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SSスレッド

1板</b><font color=#FF0000>(ItaYaZ4k)</font><b>:2002/07/11(木) 00:39
支援目的以外のSSを発表する場です

 ・1つのレスの投稿文字数制限は
   IEで2000文字以内
   かちゅ〜しゃで1500文字以内(どちらも参考値です)

   以下のサイトで文字数をチェックできます
   ttp://www5.tok2.com/home/cau85300/tool/count_check.html

 ・エロSSについては各自の判断でお願いします

このスレッドで発表されたSSについての感想も、ここに書いて頂いて結構です

2奇譚:2002/07/11(木) 16:42
『TYPE−MOON最萌えトーナメント 楽屋裏』6月28日編
高田陽一 (月姫)
クールトー(月姫)
猫又秋葉 (月姫)
三澤羽居 (月姫)

(1)
 ここは、TYPE−MOON最萌えトーナメントの楽屋裏。
試合を戦い抜く者達が表での華々しい活躍のために気合いを入れたり、
他のキャラクターにちょっと牽制を掛けてみたりする裏の社交場である。
今日、この場にやってきたのは5人。
高田陽一、クールトーと通訳係の琥珀、猫又秋葉、三澤羽居である。
 楽屋裏ではあるが、アールヌーヴォー調のテーブルに淡い色合いのティーカップ、
湯気を立てる紅茶にクッキーまでしっかりと用意されている。
テーブルの下にクールトーの為、『かみかみ君』(お犬さま用ガム)まで
用意されているのはご愛敬である。

「いよいよ試合ね…」
「わー、つぶやく秋葉ちゃんかわいー」
だきっ!
「あ、こら羽居、ひげを引っ張るんじゃない!」
「えへへー」
「(もぐもぐ)うーん、試合といっても僕ら見ているだけなんだよねー(もぐもぐ)」
オン、オン!
「えーと…クールトー君が『おれさまみんなまるかじり』と言っています。
 んー、クールトー君、大胆ですねー」
「へぇ…クールトー、いい度胸ね…」
「秋葉ちゃん、猫又変化なのだー!」
「(もぐもぐ)あー、試合が始まったよー(もぐもぐ)」

3奇譚:2002/07/11(木) 16:43
(2)
「最初は…まあこんなものね…」
「わー、どんどん票が入ってくー。あっ、私に入った。ありがとー」
「(もぐもぐ)のんびりペースだねー(もぐもぐ)」
「あ、ほらほらクールトー君、支援が来ましたよ!」
オンッ!
「…クールトー、これは…日常なのかしら?」
オンッ!(誇らしげに胸を反らす)
「ふむふむ、クールトー君が『すごいだろう!』と言っています」
「(もぐもぐ)クールトーは大人物だねー(もぐもぐ)」
「あっ、私の支援も投下されたー。あー!秋葉ちゃんといっしょでネコー!」
だききっ!
「わっ…、こら羽居!紅茶がこぼれるからやめるにゃー!」
「ふにゅ〜、ごろごろ…」
「(もぐもぐ)うんうん、平和だねー(もぐもぐ)」

「あっ、また支援画像ですよ、秋葉さま!」
「…こうして、たくさん支援を送られるとちょっと…ごにょごにょ《恥ずかしい…》」
「秋葉ちゃん、とってもかわいいよー」
「…羽居には勝てないわね…えーと次は、なっ、相撲!?」
「私とだねー」
「あらあら、と思ったら終わりましたねー。どっちが勝つんでしょう?」
オン!
「クールトー君?あら、秋葉さまの支援ですねー」
「(もぐもぐ)支援がたくさんで…激戦だねー(もぐもぐ)」
「……。……。…!!さ、30分の1ー!?」
「わーい、じーく秋葉ちゃーん!」
「秋葉さま、このお薬が効果的ですが…」
テーブルにちょこんと袋が置かれた。袋に書いてあるのは3文字。
               豊胸剤
「うにゃー!うにゃーー!」
ガタタッ、バキッ…
「(もぐもぐ)短い平和だったねぇ…(もぐもぐ)」
オンッオンッ!
「はいはい、クールトー君支援ですねー。
 ふんふん、『冒険には危険が付き物だ』だそうですー」
「クールトーちゃん、面白いねー」
オンッ(えっへん)。

4奇譚:2002/07/11(木) 16:43
(3)
「ねこアルクさんの心情が語られてますねー」
「同族として何か一言…秋葉さま?」
「知りませんっ!それに同族じゃありませんっ!」

「秋葉さまと三澤さん、着々と票が伸びてますねー」
「えへへー、みんなありがとねー」
「なんのっ!まだまだ負けないにゃー!」
「秋葉さま…だんだん違和感が無くなってきましたね…」

「(もぐもぐ)とうとう僕に来たね(もぐもぐ)」
グルルル…
「クールトー君が『票が少ないんじゃないか?』と言っていますー」
「(もぐもぐ)そうだねー。巻き返せるかなー(もぐもぐ)」

