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【ノベール】RED STONE 小説upスレッド 三冊目【SS】
1 名前:名無しさん 投稿日:2006/02/12(日) 20:55:51 [ QS1Cbi/M ]
書いた赤石サイドストーリーをひたすら揚げていくスレッドです。
技量ではなく、頑張って書いたというふいんき(ry)が何より大事だと思われます。
短編長編はもちろん関係ありませんし、改変やRS内で本当に起こったネタ話などもOKです。
エロ、グロ系はなるべく書き込まないこと。エロ系については別スレがあります。
職人の皆さん、前スレに続き大いに腕を奮ってください。

【重要】
このスレッドは基本的にsage進行です。
下記のことをしっかり頭にいれておきましょう。
※激しくSな鞭叩きは厳禁!
※煽り・荒らしはもの凄い勢いで放置!
※煽り・荒らしを放置できない人は同類!
※職人さんたちを直接的に急かすような書き込みはなるべく控えること。
※どうしてもageなければならないようなときには、時間帯などを考えてageること。
※sageの方法が分からない初心者の方は↓へ。
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/game/19634/1117795323/r562

【過去のスレッド】
一冊目 【ノベール】REDSTONE小説うpスレッド【SS】
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/game/19634/1117795323/

【ノベール】RED STONE 小説upスレッド 二冊目【SS】
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/game/19634/1127802779/l50

エロ、グロはこちら
+避難用BBSinRS+
http://jbbs.livedoor.jp/game/27750/#top

2 名前:名無しさん 投稿日:2006/02/12(日) 21:39:48 [ 21yg.VmU ]
この逆レイプ動画、最後まで持ってる人うpしてください!!
http://moe-tan.com/10-minutes/02.mpg
http://moe-tan.com/10-minutes/01.mpg

3 名前:名無しさん 投稿日:2006/02/12(日) 22:15:00 [ l2DQtdhM ]
業者に2をとられるとはorz

4 名前:名無しさん 投稿日:2006/02/12(日) 22:16:51 [ PJ6i01rY ]
ワロタw

5 名前:名無しさん 投稿日:2006/02/12(日) 23:27:51 [ sf4viEvI ]
最悪

6 名前:名無しさん 投稿日:2006/02/13(月) 01:21:04 [ 5p6eusyA ]
建てるの早くね?
それとエロ、グロ読みたい人は過去ログ倉庫から探して
行ってもらうようにしたかったな。

7 名前:名無しさん 投稿日:2006/02/13(月) 20:25:06 [ nEAwmKFM ]



某時刻

俺がINすると、俺の名前が赤になっている。

バグか?と思いリログしようとするが、 できない。

叫んでみた。

! 名前が赤くなってしまった方、いませんか?

8人から耳が来た。


だれかが意図的に仕組んでいる・・・


次の瞬間、いきなり見たこともないMAPに移動した。



そして耳が来た。


「おめでとうございます、あなた方8人は選ばれました。私たちはゲームオンのプログラムをハッキングしたので、あなた方の装備、Lv、アカウントを自由に閲覧し、剥奪できます。
しかし、全ての人を消してしまうのは・・・
ということで、あなたがた8人の中から1人だけ、生き残らせてあげます。
ためしにAさん、あなたの装備している指輪を当ててみましょう。」

Aは愕然とした。すべての装備を当てられてしまったからだ。

「お分かりいただけたでしょうか?私に逆らえば、全てが消えるのです。」


「いまからルール説明を致します。戦い、最後まで生き残った方がアカウント剥奪を免れられます。」




「このゲームの名前は、survive」


〜surivive ルール・詳細説明〜


・選ばれた8人はばらばらに飛ばされている。

・見たことも聞いたこともないMAPである。

・スキル、装備等、何を使用しても良い。

・氷柱などの危険なスキルも使用して良い。

・ダメージはギルド戦と同じように√される。

・チームを組んでも良いが、生き残れるのは一人である。

8 名前:名無しさん 投稿日:2006/02/13(月) 21:04:53 [ 1WUf/.tQ ]
>>7
ツマンネ

9 名前:名無しさん 投稿日:2006/02/13(月) 21:33:55 [ Ojst3LLk ]
>>7
バトロワ?

10 名前:初心者 投稿日:2006/02/14(火) 14:22:32 [ 3h32TdpI ]
現在、普段と違う場所から書き込んでいるので、IDが変わっていますが気にしないでください。

俺の名はプレナン。今、俺は聖騎士認定試験を受けている。
聖騎士承認試験とは、ブルネンシュティング騎士団の中で、多くの功績を上げたり、戦闘力の高さが認められた者のみが受けられるものだ。
聖騎士を名乗ることを認められるということは、騎士達にとって最も名誉なことで、同時に中級の貴族と同等以上の権力を得るということだ。
今、聖騎士と名乗ることを認められているものは、8人だ。
その中に、俺の師匠、ケイルンもいる。
その聖騎士認定試験だが、8人しか居ないことからも分かるとおり、とても難しい。
今まで、これを受ける事ができた騎士達は、100人を超えるそうだ。
その中で、生きて帰ってくる者が半分程度。
上の人間も、さすがにこれでは貴重な人材がどんどん減っていってしまうので、単独では無く、2人組みでこれを行うことにした。
その分、難易度も上がっているらしい。
「このあたりに、そこへ続く道があるはずだな。」
そして、こいつがそのパートナーである、ベノン。
「その筈だ」
俺たちは、廃坑の地下2階にいる。
此処は以前、ティレンドという者の依頼を受けた時に通った事がある道だったので、地図にも記録してある。
案の定、すぐに見つかった。
「此処だな・・・よし、行くぞ。」
敵も大して強くない・・・というより、今の俺にとっては雑魚だった。
だから、そこへ行くのは容易だった。
俺の経験では、此処みたいに雑魚が多い場所の近くの所は殆ど雑魚しか居ない。
ただ、たまに飛びぬけて強い敵が居る場合もあるので、そいつだけを警戒していれば良いと思っていた。
だが・・・
「ぐ・・・こいつら・・・ただの雑魚じゃない・・・!」
クリーパーの攻撃を盾で防ぐ。
しかし・・・
「うぁっ!」
何が起こったのか、一瞬分からなかった。
「大丈夫かっ! ぐ・・・てぁっっ!」
ベノンがクリーパーを袈裟切りで真っ二つに切断する。
気づくと、俺は少し離れた場所に飛ばされていた。
「どうやら、クリーパーの攻撃で弾き飛ばされたようだな・・・」
そういえば、最近一部のモンスターが特殊な能力を使うようになったと聞いた事があった・・・。
「そうらしいな・・・ただの雑魚では無いらしい。気をつけるよ。」
「あぁ」
此処は、異様に大量のモンスターが居た。
大量のモンスターと遭遇するたびに、いちいち倒しては進むと時間が掛かってしまうので、俺達は依頼者の元まで、出来るだけモンスターを避けながら行くことにした。(基本的に依頼をこなす事が、試験の内容だ。難易度は他のクエストの比では無い物が選ばれるが)
そうしているうちに、依頼者の元へ辿り着いた。
その男は、平静を装っているつもりで、どこか怯えているような雰囲気で俺達に依頼内容を伝え、早く行くように促した。
結局、何をすれば良いのか聞いただけで、どんな攻撃をしてくるのかなど、比較的重要な情報は得られなかった。
しかし、何もしない訳には行かないので、早々に最初のターゲット、デビルガードの元へ向かった。

11 名前:名無しさん 投稿日:2006/02/14(火) 15:42:23 [ 8H3v6EOU ]
前スレ使い切れよボケ

12 名前:初心者 投稿日:2006/02/14(火) 15:55:29 [ BjmG50gY ]
「あいつか・・・。」
ベノムの視線の先には、黒いマントをなびかせた、赤いモンスターが立っていた。
「見たことの無いモンスターだな・・・。」
依頼者は、何をすれば良いかを教えただけで、そいつがどんな攻撃をするのかなど、詳細な情報は教えてくれなかった。
「あれがどんな攻撃をしてくるか分からない以上、背後から近づいて、速攻で倒してしまうのが良いだろう。」
「いや・・・正体が分からないからこそ、慎重に近づいて、攻撃を防いで隙を作ってから、確実に攻撃を入れたほうが良いと思う。」
一理あるが・・・。
「しかし、中には盾で防げない攻撃をしてくるものも居るらしい・・・やはり、気づかれる前に・・・。」
「そうだな・・・。」
会話を打ち切った後、壁に隠れながら、敵の隙を伺う。
敵が背を見せた瞬間・・・
「今だ!」
俺達は、背後に回り、パラレルスティングを撃とうとした・・・。
その時
「!!」
敵が振り向いた・・・すると、体に激痛が走った。
「ぐぅ・・・一体・・・?」
「フハハハハ!貴様ら小童が、この私に敵うとでも思ったか!貴様らがそこに隠れていたのは、とっくに気づいておったわ!」
敵が高笑いをした。
思わず怯んでしまう2人。
そこを・・・
「愚か者め!」
顔を笑みに歪め、腕を高く掲げ・・・振り下ろした。
すると・・・
ドバァァァァ
すさまじい炎が生まれた・・・
その炎から生まれる風だけでも、相当の威力がある・・・。
「うあぁぁぁぁぁぁっ」
炎と、それが巻き起こす風に巻き込まれ、壁に叩きつけられた。
「う・・・うぅ・・・」
気を失いかけた・・・その時、
「プレナン・・・これを・・・使え・・・」
息も絶え絶えに、ベノンが巻物を差し出してきた・・・。
帰還の巻物。
スマグで作られる魔法のアイテムで、使用すると一瞬で町に帰ることが出来る。
「すまない・・・。」
そういうと、それを開いた。ベノンも同時に開く。
「逃すかぁ!!」
敵が腕を振り上げた瞬間・・・
体がほのかに光る光に包まれ、軽い浮遊感がした・・・

13 名前:初心者 投稿日:2006/02/14(火) 15:57:24 [ BjmG50gY ]
申し訳ありません・・・
新しくスレが立っていたので、前のスレはもう埋まったのかと思ったのですが・・・
>>11さん
ご指摘、有難うございました;
あちらに続きを書かせていただきます
失礼しましたm(_ _)m

14 名前:前スレ989 投稿日:2006/02/15(水) 13:58:09 [ OnBW7owU ]
前スレ>>990
自分の書き込みを見直してきたら、確かにそういう意味に取れることを書いてた。
なんだか他の職人様達を貶してるようなことを書いてしまって悪かった。
次からもう少し考えてから書き込むことにするよ。

ちょっと口出しするんだけど、前スレは埋める必要あったのか?
こういうスレに埋めは必要ないように感じる。

15 名前:名無しさん 投稿日:2006/02/15(水) 16:12:58 [ XZnVkVF6 ]
age

16 名前:名無しさん 投稿日:2006/02/15(水) 17:44:05 [ Y6Ja1Mr6 ]
>>14
確かに埋める必要無かったような気がするね。
前みたいにまとめる必要も無いけどな。
どうせリンクできなくなるし

17 名前:名無しさん 投稿日:2006/02/15(水) 22:01:37 [ i7gVGvTg ]
キラキラのVIP☆STAR♪君をもっと夢中にさせてあげるからね
チリチリのVIP☆STAR♪羽を広げ、ブーンをさせてあげよう♪ヘイストで〜
ブラー拾えた喜びと(≧▽≦)
石に付いてた寂しさの(´・ω・)
両方を手に入れて、チリは走り出す⊂二二二( ^ω^)二⊃
空も飛べるよレビテトで
知識ばかりの僕だけど
紙ペッツにアースヒール与えられたなら♪
初めてギル戦に臨んだ瞬間に、ダメオンが何故か放ったマジックは緊急のメンテヽ(`Д´)ノ
テラワロスVIP☆STAR♪君がずっと夢中なそのアチャ実はネカマm9(^Д^)
うはwおkwうっ・・うっ・・失恋ツラス(;ω;)引退するお♪今すぐに⊂二二二( ^ω^)二⊃

うん。すれ違いなのはわかってる。でもKOBARYUの「VIP☆STAR」を聞いてしまってから、ずっとこの歌詞が俺の頭の中でループ再生してるんだ。助けてください

18 名前:名無しさん 投稿日:2006/02/16(木) 02:48:19 [ iPcyGfsE ]
【多数vs多数 最強!】始源魔サキエル参戦だおwww【VIPくおりてぃ】
1 サキたんだお。
 ここの筋肉馬鹿やっつけるお!!
2 名無し
 2get
3 名無し
 2get
4 名無し
 3getじゃなかったら半裸で古都特攻。
5 名無し
 4GETオメ。
6 名無し
 >>4 kwsk!!!
7 4
 OTL
8 名無し
 うpうpっ!!!!
9 七誌
 どうせわしら外見同じなわけだが
10 七氏
 >>9
 だが、それがいい。
11 名無し
>>10
( ・∀・)人(・∀・ )
12 4
_| ̄|O

13 サキたんo
 3分で全滅させたら全裸うpするお。

 mjd?!

ksk ksk ksk
どうせ1の中の人は天使ナわけだがwww
 100げっつ
 だがそれがいい。
 ウホッ!
 みwなwぎw(ry
 恥ずかしいので言わないでください >w<

  サキたんだお。
 上の「サキたんo」は偽者だおっ!!

 うん、何となくそうじゃないかって言うのは薄々気付いてはいたんだけどね。
でもやっぱりあの赤翼出した姉さんにグワシってされたくて・・・・・・
(´・ω・`)キエトキマスネ
(´・ω:;.:...
(´:;....::;.:. :::;.. .....

( ・∀・)人(・∀・ )
( ・∀・)人(・∀・ )人(・∀・ )
(´:;....::;.:. :::;.. .....
(´・ω:;.:...
( ・∀・)人(´・ω・`)フッカツシマスタ

ksk   ksk  200get 200get ⊂二二二( ^ω^)二⊃ 200get!
ksk  (≧▽≦)

19 名前:名無しさん 投稿日:2006/02/16(木) 02:49:58 [ iPcyGfsE ]

  サキた人。
 かわいそーだから あちしが脱ぐお。

 mjd?!

ksk ksk ksk VIPから来ますタ。 ksk ksk ksk
 梅 産め 膿め
 きんもー☆
  ksk
ksk ksk 協力感謝。
kskksk ksk kskksk ksk kskksk ksk kskksk ksk k
ksk ksk kskksk ksk ksk
ksk  燃料plz!!   ksk ksk ksk ksk
 あぼーん :あぼーん
 GPGP! GP! もっとGP!
 マルチポスト乙。


 「 流 石 だ よ な 俺 ら ( ´_ゝ`) (´<_` )」
   ∧_∧   ∧_∧
   /__´_ゝ`ヽ /´<_` ヽ OKブラゲット〜♪
  〃/ハ)ヽヽ (从ハ从 ) 
  リハ´ワ`ノゝ ノヽ´ワ`从ゝま、全滅は確実だよな俺ら♪
   <ヽVノフつ ⊂[i V i]つ
   ∠ソバゝ  /_」_L_ノつ
   (_/ ∪     ヽ_)



・・・V (バーチャル/ヴァルキリー) I (イメージ) P (プロジェクター・・・・・・

すまぬ・・・丁度、↑な人が居たので便乗させていただいたーo



   オマケ

 「だ、だめだお。 そんなコトしたらこわれちゃうぉ・・・」

 一匹だけはぐれたらしい分身――777号らしい――を捕獲、連れ帰る漏れ。

トイウか、蟻の群れの怠ける割合、みたいな。

20 名前:名無しさん 投稿日:2006/02/16(木) 13:00:00 [ dqYqhQCM ]
>>18-19
気色悪いのでお帰りください

21 名前:FAT 投稿日:2006/02/16(木) 18:13:28 [ TKRnzKAI ]
キャラ紹介

主人公

【名前】エイミー=ベルツリー
【身長/体重】168cm/49kg
【性別/年齢】女(28)
【出身】トラヴィス
:穏やかで熱くならない。レンダル、デルタの教育係。黒髪白肌。


【名前】ラス=ベルツリー
【身長/体重】189cm/85kg
【性別/年齢】男(7)(21)
【出身】トラヴィス
:エイミーの子。一年に3つ歳をとる。下半身は毛むくじゃらで尻尾も生えて
いる。人間離れした運動能力を誇る。精神的にまだ成長途中であり、すぐに切
れる。感情の起伏が激しい。茶色のウェスタンハット。茶色のマントに白のジ
ャケット、ダボダボの黒ズボン姿。黒髪。


メインキャラ

【名前】レンダル=ヒューストン
【身長/体重】156cm/47kg
【性別/年齢】女(28)
【出身】トラヴィス
:男女。快活な性格で女らしさは0。エイミー、デルタの大親友。


【名前】デルタ=ゴッドレム
【身長/体重】150cm/41kg
【性別/年齢】女(16)
【出身】アウグスタ
:ロリっ子。歳が離れているため、エイミー、レンダルに愛嬌される。


【名前】ランクーイ=ベアウーネ
【身長/体重】158cm/47kg
【性別/年齢】男/(15)
【出身】バリアート
:気は強いがいざとなると逃げ腰のダメ男。魔法剣士を目指すが素質は0。
両親は2年前に病死。宿屋の息子。黒髪ツンツン、一重瞼。猫舌


【名前】レルロンド=アラジャラン
【身長/体重】173cm/60kg
【性別/年齢】男(17)
【出身】バリアート
:ランクーイの親友兼保護者。冷静で集中力の高い弓の達人。短髪茶髪。たれ目。



キーワード


「エンチャット」
:強力な魔力で、「物」に半永続的な魔力を持たせること。優秀な術者の場合、
術者が死んでも効果は残る。

「トラヴィス」
:スマグに隣接する小さな町。エイミーたちの故郷。

22 名前:FAT 投稿日:2006/02/16(木) 18:20:08 [ TKRnzKAI ]
『水面鏡』


―田舎の朝―

―1―

 水溜りが映した青空が、鳥が、雲が歪む。地を這う無邪気な振動が鏡を割った。

「おはようございますっ!! お姉さま!!」
 淡い桃色の服を着た小柄な女の子が勢い良く走り寄り、お尻を突き出す。両手を腰に当
て、大きなあくびをしていた「お姉さま」はこの尻撃であごが外れそうな程強かに家の壁
に顔を打ちつけた。

「って!! …こら、デルタ!! 挨拶代わりにヒップアタックするんじゃねぇ! あご
が外れるとこだったろうが!!」
 デルタ=ゴッドレムは首を35度斜めに傾け、
「あら、レンダルお姉さまったらご冗談を。お姉さまの強靭なあごがそのくらいで外れる
はずがありませんわ」とくすくす笑った。
 
 レンダル=ヒューストンは呆れた顔でぼさぼさの髪を掻き揚げ、眠たそうな半目を擦っ
てデルタに背を向けた。
「久しぶりに街に出れるからってあんまり浮かれるなよ。俺は正直アウグスタには興味が
ないんだ。どうせならブリッジヘッドまで行って異国の武器を…」
「もうっ! お姉さまはどうしていつもそうおっかないものに興味を惹かれるの? たま
にはおしゃれをしましょうよ!」
よれた肌着を捲りながらレンダルの目が鋭く光る。
「おしゃれだぁ? デルタ、お前それがおしゃれだと思ってるのか? 俺から言わせても
らえばピンク一色に揃えた気狂いとしか思えないぞ。おしゃれっていうのはエイミーみた
いな奴のことを言うんだよ」
「な、なによ〜! レンダルお姉さまにだけは気狂いだなんて言われたくないわよ! こ
の男女ぁ!!」

 むすっとしたデルタを横目に、レンダルは密かに笑いながら着替えを済ます。開けっ放
しのカーテンからは爽やかな春の陽が射り、木製のタンスが主役になったかのようにライ
トアップされる。その中の一段を引き出し、乱雑に畳んだ寝巻きを押し込むとデルタの頭
を掴み、
「誰が男女だって? こ の く そ ガ キ が !!」と力を込めた。同時に耳を劈
くような高音の悲鳴が家中を轟かす。

「おい! レン! 朝っぱらから騒がしいぞ! デルちゃん連れてとっとと出てけ!」
上階から父親の迷惑そうな叫びが届いたのでデルタの背中を蹴り、野外へと引き摺り出
す。「ふんっ!」っと鼻息を鳴らし、枕元の銭入れを懐に仕舞うと、錆び付いた曲刀と小
さな丸い木の盾を背中に括りつけ、瞳を潤ませているデルタに一言かける。
「すねてんなよ。もう嘘泣きなんて通用しない歳だぜ? そんな気持ち悪いことしてない
でとっととエイミー起こしに行こうぜ」

 父親譲りの男口調が彼女を本物の男のように印象付ける。セットなどする気のないぼさ
ぼさの髪、起伏の見られない胸、短い脚、勝気な目。どれをとっても女らしさが見られず、
周囲の人たちも彼女を男のように扱っている。これに対しデルタは細くほわほわした髪質
に加え童顔、ピンクを好むせいか全体にふんわりとふくよかな印象を受ける。

「お姉さま! 今朝は暴言の嵐ですわ! 気狂いだの、くそガキだの、気持ち悪いだのっ
て!! 私がどれだけ傷ついたか分かっていらっしゃるの!? 胸が痛んでもう歩けませ
んわ」
 座り込んだままレンダルの気を惹こうと派手な手振り身振りで熱演する。セリフを言い
終えた後で反応を心待ちにするが時間が止まってしまったかのように静寂がデルタを包む。
おや、と頭を上げてみると遠くの方にちんまりとレンダルの姿が見える。

「もうぅぅぅ! お姉さまぁ〜! 私をもっとかまってぇ〜!!」

23 名前:FAT 投稿日:2006/02/16(木) 18:31:37 [ TKRnzKAI ]
皆様お久しぶりです。

もうじきプリンセス/リトルウィッチ実装とのことで、ようやく新作に着手し始めました。
前作とは大分書き方を変えたので、違和感を感じるかも知れませんが、どうかスルーでお願い
致します。

>>戦士のようださん
ジンシリーズの連載お疲れさまでした。悲しくもどこか勇気が出るような、そんな終わり方
でした。ジンの苦悶と失望の念が解き放たれてよかったです。
一度長編書き終えると少しSSから離れたくなりますが(自分だけでしょうか)また、戻ってきて
下さいね。お待ちしております。

24 名前:戦士のようだ 投稿日:2006/02/16(木) 20:05:42 [ QS1Cbi/M ]
>>FATさん
新連載ですね〜
SS離れは起きてるのか起きてないのかはよくわからないです
ただ、次に投稿するときはもっと丁寧に作品を作ろうと思ってます

25 名前:FAT 投稿日:2006/02/17(金) 21:59:38 [ TKRnzKAI ]
『水面鏡』

キャラ紹介>>21

―田舎の朝―
―1―>>22



―2―
「なんだ、エイミー、起きてたのか」
 レンダルは庭先の畑に水を差しているエイミーを物珍しい顔で見た。
「やだ、そんな顔しないでよ。私だってたまには一人で起きれるわよ」
 エイミー=ベルツリーは少しはにかんだように笑い、水の半分入ったブリキのじょうろ
をレンダルに向けた。
「うわっ! ばか! 濡れるだろっ!! っとわ!」
 突然の攻撃に慌て、足をもつれさせてしまったレンダルは今しがた水やりを終えた畑に
尻餅をついてしまった。吸収途中だった水は飛び込んできたレンダルのズボンに新たな逃
げ場を見つけ、一瞬で沁みこんだ。
「あひゃあ!! つめてーー!! パンツまでぐちょぐちょだよ…。やってくれたな! 
このぉ!!」
 急いで立ち上がるとエイミーの手にしていたじょうろを分捕りその突先をエイミーに向
ける。
「レン、落ち着いて。あなたが勝手に転んだだけでしょう? 私、まだ水を飛ばしてなか
ったわよ?」
「知るかー!」
 いたずらっ子のような快活な笑みと共にじょうろを振りかざす。と、そこに、
「おはようございますっ! お姉さまっ!!」
 再び勢い良くデルタが飛び込んできた。彼女は得意のヒップアタックを繰り出そうとし
たがその前に盛り上がった土に足を取られ、エイミーのちょうどへその辺りに頭突きを見
舞う形になった。
「きゃああぁ」
 突然の衝撃に耐え切れず、二人は折り重なってじょうろをかざしているレンダルの方に
よろめいた。
「あ゛…」
 避けようにも距離が近すぎた。二人に押し潰される形でレンダルはまたも吸水の手伝い
をすることとなった。更には無意識に空へ放り投げたじょうろが絡まっている三人に冷や
やかな朝の洗礼をもたらす。
「あはははははは!」
「きゃははははは!」
 レンダルとデルタの明るい笑い声が山々にこだまする。そんな二人をエイミーは満足そ
うな笑みでみつめる。彼女はあまり声に出して大笑いをするということがない。もしかし
たら出来ないのかもしれない。しかし、彼女の微笑みは見る人の心を温める不思議な魅力
を持っている。この笑みを独占できることにレンダルとデルタは幸せを感じていた。

26 名前:FAT 投稿日:2006/02/17(金) 22:00:04 [ TKRnzKAI ]
「さぁ、エイミー、アウグスタへ行こうか」
 笑いを満喫したレンダルが出発を催促する。
「え? 着替えないの? レン」
 キョトンと目を丸くしてレンダルの顔を見張る。
「ん…もう慣れたしな。気持ち悪くないからいけるだろ?」
「…あなたらしいわね。私は着替えるからもうちょっと待ってて。デルタも着替えるでし
ょう?」
「はい!着替えてきまっす」
「じゃあね、レン。風邪引いても知らないわよ」
 わざと冷たくレンダルをあしらい、エイミーは家の中に消えていった。デルタも飛ぶよ
うに家に帰り、レンダルは独り庭に立ち呆けた。独りになると急に濡れた箇所がむずむず
と疼き出した。それと共に朝の冷たい空気が身震いを起こさせる。
 エイミーが着替えを終え庭に出るとそこにはレンダルの姿はなかった。思い通りになっ
たことで今日はいい一日になるような気がした。鼻歌混じりにエイミーは紅茶を沸かし始
め、ちょうど良い色が出る頃に例の二人が戻ってきた。
「ささ、お出掛けの前に体を温めておきましょう」
 二人をテーブルに誘導し、熱い紅茶とクッキーを添えた。
「そういやラスの野郎は元気にしてるのか?」
 レンダルが一口にクッキーを頬張りながら思いついたように言う。
「さぁ?まだ出て行ってから一ヶ月も経っていないから…。でもあの子なら何も心配はな
いわよ。向かうところ敵無しっていうのはきっとあの子のことを言うのよね」
「でたでた、この親ばかが」
「エイミーお姉さまはラスちゃんラブですものね。でもあの子の性格的に危険なことに首
を突っ込んでそうで恐いですわ」
「大丈夫よ。私の子ですもの。教育はしっかりとしたつもりよ?」
「でもなぁ…あいつまだ七歳だろ? 色々感化されてそうだなぁ…」
「それにけっこう怒りっぽいですしねぇ。まだ早かったのではないですか? ラスちゃん
を冒険に出すのは」
「でも…どうしてもって言ってたから…親としてはね…心配だけど行かせてあげたいって
思って…」
 徐々に無口になっていくエイミーに付き合いの長い二人は口を紡いだ。窓の外を放牧さ
れている牛がのっそりと通り過ぎ、レンダルが奮起する。
「ごちそうさまっと。んじゃ、今度こそ出発と行こうぜ!!」
 大きな声をあげ、せかせかと椅子から立ち上がる。連れてデルタも立ち上がり、置きっ
ぱなしにされているレンダルのカップと小皿を自分のものに重ねてキッチンへ運ぶ。ちら
りとエイミーに目配せをし、二人は戸を開いた。
「ラス…元気にしてるわよね…。手紙くらいくれてもいいのに…」
ぬるくなった紅茶を飲み干し、齧りかけのクッキーを小皿に乗せたまま、キッチンへと
運ぶ。水を溜めておいたタライを覗き込むとそこには白い顔があった。黒い瞳が何か物憂
げに映え、深い闇のようでもある。そんな視線に気付かずに、クッキーを乗せたままカッ
プと小皿を水に漬け込むと少し急ぎ足で二人の下に向かった。

27 名前:戦士のようだ 投稿日:2006/02/19(日) 11:50:39 [ QS1Cbi/M ]
100万回生きたレッドストーン

じゃあ君は不死が望みなんだね?
赤い石が一人の男に話しかけた。男はそれに肯く。
俺は死にたくないんだ。今まで恐ろしい死に方を何度も見てきたから。
じゃあ、私が願いをかなえる前に、君に100万の生を与えてあげよう。
石が光った。男は死んだ。

男はそれなりに可愛い女の子に生まれ変わった。でも、男だった女の子は、
何時も何かに怯えていた。女の子の住んでいる村は、常にモンスターの恐怖に晒されている。
そして街にモンスターが現れた。モンスターは村の人々を襲い、建物を壊した。
モンスターが現れてからしばらくすると、今度はケイルンが率いる討伐隊が現れた。
討伐隊はモンスターを退治してくれた。女の子はケイルンにお礼を言った。

それから男はケイルンになった。ケイルンは古都に戻ってから、鎧を脱いで共同墓地へと向かった。
共同墓地には妻の骨が眠っている。今日は命日で、墓には既に花が供えられている。
すまなかったな、とケイルンは呟いた。ケイルンが戦に出ている間に妻は病死した。
オヤジ、と後ろから声が聞こえた。成人を迎えた息子が後ろに立っていた。
母さんの命日だな。
ああ。
もっと大事にしてやればよかったのに。
そうだな。
ケイルンと息子の間でぎこちないボールのやり取りがあった。
妻が死んだことが原因で、むすことは仲が悪くなっていた。
兵士という職業を憎んでいた息子だが、それでも息子は騎士になった。

男は息子になった。息子は古都をぶらぶらと歩きながら雑貨屋へと行った。
ドロシーがいつものように店番をしていた。
ポーションを一つだけかった。それは二人だけが知る合図。
昼頃になると、店がいったん閉まった。息子とドロシーが裏通りへと並んで歩く。
息子とドロシーは裏通りでキスをした。毎日行われる確認作業。
二人はお互いに愛し合っていると信じている。
あ。
ドロシーがぼうっと立っている若いランサーを見た。
ランサーは顔を赤らめて二人を見ている。
ごめんなさい、覗くつもりはなかったの。
いいんです、けどお婆様には秘密にしていてください。
本当にごめんなさいね。

男はランサーになった。
ランサーは裏通りで見たドロシー達を、過去の自分と重ね合わせた。
昔、自分にも恋人が居た。だが、恋人は悪魔に殺され、自分もその悪魔の汚れを受けている。
ランサーは泣きたくなった。それでも涙は出てこない。
彼女は色々なことを経験していたし、世の中には涙にならない悲しみがある。

めぐりめぐって男は男になった。
どうだい?これでも不死がいいだろうか?
もういい、もういいんだ。
じゃあ何が欲しい?
男はじっと黙っていた。男は自分の人生を振り返り、
亡くしたもの、見捨ててしまったもの、失ったもの、磨り減ったものを考えていた。
男は実に努力をして様々な物を失っていったのだ。
男は悲しくなった。色々なものを亡くしてきたのに、何が欲しいのかわからない。
自分が空っぽだと思った。そして、それはその通りだった。
眠るんだよ。全ては夢だったんだ。朝になればまた元に戻るさ。
レッドストーンが光った。
男は眠り、それから朝が来た。
男は目が覚めたときに、何か不思議と死ぬことが怖くなかった。
久しぶりに故郷に帰ろうと思った。妹と母にも久しく会っていない。
妹と母と一緒に美味い飯を食べよう。それから犬の首を撫でてやるのだ。
久しぶりに釣りでもしよう。故郷の水は何処よりも澄んでいる。
男は久しぶりに穏やかな気持ちになれた。

28 名前:FAT 投稿日:2006/02/19(日) 22:32:37 [ TKRnzKAI ]
『水面鏡』

キャラ紹介>>21

―田舎の朝―
―1―>>22
―2―>>25-26


―子供と子供―
―1―

 やたらとしつこい蟲の群れを焼き尽くし、茶色のウェスタンハット、茶色のマントに白
のジャケット、ダボダボの黒ズボン姿のラス=ベルツリーは田舎町、バリアートに足を踏
み入れた。珍しいこの訪問者を出迎えてくれたのは人ではなくブタだった。
「よぅ、ブタさん。こんにちは」
 放し飼いにされているよく肥えたブタの鼻先を軽く撫で、ラスは宿を探そうと茶色のウ
ェスタンハットの唾を上げ、辺りを見回す。

「おい…ばれたんじゃないか?」
「いや、気づかれてはいない。見ろよ、あいつまたブタにかまってやがるぜ。見るからに
間抜けそうじゃないか」
「見た目がか? お前はよっぽど見る目がないな。あの背中の大剣を見ろよ。あんなもの
担いでるんだ。気を抜いたら真っ二つにされるぞ」
「けっ、どうせ飾り物さ。大丈夫。お前のあれが決まればいつも通りにうまくいくさ」
 
 木陰でこそこそと耳打ちをする二人の少年。一人は背が小さく、つんつんと黒髪を立て
た気の強そうな一重瞼が特徴で、もう一人は短髪茶髪、おっとりとしていそうなたれ目が
特徴である。その不穏な空気にラスは気づく気配もない。ただ、どこにも宿屋の看板がな
いことに多少の不安を抱き始めているだけである。
「ブタさん、この町には泊まるところがないのかい?」
 膝をつき、親しげに近付いてくるブタに話しかけたその時、急に何かが飛んできたかと
思うと次の瞬間、謎の粉が巻き上がった。
「なんだ? これ…っう!! げっほげっほ!! ぐっほ!!!」
 激しい痛みが喉と目に走る。地面をのた打ち回るようにもがいていると、何者かの手が
ラスの愛刀に伸び、抜き去っていった。
「いやっほーい!! 成功だ!! レルロンド!! ずらかるぞーー!!」
 意気揚々と駆ける背の低い方の少年。しかし、その逃走は意外なものによって阻止され
た。
「ぴぎぃぃぃぃぃ」
 粉塵によって猛ブタと化したそれはでたらめに野を暴走していた。運悪く、少年の逃げ
るコースとブタの突進するコースが重なってしまったため、少年は跳ね飛ばされた。放物
線を見事に描き、少年は地面に叩きつけられた。

29 名前:FAT 投稿日:2006/02/19(日) 22:33:13 [ TKRnzKAI ]
「ランクーイ!!」
 レルロンド=アラジャランは身を隠していた木陰から勢いよく飛び出し、地に潰れてい
るランクーイの様子を確かめる。衝突時の衝撃こそ強烈だったが、幸い落下地点は草の生
えた柔らかな地質だったので目立った外傷はない。ほっと一息付くと背後からのおぞまし
い程の殺気が皮膚を刺した。
「許さねぇぞ…お前ら!!」
 沁みる目を懸命にこじ開け、潰れた喉からなんとか言葉を発する。まだ幼いラスは自我
の制御がうまくできず、無意識のうちに上空に火の玉を六つ作り出していた。見たことも
ない火の玉の数にレルロンドはまばたきを忘れた。若干十七歳のレルロンドと十五歳のラ
ンクーイ。二人の少年はたった七歳の少年に今、その芽を摘まれようとしていた。

「ぷぎぃぃぃぃぃ」
 しかしまた、暴徒と化したブタが今度はランクーイたちを救う体当たりをラスにかまし
た。頑丈なラスは微動だにしなかったが、それがきっかけである言いつけを思い出した。

(いい、ラス。旅に出るのは許すけど、一つだけ約束をして。どんなことがあっても、人
を殺めてはダメよ。いいわね。私からのたった一つのお願いよ。守れるわよね?)
 
 炎の群れを直視し、震えているレルロンドの頭上を掠めるように火は飛んでいき、地中
に潜った。ラスは無言で大刀を奪い返すと足元で気を失っているブタの頭を優しく撫で、
レルロンドたちに背を向けて当てもなく歩みだした。
 
 去り行く恐怖に対してレルロンドは不思議ともったいない気がしていた。
 
 ――この田舎町でやんちゃをしているレルロンドとランクーイ。二人がこんな盗賊まが
いなことをしているのは刺激がほしいから、ただそれだけである。別に盗った物をどうこ
うするつもりは毛頭ない。いつものパターンならレルロンドが調合した強刺激の粉塵の入
った袋を矢につけ被害者の近くで破裂させ、相手が苦しんでいる隙にランクーイが獲物を
盗り、二人してオロインの森に逃げ込むという手順であった。盗った獲物は逃走コース上
の納屋の近くで、きまって投げ捨てた。森で落ち合い、互いの無事を称えあう瞬間、その
一時が楽しくて、何度も何度も繰り返した。もちろん犯罪のあと一週間程は町には帰れな
かった。しかし、親のいない二人にとってはそんなことは問題ではなかった。

 今、初めて狩りをしくじり、更に、死の危機にも直面した。しかし、何故かレルロンド
の心は燃えていた。目は、輝きに満ちていた。

「待ってください!!」
 ラスは言われるがままに立ち止まった。
「僕らの非礼を詫びます! ですから…僕の家で謝罪をさせてはいただけませんか?」
 ラスの顔が僅かに明るくなる。宿が、見つかった。

30 名前:FAT 投稿日:2006/02/19(日) 22:38:23 [ TKRnzKAI ]
>> 戦士のようだ さん
なんと言いますか、こう……考えさせられる作品ですね。
難しいことは言えませんが、一言でまとめると「人間って素晴しい」ですね。

31 名前:南東方不勝 投稿日:2006/02/20(月) 03:06:23 [ gowBXNz6 ]
ども、MT車の教習でヒイヒイ言ってる南東です。坂道発進が難しいよ、グランママン…orz
前スレ分も含めた感想を置いていきますね。

>>ドリームさん
着飾ったミレル嬢はさぞや、眼福者でしょうねぇ・・・。
さて、バースがやんごとなき身分の方だったとは驚きです。
名前からして、某Uの関係者ですかね?

>>復讐の女神さん
弓殴りでこそ泥こと、イゾルデを撃退してしまったジェシ嬢。
なるほど、彼女は正統派物理弓ですか。
盗賊組合に売られ(ryもとい、しょっ引かれていったイゾルデの運命は如何に?

>>初心者さん
プレナンさん、試験に挑戦するの巻き、ですかね。
って、試験内容がバフォクエってかなりハードっすねorz
そしてゲンマの爺ちゃん、あんた好きやわぁ。

>>リ・クロスさん
初めまして^^
簡潔に纏まっていて、個人的には良作でした。
また、気が向いたら書きにいらしてくださいね。

>>FATさん
おぉ、お帰りなさいです。先輩。
前回に引き続き、魅力的なキャラばかりで素敵です。
個人的には・・・、レンダルさんが一番萌え(ぇ ましたかね。

>>戦士のようださん
有名な童話の改変モノでしたが・・・、感動しました。
GJです。

32 名前:南東方不勝 投稿日:2006/02/20(月) 17:13:57 [ gowBXNz6 ]
前スレ>>968

―――東バヘル上流―――

ドゴォォォォォォ・・・、ズズゥゥゥン・・・!

強烈な衝撃を受け、巨木が音を立て倒れていく。
兄貴が放った真空波で片腕を吹き飛ばされても尚、あの巨人は膝を折ることはなかった。
「オォォォォォォォッッッ!!!!」
巨人が己の左の足を天高く振り上げる。その行き着く先は兄貴の腹部・・・!
「そう、簡単に・・・、当たってはやれんよ!」

ヒュオウ・・・、ザッッ!

巨人の足が腹に届く一歩手前で、兄貴がバックステップで「一撃目」をやりすごす。
巨人は未だに、足を振り上げた状態で止まっている。だが、この技はこれだけではない。
兄貴だってそのことは、充分に知っているはずだ。それなのに・・・、

ザリッ・・・、ドンッッッッ!

兄貴は戸惑いもせずに、一直線に走り出した。
「ジャック・・・!」リリィが、その光景に声を荒げる。
一頭の狼が岩肌がむき出しの荒れた台地を、巨大な獲物に向かって疾走する。
両者の距離が、瞬く間に縮められていく。手にする武器の特性上、先に間合いをとるは狼。
あの間合いからならば、巨人の「二撃目」が届く前に狼(兄貴)の牙(ハリケーンショック)が巨人を捕らえられる。
だが、狼は止まらない。さらに一歩、獲物(巨人)との距離を縮める。しかし、その踏み込んだ領域こそ巨人の間合い・・・!
「オアァァァァァァァッァァ!!!」
天高く振り上げられていた鉄槌(左足)が、兄貴に向かって振り下ろされる。

ドガァァァァァァ!!!

「がぁぁぁぁぁぁぁ・・・!」

ベコッッ・・・メキメキメキ、ゴキャッッッ!

あまりの衝撃に周りの地面が爆ぜる。
振り下ろされた鉄槌は、その狙い通りに狼の体を粉砕した。
いや、したはずだった。
「・・・ッ!?」
巨人の左足が動かない・・・いや、動かせない。
何故ならば、その左足は何かに掴まれているのだから・・・!
「はぁ・・・はぁ・・・、残念だったなぁ・・・。生憎、搾取(盗ってた)魔力は・・・防具にも回せんだよ!」
土煙の切れ目から、その掴んでいた何かが姿を現す。
振り下ろされた踵を左肩で受け止め、左手はその肩に食い込んだものをしっかりと掴んでいた。
「そんな不安定な体勢じゃあ・・・、流水撃は打てねぇよな・・・!」
狼の姿が重なり、牙(斧)を振り上げ・・・、
「まぁ、あんたがあっちで部下達と再会できることを祈ってるよ・・・。」
巨人の体にその牙を突き立てた。

33 名前:戦士のようだ 投稿日:2006/02/20(月) 17:29:14 [ QS1Cbi/M ]
元ネタって童話だったんですね
自分は「百万回生きたブーン」を見て思いつきました
嗚呼ハズカシイ

34 名前:ドリーム 投稿日:2006/02/20(月) 17:37:46 [ C5V/QrjM ]
久し振りに書き込み遅いけどキャラ紹介でも・・

主人公
レイド(21) 腕、顔共に一級品の腕利きシーフこの物語の主人公なのだが・・・?


ミレル(20) 腕は一流顔は・・・・ご想像に(ぁ 職はランサー、記憶喪失の女性ツンデレツンデレ

ヴィード(22) 変態戦士(ぁ 腕っ節が強い。ミレルに片思いの予感

バース・ロマ・シュトラディバリ(23) ロマで王子であり、古都の王の名を継ぐ男。

その他何人か(ぇ

>>FATさん
お初ですーそしておかえりなさい。魅力的なキャラの数々でどんな冒険が待ち受けているのでしょう
期待です

>>南東方不勝さん
坂道運転ガンバです・・・
そうですねドレス姿のミレルにドキドキです(ぇ
某Uの関係者です(笑

35 名前:ドリーム 投稿日:2006/02/20(月) 19:08:20 [ C5V/QrjM ]
1時間30分もたってようやく気がついた・・・坂道発進だね・・・(ぁ

36 名前:FAT 投稿日:2006/02/20(月) 21:09:54 [ TKRnzKAI ]
『水面鏡』

キャラ紹介>>21

―田舎の朝―

―1―>>22
―2―>>25-26

―子供と子供―
―1―>>28-29



―2―

 比較的新しい、しっかりとした家だ。おそらく築十年も経っていないだろう。窓が大き
めに作られており、家の中には光が充満している。だが、どこか寂しさを感じるのは何故
だろう。

 ラスは寝込んでいるランクーイの額に冷たく濡れたおしぼりを乗せ、部屋を見回す。小
奇麗に整理整頓された室内。まるで誰も生活していないかのような、不気味さを感じる。
「お待たせしました。こんな物しかありませんが…」
 レルロンドがトレイに甘いハチミツティーと七色のキャンディーを乗せて現れた。それ
らをラスに献上すると、深く頭を下げた。
「先程は本当に申し訳ありませんでした。…その、おかしな言い方かも知れませんが、命
を救っていただき、ありがとうございました」
 まだ痛む喉を癒すため、ハチミツティーを一気に飲み込む。今度はその甘さにむせ返る。
「…なんで盗賊なんてやってるんだ?」
「僕らは決して物が欲しくてあんなことをしているわけではありません! 盗ったものは
すぐに返します」
「はぁ? 何考えてんだよ」
「…スリルです。僕らはスリルを求めているんです」
「そうだ、俺たちは退屈なんだよ…」
 青白い顔のランクーイが口を挟む。
「ランクーイ、寝てなきゃダメだ。顔が病気のゴブリン並に青いぞ」
「どういう状況なのかわかんないけど…こいつがなぜここにいる?」
「後でゆっくり話す。すみません旅のお方、こいつは口のきき方も知らない愚か者でして
…」
 ラスは関心なしといった様子で、
「スリルを求めて盗みか…迷惑だぞ。もっと別のことにスリルを見出せよ」と助言した。
 この瞬間、レルロンドの瞳が力強くラスの瞳を捉えた。
「そこでお願い致します!! 僕ら二名を弟子にしてください!! 一緒に、旅をさせて
ください!!」
 突然の懇願にラスはもちろんのこと、ランクーイも唖然とせざるをえなかった。
「レルロンド、何言ってるんだ! 見ず知らずのこんなやつに弟子入りだなんて…どうか
しちまったのか?」
「ランクーイ、お前は魔法剣士になりたいんじゃないのか? だったら文句を言わずにこ
の方に付いていくのが一番の近道だぞ」
「…こいつ、そんなに強いのか?」
 ラスに対し、挑戦的な眼差しを向けるランクーイ。だがその視線は巨大な刃によって二
つに断たれた。
 …反応すらできない、いや、見えてすらいない。
ラスが、今度はゆっくりと刃物を背中に納めた。硬直した顔が全てを物語っている。ラ
ンクーイは無意識に流れ出る涙が布団に深く沁みこんでから、ようやく股が温かくなって
いることに気づいた。

37 名前:FAT 投稿日:2006/02/20(月) 21:23:40 [ TKRnzKAI ]
>> 南東方不勝 さん
ROM中に思ったことですが、戦闘UMEEEEEEEEEE
正に死闘といった緊迫感のある戦闘シーンはもはや南東さんの専売特許ですね。
そして免許取得、この時期は前期で受かった学生もたくさんいて混雑しているだろうと
思われますが、がんばって下さい。

>> ドリームさん
初めまして、ただいまです。
ツンデレは良いですね。顔は…ご想像にということで私の中ではミレルはロリに設定
しておきますね^^

>>戦士のようださん
私は童話も「百万回生きたブーン」も見たことありませんでした。後で検索してみます

38 名前:リ・クロス 投稿日:2006/02/20(月) 21:24:25 [ LR2h4YPA ]
>>南東方不勝さん
こんなので良ければ書かせていただきます。

>>初心者さん
バフォクエですか・・・ ああ、苦い思い出が・・・。

ここでクイズです。(え
青年がが戦闘していた相手は何でしょう。
1 魔法師を吸収したシャドウソウル
2 巨大化したバンシー
3 ネクロマンサー


とりあえずキャラ紹介でも・・・

【名前】スコール=エトレシア
【身長/体重】174cm/65kg
【性別/年齢】男/20歳(見た目から)
【髪/瞳】深紅が主で一部漆黒/深紅色

無愛想で無表情な上無感情な性格をしているので
時折、怒っているのかと誤解される事がある。
過去の記憶が無く、雨のエルベルク山脈で倒れていたのを
セリスが助けて、雨が降っていたのと付近の木でこの名前になった。
魔法と剣術に長けているので、自分は魔法傭兵の生き残りと思っている。

【名前】セリス=アルクェイト
【身長/体重】156cm/46kg
【性別/年齢】女/20歳
【髪/瞳】ゴールド/瑠璃色

非常に行動的な性格でメンバーを纏めている良きリーダーで
常に迅速で的確な判断の出来る戦略家でもある。
巨大なクロスボウガンによる遠距離戦も、ランスによる近接戦も可能で
多少の治療魔法や、補助魔法も使用する事が出来る。
料理が趣味であり、彼女の腕の評判は非常に良い。

【名前】スィフィー=エトランザ
【身長/体重】144cm/36kg
【性別/年齢】女/16歳
【髪/瞳】アッシュグレー/朱色

レッドアイの研究施設から、スコールが救出した少女。
救出された当初は、獣の様な凶暴さだったが今では良い意味で凶暴な性格となっている。
小さい体を活かした素早い武術を得意としているが、本人の前で言ってしまうと
相手が男だと問答無用で、回し蹴りが飛んでくる。

【名前】エリシア=アルクェイト
【身長/体重】148cm/41kg
【性別/年齢】女/14歳
【髪/瞳】シルバー/瑠璃色

セリスの妹の不思議な雰囲気の漂う愛らしい少女。
数人しか成功していない、四段階の召喚獣の召喚に成功した天才召喚術師。
調教術も腕が良く、ダイアーウルフとホーンドを捕獲して、飼っているほどであり
外では常に4体と一緒に居るので、男が近づくと彼らに威嚇されてしまう。
笛を改造して製作した、魔弾笛での射撃も得意である。

【名前】イルム=クレイサー
【身長/体重】176cm/62kg
【性別/年齢】男/18歳
【髪/瞳】ダークブルー/エメラルドグリーン

既に廃絶している、風と闇の魔法を使う珍しい人物で
範囲魔法による対多数時に活躍するがソードロッドに雷を宿した物で
近接戦闘も出来るという、多彩な魔法師である。
性格は冷静な皮肉屋だが、時に拍子抜けする様な行動に出るので
その度に皆で大笑いするのだが、本人は気づいていない。

39 名前:リ・クロス 投稿日:2006/02/21(火) 07:45:55 [ WnG8iqaE ]
「森に被害が広がる前に、食い止めろって言っただろう!
って聞いてるのかこの朴念仁野朗!!」

「・・・ああ、聞いている。」

やれやれと大きなため息をすると、目の前で怒号を発しながら怒っている
短髪の少女に深紅の目を向ける赤と黒の髪の青年――――スコール。

「(かれこれ三十分経つのか・・・、何所にそんな体力が有るのだろうか・・・。)」


古都ブルネンシュティング・・・。
フランデル大陸極東部最大の都市であり、冒険者達が最も多く集まる都市である。


帰還の巻物に宿された力――――ポータルによって戻って来たスコールは
中央通を歩いて行き、しばらく進んだところの建物で足を止め
そこに有るドアを開いて、中に入っていった。
ドアに掛けてあるプレートには【ギルド クリムゾンインパルス】と書かれている。
ソファーの方に目を向けると、銀色の髪をした少女が座っている。

「あ、スコールさんお帰りなさい。」

見た目どおりの澄んだ声で、黒いローブを着ている少女――――エリシアは
戦闘用に特化したグローブ――――マスグリップを外したスコールに話しかけた。

「マスターに任務の報告をしたいのだがここに居ないのか?。」

外したマスグリップを、ロッカーに入れてニーパッドとショルダーパットも
同じくロッカーに入れると、チェーングローブを装着する。

「姉さ・・・ マスターならトンキンさんの所にアレを取りに行ってますよ?」

一瞬、姉さんと言い掛けたエリシアに、内心苦笑しながらも
表情には出さずに一言返事を返すと踵を返そうとしたが
ドアが先に開き、紺色の髪の青年が入ってくる。

「おい、何か忘れてないか?」

紺色の髪の青年――――イルムはニヤニヤとしながら
目の前で突っ立っているスコールに詰め寄った。

「・・・?、・・・・・・あ。」

「ん? ・・・グハァ!!・・・街中に・・・何故デビ様が・・・。」

突然、ドアが物凄い勢いで開かれてその範囲内に居たイルムが
文字通り吹き飛んで気を失ったのを見届けると
今仕方、イルムを吹き飛ばした人物に視線を向ける。
妙な音が聞こえた気がするが、気のせいだろう。

「おい、スコール!!ちょっと来い!!」

そう言い放った黒い服を着た朱色の目をした少女は
スコールの腕を引っつかむと、奥の方に連れて行った。

「待て、俺に拒否権は・・・。」

その様子を見ていたエリシアは1人、微笑みを浮かべた。


大理石の床に顎を強打したイルムは、このあとしばらく放置される。

アーメン

40 名前:FAT 投稿日:2006/02/21(火) 18:09:31 [ TKRnzKAI ]
『水面鏡』

キャラ紹介>>21

―田舎の朝―

―1―>>22
―2―>>25-26

―子供と子供―
―1―>>28-29
―2―>>36



―3―

「なぁ」
 ラスが食後のデザートを平らげ、まだフォークを動かしているレルロンドに話しかける。
「はい、なんでしょう」
 慌ててフォークを置き、真面目な顔で向き合う。
「歳いくつ?」
「十七です」
「だったら俺に敬語なんて使うなよ。情けないぜ」
 レルロンドは首を傾げる。ラスは大柄で精悍な顔つきの青年である。どう見積もっても
自分よりは歳上なのは間違いがなかった。
「え? では、ラスさんは何歳なのですか?」
「なな」
 レルロンドは聴き間違えたものと思い、こう言った。
「なんだ、じゅうなな歳ならば同じ歳ですね。ランクーイはまだ十五歳なので二人で面倒
を見てあげましょう」
 この特異な男が自分と同じ歳だと思い込んだレルロンドは少しばかり悔しい気持ちにな
ったが、次の一言が彼の世界観を根底から変えた。
「いや、七。まだ七年しか生きてない。産まれてから、七年しか経ってない」
「――――」
 言葉が出なかった。彼の目は空を泳ぎながらもその画面の中にラスを捉え続けた。経験
したことのない震えが体の隅々までを支配し、腿の上に置いた手は感覚を失う。彼にはこ
の発言を冗談と取ることも出来たはずなのにそれをしなかった。この男を、常識という枠
の中に収めることが出来なかったのである。
「俺だって不思議でならないよ。なんでこんなにでかくなっちまったのか、こんなに魔力
を秘めているのか」
 レルロンドは揺さぶられた世界の揺れをしだいに快感へと変えつつあった。それは今日、
去ろうとしたラスの背中をなんとか繋ぎとめたあのときと同じような熱い胸の躍動が起こ
させたものだった。
「ラスさん、僕はこれからもあなたに敬語を使い続けさせていただきます。歳なんて関係
ありません。あなたが慕うに値する人物である限りはそうさせていただきます」
 ラスは何か摘もうとテーブルの上に手を伸ばしたが何もなかった。
「あ、何か取ってきます。しばしお待ちを」
 レルロンドの顔は興奮で赤紫になっていた。椅子から立ち上がった瞬間、意思に反して
脚が折れ、床に膝をぶつけた。ラスは声もかけずにただ赤くなっているレルロンドの顔を
不思議そうに眺める。レルロンドも何も言わずに急いで立ち上がると戸を開け、食べ物を
取りにいった。戸は開いたままになっていた。 

「なんなんだ、あいつは…」
 ラスにはレルロンドの思考が読めなかった。まだ幼すぎるラスの心はレルロンドがラス
をどのように見ているのかが分からなかった。ただ、純粋に彼の言った「慕うに値する人
物」というものがどういう物なのかをぼんやりと考えてみた。彼の言うそれがただ単に「力」
を意味するのならば自分にとって「慕うに値する人物」とは母エイミー以外には思いつか
なかった。

(しかし…)

 赤子のときから可愛がってくれているレンダルやデルタにも同様の尊敬心を持っている。
となれば、「慕うに値する人物」というものは決して「力」だけを問うものではないらしい。
では、自分は何を基準に「慕うに値する人物」を決定しているのだろうか…

41 名前:FAT 投稿日:2006/02/21(火) 18:12:17 [ TKRnzKAI ]
「お待たせしました」
 答えを探していると折り悪くレルロンドが小さな果実を大皿いっぱいに乗せて戻ってき
た。
「ああ…悪い、腹は別に空いてないんだ。それよりお前、早く自分の分喰っちまえよ」
 テーブルの上のレルロンドの皿にはまだ主食のステーキが二欠片残されていた。慌てて
置かれたフォークは皿から転げ落ち、テーブルに肉汁が跳ねている。
「あ、すみません。でもラスさんが何か食べたそうにしていたので…」
「あのなあ、今後のために言っとくけど、そういう接し方はストレスが溜まるんだ。俺に
気なんか使うなよ」
「はい」
 レルロンドは少しうつむき、大皿を慎重にテーブルに置いた。音を立てずに置かれた皿
の上には鮮やかな赤色をした艶のある果実が敷き詰められている。彼はそのまま椅子に腰
掛けると汚れたフォークを拭いもせず、肉片を口に放り込んだ。
 運ばれてきた果実を無視し、ラスはレルロンドの食事姿をじっくりと観察した。肉を刺
すとき、器用に中程で止め皿との衝突を避け、口に入れてからもくちゃくちゃと不快な音
を漏らさぬように器用に噛み潰し、飲み込む。どうやらこの男に気を使うなと言うのは無
理らしい。その視線に気付いたからか、全てを胃に収めるとまたもラスと向き合った。

「お前、親はどうしているんだ?」
 突如、レルロンドの表情が変わった。それは先程までのなよなよとした少年とは違った
顔であった。
「父は四年前から帰っていません」
 無神経にラスは
「母親は?」
「そのせいで二年前に過労死しました」
「そうか、大変だな」
 感心のなさそうなラスの返答にレルロンドはまたも顔を赤くした。その色は先程のもの
とは真逆のものである。
「あなたのご両親は?」
「両親なんてものはいない。俺には母親だけだ。母親から俺は産まれたんだよ」
 レルロンドは腕組みをし、深く瞬きをしてもう一度ラスを見直した。
「僕も母親から産まれました。それは当然のことでは?」
 言ってからラスがまだ七歳だということを思い出した。もしかしたらまだ、命のサイク
ルの定義を知らないのかもしれない。
「そうだ、当然のことだけれども…俺には、父親がいないんだ。母親だけなんだよ」
「あなたが産まれたときにはもういなくなっていたのですか?」
「産まれる前からずっとだ。母さんは一人で俺を産んだんだ」
「そういえば、産まれはどこなのですか?」
 レルロンドはこれ以上その話題を続けることを拒んだ。延々と続く終わりのないループ
に足を踏み入れていることに気がついた。
「魔法都市スマグの隣町、トラヴィス。町っていっても村みたいなもんだけどな」
「まぁ、ここも同じようなものですがね」
「いや、ここよりはましさ。宿はあるからな」
 終始冷めた口調で会話をしていたラスは真正面に座っている男の異変に思わず刀に手を
伸ばしそうになった。

42 名前:FAT 投稿日:2006/02/21(火) 18:12:48 [ TKRnzKAI ]
「宿がないなんて絶対にランクーイの前では言わないで下さい! あいつは!!」
急に声を荒らげ、テーブルを両の掌で叩きつける。慎重に置いた大皿から赤い実が二、
三個こぼれた。
「なんだよ急に。やつがどうかしたのか?」
 動かしてしまった手を刀に回す代わりに耳の裏を掻く。
「…あいつの家は宿屋だったんです。でも両親が死んでしまって…。だから、絶対にあい
つの前で宿が無いだなんて言わないで下さい!!」
「だからって急に大声だすこたぁーねーだろーが!! そんなことまで俺が知ってるわけ
ねーだろ!!」
 レルロンドは一瞬で冷静になった。それは彼と出会ったあのときと同じ状況になった光
景が脳裏に浮かび上がったからである。
「す、すみませんでした、つい…」
 気弱に頭を精一杯下げる。ラスも今回はそれほど興奮していなかったらしく、かゆくも
ない耳の裏をもう一度強く掻きむしった。無意味に赤く腫れた面に血が滲んだ。
沈黙が始まり、物音一つしない無の時間が過ぎていく。

「どこで寝たらいい?」
 寝るという選択肢を使ってラスはこの重圧から逃げた。仕掛けるわけにはいかなかった
レルロンドは笑顔で
「ベッドに案内させていただきます。こちらへどうぞ」と戸を開けようとし、そこでよう
やく戸が開きっぱなしになっていたことに気がついた。平素、なんでも几帳面にする癖の
ある彼がそんな初歩的なミスを犯すとは彼自身ある事実を受け入れざるを得なかった。
「すみません、戸がずっと開きっぱなしだったようで…」
「ああ、ちょっと寒かったな」
 レルロンドは意外そうな顔でラスを見た。季節は晩春。最近は長袖など不要なほどの気
温で夜でも薄い毛布一枚あれば充分なほどである。当のラスはといえば厚手の長袖の上に
ジャケット、さらにはマントも纏っているのに寒かったとは……
「なんだ? 案内してくれるんじゃなかったのか?」
「え? あ、すみません。こちらです」
 廊下を挟んだ戸の取っ手を回す。
「どうぞ、二つベッドがありますが好きなほうを使ってください」
「お前はどこで寝るんだ?」
「僕は自分の部屋で寝ます。それともここで寝ましょうか?」
「斬られてもいいならそうしろよ」
「す、すみませんでした、おやすみなさい」
 戸に隠れるようにしてそっと閉める。彼との仕切りが完全に閉まろうかというとき、ラ
スは「すみませんって、寒いぜ」と漏らした。
 この日、レルロンドは寝付けなかった。

43 名前:FAT 投稿日:2006/02/21(火) 18:24:36 [ TKRnzKAI ]
>> リ・クロス さん
私は1だと思います。そういう設定も新鮮で良さげですし。
イルムさんどまいです。
キャラ設定がしっかりしていて自分が恥ずかしくなりました。
どんな話になるのか、楽しみにしております。

44 名前:戦士のようだ 投稿日:2006/02/21(火) 22:03:01 [ QS1Cbi/M ]
あー新しいのが、とりあえず完成しました。
今回は「人が誰も死なない」し「激しいバトル」もしない。
「男と女がイチャイチャする話」です。
ah-これ、前置きです。ええ、前置き。
何だか文がメチャクチャですね。柄にもなくイチャイチャを書いたからでしょう。
きっとそうですね。皆さん、おやすみなさい。

45 名前:ドリーム 投稿日:2006/02/22(水) 17:55:43 [ cbWf/WqI ]
前スレ
>>971


「バース・・・・ロマ・・・シュトラディバリ?どういうことなのバース?」
ミレルは不思議でしょうがないいきなりそんな事を言われても困惑する一方だった

「コソ泥が紛れ込んでおったか」ベスペンはさっきの表情とは裏腹に気性を荒立て今にも殺そうとしているような目をしている
このままでは行けない、そう直感したミレルはバースとヴィードの首の根っこを持ちすぐに退散した
「ふん・・・・」ベスペンき苛立ちを隠せないのかすぐにその場を後にした

「はぁはぁ・・・どういうことか説明してもらうわよ?バース」ベスペンの屋敷から少しばかり離れた場所で手を離し問い掛けた
ヴィードは何がなんだかわからないようで混乱しているようだった
「ヴィード・・・言いたい事はわかるわ・・・せめて口にほうばったその大量の物を飲み込んでからにして頂戴」
ヴィードはモゴモゴ言っており何を言っているのかさっぱりわからない

「そう言えば言ってなかったか?俺はバース・ロマ・シュトラディバリだと言う事を」
開き直ったようにつーんと付き返すバース
「言ってないわよ!まったく・・・・」やれやれと言った感じで私はため息をつく

そんな事を繰り返している最中ベスペン邸では・・・・・・・

「な・・・なぜ・・貴様がそこにいる」ベスペンは酷くおびえていた
「今一度聞く・・・貴様が持っている赤い魔石・・・レッドストーンを渡せ」
その人物は強く・・・はっきりとそう言った
「な・・・なんの事だか私には・・・・」そう口走った時にはすでにベスペンに語る手段が残されてなかった
だが彼は心の中でこう叫んだ
レ・・・・イ・・・・・・・・・・・・・・

「ただのガセネタか・・・・ちっ、無駄足を踏んだな・・・そろそろミレル達と合流するか」
そう言うとその影は消えた
そこに小さな男の子が現れた、その子はもう動かないベスペンを揺すりしばらくの間こう呟いていた
「パパー、オキテ、パパー」しかし返事をするはずもない・・・・

46 名前:ドリーム 投稿日:2006/02/22(水) 18:36:27 [ cbWf/WqI ]
「つまり・・・貴方はロマの王子で古都の王の名を継ぐ人で家出中なわけね」とりあえず淡々と纏める
バースは指を振りチッチッと言いたそうにやる
「ロマの王子で古都の王の名を継ぐ人で家出中でイケメンなわけだ」自慢気に胸を貼りそう言い張る

             ガッ☆

その大きく鈍い音はバースの頭の上にある星から想像できるだろう
「痛いな・・・大体俺が王子と知れたからなんだ?俺をロマに帰すか?まったくどいつもこいつも王子王子もううんざりだ」
バースはかなり怒っている様子だ。まぁ確かに私には王子という立場の人とは話したことはないけど色々と大変なんだなぁ・・
「別に・・帰したりしないよ」短くそういうとバースは少し驚いているようだった

「バースは王子である前に・・私達の仲間・・でしょ」少し恥ずかしかったがそれが自分が言いたいことだった
バースはきょとんとしたまま動かない
「どうでもいいけどさーこれからどうすんだよ」待ちかねたようにヴィードが突然口を開く
ミレルもそれを考えていた
ベスペンの屋敷に行ったは良い物の赤い魔石は見つからずレイドにも今だ会えない
彼らには少しベスペンの所にレイドが居ると言ってここまで来たが正直その可能性も無かったため自分でも何をしていいかわからなかった

「レイドの奴もベスペンの野郎のとこには居なかったしなぁ・・・」
そういえばと要った感じでバースが不思議そうに聞く
「そういえば・・・レイドって何者なんだ?」
「何よ・・いきなりやぶから棒に」
「私の・・・・とても大切な人・・・かな」突然聞かれたのでどうしようか少々迷ったがそう答えた

少しヴィードは複雑な気持ちだった

チャリーン・・・チャリーン

突然聞き覚えのある音が聞こえた・・・・そうこれは前も聞いたことがある
「レイド・・・・・?」そう問い掛けるとその音はだんだん近づいてきた
次に姿を現した時にはもう何も見えなかった

目からは涙が零れ落ち思い切りレイドの胸の中に飛び込んだ
「レイド・・エ・グッ・・・バカ・・心配・・かけて・・・本当にグッ・・・」
ミレルは涙を抑えようとしても収まらない抑えようとしてもそれが逆にまた涙を流す
「ミレル・・・・」レイドは落ち着いた目でミレルと見合う
「ただいま・・・」そう短く言うとミレルを包み込むように抱きしめた
「おか・・・グッ・・えり・・・・」

47 名前:南東方不勝 投稿日:2006/02/23(木) 01:18:46 [ gowBXNz6 ]
>>FATさん
パッと見、ヘタレキャラのランクーイのご登場・・・。
って、設定にも書かれていましたがラスさん7歳ってorz
果てさて、これは新手のロリ嗜好ですかね(殴

>>リ・クロスさん
ス、スコールぅぅぅぅぅぅ!!
いきなりの放置プレイだなんて、なんて美味しい状況なんだ(違

さて、個人的にはクイズの答えは
2で行きましょうかね、骨系が大好きなもので。

>>ドリームさん
レイド合流・・・。すいません、ミレル嬢で萌え死んでもよろしいでしょうか?(ぇ
ヴィードもライバル登場で大変ですな。是非、ムッツリを磨いてもらいたいものですw
あと、王子という窮屈な身分に嫌気がさして家出中のバースさん。
その内、彼を中心とした騒動にミレル嬢達が巻き込まれそうな気がしますなぁ・・・。

48 名前:南東方不勝 投稿日:2006/02/23(木) 02:25:05 [ gowBXNz6 ]
>>32
―――バヘル台地―――

そうして、自分達の戦闘は終わりを告げた。
最も、後半においては彼女の独壇場であった。
彼女に肉薄しようとしていた隊長の姿はなく、その隊長が最期に立っていた地面は未だに、シュウシュウと不気味な音色を奏でている。
「あ〜あ、まだほんの少ししかあびせてないのに・・・。最近の巨人族は軟弱だお」

ズボッ・・・

己が身から槍を引き抜きながら、サキエルはつまらなそうに呟いた。
「まったく、正に『出血』サービスしてあげたのに。・・・もまだ、・・・じゃないのかな?」
何か独り言を言っているようだが、詳しくは聞き取れない。
「じゃ、片付けるものは片付けたし・・・。ボクちゃんはもう行くお。」
それじゃ、とでも言うように周りの分身を消去し、サキエルは自分達に背を向け、歩き出した。
だが、彼女がそれを許さなかった。
「待ちや、アンタ」
ぐっと、アニーがサキエルの肩を掴む。肩を掴まれたサキエルはおもむろに振り返り、
「・・・、死にたいのなら手伝ってあげてもいいお。」
そう言い放った。その言葉は協力を申し出た時とは違い、純粋な殺気で覆われていた。
だが、アニーはそれに怯むことなく言った。
「別に今ここでアンタに喧嘩を売る気はあらへん。仮にも、協力した間柄やし・・・。お礼の一つくらい、言うてもいいやろ?」
「フフフ・・・、実にお前らしい意見だな。そうだな、アニーの言うとおり・・・」
実に彼女らしい意見を聞いて、自分もほほが緩むのを感じた。
そう、仮にも今だけとはいえ共に戦ったモノ。ならば、それなりの言葉をかけてやりたい。
「お前達、馬鹿かお?」
だが、その共に戦った彼女は実にあっさりと拒絶した。
「オイ、ワレ・・・。今なんて・・・」
「馬鹿、そう言ったんだお。いいかい、ボクちゃんが君達に協力してあげたのは、こいつらがボクちゃんにとっても邪魔だったから。
更にもう一つ言わせてもらえば、イスランを殺した時点で君達はもう、ボクちゃん達の敵なのさ・・・。
次に出会う時は殺し合うことが確実な相手からのお礼?そんなものをもらってやれるほど、ボクちゃんは酔狂じゃない。」
サキエルの言葉には、きっぱりと「馴れ合いはここまで」という意思が詰め込まれていた。
二の句は告がせぬ、はっきりとした言葉だった。自分もアニーも、喉から出掛かった言葉を飲み込むしかなかった
そして彼女は去り際に、かつての口調でこう言った。
「ヒース・・・。貴方が何を考えてるかは知らないし、知りたくも無い。だが、かつての戦友として一つ忠告する。
 無駄だ。私に天界に戻る意思は無い 、あの時の事を忘れることなど出来はしない。大人しく天界へ帰れ。
どうせ、私『達』を説得しに降りてきたのだろう?お前ほどの者なら、至天使への復位は造作も無いだろう。
だからもう二度と、私の前に姿を見せるな」
それだけを言い残し彼女は、その姿をくらませた。

サキエルの姿が見えんようになった時、ウチは隣にいたヒースにどうしても聞きたいことがあった。
「なぁ、ヒース・・・。あの時の事、ってのは何や。天界でなんかあったんか?」
天使っちゅう生き物は、ウチら人間に比較にならんほどに長命な存在。
ヒースかて、ウチらの基準で言ったら28歳やけど、実際は800歳っちゅうキチガイ沙汰や。
あぁ、ウチがヒースの天寿を看取るのは無理そうやなぁ・・・。って、話が脱線しとるがな。
「アニー・・・。すまんが、今は言えん。だが一つだけ言えるとしたら、その出来事を境に自分と彼女の道は別たれたのだよ」
そう言うたヒースの瞳からは、後悔とか悲しみとか暗い感情しか見えへんかった。
「わぁーったわ・・・。今は詳しく聞かへん、でも・・・」
「分かっている、必ず話すよ・・・。さて、ジャック達の後を追いかけよう」
そう言うてヒースは歩き出した。前を歩いていくヒースが、ちぃっとばかり小さく見えた。

49 名前:南東方不勝 投稿日:2006/02/23(木) 03:26:54 [ gowBXNz6 ]
閑話・「虚無」

東バヘルの熱帯雨林に、その少女はいた。歳は15歳程度であろうか・・・?
目を瞑り、静かに笛を奏でている。
その装飾品から、ビーストテイマーと呼ばれる冒険者出るあることが伺える。
だが、その少女はこの世のものとは思えない美しい容姿を持っていた。
透けるような銀髪、均整が取れており尚且つ初々しさを失わない顔、未だに幼さを残しそれでいて女の魅力を持った身体。
なぜこのような見目麗しい少女が、このような泥臭い場所にいるのだろう?
しばらくして少女は演奏をやめ、こう呟いた。
「ふむ・・・、やはり全滅かえ。まぁ、サキエルが相手では致し方が無かろう。」
少女は優雅に、それでいてどこか寒気がする気配を発散しながら呟き続ける。
「あちらの隊長ももう限界じゃな、血を流しすぎた。まったく、わらわというものがついていながら情けないのう」
少女は腰掛けていた岩より降りて、周りを見渡した後また笛を吹く。
少女の笛の音色に反応するかのように、サタンとトリトンが姿を現す。
「さて、体を乗り換えたばかりじゃしな・・・。すぐに本調子、というわけには問屋が卸さぬか」
雅に現状に対する愚痴をこぼし、二体の僕の姿を確認するや否や、
「いつまで・・・『無い』つもりじゃ、サキエル?」
誰かに言うでもなく、ただ静かに少女は呼びかける。少女の背後にはいつの間にか、髑髏の面を付けている女性が立っていた。
「ウヒョヒョヒョ、よく分かったねぇシャム。」
黒の女性はあくまで陽気に少女に話しかける。
「なにを寝言を申しておる。『虚無』を発動させているお主の気配を認知することなど誰も出来ぬ。
 さて、お主は影か、それともサキエル本人か・・・。」
少女が訝しげに目の前の女性を凝視する。
「ご心配なく。中継体も回収したからね、正真正銘、ずばりサキエルそのものだお」
「中継体とな・・・。なるほど、お主はお主で目的があったのか。そして、わらわがわらわ自身の
 調子を図るために、戯れで『支配』した巨人共が邪魔になったと・・・。」

ここで説明せねばなるまい。サキエルのもう一つの象徴である「虚無」。
これが表す能力は、かなり他の始原魔達の能力とは異なる。その効果は、発動者の存在を零・・・すなわち、消してしまうのだ。
世界から自身の存在を零にすることにより、あらゆる干渉を無効化する。それこそが「虚無」という名の能力。
だが、この能力は鉄壁の守りを持つ反面、発動者自身も世界から消えている状態であるために攻撃を行うことが出来ない。
それを防ぐために、サキエルは「虚無」以外の能力を一体の分身に移している。
その分身は他の分身とは違い、耐久度もオリジナルと同等である。中継体とは、この分身のことを指す

「そういうことだお。あぁ、そういえばシャム。爺やとガギさんがボクちゃん達になにやら用があるらしいんだお」
「ふむ、実に丁度よい時にわらわは目覚めたのじゃな。して、場所は・・・?」
「アウグスタ・・・、ガギさんの本拠地だお」

50 名前:サマナの人 投稿日:2006/02/23(木) 12:19:15 [ b6Gnz/6I ]
今回メンテでナクリエマ共和国・タートクラフト国王等の公式設定が判明したため、今まで暖めていたネタが使えなくなりました。
ちくしょう……_| ̄|○

51 名前:ほげお 投稿日:2006/02/23(木) 15:13:08 [ f0SX/jL6 ]
初めて書いてみました。
前編通して、ゲームの設定と一部違うかも知れませんがご容赦を。




フランデル大陸の極東地方では、
魔法の中、4大元素である火、水、風、大地の精霊を利用した魔法が発達している。
フランデル極東のウィザードの中、もっとも注目すべき者は、
他ならぬ古の魔法都市スマグの辺りを根拠地としているウィザード達である。
彼らの魔法能力は昔のブルンネンシュティグの宮中ウィザードや
ブリッジヘッドの上級ウィザードに近いレベルで、
相当専門的で学問的な魔法を扱う傾向がいる。

スマグはタトバとハンヒ山脈の中間に位置し、周囲は深い森林群に覆われている。
日照時間の少ないこの地では本来、作物も育ちにくく、決して暮らし易い土地ではないのだが、
周囲の森林群が有する養分に富んだ土壌と、山脈側から脈々と
流れてくる清らかな水が、それを補って有り余る恵みをこの地にもたらし、
一大魔法都市を築かせるまでに至った。
・・・それも、今では過去の栄光となりつつあるが・・・・

日も暮れかけたある日の夕刻。時と共に一層その暗さを増し、
獣の遠吠えがかすかにこだまする深い森を、さ迷う一人の少年の姿があった。

彼は数歩進んでは立ち止まり、あたりを見回してはまた進み、ともすれば引き返して
別の方角へ、といったことをもう何時間も繰り返していた。立ち止まっては、
どちらに進むべきか思案しているのだろう、きれいに切りそろえられた
茶色のくせ毛をくるくると指に絡めては眉間にしわを寄せていた。
その顔にはまだあどけなさが残っている。
ひとしきり思案した様子の彼は、腰からぶら下げた水筒のキャップをはずし、
近くの川で汲んだ水を一口飲むと、コートの袖口で口をぬぐった。
カーキ色のコートに黄色のネクタイ、紺色のパンツはスマグ魔法学校の
制服である。彼の胸元には名札がピンで留められていた。

彼の名はエルリッヒ・アイゼン。周りからはエディと呼ばれている。
学校では勇敢な男の子と評される彼は、そろそろ女の子にちやほやされたいお年頃だが
つい母に甘えてしまう、スマグ魔法学校の3年生だ。

52 名前:ほげお 投稿日:2006/02/23(木) 15:16:21 [ f0SX/jL6 ]
エディは独り、深い森の中をさ迷っていた。
「・・・もう何時間歩いたんだろう・・・」
ちょうど今、エディの通う魔法学校は、ある「儀式」の話題で持ちきりだった。
スマグ東の森に居る年老いた大きなトレントから、彼らの髪の毛、つまり
「木の葉」をそっと取ってくるというものである。

スマグ魔法学校では、15歳の誕生日を迎えると東の森で
土の精霊・風の精霊と友好の誓いを立てなければならないという掟があり、
友好の誓いを立てることがすなわち、魔法学校の卒業試験にあたるのだ。
この儀式がウィザードとしての第一歩となる。もちろん、誓いを立てられなかった場合は
「落第」が待ち構えているわけだが。

さて、この掟と例の「儀式」に何の関係があるのか、ということだが
本来この掟、どのような内容をさせられるかは伏せられていて、
生徒は学校側から、掟についての一切が伝えられない。
しかし、この掟が定められた当初しばらくは落第者が後を絶たなかったため
学校側が、掟を達成するための訓練の一環として「儀式」を
発案した、と言われている。結局のところ真偽は分からないが、
とにかくスマグ魔法学校に通う「年頃」の少年少女にとって、
「儀式」が話題に上るのは当然だった。


「母さん怒るだろうな・・・おなかすいたな・・」
エディは深いため息をつき、木陰に腰を下ろした。
もう日が暮れかけている。スマグの森はとても深い。
目の前の森は鬱蒼と暗く、高い木々が周りを多いつくし、
見上げればまるで井戸の中から見上げるような、狭い空がわずかに見えるだけだった。
「やっぱり独りで来るんじゃなかったなあ・・ふぅ・・・」

1週間後に15歳の誕生日を控えたエディは、独り「儀式」のため
森に来ていた。何人かで連れ立って来ようと思っていたのだが、
クラスの女子の前でいいところを見せようとした結果、誰を誘うこともできず独りで来ることに
なってしまったのだ。
そのうえ、目的のトレントにたどり着くどころか地元の森で迷ってしまった彼は
目下、必死で家路を探しているところなのである。

53 名前:ほげお 投稿日:2006/02/23(木) 15:18:44 [ f0SX/jL6 ]
あたりはどんどん暗くなっていく。のんびりしていられない。
エディは気を取り直し、立ち上がると適当な棒切れを広い、
切れっ端の片方を右手で包み込んだ。
そして右手に魔力を込めると、周囲に霧散していた火の元素が、
エディの掌に吸い込まれるように集まり、小さなともし火を形作る。
「・・・これでよし」

急ごしらえの松明を掲げ、エディは歩き出した。
「おなか空いたな・・・魔法でパンでも作れればいいのに・・・」
とつぶやいて、エディはすぐにかぶりをかぶった。
こんなこと下手に口にしたら、マダム・カリン・デイズにまたお小言貰っちゃうよ・・

マダム・カリン・デイズとはエディの通うクラスの担任である。
切れ長の目に長く突き出た鼻、身長は高くつや光する長い黒髪が自慢の「ご婦人」だ。
正確には未婚なのだが、得てして世の中において御局様とは
その辺の扱いが非常に難しく、年相応の呼び名として(ある種のシニカルさも含め)
マダムが定着しているのである。
もし、さきほどのエディのつぶやきを彼女が聞こうものなら、彼女は間違いなく
お気に入りの、これまたご自慢のとがっためがねを中指で押し上げながら
「魔法は、無から有を生み出すものではありません。
そこかしこに存在する元素を精霊から必要な分だけ拝借し、自分の魔力でそれを美しく整えるものです。
ですからわれらスマグのウィザードは紳士淑女であらねばならず、また芸術家としての心構えも必要なのです。
決して、パンやミルクを作れたらなどと卑しいことを考えてはなりません!!」
と、(魔法が美しくなければならないかは甚だ疑問だが)彼女は
持論をひとしきり展開したあと、罰として魔法の芸術性についての
レポートを命じるであろう。

しかし今なら、例えどんなにうるさいマダムの小言でも、たった独りで
森をさ迷い歩くエディには心強いかもしれない。

普段は勇敢で通っているエディも、さすがに泣きそうになってきた。

何度進む方向を変えただろう、急に眼前の景色が変わり、
開けた風景が目に飛び込んできた。

54 名前:ほげお 投稿日:2006/02/23(木) 15:19:42 [ f0SX/jL6 ]
・・・やっと抜けた!・・・そう思いかけてエディははっとした。
よく見ると、そこはまだ森の中である。しかもなぜかこの場だけ
ぽっかりと穴が開いたように開けているのである。よく周囲を
見回してみると、このあたりの木々だけが、まるで局所的な
竜巻にでもあったかのようになぎ倒されているのだ。
木々の折れ目はまだ新しい。折れてまだ間もないのだろう。

・・・ブラウンベアーだ・・・・

エディは懐から折りたたみ式の杖を取り出し、素早く振り下ろした。
「カシャン」という乾いた金属音が響き渡り、思った以上に長い杖が
姿を現す。

スマグ北側に生息する雄のブラウンベアーは、発情期に入ると力を誇示するために
さまざまな方法を取るが、中には巣の近くに生い茂る木々を折って回るものもあり、
大抵、そのようなことをするブラウンベアーは非常に力強く危険だ。
森を延々さ迷い歩いた彼は、知らぬ間にスマグの北側に位置する
ブラウンベアーの巣に近づいてしまっていたのである。

エディは、杖を前に構えると慎重にあたりを見回した。
ブラウンベアーなんかが襲い掛かってきたらひとたまりも無い。
早くここを離れなければ。
エディはじりじりとあとずさりを始めた。


グルルル・・・


エディは、体中の毛が一気に逆立ったように感じた。
振り返るとそこには、普通より一回りも二回りも大きなブラウンベアーが
エディを睨んでいたのである。
大きな瞳は爛々と光を放ち、まっすぐにエディを見つめていた。
どうやらエディの存在は、この獣にとっても予想外だったらしく
エディを睨みつけたまま動こうとしない。ただ、低くうなっている。

二者の間はほとんど距離がない。ブラウンベアーにとっては一投足の間合いだ。
しばらくの間、両者は全く動かず、ただにらみ合う状態が続いた。
エディにとっては、永久にも似た、長い長い時間であったに違いない。

エディの背中を冷たい汗が伝う。

下手に背中を向ければ一瞬で襲い掛かってくるかも知れない。
でも、このままにらみ合っているわけにもいかない。

とにかく、逃げなければ。

勇敢にも意を決したエディは、ゆっくりと杖を構えなおすと
両手に魔力を込め始めた−

続く

55 名前:ほげお 投稿日:2006/02/23(木) 15:41:23 [ f0SX/jL6 ]
小説を書くのは初めてですが、難しいですね・・・
こちらのスレッドは全部読ませていただきました。
皆さんの書かれた作品を参考に励ませていただこうと思います。

56 名前:リ・クロス 投稿日:2006/02/23(木) 20:47:10 [ o6GgUsHI ]
前スレ>>986 >>39 キャラ紹介>>38

「大体、一体ぐらい残しとけよ!!」
「おい、話す事が変わっていないか?」

未だに怒号をあげている、グレーの髪の少女――――スィフィーに
呆れ果てたスコールは、少し棘を含ませた声で呟いた。

「う、五月蝿いな!はぁ・・・はぁ・・・。」
「・・・・・・大丈夫か?」

肩で大きく息をしている少女の小さな背中を
チェーングローブを外した手で上下にゆっくり撫でてやる。
いきなりスコールに、至近距離に接近されたせいだろうか
頬を淡い紅色に染めたスィフィーは、恥ずかしそうに呟いた。

「あ、ありがとう・・・ もう大丈夫・・・。」

その変りように、スコールは怪訝そうな表情をして
スィフィーの両頬を掴むと、目をじっと見つめるスコール。
まるで火が付いた様に、少女の顔が耳まで真っ赤になっている。

「スコール、顔が近いぞ。」
「そうだ、この色男め!グフゥ!またですか・・・。」

何時の間にか復活したイルムが杖で殴りかかってきたが
その勢いを利用して、床に叩き付けた。
不気味な音がしたようだが、恐らく気のせいだろう。
そう判断し、先に声をあげた人物に顔を向けるスコール。

「あのシャドウソウルは、行方不明の魔術師を“食っている”。
奴らの骨格部の物とは違う物体を発見したからな。」

腰の鞄から骨のような物を取り出して
それを、目の前のマスター――――セリスに手渡す。
それを受け取ったセリスは、しばらく考える様な仕草をすると
その物体を丹念に観察して、口を開いた。

「ふむ、これは恐らく肋骨だろうね。エリシア、これはアイツらの骨格部では無いでしょ?」

何時の間にかこっちに来ていたエリシアに
骨の様な物を見せながら尋ねるセリス。

「はい、彼らの骨格部の表面部には魔法によってバリアーが有りますが
これにはそういう物が無いので、恐らく・・・。」
「大抵の魔法師だったら、皮膚の表面か服の周りに張る。
これは、内部が異常に硬質しているから妙だ。」

エリシアのが説明している途中にだろうか
何時の間にやら復活したイルムが発した発言を受けた
皆の視線が一斉に、彼のエメラルドグリーンの目に殺到する。

「どういう事だ?」

スコールが沈黙を破って、イルムに疑問をぶつけた。
彼は、額から大量に油汗を掻きながら
手をを強く握り締めて、震える声で口を開いた。

「あ、在り得ない話だがこれは、恐らくそうだろう・・・。
闇の魔法によって脱魂、憑依、侵食させたんだ・・・つまり・・・。」

イルムは、つばを飲み込んで、こう続けた。

「誰が復活させてやったのかは分からないが・・・
こいつを化け物にしたのは・・・



暗黒鬼神“ビビットブラック”だ。」

57 名前:FAT 投稿日:2006/02/23(木) 22:54:35 [ TKRnzKAI ]
『水面鏡』

キャラ紹介>>21

―田舎の朝―

―1―>>22
―2―>>25-26

―子供と子供―
―1―>>28-29
―2―>>36
―3―>>40-42



―4―

 ばしゃばしゃと水の弾ける音が通路や開け放してある部屋にこだまする。その衝突音は
上階の隅の部屋の隅までも顔を出すほどこの家と一体化していた。
 風呂場で震えながらも懸命に、むしゃくしゃと洗濯板で下着とズボンを擦り合わせてい
るランクーイの目元はあかぎれしたように荒れ、厚みをつけている。下半身を露にしたま
ま、もちろんそんなことは気にせずに、ただ本日の奇行を思い返していた。
「まさか俺たちがしくじるなんて…あんなやつに…」
 まず、彼は自らの失態を思い出し、それがなければ「あんなやつ」とは関わらずに済ん
だかも知れないと思うと、板を擦る腕に力が入った。同時に、つい先程の恐怖も強制的に
付属し、力んだ腕は板の脇に逸れタライに溜めた水を彼の顔に飛ばした。
「レルロンド…あいつ、どうしちまったんだ?」
 一度標的を外した手を荒々しく細い板の波の上に戻し、水と衣類とを混ぜ合わせ、ばし
ゃばしゃと音を立てる。ランクーイの知る限り、レルロンドはもっと知的で冷静な男であ
る。それがあのような見ず知らずの男にぺこぺこと自らの人生を預けるような愚かな行為
に出たことが理解出来なかった。
「俺のため…なのか?」
 レルロンドの言った「ランクーイ、お前は魔法剣士になりたいんじゃないのか? だっ
たら文句を言わずにこの方に付いていくのが一番の近道だぞ」という一言が彼の頑固な心
にひびを生じさせていた。
 両親がまだ生きていた頃、ランクーイは世界で一番強い剣士になりたいという平凡だが
無謀な夢を抱いていた。そこでおねだりをし、泊まりに来ていた商人から木のナイフを買
って貰った。それは果物も切れない、紙も裂くことも出来ないほどの粗悪品であったが、
まだ幼かった彼にとっては正に世界で一番強い勇者の剣そのものだった。
彼が平凡で無謀な夢を持ってから数年後、更に無謀な願いを持つきっかけとなる人物に
出会う。

58 名前:FAT 投稿日:2006/02/23(木) 22:57:35 [ TKRnzKAI ]
 ―――まだランクーイは九歳。いつものようにレルロンドとはしゃぎ、調子に乗りすぎ
て大人に行ってはダメだと言いつけられていたオカー三角州へと探検に出てしまった。一
面に広がる背の高い黄金色の穂の軽快な踊りに二人は夢中になって駆け回った。なびく穂
の行進は二人を妖しい力で惹きつけ、気がつけば四方を作物の茎が塞ぎ、空は穂に取って
代わられていた。

 心地よい穂のざわめきは二人に安息を与えた。それが終わるとき、そこには涎を垂らす
赤い犬が汚い牙を剥いて茎の壁をなぎ倒し、進んでいた。
「おい! ランクーイ!! 野犬だ、起きろ!!」
 心地よい自然の音楽を壊す、生き物の生み出す不協和音にレルロンドは危険を察知し、
その肉食獣を見つけた。彼の発した声によってランクーイが目を覚ましたとき、捕食者は
既に眼前に牙を突きたてようと口を開けていた。偶然ランクーイが驚いて足を振り上げる
と、野犬の柔らかな腹を蹴り、飛び込んできた勢いと相まって頭上を飛行していった。
「走れ! 振り向くなよ!!」
 ランクーイは手を引かれ、黄金色の森をよたよたと走った。背後から迫っているはずの
野獣の息遣いは聴こえない。代わりに、やかましい穂の擦れあう雑音が聴覚を支配する。

 空がまだ見えない。陸がまだ見えない。生がまだ見えない。

 ランクーイの背中に熱い物が触れ、先を走っているレルロンドを追い越した。
「うわぁぁぁぁぁぁぁっ」
 レルロンドの目にはっきりと映った、白と対照の赤。そして金と赤茶色。それは悲しむ
べきなのか、喜ぶべきなのか、あるいは両方を一度に取るべきなのか、彼を悩ませた。
「ランクーイ! しっかりしろ!!」
 彼は一瞬手を伸ばしたかに見えたがそれはランクーイの手を掴むのではなく、腰に携帯
している薄い布の袋を掴み取り、抜けたばかりで穴の空いている金の森に投げ込んだ。折
れた茎の先に運よく当たり、赤い犬は巻き上がった粉塵にむせ、穴から転がりながら赤茶
色の大地に出てきた。
 レルロンドは赤に染まりつつあるランクーイの白いシャツを見て、のろしをあげる必要
を悟り、急いで乾燥した麦を掻き集め、マッチで火をつける。
 レルロンドは欲張ってしまった。いや、選択を誤ってしまった。
 ランクーイを助けようとしたために、そのことに集中したために重要なことを忘れてし
まっていた。
「あっ…」
 赤い目が彼の足に根を張らせる。迫り来る捕食の瞬間をレルロンドはただ待つしかなか
った。
「…ロンド……」
 眠い目を何とか開けてランクーイは友が調理される様を見届けようとしていた。しかし、
ぎりぎりであがった火と煙に、臆病者は安全な被食者であるランクーイを最初の獲物に選
び、姿勢を低くしてにじり寄る。ランクーイの顔は蒼白、「おいしくないから食べないで」
とでも語っているようである。手足の先が冷たく、背中の熱さと反比例している。
 ランクーイは体中から出るもの全てを出していた。恐怖という名の長年の友に初めて負
けたと自覚した瞬間だった。
 用心者は紫色の舌を垂らし、立ち止まる。どうやら食事の準備が終わったようだ。ラン
クーイは声にならぬ声と共に貴重な水分を溢した。そして、見えるもの全てが黒くなった。

59 名前:FAT 投稿日:2006/02/23(木) 22:58:03 [ TKRnzKAI ]
「大丈夫か? 坊主」
 瞼を誰かが布でノックする。それに応じてもう一度目を開くと赤い壁と動物の顔とがあ
った。視界の端ぎりぎりのところに立派な鋼鉄のブーツが光る。その上を見ようと首を回
そうとすると激が飛ぶ。
「まだ動くな!」
 だがランクーイには聴こえない。息を荒くしていつ消えるかもわからぬ自分と闘い、救
援者を仰ぐ。そこで、ランクーイは不思議なものを見た。勇者の両手が薄緑色に光ってい
たのだ。その明かりを眺めているとどうしてか、ボロ負けした恐怖に今度は負ける気がし
なくなっていた。
「よし、動けるか? 坊主」
 ランクーイは試しに寝返りをしてみた。あんなに熱かった背中はその熱を失い、失って
いた熱を繊細な部分が取り戻していた。
「あれ? おれは…」
「よかった、生気が戻ったな」
 天に届くかと思われるほどの青年の姿をランクーイはようやくその両目に映した。まだ
余韻の残る希望の光を眺め、その光を掴んだ。
「よくがんばったな、ほら、そこの坊主もこっち来いよ」
 その一言にレルロンドの根が地中から抜ける。無言でランクーイに抱きつき、生を確か
めた。
「さぁ、家まで送ってやるよ。坊主、おぶってやろうか?」
 ランクーイは素直に勇者の肩に腕を回し、飛び乗った。その背中は父親の何倍も大きか
った―――
 
 それからである。ランクーイは奇跡の正体を突き止め、自身も魔法という非常識なもの
を欲するようになった。そう、彼はあの英雄のように人を守れる魔法剣士になることを決
意したのだ。
「あいつ、強いけど魔法も使えるのか…」
 そんなランクーイの気持ちをよく知るレルロンドの推薦である。あの大男が夢に近付く
ための力になるのならば…
 ランクーイはすすぎを済ませ、水を吸って重くなった下着とズボンを干しに外へ出た。
衣服はところどころ糸がほつれ、使い物にならなくなっていた。そんな失態も、彼の下半
身が露なままになっていることの前では然程問題ではなかった。

60 名前:FAT 投稿日:2006/02/23(木) 23:20:36 [ TKRnzKAI ]
>> 戦士のようだ さん
イチャイチャですか。いいですね、イチャイチャは。どんなイチャイチャに仕上がって
いるのか楽しみにしてます。

>> ドリーム さん
>レ・・・・イ・・・・・・・・・・・・・・

これは危険な流れですね。腹黒恐いです。

>> 南東方不勝さん
サキエルの能力恐るべしですね。てか反則では(ry
それとどうしても言いたいことが一つ。
>透けるような銀髪……
すごく艶めかしいイメージが湧きました。この表現最高です。

>> サマナの人さん
公式を無視し続けている私は勝ち組ですね。気にすることはないと思いますよ。

>> ほげお さん
初めまして。マダムの持論がいいですね、惚れます。魔法は芸術だとは考えつきませんでした。
エディの路頭に迷う姿がありありと頭の中に浮かんできて不安な気持ちがすごく伝わってきました。
クマーからどう逃げるのか、楽しみです。

>> リ・クロス さん
やった!1が当たりでしたね。
暗黒鬼神“ビビットブラック”なんていう仰々しい名前が出てきましたが、一体
どんなヤツなのか、想像もつきません。神獣系ですかね…?

61 名前:南東方不勝 投稿日:2006/02/23(木) 23:59:13 [ gowBXNz6 ]
>>サマナの人さん
同じく公式をある程度無視してる感のある自分も勝ち組なのですね。
少しくらい、公式と違ってもご愛嬌ですよ。

>>ほげおさん
初めまして^^
森の中でクマーに遭ってしまったエディ君。
あそこのクマー、適正Lvだとそれなりに痛かったような気がしますねぇ・・・。
あとマダムの持論、中々に素敵です。

>>リ・クロスさん
うーむ、自分の答えははずれでしたか・・・。まぁ、その答え自体間違ってしまったのですがorz
確か、ビビットブラックってディムジェスター系のボスだったはず・・・。
まぁ、メインの戦士でも見たことはありませんなぁ。一体、どこで遭えるのやら・・・。

>>FATさん
今回はランクーイのちょっとした昔話ですね。
恐怖の前に何もできなかった彼は、この物語の中で少しはヘタレを克服することができるのでしょうか?
あぁ、そういえば最近の野犬は火属性な噛みつきをしてきますよね。

62 名前:南東方不勝 投稿日:2006/02/24(金) 00:46:28 [ gowBXNz6 ]
>>48
―――東バヘル上流―――

ギ、ギィィィィィィィィ・・・、バタン・・・!

戦闘が終わると同時に、内なる門を閉じ能力を封印する。
(しかし・・・、どうにもあの野郎と遭遇してから、能力を少しずつではあるが制御出来始めているな)
鉄鉱山におけるイスラフェルとの戦闘から、俺は日増しにこの厄介な能力を制御できるようになってきている。
今までなら封印したとしてもしばらくは搾取は止まらなかったが、今では封印すると同時に止まる。
そう、俺は不本意ながらもこの能力をモノにし始めているのだ。
今回の選択も、ここまで能力を制御できていなかったのなら決して実行はしなかっただろう。
搾取した魔力を武器以外に回すことは、以前からできることはできた。
だが今回のように短時間で、さらに最低限の魔力であるにも拘らず最大限の鎧の防御力向上に使えた事は無かった。
(気にいらねぇ・・・。)俺の意思に関係なく、身体に馴染んで行く細菌(能力)。
いつか俺の体は、この細菌の大元に支配されるのではないか?
そんな身も蓋もなく、それでもなぜか現実味のある不安が脳裏を掠める。
だが、この能力があったからこそ生き延びてきた戦いがあったのも、また事実。
結局俺という人間は、心のどこかで頼っているのだ。この、得体の知れない能力に・・・。
「っつ・・・。鎧だけで済んだかと思えば・・・、こりゃ骨に皹が入ってるな」
巨人の一撃を受けた左肩が痛みを訴える。まったく、愛用のコンポジットアーマーの肩部分を砕いただけじゃ足りないってか。
それ以外にも、流水撃による顎の痛みも脳震盪も完全には治っていない。
「っあぁ・・・、ゲイル達のところに歩くだけでも一苦労だな・・・」
そうして俺は、おぼつかない足取りでゲイル達の元に向かっていた。





―――ほぅ、既に「搾取」の第1段階はモノにしたか・・・。それでこそ、某がよりしろだ―――

63 名前:南東方不勝 投稿日:2006/02/24(金) 01:59:32 [ gowBXNz6 ]
>>62
ふらふらと頼りない足取りで、ウルフェンがこっちに向かってきている。
まったく、あんな無茶をするからそんな酔っ払いみたいな歩き方になるのよ。
「レナさん・・・、姉さん達の手当てはもう済みましたか?」
補充術式でアースヒールに必要な魔力を生成しながら、ミネルヴァが話しかけてきた。
「えぇ、あらかた済んでるわよ。もっとも、貴方の魔法と私の手当てで治るのは傷だけだけど・・・」
回復魔法・・・、ウィザード達が使用するアースヒールや、ビショップ達が使用する数々の癒しの奇跡などが有名なとこかしら。
一見、とっても便利そうに見えるんだけど、実はこの方法では「傷」しか直せないのよ。
早い話が出血した分の血までは面倒を見てくれないの。
まぁ、そこまで魔法に面倒見てもらっちゃったら、人間なんて近い将来絶滅しちゃうでしょうね。
っと、話が逸れたわね。
「さて、それじゃ今度はウルフェンの手当てでもしましょうか・・・」

兄貴の手当てに向かう二人の背中を見つめながら、オイラはぼんやりとあの隊長のことを考えていた。
隊長・・・いや、カルナバレクは武人としては非の打ち所がない存在だった。
だからこそ、オイラは兄貴と戦っていた時の姿に違和感を感じずにはいられない。
「・・・ル」
ただただ、壊すことを求めて暴走する。
「・・・すの、・・・ル?」
果たしてあれは、彼自身の意思だったのだろうか?
もし、彼のあの状態が第3者の介入によってのせいだったら・・・、
「いい加減に・・・、私の話をお聞きなさぁぁぁぁい!」
「うぉぉぉ!ご、ごめんよリリィ。ちょっと考え事してた」
突然のリリィの怒鳴り声によって、さっきまでのオイラの思考はハンヒ山脈の遥か彼方まですっ飛んでいった。
「まったく、いくら私が話しかけても一向に返事をしてくれないのものですから・・・」
う〜っ、とでも唸るような目でオイラを睨み付けてくるリリィ。
「だから、ちゃんと謝ったじゃないか。それで、リリィがオイラに対して怒鳴りたくなるほどに話したいことって?」
「そ、それは・・・。」
えーと、なんでそこで貴女が赤くなるんですか?
「あの、その・・・。さっきの言葉ってそういう意味で受け取ってよろしいものなんですの・・・?」
「さっきの言葉・・・って、えぇぇぇぇぇ!」
あぁ、確かに今更ながら恥ずかしいことを口走っていたかもしれない・・・。
「あ、あれはねぇ・・・。」
突然のことで口をパクパクさせながら、言葉を必死に探すオイラ。
そんなオイラの様子を頬を染め上目遣いで見つめるリリィ。
う〜む、確かにリリィに対して惚れてはいるけれど・・・。
「あぁもう、じれったいですわね!」
痺れを切らしたのか、ずかずかとオイラに近寄ってくるリリィ。
「お、落ち着けってリリィ・・・むっ!?」
突然のことで世界が止まる。よし、まずは状況確認だ。
まず一つ、今オイラの口は動かせない。何か柔らかい物を押し付けれているのが原因だ。
二つ、リリィの顔がものすごく近くにある。あと、心なしかさっきより顔が赤い。
以上のことを踏まえての結論。オイラは只今、緊急事態に陥っている。盛大に。
しばらくして、口に押し付けれていた柔らかい物が離れていく。
「あーと、リリィ・・・?」
「・・・、私じゃダメですか・・・?」
リリィは瞳を潤ませながら、じっとオイラの事を見つめている。
結論訂正、我ガ軍(理性)ハ全滅寸前ナリ。でも、そのお陰ではっきりと言えそうだ。
「・・・じゃない」
「えっ・・・?」
「ダメじゃない。むしろ、嬉しいよ」
そうオイラが応えると、リリィは満面の笑みを浮かべ抱きついてきた。

64 名前:無貌 投稿日:2006/02/24(金) 23:15:16 [ muR9RFkc ]
初めてここに書き込みます。授業の合間に暇つぶしで書いていたものが形になってきたので思い切って書いてみます

ー旅立ちの日ー

「この村はね、この星を壊そうとしていたデビ・ロンってモンスターを倒した場所なんだよ。
あそこにある祠にある赤い石は、デビ・ロンのお腹の中に入っていたもので
あの戦いを忘れないようにって祀ってあるんだよ。」
お母さんはよくそんなことを教えてくれた。当時の私は幼くてそのときはよくわかっていなかった。

それから一年後、それは突然におきた
私は祠の戸が開いているのを偶然にも見つけてしまった。
当時の私は14歳で、祠の扉は開けてはならないと何度も言われていたので中にとても興味をもった。
お母さんの話で赤い石というものがとても見たかったんだと思う。
夕日が沈みそうな時間帯で周りには誰もいなかった。
『ギィ・・・』
戸を開けると、小さな箱があった
祠から出して、中を見ようとしたら文字の書いている紙が張ってあって開けれなかった。
「こんなの取っちゃえ」
『ベリベリ・・・』
剥いだ紙は風に乗ってどこかへ飛んでいった。後で知ったがこれは御札だったらしい
そんなことは知らず、私は箱を開けた。
「きれい・・・」
思わず言葉が漏れた。それほどの輝きを放っていたのだった。
・・・『汝の望みは何だ』
「え?」
どこからか声が聞こえて振り返ってみたが誰もいない。
『汝の望みは何だ』
よく見ると、この石から響いているようだ。いま考えれば不気味なのによく逃げ出さなかったと思う。
「望みってなぁに?」
『汝の願っていることだ』
この村には、人が少なかった。そのため友達と呼べる人が2人しかいなかった私は
「友達がほしい!」
と、言ってしまった
『そうか、承諾した。汝が大好きなものはなんだ』
「お母さんが一番大好き!おじいちゃんも隣のおばあちゃんも大好きだよ!」
『そうか。祠の中にいる雛と力を汝に授けよう』
祠の中を覗いてみると、そこには一羽の雛がいた。おなかに赤い十字のあざがついているのが特徴的だった。
「この子をもらっていいの?」
『汝に授けたのだ。思うように育てるといい』
そのときの私はとてもうれしかった。友達が増えたからである。
「わ〜い。ありがとう!」
そのとき、遠くから村の人の声が聞こえた。
「たくさんのモンスターがこの村目指して襲ってくるぞ!早く逃げろ!!」
いままでモンスターなどが村を襲うなんてことはなかった。なんでいきなり。
ふと、お母さんが心配になって家に走った。石をポケットに入れて・・・

とりえず、こんな感じです。(ここに書き込んでる人のと比べるとしょぼくて恥ずかしい・・
できればご指導のほどよろしくお願いします

65 名前:ドリーム 投稿日:2006/02/25(土) 07:50:20 [ rxe4zHYI ]
>>リ・クロスさん
先の見えない展開・・ビビットブラック・・ナイスなネーミンg(ry

>>FATさん
ふむむ、迫力のシーンが満載でついつい魅入ってしまいましたこれからも頑張ってください

>>南東方不勝さん
萌え死んだらきけn(ry リリィとのキス・・・あまーい(謎

>>無貌さん
奇妙な赤い石中々そそるストーリですね、私も良く言われますがテーマをもっと強調して充実させてみればより一層深い作品になると思いますお互い頑張りましょうー

66 名前:ドリーム 投稿日:2006/02/25(土) 08:01:20 [ rxe4zHYI ]
>>34キャラ紹介

>>45-46
↓前スレ
>>892-893-894 ☆秋空☆

>>904

>>923-924 新たなる出発&仲間

>>943-944-954

>>969-971

67 名前:ドリーム 投稿日:2006/02/25(土) 08:28:14 [ rxe4zHYI ]
うが・・アンカーミスorz
>>943-944

>>954
です




私達はこれからをどうするかを話し合うため旅路の途中にある宿に泊まった
「ベスペンの所には赤い魔石は無かった、すみずみまで探したんだがな」
レイドは皆と別れてからずーとベスペンの屋敷を下見していたらしい隅々まで詳細を知っていた
「じゃあこれでまた振り出しに戻ったわけね・・・・」
私はそうは言った物の赤い魔石なんてどうでも良かったただレイドが無事でさえ居てくれただけでもう十分うれしい

「そういえば思ったんだが・・・赤い魔石とはもしやREDSTONEのことか?」
突然バースが話しに割り込み不思議な疑問を問い掛ける、レイドは昔戦った事を思い出して罰の悪そうな顔をする
思ってみればそんな仕草をするレイドはかわいかった
「うん。そうだよバース」レイドの変わりに返事をする
ヴィードは何故かそっぽを向いてツーンとしている何むくれてんだか・・
「お前らあれを探してるのか?」意外な一声に私はキョトンとした
「何か知ってるの?」しばし頭の中を整理しながらバースに問い掛ける
「知ってるも何もあのREDSTONEは俺の王位の証だからな」

え・・・・・・・?

「じゃ・・じゃあバース・・貴方赤い魔石を持ってるの?」
見たところそんな物は持っていない
「んにゃ・・ロマだ」きっぱり否定する
ここぞとばかりにレイドが話す
「良し・・・ロマに行こう」突然の話題転換にバースが切れる
「ふざけるな!俺はもうあんなところ・・・・・・と言いたい所だが」
突然バースが大人しくなる珍しい事もあるものね
私は会話を頭に入れるため喋られない
「もう母上にも心配を掛けているだろうしな・・・そろっと帰らないと殺されそうって感じがしてきたんでな」
私はこのとき一瞬でこう思った

         バースが怖がるお母さんって・・・・ガクブル

「そうと決まればロマに向かいましょ、ほらヴィードむくれてないで支度するよ、私先シャワー浴びてくるね」
ヴィードはむくれたままそっぽ向いたままだがすぐにその場を後にする

キュ・・キュ・・シャァアァァ
シャワーが全身の疲れを落としていくその時・・・

ガラァァァァそう言って突然ドアが開くそこにはレイドが立っていた・・・

「えーと・・・とりあえず槍でも投げようか?」そう威嚇するつもりが
「もう投げてるじゃんか・・・」
本能的に投げてしまったようだ、まぁいいか
「見ての通り私が入ってるからまた後にしてよ」またシャワーに集中する

             ギュ

え・・・・?
突然の事で何がなんだか分からない分かるのは・・レイドがすぐ後ろに居て
腕を私に巻きつかせている
「どどどどどどどうしたの・・・・?」突然の事で慌てて聞く

「ミレル・・・・・・・」ロイドは綺麗な目をしている今にも私を飲み込んでしまうような純粋な黒い瞳
おもわずドキッとしてしまう端正に整えられた顔、艶かしい程の綺麗な銀髪、それを合わせ持つ俗に言う色気という物だろうか

「レイ・・・んっ・・」何かを言おうとしたが柔らかい物が私の口の押し当てられ喋る事を拒む
あぁ・・今はこの心地よさに身を任せてしまいたい
レイドは私の足に手を滑らせ快感を燻るそんな仕草に私はハッと気が戻った
ドンッ

精一杯の力で押し返す
「い・・いきなり何するのよ!バカッ!」とりあえずこの状況を打ち破るべく声を張り上げる
「お前が欲しい」
突然短くそう言い放つ
「・・・今なんて・・?」

「お・ま・え・が・ほ・し・い」その瞳に何時もの輝きは無かったあるのは・・泥の様な私を求める瞳
反射的にすぐに風呂場から立ち去る
「一体どうしたって言うのよ・・レイド!」今私にこの後起こることが想像出来たはずもない

68 名前:ドリーム 投稿日:2006/02/25(土) 08:30:50 [ rxe4zHYI ]
少しアレ系なのを入れてみたけどこれは大丈夫かな・・ちょっと心配orz

69 名前:リ・クロス 投稿日:2006/02/25(土) 18:15:16 [ XVB9BPJ6 ]
前スレ>>986 >>39 >>56 キャラ紹介>>38


「ビビットブラック・・・
闇の世界の中において、最強の闇の神獣種だったが
“赤い悪魔”によって瘴気を注入されたために暴走させられてしまった。
その中でもっとも脅威だった一体、まあ自分の意思だったようだが
そいつの通称が暗黒鬼神ビビットブラックって言うんだ。」

イルムが説明をし終えると、この場に沈黙が流れたが
その雰囲気に耐え切れなくなくなったセリスが
ふと、腰の鞄から紙を取り出すと、テーブルの上に置いた。

「関連性は不明だけど、アルパス第一地下監獄の奴らが
外をうろついていたらしくって、それの調査依頼よ。」

一斉に紙に目をやる、クリムゾンインパルスのメンバー。

「集合時刻は今日の夜中だからね。
スコールは今帰ってきたところだから良いんだけど
残りはもう一つの依頼を私とやってもらうからね。」

まるで、それ自体が光り輝いている様な金糸雀の髪を
手串で梳きながら、悪戯っぽい声でそう言った。


「雷神トールよ、罪深き俗物達に裁きの鉄槌を!!
受けてみよ、ライトニングスプライトォォォォォー!!」

ライトニングスプライトとは、魔力で雷のハンマーを召喚して
それを媒介にして、雷の嵐を巻き起こすという
風属性魔法における、究極魔法の一つである。
逃げ遅れた比較的速度の遅いクローラーとオーガが
雷の嵐に巻き込まれて、吹き飛んでいった。

「ケルビー、It shifts to the 4th form!!
スウェルファー、It shifts to the 4th form!!」

魔神形態の二体が、それぞれ炎と水に包み込まれて
眩い光が辺りに満ちた瞬間、神々しい咆哮が響いた。
天空に飛翔した炎の翼竜は、その口から巨大な火球を放った。
まるで、メテオシャワーの如きファイアーボルトによって
クリーパーが跡形も無く消し飛び、余波によってイリュージョンも虚空に消え去る。

「えらく、ヤバいのも混じってるじゃねえか!!」

デビルガードらしき悪魔が放ってきた嵐を横に飛んで避けると
拳に圧縮した炎エネルギーで、烈風撃を撃ち放った。
命中はしたが、軽傷だったのだろうか炎を発生させて
再び巨大なフレイムストームを放とうとする。

「おっと、油断しすぎだよ。」

横から殺到した凄まじい数の矢が一気に爆裂し
吹き飛ばされた悪魔は、崖の中に消え去った。


「ほう・・・中々やるようだな。」

戦場から遠く離れた木の上にひとりの少女が佇んでいる。
まるで作られた人形のような愛らしい顔立ちをしており
水晶の如き輝きを放つ銀髪、ルビーの様な色をしている
やや釣り上がっている眼、透き通るような白い柔肌が
黒い外套の間から、チラチラと見え隠れする。

「本調子で無いとはいえ、我が製造したモノを倒すとはな。」

少女が指を鳴らすと、傍らに二体の暗黒騎士が現れ
少女を守護するように、巨大なクレイモアとランスを構えた。

「宴はこれからだぞ?もっと踊ってくれ、下衆たちよ。」

無邪気さの中に、妖艶さを含ませた微笑を浮かべると
次の瞬間には、少女と黒騎士は居なくなっていた。
辺りには少女の楽しそうな笑い声が響いていた。

70 名前:リ・クロス 投稿日:2006/02/25(土) 18:41:25 [ XVB9BPJ6 ]
>>南東方不勝さん
ツンデレ娘は凄く良いですね(ぁ
スィフィーもツンデレな子なんですよねw

>>FATさん
ランクーイ、モロ出しはやめるんだ(マテ

>> ドリーム さん
レイドは正気じゃない気がしますね。
これぐらいなら良いのでは?
最近のTVはもっと危ないですしw


さて、またまた問題です。
最後に出てきた少女は、実は仲間になるのですが
一体この子は、何者でしょうか?


正解だったとしても賞品は

○ございません(ぁ

71 名前:南東方不勝 投稿日:2006/02/26(日) 14:57:10 [ gowBXNz6 ]
ふふ、俺もサマナの人と同じような状況になってしまったとですorz
まさか、正史(公式設定)で彼が生きていたとは・・・。

>>無貌さん
初めまして^^
う〜む、少女の無邪気さが赤石の封印を解いてしまったようですね。
そして、それに呼応するかのようにモンスターの襲来・・・。
続きをお待ちしています。

>>ドリームさん
まぁ、このくらいなら大丈夫ではないでしょうか?
なにやら微妙に正気ではなさそうなレイドさん・・・。
このまま3人VSレイドなんていう、展開を望んd(ry ジョウダンデスヨ

>>リ・クロスさん
や、やばい・・・。俺のつぼを突きそうな匂いが、黒い少女からぷんぷんと・・・。
この少女は、なにかオリジナルなモンスターを作ることができるようですね。
そういった特徴から考えて・・・、この少女の正体はネクロマンサーだと言い張ってみます。

72 名前:名無し物書き@赤石中 投稿日:2006/02/26(日) 16:48:52 [ W8BAcf5I ]
ゲーム本編と設定を合わせているわけでも、実際の史実やシステムに合わせているわけでは
○ございません
一度に投下するとあまりに膨大な量になるので前後編に分割して投稿させていただきます。

……ここに書かせていただくのは初めてなので、ひとつよろしくお願いします。長編です。長いです。
お目を通していただければこれ幸いです。全部投下し終えてから感想もらえると嬉しいな。

73 名前:ウィッチ・ハント(前)1/8 投稿日:2006/02/26(日) 16:49:54 [ W8BAcf5I ]
/古都ブルンネンシュティグ

 9月も20日、もう月の中旬を回った。
 夏が終わり秋の足音を確かに感じさせる現在。年内でもっとも過ごしやすい時期に入っている
とはいえ、人が集まる場所はやはり気温が高いのか、すこし暑い。
 古都ブルンネンシュティグ。大陸でも指折りの大規模都市の人込みの中に私はいた。
 かつては貿易都市として栄えて現在に至るこの街はほかに点在する神聖都市や砂漠村とは
比較するまでもないほど巨大な都市へと成長した――いや、いまでも成長し続けている。
 私がいま腰を落ち着けている古都東の通行用ポータル(といっても早い話が検問だ)にも、
古都から出よう入ろうという人間、人間、人間の数々が後を絶たない。私がここブルンネンシュティグ
に拠点を置いてそろそろ半年になるのだが、この半年の間、この人の往来が途絶えた光景を
見たことがない。反対側の西のポータルも似たようなものだろう。この無統治国家の繁栄っぷりを
如実に体言している場景の典型といえる。

 さて私ことクラレット=フィージェはここで仲間を待っている。私のことは親しみを込めてクリフと
呼んでいただこう。仲間……小規模ギルド『昼飯時』(ランチタイムとも読める)のメンバーは皆
私のことをそう呼ぶ。名前でもファミリーネームでも呼んでもらって構わないが、通称で呼んだ
ほうが絶対に呼びやすいのでそちらを推奨する。
 私はここ古都ブルンネンシュティグ東の小橋の手すりの上に腰かけて仲間を待っている。
 集合の時間には、少々早いか。現在時刻1322時。言い渡された時刻は1330時だから、まぁ
誤差の範囲内といえなくもないだろう。ギルドのメンバーは比較的時間にルーズなわけでもないので
そろそろ誰かひとりくらいは現れても良さそうなものだが。

74 名前:ウィッチ・ハント(前)2/8 投稿日:2006/02/26(日) 16:50:48 [ W8BAcf5I ]
 今日のミッション……というほど大層なものでもないかも知れないが、とにかく今日の
仕事は、ウィッチ・ハントだ。魔女狩り。いや、「女」ではなかったか? とりあえず、魔法
が何らかの形で関わってくるだろうということは間違いない。
 ……ハノブ高台望楼の地下に、強大な力を持つ魔法使いが現れたそうなのだ。
 たまたまそちらの視察に向かっていたハノブ自警団の兵士フラムベル青年の証言から
発覚したこのモンスターの存在は、当初はそれほど重く見られてはいなかった。
 まぁ放っておくのもアレだし倒しておこうか、という感じで派遣されたブルンネンシュティグ
の歩兵一個小隊がハノブ望楼に行ったっきり帰って来なかったあたりから事態はにわかに
深刻さを増した。
 ハノブに住む住民からは何かと不安の声が強くなってきているようだし、満を持して投入した
ブルンネンシュティグの精鋭剣士団とアウグスタの戦闘アコライト隊も全滅こそ免れたものの
部隊の数はいずれも半分以下。肝心の魔法使いも打倒できずに終わっているときている。
 生き残った者の話を聞くと、その魔法使いは“死体を起き上がらせて”くるらしい。
 実際に存在するとは思っていなかったが、……ネクロマンサーだ。
 この報告により事態はさらに深刻さを増した。いまはまだ望楼の地下に引き篭もっているから
いいものの、そのネクロマンサーがもし望楼から出てくるような事態が起これば? 魔法使い
自身もそうとうの高い力を有していると聞く。それに“元”人間の手下まで操ってけしかけてくる
ようなヤツだ。ハノブ高台望楼と鉱山町ハノブは目と鼻の先。このまま彼を放置した先に
待ち受けている事態は……考えるまでもないだろう。

75 名前:ウィッチ・ハント(前)3/8 投稿日:2006/02/26(日) 16:51:48 [ W8BAcf5I ]
 そこでブルンネンシュティグとハノブが頼った先が、旅人や冒険者、傭兵などと
いった者が所属する先――冒険者ギルドというわけだ。確固とした『国家』というものを
持たないブルンネンシュティグの頼みの綱である。
 これまでも数多くのギルドがこれの討伐に向かい……そして、目立った戦果を挙げる
ことができないでいた。逆にネクロマンサーに討たれ、哀れ彼の配下になってしまった者も
多いと聞く。
 そして今回、この闇の魔法使い討伐作戦の指名を受けたギルドが、私の所属するギルド
『昼飯時』であったということだ。


   Chapter No.1 「ウィッチ・ハント」 from 古都ブルンネンシュティグ   原:ゲーム『RED STONE』クエスト「闇の魔法使い」


 ふとトントン、と遠慮がちに肩を叩かれて私はそちらを振り向く。
「くリフ・さン」
 そこに立っていたのは、褐色の肌を持つ体躯のいい偉丈夫だった。乾いた砂色の髪を後頭部で1つに束ね、
その立派な体格にはちょっと不釣合いな神官服を着込んでいる。背中にはいかめしい盾と棍棒が
1つにまとめて吊るされている。
 彼と目が合うと、彼は目許と口元を少しだけ緩めてうなずいてくれた。つられて、私も微笑み返す。
「早いね。マスターはいっしょじゃないの?」
「はイ。今日、わタシ・ひとリ」
 それだけ言うと、彼は背中の武器防具を橋の手すりに立てかけ、私の隣にどかりと座り込む。人の往来の
絶えないブルンネンシュティグ東口の通行用ポータル手前で座り込むというのはどうかと思うが、私もさきほど
からずっと立ちっぱなしで動かないので他人のことはとやかく言えない。

76 名前:ウィッチ・ハント(前)4/8 投稿日:2006/02/26(日) 16:52:42 [ W8BAcf5I ]
 彼、ローンダミス=ディザーテイズ=ル=セルバンテスは『昼飯時』専属のメディカルサポーター
にして敬虔なビショップ。そして……かつて、伝説の秘宝RED STONEにまつわる事件により
天界を追われた“元”天使だ。それゆえ、人の話す共通語が苦手だったりする。
 前者はともかく、後半のほうはにわかには受け入れがたい事実であると思うが、現に私を
含むこのギルドのメンバーは彼の持つ不思議な力が起こす奇跡を幾度と無くこの目で見て
きている。彼の持つ力は自然と私の中に溶け込んでいる……。
「ところで、他のみんなは? 誰か知ってる?」
「スぐ・キまス。まスたー、わるツ、ヒメさン・も」
「そっか」
 ゴツい僧侶と、美少女(自分で言うのもアレだが)。
 人通りの多い場所で堂々と座り込み&立ち、イヤでも目立ってしまう取り合わせであるが、
彼、ロンはそんなことはまったく気にならない様子で目を閉じて座っている。
 ちょっと、いや、かなり恥ずかしいのだが、その気に負けて場所を移動しては彼の気持ちを
傷つけてしまうような気がしてどうにも落ち着かない。あぁどうすれば。
 しかし、もっと恥ずかしいヤツが来てくれたおかげでその懸念は完璧に払拭された。
『フ……ッ………! 待たせたね、ボクの……』
「……う」
 橋の向こう側、街の中心部の方向からひとりの男が歩いてきた。
 違う、あれは……あれは。
 変態だ。

77 名前:ウィッチ・ハント(前)5/8 投稿日:2006/02/26(日) 16:53:27 [ W8BAcf5I ]
 だってあいつは……どういう手品を使っているのか、背景に薔薇を従えて……
それでいて、口にも一輪の薔薇を横に加えて片目を閉じて……いま貴族の婦人の間で
流行のキャットウォークというやつを完全にマスターしていて……なぜか逆光でこちらに
歩いてきているのだからたまらない。
 そこらを行き交う人間も思わず足を止めて彼を……彼に……釘付けになっている……。
 あっけに取られているうちに彼はいつの間にか私の目の前までやってきていて……。
「ハニィ。ボクの、無限に等しい情熱の、愛を。そのたったわずかばかりの片鱗に過ぎないが……。
 受け取ってくれたまえ」
 口にくわえた薔薇を、差し出してくる。
 それでもまだ彼は飽き足らない様子で、続ける。
「あァ、フィージェ。今日のキミはまた一段と美しい。ヤ、いつものキミは美しくないというわけじゃないんだヨ?
 キミのそのシルエットは常にこのボクのハートをつかんで放さない。むしろ日々、少しずつ少しずつ、
 キミへの想いは大きく強く、高くなっていく。昨日のキミはおとといのキミよりも美しい。
 そして今日のキミは昨日のキミより美しいっ。それなら明日は? 明後日は? 一週間後は!?
 今日と言う日が長く感じられてしかたがないヨ。早くあ……」
「Go,」
 しかし私は、彼のセリフを最後まで言わせない。言わせてたまるか。
 近くに立てかけてあった大型の槍を慎重な手つきで手に取る。
「To,Hell……!」
 地獄に落ちろ。
 その小さな呟きと共に槍を振り上げた時には、すでに彼のひょろ長い体躯はあの世への
片道切符を受け取りかけていた。

78 名前:ウィッチ・ハント(前)6/8 投稿日:2006/02/26(日) 16:54:19 [ W8BAcf5I ]
/東プラトン街道・道の中間地点

「そうか。そいつはまぁ、大変だったな」
「ホント。あのド変態、あんな人込みであんなマネして……。恥ずかしくてしょーがないって」
「そうか。そいつはまぁ、大変だったな」
「色んなひとに見られたし……もぉ私古都にいられないかも………」
「そうか。そいつはまぁ、大変だったな」
「……私の話、ちゃんと聞いてる?」
「そうか。そいつはまぁ、大変だったな」
「ダメだコイツも……」
「? なんの話題だ?」
「もぅいいです……」
 あのあと、ド変態ウィザードを槍の一撃で突き落としたあとは比較的スムーズに事は進んだ。
 『昼飯時』のギルドマスター、戦士カリン・調教師ヒメと合流した私を含む4人は、ハノブ高台望楼を
目指してプラトン街道を東に進んでいる。
 ちなみに、あの変態ウィザード……名をワルツというのだが、彼も『昼飯時』のメンバーで、
もしかすると仲間……もしかしなくても仲間なのだが……いや、深く悩んだところで始まるまい。
 どうせ殺してもいつの間にか復活しているので、川の冷水を浴びたところで死ぬわけもないし。
「まぁ、奴もモテようと必死なんだろう。お前にその気がない限りは、永遠の徒労に終わりそうだがな」
「ちゃんと聞いてるし……」
 そうジャッジするカリンはビショップのロンと並んでみても決して引けを取らない立派な体躯の持ち主だ。
 加えて、2mはあろうかという巨大な大剣を背に背負っているおかげで迫力も満点である。遠くから
見ればなかなかハンサムでもあるので、隠れファンもけっこういそうなのだが……。所々が致命的に
抜けている面があるので、細かい点に気付けない。

79 名前:ウィッチ・ハント(前)7/8 投稿日:2006/02/26(日) 16:55:09 [ W8BAcf5I ]
「まぁ、それが奴の子供の頃からの夢であるというなら俺はそれを応援してやりたいところだがな」
「応援してもらわなくてけっこうです……」
 高台望楼に行く前にハノブで装備を整えようという方針になったので、とりあえずはこの街道を
ひたすら東へ歩くのが当面の“すること”だ。途中に路上強盗団の出没地域があるのが懸念の
1つであるが、古都ブルンネンシュティグから鉱山町ハノブへ行くにはこのプラトン街道を通るしか
道がないので仕方がない。
「そういえば、ヒメちゃんはいいね……乗り物があって」
「……ん」
 集団――といっても4人だけであるが――その最後方でちょこちょこと歩く犬に、これまたちょこんと
座っているのはギルド最年少でありながら調教師の資格を持つロマ村出身のビーストテイマー、
ヒメ=K=ユウマだ。服についてるフードをすっぽりと目のあたりまで被っている。
 実は彼女、対人恐怖症……いや、人間恐怖症? とにかく、人と接するのが苦手で、聞かれない
限りは答えないし喋らない。友達は自らのペットと召喚獣。はっきり言って、暗い。
 しかし、何かと鈍感なギルドマスターに無言ビショップ、変態魔術師と他のメンバーがアレなもの
だから、ギルド内では比較的冷静で的確な判断ができる人物でもある。彼女の客観的な状況判断と
助言に命を助けられたことは、一度や二度ではすまされない。他のメンバーにしてもそれは同じだろう。
「本当は…………みなさ………の…………乗せてあげたかった……けど…………」
 どうしようもなく小声でボソボソ喋るのも欠点といえば欠点か。この彼女の言葉をリスニングするのは
少々骨である。
「みーちゃんは………人に…………慣れない……で…………」
「み、みーちゃん? あの、その動物って猫………」
「ぁ………犬……です……けど…………。ぁ、みーちゃんというのは………この子の…………名……」
「う、うん、わかってるから」
 私がそう言うと、彼女はよりいっそうフードを目深にかぶってうつむいてしまった。く、暗い。
 ケルビーはわん、と軽く吠えた。

80 名前:ウィッチ・ハント(前)8/8 投稿日:2006/02/26(日) 16:56:01 [ W8BAcf5I ]
/鉱山町ハノブ

「じゃぁ、1930時には各自宿に戻っているように。それまではフリーだから観光でもしてきてくれ」
 こんな田舎に観光できる場所があるはずないじゃないか。
 というツッコミは胸の奥にしまっておいて……。せっかくの遠出なのだから、楽しもう。ポジティヴ。
 ロンは祈りを捧げる時間らしく、既にとってあった宿の一室に入って出てこない。さすが敬虔な
ビショップ、どんなときでも神への信仰は忘れない。
 カリンはカリンで情報収集に出るといって町へ繰り出していった。どこか間抜けな彼の“収集”が
どれほどの成果を上げることができるのかは正直疑問だったが、わざわざ自分がその役を買って
出てやる、という気も起きないので彼に任せることにした。間抜けだが馬鹿ではないカリンだ、たぶん
大丈夫……だ………と…………思う。
 やることがないのでその辺をぶらぶらしてみるが、本ッ当に何も無い。田舎だから仕方ないのだろうが、
ここまで何も無いとは。娯楽施設だのといったものには最初から期待してはいないが、せめてキラキラ
光る飾り物といった類いのものを扱う宝飾品店とか、郷土料理を出す食堂とか、そういったものはないのか。
 結論→ない。
「1732時……」
 もう陽もだいぶ短くなってきた。夕暮れ時の冷たい風が私の身体にぶつかる。
 あと約2時間。中途半端なイヤな時間である……。
 こんなとき、いつもの自分ならどうするか? いまの自分に、できるコト……。
「……寝よ」


しかし、彼女はこのとき気付いていなかった。
彼女のはるか後方から、刺すような視線で彼女を見つめる、1つの影があったことを……。

81 名前:名無し物書き@赤石中 投稿日:2006/02/26(日) 16:57:07 [ W8BAcf5I ]
○簡単なキャラクター紹介

クラレット=フィージェ(Lv84ランサー/アーチャー)
槍と弓を巧みに使いこなす傭兵。ギルド『昼飯時』のメンバー。愛称クリフ。

ローンダミス=ディザーテイズ=ル=セルバンテス(Lv121ビショップ/追放天使)
かつて天界を追放された天使にして敬虔なビショップ。愛称ロン。
ギルドに必ず1人はいてほしい「いいビショップ」。無口。

ワルツ(Lv111ウィザード)
ひたすらクリフに対するアプローチをかけまくる変態魔術師。普段の素行はアレだが実は有能。
ギルドに必ず1人はいるセクハラウィザード。

カリン(Lv133戦士/剣士)
ギルド『昼飯時』の党首。普段は馬鹿っぽいがたまに名案を思いつく。
ギルドに必ず1人はいる『勇者様』。

ヒメ=K=ユウマ(Lv75ビーストテイマー/サマナー)
無言テイマ。召喚獣とペットをこよなく愛するいい子。実は折檻のプロ。
ギルドに1人はいてほしい「癒し系」テイマ。

82 名前:名無し物書き@赤石中 投稿日:2006/02/26(日) 17:00:41 [ W8BAcf5I ]
前編はこれにて終わりです。後編はハードボイルドになります。本当です。
イラストコンテストだけでなく、SSコンテストとか開催してもらえれば喜んで挑戦するんですけどねぇ。
……スクリーンショットコンテストではございません。ショート・ストーリーコンテスト。

83 名前:名無しさん 投稿日:2006/02/27(月) 14:27:43 [ 2G14qfcI ]
age

84 名前:ドリーム 投稿日:2006/02/27(月) 19:53:56 [ PpFueImY ]
>>34

>>45-46

>>名無し物書き@赤石中さん
ワルツがつぼに来ました(ぁ 変態魔術師ガンバレー

>>リ・クロスさん
んーおそらくテレポをやってそうな女ウィザードでドS系なキャラと予想しておきます(ぁ

「さて・・・じゃあロマに向かうとするか・・・」そうレイドが皆に声をかける
まったく・・・さっきあんな事しておいて良くそんなスースーした顔してられるわね・・蹴っ飛ばしたろか
心底そう思っていたが一応忘れる事にした。
バリアートからはロマはそう遠くない、少し歩いてしまえば付くぐらいだろう
と・・そうこうしてる内にソゴム山脈ね此処は周りの視界も悪く正直薄気味悪い
「まったく・・薄気味悪いわね・・・」そうボソと呟くとバースが肩に手を優しく置きこう呟いた
「安心しろ・・・その時は俺が守ってやる、このバース・ロマ・シュトラディバリの名に懸けてな」
そこまで自信満々に言われると安心できる
「さて・・・実はこのソゴム山脈には近道があるんだ、だからすぐ付くぞ」
そう言うと山脈とは別方向の森へと歩いていく
やはり此処の王子であるからにはここらの地理は知り尽くしているんだろう、迷い事無くずんずん進んで行くと森の中に獣道があった

あっという間にロマの目の前についてしまった。
バースは少し躊躇ったが諦めたらしく胸を張りずんずんと進んで行く皆はその後を追った
「貴方は・・・・王子!?バース王子ではありませんか!」警備の兵らしき者がそう呼んだ
やっぱり本物の王子様なんだぁ〜・・・結婚すれば玉の輿よね・・おっと勘違いしないでよ私はそんな気はないわよ

って・・ずいぶんと騒ぎが広まってるなぁ・・・大丈夫かな・・
そんな心配を他所に何処かから大きな声が聞こえた
「バースーーーーーーーーーーーーーーー!!」大きな声はどんどん近づいて来る
「ゲッ・・・・」そう言うとバースは突然人ごみに隠れる・・・がその人の身体能力すさまじくすぐに捕まってしまった

「バース・・・おかえりぃぃぃぃぃ」そう言うと突然バースに抱きついた・・・こんな人の前で・・ずいぶんと大胆な人ね誰なんだろ
「ただいま・・・リマ」苦しそうにバースがそう呼ぶ
見た感じかなり幼げだが出るとこは出て引っ込むとこは引っ込んでいるボンキュボンだ(ぇ
髪は私とほぼ同じ栗色だろう。その性か自分の幼少時代もこんな感じだった気がする・・まっ記憶がないから定かではないけど
まぁそんなわけで私から見れば元気で陽気なお嬢さんって感じかな
「バース・・その子知り合い?」とりあえず妥当な質問だろうと思う
バースは乗り気で無いらしく少し嫌な顔をしてこう言った
「俺の・・・その・・・・」
「私はバースの許婚です!」バースが困っているのも関わらずいきなり叫ぶ少女
えーと・・・・
「あのねお嬢ちゃん、おままごとまた今度ね」ふざけたつもりは無かったのだが実際そういう風に見えたのだから仕方がない
だが相手のほうはかなり起こったようだ眉間にしわを寄せて必死に怒っていることをアピールしているようだ
「いや・・ホントだ・・こいつは・・リマ・ファールデナントは俺の許婚・・そしてシュトラセトの王女なんだ、と言っても俺の親父がロマを発展化させるために無理矢理許婚にされたわけだがな」
よっぽど誤解してほしくないらしく長ったらしい説明をするバース
「なぁ・・・とりあえず俺ら獣道を歩いてきてさ・・疲れてんだから中に入れて休ましてくれ・・」
情けない声でヴィードが剣を杖変わりに使って必死に歩く
「ああ・・俺も少し休みたいな」レイドも額の汗を拭いそう言う
「そうだな・・すまないリマ、皆に部屋を用意してやってくれ」
そう言うと元気な声でリマは皆を先導していった

85 名前:戦士のようだ 投稿日:2006/03/01(水) 21:11:22 [ QS1Cbi/M ]
いやぁ皆さん指が軽快なリズムでキーボードを弾んでいるようですね〜
え?自分?ああ、なんだか操作をミスって
駄文を全部消してしまいましたよっと


・・・orz

86 名前:南東方不勝 投稿日:2006/03/02(木) 03:30:07 [ gowBXNz6 ]
閑話・宴、終幕

海の神殿・・・。
ブリッジヘッドの西方に位置し、フランデル大陸で最も古い海の神を奉りし場所。
入り口は小さな洞窟の奥深くにあり、その内装は奥に向かえば向かうほど仰々しさを増すばかりである。
その奥地にて、たった一人の主賓により開かれた宴が終わりを告げていた・・・。

周りは一面の赤。海を彷彿とさせる深い蒼に染められた壁も、もはやその荘厳たる優麗さを見せ付けることは不可能であろう。
周りには大量の供物。御神体を守護するべくその命を散らした神殿騎士や魚人の戦士、彼らを狩りに来た冒険者、なんと無節操な物であろう。
中心には隻眼の人狼。もはやこの地下4階において命有るモノは彼、ただ一人であろう。
そう・・・。全ての生命の母たる海を崇めた聖域は、彼という存在によって全ての命の終わりたる地獄へとその姿を変えた・・・。
「くくくくっ・・・、くはははははは・・・」
人狼が嗤う。人と人外の返り血をその身に浴びたまま、ただただ嗤う。
それは強者だけの特権。あらゆる弱者を叩き潰した、暴君のみに許される権利。

――ソウダ、コノ高揚感・・・。アァ、ナント甘美ナコノ「風景」――

「久遠」とも取れる時の中で、数多の「罪」を「断」ってきた故の惨殺嗜好・・・。
(我は罪を断ずるもの、大義の元に切り捨てる・・・。)
本来なら抑えるべきであるそれを、今この場でおいてのみ曝け出す。サァ、新タナ玩具ヲ探シニ行コウ・・・。
(我ハ命ヲ奪ウモノ、己ノ為ニ殺シ尽クス・・・。)
「ここにいたのね・・・。まったく、よくもまぁここまで無節操に殺せること・・・。ゼルエル、貴方また反転したわね」
人狼の行動を諌めるかのように、女の声が響く。
かつかつと音を立てながら、その女性は人狼に近づく。
「あ、あるみさえるカ・・・。失セロ・・・、吾身ハ血ニ餓エテイル」
「貴方の都合は関係ないわ。ラミエルが私たちのことを呼んでいるの、さっさと反転しなおしなさい」
そうして女はおもむろにローブの中より布切れを取り出し、
「これを使って身体を拭いなさい・・・。血の匂いが薄まれば、貴方も落ち着くでしょう?」

87 名前:ほげお 投稿日:2006/03/02(木) 16:11:48 [ f0SX/jL6 ]
あああ、書き込んでから放置している間に皆様から
暖かいレスポンスが・・・!orz

只今出先からなので、帰ってから皆さんの作品をじっくり読ませて
いただきたいと思います。

とりあえず、ちまちま書いたものだけ先に投稿;;;;

>>51-54

エディは両手に魔力を込めると、左手の杖をゆっくりと掲げた。
すると、あたりに漂っていた水の元素がうっすらと光を放ち、
あたりに濃い霧を醸し始めた。暫くすると両者も互いの姿が
確認できないほどの濃い霧が両者を覆いつくした。

あたりは真っ白に覆われ、一寸先ですらまともに見えない状態である。
エディは息を殺し、耳を澄ました。
・・・・かすかにだが、はっ、はっ、という呼吸音が聞こえてくる。
恐らく相手もまた、こちらの出方を警戒しているのだろう。

ここまではきっと正解だ。次は・・・

エディは音を立てずにゆっくりと後ずさりを始めた。真っ白な闇の向こうからも
ずず・・・ずずず・・・ず・・と、ゆっくりとこちらに向かう「何か」の音がする。

やっぱりばれちゃうか・・・でも、いきなり襲ってくる感じはしない。利口な奴だ。

恐らく相手は自分の「におい」を辿っているのだろう。エディはそう確信した。
だったらどう逃げたところでこの利口な熊は自分を追いかけてくる。

だったら・・・

エディはゆっくりと右手の人差し指で一本の線を描いた。
すると、指の軌跡をなぞるように火の元素が集まり始め、一本の炎の矢を
形取った。

うまくびびってくれよ・・・!!

エディは左手に持った杖を素早くブラウンベアーのに向けた。
エディの傍らで待機するように浮かんでいた炎の矢が、一直線に
ブラウンベアーの頭上を掠め、ドンッという鈍く大きな音と共に、後方の木にぶつかって炸裂した。

88 名前:ほげお 投稿日:2006/03/02(木) 16:12:37 [ f0SX/jL6 ]
あたりに焦げ臭い香りが立ち込める。
直後、敵意むき出しのうなり声とともに木々がへし折られる音と、鳥が鳴きながら一斉に羽ばたく音が聞こえた。
あたりには焦げ臭い匂いが立ちこめ、騒然となった。

今だ!!

エディは後ろを振り返ると一目散に走り出した!後ろからはまだ、木々の悲鳴と、
森の暴君の怒声が聞こえてくる。

大丈夫だ、落ち着け・・・!

エディは自分にそう言い聞かせながらひたすらに走った。
地面から這い出ている根っこや、木々の枝がエディの邪魔をしてくる。
まるで、言われもない暴力を受けた木々の恨みつらみの表れのようだ。
足がもつれ、何度となく転びそうになりながらも、エディは必死で、走り続けた。
そのときだった。かなり離れてはいるが、確かにこちらに向かってくる暴君の
足音がどすっ、どすっ、という鈍い地鳴りと共に聞こえてきたのである。

このときのエディの心境を想像して欲しい。圧倒的に強大で、獰猛な
獣に独り追われる少年の心境を。
のどは渇き、足はもつれ、空気が重く纏わりつくように感じるほど、自分の
動きが鈍く感じ、なぜもっと速く走れないのかと気持ちばかりが先に出る、
そう、ちょうど怖い夢を見ているかのような、あの感覚。恐らく誰にでも
一度は経験があるだろう。

そんな恐怖と戦いつつ、エディは(ここが、彼が”勇敢と評される”所以なのだが)
次の一手を思い描いていた。

僕の記憶さえ間違っていなければ、この先は湖のはず・・
逃げ切るにはこれしかない・・・!

「地鳴り」はあっという間にエディに迫ってくる。エディは残りの力を
振り絞ってひた走った。

89 名前:ほげお 投稿日:2006/03/02(木) 16:13:12 [ f0SX/jL6 ]
−湖だ!−

森を抜けると、眼前には大きな湖が広がっていた。
休火山に雨が溜まり、湖と化した、スマグの観光名所のひとつである。
既に火は沈み、夜空がビロードの幕のように広がり、
細い月が、夜空を切り裂いて薄明かりを差し込んでいるように見える。
水面には波も無く、まさに空の「写し絵」が広がっていた。
ちょっと粋な大人ならばこの美しい風景に見入ったり、
景色を肴に一杯、とでも言うところであろうが、追われる身のエディにはそんなゆとりが
あるはずもない。
エディは迷いも無く湖に走りこんだ。そのときである。ついに暴君がその姿を現した!

暴君はエディを確認すると、恐ろしいうなり声をあげながら突進してきた。
その口は裂けんばかりに開き、鋭い牙と、血の色の様に真っ赤な舌が覗いている。

エディはありったけの魔力を杖に流し込み、真冬の湖を強く思い描くと
杖を湖に突っ込んだ。

「凍れ!!!」

すると、杖を差し込んだあたりから瞬く間に水面が凍りつき、エディの前に
細長い氷の道が現れた。エディは氷の道を一気に駆け抜けると、
湖岸を見やった。怒り狂った暴君は水も意に介さず
エディに向かって突進してくる−−そのときだった。
唐突に暴君の体が水面に吸い込まれ、もがくように暴れ始めたのである。

うまくいった!!

この湖は休火山に水が溜まり湖と化したものである。
そのため、湖岸から少し離れただけで足場が一気になくなる。
体の大きなブラウンベアーにとっても、その深さは相当のものだったということだ。

どうにかこうにか湖岸に這い出た暴君は、悔しそうにエディを見つめると
その場でうずくまってしまった。

続く

90 名前:復讐の女神 投稿日:2006/03/02(木) 16:33:38 [ 1jnG73FA ]
古都の中心部よりすこし外れた場所。
そこには、白亜の建物が立っている。
太い柱に支えられた天井は高く、巨人すらも通ることが出来るだろう。
正面入り口は常時開放されていて、真っ直ぐと伸びた道の先には、女神像が祈りをささげている。
壁にかかっているステンドグラスからさす日差しが女神像にあたり、幻想的な雰囲気をかもし出している。
「本当、これなら天使も舞い降りてきそうね」
今日は特に天気がいいため、幻想に磨きがかかって見える。
ジェシの小さなつぶやきも、どこまでも響いていきそうだ。
「はは、お前がそんなセリフを吐くとはな」
声は、女神像の右手にある扉から響いた。
白亜のなかに自分を主張する木製の扉は、その前に一人の男を現していた。
長身の筋肉質な体。
日に焼けた肌は浅黒く、健康的なつやを放っている。
緑の服に鉄製の靴を履いている姿は、もはや名物の一つだろう。
後ろに縛った髪が、ゆらゆらとゆれている。
「お帰り、ジェシ」
「ただいま、おじ様」
彼がジェシに向かって歩いてくると同時、ジェシもまた彼に向かって歩き出し、抱きついた。
「髪がぱさぱさだな、砂漠に行ってきたのか」
「ええ、暑くて大変だったわ!」
ゆっくりと、慈愛に満ちた手で頭を撫でられ、気持ちよさに目をつぶる。
「ははは、ジェシは相変わらずだな。さぁ、旅の話を聞かせておくれ」
撫でていた手を止めて、彼はジェシを離し、扉へと向かう。
ジェシも当然とばかりに、彼の横に着く。
ジェシは女性としては背が高いほうだが、彼はさらに高く、見上げる様になってしまう
腕を組んでみるが、年齢を感じさせない張りがある。
本当にこの人は、私の両親と同じ年なのだろうか。
会うたびに、この若さの秘訣を解きほぐそうと誓うのだが、いまだ成功していない。
「ねえおじ様、今日も当たり?」
「む? ああ、そうだな。今日も当たりだ」
扉をくぐると、中庭に出る。
中央には井戸があり、その周りには緑に茂った芝が生えている。
中庭を囲むようにして廊下があり、右は治療部屋、正面が調理部屋、左手に宿舎がある。
宿舎へ向かう途中、調理部屋からいい香りがにおってくる。
「いい香り…今日も期待できそう」
「ははは。まったく、ジェシは食いしん坊だな。ああ、期待しなさい、今日もいい出来だ」
この男、私が来る日は連絡もしていないはずなのに毎回2人分の料理を作ってご馳走してくれる。

91 名前:復讐の女神 投稿日:2006/03/02(木) 16:34:08 [ 1jnG73FA ]
毎日2人前作っているのかとも思ったけど、それは無いみたいだし。
まったく、不思議な人よね。
「おや、フェリル司祭。その隣の女性は…ああ、ジェシさんでしたか」
「ええ、お久しぶりです」
「はは、なるほど。フェリル司祭が、張り切って料理をしているわけだ」
「うふふ、ここにくる楽しみの一つよね」
彼は、おかしそうに笑って手を振り、去っていった。
宿舎のドアを開ければ、急に生活感のある世界が開かれる。
といっても、その姿は質素だ。
部屋の中心に添えられた木の机に、木の椅子。
棚にはお酒が飾られているが、減っている様子は無い。
「さあ、聞かせておくれ、砂漠の話を」

フェリル司祭は、もともと冒険者だった。
戦士と弓使いの2人の仲間とともに、世界中を歩き回った。
彼の癒しの力はとても強力で、癒せぬものなどないとすら言われた。
死者すらも蘇生したと、聞いたこともある。
旅の話を聞くときの彼は、本当に楽しそうだった。
前に、聞いたことがある。
なぜ、冒険をやめたのかと。
彼は、笑って答えてくれなかった。
ただ、いつか解かる日が来ると、寂しそうにつぶやくだけだった。

「と、いうわけなの」
「なるほど、あの砂漠にはそんな場所があったのか」
ジェシとフェリルは、机に向かい合って座っていた。
机の上には料理が並べられている。
スープにパンにサラダ。
簡単な食事だが、これがもう本当においしい。
「これが、その隕石の欠片」
そういって、ジェシは黒い石を取り出す。
表面が滑らかで、光りを反射している。
「おいおい、それは依頼人に渡すものだろう」
「いいのよ、だってそこらじゅうに転がっていたんだもの。それに、依頼人にはもう届けたわ」
そう、これは隕石の欠片。
私が見た一番大きい石は、とてもではないが持ち運ぶようなことはできそうになかった。

92 名前:復讐の女神 投稿日:2006/03/02(木) 16:34:40 [ 1jnG73FA ]
「やれやれ。しかしこんな石、どこか…そう、そこの中庭にでも転がってそうに見えるがな」
「本当、私もがっかりしたわ」
今回の依頼、隕石の調査ということだったけど、私にはその重要性とかさっぱりわからない。
伝説の、ウィザードが使うというメテオシャワーで落ちてきたものと、どう違うのだろうか。
「こんな石に大金を出すなんて、気が知れないわ」
肩をすくめて、スープを飲む。
「金払いのいい客か…」
「私のお得意様よ」
最初の依頼は、確か病気になったコボルトの服を剥ぎ取って来いだったかな?
昔のできごとを思い出そうとする。
「…ジェシ」
フェリルが話しかけ、ジェシの思考がとまる。
「気をつけなさい」
「な、なに急に。もちろん気をつけているわよ」
「そうじゃない…」
フェリルは、言うべきか迷っている様子だ。
その様子を見て、ジェシは驚いていた。
この男は、今まで迷った姿を見せず、その口から出た言葉全てがいままで正しかった。
それが、迷っている。
いったい、どれほど重大なことだろうか。
「ジェシ、東の村が焼かれたのは知っているか?」
「え、えぇ。昼間、食堂で聞いたわ。私と同じ、弓使いの女の仕業でしょ?」
「うむ…」
心配しているのだろうか?
「大丈夫よ、私がそんなことするわけないでしょ。大体、犯人は一人でそれをやってのけたんでしょ?
出来ることとそうでないことの区別はつくわ。仮に出来るのだとしても、私には考えも付かない方法よ」
「ああ…そうだな、うむ、私の考えすぎだろう。いや、すまなかった。疑っていたわけじゃないんだ。
この神殿にもその知らせが届いてな、弓使いの女で怪しいものがいたら通報するように、と言われてな」
「私?」
「ばかを言うんじゃない、そんなことあるわけ無いだろう」
フェリルは頭に手をやって、困った顔をする。
これは、よほど心配しているようだ。
「安心して、私の腕を知っているでしょ?いざとなったら逃げるわよ」
「はは、そうだったな。ジェシは昔から逃げ足が速かった」
フェリルは困った顔から一転して、お腹を抱えて笑い出した。
「あぁ、思い出した。昔、よくいたずらをしては逃げ回っていたな」
「………昔のことよ」
目から涙を流して笑うこの人。
あなたこそ、人を見つける名人だったじゃ無い…と、ジェシは心の中で思う。
幼い頃、ジェシは子供たちの中でもとりわけ元気でやんちゃだった。
街の中を走り回り、いたずらをしてはその素早さで逃げ回る日々。
いいところまでは逃げられるのだが、このフェリル司祭がかならず最初にやってきてつかまってしまう。
「ねぇ、どうして私のいる場所が分かったの?」
「ん?」
「昔、私はあなたから逃げきることが出来なかったわ」
「ははは、そうだな…子供の行けそうな場所など、たかが知れているということだ」
また嘘ばっかり…。
「本当、分からない人…」
この笑顔が曲者なのだ。
人を優しい気持ちにさせてしまう、この笑顔。
子供のような、屈託の無い笑い。
不思議な…本当に不思議な人だ。
この日、ジェシとフェリルは夜遅くまで語り合ったのだった。

93 名前:ドリーム 投稿日:2006/03/04(土) 21:38:23 [ GHt5QE9c ]
>>34

>>45-46





「ふぅ・・・」レイドはとりあえずため息をついた、この頃自分の様子がおかしい事もわかっている
だが、ミレルを見ると無償に彼女を求めてしまう。
「欲求不満なのかな・・・なんてね」とりあえず彼女がいない場所ならば特に異常も無いし、軽口を叩く事もできる
キーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーん
突然耳鳴りのような現象が彼を襲った
「うっ・・・何だこれは・・・・」頭の中に妙な光景が浮かんで来る
周りには男二人が倒れている、そして男と女がお互いを見合っている・・・と言ってもそんなに初々しい光景ではない
男二人は死んでいるようだ。
「き・・・・・・い」何かを話しているようだ・・・だが良く聞き取れない







ハッ!周りは空に舞っている星々に埋め尽くされている。かなり長い間倒れてしまっていたようだ

コンコン

突然ドアがノックされる、「誰だ?」もちろん無用心に開けたりはしない
「俺だ、バースだ」短く聞き覚えのある声がする。
「鍵は開いてる勝手に入ってくれ」そう言うと少し重い顔をしたバースが目にはいった
何時もはあんなに元気なのに・・・どうしたんだ?疑問に思ったがとりあえず口には出さない事にした
「ぁぁ・・ちょっとリマと話すのに疲れた・・」そんな事を気がついたのかとりあえず説明した
「そうか・・・・」


無言・・・

だが・・そんな時突然鐘がなった

カーンカーンカーンカーン!!!!!
甲高い音を出す鐘はおそらくこの城全体に響き渡っただろう
「一体どうした!!」レイドは外に出て走っている剣士に聞いた
「ブリッジの・・・ブリッジの軍勢が攻めてきたのです!!」
大きな声でそう答えるとすぐに走り去ってしまった
「一体どういう事なんだ!!」

94 名前:ドリーム 投稿日:2006/03/04(土) 21:59:33 [ GHt5QE9c ]
レイドとバースは急いで城の城壁の上に行った
そこには武装をしたブリッジヘッドの者達と思われる人々が居た
「バース一体どういう事なんだ!」ヴィードも急いで来たらしく息を荒げながら来た
「此処ロマ城とブリッジヘッド城とは犬猿の仲でな・・・今までは話し合いを設けてお互いを貶し合う程度だったのだが・・・まさかギルド戦争を仕掛けて来るとはな」
状況を説明してる間に敵の幹部的な者が叫んできた
「ロマに所属する愚かな愚民に告ぐ、すぐに投稿しREDSTONEを渡せ。そうすれば命だけは助けてやろう」
ちっ・・・こいつらもREDSTONEが狙いか・・・レイドは心の中で舌打ちをした
「REDSTONEは俺の王家の証!そんな物を貴様らに渡すわけには行かんな(ホントは上げたいんだけどね)」
「ならばいた仕方ない!即刻その首を取ってくれるわ!全軍進めーーーー!!」
その号令と共に前衛の剣士と戦士達が一気に攻めてきた、それを援護するように後方に待機しているウィザード達が一声に魔法を放つ
「ちっ・・・敵を中に入れるな!皆まだ準備は出来ていないそれまで時間を稼ぐんだ!」
バースは指揮官となりロマの将校達に激を飛ばす
此処はバースに任せても良いだろう俺は・・・雑魚共を殺るか!
レイドは城壁から城内に飛び降り今にも入ってこようとしてる剣士に次々とダガーを投げつける
その攻撃は常に急所を狙っており一人、また一人と倒れて行くだがレイドの神々しいまでの綺麗な銀髪を汚す事はない
「中々やるな」そこにはいかにも強気な猛将がいた
お互い無駄に手を出さず相手の出方を伺う・・・と思われたがレイドは速攻で蹴りを付けに入った
毒を塗ったダガーを急所に向かって着実に投げる相手もそれを剣でいなしながら迎撃に備えている

がくっ・・・・・!突然レイドのバランスが崩れる、↓に僅かな段差が合ったためそれに躓いたようだ
「もらったぁ!!」そこにすかさず剣士の突きが襲うその突きはあまりの速さか分身して見える
ドドドドドッ
やった・・!そう確信した・・・・が次の瞬間彼の目は光を失った
「分身ぐらい見抜いてくれよ・・・まったく」実力の差はあきらかだった
僅か数㍉の差で剣を分身で交わし目をダガーで突いた、そのダガーは着実に脳も打ち抜いていた

そしてすぐにレイドは走りだすだが・・彼はこう思っていた・・・

「この・・・・・欲に目が眩んだ糞共がぁぁぁぁぁぁ!!」
相手の目に覇気はない・・あるのは欲望・・それだけだ

95 名前:SHIBA 投稿日:2006/03/04(土) 22:55:42 [ hYX0Pv0. ]
 【ネトゲ型バトルロワイヤル ダメオン式】

 20XX年、日本国は異例のオンラインゲームブームを迎えた。 本場韓国を超すネトゲ人口を生み出したのである。
 その人数、実に7000万人。(つまり、十人に七人はやっている計算である) 
 老若男女を問わずの大ブレイク中である。 
 このブームに便乗して、日本のネットゲームの数は爆発的に増えたが、やはり環境の整った古参のネットゲームほど新参者受けが良かった。
 それは、我々のレッドストーンも同じ事である。

 しかし、この人口率の大幅アップに対し管理会社ダメオンのとった行動には目を疑った。
 人員の多くを新たなネトゲに回していたダメオンに、底の見えようとしていたレッドストーンは二の次とされていたのである。
それ故、今までに16個あった貧弱サーバーの全ては人数の許容数が限界を迎えており、ラグの連続だった。  

「赤石完全放置?」  

「サービス終了?」  

「課金制に移行?」  

 数々の噂が飛び交うようになった。そんな中、ダメオンのとった行動は、今までに――いや、これからも類を見ないことだろう。  

 今日から公式HP及びゲームの待ち受け画面に以下の文が写されるようになった。そりゃ、誰もが我が目を疑ったことだろうさ。


『サーバーが許容数が限界を迎え、満足にプレイをすることの出来ないプレイヤーが増えております。
 当ダメオンも、INが少ないプレイヤーの削除など迅速な対応を心がけておりますが、人口の増幅に追いついていけない次第です。
 つきましては、苦肉の策として、【レッドストーン】ゲーム内に置いて以下のイベントを起こすことにしました。        

  ☆バトルロワイヤル☆ 
 ・簡単なルール説明
 ・今日から三日後の○月×日、午後8時より各サーバーに置いて、バトルロワイヤルを開始します。参加者は、5分前にはINしておいてください。
 ・死亡してから三分間以上経過した場合、そのキャラクターはデリートされます。
 ・未参加の場合は、IDの消失です。
 ・参加出来るキャラクターは1キャラに限ります。他のキャラクターは削除されてしまいますが、人数削減のためです。ご了承ください。
 ・不正なプレイを行った場合は、ID消失です。
 ・各サーバーごとに参加している人数が四分の一になったら終了です。
 ・デリートされたキャラクターの持ち物は、死体の周りにバラまかられます。獲得権利は、止めを刺したキャラクター又はそのパーティとします。
 ・午後0時までに、終了条件を満たしていないサーバーは、全てのキャラクターが削除とされます。
 ・原則として、パーティチャット、ギルドチャット、ささやきチャット、叫びは禁止です。
 ・装備中の武器、防具等を除き、特別サーバーに持ち運べるアイテムは10個までです。ゴールドは自由とする。
 ・期間中は、課金アイテムの使用を禁止します。
 ・期間中は、常に他プレイヤーに攻撃出来るようになっております。
 ・特別サーバーは、通常のサーバーに比べて強力ですので、どんどんスキルを使ってください。
 ・最後に、レベル差、職業差などがありますが、人間というものは生まれついてから不平等なのです。あきらめてください。逃げるが勝ちとも言いますし。


「あのダメオンのことだ……」
 そういって信じるもの。諦めるもの。信じぬもの……。様々な奴がいた。
 だが、確実なのはそれからの三日間、各サーバーは狂ったかのように――いや、実際狂っていた。
 働き蟻のごとく、キャラクターが動いていた。
 特に、俺たちのレッドエメラルドは……。



ラルグ 剣士 Lv511 生存



新参者です。バトロワっぽいのを書きたいのですが……。なんか冒頭でお察しですね(´A`)
一応書き始めたのだから最後まで頑張ってみたいです。

96 名前:南東方不勝 投稿日:2006/03/04(土) 23:41:51 [ gowBXNz6 ]
>>名無し物書き@赤石中さん
どうも初めまして^^
ネクロ狩りをするためにハノブへ向かったクラレット一行。
個性的な仲間達が非常に気に入りました。
ギャグ担当は、ワルツとカリンの予感がします・・・w

>>ドリームさん
バースには許婚がいたんですねぇ・・・。
まぁ、王子という身分から考えれば政略結婚は当たり前かもしれませんね。
そして、突如としてロマに攻め込むブリッジヘッド軍。
しかし彼らの様子を見ていると、本当に正気なのでしょうか?

>>戦士のようださん
あぁ、自分も一回ミスって途中まで書いた奴を飛ばしてしまいましたねぇ・・・orz
でも、くじけずに頑張ってください

>>ほげおさん
いや、ほんとにエディは勇敢で知恵が回りますね。
火口湖に誘い込んで、そのまま溺れさせるとは・・・。
GJでした。

>>復讐の女神さん
ジェシの身を心配してくれているフェリル司祭、非常に優しい方ですなぁ。
そして地味にレーダー天使として、優秀だったようですね。
続きを待ってます。

>>SHIBAさん
原作は結構好きでしたなぁ、自分は。
さてさて、裏切りやら騙し合いやら、もはや無法地帯と化した赤石の世界の中で生き残れるのは・・・!?
ほそぼそと続きをお待ちしています。

97 名前:南東方不勝 投稿日:2006/03/05(日) 16:09:17 [ gowBXNz6 ]
前スレ:>>680,>>693-694,>>725,>>736,>>756,>>761,>>797,>>821,>>826-827,>>842,>>856,>>864,>>901,>>921,>>940,>>968
現スレ:>>32,>>48-49,>>62-63,
閑話集:前スレ>>680,>>843
現スレ>>49,>>86

(来たか・・・!)
俺の両手に納まっている相棒が、相手がこちらの誘いにのってくれた事を如実に伝えてくる。
奴と相対することおよそ10分・・・。これまでに戦って来た奴らとも比べても、こいつは5本の指に入る大物だ。
ギリギリと持てる力の限りを尽くして、俺の相棒を引っ張っていく。俺も負けじと、奴を俺のほうへ引き寄せる。

ギリリリリリリリッッッ・・・!

(このっ・・・、いい加減に諦めやがれ!)
しかし、奴の力はあまりにも強大だった。
「貴様の力はその程度か!」と嘲笑うかのように、更に力強く相棒を自身のほうに引き寄せる。
(だが、甘く見たな・・・、俺の底はまだついちゃいねぇ!)
さっきよりも相棒に力を込め、奴を一気に俺の方へと引き寄せる・・・!
じたばたと奴は抵抗するが、その程度の力で俺が負けることは有りはしない。
・・・しないのだが、俺の相棒は耐え切れなかったようだ。

ギリリリリ、プツンっ・・・

「あっ・・・!?」
俺と奴との力勝負に耐え切れず、相棒の片割れ…釣り糸は己の限界を迎えた。
俺と10分ばかりの死闘を演じていた奴…魚は、これ幸いといわんばかりの勢いで水の中へと消えていった。
そしてその場に残ったのは、魚に逃げられちょっとやるせない気持ちなった俺と・・・、
「ジャックさん、逃した魚は申し分なく大物だったんでしょうね・・・」
地味に小物を着々と釣り上げているゲイルからの実に素直な意見だった。

東バヘルの一件から半月後、俺達はここ1週間ブリッジヘッドに滞在している。
滞在している理由は、我らがマスターの実に公私混同な理由によるものだ。
ブリッジヘッドは毎年、初秋を迎えると街を挙げての豊漁祭が催される。
その人気は広く、わざわざアリアンから見学しに来る奴もざらにいる。
それだけ大規模な祭なのだから当然、相当な準備期間を要することは想像し難くないだろう。
で、我らがマスターは毎年、この準備を手伝っているのだ。
理由は簡単、リリィがこの街の出身だからだ。
更に今年は、リリィの実家が祭の幹事を務めるらしく物資のなどの手配など、面倒な仕事が山積みだ。
そのことについて両親から相談を受けたリリィは
「それじゃあ、ギルドの皆さんで手伝いに行って差し上げますわ」と、二つ返事で了承してしまった。
(あぁ、権力というものはこのように歪んでいくのだな・・・)と、匿名希望のビショップH氏は語ってくれた。
だが意外と、こういった準備事には冒険者は重宝されている。
力仕事は言うまでもなく、少しばかり「難所」にある材料の採取や、遠方に買出しに行く商隊の護衛などと様々だ。
仕事の種類が多い分、自分の実力に見合った手伝いができる・・・。奇しくもそれは、事務所設立時の利点と同じようなものだった。
意外と考えてるんだよ、我らがマスターは。
ちなみに俺達がこうして釣りに興じているのも、立派な仕事だ。祭期間中における食材の確保。うん、実に地味だ。
だが、たまにはこういのも悪くはない。
「ジャックさん、これだけ釣ればもう充分ですよね?」
ゲイルがそういってびくを俺に見せる。多種多様な小魚がぎっしりと詰まっている。
「ん・・・?あぁ、それだけ釣れれば充分だろ。しかし、ほんとに小物ばっかだな。」
「ジャックさんこそ、釣り上げた数は少なくとも大物ばかりじゃないですか。流石に、マーマンとトライアングルを釣り上げたのは驚きましたけど」
「あぁ、あれは釣り上げた本人ながら驚いたな」
まぁ、その2体も今じゃ切り身になっているがな。さすがにそのままじゃ、持ち帰るのが辛い。
「うし、それじゃ街に戻るか。で、その後はアルシェさんの手料理で晩飯と洒落込むか」
「もうそんな時間ですか・・・。でも、今日は母さんじゃなくて姉さんが作ると思いますよ」
海に沈む夕日を背に、俺達は街へと戻っていった。

98 名前:FAT 投稿日:2006/03/05(日) 23:22:19 [ TKRnzKAI ]
『水面鏡』

キャラ紹介>>21

―田舎の朝―

―1―>>22
―2―>>25-26

―子供と子供―
―1―>>28-29
―2―>>36
―3―>>40-42
―4―>>57-59



―5―

 しけた朝がやってくる。まだ薄暗いなか、レルロンドは火薬やらスパイスやらを丁寧に
一つずつ小分けし、袋に詰めていた。もうこんな作業を数時間延々と繰り返している。ラ
スに言われた「寒いぜ」という言葉を反芻すると、さらさらと粉が机にこぼれる。一つ大
きく溜め息を付き、気分を変えようと部屋を出ると、獣が立っていた。
「うわぁ! え? ラ、ラスさん!?」
 やけに細長い足指。茶色の体毛に覆われた脚、下着からはみ出している細長い尻尾。腰
の辺りでこれらの特徴は消え、その上は屈強な肉体美が飾られている。
「なんだ、朝早いんだな」
「ええ、まぁ。…ラスさんってウルフマンだったのですか?」
 レルロンドはもう一度足の先から腰までをゆっくりと観察した。太ももなどは彼の倍は
あるだろう。
「いや、ウルフマンとは別物だぜ。俺、狼にはなれないからな。やつらは人間か、獣か、
どちらかにしかなれないんだろ? 俺みたいな中途半端なのはどっちでもないんじゃない
かな」
 ラスが魔法使いの類であることは判明している。現在彼の故郷、魔法使い都市スマグの
近辺で突然変異による人間のウルフマン化は稀ではなく、全世界に認知され、中には完全
なウルフマンでありながら富を得、人々の憧れになっている者もある。だが、ラスは中途
半端なのだ。下半身にのみ現れたウルフマンの特徴。ラスは自分自身をウルフマンの突然
変異種と位置づけ、特に深い考えは持っていなかった。
「ではラスさんはウルフマンと人間のハーフなのですか?」
「俺の母親は人間だ。ハーフだのなんて話は聴いたことがない」
 レルロンドは再びあのループに入りかけていることに気づき、慌てて話題を切り返す。
「この町にはどの程度滞在なさる予定ですか?」
「考えてないなぁ…。お前、あの話は本気か?」
 あの話、と聴かれて一瞬考えるも、すぐにレルロンドの顔が明るくなる。
「はい! 本気です! ラスさん、ついて行かせて下さい!」
 ラスは冷たく目を尖らせ、
「なら死を覚悟しておくんだな。スリルが欲しいだなんて安易な考えで俺についてこれる
ほどお前たち二人が優れているとは思えないからな」
「はい。僕ら二人とも死んで失うものはもうありません。ですからその覚悟はとうに決め
ております」
 ラスはレルロンドから視線を外し、徐々に光量を増している窓の外を見た。やはりこいつは子供だと、七歳のラスは感じた。

99 名前:FAT 投稿日:2006/03/05(日) 23:23:01 [ TKRnzKAI ]
 ランクーイがレルロンドの家に入ると、香ばしいパンの焼けた匂いが開けたドアから逃
げ出すように彼の全身を通り抜けていった。その匂いがランクーイの頭の中でパンを具現
化させ、腹が大きく鳴った。
「お! きたか、ランクーイ」
その大きすぎる音が家主に訪問者があることを告げる。テーブルに置かれた四枚のトー
ストのうち、二枚をラスに、もう二枚をランクーイに差し出した。側にはマーガリンとマ
ーマレイドのジャムが添えられている。ラスはそれを不服そうに、
「バターはないのか? マーガリンは正直好きじゃないんだ」
「あっ、すみません、すぐに取ってきます」
 とまたもレルロンドは謝り、ばたばたとキッチンに向かった。
「なぁ、あいつっていつもああなのか?」
「いいや。お前が来てからだ」
 明らかな敵対心を剥き出しに、ランクーイはラスを睨み付ける。だが、そこには攻撃的
な意図は全く見えなかった。その目を、ラスは「若い」と思った。
「お待たせしました、どうぞ」
 差し出された良質なバターを豪快に割り、トーストを平らげる。二枚をあっという間に
飲み込み、おかわりを催促する。どうやらここのバターはラス好みのようだ。その豪傑っ
ぷりを見たランクーイも負けじとマーマレイドをたっぷり塗ったトーストを放り込む。が、
喉でつっかえあえなく敗退。マメなレルロンドにしては珍しく飲み物を忘れていたのでラ
ンクーイは少ない唾液で苦しみながら飲み込む。今の危機によってあんなに空いていた腹
は食欲を失った。

「今日も盗賊ごっこをするのか?」
 ようやく出されたミルクティーを一口に、ラスが二人を交互に見る。
「いえ、もうしません」
 レルロンドは丹念にミルクティーをかき混ぜている最中だ。
「早く稽古をつけてくれ」
 ランクーイはミルクティーの温度が下がるのを待っていた。
「…お前ら、この町になんで人が来ないか分かるか?」
「え? なんでって…」
「女がいないからだろ」
 ランクーイがませたことを言う。
「ここに来る間の道に変な蟲が大量発生してるんだよ。そいつらが恐ろしく攻撃的でな、
港町の人間にきいたところだと死人もえらいでてるそうだ」
「軟弱な奴らだなー。俺たちならあんな虫共簡単に握り潰せるのに」
「…ランクーイ、多分お前は勘違いしてる」
 レルロンドはラスの意図を汲み、
「では、その蟲を駆除しましょうか」
「ああ、行こうぜ」
 多少の緊迫感を感じているレルロンド、まだ弱々しい虫と勘違いをしているランクーイ、
真意を隠すラス。少しばかりのずれを持って、三人は町を出た。

100 名前:リ・クロス 投稿日:2006/03/06(月) 17:42:09 [ o6GgUsHI ]
前スレ>>986 >>39 >>56 >>69 キャラ紹介>>38

ブルネンシュティング英霊騎士団――――シャープホワイト。
その中でも最強と謳われている、ホワイトベル隊こと
第三特殊戦闘部隊は、東口の警護を命令されていた。

「いつ襲って来るか判らない。各自警戒を怠らないように。」

凛とした声を張り上げて、他の騎士達に喝を入れている騎士は
部隊長であるアルメリア=ナギスだ。
彼女は炎のブロードソードと、風のバスタードソードを持っており
両の剣によって繰り出す剣舞から、双剣の戦天使と言われている。

「ところで・・・、何故貴方が居るのですか?」

木に凭れ掛かりながら、パンと干し肉を齧っているスコールの
何を考えているか判らない仏頂面を横目で見つつ尋ねた。
スコールは、残ったパンと干し肉を口に放り込むと
鞄から水筒を取り出して、中身の水を口に流し込む。

「瑣末事だ、別に邪魔をしようと思っていない。」

鞄に水筒を戻しながら、何時もの様にそっけない声で言うスコールに
諦めた様にため息をつくと、金糸の様な髪の毛をかきあげて
視線を前に戻して、周囲の草むらを凝視する。

「何だ、こいつ――――」

目の前に居た一人の騎士が、何かを言いかけたが
刹那に襲ってきた真空斬によって絶命する。

「くぅ!何も感じないなんてっ!!」

突然、目の前から現れた黒い鎧騎士が振り下ろした大剣を
背中のバスタードソードによってアルメリアが防ぐ。

「チッ!何時の間に回りこんだっ!!」

木を引き裂いて襲ってきたランスを、ショルダーパッドによって往なして
それを放ってきた襲撃者を血の様な瞳で睨みつけるスコール。
二体の黒い鎧騎士は巨体に似合わない速度で間合いを開けて
中段の構えを取ると、二人も構えろと言わんばかりに顔を振る。

「殺気を全く発していない・・・。」
「感じるものはどこまでも広がる虚無ってところだ。」

スコールは、背中に背負ったクリスタルのツヴァイハンダーを掴むと
黒い槍騎士に向かって跳び、上段から斬り付けるが
槍騎士が素早いサイドステップによって避けると、反撃に突きを放った。
それを横飛びで避けたスコールは、崖に跳び上がり黒い鎧が追いかける。
それを、見送ったアルメリアは黒い鎧騎士にこう呟いた。

「Doesn't it dance with me?(私と踊りませんか?)」

了承するかのように、黒い鎧騎士が剣に魔力を纏わせる。
戦天使が羽ばたく刹那に、暗黒騎士の咆哮が響き渡った。

「ですが・・・



My body is made of sword.(私の体は剣で出来ています)」

彼女の体に光の鎧が纏われ、一本の大剣の柄がが現れて
中央のサファイアが、青白い閃光を辺り一面に広げた。
それが、少女が背負った『誓い』であって『呪い』であるが故に
『彼』は、一本の剣となって人の為に我が身を振るった。

101 名前:SHIBA 投稿日:2006/03/07(火) 16:07:58 [ hYX0Pv0. ]
プロローグ>>95

1−1 「ラルグ・L・ノーマン」

 彼、ラルグ――長いし、ラルグで良いよ。と、彼曰く――は元々は戦士をしていたのだが、今は剣士に落ち着いている。
 戦士という職業はとても気に入っていたのだが、彼には変わらなければいけない理由があったからだ。
 それは些細なことだったのかもしれないけど、ラルグにとっては、とても大事なことだった。
 
 Lvが200となって一段落ついたある日、特に意味は無いのだが、彼はこの広大なマップを隅々まで見てみたいという衝動に駆られた。いや、Lv的には少し遅いくらいだったろう。
 その日は丸一日暇だったし、ギル戦も時間帯的に深夜で、狩りをする気にもなれなかったことから、一人アリアンからバリアートまで無造作に、思うがままに駆け回っていた。
 それから、1時間ほどたって、午前十時頃だったかな? 彼はバリアートにたどり着いた。
 特に何もない町だったが、世が世なので百人近くの人はいた。何となく、わらわらとした人混みが嫌だったので彼は町の中心から少しずれたところで、この見慣れぬ町をSSでも取りながら渡り歩くことにした。
 と、そこに瞬きの一瞬、画面に三人組のPTが現れた。そのウチの一人が高レベルそうな天使で、残りが若葉アチャ二人だった。
 が、それから数秒もしないうちに天使がいきなり画面から消えたかと思うと、続いてもう一人のアチャも画面から姿を消した。
 当然もう一人は取り残されたわけだが……。
 少しの沈黙の後、そのアチャは「…………」と打ち、数秒後には「ははw騙されたかな?w」と陽気に語り出した。
「最近多いですよね^^;」
 なんだろう。和んでいたからかな? 独り言だったのだろうけど、不思議とラルグはそのアチャに返事をしてしまった。
「まあ、ボクみたいに引っかかる方も引っかかる方ですけどね^^;」
「騙す方が悪いに決まってますよ!」
「ふふ、慰めてくれて有り難う御座います」
「いえいえ、友達とかいないんで、誰かと話がしたかっただけなんですよw」
 ラルグがそう言うと、その若葉アチャは、彼に友録を申し込んできてくれた。
 ラルグは今までに友録というものをしたことがなかった訳ではないが、いつも何も進展がないままメンテで消えていた。これも同じようなんだろうと思いつつも。
「有り難う御座います^^」




 この後もどうも、この若葉アチャ……じゃなくて、そう、名前を『紅葉鳥』。いや、これはこのアチャのメインの名前らしいが。(メインもアチャだったがな)
 結局若葉アチャは、バリアートからでられずに削除したらしい。
 また、紅葉鳥が友達いないと言っていたのも真実らしく、俺たちのIN時間、レベル帯も一致していたことから、この日を境に俺たちは良き親友となれた。
 
 んで、この日からはもっぱらペア狩りばっかりだったかな? 効率がアレだったから、今はもう普通に狩ってるけどサ。
 あ、そうそう。だから、紅葉鳥を守るために俺は剣士になったってわけよ。OK?

 1−2に続く。




なんかネトゲだと、色々書けない部分が多いんですよねぇ。難しすぎでふorz

102 名前:名無しさん 投稿日:2006/03/08(水) 14:07:46 [ 8ltJWqW2 ]
 私はレティ、ロマ村から来たサマナー。


 ふぅ……
 応接間の椅子に腰掛け、やっと一息。
 買い出しを終え、ここ滞在中の宿に戻ってきたのはつい先程。
 くつろげる程度に馴染んだ空間。改めて人心地。
 来た当初は落ち着かなかったんだけど。
 しみじみと思いながら、テーブルの上に投げ出された買い物袋を眺める。
 四人分だけあって結構な量だなあ、等痛む腕をさすりつつ。
 と、そこで目に止まったのは一冊の本。
 置いた荷物の下に隠れて、すぐ気付かなかったみたい。

 上に載っていた袋を除け、目の前まで持ってくる。
 飾り気のない厚めの外装で、やや使い古された感があった。
「……なんの本だろう」
 手に取り、じっと見つめる。背表紙、裏。そしてまた表。
 何も書いてないので分からない。
 今度は本を開き、パラパラとめくってみた。
 ページを追う毎に、書き込まれている日付が進んでいく。
 これは……どうやら日記のようだ。
 勝手に納得したわたしは、ぱたんとそれを閉じ元の場所に戻そうと…手を止めた。
 この宿は貸し切りなので、わたし達しかいない。
 つまり所有者は限られてくる。
 ……
 持ち主の名前を確認するだけ、分かったらすぐに届けよう。
 そう自分に言い聞かせ、そっと日記を開いた……。 


『新月×日。

 今日は、他のみんなが出かけていたので、
 この前仲まになったレティてやつと出かけました。
 町を出てギルティル川の近くを歩いたのですが、
 なんと、目の前に赤い犬の化け物が出てきたのです。
 赤い悪ま! 俺はまよわずとびかかりました。
 俺のひっ殺技を思いきりくらわせたら、動かなくなりました。
 やはり俺は強い。最強の剣士だ。
 仲まの女はさっきから下手くそなふえをふいていてなにもしてないから
もんくをいってやろうと近ずいたとたんいきなりなぐってきました。
 あの女は頭がおかしいです。
 なにするんだ、このブス!とさけんだらけられました。
 俺はふきとびました。いたかった。あいつは化け物にちがいない。

 あとけられた時にパンツがみえました。白かったです。
 化け物がパンツはくなんておかしい!
 そのことをみんなに言ったら、よろこんでいました。
 仲ま以外のやつも集まってきたので、どんどん教えてやりました。
 なぜかこうふ
「フ、フフフ……」
 ぐしゃり、何かの潰れる音が手から聞こえたが、然したる問題ではない。
 それよりも、何よりも。
 何故か笑いが止まらない。冷静? ええ、わたしは冷静ですとも。
 まずはあの阿呆剣士の部屋に行こう。
 話をする時間はいくらでもある。たっぷりと。
 丸めた紙のようになった本を投げ捨て、わたしは立ち上がった。

103 名前:黄鯖雑魚 投稿日:2006/03/08(水) 23:11:39 [ ImRHj6uc ]
ある日、古都ブルンネンシュティグにハンターの家族がやってきた。
「お父さん、本当にここなの?」と心配そうに長女が尋ねる。
「ああ、間違いない。ここだ、ここ」と胸をどんと叩いて言い張る父親。
「父さん、僕に地図を見せて」と冷静な長男。
「早く早く!ファーとミーが知らない人ばっかりでビクビクしてる!」と次女。
「もう何なんだよ!父さん!早くしてくれよ!」と苛立つ次男。
「……眠い…」と三男。

彼らはどこにでもありそうなごく普通のハンター一家。
父親ビショップ、長男ウィザード、長女ランサー、次男剣士
次女ビーストテイマー、三男シーフという面子だ。
地図にも載ってないとある田舎から
一儲け狙って古都にやってきたこの一家。
さて、どうなるのか……?

「こ、ここが新居…?」
あまりにもぼろぼろの家にあきれた声を出す長女ミア。
そんなことも気にせず父親クーファンが中に入って荷物を降ろす。
「父さん…暖炉もないのかい?冬場は?雨の日は…屋根の隙間がひどいな…」
と冷静に家の状態を解析し始める長男のクリス。
「お前ら、ゴキブリが住むようなボロ家っていうけどな」
「そこまでは言ってねぇよ」と父親をさえぎって突っ込む次男ティム。
「いや、同じじゃねぇか」とクーファンが言うが長女と長男のやれやれという視線にちょっと後ずさり。
「あれ?お父さん!ファーとミーの小屋は?」と次女ミレナが叫ぶ。
「ん、ああ、いいじゃねぇか」
「父さん…いい加減にしろ…」とクリスとミア、ティムが揃う。
「あのなぁ、父さんだって少ない金でこの家を買ったんだ。ほら、スティーブを見習え
 文句の一つも言わずに…」
「スティーブは寝てるんだよ、いつもどおりじゃん」
三男スティーブは、家の外の木の間にハンモックをかけ
ブラブラとゆれながら眠っていた。
「まぁ、どうにかなるだろ! 天国の母さんだってきっと見てくれてるってな!」
「「「「この、ダメ親父!」」」」

子ども4人の叫び声がこだまする古都ブルンネンシュティグのはずれ。
これから彼らは予想だにしなかった生活を送ることになる。

104 名前:黄鯖雑魚 投稿日:2006/03/08(水) 23:12:42 [ ImRHj6uc ]
さげわすれ。吊ってきます

105 名前:FAT 投稿日:2006/03/09(木) 11:00:31 [ TKRnzKAI ]
『水面鏡』

キャラ紹介>>21

―田舎の朝―

―1―>>22
―2―>>25-26

―子供と子供―
―1―>>28-29
―2―>>36
―3―>>40-42
―4―>>57-59
―5―>>98-99



―6―

……ぶぶぶぶぶ

………ぶぶぶぶぶぶぶ

 至る所から耳障りな羽音が聞こえてくる。予想以上の大群にランクーイは言葉を失った。
「来るぞ! ランクーイ、構えろ!」
 レルロンドの呼びかけで無意識に細身の剣を右手に握り締める。だが、想定していたも
のと余りにもかけ離れた敵の姿に戦意が湧かない。
「おい! レルロンド! これどうすりゃ斬れるんだ?」
「斬れるわけないだろ! 燃やせ!」
 と爆薬を詰めた小包みをいくつかランクーイに支給する。レルロンドは自分の足元で煙
球を破裂させ、姿を晦ます。蟲が煙に巻かれている間に矢に例の小包を括りつけ、火をつ
けて放つ。空中で矢は爆発し、焼けた蟲の残骸が散らばる。
「いてっ、いって! いたたたた」
 素早い蟲の群れに捕まってしまったランクーイはなす術なく、全身を突きまわされる。
爆薬に火をつけようにも、痛みがそれを妨げる。
「ランクーイ!」
 レルロンドの支援でランクーイの周りに煙が立つ。やっとのことで開放されたランクー
イも小包に火を付け、憎しみを込めて蟲の群れに投げつける。
「ふぅ、こりゃ死人がでるのも分かる気がするぜ」
「軟弱だな」
 ラスがぼそりと漏らしたのを、ランクーイは聞き逃さなかった。
「なんだと…」
 そこで怒りの言葉は途切れる。怒りは憧れに変わり、少年は体を包む温かな、あの光を
愛おしそうに抱きしめる。ラスの周りには焦げた蟲の塊が無数に転がっていた。それはラ
ンクーイとラスの力の差を知らしめるには十分であったし、何よりも、ラスが自分の憧れ
であるあの魔法をかけてくれたことに、ランクーイのラスに対する印象が逆転した。
「…ありがとう」
 ランクーイは少し恥ずかしそうに顔を背けたまま、ラスに誠意を見せた。子供はちょっ
としたことがきっかけですぐに自分の考えを変えられる、天才である。この柔軟さをいつ
までも失わずにいられるなら、人はどれだけ賢くなれるだろうか。
「まだだ。巣を燃やそうぜ。でないと毎日繰り返すはめになっちまう」
 見当がついているのか、ラスは北に向け、歩き始めた。
「なぜこちらの方角に?」
 歩幅の大きなラスに必死についていきながら、レルロンドが顔を見る。
「あの手の蟲は水辺に巣を作るって教わったんだ。だったらあの滝のあたりが怪しいだ
ろ?」
 どうやらラスは良い教育を受けていたようだ。生物と地理の知識の高さが伺える。

106 名前:FAT 投稿日:2006/03/09(木) 11:02:17 [ TKRnzKAI ]
 あからさまに異常である。滝から水が激しく落ちていると思いきや、それは水ではなく
蟲だった。水の流れに乗り、滝つぼに吸収されたかと思うと羽ばたき、再び水の流れに乗
り滝つぼへ。まるで子供が遊んでいるかのようなその不思議な習性に博学のラスも舌を巻
いた。
「なんだこりゃあ」
「遊んでいるようにも見えますね」
「溺れてんじゃねーの?」
 今度は水の中にいるのだから爆薬では役不足だろう。レルロンドはごそごそとバッグを
漁ってみるも、良い代用品が思い当たらない。と、突然雷が滝つぼに落ち、電光が滝を登
った。滝つぼにはもう飛び立てない蟲の死骸がループし、川辺には焦香が蔓延る。
「お前らじゃ役不足だろ?今回は特別だ」
 雷はラスの産物だった。あれほどの電力を放ったというのに、当のラスは平然である。
二人の少年は一段とラスに惚れ込んだ。
 
…ぎぐぎぎぐぐがぎ

 低く、重たい金属が擦れるような音が滝の水を四散させる。滝裏に姿を現したのは、ラ
スよりも巨大な一匹の羽虫だった。
「化け物だな…」
 ランクーイが一番に剣を構える。遅れてレルロンドも弓に矢をあてがう。そしてラスは
腕組みをした。
「な…一緒に戦わないのか?」
 ランクーイが急に弱腰になる。そんな腰抜けにラスは、
「俺についてきたいんだろ? さっきの蟲は相性が悪かったが、こいつならでかいし、お
前らだけで何とかしてみろ。無理なら一生盗賊ごっこでもしてるんだな」
「ふん、いいぜ。あんたに認めさせてやるよ、俺たちを。そしたら、魔法…教えてくれる
か?」
 にかっと大口をあけてラスがランクーイの背中を押す。
「ああ! 約束してやる! そら、とっとと行けっ!」
 
 虫は茶褐色で、羽が4枚ついている。尻からはあからさまに威嚇しているぬめった棘が
獲物を捉えようと頻繁に収縮を繰り返す。まるで蜂のような印象を受ける。

107 名前:FAT 投稿日:2006/03/09(木) 11:03:21 [ TKRnzKAI ]
…ぎぐぎぎぐぐがぎ

 どこから出ているのか、脳を揺さぶるほどの衝撃音が空気を脅かす。数匹生き残ってい
た蟲がその音に飲まれ空中で弾けた。巨大な羽音が、奇妙な超音波がランクーイを恐怖と
勇気の板ばさみ状態にさせる。睨み付ける目と前に出ない足、力む腕と荒い呼吸。虫が頭
を大きく一度振るうと、次の瞬間レルロンドの頭に牙が掠る。
「レルロンド!」
 虫が瞬間移動したように見えた。だがレルロンドにはその軌道が見えていた。ラスにも
当然見えていた。ただ、緊張のあまりランクーイに時間錯誤が起こっただけのことである。
 レルロンドは頭を牙が掠めながらも冷静に、弓を腹部に突き立てた。レルロンドの愛用
する弓は両端に刃がついた遠近両用の珍しいものである。が、それゆえ弓の柔軟性は損な
われ、矢の威力は期待できない。レルロンドが爆薬等を持ち歩いているのはこういった理
由からである。
 濃緑色の粘っこい液体が弓先にこびり付く。空気に触れた瞬間に硬質化し、弓の柔軟性
を更に低下させる。無論、傷口は瘡蓋によって即座に塞がれた。なんとも生命力の強い血
液だ。相手の動きに注意しながら、レルロンドはこびり付いた血の塊をぱぎぱぎと剥ぎ取
る。血液どうしの結束力は強いが、異物との結合力はさほどではないらしい。
 微妙な距離を置いて空を舞う虫と、弓についた異物と削ぐレルロンドと、刺すような氷
の目を向けるラスの三者の間をランクーイの目はきょろきょろと行ったり来たりしている。
戦わねば夢は夢のまま、憧れは妄想に、希望は再び手の届かぬ場所へ……。いつまでレル
ロンドの背中に隠れているつもりだ、いつまで「あの日」を引きずっていくつもりだ! 
「うぉおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」
 射程外である宙の敵に剣を振るう。ヒュンヒョンと何も斬れない虚音が滝の濁音に飲ま
れる。
「ちぃ! ランクーイ!!」
 七割ほどしか塊を除去出来ていない不出来の弓を構え、虫の急降下に合わせて爆矢を射
掛ける。ランクーイが剣を左から右に振り切った瞬間、虫は棘を彼の腹部に深々と差し込
んだ。
「う…はあぁ」
 体がまるでランクーイの戦意を拒むかのように、するりと崩れた。それとほぼ同時に、
数メートル先の地面が爆発を起こす。レルロンドの放った矢は的を外れた。しかし、矢を
放った際の反動振動により、邪魔をしていた血は全て砕けた。虫の飛行が速いか、レルロ
ンドの充填が速いか、微妙な差ではあったが、空中で虫の腹が弾けた。
「ランクーイ!!」
 腹部から赤と緑の反発する液体が漏れている。側に立つラスが珍しく優しい笑顔を見せ
る。
「大丈夫だ。もう傷口は塞いどいた。毒もたいしたことなさそうだしな。それにしてもお
前、すげえな! 魔法なしであんなに素早く矢打てるやつそうはいないぜ! こいつはま
だまだだが、お前さんに免じて特別合格だ」
 レルロンドの顔がにわかに赤らむ。ややたれ気味の目には嬉々としたきらめきが姿を見
せる。ランクーイを大事そうに抱えて、レルロンドは改めてラスに熱い眼を送った。

108 名前:FAT 投稿日:2006/03/09(木) 12:51:45 [ TKRnzKAI ]
>> 南東方不勝さん
またえらく強そうな敵が出てきましたね。裏でなにが動いてるのか…
ところでリリィの作る料理ってどうなんでしょ?ケチつけたら大惨事になりそうですね

>> 無貌さん
祠が開いていたのは誰かの仕業でしょうか?雛と押し寄せてきたモンスターたち
とも関係がありそうですね。続きをお待ちしています。

>> ドリーム さん
レイド怪しいですねぇ…。彼が裏切りに出るのか、改心(?)するのか、楽しみです。

>> リ・クロス さん
独創的な技が素敵です。あの少女はなんでしょう…悪魔とかですかね?

>> 名無し物書き@赤石中さん
キャラの個性がはっきりしていて読みやすかったです。後編にも期待です。
SSコンテストって審査員があれですからめんどくさがって原稿読まなさそう…

>> 戦士のようだ さん
災難でしたね…。影ながらあちらでの活躍期待しています。

>> ほげお さん
くまー
ほげおさんの描写はこう、面白いですね。

>地面から這い出ている根っこや、木々の枝がエディの邪魔をしてくる。
まるで、言われもない暴力を受けた木々の恨みつらみの表れのようだ。

↑この表現大好きです。

>> 復讐の女神さん
フェリルおじ様が胡散臭いと思ってしまったのは私だけでしょうか?
ジェシが厄介ごとに巻き込まれてしまいそうな臭いがぷんぷんしている気が…

>> SHIBA さん
原作では一人しか生き残れないというルールでしたが、こちらは四分の一ということ
で多少は易しい…のでしょうか。

>>102さん
これはよいツンデレ(?)ですね。どんな話になるのか、楽しみです。

>> 黄鯖雑魚さん
へたれ親父良いですね。愉快な家族にどんなストーリーがあるのでしょう。
これからに期待しています。

109 名前:ドリーム 投稿日:2006/03/09(木) 15:11:20 [ GWUlqWK6 ]
>>南東方不勝さん

リムちゃん出てきて早速なんですがもう少しで最終回(ry


>>FATさん
乞うご期待ください^^

>>SHIBAさん
とりあえず511ってのに目が行きました(ぁ

>>黄鯖雑魚さん
家族物ってのは初かも・・・?頑張ってください

>>リ・クロスさん
迫力の戦闘シーンにはドキドキです・・・黒騎士良くあるパターn(ry

>>復讐の女神さん
ジェシはオジサマ好き(ぁ








       〜儚き夢☆尊き夢〜
>>94

あきらかに見た目を凌駕する怪力で敵兵達を薙ぎ倒していくリム。
こんな光景はすでに何度目も目にしているので私は差ほど驚かないが敵兵はドタバタだ
まぁ正直私が敵兵の立場だったら同じだと思う
「まったくもう・・ヴィードとレイドはどこなのよ!」バースは塀の上で陣を仕切っているのは見えただが肝心の二人の姿がない
一方ヴィードは・・・

こんなでかい戦も久し振りだな・・血が騒ぐ!
持ち前の大斧を生かし敵を蹴散らす、が
「でやぁぁー!」戦場に響く男とはかけ離れた高い女の声・・・しかも美人なぽい
「どわっと・・・女ぁ!?」振り向きその顔を確認する・・・うむ・・思った通り美人だ
鋭い眼光を放ち命を射止めようと一気に間合いを詰める、だがヴィードにはこの程度の相手に苦戦はしない

ムニュ・・・かわした瞬間相手の胸を弄る・・・うん・・・でかい(ぁ
相手は相当怒ったようですぐに反転し切りかかる・・・がヴィードのゲンコ一撃で気絶してしまった
「もっと育てよー」アホな捨てゼリフを残し次の戦場へと走っ・・・ろうとした

次の瞬間目の前が明るくなった、「な・・なんだこりゃああぁぁぁぁぁぁぁぁ」吸い込まれるような感覚を覚えまるで水に濁流のうねりに巻き込まれたように意識が遠くなる

110 名前:ドリーム 投稿日:2006/03/09(木) 15:30:59 [ GWUlqWK6 ]
「ん・・・・・」目を覚ましたのはミレルだった。彼女もまた光の渦に飲まれていたのであろう
周りにはヴィード、バース、リム意外は見あたらない
とりあえずミレルは周りを警戒しながら仲間達のほうに寄って行く
幸い全員命に別状は無さそうだ、だが・・・此処はどこなのだろう
「私は・・・城の外にでたら急に光が・・・」とりあえず状況を整理する
だが今の状況では推測すら困難だろう
「そういえば・・・レイドは・・?」彼だけは姿が見当たらない
ミレルはレイドを探しにとりあえずその場を後にした。
「なんでだろう・・・こっちにレイドが居る気がする・・・」確信はない、だが本能・・とでも言う物が彼女を動かしているのだろう
何時しか意識を失っていた

「ル・・・ミ・・・ミレル!!」その言葉に私は気がつく。
近くにはレイドが居た・・・ああ・・無事だったんだ・・・
「レイド・・・無事・・だったのね」少し体がだるかったが気にしない
「ミレル・・・・君が好きだ」

え・・・・?
突然の言葉に私は沈黙する・・が考える暇も無くレイドはいきなり顔を押し付け唇を押し付ける
「ん・・んんっ・・んぁ」甘いミレルの吐息がこぼれる
「な・・にっすんのよぉ!!」精一杯の力でレイドを殴り倒す
が・・何時もならレイドは軽く倒れるのだが今回は違った
「ミレル・・俺はすべてを悟ったんだよ・・・」いきなりレイドの目が悲しみに満ちる
「どういう・・・こと?」まだレイドがミレルを押し倒した状態が続いているが今はそれどころではないらしい
少し困った顔をしたがレイドは語りだした「俺は・・あの戦の最中・・REDSTONEを手に入れたんだ」いきなりそう口にする
「そして俺は見た・・・俺の過去を・・・そしてお前の過去を」レイドはミレルに質問をさせないように間髪を居れずに重要な事だけを喋る
「だから・・・俺には君が必要なんだ」そういうとふたたび軽くキスをし快感を燻る
な・・何言ってるのよレイドは・・・何かおかしい・・「それ・・じゃ・・全然説明になってな・・いわ」

バチンッ!!
突然レイドがミレルのほっぺたを叩く「ツッ!!」私は少し叩かれた箇所を押さえた
「お前は黙って俺に良い様されてればいいんだ!!」レイドは無理矢理ミレルの手を引っ張り押さえつける
おかしい・・・レイドは・・こんなことしない・・・
「やめなさい!!」ミレルは手を解きすぐに距離を取る
「誰なのあなたは!!」こんなことするはずがないそう思いたかった

・・・・
「わかった・・・ならば教えてやる!!」
「俺の名は!!レイド・オブ・アダム、そしてお前の名はミレル・フォーラシオ・イヴだ!!」
「この世界を作った!!俺達はアダムとイヴなんだ!!」

111 名前:南東方不勝 投稿日:2006/03/09(木) 22:27:35 [ gowBXNz6 ]
>>FATさん
う〜む、蟲ごときと侮って実に情けない結果になってしまったランクーイ。
確かにゲーム内では普通に攻撃が当たっている様に見えますが、こちらでは爆薬ですか。
テクニカルでGJです。

>>リ・クロスさん
おぉっと、女性ながら中々に燃えさせてくれるじゃないですか。アルメリア嬢はw
彼女が出現させた剣はどのくらい強いんでしょうか?

>>SHIBAさん
知り合ったアーチャー、紅葉鳥を守るために剣士に転向したラルグさん。
元ネタが元ネタだけに、かなり切ない展開になるかもしれないとガクブルしながら続きを待っています。

>>102さん
逃げて厨剣士逃げてー・・・、っとうわべだけの心配は置いといて(オイ
いや、実にレティさんの憤りが伝わってきますね。
でも、素手で日記帳を潰すのはやりすぎ…あれ、レティさんなぜ此処に・・・。

―その後、彼の行方を知るものはいなかった―

>>黄鯖雑魚さん
幸先悪いスタートですね、この一家^^;
まぁ、住めば都の精神で乗り切ってもらいましょう。

>>ドリームさん
レイド曰く、二人は世界の始祖たる存在ということですが・・・。
さてさて、物語は一体どのような結末を迎えるのでしょうか?
そして地味に、リム嬢の戦闘力が高いんですけど・・・w

112 名前:黄鯖雑魚 投稿日:2006/03/09(木) 23:05:02 [ ImRHj6uc ]
一話目 >>103       調子に乗って続き書いてみようと思う。

クーファンとティムが家の修理をすることになった。
幸い、自然に囲まれた家だったために修理に使う木材には不自由しなかった。
ミア、クリス、ミレナの三人は古都に食材の買出しに出かけた。
「なんか…すごい所だね〜」とミレナが兄姉に言いながら歩く。
彼らが住んでいた村よりは遥かに人口が多く、商業も盛んだ。
三人は古都の広さに少しばかり感動していた。
「さ、早く買い物すませて帰ろう?きっとお父さん手伝ってないからティム疲れてるよ」
ミアの考えが伝わったのか他の二人も「そうだった…」という顔をして買出しを始めたのだった。

その頃、居残り組みはちゃんと屋根を修復していた。
クーファンを除いて。
ダメ親父クーファンは道行く人々に挨拶をしている。
「そこに引っ越してきました、俺はクーファンって言います。今後よろしくお願いします」
なんて、挨拶を笑顔とともに振りまいている。
「親父手伝え!」とティムが怒鳴るも、スティーブが「…うるせぇ…」というだけで
クーファンには何ら影響を及ぼさなかった。
ティムがハァァ…と大きくため息をつく。
ぺこぺこ挨拶するクーファンは道行く若いハンターたちに笑われていた。

「ただいまー!」
ミレナの元気な声が家に響く。
三人が家に戻った頃には屋根はマシなものになっていた。
「また親父の奴手伝わなかったんだぜ」とティムが愚痴るが
「いつものことでしょ?…はい、晩飯作るの手伝って。包丁捌きはアンタが一番なんだから」とミアが言う。
彼らの能力があれば料理なんてたいした難しくも無い。
「うん、さすがティムだね」とミアが笑いながら自分よりも大きい弟の頭を
クシャクシャッと撫でる。
ティムはそれを払いながら「わかったから早く飯作ってくれ。疲れて疲れて…」と
グッ…と大きく伸びをした。
家の中を歩き回ってたミレナがクーファンがいないのに気づく。
「あれ?お父さんは?ティム兄、知らない?」
「さぁな、さっきまでそこら辺通る人全員に挨拶してたよ?」
「ふぅん…どうしたんだろ?」

「ミク…確かに…お前の言葉どおりに古都に来たよ。
 もうあいつらには家族を失わせたくないしな…」
森の東にある墓地で涙を流している、クーファンの姿を見た者はいなかった。

113 名前:南東方不勝 投稿日:2006/03/10(金) 01:08:31 [ gowBXNz6 ]
>>97
港から実に潮くさい風が、私の頬を撫ぜていく。
アウグスタより旅馬車を雇い、それに揺られること2週間。
ゆっくりと流れていく景色を眺めているのは思いの外心地よいものだったが、体の節々がなまっている。
(長く生きた日々に少しばかりの変化を求めてみたものの…、馬車は性に合いませんな)
これだから私は、仲間内から「変わり者」と揶揄されるのであろう。
「じゃ、あっしはこれで…。またのご利用をお待ちしておりますだ、ジャギド様」
「あぁ、ご苦労でしたな。貴方の道に神の祝福があらんことを…」
ありがとうごぜぇます、と御者は私に向かって礼を申した後に街の入り口に止めた馬車へと引き返して行った。
その背中を見送りながら私は
「今更ではありますが…この『姿』、旅の足を確保するには便利ですな」
と、本音をごちた。
さて、目的地に着いたのならこの姿でいる必要は皆無。
むしろ名の知れた姿は便利なだけではなく、時と場合によれば私の行動を著しく制限する枷となる。
「どこかに適当な物陰は…。」

「しかしながら…、もう少し遅くに出発した方が良かったかも知れませんな」
程なくして丁度よい物陰を見つけた私は、今となっては利点を生かしきれないこの姿を脱ぎさった。
今の私の姿は、どこにでもいるような平凡な剣士である。
「ふむむ。毎年この街では祭が催され、それの時期が近いことは知ってはいましたが…」
忙しなく祭の準備に駆け回る人間達を見わたす限り、中々に大掛かりな祭なのであろう。
「これならばサキエルの言うとおり、もう少し待ってから行動に乗り出したほうが良かったですな」
流石は我らの中で最も若い者である、生の空費の仕方をよく存じている。
ですが、今は目先の堕落(豊漁祭)より不安要素の排除。偉大な魔法師の忘れ形見を破壊せねば…。
「タブリス殿の懸念、当たらなければ良いのですが……」
そうして私は、2週間前の出来事を思い返した。

114 名前:南東方不勝 投稿日:2006/03/10(金) 02:35:55 [ gowBXNz6 ]
>>113

―――2週間前、神聖都市アウグスタ・中央大礼拝堂応接室にて―――

開け放たれた出窓から、涼しい風が室内を駆け回っていく。
今現在、この部屋にいるのは見事な白髪を持った老練なウィザードと彼らを招いた張本人ジャギドだけだった。
老魔術師は窓際の長いすに座り読書に勤しんでいる。
ジャギドは部屋の最奥のいすに腰掛け、じっと下を向いている。

たったったっ……
かつかつかつ……

足音が二つ、この部屋に近づいてきている。
「ガギエル…、ゼルエルとアルミサエルが来たようじゃぞ」
老魔術師は書物から目線を離さずに、奥にいるジャギドに声をかける。
「あぁ、そのようですな。ラミエル殿」
ジャギドが応えてから程なくして、応接室の扉が開かれる。

ガチャリ…

先に部屋の中に入ってきたのは隻眼の人狼、その後ろに菫色の髪を持った死霊術師の女が入ってきた。
「すまんのう、ゼルエルにアルミサエル。急に呼び出して…」
老魔術師が好々爺然とした態度で、入室してきた二人を労う。
「ラミエル老、吾に対する労いは不要…。この身は託された事象を遂行するのみ」
「何を言っているのやら…。神殿でのこと、もう忘れたの?それはともかく、他の皆は?」
「他の方々はまだ着いてはおりませぬな。」
死霊術師の問いにジャギドが丁寧に対応する。
ジャギドの答えが終わると同時に人狼が
「故人曰く、『噂をすれば影』。彼の者、どうやらこの地に至れり」
話題の人物の来訪を告げた。

ガチャーン!!

豪快に扉を開き
「ウヒョヒョヒョ、遅くなってメンゴだお。途中でシャムにあったからね〜」
「このたわけめが。お主が道を間違えなければもっと早ように着いておったわ。
何が楽しくて、わらわがモリネルくんだりまで行かねばならんのじゃ!?」
「ウヒョヒョヒョヒョヒョ」
悪びれる様子もなく笑い続ける黒の女性と、その女性に対し激昂している銀髪の少女が姿を現した。
「サキエルに…、そのお嬢ちゃんはシャムシェル?」
「ほぅ、これはまた可愛らしいよりしろで」
「小柄にして矮躯。さして、理想的なよりしろとは言えぬ」
「なんじゃ、ワシに孫ができた感じじゃのう。フォッフォッフォッ」
「いかにもわらわじゃ。久しいのう、アルミサエル。ガギエル、お主もこのよりしろに興味があるのか?
ゼルエル、わらわはお主のような戦闘型じゃありはせぬ。ラミエル、何を気色の悪いことを申しておる!」
二人が部屋の中に入ると同時に、黒の女性に人狼が問う。
「サキエル…、実の無い言葉は無意味。彼の裏切り者、所在は何処か?」
「古都周辺」
女は要望通り、人狼の問いに簡潔に答えた。
「ゼルエル、分かっているとは思うが…」
「皆まで言うな、ラミエル老。汝の許しが得られるまでは…な」
にわかに騒がしくなる室内に
「ふふふ、ようやく皆揃ったみたいだね」
7人目の声が木霊した。

115 名前:ウォルガング 投稿日:2006/03/11(土) 10:32:22 [ dIe8V.vU ]
「一話」
風に吹かれて揺れる植物を見ながら、俺は木陰で座っている。
しかし、風の涼しさや植物の匂いは感じられない。

当然だ、これはゲーム、架空の世界である。
「RED STONE」というMMOだ。
ここは、REDSTONEのマップ、「オカー三角州」
地図上では、一番端っこに位置する普段誰も居ないマップだ。
人が来ないのは遠いところにあるせいでもあるが、
ここは、クエストも無いし、特別なモンスターが出る訳でもない。

なら、なぜ俺はここで座っているのか。
理由は分からないが、ここに座っているとなぜか落ちつく。
一人で居たい時や、予約までの待ち時間などはここで座っている。
・・・そういえばリアル(現実世界)にも同じ様な場所がある。
小さい頃でもう忘れたが、ここと同じような雰囲気で、
親に聞くといつも木陰で座っていたらしい。

予約していたのを思い出したので、何番目か確認することにした。
俺はインベントリを開き、一番上に置いてあるポータルスフィアーを右クリックして、
記憶してある狩場え飛んだ。
「自分何番目ですか?」
「三番目ですよ〜」
「あい^^」
三番目か・・・時間が来るまで座っておくか・・・
俺はまたインベントリを開きスフィアーを右クリックして
オカー三角州を選んだ・・・・
(続)

不意に思いついたストーリーをつらつら書いてみました。
タイトルは考えてな(ry

116 名前:名無しさん 投稿日:2006/03/12(日) 12:21:56 [ 0MNwcPoU ]
21RさんとFATさんのまとめサイトって、誰か作ってないですか?
もしあったらURL教えてください

117 名前:名無しさん 投稿日:2006/03/12(日) 12:35:51 [ QS1Cbi/M ]
>>116
前スレに21Rさんのサイトは載っていますよ
FATさんの小説は、運営公式サイトに登録されていますので
そちらからどうぞ。「FAT」で検索すれば出ると思います

118 名前:名無しさん 投稿日:2006/03/12(日) 14:31:27 [ zWOkifZk ]
皆さんの小説を見て影響され、駄ネタ&駄文ですが思い切って投稿・・・。
小説はあまり書くほうじゃないので文章とかネタとか下手糞ですが目を通して
頂ければと思います。





 真っ青なぐらいの澄み切った空、わたあめのようにふわふわな真っ白い雲、青々とした林。
林は夜のように静かで、そよ風でゆれる木々と鳥のさえずりしか聞こえない。

 その林の少し開けたところに、二人の人間が居た。
右側の人間はキャラメル色のダッフルコートを着て、首にクリーム色の長いマフラーをして
いた。長めの艶やかな黒髪が、マフラーのあまりと共にそよ風にゆったりと靡いている。手
には使い込まれた、金属のようなものでできた鈍く光る笛が握られていた。背にはこげ茶色
の皮でできたリュックを背負い、肩には可愛らしい柄の皮製ショルダーバッグが掛けられて
いた。その人間の周りには、得体の知れない赤と水色の物体が二つ、地面から少し浮いて
二人を囲っていた。
 左側の人間も同じ色のPコートに茶色のストールを首にたっぷり巻いている。背には黒髪の
人間と同じのこげ茶色の皮でできたリュックを背負い、その右脇に矢が入った長い筒と小さ
めの厳つい弓が掛けられていた。木々の木漏れ日で右手に持っている大きく太い槍の刃
が鈍く光った。
「綺麗だね、ここ」
左側の人間が呟いた。さっきよりやや強めの風で、さらさらの短い金髪が激しくばたついた。
「エリん家の前庭のほうが綺麗じゃないかい?」
エリと呼ばれた人間はプッと吹きだし、笑い始めた。その子供らしい笑い声は林に轟いた。
「・・・・・なんでそんなに笑うのさ」金髪の人間がふて腐れた。
「わ──わかんない」
エリはそれだけ言うとさらに笑い声をあげ、ついに草の上を大の字になってしまった。
「にしても・・・・」
「ん?」
「もう、戻れないのかな」エリの笑いはいつの間にか収まっていた。
「──それって、家に?それとも・・・・あっちの方に?」金髪の人間の目がエリに行った。
「どっちも。どっちもだよ。でもまぁ、ずっとここに居るしかないなら、」
「ないなら?」
「この世界で自分を極めるかな」エリは宙を見たまま言った。
「極める、か」
「ってかさ、今この状態で戻ったらサツに銃刀法違反とか言って逮捕されそうじゃね?」
「あたしが逮捕されるだけでエリは逮捕されなくない?」
「そうかな?神獣とペット出してる時点でOUTだと思うけど」
「それありえる」
「東京都なんとかなんとかなんとか地区にて大きな刃物を持った少女と得体の知れない
ものに囲まれた少女を発見、早急に現場に急行せよ!」
エリがトランシーバーを持っている振りをして渋い声で言った。
「で、そこで大勢の警官とタイマン?」金髪の人間がニヤニヤする。
「だろうね。もちろんサキのオーサムとエントラと火雨と氷雨で壊滅だろうけど」
「そんな事したらあたし達犯罪者になっちゃうじゃん」
「どうだろ?向こうの人たちは火雨氷雨なんて見ても信じるかどうか・・・・」
「そっちかよ」
サキと呼ばれた人間がそう言うと、二人は笑った。
その途端、金髪の人間は素早く立ち上がって槍を構えた。
「サキどうしたの?敵でも発見?」エリが途中で笑いを抑えた。
「うん、何か居るみたい───」
サキが途中で言葉を切り、槍を捨ててカバンから弓をもぎ取った。


シュンシュンシュンシュンッ


サキが猛烈な速さで矢を次々に放つ。


ドドドドッ!!


矢が数本突き刺さる音がしたかと思うと、木々の茂みからこちらに向かっていたエルフの
急所から鮮血が宙に迸り、仰向けに倒れた。エリの顔から笑みが消える。
「・・・・あざーっす!」
エリはサキ向かってそう会釈しながらリュックから赤い本を取り出し二冊地面に放り投げた。
カバンの蓋を閉めると本に両手を翳し、目を瞑りながら何と言っているか理解できない言葉を唱えた。
すると、二冊の本からエリより小さい槍を持った、黄緑色のマントを羽織った生き物が光と共に二匹
飛び出し、エリの下へするすると歩み寄った。
「ここも危ないね。早く行こっか」
「危ないも何もあんたがあんなに笑うからじゃん・・・」
「しょうがないじゃん面白すぎたんだもん───ごめんごめん、次誰かが襲ってきたら今度はあ
たしがサキを力強くこの拳でガッチリ守るからさぁ」辛苦の表情でエリが弁解する。
「はいはい、分かりましたよ」
「ってかエルフの血ぃ服に付かなくて良かったぁー・・」
「そっちの心配かよ」
二人はそう言い合いながら、エルフの亡骸と鮮血を残して林を去った。


それは、空がさっきと変わらず、真っ青なぐらい澄み切った昼間の出来事だった。

119 名前:名無しさん 投稿日:2006/03/12(日) 17:12:24 [ zWOkifZk ]
ぎゃぁぁあ
読み返してみたら思いっきり間違っているところが・・・・
もうスルー方面でお願いしますorz

120 名前:名無し物書き@赤石中 投稿日:2006/03/12(日) 21:48:54 [ W8BAcf5I ]
さぁ、大変長らくお待たせしました。
中編の投下です。
え、前後編の2部作じゃなかったのかって?
いざ書き始めたら㌧でもない長さになってしまったのです。
よって、3部作へと分割です。はい。長いです。本当です。実は推敲してません。


………ではどうぞ↓

121 名前:ウィッチ・ハント(中)1/13 投稿日:2006/03/12(日) 21:50:05 [ W8BAcf5I ]
/ハノブ高台望楼

 快適でも寝苦しくもないベッドに一晩横たわってから向かった先は例の望楼である。
 鉱山町ハノブを出てエルベルグ山脈の南側をぐるっと回って山登りした先にそれはあった。
「ここは簡単な天体の観測所も兼ねていてな。学者センセイやそのタマゴみたいな連中も
 ここでしばらく逗留することがあるそうだ」
「ふーん……」
「俺も何回か来たことがあるんだがな。あの夜空はわるくなかった。空気もうまいしな」
「え? ……天体観測なんてしたことあるんだ」
「いや。体作りにマラソンに来ただけだ。気付いたら夜になってしまっていたが」
「……ですよねー……」
 そんな会話をしながら1階の通路を4人で進む。この建物、1階は常駐の兵士の詰所、
2階から上は休憩室や訓練所などの生活空間その他が整ったスペース、地下は武器や魔道書
などが保管されている倉庫と区分けされているそうだ。観測所は別棟で、1階から渡り廊下を
通って往復できる形になっているらしい。
 ネクロマンサーが現れた階層は地下3階。いま私たちがいるこのフロアはまだ安全らしく、
慌ただしい空気や危険な臭いが漂っている気配はない。そう感じるのは私以外のメンバーも
同じなのか、みんなリラックスした様子で先頭のカリンに続いている。
 細く入り組んだ通路の角を何回か曲がったところで、別のフロアに続く階段が見えた。両端を
斧槍を持った兵士が守っているのも。

 彼らもこちらに気付くと背筋を伸ばして敬礼してきた。
「ご苦労様です。ギルド“昼飯時”の皆様ですね?」
「あぁ。党首カリン以下ローンダミス、ヒメ、フィージェの4人だ。書状は来ているな?」
 カリンは一歩前に出ると片方の兵士と何やら話しこみ始めてしまった。お互い顔見知りなのか、
事務的なああだこうだの手続きの中にもときおり談笑が交じっているのが見える。
 そちらの会話が一通り済んだのか、兵士はカリン越しにこちらを覗き込んで、
「既にネクロマンサーの勢力圏は地下1階、すぐそこまで広がってきています。ご武運を」
「行くぞ」
 カリンが促して私たちは階段に足をつけた。
 すれ違いざまに二人の兵士がこちらを向いて改めて敬礼をしてくれたのが見えた。
 私は視界の端で彼らを捉えると、右手の親指を軽く立てて横に突き出してみせた。
「なんのまじないだ?」
 カリンは不思議そうにそう訊ねてきた。

122 名前:ウィッチ・ハント(中)2/13 投稿日:2006/03/12(日) 21:50:54 [ W8BAcf5I ]
「ヒメちゃん。だいじょぶ?」
 相変わらずみーちゃん(ケルビー)の背中にちょこんと腰を落ち着けてとてちてとてちて、と
動くヒメに私は聞いてみた。
 著名な調教師を数多く輩出するロマ村出身の彼女は、ビーストテイマー特有の、“悪い気”を
感知するセンスに特に長けている。殺気や魔物が放つ瘴気はもちろんのこと、果ては人間の
悪意にすら敏感に反応してくる。ときに過剰なまでの反応を示す彼女のそういった才能は、こと
ダンジョン探索や潜入任務のときにはその効果を特に強く発揮する。
 そういうわけで、この場合の『大丈夫』とは健康がどうとかという意味合いではなく、敵の気配は
あるかないか、ということなのだ。
「は、はい……今のところは……一応は…………」
「そっか」
 ならとりあえずは大丈夫かとほっと一安心だ。みーちゃんもべつだん変わった様子はないし、
ヒメ本人もなにかの気配に怯えているとかいう感じでもない。
 それに私自身も……一応は、それなりの場数を踏んだ傭兵だ。ヒメのような敏感な反応こそ
できなくとも、漠然とした殺気や不安感くらいは感じ取ることができる。そのいわば“第六感”に
働きかけてくるものがないということは、まだこのあたりは安全であるということだろう。
「そうだクリフ。ちょっと前までおまえはシングル・クラッカーだったんだろう」
「え? まぁ、2ヶ月とちょっとくらい前まではね。いきなりナニ?」
「うむ……恥ずかしい話だが、うちのギルドにはそういった方面に長けているシーフがいないもんでな。
 ヒメもロンも単体戦力としてはたいしたもんだが、こういったダンジョンへのクラックというのは、な」
 悪い予感が背筋のあたりを駆けていった気がした……が、彼がそんな私の様子に気付いてくれる
ハズもない。だってカリン……果実男、だ。コイツはダメなのだ。
「よし。ここはおまえに先頭を譲ろう。唐突で悪いが、アテにしているからな」
 予感的中。
「はぁ!? ちょっ、そんな勝手な……」
「期待しているぞ」
 そう言って彼はヒメの後ろ、隊列の最後尾へとすたすた歩いていってしまった。ちっちっと舌を
鳴らしてケルビーとじゃれあい始めてしまったあたり、聞く耳持ちませーん……ということか。
 私は恨みの篭もった横殴りの視線をヒメとロンに向けるが――
「も、もうしわ………ぁりませ………」「おマカせ・しマス」
 私にとってはまことに迷惑な、返答しか聞くことができなかった。

123 名前:ウィッチ・ハント(中)3/13 投稿日:2006/03/12(日) 21:51:33 [ W8BAcf5I ]
/ハノブ高台望楼・BF2

 そもそもなぜ私がつい最近までシングル・クラッカーをやっているのか。まずはその理由から
お話することにしよう。
 ここゴドム共和国古都ブルンネンシュティグといえば大陸でも最大規模を誇る大都市である。
 その規模の大きさは、最近になってようやく独立した国家ビガプールや港町ブリッジヘッドなどの
比ではない。軍事力、経済力、所有地、人口。どれをとってみても、それは小国1つぶんくらいの
規模をはるかに凌駕しているといえる。いまブルンネンシュティグと戦争を起こして軍配を挙げる
ことができる勢力はおそらく、ない。その恐ろしいくらいの肥大化が今なお続いているというのだから
驚きである。
 世界の商売人が集まり、世界中の食べ物が、武器が、防具が手に入るこの古都。
 そんな場所に来さえすれば、なにか足取りがつかめるかと思っていた。
 レッドストーン。世界中の冒険家が、傭兵が、政治家が、魔法使いが追い求め、その中も誰もが
手に入れることのできなかった、言い伝えと呼ぶにはあまりにも有名すぎる伝説。
 救国の剣。不老不死の薬。別の天体。天上界の秘宝。ありとあらゆるウワサが常につきまとう
この赤い石を追い求め、私もまたブルンネンシュティグへと足を運んだのだ。
 自分なりに色々と情報収集をし、魔物を狩って彼らの身につけている武具を現金に換えて食い
扶持を稼ぎ、時には一般市民の頼みを引き受けて強大な魔物に立ち向かったりしていた――1人で。
 もちろん、独力による限界は感じていた。致命傷を受ければそれは即明日の食事に関わってくる
わけだし、時には深い傷を負って獲物を倒すことができないままむざむざと逃走して赤字一方
な日々を送ることもあった。
 自分の無力さが悔しいとその都度そう思っていた。しかし、心のどこかではまぁそんなものだろう
と諦めている自分がいたことも確かだ。どうせ戦死者・1で片付けられてしまう存在が自分なのだ。
そんな私が、レッドストーン? 傲慢だ。不遜極まりない。どうせ私では無理なのだ。どう訓練しても
腕力はつかないし、体力もない。小動物じみた敏捷さには若干の自身アリだが、それでもその方面の
プロには敵わない。ちょっと指先が器用で弓と槍が使えて、すばしっこい。それだけだ。
 そんな、あまりにも弱すぎる自分を見せるのが恥ずかしかった。嫌だった。煩わしい人間関係。
 友情? 信頼? 努力? 義理? 仲間?
 ――ばかばかしい。
 人との接触は最低限にとどめておきたかった。だから、1人でダンジョンに潜っていた。

124 名前:ウィッチ・ハント(中)4/13 投稿日:2006/03/12(日) 21:52:15 [ W8BAcf5I ]
 しかしひょんな事情からいまは『昼飯時』の一員として活動しているわけで、単独での
ダンジョン侵入を試みることは滅多になくなっていた。消滅しかけているとさえ言っていい。
 その既に錆び付いて久しいクラッカーとしての技術をいま、ここで披露しなければならない
なんてことになろうとは。唐突だ。ホントに。世の中こんなものか?
 ハノブ高台望楼地下2階はそれより上の階層と比べて明らかに様相が違っていた。
 まず、明かりがない。この辺り一帯がネクロマンサーの縄張りになる以前はこのフロアも
なんてことはない倉庫として活用されていたらしい。当然、そこを歩くには明かりが必要な
わけだが、備え付けの燭台やたいまつには一切かがり火が灯されていない。すれ違うついで
にそっと指先で触れてみると、冷たかった。もう長い間使用されていないのか、マッチを擦って
近づけてみてもまるで反応がない。
 そしてもう1つ気になる点は、この辺りで戦闘が起こったとみられる痕跡があちこちに残されて
いることだ。人が3人並んで通れる程度の細い通路は片側だけが崩されていたり、床、壁、天井と
実に様々な場所に人間のものと思われる血痕がついていたり。そしてそれについて気になる
ことがじつはもう1つ。
 激しい戦闘が行われていたにも関わらず、“死体が、残っていないのだ”。
 人間のものも、魔物のものも。対立2つの勢力がやりあえば必ずどちらかが勝利する。仮に
相打ちになったにせよ、どっちにぢろ死体はその場に放置されるハズだ。街を巡回して回る
清掃おばさんがこんな場所にまで来るとは思えない。理由は、あえて考えるまでもないだろう。
「それにしても、長いな」
 小声でそう言うカリンの目には錬金術師組合――アルケミストたちが作った特製暗視ゴーグル
が装着されている。
 そう、視界の保証がいっさいと言っていいほど無いこの暗闇の中でなぜ私たちが普段どおりに
歩くことができているか? コイツのおかげだったりする。カリンは当然のこと、ヒメも、私も、ロンも、
このゴーグル越しに辺りの景色を見ているのだ。少々値は張るし視界が狭くなるのが欠点で
あるが、故障も少なく性能もきわめて高水準。蛍の光くらいの明るさで真昼のような視界が確保
できるというこの性能がどの冒険者にも広く愛用されているイチバンの要因だろう。
「もうだいぶ長いあいだ曲がってない気がするぞ。俺の気のせいだといいんだがな。ヒメ、どうだ?」
「は、はぃ……」
 話を振られたヒメはその場にしゃがみ込むとケルビーになにやら小声で耳打ちした。
 みーちゃんはわん、としっぽを振って答えると今まで私たちが歩いてきた道をものすごいスピードで
引き返していく。

125 名前:ウィッチ・ハント(中)5/13 投稿日:2006/03/12(日) 21:52:51 [ W8BAcf5I ]
「クリフ、止まってくれ。みーちゃんが戻って来るのを待とう」
「りょ、了解」
 何をするのか知らないが、カリンとヒメになんらかの考えがあってのことだろう。素直に足を止める。
 心の中で28を数えたあたりでケルビーが戻って来た。このケルビー、パッと外見はただのペットに
しか見えないが、じつは力のあるごく一部の実力者しか呼び出すことのできない火の召喚獣なのだ。
人間のように道具に頼ってまで視界を確保する必要は無い。身体のつくり自体がそもそもペットとは
違うらしく、犬や猫で言う『目』が精霊では耳に相当する部位だったり……。詳しいことは知らないが。
 みーちゃんは、口に一振りの短剣をくわえて戻ってきていた。
 ヒメがきちんとなでなでしてあげた後に優しく短剣を受け取り、それをカリンに渡す。
「これは…………」
「なにそれ?」
 私も彼の肩越しにひょいと覗き込んで視る。反り返った刀身を持つ短刀だ。
 カリンは上から下までそれを舐めるようにじっくりと観察する。裏返したり、上下をひっくり返したり、
刀身を指でなぞったり、匂いを嗅いでみたり。
 彼は目を細めてその短剣を虚空にかざし、無駄に重々しく頷き、一言。
「やっぱり、よくわからんな」
「だと思った……」
「ロン、わかるか?」
 カリンから短刀を受け取った元天使のビショップはカリンと同じようにじっくりとその短刀を鑑定する。
 やがて、何か閃いたように顔を上げた彼は、腰の革袋に手を突っ込んで中から出したそれを振り撒いた。
「この粉……」
「ポータルクリスタルの…………粉末ですね…………」
 どこか特定の場所への片道切符の役割を果たすポータルクリスタル。有名どころでは蟲の巣窟の
隠された通路や旧レッドアイ研究所の監査官ファイガンの研究所への入り口か。このポータルクリスタル
の性質は長い間謎のままであったが、つい最近になってようやくおおよその原理がスマグの研究者達の
手によって明らかになってきた。
 それのいわば応用品の試作型がこの粉末だ。

126 名前:ウィッチ・ハント(中)6/13 投稿日:2006/03/12(日) 21:53:25 [ W8BAcf5I ]
 まだまだオリジナルのクリスタルにはその力は及ばないが、それでも似たようなマネは
できるらしい。即ち、どこか別の場所への一方通行が不安定ながら可能なのだ。
 未だ実験段階の品で量産もされていないレア物だ。なぜロンがそれを持っているのかは
いまは置いておいて、彼はなにをするつもりなのか。
 ロンはその粉末を円形に振り撒き、こんどは四方の床や壁にもおおまかに撒いていく。
 それが済んだら今度は短刀のほうに粉末をふんだんに塗りつけると、
「離れテ」
 と距離を取らせた。拒む理由も無く少し後ろに下がる。
 カリンの前方5メートルくらいにロンがいる。そのカリンの後ろに私とヒメが隠れるような形だ。
 ロンは自ら振り撒いた粉末で作った円形に立ち、なにやらボソボソと呟き始める。
『天tiノmE神が我RA二ユRうsIをコう』
 ところどころの言葉のアクセントがちょっと共通語と似ている。それがビショップ特有の
聖なるミサの言葉であることに気付かない私ではない。
 彼はそのまま小声で詠唱を続け……何の前触れもなく、短剣を自らの手の平に突き刺した。
「っ………う」
 そう呻いたのはロンではない。カリンでもなければ、ヒメでもなかった。
 私の声だった。
 だって、あの短刀はロンの手の平から手の甲にかけてを完璧に貫通しているではないか。
 血もドバドバ出ているし、痛いどころで済む問題ではないのではないか、コレは?
 しかし、肝心のロンはちょっと眉根をひそめてみせただけで別段痛そうには見えない。
 そして彼は、短刀を引き抜く。いわば“栓”の役割を果たしていた短刀が抜かれたことで
出血はさらにひどくなる。もうロンの左手の手首から先は血だるま状態だ。
 それにも構わず、彼はその左腕を傷口のある手の平から地面に叩きつけた。
 するとどうだろう。ロンが振り撒いたポータルクリスタルの粉末がにわかに発光を始め、ついには
宙に浮く光り輝くひし形へと変化していったではないか。
 それはほんとうに、巨大で真っ黒なひし形に見えた。あんなに接地面積が狭いのにどうして倒壊
してしまわないのだろう。近付くと、さらに驚かされた。

127 名前:ウィッチ・ハント(中)7/13 投稿日:2006/03/12(日) 21:53:50 [ W8BAcf5I ]
「うむ。タウンポータルの応用形か」
 薄い。まるで紙のようだ。ひし形に見えるのではない。それは事実、ひし形以外の何物でも
なかった。
「ここをくぐればいいんだな?」
「はイ」
「え。……コレくぐるの?」
「おかしいか?」
「絶対入れないってこれ」
 私はひし形の裏側に回ってみたが、やはりひし形だ。真横からだと直線に見える。
 外界でこれをくぐれば別の場所に行けるヨと言われても、コイツ気が狂ってるんじゃないかって
思われるに違いない。
 表面が湖面に波打つ波紋のように揺れているその様子はいかにも、“異次元への扉”といった風情だが……。
「まぁ騙されたと思って入ってみることだ。どうせここで思い悩んでいても状況は変わらん」
「それはそうだけどサ……」
「先に行かせてもらうぞ」
 彼はひし形の中へと消えた。そのポータルを開いたロンがそれに続き、そうなってくると条件反射的に
ヒメや私も続く。
 部隊の先導を私に任せておいてイザとなったらコイツは……。
 それに続く愚痴不満を口の中に押し込んでおくのには、大変な労力を費やした。

128 名前:ウィッチ・ハント(中)8/13 投稿日:2006/03/12(日) 21:54:21 [ W8BAcf5I ]
/ハノブ高台望楼・BF3

「…………ん」
 固く冷たい石床の感触に当てられて私は身を起こした。
 どのくらい気を失っていたのだろうか。5秒か、10秒か。20秒とか30秒なんてことはないだろう。
 見知らぬ場所だった。私はたしか、ロンが開いた一方通行用のポータルを仲間といっしょに
くぐり――その後だ。
 で、辿り付いた先が、ここか。軽くぐるっと見回したところ、けっこう大きい部屋のようだ。
 正方形の角っちょのあたりに私がいて、対角線を伸ばした先にアーチのかかった別の部屋に
続く通路が見える。殺風景な部屋で、ここには私以外に誰もいないし何もない。
 ……ちょっと待った。
 “誰も”、“いない”?
「ヒメ?」
 返答なし。
「ロン?」
 応答なし。
「カリン?」
 無反応。
「ちょっと……こんなときにふざけてんの? 怒るよ?」
 今度は声を荒げて叫んでみる。しかし、仲間からの返事は、ない。まぁヒメの場合ならあまりの
小声すぎて聞き取れなかったというパターンもあるだろうが……。
「ヒメ、ロン、カリン! 返事は!?」
 真面目にそう言ってみてもやはり仲間の声はない。
 それぞれが別々の場所に飛ばされたのか。ロンがタウンポータルの触媒に使った粉末は試作品の
試作品、不安定なシロモノだ。あの短剣がどういう役割を果たしたのかはわからないが……。元々
初めて来る場所だし、自身の記憶を頼りに使う追放天使のタウンポータルを粗く使った代償がこれらしい。
 まぁ、別々の場所に飛ばされたということは必ずどこかに他のみんなはいる。
 そう思うことにした。そうでも思わなければやってられない。
 立ち上がり、ちゃっちゃと身体の点検を行う。
 腕。手首。指オッケ。骨も大丈夫。臓器に異常なし。脳の変調もとくにみられない。足も問題なし。
「さて、迷子のみなさんの捜索に行きましょうか」
 とりあえずアーチをくぐって先のほうの細い通路へ。典型的なT字路だ。
 左か?
「いや、ここは右でいこう」
 困ったときは利き腕の方向だ。

129 名前:ウィッチ・ハント(中)9/13 投稿日:2006/03/12(日) 21:55:00 [ W8BAcf5I ]
 それ以外に論理的な根拠はない。
 腰に吊った弓を左手に持ち、右手は背中の矢筒にかけていつでも弓を引けるようにする。
 背に壁をつけ、首だけを出してばっと通路の奥を見る。
 いた。
 両手にぐにゃぐにゃに歪んだ曲刀を持つガイコツが、1匹。耐久性のほうはともかくとして、
あの刃で斬られたらかなり痛そうだ。傷も治りにくいだろう。確実に痕も残る。
 ――思えば、純粋な1対1の斬り合いなんて。長いこと経験していない気がする。
 『昼飯時』のみんなと一緒にいたおかげだ。集団戦は集団戦で良いところもおもしろいところも
あるのだが、やはり1人でこういったサバイバルを行うのもいい。ほどよい緊張感と身体中を
駆け巡るこの高揚感は悪くない。
 敵の力量がどれほどのものかわからない以上、低く見積もるのは危険だ。しかし、相手の
得物は長さ1メートルくらいの中剣だ。斬られれば痛そうだし、両手に1本ずつも持っている。
完全な接近戦仕様だ。弓を使って遠距離から封殺できれば。
 ガイコツと私の距離は20メートルほど。敵の剣の間合いに入ってしまう前に3発は撃てそうだ。
 壁から左半身のみを出し、弓を構える。
「Fu――!」
 気合と共に1発目を撃つ。弦を引き、狙いを定めて……射る。
 頭部を狙った。相手が骨のカタマリなので人間と同様の効果が得られるかはわからない。
 攻撃の成否を見もせずに2発目。ぎりぎり。木製の弓が鈍い音を立ててしなるのがわかる。
 射る。
 と、そこでようやく1発目の矢があのガイコツにどんな傷を負わせたのかがわかった。
 矢は狙い通りに頭部に突き刺さり、勢いを失わずにピアシングした。
 ガイコツの首から上もろとも。
「AAAHHHHHH…………」
 気味の悪い呻き声を上げながらバラバラと音を立ててその場に崩れ落ちるガイコツ兵士。
 なんだ、意外と……ヤワい?
 それとも、私が強いのかな? うはは。

130 名前:ウィッチ・ハント(中)10/13 投稿日:2006/03/12(日) 21:55:34 [ W8BAcf5I ]
 しかし、私はその認識が完全に私の勘違いであることをすぐに思い知らされた。
 具体的には、後者のほうが。
 油断しきって弓を下ろした私の背後から近寄ってくるガイコツがいたのだ。
 それに気付いて振り向きざまに後ろに跳躍したときには、すでに背中に灼熱の痛みを
負ってしまっていた。
「……ッ……」
 見ると、いま倒したガイコツと同じ見た目のガイコツが剣を構えて突っ立っているのが見えた。
 その口は、まるでこちらをあざけるようにケタケタと揺れている。
「このっ……」
 ちょっと頭にきた。弓はとりあえずそのへんに放って、腰の後ろにぶら下げた槍をつかむ。
 こちらの闘志に反応したわけではあるまいが、ガイコツのほうも両手の剣を構えて戦闘の
体勢を取った。持っている得物も、さっきのガイコツとまったくいっしょだ。
 どちらが先に動いただろう。たぶんほとんど同時だったに違いない。
「うらァっ!」
 私の持つフィルルムは槍としてはかなり短めの1.2メートル。刃は穂先にしかつけられていない。
 元々力のない私だ。パイクやハルヴァードのような重量級武器は残念ながら扱えない。その
代わり、こういった小型の槍を器用に振り回してかく乱する戦法なら任せろ。
 もっとも、通路が細いので実際に振り回すことはできないのだが……。
 純粋な“突き”のみの勝負だ。
 そして、軍配が上がったのは……なんとガイコツ側だった。
 素早く正確に突き出したハズのフィルルムの先端は、『×』印に交差された曲刀の交差点で
見事なまでに受け止められていた。コイツ、本当にアンデッドか?
 そう色々考える余裕は残念ながらいまはない。槍を弾いたガイコツが双剣を巧みに振り回して
私に向かってきたからだ。不自然な体勢で攻撃を中断された私は若干体勢を崩し、攻撃を
避けるのに必死で反撃に出られない。
 それに、さっき斬られた背中の傷が痛むのだ。

131 名前:ウィッチ・ハント(中)11/13 投稿日:2006/03/12(日) 21:56:07 [ W8BAcf5I ]
 たぶん、直撃ではないだろう。
 あの波打つ刀身を持つ剣による直撃をもらってこの程度の痛みで済むワケがない。
「こいつッ……」
 このまま避けているばかりでは勝てない。
 そう思い、奴の右手による斬り降ろしを靴の一番堅いところ、踵のあたりで蹴り上げた。
 続いて左手による突きを、身体を捻って最低限の動作で避ける。
 明らかに不自然な体勢だ。自分でもそれは自覚している。
 しかし、このおかげでガイコツ側にも若干ながら隙が生まれた。単なる武道家のマネごと
なのだが、奴の一瞬の狼狽を誘うことはできたらしい。
 その隙を見逃すほどノロマな私ではない。素早くガイコツの懐に入り込み、剥き出しの
鎖骨をつかんで引きずり倒す。
 うつ伏せに倒れたガイコツの無防備な喉(のあたりの骨)を――ざっくり。
「――Ga……」
 彼は完全に絶命した。
 念のため肘、肩、膝、股関節を槍の先端でバラしておく。万が一起き上がりでもされたら
大変だ。死体を焼却するのがこういったアンデッドに対する最も有効な事後処理法なのだが、
マッチ何本かでオイルもないのでは少々無理がある。
 さっき捨てた弓を拾って腰に吊るす。いまのような急な接近戦にいつでも対応できるよう
弓でなく槍を常用することにした。背中の傷は……我慢しよう。
 しかしこれは、由々しき事態かもしれない。昔の、1人でダンジョン侵入をしていた頃の私は
この程度の敵にてこずりはしなかった。少なくとも傷を負わされるようなことは。よほどクラッカー
としての私の技量が鈍り、低下している証拠といえる。
 少しはソロ活動の時間も取らなくては。手痛い教訓を意外なところでもらうことになってしまった。

132 名前:ウィッチ・ハント(中)12/13 投稿日:2006/03/12(日) 21:56:30 [ W8BAcf5I ]
 それから先も何体かのガイコツにでくわしはしたものの、急襲に遭遇することはなかった。
 遠距離からの射撃で始末できるものばかり。
 そして細い通路を行ったり来たりしているうちに、大部屋に辿り着いた。
 正確には、大部屋に続いているだろう、巨大な扉に。
 どれくらいの大きさがあろうか。軽く10メートルくらいはあるだろう巨大な鉄扉だ。
 おそらく、私が生涯見たなかでこれが扉としてはおそらく最大の大きさを誇るだろう……。
 それくらい大きい。もうでかいでかい。もしかしてこれは壁の一部なんじゃないか? と思える
くらいでかい。
 無論、そのくらいの大きさなので押して開けることはできないだろう。実際押してみても、
やはりというか当然というか、ビクともしない。押してダメなら引いてみろというが、取っ手なんて
ないし。ノックしても開けてくれそうにはない。
 他の場所に向かうか? 何やら危険な匂いがするし、他の仲間と合流してから行ったほうが……。
 という私の考えを打ち砕く夢のような事態が起きた。
 なんと、扉のほうが勝手に開いてきたのだ。ズズズ、という轟音と共に中央から左右にわかれて
いくように鋼鉄の扉はあっけなくその口を開けた。拍子抜けだ。だが、こういった事態こそがダンジョン
であるともいえる。
 ――進もう。槍を構えて一歩を踏み出す。床に罠が仕掛けられていることだってある。慎重に
慎重を重ねて動く者こそがダンジョンでは生存することができるのだ。
 しかし、そういった私の考えをまたも打ち砕く素敵な事件がその部屋では起きていた。
 その部屋はドーム状の天井を持つ、いわば巨大なホールだった(ビショップの使う鈍器ではない)。
 異質な空気の漂うその部屋の中央にそびえ立つのは……全長、これまた5メートルはあろうかという
巨大な人間……に似た生物。
 ナマで見るのは初めてだ。そして、できれば2度目は来ないでほしい。
 ――人は、それをネクロマンサーと呼ぶ。
 てっきり、陰気な感じで、魔道士っぽくフードをかぶった老人のような風采を想像していたのだが。
 そして、巨大なネクロマンサーの足元で必死になって魔兵を率いて戦っている少女が1人いた。

133 名前:ウィッチ・ハント(中)13/13 投稿日:2006/03/12(日) 21:57:39 [ W8BAcf5I ]
 『昼飯時』最年少と思われる召喚士であり調教術士。
「――ヒメェっ!」
 その姿を見るや私は駆け出した。だってヒメときたら、いつも目深にかぶっているフードは
ぼろぼろに破け、自身も身体中に大なり小なりさまざまな傷を負っている。召喚獣のヘッジャーと
スウェルファーは戦闘不能。残っているのはみーちゃん1匹のみ。
 いますぐ助太刀してやりたいところだが、いかんせん距離がありすぎる。大まかな目測で
私とヒメ及びネクロマンサーとの距離は100メートル。全力疾走で軽く10秒以上はかかる距離だ。
 ヒメはちょこまかと動いてネクロマンサーになんとか踏み潰されまいと立ち回っている。ケルビーは
その主人の危機をなんとか助けよう支援しようと、爪、牙、尻尾。全身をフルに使って駆け回り、
ネクロマンサーの左足首のあたりに必死に噛み付いている。
 しかしながら、あの巨体に犬くらいの大きさの攻撃が果たして効いているのか。
 例えるなら、人間のつまさきにアリが這ったところで人は死ぬのか。死なないだろう。
 そしてあのネクロマンサーはそのヒメたちの姿を見て、楽しんでいる。
 異形の表情など読み取れるハズもないが、いまの私には少なくともそう見えた。
 しかし、彼本人もそろそろこの遊びに飽きてきたのだろう。何か呪文を唱え始めた。
『浄炎――――――気化syyyyyyyyyyyOh』
 魔法使いの使う魔法の詠唱特有の発音だったので何が言いたいのか、およそどのような魔法が
放たれるのかは私には想像がつかない。
 使い終わった道具は……捨てられるだけ。
「がああっ……」
 無我夢中だった。夢中で走った。私が他人のためにここまで必死になれるとは。
 ネクロマンサーの……人間でいう右手の人差し指のあたりに大気が収束していくのがわかる。
 あと2秒。ああ、ネクロ。お願いだ。あと2秒だけ待ってほしい。2秒だけ待ってくれれば、あとで
魔法でも爆発でも花火でもなんでもやればいい。だが、あと2秒。
 私の中でその2秒が引き伸ばされていくのがわかる。私にとって、その2秒は永遠だった。




                                                                      〜後編に続く!〜

134 名前:名無し物書き@赤石中 投稿日:2006/03/12(日) 22:02:20 [ W8BAcf5I ]
○簡単なキャラクター紹介

クラレット=フィージェ(Lv84ランサー/アーチャー)
槍と弓を巧みに使いこなす傭兵。ギルド『昼飯時』のメンバー。愛称クリフ。
何故かお金が貯まらない貧乏クラッカー。

ローンダミス=ディザーテイズ=ル=セルバンテス(Lv121ビショップ/追放天使)
かつて天界を追放された天使にして敬虔なビショップ。愛称ロン。
ギルドに必ず1人はいてほしい「いいビショップ」。無口。
基本的にいい人だが追放天使の不安定な魔力はパーティメンバーに何らかの被害を与えることも。

ワルツ(Lv111ウィザード)
ひたすらクリフに対するアプローチをかけまくる変態魔術師。普段の素行はアレだが実は有能。
ギルドに必ず1人はいるセクハラウィザード。
今回出番がなかった寂しい方。きっとどこかで格好良く登場できる機会を狙っているハズ。

カリン(Lv133戦士/剣士)
ギルド『昼飯時』の党首。普段は馬鹿っぽいがたまに名案を思いつく。
ギルドに必ず1人はいる『勇者様』。
パーティメンバーの迷惑の原因を作るナイスなギルドマスター。

ヒメ=K=ユウマ(Lv75ビーストテイマー/サマナー)
無言テイマ。召喚獣とペットをこよなく愛するいい子。実は折檻のプロ。
ギルドに1人はいてほしい「癒し系」テイマ。
ケルビーをみーちゃんと呼んで溺愛するその姿はすこし微笑ましい。

135 名前:名無し物書き@赤石中 投稿日:2006/03/12(日) 22:16:57 [ W8BAcf5I ]
マズいです。他の方々へのレスに回していたら本格的に量が(後略


>>ドリーム氏
え。ここってエロっておっけ(…略
過激なまでの“いいようにされろ”発言。ウチのワルツでもこんな台詞言いません。
斬新な主人公ぶりであります。レイドと聞くとホラ、ランサーのサプライジング……が思い浮かぶのは自分だけでしょうか。

>>黄鯖雑魚氏
まぁなんだ、おそらくこのファミリーの行く末には山と谷しか待ち受けてないでしょうねw
ちなみに、自分が書くストーリーに登場する人物はたいてい家族が既に死んでいる場合がほとんどです。

>>リ・クロス氏
や、やべぇ!『英霊騎士団』って自分が考えてた『幽鬼隊』とかなりセンスが被っ(…以下略
干し肉を食すスコール。い、意外とワイルドだ。アウトドア派?

