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SSスレッド

1板</b><font color=#FF0000>(ItaYaZ4k)</font><b>:2002/07/11(木) 00:39
支援目的以外のSSを発表する場です

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このスレッドで発表されたSSについての感想も、ここに書いて頂いて結構です

106(編集人):2002/11/01(金) 03:52
『醒月/明星』山瀬舞子・支援
2002年7月9日(火)20時56分。
ROUND3.360レス目「大銛」様によって投下。
 魔術師(レンのマスター) (月姫)
 生徒会長の槙先輩     (月姫)
 山瀬舞子         (月姫)
 七夜黄理         (月姫)

107(編集人):2002/11/01(金) 03:53
■醒月/明星

   /1

 気が付くと、ボクは闇の中に佇んでいた。

 空の色さえ定かではない昏い世界。
 草や苔の匂いが鼻をつく。かすかにだけれど、高い所で木々の枝がざわめいているのが聞こえる。
 時刻は――もう夜半を過ぎているのだろうか?
 風もある。ただ、寒いとは感じない。

 ここは、林の中らしい。それもそこらの雑木林じゃないのだろう。
 音が遠くに感じられる。この静けさは――人里離れた大きな山の中としか思えない。

 ボクは何故、こんな所に居るんだろう?
 ボクは、確か――

108(編集人):2002/11/01(金) 03:55
 /−

 身体が 軋む。
 意識が 縮む。
 理性が 削がれる。

 それでも―――

「いや、だから! 私は志貴のためを思って……」
「その結果がこれですか? 秋葉さんに貴女がどんな説明をするか楽しみですね」
「ま、まぁ、アルクェイドも俺の事を思って……」

 そんな苦痛以上に辛く、苦く、悲しかった、目の前の光景/手の届かない世界。

 この身/混沌を抱える者にしか解らない、強烈な飢え。
 生きる場所を失った者にしか判らない、絶望/羨望。
 失わなってみなければ分からない/かった、幸福。

 その全てを振り切って、決して望まない望みをボクは抱いた。
 あの時ボクは、彼に襲い掛かりながら確かに、こう叫んでいた。

 『早く殺して』

――――と。

109(編集人):2002/11/01(金) 03:56
 〜/1

「くっ――――――」
 思わず、胸を抑える。だけどその腕もコートの中に ぞぶり と沈んでしまう。
 それでもう、全部思い出せた。
 ボクはあの時に、死んだんだって。

 あの時ボクは、確かに殺されることを望んでいた。
 人の命を奪ってしまった自分に恐怖し、人の命でしか留まれない自分から逃れたかった。
 彼にナイフで切られ、意識を失う直前のボクは、確かに安堵を覚えていた筈だ。

 でも――それはボクの、本当の望みじゃなかったような気がする。
 もっと大事な何かを、守りたかったような気がする。
 生きていたかった。ちゃんと、違う選択をしたかった。
 これが――未練というものなんだろうか。
 何故、ボクはこんなに辛い思いをしなくちゃいけないんだろう?
 死んでもまだ苦しまなきゃいけないなんて不公平だ。

 でもそれは言っちゃいけない。
 ボクが殺めてしまった人たちは、もっともっと辛かっただろう。
 あの人たちにだって、家族が居たに違いない。幸せな人生があったに違いない。
 もっともっと悲しかったに違いない。

 泣きたい。
 せめて誰も居ないこの世界で、泣き喚いて救いを求めたい。
 せめて泣いて謝って、ボクが殺してしまった人たちに赦しを乞いたい。
 でも泣けない。ボクは、もう、人間じゃないから。

 結局、今もボクが抱く望みはあの時と変わっていない。
 早く――早く、楽になりたいから。
 それでも――だからせめて――ボクがまだ、苦しまなきゃならない理由だけでも、知りたかった。

110(編集人):2002/11/01(金) 03:57
/2

 不意に、ちりん、という音を聴いた。かすかに小さな鈴のような音。

 そして、気配。近くに人がいる。
 誰だろうと思うよりもまず、危ない、と思った。
 今ここで近付いてしまえば、この人は間違いなく、胸の獣たちの食餌にされてしまう。
「逃げ――――――!」
 言葉が紡がれるよりも先に、衝動がきた。

 狼。胸より三匹。

 その三匹を、その 片目の男の人 は片手で無造作に握り潰した。
 獣たちがボクの胸から抜け出すよりも早く肉薄し、三匹ひとまとめに潰し、投げた。
 ボクと一緒に。

「がッ――――あ――――――」
 身体の胸から下腹部までを潰された形で、そのまま大木に叩きつけられる。
 上と下が繋がっているのが不思議なくらいだったけど、すぐに胸の中の闇の渦が染み出して、元の輪郭に戻っていった。
 それでもまだ胸は痛い。今の衝撃で、幾つかの獣は死んでしまっただろう。
 身体に残る痛みをこらえつつ、何とか立ち上がろうとする。
 そこに更に、片目の人がゆらりと迫ってくる。

 それでようやく、ボクは、まだボクがここに存在している訳を理解した。
 ボクはまだ、殺され足りないのだと――また殺されなければならないのだと――


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