「あと1時間を切ったわね…」
「そうだねー。あ、秋葉ちゃんの支援画像だよー」
「……これは何の支援なのかしら?」
「まあまあ、いいじゃないですか秋葉さま。あ、また秋葉さまに票が入りましたよ」
「(もぐもぐ)とうとう、試合が終わるねー(もぐもぐ)」
クゥーン…
「クールトー君、丸かじりできませんでしたね…」
クゥーン…

5奇譚:2002/07/11(木) 16:44
(4)
そして、試合終了。
「ま、負けたにゃー…」
がっくりとテーブルに突っ伏す秋葉。そこに羽ピンがそっと手をやる。
「秋葉ちゃん…」
「羽居…」
「…秋葉ちゃん、だいぶ猫又らしくなってきたよー」
「うにゃー!そこか、そこなのかー!うにゃーー!」
ガタタッ、ガシャーン…
「(もぐもぐ)さて、返って寝ようかな…(もぐもぐ)」
オンッ!
「クールトー君が『これから活躍しよう!』だそうですー」

 こうして、一日の試合が終了した。
この後、楽屋裏は素早く片づけられ、次の試合の楽屋裏として綺麗に整えられる。
しかし、この楽屋裏、日を追うごとに修復が困難になっているという。
楽屋裏が完全崩壊するのが先か、それとも全試合が終了するのが先か、
それはまた他の話である。
(おわり)

6奇譚:2002/07/11(木) 16:45
試合の様子をSSで表現、という事でしたがこういった感じでよろしいでしょうか?
本当は記念すべき第一回戦から、書こうと思いましたが
『空の境界』関係がよくわからないのでこうなってしまいました…。

7amber:2002/07/11(木) 17:26
奇譚さん乙彼様〜
うわー、こんな面白いの書かれた日にゃ自分必要ないですねー。
勿論ユーモアのセンスがさっぱりな自分の所為なんですがw

ネタとしてはあとは試合後、試合前のやりとりとかもできそうですね。
少し頑張ってみようかな。

8表の人:2002/07/13(土) 18:27
>6
言ってみるもんだなあヽ(´ー`)ノ
面白いので続編希望〜。

二回戦からはタイマン��負なので、
「なにかでリアルに戦ってる二人」のSSというのもできそうですね。
黒桐くんを殺戮する紅秋葉とか。

9amber:2002/07/13(土) 20:20
ナイスな考えですw
ただ試合中にそれをやると、うまく締めない限り中傷になってしまいますね。
うーん、難しい…

10表の人:2002/07/13(土) 23:17
試合後にやれば問題なし。
というか、実際の試合結果を反映させたほうが面白くなると思われ。
��負形式も試合ごとに違ってたりしてね……
ネロカオスvsひすこはのお母さん料理対決!とか。無茶。

11奇譚:2002/07/14(日) 19:40
えー、いろいろ考えてみましたが…
>実況SSの続編
…できる限り、書きます。というか今、書いています。
>二回戦の実況SS
同上。
>教授とお母さんの料理対決。
…無理です。オフィシャル公認でお母さんのキャラクターが
世に出ているそうですが、自分はそれを知りません。
SSとオフィシャルでキャラクターにずれが生じるのは
いささか無粋と思います。というわけで勘弁してください(;つД`)

12奇譚:2002/07/14(日) 19:50
>料理対決
…いや、何とかなるんじゃないだろうか?
キャラクターさえつかめるならば何とかなりそうです。
ただ、いつキャラクターがつかめるかは解らないので、
気を長くしてお待ちいただけないでしょうか。

13表の人:2002/07/14(日) 23:54
きをながーくして待ってますー。

…料理対決じゃなくてもいいですよー
将棋対決とかバンジージャンプ対決とか早口言葉対決とか
(だんだんわけがわからなくなってきた)

14奇譚:2002/07/15(月) 02:28
『TYPE−MOON最萌えトーナメント 楽屋裏』7月7日編
瀬尾晶 (月姫)
エレイシア (月姫)
月姫蒼香 (月姫)
幻視同盟のあの人(月姫)

(1)
キンコーン、キンコーン、キンコーン

楽屋裏にチャイムの音が響き渡る。
聞き慣れた音が余韻を残して消えると、
これまた聞き慣れた声が試合開始30分前を告げた。
今日の楽屋裏は和風に仕立て上げられている。
フローリングの床の上にはござが置かれ、
その上では足の短いちゃぶ台がどっしりとしたたたずまいを見せている。
ちゃぶ台の上には大量の氷で冷やされたそうめんが置かれ、
4人分の取り皿が用意してある。
ちゃぶ台に付いているのは4人。
瀬尾晶、エレイシア、月姫蒼香、幻視同盟のあの人である。
ちなみに今日の雑用係はせむし男君である。