>>FAT氏
「溺れてんじゃねーの?」のあまりにもそれなりな対応に惚れました。

>>南東方不敗
何やら天使ちっくな名前のキャラがいっぱいです。なんかメインクエストで通せそうな展開です。
そしてここから物語は核心へとッ!くーっ、燃える展開だぜぇ!


一部返し忘れがあったらごめんなさいorz
……SSコンテストぉ……。完結編は20レスぶんとかに及んじゃいそうです。

136 名前:魔道書を捨てたWIZ 投稿日:2006/03/14(火) 21:45:14 [ e2OBf3xs ]
しばらく見てないので亀感想かもしれませんが…
主人公が最後に時のダンジョンに転送された小説を書かれた方、非常に楽しく読ませてもらいました。
南東方不勝さん、たびたび自作をまとめて非常に読みやすく、感謝しています。
で、悪乗り(?)して書いてみたものをUPして見ます。
---------------------------------------------------------------
〜ログアウト〜
プレイヤーたちは次々とログアウトしていく。
その後の様子を描いてみました。

〜ギル戦後〜
WIZ「あー終わった終わった。今日もマスター手荒かったな。」
自慢のロングヘアーも縮れている。メテオを至近距離に放ったらしい。
戦士「お前はまだいいよ。俺なんかディレイしすぎで肩がいてぇ」
この戦士、鎧の下にはなんと、湿布を貼っていた。
WIZ「うわ…お前そんなんつけてんのか……おっさんくさいぞ…」
BIS「おっさんって言わないでほしいな、まだ20代だ。」
WIZ「おや、失礼。そうは見えなかったもので。」
BIS「皮肉を言うな、薬物中毒。」
(WIZは荷物に残っていた「青POT」を飲み込んだ)
WIZ「なにをーこにょふけがおーあひゃあひゃ」
どうやら、使用しすぎで副作用が強烈に出る体質になったらしい。
BIS「勝手にわめいてろ…っと、これ、新しく仕入れた薬物だが、飲むか?」
そういって、荷物袋から青いビンを取り出す。
WIZ「お…おぉ…よこせ…(ごくごく)……ぐは…」
倒れるWIZ。ビンには「POTION」の文字が。
戦士「あーあ…勘違いで一人犠牲者が…ま、いいか…」
〜唐辛子〜
少女「あら…このコ、ご飯食べないわ…唐辛子あげすぎたかしら?
   これだから唐辛子使わないでって言ってるのに…マスターったら…」
姫 「それでしたら、これを使ってみてはいかがです?」
そういい、なにやら怪しげなにおいのするビンをだす。
少女「それは…今話題のアレ?やめておくわ。病気になったら困るじゃない。」
姫 「せっかくの…好意でしたのに…ぐすん…ぐすん…」
少女「うそ泣きでしょ。だまされないわよ。」
姫 「………ばたっ…」
少女「ふぁみ、ご飯よー」 (もしゃもしゃもしゃ…)
〜転売人〜
天使「あー今日もまた、危ない橋を渡り終えました…
   儲けはいいですが、すべてマスターのものですからね…
   いい加減、危ない仕事はやめてもらいたいものです…」
ぼやきながら食事を取ろうと青い鯨亭に入る天使。
槍子「あっ!私が同情して格安で売ってあげた天井を
   高額転売しやがった天使!」
ウェイトレスをして、食費を稼いでいるランサー。
彼女は天井を10Mでこの天使に売ったが、天使は12Mで転売したのだった。
天使「あー…それはもう、仕方の無いことです…
   安く仕入れ、高く売る。この店もそうしてあなたの給料を出しているのですから…」
いつも言われるため、言い訳は慣れている天使。
しかし、良心と、翼の傷はこの台詞を言うたびに痛み、傷つき、彼を蝕んでいく。
もう、彼は天界へとは戻れない。

137 名前:南東方不勝 投稿日:2006/03/14(火) 23:40:21 [ gowBXNz6 ]
>>黄鯖雑魚さん
子ども達にいい感じに呆れられているクーファンさんですが、なにかちょっと悲しい過去の持ち主っぽいですね。
さて、この墓の中にいる人にいつかスポットライトが照らされるのでしょうか/

>>ウォルガングさん
ん〜、渋い主人公ですなぁ。
オカー三角州って一度も行った事無いんですよねぇw
今度行ってみようかと思います。

>>118さん
こういう軽いノリのキャラは好きですよ^^
また、気が向いたら投下してみてください。お待ちしてます。

>>名無し物書き@赤石中さん
ずぅーっとソロばっかりしてると、たまにPT狩りが恋しくなる時ってありますよねぇ…。
さて、クリフ嬢は無事にヒメ嬢を助けることができるのでしょうか?
それとも満を持して、変態(ry が大活躍するのか?
後編をお待ちしています。

>>魔道書を捨てたWIZさん
巷で噂の某回復薬…。兄の話によれば、「炭酸の抜けきったオロナミンC」と想像しておけば間違いは無いとか何とか…^^;
>たびたび自作……
そういってもらえると、書き手としても嬉しいです^^

138 名前:南東方不勝 投稿日:2006/03/15(水) 01:06:44 [ gowBXNz6 ]
>>114
応接室の奥、ジャギドが座っていた椅子の後ろにあった扉が開かれる。
扉の中から出てきたのは一人の天使、その背に両翼は健在。そう、彼は追放天使ではない。
「皆、久しぶりだね。相変わらず君たちの声(歌)は、聞いていて心が暖まるよ」
人懐っこい笑みを浮かべ、天使が部屋の中にいる人外達に微笑みかける。
「タブリス…、吾らが終末なる者よ。うぬは地下聖堂で何をしておった?」
人狼が天使に問いかける。
「うん、ちょっとRED STONE(アダム)の様子が不安定でね。間に合わせだけど、鎮静結界を張ってきたんだ」
天使がやれやれと言わんばかりに肩をすくめる。
「不安定って…。もしかしてアダムがRED STONE(雛)に侵食されているの?それとも、その逆?」
死霊術師が深刻そうな面持ちで、天使を問い詰める。
「どちらも正解であり、不正解だよ、アルミサエル。双方の力が拮抗しているからこそ、今のRED STONEは不安定なんだ」
そしてそのことが君達を呼び寄せた理由だよ、天使の声は静かに室内に響いた。

始原第1位魔アダム、彼は正規の生命ではない。尤もそれは、彼を作り出した技術者(天使)達の弁である。
それを語るには神代の時代、まだ地上に生命は無く天上にしか文明が無かった時のまで遡る。
ある時、一人の天使がある壮大な計画を立案した。何も無い地上に文明を築かせよう、文明は競い合ってこそ成長する。
天上の更なる発展のために、我等が子等にして兄弟を生み出そう。独力で発展の限りを尽くした天使達は、すぐに飛びついた。
かくして、計画は実行される。地上は瞬く間に緑に溢れ、様々な生物が歩き回っていた。
だが第3段階、「知的生命」創造において計画史上始めての失敗作が生まれた。
それは混沌なるモノだった。
理性を得るということはそれと同時に、「善」と「悪」を生み出すこと同意である。
無論、天使達もそのことは知っていた。「悪」を知りながらそれに溺れず、「善」を遂行できる生命…。
しかし、目の前の存在はあまりにも理想からかけ離れていた。
「善」を知りながらも、「悪」としてか行動できない。いや、其れは其れなりに「善」を行おうとしたのだろう。
されど其れは過ち、理想とは程遠い混沌なるモノ、処分(抹殺)されるのは日の目を見るより明らかだった。
だが、そんな其れにも救いはあった。
「行こう。君はここで消えていく可能性じゃない。失敗だからって、大人しく消される必要は無いんだよ」
その救い主…タブリスは彼の存在を認めてくれた。「今日から、君の名前はアダム。新たな可能性の始まりさ」
かくて二つの存在は、天上より地上に堕り立つ。
アダムは混沌(あらゆる可能性の集合体)なるモノ、それ故に不純なる生命を生み出すことができ、不完全ながら命を同化させることができた。
これ即ち、後の天使により抹消された始原たる魔の始まり。

「ボクちゃん達で、本格的な鎮静結界を設置するつもりだね。タブ兄は」
タブリスの意図を察してサキエルが声を上げる。
「あぁその通りだよ、サキエル。ここにいる6人の内、3人は僕と一緒に結界陣作成、2人は媒介となる再生核の配置を…」
「待たれよタブリス、それだと1人ほどあまりがでるぞ?」
タブリスの言葉を遮りシャムシェルが発言する。
「慌てることはないよ、シャムシェル。その余った1人にはブリッジヘッドに行ってもらうんだよ」
「ブリッジヘッド…、人間共を捕獲して再生核でも量産するつもりかのう。タブリス?」
ラミエルが今一解せんと言わんばかりに声を上げる。
「違うよラミエル。『有得ざる』希望が近々この街にやって来るんだよ」
「………、ゴーファの血脈か」
ゼルエルが唸るように言葉を紡ぐ。
「うん。あれが僕たちの存在に気づけば十中八九、良くて計画は頓挫。最悪、永久的に実行不能になるだろうね」
「ならばその『希望』の破壊、私が承りましょうぞ」
そういうと同時にガギエルは、座っていた椅子から立ち上がる。
「私はこの7人の中では、最も瘴気のキャパシティが小さいですからな。結界作成には、手も足も出ません
 適材適所とはずばりこのことですな」
室内に誰も彼を止めるものはいない。
「それじゃ、お願いするわ。ガギエル」
「わらわもお主を信じよう、しくじりは許さんぞえ」
「あぁでもガギさん、もうちょっと遅れて行った方が面白いと思うお」
「吉報、期待している」
「頼んだぞ、ガギエルよ」
「悪いね、ガギエル。君だってここ(神聖都市)でやることがあるだろうに」
6者6様の見送りを背に
「お気になさらずに、皆さん。では、行って来ますかな」ガギエルは部屋を後にした。

139 名前:名無しさん 投稿日:2006/03/18(土) 00:29:01 [ A22EieZU ]
小説書こうと思ってたが中止したので
NPCやらメインクエから集めた情報をまとめた資料だけ参考のため公開。
ほぼフランデル大陸の史実通りだと思う。


ゴドム共和国中等学校歴史教科書より抜粋、『旧ブルン暦、フランデル大陸興亡史』。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
4423年 「赤き空の日」 RED STONE降臨
4556年 追放天使の流した、RED STONEの噂。
       その真相調査を開始したエリプト帝国が悪魔の襲撃により崩壊。
4658年 帝国崩壊後、エリプト帝国の元傭兵等を集め、
       ブルン王室が王室直轄機関『レッドアイ』を設立。
4805年 『レッドアイ』会長失踪。ロムストグバイルの書記にて詳細判明。※資料1
       同年、ブルン国王アラドン失踪。
4807年 『レッドアイ』RED STONEを遂に発見。
       しかし同年、バルヘリ・シュトラディヴァディ主導による『シュトラディヴァディ家の反乱』
       が勃発。ブルン王国は崩壊。
4828年 共和国主義を唱えるバルヘリに対し、自らの地位を危惧した貴族らがバルヘリの母方
       ストラウム主導による再反乱を起こす。
       しかし戦況の不味により貴族らはビガプールに亡命、トラウザーを王に立て王国
       ナクリエマを設立。混乱のまま戦争は終結。
       バルヘリは古都ブルンネンシュティグに残り、ゴドム共和国を設立する。議会政治開始。
4850年 ナクリエマ王権を息子バルンロプトへ移しバルヘリ隠居、後年死亡。
4854年 バルンロプトは貴族の政治介入を疎んじ、貴族に対し『絶対的弾圧』を行う。
4856年 貴族は絶対的弾圧に対しバルンロプトの王権解除を望み、バルンロプトの息子が王にな
       る様企む。
       しかしバルンロプトを恐れた一部の貴族がそれを暴露し、企んだ貴族は反乱罪で処刑、
       当の息子は王にならないよう、バルンロプトにより幽閉される。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
4931年 現代。レッドアイ狂信者によるスマグ襲撃事件発生。狂信者はスマグ地下道を占拠。
       現ナクリエマ国王タートクラフト・カイザー・ストラウスがビックアイに傭兵を送り込み、
       謎の警戒態勢に入る。


※資料1 レッドアイ会長の失踪直前に記された、『補佐官スロムトグバイルの手記』 
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「汝らの求めるREDSTONEは、汝らが思うような至高の宝ではない。
天空から複数略奪された、盗品の1つに過ぎぬのだ。
だからもしや、汝はあの宝をその手に入れ、富と名誉をも掴む事になるやも知れぬ。
だが忘るな!あれは至高の宝ではないのだ。それを忘れ暴走すれば、必ず汝を破滅に引導するだろう。
―――あの、ブルン終末の王と、●●●●●●●。」

 ブルン暦4805年12月8日 王室直轄機関『レッドアイ』会長 アイノ・ガスピル

 口頭筆記 会長補佐官スロムトグバイル
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
●部分は黒で塗りつぶされている。

140 名前:名無しさん 投稿日:2006/03/18(土) 00:33:10 [ A22EieZU ]

※追記
 
年代の一部はNPCの発言より創作
そのほか、『補佐官スロムトグバイルの手記』は公式より推敲

141 名前:ウォルガング 投稿日:2006/03/18(土) 15:00:22 [ sfJddLfY ]
「1話」>>115

「2話」
あれ?
いつもの場所に剣士が座っている。
飛ばされた低Lvかな?と思ったが鎧からして違うみたいだ。
今までここで人なんてみたことが無かったので声をかけてみた。
「何をしてるんですか?」
そう尋ねると、剣士は
「何を〜と言われると、困っちゃいますねw」
「リアルにも似たような場所があるんです、それでここに座っているとなぜか落ちつくので。」
どうやら俺と同じらしい。とりあえず
「同じですね、自分もこの場所好きなんですよ。」
と、返した。

それから、予約がくるまで色々と話をした。
「リアルでも似たような場所」には触れないように。

しばらく話をしているうちに予約がきたので、友録をしてその場を去った。

それから、たまにその場所で会うようになった。
彼とはLvが近いので狩場でも会うようになった。
さらにはリアルの歳も近いみたいだ。
彼も俺もギルドに入ってなかったので、一緒にギルドを作ったりもした。
今まで友達と言えるような人が居なかったので、とても楽しかった。








しかし、そんな楽しい日々はいつまでも続かなかった・・・・・・
(続)

142 名前:南東方不勝 投稿日:2006/03/21(火) 22:43:00 [ gowBXNz6 ]
当初の予定から遅れること2週間、ようやく自動車学校を卒業できた南東です。
でも、まだ免許センターでの学科が残ってるんですよねぇ(´・ω・`)

>>139さん
おぉ、現時点で分かる限りのフランデル大陸の正史(公式設定)ですか!
これは文字を書くときに貴重な資料になりますね、GJです!
あと、気が向いたら是非その資料を使って小説を書いてみてください。
自分も最初は設定だけを投下して、そこから書き始めたくちですから。

>>ウォルガングさん
孤独な主人公に、同じような境遇のプレイヤーとの出会いが…。
さて、楽しい日々を過ごしていた彼に訪れる事態とは?

143 名前:南東方不勝 投稿日:2006/03/22(水) 00:27:38 [ gowBXNz6 ]
>>138
夕暮れ時という時間にも関わらず、街のいたる所から聞こえる喧騒は未だに衰えてはいなかった。
やれ木材が足りないだの、その部品は別の場所に使う奴だの、依頼した冒険者が定刻に戻ってこないだの、港町らしい活気が溢れんばかりだ。
「噂に名高いブリッジヘッドの豊漁祭だが…、準備の時点で祭りと変わらねぇな」
間違ったパーツを持ってきた現場の監督に怒鳴りつけられ項垂れている見習いの後姿を見ながら、正直な感想を漏らす。
「仕方が無いですよ。祭りの時期には遠方からの観光客が多いですから、メインが豪華になればそれに比例して経済効果が得られますし」
未だやむことは無い喧騒を楽しそうに聞きながら、ゲイルが俺にここまでの準備をする理由を説明する。
まぁ、港湾事業以外で大量に金が手に入る機会があるのならば、最大限に利用したいのは当然か。
メインストリートをしばらく歩き、宿屋街に続く脇道に入る。
リリィ(ゲイル)の実家が宿屋を経営してるので、滞在中の宿代の心配は無い。尤も、こうやって積極的に宿屋の仕事なり準備なりを手伝うことが条件だが…。
その宿、「潮騒の華亭」に向かう道の途中で大量の洗濯物と格闘を繰り広げているギルドの仲間を見つけた。
アーチャーやサマナーの間に混じって、黒色の肌を持った大男が凄まじい速度かつ丁寧に次々とシーツを洗っていく。
その男の技量(洗濯に関してだが…)は正に魔法の領域と言っても過言ではないだろう。
「サリー嬢、その上着はぬるま湯で丁寧に洗った方が良い。その生地はあまり丈夫で無くてな、強引に洗うと直ぐに破ける。
 あぁ少し待ってくれツグミ嬢。
 その婦人服を洗うならこの洗剤を使うといい。灰汁2のオリーブ油3のオリジナル配合だ、その服の生地に良く馴染む。
 すまないがミリー嬢、そこの洗濯物の山から…あぁ、そのズボンだ。ありがとう」
ヒースの活躍によって、山のようにあった洗濯物が見る見る内に小さくなっていく。
「は、ははは…。いつ見てもヒースさんのあれは圧巻ですね…」
「あぁ。もう驚きを通り越して呆れるな…」
ごつい筋肉質の神官が嬉々として洗濯桶に向かっている…、まさにこの光景は違和感の極地。素人が下手に入っていい領域じゃない。
軽く魔境と化している横道を避け、表通りに面している入り口へと目的地を変更する。
しかしその入り口でも、かなり珍妙な格好をしたギルドメンバーを見かけることになった。
「な…なによ、私の顔に何かついてる?」
じろじろと俺達に見られるのが不快なのか、棘のある口調で話しかけてくるレナ。
「いや、それ以前にその格好はなんだ?」
「はぁ…。父さん、今年もやっぱりやるんだ…」
レナの言葉に俺は疑問で答え、ゲイルは心底呆れたような溜め息を吐きながらポツリと呟いた。
宿の入り口に立っていたのはレナ本人に間違いは無いのだが、何故にこの格好なのか?
港の海を意識してか、淡いブルーのワンピース。
そしてその上に、海の上に浮かぶ雲を連想させるようなフリル付きの白エプロン。
もちろん頭の上のカチューシャはお約束…、どこからどうみても典型的なメイドだった。
「し、仕方ないでしょう!?ガレフさんが『掻き入れ時だから、是非この格好で客寄せを頼む』って言うものだから…」
「すいません、レナさん。父さんの奇策に巻き込んでしまって…」
後にゲイルに尋ねたところ、準備に必要な資材を遠方から運んでくる業者が、本番の時は見物客が大量にこの街に流れ込む。
宿屋にとってはどちらも金の卵を産む鶏、是が非でも自分の宿に泊まっていって欲しい。
そこでこの宿の主人、ミネルヴァ姉弟の父たるガレフさんが宿の従業員の綺麗処にメイド服を着せて、客寄せを行うという荒業を敢行した。
結果は大成功。長い旅路で身も心も疲れた商団の野郎共には、どんな酒よりもこれは喜ばしいものだった。
以降、この時期になるとこの宿屋は若い女性従業員の制服はこれが定番となったらしい。
「おぉ、ゲイルにジャック。戻ってきてたんか。厨房でリリィとアルシェさんと助手一名が待っとったで」
カランカランと、音を立て宿の扉が開かれる。中から出てきた女性もこれまたメイド服。
背中の半ばまである真紅の頭髪を、無造作に後ろに纏めて俗に言うポニーテール。もちろん、子憎たらしい程に似合っている。
少しキツイ感じの印象を受ける瞳と丸メガネが見事に混ざり合い、理知的な美人、という雰囲気をかもし出している。
体型は俗に言う、ボン・キュッ・ボン(他に例えようがないとはいえ、この表現はな…)というやつだろうか?
まぁ、正体は最初の口調で分りきっているだろうが…。

144 名前:黄鯖雑魚 投稿日:2006/03/23(木) 21:52:33 [ AkFk/XuA ]
一話目>>103 二話目>>112  さらに調子に乗ってみる('A`)

日付が変わり、うっすらと朝日が差し込んでくる。
「いでっ!」
ティムの悲鳴が6人が寝ている寝室に響く。
「ってぇなぁ…あ、そうか。部屋がないからみんな同じ部屋で寝てるのか…」
かわいい妹の寝返り際のエルボーで目覚めたティムは頭をくしゃくしゃとかく。
リビング、台所、トイレ、寝室(それなりに広い応客間)、物置(少し狭い部屋)にロフトがあるだけの
小さな家に6人も住むならば、致し方ないことかもしれない。
(早く起きちまった…古都にでも行って時間つぶすか)
と、古い羊皮紙に書置きをして、古都へと歩いていく。

朝の古都は人が少なく、装飾が施された建物が朝日を反射して
なんとも幻想的な都になっている。
噴水なんかは良い例だろう。装飾のみならず水も朝日を反射して宝石のように輝いている。
(静かでキレイだな…日が昇れば賑やかになるんだろうけど)
生活に役立ちそうな要所をまわる。
百貨店、公園、武器屋、防具屋などなど、古都にはさまざまな施設が多い。
(やっぱし広い。こりゃスティーブ、道に迷いそうだな…)
と頼りない弟のことを心配していると、路地裏から幼い悲鳴が聞こえる。
こんな朝早くにそんなところから悲鳴がするなんて、ただ事ではない。
盾は家に置いてきたうえに、剣も護身用の頼りない剣しかない。
剣を構えながら、悲鳴のした場所へと向かう。
「どうした!?」
「あ?なんだ、お前は?」
いかにも柄の悪そうな、同業者が小さい女の子に絡んでいる。
「おいおい、そんな小さな娘に何してんだ?あんたも剣士なら己の剣に恥じぬ行為をしろよな」
「あ、あの…」と、小さな女の子が潤んだ瞳でティムを見る。
するとティムの表情が一変した。
「き、君は…!」
なぜだろうか、この時のティムの顔を見ていた二人は
一生をかけて見る分の恐怖、邪念、憎悪を一瞬で見てしまったかのように汗をたらし凍っていた。

145 名前:名無し物書き@赤石中 投稿日:2006/03/23(木) 22:39:06 [ W8BAcf5I ]
>>139,140氏
その歴史年表、イエスだね! まとめサンクスです。
よもやこのゲームにこんなオモい公式設定があったとは……いやはやビックリ。

……ええ。
後編書き直しじゃあ(`Д´)ノ

146 名前:南東方不勝 投稿日:2006/03/24(金) 18:55:06 [ gowBXNz6 ]
>>黄鯖雑魚さん
なにやらティム関連で一波乱ありそうな予感ですね。
あと、同じ部屋で雑魚寝って結構ほのぼのとしたシチュですよね。

>>名無し物書き@赤石中さん
あれ、どこかで見たことある言い回しが…。元ネタは、某ブレンのパイロットですか?
とまぁ、ネタはさておいて後編の書き直し頑張ってください。

147 名前:リ・クロス 投稿日:2006/03/24(金) 19:16:57 [ r1jmaOxM ]
前スレ>>986 >>39 >>56 >>69 キャラ紹介>>38
>>100


まるで、初めからそこに居たように現れた
巨大な紺色の鎧の怪物と、大剣を持っている骸骨など
様々なモンスターが、ブルネンシュティング英霊騎士団と戦闘している。

「くそっ!何故こんな事に成っているんだ!!」

目の前から現れた骸骨に、タンクラッシュを食らわして吹き飛ばし
横から来た斬撃を盾で防ぎ、反撃に突きを放った。

「そこの騎士!伏せなさい!!」

自分に対して言われたのかは分からなかったが
体が本能的に動き、コンプリートプロテクションを発動する。
空気を裂く様な音と共に、一本のランスが飛んでいき
斜線上に居た骸骨達を粉砕し、さらに放射に撃たれた矢によって
空中に浮遊していたディムジェスターを撃ち落した。

「残存兵をまとめて西通りと南通りを守護して、後はここで食い止める。」

どういう仕掛けか、戻ってきた大型ランス――――スクリュードライバーを
やや小柄な槍弓兵――――セリスが掴み取った。
夕焼けの光に照らされて、艶やかに髪が輝いている。

「了解した、ここは任せるぞ。」

苦笑しながら騎士は返事を返すと、盾を構えながら南西に走っていった。

「エリシア、今のってもしかして・・・。」

「ブルネンシュティング英霊騎士団元帥、ケイルン=ハートレットだな。」

言おうとしていた事を、イルムに言われてしまったエリシアが
頬を膨らめて怒ると、傍らのホーンドがイルムを睨みつける。

「彼があんなにやられてるなんて・・・、姉さん後ろに三体居ます!!」

即座に弓を放り投げると、ランスを大きく振り回して間合いを取り
素早く手近な骸骨に狙いを付けると、頭部を突いて倒して
空中に浮かんだ弓から、大量の矢が骸骨に殺到して粉砕する。

「神の怒りを汝の身で受けよ!今こそ裁きの歌を奏でる!
ライトニングシンフォニー!!」

イルムが呪文を唱えると、杖から凄まじい量の光が発せられて雷撃と化し
紫電を放つ巨大な槍となって、モンスター達に降り注いだ。
まともにそれを食らったシャドウス達が、炭の様になり
付近に居た骸骨やジャイアントも、余波の雷撃で同じように炭になった。

「面倒だな、一気にぶっ潰してやる!!」

スィフィーは、鞄の中から大量の投げ短剣を手に取ると
跳び上がると、回転しながら一気に投げ放った。
無防備に体を出していた者は勿論、壁から跳ね返った短剣で
死角で潜んでいた者も、短剣が突き刺さった。

「エリシアは、生存者の保護をお願いね。スィフィーとイルムは、一緒に来てね。
残りは英霊騎士団と合流して、そこのケイルンの指示に従って。」

「「「了解!!」」」




「貴様の目的は何だ?」

「・・・・・・・・・。」

もう何度目か忘れてしまうほどの回数尋ねたことを
イラついた口調で黒い騎士に尋ねるスコール。
しかし、騎士は何も言わずただこちらに突きかかってる。

「答えろ!!」

突き込まれたランスを蹴り上げて、大剣を横に振るうが
分厚い篭手によって受け止められて弾かれる。
その勢いによってよろめいたところに放たれた槍が
スコールの右肩をショルダーパッドごと貫いた。

「ぐぁっ!!」

「冷静さを欠いた人間など、他愛も無いものよ。」

「・・・――――!?」

突然出現した黒い槍が、スコールの腹を貫通し
虚空から黒い外套を纏った少女が微笑みながら現れた。

「くぅ・・・これまでか・・・。」

少女が指を鳴らした刹那に、ランスが心臓を貫いた。

148 名前:リ・クロス 投稿日:2006/03/24(金) 19:24:22 [ r1jmaOxM ]
感想をわざわざ書いていただいてるのに
全く返せなくてすいませんOTL
こんな雑文で良ければ読んで頂けたら有難いです。

149 名前:南東方不勝 投稿日:2006/03/24(金) 19:52:07 [ gowBXNz6 ]
>>143
「えぇ、今戻ったところですよア……」
「オイオイオイ、なんだよゲイル。こんな美人と知り合いなら俺に紹介してくれよ!」
突然の乱入者にゲイルの言葉がかき消される。声の主は、ギルドメンバーである剣士のものだった。
「あぁ、毎度の事だが…。おめぇはいつでも突然だな、ダニエル」
「おっとそう言って下さんな、ジャックの旦那。俺に隠れてこんな美人と顔見知りになっているダチを見かけたら、ねぇ?」
「俺に同意を求めるな…」
どうにも、こいつは今しがた戻ってきたようだな。
「さ、というわけでゲイル君。俺にもその美女とお近づきにならせてくれ」
「え…、でも…」
「えぇい、いいからどいてくれ!大体お前は恵まれすぎなんだよ、ゲイル!マスターみたいに可愛い姉だけじゃなく、こんな眼鏡美人まで…!」
まぁ正体を知っているゲイルからすれば、ここは純粋に友のためを思って止めているのだろう。
だが、準備中とはいえ折角の祭り。ハプニングの一つや二つあった方が盛り上がるだろう。
「良いじゃねぇか、ゲイル。思う存分、そいつの気が済むまで相手させりゃあ」
「流石旦那!俺の気持ちを分ってらっしゃる、やっぱアンタにはかなわねぇな」
そういうや否や、グイっとゲイルを押しのけ赤毛の女の前に乗り出す生贄(ダニエル)。
あぁ、ゲイル。そう俺を睨むな。祭りなのだから、物事には寛容に行こうじゃないか。
「初めまして、美しい人。このギルドに貴女のような女性が所属していたなんて…、どうです?お近づきのしるしにお茶を一杯…」
「なに、阿呆な事言ってるん。ダニエル?」
「は?」
見知らぬ女性の口から飛び出す、聞き知った口調。よし、ナイスリアクションだ。ダニエル君!本当に目が点になってるぞ。
「え…、いや…、ちょ…、も…もしかして……」
「そかそか。アンタはウチの事を獣化を解いても、獣じみた野生的で見苦しい女やと思ってたんやな…」
それってむっちゃ傷つくわぁ、と凄みのある微笑を浮かべながら赤毛の女…アニーがダニエルの肩に両手を置く。
「は、ははははははは…。そ、そんなわけ無いっすよ……って、ゲイルに旦那!見てないで助けてくれよ〜〜!!」
目の幅涙を流しながら、必死に俺達に助けを請うダニエル。自分から振っておいてなんだが、そんな命知らずな事はごめん被りたい。
「ま、ダチの制止は真摯に受け止めろって事だな。じゃ、頑張って生き残ってくれ。」
そう無責任に言い残して、足早に宿屋の中へと消えて行く俺。
「だ、旦那の薄情者〜〜!ゲイル、お前は俺を助けてくれるよな、な!?」
「ごめんよ、ゲイル。助け出したいのは山々だけど…、恨むならジャックさんを恨んでくれると嬉しいな」
心底残念そうに友に自分の意見を伝え、そそくさと俺の背中を追うように宿の中へと消えていくゲイル。
「うおぉぉぉぉぉぉい!そりゃねぇだろぉぉぉぉぉぉ!!!!????」
「さぁ、ちょっと裏行こか?アンタの意見、詳しく聞きたいわぁ」
「い、いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁ〜〜……!!」

150 名前:黄鯖雑魚 投稿日:2006/03/24(金) 20:49:37 [ AkFk/XuA ]
一話目>>103 二話目>>112 三話目>>144 最近、調子に乗ってる俺ガイル('A`)

「君は…君は…!」
ティムの目つきが豹変する。
「な、なんなんだよ、てめぇはぁ…!」
女の子は、視線を定められずおどおどしている。
「許さねぇ…そこの女!」
突然、呼ばれたために「え?私?」という驚いた表情でティムを見る。
「お前には…死んでもらうぞ…忘れもしない…」
「うるせぇ!何ごちゃごちゃ話してん…」
野郎が言い終わるか否かのタイミングでティムの拳が野郎の意識を持っていく。
「え?あ、あの私…」
ティムの剣が女の子の首にピタッと当てられる。
「お前は…忘れたわけじゃないな…『魔女』…」
「…え?…」
未だに状況を飲み込めないのか、相変わらずのなみだ目でティムの鬼の形相を見ている。
「死ね…これだけは、俺の中で決められていたことだ…」
首に当てていた剣を持ち替えて、大きく振り上げる。
「悪く思うな。これだけは…これだけは…」
細身の剣が音をたてながら、空を切る。
「ティム!」
すんでのところでティムの剣がとまる。
「姉さん、起きたのか…」
「どうしたの!? …あなた、怖い顔してるわ…」
「…聞かないでくれ」
姉の声にも聞く耳を持たず、もう一度剣を振り上げ、「次こそは」という表情をして女の子の方に向きなおす。
「終わりだ…」
二度目の空を切る音が、人気の無い路地裏に響く。


そして次にティムが目を覚ましたのはおよそ2時間後の自宅、リビングである。

151 名前:名無し物書き@赤石中 投稿日:2006/03/24(金) 21:57:57 [ W8BAcf5I ]
>>南当方不勝
『イエスだね!』で勘付いてくれましたか? そのツッコミを待ってました。
それではこれからはわかる人にはわかるネタを存分に盛り込んでお送りしますね。ふふふ。

152 名前:名無しさん 投稿日:2006/03/28(火) 19:17:59 [ IL2fAdgQ ]
私、サラ。
今日の夜10時にビショップさんとかの武器を売っている
チョキーさんと待ち合わせしてるんです。
1)いく
2)いかない

153 名前:ちょwww名無しwww 投稿日:2006/03/28(火) 20:16:53 [ gFnezeBM ]
勇者様は何をする?
⇒サザンクロス
 スウィングインフィニティー
 パラレルスティング
 ファイナルチャージング

154 名前:戦士のようだ 投稿日:2006/03/28(火) 21:16:12 [ QS1Cbi/M ]
タイトル:たぶんこれより、白くて綺麗
――――――――――
最初に症状が出始めたのは六ヶ月くらい前だった。

モンスターの退治を終えると何時もよりも体が重たい。

それがはじめは10回に1回、そして具合が良くなり、また少しするとだるさを感じる。

段々とだるさを感じるペースが短くなり、慢性的なだるさを感じるようになる。

だいたい、それと同じ時期に微熱が現れ始める。

微熱、倦怠感、かすり傷から出る血が止まらない。

段々と不自然になった体を思い、医者に見せると「原因不明の奇病」と言われた。

どうやら古都に行けば解決法があるらしい、そんなわけで俺は古都に来た。

ブリジヘッドとは違う、騒々しさのある街だった。

古都の医者に体を見てもらった。医者は採決をして、それから顔をゆがめて言った。

「今の医学では残念ながら治せない病気です。これから詳しくお話しましょう。」

ドラマみたいだと思った。

「モンスターの種があなたには埋め込まれています。」

「はい?」

頭の悪い自分には良くわからない比喩表現だと思った。

医者や科学者が比喩表現を使うのは、おかしいと思う。

「先生、わかりやすいように教えてください。比喩抜きで。」

コホン、と医者は咳払いをした。

「比喩ではないです。本当にモンスターの種です。」

155 名前:戦士のようだ 投稿日:2006/03/28(火) 21:16:45 [ QS1Cbi/M ]
今度は俺が咳払いをしてみた。自分を支えている地面が、少しだけ傾いた気がする。微熱――

「あなたはモンスターの種に蝕まれているのです。もの凄く稀なことですが、
人がモンスターに触れたり、返り血を浴びたりすると、モンスターの種を植え付けられることがあります。
細かい、細胞単位のタネです。普通の人は蝕まれません。ただ、たまに蝕まれる人もいます」

「それで、俺は死ぬんですか?」

とりあえず聴いてみた。まぁ、死ぬ覚悟は昔から出来ていた。

「死にはしません。ただ、生まれ変わります。細胞が一つ一つ、着実にモンスターのものに変わっていきます。」

「いずれ、俺はモンスターになると。」

「はい」

「期間は?」

「わかりません、ただ体力と精神力の問題です。体が種に負ければ、死ぬかモンスターになります。
いずれは気が狂ってモンスターです。意識を強く持てば、気が狂うまでの時間は長くなります。」

よく解らない説明を聞いてから、病院を出てた。そういえばこの医者はコボルトの服を集めているらしい。

俺はコボルトにでもなるのだろうか。

考えても仕方がない、ただ、体が着実に腐っていくことは事実だった。

その日、バーで酒を飲んでいると一人の男に声をかけられた。
「うん?」

「あんた、逃げられないよ。」

男は言った。宗教勧誘みたいだった。

「逃げられない?」

「遅かれ早かれ気が狂うんだ。まず体が動かなくなる。それから頭をやられるんだ。体よりも、頭は弱いからね。
そうすると段々と精神が疲れてくる。そこまでくればあとは秒読みだよ。もう止まらない。
体が動かない分だけ、色々なことを考えるんだ。そして糸が切れる。プツン、終わりだ。」

「ふうん。よく知ってるね。」

「鼻が利くんだ。人が他人を自分より強いか弱いかを見分けるみたいに。」

「案内したい所があるんだ。運命の分かれ道。死ぬか、生きるかなんだ。」

156 名前:戦士のようだ 投稿日:2006/03/28(火) 21:17:17 [ QS1Cbi/M ]
男に言われるままにバーを出て、古都を出て、よくわからない洞窟に入った。

大した不信感も抱かなかった。世の中、どうしようもないことがあれば人は諦める。

洞窟を入って少し歩くと、たいまつの灯が見えた。男たちが5,6人固まっていた。

「あなたも、種ですね」

グループから一人が出てきて言った。

「よくわかるね。」

「私たちは鼻が利きます。医者が病状を見極めるように。」

「ふうむ。」

世の中、色々なセリフが存在する。

「種、その仕組みを知っていますか?」

「医者から少し聞いたけど。」

「あんなものは説明じゃない。」

案内した男が言った。

「詳しく説明します。」

別の男が言った。

「種はモンスターに触れたりすると感染します。逃れる方法は一つです。まぁそれは置いておきましょう。
種は細胞をどんどん組み替えて、モンスターの物にしていきます。逃れる術はありません。
種は生きています。あなたの血を吸い、肉を食んで成長していきます。でも、それだけではありません。
この病は一つの呪いです。あなたはおそらく、これから悩むことになります。その悩みは体の中で石になり、
種は石を食べて、さらに大きくなります。あなたはその成長を感じるでしょう。
日常の中に段々と陰りがさし、その陰りはやがて一つのシステムとしてあなたを飲み込みます。
この病の恐ろしいところは、その陰りが人々にも自然に伝わることです。陰りは広がって、別の形を取って、
別の人を飲み込みます。別の人はそれに気がつきません、肉体的な症状も出ません。
でも、いつか陰に飲み込まれます。それがこの呪いの厄介な所です。この呪いは、まったく別の形を取って、
他の人にのりうつります。」

「ふうむ。」

それ以外言うべき言葉はあまり思いつかなかった。

どうも、俺の理解の範疇を超えているみたいだと思った。

157 名前:戦士のようだ 投稿日:2006/03/28(火) 21:17:59 [ QS1Cbi/M ]
それからよくわからないけども、宿に戻って寝た。寝るときに嫌な夢を見た。

綺麗な草原を歩いていると、俺は転んでしまう。ちょっとした擦り傷が出来る。

傷を見ると、傷からは絶え間なく、黄色い汁が溢れ出す。

そんな夢だった。嫌な夢だった。せめて綺麗な草原でなく、暗い洞窟で転べばいいのだ。

起きてから、やることもないのでゴロゴロしていた。それから怖くなったので、街に出て、

道行く人々を眺めた。太陽が出て、人々が忙しなく動いているのは幸せだと思った。

「よう。」

後ろから声が聞こえたので、振り返った。昨日バーで会った男だった。

よくわかったものだ。鼻が利くのだろう。

「あんた、生き残りたいか?」

「そりゃね。」

「方法はあるんだ。」

「なに?」

「人の生き血を吸って、生の肉を食べるんだ。」

「まっぴらゴメンだね。あんたは食ったのか?」

「食わなきゃ生きていけないもの。食ったよ。」

「じゃああんたはモンスターだ。」

「あんただってモンスターだよ。」

その通りだった。

「あそこの洞窟は種にかかった人が住み着くんだ。体はモンスターだが、意識はしっかりと人間だよ。」

「みんな何してるんだ?」

「レッドストーンを探してるんだよ。」

「何で?」

「人間に戻るために。」

「はかない望みだと思うけどな。」

「儚くないよ。血を吸って、肉を食えば死ななくなるから。」

「そうなの?」

「そうだよ。肉体が変わってしまうんだ。体そのものが癌細胞に変化するようなもんだよ。

人によっては、日光に弱くなったり、タメネギやニンニクにアレルギーが出るけどね」

「まるで吸血鬼だな。」

「吸血鬼だよ。そのものだね、まさに。」

「死んだ方がましだ。」

158 名前:戦士のようだ 投稿日:2006/03/28(火) 21:18:29 [ QS1Cbi/M ]
そう言ってから宿に戻った。宿に戻ると猛烈な吐き気がして、洗面場で血を吐いた。

鼻につく匂いのする血だった。

それから口を拭いて、近所の酒屋で酒を買って、飲んだ。

出来ればこのまま酒に溺れて死にたいと思った。でも、意識はハッキリしていた。

モンスターになると酔わなくなるかもしれない。

酒に飽きると、段々と恐怖が襲ってきた。昔から死ぬことは覚悟していた。

モンスターと戦って死に掛けたこともあった。

でも、どの恐怖とも違っていた。最悪だと思った。

自分ひとりで責任を取らなければいけない死に方だった。

モンスターを殺したという、罪と憎悪に溺れることは、本当に最悪だった。

俺は今まで、モンスターを殺して、金を稼ぎ、生きてきた。感謝されたこともあった。

それが何だというのだろう。どんどんと体は深い渦に飲み込まれていった。

それから窓を開けて、人々が行きかう道を眺めた。

宿を飛び出して、昨日の洞窟へと向かった。まだ死にたくないと思った。

洞窟手前の草原を走っていると、転んで足に大きな傷が出来た。

運悪く、石に膝をぶつけたのだ。緑色の血が肉体から出て来た。

モンスターの血とも、人間の血とも違っていた。夢と同じような光景だった。

それから、再び血を吐いた、やはり緑色だった。

グルルルという唸り声が聞こえた。狼がいつの間にか現れていた。

足に痛みが走った。狼が噛み付いたのだ。それを合図に、他の狼も一斉に襲い掛かってきた。

痛みは、既に痛みではなかった。めまいがするだけだった。視界に緑色のフィルターがかかった。

それからある光景が脳裏に浮かんだ。

俺の死体から、一本の眼が萌え、それが樹に成長していった。

緑色の血と、草原の見分けがうまくつかなかった。

―Fin―

159 名前:南東方不勝 投稿日:2006/03/29(水) 00:12:16 [ gowBXNz6 ]
4月の頭から、遠出をする南東です。あぁ、荷造りが面どいですよorz

>>リ・クロスさん
お、アルクェイト姉妹が参戦しましたね。
って…、スコールぅぅぅぅぅぅ!!!
黒の少女強いですね。
あと今更ながら気づいたのですが…。騎士団の名前とかの元ネタは、某戦争からですかね?

>>黄鯖雑魚さん
う〜むティム君、実に少女に対してお冠ですね…。一体、彼女と間に何があったのか?
あと、路地裏でティム君を気絶させたのはやっぱり姉さんですかね?
続き、お待ちしてますね。

>>戦士のようださん
おぉ、お久しぶりです。
今回もシリアスなお話ですねぇ。自分もこのくらいうまく書けたらいいんですが…。

追伸:あちらでの活動も頑張ってください。

160 名前:黄鯖雑魚 投稿日:2006/03/29(水) 21:11:33 [ AkFk/XuA ]
一話目>>103 二話目>>112 三話目>>144 四話目>>150

「?」
目覚めたティムはなぜ自分がここにいるんだ?という顔であたりを見渡す。
自分を心配そうに見ている家族。そして──『魔女』──
「あ、あの…」
自分を殺そうとしていた相手にも、心配している『魔女』。
「ティム、あなたどうしたの?」
ミアが心配そうに聞く。
今まで人に剣を向けることがなかった弟が、こんな小さい女の子に剣を向けたことが
よっぽど不安だったのだろう。複雑な表情である。
「え?あぁ、うん、まぁその、なんだ…」
ティムはどうすればいいのか、と目を泳がす。
「ティム兄、無理しなくていいんだよ?」と兄を気遣うミレナ。
「…………なんだ、話す気ないのか……」と兄を突き放すスティーブ。
しばらくの沈黙の後、ティムがようやく口を開く。
「あのさ…こんなことしておいて、ことを大げさにしてなんだけどさ…
 今回のことは、聞かないでくれるかな。俺、その子と話がしたいんだ…」
あの時とは打って変わって冷静になったティムを見てミアは少しばかり安心した。
「ま、今回のことはティム、お前が好きにしろ」
珍しく厳格な顔のクーファンにティムは戸惑いながらも頷いた。
「えと、さっきはごめんね。許してくれるかな…?」
刃を向け、殺意をぶつけた相手が許してくれるなんてそう無いが、一応許しを請う。
「え?あ、はい…私は大丈夫です」
許してくれると思ってなかったので、思わず素っ頓狂な声を出す。
「へあ?…あ、そっか、ありがとう。名前は?」
「フィーユです」
「そうか、フィーユさん…でいいかな、少し話がしたいんだけど」
「…はい、わかりました」

剣を置いて、フィーユをつれて家を出るティム。
それを見て家族は思い思いに話し出す。
まず父親を横目で見てクリスが「父さん、思ったより真面目だったね」とため息をつきながら言う。
「なぁに言ってんだ、俺だってなぁ親父のはしくれだぞ?当たり前だろうが」
豪快に笑い飛ばして言うクーファンを見て「やれやれ」という手振りをする。
「でも…ティム、何があったんだろう?」と、やはり心配そうにミアが切り出す。
ミレナが悪いことを思いついた子どもの様に笑って「ティム兄、ロリコ…」と言いかけて
「なんでもない、ごめんごめん」と、失言だったかな、という表情で家族に言う。
「……まぁ、兄貴のことだから…任せておけばいいんじゃない?」
一番年下のはずのスティーブが、一番ティムのことを理解していたことに
家族みんなが少し頬を赤らめて散った。
「ふん……」
スティーブの少し満足げな表情が、誰も見ていない時、咲いていた。

161 名前:黄鯖雑魚 投稿日:2006/03/29(水) 21:14:33 [ AkFk/XuA ]
ま、また!

吊ってくる

162 名前:名無しさん 投稿日:2006/03/29(水) 22:17:01 [ QS1Cbi/M ]
ロマサガ2をレッドストーンで煮込んでみた話…

―――――プロローグ―――――

七天使・・・かつて悪しき悪魔を屠り、赤石の欠片を集め

いずこかへ消え去った七人の英雄…七人はそして伝説へ

世が平和になると、人々は英雄を忘れた

だが、再び世界は乱れ、人々は七英雄の伝説を語った

彼らは来た…だが……

―――――――――――――――

ロマサガ2のパロです。ネタのにおいがゲロ並にぷんぷんしますが
まじめに話を進めるつもりです
ちなみにラストは原作と違ってどんでん返しの予定です
まぁ、簡単に言えば、元ネタ知ってる人は生暖かく見守って欲しい
そんなわけです。はい(´・ω・`)

163 名前:名無しさん 投稿日:2006/03/29(水) 22:54:20 [ QS1Cbi/M ]
ロマサガ2をレッドストーンで煮込んでみた話 ①


ガヤガヤとにぎやかな酒場で、緑色と黄色をメインにした服を着ている詩人は詠い始めた。
その酒場には色々な人が居た。戦士や、商人や、老いぼれや、青年も…
その中に一人だけ、雰囲気の違う女性が居た。その女性は静かにミルクを飲みながら、
詩人が奏でる琴の音色と、艶のある男詩人の声に耳を傾けていた。
その女は、若くて綺麗で、どこか抒情詩を連想させる運命的な儚さをそなえていた。


~~~~~~~~~~


ここに始まるは はるかなる戦いの詩  偉大な帝国と うるわしきブルネンシュティングの詩

そして 代々の皇帝とその仲間達の詩   この詩をうたい終えられるよう  精霊よ、我に力をあたえよ!

今は昔、皇帝レオンの時 帝国は大陸の小さな国に 成り下がっていた。

大陸は麻のように乱れ 争いは絶えなかった。
レオンは統一の志を立て 日々戦いに明け暮れた。

彼には二人の息子があった。 雄々しきヴィクトールと 優しきジェラール。

その日 レオンはジェラールを連れ モンスターの討伐に出た‥‥


~~~~~~~~~~


「よいかジェラール われわれは陣形を作って戦う 私が中心に立ち、 防御力の高いベアが先頭、
両サイドをジェイムズと テレーズが固める。 お前は私の後ろに立つ。 お前のポジションが一番安全だ。
安心して戦え。 ここのモンスターには 付近の住民も苦しめられている。
モンスターを追い払い、 このダンジョンを封印するのだ。 皆も頼むぞ!」

「はい。」
「では、いくぞ。」
コボルトの洞窟を十字架のような形になって戦闘のベア、中心位置にいる皇帝のレオン、
その両脇につくジェイムズとテレーズ、そして後衛のジェラールは、ゆっくりと歩きながら進んだ。

コボルトを少し蹴散らしては、また進み。また蹴散らしては進んだ。
後衛のジェラールは、最初は緊張していたが、次第に気持ちが緩み始めていた。
戦闘の大半は、勇敢な兵士と、父が始末していたからだった。
ジェラールは本の続きが読みたかった。あくびも少し出そうだった。

「ジェラール、どうだ?」
父のレオンがジェラールに話しかけた。ジェラールはただ首を振った。
感想は特になかった。
「モンスターもあらかた消えたし、城に戻ろう。」
「はい。」
コボルトの洞窟を出てから、入り口を厳重に封印した。

 ――帝国令第772――
――この地を封印する――

  ――レオン――

コボルトの洞窟を封印してから古都へとレオン達は凱旋した。
城へ帰ると兵士たちは宿舎に戻り。レオンとジェラールは玉座の間へと戻った。

164 名前:ドリーム 投稿日:2006/03/29(水) 22:55:08 [ wBvbm9gI ]
自分の書いた奴を終えるのをすっかり忘れてましたorz


とりあえず返信・・
>>南東方不勝さん
リムの戦闘能力は仕様でs(ry

>>名無し物書き@赤石中さん
とりあえずエロのほうはスルースキルONでお願いします(ぇ




「な・・なんですって・・?」ミレルは驚きを隠せない。突然の事にめまいすらしてきた
突然言われたら誰でも戸惑うであろう。
「嘘ではない、俺は見たんだ!赤い魔石に見せてもらった・・俺の記憶を」
レイドは確かに見ていた。そう・・・自分の過去、そしてミレルの過去を
だがそれは・・・今と同じだった、今とまったく同じの過去だった。
そしてこれから起こることもレイドは知っていた、しかしとめられない。
運命の歯車は止まる事を知らない。
「お前ら・・何してるんだ・・?」そこにリムを背負いながらのバースとヴィードが居た
「皆・・・私・・・私」涙が出そうだった。でも出なかった、まるで次に起こることを最初から知っていたためなのかはわからない
だがこれだけは確実だ。

バースの胸をレイドのダガーが貫き心の臓を止める。そしてリムの心の臓も止まった。
「な・・・レイド・・・お前・・・」ヴィードはわからなかった。
親友に殺される、仲間が親友に殺される、そして自分も今死んだ。

「え・・・?皆・・・バース・・?リムちゃん・・?ヴィードォォォォォォォォ」
私は叫んだ。けど・・涙は出ない・・何故?こうなる事を知っていたから?
「ミレル・・・いや・・イヴ、また二人で世界を作ろう、そしたらまたあいつらと会える」
ミレルの心に憎しみが満ちた。
「違う・・違うわ、バースもリムちゃんもヴィードも・・・彼らは一人しかいない、私の確かな記憶にのこってる彼らは彼らしかいないのよ!!」
そのときだった。

お互いは見ただろう。レイドには赤い炎を、ミレルには青い炎を纏っていることを。

165 名前:ドリーム 投稿日:2006/03/29(水) 23:07:57 [ wBvbm9gI ]
「レイド貴方だけは・・・貴方だけは許せないの!!」ミレルはこのとき初めて涙が出た
仲間が死んだときは泣かなかったのに、何故レイドと戦うと私は泣くの?
もう何も考えたくない、今はこの怒りに、悲しみに、憎しみに体を任せて居たい
「やめろ!俺が死んだら世界がかわる!俺もお前も死んでしまうぞ」
レイドの言葉は嘘ではないだろう、しかしミレルはそんなことはどうでもよかった。
「もう皆はいない・・・こんなことが永遠に運命として続くなら、私が此処でとめる!!」
お互いの心と心がぶつかり合う、空間は捩れ、そして空気すら歪む。








もう何時間戦っただろう・・・しかし戦いは終わらない・・・


レイド・・・貴方だけは・・・貴方だけは!!!!
この気合が一瞬レイドを上回った。レイドの炎は消え失せミレルの青く悲しい炎にレイドは焼かれた。
もちろん体は焼かれない、心が焼ききれた。
まるで・・最初からそこには無かったように・・・・



はっ!!
ミレルが気がついたときには周りは白くなにもない。あるのは物が3個とレイドが倒れている
もう息はない・・・
「ねぇ・・・私分かったの・・・私達は踊らされていたのよね・・・」
何も無い空白の空に問いただす。
「そうでしょう・・リムちゃん・・バース・・・ヴィード・・レイド・・・」
「皆引き寄せられていたのよね・・・赤い・・・果実(魔石)に・・・・ね」











小鳥が囀り、川の流れが耳を満たす。そんな朝の事・・・そう歯車は止まらない




彼らという存在・・・そして




赤い果実がある限り







END・・・

166 名前:南東方不勝 投稿日:2006/03/30(木) 01:09:03 [ gowBXNz6 ]
>>149
背後から聞こえる憐れな子羊の断末魔を極力気にしないようにしながら、ゆったりとしたエントランスを抜け
一階の奥にある厨房へと向かって歩く。
「潮騒の華」亭は三階建ての宿屋で、一階は厨房等の裏方の仕事場と店主家族の居住スペース。
二階から三階は全て客室になっている。総部屋数は二十、夫婦で経営している宿屋としては充分すぎるほどだ。
ちなみに、その部屋の内の半分は俺達ギルド員の仮住まいとなっている。
カウンター横の従業員専用通路に入って程なくして、厨房の扉の前に辿り着く。
少し大きめの木製のドアを押し、更に奥へと足を踏み入れる。
「あらあら、ジャックさんにゲイル君。お魚は沢山釣れましたか?」
「遅いですわよ、ジャックにゲイル。急がないと夕食の時間に間に合いませんわ!」
「お、兄貴にゲイル。おかえり〜」
まったく温かみが違う親子(+1)の声が俺とゲイルにかけられる。
最初に聞こえてきたおっとりとした出迎えの言葉が、ミネルヴァ姉弟の母であるアルシェさん。
少しウェーブのかかった肩ほどの長さのブロンドヘアーの持ち主で、自他共に認めるマイペースな人である。
あぁ、服装はメイド服じゃないから安心しろ。ワンピースに腰エプロンをつけてるだけだから。
二番目のきつめの出迎えは言わずもがな、リリィのものである。
親の手伝いで帰郷しているため、服装はもちろん父親の意向に従って外にいたレナやアニーと同じデザインのメイド服。
ちなみにリリィがこの服を着た時のギルの反応が面白かった事については、胸に止めておこう。
最期に聞こえてきた暢気な声は、その面白い反応をやってくれたギルだ。
東バヘルの一件後リリィとくっついたようだが、最初の頃は二人揃ってアニーにからかわれていた。
まぁ、あんな何も無いところでからかわれるような行動をしたわけだから自業自得だな。
「アルシェさんにリリィ、遅れてすまんな…っと、ギルもいたのか」
アニーが言っていた助手とは、こいつの事か。
「まぁ、その分沢山釣れましたから…ね」
厨房の中ほどにあるテーブルにどさりと、本日の成果を並べる。
「沢山釣れたんですねぇ。あら、この切り身は…?」
「マーマンですよ、アルシェさん。何故か釣れちまって…」
「どんな出鱈目な釣りをしてるんですの、貴方は…」
「まぁ、ジャックさんらしいといえばらしいですよね」
「確かに兄貴らしいや。ゲイルの言うとおりだね」
あーっ…俺、軽く馬鹿にされてないか?いや、気のせいだろう。
「さぁてと、お魚も届いた事だし急いでお夕飯の準備をしなくちゃね。リリスちゃん、お友達の方の分はお願いするわね」
「任せれますわ、母様。ギル、準備手伝ってくださる?」
「オーケーだよ、リリス。約束してたからねぇ」
待ち望んでいた材料が届いた事により、厨房組みが本格的に仕事に取り掛かろうとしている。
言い忘れていたが、くっついてからギルはリリィの事を名前で呼び捨てにしている。なんでも、リリィ本人からの願いだそうだ。
「あらあら、ギル君にリリスちゃん。二人で仲良くお料理だなんて、新婚さんみたいね」
が、突如として落とされた爆弾により三人中二人の動きが止まる。
おうおう二人とも、一気に顔が赤くなってやがる。こんなときでも、息がぴったりとはな…。
「な…なにをおっしゃっているんですか、母様!私とギルはまだ…」
「そ…そうっすよアルシェさん!オイラとリリスはその…」
「あらあら、二人とも恥ずかしがっちゃって…。お母さんもお父さんも吃驚したのよ。
 久しぶりにリリスちゃんが帰ってきたと思ったら、彼氏と一緒なんだもの。
 あっ、もしかしてお手伝いはついで、ギル君を私達に紹介するのが目的だったのかしら?
 それにギル君、アルシェさんだなんてかしこまって呼ばなくていいわ。気軽にお義母さんって呼んでもいいのよ?」
「「なぁっ…!」」
さて、こうなるとこの場はアルシェさんの独壇場。まだまだ若い二人には、この爆撃に耐えることは無理な事だろう。
実際、顔をこれでもかと赤くして固まっているしな。
「母さん、姉さん達で遊ぶのも程々にしてよ。二人とも、ほんとに固まってるよ」
「あらあら、本当ねぇ。ちょっとやりすぎっちゃったかしら?二人とも、落ち着いてからお料理してね。包丁は危ないのよ」
どうにも、俺達の晩飯が出来上がるのはもう少し後になりそうだ。
「ゲイル、時間がかかりそうだから酒を買いに行こうと思うんだが…」
「あ…じゃあ、お付き合いしますよ。僕もデクストラルさんに用がありますし」
ゲイルの言葉に首を縦に振って、またも二人で夕暮れの港町へと繰り出す。
この夕暮れの港で、「あいつ」と出会う事をこのときの俺は知る由もなかった…。

167 名前:南東方不勝 投稿日:2006/03/30(木) 01:59:50 [ gowBXNz6 ]
閑話・後にも先にも必要なもの

「おらぁ〜、待ちやがれこのくそ餓鬼ぃぃぃ!!」
ケルビーに乗って逃げるアタシの背中を、執拗に追いかけてくる武道家。
何よ、こんなアタシみたいな小娘から財布をすられるようなアンタが悪いんじゃない。
「待ってて言われて、待つ泥棒はいないよ。そんな事も分らないの、お・じ・さ・ん・☆」
「だ…誰がおじさんだぁ!!!俺はまだ29だぁぁぁぁ!!!」
うわ、意外と若かったんだねぇ。じゃ、老け顔なんだ。で、それを気にしてるからあそこまで激昂してると…。
「餓鬼が…!俺を怒らせたことを後悔させてやるぜ…!!」
そう言った途端、老け顔の武道家は走るのをやめ、はあぁぁぁぁっと、気合をためる。
まぁ、なにをやってくるかは大体想像できるんだけど…。
「心してくらえぇぇぇぇ、古きよき時代の近所の頑固お兄さんによる教育的指導をぉぉぉぉぉぉ!!!」
そんな叫び声と共に、武道家の足が地を蹴り空を飛ぶ。やっぱり跳び蹴りじゃん、つまんないの。
予想通りの動きしかしない武道家に目を向けることも無く、アタシはカバンの中から一冊の本を取り出した。

「ひぃ…ふぅ…みぃ…よ…っと。むぅ、大して持ってなかったわねぇ。ちぇっ、ほんとにつまんない奴」
しつこい武道家を適当にあしらった後、アタシは資材入れのテントの上で戦利品の確認をしていた。
「主殿、人の物を盗んだ上にそのような事を言っては…」
アタシの言動を諌めるかのように、ヴァンパイアのヴォイドが話しかけてきた。
「事実だからいいのよ。それにこうでもして稼がないと、孤児院潰されちゃうんだよ!あんただって、紅爺に世話になったでしょ!?」
アタシの怒鳴り声でヴォイドはそれきり黙りこくってしまった。
カッ…カッ…カッ。下の方から渇いた音が響く。
「何、ラグル。ウィンディでも戻ってきたの?」
こくり、とラグルが首を振ると同時に次のカモを探していたウィンディが空から戻ってきた。
「お疲れ様、ウィンディ。で、いい感じのカモは見つかった?」
ウィンディの喉を擽ってやりながら、肝心の結果を聞いてみる。
クルルルゥ、と気持ちよさそうに声を上げてから、アタシのことをまっすぐと見つめる。
アタシの魔力でこの世界にいる以上、それだけでウィンディの言いたい事は頭の中に流れ込んでくる。
「ふぅん、戦士にウィザードの二人組みね…。宿屋街のほうから来てるのね」
となれば、それなりに財布は重たい事だろう。
「よっし、そいつらにしよう。んふふ〜、今日はツイてる☆」
テントの上で夕暮れの磯風に吹かれながら、私はまだ見ぬカモ(の財布)に思いを馳せていた。
そのカモと関わる事が、私にとっての新たな旅立ちであるとは知らずに…。

168 名前:南東方不勝 投稿日:2006/03/30(木) 11:24:03 [ gowBXNz6 ]
>>黄鯖雑魚さん
とりあえず、この場では和解の方向で固まったようですね。
さてさて、なぜティムはフィーユのことを魔女と言ったのか…。
今後の展開に期待しています。

>>162-163さん
サガシリーズはサガフロくらいしか詳しくないですねぇ^^;
まぁ、新鮮な気持ちで読めますからこれはこれで。
あと、IDから察するに戦士さんですよね?
間違ってたらすいません。

>>ドリームさん
執筆、お疲れ様でした。
ちょっと悲しい結末でしたが、楽しく読ませていただきました。
また機会がありましたら、この板でお会いしましょう。

169 名前:戦士のようだ 投稿日:2006/03/30(木) 11:51:06 [ QS1Cbi/M ]
コテ忘れてたorz
>>162-163はおいらでごぜえます

170 名前:名無しさん 投稿日:2006/03/30(木) 12:50:48 [ QS1Cbi/M ]
1:>>163 原作:ロマサガ2

2話:新宿からの襲撃

玉座の間は長男のヴィクトールが父に代わって守っていた。ヴィクトールは父に玉座を交代してから口を開いた。
「父上、弟は戦いよりも学問に秀でています。その力は内政に活かすべきではないでしょうか?」
「お前たち二人はこれからこの国を守っていかねばならん。」
「ですが…」
衛兵が現れて連絡を告げた。
「アイオーブという魔術師が謁見を願っております。」
「またあの魔術師か、毎日ご苦労だな。仕方ない、通してやれ。」
ジェラールとヴィクトールは玉座の間を出た。
「あの魔道士、ラッキーだったな。父上が話を打ち切るのにつかったわけだ。」
ヴィクトールが噂をしていると、衛兵に案内されて、赤いローブを纏った女が玉座の間へと入っていった。
「お前も疲れただろう。部屋で休めよ。」
ヴィクトールとジェラールは自分の部屋へと戻っていった。

それから少しして、ビクトールとジェラールはレオンに会いに行った。
「父上、魔道士は何と?」
ヴィクトールが聞いた。
「七英雄のクジンシーが復活したらしい。奴等は危険だから気をつけろと、言っておった。」
「七英雄がですか?」
「うむ、まぁ気を許す相手ではないが、奴等も英雄だ。危害はないだろう。」
「どうだジェラール、狩りにでも行かぬか?」
「はい。」
「ヴィクトール、城は任せたぞ。」
ジェラールとレオンはお供を連れて狩りへと出かけていった。


しばらくしてからレオンとジェラールが戻ると、城下町は酷い有様だった。
兵士や門番が倒れ、所々では火の手も上がっていた。
ジェラールとレオン達は急いで城に戻ろうと、走った。
城に戻る途中でヴィクトールが倒れていた。
「ヴィクトール?!どうした!何があった。」
「父上…シューティングスター→オルターリングカッターは完全にきまったのに…」


~~~数時間前~~~

「貴様!何者だ!」
城下町を襲っている。紫色の肌をした戦士にヴィクトールは詰問した。
「黙れ小僧。刀の錆にしてやろうか?」
「なめるな!」
ヴィクトールは持っていた盾を力一杯に投げつけた。
盾は戦士に命中して、戦士は少し下がった。
「ぬるい。」
「ならば!」
ヴィクトールは持っていた鋼の剣を投げつけ、武器をクレイモアに持ち替えてから、オルターリングヒッターを放った。
「なかなかやるが、このクジンシーからみれば赤子同然。」
「死ね矢。」
そう言ってクジンシーはヴィクトールにヴァンパイアリックバイトを放った。


~~~~~~~~

「たしかにクジンシターと言ったのだな?」
「・・・qw…c」
かすかに口から空気を漏らして、ヴィクトールは切れた。

その日は雨が降った。古都には珍しいくらいの土砂降りだった。

レオンはそれから魔道士のアイオーブに会った。ジェラールは泣いていた。
「・・・伝承法・・・」
「・・・・・・はい・・・引き換えに・・・」
「クジンシー・・・七英雄・・・」
「某環状線・・・・・・・・・逆さから・・・」
「新・・・宿・・・」
「クジンシーはハノブ望遠楼を根城にしています。」
「わかった。」
アイオーブとの話を終えてから、レオンはジェラールに告げた。
「ヴィクトールの弔い合戦だ!行くぞ!」

171 名前:名無しさん 投稿日:2006/03/30(木) 20:30:46 [ yG6hfiPA ]
俺は竜鱗の盾と竜鱗の鎧が好きだ!
そんでもって七星剣を片手にベルカの空へ上がるのだ!!
XLAMをQAAMもディフレクトで全て弾くぜ!!!
音速でサイレントラインを超えるZEEEEEEEEEEEE!!!!!
俺は面倒が嫌いなんだ。

172 名前:黄鯖雑魚 投稿日:2006/03/30(木) 23:44:57 [ AkFk/XuA ]
一話目>>103 二話目>>112 三話目>>144 四話目>>150 五話目>>160

「さっきは本当にごめんなさい。俺、できる限り償いますから」
古都のベンチでフィーユに向かって頭を下げるティム。
「わ、私は大丈夫ですっ。そんなことより助けていただいて感謝してるくらいですよ」
なぜだろうか、まだティムよりもずっと背の小さいはずの女の子から漂う大人の雰囲気。
「でも!…その、俺はあなたを殺そうとした。それはそれでけじめをつけたいんです!」
──自分はなんてことをしてしまったんだ── という罪悪感。
それがティムに『償いたい』という純粋な謝罪の気持ちを与えた。
「そ、そうですか…?……じゃあ、一つだけ、聞きたいことがあるんです。それを聞いてもいいですか?」
尚やさしく問うフィーユ。
「もちろんです! ……それで、俺に何を?」
「ティムさん、『魔女』…に何かあるみたいですが、教えていただけませんか?私にもちょっといろいろあって…」
ティムの過去の辛い部分に触れないようにゆっくりとティムの反応を見ながらフィーユは聞く。
「え?…ああ、そのことです…か。 長く…なりますよ?」
「ええ、大丈夫ですよ」
それじゃあ、と口をゆっくりと開くティム。
その目はどこか、寂しそうで辛そうで、何より悲しそうだった。

───一家が古都へ来る1年ほど前のこと───
ティムはとある集落から依頼を受け、そこへ向かっていた。
家計が火の車だったのもあり、とにかく無茶をしてでも高額な報酬が設定された依頼をこなす必要があった。
「なんだってこんなに遠いんだ…くそっ!」
あまりの距離に愚痴をこぼすティム。だが大切な家族を思うとそんなことも言ってられない。
あのダメ親父や、女でありながらも家族を支える姉や妹だって依頼を受け、家計に貢献している。
そう考えると、そんなことを言うのは恥というものだ。
村を出発してから二日ほどでその集落にたどり着いた。

「あなたがティムさん…ですね。話は聞いています。さ、長旅でお疲れでしょう。こちらへ」
その集落の長の家へ向かう。この集落、物資的には充実していそうなのだが
なぜだか、みんなの顔には生気がない。 かなりの不安や恐怖に包まれている顔だ。
「依頼の内容なんですが、代理人に聞きましたよね?」
「え?ああ、はい。たしか『魔女狩り』…」
軽く咳払いをして、深刻な面持ちで長は話しかける。
「実はここ数週間で『魔女』によって数十人という数の民が襲われ時には命を落としているのです。
 その『魔女』…話によれば複数名いるそうですが彼女らを撃退してほしいのです」
「捕らえますか?…それとも」
「ええ、確実に。二度と被害が広がらないように」
「…わかりました」
「ありがとうございます。報酬は確かに弾ませてもらいますよ」

長の家から出たティムを冷たい風が撫ぜる。
ヒュウウウゥゥゥ。
「なんだか…嫌な風だな」
鎧を着ていたティムにも冷たさを感じさせるその風はこの後の未来の酷な運命を
そのままティムに伝えていたのかもしれない。

173 名前:FAT 投稿日:2006/03/31(金) 07:47:20 [ xkNMQw.U ]
『水面鏡』

キャラ紹介>>21

―田舎の朝―

―1―>>22
―2―>>25-26

―子供と子供―

―1―>>28-29
―2―>>36
―3―>>40-42
―4―>>57-59
―5―>>98-99
―6―>>105-107



―双子と娘と―
―1―

 大聖堂の照り返すような色の壁、家々の歪むことのない実直な白の壁、地を覆い隠す敷
石の薄い色、それら全てが街を浄化しているようにも思える。
「まぁ、今日はいいお天気ね。いつもより街全体が白く見えるわ」
 月に一度、田舎町トラヴィスに転移魔法師が訪れ、無料で町人を様々な都市に送ってく
れる。今日はその日だった。ちなみに転移してくれるのは片道だけで、帰りは自力で戻ら
ねばならないので、大抵の人はトラヴィスに近い鉱山町ハノブか神聖都市アウグスタ行き
を希望する。
 エイミーら三人はこの転移魔法師が来るときは決まってアウグスタに遊びに来ていた。
以前、古都ブルネンシュティグに遊びに行ったことがあったが、人の多さと、帰り道の遠
さに泣いたので、懲り懲りだった。

「おい! ばあさん! 今月も来てやったぞ!!」
 レンダルが葡萄畑で大声を張り上げる。しかし反応は無い。
「シャロルおばあさまぁ〜! デルタですよぅ〜! あなたのカワイイデルタですよ〜
ぅ!」
 デルタがロリっと呼びかけてみる。しかし反応は無い。
「今日はおやすみかしら? まだまだ収穫まで時間があるから畑には来ていないのかも」
「ばぁっ!」
 突如若い葡萄林から萎びた老婆が飛び出し、レンダルの腰を両手で突く。それは完璧に
体の重心を捉え、レンダルは葡萄の蔦をあわあわと掴み、未熟な葡萄たちと共に地面にひ
しゃげた。 
「くそばばぁがっ! いきなり何しやがる!」とレンダルが言うより先にシャロルが、
「これゴリ子! 私の子供たちになにしやる!!」
 これにはレンダルも呆気にとられ、「へい、すんません」と素っ気無い謝辞を送った。
「おばぁさまぁ〜」
「おやおや、デルちゃん、また大きくなったんじゃないかね〜。胸が」
「いゃん、シャロルおばあさまのえっち!」
「いいじゃないかい、若いんだから。私のように歳喰っちまえばこんなもの荷物に過ぎな
いからねぇ。なぁ、エイミー」
 エイミーはぎょっとした表情のままでシャロルを見た。エイミーに話を振ったのは彼女
もまた、既に「荷物」になってしまうような時限まで達してしまっていると思われてしま
っているのだろうか。まだ二十台。しかし子供は一人立ちした。子の父親は不明。もはや
今後、子供を授かることなどないかも知れない。そう思うとエイミーの答えは自然と
「そうね、元気な子をすくすく育てるにはおっきいおっぱいのほうがいいかも知れないわ
ね。あなたは将来有望よ? ねえ、シャロルおばあさん」
「ふん、餓鬼をどうこうするために胸は膨らんでるんじゃないんだよ。いいかい、デルち
ゃん。そのおっきな果実は男を興奮させるために膨らんでいるのさ」
「おい、エロババァ、何吹き込んでんだよ」
「ゴリ子は黙ってな! あんたには縁がない話だ! 洗濯板め! で、いいかい、デルち
ゃん。男ってのはな………」
 何故かハイテンションなシャロルの雄テイムのイロハ講義は延々続き、終わったころに
はデルタの頭の中はおかしな考えで埋まっていた。ようやく開放されたデルタは戦利品の
アウグスタワイン(昨シーズン物)を手に、ふらふらと二人の元に帰ってきた。

174 名前:FAT 投稿日:2006/03/31(金) 07:48:01 [ xkNMQw.U ]
「あのばぁさん絶対頭おかしいって。おまえも災難だな、毎月毎月あんなんと係わらなき
ゃならないなんて」
「レン、そんなこと言うものじゃないわ。ほんとはシャロルおばあさん寂しいのよ。だか
ら……」
「ん、平気ですわっ! 今回は何故かディープなお話でしたが、独特のシャロルおばあさ
ま節は聴いていて面白いんですものっ」
 とは言うもののかわいらしい顔に似合わず疲労の線が出ている。ぐちぐち言いながらも
レンダルは涼しげな噴水までデルタをエスコートし、ひと時の安らぎを与えた。

「レン、あなたって本当に優しいわね。私、あなたに素敵な人が現れたらいいなって切に
願っているわ」
 噴水の水で濡らしたハンカチをはち切れんばかりに絞り、デルタの火照った瞼をまめに
冷やしていたレンダルは、ぱっぱっと腕を振るって雫を飛ばした。
「俺に男ねぇ…。そんな物好きがいるとは思えんがね」
 彼女の短く癖のある茶毛が噴水の水気を含み、梅雨入り前の大きな陽がそれを艶っぽく
見せる。エイミーの目にはレンダルがとても美々しく映っていた。
「あなたね、ぶっきらぼう過ぎるだけなのよ。お洋服だって良いものを着れば似合うだろ
うし、髪だって労れば今みたいに艶が出るわ」
 ふっと髪のような細い指がレンダルの髪を撫でる。優しく、穏やかな手だ。レンダルは
いつでも、エイミーの一挙一動に癒されている。それは、父同様ぶっきらぼうな母の持つ
「母性」ではなく、まだ知らぬ本当の「母性」というものをエイミーに感じるからだ。自
分を超越する「何か」を持ち、手の届かない存在のようで、何者よりも近くにいる。ふと
したときの心温まる心音はエイミーでしか鳴らされはしない。28年間を共にしてきたレ
ンダルはいつからかエイミーを上に立つ者のように思えてならなかった。
「…そうかぁ? じゃ、ちょっとおされなんかしてみるか」
「オシャレよオシャレ。そんな嫌がらなくったっていいじゃない! ほら、デルタもにや
けてないで起きなさい」
 そう言われてデルタは堪えていた笑いを一息に吐き出した。「きゃははははははははは」
と甲高い笑い声が鳩を飛び退かせた。その後で鈍い音がし、泣き声に変わった。
 三人が噴水を去るとほぼ同時に、暗い影を落とす三人の冒険者たちが涼しさを求めて噴
水に寄りすがった。まだ春と呼べる時期だが、この日の太陽は特別大きかった。何人分あ
るかも分からぬほどの大量の荷物をどかどかっと地面に投げ出し、鳩はまたも散った。

「あ、見て、お姉さま。これなんてお姉さまにぴったしではありませんか?」
「うん?どれどれ…」

【聖なるパンチィー】:光の魔法によって見たものの目を眩ませる色気たっぷりの下着。

「……これが オ シ ャ レ ?」
「あらレン、見えない部分のオシャレも大事よ。私も買おうかしら…」
「うみゅ、私も買うです。レンダルお姉さまはどうなさるの?」
 レンダルの頬がひくひくと引きつる。こいつらまじだ。本気で買う気だ。
「ほら、最近はスカートの中とか覗き込んでくる変態さんが多いじゃない。痴漢撃退にも
いいと思うわ」
「……買うよ、買いますよ! で、他には何買ったらいいんだ?」
 きゃっきゃ、きゃっきゃとレンダルを半ばおもちゃにして遊んでいると突然デルタが二
人の襟首を掴み、耳打ちした。
「ねぇ、お姉さま方、噴水に腰掛けている青い男性、すごく魅力的じゃありませんか?」
 見れば先程の三人組のうちの一人で、青い髪と漆黒の鎧とが相対して全体を絞って見せ
る。片目は眼帯で隠されており、開かれているもう片方の眼はやはり青であった。
「本当ね。レン、あんな男の人はどう?」
「ははは、あんな男前は鳥肌が立っちまうよ。俺にはあわなそうだな…」
「じゃあ、私がアタックしまぁす」
 若さを挙手でもってアピールし、青年の下へ向かおうとしたとき、今度はエイミーがデ
ルタの襟首を掴んだ。
「待ってデルタ。あの女の人が睨んでるわ」
 言われて見れば、紅一点のフードを被ったショートカットの女性……歳はデルタよりも
若干上といったところか……がじぃっとデルタたち三人を監視している。もう一人いる聖
職者風の男には誰も触れなかったし、気にならなかった。
「むむ……もしかして、愛人さんでしょうか?」
「愛人って意味分かってる? あんまり見るとトラブルの元よ。買うだけ買ったし、帰り
ましょうか」
 実際には、その女性はエイミーたちのことを親しみを込めた目で見ていたのだが、太陽
の加減で影が怒ったような目を作り出していた。足早に店を去ったエイミーたちとフラン
=サーヴェリーがこのとき接触していたなら、平和な時間はもっと早くに崩壊していたか
も知れない。今はまだ、知らなくていい………

175 名前:FAT 投稿日:2006/03/31(金) 09:47:23 [ xkNMQw.U ]
>> ドリーム さん
完結お疲れ様でした。続きがありそうな終わり方で、それから新たな物語が
生まれるのか楽しみなのですが…どうなのでしょう?

>> 南東方不勝さん
アニーネタで吹きました。いいですね、キレコワ。
物語的にはかなり加速してきて、ほんとに読んでておもしろいです。
次はどんな死闘が待っているのか、そしてどんな進展があるのか、ワクワクしちゃいます。

>> 黄鯖雑魚さん
ティムのあの豹変ぶりから察するに、これから語られることは決して穏やかなものではない
ですよね……
ガクブルして続きをお待ちしてます。

>> ウォルガング さん
ああ…ありますよね、こういう自分だけの場所みたいな所が。私にとっての
お気に入りの場所はギルドの溜まり場ですかね。理由もなくふらふらと漂着
していることが多いです。

>>118さん
間違えなんて気になさらないで下さい。文章自体は読みやすく、設定もリアル
と繋がっていて面白かったです。是非続きをっ!

>> 名無し物書き@赤石中 さん
なんてうまい話の切り方をするんですか!続きが気になるとはまさにこういう
時に使うのでしょうね。あと2秒!

>> 魔道書を捨てたWIZ さん
ふぁみ!
こういう短編物大好きです。また思い浮かんだら書いてみて下さい。

>>139さん
まさにGJです。いつか、歴史も交えた小説を書くことがあったら、そのときは
参考にさせていただきます。

>> リ・クロス さん
スコールピンチどころか絶命ですね。え?この後どうなってしまうんですか?

>> 戦士のようだ さん
>たぶんこれより、白くて綺麗
ぐっと来ました。やるせなくて、どうしようもない程の恐れが儚く、切なく
伝わってきました。

>ロマサガ2をレッドストーンで煮込んでみた話
私もサガシリーズはサガフロしかやったことないですねぇ。
なので、オリジナルの作品として読ませていただきますね。

176 名前:南東方不勝 投稿日:2006/03/31(金) 16:06:54 [ gowBXNz6 ]
>>166
宿屋街を西に抜け、歓楽街へと向かって歩いていく。
港の西側に倉庫を構えているシーフギルド関係者が、歓楽街の主な金づるのため
自然と酒場などはそちらの方へ固まって出店するのは当然だ。
まぁ、今はゲイルが魔法薬売りの女と喋っているので、空を見ながら一番星を探している。
「ジャックさん、お待たせしました」
どうやら、ゲイルの用事とやらが終わったらしい。
「おぉ、もういいのか?」
「えぇ。デクストラルさんもちゃんと覚えててくれたようで…」
そういうゲイルの手には、なにやら小難しい魔術書が抱えられていた。
「その本は…、アイノ編集の魔術書の第1巻か。俺も呼んだ事はあるが…、メテオシャワーでも覚えるつもりか?
確かその巻だと、火属性について詳しく書かれていたしな」
「よく分りますね、ジャックさん。この本、なかなか手に入らないものなんですよ。
それに、内容も難解ですし…」
「あぁ、ゲイル。俺は補充式(チャージ)が使えねぇだけだ。
ガキの頃は、親父に無理やり魔術書を読まさせられていたからな」
親父曰く、俺のウィザードとしての素質は補充式が使えない事を除けば、かのゲンマ老に匹敵するかも知れんらしい。
そのため実家にいたときは、親父に魔術書の類をよく読むよう言い聞かせられていた。
もっとも、長く戦士としてこの稼業を続けていたため、そんな初心者魔術を使う気は毛頭無い。
いや、使うためには「門」を開く必要がある。だからこそ、魔術は使わない…使えないのだ。
「そういえばジャックさんは、スマグ出身だったんですよね。しかも、かの『氷結狼』の…」
「『フェンリル』なんて大層な異名を持ってるが、ただの駄目親父だよ、発明狂の」
そんな事を話しながら、そろそろ本格的に活動しようとしている歓楽街に辿り着く。
さて、酒場の皆さんが店の酒を買い占める前に俺らも買いに急がねば…。
路地の奥のほうに酒屋を見つけ、そこに二人揃って向かって歩いていく。
だが、すぐ近くの脇道から
「あぁ〜、ちょっとどいて、どいてぇ〜!!」
「ん…のわぁっ!?」
「え…うわぁっ!?」

ドスンッ!!

ケルビーに乗って爆走していたサマナーの少女と激突した。
3人揃って、盛大に石畳の上を転がる。
「ってぇ…。おい、嬢ちゃん。危ねぇじゃねぇか!!」
「ったた…。ちゃんと前を見て、ケルビーに指示を送らないと危ないですよ」
突然の衝突事故だったが、いつもの癖でちゃんと受身を取ったいたらしく、俺もゲイルも怪我は無かった。
「ったぁ…。ごめんね、あんた達。アタシ急いでるから、じゃあね。行くよ、ケルビー!」
対して、加害者である少女も大した怪我も無く、俺達への謝罪もおざなりにケルビーと共に走り去って行った。
「たくっ…。ぶつかっといて、なんだあの態度は…」
「まぁ、それだけ急いでいたんでしょう。彼女は。それよりも早くお酒を買わないと、売り切れちゃいますよ」
ゲイルの言うとおり、そろそろ酒場の最期の仕込みの時間だ。
従業員が足りない分をかき集めにそこらじゅうの酒場を蹂躙するのも、時間の問題…!
「なら、急ぐぞゲイル。…ん、なにか鞄が軽いような?」
「奇遇ですね、ジャックさん。僕もなぜか鞄が軽いような気がするんですよ」
一抹の不安を感じ、それぞれの鞄を調べる。
案の定…、そこにあるべき財布はその姿を眩ましていた。
「…。ゲイル、さっきのクソ餓鬼はどっちに逃げた?」
「…。東、ということは港ですね。隠れる場所も多いですし」
ゆらりと、幽鬼のように立ち上がる俺達。いつの間にか、ヘイストがこの身にかけられている。
「行くぞ…!」
「えぇ、すこしばかりお灸を据えに行きましょう…!」
かくして俺達は、酒屋を背に少女が消えた方角へと走り出した。

177 名前:南東方不勝 投稿日:2006/03/31(金) 16:31:28 [ gowBXNz6 ]
>>戦士のようださん
なにやら、七英雄という人達が危険だそうですが…。
英雄なのに危険とはこれ如何に?
続きを期待しています。

>>黄鯖雑魚さん
過去に依頼で「魔女狩り」を受けたティム。
魔女は複数いたようですので、フィーユ嬢はその魔女と呼ばれた人達の生き残りなのでしょうか?
そもそも、ビスルの人達は何をもってしてその人達を「魔女」と呼んだのか…?
なかなかにドキドキする展開です。

>>FATさん
おぉ、おかえりなさいです。
自分は4月から2週間ほど、ネットに接続できない状況になるんですよねぇorz
これからも頑張ってください

178 名前:リ・クロス 投稿日:2006/03/31(金) 18:05:43 [ kcso0oWI ]
前スレ>>986 >>39 >>56 >>69 キャラ紹介>>38
>>100 >>147

少女は人のために剣を取った
幼き少女の剣が人々を救うたびに、心が蝕まれていった
それでも彼女は剣を持っている
ひとりの少女は、我が身を剣として戦っている

My body is made of sword.(私の体は剣で出来ています)


やがて、青い光が収束していき
一本の美しい銀色の刀身を持った剣が現れた。

「覚悟は良いですか?」

黒騎士が振るった剣をバックステップで回避して
反撃に突きを放ったが、サイドステップで避けられた。
横から斬り込まれた剣を、篭手の盾で防ぎ
蹴りを入れて間合いを取り、突きの構えを取った。

「トルネード・・・、ストライク!!」

竜巻の如き速さで繰り出された突きは、精確に黒騎士を捉え深々と突き刺さった。

「パラレルスティング!!」

すべての攻撃を食らった黒騎士は、轟音と共に後ろに倒れこんだ。
同時にアルメリアも、糸が切れた人形の様に倒れ
纏っていた銀の鎧が、剣と共に消え去った。
少女の表情は、何時もより年相応の笑顔だった。


確かな手ごたえを感じた黒騎士は、黒い槍を抜き取り
目の前の黒い少女に、膝を着いて手渡した。

「少し暴れすぎではないか?“暗黒鬼神”よ。」

頭の中に響いてきた声に、少女は鬱陶しそうな表情になり
イラつきながらも、可愛らしい声で応える。

「その名で我を呼ぶなと言っているが?」

エルベルク山脈に視線を向けた少女は
そこに居るであろう人物を睨み付けた。

「私は私の仕事をするまでだ。」

その人物の気配が、ブルネンシュティングに移った。

「ッツ!我の屈指の製造物が破壊されただと・・・。」

轟音と共に、目の前の黒騎士が粉砕され
少女に真空斬が襲い掛かった。

「なっ!確かに殺害したはずだが!?」

真空斬を空中に飛び上がって回避すると
幽鬼の如く立ち上がった戦士を睨みつける。
先程貫いたはずの傷口が完全に塞がっている。

「記憶が蘇った、礼を言おう。」

言い終わったスコールの背中から、銀色の翼が二対出現し
白銀で出来ている大剣をとクローを持っている。

「汝はまさか龍騎士族の生き残りか・・・。」

「そうらしい、しかも・・・

聖霊神龍――――ニムラスの属性だ。」

179 名前:黄鯖雑魚 投稿日:2006/04/01(土) 09:38:23 [ Xm16/q52 ]
一話目>>103 二話目>>112 三話目>>144 四話目>>150 五話目>>160
六話目>>172

「あ、あの、ティムさん? 無理しなくても…いいんですよ?」
見るからに、辛そうなティムを見て、フィーユは気を遣う。
それでもティムは「大丈夫です」と無理に笑ってみせ話し続ける。

─────────────────………

「あの、少し調べたいことがあるので何か『魔女』に関する資料とかってありませんか?」
「ええ、かまいませんとも」
長に紹介された館は図書館、と言うには粗末なものだが
ティムが調べたいことは、どうにか調べられそうだった。
「ありがとうございます」
「何、構いませんよ。これで『魔女』が消えてくれるなら」
何か奥がある笑いにティムは嫌な感覚を覚えた。
(なんだろうな…この集落、不気味だ…)
本棚に収まっている本の背表紙を指でなぞりながらティムはそんなことを考える。

『魔女…普段は幼い娘、小動物、ときには武器などに化ける。
 だが、その正体を現したときの魔力は凄まじく、場合によっては狼の血を引く魔法使いにも匹敵する。』
『彼女らはもともとこの星の生物ではない、そういう説も学者によって唱えられている』
本によって構成されていると言っても過言ではない小さな館に、ページをめくる音だけが響く。
時計も無い。虫も飛んでいない。周りから動物の声もしない。
一度、文献を読み終えてティムは初めて月が出ていたことに気づく。
(もう…こんな時間か…)
久方ぶりに味わった静寂、そしてその妙な心地よさはティムに不快を与えはしなかった。
ぐぐっ、と屈伸をし、ティムが伸びきった時だった。
静寂を切り裂き、ティムの運命を狂わす悲鳴が聞こえたのは。
思わず体がビクッと反応する。
(ど、どうしたんだ? こんな時間に…)
付近にある森から聞こえたその悲鳴は、事態が決して良いものではないことをティムに知らせる。
(誰かを起こす暇も無い。俺が行くしかないか!)
盾と剣を素早く持ち、構え、全速力で悲鳴のした方へと走り出す。

「誰か!誰かいないのか!?」
今は魔物を引き寄せてしまうかもしれない、だとかそんなことを考える必要は無い。
とにかく人を救うんだ。いや、救わなければ。
どこかでザザザ、と茂みの上を走る音が聞こえるが
ここまで走ってきた自分の心音が見事に邪魔し音がする方向を特定できない。
(集中しろ…)
そう自分に言い聞かせ「スー、ハー」と深呼吸する。
するとふと気がつく。音が自分に近づいていることに。
(どっちだ…人か…それとも魔物か…?)
盾を構え、次第に緊張感が高まっていく。
ザザッ
「うわ!?」
音がしたほうとはまったく逆の方から何かがティムに飛び込んできた。
だがそれは魔物ではなかった。
「た、助けてください!お願いします!」
「いてて…大丈夫…そのつもりで来たから」
月明かりに照らされたその女性は、長い髪、大人びた容姿、キレイなスカイブルーの瞳をしていた。
一言で彼女を表現するなら  ───美しい───

「とりあえず近くにある集落まで逃げよう。そこまで行けば安全だから」
「え…いや、私は…その…あ、あの…」
「?」
状況がうまく理解できないティムは「とりあえず」と、その女性の手を引き集落へと向かった。
「大丈夫、あの集落にいる限り、俺が絶対に君たちを守るからさ」
「…」

彼女とティムが初めて出会ったときのことだった。
今思えば、全て定められたことだったのかもしれないし
全て逃れられないことだったのかもしれない。それは誰にも分からないし、知る由もない。

180 名前:復讐の女神 投稿日:2006/04/01(土) 16:15:36 [ VJwv03yU ]
赤い女だった。
真紅の鎧に包まれたその体は、しなやかで女性的だ。
黒の髪は、太陽の光を反射して、天使の輪を作り出す。
顔立ちも整っていて、白い肌がいっそう引き立っている。
表情は無いが十分魅力的であることは、道行く男が振り返ることで証明済みだ。
颯爽と進む姿にたじろぎ、ナンパの男たちは声もかけられない。
背に担がれた軽そうな弓に、手に持つ槍が一つの領域を作り出している。
不思議なことに、弓を持ちつつも矢筒が見当たらない。
しかし、彼女の雰囲気はそんな違和感を消しさっている。
そう、誰も彼女に違和感など覚えない。

冒険者とは、案外貧乏なものである。
とくに、仕事を選り好みしている人間は。
理由は簡単、それほど分のいい仕事などめったに無いからである。
腕のいい冒険者なら、大抵どこかのスポンサーが専属で雇っていたりするものだ。
そうすると、いわゆる普通の冒険者には利回りのいい仕事が回ってきにくい。
選り好みしないこと。
これが、冒険者が学ぶべきまず第一歩だろう。
「ただ…最大のパトロンがアイツだってのも、考え物よね」
ベットに入る前、机に向かって一日を振り返るのがジェシの日課である。
今日おわった仕事を、振り返る。
自分のたどった道筋や、とった行動。
そこにどれほどの無駄があったか、その無駄は自分にとってプラスか。
考えることはたくさんある。
必要経費とはいっても、その場で払うのは自分だ。
節約を心がけるのは当然だろう。
「今回はそれほど、へんな出費はなかったかな」
頭の中で算盤をはじく。
思い出したのは、あのお土産。
「…そういえば、あの代金も一緒に請求したんだっけ」

181 名前:復讐の女神 投稿日:2006/04/01(土) 16:16:16 [ VJwv03yU ]
自分のうかつな行動に、頭を抱える。
ボイルは、あんな性格ではあるが、賢く勘の鋭い男だ。
おそらく…というか、絶対に気づいているだろう。
そして、何も言わないに違いない。
「うぅ……また、借り作っちゃったなぁ」
あとで、代金を渡しておかなくては…と、深く考える。
彼は、受け取るだろうか。
ボイルと会うことを考えると、げんなりする。
また、ビシュカに頼もうか。
ジェシにはめずらしく、逃げの姿勢に思考が走る。
そのことに気づき、ほかの事に頭を働かせる。
「弓使いの女…か」
今日聞いた焼き討ちの話。
一人の力で、どれだけできるだろうか。
自分の頭でシミュレートしてみるが、やはり思いつかない。
「母さんなら…できたのかな」
父さんに聞いた、母さんの武勇伝。
子供に聞かせるような話じゃないが…それでも、ジェシは楽しく聞いていた。
私の知らない、母さんの行動。
私の知らない、母さんの言葉。
私の知らない、母さんの笑顔。
すべてが、ジェシにとって大切な話だった。
「あれ?」
父さんに聞いた話の中に、なにか覚えがある。
戦場の女神と謳われた、母さんの話。
「なんだったっけ?」
たしかに引っかかるものがあるのだが…思い出せない。
壁に飾ってある、今はもう使われていない弓を見る。
洗礼された、無駄の無い弓。
一目見てわかるほどの一品であり、不思議な力が宿っている。

182 名前:復讐の女神 投稿日:2006/04/01(土) 16:16:42 [ VJwv03yU ]
という話ではあるが。
「そんな力、本当に宿っているのかしら?」
いい弓であることは分かるのだが…どうにもしっくりこない。
ジェシの使う弓は、威力重視だ。
一撃一撃に力をこめ、一矢にて必殺をめざす。
父さんから教わった弓だ。
イスから立ち上がり、壁に飾ってある弓を手に取る。
「あら?」
妙な、違和感がある。
重さも、形も変わらないはずなのだが。
そう、埃がかぶっていない。
「おばさまが、掃除なさってくださってるのかしら?」
小さいころから、ジェシを可愛がってくれる人がいる。
その人は、父さんと母さんの昔からの知り合いで、私を娘のように可愛がってくれ、心配してくれる。
おまけに、定期的に家の掃除までしてくれて。
冒険で家を空けることの多いジェシとしては、嬉しいことこの上ない。
「さて、今日はこんなところかしらね」
冒険を振り返るといっても、仕事中も毎日やっていたのだ。
さし当たって目新しいものは思い浮かばない。
どうせ、明日にはまた仕事を探さないといけないんだ。
溝掃除なんて、やりたくないし。
ジェシは、ランタンに息を吹きかけ火を消した。
暗闇の中、衣擦れの音が響き、安らかな寝息が支配した。

183 名前:FAT 投稿日:2006/04/02(日) 11:48:32 [ 5jnKn.ko ]
『水面鏡』
          |
キャラ紹介>>21   |
          |
―田舎の朝―     |―双子と娘と―
          |
―1―>>22     |―1―>>173-174
―2―>>25-26    |
          |
―子供と子供―   |
          |  
―1―>>28-29    |
―2―>>36     |
―3―>>40-42    |
―4―>>57-59    |
―5―>>98-99    |
―6―>>105-107   |



―2―

 アウグスタを出るとすぐに、三人は両手いっぱいの購入物を地面に積み重ねた。
「今回もダメなのはワインだけね。風も無いし、それじゃ、やるわよ」
 エイミーが山積みの荷物に手をかざす。口では何かをぶつぶつと唱え、空に意味不明な
紋を描く。何度か同じ紋を繰り返し描くと、突如暗黒の空間が開き、地面が消えた。その
ホールの中で荷物は静かに、だが確実に小さくなっていく。もう何十回紋を描いただろう
か、エイミーが手を止めるころには荷物は従来の十分の一ほどに縮小されていた。それを
レンダルが素早く風呂敷に包む。見た目には小さくなったが、質量は圧縮前と変わらない。
不自然な重さをレンダルは感じる。
「さぁ、魔法が解けないうちに帰りましょう」
 間髪入れずに先程とは別の紋をなぞる。すると体が軽くなったように感じ、動きの全て
が通常の何倍もの速さになる。人はこの魔法を「天使の翼」と呼ぶ。魔法がかかった瞬間、
翼が生えたように見えるからである。術者の能力によってその形、大きさは異なり、これ
でその人物の魔法の質も分かってしまう。
「レンにはこれもね」
 仕上げに、と軽く指を振る。するとレンダルの背負っている荷が重さを失った。むしろ
レンダルを上に引っ張ろうとする力が働いているようだ。
「いやぁ、これくらいならそのままでもよかったんだけどな……まぁいいや。さ、町まで
競争だぜっ!」
「あ、お姉さまこのワインも……」
 デルタの声はもうレンダルには届かなかった。
「待ちなさい!」
 エイミーの柔らかな声でレンダルが立ち止まる。というよりは止められたといったほう
が正しい。レンダルの足下の土が盛り上がり、彼女の駆動を制御していた。
「なんだよ、急に」
 高速移動していたレンダルが一瞬で止まるには膨大な負荷が掛かるわけで、不快な感覚
が彼女を襲った。そんなレンダルをエイミーは得意の微笑でなだめ、ワインを託した。

184 名前:魔道書を捨てたWIZ 投稿日:2006/04/02(日) 23:50:31 [ lMnaRqdE ]
再びログアウト中を題材に書いてみました…
前作>>136
感想への返事>>137南東方不勝さん
憧れの方から返事が来ているとは思いもよりませんでした…感謝…
某回復薬(箱)買いました。金髪の盗賊のカードと、でかいふた…
味は「リポビタンD+香料」リポ好きな私はおいしくいただきました。

〜ランチタイム?〜
街に横たわる多数の屍。廃人の末路だ。
なぜか? キャラはプレイ中食事は出来ない。
数日ぶっとおしでプレイする廃人。
キャラは空腹を耐え、戦った。そして…逝った。
「あ〜食った食った。こう呼び出しがないと楽でいいねぇ…」
空腹で逝ったランサーを平然と椅子代わりにしている魔道師…ヴァレス。
魔道師は悪魔との契約などに名前を使うが、本名は別にある。
本名を知られる事は、魂の端を握られること。すなわち、逆服従させられることだ。
「ちょうどいい椅子になってくれた彼は…ふむ、シェリーか…」
廃人の癖に几帳面だったのだろう。鎧に名前が刻んである。
「よし、シェリー。起き上がって俺に従え。」
屍は先ほどまで硬直していたにかかわらず、しなやかに起き上がる。
しかし、餓死した屍に動く余裕はなかった。崩れ去る。
「やはり、屍は毒殺死体に限りますね…強度がなさすぎる…」
彼は、ネクロマンスにも手を出していた。もちろん、表向きはただのWIZとして。
「さて、今日も呼び出しが来ることはないでしょう。家のコープスを改造しますか…」
そういうと、人影の中に消えていった。

自分のキャラの設定を深くしすぎて、小説につなげそうなので、冒頭だけ書いてみました。

185 名前:FAT 投稿日:2006/04/05(水) 20:45:30 [ BxSk4Awo ]
『水面鏡』
          
キャラ紹介>>21
―田舎の朝―1>>22、2>>25-26 
―子供と子供―1>>28-29、2>>36、3>>40-42、4>>57-59、5>>98-99、6>>105-107
―双子と娘と―1>>173-174、2>>183



―3―

 風を切る音がどんどんと鋭くなっていく。向かい風だ。三人はまるで飛ぶ矢のような速
さで走っていた。時にすれ違う人が驚いた顔をして見送る。新手の魔物とでも思われてい
ることだろう。
 鉄の道をひたすらに北上し、中間地点と呼ばれる区間に入った時だった。先頭を走って
いたレンダルが手を伸ばし、後ろの二人を抑制した。その行為が何を示すのか、エイミー
もデルタも即座に理解した。
「団体さん? っていうわけでもないみたいね。どうするレン?」
「出来れば避けたいなぁ。ワイン割ったら怒られちまうし……」
 しかし迂回できるほど道は広くはない。そして、敵の索敵能力は予想以上に高いもので、
風に乗って高速の二連矢が射掛けられた。
「見つかっちゃいましたねぇ。お姉さま、ワイン割ったらシャロルおばあさまのとこにも
う一度行ってもらいますわよ。一人で」
「そりゃ勘弁。おら、さっさと片付けるから二人ともいつものよろしくな」
 ぁいっとデルタがぴょこんと飛び上がり宙で一回転する。すると煙に巻かれたようにデ
ルタが消え、代わりにピンク色の片手剣と、もこもこした盾がレンダルの両手に握られた。
「うへぇ、今日はピンクかよ。おまえ、相当さっきの男に惚れてるな」
「きゃっ」
 無機質なはずの剣から返答がある。中々気色の悪い感じだ。それを見てにやけながらエ
イミーが炎の加護をデルタにもたらす。素早さは既に常人の倍以上になっている。レンダ
ルが颯爽と風矢に立ち向かい、矢の出所を探す。
「お姉さま、左の木の上ですっ!!」
 そう言いつつ、レンダルの左腕を操作して盾と化したデルタは飛射物を弾く。もこもこ
した表面の割に硬いようだ。デルタが示した先には、耳の尖ったエルフが緑の目を見開い
て飛び掛らんとしている。レンダルが腰を落とし、デルタを脇に引いて居合いの姿勢をと
る。枝を蹴り、真っ直ぐに落下してくるエルフの剣先はレンダルの胸元を確実に捉えれる
軌道をとっていた。しかし、レンダルが剣――デルタを空に振ると、デルタを纏っていた
炎が次なる宿主を捜すように舞い、すぐにエルフを包んだ。炎が幾巻きにも重なったが、
エルフは首に括られていた乾物を食べることによってその熱波を耐え、更に戦意までも余
計に燃やした。
「レン! 人間狩りだわっ! 仲間が近くにいるかも!」
 エイミーに言われるまでもなく、レンダルも察した。そういえば近くにはエルフ達が棲
む藪森がある。敵の数は未知数、今は一匹でも増援はいくらでも来る。考えるより先に手
が出るのがレンダルという人間である。背を仰け反らせ、燃えるエルフに向かってデルタ
を投げつける。
「いっけぇい!」
 レンダルの手元を離れたデルタは意思のまま、エルフの体幹を貫く。避ける素振りを見
せなかったエルフは噴き出す滑らかな血を目を点にして眺めている。彼は、絶対の自信が
あった体の硬さに頼りすぎていた。相手を侮ったというよりは、己を過信しすぎたゆえの
結果だった。仲間に事を知らせる前に、彼は彼の誇りを生かし、死んだ。
「やっぱエルフを殺るのは気が引けるなぁ……。こいつら、ほとんど人間だもんな……」
「そうですわね。なんでエルフたちは人を好んで襲うのでしょう……?」
 投げた剣は自らの力でレンダルの手元に飛んで戻ってきた。それらが再び煙を撒き、か
わいらしいデルタに戻った。
「噂では人の肉が好物だとか、一部の心臓コレクターだけが好戦的とか、色々聞くわね」
「でも噂は噂だもんなぁ。どうだ、俺たちでその真相を確かめてみないか?」
「いやよ、早く町へワインを持って帰らなくっちゃ」
「お姉さまぁ、戦うのはデルタなのですよ? そんな恐いこといやですわ」
 好戦的、好奇的なレンダルはいつも二人に足を引っ張られる。いや、レンダルのほうが
足を引っ張っているのか。
「ほら、早く帰らないと魔法が解けてしまうわ。走って走って」
 しぶしぶ足を出すレンダルにデルタがこしょっと、
「今夜はお祭りですわ」
 急に思い出したようにレンダルの顔が明るくなった。そうして、誰よりも早く町へ辿り
着いた。

186 名前:初めて書いてみました。 投稿日:2006/04/07(金) 13:21:36 [ Fc.G4mTk ]
─悪魔が来たよ。短剣を持って─
─逃げろや逃げろ、悪魔に気づかれないうちに─
─ムダムダ、無駄だよ。悪魔からは逃げられない、お祈りしよう。─
(祈りのポーズに入る)
─せめてすぐ楽にしてくれますように!!─
(目を閉じにっこりと笑う。そこで照明が消え、ごとんと何かが落ちる音)



      歌劇〜フランデルの悪魔〜
      台本より、抜粋。


鮮やかな照明と赤い長絨毯。
そしてそれに全くそぐわない人々の怒号と叫び。
沢山の兵士の死体と血の痕を颯爽と走る男が一人。
「いたぞ!!逃がすな!!」
数人の兵士で男を取り囲む。男は軽く舌打ち、短刀を数本、右手に構える。
「喰らえ!!!」
兵士が一斉に剣で襲い掛かる。残ったのは硬い金属音。
「なっ!!これは・・・一体どうしたことだ!!」
兵士が斬ったと思った男の姿はなく、ただ金属の像が真ん中にあるだけ。
そして兵士は次々と、頭や首に短刀を突き刺され、絶えていった。

「良い夜を。」
男は薄く笑いを浮かべ、肉塊に言う。
そして男は城の中に消えていった。

ー同時刻ー
城の中に娘が一人。
豪華な部屋と素敵なシャンデリア。
鮮やかな橙のドレスと美しい羽飾り。
そしてそれとは対照的な、人形のように無表情な顔。
沢山の兵士の断末魔が遠くから聞こえていても、それは歪むことはなく、
ただ人形のように座り込んでいた。
「私はただのお人形、皆が笑えど私は笑わず、皆が泣けど私は泣けぬ。
私はただのお人形─」
無機的に歌い上げる娘の部屋に、場違いな男が一人。
「姫様!!!此処は危険ですお逃げく─」
言い切る前に、喉に短剣が突き刺さり。ドスンと大きな音を立て崩れていった。
そしてそこから現れたのは銀髪の、一人のシーフ。
「─ナクリマエ王国王女、ノアだな。」
男は冷たく言う、そしてその質問に、表情一つ変えずに頷く姫。
「俺と一緒に、来て貰おうか。」
男は手を差し出す。その手を無視し、娘が一言。
「その前に・・・名前を聞かせてくださいますか?」
「名前など無い」
ぴしゃりと言い放つ。
「そう・・・ですか・・・。では・・・私は貴方と一緒に行きましょう。」
男は冷たく笑い。皮肉交じりに言う。
「ほぉ、聞き分けのいいお嬢さんだ。まるで人形みたいだな。」
「その通りです、私はただのお人形・・・」
表情も変えずに、娘は言う。男は娘の手を握り。そのまま窓から夜の闇へと消えていった。

187 名前:名無し物書き@赤石中 投稿日:2006/04/08(土) 22:38:28 [ W8BAcf5I ]
さぁさぁ後編の始まりです。
……どれくらいになってます?すごい量だ。いやまったく。

正直、ゲームではこんなんじゃなかったとか、
このへんの演出わけわかんねぇとか、

大丈夫です。ほとんど伏線です。たぶん。
それではどうぞ。果たしてどんな駄文が待っていることやら。

188 名前:ウィッチ・ハント(後)1/13 投稿日:2006/04/08(土) 22:43:33 [ W8BAcf5I ]
 最初に四方から風が吹いた。
 次に炎が生まれた。
 炎は風に煽られて巻き上げられ、たちまちのうちに火炎旋風と化した。
 幸いだったのは、その火炎旋風がさして大きくなかったことだ。
 それでも、私とヒメは危なかった。あのまま私がヒメの首根っこをつかんで引き倒しながらガレキの
物陰に転がらなければ、火炎旋風の端っこなり直撃を受けて黒コゲになったうえ、空中に舞い上げられて
いただろう。
 物陰に飛び込んで安堵しつつ身を起こしたものの、不意に氷でできた死神の手で心臓をわしづかみに
されたような感覚を味わった。
 ヒメは確かに満身創痍だった。服はあちこちが破れたりすすけたりしてボロボロだし、召喚獣もその
ほとんどが戦闘不能状態に陥ってるワケで――しかし、ヒメ本人は命に関わる致命傷は負っていない。
 そう思っていた。
 違った。
 そうじゃなかった。
 ヒメの左腕は、肩のあたりからごっそりと、“消失”していた。完璧なロストだ。
 そしてその傷口からは、一目で致死量とわかるおびただしい量の血が溢れ出てきている。
「……ッなんかないの……!?」
 ギルドのメディカルサポーター役であるロンはここにはいない。しかしロマ村出身のビーストテイマーは
動物の扱いに慣れた獣医としての能力も持っている。こと人間に対してその治療術はまるで効果を発揮
しないが、人体の構造や傷の対処法に関してまるで無知ではないハズだ。もしかしたら使える特効薬が
あるかもしれない。
 彼女の腰のかわいらしいポーチをまさぐる。冷たい感触を感じて引き抜くと、傷の消毒用のモルヒネ
と呼ばれる薬品があった。ワルツが魔法の研究のときによく使っている試験管と同型のものだ。
 劣化は――していない、と思う。

189 名前:ウィッチ・ハント(後)2/13 投稿日:2006/04/08(土) 22:44:13 [ W8BAcf5I ]
 手甲を外して試験管の中身を数滴垂らし、手の平でそれを伸ばして傷口に塗りつける。
「……ぃっ……」
「ガマンして」
 断固とした口調で私は言った。なぜかネクロマンサーはおとなしい。ただ単に遊んでいるのか、
私たちの姿を補足できていないのか。もし後者であるなら、うかつにネクロを挑発するのはおもしろくない。
 ヘタに声でもあげて見つかりでもしたら、それはイコール、死だ。
 包帯になるものがないので、ヒメのフードを破って傷口に巻く。少なくとも傷口の洗浄はできた。
「動ける? 動けるね、動いてもらわなきゃ困るんだからね」
「は、はぃ……」
 既に彼女の唇は紫色。瞳も目の前の私にさっぱり焦点が合ってないように見えるが……仕方ない。
 ロンさえいれば、うまい死に方さえすれば彼に蘇生してもらえる。さすがに脳が破壊されてしまうと神の
お力を持ってしても死の治療はできないそうだが。
 ネクロマンサーは……動かない。気付いてないのか。
「ロンとカリンは? どっかで会わなかったの?」
「わたしは……さいしょに……………の部屋に着い………めんなさ…………」
「そっか」
 やはり、それぞれが別の場所に飛ばされてしまったのか。
 死んでもロンに蘇生してもらえるという考えは、頭から消し去っておくべきだろう。えてして、そういった
気の緩みがツメの甘さに繋がるものだ。むしろロンが既に死んでいるという可能性も考慮しておかねば
ならない。常に最悪の事態を想定しておくべきだ。
 逃げるか? それこそムチャな話だ。たまたまガレキが多い一帯に滑り込めたからいまはいい。
 しかし、私が走ってきたこの若干100メートル。ネクロマンサーの一直線上であって、魔法の射程範囲内。
 ここに飛び込むのはまさに飛んで火に入る夏の虫だ。火に入った虫は、もれなく死ぬ。
「……ダメ。考えてても始まんないね。みーちゃんの傷くらいなら治せるね」
「は、はぃ……」
「上出来。ここでゆっくり、少しずつでいいから治したげて。ヤツに狙われたら、なにがなんでも逃げること」
「ゎかりました……」
 虚ろな表情で、しかし力強く愛用の笛を握り締めた彼女を見て微笑む。
「いい子。じゃ、ちょっと行ってくるから」
「ぁ、あの……」

190 名前:ウィッチ・ハント(後)3/13 投稿日:2006/04/08(土) 22:44:44 [ W8BAcf5I ]
「Go……!」
 私ひとりでこの化物と渡り合えるとは思っていない。
 かといって、勝ち目のない戦いを挑もうとも思わない。
 ばっと物陰から飛び出すと、ヤツもこちらに気付いた。距離にして10メートル。近い。
 走ってヤツの足に飛びつく。ゾンビやコボルトの表皮みたいな、ぬるっとした感触はしなかった。
 渾身の力を込めて槍をヤツの足に突き立てる。
 緑色の血液だった。引く抜くと、どくどくとそいつが流れ出てきた。
『huuuuuuu』
 遥か上の高みのほうから、そんな呻き声が聞こえた気がした。割れ金を打ち鳴らしたようなひどい
ダミ声だ。
 その呻き声が呼び寄せたのか。
 ヤツの全身を取り巻くようにあらわれた赤っぽい燐光は、魔力、というやつなのか。
 それが、ヤツの身体に収束した。
 集中して、結実し、あふれだしたのは、火だった。
 何本もの炎の帯が渦巻いて、乱れ、私の身体を叩こうとした。
 おいおい――と思ったときにはすでに私の足は止まっていて。
 せめて来たるべき恐怖と衝撃を和らげるべく……などと我ながら馬鹿な考えにたどり着き、目をつむった。

「……?」
 しかし、まず間違いなく私の四肢を破裂させて焼却し、分解するであろう火炎の渦は……来なかった。
 おそるおそる目を開けると、そこには天使がいた。
 実際に生粋の天使などといったものを見たことはない。よって、私にとっての正解などありはしない
のだが……おそらく彼の今の姿こそが、万人にとって限りなく正解に近い“天使”の姿なのだろう。
 彼の名は、ローンダミス。ローンダミス=ディザーテイズ=ル=セルバンテス。
 『ローンダミス』とは天界の古い言葉で“殲滅する”“絶滅する”などといった言葉を意味する。
 彼がどうしてそのような呪われた名前を授かってしまったのかはわからないが、普段、一人の侍祭として
日々の生活を送る彼は、私たち仲間に対して優しすぎる。
 よって、ひそやかに平和すぎる。
 そんな彼を、“滅”などと物騒な。
「下がッテ」
「う、うん」

191 名前:ウィッチ・ハント(後)4/13 投稿日:2006/04/08(土) 22:45:04 [ W8BAcf5I ]
 彼を、いや、私たちを包み込むこの白い、しかし透明な魔法の結界はそんな彼に残された幾ばくかの天使と
しての力。
 結界の外では激しい炎と旋風が結界に叩きつけられていた。その姿はさながら――
「シュツルム・ウント・ドランク。荒れ狂い、悶え叫ぶというやつだな」
「――うぉわっ!?」
「む。敵か?」
「い、いやそうじゃなくて。キミ、今までどこにいたの?」
「どこって、お前の後ろにだ。今もこうしてお前の背中を守ってやってるじゃないか」
「そうじゃなくて今まで……じゃない、じゃあさっき! ヒメが死にかけてたときキミはどこにいたの!」
「ヒメ? そういえばあいつの姿が見えんな。まったく、あれほど下校するときは寄り道せずにまっすぐ帰ってこいと
 言ったのに。しょうがない奴だな」
「……」
 時間の無駄だ。
 我らが“昼飯時”のマスターであるカリンは『実は頭ヤバいんじゃない?』と思ってしまいたくなるほどいい加減だ。
 どうでもいいお昼ご飯のメニューからギルドの行く末を決める重大な決議まで、今晩は何にしよう、カレーが
いいな、とかそんなノリであっさりと決めてしまう。それで物事が良い方向に運んでしまう――少なくとも、状況が
悪化するような事態を招いたことがないから不思議だ。しかし、そんな不足の事態がすぐ目の前に迫っていないとも
限らない。コイツの判断で命の危機に陥るような出来事が1分後に起きるかもしれないし、もしかしたら30秒後かも
わからない。
『我>>>>楯突>>>>>>愚御使』
「喋っ……?」
 ネクロマンサーの声とおぼしき音が響いてきた。同時に魔法の勢いがグンと加速し、魔法の障壁とぶつかり合って
ドンという鈍い音を残す。
 結界を張り続けるロンの体が大きく揺れた。
「ロン。保たないのか?」
 カリンの問いに、目を向けもせずに「長時間ハ」と答える。
「ふむ。このまま防戦していても死ぬだけだな。機を見て打って出るしかあるまい」
「機……って言っても……」

192 名前:ウィッチ・ハント(後)5/13 投稿日:2006/04/08(土) 22:47:07 [ W8BAcf5I ]
 ロンの肩越しに前を覗こうとすると、
「前に出るなっ!」
 カリンが珍しく慌てて私の身体を後ろへ引き寄せるのと同時に、ドーンと重い音がして結界がネクロマンサーの
魔法を受け止める。
 結界に加わる力に、ロンはまだなんとか耐えていた。しかしその顔色は見る間に白くなっている。結界を支える
両腕にもぶるぶると震えが来ている。
「結界が決壊するのも時間の問題だな」
「……」
「む? 何かおかしなことでも言ったか?」
「……もういい……」
 今度は炎と風が入り混じった火炎旋風が結界を襲った。ロンは今度も耐え切った。だが、ネクロマンサーの魔法
のピークが過ぎて彼が次の魔法を起動させる精神集中に入った瞬間、ロンはガクリと膝をついた。
 結界が崩れて、火炎旋風の余韻が私とカリンを襲う。
 ネクロマンサーは勝利を確信したのか、チリチリとした空気の奥で顔を歪めていた。
 再びネクロマンサーの身体に魔力が収束し――
 彼の身体が、ボンと軽く爆発した。中途半端に蓄積された魔力が、外部からの衝撃により暴発したのか。
 何事かと視線を巡らせると、一匹の犬がネクロマンサーの、人間でいうなら胸の部分に噛み付いているのが見えた。
 続いて聞こえてきたのは、笛で奏でられる勇ましそうなメロディーの……突撃ソング。
「――クリフ、俺に続け!」
 名前を呼ばれてはっと我に帰った。そこで私は初めて、自分が槍を手にしているということに気付いた。汗ばんだ
両腕でフィルルムを握り直し、駆け出す。
 こうと決めた後のカリンの行動は素早かった。愛用の大剣を肩に担ぐようにして構え、勢いをつけて跳んだ後に、
「があああっ……!」
 盛大にぶった切ったのだ。
 彼の持つ剣、フランヴェルジュとは、フランス語のフランボワヤンが語源である。14世紀末から15世紀に
全盛したフランスの後期ゴシック建築の一種で、17〜18世紀には剣の形式名としても知られるようになった。
この形状の剣によって傷を付けられると傷口は肉片が飛び散り、直りにくい傷になる。また、刺突をして抜くときにも
傷口を広げることになるので、その美しさの裏には凶暴さを秘めた形状と言える。しかし、両手持ちの大型剣が
廃れた後には、その装飾的外見から儀式用剣として用いられ、近年までその名は知られていた。

193 名前:ウィッチ・ハント(後)6/13 投稿日:2006/04/08(土) 22:47:28 [ W8BAcf5I ]
 と、なにかと物知りなワルツに教えられたような気がする。世紀だとかゴシックだとか……さっぱり意味不明だが。
 まぁ、彼の持つ剣の切れ味を見せ付けられれば、それが本物の『ふらんす』とやらで生産されたものかどうかの
真偽などどうでもよくなってくるというものだ。
 跳躍してその分厚い刀身を身体の動くままに振り回し、斬り、払い、薙ぎ、突く。最初の一撃で左足を膝から
切断されて体勢を崩したネクロマンサーには、どうすることもできなかった。
 私も駆け寄るまでの時間も惜しく弓に火矢をつがえた攻撃したが、これはもう完全にオマケでしかないだろう。
 カリンは一度地面に足をつけた後、また跳んで片膝をついたネクロマンサーの腰のあたりにフランヴェルジュを
突き刺した。
 深々とヤツの身体に埋め込まれた剣をカリンは“足がかりにして登り”、もう一度大きく跳ぶと今度は心臓のあたりに
真っ直ぐ伸びた刀身の短剣をずぶりとうずめた。
『u……』
 もちろん、まだネクロマンサーの胸に喰らいついてぶら下がったままだったワンちゃんを落ちてくる際にしっかりと
キャッチすることも忘れない。
『gu……gugugugu…………』
 ズン……という鈍い音と共にヤツの身体は床に吸い込まれるようにゆっくりと沈んでいった。魔力の気配だとか殺気
だとかも瞬く間に霧散し、そこは巨大なネクロマンサーが横たわっているということを覗けば何の変哲も無いただの
暗い部屋となった。
「……ふむ。まあ、こんなところか」
 カリンは両腕に抱えたケルビーをぞんざいな手つきで足元に下ろしてやった。故意か無意識かはわからないが、
腕と腕がケルビーの首周りをうまい形に絞め付けるような感じになってしまっていたので、わたし個人の感情としては
さっさと下ろしてやってほしいところだった。
 そして、その犬の飼い主はといえば。
「……死ぬか………ぃました…………」
「む? おお、いたのか」
 ガレキを押しのけて一歩一歩とヒメは出てきた。一応止血はしてあるものの(私がやったのだが)、滲むを通り越して
すでに染みてきたその新鮮な赤い血液は見るに堪えないものだった。
 そんな主人を気遣ってか、ケルビーはヒメの元にととと、っと駆け寄り彼女につけられた傷を自らの身長が届く範囲で
手当たり次第に舐め始めた。ぱっと見るとかなり感動的なシーンではあるが深く考えてみるとそうでもない。
 負傷者はまだ……

194 名前:ウィッチ・ハント(後)7/13 投稿日:2006/04/08(土) 22:49:26 [ W8BAcf5I ]
「そうだ、ロンは」
「はイ」
 そこにはいつも通り、無口で無表情なビショップがいただけだった。無駄なくついた筋肉の上に羽織られた変わった
形状の僧衣は、ハッキリ言って、似合っていなかった。
 考えてみれば、彼がちょ〜っと神に祈りを捧げて回復の術式を発動させればたいていの傷や魔力は瞬時に回復できちゃう
わけで。私たちのように他人からの支援を期待するような立場ではないわけで。自己再生などというきわめて経済的で
合理的で効率的なマネができちゃうわけで。
「……ですよねー……」
「ダイジョウブ・デすカ」
「は、はぃ……い、いえ、痛い……ですけど…………」
 そりゃそうだ。
 ヒメは懐のポーチから、自分の右腕だったものを取り出した。だらんと力なくぶら下がったそれは、耐性のない者なら
見た瞬間に昼飯を吐いてしまいそうなほどグロテスクな代物だった。別段、自身が繊細な神経の持ち主であるとは思わないが、
私もしばらくの間は肉が食べられそうもない。
 というか、消し飛んだんじゃなかったのか。私の思い込みか。いつの間に回収したのやら。
 ロンはヒメの右肩、右腕の付け根があった場所に巻いてある包帯を解くと、傷口と“生腕”の傷口をくっつけて何やら
呪文を唱え始めた。ヒメは、きっと耐え難い痛みだったのだろう。必死に悲鳴を飲み込んで睫に涙を溜め込んで沈黙した。
 ロンの手元が淡く輝く。するとどうだろう、彼が手を離した瞬間には離婚したハズの二人がもう元通りだ。
「ふぅ……ま、ナニはともあれ、一件落着ってコト?」
「うむ、だといいがな」
 カリンは外套で顔をぬぐった。ネクロマンサーの身体を盛大にぶった切ったときに返り血を浴びたらしい。よく見ると、
その血は緑色だ。
 しかしその外套も返り血を浴びまくっているおかげであまりきれいな布とはいえない。
 やれやれと思って私はベルトについているポケットから清潔な布を取り出そうとした。その前に、イヤなものを見て
しまった。
 目の錯覚かとも思ったが、鋼鉄のごときクラレット=フィージェの理性はそれを見逃すことをよしとしなかった。
「カリン、それ……」
「む?」

195 名前:ウィッチ・ハント(後)8/13 投稿日:2006/04/08(土) 22:49:54 [ W8BAcf5I ]
 彼の足元で蠢く、それを。
『uuuuuuuugaaaahhh』
「やば……」
 生きていたのか? 確かに、明確に“死んだ”なんて誰も明言はしなかったが。
 槍を手に夢中で駆け出したが、その行動がまったくの徒労であることは私自身わかっていた。
 ネクロマンサーの身体に魔力が収束する。赤っぽい燐光がヤツの身体を駆け巡る。
 ダメだ。間に合わない。距離がありすぎる。この若干20メートルがこれほど長い距離だとは思わなかった。仮に
間に合ったとしても、自分に何ができるのだろう――カリンは持ちうる刃物を2本ともネクロマンサーに叩き込んで
しまったし、ヒメの召喚獣は出現すらしていない、ロンの追放天使の魔力なら……? いや、いまの彼はビショップだ。
 もしかして……
 ジ・エンド?
 ビリビリと空気が振動してくるのが肌に伝わる。日頃からそれなりに折り合ってきた死神の手が、ついに私の肩を
叩いたような気がしてきた。
 いままでありがとよ、ずいぶん長い付き合いだったな。でもそれもいまこの瞬間で終わりだ。さあ、俺と一緒に
地獄へ行こうぜ。ネクロマンサーの顔は私にそう言っている気がした。
「殺すのかァい? その前に……保険金をかけたまえよ」
「……はい?」
 恐ろしく場違いで、ナルシストで、変態で、ストーカーな声が私を現実の世界へ引き戻した。
 と同時に、室内であるにも関わらずどこからか隕石が飛来してきた。
 一発。
 二発。三発、四発。そこで一息つくのかと思いきや、杖をブンブン振り回しながらポーズを決めてさらにもう一発。
 計5発の隕石がネクロマンサーの身体を直撃した。さすがにこの大技の応酬に立っていられなくなり、今度こそ
ヤツは大地にその巨体をうずめた。
「フ……ッ…………! キマった、ネ」
 ヤバい。あの変態鬼畜助平童貞ストーカーキ○ガイセクハラ魔術師が来てしまった。
 どこだ――どこにいる? 氷よりも冷たい汗が背中を伝っていった。視線を巡らせ、探す――いた。
 奴は、どういう手品を使っているのか、“天井に立っていた”。放り投げた石が自然に下に落ちていくというあの
原理、というか世界共通の一般常識を完全に無視したブラヴォーな立ち居振る舞いだ。

196 名前:ウィッチ・ハント(後)9/13 投稿日:2006/04/08(土) 22:50:49 [ W8BAcf5I ]
 彼は体勢を反転させるとわずか数十センチの段差から飛び降りるかのように、普通に落ちてきた。もちろん背景には、
バラの花びらがこれでもかといった具合に散りばめられている。なぜか。
「お、おまえ……」
「キミのいるところにはボクがいる。いや、行く。なぜ? ――愛ゆえに。愛してるヨ、フィージェ」
 昼飯時に一番不必要な存在が来てしまった。どこからか取り出された一輪のバラの花は、私に向けられている。
「ボクがいなくてツラかったろう? でも、もう安心だよフィージェ? ボクがキミを寂しがらせることなく、辛い目に
 遭わせることもなく、――愛してあげるヨ。ボクの愛は無限大だ。いや、日々成長していると言ってもいい。キミ
 へのこの思いは、留まらず、止まらず、それでいて変わることなく、しかし、日を追うごとに強ま……」
「死ね」
 ムカついたので、駆け寄ってぐーで横っ面を殴ってやった。「げぱっ」という意味不明の擬態語と共に歯が数本
どこかに飛んでいった。少しスッキリした。
「フ……相変わらずつれないね」
「黙れ」
 涙目で頬をさする彼の股間を一蹴り。「ふだっ」。
「ワルツ。いたのか」
「むごおぉぉぉ……っと。フフ、いたさ、いるとも。フィージェのいるところにボクはいる。行く。先回りしてでもネ」
「そうか。ともかく、このネクロマンサーだ。倒した証を持っていかないとな」
 カリンはあごをさすりながら、倒れたネクロマンサーの全身をじっと眺めた。
「依頼主からは明確な指定がなかった。逆に困るんだよな、こういうの」
「そうだね。首を丸々持っていくにしても、斬り落とすのも大変そうだし、腐ってわからなくなっちゃうしね」
「これが人間なら指を斬って指紋を照会させるんだが、そうもいかんだろうしな。どうするべきか」
 うーむと考え込むカリン。もちろん私だって何かいいアイデアはないものかと思案を巡らせているのだが、なかなか
効率の良さそうな運び方が思い浮かばない。どの部位をどう包んで持って帰ろうか。
「――! あ、あの……」

197 名前:ウィッチ・ハント(後)10/13 投稿日:2006/04/08(土) 22:51:37 [ W8BAcf5I ]
 遠慮しがちにそっと手を上げたのはヒメだった。足元では召喚獣のみーちゃんが行儀良くおすわりしている。
「おお、ヒメか。何かいい案はあったか?」
「そ、それなんですけど、実は致命的な問題が……」
『?』
 一同が首を傾げた。魔物の気配だとかには敏感な彼女であるが、ネクロマンサーが倒れた今、この部屋に敵はいない。
 彼女が気配を感じ取るべき対象はいないハズだ。
「あ、あれ……あそこにいるのって……」
『?』
 一同が首をひねってヒメが指差した方向を見やった。
 そしてその場にいた全員の顔色が青くなった。いや、青くなったというかなんというか。
 とにかく、その場の雰囲気が一種の“戦勝ムード”というものでなくなったということは確かか。
 ヒメが指差した先には、『半透明の少女が浮かんでいた』。うっすらと向こう側の壁の模様が透けて見える。
 歳の頃は、15〜17歳くらい。もしかするともっと上かも知れない。腰にまで届こうかというその長い髪が印象的な
少女だ。服……というよりは、布に穴を開けて袖と頭を通しただけ、といった感じの粗末な衣服を身にまとっている。
『ツァイス……ありがとう』
「……うっ……」
 耳から聞こえてくるのではない。頭の……脳に直接響いてくる、女の声だった。
『これで我が王国も終わりね。忌々しい……忌々しい悪魔ども。でも、我々エリプトは、彼らに及ばなかった。
 アリス。イライザ。シークス。エクサ。ジュリアン。タニス。グラント。皆、向こうに行ってしまいました。
 ご苦労様でした、ツァイス・シャノ・バルバロッサ。除隊を許可します』
「……なに……コイツ……」
 女がそう言うと、ネクロマンサーの死体は周囲の風景に溶けるように姿を消していった。
『私が最後の一人。どこで間違えたのかしらね……』
「……残念だがエリプト最後の女王よ。ここが貴女の墓標となる。もうエリプトはないんだ。
 ……貴女は、失敗したのです。女王」
 ワルツが一歩前に出て声高らかに言った。静かだが力強い――コイツ本当にあの――ワルツか?
 それに、コイツは、何を言ってるんだ?

198 名前:ウィッチ・ハント(後)11/13 投稿日:2006/04/08(土) 22:52:12 [ W8BAcf5I ]
『歴史とは面白いものね……ふふ。貴方が自身の手でこの国の歴史を終わらせるなんて。
 自ら……過去の清算に、この愛憎の復讐劇に幕を降ろそうなんて』
「それが、私の役目です。陛下、お覚悟を」
『見逃してなんて……くれないのね。いいわ。浄化して? 貴方に浄化されるなら、私も嬉しいのよ』
「……身に余る光栄にございます」
 ワルツは振り返ると視線だけでロンを見た。ロンはそれで察しがついたのか、小さく頷くと懐から小さな短刀を
取り出してワルツが差し出した手の平に乗せた。
『あの時私は誓ったの。私の王国を滅ぼした、国民を蹂躙した、土地を焼き尽くしたあの悪魔を皆殺しにしようと。
 わかる? 悪魔がいるところには私がいて、いつも奴らを見ていた。国が大好きで……愛ゆえに』
「それでまた、エリプトを再興させようとしたのですか。転生に転生を繰り返し、身体まで失って……」
『人さえ集めれば、またできると思ったの。……ばかね、私ったら』
 くすくすと力なく笑う少女。
 ワルツは何も言わず少女へ向き直った。その手には、あの短刀が握られている。
「それでは……失礼します」
『どうぞ』
 ワルツが短刀を振り上げる。
 何故かみんなは、何も言わず、何も言えず、その光景を見つめていた。――私も。
 カッと眩しい光が巻き起こった。私はたまらず額に腕をあてて目をつむった。

『私の水を受け取って…………』

 どこからか、そんな声が聞こえた気がした。

199 名前:ウィッチ・ハント(後)12/13 投稿日:2006/04/08(土) 22:52:48 [ W8BAcf5I ]
「う……」
 気付いたら、私は木製の床に横たわっていた。
 またどこかに飛ばされてしまったのだろうかと思って辺りを見回すと、今度はきちんと全員いるみたいだ。
 私が一番最初に意識を取り戻したらしく、皆はまだぐったりしている。しかたなく、一人一人を起こして回る
ことにした。
「しかし……」
 目が覚めたカリンの第一声はそれだった。
「ネクロマンサーは消えちまった。骨の欠片でも残っていればよかったんだがな……」
「その件なら心配はないヨ」
 ホラ、とワルツの手に短刀の代わりに握られていたのは、示し合わせたかのようにネクロマンサーのものと思われる
白骨のカケラだった。
「コレを持っていけば充分だろう。成分を調べればネクロマンサーのものと鑑別されるハズさ」
「そうか」
 よく見渡すと、ここはハノブ望楼1階の一室のようだ。あの光を浴びた後……私たちはここに飛ばされたらしい。
「……ふむ……」
 カリンは釈然としない顔だ。
「……これで任務完了、だな」
「はイ。帰りま・しョウ」
「悪いが、ボクはもう少しの間ここにいるとするヨ。急用を思い出した。フィージェ、君も来てくれ」
「断固拒否」
「そう言わずに。キミたちは先に行っててくれたまえヨ」
 唐突なワルツの台詞にみんな違和感を感じたようだが、カリンが「さあ、昼飯にするぞ」と歩き出すとパターンの
法則で他のメンバーも続いた。
「さて、邪魔者は消えた、か」
「キミの行動と言動如何によっては、殺すよ?」
「そう言わずに。ついてきてくれ」

200 名前:ウィッチ・ハント(後)13/13 投稿日:2006/04/08(土) 22:53:14 [ W8BAcf5I ]
 こっちだ、とワルツは勝手に歩き出してしまった。無理についていかなくても良いのだが、慣れない建物の中で
一人になるのは面白くないとしかたなく彼の後に続くとした。
 ワルツは建物の中をすいすいと迷うことなく進んでいく。
「この建物は天体観測所も兼ねていてネ。別棟には世界最大の望遠鏡があるんだ。
 知ってるかい? 望遠鏡、って。ここ、ボクたちが暮らす地上というのは……広い言い方をすると“天体”と
 言うのだがネ。ずっと遠く離れた別の場所には、ここによく似た天体が浮かんでいる。
 距離にして……いや、距離になんてできないな。とにかく、途方もない遠い場所に、天体はある。
 数にして、いったいいくつあるのだろう? いままで確認されているものですら、いくつあることか。
 ともかく、そういった“天体”……星、といえばわかりやすいかな?
 その星を探し、研究し、鑑賞するための道具が、天体望遠鏡なんだ」
 そんなことをワルツは歩きながら一方的に喋くっていた。正直、どうでもいい。
 中庭を抜けて望楼とは別の建物に入った。ここが、観測所というやつか。来るのは初めてだ。
 真っ昼間だというのにかなり薄暗い。そのぼんやりとした暗闇の中に浮かぶ巨大なシルエット……。
「これが天体望遠鏡だ。通常、昼間に星は見えないんだが、この望遠鏡はスマグの魔法使いどもの技術の粋を
 集めて作ってあるらしくてネ。太陽の昇っている日中でも、星を見ることができる」
「ふーん」
「ただし、決して太陽を直接覗いちゃダメだ。本物の目玉焼きが欲しいなら別だけど、ネ」
 ちょっと待っててくれ、と言うと彼は望遠鏡に飛びついて何やら作業を開始した。建物の天井を破って突き
出ているこの筒が、いったい何になるというのか。
 少しすると、「来てくれ」と手招きされた。仕方なく歩み寄ってみる。
「ここを、片目を閉じて覗いてみてくれ。左目を閉じたほうがいいかな?
 ただ、変にあっちこっちをいじって太陽を見てしまってはダメだ。これにだけは注意してくれ」
「はいはい……」
 さりげなく肩に回されようとしたワルツの手を払いのけ、腰を曲げてその小さな筒? みたいなものを覗いてみる。
 その瞬間、私の身体を何かが突き抜けていった。
 私が求めていたもの。
 私がここにいる理由。
 私が戦う理由。
 ――赤い石。レッドストーン。RED STONE。
「ワルツ、これ……!」
「これはボクの自論だヨ。
 ……ズバリ赤い石とは、あの星だ。あの星を……じゃあ、仮に火星と呼ぼうか。
 レッドアイの会長アイノ・ガスピルの言葉にこうある。
 “あれは至高の宝ではないのだ。それを忘れ暴走すれば、必ず汝を破滅に引導するだろう”……。
 さっきも言った通り、星とはとても大きい。それはこの火星だって例外じゃあない。
 ……キミは、流れ星とか、流星なんかは知っているネ」
「あの、3回願い事をすれば願いが叶うっていう……?」
「当たりだ。さすがボクのフィージェ。
 流れ星というのは、小さな星……言うなれば、星の出来損ないがボクたちの星に降ってくることを言うんだ。
 ということは、だヨ? 小さな小石ほどの星でなくとも……あの火星がここにぶつかってくるという可能性も
 否定できない」
「……何がなんだか、よくわからないんですけど」
「要点はただ一つ」
 ワルツは人差し指を立てて告げた。
「あれがレッドストーンかも知れない。
 そして何らかの行動が引き金となって、……全てを飲み込んでしまうかも知れない。ということサ」




                                                 〜「ウィッチ・ハント」〜END

201 名前:名無し物書き@赤石中 投稿日:2006/04/08(土) 22:56:19 [ W8BAcf5I ]
○簡単なキャラクター紹介

クラレット=フィージェ(Lv84ランサー/アーチャー)
槍と弓を巧みに使いこなす傭兵。ギルド『昼飯時』のメンバー。愛称クリフ。
レベルが低いのですぐピンチになる。

ローンダミス=ディザーテイズ=ル=セルバンテス(Lv121ビショップ/追放天使)
かつて天界を追放された天使にして敬虔なビショップ。愛称ロン。
ギルドに必ず1人はいてほしい「いいビショップ」。無口。
守備的な動きが得意。彼がいなくなったらPT全滅します。

ワルツ(Lv111ウィザード)
ひたすらクリフに対するアプローチをかけまくる変態魔術師。普段の素行はアレだが実は有能。
ギルドに必ず1人はいるセクハラウィザード。
今回、書き直しの関係で出番がかなり削除されてしまったかわいそうなひと。

カリン(Lv133戦士/剣士)
ギルド『昼飯時』の党首。普段は馬鹿っぽいがたまに名案を思いつく。
ギルドに必ず1人はいる『勇者様』。
大剣をぶんぶん振り回す戦場の主役。

ヒメ=K=ユウマ(Lv75ビーストテイマー/サマナー)
無言テイマ。召喚獣とペットをこよなく愛するいい子。実は折檻のプロ。
ギルドに1人はいてほしい「癒し系」テイマ。
ペットは友達。

202 名前:名無し物書き@赤石中 投稿日:2006/04/08(土) 23:30:37 [ W8BAcf5I ]
専用ブラウザの調整が甘いのか、ギコナビの動作が不安定な今日このごろ。
ちゃんと投稿…できてますよね?

>FAT氏
エルフには、
・美形
・剣と魔法が得意
・森を愛する
・人間と交流を持たない
・なんかの封印を守ってる

…という印象がありました。
……やってください(涙)。

>魔道書を捨てたWIZ氏
ひ、ひ、ひひひ、昼飯時ですかぁ!いい響きですよね。ランチタイム。
誰か、「昼飯時」でギルド作ってくれないですかねぇ。桃鯖にでも。
ネクロマンサーのヴァレス。
…昔、ネクロマンサーでありながらアルケミストでもあるという二足のわらじを履いた魔術師を見かけたような…。

>黄鯖雑魚氏
そう、これなんです。
この「そして運命の歯車は動き出す」みたいな感じのがやりたいのです。
しかし、自分の現行のストーリーではそんな壮大な物語は無理なわけで。
あぁ、スケールが…スケールが……。……メタルスケールアーマー!

>リ・クロス氏
ふぁ、ファンタジーだ。しかも…も、燃える展開だ!?
なんだか、NPCの皆さまが大活躍してますよねぇ。ケイルン強ぇ!
どうでもいい話ですが、自分はスィラパンダが好きです。ブルンネンシュティグのテレポーター。

>戦士のようだ氏
バイオハザード的展開ッ!ドラキュラになっちゃうのでしょうか。
間違って病気のコボルトになってしまったりしたら……。
そ、それはそれで嫌だ!

ロマサガはプレイしたことがないです。
代わりといってはなんですが、FFは1〜6までプレイ済みです。以降はプレイしてません(どうでもいい)。
しかし、コボルトの洞窟を制圧するのにこの規模の大部隊とは……w
昔の人ってのは面白いですよねぇ。自分も(後略

>ドリーム氏
エ(ry はスルーですかw
それではワルツくんにでもセクハラさせることにしましょうか。いや、それをやって困るのは自分だ。

それにしても、このバッドエンドは……レイド悪人じゃないか!レイドがラスボス!?

>南東方不勝
武道家(29)カワイソ(´・ω・)ス
跳び蹴りは好きです。
ですが跳び膝蹴りは嫌いで(後略


…最後に、ちょっと後書きを。
今回の「ウィッチ・ハント」はきちんとした一話完結モノのすっきりした、まあ、アレを予定していました。
メインクエ実装やら公式設定やらのおかげで台無しになってしまいましたが。
そうそう、最近、ようやく1stキャラで「クロマティガード名誉隊員」の称号を得ました。
まだそれしか進んでないのです。
物語の核心に迫れる、というか今回張った伏線が役に立つ時…来るのかなぁ、と。あぁ。

次回のタイトルは「死(私)闘! リュウィンズVSクリーパー 〜蟹の甲羅は渡さない〜」
です。たぶん。
クエスト「鉄の補給:軍備」ですね。どうせ、長くなってしまうことでしょう('A`)

203 名前:黒い人 投稿日:2006/04/09(日) 17:50:00 [ Gf1Vfgqw ]

皆様お久しぶりです。黒い人です。
皆様の達筆ぶりに圧巻されながらコッチョリ詩などを
落としていこうという魂胆であります。
感想等こちらには落としてはおりませんのは
読むのも書くのも遅いためであります…うう。

--------------------------------------------------------

-春夏秋冬-




若葉萌ゆる青空 大樹の陰で笑い合う
サンドウィッチのバスケット 草花に預けた オヒメサマ



片翼のない天使 白い砂浜で抱き合った
一つになって嬉しくて 星を数えた ハニカミ屋さん



夕暮れにかかる隊の声 ブーツが紅葉を踏みつけた
「帰るまでいい子でね」 初めて泣いた サミシガリ



こがらしが身にしみる 戦で焼けた人の国
片翼の倒木群をおしあげて
「いい子でいたのに」 ツヨガリ屋さん



桜舞い鳥ウタウ 大樹の陰のテルテル坊主
糸が切れたオニンギョウ 笑顔で叫んだ チャッカリ屋さん



「天使はオレだよ」 かっこつけ
「もういかないでね」 泣き虫さん




-------------------------------------------------------------Fin

204 名前:黒い人 投稿日:2006/04/09(日) 17:52:37 [ Gf1Vfgqw ]
抽象表現ダイスキです...。


>>202
自ブログで恐縮ですが、「アイノの報告書」と
もう一つの資料をまとめたものがございます。
こちらに公開するのが恐ろしいですが、
少しでも職人様たちのお役にたてれば公開したいと
思ってます...。

205 名前:名無しさん 投稿日:2006/04/11(火) 06:47:44 [ nXPscqHY ]
>>118

登場人物紹介 参考資料:エリのプロフィール帳

大河内 エリ(14) 女 ビーストテイマー/サマナー
長めの黒髪に金春色と紺鉄の瞳を持つ(虹彩異色症)ギルド「ミックスピザ」メンバー。イギリス人のハーフ。
普段は笑い上戸、口が達者で陽気だが現実的・冷徹な面も。召喚獣を無詠唱で三体まで出せる奇才召喚士。調教術は優秀な割に放任主義。
また、幼少の時から習っている護身術で体を使った近距離の戦闘が得意。在学中は『喧嘩番長』の異名も持っていた。
黒いジャケットと揃いのカーゴパンツ、長い細身のダッフルコートがトレードマーク。秋冬にはこげ茶のキャップとクリーム色の襟巻きも愛用。
好きなことは運動、うたた寝、いたずら、格闘、夜更かし。嫌いなことは早寝早起き、数学の問題集。誕生日は12月24日。


竜神 サキ(15)  女 ランサー/アーチャー
短い金髪と瑠璃色の瞳を持つギルド「ミックスピザ」メンバー。アメリカ人のハーフ。
大人びた性格でおとなしかったが、エリと出会ってから段々と性格が似て来ている。
幼い頃からアーチェリーに興味を持ち、7歳の頃から弓に手をつける。他のランサー・アーチャーよりも魔法攻撃が優れている。
得意技はファイヤーアンドアイスとウォーターフォール、エターナルプロジェクター。エリと同色のキャラメル色のPコートと茶色のストールを愛用。
好きなことはアーチェリー、読書、勉強、夜更かし。嫌いなことは通常では考えられない異常事態、朝寝坊、口論、忘れ物。誕生日は7月7日。


トライバル・シーズ・シルヴェスキー(23) 男 シーフ/武道家
ブリッジヘッド出身、グレーの髪と赤茶色の瞳を持つギルド「ミックスピザ」ギルドマスター。
戦闘時は驚くほどの戦闘力とリード力、冷徹さを保ちでまるで別人になるが、基本的にお気楽で能天気、面倒くさがり屋なので
普段はナマケモノのようにぐうたらしている。シータよりギャップがかなり激しい。
最近は精神レベルが似ている?エリと格闘ごっこやいたずらを楽しんでいるが、ギルド資金を貯めるためか頻繁に宝箱漁りや露店に出される。
好きなことは宝箱漁り、露店、散歩、いたずら。嫌いなことは早寝早起き、ギルド管理。


オーガスト・シード・マクライアン(25) 男 ウィザード
魔法都市スマグ出身、長い縮れ毛の茶髪にエメラルド色の瞳を持つギルド「ミックスピザ」副ギルドマスター。
トライバルの管理嫌いをしっかりカバーする縁の下の力持ち。他のウィザードに比べ術に長けており、優しく礼儀正しい性格
とは裏腹に故郷では1,2を争うほどの実力の持ち主でもあったりする。ギルドのお母さん的存在。
メンバーのなかで一番長身。気も長い。勤勉。
好きなことは魔法4大元素の研究、読書、散歩。嫌いなことは誰かさん達のいたずらを叱ること。


ラルフ・クロウ(24) 男 戦士/剣士
古都ブルンネンシュティグ出身、蒼い髪に青色の瞳を持つ、ギルド「ミックスピザ」副ギルドマスター。
若くして「青嵐の剣闘士」と呼ばれるほどの腕前を持つ物理・魔法戦士/剣士。(メインは戦士)皆の様子をまったりと眺める、穏やかな性格。
以前は単身でダンジョンに潜り込んだりして腕を磨いていたが弟子にシータを迎えてからは稽古をする日々が続くがそれなりにいい様子。
得意技はドラゴンツイスター、ハリケーンショック、ディレイクラッシング、パラレルスティング。
好きなことは傍観、睡眠、シータの稽古、皆で食べる食事。嫌いなことは悪徳業、悪いこと。


シータ・エリシオン(14) 女 剣士/戦士
鉱山町ハノブ出身。短い黒髪に金色の瞳を持つギルド「ミックスピザ」メンバー。
普段は人一倍元気があるエネルギーの塊だが、一旦沈むととことん沈む。ギャップは激しめだが、トライバル程ではない。
訳ありでラルフに弟子入りして以来、「ラルフを守れる魔法剣士/戦士」を目標に日々稽古に励んでいる。
同い年のサキとエリとは大の仲良し。基本的に剣士だが魔法攻撃を習得する為戦士の技術もそこそこある。
好きな事はラルフの稽古、瞑想、お風呂。嫌いなことは無駄な争い、戦争(ギルド戦以外)。


セブロ・シルバ(26) 男 ビショップ/追放天使
神聖都市アウグスタ出身。茶髪に瞳を持つギルド「ミックスピザ」ギルド元老。
いつもみんなに支援を送り、キチンと叱れるギルドのお父さん的存在。追放天使よりビショップの歴が長い。
オーガストとは酒を一緒に飲みあう仲でもあったりする。
また、料理の腕前が何故か良く、彼が料理当番になるとみんな特に三人娘とトライバル)が歓声を上げるほど。
好きな事は支援、神への祈り、教会でまったりする事。嫌いなことは特になし?

206 名前:名無しさん 投稿日:2006/04/11(火) 06:51:51 [ nXPscqHY ]
◆プロローグみたいなもの>>118
◆登場人物紹介>>205

空色の記憶







フランデル大陸の極東地域、ゴドム共和国──古都ブルンネンシュティグ。

そこは多くの冒険者が集まり、数々の膨大な情報が行き交うゴドム共和国最大にして数々の歴史ある都市である。


古都の空が朝焼けで赤い頃、古都の一角の空き地で、一人の人間が立っていた。


 人間の表情は若い。歳は十代前半から後半の中程か、鮮やかな金春色の右目と深い紺鉄の左目、長めの黒髪が印象的だ。
黒のジャケットを着て、腰を太く丈夫そうな皮ベルトで締めている。上に着たダッフルコートの長い裾が時々風で踊った。
 手には、金属のようなものでできた長くシンプルな笛が握られている。よく使い込まれているのか、微かな傷が至る所に付いていた。
 その人間は息を軽く息を吸うと、腕を持ち上げ笛を縦に持ち、端に口に当て吹き込んだ。美しく澄んだ音色が朝焼けの空に調和する。
「ねぇ」
 黒髪の人間が演奏を中断し右を向き呼びかける。しかしそこには誰も居なく、暖かい風と青々とした芝しかなかった。
「何?」
間を置いて少し低い声が、黒髪の人間が呼びかけたほうから聞こえた。
「ブラー取ってくんない?ホラー映画の悪役みたいだべ」
「悪役って・・・・エリだって出かけるときは持ってくくせに・・・・・・」
 声がぶつぶつ愚痴ると、さっき黒髪の人間が呼びかけた方の空間がぐにゃりと動いた。と、見る見るうちに黒髪の人間より少し背が高い
人間が姿を現した。歳は黒髪の人間よりも同じくらいか。瑠璃色の目と短い金髪が朝日に輝く。
格好は黒髪の人間より軽く、白いシャツに黒いズボン、短いこげ茶色の、底が厚いエンジニアブーツで決めていた。
「で、何」金髪の人間が話を戻す。
「一昨日テーブルに手紙が置いてあったんよ」エリと呼ばれた黒髪の人間が懐から封筒を取り出した。封は既に切ってある。
「手紙なんてたいして珍しくないじゃん」金髪の人間は事も無げに言った。
「いやいやいや」エリが否定した。「実はね・・・・・しばらく萎びてたうちのギルドにとうとう戦いの───」
「朝っぱらから何やってんだよ?」
 寝ぼけた、ぱっとしない声がエリの言葉を遮った。エリが後ろを向き、声の主をキッと睨む。

207 名前:名無しさん 投稿日:2006/04/11(火) 06:52:56 [ nXPscqHY ]
>>206

 寝ぼけた、ぱっとしない声がエリの言葉を遮った。エリが後ろを向き、声の主をキッと睨む。
歳は十代前半から後半までの間ほど、短く切ったグレーの髪と奥二重の目に赤茶色の瞳が顔に似合っている。
まだ起きたばかりだったのか、格好はパジャマのままだった。髪には所々寝癖がついていた。
「トライバル、何の用?」金髪の人間が言った。
「おい、エリもサキもそんなに睨むなよ。俺が何したって言うんだ?それに萎びたギルドって何・・・・・」
「さぁね?あとで考えてみようか?」サキと呼ばれた金髪の人間の目が鋭くキラキラッと光った。
「遠慮しとく」トライバルと呼ばれた人間は肩をすくめる。「それより早く朝飯作れよ。今日サキが当番だぜ?」
「え?あたし?」サキの目が大きくなった。「当番表ちゃんと見た?」
「ちょ、今日あたしだよ?御前何言ってんの?」エリがニヤニヤしながらトライバルに向かって身を乗り出した。体が笑いで震えていた。
「あー・・・・・あぁ、今日はエリだったな、二人ともすまん、間違えた───エリ、そんなに笑うなよ。それなんだ?」
トライはくすくす笑いを起こしているエリの手から手紙をもぎ取った。
「何々?───おお、対戦の申し込みじゃないか!ってこれもう知ってる・・・・・今日の真昼にあるやつだろ?」
「今回は強制終了無さそうだねぇ」サキと呼ばれた金髪の人間が手紙を覗き込みながら自信なさげに言った。
「へー?」トライが目を吊り上げた。「今回もどうせ事務室に入りたての新米かなんかヘマで強制終了だろ・・・・」
 トライバルは半信半疑だった。今までギルド戦をしてきた中で、最後までまともに戦いぬいた例は数えるほどしかなかったからだ。いつも
良い所で事務室の管理人が「戦闘フィールドが重い」とかなんとか言って全員古都に強制帰還されるのが落ちじゃないか。
「今回は信じようよ。それにほら、申し込んだ相手の名前見てみ?この人、すごい強いのに礼儀正しいってんでここじゃ有名な人じゃん」
エリがくすくす笑いながら言った。しらねぇよ、とトライバルが毒づく。
「おま、知らないとかどんだけだよ」
「うっせぇな、俺は武道家でもあんだからそこまで知ってるわけないだろ」トライバルがイライラと言った。
「分かんないのを武道家のせいにすんなヘタレ」
「なんだとぉ?俺は多分ヘタレじゃないぞ!だいたい手紙だってたいして見ないで申し込みに答えたし・・・」
「はっ、手紙見てないとかそれはそれで問題だな。しかも多分かよ・・・・・まぁ、早くこれみんなに見せに行こう!」
「そこ話逸らすなよ!」
「はいはいはいはい、もうそこら辺でやめてお家に戻りましょうねー」
「おいサキ、まだ話は終わってな・・・・」
トライバルが発言を途中で止めた。止めざるを得なかった。見ると、トライバルの首にサキの護身用の投げ槍の刃が押し当ててあった。
「お首を掻っ切られたくなかったら早くお家に帰りましょ?」サキは微笑んでいたが、背後には恐ろしいオーラが漂っていた。
「な、なんで俺だけ・・・・」
 トライバルが不公平と訴えるようにサキを見つめたが、当然の如く無視された。トライバルの顔がうつむいた。
こうしてこの言い合いをサキは微笑みと武力で征し、二人を空き地のすぐ近くにある大きい一軒家へと強制送還させた。

208 名前:名無しさん 投稿日:2006/04/11(火) 06:54:31 [ nXPscqHY ]
>>207

 「へぇ、なるほどね。で、この──真昼の戦いに参戦するのか?」
 カントリー調の広いダイニングで、パインテーブルに頬杖をついた蒼い髪の人間が片手で手紙をヒラヒラさせた。
紺色の瞳が朝光に映える。
「嫌ならいいけど・・・・」
エリは大きめのお皿に盛った出来立てのベーコンエッグとコーンポタージュをテーブルに置いた。いい香りが立ち込める。
「いや、俺は出るよ。最近単調で暇だしな。他は?」
 蒼い髪の人間はテーブルについている人間を見回した。
「ラルフが行くなら私も行きますよ」茶色い髪を後ろで縛った、精悍な顔の人間がテーブルの上にあるベーコンエッグに手を伸ばした。
「セブロ、ありがとうな────そちらの方々は?」
ラルフと呼ばれた蒼い髪の人間が、テーブルの横にあるソファーの背もたれにもたれかかっている短い黒髪の人間と、ソファーに
座ったままの背が高い、茶髪で縮れ毛の髪をした人間に目をやった。どちらも俯いたままびくともしない───ひどく爆睡しているようだ。
「可哀想だからやめとけば?」エリは二人を哀れむように横目でちらりと見た。
「それもそうだな。寝させたほうがいいかもしれん。そういえばサキとトライは?」
「2人は2階に上がりました」セブロと呼ばれた人間はホールをテーブルに置いたまま立ち上がる。「じゃあ、私は先に準備しておきます」
「んじゃー俺も行くわ」つられてラルフが立った。「御前は準備しなくていいのか?」
エリは何も言わず、顔を縦に振った。ラルフはわかったというように頷くと、セブロに続いて2階へ上がった。
 それを見届けた後、エリは玄関に置いてあったこげ茶色の皮製鞄をダイニングまで持っていき、口を開けて逆さまにした。ポーションや
霊薬が当たるカチャカチャといった音がダイニングに響く。
「万病7個に強化解毒剤5個・・・・青ポは6個でいいや。赤ポはポーチに入れておこ」
一人で物々いいながら、腰のベルトについている大小のポーチにポーションやら各々の物をきちんと並べて入れていく。
「・・・二人とも置いてっちゃうけどあとで怒ったりしないよね・・・・・・・」
なんとなくソファーの方に目をやった。オーガストさんは優しいから大丈夫だろうが、シータはどうだろう・・・・・。エリは頭が少し痛くなった。
「ねぇ、エリー」
 突然階段の方からサキの声がした。なに、とエリが返す。
「これからポーションとか消耗品買いに行くんだけど荷物持ち手伝ってくれる?」
「構わんけど」
「ありがと。これ、財布持ってて」
サキは階段を下りながらエリに財布を投げて預けると、右手に持っていたキャラメル色のPコートを羽織った。
「今日は何買うんだよ?」
「油とか万病とかいろいろ。あとドラゴンものは全部買うよ」
「ふーん・・・いつもより多くなりそうだね」
「そうだね」
エリは先に玄関に行き、勢いよく鉄のノブを回した。


春の暖かな天空の光が、2人の少女を照らした。

209 名前:名無しさん 投稿日:2006/04/11(火) 06:56:50 [ nXPscqHY ]
>>208




 「サキ、これだけ買い込めば十分だよね?ってか頼むから十分だと言ってくれ。いくらなんでもこりゃ重すぎる・・・・・っ」
 エリにはさっきの勢いとはかけ離れた「疲れた」というオーラが漂っている。それは、右手にラージヒールポーションが沢山入った紙袋を
抱えているせいか、リュックの中に強化解毒剤やら万病治療薬が詰め込んであるせいか、または左手にドラゴンの心臓や牙、爪や鎧油、
刃油が入った箱をいくつも抱えてるせいかもしれない。
「ジャン負けで荷物もち決めるっつったのはあんたでしょーが」
「そうだけどこんなに長く持つなんて決めてない!」エリは間髪を入れずに反論する。
「あーあー聞こえなーい」サキが満足そうに口笛を吹いた。
「いやぁん、竜神さんったらいっけずぅ〜」
「大河内さん、ちょっと気持ち悪いですよ?」サキがさらりと言った。
「うっせぇ、知っとるわ」
エリが毒づきながら体制を持ち直した。
「ならやるなよ・・・・・あ、ほら、家に着いたよ」
サキは真鍮の表札に「ギルド・ミックスピザ」と書いてある家を指差した。エリはそれを見るや否や、ハヤブサもかくやというスピードで玄関
まで走り、家の中に駆け込んだ。

「まったく、私とシータに何も言わずに行こうとするなんて───エリ、おかえりなさい!・・・どうしたんですか、そんなに沢山買い込んで?」
 玄関で茶髪の、長い縮れ毛の男が荷物に埋もれているエリを助けた。歳は二十代の中ほど、白いYシャツの上に深い黄緑色の
ベストを着ている。
背格好は二人より断然高く、長身だ。右手に持っている長い杖がそれを引き立たせた。鼻には眼鏡を着用している。
「あ、オーガストさん・・・文句ならサキに言ってくれる?」
「文句って・・・・エリ一人で買いだしに行ったのではないのですか?」
オーガストと呼ばれた男は軽く眉間に皺を寄せる。エリはうん、とだけ答えた。
「しょうがないでしょ、今日は相手が強いんから消耗品買いまくっておかないと」
サキが面倒くさそうな顔をして家に入ってきた。顔がほんのり疲れていた。
「はぁ・・・・前誰かさんの失敗でボロ負けしたのにまた戦うんですか?」オーガストが情けないとでも言いたげな顔をした。
「ですよねぇ、まさかあのポカを忘れたって言うわけじゃ・・・・・そういえばシータは?」
「シータはさっき起きて散歩に出かけましたよ。戦争には出るそうです」
「うわぁ、出るんだ。確実に絞め殺されるじゃん・・・・」エリは苦い顔をした。
「ほらほら、二人とも喋る前に早く荷物運ぶの手伝って!」
二人は嫌そうな顔をしたが、逆らう理由が無かった。渋々と荷物を手分けして持つと、ダイニングの方に向かう廊下へと進んだ。

210 名前:名無しさん 投稿日:2006/04/11(火) 06:57:36 [ nXPscqHY ]
>>209

 「買いだしご苦労──心臓結構買い込んだな?これなら今日は勝てるかも」ダイニングでトライが嬉しそうに微笑む。
「まったく、こんなに買い込んでお金がかかるったらありゃしない。トライバル、この分稼げよ?」
エリがトライの喜びに水を差した。途端にへこみ、暗さを出すトライバル。
「言っておくけど、またそんな風にしょぼくれたってびた一文貸さないからね」エリがトライバルに恐ろしい一瞥を投げた。
「あれは仕方ないだろ!お金が果てしなく無かったんだから」トライバルが反論する。
「だからって何も言わずにサイフから金抜き取るなんてどういう根性してんだおめーは」エリがイライラと言った。
「な、なんだと?やるか?」
「なんでそうなるんだよ───でもやりたいならかかって来いよ?」
エリがどんなもんでもかかって来いとでも言うように言った。トライバルの方もバトルチャクラムに手をかけ座りながら戦闘態勢に入った。
サキはいよいよ話題を危険水域から回避させるときが来たと思った。
「そうだ!戦争まであと何時間ある?できれば今のうちに腕試ししたいんだけど・・・・」
 サキが聞いた。準備を済ませテーブルに戻ったセブロは後ろを向き、壁に掛けてある振り子時計に目をやった。
「今9時半ですから・・・ギルド戦まではあと3時間半ありますね」
「セブロ、ありがとう──じゃあアルパスにでも行くかな」サキが両腕を回しながらはりきって言った。
「行くならお供しますよ」
「あら、わざわざいいのよ?気を使わなくても──」
「いえいえ、私も事前に腕試ししとかないと不安なので」セブロが苦笑いした。
「あ、じゃあ俺も行く!」いきなりトライバルが身を乗り出した。「みんな行くときに行っといたほうが良さげだし」
「じゃあ俺も追加で」ラルフが伸びをしながら言った。
「そんじゃ四人で行きますか!」
 四人は用意した各々の武器を持つと、後は宜しくねと爽やかに言いながらさっさと狩りに出かけてしまった。

 「さて、私は部屋で休みますね」オーガストが鼻眼鏡をはずしながら言った。
「あたしも寝るわ。早起きしすぎて瞼がダメだぁ・・・・・」二階への階段を上がりながらエリが目に手を当てる。
「はは、なんでそんなに早起きしたんです?」
オーガストの質問にエリが少しギクっとした。
「・・・・なんか、一人になれる時間が欲しくて。夜でも良かったんだけどチンピラとか変なの居そうだから・・・」
「ああ、それは分かります。みんなと居るときもそれなりに楽しいですけど、一人で居るときの時間も結構侮れないですよね」
オーガストが言葉を切り、遠い目をした。その顔はどこか儚げで、とても綺麗だった。自然とエリはその顔を黙ってジっと見つめた。
「! あ、ああ──自分に集中できる時間って、たたた大切ですよね、あっはっはっはっは───あぁ、もう部屋の前だ」
 オーガストを見つめていた自分に気付き、エリが慌てて言った。顔から火炎放射が出たような気がした。
 オーガストは隣の部屋の前でエリに向かって微笑みながら会釈をした。「では、私もこれで」
会釈を返すと、自分の部屋のドアを開けた。ギィィィイ、という古臭いドアが軋む音がした。

 エリはダッフルコートとジャケット、カーゴパンツを脱いでハンガーに掛けるた。ベルトも外し、イスに無造作に投げた。
「にしても、オーガストさんも同じこと考えてただなんて・・・・・偶然かな?」
 今までエリとオーガストは仲が悪いというわけでもなく、かといって良いというわけでもなかった。時々話を重ねるぐらいだったのに、
何故か今は彼のことが気になる。何でだろう・・・・・?
エリはしばらく悩んだ末、一つの考えに到達した。
「今はまず寝よう!考えるのは後!」
そう自分に言い聞かせると、エリはベッドにダイブし、毛布に包まった。

毛布はしばらくもぞもぞと動いていたが、やがて動かなくなった。

211 名前:名無しさん 投稿日:2006/04/11(火) 07:00:43 [ nXPscqHY ]
どうも、>>118です

書き込んでから自爆したっきり掲示板はしばらく見れなかったんですが
早起きついでに来てみたら・・・・・

こんな駄作に感想を書いてくださる人が居るなんて!
わざわざ有難う御座います。随分励みになりました

今回のも前のと並び酷いもんですが、誤爆等あったらなんなりと指摘してください

にしてもこれ・・・・・人物紹介と1話2話だけなのに長すぎですね(´・ω・`)

長文&お目汚し失礼しましたorz

212 名前:FAT 投稿日:2006/04/11(火) 17:48:17 [ sUYBB5Jw ]
『水面鏡』

キャラ紹介>>21
―田舎の朝―1>>22、2>>25-26 
―子供と子供―1>>28-29、2>>36、3>>40-42、4>>57-59、5>>98-99、6>>105-107
―双子と娘と―1>>173-174、2>>183、3>>185




―4―

 静かな町の面影が今夜はどこにもない。あるとすればそれは民家の中だ。
 エイミーたちは一年間、毎月通って手に入れたアウグスタ産のレッドワインをちゃちな
薄いグラスに注ぎ、振舞っていた。
 今日はトラヴィスの数少ないお祭りの一つ『雨乞いの蛙祭り』の日である。町民らが昨
年収穫のあったものを取り溜めしておき、本年も昨年同様、いや、それ以上の豊作になる
ようにと天に上質の雨を乞う儀式であったものが、いつからか近辺の街町村の人々を招い
て取り溜めを振舞う祭りへと遷移したのである。この辺りでは魔法使い都市スマグからの
訪問者が多い。

「わぁ〜、見て、レニィ。あんなに火が高く昇っているわ」
 フプレ=サーヴェリーもそんなスマグからの訪問者のうちの一人である。レニィ=スト
ラフスの手を無邪気に引き、中央広場の巨大な木組みの焚き木の噴き出す炎を見上げる。
「あの炎が天に届けば、その年は豊作に、火の伸びが悪ければ不作になると言われている
んだ。どうやら今年は豊作になりそうだね」
 その炎を見上げて、レニィの言った炎が天に届くという言葉の意味がフプレにも理解で
きた。猛る炎が星空を隠している雲群を焼いているのである。天に近い山町だからこそ余
計に天は赤く、熟したように鼓動する。
「立派な炎だ。梅雨入りするのも時間の問題だね」
「ねぇ、色々まわりましょう。私、お腹が空いちゃって」
 炎に照らされたフプレの瞳はほんのりと赤く、潤んで見える。そんな恥じらいを汲んで
レニィは人ごみを捌いて道をつくり、ふわりと膨らんだパンを手に取った。パンだけでは
寂しいと思い、レニィは近くを見回した。その視線を赤いグラスが惹き止め、それを取ろ
うと二人分のパンをフプレに渡し、ワインを二杯さらおうとした。
「こんばんはー、おいしいアウグスタ産のワインですよ。どうぞお持ちになって下さい」
 レニィは白く、炎の赤を肌に乗せたこの女性を見たことがあるような気がしてならなか
った。しかし思い出せず、ワインの人気も高いようで女性は忙しく、レニィは何も言わず
に恋人の元に戻った。
 フプレはフプレでまだ心を通わせてから幾日も経っていない状況に、周りを見る余裕が
なかった。このときレニィと共にエイミーからワインを受け取っていたなら、話は進んだ
に違いなかった。
 パンを左右の手に一つずつ持ち、彼氏の帰りを待つフプレは誰の目にも愛おしげに映っ
ただろう。火照った頬は、炎のせいだけではなかった。


「ふぅ、大盛況だったわね」
「やっぱり俺たちの出し物は無くなるの早いな。あのエロばばぁにもっと催促しようぜ」
「それってやっぱり私の役目なのでしょうかぁ?」
「いいのよ、レン、これくらいで。さ、私たちもお祭りを楽しみましょう」
 十二本分のワインを配り終えた三人はまだ残っている振る舞い物を漁り始めた。
 そろそろ祭りもたけなわというところで何匹かの巨大な蛙が燻ってきた焚き木を取り囲
み始めた。
「親父はどれかな……おっ! いたいた。やっぱり似合うなぁ。蛙の格好」
 レンダルが小ばかに父親を指差す。そんな娘を知ってか知らないでか、当の本人は真剣
そのものであった。
「お姉さまよく分かりますわねぇ。どれがお父様か私には見分けがつきませんわ」
「あらそう? 私も一応父がどれかはわかるわ」
「ふぅん……」
 デルタはそうして、自分だけが肉親を見分けられないことに悔しさ、不安を抱いた。両
親と距離を感じている自分がいることに悲しくなった。
 蛙たちは燃え尽きようとしている残り火を囲み、よく分からない踊りを踊った。回った
り飛び上がったり、手を仰いだりしていた。一通り踊り終えると輪が小さくなった。そし
て、蛙たちが一斉に火の中に飛び込んだのである。火の粉が夜の空気に舞い上がり、見物
客たちに降りかかる前にはかなく消えた。火倉を掻き、火の雪が舞う。この祭り最大の見
せ場に不思議な縁がエイミーとフプレを引き合わせた。しかし悪戯にフプレは気付くこと
なく、二人は隣に居合わせながらその存在を大衆の一部程度にも思わなかった。
 フプレの目には刹那に消え行く煌きの雪だけが投影され、他に存在しているものはレニ
ィだけだった。

213 名前:FAT 投稿日:2006/04/11(火) 19:18:59 [ sUYBB5Jw ]
>>南東方不勝さん
素晴しい手癖の悪さですね。こんなサマナがいたらシーフも廃業ですね。
帰ってこられるのを、お待ちしております。

>> リ・クロスさん
ニムラスの髭というアイテムがなにかのRPGであった気が…思い違いですかね?
龍騎士族とはどんな種族なのか、気になります。

>> 黄鯖雑魚さん
妖しさいっぱいの女性ですね。なにか集落に行きたくない理由があるのでしょうか?
それと、次回に期待を持たせる終わらせ方が好きです。連載ものはこういう方が印象強いですね。

>> 復讐の女神さん
日常描写が素晴しいです。ジェシという女性が映像として私の頭の中で再生されています。
私もこういう生きたキャラを書けるようになりたいものです。

>> 魔道書を捨てたWIZ さん
すごい独創的で新鮮です。これから本編が始まると期待させていただきます。

>> 初めて書いてみました。さん
無機的な姫いいですね。さらいに来たシーフの目的はなんだったのでしょう?
姫がなぜ無感情なのかも気になるところです。

>> 名無し物書き@赤石中さん
やはりRSのSSを書くとなるとレッドストーンの存在が無視できないわけですが、
いやぁ、火星とは、意表を突かれました。キャラ全員が強い個性を持っていて、
使い分けが巧みだなと感心いたしました。次回作も期待してます。

>>黒い人さん
こちらの板では詩の作品が少ないので目が惹かれますね。
様々な管理など、大変でしょうが頑張ってください。陰ながら応援しています。

>>205-211さん
強い女性最高です。サキエリコンビのボケツッコミがこれからも見たいところです。
私も文が長くなってしまう傾向にあるので、もっと文を濃縮できる技能が欲しいです。

214 名前:(小ネタ) 名無し物書き@赤石中 投稿日:2006/04/11(火) 21:23:52 [ W8BAcf5I ]
『店商人個のンリカ』

 もう陽も暮れて夕焼け色がここ古都ブルンネンシュティグの街並みを支配しているこの時間になって。
 コイツはなにをしているのか。
「……ん? おお。よく来たなクリフ」
 ヤバい。見つかった。
 ここはなんのためらいもなく後ろに向かって前進……するのもなんだか気が引けたので仕方ない。
 彼が建物の瓦礫の後ろにもたれかかってどっかりと腰を下ろしている目の前に広げられた風呂敷には、
まああんなものやこんなもの……魔法都市スマグで生産されたマジック・アイテムやら傷口の応急処置に
使える一般品など、冒険者のはしくれなら一度は足を止めて手に取ってしまいたくなるほど魅力的な
品々が並べられていた。
「知っていたか? こういうマジックアイテムは一般的に魔具と呼ばれる。
 その由来はな……ス“マグ”で生産されるからなんだそうだ。はっはっは」
「……へーそーですか」
 ちなみに、立てかけられた看板にはひどく雑な字で「店商人個のンリカ」とある。
「っていうかさ、もうそろそろ溜まり場に戻ったよくない? もう日ぃ暮れかけてるしサ」
「いや、それがかれこれ36時間ほどここで粘ってるんだが、まだ一品も売れてなくてな。不思議だ」
 その原因は、私にもおよそ理解できる。
 値段はきわめて適正価格。高くもなければ安くもない。品そのものもきちんと手入れされているし、
薬品の質が劣化しているわけでもない。
 つまるところ、品々を並べる以前の根本的な問題なわけで。
「わけがわからん。どうしてこんなに売れないんだ?」
「それはね……」
 私は無駄にもったいつけて言った。
「ここが貧民街だからよ」
 気付くと私たち2人を囲むようにして、無数の乞食が食べ物くれ100ゴールドくれと手を伸ばしていた。



                                                                         〜END?〜

215 名前:南東方不勝 投稿日:2006/04/15(土) 02:35:48 [ JhC8sTQM ]
ども、忘れられてるかもしれない南東です。遠出から帰ってまいりました。
最近この名前で黄鯖に犬を作りましたので、見かけたらどうぞ罵って(マテ みて下さい。

>>リ・クロスさん
スコール、無事に復活&強化。
Uの名称にもなっているニムラスの力に、ワクテカしながら期待しています。

>>黄鯖雑魚さん
果たして、ティムが拾った彼女の正体は…。
波乱を匂わせる終わり方に、不覚にもトキメキが止まりません。

>>復讐の女神さん
うぉ、自分とは比べ物にならないほどに描写が素敵過ぎます。
話的にもまだまだ序盤のようですので、気長に期待しています。

>>魔道書を捨てたWIZさん
う〜む、中々にダークな主人公ですな。
それよりも廃人プレイって、リアルだけでなくそちらの世界にも悪影響が…w
それから、温かいお言葉ありがとうございます。

>>初めて書いてみましたさん
無機的なお姫様とその人形(姫様)を盗みにきたシーフとのお話し。
この劇が終わる頃には、お姫様は人形ではなくなっている事を祈っています。

>>名無し物書き@赤石中さん
むむ、ワルツ氏やはり侮れない。
今後の彼の活躍に期待しててもいいですよね?

>>黒い人さん
お久しぶりです。
また、気が向いたら詩の投下にいらしてください。

>>205-211さん
個性的で魅力の溢れるキャラの皆さんですね。
個人的には、ぐうたらシーフがいい感じです。

>>FATさん
道は一時交われども、それを互いに気づく事は無く…。
姉妹と彼女たちが出会った時、物語はどのような展開をみせるのかとても楽しみです。

216 名前:FAT 投稿日:2006/04/15(土) 11:14:19 [ DWOiFMv6 ]
『水面鏡』

キャラ紹介>>21
―田舎の朝―1>>22、2>>25-26 
―子供と子供―1>>28-29、2>>36、3>>40-42、4>>57-59、5>>98-99、6>>105-107
―双子と娘と―1>>173-174、2>>183、3>>185、4>>212

―境界線―
―1―

「お前ら、挨拶とかはしなくていいのか?」
 ラスは年上の二人に最後の確認をする。
「おう! 特に世話にもなってねえし! とっとといこうぜ! 師匠!」
 ランクーイはすっかりラスに馴れ、師と仰ぐようになっていた。
「僕も同様です。むしろいつ追い出されるか分からなかったくらい嫌われてますから」
 レルロンドはそう言って肩かけバッグの口を閉めたか確認する。二人は非常に軽装だ。
「じゃあ行くか。ランクーイ、お前は教えたことを実践しながら歩けよ。魔法は人が起こ
すものじゃない、精霊の加護を貰うんだ。自然を感じ、共感し、精霊を見つけられるよう
になるまでが第一ステップだ。いつどこで精霊が潜んでいるかなんて分からない。常に自
然の中に身を置き、チャンスを逃すな」
 ランクーイは深く頷く。ラス曰く、優秀な術者は生まれながらに精霊の加護を受けた状
態にあるという。世の中の魔法使いは九割がこのタイプであるが、自力で精霊を見つけ出
した残りの一割はこの普通の魔術師たちと比べてより強大な魔力を持つケースが多いとい
う。
 ランクーイは話の前半で落ち込み、後半で飛び上がった。自然と共感することが近道と
聴いて、彼はもう課題をクリアした気になっていた。
 町を出て、港都市ブリッジヘッドへと向かう二、三日の間、ランクーイは自然を不自然
に意識してみた。土の栄養を吸う木とそこになる果実の一連の流れだとか、さらさらと風
に吹かれる海岸の細砂の作り出す波模様だとか、そこに潜り隠れる蟹などを彼なりに感じ
てみた。だが、中々これが難しいことであった。自然を感じるというのはこうして自然の
中に自分を置くことだろう。自然を共感するというのはそこで共にする何かがあるという
ことだろう。
 ランクーイは自分なりに自然を感じもし、共感もしているつもりであった。だがちっと
も精霊の機運は感じられない。
 誰にもどうすることも出来ない。これはランクーイが己で解決しなければならない問題
なのだ。そんなことを気付いていながらも、何もしてくれない友と師に理不尽な憤りを募
らせ、港都市に入った。

217 名前:FAT 投稿日:2006/04/15(土) 11:26:29 [ DWOiFMv6 ]
>>名無し物書き@赤石中 さん
初めはンリカっていう新キャラが出てきたのかと思いましたw
彼のキャラをより一層深く知ることが出来ました。どうやら私の知能も彼並みらしいです。

>> 南東方不勝 さん
おかえりなさい。黄鯖ですか…キャラ残ってたら遊びに行ってみます^^

218 名前:南東方不勝 投稿日:2006/04/16(日) 00:35:48 [ JhC8sTQM ]
>>176
港に積み上げられた木箱の陰で、アタシはケルビーの肩から地面に降りた。
「さ〜て、あの子達はちゃんと拾ってこれたかな?」
コンコン、と手に持った笛で地面を叩く。
その音に呼応するかのように石畳の地面が盛り上がり、その中から2匹のモグラがひょっこり顔を出した。
2匹ともその口元に、重そうな財布を咥えている。
ケルビーに乗ったアタシが、カモが財布を落とすようにしながら激突し
地面の上に落ちた瞬間に、地中に待機させていたヘッジャーの「アイテム拾い」で気づかれないうちに回収…。
これが、アタシの常套手段。逃したカモは一人としていない。
「さっすがアタシのヘッジャー達。期待通りの働きね!」
感謝を込めて、2匹ともギュッと胸に抱きしめる。

アタシこと、ミシェル・フロウエンは変わったサマナーである。
本来サマナーは、火犬・風鳥・水魚・土竜の4体の召喚獣の内、異なる属性の召喚獣を最大二体まで同時行使が可能であるが
アタシの場合は少し違う。
同時に二属性の召喚獣しか扱えない事には変わりは無いが、同属性の召喚獣を最大二体まで同時行使が可能なのだ。
つまり、一般的なサマナーは火犬と風鳥を一体ずつしか召喚できない事に対し
アタシは火犬と風鳥を最大二体ずつ召喚する事ができるってわけ。
育ての親である紅爺も、アタシのこの能力については驚きを隠しきれてはいなかった。
もっとも紅爺が驚いた事はその召喚自体よりも、アタシがその際に発した呪文に対してのことであったらしいんだけどね。

「んふふ〜、こんなに重い財布が手に入るなんて…」
ヘッジャー達から受け取った財布の中身を確認しようとした時、こちらに走ってくる足音が聞こえてきた。
耳につけているファインウィスパーのお陰で、耳の良さには自信がある。
「…早い。もしかして、ヘイスト!?」
距離的には約100メートル。本来なら、ケルビーに乗ればなんて事は無い間隔だが
相手の速度が上昇しているのなら話は別。
「やっば。Zool Stärkung」 (ヘッジャー、パワーアップ)
呪文を唱えると同時に、ヘッジャーの姿が一回り逞しくなる。
でも、あの二人組みは凄腕だ。確実に逃げるためには神獣態まで強化する必要がある。
「Zool zwei Stufen Stärkung」 (ヘッジャー、ダブルパワーアップ)
アタシの中から汲み出される魔力量が爆発的に増えると同時に、目の前の2匹の土竜が
屈強な魔人へとその姿を変える。この形態なら一通りの作戦が取りやすくなる。
「ケルビー!」
アタシの声を聞くと同時に、ケルビーがアタシを自身の肩に担ぎ上げる。
足音はさっきよりも近い。恐らくアタシの姿は視認されているだろう。
「だからって…、素直に捕まるほどアタシはできた子じゃないもの…!」
何より、人間なんかに捕まったら何をされるか分ったものではない。
あいつらは、いくらでも残酷になれる悪魔だ。
「ケルビー、全速力であいつらを振り切って!ヘッジャー達はアタシの指示があるまで、地中からついて来てね」
さぁ、アタシを捕まえられるのなら捕まえて見なさいな。戦士と魔術師のお二人さん!

219 名前:南東方不勝 投稿日:2006/04/16(日) 01:29:27 [ JhC8sTQM ]
>>218
俺達が港に辿り着いた時には、サマナーのガキがケルビーに乗って走り出そうとしているところだった。
ガキが召喚しているのはケルビー一体のみ。ペットは連れていないようだ。
「ジャックさん、彼女はケルビーに乗って逃げる気ですよ!」
「分ってる。だが、ケルビーの足じゃお前のヘイストには敵わんよ!」
そのまま速度を落とさずに、少女を乗せたケルビーの背を追走する。
じりじりと、俺達とケルビーの距離が縮まっていく。
しかし、少女に慌てている様子は無い。恐らく、なんらかの策は用意しているのだろう。
「随分と落ち着いていますね、彼女…」
「とりあえず、このまま俺達とかけっこしている分にはあいつの思い通りに動かされているのかも知れんな」
「どうしますか?僕としては、魔術は牽制程度に止めたいですけど…」
「俺が仕掛けてみる」

ダンッ…!

そういうと同時に俺は地面を思い切り蹴り、目の前の少女に向かって跳躍した。
俺の影に気づいたのか、少女が後ろに振り仰ぐ。しかし、その手には見た事もない本が握られていた。
「Aufzeichnung Aufhebung」 (飼育記録、解放)
「なっ…!?」
少女が「有得ない」言語を持って手に持った本を開く。
開かれたページからは光が放たれ、その中から双剣を手にした骸骨が姿を現す。

ガキィン!

少女を捕まえようと伸ばされた手は、骸骨の双剣によって弾かれる。
相手の方も必要以上に傷つけるつもりは無いのか、剣の背を使用しての見事な防御だった。
「ちぃ…!」
空中で弾かれ不安定な体勢になりながらも、なんとか無事に着地する。
しかし、着地と同時に
「ZoolFesselung」 (ヘッジャーヘッジング)
地面の下から突然飛び出してきた屈強な腕に、足を掴まれる。
それと同時に、周りの石が俺の足元に集められ拘束具へとその姿を変えていく。
「ちぃ…。だがいいのか、お前を追いかけてるのは俺だけじゃ…」
「問題ない。あんたの連れもアタシのヘッジャーに捕まってるし」
「おいおい、何を言ってんだよ。現にお前のヘッジャーはここに…」
「すいません、ジャックさん。捕まってしまいました!」
それは、有得ない光景だった。
俺を拘束しているヘッジャーとは別にもう一体、別のヘッジャーがゲイルの足を拘束している。
本来なら、一体しかいないはずのヘッジャーがもう一体。流石のゲイルも、咄嗟にレビテイトを唱える事は無理だろう。
実に鮮やかな奇襲だった。
「お前は…何者だ?」
目の前にいる規格外の少女を凝視する。
「別に…。ただの手癖の悪い女よ」
少女は冷たく言い放つと、火犬と土竜と骸骨を伴い夜の闇へと消えていった。
「手癖の悪い女だと…。だったらなんでそんな女が、古代エルフ言語…『セーマ・エルヴン』を使ってるんだよ…!」
両足を岩で拘束された俺は、少女が去っていった路地を睨みながらそう呟いた。

220 名前:南東方不勝 投稿日:2006/04/16(日) 12:50:33 [ JhC8sTQM ]
追記 「古代エルフ言語」

遥か昔に存在していたとされる、古代エルフ文明で使用されていた言語。
発音も現在のものとは違い、習得するのは非常に困難。
現在では、一部のダークエルフしか使用していない。
この言語の特徴は、それ自体が現在の大魔術に匹敵する魔力を擁している所である。
この言語が話せると言う事は、それほどの魔力を受け入れられる容量と制御能力持ち主である。
本来の担い手であるエルフ族以外にこの言語を使用できたのは、最も有名な魔術師アンドレイ・オウギュスト・ゴーファ
ただ一人である。
また、古代エルフ文明は古代エリプト時代の古文書や遺跡の壁画などによってその存在を知られているが
古代エルフ文明自体の遺跡の発掘例などはただの一つも無く、謎の多い文明である。

221 名前:掃除屋さん★ 投稿日:削除 [ loZxviGc ]
削除

222 名前:名無しさん 投稿日:2006/04/18(火) 15:32:03 [ CaH/D41s ]
保守age
http://xxz.jp/erurun
http://xxz.jp/eritan

223 名前:名無しさん 投稿日:2006/04/18(火) 19:34:37 [ Rdk6QNpI ]
age

224 名前:名無しさん 投稿日:2006/04/19(水) 15:58:34 [ Rdk6QNpI ]
age

225 名前:戦士のようだ 投稿日:2006/04/19(水) 21:42:39 [ QS1Cbi/M ]
ノートパッドのデータが全部消し飛んでもうダメポ

感想はピックアップで・・・

>>東南方負勝様
エルフ語は気になる部分ですね〜、やはり彼女はエルフの子供でしょうか

226 名前:南東方不勝 投稿日:2006/04/22(土) 01:57:02 [ JhC8sTQM ]
>>FATさん
自力で精霊の加護を得るために、自然との共感を試みるランクーイ。
なにやら、既に課題を達成したつもりになっているようですが…。
これが原因で面倒事に巻き込まれそうですね。

>>戦士のようださん
エルフ語が気になっている戦士さんに解説を…w
気づいてる方もいらっしゃるかもしれませんが、まんまドイツ語の単語を並べてるだけなんですよねorz
確実に文法的におかしい部分はあると思いますが、生温かい目で見守ってください。

227 名前:南東方不勝 投稿日:2006/04/22(土) 03:14:16 [ JhC8sTQM ]
>>219
―――ジャック・ゲイル、ミシェルとの遭遇より4時間前―――

「ふむ…、この程度ですかな?」
最後のシーフを退け、奥にいるギルドマスターに向かって歩いていく。
「ば、馬鹿な…。我がギルドの精鋭達がこうも簡単に…!」
「いえいえ。中々に強力でしたよ、彼らは。私も、もう少しで危ないところでしたよ」
「化け物が…!」
相手のマスターは憎々しげに呟きながら、懐より短刀を取り出した。
ふむ…。やはり一つの組織の長たるもの、不戦敗は望みませぬか。
「部下達の仇…、取らせてもらうぞ!」

ヒュン…!

相手が駆け出すと同時に短刀が5本、私に向かって空を駆ける。
しかし、その軌道は直線的で見切るのはたやすいものでした。
「いくら私が『偽り』だとしても…、この程度は避けられますぞ」
投擲された短剣を、横に跳ぶ事で難なくやり過ごす。短剣はそのまま、柱へと突き刺さる。
しかし…、どうにも跳んだ方向が悪かったようですぞ。

カチリ…

「カチリ…、とな?」
着地と同時に、何かのスイッチを踏んだ様な音が耳に入る。
足元を見下ろせば、そこには爆薬をふんだんに使った罠が一つ…。
「は、慢心したな。剣士さんよぅ…。そのまま吹き飛びな!」
実に楽しそうな彼には悪いのですが…、私に属性攻撃は効きませぬぞ。
「抵抗擬態…、廃人。」 (レジストフェイク アヴェンジャー)

ドガァァァァァン

爆風が倉庫内に吹き荒れる。これが普通の人対人の勝負なら、彼の勝利で終わっていたでしょうな。
しかし残念、私のような人外が相手では…。
「無傷だと…!」
「これで分ってもらえましたかな?貴方では私には勝てませぬよ」
私としても、無駄に瘴気を使いたくありませんからなぁ。
これで、諦めてもらえるのなら助かるのですが…。
「…、ふざけるなぁぁぁぁぁ!!!!!!」

ヒュヒュヒュヒュ……!

絶叫と共に大量の短剣が放たれる。その数…およそ50本!
「これは…、防ぐしかないようですな」
迫り来る弾幕を、剣と盾を使って受け流す。

ガガガガガガガガガガ…ガッ!

「ぬぉ…!」
最後の短剣を弾いたところでバランスを崩す。
さっきの短剣はこの事が目的だったのでしょう。
「その首…貰って行く!」
その隙を逃さぬように、相手が私の体に肉薄する。
確かに、剣や盾で…「腕」で対処するには少々キツイ状態ですな。
ならば…、「尻尾」で対処することにしますかな。
「部位擬態、死針蠍」 (パーツフェイク デスピンサー)

ドスッッッ…!

「えっ…、な…んで……!?」
突然の出来事に、彼はそういうほか無かった。
彼の狙い通りに、目の前の剣士は投擲した短剣により体勢を崩し、彼はその首をナイフで切り裂くはずだったのだ。
そう…、目の前の剣士に突然「蠍の尻尾」が生えなければ…!
「あぁそういえば、まだ名前を言っていませんでしたな…」
毒針に腹を貫かれ、遠のく意識の中に剣士の声が響く…。
「私の名前はガギエル。『偽り』と『悪夢』を司る者です。ご心配なく、貴方の姿とギルドは有効に使わせてもらいますぞ」

228 名前:FAT 投稿日:2006/04/22(土) 11:16:48 [ iVsErTcI ]
『水面鏡』

キャラ紹介>>21
―田舎の朝―1>>22、2>>25-26 
―子供と子供―1>>28-29、2>>36、3>>40-42、4>>57-59、5>>98-99、6>>105-107
―双子と娘と―1>>173-174、2>>183、3>>185、4>>212
―境界線―1>>216



―2―

 宿を確保すると、ランクーイはレルロンドを連れて埠頭へ行った。途中で街に大規模な
破壊の後が見られたが、二人には関係なかった。
「どうしたんだ、ランクーイ。少しイライラしてるんじゃないのか?」
 潮風が西から東へと時折突風のように吹き抜ける。レルロンドのたれ気味の目が塵を拒
み細くなる。
「レルロンド。お前は自然を感じるか?」
 まるで憎い敵を見るようなランクーイの鋭い一重の目がレルロンドを刺す。だが、その
目は見慣れたものだった。
「ああ、潮の匂いがするな。風も強い」
 ランクーイの目が力を失い、防波堤の上に腰掛けた。
「やっぱり俺たちと師匠は違うんだろうなぁ……。師匠はこの自然を、どんな風に感じて
るんだろう」
 悲しげなランクーイの隣に腰掛けレルロンドは、
「僕と同じように感じてるんじゃないかな。いや、お前と同じようにかも知れない。僕は
魔法なんてわからないが、魔法を使える人が皆同じように感じているとは思えないな。人
それぞれの感じ方があって、その中から何かを掴み取るんじゃないかな。ま、僕には偉そ
うなことをいう資格などないけど」
 そう笑ったレルロンドの顔を、ランクーイは新鮮だと思った。生まれた時からの付き合
いで、色々な顔をお互い見てきた。きっとレルロンドの笑顔はいつもと変わらぬものだっ
ただろう。それを新鮮だと思ったのは、ランクーイの中で答えが出たからだったのか、た
だ単に疲れていたからなのか、非常に曖昧な線を二人の間に引いていた。レルロンドから
は見えないランクーイの引いた線は大人と子供の境界線であった。ラスがここに居合わせ
たなら、どちら側に属しただろうか。
 ランクーイの中で答えが出た。自らの引いた線を悔しく思い、レルロンドにすら引け目
を感じてしまう自分がどうしようもなく小さく、惨めだった。
 大人になりたいと、大人とは何かと考えるよい機会になった。

229 名前:FAT 投稿日:2006/04/22(土) 11:17:41 [ iVsErTcI ]
―3―

「こらっ! あんたなにしてるんだい!!」
 突如大声が上がる。果物売りの露店からだ。
「なにって、え? 俺?」
「そうだよ、あんただよ、あんた。今、この籠からお金をくすねただろう。早くお返しっ!!」
 ラスは両手を挙げて身の潔白を証明するが、店主は断固として信じようとはしない。そ
のうちに店主と口論に発展した。
「っせーなババァ! 俺はしらねぇっていってるだろう!! てめぇ、目はついてんの
か? あぁ!!」
「おい、お前はシーフギルドのものか?」
 騒ぎ立てるラスに、特徴のない市民風の男が近寄る。
「はぁ? んなもんしらねぇよ! この街のもんじゃないんでね」
「だろうな、消えろ」
 突然のことにラスは意表を突かれ、露店もろとも投げ飛ばされた。
「んだぁ、てめぇーー!!!」
「この街で俺たちのギルドに手を出すのがどういう意味を成すのか、知らないとは言わせ
んぞ」
「知るわけねーだろーーが!!!」
 ラスが剣を抜くと一閃、シーフの身体を剣が通り抜けた。
「な・・・小僧」
 シーフギルドの男が振り返ろうとした瞬間、彼の腹部から血が滴り落ちた。
「母さんの言いつけでね、殺しはしない。誰かこいつを運んでやりな」
 勝ち誇ったラスに青色の髪をした隻眼の戦士が興味津々と近付く。
「おいあんた、えらく強いじゃないか。俺とも手合わせ願いたいね」
「その眼帯・・・におうな。おっさん誰だい?」
「ジョーイ=ブレイズというものだ」
 ラスは家業柄、魔力には敏感である。ジョーイの眼帯から発せられる強い魔香を嗅ぎ、
過去に世話をした人々のリストを思い出してみる。
「・・・顧客リストにはなかったな。じゃ、ジム・モリのおっちゃんのもんか。いいぜ、
やろう。――――いくぞっ!!!」
 それは大鉈のような刃をした剣である。ラスは超重量級の剣を軽々と振り、ジョーイを
襲う。対するジョーイの剣は両刃の一般的な大剣である。光のような速さで振り下ろされ
る剣は眼帯の発する冷気により一瞬減速され、その間に大剣を滑り込ませ弾き返す。
「おお! 一撃で決まらなかったのは初めてだ! やるなぁ、おっさん」
「そりゃどうも」
 ラスの剣速はジョーイの経験外の速さであった。ラスはジョーイを褒めながらも勝利を
確信した。
 ジョーイが真っ直ぐにラスの喉下に狙いを定め、突撃する。全重量を剣に乗せて最後の
一歩を踏み込み、貫く――――――
「なぜだ!」
 ラスは避けることもせず、ジョーイの全力の一撃によりその身体に穴が開いた。
「なぜって? おっさん魔法に対する知識が全くないみたいだね」
 背後から声が掛かりジョーイはビクッと体を震わす。
「ダミーだよ。高位の魔法使いならみんな使えるぜ? 倒したと思って油断しちゃダメだ
ぜ?」
「・・・そうか、そういえばそんなことも出来るんだったな。いいよな、お前たちみたい
に魔法を使える奴は」
 抵抗を諦め、ジョーイは剣を握っている手を離す。ガシャンという重々しい金属音が虚
しく聞こえる。
「でもおっさんはいい線いってると思うよ! きぃ落とすなって!! あ、そだ、これ家
の店の紹介文。魔法に興味あるんなら行ってみてよ! これ持って、俺の名前出せばどん
な道具にも魔力を付加してもらえるからさ!!」
「魔力を付加? 好きなものをか? そんなことが・・・」
「あ、いい忘れてたけど最低一千万Gは必要だから・・・・おっさん金あるか?」
「い、一千万!! あるわけないだろ!!」
「じゃ、溜まったらおいでよ。俺の母さんすっげー美人なんだぜ、それ拝むだけでもいい
からさ」
 特に用があったわけではないがラスはせわしなくその場を去った。残されたジョーイは
渡された紙に目を通し、
「あいつラスっていうのか・・・今回のことが終わったら行ってみるかな」
 その直後にフラン=サーヴェリーがジョーイに抱きつき、紹介文は懐に仕舞われた。達
筆すぎる文字で、ジョーイには店主の名前が読めなかった。

230 名前:FAT 投稿日:2006/04/22(土) 11:35:03 [ iVsErTcI ]
>> 戦士のようだ さん
ご愁傷様です。私もデータバックアップとってないので危険ですね…

>> 南東方不勝さん
すごいお嬢さんですね…なるほど手癖の悪いのはヘッジャーでしたか。
スリにはもってこいのスキルですよね。

>>227
うほっ、これも良い能力ですね。体の一部を擬態させれるとは…
突然羽生やしたり、糸出したり出来るんですねっ
どんなアイデアが飛び出してくるのか、ワクワクしてます。

231 名前:変な生き物 投稿日:2006/04/24(月) 17:00:47 [ uRvfnWEY ]
まだだ、まだ私は終わらんよ
思い出になりかけたけどまだ終わらんよ多分

232 名前:名無しさん 投稿日:2006/04/24(月) 18:48:28 [ Ry0Deqac ]
懐かしい人キタコレ。
まだ終わってはいけないと思った。

233 名前:サマナの人 投稿日:2006/04/25(火) 12:53:19 [ Ng2d6.WM ]
生物さん、そしてみなさまお久しぶりです。
最近ROM専となりつつありますが、一応生きてます。

234 名前:南東方不勝 投稿日:2006/04/25(火) 20:15:47 [ JhC8sTQM ]
サマナの人さんに変な生き物さん、お久しぶりです^^
自分は四月から就職しているので、週末に投稿するだけでもヒイヒイ言ってますよorz

235 名前:タルタル 投稿日:2006/04/26(水) 14:32:37 [ hfUQyDik ]
はじめまして、タルタルといいます。
wikiで小説書いていたらこの掲示板紹介されたんでやってきました
今まで書いたのはhttp://rs-wiki.main.jp/phpBB/viewtopic.php?t=3181
の四番目と十一番目です。
次の投稿は明日の予定。
駄文だと思いますがこれからよろしくお願いします

236 名前:名無しさん 投稿日:2006/04/26(水) 18:35:21 [ U8WlNfyk ]
レス全然見て無いけどこのスレはキモいと思った

断言できる

237 名前:名無しさん 投稿日:2006/04/26(水) 21:33:02 [ VSW7Q5Tw ]
>>235
次はsageてくださいね。

238 名前:ああああああああああ 投稿日:2006/04/27(木) 12:34:29 [ vs9Z.KrA ]
aaaaaaaa

239 名前:タルタル 投稿日:2006/04/28(金) 00:42:41 [ JhnVtCRU ]

「あのセスナがか?」
さすがの私も驚いて立ち上がる。男、職業は剣士。大柄ではないが鍛え上げられた強
靭な肉体と砂漠ならではの一年通しての強い日差しのために黒く日焼けした肌。いつ
でも明るさを失わないその性格と白い歯。そして余談になるが私とは俗にいう竹馬の
友だ、はそんな私など無視して続けた。
 「そう、あのセスナがだ、いろんな意味で最強。人類の母であるとともに敵である
、とまで言わしめたあのセスナがだ。」
驚きを隠せなかった。セスナといえば若くしてそのカリスマ性を持って優秀なテイマ
達を集め、疲れ知らずな召還獣を使い土地を開拓しアクアバンブーによって水路を
引くという方法でアリアン、リンケンと砂漠の土地を開拓していった砂漠の民にとっ
ては母たる人である。その後も警備兵墓など、さまざまな遺跡を発掘し、現在ではセ
スナの道と呼ばれるガディウス大砂漠に地下通路兼不死身のマミーというモンスター
を利用して冒険者達の訓練場をつくりさらにひと儲けしているようだ。それらのため
にアリアンではさらに人が増えている。
 そのセスナがである、現在はセスナの道の営業を愉快な仲間達とともにしていると
聞いたが、最近では狩場に鍵を無理やり壊し入っていく冒険者達が増え、どうにもな
らなくなっているらしい。
 「それで?何でこっちに仕事が回ってくるんだ?そういう警備はアリアンギルド
の仕事だろう?」
 「それがな、……」
彼は口ごもる、そもそもこのネタキャラギルドはその戦闘力のあまりの特殊性から
そういう警備やら討伐やらという正面から押すような仕事には向いていない。どち
らかというと間諜のような仕事の方があっている。
 「実は……、誰も……、」
 「何なんだ?」
彼は意を決したようにうなずいた。
 「誰もこのくそ暑い時に砂漠横切って行きたくないってよ、HAHAHAHAHA」
ひゅん、どこ。
 私の放った何かは的確に彼の頭を直撃した。
 「な、なんだよこれ、ネズミ捕りじゃないか」
彼はネズミ捕りを拾い上げ、そしてつかまった
 「いでっ、くそ、このとれねえ」
 「ネズミだけではなく人も捕まえられるとは便利だな、ま、とりあえずセスナに
ついてはこちらで何とかしよう。年老いたセスナ、か。興味もあることだしな、三日
後には連絡する、ではな」
私は悲鳴をあげながら、ネズミ捕りと奮闘する彼にそう言いながら部屋から押し出した。
そして、机に座った。
 「ヒル、三姉妹を呼んでくれ、今日中にな」
 「わかりました、ですが一時間で集めて見せます」
もともと姿を見せないが、いつも気配だけは感じる。
その気配も遠のいていくのがわかる。
 「さて、あとはどう説明するかな、あの三姉妹に」
期限は一時間か。

240 名前:タルタル 投稿日:2006/04/28(金) 00:43:37 [ JhnVtCRU ]
2
「暑いならカーペットに乗っていけばいいのに。ねえ? ムーン」
カーペットの中央に陣取るそのグラ・ランは年齢は20歳前半ショートカットの金髪碧眼
で整った顔立ちをしていて血気盛んな雰囲気を全面に押し出したような、生命力盛んな感
じを与える黒いシャツに赤いマントを羽織り、緑のジーパンをはいて、青のグローブと白
いスニーカーを履いていた。手に持っている槍はなんの変哲もない投げ槍、ついでにいう
なら彼女を覆うようにさしてある日傘は七色である。
 「うーん、たぶんあの人たち重いからカーペットに乗れないんじゃないかな?」
そう言う女性、ムーン・リトルは黒髪黒眼の美しい腰まで届くような長髪の持ち主で、元
来の性格、雰囲気がそうさせるのだろう顔は整ってはいるが美しいというよりは可愛らし
い。のほほんとした雰囲気を常に辺り構わず醸し出している。年齢はグラと同じように見
えるが、あくまで肉体的なものでその雰囲気は10歳にも満たない童女のようだ。服装は
白いワンピースを着て、その上にこれまた白いマントを羽織っていて、さらに白い帽子を
被っている。靴はなぜか黒いサンダルであり、しかもかわいらしい猿のキャラクター入り
だ。
 「……、たぶんこの前の宴会で資金を使ったから、カーペットに回す資金が無くなった
んでしょう。あれだけ無計画に、やっていれば当然です。そもそもあのギルドは中途半端
なんですよね」
カーペットの前部に座りそれを操っているのがヒト・テイである。彼女はムーンと対照的
に黒いシャツ、黒いコート、黒いグローブ、黒いスニーカー、黒いスボンを着ていた。髪
は鮮やかな赤色をしていて、肩あたりまである。今はゴムでしばっているようだ。雰囲気
は落ち着いていて、大人の女性という感じがある。年齢は二人よりも多少低く10代後半
である。


 「あ、でも! ……、そのお祭りは楽しかったよ?」
ムーン姉さんは申し訳なさそうに、そして弁論するようにそう言った。もしかして自分が
宴会にいったせいで、カーペットの資金が無くなり、私たちに仕事が回ってきたとでも思
ったんだろうか? 姉さんは、心配そうに私を見つめる。そう言う顔されると私が姉さん
をいじめたみたいじゃない。なにか言わないと。操縦もままならない。
 「あ、いやムーン姉さんが悪いわけじゃなくて。その、ただ私が言いたかったのは……」
 「言いたいのは?」
姉さんはさらに近づいてくる。ああ、それ以上近づくとカーペット揺れたときにキスしちゃ
う、なんか言わないと。姉さんが傷つかず、納得させる何かを。
 「ええと、だから、そうそうよ。さっき姉さんが言ったじゃない、重くて乗れないって、
あの人たちは食べ過ぎて重くなっちゃったの。だから乗れないのよ。ねえ、別に姉さんのせ
いじゃないわ、そうでしょう?」
 「よくわからないけど、この仕事で私たちが頑張れば罪は消されるってこと?」
 「だから罪じゃないんだけど……ええと、だから」
本当に姉さん相手だと狂ってしまういつもはこんなんじゃないはずなのに。
 「つまり、インガオウホウってやつよ、ムーン」
横からずっと沈黙を保っていた、グラ姉さんが入ってきた。
 「いんがおうほう? なにそれ」
 「知らないの? 私も知らない」
はっきりとして自信満々でそういうグラ姉さん。さすが世間知らずな姉さんだ。
 「説明は、ヒト、よろしく」
 「因果応報っていうのは、つまりいいことがあれば悪いこともあるってことよ。ムーン姉さ
んやアリアンギルドの人が楽しんだから、その分いやな仕事が回ってきたってこと」
て一応回答になって無くもない、本当に全然知らないで言ったならすごい、さすがはカンだけ
で生きてる姉さんだ。 
 「て、いうことはつまり私のせいってこと?」
エンドレス。もう止めるすべはない。
 「そっ、そういうことよ、ははははは。つまりこの仕事で取り返せってことね」
 「なんだ、やっぱりそうかぁ。よーし頑張るぞー」
えいえいおー、とか二人でやっていた。さて、セスナの道はもうすぐだ。そろそろ真面目にい
こう。

241 名前:タルタル 投稿日:2006/04/28(金) 00:50:43 [ QxvTMn3A ]
3
「よーし、ばあさんたちはいないな、鍵を壊して入ろうぜ」
俺がそう言うとPTの仲間たちは一斉に扉を攻撃し始めた。なにせ今回のPTはハーレムだ。ビショ
ップの俺以外全員女だ、うはうはだぜっ。ごほん、ではその素敵な女性たちを紹介しよう。
まず一人目ランサー。ここにくる道中でもほとんどしゃべらなかったが、笑うときにやさしくに
こって笑うの超萌。従順そうで最高。顔も美人だし、スタイルもいい。
二人目これもランサー。姉さん女房な雰囲気ばっちり、道中でも話しまくってた、楽しそうなの
で全然おっけい。美人ではないが、表情が明るいので問題なし。
三人目テイマ。二匹の召還獣と一匹の亀を見事に使いこなす、がそのときの命令はちょっと怖か
った。俺Mじゃないんだけどな、でも最近はやりのツンデレの可能性もある美人は美人。背は低
いからつれて歩くのはいいんだけどな。
四人目リトルウィッチ。俺より背高いのがちょっと、だがスタイル最高。胸もでかい。顔も萌系。
服装もあれなんで、メイドカフェで働いてるの?とか聞いたら、いやだなあ、そんなことありま
すよ、だって。もう夫婦漫才できそうなほどノリがいい。
五人目アーチャー。かなり気強いよ、ていうか男?みたいな性格。ちょっと苦手だなー。だって
ちょっかい出してきたシーフに「あん?てめえら、ぶっ殺すぞ、さっさと死ね」だもんな、こわ
いよ。一番目のランサーと友達だって聞いてびっくりして跳ね返った。
 ばぎんっ。どうやら壊れたらしい。
 「よっしゃあ、じゃあいこうぜ、みんな」
 「ちょっと待ったあぁぁぁぁぁぁ」
 「なんだ?」
そういって出てきたのはランサー、リトルウィッチ、テイマのPTだった。
 「うわぁ、声が響いておもしろい、私もやろ」
 「ムーン姉さん、やらないやらない」
 「えー、じゃあ後で一人できてやるもん」
 「そこっ、二人で話進めない。私がリーダーよ、私が。」
 「いつからグラ姉さんがリーダーに?」
 「私が長女だからよ」
 「でも、義兄弟なんだけど?」
 「えー?私もやりたーい」
俺たちを止めたのは幻だったのか、間違いだったのか、その三人は言い争いを始める。ええと、
いっていいのかな?
 「じゃあ、俺たちはいこうか」
俺がそういって歩きだそうとすると、そのリトルウィッチが気づいたようにこちらを指さした。
 「ねえ、あの人たち逃げちゃうよ?」
 「ふっ、あそこに逃げれば袋のネズミ、もう逃げられないわ、水攻めでもしてやろうかしら」
テイマは静かに首を横に振り、
 「そろそろ、真面目にやりましょう」
 「そうね、無視してやるのも飽きたわ」
 「私は真面目なんだけどなー」

242 名前:タルタル 投稿日:2006/04/28(金) 00:54:44 [ QxvTMn3A ]
4
なんだ?真面目にやるとかやらないとか、こいつらはいったい何者だ?何しにきた?
と俺が言う前に性格男アーチャーがきれた。
 「てめえら、うざいんだよ、どっかいけ、いかねえとぶっ殺すぞ?」
すでに弓を構え威嚇をした。
 「私たちはネタキャラギルドの者です、今はアリアンギルドからの要請で、お金を払わず鍵を
壊してセスナの道を利用する人々を取り締まりにきました。」
つまりこいつらは、警察ってことか。ふん、鍵壊しなんて相当前からなのにご苦労なこった、が
わざわざ俺のところでこなくてもいいものを。せっかくのハーレムをぶちこわす気か?
 「とりあえず、なにも言わないで帰ってくれませんか?取り締まるっていっても捕まえる権限
はないんですよ」
馬鹿正直にテイマが言った。そんなことするわけねえだろ?こちとら移動費だけで2万かかって
んだ。何もせず帰れるかよ。
 「ネタギルドっていったわね。あなたたちこそ帰ってくれないかしら? こっちのPTにはちょ
っと血気盛んな子がいてね、けがしないうちに帰った方がいいと思うわよ」
おう、さすが姉さんランサ。平和主義が一番だもんな。が、そんなことに答えない馬鹿がいた。
 「ネタだからって甘く見ない方がいいわよ?じゃそこのアチャ一騎打ちで勝負しましょう?」
その名はランサー。よく見るとこいつ、とんでもない服のセンスしてやがる。上から下までいろ
とりどりだ。信じられん、しかも鎧さえ着けていない。
 「はっ、いきがんのもいいかげんにしな、ぶっ殺してやる」
言い終わるやいなや放たれる一本の光の矢。マジカルアローだ。かなり正確だ、つっこんでくる
ランサーにそのまま吸い込まれると思ったら突然ランサーが消えた。
 「ちっ、やろうがっ」
ランサーは体を低くして回避したらしい。そのままアーチャーののど笛までせまる。
くっ。赤い鮮血が飛び散ると思った瞬間、俺は思わす眼を閉じてしまった。
 「やるじゃねえか。ネタキャラのくせによ」
 「あんたこそ、アーチャーのくせに接近戦に対応できるとは」
二人の声が聞こえる。俺がおそるおそる眼をあけると、ランサーの槍はアーチャーの喉に、アー
チャーはとっさに背中の弓を引き抜いたらしく、その先をランサーの喉に突きつけていた。
 「ちっ、どっちにしても引き分けか。どうするよ?」
 「次は総力戦っていうのはどう?」
敵とはいえあちらは女三人傷つけたくないんだけどな。
 「ちょっとまってください、私たちはただお金さえ払ってくれればいいんです」
 「はっ、いまさらできるかよ」
 「そうですね、みんな、仕方ありません、痛い目に遭ってもらいましょう」
姉さんランサが言った、みんないきなり戦闘態勢になる。まじかよ?ネタの女の子にか?これが
女の戦いってやつか?ちっ、しかたねえ、俺だってこのハーレムでうはうはして終わったら好き
な子決めてデートに誘う予定なんだ。邪魔されてたまっか。
 「ムーン、ヒト。準備はいい?先手必勝だからね」
 「はぁーい」
 「いつでもいいですよ姉さん」
なにを勝つ気でいるのやらネタキャラというのが本当なら負けるはずがない。そもそも六対三の
兵力の差がある。
だんっ。
アーチャーが大きく後退する。それを合図にランサー二人が前に、サマナのペットが敵のランサー
に向かって進む。が、ここで敵のランサーは思いがけないことに前進してきた。てっきり後退する
とおもったがあ!?
どどおおおおん。
な、何だ?くっ揺れるぅぅ、地面が揺れるうううううぅ。
 「ちい、なんだよ、時間稼ぎなんてしやがってぇぇぇぇ」
グラウドシェイカーって技か。ちっ、立っているのも精一杯だ。でもこれだけの揺れなら奴らでも
条件は同じはず、CPが切れるまで待つしかないか。
が、彼らは飛んでいた、というより浮遊していた。あのどうみても脳みそ足りてなさそうなリトル
ウィッチが変な踊りしているせいだ、確か名前はムーンウォーキングだったか?
……まずい、あっちにはあと一人いる、あのテイマ、ネタってことは殴りか?ちっあいつもよく見
ると信じられねえ、全身真っ黒だ。このままじゃなぶり殺される。だからMじゃないんだってよ。
 「では覚悟してください」
そのテイマは予想たがわず、懐から真っ黒な笛を取り出してそう言った。
 「くっくそやろう、ネタなんかに、ネタなんかにこの俺がっ」
ばぎ、ぶず、どす、どぅす、ばす、どすん、ばぎん。
ん?笛おれたか?
いつの間にか俺は天井を見ていた。うーんたたかれるのはやっぱりすきじゃないなー。あ、あそこ
にシミがっ。まったくそんぐらい掃除しろよな、ほらあっちには蜘蛛の巣が。ていうか結局俺一言
しかしゃべってないじゃん?せっかく性格考えた女たちも実質二人しかでてないし。

243 名前:タルタル 投稿日:2006/04/28(金) 00:55:30 [ QxvTMn3A ]

 「相変わらずお前は早いな」
 「いえ、それほどです」
 「それほどなのか、で報告は?」
 「はい、三姉妹は到着の際ちょうど違法のPTと遭遇。これを撃退、このまま三姉妹に防衛を任せ
てもいいでしょう。私見では一週間もいさせれば威嚇には十分だと思います。後はアリアンギルド
から三人程度の警備を。」
 「ふうん、さすが”いいのは顔だけ、貧乳三姉妹”だな」
 「それを本人たちの前で言わない方がいいですよ、ま今回の相手もしらなくて良かったと思いま
すよ、もし言ってたらあんなもんじゃなかったでしょうね」
 「どうなるんだ?」
 「それは長女は怒り狂い手がつけられなくなり、次女は泣き始めて手がつけられなくなり、三女
は正確に反論し始めて手がつけられなくなります」
 「……そうか、でセスナについては?」
 「あの人はすっかり、痴呆のおばあちゃんと化していました。現在アリアンに護送中。セスナの
道は同族のセスニが管理するようです。」
 「それと、三姉妹にはどう言うつもりだ? あんな砂漠の真ん中であと一週間もいるなんてな」
 「問題ありません。長女には男性ストリッパーを次女にはイケメン保育士さんを、三女にはこの
世界について語り合える人をそれぞれ三人ずつ用意し二十四時間体制で準備させています。」
 「よし、問題ないな。ではすまんがアリアンギルドにも同様の報告を頼む」
 「了解」

244 名前:名無しさん 投稿日:2006/04/28(金) 16:38:46 [ oRhtfOxo ]
-──- 、   _________
    /_____ \〟 >            |
    |/⌒ヽ ⌒ヽヽ | ヽ > _______  |
    |  / | ヽ  |─|  l   ̄ |/⌒ヽ ⌒ヽ\|  |
   / ー ヘ ー ′ ´^V  _ |  ^| ^   V⌒i
    l \    /  _丿  \ ̄ー ○ ー ′ _丿
.   \ ` ー ´  /     \        /
      >ー── く      / ____ く
    / |/\/ \       ̄/ |/\/ \    同じスレではこのままだけど
    l  l        |  l      l  l        |  l    違うスレにコピペするとスネ夫がドラえもん
    ヽ、|        | ノ      ヽ、|        | ノ

245 名前:南東方不勝 投稿日:2006/04/29(土) 00:57:57 [ JhC8sTQM ]
>>FATさん
おっと、ブリッジでジョーイとのガチンコバトルの回ですか。
さてさて、ラス曰く美人である母さんを楽しみに待ってますねw

>>タルタルさん
なんて素敵なネタキャラ…w
さて、怖いもの見たさであえてここで「貧乳」はつg
うわなにをあsdfgふじこlp

246 名前:南東方不勝 投稿日:2006/04/29(土) 02:28:42 [ JhC8sTQM ]
>>227
アタシを追ってきた二人組みを巻いた後、そのまま船の最終便に乗り
孤児院のあるシュトラセラトに戻るつもりだったんだけど…。
「ハァ…。いい歳した大人が、アタシみたいなか弱い美少女を大勢で囲って何か面白いの?」
船着場へと続く道の途中にある広場(テレポーターの人がいる所)で、アタシは沢山のシーフに囲まれていた。
ん〜、明日の朝までに帰らないとまずいのよね。紅爺達が心配するし。
「あんた達、アタシに何か恨みでもあるわけ?少なくとも、あんた達から盗った記憶は無いんだけど…。」
まぁ、この街でやってる事を考えればこういう事態になる可能性も大いにあり得るのは当然。
でも、一度も盗んでない奴らにこうやって囲まれるのはちょっと考えづらいかな。

ジャリ…

徐々に周りにいるシーフ達がアタシとの距離を詰めて来る。
今のアタシの戦力は、さっきの逃走の時に召喚したケルビー達。
ラグルを防御に徹せさせれば、ケルビーをもう一体召喚する時間は作れるだろうけど
強化するには少し足りない。でも、本からヴォイドを解放するには充分なのよね。
「かかれ…!損傷は最小限に…、マスターは生け捕りをお望みだ!!」

ダンッッ!!

アタシを囲っていた黒装束が、その号令と共に円の中央…アタシに向かって殺到する。
「ラグル、できるだけ長く弾いて!」
アタシの命令に、カッと乾いた音で応え古ぼけた双剣を構える。

シュシュシュシュシュ!

四方八方からシーフ達の攻撃が襲い掛かる。
ブーメランにボウラスを始めとする打撃投具が雨のように降り注ぐ。
その数はたかだか一体の骸骨にはとても防ぎきれない程に多かった。
でも、アタシの相棒をなめないで欲しい。
鎧爺曰く、ラグルは生前それなりに名の知れた剣士だったらしい。
彼の武勇伝には華々しい功績は唯の一つもない。
しかしそれでも彼に誇れるものがあるとすれば、それは…

カカカカカカカン…!

