ!何度呼んだことか……って、WIZ消しましたの?」
予想通りパソコンでしたのね、と画面を覗き込んだ少女が、座る少年に問いかける。
「んー、飽きた」
「またそれですの?」
兄の気紛れいつもの事なのだろう。
少女は呆れ顔だ。
「支援は縁の下の力持ちだから、やっぱストレスたまってな。
 こう考えたら面白くないか?
 ――いつもGvで左上の右側を飾っていた名前が、今度は左側を飾る事になるんだ」
「はいはい、俺TUEEEするレベルになるまでにどれだけかかる事か!
 そんな事よりも、ですわ!よもや、私とのお出かけの約束をお忘れじゃなくて?」
腰に両手を当てて憤慨する少女の言葉に苦笑した少年は、
忘れてないよ、とREDSTONEを終了して伸びをする。
そんな兄を見ながら、少女はふと呟いた。
「――姫だけは消しませんのね」
「お前と同じ名前だから消せないよ、ソロル」
「ふふ、お兄様ったら」
その返答に上機嫌そうにくすくす笑う少女の頭を撫でた少年は、立ち上がって上着を羽織った。
「お待たせ、お姫様」
「さぁ、行きましょう、お兄様」
準備が出来た少年の手を引っ張って、少女は歩き出す。

991黒頭巾:2008/04/30(水) 20:42:46 ID:fou9k2gM0
最後の段落の為に弾かれてます…改変しても改変しても駄目だ…orz
如何もNGワードが複数入っているとしか思えない弾かれっぷり(´;ω;`)ウッ
挫けたので、最後の一段落なしのまま終了かなぁ…倉庫には置いておきますので気になる方は如何ぞ(´・ω・)

今回はちょっと違うカンジで投下してみました…某曲を聴いていて思いついたアレなので名前まんまパクr(ry
テーマはキャラデリをキャラ視点から見てみると。
恐らくコレが現行スレの最後の作品になると思います。
次スレ一発目はふぁみりあいーえっくすネタの予定です。

>復讐の女神さん
本当にジェシじゃないけど二人の姿が微笑ましくて微笑ましくて。
新鯖も増える事ですし、久々にクエレザやってこようかなぁ(笑)
是非とも次の機械にお話出来ればです(*´∀`*)ノ

>68hさん
はいな、例のアレですー(笑)
いつものキャラ視点というよりは一歩引いてみました…奇妙だと違和感を感じられましたか。
うーん、読みにくくなければよいのですが。
紛い物だと知りながら、ソレが総てだと諦め、ソレでも何処か諦め切れないってのを書いてみたかったのです。、
NGワードの調査ありがとう御座いました…お手数をおかけして申し訳ない。・゚・(ノд`)・゚・。

992名無しさん:2008/05/01(木) 01:32:13 ID:d68hbIlA0
>>991
NGが出たら後ろの何行かを削ってまた投稿を繰り返して、
何回かに分けて投稿するというのはどうでしょうか?

993黒頭巾:2008/05/01(木) 12:38:55 ID:LQZaQcDIO
>992
その結果の@10行…残り少ないスレを消費するのが心苦しく…orz
ってコレでレスしてちゃ一緒ですよね…やってみます! 感謝感謝!
最初の一行とかで引っかかってたら泣きます!笑


 前半部分  >>983  >>990


――暗闇の中、そんな二人の姿を眺めている女が一人。
モニターの明かりを受けた女――“ウォッチャー”は、真っ赤な唇を持ち上げ、底知れない笑みを浮かべる。
「飽きた、ね」
彼女の目線の先にあるのは、画面の中で妹に急かされて歩く兄の姿。
「私が同じ理由で貴方を“削除”しても、そんな台詞が言えるのかしら?」
その言葉に合わせる様に兄の服の裾が歪み、0と1を映し出す。
「そろそろこのサーバーにもメンテが必要みたいよ。――ねぇ、フラーテル?」

994黒頭巾:2008/05/01(木) 12:40:48 ID:LQZaQcDIO
画面の中で生きる兄に問いかけるように、返答のない否定疑問文を唇に紡ぐ。
背後に聳える巨大な機械が発する音と光の中、ルージュの笑みを浮かべた彼女もまた知らない。
――彼女の長い髪の毛の先端にも、0と1のノイズが走っている事を。


0と1が描くモノ――fin.