「もうすぐ始まりますね、蒼香さん」
「…そうだな。浅上同士で試合になってしまうとはな」
「まあいいじゃないか、試合は時の運だから。
 それより僕の本名が出てないのが気になるな…」
「ほらほら、皆さん、そうめんがぬるくなってしまいますよ」
「あっ、そうですね、それじゃいただきまーす」
ずるずるずる…
「という間にも、エレイシアさんに支援画像が来ましたねー」
「ありがとうございますー。
 はい、フランスパンはご近所の皆さんにも人気があるんですよ」
「最初から飛ばしてるね、お前さん」
「…さて、試合開始の時間だ。僕はゆっくり見物といくかな…」

15奇譚:2002/07/15(月) 02:29
(2)
−−−試合開始−−−
「あーっ、私に票が!皆さんありがとうございます〜」
「ふむ…あたしにも少しだが入っていくな…」
「おかしいな…。…まあ、最初だからね。まだまだ試合の行方は解らないよ」
「そうめんが美味しいですねー」
「へいっ!そうめんのお代わりお待ち!」

「…えー、私お酒は好きですけど、大酒飲みじゃないですよう」
「未来の私ってどうなってるのかな…」
「まあ、未来の事は誰にも解らんさ。…おっ、あたしに入ったか。
 とりあえず礼を言っておくが…キックは少しかじった程度なんだ」
「けど、蒼香さん独自の改良が加えられているんですよね」
「……まあ、そうだな」
一方、あの人はそうめんにかかりきりである。ずるずるずる…
「(おかしいな…時期的にもうそろそろ票が来る頃なんだが…)」

「順調だな、お前さん」
「え、えー、いや、それほどでもないですよう」
「いいじゃないか。みんなに愛されている証拠だ」
晶の顔が赤くなっていく。楽しげに口元を歪めてそれを見る蒼香。
ちなみに二人の箸はもう置かれている。
蒼香は大きめの湯飲みにお茶をそそぎ、ゆっくりとすすった。
「勝負ってのは恨みっこなしが基本だ、ま、おたがいしっかりやろうや」
「は、はいっ!蒼香さん!」
そこへエレイシアがすり寄っていく。
「ところで…、しっかりするって何をしっかりするんですか?」
「ま、心構えはしっかりいきたいって事さ」
そんな会話がなされている後ろでそうめんを喰らい続ける男が一人。
「(おかしい…波が…そろそろ波が来るはずだ…波はまだか…)」

「私にも票が…みなさん、ありがとうございます」
「エレイシアさん、おめでとうございます」
「はい!」
エレイシアのこぼれるような笑顔。それを見守る晶と蒼香。
そして後ろでそうめんを食べ続ける男。
「(来るか、来るか来るか来るか来るか…!)」
ひょい
そうめんの器が下げられた。
「おい、なにを…」
「すんません、そうめんはもう打ち止めッス」

16奇譚:2002/07/15(月) 02:30
(3)
「あっ、知得留先生ですね」
「あ、ほんとですねー。がんばれっ、未来の私っ」
「何か後ろ向きながんばり方だが…」
後ろでは…。
「………」
哀愁を漂わせて、紫煙をくゆらす男が一人。

「私って小動物系なんでしょうか?そうは思えないんですけど…」
「どうなんだろうな」
「それと、遠野先輩にいじめられてるわけじゃないですよー」
「自覚がないのか…もはや才能だな」
「えっ、蒼香さん何か言いました?」
「いや、お前さんはいろいろ才能にあふれているなって言ったのさ」
「え…えへへ、そうでもないですよー。
 ほらほら、蒼香さんも髪を下ろした所がいいって言われてるじゃないですかー」
「あたしとしては、髪をまとめた方が楽なんだがな…」
そして後ろでは…。
「これが、日本茶という物ですかー。慣れたら美味しいですね。
 はい、お茶のお代わりいかがですか?」
「…あ、ああ、これはどうも…。ええと、エレイシアさん、でしたっけ…?
 落ち着いていますね」
エレイシアはにこにこと優しい笑顔を絶やさない。
「はい。試合自体も楽しいですけど、
 こうして皆さんとお話しできるのも楽しいんです、私」
「…どうもわからないな。負けたら、ここから去らなくちゃいけないんですよ?」
「はい。けど、皆さんとお友達になった、という事は変わりませんよ」
「………」
そうして、彼は無言になった。くわえていたたばこからはもう煙はなくなっている。
しかし、彼はたばこをくわえ続けていた。
彼の視線は試合観戦モニターの方を見つめている。
そんな彼をエレイシアはにこにこしながら見つめていた。