「…!」
向かい来る全ての殺気(攻撃)を、生前は元より死後も防ぎ続けた事に他ならない!
無数の投具が空しく夜空へと弾かれて行く。それを見送ることなくアタシはもう一人の相棒を解放する。
「Aufzeichnung Aufhebung」 (飼育記録、解放)
光を放ち開かれたページから、一体のヴァンパイアが現れる。
「主殿…」
「遠慮は要らない、やっちゃえヴォイド!」
「承知!」
目の前にいたシーフを殴り飛ばした後、ヴォイドは地面の上に紅爺仕込のルーンを刻む。
「我が声に応え…来たれ盟友…!」
ヴォイドの言葉に応えるようにルーンが光り輝く。その光の中から、無数の蝙蝠の群れが姿を現す!
「うわぁぁぁ!」周りのシーフ達がその光景に声を上げて驚く。
予想外の出来事の連続で彼らの包囲網にほんの僅かな隙間ができる。
「しめた…。ケルビー、ヘッジャー!」
アタシの声に応え駆け寄ってきたケルビーに飛び乗り、包囲網の隙間に向かって
「ZoolDrehung!」(アルマジロローリング!)
2体のヘッジャーを突撃させた。

247 名前:リ・クロス 投稿日:2006/05/01(月) 18:25:05 [ kcso0oWI ]
前スレ>>986 >>39 >>56 >>69 キャラ紹介>>38
>>100 >>147 >>178


「はっ!!」

血塗れになっていたナーガファイターの露出した皮膚に
正確に強烈な突きが命中して
その衝撃で吹き飛んだナーガファイターが水路に落下した。
ヘルナイトが横から切りかかってくるが
巨大なシールドが受け止めて弾き飛ばした。

「そうだ・・・、もっとこっちに来るんだ・・・。」

ケイルンに向かって奇声を上げながら
様々なモンスター達がにじり寄って来るが
ケイルンの表情は余裕の笑みを浮かべている。

「マルコム!今だ!!」

声を上げると同時に横にケイルンが跳び
その反対側から現れたマルコムが、黄金色のバスタードソードを振り回した。

「静かに眠りし氷の龍王よ、今こそ目覚め
闇に蠢くものの意思を氷結し打ち砕け
ドラゴン・・・ツイスターッッッ!!」

剣が振り回された軌跡の中から、青い皮膚を持っている龍が現れると
モンスター達に向かって、氷のブレスを吐き出した。
凍りついたモンスター達に、巨大な氷柱が降り注ぎ
氷結した彼らは、粉々に砕け散った。

「この辺の連中は片付いたようです。次は北西の方に。」

赤い十字架のペンダントを身に着けた天使が
瞑想を中断して、鬱陶しそうな声質呟いた。
彼の翼はまるで食いちぎられたように抉られており
もうひとつの翼は、傷が刻まれていて痛々しい。

「そうか・・・、マルコム行くぞ。」

「了解。」

天使が指示したとおりに北西に二人が走って行き
彼は再び目を瞑り、瞑想を再開する。

「・・・、ニムラスが目覚めたようだ。」


「げ・・・、ガーディアン2体とダークファイヤーにもう1体が・・・。」

「アヴェンジャーか・・・、模造品にしては凄まじいな・・・。」

三人の目の前には、石の様になっているモンスターが
動き出そうとしている光景が広がっている。

「ガーディアンは俺が倒すから、イルムはダークファイヤーな。」

「妥当だな。セリス、奴は君が相手をしてやれ。」

「分かったよ。荷が重いなぁ・・・。」

口とは裏腹に、楽しそうな表情をしながら呟き
ランスを構える手に力を込めるセリス。
完全に目を覚ました怪物らが、武器を手にする。

「殺・・・して・・・や・・・る、何もかもをなっ!!」

哀れな復讐者の、執念の叫びが木霊し
世界が悲鳴を上げたように、巨大な揺れが起こった。

248 名前:タルタル 投稿日:2006/05/02(火) 11:01:15 [ QvYPUbOo ]
 「あねさん武勇伝1 VS兄弟 第一話{全三話の(予定)} 

時刻は深夜、月明かりはあるが、それさえもいまにも消えそうにか弱い。音も立てず、姿も見えないその姿に一体誰が気づいた
であろうか?
「よーし、いい子だ。そのまま持って来な」
「了解です、あねさん」
一匹のへっじゃーが真っ赤な髪、真っ赤なジャケット、真っ赤なミニスカート、真っ赤なグローブ、真っ赤なスニーカー
に包まれた女性ーー背は年20代後半の割には低め、150cmぐらい、顔立ちは同じく童顔で一見すると子供の印象を受け
る、が、その性格を考えれば、ただの子供ではなく、まったく手に負えないいたずらっ子だということがわかるーに近づいていく。
女性はへっじゃーの持ってきた物を見て、にっこり笑って、立ち上がった。その表情はまるで欲しいものを買ってもらった子
供のようだ。
「じゃあ、いくわよ。さっさと逃げなきゃ」
「まてい」
「見つかった? この私が?」
「市民の血税から建てられたこのブリッジヘッド立博物館から闇夜に隠れ、こそこそと物を盗み出そうとは不届き千万。どんな
理由があるかわからんが、貴様の戦い、義ではない」
静寂の中、女性の前に二人の男が現れる。
「どんな悪も我がスピードの前には手も足もでず、速さの兄とは私のことよ」
「どんな悪も俺のパワーの前では叩き潰される、力の弟とは俺のことだ」
「どんな悪も我ら兄弟の前にはひれ伏すのみ。我ら兄弟義によって悪を討つ、盗賊よ、観念せよ」
二人はどちらも黒髪黒眼であり、着ている物も、鎧こそ着ていないが、あとは戦闘用と思われる黒を基調とした、動きやすそう
な物であった。
兄、と名乗ったほうは、職業はシーフ。その容貌の美しさとそのまさに自分こそが正義といわんばかりの表情、いや表情だけで
なく全身からあふれ出すそのオーラ。20代前半だが、そのオーラはまさに30代とも40代とも思われすでに完成されていた。
弟は職業は格闘家。その兄より2つほど年は低いが体は二回りは大きいと思われる。容貌は美しくはなく、口調も粗暴だが、そ
の眼から伝わるものは一途で実際に受ける印象は少なくとも悪い、怖いという感じはない。むしろ頼れる兄貴という雰囲気ある。
「その長ったらしい言い回し、もしかしてシーフギルドの脳筋兄弟?」
「人々がなんと言おうと関係はない、我らはただ義の道を貫くだけよ。いくぞ弟よ、いまこそ我らの力、見せるとき」
「おうよ、兄貴、あんな小娘俺達にとっては、ねずみよ」
そういうと兄は女性を指差して言った。
「普通の盗賊の約三倍のスピードで盗むといわれる、赤い貧乳の彗星め。覚悟せよ」
「貧乳は、よけいよっ、へっじ、行きなさい」
今にも動き出そうとした兄弟の前に、突然地面からへっじゃーが現れる。
「にゃー」
「なにっ、卑怯な、もぐら型猫だとっ!? いや猫型もぐらかっ?」
「ふんっ、こんな奴。兄貴任せてくれ」
「任せたぞ、弟よ、私は盗賊を捕まえる」
「ふっ、あねさんに一歩でも近づけるわけにはいかねえ。喰らえ、秘儀かく乱」
へっじゃーは兄弟の周りを地中にもぐったり、飛び出したりする。
「ちぃ、命中率が半分になる、あたらねえ」
「どこから出てくるかわからん、下手に動けんっ」
兄弟は下手に手が出せない、時間だけが過ぎていく。そして五分ほどたったころ、
「姉さんは逃げたか。じゃあ俺もそろそろ行くか」
へっじゃーは小さくそう言って地中を駆けて逃げ去っていく。
「兄貴、あの盗賊がいねえ、くそっ、あのもぐらはおとりかよ」
「くっ、この我らを出し抜くとは、信じられん」
「信じられんといえばあのもぐら、この石の床をもぐって行きやがった。ありえねえ」
弟は自分達の周りにあいたいくつもの穴のうち一つを見ていった。
「報告書には奴はネタキャラとある、それに木や石をも潜っていくというのはすでに各地で確認済みだ。科学者達に言わせると
おそらく、一つの技、この場合お宝探しだが、それを突き詰めることによりそれに特化し、さらにそれを補助するように別の能
力も付加してしまったということらしい。」
「ふうん、俺にはさっぱりわかんねえや、でも次のときは必ず捕まえてやらあ」
「その意気だ、弟よ」

249 名前:タルタル 投稿日:2006/05/02(火) 22:05:31 [ QxvTMn3A ]
「あねさん武勇伝1 VS兄弟 第二話{全三話(の予定)}」 

「あの脳筋兄弟を出してくるとは、世も末ですね」
私はあねさんに言ったつもりだが、返してきたのは馬鹿犬ケルビーだった。
「でも仕事の成功率なら、シーフギルド随一って聞いたけど?」
「それは誇張だ、あの悪名高いシーフギルドだ。彼らは世間体あげるためのただの顔だ」
「そうみたいね、でも実際、単純パワーは最強らしいわ。でも」
あねさんは上は白のタンクトップ一枚で、下は、下はよく水泳の着替えなどで使用されるゴム付きのタオル、だ。何でそんな格
好をしているのかと聞けば楽だから、という。ほかに人がいない自宅とはいえあねさん、もういい大人でしょうに。ちなみに下
着は着けていないはずだ、理由はめんどくさいから、らしい、あねさーん。あねさんは”入門盗賊〜三日でマスター〜”という
本を読んでいる、かはわからないが、とりあえず見ながらソファーに座っていた。そのあねさんは不敵な笑みをこちらに向けた
「この私には勝てなかったわね、おーほっほっほ」
そして楽しそうに笑った。
「さすがあねさん、いかすぜ」
「もっとほめなさい、全ては私のために。はーはっはっは」
この馬鹿犬は、あねさん調子づかせると朝まで続くって事を忘れたわけではないだろうな。あねさんは座っていたソファーに立
って報酬の二百万Gを散蒔きつつ踊っていた。いったいその服装のどこに持っていたんだ?周りにおいていた様子はなかったのに。
馬鹿犬もその周りをきゃんきゃん飛び回っていた。
「さて、この調子で次もいくわよ」
「おう、どこまでもついて行きますぜ、あねさん」
「ヘッジ、がんがんいけるような仕事ない?」
相変わらずなんと序列のない、が、今のあねさんの気分を壊したら大変だ。私は今ある依頼の中で一番のとっておきをひっぱり
だした。
「これはどうですか?ダメルで発掘され現在はブルネの博物館にある、”REDSTONEの刻印入りのスタリン”の奪取。このスタリ
ンは本来アリアンギルドが発掘し、アリアンギルドで管理されるはずでしたが、その歴史的、金銭的価値によりブルネギルドが
その政治力を背景に奪い取ったものです。もちろん表向きには、減税と引き替えに一時的な譲渡ということですが」
あねさんは落ち着いて、ソファーに座り直していた。散蒔かれた札はそのままだったが。後で私が片付けねばなるまい。
「事実、値段なんかつけられない価値があるからね、減税っていっても釣り合わない、か」
「その通りです、アリアンギルドも一応取引があった以上、表向きに動けず、私たちに依頼した、ということです」
「でも取り返しても、またブルネの奴らにとられるだけじゃねえの?」
馬鹿犬が、お前はただ聞いていればいいものを。が、あねさんの手前、黙ってろとはいえない。
「あのアリアンの人たちがまた同じ間違いをすると思ったか? 彼らはあくまで知らないの一点張りだ。今度はちゃんと隠して
おくか、あるいはあの人たちのことだからこれは新たに発見したものですっていうかもしれない。その場合でも二度ととられる
ことは無いだろう。彼らは馬鹿だがすることはする人たちだからな」
「要は、取り返してこいってことね、で、報酬は?」
あねさんはどうでもいい、というように話をまとめる、あねさんの最大の関心はいつもそこだ。あねさんも所詮人間だからな。
「赤い筋」
それを聞いた途端あねさんの表情がみるみるうちに変わっていく。
「……、くっくっく、ついに赤い筋が私の物になるのね、はーっはっはっは。これで真の赤い彗星になれる」
「やりましたね、あねさん」
赤い筋、その名の通り真っ赤な宝石である。その赤はほかのどの赤よりも濃く、そして洗練されている。あねさんは長い間探し
ていたが、それは唯一アリアンギルドにしかなかった。アリアンギルドといえば偏屈だが仕事は完璧で知られたギルドだ。こち
らがほしいといえばいうほど渡さず、あねさんの力でも盗み出すこともできなかった。
「ふーん、でもあのへっぽこブルネっていっても、手の抜いた警備しているわけじゃないし。実際二十四時間体制で守ってるら
しいじゃない? 結構盗むのもめんどくさそうね」
「それがこんな情報が」
私はあるところから十枚の紙を取り出しあねさんに渡す。
「多くて読むのめんどくさそうね、ってこれは」
ぶつぶつ言いながらもあねさんは目を通す。その顔が驚きに包まれる。
「博物館の警備の状況、しかもこんなに詳細に。アリアンギルドのはんこ付きで日付では一ヶ月前か、偽物ってことは、いやあの
アリアンギルドが偽物を情報として渡すわけ無いしね。おk、ヘッジ。よくやったわ。次はこれでいきましょう」
あねさんはまだ見ぬ赤い筋を思ってか、高笑いを始めた。馬鹿犬は一緒になってきゃんきゃんし始めた、馬鹿めが。

250 名前:リ・クロス 投稿日:2006/05/03(水) 18:24:19 [ kcso0oWI ]
龍騎士族について


赤い悪魔の軍勢と死闘を繰り広げた
天上界と地上界の戦闘部族の事を指し
六大元素の神獣の能力を持っている。

彼らの部族の殆どは、赤い悪魔たちによって殺害され
一部は降神術によって、悪魔らに操られ
生き残った者の殆ども、天上界に捕獲された。

捕獲した意図は不明だが、天使の追放と同じく
何らかの責任を取らされたと思われる。

彼らの生命力の強さは凄まじく、通常の人間の致命傷も
ほんの数分で再生してしまうほどであり
その上に魔法に対する抵抗も非常に戦ったが
悪魔側に裏切った神獣達によって無効にされた。

その他にも聖騎士に匹敵する剣の腕を持っており
魔法の方もスマグ魔法の中級の魔法も使用でき
一部の者は悪魔や天使たちの魔法も覚えれるようである。

外見の特徴は普段は人間たちと見間違うが
戦闘時には二対の翼と膨大なオーラが発生して
目には其々の属性の紋章が表れる。

251 名前:タルタル 投稿日:2006/05/03(水) 23:19:06 [ SD6rMzmg ]
>>249 最終話
しゅいん、ぼこ、どすん。
「あねさん。大丈夫ですか」
「曲がりなりにも砂漠の英雄セスナの第十五子の私がこんなことでやられはしない」
あねさん、腰をさすりながらじゃ説得力ないです。
「だから天井はやめようって言ったじゃないですか、地下ならこんな事は……」
「終わったことは気にしない、それより急ぐわよ、警備の交代所要時間は、十五分
なんだから」
「その前にあの音で気づいてなければいいですがね」
「そこは、外で暴れてる三匹に頼むしかないわね」
ウインディ、スウェ、馬鹿犬は陽動のために博物館の外で暴れているはずだ、警備の
トップが有能でないなら、平和慣れしたブルネの奴らなどそっちに引っかかるはずだ。
「これが噂のスタリンね」
あねさんはショーケースを開けて取り出すと、何故か左手の薬指にはめた。
「こんなのつけて歩いたら、世の男たちは私に釘付けね」
始まった、始まってしまった、あねさんの一人舞台が。
「その指に光る、見ることもできないほど輝かしい指輪、そしてそれに勝る輝きを放
つあなたは、まるで太陽のよう」
「そんなこと言って、つきあったら焼却するわよ?」
「そのときは土曜のごみの日に出してください。いや、私のこのあなたへの愛は燃え
尽きることはない、ともにあの太陽の如く、人類を照らす光となりましょう」
「いやーん素敵、でも本当に私なんかでいいの?」
「いいのなにもあなたを見たその瞬間から、ほかの女性なんて、あなたの光で見えま
せん。私をあなたの婿にしてください」
「私が婿派だって知ってるなんて、もう理性なんて関係ない、あなたと結婚します」
ばたばたばた。
「いまだ、包囲しろ」
あんなこと大声でしてるから。すっかり三十人ほどに囲まれている。
「しかし、天井を掘ってくるとは予想外だった、おかげで応援に時間がかかった」
指揮官と思しき背の高いやせた陰険そうな男、兵士ではないようだが帯剣はしていた。
服装も白い軍服以外は、グローブや靴は戦闘用のものをしている所を見ると、どうやら
戦えるらしい。襟章は副ギルドマスターとなっている。
「馬鹿めが、あの筋肉馬鹿ギルドの連中が取り返しにくることなどお見通しだ。つまり、
我々は無理矢理奪っておいて、不合法的に取り返そうとするところを一網打尽にし、社
会的に追い詰め、あのくそギルドを解散させ、アリアンの自治権を奪うつもりなのだ。
もちろんあの警備の情報も意図的に流した物だ。この完璧な作戦、どうだ参ったか」
はめられた、というわけか。が全てべらべらしゃべるこの男はただの馬鹿か。
が、入ってきた天井の方にも何人かいるようだ。床下に逃げる手もあるが、どうやらブ
ルネギルドの奴らのへっじゃーが数匹いるようだ。私一人なら逃げられるが、あねさん
も一緒だと無理だ。
「あねさん」
「さて、どうしましょうね」

「全員、かかれ」
「まてい」
まさにブルネギルドの者たちが盗賊に襲いかかろうとしたその瞬間だった。
「誰だ?」
ブルネギルドの者たちは一斉に後ろを向いた。声の主はそちらから現れた。
「たかが小娘一人にこれだけの数でかかり、小娘も義では無いとはいえだまし討ちなどで
捕らえようとするとは。どんな理由があるかわからんが、貴様らの戦い、義ではない」
静寂の中、二人の男があっけにとられるブルネギルドの者たちの中央を堂々と通って盗賊
達の方に向かった、そして盗賊達の前までくるとブルネギルドの者たちに対しこう言い放
った。
「どんな悪も我がスピードの前には手も足もでず、速さの兄とは私のことよ」
「どんな悪も俺のパワーの前では叩き潰される、力の弟とは俺のことだ」
「どんな悪も我ら兄弟の前にはひれ伏すのみ。我ら兄弟義によって悪を討つ、ブルネギル
ドよ、観念せよ」
呆然とする一同。最も早く現実に戻ったのは副ギルマスだった。
「貴様らは、シフギルドの兄弟か。なぜ我々の敵になる? あの盗賊こそが悪ではないか、
我々に敵対しようなどとそれこそ悪だ」
「だまれ、そもそもあのスタリンを政治力を盾にして奪い取ったことこそ悪である。今回
の事件全ての元凶はブルネギルドにあり」
その兄は圧倒的戦力を前にして臆することなく言う。
「こいつらも所詮逆賊か。それにたった二人でなにをしようとするのだ。我々の敵ではない」
が、そのとき兵士の一人がいつのまにか盗賊がいない事に気づく。
「副ギルマス、あの泥棒がいません」
「なに? この包囲網のどこを抜けたというのだ?」
「わかりません、が、どこにもいません」
「ちっ、まあいい、これだけでも十分くそギルドを追い詰められる。今はこの逆賊を捕まえ
るぞ」
「そうはさせるかよ、必殺急所突きぃ」
「どけい、ダーティスローイング」
ばぎ、ぶす、どす、……。

252 名前:タルタル 投稿日:2006/05/04(木) 15:49:26 [ U8bwHNNY ]
 一発ネタシリーズ 「リザリザ戦隊リザレンジャー」
廃人、それは高い攻撃力と耐久性を誇る、序盤最強のモンスターである。
それに苦戦するあるPTがあった。
「くそっ、あっちやらこっちやら同時に沸きやがって」
「ビショがいないと辛いですね」
突然の三匹同時沸きに、苦戦するPT。そこに一体のビショが通りかかった。表情は穏やかで胸には十字架。背は高めで、その鍛
え上げられた浅黒の肌はいかにも歴戦の戦士を思わせる使い古された鎧で隠されてあった。
「苦戦してますね、空いてたらいれてください」
「よし、お願いします」
ビショがPTに入った瞬間さらに四方から現れる、四人のビショ。その背後にはどこから連れてきたのか、と思うほどの廃人やら、
アサシンやらがくっついてきた。四人のビショはにこにこしながらうまくそのPTのあたりに捨てていく。当然彼らはそのPTに攻
撃を開始した。そんなPTを尻目にビショ達は逃げていった。
「なっ、捨てていくんじゃねえ。馬鹿が」
「やばい、この数は、いったん引かないと。うわっ」
「くそっ、回復が、赤ポがもう無くなるっ、うわー」
そしてPTは全滅した、ビショ以外。
ビショは、いつのまにか安全な所に避難していて、コールをかけた。
瞬時にしてPTのメンバーは集まる。
「うっ、ビショさん、逃げてたのか、良かった、リザ頼む、ん? そのビショ達はさっきの、何故?」
倒れるPTの周りには、PTに入ったビショだけでなく、あの死ぬほど捨てていった四人のビショもいて、彼らを見下ろしていた。
「我らリザリザ戦隊、リザレンジャー」
五人のビショ達は奇妙なポーズをとって言った。
「ではリザの前に、報酬を」
五人のビショは倒れているPTの懐から、ありったけのゴールドと高く売れそうなアイテムを奪い取った。
「な、何しやがる、返せよ」
「よし、このLVにしては十分だな。では、リザ開始」
リーダーらしきビショがそれぞれの成果を確認すると、こういい、ビショ達は一斉にリザを開始した。
「くっ、てめえら、最初からこれが目的とは。ぶっ殺してやる」
その剣がビショの一人に襲いかかろうとした瞬間、
「ATフィールド展開」
リーダーのかけ声を合図に全員天使になり、サンクチュアリを発動する、途端天使達は青い光に包まれた。
「くっそぉおおおお」
「我らリザレンジャーは常に君たちのそばにいるぞ、いつでもリザが欲しいときはこう呼んでくれ。’リザくれ〜’と。
君たちの全財産と引き替えにリザしてやろう」
”あうどlじゃおljぢlはいえゆお;えjl”、と騒ぎながら無駄な攻撃をするPTの面々を無視してさわやかな笑みで言った
「リーダー、もう時間が」
別の天使がそう耳打ちした。
「そうか、ではさらばだ。撤退」
一斉に帰還の巻物を取り出す、巻物を開くと同時に彼らは光に包まれ消えた。

253 名前:かりう 投稿日:2006/05/05(金) 23:22:48 [ 20jaX8ZM ]
お初です。かりうと申します。
今日プレイ中にふと思いついたので投下してみます。








いつの時代だってマトモな神経した奴は損ばかりして、
己の不幸を嘆きながらも道化にはなりきれない。

正直者がバカをみる。これは結構真理だ。







雫が、落ちる。
それは銀の鎧に当たって跳ね返り、少しだけ返り血を洗い流した。
その毒々しい緑は、「アレ」のもの。
鍾乳石の陰に隠れる俺に、嬲るかの様にゆっくりと近づいてくる、

化け物の血だ。


思えば俺たちは「アレ」を少し舐めすぎていたのかもしれない。
瓶の中の赤い液体を飲み干しながら、頭の片隅でそんな事を考える。
洞窟の奥底に住まう怪物を退治するために、
腕に覚えのある冒険者ばかりで編成されたはずのパーティ。


だが。




リーダーであった女は、俺の足元でぴくりともしない。
最後まで戦おうとしたのか。手だけが弓を強く握り締めて。


数々の罠を解除するために雇われたブリッジヘッドギルドのシーフは、
洞窟に流れる水のそばで仰のけに倒れている。


不思議な力でもって様々な術を使う少女は、
血に汚れ、冷たい石の床の上に投げ出されている。


冒険者たちを補助する役割を負う神の使いは、
誰でもひと目で致命傷と分かる傷を負い、血溜りに顔を伏せている。


赤いフードを被った少女は、怪物のすぐ傍に人形のように転がっている。
主人を最後まで守ろうとした、僕と共に。


スマグから派遣されてきた魔法使いは、
最後の力で俺に炎の魔術をかけ、そして動かなくなった。

254 名前:かりう 投稿日:2006/05/05(金) 23:23:31 [ 20jaX8ZM ]
>>253
もう一本赤い瓶を手に取り、中身を飲み干す。
死ぬわけにはいかない。たとえ一人だとしても、あの怪物を倒す義務がある。
俺が生き残る為に。
そして何より―――仲間たちの為に。



奴が近づいてくる。洞窟全体を震わす様な鳴き声が木霊する。
俺は意を決して、両手剣を構える。
灼熱の魔法壁が剣に力を与え、
そして――――仲間の声が聞こえる。
必ず倒せと。お前だけが頼りだと。




俺はその声に苦笑し、

そして力の限りに叫びながら、目の前の化け物――――


禍々しい色をした、巨大な芋虫へ向かっていった。













「蟲秘密なんて、嫌いだあああぁぁぁぁッ!!!!!」














都合により7人編成です(笑)
この場合最後まで残ってる人が一番お金を使ってるということでひとつ。

255 名前:復讐の女神 投稿日:2006/05/06(土) 05:12:08 [ 6XwJJ7KI ]
夜が太陽に溶かされ、世界に日の光が差し込んできた。
朝もやのなか、小鳥のさえずる音が聞こえる。
だが、窓からさし込む光はカーテンに締め出され、室内はいまだ静けさを保っていた。
響くのは、部屋の主の不規則な寝息のみ。
ぎいっ。
静かに、だが木製の扉独特の音が響いた。
この部屋にある扉は、一つのみ。
扉の開く音とともに、静かな足音が部屋へと侵入する。
侵入者の目には、布団がはだけて体を丸めている、下着姿のジェシの姿がはっきりと見えている。
健康的な足に、程よく膨らんだ胸。
くびれた腰に、安心しきった寝顔。
たとえ男でなくとも、その姿をみたらドキリとするだろう。
侵入者は迷いもなく、しかし出来るだけ音を出さぬようジェシへと近づく。
そして。
「ジェシお姉さま〜♪」
ジェシに向かってダイブするのだった。
ジェシはその行動が読めていたのか、眠っていたはずなのにヒラリとダイブをかわす。
そしてもちろん、ダイブした者はベットとキスをするのだった。
「ん〜、まだ暖かいですの♪」
侵入者はめげないもので、それはそれでとベットに残ったジェシの温もりをふんだんに味わい始める。
「はぁ…ビシュカ、いい加減にしときなさい。まったく、また勝手に家に上がりこんで」
侵入者…ビシュカは、悪びれた様子もなく、ベットにちょこんと座り、ジェシに向き合う。
「うふふ、お母様から鍵をくすねてきちゃいましたの」
「くすねてきちゃいましたの、じゃないでしょ。まったく、あんたは油断も隙もないんだから」
ジェシは呆れた声で文句を言うと、またベットへと横になる。
その際、ビシュカに当たらないように気をつけているあたり、ジェシもまだまだ甘いらしい。
ビシュカはその様子を嬉しそうに見て、自分も一緒に横になる。
「しっかし、あんたは相変わらず朝が早いわね。今日も朝のさんぽ?」
「はいですの。朝日の差す街を、新鮮な空気を吸いながら歩くのは、気持ちいいですの」
「じゃ、なんであんたは今ここで横になっているのかしら?」

256 名前:復讐の女神 投稿日:2006/05/06(土) 05:12:51 [ 6XwJJ7KI ]
「それはもちろん、誘惑に負けて」
ビシュカの言葉に、やってられないわとジェシは起き上がる。
窓の外を見る限りだと、そろそろ起きてもいい頃合だろう。
ジェシがベットから降りて服を選び始めると、ビシュカはベットに座ってジェシを見る。
「油断も隙もないのは、ジェシお姉さまの方ですの。今日も抱きつけませんでしたわ」
確かに寝ていたはずなのに〜と、ビシュカは頭の上に「?」をたくさん並べている。
そう、確かにジェシは寝ていた。
だが、それでいながら敵意の無い誰かが部屋の中に忍び込んでいることは分かっていた。
ジェシにしては、別になんら不思議なことではないのだが、ビシュカは変ですのとなぜか怒っている。
「あ、そうだ。ビシュカ、あとであんたの兄に渡して欲しいものがあるの」
「お金ですの?」
間髪いれずに帰ってきた答えに、ジェシはポカンとビシュカをみる。
「昨夜、兄様が受け取るだろうって言ってましたの」
そういって、にっこり笑うビシュカ。
…かなわないな。
ジェシは、ボイルの勘の鋭さにただただ感心するしかなかった。

ジェシは、料理が好きだ。
腕はさほどではないが、少なくとも食べられるものは作れる。
「ビシュカ、食べていくの?」
台所に立ち、エプロンを付けながらジェシは後ろを振り返る。
着ている服は、スカートの丈長い一般的な服だ。
動きやすさではなく見かけ重視なところは、ビシュカのリクエストだ。
「うふふ、ビシュカお姉さま綺麗」
「はいはい、ありがとう。で、どうするの?」
「まことに残念ですが、今日は帰って食べますの」
ジェシは台所で火を起こしつつ、あらそうと答える。
これは別に、寂しいとかではない。
ビシュカは、日によって食べていったり食べなかったりと色々とある。
今日は、たまたま食べない日なだけだ。

257 名前:復讐の女神 投稿日:2006/05/06(土) 05:13:25 [ 6XwJJ7KI ]
「じゃ、机の上においてあるの持っていってね」
はいですの。
その声とともに、足音が遠ざかっていく。
それにしても。
ジェシが思うのは、ビシュカ以外の気配が確かにあるのに誰もいないこと。
本当、不思議な子。
そう、まるで犬のような形の気配。
そんなことを考えつつ、ジェシは火のついたかまどを使い朝食を作り始めるのだった。

井戸から水を汲んでいると(なんと、この家のすぐ裏に井戸があるのだ!)近所の奥様方が集まり始める。
そこでできるコミュニケーションの輪。
ジェシの姿をみつけると、みながそこを中心に集まり始める。
話題はもちろん、彼女の冒険話。
そして、そろそろ男と…などという話題につながっていく。
ジェシは楽しそうに、でも困ったように受け答えしていく。
「あの、この後もやることがありますので」
そう言って、ジェシは奥様方の輪からなんとか逃げ出した。
ただし、やることがあるというのは嘘ではない。
冒険中の報告書などが、まだ完全にまとめきってはいないのだ。
なにが、どこで、どうなったか。
次に誰かが行くときのためにも、報告書の存在はかかせない。
「はやくまとめあげないとな」
冒険者だって、ただ単に歩き回っているだけではないのだ。
どうまとめあげようか。
ジェシの頭はすでにそっちへと回っていた。

258 名前:タルタル 投稿日:2006/05/06(土) 12:01:39 [ iBt6qxhU ]

「あねさんシリーズ 外伝1」 第一話(全二話)
 リンケン、私たちのネタキャラギルドがある場所である。かつては一人で活動していたあねさんもいろいろあって現在はここに
所属している。あねさんの家は東側の入り口付近の一軒である。そのあねさんの部屋は1LDKで一人+ペット二匹が暮らすには十分
な広さだ。リビングにはいるとまず中央にソファーがある。その脇に小さな机があり、扉から見て右側の壁は本棚で覆われており、
左側の飾り棚には、まあ、その、あねさんの性格的にあり得ないことだが、その、つまり、人形が大量においてある。長年あねさ
んと共にいるがこれだけはわからない。あのあねさんが何故、人形を大事にするのか。もちろん家事一切苦手で、細かいことがで
きないあねさんだから全て買ってきた物である。現在では二百体ほどにはなるだろうか。もちろん、なのか? 全てに名前がある。
動物ものがほとんどでその中でも亀、熊の割合は多い。そして、その飾り棚の端っこの方にはスウェルファーの飼われている水槽
がある。そして正面には小さめな窓を中心にして、左右には今大陸で人気の歌手グループ、タイシャニオズのポスターが貼られて
いる。部屋の方は完全に寝室と化しており、事実ベッドと衣装箪笥しかない。
 今日のあねさんは、服装は白いタンクトップとジャージのスボンでソファーの上で”ぶった切り。真面目キャラ”という本を眺
めていた。その脇にある小さなテーブルには南国を意識したようなフルーツの入りのジュースがある。そのグラスはかつてあねさ
んに好意を持っていたアリアンギルドのあるメンバーからもらった物で、材質はガラス、精巧に施された細工のために光を受ける
と七色に返す、そのため常に輝いていて、キラ物付きのあねさんのお気に入りの一つだ。
「あねさん、セスナさんのお葬式行かなくて本当にいいんですか、仮にも母親でしょうに」
病院に入ってからというもの砂漠の英雄といわれ、このリンケン、アリアンの発展に一番力を尽くしたセスナさんはすっかりボケ
が進んでしまい、すでにかつての片鱗さえも失っていた。そのセスナさんが亡くなったのはつい一週間前だ。当然アリアン、リン
ケンから大勢の人が詰めかけ、が、あまりの多さに対処が仕切れなくなりアリアンギルドは急遽葬式を決定。いま、まさにアリア
ン総手で葬式を行っているはずだ。が、実子であるあねさんは何故か行くことを断固拒否した。
「いいのよ、アリアン造って、その後死ぬほど好きな男どもとやって、子供作って、で晩年にはセスナの道でぼろもうけして、も
う十分満足でしょ。別に送ってあげなくても、勝手にあがってくって」
「あねさん……」
あねさんは本から目を離さずに言った、あねさんは十五番目、後ろから二番目の子だ。普通はあとからできた子の方がかわいいら
しいがセスナさんの場合、もう五人ぐらいで育てるのにも飽きてしまってらしい、あねさんなどはもう完全に別の親に育てられて
いる。そんな母親に怒りを感じているのはわかっていたつもりだった、が実際死んでしまうと、やはり悲しい。と思ったのは私だ
けだったか。
「実際ね、この砂漠で一カ所に砂漠中の人が集まったら、こっちが暑くて死んじゃうわ」
あねさんは真面目に言った、それかよっ、行きたくない理由は。ばしいっ、いでっ、思わず突っ込んでしまったじゃないですか。
……、ふう。あねさんはけらけら笑いながら本を読んでいた。

259 名前:タルタル 投稿日:2006/05/06(土) 12:03:38 [ SD6rMzmg ]
>>258「あねさんシリーズ 外伝1」 最終話
そんなことをしていると馬鹿犬ケルビーが入ってきて、いつもならあねさんの脇でおとなしく座るはずだが、今はあねさんの周り
をぐるぐる回り始めた、ん? 俗に言う狂犬病か? あねさんは本に夢中で、まったく気づいた様子はない。 
「あの、あねさん」
馬鹿犬はあねさんの前に座り、彼にしてはめずらしく、申し訳なさそうにあねさんに話しかけた。
「なに、ケルビ?」
いつもなら「この私の優雅な読書の時間を」とか言って、なにかするところだろうが、今日は何故か機嫌がいいようで目こそ本か
ら離さなかったが答えた。
「……お願いがあるんです、実は、実は、俺インシナが使いたいんです」
私は一瞬理解できなかった。今まで一度だってこの馬鹿犬がそんなこと言ったことはない。
「WHY?」
「だって今日仲間が使ってるのみたんですけど超かっこよくて超強いんです、なんかこうバァァァァニィィィィィングゥゥゥって」
馬鹿犬はひどく興奮した様子ではね回りながら言う、馬鹿犬でもそういうものに惹かれるということもあるらしい。
「ふーん、でも私、別に攻撃力いらないしね」
「でも、あの、護衛して、敵をやっつけてやりますよ」
「でもいつもヘッジで十分だしね、いざとなれば、スウェやウインディもいるし。しかも」
「しかも?」
「インシナって、あのLVあげるほど使えなくなるというっていう罠スキルじゃない。やるならゲイルパンチでしょ」
あねさんは相変わらず本から目を離してはいないまま答えた、ま、ゲイルパンチも半分ネタですけどね。
「そう、ゲイルパンチよっ、ゲェェェイルパァァァァンチ」
あねさんは突然なにを悟ったか、本を放り出して立ち上がり拳を固めて繰り出した。
「ああ、そのネタキャラとは思えない威力、範囲。そこらのへっぽこメテオなんて目じゃない」
「なんですか? あなたは?」
これは、一人芝居。何故こんなところで。
「ぜひ我がギルドに入ってください。その力を持って、全敗中の我がギルドに光を」
「そんなぁ、こんなネタキャラの私が?」
「遺憾ながら私は今までテイマといったらファミ。サマナだって、所詮LV差による強さだと思い、知識で威力を上げることもで
きないサマナの技なんて所詮ネタだと思ってました。が、今あなたを見てそんな考えは払拭されました。まさにあなたは我々に
とっての救世主」
「そんなことはないですよ、私はただ一介のネタキャラなんですから」
「またまた、そんな事言って、実は力がありながらもそれを認めてくれない世界に怒りを感じていたのではないですか? 我々
とともにその力を全ての者たちに見せつけようではありませんか」
「いやあ、でも」
「今こそ、この我々を導く光、いや女神となってください」
「そこまで言うなら、ネタキャラですがよろしくお願いします」 
「あ、あねさん、戻ってきてください、じゃあせめてフレームリングでもいいですから」
馬鹿犬は必死にあねさんの服の裾を引っ張っりながら言った。あねさんの一人芝居に割り込むとは、勇気があるな、馬鹿犬のく
せに。が、割り込まれた割にはあねさんは機嫌良く答える。
「フレームリングねぇ、同じでしょ」
あねさんは興味ないような様子でソファーに座り直した。
「くっ、でも、俺、あんまりあねさんの役に立ってないし、もっとあねさんの役に立ちたいんですよ」
ほう、馬鹿犬でもそういうことを考えているとは驚きだ、馬鹿犬のことだから何か別の理由があるとも思えない。単純にそう思
っているのだろう。その一途さが彼の唯一の取り柄だ。それより役に立っていないということを理解していたことの方が驚きだ。
「十分役に立ってるわよ」
あねさんは笑って、ソファーから降りる。
「え? でも俺犬乗りもできないし、攻撃もできないし」
「あなたの役目は私を笑わせること、どうでもいいこと言って、一緒に騒いで、それでいいのよ」
あねさんは言い聞かせるように馬鹿犬をなでながら言った、馬鹿犬にとっては身に余る光栄だろう。そしてさすがあねさんだ。
確かにそういう面では、馬鹿犬は四体の召還獣の中で一番優れている。
「で、でも。俺は」
「ほら、骨よ、とってきなさい」
あねさんはそこらにあった骨を部屋の隅の方へ投げた。馬鹿犬はわおんと可愛らしく鳴くと走っていく。そして口にくわえてから
はっと何かに気づいたように骨をおとす。あねさんは笑った、そして馬鹿犬は泣いた。
「俺だってあねさんの役にたちたいんだこのやろー、この、貧乳がー」
そして何故かとんでもないことを最後に言った、私は素早く部屋の外に逃げ出した。
「……、ウインディ、スウェ、いきなさい」
しゅべべべべ、どどどん、わおーん、ばた。

260 名前:南東方不勝 投稿日:2006/05/09(火) 21:46:07 [ JhC8sTQM ]
>>リ・クロスさん
燃える展開の連続でワクテカしっぱなしです。

>>タルタルさん
あねさん…、あんた最高だよw
作品の中にもネタが満載で大変楽しく読ませていただきました。

>>かりうさん
奇遇ですね、自分も蟲秘密は嫌いです…。
白ダメ固定80は凶悪すぎますorz

>>復讐の女神さん
お久しぶりです。ビシュカ嬢の百合っ気に不覚にもハァハァしてしまいましたorz
さてさて、報告書とはやはりメインクエのあれですか?
自分はそこで止まってるんですよねぇ…。鞄に余裕が無いので^^;

261 名前:南東方不勝 投稿日:2006/05/09(火) 22:46:36 [ JhC8sTQM ]
>>246

ドドドドドドドッッッッッ!!

2体のヘッジャーの突進によって、私共の包囲網に大きな穴が開いてしまいました。
(おやおや、乱暴なお嬢さんですな…。魔力の質は母君よりですが気性は父君よりですか)
まぁ、彼らだけで彼女を捕まえる事は難しい事は承知していましたし…。
やはり、姿を変えて現場に赴いたのは正解ですな。部下の不始末は、上司が片付けるのが常識らしいですし…
「ほらほらそこのアンタ、怪我したくなかったらさっさと退きなさい!」
屈強な土の魔人を盾にして、火犬の肩に乗った少女が叫ぶ。
「ご心配なく、私は怪我など致しませんよ。シェルフィミア・イリスアゲート・ゴーファ嬢…」
「は…、それって誰の事…!?」
少女の問いに答えるには時間がありませんな。もう、魔人は目の前まで来ていますし。
「部位擬態…聖盾」(ディバインフォートレス)
続いて、第2段階。
「技能擬態…絶対防御」(スキルフェイク…コンプリートプロテクション)

ドッッッッ、ガッッッッッッ…!

「う…そ…」
彼女の驚愕の声は当然のものでしょう。目の前のシーフの両手が、盾にその姿を変えたのですからな。
あまつさえ、2体がかりのアルマジロローリングを受けきったのなら尚更でしょう。
「くっ…。ヴォイド、ラグル!!」
ふむ、召喚獣でダメならペットですか…。
「甘いですぞ。技能擬態…浄化光」(デストロイングアンデッド)
私より放たれた聖なる光が、不浄なるモノの接近を拒む…!
「ぬぅ…、これでは近づけぬ!」
吸血鬼が忌々しげに言葉を吐く。「偽り」とはいえ、効果覿面ですな。
「い…一体なんなのよ、アンタ!」
いやはや、慌てていますな。どうやら、まだ覚醒はしていないようですな。
「いえ、名乗るほどの者ではありませんのでな。大人しく私に付いて来て下されば、仔細構いませんので…」
「ふざけんじゃ…ないわよ!」
そう言い放つと同時に少女が火犬の肩から私に向かって飛び掛ってまいりました。
いや…。よくよく見れば少女が手にしている笛は、風の魔力を封じ込めた魔笛「サイレントビブラ」ではありませんか。
なるほど、私を麻痺させる腹積もりですな…。ですが…、
「いっけぇぇぇぇぇ」
「抵抗擬態…盗賊鼠」(ラットシーフ)

ガシッッッ!

「な…なんで…、なんで効かないのよ!」
「相手が悪かったと思って諦めてくださいますかな?」
少女が振り下ろしてきた笛を掴み、静かに言い聞かせる。
「では、少しあちらの倉庫の中でお話しを…、っ!」

ブオンッッッ!

少女の笛を掴んでいた私の手を断つかのように、巨大な戦斧が振るわれる。
「あぁ、悪いな…。このクソ餓鬼には俺達っていう先客が入るんでな」
私と少女の間に割り込んできた戦士は、特に悪びれもせずにそう言い放った。

262 名前:タルタル 投稿日:2006/05/11(木) 15:29:38 [ hfUQyDik ]
「虹色の落書き」(長編)
 第一話 暗紅色の出会い 今回はコメディ系ではありません。(たぶん)
  
ロビーに死体が横たわっていた、その数六体。いずれもそれなりに鍛えられた肉体
を持つ男達。その全員が体中を切り裂かれ、さらに首は切断されていた。
ここはあの砂漠を移動する人々を見境なく襲うということで悪名高いスターヒール
盗賊団の根城であり、ガディウス大砂漠の地下にある。入り口は秘密だってさ。(←誰?)
「すまなかった。俺たちが悪かった、頼む命だけは、命だけは助けてくれ。お願い
だ」
凄惨なロビーを抜け、ある一室で十人ほどの男達の一人が震える声で眼前で鬼のよ
うな形相で自分たちを見下ろす男に言った。彼はどうやら剣士のようだが、剣は装
備していない。代わりに両手にはスパイクシールド、さらに背中にはイージスを装
備していた。年は二十代前半だろうか、がもっと大人の雰囲気がある。髪は短く黒
い。整った鼻筋、きりっとした目、細い眉、本来顔はなかなか男前であるが、今は
その鬼のような形相のためにただ恐ろしい。鎧を着けていない以外は普通の戦闘用
装備である、一メートル九十はあろうかという長身で、砂漠に生きるためか肌は黒
い。その手に持つスパイクシールドは血にぬれ、体も返り血なのか自身のものなの
かわからないほど血にまみれだった。
「弁明は聞かないと言ったはずだ、殺す」
そういって剣士は右手を振り上げる。
「やめなさい」
どこから現れたのか剣士がその声に反応したときにはその女性は剣士の前に立って
いた。
彼女の職業はプリンセス。十代後半、いや二十代前半か。髪は黒く長さは肩ぐらい。
身長は低め、一メートル四十ぐらい。その大きな瞳は真紅で強い意思を感じさせる。
上から下まで厚めの白いマントを羽織っている。特に武器は持っていない。代わり
なのかそのローブを着ていてもわかる厚い筋肉が内部でうごめいていた。その質、
量ともに半端ではなく、眼前の剣士以上である。もう異常である、ムキムキである。
そしてその胸は厚い筋肉に押しつぶされるように小さく、儚い。貧乳である。残念。(←だから誰?)
「邪魔だ」
剣士はただハエを追い払うが如く、右手のスパイクシールドをそのプリンセスに対
し振り下ろす。その一撃は当たればプリンセスの頭などかるくふっ飛ばしそうだ。
「なっ、ぐぅぅ」
「やめなさい、と言ったはずです」
プリンセスは振り下ろされた右腕を掴み取り、後ろにひねった。剣士は逃れようと
動くがプリンセスは力をこめ放さない。
「無駄です、私に勝てる男などいません、今のうちに逃げなさい。彼は私が説得し
ます」
プリンセスは震え上がっていた男達に言う。男達は何か騒ぎながら一目散に走り去る。
「てめえ、放せっ」
プリンセスは男達が逃げたのを確認すると剣士の腕を放す。そして扉を背にして立つ。
「どけろ、でないと殺すぞ」
「やめなさい、あなたでは勝てません」
「力だけで勝てると思うな」
剣士は左手のスパイクシールドを投げつけた、それは高速回転しつつプリンセスに
迫る。そして自身も右手のスパイクシールドを構えて突撃した。この狭い部屋の中
のこと、相当な自信がなければ自らも怪我をする攻撃である、あるいは捨て身なの
か。
「無駄といったはずです」
ばしゅいいいいいいん。
プリンセスは懐からスリングと思わせてスリングではないなにかを取り出した。そ
して飛んできたスパイクシールドをぶっ叩く。いかなる衝撃を受けたのかスパイク
シールドは叩き落され地面に埋没した。がそのとき剣士は目の前にいた。右手のス
パイクシールドがプリンセスの顔面に叩きつけられる、と思った瞬間、プリンセス
は驚異の反射神経で左側によけ、間髪いれずその拳を剣士の急所に叩き込んだ。
「dxzj5j9sgjvbん5くおぢsじぇえh43ぴさp;@わk」
言葉にならない絶叫、そのまま剣士は気を失った。

263 名前:高句麗 投稿日:2006/05/14(日) 12:16:59 [ K5tzLoLk ]
閑けりたいのに地上

「オラちょっと濃い!この野郎!」
新参者のくせに威張りまくった攻撃隊長の高句麗が叫ぶ
「いいか俺が毎日言っているように戦争は戦力だけ赤手ねエンだ
情報や仏師も重要な一因となる!ッてことでおれの振る光って来いレガシー」
いわれたのは天然のけを持ち合わせたBISのレガシーいつも言いようにこき使われていた
「でも戦争がはじまるまでもう5分もありません世高句麗産」
「おまえが5分以内に買ってきて戻って九りゃ問題ないだろ?さっさといけ」
この無茶な要求を何とかしてくれとギルマスノ蘭太郎を見やるレガシー
「レガさん、僕のぶんの刀油もお願い」
「私のdragonのちも」
ギルマス含ますたちにもレガシーの言外の視線などどこふく風
しょうがね絵から首都に会に戻ることにした
やっとこさ郊外に露天を発見したのだが
「振るひは5個セット40万刀油は1リットル40万dragonの血は80万打ね」
「ぼった栗じゃないですかそれは!」講義するレガシー
「ンじゃよそでかえよ」とそっけない承認
「! まだかこの野郎!もう戦争はじまるぞ!」個々まで聞こえてくるこうくりの叫び
「しょうがないそれください」観念するレガシー
「んじゃ包装するのにさらに1Gもらうぜ」
「最初からそのくらいやってないんですか!」
「織れは油やPOTは売るといったが外の袋や殻は別売りだぜ?」
「! この野郎!遅れたらこの世にも地獄が存在するってことを教えてやるぞ!」
もう時間がない慌てたレガシーは
「急いでいるんです!このポットにフルポ5個刀油3個dragonの地2回分お願いします」
戦争には余裕で負けた

264 名前:名無しさん 投稿日:2006/05/15(月) 17:16:25 [ W5NOPE0k ]
毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒

265 名前:高句麗 投稿日:2006/05/17(水) 09:29:30 [ hfUQyDik ]
>>263
「おら、ちょっと来い! このくそ野郎 !」
新参者のくせに威張りまくった攻撃隊長の高句麗が叫ぶ。
「いいか俺が毎日言っているように戦争は戦力だけじゃ勝てねえんだ。
情報や仏師も重要な一因となる、ってことで、おれのフルヒ買って来いレガシー」
いわれたのは天然の気を持ったBISのレガシー。いつもみんなのいいようにこき使われていた。
「でも戦争がはじまるまでもう5分もありませんよ、高句麗さん」
「おまえが5分以内に買ってきて戻ってくりゃ問題ないだろ?さっさと逝け」
この無茶な要求を何とかしてくれとギルマスの蘭太郎を見るレガシー。
「レガさん、僕の分の刀油もお願い」
「私のドラ血も」
ギルマスも副マスたちにもレガシーの言外の思いなどどこふく風。
しかたないから首都に買いに戻ることにした。やっとこさ郊外に露天を発見したのだが。
「フルヒは5個セット40万。刀油は1リットル40万。ドラ血は80万ね」
「ぼったくりじゃないですか、それは!」
講義するレガシー。
「んじゃ、よそでかえよ」
そっけない返事。
「まだか? この野郎! もう戦争はじまるぞ! 」
町中に聞こえてくる高句麗の叫び。
「しょうがないそれください」
観念するレガシー
「んじゃ包装するのにさらに1万Gもらうぜ」
「最初からそのくらいやってないんですか!」
「俺は油やPOTは売るといったが外の袋や殻は別売りだぜ?」
「! この野郎!遅れたらこの世にも地獄が存在するってことを教えてやるぞ!」
もう時間がない慌てたレガシーは
「急いでいるんです!このポットにフルポ5個刀油3個、ドラ血2回分お願いします」
戦争には余裕で負けた。

266 名前:見学者 投稿日:2006/05/18(木) 23:00:01 [ ww4BM0IA ]
お初になります、コンバンハ。
某情報サイト様の掲示板にてRSネタを書いていた者です。
しかし実際にプロット立てるとこれが長い長い ノД`

というわけで此方に移って来ました。
文章力に長けた皆様に混じること、どうか暖かく見守ってくださると幸いです。

また、作品中に各キャラクターの名前はありません。
決して考えるのが面倒というわけではありませんよ、ええ断じて……。

デハデハ、駄文投下とさせていただきます。

267 名前:見学者 投稿日:2006/05/18(木) 23:00:34 [ ww4BM0IA ]
 古都、ブルンネンシュティグの王宮跡。シーフは重い足を引きずって姿を現した。別にケガや病気、というわけではない。気が重いのだ。
 過ぎ行く人々はあんなに明るい笑顔だというのに。私は一体どうしてこんなに暗い気持ちで歩いているのだろう。
 よく晴れた青空と心地よい風の吹き始めた、良い日柄の一日であった。

 ことの発端はこのシーフが秘密ダンジョン探索に同行した帰りである。
 投げる武器も無くなったし、新しい装備品も見たいしという簡単な思いからテレポーターに頼み古都から砂漠都市アリアン、港都市ブリッジヘッド、鉱山町ハノブへと足を運んでは露店めぐりを楽しんでいた。
 いずれも自分の技量や力不足で飾ることも着ることも出来ないが、それを眺めるだけでも満足できる。これを自分が扱えるように、もしくは探し当てるように出来るように出来れば。
 所狭しと並ぶ露店の一つに、無限弾丸の称号を持った短剣が並んでいた。見たことも無い形をしており、様々な付加能力が付いている……。と説明書が隣においてある。無限弾丸とは、確か使っても使っても決して無くならない投げ短剣のことか。
「(やはり無限弾丸ともなると高いですね……。値下げを頼んだトコで買えそうもない、か)」
 露店の主が時折首をカクンと揺らしているのを見ると、どうやら良い夢を見ているようだが。残念ながらこのシーフに『強奪』などという気の利いた技術は持ってないのだ。
 代わりに属性攻撃付きの指輪を一つ二つ、ハノブの露店で購入するとテレポーターに再度頼み込み古都へと送ってもらった。
 その直後である。ギルドマスターである戦士から耳打ちが届いたのは。
「よぉ、良い感じで稼いでくれてるかな?」
 ぎょっとした。ただでさえ賑やかな古都なのに耳元で男性の声がしたのだ。前触れというものがあると嬉しいのだが。それに滅多に使わないから音量を設定し忘れていたのが失敗だった。
 シーフは顔をしかめながら右手で耳元を押さえた。そうでもしないと耳打ち相手の声が外に聞こえてしまいそうだったからだ。
「稼いだって薬と投げる物で消えてしまいますから。ユニークアイテムとやらの欠片も私には来ませんでしたし」
 そういえば、あの初めて見た短剣はユニークアイテムだったなと今更ながらに思い出した。
 へぇ、ユニークなんて呼ばれてるからもっとネタを目指した物かと思ってたんだけどな。
「ハッハッハ! そのうち箱から拾えるよ。俺の剣も出してくれや」
「……私がそのような仕事が出来るようになるには、まだ程遠いと思いますから期待はしないでくださいね」
 秘密ダンジョンにいけるシーフは『ロックピック』『ディザームトラップ』『アンロックドア』『探知スキル』それぞれの技術が必要となる。
 また、ダンジョン内で行動不能になればパーティに迷惑が掛かるし、技術があってもそれをするだけの集中力がないといけない。武器の装備には何故か素早さが必要となってくる。
 ……つまりは、攻撃するだけの技術や体力を鍛えることが難しくなるのだ。
 シーフはため息をついた。
「私に何かご用ですか? マスターが私に連絡してくるなんて珍しいじゃないですか」
「ん。あぁ、今暇でしょ? ちょっと頼まれてほしいんだよねぇ」
「頼まれて……? はぁ、また扉にでも挟まりましたか。しかし私は貴方の狩場に行くのが、」
「いやいやそうじゃないのよ」
 戦士はシーフの言葉を遮った。嫌な予感がサッと風となって髪を揺らした気がした。
「おつかいなんだよね。まぁ、ちょっと王宮跡まで来てくんないかなぁ」

268 名前:見学者 投稿日:2006/05/18(木) 23:25:20 [ ww4BM0IA ]
 少々どころかかなりの無茶をする戦士は、豪快で快活で確かに憧れたり羨んだりすることが少なくないのだが。どうもあの人のやること言うことは、納得も理解も出来ないことが多すぎる。
 よりにもよってお使いとは……。あの人は私に何をさせる気なのだろう?
「おや? 元気がないね」
 王宮跡には戦士――ではなく追放天使がゆったりと腰を下ろして水路の流れを眺めていた。シーフの靴音にでも気付いただろうか。シーフとしては半人前かな。
「あ……天使様。お邪魔してしまいましたか?」
「いやいや、気にしないでくれ。私はあの"困ったさん"に呼ばれてしまったのだよ。おそらく『狩りに行こう』ということなのだろうけどね」
 "困ったさん"とは我等がギルドマスター、戦士のことである。
「気苦労お察しします」
「それは君も同じだろう? 互いに苦労ばかりだね。だがそれは必ず報われるよ」
 若き君に神のご加護を。追放天使は胸元で十字を切った。
 神聖な気分に穏やかになったムードも、シーフよりも遅くやってきた戦士によってぶち壊されるのは言うまでもない。我が物顔でかつての王宮へ向かうその姿はまるでここは我が国とでも言わんばかりだった。

 どっかどっかと足音をならし、古都の住人のしかめた顔もおそらくはその瞳に映ってはいまい。いつでも取り出せるよう、武器である大剣は背中に装備されていた。が、整備されているとは思えないくらい柄が汚れている。
 追放天使もシーフも、これが我がギルドマスターなのかと眉をひそめるばかりだ。
「なんだ、もう来てたのか。さすがはシーフだな。『その素早さは……』」
「からかうのはお止めくださいな。それよりなんですか、その頼みごとというのは?」
 シーフの言葉に反応して追放天使は片眉を吊り上げた。
「マスター殿。まさか貴方は自分の雑用をこのシーフ君に任せるつもりだったのか?」
「気にすんなよ。天使は俺と狩りをするって前から予約してたじゃねぇか」
「天使様は予約制なのですか……」
 追放天使はフッと儚げな笑顔を浮かべた。
「我が兄弟であるビショップがテイマーさんに連れて行かれたのだよ。でなくば私を呼びまい」
 そんなことを言ったのかこの無神経なマスターは。
 追放天使はぷい、とそっぽを向いた。
「私のことは気にせず用件を続けてどうぞ」
「うむ。すまないな!」
 いつか私が天使様と同じ地を踏めるよう努力いたします。密かに心に決め、シーフは戦士に向き直った。
「繰り返すようですが。私に頼みごととは何ですか」
「砂漠村リンケンに手紙を届けるのを手伝ってほしいんだ。居たろ? あのミカだかリカだかって名前の女の人」
「確かサラという方だったと思いますが。でも貴方はそれを済ませましたでしょう」
「別に名前はどうだって良いんだがな。俺じゃなくって新人ギルメンが頼まれたんだよ」
 新人? シーフは首を軽くかしげてみせた。自分も誘われて入ったクチで三日前に入ったばかりだ。
 もう勧誘をしてしまったのか……。そりゃぁ私では力不足でしょうよ。すいませんねぇ、非力で。
「もーすぐココに来るはずなんだけどなぁ。来ないなぁ」
 王宮跡を背に、戦士は自分が来た道をじぃっと眺めた。
 その時だ。王宮跡から衣擦れの音がかすかに耳に届いた。戦士と追放天使に視線を向けるが、彼等は聞こえてないようだ。
 まさか古都にまでモンスターが入り込んだのか?
 買ったばかりの武器にそっと手をかける。

269 名前:FAT 投稿日:2006/05/19(金) 07:22:36 [ eoxhJe/k ]
『水面鏡』

キャラ紹介>>21
―田舎の朝―1>>22、2>>25-26 
―子供と子供―1>>28-29、2>>36、3>>40-42、4>>57-59、5>>98-99、6>>105-107
―双子と娘と―1>>173-174、2>>183、3>>185、4>>212
―境界線―1>>216、2>>228、3>>229



―4―

 自室でレルロンドとランクーイが思い思いの時間を過ごしていると、窓が爆発音でかた
かた鳴った。なんとも物騒な街だな程度に思い、レルロンドは火薬の調合を、ランクーイ
は物思いを再開した。
「ちっ! しつけーな、おめーら! 殺しちまうぞ!」
 ラスは爆風の中から無傷で現れた。彼を取り囲むシーフたちに緊張が走る。
「この街で俺たちのギルドに手を出すのがどういう意味を成すのか、知らないとは言わせ
んぞ」
 もう何度目だろうか。これしか喋れないのではないかと思うほど執拗な繰り返しに感情
の幼いラスはもう自分を抑えることができなくなりつつあった。しかし、それ以上のしつ
こさで母エイミーの言葉が頭の中で掻き鳴り、力の制御が出来ぬうちは手が出せなかった。
「くそっ!!」
 不本意ではあるが街中に居ては危険だと考えたラスは高く跳躍し、シーフたちの頭上を
影が通った。その跳躍は建物二階立て分もの高さを飛び、ちょうどレルロンドの目に飛び
込んだ。
「ええっ!? おい、ランクーイ、大変だ。ラスさんが追われているぞ」
 隣室のランクーイへ壁越しに呼びかける。急いで窓際に駆け寄ったランクーイは小さく
なったラスの姿を確認した。
「なんかやばそうだな。荷物、持っていくか?」
「ああ!」
 明らかな緊迫感が二人を焦らせる。あの師匠が逃げなければならぬほどの敵なのかと考
えるとランクーイにはダメな震えが起こった。
 先に部屋を出たレルロンドがラスの荷物も持ってタイミングよくランクーイと出会う。
「遅いぞ! 早くしないと見失う!!」
 分かってはいる。体が、それを拒むのだ。ランクーイは自らが作り出した空想上の敵に
脅えて足がもつれた。宿を出るのを恐れ、レルロンドが振り向く。ランクーイは恐れを見
られてしまった。そして、レルロンドは手を差し伸べようともせず、走り去っていった。
見捨てられたとは思わなかった。むしろ、気が楽になった。
「お客さん、三名様でお代は一万Gになります」
 まだ一泊もしていない。滞在時間は数時間だ。それでも金を払えと言うのか……。

 ランクーイは素直に一万Gを支払った。彼はまた、自分とレルロンドとの境目を見た気
がした。
 変わりたい、大人になりたい。
 そんな彼の気持ちは少しずつ身になっているようだ。
 ラスとレルロンドはもう遠くへ行ってしまっていた。

270 名前:FAT 投稿日:2006/05/19(金) 07:24:39 [ eoxhJe/k ]
―5―

 街を北へ抜け、人気のない草原でラスは立ち止まった。
「はぁはぁ……こ、この街で俺たちのギルドに手を出すのがどういう意味を成すのか、知
らないとは言わせんぞぉ」
 ラスは「天使の翼」を自分に掛け、見失われない程度に速度を調節してシーフたちを釣
ってきた。いかに鍛えられたシーフたちとは言えど、魔法には敵わない。
「ここならいいよなぁ……てめぇら覚悟しろよ……!」
 ラスが小さく口を動かすとシーフたちの足、いや脚までを地中から噴き出した岩土が空
気すら入る隙間もないほどに密に締め付ける。
「二、二、二、二……八人か。そうだな、まずは……」
 ぼうっとラスの頭上に四つの火炎玉が発生する。それらの一つ一つに凝縮された魔力は
各々の役割を認知し、シーフ四人が悲鳴をあげた。残りの四人は唾を飲んだ。
「死ぬなよ。死なれると俺が困るからな」
 と、焼けたシーフたちにランクーイの憧れを掛ける。そして、無事な四人を氷柱漬けに
する。歪んだ醜い顔が透明な氷の中で芸術作品のように形を留める。生きているような作
品とはこんなもののことも指すのだろうか。ラスが笑った。
 氷を消し、適当に治癒を施しているとレルロンドが追いついた。しかしその姿はラスの
目には映らない。彼は彼の楽しみの虜になり、一心不乱に傷めては治す――の繰り返しを
何度も何度もした。
 ランクーイはそこに居た。ラスはもちろんのこと、レルロンドもそのことには気がつか
なかった。そこで彼は、レルロンドだけを円の外に出して線を引きなおした。
 何がラスをそこまでの狂気に誘うのか、ランクーイには理解し難かったが、しばらくそ
の光景を眺めているうちに、もう少し幼かった頃の自分の姿が重なった。
 子供だ。
 ラスはやはり子供なのだ。終始冷めた調子でいるのもそう教育された、言わば焼付けの
刃で本物はこちらなのだ。活発な七歳の子供が持つ好奇心――それを封じる断固としたし
つけ、あるいは魔法によりラスは偽の顔を持つようになってしまっているのではないだろ
うか。押さえつけられた感情の氾濫、閉じ込められた好奇の破裂。
 その光景は、子供が虫を弄んでいるのにそっくりだった。そしてその残虐な遊びを眺め
る大人の胸には大きな不安の腫瘍ができた。
 楽しげに、子供は虐待を繰り返した。

271 名前:FAT 投稿日:2006/05/19(金) 08:31:53 [ eoxhJe/k ]
>> 南東方不勝さん
おお、お仕事がんばってください。
これはまた良い強敵ですね、「偽り」ということは意外ともろい部分もあるので
しょうか?

>> タルタル さん
初めまして。あねさんシリーズに爆笑でした。いいキャラですね。
長編の方も楽しみにしています。

>> リ・クロス さん
龍騎士族かっこいいですね。悲運の種族という感じで。
更なるバトルの発展に期待です。

>> かりう さん
初めまして。私も蟲秘密には嫌な思い出が…
しかし残された戦士の苦悩や使命感がひしひしと伝わってきて面白かったです。

>> 復讐の女神さん
やっぱりうまいなぁと思いつつ、今回も楽しく読ませていただきました。
復讐の女神さんの作品は読んでいるというよりも、映像を見ているような錯覚を
起こさせるんですよね。私だけでしょうか?

>> 高句麗さん
これは酷い仕打ちですね。レガシーさんに同情です。

>> 見学者さん
初めまして。中々に傲慢なマスターですね。それでもギルドを抜けずに残っている
ということは、どこかに良い一面も持ち合わせているのでしょうか?

272 名前:( -_-) 投稿日:2006/05/19(金) 18:39:34 [ bPsFhPHk ]
いきなり余談ですいませんが
昼飯時ってギルド
赤鯖でメンバー募集してましたぞ

273 名前:( -_-) 投稿日:2006/05/19(金) 18:48:48 [ qlIUExqI ]
連続ですいませんが
どうやら最近できたギルドっぽいす
このスレのリクエストに答えたのかは知りませんが・・・・

274 名前:名無しさん 投稿日:2006/05/19(金) 23:49:08 [ VSW7Q5Tw ]
>>272-273
晒すなバカ

275 名前:名無しさん 投稿日:2006/05/20(土) 00:31:35 [ FQTlm242 ]
そういや小説スレで新しいキャラが作られるとすぐにそのがRS内でキャラ作られるな
明らかにフィクションで検索しても小説スレしかひっかからないような名前ですら
「その名前は現在使われております」だし

276 名前:sage 投稿日:2006/05/20(土) 12:07:56 [ AR91Qen2 ]
「なあ、なんでビーストテイマーって女性ばかりなんだ?」
 「・・・・・・ほぇ?」

唐突の疑問に目を点にしてなんとも間の抜けた声を少女は疑問を投げかけた青年に返した。

 「えっと・・・・・また、いつになくいきなりですけど・・・・・・藪から棒にどうしたんですか?」

いつになくと少女は言ったが、対象であるこの海のように深く澄んだ蒼い髪の青年は時たまに突拍子もないこと
を言ってくることが確かにある。だがそれは本当に時たまであり青年にしてみればぽけぽけな言動をする天然な
少女にだけは言われたくないだろう。

 「いや、ただ単純にテイマーは女性しか見たことが無かったからさ。んで、考えてみればなぜかなと」
 「う〜ん、なるほど!」

ポンッと納得がいった様子で手を叩きニコニコと笑顔を浮かべながら少女は青年の疑問に答える。

 「ビーストテイマーに女性しかいないというのは勘違いですよ。また、女性しかビーストテイマーになれない
  というのも間違いです」
 「へ〜そうなのか」
 「はい。サマナー同様、テイマーにも男の人はいます。ただ、サマナーとは違って圧倒的に少なくテイマー
 全体の一割にも満たないんです」

そう言った少女は少し寂しそうな表情をしたが、また。すぐに笑顔で説明を続けた。

 「それに男性のテイマーは一目でわかるような格好をしていませんから・・・」
 「・・・・・・は?」

意味不明。そう言外に言い、疑問の声を少女に投げかけた。
一般的にビーストテイマーの服装は防水・防寒のためにすっぽりと頭から肩を覆うフードか、頭巾を着用して民族衣装のような身軽な服装を好んで着けている思われがちだが実際はその限りではない。
確かにほとんどのテイマーはフードなどを被っているが、脚甲や手甲を装着している者や鎖帷子・胸当てなど女性剣士が装備する軽鎧を装着する者が大半を占めている。
だから、一目でわかるような格好というのも変な話なのだ。
唯一判断できる材料は証である笛かモンスターを象った魔法の加護がある肩刺青だけだろう。

 「えっと・・・・・・つまりですね。戦士と同じ格好をしてるってことです」
 「ああ・・・・そういうことか」

ペットであるモンスターがテイマーの証であったのは百十余年の昔こと。
今では、十分に調練されたモンスターであれば主であるビーストテイマーの任意の元、主以外の人間の手伝いをすることや命令を聞くことも可能となっているのだ。

 「じゃあ、外見以外にも違いはあるのか?」
 「はい。見分ける材料にはなりませんが、女性と男性ではペットに対する認識が少し違います」
 「ペットに対する認識?」
 「私達、女性テイマーにとってペットは友人というか家族のような存在なんです。でも、男性テイマーのほうは相棒もしくは戦友のような存在だと言っていました」
 「へぇぇ〜〜〜〜〜」
 「だから、男性テイマーはテイムしようと意識しているのではではなく力の限り闘い互いに認め合った時、仲間
としてペットにするのだそうです」
 「なるほどな〜行き当りばったりでペットにするってことか、要は」
 「うっ・・・・えっと、その〜まあ・・・・・・・客観的な意見としては・・・はい、そういうことになりますね・・・」

青年の鋭い突っ込みに気まずそうに視線をややずらして少女は言い難そうに肯定した。

 「ふ〜ん?まあ、理解はできたけどさ、納得はできたとは言いがたいな」
 「あぅ・・・・・・」

身も蓋もない言葉に少女はすまなさそうに肩をすくめた。

 「・・・っと。そろそろ時間だな」
 「あ、そうですね。もうすぐ依頼人との面会の時間ですね」
 「なかなか面白い話も聞けたしよい暇つぶしなったよ」
 「それはなによりです」

少女は笑顔でそう返して、鞄を開け青年も同様に鞄の中から巻物を取り出し、開くように目の前に放り投げた。

 「報酬、高いといいですね」

少女の呟きと空間移動時の独特の音を残して二人は光の中へ消えていった。


                                      fin

277 名前:名無しさん 投稿日:2006/05/20(土) 12:20:58 [ AR91Qen2 ]
地面に両手をつけ、頭をさげて
ごめんなさいっ!!
捏造・妄想な自論をぶちまけて申し訳ないです。
勝手にイメージ崩すなとか設定変えるなとか言わずに暖かい目で見て欲しいです。
文章書くのが初めてというわけではないですが素敵な作者が多い中、つたない文だと
思っていますので指定とか書いてもらうと嬉しいです。
長々と失礼しました(_ _)

278 名前:海斗@新人# 投稿日:2006/05/20(土) 15:46:16 [ BCFeLq6c ]
俺の名は朝計育(ともばかり・すぐる)。私立赤石高校の体育教師をやってる。

誰だ!「あさはか」じゃねぇ!!と・も・ば・か・り!だっての!

トレードマークは赤のジャージ(っつっても教師は全員コレなんだが。--;)と肩から担いだ竹刀。生活指導担当の俺は、コイツで日々狂育的指導を行っているわけなんだが………


PHASE-1対(?)相馬槍子

相馬槍子「♪〜」(ブンブンと槍を回している)

朝墓(!!校庭で槍を振り回すとは…最近ご無沙汰だし、いっちょ狂育的指導を…)
「コラ、相馬!校庭でや…ゴファッ?!」

相馬「Σ?!す、すみません!!大丈夫ですか?(>д<」(トテテッ)
朝墓「やめ…近付くと…あつっ…あっ…つめt…」(カキーン)
相馬「やばっ(--;」
「急いで逃げなきゃ…」

朝墓×―○相馬


うーん…やっぱ難しいな(-д-)

279 名前: 投稿日:2006/05/20(土) 15:48:23 [ i0ue.rU6 ]
レッドストーン接続できず、、、無念

280 名前:海斗@新人 ◆Oamxnad08k 投稿日:2006/05/20(土) 15:48:52 [ BCFeLq6c ]
すんません・・・
#打ってENTER押してしまいました・・・orz


モノ書くのは初めてですが、感想とかもらえると嬉しいです。

281 名前: 投稿日:2006/05/20(土) 15:51:56 [ i0ue.rU6 ]
なんの感想?w

282 名前:( -_-) 投稿日:2006/05/20(土) 15:56:44 [ C/r1efxU ]
すまない
自分のアホさになえたよ・・・・
裸で名もない遺跡で逝ってくる・・・・

283 名前: 投稿日:2006/05/20(土) 16:00:37 [ i0ue.rU6 ]
レッドストーン接続できないです。。。
皆接続できてます>?

284 名前:名無しさん 投稿日:2006/05/20(土) 19:17:00 [ ToGMbBDU ]
korehahidoi

職人さん来ないかしら

285 名前:復讐の女神 投稿日:2006/05/20(土) 21:35:36 [ ekccW9h6 ]
水瓶が満タンになり、ジェシは机に向かうことにする。
報告書などといった書類の類は、さっさと済ませないとどんどん後回しになってしまう。
過去、3件の報告書がたまってしまい、あせったことがある。
あれは、地獄だった…。
手に万年筆を持ち、インク瓶のふたを開けて筆先を軽く浸す。
ツンとした匂いが鼻を突くが、ジェシはこの匂いが嫌いではない。
羊皮紙の上に、筆を走らせる。
早い。
繊細であり、しかし迷いの無いしっかりした文字だ。
羊皮紙2枚分の手紙はすぐに書き終わる。
「んっ…」
ペンをおいて、誤字脱字を確認する。
「うん、上出来」
うなずき、旅の間に纏め上げた全ての書類を封筒に入れ、溶けた蝋で封をする。
封筒をそのままに、ジェシは部屋の隅においてある普段愛用している自分の鎧に向かう。
旅の間についた汚れは、昨日のうちにぬぐっておいた。
油のしみこんだ鉄の鎧は、太陽の光を浴びて鈍く光っている。
服を脱ぎ、鎧したを着る。
その上に鎧を着ると、着慣れた、体に吸い付くような重さを味わう。
もはや、これこそ普段着というべきか。
女らしくないと、鎧を着るたびに思う。
でも、戦場に女らしさなど必要ない。
最後に鎧のベルトを締め、壁に立てかけておいた弓と槍を手に取る。
いつもの鞄に封筒を入れ、矢筒を背負い。
「さて、いきますか」
家の戸締りをし、向かうは依頼人宅。
昨日のうちに、たまっていたダイレクトメールやらは取り除いたので、新たに何か放り込まれていないか確認する。
すると、一通の手紙があった。
手紙を取り出し、差出人を確認する。
「………ボイル・ゾルフィード」

286 名前:復讐の女神 投稿日:2006/05/20(土) 21:36:20 [ ekccW9h6 ]
そのまま破り捨てたい衝動に駆られるも、なんとか押さえつけて封をとき中身を取り出す。
時間がもったいないので、歩きながら読むことにする。

 拝啓・愛するジェシ
あぁ、君は僕にとってまさに女神。
その澄んだ瞳─────────

とばして、次の手紙に移る。

さて、私の愛が十分に伝わったと思うので、コレくらいにしようと思う。
愛しているよ、ジェシ。
 追伸
最近、街で君に関する妙な噂が流れている。
注意したまえ。

まったく、あの男はなぜこんな手紙の書き方しかできないのだ。
頭痛はするが、最後の3行には注目せざるを得ない。
妙な噂…女の弓使いの噂だろうか?
ボイルが気にするということは、よほど尾ひれが付いて広まっているのだろう。
これは、注意して行動しないといけないかもしれない。
色々な考えが頭の中をいったりきたりするうちに、道の途中にある神殿に着く。
「ジェシ」
すると、ちょうど神殿から出てきたフェリル司祭に呼び止められた。
「あらおじ様、おはよう」
「うん…あぁ、ジェシ。実は、頼みたいことがある」
フェリル司祭をみると、その姿は普段の法着ではなく鎧を着込んでいる。
「実は、旅に出ることになってな…しかし、私はどうも戦う力が乏しい」
「私の力を所望?」
「うむ、コレは依頼だから、報酬はでるぞ」
フェリル司祭は、ジェシの目を見て真剣な顔をしている。

287 名前:復讐の女神 投稿日:2006/05/20(土) 21:36:59 [ ekccW9h6 ]
ジェシには…その心のうちが、計り知れない。
「依頼はいいんだけど、やけに急ね」
「当てにしていた人が、出れなくなってな」
手を頭の後ろに当てて笑う。
「うん、この手紙を置いて来てからなら…いいかな。家も、大丈夫でしょうし」
「そうか、よかった」
考えてみれば、おじ様と旅をするのは初めてでは無いだろうか。
もしかしたら、この男の謎の一片を垣間見ることが出来るかもしれない。
ジェシは少なからず、期待していた。
「ところで、その手紙とやらは?」
「ん、報告書よ」
二人並んで歩き始める。
正直、冒険者である私にこの人が付いてこれるかどうか怪しかったのだが。
なかなかどうして、ジェシの足に余裕で付いてくる。
それどころか、こちらのペースにあわせているような気配さえある。
遠慮はいらないということか。
二人は、ペースを落とすことなく歩き続ける。
冒険者の足の速さは、かなりのものになる。
そのせいか、予定よりも早く目的地へついてしまった。

288 名前:独り語り 投稿日:2006/05/21(日) 09:10:10 [ dJvzaVb2 ]
長らくご無沙汰しておりました、独り語りです。
1話1話を人物の独白で綴る形式で、物語をつむぎ最後まで繋ごうとこの名前をつけましたが、
いまは若干の重圧を感じる、心痛の種ともなっています。
と、言いますのも小説スレッド2で投稿させていただいた作品の完結の見込みがなくなりました。
いまさら報告だけするのもおかしいうえ、私の自己満足でしかないのですが、
理由と解題だけ書き落としていくので、しばらくお付き合いください。

作品は剣士・ランサー・ビショップに続き、アチャ・ウィザードを予定していました。
話の題材に選んだのは、普通のPTや一般的な育て方と比べるとちょっと変わったメンバーの話。
5人それぞれが異なった価値観を持ち、それぞれに一つ象徴となるアイテムを設定しました。
また、それぞれに信念があることを伝え、すべての変り種に応援を……。

紹介します。

289 名前:独り語り 投稿日:2006/05/21(日) 09:10:41 [ dJvzaVb2 ]
1)火力皆無の壁剣士。
守ることの誇りを胸に、PT寄生の野次を受け、手にしたファビスに聖騎士の称号。
アリアン砂漠の露天商で見つけたちょっと怪しい王宮聖騎士の紋章。
見た瞬間に運命を感じ取り、財産をはたいて買い取った、守りと誇りの象徴。
傷つけず傷つかず剣を収められれば、ほっと小さく息をつく。「狩り」が苦手な壁剣士。

2)白ダメ無視の舞槍子
1stキャラの元弓子。弓子のはずが矢をケチっていつのまにやらアレ?槍子。
知恵振り、運振り、敏捷振って、趣味で覚えたボイドボー。気づけば強さが エタナ>>槍子。
初PTからの友達槍子が、見かねて渡した風属性攻撃Lv9二股槍。大事な大事な宝物。
好きなことは騒ぐこと!楽しい時間は一緒の時間!効率?なにそれおいしいの?

3)PT恐怖の殴りBIS
殴りBISは強い。条件さえ揃えば狩場最強も疑いない。ただし誰もそう思っていない。
彼は初めて力を認められ、メンバーとして認められ、彼自身に変化が生まれた。
このPTには頼まれ耳で呼ばれて入っている。尚、回想のアチャとPTのアチャは別人。
マント(※元・毛布代わり)は回想のアチャのお礼。彼にとっては記念品。火抵抗+CP効率の微良品。


4)紙装甲の知識弓
狩場に入って移動中に横沸きで死んでます。青い巨人の一蹴りでダブルクリ出て死んでます。
その代わり、デスペナでもPT最大火力を出すくらい強いです。PT内でLvも一番低いのに。
普段はソロ。このPTには道中スカウトで参戦。紙を気にして緊張しまくり&PTメンバが弱くてイライラ。
そして出会ったこのPT。壁剣士、妨害ランサ、殴りBIS、○○WIZみんな揃ってアチャを支援。
大事なのは役割分担。それがPT。そんな話でしたが、、、

290 名前:独り語り 投稿日:2006/05/21(日) 09:11:28 [ dJvzaVb2 ]
この4)のプロットではアイテムに軽い無限矢ドロップのはずが、今じゃその価値30万。
昔の無限矢の感動が伝えられない。シャープも安いし、神品ドロップさせてもリアリティがない。
紙マジアロの話で完全に行き詰りました。


5)器用貧乏の研究家wiz
使えるスキルは、メテオ、エンチャ、ヘイスト、アスヒ、レビテイト、テレポ、霧……
実用ランクのメテオを中心に、支援スキルは当然のように広く使いこなします。
お察しの通り、中途半端WIZです。しかし、事実広く使いこなします。
『メテオの単発威力が低くても対時間総合ダメで…、(後略)』だそうです。
アイテムは胸に光る赤いブローチ。ポケットに潜む青いブローチ。嵩張る荷物も努力の結晶。
まだまだ成長の途中の大魔道師の雛の話。

この後に、エピローグの形で解題を加えて終わるつもりでした。
1度PCが壊れ前のデータが飛んでいるせいもあって続行は難しくなりました。
中途半端ではありますが、未完のまま筆をおかせてください。
再びROMに戻ります。本当にありがとうございました。

291 名前:タルタル 投稿日:2006/05/22(月) 12:30:34 [ hfUQyDik ]
>>262子供の事情により長編は廃止となりました。ただ考えてたキャラは別の話
に出す予定です。

「ラン子さんシリーズ」1−1(全二話)
女性は深夜のブルネ内を走っていた。
ランサーである、体は大きく百八十はあるだろうか。年齢は三十代。ブロンド
の髪は肩ぐらいまであり、今はゴムで一まとめにされている。鼻筋が通った整
った顔をしているが美しい、というわけではない。眼は黒でどこか余裕のある
眼だ。まるで老人のような。服装は鎧は着けていないが戦闘用のものだ。手に
は普通のものよりも一回りは大きいランスが装備されていた。
「へっぽこギルドにしてはいいメンツそろえているようね」
囲まれた。すばやく相手を確認する。六人、剣士、戦士、ランサー、が二人ずつ。
二人の剣士が素早く前に出る。ランサーはその後ろに、戦士は横にまわった。
「でもこの程度じゃあね」
ラピットスティンガー。重いランスのはずなのに驚くべき速度で打ち出された
その矛先は剣士達を打ち倒し、戦士が近寄る暇を与えない。そのまま戦士達に
打ちかかると思ったが、反転し二人のランサーに近づき一撃で沈める。
「さあ、まだやる気? 人生楽あれば苦ありだよ」
「何を言いたいのかわかりませんが、美しい戦いですね、お嬢さん」
声のしたほうを向くと何もなかったところから突然ヴィザードが現れた。ブラ
ーものを付けていたのだろうが、信じられない。実はかなりの高LVであるラン
サーにこれまで見えなかったものなどない。そのヴィザード、黒いロングコー
トを身につけて手に高位魔法杖を持ってる以外はまるで一般人のようだった。
服も靴もむしろどこかの富豪を思わせる。表情は柔和だが眼には思慮深さがた
だよう。年は、わからない。見た目で言えば三十前半だが発する雰囲気は老齢
とも感じられる。重みがあった。
「あいつら逃げたようね」
仲間だとおもったのかランサーがヴィザードに気をとられている間に戦士達は
引き上げた。
「で、あんたは?」
「別に用というわけではないのですが。美しいものに惹かれるのは別におかし
い事ではないでしょう」
「ふうん、私の美しさがわかるなんていい男ね」
「例えるならバラのよう。バラは見るものをとりこにさせるがその茨のために
触れることはできない、孤高なるもの。触れなれないが故に美しい」
ヴィザードはどこからかバラを一本取り出した。
「それどこから出したのよ」
「このロングコートの内側の右ポケットからですが。なにか他にリクエストが
ありますか? 私が持っている物ならなんでも取り出せますよ。なにせ四次元
小物入れですから」
ヴィザードはポケットに手を入れ、いまにも”どこでも○ア”を出しそうな勢
いである。
「結構よ、とにかく馬鹿に付き合ってる暇はないの、じゃあね」
ランサーは歩き出した。慌てることもなくヴィザードはその後を続く。
「まってくださいよ。いいんですか? 秘密ばらしますよ」
「秘密?」
ランサーは仕方なく、というように振り向く。その眼は疑うようにヴィザード
に向けられた。
「とぼけたって無駄ですよ」
「なんで今あったばかりのあんたが私の秘密知ってるの? ていうかそもそも
あんたは誰よ」
「私の名はジョニー。人は私をジョニーと呼びます」
「まんまじゃん、で何が目的なの? 新手の詐欺? ナンパ?」
「ほう、いいつっこみですね、タイミングばっちりです。それならば相方にふ
さわしい」
「漫才をするつもりはないわ」
「いえ、人生のですよ」
にっこり笑って言った。
「プロポーズかよ」
「おお、さすがです。ではそろそろ真面目に行きましょうか。秘密というのは
他でもない。あなたが本当は女性ではなく男性だってことですよ」
一瞬ランサーの動きが止まる。眼はさらに厳しくジョニーに向けられる。
「……、なんでわかったの?」
「見ればわかります。これでも若いときはかなり遊びましたから。女性と男性
を間違えるはずがありません」
「今までばれなかたことはなかったんだけどね」
「経験が違うのですよ、そこらの七十年、八十年生きているものたちと一緒に
しないでください。なにせ自称千年いきる大魔術士ですから」
「自称なのね。まあいいわ。とにかく殺すから。じゃあね」
槍が突き出された。早い、まるで風の如く。並の人間にはまずよけられない。
「自慢じゃないですが、エンチャ、ヘイスト、アルヒ、と支援技は極めていま
す。大人の事情でバリアは覚えてませんが。あとテレポとネタとしてレビテイ
トも」
当たった、と思った瞬間にはジョニーの体は一メートルほど遠くに移動していた。

292 名前:タルタル 投稿日:2006/05/22(月) 12:37:31 [ hfUQyDik ]
>>291「ラン子さんシリーズ」1−2(全二話)
「まってください、別にばらそうと思ってるわけじゃないですから」
ジョニーはいきなり殺されかけてもあわてた口調ではない。
「言う順番間違ってるわよ」
「こんなときでもつっこみますか。さすがです」
ひゅん、しゅん。一瞬で距離をつめ再び槍が突き出される。ジョニーは今度は人二人分高く上
がる。
「普通鍛えるとレビテイトは持続時間があがるんですが、私の場合高さが上がってしまうんで
す。まったく恥ずかしい限りです」
「どうしても殺されないつもり? 」
「誰だって殺されたくはありません」
「そう、でも死んでね」
ひゅん、さっ。ひゅん、さっ。ひゅん、さっ。ひゅん、さっ。ひゅん、さっ。ひゅん、さっ。
ひゅん、さっ。ひゅん、さっ。ひゅん、さっ。ひゅん、さっ。ひゅん、さっ。ひゅん、さっ。
ひゅん、さっ。ひゅん、さっ。ひゅん、さっ。ひゅん、さっ。ひゅん、さっ。ひゅん、さっ。
「いい加減やめません?」
「あなたが死んだらね」
ひゅん、さっ。ひゅん、さっ。ひゅん、さっ。ひゅん、さっ。ひゅん、さっ。ひゅん、さっ。
ひゅん、さっ。ひゅん、さっ。ひゅん、さっ。ひゅん、さっ。ひゅん、さっ。ひゅん、さっ。
ひゅん、さっ。ひゅん、さっ。ひゅん、さっ。ひゅん、さっ。ひゅん、さっ。ひゅん、さっ。
「疲れてきません?一度休憩を」
「あなたが死んだらね」
ひゅん、さっ。ひゅん、さっ。ひゅん、さっ。ひゅん、さっ。ひゅん、さっ。ひゅん、さっ。
ひゅん、さっ。ひゅん、さっ。ひゅん、さっ。ひゅん、さっ。ひゅん、さっ。ひゅん、さっ。
ひゅん、さっ。ひゅん、さっ。ひゅん、さっ。ひゅん、さっ。ひゅん、さっ。ひゅん、さっ。
「……。あきたわ」
「そうですか」
……。
……。
沈黙。
「どうすれば殺されないですむのでしょうか?」
「ばらさないという信用があれば」
ランサーはもう戦う気はないように構えをとく。
「いくらですか?」
「二千万G」
時をおかずランサーは返答する
「……。命には代えられないですしね。待ってください。四次元小物入れから出します」
ポケットに手を入れ、取り出そうとする。
「払うのかよ。もういいわ。代わりに私の相棒になりなさい」
手でジョニーの行動を制してあきれたように言う。
「ここにきてついにプロポーズの返事が、いや漫才の方ですか?」
「どっちでもないわ、私はブルネギルドの鼠どもを摘発しているのよ、それを手伝って」
「ほう鼠を。それはまたどうして」
「大切な人が奴らに殺されたから。単なる復讐よ」
「大切な人? それは男性ですか?」
「そうだけど」
「あああああ」
表情は変わっていない、ただへんな声がジョニーの口から出てきた。
「……その声はなに?ぶん殴るわよ」
「ビンタの方が好きです」
「……、なんでやねん」
疲れたように頭を抱える、それでもつっこみは忘れない。
「おお、なんですか、その微妙なつっこみは。つっこみクイーンの名が廃れますよ?」
ばしんっ。望みどうりビンタが打たれた。
「勝手にへんな名前付けないでよね」
「そうですね、面白そうですね。正義のヒーローって。このジョニー命を懸けて支援します」
ビンタされたことなど忘れたかのようにジョニーはいう。
「ところであなたの名前は?」
思い出したようにジョニーが尋ねる。
「ラン子よ」
「ラ、ラン子さんですか?」
「文句あるの? なんなら蘭子でもいいわよ」
「いえラン子さんでいいです」
ー終ー

相変わらず軽いだけのへっぽこ話ですが、どうせ駄文と思って笑ってもらえたら満足です。

293 名前:名無しさん 投稿日:2006/05/22(月) 19:27:41 [ aGUbC6YA ]
黒鯖でギオと変な生き物見っけたお(^ω^ )
変な生き物とはコンタクト取れなかったけどギオとはとれたお(^ω^ )
「RSしてないで小説書けよサボリ」と言ったら他人のフリされたお(^ω^#)

294 名前:FAT 投稿日:2006/05/23(火) 08:25:41 [ 3AJaFvmw ]
『水面鏡』

キャラ紹介>>21
―田舎の朝―1>>22、2>>25-26 
―子供と子供―1>>28-29、2>>36、3>>40-42、4>>57-59、5>>98-99、6>>105-107
―双子と娘と―1>>173-174、2>>183、3>>185、4>>212
―境界線―1>>216、2>>228、3>>229、4>>269、5>>270



―エイミー=ベルツリー―
―1―

 こんこん、と戸をノックする乾いた音が響く。返事はない。それが返事だった。
「やぁやぁ、今晩もお疲れさま、エイミー」
 ボトルと小口なグラスを二つ手に、すらっとした男が入ってきた。
 エイミー=ベルツリーははにかんで、
「アリソンこそ、お疲れさま」
 と互いに酒を注ぎあう。

 ここは古都ブルネンシュティグにあるBar“lagwagon”の二階、従業員寝泊り場の一室
で、エイミーはもう八年もここで寝泊りをしている。昼間は店の準備を手伝い、夜はピア
ニストとしてlagwagonで働き、店が閉まるとよくこうして労をねぎらった。
「今日も言い寄られていたね、そろそろ夫を作ってもいいんじゃない?」
 アリソン=ディジィーズに酒がまわり始めた。酔えばいつもその話だ。
「意地悪な人ね。私がダメだって知ってるくせに」
「だって、もったいないだろ。君みたいなのが誰にも貰われないなんて。あぁ、一夫多妻
制が許されるなら君とも結婚したいよ」
「あなたでもダメよ。そういう気じゃないわ」
 エイミーのそういうはにかみが見たくて、アリソンはこの手の冗談をよく飛ばす。
「そういえばエイミー、最近はいい夢が見れてるんだろ?」
 コトン、とグラスを置いてエイミーは顔を輝かせて、
「そうなのよ! 夢にね、フランちゃんとフプレちゃんが出てきてくれるの! それでね、
無邪気にはしゃいで、笑って、それはもう愉快なものよ! 走って、飛んで、お酒も飲ん
で……おませちゃんね。そして、遊び疲れると私の膝の上で二人仲良く眠ってしまうの。
可愛い寝顔をしてたわ」
 エイミーは数週間前に故郷へ帰るといって古都を去った双子の姉妹を懐かしげに語った。
 アリソンはその笑顔を美しいと改めて思った。

 双子の姉妹と出会う前、エイミーには刺激的な出来事が一つもなく、毎晩悪夢を見た。
中でも八年前、アリソンに拾われたばかりの頃は酷かった。人間とは思えぬ恐圧を放つ人
間に似た獣、いや、人間という獣だったのかも知れない――に犯されるという夢である。
犯されることが恐いのではなく、それが放つ恐怖という圧が恐ろしくてよく目を覚ました。
 エイミーにはこの街に来る前の記憶がない。アリソンに拾われたのが人生初めての記憶
である。歳も知らない、故郷も知らない、何故か、名前は覚えていた。歳は大体二十歳前
後だろう(すなわち、今は二十六〜三十歳程度か)と推測された。
 アリソンに拾われた八ヶ月後に、エイミーは子供を産んだ。アリソンの子ではないかと
噂されたが、噂は噂だった。
 子供は、人間ではなかった。エイミーが子供を見る前に、子供は処分された。エイミー
のピアノの音は、悲しく、深く渦を巻いた。
 その頃から夢はより鮮明になり、目の前に赤く伏す老婆と、どこぞの洞窟が見えるよう
になった。それと共に画面の端に映る二人の女性……ぼんやりとしか見えないがとても、
とても大切な人たちのような気がして愛おしくなる。でも、そこまでだ。肝心の魔物の姿
が鮮明に浮かび上がり、獣の下半身と人の上半身を持ち合わせた中途半端な姿のものだっ
た。そして犯され、夢から覚める………
 何度も夢を見、何度も犯されたが妊娠したのは最初の一回だけだった。エイミーは男を
拒むようになった。しかし恩人のアリソンは特別であった。彼は冗談こそ言うが、決して
行動を共にしなかったし、満足に生活できるだけの仕事も与えてくれた。

「ねぇ、アリソン」
「ん?」
「私ね、あの子たちが遊びに来てくれたら一緒に出かけてもいいかしら?」
 アリソンの酔いが醒めた。しかし優しい顔をして
「ああ、いいよ。あの娘たちなら、ね」
「ありがとう」
 そう言ってゆっくり頭を傾けるエイミー。白い首が、小さな耳が、控えめな胸元が赤を
薄めたピンク色に染まって婀娜である。警戒心の欠片もなく、彼女は双子の姉妹に会いに
瞼を閉じた。
 アリソンは柔らかく毛布をエイミーに掛け、そっと照明を消した。出来ることなら、も
う双子の姉妹には訪ねてきて欲しくないとわがままを抱き、家族の待つ部屋に帰った。

295 名前:FAT 投稿日:2006/05/23(火) 08:27:33 [ 3AJaFvmw ]
―2―

 あの『雨乞いの蛙祭り』から一週間ほどが経っただろうか。トラヴィスでは連日雨が降
り、祭りの成功を人々はささやかに喜んだ。
「お姉さま、次はデルタの番ですよぉ!」
「はぁ? お前のボケは老人以上だな! 俺の番だろ!」
 ベルツリー家では今、トランプを用いた神経衰弱大会が行われているのだが、どうにも
この二人がやかましい。お喋りの片手間にやっているのだから勝ち負けなどどうでもいい
とエイミーは思っているのだが、二人は一歩も引かない。
「お姉さまは今さっきこことここをめくってハズレたじゃありませんかっ!」
「その後にお前がこれとそれとをめくって外したじゃねーか!」
「それはお姉さまがめくる前に私がめくったカードですわ!だから次はデルタの番なので
すっ!」
 耳がキンキン鳴るような喧騒だ。たたたたと鳴る雨も二人の前には虚無も同然で、暗い
空でさえその存在を忘れ去られている。
「じゃあ、私がめくったらいいのかしら?」
 涼しい顔をしてエイミーが手を伸ばす。
『ダメっ!!』
 珍しく息のあった抵抗にエイミーはびくっと背筋を伸ばした。
「エイミーお姉さま、さり気無くずるしようとしてぇ」
「エイミー、お前そんなにこの勝負に勝ちたいのか?」
 奇妙な連帯感で結ばれているレンダルとデルタ。戦友といったところだろう。
「そんなことないわ。ほら、どっちでもいいからめくっちゃいなさいよ」
「じゃ、俺が」
「だめぇぇぇぇぇぇぇぇええええええ! 私の番なのぉ!」
 全くもって騒がしい。ちょうどそのとき部屋をノックする音がかすかに聞こえたので、
誰もが怒られると固唾を飲んだ。
「エイミー、お客さんだよ。ラスの紹介だって」
 ひょいと顔を出したのは父親のデリック。エイミーはほっと胸を撫で下ろして、部屋を
出た。あの二人の頑固さも中々のものだ。

296 名前:FAT 投稿日:2006/05/23(火) 08:27:53 [ 3AJaFvmw ]
「すみません、お待たせしました」
 戸を開ける前から頭を下げ、誠意を尽くす。それから頭を上げると、両者共に驚いた。
「あれ、あんたは……」
 エイミーはアウグスタでデルタとレンダルが注視していたことを思い出し、それを覚え
られているのかと恥ずかしくなった。
「あら、アウグスタでお見かけしましたわね。まさかラスのお知り合いとは思いがけませ
んでしたわ」
「アウグスタ? 俺は古都であんたと会っている気がするんだけど……。エイミーさんだ
よね?」
「ええ、そうです」
「古都のバーでピアノなんか弾いてなかった?」
「いいえ、私は古都なんて何年も前に行ったきりですわ」
 じぃっと客人の独眼がエイミーを記憶の中の人と照らし合わせる。そうして、
「双子とか、もしくは姉妹がいたりは?」
「兄がいますが姉妹はいませんよ」
「じゃあさ、フラン=サーヴェリーとフプレ=サーヴェリーっていう双子は知ってる?」
「いいえ、知らないわ」
 個人的な質問を繰り返す……いや、少しずれている、誰かと勘違いしている、そんな風
だ。
「そうか……しかし、人違いとは思えないほど良く似ているものだな」
 まじまじと見られるのに少し照れて、
「その方のお名前はなんていうの?」
「エイミー」
 エイミーは驚いて目が大きくなった。似ているだけなら他人のそら似でいくらでもいそ
うなものだが、名前まで同じだと少し気味が悪い。
「ファミリーネームはご存知?」
「いんや。エイミーっていうのも愛称なのか本名なのか分からないけど、とにかくエイミ
ーだって言ってた」
 はぁ、とエイミーは大きく一つ溜め息をついた。それで、胸騒ぎが治まるかと期待した
がそんな浅いものではなかった。
「あ、ごめんなさい、まだ用件を聞いてなかったわ。ラスとはどういったお知り合いで?」
「えっと、なんて言ったらいいんかな? 決闘した仲です」
 ふうんといった様子でようやく彼の眼帯から発せられる魔の力に気付く。ラスが家を勧
めたのも納得がいってひとりで頷いた。
「なるほど。ところで、ジム=モリにその眼帯を賭けたのでしょう。あの人はダメよ、い
い加減で」
「知り合いかい?」
「私の兄です。家とは縁を切られてますけれど。で、」
 エイミーが身を乗り出して青髪の中に映える青い目に迫る。
「あなたのお名前は?」
「ジョーイ=ブレイズ」
「ではジョーイさん、何をお望みになりますか?」
 ジョーイは慌てて、
「え? いや、俺びんぼーだからむりだよ、その、魔法をくっつけるなんてのは」
「あら? そうなの?」
 エイミーはすっと身を引いて椅子に腰掛けた。が、少し考えてから、
「この季節は結構暇なの。あなたには興味深い話を聞かせていただいたからお礼にただに
しておくわ。どう? 本物のエンチャットをお試しになりません?」
 まぬけなほどジョーイの目が開いた。ラスは最低でも一千万だと言っていた。それがい
きなりただに……。
「うん。お願いしていいかな」
 ジョーイ独自の観念。恩を着せるでもなく、着せられるでもなく、全ては好奇のままに、
事は成り行きのままに。
 今、ジョーイは決していやしい心で返事をしたわけではなく、魔法を付加するという行
為がどのようなものか見たいが故にそう答えた。
「ええ、では、どれにどんな魔力をくっつけましょうか?」
 すっと左眼を隠していた龍紋の眼帯を外し、差し出す。
「こいつだ。もっとよく凍るようにしてもらえるかな?」
 窪んだ眼孔の奥にエイミーは真実を見た。一瞬で彼女はこの男を理解し、深く同情の念
を抱き、彼の望む最高級の仕上がりを約束した。
 暗い眼孔の奥にエイミーは彼の人生を見た。外では、灰色に濁った雨が落ちてきて、そ
の幾万個の眼がエイミーを映していた。

297 名前:南東方不勝 投稿日:2006/05/23(火) 21:08:19 [ ydq7157k ]
>>タルタルさん
うおっと、これはまたアクの強いキャラが…。
しかしながら、その強いアクを補って余りあるツッコミのセンスに頬が緩んでしまいました。

>>高句麗さん
あぁ、かくも世知辛い世の仕打ち。
そんな苦労人のレガシーさんを心から応援したいと思いました。

>>FATさん
ついに、前作キャラ達との絡みが…!
ジョーイとエイミーの出会いは、今後の物語にどう影響するのか気になります。

>>276さん
う〜ん、ほのぼのとしてて個人的には好きな小説です。
まぁ、また気が向きましたら投下にいらしてください。

>>復讐の女神さん
ジェシの元に参りこむ、突然の依頼…。
なにやら裏のありそうな展開になってきましたね。

>>独り語りさん
お久しぶりです^^
自分も大体の流れは構築しているものの…、完結するのはいつの日かorz
とりあえず、お疲れ様でした。

298 名前:南東方不勝 投稿日:2006/05/23(火) 22:16:18 [ ydq7157k ]
>>261
目の前の光景に、アタシは言葉を失った…。
わけの分らないシーフに、ついさっき財布を吸った戦士(カモ)。
どうせ、この戦士だってアタシから財布を奪い返したらあいつにアタシを引き渡すつもりだろうし…。
正に、前門の虎後門の狼。進退窮まるとは正に今の状況よね。
「そちらのお嬢さんに御用事…。あぁ、財布でもスラれましたかな。なら、お早く返してもらってくだされ
 私共も少々、用事が立て込んでおります故…」
流石はシーフ。アタシの行動くらいは調査済み、というわけね…。
あ〜あ、最悪…。変な奴に捕まる上に、折角の稼ぎも奪われる(?)なんて。
「あ〜…、お前耳が悪いのか?俺はこの『ガキ』自体に用事があるんだ。まぁ、財布の件は否定せんがな」
「えっ…!?」
「ふむ…?」
目の前の戦士の言った言葉にアタシは耳を疑った。
そう、あいつは曲がりなりにもアタシのことをこのシーフから助ける、と言い切ったのだ。
自分の財布をスッた張本人を…。
(って、ナニときめいてるのよアタシ。人間なんか信じられるわけないでしょ!)
そうだ、こいつもあいつも決して心を許してはいけない存在…人間なのだ。

―――卑しい子だねぇ…。お前なんかに食べさせるものなんてこの家には無いんだよ!―――
―――なぁに、これが欲しかったんでしょ?ほら、拾って食べなさいよ…食べなさいっていってるのよ!―――
―――なにを怯えてるのかな…?ほら、何もしないから義父さんのそばに…―――

(…っ!)
脳裏によぎった面影を頭を振って必死に吹き飛ばす。
そうだ、人間なんて表の皮を剥せばこんなろくでなしばかりなんだ…!
だから、さっきのはアタシの聞き間違い。弱気になったアタシのただの願望…。
「あぁつまり…、貴殿はこの少女を助ける、と?」
「結果的にはそうなる。だがな…」

助けると決めたのは俺の意思だ。

はっきりと目の前の戦士はそう言い切った。
恐らく17年ぽっちのアタシの人生の中でこの時以上に、一人の人間を見つめた事は無かっただろう。
人間なんかに心を許すつもりはない、そう決めたアタシの心にその言葉は深く染み込んだ。
捨てられて、拾われて、また捨てられた、ただの一度も「人間」に守られた事のないアタシの心に…。
「仕方ありませんな…。では、少々痛い目を…っと」

ピキッ…

ざわりとシーフの周りの空気が変わったかと思うと、その空気は霧散していった。
それと同時に、私を捕まえていたシーフの姿に皹が入り始める
「ふむ、今夜はこれ以上は限界のようですな。いいでしょう、お嬢さんは一旦貴殿に預けます。
 明日引き取りに伺います故、それなりの準備をしておいた方が身のためですぞ。
 …バルディエルのよりしろ殿」
そう言い終るや否や、そいつはアタシの腕から手を離し
「技能擬態…転送翼」(エヴァキュエイション)
少し歪な転送の光の中に消えていった。

299 名前:名無しさん 投稿日:2006/05/25(木) 21:47:19 [ 75zpDNDs ]
ども、初めまして。
アイノの報告書を書き写してみました。
あまりに不自然なところは一番合っていると考えられる形(独断)に修正させて頂きました。
皆様の物語に役立てて頂ければと思います。

もしこれが既出なら…

本当にありそうなので、先に自分乙と言っておきますね。

300 名前:名無しさん 投稿日:2006/05/25(木) 21:47:46 [ 75zpDNDs ]
序論:「RED STONE」の生成に関するレッドアイの報告書要約本

「RED STONE」。不死の霊薬、または富貴栄華を持ってくれる富と権力の源泉。空から落ちてきたというこの赤色の石を実際に見た人はほとんどいない。この石は人々がよく称する紅玉、ルビーではない。
我々レッドアイは長い間、ブルンネンシュティグ国王の勅命を受けて、いわば「神の目」とも呼ばれるこの石の行方を追ってきて、また、その結果を見た。ここに書かれている内容は、レッドアイの37つの支部で収集した資料を土台として、再編成したもので、レッドアイ研究の一番核心的な部分のみを選りすぐっておいた物だと言える。この文を読む人々が「RED STONE」に関する疑惑を明らかにできることと同時に、正しい判断の根拠にできることを願う。
ブルン暦4805年12月8日
レッドアイ39代会長アイノ・カスピル

301 名前:名無しさん 投稿日:2006/05/25(木) 21:48:15 [ 75zpDNDs ]
第1章:「RED STONE」の存在可否

先に「RED STONE」の存在可否が、一番大きい関心事になるだろう。今まで「RED STONE」は、見た人が極めて少ないミステリーに包まれた物体だった。公信力のある機関や人物がこの品物の存在を認めなかったから、その存在可否に関する論争はいつも消耗的になるしかなかった。ここで、レッドアイでは、これに関する確かな証拠と証言を提示して、「RED STONE」の存在可否を明らかにしようとする。
追放天使という言葉を聞いてみたことがあるはずだ。我らが住んでいる地上界の上には、天上界があり、天上界で暮す住民たちが天使だ。この天子の中で、重罪を犯した者等は空の権勢によって、羽が折れたまま地上に追放される事がたびたびある。追放されて地上界に落ちた天使たちを普通追放天使と呼ぶが、これらは二度と高く飛ぶ事ができないように羽が折れたまま追い出されるのが一般的だ。

約400年前、ゴドム共和国にあった「赤い空の日」以後、このような追放天使を見つけたという報告が多数あった。しかし、そのとき堕ちた追放天使たちは、あの時まであった多くの人々とは違う面があった。まず大部分の追放天使たちが、以前の天使としての権能をとり上げられて、その象徴として、羽が丸ごと折れたまま追放されたり、少なくとも片方の羽が完全に消えるくらいの刑罰を受けた。しかし、「赤い空の日」以後現れた多くの追放天使たちは、彼らの羽、特に右羽半分だけが破れたままで、天使としての力も、ある程度は発揮できたようだ。また、以前の追放天使たちが平凡な住民か惨めな下層民として暮さなければならなかったのとは対照的に、彼らの大部分はビショップとして活発な活動をしていた。

302 名前:名無しさん 投稿日:2006/05/25(木) 21:48:40 [ 75zpDNDs ]
第2章:追放された天使たち

400年という長い時間をビショップとして過ごしながら、天使だった時の記憶や力をまったく喪失した者等も多かったが、一部は400年前の事件を全て覚えている者もいて、自分らがどうして追放されたのかを分かっている人々もいた。ここで、私たちレッドアイでは、追放天使たちと直接接してさまざまな探問し、多くの情報を得ることができた。大部分の情報は「RED STONE」に関するものだった。
まず、この事実からレッドアイは次のような何種類かの事実を類推し出した。
「赤い空の日」以後に追放された多くの追放天使たちは、その日の事件と関連があり、彼らは地上界である任務を任されて追放されたのだ。また、地上界で活動をするために、彼らはビショップの姿を主に使って、「RED STONE」に関する各種のうわさを作る震源地の役目をしたと見られる。

これは天上界と地下界、または、少なくとも天上界がこの「RED STONE」と関係があるはずだという推測を生むようにした。天上界でどんな理由のため「RED STONE」を地上界に流布させて、その後、行方がはっきりしなくなったその「RED STONE」を捜すために人間たちに力を貸す事に決めた後、追放天使たちを通じて「RED STONE」に関するそのようなうわさを広めたのが一番適当な推理のようにみえた。
一つ異常な点は、なぜ既に地上界に投げつけられた「RED STONE」の回収のために、天上界でそんなにも努力するのかという点だった。それに、数多くの天使たちがどうして追放天使になって、天上界で追放されて、その姿を隠したままビショップとして地上界で生きていくのかも疑問だった。

303 名前:名無しさん 投稿日:2006/05/25(木) 21:49:07 [ 75zpDNDs ]
第3章:「RED STONE」が地に落ちた理由

追放天使の一つ、「ルインルス・ナルミナス・イエ・アリエンカム」、地上界名「ゲール」は、その「赤い空の日」当時の状況に対して詳らかに覚えていて、レッドアイの調査員たちは、ガディウス砂漠にある「荒廃都市ダメル」でビショップの活動をしているこの追放天使と面談を通じて詳細な顛末を聞くことができた。
「RED STONE」というのは、天上界にいる六種の神獣の一つのフェニックスの卵のことを称する。天上界には火、水、風、大地、光、闇、六種の世の中の基本元素を支配する神獣たちが多く居住していて、これら神獣たちは、お互いに調和を成して地上界と天上界に不均衡が起きないように六種の元素を治めている。

今から400年前、そして地上界で称する「赤い空の日」という事件が起こる13日前、天上界に赤色の悪魔たちが大挙して進入する事態が起きた。この悪魔たちは天上界の神獣の中で、日の神獣の卵「RED STONE」を盗むために潜入し、彼らは自分らの卵を守っていた火の神獣、フェニックスの多数が消滅し、守護天使長を含めた守護天使の半分以上が死んだ。
この悪魔たちは「RED STONE」を持って、地下界ではない、地上界に隠れて、それは「RED STONE」の回収をもっと難しくした。各種の暗闘と憎しみの目がある地下界よりは安全で、「RED STONE」に関心がなかった地上界こそが犯罪をやらかした悪魔たちが隠れるには、ふさわしくよい場所だったということだ。

304 名前:名無しさん 投稿日:2006/05/25(木) 21:49:28 [ 75zpDNDs ]
第4章:「RED STONE」の盗難それから

「RED STONE」の盗難は天上界を揺るがした。まず、先に事件の責任を問うことと、事件にどう結末をつけるかがカギだった。
事件の責任の所在については、厳しかった警備網をくぐって、どう悪魔たちが進入したのかが審判の対象になった。その頃、責任者であった「RED STONE」の守護天使長は、すでに死亡した状態で、その配下にあった守護天使たちも既に半分以上が死亡した状態だった。
そして、副指揮官クラスと上級天使に当たる天使3人がこの事に責任を負って、地上界に完全追放され、生き残った大部分の「RED STONE」守護天使たちも一緒に追放された。ただ、これら「RED STONE」守護天使たちは、完全追放を免れ、その代わりに片方の羽の半分を剥奪されたまま地上界でビショップの姿で奉仕活動をしながら、「RED STONE」を探索する任務を引き受けるようになった。

あまりにも多い数の天使たちだった為、皆を放逐する事は天上界にも大きい被害になったはずであり、何よりも地上に降りて「RED STONE」探索の適任者たちを選ぶ事ができなかった状況で、このような選択は賢明な決定だったと見られるはずだ。
責任の所在と事件の結末はうまく収めたが、結局「RED STONE」を探すことはできず、さらに400年余りの時間が流れた。その間、地上に降りた天使たちは、ビショップとして活動して、「RED STONE」に対する噂を流したり、情報をあかすなど、人間たちの協力を求めながら積極的な探索活動をしてきたが、「RED STONE」と悪魔たちを探すことは易しいことではなかった。

305 名前:名無しさん 投稿日:2006/05/25(木) 21:49:58 [ 75zpDNDs ]
結論

悪魔たちがどうして「RED STONE」を盗んだのかは、いまだ明らかになっていない。地上界に落とされた一部の追放天使たちは、初期活動に「RED STONE」を盗む事件に加わった小さな悪魔の何人かを生け捕ることには成功したが、詳しい審問はまともにしなかったと知られている。怒りに満ちた追放天使たちが悪魔たちを捕まえるや即座に審判したからであるのに、それさえも、生き残った悪魔たちで信用するに値するものなど、信憑性のある情報を持っていなかった下級悪魔たちだけであった為、その真偽は迷宮に落ちたまま時間だけが過ぎてしまった。
ただ、審問に成功した小さな悪魔たちと天上界、追放天使たちの間で、彼らなりに推理した結論はある。「RED STONE」が発する火の機運を利用して悪魔たちが力を得るためという噂がそうだが、彼らなりにも理に適しているようであり、大部分の追放天使たちと人間たちはこの推定を信じている。

「RED STONE」がどのような力を持っている物か、我々としては想像もつかないが、神々が暮らす天上界と悪魔たちが住む地下界で扱うに値するものなら、人間が手をつけてはいけない物かも知れない。これに対する厳重な警告としてみたレッドアイは、「RED STONE」の探索を全面中断する事を要請して、以後、レッドアイの活動も制限的に行うことを明らかにする。
とりあえず、我々レッドアイは「RED STONE」の手がかりに非常に近づいていて、それに対する正体についても、殆ど明かしたことで、近い内にまた他の報告書を公開することを約束しながら短い文を終える。

306 名前:名無しさん 投稿日:2006/05/25(木) 21:50:20 [ 75zpDNDs ]
メモ

こんな古文書にメモをすると言うことが、少々おこがましくはあるが、キミの記憶力がよくないため、どうしようもない。

この本に関心が多い者たちの仲で、購入希望を知らせてきた者たちは、古都ブルンネンシュティグのロングッシュ、港町ブリッジヘッドのケブティス、オアシス都市アリアンにいる隊員募集担当グレイツ!以上だ。

この三人の内、誰か一人を選択することはキミの自由だ。あ!今度もっとよい条件を出す人がいることもあるから持っていても構わないがね。

307 名前:名無しさん 投稿日:2006/05/25(木) 21:58:04 [ 75zpDNDs ]
投稿した後に見直しましたが、数箇所漏れた部分がありました。失礼しました。
それに非常に読み辛いですね。その点も反省します。

現在、自分の脳内で温めている設定等があります(とても小説と呼べるものではありませんが)。
今後それを投稿するようなことがあるかも知れませんが、そんな時には生暖かい目で見守っていただければと思います。

308 名前:見学者 投稿日:2006/05/26(金) 20:15:13 [ ww4BM0IA ]
ども、見学者です。
前スレ、前々スレの作品をコピペし、オフラインで拝読させてもらっております。
しかしリア事情と自分も書きたいのと遊びたいのとでなかなか進まず orz
とても楽しく読ませていただいてます。

>>299 [75zpDNDs]氏
 私の駄文は出来るだけゲーム内の『REDSTONE』に忠実にしたいと思っておりますので
 この投稿はかなり嬉しいものです。
 参考にさせていただきます *・・)
 メインキャラがまだLv100にも満たない鍵シフだとメインクエも辛い orz

>>297 南東方不勝氏
 まだ全部は読みきってませんが楽しく拝読させていただいてます。
 ……弟子になっても良いですか?

>>294 FAT氏
 これが大作というものなのですね!
 駆け出しの自分の憧れる作品でドキドキしっぱなしです。
 
>>292 タルタル氏
 最高です。この一言しか私には言えません。
 テンポの良い会話文。実は難しいのです。

>>288 独り語り氏
 >ROMに戻ります。 是非読んで見たかった。
 しかし作品は大切に保管させていただきます。お疲れ様でした。

>>285 復讐の女神氏
 まだ読みきってはないものの、先を楽しみについつい時間を忘れてしまいます。
 読ませる文章……人を惹きつける文章。勉強になります。

309 名前:見学者 投稿日:2006/05/26(金) 20:19:37 [ ww4BM0IA ]
1st>>267  2nd>>268

「きぁっ」
 予想外にも衣擦れの主は可愛らしい悲鳴を上げたかと思うと、王宮のテラスと思わしき場所から小さな影が滑り落ちてきた。露店を出したまま眠っている主にぶつかるが、彼はなんら問題なく夢を見ている。
 落ちてきた小さな影は笛を片手に握った少女であった。
 少女は頬をほのかに赤く染め、やや俯き加減でシーフを見上げた。
「ご、ごめんなさい! 突然お城が崩れちゃうから……」
「いや、その……。私でなくそちらの店の主人に言われた方が」
 こんな女の子に向かって武器を投げようとしたシーフ自身の方が罪の意識を感じていた。
「寝てるから良いじゃね?」
「本当にごめんなさい。……でも戦士さんをやっと見つけることが出来て良かったです」
 無邪気な満面の笑顔。
「そーかそーか、ウン! そりゃそうだな」
 嬉しそうに戦士は胸を張る。その後ろでシーフは追放天使と視線を交わした。もしや新人というのは?
 褐色のローブを頭から被り、深緑色の服を着た栗色の髪の年端もいかない少女。手には笛を持っており、どこか神秘的な雰囲気を持った子であった。黄緑色の大きな瞳が純粋さを感じさせる。
「あ、あの……マスター」
 恐々とシーフは戦士の腕を引っ張り少女に声が聞こえない程度の距離を置いて声をひそめた。
「新人さんというのはあのお嬢さんのことなのですか?」
「そそそ。可愛いっしょ?」
 あからさまに顔をしかめたシーフに戦士はチチチ、と指を立てる。
「あの子サマナっていう職業なんだってさ。遠い世界の住人を笛で呼び出し、そしてその力を操って――」
 サマナー? ――あぁ、召喚師のことか。
 ロマ族の多くが調教師――ビーストテイマーとも呼ばれている――ともう一つ、召喚師なのだと聞いたことがある。これまであちこちの場所へ出向いたことがあるが、その職に就いている人間を見たことがこのシーフにはなかった。
 ビーストテイマーならギルドにも居るので数回見たが、それだけだ。話したことなどはない。
「……聞いてる?」
 戦士は頷きも相槌もしないシーフの顔を覗き込んだ。
「ええ、聞いてますとも。よく理解できました。あのお嬢さんの職業と身の危険を」
 そういって踵を返すシーフの肩を戦士は慌てて掴んだ。重たい剣を振り回すだけあって力だけは敵わないな、と思いつつシーフは渋々振り返る。
「ちょっと待ってくれよ。手紙配達の手伝いくらいしてやれよ」
「貴方がすれば良いじゃないですか。貴方が声をかけたお方なのでしょう?」
「俺これから狩りだから」
「聞く耳もちません! ――あぁ、どうして貴方のギルドに私は居るのでしょうか。今すぐに脱退出来ませんか」
 ギルドに入るにはまず、そのギルドメンバーがどのような人間なのかを知る必要があるようだ。迂闊だった。
 内心、苦悩で頭を抱えるシーフなど戦士には全く気にしてはいないのだろう。得意気にふんぞり返る。
「残念。ギルドから脱退するには加入後二週間以上経過しないとダメなのだよ」
 ほォ、そう言いさえすればこの私が諦めるとでも思ったか。
「分かりました。二週間経ちましたら私は再び孤高の旅路を歩むことにいたします。それまでに貴方に会わぬことを切に願いましょう」
 シーフは戦士の腕を無理やりに引き剥がすと、素早くその場から身を引っ込めた。いくらギルドマスターとはいえ、少々勝手が過ぎるのではないか。
 ――私の一番嫌いで苦手なタイプの人間だ。もう少し分をわきまえたら憧れる人間だったろうに。
 目深に被った帽子の奥から戦士を睨みつつ、シーフは身を翻した。……その時だ。背から流したマントをキュッと後ろに引かれたのだ。踏まれた経験ならあるが、引っ張られたことは未だ無い。
 肩を持っていかれそうな感覚を抑えながら、このマスターはシツコイなと思いつつシーフはゆっくり振り返った。
 思わず目を瞠った。
 引っ張ったのは戦士じゃない。あのサマナーの女の子であった。

310 名前:見学者 投稿日:2006/05/26(金) 20:21:29 [ ww4BM0IA ]
1st>>267  2nd>>268

「え、えと……。わたし、何か悪いことしました……?」
 瞳を揺らしながら、サマナーはシーフを見上げた。
「え?」
「いえ! なんでもないです。お手紙の配達は多分、何とか出来ますから」
 シーフのマントを握り締めたまま、しどろもどろにサマナーは口ごもった。
「しつれい、しました……」
 マントを掴んでいた手を離し、今度は自分の頭を覆うローブをギュッと握り締め、まるで自分の顔を隠すように走って行ってしまった。
 泣き声……悲鳴にも似たサマナーの最後の言葉が耳に残る。
 呼び止めることも何も出来ず、シーフはただぽかんとその場に立ち尽くしてしまった。女性の――それもまだまだ幼さの残る若さの――涙を見るのは初めてだった。ただでさえ女性と関わったりしたことなどなかったのに。
「どうしたんだ、今の子は?」
 一歩下がった位置で現場を見ていた追放天使には場の展開についていけなかったようだ。
「泣かしたんだよ、このシフが」「喧嘩は自分の所為だと言って走ってったんです」
 戦士とシーフが殆ど同時に言った。一度互いに顔を見合わせ、そして再び追放天使に言い寄った。
「マジなんだって! こいつがちっともあの子のこと分かってやってなくってさ」
「天使様、マスターの言うことはデタラメです! 人のこと分かってないのはこの人の方で――」
「あぁ、分かった分かった。つまり二人ともあの子を気遣ってやらなかったわけだな」
 片翼の折れた翼を重そうに持ち上げながら、ゆっくりと追放天使は立ち上がった。大きな体が戦士とシーフの前に仁王立ちになる。
 神の神々しさとは違う、何かがプレッシャーとなって寄りかかってくる。
「あの子は見たところ君達よりも若い。良い手本になるはずの君達が一体何をしている」
「それは……だからこのシフが」「マスターが自分勝手だから……」
「ほら、またそれだ。いいか? マスターならマスターでメンバーのことも考えてやること。メンバーを束ねるのはお前なのだから。
 シーフの君もだ。入隊してまだ日が浅いが、あの子の先輩にあたるのは違いない。今すぐあの子を探しなさい。手紙配達のことは君自身が自由に決めると良い。やりたくないなら断る。いいね」
 不出来の弟子をたしなめるような言い方で追放天使は太い二の腕を組んで話した。
 ――確かに、少々大人気なかったかもしれない。
 シーフは帽子を外してペコリと頭を下げた。再び被りなおすと、今度こそその場から身を翻した。
 戦士の声が背後から聞こえた。
「どこ行くんだよ」
「あの子を探しに行くのです。先刻は失礼しました」
 シーフは振り返りもせず代わりに右手を振ることで挨拶すると、立ち止まることもなく古都の人ごみに紛れてしまった。あっという間に姿が見えなくなる。
「あ〜ぁ」
 戦士は肩をすくめた。カシャン、と身に着けた鎧までもが脱力した音を立てた。
「なんなのアイツは? アレの兄貴と全く違うじゃん」
「兄弟だからといって同じなはずはないだろう。……ちゃんと反省しているのかマスター?」
「俺だってさぁ。ギルドを大きく賑やかにしたいだけなのよ。悪気がないことは分かってくれるよな?」
 追放天使は黙って空を見上げた。
「君も若いようだな。もう少し人間というものを学びなさい。――ところで」
 えーっ、と戦士は子どものような弱々しい反抗を見せたが、すぐに追放天使の方に視線を向けた。
 この人(この場合は天使と言うべきか)は説教させると長くなりそうだ。質問にしろ長話にしろ言わせたいだけ言わせた方が良いだろう。
「あのシーフは誰だ?」
「シーフはシーフだけど」
「いやそうじゃなく……」
 少しばかり日が傾き始めた。だが空はまだ青く、夕方にはまだ少し早い。そんな時間帯になっていた。

311 名前:双月 投稿日:2006/05/27(土) 02:44:59 [ W7ci29Dk ]
初めまして。拙い文ですが、触発されて書きました。
続き物っぽくなってますが、続くかどうかはわかりません。ですがよろしかったら呼んでやってくださいませ。


 少女が泣いていた。
その頬は夕陽に染まり、その表情は悲痛な色に染まっている。
 少女は今、たった一人だった。
他の住人はまるでケモノに食い散らかされたかの様に引き裂かれ、ばら撒かれていた。
少女の両親も例外で無く、彼女の前に散らばっている。
数多くの悲鳴と、死の匂いと、引き裂かれる音を聞きながら、必死に逃げた少女を待っていたのは、産まれて初めての孤独だった。
 彼女はずっと、泣いていた。すぐ前に大剣を握った戦士が立っていても、気付く事無くずっと泣いていた。

/*双月・戦士と少女*/

 大地を揺るがさんばかりの轟音と衝撃が、堅い脳天に炸裂する。
大の男一人を丸呑みに出来そうなくらい巨大なサソリは、穿たれた頭部から体液を噴出させながらのたうった。
エルベルグ山脈ふもとの荒地は今、戦場と化していた。
たった二人を相手に、一族総出で迎え撃つサソリの群れ。
「きゃ〜!」
そんな巨大サソリを相手にしていた男の後ろで、その場に不釣合いなほど可愛らしい悲鳴が発せられる。
 見れば剣士の格好を真似た少女が、その剣をサソリに取り上げられようとしていた。
さらさらとした漆黒のセミロングが、剣を取られまいともがく度に揺れる。
一丁前に剣と盾を装備していても、その身体つきは華奢の一言。とても剣士の様に振舞えるとは思えない。
 舌打ちをした男が大剣を地につきたて、息を大きく吸い込んだ。
黒い鎧に太い腕。そして、怒髪天を体現するかのような髪型とその表情。
そこから凄まじい怒声が、空を引き裂かんとばかりに鳴り響く。その音量は先ほどサソリに叩きこんだ轟音の非ではない。
一種の魔力を帯びたその怒声は、並み居るサソリ達の動きを止め、その注意を一気に男に向けさせた。
 呆気に取られた剣士姿の娘へ、男が叫ぶ。
「ボサッとするな! 盾をしっかり構えてろ!」
男はそのまま引きぬいた大剣を持ち上げると大上段に構え、サソリを見据え精神を統一する。
 数多くのサソリが口を鳴らしながら近づいてくるが、それにも構わず男は精神を統一し続ける。
 掲げれらたその大剣は炎の形をしていたが、輪郭が揺らめき本物の炎のようだ。その剣を掲げた男はまるで、獲物を睨むサラマンダーを連想させるだろう。
 少女は信じられない光景でも見たかの様に目をこすった。その瞳には大上段で構えている男に重なる様に、脇に剣を構えた男と、正眼に構えている様な姿の男が見えていた。まるで、男が分裂でもしている様にも見えるし、3体のサラマンダーが狙いを付けている様にも見える。
 サソリが無遠慮に男の領域に侵入した時、それらが動いた。
 男は目にも止まらぬ速さでサソリと自分との距離を無にすると、その大剣をサソリの脳天めがけて打ちおろす。
それと同時に、重なった二人の男もそれぞれ水平斬りと突きを繰り出す。その大剣の旋風に巻き込まれたサソリの頭部は、あっという間にひしゃげ、無残に体液を吹き上げながら絶命した。
 しかし、男はそれだけでは止まらない。方向を変えると、尚も近づいてきた別のサソリに剣の旋風をお見舞いする。
その様はまるで斬撃の暴風雨。その切っ先の向く所、刃の豪雨が容赦なく降り注ぐ。
 少女にとって、それは正に圧巻だった。その技はハリケーンショックと呼ばれる、彼の様な戦士にとって極めて普遍的な技であった。
 しかし、それすらわからぬ彼女にとって、それを次々に繰り出しサソリを潰してゆく男は正に鬼神。
畏怖と恐怖とがない交ぜになった感情が、彼女を地面にへたり込ませた。

312 名前:双月 投稿日:2006/05/27(土) 02:46:14 [ W7ci29Dk ]
 荒涼とした荒地を風が吹きぬける。心地よささえ感じる風の音だけは平穏そのものだが、辺りの光景は平穏には程遠い。
先ほどの戦いの名残として地面に転がった死骸の脚が、風に揺れている。いや、まだかすかに息があるのかもしれないが、自然界に置いては死んだのと同義だろう。
「腰でも抜かしたのか?」
潰し終わったサソリの群れの真ん中で、戦士は少女に問いかけた。
 しかし、返事は無い。未だに放心している少女に近づくと、戦士は軽く頬を叩いた。
「痛い!」
「ったく、腰を抜かすのはいいが、そんなんじゃサソリの餌になるぞ」
やっと気がついた少女に、戦士は呆れたような顔をする。
「あっ……、終わっ……たの?」
「立て、小娘」
先ほどの戦闘のせいか、鈍い反応を返す少女に、イラついた戦士は舌打ちしながら肩を掴んで立たせる。
「小娘じゃない……、名前があるのに」
拗ねた様にうつむく少女を無視して、語りかける。
「歩けるか?」
「はい。でも、その……あの」
「どうした」
そのやり取りを戦士は、心底ウンザリしたように続けた。
「まさか小便でもちびったのか?」
「っ!」
うつむいた少女の顔が真っ赤になった。その手は生暖かく湿っているだろう内股と股布を押さえている。
 大きくため息をつくと、戦士は荷物袋から布を二枚取り出した。
「こっちで拭いてこい、それとこっちが股布だ。」
「えっ……、でも、これちょっと汚い……」
「ああなりたいのか?」
戦士が指差した先には、ひしゃげたサソリの頭があった。少女の顔がさぁっと青ざめる。それと共に堰を切ったように、辺りに水音が響いた。
「……糞餓鬼が」

「なぁ、考え直してもいいだろう?」
先ほどの荒地から離れた木陰に腰を降ろし、戦士は少女を見つめる。少女は依然うつむいたままだ。まるで頑なに何かを守っているかの様に、その口を堅く閉じて視線を地面に落している。垂れたセミロングの髪型のせいで表情は見えづらい。
 しかし、戦士の言葉を肯定する気は無いと言う雰囲気を、その華奢な身体から発している。
「俺について来るってのは、さっきよりもおっかない目に遭うんだぞ? それだったら、教会で暮らした方がいいだろう」
「いや……です」
消え入りそうな声でも、声音には決心の様な物が感じられる。
 数日前に壊滅した村で出会ってから、少女は戦士についてきたものの、厄介者扱いされているらしい。
それはそうだろう。戦士の旅はとてつもなく厳しい。それでも少女の身体を省みる事などできない。
綱渡りのような状況になれば、生き残る事だけに集中しなければならない。
それが出来なければ、生きては行けない。
「何故だ? 少なくとも教会で暮らせば身売りさせられる事も無い。ついでに食いっぱぐれる事もないぞ」
その少女の姿はまだ胸が膨らみ始めたばかりの、あどけないものだった。
そんな彼女に身売りという言葉事態が相応しくないはずなのだが、まだ不安定な時代。孤児のいる所、奴隷商人あり。そういった輩や、買い手にとって商品の年齢などそう問題になるものではない。そして、幼いからといって容赦もしない。
「もし、ついて来たとしてだ。俺の気が変わって奴隷商に売るなんて事になったらどうする?」
「売るんですか?」
少女が少し顔を上げ、伏目がちに恐る恐るといった表情で戦士を見つめる。
「気が変わって売っちまうかもな。それが嫌だったら、さっさと決めるんだ。ブルンネンシュティングでもナクエリマでも、アウグスタでも何処でもつれて行ってやる。アウグスタくらいは知ってるだろ」
「イヤです。そんな所知りません。教会で暮らすなんてイヤです」
「糞坊主どもが。きっちり布教しとけよな。」
少女とていくら故郷が田舎でも、それらの都市を知らないわけではなかった。
特にアウグスタは教会の総本山。何処の田舎者だろうが名前くらいは知っている。
半ば冗談めいた文句を言いながらも、それを察した戦士は更にゆっくりと語りかけた。
「もう一度聞く。お前はなんで俺について来るんだ? なんで剣を持ちたがるんだ?」
少女はゆっくりと顔を上げ、何かを決意するように息を大きく吐いた。
そして、戦士を見つめる。

313 名前:双月 投稿日:2006/05/27(土) 02:47:59 [ W7ci29Dk ]
「……自分で守りたいから」
「ああ?」
怪訝そうに戦士が聞き返す。
「誰かを自分で守りたいから。」
「お前……」
「お前じゃないです。ミルスです」
しばらく沈黙が流れた。二人の間を、蝶がゆっくりと横切る。
「ミルス。お前、身内どころか知り合いは全部死んだんだろう? 今更誰を守るんだ」
それは、数日前の残酷な情景を彼女に思いださせる事を、戦士が重々承知している事を感じさせる口調だった。
 戦いの中に置いて、具体的な目的を持たない者は弱い。弱い者、迷った者は死ぬ。だからこそ、あえて現実を見据えさせる為に、その残酷な言葉を選んだ。それは、様々なモノを失ってきた彼だからこそ、出来ることだろう。
「わからない。でも、少なくとも今は自分を守りたい。そして、いつか出会う大切な人を守りたいんです」
ミルスの瞳が濡れ、まぶたの淵から雫が流れる。
「もう、逃げるのはイヤなんです。何もできなくて、みんなが殺されるのを見る事しか出来なくて」
その表情は幼い彼女が見せるには不釣合いなほど、悲壮感が支配していた。
「私は、強くなりたいんです。守る為に」
細い手足に薄い身体。顔立ちはまだまだ幼さが残り、とても剣士になるどころか戦いが常となる世界で生き残れそうも無い。
そもそも剣と盾さえ、先ほどの戦闘やそれ以前から見たところ満足に構える事さえ出来ない。
 戦士はそんな彼女を見つめた後、視線をそらして頭を掻いた。
「あ〜、ったく。さっきも見ただろう。剣は何も守りはしない。ただ、壊すだけだ。斬り刻むだけだ。何にも守りはしないんだよ」
「それでも、大切な人を守るくらいは出来ます。……出来るはずです」
「それは、意味を判って言っているのか?」
戦士が険しい表情で、ミルスを見つめる。一方、見つめられるミルスも涙こそ流せど、その瞳の奥には芯の様な決意が確かにあった。
その表情も先ほどまで見せていた、恐る恐ると言った色合いは消え失せ、毅然として見える程だった。
「第一女に剣は扱えない。」
「そんなの、やって見なきゃわからない」
「女に剣なんて持たせたくないんだよ」
「だったら、私を女だと思わないで」
「そんな訳にならんだろう」
「そういう訳にして」
「無理を言うな。大体お前が何かを殺せるとは思えん」
「私はミルス。それに殺した事なら有ります。何回も豚や鶏をつめました」
「豚や鶏と……あ〜、もう!」
まるで、剣の攻防だった。斬りつければ、斬り返される。さすがの戦士も実際の剣に熟達していても、言葉と言う剣の扱いには慣れていないらしい。そして幼いとはいえ、女に無骨な男が舌戦を挑むのはやはり分が悪い。ついに戦士が折れた。
「わかった。それだけ言うならつれいってやる」
「本当ですか!?」
「ああ。だが、逃げ場はないと思え。へたり込んだら、そのまま置いていく。後は、狼の餌になるなり好きにするんだな」

「さっさと歩け!」
「うう……」
山脈の風が吹きぬける中、二つの影がそこにあった。
一つはがっしりとした戦士。そしてもう一つは大きなかばんを背負い、地べたに膝をついたミルス。
 その大きなかばんは垂れ下がり、ミルスを押し潰そうとしている。
それでももがき、何とか立ち上がった少女の額には汗が滲み、荒い息が吐かれると共に肩が揺れる。
「ま、待って……ください」
涙と汗を拭いながら、何とか声を出したミルスはすがるような視線を戦士に送る。
「……今日はやけに狼が騒ぐなぁ」
明後日の方向を向いて戦士が呟くと、そのまま歩きだした。
「あ、やっ、待って!」

314 名前:双月 投稿日:2006/05/27(土) 02:54:45 [ W7ci29Dk ]
「痛い!」
蹴りを受けて引っくり返ったミルスを、鞭が襲う。
ハノブの町の一角に、二人の姿が有った。
「立て」
ミルスを睨みつけたまま、戦士が言い放つ。右手には木刀、左手には鞭を持っている。
 ミルスは木刀と盾、皮鎧を身に付けている。だが、それらを充分に使いこなす事は出来ず、晒された肌には無数のみみず腫れが走っている。
 既にそんなやり取りを何回もしたのだろう、ふらふらになりながらも立ち上がり、木刀を構えた。
「であ〜!」
気合の掛け声と共に、自分よりも二回りも大きい戦士に向かってゆく。
 しかし、またも蹴り飛ばされ引っくり返った所に、容赦の無い鞭が飛んだ。
--カァン
しかし、辺りに金属を叩く乾いた音が響いた。
「よし、それでいい」
何回も転がりその度に鞭で叩かれた彼女は、無意識の内に盾で防いでいた。
「剣士は少しでも体勢を崩したら、すぐに相手の攻撃が飛んでくる。どんな時でも、防御を意識するんだ」
初めて褒められた事に戸惑いながらも、体勢を整え戦士に突進する。
だが、またもあっけなく尻餅をついたミルスに鞭が飛んだ。
--パァァァン!
「あっぐ、ああああぁぁぁぁぁぁぁっ!」
肌を叩く音と共に辺りに響く悲鳴。盾こそ鞭に反応させたものの、今度は全く意味を成さなかった。
「真正面ばかりに気を取られるな!敵は一人でも、どこから攻撃するかわからんぞ!」
巻き付く様に回り込んだ鞭に、肌を晒した背中をしこたま叩かれたミルスは倒れ込み、そのまま目を閉じ動かなくなった。


そんな過酷な日々を半年も過ごした頃。

「はっ!」
辺りに気合の声と、木刀が風を切る音が鳴り響く。その声と音に戸惑いは無い。
怯えた子ウサギの様な少女は変わっていた。さらさらとしたセミロングの髪をばっさりと落し、短く揃えたその様は男と見間違える程。
 半年前とはまるで別人の様な表情には、少女らしい輪郭の中にもたくましさが根付いている。
細かった身体には、しなやかな筋肉が垣間見え、剣士としては小柄ながらも華奢では無くなっていた。
 そして、
「はぁっ! であっ!だぁっ!」
未だ流麗とはいかなくとも、剣を繰り出す動きが滑らかになっている。
 垂直、水平、様々な斬撃繰り出すミルス。
それを身体を傾けるだけでかわす戦士。
時折、斬撃を出し終わった隙を見つけた戦士が木刀を繰り出すも、ミルスはすかさず盾で弾いてその動きを攻撃に転じる。
 その姿に、半年前の少女の面影は消え失せ、未熟ながらも剣士のオーラを感じさせていた。
「よし、もういいだろう」
「あ、ありがとうございます」
肩で息をしながらも、何とか礼を言うミルス。
剣の扱いに慣れたと言っても、やはり体力の消耗は激しい。
膝に手をついた姿は、初々しさを感じさせる。
「明日、試験をしてやる」
「試験?」
額の汗を拭いながら聞き返したミルスに、赤いポーションを手渡しながら戦士が言った。
「これを飲んで今日はゆっくり休め」
そして戦士は背を向けて、ハノブの町中へ消えて行った。


 そして次の日。二人は小鳥がさえずる林の中に立っていた。
辺りには、幾つかの亡骸が地面に転がっている。そして、二人が見つめる先には、ある建物があった。
街道からうまく隠れる様に立てられたその建物は、とても公式な物とは思えない。
「この中にいる奴らが持っている得物を、5本持ってくるんだ」
戦士が亡骸近くに落ちている剣をミルスに手渡す。その亡骸は侵入者を迎撃しようとしたシーフのなれの果てだった。
「盗んでもいいし、気絶させてもいい。……もちろん殺して奪い取っても構わん」
ミルスの表情に緊張が走る。’殺す’と言う単語が、彼女にとって初めて現実味を帯びた瞬間だった。
「これが出来たら次に行く。出来なかったらお別れだ」
渡された剣を見つめた後、覚悟を決めた表情で投げ捨てると、ミルスは建物へ向かって行った。

 中は所々灯った明かりのお陰で、窓が無いにもかかわらず明るかった。
そこは最近、活動が活発化した路上強盗のアジトだが、そのアジト自体に関する幾つかの噂が以前から有った。
--人身売買や人体実験をしている。
--国の幹部が出入りしている。
--死人がたむろしている。
 盗賊のアジトにしては随分と大げさな噂であったが、歩を進めるたびにその噂が真実味を帯びるのを感じた。
湿った空気に乗って、生臭い匂いと、死臭の様な臭いが漂ってくる。明るいはずなのに何処かどす黒い物が身体に纏わりつく。
……何処からか悲鳴が聞こえたような気がした。
 ミルスは、剣と盾をしっかり構えると、泥の様なオーラの中へ進んで行った。

315 名前:南東方不勝 投稿日:2006/05/28(日) 22:22:47 [ ydq7157k ]
>>299-307さん
おぉ、メインクエストをサボっている自分にとってはとても助かります。
さていい加減、自分のキャラで報告書を集めましょうかね^^;

>>見学者さん
う〜ん、サマナーの少女が可愛いですね。
追放天使の人も影のマスターと言う感じで渋い方ですしw
>弟子になっても…
そんな滅相もないorz
ただ、自分の妄想を書きなぐってるだけですから^^;
でも書き手としては、大変励みになりました。お互いに頑張りましょうb

>>双月さん
初めまして。
なんとういうか、自分の書いている文よりすっきりしていて大変読みやすかったです。
戦士カッコイイヨ、戦士。ミルスカッコカワイイヨ、ミルス
個人的には続きが読みたいところです。

316 名前:タルタル 投稿日:2006/05/29(月) 14:19:09 [ hfUQyDik ]
みなさん感想書いているようなのでそろそろ私も書きますね
>>299-307さん
ここ最近RS自体飽きてやってないので本当に助かります。
ありがとうございます。さっそくコピペ、とw。
>>南東方不勝さん
あまりにも長く面倒なので(はぁ?ちゃんと読め)自分がここに来た
ときからしか呼んでませんが、途中から読んでもキャラクターがしっ
かりたっているし、一つ一つの文が短くわかりやすく書かれているので
非常に読みやすいです。プロットもしっかり書かれているようではっき
りとした矛盾も見られず、すばらしい技術だと思います。とても参考になります。
>>双月さん
冒頭は死体を転がせっていうセオリーどおりでどんな作品かな、と思いましたが、
なんということか、ストーリー自体は平凡なのにまったくあきさせず一気に読まされてしまいました。
すばらしい。やはり構造がきちっとしていて文章もわかりやすいと自分のように
コントみたいな馬鹿げた話でなくても読まれるんですね。尊敬します。
>>見学者さん
ええと、とりあえずサマナーが可愛い、とでも言っておきますかw
実際まだ事件(山)が始まってないのでなんとも;(始まってたりして)
文字が多く始めのつかみもないので読みずらそうだな、と思わせつつも最後
まで読ませる技術は圧巻です。どんな技術だよ。
とにかくこれからどうなるのかが楽しみです。

317 名前:双月 投稿日:2006/05/30(火) 01:52:56 [ W7ci29Dk ]
御感想ありがとうございます。 それでは残りをUPさせていただきます。
双月>>311

「いよう。こんな所で迷子かい?」
突然耳元に囁かれたミルスは身体を回転させ、バックナックルの要領で盾のヘリを後ろの誰かに叩き付けた。
それは、条件反射だったのだろうが、後ろの人物にとって見れば不運以外の何者でもない。
「がふっ!」
盾を側頭部に食らったその誰かは、呻き声をあげながら地面に頭部を叩き付ける。
「……もしも〜し?」
改めて確認したその誰かを、剣で突っついて見るも動かない。完全に気を失っているようだ。
もし、ミルスがあの戦士以外に鍛えられていたなら、もっと違った出会いになっていたかも知れない。
「これってラッキー?」
しかし、とうの彼女に取ってそんな事はどうでも良い事。
傍らに転がる剣をかばんに収めると何事も無かった様に歩みを進めた。
 だが、すぐさま立ち止まり盾を構える。
 音も無く暗がりから染み出す様に、シーフが何人か出てきた。そして後ろからも、足音が聞こえる。左右には壁がありミルスは今、完全に囲まれていた。
「おいおい。兄弟に酷い事してくれちゃって、覚悟はできてるんだろうなぁ?」
「お譲ちゃんが剣士の真似かい?かわいいねぇ」
「男じゃない無いのか?」
「俺はどっちでもいいぜ。どうせ掘るのは同じ穴だ」
「くぅ〜くっくっく……」
下卑た笑みを浮かべるシーフが5人。前に3人、後ろに2人。皆一様に剣を抜き、臨戦体勢に入っている。
 それが、一斉に飛び掛かってきた。
「いい子にしてな! 痛くしねぇからよぉ!」
剣がミルスに振り下ろされる。しかしそれは急所を狙ってはおらず、ミルスの得物を狙っていた。
 すかさず身をかわし、剣で弾き、盾で押し返す。計5人の連続攻撃であったが、戦士に鍛えられた彼女にとって、その攻撃は生ぬるいものだった。鞭ほど変則的な動きもしなければ、戦士の蹴りの様に鋭くも無い。
 その大人数の攻撃を防御で凌いだ後は、ミルスの独壇場だった。すぐ近くのシーフの顔を盾で殴打する。
「ぐふっ!」
そして股に蹴りを入れた後、その後ろの二人に突進した。
「な、なんだよぉ!」
あまりに素早い動きに、動揺したシーフ達はなす術も無く、得物を弾き飛ばされ、剣の峰で打たれる。
 それは、疾風に翻弄される枯葉のようだった。ミルスと言う名の疾風は三人のシーフを気絶させると、後ろの二人に向き直り剣を正眼に構えた。
「あ? な、なんなんだよぉ」
「身体が……」
ミルスに睨まれた二人は、ぎこちない動きで剣を構えミルスに向かってゆく。
剣士が使う魔法の一種デュエリング。それは剣士の内に眠る闘争本能を敵にぶつけ、決闘に持ち込む技をして知られている。男の中の闘争本能は比較的表面化させやすい。
 しかし、女であり剣士としての日も浅いミルスにとって闘争本能を表面化させるのは至難の業だ。
 だが、戦意を喪失したシーフ達はミルスに確実に迫っている。
「やめろぉ!」
「た、助けてくれぇ!」
先ほど述べたデュエリングの原理は一般的な俗説で、それは真理ではない。
 本来、ディエリングとは相手に暗示をかける技なのだ。睨んだ相手に決闘をしなければならないと言う暗示をかけてけしかける、邪眼に相当する技なのだ。そしてそれが、デュエリングが魔法と呼ばれる所以であった。
 だが、闘争本能に煽られず気分が高揚しないミルスのデュエリングは、何と非情なものだろうか。
 今や半泣きになりながらも剣を構えにじり寄るシーフ達を、哀れに思いながらミルスは一気に駆けた。
 自分の意思とは関係なく動かされていると言う事実。目の前の剣士に敵わないとわかっているにも関わらず、逃げられないと言う事実。その事実に苛まれるシーフ達の哀れな表情を見れば、思わず情けをかけたくなるだろうが、ミルスはあくまでも剣士だった。
「う、うああああああああ!」
二つの悲鳴が重なった時、ミルスの剣は二人の急所に峰を食い込ませていた。その太刀筋は無駄がなく、迷いも感じさせない。
ゆっくりと崩れ落ちるシーフ達。
 それを横目で見、肩で息をしながらも剣を構え辺りの様子を伺う。
「終わっ……た?」
辺りに誰もいない事を確かめると、ミルスは転がる五本の剣うち、4本を拾って出口へ走って行った。
あまりにも呆気ない。しかしそれは、彼女が今までどれほどの訓練を積んできたのかを、如実に物語っていた。

318 名前:双月 投稿日:2006/05/30(火) 01:53:37 [ W7ci29Dk ]
「随分早かったな」
「ええ。毎日の訓練の方がよっぽども辛いです」
呼吸を整えたミルスが、戦利品を見せ付けるように差し出す。その表情は満足げだ。
「殺して来なかったのか?」
驚いた表情で戦士が聞き返した。てっきり血に濡れていると思っていたのだろうが、その刀どころか差し出した手や、ミルスの身体さえ血に濡れていない。
「殺す必要すら感じなかったから」
「む……。その余裕が命取りにならなければ良いのだがな。まあ、いい」
まるで独りごとでも言う様に顎に手をあてて呟くと、背を向けて歩き出した。
「明日から本格的に鍛えてやる。覚悟して置け」
「ありがとうございます!」
戦士の口調はいつもと変わらず厳しいものだったが、それでもミルスの表情がより一層明るくなった。やっと認めてもらえた。そんな想いが霧の様に立ちこめる不安を一気に晴らしたから。
 ふと、ついて行こうとしたミルスの足が止まる。
「あの……。」
「なんだ?」
「名前は……、貴方の名前は何と言うのですか?」
立ち止まり、ゆっくりと戦士がミルスの方に顔を向ける。
「ザルクだ。」
そして、名乗るとまた歩き出した。
「ザルク……さん。」
今まで、名前すら教えてもらえなかった。それなのに今、教えてもらえた。
それは、ミルスが今まで認められていなかった事を表していた。
 しかし、今は違う。
「ザルクさん……か。」
やっと認めて貰えた。それだけでミルスの表情は生き生きとし、何処となく本来の少女らしい色合いを見せていた。
 ……彼女の旅はまだ、始まったばかり。突き抜けるような青空を見上げながら、ミルスは微笑んだ。

/*戦士のザルクと、ミルスと言う名の少女・終

319 名前:118 投稿日:2006/05/31(水) 19:09:50 [ MDeYNJzs ]
◆プロローグみたいなもの>>118
◆登場人物紹介>>205
◆1 >>206-207
◆2 >>209->>210

空色の記憶




 何時間立ったのだろうか。
空は先ほどとは違いすっかり明るくなり、太陽は真上で燦燦と古都を照らしていた。
「・・・・・・・!」
 ガバッという音がベッドからしたと思うと、物凄いスピードで中から長めの黒髪の少女──エリが飛び起きてきた。
表情は顔面蒼白、目はあちこちをギョロギョロと見回していた。
「今何時!?」
 エリは部屋のドアを勢いよく蹴り開け、階段を降りダイニングまで直行した。振り子時計は11時50分を差している。
確かギルド戦は真昼の12時からのはずだ。ということは──。
「ちょ、あと10分かよっ!!!」
 そう絶叫するなり、エリは部屋へと駆け戻り急いで服を着替えた。パジャマを脱ぎ捨て、トレードマークに慌てながら着替える。
「かなりやばいなぁ──あそこまで走っても5分はかかるのに!」ちらりとベルトポーチの中身を確認しながら言った。
 最後に両手にいくつも指輪を付け黒い皮のグローブをはめた。空いた手でリュックを持ち物凄い速さで駆け足で階段を下る。
いつも穏やかに踏まれる階段も、この時ばかりは少し悲鳴を上げた。耳に響く、結構な音がしたが、エリは気にしなかった。
 駆け足の勢いのまま玄関の扉をあけた。太陽の光が怠けたエリの体を照す。
「早く早く早くー!!」
エリはせかせかしながら玄関の鍵をかけ、ちゃんと閉まったか確認するためノブを回した。どうやら鍵はかかっている様だ。

 そこから事務室までは持久力の問題だった。
元々長距離走は苦手な(と、サキが以前トライバルにそう言っていた)エリにとって、正直言うと申し込事務室までの悪足掻きは
ギルド戦でリンチを受けた時よりもキツいと、エリは確信を持った。
路地の裏を回り抜け、
野良犬を踏みつけそうになり、 
露店に突っ込もうとしたところで、エリはふと思った。
「犬に乗っていけばいいんじゃ・・・?」
 思い立ったら吉日というのはこういう事を言うのだろうか。エリは既に一段階のケルビーに跨って古都を失踪していた。
民衆のどよめきの中、
「はいはい失礼失礼!!」
と溌剌に良いながら手を前に出して道をあけていた。もうすぐ表通りだ。もうすぐ・・・。
 やっとの事で表通りに出た。が、冒険者らしき人たちの姿があまり見えなかった。もしやもう始まってしまったのだろうか?
エリの額に冷や汗が一粒流れた。

 「──エリさん、やっぱり来ませんねぇ」
 申し込み事務室のフィールド転送魔方陣の上で、オーガストが言った。「寝かせたままなのがいけなかったかな・・・・」
「気にすること無いよ。今日の相手は強いから、次の戦争まで休ませてあげたほうがいいかもよ」
 短い黒髪の人間が少し皮肉を込めて言った。歳はエリと同じぐらいか、厳ついファビスに綺麗に光るクリスタルソードを抱えていた。
その場で待機していたラルフやサキもこの意見に大きく頷いた。
「そいえばサキ、槍変わったね?なんていうの?」
シータがサキの持っている長槍に目をやった。普通の長槍とは違い、けた違いに長い。実際天井に刃がスレスレだった。
刃の近くに細い旗のようなものが二枚靡いている。槍自体もピカピカと光っていて、いかにも高値が付きそうな感じだ。
シータはこの槍にちょっとばかし度肝を抜かれた。こんなんで突かれたら自分は即死するだろう。
「あぁ、これはホースキラーって言ってね。結構お気に入りなんだ・・・一昨日エンチャントしてもらって光りがちょっと増したけど」
「ふーん、そうなんだ・・・成功して良かった良かった。にしても綺麗に光るもんだね」
「そうですよね、似合ってますよ」セブロがにっこりした。
「そうかな?ありがと」サキは少しはにかんだ。
「みんな、」
 トライバルが急に6人を見据えて言った。全員が声の主に注目する。
「戦略と役割分担は行く途中に耳打ちしたのと同じだからちゃんと覚えておいてくれよ?」
「「「「うぃーっす」」」」
「あとサキ、」
「ん?」
「アレ使うんなら始めと最後に分けて使ってね」
「はいよー、っと」
 そう返事した瞬間、6人の身体がほのかな光を帯びた。その光は瞬く間に強くなり、個々の体を覆った。


 白い閃光が迸った。


 6人は、魔方陣の上から姿を消した。

320 名前:118 投稿日:2006/05/31(水) 19:11:13 [ MDeYNJzs ]
やべぇageちまったorz


吊って来ます

321 名前: ◆21RFz91GTE 投稿日:2006/06/01(木) 20:07:52 [ yaelVTy2 ]
ROM中 || ・_・)o)) ソーッ


皆さん、お久しぶりです〜…長いこと顔出さずに居て申し訳ないorz
始めましての人も居るので、今回は挨拶とさせていただきます


始めましての人…始めまして〜、以前の(?)このスレの十人21Rと申します;;


懐かしい方々、どうもお久しぶりです;;
少し落ち着いてきたので、また執筆始めようと思います。そのときはよろしゅ〜…

322 名前:名無しさん 投稿日:2006/06/05(月) 14:18:59 [ hfUQyDik ]
急かしてはいけないと思いつつも、
誰が書いてくれ。なぜ三日も誰も来ないんだ?
職人さん達、みんなスランプなのかな?

323 名前:戦士のようだ 投稿日:2006/06/05(月) 21:35:23 [ QS1Cbi/M ]

(壁剣士)天使をどうする気だ。あのキャラも道連れにするつもりか

(ギルマス)いかにもパラ剣士らしい手前勝手な考えだな。天使はわがギルドの一員だ。

ギルドと生き、ギルドが死ぬ時はともに滅びる

(壁剣士)あの天使を解き放て。あの天使は回復枠だぞ

(ギルマス)黙れ厨房! お前にあの天使のネタが癒せるのか。上位狩場を侵した寄生厨が、晒しを逃れるために投げて寄越したネタキャラが天使だ。

ソロ用にもなれず、PT用にもなりきれぬ、哀れで醜い可愛いコール用だ。お前に天使を救えるか

(壁剣士)わからぬ。だがコロタクで金を稼ぐはできる

(ギルマス)どうやって稼ぐのだ。天使とともに厨房を運ぶというのか

(壁剣士)違う。それでは寄生厨を増やすだけだ

(ギルマス)剣士。もうお前にできる事は何もない。お前はじきにテイマーに食い殺される身だ。メンテ明けとともにここを立ち去れ




・・・ゴメンナサイ

324 名前:名無しさん 投稿日:2006/06/06(火) 00:40:42 [ W7ci29Dk ]

 もはや、天上の風を思いだせなくなって久しい。
今思いだせるのは、じめじめとして不快感を禁じえない洞窟の空気。
そして、死者の叫びと魂の嘆きが飛び交うモルグの臭い。
 今まで幾多もの不浄を消し去り、幾多もの亡者を救い、幾多もの嘲笑にさらされてきた。
そんな私には、もはや過去の威厳も力も無く、今日も蹴られ続ける。
 最近は人間の姿を借りて、「哀れな動く亡者」どもをまとめて浄化するも、
「狩場占拠してんじゃね〜よ厨TUBISが^^;;;;;;;;;;」
「キモイ黒○○はどっかいってくださいwwwwwwwwヤロウはお呼びじゃナスwwwwwwww」(※都合により一部表現を伏せてあります)
等と罵詈雑言をわめかれる事もしばしば。私は男であると共に女でもあるのに、何と言う物言いか。
 仕方なく、場所を空けてやれば繰り返されるは虐殺の嵐。死者とて魂もあれば心がある……。
いや、それらが縛り付けられていると言う事を、理解していないのだろうか?
その刃がきらめくたびに、杖が輝くたびに響く亡者の絶叫。それを聞くに耐え無くなり、涙ながらに逃げ帰る。
 そんな日々が続く。 私は常々思う。仕える主も無く、かといって自身に取り立てて力があるわけでも無し。
正直なところ、自分の存在意義でさえ疑わざるを得ない。
 いや、’天使’であるのだから、天に仕えていない時点で、存在意義など失われているのだろう。
「主よ。死者として御許へ赴く事をお許しください」

/*彼と彼女の事情*/

 そんな言葉が漏れ出た時、凄まじい衝撃が大地を揺らすのを感じた。
視線の先には、一人の戦士が亡者どもを相手取り、慈悲を感じさせぬ様子で次々と屠っている。
その行動には、私がする時のような哀れみも感じさせず、ただ、ただ破壊の為だけに振り下ろされる鉄塊。
 なんと。なんと、哀れなことか。彼の血に哀愁は無く、涙を流すような愛を感じる心もないのであろう。
その魔人の如き表情は、一体何が彼をそうさせているのか思わず聞いてしまいそうになる。
だが、振り下ろされる鉄槌のような大剣が、他者を拒んでいるかのようだ。
 半ば自暴自棄になり、周りと隔絶していた思考は、その姿によって一気に現実に引き戻される。
「なに見てやがる」
野太い声。その声は凄惨な情景な中でも冷静ささえ感じさせる。
「何故。貴方はその剣を振り下ろすのですか?」
目の前の戦士の眉間の皺が、更に深くなる。突然の質問に気を悪くしたのだろうか。
 しかし、考えて見れば彼は’戦士’なのだ。そのような者に戦う理由も聞くのは、この上なき愚問。
赤子が何故泣くのか。人は何故生きるのか。天使は何故天に仕えるのか。それを問うも同じ事。
「ついにイカれちまったのか? 元から堕天使ってのは、変わったヤツが多いってのは知ってるがな」
「堕天使ではありません。追放天使です」
「同じだ」
間髪入れずに入る反論は、先ほどと同じ冷静さを持った野太い声だったが、何処と無く怒りを含んでいるようだった。
「まぁ、いい。で、なんなんだお前は?」
「貴方は……、戦士とお見受けする」
「ああ? ……そりゃそうだ。俺が獣使いの小娘にでも見えるか?羽を生やしたどっかのアホ面にでも見えるのか?」
半ば呆れたように、戦士が漏らす。見かけに寄らず饒舌な彼は、案外他人との交流を求めているのかもしれない。
 聞くところに寄れば、戦士と言うのは私と同じく、待遇が良くないらしい。
ギルドにおいても使えないと言う声を何度も聞いた。パーティでは誘われることは決して無いとも聞いた。そんな彼ら戦士達は何故戦うのか。誰にも顧みられる事がないと言うのに、何故一人黙々と自身を鍛えるのか。
 そんな前々からの疑問が突如噴出し、思考を圧迫し始め、ついに口から漏れ出た。
「何故、一人で戦うのですか?貴方とて巷の評判が耳に入らぬわけでもあるまいに」
「あ? なんだそりゃ」
「信じるものも無く、顧みられる事も無い。時に嘲笑にさらされながらも、何故戦えるのですか?」
呆気に取られた彼は、後ろに現れた亡者を事も無げに打ち砕くと、私に問いかけた。
「逆に聞くが、神に見捨てられたらそれでお終いってのが、お前たち天使の考えなのか?」
「と、いうと……」
「俺は神がいるかも知れねぇとは思っている。だが、だからと言って救ってくれるとも思っちゃいねぇ」
その口調は、諦めか。いや違う。
「だから、神を信じねぇ。いる事にはいるだろう。だが、そんな事はどうでもいい」
悟っている。それは、僧がするものとは別種の物だ。

325 名前:名無しさん 投稿日:2006/06/06(火) 00:41:48 [ W7ci29Dk ]
「俺は、俺自身を信じている。俺の信奉者だ」
理解に苦しむ。その言葉は理解を超えていた。何故、自分などと言う物を信じられるのか。絶対的なモノで無い、極めてあやふや、それもすぐに散ってしまうような儚いものであるのに。
「戦いにおいては誰も信じねぇ。坊主の治療など当てにせん。小娘の手下に守って貰おうとも、盾を持ったお上品な坊ちゃんどもの影に隠れようとも思っちゃいねぇ。俺が死ぬ時は、俺自身の力が足りなかった時だ。俺自身の死に方や、死ぬ理由は俺自身によってのみ、俺が決める」
「何と言う……」
私とは根本的に考え方が違う。違いすぎる。例えば、山を山とするならば、兎をうなぎとする。そんなデタラメな事を言われている気分になった。
「しかし、貴方達戦士が嘲笑されているのは、戦士が力不足だからだ。貴方のいっている事は矛盾を……」
「お前はどこのお坊ちゃんだ? 何を見て力不足と言っているんだ?」
不思議な事に彼の表情からは、侮辱された事に対する怒りは感じない。だが、強い憐れみを抱いているように感じるのは気のせいか。
「詰まらん。言いたい奴には好きに言わせておけ。どうせ、てめぇだけじゃ何にも出来ねぇ腑抜けの戯言だ」
辺りはいつの間にか、シンとしていた。洞窟を吹きぬける風の音さえ聞こえない。
「俺は俺自身を信じる。俺自身しか信じねぇ。他人がどう言おうと関係ねぇ。俺はこの形を貫き通す。ずっとだ。くたばって骨になるまでだ。お前は違うのか?」
戦士の視線に、私の額が射貫かれた。そんな感じがした。
「 お 前 は 違 う の か ?」
その言葉共にいつの間にか懐から出した巻物を出した戦士は、最後の言葉と共に消え去った。
「あばよ」
突如として鳴り響く、骨を打ち合わせる音。そして、それに合奏するかのような、腐肉が地面に擦れる音。
 それは私を取り囲んだ。骨と不肉と虚ろな目と不快な呻きと悪臭と嘆きと伸ばされる手。
 ああ、そうか。シンとしてたのは影に隠れていたからなのか。
この亡者どもは私を殺すのか? 私を喰らうのか? 私はここで終わるのか?

「主よ。主の元へ逝かぬ私をお許しくださいとは、いいますまい」
力が、奔流となって身体中を駆け巡る。
「主よ。私はもはや悪魔と化す。この力、主の名の元にでは無く、自身の為に使おうぞ!」
20を超える亡者の群れ。それに目掛けて光速の光輪が打ち出される。
「哀れなる亡者達よ。安らかに眠れるかどうかはわからん!だが、その苦しみからは、確実に救ってくれる!」
亡者の口からは悲鳴が漏れるも。腐って汚物と化し、腐臭にまみれた身体から解放された魂は歓喜に打ち震えている。
「自身の信じるがままに!亡者ある限り、他者に何と言われようと浄化し続けてみせる!」
その表情に、戦士と会う前の絶望の色は無い。その表情は、先ほどの戦士と同じ険しい表情だった。

 全てが終わった時、彼女の第二の人生は始まっていた。
きっともう、彼女を止める事は誰にも出来ない。彼女を止める権利は、彼女しか持たないのだから。

終 ……ゴメンナサイorz ホントいろんな意味でゴメンナサイ

326 名前:タルタル 投稿日:2006/06/08(木) 15:03:54 [ Z7HCSd4g ]
「あねさんシリーズ」
一応前のをのせておきます。ただし別に物語上の時間順ではなく気のまま一話完結
で書いています。よって一話とかは書いた順です。
第一話 >>248 >>249 >>251
第二話 >>258 >>259

第三話 その1
男は突然現れ、何もいわず腕組してこちらを凝視して、そして近づいてきた。
上半身裸で、白いズボン一枚である。足は裸足。それがこの男の衣装だった。
武器はもちろん、グローブも帽子も指輪もつけていない。
奇妙なほどさわやかな笑顔。その口元には光り輝く白い歯。髪はスキンヘッドである。
身長は約百九十。眼は黒く自信に満ち合われていた。年は三十を超えた所か。
が、そんなことは一見しただけではわからない、というより気づかない。
その筋肉のためである。
言葉では言い表せず、ただ圧倒される筋肉である。
しかもうごめいていた、それ自体がひとつの生き物のように。
それだけに目がいってしまう。
暑いアリアンの大地にむさ苦しいほど暑苦しい男。
「なんで私に近づく男は馬鹿ばっかり」
私の隣にいる女性、真っ赤な髪、真っ赤なジャケット、真っ赤なミニスカート、真っ
赤なグローブ、真っ赤なスニーカーを着込んだサマナ。背は年20代後半の割には低め、
150cmぐらい、顔立ちは童顔。性格は、強欲で粗い。一応私の主人である。
あの砂漠の英雄、セスナの第十五子で、名はセスソ。がこう呼ばれるのは好まず、あねさんと呼ばれている。
一応正式にもア・ネサンとなっている。
が、あねさんの言うことももっともかもしれない。この前は正義馬鹿だった。今回はどうみても筋肉馬鹿だ。
しかも今回は別に物取りにきたわけではない。ただの買い物である。
「お嬢さん、あなたは素質がある」
あねさんは怪訝な顔で筋肉馬鹿を見返すが彼はその大きな両手をあねさんの肩において何か言い出した。
「あなたも私のようになれるといっているのですよ。今からでも遅くありません。一緒に厚い筋肉と
熱い汗の漢の道に進むつもりはありませんか?」
「ありません。ていうか女だし」
すばやくはっきりとあねさんは答えた。
「その貧乳ならば、と思ったのですが」
筋肉馬鹿は肩を落としていった。
「貧乳ねぇ……、ヘッジいきなさい」
ばぎばぎばぎばぎばぎばぎ。
その怒りは力になって私に降り注ぎ、私の体は一気に第三段階になる。
仕方ないな、私は筋肉馬鹿のみぞおちを殴る。
ネタキャラの召還獣とはいえ第一形態ならまだしも第三形態では戦える。とりあえず、というレベルだが。
故に一撃で決めるしかない。
「むっ、きかんわ」
その筋肉馬鹿の体はまさに鉄のようだった。感触がそうなのだ。人間の肌ではない。
「売られたけんかは買う、それが漢だっ、マッスルナックル」
筋肉馬鹿はそのままの体勢で右拳を繰り出す、そう確認した瞬間、私は吹き飛ばされていた。
そこらにあった壁に激突する。町を歩く人々が何事かとこちらを見ている。
「とどめだ、吹き出せっ夏の汗っ、盛り上がれ漢の筋肉っ、ひっさぁぁぁぁぁつぅぅぅぅ」
そして一瞬で近寄り右手で私の体をつかむ。
「ごぉぉぉぉぉぉぉるでんっまっするっ」
何か別の次元の技だった。マッスルナックルは正拳突きといえたが、これはこの世界では説明のつかない技だった。
気づいたときには仰向けに倒れていた。
「ふう、いい汗かきました。では貧乳のお嬢さん。我らのマッスルギルドに入りたければいつでも言ってください。
当分はアリアンにいるつもりですから。我がギルドの目印はこの筋肉です。紋章など必要ない。はぁーはっはっはー」
そう言って筋肉馬鹿は何事も無かったかのように歩き去る。
「まったくなによ、あれ」
あねさんは去り際に貧乳と言われたせいか多少不機嫌だ。
「ただの馬鹿でしょう。ああゆうのは気にするだけ無駄ですよ、あねさん」


「あれは、セスソか?」
見るからに裕福そうな雰囲気をかもし出す、その若く麗しい男は脇に控える黒服の男に尋ねた。
「おそらく、あんな真っ赤なサマナーなどそうそういませんので。念のため調べておきます」
「たぶん、まちがいないだろう。しかしアリアンに戻っていたとはな。こうしてはいられないな。戻るぞ」
「はい」
二人の男は足早に去る。

327 名前:変な生き物 ◆YRNj1tYA5I 投稿日:2006/06/08(木) 18:59:53 [ axISEIrA ]
こんばんは、変な生き物です
復活宣言をしたのはいいが、小説の再開は何かと大変でした。

何よりもまずは話の大筋を決めるための路線作り
そして小説では最も重要な事のひとつ「キャラを実在させる」という事もしました
物語の、路線の上に「キャラクター」達を置いて、彼らの動きを見る
あのキャラの性格ならここはこうするだろう、このキャラなら…といった具合です
これが思ったよりも難しく、何度も物語を書き直しました…ざっと10種類ぐらいボツにorz

まだしばらくかかりそうなのでとりあえず簡単な読み物でも…
オンラインゲームRS内のメインクエストで語られる話に
自分の小説を混ぜてみたものです、RSメインクエストの話とはズレてますがご了承を…

あーなんか腕にぶってそうで怖いよオガーザーン o.....rz

328 名前:追放天使からの手紙 ◆YRNj1tYA5I 投稿日:2006/06/08(木) 19:00:43 [ axISEIrA ]
― 親愛なる兄弟へ ―

ああ、お前の手紙はちゃんと届いたぞ、にしてもなかなか面白い事を聞くな。
俺達が追放されれた訳 か、まぁ大半の同士は既に忘れているだろうな
今から約500年前もの話だ、忘れてても仕方がないだろうな、あまりいい思い出でもないし。

 『赤き石』もとい『神獣フェニックスの卵』を天上界から奪われた時、俗に言う『RED STONEが落ちた日』だ。
男性天使の多くは天上界にいる『神獣』を守る仕事についていた、俺もその一人だ。

火、水、風、大地、光、闇、六種の世の中の基本元素を支配する存在、それが『神獣』
神獣は天上界に多く居住していて、お互いに調和を成して地上界と天上界に不均衡が起きないように六種の元素を治めている
故にこれが失われる事の無いように、天使が護衛にあたっていた、と言ったところか。

ある日、火の神獣フェニックスを守る守護天使長、こと第一大天使が大天使寺院やら俺達、守護天使やらに警戒を呼びかけていた
「近いうち、何らかの天変が起こる、各員、神獣の守り、もとい天上界に外部の者を入れぬよう守りを強化しろ」みたいな事を言っていた
だが誰一人それをまともに聞こうとはしなかった、まぁそれも仕方のない事だ
この天上界の平和が崩される事なぞありえない
もとい天上界に侵略するようなバカはいないと、誰もがそう思い警戒を強めなかった、俺もそう思っていた。

その次の日、その守護天使長は大天使間の会議に出席せず、行方不明となった
一部の者達が守護天使長を捜索しようとした矢先、事件は起きた。

そう、天上界に地下界の悪魔達が襲撃しやがったのさ、誰もが予期せぬ襲撃に面をくらったさ
俺達守護天使が慌てふためく隙に、フェニックスを祭る神殿に入り込み、フェニックスを殺して『フェニックスの卵』を奪った。
すぐに体勢を立て直して悪魔達を次々と始末し、ほぼ大半を葬ったが、結局卵は盗まれて地上界に隠されちまった。

その後、守護天使長の亡骸は発見されて葬られた、悪魔達の先発隊と交戦して命を落としたと聞いた
一部の上級天使達3人が完全に追放され、そして生き残った俺達、守護天使は完全追放を免れたがその代わりに片方の羽の半分を剥奪されて
地上界に放り込まれ、聖職者の姿で奉仕活動をしながら、「RED STONE」を探索する任務を押し付けられた。
全く、生きても死んでも結局地獄というわけだ、迷惑極まりない。

だが、今こう思い出すと謎だらけだ。
なぜ守護天使長は襲撃を知ったのだろうか、なぜ、守護天使長一人で、護衛も連れずに先発隊と戦ったのだろうか?
なによりも、悪魔達があえて「フェニックスの卵」を狙って奪い、それをなぜ地上に隠したのか
そしてそれの回収の為だけに、天使の多くを地上に追放したのかよくわからん。

あの卵は極めて強力だ、だが所詮は「界のひとつを支配する」程度の能力しかない
 はっきり言って、少々言葉は悪いが
『地上界だろうが地下界だろうが、滅ぼうが支配されようが知った事ではない』
というぐらいにしか考えられていない、なんせRED STONEと同じような力がまだ天上界には5種もあるからな
そしてフェニックスそのものは大量に殺されたが、まだ残っているから元素のバランスは極端には崩れていない
よって、それほど重要かつ危険な事態でもないのだ。

何か、あの卵以外に、天地を揺るがすとんでもないものも盗まれていたかもな

 もっとも、真実は500年前の闇の中だが。

ところでアンタの友のウルフマンは元気にしてるか?
お前の話によるとアイツのメシは美味いらしいからな、機会があったらご馳走させてくれ。

329 名前:名も無き作家 ◆zGQ0MrrHTw 投稿日:2006/06/09(金) 16:12:54 [ GgNBVrbs ]
私は生物を殺すのを躊躇したことがなかった。
死を間際にした生物は皆、哀れな顔をして命を乞う。
だがある日、私に天罰が下った。
私の中の魔力が暴走して私はウルフマンになってしまったのだ。

まあ、なってみれば、なってみたで不自由はない。
二足歩行だってできるし、走ろうと思えば四本の足で驚くほどの速さで走れる。
私があまり好きではなかった動物の血肉も美味く感じる。
これが狼というものか、とひそかに感心したものだ。

だが、私は世間で知られている一般的なウルフマンとは違った。
確かに私は魔法を操っていたときは周りの者の手の届かないところにいた。
ウルフマンになってもその魔力の影響か、そこらの者では足元にも及ばない
俊敏で、力が強く、屈強なウルフマンになっていた。

が、人間に戻れなくなったのだ。

何がどうなったのかはわからない。
あの時、魔力が暴走して体の中で何かが変わってしまったのかもしれない。
だがしかし、確かにあのときの事故の影響で元の姿には戻れなくなってしまった。


周りの人間は私を化け物扱いした。
完全なウルフマン、などと呼び私を見るときはいつも冷たい視線で見下していた。
そんな視線に耐えることができなくなった私は人気の少ない狼の巣窟付近で寝そべっていた。
寄ってくる狼など、腕の一振りで殺せてしまう。

気持ちがよかった。
人間の姿のときはしようとも思わなかった。
雲はあんなにも綺麗に流れていたのか。
太陽はあんなにも世界を照らしていたのか。
空はあんなにも透き通っていたのか。
風はこんなにも…心地よく私達をなでていたのか。
そんなことを考えながら私は深い眠りに落ちていった。

330 名前:名も無き作家 ◆zGQ0MrrHTw 投稿日:2006/06/09(金) 16:13:43 [ GgNBVrbs ]

目が覚めると夜だった。
少し欠けた月が、綺麗に私を照らしていた。
この体のせいか月光に当たると少し興奮する。
と、何か異変に気づいた。

尻尾の辺りが重い。何か乗っかっている。
上体を起こし尻尾のほうに目をやると、赤い頭巾をかぶったまだ15,6歳であろう少女が
私のフサフサの尻尾を枕にして眠っている。
「…」
その少女を起こしてはかわいそうだと私はもう一眠りすることにした。
なに、空腹などは気にならない。
この体のせいで魔物が喰えるのだから。起きたらそこらの狼でも食らえばいい。

再び目が覚めたとき、太陽が顔を出し始めていた。
私の尻尾を枕にしていた少女は目を覚ましていて、私の前に正座していた。
「狼さん、私の友達になって?」
彼女が言った一言目がこれだった。
「何を言っている。私はこの姿からもう元には戻れない体質だ。
 俺と居れば君は化け物呼ばわりされてしまうぞ。そんなことは俺が許さない」
俺は忠告して、その場を立ち去ろうとした。
「待って!」
少女も少女で引き下がろうとしない。
「私も変わった体質なの。私、世間じゃ魔物を使役する職に就くはずだったの。
 なのに私は16歳になった今でも魔物と話をすることはできない。
 召喚獣だって呼び出すことができないの。皆は私のことを出来損ないとかクズって言うの…」
少女の瞳にはうっすらと涙がたまっていた。
「…わかった。いいよ。友達になってあげる」
そんな涙のせいなのか、彼女の悲しい体のせいなのかはわからないが、
彼女を不憫に思った私は友達になると約束した。

それから私は彼女を背に乗せていろいろなところへ行った。
砂漠の中にある小さい村、鉱山で有名な町や、潮風が気持ちいい港町など
一人で旅をしているときはそれはそれで良かったが
二人で旅をしていると、なんというのかすごく落ち着く。やはり私は人間だ。狼などではない。
ちゃんと感情を持っている。

331 名前:名も無き作家 ◆zGQ0MrrHTw 投稿日:2006/06/09(金) 16:14:05 [ GgNBVrbs ]
だがある日、私が彼女を見かけたとき彼女の長く綺麗な金髪はずたずたに切られていた。
「な、何があった!?」
心配そうに慌てふためく私を見て彼女は涙を流しながら笑った。
「大丈夫…だよ、狼さん。いつものことだから…」
なぜそんな風に平気な顔をしていられる?
なぜ涙を流してまで辛いのに受け止めていられる?
なぜ…私のように現実から逃げ出そうとしない?
気づいたとき、私は彼女を抱きしめていた。
「ごめん、もう君から目を離したりはしない。ずっと俺が守る」
彼女を抱きしめた私の胸がちょっとだけ濡れた気がした。

次の日、私が鋭利な爪と、人間の頃からの持ち前の手先の器用さで
彼女の髪の毛をカットしてあげた。
ロングヘアーも似合っているが、ショートヘアーも彼女には似合っている。
我ながらいいできだな、とうんうん頷いていたら
「変な狼さん」と彼女が笑った。 笑顔を取り戻せてなんだか少しホッとした。
人の笑顔は何物にも変えがたい宝だ、と思った。

彼女がこんなことを言い出したのは彼女と友達になってから早3ヵ月後のことである。
「狼さん狼さん」
彼女はいつものように私を狼さんと呼び、トコトコと私の後をついてくる。
「どうかしたか?」
「私、狼さんの役に立ちたいの。狼さん、私を鍛えてくれない?」
彼女の目は、きらきらと輝いていた。
この世界は大変だ。血飛沫を浴び、屍をこえなければ死んでしまう。そういう世界だ。
私はできれば彼女をこの世界に巻き込みたくなかったが
彼女の本気の目を前に、「やめろ」などと無神経なことはいえない。
「辛い世界だけど大丈夫かい?」
「大丈夫よ、私には頼れる友達がいるもの」
そう言って私の腕をとる彼女をとても愛しく思えた。

332 名前:名も無き作家 ◆zGQ0MrrHTw 投稿日:2006/06/09(金) 16:14:34 [ GgNBVrbs ]
彼女は魔物を使役することができなかった。
召喚獣を呼び出すこともできなかった。
力が弱く、重い武器を持ち上げることもできなかった。
だが彼女には一つの才能があることに私は気づいた。
彼女の笛の音色は、もう音色の域をこえている。
これは魔法だ、と私は気づいた。

彼女に弓を持たせた。
彼女が持てるように軽くなるように私が細工した弓だ。
彼女は喜んで「狼さんが作ってくれた弓だ」と言ってとても大事そうにしていた。
私の考えは的中した。彼女は魔法に関しては天才だったのだ。
彼女はみるみる逞しくなっていった。
それは、辛い過去のせいか、不安定な部分もある。
だが、戦うものとして、彼女は立派に成長した。
私は彼女を、背中を預けても安心できるほど育て上げた。彼女も彼女でそれをとても誇らしく思っていた。

彼女はその才能を買ってもらい、ギルドに入った。
私は…入りたくはなかった。また化け物呼ばわりされるのが辛かった。
彼女は「狼さんが入らないなら私も」と言ったが私が無理やり加入させた。
「ここに居ればさらに友達ができる。君を認めてくれる人もできる。
 入っていても損はないよ」と言い訳をした。ごめん。君に嘘はつきたくなかった。

ある日、彼女と私は熟練の者でも苦戦する魔物が潜む場所に来ていた。
確かに魔物は今までのものとはレベルが違ったが戦えないほどではない。
私と彼女はお互いに背中を預けながら戦った。
だが、アクシデントが起きた。
彼女が魔物に不意打ちをくらい、倒れているではないか。
その肩にできた傷からは生々しくも血が流れ出ている。
彼女だけは死なせたくない。そう思った私は危険を顧みず、斧を降り下げんとする魔物と彼女の間に割って入った。
斧は私の屈強にできた体によって彼女に当たることはなかった。
だが血が止まらない。
魔物の肩を抑えているが、これも時間の問題。
周りからは魔物がいずれ湧いて出てくる。
私は彼女に逃げるように言った。
彼女は「私はまだ戦えるよ!?狼さんだけ残して行けないよ!」とそれを拒んだ。
「ありがとう、でも…君には生きてほしい。君は辛い過去の分、楽しい未来が待ってるはずだから。
 だからこんなところで死んでほしくないんだ…行ってくれ」
「お願いだから、そんなこと言わないで…お願い…私、まだ狼さんに恩返ししてないよ?」
彼女が涙を流しながら訴える。
「君からは大事なものをもらったよ…もう、大丈夫だから。……さあ行くんだ…」
「でも…」
「さあ!」
もう声にもならない叫びを彼女にぶつける。
彼女は涙をぬぐって出口に向かって走り出す。
去り際に「ごめんね…狼さん」と言う声が聞こえた気がした。

そうだ、それでいい。
君は生きるんだ。辛い過去と決別して…生き抜くんだ。
ああ、私も君に出会えてよかった。
ありがとう…私の大切な人…………さようなら……

体で抑えていた斧が私の体を撫ぜるように斬る。
私の胸に大きな切り傷ができる。
血が止まらない。ドクドクと、血が流れる。
視界がゆがんでくる。辺りから槍を持った魔物が現れる。
寄るな。最期くらい静かにしてくれ。もう何もしなくても死ぬんだから。やめてくれ。
もう体に感覚がない。痛みを感じない。何が起きてる…
目を閉じる間際、私の腹に数本の槍が刺さっているのが見えた。
それから私は静かに意識を失った。


……どこか とおくで かのじょが ないている きがした………

333 名前:名も無き作家 ◆zGQ0MrrHTw 投稿日:2006/06/09(金) 16:14:57 [ GgNBVrbs ]
目を覚ますと私は砂漠のオアシスの町にいた。
使われていないはずの建物の中のベッドに私は寝ていた。
体が包帯でぐるぐる巻きになっている。
「いっ!……つつ…」
体に傷がある。   私は生きている…?
「目を…覚ましましたか?」
部屋にいた聖職者が無理に体を起こそうとする私を諌めるように声をかけた。
「…ここは…?」
「私達のギルドが使っているアジト…のようなものと考えていただいて結構です」
その男はきびきびとした口調で淡々と話した。
「その…なんで私は生きてるんですか?」
そう言った私に、聖職者は眉間にしわを寄せて少し怒り口調で説明した。
「そんなこと、彼女が目を覚ましてから言わないでくださいよね」
聖職者が、私のベッドにもたれかかるようにして眠っている私の愛する人を指差して言った。
「彼女がこの町に戻ってきたとき、重傷を負っていました。
 私を含むギルドのメンバーがすぐに駆け寄り事情を聴こうとしましたが彼女は何をあわててるのか
 『私の大切な人を助けて…』とそれしか言わない。私達は彼女を抱えて彼女に道案内をしてもらいながら
 あなたが倒れているダンジョンまで行きました。 あなたは…もう息をしていなかった。
 メンバーであなたの周りにたむろっていた魔物を討伐した後、彼女はあなたに駆け寄り
 ただ『生きて』とそれだけつぶやいていました。
 私達が全力を尽くして治療したからか、それとも彼女の想いが伝わったからかはわかりませんが
 あなたは生きてる。  ……それでいいんじゃないですか?
 それともあなた、死ぬためにあそこに向かったのですか?」
私はその言葉を聴いて、生まれて初めて涙というものを流した。
こんな自分の身を案じて…ここまでしてくれる人がいる。その事実に私は声を上げて泣いた。

彼女が目を覚ました。
「狼…さん?」
彼女の目は泣き腫らしたのが良く分かる。
「その、ごめん。もう!…君だけ生きろとか言わない。
 ギルドの人から聞いたよ…君が俺のために走ってくれたこと。全部…聞いた」
「うん…」
「ありがとう…本当にありがとう…」
再び流れ出た私の涙を、彼女は拭い取って
「泣かないで、狼さん…やっと、一つ恩返しができたんだから…」と彼女も涙を流して言った。
「狼さん…ずっと私と一緒に居て…?……こんなこと認められないかもしれないけど…私と…」

334 名前:名も無き作家 ◆zGQ0MrrHTw 投稿日:2006/06/09(金) 16:19:45 [ GgNBVrbs ]
それから数年がたった。
私は未だに狼のままだが、私の隣には最愛の妻が居る。
かつて死にかけた私のために傷だらけの体を引きずりながら走ってくれた妻が。
もう彼女を突き放したりはしない。
彼女だけに生きてほしいとは思わない。

『ずっと一緒に、いつまでも笑って生きていたい』

そう心から思った。

                        FIN


──あとがき──
非常に長々と書いてしまって申し訳ない('A`)
まずこれを書こうと思ったのが「ウルフマンのフサフサ尻尾」
ええ、好きなんです。斜め後ろを向いて座ってるウルフマンの
フサフサの尻尾がたまらないんです(*´∀`)
ただそれだけが故にこんなに長々と…本当にゴメンチャイ。
楽しんでいただけたら嬉しいです。

ではでは!

335 名前:変な生き物 ◆YRNj1tYA5I 投稿日:2006/06/09(金) 20:04:35 [ Mfri0o4s ]
ってギャー書いた後すぐに小説打ち込んでそのまま寝ちゃったけど肝心な自己紹介忘れてるぅううううう

という訳でこんばんは
「ハァあんた誰」と思ってる貴方、始めまして
「お前サボリすぎだゴルァ」と前スレの思ってる方々、ごめんなさいコロに蹴られて反省してます

変な生き物です、コテつけたのはなんとなくです
前スレでは臭い漂う小説を書いてました、昨日書いた小説の手紙に書いてあるウルフマンも
前スレ内で「変な生き物」で検索をかけると出る、私の小説を読めばピンと来るかも
…今読み返すと序盤が物凄く雑なのであまり読んで欲しくなかったりゴニョゴミョ

今回は腹をくくって色々と下準備しました、デートの誘いが来ても断って小説書きます
最もデートの相手なんか ○おりません

今度こそ近いうちにRED STONEの小説をUPしたいと思います、では
○追伸:久々にPC起動してたらキャラ消えておりました、これが天罰というものですか神様

>> 名も無き作家 ◆zGQ0MrrHTw
楽しいというか…悲しくて切なくてそんでもって嬉しい
最高の物語をありがとうございます、というか弟子にしてください
あー、ウチのキャラ達と物語も、もっと作りこまないと…

336 名前:名無しさん 投稿日:2006/06/10(土) 03:00:32 [ W7ci29Dk ]
>>329 名も無き作家 ◆zGQ0MrrHTwさん
いいですね! 長いふさふさ尻尾!
短いながらも流れるようなストーリーに、哀愁と平穏などが色々織り込んであって引き込まれました。
テンポのいい話が書けるって、凄いと思います。

337 名前:名無しさん 投稿日:2006/06/10(土) 13:20:20 [ .ilUk8Ls ]
>>298
広場を照らしていた光が弱まり、広場には俺達以外誰も残ってはいなかった。
どうやら、さっきの光に紛れてシーフ共は撤退したようだ。
「一旦俺に預ける…か、得体の知れん奴だな」
奴が転送翼を使った時感じた魔力に似た濁った力の波動。
それは間違いなくあの時の廃坑に満ちていたもの同じ、それらが指し示す答えは唯一つ。
「始原魔…、どうにも俺はあいつらと縁があるみたいだな」
以前のハイランダー達の時も、ヒースが始原魔の一人に会っていたらしい。
もっともそいつはヒース達に協力し、ハイランダー達を操っていたのはまた別の奴らしい。
「まぁ、近いうちに実家の書庫でも漁って見るか」
古い魔術師の家系である俺の実家にはどこで手に入れたのか、禁書指定されている書物の写しが大量に保管されている。
その中の一冊くらいに、奴らに関する記述が有るかも知れん。
(さて、今はその事よりやるべき事があるがな)
そうして俺は、目の前のクソガキに視線を向けた。
月の光を受けて柔らかく輝くブロンドの髪、テイマーのトレードマークとも言ってもいいフードは被っていないようだ。
戸惑うように俺を捉えている瞳は、この地方では珍しい漆黒。
体つきは…まぁ、そのなんだ、全体的にコンパクトといったところか。
胸に関してはリリィよりは僅かにでかそうだが…。
まぁ、早い話が目の前のガキは上玉と言っても過言ではない容姿をしていたのだ。
財布をスラれた、という前置きがなければ素直に感心できただろうな。
「おい、とりあえずお前を預けられた身としては話を聞きたいところだが、
その前に俺とゲイルの財布を返してもらうか」
「……」
ジリッとガキが後ずさる。それと同時に、ペットと召喚獣もいつでも飛びかかれる姿勢をとる
いや、助けたのだから財布くらい素直に返してもらいたい。
「あぁ、逃げようとしても無駄だぞ。
 広場の出入り口に任意起動型のロックバウンティングが仕掛けてあるからな」
その仕掛けの調整のために、ゲイルはこの広場の中にはいない。
「…。少し、質問してもいい?」
戦闘体勢を崩さずに、ガキが俺に話しかける。
「あぁ、それで気が済むなら答えられる事なら答えてやる」
思った以上に長丁場になりそうなので、俺は石畳の上に腰を下ろした。
これなら、俺に喧嘩しあう意思が無いという事もガキに伝わるだろう。
「なんで…アタシを助けたの?」
「あぁ?」
「アタシを助けた理由、それを教えて…」

338 名前:南東方不勝 投稿日:2006/06/10(土) 13:20:54 [ .ilUk8Ls ]
「俺が自分で助けると決めた、さっきも言ったはずだがな」
「だから、そう決めた理由はなんなのよ!
 人間なんて、自分に利が無ければそんな事するわけないじゃない!」
「あぁ、なるほど。確かに財布を取り戻そうと考えたさ」
「…っ!」
俺のその答えが気に入らなかったのか、少女の笛が付き従う従者達に指令を送ろうとする。
「だがな!それ以上に、目の前で年端かもいかねぇガキを無理やり連れて行こうとする
 あいつらのやり方が気に入らなかった。俺は財布一つをスラれたくらいで、そんな状況を
 無視するほど、俺という人間は腐っちゃいねぇ!」
俺の声が夜の広場を震わせるように響く。
「なによ…それ、気に入らないから助けた、アタシはあんたの財布をスッタんだよ!?
 そんな相手をそんな理由で助けるなんて、あんた頭おかしいんじゃない!」
「財布をスラれたのは俺の落ち度だ。金なんざ、無くなればまた怪物共を狩って貯めればいい。
 だが、人の身はそうもいかんだろう?貯め直しが効く金と、やり直しが効かない命…。
 この二つを天秤にかけることすら俺としては馬鹿馬鹿しい」
そういった後、俺はおもむろに立ち上がり、ガキの目の前まで歩を進める。
ガキの戸惑った顔に向かって、俺はまたも自分の意思をあらわにする。
「お前が何をそんなに頑ななのかは知らんが、自分で決めた以上、俺はお前を裏切らん。それだけは絶対だ」
ガキが纏っていた刺々しい空気が僅かながらに緩んでいく。だが、その目には俺に対する疑いの色が多分に残っていた。
「…。あんたを心の底から信用した、って訳じゃないけど…。財布は返すし、あんたが知りたい事を話してもいいよ」
「これは珍しいですな。主殿が人間の言う事を聞くとは」
ガキの出した答えに、ペットの吸血鬼が驚いたような声を上げる。
吸血鬼に続いて骸骨も、カッカッ、っと笑い声のような渇いた音を出す。
だが、それらの声にはそれ以上に喜びの色が滲み出ていた。
「煩い、ヴォイド!ラグルも笑うな!ほら、あんたもぼうっとしてない!
 話してあげるんだから、せめて屋根のあるところを用意してよね!」
そう一頻り喚いた後、ガキ…少女は急ぎ足で歩き出す。
だが、何を思い出したのか急に立ち止まり俺のほうに振り向いた。
「自己紹介がまだだったわね。アタシの名前はミシェル、ミシェル・フロウエンよ」
「あぁ、そうかい。俺の名前はジャック・ウルフェンだ。
 連れの魔術師の名前はゲインハルト・S・ミネルヴァ、一応覚えておけ」
そうして俺達は、互いの名前(存在)を確認した。

波音響き月光降りたる広場にて、堕天の器は希望の一端と出会いたる。
器に潜みし堕天、未だ行く末を傍観す。

339 名前:南東方不勝 投稿日:2006/06/10(土) 13:43:32 [ .ilUk8Ls ]
やっとこ続きが書けた南東です。難産だった割には、やはり拙いorz
もう少し、寝かせた方が良かったかもしれません(´・ω・`)

>>双月さん
デュエリングにガクブルです^^;
何事も気が乗らないとろくな事にはなりませんからね

>>118さん
Gvの寝過ごしくらい日常茶飯事(ry
ジョウダンデスヨw
さてさて、エリ嬢は果たして間に合うのでしょうか?

>>21Rさん
おぉ、お久しぶりです。
また投下されに来るのを、まったりとお待ちしてます。

>>戦士のようださん
正直に言います

吹きましたwwGJwww

>>324-325
戦士と出会えた事で、少なくとも何かを得ることできたようですね。
彼女のこれから歩む道が、実り多き道であるといいですね。

>>タルタルさん
姐さん、その本名はどうかと…w
相変わらずの笑いをありがとうございました。

>>変な生き物さん
おぉ、相変わらず人を惹き付ける文章をお書きになって…
やはり、手紙の中のウルフマンは愉快なシーフを相棒にしているあの方ですか?

>>名も無き作家さん
あぁ、なんて素敵なハッピーエンド。
面白くて一気に読んでしまいました。
さて、ぜんぜん遊んでないウルフマンでも起動してこようかしらw

340 名前:名無しさん 投稿日:2006/06/11(日) 21:41:57 [ XR/ykI8A ]
SSスレと絵スレのコラボレーションなんてどうですかね?
希望者お待ちしてまする

341 名前:見学者 投稿日:2006/06/12(月) 18:35:53 [ ww4BM0IA ]
暫くぶりです コンニチハ。
お初の方には ハジメマシテ。

駄文投下の前に……。

>>340
 面白そうですね (・・*
 ですが具体的にこちらは何をすれば良いのかイマイチわかりません
 やるのでしたら是非、参加させてくださいな
 お暇があったら挿絵とかもくだs……

342 名前:見学者 投稿日:2006/06/12(月) 18:36:55 [ ww4BM0IA ]
 古都ブルンネンシュティグの中央、噴水広場にサマナーは居た。
広場のメインでもある噴水の縁に腰を下ろして、小さな手をギュッと結び膝の上に置いている。唇をキュッと一文字に結び、大きな瞳は涙を必死で堪えていた。
 古都とはいえ大きな街である。人通りの多い噴水広場には、サマナーを気にかける人間は居なかった。
 だからこそ、サマナーはここに居るのだ。ここに居れば気が紛れるから……。
 しかし声をかけてくる人間が居た。
「ここに居たのですか」
 ハッとサマナーは弾けるように顔を上げた。耳にまだ残っている声とその人物の顔が記憶に一致している。
 彼はちょっと困ったような顔で微笑んだ。
「探したんですよ、この大きな街中を……。見つかって良かった」
 隣、良いですかと言うシーフに頷きながら、サマナーは再び俯いた。
 悪いことをして親に叱られる、そんな子どものように見えた。
 さて、隣に座ったもののどうすれば良いか分からない。ただただ流れるだけの時間が、徐々に地平線を目指す太陽によって止められてしまったかのように思えた。
 先ほど戦士とやってしまった口論に比べたら随分長い時間に思える。
「あの……」
 いまだに人通りの絶えない賑やかな広場の中、聞こえるのがやっとの小さな声でサマナーがこの沈黙を破った。
「わたしを、探しに来たんですか?」
「突然走っていかれてしまいましたからね。天使様に怒られました」
 誤解しないでくださいね、決してストーカーなどではありませんから。などと冗談を口にする余裕はなかった。何とかこの子を笑わせないと。それだけで頭がいっぱいだった。
「怒られちゃったんですか?」
 そりゃもう、カミナリを落とされましたよ。
 心ではそう言えるが口には出来ない。意外と追放天使は地獄耳のような気がする。
「お厳しい方ですから。可愛い子を泣かすなと、ね」
 この一言に留まった。
 サマナーはクスリと笑ってくれた。照れたのか泣いたからなのか分からないが、頬が紅潮しているようだ。
 内心ホッとしたのは言うまでも無い。
「お手紙、サラさんでしたっけ? まだ持っているのですか?」
「えっ? は、はい。まだ持ってます」
 サマナーは荷物袋から封筒を一つ取り出した。宛先と差出人の名がきれいな文字で書かれた、水色の封筒だ。
「……でも」 
「でも?」
「お断りしようかなって」
「何故?」
 ちょっとしつこかったかな。
 シーフは口をつぐんだが、サマナーは特に気にした様子はなく続ける。
「遠そうで道に迷っちゃいそうで。まだそんなに強くないし……」
 困っているところへあのギルドマスターがやってきたわけか。あの傲慢で自己中心的な……。
 ――あぁ! ダメだダメだ! 暫くはあの人のことを忘れないと!
 気を改めてシーフは深呼吸した。なんだか首元の脈打ちが早くなってる気がする。
「私で宜しかったらご一緒しますよ。リンケンならアリアンから行った方が早いでしょうし」
「ありあん?」
「リンケンから最も近い都市です。テレポーターさんに頼めば送ってもらえますから」
「てれぽーたー……。あれ、でもお金かかるんじゃ」
 今度はシーフが小さく笑う番であった。
 外見に似合わずそういう所だけは気にかけるのだから。
「そのくらい出しますよ。さぁ、日が暮れてしまいます。行きましょうか」

343 名前:見学者 投稿日:2006/06/12(月) 18:45:43 [ ww4BM0IA ]
うぉぉぉぉ アンカー入れ忘れた orz
1st>>267  2nd>>268  3rd>>309  4th>>310

 テレポーターは古都のオベリスク付近にいつも立っている。二人はそのオベリスクに向かって歩いている。途中、露店に目を奪われ立ち止まってしまったり、まるで見当違いの方向へ歩いてしまうだけでもサマナーを連れて歩くのは大変だった。
 だが、それより何より歩幅から歩くスピードから全く違うのだ。気がついたらいつの間にか二人の間に距離が出来ている。
 本当にまだ古都に来て日が浅いようだ。そう認識するまでに時間はかからなかった。
 もうすぐにテレポーターのいる現場に辿りつく。サマナーの歩幅に合わせてゆっくりゆっくり歩いて来たこの道がやたら長い道のりに思えた。
 手紙を届けたらゆっくり体を休めよう。シーフの注意がサマナーから一瞬離れたその瞬間だった。
「うぉぁッ!?」「きゃっ!」
 突然街角から人影が飛び出して来たのだ。それは好奇心からシーフの前を走り出したサマナーにぶつかり、彼女は後ろにひっくり返ってしまった。
「痛ぁ……」
「大丈夫ですか? 突然走り出したりするからですよ」
 サマナーの腕を抱え、よっこらせと立ち上がらせる。
「危ねェな! ちゃんと前見て歩け!」
「何を言ってるんですか! 貴方こそ不注意だったのですから――」
 シーフはその人物に噛み付いたが、相手の顔を見るなり呆然としてしまった。相手もシーフ一点を見たまま黙り込んでいる。
 一瞬の間。
 サマナーはシーフと、そして目の前に立っている男とを見比べた。
 身長や服装こそ違うものの、その顔は殆ど一緒。その二人が互いの顔を信じられないとでも言うかのような表情で見ていた。
「兄さん……」
「お前、何してんだよこんなトコで?」
 どうやら彼はシーフの兄らしい。なるほど、よく見ればどこか似ている。しかし相手側の方が身長が高いし体つきもがっしりしているようだ。
 二人の違いはそれだけじゃない。シーフが白と黒の衣服なのに対して、兄の方はその衣服にオレンジのラインや黄色い装飾が施されていた。その衣服のデザインは同じだが兄の方が明るい彩色がされていた。
 シーフは兄と目を合わせたくないらしく、つい、と視線を逸らした。
「別に何だって良いじゃないですか。貴方こそ何故ここに? また誰かに振られて傷心でも癒していたのですか」
 シーフはトゲを含んだような言い分だったが、相手に言葉はまるで聞こえて居ないらしい。兄は興味津々な顔をしてシーフとサマナーを交互に眺めると、くつくつと笑い出す。
「何が可笑しいのです」
「え、なに、お前いつから幼女好きになったんだよ? モテないからってさァ」
「違いますよ……。頼まれたんです、彼女の請けた仕事を手伝ってくれとね。私は別に貴方みたく女性を追いかけたりしませんから」
「俺が追いかけてるんじゃねェよ。向こうが追いかけてくるんだよ」
「職業を『武道家』から『自信家』に変えた方が良さそうですね」
 どうやらこの兄弟は仲がよろしくないらしい。
 視線を合わせようとしなかったシーフも、元より喧嘩腰の武道家も、互いにギリギリとにらみ合っている。
 そんな二人に挟まれて、サマナーは居心地悪そうに身を縮めた。
「俺、お前のその生意気なトコ嫌いだよ」
「やぁ、気が合いますね。私も貴方のその自信過剰なトコが大嫌いです」
 シーフの手がこっそりと短剣の柄に触れた。と殆ど同じタイミングで武道家の装備された爪が夕日に反射した。
 このまま喧嘩させてはダメだ。
 おずおずとサマナーは口を開いた。
「あの……」
 この状況をなんとかせねば。だが不仲な兄弟に同時に振り向かれて、サマナーは再び口ごもってしまった。

344 名前:リ・クロス 投稿日:2006/06/13(火) 14:57:50 [ kcso0oWI ]
前スレ>>986 >>39 >>56 >>69 キャラ紹介>>38
>>100 >>147 >>178 >>247
スコールの周りに風が集まってくると
白いオーラに変わって体が包まれた。

「ニムラスか・・・、少しは楽しめそうだな。」

少女はそのクリスタルの様な髪を掻き揚げると
その可愛らしい容姿に似合わない甘美な笑みを浮かべた。
その気迫に押されながらも、睨みつけると、両手に持った大剣と爪を構える。

「汝の相手はこいつが良いだろう、shadow of the soul summoning」

少女の真上の空間に亀裂が走っていき、2本の骨の腕が空間を押し広げて姿を現す。
英霊騎士団が装備しているプレートメイルがそれにも装着されている。

「こいつは英霊騎士を取り込んだようだな。」

少女から目の前に現れた巨大な影に目を移した。
それは空間から血に染まった巨大な曲剣を取り出すと
自分の手から生み出した暗黒の炎でソレを包み込み、中段に構える。

「(シャドウソウルでこのプレッシャーだと・・・、そういうことか。)」

「気づいたようだな・・・、これはガイスターストックだ。」

少女がそう言った瞬間に古都の方角から爆音が響き地震が起こった。

「何だ!?」

「能書きはこの辺にしておこう、行けっ!」

シャドウソウルは空中に浮かび上がると、ガイスターストックを水平に薙ぎ払った。
その軌跡は刃となって、スコールに降り注いだ。

「ソニックブレードかっ!」

大量に殺到する風のの刃をサイドステップを使って回避しながら
シャドウソウルの真下に潜り込むと勢いよく切り上げる。
しかし寸前の所で避けられてしまい、空いた左腕が炎に包まれ
切り上げた反動で硬直しているスコールに殴りかかった。

「チッ!」

左腕のクローで受け止めると、そのまま突き飛ばして間合いを空けて
一歩足を大きく前に出して、思いっきり突きを放つ。
突き飛ばされた反動で硬直していたシャドウソウルは
回避できないと悟ったのだろうか、左腕で突きを受け止める。
だが勢いを相殺しきれずに腕が砕け散った。

「グァァァァ――――!」

垂直に振るわれたガイスターストックの横に回し蹴りをして軌道をずらし
そのままの勢いで回転して垂直に剣を振り上げる。

「はあぁぁぁぁ!!」

スコールが怒号を上げた瞬間に剣に眩いほどの光に包まれる。

「ディレイ――――グラッシングッ!!」

鈍い音を発しながら次々と大剣が何回も振り下ろされ
最後にコア部を突き刺して粉砕する。

「・・・――――!!!」

断末魔の叫び声を上げるとそのまま爆裂して
シャドウソウルの体から瘴気に汚染された水が噴出した。

「しまった!ク・・・アァ・・・ッ!」

汚染された水を浴びた足が動かなくなり、激痛が走った刹那
目の前から現れた黒い影に殴り飛ばされて岩に激突した。

「汝の驚異的な再生、浄化能力は排除させてもらったぞ?さぁ・・・もっと苦しむが良い。」

少女の表情は楽しそうに遊んでいる子供の様に無邪気で
またどこまでも非情で残酷であった。

345 名前:リ・クロス 投稿日:2006/06/13(火) 14:58:49 [ kcso0oWI ]
上げてしまったOTZ

346 名前:リ・クロス 投稿日:2006/06/13(火) 15:00:22 [ kcso0oWI ]
上げた上に間違ってるし・・・
裸でモリネル行って来ます・・・

347 名前:タルタル 投稿日:2006/06/14(水) 12:00:51 [ hfUQyDik ]
「あねさんシリーズ」
第一話 >>248 >>249 >>251
第二話 >>258 >>259
第三話 >>326

第三話 その2

「で?ヘッジじゃなくて私自身を呼び出すほどの依頼って?」
いつもならあねさんは自分で依頼を受けることはない。理由はめんどくさいからだそうだ。
いつもは私がアリアンギルドなどから依頼されるのだが、今回依頼した我がネタキャラギルド
副マスターは直接あねさんに頼みたいと言う。
いつものあねさんならそれでもめんどくさいといって行かないのだが、今日はたまたま機嫌が
よかったようで不満のひとつも言わなかった。
さて、そのネタキャラギルド副マスターは筋肉質ではなく、痩せているが二メートルぐらいはあ
るかという身長であるためひ弱に見える。(実際筋力はそう高くないらしい)性格は公明正大で実直で
口ぶりは誰にでも丁寧。職は追放天使。ネタ技はエバンジェリズム。
ぶらり気のまま一人旅に出たまま行方不明の二代目ギルドマスターに代わり、能力的にも性格的に
もアクの強いこのギルドで一切の雑用、もとい事務をしている。よく言えば誰にでも信用されるいい人で、
悪く言えばまじめちゃんだ。本名はなぜか不明でみんなからは職業上副マスと呼ばれる。
「アリアンのグレゴリー・ロッド、知っているな」
「ええ」
先代はかのセスナとともにアリアン開発の初期グループの一人で、町が大きくなるにつれて倉庫を銀行に発展させ、
それが今では、アリアン一の金持ちだ。今は二代目だがその手腕は先代もをこえ着々と私腹を肥やしている。
「そのグレゴリーがなにか? 莫大な財産でも盗んでこいと?」
「いや、別に悪いことはしていないからな。あの財産はあくまで彼の物だ。盗んでもらいたいのは彼の心だ」
「は?」
「つまり結婚しろということだ」
「……。はい?言っている意味がわからないのだけど」
さすがのあねさんも呆然と立ち尽くす。それは私も同様だった。そんなことなど露知らず彼は続けた。
「一応表向きにはアリアンとリンケンの同盟強化のための政略結婚となっている」
「この時代に表向きで政略結婚なのね。じゃあ裏向きは?」
「あまり大きな声では言えないが、はっきりいえば人身売買だ」
あんた、はっきり言いすぎだよ。普通本人の前でそういうこと言うか?しかも人身売買って、意味わかって言ってます?
「で、何で私が身売りされなきゃいけないの」
「あちらが君を気に入ったからだろう。性格は粗暴、全身赤とそして貧乳と、
信じられんことだがな。ともかく理由は純粋な愛だよ。問題あるまい」
と、普通の人は思うようでブルネなどに行っても特に見向きもされないが、
実はアリアンギルドの筋肉馬鹿たちにとってはあねさんは絶大なる人気を誇る。
おそらく細かいことを考えないさばさばした性格が馬鹿たちには好まれるのだろう。
「……まあいいわ。で、まさか私がそれを受けるとでも思っているんじゃないでしょうね」
あねさんに貧乳と言って被害を受けないとは。どうしたんだあねさん。やっぱりとんでもない依頼でおかしくなったのか。
「もう前金はもらってしまったからな。断れん。五億Gだぞ。さらに正式に決まったときはお祝い
と称してさらに二十億Gもらえる予定だ。ふっふっふ」
「私の体は二十五億Gなのね。ふうんけっこう高いわね」
違うだろ、ばしぃ。と思わず心の中で突っ込んじゃったじゃないですか。何納得しているんですか、あねさん。
「仕方ないのだ。知ってのとおりこのネタキャラギルドは人が少ない。財政面では常に問題がある。今でもアリアンと連携してなんとかという所だ」
このギルドの人数は今二十人といったところか。別に少なくはないと思うのだが。問題は能力だけでなく性格もネタキャラである人が多いためだ。
ギルドに入っているという自覚がない人も多く現ギルマスを筆頭に旅に出たまま行方不明の人も少なくない。みんな自由なのだ。
「そのために私に犠牲になれと?」
「ギルメンがギルドに尽くすのは当然だろう」
まさに当然といった面持ちで副マスは答える。
「……あんた、なんか性格変わった?」
確かに変わった。それだけ副マスにかかる負担が大きいということだろう。今のネタキャラギルドの中でこの人しかこういう事務はできまい。
まじめだけでは生きていけないということか。
「とにかく話はわかった。考えておくわ」
「決定事項だぞ、ネサン。もう貰ってしまったんだからな、もう借金返すのに使ってしまったんだからな」
副マスは去るあねさんの背中に必死に何か言っていた。
大変そうだね、管理職は。

348 名前:ゆずみかん 投稿日:2006/06/14(水) 21:49:49 [ 2AEowAD2 ]
みなさん初めまして。最近このスレを見つけた者です。
自分はこういう書き物は大の苦手ですが、みなさんのSSを見て自分も書いてみたい
という衝動に耐え切れずお恥ずかしながら駄文を載せていただきます。

349 名前:ゆずみかん 投稿日:2006/06/14(水) 22:01:56 [ 2AEowAD2 ]
すいません、載せようと思ったのですが自分のPCの性能が悪くて文章10行くらいでも
載せられません。もうちょっと軽い時間帯に出直します。
無駄にレス増やしてすいませんでした・・

350 名前:タルタル 投稿日:2006/06/16(金) 16:38:06 [ hfUQyDik ]
>>南東方不勝さん
いい人ですね戦士さん。人間ができてます。
この人がこの後どういう物語的役割するのか楽しみです。
どう見てもキーパーソンだったガギエルを差し置いてここに出すとは、自分にはできない芸当です。
相変わらず読みやすい構成で感心します。

>>名も無き作家さん
いい話ですね。無駄な設定がなく、わかりやすい。それにハッピーエンド。
あのまま狼死んだりしたらどんな批判書いてやろうかと思いましたが、心温まるハッピーエンド
で心が和みます。こういう単純だけどいい話、実は泣けます。

>>見学者さん
相変わらずかわいいですねサマナ。(w)いや別に書くことないわけじゃないですよ。
本当にかわいらしいです。純情そうで小さくて。自分もこんなキャラを書きたいな、うん書こう(パクリ?)
>>340
絵スレ見たいんですがどこに絵があるのかわかりません。教えてくれたらうれしいです。
コラボは面白そうですね。

>>ゆずみかんさん
がんばれPC。

351 名前:タルタル 投稿日:2006/06/16(金) 16:39:47 [ hfUQyDik ]
「一発ネタシリーズ」
ひゅん。
どごん。ばた。
「何だと?」
俺は量産型剣士。いつものようにアルバB2でPTに入り狩をしていたのだが。突然脇を何かが通り
抜け隣にいたビショに当たる。長身で浅黒い肌と普通だが、髪はビショにしては珍しく金髪だ。
厚い鎧の為、体形はわからなかったが腕や足を見ると筋肉質なのがわかる。装備は標準のもので使い古された物のようだ。
腕には盾のみが装備されている。表情は明るく、回復、支援を同時にしながら、ムードメーカー
もする、ありえない器用さで場を盛り上げていた。もちろん本職の回復は完璧だ。
俺が赤ポを使わなければならない事態になどならなかったのだから。
「ビショを一撃で倒すとは、ってこれは赤ポじゃないか」
彼は打たれ強かった。その自称防御効率LV9の鎧と手だけでなく足の指まで付けてあったクエレ
ザ、そして健康極を思わせる豊満な筋肉。
「俺ってさ、足までクエレザ付けてるから」
といって笑って靴脱いだそのビショは今、地に倒れていた。頭から血を流して。
そして彼の笑顔を奪った赤ポはその破片をばら撒いて、粉々になっていた。本来傷を回復させる
赤い液は今ビショの血と混ざっている。
「ああ、ビショさんが」
「早く戻ってきて」
PTの面々は自前の赤ポをかぶ飲みしながら言う。
その赤ポがビショの命を絶ったというのに。誰だ、一体誰が。
「ああ、間に合わなかったようですね、剣士様、私はまた、助けられなかった」
「小春さん、仕方ありません」
小春と呼ばれたプリンセスはビショの脇に座り、静かに祈る。彼女は兵士とは考えられない
ような装備をしていた。鎧は装備せず、俗にウェディングドレスというものを着ていた。
何故かビショと同じように首からは十字架をかけている。手だけは白い装飾がされているがガン
トレットを付けている。しかも背中にはウサギの形を模ったリュックを背負っ
ている。年は十代後半と思われる。背は低め、髪は黒、幼顔だが、異常に筋肉があり、それが成
長を遅らせているのではないかを思われるほどである。もうムキムキである。
剣士と言われた男は無表情でプリンセスの脇に立っていた。年は二十代前半だろうか、髪は短く
黒い。顔はなかなかに男前であるが、無表情故だろうか、怖いという雰囲気がある。
装備は鎧を着けていない以外は普通の装備である、そもそも狩場に鎧を着けてこないことは異常だが。
一メートル九十はあろうかという長身で、背の低いそのプリンセスと並ぶと巨人のように見える。
「あんたたちは、うおっ」
突然隣にモンスターが沸いた。二人に気を取られていたため一瞬気づくのが遅れ、その一撃をま
ともに受けてしまう。倒れた瞬間、そのモンスターは止めを刺すためその腕を俺に、っと味方
のランサーの一撃でモンスターは倒れる。何とか助かったか。しゅん、ぱこん。ん? なんだ?
「くっ、なんだ? これは赤ポ?」
ランサーの頭に直撃したその赤ポは音を立てて割れた。ランサーの頭に触れた右手は血で染まっていた。
ひゅゅゅゅゅゅゅ。ばこここここここぉぉぉ、ばたばたばたばたばた。
突如降り注ぐ赤ポの攻撃、それはマシンアロー以上の速度で降り注ぎ、次々とPTのメンバーを殲滅した。
「俺だけが助かったのか?」
瀕死のダメージを受けたPTの面々は町にワープする。残った赤い液体がまるでここが多くの人間
が惨殺された現場のように思わせた。
俺は立ち上がる。そして赤ポが飛んできた方を見た。
「また、間に合わなかった」
「大丈夫です、彼らは町にワープしましたから」
そこにいたのは先のプリンセスと剣士だ。プリンセスの手には赤ポの壷が。
「お前らか、お前らがやったのか」
俺は剣士に近づき、その胸倉を掴んだ。
「なにがだ?」
「赤ポで攻撃してきたのはお前らかって聞いてるんだっ」
「違います、私はただ回復しようとしただけです」
プリンセスが俺を止めようというのか俺の鎧をつかむ、っお、ばご、どがん。そういえば筋肉ムキムキ
だったっけ、俺は惨めにも片手で叩きつけられた。
「なんだと?」
助ける? 俺はとりあえず立ち上がる。プリンセスは今にも泣きそうな表情でいう。剣士は無表情
のままだ。
「ポーション投げだ」
剣士は俺に掴まれた事等なかったようにただ事実を伝えるように言った。
「ポーション投げだと?」
聞いたことがある、プリンセスの回復技だ。確かポーションを蒸気状態にして振りまくとか。
「……って、何でそのまま投げてんだよ、蒸気状態にして振りまくんだろ」
俺はプリンセスに詰め寄る、プリンセスは驚いたように俺を見て、そして剣士を見る。
「そうだったんですか?」
「そうだったらしいな」
剣士も多少驚いたように言った。
………………。

終わり

352 名前:名無しさん 投稿日:2006/06/16(金) 17:54:16 [ vAnUR8AI ]
http://heki.s54.xrea.com/item_asobi2.php?grfc=212&name=%83X%83e%83B%81%5B%83%8B%83%8A%83%8A%83B&u=1&el1=%8DU%8C%82%97%CD%81%40%7B%7B80%7E99%7D%7D%81i%7B%7B1.00%7D%7D%95b%81j&tx1=%82%C6%82%A0%82%E9%83M%83%8B%83h%82%CC%83%7D%83X%83%5E%81%5B%82%AA%8F%F1%90E%90l%82%C9%93%C1%92%8D%82%C5%8D%EC%82%E7%82%B9%82%BD%8D%7C%82%CC%8F%F1&lv1=%E1%92%E1%9B%81%40%5B%5B300%5D%5D&jo1=%5B%5B%94%AD%92%8D%82%B5%82%BD%96%7B%90l%5D%5D&el2=%8E%CB%92%F6%8B%97%97%A3%81%40%7B%7B90%7D%7D&tx2=%8F%F1%82%C9%82%A0%82%E9%82%DC%82%B6%82%AB%94j%89%F3%97%CD%82%F0%8E%9D%82%C2%82%AA%81A%82%BB%82%CC%95%AA%8Fd%97%CA%82%AA%92%CA%8F%ED%82%CC%8F%F1%82%C6%82%CD%94%E4%8Ar%82%C9%82%C8%82%E7%82%C8%82%A2%82%D9%82%C7%8Fd%82%A2%81B&el3=%83_%83%81%81%5B%83W%81%40%2B%7B%7B250%7D%7D%81%93&tx3=%82%BE%82%AA%81A%94%AD%92%8D%82%B5%82%BD%96%7B%90l%82%A9%82%E7%82%B7%82%EA%82%CE%82%B1%82%CC%8Fd%82%B3%82%C5%82%E0%93%C1%82%C9%96%E2%91%E8%82%AA%96%B3%82%A2%82%E7%82%B5%82%A2%81B&el4=%8C%88%92%E8%91%C5%94%AD%90%B6%8Am%97%A6%81%40%2B%7B%7B100%7D%7D%81%93&el5=%96%BD%92%86%97%A6%81%40%2B%7B%7B100%7D%7D%81%93&el6=%8DU%8C%82%91%AC%93x%81%40%2B%7B%7B150%7D%7D%81%93&

前スレにあったあのお方の杖を…
ごめんなさい、死にます

353 名前:ゆずみかん 投稿日:2006/06/18(日) 12:55:54 [ lzLqKbOs ]
大陸の南東に位置するロマ村。そこには数々の優秀なビーストテイマーやサマナーの出身の地である。
その中でも飛び抜けて優秀な才能を持つ2人の夫婦がいた。
男の方の名はライアス=ノックス、銀色の髪の毛、整った容姿、がたいのいい体。職業は剣士で、
生まれつきの才能でテイマーの能力も持っている。ペットは人間に付くには珍しいエルフ暗殺者の
スナイ(冒険の途中で出会い戦いの中で男の友情というものが芽生え相棒になったらしい)
一方女の方の名はリリア=ノックス、綺麗な金色の髪の毛、整った容姿、細身の体。職業はテイマー/サマナーでペットは2匹のファミリアを連れている。
8年前この2人の間に1人の男の子が生まれ、その2年後に女の子が生まれた。
それから6年後―――今はその子どもも8歳、6歳と特に何の問題もなく健康に育った。
誰でさえこのような平和な日々で一生を過ごせると信じていた………



「父ちゃーん!たまには遊んでよお〜」「遊んでよぉ〜」
まず始めに声を弾ませて父親に遊ぼうとねだるのはライアス達の長男ルイス=ノックス、そしてルイスに続いてねだるのは長女エミル=ノックスである。
「なんだ朝っぱらから…今日はダメ〜、畑仕事するから」
そう朝食のパンを頬張りながらライアスが面倒臭そうに言う。
「えぇ〜父ちゃんいつもそればっかり!」「ばっかり!」
「そんなこと言ってもなぁ、ただえさえ家は貧乏なんだ。それに良く食うやつが俺を含めて3人…ちょっとは母さん見習って食う量減らせよ」
そうこのロマ村では金など必要ないのだ。いや、金がほとんどないのだ。ここは村長でさえ金をほとんど持っていない。
したがって生活方法は自給自足になる。
「まぁまぁ、たまには遊んであげなさいな。今日は私1人でやりますから」
そう言いながらおかずの野菜を持ってきたのはルイス達の母親、リリア=ノックスである。
「はぁ〜しょうがないなぁ…じゃあ午後から遊んでやるよ」
ライアスが面倒臭そうに言う。
『やったー!!』
珍しく2人声を合わせて言う。
「すまんな母さん…」
「いえいえ」
さすがのライアスもリリアには顔が上がらないみたいだ。
「よーしお前ら!何して遊びたい?」
「えーと、えーと…そうだな…じゃあ冒険ごっこ!」
ルイスが声を張り上げながら言う。
「そうか。エミルは何かしたいのあるか?」
「私も…それでいい」
今更言うのも何だがルイスはどこにでもうそうなヤンチャ坊主である。その対照的にエミルは人見知りが
激しく控え目である。顔はルイスはライアスの、エミルはリリアの血を引いているようだ。
「んー…じゃあ久しぶりに村の外行ってみるか」
『やったー!』
「よし!そうと決まったらお前ら今のうちに準備…」
「たたた、大変です!!!!!!!!!!!」

354 名前:ゆずみかん 投稿日:2006/06/18(日) 13:33:13 [ q8nMzR1g ]
『!!!!!!!!』
ライアスが言いかけた途端、村の住民が大声を上げた。
「どうした!?」
ライアスがその村人に言い寄る。続いて他の村人も出てくる。
「モモモ、モンスターが!!村の近くに!!」
「まぁまぁ…まずは落ち着きなされ」
「村長…」
その村長と呼ばれた男は大きなローブを身にまとい、髪は白髪混じりで短く、長い髭を垂らしている。
年はおそらく40-50前後だろう。
「さて…何がどうしたのかな?落ち着いて言ってみなされ」
「それが………」
なにやらこの村の近くに大量のモンスターの群れが近付いているらしい。それにもうかなり近くまで寄ってきているそうだ。
「うむ…大変なことになったなぁ…それに今までこの村に近づこうともしなかったモンスターがなぜ今更…
仕方がない。君、このことを村中の住民に報告してくれんか?そして戦える者は戦闘の準備じゃ。そしてその内の半分は村の護衛をするよう頼んできてくれ。
大至急じゃ!」
「は・はい!!」
村人はそう言うと一目散に駆け出した。
「すまんがライアス。君はモンスターの方に回ってくれないか?それとリリアもじゃ。恥ずかしい話だが
君らがいないと話にならないのでな…」
「やっぱりそう来ると思いましたよ。了解!…すまんな2人とも。遊ぶのは明日だ」
『絶対だよ!』
「ああ!」
そう言うとライアスも駆け出した。いつもやる気のなさそうな顔をしているライアスも今は違った。相当一大事らしい。
この村ではライアスもリリアも村長も生まれる前に強大なモンスター達と村を上げて戦ったらしい。
結果はなんとかロマ村の優秀なテイマーやサマナー達の活躍もありモンスター達を追い払った。しかしその被害は少なくなかった。
そしてその中心であった巨大なモンスターを近くの洞窟で封印したらしい。
今でもそれはどこかに隠されているそうだ。それからというもの、モンスターは近付かなくなった。
「…………君達は、すぐに避難したまえ」
村長は前村長から聞いた代々伝わっているその話を思い出していたが、何が起こったのか
よく分からずに戸惑っていたルイス達を見てふと我に返った。
「でも……父ちゃんたちが…」
「大丈夫じゃ。ああ見えてもライアス達は村一番の戦士じゃ。心配は無用じゃ」
村長はその優しそうな声でルイス達に言った。
『う…うん!』
「それじゃあわしと一緒に行こう」

プロローグ1―親子 Fin

355 名前:ゆずみかん 投稿日:2006/06/18(日) 13:37:37 [ 2AEowAD2 ]
PCでどうしても書き込めないので携帯からの書き込みになりました・・
なので誤字などが良くあるかもしれませんが許してください・・・
それにこんなくだらない文章載せてしまって後から後悔・・・(笑)みなさんの腕が羨ましいです。
いちようプロローグみたいなものですがものすごく長くなりそうな予感&本編考えてませんorz

356 名前:かーど 投稿日:2006/06/18(日) 17:27:54 [ qhlN9RpY ]
涙で視界が歪められても、息を切らしながら追い掛けるヴィジョンが消えない。




ここからは戦場だよ。そして君はもう脇役なんだよ。

もう一人の自分が、そう話し掛けてくるような暗示。
ここでは私は、主役じゃない。


先輩の大きな背中を、まじまじと見つめる。自分が小さいと自覚した。

風は程よく吹いていて、空気は春先のように柔らかく、重い。
太陽は照りつけるが暑くない、ここは競技場、隔離施設、墓地、復讐の戦場。
名を、クロスカウンター、崖と湖と気持ち程度の植物と小屋が存在する場所。


脳内へ直接叩き込まれるような開始の合図に、火、光、風、様々な魔法が唱えられそれぞれが元素の力を授かる。



「進軍」


マスターの言葉を皮切りにし、待ってましたとばかりに総勢20名超過の軍は動きだした。
最後尾につき、背中を追い掛ける。


足音が響く中、この時間が無限とも思われる緊張から来る錯覚。
しかし途端に空から、凍てつき身体を引き裂く矢が降り注ぐ。


敵襲だ。味方の中で視線が何重にも交差される。

私は素早くその場を離れ、一番前へ。目当ては混戦の中で活躍する事じゃない。




前には、彼女が居た。


四方八方へ、素早く機敏に飛び回り、敵兵を薙ぎ倒す。
白く光る刃に、研ぎ澄まされた眼光、その強さ、全てが想像以上だった。
この人が、自分と同じ武器を手にしているのか、とても信じがたい光景。
自然と、槍を持つ手に汗が滲む。

そうして、惚けている自分の後方から、自軍は次々と援護に駆け付けてきた。


ここは戦場だと自分自身を叩きなおすが、気がつくと、何故か涙が流れていた。
必死で、その姿を追った。周りの残骸に足をもつらせて転んだが、すぐに立ち上がる。
息が続かない、頭が回らない、汗が、涙が溢れて止まらない。
弱いだの、小さいだの、足手まといとか、そんな言葉しか浮かんでこない。


痛い。
振り向いた。





「遊びじゃないゲームでしたよ、やっぱりやられたし」

明るい口調だけれど、それはわざとで、凄く心配した電話の相手を心配させないためだ。

「でも、強くなって戻りますよ、しっかり勉強してきますね」

こっちの人には迷惑しかかけられないけどね。これは心の中の声。

受話器の向こうからは、分かった、期待して待ってるから、がんばれ。との事。
この応援は、心から言っているのだろうか。つい勘繰ってしまう癖がある。身内を信じられない自分に、少し自嘲した。

時計を確認し、そろそろ会議の時間だと告げて、会話は終了。

カチン、と受話器を置いて、部屋に向かうが、自然と足取りが重くなる。だって自分は今回一つも良い所が無かった。
それは実力以上の場所にいるのだから当たり前なのだろうけど、それでもあの様は無いだろう…。
頭を抱えたくなったが、ここは開き直って、修行するべきだ。
元々ネガティブな性格だけど、そんな我侭でギルド全体の士気を下げるわけにもいかない。

長いため息で、次への期待を取り戻す事にした。





---------
一応区切り線で、新参…というか気が向いたときにまたお邪魔させていただく気でいます。
誤字脱字あっても見逃して下さい。

357 名前:かーど 投稿日:2006/06/18(日) 17:32:47 [ qhlN9RpY ]
連投申し訳ないですが…表現直しを…orz

>凄く心配した電話の相手を心配させないためだ。
の部分を、

凄く心配していた電話の相手を、安心させるためだ。

に変更で。。。明らかに蛇足ですが、今度こそまた、ということで。

358 名前:南東方不勝 投稿日:2006/06/18(日) 21:52:31 [ .ilUk8Ls ]
>>97,>>113-114,>>138,>>143,>>149,>>166,>>176,>>218-219,>>227,>>246,>>261,>>298,>>337-338
閑話 >>167

広場でジャックさんと財布をスッた犯人…ミシェルさんと合流した後、彼女の要望に応えるために僕の実家に向かいました。
「へぇ…。アンタ、ここの宿屋の人だったんだ。わざわざ、冒険者やらなくても稼げるじゃない」
「貴女からすればその選択が最良でしょうね…」
「なんか棘のある言い方ねぇ…。自業自得だけどちょっとムカつく」
「…。人に激突した挙句、財布を取るような人にこれ以上の言葉がありますか?」
「とりあえず、中に入ってから罵り合え」
険悪な雰囲気になりつつあった僕達の間にジャックさんの呆れた声が割り込みます。
確かに、宿の入り口の前で言い争いをしてしまっていたら迷惑になってしまいます。
「えぇ…。そうですね、ここで言い争ったって何も得るものはありませんからね」
「アンタが望むなら、アタシはいつでも受けて立つわよ。ここでやり合わないってことは同じだけど」
彼女の挑発を無視して、ドアノブに手をかけ扉を開きます。
開いたドアから僕達の目に飛び込んできた光景は

ゴガシャァァァァァ!ズドドドドドドドド!!ガガガガガガガ!!!

「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」
宿屋の中とは思えない、3VS1の戦場でした。

「なんだぁ、この騒ぎは?」
宿屋のドアを開けたら、そこは爆音響く激しき戦場。
攻め手は3名。
「お待ちなさい、このスケベ!」一人は特注の杖を振るい、
「この…、エロガッパ!!」一人は精密すぎる照準で魔弾を打ち放ち、
「殺す、この出歯亀は絶対殺したる!!!」一人は己の爪で執拗に斬撃を繰り出していた。
それに対する守り手は一人、「不沈艦」の異名を持つ頑健な剣士。

ガッガッガッ!ドスドスドス!キィンキィンキィン!

「うおわぁぁぁぁぁぁぁ!!!!????落ち着いてくださいって、お嬢さん方!?」
振り下ろされる杖と爪を盾と剣で弾き、迫り来る魔弾はあえてその身に受けていた。
「まぁ、避けたら壁に穴が空くもんなぁ…」
ここまでの集中砲火を受けて平気なあいつの硬さに脱帽だ。
「えぇっと…。これって、どういう状況?」
ミシェルが一番近くにいた俺に問いかける。
「あぁ、そうだなぁ…」
執拗に攻め立てる3人組の顔色は赤みを帯び、頭髪(一名は体毛)は水気を帯びて灯りを柔らかく反射している。
ギャラリーの声援、特に女の声援はリリィ達の方に向けられている。
対する男達は一応、リリィ達に声援を送っているようだがその場凌ぎの感が拭えない。
むしろ、彼らの瞳はダニエルの鞄へと向けられている。
よくよく見ればリリィ達も、隙有らば奪わん、とばかりの勢いで鞄を狙っている。
「そうだな、大方ダニエルが…」
俺がミシェルに答えを教える前に、
「騒がしいな、何かあったのか?」
「うわぁ、スティールリリィ振り回してるよ…」
今後の戦線を左右する二人が姿を現した。

359 名前:南東方不勝 投稿日:2006/06/18(日) 22:32:12 [ .ilUk8Ls ]
>>358
「おぉ…、ヒースにギル。風呂上りか?」
「ジャック、今戻ってきたのか」
「兄貴おかえり〜。でも、もうとっくに飯の時間すぎてるよ。リリスも怒ってたし…」
ヒースは頭をタオルでガシガシと拭きながら、ギルは手に牛乳を持ったまま俺に応える。
「で、この騒ぎは何だ?アニーがあそこまで怒る事は、そうはないだろう?」
「リリスの方も、あんな勢いであの杖を振り回すのは1週間に1,2回くらいだよ?」
いや、むしろレナの方に反応してやってくれ。自分の女が心配なのは分るが…。
「あ〜、ヒースさんにギル君。暢気に風呂上りの余韻を楽しんでる場合じゃないですよ〜」
ゆっくりとした口調で、ギルドメンバーのランサーが二人に話しかける。
「「なにがあった(あったんだい)?」」
「え〜っと、ダニエル君がマスター達のお風呂を覗いたんですよ〜。しかも〜、カメラ持参で」
「「!!!」」
ランサーの言葉を聞いた二人から、なにやら非常に冷たい空気が流れ始める。
「二人ともどうしたの?」
二人の尋常じゃない様子にランサーが不安げに声をかける。
「ふふふふふ。そうかぁ、覗いたんだぁ…。人の彼女の裸を見たんだぁ…」
「あ、あのギル君?」
「心配ないよジェージェーさん。うん、ノープロブレム」
実に晴れやかな笑顔で答えるギル。だが、その手に持っているブラックソーンはなんだ?
「ジェージェー嬢…」
「は、はいぃ!?」
いつもより低いヒースの声色にびっくりしながら彼女は応える。
「別にあの低脳な剣士を主の下に送っても構わないのだろう?」
「ふ、ふぇ!?た、確かに覗きはいけないと思いますけどぉ…」
「あぁ、それだけで充分だよ。行くぞ、ギル」
「行かれますか、ヒースの旦那」
かくして、漢の浪漫を実行した者が耐える戦場に二人の修羅が参戦した。
「行くぞ」
「えっ、まだ見ててもいいでしょう?ていうか、アタシは見たい!」
「見てても結末は見えてるだろ」
むぅ、と不満そうに頬を膨らませながらミシェルが俺の後についてくる。
「とりあえず奥の食堂にでも行くぞ。ゲイル、先に食堂に行ってるぞ!」
分りました、というゲイルの声を背に食堂へと続く扉を開け、中に入る。
扉が閉まる直前

「いや、ちょ…ま!?ホールドパーソンは勘弁してください!防御できないじゃないっすか!?
え、防御したら主の下に送れないだろうって?ははは、冗談っすよね…?OK、話し合おう!
だからギル、その物騒な手裏剣と構えを解いて…。ほら、お嬢さん方も話し合いましょうよ?
………。すいません!俺が悪うございました。だから、このまま緊縛で袋叩きだけは……




ぎにゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!」

360 名前:闇鍋 ◆BJrn0PVLEM 投稿日:2006/06/19(月) 20:37:19 [ zK.vW4FU ]
自分の駄文がいかがなものか、ほんの少し投下しようと思います。
それでは、スレ汚しですがどうぞ。

「クエストPTはスリリング」(先行版)

 ・・ここに来たのは随分久しぶりになる。相変わらずこのすえた臭いは俺の鼻に容赦がない。
もっとも、ここでまともに狩りをしていたところで経験値が稼げるわけでもなく、
ほんの気まぐれ──そう、ほんの気まぐれでフラリと寄ってみただけだった。
 普段は呪いの墓(あそこも死臭が酷いもんだ)で狩りをしているせいか、
こっちのネクロマンサーは驚くほどヤワい。俺も経験が浅かった頃はこいつに
悪戦苦闘したんだが‥少しは成長出来たんだなぁと自分を誉めてやる。
 そんな日を思い出しながらしばらくネクロマンサーとじゃれていると、背後に人の気配がした。
若葉紋章こそ無いものの、ネクロマンサー(呪いの墓の方)の一発でウェルダンに
なれそうなシーフと、いかにも「私は強運よ」と言わんばかりのテイマーの二人組。
またクレブのオッサンが人を寄越したんだろうか?
「すいません、ネクロマンサーと戦っていますか?」自称強運テイマー(のような雰囲気)の、
予想に反して丁寧な態度に少し感心し俺は答えた。
「ネクロマンサーを懲らしめてくれってクレブのジィさんに言われたのかい?」
シーフが頷く。よく見ると二人とも随分ボロボロな状態だ。シーフの応急処置で
誤魔化してはいるが、あまり余裕は無さそうだ。
「あのオヤジも人が悪いな‥」苦笑して俺は狩場を二人に譲る。
元々ここにいるべきではない俺がいるのが変な話なのだ。
たまには他職の立ち回りを見ておこうと壁の隅でくつろいでいると、
二人はネクロマンサー一体にすらも押されているではないか。
 そうこうしているうちに盾役のケルビーが倒され、骸骨戦士を食い止めているシーフの背後に
ネクロマンサーがにじり寄る。テイマーがそれに気付く。
「危ない!」シーフが振り返る。クロマンサーの両手が火の玉を成形してゆく。
その瞬間、なんとテイマーがネクロマンサーの横っ面に笛で殴りだしたではないか。

361 名前:復讐の女神 投稿日:2006/06/20(火) 21:26:40 [ /ywm0G8I ]
「まっていたよ、ジェシ」
満面の笑みで迎えられてしまった。
それも、門を入ってすぐの場所で。
回れ右して逃げ帰りたい気持ちをぐっと押さえ込み、ジェシはなんとか笑みを浮かべる。
「はい、報告書。それじゃ、確かに渡したわ」
ジェシは報告書をボイルに無理やり渡すと、フェリルの腕を取り。
「それでは、次の依頼がありますので」
「お、おい…いいのかい、ジェシ」
ジェシのあまりの反応に、さすがのフェリルもたじろいでいる。
「そうそう、そんなに早く行っちゃうと、後悔するよ? うん、間違いない」
その一言。
その一言で、ジェシはボイルにつかまることになってしまった。
「な、なにを後悔するのかしら?」
ボイルは、ジェシには嘘はつかない。
今まで、出会ってから一度として嘘をつかれたことが無い。
であるならば、今の一言は絶対に無視してはならないのだ。
「おや、そこにいらっしゃるのはフェリル司祭ではありませんか。あぁ、これはお客人に失礼なことを。
どうぞ、屋敷にお入りください。すぐにお茶の用意をさせます」
「ですの!」
ボイルの後ろから、ピョコンとビシュカが現れる。
あぁ、兄妹仲の良いこと。
しかし、今のジェシには二人は悪魔にすら見えるのだから不思議だ。
「さぁさぁ、お入りください。すぐに使用人に用意させます」
ボイルが先にたち、ビシュカに腕をとられ。
ジェシとフェリルは二人にお茶会に招待されるのだった。

362 名前:復讐の女神 投稿日:2006/06/20(火) 21:29:40 [ /ywm0G8I ]
「で、後悔ってなんなのよ?」
場所はゾルフィード家テラス。
白亜のテーブルにイスが4つ。
そこに座るのは、先ほどの4人。
ボイルの後ろに専属メイドが控え、ビシュカを睨んでいるのがまたなんとも居づらいものである。
「これ、ジェシ。ボイル君に失礼だぞ」
「いいのですよ、フェリル司祭。他人行儀にされるほうが、私には悲しい」
関心しているのだろうか、フェリルは笑顔で頷いている。
「ビシュカ、あなたは知ってる?」
「いえ、知りませんの。私も初耳でしたので…」
じろりと、ジェシはボイルを睨む。
「ふむ。ところで、ジェシはこれからど───」
「あなたには関係ないわ」
ボイルの声をさえぎり、ジェシは言葉を出した。
冷たい声だ。
視線は真剣そのものであり、反論は許さないとその雰囲気が物語っている。
ジェシを睨んでいたメイドは、顔色を真っ青にしてしまっている。
手が震えているのは、ジェシが出す殺気の欠片を受けているからだろう。
「そう睨まないでくれ、メイドが怖がっている。わかっているとも、君の仕事に口出しはしないさ。でもね、コレは必要な
確認なんだよ。わかってくれ」
ボイルがすまなそうにそう言うと、ジェシはゆっくりと殺気を抑えていく。
それにともない、緊張が解けたメイドが倒れそうになる。
「おっと」
一瞬早くボイルが立ち上がり、メイドを支えた。
「すまなかったね、下がって休みなさい」
メイドがなんとか頷き、テラスから去る。
それを見送り、ボイルはもう一度イスに腰掛けた。
「ま、言いたくないならいい。おそらく、フェリル司祭からのものだろう? 私のところにも、届いている」
「…なぜ?」
ジェシは気持ちを落ち着けるため、軽くカップに口を付ける
先ほどのメイドが入れた紅茶だ。

363 名前:復讐の女神 投稿日:2006/06/20(火) 21:30:33 [ /ywm0G8I ]
ほのかに広がる香りが、気持ちを落ち着けてくれる。
おいしい…ジェシは、そう思った。
「ふふ、フェリル司祭は話していなかったか。もしや、今回の火力はジェシかな?」
「うむ、彼は別の用事があるようでな」
「…どういうこと?」
「ジェシは、知らなかったようだね。実は、私とフェリル司祭は何度か一緒に、外に仕事に出ているんだよ」
ボイルが楽しそうに笑い、ジェシはフェリルを睨む。
「別に、隠していたわけでは無いぞ。聞かれなかったからな」
フェリルは、堂々と言い放った。
確かに、ジェシはフェリルに、最近の冒険について聞いたことが無い。
いつも、昔の話か自分の冒険の話だ。
「お姉さま、聞いてください! お兄様達、私は絶対に連れて行ってくれないんですのよ」
ビシュカは、テーブルに勢い良く手を付いて立ち上がる。
その表情は、いかにも私怒っていますという顔だ。
「ビシュカ、落ち着きなさいな。そもそも、あなた戦う力が無いでしょう」
「そうだぞ、ビシュカ。そういうことは、お前のナイトに頼むんだな」
「彼とだと、すぐ外のお花畑が限界ですのよ? 私をばかにしてますわ!」
ビシュカが冒険に憧れていることを、ここにいる全員が知っている。
そして、ラディルに頼みこんでは、いつも嬉しそうに付いて行くことを、ここにいる全員が知っている。
「ねぇ、お兄様。今回は───」
「ダメだ」
「でしょうね…」
ダメといわれた割に落ち込んでいないのは、もともと帰ってくる答えが分かっていたからだろう。
残りの二人に助け舟を期待していないのは、答えが同じ事を理解しているからか。
ビシュカは大きなため息をつくと、イスに座りなおした。
「話が脱線してしまったな、元に戻そう。ともかく、今度の冒険は一緒になる。よろしく頼むよ、ジェシ」
「フェリル司祭、残念だけど今回の依頼は降りさせてもらうわ」
「なぜだね? 理由を聞いておきたい。君に限って、ボイル君と一緒だからというわけではあるまい」
ジェシは、プロだ。
仕事に関して、私情を挟んだりはしない。

364 名前:復讐の女神 投稿日:2006/06/20(火) 21:31:28 [ /ywm0G8I ]
「気に入らないのは、私とフェリル司祭の二人と思わせるような説明だったこと」
「ふむ、なるほど。それについては、私にも言い分がある。聞くが、私は君に依頼の詳しい内容を話したかね?
まだだろう? そもそも、依頼の内容すら話していない。私は、君に依頼をしたいと言っただけ。答えはまだ
もらっていないよ」
「あ…」
思い出す。
たしかに、ジェシは依頼があると聞いただけだ。
依頼を受けるとも、その内容もまだである。
「たしかに、そうね。ごめんなさい、少し興奮していたようだわ」
「では、依頼内容を話そうか。受けるかどうかはそれからでいい」
ジェシが頷くのを確認して、フェリルは話し始めた。

 モンスターの襲撃が、あるかもしれない。
 場所は、ここから5日の場所にある村だ。
 三日前の夜、犬がさわがしいので見に行ってみると、森の中から複数の動く気配があった。
 その場には、ゴブリンの毛と木に切り傷が見当たったという。

「というわけで、調査及び危険と判断したら駆除というわけだ」
「……そう」
「気が進まないなら、私とフェリル司祭で行くが?」
一通りの説明を受け、ジェシは考えた。
状況、戦力、報酬。
「ねぇ、なぜあなたが行くの?」
ジェシの目は、ボイルに向いていた。
彼は魔術を納めていると、聞いたことがある。
それが本当なら、不思議な話ではない。
フェリル司祭は強力な癒しの力を持っているし、魔術は使い方しだいでは一軍とすら対等に渡り合う。
「別に、他意はないんだがな。ただ、こう事務続きだと肩がこってね。たまにこうしてフェリル司祭と一緒に
冒険に出かけるのさ」
「………」
ジェシは、ボイルの目を見続ける。
そこに、嘘はない。
「いいでしょう、私も行きます」

365 名前:ゆずみかん 投稿日:2006/06/20(火) 23:55:35 [ NTDZCwrY ]
その頃村の出口付近辺りでは20人近くのテイマーやサマナーが集まっていた。ペットや召還獣も合わせると数はその倍以上になるだろう。
「よし!みんな!準備はいいか?そろそろ行くぞ!」
『おおー!』
そう言うなりロマの兵達は村を出てモンスター達がいるところへ向かった。それから5分ほど歩くとモンスターの大群を発見した。
「おーおーいっぱいいるねぇ」
ライアスは余裕の表情を浮かべながら言う。軽く100匹は越すだろう。
「もう少し緊張感を持ったら?」
リリアが厳しく指摘する。
「へいへい、じゃ…行くぞ!」
そう言うと、ライアスは大量のモンスターの中に飛込んだ。ライアスは村で唯一の剣の使い手であった。
「はぁぁぁぁ!!」
そう気合いを入れながらライアスはズタズタとモンスターを切り捨てていく。片手の剣とは思えないほどの大きな剣だ。
モンスターもすかさず反撃するも、これもまた大きな盾によって防がれる。
「今のうちよ!」
リリアはライアスが突っ込むと同時に召還獣を召還した。他の兵達も次々と召還獣やペットを本から呼び出した。
「リム、リク、行きなさい!」
リリアはペットのファミリアに命令し、ペット達も敵陣に飛込む。続いてリリアのケルビーとウィンディも飛込んだ。
そして他の兵達のペットや召還獣達もそれに合わせて突っ込んだ。
「ぇあ!」
ライアスはそう言うと大きな盾から竜巻を召還した。その竜巻は次々と敵を飲み込む。
ライアスのペットのスナイも急所を突く攻撃で一撃で敵を倒していく。モンスター達は不意を突かれたのもあり、
既にその数は半分以下になっていた。
「へへ、大したことなかったな」
勝利を確信したライアスは、得意げに余裕の表情を浮かべる。しかし、その瞬間、敵陣の少し上空に
空間の切目が現れる。
「!!!なんだ?!!」
そう言った刹那、そこからものすごい光とともに激しい閃光が放たれた。
その光はロマまで届いた…

366 名前:ゆずみかん 投稿日:2006/06/21(水) 00:24:02 [ SwvNQujo ]
「な、なんだぁー?」
「何が起こった!!」
「何よこの光…」
その頃ロマ村の集会所では、閃光とも言える光を見てパニックに陥っていた。
(これはライアス達の方から…しかしこのようなことはライアス達でもできぬはずじゃ…なら誰が…)
村長はぶつぶつと独り言を言っていた。
「と、とぉちゃん…かぁちゃん…」
ルイスが取り付かれたようにふらふら歩き出した。そして
「父ちゃん!!母ちゃん!!」
突然ルイスは集会所を飛び出した。
「ま、待って!」
続いてエミルも飛び出す。
「おい!待ちなさい!2人とも!」
集会所にいる村人が叫んで止めようとしたが止まる気配がない。
「くっ…君達はここで待機していなさい。ここはわしが行く。いざとなったら君らがこの村を守るのじゃ!」
村長はそう言い残し飛び出すように集会所を出ていった。
(きっとルイス達はあの場所へ…危険じゃ…早く止めねば)
「はぁっはぁっ…」
ルイスは一度も止まらずに走ってきたので2,3分で着いた。すると80メートルくらい遠くから
「待ってぇ〜…お兄ちゃん…」
エミルがヘロヘロになりながら近づいてきた。なんとかついてきたらしい。
「エ、エミル!!!何でお前までついてくるんだよ?」
「だって…お母さん達が…」
エミルは既に目に涙を溜めている。
「しょうがないなぁ…一緒に行くぞ」
ルイスは頭をポリポリ掻きながら言った。
「多分もう少しだ。血の臭いがプンプンする」
ルイスは生まれつき常人より嗅覚が優れているらしい。
「あっちだ!」
ルイスはそう言うと駆け出した。エミルもついていく。そして遂にその場所に辿り着いた。
『ぇ…………………………?』
2人はこの世とは思えない光景を目にした。―――悪夢 Fin

調子に乗ってまた投稿させていただきました。携帯からなので軽く40分は…
いちよう続きます。あと7,8話は続きそうです…いちよう前書きですが(汗)

367 名前:FAT 投稿日:2006/06/21(水) 18:35:32 [ 3AJaFvmw ]
『水面鏡』

キャラ紹介>>21
―田舎の朝―1>>22、2>>25-26 
―子供と子供―1>>28-29、2>>36、3>>40-42、4>>57-59、5>>98-99、6>>105-107
―双子と娘と―1>>173-174、2>>183、3>>185、4>>212
―境界線―1>>216、2>>228、3>>229、4>>269、5>>270
―エイミー=ベルツリー―1>>294、2>>295-296

―神を冒涜したもの―

―1―

 ラスはまた仮面を被りなおした。表情はウェスタンハットの陰に隠れ、レルロンドとラン
クーイはどんな角度からもその顔を見ることは出来ない。二人は出会う以前よりもラスが遠
い存在になってしまった気がしていた。
 あまり会話をしないのは変わらない。前からのことなのに今はそれが重く、淀んだ空が落
ちてきそうに灰色の空気を作り出している。あてもなく何となく神聖都市アウグスタを訪れ
た三人は、ほとんど無言のまま宿をとり、夜を迎えた。
 闇の中を流れるブンド川。月も星もない暗黒の中をとんとんと流れ、流れのぶつかる音
がそこに川があるという証明をする。聴覚で見る川の姿は清かった。
 空の頭でぼぅっと窓から眺めていたレルロンドは小さな松明の火で現実に戻り、映し出
された二つの影はラスとランクーイのものだと思った。気がつけば、レルロンドは灯り火
の近くの葡萄畑の中に声を殺して潜んでいた。
「……師匠、今、何て……」
 ランクーイが泣きそうに目と口とをぴくぴく動かす。松明の火で顔色はごちゃまぜの色
になっていて何だかレルロンドには分からなかった。
「そういうことだ。俺はどっちかっていうとお前に近いし、何より、俺は自分が嫌になっ
たんだ。俺が何で一人で旅なんかしてたか、お前等に言ってなかったよな。俺の家はさ、
有名なエンチャット屋なんだ。知ってるだろ? 魔法の力が物に付くっていうあれさ。…
で、俺はそこの跡取りなんだが、このとおり異常者だ。まだ七歳だぜ? なのに何だよこ
の老け方。体も魔力も並みの三倍くらいのスピードで育った。歩けるようになったのも馬
鹿みたいに早かった。でも……」
 レルロンドが唾を飲んだ。
「喋れなかったんだ、ずっと。……分かるか? 俺の体は三倍で時を駆ける、でも、脳は
そうじゃない、普通なんだ」
 レルロンドにはラスの言わんとすることが伝わった。しかし、ランクーイは、
「それでも師匠は俺たちより利口じゃないか。とても七歳には思えないぜ」
「ああ、そうだな。きっと、本来の姿のまま成長していたらこんなに不安定にもならなか
ったかも知れないな」
 とラスはウェスタンハットを脱ぎ、髪を鷲掴みにして引っ張るとそれがカツラであった
ことが知れた。晒された頭皮には、太く縫った後が前頭部から後頭部まで一直線にあり、
悲惨だった。
「これが何の傷かわかるか…? これはな、手術の痕なんだ。俺の脳をいじくりまわすた
めのな」
 眼前で見たランクーイ同様、草陰のレルロンドも思考が止まった。ラスの淡々とした口
調が重い。
「俺の異常に気付いていた親戚たちはこのままでは俺がおかしくなると思ったんだろう、
体と脳のバランスをとるために頭の中に仕掛けを埋め込んだのさ」
 爪の先ほどの小さな石粒を拾って、
「これくらいの精石が俺の脳をせかしてるんだ。母さんの魔法がいっぱい詰まってて、七
歳の性格を殺してる。今は二十一歳の俺が作られてて、俺はそれを演じるだけさ。俺が旅
をしてるのは完全に七歳の性格を殺すため、完全な二十一歳になるためさ」
「……師匠は母親を憎んでいるのか?」
 ラスは少し苦そうな顔をして、
「今の状況には不満さ、不安定すぎるからな。でも、もしこの手術を施してなかったら俺
は魔力の抑制が効かず、取り返しのつかない事態を幾つも起こしてしまったかも知れない。
仕方ないと思うしかないさ」
 本当にそう思っているのか、ラスは最後に笑みを見せた。曇りのない、今の天候に不似
合いの快活な笑顔であった。
「師匠! 俺、何の役にも立てないけど、あんたの気持ち、ありがたく受けさせてもらう
ぜ!」
「ああ、この間みたいに不安定になっちまった時は頼りにしてるぜ。……じゃあ早速、お
前に精霊を紹介するぜ」

368 名前:FAT 投稿日:2006/06/21(水) 18:36:21 [ 3AJaFvmw ]
―2―

 レルロンドは朝早く目覚めると無気力に歯を磨いた。昨晩、あの告白に自分が招かれな
かったのがショックでならなかったらしく、目が赤く腫れていた。しかし、話は聴いた。
そして、ラスに対して抱いていた疑問もある程度は解けた。あと気になる部分は何故半獣
なのかということだが、あれはラス自身も真相を知らないようなので迷宮入りだろうか。
 そんなことを考えているとノックもせずにランクーイが勢いよく部屋に飛び込んできた。
「うおぉおぉぉぉおぉ! 見てくれよ、レルロンドォ! 手! 俺の手が輝いてるぅ!!」
 ランクーイは昨晩のことをレルロンドが知らないと思っているらしく、わざと大袈裟に
はしゃいだ。レルロンドは薄緑に微光を発するランクーイの手を取って、
「うほぉぉおぉおぉ! やったな、ランクーイ! お前、ついにやったじゃないかっ!」
 とぶんぶん振り回した。ランクーイの本当に嬉しそうな顔にレルロンドの嫉妬は彼の心
から排除され、それこそ魔法の効果だったのかもしれない。

 ラスは何をするでもなく、ただ様々な建造物、作物、人物を見てまわっていた。他の街
に比べるとここアウグスタはエイミーやその友人たちと何度も来たことがあったので、ほ
ぼ素通りせざるを得なかったブリッジヘッドが悔やまれる。それでも新たな発見は幾らか
あるもので、葡萄畑と見せかけてキウイが栽培されている区間を見つけたり、ブンド川を
魚が遡上していくのに出会ったり、廃墟のようだった大きな館に人影を見たりと、どんな
ことでもラスには心の栄養になり、それがどうしてそうなっているのかを考えることによ
って作られた二十一歳ではなく、本物の二十一歳に近づける気がした。
 その廃墟のような館から一人の老婆が、いや、初老の女性が出てきた。先程の人影の者
だろうか、ラスは幼いころから無人だったこの大きな館が妙に気になっていたので話かけ
てみた。
「ええ? わたしゃ怪しいもんじゃないよ、この館に昔雇われてたもんさ。もう十五年前
になるかねぇ……」
 まあ、お入りと、ラスを館の中に招待し、応接間に通した。まるで脱皮した後に残った
抜け殻のようにぽっかりとあいたロビーが既にこの館は死んでいるのだと語りかける。家
具も照明器具も芸術品も全てがそのままに、魂だけが抜けて虚像となったかのように死ん
でいる。しかし、埃だの塵だのは目立たなかった。
「はぁ、見ての通り、この館はもぬけの殻でさぁ。お館主様がいた頃は何十人もわたしの
ようなのが働いていてね、それは皆誇りを持ってなんやかんやしていたんだよ。お館主の
ゲルシュ=アウテルシュ様はこの街の大聖司教の一人でね、光のようなお方だったのさ」
 初老の女性は遠い目で、
「しかしねぇ、あれはお嬢様が産まれてちょうど一年が経った日だったかねぇ。急に館の
中に変な男が押し入ったんでさぁ。警備の者もちっとはいたんですが全然ダメでお館主様
が直々に出てきてくだすったんでさぁ。でもお嬢様が人質に取られていて手がだせなくっ
てねぇ、男が何か言って、お館主様は言われるがままに黒い渦の中に入って消えたんでさ
ぁ」
 ラスは徐々に興味が乗ってきた。中々スリリングな話だ。
「お館主様が消えてしまうとその男は奥様に手を出してね、わたしらが見てる前で犯しや
がったのさ。わたしらの中にも若いやつが幾人もいてね、次は自分の番かと怖がってびく
びくしてたんでさぁ。もちろんわたしゃ安全でしたがね」
「で、どうなった?」
「奥様だけを犯すとそのまま奥様を連れて黒い渦に消えていきましたよ。それでこの館は
主がいなくなって、でも死んだとも限らないので当時のままにしてあるんでさぁ」
「娘は殺されたのか?」
「ああ、そうそう、お嬢様は孤児として山里に貰われていきましたよ。たしかグッドレム
とかいう家でしたねぇ」
 ラスの胸が急に圧迫された。それに似た響きの家をラスはよく知っていた。
「グッドレム? たしかにグッドレムなのか?」
「あいやぁ、ゲッドレムだかゴードレムだか、何にしろデルタという名前のかわいらしい
お子様でしたよ」
 ラスの顔から血の気が引き、あの無邪気なデルタの顔を思い浮かべた。彼女は孤児であ
ったということを知っているのだろうか、真の親が偉大な人物だということを知っている
のだろうか。
 女性との別れ際に、ラスはもう一度デルタの生まれた館を見上げた。底知れない空虚が、
そこにはあった。

369 名前:FAT 投稿日:2006/06/21(水) 18:36:54 [ 3AJaFvmw ]
―3―

 はつらつと胸を張り、大手を振って街を歩く。ランクーイが今日は見違えるほど大きく
見えた。ラスが与えてくれたきっかけを、彼は実に上手く物にした。元々知識が無かった
わけではなく、この少年に必要だったのは僅かなきっかけだけだったのだろう。
 その隣に付いているレルロンドは非常に穏やかであった。優しい垂れ目からは保護者と
して子の成長を喜ぶような安心があり、昨夜の出来事は消え去ってしまっているようだっ
た。何度も何度も意味も無く自分の手を見るランクーイは可愛かった。

「おい」
 噴水に腰掛けていると見慣れぬ男に声をかけられた。
「お前ら、人間狩りを知ってるか?」
 その男は大きな荷物を背負った、いかにもといった感じの商人であった。
「なんですか、それは?」
「凶暴なエルフたちの遊びさ。人間をとって喰っちまうんだとよ。これから行くハノブっ
て町までの鉄の道にしょっちゅう出没するらしい。お前さんらみたいな柔肉はいい標的に
されちまうぜ……気をつけるんだな」
 頭に来たランクーイではあったが、魔法を取得したことによって自分が大人になったと
思っているらしく、必死に怒りを抑え、黙した。商人が無言で立ち去ると、擦れ違いにラ
スが向かってきた。
「お前らなに険しい顔してんだよ。恐いぜ?」
 そういうラスの顔もどこか陰りがあった。そんなことには気が付かずに、
「師匠、師匠は人間狩りって知ってるかい?」
「ああ。エルフの一部の部族のことだろ。俺らもよく襲われたよ。まぁ、母さんたちがい
たから楽々返り討ちにしたが」
「何故、そんな恐ろしい奴らを野放しにしているのでしょうか…。討伐隊なんかを組んで
一掃したほうが良い気がしますが……」
「やってるぜ。だけどいくら派遣しても皆返り討ちにあって終わってるのさ。巣だって分
かってるけど中々攻め込めないでいる。何故か分かるか?」
「よええから?」
「弱いのはお前の頭だな。……迷路さ。この街とハノブを繋ぐ道の中間点辺りに藪の森が
ある。そこの奥にやつらの住家があると言われている」
「言われている?」
「辿り着けないんだ。まるで迷路のように、何度も何度も同じところを行ったり来たりで
そのうち諦めちまうんだとよ。で、なぜか帰るときは一瞬で藪から抜けれるらしい」
「魔法ですか?」
「だろうな。そうだ、ランクーイ、お前を鍛えるにもちょうどいいかも知れん。この街を
出たらちょっと寄ってみるか?」
 頭の弱いと言われたランクーイは腕をまくって、
「おぅ!師匠にいいとこ見せてやるぜ!」とやる気だ。
 そんなランクーイをレルロンドは微笑ましく思った。すっかりラスに心を開き、癖だっ
たツンツンさも、臆病さも消えているような壮快な身振りにそっとエールを送る。
 今にも旅立ちたそうなランクーイを抑え、彼らの出発はその三日後だった。

370 名前:南東方不勝 投稿日:2006/06/21(水) 20:24:58 [ .ilUk8Ls ]
>>340さん
それは面白そうですね。
具体的な内容は、絵師の方が描いた絵にこちらでストーリーなどをつけるとか
そういった感じでしょうか?
あと、私も挿絵が(ry

>>見学者さん
仁義無き兄弟喧嘩が勃発しそうな状況に弱りきっているサマナ嬢。
果たして、彼女の願いは彼らに届くのでしょうか?