…この行かぁぁぁ!orz

995黒頭巾:2008/05/01(木) 12:51:02 ID:LQZaQcDIO
スレ消費ガクブルとか言いながら連レス申し訳ない…もしまた誰かが引っ掛かるコトがあるやもと思い、追記をば。

引っ掛かった文は「問いかけるように」の「よう」を漢字で打っていました(怪しい部分を一つずつ修正確認したのでコレが犯人っす)
考えられるNGワードは「かける○(何故か変換出来n(ry」なのかな…てゆうか、全文字平仮名ですら弾かれる「かける○」って誰だYO!orz


1000ゲト争奪戦をニヨニヨ眺めながら次スレ待ちます。
黒頭巾でした|゚д゚)ノシ

996之神 @LAげっとおお!狙いで。:2008/05/01(木) 20:57:17 ID:AKbHe9aQ0
1章〜徹、ミカの出会い。
-1>>593―2 >>595―3 >>596-597―4 >>601-602―5 >>611-612―6 >>613-614
◆――――――――――――――――――――――――――――――――――――◆
2章〜ライト登場。
-1>>620 -621―2>>622―○>>626―3>>637―4>>648―5>>651―6 >>681
◆――――――――――――――――――――――――――――――――――――◆
3章〜シリウスとの戦い。
-1>>687―2>>688―3>>702―4>>713-714―5>>721―6>>787―7>>856-858
―8>>868-869
◆――――――――――――――――――――――――――――――――――――◆
4章〜兄弟
-1>>925-926 ―2>>937 ―3>>954 ―4>>958-959 ―5>>974-975
◇――――――――――――――――5冊目―――――――――――――――――◇
-6>>25 ―7>>50-54 ―8>>104-106 ―9>>149-150 ―10>>187-189 ―11>>202-204

◆――――――――――――――――――――――――――――――――――――◆
5章〜エリクサー
-1>>277 ―2>>431-432―3>>481-482―4>>502―5>>591-592―6>>673-674
-7>>753-754―8>>804-806―9>>864-866―10>>937-939―11>>971-972
◆――――――――――――――――――――――――――――――――――――◆
番外

クリスマス  >>796-799
年末旅行>>894-901 」5冊目
節分  >>226-230
バレンタインデー>>358-360 >>365-369
雛祭>>510-513
ホワイトデー@シリウス >>634-637
◆――――――――――――――――――――――――――――――――――――◆
キャラ画>>907

997之神 @LAげっとおお!狙いで。:2008/05/01(木) 21:20:15 ID:AKbHe9aQ0
γ

「さて…謎解きですか。すぐに終わりそうですが」暗いビルの路地裏。そして更に暗いボックスカーの車内で、一人の幼女が無線機に話しかける。

『…rイトだ、謎解き終わったら連絡よこしてくれ。電池が切れないように、こちらkらの連絡は極力避けたいから』
電波の悪い無線機の声は、少し聞こえがあやしい。

「了解しました」
プッ、と歯切れの良い音と共に、無線機からの雑音は止んだ。


「それにしても甘いですねガゼット…この程度の暗号とは」
――――――――――――――――――――――――――――――
九十八もの年数を気ままな睡眠に費やした、そんな奴を愚か者と思うか。
修得の義務も惑わされることも、この色の無い世界では無い。
欲が深い者には向いて無いであろうな。

さて、こんな世界にいる奴だが、もう一度問う。愚か者と思うか。
――――――――――――――――――――――――――――――

「ここでの大きなキーワード…まず」

「九十八…気まま…睡眠」

ホゥ――ッ…と薄い緑の光が、フィアレスの手のひらに舞い降りる。そしてその光は、1冊の本となった。

目分量でもそうとう重いであろうその辞書のような本を、少女は片手で持ち、そしてページをめくる。

パラ、パラとページを進めて行く。

「ありましたね」
本のページをめくる手が止まり、表のような物の上をなぞる。

「九十八・気まま・睡眠…これは九十八・隋・眠と置き換えましょうか」

メモ張のようなものに、サラサラと文字を施していく。

「九十八随眠。煩悩の大きな悩みのまとまりですね…次は、修得・惑わされ…」

「修・惑と仮定し……修惑」
ページがまた、パラパラとめくられる。

「分かり易過ぎですね…色のない世界。これは…無色界」

「最後に出てくる108煩悩に関する言葉は……んん」
ヴオォン…と、外では車の通り過ぎる音がする。
そして通り過ぎきった頃、フィアレスはまたページをめくり始めていた。