「エレイシアさーん、支援ですよー」
「はーい。あっ、仕事中の私ですね」
「ところで、パン屋ってどんな仕事があるんだ?」
「そうですねー、いろいろあるんですけど、まず朝起きてから…」
で、後ろでは。
「あれ、どうしたんスか?なんか、渋いッスね」
「いや、考え事をしていたんだ…。人生というものについて少し…」
「あっ、来ましたよ投票!」
「なにぃ!…ふ、とうとう来たか。どれどれ………なっ!」
彼の中で時間が白と黒に反転を繰り返し停止。そして一瞬後、始動。
「壊れている…?ザコ……?ふ、ふふふ、せむし男君、君ならこれをどう取るね?」
「さぁ…自分はただのせむし男なんで」
「……火、あるかい?」
「いえ、ないっス」
「………」

17奇譚:2002/07/15(月) 02:30
(4)
そして…
−−−試合終了−−−
「終わりましたねー…。えっと、お疲れ様でした!」
「ああ。一位、おめでとう」
「蒼香さん、ありがとうございます!皆さんも…ありがとうございます!」
「あのー、これからみんなでお食事にいきませんか?」
「あっ、いいですね!」
「よし、あたしも付き合おう」
「一緒にどうですか?えーと…」
エレイシアがふと、とまどいの表情を見せる。
エレイシアの言葉に振り向いた彼はエレイシアを見て寂しげに笑い、答えた。
「…そうですね…行きましょう…」
少し影が濃くなった彼の背中をせむし男君がバンバンと叩いた。
「まあまあ!今日は楽しく行きましょう!」
「…ところで、君も付いてくるのかい?」
「そりゃもう!自分、せむし男っスから!」
いつしか、夜の帳も濃くなっている。
レストランを目指して歩く、今日の試合投票枠となった人々。
彼らがレストランに行く道々、こんな会話があったという。
「あのー、すみませんがあなたの名前を教えてもらえますか?」
「え…は、はは、そういえば名乗ってなかったですね…」
(おわり)

18奇譚:2002/07/15(月) 02:35
もっと文章を推敲すればもっと読みやすくなったかも。
文章の道は奥が深いですなぁ…。
さらに精進を重ねます。

19龍也:2002/07/15(月) 12:58
やったー!あの人が来た!
ごめんな、ザコとかヘタレとか書いたん僕やねん…。

20pa-pa:2002/07/15(月) 19:52
シリアスは敬遠されますかぃ?

21pa-pa:2002/07/15(月) 19:52
sage忘れスマソ

22七死さん:2002/07/15(月) 20:43
少なくとも俺は読みますし。月姫関係なら問題ないと思われ。

23奇譚:2002/07/15(月) 21:40
シリアスもOKだと思います。
って、シリアスSSが書き込まれてないですね。
シリアスSS、難しいです…。とっかかりが無いか難解に過ぎてしまう。
寝ても覚めても、考えてはいるのですが…。

24pa-pa:2002/07/16(火) 23:48
近々エレイシア物を投下するやも。いや、自分で言っといてシリアスではないかもしれませんが……

25奇譚:2002/07/19(金) 02:56
(1)
 ここは楽屋裏から少し離れた所にある、廃れたラジオ局。
昨日、ここでは珍しく精力的にラジオの番組の準備が進められていた。
この裏には楽屋裏の管理人、久我峰斗波の意志が働いている。
彼曰く、
「ほっほっほ。試合が盛り上がるのは大いに結構。
 しかし、管理のためにはいささか資金も必要です。
 そこで、試合をする当人達にも少し協力をしてもらおうかと」
とのこと。
誰もが面倒臭がる、というか相手にしない中で、運悪く白羽の矢を立てられた者がふたり。
一人はわりとノリ気で、もう一人は当惑しながら、番組の準備は進められた。
そして、番組は始まった。