追伸
サマナが可愛すぎて困りますw

>>リ・クロスさん
黒い少女TUEEEEEEE!
能力を封じられてしまったスコールが心配です。

>>ゆずみかんさん
どうも初めまして。
平穏な一家団欒を打ち砕くモンスターの襲撃。
果たして子供達の両親は無事なのでしょうか?

>>タルタルさん
あねさーん!?あんたはそんなんでいいんですかーw
まぁ、そんなあねさん以上に赤ポを瓶のまま投げまくる姫の方が恐かったですw

>>闇鍋さん
こちらも初めまして^^
笛殴り幼女キターw
個人的にはとても続きが気になります。

>>復讐の女神さん
お久しぶりです。
ひょんなことからボイルと一緒に依頼をすることになったジェシ嬢。
ゴブリンの群れの調査、とのことですが…、序盤の方にいた火雨アチャの存在が気になります。

>>FATさん
ラス、そしてデルタの暗い過去が明らかになった今回のお話。
彼の生い立ちが今後、どういう風に話に絡まっていくかとても楽しみです。

371 名前:FAT 投稿日:2006/06/21(水) 21:06:44 [ stICg8Pc ]
>>南東方不勝さん
ジャックのセリフがくさかっこいいです。漢ですね。
覗かれた狼状態のアニーを想像して激しく苗ました。ダニエル君もアニーに殺され
たら無念すぎるでしょうね…

>>名も無き作家 ◆zGQ0MrrHTwさん
切なくて、途中で泣きそうになりました。なんて読み手を惹きこむのが上手いんでしょう。
まだ胸が震えます。良い話をありがとうございました。

>>タルタルさん
毎度楽しいお話で一人PCの前で顔真っ赤にして笑ってます。赤いアネサン最高。
マッシンPOT投げ恐ろしすぎです。

>> ゆずみかん さん
携帯からご苦労様です。子供たちに待ち受けていたものとはなんなのでしょう。
どんな悪夢なのかびびりながら待ってます。

>> 闇鍋 ◆BJrn0PVLEM さん
おお!殴りテイマ!?
ネクロ相手にどれだけの威力なのでしょう。

>> かーどさん
無力感がつうと伝わってきます。がんばれとエールを送りたくなりますね。

>> 見学者さん
サマナのおずおず感がかわいいです。
さてさてどうやってこの兄弟喧嘩を止めるのでしょう。血の気多そうなので
一筋縄ではいかなそうですね。

>>戦士のようださん
良ネタGJです!

>> 変な生き物 ◆YRNj1tYA5I さん
お久しぶりです。キャラ消え…どんまいです、では済ませられませんね。
公式に文句言ったら帰ってきますよ。…たぶん。

>>324-325さん
戦士の力強い弁がとても印象に残りました。自分を持っている人は他人を影響
するものですね。

>> ◆21RFz91GTE さん
お久しぶりです。執筆の再開楽しみにしています。

>> リ・クロス さん
緊張の戦闘シーンの連続、これからも期待しています。

>>118さん
会場に行ったら誰もいないこと、あるある。
あの何ともいえない虚無感といったら……

>> 双月さん
いいです!ミルスの成長を自分も見守っている、そんな気持ちになります。
ザルクさんの渋さもいい味だしていました。また書いてくださいっ。

>> 復讐の女神さん
なんとなく怪しげな依頼ですが…ジェシの判断は正しかったのでしょうか。
どんな展開を迎えるのか、ドキワクです。

372 名前:闇鍋 ◆BJrn0PVLEM 投稿日:2006/06/23(金) 01:10:22 [ zK.vW4FU ]
>>360の続行です。
「クエストPTはスリリング」第二話

 獲物を仕留めようとほくそ笑んでいたネクロマンサーが憤怒の形相でテイマーに向き直る。
その瞬間にも俺はウィザードになり、アースヒールとエンチャ・ヘイストをフルセットで
二人に補助をする。いくらウルフスキル主体の鍛錬とはいえ、それがそのままウィザードへの
鍛錬にもなれる。ここのネクロマンサー程度なら充分に効果はあるはずだ。
「犬さんエンヘイだったんですか?」驚くテイマー。シーフの方は武道家としての修行も
ある程度は積んでいたらしく、未熟ながら三連を骸骨戦士に叩き込む。崩れ落ちる骸骨。
 俺は再び半狼の姿になるとまた壁際に戻りながら「悪いけどエンチャもヘイストも
マスターはしてないんだわ。本職には勝てないパチモンだよ。」とテイマーにおどけてみせる。
「えっ?」信じられないと言わんばかりの表情で俺を見るシーフ。お前は余所見してると
痛いのがくるぞ?さらに召還獣とペットをけしかけながらテイマーが言う。
「でもすごいですよね!一回のチャージで私達を完全補助できちゃうんですから‥」
そりゃそうだ。何せ俺はフォベガ犬。
 本職支援ウィザードが見たら笑える付加のエンチャとヘイストではあるが、
それでも何とか持ち直した二人。もはやネクロマンサーなど恐るるに足らないのか強気に攻め始める。
 何体目かのネクロマンサーを倒した瞬間、シーフが燃え尽きた骨の欠片を手に入れたようだ。
「おめでとう!」とテイマー、「良かったのぅ」と俺。
「それじゃありでしたー」と言いながら走り去るシーフ、そして何故か呆然とするテイマー。
「あら?テイマーさんはお手伝いじゃあないの?」不思議に思った俺が尋ねると、
今にも泣きそうな表情で首を横に振る。「おいおい‥まさか二人とも?」今度は首を縦に振る。
相方だったシーフはさっさとハノブに引き返したらしく、いくら呼びかけても
戻る気はさらさら無いようだ。
目の前で泣き崩れるテイマー。そのテイマーを気遣うように寄り添うケルビー。

373 名前:闇鍋 ◆BJrn0PVLEM 投稿日:2006/06/23(金) 01:15:13 [ zK.vW4FU ]
>>360 >>372の続編です。
「クエストPTはスリリング」第三話

「なぁ、俺がもう一回補助するから再挑戦しないか?」と提案してみる。テイマーは小さく呟いた。
「グスッ…私ね、見てのとおり…運っ子なの、だから、グズッ、ケルビーも強くなれないの、だから…」
これだから運テイマーは嫌いなんだ。
だから低マーなんて…なんて言ってる場合じゃあないな。
 「要は削り役がいればいいんだろう?俺がギリッギリまで削るからトドメの一発は任せるぞ。」
何故か無性に腹が立ってきた。とりあえず目の前のネクロマンサーをぶん殴る口実が欲しかった。
「え・・でも、犬さん・・」ためらうテイマー。俺はイライラをぶつけるべく思いっきり振りかぶり──
エンチャの代わりにイライラを乗せたチェーンクローが唸りをあげてネクロマンサーの脇腹に食い込む。
引き裂かれた法衣、飛び散る血飛沫。片膝をついてよろけるネクロマンサー。
「ケルビー、ウィンディ、ファミ、ゴー!」ふっきれたテイマーの号令で召還獣とペットが
弾けるように襲いかかる。初撃の一発が余程頭に来たのか、
ファミリア特有のタゲ取りすらも無視して俺にファイアストームを繰り出すネクロマンサー。
だが体力の無いテイマーにさえ当たらなけりゃ何の問題も無い。おまけにここのネクロマンサーの
ファイアストームなんて、俺からしてみりゃ火遊びに等しい。ネクロマンサーの延髄に笛が直撃する。
流石は運テイマー、それが致命打となったのか態勢を崩すネクロマンサーの喉笛に食らいつくケルビー。
 「あ!出た!」消滅するネクロマンサーの中から燃え尽きた骨の欠片を取り出すテイマー。
一発クリアですか、これだから運テイマーて奴は。
「有難うございました!お陰でフルヒも貰えちゃいましたよ!」満面の笑みでテイマー。
その顔はついさっきの泣き虫とは大違いだ。「あ、お礼なんですけどこれでいいですか?」
そう言って鞄の中から出したのが攻撃レベル10の金剛石牙。
「な‥なんだってぇーッ!?」正直欲しい。欲しいが貰っていいのか?
「犬さんなら多分装備できるんじゃないかなって。本当は攻撃レベル10に知識比率2の付いた金剛石牙が
あるんだけど、これは露店用だから‥」流石は運テイマー。俺は牙をありがたく頂き、テイマーと別れた。
たまにはテレポーターを使わずに徒歩で古都まで帰ってみよう。早速牙を装備してみる。
試しに目の前の盗賊団を軽く一咬み。こいつはすげぇ。気分爽快、愉快愉快。
そうだ、強盗団アジトにも寄ってみよう。何か面白い事があるかもしれない。

                    了

374 名前:ドリーム 投稿日:2006/06/23(金) 10:59:28 [ 2DHPKQNo ]
皆様お久し振りです
約三ヶ月ぶりのドリームです。

>>名無し物書き@赤石中さん
悲しい結果に終わらせてみました。元々のテーマで最後はアダムとイヴの話を出すのは決まっていたので
こういう展開になりました^^;

>>FATさん

続きも書こうと思ったのですが、この作品は初めて書いた作品ということで区切らせていただきました。
もし気がかわりましたら頑張ってみます。

>>南東方不勝さん
ありがとうございました。

もうすぐ今思ってる小説のテーマ、展開などが決まりそうなので近日またこの板でお世話になると思います。

375 名前:見学者 投稿日:2006/06/26(月) 23:25:53 [ ww4BM0IA ]
どうもコンニチハ。 見学者です。
忙しくて赤石が出来ない日々が続いております。遊びTEEEEE!
二倍期間? PCにすら触れられませんでしたよ。
17時からだと思ってたら19時からだったのね……。 チクショーッ!

>>リ・クロスさん
戦闘シーンが格好良すぎます。
自分、戦闘シーンが全く描写できないので思わずため息が……。

>>タルタルさん
あねさん……いいんスか;
ポーション投げって蒸気状態にしてぶつけるんですね。素で知りませんでした orz
あれを初めてもらった時は凄くビックリしたのを思い出しますw

>>ゆずみかんさん
携帯からの書き込みお疲れ様です。PC頑張って〜!
可愛らしい子どもたちのいるのどかな村がどうなってしまうのか、続きが楽しみです。

>>かーどさん
どこか寂しさを感じさせるお話でした。
戦争なのに静けさを感じるような……それでいて激しい。

>>南東方不勝さん
宿屋の中なのに戦場の如き熱い戦いが……w
最後の悲鳴が意味深ですなw めげずにここはガンバですよ(ぇ

>>闇鍋さん
運テイマさん、笛で殴るんですか……。
つか、さすがは運。良い品をもっていらっしゃる。
懐も広いみたいですな。

>>復讐の女神さん
シリアスな展開に時間を忘れて読み続けて徹夜しました。
どうしてくれるんですk(殴  続きに期待大、であります。

>>FATさん
エルフには殺されたor逃げ回った記憶しかありません。
是非カタキをとってくだs……。 ハッ
生い立ちの件、今後にも影響されていくのでしょうか?

>>ドリームさん
お初になります。
近日公開となる作品、楽しみに待っております。

376 名前:見学者 投稿日:2006/06/26(月) 23:33:11 [ ww4BM0IA ]
1st>>267  2nd>>268  3rd>>309  4th>>310 5th>>342 6th>>343

「悪いねェ、弟が面倒かけてよ」
 サマナーが言葉を紡ぐ前に武道家はシーフの腕からサマナーを引き取ると素早くその小さな肩を抱くように腕をまわした。
「この世には警戒しないといけないモノがある。
 そりゃぁ、外に居るモンスターとか盗賊だとかもそうだが、一番は身近にいるオトナだな。
 コイツだって男なんだ、なに考えてるか分からんぞ」
「失敬な」
 あからさまに顔をしかめ、サマナーを足元に取り戻そうとするが、
 武道家はヒョイとサマナーを抱き寄せてその手に触れさせようとしない。
 ため息をつきながらシーフはちらと空に目をやった。日が沈みかけている。
 早くしないとアリアンに到着することすら危うい。
「少なくとも貴方よりはマシな生き方してますよ。さぁ、その腕を離しなさい。これから行くところがあるのです」
「へェ、こんな小さい娘連れた盗賊がそう言うのか? なんなら今から警官でも呼んでやろうか。
 盗人が幼い女の子の大変なモノを奪おうとしているってよ」
「兄さん――」
 太陽は地平線ギリギリにまで傾いている。陽の光はいつの間にかオレンジから紅蓮に古都を照らし始めた。
 シーフさん、どうしよう?
 ますます気まずい雰囲気にサマナーはどうして良いかわからず、ゆっくりとシーフに視線を向けた。
 さっきまでの、ちょっと困ったような顔の微笑で返してくれるはずの人がそこには居なかった。

377 名前:見学者 投稿日:2006/06/26(月) 23:34:55 [ ww4BM0IA ]
1st>>267  2nd>>268  3rd>>309  4th>>310 5th>>342 6th>>343


 まるで相手を見下したかのような冷たい眼光が武道家を睨んでいる。さっきまであったはずの暖かなものは感じられない。
 ただただ無機質で、冷たい――。
 風も吹いていないのに肌が粟立つのをサマナーは感じた。

 こわい……。

「全く冗談のお好きな人ですね」
 顔を俯けると帽子を深く被りなおし、シーフは何事も無かったかのようにクスリと笑った。
 その表情を再び持ち上げたころには既に先ほどまでの形相がすっかり消え去っていて、微塵も残ってはいない。
「冗談ばかり言うのは良くないですよ。それがあなたともなれば尚更」
「……よく言うよ。お前の方が冗談ばっかりじゃねェか」
 夕日に照らされた、初めて見た時と変わらない優しい笑顔。「いえいえ、そんなことありません」と苦笑交じりに言うシーフのその顔はサマナーが初めて彼を見たときのものとまるで変わらない。
 なのに今はそれが本物かすら判断できない。
 小刻みに震えるサマナーに気付いたのか、武道家はローブの上からサマナーの頭をポンポンと叩いた。
「そう簡単にプッツンといったりしねェから心配すんな。ただちょっと煽りに慣れてないだけだ」
 シーフのそれとは違う、力強くて頼れる笑顔。
 武道家はサマナーの背をそっと押した。武道家から離れることに一瞬躊躇したが、あからさまにシーフを避けるのもなんだか悪い。
 あまり目を合わせようとしないサマナーにシーフは首をかしげた。が、それは不意に見せた武道家の真面目な顔ですっ飛んでしまった。
「なぁ、レッドアイって知ってるか」


===================================
文章が多くて見づらい、と以前にコメントを頂いたので
行数を減らしてみました。
一行に使う文字数も減らす……というより改行を使ってみましたがいかがでしょうか。

378 名前:タルタル 投稿日:2006/06/28(水) 10:29:39 [ hfUQyDik ]
「あねさんシリーズ」
第一話 >>248 >>249 >>251
第二話 >>258 >>259
第三話 >>326 >>347

第三話 3
「こんちにわ。セスソさん」
穏やかな笑みを添えてその男は言った。
それがグレゴリー・ロッドだった。白を基調としたスーツをラフに仕立てたような服装をしていて
首からは星を模ったネックレスをつけていた。年は三十代後半と聞いたが雰囲気だけみれば二十代ともいえる。
若若しかった。髪は長めの黒で眼はおだやかなやさしげな黒だ。
問題はなぜそのグレゴリーがあねさんの家にいるのかということだ。
結婚を申し込んできてはいるが、会ったのは初めてだ。それなのにグレゴリーはいかにもまるで友人のように
「ああ、上がって待ってたよ」的雰囲気で椅子に座り
”僕の冒険記4〜廃人。一番の強敵は古都からの距離。足は毎日筋肉痛”
を勝手に読んでいた。しかも一応だがあねさんも女性。勝手に部屋に上がるのはどうかと思いが。
「なんでここにいるのよ?」
「セスソさんはいつどこにいるのかわかりませんからね。会うためにはここで張り込むのが
一番だと思いましたので」
グレゴリーは本を置き部屋の中を歩き出す。
「それにしても意外にきれいな部屋ですね。粗暴で強欲。面倒臭がりやと三拍子そろった男のような性格と聞いていたのですが」
きれいなのは当然だ。まったくしないあねさんに代わり私が掃除、洗濯、食事と家事全般しているからな。他の召喚獣達は馬鹿犬と
通常は非常食(魚)と気の向くまま世界中を旅している鳥と、まったく手伝ってくれる様子はなく、一人でしているので多少骨が折れるが。
「あんた、そこまで言って本当に結婚する気あんの?」
「私にはあなたの心を一発で振り向かせることができるアイテムがあるのでね。それっ」
そう言ってグレゴリーは札をばらまいた。あねさんはすばやく床に落ちた札を拾い集めた。そしてこういった。
「結婚しなくてもこれは返さないからね」
あねさん。なんか違うと思います。
「私と結婚すればそんな僅かではなく札束の山に埋もれることだってできますよ」
「くっ、そんな誘惑には、くっ、心は否定しても体が、ああっ」
必死になにかに耐えているあねさん。まあ強欲なあねさんが目の前で桁の違う金の力を見せ付けられては仕方ないか。
「それそれっ」
グレゴリーはさらに金をばら撒いた。あねさんはまるで獲物にたかる獣のごとく金を集める。
「体が、体が勝手にっ」
そんなあねさんを相変わらず穏やかな笑みで見ていたが、少しだけ表情を硬くして言った。
「……さて、そろそろ前置きは終わりにしましょうか」
「前置き? 金さえあればついて行くわよって、ああすでに洗脳されてるっ。私としたことがぁぁ」
あねさんは頭を抱えて、苦しんでいた。それを解き放つ力は私にはない。つくづく力不足を感じる。所詮私は忠実なる下僕。
ただの召喚獣にすぎないのだ。ただひたすらあねさんの後ろを付いていくしかない。
「はっきり言いましょう。私はあなたに女性としての魅力は感じていない」
はっきり言いすぎだよ、あんた。
「あなたに感じられるのは英雄セスナより引継いだそのカリスマ性。そして運をも引き込むその胆力」
あねさんは金を懐にしまいつつ聞いていた。
グレゴリーはそんなあねさんに近づく。あねさんは金が取られる、とでも思ったか一歩引いた。
「いや、違いますよ。私が言いたかったのはその首にかけられた”赤い筋”です」
「これがなによ?」
が、それこそ取られると思ったのか、あねさんはさらに一歩引いた。グレゴリーも思わず微笑んだ。どう見ても馬鹿にされましたよ。あねさん。

379 名前:タルタル 投稿日:2006/06/28(水) 10:47:52 [ hfUQyDik ]
「あねさんシリーズ」
第一話 >>248 >>249 >>251
第二話 >>258 >>259
第三話 >>326 >>347 >>378
第三話 4
「そんなまがい物よりものよりレッドストーン。本当はあれが欲しいのではないですか?」
レッドストーン。悪魔たちが天界より盗み出したといわれる秘宝。とんでもなくすごいものらしいが実際どんなものかはわからない。今では数限りない噂が飛び交っていてはっきりいってもはや
何が正しいのかもわからない。ただ赤い色の宝石ということは事実らしい。
「あのねえ、私はあんなあるかどうかわからないような伝説上の代物には興味がないの」
伝説と割り切ってしまうには噂が多すぎるが、あねさんはとにかく現実主義で効率主義で怠慢だ。そこ、効率房とか言うな。もう三十間近だから。
どこにあるかわかならい秘宝よりは目の前の金、宝石なのだ。そもそも宝石は好きだけど汗水たらして危険な巣窟に狩にいくより人が必死に探した物を盗んだほうが早い、といって泥棒を始めたのだから。
「ありますよ。片翼のみもがれた追放天使達の登場。一部のヴィザード達の変身能力の獲得。野生動物たちの凶暴化と変体等、
これらは全てレッドストーンの存在を仮定すれば説明するのに難しくない。私はどうしてもレッドストーンの存在を確かめたいのですよ。
そのためにあなたを雇いたい。仕事の内容はとりあえず今までと変わりません。ブルネの高官達から機密情報盗んだり、モンスターの巣窟に行ったり」
「だいぶ違うんだけどね。まあいいわ。それより雇うだけなら別に結婚する必要はないんじゃない?」
「専属になって欲しいんですよ。そして片やセスナの子。片やアリアン一の金持ち。仕事とはいえちょくちょくあっていれば世間はどうみるでしょうか。スキャンダルのいい的ですよ」
「なるほど、なんだかんだ言われる前に結婚して先手を打っておくってことね。そうね……。うん。仕事を請け負うのも結婚するのも私を雇うということならいいわ。いくら払える?」
何簡単に言っているんですか?結婚するって、あねさんあんなに人や土地に縛られるのがいやだったのに。……洗脳されている。やはりグレゴリーの無限とも感じる資金があねさんの心を支配しているのか。
「とりあえず結婚に対しては十億。仕事は結果次第ですね。そしてレッドストーンを手に入れた暁にはあなたに差し上げますよ。私は存在を確認したいだけなので」
「わかったわ。成立ね」
あねさんはあまり考えることもせず言った、言ってしまった。なんでもないように言われた”とりあえず十億”があねさんの深層心理に何かしたに違いない。いわゆる催眠か。やるな。
「やはりあなたはわかってくれると思いましたよ。セスソさん」
二人は満足した表情で握手した。あねさん、グレゴリーにどうも乗せられたような気がするんですけど。
一応結婚するんですよ?わかってますか?あねさん。あねさん。あねさーん。

「私は見世物かっ」
そういってあねさんがグレゴリーにたたきつけた紙にはこうかかれてあった
「あねさんことセスソがついに結婚!!。
あのあねさんの赤以外の服装が見られる?。ありえないウエディングドレス姿も。
入場料三十万G。あのセスソのまともな(?)服装が見られるのはここだけ。
チケットやお問い合わせは預けて安心。引き出して危険。みんなのロッド銀行にて」
「いやだなあ、セスソさんが結婚なんて今アリアン中の話題じゃないですか。これを見世物にしないでいつ稼げと?」
グレゴリーは相変わらず微笑んでいった。悪気はまったくないようだ。
「あんたの結婚式でもあるのよ」
「これで数百万入ると思えば問題ないでいょう。”金を捨てるぐらいならプライドを捨てろ”が我が家の家訓ですから」
「あんた……そういうとこ嫌いじゃないわ」
嫌いじゃないのかよ。

結婚式は家財を売り払ってまで来る人もいて、アリアン、リンケン中のほとんどが見に来たといっても過言ではなかった。
入場料とともに便乗したあねさん饅頭やあねさんうちわ等の売り上げまでを足すと利益は数千万にも上がったらしい。
さすがあねさんです。

終わり
今回かなり会話分が長くなってしまい読みづらいと思いますが許してください。

380 名前:読者 投稿日:2006/06/28(水) 18:41:58 [ QvYPUbOo ]
いつもみなさんの作品楽しく拝見させてもらっています。
それでみなさんに提案があるのですがみなさんのいろいろなストーリーを読むのも
おもしろいのですが、あえて同じ設定にして(同じ世界観、テーマ、ストーリーということ)
にして書き比べる、というのはどうでしょうか。
いや自分が読み比べたいだけですし、書く側の人の大変さもわかりますので(自分も何度書こうとして
失敗し続けていることか)書いてない奴がわけわからんことほざくな、と一蹴してもらっても結構です。
やってみてもいいよという人は小説の後にでも書いてもらえば結構です。
もしやれるのであれば自分が責任を持って企画しますので。

381 名前:名無しさん 投稿日:2006/06/28(水) 23:35:48 [ W7ci29Dk ]
 面白いと思いますが「同じ設定」だと抽象的過ぎるので、「同じ時間軸」、「同じキャラクター」、「同じイベント」、「同じテーマ」と言う風に具体的に分けて頂けるとありがたいです。
 それとも読者さんが言うのは、元となる話を一つ作って、それをいろんな書き手さんに表現してもらおうという事でしょうか?

382 名前:名無しさん 投稿日:2006/06/29(木) 14:43:26 [ hfUQyDik ]
こんなこと職人さんに言うのもどうかと思いますが、
たまに文章作法の間違いを見つけるので、
http://matufude.hp.infoseek.co.jp/novelchk/
でチェックしてみたらいかがでしょうか?。

383 名前:ドリーム 投稿日:2006/06/30(金) 13:24:42 [ i/QKe6Zs ]
>>読者さん
381の方が言ってる
元となる話を一つ作って、それをいろんな書き手さんに表現してもらおうという事でしょうか?
ということならば参加したいですー。

>>382
ありがとうございます^^。早速使ってみます。


大体仕上がってきました来週中には参加できそうです

384 名前:タルタル 投稿日:2006/06/30(金) 14:12:03 [ hfUQyDik ]
いや〜ん。ミスっちゃった〜。(トリアエズカエレ)
入場料だけで三十万でアリアン、リンケン中の人が来たっていうのに利益数千万ってなによ?。
単純計算で300人入るだけで九千万じゃん。人口少ないなアリアン、リンケン。
やっぱり砂漠だからかな。って違ーう。違うんですよ奥さん。(ヤッパリカエレ)

……つまり、間違えました、すみません
>>379の後半のほうの所なんですが
一家ではなく一人三十万ということだったんですが(まずそこがありえない)
そうすると上に書いたようにどう見ても人数少なすぎですよね。
ということで
>>「これで数百万入ると思えば問題ないでいょう〜(いょうってなによ?しょうだろ)」
を数千万に
>>〜利益は数千万にも上がったらしい。
を数億に(実際は2億ぐらいか)
に訂正をしてください。お願いします。

ああ、もう恥ずかしい。
今すぐにでも「あねさんシリーズ」封印したいぐらいに。
でももう次の話の第一話書いてしまったからそれだけは書かないと。

385 名前:ゆずみかん 投稿日:2006/07/01(土) 21:46:12 [ wt0TMFS. ]
第1話>>353>>354
第2話>>365>>366

2人は思わず絶句した。2人が見たもの……それは果てしない死と、死と、死と、死と、
死と、死と、死と、死と、死と、死であった。
「おーい!2人とも待つのじゃー!」
遠くから村長が走ってきた。
「2人とも無事かね…?…これは!!」
村長もこの光景を見て思わず絶句してしまった。村長の言葉でルイス達はふと我に返った。
そして我に返ると同時に激しい異臭がした。死の臭いだ…。この臭いやこの光景を目のあたりにし、
エミルは混乱し気を失ってしまった。
「エミル!!」
ルイスはエミルが地面に体がぶつかるスレスレでなんとかエミルをキャッチした。
「くっ…なんということじゃ…何があったというのじゃ…」
「ぅぅ……」
!!!!!!まだ生存者がいたらしい。村長はその者の元へと駆け出す。
ルイスもエミルをそっと地面に寝かせてその者へと向かう。
「おい!!大丈夫か?!一体何があったのじゃ?!」
さすがの村長も相当焦っているようだ。
「うぅ…ば…けも…のに……み…な…やら…れた……らい…あす…さんも…り…りあ…さんも……みんな…やられ……」
そこでその者は息を引き取った。
「くっ…………!」
(一体誰がこんなことを!)
ルイスは村長のこんなにも怒りにも満ちた表情を見るのは初めてであった。
(そ、そうだ!)
ルイスはあることを思い出した。それは危険を侵してでもここへ来た理由である。
「と、とぉちゃーん!かぁちゃーん!」
ルイスはもう生きていないと分かっていても…それでもほんの少しの希望を持って自分の父と母を見つけようと駆け出した。
地面は血で赤く染められていた。1人1人の顔を確認する。しかし自分の親の顔は見つからない。
途中で既に息絶えているモンスターを見つけた。
(スナイ…リク、リム…あんなに強かったのに…)
しかしその近くに主人はいない。そしてまた駆け出す。少し先に倒れている人がいた。しかも2人…
(もしかして…もしかして…もしかして…)
急いで倒れている人の顔を覗きこむ。しかし期待は裏切られ、それは自分の親ではなかった。
(くそっ!!)
そしてまた駆け出そうとするが、おかしなことに気がつく。

386 名前:ゆずみかん 投稿日:2006/07/01(土) 22:25:43 [ pbbVJTG. ]
「あれ…………?」
自然に声が漏れる。この先には誰もいなかったのだ。
(そ、そんなバカな…)
自分が見落としていたのかと思うが、そんなはずはない。確にすばやくではあるがしっかりと1人1人の顔を確認したはずだ。
しかし見つからないのだ。いや“ない”のだ。そんなはずは……確かにあの男は“ライアスもリリアもやられた”と言ったはずだ。
ならなぜいない…?そしてもう一度周りをよく見渡す。すると、少し離れたところに
見慣れた剣と盾、そして笛が落ちていた。
(あれは父ちゃん達のだ!)
ルイスはそこへすばやく駆けつける。それにはべったりと生々しい血がついていた。返り血でついたのだろう。
ルイスは血の匂いをかぐ。確かにモンスターと思われる臭いもついていたがそれだけでなく人間の血の匂いもした。
(やっぱり父ちゃん達は…でも、なんで2人はいないんだろう…)
そんなことを考えていたら混乱してきた。8歳には限界だ。思わず涙がこぼれ落ちた…
ドカーーーーーーーン!!!!
近くで何かが爆発したような音がした。ルイスは泣いている暇もなかった。
(今度はなんだ!)
そして村長のところへ駆けつける。
「そ、村長さん!」
しかし村長はその声に反応しなかった。村長の顔を覗きこむと、村長の顔は怒り、悲しみ、絶望、不安…全てを一度に表したような表情をしていた。
「ど、どうしたの?」
ルイスは不安に思って聞いてみた。
(あの爆発音がした場所は…もしや…いや、それはないはずじゃ…)
「大丈夫じゃよ。念のため君はエミルを連れてそこで隠れていなさい。わしはあの爆発音がした場所へ行ってみる。心配無用じゃ」
そう言い村長は駆け出した。しかしその瞬間、またしても激しい爆発音が響いた。
2人は爆発音だけで吹き飛ばされそうになった。
「ぐ……なんだ…」
ルイスはもうなにがなんだか分からなくなっていた。近くで煙が上がっている。
そして“グオオオォォォォォォォ”という雄叫びとも言える轟音と共にその爆発を起こした張本人が姿をあらわにする。
(なんだ…あれは…?)
それは絶滅したかと思われていた“ドラゴン”であった。ルイスは昔ロマにあったモンスター図鑑を見たことがあるが、
こんなものは見たことがなかった。
「ルイス!!隠れるのじゃ!!」
村長に言われるも、ルイスは動くことができなかった。くそっ!と村長はルイスと倒れているエミルを
両脇に抱え岩陰に隠れた。ルイスは村長に運ばれているときドラゴンの背に人間を見つけた。
兜で顔は見えなかったものの、確かに2人の人間を見た。全身に黒い鎧を身にまとっている。
ルイスはその黒い鎧を着た2人を見たとき、今まで感じたこともない感情が体の中に入り込んできた。
ルイスは8歳にして初めて人を“憎む”ということを知った。

あいつらがむらのみんなを…
あいつらが…………
あいつらがとうちゃんたちを!!!!
そこでルイスは気を失った。――――憎しみ Fin

387 名前:ゆずみかん 投稿日:2006/07/01(土) 22:49:43 [ NVjxcFUI ]
調子に乗って書いちゃいましたがやはりシリアスでドキドキさせるような文章を書くのは
自分には難しい…。

では感想までもらったんで感想を

>>タルタルさん
あねさんシリーズ楽しく読ませていただきました。中でも自分は馬鹿犬ことケルビがかわいくて仕方がないw
あねさんインシナ覚えさせてあげてください…。

>>南東方不勝さん
ただいま過去ログから楽しく愛読させていただいています。

>>FATさん
実は隠れファンですw自分が書き始めたきっかけはFATさんだったり…。
双子の話感動しました。

>>闇鍋さん
楽しく読ませていただきました。さすが運キャラ、すごいです。
そんな自分は貧乏剣士

>>見学者さん
サマナかわいいです。まさかシフに兄がいたとは…
そしてその兄からレッドアイの話が…新展開ですね

>>382さん
ありがたく使わせてもらおうと思ったんですが、自分のPC性能悪くて
チェックスタート→ページが表示されません

388 名前:タルタル 投稿日:2006/07/03(月) 23:08:42 [ U8bwHNNY ]
「あねさんシリーズ」
第一話 >>248 >>249 >>251
第二話 >>258 >>259
第三話 >>326 >>347 >>378 >>379

第四話  1
「ヘッジ、ケルビ。ペット捕まえにいくわよ」
突然あねさんは立ち上がってそういった。理由はわかっている。読んでいた”テイマ通信。〜ファミに疲れた人に。癒し系ペット特集〜”に感化されたに違いない。
「じゃあ手なずけるを覚えないと」
あねさんは面倒の一言で手なずけるすら覚えていなかった。
「そんなのはいらないわ。ぶん殴って力ずくで臣従させればいいのよ」
「さすがあねさん。それでこそです」
馬鹿犬ケルビーはそういうが手なずけるを覚えずしてモンスターをペットにできたテイマなど聞いたことが、……あった。そうあねさんの母親であるセスナさんは確かファミリア二体を気合でねじ伏せたという。あの親にしてこの子ありか。さすがはセスナさんの気質を一番受け継いでいると言われることはある。
「で、何を捕まえるんです?あねさん」
「亀よ。亀好きだから。面倒だからギルディル川にいる奴ね」
あねさんの亀好きは部屋中の人形を見ればわかる。その亀と熊が双璧をなし、そのコレクションの七割を超える。のんびりとした動きがいいらしい。
が、別にあねさんのLVなら手なずけるさえ覚えれば十分防御骸骨ぐらい捕まえられるはずなのだが。まあいまさら戦闘用のペット捕まえてもどうにもならないか。
「それに亀ならいざというとき非常食にもなるしね」
あねさんの場合それが冗談ではないから怖い。
私たちはギルディス川に向け出発した。

「そこの美しいお嬢さん。ちょっといいですか?」
「あら、美しいだなんて。もうっ」
ぼごっ、あねさんの一撃はまともに顔面にヒットし、その堕落宣教師はのけぞった。が次の瞬間には笑顔でこう続けた。
「うちの怪しい宗教にはいりませんか? ただですよ」
「ただ?」
堕落宣教師の眼が怪しく光り、あねさんの眼も輝きを増す。
あねさんがただに惹かれて感化される前に黙らせておくか。ばこっ。どす。
「あねさん。こういう人に関わるといいことありませんよ。それより亀捕まえるんでしょう?」
「そうだった。すっかりただに騙されたわ」
そしてまた少し歩くとまたなんかきた。
「そこの現在の流行を逆走した全身真っ赤な貧乳女。できるとみた。この兎ハン……」
言い終る前にあねさんは瞬殺していた。確かにあねさんの胸元は限りなく小さい。というかない。母親のセスナさんも貧乳だったが他の姉妹は普通だったのに。問題は普段は細かいことを気にしないあねさんがそれだけは異常に気にし、
そして初対面の人は必ずあねさんを貧乳と言うことだ。なぜだ?
やっと橋を渡り亀のいるエリアに移動した。
「さて。結構いるわね」
見たところでも五、六匹いる。それより本当に手なずけるなしで捕まえられるのかが心配だ。
「どの子がいいかなっと」
あねさんはそんな心配もよそに品定めをはじめた。自信家というか楽天家というか考えなしというか馬鹿というか。
「ああ、この気持ちはなに? ときめくような、きらめくこの感じは」
また始まったか、あねさんの一人芝居が。
「私の伴侶のなってくれて? よし子」
「グァァァ」
よし子ってだれ? そこらにいた一匹の亀はあねさんの差し出された手に自分の前足を乗せていた。
……。
どうやらこいつがよし子らしい。見たところ別に変わった様子もない普通の亀だ。
それでどうして伴侶なんですか? 伴侶って結婚てことですよね。あのーあねさん?一応世間的にはこの前グレゴリーという人と結婚したはずなんですけどね。もう浮気ですか?しかも亀と。しかもよし子って、雌ですか?
「そう、あなたもわかるのね。私たちの未来が」
にこっとあねさんらしからぬ女性らしい笑みでそのよし子たる亀に抱きつくあねさん。
馬鹿犬ケルビは呆然としていた。私も思考こそまともだが体はすっかり動けなくなっていた。
あねさんは幸せそうだった。

”DJジョニーの次回予想”
「ボケのジョニーことジョニーです」
>>291で一回出ただけで飽きた、の一言で闇に葬られたはずなのによくまた出てこれたわね』
「やっと作者も私の魅力に気づいたということでしょう。それよりらん子さんこそどうして来たんですか?」
『友情出演よ』
「またまた、らん子さんも出たいだけでしょう?」
『黙れ、死ね。ばぎっ』
「こ、殺されそうなんで次回予想行きます。
よし子とグレゴリー。二人の間で揺れるあねさんの気持ち。
愛を取るか金を取るか。
あねさんは自分を見つめ直す旅に出た」
次回「Love or Money」

389 名前:ドリーム 投稿日:2006/07/04(火) 20:27:48 [ 9fA.ChUU ]
             【姫の瞳】
此処は古都ブルンネンシュティグ王国、昔はゴドム共和国とか言われてたみたい。
この世界には不思議な石があることは皆知ってる。
でもそれは悪魔の石なの。
レッドアイが宝石を見つけたその当年、ブルン暦で 4807年に‘シュトラディヴァディ家の反乱’が起きて、ブルンネンシュティグ王国自体が崩壊してしまったとか言う歴史もあるくらい
でも、それはそれ、私はかならずその魔石を見つけて、、、
世界征服するのよっ!

「姫様〜? どこに居られるのですかー?」
執事らしき人物がそう声を上げて姫を探しているようだ。
此処はどっからどうみても城だ、それもチリ一つ落ちてなく手入れが完璧に行き届いている。
「やれやれ、姫様には困ったものだ」
すっかり困り果てた様子の執事、それを横目にドアの隙間に隠れている影があった。
凛とした瞳に綺麗な亜麻色の髪を持った少女だった。
執事が通りすぎたのを確認し、窓のカーテンを柱に巻きつけ外にスルスルッと降りて行ってしまった。

「ルンルン♪」ご機嫌の様子で歩を進める。
だがやはり姫というご身分もあり、目立ってしまうのは当然だろう、住民が少し騒ぎ出した。
というのが普通だろう。
しかし何回も城を抜けてるせいか、それほど住民も驚かなくなかった、何事も無く挨拶を交わす。
「おや、ミルキーちゃんまた城抜け出したのかい? 執事さんがかわいそうだねぇ」
少し苦笑した様子のおばちゃんである。
「だってー、お城つまんないしーそれに私の野望のために色々とねー」
何時ものように軽い挨拶を交わし歩いて行く。
「そうだー、あいつも誘ってやるか」
そう小さく口ずさむと姫は走り出した。

向かった先は遠くもないし近くもない微妙な所にあるこれまた微妙な大きさの城があった。
城の門の前に立ち止まるやいなや、大きく息を吸った。
「おおおーい! リィニー!」
城中に響く大きな声、その声はたとえるなら、削岩機とでも言って置こう。
声が響き少し時間が経つと中から少し気弱そうな男の子が出てきた。
「シルビア、五月蝿いよぅ、、」
耳を塞ぎながらそう呟く、恐らく彼の耳の中では耳鳴りが発生していることだろう。
「うっさい! 一緒にお出かけしてあげるんだから感謝しなさい!」
胸を張り威張る。
少し迷惑そうに顔をしかめるリィニーだったが何時もの事なのでもう慣れてしまった。
「で、シルビア、今日は何処に行くの?」
「何時ものとこよ」
歩きながら喋る。



今日はそうは行かなかった。
「姫様! 見つけましたぞ!」
後ろから野太い声が聞こえたと思ったら執事の大群が押し寄せていた。
「げ、、」
さすがにこんだけ居る中を突っ切るのはさすがに無理であろう。そう悟ったのか少し涙目を見せ、泣いているポーズをとった。
「ごめんなさい、、だってだって、リィニーがどうしても私と会いたいって言うから」
「えっ」
リィニーは困り果てた表情しながら一応頷いた、それを否定するとどうなるかを彼は知っているからである。
しかし、その手は何時か使ったことがあり、その時まんまと逃げられているので執事達は首を横に振り無駄だという事をアピールした。
シルビアは観念したのかため息をつきながら顔を上げた。
「しょうがない、、、これだけはやりたくなかったけど」
そう、観念するはずがない。
「私の超必殺魔法で貴方達を私の愛の虜をしてあげる!」

・・・

もちろん全員沈黙。
「信じてないわね、、、?」
彼女は手を空に掲げ小さく詠唱を始めた。
「ケルキリエニウム・・・エウゲン!!」
彼女がそう叫ぶと煙がもくもくと立ち篭った。
「逃げるよ!」
リィニーはシルビアに引っ張られ煙の中から脱出した。

「ふひー」
少し少女らしくない声を上げ倒れこむ。
「シルビア、汚いよ」
そんなのお構いなしと言わんばかりに寝っ転がる
でもリィニーはこういう時のシルビアが好きだった。
「やっぱ、シルビア可愛いなぁ」
そんな事をしみじみ思うリィニーであった。

390 名前:ドリーム 投稿日:2006/07/04(火) 20:29:45 [ 9fA.ChUU ]
とりあえず今は時間がないのでこれだけで。
姫ストーリーですけど頑張って書いて行きたいと思います;

391 名前:かーど 投稿日:2006/07/05(水) 00:16:38 [ qhlN9RpY ]
泣きたいほどに何も出来ない事を忘れたい。


合わせる顔が無い、とまでは行かないが流石に平気な顔で会いには行けない…。
ただ、暗い顔をして会いにいくべきではないのだから合わせる顔が無いというのはあながち間違いでは無いのかも知れない。
いやいや今はそんな言葉の仕組みについて思考してる間じゃないのに…、

「レーナーミーアー!」

ちょっと遠くから間延びした声で私の名を呼ぶ、見知った声…。
声は見えないのに見知ったというのも随分おかしな話だが、そんな事は今はどうでもいいのに!
これは現実逃避なんだろう。無理矢理思考に決着をつけた。

「…遅れました、すみません」

「いいよ気にしないから」

ラッセルという…、先輩剣士なのに、頼りないくせに、やっぱり先輩と感じさせるようなオーラがある。
無駄に優しすぎるのは問題だ。私の話を全部肯定されるのが少し気に食わない。
今だって待ち合わせの時間に遅れたのに、一つも怒る事無く全部を許容してしまう。

どうにもこうにも、この世界では自分の職の先輩より他職の先輩が多い。
同職だと、知っているという知識が先に憧れと云うモノを作り出してしまうからだろう。
何も知らない分、その人間性を優先して見れる。それが、嫌いだ。

「取り敢えず移動しよう。ここ人多いし」

苦笑して周りを見るように促す先輩。
ここはアリアンの露店商が犇く場所であり、確かに立ち話だけでも十分邪魔になる。

「じゃあ酒場ですね」

「人少ないといいねー」

無愛想(だと言われた、自覚は無い)な私に相対するように陽気な先輩は、あまりにも不釣合いだろう。
それが何だか、少し可笑しい。少し笑って頷いた。

酒場に向かう間はどちらも喋らない。
私は重たい武器やら防具やらを、如何に平気そうに持ち運ぶかに必死だし(少しでも重そうな素振りを見せたら手伝わせてしまう)、
先輩は至るところに出ている露店を興味津々といった顔で見ている。
(たまに何か言おうかとこちらを伺っているが全面無視。ごめんね)

酒場のひんやりとした扉を開けると、思ったほど人は居ない。
矢張り昼間から飲みに来るやつは居ないのか、しかしそれにしても少ない気がする。
その方が都合が良いのだけれど…、先輩は気にならないのか…。

店の一番左奥のテーブルに座る。
注文はせずに、早速持ってきた荷物をごそごそと広げる。

「・・・全部です」

手持ちの荷物を全て広げ終わって、壁に下げられたメニューを見ている先輩に声をかける。
すぐにメニューから目を離し、「ふむふむ」、などと頷きながら、私の広げた武器や防具を一つ一つ丁寧に見ていく。
一通り見終わるまで、今度は私がメニューを見る。
…パフェなんかあるのか…、ちょっと食べたいかも…。

「あれだね」

「はい」

先輩が話を切り出す。

「弓は軽いのにしてるんだね。それは感心なんだけど…」

そこまで言って、ごそごそとカバンから紙を取り出す。

「シャープベンダーって知ってる?凄い軽いんだよー」

「名前だけなら…」

「うんまぁ、そういう弓がある。物理的なダメージを与えないレナだったら、その弓を使ったほうがいいよ」

「っていうか、そんな弓どこにあるんですか?」

この職業について結構長いつもりだけれど、それなりに知らないことがあったらしい。
思ったより自分の知識はまだ浅いようだ。

「どこだろうね…。アリアンの露店とか伝言板使えばすぐ見つかると思うよ。最近は魔法をやめて物理に転向する人が居るみたいだし」
レナみたいにね。と付け加える。

「物理時代の事は良いんですよ。セリネさんみたいにはなれないの分かったわけですし、私は私の道を往くだけです」

「そうだねー。レナはそういう子だったね。余計な話してごめんね」

そういった先輩に、頭を撫でられた。畜生、またやられた。
弱い事を意識的に認めさせられるようで、同情や、ましてや頭を撫でられるなんて…。
涙目になって顔を上げられない私を察したのか、先輩は酒場の主人にパフェを2つ頼んでいた。

392 名前:かーど 投稿日:2006/07/05(水) 00:20:17 [ qhlN9RpY ]
再びやってきました。
ROMってようかとも思ったのですが、このスレに書き込んでいる方々のを見ていると
ついつい書きたい衝動が…。
皆さんの作品、ひっそりと楽しみにしております。
前回の作文の感想ありがとうございます。まだまだ力不足な感が否めませんが
これからもまたお邪魔させていただくことにします。
…というかシリーズ化しそうで怖い。

393 名前:タルタル 投稿日:2006/07/05(水) 12:32:19 [ hfUQyDik ]
「あねさんシリーズ」
第一話 >>248 >>249 >>251
第二話 >>258 >>259
第三話 >>326 >>347 >>378 >>379
第四話 >>388

第四話 2
「よし子、買い物行くわよ」
「グァァァ」
そんなことを言って朝からどこか行ってしまったあねさんとよし子だが、今の所はただの主人とペットの関係だ。
少なくともグレゴリーと離縁しようとはしていない。
問題は馬鹿犬ケルビーだ。
確かに元々能無しで一緒に騒ぐぐらいしか役割のなかった馬鹿犬はあねさんがよし子にぴったりとなった今は何もすることがないのは確かだが。
それでもよし子に対し怒ったりいじめたり悪く言わないのは人がいい、というより馬鹿だからだろう。
それで泣き寝入りし、私に泣きついてくるのは非常に迷惑だが。
「ヘッジ、ヘッジ。遊んでよー」
そして今日もきた。こっちはあねさんのいない間に洗濯と掃除をしなければならないというのに。私は洗濯物を干しながら答える。
「子供か、お前は。元凶はよし子だろう。なら奴に夜襲でもかければいいだろう」
「そんなことしたらあねさんが悲しむよ」
人は彼をやさしいというのだろう。だが私は馬鹿ただの馬鹿犬としか思えない。思うことは誰でもできる、実行してこそだ。
「ヘッジー、ヘッジー」
馬鹿犬は私の体にしがみついて来た。
「こっちは洗濯で忙しいんだ、一人で遊んでろ」
……母と子?

「ただいま〜」
夕方。あねさんはまた両手いっぱいに袋を持って帰ってきた。
「見てみてヘッジ。これがよし子のリボンで」
このリボンとか言ってるものだが、今もよし子は頭につけているが、
あねさんの場合そのまま紐として頭に結んであるだけ、つまりはちまきのようになっている。
……まあ、いいか。
「これが甲羅洗うためのたわしで、これがよし子にすごく似てるぬいぐるみで、これが亀の飼育マニュアルで、これがこち亀で」
最後の何?
まあ、これが俗に言う恋ボケか。
「もうね、どこいってもかわいいペットねって言われるのよ。ねえよし子」
「グァァァ」
自分では気づかずに言わせているのかも知れませんよ。
「とにかく今日はおなか減ったわ。ヘッジ、ご飯」
早い。まだ夕方なのに。よし子と一緒だから年甲斐もなくはしゃいだのだろう。
「はいはい、今作りますから。お風呂でも入っててください」
「はーい。じゃよし子いこっか」
……母と子?

今日の夕食はきのこパスタ。
あねさんとよし子と馬鹿犬と私。
平和な夕食の時間だった。
「でさあ、よし子がねえ」
またよし子ネタか。ま、私は別にひがみはしないが。
それよりよし子が来てからあねさんの性格が丸くなったような気がする。
恋をすると女性は変わるというが、ということはやはりあれは恋なのか。
うーん、まああねさんが幸せそうだからいいか。
終始不気味なほどににこにこしているあねさんを見るとそう思ってしまう。
ケルビはあれだがなんとかなるだろう。もう子供じゃないんだし。
「ねえヘッジ。今まで泥棒とかいろんなことしてきたけど、こんな生活もいいのかもね」
やさしく微笑んでらしからぬことを言った。
……。
あ、今わかった。
よし子を食べようとしているんだ。十分なつかせて、太らせて食べるつもりだ。
亀好きはたぶん食べるのが好きなんだ。熊もそうだ。どちらも美味らしいし。
今まで食べているところを見たことはないが、そうに違いない。
でなければこんな金にならないことにあねさんが興味を持つはずがない。
最初非常食になるって言ってたしな。
亀の料理か、勉強しとかないとな。


「ジョニーの次回予想始まるよ」
『ていうか全然内容違うじゃない』
「だから次回"予想"なんですよ。私が独断と偏見で勝手に次回を予想しているだけで」
『それ意味あるの?』
「ないです(はっきり)」
『じゃあなんでこんなコーナーできたの?』
「作者の気まぐれです(はっきり)」
『作者って、馬鹿』
「ひゃぁぁー。ラン子さん。何いってるんですか。作者に怒らせたらこのコーナー潰されますよ」
『まあ、あんたが馬鹿だから、その作り手の作者が馬鹿でもおかしくはないけどね』
「ひゃぁぁー。また言った。ああ、潰される間違いなく確実に潰される。完全抹消される」
『……もう時間だから次回予想行けば?』
「うう、じゃあ最後の次回予想いきます。
ついに真実の愛に目覚めたあねさん。ついにグレゴリーとの離婚を決意し離婚状を叩きつけた。残念そうだが受理するグレゴリー。が一週間後吹っ切れずついにストーカーとなってしまう。
何度ぶっ飛ばしてもついてくるグレゴリーに対し、あねさん一行は終わりなき逃避行を始めた。全てはよし子への愛のため」
次回「I Love よし子」

394 名前:双月・第二話 投稿日:2006/07/06(木) 17:22:51 [ W7ci29Dk ]
双月一話>>311 >>317


 己の意思を剣と為し、己の身を盾と為し、信念の従い敵を薙げ。信念に従い主を守れ。
 我は力なり。我は生命なり。我は意思なり。
 汝は荒ぶる豪腕なり。汝は健やかなる身体なり。汝は冷静なる思考なり。

「やっと泣き疲れたのか? 小娘」
それが、ザルクとミルスの最初の出会い。

双月・二話・少女と野獣


 あれから、二年が経った。
「なんで私の事、名前で呼んでくれないんですか〜?」
 ベッドに腰掛けたミルスが、いかにも不服そうに唇を尖らせて問いかける。
鎧を脱いで肌着になった彼女の胸は膨らみが見て取れたが、その身体は普通の少女とは違い筋肉の隆起を見せていた。
 最初の頃とは随分と印象が変わっていた。しかし、今の彼女の仕草は年頃の少女らしさを見せている。
「小娘だからだ」
 そんなミルスの質問を、ベットに寝転んだザルクがにべもなく返す。
 こちらは最初の頃と、そして鎧を着ている時とさして印象に変わりは無い。
短く刈りあげた黒髪。深い皺が刻まれた眉間。そして、鎧を脱いでいるからこそ改めてわかる、がっしりした身体。
「むぅ〜」
 最初の出会いからは考えられないような二人のやり取りだが、ミルスはもとよりザルクも特に気にしていないようだ。
ただミルスは、自分の事を小娘としか呼ばないザルクに不満を持っていたが、それ位の事しかなかった。
 ここはハノブの宿屋。抗夫の宿舎も兼ねたその部屋は実にそっけない。
 二年の間に随分と色々な場所を旅した二人だが、ここ数週間はハノブに滞在していた。
 ハノブは鉱山で有名な町だが、冒険者にとってワリの良い仕事が多い事でも有名だった。
「小娘小娘って……」
「なんなら、こんなのはどうだ? 可愛らしいお嬢ちゃ……ぐっ!」
 その口が閉じられる前に、枕がザルクの顔面に叩き付けられる。
 今のミルスは、鎧を脱げば少女らしい体付きを見せるものの、髪形は短く刈り、腕には幾つもの傷痕が走っている。
鎧を着込めば、その外見は小柄ながら男と変わらない。ミルス自身は仕方なく思っている節があるものの、女性らしい外見と

は程遠いと言う事を気にしていた。にも関わらず、今のミルスにとって’お嬢ちゃん’呼ばわりされるのは痛烈な皮肉だった


「もういいです……」
ミルスは拗ねた口調で言うと反対側を向き、仔猫のように背中を丸め不貞寝をした。
「ほれ、枕」
そんな彼女の傍に枕を差し出すも、無視される。ザルクは頭を掻き、そのまま枕を置いた。
「ところでだ、最近一つ問題があってな」
「なんですか?」
改まった口調で語りだすザルクに、ミルスが顔を向ける。
「最近の学者と言うのは、実に金持ちだ。お陰で金も随分と貯まった」
笑いかけながら話すザルクを、ミルスは怪訝そうに見つめる。だからどうしたとでも言いたげだ。
「が、知って通りハノブじゃあ金の使いどころがほとんどない。そこで、明日ブルンネンシュティングに向かおうと思うのだ

が、どうだ?」
「本当ですか!?」
途端にミルスの表情がパァッと輝いた。
 古都ブルンネンシュティング。そこは何度か足を運んだ事があるものの、田舎育ちの彼女には魅力的な物が沢山あった。
綺麗なアクセサリーに、甘いケーキ。整備された石畳に、勇壮な議事堂。
そんな事を思い描いているのだろう。彼女の表情は正に夢見る乙女。元のセミロングの髪型だったならもっと愛らしかっただ

ろう。
「やっぱり小娘じゃね〜か」
そんなミルスを見ながら、ザルクは呆れた顔でぼそりと呟いた。

395 名前:双月・第二話 投稿日:2006/07/06(木) 17:23:42 [ W7ci29Dk ]
 春の日差しに包まれるも、山脈の風はまだ冷たい。
日差しと暖かさをやっと感じられる気温も相まって、心地よい涼しさを際立たせる風は、油断すれば身震いをさせられる。
 そんな中、荷物を背負った二人がゆっくりとした歩調で歩いていた。
 ザルクの荷物はさっぱりしたものだ。炎をかたどった大剣に、その身体のワリには小さい荷物袋。
 一方のミルスは、一抱えもあるカバンを背負い、盾と剣を持っている。その剣はザルクのものより二回りも小さい印象を与えるが、少女が構えるには随分と大げさだ。盾もしかり。荷物のせいでその小柄な身体は、大きく膨らんで思える。
「春ですね〜」
 だが彼女の足取りはおろか、口調さえ荷物の重さを感じさせない。それどころか嬉々とした印象さえ感じられる。
「そういえば、ザルクさんはなんで旅をしているんですか?」
「……その質問は何度目だ?」
さもウンザリしたようにザルクが返す。この年頃の少女と言うのは、何かを喋らなければ気が済まないらしい。
 重い荷物を持っていようがお構い無しにおしゃべりを始めるミルスに、ザルク。
「だって、前も、この前もはぐらかしてばっかりじゃないですか」
「はぐらかすも何も、それが全てだからだ」
「嘘は良く無いですよ〜」
ただの傭兵だった。そして今は引退して放浪生活をしている。ザルクはいつもそう答えていた。
 しかしそれは、ミルスにとってはあまりにも詰まらない答えだった。
大剣のさばき、技のキレ。片手剣も使いこなし、剣士が使うとされる技も使いこなす。
いままでミルスが教えてもらった技は、全てザルクに叩きこまれてきたモノだ。そんな彼が凡庸な戦士だったとは考えにくい。きっと面白い話があるはずだ。そんな期待がミルスにあった。
「戦士が、剣士の技を使えるなんて変じゃないですか」
「お前は、剣士と戦士の違いを何だと思っているんだ?」
「え?」
きょとんとした表情でザルクを見つめる。
「え〜と、剣と盾を持っているのが剣士で、両手剣を持っているのが……」
「結局大剣というは、片手剣の延長でしかない。大剣は片手剣に手馴れた奴が持つモノだ。が、アウグスタの辺りの連中はそれをすっ飛ばして、いきなり大剣で訓練を始めるからそんな事を言われているんだろうが、剣士と戦士の違いはそんなものじゃない」
 正規の訓練を受けた事が無いミルスには、初めて聞くことだった。
「剣士と戦士。階級的などうこうは別として、精神的に言うとだな……、剣士は儀礼を重んじるお坊ちゃま。戦士は戦いを信条とする荒くれだ」
「むぅ……」
 眉間に皺を寄せたミルスが、腕を組んで考え込んだ。剣士にしても、戦士にしても得物が違うだけで、どちらも戦いを信条としている。それがミルスの常識だった。しかし、それをいきなりぶち壊された上に、ややこしい事を言われた彼女は理解しようと必死になっていた。
「剣士も戦士も、戦いを信条として剣を持っているんじゃないんですか?」
「剣士は言ってみれば貴族だ。自分のメンツを守ったり、体裁を繕う為に剣を振るい、盾で守る。当然、お坊ちゃま的にいう’卑劣な行い’はしない。だが、戦士は金の為だろうがなんだろうが、戦いが全てだ。そして勝つためには手段を選ばん。もっとも、貴族と違って戦場じゃあ、手段なんざ選んでられんがな」
「むぅ〜……」
 眉間の皺を更に寄せて、ミルスは息でも詰まったかのように呻く。新たな知識という洪水に巻き込まれて、溺れているようだ。すこし哀れなようだが、ザルクはそれ以上何も言わず、ただ安堵の溜息を吐くばかり。
 やっと黙ってくれたのだ。ザルクとしては、そのままもうしばらく黙っていて欲しいのだろう。
 相変わらず、涼しい風は二人を撫で続けていた。

396 名前:双月・第二話 投稿日:2006/07/06(木) 17:25:19 [ W7ci29Dk ]
 ハノブからブルンネンシュティングまで歩くとなれば、何日かはかかる。
 山脈で野宿した二人は今日もブルンネンシュティングを目指し歩いていた。
しかし突然、二人に向かって何かが飛び出してくる。
 目にも止まらぬ速さで抜刀したザルクが、向かってきた何かを大剣の平面で打ちつけた。だが、打撃音がしない。
 飛び出したそれは器用にも大剣に’着地’し、それを足場に飛び跳ねて反対側の地面に着地する。
 異常な運動神経。体毛に覆われた体躯。そして頬まで裂けた口とぎらつく瞳。
 それはウルフマンだったが、何かが違う。それはウィザードが変身するものと相場が決まっていたが、理知的な気配が全く無い。そればかりか、どんな者でも寸分残っているはずの理性さえ全く感じさせない。
 以前ミルスがアジトで感じたどす黒い感覚。それよりも更に暗く、こびりつくような不快感を催させる感覚。
それがウルフマンから放たれ、ミルス達を苛んだ。それは二人のみならず、周囲がその感覚に汚染されていくような感じさえする。
その感覚は、瘴気と表現してもいいかも知れない。その容姿は瘴気を振り撒く狂狼。正にそれだった。
 ミルスは、何処かでこの感覚を感じた気がした。強盗のアジトでは無く、もっと別の何処かで。
「死にたく無ければ、盾を構えていろ」
 瘴気に中てられ、呆然としているミルスにザルクは静かに言い放った。
ミルスが戦闘態勢を整えるのを横目で確認すると、ザルクは大剣を構えながら、目の前のウルフマンを睨みつける。
 構えは正眼。大剣の切っ先は、ザルクの視線とウルフマンを結ぶ線の上に位置し、攻撃にも防御にも即座に対応できるようにゆらゆらと揺れている。
 本来は攻防両立の極めて一般的な構えであるが、一撃必殺、攻撃こそ防御なりを体現する今までの彼の戦い方を鑑みれば、明らかに防御を意識した構えだった。つまりそれは、一撃で仕留めきれない可能性をザルクが感じている証拠ともいえた。
 事実、ミルスは実戦でザルクが攻撃最重視の大上段以外の構えで戦うのを、これまで見た事が無かった。
「喰ワセロ……喰ワセロ……」
ウルフマンが息を吐くたびに、言葉を発するたびにだらしなく伸びた舌から、涎が滴り落ちる。
 そのさまが、より一層恐怖を掻き立て、涎からも立ち昇る瘴気が景色を満たしていくようだ。
 だが、ザルクはあくまで戦士だった。
「来い」
平然とした口調でウルフマンを促すと、全身から殺気を放った。それはまるで目の前のウルフマンが、ただの毛玉に見える程の圧倒的な重圧で瘴気を塗り替えていく。瘴気と殺気。二つの禍々しい気がぶつかり奔流となってあたりを汚染していく。
 その奔流が最高潮に達した時、ウルフマンが飛び跳ねた。
 身体を丸め、ザルクに突進した毛玉。それはザルクの大剣に弾き返されると、そう遠くない地面に足をつけ両手を広げて再びザルクに襲いかかった。 一薙ぎで頭を弾き飛ばしそうな爪を、一回、二回、三回。それをワンセットとして、何回も繰り出す。腕の残像が次の残像に掻き消され、音が響くよりも早く音がなり始める程の速さで繰り出される。目にも止まらぬではまだ足りぬほどの凄まじい速さ。外見同様、正に人外の業がザルクに襲いかかっていた。
 だが、ザルクとて負けてはいない。先ほど殺気を放った時に既に織り込んでいた分身が、人外の所業たる怒涛の爪撃を順次、燃え盛る大剣で凌いでいた。ディレイクラッシングや、ハリケーンショックに代表される分身術。それを防御に応用した技であるが、そんな事をする戦士はザルク以外にいないであろう。
 爪を大剣の平面で弾き、ワンセット凌ぐとまた次の分身が相手をする。
 刃で受ければ、真っ二つになったその腕は速度を緩めること無くザルクを抉るだろう。
最初の突進も然り。平面で凌ぐのは情けをかけているように見えて、もっとも理に適った’攻撃’方法だった。
 事実、燃え盛る炎をエンチャントされたザルクの大剣は、爪が打ちつけられるたびに、その爪を、毛で覆われた掌を焦がしていった。
 人外の速度に対応するは、常識外の戦術。理性無き横暴に対するは、理性と経験に裏打ちされた匠の技。
 両者ともに、肉体的な差こそあれど、戦闘の優位性は拮抗していた。

397 名前:双月・第二話 投稿日:2006/07/06(木) 17:26:18 [ W7ci29Dk ]
「ウガウッ!」
 突如、打撃音が止むと同時に、ウルフマンがバックステップを刻む。それに追い討ちをかけるように、残っていた分身が一気に散開し大剣を振るう。
 しかし、並みの人間がするバックステップならまだしも、人外のするそれはとてつもなく鋭く、追いきれるものではなかった。跳ねたウルフマンが追い討ちを全てかわし切ると、瞬く間に’ザルクの間合い’の外に逃げた。
 だが、それはあくまで’ザルクの間合い’から逃げたに過ぎない。ウルフマンからすればその場所は間合いの内だった。一瞬にして遠距離を無距離にできる間合い。その計算もまた感性に裏打ちされた戦術。安全圏にして攻撃圏内のその場所で息を整え、鈍った殺意という名の爪を砥ぎはじめた。
「な……なんなんですかぁ?」
 震える声でミルスが問いかけるも、ザルクは何も答えない。ザルクはあれだけの事をしたものの、息一つ切らしていない。ただ、ただ眼前の毛玉を睨みつけ、殺気を放っていた。
 なんとかへたり込みそうになるのを押さえながら、ミルスは盾を構え続けた。
 この震えは瘴気に因るものではない。もっと恐ろしい、まるで何か巨大なものの睨み付けられているような感覚。
ザルクから発せられるその感覚は、禍々しさこそ無いものの、純粋な畏怖をミルスの心に満たしていった。
 ザルクの背中が脈動を始める。いや、実際はしていないのだろうが、波打った殺気がそんな幻影を見せた。
それと同時に、幾つモノ分身が織り込まれていく。今度はハッキリと数を数えられるほど、実体を持っている。
 十、いや二十……それよりももっと多くの分身が織り込まれ、脈動に共鳴するように揺れ動く。
 まるで、何かのタガが外れたように常識外の量の分身が、次々と作り出されている。
 そして、その背中の向こうの毛玉もまた、次の攻撃への準備を進めていた。

 互いに最後の刻を思わせる静寂が、辺りを包む。瘴気と殺気の激流が渦巻く中でも、静かに響く無音の調べ。
 だがしかし、いつでも静寂は突然破られるものだ。
「ウガァッ! 返セ! 石を返セ!」
 ウルフマンが跳ねた時、打撃音と爪と刃が擦れ合う音が木々を揺らし、風を切り裂いた。
 ただ、力任せに破壊する事のみを念頭に置いた爪撃。それに顎での攻撃も加わった。
 力任せと言いながらも、充分に鋭い攻撃が縦横無尽に襲いかかる。その速さ、先ほどの比ではない。
それに顎に並ぶ牙も織り込まれるのだ。さっきと同じ要領ではとてもではないが捌き切れないだろう。
しかし、ザルクはそれでも捌いていた。さっきよりも速く正確に爪を弾き、次の爪が振り下ろされる前に他の分身が大剣を振り下ろす。防御と攻撃を交互に行っているものの、ミルスはもとより一体どれほどの人間がその技を見極められるであろうか。ザルクとてその動きは人外であった。それは神技の域に達しているとさえ思わせる。
 百華繚乱、剣戟烈牙。
 舞い散る火花は華と咲き乱れ、双方の得物は必殺の牙と化す。爪が鳴り、剣が哭き、切り刻まれた哀れな風が大地を揺らす。
 互いに避け、攻め、防ぐ。その攻防、熾烈を極めた。
だが、その喧騒も突然破られた。
 ザルクが見せたほんの一瞬、針の先ほどの隙をウルフマンは見逃さなかった。
 刃を払い、ザルクの胴を薙ぎ払うと、そのまま前に飛び出し、ミルスの目の前で着地した。
 改めて近くで見るからこそわかる、禍々しい顔つき。そしてケモノ臭。
 その口から吐かれる生臭い息がミルスの鼻腔を犯し、その奥の脳髄に怯えの感情を染み渡らせる。
ぎらつく瞳に見つめられる。思ったより大きな顔が目の前に突き出される。ミルスの時間が止まった。
一瞬、本当に一瞬だったろうが、ミルスはウルフマンの顔を観察し、まぶたの奥に焼き付けた。それと同時にあの時の記憶が思い出される。
 切り裂かれるみんな。地面にはじけ飛ぶ血と肉塊。そして、毛むくじゃらなみんなを喰らう化け物。
忘れるはずも無いあの時と同じ感覚。同じ化け物。
「あ……い、いやぁ……」
 掠れた声がミルスの口から漏れた時、ウルフマンの口が大きく開かれた。
「グ……グアアアァァァァ〜〜!」
突如悲鳴を上げて身をよじるウルフマン。その影から、血に染まったザルクの顔が飛び出した。
「舐めるんじゃ……ねぇよ!」
大量の血に染まっていながらも、ザルクの声にはしっかりと力が篭っていた。そのまま、ザルクが力を込める。
「グウッ! グアウ! グアアアアア〜〜〜〜!!」
 攻撃の為では無く、ただもがくが為に振り回された腕で地面を掘ると、ウルフマンはそのまま飛び跳ねて行った。
「逃がしたか……」
 ウルフマンが逃げ行った方向を見つめ、ザルクは独りごちる。
いつもと変わらぬ風に立つザルクは、鎧こそ切り裂かれているものの、その中まで切られてはいないようだった。

398 名前:双月・第二話 投稿日:2006/07/06(木) 17:29:24 [ W7ci29Dk ]
つまり、彼が被っている血は全て、ウルフマンが流したものだった。
手にはいつもの大剣では無く、奇妙にくねったナイフを握っている。
「大丈夫か?」
いつもの顔でザルクがミルスに問いかけると、ミルスはそのまま膝を折って座りこんだ。
よほど怖かったのだろう、声を上げる事も無く、ただ愕然とした表情で涙を流している。
いくら修羅場を潜ったとはいえ、ミルスはまだ十四歳の少女にしか過ぎなかった。

 あのウルフマンに出会ってから、何日か後。古都ブルンネンシュティングを歩く二人の姿があった。
 ザルクはいつも通りであったが、ミルスの表情は浮かない。ハノブとは比べ物にならない程の人ごみ。
それに混じって、あのウルフマンが何処かでにいるかと思うといても立ってもいられない。そんな感覚にミルスは苛まれていた。
「って、おい……おい! 聞いているのか?」
「え、あ、はい?」
さっきまで、半ば我ここにあらずと言う風なミルスが、返事をした。
「大丈夫かよ……。ほら、これを受け取れ」
「え? 何ですか?」
受け取った金貨袋を見ながら、訝しむようにザルクを見つめる。
「十万ゴールドその中に入っている」
「えぇ?」
 十万ゴールドという大金を聞き、思わず耳を疑うミルス。
 だが、次の言葉にミルスは、更に耳を疑う事になった。
「それを元手に、ここで一ヶ月間独りで生き抜け」
「……」
ミルスの動きが完全に止まった。そして、
「あ、え、え、あぁ? ええ? ……ええええええぇぇぇぇぇぇぇぇ〜〜〜〜〜〜!!」
素っ頓狂な声が古都に響くも、その声は周囲の喧騒に掻き消されていった。


二話・少女と野獣/終
後書き・長くてスミマセン……orz 
 テンポのいい話に憧れるも書きたい物が多すぎて、ストーリーが足踏みしてしまいます。

399 名前:ゆずみかん 投稿日:2006/07/07(金) 18:22:19 [ 3ebeVURg ]
第1話>>353>>354    第2話>>365>>366    第3話>>385>>386    ────ん……ここは……ルイスが目を覚ましたときそこは見慣れた自分の家のベットであった。
(何だ、ただの夢か…)
「かあちゃーん!腹減ったよう」
ベットから起き上がり母親に飯の催促をする。しかし誰も反応はしなかった。
それどころか家には誰もいなかった。なんでだろ…?そう思いふと窓から外を覗く。すると村の集会所に村人が数人入っていくのを見た。
なんだ、みんな集会所にいるのか。そしてルイスは素早く着替え自分も集会所に向かった。

集会所の扉をそっと開け、コソコソと入る。集会所にはほとんどの村人がいた。珍しいなと思いながらとりあえずエミルを探す。エミルは建物の端にいたのですぐに分かった。
「おーい!エミル〜、どうしたんだよ?みんなが集まるなんて。それにお前もいつも以上に暗い顔して。なにかあったのかよ?」
ルイスが気軽に声を掛ける。
「お、お兄ちゃん!!」
エミルのその声で村人達もルイスがいることに気づいた。ル、ルイス!大丈夫だったかい?怖かったろう?などと聞かれ、意味が分からずルイスは混乱した。
「どうしたんだよみんなして。俺はなんともないよ?それよかなんかあったの?」
「覚えてないのかい?一昨日のこと」
(一昨日?一昨日は確か俺は父ちゃんが遊んでくれないから村のみんなと遊んで…)
「君は2日間眠り続けていたんだよ」
(2日間!?何で俺が?)
ルイスはさらに混乱した。
「じゃ、じゃあ今何してるの?」
それを聞くと村人は気まずそうに顔を合わせ、少しの間の後ゆっくりと頷いた。
「君の父さん達の…葬儀さ」
(ぇ………?あれは夢じゃ……)
それを聞いてエミルは泣き出した。それを見てまた泣き出す者もいた。
「嘘だ!!父ちゃんに限ってそんなわけないよ!!確かにそんな夢も見たけど……」
そして村長がルイスに近づいてきた。
「ルイスよ、その夢は夢なんかじゃない。紛れもない事実なのじゃ。ライアス達のことも、君が2日間眠っていたことも、そして今葬儀をしていることも」
(嘘だ…嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ!!!!)
自然に涙が頬を伝った。
「……君はわしと一緒にきなさい」
そう言うと村長はルイスの腕を掴み個室へと連れていった。
「ふぅ……まずは何から話せばよいのやら…」
「……………………」
「大丈夫かい?」
「……………………」
「……まぁ、それが普通じゃろう。まずは…」
そして村長はすべてのことをルイスに伝えた。
あれからドラゴンは村を襲わずどこかへ消えていったこと。村人達が必死に探してもライアス達の遺体は見つからなかったこと。
そしてあのドラゴンは何十年も前にロマの戦士達に封印された古代龍だということも……。ルイスも村長に黒い鎧の2人組のことを教えた。
「ふむ…そうか…」
ルイスは出てきそうな涙をぐっと堪えた。
「君も……我慢しなくていいんだよ。悪いものは全部吐き出しなさい」
村長が優しい声で言うと、堪えていたはずの涙が急に溢れだした。
「う、うわあああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁん」
その泣き声は村中に響き渡り村中を一層切なくさせた。────悪夢の後 Fin

400 名前:復讐の女神 投稿日:2006/07/08(土) 00:56:53 [ o5cm4Aqs ]
三人で冒険に出ることになり、ジェシは少しワクワクしていた。
ジェシは、基本的に一人で全ての依頼をこなす。
誰かと一緒に冒険することは、めったに無いのだ。
「行くなら早くしましょう? 村の人たちを、いつまでも怯えさせるわけにはいかないわ」
「うむ」
「ということだ。ビシュカ、お兄様たちは行ってくる。留守は任せたぞ」
3人が揃って立ち上がると、ビシュカは寂しそうに顔を伏せた。
「えぇ、ご無事をお祈りしています」
ジェシは、ビシュカの髪の毛をくしゃっとして、テラスを後にした。

冒険者の準備というものは、そう時間がかかるものではない。
彼らは、現地で物資を調達することも少なくないからだ。
中には、お金と武器や鎧を持っただけで出るものもいるくらいである。
そして、お金持ちのボイルのことである、魔術の発動体である杖と軽い鎧を着るだけで、あとは現地で全て調達
するものとジェシは考えていた。
「…なんだい?」
しかし、この男にはそんな常識など通用しなかった。
いや、まさかここまでとは…。
「僕の魅力に気づいたのかい? ははは、照れることは無いよ」
ボイルは、普段着に杖という信じられないほどの軽装だった。
もっとも、彼の普段着というのはそれはそれで高価なものであるのだが。
「まさか、その格好で出る気? 死にたいの?」
「ははは、まさか。私だって、この格好で出るわけではないさ。ただ、私の鎧などは現在整備しててね。今から
取りに行かなければならないのさ」
肩をすくめ、ため息をつくボイル。
その格好が型にはまっているのは、鏡の前で練習しているからだろうか。
「あぁ、安心してくれ。修理はすでに終わっていると連絡はもらっている。受け取ったらすぐにでも出られるよ」
それならしょうがないと、ジェシは納得する。
ジェシは基本的に、相手の攻撃に当たらない戦法を取る。
そのため、鎧の修理はめったにしない。
フェリル司祭をみるが、別段文句はなさそうだ。

401 名前:復讐の女神 投稿日:2006/07/08(土) 00:57:45 [ o5cm4Aqs ]
「ん? あぁ、ボイル君はいつもこうだからな。修理に出すというより、物置にしているのだよ」
鍛冶屋を物置にする…ジェシには考えもつかないことだ。
鎧とは、自分の身を守るもの。
常に、自分の側においてあるべきものだ。
武器もまた、然りなのである。
「では、行って来る」
ボイルが背を向け門に向かって歩くと、屋敷中から。
「「「行ってらっしゃいませ、皆様道中お気をつけて」」」
訓練でもしているのだろうか、揃った声が響いた。
ジェシが驚いて振り返ると、家中の人間が3人に向かって頭を下げていた。
「は、はは…いつもこうなの?」
「あぁ、いつものことだよ。私は、特に何も言ってないのだがね…まぁ、止める理由も無いし、自由にさせているよ」
ジェシは、もう一度屋敷を振り返り、逃げるように屋敷を出たのだった。

大きな街には、かならず鍛冶屋ができる。
それも、大きなところから小さいところまで様々だ。
ジェシは、ボイルの言う鍛冶屋とはこの古都で一番大きな鍛冶屋だと思っていた。
「じゃあ、少し待っててくれ。すぐに戻る」
そう言ってボイルが入っていったのは、しかし小さな場所であった。
「ここが、ボイルの武器を直してる鍛冶屋?」
「うむ、私が昔からお世話になっている所だよ。腕は確かさ」
フェリル司祭が言うには、ボイルの武器防具は全てここで仕入れたという。
「彼は…最初、扱いきれそうに無い道具を持ち出してきたからね」
苦笑交じりに話すフェリル司祭の言葉は、ジェシには驚きだった。
ボイルは完璧な男というのが、ジェシの中での常識だった。
いきなりメテオを打ったとしても、あぁ彼なら…と、納得したかもしれない。
「ははは、それは違うよジェシ。完璧な人間など、存在しない。そう見えるのは、その人がそれまでに様々な失敗や
成功を繰り返してきた結果なのだからね」
「…そうね、認識を改めるわ」
「もっとも、君の言いたいことも分からなくも無いがね。なにせ、彼にはそういった雰囲気がある」
はははと、フェリル司祭は笑って言う。

402 名前:復讐の女神 投稿日:2006/07/08(土) 00:58:42 [ o5cm4Aqs ]
「ねぇ、ここは鍛冶だけじゃなくて、武器の販売もしているの?私も見たいわ、彼が出てくるまでいいかしら?」
「さて、女性の買い物は時間がかかるというが…そうだな。ついでだ、君のことも店主に話しておこう」
いたずらっぽく笑いながら、フェリル司祭はジェシを店の中へと案内する。
中に入ると、大小様々な武器が並んでいた。
一目見て、一品が揃っていることがわかる。
店の奥には、鎧もいくつか目に付く。
近寄ってつなぎ目などを確かめてみるが、量産品によくある雑な仕事ではなく、硬く補強されている。
これだけ丁寧な仕事ができる職人なら、腕は確かだろう。
「なんじゃ、客が来ていたのか。悪いが、あんたに売る品は……メルティシ…ア?」
ジェシが振り向いた先、そこには目を見開いてジェシを凝視する老人がいた。
日に焼けた顔に、煤で汚れたつなぎをつけている。
察するに、この店の職人だろう。
「トバリさん、違いますよ」
トバリと呼ばれた老人に答えたのは、フェリル司祭だった。
「彼女はジェシ、メルティシアの娘です」
「どういうこと、おじ様。母の知り合いなの?」
「あぁ、紹介しよう。ジェシ、こちらはこの鍛冶屋の店主であり職人でもあるトバリさんだ。昔から懇意にさせて
もらっている」
「わしの説明はいい、この姿を見りゃわかるじゃろうが。それより…」
「こちらはジェシ。メルティシアとSDの、忘れ形見です。現在は、冒険者として生活しています」
「ジェシです、はじめまして」
「あの二人の娘、か…わしの名はトバリ。見ての通り、鍛冶職人じゃ」
ゆっくりとジェシに頭を下げるトバリに、ジェシは戸惑った。
「あ、あの…?」
「お主の両親には、大変世話になった。彼らが生きているうちに、恩を返せなかったのが、心残りじゃったよ」
昔を懐かしむように、トバリはジェシの顔を眺める。
その瞳には、一体何が写っているのか。
「ほほう、その話は初耳ですな。なかなかに興味深い。ご老公、詳しい内容を教えていただけ無いだろうか?」
軽くて丈夫そうな鎧を着て、その上からマントを羽織ったボイルがやってきた。
マントで隠れているのもあるが、目立ちすぎず、しかし実用的なデザインだ。
なるほど、本当に遊びで冒険をしているわけではないようだ。
「ふん、お主には関係ないわい」
「ボイル君も、準備ができたようだね。それでは、出発しましょうか」
フェリル司祭の合図に、ジェシとボイルは頷く。
「それでは、トバリさん。行ってきます」
トバリは、3人を見回し、店の奥へともぐってしまった。
店を出て、フェリル司祭は荷物を降ろした。
何を始めるのかと思うと、急に祈りだす。

403 名前:復讐の女神 投稿日:2006/07/08(土) 00:59:16 [ o5cm4Aqs ]
その、朗々たる声は、この場が急に神殿になったと誤解してしまうほどである。
そして。
「おおおおおおお!」
気合一閃、フェリルの背中に光が収束し、固体化する。
空を自由に駆けるための翼だ。
白く輝く一枚一枚の羽に、太陽の光が金の輝きとなってほのかに宿っている。
だが、その羽は対では無い。
片翼が、まるで途中から切り取られたかのように、短くなっていて、その先からは血が滴り落ちているのだ。
「ふむ、この姿になるのも久しぶりだな」
フェリルは、羽をバサバサと開閉し、感触を確かめだす。
そうしていると、最初こそ翼から滴り落ちていた血も、赤き羽となって流れ落ちるのをやめた。
「おじ様、その姿は…」
ジェシの目は、驚きに開かれていた。
ジェシとて、冒険者である。
天使が地上での職業として、ビショップをやっている姿などいくらでもみてきた。
彼らとは、何度かいっしょに冒険をしたこともある。
しかし、フェリルとは幼少の頃から長い間一緒にいて、一度も天使の姿をみたことがなかったのだ。
ジェシは、てっきり純粋な人間のビショップだと思っていた。
「そういえば、ジェシには見せるのは初めてだったかな?ふむ、これだけ長い間一緒にいて、一度もなかった
というのも変な話であるな」
「そう…ね。考えてみれば、おじ様と一緒のときは大抵平和な時でしたものね、どちらでいようと関係ないなら、
負担の大きい天使の姿は取っていないはずだわ」
ジェシは、頭を振って切り替えることにした。
たしかに、今までこのことを勘違いしていたのはショックだった。
だが、ただそれだけ…隠されていたわけではなく、勘違いしていただけ。
「でも、そうなると移動がずいぶんと楽になるわね♪」
「ははは、まぁ私の力では7人までが限界だがね」
おろしていた荷物を再び手に取り、フェリルは二人を見る。
「さぁ、行こう。怯えから救いに」

404 名前:復讐の女神 投稿日:2006/07/08(土) 01:01:34 [ o5cm4Aqs ]
>ボイルの後ろに専属メイドが控え、ビシュカを睨んでいるのが
×ビシュカ
○ジェシ
です。
メイドが主人睨んでどうするんだ…orz
それにしても、何も考えずに小説書いていると、無駄に長くなるなぁ。

405 名前:復讐の女神 投稿日:2006/07/08(土) 01:07:07 [ o5cm4Aqs ]
↑の直しは>>362です。
焦っている自分乙。

>>ここに書かれている皆さん。
毎回、感想書いていなくて、申し訳ないですm(_ _)m
皆さんの小説は、全部読ませてもらっています。
ただ、昔から感想文とか…そういうものに弱くて…。
これからも、皆さんのすばらしいお話、期待しておりまする。

406 名前:ドリーム 投稿日:2006/07/08(土) 09:03:58 [ TQwpk2X. ]
>ゆずみかんさん
オジい様渋くてカッコイイですね(ぇ、これからルイスは復讐に出るのでしょうか、小さい体で頑張って欲しいです。

>双月さん

ザルグいいですねぇ、戦場の男って感じです。ミルスはかわいすぎかもw
剣士に向いてないさらなるお坊ちゃんって感じです(ぁ

> 復讐の女神さん
フェリル様が良すぎですね、ジェシとのコンビがマッチングしていると思います。
ボイルにも頑張って欲しいです。

407 名前:ドリーム 投稿日:2006/07/08(土) 09:16:42 [ TQwpk2X. ]
            姫の瞳

キャラクター紹介

●シルビア・ロール ⑫歳
この作品の主人公、一国の姫であり、容姿端麗であるが心は結構腹黒い。
世界征服のために毎日努力している。

●リィニー・マリネスク⑫歳 
一国の王子であるが気が弱い。けれど根はしっかりしていて頼りになるときなる。

●ガブリエル・ウィン・マックロード21歳
もうすぐ登場、この作品のプリンス(ぇ、圧倒的な強さを持ちその腕は神にも匹敵するとまで言われている人物本名は不明。
最初はウィン・マックロードと名乗っていたらしいが、道行く人にその強さからガブリエルという異名をつけられ今に至る。

408 名前:ドリーム 投稿日:2006/07/08(土) 09:21:21 [ TQwpk2X. ]
第一話
>>389

あれからしばらくの時間経った。
彼女の話は何時もと同じ、世界征服の話だ。
この話はもう聞き飽きたけど僕は不思議と嫌な感じはしなかった。
べ・・別に彼女が好きとかそういうのじゃなくて、、、えーと。
そんな事はどうでもいいんだ。とりあえず嫌じゃないならとことん付き合うってことで。
「でねー、ってリィニー聞いてる?」
シルビアは体を乗り出して顔を覗く。
「ってうわぁっと」
少し驚いて距離を取る。
ちょっと不満そうな顔をするが特に気にはしてないようだ。
「それにしてもー」
シルビアはやれやれと言った感じで頭を振る
「私のフィアンセがこんな奴なんてなぁー、親同士の決めた結婚ってイヤよねー」
リィニーの心にズキッと小さな傷がついた。
「僕は別に、、、シルビアのことは嫌いじゃないし、、」
赤くなるリィニー。
「、、、私も、、ホントは、、」
お互い赤くなる。

・・・沈黙

「プッ、、」
と思いきやシルビアの口から以外な声が飛び出した。
「何赤くなってのよーマセガキめー」
くしゃくしゃと頭を擦る
リィニーはあっけに取られポケーとしていた。

ガサッ
小さな物音が立つ
もちろんシルビアは普段から逃げているだけあって感覚はするどい。
その音を聞きすぐに逃げる体制に入っている。
万が一執事だったら速攻で逃げないと捕まってしまうに決まっている。
リィニーもそういう経験も豊富?なのでとりあえず逃げる準備はする。
が想像とは違っていた。
そこにはするどい槍を持ったリザードマン達の群の姿があった。

409 名前:ドリーム 投稿日:2006/07/08(土) 09:33:51 [ TQwpk2X. ]
「ありゃー、、良し、リィニー私のために逝ってくれ!」
「ええ、、」
 さすがにシルビアに真顔で言われてしまうと引くわけには行かない。
「よ、、よーし」
 ジリッジリッとお互いの距離を縮めて行く。
「え・・えーい!」
ドカッ。
短い音と共に吹っ飛ばされるリィニー。
「やっぱり敵うわけないか」
 きっぱり言ってしまう、シルビアだがその目に余裕があるわけではなかった。
やれやれ、どうしたもんか、リィニーも役に立ちそうにないし。
敵さんはどうやら考える時間をくれそうもない、ということはやっぱり。
「逃げる!」
 短くそう言い放つと速攻後ろを向きとりあえず走った。
 リィニーを置いて。
「ま、まってー」
 そんな声が聞こえた気がしたが、とりあえず気にしない。

 何分か走ったがとりあえず追ってくる気配はないようだ。
「やれやれ」
少し疲れたため木に寄り掛かり息使いを正す。
「はっはっ、、ふぅ」
何時も逃げてるだけ合って、体力は底なしのようだ、すぐに激しい鼓動は収まり冷静になった。
しかし所詮それは子供の中での話。
モンスターと比較するには訳が違ったようだ。
 湖の中に潜みながら進んできたリザードマンに気がつくはずもなかった。
ザプッ
その短い音が立った時ようやく気がついた。
しかし時すでに遅く、周りはリザードマンの群が一面広がっている。
 逃げ道はないだろう、そう彼女は直感した。
しかしここからが彼女の本領発揮だった。

410 名前:ドリーム 投稿日:2006/07/08(土) 09:52:47 [ TQwpk2X. ]
 ふっふっふ、お前等良く聞け!、私は世界征服をするために自らを鍛え上げた!
鍛えて鍛えて鍛え上げた末にようやく分かったのだ!
 私には魔術しかないとな、、、クックック
しかと見るが良い!我が魔術の力を!
「ケルキリエニウム・・・あぅ!!」
 もちろんリザードマン達に人間の言葉が通用するはずもない。
詠唱?中に槍でツンツンと突かれてしまった。
「お、おのれ、、卑怯だぞ!ヒーローが必殺技を出す時は悪者は黙って喰らうものだ!」
 人間が聞いてもアホな事を言ってる思われるだろう、けれどリザードマン達には意味すら通じていない。
(私、だめなの?世界征服するのに、、こんなところで)
 そんな考えが過ぎった刹那だった。
 剣がシルビアの目の前を通った。いや、恐らくシルビアの目には通った事すら気がつかなかっただろう。
それと同時に青い髪をした、がたいの良い戦士がそこにいた。
 手には巨大な大剣を持っており、がっしりとした筋肉、まるで鎧とも取れるであろう。
顔は髪が乱れているため良く見えない、戦士にしては無駄に長い髪であろう。

 誰、、?あの人、とりあえず助けてくれたのかな?
「・・・」
 戦士は何も喋らず剣をしまい、背を向けて歩き出した。
(助けてくれたんじゃないんかい!)
 しかし、仲間がやられたとあってリザードマン達がそのまま帰すわけがなかった。
瞬く間に囲まれてしまった。
「邪魔だ、仲間を思う気持ちがあるのなら、彼の分まで長生きしろ」
 小さく、しかし力強い声はシルビアに安心感と同時に畏怖の心を感じさせた。
「クキャア!」
 人の言葉を知らないのが運を尽きというものであろう。
 次の瞬間リザードマン達は地に伏せていた。
恐らく彼らは自分が死んだ事すら分からなかったのだろう。
 シルビアはそれをじーっと見ているだけだった。
「また、罪を重ねた。お前等の分、俺が背負おう」
 小さくそう呟くと背を向け立ち去ろうとする。
「待ちなさいよ!」
しかしそれを静止する声が聞こえた。
 声の主は当たり前だがシルビアだった。
これが運命の始まりだった。


                            第一話長髪の剣士fin

411 名前:南東方不勝 投稿日:2006/07/08(土) 13:11:25 [ DJugzF9. ]
>>359
食堂に入った俺はミシェルに適当に席をあてがい、彼女の向かいの席に座った。
「さて…、お前を連れ去ろうとした奴の事はゲイルとヒースが来てから聞くとしてだ。
 俺個人として、お前に聞きたいことがある」
「ん…、あんたの個人的な質問?ハハァン。言っとくけど、スリーサイズは最重要機密よ」
「ガキの体に興味はねぇ」
「速攻で一刀両断!?少しはアタシのノリに合せなさいよ!
 アンタの聞きたいことを話してあげるんだからさ!!」
けらけらと、俺をからかうように返事を返してくるミシェルに対し俺は、
にべも無くその言葉を断った。目の前の少女は、俺のその反応が気に召さないようだが。
「俺にそういった事を聞かせたいなら、もう少し育ってからにしろ、小娘が。
 大体お前には色気が足んねぇんだよ、圧倒的にな」
「ムキー!!!」
おっと、少しばかりからかい過ぎたか。まぁ、財布をスラれたんだ。
この位の事なら罰は当たらんだろ。
「もういい、アタシ帰る!」
「あぁ、悪い悪い。そう気を悪くするな。
 それに、帰るといったって船の最終便はもうとっくに出ちまってるぞ」
肩を怒らせ食堂を去ろうとする少女を笑いながら引止める。
「うぐ…」
少女もその事実を突きつけられ、苦虫を潰したかのような顔つきで席に戻ってきた。
「さて、帰るのを思い止まってくれて感謝する。で、俺が個人的に聞きたいことについてだが…」
「フン。なによ…、改まって?」
そういって、ミシェルは不機嫌な表情を崩さずに俺を見据えた。
「簡潔に聞く。お前、どこで『古代エルフ言語(セーマエルヴン)』を習得した?」
「は、なんのこと?ていうか、そのせーま何とかってなに?」
「なっ…!?」
少女の反応に俺は驚愕した。
「何って…、お前が術を使う時に言ってる言葉のことだ」
「あぁ、あれのこと。あんなの、物心ついたときには普通に使えたわよ。
 そういえば、紅爺も驚いてたわねぇ。ねぇ、あの言葉ってそんなに値打ちのあるもんなの?」
「………」
開いた口が塞がらない。
目の前の少女は自身が扱っているモノに対して、一切の知識を持ち合わせていなかった。
いや、それどころか、現在の魔術師達が束になっても制御しきる事ができない程の魔力を
この少女は生まれつき自在に操っているのだ。
奴らが少女を狙ったのは、この類まれなる魔術の才をどうにかするためだったのだろうか?
「お前は…、本当に何も知らないのか?」
「だからそういってるでしょ、紅爺ならなんか知ってるかも知れないけどさ」
驚きに染まった俺の言葉に対して、ミシェルは自分の髪の毛を玩びながらうんざりした声色で応えた。
沈黙が俺とミシェルの間に訪れる。しかし、それも束の間。

ガチャリ…

食堂の扉が開き、
「お待たせしました、ジャックさん。事が事なので、姉さん達も一緒でいいですよね?」
「ジャック、遅くなるのなら遅くなるって一言言って欲しいですわ。
 夕飯の片づけが進まなくて大変ですのよ!」
「兄貴〜、その娘に財布スラれたんだって?」
「で、その娘が連れ去れそうになるのが見過ごせなくて助けた。ほんと、お人好しね。ウルフェンは」
「まぁ、それがジャックの性格やし。今更言うても変わらんやろ。実は、ジャックは年下好きとかなら
 おもろいんやけど」
「ジャック、事の顛末はゲイルから聞いた。しかし、またも始原魔か…」
頼りになる仲間(ダチ)が姿を見せた。
「まぁ、そんなところだ。しかし、なぁ…」
ゲイル以外の4人の姿を見て俺は一人、心の中でこう言った。
(せめて、返り血くらい拭いてきてくれ。っていうか、ほんとに殺ったのか…?)

412 名前:南東方不勝 投稿日:2006/07/08(土) 14:26:47 [ DJugzF9. ]
>>闇鍋さん
テイマさん、なにげにもんの凄い牙渡してらっしゃるorz
家の運極娘はそんな良品未だに出したことはありません

>>見学者さん
なんか、シーフのやばい面がちょっとばっかし表に出てしまった模様。
また、話しに関わってくるであろうレッドアイの影…。
続きはどうなるのでしょうか?

>>タルタルさん
姐さん、相も変わらずゴーウィングマイウェイですなぁw
さてさて、姐さんとよし子の生活はこのまま平穏に過ぎていくのでしょうか?
とりあえず、次回予想の彼らが好き勝手すぎて大好きですb

>>ドリームさん
新作キター
っと、これまたゴーウィング(ryな姫様ですなぁ。
続きを楽しみにしています

>>双月さん
お久しぶりです。
相変わらずの小説の上手さですね。
さて、突然の一ヶ月十万円生活に困惑するミルス嬢。
果たして、ザルク氏の思惑とは?

>>ゆずみかんさん
う〜む、ドラゴンの上に乗っていた黒鎧の二人組みが気になりますねぇ。
さて、両親を殺されてしまった兄妹はこれからどうしていくのでしょうか

>>復讐の女神
ボイル氏、意外と真面目な人なんですね。
そして、ジェシの両親を知る鍛冶屋のおっさん。
続きが気になって仕方がありません。

413 名前:ゆずみかん 投稿日:2006/07/09(日) 23:51:31 [ 0Q3GCQU2 ]
第1話>>353>>354
第2話>>365>>366
第3話>>385>>386
第4話>>399

両親を失った俺達は近所に住むレベッカおばさんに引き取られた。おばさんはとても元気が良くて(良すぎて)
大雑把で母ちゃんとは正反対だった。その元気のお陰でエミルも少しずつだけど元気を取り戻してるみたい。
────それから5年後────
俺は13歳、エミルは11歳になった。ロマ村はあの事件以来特に変わったこともなくいつものように変わらない1日1日が過ぎていた。
しかし今日はいつもとは少し違った。

「おーい、みんなぁ〜誰かが村に向かって歩いてくるぞ〜」
「おーおー久しぶりの客人かぁ〜」
村人がそれを聞いて次々と集まってくる。このロマ村ではゾゴム山脈に探検しにくる冒険者が泊まりにきたりするのだ。
しかし今ではゾゴムにいるモンスターは強く、簡単には辿り着けないのでゾゴムに来る冒険者は減り、
ロマに来る冒険者はほとんどいなくなっていたのだ。
ルイスもエミルと一緒にそれを見に行った。エミルはレベッカおばさんの影響もあり前ほど人見知りをしなくなったばかりか気が強い女の子になっていた…。
ざわざわと人ごみが凄い中ルイスとエミルは背が低いのを利用してスルスルとみんなの体を抜けていった。遂には最前列まで来れた。全員わくわくしながら冒険者が訪れるのを待つ。そして遂に村の外から人影が現れた。
だんだん近づいてきて表情も見えるくらいまで来た。着ている鎧、そして背中に背負っている大きな剣からして職は戦士だろう。
その男は出迎える村人の数に圧倒されて苦笑いをしていた。
「み、みなさん初めまして…。」
男が一礼すると村人は一斉にどうやってここまで来れたんだ?どこから来たんだ?
などと男を質問攻めにした。ルイスはしばらくこの男がここから動けないのを悟りここから離れることにした。
「エミル行くか……」
「だね…」
2人は家に帰り自分達の仕事をすることにした。レベッカおばさんのところに来てから、2人は仕事を持たされた。
ただの雑用なのだが…。
しばらくしてレベッカおばさんが意気揚々と家に帰ってきた。その隣にはさっきの冒険者がいた。

414 名前:ゆずみかん 投稿日:2006/07/09(日) 23:54:37 [ 3ebeVURg ]
「ああ、この人はさっき村に来た冒険者さんでね、話し合いの結果私のところに来ることになったんだよ」
ふふっと上機嫌なレベッカおばさん。恐らく強引に連れてきたのだろう。
でもいつも3人だし冒険の話など聞けるかもしれないということなどからルイス達も大歓迎であった。
「ささ、あんた達!自己紹介しなさい」
「初めまして、ルイス=ノックスです」
「エミル=ノックスです」
「初めまして。僕はロバートといいます。呼び捨てでいいよ」
とにっこり笑った。笑うととても爽やかであった。レベッカおばさんは昼食の準備をすると言ってキッチンに向かった。
おばさんが見えなくなるのを確認すると
「ロバート、何で家に来ることになったの?」
エミルが声を潜めて言う。
「あ、俺もそれ気になる!!」
『シーー!!』
エミルとロバートが声を合わせて言う。
「あ、ごめん……」
「そうだね、何か強引に決められたというか…。村のみんなも逆らえないみたいだったし」
ロバートは癖なのか苦笑いをする。
「やっぱりねぇ、レベッカおばさんには誰も逆らえないもの」
納得、とエミルが手を合わせて言う。
「ロバート、今日の夜にでも冒険の話聞かせてよ!」
ルイスが目を輝かせながら言った。
「分かったよ。でも僕は君のお父さん達ほどすごい武勇伝はないけどね」
「え?父ちゃんのこと知ってるの?」
「ああ、君のお父さんとお母さんは冒険者の間ではとても有名だよ。レベッカさんから君達があの2人の子供と聞いたときは正直驚いたよ」
『へぇ〜』
子どもの柔軟性とはすごいものだ。ものの3分でもう2人はロバートに打ち解けた。
「おーい、昼食ができたよー!早くおいで!」
「それじゃあ食べに行こうか」

その昼食はこの5年間、一度も食べたこともないような豪勢さであった。
(うわ……)
それには滅多に食卓に顔を出さない肉の料理が並んでいた。ルイス達はゴクリと唾を飲む。
「ちょっと張り切りすぎちゃったかね…」
確かに昼食には多すぎる量だ。
「いえいえ、こんなに豪勢に振る舞っていただくなんて、有りがたくいただきます」────幸せな日々 Fin

415 名前:ゆずみかん 投稿日:2006/07/10(月) 00:16:25 [ SUGQUYhM ]
だんだん話が脱線してきた気もします…
では感想を

>>かーどさん
何だかとても悲しく切ない気持ちになる重いお話ですね…

>>タルタルさん
あねさんシリーズはいつも壺りますw
特に「よし子、行くわよ」「グアアア」の流れが好きです。

>>双月さん
戦闘シーンの描写がすばらしいです。
わんこが言っていた台詞は何か意味がありそうですね。

>>南東方不勝さん
まだ過去ログからの話全部読めてないですがとても面白いです。

>>復讐の女神さん
おじさんがとても渋くてイイですね。
いよいよ出発ですね。これからの展開が楽しみです。
>>ドリームさん
新しいお話ですね。
姫メインは斬新ですね…もう1人のリィニーがかわいいですw

416 名前:見学者 投稿日:2006/07/10(月) 09:41:00 [ ww4BM0IA ]
コンニチハ。
遊ぶ時間が欲しい見学者です。
 一日が24時間。長いと思えば長いし短いと思えば短し。

>>380
 面白そうですが私にはちと時間がなさそうです orz
 名の通り見学することになりそうであります。

>>382
 使わせていただきました。
 甘々自動感想になぜかホロリと涙が出たのは何故でしょうか……。

417 名前:見学者 投稿日:2006/07/10(月) 09:41:26 [ ww4BM0IA ]
1st>>267  2nd>>268  3rd>>309  4th>>310 5th>>342
6th>>343  7th>>376  8th>>377

 武道家は何気ない口調で言うと、シーフに視線を投げかけた。
 ただ単に世間話をしているような武道家の口調ではあったが、彼のその一言でシーフの様子が変わったのは目に見えていた。
「追放天使サマの言ってた『REDSTONE』に絡んだ集団らしいんだ。その連中は……えぇと? なんとかって国の援助か何かを貰いながら活動してたとかなんとか?」
「……」
 サマナーには難しい内容の話らしい。それに口出しできる雰囲気じゃない。
 先ほど消えたはずの"違和感"が再びサマナーの感覚を逆なでしている。
 感じるはずの無い、怖さという名の違和感が。
「このブルンネンシュティグにも妙な噂ばかり目立つし、やたらモンスターの連中が喧嘩っ早くなったのももしかしたら関係が、」
「さぁ? 知りませんね」
 武道家の言葉を遮ってシーフはそっけなく言い放った。
 瞬間に"違和感"がサッと吹き消された。
「まぁ噂の一つくらいなら耳にしたことがありますけどね。なんと言いましたっけ……。あぁ、そうだ」

 そのレッドアイの頂点に立つ者が死んだ、と

「へ?」
「まぁ機会がありましたらブリッジヘッドにでもまた戻って確認してきますよ」
 所詮は噂ですからね。
 シーフはそう付け加えると地面スレスレまで伸びたマントを翻し、踵を返した。
 立ち去ろうとするシーフの肩を慌てて武道家が追いかけ、引き寄せる。
「や、ちょっと待てよ。何、誰が死んだって?」
 迷惑そうな顔をあからさまに表に出しながらシーフはさも面倒くさそうな語調を目の前の兄にぶつけた。
「だからそのレッドアイの会長だかボスだか知りませんが……。その人物が、ですよ。一ヶ月だか二ヶ月だか前に聞いた話です」

418 名前:見学者 投稿日:2006/07/10(月) 09:41:51 [ ww4BM0IA ]
1st>>267  2nd>>268  3rd>>309  4th>>310 5th>>342
6th>>343  7th>>376  8th>>377

 怪訝な表情で武道家は何か言いかけたが、何を思ったか引っ込めてしまった。少し考える仕草を見せてから、武道家はふと口にした。
「で、こんな小さい娘連れてお前ドコ行くの」
「貴方の話はまるでツギハギみたいですね。――リンケンへちょっと配達物があるので届けに行くのですよ」
「ふぅん……。でももう日暮れだぜ?」
「アリアンの宿屋にお世話になるつもりです。翌日に午前中にはリンケンに着くかと」
「やっぱこの娘と同じ部屋なわけ?」
「貴方は一度、山へ篭って雑念を捨ててきなさい」
 ため息を洩らしながら呆れ顔で言った。
「私達はもう行きますよ、御機嫌よう。次に何かお話してくださるときは順序良くお願いしますね」
 シーフは帽子を外してペコリと頭を下げると、サマナーの肩に優しく手を置いてテレポーター前へと誘う。
 手が肩に触れたとき、サマナーはビクッと身体を一瞬強張らせた。
 なんだろう、この不安……?
 初めてシーフに会った時、噴水まで探しに来てくれた時。
 何も変わらないシーフの態度と穏やかな仕草だが、どうも武道家を睨むあの双眸が忘れられない。
 サマナーは肩越しに振り返った。武道家はまだ何かを考え込んでいるらしく、シーフの皮肉にすら耳を傾けずに俯けた顔を持ち上げようとはしなかった。
 二人が街角から姿を消した後になって、ようやく武道家は顔を上げた。
「妙だな……」

419 名前:タルタル 投稿日:2006/07/10(月) 14:24:58 [ hfUQyDik ]
「あねさんシリーズ」
第一話 >>248 >>249 >>251
第二話 >>258 >>259
第三話 >>326 >>347 >>378 >>379
第四話 >>388 >>393
第四話 3

「よし子、狩り行くわよ」
今日の仕事はグレゴリーから依頼されたもので、ハノブ高台望楼にいるネクロマンサー(以後ネクロ)を調べてきて欲しいということだ。
ネクロというのは、堕落召喚士が魔術によりモンスター化したものを言う。故に人間としての知能とモンスターとしての強さを持ち合わせる。
寿命も人間に比べれば長く、長く生きたネクロはそこらの魔物などよりはるかに強いといわれる。そのモンスター化の理由が魔術ではなくRSの力によるものではないか?という噂があるらしい。それを確認してきて欲しいそうだ。
が、確認ってネタキャラのあねさんじゃ力で太刀打ちできないのは眼に見えてるのにも関わらず、間違いなくあねさんの性格から言ってぶん殴って聞き出そうとするし。事実狩り行こうって言ってるし。
人々に話を聞くとか、過去の文献調べるとかいろいろあるでしょうに。
「さて、お弁当もって、お菓子もって、水筒もって〜」
それじゃ遠足だし。
「さあ、ネクロ狩りに行くか」
だから狩りじゃなくて調査なんですけどんですけど。

まあ、なんていうかさすがあねさんだ。ネタキャラでありながらネクロを倒してしまうのだから。
すでに四匹。問題は倒し方だ。
「グォォォ。仲間ノ仇トラセテモラウゾ。この貧乳女メ」
そのときどこからかネクロが現れた。
ぶぢっ。
あ、またあねさんがきれた。
「アアー!!、頭ガー」
「……あんた、RSって知ってる?」
あねさんが貧乳といわれながら瞬殺していないのがさすがだ。一応仕事だからな。
「知ラナイ、知ラナイ、ダカラ助ケテクレ。頼ム……」
ネクロは眼に涙を浮かべ、そう呟く。
ぐちゃり。いやな音とともにネクロマンサーの頭部は握り潰された。
まあ、そんな訳で虐殺しているわけだが、あねさん、あんまりきれると体に悪いですよ。
「まったくゆっくりお弁当も食べられないじゃないの、ねえ、よし子」
「グァァァ」
そう言ってあねさんはネクロやらその配下の骸骨やらがいるここにシートを敷き始めた。ここで食べるんですか?というよりネクロ握り潰した直後でよく食べようという気になりますね。
よし子もよし子で相変わらずゆっくりとシートに上がる。優しげな眼であねさんに擦り寄る。
「さあ、今日のお弁当は何かな〜」
今日は弁当の定番、サンドイッチだ。中身は卵とハムとレタス。
「はい、あーんして」
「グァァ」
よし子って亀のくせに雑食らしくあねさんと同じものを食べる。腹をこわしたした様子はない。
「オ前ラ、馬鹿ニスルノモイイ加減ニシロ、死ネ、人間ガ」
再び現れたネクロはこれまでのとは少し違っていた。まず大きい、二回りほど。それに雰囲気も今までの者とは違う。重みがある。おそらくリーダーだ。
そのネクロは言葉とともにその拳を振り下ろす。間一髪であねさんはよし子を抱え後退する。そして空を切った拳はそのままそこにあったサンドイッチを押しつぶした。ああ、朝早く起きて作ったのに。
「ふっ、なめんじゃないわよ」
そう言って体勢を崩したネクロの顔面をぶん殴った。
「キカンナ、人間ガ」
が逆にネクロにつかまってしまったあねさん。その大きな手はあねさんを簡単に握りつぶしそうだ。
私は反射的に飛び掛っていた。ネクロは驚いたようで一瞬対応が遅れる。私は迷うことなく顔面に飛び掛り眼に喰らい付いた。
「グァァァァ」
ネクロはあねさんを放し、眼を押さえる。
「ふう、助かったわ。ヘッジ、よし子をお願い。さあ仕切りなおしよ。見せてもらおうじゃないの、ネクロのリーダーの力をやらを」
あねさんはファイティングポーズを取る。
「私ヲ本気ニサセタナ。死ネ、虫ケラガ。ファイヤーストーム」
ネクロの手から火炎が噴出した。その火炎は一直線上に放たれた。超高温の炎は当ったものを焼き尽くす。しかも早い、あねさんの回避が一瞬でも遅れていれば危なかったかもしれない。
「当たらなければどうということはないわ」
あねさんは細かく動き回り、隙を見せない。焦ってネクロがファイヤーストームを放ったときは横面を殴りつけた。
が相変わらずきいた様子はない。あねさんは再びネクロから離れた。
それが数回続いた。お互い決め手がなかった。
「グゥ、コザカシイヤツメ」
「あんたも相当しぶといわね」
二人は中距離を保ちお互いの出方を伺っていた。


「ネクロマンサーのくせにネタキャラ一人殺せないとはな。役立たずは黙って見ているがいい。ディスプレイスメント」

420 名前:タルタル 投稿日:2006/07/10(月) 14:30:47 [ hfUQyDik ]
「グァァ」
突然ネクロマンサーが声を上げた。
そして静まり動かなくなる。どうしたのかとあねさんが近づくと突然あねさんを殴りつけた。あねさんの体はおもちゃの様に吹っ飛んだ。
「てめぇ、あねさんを」
馬鹿犬は飛び出していた。
が簡単に払い飛ばされる馬鹿犬。消滅はしないが動かなくなった。
あねさんも所に行きたいのは山々だが、私が飛び出しても同じ、か。
そんな私を尻目に止めを刺すためかあねさんの方に向かうネクロ。
「ここで死ね、セスソ」
「この化け物がっ」
どうすることができなくても、このまま見ているわけにはいかない。私はただ突っ込んだ。
ネクロの巨大な手が待ち構えていたように顔面に現れた。
どごぉぉん。低い重い音が響いた。
が気づくと、目の前にはよし子がいてネクロの拳を体中で受け止めていた。あまりの力のためかその甲羅にはひびが入り、割れかけていた。
確か亀は甲羅がないと死んでしまうはず。
「な、何だと?」
よし子の甲羅が割れどこに入っていたと思うような大きな二対の赤い翼が現れた。それはゆっくりと大きく広がっていく。
ネクロは驚いたように固まっていた、あねさんは動かず死んでいるのか気絶しているのかわからない。
よし子の変貌は止まらない。
「我らは成長するまでの間、亀の甲羅に入り力を蓄える。通常の生物と違い少しずつは大きくならない。力をため一気に変態する」
低い声だった、が重みがあり、力強い。
「変態の時期はそれぞれに異なる、私は今がそのときだと思った」
「こ、これは」
よし子は完全に甲羅から飛び出した。大きさは目の前のネクロとそう変わらない。翼がある分大きく見えるが。体形は人間と同じだ。だがその肌には真紅の鱗が一面に生えていた。
手や足のツメも人間に比べるととても大きい。なにより違うのは頭部だ。まっすぐ後ろに生える二本の角。大きく突き出した牙。眼は細く、睨み付けているようにも見える。
人型だが、その姿間違いなく竜だった。今までと同じなのは目元だけだ。赤い翼に真紅の体か、偶然か必然か。全身真っ赤のあねさんと似ている。
「よし子なのか?」
「ここは私に任せ彼女を連れて逃げろヘッジャー」
そういってよし子は片手でネクロの頭部をつかむ。
私は言われたとおりあねさんの所に行った。あねさんは見た目に怪我はない様だが、口から血を吐き、苦しそうに息をしていた。
今はとにかく安全な所に行かなければ。
「くっ、本来竜の力はこんなものではないが、幾分早く目覚めすぎたからか力が及ばん、そう時間はないぞ」
ネクロはよし子の腕を払い飛ばし逆に襲い掛かる。よし子は体でネクロをとめていた。私はその隙にあねさんを抱き上げた。
「うおお」
よし子はネクロの右腕に喰らい引き千切った。
「ぐぁぁ」
「さあ、行け」
よし子は馬乗りになって押さえつける。
「待て、よし子も一緒に、あねさんが悲しむ」
「無駄だ、もう死ぬ。早すぎた変態が体に無理をかけたらしい」
私のほうを向いたよし子の口からは血があふれ出していた。しかも大量に。赤い鮮血は真紅の鱗の上でも赤く輝いていた。
「一つだけ伝えてくれ。もうこんなネクロに挑むような無理はするな、と」
が、よし子はそう言った。そしてふっ、と笑ってこう続けた。
「もう三十なんだしな」
三十ってまだ十分若いだろ、……馬鹿犬に続き、もう一人馬鹿が増えたか。
「必ず」
私は必死に走った。馬鹿犬も置いてきたが、あねさんさえ無事ならいくらでも召喚できる。
何とか外に出ると夕焼けがきれいだった。

病院。あねさんはなんとか命は助かった。今はもう体も落ち着いた。がまだ入院が必要で、通常の生活に戻れるのは先だが。
馬鹿犬は相変わらず、あねさんの脇に座っていた。
「旅出たい、ほらよく失恋した女がやるでしょ、自分探しの旅とか言って」
あねさんはいつもどおりのような口調で言った。目覚めてからあねさんはいつもどおりだった。少なくとも私の前では。
「だめですよ、あねさん。旅なんて体を直してからですよ」
「そうね、わかったわ。じゃあ少しでも早く体直さないとね」
「そうですよ、あねさん」
私と馬鹿犬は病室をでた。いつも家なら一緒に寝るが、病院に来てからは一人で寝たがる。もう子供じゃないんだなって、もう三十か。
三十か、もう馬鹿だけやっていられるほど若くない、か。
外に出るとちょうど夕焼け空が広がっていた。
きれいだった。

日も落ち、暗闇が包む深夜。
「竜の出現は予想外だったな。おかげでネクロとの戦闘中に死ぬという予定が狂ったではないか」
男があねさんの病室に突然現れた。長身で杖を持っていた。
「が、問題あるまい、戦争が始まってしまえばな。さあギャグストーリーはここまでだ」
男の放った一撃は寝ているあねさんを叩き潰した。

421 名前:タルタル 投稿日:2006/07/10(月) 14:32:31 [ hfUQyDik ]
「ボケのジョニーの次回予告ぅぅ」
『コーナー続いてるじゃない。よかったわね。あと主人公突然死んだね』
「本当によかったですよ。でも本当に死んだんですか? 明確に書いてないからもしかしたら生きてるかも」
『いや、この次回の原稿によると死んでるし違う主人公になってるし』
「わああああああー!!なにネタばらししてるんですかー!!」
『別にここで言ってることなんて誰も信じないって』
「それも、そうですね。じゃあ次回予想行きます
グレゴリー・ロッドは何者かに殺されたパートナーであるあねさんを魔術で禁忌とされている人体再生によって蘇らせようと試み、失敗した。
グレゴリーはその代償として貯めに貯めこんだ資金を失ってしまう。金欠で腹ペコの中彼はレッドストーンは不老不死と'莫大なる富'を生み出すということを思い出し、
全てを取り戻すため、一人レッドストーンの捜索を開始するのであった」
 次回「金欠の錬金術士」

422 名前:名無しさん 投稿日:2006/07/10(月) 17:05:36 [ b6Gnz/6I ]
物凄い久々に投下してみます。と言っても、前の続きじゃなくて突発的に新シリーズ。
多分中編くらいで終わります。メインのためのリハビリ兼、ネクロ実装間近記念って事で。

 ギルドには大きく分けて二種類ある。

 一つは普段から密な付き合いを持つギルド。
 メンバー同士の連帯感は強く、メンバー同士でパーティを組んで冒険をすることも多い。
 メンバーはギルドから濃密なサポートを受けることができる反面、自分の時間をギルドに裂く必要もあるため、義務や束縛も大きい。


 もう一つはもっと事務的なギルド。
 構成員は普段は完全にソロかあるいは野良のパーティで冒険を行う。
 仕事が無いときなどはギルドに連絡を取れば仕事の斡旋もしてくれるが、あくまで斡旋をしてくれるだけで前述のギルドのように皆で一つの仕事、と言うわけではない。

 自分の好き勝手にやれる反面、サポートも少ないのがこのタイプのギルドの特徴だ。


 そして、JJが所属しているギルドは後者に当たる。


 JJは基本的にソロで活動している剣士だ。
 野良と言えどもパーティを組むことなどめったに無く、ギルドメンバーとの交流もほとんどしていない。

 が、つい先日、ガタの来ていた武器防具一式を新調したため、一時的に資金がそこをついてしまった。
 そこで仕方なしに、手っ取り早く稼げる仕事の依頼が無いかと久々にギルドを訪れたのである。





「おう。何だ、生きてたのか」
「いきなり失礼な挨拶だな」
「いや、そんなことを言われてもな。半年以上連絡も無ければ死んだと思うのがこの業界だろう。
まあ、ウチのギルドはあまり連絡も取り合わないからな。死んだのか逃げたのか引退したのかの情報も入ってこないしな」


 案の定、久々に訪れたギルドではこんな会話がかわされる。
 とは言え相手もさすがはこんなギルドを仕切っているだけのことはあった。
 事情を話すと、即座に一つのクエストを斡旋してくれた。


「だが、な。ちょっと問題があって――」


 ギルドマスターは言いかけて口をつぐむ。
 JJは手元の依頼内容の書かれた羊皮紙に視線を落とし、彼が何を言いたいのか理解した。 


「既に一名確定。パートナー募集、か」


 どうやら、このクエストには先客がいるらしい。
 基本的にクエストは先着順だ。
 が、もし受けた人間が一人では手に余ると感じた場合は複数で挑むこともある。

 そして、先にも述べたがJJはソロメインの剣士。
 ギルドマスターが口を噤むのも無理は無い。
 が、JJとてプロの冒険者だ。その辺の事情は理解している。


「構わんさ。俺の方が遅かったわけだしな。その辺は文句言わない。
まあ、相手がどうにも気に入らないやつだったら、キャンセルして別のクエストを探せばいいだけのことだしな」
「なら良いんだが……
よし、じゃあ相手にも伝えておくから、そうだな……半日後にでも、いつもの酒場――じゃお前にはわからないか。南地区の踊るキクロ亭に来てくれ
店の前にその名の通りの看板が出てるからすぐわかるはずだ」
「わかった」


 そんな会話を交わし、JJはブレンギルド連合の詰合所を出る。
 とりあえずはポーションや解毒剤、食料などの買出しだ。

423 名前:名無しさん 投稿日:2006/07/10(月) 17:07:27 [ b6Gnz/6I ]
 夕暮れの街に鐘の音が響く。
 ギルドマスターの元を訪れてからおよそ半日後、指定どおりの時間にJJは南地区へとやってきていた。


「キアンクロップスの看板……あったな」


 踊るキクロ、というからもっとワイルドな看板を予想していたが、そこにあったのはタキシードとドレスを着て、手を取り合いながら踊る二人(?)のキアンクロップスの絵の描かれた看板だった。
 確かに踊ってはいるが……何かが違う。


「ま、まあ、とにかく入ってみるか」


 気を取り直し、店内に入る。
 普段JJはもっと安い酒場兼宿屋に寝泊りしているし、食事はそこや立ち食いの露店で済ませることが多いため、この店にははじめて入る。
 待ち合わせの相手の名前は聞いていないが、ギルド名で席を取ってあるということで、ちょうど傍を通りがかったウエイトレスを捕まえ、聞いてみる。

 ――何故かそのウエイトレスは、メイドの格好をしていた。


「あー、ギルド『SW』で予約がしてあるはずなんだが……メンバーと待ち合わせなんだ」
「はい、承っております。少々お待ちください――っと、こちらへどうぞ」


 手にした皿を手際よくテーブルに並べ、ウエイトレスが踵を返す。その動きに、JJは密かに感心した。
 このウエイトレス、体術の基礎が非常にしっかりとできている。
 皿を運んでいるときもそうだが、一つ一つの動作の切れがよく、また上体がとても安定している。

 プロの冒険者でも、ここまで身体の基礎能力をきちんと鍛えている人間はそうはいない。


「お客様、ギルドの方がお見えになりましたよ」


 ウエイトレスに案内され、店の最奥のテーブルに案内される。
 だが、そこに待っていたのは、予想もしていなかった異形の姿だった。





 反射的に体が動く。
 街中ゆえ、普段愛用している曲刀こそ置いてきているものの、腰にはサブウエポンとしても使える左手剣が下げてある。
 即座にそれを引き抜こうとして、だがそこでJJの動きが止まる。


「あ、お客様。スープのおかわりはいかがですか?」


 のんびりとした口調でウエイトレスがテーブルの異形に問いかける。
 だが、今の今まで彼女はJJの左隣に立っていたはずだ。

 それがいつの間にか、ちょうど異形とJJの間に立っている。
 JJの位置からは彼女の後頭部しか見えないため、どんな表情をしているのか見ることはできないが、きっと先ほどと同じ微笑を浮かべているのだろう。


 ――気づかなかった。いつ動いたのかも、どうやって動いたのかも。


 静かに戦慄するJJの前で、テーブルの異形がウエイトレスに言葉を返す。


『彼に聞いて。彼がすぐにここを出るのなら、私もこのまま切り上げます。彼が何か食べてゆきたいと言うのなら、私ももうちょっと付き合います』


 それは、くぐもって聞き取りにくいが、間違いなく人間の言葉だ。

 半歩右にずれ、ちょっとは冷静になった頭でJJは目の前の異形をしげしげと見つめる。


 座っているせいで詳しくはわからないが、身長はおそらく5フィートほど。
 背は低いが横に長い。と言うか、どちらかと言えば丸に近い。
 まるで道化師のようなだぶだぶのレザーのズボンに、目の覚めるようなブルーのチョッキ。
 そして何より極め付けなのが、冷たい金属で形作られた、絡繰の様なパーツを組み合わせてできた頭だ。


「着ぐるみ……?」
『着ぐるみとは失敬ですね。これは、れっきとした私達の部族の伝統衣装です』


 憮然と――文脈からそう判断した。表情は見えないし、声もくぐもっているため感情が読みにくいのだ――したように、着ぐるみが言う。


『それで、どうしますか。出発の前に何か食べておきますか? それとも、すぐに出発しますか?』
「と言うことは、やっぱりあんたがギルマスの言っていた、今回のクエストのパートナーってわけか」
『はい。D=Oと言います。クラスはネクロマンサー。よろしく、JJ』

424 名前:名無しさん 投稿日:2006/07/10(月) 17:08:00 [ b6Gnz/6I ]
 ちなみに、JJの本名はジャック=アンブロシア=ジュニアと言う。
 その名の通り、祖父であるジャック=アンブロシアの名前をもらっているわけで、本来はリトルJとでも言うべきなのだろうが、この年にもなってリトルも無いだろう、と言うことでJジュニア、即ちJJと名乗っている。

 このように、冒険者の中では本名ではなく通り名を使っているものも多い。
 それはJJの様に本名をちょっと変えたものであったり、「ウインド」や「ブリッツ」の様に名詞をそのまま通り名としたもの、果てには「せっちゃんファン」や「(・ω・)ω・)」の様にもはや訳がわからなくなっているものも存在する。

 察するところ、D=OもJJと同じく本名を略したものだろう。
 すると、Dはドニーかダニエル、あるいはダンと言ったところか。

 と、そこでJJの思考が止まる。
 名前の後、彼は妙なことを言っていなかったか?


「悪い、よく聞こえなかった。もう一度頼む」
『一度で覚えてください。私の名はD=O。クラスはネクロマンサーです』
「ネクロマンサーっ!?」


 あまりと言えばあまりの自己紹介に、JJも思わず声を上げた。





 しばらく後、ブルンネンシュティグ南大通り。


『まったく、貴方のせいで追い出されてしまったではないですか』
「悪かったよ。けど、いきなりネクロマンサーなんて言われたらなぁ」


 JJが不用意に叫んでしまったせいで、踊るキクロ亭の内部は騒然となった。
 一般に、ネクロマンサーといえばハノブ高台望楼等に住む、アンデットたちを統率している大型アンデットのことだ。
 冒険者たちの集まる酒場でそんな不穏な単語を言えば、それは大騒ぎになる。

 あのウエイトレスがとりなしてくれたおかげで何とか騒ぎは収まったが、雰囲気的にもはや食事を楽しむという感じではなくなってしまった。


「大体、俺はそもそも食うことすらできなかったんだぜ。あんたは俺が来る前に一通り食べてたんだろうが」
『貴方はまだお金を払っていなかったでしょう。私はせっかくスープおかわり自由の定食を頼んでいたのに、結局五回しかおかわりできなかったんですよ?』


 ぶつぶつ言いながらD=Oがずんずん進んでいく。
 その歩き方もどこか、喜劇チックというか、道化師めいている。


「で、そっちは準備はできてるのか? 俺はもうできてるから、あとは宿屋に寄って荷物を取ってくるだけだが」
『…………』
「飯は食ってたけど、準備はまだってことか」


 肩をすくめ嘆息する。


「じゃあ、適当に買出しに行っててくれ。俺は荷物取りに行きがてら宿屋で飯食ってくる」
『待ってください』


 言って宿屋に向かおうとするJJに、D=Oが制止の声をかける。
 その声は、相変わらずくぐもっており、表情も見えないままだが、どこか寂しさを含んだ声で、


『その、良いんですか? 私なんかと組んで。貴方は普段ソロで狩っていると聞きましたし……』
「別に。パーティを組まないのはめんどくさいから、ただそれだけだ」


 敢えてD=Oの意図とは違う答えを返し、そのまま宿屋へ向かって歩き出す。
 おそらく彼は、こう言いたいのだろう。

 自分なんかと組んでしまって良いのか、と。

 ネクロマンサーという自分の職業を気にしているのか。
 それでもクエストパーティで人待ちをしていたのは、やはり一人では心細かったのか。

 だったらまず、あのみょうちくりんな格好を何とかすればいい。
 まさか、中身はもっと見せられないようなものなのだろうか?
 ちょっと気になる。気になりはするが……


「本当、やれやれだぜ」


 肩をすくめ、誰にともなく言う。
 それは、あんなみょうちくりんな格好をしながらも寂しがりやなネクロマンサーに対してか、ソロ専門と言いながら今回のクエスト、久々のパーティにわくわくしている自分へか。

425 名前:名無しさん 投稿日:2006/07/10(月) 17:10:47 [ b6Gnz/6I ]
主人公はJJです。決してジ○ジ○と呼んではいけません。
パートナーはD=Oです。決してデ○オと(ry
あと、メイドの人は皆さんおわかりの彼女です。ええ。

しばらくROMってるうちに新入りさんもどんどん増えて嬉しい限り。
また感想書きの方もおいおい再開しますねぃ。
ではっ(ノ>ヮ<)ノシ♪

426 名前:ドリーム 投稿日:2006/07/10(月) 17:36:47 [ EKL7GJLU ]
>>ゆずみかんさん
成長した二人とロバートの出会い、これからが楽しみです。

>>見学者さん
武道家の「妙だな」って言葉が気がかりです(汗、どんな展開になるのか予想もつきません^^;

>>タルタルさん
あねさんも30、ついに固める時期でしょうか(ぇ。隠されたあねさんの素顔、以外と寂しがりやだったりして(ぇよし子〜!よし子〜!

>>名無しさん
文章は状況を良く見て取れるのですが、間の空白は別に入れなくても良いと思います。
私は沈黙する場面とかに空白を入れたりしていますけど。
孤独な剣士JJどうなることやらー。

427 名前:リ・クロス 投稿日:2006/07/10(月) 19:00:36 [ kcso0oWI ]
前スレ>>986 >>39 >>56 >>69 キャラ紹介>>38
>>100 >>147 >>178 >>247 >>344


漆黒の鎧の復讐者の咆哮によって発生した炎が
一気に爆裂して、凄まじい爆風となって襲い掛かった。

「ファウンテンバリア!!」

イルムはとっさの判断で二人の前に回りこむと
水の魔力を収束させて、手を中心にバリアを生み出した。
二つの魔力の衝突によって、辺りに地鳴りが響き渡る。

「うおおおおぉぉ!」

怒号を上げながら突進してきた復讐者は、勢いよく大斧を振り下ろした。

「この野朗っ!」

腰にぶら下げていた杖を取り出して剣に変形させて
振り下ろされた巨大な斧を受け止める。
刃が擦れ合い、摩擦音と共に火花が飛び散った。

「こいつは俺が引受ける・・・ッ!」

剣を蹴り上げることで斧を弾き間合いを空けると
剣を杖の形状に戻して、魔法石に手を翳して魔力を収束し
手を大きく回転させると、呪文を唱えるイルム。

「天空を駆ける風の精よ!我に自由の翼を授けよ!」

イルムの背中から、光を纏った翼が出現する。
復讐者は何かを悟ったように、イルムに向かって突進するが
イルムはソレを無関心な視線で捉えると、再び魔力を練り上げる。

「フォーベガ・チャージング!」

イルムの周りに四つの魔方陣が表れ、それぞれが光を発して収束する。

「死ねえええええええ!」

復讐者の執念が暗黒の炎に変異して大斧を包み込んだ。
イルムはさらに無感情に哀れな復讐者を見つめていた。

「黙れ、デカブツ。」

収束していった光が、剣に変形させられた杖に吸い込まれ
青い光となって剣を包み込み、意思を持ったように大斧と交差した。

「しまった・・・、イルムがまともに戦ってるぞ・・・。」

近づいてきたガーディアンに、短剣を投げつけながら
横から斧で切りかかって来た骸骨を、肘鉄を食らわせて斧ごと頭部を“粉砕”した。

「それは少し不味いな〜。」

ダークファイアを放射状に矢を放って牽制しながら
ガーディアンの周りを素早くステップしてかく乱させつつ骸骨を蹴り飛ばす。

「なんて不遇な扱いだああああああああ!」

イルムの感情に呼応し、より濃縮された魔力に包まれて入った剣で
うっぷんをぶつける様に、石畳を踏み込んで復讐者に切りかかって行った。

「面倒だからローストにしてやろうか。」

鞄から火炎を濃縮した短剣を、ニヤニヤしながら取り出すスィフィー。

「それってスコールが作ってくれたのだよね?好きな人から貰いたくないよね〜。」

「な、ななななな・・・、そんなんじゃないって!」

耳まで真っ赤にしながら必死に否定するスィフィーを見ながら
ダークファイアに光の矢を放って牽制しながらガーディアンの上に跳ぶセリス。

「ローストアーマーにされちゃ困るなぁ。」

七人の分身を生み出しながらガーディアンの後ろに着地して
風の魔力を付加させたランスで、すくい上げるようにガーディアンを吹き飛ばし
追い討ちのデザートブラストで飛んだガーディアンに、七人のセリスが突きを入れた。

「チェックメイト!」

スクリュードライバーがクロスボウで射出されて、豪風を纏いながら突き刺さり
守護神を冠する巨大な鎧霊を、木っ端微塵に引き裂いた。

428 名前:リ・クロス ◆7EZFkfmk/U 投稿日:2006/07/10(月) 19:11:41 [ kcso0oWI ]
トリ付けるのがミスってたようなので・・・

429 名前:サマナの人@422-425 投稿日:2006/07/11(火) 20:33:16 [ b6Gnz/6I ]
あははは、物凄い久々なので爽やかに名前入れ忘れましたよorz

>>ドリームさん
うぅ、掲示板書きは久々だったので、完全に行間とか忘れてました。
メモ帳ならともかく、掲示板に貼り付けてみると見辛いことこの上なしですね。
次から気をつけます;;

>>リ・クロスさん
イルムが無茶苦茶気にいりました。
こういう性格のWIZ&近接戦闘用術式の組み合わせは激しく燃えます。
そうか、守護鎧を燃やすとローストアーマーになるのか(違

430 名前:ドリーム 投稿日:2006/07/11(火) 21:03:58 [ QZUGjB96 ]
>>389
>>408-409 410

「誰なの、、貴方は」
 あっちゃー、、呼び止めてもなんて言うか決めてなかった。
どうするかなぁ、とりあえず助けてもらったんだかせお礼よね、お礼。
「とりあえず、助けてくれてありがと」
 青い髪の男はそれをジッとただ見つめているだけだ。
ううー、、気まずい。
「な、なんとか言いなさいよ!」
 少し凄みを聞かせて言う物の男は黙ったままだ。
 今一調子の狂う人だなぁ。
「俺は、ウィン・マックロード、人はガブリエル・ウィン・マックロードと呼ぶ」
 また小さく、そして静かに呟く。
「礼はいらない、俺は君を助けたわけではない、こちらの道に用があっただけだからな」
そう言うとすぐに歩き出す。
 ちょ、それだけ!?普通こんなかわいい女の子がいるんだから口説くぐらいしなさいよ!
「あ、あのぅ」
 少し上目使いをし色気を出している、つもりだ
「それでも助けてもらったことには変わりありませんしぃ、良かったらお礼ぐらいさせてくださいぃ」
ふっ、見たか! これでこいつも。
「いらん」
速攻断られた!
「と、とりあえずお礼させろ」
 急に態度を変えて自己中ぷりをアピールしながら、お城まで引っ張るシルビアであった。

431 名前:ドリーム 投稿日:2006/07/11(火) 21:07:07 [ QZUGjB96 ]
>>サマナの人さん
Σ、サマナの人さんでしたか、お久し振りですー、新作期待してます。

>>ゆずみかんさん
リィニーは基本的にかわいい系ですw

>>南東方不勝さん
ゴーウィングどころかすでに神の領域に(ry
頑張って続き書きたいと思います;

432 名前:382 投稿日:2006/07/14(金) 10:37:58 [ hfUQyDik ]
またおせっかいにきました。
ライトノベル研究所というサイトにわかりやすい小説の書き方(?)があったので
載せて置きます。
0 文章作法を守っている。誤字脱字なし
1 出始めで「引き」がある
2 キャラクターが「立って」いる
3 世界背景や描写がしっかり書かれている
4 ストーリーに破綻がない

【ちゃんとした小説だと見てもらうために】
1 小説を書くときに、空行を空けすぎないようにしましょう。全体的に白い部分が多いと、薄っぺらい印象を与えてしまいます。一文書くたびに一行の空行があると、結構指摘の的になってしまいます。空行は時間が経ったことを表現するときや、主人公を変更するとき程度にしておくといいです。
2 台本のように台詞の前に発言主を表記するのも、かなりの指摘の的になります。和幸「今日どこかに遊びに行かない?」などは注意を受けます。
3 顔文字や『♪』マーク、(笑)などのチャットやメールの記号はやめたほうがいいです。文章が書けないから手抜きしているように思われてしまいます。気分の良さや驚きを伝えたいなら、地の文で表情や仕草を書き込みましょう。「何か飲もうよ♪ 今日は気分がいいの(笑) え? 駄目なの?( ̄□ ̄;)」などは好ましくないです。

【文章作法】
1 地の文で改行した後は、行頭を一字下げてから書きましょう。ただし、カギカッコの場合は下げません。改行をせずに地の文を続けている場合は、文の行頭を下げる必要はありません。
2 『?』や『!』の後はスペースを一つ空けましょう。ただし、直後にカギカッコの閉じがくる場合は空けません。「何で逃げたの?どうして!教えてよ! 」ではなく、「何で逃げたの? どうして! 教えてよ!」という感じです。
3 『・・・』や『。。。』で沈黙や間を書かないようにしましょう。三点リーダ『…』を二つ並べて『……』とするのが正しい文章作法です。「…私が・・やりました・・・・違うんです。。。」ではなく、「……私が……やりました……違うんです……」という感じです。
4 数字は基本的に算数字ではなく、漢数字を用いましょう。ただし、爆撃機や銃器などの固有名詞の場合は例外です。固有名詞は分かりやすさを重視したほうがいいです。『㎏』『cm』などの記号を用いる場合も、ほとんどお目にかかりません。『彼は80㎏の体重だ。身長は180cmある。そんな彼はB二十九のパイロットだ』ではなく、『彼は八十キロの体重だ。身長は百八十センチある。そんな彼はB29のパイロットだ』という感じです。

【少しレベルを上げ、読者に混乱を与えないために】
1 主人公の性別や年齢は読者に分かるように明記しましょう。高校生か中学生かも分からないと大変です。高校生なのに、後々から感想で「主人公が小学生かと思っていた」と書かれる場合があります。簡単に書けることなのに、書かなかっただけで評価がさがる原因になるかもしれません。
2 表情や仕草は丁寧に書きましょう。笑っているか怒っているかも書かれていないと、登場人物の感情や状態が伝わらないです。台詞だけでは限界があります。
3 登場人物の状態は、はっきりと書いておいたほうがいいです。最低でも登場人物が立っているのか座っているのか、登場人物たちはどの場所(教室や自宅や道端や校庭)にいるのか、物語の季節がいつなのかは描写しておいたほうがいいです。
4 台詞ばかりに頼って、地の文を書かずに手抜きするのは危険です。感想で「台詞ばかりで場面のイメージができなかった」と指摘されてしまいます。点数のいい他の作者の作品と自作を見比べ、台詞が多くて地の文(描写)が少ないと思うなら、台詞の量を変えずに描写だけを増やして枚数を倍にする、などの試みをしてみましょう。必然的に風景描写や心理描写、表情描写を増やすことになります。読者に場面を思い浮かべてもらいやすくなります。描写だけで枚数を増やすという試みを勧めたのは、台詞も同時に増やそうとすると、再び台詞中心になってしまう危険性があるからです。
5 背景描写は丁寧にしましょう。『豪華な部屋だ』『普通の景色だ』とだけ書かれていても、個人個人で『豪華』『普通』のイメージが違うので、読者と作者のイメージがすれ違う場合もあります。どんな家具があるのか、何が見えるのか(平原か山か川か)などは必要です。特に異世界を書く場合は、現実とは違う世界なので、余計に風景や町並みの描写は重要になってきます。背景描写を書き込まないと、「世界観が分からない」と厳しい指摘を受けてしまいます。
6 作品の完成後はすぐに投稿せずに、少なくても一日は放置しましょう。冷静に作品を見直せるようになってから、誤字脱字のチェックをすれば、他の方に指摘される前に気づくことも多いはずです。誤字が多いと、見直し不足として評価が下がってしまいます。

433 名前:名無しさん 投稿日:2006/07/14(金) 12:22:08 [ CO3n4996 ]
>>432
長い本文を引用して貼り付けるより、URLリンクを貼りシンプルにしたほうが良かった。

434 名前:ゆずみかん 投稿日:2006/07/14(金) 23:30:02 [ UOtXQH62 ]
第1話>>353>>354
第2話>>365>>366
第3話>>385>>386
第4話>>399
第5話>>413>>414

――――約40分後
なんとか完食…。全員腹がはち切れそうになっていた。
「あたしは…ゲップ…食器の片付けするから…ゲップ…あんたたちはロバートさん連れて村の案内でもしてな…ゲップ…」
「分かったよ…ゲップ…」
3人は村中を回った。ロバートは話がうまいので楽しかった。そして夜が来る。
昼食が“あれ”だったこともあり、いつもより1時間ほど遅い夕食だった。間もなく村人達が入ってきた。
パーティーでもするらしい…。夕食も豪勢に出された。食欲がないのでルイス達はあまり食べなかったが、楽しかった。
パーティーが終わりルイスとエミルは酔っ払いのおっさん達を家まで送ることになった。

一通り終わり、あとは寝る支度だけだった。ロバートには空き部屋を1つ貸した。
布団の準備をし、レベッカおばさんが寝たのを確認した後、ルイス達はこっそりロバートのところに行った。
「やあ、待っていたよ」
ちゃんと約束を覚えていてくれたらしい。
「ねえねえ、その前にさ」
「なんだい?」
「ロバートはいつ帰っちゃうの?」
「ん〜明日には出ようかなって考えてるよ」
「そう……」
エミルが寂しそうに呟く。
「ロバート、もう1日ここにいてよ!」
ルイスが目を輝かせながら言う。
「あ、私からもお願い!」
エミルも目を輝かせながら言う。
「ん〜、困ったなぁ…。」
ロバートは苦笑いを浮かべた。
『お願い!!』
「あはは……」
その勝負はルイス達の圧勝だった。どうやらロバートは決断力に欠けるらしい…。
「しょうがないなぁ、じゃあおばさんがいいって言ったらもう1日ここにいることにするよ。でも1日だけだからね。更にもう1日とかはなしだよ」
『やったー!』
それから2人はロバートの様々な話を聞いた。他の町の話やら、モンスターに囲まれてピンチになった話やら、すごい強いウィザードに会った話やら…。
どれもルイス達は興味津々で黙ってロバートの話を聞いていた。
「それでね…ここを僕が…あれ?」
気がついたら2人はスヤスヤと眠っていた。ふと時計を見ると深夜の1時を回っていた。
(子どもにはもう遅い時間かな。まぁ今日はいろいろあって疲れていただろうししょうがないか )
ロバートは起こすのもかわいそうかな、とそのまま2人に布団を被せた。
――――次の日
「ん……」
エミルは寝ぼけた声を出しながら周りを見る。隣で兄がグッスリ寝ていた…。エミルは必死に思い出そうとするが思い出せない。
寝起きで思考が止まっているようだ。1分後ようやく思考が戻った。
「ああーーー!!」
「どうしたんだよエミルうるさいなぁ…」
ルイスもエミルの声で起きたらしい。
「あ、ごめんごめん。私昨日ロバートの話の途中で寝ちゃったみたい…」
「あ、俺もだ」
「あれ?ロバートは?」
ロバートはこの部屋にはいなかった。
「もしかして昨日俺達が途中で寝たから怒って帰っちゃったとか?!」
何とも子どもらしい発想。
「えぇ!とにかくおばさんに聞こう!」
バタバタとおばさんのところに駆け付ける。
「おばさん!!ロバートは?」
「なんだいあんた達朝からうるさいねぇ、ロバートならあんた達が寝てる間に起きてきて一宿の恩だとか言って今庭の掃除をしているよ。あたしはいいって言ったんだけどね」
『よかったぁ…』
2人は胸を撫で下ろした。そうだとエミルはおばさんにロバートをもう1日泊めてくれないかと聞いた。
おばさんは快くYESと言ってくれた。
『やったー!!』
「じゃあそのロバートを呼んできておくれ。もう朝食ができるから」
『はーい』
2人はロバートのところに向かった。
「ロバートオオォォ!!」
エミルが元気よく走りながら叫ぶ。
「なんだい?」
「んとね、おばさんにロバートをもう1日泊めてくれないかって頼んだらいいって!」
「それは良かった、じゃあ遠慮なく泊めさせてもらうよ」
「あ、それともうすぐ朝ごはんだからさっさと来いだって」
「了解」
「ん……?もしかしてこれ、全部ロバートがやったの?すごーい!」
ロバートが掃除をした後には今まで容赦なく生えていた雑草が跡形もなく、なくなっていた。
ロバートは我ながら完璧!というような表情で得意気に鼻を擦った。
「それじゃ、いこっか」
ロバートはそう言うと玄関に向かった。
「そうだね。いこ、お兄ちゃん」
「…お兄ちゃん?」
「あ?ああ、今行くよ」
(変なの…いつもはどんなことでも敏感に反応するのに…)
今思うと私はこの時点でお兄ちゃんの異変に気づくべきだったのかもしれない……

435 名前:ゆずみかん 投稿日:2006/07/14(金) 23:33:36 [ zxbEYAI. ]
楽しい時間はあっという馬に過ぎ、もう夜が訪れてしまった。(昨日ほどおばさんは料理に手が込んでなかったが)
また寝る前にロバートと楽しく話していたがもう時間が来てロバートに子どもは早く寝ないと成長しないぞとうまく逃げられ部屋から追い出されてしまった。
その時もお兄ちゃんは何かを考え込んでいるような顔でいつもの明るさが欠けていた。
「どうしたのお兄ちゃん?暗い顔して」
「ん?いや、なんでもないよ」
「分かった!ロバートと離れるのが寂しいんでしょー?」
「そ、そんなことねぇよ!」
そう言うと、そそくさとベッドに入り込んですぐに寝てしまった。
(変なの……)
私も眠たかったのでさっさと寝ることにした。
いろいろと疲労が溜り込んでるせいかベッドに入って2分も経たないうちに寝てしまった。

ルイスはエミルが熟睡したのを確認するとベッドから抜けるとコッソリと部屋を出た。ルイスはコソコソと狭い廊下を歩く。
既に時計は深夜の12時を回っていた。おばさんに見つかったら怒られるだろう。
ルイスが向かうその先は、なんとロバートのいる部屋だった。そして部屋の前まで来ると立ち止まり、軽くノックを2回する。
「誰だい…?」
ルイスが近づいてくる音に気がついたのか、ロバートはすぐに返事をした。さすが冒険者ってところだろうか。
「お、俺です…」
「ルイスか、なんだい?まぁここでもなんだし入ってよ」
そしてルイスはそっとドアを開けると下にうつ向いたままロバートに近づいた。
「なんだい?それよりこんな時間に起きてきて大丈夫なのかい?」
ルイスはロバートの言葉を無視した。
「ロバートに…話があるんです」
「ぇ………?ん〜まあとりあえずその話を聞かせてみてよ」
「あの…お……俺を……」
「俺を……」
「俺を…俺を旅に連れていってください!!」
「えぇ!!」
ロバートは不意を突かれたような表情をした。
「………理由は?」
「…………父ちゃん達の仇を……」
「駄目だ」
ロバートは急に真剣な表情になり、ルイスが言い終わる前にそれを遮った。
「ど、どうして?」
「いいかい、まず1つ。君は敵討ちというものの重さを知らない。復讐者と名乗っている人を僕は旅の中で何度も見たが、
そのようなやつらの末路はいいものじゃない」
「………でも…」
「そして2つ目、君は旅というものを甘く見ている。旅は死と隣り合わせだ。少し誤った行動をしただけでも危険が待っている。僕は君を危険な目に遭わせたくない」
「それでも俺は……!」
ロバートは少し躊躇った後
「いいかいルイス?最後に3つ目だ。君は敵討ちと言っているが“あの”ライアスさん達をも倒した相手を君は倒すことができるのかい?
それには君はお父さんより強くならないといけない。それが君にできるのかい?」
「……………俺は、エミルと違ってテイマーの能力もサマナーになる才能もこれっぽっちもない。でもエミルはまだ一段階だけど召喚獣を召喚することもできるし、
動物や弱いモンスターくらいだったら会話だってできる。村のみんなには母ちゃん以来の天才なんて言われてる。でも俺は……」
それを聞いてロバートは困ったな、と頭を掻いた。そのままルイスが続け
「俺は…もう守られてるだけじゃ嫌なんだ!!別に旅でどうなったっていい!俺は誰かを守りたいんだ!!もう身の回りの人が傷付くのを見ているだけなんてのは嫌なんだ!!!!」
ルイスは必死にそれをいい放つと、泣き出してしまった。やはりルイスはまだ“子ども”なのである。
(まさかまだ13歳なのにここまで思いつめてるとは…何がここまでこの子を?)
「………分かったよ」
そう言うとロバートはにっこり笑いルイスの頭を優しく撫で下ろした。
「でも、村長や君のおばさんが駄目って言ったら諦めるんだ。分かったかい?」
「…………ありがとう」
そう言うとルイスは床に崩れ落ちた。ロバートがどうした?!と近づいてみたらルイスはグッスリと寝ていた。よほど精神的にも疲れていたのだろう。
(よほど今日1日中考え込んでいたんだな。妹より劣っているという焦り、両親の仇を取りたいという憎しみか…
はぁ、何で僕はこう子どもに弱いんだろ。考えてる事と逆な行動にいつも出ちゃう…意思が弱いのかなぁ…)
ロバートはそんなことを考えながらルイスに毛布をかけ自分も寝ることにした。
――――異変 Fin

―――――――――
PCで確認したらずれまくってたりしてる…
ちなみにパスワード変わってるのは携帯からということです。

436 名前:名無しさん 投稿日:2006/07/15(土) 03:13:20 [ 27I1SfNU ]
>>432
まぁ言われてもそうそうすぐには直せない罠
直そうとして血吐いた人が言ってみる

人間だから文の粗さもまた個性、まぁまずは何でもいいから書いてみるこった(^ω^)

437 名前:名無しさん 投稿日:2006/07/16(日) 00:54:38 [ tB8z8sSc ]
そろそろage

小説書くなら、予めプロが書いてる小説を読んでどんな書き方をしてるかとか勉強するのもいいかと

もし小説買う余裕がなければスレの21R氏とFAT氏の小説をよく読めば良い勉強になると思う。
特に21R氏の小説読み返せば背景の表現方法は良い勉強になると思う。
キャラが立つかどうかはその人の腕の見せ所。


っと、定期的に沸く21R氏とFAT氏の猛烈ファンより

438 名前:名無しさん 投稿日:2006/07/16(日) 04:04:29 [ W7ci29Dk ]
>>432
テンプレ見ると「書きたい!」という気持ちが第一番っぽいので、有る程度文法を守れていればいいかと。
プロ志望の為のスレならともかく、あんまり敷居を高くしても益はありませんから。

ただ、ワンランク上のSSを書きたい人向けに、URI張っておきます。
ttp://www.raitonoveru.jp/

「カッコイイ文が書きたい!」とか、「このまま文を書いてていいのかな……」と引っかかった時が、そのサイトにお世話になる時かと思います。

439 名前:名無しさん 投稿日:2006/07/16(日) 15:53:52 [ 9yr6zJ6w ]
test

440 名前:戦士のようだ 投稿日:2006/07/17(月) 00:12:17 [ QS1Cbi/M ]
Wolf And Raven 僕と彼女の終末に

満月の夜。僕は今、コンクリートで出来た道路を必死に走っている。
後ろからはたくましい犬のような物が自分を追いかけている。僕が知っている犬とは何処か違う。
野生の鋭さのような、トンボを針で串刺しにするような、なにか生々しい気配を犬のようなものは身に纏っている。
息が切れる。体がひどく重い。脂汗が体中から噴出し、全身が薄い膜に包まれたかのような感覚に陥る。
それと同時に寒気も感じる。走りながら体が震える。震えるたびに脂汗が出てくる。
服はぴったりと体に張り付き、とても邪魔くさい。
心臓が裏返りそうなほど疲れた。走るのを止めたい。だが、一度立ち止まれば疲れのせいで二度と走れないだろう。
そう思いながらも頭に別の考えが浮かぶ。とても疲れた。
走るのを止めて後ろを振り返る。
犬のような物の姿は見えない。だいぶ引き離したのだろう。
僕は安心する。
両手を膝に置いて僕は荒く呼吸をする。
なにか悪い予感が胃に届く。顔を上げて満月を見上げる。
それと同時に鳥が空から襲い掛かってくる。
僕は鋭く息を吐き出して、その場に尻餅をつく。
鳥、カラスのような鳥だ。鳥の爪からはなんとか逃れた。
立ち上がろうとするが、腰が抜けて立ち上がれない。
背中に鈍い衝撃を感じ。僕はうつぶせに倒れてしまう。
コンクリートにあごをぶつけて頭がくらくらする。
何かが背中の上にのし上がった。四本足の動物。おそらくはさっきの犬のようなものだろう。
立ち上がろうとするが、犬のようなものが背中を押し付けているので立ち上がれない。
首にカラスがとまる。肉に爪が食い込む。皮が破け、血が少しずつ確実に出てくる。
犬のようなものが僕の背中に噛み付く。
激痛に僕は叫びを上げる。とても低い声で、僕の体から出た声とは思えない。
もしかしたらこの声は犬のようなものの声かもしれない。
牙から僕の体を通して出た声。
カラスが僕の肉をついばむ。肉がぶちぶちと体から離れるたびに、僕は少し仰け反る。
背中から出た血が体を伝って、コンクリートに広がる。
背中と血が酷く熱い。僕の血で僕の体は溶け爛れてしまいそうだ。
こつんという感覚がした。カラスのクチバシが背骨に当たったのだ。
体の痛みは消えた。犬のようなものは僕の体をあいかわらず貪っている。
僕は思った。何故こいつ等はこんなにも腹を減らしているのだろう。
背中の肉が段々と掘り下げられ、ついには腹にも穴が開いた。
不思議な感覚だ。僕は立ち上がろうとする。簡単に立ち上がれた。
カラスと犬のようなものは僕の体から離れる。
僕は僕の体を見た。
肋骨がむき出しになり、中でうごめく筋肉が見える。
腹と背中の肉は全てなくなり。肋骨から骨盤までの肉は何もない。
体はとても軽い。僕はまずカラスを捕まえる。カラスは何の抵抗もしない。
カラスの羽を折り、右の翼を引きちぎって咀嚼する。
バターのような味がする。食感はサトイモに似ている。
もの凄く腹が減っていた。そうなのだ。あれほど肉を食われたのだ。腹が減ってもおかしくはない。
いつの間にかカラスを全部食べ終えていた。カラスを食べ終えて僕は少し勿体無い気分になった。
あんなに旨いものはよく味わって食べるべきだった。
次に僕は犬のようなものを両手で捕まえて、空に高く掲げた。
そして腹に歯を立てる。血が噴出して、顔にかかる。
香ばしい血の香りと、肉のうまみが鼻腔をくすぐる。
僕は叫び声を上げる。

441 名前:戦士のようだ 投稿日:2006/07/17(月) 00:12:51 [ QS1Cbi/M ]
急いで上半身をベットから起こす。いやな夢を見た。まだ頭が混乱している。
半そでのパジャマのボタンはほとんど外れ、胸には赤い引っかき傷が少しついている。
恐ろしい夢だ。震える心と体を落ち着けようと深呼吸をする。
体も心も落ち着かなかったが、深呼吸によってなにかショックを和らげるクッションのようなものを得る。
僕は悪夢を見ていた。犬のような物、夢ではわからなかったが、きっと狼だ。
狼とカラスが僕を食べ。そして僕は彼らを食べた。
軽く頭を振ると、ドアについているベルが鳴っていることに気がついた。
ベットから抜け出して、ドアを開けると、ロッテが立っていた。
彼女は笑いながら、おはようと言いかけて、顔をぎょっとさせる。
「どうしたの君?酷い顔よ。具合悪いの?」
「いや、ただ。」
続きを言おうとして僕は言いよどみ、それから首を横に振る。
「まあいいや。とりあえず上がって。」
僕は彼女を自分の部屋に入れる。
「ちょっと待ってて、顔洗ってくるから。」
そう言って僕は狭い洗面所へ行く。鏡に映る僕の顔はとてもやつれている。
肌は血の気を失って蒼白で、唇はすこし震えながら半開きになっている。
僕は蛇口を捻り、冷たい水で顔を丹念に洗う。
それから髪も水で濡らし、寝癖を押さえつけてからよく拭いて、ロッテが待つ茶の間へと戻る。
「ごめん、こんな早くに来ると思ってなかったんだ。」
「ねえ、そんなことよりも聞いてよ。私、こっちのほうへ転勤するの。だから一緒に暮らしましょうよ。」
「一緒に暮らすって言っても、そんな急に。それにこんな狭い借家じゃ。」
「いいじゃない。もう少し広い借家を借りれば。私のお給料とあなたので間に合うでしょう。」
でも、と僕は言った。その間にも彼女は手際よくお茶の準備をして、口を動かしながら紅茶を入れた。
「ねえシルヴァリン、私たち付き合ってもう長いのよ。そろそろ。」
「ねえ、転勤になったけども今度はどんな仕事?」
僕は話を変えた。彼女は少しむっとしたが、それでも答えてくれた。生真面目で優しいのだ。
「沼地に住むクラゲの観察よ。そうそうそれとペットも連れてきたの。広い部屋に住んだら封印を解いてもいいでしょ?」
「うん。ペットは元気?」
「元気元気。それより朝ごはん食べましょうよ。どうせ食べてないでしょう?」
「でも、食べ物何もないよ。」
「じゃあ、そこら辺の露店でなにかかって食べよう。それと古都案内してね。」
僕はお茶を飲んでからパジャマを脱ぎ捨てて着替え、財布の中身を確認してから外へ出た。
日曜日の古都は太陽のにおいがした。こんな路地裏にもやはり日曜日は優しい。
僕と彼女は露店でパンを買って食べ、それから噴水やアクセサリーを見て回った。
午前の太陽の光はとても温かく、悪夢の影響は、それこそ夢のように薄れていった。
ロッテは王宮跡を見たいといったので、一緒に見に行った。
王宮跡へ向かって一緒に歩いているときに、ロッテは急にくすくすと笑い出した。
それにつられて何故か僕も笑った。
王宮跡を目にすると彼女は瓦礫の中を歩いたり、ちょっと突き出しているところに上ったりした。
崩れた王宮跡を目にするのは久しぶりだった。大したものではないのだが、なにか人に訴えるものがあった。
彼女は十分と瓦礫を観察した跡に、僕のところへ戻ってきた。
「昔はここにあの石があったのね。」
「そうだね。」
「なんで人はあの石を探すのかしら?」
「あの石を見つければ救われると信じてるだよ。」
彼女は何も言わずにじっと僕を眺めた。
あなたってどこか変わってるわね。きっと私はそこが好きなのよ。でも、いつかそこが嫌いになるかもしれない。
と彼女は言った。僕は周りを見回して、誰も居ないことを確認してから彼女にキスをした。

442 名前:戦士のようだ 投稿日:2006/07/17(月) 00:13:35 [ QS1Cbi/M ]
引越しの話は順調に進んで、ロッテが来てから二週間後には新しい借家で生活を始めた。
ロッテの他にも同居人は増えた。彼女のペットの狼とガーゴイルだ。
ロッテには内緒にしているが、結婚指輪を買おうと貯蓄をはじめた。
そして毎晩、僕は悪夢を見た。いつも同じ夢だ。
ある日曜日の夕方、ロッテと一緒に散歩をしていると、崩れた王宮近くの用水路に人だかりが出来ていた。
誰かの死体が会ったらしい。騎士団はすでに現場検証を始めていた。
休日だったが、やはり騎士団に所属している僕も現場検証に加わらざるを得なかった。
「ロッテ、今日は家に帰るんだ。事故死かも知れないけども殺人かもしれない。戸締りをしっかりするんだ。」
そう言ってから僕は人ごみを押しのけて、騎士団の輪に加わった。
現場にはやはり騎士団長が居た。
「シルヴァリン、これは殺人だ。どうもウルフマンによるものらしい。今、パトロールを組んでいる所だ。お前もそれに加わってくれ。」
僕は数人と一緒に地下水路を探索することになった。
地下水路には時折、点々と血の跡のような物がついていた。
ここにはモンスターや盗賊が住んでいて、よく血の跡が飛び散っている。
頭ではそれがわかっていても、今はその血がさっきの死体のものに見えた。
「あれ。」
と言って若い弓士が薄暗い暗闇の先を指差した。
その声をきっかけにか、暗闇の中から一人の赤いウルフマンが現れた。
ウルフマンの爪には生々しい血がこびりついていた。犯人だった。
撃て、と誰かが言った。若い弓士は矢をつがえ、ウルフマンへと放った。
矢がスローモーションで飛んだように見えた。ウルフマンに命中したからは、普通の速度に戻った。
ウルフマンが倒れる瞬間に、僕と彼は視線を交わらせた。強烈な吐き気と寒気が僕の体を襲った。
背筋が酷く重たかった。何かにのしかかられているみたいだった。
僕はその場で意識を失った。

やはりまた悪夢を見た。狼とカラスを貪っている最中に目が覚めた。
自分は病院にいるようだった。
目と頭が焼けるように熱かった。血の涙が流れそうなほどだ。
ベットから起き上がると、すぐそばにはロッテが居た。
ロッテは僕を見ると悲鳴を上げた。
僕は雄叫びを上げながらロッテを爪で切り裂いた。
体にはもさもさした毛が生えていた。ひどく腹が減っていた。
狼とカラスでは足りないくらいに。
僕は雄叫びを上げた。それから病室を抜け出し、病院の外へ出た。
満月の夜だ。なにか熱いものが体中を駆け巡っていた。
近くに誰かが居た。その人を切り裂いた後に僕は夢中で駆け出した。
僕はウルフマンへとなったのだ。
恋人も、婚約指環も、悪夢も全てを気にしない存在だ。

443 名前:戦士のようだ 投稿日:2006/07/17(月) 00:14:53 [ QS1Cbi/M ]
なんだか思いつきで狂ったような小説を書いてしまいました。
よく考えるとあんまりレッドストーンと関係ない話ですね。

444 名前:独り語 投稿日:2006/07/17(月) 06:35:03 [ wU/FVwJY ]
>>440-442
>戦士のようだ
背筋がぞっとしました。夢の描写が怖いです。
救いのない物語はあまり好きじゃありません。
無感覚の怪物、エンドレスの連鎖を感じさせる陰惨な事件。悲しすぎます。
これが物語のプロローグで、騎士団長が主人公ならまだいいのに……。
というわけで、>>380の企画じゃないですが、勝手に続き書いてみました。
主人公は騎士団長の代わりに数行しか出番のない弓士です。
コメントからこれで終わりの読み切りと判断しましたが正規の続編があったら、
本気でごめんなさい。

445 名前:独り語 投稿日:2006/07/17(月) 06:35:42 [ wU/FVwJY ]
「シルヴァリンは真面目な男です。仕事熱心で生活態度もいたって真面目。
結婚資金と思われる貯蓄もあり、仲のいい関係でした。そんなことをする男じゃありません」

 騎士団長の声は開かれた窓を通してもはっきりと毅然と聞こえてくる。
抗議の相手は公安のお偉いさん連中だ。彼らの声は反響してくぐもって内容までは聞き取れない。
しばらくして、騎士団長が重い扉を自分の手であけて出てきた。
表情はいつもの毅然とした騎士団長のままだが、相当苛立っている様子。
具足が石畳を蹴る音が強く響き、声無き不満を代弁しているかのようだ。
「宿舎に戻る」
いつもより短い指令。この付き添いが私の今日最後の任務だ。

宿舎に戻り、巡回に行く同僚を見送ってから自室のベッドに腰を下ろした。
昼過ぎに回ってきた報告書に目を通す。普段より量が少ないのにやけに重たく感じた。
昨日、同僚の一人シルヴァリンの婚約者のロッテがウルフマンに襲われた。
まだ意識は戻らない。シルヴァリンは行方不明。公式の発表はこれだけ。
他に、同日未明にウルフマンによる通り魔事件も報告が上がっている。
昨日のウルフマンの連続通り魔事件として犯行の共通点が羅列されている。
 でも、そんな筈はない。
犯人のウルフマンは昨日、私が、射ち殺したのだから。
犯人の死体検分ももう終わっているし、生き返って消えたなんて報告書はない。
それなのに、目撃証言と証拠は同一犯を示唆している。
今回の犯人は連続通り魔事件と同じ体毛の色は赤みを帯びた黒毛で目は月に似た黄金。
体格も一致。右手で大きく下から切り上げる独特の傷跡も同じ。
跳ねるように走る足跡の特徴まで一致していると、報告書にある。
目で文字列を追いながらロッテのことを思い出していた。
ロッテは私の親友で、おしゃべりが大好きで一緒にいるといつも時間を忘れてしまう。
『カルディアにも幸せになって欲しいな』
ロッテと最後に話したとき、祝福を贈った私に照れながらそう答えた。
はにかんだ笑顔が可愛らしくて、幸せが溢れているようにまぶしかった。
……パタッパタッと涙が報告書を叩く音で我に返った。
ぐずる鼻を抑え自嘲するような笑い声をあげた。
「大丈夫、明日には目を覚ますはず。大丈夫、大丈夫……」
心の中で何度も繰り返し、声が響かないように枕に顔を埋めた。

446 名前:独り語 投稿日:2006/07/17(月) 06:36:27 [ wU/FVwJY ]
 翌日、午前の訓練を正式にさぼってロッテのお見舞いに出かけた。
届けを出すときに騎士団長に目が赤いと心配された。
寝不足と言い訳する私に優しい沈黙を返し見送ってくれた。
今朝は明け方近くに目が覚めたのだから、寝不足も嘘ではない。
少し遠回りをしてクッキーと小さな花籠を買う。ちょうど焼き立てで甘いいい香りがする。
病室はすぐに分かった。白いカーテンが窓辺でさらさらとゆれている。
ロッテはまだ眠っていた。頬は白く窓際に座った私の反対側に顔を向けている。
とりとめのないことを寝顔に話掛けながら、花籠を添えつけのテーブルに置く。
寝顔にかかった髪を指先で払い除けたとき、閉じたままの睫毛が震えた気がした。
改めて、まだ甘い香りのするクッキーの包みを手にとった。
「ロッテ、早く起きないと団のみんなでたべちゃうぞ」
独り言のように話しかけながら小さな寝息に耳を澄ます。
鳥の影が病室の床をよぎる。窓の外に目を移し、高くなりはじめた太陽を見つけた。
「そろそろ戻るね。また、お見舞いに来るよ」
「……」
クッキーを手に病室を出るとき、背後でロッテの身じろぎの気配を感じた。
足を止めてからゆっくりと振り向く。小さな瞼はまだ閉じている。
少し迷った挙句、花籠と一緒にクッキーも置いていくことにした。

 詰め所にもどるとすぐに騎士団長に呼び出された。
「失礼します」
「カルディア、中に入れ。いま話したカルディアだ。こちらは捜査に協力してくれるダムザ氏。スマグの魔法院からきたそうだ」
「よろしく、ダムザです。所属は名ばかりでほとんどフリーで活動しています」
差し出された右手を握り返しながら、年齢不詳とはこの男を指すのだと内心つぶやく。
部屋に入ったときに見た後姿の細いシルエットと、やけに綺麗な長い髪には若い印象をうけた。
正反対に、裾がぼろぼろになったコートのデザインは古く年季が入りすぎている。
整った顔立ちは若者そのものなのに、表情の作り方は落ち着いていてただの若作りかもしれない。
声は低く、落ち着いたしゃべり方と併せて威厳すら感じる。
自分が作った不自然な沈黙に気づき、あわてて返事をする。
「カルディアです。よろしくお願いします。ダムザさんはウィザードですね?」
「えぇ、ダムザで結構。純粋なウィザードです」
あわてて口をついた変な質問にも律儀に返すあたり、確かに生粋のウィザードだ。
「紹介は充分だな。そろそろ本題に入ろう。カルディアにさっきの説明を頼む。他に必要な物があったら用意しよう」
「ありがとうございます。歩きながら話しましょう、現場まで案内をお願いします」
「え?」
二人の視線を受けて、助け舟を求めて騎士団長を見る。
「あぁ、お前が彼の捜査の相棒だ。お前に聞きたいこともあるらしい。頼んだぞ」
いつも通りの騎士団長の独断で、私の午後の予定は昼食前に決定した。

447 名前:独り語 投稿日:2006/07/17(月) 06:37:32 [ wU/FVwJY ]
「騎士団長の言っていた、さっきの説明ってなんのことですか?」
太陽は高くのぼり日差しが暑く感じられる。木陰に入ったときに肩をなでる風が心地よい。
「わたしの研究の専門と事件の真相に迫る仮説のことですよ」
「もったいぶらないで教えてください」
「その前に、一件目の犯人は貴方が仕留めたそうですね」
「……はい、確かに私がやりました」
まるで自白。そんなことを考えながらサンドイッチを頬張る。
歩きながらで行儀が悪いが、”相棒”は昼食を済ませていたのだから仕方ない。
サンドイッチとそれぞれに飲み物を手に並んで歩いている姿はデート中にでも見えるかもしれない。
二人ともむっつりとしたまま歩いているので、或いは喧嘩の最中にでも見えるだろうか。
口がふさがった私の代わりにダムザがつらつらとしゃべり始めた。
「わたしの専門は肉体と精神の分離や独立の研究です。
アンデットに現れる霊体または肉体だけの存在や、生者の精神の伝播・感染・憑依の研究をしています。
生き物が他の生き物に与える影響の研究から入ってそんな所までのめり込んでしまいました」
ダムザが私に視線をなげかける。仕草でもうちょっとかかると合図をして先を促す。
「一昨日、通り魔が発生して犯人はすぐに仕留められた。
それにも関わらず、同じ日の深夜には発表もされていない犯行のコピーキャットが現れた。
同一犯であると証拠が語り、同一犯はありえないと死体が語る」
「ごちそう様!」
「味はどうでしたか?」
「美味しかったわ。随分と詳しいですね」
「貴方の手に渡った報告書と同じものを私も見ています」
「続きを聞かせて」
私の心に引っかかったもやもやを彼の口が代弁しているような気分になっていた。
同時に解きほぐしてはいけないもやもやを無理矢理引き回されるような気持ち悪さも感じる。
「今回のような事件は、特に犯人がウルフマンとはっきりしている例では、珍しくないのです。
研究者の間では度々認められることで、一般には珍しいでしょうか」
「もったいぶらないではっきり話してよ」
自分の声に棘があって驚いていた。平静を装い真相に迫る。
「犯人は誰だと思ってるの?」
「王宮近くの一件目、病室での二件目、病棟の傍での三件目。
三件の元凶は同じです。ウルフマンのディスプレイスメントで知られる精神転嫁技術による肉体の乗っ取り。
そして、二件目・三件目の犯人はシルヴァリン……」
「…………」
私からなんらかの反抗があると思ったのだろう、彼は言葉を切って沈黙を用意してくれた。
私は暗く沈んだ心に縛られ、俯いたまま足を進めるしかなかった。
初夏の日差しは私には冷たかった。

448 名前:独り語 投稿日:2006/07/17(月) 06:51:05 [ wU/FVwJY ]
>>444は批判にも読めるかもしれません。
ですが、誉め言葉と受け取ってくださいませ。恐怖も感動のうちです。
重ねて申し上げますが、勝手な行動は承知しております。
気分を害しましたら本当にごめんなさい。

449 名前:名無しさん 投稿日:2006/07/17(月) 08:32:58 [ 653ggPUo ]
<jbbs font color="#0000FF">青文字うててるかな(〟-_・)ン?

450 名前:戦士のようだ 投稿日:2006/07/19(水) 23:05:50 [ QS1Cbi/M ]
>>独り語さん
いえいえ、ほんとうにもう何をおっしゃいますやら、いやはや、そんな、
ええ、どうも、こちらこそ、ええその節は、まったく・・・云々
と言ってしまいそうなくらい嬉しいです。
こんなくだらない話の続きを書いていただけて本当に感激です。


話は変わりますが、前に一度投稿した作品を書き直して投稿するのはありでしょうか?
ストーリーも随分と変える予定なのですが。

451 名前:見学者 投稿日:2006/07/20(木) 09:32:28 [ ww4BM0IA ]
毎週決まった日に投稿しようとしても
なんだか頻繁に書き込んでいる気がして投稿できない私です。
どうもコンニチハ。

思ったよりも文章についてのレスが多く見られてドキドキです、ハイ。
「おかしいよ、ココ」とか思われる部分がありましたら
どうぞ何でも言ってくださいまし……。
最低限、読める文章くらいにはならなくてはいけない、と考えてますので。

>>戦士のようだ さん
 お初です。
 特に決まりも何もない(と思う)ので良いのでは?
 新参者が口出しできるモノとは思いませんが……。
 私はその書き直した方の作品も読んでみたいです。

452 名前:見学者 投稿日:2006/07/20(木) 09:32:56 [ ww4BM0IA ]
1st>>267  2nd>>268  3rd>>309  4th>>310 5th>>342
6th>>343  7th>>376  8th>>377  9th>>717 10th>>718

 砂漠は夕方頃から急に冷え始める。砂漠都市アリアンも例外ではない。
 日が地平線に近くなればなるほど、人通りは少なくなる。
 とはいえ、人が夜に到着することなんかごく当然のことである。
 露店こそ出したままにするが主人の方は睡魔によって深い眠りに落ちてる、なんて日常的な風景なのだ。
 まるで盗んでくださいとでも言っているかのようである。
 ブリッジヘッドのシーフとド田舎ロマ村のサマナーという変わった二人組みがアリアンに着く頃には、太陽の頭はすっかり地平線に隠れてしまっていた。
 冷たい風が乾いた砂を持ち上げて頬にぶつけてくる。
 アリアン旅館に砂漠の砂を持って入るな、と言われたらどうしようかと思いつつシーフは宿屋の扉を開けた。
「いらっしゃい」
 期待に反して砂の文句を付けられなかったが、代わりに旅館内は砂まみれだった。
 こちらを見ることも無く挨拶を投げたのは旅館の女将なのだろう。
 年老いた女性が椅子に腰掛けて膝に載せた宿帳の上にペンを走らせている。机は無い。
 間違いなく腰を痛めているだろう。かがむにしたってあの体勢を維持するのは苦痛だ。
 シーフはそんな老婆に帽子を外して一礼した。髪と帽子に積もった砂がサラサラと落ちる。
「こんばんは。日暮れ時にすいません」
「じゃぁ来ないでおくれ」
 下げたままの頭をクリッと横にかしげた。
「はい?」
「『すまない』というくらいならするもんじゃないだろう? だから来ないでおくれ」
 いや、言い分は尤もだが。あぁ、なるほど言い方を変えろと言ってるのか。
「これは失礼いたしました。『日暮れ時ですがお邪魔致します。』お部屋は空いてますか? 
 二人なのですが」
 初めて女将は顔を上げた。老眼鏡を装着したままの目をしょぼしょぼさせながら二人を見比べる。
「おや? ブリッジヘッドのシーフさんかい?」
「ええ、まぁ。大したことはやってませんが」
「へぇ……。でも生憎、部屋はどれも予約済みなんだよねぇ。困ったモンだねぇ」
 なんなんだこのヒネくれた婆さんは?

453 名前:見学者 投稿日:2006/07/20(木) 09:33:31 [ ww4BM0IA ]
1st>>267  2nd>>268  3rd>>309  4th>>310  5th>>342
6th>>343  7th>>376  8th>>377  9th>>717  10th>>718

 見たところ部屋の並ぶ廊下から足音どころか衣擦れの音すらしない。
 外は確かに夕闇色だが、寝る時間には少し早すぎる時間だ。
 宿泊客など、一人も居ないのではないか。あぁ、だから『予約済み』と言ったのか。
「でしたら、どこか他の宿泊施設はありませんか? 出来れば屋根と壁とベッドがあると良いのですが」
 言いながらチラとサマナーに視線を向けた。
 彼女に野宿をさせるのは酷というものだろう。
 一人部屋の一つ取ることが出来たら、自分はどこか適当な場所で身体を休める程度で充分だ。
「ウチよりも設備の整った宿はないと思うね。他のは多分、屋根も壁もベッドすらないよ」
 どんな宿だよ。
「では……なんとか部屋を空けられませんか。全て埋まってるのでしたら引き下がりますが」
「あ、あのシーフさん」
 苛ついたのか語調の強くなったシーフのマントをくいくい、とサマナーが引っ張る。
「空いてないならしょうがない……と思います。お宿がないなら、別にお外でもだいじょうぶですから」
「砂漠は寒いし風も強いのですよ。先ほども砂がまるで横殴りの大雨のようにぶつかってきたでしょう? 
 ――あぁ、そうだ。何も一人部屋でなくても良いのです。
 彼女の休む部屋一つあれば充分ですから、空いてませんか」
 サマナーは「えっ?」と声を上げた。
 シーフの言った意味を少し間を置いて理解すると、今度は激しく首を振ってマントをぐいぐいと引っ張る。
 右肩が少々、幼い力で痛くなってきた。
 その二人のやりとりを見ながら、老婆はふんと鼻を鳴らした。
「無理やりに作ってやっても良いよ。ただしお代は二倍頂きますけどね」
 どこまでも気に食わない婆さんだ。

454 名前:見学者 投稿日:2006/07/20(木) 09:42:53 [ ww4BM0IA ]
あとで見直してアンカーミスに気付いた……。
まだ>>700すらないのに……。

9th>>417 10th>>418

455 名前:ゆずみかん 投稿日:2006/07/24(月) 23:05:56 [ i7EZP0vw ]
第1話>>353>>354第2話>>365>>366
第3話>>385>>386第4話>>399
第5話>>413>>414第6話>>434>>414

次の日、私は昨日一昨日と遅く寝たせいか、寝坊をしてしまった。
「んー…」
時計を見たら既に8時を回っていた。
「し、しまった!!あれ…?」
いつも私より遅く起きるはずのお兄ちゃんがいなかった。
「あ、そういえば今日はロバートが行っちゃう日じゃん!!」
私はすっかり忘れていて、素早く着替えておばさんに聞いたら、おばさんはロバートはルイスと一緒に村長の家に行ったということだ。
私はちゃんとロバートに別れを言えると思って安心した。
(でも何で村長のとこに?しかもお兄ちゃんと。変なの…)

「じっちゃん、お願い!!」
「むぅ……旅とは危険がつきものなんじゃぞ?」
「それは百も承知だよ!頼むよ…」
「はは、昨日僕も最初はそうやって止めたんですけどねぇ…聞かなくて」
村長の家ではルイスが例の件で交渉をしていた。
「ルイスよ、このままずっとこの村にいれば平和な日々が送れるのじゃよ?自ら自分の身を危険に晒さなくても…」
「でも、またあいつらがこの村を襲いに来ないって保障はないだろ?それに他のやつらだって」
「しかしのぉ……」
「じっちゃんだって俺がテイマーもサマナーも才能が最初からないのは知ってんだろ?俺はもう守られるだけは嫌なんだって!いざというときこの村を守りたいんだ!」
その目には固い決意と信念が込められている。村長はそれを悟ったのか
「しょうがないのぉ…まぁお前がいつかこう言ってくるとは前から思っていたが…」
ルイスの勝利。
「やったー!じゃあ早速準備だ!」
「待て、ルイス」
「なに?」
「分かっていると思うが、旅の間は村の者には会えない。もちろんエミルにもじゃ。少し寂しくなったからと言って来たらわしは許さんぞ?
それにたったの1年や2年じゃ強くはなれん。ロバート殿よ、どのくらい旅を続ける気かな?」
「そうですね……5年です」
「ご、5年!?」
「そうだよ。それくらいしないと強くなんてなれないさ。嫌だったら諦めるんだね」
「諦めるもんか!やってやるよ!!」
「そうか…じゃあそうと決まったら村中の住民に挨拶をしてくるのじゃ。出発は今日の午後1時。よろしいか?」
「分かったよ」
そう言ってルイスは家を出ていった。
「すまないのロバート殿…」
「いえいえ、構いませんよ。ルイスは僕が命わ賭けてでも守って見せますから」
そう言い一礼をしてからロバートも村長の家を出ていった。

ルイス達はレベッカおばさんの家に戻り朝食を食べた。ルイスは今まで以上にこの味をしっかりと味わいながら食べた。
ロバートは早めに食べ終わるとルイスに村の人に伝えるのは僕がするから君はこの2人に伝えておいてと耳打ちをし、ちょっと出てきますと家を出た。
「昨日からお兄ちゃん変よ。何かあったの?」
エミルが不思議そうにルイスの顔を覗き込む。
「きっとロバートと別れるのがつらいのよ」
レベッカおばさんがからかった。
(別れるのはロバートじゃなくてエミル達なのに…)
ルイスはそう思うと涙が出そうになったがぐっと堪えた。ルイスはエミルが産まれてからこの11年間、片時も離れた時なんてなかったのだ。
村では仲良し兄妹で有名だった。いざ離れるとなると辛いものだ。
「ご馳走様……」
そう言うとルイスは家の仕事を黙々と始めた。
「なんだいあの子…明日は雨でも降るんじゃないの?」
レベッカおばさんが不思議そうに言う。
その頃ロバートは村の住民にそのことを伝え回っていた…。

456 名前:ゆずみかん 投稿日:2006/07/24(月) 23:07:05 [ X.oGVJTs ]
「本当かい!?あのルイスが…」
「はい、彼からの希望ということで…」
「あんた本当に大丈夫なんでしょうね?」
「はい、僕の命を賭けて彼を守ります」
「安心していいんだね?」
「はい、大丈夫です(たぶん)」
そんな会話がずっと繰り返されていた。
(はぁ、なんて嫌な役なんだ…)
ロバートは既に村の8割近く回っていた。(もうちょっと…さっさと回ってしまおう…)


その頃ルイスは自分の仕事を終わらせ旅の準備を始めていた。刻々と近づいてくる時間。
言おう言おうと思ってもなか言えない…。
(くそっくそっ!…言わないで出ていく方が後々後悔するぞ)
自分に言い聞かせる。
「あれ?もう終わったのかい?サボってないだろうね。ん…何してんだい?」
悩んでいるところにレベッカおばさんが来た。(せめておばさんだけにでも…)
「まぁあたしは昼食の準備をするよ」
「待っておばさん!!」
「なんだい?」
「あ、いや…その…」
「なんだい?変な子だね…まぁ後にしておくれ」
そう言っておばさんは出ていこうとした。
「待って!今じゃないといけない話なんだ…だから…」
「?……あたしゃ急いでるからさっさと済ましておくれ」
「あのさ…………実は……………お、俺!ロバートと旅に出ることにしたんだ!!」
少し躊躇ったが、決意を決めて一気に言い放った。
「……そうかい。気をつけて行ってきなさい」
「え?」
意外な反応だった。ルイスはこのことを言ったらおばさんは怒ると思っていたからだ。
「遂にこの時が来てしまったかい…村長もいつかこういう時が来るだろうと言っていたよ。さあ!そうと決まったら今日の昼食は豪勢に作るよ!
朝っぱらから村長のとこ行ってたということは昼にでも発つんだろう?村のみんなには伝えたのかい?」
「ありがとうおばさん。出発は1時の予定さ。村のみんなにはロバートが引き受けてくれたよ。俺はおばさんとエミルに伝えろって言われたんだ。
それと…おばさん……」
「なんだい?」
「エミルにこの事をおばさんから伝えてくれない?何かどうしても言えなくてさ」
「それはだめだね。あんたロバートからあたしとエミルだけは自分の口で言えって言われたんだろ?兄妹だったら自分の口で言いな。
それが出来なかったら何も言わずに勝手に旅立つんだね。もちろんそれでもエミルは傷付くと思うがね。あたしゃ知らないよ」
そう言っておばさんはキッチンへ向かってしまった。ルイスは見放された気分だった。やっぱり怒っちゃったんだとも思った。
(どうしよう…ええい!勇気を出せ!ルイス!)
心の中でそう言い聞かせルイスはエミルのところへ向かった。

457 名前:ゆずみかん 投稿日:2006/07/24(月) 23:08:27 [ UOtXQH62 ]
その頃エミルは風呂の掃除をしていた。ルイスはその様子をそ〜っと気づかれないように見ていた。
「ふっふふふ〜ん♪」
鼻歌を歌いながら掃除をしている。
(なんかこの状況じゃ言いにくいなぁ…ん…悩んでたら急に鼻がムズムズと…)
「へ……………」
(まずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずい!!)
「へえぇぇ………」
(もう…無理…)
「ヘックショオン!!!!」
「キャ!!ってなんだお兄ちゃんか。驚かさないでよ」
「はは、ごめんごめん…」
そう言ってエミルに近づいていく。
「ん?どうしたの?手伝いにでもきてくれたのかな〜?」
「ば、バカ野郎!そんなんじゃねえよ」
「じゃあ何しに来たのよ?」
「そ、それは…」
「用がないならあっちに行って。掃除の邪魔だから」
「んー…用がないわけじゃ………」
「?…なによ?」
「それは……」
(言え!言うんだ俺!ここで言わなきゃ男じゃないぞ!!)
変なの…とエミルが不思議そうな顔でこちらを見ている。そしてルイスは遂に決意を決め、そのまま床に伏せ土下座の体勢になった。
「エミル、ごめん!!」
「はぁ?何か悪いことしたの?」
「いや…まだしてないけど、ごめん!!」
今度は気味が悪そうな顔でこちらを見ている。
「お、俺………ロバートの旅についていくことに決めたんだ……。それも5年…それまで俺…エミルとは会えない」
「ぇ………………?」
周りの空気がさっきとうって変わりとても深刻な雰囲気になった。
「う、嘘でしょ…?」
信じられないという面持ちでエミルが問う。
「……本当なんだそれに決めた。村長とももう話した。おばさんとも…もうこれは変わらない。だから……ごめん!!」
そう言うとルイスは逃げるように駆け出した。苦しかった。泣き出したかった。でも、泣けなかった。
苦しいのはエミルも同じだ。俺が泣いてどうする。
それから間もなくおばさんが昼食だと2人を呼んだ。
あまりエミルとは顔を合わしたくなかったが、おばさんが自分の為に腕をふるって作ってくれたのだから行かないわけにもいかない。そしてルイスは食卓へと向かった。

食器は4人分並べてあったが、ロバートは来なかった。村人達から解放されないのだろう。
無言のまま過ぎていく時間。誰も話そうとはしなかった。ルイスはとてもこの空気の中にはいられないと思ったので、さっさとたいらげ部屋を出ようとしたら急にエミルがこの均衡を破った。
「待ってお兄ちゃん!!」
「……なに?」
「私も…私も…私も旅に連れていって!!」
「は、はぁ!?」
これにはルイスもおばさんも驚いたようだ。
「あ、あんた何考えてるんだい?あんたのような弱い子が旅なんて…無茶だよ!」
「で、でも決めたの!」
「駄目だ。エミルはここに残れ。何しろ旅は危険が多すぎるんだ。俺が行くからといって一時の感情で行くなんて言うな。いつまでも俺に頼るな」
「わ、私の気持ちも知らないで!!!!お兄ちゃんなんて大嫌い!!」
エミルは急に泣き出し家を飛び出していった。
(これでよかったんだこれで……でも、最後がこんな別れなんて……)
「よく言い切ったねえ…偉い子だ。辛かったろう?」
柄にもなくおばさんが優しい声で慰めてくれた。ルイスはふと自分の母親を思い出した。自然と涙が溢れてくる。
旅立ち前は泣かないって決めたのに…。
「つらく…なんて……ないよ…」
涙が止まらない。それをなるべく見せないように部屋を出た。荷物をまとめ時計を見る。
少し早かったがもうここにはいられない気がしたのでもう出ることにした。古い自分の引き出しから何かを取り出した。
(これはもう必要ないか……)
そう呟いてポケットに突っ込んだ。玄関におばさんがいたが何も言わずにただ一礼だけして飛び出した。
礼をするとき涙がこぼれ落ちてしまった。
村の出口へと向かう。すると遠くからロバートが走ってきた。
「おお早かったね。みんなとは2人とはちゃんと話したかい?ちょっと待ってて、僕も荷物持ってくるからさ」
「うん……」
「あら、その様子だと言ったには言ったけど、あまりいい感じにはいかなかったみたいだね?まぁ、旅立ちなんてみんなそんなもんだよ」
ロバートはそう言うと家へと走り出した。2分後、ロバートが戻ってきた。
「それじゃ、行くよ」
「うん……」
ルイスはずっとうつむいたまま歩いていた。
「まあまあ、旅立ちなんだからもって元気にいこうよ。ん……?おっとぉ…」
村の出口まで来てロバートがそれを言った。ルイスはそれに反応して顔を上げた。
そこには信じられない光景が待っていた。

458 名前:ゆずみかん 投稿日:2006/07/24(月) 23:30:28 [ dhRkGeXc ]
そこには、村中のみんなが先回りして村の出口に立っていた。レベッカおばさんもいた。しかし、そこにエミルはいなかった。
「ルイス!頑張って来いよ!」「気合い入れすぎて空回りするんじゃね〜ぞ〜」
「5年後待ってるからな!何か土産持ってこいよ!」「強くなって帰ってこいよ!」
なんと見送りに来てくれたのだ。ルイスは思わず今度は嬉し涙を流した。
「ありがとうみんな…」
しかし涙や鼻水でほとんど言葉になっていなかった。
(みんな怒ってなんかいなかったんだ。許してくれたんだ俺を。認めてくれたんだ)
そう思うと涙が止まらなくなった。
「ルイスよ…気を付けて来るんじゃよ、くれぐれもな」
「じっちゃん…」
「それと…ほれ、あっちをみてみぃ」
ルイスは村長に言われた方向を見てみると、そこにはなんとエミルが息を切らしてこちらを見つめていた。
「え、エミル……」
「お兄ちゃん!」
エミルはダッシュでルイスに近づくと抱きついた。
「お、おい!」
「お兄ちゃんのバカ……私と離れて困るのはお兄ちゃんの方なんだから。1人じゃ何もできない癖に」
「むむ………!」
「それと…5年後に絶対生きて帰ってきてね?」
「ああ!」
そう言うとエミルは兄から離れ、
「ブアァ〜〜〜〜〜カ!さっさと行ってしまえ!」
と精一杯の大声で言い放った。
「何だと!?ああ分かったよ!さっさと行けばいいんだろ?バカエミル!」
と言い、ロバートにいこ、と言い、て先導を切って歩いていった。
ロバートもありがとうございました、と頭を下げてからルイスのところに向かって走っていった。
「行ってしまったねぇ…大丈夫かい?エミル」
レベッカおばさんが優しい声で声を掛けた。
「正直、まだショックかも…急だったから…。でも、5年後にまたあえるよね?」
「ああ、あえるさ。なにせあいつはあたしが認める強い子だからね!」
「だよね…」
そこでエミルは強がっていたが、ここで声を上げて泣き出した。とても子供っぽく…。
10分は泣いただろうか、エミルはふと自分のポケットに何かが入っているのに気がついた。
取り出してみるとそれは兄からの手紙だった。
「ぁ………………」
「どうしたんだい?」
「お兄ちゃんからの…手紙…」
そして封を切って内容を見てみる。手紙にはルイスらしい汚い殴り書きで、エミルへの謝罪や皮肉が書き込まれていた。
そして最後に“5年後ぜったいにあおうな!”と書かれていた。
「お兄ちゃん………ありがとう」


「ロバートォ、疲れた。休もう」「まだまだ、これくらいでバテてちゃお父さんを越えられないぞ?」
「えぇーい!行くぞー!」「ちょっと!待ってよ、聞いてる?ルイス〜!」
こうしてルイスの修行も兼ねた旅が始まった…。
――――旅立ち THE END

――――――――――――――――――
とりあえずここで第一部は完ということにしてもらいました。
ああ、最後なのに文章ダメダメだ…。
文章の巧さについて書かれていて載せにくかったのですが頑張って投稿…。

それと調子に乗って第二部の予告のようなものを……
一回りも二回りも大きくなって帰ってきたルイスだが、間もなく再び旅立つことを決める。エミルと共に。
今度は強くなる為ではなく………。
旅の中で様々な仲間との出会い、そして別れ。
そして遂に鎧の2人と激突。様々なことが身の周りで起こるなか、ルイス達は乗り越えられることができれのか?

以上、予告でした(汗)

459 名前:ゆずみかん 投稿日:2006/07/25(火) 00:05:50 [ 0Q3GCQU2 ]
>>タルタルさん
よし子あんたドラゴンだったのね…。ってあねさん死んじゃイヤァ!
生きているor生き返ることを祈っています。
>>サマナの人さん
初めまして。なんと!前作のキャラが…読まなくては…。
一足先にネクロ登場ですね。どんな戦いを見せてくれるか楽しみにしてます。
>>リ・クロスさん
イルムがいいキャラしてますねw
やばい、イルムがまともに戦ってるって…w
>>ドリームさん
姫さま今度はいいから礼させろとは…(汗)
次どんな台詞言ってくれるのか期待です。
>>戦士のようださん
初めまして。
とても怖い話ですね…。
ロッテのペットがガーゴイルとウルフと聞いてからビクビクしながら読んでいました。
>>独り語さん
初めまして。
他人が書いた話をうまく繋げて書けるなんて尊敬しました。
自分もそれ程の文才が欲しい…。
>>見学者さん
なんかいや〜な感じのおばあさん出てきましたね…。
それにシフがまた切れかって…うまく止めたサマナナイスですw

460 名前:リ・クロス ◆7EZFkfmk/U 投稿日:2006/07/26(水) 22:48:41 [ kcso0oWI ]
前スレ>>986 >>39 >>56 >>69 キャラ紹介>>38
>>100 >>147 >>178 >>247 >>344 >>427


スコールは全身を這う激痛に襲われつつも立ち上がり
光の紋章が浮き上がる赤い目を、黒い影を纏った少女に向ける。
黒い少女はスコールに、頬を赤くし熱っぽい視線を送りつける。

「そうだ・・・、もっと抵抗して貰わないと興奮しないでは無いか・・・。」

その台詞にスコールは、眉間に皺を寄せながら口を開く。

「そんな表情をされても貴様の体に興味は全く無い、皆無だ。」

言い切る手前からスコールは、少し顔を引きつらせながらも飛び上がり
そこし怒ったような顔をしている少女の背後にソニックブレードを放つ。
しかし、少女が手を振った瞬間に、軌道が脇にそれて岩を粉砕した。

「ほら、どうしたのだ? もっと我を楽しませてくれ。」

少女の背後の影が、黒い火の弾を大量に生み出してスコールに投げつける。
前にもこういう光景を見たなと思いながら、自分に当たりそうな物は切り捨て
そうで無いものは無視しながら飛び上がり、少女に向かって剣を突き出す。

「遅いな。」

「何!?」

スコールの剣を少女の小さな手が払いのけた瞬間に
もう片方の手が黒い波動を生み出し、スコールを吹き飛ばした。
空中で回転することで受身を取って着地したスコールに
少女の小さな手に収束した魔力が、光弾となって発射された。

「はは、踊れ、踊れ。」

一発目を横へのステップでかわし、追撃をバックステップでかわして
頭部へ放たれた光弾は、しゃがむ事でかわし、足元から現れた氷柱を飛び上がってかわす。

「しまったっ!」

瞬間移動で現れた黒い影が、暗黒の炎に包まれた両手で
跳び上がって隙の生まれたスコールに殴りかかる。

「・・・ッ!」

スコールの腹に命中して、そのまま勢いよく吹き飛んで行き
その先に回りこんだ黒い影は、両手を組んで思いっきり振り下ろした。

「ぐうっ!」

地面に叩きつけられて呻き声を上げて吐血しているスコールを
黒い影が見せしめのように掴み上げると、少女は片方の手に膨大な魔力を収束させる。

「つまらないでは無いか・・・、汝も我を満足させてはくれなかったな。」

高度に収束させた膨大な魔力を、未だに戦意を失わないスコールに放った。

「彼は貴女を慰めるために存在はしていませんよ。」

真横から飛んできた巨大な火球が、暗黒の火球とぶつかって派手に爆裂し
スコールを掴んでいた黒い影の手が、赤く光を放つ輪によって切り落とされる。

「スコールさん!その傷・・・大丈夫ですか?」

スコールを助け出した第三形態のヘッジャーが、ゆっくりとスコールを下ろし
ふらつきながらも立ち上がったスコールに駆け寄ったエリシアが尋ねる。

「瑣末な事だ・・・、大した事は無い。」

明らかに重傷と思われる傷を負っているが、無感情な声で応えたスコール。

「ブラッディーサークルだと?それに神龍形態の神獣・・・。」

スコールの前に立ちはだかった天使が、信じられないという表情をしている少女に
白銀の様な髪を整えながら、スコールよりもさらに無感情な声で口を開いた。

「そんなに驚く事では無いでしょう、今の媒介は・・・





メリア・アインツ・カスピル・・・、アイノ・カスピルの一族の娘ですね。」

461 名前:リ・クロス ◆7EZFkfmk/U 投稿日:2006/07/26(水) 22:56:06 [ kcso0oWI ]
>>サマナの人さん ゆずみかんさん

イルムは何時も大して活躍していないのに
格好付けてるのがスィフィーは面白くないんですよw
本当はスコールに助けてほしいわけです。

セリスはそんなスィフィーに便乗して
イルムを弄って面白がってるのです。

462 名前:幻影 投稿日:2006/07/28(金) 02:38:23 [ WCQCuaeM ]
初めまして。いつもワクワクしながらスレを覗いている者です。
今日、ふと小ネタを思いついたので投下させて頂きたく・・・。
お手柔らかにお願いします。

463 名前:幻影 投稿日:2006/07/28(金) 02:39:58 [ WCQCuaeM ]
ここは、ギルディル川の流れも涼しい古都南。様々なギルドのたまり場でもある。
その中の一角、マスターらしき戦士の周りに、沈んだ様子のテイマー、天使、武道家。
どうやら、ギルド戦が終わって戻ってきたところらしいが、彼らは一言も発しない。

「なぁ、・・・どうしたんだ?」

あまりの空気の重さに耐えかねた戦士が、仲間に尋ねた。
すると真っ赤な目をしたテイマーが、顔を上げて答えた。

「ギルド戦中に・・・相手の剣士さんが・・・『お前それ納骨堂のファミだろ、不具合利用者め』って言ってきたの・・・。
 違うもん・・・この子達は、アジト出身だもん・・・。わたしが60レベルくらいの頃から可愛がってきたんだもん・・・。
 骨ファミ使用ギルドだって晒されちゃったら私のせい・・・どうしよう・・・しくしく」

「泣くな、心配しなくてもいいから・・・。で、お前はどうしたんだ?」

次に戦士はこれもまた真っ赤な――元々真っ赤だが――目をした天使に尋ねた。

「さっき相手から耳打ちがきて・・・。
 『お前のディスペルのせいでCPがとんでもないことになってる。青POTよこせ、ディスペル卑怯』って・・・。
 我々天使は、戦ではディスペルしか手段がないのに・・・。攻撃職の方に『攻撃するな』とは誰も言わないのに・・・。
 でも私には耳打ちを返す勇気はありません・・・さめざめ」

「泣くなって・・・お前今年でいくつになると思ってるんだ・・・。で、お前は?」

今度は、目は通常の色だが、周りに傍目にも分かるほど暗いオーラの出ている武道家に尋ねた。

「今日もオレは倒れなかった・・・。だけど、誰も倒せなかった・・・。というか、オレは完全に避けられてた・・・。
 ちょっと仰け反っただけで、『武道家は無視でいいから』って、敵はみんなオレから去っていく・・・。えっぐえっぐ」

「いや、まぁ気持ちは分かるが・・・あぁ、もう」

戦士は、空を見上げて呟いた。


「俺、ギルド戦会場にすら入れなかったんだが・・・泣いてもいいかな?」

464 名前:幻影 投稿日:2006/07/28(金) 02:44:46 [ WCQCuaeM ]
以上です。
皆さんのような長編SSが書きたいと思っているのですが、
どうにもうまく書けないものですね・・・orz
お目汚し失礼しました ...λ

465 名前:名無しさん 投稿日:2006/07/30(日) 01:39:31 [ fWFUJsr6 ]
吹きましたw
最後の一行に、戦士さんの哀愁がぎゅっと凝縮してて、グゥ!です。
長編が、短編より優れているなんてことは、ありませんよ。
要は、内容に即した長さであるかどうか、
そして、心に残るか否かです。
幻影さんのお話、とっても面白かったので、次回作も期待してます!

466 名前:ドリーム 投稿日:2006/07/30(日) 08:01:28 [ .5Se7UZ. ]
 さて、どうしたものか。。。
シルビアは深く考えていた、とりあえず城までついて来させる事には成功したが、こいつが私の下僕になりそうにないしな。。
「…」
 それにしてもこのマック・ロードとか言う男場の雰囲気が読めないのかしら、普通こういう場合男から話しかけてくるもんでしょ。
「おい」
突然その男を口を開いた。
「何よ」
 しかしそこに先ほどまでの厳しい顔ではないことに気がついた。
それ以上の憎悪に満ち溢れた今にも人を殺すような顔がそこにあった。
 私はその時彼が手に負えない男だと言う事を悟った。
殺気、その言葉で表現するにしても足りないぐらいだった
「奴が…来る!!」
そう言い放つといきなりシルビアを抱きかかえた。
 「え…な、何するのよ!」
シルビアは顔を赤らめながらそう言った、少女であることから急なのには慣れていないせいである。
 しかし、すぐに分かってしまった。
そこに禍々しい、いや、見る者に取って美しいとも言えるような人が立っていた。
 「ロード…探したよ」
顔でこそ笑っているがその奥に隠しきれない殺気を出していた。
 素人の私でも分かるくらいだ、マック・ロードには分かりたくなくても分かるはずだ。
「ふ、今更俺になんのようだ?マリア」
 その名前なら私も知ってる。でもやっぱりあのマリアなわけないよね。
「死んでもらうわ。愛する貴方のためにね」

467 名前:ドリーム 投稿日:2006/07/31(月) 22:18:29 [ 0PVEB/8k ]
 どういう事なのよ。
私は目の前で起きている光景を疑った。人間技ではない技の応酬一歩間違えれば命を落とす戦い。
 しかし二人は笑っている。
 まるで、デートをしているかのように…
「ねぇ、思い出さない?こんなに激しいのはあの夜くらいでしょう?」
「ふっ…そうだな、なら今度はもっと激しくイかせてやる!俺を二度と追ってこれないようにな!」
 子供の私には良くわからないことだが、そんな会話もこの命のやり取りの最中では冗談ではすまない状況だ。
ロードの剣がしなりマリアの肩を目掛けて突くその動作の中にも、お互い手の内を読みあっている。
 マリアは突かれた剣を弾く。
ギィィーン!そう高い音を上げロードの剣は宙を舞った。
 そう、ダンス(殺し合い)が終わったのである。
「私の勝ちね」マリアの顔には先ほどまでの殺気溢れる顔は無く、清らかに笑っていた。
ロードも同様である。
「ところで気になったんだけど」そう突然マリアが口を開いた。
「そこのお嬢様は?」
むかっ、人が口を出さず状況を必死で説明しているって言うのにその扱いか…
 「・・・知らん」
ロードどういうことよ!?

468 名前:リ・クロス ◆7EZFkfmk/U 投稿日:2006/08/06(日) 15:41:15 [ kcso0oWI ]
落ちそうなので上げときます。

469 名前:名無しさん 投稿日:2006/08/08(火) 01:39:08 [ 10ESWgag ]
SAGE

470 名前:名無しさん 投稿日:2006/08/22(火) 02:56:11 [ 6wDJ3gyY ]
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471 名前:名無しさん 投稿日:2006/08/28(月) 01:21:17 [ gs29gM6. ]
.

472 名前:サボり君 投稿日:2006/08/28(月) 21:03:09 [ rHcf4Vpk ]
お初ですが書いてみましょうかの
けっこうRSの知識は薄いので
んん?っと感じることもありましょうが、そこはおかーさんのような大きな心でw

473 名前:サボり君 投稿日:2006/08/28(月) 21:32:34 [ rHcf4Vpk ]
私はユリ。やっと旅をする事を許された14歳。
一応、ランサーだ。
幼馴染のカン(剣士)と一緒に、旅を始めた。

ユリ「一応、武器と回復アイテム持ってるし、狩り行く?」
カン「ん?おぉ、行くかの〜。」

カンは、剣士という職業に似合わない、ゆるゆるとした性格だ。
でも、しっかりしてる。私に気付かれないようにいつも頑張ってくれてるのを、私は知ってる。

西口の、ポータルに立つ。 暖かいような、冷たいような光が私たちを包む。

そして、コボルトを倒しては、小銭を拾い、キャンディーを拾う。
その作業に飽きた私たちは木陰に座り込み、どんな技を選ぶか、相談していた。
ユリ「やっぱり私は、おかーさんから貰ったこの風の魔法がかかったネックレスがあるし、
   とにかく速く敵を倒せるように、物理系にしよっかなー。
   カンはどうするの?」
カン「んん?あぁ、とにかく速く、強くなりたいし、俺も物理系かなー。」
などと会話をしていると、優しそうなビショップが声をかけてきた。」
ビショップ「あの、お二人さん?もしよければ、一緒に、あの洞窟の秘密、探りに行きませんか?」

あの洞窟、というのは、コボルト秘密の事だろうか。
今まで幾度と無く調査されたらしいが、いつも、洞窟の主が護っている
宝箱の開錠の方法が判らず、それまでの「過程のモンスターを狩ること」
が目的になりつつある洞窟だ。

ユリ「ねぇ、行こうよ。面白そうだし。」
カン「おぉ、じゃぁ行くかぁ。」
余り乗り気じゃない返事だったが、気にせずに行くことにした。

474 名前:サボり君 投稿日:2006/08/28(月) 22:02:36 [ rHcf4Vpk ]
洞窟の前で待機していたメンバーと挨拶を交わし、
洞窟の、大きな柱の前で、ビショップが仄かに光る宝石のようなものを取り出し、ゆっくりと砕いた。
ビショップ「行こうか。」
ビショップの後に続き、開かれた扉に入る。
そこは、入る前の洞窟とさほど変わりはしなかったが、少し嫌な雰囲気を感じさせる空気で満ちていた。
順調に洞窟内を進み、大きな扉を開けた。
会話が突然途切たかと思うと、目の前に一回り大きなコボルトが居た。
しかし、大きさだけじゃない。何かが違う。これは、コボルトじゃない
シーフ「気をつけなよ。コイツ、普通のと全然違うから。
    皆でかかんないと、やられちゃうよ」
ビショップ「よし、行くぞ」
その言葉を合図に、皆が一斉に飛び掛った。
少し恐怖は感じたが、これだけ人数がいれば、大丈夫だという安心感もあった。
2,3分立っただろうか。まだ戦闘に慣れてない私は、大したダメージも与えられなかったが、
こちらの傷も殆ど無く、無事、主を倒した。
すると突然、洞窟が激しく揺れ始めた。
シーフ「だーいじょうぶだよ。もうちょっとしたら外に出られるから。」
その言葉を信用していなかった訳ではなかったが、まだ不安だった。
ユリ「そういえば・・・カンは?剣士の。」
ビショップ「あれ?さっきまではいたよね?」
シーフ「もしかして迷っちゃったか〜? まぁ、どこに居ても、外には出られるから、大丈夫でしょ。
    ほら。もう出られる。」
西口でポータルに立った時のような感覚に包まれ、目を開けると、そこは洞窟の入り口だった。
シーフ「!!おっ、おいっ!オマエっ!」
何事かと思い、振り返ると、居なくなっていたカンに怒鳴っているシーフがいた。
ユリ「何何??どうしたの?」
シーフ「お、オマエっ、そ、その手袋っ!」
カン「ん?これ?さっき、変な宝箱こじ開けたら、入ってたんだ。」
シーフ「そ、それ、ただの手袋じゃないぞっ!!
    ほらっ、その十字架のエンブレムっ、それ、賢者カイトスの手袋だよ!」
カン「んん?誰よ?それ?」
その意見には私も賛成だった。そんなに驚くほどの人間は聞いたことが無い
シーフ「カイトスっていったら、その魔力は海を杖一振りで大陸に変えちまうっ程の魔法使いさ!」
カン「んん?」

475 名前:殴りBIS ◆1D.OIf0oIk 投稿日:2006/08/29(火) 02:26:33 [ hJ7MfxA2 ]
元ネタ:ジョブに対する偏見とイメージを書くスレPart4
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/game/19634/1155817950/120
あまりにもツボに入ったので、2次(3次?)創作を試みました( ̄▽ ̄;

 ブルン高校野球部は最大のピンチを迎えていた。
 2−1で迎えた9回裏、駄目音高校3番のバフォメットをなんとか打ち取り、
最強の4番デビ・ロンを敬遠四球、5番レイスをキャッチャー・BISの冷静な
配球術で押さえ込んだ。そしてツーアウトから後1人でゲームセットの場面、
今までほぼ完璧に抑えていたエースピッチャー・アチャがまさかのアクシデント。
 6番コロッサスの打席、長打を警戒し深い守備体系(通称:コロシフト)を
取っていたところ、まさかのセーフティスクイズを敢行、焦ってファーストへ
ベースカバーに入ったアチャは、コロッサスの猛烈なキックに吹っ飛ばされ
ノックアウト、守備妨害も認められず、負傷退場となってしまったのだ。
 デビ・ロンはすかさずサードまで進塁、ファーストにコロを置き、次打者は
駄目音高校屈指の強打者、7番リッチ。控えピッチャー・天使の投球も通用
しないバケモノである。

 「タイム」 動揺を隠せないナインに、キャッチャー・BISは間を取った。
内外野からすべての選手がマウンドに集まってくる。
 「すまねぇ。俺のところに飛んでくるように、睨みつけてたんだが……」
 センター・剣士がうなだれる。今までコロの飛球は、全部抑えていたのだ。
 「やっちゃったものはしょうがないよ。リッチも敬遠で、古代と勝負する?」
 ショート・ランサーが剣士の肩を叩いて満塁策を提案するが、
 「いや、ここで終わらそう」
 寡黙なファースト・戦士が口を開き、みんなの目の色が変わった。
 「そうですそうです。あとOne Outなんですから、良い方に考えましょう」
 そういって1人バリアを張るサード・WIZは、「砂漠の疾走」球場の熱気に
ほとほと参っているという感じだ。実はスタミナがないのが彼の弱点である。
 「そんなこといって、WIZ先輩暑いの苦手だもんね(にぱ」
 ライト・サマナに見透かされて、思わずWIZ苦笑い。でも満更でもなさそう。
そんな会話をしつつ、召喚獣を再召還している辺り、サマナは抜かりがない。
 「で……どうする……アレで行くか?」
 セカンド・シーフ、必殺の隠し球を意識し、帽子の奥の瞳がキラリと光る。
 「バウバウバウ!」
 「そのとおり、やつ(コロ)には効かないよ」
 レフト・狼に賛同するBIS。
 「じゃぁ、どうするんだ? 俺の必殺ホリクロも、リッチには……」
 不安げな天使の言葉に、みんなが一斉にBISの方を向く。
 「大丈夫、作戦がある……それにはみんなの応援が必要だ」 
 BISは、頼もしい応援席の方を向いた。            (続く)

476 名前:殴りBIS ◆1D.OIf0oIk 投稿日:2006/08/29(火) 02:29:16 [ hJ7MfxA2 ]
 「<!>うおお、あとワンナウトや! いてまえお前ら!
   <!>ブルン高、ブルン高、ファイッォー、オー!!
   <!>気合いだ、気合いだ、気合いだー! オイッオイッオイッ!
   ……う、ゲホッ、ごほ、ノ、ノドがかれた……」
 熱血応援団長・武闘家、守備側なのに声をからして大応援。そんなスタンドで、
転校生・悪魔と一般生徒・姫が試合を見つめていた。
 (ククク、リッチ相手では、天使の魔法投球なんて一溜まりもないわ……
素直に敬遠策でも取れば別だけど、これでブルン高も終わりね……)
 なんと悪魔は、駄目音高校からの転校生だったのである! しかしそんな
様子は微塵も見せない悪魔、努めて冷静を装い、試合を解説し始めた。
 「あぁ、これはもうダメね……」
 「な、なんでですの? 悪魔さん。天使先輩はまだ一球も投げてませんわ」
 野球(俗世間)には疎い姫、スリングを握りしめ、固唾を呑んで見つめていた。
 「フフ……あのリッチは、駄目音高校の中でも別格よ。ネクロやレイスなんか
目じゃないわ。何しろ全属性抵抗が100%だから、天使先輩のホリクロフォークも
ホリサクチェンジもジャッジ分裂魔球も、てんで効かないのよ。元々天使先輩の
魔法投球は制球が甘くなるから、物理投球って手もあるけど……それも球威不足ね」
 自校の絶望的な戦況を解説しながら、どこか楽しそうな悪魔。どうやら天使とは
少なからず因縁もありそうだ。そんなことはまったく気付かず、不安が募った姫は
 「あぁっ、そんなっ……ふぅ……」
 遂に失神してしまった様子。

 「諦めちゃダメ!」
 そんな2人に声をかける、チアリーダー・リトル。そのフリフリでギリギリの応援
衣装は、他校生徒からも人気が高いブルン高の華である。
 「今までだって、BIS先輩の冷静な状況判断で、どんなピンチでも乗り越えてきたわ!
それを信じて、私たちも一緒に勝利を祈らなきゃダメよ!」
 「フ……そうはいっても、この状きょ」
 「そのとおりですわ!」
 失神していたかに思えた姫、いきなり直角に身を起こす。
 「リトルさんのいうとおりですわ! 奇蹟は必ず起こりますっ、 私は信じてますわ!」
 (なっ……このアマ……)
 色々といいたいことがありそうな悪魔。どうにもこの手の子は苦手のようだ。その時
ふと、マウンドのBISと、応援席のリトルとの間で交わされる視線に気が付いた悪魔。
 「まっ、まさか……!?」                   (続く)

477 名前:名無しさん 投稿日:2006/08/29(火) 02:57:11 [ xJi8rg6E ]
>>476 GJ!!!!
野球のルールわからないけど雰囲気面白すぎる

478 名前:殴りBIS ◆1D.OIf0oIk 投稿日:2006/08/29(火) 04:10:34 [ hJ7MfxA2 ]
 「あぁっ、こんな時、ベンチで見ていることしかできないなんて……」
 スコアラー兼マネージャー・テイマは気が気でない。双子の妹、サマナは
レギュラーの座を射止めているが、自身はまったく野球は出来ないのである。
 「私はこうやって、正確なスコアを書くだけ……」
 思わずスコアを握りしめるテイマ。いつも彼女の日記には、こういった日の
憂鬱な気分や、叫び出したいような心情が書き込まれるのだ。
 「ソンナコト ァリマセンョ」
 「きゃぁっ!?」
 いきなり後ろから呟く、控えキャッチャー・ネクロ。この男か女か、果ては
人間なのかどうかすら怪しい人物を、御多分に漏れずサマナも苦手だった。
 「ネ、ネクロ君、ビックリした……いきなり後ろに回り込まないでよぉ」
 「スィマセンスィマセン デモ さまな先輩ハ 立派ニ役ニ立ッテマスョ 自分
ナンテ ねくろダカラ根暗ダナンテ ィワレマスケド さまな先輩ハ ィツモ明ル
クテ べんちカラ励マサレルト 不思議トドンナぴんちデモ 頑張レマスョ」
 「ネクロ君……」
 ちょっとしゃべり方も怪しいけど、良い後輩には違いない。
 「ありがと、ネクロ君。でもね」
 「ハィ」
 「私、サマナじゃなくて、テイマ。サマナは双子の妹の方よ」
 「……Σ」
 妹のサマナが自分に間違われることはあるけど、そういえばその逆はあんまり
なかったなぁ……そんなことを考えながら、テイマの気は晴れていった。そう、
自分は自分に出来ることをすればいい、それがみんなのためにもなるんだ。
 「みんなー、ガンバってー! サマナー、おねぇちゃん付いてるよ〜!」
 マウンドの円陣で、姉の応援に気付いたサマナはにっこり笑顔。ベンチの奥
に引き籠もってしまったネクロは、ベンチのクーラー・スウェルフェー相手に、
体育座りで何事かブツブツ呟いていた。心なしか周囲の空気が黒い。何を考え
てるか判らないスウェルフェーも、この時ばかりはちょっぴり迷惑そう。

 「君たち、早くしなさい」 全身鎧のケイルン審判が、ブルン高ナインに促す。
 「あぁ、すいませんでした……みんな」 BISが引き締まった顔で向き直る。
 「あと1人だ。神の御加護がありますように」
 そうBISが賛美し、みんなの集中力を高めると、突如ブルン高ナインの頭上に
聖なるアーチが出現し、聖霊の加護が、そして六大元素の精霊達も召喚された。
 『『『ブルン高……オー!!』』』
 みんなの声が一つになり、守備に散っていった。         (続く)

479 名前:殴りBIS ◆1D.OIf0oIk 投稿日:2006/08/29(火) 04:38:52 [ hJ7MfxA2 ]
>>478
ギャー! 10行目、テイマとサマナを間違えた……深夜に物書くとこれだから><
続きはまた午後にでも、書け次第アップ予定です〜

480 名前:殴りBIS ◆1D.OIf0oIk 投稿日:2006/08/29(火) 18:32:08 [ hJ7MfxA2 ]
 それぞれの守備位置に戻っていったブルン高ナイン、彼らの胸には、この試合
に対する決意が秘められていた。

 寡黙な4番、戦士。一撃必殺の長打力を持ち、なおかつ分身打法も体得した、
ブルン高の頼れる4番であるが、意外にもブルン高の中では地味な存在であった。
ブルン高ナインは、センターラインを中心とした鉄壁の守備を誇るチームである。
 すなわち、大黒柱であるキャッチャー・BIS、エースピッチャー・アチャ、シーフ
とランサの二遊間、そしてセンター・剣士。彼らの存在があったからこそ、今ま
でも幾多の強敵を打ち負かしてきたのだ。加えていえば、WIZとランサの三遊間
も超高校級だ。反則すれすれのWIZの守備には、いつも舌を巻かされる。
 つまりブルン高は、ファースト・戦士、ライト・サマナ、レフト・狼が守備の
穴である。もっともサマナはチームの華であるし、召喚獣たちとの連係プレーに
は定評がある。狼は……いつもバウバウしかいわないので、戦士には何を考えて
いるのかイマイチ判らないが、三遊間とセンターで十分補っている。自らを鑑み
れば、シーフの守備範囲の広さに頼っているのが現状だ。
 だからこそ無駄口を叩かず、どんな時も1人で黙々とバットを振り続け、誰
よりも長打力を磨いたのだ。そんな戦士の姿に、ブルン高ナインはみな尊敬にも
似た気持ちを抱いていたのだが、当の戦士は気が付かなかった。彼は誰よりも
自分に厳しく、他人の評価などまったく気にしない人間だったからだ。
 ちなみに今日の試合の全得点は、戦士が叩き出した。必殺のドラツイ打法が
決まり、場外ツーランホームランを放ったのだ。しかし9回裏のコロシフトで、
アチャがコロッサスに吹っ飛ばされてしまったのは、明らかにファーストである
自分のミスだった。それが、人一倍責任感の強い戦士には堪えられない。自らの
不甲斐なさに、全身の血が沸き立つような怒りさえ覚えた。
 このミスは、俺が取り返す。いや、俺が取り返さなければならない―――
アチャのためにも―――戦士は、ファーストミットを強く叩いた。

 ブルン高の二遊間、シーフとランサは、このピンチをしのぐ術を考えていた。
 「やっばいなぁ……」
 誰にも聞こえないように一人ごちるランサ。彼女の両足は、爆弾を抱えたも
同然だった。いつ動かなくなっても不思議ではない。むしろ9回裏まで保った
のが奇蹟みたいなものだ。華麗なステップも、ボールに向かって突進していく
ような自慢の守備も、この局面で足が動かなくなったら―――頬に汗が伝う。
 (もう少しだけ保ってくれよ、アタシの足……)
 そうやって両足を気にするランサの姿を、シーフは誰よりも心配していた。
 (いつ限界が来てもおかしくない……オレがなんとかしなきゃな……)
 シーフの頭の中では、もちろん二ゴロに打ち取るのが最善である。そのために、
審判には気付かれないように、既に一二塁間には大量のブービートラップを設置
済みである。もし遊ゴロになって、ランサが打球処理に手間取るようなことが
あっても、それで少しは時間が稼げるだろう。
 (ランサさんの分まで、オレがやってみせるぜ)
 普段クールなシーフであったが、この時ばかりは燃えていた。     (続く)

481 名前:名無しさん 投稿日:2006/08/30(水) 04:04:54 [ L7m3sBnQ ]
殴りBIS ◆1D.OIf0oIk 応援sage

482 名前:名無しさん 投稿日:2006/08/30(水) 12:19:56 [ EaxCfM8I ]
バントシフトのときはセカンドがベースカバーに入るはずだが・・・

そんなことは気にならないほど期待sage

483 名前:殴りBIS ◆1D.OIf0oIk 投稿日:2006/08/30(水) 18:44:34 [ hJ7MfxA2 ]
 「ウォォォォォーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!!!」
 「「!?」」
 外野から球場全体を揺るがすような、凄まじい咆哮が響く。狼の本気の姿だ。
肩を怒らせ全身の毛が逆立ち、まるで炎が立ち上っているかのように揺らめく。
その瞳はまさに野獣、外野からでもバッターを射すくめ、レフトに打球が飛んで
くることは少ないのだ。
 「グルルルルルル……」
 (BISさんのいったとおり、あと1人だ。何があってもここで終わらせる!)
 グローブをはめられない狼の両手は、鋼鉄のように引き締まった。

 「あは……ポチ先輩、すごいなぁ……」
 反対側の外野、サマナは第3段階のケルビーの肩に乗り、ビリビリとした気迫
を感じた。ちなみにポチ先輩というのは、サマナが呼ぶ狼の愛称である。
 (でもあの姿になると、フライあんまり捕れなくなっちゃうんだよねぇ……)
 狼の本気モードは、ミートや長打力が増し、俊足・強肩になる代わりに、肝心
の守備力が落ちてしまう、こうした局面では諸刃の刃なのだ。もっとも、割合
レフトに打球が飛んでいくことが少ないのは、サマナにとっては不思議だが。
 「私は私にできることをするだけ、だよね……おねぇちゃん」
 サマナの双子の姉、テイマのことを想った。誰よりも気配り上手で、ベンチで
いつも自分達を励ましてくれるおねぇちゃん。そんなおねぇちゃんの応援に応え
るためにも、絶対に負けられない。そのためにも、最高のプレーを―――。
 「ケルビー、ウィンディ、ヘッジャー……あと1人だよ。ガンバろうね!」
 『ガウッ! バウッ!』 『ピピルーィ!』 『……(無言でうなづく)』
 頼もしい召喚獣たちをライトに散らばらせ、サマナは引き締まった顔を向けた。

 「うぉっ!? ペロの野郎、気合い入ってやがんな……」
 センターでは剣士が、元プロ野球選手だった父親譲りのグローブをはめ直して
いた。自分が幼い頃に亡くなり、その手が優しいものだったか怖いものだったか、
もう覚えていないが……ちなみにペロというのは、剣士が呼ぶ狼の愛称である。
 (このピンチは俺の責任だ……俺がなんとかしなきゃ……)
 駄目音高校のコロッサスを抑えるのは、常に自分の役目だった。コロの破壊力
抜群の長打を警戒し、ナインは定位置より深い守備体系(通称:コロシフト)を
取る。そして打球は、常に自分のところに飛んでくる。そうやってコロを完璧に
打ち取っていたのだ。しかし9回裏、まさかの一二塁間へ向けたセーフティスク
イズ、必死にゴロを捕りに行き、そのままタッチアウトを狙ったアチャは、コロ
の猛烈なキックにやられてしまったのだ。
 (こんなんじゃ、天国の親父に顔向けできねぇ……)
 自他共に認める陽気なチームのムードメイカーも、この時ばかりは笑えない。
今日はバットでもまったく貢献出来ず、当たればクリーンヒット率80%↑とも
いわれている、WIZの巧打での出塁と、戦士の豪快なホームランで取った2点
だけだ。せめて守備で貢献しようと意気込んでみたが、この様(ざま)である。
 「俺に出来ることは……」
 もう、カッコイイだけのバッティングは、あいつら(駄目音高校)には通じない。
父親譲りといわれている、どんな時でも諦めないガッツ、これが最大の武器だった
はずだ―――剣士は、自分の持ち味を思い出した。
 「おおおっ、バッチコイやぁぁああ!!!」
 親父、俺に力を―――剣士は外野で雄叫びを上げた。           (続く)

484 名前:i 投稿日:2006/09/01(金) 18:14:28 [ LCokjZpI ]
野球のことは全く分かりませんが、すごく面白いです。
続きを楽しみにしています!(^^)

485 名前:i 投稿日:2006/09/01(金) 18:15:36 [ LCokjZpI ]
久しぶりに書き込んだら、sage忘れました・・・_n○
申し訳ありません><

486 名前:名無しさん 投稿日:2006/09/01(金) 20:21:32 [ 95LPe4Fk ]


ハハハ                             イキデキネーヨ
   ∧_∧  / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄   ハライテ-       ゲラゲラ
   ( ´∀`) < マジだよコイツラw      ∧_∧       〃´⌒ヽ       モウ カンベン
.  ( つ ⊂ )  \_______   (´∀` ,,)、      ( _ ;)        シテクダサイ
   .)  ) )   ○   ∧_∧      ,, へ,, へ⊂),     _(∨ ∨ )_     ∧_∧ ○,
  (__)_)  ⊂ ´⌒つ´∀`)つ    (_(__)_丿      し ̄ ̄し     ⊂(´∀`⊂ ⌒ヽつ
          タッテ ラレネーヨ

487 名前:殴りBIS ◆1D.OIf0oIk 投稿日:2006/09/02(土) 01:13:02 [ hJ7MfxA2 ]
 「やれやれ……うちの外野はうるさいですね……」
 ブルン高ナインで女生徒人気No.2を誇る、サードのWIZ。彼のモットーは、いつ
いかなる時でもSmart(洗練された、利口な、素早く、等の意)に、である。その
頭脳的なバッティングと守備は、他のナインの追随を許さない。ちなみに彼は、
見栄えの良いプレーや、ファインプレーといったことを認めない。どんなに困難
な状況でも、それを感じさせない凡プレーにしてしまうのが、本当の名選手だと
信じているからである。
 (心はHotでも、頭はCoolに―――Smartに。それこそが勝利を呼び寄せる……
それにしても、ここは暑すぎるな……)
 砂漠のジリジリ灼けつくような熱気が骨身に応え、Smartさが信条のWIZも堪ら
ない。水壁を張って少しでも日差しを避けていたが、加えて周囲に風壁を起こし、
少しでも涼を取ることにした。これは守備力を高める効果もあり、一石二鳥である。
 (さて、一番の問題は……)
 WIZは、三塁走者のデビ・ロンをチラリと見た。駄目音高校最強の強打者にして
エース、デビ・ロンには、今日の試合すべて敬遠策を取ってきた。しかし、三塁
まで進めてしまったのはこれが初めてである。コロッサスのセーフティスクイズの
場面で、一塁から一気に三塁まで陥れたのには、さすがのWIZも嫌な汗をかいた。
 (この鳥顔、近くで見ると、ますます何を考えてるのか判らん……)
 次のバッター、リッチも、駄目音高校の中では別格の強打者には違いないが、
デビ・ロンはそれをも遙かにしのぐ存在である。自慢のチリング牽制タッチや
ロックも、まったく効きそうな気配がしてこない。なんとかゴロかフライで
終わらせて欲しいのが本音だが、もしそうならなかったら―――。
 (フッ、この私が運頼み・神頼みですか……頼みましたよ、BIS/天使バッテリー)
 頼れる大黒柱、BISの作戦を信じるしかない―――泡のように軽く、心地よい
着用感を誇るインナーグローブをはめ直し、WIZはマウンドを見つめた。

 9回裏、今日の試合最大のピンチを迎え、マウンド上の天使の心は揺れていた。
満塁策を取って古代と勝負するのではなく、リッチを抑える―――みんなでそう
決めたものの、今日の試合、ベストピッチといって過言でなかったアチャの後を
投げるとなると、普段よりも凄まじいプレッシャーであった。ミスは許されない。
 (ここでリッチを抑えられなかったら、良くて延長、悪くてサヨナラ負け……)
 天使の脳裏に、悪いイメージばかりが過ぎる。
 (ハッ! いかんいかん、弱気になったら終わりだ……!)
 天使は、胸にしまってある十字架を取り出した。以前、王立ダークエルフ高校と
の試合に勝利した時に、相手ナインの王(キャプテン)から手渡されたものだ。
 『我らを倒すとは見事……その証に、これを受け取られよ』
 その時の死闘が、ありありと想い起こされる。そうだ、自分はあの試合を投げ
切ったじゃないか、リッチ1人にこの弱気では、彼らに顔向け出来ない―――
十字架をしまうと、天使は、自分の力がぐんとみなぎってくるのを感じた。
 (勝つ……! それしかない……!)
 「プレイ!」 ケイルン審判の声が、マウンドにこだました。     (続く)

488 名前:名無しさん 投稿日:2006/09/02(土) 19:57:08 [ vO/w8OUw ]


489 名前:名無しさん 投稿日:2006/09/02(土) 20:50:48 [ y9QDGsHA ]
いい、すごくいい。読み手をぐいぐい読み進ませる力がある。続きが気になって仕方ないね。
ところどころに赤石にも話を絡ませてあるから、赤石やってると「剣士が装備しているグローブはパパ手か」
とか「お、犬がベルセ使ったな。どんな展開になるんだろ」みたいに色々妄想できて楽しい。

行き詰まったら、定期的に散歩するといいよ。体動かすと血の巡りが良くなるし、
気分転換になるから。

がんばれー。

490 名前:名無しさん 投稿日:2006/09/04(月) 00:59:07 [ 7tncazGA ]
test

491 名前:殴りBIS ◆1D.OIf0oIk 投稿日:2006/09/04(月) 03:53:25 [ hJ7MfxA2 ]
 まるで全身鎧のようなプロテクターに身を包み、無骨なマスクを被り直したBISは、
ブルン高ナイン全員を見渡した。この局面、キャプテンとしてもキャッチャーとして
も、本来ならばリッチは敬遠であった。そして満塁策を取り、古代ヴァンパイアと
勝負するのが定石といえよう。それがこの局面でベストだった。しかしBISは、ここ
で勝負というナインの意を汲んだ。
 (私もキャッチャーとしては、まだまだだな……)
 BISは内心苦笑した。しかしこれは、ナインの無謀な策に乗せられたというわけで
はない。BISもまた、心のどこかで、ここで勝負することを望んでいたのだ。BISは
守備の人である。ブルン高屈指の長打力を持つとはいえ、打率はかなり低い。その
活躍の場は、キャッチャーというポジションに限られるといっても過言ではない。
 ではBISにとって、「勝負」とはなにか。バッターが臆することなくピッチャーと
「勝負」するのと同じように、キャッチャーが臆することなく「勝負」することと
はなにか。その答えを、BISは自らの意志で選んだ。そして、ならば。
 (この「勝負」、負けたら私の責任だ。天使の100%の投球を引き出すのも、また
私の責任―――そして頼むぞ、リトル)
 勝つために―――キャッチャーとして、キャプテンとして、そしてブルン高ナイン
の一員として―――BISは天使にサインを送った。それを待ちかねていたかのように、
大きくうなづく天使。2人の意志は、完全に一致した。

 その時だった。砂漠の熱気にさらされていた球場に、突如として無数の光が降り
注いできた。それはまるで、実体を持たない流星群のような、あるいは超新星爆発
の光が地上に到達してきたかのような、無数のまばゆい光であった。
 「こっ、これは!?」
 悪魔は目が眩んで、思わず顔を覆った。応援席の最上段では、いつの間にかそこ
まで登っていたリトルが、応援用の指揮棒をくるくると回していた。その姿からは、
まるで女神のような神々しささえ感じられたが、みな光に気を取られて、誰もその
姿を見ていない。
 (こっ、この光は……! ぜ、全身の力が抜けていく……!)
 球場中の誰もが―――正確にはリトルとBIS以外であるが―――あっけに取られた
が、その光は身体を突き抜け、何事もなかったかのように地に吸い込まれていった。
しかし悪魔と駄目音高校ナインには、それでは済まなかった。
 (お、おのれぇっ……邪な心を持つ者にだけ―――悪魔の眷属にだけ降り注ぐ、
聖なる星の光かっ……!)
 「い、一体これはなんですの……!?」
 「うぉ、なんじゃこりゃ!?」
 驚きのあまり、思わずウサギ化してピョンピョン跳びはねる姫。光を避けるために、
分身したり左右に忙しく飛び回ったりする武道家。もちろん彼らに影響はない。
 「心配しなくても、無害よ……でもこの光、リッチには効くわね……」
 憎々しげに声をかける悪魔。この威力ならば、全属性抵抗100%のリッチでさえ、
その抵抗は半減してしまうだろう。そしてあの十字架―――。
 (ぬぅぅ、BISめ、リトルめ……こんな大技を本当に使ってくるとは……ハッ!?)
 「ぬぁ!」
 光の降り注ぐ球場で、天使が渾身の球を投じた。             (続く)

492 名前:名無しさん 投稿日:2006/09/05(火) 00:33:18 [ /aCP4Cz6 ]
ブルン高校せけーw 
おもしろい(;´Д`)ハァハァ
続きおね

493 名前:名無しさん 投稿日:2006/09/05(火) 00:39:32 [ OkWuaEiU ]
ネットで時給千円〜三千円のお小遣いをGET!!
http://web1.nazca.co.jp/jbbs/

494 名前:殴りBIS ◆1D.OIf0oIk 投稿日:2006/09/05(火) 05:24:08 [ hJ7MfxA2 ]
 天使とBISが勝負に選んだ球―――それはまさに全身全霊、天使のすべての
力を込めた球であった。その右腕は弓のように引き絞られ、バネのように弾か
れる。そのあまりの威力に、天使の傷ついた羽からは血が飛び散り、自らを
痛めるほどの剛速球―――天使の最も得意とする、ブラッディストレートだ。
 「グォォオォォオ!!」
 リッチが巨体を震わせ、声にならない叫び声を上げる。まるで炎が吹き出す
かのようなスイングが空を切り、天使の初球はズバンとミットの中に収まった。

 「「「おおおおおおお!!」」」 ブルン高応援団は大歓声を上げた。
 「イけるぞ!」「天使先輩の球が効いてますわ!」「その調子!」
 勝利を予感し喜ぶ面々であったが、悪魔だけがギリリと爪を噛んだ。
 (リッチ……! 貴様の真の力を見せてみろ……!)

