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SSスレッド

1板</b><font color=#FF0000>(ItaYaZ4k)</font><b>:2002/07/11(木) 00:39
支援目的以外のSSを発表する場です

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このスレッドで発表されたSSについての感想も、ここに書いて頂いて結構です

282(編集人):2002/11/01(金) 15:22
『(無題)』弓塚さつき支援
2002年8月17日(土)3時5分。
ROUND7.【萌る躰】198レス目「全系統異常アリ」様によって投下。
 弓塚さつき           (月姫)
 アルクェイド・ブリュンスタッド (月姫)

283(編集人):2002/11/01(金) 15:23
月が出ていた。
中天に懸かるそれは、暖かくもなく、かと言って非情でもなく。
静かに私の影を縫いつける。
数年ぶりに立ち寄った、懐かしい街。
その小高い場所に在るそれは、以前と変わらず鬱蒼と茂った木々に囲まれている。
蒼い光に照らされながら。
厳めしい構えの門に立って、中を窺ってみる。
用事があるなら、堂々と中に入って行けば良いけれど、生憎と用事もアポイントも無い。
たまたま近く迄来たので足を伸ばしてみただけに過ぎない。
もしかしたら逢えるかも知れないとか、そう言う期待は勿論あった。
けれど、現実がそうそう都合良く行かないことも知っている。
小さな吐息を一つ漏らして、踵を返す。
「あれ、もしかして先輩?」
前言撤回、現実なんていい加減なもので、結構なるようになるものだ。
振り返った先には以前と変わらない姿。
いや、以前に比べると少し精悍さを増した彼が、手に16、7本の白い百合の花を持って立っていた。
「ごきげんよう、遠野君。元気そうですね」
「うん、シエル先輩も」
逢ったら言いたい事が沢山あった筈なのに、何を言って良いのか判らない。
どうやら、遠野君もそれは同じらしく何度か口を開きかけては、言葉に出来ずにまた閉じる。

284(編集人):2002/11/01(金) 15:24
そうやって、二人とも暫くの間、馬鹿みたいに見つめ合う。
「入りませんか、シエル先輩。
 その・・・時間があればですけれど」
「ありがとう。では、お言葉に甘えさせて貰いますね」
門から玄関に向かう迄の間、当たり障りのない会話を通して互いの近況を伝え合う。
「―――じゃぁ、今日は仕事の途中で?」
”もしかして”そんな僅かな憂いを滲ませた顔に向かって、安心させるように答えを返す。
「ええ、まぁ。でも、途中とは言っても後は帰って報告を済ませればお終いです。
 それに安心してください。事件があったのはこの近所じゃありません。ずっと遠くです」
「そっか。先輩には悪いけど、チョット安心したかな」
扉に手をかけて、遠野君がはにかんだ笑いを浮かべてみせる。
「今日は、泊まって行けるんでしょ?
 先に中に入って休んでいてください。琥珀さんにお茶をお願いしておきますから」
「遠野君は、入らないんですか?」
「ええ、チョット用事を先に済ませてきますから」
さっきから気になっていた、彼が手にしている百合の花束に視線を落としながら聞いてみる。
「あの、差し支えなければ一緒に行っては行けませんか?」
「え?」
チョットだけ驚いて、少し考え込んだ後で頷く。
「じゃぁ、こっちです」
そう言って遠野君はお屋敷の傍らに鬱蒼と生えている林の中に私をいざなった。

285(編集人):2002/11/01(金) 15:25
「ここは?」
彼が連れてきたそこは、生い茂る木々の中にぽっかりと隙間が空いていて、
そこから蒼い光がスポットライトの様に差し込んでいる場所だった。
「うん。秋葉にも内緒の場所。ここを知っているのは、先輩で二人目かな」
そう言って、かがみ込むと手にした百合を地面にそっと置いて瞳を閉じる。
百合の花が置かれ場所には、あまり大きくない石版が一枚。
白い百合は手向けの花だ。
「あ―――」
なんと言うべきか、私が言葉を選んで口を閉ざすのを見て、安心させる様に微笑んでみせる。
「琥珀さんにお願いしてね、秋葉に内緒でこっそり作ってもらったんです。
 弓塚さつきの事を忘れない様に、って。今日は、弓塚の命日なんです。
 花ってよく判らないから、女の子に送る用にって選んでもらって・・・」
そういって、彼は足元の石版に視線を移す。
「勿論、ここには遺体も遺骨もありません。この石版だけです。
 それでどうこうって言うつもりなんて無いです。ただ、他の誰が忘れても俺は覚えていようって。
 覚えて居なきゃいけないから。それで、無理言って作って貰ったんです。」
そう言って視線をまた私の方に戻すと、申し訳なさそうな表情を浮かべる。
「それで・・・申し訳ないんですけれど、彼女に祈りの言葉を先輩から贈って貰えないかなって。
 いきなり不躾なお願いなんですけれど。
 あ、勿論、単なる感傷だって判ってはいるんですけれど―――」
「良いんじゃないですか、それで。何をするでもなく、ただ覚えている」
なんだか後にいろいろ続きそうな言葉を遮ると、石版の前にかがみ込む。
少し遅れて、遠野君も私の隣に同じ様にかがみ込む。
石版に刻まれた祈りの言葉を、二人で静かに詠い上げる。

286(編集人):2002/11/01(金) 15:27
我ら 愛しきものを送らん
  汝が国の平穏の廟(みたまや)に
  汝がやさしき腕(かいな)の夢に
  我ら 大ならずされど小ならず
  遠く去り また生まれる
  ゆえに呼べ 遙かなるものなりと

  地をさまよいつつ
  我 汝を求めしも答えなく
  憂し世に影のみを見ん

  されど 我 恐るるを知らじ
  沈黙の言葉を知り
  見えざるものを見るが故に
  我ら汝なり 汝は我らなり
  遙かなるもの いま ここに送らん


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