『TYPE−MOON最萌えトーナメント楽屋裏・6月20日編
 〜朱鷺恵とつかさの実況中継〜』

「え…始まっちゃっ…こ、こんばんは」
「こんばんは、今日の楽屋裏は私、時南朱鷺恵と四条つかさちゃんの二人でお伝えします。
 よろしくね」
「よ、よろしくおねがいします…あの、ところでと…時南さん」
「あら、なにかしら。それと名前で呼んでいいからね」
「え…じゃ、じゃあ朱鷺恵さん。台本によると、
 すぐに今日の試合当事者の説明に入らないと…」
「あ、そうなんだ。それじゃ、もう始めちゃおうかな」
「あ、はい。では…最初は『英語教師アルクェイド』さんですね。
 この人は有名な知得留先生の同僚にしてライバルです。
 知得留先生と遠野志貴さんを奪い合っているようですね」
「ふーん…志貴君、かっこよくなったもんね。もっと、アプローチしておけば
「ごほごほっ、つ、次行きましょう、次!はい、次は『常盤』さんです。下の名前は不明。
 遠野志貴さんのクラスメイトです。オカマ口調で話しかけてくる、柔道部の人です」
「オカマ口調…?何か深いわけがあるのかな…?」
「えっと、次は《『高雅瀬』》さんです。で…
「つかさちゃん、名前の所がよく聞こえなかったんだけど…」
「え、えっとですね…うう…すみません、読み方が解りません…。
 結構大きめの漢和辞典も引いたんですけど解りませんでした…」
「そうなんだ…」
「だから、今回は暫定的に、たか・みやせ、と呼ばせていただきます…」
「はいはい、つかさちゃん、固くなっちゃだめよ。はい、深呼吸」
「すー…はー…」
「落ち着いた?うん、じゃあ、続きをお願いね」
「…はい。高雅瀬さんは私と同じ浅上女学院の一年生です。今は生徒会書記を務めています。
 厚めの眼鏡…ビン底眼鏡というんでしょうか…を掛けている、お話好きで噂好きな人だそうです」
「あら、そうなんだ。秋葉ちゃんの噂話とかも聞けるかな?」
「それは、是が非でもやめた方がいいかと…」
「あら、そう?」
「最後に『乾有彦』さんです。遠野志貴さんの男友達です。えっと、破天荒な方、だそうです」
「とても有名な人だから紹介の必要はないかな?」
「はい、朱鷺恵さん。…時間がおしてるそうなので次へ行きましょう」

26奇譚:2002/07/19(金) 02:57
(2)
「…はい。楽屋裏にやってきました。もうすぐ本日の試合が始まります。
 ちょっと、出演者の方にインタビューしてきます。
 えーっと、英語教師のアルクェイドさん、今のお気持ちを一言、お願いします」
「うん?そーだねー、勝ったらうれしいけど、もし志貴とかち合ったら嫌だし…う〜ん、複雑」
「ありがとうございます。常盤さんはどうですか?」
「あたし?そうね、のんびり観戦する事にするわ。成り行きを温かい目で見守るの」
「はい、ありがとうございます」
「…あら、つかさちゃん終わったのね。じゃあ、こっちも。高雅瀬さん、
 今の心境はどんな感じですか?」
「そうね、私が思うにね…(この後、1分近く機関銃トークが続く)…で、それからね、
「ごめんなさいね。もう次の人に行かなくちゃいけないの。はい、ありがとうございます。
 では、次の人…『乾有彦』さん、お願いします」
「はい!いやぁ、こんな美人のお姉さんと知り合いになれるなんて、
 男冥利に尽きるってもんですよ!」
「あら、お上手ね。じゃあ、私からお願い。志貴君と仲良くしてね」
「えっ…!お姉さん、まさか遠野の…」
「うん、きっと君が思ってる通りだと思う」
「………ぉ、お、おのれーっ!遠野っ!裏切り者ー…
「わっ、そろそろ試合が始まりますから抑えてくださーい!」

27奇譚:2002/07/19(金) 02:57
(3)
−−−試合開始−−−
「試合が始まりました!楽屋裏は歓声怒号叱咤激励悲鳴絶叫の嵐です!」
「つかさちゃん、張り切ってるね。試合の様子は…乾さんが先制リードしています」

「ぶー。何でこんなに少ないのよう!」
「あたしは…まずは様子見、ね」
「おかしいわ、おかしいわ、私に表が来ないなんて(以下省略)」
「おっ、けっこう入ってくるな。ふっ、ちょっと夢、見せすぎちまったぜ!」

「あっ!ただいま支援物が投下されました。
 内容は乾さんの…えっ…あの…これは…ごにょごにょ…」
「おっ、俺の支援か、どれどれ………ぅ、ぁ、あ、NOーーー!なんじゃこりゃーーー!」
「乾君と遠野君、そんな関係だったのね…やるわね」
「てやっ、英語教師的、教育的指導!」
ガスッ
「ぐはぁっ!お、俺はやっていない!断固として俺は無実だ!」

「えと、あー、うー、…ごにょごにょ…」
「うーん、つかさちゃんにはちょっと刺激が強かったかな?
 つかさちゃん、ここで休んでいていいからね。
 さて、試合は乾さんが最初に大きくリードしたまま、ゆったりとしたペースで進んでいます。
 乾さんはその後も順調に票を伸ばしています。
 英語教師アルクェイドさんも順調に票を伸ばして、乾さんの後ろに付いています。
 その後ろを常盤さん、高雅瀬さんが追う形となっています」

「あっ!ようやく私にも票が入った…って、遅いっ!
 今から巻き返すのはかなりきついから…そうね…ここは…(ぶつぶつ)」
「あたしも最初の一票以来、伸びないわねー、活躍の場が少ないときついわねー」
「うー。知得留に負けるのだけは勘弁」
「ちなみに乾さんはケイレンしています。そっとしておきましょうね」