 「ふう……」
 天使は大きく息を吐き、本当の「天使」であった頃の力を懐かしんでいた。
 (あの頃だったら、まだまだこんなもんじゃなかったんだがな……しかし
今はこの「身体」で、全力を尽くすのみ……そうだろう、キャプテン)
 天使は、同じ境遇であるBISを見つめた。同じ境遇であるが故に、同じ堕天
された身であるが故に、2人は誰よりも解り合える仲である。またそれ故に、
配球で2人の意見が合わなかったことは、かつて一度としてない。BISの出す
サインに、また力強くうなづく天使。
 「ぬあ!」
 天使とBISが選んだ球、それはまたしてもブラッディストレートだった。速球に
射し込まれ、球はガキンと鈍い音を立てて真後ろに飛んだ。ファール。

 「「おおおっ!」」「きゃっ!」「ひっ」
 歓声の中にも一瞬悲鳴が混じるブルン高応援団。だがそれも、すぐに安堵の
溜息に変わる。
 「アブねぇ〜……」「でもこれで追い込んだぞ」「あと一球! あと一球!」
 みんなが天使の剛速球に期待を寄せる一方、悪魔だけは別の感想を持った。
 (真後ろに飛ぶファール……これは速球に圧されているとはいえ、タイミング
は合っているということ……ならばあの球、打てない球ではない……!)
 まったく同じことを、ベンチのネクロも感じていた。
 (マズィデスネ///天使先輩ハ 制球ガァマリ良クナイ///コノ二球ハ 悪クナカッタ
ケド 次モ良ィトハ限ラナィ///甘ィトコロヘ ァノ球ガィッタラ///)
 口元を歪め、にやりと嗤う悪魔。
 (フフ……駄目音高校の、勝機が見えたぞ……!)
 青く燃えたぎる炎を揺らめかせ、格子の奥の表情を曇らせるネクロ。
 (天使先輩///BIS先輩///ドウカ りっちヲ抑ェテ///頑張ッテ///)

 キャッチャーであるBISは、冷静にこの二球を振り返った。
 (初球、外角へのブラッディストレートには空振り、今の内角へ投げ込ませた
ブラッディストレートには、射し込まれながらもタイミングは合っていた……
リッチの頭の中には、直球の速さを刷り込ませたはず……ならば、次の球は……)
 天使にサインを出すBIS。そして当然のようにうなづく天使。
 (さぁ……ここへ投げ込んでこい!)

 その刹那―――シーフの第六感が、頭の中を貫いた。
 「やべぇ!」                           (続く)

495 名前:殴りBIS ◆1D.OIf0oIk 投稿日:2006/09/06(水) 00:30:25 [ hJ7MfxA2 ]
 「ぬぁ!」
 天使が3球目に投じた球―――それは外角へのホリクロフォークだった。
ブラッディストレートとほぼ同じ球速で投じられるが、バッターの手元で
ストンと落ちる、空振りを狙える球である。外角へ落とすため、もしバット
に当たったとしても内野ゴロになることは必至である。しかし制球重視の
球であるが故に、直球ほどの球威はない。そして落ちきらなかった場合は
―――。
 (しまった……!)
 投じた瞬間、天使は失投を悔いたが、すでに遅い。リッチもまた、この
失投をみすみす見逃すようなバッターでもなかった。地獄の底から響いて
くるようなうなり声を上げ、リッチのバットが火を噴く。
 『ギィン!』
 落ちきらなかったホリクロフォークを捉え、詰まり気味ながらもライナー
性の球が、ピッチャー返しされた。
 「うぉお!」
 天使は咄嗟に双翼を大きく広げ、球を弾き落とそうとするが、その球は
傷つき折れた片翼の下をかすめる。後ろでは、その球に鋭く反応したランサ
が横っ飛びで球に喰らいつこうとするが、
 「ぐっ!!!(足が……!)」
 ここ一番でランサの両足を襲う激痛―――あと一歩足りず、グローブに球
は届かない。シーフの足も遙か及ばない。球はセンターに落ちていく。
 「うおおおおおおお!」
 剣士が猛烈な勢いで突進し、球に狙いを定め、グローブを突き出しながら
飛び込んだ。
 (頼む、届いてくれ―――!)
 球場中のすべての視線が、球に、剣士に、グローブに注がれる。しかし
無情にも、剣士の突進は届かず、球は外野の硬い土に高く跳ね上がった。

 (((ダメだ……1点入った……)))
 球場中の多くの者が、そう落胆し、嘆き、諦め、ある一部の者は驚喜し、
デビ・ロンとコロッサスもその姿を確認してから、走り出す。

 ここで 1点失う ? ここで 諦める ?
 認めるのか? それを 認めるのか? 諦めるのか? 諦めるのか?
 あきらめるのか―――?


 ―――否!!!


 最後まで勝負を諦めない者達が、動いた。           (続く)

496 名前:殴りBIS ◆1D.OIf0oIk 投稿日:2006/09/06(水) 03:11:24 [ hJ7MfxA2 ]
 「……ハッ!?」
 天使は球が打たれた瞬間、本塁に向かうデビ・ロンの姿が目に入った。
 (本塁には返せない……! 守りきる……!)
 考えるより先に、身体が動いた。
 「ホールドモンスター! ホールドモンスター! ホールドモンスター!」
 伝家の宝刀ともいうべき、天使の魔法守備。
 (みんな済まない……! なんとか、ボールを返してくれ!)

 「行かせん!」
 天使に遅れて、本塁に走るデビ・ロンに、WIZが渾身の魔法守備をかける。
 「ロック! ロック! ロック! グラビティ! グラビティ! グラビティ!」
 球が返ってくる保証はない。デビ・ロンにはほとんど効果もない。
 (しかし、私に出来るのはこれだけ……この命(CP)尽きるまで……!)

 外野の剣士は、腹這いになりながら、喝とボールを見上げた。硬い土に
跳ね返ったボールが、太陽の光と重なり、まるでスローモーションのように
浮かんで見えた。球場の歓声も聞こえない。砂漠の熱さも感じられない。
ただただ、光に照らされたボールと自分が「ある」だけ―――。
 (俺のせいで……点が入る……? 俺が取れなかったから……点が入る……?
俺は……ここまでなのか……? いや……いや……! 違うよな、親父……!!!)
 
 「ウィンディーーー!! リフトアーーーーップ!!!」
 『バタバタバタ!』
 剣士が大きな羽ばたき音を感じた瞬間、その身体は宙へと翔(かけ)上がった。
サマナの命令でウィンディが剣士の身体を掴み、空中に持ち上げたのだ。
 ((飛……飛んだ……!!?))
 その様にみな息を呑む。まるで翼が生えたかのようなその姿は、陽光に照ら
され、美しく、神々しくさえある―――そう、まるで、天使のように―――。
 (いくぜ……!)
 剣士は空中でボールを掴んだ。ランサやシーフは眼中にない。狙うは、本塁を
守るBISのみ。心臓はまるで龍の如く脈打ち、全身に血が駆け巡る。その指にも
ボールに喰い込むほどきつく力が入る。そして投げるは、この日のために磨いた、
シューティングバックホーム。
 「受け取れぇぇぇぇぇえええええ!!!!!」
 剣士は吼えた。その名のとおり、まるで流れ星のように、空中から投じられた
一球―――その球は、矢のように、レーザービームのように、BISのキャッチャー
ミット目がけて一直線に疾(はし)った。

 天使とWIZの魔法守備を振り切り、本塁へと突っ込むデビ・ロン。並の者なら、
一瞬でふっ飛ばされてしまいそうなその圧力―――BISは全身に力を込めた。
剣士の返球とのタイミングは、ほぼ同時。全体重を三塁側にかけ、デビ・ロンを
迎え撃つ。その様はまるで、要塞が立ち上がったかのよう―――。
 (((頼む……! 守ってくれ……!!!)))
 ブルン高ナインの祈りが、ブルン高応援団の祈りが、球場中にこだまする。
 「おおおおおおお!!!」
 「クワァァァーーーーーーー!」
 ボールとBISとデビ・ロンが交錯する。

 そして、閃光が走った。                      (続く)

497 名前:名無しさん 投稿日:2006/09/06(水) 10:09:15 [ ns7qpNRQ ]
魔法守備ってwww
幾らなんでも走塁妨害www
笑わせて貰いましたb

498 名前:名無しさん 投稿日:2006/09/12(火) 15:38:16 [ UxOEv5b2 ]
age

499 名前:名無しさん 投稿日:2006/09/13(水) 23:09:41 [ SdNrc8sk ]
まとめサイトは無いのか?

500 名前:21R ◆21RFz91GTE 投稿日:2006/09/15(金) 23:57:58 [ zBpIIz/s ]
前作品まとめ
[冬の軌跡]
ttp://bokunatu.fc2web.com/SS/main2.htm

Act:1 青空 前スレ>>962-963





 数年前より遠くなく、先日より遠い過去の話。先の大戦と呼ばれる悪夢をこの星は記憶した。
何人者冒険者が死亡し、何人者一般市民の犠牲を伴った大戦が終わりを告げてから幾年が立とうとした頃。僕は一人、英雄達が眠るあの古都へと来ていた。



Act.2:意思を告ぐ者達



 「マスタ…」
何時ものように私を呼びに来る一人の男性。彼の名はクラウス、「クラウス・アルフォード」。古都ウィザード協会の会長であり、私の右腕の男性。通称「北風のアルフォード」。
彼は何時ものように私を起こしにやってきた、外見は赤い短めの髪の毛に、軽めな服装、紺色の長いブーツを履き、手には彼愛用の杖が握られている。
「…おはよう、クラウス。」
私はベッドのすぐ側においてあるメガネを取り、それからベッドを降りてカーテンを空ける。夏のまぶしい朝日が目に飛び込んでくる。
日の光は私の部屋を明るく照らし、そして少し寝ぼけている私の顔をよく照らしてくれる。
「マスタ、寝起き早々申し訳ございませんが、昨夜訪れてきた入隊希望の二名の件ですが…」
「クラウス、その話は昨日の内に済ませたはずです。」
「…断る理由が。」
「断る理由、あえてそれを私に聞くのですか?」
少ししかめっ面をした私の顔を緊張した顔でクラウスが覗く。私は手に取っていたメガネをつけて引き出しに入れてあった写真立てをもう片方の手で取る。
その写真立てに、昔一緒に冒険した二人の冒険者の写真を入れる。この部屋に越してきてから数日、忙しくて荷物の整理すらまともにできては居なかった。
「ただ強くなりたい、強さを見せしめたい…理由がこれでは拒むのも分かります。ですが…」
「…武装ギルド、「エルビ・アル・ステレプト」との直接対決…ですか?」
「そうです、今は戦力に集中し動員メンバーを増やすべきで…。」
「クラウス。」
クラウスは、分かりきっている事をあえて言おうとして私の声を聞いてその先の言葉を言うのを止めた。
「…あの二人のギルドを、このギルドを血に染めるわけには行かないのですよ…。」
「…。」
「…それと。」
私がゆっくりと右手に力を入れて力拳を作りながら右肩の所まで拳を持ってくる、私の顔は他の人が見れば鬼神のごときという言葉がよく似合うであろう顔をしている、多分…それは私自身がよく分かっていることだと思う。
「…えっと、何か?」
「貴方は…本当に前マスタによく似て天然ですね…。」
「…といいますと?」
「私の体を見て何か気づくことはありませんか…?」
私はそこまでヒントを与えてそれ以上何も言わなかった、クラウスは一度首を傾げて私の体を多分じっくりと、そしてすばやく見たと予想される。
そして、少しの沈黙が流れた後
「…し…失礼しました!」
多分顔を真っ赤にしているのだろうその声を聞いて私はようやく事がすんだものだと思った。その瞬間クラウスは私の部屋をあわてて飛び出した。
「…まったく。」
羞恥心が無いと言えば私が悪いのであると思う、しかし…もう一年以上も一緒に過ごしているのだからそろそろ気が付いて欲しいというのも事実であった。
「…そろそろ下着姿で寝るの止めようかしら…。」
そこまで言って、私は何時もの洋服に着替える。着慣れた袖に手を入れ、何時ものズボンを履き、その上から軽い甲冑を付けた。
「さてっと…。」
外に出ても大丈夫な服装に着替えた後、先ほど写真を入れた写真立ての位置を調整して
「行って来ます、ミルさん、アレンさん。」




 広渡る青くて綺麗な空、全て包み込んでしまいそうになるその壮大さに僕は少しあこがれていた。
僕にもあんな壮大な力があればと何度思ったことだろう。でもそれは、汚れ無き白い雲の様に静かで、気が付けば消えてしまいそうになる理想だった。
 本日は晴れ、少しの雲だけが自由な空を飛び、少量の鳥が飛びまわり、心地よくもじめっとした風が流れる。よく言えば気持ちのいい真夏日、悪く言えばただ蒸し暑いだけのお昼下がり。
お昼と言えばまだ朝から何も食べてなかった、近くの食堂で何か食べようにもお金が無い。強盗を働くか?そう思ったがすぐに止めた。

501 名前:21R ◆21RFz91GTE 投稿日:2006/09/15(金) 23:58:41 [ zBpIIz/s ]
僕に強盗が出来るほどの力は無いし、度胸も無い、強いて言うなら彼女も居ない。あるのは山を登るのに便利なその辺で売っている杖と、緑色の長いコート。そして皮で出来たごく普通の帽子に冒険者気取りの少し汚れた靴。一度ゆっくりと自分を見直すとなんともセンスの無い服装だろうと他の人は言うかもしれないけど、僕には今これしか無い。
 でも、それも昨日までの話。お金が無い事と強盗が出来る力と度胸。強いて言うなら服装も。これを抜かしては昨日とは少し違った感じもするかもしれない。
今隣に居るのは一人の女性。少し長めの金髪に赤い頭巾、身長は…ロリコンと言われたく無いので公開しない。
「…ねぇ。」
彼女は昨日、僕が一人で草原の丘に座っているところに隣にやってきた。何が目的なのだろう…金か?金なら無いぞ…。力か?もちろん僕にそんな力が無いのはこの二の腕をみれば一目瞭然だろう。
では何の目的で僕に近づいてきたのだろう…。
「…ねぇってば。」
こんなに可愛い女の子に声をかけられたからか、実は昨日この子の宿代まで支払ってしまった。最初に述べたとおり、お金が無いわけだが…これが男って生き物なのだろう…。
「…ねぇ、ユラン君ってば。」
見栄を張って、無い金を使って彼女を宿に止めた。もちろんの事ながら別室だ。最初は一緒の部屋にすれば宿代が浮くと思ったのだが、そこは男の子。紳士な態度で接し、男と女であれば部屋は別々。これ当然の事と人は言うだろう。
「…ユラン君ってば!」
だが僕は違った、宿代の為なら同じ部屋で泊まろうとも何も思わない。だがしかし、一緒の部屋で、一緒のベッドで一緒に寝ると言う行為…そう…僕にはそんな度胸が無かったわけで…。
「無視をするなぁぁぁ〜!」
と、あれこれ頭の中でぐるぐると考え事をしているところへ彼女の声がようやく届いた。それも鼓膜が破れるかと思うぐらいの声でだ。
「…ててて…そんなに大声を出さなくても十分聞こえるよ。」
「何言ってるのよー、全く持って聞こえて無かったくせに…。」
彼女の言うとおりなのだから仕方が無い。考え事をすると回りが目に入らないどころか、自分の中で無の空間に閉じこもったように音すら聞こえなくなる。悪い癖だ。
「…それで、如何したの?」
「…この状態でよくそんなのん気な事が言えるよねユラン君…。」
僕達は昨日と同じ場所でボーっとしていた、いや、ボーっとして居たのは実は僕だけで彼女は周りの変化にいち早く気が付いていたのかもしれない。
「…えーっと。」
「分かってくれた?」
「うん…。」
僕達が居るのは崖、目の前は断崖絶壁。後ろは緑色をした草が広がるいわば草原。
「えーっと…。」
僕の目に映るのは俗に言うゴブリンと呼ばれる種のモンスター、それが一匹であればなんて事は無いのだが…。
「…これ、何匹?」



Act:意思を告ぐ者達   END

502 名前:21R ◆21RFz91GTE 投稿日:2006/09/16(土) 00:00:11 [ zBpIIz/s ]
まず始めに…

ごめんなさいorz
というか…お久しぶりです皆さん&始めましての方々;;
前に投稿してからどれくらいの月日がたっているかは追求しないでください…

と言うわけで、執筆再開です。よろしければまたお付き合いくださいませ…
では、また次回の投稿まで〜…

503 名前:名無しさん 投稿日:2006/09/17(日) 01:15:33 [ gYcYRacg ]
>>499 前スレより
【まとめサイト】
◆dGkqy8VIyg さん
http://ponkin.fc2web.com/matome/

>>494-496
スキルネタも混ぜ合わせていて面白いなぁ
リフトアップはアイコンそのまんまで笑いました

504 名前:タルタル 投稿日:2006/09/20(水) 10:26:51 [ hfUQyDik ]
ぐぅ、ぐぅ、はっ!!
ということで夏の間ずっと寝落ちしていたタルタルです。
お久しぶり、とはいいません。心機一転ダルダルと改名して書いていこうと思います。
(別に書き方を変えるつもりはありませんが)
前はセスナの道のセスナを中心とした話でしたが、
今回はブルネのドロシーを主体とした話を書いていくつもりです。
まだまったく考えていませんが、期待しないでください。自分としてはこのスレ保守のため
に書くのですからw。
では。

505 名前:病気のデビ・ロン 投稿日:2006/09/21(木) 16:40:51 [ sMWXiguI ]
どうも、おはつです。
思いつきで書いた代物ですが投下します。
良ければ読んでやってください。


―狭間で―


1.
ガディウス砂漠・モリネルタワー付近。
かいた汗が瞬く間に蒸発してしまう灼熱地獄。
しかし、私にはそれも取るに足らぬものだ。
私が以前いた場所に比べれば…

ここには特殊な魔力場が存在しており、下手に足を踏み入れた者は行き先を見失い、モンスター達の餌食となる。
それゆえに、ここに近づく冒険者はごく稀だ。
喧噪を嫌う私にとっては好都合な狩り場である。
コツさえつかめば、魔力場によって行き先を見失うこともない。
今日も私はここで狩りをする。

と思ったが、今日は珍しく先客がいたようだ。
一対の純白の翼。
しかし、その片方は途中からもぎ取られ、血がにじんでいる。
…追放天使。
「赤い宝石」を探す任務を受け、天界から追放された天使。

しかし、押されている。
追放天使は必死でホーリーサークルを生み出し、モンスターにぶつける。
だが、モンスター…ボイドラスターにはほとんど効果がない。
そうこうしているうち、ボイドラスターは1匹2匹と増え、とうとう追放天使は完全に囲まれてしまった。
それを見てとった追放天使は、周囲のボイドラスター全てを巻き込むように、巨大な聖なる十字架を連続で召還した。
ホーリークロス。
周囲の敵に大きな光のダメージを与えつつ、自分の傷を癒す高等神術。
が、それでもボイドラスターたちを倒すには及ばない。
ボイドラスター達は何条もの光線を追放天使に向け放つ。
ホーリークロスの連続行使で神力を使い果たしたのか、もはや追放天使はボイドラスター達のなすがままだ。

ええい、見ちゃいられない!

506 名前:病気のデビ・ロン 投稿日:2006/09/21(木) 16:42:44 [ sMWXiguI ]
2.
魔力を高めつつ、ボイドラスター達の中に突っ込む。
ボイドラスター達も追放天使も、予期せぬ乱入に驚き、一瞬動きを止める。
「鼻と口を塞ぎなさい!」
そう追放天使に向かって叫ぶ。
追放天使がそうしたか、確認している暇などない。
すぐに魔術を行使する。
「来たれ、魔界の障気!」
私の呼び声に応じ、地の底から致死性の毒ガスが吹き出してくる。
モータルクラウド。
周囲に致死性の毒ガス雲を形成し、中にいる敵の命を削り取る上級魔術。
この毒は遅効性なため、ボイドラスター達を即座に殲滅することはできないが、ボイドラスター達の注意を追放天使から引き剥がすには十分だ。
しかしそれは、今度は私がボイドラスター達の集中攻撃に晒されることを意味する。
周囲から光線が放たれ、私の身体に突き刺さる。
辛うじて急所は避けているが、ダメージは小さくない。
早めにケリをつける必要がある。

ボイドラスター達のうち1匹に狙いをつけ、鞭を伸ばす。
絡め取り、私の目の前―そこは最もガスが濃い場所でもある―に引き寄せる。
こうして密着すれば、光線は撃てない。
周囲のボイドラスター達も、同士討ちを恐れて一瞬怯んだ。
その隙に、他のボイドラスター達も次々と鞭で引き寄せる。
光線が撃てないならばと直接攻撃を仕掛けて来るボイドラスター達。
それこそ鞭のような触手が、何本も私に襲い掛かる。
その触手をかわし、受け止めながら、ついに全てのボイドラスターを引き寄せた。

…効果範囲内…入った!
「血塗られし呪いの十字架よ!」
先程追放天使が召喚したホーリークロスと形状は酷似した巨大な十字架。
だが、私の召喚する十字架は血に染まり、呪われている。
ブラッディークロス。
血に染まった呪いの十字架を召喚し、その力で周囲の敵から生命力を奪い取る魔術。
モータルクラウドの毒ガスによって体力を削られていたボイドラスター達は、この呪いの力に耐えられず、干からびて死んでいった。

「ふぅ…」
なんとかなった。
ブラッディークロスで吸い取った生命力で、負った傷も癒えた。
周囲を見回し、先程の追放天使を探す。
…いた。
どうやら、ちゃんと呼吸を止めていたらしく、生きている。
追放天使は呆然とした表情で私を見て、呟く。

「あ、くま…?」

507 名前:病気のデビ・ロン 投稿日:2006/09/21(木) 16:45:06 [ sMWXiguI ]
3.
追放天使の首にかかっている十字架を見て、言う。
「あなたねぇ、何で光強化系の十字架なんか使っているのよ?
 せめてボイドラスターみたいなモンスターを相手にするときは弱化系を使いなさいよ」
もともと魔法攻撃に高い耐性を持つ神獣系モンスター。
まして、ボイドラスターは光の眷属である。
いくら光魔法の威力を増幅しても、大したダメージは期待できない。
そういう相手には、耐性を下げる弱化系の十字架の方が有効だ。
かく言う私も、十字架は強化系と弱化系、両方の十字架を常備している。

開口一番にそんな批判が来るとは思っていなかったのだろう。
追放天使はあっけに取られた様だ。
が、それも一瞬のこと。
すぐに反論してくる。
「それは! 
 私はもともと彼らと争いに来たわけじゃないからだ!」
…?
「じゃあ、何をしにここに来たって言うの?」
問いかける私。
「3日ほど前にこの付近で消息を絶ったという冒険者の捜索に来たんだ」
それって…
追放天使は続ける。
「冒険者の家族にそういう依頼を受けて、ここに来たんだ。
 神獣である彼らなら、話も通じると、そう思ったんだが…」
「問答無用で攻撃された、と?」
追放天使は苦々しく頷く。
「そう…」
しばし無言の時間が続く。
言うべきか、言わざるべきか。
迷った末に、言うことにした。
「ねえ、その冒険者の行き先、心当たりがあるんだけど、知りたいかしら?」
「っ!? 教えてくれ!」
血相を変えて知りたがる追放天使。
やっぱりそうくるか。
私は、人差し指をある場所に向ける。
その先にあるのは、先程倒したボイドラスターの死骸…の腹部。
「…まさか…?」
追放天使が青ざめる。
「このボイドラスターがそうかまでは分からないけどね。
 恐らくどこかのモンスターの腹の中よ」
追放天使は叫ぶ。
「っ! 馬鹿な! 
 神獣であるボイドラスター達が人間を殺すだけならまだしも…
 食べるなんて、そんな罪深いことをするはずが…」
「あるのよ、ここでは」
その言葉を遮る。
「神獣とは言え生物…食料がなければ生きていけないわ。
 そして、この何も無い砂漠で最大の食料と言えば、迷い込んだ冒険者なのよ」
「くっ…そんな…」
「3日も前じゃ、恐らく骨も残っていないわ。
 運がよければ、身に着けていた物の欠片ぐらいはあるかもしれないけど」
言葉に詰まる追放天使。

この砂漠は、灼熱の地獄。
そして、地に膝を突いた者はたちまち餌食となる。
共食いだろうがなんだろうが関係ない、弱肉強食の世界。
私が以前いた場所―魔界―に似ている。
だからかも知れない。
私がこの砂漠に魅かれるのは…

508 名前:病気のデビ・ロン 投稿日:2006/09/21(木) 16:47:24 [ sMWXiguI ]
4.
夜になってしまった。
茫然自失とした追放天使を置いていくわけにもいかず、その場に留まり続けた結果だ。
この砂漠は灼熱の地獄。
だがそれは、日中だけに言えること。
日が沈んでからは一転、いる者を凍えさせる寒波地獄となる。

テントを張り、中で小さな魔界の炎を召喚する。
この魔界の炎ならば、薪が無くても燃え続け、火の番をせずとも消えることは無い。
この炎でスープを作り、ようやく立ち直り始めた様子の追放天使に1杯を差し出す。
「ほら、これでも飲みなさい。口に合うかどうかは分からないけど、体は温まるはずよ」
「あ? ああ…ありがとう」
追放天使は戸惑いながらもカップを受け取る。
が、口を付けようとはせず、自分のスープを飲む私のほうをじっと見ている。
「何よ? 別に毒なんか入って無いわよ?」
追放天使は慌てた。
「あ、いや、別にそんなことを疑ってるわけじゃないんだ…」
そうしてスープに口を付ける。
…って、そんな勢いで飲もうとしたら…
「ズ…ぅ熱っ?」
案の定、舌を火傷したようだ。
「プッ…」
私は思わず吹き出した。
悪魔という立場上、どうも追放天使たちは苦手な存在だった。
けれど、この追放天使は…
どうも、面白い。

509 名前:病気のデビ・ロン 投稿日:2006/09/21(木) 16:50:43 [ sMWXiguI ]
5.
とまあ、ちょっとした騒ぎはあったものの、食事も終わり、人心地付いたところで追放天使が話しかけてきた。
「君は…どうして私を助けてくれたんだ?
 私は天使で、そして君は悪魔だというのに」
「私は、最後の戦争よりもだいぶ後に生まれたからね」
天界と魔界は、過去、何度も戦争を繰り返してきた。
しかし、ここ数百年、天界と魔界の間での争いは起こっていない。
私が生まれたのは最後の戦争よりも後のこと。
私自身が生まれる前のことなんか、知ったことじゃない。

「だが、昔はたしかに戦争をした相手なんだ。
 拭いきれない憎しみというものは無いのか?」
追放天使は更に聞いてくる。
「まあ、そういう悪魔も多いわ…。
 けど、少なくとも私はそんなことに興味は無いわ」
実際、過去のことで天使達を憎み続けている悪魔は多い。私のような悪魔の方が少数派なのだ。
「私にはあなた達を憎む理由なんて無いの…もっとも」
そこで言葉を切る。
「もっとも…何だ?」
先を促してくる追放天使。
「もっとも…あなた達からすれば、天界を追放された原因の同類である私達なんて、憎しみの対象でしかないのかも知れないけど?」
顔色を変える追放天使。
「そ、そんなことは…」
「無いの?」
言い切る前にこちらから問う。
「無いことは…無い」
苦虫を噛み潰したような表情で追放天使は言う。
「そうよね…」
これまで、町などですれ違った追放天使たちは、例外なく私の方を見てきた。
その瞳には、常に憎しみが宿っていた。

「だとしても、あの危険な状況になってまで助けてくれたのは何故だ?
 いや、それだけじゃない、茫然自失としていた私を見捨てずにその場にいてくれたことも、こうして食事を振舞ってくれることも、何故だ?」
「人間達に言わせれば、『困っている者を助けるのは当然の事』らしいわよ?」
答えると、追放天使は驚いた顔をした。
「そうか…いや、すまない。
 助けてもらった身でこういう事を言うのは失礼だと分かってはいるんだが…
 悪魔というのは、自分の都合さえよければ、肉親であろうと平気で見殺しにする、そんな風に思っていたから…」
申し訳なさそうにする追放天使。
「別に、失礼じゃないわ…
 あなたの言った通りの存在よ、悪魔は」
「え…?
 でも君は、私を助けてくれて…」

いけない。
今日の私はどうかしている。
言わなくていい事まで、この追放天使に言おうとしている。
神の徒である天使を前に、懺悔でもしようというの?
悪魔である、私が。

510 名前:病気のデビ・ロン 投稿日:2006/09/21(木) 16:54:05 [ sMWXiguI ]
6.
「私は、自分の両親も兄弟も、全てこの手で殺したの」
追放天使が息を飲む、が、構わず続ける。

「魔界の環境って、すごく気まぐれなの。
 その環境の変化で、作物が全てダメになることも珍しくないのよ」

ああ本当、何を言っているのだ私は。

「そうなると、この砂漠と同じ。
 食料を得ようとしたら、目の前にいる者を殺すのが1番手っ取り早いの」

こんなこと、今ここで話してもどうにもならないのに。

「躊躇したら、食料になるのは自分。
 躊躇したら、生き残れない」

止めなさい、もうこれ以上言う必要はないわ。

「だから、殺した。
 そして、食べた。
 家族であったものの死肉を」

黙れ黙れ黙れ、私。

「美味しかったわ。
 それまでに食べたどんな肉よりも」

でも、私の唇は止まらない。

「環境が戻って、作物が作れるようになった頃、家で生き残っていたのは私一人。
 父も、母も、姉も、弟も、妹も、全て私が殺した。
 私が生き残るための食料にした」

止めなさい!舌を噛み切るわよ!

「こんなこと、魔界では珍しくないの。
 だから、あなたの言った通り…いいえ、それよりも更に酷い。
 自分のためなら、肉親でも平気で殺して喰らう。
 それが、悪魔なのよ」

…言ってしまった。
言わなくてもいい事なのに。

それまで黙って聞いていた追放天使が口を開く。
「なら尚更、どうして私を助けてくれたんだ?」

…もう今更何を隠す必要も無いか。
「…来て」
私はテントを出た。
追放天使も私に続いてテントを出てきた。

511 名前:病気のデビ・ロン 投稿日:2006/09/21(木) 16:58:54 [ sMWXiguI ]
7.
知らないものも多いが、砂漠の夜は寒い。
日が隠れれば、熱をとどめるものの無い砂漠は極寒の地となる。
恐らく今の気温は零下だろう。
冷えた空気は澄み切っている。

「空を見てみて」
追放天使に言い、私自身も空を見上げる。
この澄んだ空気の中、空を見上げると…
「うわぁ…素晴らしい星空だな…」
他では考えられないほど、たくさんの星を見ることが出来る。

「この世界に出てきて、多くの人間を見てきたわ…」
「人間達は、小さなことにも喜び、悲しみ、楽しみ、苦しむ」
「こんな星空を見た人間は、『感動』というものを覚えるらしいわ」
「でも、私には『感動』がどんなものか分からない」

「…妬ましいわ…」

「この世界に来たときは、下らないものでしかなかったはずなのに…」
「人間も、その人間が感じ取る全てのものも、下らないものだったのに…」
「今は、妬ましくてどうしようもない」
「妬ましくて妬ましくて、全ての人間を殺してしまいたいくらい」

「この世界に来て、人間としての生き方を選ぶ悪魔も多いわ…」
「じゃあ、私はどう?」
「悪魔であるならば、人間を妬ましいとは思わないはず…」
「人間であるならば、妬ましさで全てを殺そうとは思わないはず…」

「私はどちらにもなりきれない、中途半端な存在…」

「あなたを助けた事だってそう…」
「以前は家族でさえ平気で殺した私なのに…」
「追放天使の1匹ぐらい放っておけばいいとも思うのに…」
「人間に近い『心』をもつ天使なんて、妬ましくて殺したいとも思うのに…」
「あなたを見殺しにすることが、出来なかった」

「最近、ずっとこんな調子」
「今になって、家族を殺したことを思い出すと、胸が痛い」
「殺した時は何も感じなかったはずなのに…」

息を吐く。
吐いた息は白い。
追放天使を見る。
追放天使は、真剣な表情でこちらを見ている。
ふと、問いかけた。
「ねえ、私は何なんだろう…?」

愚かな質問だ。
私自身でさえ分からないのに、彼に私が何であるかなど分かるはずがない。
彼が口を開いた。
「君が何なのか、私には分からないよ」
ほらね。
まったく、私も愚かな事を聞くものだ。
と、彼が続ける。

「けれど、これだけは言える」

…?

「私は、君が何であったとしても君に感謝している」

え…?

「君が人間か悪魔か、あるいはどちらでもないのか、それは分からない。
 けど、私が感謝している存在であることは間違いない」

ああ…

「私は君に感謝している。
 君がたとえ、人間であろうとも。
 君がたとえ、私の敵と言える悪魔であろうとも」

これが…

「君に感謝している、これだけは紛れもない事実だよ」

これが『感謝』の気持ちか…

「私に言えるのは、それだけだよ」

私の口を付いてひとつの言葉が出た。
それは、今まで私が口にしたことのない言葉だった。

「ありがとう…」

それを聞いた彼は…

「それは私の台詞だよ」

笑った。

512 名前:病気のデビ・ロン 投稿日:2006/09/21(木) 17:01:37 [ sMWXiguI ]
8.
「ん…これじゃないかしら?」
翌朝。
せめて冒険者の遺品だけでも持って帰りたいという彼の希望もあり、私達は一緒にモンスター達を倒していた。
今日は弱化系の十字架を使っている彼は、ボイドラスター相手でも十分戦力になっていた。
ここは3つ目のボイドラスターの巣。
恐らく持ち主のものだろう、名前の彫られた鎧の破片が見つかった。
彫られた名前は、彼が探しているという冒険者の名前と一致している。
「ああ、間違いない。
 本人を連れて帰れないのは残念だが…
 遺品だけでも見つからないよりはずっといい」
「そうね…早く届けてあげないと」
…?
何だろう。
何か、自分の言葉に引っかかる。

彼は真剣な表情でこちらに向き直った。
「私一人ではこの遺品を見つけることも出来なかっただろう。
 君のお陰だ、ありがとう」
「そんなのお互い様よ。
 私だって楽させてもらったしね」
笑って言う。
が、彼は真剣な表情のままだ。
「君の言うとおり、これは早く届けてあげるべきだ…
 私はこれから遺品を届けに行く。
 残念だが、ここでさよならだ」
言って、右手を差し出す。
「また会おう」
私は彼の手を握る。
彼の右手は、私の右手よりもずっと大きく、ずっと温かかった。
「ええ、また会いましょう」
そして手を離すと、周囲の空間が歪み、彼の姿が消えた。
エバキュエイション。
依頼主のいる場所へと行ったのだろう。

握手した右手をそっと左手で包み込む。
まだわずかに温かかった。

513 名前:病気のデビ・ロン 投稿日:2006/09/21(木) 17:03:22 [ sMWXiguI ]
9.
私は悪魔。
人間に影響され、悪魔らしさを失いかけた悪魔。
人間にも、悪魔にもなりきれない中途半端な存在。

でも、私はあり続ける。
あり続ける先に、私の存在が固まってゆくのだから。
今は人間も悪魔もどうでもいい。

もともと私は悪魔として、更なる力を求め、「赤い宝石」を得るためにこの世界に来た。
そして、この世界には、地位や名誉のために「赤い宝石」を求める人間達が数多くいる。
私が「赤い宝石」を得たとして、その時何を望むのか。
今は分からない。
だが、その時何らかの答えが得られるかも知れない。
いずれにせよ今の私が目標にするには十分なものだろう。

私はあり続ける。
自分が何者か分からずとも構わない。
ただ、「赤い宝石」を求め、日々を足掻き続ける。

―悪魔と人間の狭間で―

514 名前:病気のデビ・ロン 投稿日:2006/09/21(木) 17:05:34 [ sMWXiguI ]
以上です。
辛口批評とかでもどんどんお願いします。
自己評価では…戦闘シーンがちょっと説明くさい、かな?

515 名前:名無しさん 投稿日:2006/09/21(木) 19:05:40 [ gnKSMgJ6 ]
6月12日午前2時40分、アウグスタ西部―
―逃げろ、急ぐんだ
何でまた、俺を?あんたはそっち側の人間だろう
―私も君と同じ経緯でここに入った、だからこういう事をやっているんだ
…わかった、古都まで逃げ延びればいいんだな
―頼む・・・

6月28日午後6時25分、古都ブルンネンシュティグ―
「今日も1人死んでいたわ、周りの状況からしてココ最近の殺人と
同一の人物がやったみたい。」
20代前半の女性―恐らくランサーだろう―が言った。
『抵抗した形跡が全くないのも気味が悪いが俺たちも全く手ががりが掴めないもんな」
彼は明らかにそれとわかるウィザードだった。
ここ最近古都ブルンネンシュティグで殺人がかなりの頻度で起きており、
一般の憲兵では無意味だったため、彼らがこの事件を担当することになった。

516 名前:名無しさん 投稿日:2006/09/27(水) 05:13:28 [ N1B0JemI ]
>>514
 人間もこれくらいのヒューマニズムを持てば、平和になるんでしょうね。でも、現実は……。

 批評できる立場ではありませんが、作者様がお気になさっている戦闘シーンについて。
 説明臭いとのことですが、「取扱説明書」臭い記述が、そう感じさせているのかもしれません。

・ホーリークロス…巨大な十字架を召喚し、周囲の敵に大打撃を与えると共に、味方の傷を癒す高等技術。
・ボイドラスター…ガディウス砂漠・モリネルタワー付近に棲息する光の眷属。光線を放って攻撃してくる。光属性の攻撃がほとんど効かない。

 例を出すと、こんな感じの文が、作中にでてくると感じました。モータルクラウドも然り。
 良く言えばまとまっている、悪く言えば無機質、躍動感がないように感じるのでしょう。
 また、これだけだと知らない人は場面をイメージしにくいと思います。
 なので、もう少し踏み込んで描くといいかもしれません。

>>506
 悪魔が天使を助けるくだりは、悪魔(一人称の語り手)が動いているので、もっとアクションに対する感情を描くと良いかもしれません。
>>505の時点では、悪魔は傍観者でした。しかし、>>506ではアクションの中心人物となっています)
 例えば、悪魔が思った事。モータルクラウドに対してどう思っているか。ボイドラスターに対してどう思ったのか。天使に対してどう思っているか。
 しかし、説明的な文が必要な時もありますし、感情を全面に出すと判り難い文になることもあります。
 なので、作者様のさじ加減と言うか、作風次第かと思います。

 それでは恐縮ですが、これにて失礼致します。
 これからも頑張ってください。

517 名前:ナナシ 投稿日:2006/10/08(日) 08:00:30 [ KIndcp6Q ]
野球の続き期待age

518 名前:名無しさん 投稿日:2006/10/09(月) 01:09:54 [ GW1KA1dY ]
はじめまして。
流れをぶった斬る形の登場、すみません。

これからダラダラと小説を書いていく予定なので、
よろしくおねがいします。

519 名前:名無しさん 投稿日:2006/10/09(月) 01:10:36 [ GW1KA1dY ]
↑sage忘れすいません

520 名前:名無しさん 投稿日:2006/10/10(火) 00:53:29 [ 2SEKg0og ]
さて小説書きたいが主人公やらの名前が浮かばないんだぜ?
名前浮かぶまでなんか今考えた物でもいいかな?

コボルトの一生

○月○日

朝起きたら体がダルかった。

どうやら僕達コボルトの天敵とも言える魔の病気にかかったのだろう。

そう・・・この病気のせいで何万匹の仲間がこの世から消え去った・・・。

そして僕もその病気になってしまった。

しばらく孤独と何時殺されるか分からない恐怖に怯えないといけないのだろう・・・。

でもこの苦しみから1匹でも助かるために僕はやらなくてはならないことがある。

それはこの病気の治療法を探すことだ。

そこら辺に売ってる回復薬や解毒剤じゃあ治療なんてできやしない。

だから僕は一生懸命勉強をした。医学に関する本を街からこっそりと盗み出したこともあった。

地下水路に居る優しそうなお爺さんからも一杯教わった。

洞窟に居る友達からやボクの師であり父でもあるファミリアからも一杯教わった。

でも全く分からない。それにこの病気が何時感染するかも分からない・・・。

今日は一杯勉強をして疲れちゃった。明日生きてることを願いながら寝よう。

おやすみ父さん・・・。

521 名前:コボルトの一生 投稿日:2006/10/10(火) 00:54:23 [ 2SEKg0og ]
○月×日

朝起きたら突然の吐き気がした。

どうやらこれもあの病気の症状の1つなんだろう。

・・・そして今日は友達が殺された・・・。

寝ている所を襲われたそうだ。生意気なコボルトってあだ名だったけど

結構優しい一面もあり以外と良い奴だったのにな・・・。

何故殺されたかって?それはそこにある花を取るのに邪魔だったから。だってさ。

そう言いながら笑ってたよ。あの悪魔達が・・・。

別に殺さなくても花は取れたのに・・・・・・・。

僕は復習をしようと思った。あの人間と言う名の悪魔達を・・・

522 名前:コボルトの一生 投稿日:2006/10/10(火) 00:55:03 [ 2SEKg0og ]
○月□日

今日は血を吐いてしまった・・・。

僕もそこまで長くは無いのだろう。

でももうすぐ病気の原因が分かるはずなんだ。

僕が死ぬ前には必ず原因を・・・・・・

あれ・・・頭がクラクラしてきた・・・そろそろ寝よう・・・。

523 名前:コボルトの一生 投稿日:2006/10/10(火) 00:55:47 [ 2SEKg0og ]
○月△日

今日は殺されそうになった。

剣を持った男に追いかけられた。

怖かった。ここまで死を覚悟したことは無かった。

・・・でも仲間が殺されてしまった。

仲間を殺した後その剣を持った男が笑いながらどこかへ消えてしまった。

僕は仲間を見捨てて逃げてしまったのかと思うと悲しくなった。

・・・だが病気の原因がなんとなく分かった。

街に居る学者のような人間が昔洞窟に何か怪しげな花を植えたんだそうだ。

どうやらこの花が毒を撒いてるんだそうだ。

1人のコボルトが言っていた。けど僕に近付いてあのコボルトは大丈夫だったのだろうか。

でも元気そうにしてたし平気だろうな。

・・・よし明日には街に居る学者を殺して仲間の復習を・・・

だから今日は寝よう。

524 名前:コボルトの一生 投稿日:2006/10/10(火) 00:56:30 [ 2SEKg0og ]
○月♪日

今日は優しい旅人に助けられた。

どうやらこの人は旅の途中に弱った僕を見つけて治療をしてくれたようだ。

もしこの人が居なかったら僕は死んでいたかもしれないんだそうだ・・・。

人間にも優しい人が居たんだな・・・。

でもあの学者だけは許さない・・・。今日仲間と相談して全員で街を襲撃しよう。

そしたら皆が報われるだろうしね。

明日に備えて今日はもう寝よう・・・。

525 名前:コボルトの一生 投稿日:2006/10/10(火) 01:12:11 [ 2SEKg0og ]
○月・・・日

もう・・・駄・・・だ。

・・・間・・・殺・・・血が・・・・・

仲間が・・・・・学・・・

同・・・よ・・・もしこ・・・日・・・

・・・あの・・・者に・・・復習を・・・


日記はここで終わっている・・・。

僕が調べたのだがどうやらこの日記はコボルトによるものだと分かった。
まぁそう書いてあるしそうだよな。
大昔この街がコボルトに襲撃された。
だが大勢の旅人が居たこの街だ。コボルトが何万匹と居ようと勝ち目は無い。
・・・そしてこの病気の原因はたしかに学者のファーガソンのせいだ。
だが彼は本当はコボルトのことを助けたかったから薬を作った。
しかし薬の中にコボルトにはとても有害な物質が含まれていたそうだ。
その有害な物質をばら撒いたのが日記に書いてあるあの花だ。
・・・彼は自分の失敗を悔やみ自分の愚かさに絶望した。
そして彼はせめてもの罪滅ぼしのために・・・と言い
病気のコボルトのみを殺しさらにその花を処分した。
・・・だが洞窟内は既に毒で大変なことになっていた。
人間でも多く毒を体内に取り込んでしまうと大変なことになる。
そう思ったファーガソンはあの事件から数ヶ月後
コボルトの洞窟を爆破した。
そして彼も自殺した。こんな結末で終わらせたことをきっと怒っているだろう。
こんな結末で終わらせたことを怨んでいるだろう。
だがもうこうするしかなかったんだそうだ・・・。

旅人の独り言・・・と書かれた本はここで終わっている。

終了です。ベタベタです。感想もらえたら嬉しいです。
最後の旅人の独り言なんですが読み難いのは改行の問題ですorz
本当にすみませんでしたorz

526 名前:sage忘れ518 投稿日:2006/10/10(火) 22:57:56 [ p/M3OfZE ]
少女は、最強の獣使いと謳われたビーストテイマーと
平凡なウィザードの間に生まれた子供だった。
親の光はなんとやら、と言われたもので、少女に対する期待は大きかったが、
少女が5歳を過ぎたころから、そんな期待は薄れていった。


少女の奏でる音楽は、そこいらの凶悪なモンスターさえも聞き入るほど魅力的で、
体力、知識共に数多くのビーストテイマーのトップレベルだった。
それでも、彼女は期待されなかった。


なぜなら、どこをどう間違えたのか、
好戦的な両親とは真逆に、彼女は血を見る事を極端に嫌ったからだった。
獣を調教するのを生業とするビーストテイマーにとって、
それは致命的な欠陥だった。



それでも、獣を人の倍以上愛する事が出来た。
調教しなくても、心を通わせればいつかはペットに出来る。
少女は、そう信じていた。

527 名前:sage忘れ518 投稿日:2006/10/10(火) 23:18:09 [ p/M3OfZE ]
少女はいつも、
街を西に出たところの木の根元に座っていた。
比較的温厚な性格のコボルトを眺めるのが楽しかったからだ。

弱いうえに攻撃を仕掛けてこないため、
側を通り過ぎる、幻の赤い石を求める冒険者たちは
見向きもしなかった。
いつまでも、そんな平和な日々が続くと思っていた。


ところがある日、
少女がいつものように街を西に出ると、
小さめの立て看板がそばにあった。
昨日は無かったけど・・・、とつぶやきながら看板に書かれた文字を読む。
内容は、


「昨日、何者かによって大量のウイルスがプラトン街道に撒かれました。
その影響で多くのモンスター達が病気に感染し、
街に被害を及ぼす可能性が出てきました。
ワクチンを作成するため、手身近な病気のモンスターを倒し、
残った衣類等を、古都北東のブロームまでお届け下さい。」


というものだった。


「うそでしょ?!」


あわてて振り返ると、
そこには大柄な剣士に切り裂かれるコボルトが居た。
あちこちから、コボルトの弱い、「キエエックー」という声が聞こえる。
温厚でかわいかったコボルトが、何者かの手によって、
狩りの対象にされた。

血を見るのが嫌いだった少女は、
当然悲しみに暮れ、涙を流した。
何の躊躇いもなくコボルト達を切り裂く冒険者が、
急に醜く見えてきた。


許さない。
こんな頼みごとをしたブロームも、
ウイルスを撒いた犯人も、
そして、何の躊躇いもなく、罪の無いコボルト達を切り裂く冒険者を。



少女は、血を見るのが嫌いだった。
誰よりも平和を好んだ。
それでも、人一倍正義感は強かった。


頭のどこかで矛盾を感じながらも、
少女は決心した。


殺してやる。

528 名前:掃除屋さん★ 投稿日:削除 [ jDkDaZHo ]
削除

529 名前:露店放置の暇人 投稿日:2006/10/12(木) 15:42:07 [ Z2eQVQ5U ]
露店放置で暇人になったので書いてみました。内容は打ちながら考えてます。
では、スタート

題名:○○の冒険

突然の光につつまれ体が動かない。

 「・・・それがこいつの名前ですね?」
 「あぁ、そうだ。」

謎の声と共に体に感覚が戻り始めた。
 「ん・・んぁ・・・こ、此処は?」
見た目は20~23ほど、身長は180前後だろう。がっちりとした体系で、顔はなかなか男前だ。
目を覚ました彼は一人だった・・・周りには誰もいない。
 「いったい何が? 俺の名前は? 此処はどこなんだ・・・街? それに・・・それに・・・・」
彼はさまよい続けた。街はなかなかの広さを持っているようだ。
 「建物はあるが人はいない・・・いったいどうなっているんだ?」
しばらくすると街の出入り口と思われるところについた。
 「こ、これは・・・なんなんだ!?」
看板には【古都 ブルネンシュティグ】と書いてあった。街の名前はブルネンシュティグ。
しかし彼は看板には見向きもしなかった。なぜかというと出入り口と思われる黒い壁。
真っ黒で、そこに世界がないようであった。その黒い壁の前にぽつんと青い円状のエリアがあるだけ。
 「これは・・・いったい・・・何処まで続いているんだ・・・」
 「それは何処にも続いていないわ」
 「!?」
突然の声に彼は振り向いた。 そこにはまだ10歳であろう少女が立っていた。
 「君は何か知っているのか? 知っているなら教えてくれ!」
彼女は大きなため息を一つ。
 「いいわ、教えてあげる。此処はブルネンシュティグ。」
 「ブルネンシュティグ?」
 「ええ、この街の名前のことよ。今この街には私と貴方しか居ない。」
 「どうして?なんで!」
彼女は首を振りながら答えた。
 「今はその質問には答えられない。代わりに教えられるだけのことは教えるわ。」
彼女は青いエリアに指差した。
 「あれはポータル。この街と外をつなぐゲート」
 「ポータル・・・ゲート・・・」
 「そしてその黒い壁は何の意味も成さない、ただ[有るだけ]のもの。」
彼女は淡々とこの世界について語った。

 (この世界は別の世界。此処に居る人間は全て他の世界から送られてきたらしい。俺もその例外ではないようだ。
  そして、人間が極端に少ないということ。この街に人が居ないのはそのせいかもしれない。
  一番気になったのが街の外には[モンスターが居る]ということだった。)

530 名前:露店放置の暇人 投稿日:2006/10/12(木) 15:43:03 [ Z2eQVQ5U ]
 「外に出るときは十分に気をつけてね。武器を装備しなければ戦えないわよ。」
 「武器って・・・銃とかナイフとか?」
 「ええ・・・でもこの世界には銃は存在しないわ。有るのは剣や槍、斧くらい。」
 「へぇ、じゃぁ武器は何処にあるんだい?」
 「多分貴方が望めば手に入るかもね。」
そういわれて彼は両手を前に突き出し、念じてみた。
 (俺に剣を!・・・なんてな。後であの子がくれるんじゃないか?まぁ、思ったところで・・・ん?)
 「うわっ・・・く・・なんだいきなり・・・」
彼の手には少々重いが両手で持つほどではない大きさと重さの剣が握られていた。
 「・・・貴方は剣士ね。」
 「剣士?俺がかい?」
 「ええ、その剣は片手で扱う剣。片手に剣を持ち、片手に盾を持つ。それが剣士。」
 (俺が・・・あのゲームに出てくるような剣士だっていうのか?)
 「しかし・・・いったいこの世界はどうなっているんだ?」
彼は戸惑っていた。自分の名前もわからないのに、自分は剣士、外にはモンスターも居る。
 (まさかこれって・・・・ゲームの世界か!?・・・なんてな)
 「しかし・・・これってまさかこの世界って・・・ゲー」
少女がいきなり口を挟んだ。
 「とにかく、その剣で外の敵を倒すの。戦闘を積めば強くなるわ。」
 (いったい今のは?・・・まさか本当に!・・・・・そういえば)
 「そういえば、君の名前は?」
 「私? 私は・・・そうね、ドロシーでいいわ。ドロシーって呼んで。」
 「ドロシーか。これから、よろしく頼むよ。」
 「ええ・・・」
少女は少し悲しげな表情で返事をした。
 「あっそれから、これ、コンパス。方角を知っておくといいわ。あげるから。」
 「あぁ、ありがとう。」
 「西口から出るといいわ。出方はポータルの上に立つの。全てのポータルは同じ仕組みだから。」
 「何故西口から?」
 「敵が弱いからよ。街から離れれば離れるほど敵は強くなっていくの。コボルトって敵を倒しなさい。」
 「コボルト・・・わかったよ。やってみる。」
 「気をつけてね・・・私は傷を癒すアイテムを売っているから。
   お金が貯まったら買いなさい。お金はモンスターが落とすわ。」
 「あぁ・・・」
 (ゲームか・・・元の世界では俺もRPGというゲームをやってたのかな・・・
   脳波をそのままゲームの世界に送り込む・・・とか出来るかな? とにかく今できることをしよう。)

彼にとってドロシーと会った事は精神的によかったらしい。
特に他の人間の存在、この世界のことを知れたことはとても精神安定につながっていた。



此処まで書いて。疲れた、露店の物が売れてた等の理由でこの話は終わりを迎えました。
いつか続編書けないかな・・・

531 名前:名無しさん 投稿日:2006/10/14(土) 06:39:53 [ N1B0JemI ]
Love song to give last (最後に捧げる愛の歌)

 ある日、天から光が落ちてきました。
 それはいくつもいくつも、流れ星の様に地へと降り注ぎました。
 ある人はそれを怖れ、ある人は物珍しさに光を見つめていました。
 しかし、それっきり何も起こらなかったので、大体の人々は何時も通りの平穏な日々を過ごしました。
 以前と比べて、唯一変わった事と言えば、旅人が増えたくらいでした。
 中でも紅い髪の異邦人の親子は、道行く人々の目を惹きましたが、だからといってどうと言う事もありませんでした。
 これは、まだまだ世界が平穏だった頃のお話。

 ある村に男の子がいました。
 その男の子の名前は有り触れていて、この話が人から人へ伝わる内にうやむやになってしまいました。
 だから、正確な名前を知っている人は、今は誰もいません。
 その子の父親は、随分と早くに亡くなっていました。だから、母親と二人きりで暮らしていました。
 その子は、村の他の子供達に比べて、随分とひ弱でした。力は、他の子と同じ位か、もしかしたら誰よりもあったのかもしれません。
 でも、誰よりも長続きしませんでした。
 飽きっぽい性格だったのではありません。堪え性と言いましょうか、スタミナが誰よりもなかったのです。
 みんなと鬼ごっこをすれば、一番に息を切らせて年少の女の子に捕まったり、お手伝いで荷物を持たせれば、誰よりも早く根をあげました。
 彼は、そんな自分の不甲斐なさを気にしていました。

 ある日、その男の子のお母さんが、風邪をひきました。風邪は一向に良くならず、毎晩せきをしては唸っていました。
 それを見かねた少年は、山に向かいました。
 山奥にあるお花畑に、風邪に良く効く花が咲いているのです。
 しかし、道中の坂は急で、何より距離がありました。
 お母さんは少年のスタミナのなさは知っていましたから、もちろん止めました。
 もう二〜三日すれば、狩から村の男たちが帰ってくるので、その時に頼むから良いと言いました。
 しかし、少年は聞きませんでした。
 「大丈夫だよ。僕だっていつまでも弱虫じゃないからさ」
山を登りきれる自信はありませんでした。しかし、お母さんを楽にしてあげたい一心で、強がってみせました。
 お母さんはついに観念したのか、止める事をやめました。
「無理せずゆっくりでいいから、気を付けて行って来るんだよ」
 
 鳥がさえずる山の中、少年は走りました。
 無理をしなくてもいいと言われましたが、走らずにはいられませんでした。
 何より、お母さんが苦しんでいると思うと、不思議と息が切れませんでした。
 そして視界が急に開けて、辺り一面に広がるお花畑が眼に飛び込んできました。
 少年はいつもの何倍もの早さで、そこに辿り着いたのでした。
 「やった!」
 それは初めての事でした。初めて山を休まずに走りきった事、お母さんに早く花を届けて上げられること。
 それらの事がいっぺんに思い浮かんで微笑んだ時、少年は転んでしまいました。
 身体が、なぜかぴくりとも動きません。息も、死んでしまうかと思うくらい苦しいのです。
 そのまま、泥沼で溺れるように呼吸を繰り返しました。
 息の苦しさと自分の情けなさに泣きそうになっていると、お花畑に人影が見えました。
 お花畑の真ん中に腰を降ろして、花輪を編んでいるのは、それは可愛らしい女の子でした。
 肩から流れる髪の毛は、陽に照らされて紅蓮に輝き、マシュマロの様なほっぺは、紅をさしたように薄っすらと赤らんでいました。
 彼女が立ち上がれば、さらさらと純白のスカートは風になびき、お人形さんの様な完成された愛らしさを引き立てました。
 そして、その娘がこちらの方を向いた時、少年は呼吸する事を忘れました。息が苦しかった事さえ忘れました。
 女の子が歩いてきて、少年の鼻っ柱に顔を近づけてこう言いました。
「はじめまして。私はラティア。あなたはだぁれ?」
 村にいるどんな女の子よりも綺麗な、琥珀色の瞳に見つめられ、少年は馬鹿みたいに口を開けるばかりでしたが、やっとの事で自分の名前を言ったのでした。そして、これまでのいきさつを話し、風邪に効く花を集めなければならない事。でも、息が死ぬほど苦しくして、身体が動かせない事などを伝えました。
 面白いもので、どんなに息が苦しくて、身体は動かなくても、なぜか口は回りました。どんなにひ弱でも、少年はやっぱり男の子でした。
 それを聞いたラティアという女の子は小首を傾げると、スカートのポッケから紅い小瓶を取り出しました。その中身を口に含むと、なんと口移しで少年に飲ませたのです。
 そして、悪戯っぽく微笑むとラティアは言いました。
「えへへ、楽になったでしょ?」

532 名前:名無しさん 投稿日:2006/10/14(土) 06:40:42 [ N1B0JemI ]
 
 ラティアから薬を貰った少年は、言われたとおり不思議なくらい身体が楽になりました。
 そして、ラティアと一緒に花を摘みました。
 花を摘みながらお互いの事を、話しました。
 ラティアはこの先にある小屋で、お母さんと二人で暮らしている事。いつもこのお花畑で遊んでいる事。
 少年も、お母さんと二人で暮らしている事。村の男たちが狩に出ている事。そして堪え性が無くて、悩んでいる事。
 二人ともどんな話題になっても、楽しそうに話しました。
 花を充分に摘み終わった頃、礼を言って去ろうとする少年にラティアは言いました。
「ねぇ、堪え性がつくおまじないしてあげようか」
少年が意味を図りかねていると、続けていいました。
「私とずっと一緒にいるっていう約束をするの。そうすれば、どんなに苦しくても耐えられるんだよ」
「でも、僕は帰らなくちゃいけないし、第一お母さんと一緒にいなきゃいけないよ」
そう少年がいうとラティアは笑いました。
「もう、鈍いんだから。さっきのはファーストキスなんだからね」
少年は、気付きました。いくら少年が野暮でも、ファーストキスの意味を知らないはずはありませんでした。
「それって、結婚するってこと? まだ僕たち子供じゃないか」
「私とずっと一緒にいるのは、いや?」
そう言われると嫌とは言えません。何よりラティアは可愛かったですし、少年は彼女から目を離せなくなっていたのです。
 そのまま、二人はキスをしました。そして、子供ながらだったのですが、本気で将来を誓い合いました。

 それから、数年経ちました。少年は立派に成長していました。そして何より、以前のようにひ弱ではありませんでした。
 ラティアと、ちゃんとしたキスをして将来を誓いあった後、少年は山を全く休むこと無く降りることができました。
 そして、お母さんが元気になった後、すすんで狩から帰ってきた男たちの手伝いをしました。
 村の男たちは、少年の堪え性のなさを知っていましたので、たいして期待していませんでした。
 しかし、その期待は見事に裏切られました。少年は大人たちと同じ位か、それ以上に働いたのです。
 しかも、へとへとになった大人達に比べて、全く疲れた様子を見せません。
 それ以降、少年は村の誰よりも長く働き続ける事が出来ました。
 周りの人間が動けなくなっても、まだ少年は仕事を続けている事もあったくらいです。
 そして、実は村のどの子供達よりも力があったので、誰よりも荷物を多く運びました。
 人々は不思議がりました。しかし、きっと少年が並々ならぬ努力をし、短所を克服したのだろう言う事で、微笑ましく見守っていました。お母さんが風邪をひいた時に、一人で山へ花を取りいったと言う事を知っている人は、それがきっかけになって成長したのだろうとも言いました。

 それから、また数年経ち少年は青年へと成長していました。
 もうひ弱だった頃の頼りなさはありません。
 お嫁さんを貰える歳になったので、ぜひうちの娘を嫁にというお誘いは幾つもありました。
 しかし、村一番の良家の娘さんや、村一番の美人の娘さん、村で一番気立てのいい娘さんの話もことごとく断りました。
 何故ならラティアがいたからです。
 あの日以来、彼は暇を見つけては山を駆け登り、ラティアとおしゃべりしました。
 話す内容は村での出来事や、お手伝いに行った仕事場の親方に褒められたことや、お坊さんが最近村に教会を建て始めた事。
 それ以外にも沢山ありました。
 青年は立派になっていましたが、ラティアも負けないくらい美しく成長していました。
 紅蓮の髪は流れる滝の様に肩から腰に落ち、花を愛でる瞳は憂いを感じさせる程、切無く潤んでいました。
 少女の頃にはなかった胸も控えめながら膨らみ、胡蝶蘭のような可憐さがあわたっていました。
 そして、以前は丸くて可愛らしいかった顔立ちも、今は白刃の様にスッと伸び、陶器の様な肌の白さと相まって、名画の中に佇む婦人のようでした。
 そんなラティアが、あまりにも楽しそうに話を聞くので、青年は口が渇くのを忘れ、ずっと喋り続ける事も多々ありました。
 ある時、ラティアは言いました。

533 名前:名無しさん 投稿日:2006/10/14(土) 06:41:58 [ N1B0JemI ]
「ねぇ、約束覚えているよね?」
さも意外だという様に、青年は言いました。
「覚えているも何も、今もずっと一緒じゃないか」
「そうじゃなくて。そろそろ私と一緒になってくれても、いいでしょ?」
「そうだね。一緒に暮らそう。母さんも、きっと君を気に入ってくれるよ」
嬉しそうに話す青年に、ラティアはかぶりを振って言いました。
「そうじゃなくて、二人きりで暮らしたいな。その方がいいと思うの」
寄り添い頭を預けてくるラティアに、青年は言いました。
「それは出来ないよ」
寄り添うラティアの髪を撫でながら続けました。
「最近、お母さんが変なんだ。急に年寄りみたいになってしまったし、ベッドから出れないことも多いんだ」
そうです。ずっと前から青年のお母さんは、老け込んだように元気がなくなっていました。
 そんなお母さんをほうっておけるはずはありません。
「だから、お母さんと離れる事は出来ないんだ。わかって欲しい」
「お母さんはそんなに悪いの?」
「ああ」
ラティアはスカートのポケットから、紅い小瓶と青い小瓶を取り出し、青年に手渡しました。
「これをお母さんに飲ませて上げて。少しは良くなるはずよ」
そう言うと、瞳を閉じてキスをしました。長いキスの後、二人はお花畑に沈み込みました。

 それから、一日に一本ずつラティアから貰った小瓶を、お母さんに飲ませました。 
 するとお母さんは有る程度元気になりましたが、それでも日に日に弱っていきました。
 そして、その日はやってきました。
 もう何も飲み込むことが出来ないほど弱ったお母さんの手を握り、青年は泣いていました。
 その横には、ラティアも一緒にいます。
「泣くんじゃ無いよ、女の子の前で。私はね、嬉しいよ。あんなだったお前が、こんなに立派になってくれて。それにこんな綺麗な人をお嫁さんに貰えるんだろ? もう、思い残す事は無いよ。あたしは幸せだったから、あんたも幸せにおなり。そして、そこのお嬢さんを幸せにして……やるんだよ」
途切れ途切れに言葉を放ち、最後にゆっくりと息を吸い込んで息子を見つめた後、お母さんは天に召されました。
 その一晩中、青年の泣き声が響きました。
 
 お母さんの葬儀が終わった後、二人はお花畑に寝転がっていました。満月が二人を照らします。
 青年が口を開きました。
「母さんは……、俺のせいで死んだのか?」
泣きながら、ラティアを見つめて続けました。
「村の坊さんに言われたんだ。俺は呪われていると。身体が疲れないかわりに、周りの人間に瘴気を振り撒いていると。俺のせいなのか?」
「違うわ。全部私が悪いの。あなたに呪いをかけたのは私だもの」
「違う! 全部俺が悪いんだ! 俺が弱かったから、不甲斐なかったから誘いに乗ってしまった! 俺が母さんを殺したんだ!」
泣きながらラティアを抱きしめた青年は震えていました。
「君の望みは何なんだ? なんでこんな事をしたんだ」
「私は、あなたとずっと一緒に居たかったから。だから、あなたがずっと一緒に居るって約束を……契約をしたの」
「ラティア……」
「あなたの話を聞いていて楽しかった。村の友達の事、大人たちの事、いろんな出来事。わたしの周りに無い事ばかり話してくれた。だから、何を聞いても楽しかった。私には、友達だって居ないから」
「友達になって欲しいから契約をしたのか?」
「あなたは友達なんかじゃないわ。ずっと一緒に居て欲しい人。一番大切な人。……一目見た時に、ずっと一緒に居たいって思ったわ。だから、契約してでも一緒に居たかった。あなたの為なら、私がどんな事になったって良かった。だから、契約したの」
「口ではどうとでも言える」
「ここでした事は、遊びじゃ無いわ」
ラティアは自分のお腹に、青年の手を導きました。
「そうか……。ごめんな」
「いいの」
二人は静かにキスをしました。青年は静かに囁きました。
「気付いているか? 囲まれてる」
「大丈夫。抜け道があるから。合図をしたら走って」
風が無いはずなのに、花々がそよぎました。そして、突然花びらが撒きあがると、二人を覆い隠しました。
 花びらが落ちた時、二人の姿は何処にもありませんでした。

534 名前:名無しさん 投稿日:2006/10/14(土) 06:43:53 [ N1B0JemI ]
「何処に行った!?」
「こっちにはいない!」
「探せ! まだ遠くには行っていないはずだ!」
山に次々と、灯りがともりました。坊主に指示された村人達が、青年とラティアを浄化するために、山を駆け回っているのです。
 二人は村人の声を聞きながら、必死に山道を下りました。
 抜け道と言うだけあって、かなりの急勾配です。木々の枝が邪魔してなかなか進めません。
 そして、石が剥き出しになった坂にさしかかった時、それは起こりました。
 ラティアが足を滑らせてしまったのです。慌てて庇う様に青年はラティアを抱き、一緒に転げ落ちました。
 それが不運でした。ラティアは怪我をしていませんでしたが、血まみれでした。その血は青年のものでした。
 一緒に転がった青年は、運悪く太い木の幹に首を裂かれ、そこから鮮血を吹き上げていました。
「い、いやだ。いや、死なないでっ! いやああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあっ!」
ラティアは半狂乱になりながら、青年の首を押さえました。しかし、動脈の血流は激しく、どんなに押さえても止まりません。
 首の傷も、契約により塞がろうとするのですが、吹き出る血に押されてなかなか塞がりませんでした。
「ここか! おい、見つけたぞ! ……っ! お前、そいつに何をしているんだ!?」
ついにラティアを見つけた村人達は、血まみれになりながら、青年の首を押さえている彼女を見て、激昂しました。
 当然でしょう、坊主に悪魔だと言われた女が、青年の首を締めているのですから。しかも、青年の血でずぶ濡れになりながらです。
 怒りにませるがまま、何人かの村人達が手にした手斧で、ラティアに切りかかりました。
 しかし、その切っ先が届く事はありませんでした。
 ラティアの周りに集った村人達は、突然地面から突き出た地竜虫に喰われてしまったからです。
 運良くか運悪くか、一飲みにされなかった者も咀嚼され、断末魔でさえ砕けた骨肉とともに飲み込まれてしまいました。
 辺りがしんと静まりかえっても尚、ラティアの叫びは止みませんでした。
 既に青年の血は止まっていました。同時に心の鼓動も止まっていました。

 夜が明けました。ラティアは青年の遺体に膝枕しながら、朝日を見つめていました。
 青年の身体は、腐る様子がありませんでした。首の傷もすっかり治っていました。
 しかし、一度抜けた魂は、二度と器に戻る事はありません。例え、契約や魔術によって身体の状態が完璧になったとしても、完全に元に戻ることなどありえないのです。
 抜け殻となった青年の身体を撫でながら、ラティアは静かに涙を流し続けました。
 半日過ぎた頃、ラティアは唄を謡い始めました。その声音は悲しく、どんな生き物も元気が無くなる様な歌声でした。
 その唄が謡われ始めてから、腐る様子すら見せなかった青年の身体は、ゆっくりと甘いような、酸いような臭いを発しはじめました。

 それから。
 半年後に花を採りに行った人によれば、腐った死体に膝枕をしながら、悲しげな唄を謡う女がいたという話があったそうです。
 その一年後、その場所には死体が白骨化しても尚、膝枕をしながら謡う女がいたという話もあったそうです。
 そして今、その場所には、二つのしゃれこうべが寄り添っていると聞きました。片方には小さな角が生えていたとも。

 これが、私が伝え聞いた話の全てです。
 私達は、冒涜する為にこの唄を、鎮魂歌を謡っているのではありません。
 あなた方の様な偽善者が、これ以上魂を冒涜できないように謡っているのです。
 私は、母の様に愛する人と出会う事はありませんでしたが、祖母から愛の何たるかは学んだつもりです。
 今はただ、ここで眠る人々の安らぎを約束したいだけなのです。
 だから、私の邪魔をしないで下さい。
 お願いしま…………



「愛を語るんなら、戦場以外で語るんだな」
                Love is over -終-

535 名前:名無しさん 投稿日:2006/10/20(金) 17:17:06 [ xJi8rg6E ]
>>531 >>532 >>533 >>534
泣いた

536 名前:名無しさん 投稿日:2006/10/22(日) 01:33:05 [ pW/IKbZM ]
さて今さっき見た夢の話から思いついた話だ。
ぶっちゃけ赤石関係無くなりそうだがそこはスルーだ。


・・・頭が痛い。二日酔いか?いや酒は飲まない。
ならなんでここまで頭が痛くなるんだ・・・。
「おーい」
誰だ?ってかどこに居る?周りを子供みたいに見回すが何も無い。
ってかここどこだ?
「おーいそっちじゃねぇよ。上だよ上」
なんだ上か。って・・・
「うわぁぁぁぁぁ!!!!」
上を向いたらいきなり空中浮遊してる奴が居る。
・・・ちょっとチビりそうになったのは永遠の秘密だ。
「おいおいそう驚くなよ。死神でもないしただのゴーストだ」
一瞬何を言ってるのか分からなかったが分かった瞬間体全体から汗が噴きだした。
ゴーストだぜ?お化けだぜお化け。死神のほうが怖いかもしれないが
いきなり「俺ゴースト」なんて言われたら吃驚するぜ?
「おっすオラゴースト!よろしくな!」って陽気なオッサンみたいに言われても驚くぜ?
・・・一通り落ち着いてからとりあえず質問をしてみた。
「お前がゴーストなのは分かった。とりあえずここはどこだ?」
今思えば俺は周りの景色よりゴーストのほうに数倍驚いてたようだ。
よく見ると俺が寝ていたはずの部屋ではなくなっている。
簡単に言えば草原に近い感じだ。
「ここは見たとおりの場所。草原だ」
・・・俺の質問のしかたが悪かったのか?まぁいいや。
「んでそのゴーストさんとやらはいったい俺に何か用でも?」
「あぁそういえば忘れてたな。こんな所で昼寝なんて何考えてるんだ?って言おうとしてたんだよ」
こんな所と言われてもな。ただの草原じゃないのか?
・・・と思ってたけど違うみたいだな。ゴーストとか言うのも俺の顔を見て
俺がここがどんな場所かを把握したのに気付いたようだ。
「・・・まぁあれだ。こんなとこで昼寝しててよく生きていられたな」
まぁ気付いたらここに居たんだ。しょうがないだろ。
とりあえず今すぐここから逃げたい。ってか俺の部屋に帰りたい。
明日新作のエロゲの発売日だし。しかも明後日は好きな子に告白する予定だし。
・・・そんなこと考えてる暇があったら足を動かそうかな。
物凄い勢いでこっちに向かってくる剣持ったムチムチボディの男が走ってくるんだもん。
たぶん・・・いや絶対にだ。捕まったら殺されるだろうな。
お前ら純粋に考えてみろ。剣持って何か物凄いニヤけたムチムチボディで殺すってオーラ出てたら
まず殺されるって思うよな。ってかそもそも剣持ってる時点でアウトだろ。
銃刀法違反で捕まるだろ。あぁあれか。警察もあんな奴に近付きたくないってか。
今俺の目の前で奇声上げながら剣振り回してる危険人物を捕まえてくれる奴。
明日買うエロゲ譲ってやってもいいから助けてくれ。
・・・神に願いが通じたのか一瞬で男が吹き飛ばされていた。
っておいおいおい。俺なんで剣なんて持ってるの?
ってか何時振り回した?俺こんな無駄にでかい剣持ってたっけ?
色々と思ったが考える暇はないようだ。気が付くと奇声男が喰われていた・・・。
ってはぁ?なんで犬とおっさんみたいなのが人喰ってるんだ?
と思ったがまぁいいや。これでも俺はバイオハザードのベリーハード的な奴をクリアしてるんだ。
・・・とりあえずどこか安全な場所へ避難するか。

537 名前:名無しさん 投稿日:2006/10/22(日) 02:14:37 [ pW/IKbZM ]
とりあえず避難した。だってさ。流れ的に次俺が喰われるって感じじゃん。
そういえばゴーストとか言う奴は何処へ?
「ふぅ・・・助かった・・・」
一瞬殺意が芽生えたがとりあえず。
「ゴーストさん大丈夫かい?」
「あぁ大丈夫だよ。それにしても君以外と強いね」
こんなことを言われたのは10年ぶりだ。
10年ほど前に空手の大会かなんかで準優勝した後対戦相手から言われたっけかな。
まぁいいや。
「とりあえず俺って何時からこんな剣持ってた?」
「さぁ?そんなもん持ってたなんて気付かなかったぞ」
・・・とりあえずこの剣で殺そうか?ってオーラ出してみたけどスルーされた。
「えっとだ。俺は寝てたら何時の間にかこんなとこにきちゃったんだ」
「・・・お前この世界のことは知らないのか?」
はぁ?知らないに決まってるだろ。と言いたかったがとりあえず教えてくれるそうだから許す。
・・・話糞長いな。とりあえず簡単に説明すると
この世界はどうやら異世界のようで。んで俺は何かの拍子に異世界の扉を開いてしまったんだそうだ。
そしてこのゴーストとか言うのもそんな感じだそうだ。
んでこの異世界では自分が居た世界の体とは違う体になっているようだ。
ちなみにこの異世界では銃刀法違反も糞もなく
子供だろうが老人だろうが剣でも銃でも好きなだけ使っていいそうだ。
当然殺してもそこまで罪にはならない。しかもなんと魔法まで使えるんだそうだ。
ちなみに街には剣持ったムチムチ野郎とかモンスター引き連れたサーカス団とかも居るらしい。
魔法使いも宇宙人も狼男も天使だって居る。
・・・一言で言えばなんだこの世界。子供の想像の世界か?
それとも夢か?夢にしてはリアルだよな。もしかしたら色々出来るだろうな。
でもどっちかと言うとツンデレな女の子に召喚されて使い魔とやらをやらされてたほうが
何億倍も嬉しいだろうな。
「そういえばお前自分の体を見ても驚かないな」
たしかに俺はどんな感じになってるんだろうな。
早速見よう・・・ってなんじゃこりゃー!!!!
と言いたくなった。だってさ。
めっさ俺なんだもん。何一つ変わってない。
唯一変わったものはこの馬鹿力だろう。筋肉マンも吃驚なくらいだぜこれ。
もう今の俺ならあの陽気なオッサン倒せそうだな。
カカロットカカロット五月蝿いMハゲも倒せるくらい凄い。
いやこれは言いすぎか。でもそれくらい凄い。いやまじで。
「まぁあれだ。変わったのか変わってないのかは知らないがどちらにしてもどんまい」
「いやいやむしろこっちのほうが気楽でいいよ」
「ハハハ。まぁなんにせよ頑張ってくれ青年」
「ゴーストさんもね。とりあえず俺は街とやらに向かってみるよ」
「そうか。じゃあもし会いたくなったらこの場所まで来い。何時でも相手してやる」
「そりゃどうも」
ゴーストとか言うのは笑いながら俺の旅立ちを祝福してくれた。
旅立ちって言うのはおかしいか。
さてそろそろ行くか。さ〜て街でナンパしたり美女と遊びまくったりするぞ〜

538 名前:名無しさん 投稿日:2006/10/22(日) 02:59:46 [ pW/IKbZM ]
・・・おぉ神よ。貴方は何故こんなにも純粋な青年を痛めつけるのですか?
あぁ面倒だ。なんだこの街は。暑いにもほどがあるだろ。
ぶっちゃけさっきの危ない草原に居たほうが安全だったかもしれない。
だってさっきのムチムチボディの奴が腐るほど居るんだもん。
ってかほとんどの人が武装している。子供ですら剣を持っている。
なんか半透明の奴まで居る。全くなんつー世界だここは。
とか思いながら歩いてたら人が少ない場所に着いた。
なんだここ?路地裏か?路地裏だ。
まぁそりゃそうだよな。路地裏には人が少ないとか常識だよな。
と思ったがそうでもなかったか。5~6人ほど人が居る。
一人はまた暑そうなコートを着た男。一人は雰囲気が暗殺者っぽい奴。
二人露出しすぎwwwって言いたくなるくらい凄い服を着た女性。
後は噂のサーカス団の団長らしき人が二人。ってかフードを被っててよく分からない。
身長からしてまだ子供だろうな。にしてもあんな子供がよく巨人とか引き連れてるよな。
・・・なんか話題がカオスだし近付くのはやめとこう。

とりあえず何をするか・・・。
まずは宿か?それとも飯か?それともナンパか?
ナンパはやめだ。武装してるし変に怒らせたら多分殺されるだろう。
飯はまだ腹へってないしいいや。と言うわけでまずは宿だな。
でも金ないから無理か。そういえばどうやって金を貯めるんだ?
俺NEETだぜ?バイトとかはっきり言えば面倒だぜ?
とか思ってたらいきなり話し掛けられた。
「あの・・・もしお暇でしたら・・・あの・・・その・・・」
あら?俺は何か怖がらせるようなことしちゃったのか?
まぁいいや。困ってるっぽいし。
「ん?どうしたのかな?」
「あ!・・・えぇっと・・・もし良かったら・・・手伝ってほしいことが・・・」
なるほど。ってか可愛いなおい。16歳前後の少女に話し掛けられるとは。
この世界。そこまで悪くないな。
「あ・・・すみません・・・無理ですよね・・・」
「そんなことないですよ。どんなことをすればいいのですか?」
「あ・・・ありがとうございます・・・。えぇっと・・・」
・・・つまりだ。母親が病気で薬草を探したいのだが一人では心細いと。
なるほどなるほど俺に任せてくれ。こう見えても俺は
夜コンタクトレンズを落としたとしても数秒で見つけられるほど物を探すのが得意なのだ。
「分かりました。では行きましょうか」
「あ・・・ありがとうございます。でも・・・モンスターとか・・・」
「あぁ平気ですよ。こんなんでも一応完全(?)武装した狂人を倒せるくらいですから」
そんなジョークを言って笑っていた俺が昔の俺。
今の俺。
ちょwwww何あいつwwwwwでけぇってwwwwwwwww
俺の目の前には身長約3mほどの巨人が居た。
ってかこの娘は一人でこんな怪物のところまで来ようとしてたのか?
まぁそりゃ心細くもなるよな。
だが今ここで俺がこの巨人をかっこよく倒したらきっと・・・フフフ考えただけで涎が・・・。
さてそんな余裕は無いよな。とりあえずこの馬鹿力でどうにかなるだろう。

・・・・・強いってか卑怯だぞ。そっちは五匹こちらは二人だぞ?
しかもお前らは巨人。こっちは生身の人間。
いくら武装してたとしても生身の人間がこんな巨人五匹を倒せるとでも?
と思ってたら襲っていきやがった。ちくしょう。
動きが鈍いのが唯一の救いか。棍棒のような物をあんま振り回すな。
岩を砕く破壊力。大木をも砕く破壊力。
あぁこの野郎。この少女は気絶するし抱えながら走るとなると結構きついぞ。
「だぁぁぁぁぁぁもう!!!!」
気合を入れて剣を振り回す。お!見事に命中。
腕を吹っ飛ばしただけか。だがもう武器は持てないだろうな。
でもまだ四匹か。とりあえず死ぬ気で行くか。この少女がどんなお礼をしてくれるのやら。

539 名前:名無しさん 投稿日:2006/10/22(日) 03:19:11 [ pW/IKbZM ]
・・・なんかこうあっさりと終わっちゃった。
周りには巨人の死骸が五つ。
腕を切り飛ばした奴は抵抗のつもりなのかもう片方の手で岩とか投げてきやがった。
まぁなんつーか一発で仕留めないと駄目なんだな。
どうでもいいけどまだ気絶してるよこの娘。
あぁ・・・どうせならどんな薬草か聞いとけばよかった。
とりあえず起きるまで待つか。

「ん・・・あっ・・・大丈夫ですか・・・?」
やっと起きたか小娘が。さてお礼はタップリとしてもらうからな。
と言いたいがまずは・・・
「あの巨人みたいなのは倒しておきました。それで薬草はどんなもので?」
「あ・・・すみません・・・怖くて気絶してしまって・・・」
顔を赤くしながら言わないでくれ。これじゃあ襲いそうになる。
今襲ってしまったらお礼なんて受け取れないだろうしな。
「えっと・・・あれです・・・」
・・・この小娘は俺のことを怒らせたいのか?
なんでよりによって崖の上にあるんだよ。俺はてっきりこの巨人達が守ってる薬草かと・・・。
まぁいいや。今の俺に不可能は無いだろう。

・・・まぁ予想はしてたけど案外あっさりと終わった。
何がどうしたいのか俺はそのまま飛び降りた。
まぁ見事に足からグギッ!!と鈍い音が聞こえたわけで。
・・・とりあえず歩けるな。
「あの・・・大丈夫ですか・・・?」
「あぁこれくらいなら平気だよ。それよりはい薬草」
「あ・・・ありがとうございます・・・」
「さてじゃあ行こうか」

あ〜疲れた。さ〜ていよいよお礼を貰えるわけだな。
・・・なんて言えない。今目の前で少女が号泣してるのにこんなことなんて言えない。
感動の涙ではない。悲しみの涙だ。母親は俺達が帰ってきた時には既に亡くなっていた。
病気ではなく殺害されたようだ。しかもレイプされた後。
そうメモのようなものに書かれていた。
少女は半裸にされた血塗れの母親を見て泣いている。
俺はただ。抱きしめてあげることしか出来なかった。
その悲しみが少しでも癒えてくれるようにと願いながら。


・・・エロイ意味で抱いたんじゃないぜ?

540 名前:名無しさん 投稿日:2006/10/22(日) 04:34:02 [ pW/IKbZM ]
少女は寝てしまった。
・・・もし目が覚めたら墓を作るのでも手伝うか。
とりあえず少女の母親の血を拭き取り服を着させてあげた。
・・・いや別にエロイ意味は全く無い。
さて・・・俺も寝るか。

・・・気が付くと朝だ。あれ?帰った時はもう夜だったのか?
まぁいいや。
・・・少女も起きたようだ。
「あ・・・昨日はすみません・・・」
「・・・残念でしたね・・・。でも酷いですね・・・」
「この辺りでは盗賊がよく出るんだそうです・・・」
「・・・行こうか」
「え・・・?どこへ・・・?」
「その盗賊とやらを殺しに」
「で・・・でも・・・」
俺は他人だろうとこんなにも酷いことをされていたと知ったら助ける。
それにこれも何かの縁だろう。人助けくらいさせてくれ。
「悪いね。これでも俺は巨人五匹くらいなら倒せるんだ。盗賊くらいなら負けないさ」
「で・・・でも・・・悪いですし・・・それに・・・もういいんです・・・」
「何がいいんだ・・・?」
「・・・?」
「親を殺されて・・・悔しくないのか・・・?」
「・・・・・」
「・・・ごめん・・・そりゃ悔しいよな。悲しいよな。分かってるみたいなこと言ってごめん」
「・・・私もごめんなさい・・・」
沈黙が続く。でも何も言えない。
・・・とりあえず墓作ってから行くか・・・。
目指す所も無しに旅に出るってのもまた馬鹿みたいだけどさ。

・・・でも待て。この少女は一人で暮らすことになるよな・・・。
ってことはまた盗賊とかがきたら大変じゃないか・・・。
それにこんな可愛いんだ。何をされるか分からない。
・・・ここは思い切って・・・。
「あの・・・今こんなこと言うのもあれだけどさ」
「?」
「もし良かったら一緒に旅に出ないか?行く先なんて何も考えて無いけどさ。
 それにもしまた盗賊とかがきたら大変だろ?だから一緒に行かないか?
 安全は俺が全て保証するしね」
「・・・分かりました・・・。でも迷惑じゃないですか・・・?」
「いやいやとんでもない。こちらこそ迷惑じゃなかったかな?」
「・・・嬉しいです・・・見ず知らずの人にここまで優しくされたのは初めてですから・・・」
「そうですか・・・。では準備が出来たら言ってください」
「はい・・・では準備してきます・・・」
そう言うと旅の準備を始めた。鞄に薬を入れたり武器を持ったりと色々大変そうだな。
そういえば俺はただ武装してるだけで薬とかは持ってないぞ?
ってか鞄すら持っていない。・・・どこかで買えばいいか。
そういえば名前聞くの忘れてたな。準備が終わった時に聞けばいいか。

しばらくした後に終わったようだ。では早速・・・。
「そういえばまだお名前をお聞きしてませんでしたね」
「あ・・・すみません・・・私の名前は「ドガガガァァァァァァァン!!!!」
ちょwwww何この物音wwwwwww名前聞けないってひでぇwwwwwww
なんて言ってられないか。昨日の巨人達がボスっぽい奴連れてきやがった。
今度は20匹・・・いや30匹か?とデカいのが1匹。どうやらこいつがボスのようで。
さてさて二人だけで30匹倒せとかふざけてるだろ。
ってかボスらしき奴5mはあるぞ。いや・・・遠くに居るからなだけで実際にはもっとありそうだな。
こんな可愛い少女と俺だけで勝てるのか?
・・・まぁ少女が気絶しなかっただけが唯一の救いか。
さて・・・こんな時はたしか誰かが助けてくれるはずだ。
主人公とヒロインのピンチだ!って時に物凄い速さで現れて敵を片付ける奴がくるはずだ!
・・・まぁそんな面白いことは無いよな。
よし!ここはヒロインのキスかなんかで主人公がパワーアップするって・・・
これも無理か。しょうがない。諦めて1匹づつ倒していくか。
お?どうやら少女は弓を使うようで。
とりあえずこれならいけそうか?俺がこの娘を補助しつつやればなんとかなるな。
「よし・・・じゃあ娘さん。準備はいいか?」
「・・・怖いけど・・・頑張ります・・・」
「じゃあ・・・死ぬんじゃないぜ?」
「・・・貴方も・・・」


なんかかっこいいな俺wwwwwwwwwwwwww

541 名前:名無しさん 投稿日:2006/10/22(日) 06:33:35 [ pW/IKbZM ]
ね・・・眠れない・・・orz

さて5匹ほど倒したら「おっこれはいける!!」と思いました。
10匹目できつくなりました。15匹目でもう勘弁してください。
20匹目もう死ぬって俺死ぬって。後10匹。
相変わらずボスみたいな奴がデカくてうざい。
ってかお前戦えよ。部下に任せて自分は鼻歌ですか。
とか言ってる間に雑魚を全滅させたぜ。
・・・え?矢がもう無い?じゃあもうお前気絶してろよ。
ってか隠れててくれね?それか予備の矢あったらそれ使ってくんね?
「グワァァァァァァァァ!!!!」
うるせぇなこいつ。悪者の強い奴気取りですか?
所詮殺される運命のお前が何でしゃばってるんだよ。
あぁうざい。とりあえず矢が頭に刺さっても死なないってどういう体だ?
さっきから腕切ったりしてるのにすぐ再生しやがる。
ピンク色の自称恐怖の魔人と戦ってる感じがした。
それとも人造人間の虫みたいな奴か?まぁいいや。
あぁ周りがこの腐れ野郎の腐った腕で埋まりそうだ。
と思ったら土の中に消えていった。なんだこれ?
・・・そういえば再生する奴はどこかに弱点があるはずだ。
核を潰すとか再生出来ないくらい完全に消滅させるとか・・・。
無理だな。でもどこかに弱点があるはず。
まずは心臓を・・・ってもう既に矢が貫通してるよな。
頭をぶっ潰せば・・・そうだね矢が頭を貫通してるね。
腹を狙えば・・・そうだねもう矢が貫通してるね。
ちくしょう俺が狙ってるところを正確に狙い撃ちしてやがる。
これじゃあ俺は完全に腕を切り落とすだけじゃないか。
いやむしろそれでいいのか。何を言ってるんだ俺。
あぁうざい。しばらくこの巨人の顔は見たくない。終わったらもうこの少女の可愛い裸体でも(ry
「いっ・・・・・・・ってーーーーーーー!!!!!!」
棍棒が直撃しやがった。なんだこの痛さは。
あぁこれ死んだかもわからんね。
って痛っ!ちょっと待て馬鹿。瓶をこっちに投げるな。
と思ったがどうやらこれは回復薬のようだ。さて飲むか。
ゴックンと。あ〜美味い。これ結構いけるね。今度からこれを水の変わりに・・・って
やばいwwwww少女がやばいってwwwwwwww
俺は巨人の背中をおもいっきり斬った。
「グギャァァァァァァァァァ!!!!!!!」
「うるせぇ糞野郎!!!!」
もう一回やったら巨人がその場に崩れ去った。
なんだ。背中が弱点だったのか。俺は安心した顔で少女のほうを向いた。
おいおい今頃気絶するなよ馬鹿。
なんてことを思いながら近付こうとした瞬間。
「グガァァァァァァァァァァ!!!!」
またか?そろそろ消えろよ。と思ったが不意をつかれたことだけあって
さすがに腰が抜けてしまった。あぁもうだめだ。
巨人が最後の一撃を!!!!って顔でこっちに向かってくる。
あぁさようならこっちでの俺。まだ色々やりたかったな。
「グギャァァァァァァァ・・・」
ドダァァァァァァァン
物凄い音が周りに響いた。ってか最後までうるさい奴だったな。
どうやら頭を完全に吹っ飛ばされたようだ。
誰だよこんなことした奴。と思ってたら。
「おーい。上を向け青年」
この声・・・まさかと思ったけどゴーストだった。
「まさか君がオーガと戦うとはな。こりゃ面白いハハハ」
「うるさい!!俺が好きでこんな奴らと戦うとでも?」
「ハハハ。まぁよくもまぁここまでやれたなぁ」
・・・にしてもあれだ。なんでこんなギリギリなタイミングで助けたんだ?
そう問い掛けたら「そっちのほうがかっこいいから」とか抜かしやがった。
殺すぞゴースト。まぁ何はともあれ助かったわけだ。

しばらくゴーストと話していると少女も起きたようだ。

542 名前:名無しさん 投稿日:2006/10/23(月) 01:47:32 [ pW/IKbZM ]
眠れない夜には考え事をすれば眠れるよと言うので>>541の続き書くぜ。

少女はすぐゴーストの存在に気付いたようで。
って何その顔。目の前にまるでモンスターが居るかのような顔をしている。
・・・ちょっと可愛いじゃないかこの野郎め。
「・・・何故ゴーストが・・・?」
・・・え?ゴーストが居ちゃやばいの?
「ゴーストが居ちゃ駄目かい?」
「!!!」
何この二人。壊れたのか?別にゴーストの1匹や2匹いいだろう。
って思ってたのが前の俺。今の俺は・・・
ちょwwwwゴーストってモンスターだったのかよwwwwww
俺はてっきり優しいお兄さんなのかと。
・・・まぁ違う世界からきた奴だし中身は普通の人間だって言ってたしな。
「・・・なるほど・・・でもモンスターが人に優しくしても平気なの・・・?」
え?駄目なの?別に全部のモンスターが酷い奴ってことじゃないだろ。
「ぼくわるいスライムじゃないよプルプル」って感じの奴と同じだろ。
「・・・まぁ多少は警戒されてるさ。けど別に俺の自由だろ?」
「・・・たしかに自由ですが・・・命を狙われたりとか・・・」
「心配してくれるのはとても嬉しい。だが俺は自由に生きたいんだ。ただそれだけ」
お前は自由に生きるためなら命を狙われてもいいのか?
・・・こいつ絶対ギャンブラーだな。うん。ギャンブラーの心得って本読んだ俺が言うんだ。
確実にこいつはギャンブラーだ。絶対。
そういえばこの少女も違う世界からきたのか?とりあえず聞いてみるか。
「そういえばちょっと聞きたいんだが・・・いいかい?」
「・・・なんでしょうか・・・?」
「えっと。君は違う世界からこの世界にきた人かな?」
「・・・?」
おっと質問のしかたがストレートすぎたか?とりあえずもう一回質問するか。
「おっと失礼。えーっと君は何時からこの世界に?」
「・・・?それはつまり私が産まれたのは何時か?と聞いてるのですか・・・?」
・・・あら?俺の質問のしかたはやっぱ駄目なのか?
なんて質問をすればいいのかって考えてたら急にゴーストが小声で
「(おい・・・お前はこの世界に居る生物全てがどこか違う世界からきたとでも思ってるのか?」
まぁ思ってるさ。お前がそんな感じに説明してたしな。
って言うと「あwwwごめんwwwww」って顔してきた。
・・・やっぱうざいなこいつ。
とりあえず謝っとくか。
「あ・・・変な質問をしてしまってすみません・・・」
「・・・間違えは誰にでもありますよ・・・」
あぁ・・・なんかすっげぇ恥ずかしい。この恥ずかしさを例えるなら・・・。
隠していたエロ本を妹か弟か母親に見られた時くらい恥ずかしい。
おいそこのゴーストニヤニヤするな殺すぞ。
・・・あぁ恥ずかしい。さて旅に出るぞ旅。
そう少女に言ったらゴーストが「俺も行っていいか?」とか抜かしやがる。
もうお前帰れ。な?たまに様子見とかしてやるからさ。
せっかくこんな可愛い娘と二人っきりで冒険が出来るのにさ。
おぉ神よ。何故貴方は俺の邪魔をするのです?
・・・まぁいいや。人が多いほうが何かと楽とか言ってたし。
少女も賛成しちゃったし。多数決やったら確実にゴーストきちゃうだろうし。
もういいや。さてさっさと行こうかな。またオーガとかがきたら最悪だしな。
いよいよ本格的に俺の冒険が始まろうとしている。
正直どきがむねむね。でも正直オーガ30匹とかは勘弁。まじ怖い。
さ〜て冒険の始まりだ〜いwwwwww


その前に鞄と回復薬買わせて。正直そのくらいは俺も持ってたいから。

543 名前:名無しさん 投稿日:2006/10/23(月) 03:31:17 [ pW/IKbZM ]
鞄と回復薬・・・案外安いな。
さっきのオーガから出てきた変な物体売ったら結構な金になった。
うはwwwwいきなり金持ちwwwwwww

さ〜ていよいよ冒険の始まりだ。
街の外に出たらもうモンスターだらけで死体だらけ。
まさに地獄って感じのを期待してた時期が俺にもありました。
なんだよここ。すっげぇ平和。街より涼しいし。そして何よりお花畑がある。
楽園か?それとも天国か?まぁいいや。
「さ〜てここから結構歩くといっきにモンスターが凶暴になるぞ」
・・・ちょっと待て。何それ?ってことはつまりここは
ドラクエで言う最初の街の周りって意味か?
あ〜・・・まぁいいか。さ〜て旅だ〜凶暴なモンスターでもなんでもこい。

・・・あ〜・・・ごめん。さっき言ったことは無かったことにしてくれ。
何あれ?槍持ったあの狐と犬が合体した感じのあれはなんだ?
あとそこに居るミイラはなに?ゾンビはなんだ?そして周囲の砂漠はなんだ?
暑いし怖いしもうね。地獄だよ地獄。
「オラァァァァ!!!」
なんて言って剣振り回してるけど俺正直めっさ自信なくした。
槍持った変な奴怖い。ミイラ怖い。ゾンビ怖い。
あぁ泣きたい。もうね。泣きたい。周りでは火が飛んだり矢が飛んでる。
「ギャ!」とか「グワァ!」とか聞こえる。
たまに「キエエック!!!」とかも聞こえる。
なんか馬鹿にされてる気がして嫌になる。あぁもうゾンビ邪魔だっての。
・・・そういえば俺まだ1匹も倒してないな。
ほとんど焼け死んでるか急所に矢が刺さって死んでる。
気が付くとモンスターは全滅していた。
あぁ・・・二人ともそんな目で俺を見ないでくれ・・・。
「・・・疲れましたね・・・」
「そうだな・・・よし休憩しますか」
ゴーストだろうがやっぱ疲れるんだそうだ。
とりあえず二人にさっき買った回復薬を渡した。
「・・・夜になる前になるべく早く街か村に着きたいですね」
「そうですね・・・」
そんな会話をしながら休憩をしていた。

・・・え?もう休憩終わり?早くね?
そんなこと考えてたら笑われた。あ〜恥ずかしい。
砂漠を移動するのも大変だな。ゾンビが出てきたりするしさ。
あ〜暑いよ〜喉渇いた〜回復薬飲もうかな〜。
「・・・あっー!!!!」
うおっ誰だよ今大声で叫んだ奴。あぁゴーストか。
「何を騒いでるんだ?」
「やっと見つけたぜ!おい走るぞ!」
・・・あんたは浮いてるからいいけど俺らは歩きだぜ?
あ〜きつい・・・じゃねぇな。目的地がなんとなく分かった。
あそこに見える湖だな。ウッヒョー水浴びできるじゃないか。
気が付くと物凄い速さで走ってた。ゴーストも吃驚するほどの速さだったらしい。
「よっしゃー一番乗りだー!」
「・・・どこからそんな元気が・・・?」
「さぁ・・・」

あ〜・・・なんでモンスターが?
あぁモンスターの風呂場っぽい場所だったのか。もうね・・・。
ゴーストのことを軽く睨んだ。
「あ〜残念だったね〜」
「・・・ですね・・・」
なんでこんな冷静でいられるの?俺が短気なだけか?

とりあえず涼しそうな場所を探してそこでまた休憩することにした。
あ〜喉渇いた・・・。

544 名前:名無しさん 投稿日:2006/10/24(火) 03:06:40 [ N1B0JemI ]
>>535
泣いてくれてサンクス。

>>536->>543
凄くノリがいいですね。続きを期待してしまう自分がいます。

545 名前:ageパン 投稿日:2006/10/24(火) 05:52:03 [ liMY2x9w ]

−古都ブルネンシュティグ クリムスン商店−

ギル戦後の集会が終わり、誰もいなくなった店内で私は一人品物をみていた。
特に目を引く物もなく、私は店の正面に並べられている小物を軽く一瞥し外に出た。
日の当らない店内とは違い外は明るく太陽はさんさんとしていた。私は眩しさに少し目を
細めた。

表通りではヒマそうなカオリンがケイルンと話をしている。店内を振り返ると店の裏手口
へ通じる狭い通路ではまだギルドマスターと新入りの問題児が話をしている。彼を待って
5〜6分たつのだがまだ終わりそうもない。ただ待つのもつまらない、おしゃべりでもし
ながら待つとしようか。

そう思い彼女らの方向へ歩き出した矢先、私の後ろから雷鳴のような怒鳴り声が聞こえて
きた。マスターの怒鳴り声だった。
「なんで命令が聞けないんだ!どうして自分の部隊メンバーのもとを離れた!?貴様の仕
事は自分の所属する部隊メンバーの後方支援だろうが!」
「・・・・・・・」
「勝ったとはいえ負けたらどうやって責任を取るつもりだったんだ!」
彼はマスターの怒号にもマユゲ一つ動かさず、壁に寄りかかり腕を組みながらうつむいて
いるだけだった。マスターの太い腕と握り締められた拳が震えている。
「黙っていては話がすすまん!いいかげん何とか言ったらどうなんだ!」
それでも彼は何も言わない。
業を煮やしたマスターは近くにあった椅子を蹴り飛ばし、立てかけておいた自分の斧を持
つと私の方へと歩いてきた。
「明後日のギルド戦でもその態度が直らないようならば追放もありえる・・・、そう伝え
ておけ!」
まるで私にでも言うかのようにすれ違いざまにそういい残すと、返事も待たずにマスター
は店を後にした。
私は軽く胸をなでおろした。
嵐の去った店内は静まり返り耳鳴りすら聞こえる。
カウンターでそろばんをいじりながら記帳しているクリムスンと目が合ったが、彼は何も
いわなかった。もうこういった出来事には慣れっこらしい。
「何してるの?」
ふと視線を移すと私のすぐ隣に新入りが立っていた。彼は右手に持った長い杖を肩にかけ
ながらそう言った。
私は言った。
「君を待ってたんだ、ここではなんだから少し場所を変えようか。」
「・・ああ、いいよ。」
彼は店の表に出ると外の明るさに一瞬眉をしかめていた。
私たちは水路沿いを歩き古都を南へと出た。

546 名前:ageパン 投稿日:2006/10/24(火) 05:54:01 [ liMY2x9w ]

−ギルディル川 ナス橋付近−

新入りの彼は、私の隣で欄干に肘をのせ左手で頬杖をつきながら右手の中指で落ちていた
小石を弾いていた。
私は欄干に背をもたれて、向かい側の欄干の間から見える水面を眺めていた。穏やかな水
面は昼下がりの暖かい太陽の日をうけ、美しい光を反射していた。私は煙草に火をつけ軽
く息を吐き、煙の行方を目で追った。

彼は言った。
「話って、なに?」
「なぜ命令に違反するような真似をしたのかと思ってさ。」
彼は手に残っていた小石を全て橋の下へ落とした。小石が水面を叩く音が聞こえた。
彼は私と同じように欄干に持たれ、立てかけていた長い杖を手に取ると杖の柄で靴のつま
先を軽く叩いた。
「なんでって・・・。」
私は続けた。
「マスターが言っていたよ、このままじゃ追放もありえるって。せっかくこのギルドに入
ったんだ、できることなら仲良くやっていきたいと誰もが思っている。君だってそうだろ
う。」
「・・・・・」
彼はまた黙っていた。
私は橋の下を見た。橋の影ではスッポンの親子が三匹戯れている。親の背中に乗ろうとし
た子のスッポンが足を滑らせてなかなか背に乗れずにいた。水面に映る煙草を吸っている
男が私を眺めていた。
その時ふと新入りの彼が口を開いた。
「俺とは違う部隊に所属していた赤髪のランサーいるだろ。」
「ああ、君と同期に入ってきた彼女か。彼女がどうかしたのか?」
彼は少し間を置くと軽く息を吸ってからこちらを見ずに言った。
「今日、彼女が敵に囲まれていたんだ。あのまま放っていたら確実にやられていた。彼女
がやられるのは負けるよりも嫌な事なんだ。」

彼はそう言い切ると鼻で溜め息をつき、安堵した表情を見せ私を一瞥し軽く笑って見せた。
その時私は彼の笑顔を初めて見た気がした。
私は言った。
「そうか。」
彼は言った。
「そうだ。」
私は吸いかけの煙草を川に投げた。ジュッと音がした。緩やかな流れの水面に波紋が広が
った。それに気がついたスッポンの親子が不思議そうに私を見上げていた。
「言うべきことは言ったぜ。俺は古都へ戻るよ。」
彼はそういうとナス橋を後にした。

私は二本目の煙草に火をつけた。
時折吹く優しい風が私の頬をなで木の葉をざわめかせた。
舞い散る木の葉の色づきが秋の訪れを告げていた。
私は彼の姿が見えなくなるまで彼の後姿を眺め続けていた。

            −fin−

547 名前:サマナの人 投稿日:2006/10/25(水) 00:07:20 [ b6Gnz/6I ]
>>ageパン氏
物凄い素敵な話ですね。
「そうか」「そうだ」と言う短い掛け合いの持つ雰囲気が、個人的に気に入りました。
なんとなく、大人の雰囲気、みたいなっ。
あと、すっぽんの親子にテラ和みす(´Д`*)

548 名前:名無しさん 投稿日:2006/10/25(水) 00:42:46 [ pW/IKbZM ]
>>544
そのようなお言葉が貰えるとはありがたいです。
あなたの小説に泣かせていただきました。

続きを期待されると困っちゃいます・・・。
ですので何こいつwwwwきめぇwwwwwwって感じに見てくれると嬉しいです。


では>>543の続き書くぜ。
「あ〜つ〜い〜よ〜・・・」
「無駄に喋ると喉も渇く・・・だから静かにしろ・・・」
「でも暑いんだよ・・・誰かさんのせいで無駄に喉も渇くし・・・」
「だぁーもう!!五月蝿いな!!俺だって湖がモンスターの溜まり場だって分かってたら言わなかったさ!」
「・・・二人とも落ち着かないと・・・」
・・・少女に止められてなんとか俺とゴーストの口喧嘩は終わった。
でも暑い・・・。この娘だって暑かろうに・・・。
「暑い〜」って言いながら裸になったりとかしないかな〜・・・。
そうすりゃ少しは気持ちも落ち着くんだがな〜・・・。無理だよなうん。
さて・・・次の街までは後どのくらいなんだ・・・?
「そういえば次の街は後どのくらいで?」
「・・・街ではなく村ですね・・・」
「あぁ・・・村だったな・・・」
「どっちでもいいさ。んでどのくらい?」
「子供かお前は。えーっと・・・ってもうすぐだな。ほらそこだ」
へ?もうすぐ・・・ってうわもう目の前じゃね?
あ〜でもようやく村か〜。さ〜てまずは水だな。
次に飯か・・・?そういえば腹減ってきたな・・・。
ってか飯食ってなかったな。あ〜腹減った。
「ウッヒョーー!!一番乗りはまた貰っちゃうもんねー!」
「・・・こいつやっぱ子供か?」
「・・・精神年齢が低いのでしょう・・・」
うっ・・・ちょっとピクッっときたぞ・・・。まぁいいや。
村って言ってたけど結構広いな。それに涼しい・・・。
・・・あ〜腹減った。宿はどこだ〜?
「おーいどこ行ってるんだ?お前の探してる所はそっちじゃなくてこっちだぞ?」
うぉ!あぶねぇ・・・後もう少しで怪しい店に入りそうになった・・・。
ゴーストには後でお礼言っとかないとな・・・。

そんなこんなで宿に到着・・・。ってうわ客結構居るな・・・。
ってかここどこだよ。すっげぇ怪しい所から入っていった気がするぞ?
・・・まぁ素人にはわからない理由ってのがあるんだろうな。
「・・・ここですか・・・?」
そう思いたくなるよな。俺だってここか?って思ったもん。
「ここだ。ちょっと小汚いが結構良い場所だぞ?」
へぇ・・・でもこんくらいのほうが雰囲気出ていいな・・・
って待て。なんでこいつそんなこと知ってるんだよ。
「おいゴースト。なんでお前こんな隠れ家的な場所知ってるんだ?」
「モンスターやってると嫌でもこういう場所とかわかっちゃうんだよ」
モンスターも大変だねぇ。とでも言ってほしいのか?まぁいいや。
「じゃあ何頼むよ。ここは俺がおごるぜ」
ほぉおごることができるくらいの金があったのか。後で少し貰うかな・・・。
「ほぉ・・・ゴーストにも友達とやらが出来たのか?」
怖い声だな。誰だ・・・ってうわっこいつオーガか?
少女も結構吃驚してるみたいだな・・・。警戒してるみたいだ。
「ハハハ。大丈夫だって。こいつは人を襲ったりする奴じゃない」
・・・なんだゴーストと同じタイプの奴か。
「・・・なるほど・・・だからこんな場所に・・・」
「つまりそういうことだ」
へぇ。モンスターが居る店ってか。こりゃたしかに人に見られたらまずいよな。
・・・っておいおい。人すっげぇ居るじゃないか。平気なのか?
「・・・人が居ても平気なのか?」
「あぁ雰囲気をぶち壊すような奴じゃなければ全然OKだ」
いいのかよ。でもあれだな。以外と皆楽しそうだ。
「・・・こんな場所初めてです・・・」
まぁそりゃそうだよな。俺だって初めてだ。
「モンスターを手なずけて一緒に戦う人・・・なら知ってますが・・・」
「ここはそういうのは一切無い。酒を飲んだり飯を食ったりって場所だ。
 だから人もモンスターも関係無しってことだ」
それは既に分かってるって。あ〜・・・でも腹減ったなぁ・・・。
「あ〜俺腹減ったよ・・・喉も渇いたよ〜・・・」
「はいはい分かった分かった。じゃあオーガこいつに美味いもん持ってきてやってくれ」
「分かったじゃあ今すぐ美味いもん用意してやるから待ってろ」
お〜いよいよ飯だ〜wwwwさ〜てどんな料理が出るんだろうな〜・・・w

549 名前:ゆずみかん 投稿日:2006/10/26(木) 02:18:49 [ Vy6vehBs ]
――――――もう、これで何回目だろう。

私はもう幾度となく殺され続けている。目の前の男に。
もう何度も殺されている私は、死ぬことに慣れさえ覚えた。しかし、それはあまり良い気分のことではない。
人は、自らの死の間際に己の人生を駆け抜けるようなスピードで思い出すというが、それは本当だ。
私は死ぬ度に己の人生が電光石火の如く頭の中を駆け巡り、その度に私の心は引き裂かれるように痛んだ。

――――――コロシテ

不意に、口からぽろりと溢れ出す雫のようにこぼれた。

しかし、それは切なる願いだった。
既に、私の半分は私ではない。残りの私ももうすぐ消えてしまうだろう。
どうせ消えるのなら、どうせ消えるのなら、せめて私のままで逝かせて。
「コロシテ、コロシテ」
ただ私は呪文のように繰り返した。
「コロシテ」


「朝だよ、あーーさッ!ほら、さっさと起きた!」
「ぅーん…あと、少しだけ…」
「あーもう!」
その声と同時に、少女の体を暖かく包んでいた衣がはぎ取られた。
窓を開け放たれ、肌寒い外気が肌に染み込む。
「ぅうん……」
「あんた昨日友達と約束あるって言ってたようだけど大丈夫なのかい?」
その言葉で完全に目が覚めた。素早く振り向き時計を確認。既に針は9時を回っていた。
完全に遅刻だ……。
「な、何で起こしてくれなかったのよ!」
「起こしたさ。起きないあんたが悪いんだからね」
「〜〜〜〜〜もうッ!」
私は素早く寝巻きから着替え、跳ねまくっている髪を大雑把にピンで止めると、階段を三段飛ばしで降りた。
食卓の前まで行き座りながらパンを頬張っているお父さんに挨拶すると皿の上に乗ってる食パンを片手で掴み無言で外を飛び出した。家を出るとお母さんが窓から顔を出した。
「神様の挨拶忘れずにしてから行くんだよ〜」
「分かってるって!」
私達の町アウグスタは神様だの仏様だのにうるさい町だ。一日二回のお祈りが風習である。
正直私はこの町には引っ越してきたせいか、神様とかは信じていない。しょうがなく遠くに見える教会の十字架に向かって軽く頭を下げた。町の外に出ると、遠くに5人ほどの人だかりを見つけた。
「ごめん!待った?」
私は両手を合わせて謝った。だが、友達の一人はきッと睨むと
「おーそーい!もう、何回寝坊すれば気が済むのよ!ルーシェ!」
「ごめんごめん…」
私はただただ何回もペコペコと頭を下げるばかりだった。
「ルーシェは朝弱いもんね〜」
違う友達がのほほんと笑い掛けた。
「もんね〜」
私も笑い返した。
「もんね〜。じゃぁない!!」
最初の子が怒鳴った。近くで怒鳴られた為にしばらく耳がキンキンした。
ところで、今日はみんなで近くの麻薬倉庫まで探険するという約束だ。それを私は遅刻した訳だが……
しばらく歩くとその子のほとぼりも冷め、いつものように楽しい会話が始まった。ふと、誰かが私に声を掛けた。
「ルーシェ〜。あの人とはうまくいってるー?」
「ななな、何もないわよ……」
私は音を立て顔が真っ赤に染まった。
「ルーシェはかわいくていいよねー。キャハハ」
「なっ…ほ、ほら、着いたわ。さっさと行くわよ!!」
そう言うと私はずかずかと歩き出した。
無論、今日来た麻薬倉庫にはモンスターがいる。私達だって承知の上だ。
別に、いざとなったらここくらいの敵なら倒すことだって可能だ。私だって伊達に小さいころ棒術を習っていた訳ではない。

「ふぃ〜、楽しかった〜」
皆それぞれ感想を言い合い倉庫を後にした。外に出ると既に太陽は沈んですったり夜だった。
――――? なんだか誰かに見られているような違和。
「どうしたのルーシェ?」

「ううん、何でもない」
やはり誰かに見られている。私は思い切って振り返ってみた。遠くに、誰かが立っていた。
私はそれを見た瞬間ゾッとした。本能がやめとけと言い続けている。
「みんな、遠くに逃げて!!」
「どうしたのさ?」
「いいから早く!!」
私の迫力に押されたのか、みんな遠くへ走っていった。
私はゆっくりと槍を構え、そいつに向かって走り出した。
「あれ?いない?……しまった!上に!」

「お、来た来た。どうしたんだよルーシェ。いきなり」
「ごめんごめん」
――――殺せ、全員殺せ
「な、何て顔してんだよ。ルーシェ……?」
私は数歩で友達の一人に近づき、その首を爪で掻き切った。大量の血が吹き出す。
「え?」
急な出来事に立ち尽くす友達を、一人、また一人と私は首を掻き切った。

辺りには私、そして五つの死体。
「血が……美味しい」
私は一人不適な笑みを浮かべた。

550 名前:ゆずみかん 投稿日:2006/10/26(木) 02:20:15 [ wA1424Gk ]
「あら。遅かったわねルーシェ。おかえり」
「ただいま〜」
私は家に帰ってきていた。

「今日は友達と一緒じゃないのね。どうしたの?」
「ん?あれ、そういえば、そうだ。ま、みんな家に帰ったんでしょ」
適当なことを言ったが、正直どうなのか分からない。私は倉庫から出た後どうしたのか思い出せなかった。気づいたら家の前に立っていたのである。
「あら……どうしたのよその血!また変な遊びしてたわねぇ…」
「あ、ほんとだ」
「ほんとだじゃないわよ!洗うからさっさと脱いで風呂入りなさい」
「はぁ〜い」
気のない返事を返し、風呂に入った。服だけじゃなく体のあちこちにも飛び散っていたので早く洗い流したかった。
一番酷いのは口の中だった。血の味がして気持ちが悪い。
とりあえずシャワーを浴びながら考え事をした。

よく考えると、そろそろ私達はこの町に来て一年になる。だとするとあの彼とも出会って十ヶ月になるな。

彼とは、言葉通り彼である。私達はふとしたことで出会いお互い惹かれ合った。

彼は忙しいこともあり、逢えるのは週に二、三回程度だ。
だが、別に気にすることではない。
なにせ、彼は私がこの町に来て初めて私を認めてくれた人だし、この私の初恋の人だ。
私は髪の色などで当初は周りのみんなに馬鹿にされた。今は誰も気にしてないが、当時はつらかった。
そんな私を認めてくれたのが彼である。彼と出会った日のことは忘れない、蒼白い綺麗な月の夜だった。

「うッ!」
急に激しい頭痛が私を襲った。痛みは頭から全身に広がっていった。
そのまま私は風呂場に倒れた。


「――――――あれ……私…」
「気が付いたかい?」
目を開くとお母さんが私を見下ろしていた。
「もう、半日うなされてたんだよ。お父さん、すごく心配してたから帰ってきたら声掛けておきな」
「はぁい…」
気のない返事を返し、窓の外を覗いた。もう昼か。
「ぅ……」
またしても頭痛。なんだか今日の私は変だ。寝よう
それから一週間経つが、一向に頭痛は治らない。むしろ日に日に酷さは増していった。
日の光に浴びると、体中が熱くなるように痛む症状も出た。なので私は日の光との関係を絶った。
だが、不思議なことに夜になるとどれも引いたのだった。
私の寝たきり生活が始まり二週間の夜、私は外を眺めていた。すると家の近くに誰かが通った。
「あ、あれは裏のおばさん」
帰宅途中だろうか。手にいろいろ荷物を持っている。

――――――殺せ
………え?誰?誰なの?

――――――殺せ!殺せ!殺せ!殺せ!殺せ!殺せ!殺せ!殺せ!殺せ!
その声は耳鳴りのようにずっと頭の中になり響いた。

プツン。何かが私の中で切れ私は自我を失った。同時に体の自由も奪われた。
たちまち爪は鋭く伸び、二本の歯が伸び鋭くとがった。
「ふふ、良い気分だ。今なら世界でも乗っとれそうだよ」
そう独り言を言い私は窓を飛び降りおばさんの目の前に舞い降りた。

551 名前:ゆずみかん 投稿日:2006/10/26(木) 02:21:31 [ z.PXktEo ]
「朝よーーッ!」
「おふぁょぅ…」
お母さんのいつものハイテンションで、大あくびをしながら私は起きた。
「朝からぼうっとしてないで、ほら」
……朝にぼうっとするのは普通ではないだろうか?まぁそれはさておき私はお母さんが手渡した朝食を受け取った。
部屋に閉じ籠ってからというもの、私は部屋から一歩も出ず、食事も部屋で食べるようになった。
「ねぇねぇルーシェ…」
「何?お母さん」
受け取ったパンを頬張りながら私は応えた。
「今日さ、すぐそこでね、裏のおばさんが死体で見付かったそうだよ。それもね、損傷が酷くて血がほとんどなくなってたそうだよ」
「へぇ……」
「前のあんたの友達のこともあるんだからあんた気を付けなさいよ」
「分かってるわよ……」
「あ…食事中にする話じゃなかったね。ごめん」
悪びれた表情でお母さんは部屋から出ていった。
この前医者に診てもらったのだが、友達の件での精神面も原因の一つではないだろうかということだ。
だが私はなぜか友達の死にあまりショックを受けなかった。
私はそんなに冷たい女なのだろうか?

今日は激しい頭痛も、日に当たると熱くなるような痛みも起きなかった。
ふぅと安心してそのまま寝ようとしたら、ふいにあの声が聞こえた。

――――――殺せ。全てを壊せ

またこれだ……私はそんなことしたくない。私はただ……血が飲みたいだけ。
え……?思った自分が一番驚いた。私ったら何てこと考えて…。
突如体の自由が奪われた。まただ……。そうすると私はゆっくりと自我を失うのだった。

次の日起きると、私はいつも口の中が血生臭いのに気が付くのだった。それが毎日続いた。
そして遂に私は抑えることが出来なくなった。
そして気づく。そうか、私が犯人だったのか……。前から疑問に思ってはいたが、怖くてそう思うことを避けていた。
既に私自身の意思で数人人を狩った。ああ、私は人殺しだ。そう思い悲しんでも飢えは収まらないのだった。

ある日の夜。私はいつもの飢えを押さえ付け苦しんでいた。
ドア越しから声が聞こえた。
「ご飯よー」
お母さんだ。しまった!夕食が来ることを忘れていた。来ないでお母さん!!
その思いも儚くドアを開けたお母さんは私に首を裂かれて死んだ。
お母さんを殺してしまった…お母さんを殺してしまった…お母さんを…
「ルーシェ!!何をしている!!!!」
この光景を見たお父さんが驚愕した表情をしながら私を見つめていた。
お父さんまで……。
私はお母さんの首から口を遠ざけ立ち上がり、右手で口についた血をを拭った。

こうなった私は止めることができず、お父さんをもこの手で殺してしまった。
殺した後、私は後悔と悲しみに包まれた。
明るく優しいお母さん。厳しくも私を思ってくれていたお父さん。その両方をこの手で失ってしまった。
どうしよう、どうしよう、どうしよう、どうしよう。このままじゃ見付かっちゃう。今度は私が殺されるよ……。
私は恐ろしいことを考えた。見つかるなら、消してしまえばいい。
私は二人の足を掴むと下の暖炉に二人を放り投げた。

これで私は無実だ。私は悪くない。私は……!

552 名前:ゆずみかん 投稿日:2006/10/26(木) 02:22:47 [ 0Q3GCQU2 ]
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……」
その夜から私は一睡もできずただ家で自分のやったことに苦しんでいるばかりだった。
だが不思議と眠気もない。よく考えると何も食べていないが、腹も減らない。
私は、何なんだ?人間?それとも化け物?
何か食べてみたが、砂のような味がした。舌がおかしくなったのだろうか?
そんなことよるこの先のことを考えた。自力で飢えを抑えるのも、両親の血を飲んだとは言えそろそろ限界がある。
完全に自我が戻った私は、誰にも目の届かないところへ行くことを考えた。
その日の夜、私は一人町を出ようとした。
さよなら、いろんな思い出が詰まった町だけど……これもみんなの為よね。
そして、町を振り切り一歩を踏み出す。そのときだった。
私の背中だった場所に、いくつもの十字架が刺さった。思わずうつ伏せに倒れた。
「ちッ……まだ生きているか。貴様ヴァンパイアに感染された人間だな」
背後から男の声がした。…そうか。遂に全て繋がった。私はあの時立ち向かったのはヴァンパイアなのか。
更に私に十字架が降り注いだ。
「あぁぁぁああああ!!!!」
「すまない。これは俺達エクソシストの仕事なんだ。悪く思うな」
このまま殺されてたまるか。殺せ殺せ。邪魔する者は全て殺せ!
私は再びヴァンパイアになった。爪が伸び、歯が鋭くとがる。
傷は瞬時に癒えた。男に飛びかかったが、手前で十字架の雨を食らいまた倒れ伏せた。
蒸気を上げて傷は癒える。十字架が落ちる度に私は死に、気づくと生き返っている。
「くそ、中でも強力な古代の血か」
男は私の手足を光の縄で縛ると近付いてきた。
その顔は見覚えがあるもなにも、最も求めていた顔だった。
「……え?あなた……?」

「ルーシェ…?」
二人の間に長い沈黙が流れた。
「なぜ……君が」
彼の表情が苦痛に変わった。
「ねぇ、あなた。お願いがあるの」
「…………?」
「私を、殺して。せめてあなたの手で。私が私であるうちに」
「しかし………」
「お願い。いつ私が再び暴走するか分からないわ。だから、お願い」
その表情は一点の曇りもない、素直な表情だった。
「――――くそ!!」
彼は長く力強い永昌を唱えると、私の頭上に大きな十字架が現れた。
その十字架は光輝き、回りの物を浄化した。私の中の物も死んだ。つまり同一体である私も死ぬ。
最期に出てきた言葉は、彼を憎む言葉でも、中傷する言葉でもなかった。
「ありがとう」
半分自我が失いかけ、口だけ笑った気味が悪い顔で私は微笑んだ。
すると、彼は私に手を差しのべた。
私も、残り少ない力を振り絞り手を伸ばした。

意識が途切れる中それでもはっきりと見えた。今宵の月は、丸くて、蒼白く、そして、
――――――出会ったあの日のような、綺麗な、月だった。

――――END

553 名前:ゆずみかん 投稿日:2006/10/26(木) 02:24:04 [ Z/491TXs ]
みなさん、お久しぶりです。初めての方、こんばんわ。
どんなに書いても上達しないゆずみかんです。

この前ふと考えたものを書いてみました。赤石とほぼ関係ないのは気にしないで下さい。

自分は今、以前書いて載せていた下手くそな小説の続きを制作中なので、
近々載せたいと思います。
この小説を最後まで読んでくれた方、ありがとうございます。
つまらなくて途中でやめた方、すいませんでした。

これからまたお世話になりそうなのでよろしくお願いします。

それでは

554 名前:名無しさん 投稿日:2006/10/28(土) 02:43:37 [ N1B0JemI ]
>>548
オーガのウェイター……裸エプロンが胸毛で浮いてキモスwww
と、凄いものを想像した自分に鬱 orz

>>549->>552
主人公が狂気に堕ちて行く様が生々しかったです。

555 名前:名無しさん 投稿日:2006/10/28(土) 23:30:51 [ i3zjm4wM ]


556 名前:名無しさん 投稿日:2006/10/31(火) 02:50:29 [ vi17z.B. ]
1.ttp://jbbs.livedoor.jp/game/19634/storage/1127802779.html#960
ttp://jbbs.livedoor.jp/game/19634/storage/1127802779.html#961

 
 あと一つ。コレが最後。
 崖の上から古都を見下ろす。
 ブルンネンシュティグ…ここを陥落させてしまえば自分達の勝ち。
 ついにここまでやってきた、やっと辿り着いた。
 もう少し、もう少しで理想の世界を創ることが出来る。
「なぁ、みんな見えているか?ついにここまでやって来たんだ。理想の世界は目の前だ。
 あとは手を伸ばすだけ、そして邪魔な閂を外し扉を開けるだけ。」
 声が震える。あと少しで夢が叶うからなのか。
 それとも、この後に待ちかまえている戦いを想像し血が騒いでいるからなのか。
 おそらく両方だ。
 所詮自分は悪魔なのだ。どんなに抑えつけていても戦いが近づくと心が躍る。鼓動が高鳴る。
 そして今日、今まで体験したことがないような大規模な戦争が起こるのだ。
 もうすぐ太陽が昇る。朝日が昇り、世界がその光に包まれたとき最後の戦いが始まる。
「長かった…本当に長かった…」
 悪魔を騙し、天界から逃げ出してからどの位の月日が流れたのだろう。
 ここに来るまでに沢山の仲間を得た。
 それぞれが個々の理想の世界を心に描き、自分と共に行くと言ってくれた。
 誰にも受け入れられない理想。
 損をする人々の方が圧倒的に多い理想だとしても自分は実現させてみせる。
 たった一言。
「お前について行く」
 その言葉を言ってくれた仲間。その一言で心が救われた。
 間違った道を歩む自分に勇気をくれた。
 あとはこの戦いに勝利し、この力に耐えられるだけの体を手に入れ、理想を実現させるだけの力を行使するだけ。
 スマグやアリアンの時とは違う。それ以上の激しい戦いが待っている。
 古都には世界中からこの世界を維持しようとする者達が集まっているだろう。
 だが負ける気はしない。自分達は強いのだから。
 あまりに強すぎて、その強さ故に孤立していった者達。それが自分達なのだから。
「もうすぐ陽が昇る。古都の近くまで移動しようか。」
 声をかける。その声に従い全員が移動を始める。
  
 古都の入り口には多くの兵士達がいた。世界中の町から集まったのだろう。
 屈強な戦士達。精神を集中させている魔法師達。
 いったいどれ程の数が集まったのだろうか。思わずその数に圧倒させそうになる。
 しかし、数では劣勢とはいえ、こちらは一騎当千の実力をもつ者ばかり。
 戦力は五分と五分と言ったところだろうか。
 視線を古都の正門の方に向ける。
 いた。やはりあの二人。
 槍を持ち、女でありながら古都最強と言われる実力をもつランサー。
 翼を失い、天使としての力を失い、それでもなお巨大な盾を持ち、ランサーを補佐するように構えるビショップ。
 理想を見据えるといつもこの二人が視界に入ってくる。
 どこまで行っても立ちはだかる。なんて邪魔な存在なのだろう。
 二人は笑っていた。とても幸せそうに。負けることなど少しも想像していない。そんな表情。
 腹立たしい。恨めしい。そして羨ましい。
 もうすぐ陽が昇る。そのはずなのに時間が進まない。
 ゆっくりと流れる時間。気が狂いそうなくらいの静寂。
 ゆっくりと空に赤みがかかる。
 あと一呼吸。


 陽が昇る。

「勝利を我が手に!その先にある理想を我々の手に!」
 戦いが始まる。
 仲間達の声が聞こえる。
 狂気に満ちたような荒々しい声。歓喜の叫びのようにも聞こえてくる猛々しい声。
 自分を先頭に一直線にランサーとビショップのいる正門へと走っていく。
「うおおぉぉぉぉ!」
 両軍がぶつかる。
 頭の中には今まで歩んできた道程とこれから目にするであろう輝かしい世界が浮かんでいた。

557 名前:名無しさん 投稿日:2006/11/01(水) 04:44:52 [ pW/IKbZM ]
眠い・・・死ぬ・・・>>548の続き・・・
ぶっちゃけ「・・・」より「・・・とか…のほうがよかったな」まぁどうでもいいけど。

皆はもし目の前に巨大な眼球とか腕が出てきたらどうする?
俺?俺はとりあえず・・・
「うわぁぁぁ!!!!!!!」
って叫んだよ。うん。いや気絶しそうになったけどさ。
気絶してる娘。そして目の前でニヤニヤしてるゴースト。
「お前・・・これ目玉だよな・・・。後この腕のような物は・・・」
「あぁ。それはドラゴンの眼球とサラマンダーの腕。結構高いんだぜ?」
いやさ。普通の人間が眼球と怪物の腕が目の前に置かれたら驚くだろ。
ってか元人間のお前のそのリアクションはなんなんだぜ?
「さっきも言ったけど高いんだから残さず食えよ?」
何言ってるんだお前。腕なら・・・いや腕も無理だ。眼球なんてもう・・・。
おぉ神よ・・・貴方は何故俺のことを苦しめるのですか?
・・・これも試練か。OKOK食ってやるさ。
とりあえず食えそうな腕とやらを・・・って熱っ!!!!!!
何このサラマンダーふざけてるの?
「なんだと?」って感じにこちらを見るなそこの目玉。
でも味は美味いな。うん美味い。でも熱すぎだろ・・・。
「火傷でもしたか?」
「うるせぇ。でも美味いなこれ」
「だろ?その眼球も美味いから食ってみろよ」
ほぉ。それじゃあ食ってみるか・・・。
グチャグチャしてる・・・そして何よりこの味。
苦いって。なんかすっげぇ苦いって。まじ吐きそう。うん吐く。ごめん。
「・・・バケツあるか・・・?それかトイレの場所教えろ・・・」
「ねーよ。我慢して食えって」
・・・この・・・なんつーか。噛む度にグチャって聞こえる・・・。
あぁもう死にたい。いっそ俺を殺せ。それかこの口の中にある物を吐かせてくれ。
「あ〜しょうがないな。これ飲め」
「あぁ・・・サンキュー・・・」
何このドロッっとした液体・・・。飲み物だよな?
「これはドラゴンの血だ。別に体に害は無いぞ。それにすっげぇ高いんだぜ?」
死ね。普通の水くれ。血ってなんだよ血って・・・。
・・・あ結構美味いな。

「あ〜・・・食った。なんか途中で食欲すっげぇ失せたけど食った」
「意味わからんって。まぁいい。そろそろ酒を持ってこい」
「・・・金は平気なんだろうな・・・?」
「大丈夫だって。ってかオーガに言われると怖いなおい」
・・・オーガと必死になって戦った俺から言わせてもらう。
その顔本当に怖い。よく目の前で言われて平気だな。流石ゴースト。流石お化け。
「・・・酒ってさっきみたいに血とかじゃない普通の酒だよな?」
「安心しろ。普通の酒だ。美味くてぶっ倒れるくらいの酒だからな?」
「何言ってるんだお前は。そんな酒がこの世にあるとでも?」
こんな会話をしながら待ってたら・・・これはまた凄い可愛い子が酒を運んできたんだが・・・。
ドンッ!!!!!!!!!!!
何今の音。いやこれは酒を置いた音だ。ずいぶんとまた乱暴だな。
そして何故黙って行く?この娘は俺達のことを挑発してるのか?
「おいおい。なんだその態度?客に向かってその態度は・・・」
「うるせぇな!!!!今忙しいんだよ!!!!!」
・・・礼儀って言葉を知らぬのかこの小娘は。
「相変わらず元気だなぁ〜。それにしてもここの酒は美味いなぁ〜」
ゴースト。お前酔ってるのか?それとも馬鹿にしてるのか?
「酒が美味いのは当たり前だ!!!!!!それよりこの糞ガキはなんだ?」
てめぇ・・・・・・。俺の性格が非情だったら殺してたぞこの糞女・・・。
・・・・・・・・・・・・あ酒美味いな。

558 名前:名無しさん 投稿日:2006/11/05(日) 01:13:28 [ voKR2G42 ]
age

559 名前:名無しさん 投稿日:2006/11/05(日) 14:02:29 [ x/hc0DlQ ]
やばい

560 名前:名無しさん 投稿日:2006/11/09(木) 21:58:11 [ cT.XCe4g ]
ほしゆ

561 名前:名無しさん 投稿日:2006/11/13(月) 19:47:29 [ 02Ivu1SA ]
age

562 名前:名無しさん 投稿日:2006/11/17(金) 03:23:16 [ BNPIDZd6 ]
黒鯖 Lv450↑天使売ります。
装備 狩り用、Gv用等充実しております。
Gは3億G程銀行にあります。

詳細はメールにて
希望は35000RMです。
*****@yahoo.co.jpまで^^

◇タンク おい、みんな!昨日さ、RMTサイトで気になる垢売り見たんだよ!
ぎゃおす なんだよ? てかさ、俺しかインしてねーしw
◇タンク ww
◇タンク いやさ、450↑天使の垢売りって出てたんだけどよ・・・・・・
ぎゃおす ふーん・・・・・・・
◇タンク ・・・・・・・
ぎゃおす ・・・・・・・・・・・???!!!!!!!!!!
◇タンク ぉ? なんとなく言いたいこと判った?
ぎゃおす まさかな。ありえんべ?
ぎゃおす 確かに3週間程インしてねーけど、知り合い多すぎるべ?
◇タンク ・・・・・・・キンガーさん・・たまにインしてるんだよ・・・
ぎゃおす 昼間か?
◇タンク いや、朝方。
ぎゃおす で?
◇タンク 耳しても返事こない^^;
ぎゃおす いつから?
◇タンク 10日程前から・・
ぎゃおす 参ったな。仕事のシフト変わったとか言ってなかったしな。
ぎゃおす 俺も気付いたら耳してみるよ。
◇タンク 一番仲良かったもんね! 頼むわ〜 ノシ
ぎゃおす ノシ

 この後気になって、自分もRMTサイトを覗いてみることにした。

黒鯖 Lv450↑天使売ります。
装備 狩り用、Gv用等充実しております。
Gは3億G程銀行にあります。

詳細はメールにて
希望は35000RMです。
*****@yahoo.co.jpまで^^

*当方興味あります。ステ振りとかだけでも先に教えてもらえませんか?

-スキルはハイブリッドですね。ステは力300、健康500、知識700、カリ450等です。

*了解しました。メールさせて頂きます。


・・・このステ振りとかはキンガーさんに似てるかも・・・
3日後、そのサイトを覗いてみると例の垢は商談成立となっていた。


toタンク よう!
fromタンク やぁ!
toタンク 例の垢・・1週間前に売れたみたいだw なんだか気持ち悪いなw
fromタンク ぁ 消えてる
toタンク そりゃそうだろ。売れたんだからwww
fromタンク それじゃない。キンガーさんの友録!
toタンク ぉ?俺のもだ--------
fromタンク やっぱ、あれはキンガーさんだったのか?
toタンク ・・・かもな;;
fromタンク 今日は落ちるわ ノシ
toタンク 俺も・・・おやすみ〜

 と言いつつも、気になり、もう一度例のサイトを覗きに行った。
何度見ても、そのサイトはキャラの墓場のように見える。
・・・・商談成立かぁ・・・・?!
「なんだこれ?」
つい声を出してしまった。弟が不思議そうにこちらを見る。
4週間前にも同じようなキャラが商談成立してる!
Gは15億だけど、キャラの性能とかの文面は全く一緒だ!?
よくあることなんだろうか? 同じキャラが4週間以内で2回も取引されてるなんて。
キンガーさんのキャラは35000RMか・・・自分も同じ天使で、もう少しで400。
そんなことを考えながら、Gvぎりぎりで帰ってきたので
まだ落とせていない化粧やマニキュアを処理するために鏡に向かう。

鏡の向こうではニュース番組が今日も殺人事件を報道している。
「・・・・トカフェでの殺人事件が起こり・・・・」
全くいやな世の中ねぇ〜とかなんとか、姉は独り言をつぶやきながら
私の化粧水を横から奪っていった。

563 名前:名無しさん 投稿日:2006/11/17(金) 10:06:36 [ 22.WAbfc ]
ホラーイイ!

564 名前:第2話 引退オーク 投稿日:2006/11/19(日) 04:12:23 [ HSY7B94c ]
RMTサイトを覗いてすぐに眠くなった私は、色々な事を想像しつつ
布団にもぐりこんだ。タンクとの付き合いはすでに7ヶ月。
キンガーさんにいたっては1年半。

・・・そういえば、メアドすら交換してなかったなぁ・・・・。
まっ、彼らは「ぎゃおす」が女性だなんて気付いてないし、
ましてやしがないOLだなんていえやしない。
 −朝5時−
ふと、思ったより早く起きてしまった私は、露店放置した「ぎゃおす」も
起こした。今日も売れず仕舞いか・・・。
だれか起きてないかしら? ギルチャで呼びかけてみる。

ぎゃおす おはよー!
◇デルモ ぉ? ぉはよー^^
ぎゃおす あららw
◇デルモ あららって、なにさ〜w
◇デルモ 珍しいね?ぎゃーさんがこんな時間w
ぎゃおす えへへw なんか目が覚めてさ〜 狩りはいつも
     この時間?
◇デルモ 明日ゎ、てか今日かw 日曜ですじゃ〜
ぎゃおす ぬ 忘れてたw
◇デルモ そういえばさ、今日はアウグで引退オークだね! 楽しみ〜
ぎゃおす 誰の?
◇デルモ 雪月さんの
ぎゃおす なんだぁ、テイマか てか、何回目さ?ww
◇デルモ 私には重要ですw 団長系統のいいもの出ないかな!
ぎゃおす 何時から〜? 俺もいくー
◇デルモ 夜9時です。
ぎゃおす おk。またそんときでも耳するねー
◇デルモ ぁぃ。
ぎゃおす では
◇デルモ //

二度寝することにした私はなんとなく耳してみた・・・朝だし・・・

toキンガー こん^^

・・・返事なし・・・??
つながった・・・・インしてる?

toキンガー 忙しいのかな? 暇あったら返事ちょーだぃ

やっぱり返事がない;; タンクの言うとおりだった。
ひとまず、露店放置して寝ることにした。

−夜9時−

toデルモ いるぅ? 今帰ってきたw
fromデルモ おそーぃw もぅアウグだしぃw

アウグまでエバキュで一っ飛びw
現地でタンクとも合流して3人でPTを組んだ。

◇タンク 遅かったねw
◇デルモ 一つ目は終わっちゃったけど、ゴミ品だからw
◇タンク この人の引退オークっていつも司会みたいな人いないねぇ
◇タンク なんかそっけない。
◇デルモ 余計なMCなんかいらないよ〜
ぎゃおす なんか目玉商品みたいのあるの?
◇タンク HP97%アンク出るみたい
◇デルモ 私それほしー!

・・・こんな感じでオークを堪能していた私達。
運命の6出品目までは私も楽しんでた。

−6出品目−
RSサクレLx 
HP97% 首飾りLx(125)
そして3品目が
スタリンLx 薬回復199% 致命打抵抗65% HP+7%

え?
このスタリン・・・・・・・私がキンガーさんにあげた奴じゃん・・・・・・
露店でなぜか100万で置いてあって、私がすかさずサブで買った奴だ・・・・・
自分じゃレベとカリスマ足りないからキンガーさんにあげた物・・・

565 名前:名無しさん 投稿日:2006/11/20(月) 01:07:16 [ Kvc85hDk ]
少女は機械の中で生まれた
少女が育てられたのはどこかの施設の中だった。
そこではさまざまな実験をしていて、その実験の対象は機械で生まれた子供たちだった。
機械で生まれた子供は成長速度が速く、その分寿命が短かった。
毎日何十人の子供が製造され、最初の実験で約半分が死ぬ。
その実験で生き残った子供を数グループに分けて実験を行なうのがその施設でのやり方だった。

少女は3度目の実験のときに目が見えなくなった。
施設の者は実験する意味がないと判断したらしく、少女を無能者と呼んでいた。
その施設で実験に成功したものはさまざまな能力を身につけるらしかった。
火を自在に操るもの、治癒の能力を持つもの、毒を体で生成するものなど・・・
そのような能力を身に付けた子供は、スポンサーの人に売られていった。

少女のような無能者は慰め物として売られていたが、寿命が短いために処理が面倒らしく買い手はあまりいなかった。
ある日少女は施設の男に連れて行かれ、部屋に閉じ込められた。
その男は扉に鍵を閉め、少女に襲い掛かった。
少女程度の腕力でどうにかできるはずもなく、少女は男の暴行をただ受け続けるだけだった。
最初のうちは悲鳴をあげていたが、途中から悲鳴を上げてもどうにもならないと悟り痛みに耐えた。
男は殴るのに飽きたか、少女をその場に放置して部屋から出て行った。
出て行くのを音で確認すると、少女は黙って泣いた。
自分はどうせ作り物なんだと分かっていたはずなのに悔しさが湧き上がってきて止まらなかった。
10分くらい泣いていたか、また男が戻ってきた。
まず男は泣いている姿を笑い、泣いている顔を笑い、そして蹴って這いつくばっている姿を笑った。
そのとき、少女の何かが外れた。
見えないはずの目が見えるようになり、子供だった姿は二十歳くらいの姿まで成長を遂げた。
そしてその少女の後ろには、真っ赤に燃えさかる魔物の姿があった。
男がその魔物を見た途端、恐怖で顔を引きつらせて後ろを向いて逃げようとした。
その男の後ろにも魔物がいた。
目で捉えることはできないが、そこに存在を確認できるほどに存在感を漂わせていた。
次の瞬間には男は一風の風によって細切れにされ、炎に焼き尽くされて消滅した。
女は一言「壊して」というと二人の魔物はスッと消え、施設はあっという間に崩壊した。
魔物に立ち向かったものはすべて切られ、燃やされ、だれも抵抗はできなかった。
施設が完全に破壊され、動くものがなくなると少女は魔物2体に抱かれ、地に消えた。
その後同じような施設はすべて破壊され、人は女のことを召還者(Summoner)と呼んだ

多分これがサマナーが生まれた理由なんだ!
いつもテイマーの存在が強くて忘れられているが、きっと苛められていた過去があるから影に隠れているんだ!

566 名前:橙鯖某サマナ 投稿日:2006/11/23(木) 00:17:31 [ Fbp.QdF2 ]
夕焼けが、眩しかった。いつものように、眩しかった。
私は物心ついた頃から、毎日この場所で夕日を見ている。
よく、夕暮れ時は物悲しい、とか寂しい、とか言う人がいるが、私はそう感じたことはなかった。
美しいと思っていた、あなたがいなくなるまでは。

代々召喚師である私の家にはひとつの笛が伝わっていて、
一人っ子の私は幼くしてその笛を受け継いだ。
とても強力な魔力が備わっているという話だったけれど、
それを活用できる力も技術もまだなかった私は、ただ笛を楽器として音を奏でるだけだった。
やがて、ひとつふたつと吹ける曲が増えていき、あなたはそれを微笑みながら聞いてくれた。
綺麗な音だね、と。
そして、私の笛の音色にあわせて、歌を口ずさんでくれた。

あなたがいなくなってから、長い時間が経って、
吹けるようになった曲も随分と増えた。
私は毎日、あの場所で笛を吹いているよ。
毎日、沈んでいく夕日を見ながら。

笛は相変わらず、澄んだ音色で響く。

あなたは聞いているのだろうか、何処かの樹の下で。
あなたは聞いているのだろうか、泣きくたびれた笛の音を。

夕日はもうほとんど沈み、空が藍色に染まっていく。

あの時、坂道を一人で降りていくあなたを、私はただ見送るしかできなかった。

あなたは何処にいるのだろうか。
しばらくは届いた手紙もいつしか途絶え、風の噂も聞かなくなった。
あなたは何処に、いるのだろうか。
あなたの口ずさむ歌は、今でも聞こえるのに。

一人ぼっちで、影を見つめる。
なんて、寂しい夕暮れなんだろう。

笛を吹こう。
あなたに届くように。
あなたがまた、私の側で、歌を口ずさんでくれるように。

私の想いが、届くように。

567 名前:橙鯖某サマナ 投稿日:2006/11/23(木) 00:20:55 [ Fbp.QdF2 ]
初投稿です、初めまして。
元ネタは分かる人には分かるはずです…。
女がサマナなのは分かっていただけると思いますが、
『あなた』に関してはお好きなキャラを当てはめていただいて結構です。
個人的にはシーフをイメージしながら書きましたw
では、乱文失礼しました。


携帯からだと一行分の改行、反映されないのかな…?

568 名前:第3話 メールアドレス 投稿日:2006/11/23(木) 15:20:02 [ PSiqEF5s ]
先ほどの引退オークで異次元アンクを手に入れたデルモちゃん達と
ギルチャで盛り上がりながら、コンビニ弁当をほおばる私。
まだ化粧も落としていない。Gvまで@1時間・・・。
ぎゃおす どぉーなの?アンクの付け心地は?w
◇デルモ Gv用だから、まだ付けてないw
◇弁慶  なぬー!あれ競り落としたのかーw
◇デルモ えへへw
ぎゃおす こん^^
◇弁慶  おひさーww
◇デルモ 昨日ぶり〜w
◇弁慶  w
◇弁慶  BISには付けれんw
◇タルカス 戦士にも付けれんww
ぎゃおす タル〜! 今日はGv出れるんだろ?
◇タルカス 多分・・・・^^;
◇タンク なんだそれ〜w
◇弁慶  ぎるどHPに貼ってくれ>アンク
◇弁慶  ギルド
◇デルモ Gv用意終わってるから今貼って来る〜
◇タンク 俺まだだw 用意してくらー
ぎゃおす てらー
◇タルカス 花いくついるかなw
◇デルモ じゃGvで^^

ちゃっちゃとGv準備を終わらせてギルドHPにいってみた。
まだデルちゃんは貼ってないらしい。ちょっとさかのぼってHPを読んで見る。

あ!! 記憶の片隅から何かが蘇ってきた・・・。
−そうだ、以前記入しなくてもいいメールアドレス書いたことあったような−

キンガーさんも2.3度書いてたな・・・・ぁ、もぅ11:40か。
Gv行かなきゃね!今日の相手は強いはずだから、序盤はHP装備で様子みよっか。

−−−夜12:10−−−

〜〜〜〜〜〜〜〜
◇運ルパン 敵36.41 うじゃうじゃいる
◇タンク  ぎゃーコールおね
ぎゃおす  あい
◇タルカス ヘイおね
◇黒ハリー あいお
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

ギルド ファブリーズ戦において勝利しました
         勝ち点2
         2連勝

ぎゃおす  おつ^^
◇デルモ  おっつー
◇弁慶   心臓使い切るとこだった^^;
◇タンク  おつ
◇タルカス 3回死んだー!
◇運ルパン ひぃ〜天使うぜぇw
◇大ハード みんなおつかれ〜 ゼンシで反省会ねー
◇弁慶   ファミ痛かったよ;;
ぎゃおす  俺今日は落ちるねー おつでしたー
◇タンク  おつー/
◇弁慶   おつ^^
◇大ハード おつかれさまー

どうしても、さっきのHPのことが頭から離れず、過去ログを漁る事にした。
HPが出来たのが4ヶ月ほど前。メルアドを書いたミスは最初の頃だから・・

―あった!―

連絡欄が記入されてる! ここをクリックすればメールソフトが動くはずだ。
そーっとクリックしてみる・・・・HDDが動き始めた!

あたり! メアドを見ると、律儀にもフリーメールでは無かった。
これは・・連絡を付けられるかも?

569 名前:名無しさん 投稿日:2006/11/23(木) 20:39:21 [ E1qczXLw ]
x

570 名前:名無しさん 投稿日:2006/11/29(水) 01:21:52 [ tNnphh2w ]
職人様支援age

571 名前:名無しさん 投稿日:2006/11/29(水) 01:25:13 [ NYjN67jg ]
>>568
続きが気になります

572 名前:第4話 通信手段 投稿日:2006/11/30(木) 00:35:32 [ NkCfTk02 ]
メールアドレスはゲットした。
でも・・・キンガーさんもこの位は気付いているはずなんだけどなぁ
忙しいならHPに書き込む位出来ないのかしら?
インしなくなって4週間強。
もぅ一月か
フリーメールを使ってメールしてみようかしら。

「姉貴!PCそろそろゆずってくれ!」
あ?もぅそんな時間か。そういえば・・・
「あんたさ、MMOやってたよね?」
「たまにね。姉貴ほどはやってないけどね」
悪かったわね!25にもなってPCばかりに向って!
そう怒鳴りにそうなったのを我慢して
「MMO内の友達と連絡とったことある?・・・・リアルで。」
「まったく、「リアル」とか言って、廃だな」
「あんたこそ「廃」なんて使ってるジャン! で?あんの?ないの?」
ニヤついて弟がこう答えた。
「相手が女なら携帯番号まで聞くよw」
「ちょwあんたw 個人情報を教えるの恐くないの?」
「最初はちと、とまどったけど・・・でもなんでそんな事聞くんだよ?」
「いやちょっとね・・・みんなどうなのかなって思って」

結局、PCを弟にゆずり、自分は眠ることにした。
これからレポートでも書いて、飽きたらゲームでもするんだろう。
キンガーさんにはプロバイダー設定のアドからメールしよう!
自分もHPにはそれで登録してたんだから。
そうこう考えてるうちに、うとうとしてきた。
あーーーーーーーーーーーーー!

・・・化粧落とすの忘れてた。


翌日、仕事から帰ってPCに向った。

-メールクライアントを立ち上げる-
Thunderbirdのアイコンをクリックし、受信が終わるまで待つ。
私はこの青い鳥がなんとも可愛くて仕方ない。

文面はもぅ考えてある

差出人(R): mikkori1216@xxx.ne.jp
   宛先 donki-konger@xxxx.ne.jp

件名(S): ぎゃおすです^^

やっほぃ^^ キンガーさん元気してっかな?
突然ごめんね〜w 
掲示板にも何も連絡ないし、Gvもこないから気になって
HPに書いてあったメアドにこうやってメールしましたよ!
気になることもあったので(RSで)良かったら返事下さい。

出来れば、下記アドまでお願いします。
     xxxx-xx-xxx@gmail.com
Gmailなら自分の携帯でいつでもメールに気付く事ができますので・・・
んじゃ、まったねーww



とまぁ、こんな風に文章作成は終了!
@は「送信」ボタンを押すだけb

祈るように送ってから、ふと我に戻って考えた。
私はこの一連の作業の中で、どれだけの情報を
キンガーさんに知られてしまうんだろう?

ネガティブな心配を無理やり頭の隅においやり、Gvの無い今日は
いつもより早めの晩御飯を食べることにした。

573 名前:ark 投稿日:2006/11/30(木) 02:07:57 [ aCJy4HC6 ]
こことは違う場所、今とは違う時代。
某小説のような書き出しと言う突っ込みは無しで。

チャプター0

朝から嫌な予感はしていた。黒猫は親子+ご近所さんで通るし、
下駄なんか持ってないのにわざわざ空から振ってきて鼻緒が切れた。つか下駄ってなんだ?
挙句の果てにはインチキ占い師に「あなたは今日世界一ラッキーです。」と言われた。
嫌な予感はしてたけど、まさかあんな厄介事に巻き込まれるなんて、な。

「おい、そこのアンタ。そう、男前のアンタだよ。」
道を歩いていた俺に声をかけて来る、知っている顔の中年のオッサン。
「あんだよ、ケイルンのオッサン。金なら持ってないし、クエスト受ける気もないぜ?」
いつもの会話だ。このオッサンはこの後決まってこう言う。
「まぁそう言うな、いい話がある。あの有名な・・・」
って感じ。んで、またひでぇんだ、この『いい話』ってのが。
こないだなんか死にかけたからなぁ。あ、聞く?オッサンの話ってのは、
「ゴールドスワンプ洞窟で金が取れるらしいんだよ。それも、かなり上等な金が。
しかも、そこにいる魔物はトカゲ程度らしいんだ。な?行きたくなっただろ?」
まぁ行ったんだけどさ。はぁ、美味い話にゃ裏があるんだと改めて思い知ったよ。
え?どんなに酷かったかって?聞きたい?しょうがねぇなぁ。
面倒だし心の傷が深いから簡単に説明するぞ。
まず、金は確かに上等だった。けど、オッサンの取り分がやたら多いってのと、
そこにいたトカゲはトカゲ種の中でも最上級クラスの大物だったって事。
で、金採掘して命からがら帰ってきたら、
「おいおい、冒険者ギルド随一のシーフがダセェなぁ。ま、いいから金くれや」
だぜぇ・・・。はぁ、毎度毎度付き合うこっちの身にもなれってんだ。
クエスト仲介屋は楽でいいよな。・・いつか毒もってやる。
しかし、その日はどうも様子がおかしかった。

あ、自己紹介がまだだったな。俺はクロウ。鴉って呼ばれる事が多いけどな。
一応冒険者ギルドってのに属してる。ま、まだまだ新米なんだけどね。
でも、一応腕には覚えもあるし、仕事も結構数をこなしてる。
その俺が、不吉な現象に怯えつつ歩いていると声をかけてきたのがケイルンのオッサンって訳。

「よう、鴉。今日もいい天気だな。」
目、あいてんのに寝てるのか?不吉なほどにどんよりと曇った空を見上げ考える。
「おっさん、俺はもう『田舎を体験しよう、バリアート散歩ツアー』
のガイドはこりごりだぜ?田舎まで歩いて、田舎で歩いて、田舎から歩いて・・・」
と愚痴をもらす。いや、本当に酷かったんだって。
「・・いや。今日は、上等な仕事だ。しかも、クエスト受諾料はタダの、な。」
ふむ、それは悩む。クエスト受諾料、言わば保証金のようなものだ。しかも結構高い。
しかし、帰ってこないのだ。まぁ、その分大抵のクエストの報酬は元金+α以上なのだが。
「へぇ・・いい話じゃないか。で、アンタの取り分はいくらなんだい?」
皮肉をたっぷりと込めて言う。すると、予想外の返答が帰ってきた。
「俺の取り分はナシだ。このクエストは特別でな・・・。
依頼人と直で交渉してもらう。先方がお前をご指名なんでな」
そこでようやくピンときた。要するに、ヤバイ仕事なのだ。・・多分シーフギルド絡みだろう。
「はーん・・・なるほどね。OK、たまにはアンタの顔も立ててやるよ。」
オッサンが暗いのが気になったが、シーフギルドからの仕事はとても報酬が良い。
結構貧ぼ・・じゃなくて無駄のない生活を送っている俺にはありがたいのだ。
「・・・すまねぇな、クロウ。」
がらにもなく感謝(?)してるオッサン。少し気味が悪いな。
「いいって事よ。で、どこで待ち合わせなんだい?」
走り出す準備をしながら聞く。
「崩れた王宮跡、夜に来いとさ。0時だそうだ。」
さすがシーフギルド、アレな雰囲気大好きってか。
「OK。ま、報酬貰いすぎたらオッサンにも少しやるよ。」
冗談のつもりでオッサンに言う。しかし、オッサンは微妙な反応を示した。
「あ、あぁ・・。クロウ、気をつけてな。」
オッサンが心配?珍しい、こりゃ氷の矢でもふってくるのかな?
・・この予想、あながち間違ってなかった事を後ほど知る。

574 名前:ark 投稿日:2006/11/30(木) 02:09:39 [ aCJy4HC6 ]
すいません、なんか書いてみたくなってしまい投下・・・
稚拙な文章力で恥ずかしいです。

感想とか意見とか書いてもらえるととても嬉しいです。

575 名前:名無しさん 投稿日:2006/12/03(日) 10:23:22 [ aHRfUBQo ]
>>573
某小説ってフォーチュ○クエストかな?
個人的にシーフ絡みの話は好きだから続きに期待

自分も何回か書いてみようかとは思ったが職ごとの公式設定があるから自由な展開にできないんだよね。
ある程度自由なのがシーフとか剣士とかなんだけど、アチャとかネクロあたりは使いにくい。

576 名前:第5話 空白の一日 投稿日:2006/12/07(木) 03:25:27 [ 3mIoovkQ ]
少しソファで横になってから
ログインしてみた。時計は10:15を少し点滅してから10:16になった。

いつもどおりにギルメンに挨拶して、相場の情報交換をわいわいする。


その時だった。 Gmailがメールの着信を告げる。
差出人はキンガーさんじゃないみたいだ。

放って置こうと思ったけど、みんなに失礼してログアウトし、
メールの確認をすることにした私。



一番上に
□☆ DDO (無題)-            11月16日

私は開けてみることにした

書いてあるのは

来いよ、ぎゃおすw チャットのほうが速いwww
kinger.xxx1234@gmali.com

私はあわてて、googleTalkを立ち上げた。
間違いないわ!キンガーさんだ。
友達登録をして、ドキドキしながらモニターを凝視した。

いるのかな? いてちょうだい!



キンガーさんの名前の左にグリーンのランプが点ってる!いる!
!!!
アバターをご丁寧にもキンガーキャラのSSにしてある!

チャット欄を開き、メッセージを送る


ぎゃお
 いるの?

         キンガー
       いるよw
ぎゃお
 やっと発見だよ!w何してたんだよ?
         キンガー
       wwww
       久しぶりにあってそんなに責めるなよw
ぎゃお
 まったくもぅ!みんな心配してるぜ!
         キンガー
       まぁ聞いてくれよ。急にイン出来なくなったんだよ。
       運営に聞いても、対処無し;;
       垢停止なのか聞いたら、つい1週間前に返事きてさ
       パス変更してるって言うんだよ!
       俺してねーのによぉ!
ぎゃお
 え?嘘? だって朝方インしてるでしょ?
         キンガー
       はぁ? ログイン出来ないんだぞ?
ぎゃお
 みんな友録で確認してるよ? 耳も届いてた
 10日位前までだったかなぁ?
         キンガー
       まさかぁ! どうなってるんだ?
ぎゃお
 そして友録は消えた・・・・
         キンガー
       むぅ・・・・・・・どうなってるんだ?
ぎゃお
 さぁ・・
         キンガー
       とにかく、そいつは俺じゃねぇ
       垢盗まれたんかなぁ?
ぎゃお
 身に覚えはあるの?
         キンガー
       ねぇよ! おっかしぃな
ぎゃお
 でもさぁ、パス盗まれても、パス変更はそんな簡単だっけ?
         キンガー
       メールアドレスとそのパス無いと無理!!
       ・・・・・・・あ!!

577 名前:第6話 空白の一日part2 投稿日:2006/12/07(木) 03:28:29 [ 3mIoovkQ ]
ぎゃお
 ?
 待って! おかしいじゃんか! メールのパスは簡単にクラックできないよ!
         キンガー
       俺・・・・RSの登録メアド・・・yahooだ
ぎゃお
 だからって登録メアドがyahooって判って、その上でパスも必要なんだよ?
 ・・・・あ?
         キンガー
       RSにログイン出来なかった日・・・・・
       yahooにもログイン出来なかった・・・・・
       翌日にはyahooはログイン出来たけどさ
ぎゃお
 二つとも制御不能だったって・・・接点はRSのログイン情報のみじゃん
           キンガー
        ・・・・・・・・・・・

少し二人で考え込んだ。Gtalkの左下には「最終通信時刻 23:40」と表示。

           キンガー
        どうゆうことか、わからんけど
        クラックされたみたいだな
ぎゃお
 うーん・・てゆーか、HPに連絡くらいしろよなw
           キンガー
        すまん!仕事もちょうど忙しかったからなw
        ぎゃお・・・略すなw
ぎゃお
 w
 うるせー! また明日チャットする?
           キンガー
        おk! なんでこうなったか考えてみるよ
ぎゃお
 俺も考えてみる。おやすみ!
           キンガー
        おやすみ〜wまた明日


こうしてキンガーさんと連絡はついた。いつのまにかドキドキ感は消えていた。
それにしても腑に落ちない。
歯を磨きながら考えた。
・なぜIDがばれたのか?
・なぜパスが変更出来たのか?
・なぜyahooのメアドがばれたのか?
・なぜメアドのパスまでばれたのか?
判らないことばかりだわ。


私のIDはgyaosu・・・?
私って馬鹿だわ! キャラネームから推測できるじゃん!
大抵の人はキャラ名だと思って、ID入力の際に付けようとしている名前を
ローマ字で打ってしまうんじゃないだろうか?
それで、いざキャラ名入力の段階でカタカナとかで打ち直す?!
有り得るかも・・・・

578 名前:名無しさん 投稿日:2006/12/11(月) 13:11:02 [ L9kz4Wg2 ]
続き、ドキドキしながら待ってます。
IDのあたりでは、ギクッてした人も多そう(笑)

579 名前:名無しさん 投稿日:2006/12/11(月) 14:22:38 [ bCPa74Hs ]
こちらも続き待ってます〜なんか推理小説みたいで面白い。
それと>>573の続きも。

580 名前:第7話 謎 投稿日:2006/12/12(火) 20:07:02 [ 0o5OrbH2 ]
仕事も終わり、帰路につく中少し思い出した。
今日はGvがあったな・・・。
みんなにこの事を言うべきか迷っている。
理由は判らないけど何故かまだ言うべきではないような・・

最終時刻にGvがあることをキンガーさんにGmailで伝えて置くことにした。

返事が返って来たのは19:40。内容は

チャットは01:00でもいいよとのこと。
折り返し、遅くなるけどごめんなさいと入れておいた。

家に着くまでの間、疑問点をいくつか挙げてみた。
しかし一番の疑問はなぜRSのパスを変更できたか?だ。
変更出来るとゆうことは、登録メアドを利用するということだ。
yahooメアドのパス変更は元のメアドのパスが判らなくちゃいけない?
もぅ訳がわからなくなってきた;;

家に帰って実験することにした。

581 名前:第8話 実験 投稿日:2006/12/12(火) 20:35:37 [ 0o5OrbH2 ]
Gvまでの間、時間があるので実験してみることにした。
私もyahooのIDがあるのでパスワードを忘れた場合をチェック。
・・・生年月日や郵便番号を記入かぁ・・・

うーん、なんか違うなぁ。郵便番号まではもれないでしょ?
だいたい何故yahooID自体がばれたんだよぉ?
キンガーさんったら、何したんだろ?

23:40 Gvまで@少し。そろそろギルメンもイン率が
上がってくる時間だ。転送までみんなで
「POT忘れた!」「狩り装備で来ちゃったw」
「今日の相手は強い?メジャー?」
だのと、騒いでいた。私はみんなにあのことを
キンガーさんと連絡取れたことを言おうか迷っていた。
フィールドに転送された瞬間、そんなこと忘れてしまったけどねw

勝ち点1の圧勝Gvがあっという間に終わりみんなとチャットしてたら

クィンガー  やっほぃw 俺だよ! キンガーwww
ぎゃおす   びっくりしたよ!w
クィンガー  ギルメンに知られてないサブある?
ぎゃおす   あるw
クィンガー  じゃ、それでスバインビーチの左下へ
ぎゃおす   遠いなぁw まいっか。 耳するね。
クィンガー  耳はダメだ。ログが記録されてる。
ぎゃおす   へ? 判った。待ってて。
クィンガー  ごめんな。なんとなくインしたくてさw
ぎゃおす   おk 合図はいつものでw

私は急いでログアウトし念のために作っておいた別垢で
インすることにした。

582 名前:第9話 再会 投稿日:2006/12/13(水) 15:44:50 [ 0o5OrbH2 ]
スバインまでかなり遠い。途中ドラゴンカーペットに乗りながら急いだ。
左下、左下・・・と呟きながら該当マップの指定の場所へ向かった。

そこにはシフがちょこんと一人座っていた。きっとキンガーさんだろう。
ポインタを合わせて名前を見たときには吹き出したw

怪盗きんが・・・・判り易いw
私はいつもの合図をした。

ヒキダシ    ぉぃ! 邪魔だ
怪盗きんが   チネ
ヒキダシ    w
怪盗きんが   w

どうやら本人みたいだ。さっそく話し合うことに。

怪盗きんが   あれから色々考えた。
ヒキダシ    俺も考えた! 鍵はメアドのパスでしょ?
怪盗きんが   そそ。RSのパス変更はメアドが鍵で、そのパスもだ。
ヒキダシ    その上登録メアドがなぜ判ったのかもね。
怪盗きんが   そこで少し思いついたのが、スパイウェアなんだけど
怪盗きんが   RSのパスを盗む奴があるとは思えないんだ
ヒキダシ    あるってきいたことあるよ。
怪盗きんが   スパイウェアは小まめに排除してるからそれはない。
怪盗きんが   yahooのパス打ち込みを狙われたんじゃないかと思う。
ヒキダシ    でもそれは登録IDがyahooだと判ってないといけないでしょ?
ヒキダシ    しかもRSのためだけにスパイウェアをばらまくなんて・・
怪盗きんが   とりあえず、それが怖いから今回はRSで白チャすることにした。
ヒキダシ    耳が駄目なのは何故?
怪盗きんが   耳はログが会社側に記録されてると聞いた。
ヒキダシ    白チャは? 他のMMOは白も残るって・・・・
怪盗きんが   RSは耳だけらしい。それでこんな辺境で話すことにした。
ヒキダシ    ここなら大丈夫そうだけど・・・誰かきて聞き耳立ててるかも
怪盗きんが   w 大丈夫、お互いメインじゃないしね。
ヒキダシ    怪盗さんは、登録メアドがyahooであることを誰かに言った?
怪盗きんが   言ったことはないんだ。一度も。それで会社側も疑ってる。
ヒキダシ    俺ね、実験してみたんだよ。パス変更とか・・
怪盗きんが   どうだった?
ヒキダシ    生年月日やら郵便番号を判らないといけないんだよ
怪盗きんが   それも当然言ったことはないよ。
ヒキダシ    俺のyahooIDは盗まれたことないしなぁ・・・
ヒキダシ    そういえばこのID、みんなで将棋トーナメントやるときに
ヒキダシ    作ったんだっけw
怪盗きんが   w あん時はデルモが優勝したんだよな!
ヒキダシ    あ!
怪盗きんが   ああああああああああああああああ
怪盗きんが   あんときにIDをみんなに晒したよ俺・・・・・・
ヒキダシ    ・・・・・・・・・・
怪盗きんが   当時のギルメン覚えてる?
ヒキダシ    出入り激しかったからなぁ・・・・
ヒキダシ    当時誰かがyahooの将棋で遊ぼうといいだしてさ・・・
怪盗きんが   あちゃ〜。あんときか;;
怪盗きんが   でもパスまでわからんだろうに・・・
怪盗きんが   yahooの情報漏れた時あっただろ?
ヒキダシ    あったねぇ。何万人もの流出したときでしょ?
怪盗きんが   あんときちゃんと保全メールきて、指示に従ったしなぁ。
ヒキダシ    ? なにそれ?
怪盗きんが   いや情報流出の危険があるからユーザーはなんたらかんたらと
ヒキダシ    俺のとこ来てないよ? 
怪盗きんが   ?!

583 名前:名無しさん 投稿日:2006/12/13(水) 16:54:54 [ LlQbaSRk ]
>>582
いい展開になってきましたね〜
続き楽しみに待ってます。
しかし、スバインではなく…

584 名前:第10話 間抜け 投稿日:2006/12/15(金) 02:45:38 [ 0o5OrbH2 ]
それから二人で色々と検討した結果、おおまかな部分が判明してきた。

・RSのパス変更は、登録(yahoo)メアドより変更されたらしい。
・メアドのパスは偽の保全メールでの打ち込みにより情報収集された。
・登録メアドはギルドのレクリエーション時に推測された。
問題はRSのIDだ。

ヒキダシ  ねぇ?ここまでは一応なんとなくつかめたけど・・
怪盗きんが ? 何?
ヒキダシ  RSのIDなんだけど・・・・
怪盗きんが それだよなぁ・・・
ヒキダシ  kinga- でしょ?
怪盗きんが ええええええええええええええ
怪盗きんが なんで判ったの?
ヒキダシ  ・・・やっぱりぃ
ヒキダシ  そうじゃないかと思ったよ
怪盗きんが メインの名前とIDが一緒の人多いのかなぁ〜
ヒキダシ  俺もそうだもんw 変えられないんだよね;;IDをさ。

ヒキダシ  これで人のIDを盗むことができる3個が揃った。

・RSのID
・登録メアドのID
・登録メアドのパス

怪盗きんが  後はRSのID打ち込んで、パス忘れた〜ってやれば
怪盗きんが  登録メアドにパス変更メールが届くかぁ・・・
ヒキダシ   きっとメールのぞくと、ゲームオンからのメールとかも
ヒキダシ   残ってるんでしょ?
怪盗きんが  残ってる・・・・
ヒキダシ   パス変更メールとかは削除してから
ヒキダシ   怪盗さんに返したと・・・何もなかったかのように
怪盗きんが  悔しいよ・・・俺だけなのかな?
ヒキダシ   ギルメンに聞いてみるかい?
怪盗きんが  意味ないよ。引っかかった俺が悪い。
怪盗きんが  間抜けだな・・・;;
怪盗きんが  ネットを甘く見てた。
ヒキダシ   見つけて懲らしめてやりたいよ!
ヒキダシ   てっきり垢売ったのかと思ってたし・・
怪盗きんが  まさか! なんで・・・
ヒキダシ   なんか良く似たキャラの取り引きがあったから・・・
怪盗きんが  売ってないさ。
ヒキダシ   こんな時にあれなんだけどさ
ヒキダシ   昔あげたスタリンLX覚えてる?
怪盗きんが  覚えてるも何もずーっと使ってたさ
ヒキダシ   雪月さんの引退オークで出てた
怪盗きんが  は? 俺じゃねーよ! 
怪盗きんが  雪月? あいつも中身違う人だからなー
怪盗きんが  俺みたく盗まれたIDだったりしてw
ヒキダシ   ?!
怪盗きんが  つながった!
ヒキダシ   同じ奴が関係してるんじゃないか?
ヒキダシ   ・・・・・・・・・お

怪盗きんが  どした?
ヒキダシ   テレビのニュース・・
ヒキダシ   また殺人だってさ
怪盗きんが  ほんとだ・・
怪盗きんが  なんだろね?

モニターの向こう、テレビでは
「・・・さんが殺されました。ネットカフェを利用した後
帰宅途中を狙われた模様です。警察はカフェで一緒だった
人物を参考人として・・・・・・・」

585 名前: ◆ACGhoST.hk 投稿日:2006/12/16(土) 17:08:04 [ LlQbaSRk ]
ブリッジヘッド↑にて。
姫が一人でテンプラと戦っている。
苦戦しているようだ。
「あぁ、もうだめ〜!」
姫はウサギに変身し、逃げた。
「ふぅ、助かった…。」
姫は道に出て、ほっと溜め息をついた。
そのときだった…
姫の体が、ひょいっと宙に浮いた。
(え、なに…!?)
どうも、姫は誰かに持ち上げられているようだ。
「ママ見て〜!可愛いウサギちゃんがいるよ〜!!」
姫は理解した。
ブリッジヘッドに住む少年に見つかり捕まってしまったと。
「あら可愛いウサギねぇ〜。迷子かしら?」
少年の母親が言った。
「このウサギちゃん連れて帰ってもいい?」
「いいわよ。飼いましょう。」

姫大ピンチ。
少年と母親に連れられ家に来たが、もうすぐ変身が切れてしまうのだ。
(あぁ、どうしようどうしよう…。)
姫は少年の膝の上で焦った。

あぁ…もう解ける…。
3、2、1…
ぼんっ!!

少年は、驚き姫の顔を見た。
「ま…ママ〜!!ウサギちゃんが…!!!!」
ああしまった…。
こうなったら手段は一つ。

「どうしたの坊や。」


【死んだフリ】

586 名前:名無しさん 投稿日:2006/12/16(土) 17:30:53 [ .FroYhwA ]
>>585
短編系もいいね。

587 名前:第11話 捜査官 投稿日:2006/12/17(日) 01:10:40 [ Szc5ZNKM ]
その建物はあまり目だたないつくりで
普通に暮らす人は入ることもなく死んでいくだろう。

玄関を通り抜け、正面階段から2階に上がり突き当たりの部屋に向かう。
中肉中背の少し野暮ったいコートを着た男は部屋に入る前に大きく息を吐く。

中に入ると先に部下の佐々木が状況の整理を始めていた。
「おはようございます!」
「おすっ!」と田村刑事は応えた。
佐々木はここのところの事件の詳細を説明しはじめた
「まずはこれを見てください」といってホワイトボードを指した↓
http://www.google.co.jp/maps?hl=ja&lr=&rls=GGGL,GGGL:2006-45,GGGL:ja&q=%E3%83%8D%E3%83%83%E3%83%88%E3%82%AB%E3%83%95%E3%82%A7&near=%E6%96%B0%E5%AE%BF%E9%A7%85%EF%BC%88%E6%9D%B1%E4%BA%AC%EF%BC%89&sa=X&oi=local&ct=title
「これが一連の事件と思われる周辺地図か?」

「刑事の推定でいくと、ネットカフェが関係していると思われるので
カフェをピックアップしました。」

「しかしこの中からどの喫茶店を探すんだ?該当事件は4件で喫茶店は
すごい数になるんだぞ?」

「鍵は先ほどの地図の西口付近の喫茶店です。唯一、店内での犯行でした。」

「今からじゃ何も残ってないだろう?」

「そのときの該当PCと該当PCからの通信は全て押さえてあります」

588 名前:名無しさん 投稿日:2006/12/18(月) 16:04:20 [ 73WOFiF2 ]
授業中にふと思いついた話を、実際の文章にしてたら、無性にこのスレに載せたくなってきたので、最初で最後であろう投稿をしてみます。


〜プロローグ〜
「来るんじゃなかった・・・」彼は後悔していた。
彼は、右手に棍棒を持ち、左手には小さめの盾を持っている、ビショップと呼ばれる職業である。
彼はさっきまでレイス―魔法傭兵の墓B2―で狩りをしていたのだが、今は砂漠に居る。
「やっぱりあいつの言う事を聞いておけばよかったかな・・・」
彼は、ここに来る前の事を思い出していた。

〜昨日〜
「レイスに行くつもりなんだって?」
「あぁ、明日にでも行ってみるつもりだよ」
ここは古都ブルンネンシュティグの一角、井戸の側である。
「そうか・・・俺は行った事が無いからなぁ」
彼はメテオWIZ。あるギルドのマスターをつとめている、私の親友だ。
「一応、火風抵抗は揃えてあるんだ」
私は彼に装備品を見せた。
「ほ〜、火・風共に90%以上じゃないか」
「まあね、少し前から意識的に集めてたし」
レイスでは、火・風の2つの属性を持った魔法攻撃をしてくる敵がいるらしい。
そのため、防御力を上げるよりもこれらの抵抗を揃えた方がいいのである。
「でも・・・やっぱり神殿に来ないか?何か、嫌な予感がするんだよ」
「大丈夫だよ、相変わらず心配性だなぁ」
彼の言う「神殿」とは、「海の神殿」と言うダンジョンの事である。
こちらはレイスと違い、物理攻撃をしてくる敵が多い。
「まぁ、大丈夫だとは思うけどさ・・・用心しすぎるって事は無いからね」
「それもそうだな・・・念のため、アイテムは多めに持っていく事にするよ」

〜今日〜
「結構遠い場所なんだなぁ」
レイスまで走ってきた私だが、途中が砂漠だった事もあり、少し疲れていた。
(少し休んでから、どういう場所か見て回ろう)
魔法B2に入ったばかりの場所には、私の他にも数人休んでいる人が居る。
時折「ゴウッ」という炎のような音が聞こえてくるのは、レイスの攻撃なんだろう。
(さてと・・・そろそろ行こうかな)
そう考えて道なりに進み、最初の角を左へ曲がった途端・・・
私の体は炎に包まれた。
「なっ・・・」
かなり驚いたが、ダメージ自体はそれほど無い様だ。
どうやら、火・風の抵抗を揃えて来たのは大正解だったらしい。
とはいえ、私は補助・回復を専門にしている、いわゆる「支援BIS」である。
BISの中には、神聖な力を付加させた武器で殴ったり、盾に神の光を宿したりして、アンデッドを倒す事が出来る人も居るが、私にはそういった行為はほぼ無理である。
減った体力は、回復魔法ですぐに回復できるので、死ぬような事は無いが、敵を倒す事も出来ない。
「さて、どうするか・・・」
不慣れではあるが、持っている武器を使って殴りかかろうかと考えた所で、レイスが急に反対を向いた。
「大丈夫ですか!?」
声の主は剣士だった。彼は、レイスを速攻で倒すと、唖然としている私に歩み寄ってきた。
「大丈夫・・・みたいですね、良かった」
「あ、えっと・・・」
「あぁ、とりあえずあちらへ行きましょう。話はそれからです」
彼に連れられ、B2の入り口へと引き返す。
「それにしても、あなたのような支援BISさんが、一人で何をしていたんですか?」
「実は、ここに来るのが初めてで、どんな場所なのか見て回ろうと思ったら、いきなりあのレイスに出くわしたんです」
「なるほどね・・・そうだ、もしよろしければ、私と一緒に狩りませんか?」
「え、いいんですか?」
「当然ですよ。見た所、抵抗もしっかりとお持ちのようですし」
「では、お願いします」
こんなやり取りがあって、私は彼とPTを組む事になった。
数匹レイスを倒しつつ、この狩場のルールを彼から教えてもらっていると、
「中央PTにて、火力さん、BISさん募集中です!」
という声が、フロア中に響き渡った。
「珍しいな・・・火力が足りないなんて」
「そうなんですか?」
「いつもは、10人前後予約して待ってる事が多いんだけどねぇ」
「へぇ・・・」
「そうだ、折角だし中央行ってみる?」
「そうですね、行ってみましょうか」
私はこの時(彼と一緒なら大丈夫だろう)という気持ちだった。
後で聞いた話だが、彼も(この人と一緒なら・・・)という気持ちだったらしい。

589 名前:名無しさん 投稿日:2006/12/18(月) 16:05:26 [ 73WOFiF2 ]
〜中央〜
彼と一緒に中央へ行き、そこで狩っていた人達と一緒に狩る事になった。
「よろしく〜」「よろしくお願いします」
一通り挨拶をし、相方のBISさんとミラーを分担し、狩りが始まった。
元々、PTでの支援を目的としている私。今までの狩場でブレエビをかけていたのが、ブレミラーになっただけなので、特別大変とは思わなかった。
ワイトの大きさには少しびっくりしたが、攻撃方法は周りのレイスと同じなので、脅威ではなかった。
30分程した所で、相方のBISさんが抜ける事になった。
「お疲れ〜」「おつー」
この時点で、BISは私1人。だが、私を含めた7人全員が抵抗完備だったため、特に大変ではなかった。
その後、PTMが入れ替わり、最初から一緒だった彼も抜ける事になった。
この時に、私も抜けておけば良かったのだが、
「お疲れ、頑張ってね」
と、彼に励まされ、もう少し狩ってから抜けようと思った。
だが・・・
彼と交代で入ってきたのは、ランサーさんだった。
「よろしく〜」「・・・」
何故か無言。その時は(口下手な人なのかな?)と思い、特に気にしなかった。
この時点で、PTMの内抵抗無しの人が2人、そこそこの人が2人だった。
そして、彼女も抵抗無しの人だったのだ。
仕方なく、5人にミラーをかけて狩り始めたのだが・・・彼女は、しょっちゅう私のミラーの範囲から外れるのだった。
そして、恐れていた事態が起こった。
私にかかっていたヘイストが切れてしまい、PTMの場所に行くのが遅くなった時、丁度彼女のミラーも切れてしまったのだ。
ワイトの攻撃で大ダメージを受ける彼女。慌てて回復するが、傷が癒える前に次のダメージを受けてしまう。
そして、彼女は力尽きてしまった。その瞬間、目の前が真っ暗になり、不思議な感覚に襲われた・・・。

〜砂漠〜
気がつくと、私は砂漠に立っていた。周りには、先程のメンバーも居た。
「何で・・・いきなり外に?」
何が起こったのか、よく分からなかった私がつぶやくと、隣に居た支援WIZさんが教えてくれた。
「誰かがワイトに倒されると、そのPT全員がこうやって外に飛ばされるんだよ」
「そうだったんですか・・・そうだ、ランサーさんは?」
「ここです・・・」
後ろの方から、弱々しい声が聞こえてきた。
とりあえず、全員の体力を回復させたのだが・・・
「抵抗無しで中央に来るとか、馬鹿じゃないの?」
「そっちだって、抵抗持ってないじゃん!」
「死ななければいいだけの話。死んだあんたが悪い」
等と、抵抗無しの人達での言い合いが始まってしまった。
その間に、元々居たメンバーは次々と帰還の巻物で街に戻っていった。
私も居づらくなったため、そっとその場を離れた。
「来るんじゃなかった・・・」私はそう思った。
「やっぱりあいつの言う事を聞いておけばよかったかな・・・」そう思いながら、私も街へ戻った。

〜数日後〜
その後、しばらく経ってから、古都の噴水近くで彼と再会した。
「あ、お久しぶりです」
「お〜、久しぶり〜」
「そうだ、ちょっと時間ある?」
「はい、何ですか?」
「実はさ・・・」
彼の話の内容は、彼が入っているギルドに入らないか、というものだった。
私は、ギルドというものに入った事が無かったため、少し興味があったのだが、どうしても戸惑ってしまった。
「でも・・・私なんかが入って、大丈夫ですか?」
「大丈夫だよ、体験って形でもいいからさ」
「そうですね・・・」
(彼の居るギルドなら、大丈夫だろう)そう思った私は、承諾する事にした。
「では、加入させていただけますか?」
「もちろん、喜んで!」
「じゃあ、ギルドのマスターに会わせるから、ついてきてくれる?」
彼について行くと、そこは古都南のつつじが咲いている場所だった。
「お、いたいた。あそこで座ってるのが俺のギルドのマスターなんだ」
彼の指す先に居る人物を見て・・・私は驚いた。
だって・・・そこに居たのは・・・
「あれ?2人とも知り合いだったの?」
私の親友のWIZだったんだから・・・

〜エピローグ〜
ギルドに所属した事が無かった彼は、今回の事を機に、このギルドに入る事となった。
現在、WIZ、BIS、剣士の3人は、ギルドのTOP3として頑張っている。
「2人共、いつも回復ありがとね」
「いえいえ、これがBISの仕事ですから」
「君こそ頑張ってくれてるじゃないか。今日のGvでも敵をかなり倒せたのは、君のおかげだよ」
「そんな事ないですよ〜」
ここは古都南。今日も楽しそうな会話が聞こえてくる・・・

590 名前:名無しさん 投稿日:2006/12/18(月) 16:06:39 [ 73WOFiF2 ]
あとがき
少しでも読んで下さった方々、ありがとうございました。
登場するキャラに名前がついていないのは、思いつかなかったからです・・・
また、プロローグとエピローグは第3者目線で、それ以外はBIS目線で書いてあります。
よって、「彼」の指している人物が変わりまくっています。

本来は、2レスで終わらせるつもりでしたが・・・この後書き分がオーバーしました orz

では、この辺で。駄文失礼しました〜。

591 名前:名無しさん 投稿日:2006/12/18(月) 22:51:19 [ LlQbaSRk ]
>>588-590
いい話ですね。
とても読みやすくてよかったです。
最初で最後だなんて言わずにまた書いてください。
次回作に期待してます^^

592 名前:名無しさん 投稿日:2006/12/18(月) 23:06:53 [ 68hJrjtY ]
>>590
レイスって行った事ないんだけどもそんな自分にもとても分かりやすく読めました。
面白かったです〜。

593 名前:けいじ 投稿日:2006/12/22(金) 04:38:18 [ titSYi0M ]
こちらから↓
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日本全国各地で1万人以上の登録実績とお一人様50万/月以上のお支払い実績がございます。

いっしょに生活の向上をめざしませんか?

594 名前:名無しさん 投稿日:2006/12/25(月) 04:56:58 [ 5rZ/tZJs ]
きんがーさんの話の続きが気になるなあ
赤石のキャラを使っての話ではなく、現実の人間を使っての話は妙にリアリティーがあっておもろかた
期待ageしたいけどルールは守らんとな
続き待ってるぞー

595 名前:名無しさん 投稿日:2006/12/25(月) 07:25:10 [ 6nDHbYLY ]
同じくきんがーさんその後気になる。

なんかリアル感ある小説もこうして読むと面白いな。
久しぶりに何か書きたくなってきたよ。

596 名前:名無しさん 投稿日:2006/12/25(月) 14:13:52 [ THu/alug ]
<2006年度 Red Stoneベストセラー小説>

順位
1:火力職の品格
2:ブックウンボソックと謎のプリンセス(上・下)
3:即死狩り ネクロとBISと、時々、エルフ。
4:課金してメインクエスト
5:寄生にならない狩り方
6:おいでよ 即死狩場 かんぺきガイドブック
7:支援職は見た目が9割
8:新・狩場革命(15・16)
9:ロトボックスハッピーアドバイス(1・2・3)
10:完ソロに咲く
11:アリアンの鍛冶屋さん
12:超低マの壁
13:美しいRedStoneへ
14:物理火力Xの献身
15:狩場の裏側 みんな大好き超効率PT

寸評
 すべての火力職に誇りと自信を与える画期的提言、「火力職の品格」がダブル
ミリオンを記録する大ベストセラーに。火力職の高潔さを謳った本書に刺激され、
即死狩り全盛期に引退を決意した火力職も少なくなかった。
 2位には、上半期に話題をさらった「ブックウンボソックと謎のプリンセス」が。
新職にはバグ多しというお約束どおり、ボトル投げや花投げが話題を独占。
 「即死狩り ネクロとBISと〜」は下半期の一大トピックに。関連書の「おいでよ
即死狩場〜」と共に即死狩りのバイブル的存在となったが、既に店頭からは回収。
 フランデル大陸の端から端へと駆けずり回されるメインクエストを扱った「課金して
メインクエスト」は4位に。もっとも、無課金・3日で終わらせた猛者もいるとか。
 話題の書としては、「ロトボックスハッピーアドバイス」シリーズがランクイン。
お目当ての異次元やチケットを当てるための、様々な情報がしたらば板を賑わせた。
また、即死狩りどころか、PT狩りに見向きもせず、ひたすら完ソロに励む職業達の
悲哀を書いた連作短編小説集「完ソロに咲く」も多くの感動を呼んだ。

元ネタ:ttp://www.tohan.jp/tohan-news/06-12-05.html

597 名前:名無しさん 投稿日:2006/12/25(月) 17:12:31 [ irupNu6E ]
ふと思い立ったので書いてみる
文章オカシイ所は脳内変換ヨロシク

「報告します!西門を指揮していた狼男を武術師範殿が討ち取られました!」
『そうか。報告ご苦労』
「しかし・・・」
『どうした?』
「師範殿の傷も深くすぐには東門への救援には向かえそうにないとの事です」
『奴をそこまで追い詰めるとは相手もかなりの者だったと言うことか・・・』
『東門は俺に任せて後方で傷を癒す事にだけに専念しろと伝えてくれ』
「ハッ」

ブルンネンシュティグは戦争を仕掛けていた
多くの穀倉地帯を有するビガプールに対する侵略戦争である
世界の各地より冒険者を軍に募ったブルン軍にビガプール軍の防衛線は破られ
ついに首都への攻撃が開始されていた

『さて・・・派手に暴れるとするか』
相棒である大剣を握り締め男は戦場へと向かった

東門の制圧は容易なはず・・であった
ブルン正規軍に加え、多数の魔道士と魔女が軍に組み込まれていたからである
しかし戦況は予想外な展開に陥っていた
男が戦場に着いた時、魔道士の大半は討ち取られ、周りには無数の兎の屍が転がっていた
『これはいったい・・・』
「うぅ・・あい・あいつにみん・・」辛うじて生き長らえていた魔道士が口をひらく
『どいつだ?』
もう言葉を発する事も出来ないのか方角を指差し、そしてそのまま息絶えた
指差した先で一人の女戦士が戦っていた
身の倍はあろうかという長槍を振り回し屍の山を築いていた
『こいつは楽しめそうだな』 男は笑っているようだった

『うおぉぉぉぉ!!!』
男が咆哮を上げると周りの全ての人間が恐怖に怯え体を硬直させた
しかしやはりあの女戦士は微動だにしていない
男は腰に差している小剣を女戦士に投げつけ、睨みつけた。男なりの宣戦布告である
投げつけられた剣を槍の柄で受け止め、女は男に向き直った
そして男に向かって走りだした

『いざ!』「尋常に!」【勝負!!】
女が槍を突き出してくる。先端が見えないほどの速度で的確に左胸を狙って
男は体を捻り肩当で槍を受け止め、そのまま剣を突き出した
女は軽快な動きで横へ飛び、槍を旋回させてその勢いを利用して突いてきた
男は突き出した剣を上から振り下ろし槍を強引に抑え込んだ
動きが止まる
下手に動いて隙を作れば間違いなくやられる お互い同じ判断をしていた
見つめあう2人
『!!』男の意識が乱れた
その隙を逃さず女は抑えこまれた槍をそのまま地面に突き立てた
槍から稲妻が迸り男の体を撃つ
『ぐあっ・・・』
女は獲物を弓に持ち替え距離を取りこちらに照準を絞っていた
『(左目の下の傷・・・槍を旋回させた時に持ち手を変える癖・・・)』
『(そんなはずはない。アイツは死んだんだ。俺が・・・殺したんだ)』
女が矢を放ってくる
機械のように正確な軌道の矢が男に襲い掛かる
剣で矢を打ち払い、男はついに確信を得た
『(一定のリズムで矢を打ち出すこの撃ち方、間違いないアイツだ!)』
矢を打ち払いながら男が叫ぶ
『マウア!マウアなんだろ!?俺だ!ジェイミーだ!』
叫び声を聞いた女の動きが止まる
「う・・・ああぁぁ・・うあぁぁ!!」
弓を落とし頭を抱え女は苦しみだした
『マウア・・・?』
「コ、コロシテ・・・早く私を殺して・・・」
『・・・出来るわけないだろう』
「あなたが一番知っているでしょう?私はもう死人」
「私は操られているのよ・・・死霊術で」
『だからといって俺にまた君を殺せと言うのか もう御免だ・・・』
「このままだと私はアナタを殺してしまうわ」
「そしてその後もいいように扱われる・・・私を自由にして」
『俺にまた死以上の苦しみを与える気か?』
「アナタは本当に・・・うっ・・・ガッ!お願い早く・・・」
『・・・わかった』
男は剣を回転して振り回した。剣の先から冷気が巻き起こる
『だが今度は1人じゃ逝かせねぇ』
冷気が龍の形になり、2人を中心に弧を描いた
数秒後、龍は天に昇っていった 弧の中心に手を繋いだ男女を氷りつかせて

598 名前:名無しさん 投稿日:2006/12/25(月) 17:22:58 [ nRyhE3xI ]
>>597
全俺が泣いた
ラブストーリー(・∀・)イイ!!。
ドラツイもこうして読むと芸術的だな・・

599 名前:名無しさん 投稿日:2006/12/26(火) 02:35:58 [ QSh3zyho ]
俺も何か書いてみようと思って書いてみた
まだ雑な物だけど投稿してみようかな・・・

600 名前:名無しさん 投稿日:2006/12/26(火) 02:40:47 [ QSh3zyho ]



ここは小さな平和な村
地図にも乗ってない小さな小さな村でのお話

俺の名前はA(エース)、この村で唯一のWIZ。
まぁごく最近爺さんが逝っちまって俺一人だけになっちまったんだがな
村は小さいけど、それなりに楽しくやってる。

マンネリ

そんな言葉は今の今まで思い浮かばなかった。


カラン
村にある居酒屋で連れと話てると、垢抜けない大柄でもない小柄でもない
どこにでもいそうな男がやってきた
背中には布の巻かれた恐らく大剣だろう、そして腰には背中の物くらいの大剣をぶら下げている。
鈍い光を輝せながら・・・

戦士・・・?

旅人だろうか?

この時はあまり気にも留めなかったが
ふと男がタバコを取りだし、火をつけようとした

少しからかってやるか。

「何する気だよ、やめとけって」
連れの一人が、顔をしかめながら言う
「まぁ見てろって・・・・」
爺さんからもらった古めかしい杖の先を、男の口先に向け加減したファイヤーボルトを放つ

シュボ
タバコに火が着き、男は別に驚いた様子も無く煙を肺に入れ、吐き出す
普通、いたって何も無かった用に、もう一息入れ、そしてこちらにゆっくりと顔を向け
鉄のような重い目で
「ありがとう。」
と一言、そしてまたゆっくりとタバコを吸う。

チッ、つまんねぇ・・・

些細な、いざこざを期待していた俺は
期待はずれな結果を前に塞ぎ込む。
まぁ、こんな奴も村の外には五万といるだろう、そう自分に言い聞かせ
今度は自ら男へと向かう。多分これは俺の興味本位な行動だ。

「あんた、ここへ何しに来たんだ?狩か?ならいい場所知ってんぜ?」
男は、タバコの火を消しもう一本のタバコを取り出した
「そんな所です。ぜひ案内をお願いしたい。」
そして今度は自分で火をつけ、煙を吸いだす。
以外に紳士な返事で、少し戸惑ったが、まぁそれはよしとしよう。

601 名前:名無しさん 投稿日:2006/12/26(火) 02:41:55 [ QSh3zyho ]
Ⅱ 

男との話を一段落終え、また元いた席に戻る。

「あの男と狩しに行く事になった。お前も来るか?」
連れは困った表情で、しょうがねぇなって顔でつぶやく
「おいおい、俺はお前と違って戦い方なんて知らないんだ、行けるかっての」
その後、お前は大体他所者にちょっかい出しすぎる、だの、おとなしくしろ、だの
説教を聞かされ、気づけば狩場へ案内する約束の時間が迫っていた。
「んじゃ、そろそろ行くわ」
その言葉で連れの説教から逃げるように店をでた。

「すまない、待たせた」
約束の時間よりまだ10分ほど早い、まして詫びられても困る。
「準備はいいのか?」
「あぁ」

そしてPT申請を行う、俺だって田舎者だがそれくらいは知ってる
「あらら?」
そのPT申請が破棄された。男は申し訳なさそうに
「一人でも大丈夫だから・・・すまない」
俺は少し苦笑いをし、自信たっぷりだな、などとおどけた会話をした。
まぁ初対面だもんな、仕方ない
と心の中でつぶやきながら

狩場への途中に男からいろいろ聞かれた。
狩場の適正、MOBの種類、など
一つ一つに答えてやると、男は ふ〜ん と行った表情で
「そうか」
と一言返事するだけだった。

「そういやあんたの名前聞いてなかったな、ってまぁ別にどうでもいいけどな」

無言の状態が続いた時とっさに言った言葉、まぁ別に教えてくれるとは思わなかったけど
男は以外にさらりと答えた。

「β(ベータ)」


Ⅱの2

狩場に着くと、男は1分ほど準備体操をし、狩を始める
俺はただぼ〜っとβを眺めているだけだ。
にしても・・・

弱い・・・、一匹倒すのにどんだけ時間食ってるんだ?
俺の連れが棍棒で殴ったほうが早いくらいだ、これは言い過ぎか・・・
仕方が無い、一肌脱ぐか。
俺は爺さんの杖を軽快に振るい、自分の魔力を高める
そしてβに向けて、魔法を掛ける。
βの周りには炎が巻き起こり、背中からは青白い羽が生え刹那に消える
俺自慢のファイヤーエンチャントとヘイストだ。
余談だが、俺はヘイストの羽が生え、そして儚く消えるこの瞬間が溜まらなく好きだ。

「これで、ちょっとはマシになったろ?」
俺は満面の笑みを浮かべβの反応を見る
するとβがこちらに顔を向け
「ありがとう」
と一声掛けたそのあと居酒屋で見せた鉄のような重い目で
「でも、横(邪魔)はするなよ?」
俺は不覚にもビビッた
「わかってるよ・・・」


体力には自信があるのかMOBの攻撃を受けてもポーションを使う気配が無い
いや、良く見ると微量だが攻撃した時に回復している。
あれは確か、村の武器商人がアリアンの露店で安く買ったと自慢していた
HP吸収ってやつか?
もしかしてそれ買ったのか?
かわいそうに、βは騙されてボッタくられたんだろうな・・・
あの人転売好きだもんな・・・。

602 名前:名無しさん 投稿日:2006/12/26(火) 02:42:36 [ QSh3zyho ]



その後俺はβの隣の狩場でMOBを暇つぶしに狩っていた。
ちょこちょこ、隣のβの所へ、エンチャとヘイストも掛けに行った。

2時間くらいだろうか適当にMOBを狩っていると
連れからの耳打ちが来た

「おい!村が襲われた!盗賊だ、何とか女、子供は非難させたが、さすがにもう無理だ!来てくれ、頼む!」

「大丈夫か?!、今行くから待ってろ!いいな!俺が着くまでなんとか耐えろ!いいな!」

「あぁ・・・やってみる!それと村長から伝言だ・・・


村長の伝言とはこうだ

「おめぇ、男と一緒だったな?あの背中に大剣を持ったあの男だ、奴らの要求は、その男を連れて来い、
さもないと、村を灰にしてやると・・・あの男は村の大事な客だ!絶対に連れてくるな!いいな!」

俺の村は他所者を大事な客として迎える、そもそも他所者なんて滅多に来ないし
たくさんの金を落としていくから大事なんだろうが・・・
そこまで他所者を大事にする理由がわからない・・・
でも村長は頭のいい人だ、世話も良くやいてくれている
爺さんと二人でこの村に来た時も家族のように接してくれた
そう、俺は他所者だ
だから・・・

「おい、β、ちょっと連れに呼ばれてな、しょーがなく行ってやる事にしたんだ。ごめんな行ってくるわ。
お前はここで待ってろよ。また直ぐ来るから」

俺は今まで以上に平静を保ちながらβにそう伝えた

「わかった」

βは何か勘ぐった様子で答えた
俺は今まで以上にさりげなく
「じゃぁな」
とその場を去った。

603 名前:名無しさん 投稿日:2006/12/26(火) 02:43:25 [ QSh3zyho ]



「そろそろさぁ、出してくんない?村長さんよ、おれぁ待つのが嫌いじゃないが
好きでもない。わかるか?暇つぶしに弱い者をいたぶるのは好きだけどよう、
もう皆瀕死じゃんwwwwww。もう暇つぶしにもなんねぇよ」

額から血を流し、仁王立ちで盗賊の頭を睨み付ける。

「そんな奴この村には来とらぬ!。」


村長は怒ったら怖い

昔、村の売店からリンゴを拝借したとき
冗談半分のつもりで後から、
「間抜けだなぁ」
とか言いながら返すつもりだったのだが、
その時の村長は怒り狂い、、
「冥土の土産だ、持って行け」
と鬼の様なゲンコツを頭の天辺に御見舞いされた、
あの時の目はマジだった、
もう一発もらったら確実に逝く所だった・・・
その傷はまだ癒えない・・・

その傷をさすりながら俺は村へと急ぐ。
「村には村長がいる!大丈夫!大丈夫、大丈夫・・・」
胸騒ぎがする、そりゃそうだ
俺が村に来てこんな出来事なんて始めてだ

「ふぅ、参ったねぇ〜、村には居ねぇと言い張るしぃ?それなのに歯向かって来るしぃ?
ここまで来たらこの村燃やしちゃうしかないよねぇ?
んじゃぁ行くyぶぐあぁ!!・・・っってぇ・・・なんだぁ?」

「間に合った・・・はぁはぁ・・・はぁはぁ」
俺は懇親のファイヤーボルトを放った。
走りながらここまできたからこれが精一杯だ。

「村長!大丈夫ですか?」
気が抜けたのか村長がその場に崩れ落ちる
「すまんな、後はおめぇに任せていいか?」

「守れるか、わからないけど、やってみるよ、でも・・・」

「なに、誰もおめぇを攻めやしねぇよ、攻めるにしてもこの様じゃぁよ」

辺りを見回すと、そこには村の男達がうずくまっていた。
そしてさらに追い討ちを掛けている盗賊達・・・


Ⅳの2


「おめぇ等!集まれ!」

盗賊の頭が集合を掛ける
追い討ちを掛けていた盗賊達が一気に集まる
30〜50人はいるだろうか、

「おれぁ、ちょいと怒ったぜ?wおめぇからまず可愛がってやるよ」

盗賊の頭が合図を出し一揆に盗賊の群れが襲い掛かる

攻めて来る盗賊を前に俺は爺さんの杖を振るい
魔力を高め、自分にヘイスト、ファイヤーエンチャントを掛ける
皮肉な物で自分自身にヘイストを掛けても
背中の羽は見えない
見えるのはやってくる盗賊

サリビエラの紋章の入ったブローチを握り締め
迎え撃つ

チリングタッチ
俺のもっとも得意な技、
だが相手はMOBではない
人間だ、思うように動いてはくれまい

まして、盗賊だ、軽い身を縦横無尽に襲い掛かってくる

来る、来た、やるしかない。

その時、突風が後ろから吹いた、そして肩を捕まれ、後ろに放り出された
何が起こった?
後ろを振り返ると

「お、おまえ・・・」

そこにはβがいた、狩場にいるはずなのに、来てしまった。
何しに来た?ポーションの買出しか?でもお前ぜんぜん使ってなかったろう?
何しに来た?休憩か?でもお前ちょっと前に休んでただろう?

「すまない、自分の責任だ、あいつ等はもう諦めてたと思っていたのだが・・・。」

よく見るとβの体がローブを羽織っている部分だけ消えている
不可視?
着けて来たのか?
俺を・・・

604 名前:名無しさん 投稿日:2006/12/26(火) 02:44:10 [ QSh3zyho ]
Ⅳの3


前を見てみると盗賊達は
突風に巻き込まれ、身動きが取れない様子だった

「自分の責任だ、後は自分がやる」

βはそう言いながら前に出る
そこへ不適な笑みを浮かべた盗賊の頭がズカズカとβの前へとやってくる

「やぁ〜〜っと来たねぇ、悪い事は言わない、早くお前さんの持ってるその背中の物
よこしな」

「まだこれを狙うのか、他にももっといい物がたくさんあるだろう?」

「知らないのかぃ?それ、とても高く売れるんだよねぇ」

「そんなの俺は知らない、お前がこれを狙ったから俺の村がお前に潰された」

「そうだったね、あの時のお前は弱っちかったものねぇwwww」

「・・・そうだな」

「今でも弱っちいんだからさ、ほら、無理しないで、おくれよ、それ」
盗賊の頭が手を伸ばし、βの背中の大剣と捕ろうとすると
βは持っていた大剣を立てに振り下ろす。

「ただじゃくれないってか?、力ずくでもらっちゃうしかないねぇ・・・くくく」
軽い身を逸らし、後ろへ宙返りし、剣を避ける
盗賊の頭は笑みを浮かべ、何か策を練っているように
下を見つめながら笑っている

605 名前:名無しさん 投稿日:2006/12/26(火) 02:44:53 [ QSh3zyho ]
Ⅳの4


「おい、おめぇ等しっかりしろよ!、いつまでもグダグダ唸ってんじゃなねぇよ」

盗賊の頭が渇を入れ、下っ端達が立ち直る
また来られても、次どうなるかわかならい
でもここは

俺の村だ

俺がやらないといけない。
俺が思っている事を察したのか
βが呟く
「お前は下がってればいい」
俺は無償に腹が立った
「うるせぇ!ここは俺の村だ!お前他所者だろ!?それにお前あんなにショボイ攻撃で
太刀打ちできると思ってんのかよ!!」

βは困った表情で、無言で俺にPT申請を申し込む
俺は、まだ腹が立っている、村がメチャクチャにされたこと
βが俺を邪魔者扱いすること、
しかし、それが一瞬で吹き飛ぶような出来事が目の前に飛び込む

「べ、β?・・・お前何者だよ・・・?」

愕然とした

俺の倍以上はあるのではないかと言う
数値で強さを表した称号、Lvだ

そしてβは前を向いたまま、あの鉄の目を俺に向け

「自分・・・、タゲ取れませんから・・・」

と、深く呟いた。
その時のβの目はとても
悲しそうな目をしていた気がした

606 名前:名無しさん 投稿日:2006/12/26(火) 02:46:40 [ QSh3zyho ]



俺は爺さんの杖を振るい、自分とβに魔法を掛ける
ヘイスト、ファイヤーエンチャント

今まで気にしなかったが
エンチャントのせいだろうか
自分の心臓まで熱くなっていき
ヘイストのせいだろうか
自分の心臓の鼓動が早く聞こえてくる。


戦だ、二人の、いやこの村の


先陣を切ったのはβだ、何の策も無く敵に突っ込む
空振り、殆どの攻撃が盗賊達に当たらず
逆にやられている状況だ

βのポーションの消費が激しい。
俺に何ができる、何かあったはずだ
何だっけ・・・
そうだ、俺にできること。

俺は爺さんの杖を振るう、無心に、ただ振るう。
その時横から攻めて来る盗賊に気づかなかった

鋭い攻撃、なんとかかわすも大事な爺さんの杖が弾かれた、
杖が、爺さんの杖が・・・
杖がないと、極端に魔力が落ちる。
何も無い手を振るっても大した魔法が打てない
けど、俺はアレができる。

βのほうは状況は変わらず、苦戦しているようだ
そこへ、βに目掛け普段は自分自身にしか使った事の無かったある魔法を掛ける。

βの足元から地脈を張って渦を巻く、とても優しく、力強い光

アースヒール

「すまない、助かる」

βは言葉にはしなかったが、背を向けたまま
拳を俺に向け、親指を空に着きたてた。

「なに、これくらいどうってことねぇよ」

俺は何も無い手を一身に振り、魔力を少しずつため、
βにアースヒールを掛けてやる。
しかし、杖が無い事には足止めすらできない、今の俺。
すでに盗賊達に囲まれ、逃げ場が無い状況だ。


Ⅴの2


「そろそろ・・・だな」

βはそう言うとあの透明のローブをまとった。

「くく、負けと分かると尻尾まいて逃げ出すか・・・くく」
盗賊の頭は勝ちを悟った表情で笑い出す。
「でも、逃がすわけには行かない。あれを手に入れないとねぇ。まぁ奴は直ぐ見つけるさ、その前に
約束通り、お前さんから可愛がってやるよ」

逃げたのか?
本当に?
いや違う。
βは直ぐ近くに行きを潜めている
待っている。
俺にはわかる。
けど、何をするつもりだ?
何か策でもあるのか?

「いけ」

盗賊の頭の合図と共に、四方八方から盗賊達が襲い掛かる

その時


まとっていたローブの中からβの姿が現れた
背中の大剣を振るいながら
その大剣はギンギンと見たことの無いくらいの光を放ちながら
空を裂いた

空気の裂け目から、青白い半透明の恐々しくも美しい一体の、いや何匹もの
竜が辺りを食い散らかす。

ドラゴンツイスター

こんな数の竜は見たことがない、俺はまるで金縛りにあったようだった。

βは大剣に懇親の力を込めて、空気にまるで八つ当たりのような勢いで振るう
その裂け目からは幾つもの竜が長年の封印から開放されたような勢いで飛び出してくる

気づけば辺りには盗賊達が地面に倒れこんでいた
少し離れた場所で盗賊の頭が尻餅をついていた。

607 名前:名無しさん 投稿日:2006/12/26(火) 02:47:27 [ QSh3zyho ]
Ⅴの3


「嘘だろ!?40人もいた俺等が一瞬で全滅なんてよ!!分かった!わかったよ!もうお前は狙わねぇ!約束だ!
な?な?ちょwwww助けてよwwww」

ちょwww助けてよwwwwだと、村をこんなにしやがって、
何言ってるんだ・・・
クソッ!クソッ!

俺は爺さんの杖が弾かれた場所まで戻り
そしてそのまま杖を振るいながら盗賊の頭の前までやってきた

「何する気だよ?俺等の負け!な!頼むよ!!」

俺は魔力を込め、勢い良く振るおうとした時

「こいつを殺した所で何も変わらない。」

βが俺の腕を掴み、表情を見せないように顔を隠しながら
俺に言った。

泣いているのだろうか?
お前、こいつ等に村燃やされたんだろ?
悔しくないのか?

まぁ、確かにこいつを殺しても何も変わらないのは確かだ
幸い死人も出ていないし、でもな


ドゴッ


一発くらいは殴らせろよな

608 名前:名無しさん 投稿日:2006/12/26(火) 02:48:10 [ QSh3zyho ]



その後盗賊達は一斉に引き上げ、俺達も村の皆を
村長の家に運び手当てをした
女、子供は村長の秘密の地下室に隠れていたらしい

「俺がいたせいで、迷惑を掛けて申し訳ない」

話を切り出したのはβだった

「いや、おめぇは村の大事な客だからよ、どうってことねぇ
それにおめぇのその大剣、もしやと思ったがやはりα(アルファ)の物だろ?」
「親父を知ってるんですか?」
「昔、Aがここに来る前にこの村はαに助けられたんだよ
まさかその息子にまた助けられるとわ思わなかったけどな」
「いや、今回は・・・」

村長とβの会話に割り込むように俺が乗り込む
「まぁまぁそういう事にしとけって」
βは腑に落ちない様子で
「わかった・・・」
と呟いた。

俺はさっきまで連れの手当てをしてたんだが
「俺あんなにすげぇの見た事ねぇよ!」
「お前もしかして」
「何だよ」
「結構大丈夫だったんじゃないのか?」
「・・・急に腰が・・・」
そんな感じで無事を確認した後
村長とβの会話が聞こえて、そこに割り込んだ


Ⅵの2


それから一週間

俺達は傷が癒えるまで話をしていた

「なんで旅なんかしてるんだ?」
「別に、元々自分の家は無いからな」
「そうか、すまん」
「別にいい、そのおかげで色々知る事ができた」
「ほー、例えば?」
「RED STONEって知ってるか?それを見つける事ができたら
願いが何でも叶うらしい、今はそれを探す旅の途中なんだ」
「願いが叶うのか、すげぇな!」
「あぁ、それを見つけて俺はいつか村を蘇らせたい」
「叶うといいな」
「ありがとう」

俺はこの村の生活が気に入っている
でも何か足りないとずっと思ってた
毎日同じ繰り返し
それでも俺はぜんぜん構わなかった
けど、βの話を聞いてる内に
この生活に実はマンネリしている事に気づいた
俺ももっと世界を知りたい

「なぁ、俺も着いて行っていいか?
「もちろんだ」


終わり



おまけ

「なぁ!なぁ!βってば!」
「どうした?」
「その絨毯乗せてくれよ・・・」
「悪いな、これは一人乗りだ、お前ヘイストあるだろ?」
「してるよ!でもな!走ってるの!しんどいの!分かる!?」
「俺とお前の決定的な違いがある」
「なんだよ・・・」
「俺は課金組だ!!」

609 名前:名無しさん 投稿日:2006/12/26(火) 02:51:59 [ QSh3zyho ]
あとがき

自分なりに起承転結をつけてみたつもりです
登場人物の名前は適当につけました
知識戦士のかっこよさが自分の表現で伝わってくれれば幸いです

610 名前:名無しさん 投稿日:2006/12/26(火) 03:18:25 [ nRyhE3xI ]
>>609
いやー面白かった(´∀`*)
「ちょwww」とかの言葉遣い、確かに盗賊にしっくり来る。笑っちゃいました
戦士もチリWIZもやった事ないんだけどどっちもカコ(・∀・)イイ!!

おまけにある絨毯に乗せろ〜ってのはちょっと想像した事はある。
二人乗りくらいできそうなのに。

611 名前:名無しさん 投稿日:2006/12/26(火) 09:04:34 [ n0jmUgEI ]
>>597
いい。すごくいい。
>>600
面白い。けど全体に改行が多く読みづらい(全体をみて読む気なくす)

612 名前:名無しさん 投稿日:2006/12/26(火) 11:52:56 [ /ggxc6Us ]
1
冒険者になろうと思った。

家はどうしようもなく貧乏で、子供の頃だって近所の子たちのように子供キャンディーを舐めたこともない。
僕はいつも羨ましがるだけだった。
両親はそんな僕を見て、すまなそうにしていた。
僕もそんな両親のことを分かっていたから、出来るだけそういう素振りはしないようにしてきた。
小作人の子。
元より将来に希望なんてない。
バリアートってところでは小作人でも努力次第で土地を貰えてこんな生活からも抜け出せるらしいけど、
ここではそんなこともない。小作人は一生小作人のまま。その子供も同じ。

ある日、冒険者が村にやって来た。
冒険者はとても儲かる。でも、怪物を相手に生きるか死ぬかの戦いをしなけりゃいけない。
生き残って大金持ちになれるのはほんの一握りだって聞いていた。
そんなこと、どんな人がしているんだろうと気になって見に行った。
地主の奴に見つかれば両親にも迷惑がかかっちゃうけど、そのときは気になって仕方がなかったんだ。
そこには人だかりが出来ていた。どうやらその冒険者が露店を開いて珍しい商品を売っているらしい。
人垣を掻き分けてなんとか前に出ると、そこには

小さな少女が座っていた。

2
地べたにマットが敷かれていて、ごちゃごちゃと並ぶ商品を挟んで向かい側に彼女は座っていた。
頭巾をかぶった、歳は僕よりも下かもしれない。
幼さの残る小さな白い顔。
腰巻きに笛を差している。あれで戦うというのだろうか。
じろじろと見る僕に気づいたのか、僕に向かって彼女は「いらっしゃい」と微笑みながら言った。
思わずどきっとしながら僕はそこが露店だということを思い出した。
見回すとそこには見たこともない物が並んでいた。
どんな症状も治すという「万病治療薬」、よく分からない塩漬けの臓物「ドラゴンの心臓」、
そして真っ白な鉄床。etc...
正直、何に使うのかよく分からない物がほとんどだった。
さらに値札をみて腰が抜けそうになった。
万病治療薬1個2万G...両親が地主から貰う小作料の半分近い。
実際はそこから土地代だのなんだの引かれるから、もっとか。
あの臓物が30万G、鉄床に至っては2000万!!?
僕は頭がどうにかなってしまいそうだった。
でも、なんとか正気を保って目の前の女の子に疑問を投げかけた。
「ねえ、君。本当に冒険者なの?」
彼女は笑いながらそうだよと答えた。
「ここみたいな田舎に来るとよく言われるわ。でも、私みたいなロマの冒険者はそれほど珍しくないのよ」
「でも、怪物を相手にしたりするんでしょ?」
「う〜ん・・・。実際に戦うのは私じゃあなくって。この子たちね。」
そういうと、そばにあった鞄の中から一冊の本を取り出した。
「それは何?」
すると彼女はちょっと困った顔をして。
「ここでは、ちょっとね。そうだ!後で会えるかな?わたしそこの宿屋に泊まってるからあとでおいでよ。
ここ初めて来たからさ。話相手が欲しかったんだ」
僕は突然の誘いに「え?」と間の抜けた返事をしてしまった。

「おいお前!何やってる!仕事はどうした!?」
やばい、監視に見つかった。
「ご、ごめん。行かなきゃ」
結局ぼくはロクに返事も出来ずに慌ててその場を走り去った。

613 名前:名無しさん 投稿日:2006/12/26(火) 11:54:00 [ /ggxc6Us ]
3
その後は監視役の男に怒鳴られながらずっと働き通しだった。
そして、一家三人で頭を下げて謝った。
「このことは地主様に報告しとくからな!覚悟しとけよ!」
監視役は唾を撒き散らしながら怒鳴るだけ怒鳴って去っていった。
僕は両親に謝った。
すると父はこう言ってくれた。
「いいんだよ。何か珍しい物は見れたか?」
何も言っていないのに、父は全てお見通しだった。
父母はどこか他の小作人と違う。
歩き方や動作に気品があるというか。
字の読み書きも出来るし。過去にちゃんとした教育を受けていたようだった。

僕はその日のことを父母に話した。だけどあの誘いのことは黙っていた。

4
貧しい夕食を食べ終えると早々に寝床につく。
僕は目を開けたまま横になり、耳を澄ました。
両親の呼吸の変化を鋭く感じ取った。
両親が寝たのを確信して、僕は家を後にした。

彼女はまだ起きているだろうか。
宿屋の二階の窓を見ると明かりが漏れている。よかった、起きてる。
宿泊客なんて滅多に居ないから、他の部屋は全部真っ暗だ。
宿屋に入ると、「いらっしゃい」と出てきた主人が訝しげに僕を見た。
この村に住んでいるから主人は僕の顔も、僕が小作人であることも知っていた。
「おい、起きてて大丈夫か?」
「あの、ちょっと泊まってる人に用があって」
主人は少しの間僕をジロと睨みつけると、
「黙っててやるから、さっさと済ませて来い」
僕は頭を下げ、階段を上がった。

コッコン
僕は少し緊張しながらノックした。
「はい?」
「あの、昼間に会った・・」
「ああ、ちょっと待ってね。」しばらくしてドアが開いた。
「いいよ、入ってきて。」
部屋の中を見て僕は驚いた。そこには槍を持ったモンスターが居た。
「ひ!!コボルト!?」
前に農作業中に襲われたことがあった。二足歩行の凶暴な小さい犬だ。
思わず逃げ出しそうになる僕に
「大丈夫だよ。その子達はわたしのペットだから。襲ったりしないし大人しいから入ってきて。」
ぼくはビクビクしながら部屋のなかにそろそろと足音を立てないように入った。
「それにその子達はコボルトじゃなくって、ファミリアね。椅子に座って」
彼女はベッドの上に座っていた。
僕は彼女と向き合うように椅子に腰掛けながら昼間の質問の続きをした。
「戦うのって、これ?」
僕は目を落とし、ファミリアを見た。ファミリアが睨み返してきたので慌てて彼女に目を戻した。
「これなんて言っちゃだめだよ。ちゃんとノナメって名前があるんだから」
「ノナメ・・・」
「ビーストテイマーっていってね。モンスターを仲間にして一緒に戦うんだよ」
「へえ、冒険者ってみんなそうなの?」
「ううん、ビーストテイマーになれるのはロマに生まれた女だけ。冒険者って一口に言っても色々あってね。
剣士とかシーフとか、色んな職業の人が冒険者やってるよ」
「そうなんだ。ところで、冒険者になるにはどうすればいいの?」
「別に特別な条件なんてないよ。冒険者って名乗ればみんなが冒険者だよ」
「え、じゃあ僕も冒険者になれるかな?」
「うん、なれるよ。冒険の知識がない人でもブルンネンシュティグの『学問の家』に行けば
冒険に必要な色んなノウハウを教えてもらえるよ。もちろん戦い方もね。もしかして」
脳裏に両親のことが浮かんだけど、僕はそれを振り払ってその言葉を口にした。
「僕は、冒険者になりたい」

614 名前:名無しさん 投稿日:2006/12/26(火) 11:55:02 [ /ggxc6Us ]
5
その後、彼女と色々話し合った。
名前は○○というらしい。
どうやら彼女は地方を回って冒険者になる人をスカウトしているらしい。
なぜそんなことをしているのかと聞くと、仲間は多いほうがいいから、らしい。
僕は両親に話そうと思っていたけど、彼女に止められた。
「話したところで、許されると思う?」
確かにそうだ。
「冒険者になりたいんでしょ?それならそんなことじゃあダメだよ。冒険者っていうのは命がけなんだよ?
今から全てを捨てるだけの覚悟もないのなら、諦めなさい」
その一言で僕は覚悟を決めた。
父さん、母さん。ごめん。

僕らは早朝村を出た。
しばらくは村に居たかったが、彼女はすぐに村を出るらしく。
1人では古都への道も分からない僕は彼女に従うしかなかった。

6
古都まではあっという間だった。
○○の仲間らしい天使がポータルという古都まで続く穴を作ってくれた。
初めて天使を見る僕は彼と少し話したかったが、
「早く入って!」と急かされ、話す間もなく穴をくぐった。
そして、視界に光が広がると同時にすごい喧騒が響き渡った。
「オぉガ秘みぃ〜つ!!ビショップと鍵シフ募集中ぅーー!!!!」
「魔法のボンド5Mでうりまーす!!」
「コロタぁーク!10Nでおね!!」
意味不明な言葉を喉がつぶれるんじゃないかというほど叫ぶ人々。
路上のあちこちに並ぶ露店。
忙しく走り回る人々。
飛び回る絨毯。
きょろきょろと見回す僕の手首をぎゅっと掴むと
「ついてきて」
僕は彼女に引かれるがままに人ごみの中を進んだ。
そして、道端に立つ騎士のもとに僕は連れて行かれた。
「彼を学問の家へ飛ばして」
ケイルンは分かりましたとだけ言うと、僕の視界が暗転した。

なにやら、槍を持った女の人を見た気がする。
気がつくと僕は部屋の中に居た。窓も扉もなく、出口の見当たらない部屋だ。
ただ1人だけ人が立っている。教官らしい。
僕は冒険者への第一歩を踏み出した。

615 名前:名無しさん 投稿日:2006/12/26(火) 11:56:08 [ /ggxc6Us ]
7
なんてことは無かった。いきなりデカイ蜘蛛と戦わされたときはどうしようと思ったけど、
見た目よりは弱かった。僕の腰にはいつの間にか剣があって。
腰が引けながらも剣を振り回してるうちに倒せてしまった。
少し噛み付かれてしまったけどあまり痛くなかった。
少し拍子抜けしつつも古都に戻れた。

うるさい叫び声の飛び交うなか、彼女は笑いながら
「もう立派な冒険者だよ。おめでとう」
「ありがとう。ところで、これからどうしたらいいんだろう」
「まずは狩り!ついてきて!」
言われるがままに僕は彼女の後について古都の外に出た。

8
古都の外に出ると、○○は僕に向かって言った。
「いい?今からやることをマネしてね」
そう言うと、地べたに座ってなにやら話していた男たちに向かって
「えんへいおね」
すると彼女の周囲が燃え上がり、一瞬翼が広がって消えた。
「あり」とだけ言って彼女は戻ってきた。
「やってみて」
僕は彼らのそばに走り寄って
「え、えんへいおね」
男は杖をひとしきり振り回してから、僕に魔法をかけてくれた。
「あり」
戻ってきた僕に向かって○○は言った。
「あーゆー格好した人を見かけたら、えんへいおねって言えば魔法で強くしてもらえるからね」
そうなんだ。いいこと聞いたなあ。

その後僕はコボルトたちを倒して回った。
魔法のおかげで楽勝だった。
○○も色々アドバイスしてくれた。
狩りたい場所に先客が居たら、攻撃しているモンスターを一緒に倒して「つかってます」と言えばいいとか
PTに入りたいときは「いれて」と言えばいいとか。
狩りにも慣れてきたところでそばで見てた○○が言った。
「そろそろ市民権取ろうか」
「市民権?」
「そ、古都で生活していくためには必須だからね。申し込みには3万G要るんだけど」
「さ、さんまん!?そんなお金ないよ」
「大丈夫、私が貸してあげるわ」
「でも、こんなに親切にしてもらった上に、そんなことまで。悪いよ」
「いいのよ。困ったときはお互い様なんだから」
そうして銀行に行き。僕は市民権を手に入れた。
市民権の申請が終わるとすぐに○○が話しかけてきた。
「ギルドはどこに入るか決めた?」
「ギルド?」
「冒険者の組合みたいなものって言うのかな。助け合ったりする集まりのことよ」
「へえ」
「アテがないなら、私のとこに来ない?」
確かにアテもなかったし、3万Gの借りもある。
なによりここでは知り合いは彼女だけだったので彼女のギルドに入ることにした。
「えっとね、この紙のここにサインして。それだけで申し込みは済むから」
サインが済むと、彼女は僕の手から用紙を奪い取り。
固まった笑顔でこう言い放った。
「ギルド登録ありがとうございました。当ギルドでは毎週組合費を組合員様に請求させて頂いています」
「え?」
「あなたは現在11レベルなので、来週の今日までに11万ゴールドを支払ってください」
「そ、そんな話聞いてないよ!」
「ここに書いてあるでしょ。よく読まないあなたが悪いのよ」
「そうそう、支払いが滞ったり、拒否したりすると。あなたのご両親のお宅にうちのギルド員が腕試しに
お邪魔するかもしれないから。わかった?」
呆然と立ちすくむ僕を後にして、彼女はどこからともなく現れた赤い犬に乗って走り去った。

僕の地獄が始まった。

616 名前:名無しさん 投稿日:2006/12/26(火) 12:01:31 [ /ggxc6Us ]
ごめん。思いつきで書くもんじゃなかったかも

617 名前:名無しさん 投稿日:2006/12/26(火) 14:31:55 [ irupNu6E ]
>>607
盗賊のヘタれっぷり面白いなぁ
>>598-611
ありがとう 読み返してみると何か恥ずかしいな。
出来るだけスキル名出さずに書きたいと思ったから回りくどい文になってしまったorz

618 名前:名無しさん 投稿日:2006/12/26(火) 19:15:20 [ 5uQ2gEbE ]
>>610
>>617
感想ありがとうございます
初めての投稿で不安だったのですが、少し安心しました。
>>611
ご指摘ありがとうございます
改行はあまり気にせずに書いてしまいまいた。
後から編集してみると、全体が少しスッキリしたように思います。
以後気お付けます。

619 名前:名無しさん 投稿日:2006/12/26(火) 19:42:41 [ KwB/52v6 ]
>>616
最初は良い感じだったのにこういうオチだったとは・・ちょっとワラタ
続きがあるならハッピーエンドにさせてやりたいね( ´・ω・)

620 名前:第12話 疑惑 投稿日:2006/12/27(水) 01:25:36 [ geeyBKzs ]
キンガーさんとの会話で判ったことがある。
ギルメン及び元ギルメンの中にキャラ窃盗犯がいるということだ。
ギルドレクリエーションと称してyahooサイトに誘導し、IDチェックをした人がいる。

犯人はキンガーさんと対戦した3人の中にいる。

・優勝したデルモ
・2回戦でキンガーさんに負けたギルマスの運ルパン
・初戦であたったパスケレ

翌日のギルセンの後でギルマスにそれとなく聞くことにした。

ぎゃおす  「ねね、また将棋トーナメントやろうぜ!」
◇運ルパン 「いいですね。しばらくギルハンもしてないし」
ぎゃおす  「またデルモが優勝かもしれないけど」
◇運ルパン 「えーと、組み合わせ決めないといけませんね」
ぎゃおす  「前回と同じようにやればいいんじゃない?」
◇運ルパン 「僕じゃないんですよ。組んだのは。」
ぎゃおす  「あれ?マスターじゃないの?」
◇運ルパン 「確かあのときは、タルカスがやろうと言い出して・・・
      パスケレが組み合わせしてくれたはずでした」

------パスケレ------- こいつなのか? しばらくインしてないな。
加えてギルセン出ているのを見たこと無い。

ぎゃおす  「思い出した!みんながパスケレのyahooIDにヤフメで登録したんだ」
◇運ルパン 「そそ、そしてそこから組み合わせが順番に発表されて進んだ。」
ぎゃおす  「みんなのIDを知っているのはパスケレだけ?」
◇運ルパン 「だろうね。」
ぎゃおす  「あの後にさ、yahooからなんかメールきた?」
◇運ルパン 「僕は当時、IDはあってもメール登録してなかったからね」
ぎゃおす  「てことはさ、マスター。変なこと聞くけどさRSの登録アドは?」
◇運ルパン 「hotmailだよ。どうしたの?」
ぎゃおす  「実は・・・
 私はキンガーさんについて全て話した。
何故信用したかというと、キャラを盗むのにGMをやっていなくてもいいから。
しかもいろんなギルドを渡り歩けないんじゃ意味がない。
更にGMとパスケレは同時にインしていたことがある。

◇運ルパン 「・・・なるほど・・・で? パスケレが怪しいと?」
ぎゃおす  「あの時のトーナメント表はないのかぃ?」
◇運ルパン 「デルモが持ってるはずだよ。記念に。」
ぎゃおす  「デルモはまだ疑惑が消えていない。参加者全員に連絡してみてほしい」
◇運ルパン 「パスケレとデルモ以外にyahooからメールが来たかどうか?」
ぎゃおす  「そう。確か参加者は8人いたはずだよ」

自分でも何故こんなことをしているか解からない。キンガーが帰ってくるわけでもない。
なんとなくRMTサイトをのぞいてみることにした。今回はゲームマネー交換。

いつも不思議なのが、なぜこんな業者がいるのか?
ゲームオンで禁止しているだろうに・・・・裏では噂どおりゲームオンが・・
利ざやがあるだろうから買値と売値がもちろん違うだろう・・・。
私の弟が横からのぞいていた。
弟 「ねーちゃんRMTすんの?」
私 「いや、なんとなく見てた。ゴールドに困ってないわよ」
弟 「今度キャラ買おうかなぁ。即死狩りもなくなったしなー」
私 「ぁ? あんた。買うの?」
弟 「バイト代もたまったしねー」
私 「詐欺にあったりしてねww・・・・いいキャラあるかもよ?」
ちょっと思いついたことがあった
弟 「キャラが買えるサイトどこだっけ?」

例のサイトに移動してざーっと見ていると・・・あった!
前から目をつけてるやつだ。・・・450↑天使。

私 「ちょっと相手に連絡してみなよ。能力とかゴールドとか聞きなよ」
弟 「天使かぁ・・ここまで育てるのに黙って4万はかかるよなぁ」

621 名前:616 投稿日:2006/12/27(水) 01:51:07 [ /ggxc6Us ]
>>619
レスありがとう。なんか嬉しいよ。
期待はして貰えないだろうけど、続きをがんばって書いてる。

622 名前:名無しさん 投稿日:2006/12/27(水) 10:55:13 [ /ggxc6Us ]
>>619
やっぱり、思いつきに続きなんて付けられるわけがなかった。
代わりに、新しいネタが思いついたので
↓    ↓    ↓

623 名前:名無しさん 投稿日:2006/12/27(水) 10:56:13 [ /ggxc6Us ]
『クレイジービショップ』

私はビショップ。
今日も迷える仔羊たちを導くために街へ出る。

古都ブルンネンシュティグにて
聖騎士のケイルン殿との挨拶もそこそこに、
私はケイルン殿の隣で道行く冒険者達に向かって説教を始めました。
「みなさん。ご機嫌いかがでしょうか?
愚僧は神聖都市アウグスタより参りました。ディ・オン・ハーゲル=アルテドアと申します。
冒険者の皆様は日々殺伐とした冒険と狩りの日々に疲れておられませんか?
どうぞ、私の話を聞いてくださいませ。
神の御教えはきっと皆様に真の心の平穏を与えてくださることでしょう。
過去の過ちに心を痛めてはおられませんか?
どうぞ、私に全てをお話しくださいませ。
懺悔することで、必ずや皆様の傷ついたお心は癒されることでしょう。」

「赤目秘密募集中。鍵、エンチャ、火力各1人募集中」
「巨人斧ダメ100%↑買います。値段添えて耳よろ〜」
「20秒↑心臓1秒1Nで何個でも買います。耳よろ」

・・・・・・・・・・・・・・
くじけてはいけません。これも神の与えたもうた試練なのでしょう。

「みなさん。ご機嫌いかがでしょうか?
愚僧は神聖都市アウグスタより参りました。ディ・オン・ハーゲル=アルテドアと申します。
冒険者の皆様は日々殺伐とした冒険と狩りの日々に疲れておられませんか?
どうぞ、私の話を聞いてくださいませ。
神の御教えはきっと皆様に真の心の平穏を与えて・・・」

アチャ「BISさん」

おお!!やっと神の御教えを求める仔羊が!!
いやいや、逸ってはいけません。見ればうら若き乙女。
きっとデリケートな悩みを抱えておられるはず。ここは慎重に・・・。

アチャ「ログ流れるからやめて」

・・・・・・・ブチッ
い・・・・いやいや、落ち着け私。
彼女もきっと色々あってストレスが貯まっていたのでしょう。
そう、きっとデリケートな悩みで。
「お嬢さん」
私は彼女を伝道すべく、努めて優しい声で呼びかけました。

って、あれ?いない?
・・・・・・アンノクソ
いや、私としたことが何とはしたない言葉を口にしようとしたのでしょう。聖職者としてあるまじき行為。
今日のところは出直しましょう。
これから地下墓地で苦しみ続けるバインダー様の御魂に安らぎと平穏を与えに行かなければなりませんし。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・クタバレボゲェ!!     バインダー「あ゛あ゛あ゛あ゛ぁぁ....」

624 名前:名無しさん 投稿日:2006/12/27(水) 10:57:08 [ /ggxc6Us ]
次の日
ケイルン殿、お役目ご苦労様です。
え?昨日は大丈夫でしたかですって?
はっはっは、ケイルン様もご冗談を。何のことやらサッパリ分かりません。
さて、今日も迷える仔羊達に説教を致しましょう。

「みなさん。ご機嫌いかがでしょうか?
愚僧は神聖都市アウグスタより参りました。ディ・オン・ハーゲル=アルテドアと申します。
冒険者の皆様は日々殺伐とした冒険と狩りの日々に疲れておられませんか?
どうぞ、私の話を聞いてくださいませ。
神の御教えはきっと皆様に真の心の平穏を与えてくださることでしょう。
過去の過ちに心を痛めてはおられませんか?
どうぞ、私に全てをお話しくださいませ。
懺悔することで、必ずや皆様の傷ついたお心は癒されることでしょう。」

「ポタあり墓地秘密募集中!鍵シフさん来てください!」
「誰か高レベさん。レベアゲ手伝って〜!」
「○○○○はキチガイです!みんな注意して」

おお・・・・なんという人心の乱れよう・・・。
これは・・・こういう時こそ神の御教えが必要なのです!!!