「…欲が深い者…欲が深いこと…別の言葉で…別の単語で…」
パラ、パラ、パラッ…

「…貪欲」
せわしなく動いていた手が止まった。

「さて整理すると…九十八随眠の修惑の内の、無色界の中の貪欲」

フィアレスは無線機を手にした。

『どうだ、わかったか?』のん気にもとれるライトの声が、静寂な車内に響いた。

「96、で開きますよ」

『了解…信用してる』

998之神 @LAげっとおお!狙いで。:2008/05/01(木) 21:47:50 ID:AKbHe9aQ0

α

「ピューイ…!」
ウィンディと呼ばれる大鳥が、何か言いたげに鳴く。

「えっ…どうしたの?」
シルヴィーがたずねると、ウィンディは大きな翼で一方を指す。

俺は目をやった…が、半開きの扉があるだけにしか見えない、その場所。

「ピュルルル…ピュー…」
隙間風のようなその鳴き声は、当然俺には理解できない。

「うん…そっか、ありがとう」
だが、この少女は違った。

「何か分かったんですか?」分からないことは聞け、無知な俺の最善策発動…。

「あそこの扉から、風を感じるようです」シルヴィーは扉を指す。

意味が分からなかった、俺はやっぱり凡人だ。
「つまりですね…風が通っているので、その先の何かが外へ繋がっている、と推測できるんです」

「はぁ…つまり…あ」

「気づきました…か。そうです…可能性ですが、下へ行けるかもしれません」
シルヴィーは頷く。

「…ありがとうございます…、行きましょう」俺は駆け出す前フリを見せ、そのまま扉へ走っていた。

ビル中央の吹き抜け…それをまたいで丁度向こう側…。走れば50mくらいだから、10秒もいらない。

タタタタ…と後ろから追いついてくる少女の駆け足も聞こえる。

「ハァ…ハァ、ここ…かっ!」
勢いよく扉を開けたその瞬間、黒い影がシュッと音が聞こえるかと思うほど、素早く視界から消えた。

「あれ…?」俺は目をこする。

「大丈夫ですか?…って、あれが下へ降りるエレベーター…?」
シルヴィーの目線には、巨大な片方だけが開いた扉、そして置くには箱型の小部屋が…エレベーターとして待ち構える。


1分前――γ

ゴクリ…。

「ロック…解除!」

カチャリ…

96と書かれた鍵穴は、滑るかのようにスムーズに、ピッキング用の針金を巻き込みながら回転した。

……。


「…セーフ」

「フィアレス、開いた!」
『そうですか…それより、時間がありません。急いでください』
「ああ…」
俺は無線機をしまいこみ、サッとエレベーターに乗り込んだ。

999之神 @LAげっとおお!狙いで。:2008/05/01(木) 21:49:37 ID:AKbHe9aQ0
κ

「エトナ、足止め」
軽装に身を包んだアルシェは、グライビアアイドルのような少女に命令した。

「りょうかーい! うさぎさん達、出番だよーっ、出ておいでぇー!」

彼女の持っていたタクトの先から、ビーズのような細かい、キラキラした物が発射される。

――ウガッ?

廃人は踏み出そうとしたそのポーズのまま、動けなくなった。

その廃人の足元には、大量のうさぎ。

「あーっ、踏まないでねっ!?」

「能力も、最大まで下げておくんだ…」
アルシェはいつの間にか、巨大な弓を手に構えていた。

「OK!」

「コホン…コホン。お天気予報です!」天気予報士を気取ってか、タクトで空中を指し示す。
「あと少しで、アライブコープスさんの真上でっ…!」

「教えない♪」

―― グボァ…、!

まぶしい光が天井から降り注ぎ、そのまま廃人を叩きつける。

「ウルトラノヴァが降り注ぐでしょう!」

「後から予報か、アホらしい、そしてお前らしい」アルシェは薄笑いして、そして歩みだす。廃人のほうへ。

突然、アルシェは立ち止まり、上空に向かって束ねた矢を打ち上げた。

バシュッ…と音をたてて、上へと伸びて行く矢の束。

「一撃だ」
――ゲハハハ、ウゴケナイカラ、イチゲキ、カ?ワラワセルナ。

バシュッ

「ほう、耐えるか」
――タダノ、ヤ、ダロ。ナメルナ。  動けないが、廃人は余裕の表情だ。

バシュッ

「ただの矢では無い…とだけ言っておこう。そして俺の技も、普通じゃ無いと」
――ゴタクハイイ。ヤッテミロ。

バシュッ

「最後の言葉は、それでいいのか」
――ヘッ、ソレニシテ、モ、オマエ…サッキカラムダニ、ヤ、ウチアゲテルナ

バシュッ

「時間切れだ。門番、お疲れ様…とだけ言っておこう」
―― …?

「…スナイプ…!」
ギリ…と、強くしなる弓は、一瞬にして緊張が解かれ…そして1本の矢が風を斬って廃人に飛ぶ。

―ガッ…、…ナカナカヤルナ、ダガ、イッパツジャ、ムリダッタ、ミタイダナ

「まだ一撃は終わっていない、んだが?」

ドドドドドドドッ…!

狙ったかのように、上空から矢の束が廃人を狙い、そして命中した。

1000之神 @LAげっとおお!狙いで。:2008/05/01(木) 21:52:57 ID:AKbHe9aQ0
こんばんわ、之神です。
新鯖オープンなど、ニュースもいろいろありますが…。

チャットイベントで宣言した通り、LA貰いましたw

そしてアルシェ、ビットをインターとして使ってます、恐ろしい。

では、6冊目、勝手にトリの之神でした。
7冊目で会いましょう。

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