28奇譚:2002/07/19(金) 02:58
(4)
そして
−−−試合終了−−−
「朱鷺恵さん、すいません…」
「いいのよ、つかさちゃん。もう平気?」
「あ、はい…では、結果発表です。一位、乾有彦さん!」
「よっしゃあ!」
「おめでとうございます、乾さん。一位の乾さんは本戦出場決定です」
「…よし、本戦で可愛い女の子と…見てろよ、遠野!」
「続いて、二位の英語教師アルクェイドさん、
 獲得票同数で三位の常盤さん、高雅瀬さん、残念ですが、ここで予選落ちです」
「あーあ。志貴と一緒にいたかったのにな。ま、いっか。別の機会もあるし」
「あたしの扱いって…」
「おかしい、絶対おかしいわ!責任者!責任者はどこー!」

「それでは、ここで楽屋裏からお別れです。今日の放送は久我峰家の提供でお送りいたしました。実況は私、四条つかさと、
「時南朱鷺恵でした。それでは、皆さん、おやすみなさい」

「つかさちゃん、お疲れ様」
「はぁ…疲れました…この後もこの番組続くんですか…?」
「うーん、それはわからないの。この番組、久我峰家の提供でしょ?」
「そうですね」
「で、番組の途中に聞いたんだけど、久我峰家がこの資金提供の件で遠野家に怒られたんだって」
「あー…そうなんですか…」
「だから、続きがあるかどうか、今の時点ではわからないの」
「はー…」
「それはそうと、つかさちゃん、打ち上げに行かない?みんな行くんだって」
「…お供します。あ、朱鷺恵さんもお疲れ様でした」
「ありがとう。じゃ、行こっか」
「…はい」
ドドドドド…
「お姉さんっ、お嬢さんっ、是非是非、俺たちと一緒に打ち上げにっ」
「あら、有彦君、それは私達からもお願い」
「よしっ!二名様、ごあんな〜い!」

こうして、今日のラジオ放送は終了した。
夜も深くなった闇の中、楽しげに、またはやけくそ気味に、
そして疲れた表情の人達が街の明かりに消えていく。
そして、余韻がさめやらぬ内に次の試合の準備が整えられる…。
TYPE−MOON最萌えトーナメントはまだまだ止まらない。
(おわり)

29奇譚:2002/07/19(金) 03:01
えー、まずは…支援物が完全に把握できませんでした、すいません。
昔の試合のせいでしょうか、リンクが切れておりました。残念です…。
あと、キャラクターの性格がわからない部分など、自分で性格付けをしました。
四条つかさについては『夢十夜』で「教室では覇気がある」
という描写があったのでこんな感じではないかと(^^ゞ)
もしオフィシャルで発表されたら…(((;゚Д゚)))ガクガクブルブル
 それとシリアスSSですが、何とか一本できそうです。
けれど、このSS、どう考えても支援SSとしか思えません…。
よって、支援物として使ってしまうと思いますので、
このスレにはシリアスSSがまだ投下できません…。
シリアスSS、先になってしまいましたが、これからも試行錯誤していきます。

30板</b><font color=#FF0000>(ItaYaZ4k)</font><b>:2002/07/24(水) 02:54
ここが、投票スレの過去ログより下にあるのはヘンなのでageておきますね

31(編集人):2002/11/01(金) 02:12
せっかくのSSスレッドなのでこちらを使わせていただきます。

32(編集人):2002/11/01(金) 02:15
今、振り返って…「TYPE−MOON最萌えトーナメントSS総集編」。
このトーナメントで読めるSS総集編。
この総集編ではSSのみを対象としていますので、コピペなどは含まれません。
なお、作者様が「SS」と宣言されている場合は、SSに含まれます。
また、SSが掲載されているHPが紹介された時は、
それもSSと同じように扱っています。
SSの一部抜粋となっている物は一覧に加えていません。
同じHP、SSが紹介ないし投下された時は、一覧に加えないようにしています。
あと、リンク先が無くなっている物、解らない物も一覧に加えていません。
なるべく、投下当時の状態のままにしていますが、ずれてしまった場合は
申し訳ありません。あと、外部リンク型でリンク先が無くなってしまった物についてはここに掲載できません。ご了承ください。
あと、ここが抜けてる!という所がありましたらご一報いただけると助かります。

33(編集人):2002/11/01(金) 02:16
『水底の宴』久我峰斗波・支援
2002年6月9日(日)12時56分。
ROUND1、39レス目「名無しさん」様によって投下。
 真・オバケキノコ   (月姫)         
 久我峰斗波       (月姫)        
 死の線だらけの死人  (月姫)        
 秋巳大輔       (空の境界)  

記念すべき第1戦目で初めて投下されたSS。外部リンク型。
ttp://isweb31.infoseek.co.jp/novel/boysss/cgi-bin/toko.cgi?action=html2&key=20020605000001

34(編集人):2002/11/01(金) 02:17
『無題』翡翠・支援
2002年6月19日(水)2時4分。
ROUND1.705レス目「お絵かきadmin 」様によって投下。
 フォルテ(月姫)
 翡翠  (月姫)
 有馬都古(月姫)
 遠野秋葉(月姫)