「みなさん。ご機嫌いかがでしょうか?
愚僧は神聖都市アウグスタより参りました。ディ・オン・ハーゲル=アルテドアと申します。
冒険者の皆様は日々殺伐とした冒険と狩りの日々に疲れておられませんか?
どうぞ、私の話を聞いてくださいませ。
神の御教えはきっと皆様に真の心の平穏を与えてくださることでしょう。
過去の過ちに心を痛めてはおられませ・・・」

剣士「おい」

あぁ?・・・は!いけません。
心の荒れてしまった仔羊は、きっと心のどこかで救いを求めているはずです。
彼もきっとそうです。
私が導かなければ・・・そう、私が導かなければいけないのです!!

剣士「おい、聞いてんのか」
「剣士様、私はおいという名前ではございません。
ディ・オン・ハーゲル=アルテドアという神より授かった名前がございます。
あなた様はきっと、過去に何か悔いておられる事がおありなので・・・」
剣士「はあ?ダメオンハゲるアウトドア?」

・・・ブチ
い、いかん!今のはマジヤバかった!ブチキレそうになっちまった!
は!いっか〜〜ん!私としたことが何とはしたない言葉遣い!きっとまだまだ修行が未熟なせいだぁ!
落ち着かなければ・・・落ち着けぇ〜落ち着けぇ〜落ち着けば落ち着くとき落ち着けぇぇ・・・。

剣士「おい、なにうずくまってんだよ。邪魔だからどけ!聞こえなかったのか?じゃ・ま!
それに昨日もだけどよ、マジうるせえ!何訳わかんねえことグダグダ喋ってんだよ!ウゼえよ」

ブチィッ!!
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・
私の中で、熱いものがたぎっている。
目の前に立っているこやつはきっと仔羊などではない。わたしの心の平穏を脅かす・・・
悪魔!!!!

「ゴォォォッドハァァーーンド!!」           剣士「げばぁ!!」

625 名前:名無しさん 投稿日:2006/12/27(水) 10:58:54 [ /ggxc6Us ]
小さな公園、ベンチにて

やってしまった・・・。なんていうことを・・・。
聖職者でありながら人に危害を加えてしまうとは・・・。
情状酌量で執行猶予が付いたとはいえ、私は犯罪者。
神よ・・・私は取り返しの付かない罪を犯してしまいました。
こんな私でもあなたはお許しになるのでしょうか?
いや、私は以前から疑問だったのです。
あなたは本当におられるのですか?
おられるとすれば、何故私をこれほどまでに苦しめるのですか?
わたしは今まであなた様の忠実なる使いとして、あなたの御教えを人々に伝えてきました。
でも、誰一人として私の言葉に耳を傾けてくれないのです。
これも試練とおっしゃるのでしょうか?
これほどの試練は、私めには荷が重過ぎます・・・。
一体、何故・・・あなたは本当に・・・・

「ねーねー、おじちゃん」
ん?これはこれは、かわいいおさな子・・・

「なんですか?」
わたしは泣きそうなのを堪えながら、今出来る精一杯の優しい声で答えました。

「ずっとここであたまかかえてるけど。あたまいたいの?
いたかったらがまんしないでないたほうがいいって、ままがいってたよ?」

私の頬を、熱いものが流れている・・・。
神よ。あなたは居ても居なくても、もうどちらでもいい。
でも・・・・

天使はここに確かに居る・・・。






ケイルン「その子を放してください。ディ・オン・ハーゲル=アウトドア様」
え?

思わず私の両腕から力が抜ける。

「う゛ぁぁぁぁぁん!!マ゛マ゛ァァァァァ!!!」
彼女が・・・天使が走り去っていく。

「あああ・・・天使が・・・私の天使が・・・・」

ケイルン「執行猶予中なのをお忘れですか?」
「あぁぁ・・・・・」

また留置所に入ったが、すぐに出してもらえた。

「ケイルン殿、ご迷惑をおかけしました」
ケイルン「いえ、私のほうこそ誤解してしまいまして・・・」
「いえ、いいのですよ。ところでケイルン殿。一つ言いたいことが」
ケイルン「何でしょうか?」

「俺はアルテドアだボケェ!!」        ケイルン「がっはぁ!!」

ディ・オン・ハーゲル=アルテドア:傷害罪でアルパス地下監獄に収監中。

626 名前:第13話 進展 投稿日:2006/12/27(水) 17:51:24 [ geeyBKzs ]
朝から例の事件を検討している最中だった。
佐々木が田村に電話があることを伝える。
「娘さんからです。急ぎだそうで。」
「分かった。代ってくれ。」
田村は娘からの電話に半分嬉しさと半分悲しさを交えて出る。

「どうした?珍しいじゃないか?」
「ちょっとね。こっちでおかなしな事件を抱えてるの。」少し困ってるようだ
「俺はお前の仕事に賛成しているわけじゃないんだぞ?
だいたいなんで入国管理の仕事なんかしているんだ?なぜ拳銃の携帯を
認められているか解かっているのか?相手は日本人より危険なんだぞ?」
「パパの様になりたかっただけよ!私だってこんなに大変だと思ってなかったわ」
「まぁいい、妹や弟のこともある・・・その話は今度だ。で、なんだ?」
「私がこの間のガサ入れで朝方帰ってきた日覚えてる?」
「あぁ、中国人だろ?オーバーステイだかなんだか言ってたな」
「その中国人留学生はビザ切れだったのよ。それで学業以外の目的で
日本国内に留まってるらしく・・・つまり犯罪に関わってる疑いがあったのよ」
「で?強盗か?」
「それが・・踏み込んだ途端、泣きながら何度もこう言うのよ

  俺はやってない!たのまれただけだ!

・・って。容疑は不正アクセスだったんだけど、ビザ切れが判ってね
それでうちの出番だったわけ。」

「不正アクセスじゃだめなのか?」
「ビザ切れでまず逮捕。不正アクセスで拘留を伸ばすのよ」
「じゃ、管轄が警視庁ハイテク犯罪対策総合センターに移るのか?」
「だと思うんだけど・・・・」
「何が気に入らないんだ?きちんと逮捕してお役御免だろうが?」
「それが・・・家から某銀行のタイムパスキーホルダーが4つ出てきたの」
「俺と何の関係があるんだ?」
「そいつ、護送車に乗せられる直前、こう言ったの

 新宿、関係ない・・殺される・・

 小さな声だったけど、私にははっきり聞こえたのよ。」

「新宿? キーホルダー4つ?」
「ガイシャの財布から某銀行のカードは出てきた?」
「調べてみるよ。」
「私はその4つの口座はまだ生きていると思うの。」

627 名前:619 投稿日:2006/12/27(水) 22:59:43 [ oXg38p4E ]
>>623-625
引き続き読ませてもらいました(´∀`*)
明るく楽しくダークな話ってのはなかなか面白いナァ。
RSの風潮も上手く取り入れてるし。次回作も期待してます。

628 名前:名無しさん 投稿日:2006/12/28(木) 08:17:26 [ /ggxc6Us ]
>>627
ありがとう。
読んでくれる人が居るっていうのはいいモチベーションになるよ。
次は年明けにでも書こうと思う。
では、今年最後のお話。
どうぞ↓↓↓

『ドギーマン』

それは、全くもって不運な事故であった。
彼は元々スマグの名の知れたウィザードの1人だったが、
ある日スウェブタワーでウルフマンの能力をより強化するための研究をしていた際、
突然なだれ込んできたレッドアイの職員たちのせいで未完成の実験装置が起動。
彼は装置から発せられる魔力の光をもろに浴びてしまった・・・・。


古都ブルンネンシュティグ。
冒険者達のやかましい喧騒を避けるようにその影は路地裏を移動していた。
人に見つかっては・・・絶対に見られてはいけない。
ボロボロのローブを頭から羽織り、その影は物陰をこそこそと動いていた。

ドンッ
何かに頭からぶつかった。
そこに居たのは豪華なドレスに身を包んだ小さな女の子、プリンセスだ。
なんで路地裏なんかに?近道か何かだったのか?
噂では他の星から来たらしいが・・・と、そんなこと言ってられない。
逃げなくては。
彼は踵を返して走り去ろうとした。
が、ローブが何かに引っかかって動けない。
振り返ると、さっきのプリンセスがローブの端をむずっとしっかり握っていた。

やばい・・・。
「なあに?これ」
や、やめろ・・・。
やめろおおおおおお!!!!

彼の身体を覆っていたローブが捲られた。
「わあ、ワンちゃんだ」
・・・・・・・・・・ぐ。
そう、彼の身体はあの事故以来。犬になってしまったのだ。
ウルフマンを犬と呼ぶ人も居るが、あれはれっきとした狼人間。
だが彼は、完全に犬になってしまったのだ。
「かぁわいい〜」
小さな手で頭を撫で回される。
元々プライドの高いウィザードであった彼には、耐えられることではなかった。
「やめろ!」
「え、しゃべ・・」
抱き上げようとするプリンセスの手を払いのけ、彼はローブを拾い上げて走り出した。
数少ないウルフマンの面影が残る部分、それは手だ。
器用に物を掴むことが出来る。
「あ、まってよぉ」
はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・
疲れた・・。そう言えばずっとろくに物を食べていない・・・。
「まってってば」
!!!!
ばかな、人間の足で追いつけるわけが・・・。
振り返ると、ウサギが追いかけてきている。
彼は足を止めた。
「きゃ〜〜〜、やっぱりかぁわいい〜〜。さっき喋った気がするけど気のせいかな?
どうしよ。連れて帰って飼おうかなあ。パパ許してくれるかなあ」
なにやらゴチャゴチャ喋ってるウサギの言葉は彼の耳には届いていなかった。
に・・・肉。
しかし、吹き飛びそうになる理性を抑えて再び走りだした。
「あ!ちょっと!」
不意を突かれたプリンセスは追ってはこれなかった。丁度彼女の変身が解けてしまったからだ。

くそ・・・なんで私ばかりがこんな目に・・・。

629 名前:名無しさん 投稿日:2006/12/28(木) 08:19:07 [ /ggxc6Us ]

路地裏で彼はへたり込んでいた。
今思えば、何でこんなところに来てしまったのだろう。
彼はかつてウィザードであった頃の記憶に思いを馳せた。

わたしはウィザードとして、魔力の神秘と究極を追求するために日々研究に没頭していた。
勿論その一方で自らの魔力を高め、魔法の修行をすることも忘れなかった。
わたしの魔力は大地を裂き、重力すらも操り、ときには天より星を降らせたりもした。
人々は私を畏れ、敬った。同僚のウィザードたちすらも私に羨望の眼差しを向けたものだった。
他人の私を恐れる目は私に覇気を与え。
同僚の私への嫉妬は私に何ともいえない高揚感を与えた。
だが・・・あの事件以来、全てが変わってしまった。
私が何度Xキーを押そうと、かつてのウィザードの姿に戻ることはなかった。
それでも私はなんとか元に戻ろうと出来る限りの努力をした。
だが、犬の身では思うように実験機器も動かせず。
スマグの最長老にして最高権力者のゲンマ老にも相談しに行ったが
「むにゃ・・・ふぁ〜ぶぅ〜ぷぁ〜むにゃむにゃ・・・」
寝てばかりで全く人の話を聞いてくれない・・・。
同僚は私を見て同情してはみせていたが、裏では蔑み笑っていた。
私はついに耐えられなくなり、スマグを去った。
街の外はただの犬にとって厳しすぎる世界だった。
盗賊に食料にされかけ。
熊に食われそうになり。
狼に追い掛け回され。
やっとたどり着いたハノブ。
そこで出会った心優しい老人は古都の西にわたしによく似た連中が居ると言った。
居場所を無くしていた私は、仲間を求めて古都ブルンネンシュティグを目指したのだった。

く、しかし今の私の有様はどうだ。
必死に、頑張ってここまで来たのに。空腹で動けないとは・・・。
ああ、何か食べ物・・・。

幻か?目の前に鳥の丸焼きがある。
湯気までたってる・・・。
いや、このいい匂い。幻なんかじゃあない。
私は目の前の肉にかぶりついた。
美味い・・・何日ぶりの食事だろう。
「まだまだあるから。いっぱい食べていいよ」
女の声だ。
誰だろう。この親切な人は。
そこにはビーストテイマーが立っていた。
肉にかぶりつく私を、彼女は優しく微笑みながら見ていた。

肉を平らげた私に彼女は「ひどく疲れてるようだけど、大丈夫?」と優しく問いかけた。
わたしの毛だらけの身体を撫でる彼女の小さな手はとても暖かく。
それだけで私の心は癒された。

だが、私には行かなければ行けない場所がある。
まだ見ぬ同胞の元へ。
私は彼女に「ありがとう」と言った。
「え、しゃべった?」
驚く彼女を尻目に私は走り出した。

630 名前:名無しさん 投稿日:2006/12/28(木) 08:19:53 [ /ggxc6Us ]

古都の西口付近。
あそこに行くには裏路地から出て人目の中を走り抜けなければならない。
そう、この姿を人々の前に晒さなければならないのだ。
もし彼女に出会えなければ、私は出口にたどり着く前に倒れてしまっていたかもしれない。

この犬に貶められてしまった身。
しかし、今だからこそ分かる。
私は今まであまりにも驕慢であった。
他人を見下し。自分こそが最高なのだと思っていた。
それは違った。人の間に優劣など元から無い。
人生の価値とは、その中でどれだけの素晴らしい人物や事象出会い。
彼らと素晴らしき時を共に出来るか。そこにこそあるのだと。
他人と自分を見比べてばかり居た私は、心の貧しい人間だったのだ。

そう悟った時。わたしの中に力が漲った。
今なら行ける!

私は全ての力を振り絞り。
跳ねるように走り出した。
人々の足元をすり抜け。
私は風よりも速く走り抜けた。
そして、西口をくぐり抜けた・・・・!!






「キエエック?」
・・・・・・・・・・
呆然と立ちすくむ私の目の前で、コボルトが鳴声をあげた。
ま、まさか・・・・。
私はそばに転がっていた木の枝を拾いあげ、
ぶるぶる震える後ろ足でなんとか立ち上がってみた。

ローブをまとった、犬。

私の中で何かが崩れ去った。






その日、古都の西口付近で珍しい茶色い毛色のコボルトが
新米の冒険者によって葬り去られた。
彼の最後の言葉は
「ゲッ!俺は肉弾戦弱いのに・・・俺もXキーで変身したい!」

631 名前:名無しさん 投稿日:2006/12/28(木) 10:10:11 [ dAnF8.e6 ]
>>628-630
またまた読ませてもらいました(`・ω・´)
こういうオチだったんですね〜病気コボルトのセリフと上手く繋がってますね。
どんでん返しっぽくて面白く読みました!年明けのも期待してます(*・ω・)

>他人と自分を見比べてばかり居た私は、心の貧しい人間だったのだ。
というあたり、深い意味合いが込められてるような気が。
最終的にコボになっちゃったけど。
茶色い毛色・・にせインプ?w

こうして読んでると自分もなんか書いてみたくなる・・文才無いから無理だけどorz

632 名前:名無しさん 投稿日:2006/12/28(木) 22:31:11 [ xocynORE ]
何気にときどきこのスレに来ては楽しんでます。良スレですね。

633 名前: ◆ACGhoST.hk 投稿日:2006/12/28(木) 22:33:25 [ LlQbaSRk ]
僕はあなたが好き。
だから、いつもついて行くよ。
僕はあなたが好き。
親切で優しいあなたがとても愛しいよ。
僕はあなたが好き。
誉めることができなくても、励ますことができなくても。
僕はあなたが好き。
背中に乗られても大丈夫。ちっとも重くない。
僕はあなたが好き。
あなたの為なら、どうなってもいい。
僕はあなたが好き。
あなたの為に、力いっぱい戦うよ。
僕は、あなたの為に生まれた。
外に湧いてる化け物よりも役に立ってみせるよ。
だから…
僕を呼んで。僕に命令して…。


才能ないなぁorz
もっと他の方々の作品を見て出直してきます。

634 名前:第14話 取引方法 投稿日:2006/12/29(金) 04:06:43 [ geeyBKzs ]
弟が冗談半分で例のキャラの持ち主と取引方法の相談をしている。
私はどうゆう展開になるのか興味深く観ていた。
弟が主に遊んでいるのは白鯖で、古都の銀行のまん前で陣取っているキャラは
有名なRMT業者なんだとか。

今回も35000RMらしい。持ちゴールドは1億。
入金確認後にメールでIDとパスが送られてくるらしい。

私 「とんずらされたら堪らないわよねw」
弟 「うん、それでネカフェでの直接取引きもしてくれるらしいんだよ」
私 「へぇ〜割と信用できそうねぇ?」
弟 「不安なら現金じゃなくても、その場でネットバンクから送金でもいいらしい」
私 「ま、あんたはね時間あるんだから自分で育てなよ。」
弟 「バイト代でPCでも作ったほうがいいか。いつまでも姉ちゃんの貸してもらうのもな」
私 「パパと相談していくらかお金出してあげるわよ」
弟 「まじ?やったー!」
私 「ちゃんと講義に出ることが条件だからね」
弟 「わかってるって」

そんな話をし終えた後、RSにインした。
目的は当然GV! 今日はなんたって・・・・今日から透明なのよん!

◇タンク  あらぁ??? ぎゃおす???
ぎゃおす  へっへーん! 気づいた?
◇デルモ  透明なんだw
◇タンク  モリネル? 塩? トラン?
ぎゃおす  アリアン産w
◇運ルパン 露天買いですかw
ぎゃおす  125M・・・貧乏ですわ^^;
from◇運ルパン あのトーナメントに出てた人に聞いてみた。
◇デルモ  ベース何?
from◇運ルパン デルモとパスケレには聞いてない。
ぎゃおす  スタリン+5だよーw
◇タンク  俺のバトリンと交換してw
ぎゃおす  断る!w
to◇運ルパン  タルカスやタンクとかにも聞いたの?
from◇運ルパン  うん。タルは例のメールが来たらしい。
to◇運ルパン  まじ?で?どうなの?
from◇運ルパン  偽者メールだから笑いながら消したらしいよw
◇タンク  ぁ、トラップバイト・・・・・・・・
◇デルモ  捨ててね^^
to◇運ルパン  タンクは?
from◇運ルパン  元々yahooのメールなんぞ使ってないらしい。
from◇運ルパン  僕の予想では高レベだけが標的だった思う。該当しそうなのは
to◇運ルパン  キンガーさんだけか・・・

そうこうしていると姉が帰ってきた。なんか疲れているらしい。
母が亡くなってからは家事は姉と私でほとんどやっている。
去年職場で配置換えがあったらしく、それからは帰宅時間が不規則になった。
法務省とはそんな職場なんだろう。公務員かぁ・・・私もなりたかったなぁ。

635 名前:ドギーマン 投稿日:2006/12/29(金) 15:07:23 [ AepyIIHk ]
3つ話を書いてきて、今更ログを一番最初から読み始めてる。
みんな、面白いなあ。俺もいい物書けるようになりたくなったので、
とりあえず形から入ろうと今からコテハンでいくよ。この名前気に入ってるし。
あと、ドギーマンで今年最後〜とか言っちゃったけど、
今日は朝から雪で家から出られなくなったので、書きこませて貰います。
クリスマス終わっちゃったし、色々ツッコミどころもあるけど、
ネタが風化しちゃわないうちに書きたかったんだ。
では、今度こそ今年最後。どうぞ↓↓↓

12月21日木曜日10時28分

彼らは全ての準備を済ませ、ゲートの前に集まった。
袖口だけ白い赤い服に身を包んだ20人ほどの男女。
彼らは自分達の出番を、まるでスタートの合図を待つマラソンランナーのように身構えて待っていた。
彼らの手には梯子、シャベル、大きな木箱などがあり。
一番後ろの大きな台車の上には巨木が載せられている。
その台車の先に付いたロープを屈強な体躯の男5人が肩に担ぐようにして両手でしっかりと握っていた。

10時30分定期メンテナンス開始。

古都ブルンネンシュティグの街から冒険者達の露店が一斉に消え、
REDSTONE世界の時が止まった。
と、同時にゲートが開かれた。
彼らの眼に差し込む光。
眩しいのを堪えて先頭のリーダー格の男が叫んだ。
「GO GO GO GO GO!!!」
彼らは人気のない古都の街道を走りぬける。
広場の噴水に向かって。

時の止まった世界は不自然ではあるが幻想的である。
流れるのを止めた水路の流れ。
吹くのを止めた風に傾けられたままの草木。
しかし、この幻想的な、まるで一枚の風景画を見るかのような景色を楽しむ余裕は
彼らにはない。

「よし、ストーーーップ!!」
リーダーのフィリップの号令の元、大木を牽引していた男達が止まり。
全員が噴水の周囲に散開する。
「デービッド班は地下水路に行って水道を止めろ!
サラの班は噴水の解体作業!ディックとうちの班は水を掘れ!」
フィリップが指示を飛ばすと同時に全員が動き出した。

10時41分メンテナンス終了まで3時間と19分
地下水路

古都の地下水路は真っ暗闇である。
外と違って、こちらは太陽の光が全く差し込まない。
もちろんあちこちに松明はあるが、時の止まった火は光をあまり発しない。
彼らは各々手に持った魔法のランタンの明かりを頼りに地下水路を進む。
真っ暗で見通しの効かない中での作業は緊張を極める。
例えば、天井から落ちた水滴が水面を跳ねた瞬間に時が止まったとすれば、
その部分は危険な鋭利な刃物と化す。
彼らは「針」を踏まないように慎重に足元を照らして進んだ。

ほぼ同時刻
噴水

時の止まった噴水の水を除去する作業、
通称「水を掘る」作業と噴水の解体作業が同時進行で進められた。
空中に散っている水滴をかき集める。
噴水の水面をシャベルで掘る。
集めた水を水路に捨てる。
その一方で噴水自体のほうでは隙間に固まっている水を噴水に傷つけないようにノミと金槌で砕き、
解体する作業がそれぞれ流れ作業で行われていた。

11時22分メンテナンス終了まで2時間と38分
地下水路

ベテランのデービッドの班は手間取っていた。
去年の今頃ならば既に噴水への水流を制御する水門に到着しているはずであった。
どうやら水路の一部に亀裂が生じているらしく、壁から水がまるで巨大な剣のように生えている。
それが何箇所も・・・。
班員「クソ!古都の水路管理局は何やってるんだ!こっちは命がけだっていうのに」
デービッド「落ち着け。あまり興奮せずに慎重に水を砕くんだ。処理を誤ると怪我をするぞ」
血の気が盛んな若い班員をたしなめながらも、デービッドも内心焦っていた。
早く上の連中に加勢しに行かなくてはならないのに、これではもうしばらくかかりそうだな。

11時53分メンテナンス終了まで2時間と7分
噴水

デービッド班からの加勢がなく、作業はもたついていた。
何か問題が発生したのだろうか?
しかし、様子を見にいく余裕もない。
ここはデービッドさんを信頼してこちらの作業を続けるしかない。
精密な噴水の解体作業と地味な重労働の水を掘る作業はまだ続く。
サラ「なにやってんの!早くしなさいノロマ!」
普段冷静なサラがヒステリックになっていた。
あと二時間で、終わらせることが出来るだろうか・・・。
フィリップはシャベルを硬い水面に突きたてた。

636 名前:ドギーマン 投稿日:2006/12/29(金) 15:11:26 [ AepyIIHk ]
12時04分メンテナンス終了まで1時間と56分
地下水路

ようやく水門に到着した。
水門を降ろすレバーを二人がかり一気に引く。
ガギンッ!!
鈍い金属音を発すると、滑車が回りだした。
ガガガガガガガガっと水門が降り、水路の水面の上に凄まじい勢いで叩きつけられた。
水がまるでガラスのように散らばり、デービッドたちに降り注ぐ。
全員特製の分厚いコートを頭から被ってガードするが、この瞬間が一番危険である。
時には20cm超の水のナイフが飛ぶこともあるからだ。
水門は水に阻まれて完全には降りていないが、時が動き出せば勝手に降りる。
「みんな無事か!」
全員にケガがないことを確認し、デービッド班は来た道を戻った。

12時15分メンテナンス終了まで1時間と45分
噴水

デービッド班が合流し、作業は急ピッチで進められた。
残り時間は2時間を切っているというのに、まだ土を入れることもできて居ない。
デービッドは遅れを謝ることもなく作業に加わった。
そんな暇も惜しいのだ。
噴水の出水パイプに蓋をしてサラが叫んだ。
「解体作業終了!!」
フィリップ「よし、サラ班は木の飾りつけに入ってくれ。もう立ててから飾りつけする余裕はない」
サラ「わかった。みんな、聞こえたでしょ?急いで!」
サラの班が木に向かって散って行った。
デービッド班が加わって作業速度は上がったとはいえ、水はまだ残っている。
それに、そろそろ疲労で速度が遅くなってくるころだ。
1時間の遅れを取り戻す、何か方法は・・・。

12時26分メンテナンス終了まで1時間と34分

そうだ!
フィリップ「みんな、水を掘る作業をやめろ!」
ディック「何を言い出すんだ急に!?ふざけた事言ってないで作業を続行しろ!
只でさえ間に合いそうにないんだぞ!」
フィリップ「そうだ。このままじゃあどうしたって間に合うわけがない」
ディック「諦めるって言うのか!?」
ディックはフィリップよりずっと身体が大きい。まるで上から威圧するようにフィリップを睨みつけた。
しかし、フィリップは臆することもなく言い返した。
フィリップ「違う。俺を信じろ。みんな!土を入れて木を立てる用意をするんだ!」
ディック「おいおい。正気か?水を残したまま土を入れてみろ。
時が動き出したとたんに土台が緩んで木が倒れちまうだろうが!!」
デービッド「いや、このままではどうしたって間に合わない。ここは彼を信じるしかないだろう」
横からデービッドが会話に割り込んだ。
ディック「っち、どうなったって知らねえぞ。おら!木にロープをかけろ!」
ディックは屈強な班員達に向かって号令をかけた。
デービッド「私にも大体分かったよ。だが、あの木が力を貸してくれるだろうか?」
フィリップ「やってみないと、分かりません」
時は刻一刻と迫っている。

12時50分メンテナンス終了まで1時間と10分

ロープは巨木に手際よくかけられ。
根元をディック班の男達が持ち上げ、噴水の淵に乗せた。
噴水の水は排水溝のあたりだけを集中的に掘り、排水溝の蓋も完了した。
土を入れる作業と、サラ班の飾りつけ作業が続く。

13時33分メンテナンス終了まで残り27分

サラ班の飾りつけも終了し、土も入れられた。
あとは木を立てるだけとなった。
「せーーー・・っのぉ!」
全員でロープを引っ張る。
木はゆっくりと持ち上がり。
そして、噴水のあった場所に大きな木が立った。
木の根元に土を被せ、ロープの先を杭で固定した。
ディック「で、どうするんだ?まさかこのまま帰るとか言い出すんじゃないだろうな?」
フィリップ「いや」
「祈るんだ」
ディック「はあ?おいおい。何の冗談だ?
何か考えがあると思ってはいたが、まさかそれが神頼みなんていうオチか?」
ディックは怒ってフィリップの襟首を持ち上げた。
フィリップ「ちがう・・この木は」
デービッド「この木は、天上の大樹。神がこの世に初めて撒いたとされる種から育った木だ。
人々の想いの力を糧にし、奇跡を起こすこともある。意志を持った聖なる木なのだ」
フィリップ「そ・・そうだ。だから、この木に祈るんだ。奇跡を起こしてくださいと。
みんなの・・大切な日のために・・・く、苦しいから降ろしてくれ」
ディックは、黙ってフィリップを降ろした。
ディック「もう少し、てめえの茶番に付き合ってやる」

637 名前:ドギーマン 投稿日:2006/12/29(金) 15:12:22 [ AepyIIHk ]
13時45分メンテナンス終了まで残り15分

全員、手をつなぎ木を囲んで立った。
目をつぶり。
祈った。

友人や、恋人や、家族の
世界中のみんなの大切な人との素晴らしい時間を守るために
どうか、奇跡を起こしてくださいと。

ググ・・・ゴゴ・・・
土が下がり、木が少し沈んだ。
土の下にあった水を、木が吸い取ったのだ。
そして、時が止まっているにも関わらず
天上の大樹は少し枝を伸ばして成長し、
木の魔力に反応する装飾が眩しく輝きだした。
その場に居た、皆が奇跡を目の当たりにした。
輝くMerryChristmasの文字を・・・

13時52分メンテナンス終了まで残り8分

みんな慌しく動いている。
フィリップ「いそげ!ゲートが閉じる前に道具を片付けろ!」
道具を全て木を運んできた台車に載せた。
ディックを含め5人の班員が台車を引っ張る。
「ふんぬおぉぉぉぉおお!!」
額に青筋を立てすごい形相で男達が台車を牽引する。
その台車をみんなで押す。
ゲートがゆっくりと閉じ始めている。
台車がスピードに乗って走りだした。
みんなはゲートの中に突進するように突っ込んで行った。
しかし、フィリップだけはゲートの手前で足を止め。
振り向いて、遠くで輝くきらめきに向かって言った。
「ありがとう」

デービッド「早く入れ」
フィリップはデービッドにゲートの中に引っ張り込まれた。
そして、ゲートはゆっくりと閉じて消えた。

14時00分メンテナンス終了

ぽつぽつと、そして続々と人々が街に現れた。
「なんだこれ!」
「きれ〜〜・・」
人々は広場に噴水に変わって突然現れた木を驚きながら眺めていた。
そして、
「窓」を通じてその様子を彼らは眺めていた。
ディック「ふう、一時はどうなることかと思ったぜ」
サラ「なんとか間に合ってよかったわね」
フィリップ「ああ。よし、仕事も終わったことだし。みんなで打ち上げいくか!」
そう言ってフィリップが振り返ると
みんな、カップルになって散り散りに帰り始めている。
ディック「でさあ、そこのメシが美味いんだよ」
女に肘を抱かせて遠くに去っていくディック。
フィリップ「サ、サラ?」
サラ「ごめんなさい。わたし彼氏居るから」
・・・・・・・・・・・・・
フィリップ「あ、デービッドさん!?」
デービッド「悪いな、家族が待ってるんだ」
・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・1人鍋でも食うか・・・・。
フィリップは1人寂しく家路についた・・・。



果たして、彼らは何者だったのだろうか?
その答えはすぐに分かる。
そう。
彼らはクリスマスの夜に、ソリに乗ってまたやって来る。たくさんのプレゼントを持って。

638 名前:ドギーマン 投稿日:2006/12/29(金) 15:13:21 [ AepyIIHk ]
ごめん、sage忘れてた。 orz

639 名前:名無しさん 投稿日:2006/12/29(金) 15:26:26 [ wxabjNKM ]
何かまた活気が出てきたな・・・うれしい。

640 名前: ◆ACGhoST.hk 投稿日:2006/12/29(金) 18:02:52 [ LlQbaSRk ]
>>637
メンテにそんな秘密が!?
発想が素晴らしいです

641 名前:名無しさん 投稿日:2006/12/29(金) 18:07:54 [ NiNjhPd6 ]
感動しました。 GJ

642 名前:名無しさん 投稿日:2006/12/29(金) 19:28:44 [ NiNjhPd6 ]
>>634さん
今日初めてこのスレを発見し、興味をそそられたので1話から読んでみました。
リアリティがあってとても面白いです。
連載を期待しております。


>>ドギーマンさん
クリスマス関連の小説がすごくよかったです。
発想が素晴らしいです。
「水を掘る」「水が刃物に」などという発想が特に。


時間がなくて全ての小説を読むことができませんでした。
ですが皆さん、素晴らしい文才をお持ちですね^^感服いたしました。
年末にこれほどまでに感動し、笑い、心和んだのは久しぶりです。

尚早でございますが、来年も素晴らしい小説の数々を期待しております。

643 名前:名無しさん 投稿日:2006/12/29(金) 20:00:20 [ Qpus43BU ]
>>638
またまたまた読ませてもらいました。(;゚∀゚)=3
なんか洋画にでもありそうな男たちの奮闘みたいでかっこいい。
登場人物の名前からして洋画っぽいです。

疑問になってる部分を上手く小説にして解明させているところは
昔あったDQ小説の「モンスター物語」「知られざる物語」シリーズっぽくて面白いです。
実はこのアイテムは、このモンスターは、この人たちはこういう逸話があってここにこうしているんだよ みたいな。
RSを知るからこそ楽しめる内容にどっぷり浸ってしまえます。

今後の作品も期待してますよ(*・ω・)

644 名前:名無しさん 投稿日:2006/12/29(金) 22:15:47 [ efK/MsP2 ]
age

645 名前:携帯物書き屋 投稿日:2006/12/29(金) 22:42:06 [ eFHFlgNU ]
それは空をも裂く切りっ先だった。
当たれば両断。そう思わせるほどその一撃には勢いがあった。
しかし剣は空を切っただけだった。対する者は一蹴りで剣を持つ男の間合いから大きく外れた。否、自分の間合いに入れたのだ。
その者が持つ武器は弓。息をする間も与えず男に向けて光輝く矢を放ち続ける。
「ちぃ」
男は軽く舌打ちをし剣を構えた。
「えぇい!!」
怒号と共に舞い上がる剣舞。男は雨のように降り注ぐ矢の嵐を剣一本でかわし、最後の一本は左手に持つ盾でお返しとばかりに弾き返した。
「貴様、女のくせによくやる」
笑っているのかよく分からない表情で男が言った。
「――――――」
女は無言で男を見据える。
「……だが、その程度では俺に届かない」
女の表情が曇る。それを見て男は口元を少し歪め、再び剣を構え直した。
「いくぞ――――!」
盾を前に突きだしながら走り出した男は突風そのものだった。対する女は弓を捨て、背に差してある槍を構えそれを迎え撃つ。
「おぉおおおおおおおっ!!」
「やあぁああああああっ!!」
ドス――――と、短く鈍い音が辺りに鳴り響いた。
「がふっ」
赤い鮮血が口元から吹き出した。次いでカランと高い音を立て獲物が手から滑り落ちる。
滑り落ちた物は槍だった。女の腹部には細身の長剣が深々と刺さっていた。
リーチでは明らかに槍の方が上だった。しかし男は直前に槍を盾で受け流し、無防備になった身に渾身の一撃を見舞ったのだった。

「はぁ…はぁ…」
剣を抜く。支えがなくなった女の体は鮮血を巻き散らしながらその場に倒れ伏した。
男はくるりと向きを180度変え、歩き出した。その先にはさらに死体が3つ転がっていた。合計4つの死体が転がり、この場に立っているのは男だけであった。
男はさらに進む。その先には赤く輝く宝石のような石があった。
「はぁ…俺が…勝った…」
男はその石に手を触れる。刹那、石に亀裂が走った。
「な…爆は―――――!」


その日、ある洞窟で大規模な爆発が起こった。古都ブルネンシュティグは後日調査団を送ったが、残っていた物はおびただしい血の痕だけで、後は何も発見できなかった。

646 名前:携帯物書き屋 投稿日:2006/12/29(金) 22:49:10 [ eFHFlgNU ]
ジリリリリリリリリリリ
朝を告げる鈴の音が部屋中に響きわたる。
「ぅん………」
気の抜けた声を発しながら目覚ましのスイッチを探る。……が、見つからない。
「そういえば昨晩に目覚ましを遠くに置いておいたんだっけ…」
ようやく重い体を起こし音を止める。すると春の心地よい陽射しが窓から差し込んできた。そして思う。
「あーあ、今日も面倒臭い一日がやってきた」


重い足取りで部屋を出る。誰もいない。ま、いつもの事だけど。それから期待もしないで丸テーブルを覗く。何もない。ま、いつもの事だけど。
朝食は適当に食パンで済ませ、また自分の部屋に戻って学生服に着替える。とりあえず第一ボタンだけは外しておく。
俺もあまりダサイとは言われたくはない。
「さて…行くか」
洗面所の冷水で喝を入れてから玄関へ向かう。玄関を出ると目前に町の景色が広がった。ちなみに俺の家はマンションの最上階の6階だ。
ここから見える景色は割と気に入っている。ここから学校も見えるのだから近い方なのだろう。


学校の教室に着くともう友達同士で騒ぐ雑音が耳に入る。もう高校に入って2年の春になるが未だに馴染めない。
小学校では友達の1人や2人はいたが、中学にもなるとほとんど1人が多かった気がする。
で、高校だとこれだ。
気を取り直して扉を開く。一瞬こちらに注目が集まるが、すぐにまた騒ぎ始める。一番窓側で後ろの自分の席に着き、外を眺める。いつもこうしながら授業が始まるのを待つのだ。


やっと授業が終わり解放された。帰宅部の俺は授業が終わればすぐに帰る。それにしても登校に対して下校は楽しい。
「今日もゲーセン寄って行くかな」


ついついハマってしまい日もすっかり沈んで夜になってしまった。どうせ帰っても誰もいないのだから急ぐ必要はないのだが。
「――――?」
今、誰かに見られているような気がした。つい早足になる。
「うわっ」
コケた。豪快にコケた。いや、何かに引っ掛かった気もしないでも……。そう考えたら急に恐怖感に包まれ、走り出した。
「はぁはぁはぁ――――」
家! 家! 家! なんとかマンションまで無事に着けた。階段を全速力で駆け上がり家に着いた。
ふぅと一息つき灯りをつける。だが、安心するのはまだ早かったらしい。
俺の部屋に、水着のような派手な格好をし、ブロンドの髪をした少女がくつろいでいる……。
「だだだ、誰だよあんた!!」
そして少女は微笑み
「え、私? 幽霊よ」


もしかしたら続くかもです。

647 名前:名無しさん 投稿日:2006/12/30(土) 00:33:12 [ Qpus43BU ]
>>645-646
この二つの話は繋がりがあるのかな?いきなりリアルになって面白そうなので期待。

っていうか携帯からっすか・・凄いなァ。
俺の携帯はこういう長文を書き溜めようとしてもすぐ充電切れるボロだからダメポ(;´∀`)
出先でもすぐ書けるのは楽そうなんだけども。

648 名前: ◆ACGhoST.hk 投稿日:2006/12/30(土) 15:15:52 [ LlQbaSRk ]
浮かんだのでひとつ…
この話はフィクションです。


俺はなんちゃってウィザード。
今日も、陽気に藪でエルフを殴っている。
「バシッバシッ!」
この音が清々しくて好きなんだ。
鋼の杖でこんな風に叩かれていたら痛そうだな。
そんなとき、俺の目の前に戦士が現れたんだ。
戦士は、俺の殴ってるエルフを斬り、こう言った。
「お前邪魔。」

ああ、よくあるんだ。
またか…と思いつつ、俺はその場を離れようとしたんだ。
そのとき、戦士さんがこう言った。
「WIZさんよぉ…。メテオって知ってるかぃ?」
あぁ…知ってるさ。知っているとも。
「知ってるが、それがどうかしたか?」
すると、戦士はこう言ってきた。
「俺がスキル振り教えてあげようか?w」
よく言われるからなんてことない。
慣れっこさ。
「結構。」
俺は、藪を出た。

それから、神殿に行った。
神殿の地下一階の片隅で、クラゲや亀と戯れてたんだ。
そしたらそこに、ファミリアを連れたテイマさんが来たんだ。
「ねね。」
テイマさんが話しかけてきた。嫌な予感がする。
「クリ強い?w」
ほらきた…。
もううんざりだよ。
「強いよ。」
俺は気にせず狩り続けてた。
「ふぅ〜ん。」
テイマさんは、俺が狩ってるのをしばらく眺めていたよ。
数分後、テイマさんが口を開いた。
「ねね。」
「なんだ。」
「骨ファミTUEEEEしていい?w」
やる気をなくしたよ俺は。
俺は神殿を後にした。
そして、ブリッジヘッドで海をぼんやり眺めてた。
そんな日が毎日続いた。
もう嫌だったんだ…。
もう冒険者なんてやめようと思っていた。

そう、君に出会うまでは…

649 名前:名無しさん 投稿日:2006/12/31(日) 20:13:13 [ US5vFcoE ]
>>645-646
繋がってるのか良く分からない。645は良いと思いますが646のはあまりにも突然すぎるかも。もう少し主人公が気配に薄々感づくなど入れたほうが良かったかも。
と自分的に思います・・・。

>>648
あるあるw

650 名前:殺人技術 投稿日:2006/12/31(日) 22:12:18 [ E9458iSQ ]
何となく書いたのうpしたいんだけど、やっぱ前のが終わるまで待つべきかな。
あと、やっぱり最後まで書き上げてから一気に連続でうpするべき?
教えて偉いかも知れない人

651 名前:名無しさん 投稿日:2006/12/31(日) 23:09:39 [ R4g7OgKI ]
>>645
視線がかわりすぎ

男の視線ならば女の表情等は説明できても
自分の事は説明できないはず

女の場合も同じくだ

こういうのを神様視線というんだよ

もう少し出直してきたらどうだい?

>>648
まず、「」の文の後ろに。をつけるのは今では無い。
つまり、今の書き方では「」の後ろに。をつけない。

それから神殿にいった←これまでに思った事や行動を詳しく書こう


今二つのレスを取り上げたが、どっちも勉強が大切だと思う
(用語間違ってたらスマソ)

…マジレスしてよかったのかな?

652 名前:ナナシ 投稿日:2006/12/31(日) 23:10:49 [ trP3f0jc ]
お風呂入ってくるんで抜けますね。
空いてたらまたよろしくお願いします。

653 名前:名無しさん 投稿日:2006/12/31(日) 23:12:14 [ R4g7OgKI ]
連続スマンが、「…」を使いすぎだと思う

小説投下してる殆ど全員にいえることだが。

654 名前:名無しさん 投稿日:2006/12/31(日) 23:58:41 [ dAnF8.e6 ]
小説家の先生がいるスレはここですか?

指摘してやりたい気持ちは分かるけどそれと同じくらい評価できる点も挙げてあげようよ。

655 名前:殺人技術 投稿日:2007/01/01(月) 00:29:44 [ E9458iSQ ]
過去ログ読んだ感じあまり長い間隔空けなければ大丈夫そうだったんでうpします。
一度に何文字入れられるか分かんないけど。
あと
メインクエ真剣にやってる人は「その設定赤石にないよ」って言いたくなるだろうけど。
ゲームのパラレルって事で大目に見てくれると嬉しいです。
あと
つまんなかったらごめんなさい。
あと
あけおめおめ。

656 名前:殺人技術 投稿日:2007/01/01(月) 00:40:51 [ E9458iSQ ]
チョキー・ファイル


「俺のペットが消えてしまったんだ、名前はチョカ」

フランデル大陸に、一度滅亡してなお活気にあふれる街があった。

古都ブルンネンシュティグ、今は亡きブルン王朝の遺産である。

時刻は昼下がり、石だらけの街に水色の空が映え、商店街には食料品を買う嫗や、遊び騒ぐ子供。

そこから離れた別の区域では、訪れる旅人が日々の宿を借り置いている。

「あの辺りには野良スパイダーが居るんだ、まさかとは思うが、探してきてくれないか」

古都の一角、路上で物騒な鈍器を売る武器屋の店主、チョキーは、フランデル大陸に溢れる旅人達と話をしていた。

何事かを依頼したのだろう、重そうな鎖のスリングを手首に掛けた筋骨隆々としたプリンセスが会釈をしながら立ち去り、チョキーは一息ついて腰を下ろした。

チョキーは自らの禿げ上がった頭を申し訳なさげに掻き、街行く人々と商談を交わしながら、旅人が戻るのを待った。

といっても、売買するのは何も武具だけではい。

漆で固められた棍棒や、見るだけで痛覚を刺激する鈍い棘の付いた鉄球の脇に、恐らくそれと同じ金属で作られたのだろう

小洒落たアクセサリや、少し使うだけで職人魂を感じられそうな大工用具などが並べられている。

今日び、いくら旅人や人を襲う怪物が蔓延っていると言っても、それだけでは生きてはいけない。

それをチョキーは、長い商人としての経験上、身に染みて分かっているつもりだった。

太陽が傾き始め、斜陽が古都全体を朱に染める頃になると、人の足や喧騒も途絶え始め、旅人が借り置いていた宿に戻り始める時間だ。

昼に会ったあのプリンセスもチョキーの元に現れ、神妙な顔付きで小さな壷を渡すと、約束していた金と犬用の入れ歯の様な物を受け取って、足早に立ち去った。

チョキーはその壷をしばし見つめた後、商売道具の陰に隠すように置いてあった鞄に入れ、重い武具やアクセサリ等を膠の様な布に包み込み、商人の必需品、リアカーを転がした。

657 名前:殺人技術 投稿日:2007/01/01(月) 00:44:27 [ E9458iSQ ]
チョキー・ファイル(2)


数分ほどリヤカーを引き、街がほぼ暗くなり始めると、古都の裏の顔が目覚め出す。

路地裏の一角では通常の取引すら禁止される様々な物を高値で売る闇商人や、それとはまた別の物を高値で売る娼婦

はたまた男娼が街を闊歩し、一角では知性に欠けた旅人が暴力を起こす。

そんな闇の言葉を耳に入れないかのように、チョキーは無言でリアカーを引いた、だが暫くすると、チョキーの足とリアカーの車輪の声は止まった。

「君が、チョキーだね?」

月光にぼんやりと照らされて、チョキーの目の前に奇妙な人影が現れた。

真っ暗な世界をスプーンでくり貫く様な白い光の玉の中に、夜景と同化しつつある黒いマントをひらひらとはためかせ

恐らくじっとチョキーを見つめながら、ぽつんと立ち尽くしている。

チョキーが怪訝そうに見つめる中、その影は一足一足と歩み寄り、その姿を見せる。

チョキーの視界に映ったのは、フランデル大陸に蔓延る怪物の1つだった。

だが、チョキーは普段怪物と出くわす時とは違って、少し驚いただけで、動かなかった。

いや、驚きが大きすぎて、動けなかったのだ。

見たことのない怪物ではない。

文献では安い物にも挿絵付きで載っている、地下界より地上界に昇ってきた、地獄の炎を操ると言われる、下級悪魔のピエンドだ。

──火を出す怪物は、商人のまさに天敵中の天敵である。

なぜなら、大荷物を抱える商人は高速で逃げる事が出来ず、たちまち大事な荷物を火で燃やされてしまうからだ。

しかも、武具商人ともなればさらに悪く、商品の手入れに使う整備用の刃油や鎧油に引火でもすれば、始末も悪い。

そう、武具商人のチョキーにとって、目の前の怪物は出会ったらすぐに、いや出会うべきではない相手なのだ。

だが、チョキーは逃げないどころか、むしろ己の好奇心によって、少しずつ近付き、その姿を間近に捉えた。

目の前のピエンドには、それだけの惹き付ける何かがあったのだ。

正真正銘の悪魔の姿に、まるで天使の様に白く淡い光を纏う、その姿には。

658 名前:殺人技術 投稿日:2007/01/01(月) 00:45:59 [ E9458iSQ ]
チョキー・ファイル(3)


「……信じられない」

薄い白光を纏うピエンドは、黒いマントの下に無機質を思わせる質感の肌を覗かせて。

「何がだ?」

ピエンドは、知性を感じさせる声で、問い掛けた

「悪魔が……ピエンドが、そんな光を放っているなんて」

チョキーは、段々と落ち着きを取り戻していた

この悪魔が、チョキーを見るや否や火を吹いて脅迫でもしよう物なら、チョキーは慌ててもと来た道を引き返しただろう。

「お前、チョカという犬を殺しただろう」

悪魔は平然とそう言い、チョキーは思わぬ物言いに憤激した。

だが、チョキーは一流の商人、得体の知れない相手に怒りを露にする事の愚かさを良く知っていた。

「チョカという犬は飼っていたが、殺してはいない、本当だ」

チョキーは、悪魔に口ごもっても無意味だと判断したのか、語気に微かに怒りを乗せて、堂々と言った。

チョキーは、既に覚悟を決めていた。

一人きりで、傭兵もつけずに、しかも悪魔の本分と言われる夜に、その悪魔と対峙して、なおかつ逃げ遅れたのだから。

だが、ピエンドの反応は言葉だけだった。

「いや、お前はチョカを殺した」

ピエンドは続けた

「お前が野良犬の子供を拾い、チョカという名前を付け、親や同族と引き離して自らに隷属させ、今日のこの日、チョカの骨をその手に収めたのだ」

ピエンドはそこまで言うと、右手の人差し指を地面に向けた

「一つの尊き命を奪ったお前に、生きる権利はあるのか?」

チョキーはその場で黙り込み、頭の中であらゆる事を考えた

本当に自分が悪いのか、自分は殺される程の事をしたのか、第一自分よりも命を多く奪う人間はこの世にいくらでもいるのに、なぜ自分だけが──

ピエンドは小さく笑い、降ろした右手をするりと上げ、チョキーの顔に向けた

「私なら、今すぐにでもお前の頭を焼き払い、消し炭にしてみせる」

チョキーはその指先に絶対的な恐怖を感じたが、悪魔はその指をくるりと一回転させ、指で数字の"1"を象った

「だが、このまま殺してもつまらない、ここは取引と行こうじゃないか」

取引

その言葉を聞いて、チョキーは生きる希望を見出した。

商人にとって、取引という二文字は特権であり、生きる術であり、自らの武器であるからだ。

ピエンドはその指先の"1"をチョキーに突きつけた

取引において、自分が提供する取引材料、という意味だ

「お前は今までと変わらず生き延び、商売をし、チョカとはきっぱりさよならをする」

そして、ピエンドは二つ目の指を立てた

取引において、相手に要求する取引材料、という意味だ

「そして、私は──」

659 名前: ◆yyWXV3xFSw 投稿日:2007/01/01(月) 03:35:41 [ xPImauBE ]
PCから書き込んでるのでIDが違うと思いますが>>648です。

>>651
御指摘有難う御座います。
「」の文の後ろに。をつけるというのは、例えば
「バナナを食べた。」
ということでしょうか?
(今バナナを食べているんです^^)
「」の後ろに。を付けないと今ということは、
上記の文を現在進行形にすると
「バナナを食べている」
という様になるのでしょうか?
勉強になります。


続きを考えたんですが書いてもよろしいのでしょうか?

660 名前: ◆ACGhoST.hk 投稿日:2007/01/01(月) 03:38:24 [ LlQbaSRk ]
トリップミスorz
連投すみません

661 名前:名無しさん 投稿日:2007/01/01(月) 04:29:01 [ dAnF8.e6 ]
>>659
ぜひ書いて欲しい。

国語の文法的なものを持ち出されれば今までの小説は色々な部分で間違ってるかもしれないが
ここはそういうものに縛られず自由に書いても良いスレって事でいいじゃない
そんな俺はwordで小説書いてたら文法おかしいって指摘されまくってイライラしてメモ帳で書く事にした

662 名前:名無しさん 投稿日:2007/01/01(月) 08:13:15 [ R4g7OgKI ]
>>659
どうやら具体例を出さなかったのが悪かったみたいね^^;

「俺だって信じたくは無いさ」
↑例えばこういう文章があるとする。
「俺だって信じたくは無いさ。」
↑という文章にするとダメ。

基本的に、「今の」小説は「〜〜。」という文章はしない。
しているのは昔の小説だから、今書いている小説としてはダメ

因みに俺は小説家でもなんでもありません
ただちょっと批判がしたくなっただけ
(このためだけに用語を調べたわけじゃないぉ(^^ )

663 名前:ドギーマン 投稿日:2007/01/01(月) 08:40:01 [ AepyIIHk ]
あけおめ。
ワードは立ち上がるの遅いし、
多機能だけどいろいろ面倒くさいからやっぱりメモ帳が一番気楽でいいよね。

>>651
マジレス大いに結構。大歓迎。
誤字脱字みたいな細かいのはイラつくだけだけど、
文法ミスの指摘は勉強になるし、小説全体の感想も貰えれば尚いいと思う。
でも、「…」への指摘はナンセンスかな。
だって、沈黙以外に言葉の貯め、何とも言えない言葉、とか。
活字でしか表現できない小説にはどうしても必要になってくる表現だからね。
使いすぎだとしても、それはその人の表現の仕方だから。
と、次に書こうとしてるのに「…」が多いのを言い訳してみる。

664 名前:名無しさん 投稿日:2007/01/01(月) 09:11:01 [ R4g7OgKI ]
>>663
ご指摘ありがとう

だが、…の使いすぎは良い印象を与えるとは到底思えない。

だが、…を使ってはいけないとは言ってないよ。

使うのは結構だが、使いすぎだと言っているんだ。
まず、表現の工夫があれば、…は少なくて済むはずだと思う

少なくとも、人間が理由なしで黙る事は100%無いのさ。

言い返せないのか
怒りで何もいえないのか

沈黙にも種類があるから、…だけであらわすのは無理だってこと。

何ともいえないってことは、沈黙だよね

言葉の貯めなら、「少し間をあけていった」とかあるから…

とりあえず…の使いすぎはダメだよってこと
感想としては、チョキー・ファイルが一番面白かった。
しっかりしてる小説だったと思う。

665 名前:名無しさん 投稿日:2007/01/01(月) 09:15:44 [ R4g7OgKI ]
連続すまないけど

チョキー・ファイル3にある

悪魔が光って驚くシーンがあるけど

何故光って驚くかを明記したらいいと思う

666 名前:645-646 投稿日:2007/01/01(月) 10:44:12 [ eFHFlgNU ]
みなさんあけましておめでとうございます。
最近このスレの伸びもよくて嬉しい限りですね。

>>647>>649>>651
感想&指摘ありがとうございます。

645は一応プロローグやオープニングのようにするつもりだったのですが書き忘れていました^^;
2つの話は物語が進むにつれて繋がる予定です。

>>651
視線が変わりすぎとありますが、それは男のでも女の視線でもなく言われた通り神様視点だからです。
645は三人称、646は一人称で書いたつもりです。

ちなみに主人公は>>646に出てきた男の子のわけですが、ここは現代がメインの赤石の物語でも大丈夫でしょうか?

出直せとまで言われてるけど続き書いても大丈夫かな・・・?

667 名前:名無しさん 投稿日:2007/01/01(月) 11:50:42 [ R4g7OgKI ]
>>666
どうぞ続き書いてください

んー、>>646は…ホラーやミステリーなのかな?
初めにどうでもいい日常を描いているシーン
あれ全部いらないと思う。

あれが事件や他の展開の複線になるなら別だけど…

668 名前: ◆ACGhoST.hk 投稿日:2007/01/01(月) 13:41:54 [ LlQbaSRk ]
>>661-662
ありがとうございます。続き書きます。
トリップテストをしてみたところ、
パソコンから書き込むと違って出てきてしまうようなので
携帯から書き込むことにします。
見直しはしますが、多少の誤字脱字があっても見逃してやってください><

669 名前:ドギーマン 投稿日:2007/01/01(月) 16:00:19 [ AepyIIHk ]
初めて書いて出した>>612に続きをつけてみた。

9
あれから三ヶ月の月日が流れた。たった三ヶ月。
それでも、1人の田舎者を「真の冒険者」に変えるのには十分だった。
他人の目から見たら今の僕はどう移るだろう。
身体のあちこちに傷跡がちらばっている。
その種類もまちまちで、刀傷、歯形、火傷・・・。
顔も以前の面影を無くしかけていた。
僕は広場の噴水で急いで顔を洗い。ローブを羽織って人目を避けるように歩き出した。

没落貴族の屋敷。
主人を無くしたこの屋敷は、いまはろくに手入れもされず。
外壁はぼろぼろでところどころ崩れていて、庭は雑草が我が物顔で占拠している。
かつては立派な屋敷だったであろう建物は、今となっては僕のような無宿者達の寝床になっている。
ギャンブルで金を使い果たしたやつ。
商売に失敗したやつ。
そして、僕のように悪徳ギルドに騙された田舎者。
そう、僕は騙されたんだ。
地方の何も知らない若者は無条件に金のある冒険者に憧れる。
そういうカモに声をかけて、古都に連れて来ては騙してギルドに入れる。
家族をネタに脅して金を奪い。
家族に黙って出て来させることで帰りにくくする。
帰ろうにも、古都からの帰り道も分からない・・・。
ギルドを脱退することも許されない。
戻ることも進むことも出来なくして、金を奪い続ける・・・。
この哀れなカモを「スカウト」する役目を負うのがロマの少女達。
幼い容姿は見るものを油断させ、それでいて凶暴なモンスターや精霊を操る。
まさにうってつけというわけだ。

最近知ったことだが、ロマは年齢による容姿の変化が少ない。
僕を騙したあの○○も実際は僕よりも一回り年上らしい。
・・・・くそ。

ギギギ、ギィィィィ・・・
僕は重々しい扉を開けて玄関をくぐった。
広く、寒々しく、誰も掃除もしないせいで妙な悪臭も立ち込めてはいるが、
それでも雨風をしのげるだけマシだ。
こんな場所でも、優劣があって。
一番寝心地の良い寝室のベッドはウルフマンに占拠されている。
細かい装飾の施された豪華な作りの寝台も、まさかケダモノ(正確には人間だが)に寝床にされるとは思わなかったろう。
ふかふかの羽毛布団も体毛にまみれてみる影もない。
その他のソファ、暖炉のそば、どこもかしこも強そうな連中の場所だ。
そんな場所以外では、僕を含めて大勢の人間が廊下や部屋の床で寝ている。
当然、こんな場所でおちおち眠れるわけもない。
現に時々行方不明になる者がいる。
シーフに寝首をかかれて、服も金も全部奪われて地下墓地に捨てられてアンデッド達に食われるらしい。
あの妙な悪臭は、何人もの乾いた血の臭いだ。
それより、何よりも怖いのは「冬」だ。
こんな劣悪な環境で冬を迎えれば、僕のような線の細い人間は眠りから覚めることなく天に召される。
僕だけじゃなく廊下や床組の半数以上が死ぬらしい。
ここにずっと以前から住んでいるという書斎のネクロマンサーに教わった。
気味の悪い奴だったけど、まず間違いのない話だろう。
もう、時間がない。秋が訪れようとしている。

10
ここで必要なのは、何よりも仲間。
信用は出来なくても、協力し合える仲間だ。
寝首をかかれない様に見張ったり、大した物はないけど荷物を見張ったり。狩りを共にしたりする。
僕の仲間は、武道家とビショップの××さん。
武道家は僕と同じ、悪徳ギルドに騙されたクチだ。
名前も分からないし無口なやつだけど、悪い感じはしなかった。ただ不気味なだけ。
××さんは僕が初めて古都に来てあの○○に嵌められたとき、懺悔室で泣き続ける僕を優しく諭してくれた。
言わば僕にとっては恩人だ。
顔を洗って戻ってきた僕は武道家にありがとうと言って荷物をまとめ始めた。
「ああ」
細い返事が返ってきた。彼は騙されて以来人が信用出来なくなってしまったらしい。
僕も似たようなものだけど。
武道家の荷物は既にまとめてあった。僕は荷物を鞄に詰め終えると武道家に行こう言った。
武道家は僕とは目を合わせようともせず、のろのろと立ち上がった。

僕達は教会へ××さんを迎えに行った。狩りの手伝いを頼んだら快く引き受けてくれた。
僕は148万Gを今週末にあのギルドの銀行口座に収めなければならない。武道家は160万Gらしい。
最初の頃は苦しかったが、最近はアリアンで高額でアイテムを取引してくれる店を発見したので、
大分楽に金を集めることが出来るようになってきた。

670 名前:ドギーマン 投稿日:2007/01/01(月) 16:01:50 [ AepyIIHk ]
11
海の神殿。海の神が居るらしい。ただの噂だと思うけど。
金を集めるには格好の場所なので冒険者も多い。
海の中にあるらしいが、空気もあるし神々しいまでの光に溢れている。
僕はここが好きだ。ビショップである××さんもこういう雰囲気が良いらしく、ひたすら祈り続けている。
いや、僕が弱いからか。
レベルは上がるけどちっとも剣の扱いに慣れない。
稼ぎのほとんどはギルドに取られるせいで装備にまわす余裕もない。
よく見ればこの剣も細かい刃こぼれだらけだ。これじゃ斬れるわけがない。
くそ、ケチって安物買うんじゃなかった。なまくら掴まされた。
そんな僕の横では武道家が普段からは想像も付かない気迫でモンスターをなぎ倒していた。
クラゲの長い触手をするりと避け、「はあ!」と雄叫びと共に鉄の爪でピンク色のゼリーを切り裂く。
速くて、しなやかな動き。強い。
結局その日僕は役にも立てず、2人の足を引っ張ってばかりだった。
僕は終止2人に謝ってばかりだったけど、××さんはいいんですよとゴツい顔をほころばせて言った。
その顔でさえなかったら、子供に泣かれないのに。
武道家は相変わらず無口で、帰途の間も僕とビショップの会話に加わろうともせず。
僕達の後ろをゆっくりと歩いていた。
彼の目は、僕の背中に向けられているようだった。

12
港町ブリッジヘッドに着いた。
潮の匂いがする。
ここのシーフギルドは悪名高いことで有名だ。
窃盗、密輸、強姦、恐喝、殺人。
犯罪率の高さは他の都市と比べて郡を抜いている。要するに、用心しろってこと。
こんな場所でも信仰はあるらしく、ビショップは宿屋に無料で泊まれる。
僕と武道家もタダで泊めて貰えた。
ただし、××さんだけはシングルルーム、僕と武道家はダブルだった。

ベッドに仰向けに寝転がった。
武道家も隣のベッドで寝転がっている。
僕は天井のシミを眺めながら、ずっと知りたかった事を聞いた。
「あのさ、名前は?」
「・・・・」
・・・・・・・・・・・・・・・沈黙。彼は名前を明かそうとしない。
前から何度か聞いた質問だけど、また聞いてみた。
「君強いよね。武術は誰に教わったの?」
「師」
・・・・・・・・・・・・・・・「死」とも聞き取れるから怖い。けど、たぶん師と言ったんだろう。
話すことが無くなってきた。
「今日は助かったよ。明日は足引っ張らないように頑張るからさ」
「ああ」
・・・・・・・・・・・・・・・会話が続かない。いつもの事だけど。

重々しい空気に耐えられなくなった僕は散歩してくると言い残して外に出た。
港の海を眺めながら歩いた。
真っ黒な海の上を真っ白な月の輝きが揺れている。
ぼーっと、眺めながら歩いた。
ふと気がつくと、そこはシーフギルドの倉庫があるあたり。
やばい場所だ。目を付けられれば金を盗られて海に沈められる。
急いで立ち去ろうとすると、目の前にあいつが居た。

ずっと遠くの街灯の下にチラっとだけだけど、忘れもしないロマの民族衣装。
○○だ。
すぐに明かりの中から失せてしまった。でも、間違いない。
僕は湧き上がる激しい怒りを抑え、○○が消えたほうへ向かった。

671 名前:ドギーマン 投稿日:2007/01/01(月) 16:03:41 [ AepyIIHk ]
13
そこは全く人けのない場所だった。
シーフギルドの倉庫。
一般人なら絶対に近寄りたくない場所。
僕は建物の壁越しにそぉ〜っと覗き込んだ。
そこに○○は居た。
そしてその向かい側にも誰か居る。
長身の男?暗くてよく見えない。長髪のようだから女かとも思ったが、声で男だと分かった。
動悸を抑え聴覚に全神経を集中した。

○○の声だ。
「これが、今月の新規ギルド登録者のリストです」
それに続いて、男の声
「ご苦労。相変わらずいい成績だよ。この調子なら来年の君の副ギルドマスター昇格も検討しておかなくてはな」

「ありがとうございます。マスター」

僕の心臓が大きく高鳴った。
すぐ向こうに、ギルドマスターがいる。
僕を嵌めたギルドの、ボスが・・・。
僕は激しくなる呼吸をなんとか静めようとしていた。

じゃッ・・・
背後から地面を踏みしめる、靴と砂が擦れあう音が聞こえた。
僕は振り返ると同時に剣の柄に手をかけた。
が、間に合わず右脚に凄まじい衝撃を受けた。
たまらず倒れこみそうになったところに顎をカチ上げられて吹っ飛んだ。
一瞬意識が飛びそうになる。
「は・・・ぐっ・・・」
視界がぐらぐら揺れる。
「何だ?」
僕は○○とギルドマスターの男の前に投げ出されてしまっていた。

14
僕は慌てて剣を抜き、立ち上がろうとした。
だけど、脚が言うことを聞かない。ガクガクと振るえて立ち上がれない。
なんとか立ち上がろうとする僕を見下ろしながら、○○は言った。
「あら。お久しぶりね」
「だ、ま、れ」
ガチガチ震える顎をなんとか制してぼくは○○の目を睨みつけて言った。
そんな僕をみて○○は腹を抱えて笑い出した。
夜の静寂の中にあはははははははと、○○の無邪気な笑い声が響き渡る。
自分では分からないけど、どうやら僕はかなり情けない顔で似合わないセリフを吐いたようだ。
僕は剣を床に突いて、身体を支えてなんとか立ち上がった。
僕は今、三人に囲まれている。逃げるしかない。
どうやって逃げるか、考えを巡らせていると
「無駄だ。諦めろ」
さっき、僕を吹き飛ばした奴だ。
僕が隠れていた暗がりから、ゆっくりと歩み出てきた。
武道家だ。
もしかしたらと思ったけど、
改めて事実を突きつけられるとショックだった。
「僕を監視してたのか?」
武道家は表情を変えずにそうだと答えた。
「僕と同じように脅されているっていうのは嘘だったのか?」
「いや」
「一体・・」
僕の問いを先読みして○○が答えた。
「彼はねえ。とっても強いのよ。その腕を見込んでギルドへの納金を3分の1にする代わりに
あなたみたいな不穏な分子を監視して取り除く仕事が任せてあるのよ」
「なにより、あなたみたいなウスノロと違って。人を見る目があるしね!」
そう言うと僕に向かって小さな唇の端を釣り上げて笑って見せた。
目は笑っていない。
武道家は黙って僕を見ていた。構えを解いているが、油断の無い気迫が伝わってくる。
ギルドマスターはその後ろに居るが、表情は窺い知れない。
折角、目の前に居るのに・・・。
このままじゃあ、消される。

672 名前:ドギーマン 投稿日:2007/01/01(月) 16:04:26 [ AepyIIHk ]
15
僕はほとんど諦めていた。
いや、諦めてしまいたかった。
疲れてしまったから。
でも、最後に一つだけどうしても聞きたかったことがあった。
「最後に、一つだけ聞かせてくれ」
「なに?」○○が表情を崩さずに答えた。
「僕の両親は、僕が居なくなったあとどうしてた?どうせ監視を付けているんだろ」
「はあ?監視?そんな手間のかかることはしないわよ」
○○はため息をついて、やれやれといった素振りで言った。

「とっくに消した」

僕の中で何かが弾けた。
脚の震えが嘘のように引いて、体中に力がみなぎっていく。
「あああああ!!!」
僕は剣を振りかぶり、前に突き出した。
○○も笛を振ってノナメに命令を下そうとしたが、
僕の身体は強烈な熱を帯びて、風よりも早く突き進んだ。
僕の身体は○○を弾き飛ばし、その後ろに立っていたギルドマスター。ウィザードに向かって突進した。
僕の通った跡の床は燃え上がり、真っ黒に焼け焦げた。
僕の剣はウィザードの腹を刺していた。
やった。

そう思った次の瞬間、ウィザードの身体が膨れ上がった。
体中から毛が吹き出すように生え。
爪は長く、鋭く伸び。
顎が前にせり出し、犬歯が鋭く長い牙になった。
ウルフマン。
あの、屋敷の寝室を占拠してた奴。僕よりずっと身体が大きい。
愕然と見上げる僕を見下ろしてウルフマンが言った。
「惜しかったな。剣がなまくらでさえ無かったら、俺様の鋼の肉体を貫けたものを」
僕の剣は折れていた。
「んぅ・・・」とうなり声を上げると、ウルフマンの腹に残っていた剣の切っ先がゆっくりとせり出し、
カランと軽い音を立てて地面に落ちた。
ウルフマンは数メートル後方に吹き飛んで見えなくなった○○のほうをチラリと見て、視線を僕に戻した。
「さて、と。有能な部下を殺してくれた礼をしなくてはな」
そう言ってゆっくりと振り上げられたウルフマンの右腕は、
僕の頭に向かって振り下ろされた。

673 名前:ドギーマン 投稿日:2007/01/01(月) 16:06:51 [ AepyIIHk ]
全体的に暗い話になってる。
前フリからして暗かったからね。
続きはまた後日。

674 名前: ◆ACGhoST.hk 投稿日:2007/01/01(月) 19:11:05 [ LlQbaSRk ]
>>648の続き


数週間が経った。
この数週間の間に、のんびり散歩しながらブリッジヘッドからハノブに行ったよ。
そして、ハノブでのんびりと過ごしていたんだが…
なんだか狩りがしたくなったんだ。
ということで、南望楼二階にいるオーガを狩ることにした。
そして、二階に着くと、オーガを黙々と狩った。
それで、しばらく狩ってたんだがだんだん疲れてきてね。
部屋の隅に座り休憩することにしたんだ。
タゲ回避付けてるから安心して休んでた。

俺はふと、隣りに誰かいることに気がついた。
右を見ると、女の子が俺に寄り添って座っていたんだ。
「あ、起きた!おはよう^^」
どうやら俺は寝てたみたいだ。
「こんなとこで寝てたらあぶないでしょ」
女の子はそう言い、俺に笑いかけてきた。
女の子は、ウェーブのかかったブロンドの髪をなびかせ、黒い頭巾を被っている。
俺を散々いたぶってきたテイマ達とは雰囲気が違っている。
そのとき、俺の首筋に変な感触が。
「ガウガウ」
赤い犬が、俺の首筋を舐めている。
「わ、くすぐったいな」
俺は、赤い犬を戯れ合うようにして撫でてやった。
「ふふ。ケルビーったら、すっかりお気に入りね」
この女の子はサマナーのようだ。
「サマナーか。珍しいな」
俺はサマナーに言った。
「クリWIZもね^^」

675 名前:名無しさん 投稿日:2007/01/01(月) 20:08:14 [ HLccy49o ]
まだ無題b

=第一話=

「くっ!・・・応援はまだ来ねぇのか!!」

廃墟とかした大都市に、最後の一人の悲痛な叫びがこだまする。

周囲を取り囲む、コボルトの眷属である悪魔達。

コボルト・グレムリン・ゴブリン・ファミリア・インプ。

色とりどりのマントを羽織った悪魔の襲撃は激烈であった。

かつてのゴドム共和国の首都であり、歴史ある古都ブルンネンシュティングは、、

人語さえ解せぬ無知な悪魔に、そのすべてを蹂躙されていた。

古都の有する軍はすでに壊滅。

たまたま居合わせた冒険者達が防衛に参加したが、それさえも残すところ、彼一人である。

「キキィ!」

水色のマントを背負うコボルトの槍が、彼の腹部に突き刺さる。

野蛮で残虐な笑みを浮かべる水色の悪魔。

そして、彼がその痛みに動きを止めた一瞬。

幾本もの五色の槍が、彼の肉体のいたる所を刺し貫いた。

「・・・ち・・・き・・・」

・・・断末魔さえ、悪魔達は最後までつむがせなかった。

さらに多くの悪魔たちが、肉を貫く感覚を求めて、瀕死の彼へ群がったのだ。

彼の職業、誇り高き戦士であるコトさえ、識別できないほどに。

676 名前:名無しさん 投稿日:2007/01/01(月) 20:59:19 [ xocynORE ]
>>673
ん?○○は死んだのか・・??
続編期待してます。

677 名前:殺人技術 投稿日:2007/01/01(月) 23:26:15 [ E9458iSQ ]
んー……なんか読む側が混乱しそうだけどうpしていいのかな。

>>665
読んでくれてありがとうございます。
んー、あれはどういう事かと言いますと、簡単に言えばイメージ、偏見です。
怪物が闊歩して、ある所では数え切れない程の人間が怪物(モンスター)や悪魔(コボルトとか)に虐殺されているその世界では
少なくともチョキーの頭の中では ピエンド=悪魔=おぞましい化物 と一括りにされていて
逆に 白くて淡い光=天使=人間を助けてくれるありがたい存在、神聖な存在 ってイメージがあるんです、あったってことにしてください。
そこで悪魔のピエンドが天使をイメージさせる様な光を出してたら、本来のイメージと全然違っていて困惑する訳です。
例を出すと、古風な京都の舞妓さんが新宿の路地裏で不良座りでシャブってたり
派手な柄のシャツにグラサンと頭刈り上げにタバコスパスパしてるいかにもってヤーさんが子供には優しかったり涙もろかったりするような物です
……極端すぎるかな。
んで、今2つ出した例のうちピエンドに当てはまるのは後者で、チョキーも何か知らないけど惹かれる訳です。
……なんか無理矢理な説明ですいません。

でも、説明不足なのは弁解のしようがないので、ご指摘ありがとうございました。
じゃあ、続きうpします

チョキー・ファイル
>>656
>>657
>>658

678 名前:殺人技術 投稿日:2007/01/01(月) 23:26:56 [ E9458iSQ ]
チョキーは朝靄の立ち込める古都の清閑の中で、いつも決まって陣取る古都を囲む川の石橋の上に、今日も店を構えた。

馴れた手つきで商売道具を並べ、折りたたみ椅子を置き、一息ついて腰を下ろす

小太りのチョキーが椅子に掛けると、使い古した椅子はうんざりとした声を上げて軋んだ。

"ずいぶんと落ち着いているんだな"

チョキーの頭の中で、昨夜邂逅したピエンドの声が聞こえた──まるで麻薬の禁断症状の様に、頭の中でぼんぼんとゴム鞠の様に声が響き、決して気持ちいいとは言えないが、未体験の不思議な感覚だった。

しかし、チョキーは職業上頭が悪くなく、いつ何時何が起こるか分からないこの世界、もしもの時の順応性もあった。

"商人に出来るのは、物を売買する事だけだ"

チョキーはいつぞやの港町の本屋でつかまされた"改訂版・怪物全書"の一面を思い出した。

ピエンドは人間と非常に精神構造が似ているが、人間に憑依する能力を持つ──確か、そう記されていた事を記憶している。

安物の書物なので過信はしなかったが──どうやら正しいらしい、それは、正に今のチョキーの状態だ。

"約束は憶えているな?"

ピエンドがそう言うと、チョキーは鞄から躊躇いがちに、灰色の小さな壷を取り出した

"商人が契約を不履行するわけない"

そして、チョキーはその壷を力の限り振り被り、古都を囲む川に投げ込んだ

のっぺりとした川の流れに飛沫が砕けると、川の小魚が驚いて逃げ惑い、ぷかりぷかりと朝靄とさざ波の狭間へと吸い込まれていった。

"これでいいのか?"

"ああ、これでいい"

チョキーは壷が視界から消えるのを目録に収めると、大きく溜め息をついた。

昨夜の取引は、今まで日常的に交わしてきたどの取引よりも、チョキーに重要かつ不利な物となった、当然だ。

「"そして、私はお前の体に憑依し、ブルンネンシュティグの国会議員を全て殺す"」

679 名前:殺人技術 投稿日:2007/01/01(月) 23:27:38 [ E9458iSQ ]
"そうだ、その為に、お前を選んだ"

ピエンドは嬉しそうに喉を鳴らすと、チョキーは不思議な気分になった。

お前の目的は絶対に果たさせない──しかし、チョキーは頭の中の悪魔が単なる悪魔とは思えなかった。

やはり、第一印象が他の悪魔と決定的に違っていたからだろうか?それとも既に悪魔の術中に填まって居るのだろうか。

"そういえば、まだ名前も言って無いな"

チョキーは仕方なくピエンドに対する警戒を解き、頭の中でピエンドと握手した

正気の沙汰ではない。

"改めて、チョキーだ"

"生まれ持って有している名前はないが、F・Fと呼ばれている"

ファイルは淡々と言い、チョキーはそれを聞いて、眉を顰めた。

F・F?──地下界の名前だろうか。

"私の能力を知った地下界の友人はそう言っている、言い難いなら──そうだな、ファイルと呼べ"

ピエンドは自らをファイルと称し、チョキーは地下界にも友人等という付き合いがある事に驚きながらも、その名前を口の中で反芻した。

"分かった、ファイル、それよりも私はこれからどうすればいい?"

チョキーが何気なくそう尋ねると、ファイルは高らかに笑って応えた。

"何もしなくて良い、チョキーはファイルの悪魔としての能力を得た、お前は訪れてくる出来事に柔軟に対応していけばそれで私の目的は達成する"

チョキーはそれを聞くとややばつの悪そうな顔をして、暗鬱とした。

つまり、普通に過ごしていたらそれで目的が達成されてしまうのだ。

"何もしなくて目的が達成する訳ないだろう"

登る朝日が霞を晴らしていくと、町には次第に人の足音や声が響き、空気は太陽の光を浴びてか、次第に熱を持っていった。

チョキーもファイルに言われた通りに、今までと同じ様に、旅人と武器の取引をし、女性にアクセサリを売り、若い男にトンカチを振るって見せ……

本当にこんな事で、何が起こると言うのだろうか、いいや起きないはずだ、自分から行動しない限り転機は訪れない物だ。

「おい、店の人」

太陽が街の天辺に掲げられる頃、チョキーはふと声をかけられて顔を上げた。

目の前に立つ長いコートを着込んだ端正な顔立ちの男は、物言わず一枚の羊皮紙の巻物を取り出し、チョキーに見せ付けた。

「……何だ」

チョキーはその羊皮紙に並べられた文字の羅列を飛ばし、右下の捺印を見て息を呑んだ。

ウネウネとした菱形の中に、さらに菱形が幾重にも重なった紋章

今は亡きブルン王朝の印であり、ブルンネンシュティグ国会の印でもあった。

「国会議員助手のロングッシュとか言う奴が、お前に国会議事堂前まで来て欲しいそうだ、チョカで合ってるよな」

それは犬の名前だ。

「チョキーだ、君の名は?」

「カルス、しがないウィザードだ」

カルスは無表情で言い、羊皮紙を巻いてチョキーの膠の上に置くと、また口を開いた

「他にも何人かに、これを伝えなきゃいけないのでな、失礼する」

カルスは踵を返すと、背中越しに「怠け鳩め」と吐き捨てたのが聞こえた。

"なるほど"

チョキーは感嘆の溜め息を吐いた。

この悪魔からは逃げられない。

680 名前:名無しさん 投稿日:2007/01/02(火) 00:42:20 [ g5kTrSEA ]
ギルバート的な物を一本書きたくなったので。


赤石夢、と書いて「キムチドリーム」と読む、リア厨小説の始まり始まりー。

1.
 俺の名前は逸見久遠。そう、逸見久遠。そうです、俺は逸見久遠。うん、間違いなく。
 俺は人間。男、中学三年生、彼女なんて生まれてこの方出来た事なんて無い、毎日ネットゲーム『RED STONE』に明け暮れる受験生のはずなのだ。
 そう、俺はあくまでこちら側――三次元の住人のハズだ。よし、そうだ、間違いない。……だが、今俺の目の前に広がっているのは……何だこれ。三次元なのに、二次元の世界。
 
 ……自分の中でも整理が出来ないので、少し前から――そうだな、今日、俺が家に帰ってきた辺りから――思い出そう。

 今日もようやくながら学校が終わった。既に部活なぞ引退し(元々大して出ていた訳でも無かったが)、家に帰れば両親の勉強コールが待っている。
 そんな中でも、矢張り娯楽は必要だ。毎日家から帰る度に俺はPCの前に座り、ネットゲーム『RED STONE』を楽しく遊んでいた。
 そして、今日もいつもと同じように、そう、いつもと全く同じに、ネットゲームを起動したんだ。いつもと同じように、いつもと同じサーバーに、入った。
 その瞬間画面に映された映像はいつもとは全く違う物だった。
 このゲームの中にいる職業の一つ、シーフ。そのシーフが、ガゴイルのようなモンスターによって、鎖で縛られている絵。これがテイマーやサマナーだのの絵だったら取り敢えずスクリーンショットでも撮るのだが……。
『嫌ダ、マダ生キタイ』
 いきなり、画面にそう文字が表示された。これは運営会社が新しくこういう画面にしたのか……? というか、それ以外有り得ない、ハズ。だが、ここで文字を表示する意味が解らない。
『私ハ……』
 違う、運営の仕様変更でも何でもなかった。何かなんて解らないが、これは……ヤバイ!
 何でかって? PCの画面からガゴイルの手が伸びてきたらテメェはどうするよ!?
『彼女ノ元ヘ……!』
 その文字が椅子ごと後ろに下がった俺の視界に入ったと同時に、PCの画面が変に光った。そして、次に眼を開けると、俺は。

681 名前:名無しさん 投稿日:2007/01/02(火) 00:43:06 [ g5kTrSEA ]
「……何じゃこりゃ」
 白い世界の中に居た。何もない世界。見渡す限りに白しかない。何だろう、この展開。訳が分からないのですが。と、そんな風に独りで居ない誰かに質問してみても何の意味もない。
 もう一度、良く、この白い世界の果てを見ようとする。そして、ふと後ろを見た俺の目の前に、
 さっき画面に映っていた、鎖に縛られたシーフの姿が在った。
「!」
 腰が抜ける、という奴か、がくん、と自分の足が自分を支えられなくなる。ビビり過ぎだぞ、俺。
「ソノ男ハ」
 いきなり後ろから声が聞こえる。何々、何事ですかと、俺が後ろをもう一度向くと、其処にはガゴイルが一匹、宙に浮くようにして居た。
 慌てて後ろに下がった俺は、後ろで縛られているシーフにぶつかった。咄嗟に、そのシーフのベルトに大量につけられているダガーの中の一本を取る。そしてそれをナイフのようにして構え、ガゴイルに向き直る。
「動くな化け物、テメェは誰だ」
 命令と質問を早口に伝える。緊張で声が震え、裏返る。ダガーを手にした手はガクガクと震え、我ながらとてつもなく情けない。
「ソノ男ハ、私ヲ殺シタ」
 どちらにも答えられていないので斬りかかろうかと思ったが思いとどまる。コイツは、さっきの言葉の続きを発しているだけなのだと気づいたからだ。
「私ノ名ハぎるばーと」
 ギルバート。その名には聞き覚え……じゃない、見覚えが在る。確か、このゲームの中の……そう、初心者クエストだ。その中で、最後の最後に、完全な化け物と化して、プレイヤーに殺される運命のキャラクター。
 そうだ、確か昨日はコイツを殺した所でログアウトしたんだった。……それで? 何でそれで、俺は此処に居る理由が生まれる訳なんだ?
「私ハ、彼女ノ所ヘ帰ル」
 ギルバートが、そう呟いた。化け物になり、死んで、それでも尚、コイツは自分の恋人を愛してるのか? ……いや、普通なら感動物だけども、残念な事に、
「俺は興味が無いな」
 ということである。
「ソノ男ハ、オ前」
 後ろの、コイツが。俺、だぁ? 益々何を言ってるのか……、言ってるのか……、……解った……?
「テメェを殺したのは俺、って事か」
 あぁ、グラフィックが全く同じだから気づかなかったよ。後ろにいるこれは、俺のキャラ、シーフ。
 マエルド。
 だから、俺が此処に居る訳なのね。だが、にしても、何で俺だけなんだろうか。別に、他のプレイヤーだって全てその罪は背負う事になるはずだ。……たかがゲームだが。
 その中から俺が選ばれた、というのは運命……だったらそれはそれでゲームっぽくて楽しいが、恐らく偶然だろう。俺が何かの力を持ってる訳でも英雄な訳でも無いだろう。残念な事に。
 つまり、俺がここで何するべきか? そうだな、まず現実に復帰するべきだ。が、さっきから密かにそこら中引っ張ったりするが目は覚めない。夢ではない、つーか痛い。
 現実に復帰する為には、こいつに解放して貰う他無いのか。何これ、こういうクエスト? と現実逃避に走っても何ら意味はない。
 結局俺は、
「で、俺は何をすれば良いんだい?」
 どうせこれしか現実に帰る方法が無いのなら、楽しむだけ楽しもう、と言う結論に達した。

682 名前:第15話 劉 投稿日:2007/01/02(火) 03:45:49 [ BfijPlUY ]
あれから捜査上、進展したのは自分たちが担当しているネカフェでの殺人事件だけだった。

「田村さん。うちの課の事件と他の3件はやっぱり連続なんでしょうか?」
「俺はそうだと思っている。つながれば本部行きだ。お前は他の3件の連中とコネがあるか?佐々木!」
「例のネットバンクカードの事ですか? それとなく訊けると思います」

うちの担当のガイシャの所持品にはカードが無く、例の銀行に口座を所有していたことが判った。
これが他の事件のガイシャも同じなら、殺された真相は口座にある。
全4件の事件のガイシャが行ったネカフェも判明した。
佐々木が気を利かせ、すでに他の課から情報入手していた。

「共通点はいくつかありました。
 ・全店共通でUSB端子を使えたこと。
 ・ブラウザの履歴にネットバンクを使用した跡があったこと。
 ・使用直後に消したデータがあること。
以上3点です。他にもあるかもしれませんが、確定しているのはこれだけです」
「USB端子は何か関係あるのか?」
「スパイウェアーって知ってます?それの持ち運びをUSBメモリーでやるわけです」
「年寄りには解からんよ。解かり易く説明してくれ」
「要は、外部機器の接続を難しくすることにより、不特定多数のユーザーに
対する電子詐欺を物理的に防ごうとすると、USB端子を閉鎖するのが手っ取り早いんです」
「うちの事件のPCには消されたデータは残っているのか?」
「はぃ。犯行直後に押収しましたので、削除データは丸生きでした」
「どうもわからんなぁ・・消したのに残っているって?さっぱりだな」
「PCのHDD上のデータは消すと言っても消えてないんです。見かけ上消えたように
ユーザーには見えるんですが、実は次のデータが上書きされるまで一度書いた
データは残っているんです。所定のソフトを使えば生き返るって寸法なんですよ」
「・・・・で? 何が残っていたんだ? というか、何が消されていたんだ?」
「スパイウェアーが一つと、Red Stoneと言うネットゲームです」
「さっきの話と繋がったな。ゲームは関係なさそうだが」
「ですね。このスパイウェアーは凄くて、キーボードによる打ち込みを全て
記憶しているんです。ミスタイプまでも。これでパスワードなんかいちころです」
「ネットバンクを狙われたのか・・・殺す意味がわからん」

他の担当捜査員とも検討しても、残ったのは事実のみ。動機が見当たらない。
スパイに成功して殺す意味が全く見当たらないのだ。
ひとまず娘の美香にこちらの進捗を伝えることにした。

「もしもし?今いいか?」
「大丈夫。何か判った? こっちも状況が少し判ったわよ」
「例のカードだが、俺の担当ガイシャは口座を持っていたよ。親も知らなかったらしい」
「こっちも例のキーホルダーを銀行に問い合わせたわよ! 紛失届けは出ていなかった」
「4つともか?」
「そう、4つとも。でも、カードが家宅捜索でも出てこないのよ。おかしいのよね」
「ホシはなんか喋ったのか? ・・・家のPCは調べたのか?」
「名前は劉。それしか言わない。PCのだいたいの使用状況はわかったわ。
あらゆるクラッキングツールが出てきたのよ。立証はこれからだけどね」
「う〜ん・・・こりゃ合同になるなぁ。大事になりそうだ」
「何か判ったら教えて頂戴! こっちも電話するから」
「うん、分かった。くれぐれも気をつけてな」

683 名前:名無しさん 投稿日:2007/01/02(火) 14:12:19 [ N3tqag3o ]
なんか凄いスレが進んでる・・
批判や指摘レスは苦手なので、純粋に面白かったと思える部分を。

>>673
またまry読ませてもらいました(*´д`*)
関係ないけどメイン武道なもんで武道家が登場するとこはつい見入ってしまいました。
戦闘シーンは小説で表現すると大変なんですよね。上手い。
続編期待してます〜

>>677
前回までの話をアンカー付きで指し示してくれて分かりやすい。
殺人事件の予兆のようになってきましたね。続編期待、むしろ希望。

>>680
自分も今考えてる話でリアル世界からRS世界に・・ってネタのSSがあるもので面白く読めました。
ギルバートって誰だっけと思ったら初心者クエストの彼ですね。
実は初心者クエスト一回しかやってなくて内容をほぼ忘れていた(;´∀`)
続編を読む事により思い出せるよう頑張りますorz

やっぱり名前付けるのって難しいのか・・。
自分は小説書く時は最初に名前付けちゃうからな。
名前のせいで先入観が持たれて進ませにくくなったりするものなのだろうか。

684 名前:680 投稿日:2007/01/02(火) 16:06:22 [ g5kTrSEA ]
>>683
か、感想が来てる!?Σ(゜Д゜)
ギルバートはかれこれ10回は殺したのでとても印象に残っています(;´Д`)
ゲーム内に初心者クエストに続くストーリーが見つからなかったので勝手に制作。
そんなグダグダなのですがどうぞ良ければこれからも読んでください。


あ、第二話の前にキャラ紹介。

逸見 久遠(いつみ くおん)
ネットゲーム「REDSTONE」を遊ぶ少年。
訳の分からないままにREDTONEの中に入り、
自分のキャラを救う為冒険する事に。
名前の由来は
「kimuti game on」→「kimuti on」→「itumi k on」→「itumi kon」→「逸見久遠」
何でキムチだけローマ字打ちなのかは聞いたら負け組。

マエルド
久遠がREDSTONEで使っているキャラクター。
初心者クエストの最後にて殺害したギルバートの亡霊に囚われている。
名前の由来は
「dream」→「maerd」
スペルが違おうが何しようが知ったこっちゃないのさ。

685 名前:680 投稿日:2007/01/02(火) 16:07:28 [ g5kTrSEA ]
これは……グロい、のか……?

キャラ紹介
>>684
第一話
>>680
>>681

2.
 さて、そんなこんなで、俺は三次元に見える二次元の世界に居る訳だ。お解り頂けただろうか。俺? 解ったけど解ってねぇよ畜生。
 ということで、ギルバートの命令の元、『ギルバートを人間として蘇らせる』強制的な、俺だけの、独りぼっちの、全くもって訳の分からないクエストが始まってしまった訳である。
 ……はぁ、運営会社は何やってんだろ。……あぁ、キムチ食ってんだっけか。さて、どうしたものか。
 運営会社はこんな自体は把握してないだろうし、というか把握してたらそれはそれで怖いというかふざけんなこの野郎モード突入な訳だが。
 何はともあれ、此処は古都ブルンネンシュティグ――所謂この世界の中心地、という奴だ――の西口から出たマップ。そこに立つ俺の姿は、マエルド――、簡単に言えば俺が使っているシーフの姿そのものだ。……が。
 生憎ダガーなぞ投げられるほど器用でも無いし、トラップを仕掛けられるほど素晴らしい知恵も持っちゃ居ない。スリも出来なければ強奪も出来ない、暗殺なんて持っての他。
 Q、さて、俺はどう攻撃すれば良いでしょう?
 A、……ダガーで直接斬りつける。
 と、そんなこんなで勝手すぎる新スキル。便利と言えば便利だが、不便と言えば不便全開である。マジで勘弁してください。
「っておわ!?」
 自問自答をくり返している間に、コボルトチャンプの一撃が飛んできた。それを避け、ダガーを喉元に突き刺す。コボルトチャンプの悲鳴と共に首から鮮血が吹きだし、一本しか持っていない俺のダガーと服だの顔だの腕だの何だのを紅く染めていく。
 視界の端で死の手前だというのに槍をもう一度構えるコボルトチャンプの手が見えた瞬間、首に突き刺したダガーをそこから抉るように回しながら抜く。短い悲鳴と共に襲いかかってきた最後の槍を横から掴み、奪い取り、
 倒れ込んでいくコボルトチャンプの顔面に突き刺してやる。
 最早悲鳴すら上げる事も不可能となったコボルトチャンプが槍ごと地面に叩きつけられ、絶命する。一息吐いた俺の目の前を一つの矢が飛んでいく。
 咄嗟に警戒態勢に入った俺が矢の飛んできた方を向くと、もう一本矢が飛んできていた。此処でダガーを使って叩き落とすなりすれば格好良いのだが、生憎そんな事が出来るほど凄い人間でもない。
 上に、そんなスキルを使えるシーフでもない。俺は、シーフの格好はしているがシーフではない。……一応言えば武道家でも無い。
 矢をしゃがんで避け、そこから全力で目の前に立ち、もう一度矢を番えているアーチャータイプのモンスターへと突進する。矢が幾らか飛んでくるが、撃つ瞬間が解れば、その瞬間に横に避ければ良い話、簡単にかわしながら一気に詰め寄る。
 先程のコボルトチャンプと同じように首にダガーを突き刺す。が、今度はそのまま上に引き上げ、顔面を引き裂いてやる。引き裂くだの何だの言っても、ゲームなのでどうという事も無いのだが。
 モンスターの死体が足下に転がる。が、矢張りゲーム、数十秒もすればこの死体なんて消えて無くなるだろう。血も同様だ。……まぁ、ゲーム内では血なんて出なかったけどな。

 そんな事を考えながら、コボルトチャンプ狩りを俺に命じた中年男性の所へと俺は戻った。

 キャンピングマスターLv4の称号をゲット。簡単に言うと、俺がこの世界に来た時は、Lv1のシーフの状態だった。つまり、俺は新キャラ、な状況下な訳である。ということで、何はともあれ、いつも通りにキャンピングマスターの称号を得た訳だが。
 無論銀行クエストも終了、Lvはまぁ、それなりか。ステータスの振り方なんぞ知らん。イメージすれば勝手に振られるんじゃ無いか? スキル? 覚えられる訳も無し。
 ただ、体力は上がった気がする。うん。それなりに良い感じ。LvUPの効果だけはしっかり在る事が解っている。ま、ギルバートを復活させる為の道具の情報収集と一緒にLvを上げていくのが無難、って所か。
 そんな事を考えながら、ダガーに付いた血を拭っていた。

686 名前:殺人技術 投稿日:2007/01/02(火) 19:20:24 [ E9458iSQ ]
>>683
感想ありがとー
>殺人事件の予兆のようになってきましたね。
ごめんね、ちょっと違う展開なの(´・ω・)

チョキー・ファイル

>>656
>>657
>>658
>>678
>>679

687 名前:殺人技術 投稿日:2007/01/02(火) 19:33:17 [ E9458iSQ ]
チョキー・ファイル(6)


羊皮紙に指定された時間、街が最も活気に溢れ、最も怪物が侵入しづらい時期

国会議事堂前は太陽の光が照りつけ、長い話になりうるとの事で、急遽国会議事堂内という事に変更になった。

集まった人間は自分を含め、ざっと4人

腰に折りたたみ式のパリーイング・ダガーと厚手の長剣をぶら下げた、まるで自らの筋肉を誇示するかのような服装の若い戦士。

自らの豊満な肉体をこれまた誇示するかのような、赤い金属で出来た弓を持つアーチャー。

そして、それらとは対照的に長袖のコートを羽織った、明朝に見かけた男、カルス。

ぱっと見ではいずれも旅人としての風格を臭わせいる。

そして、顔の整った若い男女の中に、壮年のただの商人である自分、チョキーを含めた4人は、ロッグンシュと名乗る青いスーツに身を固めた男の前で、かれこれ10分程待っていた。

どうやらロッグンシュの上官である国会議員を待っているそうだが、見てみるとだれもが別々の事をしており、なかなかに個性的だ。

浅葱色の髪の剣士は、照明の光を受けて鈍く輝く蛇の皮の様な剣を掲げ、鈍色の砥石で慣れた手付きで刃を研いでいる、10分もの間磨かれたその刃は、そのまま振り落とすだけでどんな怪物でも一刀両断できそうだ。

金色の髪に緑色のメッシュが入ったアーチャーは、手近なソファに腰掛けて目を瞑り、10分もの間微動だにしない、──瞑想しているのだとしたら、邪魔できないな。

そして、コートを羽織った長髪の男は、壁に凭れ掛かって、青いカバーの本を10分もの間ぶつぶつと読み耽っている。

「お待たせいたしました、奥の応接室に一人ずついらして下さい」

ロングッシュが咳払いをして言うと、全員がそれぞれの行動を中断し、浅葱色の髪の剣士からロングッシュに案内されて、奥の廊下へと消えて行った。

"ふん、末端とはいえ気に入らんな、どうせ他人に知られて欲しくないような依頼なんだろう"

ファイルがぼそりと呟き、チョキーは自分の頭の中で唾を吐かれた気配を感じた。

"国会議員なんてそんな物だ、旅人や商人、村人は政治に無知だと考え、自分勝手に世界を動かす"

チョキーがそう言うと、ファイルはくく、と嗤った

"分かってるじゃないか、それが政治家であり、私がこれから殺す人種だ"

688 名前:殺人技術 投稿日:2007/01/02(火) 19:37:18 [ E9458iSQ ]
チョキー・ファイル(7)


割と迅速に前の三人が応接室から戻り、剣士などはとっくに何処かへ消えてしまった。

チョキーがロングッシュに呼ばれると、チョキーは壮年の顔に笑みを作り、ロングッシュもそれに応えて会釈をした。

綺麗に磨かれた廊下に響く足音が止むと、頼りなさげな声を上げて応接室の扉が開いた。

応接室には既に男が座っており、ロングッシュが恭しく頭を下げた、彼がブロームというロングッシュの上司者だろう。

「座ってくれ」

ブロームはそう言って、長方形の漆塗りの机を挟んだ、高級そうな革張りのソファを指し、チョキーはそれに従った。

腹に贅肉がよく付いて、頭には恐らく鬘だろう、ブルン王朝の時代の宮廷音楽家の様にくるくると巻いた白髪をぶら下げている。

鬘は堅いだろうが、その本体についている贅肉は、炭火で焼けばさぞジューシーなのだろう、だが肌にはギトギト感があり、ウェルダンで頂きたいな、と、チョキーは危うく出そうになった涎を隠した。

"……おい"

チョキーがファイルに低い声で問いかけ、ファイルは頭の中でニヤニヤと笑った

"気付いた様だな"

ファイルは今までの人間じみた気配を解き、チョキーは鳥肌を立てた。

"俺は憑依と言ったが、実際にはチョキー、貴様の精神に同化してるのと同義だ"

ファイルは言葉に禍々しい、正に悪魔の風格を漂わせる語気を込めて、続ける。

"精神と肉体は一つであり、それは悪魔だろうと人間だろうと、動物だろうと天使だろうと同じだ、私がちょっと念じれば、貴様を猟奇殺人鬼にする事だってできる"

"……その方法で、国会議員を殺すつもりか!"

チョキーは怒りを露にファイルに迫ると、ファイルは何も言わず、不気味な笑いを響かせた

"まぁおさえな、今は目の前の奴の話を聞けよ"

チョキーははっとして、ブロームと目を合わせた

ブロームはその瞳に何を見たのか、びくりと体を震わせて、だがすぐに困惑を顔に浮かべながら、言葉を放った。

「……商人である君には、他の3人の旅人には出来ず、商人にしか出来ない仕事をしてもらう、それも商人の中で、君にしか出来ない事だ」

ブロームがそう言うと、ロングッシュが薄汚れた一枚の書類を机に乗せた、チョキーはそれをめくり上げ、ブロームは続けた

「それは、今は亡きブルン王朝の印が押された、一枚の書類だ」

そう言われ、チョキーは確かに、と呟いた

書類の墨には垂らした紅い蝋に、ブルンの印象がレリーフの様に象られている、よく見るとその隣に、何処かで見た事のある判が押されていた

「……この、ブルンの印象の隣にあるのは」

チョキーは、その卵のような印を指すと、ブロームはゆっくりとうなずいた。

「レッドアイ」

"レッドアイ?……なんだそりゃ"

黙っていたファイルが訝しげにチョキーに問いかけ、チョキーは軽く目を見開いた。

"今や都市伝説と化している、ある物質を捜索、研究する団体だ"

689 名前:殺人技術 投稿日:2007/01/02(火) 19:40:45 [ E9458iSQ ]
チョキー・ファイル(8)



ある物質──レッド・ストーン

昔、いや今もか──世界は三つに分かれている

神や天使、精霊が住むとされる天上界、悪魔やドワーフ、オーガ等の怪物が住むとされる地下界、そして人間が住む地上界、この3つの世界は互いに不可侵を保って来たが、ある時その均衡は崩壊した。

天上界にあり、火の精霊の卵とされているレッド・ストーンが、ある日突然地上に堕ちるという、歴史的大事件の一つによって、とされている。

レッド・ストーンの墜落に関与した天使達は罰として、また大天使の面子を保つ為に片翼をもぎ取られ、レッド・ストーンの捜索という面目で地上に追放された。

だが、レッド・ストーンは火の精霊の卵──ヘルメス学において、地水火風の四大元素が、すべての物質の元となっている「第一原質」にもっとも近い状態の存在と考えられていた三つの世界──

すなわち地上界も地下界も、それを知るやいなや、種族を総動員してそれを探し始めた

地下界からはファイルの様な悪魔や怪物が放たれ、天上界からは追放された天使達が、地上界ではあらゆる豪族が、たった一つしかないレッド・ストーンをありとあらゆる手を使って捜し求めた。

だが、レッド・ストーンが落ちたのは地上界──人間の世界、地下界の悪魔達や、天上界の天使達は長引く競争に遅れを取り、レッド・ストーンの捜索はほぼ人間だけが独占して進める物となった。

そこで設立されたのがレッドアイ──レッド・ストーンを血眼になって捜し求める者が集まり、レッド・ストーンの恩恵を受けようとする貴族達が莫大の金を投資した巨大な団体だったのだ。

なぜ全ての種族がレッド・ストーンを捜し求めるのか──その理由は、説明すると長くなるので省略する。

「……ちょっと待て、この書類は見た所契約書──それもスポンサーとしての、だ」

チョキーはそう言うと、ブロームはまた同じ様に頷いた

「そう、それは正真正銘、ブルン王朝がレッドアイと手を結んだという証明書だ」

「増長し、人道に反した行いに手を染めたレッドアイを半壊に追い込んだのは、他ならないブルン王朝のはずだ、つまりこれは……」

チョキーは自分が興奮している事に気付かず、間髪居れず言った、ファイルが頭の中で溜め息をつき、ブロームは言った

「そうだ、これはスキャンダル、それも何世紀にも渡って栄えた1つの国家を、この1枚で壊滅せしめるほどの威力を持っている、な」

チョキーはそれを聞いて、じゃあその紙が原因でブルン王朝が、と言いかけたが、すんでの所で口を噤んだ

「……だが、何故」

チョキーは、半ば困惑した様に言った

「何故、その紙がここにあるんだ?」

「それだ、それこそが君を呼んだ理由だ」

チョキーは訳が分からなかった。

690 名前:殺人技術 投稿日:2007/01/02(火) 19:44:00 [ E9458iSQ ]
チョキー・ファイル(9)


目の前にある紙は、ベテランの商人の命を懸けて断言しても良い、紙の汚れ具合、筆跡、捺印の形、ブルン印象、どれを取っても本物そのものだった。

本当にこれが原因でブルン王朝が滅んだのかどうかは分からないが、この紙が一国を崩壊に導く力を持つのは事実だ、だから謎なのだ。

どうしてそんな物が、レッドアイが半壊に追い込まれてなお、元々はブルン王朝そのものであった、ブルンネンシュティグ国会に存在するのだろうか。

本当にこれを隠したいのなら、レッドアイが発言力を失った時点で、焼き捨ててしまえば済む事なのだから。

「不可解な事に、この紙が発見されたのはブルン王朝ではないのだ」

ブロームはロングッシュと目を合わすと、ロングッシュは広い机に大きな巻物を乗せて、ブロームがそれを広げた。

フランデル大陸の地図だ──恐らく最新の物だろう。

「現在、ブルン王朝は消え、新しいナクリエマの首都が築かれている、精力絶倫のタートクラフト王を頂点とした"王国"だ」

ブロームはジョーク交じりで言いながら、まず指先をブルンネンシュティグに乗せ、そのまま少しずつ西南にずらしていった

「その王国は今でこそほぼ完成形だが、まだ王国と呼べるほどの規模を持ってなかった時代、国宝を保管する宝物庫の清掃員が、偶然ボロボロの古書の隙間から一枚の紙を見つけたのが発端だ」

ブロームの指が山脈を両断し、ロングッシュが応接室の引き出しから赤いペンを取り出した

「幸運な事に、その清掃員は落ち着き払っていてな、その紙をむやみに披露せず、大臣にこっそりと教えたお陰で、大事には至らなかった」

そう言い終わると、ブロームは指を止め、片方の手でペンを受け取り地図に赤い×印を書いた

「大急ぎで押収して、隠蔽工作にかかったよ──だが、時が経つ内に、このままではいけない、そう思ったから、三人のベテランの旅人と、君を呼んだんだ」

「新興王国ビガプール……ナクリエマの新しい総本山か」

チョキーは額に汗を浮かべ、地図の×印をじっと見つめた。

「チョキー君、なぜ多くの商人の中で君を選んだか、それは君の多岐に渡る人脈、そして、君の商人としての腕を買ったからだ」

ブロームはそう言って地図をどかし、一枚の別の書類を、チョキーに差し出した。

「取引だ、君にこの紙についての調査を依頼する、報酬は結果を見て支払おう」

目の前の紙は、チョキーの名前を書く欄とチョキー側の印だけが空欄だった。

"……どうすればいい?"

チョキーの心はほぼ決まっていたが、チョキーはファイルになんとなく問い掛けた

"決まってるだろ、ここまで来て退いたら私との「契約不履行」になる、だが本名は書くな"

"……どうしてだ?"

チョキーは訝しげに問い掛けると、ファイルはさも当然の様に言った

"こいつは国会議員、つまり自分の地位を大切にする人種だ、いざとなればこの紙を使ってお前を殺す事だって出来る、さっきも言った様に、精神と肉体は一つだからな、お前が死んだらこっちも迷惑する"

チョキーはロングッシュから高級そうな鷲の羽根のついたペンを受け取り、インクに浸した。

"分かってるじゃないか、だが精神と肉体は一つだ、ここに偽名を書き込めば、私の精神は死に、同化しているお前の精神も破滅する"

691 名前:ヒロユキコントローラー 投稿日:2007/01/03(水) 03:35:16 [ 7J.1bhHQ ]
ひろゆきの冒険
RS起動→ダメオンマジック発動→鯖死→待つ→PCシャットダウン

692 名前:携帯物書き屋 投稿日:2007/01/03(水) 10:44:31 [ eFHFlgNU ]
前回>>645-646
「ゆ、幽霊だと…」
「そ、幽霊。私にも信じられないけどね」
目の前の少女は困ったわ、なんて軽く溜め息をついてみせる。
困ったのはこっちだっていうのに…。まずはここからどうやって切り抜けるかを考えるのが一番だ。
このまま全力で逃げるか――いや、それはできない。相手に背を向けるのは良くない。
ならば戦うか――いや、それもできない。第一幽霊にこちらの攻撃なんて効くのだろうか?
「ねえ、さっきから何ぶつぶつ言ってんのあんた?」
「え―――いや……あ、あんたこそ何の用だよっ」
「別に。私はあなたに憑いている霊だし出てきてもおかしくないでしょ?」
「なっ」
俺に憑いている霊だと? それになぜ外人の霊なんかが俺に憑く。
「なぜ俺に憑いたんだ? お前は外人だろう」
すると少女は不思議そうな表情を浮かべた。
「んー…別にあなたを選んだわけじゃないんだけど。しいと言えばあなたが一番憑きやすかったからね」
「…はい?」
「あのね、私だって今日気づいたらこんな場所に浮かんでいたのよ。それで誰かに話しかけようにもみんな聞こえている様子もないし、触れたら触れたで逃げ出すし…」
「それと俺に憑くことに何の関係があるんだよ」
ただ憑きやすいから憑いたなんて迷惑にもほどがある。どうにかして離れてもらわないと。
「だから、あなたが憑きやすかっただけよ。普通の人なら大抵は無意識に抵抗するんだけど、あなたみたいに孤独感とか負の感情の塊みたいな人間は入り込みやすいのよ。それだけ」
それだけだと…?
「ふざけるなっ! 早く出ていけよ!」
「嫌よ。他探すのも面倒だし。それに、あなた結構気に入ったしね」
気に入った? こいつ今俺のことを気に入ったと…。何年ぶりだ女にこんなことを言われるのは。
――――と、待て。この脳天気さに忘れていたがこいつは幽霊だ。
「お前、俺に憑いてどうするつもりだ」
やっと一番聞きたかったことが言えた。
「えっと…」
そう言い少女はソファーから腰を上げると恭しい仕草で俺に頭を下げた。
「この私に協力してくださいまし」
「は…?」
考える前にまず声が漏れた。ここは――――
「ご、ご丁寧にお断りします」
とりあえず俺も頭を垂れる。
しばしの間。
「な、なんでよーっ」
さっきの丁寧さはどこへやら。少女はムキーッとばかりに声を上げる。
「いや…何だか危なそうだし」
素直な感想。
再び少女は、はぁと溜め息をついた。
「仕方がないわね」
お、分かってくれたらしい。
「どうしても拒むと言うなら、あなたの生命力を全て取らせてもらうわ」
「はい…?」
「だから、協力するかここで死ぬか聞いているの」
ここで初めて俺は少女に恐怖した。
「そんな理不尽な…」
「で、どっちにするの?」
最早俺の言葉など聞いていない。
「そんなの…答えは1つだろ」
するとさっきまでの殺気は止み、少女は笑顔を浮かべた。
「契約成立ね。えっと、自己紹介がまだね。私の名前はニーナ=オルポートよ。ニーナって呼んで」
「俺は、矢島翔太だ…」
よろしくね、と少女は手を差しのべてきた。それを受けとる。少女の手は幽霊とは思えないほど温かかった。
「それで本題なんだけど…」
「ああ、俺は何をやらされるんだ?」
それがよほど面白かったのか、ニーナと名乗る少女はにぃと口元を吊り上げた。
「それはね、レッドストーン探しよ」

693 名前:携帯物書き屋 投稿日:2007/01/03(水) 10:45:21 [ eFHFlgNU ]
「れっどすとーん…?」
聞き慣れない単語をそのまま返す。
「そ、レッドストーンよ。……もしかしてショウタ、レッドストーンも知らないの?」
さぞ不思議そうに聞いてくる。しかも既に呼び捨てだ。
「あのな…そんなもの聞いたこともないぞ」
「あれ? 変だなぁ。知らない人なんていないって思ってたんだけど」
ニーナは腕を組み、頭を傾げ悩みだした。
「……1ついい?」
「え? ああ」
「もしかして、ここってフランデル大陸じゃないの?」
俺とニーナの間に長い沈黙が流れる。
「なんだそこ。ここは地球という星だぞ。ちなみに日本だ」
ニーナの時間が止まった。それから何かぶつぶつ呟き始めた。
「はぁ……そんな予感はひしひしとしていたわ。だってここ服装も違うし肌も黄色いし見知らない建物ばかりだし、剣も槍も持ってる人いないし魔物もいないし…」
何だそれは。もしかしてこいつ死んだ際に頭をぶつけた上どこかの国から日本に飛ばされでもしたのだろうか。
「お前何て国出身だ?」
「ビガプールよ」
「………」
どうやらこいつは頭が可哀想な人間らしい。
「何これ? 人形…?」
――――ん? ニーナが何かを掴んで不思議そうに眺めている。
そ、それは――――!
「その人形を放せええぇぇ!!」
あいつが掴んでいるものは、俺が一番大事にしている――フィギュアだ!
「へ?」
「え?」
俺はあいつに飛びかかった。だが気付くと俺はタンスにダイビングしていた。
星が、見えた気がした。


「ぅん……」
目を覚ますと何故か俺はタンスの前で寝ていた。
「もう朝か…痛っ」
体を起こした直後頭が痛んだ。…なんだか嫌な夢を見ていたみたいだ。

重い体を起こし、部屋のドアに向かおうとしたとき、俺のすべての思考が停止した。
「ショウタが悪いのよ。いきなり飛びかかってくるんだもの。つい透明化しちゃったじゃない」
「あ、えっと…」
えっとつまりこれは現実で夢も現実で…まぁ何が言いたいかというと目の前の少女は夢じゃないってことで…。

「お前ずっとここにいたの?」
するとニーナは微笑んだ。
「幽霊は寝ないのよ」



「何度も確認するが…信じないがお前は異世界人でそのフランベル大陸ってところからやって来たんだな?」
「そうよ」
「それでその原因はあのれっどすとーんとかいう石にあるんだな?」
「うーん…それは自信ないけどそうとしか考えられないわ。私達の世界で時空移動できるほどの力と言ったらレッドストーンくらいしかないもの」
とりあえず俺は、問題はたくさんあるが学校へ向かう事にした。        「それとね――」
「おっともう話しかけるな」
「な、なんでよう」
ニーナからブーイングが飛んでくる。本当にこいつは幽霊みたいだが、本当にこいつは俺の幽霊に対する想像と食い違っている。
「ここからは人が多い。学校の生徒に外人のお前と仲良く話しているところなんか見られたらまずいんだよ」
「それなら問題ないわ。今の私の姿は契約者であるショウタと霊感の強い人や霊能力者くらいしか見えてないと思うから。はっきりとは分からないけどね」
「む…」
確かに今のニーナは微妙に半透明に見えないこともないが…。
「それなら尚更だ。一人でぼそぼそ呟いていたら気持悪いだろ」
「ケチ」
なんとでも言ってくれ。
「あ、言い忘れていたんだけど」
「………」
「いいわ。私一人で話すから。実はね、私もうレッドストーン持ってるのよ」
「―――は?」
「話は最後まで聞くものよ。そうと言っても砕けた欠片よ。大きさからして5分の1程度ね。それが核となって私を動かしていると思うの。
私がここに来たのもこれのせいね、たぶん。だから私達が探すのは残りの欠片よ」
何が言いたいのかさっぱりだ。つまりあいつの体にはそのレッドストーンという石が入っていてそれが原因でここに来たんだが入っているのは欠片ということか…?
「なら俺が協力する意味ないんじゃないのか?」
「いえ、あるわ。私不完全な霊体だから生命力食べないと維持できなくて…」
つまり協力とは―――
「お前初めからそのつもりだったのか!!」
「そうよ。あと、声大きいわよ」
あ……。軽く咳払いして誤魔化す。俺としたことがつい大声を出してしまった。
「ふざけんな。それと何でレッドストーンとかいう石は割れているんだよ」
小声で囁くように聞く。
「んー…それは分からないな。私レッドストーンを巡る争いで最後に負けて死んじゃったし」
「……だめじゃん」

694 名前:携帯物書き屋 投稿日:2007/01/03(水) 10:46:01 [ eFHFlgNU ]
そんなこんなで学校に着いた。教室に行く前に確認しなければいけないことがある。
「なぁ、俺がお前に提供する生命力はどれくらいなんだ?」
「そうね。量としてはたいしたことないわ。しいと言って睡眠量が増えるくらいね」
それなら気にする必要はないか…。
はぁ、それにしても変なことに巻き込まれたものだ。これからの事を考えるだけで憂鬱だ。

教室はいつも賑やかだが今日は一段と騒がしかった。何かあったのだろうか。
席に着くとニーナが話しかけてきた。
「ねえ。何話しているのか聞いてみてよ」
「…無理」
「なんでよー」
なんでもなにも俺は元々この学校に友達なぞいないのだ。
「なら私が聞いてくるわ」
「いや、それはやめろ…」
「うまくやるわよ」
そう言われてもこいつにやらせるととんでもないことになりそうな予感が…
「だったらショウタが聞いてきて」
「う…」
痛いところを突かれた。
「もしかしてショウタってそんなことも聞けないチキンさん?」
「む、そんなことないぞ」

何だかニーナの奴に乗せられている気分を抱いたまま俺は話の内容を聞くことになった。
なに、ただ聞くだけだ。何て事はないさ。と、自分に言い聞かせ俺は近くの3人組に近づいた。
まずは深呼吸。それから意を決して3人に話しかけた。
「あ、あのさ…」
「「「………」」」
軽くシカトされた。心が折れそうになるが再び話しかける。
「あ、あのさっ!」
今度は大きめに言った。
「……ん、何?」
3人組の内の1人が反応した。確か…佐藤洋介とかいう名前だっけ。
「何?」
再び問われて我に帰る。
「えっとさ…みんな…何か話してるみたいだけど…何かあったの?」
ツギハギな文章でなんとか聞けた。
「なんだ。そんなことか。矢島君も気になるのかい?」
「え? あ、ちょっとね」
名前を呼ばれつい反応に遅れた。
「えっと…矢島君も知ってるだろ。3年の吉沢鉄治」
「あ、ああ…」
確かこの学校一の問題児だっけ。
「その吉沢がね、昨日担任の教員殴って学校追い出されたんだって」
ははは、と佐藤洋介はさぞ面白そうに話した。俺には全く理解できないが。
「あ、そろそろHR始まるから席戻らないとだよ」
「ああ、そうだね」

席に着くと間もなくHRが始まった。今気づいたが佐藤洋介は俺の席の1つ前のようだ。
「へぇ…この世界も物騒ね」
ニーナも後ろで聞いていたらしい。


授業が一通り終わり帰宅部の俺はいつものように帰路についた。
授業中ニーナはさぞ興味深そうに聞き入っていた。
いつもの道草コース。
俺は帰り道真っ直ぐ帰らずゲーセンなどで遊んでから帰るのだ。
「………ん?」
俺の進行方向ににあまり会いたくない奴が歩いていた。
派手な服装に茶色に染め上げられた長髪。例の吉沢鉄治だ。
「どうしたのショウタ。あの人がどうかした?」
「いや、あれが噂の吉沢だよ」
でも何でその吉沢がここにいるのか。俺は気がつくと好奇心から吉沢をつけていた。
吉沢は人通りの少ない路地裏に曲がった。俺も一呼吸置いてから曲がった。
だが――――
「え…いない?」
曲がるとそこは行き止まりで人一人いなかった。
「そんな…」
とりあえず奥まで――――
「ショウタ!!」
「え――――」
何なのかも分からず目前で鈍い金属音が木霊する。
それと同時に足元に鋭利な刃物が転がってきた。
「ショウタ、下がって!!」
そう言いながら俺はニーナに後ろまで弾き飛ばされた。
「な、なにす――」
言葉はここで止まった。突如遠くからさっきの刃物が飛んできたのだ。
刃物は俺を狙って弾丸のように飛んできた。だが、それはさらに速い弾丸によって阻まれた。
その原因はニーナだった。何故ならニーナが持つものは――――
「え――――弓・・・・・・?」


いつも赤石に関係ないとか話がよく分からないとか文章作法がおかしいとかで批判されることにビクビクしながら投稿してます。

695 名前:名無しさん 投稿日:2007/01/03(水) 13:35:27 [ 5oijU9WE ]
>>692-694
RSとの繋がりが明らかになってきましたね。
ヒカ碁みたいな感じで幽霊とのやり取りが微笑ましいっていうか、楽しい。
RSの住人がリアル世界にっていうのは個人的に新しい発想だったので新鮮感があります。

批判レスは苦手・・逆にそのせいで改善策なんかを指摘できない感想文で申し訳ない。

696 名前:ドギーマン 投稿日:2007/01/03(水) 22:39:33 [ AepyIIHk ]
1〜8 >>612-615
9〜15>>669-672
最後です。終わりがイマイチな感じかもだけど、収まるように収まりました。

16
終わったと思い僕は目をつぶっていた。

なんともない?
僕は恐る恐る目を開けると、ウルフマンの右手を武道家が左手だけで支えていた。
ウルフマンは武道家を睨みつけて言った。
「おい。手を離せ。どういうつもりだ?」
「・・・どういうことだ?」
「質問に質問で返すな」
「・・・あの人はどうした?」
「なに?」
武道家は僕を蹴飛ばした。
「下がってろ」
思わず後ろに飛ばされた僕は倉庫内に詰まれた大きな積荷箱に突っ込んだ。
痛い・・・頭打った。
あまりの痛みに悶えながらも視線を2人のほうに戻すと
武道家が何人も居る。
頭を打ったせいで錯覚を見ているのかと思ったが、確かに5人居る。
ウルフマンが振り上げた左腕をかわして武道家は後ろに飛び退いた。
「何の手品か知らんが、それなら本気で相手をしてやる」
そう言ってウルフマンは大きく息を吸い。雄叫びをあげた。
ゥウオオオォォオオォォ....ンン
ウルフマンの身体から魔力の炎が燃え上がり、身体の筋肉が一回り膨れ上がった。
化け物だ・・・。
そんなウルフマンに臆することもなく、武道家は冷たい目でウルフマンに向かって言った。
「あの人を、どうした?」
「しつこいな、捨ててきた女の事を今更気にするのか?」
「・・・・・」武道家はウルフマンを睨みつけている。


「知らんな。○○に一任してたからな。まあ、監視は付いていないのは確かだな」
そう言うと、ウルフマンはニヤリという風に笑った。
5人の武道家の身体が跳ねた。
「ぬ・・」
ウルフマンが唸った。
武道家たちはバラバラに動き、ウルフマンに的を絞らせない。
ウルフマンの振るう爪が空を切る。
ウルフマンを囲み、素早く跳ね回る。
「ふん、こんな子供だましがいつまでも通用するか!」
ウルフマンの爪が武道家を捉えた。
が、切り裂かれた武道家は霧のように消えた。
そして、ウルフマンの後ろに回っていた本物の武道家が背に肘をお見舞いする。
「ぐおっ」
ウルフマンが膝をついた。
いいぞ、いける。
「さっさと逃げろ!」
武道家が僕に向かって怒鳴った。
「う、うん」
でも、蹴飛ばしたのはそっちだろう。
さっきまで怒りで抑えられていた脚の震えが蘇った。
緊張が解けてしまったせいだろうか。
何とか震える足で立ち上がろうとする僕を見て、ウルフマンの目が輝いた。
「がああ!!」
ウルフマンが吼えると身体がより激しく燃えだした。
そして、ウルフマンが前宙返りすると身体を包んでいた炎が僕に向かって放たれた。
ゆっくりと迫る火球、でも僕の脚は言うことを聞いてくれない。
激しい熱でチリチリと顔を刺されるように痛む。
だめだ・・・逃げられない。
僕は熱を避けるように腕を前に出し、身体を伏せた。
そして、火球が炸裂した。


僕の前で、武道家が立ちはだかり火球を全身に受けて燃え上がった。
「くああおぉぉおお」
武道家は転げ回り、すぐに火は消えた。
「ぐ・・・う・・」
僕のせいだ・・。
そして、ウルフマンはのっしのっしと巨体を揺らして僕たちのほうにゆっくりと歩いてきた。
ニヤニヤとした笑みを顔に貼り付けて、
何とか立ち上がろうと脚を振るわせる僕と、
うずくまって立てないで居る武道家を眺めて楽しんでいる。
「はははは、余計な感情に走って勝機を逃したな。
そんなグズなど放っておけば俺を倒せたものを」
ウルフマンはうつぶせの武道家を見下ろし、足先で腹を蹴り上げた。
「はぐっ」
武道家は火傷で真っ赤になった腕で腹を抑えた。
「ほお、その傷で意識があるとはさすがだな。しかし・・」
ドスッ!
武道家の火傷した腕を踏みつけた。
「ぐあああああ!!!」
武道家の絶叫が響き渡った。
僕は、見てるしかないのか・・。
だが、僕は足の痺れが納まっているのに気づいた。
ウルフマンの注意は武道家に向いている。
僕はちらっと出口のほうを見た。
今なら・・逃げられるかもしれない。
だが、それは武道家を見捨てるということだ。

697 名前:ドギーマン 投稿日:2007/01/03(水) 22:40:27 [ AepyIIHk ]
17
出来ない。そんなこと絶対に!!
僕はずっと離さなかった折れたなまくら剣をぎゅっと握り、
ウルフマンに向かって走り出した。
「うわあああああ!!!」
予想外の敵からの攻撃に、ウルフマンは無防備だった。
僕は剣に全体重を預け、ウルフマンのわき腹に折れた剣を突き立てた。
「なに!?」
不意を疲れたせいだろうか、
僕の剣は鋼のように鍛え上げられたウルフマンの脇腹に滑るように埋め込まれた。
うおおおぉぉぉお!!
ウルフマンの咆哮が耳を貫いた。
「こ・・・の・・・」
ウルフマンは僕の肩を大きな手で掴み、引き剥がそうとする。
しかし、思うように力が入っていないようだ。
僕はありったけの力を込めて剣をひねった。
「ぐがあああああ!!」
ウルフマンの叫び声が響く。
「いいぞ・・」
いつの間にか武道家が身体を起こし、ウルフマンの膝を掴んで立ち上がろうとしている。
「きさま・・・ら・・なんぞに・・」
「ほああ!!」
武道家のねじり込むように放たれた右こぶしがウルフマンの腹を貫いた。
剣の柄を握る僕の手に、内臓をつぶす鈍い感触が伝わった。
「はがっ」
ウルフマンは口から大量の血を武道家に浴びせ、倒れた。



18
それから僕たちはシーフギルド倉庫を脱出し、××さんが待つ宿屋に帰った。
それまでシーフに襲われなかったのは幸運としか思えない。
もしかしたら会見のためにあのウルフマンが周囲のシーフを追い払っていたのかもしれない。
あの温厚な××さんには今まで見たことのないほどにひどく怒られた。
でも、怒りながら僕たちのために涙を流してくれた。
とにかく、僕と武道家は解放された。




あれからどれほどの月日がたっただろう。
武道家にはもうずっと会っていない。
結局名前も聞けずじまいだったけど、いつかまた会えると思う。
そのときにはちゃんと名前を聞いておこうと思ってるんだ。
彼がどういう過去で奴らに利用されたのか・・・。
それだけは、彼から話してくれる日まで待とう。

僕はもう冒険者をやめた。
帰る家も両親も居ない。
今は××さんに誘われて教会で修道士をしてる。
昔求めていた豊かな生活は無理だけど、
僕の心はいまとても満たされてる。
冒険者は金と名誉を求めるあまり、のめり込めばその欲に際限が無い。
自分の限界を知って、満たされた生活は
満たされることの無い欲に引きずられる人生よりも幸せなのかもしれない。

698 名前:携帯物書き屋 投稿日:2007/01/03(水) 23:58:00 [ eFHFlgNU ]
>>695
感想ありがとうございます。次に向けて頑張れるような気がしてきました。
やっぱり感想があるのとないとではモチベーションが全く違うみたいです。

>>ドギーマンさん
遂に完結ですね。主人公には幸せになって欲しいです。
次作を期待しています^^

>>殺人技術さん
全部読ませて頂きました。文章がとてもうまいです。羨ましい・・・
主人公が商人というのは斬新ですね。これからチョキーと悪魔はどうなっていくのか楽しみです。

>>680
初心者クエですか! 自分は赤石半引退なので初心者クエはおろか最近の状況も分からん事態です。
接近戦しかできないシーフがどうやって戦っていくのか楽しみにしています。

>> ◆ACGhoST.hk さん
クリWIZとサマナ・・・これまた珍しいコンビですね・・・w
このまま2人の距離は縮んでいくのでしょうか? 続編期待してます^^

>>675
コボルト強・・・・・wこのまま古都は滅ぶのでしょうか?

>>682
一話から読ませて頂きました。ミステリーいいですね!
これからどう絡んでくるのかドキドキしながら待っています。

699 名前:名無しさん 投稿日:2007/01/04(木) 00:06:35 [ xocynORE ]
>>697
最後の3行は現実でも考えさせられるような、含蓄のある文でした。楽しく(ちょっと悲しい部分もあったけど)読ませて頂きました。次回作期待しています。

700 名前:殺人技術 投稿日:2007/01/04(木) 00:22:02 [ E9458iSQ ]
>>688
>応接室には既に男が座っており、ロングッシュが恭しく頭を下げた、彼がブロームというロングッシュの上司者だろう。

上司者って何ですか自分。

>>698
読んでくれてありがとう
>ドギーマン
戦闘シーンの残酷描写が良かったです(そこかい
最後も綺麗にまとまってて、何か良い余韻がありました。

チョキー・ファイル

>>656
>>657
>>658
>>678
>>679
>>687
>>688
>>689
>>690

まだまだ続きます。我慢してね(´・ω・)

701 名前:殺人技術 投稿日:2007/01/04(木) 00:23:01 [ E9458iSQ ]
チョキー・ファイル(10)


ブロームは、この任務を遂行する間、移動に困難となる持ち物は預かろうと言った。

チョキーは元々リアカーを引きながらでも各地を回ろうと思っていたのだが、それでは困ると依頼主側から無理やり"押収"されたのだった。

だがチョキーも譲らず、数分に及ぶ交渉の末、リアカーとまでは行かないが大型のリュックサックに入る程度の物資を持っていくという事で落ち着いたが、チョキーは終始不機嫌顔だった。

"で、まずは何処に行くんだ?"

国会議事堂を出ると、ファイルが少し不機嫌そうに頭の中で問い掛けた。

殺す対象を目の前にして自ら見逃したからだろうか──それをチョキーは再認識して、暗鬱とした。

あの時点でブロームに何も手を出さなかった辺り、恐らくファイルの目的は単なる国会議員の殺害ではなく──殺戮だ、それもかなりの人数を相手にし、国政を崩壊させる程の規模の。

だが、チョキーはそう考えると、頭の中で自嘲した、頭の中に居るファイルはそれに気付き、怪訝そうな声を上げた。

──たとえ一人だろうと多人数だろうと、殺してしまったら殺人鬼という事に変わりはない。

"──アリアンだ、あのブロームの言ったとおり、人脈を使うのが一番早いだろうからな"

チョキーがそう言うと、ファイルは暫し黙った後、大きな溜め息をついた。

"……おい、さっきの地図を見たが、アリアンは此処からとんでもなく遠いぞ──歩いていくのか?"

空が既に赤み始めており、斜陽がチョキーの眼を刺す、チョキーは暗くなりゆく東雲の空を眺めて、言った

"そんな訳あるか──ところで、お前さっきこう言ったよな?"

"?"

ファイルは沈黙に疑問を乗せ、チョキーは心の中でほくそ笑んだ

"チョキーはファイルの悪魔としての能力を得た"

チョキーはそう言って、リュックの中から器用に一本の杖を取り出した。

702 名前:殺人技術 投稿日:2007/01/04(木) 00:24:11 [ E9458iSQ ]
チョキー・ファイル(11)


ワンダーワンド──俗にユニークアイテムと呼ばれているが、見た感じは何の変哲もない、緑色の小さな杖だ。

"商人といえど、賊から自分と商品を守るために、魔法の一つや二つは使える様にならなければやっていけないんだ"

チョキーは全身を包む見えない粉の様なエネルギーを腕、指先、杖、そして先端へと集まるのをイメージすると、チョキーの姿が石造りの地面にみるみる同化した──ワンダーワンドに掛けられている魔法の効果だ。

「トルネードシールド」

朗々とした声を空気に響かせると、議事堂を飾るの街路樹から葉っぱが消え失せた。

轟音と共に国会議事堂が緑の渦に飲み込まれる、帰路につく住民達の驚愕の声が聞こえる。

「レビテイト」

ほぼ完全に透明になったチョキーの体がふわりと浮き上がり、取り巻くつむじ風がチョキーの足元に集束すると、ファイルはほう、と感嘆の吐息を漏らした。

……突然のつむじ風がまるで嘘の様に消えると、そこには芥一つない石畳と、まるで厳冬を思わせる禿げた街路樹だけが、寂しそうにその体を揺らしていた。



"さすが商人だな、この事に僅か一日で気付くとは"

朱色の空と紫紺の雲を掻き分ける様にして進むチョキーに、ファイルは言った。

"お前の考えている通り、私は悪魔達の中でも特に位の高かった悪魔だ、人間共の作り出した惰弱な魔法でも、今お前がしている程度の事は出来る"

チョキーは方位磁石がセットになった時計を見て、口腔内で言葉を紡いだ。

最初に唱えた魔法によるつむじ風のお陰で既に空気抵抗の殆どを受け流していたが、チョキーの体の周りに青白い光の様な物が瞬くと、その僅かな空気抵抗も無くなり、チョキーの声もよく響くようになった。

"そして、今お前は私の持つ魔力とほぼ同等の力を使える、まさか魔法すら知らない馬鹿かと思ったが、いらん心配だったようだな"

元々そこらの上級魔術士に匹敵する魔力を持っていたチョキーに上乗せされた、ファイルの魔力が出す魔法は、その口ぶりに恥じない威力を持っていた、チョキーが空を飛ぶ速度は、既に馬車の出しうる最高速度を軽く上回っていたのだ。

いつのまにやら、眼下に見える景色は薄闇に溶ける緑から、赤と青の波立った縞模様が美しい、沙漠と表現するに相応しい物へと変わっていた。

「平均速度約150m/秒──この分だと日が沈む頃には到着するな、砂漠の夜は冷え込むから、ありがたい」

およそ10分程"空の旅"を満喫していると、チョキーの視界に、重なる砂丘で流線型を描いていた地平線に、ギザギザと毛羽立った物が見えた。

不毛なガディウス大砂漠に数あるオアシスの中でも、一際大きなオアシスを大事そうに抱え込む様に作られた、主に商業で繁栄した、オアシス都市アリアンである。

アリアンでは大きな商業組合が軒を連ね、裏では黒い金や大規模な犯罪組織のアジトもあると言われている、まさに商人の表と裏を、先ほどの砂丘の姿さながらに併せ持つ、商人で知らない者はモグリと言われる都市だ。

──本当はブルンネンシュティグととアリアンの間にはリンケンという輸出入の中間地点となる街があるのだが、どうやら見逃したらしい。

703 名前:殺人技術 投稿日:2007/01/04(木) 00:25:04 [ E9458iSQ ]
チョキー・ファイル(12)


一般的な砂漠のイメージである溜め息が出るような黄金の砂と陽炎の姿は消え失せ、しっとりとした青い砂は雪の様に冷え込み

波一つ立たないオアシスを囲む平屋は月明りを反射して薄く光り、オアシスは満天の星空を逆さまに映し出している。

町を外敵の侵入から守る防壁の入口には深緑色の服を着た寡黙そうな男達が佇み、時折街の静寂を切り裂くのを畏れるかの様に小さい声で言葉を交わしていた。

"私には理解できんな、なぜあの男供は起きてるんだ?"

ファイルが本当に理解出来なさそうな声で囁き、チョキーは住宅街の裏路地に魔法を弱めながら着地して、ほっと息をついた

"あれはクロマティガードと言ってな、ここアリアンはナクリエマ王国の最西端に位置しているんだ"

チョキーはそう言ったが、ファイルはまだ理解できてないと察したのか、チョキーは続けた

"つまり、国境警備隊が国境付近の街と契約して、治安を守っているんだ"

チョキーは頭の中で何か蠢いていた物が落ち着くのを感じた、どうやら少しは納得したらしい。

"あいつらがどういう奴等かは分かった、だがどうして街や国境を守る必要があるんだ?"

ファイルがそう言うと、チョキーは余りにも愚問だと思って慌てて答えようとしたが、なぜか間違っている事を言いそうな気がして言葉を呑み込んだ。

"ん……そうだな、何でだろうな"

チョキーはリュックサックの中身が移動の際に落ちたりしていないか確認した後、それを背負って路地裏から街へ出た。

クロマティガードの人間に引き止められるかと思ったが、アリアンでは夜にうろつく商人など珍しくも何ともないのか、チョキーの姿を見ても彼等は眉一つ動かさなかった。

多少冷え込むが、まだ昼間の熱が残っている為、むしろ涼しさが心地良かった、だがのんびりしていると真冬の様に寒くなるだろう──その証拠に、夜でも暖かい古都とは違って街全体が落ち着いている。

チョキーは中央のオアシスを迂回して東南側の出入り口に向かうと、クロマティガードの隊舎が立ち並ぶ一角で、のそのそと蠢く人影を目に捉えた。

"あいつに用があるのか?"

"あぁ、職業は同じ商人だが、あいつの得意分野をアテにして来た"

蠢く人影はチョキーに気が付くと、商売道具を片付けていたのだろうか、大きな袋に包まれた荷物を平屋の壁に立て掛け、腕につけたリストバンドで汗を拭った。

「やぁ、久しぶりだな、チョキー」

人影の主は商人というよりは大工を思わせるような精悍な男で、その物言いは大柄な体躯に見合わず友好的だ。

「遅くにすまないミスター・ブラックスミス、儲かってるかな」

704 名前:殺人技術 投稿日:2007/01/04(木) 00:25:56 [ E9458iSQ ]
チョキー・ファイル(13)


チョキーはその名前を揶揄するかの様に馬鹿丁寧に言い、ブラックスミスと呼ばれた男は苦笑いを浮かべた。

「大繁盛だよ、無知な旅人がいくらでも品物を売ってくれてね、それを装備の不足してるクロマティガードや軍隊に売れば数倍の値段で──おっと企業秘密だった?」

ブラックスミス──鍛冶屋を意味するその名前は、二人の会話からして偽名だろう、鍛冶屋は思わずという顔で言葉を切り、苦笑いを顔の裏にしまい込んでチョキーに尋ねた。

「何か用でもあるのか?まさかあんた程の人間が用もなくふらついてる訳はないだろう」

チョキーは懐から昼間貰ったあの契約書を取り出し、鍛冶屋の手に紐で巻かれたままの契約書を乗せた。

「その紙には二つの異なる人間の文字が書かれている、そのうち片方、二つある名前の欄の下側の筆跡が誰なのか、調べて欲しい」

「筆跡鑑定か──この紙は何時ごろの物なんだ?」

鍛冶屋はそう言うと、壁に体を凭れ掛からせて、チョキーを見た。

チョキーは言うべきか言うまいか迷ったが、どのみち悪魔に憑依されている身と思って、さらりと言った

「レッドアイが結成された時代の物だ」

チョキーがそう言った瞬間、その紙を弄んでいた鍛冶屋は噴き出して、目を瞬いた。

「──おい、そんな昔の物を調べるなんて──代金は数万や数十万じゃ済まないぞ」

鍛冶屋は一度言葉を飲み込んで、頭の中で何か考える素振りをしながら言った。

「三百万頂く」

「じゃあ、五百万支払おう」

チョキーが間髪入れず言うと、鍛冶屋は信じられない物を見る様な目のまま、凍り付いた。

「口止め料と、チップだ」

そう言って、チョキーはリュックの中から金貨のつまった小袋をいくつか取り出すと、鍛冶屋の足元に捨てる様に置いた、というより捨てた。

何故だか、背中に背負っている今までコツコツと溜めてきた金が、急にどうでも良く感じたからだ

「その紙は貸しておくから全力で頑張れ、ところでアリアンの安い宿は何処がある?」

「なぁ、お前……」

鍛冶屋は呆然とした顔で言った

「お前、なんか変な物に憑かれてるんじゃないか?」

705 名前:殺人技術 投稿日:2007/01/04(木) 00:26:42 [ E9458iSQ ]
チョキー・ファイル(14)


チョキーは借り置いた宿屋の一室にリュックを降ろし、明らかに整備の行き届いてないベッドに腰を下ろすと、床が軋んだ。

部屋はお世辞にも広いとは言えず、大人一人分の大きさのベッドの隣には使い古されたランプと、1つの窓、小さな丸テーブルと椅子、そしてテーブルの上に申し訳程度に置かれた花瓶だけの部屋だった。

唯一救いがありそうなのは、この配置だと窓から差し込む朝日で目が覚め、起きて一番最初に花が目に入る事だ

しかし窓は薄汚れすぎて綺麗な光は通さない。

さらに丸テーブルが何故かベッドより高い位置にあるので、花は先端の微かな花弁しか見えなかった、その花弁も今にもしおれて千切れ落ちそうだ。

本当はもっと格の良い宿を選べたのだが、どうにも高級な宿で泊まる気になれず、鍛冶屋が一番最後に紹介したこの宿にしたのだ。

"……ファイル、一つ聞いていいか?"

チョキーは溜め息を吐きながら訊くと、ファイルは頭の中で"?"だけを投げかけてきた。

"ファイルが私に憑依してからの私の行動は全体的におかしい──もしかして、そう仕向けてるんじゃないだろうな"

チョキーがそう言うと、ファイルは完全に黙り込み、チョキーは体の内から怒りとも諦観ともつかない物が込み上げるのを感じた

"今まで私は、先程みたいに湯水の様に金を使う事など無かった、一度もだ、それなのにさっきは、自分でもどうしてあんな事をしたのか分からなかった"

"……"

ファイルは妙に真摯にその言葉を聞き、チョキーは自分の言葉を続けて吐露した

"だが、それもファイルが私の事を全て操っているのなら説明がつく、お前はお前の目的の為に私に憑依している、だからお前が人間の私に気を許す道理はない"

チョキーはそこまで言って、自分の言ってる言葉がまったく意味をなさず、自分の頭の中をぐるぐると旋回するのを感じて、ベッドに寝転んだ

"いや、だとしたら私が今こうやってお前に問い掛けている行動すら、お前が操って起こさせた行動かも知れない、ここでいくらお前から詳細を聞き出そうとしても無意味だし、嘘を付いて騙そうとしても無意味だ、だから──"

チョキーは自分の頭の中が冷たく、澄み切っていくのを感じた、チョキーの精神もファイルの精神も、まるで鏡に映されたように対極かつ同じ行動を取っていた。

"だから聞く、お前は私を操っているのか、操っていないのか、どっちだ"

宿の一室に完全な沈黙が横たわり、風の吹く音だけが寂しげに響きながら、チョキーは刹那、知覚すら出来ない一瞬だけ、背景と完全に同化した──魔法の効果等ではなかった。

"……それは、こっちの質問だ"

ファイルは長い沈黙を解き放ってそう言い、今度はチョキーが"?"を投げかけた。

"確かに、私はやろうと思えばお前の精神、ひいてはお前の行動を全て管理する事が出来る、私と貴様の精神が同化しているからだ、だがお前はこの同化という物に主従の関係があるとでも思うのか?"

ファイルのその言葉を聞いた瞬間、チョキーは頭の中で電流が走るのを感じた。

ファイルとの契約条件、憑依、精神の同化、ピエンドと人間の精神的相似

──どうして気付かなかったんだ?

"そうだ、今お前が気付いた様に、私はお前の精神を自由に操れる、ほぼ潜在的レベルでな、だがそれはお前も同じで、お前も潜在的レベルで、私の精神をいくらでも操れる、ただそれに気付いていなかっただけだ──しかも、操るというよりは強力な洗脳に近い"

ファイルがそう言うと、チョキーは唐突に体の力が抜け、強烈な睡魔が襲ってくるのを感じた。

"今まで私の仲間で、人間に憑依して地下界に戻った者は居なかったが、こういう事だったのだな──私もお前に憑依してから、早くも色々と変化が現れた"

ファイルとチョキーは朦朧とする意識の中で、全く同じ絶望を感じ取った。

"そしてこれからも急速に変化が訪れていく──それは悪魔としてあってはならない変化であり、人間としてあってはならない変化だ"

706 名前:名無しさん 投稿日:2007/01/04(木) 10:30:34 [ qv23N272 ]
また活気が出てきましたなぁ〜、皆さんアケオメです〜
これから読んでいきますが、時には思い出して上げてください。

当時ネタ扱いされてたこのスレに活気を与えてくれたFAT神と21R神の二人を…
お二人ともかんばーく(ぉ

707 名前:名無しさん 投稿日:2007/01/04(木) 20:44:46 [ HLccy49o ]
前レス
>>675

「・・・現在、古都ブルンエンシュティングは悪魔達の襲撃を受け、危機的状況にあります。」

最初の伝令がこの報を伝えてから、二人目の伝令が到着するまで、ほとんど間は無かった。

そして、その二人目から次の伝令、その次の伝令までも、間は空かない。

次々と新興王国ビガプールに訪れる伝令たちの報告は、深刻さを増していくばかりである。

―王宮に集められた、ブルンギルド連合の各正副ギルドマスター達の表情は険しかった。

ビガプールの王からの、突然の招待。

今、ブルンネンシュティングとビガプールの仲にすれ違いをおこさせてはならない。

・・・個々の各ギルドに届いた招待状を片手に、ギルドマスター達は集まっていたのだ。

そこに突然伝えられた、ブルンネンシュティングの危機。

本来ならば、すぐに古都へとってかえしたい所なのだが・・・。

「・・・・・・くっ!!王はまだか!!」

王の間へとつながる巨大な扉の前に立つ、番兵のむなぐらを掴む一人の戦士。

有力ギルドの一つ、「セシリア」の二代目ギルドマスター、アーウェンである。

「落ち着けよ。アーウェン“さん”。」

そんな彼の背後から冷静な、少し嫌味を含ませた響きの声。

名をフリースラントというウィザード。

彼もまた、ブルン連合の加盟ギルド、「魔錬」のギルドマスターである。

「そうですよ☆・・・それに、最後の伝令の報告からすると、もう古都はおそらく。」

さらにその近くの長椅子に腰掛け、ペットのファミリアの鼻をつっつきながら、、

古都への郷愁をまったく感じさせない言葉を吐いたのもまた、ギルドマスター。

メンバーの八割がテイマー・サマナーで構成されたギルドの長、彼女は、レルという名だ。

―今の三人を含め、謁見の間に集められたギルドマスター達は、合計10名。

各々が王が現れるのと、おそらく到着するであろう、古都からの伝令を、それぞれの胸中で待っていた。

708 名前:ドギーマン 投稿日:2007/01/04(木) 23:28:14 [ AepyIIHk ]
本当に活気付いたね。
なんか、1度sageミスしてこのスレが急浮上してから一気に増えたような・・・。
結果オーライと・・・w

で、友達から聞いた話を元に書いてみようと思ったんだけど、
うまくいかなかった・・・。
ネタとして読んでおくれ。
↓      ↓     ↓

彼は厨房だった。
彼のブーンは周囲を辟易させ。
彼の発言は芝生を超えて大草原を作り上げた。
晒し叩きも気にしない。
ただ我が道を征く厨の中の厨。
だが、そんな彼が恋をした・・・。
これは、そんなどうようもない彼の甘く切ないラブストーリー。

出会いは狩りPTだった。
リアル女性だという♀キャラPCと知り合えた彼は、速攻彼女に友録を申し込んだ。
相手にしてみれば「断る理由がなかったから」程度の理由で承諾したのだが、
彼の猛アタックはここから始まる。

彼女は毎日INしてる。
彼女がINしているのを確認したら速攻耳。
狩場に居ても長々と耳し続ける。
彼の水色のラブコールはログを真っ青に塗りつぶした。

場所を検索して古都かアリアンに居たら速攻拉致。
拉致してコルしてロマへGO!!
「やっと二人っきりになれたwww」
先方にすれば迷惑な話。
しかし彼は気にしない。
気にしないんじゃなくて気づかない。

彼は人目を気にしない。
ケイルンの前、オーク会場、Gv会場。
いつでもどこでも彼女に会えば白チャで彼女に愛を語る。
彼女は静かに聞いてくれている。
いや、本当は聞き流してる。

彼女はとっても優しい。
彼の話に合わせてくれる。
いや違う。
彼女が話を変えようとしても無理矢理彼は自分の話に引き戻す。
彼は彼女がさっきから
「w」「うん」「そっかー」「よかったねー」しか喋ってないのに気づかない。

しかし、そんな幸せな日々も長くは続かない。
その日も彼は彼女に「元気ぃー?w」と耳をした。
彼女はかなり遅れて「ううん、あんまり」
彼は鼻息を荒くしたことだろう。

即席お悩み相談室開業!!
to○○ 何かあったの!!??
from○○ちょっとね、つき纏われちゃってて
to○○ なんて読むの??
from○○ つきまとわれちゃって、ストーキングされてるの
to○○ えええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!!!
from○○ なんとかしたいんだけど、友録しちゃったから・・
to○○ そんなの、名前を何も押さずに友録の削除押して、名前打ち込めば相手の友録消せるよwwww
from○○ あ、そうなんだ
to○○ やってみてwww
             ┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓  
             ┃ 友達登録から○○さんの名前が削除されました。┃
             ┃                       ┃
             ┃          [確認]          ┃        
             ┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
・・・・・・・・・・・・・・
○○さんはコミュニティー拒否しています。
○○さんはコミュニティー拒否しています。
○○さんはコミュニティー拒否しています。
○○さんはコミュニティー拒否しています。
○○さんはコミュニティー拒否しています。





彼の恋は終わった。

709 名前:ドギーマン 投稿日:2007/01/04(木) 23:29:43 [ AepyIIHk ]
ありゃ、ズレちゃってるよ・・・orz

710 名前:第16話 新人 投稿日:2007/01/05(金) 03:54:48 [ 4MPv4jfo ]
あれから、運ルパンは少しずつ情報を集めてくれるようになった。
例えば
・パスケレもインしている時間帯があること。
・パスケレは”耳”に対して応答しないこと。
・どこのギルドにも幽霊のようなメンバーがいて、インはしているが
チャットに反応がなかったりすること。
・装備を見たがるくせにギルセンに全く出ない者が多くいること。
・誰にも何も言わずに引退する高レベがけっこう存在すること。

・・・これが何を意味するのかはまだ判らない。

始まりは雪月の引退オークを見てしまったこと。
人にあげたアイテムや貰ったアイテムはなんと思い出深いんだろう。
あのオークを見ていなければキンガーさんに連絡しなかったろう。
雪月はキンガーさんのキャラを盗んだ奴と繋がっている。
もしかするとパスケレも雪月”グループ”なのかも知れない。
そんな事をキンガーさんにメールした。
______________
件名  Re:元気?     |
――――――――――――――
元気だよ! 雪月かぁ・・・あ
いつから露天で買ったことある
なぁ ハフプレGDXのHP75%をさ
もしあいつがなんらかの形で絡
んでいるならムカつくなぁ!
    −ENDー
______________

メールを読んでびっくりした・・・その鎧はオークで出ていたから。
つまり雪月は永遠に同一アイテムで稼ぎ続けてる?
雪月を狩場で目撃した人はいない・・・完全な集金マシンなの?
集めたゴールドはどこに消えるの?
RMTで稼ぎ続けているの?
ついでに購入時期をキンガーさんに聞いてみると2ヶ月前だと言う。
 鎧購入
  ↓
パスケレギルドに加入
  ↓
yahooでみんなで将棋トーナメント
  ↓
メアドがばれる
  ↓
RSのIDが盗まれる

タイミングは合っている。でもこれは状況証拠でしかないわ。

考えすぎて疲れたのでRSにインしてみた。
改めてゲームが気晴らしであり、仲間がいるってことに嬉しさを感じる。
いつもどおりギルドメンバー表を見て、みんなのレベルを確認する^−^
 
          ?!

待望の・・・久しぶりの新人さんが加入しているじゃないの!?
嬉しくて、嬉しくてギルチャで挨拶してみたが本人はいなかった。
すると、タンクがこう言ったのが私の動悸を速くした。

「新人さんが交流を深めるためにもゲームしませんか?ってさ」
「yahooの大富豪やろうって言ってたよw 俺もたまにやりたいよ^^」

あわてて友達検索で運ルパンを探したがインしていない!

私はみんなに組み合わせを決めるまで勝手に遊ばない様に伝え
友達を1秒でも疑った自分に呪いの言葉を発しながら、もう一人に
可能な限りすばやく耳を送った

・・・デルモに。

だって、雪月からオークでHPアンクを購入したから・・・・。

711 名前:名無しさん 投稿日:2007/01/05(金) 08:34:09 [ 3apT8vFw ]
>>708
同じくスレの伸びの凄さに驚いてます。
RS小説でぐぐってもあんまり小説サイトが無いから
RSの人たちって創作小説とか好きじゃないのかなぁと思ってたけど、そんな事も無かったみたいで嬉しいなぁ。

ドギーマンさんの小説は意外性とどんでん返しに富んでて読んでてドキドキしますね。
常々こんな話を書いてみたいと思っています。
短編でキチッとまとめられてるのも凄い。


>>710
きんがーさんその後の話、待ちわびてました。
推理小説というだけじゃなくて、誰が犯人か暗中模索している感じが上手く表現できてると思います。
今後の展開を期待しています。かなり気になる・・。

712 名前:ドギーマン 投稿日:2007/01/05(金) 10:23:26 [ AepyIIHk ]
>>711
ありがとう。
俺も何か他の人の話の感想を書こうと思ったりするんだけど、
書いては消してるんだ・・・。
なんだろ、なんか感想を書くのって苦手なんだ。

今回もかなり短いお話を持ってきたよ。
↓    ↓   ↓
教会の前の小さな公園で、ビショップを囲んで子どもたちが座っている。
黒い肌、オールバック、袖の短い聖徒衣からは太い筋肉質の腕が伸びている。
見た目の怖いかれは最初は子供たちから当然のごとく怖がられた。
しかし、一人、また一人と彼に近づいてきて。
いまや彼は子供たちに頼られ、そんな彼も子供たちに心を救われていた。

いま、彼は子供たちに本を読み聞かせている。
はるか昔の一人の冒険者の冒険譚。
男の子はワクワクと目を輝かせながら聞き。
女の子はドキドキと口元に両手を当てながら聞いた。

「ねぇねぇ、それでその箱の中にはなにがあったの?」
男の子が一人、ビショップの話の長い貯めに耐え切れずに聞いた。
ビショップは顔をほころばせ、優しい笑みを浮かべながら言った。
「夢が、詰まっていたんだよ」
一呼吸開けて、続けた。
「開けさえしなければね」
子供たちは首をかしげている。
ビショップは日が西の山に傾いたのを見て、本をパンっと音を立てて閉じ、立ち上がった。
「さあさ、もうおうちに帰る時間だよ。お話しはまたあ〜し〜たっ」
え〜〜、やだ〜〜っと子供たちの声が響く。
「こらこら、お母さんとお父さんが心配するからね。寄り道しないように帰るんだよ」
子供たちは『は〜〜い!』と元気に答え、ビショップに小さな手を振って帰っていった。




子供たちの小さな影が小さくなるのを見とどけて、
ビショップは懐から紙を一枚取り出した。

『エンチャント文書セット』

ビショップはその紙をグシャっと握りつぶし、教会の中にゆっくりと消えて行った。

夕日の美しい日のことであった。

713 名前:名無しさん 投稿日:2007/01/05(金) 14:50:18 [ g7GihE3Y ]
.

714 名前:ドギーマン 投稿日:2007/01/05(金) 22:06:33 [ AepyIIHk ]
古都ブルンネンシュティグのとある一角。
彼女は前を歩く小さな影の後ろをついて歩いた。
「おら!ちゃっちゃと歩け!」
前から怒鳴り声がする。
「は、はい・・」
彼女は力なく答えた。
周囲からクスクスと小さな笑い声が聞こえる。
彼女は羞恥から顔をうつむいた。

前を歩いていた影は噴水のふちに座ると、彼女に言った。
「おい、クッキー買ってこい」
「はい」
しかし、彼女は動かない。
「何だよおい。さっさと買って来い!!」
影が怒鳴った。
「あ、あの・・・お金が」
「ああ金だぁ?仕方ねえなあ」
そう言うと、そいつは財布を取り出した。
彼女の財布だ。
「ほらよ、さっさと行け!」
「は、はい」
彼女はダッシュでクッキーを売っているバリカスのもとへ向かった。





クッキーを詰めた紙袋を胸に抱いて、彼女は噴水に戻ってきた。
かなり急いだのだろう。息を切らせている。
「はあ・・・はあ・・・買ってきました。コボルトさん」
「遅い!」
コボルトは紙袋をガサガサと開けると、ジロっと彼女をにらみ付けた。
「ケーキはどうした?」
「え、クッキーしか聞いてませんけど」
「バカヤロウ、クッキーっつったらケーキもだろうが!」
無茶苦茶な訳の分からない理屈でコボルトが吠えた。
「すいません、すいません」
ペコペコと頭を下げる彼女を眺め、
「まあいい」
とコボルトはクッキーをかじり始めた。
彼女が立ってその様子を見ていると、
コボルトは「おい」と浮いている足を揺らした。
「あ、はい」
彼女はコボルトの足を揉み始めた。
自分の足元にしゃがむ少女を眺めながらコボルトは言った。
「ったく、てめえは俺様が居なけりゃまともに狩りも出来ねえんだからよ。
ちったあ敬うってことを知ったらどうだあ。ああ?」
「すいません、すいません」
コボルトの小さな足を揉みながら彼女は思った。
ファミリアに乗り換えたら、コイツを速攻で殺す。と。





数日後、
ファミリアA「おっせえぞ!さっさとしろ」
ケルビー「ったく、ノロマだな」
ファミリアB「キャキャキャ、いつものことだろうがよ」
スウェルファ「とにかくさっさと来い」
4人分の大きな荷物を背負い、彼女はよろよろと彼らの後ろを歩いていた。
彼女は周囲の目が自分に集まっているのを感じた。
そして、つぶやいた。
「もうやだ・・・ロマ村帰る・・・」


------‐------‐------‐------------------------------------
あとがき
もし、ビーストテイマーの主従関係が逆転したらってことで書いてみた。

715 名前:1/2 投稿日:2007/01/06(土) 15:58:09 [ 2Qz8IwTk ]
元ネタ ジョブに対する偏見とイメージを書くスレ
【】は武道の心の声として書いています

「武道家さん」
『ぬ。何か用でござろうかサマナ殿』【サ、サマナたんいつ見ても可愛いなぁハァハァ】
「アーチャーさんと何を話してたんですか?」
『む。それは・・・』
「私には言えないようなことなんですか・・・?」
『あ、いや弓子殿のぷらいばしーにも関ることなので某の一存では』【不安そうな顔コレもまた。。】
「ふ〜ん・・・随分と仲がおよろしいんですね」
『うむ。よい付き合いをさせて戴いておる』【いつもと違った尖った眼もヨイヨイ】
「・・・・・・」
『どうなされた?』【このカラケどうもピリピリしておるような・・・気のせいか?】
「・・・・えばいい」
『うぬ?なんと?』【ぬぅ!某の感が逃げよと告げておる!なんなのだ!】
「アーチャーさんのとこにでも何処にでも行っちゃえばいいんだー!」
サマナーは腰に差していた笛を取り召還の体勢をとった
『サ、サマナ殿落ち着いて!笛吹けてないでござる!』
【泣き顔も怒った顔もまさにぷりてぃーそのもの!某のめもりーに焼き付けねば】
「うるさい!うるさい!!うるさい!!!」
サマナーを囲むように4匹の召還獣が呼び出された
しかし呼び出された4匹は驚き途惑っていた
(いつも一緒に居るこの2人が何故?)(というか何で全員呼ばれてんの?)
「うぅ・・・ぐすっ・・」サマナーの笛が武道家を指した 突撃の合図だ
(何かよくわからんが今の所この男は敵らしい)(まぁ命令には従っとこうー)

716 名前:2/2 投稿日:2007/01/06(土) 15:58:53 [ 2Qz8IwTk ]
『サマナたn じゃなかったサマナ殿!どうなされたのだ!』
「何よ!人の気も知らないでデレデレしちゃってさ!そりゃ私はアーチャーさんみたいに胸・・」
『確かにサマナたんの胸は小さいがそれはまだこれから成長するのであっ・・』
「小さいって言ったぁぁぁ!気にしてるのに!バカバカばかぁぁぁぁ!」
【ぬぅ!?火に油を注いでしまったか!年頃の娘は難しい】
「ケルビー!テイルスピアー!」
(mjd!?当たり障りなく適当に攻撃してたのにそんなこと言う!?)
「スウェルファー!バブルガム!逃げ道塞いで」
(こりゃ本気だなぁ逆らえなさそうだ)
『サマナ!!! たん』
武道が大声で呼びかける 語尾が語尾なので迫力もクソないが
「な、何よ!?」
『何を怒っているのかわからぬが弓子殿とはなんでもござらん。互いにあどばいすをしていただけで候』
「アドバイス?」
『さよう。弓子殿は倒れられる時に少々不恰好なのでな もっと槍子殿のように恥らって倒れるようにと』
「不恰好?恥らう?」
『槍子殿の見えそうで見えない絶妙な倒れ方を参考にするとよいと某かr』
「胸だけじゃとどまらず・・・この色情魔!!」
【説明したのに更に怒り狂っておる何故!?】
「ウィンディ!リフトアップ!」
(私たちは痴話喧嘩に巻き込まれたってことね、ヤレヤレ)
『鳥の動きが・・・見える!そこぉ!』
突進してきたウィンディを武道はひらりと身をかわした

{だからサラダにはゴマ味噌だって言ってんだろこの低マ!}
[あんた馬鹿じゃないの?サラダにはフレンチと相場は決まってんのよ火力剣士様?]
{聞き分けのないや・・・んっとぉっぉ?俺TAKEEEEEEEE!!!!!!}
[け、剣士?何処にいくのよー あのウィンディ何処からきたのかしら?]

『サマナたん話を聞いておくれ』
「何よ・・・何よ・・・」
サマナが俯いた瞬間に武道は動いた
パァァン!乾いた音が響き渡った
猫だまし 一瞬のうちにサマナの懐に飛び込んだ武道はサマナを怯ませ背後を取ることに成功した
人相手に猫だましする方もする方だが 引っかかる方も引っかかる方である
【サマナたんの髪の毛いい臭いだぁ 我が人生に一片の悔いな】
危うく天に昇りかけた武道であったがギリギリのところで踏みとどまった
『互いにあどばいすを と言ったであろう?』
サマナは顔を向けず武道の声を聞いている
『某、仏教徒の為当日は祝えなかったが、
サマナ殿にくりすますぷれぜんとをと思ったのだが何がよいかわからなくてな弓子殿に相談を持ちかけた次第』
『驚かせようと思ったのでな、知られたくなかったのだ』
「・・・」
『これが某流のさぷらいずじゃぁぁぁ』
どこかで聞いたような台詞を口走る武道
『土竜よ例の物をココへ』
ヘッジャーが何かキラリと光る物をサマナへ渡した
『自分がイイと思う物でイーんじゃない?とあばうとに返されたので某が選んだ物に候』
「ホロウサークルズ・・・」
『気に召さなかったか・・』
「うぅん。ありがとう。私のために買ってくれたんだもんね大切にするよ」
『う、うむ』【お、収まったか危ないところであった】
「来年はタートでもくれるのかしらね?」
『ん。タートとやらが何かわからんが出来る限り応えよう』

終幕

717 名前:名無しさん 投稿日:2007/01/06(土) 19:56:46 [ S/frkNFs ]
>>714
確かにペットあってのテイマ。下克上されたらたまりませんな。
学問の家だと「テイマは動物好き」みたいな言われ方してたけど、やっぱりMOBはMOBだ・・。


>>715
偏見スレのあの流れ、自分も読んでました。
武道のこれでもかってほどの武士口調に別の意味で惚れた・・w
そして「サマナ"たん"」とかの呼び方の変調にもあんまり気にしてないサマナたんもイイ(*´Д`)

武道×サマナのカップリングはやっぱ随一ですわ。
どっちも天然だし純情だし素朴だし。見ててほわわんとしてしまいますな。

718 名前:携帯物書き屋 投稿日:2007/01/07(日) 00:00:28 [ eFHFlgNU ]
>>714
確かにペットいなかったら何もできませんもんね。
自分もテイマ持っているのでなんだが身近に感じました。

>>715-716
自分も偏見スレ読んでいました。
武道×サマナってペアが固定されていますね。何だか昇天しまくってたようですが・・・。
農家の最初の心の声でいきなり吹きましたw

では自分も書いたので載せます。
何回か見直ししたけど最後の方苦し紛れだorz

あと読み手の方を置いて行ってそうな予感・・・。

719 名前:携帯物書き屋 投稿日:2007/01/07(日) 00:02:38 [ eFHFlgNU ]
前回>>692-694
「弓……?」
ニーナが持つものはどう見ても弓だった。
弓にしては小さめだが、弓が描く綺麗な弧と、無駄のない造りが威厳を感じさせる。
――――ん? 俺は1つおかしいことに気がついた。
矢筒がない。矢筒がなければ矢を放てるわけがない。しかし、先程ニーナは確かに矢を放ったのだ。
そんな疑問はすぐに解決した。
ニーナは再び弓を構えると、空いた右手の先から眩い閃光が走った。
すると、ニーナの手にはしっかりと矢が握られていたのだ。光の矢が!
瞬間、再び俺たちに無数の刃物が襲いかかる。同時にニーナも光の矢を放った。
何のマジックか、無数の刃物はニーナの光り輝く矢によって全て撃ち落とされていた。
確かにあの射ち方なら、矢を矢筒から取る動作がいらない分速く射てる。
しかしあの速さは異常だ。なにせ俺の眼には全く捉えることができなかったのだから。
「いい加減姿を見せたらどう?」
暗闇に向かってニーナが叫ぶ。すると暗闇から2人の人影が現れた。
1人は吉沢鉄治。もう1人は漆黒の外套で身を包んでいる全身真っ黒の不気味な男。
するとその男が口を開いた。
「我が投擲を防ぎ切るとはやはり相当な使い手だな」
男の不気味な声が低く響く。
「あなたこそ気配だけでなく姿まで消すなんてさすがね」
ニーナは感情のない声で言った。
「それはシーフの専売特許だからな」
男もどうでもよさそうに言う。こっちも負けていない。
「でも――まさかあなたもこっちに来ているとは驚きだわ」
「それは俺も同じだ」
また俺を置いてきぼりにする会話が始まった。少しの間の後、男が口を開いた。
「1つ聞く。お前を動かしている原因はレッドストーンか?」
また出た。レッドストーン。ニーナは意に介した風もなく頷いた。
やはり…と男は呟くと、踵を返した。
「逃げる気?!」
ニーナが叫ぶ。すると男は足を止めた。
「そうだ。俺はまだ万全ではないからな。場所も悪い。…それにだ、俺とお前がレッドストーンによって生き返っているとするなら、他の3人が俺たちと同じように生き返っている可能性も否定できんからな。
これは時期尚早というものだと思うのだが?」
正直さっぱりだが、ニーナが押し黙っているので俺も黙る。
それを見て男は再び歩き出した。
「ちょっと待ってっ!」
再び男の足が止まる。
「あなたたち何で私たちがここに来ると分かったの? それともう1人の方はあなたの契約者ね」
「テツジと共にいたらお前を見つけたからだ。……するとそこにいる奴はお前の契約者か」
全員の視線が尻餅ついてる俺に向けられる。ニーナは俺を一瞥すると、
「そうよ」
と、答えた。ニーナの背が俺にいつまで腰抜かしながら解説してるんだと潮笑する。
男は俺から視線を逸すと歩みを進めた。
「行くぞ、テツジ。――――また会おうニーナ=オルポート。次はお前の中のレッドストーンを貰い受ける」
そう言い残し漆黒の男は吉沢鉄治と共に闇に消えた。
ふうと一息着く。一時はどうなるかと思ったがこれも全部ニーナの―――
「お、お前っ!」
ニーナの方へ視線を向けるとニーナはうつ伏せの姿勢で倒れていた。
すぐさま腰を上げニーナの方へ駆け寄る。息が荒い。……ついでに意識もない。
「たく、しょうがねえな」
さっきまで俺に潮笑していた癖になに倒れてるんだよっ! それに幽霊は寝ないんじゃないのかよっ!
と、心の中で罵倒しながらニーナを背負った。
「うお、軽い」
素直な感想が漏れる。だが、次の瞬間そんな感想は脳外へ飛んだ。
ニーナの豊艶な体が背中にモロに触れる。つまり…あれ、あれが背中にっ!
嬉しいんだか苦しいんだか分からない気分のまま俺は家に向かった。

720 名前:携帯物書き屋 投稿日:2007/01/07(日) 00:08:18 [ eFHFlgNU ]
背負ってきたニーナをベッドの上に寝かせついでに毛布をかけてやる。
今まで幽霊だからあまり気にしなかったがニーナは美人だ。
流れる様なブロンド髪と染み1つない雪の様な白い肌、そして至高の彫刻のごとく整った容貌は正直目を惹く。と言っても人間ならという大前提の前ならだが。
「でも…こうしているとお前が幽霊なんて思えねえよ」
ポツリと溢れる。
「ぅん……」
「うわっ!」
ニーナが急に目を覚ました。聞かれてないだろうな……。
「あれ……? 私」
「覚えてないのか? 変な黒男が去った後にぶっ倒れたんだよ」
ニーナはしばらく悩む仕草を見せ、ぽんと手を叩いた。
「おい背後霊」
「守護霊よ」
「どっちでもいい。俺がここまで連れてきてやったんだから礼の1つはよこせ」
「え? そうなの? ありがとうショウタ」
ニーナが笑顔を見せる。俺にとってそれは不意打ちだった。思わず顔を逸らし、おうと答える。
「ところでお前、どうして倒れたんだ?」
苦し紛れに話題を逸らした。
「それは恐らく生命力――――生気が不足したからね」
「それって、契約した俺から取るものじゃないのか? 俺だけじゃ足りないとか?」
「いえ、そんなことないわ。生体を維持するために摂取する生気なんてほんと微量よ。でも、今日あいつと軽く戦闘して分かったんだけど、戦闘で使う魔力の方がずっと生気を必要とするみたい」
「む……やっぱり俺の生気じゃ全く足りないってことか?」
「いえ、今日くらいの戦闘じゃ別に支障ないと思うわ」
? なら何でぶっ倒れたんだろうか。
「なら何で倒れたりしたんだ?」
「それは――――私がまだ一度も生気をとってないからね。たぶん」
はい? 何言っているんだこの霊。生命力を貰わないといけないからとか言って契約しておいてまだとってないだと?
「お、お前…馬鹿?」
「なっ……ただ私は罪もない人から何かを奪うっていうのが嫌いなだけよっ!」
「――――――」
一瞬思考が止まった。
「だが、またお前が倒れるよりはましだ。さっさと俺の生気をとれよ」
「え? いいの?」
また間抜けなことを抜かしている背後霊。
「初めからそういう契約なんじゃないのか?」
「そうだけど…」
「いいからっ!」
なんだか俺ヤケになってるような気がする。
「じゃ、いくわよ――――」
ごくりと唾を飲み込む。その音は自分でも聞こえた。
痛かったらどうしよう。
「――――はい、終わりっ」
はい? 痛いどころかいつとられたかも分からなかったぞ。
「ほ、ほんとに終わり? 嘘ついてない?」
「嘘じゃないわよ。ちょっと多目に貰っちゃったけど」
―――痛くなくてよかったっ!
「あ、聞きたいことがあるんだが、あの男は誰なんだ? それにお前が使った矢とか」
これだけは契約者とかいうやつとして聞いておかないといけない。
あとあいつの矢、光ってたけどあれも知りたい。
「えっと、まずあいつは私と同じ存在よ。私と同じようにレッドストーンを持っているわ。その力で活動している。
あのもう1人の男はショウタと同じであいつの契約者ね」
なるほど。吉沢は契約者だったのか。確かそんなこと男が言っていた気がするが。
「それであいつもレッドストーンを集めようとしているわね恐らく」
「む…ならレッドストーンというやつを集めるにはあいつから奪わないといけないのか?」
「そういうことになるわ。大丈夫、私強いから。あと私の矢だけどあれは魔法よ」
――――は? 魔法だと。何てデタラメだそれ。それにどこからその自信が湧いてくるのか聞いてみたいものだ。
「私の生前いた世界は魔法は常識なの。私のもその一種。ついでに言っておくと私の職業はアーチャーよ。あの男はシーフね。
あいつは生前大陸内で最大の盗賊ギルドのマスターだったのよ。その名もラルフ=カース」
全く理解できてない気がするがこれだけは分かった。
あの男はやばい。
それより話題を変えよう。
「そういや、お前寝ないって言ってた癖に何で気を失ったりしたんだ? 生気が足りないのは分かったが」
「それはね…私たちは半分人間だからよ」
「へ?」
思わず間抜けな声が漏れた。
「これは説明するよりこうした方が早いわ」

721 名前:携帯物書き屋 投稿日:2007/01/07(日) 00:09:00 [ eFHFlgNU ]
そう言ってニーナは俺の手を掴むと己の左胸に持ってきた。
ってちょっと! 思わず目を天に仰ぐ。柔らかい感触が手全体に広がる。
「どう?」
どうってニーナさんっ!
「どう? 感じないでしょ、心臓の鼓動」
え? 言われてみれば確かに感じない。
「ああ」
「私の心臓はね、レッドストーンそのものなの。本当は完全に人間のはずなんだけど
これは5分の1しかないから半霊半人くらいまでしか再生できなかったのよ」
そう言ってニーナは少し悲しそうな表情を浮かべた。
気まずくなったのでテレビをつけた。ちょうどニュースの報道が流れた。
『只今入ったニュースです。本日午後6時頃、通り魔殺人事件が起こりました』
「「――――!!」」
『場所は――――』
近い!
「な、なあっ」
「ええ。あいつの可能性が高いわ。1人の生気じゃ物足りなかったのね。
あいつはそういう男よ。欲しい物はすべて奪う盗賊だもの」
殺害方法は酷かった。綺麗に首を切断。
被害者は抵抗した痕跡もなく殺害されたそうだ。
つまり、被害者は訳も分からず、自分が死んでいることも気づかず殺された。
こんな物は人間技じゃない――――! 俺は気づくと床を思いきり殴っていた。
「ショウタ…?」
「俺のせいだ……。俺があの時ビビって動けなかったから……あの時あいつを止めとけばよかったんだ」
何でだ? 何でこんなにも悔しいんだ? 俺は他人がどうなろうと関係ないと思ってきたはずなのに。
それに被害者は顔も知らなければ会ったこともない他人なのに。
それでも悔しさは湧くのを止めない。
身近で起こったから? 自分でもこの原因が分からない。
「ショウタのせいじゃないわ」
「――――!」
「ショウタは自分を責める必要はないわ……。ごめんね、私はショウタと精神的にも繋がってるから少しばかり分かるの。考えていること」
ニーナが続ける。
「ショウタは冷たくなんてないわ。関わった時間は少ないけど…ショウタは優しいもの」
「な――――」
ストレートにこんなこと言われて平気な男なんているはずがない。
俺の顔は恐らく彼女の緋色の眼にはその色以上に赤く映っているだろう。
「だってショウタは私をここまで連れて来てくれたじゃない」
ニーナが微笑む。
この気持ちの理由はまだ分からないが、1つ決心した。
「おい、ニーナ」
俺は初めてニーナのことをニーナと呼んだ。
「えっと…明日はちょうど休日だし学校も休みだ」
俺は今自分でも馬鹿なことをしようとしていると思う。止めた方がいいとも思う。
言ってみれば絞首刑の階段を一段…いや二段飛ばしで飛び越して上がっているようなものだと思う。
それと同時に今ここから逃げ出せばさらに後悔するんだとも思った。
だから、俺は――――
「明日は1日使ってあいつを見つけ出すぞ」

722 名前:名無しさん 投稿日:2007/01/07(日) 15:42:09 [ 0W3ZLnBs ]
あ〜、アラステキさん帰ってこないかなぁ、
久々にあの凄まじい全作品へのレスが見たいわマジで。
あの人いなくなってから、書いても投稿しなくなってしまったぜ。
なんでだろ?雰囲気は活気があった頃に似てきているんだけどなぁ。
色々書いてみた後に[書き込む]がどうしても押せない…

723 名前:殺人技術 投稿日:2007/01/07(日) 21:14:20 [ E9458iSQ ]
同じく書いたのに投稿する気がなかなか起きなくなってきました(´・ω・)
書く人は多いけど感想付ける人は少ないからかな……?

>>718
読んでみました。
現実世界に異世界的な何かが入り込んでくる形の小説ってなんかドキドキしますよね。
戦闘シーンがかっこいいです、ショウタの心理描写も結構上手くて、面白いですw
でも、読んだ感じ三人称や物を表す言葉遣いがちょっと変かな、って思いました。
>あとあいつの矢(あいつだとシフとかぶっちゃうので身近に居るならこいつのがいいかも)
>それに被害者は(語り手が感情的になってるなら犠牲者のほうが伝わるかも)
>空いた右手の先(自分も自信ないけど弓を構えるとどちらの手も空かないので、弦を握る手、のがいいかも)
偉そうに指摘してすいません。
続編期待してますー。

>>722
ぜひ書いて欲しいです。
あとそのアラステキさんの作品は大体何レス目辺りにあるんでしょうか?
1レス1レスが長いので1スレ目から全部見る時間がないです(´・ω・)

724 名前:ドギーマン 投稿日:2007/01/07(日) 22:05:46 [ AepyIIHk ]
お兄さん。そこのお兄さん。

そう、あんただよあんた。
浮かない顔してるねえ?

ははは、確かにわたしにゃ関係ないけどね。
でも、あんたの事は知ってるんだよ?

何をって、ねえ。
そうだお兄さん。ちょっとここに座りな。

いいから!!このババの話に付き合ってくれるだけでいいんだよ。

ちょっと待ちなって!
いいかい?あんたにも関係のある話なんだ。

どう関係があるかは、聞いてもらわなくっちゃねえ・・・。

よーしよしよし、じゃ、そこに座って。

どこから話したものかねえ・・・。
ええと、
昔々・・・




フランデル大陸の極東のそのまた東。
ある森の中、女だけの狩猟部族があった。
彼女らは森に生き、森に死に、森の木と共に生まれる。
それはいつの頃から始まったのかも知れない。
言い伝えでは、彼女らの先祖がその森の神と契りを交わし、神は彼女らに永遠の繁栄を約束したらしい。
実際、その森では動植物もよく獲れ、森の中で食うに困ることは決してなかった。
しかし、森の神様は外の者を嫌った。
だから彼女たちは侵入者を決して許さず、森に踏み込んだ者は例外なく彼女らの手によって殺された。
彼女らは、森の娘であり、森の恋人であり、森の守人だったのである。

しかし、ある娘によって全てが変わってしまう。
娘の名はマハル。
その娘もまた、しばらく居なくなっていた母に抱かれて森の中から来たそうだ。
その森では、年頃となった娘は誕生を迎えた日の夜にふっと姿を消し、
しばらくして赤子を抱いてひょっこりと帰ってくる。
どこに行っていたのか、何をして来たのか、一切答えてはくれぬ。
ただ、赤子は誰の子かと聞けば、森の子だと言う。
子は母に育てられ、森に全てを学び、森の子を生み、森の中で一生を終える。
しかしマハルは違った。
彼女の母はあの夜、森を拒んだそうだ。
森はそれを怒り、その怒りは部族の女達全てに及んだ。
木々は荒れ、動物たちは姿を消し、それまであった草々は土くれに姿を変えた。
彼女らは恐れた。
そして、マハルの母を殺した。
マハルの母の死で森は怒りを鎮め、再び森に元の繁茂がかえってきた。
マハルはというと、母の居ない幼子を不憫に思った母の友が引き取り、己の子と共に育てた。
しかし、森を愛さなかった女の娘、森を拒んだ咎人の娘、部族を滅ぼそうとした呪われた者の娘。
マハルへの視線は常に敵意と悪意と恐れに満ちておった。
やがてマハルの母の友が死ぬと、彼女への風当たりはより厳しいものとなった。

マハルが間もなく成人を迎える頃、彼女は森に迷い込んだ1人の旅人を見つけた。
旅人は獣に襲われたのか、傷を負っておった。
森人の掟に従えば、その旅人も当然の如く殺されておっただろう。
しかし、マハルはその旅人を殺さなかった。
あろうことか、旅人を掘った洞穴の中に隠し、匿ったのだ。
マハル自身、何故そんな事をしたのかよく分かってはいなかった。
ただ、森の中で1人血を流している男が、自分と同じで孤独に見えたそうな。
マハルは男のために森の薬草を集め、男のために獣を狩った。
男も、マハルに外の世界のことを話して聞かせた。
マハルにとって、それは御伽噺のようであった。
生まれた時より森の中で孤独に生き続けたマハルにとって、外の世界は自分の生きるべき世界に思えた。
しかし、森は決してそれを許しはしなかった。
マハルが男を隠してから、森は荒れ続けた。
部族の女たちも、森の中の侵入者を探し続けた。
しかし、幾度と無く見つかりそうになりながらもマハルは男を隠し通した。
そしてついに、マハルはやってはならぬ禁を犯した。
マハルは男を愛し、そして受け入れてしまった。

725 名前:ドギーマン 投稿日:2007/01/07(日) 22:06:31 [ AepyIIHk ]
森は激怒した。
地を揺らし、動物は森を去り、緑は消えた。
部族の女達はマハルと男を殺そうと森の中を探し回った。
しかし、男はマハルによって既に森の外へ逃がされていた。
マハルはというと、
部族の誇りである槍を持ち、魂である弓を腰に差し、怒りである矢を背負い、
男の手を振り払って森と部族の女達にただ1人戦いを挑んでいった。
マハルの中には、森のものではない命が宿っていた。




その後マハルがどうなったのかは知れない。
殺されてしまったのかも知れないし、或いは生きているのかもしれない。
ただ、森は死に、いまそこには森の残骸のように荒野が広がっているだけと聞く。
森を失ない、生き残った女達は外の世界に出て、
大陸を彷徨った挙句にエリプト王国というところで持ち前の弓術槍術を用いて傭兵となったそうな。




さて、話はこれでおしまいだよ。

ん?今の昔話のどこがあんたに関係があるかって?
はて、そんなこと言ったかのぉ・・・。

ほほほ、怒るでない怒るでない。

森の呪いを受けてから、自分の子孫を見ることだけが生き甲斐でね・・・。

ふふ、浮かない顔も吹き飛んだね。
じゃあね、わたしの坊や。

726 名前:ドギーマン 投稿日:2007/01/07(日) 22:09:00 [ AepyIIHk ]
ちょっと、昔話テイストな感じで書いてみた。

727 名前:名無しさん 投稿日:2007/01/07(日) 22:32:59 [ TB1ykK6U ]
>>723
感想ばかり書いてる自分は読ませてもらってばかりです。
試しにSS書いてみても、他の人の作品読んでから見返すとまだまだだなぁと思う。
感想文もへたくそですが、今後もここには感想主体で書かせてもらいます(・ω・)

>>726
ドギーマンさんのお話は毎回楽しみにしてます。
やっぱり最後はハッとする展開(*´д`)
RSの地名すら覚えてない自分はエリプトってどこだっけとか思ってたり
世界設定ではアリアンの西方でしたっけ?勉強してきますorz

728 名前:名無しさん 投稿日:2007/01/07(日) 22:36:52 [ 0W3ZLnBs ]
>>723
あー、すまん書き方悪かったかな。
アラステキさんは21RさんやFATさんが活躍してたときに
作品への感想を書いてこのスレを盛り上げてくれた人ね。
今は知らない人多いかも。
やっぱり感想書いてもらえたら次も書きたいって思えるよね。
反応無いとただ自信だけ無くしていくような気分…

729 名前:殺人技術 投稿日:2007/01/08(月) 00:10:43 [ E9458iSQ ]
>>724
ちょっと軽い気持ちで読んでみました。
短い文の中で上手に隠喩が使われてますね。
最後の一文はじわじわときました。

>>728
教えてくれて有難う御座います。
アラステキさんの作品が凄いのかと思いましたが、そうではなくて盛り上げる側だったんですね。
良くても悪くても何かしら感想があると「書いて良かった」って思うけど。
ないと「別に書く必要なかったのかな」って思います(´・ω・)

砂浜の中に手ぇ突っ込んで
手を取り出した瞬間手の上に貝が乗ってたりもしかしたらゴミが乗ってたり
貝が乗ってたら嬉しい気分になるし、ゴミが乗ってたら不快だけどゴミ箱に捨てれば浜は少し綺麗になるし。
でも何もなかったら砂は指の間から零れ落ちて何も残らない、浜に手を突っ込む行動自体が徒労で無意味になっちゃう(´・ω・)

730 名前:殺人技術 投稿日:2007/01/08(月) 13:38:31 [ E9458iSQ ]
今ひとつ活気が欲しいので一発age
迷惑かけたらごめ(´・ω・)

731 名前:名無しさん 投稿日:2007/01/08(月) 14:28:17 [ qv23N272 ]
ゲーム中で21Rさんによくお会いしますが、やっぱりアラステキさんが現れなくなったのがキツイって言ってましたよ
最近感想がもらえて無かったからそのまま書くの止めちゃったんでしょうかね…

それにしても>>728さんは昔の事をよくご存知で

732 名前:名無しさん 投稿日:2007/01/08(月) 17:19:19 [ psw7Vx8o ]
ageられてたお陰でこのスレを発見する事ができました。
色々読ませて貰いましたーホント面白いです。
感想は書き込んでなくても、続きや次回作を楽しみにしてる人も多いと思うので・・
書き込んで貰いたいです。
まだ見つけたばかりで何方がどの小説を書いたのかも良く分かってないんですが・・
これから直々覗いて一人一人にコメントもできたらなと思ってます。
長文失礼しましたっ。

733 名前:名無しさん 投稿日:2007/01/08(月) 19:16:58 [ yf6mwZPs ]
一言でもいいから感想貰えると書いた側としては嬉しいね
自分は2度書き込んだけど(接続の関係上ID変わってるが) 最後の 書き込む を押す時結構悩む

734 名前:殺人技術 投稿日:2007/01/08(月) 19:49:04 [ E9458iSQ ]
続きうpします。
長くてつまらない、なんて事態になったらごめんなさい(´・ω・)


チョキー・ファイル

>>656
>>657
>>658
>>678
>>679
>>687
>>688
>>689
>>690
10>>701
11>>702
12>>703
13>>704
14>>705

735 名前:殺人技術 投稿日:2007/01/08(月) 19:49:47 [ E9458iSQ ]
チョキー・ファイル(15)


砂漠の朝は涼しかった

空は暗い宵闇を追いやる様に移り変わり、絶望のまま床に就いたチョキーには砂漠に横たわる暁は血の塊に見えた。

同じ絶望を感じたファイルにはどう映っているのだろうか──そんな素朴な疑問を一蹴するかのように、町は商人達が慌しく店を構え

夜中交代で見張っていたのだろう、クロマティガードの面々は欠伸や伸びをしてまた交代し、旅人がアリアンを後にする。

これが、アリアンの毎日の朝だ。

"次は何処にいくんだ?まさかあの鍛冶屋の鑑定が済むまでいるつもりか?"

ファイルはさして眠気を感じさせないような声で──当然だが──チョキーに問い掛けた。

チョキーはまた淡々と述べようと思ったが、ふとある事に気が付くと、チョキーは言った

"なあ、昨夜お前言ったよな、精神が同化しかけてるって──だったら俺の考えてることが分かるから、訊く必要ないんじゃないか?"

チョキーはそう言うと、ファイルは頭の中で溜め息をついた。

"確かに、精神は同化してるから、お前が感情を変化させればこっちの感情にも影響する、だがそれだけだ──記憶というのは精神というよりも肉体に近い、そしていくら精神が同化しようと、肉体は同化しない、そういう事だ"

チョキーは憮然としたが、少し考え込んで半ば納得し──無理矢理納得し──仕方なくまた淡々と述べた。

"今度はアウグスタだ、親しい人間にビガプールの王国に太いパイプを持つ人物が居る"

チョキーはそう言って一泊した宿を後にし、人の少ない過疎区域に入り込むと、街には突然強風が吹き荒れ、砂嵐が舞い、露店を開く商人達は砂から商品を守るために手馴れた様子で布を被せた。



神聖都市アウグスタ──古都ブルンネンシュティグの様に石材を主に作られたその都市は古都よりも清潔に保たれており、中央広場にはその都市を象徴するシンボル、十字架が掲げられていた。

街の東方には畑や果樹園が広がっており、北側には巨大な大聖堂が太陽を突く様に君臨している。内部からは時折、荘厳かつ美しい聖歌が響き渡り、平和の象徴である白い鳩が住宅の屋根に佇んでいる。

中央広場では青空の下で神父が教徒を前に説教をしており、正に絵に書いた様な「神都」だ。

先程から頭の中でムズムズとした何かが徘徊してる様な気をチョキーは感じ取ったが、恐らくファイルがこの街の雰囲気を嫌がってるのだろう──悪魔だから当然だが。

"さっさと用を済ませよう、あまり耐えられる空気じゃない"

ファイルは具合悪気にそう言い、チョキーは何故か自分も痒くなって来たので、早足に目的地へと向かった、だがその目的地を見て、ファイルは背中を蛆が這いずり回っているかのような悲鳴を上げた。

目的地は、都市の中心に聳える大聖堂──どうやら今はミサを終えて、人が少ないらしい、チョキーは威厳と歴史を感じさせる重厚な木製の扉を少しだけ開けて、足を踏み入れた。

入ってみると、床は総大理石なのかつるつるとしており、天上は高く、向かって両側には参礼者の為の木製の長椅子が綺麗に並べられている。

一歩歩くだけでチョキーの足音が聖堂内に響き渡り、天上から吊り下げられた蝋燭のシャンデリアがチョキーを出迎えているようだった。

チョキーは妙に足取りを大人しくして説教台の前まで移動すると、奥の二つの扉の片方が開き、中から髪を後頭部に纏めた、大柄な男性が現れた。

736 名前:殺人技術 投稿日:2007/01/08(月) 19:52:25 [ E9458iSQ ]
チョキー・ファイル(16)



「お久しぶりです、チョキーさん」

淡い緑色の法衣を身に纏った筋骨隆々とした男は、その体躯に見合わず礼儀正しい言葉遣いを見せ、恭しく頭を垂れた。

鍛冶屋の時は冗談臭かったが、彼は素である──チョキーは同じく言葉を返し、その男は長いすの一つを指し示して、そこにチョキーを座らせると、その隣に腰掛けた。

大の男が二人して腰掛けると、長椅子は微かに軋んだ、だがその軋み声にはチョキーの商売椅子と違い何処か高尚な雰囲気が漂っていた。

"……もしかしてこいつ、神父か?"

ファイルは疑わしげに言うと、チョキーは半ば賛同の意を込めて言った

"信じ難いとは思うがな……"

チョキーとファイルは、隣に座っている神父の体をもう一度見た。

神父は笑顔に無言の"?"を浮かべ、チョキーを見返した。

……

"なるほど、神父じゃなくて、僧兵だな"

ファイルはそう言って、チョキーは頭の中で苦笑すると、神父は手を組み合わせて小さく笑った。

「してチョキーさん、やっと信仰に目覚めて頂けたんですか?それは嬉しい限りです、寛大なる神様は新しい教徒に必ずや正しき道を……」

「いや、悪いが違うんだ、君に個人的な用があって」

チョキーは神父の言葉を慌ててせき止めると、神父は非常に残念そうな顔をして、だがすぐに笑顔を取り戻した。

「そうですか……残念です、しかし神は信仰を強要することはありません、ゆるりとお待ち致します──私の様な未熟者で良ければ幾らでも手を貸しますよ、貴方は恩人ですから」

神父は謙虚な姿勢を崩さずに言い、頭の中でファイルはこの上なく痒そうに悶えた。

大丈夫か?

「ありがとう、君に頼みたい事は他でもない、君からビガプール王宮に頼み込んで、まだビガプールが完成形に至ってない頃、宝物庫を担当していた清掃員の事を調べて欲しいんだ、出来るだけ詳しく」

チョキーはそう言うと、神父は少し考え込んだ後、快くそれを受け入れ、チョキーは安堵の吐息を漏らした。

「アドナイメレク、その人誰?」

先程神父の出てきた開けっ放しの扉から唐突に声がし、チョキーと神父はふとそこに目を集めた。

「おはよう、カイツール」

神父は扉から出てきた人物をカイツールと呼び、チョキーはその姿を見て思わず顔を顰めた。

出てきた人物は小柄だった──恐らく、大柄な神父の身長の半分あるかないかだろう、いや無いな。

だが──なんだ、あれは?

737 名前:殺人技術 投稿日:2007/01/08(月) 19:53:12 [ E9458iSQ ]
チョキー・ファイル(17)


カイツールと呼ばれた小柄な人物は自分の背より高い説教台の裏を通って、神父の前に立ち止まると、チョキーを見据えた。

チョキーは思わずびくりとし、神父は笑って答えた。

幼くよく響く声と身長からして、少女だろうか。

それは少女の物だろうか。

金属で出来た檻の様な面の向こうに広がる闇の中で、ただ2つだけ、まるで人魂の様に光るその眼窩は。

「彼は僕が昔世話になった人だ、挨拶して」

神父──アドナイメレクは、優しい声で言うと、カイツールと呼ばれた少女はチョキーに手を伸ばした。

「カイツール、よろしく」

差し伸ばされた手は厚手の皮手袋に包まれており、全身は青い服と同じく皮の丸いズボンで、肌は完全に覆い隠されている、黙っていると仮装中の少年、もしくは人形にしか見えない。

だが、その声だけは紛れもない少女の物で、チョキーはそれに安心したのか、戸惑いながら丸くて大きい手と握手した。

「チョキー、しがない商人だ、よろしく」

チョキーはそう言って握手を解くと、カイツールはアドナイメレクの元へ歩いた。

「僕は後でいくから、先に食べていなさい、料理は済ませてあるから」

アドナイメレクはそう言ってカイツールをくるり反転させると、カイツールはそのまま真っ直ぐ、よちよちと扉の奥へ消えていった。

聖堂に再び静寂が戻り、アドナイメレクは口を開く。

「彼女は少し前に、孤児としてここに預けられた子なんです、全身の火傷が酷くて、まるで悪魔にでも焼かれたかの様な有様でした、彼女は自分の素顔を私以外の人に見せるのが嫌で、あの面を外すのは私と二人きりか、一人の時だけなんです」

アドナイメレクは哀しみのコーヒーに怒りのフレッシュを混ぜ合わせた様な語気で言うと、チョキーは何処か居心地が悪くなったような気がした。

「……すいません」

チョキーは謝ると、アドナイメレクは苦笑いをして言った。

「いいんですよ、初めて見る人は皆同じ反応をします、最近は少しずつ外の人に馴れ初めて居ますし」

アドナイメレクはそう言って席を立つと、チョキーに向き直った。

「ビガプール王宮建設の序段階に宝物庫を受け持った清掃員ですね、承りました、分かり次第キャサリンを使って伝えます」

チョキーはアドナイメレクに疑問の視線を向けると、アドナイメレクははにかんだ笑みを見せ、痒そうに頭を掻きながら言った。

「鳩の名前です、ここ一体の鳩達は皆私が世話をしているんです」

チョキーはそれに苦笑いを返して立ち上がると、大聖堂を後にした。

「それじゃあ、頼むよ」

そう言って扉を開けると、アドナイメレクは遠くから手で口を包み、大きなよく響く、しかしどこか能天気な声で言い、聖堂の清閑は慌てふためいて逃げていった。

「そうそう、言い忘れていましたー」

チョキーは大聖堂から一歩出て振り返った。

「私はこんな体でも普通の神父ですので、そちらから伝えておいて下さいねー」

チョキーは扉を閉めた。

738 名前:ドギーマン 投稿日:2007/01/08(月) 21:14:45 [ BY7V6ui6 ]
『HERMEL』


エリプト帝国
遥か昔に滅び、今は砂漠に埋もれ瓦礫のみを残す国。
かの国が滅んだ原因は、無知な傭兵たちによる悪魔たちの領域への侵犯であった。
悪魔たちは怒り、群れをなしてエリプト帝国を攻撃した・・・。


グルルルアアアァァ!!
「ふん!!」 ダン!!
バルガを斧を振るい、雄叫びをあげるイフリィトの首を落とした。
既に自分の周囲に居たはずの部下達の姿は無く、
彼はたった一人で孤独な戦いを強いられていた。
天を覆う悪魔たちの群れ。
地を這う悪魔たちによってもたらされた怪物たち。
「がぁ!!」 ゴシュッ!
数えきれぬほどの悪魔とモンスターを斬った斧は刃こぼれだらけで、
もはや斬るというより叩き潰すという感じになっていた。
この怪力ゆえに、彼がオーガの子であるという噂がたったことも頷けることであった。
全身を包んでいた甲冑は悪魔たちの血にまみれて輝きを失い、
バルガは人というより奴ら悪魔の1人であるかに見えた。
「みんな、どこだぁ!?」
バルガは叫んだ。返事などあるはずもない。
「があぁ!」 グジュッ!
悪魔も恐れる気迫であった。
「どこだぁ!?返事をぉ!」
バルガには見えていなかった。
自身の後方で、滅び行く自らの祖国が・・・。


一昼夜戦い続けたバルガは、
次々と現れる悪魔たちによって、もはやまともな精神状態ではなかった。
既にエリプト帝国は滅びたというのに、バルガはそれに気づくこともなく。
もはや自分が何を守っているのかすらも分からぬまま、
悪魔を殺し続けた。
やがて悪魔たちは去り、
彼の目の前に悪魔が居なくなると、
バルガはぷっつりと糸が切れたようにその場に倒れてしまった。

アリアンからやって来た斥候が、悪魔達の屍に埋もれて瀕死状態だったバルガを救った。
バルガはその斥候の家に匿われた。
匿われたとは言っても、ほとんど捕虜のような扱いであったが、
彼は驚異的な生命力で回復を遂げた。
しかし、意識を取り戻したバルガは心を病んでしまっていた。
血を極端に恐れ、感情の抑制が効かなくなり、手足の震えが止まらなくなっていた。
なにより、あの日の悪夢が彼を毎日のように苦しめた。
毎夜のように唸り、悶え、掻きむしり、暴れ、すすり泣く。
斥候の家族は彼を気味悪がり、ついに彼はクロマティガードに引き渡された。
やがて彼がエリプト帝国の将の1人と知れると、彼の勇名を恐れた者たちは彼を幽閉した。

暗い独居房の牢のなか、彼以外に収監されている者は誰も居ない。
彼は孤独の中で日々苦しみ続けた。
頬はこけ、髭は生え放題で、髪は背まで伸び・・・。
かつての勇猛さは見る影を失っていた。

そんな彼に、一人の少女が差し入れを持ってやってきた。
彼を不憫に思ったあの斥候が、彼を幽閉させてしまったことを悔やみ、
娘に差し入れを持たせて寄越したのである。
その少女も最初はバルガを怖がり、
差し入れを置いていくとすぐに帰っていったのだが、
何度か通ううちにバルガに興味を持ち、彼に話しかけるようになっていった。
最初は返事も出来なかったバルガも、段々と打ち解け、返事をするようになっていた。
やがて血色も良くなり、身体の震えもなくなっていた。

739 名前:ドギーマン 投稿日:2007/01/08(月) 21:15:48 [ BY7V6ui6 ]
「なあ、ヘルメル」
バルガは差し入れを食べながら目の前の少女に声をかけた。
「なぁに?」
ヘルメルと呼ばれた少女は答えた。
「君は、私が怖くないのかい?」
バルガは少し俯いて彼女に聞いた。
「またその質問?ちっとも怖くないわ」
彼女は肩をすくませた。
「何故?」
バルガは目を上げ、彼女の顔を見た。
いつものその様子を見て、彼女はいつもの答えを言った。
「あなたは檻の中の熊さんを怖がるの?」
バルガは笑った。彼女も笑った。
「ヘルメル。なんで君は毎日私に会いにきてくれるんだい?」
ヘルメルはまたその質問?と半ば呆れながら答えた。
「あなたは私の友達だからよ」
「何で君は・・」
「あなたに優しいのか、でしょ?」
ヘルメルは先読みして答えた。
「あなたが素敵な人だからよ」
そう言って彼女は微笑みを浮かべた。
牢屋の小さな窓から差す光が彼女の笑顔を照らしていた。
バルガにとって、彼女は光そのものだったのかもしれない。
バルガは少し照れながら、彼女にいつもと違うお願いをした。
「ヘルメル、実は持ってきて欲しいものがあるんだ」
「なぁに?」
「その・・・剃刀と鏡が欲しいんだ」
「せっかくの立派な髭を剃っちゃうの?熊さん」
バルガは笑いながら答えた。
「ははは、やっぱり、この顔で君に会うのは少し恥ずかしくなってきてね」
ヘルメルは笑った。
「ふふ、いいわよ。お父さんの借りてきてあげる。
やっぱりあなたは皆の言うような怪物なんかじゃあない。立派な人間よ」
バルガは胸に何ともいえないものを感じていた。
しかし、次の日に彼女は来なかった。


バルガはその夜も悪夢を見ていた。
視界を埋め尽くす悪魔たち。光など見えない。
心を恐怖に歪めて身体にまとわりつく悪魔達の手を払いのけ、悪魔の顔を殴り潰す。
悪魔の断末魔が耳を貫き、返り血が自分の手を、胸を染める。
うああああああああああ!!!
「ああああああ!!!」
叫びながらバルガは目を覚ました。
「うぅ・・・うっ・・・ぐぅ・・・」
バルガは泣いた。
つきまとう悪夢、変わることなき悪夢、一生続くであろう悪夢。
しかし、ヘルメルが来てくれるなら耐えられる。
この悪夢に差し込む唯一の光。
だが、彼女はその次の日も来なかった。


どうしたのだろう。何があったのだろう。
バルガはヘルメルのことだけを考えていた。
変わることの無い牢屋の中の景色をずっと眺め、そのことだけを考えていた。
そうしていると、牢の並ぶ廊下の入り戸が開く音がした。
人が1人歩いて近づいてくる。
「ヘルメル!?」
バルガは鉄格子にしがみつき、廊下を覗き込んだ。
しかし、来ていたのはヘルメルの父、斥候の男だった。
斥候は顔を背け、バルガの顔を見ないように言った。
「すまない・・・娘はもう来ない」
バルガの手が震え始めた。
「な・・なぜ!?」
バルガは目を見開き、髭に埋もれてしまった口を震わせて斥候に問いかけた。
その様子を見たくなかったのか、斥候は彼に背を向けて言った。
「妻に止められたのだ。分かるだろう?あの子はもう年頃の女なんだ。
そんな娘が毎日毎日牢屋の男に会いに行くわけにもいかないだろう」
バルガは見開いた目を震わせ、何も言えずにただ聞いていた。
斥候はバルガと目を合わせないように手鏡と剃刀をバルガの前に置いた。
「それはお前にやる。看守には見つからないように上手く隠してくれ」
バルガは目から涙を流し、床に置かれた剃刀と手鏡をじっと見つめた。
もはや使う意味すら無くした物を。
斥候は去り際に、
「ヘルメルに婚約者が出来た。祝ってやってくれ・・・」
と言い残して去っていった。
「うおおおぉぉぉぉぉぉぉ・・・・」
男の叫びを背に、斥候は出て行った。

740 名前:ドギーマン 投稿日:2007/01/08(月) 21:16:39 [ BY7V6ui6 ]
ガアアァァ!!キシャァァァア!!
うあああ!! ドガッ ゴチュ!!
キャアアアアア!!グルルアァァ!!
あああ!!  ゴッ! ゴシュッ!!
ゴアアァァ!!ギュルルゥゥ!!
くるな!くるなぁ!! ・・ルガ
バルガ・・

「バルガ!!」
誰かの呼ぶ声でバルガは目を覚ました。
「はあ・・はあ・・はぁ・・・」
バルガは身体を起こし、肩で息をした。
「大丈夫?バルガ」
暗闇のなか、バルガは暖かな光を感じた。
分かる、この温もりは・・・
「ヘルメル・・」
バルガは鼻をひくひくと動かし、涙でぐしゅぐしゅになってしまった眼で彼女のほうを見た。
「バルガ・・」
彼女は鉄格子を掴み、心配そうに寝台の上の男を見た。
「どうやって来た?看守は?」
ヘルメルはふふっと笑って答えた。
「あのおじさん、いっつも寝てるから黙って忍び込んじゃった」
まるで悪戯を自慢する子供のようであった。
そんなヘルメルを見て、バルガはすぐに寝台を降りてそばに行きたかったが、
「馬鹿が・・・」
と呟いた。
「あ、なによ!せっかく寂しがってるだろうと思って会いに来てあげたのに!」
文句を言うヘルメルの影をじっと見つめながらバルガは言った。
「婚約者が決まったんだろう?なら、もう私の所になんか来ちゃいけない」
バルガは分かっていた。
悪夢の中に生きる自分と彼女は違う。
自分のために彼女が幸せを犠牲にすることは絶対にいけない事だ。
しかし、真剣に言ったバルガに対し、彼女は間の抜けた声で返事をした。
「へ?」
バルガは眼に涙を浮かべたまま、彼女の変な反応に眉をひそめた。
「私が婚約?誰と?」
・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・
二人の間に変な空気の沈黙が流れた。
「君のお父さんにそう聞いたが・・」
「あ、お父さんたら・・・様子がおかしいと思ったらそういう事だったのね」
バルガもおおよその事を把握した。
「ヘルメル、お父さんを責めちゃいけない。彼は正しいことをやったんだ。
たとえ婚約者の話が嘘だったとしても、君は私に会いに来ちゃいけない」
そう、事情は何も変わっていない。
しかし、ヘルメルは退かなかった。
「何を言ってるの!あなたは私の友達よ。
友達に会うのが駄目だなんていう旦那なんて、こっちからお断りよ!!」
いきり立つヘルメルを何とかなだめようとバルガは必死になった。
「いいかい?君の気持ちは嬉しいが、私は君とは住む世界が違うんだ」
その言葉を聞いて、ヘルメルは寝台の上に座る影を睨みつけた。
「バルガ」
「・・・・」
「こっちに来て」
「・・・駄目だ」
「いいから来て」
「・・・駄目なんだ」
「来なさい!!!」
あまりの剣幕にバルガはのろのろと立ち上がり、
ヘルメルに鉄格子を挟んですぐの所に立った。
バルガは目の前の自分よりずっと小さな女性を見下ろした。
ヘルメルは鉄格子の間から白い手を伸ばした。
バルガは驚いて身を引こうとしたが、
「動かないで」
とヘルメルに制止されて止まった。
ヘルメルはバルガの手首を握り、自分のほうへ引き寄せた。
触れられた瞬間バルガはビクッとしたが、彼女の手の動きに任せた。
ヘルメルはバルガの大きな手を両手で握って頬に当てると、バルガの顔を見上げて言った。
「ほら、こんな手の届く場所に居るのに。触れられる場所に居るのに。
違う世界にいるだなんて言わせないわよ」
バルガは「そういう意味じゃない」と言おうとしたが、
彼女の真剣な目の輝きを見て、言葉を飲み込んだ。
亡国の戦士と、砂漠の都の女は互いに見詰め合ったまま黙っていた。




先に折れたのはバルガだった。
「とにかく、今日はもう帰るんだ。看守に見つかったら大変だぞ」
そう言って寝台に戻っていく男を見て、ヘルメルは勝ち誇って言った。
「ふっふ〜。私の勝ちぃ」
子供のような彼女を見て、バルガは言った。
「ヘルメル、真剣な話なんだよ?」
「あら、私はいつだって真剣よ」
彼女は胸を張った。
「ヘルメル・・」
バルガは心配そうな顔で言った。
しかし、ヘルメルは聞いてない風に言った。
「それじゃ、明日も会いに来るから楽しみに待ってて!」
バルガは鉄格子にあわてて身を寄せて言った。
「駄目だ!言ったろう!」
ヘルメルはそんなバルガの言葉を無視して、
「ちゃんと次会いにくるまでに髭剃っといてね。熊さん」
そう言い残して去っていった。
その夜、バルガは久しぶりに悪夢を見ることなく朝を迎えた。

741 名前:ドギーマン 投稿日:2007/01/08(月) 21:18:21 [ BY7V6ui6 ]
バルガは落ち着かなかった。
彼女に会いに来るなと言った手前、彼女が会いに来るのを期待するわけにはいかない。
が、彼は剃刀と手鏡を前に悩んでいた。
結局彼は、ヘルメルが来るからじゃなくて、
髭が鬱陶しくなったからと自分の中で理由を作って剃刀と手鏡を手に取った。

一度はこれで自殺しようかと思った剃刀で顔を剃るのは変な感覚だった。
結局、ヘルメルの父親に渡された剃刀で自殺をはかったりしたら、
彼女が悲しむだろうと思って思いとどまった。
バルガは久しぶりの髭剃りに手間取っていた。
小さな鏡を寝台に置き、全体の写らない顔を覗きながら剃ろうとするが思うように剃刀が動かせない。
と、そのとき刃の角度を間違えて皮膚を切ってしまった。
顔から血がにじみ出てきた。
鏡に映る血、鏡にぽたりと落ちる血。
バルガの脳裏にあの悪夢が蘇った。
「うあああ!!」
思わず剃刀が手からこぼれる。
顔を触っていない、血の付いていないはずの手が血まみれに見えた。
聞こえるはずのない悪魔の断末魔が耳を突いた。
「ああああ!!」
すがり付いてくる悪魔が見えた・・・。
バルガは頭を抱え、寝台に頭を抑えた。
と、その瞬間。
ヘルメルの顔が頭に浮かんだ。
「別の世界にいるだなんて言わせないわよ」
手の震えが止まった。
バルガは身体を起こした。
さっきまで居たはずの悪魔も、血まみれの手も見えなくなっていた。
バルガは血のついてしまった手鏡を拾い上げて、自分の顔を見た。
頬から流れる血が、髭に染み込んでいる。
「そうか・・・」
バルガは呟いた。
「私はもう、彼女なしでは生きられない・・・」

随分顔を切ってしまったが、バルガはなんとか髭を全て剃り落とした。
シーツがすっかり血まみれになってしまった。
看守には悪いが、新しいのを頼もう。

742 名前:ドギーマン 投稿日:2007/01/08(月) 21:19:05 [ BY7V6ui6 ]
夜になって、バルガは寝ずにそわそわと彼女を待っていた。
しばらくして、彼女は予告通りやってきた。
今度は小さな蝋燭一本が置かれた皿を持ってきていた。
「お待たせ、ちゃんと髭切れてるか見てあげるわ」
そう言って蝋燭に火を灯した。
「まあ!」
バルガの顔を照らして、ヘルメルは笑いを堪えながら言った。
「これは・・素敵な・・・剃りようね・・」
バルガは苦笑いしながら答えた。
「酷いな、これでも苦労して剃ったんだ」
「ごめんごめん」
ヘルメルはそう言いつつも笑ってしまった。
「うん、でも。良い男前の顔になったじゃない」
そう言って、バルガの顔をまじまじと見た。
バルガは蝋燭の揺れる明かりのなか、照れて見せた。
「それにしても」
ヘルメルは一呼吸開けて続けた。
「私が来るのをちゃんと髭を剃って待っててくれてたのね」
バルガは少し眼をそらして答えた。
「これはだな。違うんだ。丁度髭が鬱陶しくなって・・」
ヘルメルは意地悪そうな笑みを浮かべて、
「言い訳はよくないわよ」と言った。
「言い訳じゃないさ」
「意地っ張りもよくない」
「意地っ張りでもない」
「強情もよくない」
「言い訳でも意地っ張りでも強情でもない」
バルガがそう答えると、
ヘルメルは「もう」と呆れた。
そして、二人は笑った。

一頻り笑ったあと、バルガは言った。
「ヘルメル、もう会いに来るなとは言わない。言っても無駄だろうしね」
「そうそう」
「でもね」
「なに?」
バルガはゆっくりと、言い聞かせるように言った。
「やっぱり、夜に会いに来るのはマズイと思うんだ」
「そう?」
バルガは呆れた。
「いいかい?次からはちゃんとご両親に許可を貰って、昼間に来るんだ」
ヘルメルは不服そうに答えた。
「いやよ、絶対に許してなんてくれないわ」
バルガはヘルメルの目をじっと見ながら言った。
「ヘルメル・・君はもう大人なんだ。
君みたいなかわいい女性なら、きっと誰か他の男が結婚したいと申し入れてくる。
それなのに、毎晩毎晩私なんかに会いに来たりして、もし見つかったりしたら、
要らぬ誤解を招くかもしれない。だから、昼間に来るんだ」
それを聞いて、ヘルメルは即答してきた。
「平気よ」
「平気なもんか」
「だってあなたと結婚すれば済む話じゃない」
バルガはぎょっとしてしばらく何も答えられなかった。
そして、なんとか声を振り絞って言った。
「い、いいかい?私の話をよく聞くんだ。
君のお父さんは、言ってはなんだが、しがないただの兵士なんだ。
斥候っていう、ただ見回りするのが仕事の人なんだ。
君も決して生活が裕福なわけじゃあないだろう?
私のような牢屋の中に居る人間と結婚なんて出来るわけがない。
重たい荷物を背負い込むだけだ」
ヘルメルはじっとバルガの目を見据えて言った。
「ねえ、バルガ」
「何だい?」
「あなたは何で牢屋になんて入れられてるの?」
「何でって・・・」
「あなたは何でそれで何も文句を言わないの?」
「それは・・・」
「あなたは獣なんかじゃないでしょ!?一人の人間でしょ!?」
「・・・・」
「一人で苦しみ続けるあなたを、他の人たちが少しでも心配してくれたことがある!?
それなのに何であなたは皆に遠慮してるの?
あなたは喋れるし、歩けるし、明日からだって働ける身体があるわ!
それなのに何でいつまでもこんなところに居るの!?」
バルガは何も言えなかった。
ヘルメルは決心したかのようにすくっと立ち上がると、
「バルガ、私決めた」
「何をだい?」
「あなたをここから開放するわ」
「ヘルメル、頼むから無茶はやめてくれ!」
「また明日くるわ!」
そう言ってヘルメルは去っていった。
バルガは心配で仕方がなかったが、この夜も悪夢を見なかった。

看守の様子を伺い、こそこそと去っていく女性の後ろ姿を見て、
看守はにやっと笑って、寝た振りをやめた。

743 名前:ドギーマン 投稿日:2007/01/08(月) 21:19:57 [ BY7V6ui6 ]
次の晩、やって来たヘルメルの顔にはいつもの元気がなかった。
「ヘルメル、大丈夫かい?」
バルガが心配そうに尋ねると、彼女は笑って、しかし目に涙を滲ませて答えた。
「当たり前じゃない」
そんな様子を見て、バルガはヘルメルに言った。
「ヘルメル、無茶をしないでくれ。君は私なんかのために孤立していい人じゃない」
ヘルメルは声を上げて泣いた。
バルガは鉄格子の隙間からヘルメルの顔に手を伸ばし、
ヘルメルはバルガの手にすがって泣きじゃくった。
「なんで、なんで皆分かってくれないの・・・。
この人はこんなに孤独なのに、こんなところに閉じ込めておくなんて。
オーガの子が何、1万の悪魔を殺したのが何、あなたは怪物なんかじゃないわ。
ただの人間よ」
バルガは黙っていた。
ヘルメルは溢れ出る涙に肩を震わせ、声を震わせてバルガに言った。
「バルガ、私には夢があるの」
「なんだい?」
バルガは目の前の女性の涙を指先で拭き取った。
「いつかね、あなたと一緒に日の光を浴びて一緒に歩くことよ」
「日の光なら、ここでも浴びれる」
バルガは振り向いて、月明かりが差し込む小さな鉄格子をはめられた窓を見た。
「違うわ。そんな小さな窓からじゃなく、外に出て、身体いっぱいに光を浴びるのよ」
「ヘルメル・・・」
バルガは目の前の女性に言おうとした
「君こそが僕の光だ」と、
しかし、それは彼女を自分に縛り付ける魔法の鎖の呪文に思えた。
決して口にしてはならない言葉。
「ヘルメル、いいかい。君には未来があるんだ。私なんかのために棒に振ってはいけない」
バルガの言葉に、ヘルメルは怒った。
「なんであなたまでお父さんやお母さんと同じ事を言うの!?
あなたの居ない未来なんて要らない!私はあなたを・・・」
バルガはヘルメルの口の前に手の平を差し出し、制止した。
「それ以上は言ってはだめだ」
ヘルメルは黙って走り去った。
バルガは寝台に戻り、つぶやいた。
「・・・これでいいんだ」

しかし、ヘルメルが去ってからすぐ後に、また誰かが来た。
「ヘルメル、また来たのか?頼むからもう・・」
そう言いかけて身体を起こしたバルガの目に映ったのは、
初老の女だった。
ヘルメルの母だ。
「生憎様。わたしはヘルメルではないわ」
「婦人・・」
目の前の女は蝋燭の明かりのなか、顔だけを闇に浮かべていた。
その顔は眉と眼を吊り上げ、とても怒っているように見えた。
「なんで・・」
婦人は口を開いた。
「なんで、あんたなんかに・・・あの子が・・・」
婦人は蝋燭を床に置き、しゃがみこんで泣き出した。
「・・・・」
バルガは黙って婦人を見ていた。
「あの子はね、貧しい私達夫婦の希望なのよ?
たった一人の・・・大切に育てあげた・・・それを、それをあんたなんかが・・・
何の権利があって奪うのよ!!」
「・・・・」
「婚約が正式に決まったと言うのに、あの子ったら突然あなたの話なんか切り出したりして。
結婚する代わりにあなたを牢から出せだなんて言い出したのよ!?」
「・・・え?」
バルガは一瞬うろたえたが、すぐに分かった。
嘘をついていたのは、ヘルメルの方だったのか。
「先方がどんな顔をしたと思う?もう少しで話が全て流れてしまうところだったのよ?」
「・・・・すまない」
「明後日にはあの子は結婚するわ。今日は見逃してあげたけど・・・」
婦人は眉間のしわをぴくぴくと動かし、シワだらけの頬に涙を滲ませ、、
刃を食いしばってバルガを睨みつけた。
そして、床に置いた蝋燭を持って立ち上がると、
「あの子はもう、絶対にここには来させない」
そう言い残すと、婦人は牢を後にした。
バルガは寝台の上に横になり。
「これでいいんだ・・」と静かに呟いた。
そんな夜でも、バルガが悪夢を見ることはなかった。

744 名前:ドギーマン 投稿日:2007/01/08(月) 21:20:53 [ BY7V6ui6 ]
朝がきた。
明日にはヘルメルは結婚することだろう。
バルガは寝台に座り、変わることの無い牢屋のなかをじっと眺めていた。
いまにも、牢屋の鉄格子の隙間からひょっこりと顔を出して、
「バルガ!」と言って来そうな気がする。
しかし、彼女はもう来ない。

日は西に傾き、沈もうとしている。
バルガは寝台の上で、ヘルメルの姿を思い描いていた。
「旦那」
男の声が聞こえた。
鉄格子のほうに眼をやると、看守が立っていた。
「なんですか?」
バルガは中年の背の低い看守に問いかけた。
「釈放です。すぐに出てください」
バルガは眉をひそめ、何故?と聞いた。
バルガの反応が予想外だったのだろうか、看守は怪訝な顔を向けた。
「旦那・・・。ヘルメルのお嬢さんが結婚するのはご存知で?」
「ああ・・」
「ならすぐに出て、彼女のとこに行ってください!」
看守はガチャガチャと牢の鍵を開けると、ガシャン!と扉を開けた。
「看守さん。私は彼女に会っちゃいけないんだ。彼女が結婚するともなれば、当然だろう?」
看守はじろっとバルガを睨みつけると、
「旦那の苦しみを理解しているのは、ヘルメルのお嬢さんだけだと思ってたんですか?
あっしは看守をしている間、ずっと旦那の苦しむ声を聞いてきたんだ。
お嬢さんが来てから、あんたは笑うようになったし、夢にうなされることも無くなった。
あっしはね、助けたいんですよ」
「しかし・・・」
なおも拒むバルガに看守は怒鳴った。
「旦那!!いいですかい?今ヘルメルのお嬢さんは奥さんに閉じ込められてるんだ。
あの人は娘を結婚させることだけに頭がいっぱいで、もう他に何も見えちゃいない。
自分の娘の姿もだ!!」
「・・・・」
「あんたが解き放つんだ。彼女があんたを救ったように、
今度はあんたが彼女を救う番だろう?違うかね?」
「・・・・」
「旦那!!」
「・・・・分かった」
バルガは大きな身体を屈め、牢屋の扉をくぐった。
「お嬢さんの家は分かってるね?」
「ああ」
バルガは考えた。
ここで自分が彼女を連れ出したところで、何もならない。
しかし、彼女を縛り付けてしまったのは他ならぬ自分だ。
彼女を、私の光を本当に解き放つには・・・。
「旦那?」
立ったまま動かなくなったバルガを見上げて、看守は心配そうに尋ねた。
「行ってくる。ありがとう」
そう言うと、バルガは走り出した。

745 名前:ドギーマン 投稿日:2007/01/08(月) 21:21:36 [ BY7V6ui6 ]
エリプトの英雄、悪魔殺し、オーガの子・・・。
男は夜の砂漠の都に身を躍らせた。
背中に羽根が生えているかのように跳躍すると、
民家の屋根に降り、屋根伝いにヘルメルの家を目指して走った。
牢屋から出てくるのを見ていた、警備のクロマティガードが動き出したが、
バルガの足には追いつけない。
ずっと牢のなかでじっとしていた男のものとは思えない動き。
バルガはあっという間にヘルメルの家に到着した。
扉の前に居た婦人が叫び声をあげたが、バルガは無視した。
扉にかけられていたつっかえ棒を外し、すがり付く婦人を振り払って戸を開けた。
「ヘルメル・・」
「バルガ!!」
ヘルメルはバルガに駆け寄り、飛びついた。
「馬鹿ね・・・日の光の下を一緒に歩きたいって言ったでしょ。なんで夜に来るのよ!」
バルガは「すまない」と言うと彼女を抱き上げ、外に出た。
外にはすでにクロマティガード10数人が待機していて、
バルガに向かって弓を構えようとした。
すると、婦人はその前に飛び出して、
「やめてぇ!あの子に当たるわ!!」と泣き叫んだ。
バルガは泣き崩れる婦人をすまなそうに見ながら、ヘルメルを抱いて街の大きなオアシスのほとりに行った。
クロマティガードは弓を構えたままゆっくりとその後をついていった。
ヘルメルを降ろして、バルガはしゃがんで、
目の前の女性の顔を見上げながら言った。
「ヘルメル、いいかい。私の話をよく聞くんだ」
ヘルメルは怪訝そうな顔をした。
「駆け落ちしに来たんじゃないの?」
バルガは首を横に振った。
「君には、本当に助けられた。
君は、国を失ってずっと孤独で、悪夢に苦しみ続けた私にとって、
君は暗闇に差す光そのものだった」
バルガは自分の心のうちをヘルメルに話し始めた。
それを聞いたヘルメルは突然泣き出した。
「なんでそんな事を今言うの?」
バルガはヘルメルの頬を撫でた。
「君も、いつか自分の光を見つけるだろう。
君の両親にとって君がそうだったように。わたしにとっての君がそうだったように。
君も、いつかきっと」
涙をぽろぽろと流しながら、ヘルメルは怒った。
「だから、何でそんなことを言うのよ!!」
バルガは怒る彼女の目をじっと見つめて続けた。
「君は、幸せになるべき人だ。
私は、とっくにエリプトと共に死んだ亡霊なんだ。
幸せになれる人と亡霊は、一緒に居ちゃいけない」
「そんな事ないわ!言ったじゃない。違う世界に居るわけじゃないって。
こんなに・・・すぐそばに居るのに・・・」
バルガはヘルメルに最後の言葉を贈った。
「幸せになってくれ」
そう言うと、バルガは彼女を突き飛ばした。
ヘルメルはきゃっと地面に尻もちをついた。
そして、バルガは彼女から離れた。
「駄目ぇぇぇぇ!!!」
彼女の叫びを無視して、クロマティガードたちの放った矢は、バルガの身体を貫いていった。
ヘルメルはずっと泣き叫び続けた。
動かなくなったバルガのそばに行こうとするが、クロマティガードたちに遮られ、
遠くへ引きずられていく男をただただ涙で歪んだ視界で見るしかなかった。

746 名前:ドギーマン 投稿日:2007/01/08(月) 21:22:37 [ BY7V6ui6 ]
ヘルメルの父、斥候の男は翌日看守と二人きりで話していた。
「これは、少ないがお礼だ」
看守は渡された金の入った袋を覗いてから、懐にそれをしまい込み、
いやらしい笑みを浮かべて言った。
「旦那も人が悪いやね。ああなること、全部分かってたんでしょ?」
「ああ・・・、妻が彼に嘘の結婚の日程を継げたと言ってきてから、思いついたことだ・・・」
そう言うと斥候は頭を抱え、膝をついた。
「そうだ、彼のことだから・・・きっとああいう選択をするであろうことは分かってたんだ・・・。
分かってたんだ・・・。だが・・・・あの子が彼を諦めるには、これしか方法が・・・」
そう言うと、斥候は泣き出した。
斥候の嗚咽にひるんだ看守は、
「そ、それじゃあ、あっしはこれで・・・」
男の涙は、砂漠の砂に吸い込まれて消えた。





数年後、
銘すら彫って貰えなかった墓の前に、彼女は居た。
彼女は花を手向けると、子供達を呼び寄せた。
「ねー、ママァ。これ誰のお墓?」
彼女は子供たちに微笑を向けて、
「私の大切な友達のお墓よ」と言った。
子供たちは、ふぅんっと興味がなさそうにしている。
彼女はしゃがみ、子供たちの頭を引き寄せると、何も答えぬ墓石に向かって言った。
「見て、バルガ・・・私の光よ」

747 名前:ドギーマン 投稿日:2007/01/08(月) 21:27:01 [ BY7V6ui6 ]
あとがき

悲しい話に挑戦してみた。
どうだったかな・・・ちょっと省略とか多すぎたかもしれない。

748 名前:名無しさん 投稿日:2007/01/08(月) 21:58:27 [ V7ZevVl6 ]
せ、切ない…(´;ω;)

749 名前:携帯物書き屋 投稿日:2007/01/08(月) 23:43:08 [ eFHFlgNU ]
あまりPCを使える時間がないので携帯からよく見させてもらっています。

>>殺人技術さん
ご感想&ご指摘ありがとうございます。
どうも後半に向けて文章が雑になっていく傾向があるみたいなので気をつけます。
そう簡単に直らないだろうけどorz
書いたのに投稿する気が起きないですか、それは深刻ですね・・・。
確かに少しでも感想がないと続きにくいかもしれませんが。というか続きませんね・・・。
でも読んでもらった上に感想までもらうのはかなり贅沢なのかもしれません。
自分の場合は友達に見せて、感想をもらって何とかモチベーションを保っています。

小説の方も読ませてもらいました。
チョキーとファイルの会話がイイです。特に自分では精神的にシンクロしているから感情も共有するが
記憶までは分からないというのは考え付きませんでした。続きを楽しみにしています。

>>ドギーマンさん
なんかこう、ぐっときました。読んでいるときにちょうど音楽を聴いていてそれがマッチしてしまって
目頭がなんだか熱くなりました。

>>722
自分が初めてこの板を見つけたのは去年の3~4月辺りなんですが、初めて読み、この板のことが好きになったきっかけが
FATさんです。それから過去ログ漁ってたくさんの方々の作品を読んでいたりしました。
確か知ったきっかけがちょうど誰かのミスで上がっていたからだったかな。
自分もアラステキさんにはぜひ戻ってきて欲しいと思っています。もちろん21RさんやFATさんもです。

最後に長文・乱文失礼しました。

750 名前:名無しさん 投稿日:2007/01/09(火) 01:17:20 [ b/kDDrJg ]
>>747
切な過ぎる・・・;

涙で前が見えないよ(´;ω;`)ウゥ…

751 名前:名無しさん 投稿日:2007/01/09(火) 02:25:13 [ 6nmuNZOE ]
>>724-725
>ドギーマン様
公式設定の父と恋人を殺された仇を思い出しました。
複雑な心境です。マハルが手にした自由の代償は民族の解放かはたまた混沌への誘いか。
小難しいことが頭をよぎりつつも、目下の興味は藪森のあの子達も恋に落ちるのかどうか、です。

>殺人技術様
ファイルがやけに人間くさくてかわいくて好きです♪
まだ14までしか読んでないので続きの感想はあらためて〜。
ついでにおせっかい。

1−3>>656-658
4−5>>678-679
6−9>>687-690
10−14>>701-705

752 名前:名無しさん 投稿日:2007/01/09(火) 03:51:53 [ 7qT01J3Y ]
アラステキさんとか懐かしいな。
やっぱ書き手側としては感想もらえると嬉しいのか・・・。

サマナの人の作品とか、かなり好きだったんだが途中で止まっててちょっと悲しい。
最近見ないけど、もう書くのやめてしまったのだろうか?

753 名前:名無しさん 投稿日:2007/01/09(火) 13:29:52 [ 1P0T86Ys ]
ブログを作って愚痴をかこう!!
http://maglog.jp/ruka/

754 名前:名無しさん 投稿日:2007/01/09(火) 17:29:53 [ psw7Vx8o ]
>殺人技術さん
まだ序盤って感じですね。
様子や情景等が詳しくかかれてて分かりやすいです。
魔法もあんな使い方があったとは・・なるほどっ。
凄い長編になりそうで続きが楽しみです〜。

>ドギーマンさん
まじ泣きしました・・・;
こんな感動したの久しぶりです・・。
バルガは最後までヘルメルの幸せだけを考えてたんですね・・。
凄い切ないです;

755 名前:ドギーマン 投稿日:2007/01/09(火) 19:25:46 [ 6gUCYqqA ]
こんにちは。
感想もらえるのはやっぱりうれしいね。
ろくにレスもしてないのに書いて貰えてるなんてね・・・。
感想書いてくれたみんな、ありがとう。

>殺人技術さん
情景や人物の描写がとても細かくて分かりやすい、すごい。
俺はそういう細かい描写は苦手なので勉強になるよ。
特にね、あのカイツールの表現。
俺も前にネクロマンサーを文章にしようとしたけど、上手くいかなかったよ。
あの、頭の被り物のせいで・・・orz

>携帯物書き屋さん
話の設定が面白い。なにより携帯から書いてるとは思えない。
続き待ってるよ。

756 名前:名無しさん 投稿日:2007/01/09(火) 20:29:22 [ Z3aIPfMI ]
>>殺人技術さん
相変わらず情景や風景の描写が上手いですね。聖堂内部の想像がしやすいです。
新しいキャラ登場ですね。カイツールはチョキーの真相が分かったのでは・・という勝手な予想。
アドナイメレク、某ゲームに登場するアドラメレクを連想してしまいます。
続き楽しみにしています。

>>ドギーマンさん
不覚にも泣いてしまった・・。良い話をありがとう。
本当は一緒に居たいのに精一杯気を張って好きな人を拒む姿が余計悲しい。
悲しいながらもハッピーエンドのように終結していてホッとしたのは本音です。
また他のSSも期待しています。

757 名前:ドギーマン 投稿日:2007/01/09(火) 20:40:07 [ 6gUCYqqA ]
突然な話、失礼。
後書きなんだけど、毎回ネタバレ怖くてロクなこと書けないんだよね。
最初に見るの最新書き込みだし。
でも、次の人に書き込んでいいよって意味で書いてたりする。
あんまり意味ないかな・・・。

HERMELは自分でも気に入ってる話なので、今更だけどきちんとした後書きします。

本当はこの話は別に書いてた長編のサイドストーリーみたいな感じで書き始めたんだけど、
思ったより頭の中でどんどん話が膨らんでいって、
元の話と全く関係のない話になっちゃったんだ。
書き手も予想してなかった偶然の産物のようなもの。

人物は見た目をほとんど書いてないのでキャラが薄いかもしれないけど、
会話に重点を置いたので、
そこら辺から彼らがどういう人物像なのかイメージしてもらえれば幸いです。
ただ、かなり感情移入して書いたので誤字も結構あるし、
矛盾点も少し・・・。
書いてる自分も最後のシーンを書くときは目頭が熱かったけど、
読み手にもそれを感じて貰えるかはかなり不安だったよ・・・。

758 名前:ドギーマン 投稿日:2007/01/09(火) 23:08:35 [ 6gUCYqqA ]
悲しいお話の次は、軽いネタを。

どうぞ↓ ↓ ↓

759 名前:ドギーマン 投稿日:2007/01/09(火) 23:09:40 [ 6gUCYqqA ]
路上強盗団アジトB3
シーフたちが集会を開いている。

アサシンが壇上にあがり、演説を開始した。
「みんな聞けぇ!!」

う お お お お お お お お ! ! ! !

「我々はかつて、古都からハノブへと通じる街道を縄張りとし、
 そこを通る商人や旅人から、金品や食料を少し分けてもらって今日までやってきた!!」

「人々から恐れられ、我々が現れると既に差し出す準備をしている者すらいた!!」

お お お お お お お お お ! ! ! !

「しかし、し・か・し・だ!!」

「冒険者が現れてからここ数年の我々の体たらくはどうだ!?」

「アジトの中にまで踏み込まれ、仲間を殺戮され、お菓子を取り上げられ・・・」

・・ぅぅ・・・ぉぉ・・・ひっぐ、ひっぐ・・・クッキーがぁ・・・・

「いくら何でもあんまりではないか!?」

「我々は確かに世間につま弾きにされてきたロクデナシの集まりかもしれない」

「だが!!」

「我々よりも冒険者どものほうが、もっと物騒な凶器を持ってうろうろしているではないか!!」

「今こそ、今こそ!!」

「我々は立ち上がり、アジトの冒険者どもを一掃し、かつてのあるべき姿へと還る時ではないか!?」

う お お お お お お お お お お お お お ! ! ! ! ! !