35(編集人):2002/11/01(金) 02:18
あれほど騒いでいた昼間がまるで嘘のようにあたりは静まり返っている――――

昼間の花見はそれはもう修羅場だった。
遠野家のちょっとした余興のはずだった昼食をかねての花見は、アルクェイドの乱入、それにともなうシエル先輩の乱入、どういう嗅覚をしているのかしらないがその騒ぎをかけつけた有彦の乱入、有彦によるとおりがかりの弓塚のひきこみ...
気を利かせたのかその騒ぎを楽しんでいるんだか知らないが、琥珀さんの持ってきた秘蔵の日本酒とやらのおかげで場は一気にヒートアップ。
最後には秋葉がぶったおれたぐらいだからあの酒にはなにかしこんであったに違いない。
そんな騒ぎもいつのもの、夕陽が沈むとともにあたりはひっそりと夜へと変わっていた。
「翡翠もそれを片付けたら一休みしなよ」

これまた気を利かせたのか楽しんでいるのかわからないが、琥珀さんは洗い物と称して台所に引っ込んでしまっている。

「はい」

翡翠はテーブルの上を拭き終えると、おずおずと僕の隣に腰をおろした。
桜の木の下には死体が埋まっている―――遠野家では洒落になりそうにない逸話だが、そんな話を信じてしまいそうになるほどに夜の桜は妖艶に散っていた。

「ねぇ、翡翠」

そんな雰囲気の中の沈黙に耐え切れずに僕は口を開く。

「僕らが付き合ってもう半年になるけど―――」

翡翠が不思議そうな顔をしてコチラを見つめる。何をいうのか?といいたげな目線。
そのあまりのかわいさに僕はまたつばを飲む。

「その、もしも翡翠が遠野家の使用人だからとか、僕への同情とかでつきっているのなら、その―――。いつでも別れてくれてかまわない。きっぱりといってくれたほうがいい」
風が吹いた。
夜の月明かりに妖艶に照らされた桜が舞う。

「志貴さまは相変わらず愚鈍ですね。」

その向こうに翡翠のあまりに綺麗な顔がみえた。

「私がこれほど志貴さまを想っていても志貴さまはちっともわかってくださらない
 私の想いは子供のころからずっと、そして今も変わりはありません」

ゆっくりと翡翠の顔が近づいてきて、だんだんと大きくなるような錯覚を覚える。

「私はずっと、志貴さまのことを好きでした」

静かに、しかし確実に重なる唇。
それは遠野家に帰ってきてからずっと、いや子供のころからずっと、僕の求めていたもの。
やわらかくて・・・暖かい。
僕はなんども翡翠の唇を求めた。
妖艶な、優しい月明かりの下で。

36(編集人):2002/11/01(金) 02:19
『無題』翡翠・支援
2002年6月19日(水)2時38分。
ROUND1.711レス目「七死さん 」様によって投下。
 フォルテ(月姫)
 翡翠  (月姫)
 有馬都古(月姫)
 遠野秋葉(月姫)

37(編集人):2002/11/01(金) 02:20
―そして事件は過ぎ去り、遠野志貴にまた日常が却ってきた。
 秋葉がいて、七夜さんがいて、……翡翠がいる。
 全てが元通りというわけではないけれど、それでも概ね平穏な日々。
 いろいろなことがあったけど、だからこそ手に入れたこの時を、俺は大切にしたいと思っていた―


 「…じいさん――今なんて言った――」
 ゆらり、と、遠野志貴の中でナニカのスウィッチが入ったのが分かる。抑えきれないほどの激情を抑えて、もう一度だけ聴く。絶望を。
 「何度も言わすな小僧…。半年だ…。」
 背後で秋葉が絶句するのが感じられる。それはそうだ。俺だってできることならそうしたい、だが……。
 ――昼下がりの時南医院、そこで長年見知った医師に告げられたその言葉は――
 「翡翠…あの嬢ちゃんの命は――持って後半年じゃろう…もう、どうしようもない――」

 どうしようもないくらい巨大な力で、遠野志貴の日常に穴を開けていった――

 
 消毒薬の匂いのする真白い廊下をただ歩く。感情は無く、ただ遠野志貴は人形のように進んでいく、目的地へと向かって。
 「兄さん、このことは―――」
 思考のループの中で拡散を続けていた俺の自我が、その言葉で表層へと上がってくる。
 「言えるわけがない――七夜さんにも―――もちろん翡翠にもだ」
 ギチリと、強く噛み合わせた歯から異音が漏れる。

38(編集人):2002/11/01(金) 02:21
――つい数日前、屋敷でいつも通り仕事をしていた翡翠が、血を吐いて倒れた。余りの事態にパニックに陥りながらも、慌てて時南医院へと運んで見れば――