760 名前:ドギーマン 投稿日:2007/01/09(火) 23:10:58 [ 6gUCYqqA ]
「よし、ではまずアサシンビギナー」
呼ばれたアサシンビギナーが立ち上がり、壇上にあがった。
「それでは、いまから我々が行ってきた数々の冒険者対策を振り返ってみよう」

「まず、コボルトを餌付けして1階に放ったオペレーションコボルト」

「これは、冒険者たちが1階を素通りするという思わぬ行動に出たせいで失敗した。
 ムーンウォーカーを放すオペレーションマイケルも同様に、だ」

「続いて、腐臭を放つゾンビを密閉された地下1階に放つオペレーションホラー」

「これは、経験値目的で冒険者が集まってくるという事態を引き起こしてしまった」

「さらに、いくら冒険者でも老人はいたわるだろうということで魔法使いを雇った
 オペレーションおじいちゃん」

「奴ら、野蛮な冒険者どもはいたわるどころか惨殺する始末だ。全く、何てゲス野郎どもだ!!」

「続いて、コボルト種の上級種であるファミリアを設置し、ボスファミリアに統率させた
オペレーションファミたん」

「これは、テイマーが・・・・」




「以上、これまでに行ってきた作戦によって・・・」

「アジト内は我々シーフよりも他のモンスターのほうが多いという事態になってしまった」

「なんということだ・・・」
アサシンは呻いた。

あとがき
おじいちゃんはいたわろう。

761 名前:第17話 ナイフ 投稿日:2007/01/10(水) 19:15:41 [ ydBnLIs2 ]
田村と佐々木は事件が一本化されて本部行きになるのを待ってはいなかった。
担当事件のガイシャはネカフェのトイレで頚椎を後ろからナイフで突かれていた。
これは日本人の犯行とは思えない証拠でもあった。
日本人ならば体の正面、腹の辺りを突き刺すはずである。
田村が刑事を目指していた頃は外国人による犯罪など思いもよらなかった。
近年、外国人による犯罪は後を絶たない。
特に犯罪者引渡し条約を結んでいるのはアメリカと韓国だけであるので、
今回の事件が他の国の出身者であれば、出国とともに「負け」が確定してしまう。
本部行きを待たないで独自に捜査範囲を広げているのはそんな理由だった。
他3件の事件も首を後ろから突かれている。
場所や状況は違えども、取り巻くものに共通点がある。

・ネカフェ利用暦があること。
・ネットバンクの口座を所有していること。
・死んだ後も口座が動いていたこと(娘の予想通りだった)。
・現金引き出しカードが紛失していること。

口座は全て凍結したが、送金量が半端ではなかった。
「劉」と名乗る男が逮捕されてすぐに全ての口座から現金が引き出されていた。
おそらく「劉」は送金直前に逮捕されたのだろう。

 奴には共犯が必ずいる!

これが田村と佐々木の見解だった。そしてホシは自由に泳いでやがる。
送金先はスイスとシンガポールだった。
いずれも官憲の調査に応じない銀行だ。昔よりは捜査に応じる銀行は増えたが該当銀行はだめだった。
おそらくすでに金は移動されているだろう。

田村は以前に逮捕した「張」と言う中国人を思い出した。
奴に会う必要がある・・・絶対に何か知っているはずだ。
奴の得意技はゲームのアイテムの売買を装った詐欺だった。
奴らの社会は狭いと聞いた事がある。

田村は佐々木と「張」が収容されている刑務所に向かうことにした。

762 名前:携帯物書き屋 投稿日:2007/01/10(水) 23:38:06 [ eFHFlgNU ]
「明日は1日使ってあいつを見つけ出すぞ」
「ええ、分かったわ」
……と勢いで言ってしまったが5秒で後悔した。
いつから俺はニーナに対して協力的になったんだ。さっきのは何かの誤りだ。きっとそうに違いない。
そこで俺は1つ我ながら知的で素晴らしい良策を思いついた。
「やっぱり俺ここで待機――――」
「却下」
は、早っ! 言い終わることもなく拒否されてしまった。
ニーナは俺にずいと近づくと指を突きつけた。
「あのね、ショウタはもうあのラルフ=カースに顔が割れてんのよ。もしも私がいない間に
襲われでもしたらどうするつもり? ショウタは霊感ないんだから襲われても見えないから死んでることも気づかずに死んでるに違いないわっ!」
「ご、ごめん…失言だった」
文章が一部おかしい気もしないでもないがそんな細かいことは吹き飛ばすほど
今のニーナには威厳があり、俺は思わず怯んでしまった。
そこで俺は1つ疑問が浮かんだ。
「なあ…お前いつも契約者、契約者とうるさいけどあの男みたいに一般人から生気を奪った方が効率が良いんじゃないのか?」
するとニーナは心底呆れたような表情を見せた。
「それは違うわ、ショウタ。私は無関係の人の命を奪ったこともこれから奪うつもりもないけど、一般人から取れる生気なんて微々たるものよ。私も詳しくは分からないけど一度死んでしまえばその人の生気も一緒に死んでしまうの。そこから貰えるのは漏れだした一部の生気だけよ。だから直接繋がっている契約者から貰える生気の方が何倍も多い訳。分かった?」
「いや…正直に言うとよく分からん。だが大雑把なところは理解できた」
「それならいいわ。という訳で、明日は同行してもらうわ」
「あ、ああ」
とりあえず明日は2人で行動することになった。
そこで俺は再び良いことを思いついた。
「なあ、明日は最悪戦闘になるだろ? そこでなんだが、俺にも何か身を護る手段が必要だと思うんだ」
「それで?」
ニーナが怪訝な表情を俺に向ける。そして俺は意を決し言い放った!
「俺にも魔法を――――」
「無理」
これまた早い! まるで未来予知していたかのように拒否された。
「言っておくけどこの時代の人間にそんな才能も魔力もないわ。でも、身を護る手段は必要かもしれないわね…考えておくわ。今日はとりあえず休みましょう」

そんな訳で朝が来た。
ニーナの表情から察するに何か思いついたようだ。
「ショウタ、1つ聞くけど適当な剣か槍か弓持ってない?」
「んなもんあるかっ!」
「それじゃ何でもいいから武器になる物ある?」
武器か……待てよ、確か…。俺は押し入れをあさり、そして取り出す。
「これだ。デザートイーグル」
「何それ?」
「銃ってやつだ。これが現代の主要武器さ。と言ってもこれはエア・ガン、玩具だけどな」
勝手に希望を持ち勝手に玉砕した俺は一度撃って見せ、放り投げた。
「ショウタ……これよ」
「はい?」
「いいから全部の弾を出して」
言われた通りに銃と弾を広げると、ニーナはそれらに手を向け、光る。
光はそれらを包み込んだと思ったら、すぐに消えた。
「はい、これでいいわ。もう一度撃ってみて」
? 言われた通りにさっきと同じ容量でエア・ガンを撃つ。
だが結果は俺の許容範囲を軽く突破していた。
1、押し入れに拳1つ分の大穴。
2、押し入れに触れた直後弾が爆発。
3、今も煙を上げている。
「何だこの危険な代物はっ!」
そう言って俺はエア・ガンを床に叩き付けた。
「危ないわよ。下手に衝撃与えたら中で全弾爆発するわよ」
「う…」
俺は時限爆弾を扱うような手つきでエア・ガンを鞄に入れた。
「それじゃ行くわよ」
有無を言わず突き進むニーナさん。
「待てよ。霊の状態で行け」
「今日は気分的にこのままで行くわ」
人間の状態で行くのはまだしもこの変わった水着のような格好では行かせられない。
「その格好だと目立つ。ほら」
俺は女でも着れそうな服をニーナに寄越した。

初めは嫌がったが先にニーナが折れ、その服を着た。
見た目はどう見ても現代の若者だった。これも悪くないぞ、うん。

763 名前:携帯物書き屋 投稿日:2007/01/10(水) 23:38:48 [ eFHFlgNU ]
俺が渡したグレーのパーカーとジーパンを着てはしゃぐニーナ。
俺たちは今住宅街を抜け町中に来ていた。
ニーナによると相手も昼間に動くとは思えないから日中は相手が現れそうな場所をチェックし、本格的に動くのは夕方からだと言う。

という訳で町中に来ている訳だが…。ニーナはとあるごとに立ち止まり、興味を持つのであまり捗っていなかった。
それにしても目線が痛い。
まあ目立つ金髪の外人にその上美人のニーナと並以下な俺、という奇妙なカップルだから仕方ないが。

時間も昼時。ニーナがある店の前でまた立ち止まった。
その店を見上げると看板に大きく「中華料理店」と書かれていた。
まあ、時間も時間だし構わないだろ。
「…食う?」
「え! いいの? 私幽霊なのにっ」
「ああ、いいよ。今日くらい」
というかヨダレを垂らしながら言われても説得力の欠片もない。


再び店員や客の痛い視線を受けながら、案内された丸テーブルの席に腰を下ろす。
対するニーナは向かいの椅子に座った。
ニーナがいる分料金は2倍なので1番安そうな中華蕎麦2つに俺用に飲み物をコーラと、
ニーナにはオレンジジュースを頼んでやった。

間もなく飲み物が届く。俺はニーナにストローの使い方を教えた。
初めは手間取っていたがしばらくすると慣れたのか上手に飲み始めた。
「お、おいしいっ!」
「良かったな。俺じゃなく店長に言ってやれ。きっと喜ぶ」
そんなことを言っていたら俺のコーラに別のストローが侵入した。
やめとけ、と言おうとしたが時すでに遅く、オレンジジュースの容量で勢い良く飲んだニーナ表情が固まる。
「――――!」
無言で悶えるニーナ。ほら見ろ、人の物を盗もうとした裁きだ。
「な、何よこれっ! 電流でも仕込んでるの?!」
やっとの思いで復活したニーナが訴える。俺は思わず軽く吹いた。
「んなわけあるか。大人しく炭酸ジュースの洗礼を受けていろ」

そんな会話をしているとやっと中華蕎麦が届いた。
ニーナは慣れない箸に悪戦苦闘しながらも中華蕎麦をうまそうに食べた。

764 名前:携帯物書き屋 投稿日:2007/01/10(水) 23:39:33 [ eFHFlgNU ]
店を出、その後も怪しい場所をチェックした。

町の大きな時計が午後4時を指す。だんだんと空も朱色に染まっていく頃。
「だいぶ怪しい場所もチェックしたしそろそろ動くわよ」
「分かった。まずは1番近い――――」
「ねえショウタ」
慣れない地図に悪戦苦闘しながら喋ると、ニーナが俺の言葉を遮った。
「ん、何?」
目線を変えずに返す。
「もし戦闘になったら今度は本気を出さざるを得ないわ。だからその際にショウタの生気を大量に奪う可能性が…」
「気にすんなって。それよりお前は自分の身を心配しろ」
どこかで聞いた風な台詞を精一杯の強がりで返す。
するとニーナは微笑み再び俺の後を歩き出した。
正直に言うと全然平気なんかじゃない。実際日が傾き始めてから体の震えが止まらないのだ。
それは当たり前の現象だろう。何せこれから殺し合いをしにいくというのだから。
俺の心が何度もやめておけと止めるのだが、その反面逃げるなと俺の中でも1番嫌いな部分の
正義感を持つ心がその度に俺を動かし、現状に至る。

ようやく1つ目のチェックした場所に着いたが、外れ。
気を取り直して次の場所へ行くもまたもや外れ。

気がつけば時間は夜9時を悠に過ぎ、チェックした場所も残すところあと1つになっていた。

「ここが最後ね」
「ああ」
ここは最初にチェックした場所で、高層ビルができる予定の工事現場である。
今はまだ途中で、鉄格子の状態である。
これまで数々の路地裏や人間を待ち伏せるのに適した場所を回ったが男は現れなかった。
「行くわよ」
無言で頷き細心の注意を払って工事現場に足を踏み入れる。
不気味なほどの静けさ。
気を抜かずにただニーナの次なる言葉を待つ。
「………いないわね」
「そうか。で、これからどうするんだ?」
内心ほっとしながら次の動向について聞く。
「今日は帰るわ。これ以上うろうろしていても仕方がないし」
そんな訳で俺たちは早々に立ち去ることにした。
踵を返すと、雲が晴れたのか背後から冴え冴えとした蒼い月光が俺たちを照らす。
それにより長細い影が2つ伸びる。すると、2つの影の両脇に新たな2つの影が現れた。そんな筈はない。ここには俺たち以外誰もいない筈だっ!
俺の脇の影の腕が動く。振り向く間もなくニーナが俺を大きく突き飛ばす。
「ショウタ離れてっ!」
そう言ったニーナの手には以前見せた弓が握られていた。
「これはまた、大きな獲物がかかったようだな」
「ラルフ=カース…」
両脇の影の正体はまさしくあの男だった。隣にはやはり吉沢鉄治がいた。
「ラルフ=カース……やはりあなただったのね」
「何のことだ?」
「とぼけないでっ!」
ニーナが敵意を露にする。
それを男は片手で制した。
「それより知っているかニーナ=オルポート。やはり他の3人も現世に来ているぞ」
「なんですって…」
「俺も出来れば信じたくはないがな。だが事実だ。こうなったら意地でもお前の中のレッドストーンを奪い、俺は優位に立つ」
「珍しく気が合うじゃない。私もちょうどあんたのレッドストーンを貰おうと思ってたところよっ!!」
ニーナが駆ける。同時に体全体を光が包み、黄金の衣が現れた。
男は無数の短剣を投げつけ牽制した。だがそれを物ともせず光速の矢が相殺する!
そこで男は大きく飛翔し、後方の鉄格子のビルに着地する。
さらに飛翔し、男は10メートル近く上がった。
「さあ始めようニーナ=オルポート。殺し合いを!」

765 名前:携帯物書き屋 投稿日:2007/01/10(水) 23:45:08 [ eFHFlgNU ]
書いていくに連れて話がどんどん赤石と関係なくなっているような気がひしひしと感じます。

>>761
待っていました。
さまざまな事が絡み合い、繋がっていく。う〜ん、うまいです

>>ドギーマンさん
今度は面白ネタですね。笑わせてもらいましたw
確かにアジトにはシーフよりもモンスターの方が多いですね

766 名前:名無しさん 投稿日:2007/01/11(木) 00:32:36 [ .NVUYijc ]
>>携帯物書き屋さん
ハラハラして読んでたらなんとも良いところで終わって(´・ω・`) 実に続きを期待です。
上手く伏線が張られているように思います。他の三人というのも気になる・・
寄生獣みたいなイメージですが、なんか恋人同士っぽい感じでもあるし・・そっちも気になる。

赤石と関係ないというより、やっぱり書いていて楽しいというのが一番だと思いますよ。
自分も拙い小説書いてますが(公開はしてません)
キャラ設定とか全部自分で考えたSSは書くのが楽しくてどんどん進みます。
逆に自分の考えている設定より公式設定とかを優先させたSSは進みが悪い・・orz

767 名前:第18話 デルモ 投稿日:2007/01/11(木) 02:23:08 [ ydBnLIs2 ]
あれから丸二日経った・・・デルモと連絡がとれない。
私は運ルパンにそのことを伝えた。

to運ルパン  どうしよう?デルモがインしてない><
from運ルパン たまたまかもしれませんよ?それに新人さんがスパイとは限らないし
to運ルパン  でもスパイだったら?狙いはデルモだよ?
from運ルパン 僕は、今回は400以上のキャラは全員狙われてもおかしくないと思いますよ
to運ルパン  え?
from運ルパン 新人さんがスパイだとしての話ですからね?
to運ルパン  どうゆうこと?
from運ルパン 以前とはみんなのレベが違います。狙いはデルモ含め高レベでしょ?
to運ルパン  じゃぁ、うちのギルドはそんなレクしないと言う?
from運ルパン ・・・それもおかしいですね。
to運ルパン  確かめる方法ないのかな?

しばらく無言が続いた後、運ルパンはある提案をしてきた。

from運ルパン 今いくら持ってる?
to運ルパン  金?
from運ルパン 僕は今2億ちょっとしかない。
to運ルパン  ・・・・180M
from運ルパン よし。雪月の商品は最低3億程覚悟しなきゃ買えない
to運ルパン  買ってどうするのさ?
from運ルパン 僕を信用できるかい?
to運ルパン  内容を教えてくれよ!じゃないと返事のしようがないよ。
from運ルパン だよね^^; これから言うことをキンガーさんに頼んでくれる?

私は運ルパンの提案に驚きを隠せなかった。
でもこれは必要なことだと言い聞かせ、キンガーさんに連絡をすることにした。
最後に運ルパンはこういった。

この方法なら僕を信用しなくても大丈夫でしょ?

768 名前:ドギーマン 投稿日:2007/01/11(木) 11:53:01 [ 6gUCYqqA ]
フランデル大陸中部に広がるガディウス大砂漠。
その砂漠を列をなして進む商隊があった。
およそ10人ほどの商人たちが列をなして、
リンケンからアリアンまでを進んでいた。
マルゥはそんな商隊のなかに居た。
マルゥは10歳の誕生日に、父親にアリアンに連れて行くようにせがんでいた。
父親は危ないからと渋りながらも、
ついには連れて行くことを承諾してしまった。
父がセスナの道で買ってきた日除けのチャドルに身を包み、
マルゥは父の牽くロバの背中に乗って、どこまでも続くような砂漠を進んでいた。

その夜、
マルゥはチャドルを脱ぎ、
大人たちと一緒に火を囲んでいた。
父親はマルゥをみんなに紹介し、
マルゥは知らないおじさん達に緊張して挨拶した。
最初はみんなマルゥに構ってくれていたが、
酒を飲んで酔いが回りだすと、大人たちはみな談笑に夢中になった。
父親も酒を飲み、友人の商人とマルゥには分からない話をしていた。
父親はマルゥに
「もう遅いから、テントに入って寝なさい」と言った。
マルゥは少し不服だったが、
「アリアンに行きたいんだろう?」
と言われ、渋々テントに戻っていった。
テントに入る前に、ふと砂漠に目を向けると、
遠くの砂漠のなかにポツンと何かが光っている。
砂漠に広がる夜の闇のなか、
それは1つの星のように輝いて見えた。
マルゥは火を囲んでいる大人たちのほうへ目をやった。
誰も自分には気づいていない。みんな夢中になって何やら笑っている。
マルゥは砂漠のなかに光っている何かに向かって走りだした。
しかし、走っているうちにそれがかなり遠くにあることが分かってきた。
マルゥは戻ろうかと思ったが、やっぱり気になって仕方がなくて、
光に向かって歩き続けた。
気がつけばキャンプの明かりがとても小さくて、
マルゥは来ちゃいけないところに来てしまった気がした。
何か、とても寂しい。
でも、そこまで来てマルゥにはその光が何なのかはっきり見えた。
人だ。
マルゥはその人に向かって走り出した。
それは、とても綺麗な人だった。
金色の長い髪、マルゥの初めて見る透き通った青い目、
肌は月明かりよりも白く光っていて、それが彼女を遠くから星のように見せていた。
マルゥの見たことのないフリルがいっぱいついた赤と白の小さなドレスのような服装。
砂漠の中では彼女は美しいようで、またとても奇異に見えた。
マルゥは彼女のそばに駆け寄った。
彼女はマルゥに気づいていないかのように、じっと星空を見上げている。
マルゥは彼女の見ている夜空を見上げてみた。
星空が彼女達に覆いかぶさるように広がっている。
「何を見てるの?」
マルゥは彼女に聞いた。
彼女は空を見たまま、マルゥに気づいて居たのか、全く驚いた風もなく答えた。
「おうちが見えるのを待ってるの」
「おうち?」
マルゥは彼女の横顔に目をやった。
「そう、おうち」
彼女はずっと空を見上げていた。
マルゥは彼女の隣に立って、一緒にじっと星空を眺めた。
砂漠の星空はとても深くて、見上げているうちに吸い込まれそうな深い闇をたたえていた。
そして、その闇の中に数え切れない星々が光り輝いていた。
2人はしばらくの間、じっと空を見ていた。
夜空に浮かぶ星は、手に取れそうで、それでいてずっと遠くにあった。
マルゥは彼女に聞いた。
「おうちはいつ見えるの?」
「わからない」
「待ってたら、そのうち見える?」
「わからない」
「見えるまで待つの?」
「・・・わからない」
分からないだらけの彼女に、マルゥは首をかしげた。
「おうちには、誰か待ってるの?」
「おうちは、もう無いかもしれない。あっても、誰も居ないかもしれない」
彼女は空を見上げたまま、目から星のように輝く涙を流した。
マルゥはそんな彼女を見ていると、急に涙が出てきた。
彼女の寂しい心が自分の心にも流れ込んできた気がして。
彼女の悲しい涙が自分にも分かった気がして。
彼女はしゃがんで、自分のために泣いてくれた小さな女の子の頭を胸に抱いて、
歌を歌いだした。
とても美しく、透き通っていて、でも力強い歌声が寂しい砂漠の中に響いていった。
マルゥの小さな胸に入り込んでくるかのように響く歌は、
マルゥの目から涙を奪い、代わりにとても暖かい何かをくれた。

769 名前:ドギーマン 投稿日:2007/01/11(木) 11:53:57 [ 6gUCYqqA ]
彼女はマルゥにもう帰りなさいと言った。
マルゥはキャンプのほうに目をやった。
明かりは相変わらず灯っているけど、
来るときよりもずっと遠くに見えて、暗い闇の中を歩くのはとても怖かった。
マルゥは彼女に聞いた
「わたしのおうちに来ない?」と。
彼女はここで待ってなきゃいけないから、と断った。
マルゥの不安そうな目を見て取って、彼女は言った。
「大丈夫、歌っていてあげるから」
そして、彼女はまた歌い始めた。
その歌はさっきよりもずっと力強く、
マルゥは身体が熱くなって、心のなかの不安が消えていった。
マルゥは彼女に小さな手を振ると、キャンプに向かって走り出した。
さっきまで遠かった気がしたのに、どんどんキャンプの明かりが大きくなってきた。
そして、どこまで離れても彼女の歌声は決して小さくならず、
マルゥの心に響き続けた。
マルゥがキャンプのすぐそばに来ると、父親が彼女を見つけて走り寄ってきた。
「マルゥ!!」
そう言ってマルゥを抱きしめた。
「どこ行ってたんだ。テントに入って寝ろといったろう・・・」
父親は目に涙を滲ませていた。
マルゥはそんな父の様子を気にしていないのか、
父親に聞いた。
「ねえ、お父さんは歌が聞こえないの?」
「歌?」
すると、さっきまで聞こえていたはずの歌は聞こえなくなっていた。

マルゥはそれから父親たちに砂漠で会った彼女のことを話したが、
誰も信じようとしなかった。
しかし、
やがて他の星からやってきたという彼女達のことをマルゥは知った。
あのときに聞いた歌の歌詞は、
何度思い出そうどしても、結局なぜか思い出せなかった。
でも、彼女がくれたものはマルゥの中にあり続けた。

彼女は、おうちに帰れたのだろうか。

770 名前:ドギーマン 投稿日:2007/01/11(木) 12:00:53 [ 6gUCYqqA ]
あとがき

リトルウィッチを話に登場させるのって、難しいよね。
宇宙人っていう公式設定無視しないかぎり、
ただの電波系少女になっちゃうもんね。
敢えて挑戦してみた・・・けど、
不思議体験というか、未知との遭遇というか・・・w
服装も、コスプレメイド服って書ければ楽なのに・・・。

771 名前:名無しさん 投稿日:2007/01/11(木) 18:02:54 [ 2B9EN7f6 ]
>>767
待ってました〜、きんがーさんの話続編!
思えば自分がこのスレを見始めたのはきんがーさんのお話が始まった頃でした。
完結までぜひとも読み切らせてもらいます。

>>ドギーマンさん
本当に小説の書上げが早いですね。それも色んなムードの物をぽんぽんと。
リトルは自分も良く分からないというのが本音です。
個人的にはウィザードと同様魔女っ子みたいなイメージなんですが・・
星の王子様のような感じで儚い物語ですね。ちょっと悲しいですが、ほんのり暖かい心境です。

772 名前:第19話 張 投稿日:2007/01/12(金) 16:17:23 [ ydBnLIs2 ]
田村はふと思い当たる節があったので佐々木を別の捜査に当たらせた
例の「張」が収監されている刑務所には一人で出向くことにした。合同捜査本部が設立されるのは一両日中だろう。
これだけ一連の事件で共通点が出ているのにすぐに合同にならないのは
官僚社会の弊害だろう。

面会の申し込みは昨日のうちに済ませてあった。
先に「張」を面会室に入れさせわざわざ30分程待たせた。
武蔵じゃないが、主導権は渡したくない。奴から必ず情報を引き出さねばならん。
室内に入ると、下を向いていた「張」が田村の顔を見上げて少しほっとしたようだ。

「あんたか」
「俺で良かったんじゃないか?そうなんだろ?チョウ。」
「チャンだ。二度と間違うな。」
「ふっ。名前を大事にするんだな・・・この国では君らほど名前に執着しない」
「何のようだ?全て話した・・・ほっといてくれ」
「命の恩人にそんな言い方しないでくれよなぁ・・チョウ」
「・・・チャンだ。」
「いい子にしていないと、早期釈放願いを出すぞ?いいのか?」
「そんな事できやしねぇ!日本は法律を守るんだ」
「いいやそうでもないぞ?チョウ」
「・・・・」
「外に出りゃ、全て話してしまったお前は、何日生きていられるかな?」
「どうしろと?」
「まぁ聞くんだ、チョウ。本来ならお前さんは海の向こうにいたはずだな?
生死は別としてな。お前さんの組織から狙われる状態から守るにはここ日本の
刑務所でお勤めをするしかなかった。7年。求刑は8年だった。」
「その礼は必ずする。」
「そこでだ。今日本の務所は満室なんだよ。問題を起こすわけでもないお前を
いつまでも留めておくほど鬼じゃないんだよ、この国は。わかるか?」
「頼む!まだ出るわけにはいかない!殺される・・・」
「・・・質問に答えるなら、非協力的として刑期を満了できるだろう。
しかし、答えないなら、協力的として早期釈放願いを出す。いいな?分かったか?」
「わ、わかった。なんでも答える」

例の「劉」と言う男の話をし、組織とどうゆう繋がりなのか知りたかった。

773 名前:第20話 嘘 投稿日:2007/01/12(金) 16:18:25 [ ydBnLIs2 ]
「なぁチャン、年間2億も稼いで、何故逮捕された時に5万程しか持っていなかった?」
「上の奴らにほとんど持っていかれた。何度も言ったはずだ」
「いや違う! 話せ!」
「言ったとおりだ、残っていない!」と田村の右手を見つめながら言った。
丁度、佐々木が遅れて到着したのをいい機会だと思い、部屋を一旦出ることにした
「お前は用済みだ。早期釈放願いを出す。手続きしたら戻ってくる」

佐々木は最後の方のやりとりしか見ていなかったので怪訝な顔つきをしていた。
「田村さん、どうしたんですか?」
「奴は金を隠している。この期におよんでまだ嘘をつきやがる。ちょっと試しているんだよ」
と言って、タバコに火をつけた。早く戻っても効果がないだろう。
「嘘だなんてどうして?」
「お前はチャンが答えた時に左側を見つめて言ったのを見てなかったのか?」
「それが何か?」
「・・・嘘をつく時は左を見るんだよ、人間は。左脳は論理的思考を司る」
「知らなかった・・・」
「そんなんで職質できるのか?まったく最近じゃ学校で習わないのか?」
「すみません」
「まぁいい。佐々木は部屋に入らないでここで休んでくれ」

と言って田村は面会室に戻っていった。
「待たせたな、チョウ。早ければ来年だな」
「何が?」
「桜を見れるだろうよ。お前の国ではないかもしれんが」
「やめろ!殺される!」
「【協力的】だから仕方ないじゃないか?さっきの相棒が車で書類提出に向かったよ
今なら間に合うかも知れんが。俺に答えるか?」
「分かった。だから電話して引き返すように言ってくれ」
「話してからだ。5分だな・・・猶予は」
「・・・隠し口座があるんだよ。日本人名義のが!俺の取り分は1億だった。
もう4千万位しか残ってないが」
「1億は組織に払ったんだな?何故だ?一人で出来るじゃないか?」
「それは違う。電子的な詐欺は俺の専門だが実際に人に会って免許証や身分証を
盗む奴は別にいるんだよ。それを元に俺がネットから詐欺をしたわけだ」
「チャン、お前はゲーム専門じゃなかったのか?」
「そうだ。専門はゲームだ。子供相手だからほとんど被害届けがでないからな。
だけど何故か、奴らは俺のことを知ったんだよ!それから抜けられなくなった」
「で?ゲームからの稼ぎも抜かれたわけか?」
「そうだ。アイテム売買もバブルが過ぎ去って、結局は片棒担いだほうが稼げたしな」
「でもわからんなぁ。何故身分証が必要なんだ?」
「それがあれば比較的簡単に口座が作れるんだよ。本人に気づかれずにな」
「で?」
「あんたまだわからんのか? 口座があれば自由に金が動かせるんだぞ?」
「マネーロンダリングか?」
「その通りだ。金の流れが組織の息の根をいつの時代も止めてきたんだ。
それが判らなければ安泰なんだよ。」
「話を戻そう。劉は例の事件の実行犯だと思うか?」
「いや、きっとそいつも俺と一緒さ。ただの送金係りだよ。ゲームもやっていたか?」
「やっていた。口座が問題なんだろ?」
「多分・・・口座とゲームのアイテムやキャラクターも一緒に盗んでいると思う」
「わからんなぁ・・・何故殺す?」
「以前より口座を作りずらくなったんだよ。それだけさ」
「それで殺すのか?」
「そうだ」
「くそったれ!なんて奴らだ!人の命をなんだと思ってる?!」
「俺じゃねぇよ!お前らの言うチャイニーズマフィアってそういう奴等なんだ」
「どうやったら奴らを捕まえられる?」
「それはわからねぇ!・・・劉のPCのゲームの種類は全て見たのか?」
「なんか関係あるのか?ゲーム話なんかしやがって!」
「関係あるんだよ!それも資金源なんだ!」
「劉のは見てない・・・だがゲームならレッドストーンって奴なら名前が挙がってる」

774 名前:ドギーマン 投稿日:2007/01/12(金) 17:41:52 [ 6gUCYqqA ]
『Ring』

ブルン暦4795年 ブルン王国首都ブルンネンシュティグ
公園で10才の男の子と女の子が木の棒を持ってチャンバラをしていた。

「やぁ!」
槍のように長い真っ直ぐな木の枝を突き出したラナは、
「わっ」と体勢を崩したシュッツの足を払った。
そして、たまらず尻もちをついたシュッツの顔に、枝の先を突きつけて。
「はい、またあたしの勝ちね」
そう言ってラナは勝ち誇った。
シュッツは悔しそうに言った。
「もっかい!もう一回勝負!」
ラナはふうっとため息をついた。
「またぁ?いい加減諦めなさいよ」
シュッツはつまらなそうに木の枝と鍋蓋を放り投げると、
「あ〜あ、あんな長い武器使うなんて卑怯だよ」
ラナはむっとして言い返した。
「なによ!槍はちゃんとした武器なんだからね。そっちこそ盾持ってやってるくせに」
シュッツは言い返せなかった。
「くっそぉ〜。何で勝てないんだよ」
そう言って尻を叩きつけるようにベンチに腰掛けた。
ラナも槍にしていた木の枝を捨てると、シュッツの隣に座って言った。
「だってあたし、お母さんに槍教えて貰ってるもん」
アープは持たれかけていた背を起こして、ラナのほうに顔を向けた。
「ずっりぃ〜、父上なんか何も教えてくれないのに」
「そんなこと知らないわよ〜」
「くっそぉ〜、もっかい勝負だ。もう勝つまでやる!」
「ええ!?もうやだぁ」
ラナは辟易して言った。

シュッツという名前は、長いからとラナに付けられたあだ名だ。
本名はシュトラウツェル=アルグレイ。
シュッツはブルン王国で代々王族に仕える騎士の名家の跡取り。
ラナはブルン王国に雇われている傭兵一家の娘。
当然、2人は「位」が違う。騎士とは言ってもシュッツの家は貴族とほぼ同位なのだ。
貴族の家との血縁関係も出来ていて、シュッツも将来は相応の家の娘と結婚させられることだろう。
一方ラナは、大昔に滅んだ大国エリプトから流れてきた傭兵一族の末裔。
国を失った移民としての地位は昔から全く変わっていない。
王国に雇われていても、元々王に仕えていた騎士たちとは衝突することは多かった。
そこで、王室直轄機関レッドアイ設立と同時に彼女達傭兵は皆レッドアイに移籍され、
REDSTONE探索のために各地を飛び回るようになった。
しかし、REDSTONE探索は国家の大事業。
騎士達は国の警備という仕事が回されてはいたが、
彼らにとってこれは決して面白いことではなかった。
結局、騎士団と傭兵たちの衝突は現在も続いている。
だから当然仲の悪くなるはずの2人が、何故仲良く遊んでいるのか。
子供だからと言えばそれまでだが、周囲から見ても不思議なことだったはず。
当然、彼らの親は2人を引き離そうとする。

775 名前:ドギーマン 投稿日:2007/01/12(金) 17:43:02 [ 6gUCYqqA ]
ブルン王宮
眩いばかりの白い王宮の廊下。
細かい刺繍をほどこされた絨毯が延々と続いている。
シュッツの父は騎士団の詰め所に向かっていたが、突然立ち止まった。
後ろを歩いていた部下が「どうなされました?」と尋ねた。
シュッツの父は、横を通り過ぎようとした傭兵の女に蔑むような視線を送り、
わざと聞こえるように言った。
「全く、移民どもが大きな顔をしてこの美しい王宮を歩くとは・・・。
嘆かわしいことだ。そうは思わんかね?諸君」
部下たちは、笑った。
「全くです。奴らがごとき輩、歩くだけでこの王宮を穢されているようなものですな」
傭兵の女、ラナの母は立ち止まって、
細かい細工の施された、豪華な白い甲冑に身を包んでいる男をキッと睨んだ。
「おや、聞こえてしまったかな?この廊下はよく声が響くからなぁ。ククク」
騎士達は含み笑いをしながら傭兵を見た。
ラナの母は黙っていた。
逆らえる立場ではなかったから。
「それにしても、その昔エリプトから流れてきたときはほんの100人程度と聞いていたが、
あっという間に増えるんだな。犬や豚と同じだ。そう、まるで家畜」
取り巻きの部下達が下卑た笑み浮かべた。
「どうせREDSTONE探索にかこつけて、あちこちで男を漁ってるんでしょう」
「はははは、そうだな。ははははは」
ラナの母は歯を食いしばり手をぎゅっと握りこんで、去っていく騎士たちを見送った。


シュッツとラナは遊びつかれて地面にへたり込んでいた。
木の枝が地面に転がっている。
「はぁ・・・はぁ・・・あーもう、なんで勝てないんだよぉ」
「ひぃ・・ふぅ・・・シュッツ、いちいち大振りすぎなのよ・・・」
2人とも肩で息をしていた。
服がすっかり泥で汚れている。
「あーあ、またサーシャに怒られちゃうな」
サーシャとはシュッツの家の家政婦のことだ。
「いいじゃない、服はそれだけじゃないんでしょ?」
「まあね」
ラナは羨ましそうに言った。
「いいなぁ。あたしなんか、全部お姉ちゃんのお古だし。新しいのなんて買って貰えないし」
それを聞いてシュッツは思いついたように言った。
「そうだ、服買ってあげるよ。お小遣い結構貯まってるんだ」
ラナは悲しそうな目でシュッツを見た。
「駄目よ。お母さんが絶対許さないわ。
それに、そんな施しみたいなこと・・・・して貰って嬉しいと思う?」
シュッツはハッとして、
「・・ごめん」と謝った。
「いいの」
子供の2人にだって親の仲が悪いことは分かっていた。
日は西に傾いて、辺りの白い建物は美しい夕日の色に染まっていった。
「もう帰らなくっちゃ」
ラナはそう言って立ち上がった。
「ん・・」
シュッツは地面を見たまま返事ともつかない返事をした。
「シュッツ、また明日遊ぼう」
シュッツは呆けた顔をあげて、ラナの夕日に染められた顔を見上げた。
ラナは顔に笑みを浮かべて、
「約束ね」と言った。
シュッツも笑顔で「うん!」と返した。

776 名前:ドギーマン 投稿日:2007/01/12(金) 17:44:11 [ 6gUCYqqA ]
「ただいまぁ」
ラナが家に帰ると、姉が既にてきぱきと1人で家事を行っていた。
姉はラナを一瞥すると、
「ただいまじゃないでしょ!さっさと夕食の支度手伝ってよ。
またアルグレイの家の子と遊んでたんでしょ。母さんに黙ってて欲しかったらさっさとする!」
「はぁーい・・」
ラナはのろのろと夕食の支度に入った。
しばらくして狭い食卓に母が帰ってきた。
『おかえり〜』
ラナと姉が口を合わせて言った。
「ただいま」
そう言って槍を置いて鎧を脱ぎ始めた母の表情は暗かった。
年齢からは考えられないほど若々しい母ではあったが、
その身体には長い傭兵生活での傷跡が目立つ。
傷跡は戦いを生業とする者にとって勲章であるとはいっても、
小さなラナにとっては心配の種でしかなかった。
「お母さん、どうしたの?」
服を手に持ったまま怖い顔をして止まっている母を見て、
ラナは心配そうに尋ねた。
「なんでもないわ」
母はそう言うと急いで服を着て、食卓についた。
「もう少しで出来るから待っててね。ラナ、お皿並べて。」
姉の声に母の顔をじっと見ていたラナは慌てて動き出した。

母、姉、ラナの3人で食事をする。
母も父も傭兵だが、母はレッドアイ所属、父はリンケンで警備に従事している。
なかなか帰ってこないが、父はたくましくて優しい人だ。
姉もラナも将来は母のような強い傭兵になりたいと思っていたが、
母は決してそれを望んでいるわけではないようだった。

その夜。
ラナは何かとても怖い夢を見て、目を覚ました。
身体を起こして横を見ると姉が寝息をたてているが、母の姿が見えない。
食卓のほうが明るい。
ラナはそうっと音をたてないように闇のなかを進み、明るい部屋を覗き込んだ。
母が1人で酒を飲んでいた。
「アルグレイめ・・・・笑っていられるのも今のうちよ・・・」
とても怖い顔で、母は1人呟いていた。
ラナは怖くなって、急いで寝床に戻り姉の隣に潜り込んだ。
姉が起きてしまったが、「ん・・?もう・・」と言ってまた眠り始めた。
ただの寝返りと思ったようだった。

777 名前:ドギーマン 投稿日:2007/01/12(金) 17:45:00 [ 6gUCYqqA ]
シュッツはいつも通り朝仕事に出かける父親を見送っていた。
「では行ってくる。ショトラウツェル、今日も勉学に励み、友達と仲良くするのだぞ」
「はい、父上」
この父の言う『友達』というのは、貴族の子供達のことだ。
小さいうちから仲良くしておけば、将来役立つということなのだろう。
しかし、シュッツにとって彼らは友達なんかではなかった。

シュッツは家庭教師の授業が終わると、行ってくると言って屋敷を出た。
ただし、表門からは出ずに垣根を越えて行く。
門のあたりにはいつもあいつらが待ってるからだ。
いつも誰かをバカにして見下してないと気が済まない奴ら。
シュッツは垣根を越えると、ラナの待つ公園まで走って行った。

ラナは公園のベンチに座っていた。
「おーい、ラナァ!」
シュッツはラナに手を振った。
ラナも手を振って返した。
「今日は何する?」
シュッツはラナに言った。
「どうせまた負けたいんでしょ?」
そう言ってラナはシュッツに木の枝を放った。
シュッツは木の枝を受け取ると、にやりとして
「今日は勝つからね」と言った。
「返り討ちね」そう言ってラナは木の棒を構えた。

その日も泥だらけになって、2人でへたり込んで居ると、
「よぉシュトラウツェル。面白いことしてるなあ?」
シュッツは汚いものを見るように顔を歪めて振り向いた。
ハムスケナンとジュスドー、デブとガリの2人組だ。
シュッツの父の言う『友達』に見られたくないところを見られた。
「移民のガキとこんな物振り回して、なんの踊りだ?」
ジュスドーがシュッツの持っていた木の枝を拾い上げて笑いながら言った。
シュッツとラナは自分達よりも年上で大きいこの2人組を睨みつけた。
2人の目に動じることなく、ハムスケナンは言った。
「シュトラウツェルちゃんよ。俺達はお前んちの前でわざわざ待っててやってたのに、
こんなとこで移民のガキと何してんだ?ん?」
シュッツは吐き捨てるように言った。
「君達には関係ないだろ。遊ぶ相手くらい自分で選ぶ」
ハムスケナンとジュスドーは眉間にシワをよせて、
『はあ?』とハモった。
ラナはその様子に吹き出した。
それは彼らの怒りを煽ったようだった、
「なんだこいつ、移民のくせに」
そう言ってラナにくいかかろうとするジュスドーを
シュッツは「やめろ!」と立ち上がりざまに押し倒した。
「うわ」
ジュスドーは受身もまともに取れずに地面に頭を打ちつけた。
ハムスケナンは垂れた頬の肉をぶるぶる震わせて怒鳴った。
「お前そんなことしてどうなるか分かってるのか!?」
シュッツは「どうにか出来るならやってみろよ!」と怒鳴り返した。
倒れていたジュスドーは打った頭をさすりながら立ち上がり、
「たかが騎士の家のガキくせに、お前の親父は貴族と縁を結ぼうと必死になってるけどな、
父上が笑ってたぞ。『たかが騎士の分際で貴族になれると思い込んでる愚か者』だってな!!」
と、シュッツに向かって言い放った。
「黙れ!」
シュッツはラナの木の棒を拾いあげると、2人に向かって振り回しはじめた。
「うわ!」
「危ねぇ!」
そう言って逃げる二人にシュッツは石を投げ、
「二度と来るな!」と叫んだ。
シュッツは肩で息をし、逃げる二人の姿を見送ると、
後ろで立ってたラナに振り向いて、
「ごめん、嫌なとこ見せて」
「ううん、いいの」
そう言って、ふうっと息を吐いてからラナは言った。
「守ってくれてありがとう」
シュッツは顔を赤くした。
「でも、今日もあたしに負けっぱなしだったけどね」
ラナは意地悪な笑みを浮かべて言った。
シュッツは頭を掻いて、
「明日は勝つよ」
と言って笑った。
「返り討ちよ」
ラナも笑顔で返してくれた。

778 名前:ドギーマン 投稿日:2007/01/12(金) 17:46:29 [ 6gUCYqqA ]
その日の夜、シュッツは父親に呼び出された。
シュッツには用件は分かってた。
シュッツが部屋に入ると、
父は椅子に座って机に向かっていて、シュッツにまるで気づいていないようだった。
「父上、いま参りました・・・」
シュッツはおどおどと小さい声で言った。
「シュトラウツェル・・・」
父はとても低い声で言った。
「お前、移民の子供と遊んでいたらしいな?」
『移民の子供』と聞いて、シュッツは手をぎゅっと握った。
「父上まで移民の子供だなんて言うんですか!?」
堪らずシュッツは言った。
「何?」
父は椅子を回し、シュッツのほうに向き直った。
鋭い怒気をはらんだ目に、シュッツは言葉を失った。
「私はお前のために、相応しい家の子を選んでやったのだ。それなのに・・・」
そう言って父は立ち上がり、シュッツにつかつかと近寄ると。
「移民の子供と遊ぶとはなにごとかぁ!!」 パァン!
そう言ってシュッツの小さな右頬に思い切り平手打ちした。
シュッツは堪らず叩かれた頬を押さえてうずくまった。
「しかもお前は、あの子達を棒で叩き、石まで投げつけたらしいな!?」
父はシュッツを無理矢理引っ張り上げて立ち上がらせると、
パン!と左頬も平手で叩いた。
シュッツは痛みで泣き出した。
しかし、父は泣いて顔を手で押さえているシュッツの両手を無理矢理開いた。
「何故だ!何故わたしの言うことを聞かない!」
シュッツはアゴをガクガクさせていたが、
怒りが恐怖に勝った。
「父上、ラナを移民だなんで言わないでぐだしゃい!」
舌が回らずに変な発音だが、シュッツは父に抵抗した。
父は歯をキッと鳴らすと、サーシャを呼んで
「押入れに閉じ込めて反省させろ。食事は与えるな!」
そう言って、サーシャとシュッツを部屋から追い出して机に向かうと、
机をダン!!と強く叩いた。


ラナはその日の朝母を見送ると、
慌しく姉と一緒に家事を済ませ、いつも通り公園でシュッツを待つことにした。
しかし、その日はいつもと違った。
シュッツがいつまで待っても来ない。
ラナの脳裏に昨日の2人組が浮かんだ。
―まさか。
ラナはシュッツの屋敷に向かって走り出した。
前に家にあがるように誘われたことがあったから場所は分かっている。
ただ、そのときは断った。
シュッツはそのときはラナの母と彼の父が仲が悪いと知らなかったみたいだったから。
程なくしてラナはシュッツの家に着いた。
ラナの小さな家とは比べ物にならないくらい大きな家。
ラナはボロボロな服装の自分が、周囲の高級な住宅のなかでひどく不釣合いで、
恥ずかしく思えた。
―だけど、今はそんなこと気にして居られない。
「シュッツーー!!」
閉じられた表門の鉄格子を掴み、シュッツの名前を叫んだ。
「シュッツーー!!」
「シュッツゥー!」
何度でも叫んだ。
すると、屋敷の中からメイド服を着た中年の女性が走ってきた。
「あなた、ラナちゃん?」
「そうです。あの、シュッツは?」
女性は人差し指を立てて、静かにと合図を出した。
門の鍵をはずし、門を開けて周囲を見回すと、
「早くおいで」
とラナを屋敷の中へ導いた。

779 名前:ドギーマン 投稿日:2007/01/12(金) 17:47:14 [ 6gUCYqqA ]
シュッツは押入れの中でじっとしていた。
食事はサーシャが父に内緒で食べさせてくれた。
―父上は分かってないんだ。
いくら王族お抱えの騎士の名家で、ほぼ貴族と同位の地位だと言っても、
いくら貴族と血縁を結ぼうと、貴族達は絶対に騎士を貴族と同位だとは認めない。
―なんで父上は、あんな奴らなんかに媚るんだ。
シュッツは貴族が嫌いだった。ハムスケナンやジュスドーみたいに、
自分では何も出来ないくせに偉そうにして、見下している。
―あんな奴ら、友達なんかじゃあない。ぼくの友達は・・・
そのとき、外から鍵がかけられていた押入れの戸が開いた。
「ラナ!」
シュッツは押入れの外に居た女の子に驚いた。
「シュッツ、大丈夫!?」
そう言ってラナはシュッツを見るなり抱きついてきた。
「よかった・・・」
「ちょ、ちょっとラナ。苦しい・・」
シュッツが呻くと、ラナは顔を赤くして離れた。
「あ、ごめん」
サーシャはそんな2人を見て、優しい目をして言った。
「やっぱり旦那様は間違ってるわ。友達は子供にこそ選ぶ権利があるのよ」
シュッツとラナはミーシャを見上げて微笑んだ。
「ひどい、顔がこんなに腫れてる」
ラナはシュッツの顔に目を戻すと、悲しそうな目をして言った。
「平気だよ。僕のことは心配しなくていい。それよりラナ」
「なに?」
「僕決めたんだ。父上は全然分かってくれないけど、騎士だから偉いとか、貴族だから偉いとか、
エリプトから来たからって馬鹿にされるなんて絶対おかしい。だから・・」
「だから?」
「僕はいつか騎士で一番偉くなって、そしてみんなの考えを変えてやるんだ。
もう、誰にもラナを移民だなんて呼ばせない」
「シュッツ・・」
ラナは少し泣いてるようだった。
「じゃあ、父上が戻ってくるかもしれないし、僕はまた押入れにもどるよ。
サーシャ、後は頼んだよ」
「はい」
そう言ってサーシャはシュッツ押入れに閉じ込めて鍵をかけた。
「シュッツ!」
ラナが押入れに張り付くと、押入れの中から
「大丈夫、心配しないで」
そう言って、最後に付け加えた。
「今日は勝負できなかったけど、明日は勝つよ」
「・・返り討ちよ」
ラナは笑って呟いた。
「さあさ、早く」
そう言ってサーシャはラナの手を屋敷の外へ引っ張っていった。


次の日、
いつものように公園にやって来たシュッツは暗い顔をしていた。
「シュッツ!!」
嬉しそうに手を振って走ってきたラナに、シュッツは突然
「ごめん、ラナ。今日でお別れなんだ」と言った。
「え?」
ラナの顔が強張った。
「なんで?」
ラナの瞳がぶるぶる震えている。
シュッツは顔を俯いて言った。
「父さんに、昨日の夜急に・・・
明日からアウグスタの学校に通わせるって・・・・・
だから、今から家を出なきゃいけないんだ」
「そんな・・」
ラナは愕然とした。
「ラナ、これ・・」
「いらない」
ラナはシュッツが伸ばしてきた手に握られている物を拒否した。
「違うよ。これは君が僕との勝負にずっと勝ってきたからあげるんだよ」
「・・・・」
「僕が、いつかここに帰ってきて。そして君に勝ったら。返してもらう」
「分かったわ」
そう言って、ラナは両手を出した。
シュッツは手を開き、中に握られていたものをラナの両手の平の上に乗せた。
それは、綺麗なキラキラ輝く小さな宝石が填められた指輪に、
細いチェーンを通して作ったネックレスだった。
「これは?」
「僕の宝物。母上の形見なんだ」
「そんな!」
ラナは貰えないと言おうとしたが、シュッツはラナをじっと見て目で制止した。
「だから・・・絶対に・・・・取り返しにいくよ」
シュッツは目から出る涙を堪えるように言った。
ラナも釣られるように涙目になり、
「わかった。絶対よ」と言った。
「だからって、わざと負けないでね」
シュッツは目から涙を流しながら笑った。
「分かってる」
ラナも泣いていた。
「じゃあ・・・」
シュッツは別れの一言を言った。
「今度は勝つよ」
ラナは笑みを浮かべて。
「返り討ちよ」

男の子と女の子は、手を振って別れていった。

780 名前:ドギーマン 投稿日:2007/01/12(金) 17:51:10 [ 6gUCYqqA ]
少し、寂しくなってきたかな・・ってことでageてみる。

一応、第一部完って感じなんだけど、続き書けるかちょっと不安。

>>772-773
相変わらず面白い。
続き楽しみに待ってるよ。

781 名前:名無しさん 投稿日:2007/01/12(金) 21:38:19 [ ftqbGU56 ]
あるぅ日〜森の中〜テイマにでああった
花咲く森の道〜テイマにであ〜あった

782 名前:名無しさん 投稿日:2007/01/12(金) 23:37:29 [ psw7Vx8o ]
>>772-773
待ってました〜。
とうとうREDSTONEに・・・続きが楽しみです。

>ドギーマンさん
これが言ってたHERMELがサイドストーリーの長編・・なのかな?
こういう別れなきゃいけない男女・・みたいなのに弱いみたいです;
何部まであるんでしょう・・楽しみですっ。

783 名前:名無しさん 投稿日:2007/01/13(土) 00:37:16 [ VntJjyIU ]
>>ドギーマンさん
また再会させてあげたいと素直に思える二人、続きが気になります。
内容もそうですが国家背景とか歴史的な背景の描写も考え抜かれていますね。
RS自体の歴史などはどうも詳しくないので目から鱗状態です。
メインクエストもやってないしなぁ・・。

今後の部も是非読ませてもらいたいです。

784 名前:ドギーマン 投稿日:2007/01/13(土) 02:37:42 [ 6gUCYqqA ]
>>782-783
HERMELとは一切関係のない話、になりそうです。
だって一昨日思いついた話ですからね。

エリプト王国から来た傭兵達が差別されていたかは分からないけど、
国を無くした移民が流れた先で差別を受けるのはリアルでもあることだから、
おかしくはないかなあ・・・と思う。

785 名前:ドギーマン 投稿日:2007/01/13(土) 02:38:46 [ 6gUCYqqA ]
sage忘れ失礼・・・。一回ageたの忘れてた

786 名前:名無しさん 投稿日:2007/01/13(土) 11:42:44 [ MRywH1/Q ]
一昨日思いついてこれだけの話が書けるとは・・・

787 名前:ドギーマン 投稿日:2007/01/13(土) 17:51:51 [ 6gUCYqqA ]
『Ring』第二部 上
 
炎が生き物のように木製の小さな建物の壁を撫でている。
彼女は家に飛び込もうとするが、母の手に阻まれた。
視界を涙が歪め、火の熱気が顔をちくちくと刺す。
彼女を抱いて、小さな肩の上に顎を乗せた母は囁いた。
「絶対に許してはいけない・・・・ラナ、今日という日を忘れてはいけないよ」


ブルン暦4805年 ブルン王国首都ブルンネンシュティグ
シュッツは20歳となり、アウグスタ大聖堂で騎士の洗礼を受けて王国に帰ってきた。

アルグレイ家邸宅
「シュトラウツェル、我が息子よ。立派な大人になって帰ってきたな」
そう言って嬉しそうに笑う父に、シュッツは笑みをうかべて言った。
「まだ大人になっただけです父上。これから立派な騎士になってみせますよ」
「言ってくれるではないか」
10年ぶりに見る父の笑顔は、かなり老けて見えた。
「しかし、シュッツよ。今、王宮は混迷を極めておる」
「分かっております。アウグスタでその知らせを聞き。急ぎ駆けつけた次第にございます」
この年、レッドアイ会長アイノ・ガスピルとブルン国王アラドンが突然失踪したのである。
「うむ。国王は現在方々に手を回して捜索中だが、
この不在の間にこの国をさらなる混乱に陥れようとする輩が出んとも限らん」
「はい」
「特に、気をつけなければならんのはレッドアイだ」
レッドアイという言葉を聞いて、シュッツの脳裏にラナが浮かんだ。
きっと、彼女も傭兵になっているはず。
だとすれば、彼女の母親と同じくレッドアイで働いているかもしれない。
シュッツの中ではラナは当時のままの小さな女の子だが、
今はきっと綺麗な大人の女性になっていることだろう。
「おい、シュトラウツェル」
「あ、はい」
「ちゃんと話を聞かんか!今からそれでは先が思いやられるぞ。立派な騎士になるのだろうが」
ラナを思い出して呆けていたシュッツに父の叱咤が飛んだ。
「申し訳ありません」
「・・・まあいい。とにかく今は王不在の間、宰相が王宮を取り仕切っておられる。
王族方はもう次の王候補のために躍起になっておられるから、忙しくなるだろうが」
父は続けて言った。
「我ら騎士がこの混乱を乗り切るまでの間、王国を護りきるのだ」
「はっ!」
シュッツの返事に父は満足したように頷き、
「よし、行くぞ」と部屋を出て行った。
シュッツも後について王宮へ向かった。


レッドアイ本部
暗い、奥行きの見えない部屋を赤い輝きが照らしている。
「どう、出来た?」
女は問いかけた。
「ああ、完成だ」
男は赤く輝くそれを眺めながら答えた。
「あとは、時期を待つだけね」
「全て、計画通りだ」
男はにやりと笑った。

788 名前:ドギーマン 投稿日:2007/01/13(土) 17:52:42 [ 6gUCYqqA ]
ブルン王宮大会議室
シュッツと父は大きな円卓の置かれた部屋に入った。
父が「各自抜かりのないよう」と言うと、
部下達はそれぞれの持ち場に向かって行った。
「団長、私はどこにつけば宜しいのでしょうか?」
事前に何も聞かされておらず、さすがに不安になってシュッツは問いかけた。
「お前は私と一緒に、この扉のところに立ってもらう。
これからお仕えする方々への挨拶も兼ねてな」
「はっ」
父とシュッツは扉の端に並んで立って、続々と入ってくる王族に頭を下げて挨拶をした。
「アルグレイ卿。今日は子息が一緒と聞いていたが」
王族の1人が立ち止まって父に声をかけた。
「はっ、ここに控えておりますのが、そうでございます」
紹介され、シュッツは
かかとを打ち鳴らし、背筋をぴんと伸ばすと、右拳を左胸に打ちつけて敬礼した。
「シュトラウツェル=アルグレイにございます」
王族の男は笑みを浮かべ、直立不動になったシュトラウツェルに笑みを浮かべた。
「そう硬くならんでよい。私の名はバルンヘリ=シュトラディバリだ。よろしく頼む」
そう言って男は形良い髭を乗せた口を笑みの形に引き伸ばして手を伸ばした。
シュトラウツェルは敬礼を解き、バルンヘリの手を握り返した。
「こ、光栄にございます」
バルンヘリはシュッツの手をグッと強く握ると、彼の目をじっと見た。
「ははは、良い子息だ。アルグレイ卿、彼はきっと良い騎士になるぞ」
シュッツの父は落ち着いた様子で
「まだまだ若輩者ですが、そう言って頂けるとは、光栄の極みにございます」
バルンヘリは父から視線をもどすと、
「シュトラウツェルと言ったかな」
「はっ」
「会議後、暇があれば私を訪ねて貰いたい」
この言葉に、シュッツも父も目を丸くして驚いた。
「了解しました。必ず参ります」
バルンヘリは満足そうに頷くと、円卓に向かって行った。
父は「でかした」という感じの笑みをシュッツに贈ると、
また前を向いて入ってくる王族に頭を下げた。
シュッツも倣って頭を下げた。



「ここは国力の分裂を避けるために、平等にくじで決めるべきだ」
「馬鹿な!血縁関係で前王に最も近しい人物こそ」
「そんな綺麗ごとが通るか!今はモメるよりも早期解決のためにくじで決めるべきだ」
「その結果、相応しくない人物が王になる恐れがあるとしてもか!?」
「相応しくないとは誰のことだ!!」
会議は全く進展が見られない。
内心辟易しながらも、シュッツは冷静な面持ちで会議を眺めていた。
ただ、気になったのはあのバルンヘリという人物。
他の皆が怒鳴りあっているのを面白そうに眺めている。
まるで、既に自分が王になることが決まっているかのような・・・。


地下水路レッドアイ秘密研究所
母と父、そして多くの傭兵たちがこの10年という歳月をかけて綿密に練り上げた計画は、
王国の裏で着々と進んでいる。
ラナはあの日のことを忘れていない。
火に包まれた軒並み。
焼け跡のすえた臭い。
そして、真っ黒な人形のようになってしまった姉を。
他の仲間の傭兵達は、あの事件以来街を歩くことすらできない。
復讐は絶対に実行しなくてはならないが、ただ一つ気がかりなのは
―シュッツ・・・。
ブルン王国騎士団長の息子が騎士の洗礼を受けて帰ってきていることは聞いていた。
すぐにでも会いたかったが、今はまだ駄目だ。
―バルンヘリ様は約束してくれた。だからきっと、シュッツも味方してくれるはず。
この計画は、彼のあのときの誓いを助けるものでもあるのだから。

789 名前:ドギーマン 投稿日:2007/01/13(土) 17:53:57 [ 6gUCYqqA ]
ブルン王宮
シュッツは会議の後、バルンヘリの後について王宮の長い廊下を歩き、
彼に導かれるままに馬車に乗った。
父は王宮の警護には他の者を当てるから行って来いと言ってきた。
―親の七光りと思われただろうな。
父の部下たちの妙な視線には多少の戸惑いはあった。
程なくして、バルンヘリの屋敷に到着した。


シュトラディバリ家邸宅
王族といっても、その生活は貴族とさほど変わらないようだ。
シュッツは剣を執事に預け、バルンヘリに導かれるままに進み、彼の書斎に入った。
椅子に座り、テーブルを挟んで向き合う。
バルンヘリは紅茶の香りを楽しみながら、まだ一言も発していない。
シュッツは黙ってその様子を見ていた。
「ふむ、紅茶はお嫌いだったかな?」
そう言われてシュッツは
「いえ、ただ・・・」
シュッツは口ごもってしまった。
「ふむ、気になるかね。まあ仕方ない。本題に入ろうか」
「申し訳ありません」
シュッツは謝った。
「構わんよ。さて、どこから話したものかな」
バルンヘリはしばらく頭の中で整理するように考え込んだ。
そして、思いついたように言った。
「君は、ラナという女性を存知ておるかな?」
シュッツは目を見開いた。しかし、平静を装って、
「ラナですか。彼女が何か・・・?」
その反応を面白そうに眺め、バルンヘリは続けた。
「いま、王国内では秘密裏にある計画が進められている。その計画の重要人物が、彼女だ」
シュッツは驚いた。一体、自分が居ない間に何があったのか。
「その計画というのは?」
「なに、単なる掃除だよ」
バルンヘリは紅茶をひとすすりした。
「掃除?」
シュッツは怪訝な顔をして聞いた。
「そう、この国に蔓延する膿を全て吐き出させる。そのために彼女は必要なのだ。
そして、彼女はこの計画に君を加えることを薦めてきた」
シュッツは話がよく見えなかった。
「バルンヘリ様。それでは質問の答えになっておりません。膿というのは何なのですか?」
シュッツは説明を求めた。
「ふむ、そうか。君は王国には居なかったのだったな」
「はい」
「よろしい。少々長くなるが説明しよう」

国というものは果実のように成熟すればするほど豊かになるが、
あるときを境にして一気に腐敗が進む。
シュッツが居ない10年の間に、王国内ではその腐敗が一気に進んでいた。
貴族が無駄に力を持ち始め、政治に干渉し始めた。
もちろん、それに対して貴族達を押さえ込もうとする動きはあったのだが、
保守的な前王アラドンはすでに貴族達に逆に押さえ込まれ、傀儡と化していた。
しかし、そこに前王アラドンの失踪という事件が起きた。
それが現在の王宮の混乱の元となっているのだが、バルンヘリはこの期を逃さず、
反乱を起こして王国を乗っ取ることを計画したのだ。
そして、王国を再建し、貴族を粛清する。増えすぎた王族もだ。

790 名前:ドギーマン 投稿日:2007/01/13(土) 17:56:17 [ 6gUCYqqA ]
「つまり、荒療治だな。もはやこの国を救うには、一度壊し、そして作り直すしかない」
シュッツは父の言葉を思い出した。
―なるほど、王国を更なる混乱に陥れる人物は確かに居る。
しかし、一つ疑問があった。
「バルンヘリ様、讒言でございますが・・・」
「構わんよ、何だね?」
「反乱に用いる兵力はどうなさるおつもりですか?
騎士団はバルンヘリ様の独断で動かせるものではありませんし、ましてや反乱などには動きません。
さらに貴族の兵も敵に回るとなっては。
失礼ながら、王族であらせられるバルンヘリ様といえども、お抱えの兵力だけではとても・・・」
シュッツが遠慮気味に言うと、バルンヘリはにやりと笑ってみせた。
「そんなことかね、簡単な話だよ。貴族どもの兵を使えばよい」
「え?」
バルンヘリの言葉の意味がシュッツには理解できなかった。
「なにも、この戦争で貴族たちを敵に回す必要はない。
いいかね。貴族達は王を失ってもはや政治に口出しするどころでは無くなっている。
そこでこの私が王国を奪い、彼らにその後の地位を約束すると言ってやる。
彼らはきっと飛びついてくるだろう。それに・・・」
紅茶を一気に飲み干して、カチャンとテーブルに皿とティーカップを置いて続けた。
「君はあの会議を見て、新王が決定すると思うかね?」
シュッツはあの不毛な会議を思い出した。
あれでは10年たっても王が決まるわけがない。
シュッツは黙っていた。
その無言を肯定と受け取ってバルンヘリは言った。
「貴族どもを今のうちに手なずけておく。
騎士団の力がいくら優れていても、貴族全体の兵力を相手にして、はたして王宮を護りきれるかな?
貴族どもは自分達を破滅に導く手伝いをしているとも気づかずに、最後になって後悔するだろう」
そう言って、バルンヘリは声をあげて笑い出した。
「しかし・・・」
シュッツは口を開いた。
「全部の貴族が味方するとはとても・・・」
バルンヘリは笑みを崩さずに言った。
「安心したまえ、奴らにはとっておきの餌を用意してある」
「餌?」
「現段階で君に話せるのはここまでだ。で、君の返事を聞きたい」
選択肢などない。国家転覆の計画など、聞かされた以上は選択肢など・・・。
バルンヘリの形だけの笑顔のなかに潜む、狂気に満ちた目の輝きを見たとき、
シュッツは懐の短剣に手をかける心の準備をして、口を開いた。
「それで・・・、私に何を求めておられるのですか」
バルンヘリはシュッツの言葉に満足そうに頷いて言った。
「簡単なことだ。これから戦う相手の内情を知ることは、戦争において必須であろう?」
「私に、スパイをしろと・・・いうことですか」
「ふふふ。しかも君は騎士団長の息子という、実に都合のいい立場にいる」
シュッツは右手を鎧の胸当ての隙間にいれ、目の前の男の首の頚動脈の辺りを見た。
「しかし、それは父を・・・」
シュッツのその動きを見ながら、バルンヘリは何の動じた様子も無く、
むしろ面白がっているような様子で言った。
「何を躊躇う?彼女から聞いているよ。君はお父上を憎んでいるそうではないか」
確かにそうだ。シュッツは自分とラナを引き離した父を憎んでいた。
「しかしそれでも、父はたった1人の肉親です」
バルンヘリはじろっとシュッツを睨んだ。
「いいかね。大義の前にそんな感傷など邪魔なだけなのだよ。
君にもあるだろう?移民達の解放という大義が。この計画はその大義を叶えるものでもあるのだよ」
シュッツは黙ってバルンヘリの目を見た。
大義大義と言っているが、
この男の濁った目は決して大義を持った人間のものではないように思えた。
バルンヘリは焦れて言った。
「君は、何故ラナ君が私に味方するのか分かっていないようだね?」
「何故なんです?」
「そうか、きっと君が出て行った直後のことなのだろうな。
10年前、君のお父上が傭兵達の集落を焼き払ったのだよ。
記録の上では犯人は不明とされているがね」
シュッツは驚愕した。
「そして、ラナ君は大事な家族を1人失った」
―そんな・・・・。
「ラナ君の心の痛みを思うのなら、君は是非協力すべきだと思うが、どうだね?」
シュッツは沈痛な面持ちで、
右手をだらんと膝の上に力なく落とし、頭をさげてテーブルの上の紅茶を見下ろして言った。
「わかり・・・・・・ました」
バルンヘリは満足そうな面持ちで、椅子にもたれかかってシュッツの頭を見下ろしていた。

791 名前:ドギーマン 投稿日:2007/01/13(土) 17:57:04 [ 6gUCYqqA ]
シュッツはすっかり夜になったブルンネンシュティグを歩いて帰っていた。
馬車で送ると言われたが、風に当たりたくて断った。
腰にはシュッツが騎士の洗礼式で受け取った剣のほかに、
もう一つバルンヘリから受け取った細かい金細工が施された豪華な剣を差している。
『この剣を与えよう。これは君が我が同胞となったことの証であり、
お父上への今日の用件の言い訳に使いたまえ』
シュッツはラナに会えないのかとバルンヘリに聞いたが、
彼女はいま計画のために王都には居ないと言われた。
シュッツの目に、あの懐かしい公園が見えた。
久しぶりに見る公園は、あの頃と同じものとは思えないほど小さかった。
「ラナ、僕は帰ってきたよ・・・・・
いつになったらあの時の勝負の続きが出来るんだい?」
シュッツは夜の公園の中に佇む、小さな少女の幻に問いかけた。
『返り討ちよ』
聞こえるはずのない彼女の声。

王都の夜の闇が、歩き去っていく男の背中を飲み込んでいった。
そして消えていく男の後姿を、バルンヘリの屋敷からずっと男をつけていた女は見送った。
「続きは、全ての準備が終わってからよ」
届かない返事を呟いた。

792 名前:ドギーマン 投稿日:2007/01/13(土) 18:07:07 [ 6gUCYqqA ]
あとがき
年代とかに関しては
>>139を参考にさせてもらいました。
一気に20歳にしたけど・・・大丈夫かな。
年表ではバルンヘリ・シュトラディバリというREDSTONEの歴史上の人物を
登場させてます。名前はバルヘリじゃなんか締まらないので、勝手に
ちょっとだけイジりました。

そう簡単に会わせません。
歴史の波に翻弄される2人という感じで・・・
分かれたときみたいな爽やかさはない、かも。

793 名前:名無しさん 投稿日:2007/01/13(土) 19:00:51 [ HEovgbws ]
>>ドギーマンさん
なるほど、歴史年表があったんですね。
実を言うとRSのNPCと話してるとかなり面白い事を喋ってくれたりするので
歴史的に重要なものだけ抽出してメモしておいたんですが、>>139で全て晒されてました。
(他にも結構色々メモしたんですが)

政治的な駆け引きは実際自分も小説として挑戦してみて難しかったのを記憶してます。
話が収束していくようで読んでいて小気味良いです。
一気に年齢が・・というのは別に違和感はありませんよ。
第一部の時点で次の部で一気に時間を進める事を想定して書いてるのかな、と思っていました。
やっぱりラナと再会させたいと思ってしまっていたのですがまだまだそれは難しそうですね。
続きを期待します。

794 名前:殺人技術 投稿日:2007/01/13(土) 23:55:23 [ E9458iSQ ]
チョキー・ファイル

長くてつまらない、なんて事態になったらごめんなさい(´・ω・)

1−3>>656-658
4−5>>678-679
6−9>>687-690
10−14>>701-705
15-17>>735-737

>>751
なるほど、こんな方法があったのか。
かさばってたから助かったw
どうもありどぇす。

>>754-756
感想ありがとー。
やっぱあると嬉しいです。

795 名前:殺人技術 投稿日:2007/01/13(土) 23:58:11 [ E9458iSQ ]
チョキー・ファイル(18)


神聖都市アウグスタの昼は古都の商店街程ではないが、平和な都市を彷彿とさせる活気に満ちていた。

南中した陽光がチョキーの禿げかけた頭を熱し、チョキーは黙って縁の浅い帽子を被った、古都よりも清潔なせいか、石畳はまるで時の止まった水面の様に輝いている。

"……おい、チョキー"

"……何だ?ファイル"

ファイルはこの上なく気だるそうにチョキーに問い掛けると、チョキーは壮大な溜め息を付いて応えた。

"他人の心の中が外から読めるとか──そういう人間は、聞いたことあるか?"

ある訳ないだろ、ファイル。

"仮にそう言うのが居たとして──あいつは聖職者だ、もしもより高位の聖職者にこの事が広まったら──"

チョキーはそう言うと、ファイルはチョキーの頭の中で鳥肌を立て、チョキーも釣られて鳥肌を立てた。

"悪魔祓いって、本当にあるんだな……地下界じゃ人間の作り出したオカルトだと思ってたよ"

"──聖水撒きで思い切り頭を殴打されるとも聞いた"

………………

………………

……いや、あいつは俺に恩があるから、多分命を奪う様な事はしないだろう。

それどころか、こっちから告白すれば悪魔だけ祓って元の生活に戻れるかも──

"お前、今俺を売ろうとしなかったか?"

ダメだ。

"……仕方ない、次はブリッジヘッドだ"

チョキーは舌打ちして、アウグスタを後にした。

あぁ、眩しい。



ブリッジヘッドは、商人たちの間では「間引き街」として、ある意味商人の都市アリアンよりも知名度があった。

その理由は、港町の北西に佇む「シーフギルド」にある。

「シーフギルド」とは文字通り「盗人組合」──ブリッジヘッドではアリアンのクロマティガードの様な治安維持や、役所の役割も果たしている。

しかし、何処まで行こうとシーフはシーフ──「シーフギルド」は商人に、売り上げの何割かを収めるという一見普通の契約で土地を貸しているの

だがそこは正規の警備隊とシーフの差──土地の価格に釣り合う金額を長期に渡って納入しないでいると、人の最も寝静まる未明、ちょっとした物音の後には「土地、貸します」の立て札だけが残るのだ。

一部の人なら嗅ぎ分けられるであろう鉄の臭いを残して。

つまり、悪く言うとマフィアである。

逆に、現在ブリッジヘッドで商売"出来ている"商人達は、いずれもチョキーの様に優れた商才を持ち、腕っ節も優れた者ばかりである、しかも多額の金額を納入した商人には、シーフギルドからの特別なバックアップも付く。

その代わり、自分には商才があると信じ、商人としてのし上がるのを夢見てこの港町に店を構えて生き残った商人はまさに数える程しかないとも言われていた。

故に「間引き街」と言うのだが。

"見てみろ、あれがシーフギルドだ"

チョキーは久々に訪れたブリッジヘッドの潮の匂いを嗅ぎながら、潮風に錆びた横長の倉庫の様な建物を眺めた

ぱっと見では、港から船で輸送する貨物を詰め込んだ倉庫にしか見えない。

"──!"

ファイルがその倉庫を眺めていると、突然弾かれた様に息を震わせた、チョキーも頭の中でファイルが謎の反応をするのに気付き、足を止める。

"どうした?"

チョキーが問い掛けると、ファイルは短い沈黙の後、含み笑いを零して言った

"幸運だ"

ファイルはそれだけを言うと、チョキーは怪訝そうに思いながら砂利を踏みしめた、眠そうに横たわる倉庫の前には男が立っていた。

「久しぶりだな、ケブティス」

796 名前:殺人技術 投稿日:2007/01/13(土) 23:59:20 [ E9458iSQ ]
チョキー・ファイル(19)


チョキーはその小太り──というより多少筋肉質な男を、ケブティスと呼んだ。

その男はチョキーに気が付くと帽子から小さく目を覗かせ、また帽子の縁で相貌を隠した

「──こりゃまた、久しい顔がお出でなさった、とっくに野垂れ死んでるかと思ったよ」

倉庫の前に奇妙な沈黙が流れると、ケブティスとチョキーはまるで示し合わせたかの様に大声で笑った。

「なんだ、あの豪遊生活が恋しくなったか、丁度土地が一つ空いてる、血腥すぎて客も寄り付かないがな」

「そりゃ良い、他と違う所に人は集まる物だ、でも今は立ち寄っただけだ、カリオは居るか」

チョキーは会話の最後にカリオという名前を出すと、ケブティスは咳払いをして黙り込み、海の潮騒の音に合わせて溜め息を吐いた。

「知らん、あいつは暇なときは何時も行き先を告げずに出て行くんだ、おまけに鳩をいくら飛ばしても無視しやがる」

「カリオなら此処に居ますよ」

ケブティスとチョキーは突然の言葉に周りを見渡すと、声は頭の上から落ちて来た。

「上、上、そうそう、久しぶりチョキーさん」

チョキーとケブティスが上を向いた瞬間、男はチョキーの真後ろに立っていた。

チョキーは弾かれた様に振り返ると、男は子供じみた笑みを浮かべた。

黒い縁の長い帽子をかぶり、灰色の服に身を包んだその姿は今でこそ浮いているが、恐らく夜になるとその姿は嘘の様に消えてなくなるのだろう。

──おまけに、今の動きはチョキーとケブティスはおろか、ファイルですら目に収める事は出来なかったらしい。

「カリオ!お前何羽も鳩を送ったのに無視を決め込むとは何だ!おまけにお前に送った鳩は一羽残らず野性に帰るし──エサ代払え!」

ケブティスは赫怒してカリオを叱咤し、カリオは聞いているのか聞いてないのか、ハイハイと空返事を怒声の間に挟みこむだけだった。

「……もういい、疲れた」

ケブティスは憤怒で赤黒く染まった顔を指で痛そうに押さえ、チョキーとカリオを残すと、何処かしら大人の哀愁が漂う背中でシーフギルドの中へ消えていった。

「シーフギルドは放任主義だって言ったの、何処の誰だよ、なあ?」

カリオは呆れ顔で言うと、膝に付いていた砂を払った。

「何か用か?チョキー」

"こいつは何なんだ?お前の子供か?"

ファイルはそう言うと、チョキーはカリオを見て辟易した。

"どう見ても似てないだろ……昔此処で拾ったんだ、育てたのはケブティスだがな、まぁカリオからしてみれば私は親戚みたいな物だ"

「あぁ、ちょっと一仕事だ、付いてきてくれ」

チョキーはカリオを倉庫の合間という非常に密売等に使われやすい一角に連れ込むと、息を潜めて囁いた。

「欲しい情報がある、何時になってもかまわない、ブルンネンシュティグ国会議員の情報だ」

チョキーはそう言うと、ファイルは怪訝そうに言った。

"おい、それは……"

カリオはしばらく考えこむと、すぐに何かを思い出したのか、チョキーを路地裏に待たせ、シーフギルドへと消えた。

別に、何時になっても構わないのだが、とチョキーは思った

"チョキー、今の質問はあのブロームの契約とは関係ないぞ、分かってるのか?"

"……"

チョキーは自分の頭があの砂漠の夜の様に澄み切るのを感じ、ふと空を見上げた。

碧空の大部分を削り取る倉庫の雨樋は乾き、長方形の空に海鳥が一羽、現れては緩やかな弧を描いて消えていった。

私は今、ブロームの契約よりも、この頭の中に居る悪魔との血盟を優先した。

それがチョキーにとって何を意味するのか、そのチョキーに分からない筈がないのに。

"ククククク……お前もついに悪魔の仲間入りか"

チョキーはファイルのその言葉を聞いて、咄嗟に弁解した。

"今更気付いたのか"

ファイルは笑った。

チョキーも笑った。

797 名前:殺人技術 投稿日:2007/01/14(日) 00:00:21 [ E9458iSQ ]
チョキー・ファイル(20)


暫くすると、カリオが何か紙切れの様な物を手に、チョキーの待つ路地裏へと戻ってきた。

チョキーと目を合わすと、カリオは一瞬奇妙な身震いを感じたが、すぐに笑ってチョキーにその紙切れを一枚差し出した。

「もしかしたら使うかもと思ってな」

チョキーはその紙を見ると、軽く驚いた後、口の端に小さく笑みを浮かべた

ビガプール王宮での、新年祭パーティ特別招待状──カリオも一枚それを持っており、チョキーのとあわせると2枚ある。

──恐らく、シーフギルドを纏めるケブティスの分と、その護衛としてカリオの分だろう。

シーフギルドに二枚もこんな物が届くのだとしたら、恐らくブルンネンシュティグ国会議員──もしかしたら議長も──招待されるだろうか。

「いいのか?二枚しかないんだろう?」

チョキーはとりあえずカリオに確認を取ると、カリオは嬉しそうに頷いた。

「どうせ親父はこういうの行きたがらないだろうし、チョキーさん程の有名な商人なら、代理だとしても文句を言われないと思うしな、うん」

チョキーはカリオに礼を言うと、チケットを懐へと忍ばせた。

「新年祭──って、何時に行われるんだ?」

「んー……新年祭としても新年きっかしにやる訳じゃないしな、確か──四日後だ」

カリオはそう言うと、チョキーはカリオにもう一度礼を重ねて、別れを告げた。

四日後か。

四日も経てば、仕事の早いあいつらなら調べる事は調べられるだろう──もしかしたら、パーティで会うことにもなるかもしれない。

カリオはシーフギルドに消える間際にチョキーに手を振り、チョキーもそれに合わせて手を振った。



チョキーは港の防波堤のベンチに腰を降ろし、小さく吐息とも溜め息ともつかないものを吐いた。

停泊中の船に当たっては砕ける白波が、波間を埋め尽くす様に彷徨っている。

"私が悪魔になりかけているかどうか、確かめる方法は一つある"

チョキーは切り出して、合間の沈黙を海のざわめきが落ち着かなさげに誤魔化した。

"人間と悪魔の精神が同化して、人間が悪魔になりかけた──もし、お前の言う通りなら、同時に悪魔も人間になりかけるはずだ"

"──そうだな、互いに影響されつつある精神に優劣関係はない"

ファイルは確かめるように言い、チョキーは無言の質問を投げかけた。

"私は確かに地上に上った時よりは色々と変化したが、それでも人間に近付いたとは微塵も思わんな"

チョキーは笑いたかった。

798 名前:殺人技術 投稿日:2007/01/14(日) 00:03:13 [ E9458iSQ ]
>>795
>の

誤字った(´・ω・)

799 名前:ドギーマン 投稿日:2007/01/14(日) 00:54:51 [ 6gUCYqqA ]
>>798
悪魔に近づいていくチョキー、人間に近づいくファイル。
最後に2人はどうなるのかな。
続き期待してます。

800 名前:ドギーマン 投稿日:2007/01/14(日) 00:59:40 [ 6gUCYqqA ]
第一部 >>774-779
第二部上>>787-791

『Ring』第ニ部 下

4807年 ブルン王国首都ブルンネンシュティグ
レッドアイによってREDSTONEが発見され王室に献上された。


アルグレイ家邸宅
その話を聞いたとき、シュッツは愕然とした。
「素晴らしい!REDSTONEさえあれば我が国の永遠の繁栄が保障されたも同然だ!」
父が晴れ晴れとした顔で両手を広げて言った。
その様子に反し、シュッツは椅子に座って暗い顔をしていた。
―いくら何でもタイミングが良すぎる。そうか・・・これが"餌"か。
「どうしたシュトラウツェル。この素晴らしき日に何を浮かない顔をしておる」
父が怪訝そうな顔をして、座っているシュッツを見下ろした。
「いや、レッドアイに先を越されたから」
シュッツは適当な言い訳をした。
「ふむ。だがこの際レッドアイだろうがそうでなかろうかなど関係あるまい。
お前も喜ぶのだ。王国のさらなる繁栄を!」
「そうですね」
シュッツは無理矢理作った笑顔を父に向けた。
父はそれで満足したのか、
「おお、我がブルン王国に栄光あれ!」
そう言って身体を嬉しそうに揺らしながら部屋を出て行った。
父が出て行いくのを見送って、シュッツは頭を抱えた。
あの日以来、シュッツはバルンヘリに騎士団の内部情報を流し続けた。
国家機密にもなっている騎士団の総兵力。
騎士たちの編成、支給・配備されている武器、王宮内の備蓄。
各隊を束ねるリーダーの名前から性格、家族構成まで。
ありとあらゆる情報を漏らし続けた。
調べてみて分かったが、騎士団は軍としてみれば高い攻撃力を誇っていた。
そして、王宮という堅固な鎧をまとっている。
まともにやれば、貴族全体の兵力を持ってしても苦戦するかもしれない。
しかし、戦う相手は外部の敵ではない。自分達が護るべき王族が相手なのだ。
結果がどうなるかは、今の時点では分からない。
そんな事くらい気づいていないわけではないだろうが、バルンヘルは余裕の顔をしていた。
何か秘策があるのだろうか。

レッドアイ本部
一つの大きな椅子に、男女が頭をもたれ合うようにして座っている。
「全ての準備が整ったわね」
「ああ」
男は女の肩を抱いて、じっと石が置いてあった台を見ていた。
「私達の復讐も、もうすぐ終わる」
「そうね」
女の頬を伝う涙は、悲しみの涙か、それとも復讐の成就を祝う涙か。

801 名前:ドギーマン 投稿日:2007/01/14(日) 01:00:45 [ 6gUCYqqA ]
ブルン王宮
王宮内は浮かれていた。
REDSTONE発見の報に、国中が浮かれていた。
シュッツも大会議場に高々と置かれている赤く光り輝く巨大な宝石を見た。
見るものは一様に「なんと美しい」と感嘆の声を上げていたが、
偽物と分かっているシュッツには、何の感慨も浮かばなかった。
―本物のREDSTONEは、本当に繁栄をもたらすのだろうか?

ブルン王宮大会議場
赤い眩い輝きに照らされながら、その日も不毛な会議が続いた。
王族達は皆赤い石に視線を走らせ、激しい剣幕で怒鳴りあった。
そして、あの男。
バルンヘリはその模様をにやにやと笑いながら眺めているのだった。
シュッツはこの2年間ずっとこの会議を眺めてきた。
ここに居る全員は殺され、そしてバルンヘリが王となる。
確かにそう考えると、目の前の騒ぎなど茶番劇にしか見えない。

地下水路レッドアイ秘密研究所
ラナは最後の戦いの準備を終えた。
バルンヘリからシュッツが協力することを承諾したと聞いたときは、
嬉しいようでもあり、同時に悲しかった。
彼に自分の父親を殺すのを手伝わせているのだから。
―シュッツ・・・あなたは私に同情してくれてるのね。
―でも、それは間違ってる。
姉が死んでから、彼女は母から戦いの術を全て叩き込まれた。
傭兵としてではなく、復讐の一本の槍になるために。


数日後、
ついにバルンヘリから計画実行の知らせが届いた。
もう誰にも止められない。
―だがな、バルンヘリ・・・・私はただ黙って貴様に従っていたわけではない。
アウグスタで1人孤独に生活した10年間、最高の騎士になるために己を鍛えぬいた。
剣術なら誰にもひけをとらぬ自信はある。


シュトラディバリ家の反乱
シュッツは父と同じ白い鎧を身につけ、
洗礼式で頂いたほうの剣を差し、左腕にブルン王国の紋章の入った大き目の盾をつけ、
王宮に向かわずにあの公園に歩いて向かった。
すでに通りには貴族達の兵が続々と集結していた。馬車は通れない。
王都は騒然とし、王宮のほうへ甲冑に身を包んだ兵士達が川の様に流れていく。
貴族達の姿も見える。どさくさに紛れてREDSTONEを手に入れようとしているのだろう。
懐かしいハムスケナンとジュスドーの姿も見える。
2人とも一目で分かるほど変わっていなかった。ただ、昔のようにつるんではいないようだ。
互いにじろじろと険悪な視線で牽制しあっている。
偽物のREDSTONEに躍らせれているとも知らずに・・・。

802 名前:ドギーマン 投稿日:2007/01/14(日) 01:01:32 [ 6gUCYqqA ]
公園が見えてきた。
そして公園のベンチに、すっかり大人になった彼女は座っていた。
大人になったせいだろうか、ベンチがひどく小さく見える。
ラナの母が着ていた革鎧を着ている。
そして、その鎧の少ない肌の露出部にはちらほらと傷跡が見えている。
鎧の下は傷跡だらけだろう。
シュッツが居ない間、彼女も必死で強くなったらしい。
ベンチには彼女の物であろう両端に刃のあるランスと、
木製の剣と槍が立てかけてあった。
「シュッツ・・・」
彼女はシュッツを見て立ち上がった。
「久しぶりだね。ラナ」
「そうね」
ラナは微笑んでみせた。あの頃と変わらない笑顔。
「綺麗になったね」
「上手くなったのはお世辞だけ?」
そう言って木剣を投げた。
「それは、試してみてくれ」
シュッツへ木剣を受け取ると、構えてみせた。
ラナも木槍を構えた。
あの頃は木の枝だったけど、今は長さが合わないからだろう。
剣術、槍術の練習用の物だ。
「ラナ、指輪は?」
「勿論、ここにあるわ」
そう言って首にかかっているチェーンを引っ張ると、
胸当ての中から指輪がキラリと輝きをのぞかせた。
シュッツはそれを見て頷いて言った
「今日は勝つよ。そして、返して貰うからね」
「返り討ちよ」
ラナは笑顔で返した。
2人は駆け出した。

昼間の公園。
普段なら子供達が遊んでいるはずの場所で、
大人の男女が木の棒を持って戦っている。
周囲の通りに人影は全く無く、まるで時の止まった世界に2人は居るようだった。
彼らの動きは素早く、しなやかで。
素人目には分からないが、それでも彼らは互いに本気を出してはいなかった。
その証拠に、2人は笑っていた。
シュッツは木剣をラナに向かって振るった。
ラナはそれを木槍で受け流すと、シュッツに身体を密着して言った。
「シュッツ、あたし達が初めてあったときのこと、覚えてる?」
「ああ、覚えてるよ」
そう言うとシュッツは手首をひねってラナのわき腹目掛けて木剣を振った。
ラナは身体を剣の動きを流すように反転させて避け、距離をとった。
「あの頃は、私のほうが強かった」
シュッツの言葉にラナは吹き出した。
「どうした?」
シュッツが動きを止め、怪訝な顔をして聞いた。
「ううん、"私"だなんて言うんだもん」
「ああ」
シュッツはそういうことか、と言い直した。
「あの頃は僕のほうが強かったね」
「そうね、お姉ちゃんはもっと強かったけど」
ラナは笑顔で木槍を振るった。

803 名前:ドギーマン 投稿日:2007/01/14(日) 01:02:40 [ 6gUCYqqA ]
シュッツとラナが初めて出会ったのは、
王都にラナが姉と2人で遊びに来ていたときのこと。
姉が目を離した隙にラナは好奇心から勝手に1人で通りを歩きだし、
そして街の子供に目をつけられた。
"移民の子供"は子供にとって格好のいじめの対象だった。
そして、いじめられているラナを助けたのがシュッツだった。
シュッツも移民の話は聞いていたが、彼にはそのときラナがそうだとは分からず。
ただ囲まれて泣いている彼女が可哀想だったから、いじめている子供にいきなり飛びついて、
取っ組み合いを始めたのだ。父から当時から教えられていた"騎士道"に従って。
ただ、相手が多すぎた。あっという間に押さえ込まれ、叩かれ始めた。
そして、そこにラナの姉がやってきていじめっ子を追い払った。
それから2人は一緒に遊ぶようになった。
シュッツはラナが移民だと知ったときは驚いたが、決してラナを差別したりしなかった。
むしろ、何で移民だからってみんないじめるんだろうと疑問を持ち始めていた。
ラナと姉もシュッツがアルグレイ家の息子だと知って驚いていたが、
ラナはそれがどういうことかその時は分かっていなかったし、
姉もシュッツのことは両親に黙っていた。

2人は当時を思い出し、懐かしみながら剣と槍を撃ち合せた。
王宮のほうでは、とっくに貴族の連合軍と騎士団の戦いが始まっていた。


シュッツは突然動きをとめた。
ラナはそれを見て取って、攻撃をやめた。
「どうしたの?」
シュッツは木剣を捨てて言った。
「ラナ、君は計画の重要人物らしいね」
「・・・・」
ラナは黙った。
黙っているラナにシュッツは真剣な目をして言った。
「そろそろ、遊びも終わりにしよう」
「そうね・・」
ラナは木槍をカランと地面の落として言った。
「僕が聞いた限りでのこの計画で、考えられる君の役目は・・」
シュッツはそこまで言って少し迷った。
「計画の邪魔になる人物の抹殺よ」
ラナは続けた。
「ラナ・・」
シュッツの目をじっと見つめながらラナは続けた。
「そう、あなたの考えている通り、国王とレッドアイ会長は私が暗殺したわ。
計画を実行するには国王は消えなければならなかったし、
レッドアイは指導者を失って空洞化する必要があったから」
「・・・計画は、バルンヘリが?」
「いいえ、元の計画を立てたのは私の両親よ。復讐のためにね」
「国を崩壊させるのが復讐かい?」
ラナは首を横に振った。
「あくまで、元の計画よ。バルンヘリ様はそこにさらに手を加えてくださっただけ」
バルンヘリ"様"という言葉に、シュッツは少し嫌な気分になった。
ラナは王宮のほうに顔を向けた。
「もうそろそろかしらね」
「何がだい?」
ラナは顔をシュッツに向けずに言った。
「あなただってバルンヘリ様が王国を手に入れたとしても、
貴族の粛清なんて出来るとは思わなかったでしょ?」
「ああ」
シュッツがあえてバルンヘリに聞かなかったことだ。
何か考えがあるのか、そうでなければ王国を手に入れることに頭がいっぱいで、
その後のことを考えていなかったのか。
騎士団を倒し王族を消して王国を手に入れても、
貴族を敵に回せばバルンヘリの動かせる兵力では太刀打ちできない。
たとえ、騎士団との戦いで貴族の兵力の相当数が削られたとしても、だ。
「その答えは、もうそろそろ出るわ」
「なに?」

804 名前:ドギーマン 投稿日:2007/01/14(日) 01:03:28 [ 6gUCYqqA ]
キイイイイイイイイイイィィィィィィィィィィ―――――――――



耳をつんざく音がした・・・。
シュッツもラナも耳を押さえてうずくまった。
王宮のほうから凄まじい突風が吹き、砂が吹き上げられた。
「くっ・・・なんだ・・・?」
シュッツは凄まじい音に聴覚が麻痺していた。
顔をあげると、王宮のある方角に巨大なきのこ雲が立ち上っている。
「・・・・・」
あまりの出来事にシュッツは言葉を失った。
シュッツの後ろのほうでラナが立ち上がり、きのこ雲を黙って見上げた。
やがて聴覚が戻ってくると、
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴという、吹き上がる煙の音が聞こえてきた。
「なんだあれは!?」
シュッツは立ち上がってラナに叫んだ。
ラナは表情もなく言った。
「あのREDSTONE・・・の偽物は、爆発する仕掛けなのよ。ああいう風に」
「・・・・」
「バルンヘリ様はね、国王という地位には別に興味はないのよ。
ただ本当にこの国のために、大義のために動いてる。
だから、もう不要になるあの王宮もろとも貴族も騎士も王族も全部吹き飛ばしたのよ」
「その中に、君たちの復讐も含まれているのか」
「そう、本当はあそこまで大規模な爆発をさせるものでは無かったけどね。
あの男を、奴が大事にしている王宮と一緒に葬ること。それが私達の復讐」
ラナは呆けたような、無表情な人形のような顔で言った。
「悪いが、復讐は失敗だよ」
「えっ?」
ラナのさっきまで無表情だった顔が曇った。
「父は、"私"が昨晩のうちに睡眠薬を飲ませて匿った。王宮には居ない」
「どういう、こと」
ラナは握った手を振るわせた。
「私が君達に同情していると思ったのだろうが、それは違う。
たとえ父が君達に殺されて当然の人物だとしても、
そして私にとっても憎い人物であるとしても、私は父を守る」
「そう・・・」
ラナは俯いて、静かに言った。
「シュッツ、知ってた?」
「何をだ?」
「王宮の地下にはね、レッドアイ本部があって、私の両親もそこに居たのよ」
シュッツは驚いたが、すぐに聞き返した。
「何故?」
「償いのため、かしらね。自分達の復讐のために、関係のない兵士たちも巻き込んだんだからね。
でも・・・・」
ラナは目に涙を浮かべ、ランスを拾い上げて言った。
「あなたのせいで全て無駄になったわ!」
さっきまでの遊びとは比べ物にならない速さでラナは距離を詰め、
ランスをシュッツの首に向かって突き出した。
シュッツは左手の盾でランスの切っ先を叩くように右に流し、
そのまま右拳でラナの腹を殴ろうとしたが、ラナは突き出したランスを立てて、
槍の柄で拳を受け止め、また距離をとった。
シュッツは剣の柄に手をかけ、ラナに言った。
「ラナ、もうやめろ。復讐は終わった」
ラナは目から涙を流して言った。
「終わってないわ」
「王国を失った以上、もはや父は死人も同然だ」
「駄目よ、アルグレイは絶対に殺す」
「本当に、無理なのか?」
「・・・・」
ラナは聞く耳持たないという感じでシュッツを睨んでいる。
「考え直せ、バルンヘリに大義はない。
奴はただこの国を自分の玩具程度にしか考えていない。君達の心も弄んでいるだけだ」
「そんなことない・・・約束してくれたわ。
望むなら移民だからと馬鹿にされない国を作ると。
王もない、騎士だから偉いというわけでもない、貴族も偉くない。
そういうみんな平等な国を作ると約束したわ・・・」
ラナは涙を拭った。
「そのために、お母さんもお父さんも、みんなのために死んだのよ」
「奴の目を見てないのか?あの目が大義を持った人間の目か?
君は奴の言う大義という言葉に、ただ酔っていただけなんじゃないのか?」
「違う!!」
――――――――――2人の間に、長い沈黙が流れた。

805 名前:ドギーマン 投稿日:2007/01/14(日) 01:04:12 [ 6gUCYqqA ]
シュッツは悲しそうな顔で口を開いた。
「仕方ない、言いたくはなかったが・・・」
「なに?」
ラナはランスを構え、今にも突進してきそうだった。
「僕がなぜ、この計画に黙って協力してきたと思う?」
「知らない」
ラナはもうどうでもいいとでも言うように吐き捨てた。
「さっきも言ったが、王国が崩れれば父は生きる目的を失う。
それだけで父は死んだも同然だ」
「それが何?」
「それが、僕にとっての父への復讐だったからだよ」
「それで?」
「出来れば君たちにも父を憎むだけで終わって欲しかった。王国を崩すという時点まででね」
「何が言いたいの?はっきりしてよ!」
怒鳴るラナにシュッツは落ち着いた声で言った。
「私の父が君ら傭兵の集落を焼き払って、どうして犯人が不明になる?」
「え?」
「いいか、落ち着いて聞いてくれ。
たとえ君達が世間から蔑まれていたとしても、
国家の大事業であるREDSTONE探索に携わる傭兵を襲って、
いくら父が騎士団長とはいえもみ消すことが出来ると思うか?王が許すと思うか?」
「・・・・」
「もし、ある王族が退屈しのぎにやったというスキャンダルだったとしたら、どうだ?」
「そんな・・・」
ラナの手からランスがこぼれ落ちた。
「じゃあ・・・私は、お父さんは、お母さんは・・・・・・何のために?」
「・・・・・」
シュッツは何も言えなかった。
ラナは、糸が切れたように、その場にへたり込んだ。


女は呆然と地面を見下ろしたが、見開いた目は何も見ていなかった。
長い沈黙のはてに、
ようやく口を開いた彼女は、決着の一言を告げた。
「シュッツ・・・・指輪、返すわ」

806 名前:ドギーマン 投稿日:2007/01/14(日) 01:15:31 [ 6gUCYqqA ]
あとがき
第二部 完と。
続きますよ。あとの展開はいま考えてるけど。

古都にある崩れた王宮跡と、
公式サイトのレッドアイ本部が跡形も無く爆発で吹き飛んだっていうのを
いっしょくたにしました。
REDSTONEについては大会議場にあるっていう公式情報を使いました。
今もある、という設定になってるらしいけど。

807 名前:名無しさん 投稿日:2007/01/14(日) 02:41:51 [ VntJjyIU ]
>>殺人技術さん
冷酷無比だったファイルが段々と好意的に見えてきたのは、人間と精神が同化してきたという意味でしょうか。
そして確かに、チョキーもただの商人とは思えない言動が多くなったような・・
自然にそれらが馴染むように書き進められていて見事です。

>>ドギーマンさん
二度目の感想レス失礼します。
シュッツ主観でありつつもどんでん返しのような読み手を裏切る展開が面白いです。
悲しい二人の感情が単なるハッピーエンドを想像させません。

808 名前:名無しさん 投稿日:2007/01/14(日) 09:23:47 [ T5cpr3X6 ]
うう・・・またしても切ない(´;ω;)
でも読んじゃう。

809 名前:ドギーマン 投稿日:2007/01/15(月) 17:47:19 [ 6gUCYqqA ]
第一部 >>774-779
第二部上>>787-791
第二部下>>800-805

『Ring』 第三部

4810年 古都ブルンネンシュティグ
シュッツはラナを説得し、ラナと共にバルンヘリを討つ計画を立てる。


ブルン王宮跡
コートを頭からを羽織り、顔を目だけ出して覆面で隠し、シュッツは立っていた。
シュッツはかつての威厳に満ちた姿を想像させぬほど破壊された瓦礫の山を眺めた。
―まさか、王宮を爆破するとは思わなかったな・・・・・。
どうせ爆発で全て吹き飛ばすのに、何故シュッツに騎士団を探らせたのか。
どうやらラナの薦めを受けただけで、シュッツの情報を有効活用する気など毛頭なかったらしい。
シュッツは今死んでいることになっているが、国家機密漏洩の容疑がかけられている。
バルンヘリに渡し続けた機密文書は証拠品とされた。
実際に反乱を起こして国を崩したのはバルンヘリなのだが、
王国を愛していた者たちは皆シュッツを王国崩壊を招いた元凶と考えている。
つまり、怒りの矛先をそらすために利用されたのだ。
ともかくバルンヘリ=シュトラディバリによる反乱は成功し、
バルンヘリはブルンネンシュティグの街を完全に集握した。
あの王宮を吹き飛ばした爆発は、レッドアイの職員による暴走として処理され、
REDSTONEは、瓦礫の中に今も埋もれているということになっている。
いずれ掘り出すふりをして偽物をまた置くのだろう。
バルンヘリは自らの手勢に加え、傭兵たちをも味方にし、
共和制議会政治を打ち出した。
自らを議長にし、他の議員を一般人から選挙で選ぶらしい。
人々は戸惑っていたが、新しい時代の流れを受け入れるつもりのようだった。
王族も貴族もほとんどが死に、バルンヘリに逆らえる者は居ない。

810 名前:ドギーマン 投稿日:2007/01/15(月) 17:48:23 [ 6gUCYqqA ]
シュッツは街に向かって歩き出した。
反乱のときはあんなに静かだった街が、今は活気を取り戻している。
国会議事堂の建設も着工され、王宮ほどではないが豪壮な建物を予感させる骨組みが立っている。
あのラナと戦った公園も今は子供たちが遊んでいる。
追いかけっこしている男の子と女の子の姿を、
かつての自分とラナに重ね合わせてしばらく眺めていた。
女の子が突然泣き出した。
声は聞こえないが、男の子がうろたえながら女の子に話しかけている。
―もし、あのとき家出してでもアウグスタになど行かなければ、
―ラナのそばに居て、彼女を支えてやれたんじゃないだろうか。
もう、過ぎてしまったことをただただ考えた。

シュッツはかつて自分が父と一緒に住んでいた屋敷を見上げた。
父はアウグスタの教会に預けた。
サーシャは父についていき、介護をしてくれている。
父は王国が崩壊して以来、痴呆になってしまったらしい。
あんなに精力的だった父からは想像できないが、仕方のないことだろう。
『私が父をそうしてしまった』
サーシャには何も事情は話していないが、久しぶりに会ったサーシャにそう告げると、
否定もせず、責めもせず、
『シュトラウツェル様、どうか振り返らないでくださいませ。前にしか進む道はありません』
―前にしか道はない、か。
シュッツは屋敷の前を通り過ぎた。

811 名前:ドギーマン 投稿日:2007/01/15(月) 17:49:13 [ 6gUCYqqA ]
シュトラディバリ家邸宅
ラナは鎧ではなく、ドレスを着せられていた。
初めて着る高級な衣装は、彼女にとって落ち着かなかった。
その日、バルンヘリは突然屋敷でパーティーを開くなどと言い出したのだ。
ラナはあの王国崩壊の日、シュッツから
『君はバルンヘリのところに戻り、今まで通りやつに従ってくれ。そして奴の動向を知らせて欲しい』
と言われたのだ。
シュッツには何か計画があるようだったが、
今は余計なことを知って口を滑らせる危険を避けるため、ラナは敢えて聞かなかった。
―でも、本当はシュッツと行きたかった。
バルンヘリには、シュッツは殺して死体は燃やしたと言ってある。
その報告を聞いたバルンヘリはそうかと答えて何故か嬉しそうだった。
「ラナ君、綺麗だよ」
後ろから声をかけられ、はっとして振り返ると、バルンヘリが立っていた。
「ありがとう、ございます」
少し硬くなってラナは返事をした。
ラナの様子を気にせずにバルンヘリは続けた。
「どうだねそのドレスは、君に似合うだろうと思って特注したんだ。気に入ってもらえたかな?」
「ええ、まあ」
ラナは落ちつか無そうに答えた。
「歩くところも見てみたいな」
ラナはびくっとした。
「どうかしたかね?」
「いえ・・・・」
ラナはゆっくりと歩き出した。
そして、さっきまで何度も歩こうとしてやってしまったことを
またやってしまった。
長いスカートの裾を踏んでこけたのである。
その様子を愉快そうにバルンヘリは眺めていた。
「う・・」
「大丈夫かね?」
バルンヘリは面白そうにニヤニヤ笑いながら手を差し伸べた。
ラナは差し出された手を無視して立ち上がった。
「大丈夫です」
バルンヘリは差し出した手を残念そうに引っ込めた。
「やっぱり、鎧に着替えて警備のほうつきます」
「いいや、駄目だ」
バルンヘリはラナに近づいて、彼女の両肩に手をおいた。
ラナは手を払いのけたい衝動にかられたが、押さえ込んだ。
「今日のパーティーはね、君のために用意したのだから」
「え?」
ラナの怪訝そうな表情にバルンヘリは顔を近づけた。
「ラナ君。いや、ラナ。君は本当に美しい」
ラナは目の前の顔が何を言っているのか分からなかった。ただ、寒気を感じた。
「強くて美しい女性こそ、私の理想とする人だよ。
だから、新国家誕生の暁には君を是非とも我が花嫁に迎えたい」
ラナは全身に鳥肌が立つのを感じた。
「鎧に着替えます」
そう言ってラナは肩の手をゆっくりとどけて下がった。
バルンヘリは少しショックを受けたような顔をしていたが、すぐに元に戻った。
「ふっ、冗談だよ冗談」
そう言って部屋の外へ歩いていくバルンヘリの後頭に、
ラナはそばのテーブルの上に置いてある花瓶を投げつけたかったが、
扉のところで振り返ったバルンヘリに驚いて手を引っ込めた。
その様子を見て、バルンヘリは
ははははと笑いながらバタンと扉を閉めた。
―シュッツ、やっぱりあたしはあなたと・・・・・。

812 名前:ドギーマン 投稿日:2007/01/15(月) 17:50:00 [ 6gUCYqqA ]
ストラウス家邸宅
バルンヘリの母方の家。
この家の主は現在バルンヘリの従兄弟にあたるトラウザーである。
門に立つ衛兵に、シュッツは顔を隠したまま門番に
ストラウス家の紋章が彫られたスタンプリングを見せた。
門番は頷くと、「顔を」と言った。
シュッツは覆面に手をつけずに、
「亡霊に顔は無い」と合言葉を言うと門番はまた頷き、門を開けた。
シュッツは屋敷の主人の部屋に入り、コートを脱ぎ、覆面を外すと、
椅子に座って書類を眺める目の前の男に言った。
「トラウザー様、シュトラウツェル、ただいま戻りました」
「うむ」
トラウザー=ストラウスは笑みを見せた。
このトラウザーという男は、多くの王族の中からシュッツが選び、
あの日、王宮に行かせなかった王族だ。
もちろんシュッツがあの反乱に本当に加担していたという事実は伏せてある。
トラウザーはシュッツを命の恩人であると思い込み、
匿ってくれていると同時に頼りにしてくれている。
「トラウザー様、生き残った貴族たちへの働きかけのほうは?」
「うむ。少しずつではあるが集まっておる。皆バルンヘリの新政策を快く思ってはおらんからな」
これが、シュッツがバルンヘリに従う振りをして、裏で計画していたことだ。
一介の騎士でしかないシュッツよりも、
王族を掲げて生き残った貴族たちに働きかけたほうが効果的だ。何よりシュッツは貴族嫌い。
貴族の手を借りるのに抵抗がなかったわけではないが、この際仕方ない。
シュッツはトラウザーから差し出された書類に書かれた貴族達の名を見て言った。
「・・・・まだ全然足りませんね」
「うむ、方々に手を回してはいるが、あの爆発で生き残った者が少なくてな」
―まともに王宮での戦争になっていたなら、もっと生き残っていたはずだが・・・・。
「とにかく、戦力が整うまでは息を潜めるしかありませんね」
「その通りだ。君も用心するのだよ」
「分かっています」
「それで、バルンヘリのほうは?」
シュッツは現在、バルンヘリの側に居るラナとなんとか連絡を取り、
トラウザーに報告していた。
「完全に、王様になった気でいるようですよ。奴の話では王様ではなく議長だそうですが」
「ふん、くだらん。何が共和国主義だ」
トラウザーは吐き捨てるように言った。
―この男を立てて反乱が成功すれば、この国は再び王国へと還るだろう。しかし、だからこそ選んだ。
―王国でも共和国でもどちらでもいい。
―今は、この国にとって最も混乱の少ない方法で、バルンヘリを殺すのが最優先だ。
―そのうえで、この国の人々に自分の考えを訴えかけていけばいい。
シュッツは、いま感情に任せてバルンヘリを暗殺したりすれば、たちまち生き残った王族や貴族が対立し、
1度崩壊したばかりのこの国ではそれに耐え切れずにバラバラに分裂してしまうだろうと考えていた。
だから1人の王族の元に貴族を束ねさせ、その上で反乱を起こさせてバルンヘリを殺すのが、
最もこの国にとって混乱の少ない方法だと考えたのである。
しかし、
―この調子では、時間がかかりすぎる。

813 名前:ドギーマン 投稿日:2007/01/15(月) 17:50:48 [ 6gUCYqqA ]
古都ブルンネンシュティグ郊外 イースタンブリッジ付近別れの広場
なぜそこが"別れの広場"と名付けられているのか、その理由を知る者は少ない。
とにかく、シュッツとラナはその場所の名を知らぬまま、
密会の待ち合わせ場所にしていた。
「早かったかしら・・・」
誰もいないその場所で、ラナはつぶやいた。
「いや、少し待ったよ」
その声にラナは驚いて振り向いた。
「シュッツ!」
そばの木陰に隠れていた男の名をラナは嬉しそうに言った。
「つけられてないか?」
「ええ」
辺りを確認してから、2人は抱き合って長いキスを交わした。

一通りの報告を終えると、ラナは言った。
「シュッツ、いつになったら迎えに来てくれるの?」
シュッツは俯いて言った。
「駄目だ、計画は動き出しているが、ほとんど進展していない」
「そう・・・・」
「すまない、まだしばらくの間耐えてくれ」
しばらくの沈黙の後、ラナは口を開いた。
「シュッツ、あたし怖いの」
「何かあったのか?」
「あの男、何を考えているのか全然分からない。不気味なのよ」
シュッツは顔を曇らせて言った。
「確かにやつは底が知れないが、弱気になっちゃいけないよラナ」
ラナは首を振った。
「ううん、あの男、わたしに結婚を迫ってきたのよ」
シュッツは心臓が跳ねるような感じを受けた。
「まさか」
「まさかってなによ!」
ラナは怒鳴った。
「すまない。そんな訳ないよな」
シュッツは済まなそうに謝った。
ラナは俯いた。
そして、おもむろに顔を上げて言った。
「シュッツ、お願いがあるの」
「なんだい?」
ラナはシュッツに身体を寄せて言った。
「2人で逃げましょう」
シュッツは驚いて、ラナの肩を掴んで体から離し、
ラナの目をじっと見つめながら言った。
「ラナ、君は忘れてしまったのか!?
奴は君のお姉さんを殺して、そのうえ君や君の両親の復讐心まで利用したんだぞ?
そのために君のお父さんやお母さんが死んでしまったのを忘れたのか?」
ラナはかぶりを振った。
「もういい、もういいの」
「いいもんか」
ラナは悲しそうな顔で言った。
「あいつは人間なんかじゃないわ。人間を盤上の駒にしか見てない。
このままじゃ、きっとあたしもあなたも奴に操られて殺されるわ」
「私はあいつの駒になどならない」
「いいえ、あなたはもうされたわ!王国を潰すために利用されたのを忘れたの?」
シュッツはそのことに関しては、父親に対する復讐のために自分の意思でやったと考えたかった。
シュッツは目をそらして言った。
「ちがう、あれは・・・」
「違わないわ!」
シュッツはラナを突き離した。
「違う!あれは、私自信の意志でやったんだ。奴になど操られていない!」
「シュッツ・・・」
しばらくラナは黙っていたが、
「わかったわ、もうすこし耐えてみる。だから」
「だから?」
「あの指輪を貸して」


数ヵ月後 突如ラナからの連絡が途絶える。

814 名前:ドギーマン 投稿日:2007/01/15(月) 17:51:36 [ 6gUCYqqA ]
シュトラディバリ家邸宅
ラナはバルンヘリに呼ばれた。
いつもの鎧姿で、槍は扉の所で預けた。
部屋に入ると、ボディーガードのような剣士風の男2人の向こうで
机に向かう男に言った。
「失礼します。何の御用でしょうか?」
「来たかね」
バルンヘリはラナに向き直った。
ラナはこの男の顔に張り付く笑顔に寒気を覚えるようになっていた。
「実はね、ここ最近虫の息だった貴族どもがやけに活気付いてね。
不穏な動きをしているようなのだよ。まあ、それぐらいは想定の範疇だがね」
―シュッツの計画が・・・・。
ラナは計画については知らなかったが、察知した。
「彼らのことだ、どうせ誰か王族を立てて私に逆らうつもりなのだろう」
「そうですか。それで、用件は?」
「焦らないでくれたまえ。そこでね、手の者に調べさせたのだが、そこで面白い人物の名前がでてきた」
ラナは体を強張らせた。
「たしか、シュトラウツェルと言ったかな?」
バルンヘリは目を笑みの形にしたが、その眼はラナの目をじっと見据えて笑っていなかった。
「ラナ、残念だよ。君は私の政策に賛同してくれているものだと思っていたんだがね」
―何か、言い返さなければ。
「その情報は確かなのですか?」
「ん?」
「わたしは確かに彼を殺しました。もしかしたら名前という情報だけが1人歩きしているのでは?」
「ふむ・・・」
バルンヘリは椅子に座ったまま人差し指で肘掛けを叩き、少し考え出した。
―上手く、いった?
「よし、こうしよう」
バルンヘリが思いついたように口を開いた。
「彼女を監禁しろ」
―!!!
ラナは掴もうと近づいてきた剣士風の二人を
逆に足を払い、投げ飛ばした。
バルンヘリは倒されて地面に転がる2人に笑いながら言った。
「君らに彼女が押さえ込めるわけがないだろう。部屋に案内するだけでいいんだよ」
「どういうことですか?」
ラナはバルンヘリに聞いた。
「怖い顔をしないでくれたまえ。なぁに、君をどうしようというのではない。
ただ部屋のなかに閉じこもって貰って、私の国を飛び回る蝿が飛んでくるか試すだけさ。
君を信じていないわけじゃあないんだが。ただ念のためね」
―く・・・・。
「あと、そうだな。前国王殺害の容疑で手配でもかけておくかな。これも念のため、ね」
―なんですって。
いまの騒ぎで続々と屋敷の護衛が集まってきた。
「ははは、大したことはないんだよ、みんな。さてラナ、行こうか。案内しよう」


シュトラディバリ家邸宅
ラナは部屋に監禁されていた。
拘束はされておらず、ラナは黙って椅子に座っている。
鎧は着ているが、槍は奪われ、見張りがつけられていた。
武器を奪われることを用心したのか、見張りは武器を持っていない。
抵抗しても5人という人数で圧倒するつもりなのだろう。
―力ずくでの脱出は期待できそうに無い、か。
部屋にバルンヘリが入ってきて、
いつものヘラヘラとした笑顔で言った。
「やあ、ラナ。気分はどうかな?」
「外の空気が吸いたいのですが」
ラナがそう言うと、バルンヘリは「おい」と見張りに声をかけて窓を開けさせた。
「悪いが窓に近づくのは駄目だよ。外の空気はそこから味わいたまえ」
―くっ・・・・。
ラナはバルンヘリに目を合わせずに言った。
「彼は死にました。いくら待っても無駄です」
バルンヘリはラナに近寄って、彼女の顎を指先で自分の顔のほうに向けると、
「そうかね?まあ、待ってみようじゃないか。くどいようだが、念のためさ」
と言って口の端を吊り上げた。
ラナはバルンヘリの指を避けるように椅子から立ち上がると、
バルンヘリに背を向けて、懐の指輪をぎゅっと握った。
―なんとか、シュッツに伝えなくては。来てはいけないと・・・。

815 名前:ドギーマン 投稿日:2007/01/15(月) 17:52:37 [ 6gUCYqqA ]
その三日後
ストラウス家邸宅
シュッツはトラウザーからあてがわれた部屋に居た。
―どういうことだ、会うことは出来なくても定期的に合図を出すはずなのに。
それは、公園のベンチの下に×印を描くという単純なものだった。
合図による連絡が途絶えてから既に3日が過ぎている。
ということは、ラナはいま身動きがとれない状態にあるということ。
最悪の場合・・・・。
―なんてことだ、奴に察知されてしまったのか?
シュッツは頭を抱えた。
―こうなったら猶予はない。彼女を助けなければ。
シュッツは鎧を着込み、左腕に盾を着け、腰に剣を差した。
―だが、真正面から斬り込んでも死にに行くだけだ。
シュッツはトラウザーの部屋を訪ねた。


シュトラディバリ家
バルンヘリは見張りを取り巻きにして、椅子に座ったラナと向き合っている。
バルンヘリは両腕を広げて、やれやれといった感じで言った。
「全く、何て男だ。女性をここまで待たせておくとは」
「言ったはずです。彼は死にました」
「ふむ・・・・」
そう言ってバルンヘリは考え込み始めた。
―よし、もう少しで疑いが解ける。
と、そこに扉をノックする音が聞こえた。
「む、入れ」
バルンヘリの言葉に、扉を開けて入ってきた男は一礼すると、
「申し上げます。シュトラウツェル=アルグレイが捕まりました」
ラナは目を見開いた。
「ほお」
バルンヘリはにやりと笑って、ラナを見下ろした。
―そんな・・・・。
「ラナ、実に残念な知らせだったね。私にとっても残念だよ」
ラナは何も答えなかった。
「彼女をしっかり見張っておけ、私が直々に確認しに行こう」
「はっ!」
バルンヘリは部屋を出て行った。
バタンという扉を閉める音が、ラナの鼓膜に残酷に響いた。

816 名前:ドギーマン 投稿日:2007/01/15(月) 17:53:24 [ 6gUCYqqA ]
シュトラディバリ家邸宅 大広間
バルンヘリは護衛数人を連れて広間に来た。
広間にバルンヘリのよく知る人物が居た。
「やあ、久しぶりだね。トラウザー」
「そうだな、バルンヘリ」
2人は従兄弟同士であり、少なからず面識はあった。
バルンヘリは、トラウザーの後ろで後ろ手に縛られている人物に目をやった。
「やあ、久しぶりだねシュトラウツェル君」
呼ばれてシュッツはバルンヘリを睨みつけた。
「おぉこわ、君も少しは笑ったらどうだね?」
「黙れ」
シュッツは吐き捨てた。
バルンヘリはにやりと笑うと、トラウザーに向き直った。
「確かに本物だよトラウザー。しかし、なんで君が?
私はてっきり貴族どもを集めているのは君だとばかり思っていたよ」
トラウザーは少し驚いたが、なんとか平静を保った。
「心外だな。それより、報酬が欲しい」
そう言って、バルンヘリとシュッツの間に体を割り込ませた。
「報酬?」
バルンヘリは聞き返した。
「この男を引き渡す代わりに、新しい議会政治に参加させて貰いたい」
それを聞いてバルンヘリは笑い出した。
「はっはっはっは。これは愉快だ。なるほどな。いいだろう、君に議員のポストを用意しておくよ。
じゃあ、そこをどいてくれ。彼と話がしたい」
トラウザーは横にどくと、自分の護衛たちのなかに混ざっていった。
シュッツは面白そうに自分を眺める男に向かって言った。
「バルンヘリ、何故今さら私を気にする?そんなに私が怖いか?」
バルンヘリはその言葉に吹き出した。
「おいおい、君は自分が食卓に並ぶ料理にたかる蝿と同じだと気づいていないのかい?
うっとうしくはあるが怖いなどとは思わんね」
「料理とは、この国のことか?」
「その通りだ、わたしの国だよ」
そう言ってバルンヘリは両手を広げた。
「議会政治なのだろう?支配者などいないんじゃあないのか?」
シュッツの言葉にバルンヘリは楽しそうに答えた。
「ふっ、シュトラウツェル君。君はもう少し賢い人物だと思っていたよ。
いいかね、政治とはいかに民衆と言う愚かな蟲を上手く手なずけておくかが重要なのだ。
ただ王になって支配するだけでは、いずれ奴らは逆らって噛み付いてくる。
選挙で代表を決めるという形で奴らを適当に満足させ、そして肝心な決定権は全て私が握る。
私は別にこの国の未来になど興味は無い。愚民どもを支配することのみが私の踰越なのだよ」
シュッツは話しながら歩くバルンヘリを目で追って言った。
「民衆を愚かだと言うが、いずれは彼らも気づく」
「確かにそうかもしれないね。だからこそ永久に続く国家体勢が未だ存在しないのだろうな。
だがね・・・・」
バルンヘリは続けて言った。
「その頃には私はとっくに死んでるだろう。私は自分の生があるうちに楽しめればそれでいい」
そして、大きな声で笑い出した。
広間に男のやかましいほどの笑い声が響き渡った。
シュッツはバルンヘリの横顔を見据えて言った。
「哀れだな」
「何だと?」
バルンヘリはシュッツを睨んだ。その顔にシュッツは逆に笑顔をくれてやった。
「お前は自分で頭がいいと思っているようだが、それだけの男だよ。
心は幼稚で卑小な臆病者だ。貴様には支配することは出来ても人を愛することなど出来ない」
「黙れ!」
怒鳴るバルンヘリに構わずに笑いながら言った。
「そんなことだから、女にフラれるんだよ」
バルンヘリの顔が一変し、怒りに満ちた顔になった。
「黙れぇ!!」
バルンヘリはシュッツの顔を思い切り殴った。
シュッツは膝をついた。
「ここで私が直々に処刑してやる」
そう言ってバルンヘリはそばの護衛から剣を受け取ると、
膝をつくシュッツに言った。
「最後に何か言うことはあるかね?」
シュッツは屋敷中に響くほどの大きな声で叫んだ
「ラナァ!!!」

部屋の中で呆然としていたラナの耳に、シュッツの呼ぶ声がした。
―シュッツ!!
見張りたちは「何だ?」と目をラナから離した。
ラナは見張りの男の1人の顔をぶん殴り、自分のほうを向き直った別の男に当身をくらわせた。
ラナは掴みかかってくる手をかわし、部屋の扉を開けて廊下に出た。
が、そこで足をつかまれて倒れた。
次々と押さえ込もうと伸びてくる手に抵抗しながら、ラナは叫んだ。
「シュッツゥー!!!」

817 名前:ドギーマン 投稿日:2007/01/15(月) 17:54:14 [ 6gUCYqqA ]
シュトラディバリ家邸宅 大広間
ラナの名を叫んだシュッツに、バルンヘリは無言で剣を振り上げた。
そのとき、シュッツは自分の体にかけられていた縄を引きちぎった。
元から切れ目が入れてあったのだ。
シュッツは立ち上がりざまにバルンヘリの鼻柱を殴ると、
剣を奪って、バルンヘリの後ろで突然の事態を理解できていない護衛を斬り捨てた。
そして、そのまま階段をあがって屋敷の奥へと走って行った。
バルンヘリは、自分に何が起きたのか理解できずにいた。
すでに屋敷の庭と大広間ではトラウザーが連れてきていた護衛のほか、
兵士がなだれ込んできて斬り合いが始まっていた。
バルンヘリは
「ひっ・・・ふぇ・・ふぁああ!?」
と錯乱しながら逃げ出した。

廊下を走るシュッツにラナの呼ぶ声が聞こえた。
そして廊下の突き当たりで男たちに押さえ込まれそうなラナを見つけた。
「うおおおおお!!!」
ラナを押さえていた見張りの男達は、剣を持って走ってくる男にひるんだ。
自分達は丸腰なのだ。
手が緩んだのを感じたラナは、体にかかる手を振り払い、
男の体をどけると、シュッツに走り寄り、抱きついた。
「シュッツ、よかった・・・・」
「ラナ、君も無事か?」
「ええ、指輪、返すわ」


シュッツとラナは大広間で始まっていた戦いになだれ込んだ。
シュッツは敵から奪った斧槍をラナに渡し、トラウザーを探した。
「トラウザー様!終わりました」
トラウザーはラナの姿を見て取って、
「その人がそうか。よし、君達は逃げたまえ。私はここに残ってバルンヘリを殺す」
シュッツは興奮しているトラウザーに言った。
「待ってください。奴はきっとすでに屋敷の外に逃げています。
屋敷の護衛だけが相手なら大丈夫ですが、これ以上時間をかければ外から応援がきます」
トラウザーは残念そうに
「そうか、仕方ない」と引き下がった。

818 名前:ドギーマン 投稿日:2007/01/15(月) 17:55:05 [ 6gUCYqqA ]
その数時間後、古都ブルンネンシュティグ郊外
シュッツはトラウザーに言った。
「ありがとうございました。トラウザー様」
「いや、いいんだ。君は命の恩人だからね。やっと借りは返せたよ」
そう言ってトラウザーは笑顔を浮かべた。そして呻くように言った。
「やはり、我々の計画は奴に把握されていたのだな」
「そうですね・・・」
シュッツはトラウザーに聞いた。
「これから、どうなさるおつもりですか?」
「私はこの国に残る。身を隠しながら貴族達を集め、何年かかってでも力を蓄え、
必ずバルンヘリからこの国を取り戻す。君はどうする?」
「私達は・・・」
俯くシュッツに、ラナは言った。
「シュッツ、もういいの。一緒に行こう?」
「だが・・・」
トラウザーはシュッツのその様子を見て取って、
「シュトラウツェル君、君がこのままブルンネンシュティグに残ってももう出来ることはないよ」
シュッツはトラウザーの顔を見た。
ラナはシュッツの腕を掴んで、すがるように言った。
「そうよ、もういいの・・・」
シュッツは悲しそうなラナの顔を見た。
「わかりました。しかし・・・」
シュッツはトラウザーに目を戻した。
「決起のときは必ずやはせ参じます。いいかい、ラナ」
「ええ」
ラナはシュッツに頷いた。



日の光の下、2人は街道を歩いた。
シュッツの隣を歩くラナはどこか楽しそうだ。
あのバルンヘリが彼女にとって精神的な重荷になっていたのかもしれない。
それが去ったいま、彼女の歩いている姿はとても軽やかに見える。
シュッツはラナに聞いた。
「なあ、これからどこに行く?」
ラナはシュッツの前に走り出し、子供のような笑顔で振り向いて
「どこまでも!」と叫んだ。
そう言って前に歩き出す彼女と、その先に果てしなく続く街道。
その姿を見て、シュッツはサーシャの言葉を思い出した。
―そうだな。道は、前にしかない。


その後、2人が大陸のどこを彷徨ったのかは知れない。
しかし、18年後トラウザー=ストラウスの決起の際に
シュッツと思われる人物が戦場の渦中で目撃されている。
今より100年ほど前の事である。

そして指輪は、彼らの血を継ぐ者に託された。

819 名前:ドギーマン 投稿日:2007/01/15(月) 18:03:42 [ 6gUCYqqA ]
第一部 >>774-779
第二部上>>787-791
第二部下>>800-805
第三部 >>809-818

あとがき
終わりましたっと。
書き上げた感想としましては、「すんごく頭が疲れた」です。
歴史に基づいた話って、本当に疲れるね・・・。
話書くのにこんなに頭使ったのは初めてだよ。
とにかく、話の収拾とつじつま合わせが大変大変。

ちなみに、この後トラウザーは負けてビガプールに落ち延びて、
神聖王国ナクリエマを建国して独立。バルヘリはゴドム共和国を建国します。
話の中に登場する、"別れの広場"はゲーム内にもある地名なので、
気になったら見に行ってみてください。何もないけど。
古都右のMAPにあります。

>読んでくれた人
読んでくれてありがとう。

820 名前:名無しさん 投稿日:2007/01/15(月) 18:34:33 [ VntJjyIU ]
>>819
リロード連打しながら読ませてもらいました。
読んだ側としても頭で考えながら読んでいましたよ。
RSが舞台でありつつも歴史小説がこんなに面白いとは。
重厚な作品、書き上げお疲れ様です。そして読ませて頂きありがとうございます。

本当に上手く辻褄合わせや伏線の利用がされていると思いました。
トラウザーの反乱、ラナの逃走を同時に達成させているあたりは読んでいて爽快感ありました。
そして歴史年表と照らし合わせるとピタリと一致しているのが何より面白いです。
こんな作品を一度書いてみたい・・。

「別れの広場」やあの辺の「見送りの沼沢地」とか名前が気になりますよね。
グレートフォレスト入口付近MAPの右上にある「水害の丘」という名前は
きっとその↑MAPにあるクェレスプリング湖が氾濫して水害があったんだろうな・・とか妄想してました。
調べると結構あって面白いですよね。

821 名前:名無しさん 投稿日:2007/01/15(月) 22:56:23 [ psw7Vx8o ]
>>819
お疲れ様です。凄い楽しんで読めました。
シュッツが捕らえられた時はトラウザーが裏切ったのかと思いましたが・・作戦だったんですね。
どんでん返しもあってハラハラドキドキ・・先を読んじゃうのがもったいない感じでした。
別れの広場見てきました〜。何か切ない・・。
古都の公園等も見て、シュッツ達がいたんだなぁ・・とちょっと不思議な感じになりました。
REDSTONEもこれからはちょっと違った楽しみ方が出来そうですv
ホントお疲れ様です、ありがとうございました〜。

822 名前:名無しさん 投稿日:2007/01/15(月) 23:39:53 [ xocynORE ]
>>819
練って作られた感がありますね。楽しませて頂きました。

823 名前:携帯物書き屋 投稿日:2007/01/15(月) 23:51:27 [ eFHFlgNU ]
前々回>>719-721前回>>762-764
「初めからそのつもりよっ!」
ニーナが叫び、ラルフ=カースに向かって光の矢を放つ。
対するラルフは鉄格子を盾にし、それを防ぐ。
そして矢が止むときを見計らい、短剣を投擲する!
ニーナはそれを大きく飛翔してかわし、さらに鉄格子の上に着地した。
次いで光の矢を放つが再び鉄格子を盾にされる。
「ならば…」
ニーナは晒している右腕の二の腕辺りに手を当てた。
するとそこが微光を放ち、光の中から太陽を象ったような刺青が現れた。
その刺青を中心にして彼女の右腕は微光に覆われる。
そして微光を纏ったまま再び矢を放つ。ラルフはまた同じように鉄格子に隠れた。
矢はラルフの手前にある鉄格子に激突する。ところが矢はそれがなかったかのように
すり抜けるかの如く貫通。そして勢いを緩めず必殺の一撃となりその先にいるラルフに殺到する!
しかしラルフもプロの勘か、一刹那速く動き難を逃れた。
男はさらに飛翔し、彼女に向かって叫んだ。
「それはペイルライト紋様の刺青だな。それならば矢の威力が倍増するのもおかしくはない」
続けて「それならばこちらも……」と言い何かを取り出した。
ニーナの表情が驚愕に変わる。
ラルフが持っている物は赤い投斧だった。
男はそれを投擲し、ニーナの足元に刺さり、抉り、太い鉄に大穴を空けた。
それが合図となり、ラルフは連続して赤い投斧を投擲する。
今度はニーナが避ける番だった。しかしニーナは足場の少ない鉄格子をところ狭しと駆け回り、飛翔し、降下し、これをかわし切った。
やっと斧の嵐が止む。同時にニーナも足を止める。
「それは…呪われた投斧…ルインドライバーね」


俺はたった今始まった戦闘をただ傍観するしかなかった。
2人は既に点のようにしか見えない。
だが2人の戦いは遠くからでも俺のどこかを熱くさせ、心を惹き付ける魅力があった。
交差する金と黒、飛び交う黄と赤の閃光。その度に俺の心が奮える。
あの先には俺が想像もつかないような死闘が繰り広げられているのにも関わらず。

突如、俺の視界が闇に覆われた。
「よう」
頭上から声が聞こえた。恐る恐る見上げるとそこに吉沢鉄治の巨体があった。
そいつは茶に染められた長髪を夜風になびかせ、半笑いを浮かべながら俺を見下ろしていた。
「な、何のようだ…」
硬直した喉笛を無理矢理動かし、睨み返す。
思えば俺はこいつとは話したことも何もないのだった。
「特に。俺もあいつのせいで生気を取られてよ。ストレスが溜って誰かを殴りたくてしょうがない訳よ」
あーダリィとか言いながら吉沢は言葉を切った。
確かこいつが退学になった理由も教師を殴ったからだった。
「まさか教師を殴ったのもその理由か?」
「そうだよっ!!」
そう言った瞬間、吉沢の矢の様な拳が走った。
それは俺の左頬にモロに命中し、減り込み俺を大きく吹き飛ばす!
「な…何の真似だ…!」
殴られた頬を押さえ、唸るように叫ぶ。
「あ? あれ見てたら疼いてな。お前も契約者みてぇだから
ここで死んで貰おうと思ってな。利口な下僕だろ?」
そう言いながら吉沢は獰猛な笑みを浮かべる。
――――無理だ。俺がどう抗おうと敵う相手じゃない。
逃げるか? いや、逃げ切れる自信もない。なら…
そう考えている内に吉沢は歩きながらじりじりと距離を詰めてきた。

俺が半分諦めかけていたとき、視界に1粒の金色を見た。
(ニーナ――――!)
それを見るだけで俺の心は奮えた。
(お前も必死に頑張っているんだ。なら俺だって……!)
「あ?」
吉沢がさも不愉快そうに俺を眺める。
俺は赤く腫れ上がった頬を晒けだし、被った埃を払いながら立ち上がった。
「効かねえ」
そして俺は走り出した。

824 名前:携帯物書き屋 投稿日:2007/01/15(月) 23:52:08 [ eFHFlgNU ]
周りはまるで廃墟のようだった。
太い鉄格子は虫食いみたいに穴が空き、軋み、既に崩れかけていた。
それは鉄格子のビルの上方で佇む黒い外套を纏った男――――ラルフ=カースの仕業であった。

彼の持つ武器、ルインドライバーは1度投擲すれば何かにぶつかるまで勢いを緩めず触れた物は悉く破壊する、正に死の斧だった。

「そう簡単には当たってくれないみたいだな」
「あなたの思い通りにはいかないわ」
しかし彼女は既に息が上がっていた。
額から汗が零れ落ちる。
「強情だな」
それを見た男は鼻で笑うと、両手に死の斧を構えた。
そして放つ。大きく双方に放たれた投斧は円を描き、その先のニーナに接近する。
さらに1本を投擲し前方、右上方、左上方の3方向からニーナを襲う!
ニーナは弓を手放すとそれが霧となり消え、代わりに1本の槍が握られていた。
「はあっ!」
怒号と共に槍を前方に回転させ、迫り来る3本の斧を青白い火花を散らせながら弾く。
さらに槍を投擲。轟音を纏いながらラルフを襲う。
それをラルフは横っ飛びでかわす。しかし槍は後方で大きく旋回し、再び彼を襲う!

目を疑うような現象が起こった。
何とラルフは空中で反転し、それを避けたのだった。

(――――できた、隙っ!)
しかし彼女の目的は槍で深手を負わせることではなかった。
彼女の目的はただ1つ。この小さな隙を作り出すことにあった。
戻ってきた槍を掴み、再び弓に換装する。太陽の刺青が煌めく。
素早く狙いを定め、空中にいるラルフに光の矢を見舞う。
対するラルフは投斧を投擲し、防ぐ。
ニーナはそれも読んでいたかのように次弾を放つ。
バランスを失ったラルフはとっさに転がり、足にかするだけで難を逃れる。
さらにニーナの追い打ちは続く。
常にラルフの行く先を完全に読み、彼を追い込む。

37本目で彼女の猛追は止まった。
ビルの頂上まで登りつめたラルフが苦い表情でニーナを見下ろした。
「なるほど……生前、噂で聞く鷹の眼とはこのことか。
相手の眼の動き、足の動きで完全に先読みするとはな」
「貴方もね。狙った物は必ず盗むとは本当のようね。そのルインドライバー、どこの国の財?」
ラルフはさあなとおどけて見せると、1本の投斧を投擲した。
ニーナはその隙を突き、武器を再び槍に持ち変え黄金の風となりラルフの胸めがけ槍を突き出す!
それを予測していたのかラルフは後方、つまりビルの頂上から飛び降りた。
入れ違い様にニーナが着地する。その際ラルフの口元が「掛ったな」と形作った。
「え――――?」
気づいた時にはもう遅かった。彼女は踏んではいけない地雷を踏んだのだ。
激しい瀑布と爆風と爆炎が彼女の全身を包んだ。

825 名前:携帯物書き屋 投稿日:2007/01/15(月) 23:52:49 [ eFHFlgNU ]
「おおおおぉぉっ!!」
雄叫びを上げながら俺は疾走した。
体格、腕力、経験。すべてに置いて劣っている俺が勝てるとは思えない。
だが、勝機はある。まずは主導権を握る。どんな手を使ってでも!

全力と思わせていた走行をさらに速く駆け、一気に間合いを詰める。
タイミングがずれ戸惑う吉沢の顔面に右ストレート!と思わして実はフェイントッ!
無防備な腹部に左拳を減り込ませる。
「ぐっ…」
吉沢は苦い表情をした。
ここしかないとばかりに連打、連打、連打!
頼む、倒れろ。
「この……」
大きく振り上げた右腕が吉沢に掴まれた。
同じく左腕も掴まれ俺は身動きが取れなくなる。
いかん、殺される。
「満足か?」
冷静な声に対し表情は怒りで満ち溢れていた。そう、例えるなら破壊神。
両腕が解放されたと同時に口元に激痛が走る。
衝撃で唇が裂け、口内から鉄の味を感じる。

一撃で五分…それ以上のダメージ。
思わず気が飛びそうになるほど。
ここまでの差とは…。
俺は悔しさと恐怖で涙を滲ませた。
前方を見れば吉沢が歩み寄って来るところだった。

その時だった。

鉄格子のビルの頂上から激しい爆音が聞こえた。
「ニーナアアッ!」
俺は思わず立ち上がり、その人の名前を叫んだ。
「よそ見すんなよ」
激痛が腹部に走った。吉沢の膝が見事に俺の腹に刺さる。
「ぐっ――――!」
吐血。そしてその腹に追い打ちをかけるように再び強打される。

――――勝てる訳がないっ!
俺は半泣きで吉沢に背を向けて走り出した。
何か武器、奴に勝てる武器はっ!

そこでふと気づいた。武器ならある。
朝、ニーナから受け取ったエア・ガンが。

あれは人に向けていいような物じゃない。
だが使わなきゃ俺はこのまま殺されるかもしれない。

俺は――――!

826 名前:携帯物書き屋 投稿日:2007/01/15(月) 23:59:34 [ eFHFlgNU ]
今回は場面によって主人公の一人称とそれ以外は三人称で変わっていたので見にくかったかもしれません。
それにしても戦闘シーンの描写って思った以上に難しいですね・・・。

>>766
感想ありがとうございます。
もしそのSSが完成したら見てみたいです。

>>ドギーマンさん
最後まで見させてもらいました。
うーん、自分は赤石の歴史が全く分からずナクリエマとかもさっぱりだったりします。
そんな自分でも楽しむことができました。

827 名前: ◆21RFz91GTE 投稿日:2007/01/16(火) 00:07:08 [ wAKWTM7M ]
…。(´・ω・`)
皆さん久しぶり…そしてアケオメ(遅

久しぶりにこのスレ覗かせて貰いました…活気だってますね;;
日付が変わってますが、本日久しぶりに一本投下しますね…。(´・ω・`)

828 名前:766 投稿日:2007/01/16(火) 01:43:46 [ XYu7pBcI ]
>>携帯物書き屋さん
続きキタワァ*・゜゚・*:.。..。.:*・゜(n‘∀‘)η゚・*:.。..。.:*・゜゚・* !!!!
戦闘シーンの描写、本当に上手いです。
戦闘に限らずですがアクション的な面は経験しないとなかなか書けないものですよね。
主観が変わるのも特に分からなくなる事も無く読めました。全然大丈夫ですよ。
むしろ展開が急ピッチで進んでいてこっちまでワクワクしっぱなしでした。また続きお願いします。
SSは・・ウーン、ぼちぼち書いてます。(苦笑)

>>21Rさん
おお・・噂の21Rさんが!私は最近ここに来たので作品はまだ読ませてもらっていません。
レスを書いてる間もリロード連打してましたが、現在執筆中でしょうか?
楽しみにしています。

829 名前:ドギーマン 投稿日:2007/01/16(火) 12:39:58 [ at5Dv2Nk ]
古都西
病気のコボルトがどこで手に入れたのか、タバコを吹かしながら休んでいる。


よう兄ちゃん、ええ天気やのぉ?
うおっ・・・・おいっ・・

なめとったらあかんぜよクソガキャァァァ!!!





ったく、いきなり刃物振り回すって、何考えてんねやボケが。
おい小僧、大丈夫か?
おい?おい?お〜〜〜い?





ひゃひゃひゃ、わりぃな、若葉相手にちょっと本気出しすぎたわ。
でもな、いきなり刃物振り回して襲ってくるそっちも悪いんねんで?

兄ちゃん考えてみぃ、街歩いてて挨拶したらいきなり斬りかかられるってスゲーこわくね?

ここは街じゃない?屁理屈こくなボケ、殺すぞ。

大体な、兄ちゃん。わしらコボルトも本気出したらこわいやで?

もうな、兄ちゃんみたいなほっそいのんやったら、バキバキー!ゆーてアバラ折れるで。
ホンマやで?

もうな、兄ちゃんみたいなんばっか相手しとってほん〜〜ま疲れてんの。
わかるか?ロクに礼儀もしらんクソガキ相手に適当に戦ってやって、
そんでもって死んだ振りせなあかんのやぞ?
休日にヒーローのカッコした自分の子供にやられたフリすんのんとちゃうんやで?

830 名前:ドギーマン 投稿日:2007/01/16(火) 12:41:57 [ at5Dv2Nk ]
せや、わしらコボルトはホンマはめっちゃ強いねん。

ビョーキ持ちゆーてバカにしとるけどな、なめんなや!
好きでビョーキなったんとちゃうねん。

あ?

なんの病気かて?んなもん・・・

ブルセラ病にきまっとるがな。最近ニュースでやっとったやろ?

おい兄ちゃん、いま変なん想像しとったやろ。あかんでぇ、新聞とかちゃんと読まな。

ブルセラで何想像してんねん。そんなことやったら社会に出てから大変やで?

まったく、こんなんばっか増えてくなあ古都も。

あん?なんや文句あんのんか?

さっきは手加減したったけどな、次は本気でケイルンとこ飛ばすぞ。

てか、ログイン画面通り越してWin再起動画面まで吹っ飛ばすぞボケが。

そう、それでええんや。おすわり!なんつってな。ゲラゲラ
犬におすわりくろてるで。ヒャヒャヒャ

まあまあ、そんなに怒んなや、冗談やんか。

せや、ええもん見せたろ。

わしらな、Xキーで変身できんゆーことなっとるけど。
実は出来んねん・・・。

兄ちゃん、特別やで?









若葉剣士のK・Tさん
「いや、ノーコメントでおねがいします・・・・すいません、ごめんなさい・・・・」

あとがき
お昼休みにポンと書いてみた。

831 名前:ドギーマン 投稿日:2007/01/16(火) 12:55:26 [ at5Dv2Nk ]
>>820-822 >>826
ありがとう。
確かに気になる地名はあっちこっちにあるね。探してみると意外と多い。
何があってこういう名前になったんだろうっていうのを想像させるよね。

>>827
初めまして〜、前スレのほうの作品とかは読んでないので、
楽しみにしてます。

>携帯物書き屋さん
戦闘シーンうまいね、私はもう・・・・・w

832 名前:第21話 味方 投稿日:2007/01/16(火) 14:19:18 [ cByaCGf2 ]
張はまだも流暢に話し続ける。
塀の中ではこんなに話せないのだろう。

「俺があんたに捕まる時には、ネットゲーム裏ビジネスは大幅に変化してたんだよ
それはネット上での認証の問題と連結しているから、あらゆるネット上の取引きは
同時に進化していったんだ。俺の主戦場だったアイテム売買ですら簡単に騙せなく
なっていた。何を意味するか判るか? これは俺たち下っ端には収入の減少は当然
、上層部の収入も減少するってこった。」

「それと「劉」の事件とどう関係するのかきちんと説明してもらおうか?」

「まだ判らんのか?上層部にとっては金の質は問題ないんだよ。問題なのは「量」
なんだよ。いいかい、あんた? 普通の企業と一緒だよ。前年比率が落ちるのは
許しちゃくれないんだよ。奴らに法律は関係ない。所詮、ここは外国だからな。」

一息置くとまた続けた。

「金が詐欺で得たものだろうと、殺して奪ったものだろうと関係ないって事なんだ
皮肉なことに、ネット上の個人認証技術が発達すれば、実生活での安全が返って、
脅かされるってことなんだよ。飲み込めたか?」

「ゲーム・・・何故だ?」

「ある時気づいたんだろうな、大金を持っているガキどもが口座も持ってると
言う事をな。今まで直接会うことしなくてよかった仕事が、今じゃアイテム等
の取引きでは【ネカフェ】での直接取引きが主役だ。データのやり取りに大金
を払うなんざ、頭がおかしいぜ。結局それが首をしめてるんだよ。」

「まとめるとこうゆうことか?
・数年前までは個人認証技術が低かったがために詐欺が簡単だった
・ネット口座も架空名義で作りやすかった
・現在では直接取引きが出来る状態でないと買う人間も減少している
・架空口座が官憲に押えられ、新たに作りづらくなった
これに局面を打開できる対象者とゆうのがゲームに大金を払うガキどもか?」

「そうゆうことだ。きっと何人も俺みたいな電子担当はいるだろ。いいか?
よく聞けよ。これはネット詐欺じゃない、【ネット強盗殺人】だ。」

「だが殺して何になる?」

「自由に動かせる口座が2〜3日あればいいのさ。それでその口座とはおさらば
加えて、何度も同じキャラで人を騙せるじゃないか? 苦労するんだよキャラを
手に入れるのは」

「判った。つまり情報収集担当と直接交渉担当に別れていて、お前と「劉」は
情報担当だな? どうやったら直接交渉担当のやつを誘き出せるんだ?」

「ネットの海の中から【キャラ売ります】ってのを探すんだな。それしかない」

「連絡方法はないのか?」

「俺からはもう通じない。奴らもバカじゃないさ。方法はさっき言ったとおりだ」

「それは大丈夫だ。多分出来るだろう」

「はっ。頑張れよ。そんなに甘くはないと思うがな」

「俺達には凄い味方が居るんでね。」と田村は真っ直ぐ【張】を見た。

「ぁ? お、俺がやるのか? ダメだ冗談じゃねぇ! もうかかわらねぇ!」

「ずいぶん【協力的】じゃないか? チョウ」

「や、やるよ・・・だがここからは出ないからな!それが条件だ」

「明日からだ。事務室のPCから毎日8時間やってくれ。懲役としては悪くないだろ?」

833 名前:第22話 愛着 投稿日:2007/01/16(火) 14:49:52 [ cByaCGf2 ]
キンガーさんに連絡をつける事にした私はGmailでメールした。

「で?運ルパンは何を俺にやらせようって?」
「うちのギルドに入った新人が雪月グループのスパイかどうかを確認したいんだ」
「ふうん・・・面白そうだね^^ ま、やってみるさ! その新人の名前は?」
「連連」

キンガーさんに一通りやるべき事を伝えたのでRSにログイン!
アリアンで赤い看板の雪月の露天を見つけ、買うべき商品をチェックした。

ロトトロル!

予算ギリギリだ。後は運ルパンと相談して買うだけだ。
もし連連がスパイなら、ギルド内にトロルを買ったやつがいて喜ぶだろう!
そしてyahooでギルドレクをする前に、全員に新しくIDを作るように耳しておく。
段取りは整ったので、予約を待っている間退屈しのぎに
つい今しがた入ったばかりの新人さんのレベ上げを手伝ってあげる事にした。
気晴らしのつもりで低レベ狩場でTUEEEE!もいいかなぁとも思いながらw

デルモともついに連絡がとれ、これまで判っていることを報告した。
自分がデルモも疑っていたことも素直に話した・・・辛かったけど。

リアルの生活でもこれほど素直に生きることが出来たなら、私にも今頃彼氏がいるだろう。
そんなことを考えながらベッドに潜り込んだ・・・今日も化粧落とすの忘れてた!

化粧を落とそうと洗面台に向かおうとした時だった。
姉が帰宅した。ノートPCを持って。
「どうしたのそれ?残業でもするの?」
「これ?なんかパパが幸一にプレゼントだってさ^^」
「え〜!どうして?!私なんか全部自分持ちで買ったのにぃ!」
「パパの仕事をちょっと手伝うのが条件だってさw」
「甘やかしすぎよ!」
「ま、いいじゃない^^ ぁ、後で化粧水貸してね^^;」

化粧水とトイレは貸しても返ってこないのよねぇと考えつつ洗い流していた。
姉が茶の間から電源つけっ放しの私のPCを覘いたのだろう
「これって面白いの?あんたよくやってるみたいだけど?」
タオルを首にかけたまま私も茶の間に行く。
「なんだかおかしいけど、この箱の向こうに友達がいっぱいいるような感じかなぁ」
「ふぅ〜ん。なんてゲーム?」
「レッドストーン。ロールプレイングよ。」
「れっどすとーん? ドラクエみたいなもんね。なんではまるのさ?」
「ここまで育てるの1年半以上かかっているの。育成ゲームにも近いのかなぁ」
「ふぅん。それなりの価値や愛着があるってことねぇ・・・れっどすとーんかぁ」

私は眠ることにした。姉は職場の人に一本電話入れてから寝るらしい。
弟はコンパで遅くなるらしい。パパからPCをもらえたなんて教えてやらない!
あ〜私もたまにはコンパ呼ばれたぃ〜!!

834 名前:名無しさん 投稿日:2007/01/16(火) 18:21:35 [ bHPdhhZA ]
>>831
面白かったです。コボの変身職・・想像できないなぁ・・。
病気コボルトの病気って何なんだろう。昔、若葉の頃「病気かわいそう」とか思っていました。
MOBも面白い事喋ってくれるんですよね、RSって。

>>832-833
待ってました!
この二つの話がどう繋がるのか色々想像してしまいます。
というか、もう繋がりかけてるのかな・・ともかく続編期待してます。

835 名前: ◆21RFz91GTE 投稿日:2007/01/16(火) 18:43:31 [ wAKWTM7M ]
Act3:遠い空

 「…これ、何匹?」
自分を冷静で居させようと一生懸命に落ち着こう、落ち着こうと頭の中で何度も言い聞かせる。そう思えば思うほどあせってしまうのが人間なのだろうか?落ち着くどころか余計頭の中がこんがらがってしまいそうになる。
「ねぇユラン君…冷静になって物事を考えてるところ申し訳ないんだけど、逃げた方がいいんじゃないかな?」
彼女の言う通りなのかもしれない、ゴブリン達はお昼時なのか口からよだれをダラダラと垂らしている。前菜は僕達の皮膚でメインデュッシュは内臓なのかもしれない。また冷静にそんな事を考えているとゆっくりとだが群れのリーダーと思われる一際大きいゴブリンが一歩前に体を出してきた。
「うーん…。」
リーダー格のゴブリンが手に持っている槍を頭上高く振り上げた瞬間周りに居たゴブリンがいっせいに突撃して来た。こう見るとゴブリンと言えども中々おぞましい光景なのだと分かる。一層の事この事を本にして売り出してみようか。
「く、来るなら来いぃ!って…うわぁ!」
僕は明らかに戦闘モードの彼女を脇に抱きかかえ目の前の崖から飛び降りた、この選択が正しかったのかはたまた間違っていたのかは後になってからのお楽しみと言う事に僕の中で決め付けた。
「ちょ、ユラン君いきなり大胆すぎるんじゃないですか!?」
「この状況を楽しんで言ってるのかそれとも真面目に言ってるのか分からないような顔で僕にそんな事を言わないでくれ!」
「だって、ユラン君の手が私のむ…。」
「だぁぁぁ!それ以上言わなくて良いの!」
そう言えば一つ追加しておくことがある、彼女はかなりの天然なのだろう。昨夜怖いからという理由からタオル一枚で僕の部屋に飛び込んできて数分、今度は大声を上げて自分の部屋に引き返して行った。
確かに僕の手に彼女のむ…いや、路線が外れそうなので言わないでおく事にしよう。とりあえずはあの危機から脱出できれば良いと考えるべきだ。
「たすかった…そうでもない!?」
とっさに飛び出した崖は予想以上に高い物だと落ちている今気が付いた、そして上からはゴブリンの大群が同じ場所から身を投げている。そこまでおなかが減っているのだろうか。
「あぁ…短かった僕の人生、ありがとう青春、さようならまだ名前も覚えてない密着したちびっ子…。」
「ちびっ子言うなぁ!それと私の名前はイリアですぅ!」
分けの分からないっ事を叫びながら二人は地面まで落下して行く、もう少しで地面に衝突すると思われる所まで落ちてきた時、体がふわっと何かに支えられるような感覚が僕たち二人をつつんだ。
「あ…あれ?」
ゆっくりと僕達は地面に降りた。おかしい…崖の高さからしてこのような着地の仕方はありえない、強いて言うなら落下速度は重力によってドンドン加速して行くはず。計算式は…思い出せないので省略するとしても何でだろう。
「そうだ、ゴブリン!」
バッっと振り返ると、真っ黒に焼け焦げた多分ゴブリンと思われる死体がドサドサと落ちてきた。そのゴブリンの死体には何本かの弓矢が刺さっている。

836 名前: ◆21RFz91GTE 投稿日:2007/01/16(火) 18:44:13 [ wAKWTM7M ]
「大丈夫君達?」
とてもやさしそうな女性の声が聞こえた、その声がする方向を見てみると確かに女性が居た。年齢は多分僕と同じか少し年上。はたまた年下なのだろうか?童顔なのでよく分からない。その隣にはどこかで見た事のあるウィザードが不満げな顔で立っていた。
「マスタ…移動されるなら移動すると一言仰ってください。急に私のマフラーを掴んで引きずるなんて酷いじゃないですか…。」
「あ、ごめんなさい。でもクラウスが苦しい思いをしたから人助けが出来たかもしれないよ?」
「どんな理由ですかそれ…はぁ…君達大丈夫だったか?」
クラウスと呼ばれたウィザードが僕たちに手を差し伸べてきた。僕はゆっくりとその手を取ろうと腕を伸ばすがなぜか体が重い、もしかして腰が抜けたのだろうか?
「…まずは君の上で伸びている彼女を退かさないと君は動けないんじゃないかな?」
「え?」
そう言えばわずかだが重さを感じる、ゆっくりと体を起こそうとしたが何かが邪魔していてそれを妨げる。特別何か考えた訳ではないが一気に起き上がろうとする。
「あ、ちょっと待って…。」
女性がそういったが、僕はその言葉が完全に頭の中に入る前に置きあがってしまった。状態を起こした瞬間「ふにゃ!」という声が聞こえた。はて…何の声だろう。
「あっちゃぁ…。」
女性は頭をポリポリと掻いてばつが悪そうにしている、そして僕もその行動を見てようやく思い出す。
「痛いですよユラン君…。」
「あ、ごめんイリアさん。」



 「それで、あの高さからダイビングしたの?」
「はい…。」
古都に戻り一つの喫茶店へと四人で入った、僕とイリアと助けてくれた二人だ。どうして崖から落ちてきたのか聞かれたのでそのまま事の次第を話した。
「なるほど、私はまた「空だって飛べる!」って何か勘違いしたのかと思ったよ。」
もう片方のウィザードが大笑いしながらその話を聞いていた、確かに一昔前の僕ならやりかねない事だがそこまで笑うことも無いんじゃないかと心の中で密に叫んだ。
「そうなんですよ〜、そしたらユラン君ってば私のむ…モゴモゴ。」
イリアがそこまで言って口ごもった、正しくは僕が彼女の口を手でふさいでそれ以上言わせないようにさせた。こんなところで知らない人にいきなりそんな話をされても僕の立場が困る。
「…む?」
「あははははは!なんでもないんですよ何でも!」
「ん〜、まぁ詳しくは聞かないからあれだけど…それにしてもユラン君っていったかしら?君はもう少し強くならないといけないね。大事な彼女を道連れにしてあんな高い所から飛ぶなんて危険よ?」
ごもっともな意見を言われた、確かに僕は彼女を守るにはいささか…訂正、かなり力不足である事は確かだった。しかし、強くなるにも何をしたら良いのかが全く分からないのも事実。ゆっくりとイリアの口元においてあった手を自分の膝元に降ろしてうつむいた。
「そうですよね…確かに役不足ですよね…。」
「うーん、そうだねぇ〜。」
女性が腕を組んで何か考え事を始めた、暫くその体制のまま動かなかったが暫くすると女性の隣に居たウィザードを凝視する。
「…なんですかマスタ。」
「うーん、いいよね?」
「…そう来ますか。」
「うん、そう来る。」
二人が訳の分からない話を始めた、少しウィザードの方が考え事を始めて数秒。ヤレヤレと言った表情で僕達に話しかけてきた。それも本当に複雑そうな顔をして。隣では満面の笑顔の女性が居た。何がそんなにうれしそうなのかが分からないがとても楽しそうだった。
「君達、ギルドに入らないかい?」



Act3:遠い空

837 名前: ◆21RFz91GTE 投稿日:2007/01/16(火) 18:55:47 [ wAKWTM7M ]
////**************************************////
  ■冬の軌跡:まとめサイト(だるま落し禁止)
  ■http://bokunatu.fc2web.com/SS/main2.htm
  ■現行SS速見表
  ■Act:1 青空     前スレ>>962-963
  ■Act.2 意思を告ぐ者達  >>500-501
////**************************************////



こんばんわ…。(´・ω・`)
そして、本当に久しぶりです…覚えてる人が何人いる事やら…。
このスレで最後に書きこんだのが…多分500台…。
うん…申し訳ないですorz

さてさて、本当にお久しぶりです。
一応前SSからの流れが有るので一目見ただけじゃ分からないキャラが数名入って居ます。

なので、簡単な人物紹介を

■ユラン・F・エルフィート(♂)
今作の主人公、WIZの割には魔法が苦手。
何事にも気合が足りないために、進んで行動を起こさない。

■イリア(♀)
今作メインヒロイン、チビで天然でおっちょこちょいなビーストテイマー。
好奇心旺盛で天真爛漫、美味しく頂ける方はどうぞ。

■ミト・メーベ(♀)
前作ヒロイン(二番目の)、現在はとあるギルドのGM。
昔は臆病で弱弱しかったが、現在は結構ハキハキと物事を言う。

■クラウス・アルフォード(♂)
ミトと同じギルドに所属するGMのお目付け役。
最近は昔のミトと現在のミトを比べてため息ばかりをつく。

■ミルリス(♀)
前作のメインヒロイン、オテンバで実はおっちょこちょい。通称ミル。
先の大戦で活躍し名声を欲しいままにするが、大戦中に死亡

■アレン・ケイレンバック(♂)
前作の主人公、設定を無視してスレ内ではロリコンと言われた可哀想な人。
ミルリスと同様、先の大戦で活躍するも死闘の末死亡。


今作の主人公はろりこn…うわ待て何をすrくぁwせdfrgtyふじこ

838 名前:ドギーマン 投稿日:2007/01/16(火) 19:35:45 [ at5Dv2Nk ]
500ですか、
私がこのスレ見つけて初めて書き込んだのが612ですね。

じゃ、続けてロリコン(?)ネタでも。


鋭い眼
獲物を逃さぬ鼻
ナイフのような牙
毛に覆われた強く大きな体躯
鋼鉄のように硬く研ぎ澄まされた爪

そう、彼はウルフマン。
そして、彼は今小さな公園の柵をぎゅっと握り。
その向こうに居る天使達をじっと見つめていた。

ローブを羽織った、彼の小さな天使。
人は彼らをビーストテイマー・サマナーと呼ぶ。
彼女達はいまペットを自慢しあっている。

ケルビーの腹を撫で、ファミリアに餌をやり・・・
ウルフマンはじっとその様子を見つめていた。

ケルビーがウルフマンをちらっと見た。
ふっと笑ったきがする・・・・。

―まて、おれは狼なんだ・・・・やつら犬とは違う・・・。

サマナー「あ、おっきなワンちゃん。一緒に遊ぶ?」

・・・・・・・・・・・・・・・・

「ワン!」

839 名前:名無しさん 投稿日:2007/01/16(火) 19:43:57 [ bHPdhhZA ]
>>21Rさん
なんか、純粋な冒険話みたいですが、かなり前から続いている話の外伝って感じですね、
今後も書き続けてくれたら嬉しいです。
サイトまであるんですね・・、時間が空いたら他のSSも読ませてもらいます。

>>ドギーマンさん
のほほん話大好きです。
ウルフマンを操作している自分も、たまに「犬」と思って動かしてる事があります・・
やっぱり走り方が良いんですよ走り方が!
でも攻撃方法は引っかくだし・・ある意味猫みたいです。

840 名前:題名付けてなかったな^^ 投稿日:2007/01/17(水) 04:23:07 [ 7iWW05XY ]
>>562
>>564
>>568
>>572
>>576
>>577
>>580
>>581
>>582
>>584
>>587
>>620
>>626
>>634
>>682
>>710
>>761
>>767
>>772
>>773
>>832
>>833
キンガー」です^^; この物語の題名付け忘れてました・・・。
今更つけなくてもいいですよね?
物語のプロットは大体決まってるんですが、中々進みません><
本当は7-8話で終了するつもりだったんですが、登場人物が生命を得てしまったような
感じで話が奥行きを持ち始めてしまいました^^;
作者自身、登場人物を止められないような感じですw
ここまでせっかくのネット上の書き物なので色々チャレンジしてきました。
これからはもう少しネット小説の強み、仕掛けを利用してみたいと思います。

841 名前:ドギーマン 投稿日:2007/01/17(水) 12:10:35 [ at5Dv2Nk ]
『シルバリン』

男が1人、オロイン森で油虫を捕まえている。
私の名はケンプ。行商人だ。
オロイン森の油虫から、とても上質な油が取れると聞き、
金にならないかとやってきたのだが・・・・・なるほどな。
この油虫は思ったよりずっと大きい上に、凶暴で、さらに取れる油の量が少ないときている。
これでは、本気でこの油取りを職業にしないと金儲けなど出来そうにないな。
気がつけば日は西に傾き、森の木々は闇に飲まれようとしていた。
少々頑張りすぎたか。
今からバリアートに向かうのもかえって危険かもしれない。
仕方ない。今日は野宿か。


ケンプは薪になりそうな木の枝を集め、火を起こし始めた。
ブリッジヘッドで買ってきた干し魚を焼きながら、
ケンプはゆれる火をじっと見つめながら娘のことを考えていた。
行商を続けてもうすぐ10年になろうとしている。
ケンプは元々はアリアンでは名の通った富豪の1人であった。
しかし、金儲けに傾注するあまり、家族を省みることを忘れていた。
妻は気づけば若い男に寝取られ、そして逃げた。
屋敷は、今までライバルを蹴落とすように稼いできたからだろうか、
放火され、今では他の富豪の家が焼け跡の上に建っている。
全てを失ったケンプは、傷心の末に娘をシュトラセラトの親戚に預け、
アリアンを去って放浪した。
金はほとんど娘に託してきたが、その娘もいつしか家出同然に親戚の家から姿を消したらしい。
ケンプはボロボロの心を抱え込みながら街から街へ彷徨い歩いた。
しかし、人間食えねば死ぬしかない。
抵抗はあったが、再び商人となった。
それしか出来ることが無かったから。
ケンプはもうかつてのような悪どい商売はしないと決めた。
家をもたず、世界を転々とし、細々と生計を立てていた。
この世界は未開の地がまだまだある。
そこには当然のように珍しい物があり、ケンプはそういった物を売っていた。
しかし、そこには危険が伴う。
モンスターを相手にしなければならないのだから。
だが、ケンプは一介の商人であるにも関わらず、
構わずそういった危険な場所に入っていった。
もしかしたら彼は、死に場所を求めていたのかもしれない。

ついこないだ、ケンプがビガプールに立ち寄った際、
偶然、娘を見つけてしまった。
娘は彼の知っていた当時の面影をそのままに、大人の女になっていた。
娘は若い男と一緒に教会に入って行った。
なんでも、来月の中ごろに結婚するらしい。
教会から出てきた娘の顔には、美しい笑顔があった。
かつて、自分の屋敷にいたときにあの笑顔はあっただろうか。
思い出せない・・・・。
ケンプは話しかけたい衝動にかられた。
今までどうしてた?
相手の男は誰だ?
生活は出来ているのか?
・・・・・・・・・・・・・・・駄目だ。
全て自分のせいなのだ。娘に今さら会って父親面する資格などない。
ケンプは感情を押さえ込み、逃げるようにビガプールを去った。
「私は、どこまで逃げればいいのだろうか・・・・」
誰にともなく、自分自身に問いかけた。
気がつけば、魚が焼け焦げてしまっていた。

842 名前:ドギーマン 投稿日:2007/01/17(水) 12:11:15 [ at5Dv2Nk ]
焦げを取り除きつつ、魚を食べていると、
「あの、火を借りてもいいでしょうか?」
突然の背後からの声にケンプは驚いて噛みきれていない魚を喉に詰まらせた。
慌てて、鞄の中の酒を取り出し、喉の奥の物を無理矢理流し込む。
軽く咳き込みながら、ケンプは背後の人物を睨みつけた。
「ごめんなさい、驚かせてしまって」
女は謝った。
そこに居たのは、
動きやすそうな革の鎧に身を包んだ女が立っていた。
手には短めの弓、背には矢筒を背負っている。
ケンプはもう一口だけ酒を口に含み、
女に対しての文句と一緒に喉の奥に飲み込んだ。
「どうぞ」
とだけ言って、顎を火を指し示すようにしゃくった。
女は火を挟んでケンプの向かいに座り、
鞄の中から飯ごうを取り出し、米と水を入れた。
さらに、ケンプが食べていたのと同じような干し魚を取り出した。
ケンプは女の様子をじっと見た。
「私の分なら要らんよ」
ケンプは女の飯ごうに入れる米の量を見て言った。
「でも・・・・」
ケンプはため息をついた。
もう入れてしまったか。
「わかった。私の分も頼む」
ケンプの言葉に女は少し済まなそうな顔をして、米を炊き始めた。
ご丁寧に、ほとんど黒くなってしまった魚の残骸を見て、
ケンプの分の魚も焼いてくれるようだ。
ケンプは酒で少し熱くなった顔で、女を眺めた。
娘と同じぐらいの歳だな。
女はケンプの目に気づいたのか、ふとケンプと目が合った。
ケンプは目を逸らした。

「あの・・・」
沈黙が気まずくなったのか、女が口を開いた。
「こちらで何を?」
逆にケンプが問いたいところだったが、女の弓を見る限り、狩人といったところか。
むしろただの老人にしか見えないケンプのほうが、この森では異様なのかもしれない。
「油を取りに来たんだ。売れるかと思ってね」
ケンプの近寄りがたい雰囲気を察したのか、
「そうですか」
とだけ、女は言った。
また、沈黙がやってきた。
闇の中に揺れる明かりの中、火の揺らめきだけが時を刻んでいた。

843 名前:ドギーマン 投稿日:2007/01/17(水) 12:12:25 [ at5Dv2Nk ]
ケンプは悩んでいた。
娘のことを、これまでの自分の歩んできた人生を。
娘に会いたい。会って詫びたい。
地に頭をつけてもいい、彼女に謝りたい。
今まで済まなかったと・・・・・。
しかし、それは逆に娘を傷つけることになるかもしれない。
娘のことを思うなら、むしろ会うべきではないのかもしれない。
ケンプは急に飲んだ酒に酔ったせいか、少し夢を見ていたのかもしれない。
『おとーさん、あそんでよぉ』
『だめだ、あっちいけ!この忙しいときに何言ってるんだ』
――――
『おとーさん、見て見て、お花』
『ああそうだな。でも今忙しいんだ』
――――
『おとーさん』
『おとーさん』
『おと・・・・』
――――
「あの・・・・・おじさん?」
ケンプははっとして顔をあげた。
「やっぱり、食べませんか?」
女が心配そうにケンプを見ていた。
「あ、ああ・・・・食べるよ」
ケンプは手を伸ばし、魚とご飯が盛られた椀を受け取った。

食事をしながら、ケンプは彼女に聞いてみることにした。
「君は、狩人かい?」
「ええ、まあ・・・・」
曖昧な返事が返ってきた。
「こんな夜になるまで獲物を追いかけているのかい?」
女は少し困ったような顔をした。
「その、夜にしか出ないそうなので・・・・」
ケンプは彼女の様子に構わずに言った。
「そうか、じゃあ食事が済んだら行くんだね」
「ええ・・」
女はあまり食が進んでいないようだ。
ケンプはそれから黙って、食べ続けた。

やがて食事も終わり。
ケンプは毛布を取り出した。
酔いもしたたかに回ってきていたので、そのまま寝るつもりだった。
「行くときになったら、火は消していってくれ」
ケンプは鞄を枕に、毛布を体にかけ、寝る準備をして言った。
「あの・・・・」
女が遠慮気味に声をかけてきた。
ケンプはこの女のハッキリしないところに少々苛立ちを感じていた。
「なんだ?」
目を向けることも無く、火に背を向けて横になりながら返事をした。
「本当に、何も知らないんですか?」
女の奇妙な言葉に、ケンプは体を起こして向き直らざるを得なかった。
「知らない、とは?」
ケンプの不機嫌そうな顔に、女は少々気まずそうに答えた。
「その、この森に出る怪物の話なんですが・・・・」
ケンプは怪物という言葉に毛布をどけ、あぐらをかくと女に聞いた。
「怪物とは?」
女はケンプと目を合わせたくないのか、少し俯いて答えた。
「ここ最近ですが、この森にはある怪物が1匹だけ住み着いてしまったらしくて・・・・」
なるほどな。よくある話だ。
こういう話は辺境の村などに行くとよくある。
居もしない化け物をでっちあげて、倒した人物に金を積むと言って、
何日も宿に居座らせたり、大量の食料を買わせたりする。
大方、この女も騙された口だろう。
ケンプは毛布を鷲掴みにすると、ぐいと引き寄せてまた横になった。
「あの、寝たら・・・」
「居もしない怪物に襲われるのかね。夢なら寝てから見ようじゃないか」
ケンプは女に皮肉を言うと、まぶたを閉じた。
「バリアートで聞いていないんですか?」
ケンプは目をつむったまま答えた。
「ブリッジヘッドから直接来たんでね。いい加減寝たいんだ。さっさと行ってくれ」
ケンプの冷たい言葉に動じることもなく、女は言い返してきた。
「違うんです。本当に居るんです」
しつこいな。
ケンプは辟易したように
「分かったよ。じゃあさっさと君が怪物を――」
倒してきたらいいじゃないか。
と、言おうとすると。

844 名前:ドギーマン 投稿日:2007/01/17(水) 12:13:31 [ at5Dv2Nk ]
ウオオオオオォォォォォ――――ン!!!!

獣の咆哮が夜の森に響き渡った。
ガシャガシャと木の葉が風に揺れた。
「これでも、信じませんか?」
女はケンプの顔を悲しそうな表情で見て言った。
ケンプはやれやれと体を起こすと、毛布をたたみ始めた。
女がほっとした様子で胸に手を当てている。
ケンプは女をじろっと一瞥すると、
「どうせただの狼だろう。どちらにしても、寝てはいられないみたいだな」
ケンプは女の表情を見ずに荷物を鞄に収めた。

ケンプは女の後ろについて、闇の中を進んだ。
女はケンプに
『バリアートの近くまで送ります』と言われたが、
ケンプは断った。
むしろ、
『本当に化け物が居るんなら、見てみたいね』と言い、
困惑する女を無理矢理に説得し、鳴き声がしたほうへ向かっていた。
長年モンスターを相手にしてきたケンプにとって、
ただの狼など大した相手には思えなかった。
ケンプは腰にナイフを差し、松明で闇を照らした。
それにしても・・・。
ケンプは目の前の女の歩き方をみて奇妙に思った。
初めて会ったときも背後に立たれたのに気づけなかったように、
女の歩く音はほとんど聞こえない。
この落ち葉や枯れ枝の密集する森のなかでも、だ。
それでいて、スムーズに歩いていく。
静かに歩こうと慎重になる自分の足音がやけにやかましく聞こえる。
気を抜けば置いていかれそうだった。

闇は木々を溶かし、闇は空へと続く。
2人が立っている森と空の境界線は、星の輝きのみが示してくれている。
随分森の中を歩いた。
ケンプは女の背中に言った。
「なあ」
女は立ち止まって振り返った。
「はい?」
ケンプは闇の中に浮かぶ女の上半身に言った。
「やはりただの狼だったんだよ」
女は前に向き直った。
「いえ、絶対に居ます」
そう言ってまた歩き出した。
何がこの女を、頑ななまでに突き動かすのだろうか。
まるで化け物に確信を持っているようで、
ケンプのなかで、化け物の存在を疑うのと、いるのかもしれないのと、
ごちゃごちゃに混ざり合って、なんとも言えない気味の悪さが芽生えていた。

845 名前:ドギーマン 投稿日:2007/01/17(水) 12:14:35 [ at5Dv2Nk ]
森の中を見回してみて、
ふと、ケンプは気づいた。
いや、気づいてしまった。
「待て」
女は立ち止まってケンプの顔を見た。
「あの星、やけに低くないか?」
ケンプの指し示した星は、2人の左前方の方向にあった。
確かに、その星は変であった。
星空が木々の形を闇の中に浮かべているなか、
その二つの並んだ星だけは、確実に木の影の中、
そう、木の中から光を発していた。
「下がって!」
女は素早い手つきで弓につがえていた矢を星に向かって放った。
ガフッ!
闇に消えた矢の先で、獣の鳴き声が聞こえた。
ガサッと音を立てると、星は見えなくなった。
ヴヴゥゥゥゥゥ・・・
獣の唸り声が聞こえる。
ケンプはナイフを握り、辺りの闇に松明の明かりを向けた。
鳴き声から察するに、狼にも思えるが・・・・。
何か違う、違和感があった。
とんでもない物に手を出してしまったような、言い知れない恐怖。
ジャサジャサジャサ・・・
落ち葉を散らすように走る音。
ケンプは音を追って振り返った。
そして唾を飲み込み、闇の彼方に目をやった。
緊張のせいだろうか、
背後に立っているはずの女の気配が怪しくなる。
ケンプは自分が闇の中でたった一人、ひどく孤独に思えた。
ケンプは化け物が居るであろう闇に視線を彷徨わせたが、
視界に広がる闇はまるでケンプを逆に凝視しているようで、
ケンプの心に恐怖という牙を突きたて始めた。
すると、背後からぽんと肩を掴まれた。
「うお!」
ケンプは驚いて背後に向かってナイフを持った手を振るおうとした。
その腕を受け止めて、女はケンプの顔にむかって言った。
「逃げました」
ケンプは膝をがくりと折り、その場にうな垂れた。

「あれは何だ?」
地面に膝をついたまま、ケンプは女に聞いた。
「あれが、怪物です」
ケンプを何故か悲しそうな目で見下ろして、女は言った。
「そんなことは分かってる!君は分かってるんじゃあないのか?あれの正体が」
今までの女の確信じみた動きに、ケンプは問い詰めた。
女は俯いて、ケンプの質問に答えぬまま
「バリアートまで戻りましょう」と言った。
ケンプは女の自分から逸らした目をじっと睨んだ。
「無駄だ。君も分かってるだろう?」
手負いにされた以上、あの手の化け物はずっと追いかけてくる。
あの鋭い殺気がその証拠だ。
このままバリアートに戻るにしても、
オロイン森を抜けるまであれに襲われず無事で居られる保障など、ない。
黙りこくる女に、ケンプは立ち上がって土を払って言った。
「行くか」
「え?」
女は驚いたように聞き返してきた。
ケンプは女の顔に向かって言った。
「化け物を殺しに行くんだろう?」
「でも・・」
女の心配そうな顔に、ケンプは落ち着いた表情で返した。
「さっきまでは信じてなかったせいか、動転してしまったが、もう大丈夫だ」
ケンプの目には、森と同じ暗い闇が溶け込んでいた。
「死ぬ覚悟は出来た」
そう言ってケンプは化け物の消えたほうに歩き出した。
ケンプの変化を理解したのか、女も黙ってケンプの後ろをついてきた。

846 名前:ドギーマン 投稿日:2007/01/17(水) 12:15:25 [ at5Dv2Nk ]
ケンプは目の前の闇を見たまま後ろの女に言った。
「もっと後ろを歩け」
「え?」
この女はこんな返事ばかりだな。
「君は足音を立てずに気配を消して進めるんだろう?なら、私から離れろ」
「でも・・・」
ケンプは女を無視して、歩を早めた。
その歩みはつい先ほどのものとは違う。
ガサガサバキバキと、落ち葉を踏みしめ、枯れ枝を踏み折り、
派手に音を立てて歩いた。
女の気配はないため、離れているか分からないが、
ケンプは気にせずに森を進んだ。

ケンプは闇の中を1人歩きながら、
再び娘のことを考え始めていた。
『うああぁぁーーん』
『どうした?』
『おかーさんが・・・・』
『お母さんがどうしたんだ?』
『男の人と、もう帰らないって・・』
『・・・・・』
―――――
『おとーさん、なんでおかーさん出ていっちゃったの?』
『うるさい!黙れ!』
『うあああぁぁん』
『くそ!黙れと言ってるだろう!』
『ごめんなざい・・・うぅぅ〜・・』
―――――
『おとーさん』
『おとーさん』
『おと・・・』
やはり私は、娘に会う資格などないな。
ケンプは闇を見つめ、歩み続けた。

化け物は一向に姿を現さない。
よっぽど用心深いのか、それともさっき負わされた傷で懲りたのか。
踏み鳴らす足のほうが疲れてきた。
ケンプは闇に向かって叫んだ。
「出て来い化け物!私が怖いか!?」
ガサッ
叫んでみるものだな。もしかしたら、ずっとついて来ていたのかも知れない。
ケンプは音がしたほうに向き直ると、
一切の躊躇も見せずに音のしたほうへ向かった。
あの女はついて来ているだろうか?
置いていかれるほど間抜けではないか。
ケンプは音を立てたものを見た。
それは、油虫だった。
ガシャガシャと落ち葉を食んでいる。
「っち」
ケンプは舌打ちした。
が、次の瞬間視界が左に吹っ飛んだ。
いや、自分が左側から飛びついてきた何かに吹っ飛ばされたのだ。

847 名前:ドギーマン 投稿日:2007/01/17(水) 12:16:32 [ at5Dv2Nk ]
グルルルルァァァ!!
気は動転していたが、状況を把握するよりまず、
ケンプは自分に覆いかぶさる化け物に右手に握ったナイフを突き刺した。
グァフッ!!
化け物は叫んだが、構わず両手でケンプの両肩をすごい力で握った。
爪が肩に食い込んで血が溢れてきた。
化け物の頭がケンプに近づき、
大きな口から飛び出した牙がケンプの首元に刺さった。
「ぐうぅぅ」
ケンプはナイフを持つ手をなんとか突き上げようとするが、
肩を押さえ込まれて手が上がらない。
フヒュ! フグァァア!
化け物はケンプの身体から跳ねるように離れた。
ケンプが取り落とした松明に照らされたそれは、
わき腹に矢を突き立てられ、闇の彼方を睨んでいる。
ウルフマン。
ケンプはそれに見覚えがあった。
スマグのウィザードのなかで、肉体的強さを求めた者がなるという。
しかし、いまケンプの目の前にいるそれは、眼に人のものではない光が宿っていた。
ケンプは身体を起こし、咄嗟に叫んだ。
「にげろぉ!」
ガアァ!
ウルフマンが矢の飛んできた方向へ跳ねるように消えていった。
ケンプは肩から垂れる血に濡れた両腕で、痛みを食いしばって立ち上がり、
ウルフマンが向かったほうへ力のかぎり急いだ。
ふらふらとする身体を伝う血の感触だけが、やけに鮮明だった。

そんな長い距離を動いたわけではないのに、
ケンプはまた娘のことを思い返していた。
走馬灯というものなのかもしれない。
――――――
燃え盛る屋敷。
帰ってきたケンプは慌てて走り出した。
『駄目だ、止まって』
『どけ!』
『待て!死ぬぞ!』
――――――
燃える家財などに目もくれず、ケンプは屋敷の中を走った。
『メリル!どこだ!メリル!』
『うぅぅ〜・・・わぁぁぁん』
燃える扉を蹴破ると、部屋のはしにうずくまる娘を見つけた。
『メリル!よかった・・・』
『おとーさぁん!うぅぅぅ・・・』
泣いてすがりつく娘を抱き上げて、ケンプは燃える廊下を構わず突っ切った。
足や腕が火傷だらけになったが、構わず娘を抱きしめて走った。
――――――
『おとーさん、わたし、おうちを・・』
『何も言うな・・・』
ケンプは焼け崩れる屋敷を背に、娘を抱きしめていた。
その後、小さな家を借りて娘と住んだが、
それは常に娘と顔を向き合わせなければならない生活だった。
私は・・・・何故娘を親戚に預けてきたのだろう・・・・・。
そうか、逃げたんだな。娘の目に耐え切れなくて。
そして、今も私は・・・・・・。

848 名前:ドギーマン 投稿日:2007/01/17(水) 12:17:24 [ at5Dv2Nk ]
ウルフマンはその身体に5本の矢を突き刺したままなお、
少しもひるんだ様子もなく動いていた。
そして、木を登って、木の枝の上から矢を放つ女に爪を振るっていた。
なんとか捕まるまいと、女は狼に向かって矢を放つが、全く痛がる素振りを見せない。
むしろ、その分憎しみを増大させるようにウルフマンは吼える。
ググァァ!!
女の立っている枝を掴むと、
メキメキメキと、ウルフマンは太い枝を信じられない力で握りつぶした。
女はバランスを崩して木から落ちた。
地面に倒れる女に、ウルフマンはのしかかり、爪を振るった。
両腕をうえにして女が叫ぶ。
「あああ!!」
ウルフマンの爪が女の小手を引き裂いて、その下から真っ赤な血を引き出した。
「やめろぉ!!」
ケンプには娘が化け物に襲われているかのように見えた。
ケンプはウルフマンに体当たりを食らわした。
そして、仰向けに倒れこんだウルフマンに覆いかぶさり、
ウルフマンの腹に突き刺したままのナイフを引き抜いた。
ウルフマンが倒れたまま振るった右爪が、ケンプの胸に4本の真っ赤な線を描いた。
が、構わずケンプはナイフを振りかぶった。
すると、何故か女が叫んだ。
「やめてぇ!!」
しかし、構わずケンプはウルフマンの左目にナイフを突き立てた。
そして、えぐるようにナイフに力をこめた。
ウルフマンは身体を1度ビクンと痙攣させると、動かなくなった。
ゆっくりとケンプは立ち上がり、女に聞いた。
「やめろ・・・とは?」
女は小手に守られていたのか、腕の傷は浅そうだった。
女はピクリとも動かなくなったウルフマンの胸に手を当て、
「お父さん・・・」と呟いた。
ケンプの意識はそこで途絶えた。

『おとーさん見てぇ』
『ああ、良く似合うよ』
『ふふぅ』
娘は誕生日に買ってもらった子供用のドレスを着て嬉しそうにしていた。
『ねえ、おとーさん』
ケンプに抱き上げられながら娘は言った。
『なんだい?』
『私ね、将来ね』
『うんうん』
『お嫁さんになるときはね、おとーさんに最初にドレス見てほしいなあ』
『はは、そうか』
――――――――――――――

849 名前:ドギーマン 投稿日:2007/01/17(水) 12:18:04 [ at5Dv2Nk ]
「すまない・・・メリル。私が愚かだった」
「あ、気がつきました?」
ケンプのはっきりしない視界の中に女が現れた。
「メリル?」
朦朧とした意識のなかケンプは言った。
「あ、まだ休んでてください。いま人を呼びますから」
しかし、構わずケンプは身体を起こした。
「駄目ですよ。傷に障りますから」
「いや、いいんだ」
ケンプは次第に意識がはっきりしてきた。
「君・・・」
「はい?」
ケンプは心配そうに見ている女に謝った。
「すまなかった・・」
女は俯いて言った。
「いえ、いいんです」
しばしの沈黙ののち、ケンプは聞いた。
「ここは?」
「バリアートです。あのあと、色々と大変でしたけど。
大丈夫です。腕のいいビショップさんがたまたまこの町に来てたので」
「そうか」
ケンプは再びベッドに横になった。
「じゃあ、人を呼んできますね」
そう言って女は部屋を出ようとした。
「わたしは・・・・」
ケンプは天井を見つめながら呟いた。
女は振り向いてケンプを見た。
「わたしは、許されるのだろうか」
女は事情も知らないはずだし、もしかしたら自分のことだと思っていたかもしれない。
「心の底から謝ったんですから、いいじゃないですか」
そう言って女は部屋を後にした。
「心の底から・・・・か」

その後、
ケンプは無事完治し、バリアートを後にした。
女はケンプが治るまで見舞いに来てくれた。
その間、ケンプは彼女の父が何故ああなってしまったのか。
決して聞くことはなかった。
互いに互いの引きずる傷を知らぬまま、彼らはブリッジヘッドで別れを告げた。

ケンプは船に揺られながら、シュトラセラトに向かっていた。
娘は許してはくれないかもしれない。
しかし、もう逃げ続けるのももう終わりにしようと思った。
果てしなく続く海を眺め、ケンプは娘にかけるべき最初の一言を考えていた。

850 名前:ドギーマン 投稿日:2007/01/17(水) 12:25:23 [ at5Dv2Nk ]
あとがき
元ネタはウルフマンのU牙のシルバリンの牙です。
単純に化け物討伐のお話にしてもよかったんだけどね・・・・。
ちょっと暗めの出だしだけど、悲しい終わり方ではない、かな。
別れなきゃいけないっていう話から一変して、
会いたい、けど会えないという話に挑戦しました。

>きんがーさん
毎回楽しみにしてます。
題名は、欲しいかも。個人的に・・・w

851 名前:名無しさん 投稿日:2007/01/17(水) 20:02:51 [ C5YpDFjg ]
>>ドギーマンさん
冒険者が主人公というのはそれはそれで面白いのですが
戦う力を持たない商人などが主人公となると妙に親近感を覚えながら読めました。
ケンプさんはそれでも結構戦闘慣れしているみたいですが(笑)
戦闘シーンの「視界が左に吹っ飛んだ」というのはとてもリアルでした。
悲しいながらもケンプの幸せなその後を想像できるラストで感動しました。

U装備には何かのいわれが少しだけ書かれていて想像が膨らみますよね。
シルバリンの牙の説明は忘れてしまいましたが・・今度見かけたら確認してみます。

852 名前:名無しさん 投稿日:2007/01/18(木) 00:09:49 [ psw7Vx8o ]
>>きんがーさん
おお、初めてコメントがっ。
現実と結びつけて詐欺の話・・ドキドキで凄い楽しみにしてます。
頑張ってください〜。

>>ドギーマンさん
どの小説でもそうなんですが・・終わって欲しくないってのがありますよね。
ドギーマンのがまさにそうで・・もっと続きが読みたいって感じですv
毎回読むのがもったいない気がしますし・・(笑

>>21Rさん
結構前に書かれた物の続編みたいな感じなんですね・・。
このスレを発見したのが結構最近で、前の作品が見れてなかったので・・
気になってサイトの読んで見ました〜。
時間が無くてまだ2話までしか読んでないんですけど・・凄い先が気になります。
でもミルさんが死んじゃうって分かっちゃったのがちょっと悲しいです;

では今日はこの辺で・・。

853 名前:第23話 拠所 投稿日:2007/01/18(木) 04:10:59 [ kHEFNWhg ]
面会の翌日から張は事務室に篭りきりになった・・・看守付で。
田村は佐々木に新宿のネカフェのPCから消されたあるソフトを抜き取らせていた。
---因果応報---
田村の好きな言葉というか、身にしみて大事にしている言葉。
今回は張に味わってもらおう。人をPCで嵌めたんだ。PCで辛い思いをしてもらおうと。
1日8時間のネットサーフィン。
田村は自分が記録課に1時間といられないのを思い出しながら不敵に笑みを浮かべた。
奴はこの仕事をちゃんとやるだろうか? 死にたくないだろうからな・・・。

佐々木が張の収容されている務所から戻ってきた。PCのセッティングを田村に任されていたのである。

「戻りました! あれでいいんですか?」
「おぅ、ご苦労さん。いいんだよ、奴がやり易い様にしておけばいいんだよ」
「・・・今日から合同捜査ですねぇ。こちらで得た情報は全部開示するんですか?」
「う〜ん、張の話は無しだ。あれは昨日までの捜査の範囲だから、まだ隠しておけ」
「どうしてですか?連携したほうがいいと思いますが」
「お前ね、これほど状況証拠出ていて何故、捜査がこんなに遅れているかわからんのか?」
「といいますと?」
「手柄の取り合いともう一つある。管轄の中で情報漏らしている奴がいるんだよ」
「ど、どうして?」
「劉が捕まって直ぐに金が引き出されているんだぞ? ガサ入れから5分経っていない」
「はぁ? とにかく判りました。張の懲役に関しては口を閉じます」
「よろしい。組織全体は無理でも実行犯だけは取るぞ!いいな?」
「はい! あ、例の奴なんですが、メールで田村さんの所へ送られるようにしておきました」
「有難う。」

そのころ張は目ぼしいRMTサイトを回っていた。自分が以前活躍していたサイト等を。

見つけたところで、どうしようってんだ? あの刑事の考えることは判らない。
くそ! 今回は俺が”買う側”なんだ。 どれを見ても怪しく見える。
思い出さなくては・・・安全そうな、お手ごろ価格のキャラを探すんだ!
大体、殆んどがインチキなんじゃないのか? きちんと買える奴はいるのか?
看守はモニターの向こう側に座っている。何を検索しているかも判らないだろう。
張は思い切って、一番の自分の不安要素、塀の中の唯一の心の拠所を検索した。
ここを出た時のために取ってある”金”。確認せずにはいられなかった。
絶対に忘れることはない、その口座のパスワードで残高確認をすることにした。
ここを出るころには手数料等で1万程は引かれてるだろうが、微々たるものだ。
看守に挙動不審に思われないように精一杯、普通を装いそのネットバンクにログインをした。

あった! 誰にもばれていない俺の財産。 ふぅっとため息をついた。

「どうした?顔色が悪いぞ! なんだ汗をかいてるのか?」看守が近づいてきた。
「なんでもない! ちょっと疲れただけだ」

看守がモニターのこちら側にやってきて画面をチラッと覘いた。

画面にはRMTサイトがあるだけだった。張は間一髪仕事外の作業を見破られずにすんだ。

張は焦りと安堵で、その時HDDランプがいつもと違う点滅をしていたのは気づかなかった。

854 名前:知識ランサーのお話 投稿日:2007/01/18(木) 12:28:03 [ OsEuGMwM ]
最近このスレ活気があっていいですね。

自分もひとつ投下します。

講義中にふと思いついて、内職で書き上げた短いお話です。

855 名前:知識ランサーのお話 投稿日:2007/01/18(木) 12:28:49 [ OsEuGMwM ]
私は踊り手。



人里離れた深い洞窟。

その更に奥、闇の中。

異形の魔物たちに囲まれて。

今日も私はダンスを踊る。



パートナーは、細身の槍。

取り巻く観衆は魔物たち。

さあさ、寄ってらっしゃい見てらっしゃい。

楽しいダンスの始まり始まり。



スロー、スロー、クイック、クイック。

炎が周囲を明るく照らす。

ステップ、ステップ、回って、ステップ。

氷が静かに冷たく輝く。

右、右、左、左。

渦を描く炎と氷を背景に。

私のダンスは激しさを増す。



ダンスが終わり、息をつく。

ふと周囲を見回せば。

ダンスに魂を奪われた、かつて魔物たちであったもの。

あたりにあるのはただそれだけ。



…本日も熱心なご鑑賞、まことにありがとうございました。

856 名前:知識ランサーのお話 投稿日:2007/01/18(木) 12:37:01 [ OsEuGMwM ]
以上です。

思いついたきっかけは、ファイアー・アンド・アイスがファイアーダンスに似ているなあとか思ったことで、そう言えばランサーには(サイド、ダミー)ステップもあるなとか連想がつながって、こんな風になりました。
こんなもので良ければ読んでやってください。

857 名前: ◆21RFz91GTE 投稿日:2007/01/18(木) 12:37:35 [ wAKWTM7M ]
////**************************************////
  ■冬の軌跡:まとめサイト(だるま落し禁止)
  ■http://bokunatu.fc2web.com/SS/main2.htm
  ■現行SS速見表
  ■キャラクター紹介(一部ネタバレ含む) >>837
  ■Act:1 青空     前スレ>>962-963
  ■Act.2 意思を告ぐ者達  >>500-501
  ■Act.3 遠い空 >>835-836
////**************************************////


Act.4:NorthWindGate


 
 夏、それは青春の香り。夏、それは男の季節。夏、それは女の魅力を最大限に引き立たせる人類最高の叡智。
等と昔の先人たちは言っていたが、本当なのだろうか。青春の香りと言うのは分からなくも無いが残りの二つはどうなのだろう。連想するに…夏でわっしょい。海でわっしょいと言う事なのだろうか…。そう考えれば分からなくも無い。ただし、そんな事を常時連想しているのはただの変態さんだ。
 アレから僕達は出会った二人組みに誘われて古都の北東へと向かった。そこに一軒の大きな家がある。訂正、大きな家ではなくて大きなアパートだ。名前は『風吹くさざなみ亭』と言うらしい。外見こそまぁまぁ普通のアパートだが、一回はカフェになっている。そこには英語で北風と書かれた看板までぶら下がっていた。この北風とは一体なんなのだろう?
「あの…。」
とりあえずついてくるように言われてから何も喋らなかったが、ここに来てようやく第一声が出た。それもまたなんとも情けない声だった。
「ん、どうしたの?」
「えっと…ここは?」
「あぁ〜、ここが私たちのギルドの溜まり場。このアパートの二階に私がすんでて、家主さんもギルドから資金が入ってきて大助かりって言ってくれてね、ちょうど良いからここにいるのよ。」
「はぁ…。」
女性がとても嬉しそうな表情でハキハキと説明してくれた、その隣で未だに難しそうな顔をして色々と考えている男性が居る。
「…マスタ、お時間はよろしいので?」
考え事をしていた男性が口を開く、女性はその言葉にビクっと反応して空を見上げた。太陽で時間を計っているのだろうか?
「あ、もうこんな時間かぁ。クラウス、後は任せて良いですか?」
「もとよりそうするおつもりだった癖に…後の事は任せて早く行って来て下さい…。」
「あはは、ごめんなさいねクラウス。私はちょっと用事があるから後はこのクラウスに任せるね、説明は色々と質問するなり聞くなりでいいから。それじゃ、また後でね。」
そう言うと女性は回れ右をして来た道を走って行った。それをポカンとした様子で見送る三人。
「…さぁ、中に入ろうか。」



 「マスタ、私はコーヒーで。君達は何を飲む?」
「あ…いえ…お金がありませんから…。」
「気にする事は無い、ギルドの経費だ。」
そう言うとクラウスは懐からタバコを一本取り出して火をつける、一息ついてから煙を肺に送り込みゆっくりと口から吐き出す。
「さて、まずはこのギルドの歴史から説明した方がよさそうかな?…知って居るとは思うが。」
到着したコーヒーに手をかけてゆっくりと口元へと運ぶ、その様子をユランはただじっと見つめている。新米ウィザードからすればやはりこのウィザードはカッコいいのだろう。少し怪しげな雰囲気を漂わせ大人の空気を匂わせる。新米ウィザードじゃなくてもカッコいいと思わせるだろう。
「すみません、僕達故郷から出てきたばかりでして…まだ何も分からないんです。」
「私知ってます、先の大戦の英雄が残したギルドですよね。噂をよく耳にします。」
…僕は一体古都で何を聞いて回ったんだろう、イリアが知っていて僕が知らないというのは明らかに情報捜索不足だ。
「…このギルドは。」

858 名前: ◆21RFz91GTE 投稿日:2007/01/18(木) 12:38:16 [ wAKWTM7M ]


 夜、暑くて寝苦しい熱帯夜の中一人昼間居た草原に足を運んでいた。
昼間にクラウスが話してくれた事を少し信じられないで居た、誘ってくれたギルドがあの大戦時に動いていたギルドだとは思ってもいなかったからだ。
何故僕は誘われたのか、なぜあの人へ笑顔だったのか。ただただそれだけが気になるようになって来る。確かに今の僕じゃ彼女を守る事なんて出来ないだろう、でも何故守らなくちゃいけないのか…。
たったの二日、それだけの付き合いだけでしかない彼女を何で僕が守らなくてはいけ無いのだろう。男の子だから?そんな理由だけなのだろうか。
「…。」
草原の上で寝転がってみる、夜空はとても綺麗で遠い。高く高く、何処までも高く澄み渡るその虚無と言う空間を見つめているだけで引き込まれそうになる。偉大なこの空、その空は果てしなく広がる理想と言う名の元に広がっているのか、はたまた現実と言う鎖に縛られて広がっているのか。時々そんな事を考えたくなる。
僕はまだ駆け出しの冒険者、初歩的な呪文ですら満足に唱えられない。得意なのは体を使った運動や体操。とてもじゃないがウィザードとしての機能を全くと言っていいほど果たせない。魔力もたかが知れている。
「お、黄昏ているね少年。」
聞き覚えのある声が耳に届いた、ゆっくりと状態を起こし声がする方向に体を向けてみると、そこにはあのギルドのマスターの姿があった。
「ミトさん。」
「何か悩み事かな?」
ミトはゆっくりと歩き出してユランの隣に座る、あの時はあわててたり混乱してたりしたせいでよく顔までは見てなかったが、今は月明かりのしたでぼんやりとだが見える。
まだ幼い表情をしていて歳は多分僕と同じぐらい。いや、少し年上なのかもしれない。こんな幼い表情を残した女性があれほど大きなギルドを統括しているのかと思うと思わず脱帽してしまいそうになる。
「凄いですよねミトさんって。」
「ん?」
「僕と同じぐらいの年齢だと思うのに、あんなに大きなギルドをまとめてるんですから…凄いですよね。」
ユランは胡座から体育座りに形を変えて崖の下を何処までも広がる草原を見つめてそういった。隣に居るミトは両手を後ろに回し地面につけた状態で座っている。
「そんなことないよ。」
ミトはそのままの体勢で空を見上げた、一面に広がる星を見つめながらそう呟く。
「凄いのは私じゃなくて、ギルドを大きくしようと支えてきてくれた皆。それと、先の大戦で活躍したあの二人…ミルさんとアレンさんは本当に凄い人達だった。」
本当に暑い夜だった、寝苦しくて水浴びでもしない限り眠れそうもないほど熱い熱帯夜。その熱帯夜の中一つの風が吹く、とても心地よくて涼しい夜風だった。その風は昼間の風と同じように土の香りを含んだ、どこか懐かしい故郷の臭いにも似ていた。


ACT4:NorthWindGate


END

859 名前: ◆21RFz91GTE 投稿日:2007/01/18(木) 12:40:09 [ wAKWTM7M ]
どうも、21Rです…。(´・ω・`)
感想を頂きまして、ありがとう御座います。
そしてネタ切れ中ですorz

それにしても、この長編何時まで続くのやら…私も短編物に切り替えようかなぁ…。

860 名前:自称支援BIS 投稿日:2007/01/18(木) 15:30:05 [ 73WOFiF2 ]
前回、レイスでの話を書いた者です。

>>591-592
感想、ありがとうございました。返事が遅くなってしまってすみません orz
まさか感想を頂けるとは思わなくて・・・

最初で最後と書きましたが、偏見スレでの武道家&サマナーの部分を見ていたら、
また小説を書きたくなってきたので、つい書いてしまいました・・・w
今小説を書かれている、ドギーマンさんや21Rさん、キンガーさん等のような素晴らしい小説は書けませんが、
そこはもの書き初心者という事でご勘弁を・・・
(名前は一応付けましたが、これ以後小説が書けるかどうかすら分かりません)

では、駄文ですが武道家&サマナーの短編物語をどうぞ。

861 名前:自称支援BIS 投稿日:2007/01/18(木) 15:31:37 [ 73WOFiF2 ]
「ウインディ、お願い!」
背の低い、フードを被った少女が叫ぶと、急に竜巻が起こり、敵は動けなくなった。
「ありがとう。ケルビー、やっちゃって!」
今度は、灼熱の炎が出現し、敵を一瞬にして焼き尽くした。
「よしっ・・・2人とも、お疲れ様。少し休もっか」
彼女はそう言うと、敵が出現しない場所に移動し、腰を下ろした。
彼女はサマナー。火・風・水・大地の神獣と共感し、その力を発揮させて戦う職業である。
「2人共、ゆっくり休んでね」
彼女がそう言うと、ケルビーとウインディは姿を消した。
「さてと・・・ふぁ・・・私もちょっと寝ようかな、いい天気だし」
彼女は側にあった木にもたれかかって寝る事にした。

カン!カン!カン!
「ちっ、ブロックかよ。厄介な奴め・・・」
何か物音がしたので、彼女が目を覚ますと、目の前にはエルフが数体居た。
びっくりして起き上がり、よく見てみると、エルフ達の中心で戦っている人が居た。
「お、ようやく起きたか。早速ですまないんだが、ちょいと手助けしてくれないかい?」
エルフ達の攻撃を器用にかわしながら、彼はそう彼女に話かけた。
「あ、はいっ!」
彼女は、とりあえずエルフ達を倒そうと、ウインディとスウェルファーを呼び出した。
「ウインディ、いつものやつね!スウェルファー、バンブー出してあげて!」
彼女の声に反応し、エルフ達がこちらに来ようとするが、竜巻に閉じ込められ動けなくなった。
その直後、足元に水溜りが発生し、さらに水しぶきがエルフ達を襲った。
「今です!」
「サンキュー!」
彼は、全く動けなくなったエルフ達に、目にも止まらぬ速さで連続攻撃をしかけ、あっという間に倒してしまった。
そう、彼は武道家。己の肉体を武器にして戦う職業である。
「ふぅ・・・ありがとう、助かったよ」
「あ、いえ、どういたしまして」
お互いに大した傷は無いようだ。
そこで、彼女は気になった事を聞いてみた。
「でも・・・何でエルフがここに?」
「それは・・・おい、そろそろ出てきたらどうだ?」
「え?」
彼は、少し離れた場所にある茂みに向かって声をかけた。すると・・・

「・・・・・・」
そこから、傷だらけの戦士が出てきた。
「だ、大丈夫ですか!?」
彼女は駆け寄ると、鞄に入れておいたポーションを取り出し、戦士に飲ませた。
「ったく・・・しゃーねーな」武道家も近寄って来ると、戦士の傷の応急手当を始めた。
「・・・あり・・・とう・・・た・・・かる・・・」
戦士はこう言った後、動かなくなった。
「大丈夫、気を失っただけだ」
「良かった・・・でも、何でこの人は・・・?」
さっきからわけの分からない事ばかり続き、頭が混乱している彼女がそうつぶやくと
「多分だが、まだ剣の扱いに慣れてないんだろう。急に襲われて、必死に逃げてきたんだろうな」
戦士という職業は、敵を一撃で粉砕する威力はあるのだが、少々動きが遅い。
そのため、素早いエルフを、しかも複数相手にするのは厳しいものがある。
「で、何とかそこの茂みに隠れる事で、エルフからは逃げれた。だが、エルフ達のそばには・・・」
「・・・私が寝ていた?」
「そういう事」
「じゃ、じゃあ、あなたは私を助けるために・・・」
「か、勘違いするなよ!俺は・・・えっと・・・見つけた敵を倒さないと気が済まないんだよ!」
「・・・ありがとうございましたっ!」
「お、おう・・・」
「あ、もうこんな時間!?」
太陽はすっかり西に傾いており、夕焼けが段々暗い闇に染まっていく時間であった。
「すみません、私もう帰らないと。ケルビー!」
「あ、ちょっとまっ・・・」
「今日は本当にありがとうございましたっ!ケルビー、お願いっ!」
彼女はケルビーの上に乗ると、街の方角へと走って行った。
「・・・言えねぇよなぁ、おまえに一目惚れしたなんてよ・・・」
彼は、彼女の後姿を、見えなくなるまで見つめていた・・・

862 名前:姫の独り言 投稿日:2007/01/18(木) 18:18:33 [ ZF.lqOBY ]
初投稿させていただきます。


<アルパス監獄での一コマ>

「スィングインフィニティ!!」
目にも留まらぬ速さで敵を斬り付け、キクロップスに対峙する剣士。
そしてその頭上からメテオが降り注ぐ。剣士後方のウィザードが撃ち放ったものだ。
しかしキクロップスは未だ健在。狙いをウィザードへ変更し、歩みを進める。
軽く舌打ちをする剣士。後ろから追撃をかけるも無意味。
それがウィザードの火力に対する羨望か、あるいは自身の火力の無さに憤ってのものか。
そのどちらだろうと私は思案するが、即座に思考を停止。今はそうすべき状況に無い。
ほら、案の定キクロップスの攻撃を受けたウィザードは瀕死の状態にあるのだから。

ビショップは賛美の最中で、対応できそうにない。まったく・・・と内心思いながら、私はポーションを放る。
ついでに剣士にも放っておく。応急処置にしかならないが、それでも無いよりは良い。
もう一度距離を取り直したウィザードのメテオで何とか敵を仕留めることはできた。
遅ればせてビショがPTHを放つ。パーティーの状態も立ち直り、ほうっと一息。

「君、敵の足止めもできないのかい?」
瀕死から立ち直ったウィザードが言う。無論、剣士に対してだ。怒りよりも、嘲りを含んだような言い方だった。
剣士は答えない。
「デュエリングは習得していないのか?」
更にウィザードは問い詰めるが、剣士は沈黙を守ったままだ。見ると、剣の柄を握り締めた手には血が滲んでいる。
それほどまでに強く、強く柄を握り締めていた。弁明よりも黙することを、ただ耐えることを選んだのか。
私もビショップも、剣士の心情を察することはできたが、何も言わなかった。
一体どんな言葉が剣士に対する慰めになり得ただろうか?

ウィザードは何を言っても無駄だと悟ったのか、剣士の側を離れる。
それを機に剣士も立ち上がった。ここを去るのだろう。
そしてぽつりと一言。
「力不足だ」
私は何も答えない。
ただ、去ろうとする剣士の手を取り、傷の手当てをする。
剣士はこちらを一度も見なかったし、私も向こうを見なかった。
剣士の礼に対しても、私は頷いただけで言葉は掛けなかった。
どんな言葉も慰めになりはしないと私は知っていたからだ。

だから見えなくなった剣士の背中に言葉を掛ける。
「姫を守るのは騎士の役目なんだから。今度はしっかり・・・ね」
零した言葉は空中に霧散して消える。
私の言葉は彼に届かない。
届かなくたっていいのだ。
どんな言葉も今の彼には慰めにはならないのだから。

だけどきっと、思いは・・・思いだけは。




姫の一人称で話を進めてみました。
小説を書くのも初めてなので、見れたものではないかも知れませんが。
最後まで目を通して頂けたら幸いです。

863 名前:殺人技術 投稿日:2007/01/18(木) 18:42:37 [ E9458iSQ ]
ちょっと目を離したスキに物凄く進行してますね
さすがに全部は読みきれなかった(´・ω・)

>>862
武器変身の姫が語り手……
目の付け所が凄いです。
描写は物凄く切実で突っ込みどころが無いのに、最後の一文の隠喩が凄く上手いw

864 名前: ◆21RFz91GTE 投稿日:2007/01/18(木) 18:47:23 [ wAKWTM7M ]
>>862
Σd(дゝ)グッジョブ
昔、アルパスがまだ活気を帯びてた時代を連想しながら頭の中でアニメーションが流れました。
こういう話大好きです〜、文の作り方も周囲の状況も細かく書けていて素敵ですΣd(дゝ)グッジョブ
これからも是非是非投稿してみてくださいな〜。

865 名前:殺人技術 投稿日:2007/01/18(木) 19:04:37 [ E9458iSQ ]
数えたら、今日の一日で10レスも進んでるw
今ポチポチと書いてるんで後でカキコしま。
>>ドギーマンさん
なんだか、段々上手になっていってるのが分かります。
執筆速度も凄いなぁ、と関心……w
>>21Rさん
一人称の描写が上手いです。
ところどころウィットに富んだ言葉があってクスリときます、北風のくだりも笑いましたw
ギルドの説明も、あまりギルドって物に固有のイメージが無いんですが、それでも抵抗なく読めて、一人称小説が描けるのが羨ましいです。
>>自称支援BISさん
(*´ω`)

866 名前:名無しさん 投稿日:2007/01/18(木) 19:13:19 [ psw7Vx8o ]
>>きんがーさん
我慢できずに口座確認してしまったんですね・・。
看守にはばれませんでしたが・・
HDDランプ、PCの事は分からないんですが・・PASSが知られてしまったのかな。
どうなるんでしょう・・。

>>知識ランサーさん
和みましたー。
確かにランサはダンスっぽいスキル多いですね・・。
テンポ良く読むと楽しかったり・・v

>>21Rさん
前作、読み出すと止まらなく・・最後まで読んでしまいましたっ。
今更大分前に書いた前作品の感想は遅いかもしれませんが・・。
後・・個人的には長編が好きです〜。
ただ・・その一話一話が終わってしまうのが嫌なだけなんですが・・(笑
だから21Rさんの続編みたいに、前のキャラが時を経てまた出てくる・・みたいなのが凄い好きです。
これからも頑張って下さいっ。

>>自称支援BISさん
助けたのを慌てて否定した武道家に少し笑ってしまいました(笑
小説は自分の好きなペースで好きな時に書けば良いと思いますよ〜。
待ってますv

>>姫の独り言さん
描写が分かりやすく、ホントにその光景が頭に浮かぶようでした・・。
剣士が凄いカッコイイですv

>>殺人技術さん
こまめに見ていかないと読むのが追いつかなくなりますね(笑
チョキーファイルも楽しみにしてます〜。
チョキーのが悪魔っぽくなってファイルが止めたり・・等変なこと想像してますv

凄い活気が出てきたみたいで嬉しいです。
読むだけの自分が偉そうな事いえないんですが;
時間があればまた前のも読んでいきたいと思います〜。
ではこの辺で・・。

867 名前:ドギーマン 投稿日:2007/01/18(木) 19:23:56 [ at5Dv2Nk ]
>>838
前回までのあらすじ

ビーストテイマー&サマナーの幼女の魅力に
プライドを破壊されかけたウルフマン。

彼は自分を取り戻すために公園から逃げ出し、
古都西にやってきたのだった。


本編

―あ、あぶなかった・・・・。
ウルフマンは息を切らせて街道の端に身を休めた。

―おれは狼なんだ。絶対犬になんか・・・・・。

ピシーン! パシーン! キエエックゥゥ〜〜ン

謎の音に顔を上げた彼の前にあったもの・・・・

悪魔がコボルトを鞭でしばいている。

ピシーン! ギャッ パシーン! キエエックゥ〜〜

コボルトが恍惚とした表情でのたうちまわっている。

悪魔がウルフマンの視線に気づいたのか、彼に言った。

「ちょっとそこの犬、何見てんのよ。あんたも叩かれたいの?」

・・・・・・・・・・・・・・・・

「ワン!」
              それでいいのか?
                      続かないとも言い切れない。

868 名前:ドギーマン 投稿日:2007/01/18(木) 20:03:07 [ at5Dv2Nk ]
なんか一気に進んでるねホント。
ビックリしちゃったよ。

>キンガーさん
HDDが光る・・・・。気になります。

>知識ランサさん
いいですね。ランサの立ち回りを踊り、モンスターを観客に喩えている辺り、
とてもよかったです。

>21Rさん
私は長編のネタに詰まってる間、短編でも書いてみるといいかもしれませんね。
一つの物をずっと書いてると、肩が凝りますから(私だけかも)。息抜き程度にポンとw

>自称支援BISさん
いいですね。一目惚れですか。
こういうの、好きですよw
自分のペースで書くのがいいと思います。

>姫の独り言さん
アルパス・・・・久しく行っていませんが、あそこはRS有数の激戦地帯ですよね。
姫と剣士といえば、やっぱり身を挺して守る構図が浮かびます。

レスが急に進んでビックリしましたが、活気が出て嬉しいです。
初投稿で自信ないという人、私も初めてのときはそうでした。
今も書き込んだあとはドキドキしてますけどね。
自信や文章力とかその他諸々は書いていけば自然に身につきます。
とにかく、書いてみて、他の人に読んでもらえるのが楽しいと思えれば、
自然といい話が書けるようになると思いますよ。

869 名前: ◆21RFz91GTE 投稿日:2007/01/18(木) 20:27:50 [ wAKWTM7M ]
感想を頂いた皆様、ありがとう御座います。

>>868
私は別の所でも色々と小説書いてるので、詰まったときはそちらを書いてます。
描いてる途中に突然電波を受信しますので、その時メモを取ってまたネタが尽きるまでガーって書くタイプですね

870 名前:名無しさん 投稿日:2007/01/18(木) 21:10:23 [ o9MCCvmk ]
ホントに進みまくってる(*゚д゚)

>>21Rさん
短編は短編の良いところがあるように長編は長編の良いところがあると思いますよ。
キャラ設定もしっかり決まってるようですし、このままラストまで書いて欲しいと思います。

>>自称支援BISさん
武道サマナのコンビは大好きなのでこういう話は大歓迎です。
サマナ側は天然で気がついてないって感じなのが最高。
偏見スレの他のペアでの話も多少思いついたりはしてますが、SSにするには私の力量不足のようです。

>>姫の独り言さん
アルパスB3で全く似たような体験をした事があるので親身に読めました。
○○スキル無いの?って質問に無いと答える時はほんとに言い表せないほど情けないですよね。
仕方ない事なんだけども。

>>ドギーマンさん
やっぱりドギーマンさんは犬ネタがお好き・・ですか(笑)
HNの由来になったSS「ドギーマン」、保存させてもらって読み返してます。
あの話が私は一番好きです。
実際は選べないほどたくさん良いSS書かれているけれど・・

>>866
同じく私も感想ばかりです。
書いてもいないのに大きな事言いまくってます。気分悪くされたら申し訳ないです。

871 名前:殺人技術 投稿日:2007/01/18(木) 22:33:48 [ E9458iSQ ]
チョキー・ファイル

段々と……?

1−3>>656-658
4−5>>678-679
6−9>>687-690
10−14>>701-705
15-17>>735-737
18-20>>795-797

なんか凄いカキコの間隔空いてるなw

872 名前:殺人技術 投稿日:2007/01/18(木) 22:35:02 [ E9458iSQ ]
チョキー・ファイル(21)


"……そういえば、お前さっき、幸運だ、とか言ってたよな、あれ何のことだ?"

ベンチに座るチョキーに海の吹風が楽しそうに吹き荒び、潮騒はおしゃべりを止める気配はない。

チョキーはその喧騒の声を聞いてふとそれを言い、ファイルはあぁ、と気だるそうに吐息を漏らした

"私、F・Fの悪魔としての能力だ、この能力は魔力と違って固有の物だから、お前には使えない"

チョキーは俯き加減に何事かを考えると、続けて問い掛けた。

"……なぁ"

"殺すぞ"

"え?"

チョキーはどきっとして戸惑うと、ファイルは語気を強めた。

"地下界の事を聞いたら殺す、精神が同化しているとは言え、上級悪魔の私ならいつでもお前の体から抜け出して、外からお前を殺す事が出来る──今となっては抜け出しても損なだけだがな"

ファイルはチョキーを脅す様に言ったが、チョキーはファイルに対してそれ程の恐怖を感じなかった為か、少し沈黙するもすぐに言葉を再開した。

"なぁ、今お前、私の考えを読んだのか?"

"──いや、勘だ"

ファイルは不機嫌そうに言った。

悪魔の勘と言えば、何かと信憑性のありそうな響きだが……と、チョキーは思った

日光は微かに降り始め、波の反射光はより一層の輝きを増して、嬉しそうに揺れている。

チョキーは特にする事もなく、宿はシーフギルドがなんとかしてくれるだろうと思い、時が経つのも忘れてベンチに座り続けた。

………………

………………

………………

"──地下界の事は言えないが、どうしても気になるなら面白い話をしてやろう"

チョキーはずっと黙りこくっていたが、ファイルはその暇と沈黙に耐え切れなかったのか、痺れを切らしたかの様に言葉を紡いだ。

"何の話だ?"

チョキーは頭の中で軽く笑って応答し、ファイルは簡潔に答えた。"お前の杖の話だ"

チョキーは想定していた答えとは全く見当違いの言葉が飛んで来たことに眉根を寄せ、今度はファイルが小さく笑った。

"この杖の事か?"

チョキーは懐から小さな緑色の杖を取り出した。

確かにこの杖は珍品と言える物だが……それがファイルと何の関係があるのだろうか。

"そうだ、それはワンダーワンドという名前だろう"

ファイルは杖を見て嬉しそうに言うと、チョキーは目を見開いた。

"なんで知ってる?"

チョキーがそう訊くと、ファイルはもったいぶって言った。

"その杖はな……俺の親戚だ"

873 名前:殺人技術 投稿日:2007/01/18(木) 22:38:49 [ E9458iSQ ]
チョキー・ファイル(22)


チョキーは出しかけた言葉、というより吐息を呑み込んだ。

"その杖だけではない、今地上界に出回っている、俗にユニークアイテムと言う物は、全て親戚だ"

チョキーは手元の小さな杖を凝視した。

この杖がファイルの親戚?

"どういう事だ?"

チョキーはそう聞かずにはいられなかった。

"つまりだな、ユニークアイテムというのは、人間が作った一部を除けば、全て地下界の、私の様に固有の能力を持った上級悪魔が死んだ時にその魂と生前と能力を有した物の呼称だ"

ファイルはそう言って、続けた。

"つまり、その杖に宿った悪魔の生前持っていた能力は"透明"になる事と、死してなお蒸発せずに残る程の"魔力"だ、そしてユニークアイテムの名前は、その悪魔の名前だ、その杖の場合はW・Wだ"

"ちょっと待て、そのユニークアイテムの名前が悪魔の名前というのはおかしくないか?ユニークアイテムを拾った物が悪魔の名前を知らなければ、全く関係ない名前になるだろう"

チョキーはファイルの言葉に異議を唱えると、ファイルはチョキーの頭の中でぶんぶんと首を横に振った。

"いや、そうではないのだ、実際に私はW・Wという悪魔とも面識がある、それに──"

ファイルは一旦言葉を切ると、どこか恥ずかしそうに言った。

"名前、言葉には魔力がある、それは地下界だろうと地上界だろうと──天上界だろうと同じで、誰も説明出来る者は居ないが──言葉とは、名前とはそういう物なのだ"

ファイルは誰が聞いても曖昧と思える事を早口に言った。

まるで聖書の様な言葉だが、とチョキーは考えたが、聖書は知らないので深くは考えられなかった。

「おい、チョキー!」

突然そう呼ばれてチョキーは弾かれた様に首をもたげ、興奮しかけていたファイルの気配がすうっとチョキーの中に溶け込んだ。

「………………」

チョキーは首だけ動かして歩み寄ってくるケブティスを見て、ケブティスはチョキーに聞こえない様に小さく溜め息をついた。

「カリオに聞いた、俺の代わりに新年祭のパーティに出席したいらしいな」

チョキーは目を見開き、心の中で舌打ちした。

黙ってればいいものを……「あぁ、どうしても外せない重大な用事があるんだが、招待状を無くしてしまったんだ」

チョキーはそう言って、ケブティスは苦笑いを浮かべた。

走ってここに来たのか、輪郭に汗を滲ませたその容貌は、いつのまにやら落陽で橙色に映されている、汗の雫はより明るい山吹色だ。

「お前がそこまで言うんだから相当な用事なんだろうな、俺なんか毎年呼ばれてるが正直立って飯をつまんでるだけのつまらん仕事だ」

「ブリッジヘッドの魚はクリーム臭くて不味いし……」今度はチョキーが橙色の苦笑を顔に被せた。

「じゃあ、私が行ってもいいのか?本当にその新年祭に」

チョキーはそう言うと、ケブティスは頷くように首を縦に振った。

「お前が行ってくれりゃ万々歳だ、ついでにカリオも連れて行くと良い、ボディガードの癖に俺よりはしゃぎやがる」

こっちは最初からそのつもりだ

「ん?」

ケブティスは何か雑音を察知したかのように首をかしげ、チョキーはケブティスに疑問の眼差しを投げかけた。

「どうした?」

「いや……さっきから思ってたんだが」

ケブティスはスキンヘッドの隅を爪を立てずに掻いた。

「お前、なんか変わったな、雰囲気」

「そうか?」

チョキーは慌てて言い、ファイルは固唾を飲んだ。


太陽はフェリーでギザギザに縁取られた西の水平線に半ばまで沈み、青かった海は血の様に赤く染まる

血の海は黄金色の輝きを湛えて、ブリッジヘッド全体を体の温まりそうな暖色で包み込んだ。

かたや西の空は朱に染まったドレスに紫色の雲のフリルをぶら下げ、かたや東の空は紺のドレスに輝く星々のラメを振りまいて、次第に暖色の令嬢は血の海に頭から飛び込もうとしていた。

「ファイル」

"どうした?"

チョキーは眩し過ぎる波の姿を眺め、その瞳には諦観が浮かんでいた。

「四日後だ、四日後のパーティーの終わりを告げる鐘が鳴った時、お前の目的は達成に限りなく近付く」

チョキーは左手にぶら下げたファイルの親戚を握り締めた。

白い杖の柄から、紅い雫がぽたりと一滴落ちる。「必ずだ」

874 名前:携帯物書き屋 投稿日:2007/01/18(木) 23:49:26 [ qlAZ9Vo. ]
第1話>>645-646第2話>>692-694第3話>>719-721第4話>>762-764第5話>>823-825

燃え盛る爆炎と、爆風と、爆音の中から飛び散る鉄屑と共に落下する人影が現れる。
ニーナだった。
頭上から垂直に落下し、落下速度は加速するばかりで、死へのカウントダウンは雷光の如く進められていた。
「ぅ……」
重い瞼を微かに開き、緋色の眼からぼやけた眼光が灯もる。
一度眼を閉じ、大きく双眸を見開く。既にビルの中腹部分まで来ていた。
ニーナはただれかけた手で鉄格子を掴み、勢いを殺しその場に留まった。
「あぁぁああっっ!!」
落下速度がそのまま衝撃となり、彼女の肩が過負荷を起こし悲鳴を上げる。
ブチブチと千切れる筋肉の激痛を、歯を食い縛りながら耐え、逆の手で鉄格子を掴み体を起こす。
今にも千切れそうな腕を押さえながらニーナは状況を確認すると同時に
彼女が持つ光属性が得意とする治癒魔法を開始する。
みるみる傷が癒え、満身創痍だった彼女の体が再び力強さを取り戻した。
(ラルフ…ラルフ=カースはどこ!)
せわしなく彼女の鷹の眼と称されるその双眸で辺りを見回すが、
大陸中で名をはせらせた盗賊を捉えることはできなかった。
(いない…? いえ、必ずいるわ。これは恐らく奴の特技…)
細心の注意を払いながら槍を構え、敵の強襲に備える。

ひたすら虚無感だけが流れる。

彼女は緊張感を保ったまま近くの角まで下がった。
(ここなら背後から襲われることはない。正面の可能性も低い。来るなら上か下ね)
ニーナは首への一撃を避ける為に右腕で覆うように構えた。

その時、彼女は視界の左上方に赤い死の斧を見た。
「――――!!」
空いた彼女の左首筋に死の斧が振るわれる!
それは防ぎようのない一撃……のはずだった。
しかしニーナは生前に培われてきた動体視力と反射神経をフル回転させ、
斧の切りっ先を見た直後、瞬時に反応し、弾くのでも防ぐのでもなく、
空中へ身を投じたのだった。

再び落下する体を上手く操り、槍を引っ掛け半転。鉄の地上に着地する。
男は少し苦い顔をしただけで、すぐに平静を取り戻し、全身を霧に包み再び姿を消した。

さらなる沈黙。ラルフ=カースは姿だけでなく、気配、殺気、そして足音までも消したのだった。
ニーナは先程と同じ構えをした。
(これは高位シーフのみが使える技…。それにしても厄介ね。でもこの技にも弱点がある。
速い移動、そして攻撃の際には解ける筈。その証拠にさっきは姿が見えた。そこを狙うし
かないっ!)
ザシュリ。肉を削る嫌な音。
「ぐっ――――!」
赤い斧は深々と脇腹に刺さり、その血でさらに朱に染めていた。
鮮血が舞う。ニーナが気を緩めた一瞬の隙に、下から現れたラルフが彼女の脇腹を切り裂いたのだった。
武器に付着した血を舐め、確実にとどめを刺すべく再び姿を消す。
「ふ…馬鹿ね…」
激痛に表情を歪め、傷口に治癒を掛ながらニーナが呟いた。
「だってあなたはもう、私の策中にかかっているのだから」
武器を弓に持ち変える。
指先から光が伸び、矢を形作っていく。
「はあああぁぁっ」
ニーナの右腕から光の奔流が流れ、光の密度が増す。
「ライト、ベロシティィィッ!!」
矢が放たれる。光の矢は虚無の空間へ唸りを上げながら飛んで行く。
が、次の瞬間矢が大きく屈曲し、空中に刺さった。
空中から赤い液体が流れたかと思うと、そこから右胸を射抜かれたラルフ=カースが現れた。
「何故……?」
男が虚ろな眼で問う。
「血の……臭いよ。私のね」

875 名前:携帯物書き屋 投稿日:2007/01/18(木) 23:50:16 [ qlAZ9Vo. ]
俺が迷っている内に、追い掛けてきた吉沢との距離が縮まっていく。
「はぁ、はぁ、はぁ」
既に体力が限界に近かった。長年運動をしていない効果がこんな場所で発揮されるとは。
体力の限界が来る前に工事現場の囲いで行く先は行き止まりだった。
「くそ…囲いなんか作りやがって!」
俺は囲いに『立ち入るな危険』という札を持ったマスコットキャラクターらしき物が
描かれている絵を思いきり殴った。表記の内容に対し何故かここの外側ではなく内側に描かれている理由が永遠の謎である。
俺は無駄な思考に悔いると同時に、はっとして後ろを振り返った。
その先には鬼の形相を浮かべ、怒りの炎を背景効果に太めの鉄パイプを握る吉沢がいた。
「よう。死ぬ準備はできたか?」
どうやら俺の人生はここまでのようだ。

突如、吉沢が力が抜けたように片膝をついた。
「またあいつ人の生気を惜しみなく取りやがって…」
吉沢が吐き捨てるように呟いた。
「生気?」
俺は思わず聞いていた。
「そうだ。あいつらは自己で貯蔵している以上の魔力を消費すると契約した
俺らから補充するらしいぜ。お前も気を付けな」
そう言うと吉沢は立ち上がり、「じゃ、殺す」と言った。
「ちょっと、気を付けなとか言いながら…矛盾じゃあ…?」
俺の言葉も届かず吉沢は鉄パイプを振り上げた。


「血の、臭い…か」
右胸に大穴を空けながら既に虫の息のラルフが呟いた。
「私は眼だけでなく耳や鼻もいいの。急所を討てなかったあなたの失敗よ」
「そうか。ならあれを受けたのもわざとか…」
ラルフは微笑を浮かべ、空いた右胸に手を当てた。
すると、空いていた大穴がみるみる塞がっていった。
ニーナに驚愕の表情が走る。
「馬鹿な…治癒ですって? あなた、光魔法なんか…」
そう言うと男の笑みが増幅する。
「ファーストエイド、一場凌ぎだ。それより感謝しよう、ニーナ=オルポート。
俺を追い込んでくれた事を」
瞬間、ラルフの全身が赤く輝いた。皮膚からの光は服を貫通し全身の黒を塗り潰した。
ニーナの表情が驚愕から絶望に変わる。
「そんな…サバイバル…モード…」


振り上げた鉄パイプを吉沢はそのまま振り下ろした。
吉沢の予定ではこれで鈍い音が響く筈だっただろうが、残念。響いた音は高かった。
俺はとっさに取り出したエア・ガンでそれを防いでいたのだ。
「なに…?」
吉沢が驚きの表情になり、そのまま怒りの表情に変わる。
「こんの――――!」
再び振りかぶり鉄パイプを振り下ろした。それをまたエア・ガンで受ける。

甲高い音が鳴り響く。魔法で強化されたエア・ガンは傷一つ付かず、
逆に鉄パイプが折れ曲がった。
俺は横へ飛び距離を取った。
「なんだよこれ……」
苦い顔をした吉沢が再び振り上げる。そこを狙い俺は予め詰められていた銃弾を撃った。
撃たれた銃弾は鉄パイプに当たり、例により爆発を起こす!
「ぐっ――――!」
衝撃で手から抜け出した鉄パイプは綺麗に弧を描いて落下した。
それを拾おうとした吉沢に俺は銃口を向ける。
「手を挙げろ」

少しの間の後、苦虫を噛み潰した表情をしながら吉沢は手を挙げた。

876 名前:携帯物書き屋 投稿日:2007/01/18(木) 23:50:58 [ qlAZ9Vo. ]
サバイバルモード―――

それは狂化とも呼ばれ、発動すれば攻撃的思考になり、パワー・スピードを倍増させるが、瀕死の状態でしか発動できず使用できる者は少ないと言われる。

「どうして貴方がそれを…」
「言っただろう。俺のは治癒ではない、その場凌ぎだと」
ニーナが、はっとした表情に変わる。
「ファーストエイド…」
ラルフは僅かに頷くと、戦闘の構えを取る。そして男が手に、その体躯と同色の赤い斧を取り出す。
赤い斧は更なる狂気を纏いながらニーナに殺到した!
ニーナは飛翔し一段上に上がる。
同時に死の斧の攻撃で舞った鉄の粉塵が彼女の肌に小さな傷を作り出す。
更に攻撃は続く。威力が倍増されたその破壊力は脅威で、
そこから発生する風の刃が直撃を避けても露出されている手や足、頬を切り裂く。
「ぐぅっ!」
攻撃をかわす度に増える傷にニーナの悲痛の声が漏れる。
自慢の俊敏さも徐徐に鈍り、以前の鋭さは失われていた。
よろけながらも、ニーナは宙を舞い残りの力を振り絞り空中から渾身の一撃を放った。
「ライト、ベロシティィッ!!」
高密度の光の矢は、大きく屈曲すると標的に向かって直進する。
対するラルフは動じることなく、片手に7本、合計14本の赤い斧を迫り来る光の矢に同時投擲した。
1本の光の矢と14本の斧が空中で激しくぶつかり合う。やがて互いに相殺し、轟音となって消えた。
「どうした。俺を撃ち抜いたときの鋭さが微塵も感じられんぞ?」
ラルフが勝ち誇り不適ない笑みを浮かべる。
攻撃が再会される。休む間も与えず、その冷酷な攻撃は彼女の誇りである黄金の衣を朱に染めた。
「攻撃をしなければ勝てんぞ?」
(これ以上攻撃すればショウタに影響が…)
彼女の魔力残量は空同然だった。
それ故大きく魔力を消費する回復魔法を使用せず、渾身の一撃に賭けた。
だがそれも防がれてしまった。彼女が生き残るには契約者であるショウタの生気を接種するしかなかったのだ。
だが彼女はそれをしなかった。彼女は恐れた。他人から何かを奪うということを。
ニーナは鉄の粉塵を舞いながら飛んでくる死の赤い斧を跳んで避けた。
するとそこに赤い残光が高速接近し、鋭利な蹴りが放たれた。
腹部に直撃しニーナは鮮血を吹きながらビルから落下した。

877 名前:携帯物書き屋 投稿日:2007/01/18(木) 23:51:41 [ qlAZ9Vo. ]
鮮血を散らしながら落下するニーナにラルフは追撃を掛けるため自らも飛び降りた。
(視界が霞む……これで目を閉じたら楽になれるかな…)
『――けるな』
(え――――?)
ニーナの脳裏にある言葉がよぎった。
(ショウタの声……。確か前にも一度こんなことがあったな)
以前、翔太が通り魔事件の報道を聞いた時にも翔太の思考が強い形となりニーナに届いたことがあった。
今度はそれが言葉となりニーナに届いたのだ。
『――――負けるな!』
刹那、ニーナの視界に翔太の姿が映った。彼女の心が奮える。
彼女に再び戦闘意志が灯もった。
瞬時に戦闘思考に切り換える。

(地面落下まで残り4秒、ラルフ=カースと接触まで残り3,5秒)
(ペイルライト紋様の刺青解除。更にスクリューフライアー瞬間換装)
――――1秒
「マジカル――――」
(弓をセット。不足している魔力を契約者ヤジマショウタの生気から補充。光の矢を生成)
――――2秒
「――――マシンアロォォッッ!!」
大量の光の矢が男を襲う。同時に男も14本の赤い死の斧を一斉投擲。
しかし矢は相殺させ、再投を許さず男の手の甲、腕、肩、股、肺、心臓、さらに額に刺さり穿つ!
――――3秒
(レビレイト展開。衝撃を吸収し着地!)
――――4秒!

遅れてラルフ=カースが落下する。
ラルフは今度こそ完全に動きを止めた。

突如ラルフに変化が起こった。
男の衣服、武器、そして肉体が左胸を中心として吸い込まれていく。
やがて完全に消失し、跡から一欠片の赤く輝く石が現れた。
彼女は最期まで見届けると、現れた赤い石を拾い上げた。

「これが………レッドストーン」

878 名前:携帯物書き屋 投稿日:2007/01/18(木) 23:53:25 [ qlAZ9Vo. ]
ニーナが手に取ると、それは急に激しく光り出したかと思うと、彼女の左胸に吸い込まれるように入った。
すると全身の傷が嘘のように癒えた。

そこで翔太のことを思い出し駆け付ける。

ニーナが駆け付けると、翔太は急に力が抜けたように倒れ、彼女がそれを支える。
「ショウタ…ごめんね」
すると翔太は微笑んだ。
「ニーナ……良かった」
そして生気の大量消失により完全に気を失った。

ニーナはありがとうと呟き、前に向き直った。
「俺は殺されるのか?」
吉沢が彼女を見据え言った。
「いいえ。ショウタがそうしなかったから手は出さない。早く消えなさい」
吉沢は少し苦い顔をし、悩む動作を見せてから向き直った。
「これじゃあ後味悪いからな。代わりに情報を教えてやる」
「情報?」
ニーナが怪訝な表情をする。
「そうだ。俺らはお前らとここで戦う前、同じ様な奴らと3ペア戦った。
実際は軽く手を合わせただけだが、その中でも蒼い髪の剣士には気を付けろ。
俺が言えることはこれだけだ」
そう言い残し吉沢鉄治は去った。
ニーナはしばらくその場に立ち惚うけていた。
(蒼い髪の剣士……)
ニーナは翔太を担ぎ翔太の家に着いた。
手慣れない手付きで汗を拭き、ベッドに寝かせた。

翔太の寝顔を見ながら、ニーナはどこか辛く、悲しそうな笑みを浮かべた。
「ショウタ、ごめんね。もう、ショウタに無理はさせないわ。今までありがとう」


朝が来る。心地好い陽射しで俺は目が覚めた。
起き上がると妙にだるかった。
それでも今日は日曜なのに理不尽にもテストで学校があるので行かなければならない。

――――待て。何かおかしい。
目が覚めて思考がクリーンになる。
「そうだっ、おいニーナッ!」
そういえば昨日はあの工事現場で…。何故俺がここで寝ているのか分からないがニーナなら知っている筈だ。
「おいニーナ」
俺の部屋にはいなかった。
「おい」
声を出しながら狭い家を回る。しかしどこにもニーナは見当たらなかった。

時間も迫ってきているのであいつはその内沸いて出てくるということで学校へ向かった。

だが、俺が今ここに生きているということはニーナは勝ったのだろう。
そうじゃないと俺が生きている理屈が見当たらない。
「じゃあ、もう事件は終わったんだな」


学校に着くと前の席の佐藤洋介が話しかけてきた。
うざったいので軽く無視した。

あっという間に学校が終わる。俺はいつものように帰路についた。

日は沈みかけ、朱色の空が広がる。
帰り道で例の工事現場に立ち寄ったら、鉄格子は崩れかけ、辺りは警察と野次馬ばかりだった。

家に着く。ベッドに横たわり、ただ天井を見つめた。
窓から差し込む夕日が眩しくて、俺は腕で双眸を隠した。
「終わったんだよな、もう。帰って来たんだよな、俺の日常が。でも――――
別れの言葉くらい、言ってくれてもいいじゃないか」

その夜もニーナは現れなかった。

879 名前:携帯物書き屋 投稿日:2007/01/19(金) 00:19:12 [ qlAZ9Vo. ]
流れにのって自分も投下。みなさんに忘れられないためにもいつもより急いだかも・・・。

とりあえず物語は一旦ここで仕切らせてもらいます。(リアで一斉考査が・・・;)
次に書き込むときから少し話題にもあった題名を付けてみようかな。ショボいのしかつけられないけど・・・w

今回はずっと戦闘しっぱなしでした。正直疲れました。やはり戦闘は難しいです。
それにしても伸びが・・・

>>ドギーマンさん
相変わらず執筆速度が早いですね。物語もよく練れてますし。
その発想力に嫉妬・・・w

>>きんがーさん
先が気になりますね。自分にはミステリーは書けないのですごく尊敬します。

>>21Rさん
以前書かれたお話は半年以上前に読んだのかな・・・。それでも面白かったことを覚えています。
続編っていいですよね。やっぱり主人公はロr(ry

>>知識ランサーのお話さん
とても綺麗な小説でした。そういわれるとランサーはそんなスキル多いですよね。

>>自称支援BISさん
全作品も見てましたよー、レイスの話。
この2キャラはイイですよね。まったりしましたw

>>姫の独り言さん
初めてでここまでとは驚きです。自分なんて酷いものでした。
かなり前に投稿したことがありましたが恥ずかしくて見れません。
最後に伝えたいような言葉がとてもよかったです。

>>殺人技術さん
どんどんチョキーがダークサイドに・・・w
ちょっとした新展開ですね。Uにそんな秘密があったとは・・・・・・

>>828
またまた感想ありがとうございます。
いつか拝見できることを期待してます。

880 名前:名無しさん 投稿日:2007/01/19(金) 00:30:02 [ o9MCCvmk ]
>>殺人技術さん
四日後の新年会パーティ、何かが起こるのを期待させます。
Uアイテムが元々は悪魔だったというのも新発想ですね。確かにそういう逸話があってもおかしくないです。
ということはファイルもいずれは・・と考えると際限なく妄想が膨らんでしまう・・
しかし、情景の描写が秀逸なお陰でただチョキーがケブティスと話しているだけというシーンも想像しやすいです。

>>携帯物書き屋さん
いやーー読み応えある戦闘シーンでした。
サバイバルシフ、実はサブで居るんですが・・こうして文章にして読むと物凄い事やってる気分になります。
実際中の人は焦りまくっててやばいやばい言いながら逃げ回ってるだけですが(笑)
ニーナはどこへ・・剣士とは・・続きが気になります。

881 名前:第24話 刺客 投稿日:2007/01/19(金) 04:02:06 [ kHEFNWhg ]
運ルパンと相談した結果、ロトトロルを買うことにした私たち。
雪月の商品は3億以下はないが、決して高くは設定していない。
どうせ何度も売るのだろうから、薄利多売なんだろう。
今度の仕掛けをデルモにも話したところ、かなり乗り気で参加してくれることになった。
連連が雪月グループなら必ず偽メールを送りつけて来るはずだ。
とりあえず、全容を知っているメンバーでPT会話をすることにした。

ぎゃおす   おーし! 注意事項を言うね〜
◇運ルパン  お願いします^^
◇デルモ   おk
◇タンク   どぞ
ぎゃおす   まずね、トーナメントは32人でやるよw
◇タンク   そんなに出るの?w
◇運ルパン  出るとは思えないなw
ぎゃおす   へへw これは架空のトーナメントなんだよ!実際に対戦するのは5人だけ
◇デルモ   ? 連連には32人でやってるように見せかけるの?
ぎゃおす   そそw 片側のトーナメントにみんな入れて、順々に負けていってもらう
◇タンク   え〜。負けたくないなぁ。
◇運ルパン  それで連連にID情報を教えるんだ?
ぎゃおす   ニセのねw
◇デルモ   う〜ん・・・・・・
◇タンク   どうしたの?
◇デルモ   ・・・・一人足りなくない? 32なら5人いないとまずいでしょ?

その時、左上のコンソールに”筋駕”(20)がPTに入りました と表示された。

ぎゃおす   みなさん挨拶してね^^ お久しぶりとw
◇筋駕    みんな元気?
◇タンク   ぁ ぁぁあああああああ! 
◇デルモ   キンガーさん??
◇筋駕    ですわw
◇運ルパン  お久しぶりです^^=3
ぎゃおす   そうなんだよw ”新人”の筋駕さんはあのキンガーさんなんだよw
◇運ルパン  ひどい当て字ですね・・・・
◇筋駕    すんませんw
ぎゃおす   決勝は筋駕さんでねw 
◇筋駕    まぁ、もしそいつがスパイなら、喜んで引き受けるよ!
◇タンク   元気だった?
◇デルモ   もう戻ってこないかと思ってたw

〜〜〜〜これまでのことをみんなで検証しながら昔のようにチャットした〜〜〜〜

キンガーさんの役目はなんといっても、”ロトトロル”購入をすること。
そして連連にIDを見せつけること。
例え連連がスパイじゃなくてもあの値段なら転売できる。
どちらにしても連連にはアイテムは渡らない仕組みになってる。
後は手ぐすね引いて待っている連連に今日からでもトーナメントに出てもらうだけだ。

ろくに狩りもいかずにインしているのはそのためだろう。

私と運ルパンは筋駕にゴールドを渡し、アイテムを買いに行かせた。

882 名前:第25話 レク 投稿日:2007/01/19(金) 05:01:20 [ kHEFNWhg ]
ギルドレクをやると連連に伝えた時の喜びようは凄かった。
組み合わせは是非自分にやらせてくれと言って譲ろうとしないのである。

好きにさせるわけがないでしょうがw

もう出来上がってるから変更しないと言ったときの落胆振りが見事でもあった。
運ルパンの一言がきつかったのも、面白かった。

◇運ルパン  何か困ることでもありますか?
連連     いやないけどさ・・・

結局、全ての試合が終わるまでに3日かかった・・・5試合だけどw
連連との試合中は決まって聞かれることがあった
「メインの名前は?」
「ねね? RS登録する時はやっぱフリーメールだった?」
キンガーさんはきちんとこう答えた
「メインはこれじゃなくて、400上の戦士なんだー。名前はタンタンタヌキ」
「このyahooIDはそれように作ったんだよ^^」
ばっちりである。ほかの人はテキトーに答えるようにしてもらった。

連連がただの詮索好きなだけなら問題なし。
本当にスパイだったならどうしよう? そこまではあまり考えてなかったみんなだった。
そんな話をチャットしているときにオフ会をしよう!ということになった。
場所は東京。私とデルモとキンガーさんは東京、運ルパンは新潟、タンクは大阪在住。
きっと3人しか集まれないだろうなぁ〜なんて話していた。
運ルパンとタンクはこれそうにないので、3人で3日後の日曜に待ち合わせることにした。

日曜日の夜、私は何故約束しちゃったんだろう?なんて待ち合わせの場所にきてから後悔していた。
みんな、ぎゃおすが女だなんて判ったら引くかなぁ? 目印は黒いキャップを逆さに被ることだった。
少しだけ化粧を厚く塗ってしまったのも不安材料なんだよね〜w
本当に来るのかなぁ? 馬鹿みたいに真に受けて来たのは私だけなんじゃないだろうか?
すると、待ち合わせ場所の通りの向こうからそれらしい男の人がキョロキョロしながら歩いてくるのが見えた。

RSみたく緑色に頭上に判りやすくメンバー表示があればいいのにぃ!

「あの・・・」
「はぃ?!」びっくりして私は大きな声を出してしまった。
え? この人、黒いキャップを逆さに・・・正確にいうとこの小柄な女性。
「待ち合わせですか?・・・デルモです・・・」
「ぁ、あの、ぎゃおすです・・・」
少し間があいた後、目は合わせられないけど、微笑みあった。
「キンガーさんには良い目印でしょうね? 二人とも黒いキャップを逆さにつけているから^^」
「賭けますか?」
「何を?」
「キンガーさんが男かどうかw」
5分ほどして、不意に後ろから声をかけられた。
「黒いキャップが似合わない二人は、我がギルドの二人かな?^^」

883 名前:ドギーマン 投稿日:2007/01/19(金) 12:09:53 [ at5Dv2Nk ]
新興王国ビガプール
国王を中心に貴族が支える王国。
シャママはその貴族の家の一人娘に生まれた。
シャママが9つになったころ。
彼女はその日も窓から外を眺めていた。
窓から見えるもの、それは遥か遠くに青く見える山だ。
乳母のクレメが本を読み聞かせるあいだも、教育係のファーガスの授業のあいだも、
彼女は上の空で窓の外に見える山を眺めていた。
ファーガスは自分の授業を全く聞いている様子の無いシャママに心配になって聞いた。
「お嬢様、一体何を見ておられるのですか?」
そう言って彼女と同じように窓の外を眺めるが、彼にはただの景色にしか見えない。
「山」
顎を重たそうに手で支えながら、彼女は答えた。
「山?」
「うん」
怪訝そうに聞き返すファーガスに、彼女は目もくれずに山を眺めていた。
「山を眺めるのが楽しいのですか?私には何の変わりもない景色に見えますが」
「ううん、そんなんじゃないの」
「では、なんでまた?」
シャママは椅子にもたれかかる様に伸びをしながら答えた。
「あの山の頂上までいきたいなぁ〜って思っただけ」
ファーガスはふっと笑った。
「なによ?」
シャママはファーガスの態度が気に食わなかったらしく、むっとした。
「いえ、幼いうちはそういうものですよ。しかしお嬢様」
「んぅ?」
シャママは唇をとがらせ、ファーガスを睨みむように見上げた。
「お嬢様はいずれは貴婦人となられるお方、子供のうちはそういった好奇心を持つのもよいことですが、
早く大人になりませんとな」
シャママはその言葉が気に食わなかったのか、
机の上のペンと羊皮紙の束をファーガスに投げつけた。
「わっ、お嬢様。おやめください!」
腕を前に出して防ぐファーガスに、シャママはさらに黒インクの入ったボトルを投げつけた。
「うおっ服が!」
「ふん」
黒くなって騒いでいるファーガスを背に、シャママは部屋を飛び出した。

シャママがスカートを持ち上げて廊下を走っていると、
それを見つけた侍女のウルカが叫んだ。
「お嬢様!ファーガス様は!?」
「知らない」
とだけ答えると、シャママは走る速度を加速させた。
「お待ちください!ちゃんとお勉強しなくては」
やっぱり大人は子供より足が速い。シャママは諦めて立ち止まると、追いかけてきたウルカに向き直った。
「ねえウルカ。空はなんで青いの?」
「え・・・」
ウルカは突然の質問に戸惑った。
「星はなんで光ってるの?」
「それはですね・・・」
「太陽は西に沈んだあと、どうしてまた東から出てくるの?」
次々と出てくる質問にウルカは困った。
「ほら、ウルカでもそんな事も分からないんだから、勉強したって無駄よ」
そう言うとシャママはまた振り返って走り出そうとした。
その彼女の小さな細い腕をがしっと掴んで、ウルカは怖い顔をした。
「いけません!お部屋に戻りましょう」
その顔を見たシャママは突然しゃがんでしゃくり上げ始めた。
「ひっく・・・・ひっぐ・・・」
余りの剣幕に驚いたのだろうか。
「あ、お嬢様・・・・申し訳ありません。私は決して怒ったわけでは・・・」
そう言って手を離したウルカの向うずねをシャママは蹴りあげた。
「ふおっ!?」
脚を抑えてしゃがみこむウルカに、シャママは
「ばーか!」
と捨てセリフを置いて走り去った。

884 名前:ドギーマン 投稿日:2007/01/19(金) 12:10:37 [ at5Dv2Nk ]
貴族たちの住む高級住宅地と農民達の居住区の間にある広場。
ヘイグはいつもそこに居た。
「ヘイグ!」
シャママの声に噴水の縁に座って水をいじっていた男の子が顔をあげた。
「よっ!」
そう言って走りよってきたシャママの顔に指についた水を飛ばした。
シャママは一瞬ひるんだが、すぐに
「なにすんのよ!」
と噴水の水を手で叩くようにヘイグに向かってかけた。
「うわっそんなにやってないだろ!」
ヘイグはさらに強く水をシャママに浴びせようとしたが、
シャママは後ろに下がって避けた。
スカートの裾に少しかかったが、気にしていない風で言った。
「まったく、子供ねえ」
「そっちこそ」
シャママはふっと息を吐くと、ヘイグの隣に座った。
「ねえヘイグ」
「なんだよ?」
いきなり真面目な顔になって顔を近づけてきたシャママに、
ヘイグは少し身体を後ろに傾けて答えた。
「空はなんで青いの?」
「そんなの、天井が青いからだろ」
「太陽はなんで西に沈んで、また東から出てくるの?」
「海にもぐった後、俺達の下をくぐって東からまた頭出すんじゃねえの?」
「星はなんで光るの?」
「天井に穴が開いてて、そこから外の光が差し込んでるんだろ。
なあ、いきなり何なんだよ?」
シャママは乗り出した身体を戻し、関心したように言った。
「やっぱりヘイグってすごいわね。何でも知ってて」
「何なんだよ」
ヘイグは怪訝そうな顔でシャママを見た。
「ウルカもファーガスも勉強しろしろ言うけど、今の質問にだって答えられないのよ?
私より勉強してるクセに」
「ははは、本当かよ」
ヘイグは腹を抱えて笑いだした。
「そうだ、良い物持ってきたんだ」
ヘイグはズボンの腰に差していた、二股の木の枝の先の両端に紐を通した物を取り出した。
「なぁにそれ?」
「スリングってやつさ」
そう言うと、地面に落ちている手のひらに握りこめる程度の石を拾い上げた。
シャママはその様子を見て、
「何してんの?」と聞いた。
「まあ、見てろって」
ヘイグは紐の中ほどにあるへこんだ革板に石を込めると、
「あの木に当てるからな」
と言って、5メートルほど先にある木を指差した。
そこまでいくとシャママにも分かり、興味深そうに眺め始めた。
「ふっ!」
ヘイグが思い切りスリングを振るうと、石は木をそれて石畳に跳ねた。
「あ、くっそ」
悔しがるヘイグにシャママは言った。
「ねえ、わたしにもやらせてよ」
「初めてじゃ無理だって」
そう言うヘイグに、
「いいから貸してよ!」とシャママは詰め寄った。
渋々ヘイグはスリングを渡すと、シャママは石を拾って戻ってきた。
そして、見よう見まねでスリングに石を込めると、
「やっ」と木に向かってスリングを振るった。
すると、カッと音を立てて石が木に当たって跳ね返った。
ヘイグはそれを見て驚いたが、すぐに強がりを言った。
「たまたまだろ、もっかいやってみろよ」
しかし、2回、3回と命中させると、
「すげえ」と感嘆の声をあげた。
「ふふん」とシャママは自慢げにふんぞり返った。
そしてヘイグに交渉を持ちかけた。
「ねえ、ヘイグ」
「ん?」
「キャンディーあげるからこれ頂戴」
「いいよ、また作れるし」
あっさりと譲ってきたヘイグに、シャママは笑顔で
「やった、ありがと!」と笑顔を浮かべた。

885 名前:ドギーマン 投稿日:2007/01/19(金) 12:11:49 [ at5Dv2Nk ]
早速シャママはヘイグを連れて、そのスリングで遊ぶことにした。
後ろでキャンディーを舐めているヘイグを尻目に、シャママはにやにやと笑みを浮かべて準備をしていた。
そして、準備ができた。
屋敷の庭師が木をハサミで刈っている。
シャママは石を庭師の尻に命中させた。
「痛っ!」
すぐに身を隠す二人。
「誰だ!?」
怒鳴って辺りを見回す庭師、それを眺めてクスクスと笑いを堪える2人。
「よし、次いきましょ」
次の標的はファーガス。
屋敷の中をうろうろしている。大方居なくなったシャママを探しているのだろう。
「ファーガス!」
屋敷の外からシャママが叫んだ。
「お嬢様!いけませんすぐ戻ってきてください!」
着替えたのだろうか、インクまみれだったスーツが綺麗になっている。
ファーガスが玄関口から外に出た瞬間を狙って、シャママはスリングを振るった。
バチャッ
鈍い水音を放ってファーガスの顔に命中した袋の中から白い牛乳が炸裂した。
「ふおっ」
牛乳が目に入ったのか、白くなったファーガスは顔をこすっている。
「あははははは」
笑い声を上げて二人は逃走した。
その日、シャママの屋敷周辺のみならず、
2人のイタズラは街中に及んだ。

その日の晩、屋敷に帰ったシャママは当然叱られていた。
食事を終え、寝間着姿になったシャママはウルカに怒られていた。
「お嬢様、聞いているのですか!?」
「うんー、聞いてるよ」
上の空と分かる素振りでシャママは答えた。
「皆に迷惑をかけて、なんとも思わないのですか?」
「うんー、そうだねー」
顎を手に預け、ウルカの顔を見ずにただ壁を見て答えた。
ウルカは痺れを切らして言った。
「そんなことでは、お館様がお帰りになったら悲しまれますよ」
が、それは禁句だった。
ウルカの言葉に、シャママはむっとして怒鳴った。
「どうせ帰ってこないじゃない!」
その言葉にウルカはしまったと思い、ひるんだ。
シャママは椅子から降りると、椅子を蹴り倒した。
そして、椅子を慌てて立てるウルカを尻目に部屋を出ようとした。
「お待ちください!まだ話は終わっておりませんよ!」
「聞く必要ないわ。どうせ同じことしか言えないでしょ」
そう言うと、バン!と思い切り力を込めて扉を閉めた。
シャママは明かりに照らされながらも、少し暗い廊下を走った。
この屋敷は小さな彼女にはあまりにも広すぎる。
シャママは寝室の扉を開けて、真っ直ぐに天蓋付きの豪華なベッドに飛び込んだ。
「また、泣いておられるのですか?お嬢様」
部屋で椅子に座って待っていた乳母のクレメが言った。
「クレメ?何で勝手に部屋に居るの?」
身体を起こして椅子に座っている落ち着いた表情の女性に言った。
「今日の騒ぎ、聞きましたよ」
「ふん、クレメも怒るの?いいわよ。怒りたかったら怒れば」
そう言ってシャママは布団に身を沈めた。
「いいえ、怒りません。ただ、今夜はきっと眠れないでしょうと思いまして」
「大丈夫よ、寝れるわ」
枕に顔を埋もれさせてシャママは言った。
「声が震えてますよ」
「・・・・・」
クレメは椅子から立ち、シャママの隣に横になった。
「勝手にベッドに入ってこないで」
「でしたら、私をお蹴りくださいませ」
シャママは蹴らなかった。
そして、枕に顔を伏せたまま言った。
「ねえ」
「なんでしょう?」
「なんで、わたし1人だけなの?」
クレメはシャママの髪を撫でた。
「ここに、私がおります」
「違うわ。父様も母様も、居ないじゃない」
クレメは髪を撫で続けて答えた。
「お館様はご多忙にございますから」
「忙しかったら、わたしなんかどうでもいいの?」
「いいえ、お嬢様の生活を支えるためです」
「それなら、こんな生活いらないから、忙しくしないでよ」
クレメは悲しそうな顔でクレメの頭を見つめたが、その表情はシャママには届かない。
「お館様は国の要職に就いております。責任のために、いつでも辞められるというものではないのです」
「そんなの、聞きたくない」
シャママは枕の端をぎゅっと握った。
「お嬢様・・・・」
クレメはうつぶせのシャママの背中を優しく撫でた。
しばしの後、シャママはクレメに言った。
「クレメ」
「はい」
「あの話、また聞かせて」
「そのつもりでございました」
クレメはシャママの生まれる前の、彼女の母の話をした。

886 名前:ドギーマン 投稿日:2007/01/19(金) 12:12:33 [ at5Dv2Nk ]
数日後、
その日もシャママはファーガスの授業を聞き流し、
花瓶1個と引き換えに外に飛び出してヘイグと一緒に広場で遊んでいた。
ヘイグはシャママに言った。
「なあ、REDSTONEって知ってるか?」
「なにそれ?」
聞いたことのない物にはいつもシャママは興味津々に聞き返す。
「世界に1個しかない、珍しい石なんだってさ。それを手に入れたら、大金持ちになれるらしいぜ」
「ふぅん」
その話を聞いた途端、シャママは興味をなくした。
「なんだよ」
食いつきの悪いシャママに残念そうにヘイグは言った。
そんなヘイグにシャママは聞いた。
「お金持ちになって、どうするの?」
「そりゃあ、おっきな家建てて・・・・」
シャママはヘイグから目を逸らし、眉を寄せて言った。
「くっだらない」
「なんだよ、くだらないって」
シャママの言葉にヘイグは少し怒った。
「お金持ちの家に生まれたからって、俺を馬鹿にしてんのか!?」
怒鳴るヘイグに目も向けず、シャママは言った。
「そんなんじゃないわ」
「じゃあなんだよ?」
「お金がいくらあったってね、家がおっきくたってね、寂しいのは埋まらないのよ」
ヘイグは首をかしげた。
シャママの言葉の意味が分からないようだった。
「ねえ、ヘイグ」
「なんだよ?」
まだ少し怒ってるようだが、シャママは気にしない。
「REDSTONEっていうのがどういう石かは分かったけど、それがどうかしたの?」
調子を狂わされたヘイグは少しつまらなそうだ。
「そりゃあ、大人になったら冒険者になって探しに行くんだよ」
「どこにあるか分からないたった1個の物を?」
「そうさ、見つけたら。英雄だぞ」
ヘイグは調子をあっさりと取り戻し、高揚として言った。
すると、シャママは突然ヘイグに詰め寄って顔を近づけた。
ヘイグはやっぱりこれに慣れないのか、少し後ずさった。
「ねえ、それって街の外へ出て行くってことよね?」
「う、うん。そうだけど」
シャママは眼を輝かせた。
「わたしも連れてって!」
ヘイグは話にならないというように笑った。
「何言ってんだよ。女なんか連れていけるわけ」
ヒュッ
そんなヘイグの頬を石がかすめて飛んでいった。
「役に立つわよ?」
そう言ってシャママはスリングを片手にふんぞり返った。

その日の帰り、
シャママはたまたま通りかかったところに、
同じくらいの歳の子供達がこそこそと集まっているのを見つけた。
興味を惹かれたシャママは隠れてこっそりと彼らの話を盗み聞きした。
「にしても、ヘイグの奴うまくやったよなあ」
「ああ、金持ちんとこのガキと仲良くなるなんてなあ」
「あいつこの前、キャンディー舐めてにやけてやがったぜ」
「マジかよ。クソ、俺もあやかりてえなぁ」
「どーせ、そういうの目当てで適当に仲良くしてやってるフリしてんだろ」
「うへ、ムカツク」
シャママはしゃがみ込んだまま動けなかった。
頭の中をヘイグの顔がぐるぐる回った。
ガタッ
「ん、何の音だ?」
シャママは慌てて走り去った。

887 名前:ドギーマン 投稿日:2007/01/19(金) 12:13:24 [ at5Dv2Nk ]
シャママは食事の間も、入浴の間も、そのことばかり考えていた。
ずっと黙って俯いているシャママにウルカは聞いた。
「どうなさいました?何かあったのですか?」
シャママは俯いたまま何も答えなかった。
花瓶のことを怒ろうと思っていたウルカだが、
いつもの上の空と違う様子にウルカはうろたえた。
「あの・・・・・お嬢様?」
シャママは椅子を降りると、いつものように椅子を蹴り倒すでもなく、静かに部屋を出て行った。
ウルカは廊下に出てきて、シャママの小さな背中が離れていくのを見ていた。
シャママは寝室に入ると、部屋で待っていたクレメをちらっと一瞥した。
そしてまた俯いたまま、もそもそとベッドに潜り込んだ。
「お嬢様」
クレメが呼びかけた。
だが、シャママは何も答えない。
「・・・・・」
「やはり、何かあったのですね?」
「・・・・・」
「私に、お話下さいませんか?」
「・・・・何も無い」
「そうですか・・」
クレメは悲しそうに言った。
クレメは立ち上がると、ベッドに近寄った。
「入ってこないで」
クレメは構わずシャママに寄り添おうとしたが、
「蹴るわよ」
その言葉に込められたシャママの雰囲気に、クレメは止まった。
クレメは黙ってベッドから離れ、部屋の扉を開けてシャママに言った。
「お嬢様、私はお嬢様の心を誰よりも、お館様よりも、お亡くなりになった奥方様よりも、
よく分かっております。どうか、明日には私に事情をお話くださいませ」
シャママは黙ったまま、何も答えなかった。
クレメは扉をゆっくりと閉めて部屋を出て行った。

888 名前:ドギーマン 投稿日:2007/01/19(金) 12:15:39 [ at5Dv2Nk ]
翌日、
シャママはベッドから出ようとしなかった。
ウルカは無理にでもベッドから出そうと息巻いたが、クレメは止めた。
クレメはファーガスを丁寧に追い返すと、シャママを訪ねた。
「お嬢様」
シャママは何も答えず、寝たふりをしていた。
「涙は、もう出し切りましたか?」
シャママは黙ったままだが、クレメは構わずに言った。
「お嬢様、どうかお話くださいませ」
シャママはピクリとも動かず、クレメに言った。
「なんで、わたしは一人ぼっちなの?」
「お嬢様、それは違います」
クレメの言葉を無視してシャママは続けた。
「誰もそばに居ないわ」
「違います」
クレメの言葉にシャママは体を起こして怒鳴った。
「何が違うのよ!」
クレメはシャママの剣幕にも動じずに答えた。
「お嬢様は1人ではありません。ただ、そばに居る人の心が見えていないだけです」
「意味が分からないわ」
ベッドの中のシャママに、クレメは言った。
「お嬢様、もっと人を信じてくださいませ。そうすれば、きっと分かります」
真っ直ぐにシャママの目を見つめようとするクレメから目を逸らしてシャママは言った。
「信じてたわ・・・・でも」
「いいえ、疑っています。言ったはずです。私にはお嬢様の心が分かると」
「・・・・・」
「私を信じてください。そして全てを話してください」
シャママは俯いて布団を握りながら言った。
「ヘイグよ・・・・」
「ヘイグ?あの、いつも一緒に居る男の子ですか」
「知ってたの?」
顔を上げたシャママの瞳にクレメの優しい笑みが写った。
「名前は今知りましたよ。まあ、あれだけ派手に暴れては、ね」
クレメは口元を押さえて笑った。
しかし、慌てて真顔に戻すと、クレメは聞いてきた。
「その子と、何かあったのですね?」
「・・・・」
「話してください」
クレメはシャママを見据えて言った。
シャママは白い布団を見つめたまま答えた。
「わたしと遊んでたのは、わたしがお金持ちだからだって・・・・」

889 名前:ドギーマン 投稿日:2007/01/19(金) 12:17:04 [ at5Dv2Nk ]
クレメは俯くシャママに冷静に聞いた。
「それは、本人から直接聞いたのですか?」
「ううん、でも、他の子が・・」
「やはり、お嬢様はその子のことを信じておりません」
シャママは顔を上げた、その頬には涙があった。
「違う!信じてたわ!」
「ならば何故、他の子がそう言ったからと彼を疑うのですか?」
「それは・・」
再び目を逸らすシャママにクレメは言った。
「お嬢様、人を信じるということはただ傍に居ればよいという事ではないのです。
心の内を打ち明けられること、決して相手を疑わないこと、そして愛することです」
「でも・・・」
クレメはじっとシャママを睨み、厳しい口調で言った。
「恥をお知りなさいませ」
シャママはいつもと違うクレメにびくっとして驚いた。
「私が見たかぎり、あのヘイグという子にはお嬢様の考えておられるような卑しい考えなどありません。
ただ周囲の言葉に踊らされて信じてくれている人を疑うなど、それこそが卑しいことです」
「・・・・・」
「お嬢様は誰よりも彼のそばに居たはずです。なら、彼のことは一番分かっているはずです」
「そうね・・」
その言葉を聞いて、クレメはいつもの優しい顔に戻り、
「出すぎたことを申しまして・・」
と、頭を下げた。
「いいのよ。わたし、ヘイグもクレメのことも疑ってた」
そう言って俯くシャママを見て、クレメはパンッと手を叩いた。
その音に顔を上げるシャママの目を見てクレメは言った。
「もう下を見ないでくださいませ。相手の顔を見なければ、真偽を量ることなど出来ません」
「そうね」
「では、早く着替えてください。これ以上待たせるのも気の毒ですから」
「え?」
クレメは窓の外を見た。
シャママがその視線を追って窓の外を見ると、
屋敷の外で退屈そうに待っているヘイグの姿があった。
「今日はファーガス様の退屈な授業もありませんので」
そう言うとクレメはシャママに優しく笑いかけた。
「行ってくる!」
その笑みを無視してシャママは走り出した。
そして慌しくウルカを呼び出すと、ドレスの着替えを手伝わせた。
最後に、出て行く前にシャママは寝室で笑っているクレメに廊下から
「ありがと!」とだけ言って、走って階段を駆け下りて行った。
ウルカが頭を抱えてクレメのところに来た。
「はぁ〜・・・・台風が帰ってきましたわ」
ため息をつくウルカに、クレメはクスクスと笑って言った。
「いいじゃないですか。しおらしいのはお嬢様らしくありませんもの」
「まあ、それはそうですが・・・・」
そう言うと、ウルカはまたため息をついてベッドの手入れに向かった。
クレメが窓から外を見ると、
シャママは暇そうにしゃがんで居るヘイグの頭を引っ叩いて走って行った。
ヘイグもその後を頭を押さえて追いかけていった。

890 名前:ドギーマン 投稿日:2007/01/19(金) 12:17:51 [ at5Dv2Nk ]
5年後
シャママとヘイグの別れは突然だった。
ヘイグは冒険者になると置手紙だけ残して居なくなったのだ。
事前に何の相談もなく、居なくなった。
5人兄弟だという彼の家族は食い扶持が減ったと強がってはいたが、
急なことに戸惑っているようだった。いや、心配で仕方ないように見えた。
シャママも当然ショックを受けていた。
そして、外に出て遊ぶこともなくなった。

ファーガスは大人しく授業を受けてくれると喜んでいたが、
クレメは心配で仕方がなかった。
クレメは毎日部屋に篭りきりのシャママを訪ねた。
「お嬢様」
「なぁに?」
窓から外を眺めていたシャママはクレメに向き直った。
「どうか、立ち直ってくださいませ」
「何を言ってるの?」
シャママの言葉にクレメは怪訝な表情をした。
「クレメ、あれだけ私の心が分かってるって言ってたじゃない」
予想外のシャママの対応にクレメは戸惑った。
「それは、そうですが・・・」
そんなクレメの様子を見て、シャママは笑って窓の外に目をやった。
「ねえ」
「はい?」
「あれ見て」
「あれ、とは?」
クレメはシャママの眺めている外の景色を彼女の後ろから覗き込んだ。
そこには、何の変哲もない街並みしかない。
首をかしげるクレメに、シャママは笑った。
「違うわよ、もっと上」
「上?」
「そう、あの山」
シャママがそう言って指差したのは街並みの遥か向こうにある青い山だった。
「あれが何か?」
「ねえ、クレメ。あそこの頂上まで行けると思う?」
「お嬢様がですか?」
「他に誰が行くのよ」
シャママはまた笑った。
「それは・・・無理ではないとは思いますが、なんでまた?」
「そう、無理じゃないのね」
「あの・・・・?」
シャママは窓から離れて、クレメの横を通り過ぎながら言った。
「ああ、ごめんごめん。私なら大丈夫よ。しばらく書斎に篭るから、食事は書斎でとるわ」
「え、お嬢様が本を?」
クレメは驚いた。
その言葉を聞き流してシャママは書斎に向かった。
クレメは心配で仕方がなかった。

891 名前:ドギーマン 投稿日:2007/01/19(金) 12:18:59 [ at5Dv2Nk ]
1年間、
シャママは寝る間も惜しんで本を読み漁った。
既にファーガスの授業の先を進むほどに知識を溜め込んだ。
ときには爆弾に関する書籍まで持ち出し、クレメを余計に心配させた。
そして、その頃から屋敷の中を奇妙な現象が起き始めた。
居るはずの無いウサギを見かけるようになったり。
飾りの甲冑が見たことのない武器を持っていたり。
巨大な丸太がファーガスに向かって廊下を転がってきたり。
屋敷の人間は気味悪がったが、シャママは涼しい顔をしていた。

そして、その日は来た。
シャママはクレメを呼び出した。
クレメは相変わらず心配そうにシャママに聞いた。
「何でしょうか?」
シャママはいつものように山を見ながら言った。
「わたし、この屋敷を出るわ」
「え?」
シャママは振り返って窓枠に手を置いて言った。
「街の外に出て、世界を旅するの」
「それじゃあ、今までのは」
「そのための準備ね。もうこの屋敷で学べることは全部分かったし。
今の私ならきっとあの山の頂上にだって行けるわ」
そう言って山に目をやるシャママを、クレメはじっと見つめた。
「しかし」
「クレメ、しかしじゃないの。もう決めたんだもの。あなたなら分かるわよね」
クレメはため息をついた。
シャママは笑みを浮かべた。
「お嬢様、必ず帰ってきてくださいませ」
「勿論、私を信じてくれてるんでしょ」
クレメは笑みを浮かべていたが、やはり心配そうな感じは隠せない。
「それで、いつお発ちになるのですか?」
「今よ!」
目を丸くするクレメの目の前に小さな荷物を担ぎ出し、
「じゃ、いってくる!」
そう言ってクレメが言葉を発する前に部屋から走り出た。
階段を激しく踏み鳴らして降り、ガシャンと景気づけのように花瓶を割る音がする。
ウルカの叫び声がクレメの耳に届いた。
クレメは窓から、一匹のウサギが走り去るのを涙ぐみながら笑みを浮かべて見送った。
「いってらっしゃいませ」
と、その小さな背中に呟いた。

街道を場違いなドレス姿で歩きながらシャママはヘイグの文句を言っていた。
「全く、連れてってって言ったのに置いてくなんて!
おかげで追いかける準備に1年もかかっちゃったじゃない。
まあいいわ、絶対に追いついて見せるんだから」
彼女の手にはスリングが握られていた。
シャママは街道を歩きながら、あの山の頂上を眺めた。

892 名前:ドギーマン 投稿日:2007/01/19(金) 12:36:48 [ at5Dv2Nk ]
あとがき
出来る限り短くまとめようとしたんだけどね・・・。
ちょっと、細かい描写を省きすぎたか。
とにかく、プリンセスで何か話を作ってみようと思ってやってみました。
宇宙人という設定はめんどくさいので無視です。

>殺人技術さん
ユニークは全部悪魔ですか。新しい発想です。
言葉にも魂がある。言霊ってやつですね。
ネクロマンサーが悪態や毒舌を使うのは、そういった言葉の魂を操るからでしょうか。
と、想像を膨らませてみたり。

>携帯物書き屋さん
読み応えのある戦闘シーンでした。
ひとまず、お疲れ様でした。次回作or続編を期待してます。

>キンガーさん
ますます怪しくなってきましたね連連。
嵌めた後はどうやって懲らしめるんでしょうか。楽しみにしてます。

893 名前:名無しさん 投稿日:2007/01/19(金) 16:31:31 [ psw7Vx8o ]
>>殺人技術さん
Uにそんな秘密が・・ゲームに関連した秘密みたいなのは面白いです。
やっぱりファイルもいずれ・・と考えてしまいます。

>>携帯物書き屋さん
1話から読ませて頂きました〜。
どんどんはまって・・とても楽しめましたっ。
ニーナは何処へ行ってしまったのでしょう・・。
他のREDSTONEの持ち主も気になりますし・・続きが楽しみですv

>>きんがーさん
連連の反応が分かりやすくて面白いです(笑
3人は直接会う事になったんですね〜。
キンガーさんとのご対面・・どうなるんでしょう。

>>ドギーマンさん
屋敷での怪しい出来事・・シャママが頑張ってスキル習得したんですね(笑
続きは書かれるのかな・・?
ヘイグは何処へ行ったのか、二人は会えるのか・・とても先が気になりますー。

894 名前: 投稿日:2007/01/19(金) 17:38:07 [ LKapq98w ]
>>21R様
お久しぶりです。と言ってもちょっと会話しただけですがw
冬の軌跡のまとめサイトを久しぶりに見ていたらついつい全話見てしまいました(汗
続編期待しています、ぜひがんばってください^^。

>>携帯物書き屋様
別れの言葉も言わず去った、ニーナ、続編はどういう形から始まるのかが期待です。
別れも言わずに去ったからまた会いにくい気がしますねw

>>きんがー様
リアル犯罪から繋がって行くREDSTONE、黒い帽子が似合わないのはご愛嬌?できればオフに来た人達の特徴も書いて欲しかったりw

>>姫の独り言様
グっと堪える剣士、格好良いではありませんか、デュエがなくても良いでは(ry
短編物素敵です( ´-`)

>>知識ランサーのお話様
良い感じですね。こういう感じの小説は今まで無かったので新しい感じですいすい読めました。
スロー スロー クイック クイック(謎

>>ドギーマン様
多数の作品を短い間に書き上げるのに敬服ですorz
お嬢様頑張って(ぇ

>>殺人技術様
ブリッジヘッドっていかにも港なのに魚まずいっt(ry

>>自称支援BIS
一目惚れ(・∀・)イイ!!

895 名前: 投稿日:2007/01/19(金) 18:57:20 [ LKapq98w ]
姫系の奴は間が空きすぎてしまったため、頭から抜け落ちてしまいました・・・。
もし、気がついた人が居ればそういう事かと笑ってください。

       The sky in continuing autumn

この街には伝説があります、それは、ある一人の男ともう一人の女のお話、とてもとても悲しいお話。
 男の名はアダム、遥か昔、神様に天界を追放されてしまった人、なんで追放されたかは知りません。
子供は知らなくて良いのとお母さんに言われます。
 女の名はイヴ、この人は知っています。赤い果実を食べてしまった人そのためにとてもとても辛い運命を背負わされた人。
でも皆さん知っていますか?辛い運命を背負う事で運命に打ち勝った時の喜びは一生の物になることを。
 彼女もその一人です。
大鳥が舞い、不気味さを醸し出させる、そんな夜の事でした。
 「レ…イ…」「ミ……ル」
その言葉は、鳥が舞う羽音でかき消されてしまった。
 男と女が戦っている、男は必死で女に呼びかける、しかし女は戦い続ける。
赤い炎と蒼い炎がぶつかり合う、蒼い炎はしばらくすると一瞬で赤い炎を包み込んだ。
争い、なんと愚かなのだろうか
 女はしばらくすると起き上がり、その場で何かが切れたように呟いていた。
その声は深く、悲しく、そして絶望を感じさせる声だった。

続編ですが、なんの続編かは、想像にw
わけわかめな人は英語タイトルを翻訳してみてください。

896 名前:姫の独り言 投稿日:2007/01/19(金) 20:25:13 [ ZF.lqOBY ]
こんばんは。
駄文を出し逃げ、そして今頃になって恐る恐るこのスレに足を運んでみた「姫の独り言」です。
初投稿ということで、書き込み後はドキドキでした。
しかし多くの方が温かいお言葉をかけてくださって、嬉しい限りです。
これに懲りず今後もぜひぜひ投稿したいと思っているので、一読頂けたら励みになります!

897 名前:殺人技術 投稿日:2007/01/19(金) 20:25:19 [ E9458iSQ ]
>>881
なんだか、読んでて物凄いハラハラしますねw
こういうリアル系の話はファンタジーとはまた違った切迫感があって面白いですね
ゲーム内のチャットウィンドウ状の書き方も緊張感を煽りますw
>>883
早いですね……w
一日でここまで書き上げるのは自分には無理です(´・ω・)
プリンセスのシャママがいかにも少女って感じで可愛いです。
でも狩場に赴くとスリングでビシバシ殴り、窒素とかナパームとか凄い危険な物を凄いスピードで投げまくるプリンセス
謎が多いです、プリンセス(´ω`)

>>894
すいません、ちょっと書き方が悪いなとは思ったんですが、投稿の際に
「改行が多すぎます」とでて無理矢理詰めざるを得ませんでした(´・ω・)
「魚がクリーム臭くて不味い」ってのはケブティスがセリフのあとに付け足した愚痴で
ブリッジヘッドの魚をパーティーに使っても、パーティーで料理された魚はクリーム臭くて不味い(口に合わない)って事で、それを聞いてチョキーが苦笑した、って事です。
自分でも読み取れないくらい変な詰め方したけど(´・ω・)ごめんなさい。

898 名前:姫の独り言 投稿日:2007/01/19(金) 22:33:38 [ ZF.lqOBY ]
もう一作だけ短編を書いてみましたので、投稿させて頂きます。
今回はランサーが一人称。
私自身読み返してみて何が書きたかったのやら、と自問しております。
しかもダウン系でございます・・・。お暇な方はどうぞご覧くださいませ。


<戦うコトの意義>

「あんたさぁ、恐怖心とかないわけ? まるで死にたがりだな」
その問いに対して私が何と答えたのか、今となっては思い出せない。
何かしら反論をしたのかも知れないし、あるいは曖昧な言葉を返しただけなのかも知れない。
いずれにしても上辺だけの返答であったことは確か。
私を充分に惹きつけるだけの意義を持つ問いではなかったのだ。少なくともその時の私には。
そう。私は気付かなかった。その問い掛けが一欠けらの澱となって私の奥底に沈んだことを。


「恐怖心とかないわけ?」
そう問うたのは、かのネクロマンサーを打倒する為一時の間行動を共にした戦士であった。
基本的に私は単独で行動することが多い。
私は槍使いであったから、生き残ることに特化しているし、何より私一個人の性質として単独行動を好んだ。
従ってネクロマンサーも単独で仕留めようと考えていたのだが、依頼主の言葉もあって私は戦士と組むことにした。
もちろん不満はあった。不満を言葉にすることは抑えたが、戦闘に関しては単独行動を想定していた。
戦闘が始まってしまえば、連携なんて関係ない。そんな事を考えている暇があるのなら、一撃でも多く。
強く、苛烈に舞い踊れ。
私は私のイメージのままに。

事実、私はその通りに行動した。
そしてその結果、呆れたように戦士が私にこう問いかけたのだ。
「あんたさぁ、恐怖心とかないわけ? まるで死にたがりだな」と。
彼の目には、私の行動が捨て身の特攻にしか見えなかったのだろう。
その時の私は特に気にも留めなかった。

戦士と別れてから幾月、私は変わらず戦い続けた。常に独り。戦いの外に身を置いている時、私は私自身を俯瞰しているような錯覚に陥る。
だから、ひたすら戦った。
楽しかったのだ。理想に描いた槍捌き。イメージの中で幾度も描いた。それを体現できた時の喜び。
きっと私はその感情を糧に、この先ずっと戦い続けることが出来ただろう。
あの時の、私の底に落ちた澱さえ浮上してこなければ・・・。


私には、私が分からなくなった。
最初に生じた疑問は、私は何故戦っているのかというものであった。
楽しいから?
――― えぇ、確かに楽しかった。
戦わずとも楽しみは幾らでもあるだろう?
――― そうかもしれない。
戦いとは、換言すれば殺しの過程。つまり君は殺しに快感を覚えている。それは真っ当な人間だろうか?
――― ・・・。
私は毎回ここで答えに詰まる。そして静かに、しかし速やかに浮上してくるあの時の言葉。
「まるで死にたがりだな」
そう、あの男はある一面において正しかった。私は結局、死との対比によってしか生を感じることが出来ないのだろう。
私はそう自身に結論付けた。


もう一度、あの戦士に問われたなら私は答えるだろう。

恐怖心とかないわけ?
――― 一つだけあるよ。私が何より恐れることは、戦えなくなること・・・その一点だけ。それが私の生。私の意義・・
・。

899 名前:名無しさん 投稿日:2007/01/20(土) 01:57:23 [ 6P9IgygA ]
順不同で・・

>>姫の独り言さん
ダウン系どんとこい。でもやっぱりちょっと悲しくなる。
ランサって主人公になる事が多いみたいだけど、それだけ愛されてる職なんだろうな。
彼女の生きがいがやがて変わってくれる事を祈ったりするのはダメだろうか・・( ´・ω・)

>>ドギーマンさん
プリンセス出生にはこういう逸話があると面白いですね。
スリングだけでなく、ウサギや丸太変身というのはファンタジックでいかにも姫様。
山とはどこの事だったんだろう・・そんな部分ばかり気になってます(笑)

>>夢さん
この話は続編なんでしょうか?
片方は望まず、片方は怒りという悲しげな戦闘を思い浮かべます。

>>きんがーさん
いよいよ戦闘開始といったところですね。続きを期待します。
ネトゲからのOFF会というのは参加した事も無いのですが、そんなものかもしれませんね。
ネナベ、ネカマが多いとはいえ会わない限りは知る由もありませんし。
RSの場合、職で性別が決まってしまうので仕方ないのもありそうです。
別にネカマ等を演じる気が無くても異性を操作してるとそんな気分になる・・。

900 名前:名無しさん 投稿日:2007/01/20(土) 03:53:46 [ dpWctTts ]
1.ttp://jbbs.livedoor.jp/game/19634/storage/1127802779.html#960
ttp://jbbs.livedoor.jp/game/19634/storage/1127802779.html#961
2.>>556


 ――違うんだ、別にあの天使が憎かったんじゃない。
 誰かを殺したかったんじゃないんだ…本当なんだよ、ただあの場所から逃げ出したかったんだよ。
 体を、初めて自分の思い通りに動く体を手に入れて嬉しかったんだ。
 嬉しくて、嬉しくて、もう周りが何も見えなくなっていたんだ…
 殺したくて殺したんじゃないんだ!本当だ!信じてくれ!
 違うんだ…俺じゃない、俺じゃない!
 この体が!この悪魔の体が勝手に動いたんだよ!
 俺が…俺じゃ…ないんだ、俺じゃない…よな?
 俺がやったのか?本当に俺が殺したのか?
 違う、嫌だ、誰か助けて!誰か!
 誰かいないのか?助けてくれ!このままじゃ俺が壊れてしまう!――

「あーもう、ホントうるっさいのよ!」
 半ば絶叫気味に声を張り上げ起き上がる。
「毎日毎日なんなのよ、私を睡眠不足にさせて何が言いたいのよ!」
 毎日のように変な声が聞こえてくる。いつも同じ内容、同じ声。
 声の主が誰なのかは全くわからない。どこから聞こえてくるかもわからない。
 気持ちが悪いし、イライラする。
「あーやだやだ、お肌が荒れちゃうわよ…最悪…」
 頬に手を当てながらつぶやく。寝不足は肌に悪い。非常に悪い。
 何とかしたいが、どうしたらいいのかわからない。
「何が助けてくれ〜よっ!こっちが助けてもらいたいものだわ!」
 まったく!何でこんな星に来てしまったのかしら!
「綺麗な星だからワガママ言って降りてきたのにぃ!」
 まさか毎晩謎の声に悩まされるなんて思っていなかった…
 しかも段々声が鮮明になってきてるし…あ〜、このままじゃ私もおかしくなってしまいそうだわ…
「もう限界だわ、声の主を探し出して一言言ってやらない気が済まないわね。」
 見つけ出して文句を言いまくってやる!
「でもどうやって探したらいいのかしら…とりあえず歩くしかないか…」
 眠くてふらつく足に鞭打って歩き出す。
 フラフラと街の中を徘徊する私。
 時々「何で私がこんな事!」とか「もう、いやぁ…」等と怒ったり弱音を吐いたり。
 誰もいない方向に喋っている私を誰かが見たら見たらきっと頭がおかしい奴だと思われるんだろうなぁ…
 でもまぁ、ラッキーなことに今日は誰一人街の中を歩く姿は無い。
 それもそうか、こんな時間に起きている人なんていないわよねぇ、そりゃそうだ。ちょっと納得。

 それなりに大きい街なのに誰も歩いていない。その不自然さにこの星に来たばかりの私は気付いていなかった。

901 名前:名無しさん 投稿日:2007/01/20(土) 03:54:40 [ dpWctTts ]

 何かが変だった。聞こえてくる声はどんどん大きくなっていく。
 森の方角だ、あっちの方から聞こえてくる気がする。
 フラフラと森の中を歩く。まだ声は聞こえている。いつもなら聞こえなくなっているはずの時間。
 やはりこの先に声の主がいるということなんだろうか?
 文句を言ってやりたい一心で足を進める。
「ん?何かしらアレ?」
 山に穴が開いている。これが洞窟ってやつなのかな?うん、初めて見たけどきっとそうだわ。
 洞窟に足を踏み入れる。真っ暗で先が見えないのが気持ち悪い。何か変な生き物が出てきたらどうしよう。
 コツ…コツ…
 ゆっくりと目を暗闇に慣らしながら進んでいく。
 奥の方に何かいる…姿は見えないけど気配を感じる。もう少し行ってみよう。
 コツ…コツ…
 奥から声が聞こえてきた。苦しそうな、とても辛そうな声。
「もうやめてくれ…お前を殺したのは悪かった…もう許してくれ…」 
 この声は…間違いない。この奥にいるのが"声の主"だ。
 この星に来て間もない私にあんな仕打ちをするような酷い奴がこの先にいる。
 無意識に持っていたスリングを構える。今すぐにでも文句を言って、出来れば一発殴ってやりたい。
 でも自分より強い奴だったら?この星の生き物がどの位強いのか私はまだ知らない。
 とりあえずどんな奴なのか見てから考えよう。
 そう思って一歩踏み込んだその時だった。
「体が!体が熱い!うあぁああぁ!熱い、熱いぃ!!」
 突然の絶叫。
「ひっ!」
 悲鳴を上げそうになって口を押さえる。心臓が飛び出るかと思った。いや、少し飛び出た気がする。
 少しだけ出てきた涙を拭って深呼吸。
「スゥ〜、ハァ〜。よし。」
 小さく気合いを入れてさらに一歩。もう一歩。
 奥から何か変な臭いがしてきた。肉の焦げるようなそんな焦げ臭い感じ。
「ううぅ…うぅ…」
 うめき声が聞こえる。かなり近い、すぐそこだ。
 さらに慎重に一歩二歩。三歩進んで二歩下が…ってる場合ではないのでもう一歩二歩三歩。
 途中から数えるのが面倒になったので数えるのをやめた。とにかくたくさん歩いた。
 明かりさえあれば相手の姿を確認できるであろう距離。気配を感じる。
 焦げ臭さも増している。
 こちらの存在に気付かれていないか少し心配な距離ではあるけれどきっと大丈夫だろう。
 気配を隠すのは結構得意な方だ。まぁ、根拠の無い自信なのだけれど。
 こちらに明かりとして使えそうな物は無いし、たとえ有っても使えない。流石にバレてしまう。
「ん?よく考えてみたら…」
 焦げ臭いということは相手は火を使ってるのよね?それなのに何でここは真っ暗なのかしら?

902 名前:名無しさん 投稿日:2007/01/20(土) 04:01:03 [ dpWctTts ]

 その疑問の答えはすぐに解決した。
 突然相手の気配がした場所から炎が立ち上った。ちょうど30歩くらい先。
 真っ赤な体でコウモリのような羽が付いている変な生き物。体中から炎が吹き出し苦しんでいる。
 まさか内側から燃えているの?そうだったのね、だから明かりが無かったのね。
「いやいや、納得してる場合じゃないわ。なによあれ…街で見た"人間"って生き物と全然違うじゃない…。
 というか何で体から火吹いてるのよ…」
 あんな生き物は初めて見た。"人間"は私とほとんど同じ見た目だったから驚くこともなかったのに。
 文句を言ってやろうと思っていたのにそんな気持ち何処かへ飛んでいってしまった。
 目の前の生物に興味を持った。不思議な生き物だ。いくら燃えても灰にならない。
 さっきからずっと苦しんでる。不思議だ。どんな仕組みなんだろう。
 色々と調べてみたいし色々と聞いてみたい。探求心が大きく膨らんでいく。
 何故だか恐怖心は無かった。
 それなのに足を踏み出せない。近づいてはいけない、この先には何か神聖なモノがいるような、そんな気分。
 そうね、危険だわ。やっと冷静になってきた。近づいたら襲われて食べられるかもしれない。
 幼稚な考えだと笑う人がいるかもしれないが、何せ初めて見た生き物だ。可能性は捨てきれない。
「きょ、今日は、やっ、やめておきましょうか…」
 何故か声が震える。本能が警笛を鳴らしているのかもしれない。とにかく戻ろう。
 一歩、また一歩。来たときよりもさらに慎重に後ずさる。
 カカトに何か当たった。とても小さな小石。ほとんど音もしなかったので相手も気付いていない。ホッとした。
 ここで大きめの石を蹴って音をたててしまうなんて"お約束"をしてしまうわけにはいかない。
 必死の思いで後進していくうちに壁に凹みが有るのを見つけたので少し休むことした。
 あの様子だと外に出ようとしてこちらに来ることもないだろうきっと。
「ふぅ、変な汗かいちゃった。帰ったらお風呂に入らなきゃ。」
 安心しきっていた。何気なく触った壁の出っ張りが取れて落ちるなんて思っていなかった。
 ガラガラガラッ
 壁からつきだしていた大きめの石が地面にぶつかり音を立てる。
「誰だ!誰かいるのか!」
 案の定気付かれてしまい、声が聞こえてきた。
「まさか天界の追っ手か?いや、まさか…早過ぎる…。」
 なにやらブツブツ言いながらこちらに近づいてくる。
 一歩ずつ、こちらを警戒するようにゆっくりと。
 
 こうなったらアレしかない…出来るだけ使いたくなかったけど逃げ切るにはアレしかないわね…
 私は覚悟を決めて自分の手の甲にキスをした。

903 名前:ドギーマン 投稿日:2007/01/20(土) 09:02:26 [ at5Dv2Nk ]
こんにちは、工場長のヤックンです。
やっ君?いえ、愛称じゃなくてそういう名前です。
じゃ、工場内をご案内しますね。

えー、あの釜の中でですね、
砂糖水とアレを混ぜたものを煮込んでおります。
え、アレですか?いやぁ、アレとしか答えようがありませんな。はっはっは

で、こちらで先ほど釜で煮た砂糖水を冷やしながらさらに砂糖を足して、
飴の原形とも言えるものを作ります。

で、こちらで先ほどの飴の原形をアレと砂糖が均一に混ざるように練りこんでおります。

さて、よく練りこんだ飴を、こんどは真っ直ぐに引き伸ばしてですね。
こちらで丸めて、棒を差して出来上がりです。

あとはこれをコボルトたちや知識の家の職員方を通じて
若葉冒険者の皆さんの手元に届くわけですね。
以上、キャンディーSPの製作過程をご覧になって頂いたわけですが、何か質問は?

はい?いや、アレはアレですよ。
くどいですね・・・・・。企業秘密なのでお答えできません。

じゃあ、最後にお土産に先ほど作ったキャンディーSPをご馳走しますよ。
出来立てですから美味しいですよ。

え、私ですか?いや、結構です。
いやいや、さっきお昼を食べたばかりですので。
いや、ホントに・・・・ちょっと、やめてくださいよ。
ちょっと、怒りますよ?
いや、あの・・・・・・殺す気かぁ!!

904 名前:名無しさん 投稿日:2007/01/20(土) 13:49:01 [ psw7Vx8o ]
>>900-902
大分前に書かれた物の続きなんですね。
読ませてもらいましたー。
主人公はプリンセスなんですねv
見つかってしまいましたね・・これからどうなるか楽しみですv

>>ドギーマンさん
若葉のころ良く使ってたキャンディーSP・・・そんな秘密があったんですね(笑
「アレ」って何なんでしょう・・。
殺す気かぁって・・そんな危険な(笑

905 名前:名無しさん 投稿日:2007/01/21(日) 01:10:05 [ S9OCo48I ]
>>900
最初の小説も読ませてもらいました。
RED STONEが世に現れた頃のお話なんですね。
神話みたいな感じでかなり曖昧にされてますし、読むというより歴史を紐解いていくような感じです。
悪魔とこのプリンセス?リトルウィッチかな?との繋がりが気になります。

>>ドギーマンさん
こうしたほのぼの系は読むとホッとします。心が温まるというか。
キャンディーSP、確かに効果不明ですよね。若葉じゃないとドロップしないし・・
そこらへんに「アレ」の秘密が隠されているような(笑)

906 名前: ◆21RFz91GTE 投稿日:2007/01/21(日) 08:10:29 [ .ugJd1pQ ]
////**************************************////
  ■冬の軌跡:まとめサイト(だるま落し禁止)
  ■http://bokunatu.fc2web.com/SS/main2.htm
  ■現行SS速見表
  ■キャラクター紹介(一部ネタバレ含む) >>837
  ■Act:1 青空     前スレ>>962-963
  ■Act.2 意思を告ぐ者達  >>500-501
  ■Act.3 遠い空 >>835-836
  ■Act.4 NorthWindGate >>857-858
////**************************************////



ACT.5:風の吹く場所へ




 相変わらず高く遠い空、何処までも青く海の様に澄み渡った汚れなきあの大空。
ギルドへと加入する事になってから幾日、まだギルドメンバーのほとんどの人にはあってない。クラウスの話によると出張や派遣などで今人材が不足しているのだとか。他にも主だった行事に出稼ぎに行っている人等など。
本当の事を言うと、まだミトとクラウスしかあって居ない。80人近くいるギルドメンバーは各地に散らばり個人個人の作業をしていると言う。
聞くところの話によると、詰め所にもギルドの大半を裂いてまで補給を行っているのだとか。古都東部の詰め所に10人を初めとした各街の途中に有る詰め所に配属されているのが全部で70人。残りの人は探索や治安維持の仕事等など。
 アレから幾日が経ったのか、ユランとイリアの二人はクラウス指導の元鍛錬に励んでいた。イリアは持ち前の明るさと頑張りでドンドンと成長していく反面、ユランはまるで才能がないかのように成長が遅く悩んでいた。
「それにしてもユラン君…もう少し魔術の勉強が必要かもしれませんね。」
地べたに座って息を切らせているユランの目の前でしゃがみ込んでタバコを吸いながらそういうクラウス。
「機動力には目を見張りますが、どうも魔術に関しての知識が少し浅いようですね。」
「…魔術学校でもよく言われてました。」
「うーん、英雄アレン様も魔術はそこまで凄くなかったと聞きますかすから。もしかするとユラン君は英雄と同じタイプのウィザードなのかもしれませんね。」
クラウスがゆっくりと立ち上がってそういった、その言葉に少し驚いたのがユランだった。あの英雄が僕と同じく落ちこぼれ?その言葉が信じられなかった。
「あの英雄が僕と同じですか?」
「ん、あぁ〜マスタの話によるとだけどね。確か〜…。」

907 名前: ◆21RFz91GTE 投稿日:2007/01/21(日) 08:11:15 [ .ugJd1pQ ]


 「…と言うようにミルさんのお風呂を覗いたりしては良く逃げ回っていましたよ。私も何度アレンさんに弓を引いた事やら。」
そう楽しそうに語るのはミトだった、昔の事を鮮明に思い出しながら目をつぶり話している。夕食時の一時の安息。それはそれは楽しいものだった。
「…あの英雄がですか、信じられません。」
「確かに彼は凄かったけど…スケベでロリコンでお調子者。確かに魔術その物は凄かったけど、私も一度しか見たことなかったからなんとも言えないかなぁ。でも魔術より体術の方が得意だったかな。」
ミトがアレンの事をもう一度話し始めた、確かに墓地に作られている銅像にもユランが握っている山を登るのに適している杖を握って居たように思えた。この杖は普段魔術を使用するにはさほど適しては居ない。所詮は山を登るのに使われる杖。
そして何より、相方であるミルの戦闘に常についていける俊敏さと体力。ウィザード離れした身体能力だと話してくれた。
「ん…。」
そう言えばまだこの場所が何処なのか説明して居なかった、この場所はミトが寝泊りしている部屋。その部屋の一角で夕食を取っていたときの事だった。
突然近くの窓がコツコツと音を立てた、その音は何かとがった者が突っつくような音にも似ている。
「…鳩?」
ユランはゆっくりと窓の方へと歩き、空調が聞いている部屋の窓を空けた。そこには真っ白な鳩が一羽、足枷(あしかせ)に小さな紙が丸められて挟まっている。よく言うところの伝写鳩だ。
「ユラン君、それ私に見せてくれるかな?」
「あ、はい。」
ミトはゆっくりとユランの方へと歩きだし、少しこわばった表情で居た。先ほどまでの愉快で楽しそうなあの表情は微塵の欠片も無ない、そして手紙を受け取るとその文面に目を凝らしていた。
「マスタ、オーダーを…。」
クラウスは立ち上がりながら近くに在った布で口元を拭く、そして椅子にかけていた杖を手に取り、普段着の上からローブを羽織る。さらに懐からメガネを取り出しそれをかけた、細長くて四角いメガネである。
「え、一体どうしたんですか?」
今まで無邪気に目の前にあるご飯をパクパクと食べていたイリアがようやく口を開いた、今の今まで食事に夢中で会話どころかユランが席を立ったのにすら気づかないで居たのだろう。この少女は本当に天然である。ユランも何がどうなっているのか訳が分からずその場に立ちすくしている。
そして、ミトはゆっくりとクラウスの方を振り返り。左手を強く握り締め、震える右手でその手紙を握り締めていた。そして
「コード、801。…炭鉱都市ハノブ鉄鉱山…。」
そう、一言だけ呟いた。



ACT.5:風の吹く場所へ

908 名前: ◆21RFz91GTE 投稿日:2007/01/21(日) 08:12:48 [ .ugJd1pQ ]
おはよう御座います…。(´・ω・`)
最近、古都南や東のフィールドの曲を子守唄代わりに聞いている21Rです。

それにしても寒いですねぇ…

909 名前:名無しさん 投稿日:2007/01/21(日) 09:01:52 [ ayzSFWtE ]
>>21Rさん
同じくおはようございます。明け方は寒いですね。

運動神経の良いウィザード・・。合わないながらも姿を想像できてしまうのが不思議です。
実は「剣士のようなウィザード」というキャラを主人公にしてSSを書いてみた事があったのですが
完結する前にHDDが飛んでしまって無念な思いをした事がありますorz
ぜひともこの話は最後まで読ませてもらおうと思っています。

910 名前:名無しさん 投稿日:2007/01/21(日) 23:29:38 [ WKsSvRHQ ]
>>881 >>882
すっごくおもしろくて毎日更新無いかさがしてますw

がんばってください^^

911 名前:名無しさん 投稿日:2007/01/21(日) 23:47:26 [ psw7Vx8o ]
>>21Rさん
スケベでロリコンでお調子者・・・少し笑ってしまいました。
確かにそうだったかもしれないけど・・可哀想です(笑
ユランがどう成長するか楽しみですv
手紙・・ハノブで何かあったんでしょうか、気になります・・。

少し忙しく土日あまり覗けなくなったんですが・・
レスが少なく読みきれる範囲だ・・と安心する反面、やっぱり読み足りないというか・・。
急かす訳じゃないですが、出来てるけど書き込むのを躊躇してる方がいたらどんどん書き込んで欲しいですv

912 名前:殺人技術 投稿日:2007/01/22(月) 00:03:08 [ E9458iSQ ]
チョキー・ファイル

1−3>>656-658
4−5>>678-679
6−9>>687-690
10−14>>701-705
15-17>>735-737
18-20>>795-797
21-22>>872-873

遂に戦闘シーン(?)突入
読みにくくなってたらごめん(´・ω・)

913 名前:殺人技術 投稿日:2007/01/22(月) 00:03:54 [ E9458iSQ ]
チョキー・ファイル(23)


新興都市ビガプール

今は新しいナクリエマの首都として完成形となっているこの国

だが、どれだけ新しくとも、どれだけ教訓を積んでいようとも、どれだけ活気に満ち溢れていようとも消せない物はあった。

そう、貧富の差。

広大な都市の北東には貴族街に王宮が聳え、都市の西側には農村や大きな工場が軒を連ねて横たわり、川で区切られた街の北側は多少の格差はあれど、誰が見ても人々が豊かな心を持ち、豊かな暮らしをしていると分かるだろう。

だが、ひとたび街の南側に目を向ければ、そこにはブルン王朝が栄えてた頃と生き写しの貧民街が広がり、毎日規定の時間になると、食事の配給に薄汚れたコートと帽子を取り付けた男達が長蛇の列を作っている。

チョキーは元々この街の事情には疎かったが、空から見下ろせばそれは一目で読み取れた。

貴族街と貧民街を繋ぐ石橋には常に銃を携帯した厳つい警備隊が見張り、貧民街の一角では土を被せて路傍の石を載せただけの小さな墓が地雷原の様に被さっている、よく見ると石すらない墓もあった。

どれだけ貴族達や政治家が"儀式"を重ねようと、その儀式は一人の信者も生み出さず、徒に貧民層の反感を買うだけだ、この街もなんだかんだ言ってそういう街なのだろう、チョキーはそれを一瞬で感じ取り、嘲笑を心の中に寄せた。

そして、新年祭パーティーの数日前、月が大地の影に殆ど食いちぎられた夜、チョキーはこの街に訪れた。

"なあ、ファイル"

"何だ?"

チョキーは庶民街──貧民街の住民も訪れる事の出来る街の酒場の前に立ち、眼前の酒の匂いを仄かに嗅いで言った。

"お前、ブリッジヘッドで言った通り、いつでも私の頭の中から抜け出して私を殺せるんだな?"

ファイルは思いがけない質問に眉根を寄せつつ、小さく溜め息を吐いたのち、口を開く。

"あぁ、だが私がお前から出て本体に宿ろうとしても、お前の精神と私の精神は繋がったままだ、憑依してすぐなら完全に分離できるが──今となっては恐らく遅すぎるだろうな、俺は俺の目的が達成されれば後はどうなってもいいが"

ファイルはどこか憂いを含めた口調で言い、チョキーは思い通り、口の端を軽く持ち上げた。

"という事は、また私の中に戻る事も出来そうだな"

そう言って、チョキーは酒場特有の中が丸見えな戸を空けた。

木の軋む音と同時に酒の濃い匂いと紫煙がチョキーの感覚を刺激し、中の客やコップを磨く店員はチョキーに流し目を送り、またすぐに元に戻した。

だが、チョキーはその一瞬の目配せの中から一人を選び、丸い机の合間を抜けてその選りすぐりの一人の傍に立った。

「なあ」

チョキーは一口問いかけるも、その芥色のコートを来た男は目も暮れず、大人の割にはどんよりとした目を黄金の液体に映すだけだった。

「これを置いておく、後で目を通すと良い」

チョキーはそう言って一枚の羊皮紙を丸テーブルに置き、男がちらりと紙を確認するのを見て、物も言わず立ち去った。

酒場から出ると、ほんの十数秒しか酒場に居なかったのに、夜の風がひんやりとして心地良かった。

"何の意味があるんだ?"

ファイルはつまらなさそうに言うと、チョキーはまた先ほどと同じ様に笑った。

"そのうち分かる、まぁ楽しみにしてろよ"

酒場の中に冷たい風が入りこみ、宵風が星空に舞った。

914 名前:殺人技術 投稿日:2007/01/22(月) 00:06:54 [ E9458iSQ ]
チョキー・ファイル(24)


新年祭はビガプール王宮のT字型の舞踏会場で催された。

というより、本当に内容は舞踏会の様な物なのだろう

踝まで埋まる鈍いピンク色の絨毯が一面に広がり、その上に立つ者達は男は皆正装を固めていた。

女は色とりどりのドレスに身を包んで、純白のテーブルクロスが垂れた机には豪華な料理が嬉しそうに乗っている。

中には、オレンジ色の可愛らしいドレスに身を固めた、弱冠15歳にも達していなさそうな少女までいた。

会場の壁際にはいくつかの甲冑が飾られ、その手には本物だろうか、鋭い輝きを見せる大剣や槍などの見る物に緊張を与える武具を、それぞれの甲冑が握っている

その兜のバイザーの奥には空虚が広がり、じっと目を合わせると気迫負けすらしそうだ。

ビガプール現国王の挨拶が終わると、招待客達は豪勢な食事とワインに手を付ける者も居れば、大きく空かれた空間では幾組かの男女が音楽に合わせて踊り、一角では要人のボディガードや警備隊が目を光らせていた。

「カリオ、お前はケブティスにはしゃぐと聞いたんだが、はしゃがないのか?」

ワインを片手に天上まで十数メートルはあろう大窓の前で佇むチョキーは、傍らのカリオに問い掛けた。

チョキーは他の賓客と同じく黒の格調高いスーツに正装しているが、カリオはブリッジヘッドで合った時と同じ黒尽くめの格好で、まわりをキョロキョロと見渡しながら扇形に切られたピザをつまんでいた。

「……あー、親父が居る時はな、でもチョキーさんの前じゃ、あんまりそういう所見せられないよ」

カリオはピザを頬張りながら言って、一気にピザを飲み込むと毒でも口にしたかのように呻いた。

チョキーはそれを見て手に持っていたワインをカリオに渡すと、カリオは不恰好にもワインを一口で飲み干した。

チョキーはふと大窓を背に目を見渡すと、見覚えのある人物を見つけた。

ブロームから依頼を受けた時、国会議事堂に一緒に召集された、黒く正装する人々の間で明らかに浮いている、緑色の剣を腰に掲げた剣士と、紅い金属の弓を背中にぶら下げたアーチャーだ。

その露出的な格好はこの場には似つかわしくないが、恐らくは人々に威圧感を与えて、不届きな事をさせない様にする為だろう、カリオもその様な物だが。

──あの二人が居るという事は、恐らく確か……カルスとかいうウィザードも居るな、とチョキーは思った。

「これはこれは、チョキー様」

突然掛けられた声にチョキーとカルスが向き直ると、正装しているお陰で分からないが、そこには目に新しい顔が立っていた。

915 名前:殺人技術 投稿日:2007/01/22(月) 00:08:15 [ E9458iSQ ]
チョキー・ファイル(25)


「ブラックスミス、君も招待されたのか」

チョキーと鍛冶屋は互いに握手を交わすと、鍛冶屋は苦笑いを浮かべて言った。

「それはこっちのセリフだよ、私は毎年お呼ばれしているが、どうしてお前がここに居るんだ?」

チョキーはそれに、代理だよ、とだけ告げて、銀のトレイを持ってやってきた女性からワインを受け取って、口を潤わせた。

「チョキーさん、御久しぶりです」

今度は鍛冶屋も含めた三人がまた別の方向に振り返ると、声の主は片手に大きな皮の手を繋いで微笑んだ。

「アドナイメレクか、君も招待されたのか」

チョキーはアドナイメレクと握手をすると、アドナイメレクが傍らの少女──カイツールを前に出し、チョキーはカイツールとも握手をした。

アドナイメレクは以前会った様な薄緑色の法衣ではなく、胸元に大きな十字架の刺繍がなされた黒い法衣を身に纏っていた。

カイツールもまたあの時の青い服ではないが、形はほぼ同じの黒い服に真っ赤なラインとフリルをたくさんくっつけている、あの独特な仮面と手袋は同じだ。

目を上げると、その後ろには先ほどのアーチャーが立っている、どうやらアドナイメレクとカイツールの護衛らしい。

「そうでした、チョキーさんの言っていた清掃員ですが、大体の事が分かりました、それを私なりに纏めて見たので、後で目を通して下さいね」

アドナイメレクは法衣のポケットから丸まった書類をチョキーに手渡すと、チョキーはありがとう、と礼を言った。

「あ、そうだ、こっちの仕事も終わったぞ」

今度は鍛冶屋が言い、スーツの内ポケットから一枚の書類を取り出した。

「口に出して言えない結果になった、という事だな」

チョキーはそう言うと、鍛冶屋は失笑した後、別れを告げてどこかへ去った。

「──そうだ、アドナイメレク」

「?」

チョキーはそう言ってアドナイメレクの後方を指し示すと、アドナイメレクは振り向いてそれを目に入れた。

「ブルンネンシュティグ国会の議長は、確かあの人だったよな?」

アドナイメレクはチョキーの指差す先を見ると、そこには中肉中背の体格の、髭を白くした老人が多くの護衛を付けて周りの人物と談笑していた、護衛の中には一人だけ緑色のコートを着たカルスというウィザードも居た。

「えぇ、アレクシス議長ですね、彼がこのパーティーの一番のVIPですから、護衛の量も私達とは比べ物になりませんね」

アドナイメレクはそう言って笑い、チョキーも一緒に笑おうとしたが、突然パーティー会場を包んだ振動によってそれは一瞬の警戒へと変わった。

916 名前:殺人技術 投稿日:2007/01/22(月) 00:09:10 [ E9458iSQ ]
チョキー・ファイル(26)


「どうした?」

カリオとアーチャーがチョキーとアドナイメレクを隠すように位置取り、アレクシス議長の護衛達は瞬時に守るべき対象を背中で囲んだ。

「……扉が開いているな」

チョキーはカリオの背中越しに大きく開いた扉を覗き込み、パーティー会場を静寂が染め上げた。

「うわあっ!?」

突然その扉から黒いものが飛んでくると、テーブルに置かれた料理の上に被さってテーブルを破壊し、近くに居た令嬢や貴族達が慌てて後退りをした。

「……!」

それは衝撃的な光景だった

テーブルクロスの皿の上にサラダが散乱し、そのサラダの上に黒く焼け焦げた警備員が七面鳥の様に盛り付けられている。

警備員のソテーだ。

「ば、ば……化物だぁぁぁ!」

開き放たれた扉の前で腰を抜かした男がそう叫んだ瞬間、扉の奥の闇夜から引き千切られたかのような黒い闇が入り込み、会場内の貴族達の頭の中で、最後の一線が断ち切られた。

すなわち、恐慌。

令嬢達はドレスのフリルを持ち上げて出口へ殺到し、男達は一緒になって逃げる者も居れば、情け無い事にテーブルの下に隠れようとする者も居る。

黒い物がT字型の会場の中心に来ると、その黒い物の正体である悪魔のマントが生き物のごとく伸びて会場を包み込んだかと思うと、黒い帳はそれ自体が何かを形作るように分裂しては集まるを繰り返した。

そして、会場のの中空に悪魔の姿が晒されると、その会場の全ての視線を集めながら、緩やかに絨毯へと足を降ろした。

その爪先が大地を触れた瞬間、絨毯に海の様に波紋が立ち、無事なテーブルと料理がカタカタと音を震わせた。

悪魔はまるで天使の様に白く美しい光を放ち、武器を構えた警備員やボディガード達も、物言わずそれに見とれてしまった、そして最初にそれから抜け出したのは女だった。

「悪魔……」

アドナイメレクを守っていたアーチャーがぼそりと呟き、アドナイメレクがそれに気付いた瞬間、アーチャーは目にも止まらぬスピードで矢継ぎ早に弓を振動させた。

走りながら。

それと同時に悪魔を挟んで反対側の剣士が抜刀して緑の筋を煌かせると、開いた手にパリーイング・ダガーを構えて突進した。

悪魔は両手をふわりと持ち上げ、右手をアーチャー、左手を剣士に向けると、訪れた無数の矢は一瞬で黒く炭化し、振り被られた剣は横から割って入った黒い騎士のサーベルに受け止められた。

アーチャーは小さく喘いでカーペットに倒れ込み、剣士はその異様な騎士の姿を見て狼狽した。

そして、剣士はすぐにその正体に気付いた、その騎士は空飛ぶ巨大なマントの一部で出来ていたのだ。

「大丈夫ですか!」

アドナイメレクは自分が守られる立場である事も忘れて倒れたアーチャーに駆け寄り、会場内に再び混乱が巻き起こると、無数の警備員達がボウガンを構えて悪魔と剣士の前の黒い騎士に狙いを定めた

「大丈夫よ、神父様」

アーチャーが悪魔の炎をすんでのところで弓で防いだお陰で、外傷はないようだった、それを確認するとアドナイメレクはほっと息をついた。

「おい、チョキー!」

チョキーははっとして声の方向を見ると、鍛冶屋が顔に焦燥を浮かべてチョキーを見た。

「今の内だ、逃げるぞ」

鍛冶屋はチョキーの手をとって会場の非常口の方に連れて行くと、まるでそれを知っていたかのように鍛冶屋の行く手をもう一人のマントの騎士が遮った。

そしてその瞬間、悪魔を取り囲んだ警備員達のリーダー格と思われる男が、会場内の騒音に掻き消されない様な凛とした声で叫んだ。

「撃て!!」

その声と同時に、警備員達の持つ強靭なボウガンが引き絞られ、まるでセピア色の虹とも見紛う様な矢が悪魔に集束した。

だが、その矢は悪魔が何事かを呟いた瞬間、警備員と悪魔の間の空間で嘘の様に姿を消した、それと同時に、警備員達は揃ってうめき声を上げて、絨毯に倒れ付した。

「……?」

警備員達は地面に横たわりながら、自分の身に何が起こったかも分からなかった、だがそれは一緒に倒れる同胞の姿を見て明らかになった。

苦しそうに呻く仲間の体から、放ったはずのボウガンの矢が体内から突き出しているのを見る事によって。

「……テレポーテーション」

悪魔がもう一度同じ言葉を紡いだ、今度のはチョキーにも聞こえた。

チョキーと鍛冶屋の前に立ちふさがっていた騎士と、剣士と格闘していた騎士が手品の様に掻き消え、そして空を舞っていた巨大なマントと白い悪魔までもが、蜃気楼の様に消えてなくなった。

917 名前:殺人技術 投稿日:2007/01/22(月) 00:11:26 [ E9458iSQ ]
チョキー・ファイル(27)


………………

………………

「……消えたか?」

鍛冶屋は茫然自失の体で呟き、アレクシス議長とその護衛も、未だ強張る体のまま天井や窓の外などを、注意深く眺めた。

だが、それは意味のない物だった。

「うおっ!?」

不意に、鍛冶屋とチョキーの間のほんの数十センチの隙間に黒い巨大な槍が生え、天井までを貫いた。

──いや、生えたのではない、降りてきたのだ。

一つ目の槍に続き、T字型の会場の中心を包み込む様に無数の槍が振り落とされると、天井からぱらぱらと砂と礫が零れ落ちた。

「……ま、まずい!」

監獄の鉄格子の様に連なった黒い槍が天井に消えると、今度は礫などではなく正真正銘の岩──天井の破片が、崩れだした。

鍛冶屋とチョキーは全速力で逆方向に逃げ、耳を劈く轟音が止むと、そこはとても人が通れる道ではなくなっていた。

つまり、逃げ場がなくなった。

既に動かない警備員達の死体が作る輪の中心に再び悪魔と巨大なマントが現れ、一瞬の沈黙の後、剣士とアーチャーは一方向から一丸となって悪魔に襲い掛かろうとした。

だが、それを寸前で止めたのは意外な存在だった。

「待てよ、お前等」

いつの間にか姿を掻き消していたカリオは、剣士とアーチャーを一瞬で突き飛ばし、悪魔とは遠く離れた一角に追いやった。

剣士とアーチャーはむくりと起き上がると、その武器をカリオに向けて、狼狽した。

「ご、護衛の癖になぜ邪魔をする!」

アーチャーはわけがわからないといった表情でカリオを見、カリオは笑って言った。

「知らねえよ、そうしろって言われたんだ」

カリオは二人の前に右手を掲げると、親指と人差し指、中指を上に向けた。

そして、皮と皮がぶつかる小気味良い音が鳴った瞬間、カリオのバックで幾つもの爆発が巻き起こり、カリオの姿が逆光となって二人の眼に焼きついた。

「み、道が……!」

爆発と共に落下した瓦礫は、ものの見事に悪魔と三人の間を塞いだ。

「……そこのアーチャー、まずはこの馬鹿をどうにかするぞ」

剣の鞘を絨毯に突き立てて立ち上がりながら、浅葱色の髪の剣士はカリオを睨み付けた

「本当にどうにか出来るのか?──武器なしで」

カリオは帽子の影に笑みを浮かべて言い、剣士とアーチャーは弾かれた様に自分の腰と背中に手を回した。

だが、そこに何かがあるはずもなかった。

緑色の剣と赤い弓は、カリオが突き飛ばすと同時に瓦礫の向こうへ投げ捨ててしまったのだから。

「ま、俺も武器ねぇけどな」

カリオは肩を竦めて両手を拾げ、自分に武器となる物が何も無い事を見せ付けた。

「……」

だが、二人は暫し沈黙を守ると、同時に立ち上がってカリオから逃げ出した。

「ははっ、腰抜けめ」

カリオは嘲笑した、だがその表情に冷や汗が浮かぶのはそう遅くは無かった。

二人の手には武器が握られていた。

その二人の後ろには、武器を奪われた情けない姿の甲冑が佇んでいた。

その騎士に見守られる様に、剣士は重厚な大剣を、アーチャーは先端が三方向に分かれた鋭い槍を構え、カリオは溜め息をついて両手を握り締めた。

「いいぜ、来いよ」

918 名前:殺人技術 投稿日:2007/01/22(月) 00:14:48 [ E9458iSQ ]
>突然掛けられた声にチョキーとカルスが向き直ると
思いっきり間違えた(´・ω・)

919 名前:第26話 酒のつまみ 投稿日:2007/01/22(月) 02:44:58 [ kHEFNWhg ]
「似合ってないなんて言ってごめん^^;」
そういってキンガーさんはガハハッ!と笑った。
背丈は180は無いかな。私が172だから・・・これも彼氏が出来ない原因の一つ。
デルモちゃんは150位。ほっそりした可愛い子。まだ19らしい。
「ま、立ち話もなんだから、居酒屋でもいこっか?」
「はぃ。」とついて行く私達女性陣。なんだか緊張が解けない;;
適当に入れそうな居酒屋へ3人だけのギルドで行くことに。
私的にはこの優しそうな笑顔の男性と一緒にいられるのはなんだか気恥ずかしい感じだった。

運ばれてきたお酒とともに「かんぱーい!」と声を上げた3人。
お酒が運ばれてくるまで、まるで通夜のように無口だったw

「そんなかしこまらないでよw俺も緊張してるんだからさ。何から話していいか戸惑うしね」
「とりあえず、初めまして・・・でもないか・・・私が「ぎゃおす」です」
「ぁ・・えと、私がデルモです。ごめんなさい」
「別に謝る事ないんだけどw女性がネトゲーしててもいいじゃないのぉ!」

お互いの本名や年齢、職業なんかを話したりして、最初は合コンみたいだった。
二人とも感じのいい人たちで、改めて楽しいギルドにいることを認識したりもした。

「実は二人に見てもらいたい物があるんだよ」
と言って、キンガーさんは自分の鞄からPCを取り出した。
ノートなんかよりずーっと小さいタイプの物で小型電子辞書みたいなPCだった。
思わず私は
「これでRSやっているですか?」と訊いた。

「これは仕事用なんだよ。出張なんか多いから・・(日帰りばっかで疲れる)こうゆのが便利なんだ
主に顧客の情報整理や、メールのやりとりはこれでしているんだよ」

「へぇ〜! すっごいですね? 私の手でもキーが小さいかも」
くそ! 小柄の女が羨ましい〜! 声にならない私の妬みw デルモめ!

「見て貰いたいのはPCじゃなくて・・・・

何か打ち込んで、さっと私たちの方へ画面をクルリと向けた

 これ。ついに来たんだよメールが」

920 名前:第27話 宴 投稿日:2007/01/22(月) 03:25:31 [ kHEFNWhg ]
クルリと向けられた画面に映っているのは、キンガーさんのyahooメールの受信箱だった。

「これが前に送られて来たものと一緒なやつだよ。悔しいけど、これで騙された」

それを見たデルモちゃんはお酒のせいなのか、顔を赤くして言った。

「実は私のところにも来たのよ。」
「え?なんで? 連連にRS登録メアドはyahooじゃないって言わなかったの?」
「狙われているって聞いてから、仕返ししたくてね・・・被害にあったわけじゃないけど
キンガーさんの事もあったし、それで・・・」
「それでなんだい? 俺だけの役目だったはずだけど?」
「わざとその偽メールに返信しようと思うの。実はトーナメントに使ったIDでRSの登録してあるの」
「ぇぇぇええええ? ちょw キャラとられちゃうよぉ?」
「・・・仕返し用に新たにつくったアカウントなのw」

どうゆうことなのか、デルモはゆっくりとキンガーさんと私に教えてくれた。

「それ・・・俺も真似していい?」
「いいですよ〜^^ どうせだから二人でやりましょう!」

お酒のせいなのか勢いのある娘だと思った。見た目とは大分違うのね;;
キンガーさんも見た目とは違うんだろうか? みたまま優しそうよねぇ。
合気道二段の腕前でちょっとゴリラ系の顔。嫌いじゃないのよね・・・と考えていた。
その時ふと、キンガーさんの左手が光ったような気がした。

あ!

だめだこりゃ。薬指にあるわこれ。人の物だったのね〜。

「ぎゃおす! どうした? ぼーっとして?」
「ぁ、なんでもないです。 今日は飲みましょ! 飲まれましょ!」

またの再会を約束して分かれた3人はその日の深酒を後悔しつつ各々家路についた。
3人の距離は家に近くなるにつれ、実は近くなっているのでもある。
またRSで一緒だもん。

翌日の私の顔には前日の酒と一緒に化粧も残っていた。

921 名前:名無しさん 投稿日:2007/01/22(月) 09:41:14 [ aJnTd6S6 ]
>>殺人技術さん
戦闘シーンよりも、最初の襲撃シーンについ見入ってしまいました。警備員のソテー・・。
華やかなパーティ会場が無残に壊されていくという場面の描写が細かくて、本当に怖いと感じてしまいました。
本当に意外な人物が意外な行動を開始していますが・・どうなってしまうんだろう・・。
ところで、剣士とアチャとWIZ、シーフ(カリオ)、BIS(アドナイメレク)、悪魔の職がさりげなく揃っている(笑)
ちょっとだけ出てきた「15歳くらいのオレンジ色のドレスの女の子」はやっぱりプリンセスをイメージしているのかな。

>>きんがーさん
ついにリアルでの話に発展してきましたね。
敵側の行動も気になりますが、ともかくこのなんとも言えない駆け引きが読んでいて面白い。
さりげない恋愛的な機微も主人公が女性だからこそ味があるというか。
さて、今後どうなっていくんだろう・・。

922 名前:ドギーマン 投稿日:2007/01/22(月) 20:34:27 [ at5Dv2Nk ]
キンガーさんの話も盛り上がってきたし、
チョキー・ファイルもいよいよという感じですね。

緊張も何もない話ですが気楽にのんびり読んでみてください。

『カムラのお散歩』

小さな女の子がブルンネンシュティグの街を歩いていた。
手にウルフマンぬいぐるみを抱いて街をお散歩中らしい。
「やぁ、カムラちゃん」
バリカスが近寄ってくる女の子に声をかけた。
「こんにちは、おじさん」
"おじさん"と呼ばれてバリカスはちょっと困った顔をして頭を掻いた。
カムラは構わずに言った。
「キャンディーくださーい」
「はいよ、いくつ?」
バリカスは紙袋を取り出してカムラに聞いた。
キャンディーは1個200ゴールド、カムラは胸に下げた小銭入れを覗き込んだ。
ちょっとずつお小遣いを貯めた100ゴールド硬貨が20個。
カムラは「10こ!」と言おうとして思いとどまった。
少し離れたところの家の前で、戦士がうろうろとして迷っているようだった。
ドアを叩こうか、いや、やっぱり止めよう。いや、やっぱり・・・。
そんな様子だった。
カムラはちょっとだけ悩んで。
「やっぱりお花ください」と言った。
バリカスは笑顔で紙袋を引っ込めて、
お花を一輪、しかもリボンをつけてカムラに渡した。
「ありがと〜!」
手を振るバリカスに小さな手を振ってカムラは戦士に走り寄った。
「ねぇねぇ、おじさん」
おじさんと呼ばれて戦士は辺りを見回した。自分しかいない。
「おじさんじゃなくて、お兄さんだよ」
戦士はしゃがんで少し引きつった笑顔でカムラに言った。
「はい、これ」
リボンのついた花を差し出すカムラに戦士は少し驚いた。
「え?」
「おじさん、やってみようよ!」
戦士は少し勇気がわいてきた。
「じゃあね!」
そう言って走り去ろうとするカムラの小さな手を戦士は掴んだ。
「ちょっと待って」
「ん?」
首をかしげるカムラに、戦士は財布を取り出した。
「これでキャンディーでも買うといい」
そう言ってカムラに1000ゴールド硬貨を1枚渡した。
「ん、ありがと!」
花を持って扉をノックする戦士を尻目に、カムラはバリカスのところに戻っていった。

923 名前:ドギーマン 投稿日:2007/01/22(月) 20:35:42 [ at5Dv2Nk ]
カムラはキャンディーを舐めながら散歩を続けた。結局買ったキャンディーは5個だけ。
キャンディーを舐めながら歩いていくと、
ウルフマンが路肩に座り込んでぼんやりしているのを見つけた。
カムラはウルフマンぬいぐるみと実物のウルフマンを見比べて、目を輝かせた。
ウルフマンに走り寄ると、話しかけた。
「ワンちゃんワンちゃん!」
ウルフマンは素敵な笑顔で自分を見つめる女の子に気づいた。
細い腕にウルフマンぬいぐるみが抱かれている。
「ん、なんだい?」
敢えて"ワンちゃん"にツッコまずに聞いた。ぬいぐるみを見て少し嬉しかったのもある。
カムラはウルフマンの頭を撫で始めた。
「わぁ〜、本物だぁ」
「ははは、尻尾も触ってみるかい?柔らかいよ」
ウルフマンは毎日丁寧にブラッシングしている毛並が自慢だった。特に尻尾の。
「わぁ、さらさらぁ」
「そうだろう、そうだろう」
ウルフマンはかなり嬉しそうに言った。
すると、2人の目の前をケルビーに乗ったサマナーが通り過ぎて行った。
カムラは目をさらに輝かせた。
そして、じっとウルフマンを笑顔で見上げた。
ウルフマンは迷った。彼は狼人間だという自意識が強かったから。
カムラは残念そうに俯くと、ウルフマンぬいぐるみをぎゅっと抱きしめた。
ウルフマンはぬいぐるみを見た。
女の子の腕の中で「ぐぇっ」と言いそうな感じに首を締められて顔を縦長に歪めている。
ウルフマンは地面に手をついた。
「ほら」
カムラの顔に笑顔が咲いた。
カムラはウルフマンの身体をよじ登ろうとするが思ったより身体が大きい。
「あ」
と足を滑らせて握っていた背中の毛をぶちぶちっ!と思い切り引っこ抜いた。
ウルフマンは「きゅおっ」という悲鳴を上げて地面に伏せた。
その背中に構わずカムラは乗っかった。
「ワンちゃんだいじょうぶ?」
カムラが心配そうに聞くと、ウルフマンは身体を起こして痛みを堪えて言った。
「だ、大丈夫さ」
ウルフマンは走りだした。

走るウルフマンの背中で風に黒髪を揺らしながらカムラははしゃいだ。
腕の中で跳ねるウルフマンぬいぐるみも喜んでいるようだった。
「はやいはやーい!」
ウルフマンは少し照れながらも走り続けた。
すると、目の前にさっきのサマナーが見えた。
「ワンちゃん、追い抜いちゃえ!」
カムラは指揮棒のようにキャンディーでサマナーを指し示した。
「ウォォン!」
ウルフマンは一声大きく吼えると走る速度を上げた。
そして、ケルビーに乗って走るサマナーを抜いた。
「やったぁ!抜いた抜いたぁ!」
サマナーは前を走る二人に目を見張った。
走るウルフマンの背中で女の子がはしゃいでいる。
なんか悔しくなったサマナーは笛でケルビーの尻を叩いた。
「ケルビー!追い抜いて!」
「バウバウ!」
ケルビーは鳴き声を上げてウルフマンに迫った。
「ワンちゃん、追いつかれちゃう!」
カムラは叫んだ。
ウルフマンは走りながら首を後ろに向けてケルビーに目を合わせると、思い切り睨みつけた。
「キャウンッ!?」
ケルビーは身体が硬直した。
「キャッ」
慣性の法則に従ってサマナーは急に止まったケルビーから前につんのめってに落とされた。
「あ、ワンちゃん止まって」
カムラの声にウルフマンは止まった。
サマナーは右腕を地面で擦りむいていた。血が滲んでいる。
「ごめんなさい」
カムラはサマナーのところまで戻ると、謝った。
「あ、いいのよ大した事ないから」
後から戻ってきたウルフマンにカムラは言った。
「ワンちゃんも謝って!」
「すまない」
ウルフマンも済まなそうに謝った。
「いいってば、私も大人げなかったし」
サマナーは苦笑した。
腕の擦りむき傷からは血が垂れていた。
「痛そう・・・」
カムラは呟いた。
「大丈夫よっ」
サマナーは手を振った。
と、カムラが思いついたように走り出した。
「ちょっと待ってて!」

924 名前:ドギーマン 投稿日:2007/01/22(月) 20:36:26 [ at5Dv2Nk ]
カムラはキャンディーを握って、ウルフマンぬいぐるみを胸に抱きしめて走った。
そして、たまたま近くに居たビショップに声をかけた。
「おじさん!」
ビショップは黒い筋肉質な身体をカムラに向けた。
「なんだい?」
ビショップは笑顔で言った。
カムラは少し怯えた。
「あ、いや、違うんです!」
泣き出しそうなカムラを見て周囲から視線が集まる。
ビショップは必死に弁解した。
「あ、おじさん」
カムラは思い出したように言った。さっきの涙目はどこへやら。
「なんでしょうか」
ビショップは少しほっとして聞いた。
「ついて来て!」
そう言うとカムラはビショップの手を掴んで走った。
ビショップは身長差に少し腰を曲げて女の子に導かれるままについていった。
ビショップを連れてカムラはサマナーとウルフマンのところに戻ってきた。
「治してあげて!」
ビショップはサマナーの擦り傷を見て、頭を掻いた。
実際大した怪我ではないから、治すほどのこともないと思った。
「はやく!」
「わかりました!」
カムラに急かされてビショップは傷口に手をかざした。
「はっ!」
手の平から放たれた光が傷口を包み、傷を血の痕だけ残して消した。
「ありがとう!」
ビショップはカムラの頭を撫でながら笑顔で言った。
「どういたしまして」
その笑顔にカムラはまた泣きそうになった。
ウルフマンがジト目でビショップを見た。
「いや、違うんです。違うんですよ」
おろおろするビショップにサマナーも
「ありがとう。ごめんなさいね、わざわざ」と言った。
「いえいえ、良いんですよ」
ビショップは気を取り直して白い歯を輝かせた。
「じゃあ、私はもういくわね」
そう言ってサマナーはケルビーに乗った。
「私も失礼させてもらいます」
ビショップは頭を下げた。
「ばいばーい!」
去っていく二人をカムラとウルフマンは手を振って見送った。

再びカムラはウルフマンに乗って走りだした。
道行く人が自分達を見ているのが分かってか、カムラはなんだか自慢げだ。
ウルフマンもだんだんまんざらでも無くなってきた。
すると、走る2人の前を小さな影が横切った。
「止まって!」
ウルフマンは急ブレーキをかけて止まった。
ウルフマンの背中から勢い良くカムラは飛び降りると、その影を追いかけて走り出した。
ウルフマンも慌てて後を追った。
カムラは路地に逃げ込んだ小さな影を探した。
「ウサちゃ〜ん?」
呼ばれてウサギは振り向いた。
「あ、いた!」
カムラはウサギに向かって走り出した。
ウサギは目を見開いて身体を震わせた。
カムラにではない。
自分に向かって手を振って走ってくる女の子のさらに後ろ、
獣の巨体の影に驚いて逃げ出した。
「あ、待ってよぉ」
ウサギは慌てて角を曲がった。
そこにはウサギの姿はなかった。
代わりにカムラは横たわっているプリンセスを見つけた。
ウルフマンも追いついてきた。
カムラはプリンセスの柔らかい頬を指先でつついた。
プリンセスは少し嫌な顔をしたが、目をつぶって死んだ振りを強行した。
ウルフマンはカムラの肩をトントンと叩いた。
振り向くカムラにウルフマンは人差し指を立てて静かにと合図を送った。
プリンセスは急に静かになったのを感じて、
もう行ったかな?と目をすっと開けた。
視界いっぱいにウルフマンが大口を開けているのが見えた。
「きゃああああああああっ!!」
プリンセスは寝たまま足を蹴り上げた。
つま先がプリンセスに覆いかぶさっていたウルフマンのみぞおちを捉えた。
「・・・かっ・・く・・・ぉ・・」
ウルフマンは呼吸できなくなって腹を押さえてうずくまった。
プリンセスは尻をする様に後ずさってウルフマンから離れた。
「はぁはぁはぁ・・」
「ふ・・ぉ・・・」
息を荒くするプリンセス、方や悶えるウルフマン。
カムラはクスクスと笑って二人を眺めていた。

925 名前:ドギーマン 投稿日:2007/01/22(月) 20:37:32 [ at5Dv2Nk ]
あちこち走り回ってウルフマンが疲れたらしいので、
カムラとウルフマンは水路の縁に座って休むことにした。
カムラはウルフマンに紙袋の中のキャンディーを1個渡した。
「はい、これ」
ウルフマンは快く受け取ると、ありがとうと言って一緒に舐めた。
本当は牙が命の彼にとってキャンディーは厳禁なのだが、女の子の笑顔には断れなかった。
カムラが足をぶらぶらさせてキャンディーを舐めていると、
後ろを誰かが走って通り過ぎた。
何気なくカムラは後ろを見た。
ネクロマンサーが両手を広げて走っていた。
カムラは立ち上がると、ネクロマンサーのように両手を広げて後を追いかけていった。
ウルフマンも慌てて後ろを追いかけた。
「待ってー!」
ネクロマンサーは後ろから呼びかけられて立ち止まった。
カムラは格子のはめられた仮面の奥にあるネクロマンサーの怪しい目の光を見た。
「な、何?」
ネクロマンサーが少し緊張気味に言った。
カムラはネクロマンサーの仮面を興味深げに眺めると、
紙袋からキャンディーを取り出して、
「はい、これ!」
とネクロマンサーに差し出した。
「え・・・」
ネクロマンサーは驚いた。
「食べて!」
カムラに言われてネクロマンサーはキャンディーを受け取った。
カムラはネクロマンサーの仮面のなかの暗い闇をわくわくとした表情で見ていた。
「・・・・・・」
ネクロマンサーは固まった。
キャンディーを縦にして格子の間に差し込もうとするが、はいらない。上下の幅が狭くてつっかえる。
カムラは目を輝かせた。
「はやくっはやくっ!」
ウルフマンはカムラの後ろでネクロマンサーを少し気の毒そうに見ていた。
すると、ネクロマンサーは思いついたようにキャンディーを両手の手袋で割ろうとした。
しかし、手袋の先まで指が入っていないのか、力が入らないため割れない。
「はやくぅ〜〜」
カムラは急かした。
ネクロマンサーはカムラに「ちょっと待ってて」と言って後ろを向いた。
すると、ネクロマンサーの身体が黒く染まって、黒い物体は上に伸びて
すらりとした悪魔の姿になった。
悪魔は振り向いてしゃがむと、ぽかんと口を開けているカムラの頭を撫でた。
「ありがとうね」
キャンディーを舐めながら歩き去っていく悪魔の後ろ姿をカムラは呆然と、
ウルフマンは少し興奮気味に見送った。

カムラはウルフマンから下りて、手をつないで一緒に歩いていた。
キャンディーは全部食べちゃったし、
ウルフマンぬいぐるみも腕の中でのんびりとカムラと同じ景色を見ていた。
ふと、カムラは噴水の縁に座ってじっとリボンのついた花を眺めているアーチャーを見つけた。
近寄ってみると、ぶつぶつと何か呟いている。
「どうしよう・・・」
そんな感じにカムラには聞こえた。
カムラはアーチャーに声をかけた。
「ねぇねぇ、おばちゃん」
アーチャーの顔が引きつった。
「おばっ!?」
カムラは気にせずに言った。
「困っちゃうなら、嫌って言ってもいいんだよ?」
アーチャーは呆けた表情で、丁度腰掛けている自分よりも小さいの女の子の顔を見た。
そして、微笑みを浮かべると、
「そうね。そうよね」
と言って、花をカムラに差し出した。
「それ、あげるわ」
カムラは立ち上がるアーチャーを見上げた。
「ありがとう!」
アーチャーは腰を曲げてカムラの頭を撫でた。
「わたしのセリフよ」
そう言ってアーチャーは踵を返すと、
「ありがとうね」
と言ってカムラに手を振った。
「ばいばーい」
カムラも手を振って見送った。
アーチャーが見えなくなると、カムラは花を手に持ってウルフマンに振り向いた。
「かえろっか!」
ウルフマンは頷いた。

カムラとウルフマンは出会った通りで手を振って別れた。
帰り道の途中、歩きながらカムラは辺りを見回した。
うな垂れて歩く戦士が悪魔とのすれ違いざまに振り向くと、その後ろを追いかけていった。
サマナーを乗せたケルビーがプリンセスが変身したウサギを見つけると、
サマナーの命令を無視して追いかけて言った。
ビショップはまた子供に泣かれていた。
天使になって「旅に出ます。探さないで下さい」と手紙をしたためていた。
カムラは家につくと、大きな声で言った。
「ただいま!」
お母さんが優しい声でおかえりと言った。
窓の向こうで、リボンのついた花をアーチャーに差し出すウィザードがいた。
アーチャーは頬を染めてそれを受け取っていた。

926 名前:ドギーマン 投稿日:2007/01/22(月) 20:46:34 [ at5Dv2Nk ]
あとがき

問題1 登場していないジョブは?

問題2 カムラのお財布の中はあといくら?

問題3 カムラの髪の色は?

ウルフマンぬいぐるみ×ケイルンの近くにたまたま居たちびっこNPC
でなんとなく書いてみました。ひねりも特にありません。
全キャラ登場させるつもりだったけど、
シフ/武道が居ないのは仕様です。思いつかなかった・・・・。
ウルフマンぬいぐるみで何か書けないかなって思っただけです。

答えは、書かずに心にとどめておいてくださいw
出来たかどうかだけ答えてください。

927 名前:名無しさん 投稿日:2007/01/22(月) 22:39:29 [ xJi8rg6E ]
初めてこのスレに書きこまさせていただきます。
文才というものに縁がなさげなので、日本語になっているかどうかが心配です

>>913
ソテーの表現がすごいなと思いました
小説書きさんたちの表現力には驚かされます
悪魔・・・いったいどの陣営でしょうか?

>>919
反撃開始!でしょうか。
オフ会での心の動きが生々しい?リアル?で面白いです

>>922
和みました。
各職の特徴がよくでていて、ネクロの所では思わずクスリ

928 名前: ◆21RFz91GTE 投稿日:2007/01/23(火) 00:01:28 [ .ugJd1pQ ]
////**************************************////
  ■冬の軌跡:まとめサイト(だるま落し禁止)
  ■http://bokunatu.fc2web.com/SS/main2.htm
  ■現行SS速見表
  ■キャラクター紹介(一部ネタバレ含む) >>837
  ■Act:1 青空     前スレ>>962-963
  ■Act.2 意思を告ぐ者達  >>500-501
  ■Act.3 遠い空 >>835-836
  ■Act.4 NorthWindGate >>857-858
  ■Act.5 風の吹く場所へ  >>906-907
////**************************************////


ACT.6:深い深い嘆きの森



 熱帯夜、暑くムシムシとした風は気分を悪くさせる魔性の風。
南から吹きぬけるこの風は、時に辛く、時に優しい気分にさせてくれる。夏特有のあの土の臭いを含んだ風が吹きぬける夜だった。
「たたた、助けてくれぇぇ!」
駆け抜ける風は道を選ばない、山の中にぽっかりと空いた空洞の中へでも迷いなく進んでゆく。通り抜けることが出来ないと分かりながらもその中を進んでゆく、まさに坑道を駆け巡る一つの道のように。
「く…来るな化け物ぉ!」
土の臭いと一緒に他の臭いも混じっている。例えるなら生臭く真紅のように赤い体液…血のように不快な臭いだ。その臭いは入り口からではなく、行き場を失った風が入って来た風により送り出された風。坑道の奥深くから運ばれてきたその風の臭いに死神が集まる。
「う…う…う……うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
死神という名の仮面をかぶった、烏を呼び寄せる臭いだった。

929 名前: ◆21RFz91GTE 投稿日:2007/01/23(火) 00:02:22 [ .ugJd1pQ ]
 12時間後 鉱山都市ハノブ近郊 鉄の道

 「つまり、地震で坑道が崩れて作業中のチームにモンスターが襲い掛かった。と?」
「そうですね、詰まる所その通りです。」
ハノブへと通じる商業の道として栄えた鉄の道。今では魔物の巣窟となっているがその昔は商人達の交友の場所でもあり、市を開くほど穏やかな場所だった。
時が流れると言うのはそれは恐ろしいことだった、人の通りがなくなってから幾年。荒れ者達がその道を支配し、徘徊するほどまでになった魔物の群れ。それはまさに現世の輪廻と同じように弱肉強食の世界となっていた。
「それにしてもユラン君、君は本当にタフなんだね。」
「いやぁ〜それほどでも。」
この二人の移動速度は尋常ではなかった、まさに神風。目視することも出来ないほどの速さにて鉄の道を走り続けている。だが、気になるのは。
「マスタ、そろそろ私の背中から降りてもらえませんか?」
「イリアもだよ、何で僕が君を背負って走らなくちゃいけないのかな?」
そう、クラウスはミトを。ユランはイリアを背負って走っている。既にクラウスの顔は汗だくで披露困憊していた。その隣を涼しい顔で走っているユラン。彼は本当にウィザードなのだろうか、そう思いたくなるほどだ。
「あらクラウス、か弱い女の子を古都からハノブまで走れと言うの?」
「そうよユラン君、私たちはか弱い女の子なのよ?」
二人は同時に顔をあわせて笑顔でそういった、何故こうも女性と言うのはここまで仲良くなるのが早いのだろうか。クラウスとユランは互いに顔を見合わせてため息をついた。



 「ご苦労様、大丈夫二人とも?」
流石のユランもうつぶせになりながらゼェゼェと息を切らせている、その隣で半ば死にそうなクラウスが仰向けで倒れていた。かすかだが息はあるようだ。
「それにしても惜しかったですねぇ、後500メートルも進めばハノブだったんですけどねぇ〜。」
そう、先にギブアップしたクラウスとミトを背負い、さらにその中にイリアを含めた三名を背負ってユランは走ってきていた。彼は本当に…いや、これ以上追求するのは止めておこう。
「さて…。」
倒れている二人に慰めの言葉を贈った後、ミトは目と鼻の先にある炭鉱都市ハノブを見つめた。炭鉱マン達の声で24時間活気があふれているハノブだったが、この夜はやけに静かだった。依然来た時はあの宿屋の店主が笑顔で迎えてくれて、その後部屋を一つ取ってくれるほどの面識があるミトだが、この夜のハノブでそれを期待するような事は現時点では無くなっていた。
「静かですね…。」
「私ハノブは始めて何ですけど、こんな夜中でも賑わっているのですか?」
「えぇ、商人達が常に声を上げて商売をしたり、炭鉱マンが酒場でお酒を煽って騒いでいる時間です。」
簡単に夜のハノブについて説明した後、ゆっくりと街のほうへと歩きだす。腰に装着していた弓を取り出し、魔力増強装置のノブを少し上げた。
「…地震で炭鉱が崩れたにしては静か過ぎるわね…もう少し騒いで居てもいいものだけど。」
背中の矢筒から数本矢を取り出して持っている弓に装填する、ミトはこの弓を”琥珀の人”と呼んでいる。
街へと近づくに連れてなにやら瘴気が漂ってくるのが分かる、その中には
「…っ!」
微かだが血液の臭いも混じっている、動物や魔物の臭いではなく、紛れも無い人間の血液がゆっくりとだが段々と濃くなってくる。その臭いに誘われて烏の群れが帯をなしてハノブの街を多い囲むように飛んでいるのが肉眼で確認できた。

930 名前: ◆21RFz91GTE 投稿日:2007/01/23(火) 00:03:08 [ .ugJd1pQ ]
「クラウス!」
「イエッサー。」
先ほどまで死にそうな声で小言をこぼしていたクラウスが突如起き上がり、右手に構えている杖を目の前に持ってくる、それと同時に一つの詠唱を始めた。クラウスの足元に魔法陣が出現しその魔法陣ならさらに魔法陣が連なるように出現する。そして当たり一面が魔法陣で一杯になった頃クラウスの目の前に一つの火炎弾が召還される。その火炎弾は一つ、また一つと増えて最後には五つの火炎弾が出現した。
その火炎弾一つ一つを右手に持っている杖ではじきハノブ上空に散開した。そこに特殊な液体と化合物を混ぜた矢をミトが射る。するとハノブ上空で大きな爆発が起りハノブの町全体を照らした。
「…あれは!」
街が明るく照らされた後、直ぐ目に飛び込んで来たのがとても大きく、人形をしたモンスターだった。
身の丈6尺程、全身が肌色で染まっていて二足歩行の巨大な怪物。その手には微かだが血液らしき液体で赤く染まっている。
「マスタ!」
ハノブの街から数多くの魔物の群れがミト達めがけて走り出してきた、その中には先ほどまで人であっただろう…察するに腕を加えた魔物も見えた。
「とんでもない数ね…行きますよ!」
「オーダー、承りました…。」
「あわわわ…頑張ります!」
ミトの掛け声に後ろに居る三人は各々と戦闘体制を作り出す。戦闘慣れしていないイリアですらこのときばかりは覚悟を決めたのか、懐から一つの本を取り出しその本をゆっくりと開けてなにやら呪文を唱え始めた。その最中。
「あぁ…短かった僕の青春…ありがとう友よ…ありがとう戦う気全開のちびっこ…。」
「ちびっ子いうなぁ!」
イリアの詠唱は一度そこで絶たれた。



ACT.6:深い深い嘆きの森


End

931 名前: ◆21RFz91GTE 投稿日:2007/01/23(火) 00:05:26 [ .ugJd1pQ ]
こんばんは…。(´・ω・`)
サブで廃坑秘密に向かったら…1時間30分程入り口をクリックしてました21Rです
もちろん、入れずにその後解散しましたorz


さて、何時も感想を書いてくださる方。本当にありがとう御座います。というか励みになります;;
と言うわけで、こんな小説しかかけない俺ですが…まだこの話は当分続きます。
スレ住人の皆様、本当に長文を失礼します;;

PS:ご期待に添えず、まだ生きてます…。(´・ω・`)

932 名前:ドギーマン 投稿日:2007/01/23(火) 00:38:24 [ at5Dv2Nk ]
今は昔
REDSTONEが地上にもたらされた頃の出来事。
ある天使が右翼を折られてリンケンとアリアンの境、
ガディウス大砂漠に墜とされた。
砂漠に倒れる彼を救ったのは、リンケンに住む傭兵一家だった。
彼はその家族に介抱され体力を取り戻したが、
落下の際の衝撃で自身が天使であった記憶を全て失ってしまっていた。
背中の翼と共に。
彼は心優しいその一家に迎えられ、名前を貰った。
見つかった砂漠にちなんでガディウスと。

ガディウスはその家族の元で共に働いて生活して居たが、
ある日、彼を見つけ出した傭兵の息子が大怪我を負った。
今にも天に召されようとしていた彼を救ったのは他ならぬ
ガディウスだった。
ガディウスは不思議な力を用いて傭兵の息子の傷を跡形もなく癒してみせた。
その日から、彼は一家だけでなく、町全体に必要とされるようになった。
彼は人々の傷のみならず、病から心の傷まで癒した。
やがて彼は傭兵の娘と愛を誓い、
ついに彼は傭兵の一家に本当の家族として迎え入れられた。

しかし、あるときを境にして彼は変わり始める。
彼にしか聞こえぬ声と会話を始め、
まるで操られているかのように町にREDSTONEの噂を流し始めた。
妻は心配になった。
自分の声がまるで届かず、ガディウスは遠くを見てずっと誰かと話しているのだ。
まるで、だんだんと自分から離れていくかのように感じたのだ。
しかし、妻がガディウスに聞いても分からないと答える。
ガディウス自身、自分が誰と何を話していたのかまるで覚えていなかった。

そしてその日はやってきた、
リンケンにガディウスによく似た男がやってきたのだ。
男はガディウスがしたのと同じような不思議な力で人々を癒してみせた。
そして、男はガディウスを見つけると、
全てを忘れていた彼に、真実を語ってしまう。

ガデイウスは思い悩んだ。
真実を知っても記憶は戻らなかったが、
天使である自分は神の意思を代行すべくREDSTONE探索の旅に出なければならないのだ。
彼は妻に話すべきか思い悩んだ末、
決心した。
人間として彼女の側に居続けようと。
その決心と共に、彼はあの声を聞くことはなくなった。

だが、幸福の時は長くは続かなかった。
彼はある日妻に誘われるままに、2人連れ立ってリンケンの近くにある、
特別に美しいオアシスに行った。
そこで、彼はまるで鏡のようなオアシスの水面を覗き込んでしまう。
彼の目に映った者、それは自分自身ではなく天使だった。
そして、その姿を見た瞬間に全ての記憶を取り戻し、
使命に目覚めてしまう。
彼は泣いて拒む妻に告げた。
自分の本当の名を。

ガディウスは砂漠を去り、
妻の後悔の涙はオアシスに落ちた。

今もリンケンの北に広がる美しいオアシス。
人々はこの悲劇にちなんでそのオアシスをこう名付けた。
"忘れた記憶のオアシス"と。

933 名前:ドギーマン 投稿日:2007/01/23(火) 00:40:57 [ at5Dv2Nk ]
あとがき
久々の昔話です。
忘れた記憶のオアシスはRS内に実際にあるので観光気分に一度どうぞ。
何にもないけどね。

934 名前:名無しさん 投稿日:2007/01/23(火) 00:43:58 [ aJnTd6S6 ]
>>ドギーマンさん
同じく、ほのぼのしてしまいました。それぞれの職のイメージがぴったりです。
ウルフマンの四足走行は本当に楽しそうですよね。私も操作してて楽しいです(笑)
カムラの無邪気ながら他人を観察する能力は凄いと思います。こういう後押しってやってもらったら嬉しいなぁ。

問題1 登場していないジョブは?
シフ/武道以外として。剣士、テイマ、ランサ、リトルでしょうか

問題2 カムラのお財布の中はあといくら?
10600Gかな?

問題3 カムラの髪の色は?
黒髪ですよね。


>>21Rさん
ユラン君のタフさに私も脱帽(笑)
なんかハチャメチャながら抜群な相性(?)の四人組が面白い。
冒険物語みたいで読んでいて楽しいです。続きを楽しみにしています。

935 名前:934 投稿日:2007/01/23(火) 00:49:07 [ aJnTd6S6 ]
>>ドギーマンさん
感想を書いている間にまたも一作・・本当に書き上げが早いですね。凄い。
アリアンやリンケンの付近はオアシスがいくつかあってつい行ってみたくなりますよね。
でも、こんな謂れのあるオアシスだったらと思うと。
あの辺は箱も結構あったりして嬉しいんですが(そっちか)

936 名前:ドギーマン 投稿日:2007/01/23(火) 20:12:30 [ /Bfx.hTI ]
お客さん、剣をお求めですか?

なんですって?ウチの剣にケチつけるんですかお客さん。

ふふふ、仕方ないですね。お客さんにだけウチの取っておきを見せてあげますよ。

ゴトッ
コレですよコレ、銘は"ドラゴンスレイヤー"。

そうでしょうそうでしょう。でもこの剣、実は曰く付きの品なんですよ。


いつのことかは分からない。
その昔ハノブにある刀鍛冶が居た。
彼は究極の武器を作るために日々鍛錬を重ねていた。
彼は過去に妻子をドラゴンによって殺されていた。
戦うことの出来ない刀鍛冶は、
せめてドラゴンを殺すことの出来る武器を作ろうと考えていた。
それが彼にとっての復讐だったのだ。
しかし、いくら武器を作っても彼の望む剣は作れなかった。
刀鍛冶は苦悩した。
こんなにも憎いのに、何故出来ないのかと。
そんな彼の元にスマグから来たというウィザードが現れた。
ウィザードは刀鍛冶に告げた。
憎しみをいくら剣に込めても、それは必ずしも強さには直結しない。
もし、本当に強い武器を作りたいと望むなら、
憎しみを押さえ込み、制限すべきだ。そのための呪いの魔法を教えよう。
そしてウィザードは刀鍛冶に呪いを込めた剣の製法を教えた。
刀鍛冶は迷った末、ついには憎悪を職人魂が超えた。
彼は三日三晩刀を打ち続けた。そして、ついに完成した。
その剣は、3匹のドラゴンを殺したとき、
剣の持ち主も、刀鍛冶自身も死ぬという呪いがかかっていた。
やがて、剣は持ち主を殺し、刀鍛冶自身も剣に首を刎ねられた。
呪われた剣は持ち主を変え、今ここにある。


という話なんです。どうでしょう。いまなら300万で譲りますよ。
戦士「・・・・・・」
おやぁ、怖いんですかお客さん。
戦士「いや、ドラゴンって居ないし」
・・・・・・

937 名前:ドギーマン 投稿日:2007/01/23(火) 20:24:48 [ /Bfx.hTI ]
あとがき
本当に、RSってドラゴン居ないのに何故かドラゴンスレイヤーがあるんだよねw
ドラゴン=イフリィトかと思ったけど、やっぱり違う気がする。

>>934
問い2の答えは600ゴールドですね。
最初に2000ゴールド、花の値段が1輪1400ゴールドで、
戦士から1000ゴールド貰ったあとにキャンディー5個(1000ゴールド)買ってますから。

>R21さん
4人はどうなっちゃうんでしょうか。次の展開に期待してます。

900レス超えると、ちょっと長めの話を載せるのが怖くなりました。
ずっと1話完結でやってきたし、しばらく1レスの小話でも・・・

938 名前:名無しさん 投稿日:2007/01/24(水) 04:44:37 [ LG./j/AU ]
>>ドギーマンさん
うーんキャンディーの事を忘れていました(苦笑)
でも、ああいうちょっと謎かけのあるSSも面白いですよね。

ドラゴン・・確かにいませんね、RSって。
それと個人的にゴーレムというのもあんな鉄巨人みたいなのじゃなくて、岩系だと思ってました。
日本人の嗜好に合わせたゲームではないのは分かりますが、定番モンスターがいないとなんか寂しいです。

939 名前: 投稿日:2007/01/24(水) 13:50:27 [ Mu./HuxU ]
>>895
   The sky in continuing autumn

街の伝説には続きがあったんです。その一人の女が泣き崩れたまま数年が立った時だそうです。
「雪…?」
そう、その日は雪が降ったんです。周りには何も無い、白い空間に雪が降ったんです。
 そしてそれからさらに月日が立ち、次は街が出来ました。
街の次は動物、動物の次は人、もう何年立ったかわかりません。でも彼女は元居た場所から動きませんでした。
 ところが、ある日の事でした。
彼女はいつものように、いつもの場所で、ずっと座っていました。
 
私は…これからどうすれば良いのかな…教えてレイド…。

心の中でそう言い放つと、彼女はその場に倒れ眠ってしまいました。

940 名前: 投稿日:2007/01/24(水) 14:00:40 [ Mu./HuxU ]
次彼女が眼を覚ました場所は先ほどまで居た場所ではありませんでした。
 「此処は…?」
見覚えのある部屋、聞き覚えのある小鳥の囀りそして川の流れ。
 朝日が満遍なく差し込み、私を照らす。
そう、そこは…すべての始まりの場所。
 ミレルとレイドが住んでいる、古都ブルンネンシュティグのある一室でした。
ドアの奥の方から、誰かが料理をしているように伺える。
 彼女はゆっくりとベットから出て、音のするドアを開ける。
そこには一人の男が立っていた。
 「おっと…ミレル起きたかい?ずいぶんと疲れてたようだけど…」
そう、その男を彼女は知っている。なぜなら彼はミレルが殺した人、レイドなのだから。
 「え…う、うん」
彼はクスッと少し微笑むと朝食をテーブルに運んだ。
 なんで…レイドが生きているの…!?

941 名前:携帯物書き屋 投稿日:2007/01/25(木) 22:31:29 [ mC0h9s/I ]
どうも、お久しぶりです(たぶん)。携帯です。
>>880>>892>>893>>894
遅くなりましたが感想ありがとうございます。たくさん感想がきていて少し感動でした。

>>夢さん
もしやとは思いましたがやはりドリームさんだったのですね。「秋空」でしたっけ?
前作の続きのようですがレイド生きて・・・。前回は悲しい終わり方でしたが今回はどうなるのでしょうか・・・続きまってます。

それと、姫の話は打ち切り・・・・残念orz
ツンデレ姫とリィニー? 良かったのにな・・・w

942 名前:ドギーマン 投稿日:2007/01/26(金) 03:07:43 [ /Bfx.hTI ]
武道家は必死に帽子を押さえていた。
戦士が彼をじっと見て言った。
「なあ、帽子とってみてくれ」
武道家の顔に汗が滲んだ。
「いやだ」
「いいじゃないか」
「絶対やだ」
「なんで?」
「とにかくやだ」
チッと舌打ちすると戦士は諦めたようだった。
武道家はほっとした。が、すぐに戦士は再び声をかけてきた。
「なあ」
武道家はビクっとした。
「今度はなんだ?」
戦士はにやりと笑みを浮かべて言った。
「三連回し蹴り、やってみてくれよ」
武道家は固まった。
「出来ないのか?武道家のくせに」
武道家は覚悟を決めると、構えた。
「わかった、良く見ておけ」
戦士はドキドキしながら武道家を眺めた。
「ほあたぁ!」
武道家の身体が激しく回転し、帽子は宙を舞った。
戦士が見たもの。それは、

武道家の靴の裏だった。

ドカッドカッバシッ
戦士はダウンした。

943 名前:ドギーマン 投稿日:2007/01/26(金) 03:08:45 [ /Bfx.hTI ]
アーチャーがサマナーに話しかけた。
「いいなぁ、犬に乗れて」
サマナーは自慢げに犬をアーチャーの周りに走らせた。
「いいでしょ〜」
アーチャーは思いついたように言った。
「ねえ、他の召喚獣には乗れないの?」
サマナーは首をかしげた。
「う〜ん・・・・あ、そういえばウィンディ!」
そう言ってサマナーはウィンディを召喚した。
アーチャーはサマナーに聞いた。
「どうしたの?」
サマナーはアーチャーに振り向いて提案した。
「リフトアップっていう持ち上げるスキルがあったから、
 それで持ち上げれば空も飛べるんじゃないかな?」
アーチャーは興奮した。
「空が!?」
「試してみる?」
「やるやる!」
早速アーチャーはウィンディの足を持って立った。
「いくよ」
「うん」
「リフトアップ!」
「キィ!」
ウィンディは一声高く鳴くと、バサバサと羽ばたきだした。
バサバサバサ
バサバサバサ・・・
バサバサバサバサバサ・・・・・

地面に足をついたままのアーチャーの頭上で、
ウィンディは必死に羽ばたいているだけだった。
「・・・・重すぎ・・・・かな?」
サマナーはボソっと呟いた。
「・・・・・・」
アーチャーは無言でウィンディの足を離すと、勢い良く空に舞ったウィンディに
「スナイプ!!」
ダンッ!
「クエェッ!」
「やめてぇ!」
慌ててサマナーは制止した。

944 名前:ドギーマン 投稿日:2007/01/26(金) 03:09:29 [ /Bfx.hTI ]
シーフ2人とプリンセスがビガプールの城の外壁の側に立っている。
「でっけぇ壁だな・・・・どうやってこんなとこ入るんだ?兄貴」
兄貴と呼ばれたシーフはふっと笑うと。
「まあ、任せろ。姐さん、お願いします」
プリンセスはミスリル製のスリングをぶんぶんと素振りすると、
「まっかせておいて!」と元気良く返事した。
「じゃあ、とりあえず俺から」
と、兄貴はプリンセスに近寄った。
「いくわよ」
「ウッス」
プリンセスはスリングをシーフのベルトに引っ掛けると、
「モンスタァーバレットォ!!」
ぶおぉん!!

「あああああああぁぁあぁぁあぁあぁぁぁぁぁぁぁぁ・・・・・・」

勢いよく宙に舞った兄貴は壁を越え、城の中に消えていった。
「あ、兄貴ぃ!」
残されたシーフは叫んだ。
―おい!何か落ちたぞ!
―侵入者か!?
城の中から騒がしく兵士たちの声がする。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
2人とも黙っていたが、おもむろにプリンセスは口を開いた。
「さ、今のうちにロープをかけて侵入するわよ」
「あ、はい」
シーフはいそいそとロープを取り出した。

945 名前:ドギーマン 投稿日:2007/01/26(金) 03:11:56 [ /Bfx.hTI ]
あとがき
みなさんいかがお過ごしでしょうか。
大変ですよね。この時期は。
とりあえず、小ネタ三発出しました。
息抜きに笑ってもらえれば幸いです。

本当はマンガでやりたかったネタなんだけど、
絵心ないのでw

946 名前:第28話 ルーキー 投稿日:2007/01/26(金) 03:31:42 [ E8IUlDNM ]
佐々木は昨日の晩から眠っていない。
田村の言いつけで別行動をさせられていたからだ。
当の田村は合同捜査の駒としてきちんと動いているように見せていた。

「賭けてもいいぞ。この捜査はうまくいかない。絶対にな。トップが見当違いな方針で動いているからな」

おかげで佐々木は一人こそこそと動く嵌めになった。 
(田村さんのほうが見当違いだったらどうするんだ?)
優秀な成績で昇進してきた佐々木だが、地道な捜査とゆうものに慣れないでいる。
 あぶない刑事を観て育ったものの、現実は違うと判っていた。
だが、想像より捜査がもっと地味だとは思ってもいなかった。
そのうえ、今回は事件を’追わない’と言う。
追っても迫ることは出来ないだろうと・・・どうゆうことなんだ?
証拠から追わずにどうするんだ?
張のネットサーフィンで’サメ’が食いつくとも思えないぞ?

田村は佐々木を鍛え上げるつもりだった。
叩き上げてやる、そう思っていた。
そう考えつつも、自分はやることを進めていた。
電子課に特定のメールアドレスを監視出来るかどうか問い合わせてみた。
・通信の秘密の自由
これは法律では破ることができない・・・が、犯罪に関わる時は別である。
律儀に守る’善良な警察官’ばかりではない。
答えは’技術的には可能’だった。

張がネットの海から拾い上げた「キャラ売ります」取り引きで使われる
アドレスを監視すれば、いつ、どこで、取り引きが行われるのかが判るからだ。
取り引き現場にさえ行くことが出来れば、直接交渉担当の人間の身柄を拘束できる!
全ての取り引きを監視は出来ないが、都心近辺はカバーするつもりだった。
現場にいくのはもちろん佐々木。 

佐々木が眠っていない理由の一つにゲームの検証がある。
例のレッドストーンというゲームだ。
劉のPCにインストールされていたゲームだ。
他にも数種類インストールされていたが、今夜はこれ。
田村さんの娘さんから電話が入り、このゲームの取り巻く環境を報告してもらった。
・RMT業者が多聞にもれず、このゲームにもついていること。
・ゲーム内でキャラの中身が(使用者)が変わっていること。
・情報は’したらば’で探せるということ。
現場が仮想空間??? まったく、俺は何やってるんだ? 頭がおかしくなりそうだ。
BBSってのは井戸端会議みたいなもんか・・・・噂話ばっかりだな・・・・。
どれが真実なんだかわからないぞ・・・。

947 名前:名無しさん 投稿日:2007/01/26(金) 14:41:45 [ uuITwIy. ]
>>ドギーマンさん
しばらく小説が増加してないので思い切って何か書こうかと思ったら面白いSS発見(笑)
マンガにせずともその状況が楽に想像できます。
武道家(シフ)の素顔ってやっぱり秘密なんでしょうかね・・、イラストでも隠されてますよね。
実はかなりカッコイイんだろうなと勝手に妄想してます(笑)

>>946
したらばの存在まで出てきてしまいましたね・・ちょっと怖くなってきました。
ネットゲーム上で犯罪捜査、実際に存在しそうな気もしてきます。
警察関係は私はさほど知らないのですが、詳しく書かれていて凄いです。何よりリアル。

948 名前:第29話 寝起き 投稿日:2007/01/27(土) 04:24:12 [ E8IUlDNM ]
ようやく仕事が一段落ついたとき、猛烈な眠気が襲ってきた。
40時間ぶりの睡眠にありつける喜びと頭痛で一瞬変な夢を見たと思うと、
深い眠りに落ちていった・・・佐々木は3課のソファで泥の様に眠っていた。

今寝たばかりだと言うのに、起こす奴がいた。田村だった。
「田村さん・・・勘弁してくださいよ。寝かせてくださいよ!」
それでも、しつこく「起きろ!」と言う。
「あ! え? 何時間寝ていました? 俺。」
「かれこれ8時間だよ。 もういいだろ? 用事があるのに一応4時間以上待ったんだ」
「す、すみません・・・どうしたんすか?」
「まぁ、あれだ。 刑事らしくナリを整えて来い。話はそれからだ」
とにかく、髭を剃ったり、歯を磨いたり、予備の下着に取り替えたり急げるだけ急いだ。
一度だけ田村に佐々木は質問をしたことがある。
「何故、下着の予備なんか? どうせなら上着だけでいいじゃないすか?」
田村は応えた。
「見えないところを綺麗に保てない奴が、悪人の心を覗けるか?」

戻ると、コーヒーを用意してくれていた田村に状況説明をされた。
「本部は奪われたカードとネカフェの利用者から捜査対象を絞るつもりでいるみたいだ
おそらく、これではうまくいかない。防犯カメラに人がどれだけ映っていようと追い詰められないだろう」
「でもそれが近道なんじゃないですか?」
「近道ではない。逆に遠くなるだけだ。実行犯は毎度毎度、ネカフェを利用していると?
そんなことは考えられない。奴は取り引きにしか現れないはずだ。」
「それですよ。犯行日の全てのネカフェの防犯ビデオを見れば、共通人物として
しょっぴけるじゃないですか? 重要参考人ですよ?」
「あほか? オーバーステイがいいとこだ。決して殺人の証拠になりゃせん!
しかも身分偽っている人間をどうやって突き止めるんだ?」
「あくまで殺人で起訴したいんですね? そろそろ僕にも種を明かしてくださいよ。
ストレスが溜まって来ます。特殊な捜査ですしね!」

課長が二人を見てる。田村は屋上に佐々木と連れ立って行くことにした。灰皿も持って。
「よし。よく聞くんだ。もう少しでインパクトの強い立件になる。今のままでは捜査方針は変わらないだろう
それでだ。張が見つけるだろう取り引きを電子課に頼んで、該当メアドを監視してもらう。送信も受信もだ
その中で、ネカフェで取り引きを行う物件をピックアップして、今度は実際にその模様を監視する。間近でだ」

「・・・どの時点で本部に応援を頼むんですか?」

「張の拾ってきた情報のメアドのやり取りの中でキーワードがヒットしたらだ
・ネカフェで取り引き
・ネット決済
以上二つがキーだ。 現場で取り引き確認をするのはお前だ、佐々木」

「解りました。僕のほうでは色々と判りましたよ」
「おぅ。報告してくれ」

「このレッドストーンと言うゲームなんですがね、月額課金ではなく無料でログインできるタイプなんです」

949 名前:第30話 儲け 投稿日:2007/01/27(土) 04:24:54 [ E8IUlDNM ]
「はぁ? どうやって儲けを出すんだ?」
「色々とゲーム内で便利なものを売りつけるシステムです。駐車料金でも月極の方が安いでしょ?
それと一緒でこのタイプは無料で客を寄せて屋根つきの駐車場は料金掛かりますよ〜って感じです」
「で?」
「このゲーム内で人に差をつけるには課金をしないと出来ません。心理的にユーザーは競争意欲を
かき立てられて徐徐に課金アイテムの購入に麻痺していきます。気づけばズブズブと購入しています
さて、一方、この手のアイテム課金タイプは必ずと言って良いほど、育成したキャラを売買するのが
横行します。敷居が低いというよりか、無いものも同然なので元手が掛からないのが理由です。」
「しかし、時間が掛かるだろう?」
「そこなんです。2500円で課金して、一月で15000円程のキャラが出来上がったとします
差額で12500円・・・おいしくないです。キャラの売買ははっきりいって儲かりないと思います」
「続けて」
「しかしゴールドは別物なんです。僕はゴールドの売買に闇がまた一つ潜んでいると思いますよ
アカウント自体は中古車の売買と一緒です。中古車屋がどこで儲けるかってそりゃ、手数料ですよ
しかし、一度の取り引きじゃ儲けが少ないからこういうわけですよ
【お客さん、この車売りたくなったらうちで買い取りますよ^^】
ってね。もちろん売値よりずっと低い金額ですからまた儲けちゃうわけです」
「その通貨の取り引きもあるのか?」
「RMTって言って、ずいぶんいろんなモグリ業者がいます。正規の業者だなんて
自称するやつもいますが、現在そんな法律が日本国内にありません。つまり、すべてモグリ
税金は死人からでも徴収する我が国ですから、モグリ業者からも税収はありますがね
国内のRMTは150億円を超えています。税収が比例してないから困ったものです。
ちなみに、リアルマネートレード=RMTです」

「そして?」

「ゲーム内通貨はインフレでどんどん価値が落ちていきます。それが張たちの仕事の減収になっていた思います
そういったものがゲーム内でのバランスを壊していると思われます。」

「ふむ。ゲーム内でも経済のバランスが世界のバランスを壊すってか?
まぁ、いい。 ゆっくり寝たお前さんに仕事を持ってきたよ。」
「はぃはぃ。なんでもやりますよ。 どんな仕事でしょうか、旦那様?」

「張が怪しいと思う取り引きをピックアップしてきた。全部で8個。これを電子課に届けて
メールのやり取りを覗いてきてくれ。面倒かもしらんが、出向くのが礼儀だし安全だ。」

950 名前: ◆21RFz91GTE 投稿日:2007/01/27(土) 09:35:12 [ t80sBG8k ]
////**************************************////
  ■冬の軌跡:まとめサイト(だるま落し禁止)
  ■http://bokunatu.fc2web.com/SS/main2.htm
  ■現行SS速見表
  ■キャラクター紹介(一部ネタバレ含む) >>837
  ■Act:1 青空     前スレ>>962-963
  ■Act.2 意思を告ぐ者達  >>500-501
  ■Act.3 遠い空 >>835-836
  ■Act.4 NorthWindGate >>857-858
  ■Act.5 風の吹く場所へ  >>906-907
  ■Act.6 深い深い嘆きの森  >>928-930
////**************************************////

951 名前: ◆21RFz91GTE 投稿日:2007/01/27(土) 09:35:54 [ t80sBG8k ]
ACT.7:黒衣の焔−TrueEndStory 1


訂正事項:前話で出てきたモンスターの身の丈を36尺に変更


 夏の夜、まだ鈴虫が鳴くほどの時期では無い季節。ゆったりとした風が吹き、当たり一面の砂埃が舞う。
「クラウス、後ろ!」
クラウスと呼ばれた男性はその言葉と同時に前方へと飛び出した、対象物が無くなった場所に巨大な蜘蛛の毒素を帯びた胃液がぶちまけられる。それは無機質な土や石をも溶かし原型を留めないほどの破壊力が帯びていた。
「ミトさん危ない!」
落ちたウィザードの放った火炎弾がミトに向かって迫っている、咄嗟にユランは攻撃対象を変更し予め作っていた火炎弾をその放たれた火炎弾に向けて杖で弾き飛ばす。
火炎弾同士がぶつかり、そこで一つ大きな爆発が起った。その爆発にミトが数本の矢を一斉に打ち込む。すると打ち込まれた矢は爆発の勢いで当たり160度方向へと散開する。勢いのついた矢は数対のモンスターの体を貫通させた。
「ユラン君、右!」
すぐさまその声に応じて右の方向に体を向ける、そこには身の丈16尺(一尺:30.303cm )はあるかと思われる突然変異した鷹形のモンスターが居た。右手に構える剣を上から振り下ろそうとしていた。その剣の軌道はもはや回避できる間合いではなかった。
「ギータ!」
その時、モンスターと同じ大きさぐらいの巨人が突如目の前に姿を現し、振り下ろされた剣を左手で受けた。自称イリアのお友達。名前をギータと言う。傷ついているところをイリアが手を差し伸べてからと言うもの、彼女の側から離れなかったモンスターだった。
ギータはすぐさま受けた剣を軽々とはじき、そいて右手を大きく振りかぶって鷹の顔部分めがけて正拳付きを放つ、よほどの破壊力なのだろう。その一撃で鷹は命を絶った。
「皆、伏せて!」
前方へと飛び出したクラウスはその後直ぐに詠唱を始め、そしてものの数秒でその詠唱を終わらせる。クラウスの叫びと同時に残りの三人は同じタイミングで身を低くする。
その前後、ミトが数十本の矢を上空へと放ち、二秒も立たないうちに辺り一面のモンスターに付き刺さる。

952 名前: ◆21RFz91GTE 投稿日:2007/01/27(土) 09:36:41 [ t80sBG8k ]
「堕ちろ…!」
足元に連なる青く光る魔法陣に向かって左手をの掌(たなごころ)を勢いよく叩きつける。すると魔法陣が発動しさらに青く光った。それと同時に上空に雷雲が広がりそこからバチバチと電気分子どうしがぶつかる。そして避雷針と化した矢目掛けて一斉に雷が落ちて来た。四人はクラウスの魔法陣による浮遊効果で地面から数センチ浮いている。クラウスはあの短い時間の中で雷の魔法と風の中位精霊の力を借りた範囲浮遊の魔法を同時に行っていた。
「すっげぇ…。」
当たり一面の魔物達は真っ黒な炭と化していた、あの落雷がどれ程の物だったかを感じさせるほど全身黒く、いい炭になるだろう。
「ユラン、関心してる暇等ありませんよ。」
すぐさまクラウスは詠唱を始めた、再び足元一面に魔法陣が出現した刹那、目の前に大気中の水滴が集まり始める。その水滴は次第に大きな渦を巻き始めた。その巨大な水を杖で弾くと、巨大な人形モンスター目掛けて飛んでゆく、まるで巨大な大砲でも撃ったかのような轟音と共に。
その発射された水に向かってミトが弓を射る、八本の矢を同時に5発打ち込み水鉄砲の中腹へと命中した。さらにユランが続ける。覚えたての風精霊による高速移動を詠唱し、同時にクラウスが放った後の少量の水滴を瞬時に凍らせる。それを杖に付着させ簡易的な氷の槍を作り出した。
そしてイリアの友、ギータの手の上に載るとイリアの合図と共にユランをあの巨大な人形モンスターの方へと投げ飛ばした。
「でやぁぁぁぁぁぁ!」
ユランは氷の槍を逆手に持ち変えて人形モンスターの心臓目掛けて付き刺した、その直後クラウスの放った水鉄砲があたるかあたらないかの瀬戸際にユランがモンスターの胸を蹴って上空へと舞う。水鉄砲があたったと同時に今度は上空から無数の水の矢が降り注いできた。
「終いです!」
琥珀の人の魔力増幅装置を最大限にまで引き上げ、8本の矢をミトはセットする。そしてそれを巨大モンスターの急所…つまり心臓目掛けて全弾発射する。ズドドドドと全弾が当たったと同時に全ての矢が爆発を起こした。
「…。」
確かな手ごたえを感じたミトはゆっくりと弓を下ろす、だがもしもの時のために弓に矢をセットした状態でだ。
「…終わりましたの?」
イリアがギータの肩に乗ってゆっくりと後ろから姿を現した、クラウスとミトはまだその緊張を解いて居ない。
「分かりません、ですが…あの攻撃を受けて生きているとしたら…。」
「流石にあの攻撃を受けては一溜まりも有りませんでしょう…。」
そう二人同時に喋ったと同時に空からものすごい勢いで急降下してくるユランがいた。ここは格好よく着地したいと考えているユラン。
「終わりましたね…。」
そう一言決めて、素直に地面へと落ちた。落ちたと言うよりは着地に失敗したと説明した方がいいのだろう。落下の途中で体勢を崩し、顔から地面へと落ちて来た。お約束と言っていい程素敵な着地の仕方だ。上半身が地面に埋まり、蟹股開きをした足がピクピクと動いている。
「…。」
その足をギータが掴んで引っ張り上げる、まさに大根を地面から引き抜くように。地面から無事誕生したユランの顔は泥だらけで、目は白目を向いていた。
「ユラン君…ださ〜い…。」
辛うじて骨だけは拾われたユランだったが、ミトとクラウスはイリアのその一言で慰めの言葉すら見つからなかったと言う。



ACT.7:黒衣の焔−TrueEndStory 1


END

953 名前: ◆21RFz91GTE 投稿日:2007/01/27(土) 09:38:17 [ t80sBG8k ]
…。(´・ω・`)
おはよう御座います皆さん、もうめっきりと冬ですね…。(´・ω・`)
とりあえず、ヴァレンタイン用のごまかし自作チョコの作成に取りかかってきます…。(´・ω・`)

954 名前:殺人技術 投稿日:2007/01/27(土) 10:45:03 [ E9458iSQ ]
いつのまにやらもう950超えてますね
埋め立ては990辺りからか?このペースだともって一週間か
書きかけの長編小説は次スレに持ち込む時どうリンクすればいいのかわかりません(´・ω・)

>>946
RMTが出てきましたね。
話の進行がスムーズで読みやすいです

>>951
キャラがかっこいい……(´ω`)

955 名前:ドギーマン 投稿日:2007/01/27(土) 14:38:40 [ /Bfx.hTI ]
剣士がぼんやりと道端で座りこんで居た。
別に浮浪者ではない。乞食でもない。金がないわけでもない。
ただ、やることがない。
REDSTONE?なんだそりゃ?食えんの?
・・・・・・冗談だ。当然知ってるさ。
でもな、ダメルのゲールの野郎からREDSTONEハンターの称号を貰ってから、
何か分かったら知らせると聞いたっきり、何の音沙汰もない。
頼りにしてたのに、手がかりがぷっつりと途切れちまった。
あ〜〜〜〜〜〜〜
あのアイノの報告書、やっぱ持っといたら金になったかなあ。
深く考えもせずに称号欲しさにクロマティガードの連中にやっちまった。
もしかしたら、何かREDSTONEの手がかりがまだあったかもしれなかったなあ。
あ〜、REDSTONEの手がかりもないため、旅のしようがない。
狩り?やだよもう、たるいし。
今持ってる物を全部売ったら、ビガプールあたりで土地も買えて、
ちょっと大き目の家が建てれるなあ。
辞めようかなあ、冒険者。
そう剣士が誰に話しかけてるのか分からない事をうだうだと考えていた頃。
剣士の目の前で1人の子供が4人の子供によってたかってイジメられて、
持っていた子供キャンディーを取られてしまっていた。
しかし、4人とも全員がというわけではない。
1人だけただ3人の後ろで見ているだけの子供がいる。
4人は1人泣いている子供を残して、走り去った。
剣士はゆっくりと立ち上がると、泣いている子の横を素通りして4人の後を追った。
4人は子供キャンディー4本を1本ずつ分け合うと、散り散りに分かれた。
剣士は、あの乗り気ではなさそうだった子供にだけ目をつけて追いかけた。
その子供は水路の縁に座り込むと、キャンディーをじっと眺めていた。
そして、捨てようかと迷っているような素振りを見せていた。
「なあ」と剣士は子供に後ろから声をかけた。
慌てて振り向いた子供の隣に座ると、剣士はその子に聞いた。
「俺があの子に返してきてやるから、もうあんな事やっちゃだめだ」
その子は剣士の顔を見上げた。すこし涙ぐんでいた。
「男だろう。泣くな。あんなこともうしないって、約束しろ」
「うん・・・・もうしない」
「男同士の約束だ」
「うん・・・・」
男の子は目をこすると、剣士にキャンディーを渡した。
剣士は立ち上がってその子の頭を撫でてやると、踵を返して歩き出した。
そして歩きながら、「やっぱ狩りすっかぁ」と面倒くさそうにぼやくと、
キャンディーをボリボリとかじって歩いた。

956 名前:第31話 返信 投稿日:2007/01/28(日) 03:41:59 [ BnZCUtXo ]
彼が日本にやってきたのは、2年前。
親戚が日本に住んでいたので、それを頼りに来日した。
本国ではあまり人付き合いもうまくできず、どちらかというといじめられていた。
伯父はこの国で成功を収めている尊敬の出来る人物で、この国で唯一の彼の味方でもある。
彼は伯父の仕事を少し手伝うのが条件で、衣食住を確約してもらっていた。
仕事といえば、伯父の数ある所有マンションの一つの管理で、月に3日程しか実働がなかった。
しかしながら、小遣いはなく、どうにか自分で稼ぐしかなかった。
アルバイトをしようと何度か挑戦したが、この国では彼の祖国は好かれてはなく、
良い目では見てもらえなかった・・・本国にいるときとあまり変わらない状況だ。
何分、言葉は文法が一緒なので上達はあっというまであり、日常生活では不自由しないのが
せめてもの救いだった。 唯一つだけ、対人だけがうまくいかないのである。

自然とパソコンに向かうようになるのも時間の問題だった。
自分の祖国が発祥のMMOなんかがあり、誇らしげにプレイするようになるのに時間はかからなかった。
主にプレイするのはレッドストーン。
日に20時間プレイするのはザラでしだいにおかしくなっていった。

バイトもせずに課金代は稼げない。思いついたのはRMTだった。
当時1億ゴールド1万2000円で売れた時代だった。日に20時間もインしていればレアなアイテムも拾う。
しばらくバブルは続いたが、あるとき間違って注文をダブルで受けてしまった。
1億1件に2件の応募があり、両方とも受けてしまったのだ。

どうしたかって?

ウェブマネーをRS内で払わせて、トンズラこいたのさ。
それが始まりで、かなりの数の詐欺を働いた。
いつしかそれが「奴ら」の目に留まり、キャラの窃盗に加担すれば報酬がもらえる
とゆう契約までしていた。 

・・・・今回は一度に2アカウントを奪えるかもしれない。

「奴ら」が何故かせっつくので今回は若干仕込みが雑だったかも知れない。
なにはともあれ、いつもうまく行くとは限らないのがこの詐欺なのさ。
と考えつつ、彼は鼻唄まじりでブラウザを起動させた。

あ! キテルキテル! おばかさんが二人も偽メールに返信ときた

後は推測とおりにRSのパス変更まで辿りつけるかどうかだった。
メインの名前からRSのIDを推測して・・・tantantanuki と入力
あとはPW忘れたと申請すればいっちょあがり!

少し待つと、メールがゲームオンから届いた。
彼は今回も、まんまとキャラを盗むのに成功した。

957 名前:名無しさん 投稿日:2007/01/28(日) 06:06:00 [ dpWctTts ]
1.ttp://jbbs.livedoor.jp/game/19634/storage/1127802779.html#960
ttp://jbbs.livedoor.jp/game/19634/storage/1127802779.html#961
2.>>556
3.>>900-902


 足音が近づいてくる。
 ズシン! ズシン! と大きな足音をたてて近づいてくる。
 巨大な洞窟の中にある大きな凹み。その中で私は息を潜める。
 ズシン! ズシン!
 足音が消えた。目の前に大きな足が現れる。
「ここか!」
 もの凄い勢いで赤い生き物の顔が出てきた。
「ゲコッ!(きゃっ!)」
 あまりの迫力に声が出てしまった。さすがにあの顔が視界いっぱいに広がると何かもう色々と凄いわ…。
「カ、カエル? そうか…カエルか…はぁ。」
 安心したように息を吐き出している。
 助かった…? 正直気持ち悪いから嫌だったんだけど、カエルに変化する能力があって初めて良かったと思えたかも…。
「どうやらこの石が落ちただけみたいだな。ん、ここにへこんでる場所があるな、ここから落ちたのか。」
 このまま何ごとも無かったかのように戻ってくれたら最高だったんだけど、この世界の神様(多分いるよね?)は私のことが嫌いらしい。
「いや待て、この石の湿り具合…8割くらいは土にめり込んでいたような湿り方だ。自然に落ちてくるとは考えにくい…。
 誰かが触って落としたとしか思えん。それにこのカエルどこから来た?カエルってのは池の近くとか水気の有るところに
 いるものじゃないのか?この辺には池も無いし、水も湧いてない。このカエル怪しいな…。」
 赤いヤツが私を掴みあげる。
「ゲ、ゲコゲコ…(く、苦しひ…)」
「どれ、少し調べてみるか。」
 私を掴んだまま洞窟の奥へと戻っていく。
「ゲロゲ〜ロ!ゲコ!(いや、ちょっ!待った待った!)」
 何これ!? 何でこうなるの?悪い方向へ進み過ぎじゃない? しかもきつく握ってるから苦しいし!

958 名前:名無しさん 投稿日:2007/01/28(日) 06:06:53 [ dpWctTts ]

「むー、どう見ても普通のカエルだ。」
 赤いヤツの住み処?に着いたあと私は体中隅々まで調べられた。それはそれは酷い調べ方だった。
 ひっくり返されてお腹をブニブニと押されたり、足だけ持って軽く振り子のように振られたり。
 途中何度も気持ち悪くなって吐きそうだった。
 何より体中ベタベタ触ったのは乙女として許し難いものだった。もうお嫁にいけないわ…。
 きっとこの恨みは一生忘れないだろう。
「やはり、俺の考えすぎだったか。」
 やっと赤いヤツが私を放した。放したというかゴミでも捨てるみたいに放り投げたんだけど。
 こんな扱いを受けたことは気に障るが、今は逃げるのが最優先だ。
 ピョンッ、ピョンッと出口へ一直線。やっと外へ出られる…。と思ったその時、真っ赤な手がまたも私を鷲掴みにする。
「ゲロッ!ゲロゲロ!ゲコッ!(あーもう!何なのよ!いい加減にして!)」
 本当にしつこいヤツだ、しつこいヤツは嫌われるって知らないんだろうか。
 いったいこれ以上何をしたいというのか。
「そういえば、もう何日も何も食べてなかったな…。このカエル、不味そうだが何も食わないよりマシだ。
 とりあえず焼いてみるか。」
 いつもここで何か焼いて食べていたんだろうか、集めてあったと思われる小枝に火をつけた。
「ゲコッ!?(指から火が出た!?)」
 いやいやいや、そんなところに驚いている場合じゃないぞ私!(こんな寒い一人ツッコミも初めてだ。この星は何かと初めての体験が多い…。)
 やばいやばいやばい!このままじゃ火であぶられて丸焼きにされてしまう!
「あ! こら! 暴れるな! この、こいつ!」
 どんなに暴れても私を逃がすまいと抑えつけられる。非常にまずい状況だわ…このままじゃ本当に焼かれちゃうじゃない!

959 名前:名無しさん 投稿日:2007/01/28(日) 06:07:37 [ dpWctTts ]

「こいつめ!いつまで暴れる気だ!いい加減諦めろ!」
 諦める?私の大切な大切なこの命を諦めろっての?冗談じゃないわ!
 必死になってもがき続けるが、掴まれた私はどんどん巨大な炎(本来は小さな焚き火程度なのだけど…)に近づけられていく。
 視界いっぱいに炎が広がる。今の私には強すぎる光。
 あぁ、なんだか体が軽くなった気がする…この光の先に何かが待っている気がする………ハッ! いけない! この先に待っているのは闇よ!
「ゲゲゲゲゲゲゲ!ゲコ!(ちょちょちょちょちょちょ!もう無理!)」
 もう限界!これ以上カエルの姿でいることは死を意味しているわ!
 ボンッ!
 一瞬白い煙が出てきて変身が解ける。
「うお!」
 驚いてキョトンとしている赤いヤツの体を蹴って焚き火から離れる。
 ザザァ
 受け身なんてとってる余裕は全くなかったので地面に体を強く打ちつけてしまった。痛い…と思う余裕も、もちろん無かった。
「ハァ、ハァ、フゥ」
 あまりに焦っていたせいか、すぐに息を整えることもできないし、逃げるのも忘れていた。
 目を丸くして見ていた赤いヤツの声があがる。
「だ、誰だお前!ここで何をやって…!」
 声を聞き、ハッとして走り出す。逃げなければ!
「待てコノヤロウ!逃がすか!」
 やはり逃げ出すまでに時間がかかりすぎた服の背中部分をつかまれてつるし上げられてしまった。
「きゃっ!いや!やめてよ!はっなしてよっ!」
 こうなったら手段は選んでいられない。足をバタつかせ、腕を振り回す。体勢が悪すぎてスリングを持つことが出来なかったのが悔やまれる。
 バシ!ボコ!ビシビシ!
 手やつま先が赤いヤツの腕や体にヒットする。しかし全く動じることもなく、特別何をしようとするでもなく私を見ている。
「放せって言ってるでしょ!降ろしなさいよ!」
「ダメだ、お前には聞いておかなきゃいけないことがあるんでね。」

960 名前:名無しさん 投稿日:2007/01/28(日) 06:08:25 [ dpWctTts ]

「とりあえず落ち着け。お前の返答次第によっては逃がしてやらんこともない。」
 その言葉を聞いてピタッと動きを止める。
 ホント?助かるの私? 普段なら絶対に信じる事はないであろう言葉を信じきっている。何故か信じても良いと思える、そんな声だった。
「何よ、聞きたい事って。」
「簡単な質問だ。お前は天界からの追跡者なのかどうか、それだけだ。」
「"天界"?何意味わからないこと言ってるのよ、いいから降ろしてよ!この体勢苦しいのよ!」
 何を聞くのかと思えば意味のわからないことを。
「そうか、やはりそういう答えが返ってくるか、だが残念だったな。そう答えるヤツはどんなヤツだろうと殺しておけと
 ずっと昔に教えられたよ。」
 はぁ?なによそれ!
「クゥ…結局最初から…殺す気な…んじゃ…ない」
 赤いヤツから殺気が発せられ、それがどんどん大きくなっているのがわかる。
 私の首に手をかけ持ち上げられる。く、苦しい…。
「お前に恨みがある訳じゃないんだがな、俺を見つけてしまったお前の運が悪すぎたんだ。」
 首を掴む手の平の温度が上がってきたような気がする。もうすぐこの手のひらから炎が吹き出し、私は燃やされて灰になるのだろうか?
 その時だった。
「私のこともあの天使のように殺すの?何度も何度も燃やして苦しめて殺すの?」
 見えたのだ。この赤いヤツに燃やされて灰にされる一人の"白い翼を持った人間"が。
 赤いヤツは笑顔を浮かべながら白い翼を持った人間を痛めつけている。いや、笑っているだけだろうか?
 何か辛いことがあった時、その辛いことを忘れるために浮かべるような、そんな笑顔。
「?!」
 首を掴んでいた手の力が緩む、少し楽になった。
 手の平から炎が吹き出してくる様子もない。私は赤いヤツを見下ろす。
 なぜ!?何でそんなことをお前が知っている? そんな表情。動揺してるのがわかる。
 腕がブルブルと震えているし、目の焦点も私に合ってない。ここにいるはずのない何かを見ているような目。
 この状態が何秒続いてくれるだろう?
 とりあえず今すぐ殺されてしまうことは無くなったと思って良いんだと思う。ほんの少しだけ、本当に少しだけ安堵する。
 この時間が出来るだけ長く続くことを期待しながら、
 うわ…さっきの焚き火のせいで髪の毛少し焦げてるじゃない…最悪ね…、などとそんなどうでも良いことを考えていた。

961 名前:名無しさん 投稿日:2007/01/28(日) 23:23:42 [ 1OKM8rQw ]
>>ドギーマンさん
「あるアサシンの物語」を思い出してしまいそうないい話ですね。
ある程度の強さや資金を手に入れると失ってしまうものも大きいのかもしれません。

>>きんがーさん
ついに接触・・ですか!?
ハラハラします。続きが早く読みたいです(笑)

>>957-960
第三者視点ではなく主人公(?)の姫さん視点での語りが面白いです。
そういえばあんまり見ないので忘れてましたが、蛙に変身させれるんですよね・・
悪魔と姫の出会いからまた新展開がスタートしそうですね。続きを期待してます。

962 名前:ドギーマン 投稿日:2007/01/29(月) 01:41:38 [ /Bfx.hTI ]
グリム童話+REDSTONE

『黒頭巾』

昔々ロマ村のビスルというところに
それはそれは可愛いロマの少女がおりました。
彼女はいつも黒い頭巾をしていたので、黒頭巾と呼ばれていました。
ある日、黒頭巾はお母さんに呼ばれて
「黒頭巾や、オロイン森のお婆さんのお家までこの葡萄酒とパンの入ったカゴを届けておくれ」
とお使いを頼まれました。
黒頭巾は元気に返事をしました。
「いいかい。何があっても絶対に道草をくったりしちゃいけませんからね」
と言われ、黒頭巾はお母さんと絶対に道草しないと約束しました。
赤山を越えてしばらく道を進んでいると、黒頭巾はウィザードに出会いました。
「こんにちは、ウィザードさん」
「やあこんにちは。お嬢ちゃん、名前は?」
「みんな黒頭巾って呼ぶわ」
「そうかそうか、じゃあ黒頭巾ちゃんはこれから何か用事があるのかい?」
「オロイン森のお婆さんのおうちにこのカゴを届けに行くの」
「ほう、関心な子だね。そうだ、いい子の黒頭巾ちゃんにだけ教えちゃおう。
 このわき道を行くととっても綺麗なお花畑があるんだけど、行ってみないかい?」
「でも、お母さんと道草しちゃだめって約束してるもの」
「なあに、大丈夫さ。バレなければいいんだよ。
 それに、お花を持っていってあげればお婆さんもきっと喜ぶよ」
黒頭巾は悩んだ挙句、ウィザードの誘惑に負けてしまいました。
そして、お花を摘みにわき道を歩いていきました。
その黒頭巾の後ろ姿を見送ると、ウィザード身体はみるみるうちに膨らんで、
大きな大きなウルフマンになってしまいました。
「ふふふ、よぅし、先回りしてウンと怖がらせてから食ってやる!」
そう言うと、ウルフマンはお婆さんのお家へ駆けていきました。
その頃、黒頭巾は一面に広がるお花畑に感激しておりました。
「まあ!なんて素敵な場所なのかしら!」
黒頭巾はそのお花畑でお花を摘み、蝶々を追いかけて過ごしました。
そしてしばらく夢中で居た後、
「あらいけない、お婆さんのお家に行かなくっちゃ!」
と、ようやく用事を思い出してオロイン森のお婆さんのお家へ走っていきました。
ですが、その頃にはお婆さんはもう先回りしたウルフマンにペロリと食べられてしまったあとでした。

963 名前:ドギーマン 投稿日:2007/01/29(月) 01:42:25 [ /Bfx.hTI ]
黒頭巾はお婆さんのお家の前に着くと、
「おばあさ〜ん」と呼びました。
「おお、おお、黒頭巾かい。よく来たねえ。入っておいで」
中から声がしたので、黒頭巾はお家の中に入りました。
お家のベッドには、お婆さんの格好をしてウルフマンが寝ていました。
黒頭巾はベッドの上のウルフマンに近づくと聞きました。
「お婆さん、病気の具合はどう?」
「黒頭巾が来てくれたから、きっとすぐに良くなるわ」
そう言うと、お婆さんの格好のウルフマンはクククと低く笑いました。
黒頭巾はいつもと違うお婆さんが何かとても怖くなってきました。
「お婆さん、葡萄酒とお花とパンを持ってきたわ。じゃあわたし、もう帰るね」
そう言って逃げようとしましたが、
「待っておくれ私の黒頭巾。私としばらくお話しようじゃないか」
黒頭巾は震えあがりました。
「さあ、こっちへ」
ウルフマンはニヤリと笑ってよだれをたらすと、ゆっくりと手招きしました。
「でも、道草しちゃいけないってお母さんと約束を」
「なぁに言ってるんだい?黒頭巾や、お前はもう約束を破ってしまっているだろう?」
黒頭巾は驚きました。それは自分と途中で会ったウィザードしか知らないことだったからです。
「ねえ、お婆さん」
黒頭巾は恐る恐る聞きました。
「なんで、そんなに声が低いの?」
「それはね、病気のせいだよ」
「なんで、そんなに身体が大きいの?それに、なんだか毛深いわ」
「それはね、お前をぎゅう〜っと抱きしめるためだよ」
「なんで、そんなにお口が大きいの?」
「それはね、お前を食べるためだよ!」
そう叫ぶと、ウルフマンは黒頭巾に跳びかかりました。
その頃、オロイン森の中を弓を持った狩人、アーチャーが歩いていました。
アーチャーはバリアートの町の人々にオロイン森に出る悪いウルフマンを退治するよう頼まれていました。
そのウルフマンはシルバリンという名前で、ウィザードの格好で誰かに近づいては油断させて、
散々に怖がらせた挙句に食べてしまうという、それはそれは怖いウルフマンでした。
アーチャーがしばらく歩いていると、小さなお家を見つけました。
何か異変はないかと、アーチャーはそのお家を訪ねることにしました。
「もしも〜し、誰かいますか?」
とドアをノックしますが、返事がありません。
アーチャーはもしやと思い、ドアを開けると、鍵が掛かっていません。
アーチャーはバァンと勢いよくドアを蹴り開けると、家の中に向かって弓を構えました。
するとそこには、
ファミリア二匹にめった刺しにされて、ぐちゃぐちゃになってしまったウルフマンの姿がありました。
「ねえお姉さん」
アーチャーは家の中でその様子を眺めていた黒い頭巾の女の子に驚きました。
女の子は顔に点々とウルフマンの返り血をつけた顔をアーチャーに向けて言いました。
「わたし怖いの。また襲われちゃうかもしれないから、ロマ村のわたしのお家まで送ってください」
アーチャーは黒頭巾のほうがよっぽど怖いと思いましたが、
あまりの怖さに逆らうこともできず、黒頭巾をビスルまで送っていきました。
それからお家に無事に着いた黒頭巾は、お母さんに約束を破ったことを正直に謝り、
もう二度と破らないことを誓って、幸せに暮らしましたとさ。

おしまい

964 名前:ドギーマン 投稿日:2007/01/29(月) 01:51:19 [ /Bfx.hTI ]
あとがき
今日、かなり久々に子供に絵本を読み聞かせる機会がありまして、
自分の子じゃありませんけどね。
そのとき、赤頭巾にREDSTONEの世界がぴったり当てはめれるなって思いついたんです。
ちょっと「本当は怖い・・・」のほうのが混じってます。
私はこんな感じにしちゃいましたが、
もうちょっと考えればもっとひねれた気がしますが、
グリム童話の原形残したかったのでこの形に落ち着きました。
いつもどおり思いつきですが、
子供の頃に聞いた赤頭巾ちゃんの話を思い返しながら読んで頂けるといいと思います。

965 名前:ドギーマン 投稿日:2007/01/29(月) 02:10:14 [ /Bfx.hTI ]
>キンガーさん
張がRMTに手を出した理由ですね。
一気に核心にいかずに外堀を埋めるような、ゆっくりとした進行がいいです。
けど、早くオフ会のほうの作戦が何なのか知りたいなあ。

>>957-960
悪魔とプリンセスの間に何かただならぬ繋がりを予感させる終わりでした。
続き待ってます。

966 名前:第32話 悪だくみ 投稿日:2007/01/29(月) 04:14:33 [ BnZCUtXo ]
小柄なデルモは帰宅してからもオフ会の興奮冷めやらずの状態だった。
大した仕返しではないけれど、キンガーさんと二人でわざと引っかかる作戦は
相手がどんな奴かは判らないけど、その時の顔が想像できるものだった。
手順は簡単。

「あのね、連連が犯人なのはもう判明したわけだからキンガーさんがやられた時と
同じように返信してあげるの。きちんとメアドのPWも誕生日も入れて返信するのよ。
連連はそれを使って、私たちのメイン(そう信じ込ませた)の名前からRSのIDを推測
しながら「PW忘れた」連絡を利用してアカウントを盗むはずなのよ」

「それは解るけど、ただ単に盗ませるだけ?」

「サブもきちんと作って、アイテムは勿論ゴールドも空にして送り出してあげるのよ
それとね・・・・・・・・」

「なるへそ〜! 痛快だね! ささやかながら最初で最後の反撃だねw」

「後はキンガーさんのお好きなように^^」


 翌日のキンガーは目覚めが悪く(酒のせい)水を一杯飲んで前日の記憶を蘇らせた。
出勤は午後からにしておいて正解だったなと思いつつ、デルモの狡賢い笑顔が自分に
今日一日の活力を与えてくれているのを感じた。
「借りは返す」
ついでに大学時代のPCバカに電話した。
「よう! 元気か?」
「ちっ。お前か。どうせロクな電話じゃないだろ?」
「よく判ったなw 仕事は続いてるか?」
「あぁ。大きなお世話だがな。何のようだ?」
「覚えているか? お前がサークルでxxxでxxxxxしたの?」
「ちょwおまwww 何を言い出すんだ?もぅ忘れてくれ^^;」
「嫁さんに言われたくなかったら、俺の頼みを聴いてほしいんだが・・・」
「それは世間では脅迫といいますが・・・」
学友を脅しながらキンガーは必要なものをいただいた。
デルモと同じ仕返しだと芸がないと、「のしを付けて」返すつもりなのだ。

多少時間が前後しつつ、二人は愛を込めてメールを返信した。

967 名前:第33話 被害 投稿日:2007/01/29(月) 04:57:28 [ BnZCUtXo ]
彼は簡単にIDやPWを盗めることに麻痺していた。
このやりかたは組織の連中に指示されたやりかただった。
今回は二つもアカウントが手に入った。
中を確認している時間は無いので、とっとと登録メアドの変更を済ませる手順だった。
筋駕のメインはタンタンタヌキ。デルモのメインはモミアゲまん。
各々、tantantanukiとmomiagemanかmomiagemannだろうと推測し、まんまと手に入れた。
自分の用意していたメアドに移動させた後、目当てのものを探すためにログインした。
「さーて、デルモちゃんからはアイテムを「返して」もらおうか・・・」

うん?・・・なんだこれ? なんで全部若葉なんだ? アイテムはと・・・
なんだ?! 全部空だぞ! どうなってるんだ? 

彼はも一度ログイン画面に戻った。
画面をみてはっとした・・・キャラの名前が上から

これがね
うちのギルドの
レクリエーションなのよ
ご苦労さまw

え? バレたの?? なんで? どうして?
慌てた彼は筋駕のアカウントを調べた。

あほかいなー
そんなんでキャラが
手に入ると思ったかww
大事に育ててね!

ようやく彼は気づいたのだった。自分が遊ばれたということが。
一応アイテムも調べたが、こちらはご丁寧にインベントリ一杯に
花が一輪ずつ咲いていた。
お国柄が顔に出ていた。いや、他の国の人間でも顔を真っ赤に染め上げたただろう。
頭が真っ白になった彼はすがる思いで、元のメールを漁り始めた。
きっと自分は間違ったんだ、何か見落としていると思いながら闇雲に受信箱を覗いた。
「あった!」思わず彼は画面に向かって声をあげた。
他のMMOのアカウント情報の入っているメールを見つけたのである。
そのメールをクリックした瞬間だった。
一瞬フリーズしたかと思うと、メールを発信し始めたのである。
大量のメールをあらゆる所に送信開始しはじめたのだ・・・見かけ上はね。
彼が電源を落とすまではメールクライアントは動き続け、
そのバックグラウンドであらゆるファイルを壊し続けた。
そう、キンガーの友人の仕事は某アンチウイルスソフトのワクチン作りだったのだ。
趣味がウイルスのコレクションだというのを覚えていたのだ。

DOSまで壊された彼のPCはしばらく動作できない状態にまでなった。
「組織」にまでメールは送信され、彼はそれが原因で行方不明になった。
半島に帰ったのかどうかは判らないと言う。

968 名前:名無しさん 投稿日:2007/01/29(月) 12:01:36 [ 1OKM8rQw ]
>>ドギーマンさん
怖いですね。
でも、世界的にも配役的(?)にもピッタリ合っていて面白いです。シルバリンがまた出てきてますね。
「本当は怖い・・」シリーズではないですが、童話というのは怖い物語が主体と聞きました。
私も子供の頃遊んだ赤ずきんちゃんの絵本+塗り絵みたいなのを見つけて、改造したりして遊んでました(笑)

>>きんがーさん
作戦成功にまずは乾杯。
きんがーさんの用意した「のし」、読んでいて爽快なくらいヒットしましたね(笑)
でも、笑って読めるのも今のうちでこういうID盗みは結構ありそうで冷や冷やものです。
PWも名前と同じものを使う人も多そうですしね。自分も注意しなければ・・。

969 名前:第33話 願望 投稿日:2007/01/30(火) 03:32:00 [ BnZCUtXo ]
退屈というよりか、人間関係で苦痛覚える仕事から帰宅した私は
デルモとキンガーさんの仕返しがうまくいったのかなぁと考えながらPCに飛びついた。
ログアウトした街に降り立ったぎゃおすは凛々しさを増したように感じる。
相変わらずけたたましい叫びが飛び交い、足の踏み場もないほどに混雑した街アリアン。
露天を眺めながらの散歩から徐徐にゲームの世界に入っていく。
あ! 赤い看板・・・雪月だよ!? まだこりてないのか・・・
ギルメン表からはパスケレと連連が消えていた。
運ルパンが蹴ったらしい。 当然よねぇ。
狩りにでも行こうかとしていたら、弟が帰ってきた。
「ただいま〜」
「おかえり。今日は合コンなかったのね〜?」
「毎晩するわけないじゃんか。ぁ、姉貴も行きたいの?」
「誰が弟のいる合コンなんかいくもんですか!」
「へいへい。じゃ俺は部屋にいくわ」
「パパに買ってもらったPCがきになるんでしょぅ?w」
「まぁね。でも仕事の手伝いしなきゃならないから完璧に自分のものって感じはしないなぁ」
「ぜいたく言わないの。手伝いは簡単なの?」
「うん。誰でもできるんだけどさっぱり意味が判らないw」
「なんだそれ?」
「データ処理みたいな感じだよ。文字の羅列の中から目立つものを探すだけ」
「よく判んないわねw ぁ、ご飯はおねーちゃんが作り置きしてくれたからチンしてねー」
「あいあい」

再びRSに戻り、狩り装備を運にしようかどうか迷った。
しばらく迷っていると’耳’が来た
なんと怪盗きんがからだった。PTを組んでそれでチャットすることに。

ぎゃおす   こないだはご馳走様でした^^;
怪盗きんが  いやいや、楽しかったからいいんだよ。
ぎゃおす   仕返し、したんですか???
怪盗きんが  したw 今頃怒っているだろうね〜! 
ぎゃおす   すっきりしたでしょ?
怪盗きんが  うん。しかしな・・・・
ぎゃおす   ? どうしました?
怪盗きんが  顔合わせちゃうとさすがに文体も女の子っぽくなるねw
ぎゃおす   あぁw みんなには内緒にしてね^^
怪盗きんが  了解。
怪盗きんが  実はさ、訊きたい事があるんだけど
ぎゃおす   どうぞ
怪盗きんが  前にね、キンガーのアカウント売りみたいな奴があるって言ってたよね?
ぎゃおす   はい。
怪盗きんが  まだ売り出し中かな?
ぎゃおす   どうでしょ? 観てみたいんですか?
怪盗きんが  ・・・・取り返そうかなぁと。
ぎゃおす   同じものとは限りませんよ?
怪盗きんが  だからネカフェで直接取引きしようと思うんだ。多分できるでしょ?
ぎゃおす   そういえばそんな事書いてありましたね
ぎゃおす   会ってみたら連連の中の人だったりしてw
怪盗きんが  そのほうが都合がいい。けりつけたいしね。
ぎゃおす   けりつける」なんて、危険な目にあうかもしれないですよ?
怪盗きんが  ま、まだ売り出し中なら」の話だから。
ぎゃおす   あとでサイト覗いてきますね^^
怪盗きんが  お願い^^ URL教えてね^^
ぎゃおす   はぃ^^ メールで送ります。
怪盗きんが  ではまたノシ
ぎゃおす   ノ

狩りどころではなくなった私は、ログアウトしてサイトを覗きにいくことにした。

970 名前:ごめん 投稿日:2007/01/30(火) 03:35:34 [ BnZCUtXo ]
第34話でおね^^↑

971 名前: 投稿日:2007/01/30(火) 07:22:40 [ LHf9n7tk ]
>>941
返信遅れて申し訳ない。分かる人が居たとはw
間が空きすぎるときついですねorz、レイド達は今回どうなることやら・・・できるだけ三人称で行こうと思ったりしてますw

972 名前: 投稿日:2007/01/30(火) 07:42:01 [ LHf9n7tk ]
>>895
>>939-940

 二人はテーブルに着き、朝食のパンを口にしていた。
しかし、ミレルの頭の中ではそれどころではないらしい。
 なぜ…?一体どういうことなのよ…?
彼女がそんな事を思っていた、そのときだった。
「さて…ミレル、次はかなりの大物だよ。ブツの名前は…」

            …
「赤い魔石…REDSTONEよね…」
そう…この光景は、彼女に取って忘れられない物、此処からすべてが始まりすべての歯車が回りだす。
「悪徳ギルド委員会のベスペンが持っているんでしょ?」
彼は一瞬呆気に取られたが、気を取り直し仕事の説明に入る。
「ねぇ、レイド」
この仕事…やめない…?

彼女はその言葉が出なかった、出したいのに出なかった。まるで、見えない何かに口をふさがれているように…

「は…グ…ル…ま…は…トマ…ラ…ナイヨ」

973 名前:ドギーマン 投稿日:2007/01/30(火) 09:29:16 [ LqS319xY ]
『オアシス』

ブルン暦4423年6月。
僅かに空が暗く成りて三日間彼の状態が続き。
続いて十日間明るくて赤き光空を覆い。
彼の挙句、赤き光一つの点に成りて南の地に落ちれり。

1:追放天使

彼には何がなんだか分からなかった。眩しい光に包まれたかと思うと、雲の白い霞を裂いて進んでいた。
いや、進んでいたのではない。落下していたのだ。雲の中を地上に向かって。
やがて白い霞を抜けると、錐もみ状態で落下し続ける彼の視界いっぱいに地上が回っていた。
―なんだこれは?一体何が起こったんだ?
彼は混乱していた。方向感覚を失い、ただ重力に身を任せて地上に向かっていた。
彼はなんとか背中の翼を広げ、バランスを取って錐もみ状態を脱出しようと努めた。
翼には物理的な意味はほとんどない。あくまで彼らの聖なる力を制御するためのものだ。
彼は体内に宿る力を翼に集め、重力を制御しようとした。
しかし、落下速度が少し緩んだだけでほとんど変化はない。いや、むしろ錐もみ状態が余計にひどくなった。
彼は頭を下にして右に激しく回転していた。地上が多重の円のように見える。
―馬鹿な。バランスが・・・・。
彼は右の翼に意識を集中して、何とかバランスを取ろうとした。
しかし、右の翼から返ってきた反応は激痛だった。彼の顔が苦痛に歪んだ。
「く・・・・ぉ・・・」
右翼の先の感覚がない。恐怖と喪失感が彼の混乱に拍車をかけた。
そうしているうちに地上はすぐ目の前に近づいて来ていた。
彼は咄嗟に翼を目一杯に広げ、翼に集めていた力を地上に向かって放出した。
凄まじい砂埃が吹き上がり、視界は消えた。そこから先、彼は身体のあらゆる感覚を意識と共に失った。
やがて砂煙が落ち着くと、肉体のほとんどを小さな砂のクレーターの中心に埋もれさせて、彼は砂の大地に抱かれて眠った。

彼が見つかったのは全くもって運の良い、偶然だった。
風に流される砂に肉体を埋もれさせようとしていた彼は砂漠を哨戒していた若い傭兵によって発見された。
もしあと少しこの傭兵が発見するのが遅かったなら、彼の身体は砂に完全に埋もれてしまい、
小さな砂のクレーターなど砂漠の砂丘のなかに紛れてしまっていたことだろう。
傭兵は僅かに浅黒い肌を砂の中から覗かせて居た彼を見つけると、急いで駆け寄って彼を砂の中から引きずり出した。
そして傭兵は一緒に見回りをしている相方に向かって大声で叫んだ。
「親父!人だ!すぐ来てくれ!」
親父と呼ばれた黒い髭面の体格の良い男が走ってきた。
親父は彼の口の中の砂を出させると、背中を乱暴に叩いた。
するとゲホゲホと咳き込んで呼吸を取り戻した。眼を少しだけ開き、意識を取り戻したように見えたが反応が無い。
腰の皮袋を取り、中に詰まった水を口に流し込んでやる。
水を飲んだのを確認すると、親父は彼の右腕を肩にかけ、腰に腕を回して持ち上げた。
「急いで町に運ぶぞ」
傭兵も彼の左腕を肩にかけると、親父と息の合わせてリンケンに向かって走っていった。

974 名前:ドギーマン 投稿日:2007/01/30(火) 09:32:21 [ LqS319xY ]
彼は簡素な木製の寝台の上で意識を取り戻した。そしてはっとして身体にかけられている薄い毛布を跳ね除けて飛び起きた。
しかし、視界がぐらりと崩れるように床に向かった。気づけば彼は床に倒れ伏していた。
頭がズキズキと痛む。彼は頭を手で押さえた。身体全体を気持ちの悪い汗が覆っていた。
「大丈夫!?駄目よまだ寝てないと」
今部屋に入ってきたらしい女の良く通った美しい声が彼の痛む頭に不快に響いた。
彼は女に支えられて寝台に戻されると、再び横になった。
彼は重たいまぶたの中に下半分を覗かせる虚ろな両の眼で女を見た。
砂漠の民らしく日焼けした肌に鼻筋の通った美しい顔立ちをしている。
女は水に布を浸し、ぎゅっと絞ると彼の汗を拭き始めた。
はっきりしない意識の中にひんやりとした柔らかい布の感触だけが鮮明で、妙に心地よかった。
彼は短く息を吐いて、女をじっと見た。何かをぶつぶつと呟いている。
「水?水ね?」
女は耳がいいのか、彼の呟きを聞き取るとコップに水を注いで彼の口元に持ていった。
自分の手で水を飲もうと彼は手を動かそうとするが、女は彼の手を押さえた。
「無理しないで。ろくに力も入らないでしょ」
彼は口の端から水をだらしなく垂らしながら喉を潤していった。
水を飲み終えると、口から垂れた水を拭き取っている女に彼は言った。
「あり、がとう」
女は微笑を浮かべて彼に優しい眼差しを向けた。
「いいのよ」
それから女は彼の手を両手で握ると、眉を寄せた顔を彼に近づけて言った。
「いくらなんでも、何も持たずに砂漠をうろつくなんて無茶だわ。
 何があったか知らないけど、死んだって何一つ良いことはないんだからね」
暖かい女の手の感触を感じながら、彼は女に呟いた。
「砂漠?」
彼の言葉に女は怪訝な表情を向けたが、すぐにはっとして彼に毛布をかけた。
「喋っちゃ駄目よ。今は身体を癒すのに専念してちょうだい」
彼はその言葉に素直に従い、頭の痛みから逃げるように目をつむって意識を暗闇の中に沈めていった。

彼は白い雲のような大地に立っていた。ただし霞ではない。
白い霞の中にしっかりと水平な床の感触がある。
彼は何か熱い気配を感じて振り返った。
遥か高い雲の頂に、まばゆく神々しいまでの赤い光を放つ石が火の鳥に抱かれていた。
赤い鳳は美しく燃える炎の翼を広げ、一声高く啼いた。
白い世界に赤い光はよりいっそう強さを増し、彼の瞳に赤い輝きを焼き付けた。
強すぎる光を避けるように彼は周囲を見回した、すると彼のほかに誰か立っている。
白く輝く翼を誇示するかのように広げている。天使は彼に目を向けると、口を開けずに言った。
"何か用か、兄弟よ"
彼の頭に直接響くような声。しかし、彼はそれを不思議に思わなかった。夢だからだろうか。
そして、目の前の天使に対して同じように口を動かさずに問いかけた。
"汝こそ何をしている。ここは我ら火の守護天使が守る場所。汝は・・・・"
次の瞬間、その天使より放たれた光が彼の視界を真っ白に染めた。

975 名前:ドギーマン 投稿日:2007/01/30(火) 09:33:31 [ LqS319xY ]
彼は目を覚ました。今度は意識もはっきりしていたし、頭の痛みも嘘のようにひいていた。
彼は身体を起こすと、ベッドから降り立った。ふらつかずに真っ直ぐに立てた。
最初に起きたときは気が回らなかったが、誰の物か分からない灰色のローブを着せられていた。
部屋を見回すと、自分が寝ていた寝台の他に2つベッドが並んでいる。
夜らしく、暗い部屋には頼りなく揺れる小さな明かりが一つだけ。
彼は心の中に逸る何かを感じていた。何か急がなければいけない気がする。
しかし、何を急がなければいけないのか、それが彼には分からなかった。
彼はざらざらとした手触りの壁を手探りして戸を探すと、部屋を出て暗い廊下を進んだ。
そして、廊下の先の突き当たり左からもれる明るい光と話し声のほうにゆっくりと歩を進めた。
明かるみにそおっと顔を覗かせると、そこには家族の団欒があった。
3人の男女が火にかけられた鍋を囲んで床に座っている。
「きゃぁ!」
暗がりから自分を見る男の顔に女が悲鳴をあげた。一同の目が彼に集中した。
彼は恐る恐る陰から姿を現した。暖かい暖色の光が彼の身体を照らし出した。
「駄目よ。寝てなきゃ」
彼だと理解した女が心配そうに口を開いた。
「いや、大丈夫」
彼は静かに口を開いた。その落ち着いたしっかりとした声は、
先ほどのぐったりした様子とは結びつかないものだった。
親父が目を丸くして言った。
「驚いたな。一体どういう身体してるんだ」
「まあ、いいじゃないか。良くなるなら早いほうがさ。ほら、突っ立ってないでこっち座れよ」
傭兵は気楽な声で言うと床に置いた尻をずらして彼を隣に手招きした。
彼は傭兵の隣に腰を落ち着けると、辺りを少し見回しておもむろに口を開いた。
「ここは?」
親父は落ちつかなそうな彼を安心させるように笑みを浮かべて答えた。
「リンケンだ。砂漠の中にある小さな町だよ」
「リンケン?」
彼は土地の名を聞いてもピンとこなかった。
傭兵は両手を広げて不満げに言った。
「おいおい、いくらここがアリアンやブルンネンシュティグに比べて田舎でも、その反応はねえだろ」
「落ち着きなよお兄ちゃん」
女が傭兵をなだめた。
―アリアン?ブルンネンシュティグ?
彼は困惑の表情を浮かべた。
親父は彼の戸惑いの表情をじっと見据えて言った。
「君はこの辺りの土地の者ではないようだね。一体どこから来たのかね?」
彼は俯いたまま何も答えなかった。火を見つめたまま、自問しているようだった。
「どうしたんだ?」
傭兵が心配そうに彼の顔を覗きこんだ。彼の顔には汗が滲んでいた。
親父は質問を変えることにした。
「私はグレイ・ヘムキンス。こっちは娘のエレナで、こっちが息子のハンク。君は?」
親父の紹介に、エレナは彼に小さく会釈したが、俯いたままの彼は彼女を見ていなかった。
彼は揺れる火を見つめながら、その質問にも答えなかった。いや、答えられなかった。
顔をつたう汗が鼻先に集まり、ぽたりとあぐらをかいた彼のふくらはぎに落ちた。
彼は愕然とした顔を重たそうにゆっくりと上げると、震える瞳をグレイズに向けて言った。
「名前が・・・・私は・・・・・・思い出せない」
彼は気づいていなかった。自分の背中から翼が消え失せていることに。

976 名前:ドギーマン 投稿日:2007/01/30(火) 09:47:53 [ LqS319xY ]
あとがき
>>932に載せた話を長くしてみようと思いまして。
結果どころか話の筋まで分かってる話を読ませるのはどうかとも思いましたが、
書きたかったんです。
出来れば、932に無いエピソードも交えようと思ってます。

977 名前:名無しさん 投稿日:2007/01/30(火) 14:27:43 [ HSEbE42E ]
>>夢さん
RED STONEが話にのぼってきましたね。何かが起こりそうです。
続きで謎が分かってくるのを期待してます。

>>ドギーマンさん
こういう史実的な話は個人的に好きです。私も良く分かってないところが多いですし。
新しい逸話もまた出てきそうで楽しみです。こうして見ると天使ってカッコイイなぁ(笑)
ドギーマンさんのシリアスな話、大好きです。続き待っていますね。

978 名前:殺人技術 投稿日:2007/01/30(火) 17:14:04 [ E9458iSQ ]
チョキー・ファイル

1−3>>656-658
4−5>>678-679
6−9>>687-690
10−14>>701-705
15-17>>735-737
18-20>>795-797
21-22>>872-873
23-27>>913-917

やっぱ下がるとレスが少なくなる傾向にあるのねw

979 名前:殺人技術 投稿日:2007/01/30(火) 17:14:46 [ E9458iSQ ]
チョキー・ファイル(28)


チョキーとアレクシス議長、そしてその護衛と数人の男女が会場に取り残され、令嬢達は恐怖で震える体を壁際に寄せ、男達は瓦礫の山をよじ登って脱出を図った

だが、その山を越えた所では悪魔のマントが渦潮の様に会場を包み込み、恐怖に駆られて走り抜けた者は一人残らずマントの闇に呑み込まれていった。

つまり、逃げられなかった。

だがそれでも、アレクシス議長の護衛の内の一人であるウィザードのカルスが混乱をなんとか諌め、チョキーとアレクシス議長、そして戦う能力の無い者は皆悪魔から離れた所で立ち尽くしていた。

アレクシス議長は一番安全と思われる壇上付近で護られ、チョキーは無事なパーティーテーブルを悪魔との間に挟んで、座り込んでいた。

「お前達は無事な者達を守れ、蟻一匹通すな」

生き残っているアレクシス議長の護衛は8人、その内の7人はカルスの言葉に従い、カルスは悪魔の姿をみて軽く唾を飲み込むと、悪魔の気に中てられたのか、落ち着かなげに毛羽立つ絨毯を踏みしめた。

カルスは悪魔を包む警備隊の赤い円陣の縁を超えて、悪魔と対峙した。

「脆弱な人間が、杖も無しにこのF・Fに挑むのか?」

悪魔は言った。

F・Fとは何だろうか──そんな素朴な疑問を頭の崖っぷちから突き落とし、カルスは差し伸べた右手に意識を集中した。

「冷たい……?」

チョキーは思わず呟いて、絨毯につけていた手を引き離した。

手は赤く変化し、もう片方の手で触ってみるとなるほど、ひんやりとしている。

そして、会場の全員がカルスの右手を、その右手の真下の床を凝視した。

凍っている。

絨毯の高級な毛に白い霜が立ち、霜はやがて集まり、床に小さな山脈を作った。

「来い、ガンバンティン」

カルスがドス低い声で呟くと、山脈は震え、凍てついた山は小気味良い破裂音を上げて谷となった、その谷には三日月が突き立っていた。

「──ほう、G・Tか」

悪魔はまたも謎の単語を呟き、カルスはそれに耳もくれず、氷山から長い杖を抜き取った。

「チリングタッチ!」

カルスは杖を抜いた勢いをそのままに杖を振り抜き、ファイルは動じる事なく飛び上がった、カルスは上空を仰ぎ、悪魔の両手で赤く光る手のひら大のボールを見た。

「人間にしては奇異な魔力だな、それはその杖を持つが故か、それとも?」

悪魔は両手に携えている真紅の光球をその黒い手で握りつぶし、カルスに語りかけた。

「話す必要はない」

カルスは二つの紅玉が悪魔の手中でおぞましい脈動を湛えているのにも怯まず、口の中で小さな言葉を紡いだ。

すると、カルスはまるで背中に見えない翼でも付いているかの様にふわりと舞い上がり、緑のコートをはためかせて文字通り悪魔と肩を並べた。

「地獄へ還れ、忌々しい悪魔め」カルスはガンバンティンを握る右手に力を込めると、先端の三日月が呼応する様に鈍く輝き、カルスはそれを左手で叩いた。

途端、その杖から光とも柱ともつかない何かが放たれ、悪魔はそれを空中で側転する様に飛んで回避すると、それは無事だった壁に音も無く衝突し、残された痕跡を見てチョキーは息を呑んだ。

あの光の様な物は、大質量の水だったのだ、水だという事は壁に伝う雫で分かった、大質量という事は壁に空いたヒビ一つ無い芸術的な穴で分かった。

そしてどうやら悪魔もそれはかわしきれなかったらしい、悪魔の脇腹は白く凍て付き、悪魔の体からぱらぱらと氷の破片が零れ落ちた。

だが、零れ落ちたのは氷だけではなかった。

悪魔は両手に握っていた紅くおぞましい何かを手放すと、それは絨毯についた瞬間、大量の恐怖へと形を変えた。

脆弱で怠惰な貴族には為す術も無い、死の恐怖へと。

「ば、化物だ!」

貴族の一人が叫び、だが指は指さなかった、どれに指を指せばいいか分からなかったのだ。

赤いうねうねとした光が分裂して形作り、貴族達に再び絶望を与えるに相応しい大量のインプには。

980 名前:殺人技術 投稿日:2007/01/30(火) 17:15:31 [ E9458iSQ ]
チョキー・ファイル(29)


カリオの玩具によって作られた原始的なバリケードを挟んだ反対側の、悪魔が侵入してきた扉のある空間では、不規則な金属音が互い違いに鳴り響いていた。

ランサーが目にも止まらぬ速度でカリオに槍を突き出し、カリオがそれをかわす瞬間を見計らって戦士の大剣が横殴りに叩き付けられる。

だがカリオはそれを操り人形の背中の糸が切れたかのように仰け反ってかわすと、大剣はたちまちランサーの眼前をかすめ、慌てて剣を止めた戦士の顎をカリオの爪先がカチ上げた。

カリオは海老反りになった勢いで見事に後転して着地すると、一瞬で体勢を持ち直したランサーが槍を風車の様に振り回して、疾風の如く突進した。

槍の長さはおよそ3メートル超、跳んで凌げば確実に隙が発生し、すぐ後ろは瓦礫、横に逃げるには最低でも槍を持って振る事の出来る2メートルの距離をほぼ一瞬で走り抜ける必要がある、疲労の全く無い時ならそれも出来ただろうが……

カリオは移動による回避が不可能とランサーの踏む一歩の内に判断すると、床に転がっていた瓦礫の破片をランサーに向けて蹴り飛ばし、ランサーは危険を察知してやむなく槍を止めて防御した。

だが、カリオが一瞬の安堵を感じた瞬間、死を告げる地獄の冷気がカリオの頬を撫で、カリオは冷気の発生源に気付くと狼狽した。

「喰らえぇっ!」戦士はランサーの真横、ヒビの入った大窓の傍で叫び、カリオの横に飛び込みながら大剣を振り被った。

戦士の腕から伸びる瑠璃色の綺麗な光がカリオの世界を埋め尽くし、ランサーは視界の隅から猛スピードで目の前の男に噛み付かんとする瑠璃の竜を見て後ろに飛び退いた。

カリオは服の下に忍ばせていたパーティー会場のステーキナイフを竜の額めがけて投げながら足を転がし、近場のテーブルに飛び乗るとテーブルの反対側の縁に手を掛けた。

投げられたステーキナイフは竜の額に刺さった瞬間竜の一本角と化し、カリオはテーブルを思い切り持ち上げ、空中で前転しながらテーブルの後ろに身を隠した。

「うおっ!?」

カリオはテーブルに完全に隠れたつもりだったが、空間がひび割れる様な轟音と共に、冷気はテーブルを通り抜けてカリオの全身を凍て付かせた。

「……凍え死んだか?」

戦士は訝しがるように言うと、さながらアイスケーキの様になってしまったテーブルに歩み寄った、音はしない。

ランサーは周囲を満たす冷気に身震いすると、自分の足元の絨毯までもが凍り付いてしまっている事に気付き、戦士を背後から疎ましげに睨み付けた。

「………………」

傾いたアイスケーキのすぐ傍まで歩み寄ると、戦士は念の為にと武器を構え、ランサーも軽くくしゃみをすると取り落としていた槍を拾い上げた。

戦士が、アイスケーキの内側を覗き見るように、一歩、また一歩と、足を運ばせる。

「!」

戦士はその内側を見ると息を呑み、ランサーは慌てて槍を構えた。

アイスケーキの中には、期待していたフルーツは入って居なかった。

だが、それを確認した瞬間、戦士は前のめりに倒れ込み、ランサーは唐突にバランスを崩して尻餅を突いた。

ランサーと戦士は顔を見合わせた、そして一つの答えが浮かんだ。

これは自らを透明にする、ブリッジヘッドのシーフ達が得意とする魔法だった。

981 名前:殺人技術 投稿日:2007/01/30(火) 17:16:49 [ E9458iSQ ]

チョキー・ファイル(30)


おしまいだ──そこにいる誰かがそう呟いた。

武器を構える護衛すらもが後退りするそれは、一匹だけなら度々討伐の任務が張り出される標的だった、1匹だけなら。

フランデル大陸に蔓延る怪物の代表格とも言えるコボルト族──

彼らは人間とも悪魔とも独立して自分達だけのコミューン、すなわちコボルト社会を形成し、現在最も勢力を増やしつつある"悪魔"だ。

中でも、目の前に居る黄土色の毛を持つインプは、そのコボルト社会の中で頂点に鎮座すると言われるA級危険因子、単独でもその戦闘力はそこらへんの冒険者とは比べ物にならないと言われている。

それが、目の前のこの余りにも狭い閉鎖空間に、一体何十匹居るのだろうか、分からない。

カルスは自らの下方に大量のインプが現れたのに気付くと慌てて呪文を唱えようとしたが、悪魔はその隙を見逃さず、空を凄まじい速度で泳ぎカルスに体当たりを喰らわせた。

護衛達がタイミングを合わせて、インプの軍団に攻撃する、ある者は矢を放ち、ある者は片手剣を手に突進し、ある者は鎖の付いた棘付き鉄球を振り回して叩き付けた。

だが、駄目だ。

放たれた矢はインプの眼球を正確に射抜いたが、目を抑えて悶え苦しむインプの後ろから投げられた正確無比な投げ槍の一撃に首を貫かれ体内の空気を風船の様に抜き出されて絶命した。

突進の勢いが上乗せされたブロードソードの鋭い突きはインプの心臓を貫いたが、そのインプの体を反対から貫通してきた幾つもの槍に全身を貫かれ、二つの死体が切りもみ状に転がり血を撒き散らして絶命した。

振り回す度にじゃらじゃらと音を鳴らす、重量を感じさせる鉄球の一撃は鈍い音を立ててインプの胸を粉砕したが、その攻撃をかいくぐった何匹かのインプ達に押し倒され、それぞれのインプにまるでこのパーティーの食事の様に"つままれて"絶命した。

アレクシス議長とチョキーはまるで真冬の夜空に裸で放り出されたかのように震えた

貴族の男達の中にはあまりの出来事に失禁する者もいたが、令嬢達が一人残らず気を失った為に余計な恥はかかずに済んだようだ。

……あれだけ居た護衛達の影も、今や絨毯に染み付いた血潮でドス黒く染まり、会場を血臭が覆いつくした、だが無情にも瓦礫の向こうの夜空では、悪魔のマントが餌を待つ大蛇の様に会場の周りの庭園で踊っているばかりだ。

インプ達も何匹かは護衛と共に血の霜に顔をうずめ、残ったインプ達がぎゃあぎゃあと騒ぐのを止めると、その無数に散りばめられたルビーの欠片を一斉に貴族へ向け、小さな、だがとてつもなく大きな一歩を動かした。

チョキーは目の前に広がる貴族達の無残な屍を思い浮かべて目を限界まで引き絞った、だが聞こえてくるのは肉を抉り出す湿った音ではなく、いくつかの音が混ざり合った奇妙な音だった。

982 名前:殺人技術 投稿日:2007/01/30(火) 17:17:34 [ E9458iSQ ]
チョキー・ファイル(31)


チョキーは何も起こらない事に気付き、恐る恐る瞼を開くと、暫し目の前の光景を目に焼き付ける事無く見つめた。

護衛やインプの死体、絨毯、テーブルに、まるで宝石の様に煌く鋭い物が散乱している、聞こえてきた混ざり合った音のうち一つは、大窓のガラスが盛大に割れる音だった。

チョキーのちょうど背中からは優しい風が会場に吹き、美しく透き通っていた窓は縦長の口に歯並びの悪い肉食獣の牙を取り付けた様で、その窓は今は清掃員がその生涯を掛けて磨き続けても到達できない程に透き通っている。

もう一つの音は、何とも恐ろしげな、それでいて温もりを感じさせる音だった、自分の足元よりももっと下の何か脈動を感じさせる空間から、この地上にモグラか何かが這い出てきた様な音だった、インプの体を血の様に赤く光る南京錠付きの網が包んでいた、まるで死せる罪人を束縛する監獄を思わせた。

最後の一つの音は、神聖都市アウグスタの大聖堂を仰ぎ見る時に目に入る、大鐘楼の声の様に透き通った、美しい音色だった、地獄の監獄に閉じ込められたインプ達の四肢を白く細長い糸が縛っている様は、まるで牢屋に据え付けられた鎖の様だった。

そして、身動き一つ取れなくなったインプ達の体が、目にも止まらぬスピードで視界の中を駆け巡る二つの緑色の影によって、一匹また一匹と血を躍らせて倒れる光景がチョキーだけでなく、その場の全ての人間の眼球に映し出された。

──気付けば、パーティー会場を甲高い音色が包み込んでいた、明るく高く鳴り響く、だが懐かしさを感じさせる笛の歌が、無音階の曲目を奏でている。

チョキーはついに大量に居たインプが全て地面に倒れ付すのを見送ると、笛の音が聞こえてくる方向へ何気なく頭を巡らせた、だがチョキーが奏者の姿を見た瞬間にその曲は終局を迎えてしまった。

アレクシス議長が隠れている壇上から、赤頭巾を被った年の浅い少女が足を垂らし、一曲を演奏した笛を膝に乗せて壇上をひょいと降りた。

気が付くと悪魔の炎の様に赤い監獄も、天使の翼の様に白く輝く鎖も跡形も無く消え去り、その場に居合わせる意識のある人々は全員が全員、赤子の様に言葉も喋れなくなってしまった。

一瞬、そこに不可解な静寂が宿ったが、すぐに訪れてきた爆音にチョキーと少女は弾かれた様に振り向き、少女は右手の笛を上空の悪魔に向けて吠えた。

動かぬインプの山陰から矢の様に2つの緑の影が飛び出し、それを見てチョキーは狼狽した。

コボルト族の中でインプに次ぐ力を持つと言われる、ファミリアだ──この女、悪魔を従えているのか。

驚く事に、カルスは気丈にも悪魔とほぼ互角に戦っていた

悪魔の体は所々焼け焦げた痕や白く凍りついた部位が目立ち、カルスは先程の体当たりのダメージか、口の端から赤い物を滴らせ、コートは床の上で無残にも焼け焦げていた。

そしてそこに、大量のインプを謎の現象付きとは言え一瞬で屠って見せた二匹のファミリアがインプと瓦礫を踏み台に飛び上がる、悪魔はそれを見て些か顔に焦りを浮かべ、カルスは好機とばかりに距離を取って、呪文を二つ唱えた。

「アイススタラグマイト!、トルネードシールド!」

その言葉と呼応する様に、会場の床やら壁やら天井、瓦礫までもが白く光り輝き、緩やかな滝の様に落ちる霧を零し始めた、更には風の音と共に悪魔の四肢が急に大の字に開かれ、悪魔は自らの言う事を聞かぬ不憫な体を見て喉を鳴らした。

「……む」

一方、二匹のファミリアは一直線に悪魔に飛び掛かると思われたが、悪魔の意表を突くつもりなのか、ファミリアは会場の無事な壁に飛びつくと、まるで緑の糸を張り巡らすかのように壁を蹴っては天井に立ち、天井を蹴っては床を蹴り、床を蹴っては天井から微かに零れ落ちる石ころを蹴った。

そして、カルスが杖を出した時の様な氷の割れる音が今度は会場全体に響き、幾つもの白い光から、水晶の様に透き通り、かつランスの様に尖った氷の棘が、空中で処刑台に括り付けられた罪人の様になっている悪魔に殺到した、二匹のファミリアもそれと合わさって、悪魔の右側と左側から飛び掛かった。

カルスは疲弊しきった顔に安堵と笑みを浮かべ、少女は笛を握り締めて悪魔を凝視した。

自らに引き寄せられるようにして迫る二つの悪魔の矛と無数の氷の槍を視界に捉えて、悪魔は呟くように言った。

「さてどうする、悪魔よ」

氷の槍と緑の影が一点に集束し、目を覆う程の白煙が全てを包み込んだ。

983 名前:ドギーマン 投稿日:2007/01/31(水) 01:09:12 [ LqS319xY ]
2:力

彼は以前の記憶を完全に失っていた。名前も、家族も、故郷も全て。
そんな彼にグレイは家に留まるように勧めた。
『ただし、勿論ただ居座って貰っても困る。我々の仕事を紹介するから一緒にやるといい。
 君はなかなかいい身体をしているし、その様子ならすぐにでも働けそうだしね』
行く宛のない彼はこの申し出に感謝した。そして、名前もハンクから貰った。
『そうだな。砂漠で見つかったんだからガディウスはどうだ?』
ガディウス大砂漠から名前を取ったのである。この日から、彼はガディウスとなった。
ガディウスがグレイから紹介された仕事とは、傭兵達に混じっての町の警備だった。
傭兵は現在人員不足らしく、本来は経験のない者は採用しないが(ガディウスの傭兵経験の有無は不明だが)、
体格のいいガディウスは特に怪しまれる事無く即採用が決まった。

984 名前:ドギーマン 投稿日:2007/01/31(水) 01:10:06 [ LqS319xY ]
ガディウスは初仕事ということもあり、グレイとハンクの組に同行することになった。
3人でリンケンを出発して西側の砂漠を哨戒する。雲が疎らな空の下、彼らは話しながら歩いた。
「この見回りは、何に対する警戒なんでしょうか?」
ガディウスは2人に聞いた。その質問にグレイが答えた。
「この砂漠にはモンスターが多くてね。主にモンスターが町に近づかないように、だね。
 ここから北東のほうにはスターヒール盗賊団が居るし、アリアンに対する国境警備もある」
ガディウスはきょろきょろと似たような景色の砂漠を見回した。そして、腰に下げた剣をちらっと見た。
「と、言うことはもしモンスターや敵を発見したら戦うのですか?」
不安がるガディウスにグレイは笑った。
「ははは、戦ったことなんかないよ。長いこと先達がモンスターを狩ってくれたおかげで、
 モンスターのほうが町に近寄ろうとはしない。仮に近くに居ても、手を出さずにやり過ごす。
 盗賊たちも最近は大人しいようだし、アリアンとは不可侵条約を結んでいるしね」
それを聞いていたハンクは頭の後ろで腕を組んでつまらなそうに言った。
「モンスターがなんだってんだよ。見つけたら片っ端から斬り殺しちまえばいいのによ。
 毎日毎日、親父と顔を突き合わせて見回りだけなんてやってらんねえよ」
グレイはハンクをじろっと睨んで言った。
「馬鹿が。一度も実戦をしたことのないお前がモンスターと戦えるわけが無いだろうが」
そう言われてハンクは腕をほどくと、グレイに向き直って怒鳴った。
「そんなのやってみなきゃ分かんねえだろうが!」
グレイは厳しい顔つきで喚くハンクを諭すように言った。
「やるまでもない。お前には無理だ」
ガディウスは陰険な2人の様子を見て慌てた。
「あの、落ち着いてください」
2人はガディウスに気づいてバツが悪そうに離れた。
グレイは顔を緩ませてガディウスに言った。
「いや、すまない。いつもの事だから気にしないでくれ」
ハンクは顔を無理矢理に笑みの形にしてガディウスに言った。
「まあ、ガディウスが来てくれて本当に良かったよ」
ガディウスは呆けた顔をハンクに向けた。
「実際退屈な仕事だしな。毎日毎日親父とこうして話しながら歩くしかねえんだわ。
 だけど親父とばっか喋ってるとストレス貯まるしな。新しい話し相手が欲しかったんだよ」
「喋るのは仕事じゃないぞ、ちゃんと見張るんだ」グレイは砂漠に目をやりながら言った。
「そう言いながら親父だって嬉しいんだろ?でなけりゃ仕事に引き込むわけがねえ」ハンクはにやけた。
グレイはククっと笑うとハンクをちらっと見て言った。
「まあな」
ガディウスは笑う2人を見て顔を緩ませた。しかし、俯き加減に言った。
「でも、私は何も覚えてないんです。お二人に話せることは何も」
ハンクは大声で笑うとガディウスの背中をバンと叩いた。
「何言ってんだよ。そっちから聞いてくりゃいいじゃねえか。
 何でも聞いてくれよ。エレナのことでも教えてやるぜ」
背中を強く叩かれてガディウスは少し顔をしかめたが、我慢した。
グレイも2人に目をやって言った。
「その通りだ。君の事なら思い出せたときにでも話してくれ。
 我々のことを話すだけでも、いい暇つぶしになるからね」
ハンクはグレイにいやらしい笑みを向けた。
「おいおい、喋るのは仕事じゃないんじゃなかったのかよ」
グレイはハンクに笑みを返した。
「お前が仕事をすればいいさ」
ハンクは呆れて言った。
「おいおい、なんだよそりゃ」
ガディウスは2人のやり取りを見ていて笑い出した。
2人も互いを見やって笑った。
ガディウスはそれから2人に色んなことを聞いた。
砂漠に住むモンスターたちのこと。
砂漠のあちこちにあるオアシスのこと。
グレイの妻は10年前に病が元で他界したこと。
北の砂漠の下には広大な地下墓地が広がっており、
かつてリンケンとアリアンが衝突していた際に亡くなった英霊たちが眠っていること。
グレイもかつてその戦争に参加していたこと。
現在商人たちによってリンケンとアリアンは徐々に交流を回復しつつあること。
そして、エレナのことも。

985 名前:ドギーマン 投稿日:2007/01/31(水) 01:11:17 [ LqS319xY ]
ガディウスが一家に助けられてから2ヶ月の時が流れた。
最初は他人行儀だった彼らも、次第に心を打ち解け、本当の家族のように暮らし始めた。
その日、ガディウスは非番で家でエレナの家事を手伝っていた。
エレナは家に居ても手伝ってくれるのはガディウスだけだといつもの愚痴をこぼしていた。
それを笑って聞き流しながら、ガディウスは洗い終わった洗濯物が詰まったかごを持ち上げてエレナに聞いた。
「エレナ、今日は中干しでいいんだね?」
エレナは乾いた食器を棚に収めながら答えた。
「ええ、この時期は砂嵐が酷いから、本当に嫌んなっちゃうわ」
ガディウスは苦笑しながら洗濯物を部屋の中に干し始めた。
すると、そこに慌しく戸を叩く音が響いた。
「何かしら?」
エレナが手を止めて戸口のほうを見やった。
「いい、私が出よう」
ガディウスは戸を開けた。そこには同僚の傭兵が立っていた。
「エレナ、大変だ!ガディウスもすぐに来てくれ!」
エレナが奥から出てきた。その顔は不安に染まっていた。
「どうしたの?」
傭兵はまくし立てるように答えた。
「ハンクがモンスターにやられちまって危ないんだ。とにかく急いで!」
ガディウスは目を見開くと、すぐさま愕然と立ちすくむエレナの手を掴んで走った。

傭兵たちの詰め所でハンクは寝台に横たわっていた。
傭兵長は椅子の上で頭を抱えて俯いていた。
ガディウスは頭を抱える傭兵長の禿げ上がった頭を見下ろして聞いた。
「ハンクは!?」
傭兵長は辛そうな顔でガディウスを見上げた。
「無理だ。町までもったのが奇跡みたいなもんだよ。君たちを呼んだのは最後のお別れのためだ」
ガディウスの後ろでエレナは両手で口元を押さえると、その場に崩れるように膝を着いた。
「エレナ!」
ガディウスはエレナの身体を支えた。
エレナは力なく小さな声で何か呟いていた。その目は焦点があっておらず、どこも見ていなかった。
軽い女性の身体は、小さく震えていた。
ガディウスはエレナを近くに立っていた同僚に任せると、ハンクの元に駆け寄った。
グレイズはハンクの側でハンクの手をぎゅっと握り締め、歯を食いしばっていた。
「ハンク・・」
ガディウスは変わり果てた友の姿を見た。
腹を赤い毛布で覆われており、
口からあふれ出る血によって仕方なく顔を力なく横向けにして寝かされている。
まるでよだれのように黒い粘り気のある血を止めどなく垂らしていた。
ただ細く短い微弱な息を吐き続け、その瞳は天の光を見ようとしていた。
ただハンクを見下ろしているガディウスに、グレイズは眼だけを向けて言った。
「君も、何か・・・・言ってやってくれ」
グレイズの目には諦めの涙が溢れていた。
―別れの言葉?そんな、何か出来ないのか・・・・何か・・・。
"誰か、助けてくれ"
ガディウスは無意識のうちに心の中で喋っていた。いや、心の中から外に発信するように。
"兄弟よ、何故力を使わぬ"
ガディウスの中に、彼のものではない声が聞こえた。突然の声に戸惑いながらも彼は返事をした。
"力?"
"救いの光、死にゆく者の魂つなぎ止めん"
声はガディウスの問いに答えるでもなく、謎の言葉をガディウスの中に響かせた。
その時、ガディウスの脳裏に白い光が溢れた。
「救いの光、死にゆく者の魂つなぎ止めん」
突然謎の言葉を発したガディウスをグレイズは涙目で見上げた。
ガディウスの瞳には彼のものではないような白い光があった。
ガディウスは突然ハンクの腹にかけられている布を無造作に掴むと、乱暴に取り払った。
見る者の生気を奪うような赤い光景が広がった。
「何をする!」
グレイズが立ち上がってガディウスを止めようとするが、
ガディウスよりも身体の大きいグレイズの力を持ってしても彼の身体はビクともしなかった。
彼の身体は白い光が薄い膜のように覆っていた。
ガディウスは痛々しく肉をえぐられ内蔵を露出したハンクの腹に手をかざすと、一言呟くように言った。
"リザレクション"
「リザレクション」
ガディウスの身体を覆っていた光は彼の手の平に集まり、そして光は手の平からハンクの腹に放たれた。
ハンクの傷口は眩しく光り輝き、やがて光が消え失せるとハンクの腹は血痕だけを残して、
何事も無かったかのように元の割れた腹筋を取り戻してみせた。
グレイズは目の前の光景に目を見張った。
「ガディウス・・・・君は一体・・・」
ハンクは何事も無かったかのように寝台の上で眠っている。
一番驚いていたのはガディウス本人だった。ただただ、自分の手をじっと見ていた。

986 名前:ドギーマン 投稿日:2007/01/31(水) 01:21:00 [ LqS319xY ]
1000が迫ってきましたね。
前スレもそうだったみたいだけど、このスレも使い切る前に次を立ててくれるのかなあ?

>殺人技術さん
ファイル追い詰められちゃいましたね。
先の読めない展開でとても面白いです。相変わらず表現が素晴らしいです。

987 名前:名無しさん 投稿日:2007/01/31(水) 13:05:20 [ Ju82naOY ]
新スレは立てて欲しいですね。と言っても自分は感想ばかりしか書いてませんが(苦笑)

>>殺人技術さん
大掛かりな戦闘シーン、凄いです。
読むたびに毎回思いますが例えが分かりやすくてとても想像が簡単です。
アクションシーンは想像力がないと理解が難しいものもあると思いますが、殺人技術さんのは苦労せず読めます。
突然テイマが現れましたが・・悪魔はどうなってしまうんでしょうか。
個人的にはカリオが気に入りました(笑)

>>ドギーマンさん
ガディウス、やっぱりカッコイイ(笑)
でも折角エレナたちとの暮らしがほのぼのしてて良い感じなのに、別れる時があるかと思うと。
ところで体格の良い天使って結構珍しい設定ですよね。ビショップはまだ体格が良くても分かりますが・・。

988 名前:ドギーマン 投稿日:2007/01/31(水) 18:58:57 [ LqS319xY ]
3:英雄

その日から、ガディウスは不思議な力に目覚め始めた。
そして傭兵を辞め、その力を町の人々の治癒のために使い始めた。
ガディウスが子供の手の火傷に手の平をかざすと、部屋に眩しい光が溢れ、
光が消えた頃には焼け爛れた皮膚は跡形もなく消えて元の肌を取り戻した。
「ありがとうございます」
そう言って母親が頭を下げた。
「いいんですよ。坊や、これからは気をつけるんだよ」
そう言ってさっきまで泣きじゃくっていた子供の頭を撫でた。
「うん・・」
まだグズって涙をこすりながら子供が答えた。
「では」
そう言って懐に手を入れようとする母親をガディウスは制止した。
「いいんですよ、お代は。いつも食材を分けて貰ってますし」
母親はほっとした表情をして、また頭を下げて家を出て行った。
後ろでエレナが笑顔で立っていた。
ガディウスが力に目覚めてから1ヶ月、彼の力は町の人々にとって欠かせぬものとなっていた。
しかし、彼は決してその力で金を取ろうとはしなかった。
決して自己の欲望のために使ってはならない神聖な力である気がしたから。
ハンクは「もったいねえなぁ」と言っていたが、グレイもエレナも町の人も、そんな彼を慕っていた。
さっきの親子を見送っていると、慌しく誰かが駆け込んできた。
左腕に長い切傷をつけて真っ赤な血を流している。ハンクだった。
「ガディウス!」
ハンクはガディウスの名を呼んだ。
「ハンク、また君か!」
ハンクは瀕死の傷をガディウスに治されて以来、何度も怪我を負って帰ってくるようになった。
「なぁ、痛ぇんだよ。早いとこ治してくれ」
ガディウスは傷に光をあてると、傷をふさいだ。
「ありがとよ」と言ってハンクはすっかり元通りになった腕を撫でた。
「なあ、ハンク」ガディウスはハンクに心配そうな顔をして言った。
しかし、ハンクはガディウスの言葉を無視した。
「聞いてくれよ。スターヒールの盗賊どもを追い払ってやったぜ!」
自慢げに言うハンクをなだめるようにガディウスは言った。
「ハンク聞いてくれ。あんまり無茶をするんじゃない」
しかし、ハンクは辟易したように言い返してきた。
「またそれかよ。大丈夫さガディウスが治してくれるんだから」
ガディウスは怒鳴った。
「ハンク!この前は運よく生きていたが、もし助からなかったらどうするつもりだ?
 私は死んでしまった人間の命まで救う自信はないぞ」
ハンクは睨むガディウスにひるんだ。
「おいおいガディウス、そんな怖い顔するなよ。分かったよ今度は気をつけるからさ」
「ハンク・・」
ガディウスはなおも何か言おうとしたが、
「じゃあ、まだ仕事が残ってるんだ。行ってくる!」
その前にハンクは走り去ってしまった。
「お兄ちゃん・・」
エレナが心配そうな顔をして立っていた。

989 名前:ドギーマン 投稿日:2007/01/31(水) 19:00:05 [ LqS319xY ]
ここ最近ハンクとグレイは家に帰ると、ことあるごとにケンカを始めるようになっていた。
先に家に帰ってきて食卓に腰を落ち着けているハンクに、
帰ってきたグレイはずかずかと近寄ると、胸倉を掴みあげた。
「ハンク、またお前はどこへ行っていた!」
ハンクは睨むグレイの視線から目を逸らすと、
「どこでもいいだろ」
と唾を吐くように言った。
「なんだその態度は!」
殴ろうと振りかぶった腕をガディウスは押さえた。
「落ち着いてください!何があったんですか?」
グレイはガディウスに目をやると、両腕を降ろし、ハンクを離した。
そして、掴まれてしわの寄った襟を伸ばしているハンクを怒りの形相で睨みつけて言った。
「ハンク、お前英霊の墓を荒らしただろう?」
ハンクは黙っていた。
それを聞いてガディウスはそっぽを向くハンクに目をやった。
「本当なのか?ハンク」
ハンクはグレイにも、ガディウスにも目を合わさずに答えた。
「ああ、確かに墓に入ったよ」
それを聞いてグレイは拳をぎゅっと握った。
「お前・・・・」
ハンクは目をグレイに向けると言い放った。
「なんだよ!居たのはただの骸骨やゴーストどもだ。アンデッドどもを殺して何が悪い!」
それを聞いたグレイの右拳はハンクの左頬を弾き飛ばした。
突然のことにガディウスは止められなかった。
ハンクは後ろにたたらを踏むと、壁に背中をたたき付けてそのまま壁際に尻を落とした。
激しい叫びや音を聞きつけてたまたま丁度家に戻ってきたエレナが駆けつけてきた。
「お兄ちゃん、大丈夫!?」
慌てて壁際で倒れている兄に駆け寄った。
「お父さん、ガディウス、どういうことなの?」
エレナは父とガディウスに悲しそうな顔を向けた。
グレイはハンクを見下ろしたままエレナに言った。
「エレナ、お前は下がってなさい」
ハンクは口の中を切ったのか、唇の端から血を流し、頬を赤く腫れ上がらせていた。
エレナは兄の腕をぎゅっと握って父に言い返した。
「いやよ!」
しかし、ハンクはゆっくりと立ち上がってエレナを邪魔者のように押しのけた。
「エレナ、どいてろ」
エレナはショックを受けたように兄の横顔を見ていた。

990 名前:ドギーマン 投稿日:2007/01/31(水) 19:01:04 [ LqS319xY ]
グレイはまだ壁にもたれ掛かって殴られた頬を押さえているハンクの眼を見据えて言った。
「ハンク、お前は分かっていない。過去のアリアンとの争いで死んでいった英霊達の苦しみを。
 彼らはまだ死にたくなかったにも関わらず、争いに狩り出され無念のうちに死んでいった。
 あの墓に居るアンデッドたちはな、皆お前くらいの歳だった。なのに死んだ!
 分かるか?彼らは死んで尚、今もあそこで苦しみ続けているんだ」
ハンクは顎まで垂れてきた血を手で拭い取った。
「うるせぇ!それが何だって言うんだ。今はただのモンスターと同じじゃねえか!」
グレイは目を見開いて怒鳴った。
「馬鹿者!お前が何度彼らを殺そうと、彼らに本当の死など訪れはしない!
 無駄に苦痛を与えるだけだ。何故それが分からん」
しかし、ハンクは引かない。
「うるせえっつってんだろ!たかが腕試しにごちゃごちゃ文句言うんじゃねえ。
 何が町を救った英雄だ。すっかり腑抜けちまいやがって。俺は違うぞ。親父みたいになんかならねえ。
 モンスターを殺してこその傭兵だろうが。なのに傭兵がモンスターを見つけても無視してんだぜ?笑わせらぁ。
 どうせ戦争で生き残ったのも、逃げ回ってただけなんだろ!」
「お前・・・」
グレイは眉を吊り上げ、歯を食いしばった。腕は血管が浮き、握り拳はぶるぶると震えた。
「もうやめて!」
エレナは叫んだ。その目には涙が滲んでいた。
グレイは今にも泣き出しそうなエレナに目をやると、
「頭を冷やしてくる」と言い残して家を出て行った。
「チッ」
ハンクは舌打ちして、ゆっくりと歩み寄ってくるガディウスを見上げた。
「はは、すまねえな。またケンカしちまったぜ。
 なあガディウス、口ん中切っちまった。治してくれよ」
そう言ってヘラヘラと笑うハンクの右頬を、ガディウスは殴った。エレナはまた悲鳴をあげた。
さすがに左手だし、グレイほどの力はない。
しかし、今のハンクには十分に効いたようだった。
「ハンク、君は私が傷を治せば。また無謀な戦いをしに行くんだろう。
 いいか、君が傷つくたびに誰かが傷ついているんだ。君の傷は治せるが、その人の心の傷までは治せない」
落ち着いた表情で見下ろすガディウスをハンクは下から睨んだ。
「うるせぇ、たかが居候のくせに偉そうなことぬかすんじゃねえ」
その言葉にエレナは叫んだ。
「お兄ちゃん!」
ガディウスは踵を返すと、
「ハンク、私はもう君がどんな怪我をしても絶対に治さない」
そう言い残してガディウスは家を出て行った。
壁に中腰にもたれ掛かっていたハンクは、力なくどすんと腰を床に落とすと、
首をがっくりと落として小さく呟いた。
「クソッ」

991 名前:ドギーマン 投稿日:2007/01/31(水) 19:02:07 [ LqS319xY ]
ガディウスは家を出ると、外で星空を見上げて一人立っているグレイに走り寄った。
「グレイさん」
ガディウスに呼ばれてグレイは苦笑した。
「すまないな。また見苦しいところを見せてしまって」
「いいえ」
ガディウスはかぶりを振った。
「あれはな、私に似てしまったせいか、若い頃の私にそっくりなんだ」
グレイはどことも無く、夜の風に吹き流される砂を眺めながら言った。
「前にも君に話したと思うが、私はアリアンとの戦争に参加していた」
ガディウスは黙って聞いていた。
「今のあいつと同じでな、かなり無謀な戦いばかりしていたんだ」
グレイは一息つくと、続けた。
「そして、そんな私のために、私の身代わりになって多くの仲間達が犠牲になってしまった」
グレイの眼は過去を見つめ、その表情は後悔に歪んでいた。
「彼らは皆若かった。今も墓で苦しんでいる英霊達が・・・・彼らだ。私が彼らをあんな姿に変えてしまった」
グレイは手で顔を抑えると、苦痛に耐えるように頭をぎゅっと握った。
「結局私は生き残った。そして英雄と呼ばれた。しかし・・・・」
「しかし、生き残っただけだ。私が生き残るために多くの仲間が死んでいった。
 仲間が死ぬたびに、私の魂に彼らの思いがすがりついて、離れない。
 リンケンの仲間達だけではない、アリアンの若者達もだ。
 私は自分が死にたくないがために、彼らを殺し続けた。私は英雄などと呼ばれる資格など無い」
グレイは顔をあげてガディウスを見た。
「ハンクには、私と同じようにはなって欲しくない。なのに、あいつは私と同じ傭兵を選んだ。
 あいつは放っておけば絶対に危険に身を晒すだろう。
 だから、私はあいつがいくら嫌がろうと必ず組んで行動を共にしてきたんだ。
 もし、誰か他の同僚があいつの身代わりになったとしたら、あいつは一生を後悔に費やすことになる。
 ・・・・・・私のように」
ガディウスにはグレイの思いが痛いほど分かった。
そして、この悲しみの原因には自分も絡んでいることを痛感した。
グレイはハッとして言った。
「あ、すまないな。こんな話をされても困るだろう。つい、感情に流されてな」
ガディウスはグレイの哀しい眼をじっと見て言った。
「いいんです。私には家族が居ません。ですから、そうやって心の内を打ち明けて貰えるのは、とても嬉しいです」
「ガディウス君・・・・」
グレイとガディウスは家に帰った。
その日、結局グレイとハンクは言葉を交わすことも、目を合わせることもなかった。

992 名前:ドギーマン 投稿日:2007/01/31(水) 19:03:40 [ LqS319xY ]
次の日、
ハンクはまたグレイの目を振り切って砂漠を1人進んでいた。
昨日と同じくモンスターがほとんど侵入しない見回りルートを逸れて、
モンスターたちの縄張りのなかを歩いていた。
昨日殴られて腫れている頬を撫でながら言った。
「思いきり殴りやがって・・・」
「あーくそ、強くなりてえ」
ハンクはぼやいた。
「何が、英霊だっ」
歩みはだんだんと激しくなり、砂を蹴飛ばして撒き散らすように走り出した。
『馬鹿が。一度も実戦をしたことのないお前がモンスターと戦えるわけが無いだろうが』
「もう実戦はやった。モンスターどもなんか、俺1人の手でぶっ殺してやる」
『やるまでもない。お前には無理だ』
「ふざけんなぁ!」
ハンクは立ち止まると、大声で砂漠に向かって叫んだ。
はぁはぁと深く肩で息をついた。
ハンクは幼少時代を思い出した。
『俺んちの親父はな、この町を救った英雄なんだぜ!』
『知ってる!お父さんから聞いたよ』
『すげぇ〜』
ハンクにとって、英雄だった父は誇りだった。
しかし、
『何言ってんだよ。お前の親父は英雄なんかじゃねえよ』
『なんだと!』
『父さんが言ってたぞ、本当の英雄は勇敢に戦って死んだ英霊達だって。
 お前の親父は生き残ったから英雄になっただけで、本当は逃げ回ってただけなんだ』
『違う!』
『違うもんか。実際お前の親父はモンスターに会っても一度も戦わないらしいぜ』
『嘘だ!』
『ふん、嘘だと思うなら本人に聞いてみろよ』
その子供とは殴り合いになり、ボコボコに痛めつけてやった。
そして、家で親父から説教されていたときのこと。
『何であんな事をしたんだ』
『親父』
『何だ?』
『親父は、英雄なんだよな?あいつらの言うことなんか、嘘なんだよな?』
『・・・・・いいや、私は英雄なんかじゃない。真の英雄はあの墓の英霊たちだ』
その言葉は、それまでハンクが信じてきたものを無残に破壊した。
「うおおおおおおお!!!」
過去の幻を振り切るように、ハンクは砂漠に向かって雄叫びをあげた。
その叫びは広い砂漠にこだますることなく消えた。
「俺は親父みてぇな腑抜けになんかならねえ。傭兵らしくモンスターどもをぶっ殺しまくって、
 町を守って、本当の英雄になってやる!」
ガディウスのおかげでいくらでも実戦経験を積めるようになった。これなら、いつかきっと。
荒く呼吸をし、ハンクは砂漠の遥かを眺めた。
そして、次第に怒りから醒め、冷静さを取り戻した。
落ち着くと、ハンクは左頬に触れた。
『うるせぇ、たかが居候のくせに偉そうなことぬかすんじゃねえ』
「あれは・・・・言い過ぎたな。あとで謝っとくか」
そう呟いたハンクの目の前を、大鎧霊がのしのしと彷徨っていた。
かつてここでの戦争で死んだ者たちの鎧と怨念をよせ集め、それを低級霊が媒介にして実体を持ったものだ。
この辺りでは、上級な部類に入るモンスターである。
胸からトカゲのような低級霊の正体が頭を出している。見るからにそこが弱点だろう。
ハンクは無言で腰の曲刀をスラリと鞘から抜くと、走り出した。
大鎧霊はハンクに気づいたらしく、身体を彼のほうに向き直った。
重量のありそうな鉄塊の巨体は素早い動きなど無理に思われた。が、
「ヴオオオオオオ!!」
大鎧霊は剣とも、鉄塊ともつかぬ巨大な棒を右手で軽々と持ち上げると、
走り寄るハンクに真っ直ぐに振り下ろした。

993 名前:ドギーマン 投稿日:2007/01/31(水) 19:05:38 [ LqS319xY ]
バスッ!と掠れた音を立てて砂の地面を鉄塊が二つに割った。
一直線に大鎧霊の胸に向かっていたハンクは、予想外の速さに驚きながらも、寸での所で避けた。
しかし、地面に刺さった大鎧霊の剣が飛ばした砂がハンクの目に入ってしまった。
「うっ、クソッ」
ハンクは慌てて後ろに下がり、目を擦った。
「オオオォォ」
大鎧霊はひるむハンクに剣を振り上げて追いすがった。
ハンクはうっすらとしか見えぬ視界で、大鎧霊と戦うことを余儀なくされた。
当たれば命は無いであろう鉄の塊が、ぶぉん!と空を斬る。
ハンクはまたもギリギリのところで避けたが、そうそう運は続かない。
鉄の塊をぶんぶんと無造作に振り回す大鎧霊。
ハンクはなんとか反撃の糸口を見つけようとするが、なかなか近づけない。
大鎧霊のぶ厚い装甲に対して、彼の持つ曲刀はあまりにも頼りなげに見えた。
目に入った砂をこすり落とし、なんとか大鎧霊の力任せの攻撃をよけて反撃する。
ガゥンと音を立ててハンクの振るった剣は大鎧霊の脚を捉えたが、擦り傷がついただけで全く効いていない。
鎧の中は空洞らしく、音が鎧の中を反響して響いた。
「ヴヴゥ」
大鎧霊はのそっと足を持ち上げた。そして、全体重ハンクの方に向けて傾けた。
どふっと四股を踏むように鉄の巨体がさっきまでハンクが立っていた場所にめり込んだ。
ハンクは攻撃が効かないと見るや大鎧霊に背中を向けると、逃げ出した。
背後から大鎧霊がダッフダッフと全体重を砂の大地に叩きつけて追いかけてくる。
その動きは緩慢に見えるが、実際は歩幅の長さもあってかなり早い。
「くっ」
砂漠の暑さの中で走るのはかなり体力を消耗する。
ハンクは緊張と疲労に息を切らし、大鎧霊に向き直った。逃げ切れないと悟ったのだ。
目は見えるようになっていたが、すでに疲れで俊敏な動きが取れなくなってきていた。
彼は覚悟を決め、最後の攻撃に賭けることにした。
大鎧霊が剣を振り上げたとき、その瞬間を狙った。
「おらぁ!」
ハンクは右手に握っていた曲刀を鎧の胸に生えている正体に向かって投げた。
剣先は真っ直ぐに目標に向かい、トカゲのような低級霊の胸を貫いた。
「キャアアアアアア!!」
低級霊の魂から直接吐き出す叫びが辺りに高く響いた。そしてガクガクと痙攣するように鎧が震えた。

994 名前:ドギーマン 投稿日:2007/01/31(水) 19:06:35 [ LqS319xY ]
「やったか!?」
しかし大鎧霊は一度動きを止めると、またゆっくりと動きだした。
「くそ、なんとか剣を」
しかし、そのためには大鎧霊の斬撃を避けて懐に入らなければならない。
「ヴォオオオオ」
鎧はくぐもった雄叫びを上げると、ハンクの頭目掛けて剣を振り上げた。
振り上げられた鉄の塊を見上げ、ハンクは動けなかった。恐怖に足がすくんだのだ。
死の恐怖がハンクの身体の時を止めた。
「うおおお!!」
誰かがハンクを左からドンと押した。
ハンクは砂の上に倒れこんだ。突然のことに驚きながらも、ハンクは自分を救った人物を見た。
そこに立っていたのはグレイだった。その右手にはハンクの物と同じ傭兵の曲刀が握られていた。
「何やってんだ親父。逃げろ、殺されちまう」
しかし、グレイはハンクの言葉を無視し、足を踏ん張るように広げて腰を落とすと剣を構えた。
「ォォオオン」
大鎧霊はグレイを見下ろすと、狙いをグレイに変えて剣を振り上げた。
「やめろ、親父!」
ハンクの叫びにグレイは構わず真っ直ぐに大鎧霊に向かって走り出した。
ぶおん!!と鉄塊が風を斬ってグレイズの頭上に振り下ろされた。
しかし、グレイズは右足首を内側にねじり込んで踏み込むと、
そのまま身体を右に回して大鎧霊の攻撃を避けると同時に懐に入り込んだ。
そして、流れるような動きのうちに鎧の胸にあるトカゲの頭を斬り落とした。一瞬のことだった。
「ヘバッ!」
鎧の中から顔を出していた低級霊が霧散し、鎧は崩れ落ちてただの鉄くずとなった。
「親父・・・・」
黙って砂漠に立つ父親の姿にハンクは見とれていた。
その姿はかつて彼が信じた父の姿であり、理想とした男の姿。まさに"英雄"の姿だった。
しかしその父の立ち姿には、本来あるべきものがなかった。
ハンクは恐る恐る自分が突き飛ばされた場所に目をやった。
そこには、自分を救うために父が支払った代償。グレイの左腕が肘から下を砂の上に横たえていた。
「む・・」
グレイは顔をしかめ、剣を砂の上に落とすと、右手で左腕が生えていた場所を押さえた。
血は指の隙間から容赦なく滴り、砂に滲みこんで真っ赤に染め上げた。
「親父ぃ!」
ハンクは父親に走り夜と、すぐに傷口を布で塞いだ。布はすぐに真っ赤に染まった。
「何やってんだ。すぐに町に戻るぞ!」
ハンクは父親の腕を拾いに行った。
しかし、グレイはハンクの背中に静かに言った。
「捨てていけ」
「馬鹿言うんじゃねえ。早く戻るぞ!ガディウスなら元通りにくっ付けられるはずだ」
ハンクはそう言い返して砂の上に不自然に落ちている腕を拾い上げ、
さっきまでの疲労も忘れてグレイを引っ張っていった。

995 名前:ドギーマン 投稿日:2007/01/31(水) 19:08:09 [ LqS319xY ]
やがて町に到着すると、二人は家に向かった。
「ガディウス!」そう大声で言うとハンクは乱暴に玄関の扉を開けた。
椅子に座って男性を診ていたガディウスは、顔を上げてハンクに言った。
「ハンク、私はもう君の傷を・・」
「違う!親父だ。早く腕をくっつけてくれ!」
そう言って布に包まれたグレイの左腕を差し出した。エレナが悲鳴を上げた。
グレイは辛そうな顔をしながらも、黙って家に入って囲炉裏の側に座りこんで、
昼食を焼いていた火の中に油を撒いて火かき棒を突っ込んだ。
ガディウスはハンクの差し出した左腕を握ると、グレイの側に寄って左肘を覆う布を取り払った。
「グレイさん、左腕を上げてください。治します」
グレイは火にあぶられる火かき棒を見つめながら言った。
「いらん。治療は自分でやる」
ガディウスにはグレイが何をしようとしているのか、察した。
「しかし・・・」
燃え上がる火に撫でまわせれ、鉄棒は次第に熱を帯びていった。
「ガディウス君、いくら君でも止めることは許さん」
そう言ってグレイは鋭い眼差しをガディウスに向けた。
普段温厚な男は、このときは戦士の眼をしていた。
ガディウスは手を止め、目の前で起こるであろう事を見守ることにした。
「おいガディウス、早く治せよ。何ボサっとしてんだよ」
ハンクの言葉をガディウスは聞き流した。
グレイは熱せられた火かき棒を火の中から引き抜くと、口に折りたたんだ布を咥え、
躊躇することなく火かき棒の先を傷口に押し当てた。
しゅううううぅぅぅぅぅぅぅ・・・肉の焼ける音と共に鼻をつく血の焼ける臭いが漂った。
「ぐううううううううううう」
激痛にグレイズは歯を食いしばって唸った。
「お父さん!?」エレナが悲鳴のように父を呼んだ。
「親父!何やってんだ馬鹿、やめろ!」
止めようとするハンクの顔に父は右肘をぶつけた。
「ぅが・・」ハンクは鼻を押さえてうずくまった。
「やめてくだ・・」グレイの表情を見て、やはり止めるべきかと思い始めたガディウスの目を、
グレイは無言で睨んだ。もう、止められない。グレイは再び傷を焼き始めた。
愕然と立ちすくむエレナの前で、父は何度も唸り声をあげて傷口を焼いた。
やがて、傷を焼いて塞ぎ終えると、父は顔を上げた。その顔には苦痛からかべったりと汗が滲んでいる。
「エレナ・・・・いや、ガディウス君。酒を持ってきてくれ」
動けないで居るエレナを気遣ってか、グレイはガディウスに頼んだ。
ガディウスは全てを了解したように静かに立ち上がると、酒と包帯を持って戻ってきた。
グレイは再び布を咥えると、ふっふと息を吐き、焼いた傷口に一気に酒をかけた。
「ふぐううううううう」再び顔が激痛に歪んだ。
黙ってグレイの腕に包帯を巻いているガディウスを見て、ハンクは鼻血を垂らしながら言った。
「な、なにやってんだよ親父。それにガディウスまで・・・・。
 さっさとあの光でぱっと治しちまえよ。訳わかんねえよ」
エレナは手で口を押さえながら立っているばかりだった。
「エレナ、すまないがここを押さえてくれ」
ガディウスは冷静にエレナに頼んだ。
エレナはびくっと一度身体を震わせると、慌てて駆け寄ってきて包帯を巻くのを手伝い始めた。

996 名前:ドギーマン 投稿日:2007/01/31(水) 19:09:55 [ LqS319xY ]
グレイはハンクに目を向けた。その目はさっきまでの戦士の眼から、いつもの父の眼に戻っていた。
息を荒くして、痛みを堪えながらもグレイはハンクに言った。
「ハンク、よく聞け」
ハンクは黙って呆けたように父親の顔を見ていた。
「お前はガディウス君に甘えて今まで傷を消して戦ってきたな。その結果、お前は強くなったか?」
ハンクは眉をよせ、顔を震わせ、そして少し笑っていた。
「は・・・は、何言ってんだよ。強くなったに決まってんだろ。
 戦ったことの無かった俺でも、経験さえ積めばいくらでも強くなって・・・・」
「馬鹿が!」
父親の一喝にハンクは閉口した。
「戦いに強くなるには体力や経験も勿論必要だろう。だが、その前に恐怖に打ち克つことが重要なのだ。
 傷つくことの恐怖、傷つけることの恐怖、痛みの恐怖、そして、死の恐怖。
 今までお前は傷つく事を恐れて今ほど積極的に戦おうとすることはなかった。
 しかし、今のお前はどうだ?傷を消して貰えることに甘えて、その恐怖を無視してきた」
エレナも、ガディウスも、たまたま居合わせた男まで黙ってグレイズを見ていた。
「お前は今も傷つくことを恐れる卑怯者だ。そんなことで強くなれるわけが無い。
 傷痕はな、戦士の戒めなのだ。何度も傷つきながら恐怖に打ち克つ術を学ぶのだ。
 たとえその結果命を落とすことになろうとも、恐怖に克った者だけが真の戦士だ」
ハンクは下を向いて聞いていた。
父は本当に英雄だった。町のために最後まで戦って生き残った。
「なら・・・・・なんで、今も戦ってくれないんだよ」
ハンクは顔を上げた。目に涙を滲ませて、叫んだ。
「強いんだろ?なんでだよ。何で戦い続けてくれなかったんだよ!
 親父が俺の誇りで居てさえくれれば、俺は・・・・・俺は!」
グレイはハンクに静かにゆっくりと、言い聞かせるように言った。
「ハンク、戦うこととただ命を奪うことは同じことではない。
 もう戦争は終わったんだ。平和な世界に意味の無い殺し合いは必要ない。苦しむだけだ」
ハンクはがっくりとうな垂れると、ぶつぶつと呟いていた。
「俺は・・・・・」
ガディウスはハンクの肩の傷の擦り傷を見た。
大鎧霊との戦いのときにいつの間にかつけられたらしい。
「ハンク、治すか?」
「いや、いい・・」
ハンクは小さく答えた。

997 名前:ドギーマン 投稿日:2007/01/31(水) 19:12:13 [ LqS319xY ]
思ったより・・・・長く、なっちゃった・・・・orz
長すぎます出まくって細かく切ったらこれだもんなあ。
次スレ、立たないかな。

998 名前:名無しさん 投稿日:2007/02/01(木) 00:13:55 [ 1W/DC2sE ]
新スレ
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/game/19634/1170256068/

999 名前:ドギーマン 投稿日:2007/02/01(木) 09:48:15 [ LqS319xY ]
まえがき
中途半端にレスが残ってしまったので、
最後に1000文字SSを書いてみました。
次に書き込めなくて迷っていた人たち、ごめんなさい。

次スレも素晴らしい作品に期待しています。

↓  ↓  ↓
1000文字SS
『病気のコボルト』

1000 名前:ドギーマン 投稿日:2007/02/01(木) 09:49:03 [ LqS319xY ]
僕達が出会ったのは古都西の花畑だったね。
僕は仲間と共にあの危険地帯に立ってた。
病気のせいで洞窟にも戻れなくなった僕達は、冒険者に殺されるためにあの場所で立ってた。
あれ以上病気を兄弟たちにうつしてしまわないために。
そして最後にあの花畑を眺めながらその時を待ってたんだ。
本当は死にたくなんかなかった。
みんなのためだと自分に言い聞かせていても本当は逃げ出したかった。
でも一緒に死を待っている仲間達に何だか申し訳なくて。
僕はなんとか覚悟を決めたかった。
そこに君が来た。
君は笛を振り上げて僕に殴りかかってきた。
僕は怖くて、何がなんだか分かんなくて、病気でふらふらの身体で槍を君に向けて振り回した。
あの時の君の顔は今でも覚えてる。
君も怖かったんだね。
結局病気でろくに力の出ない僕は、ただの女の子でしかない君にも歯が立たなかった。
でもトドメを待つ僕を君は殺さなかった。
それどころか、仲間にすら見捨てられた僕なんかを君は必要としてくれた。
やがてケルビーやウィンディといった本当に頼りになる召喚獣たちが仲間に加わって、僕達は色んな場所を巡った。
僕はみんなについて行くので精一杯だった。
力も体力も特技もない。
そんな僕なのに君は僕を必要だと言ってくれた。
だから僕は君のために戦おうと誓った。
あんなに泣き虫な君が何であんなにも危険な冒険をしているのかは今でも分からない。
きっと、君には何かやらなきゃいけない事があったんだね。
でも僕は所詮病気のコボルト、君達の冒険について行くにはすぐに限界がきた。
街を歩く他のロマ達がとても強そうなペットを連れて居るのに、君は僕なんかを連れていた。
嬉しくもあったけど、とても不安だった。
僕なんかを連れていたら、いつかきっと君は危険な目に遭う。
実際、今までもそういった場面があった。
だから僕は、いつ君との別れがきてもいいように、あの時の一瞬一瞬を心に刻んだ。
思い出はいつか色あせてしまうものだから、少しでも鮮明に残して置きたかった。
そしてその時はきた。
バインダーと対峙したとき、僕は分かったよ。
彼が僕の代わりなんだって。
君と別れてから、僕は今もあの花畑に立ってる。
やっぱり病気の僕なんかがいつまでもうろついていちゃいけないから。
あの時もし君が居なかったら、こんなにスッキリした気持ちでは居られなかったと思う。
僕は君のおかげで宝物が出来たよ。
君との思い出と、君にとってだけの僕の名前。
ありがとう。

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