 『――手遅れじゃ、若いが故に進行が早すぎる。一般の病院へ連れこんでも変わらんだろう。全身に腫瘍が転移しはじめておる』
 感情を無くした声で、時南先生が告げる。
 『――なっ!!』
 ―――絶句。腫瘍、悪性のもの、それらを称して癌ということくらい、俺だって知っている。そしてそれが意味することも。
 ――永遠にも思える一瞬、遠野志貴の思考が停滞する。それを見越してか、時南医師が言葉の先を続ける。
 『何も言うな小僧――ワシは小さな頃からあの嬢ちゃん達の面倒を見てきた。できることならワシだってどうにかしたい――じゃが――』
 グッと、医師の手が固く、固く握られる。何かに耐えるかのように、固く。そして――

 『――小僧、お主に全て任す。話すべきか、あの子になにをしてやるべきなのか。――自らが決断せい』

 固く、硬く。医師として、時南宗玄は、ただそれだけを遠野志貴に告げた。

39(編集人):2002/11/01(金) 02:23
ドアを開ける。ただ真白いだけの簡素な病室の中で、ベッドに横たわる少女だけが色彩を放っている。そっと、彼女を起こさないように、後ろ手にドアを閉める。部屋に入るのは遠野志貴ただ一人。秋葉には先に屋敷に帰って貰い、心配しているであろう七夜さんに説明する役目を頼んでおいた。
 ゆっくりと、彼女の元へ近づいていく。シーツから覗いている寝顔は、心なし蒼ざめている。それでも堪らなく愛しくて、だからこそ不意に泣き出したくなったが、翡翠の眉が小さく動くのを見て、慌ててその思いを抑えつける。
 「志貴……さま?」
 うっすらと目を開け、そばに俺の顔があるのを確認すると、その表情に安堵の笑みを浮かべ、ついで己の状況を認識しようとし――
 「――――っ!!」
 それに至って慌てて飛び跳ねようとするのを優しく受け止める。
 「あ、あの、志貴様、わ、私…あの、その…」
 自分が休んでいるという状況がよほど気に掛かるのだろう。オロオロとしている翡翠を、そっとベッドに寝かせる。
 「ほら、翡翠、ちょっとだけ大人しくして。覚えてないかもしれないけど、翡翠、屋敷でいきなり倒れたんだ。だから大人しくしてなきゃダメだよ?」
 ありったけの自制心を注ぎ込んで、ムリヤリ笑顔という名の仮面を作る。今にも崩れそうなそれでも、翡翠を落ちつかせる役くらいは果たしてくれたらしい。
 「――はい」
 不承不承、といった感じで翡翠が頷いてくれたのがわかる。どうも翡翠は、仕事をしない、ということそのものに不安を感じるようだった。
 「全く、翡翠はいつも働いてばかりなんだから、こういう時くらい休んでたって罰は当たらないぞ?」
 事実それはその通りだったので、翡翠は何も言えない。そう、自らの身も省みないほどで、だから――

40(編集人):2002/11/01(金) 02:24
浮上してきたその想いを一蹴する。ダメだ。何かをしていないと心がコワレテしまいそうだ。ふと周りを見れば、恐らく秋葉が用意したのだろう、果物ナイフと共に、よく熟れた林檎が幾つか置いてある。
 「そうだ翡翠。林檎食べたくないか?俺が剥いてあげるよ」
 「そんなっ!!志貴様の手を煩わせるわけには――」
 ほらやっぱり。翡翠のことだからそう来ると思っていた。だから俺はその逃げ道を塞いでやる。
 「いやだって俺も食べたいしね。林檎」
 そういってにっこりと笑ってやる。その効果は劇的だった。
 「なっ!でしたら私が―――あっ!」
 言いかけた翡翠の顔が真っ赤に染まる。自分でも自覚しているくらい生粋の料理下手な彼女が林檎を剥こうものなら…大方の予想はつくだろう。
 「……はい」
 だから、最後には頬を染めながらも頷いてくれた。
 「――でも」
 刃物の扱いは得意だ。鮮やかな手つきで林檎を剥いていくさなか、翡翠がポツリと言葉をもらす。
 「ん?」
 「――これでは立場が逆です。本来なら私が志貴様を看病する側であるべきなのに…」
 そういって、小さく嘆息を洩らす。
 「なんだ。そんなことを気にしていたのか」
 「志貴様にはそんなことかもしれません。ですが私には――」
 ヒョイと、開いたその口に、切った林檎を頬張らせてやる。
 「だって翡翠はこの前俺の事を一生懸命看病してくれたじゃないか。だから俺も翡翠の看病をする。これじゃいけないのかい?」
 そんな俺の言葉に、翡翠は放りこまれた林檎を懸命に飲み込んでから反論しようとする。
 「でっ、ですが私は志貴様のメイドですから、志貴様を看病するのは――」
 「じゃぁ翡翠は、仕事だから俺の看病をしたっていうの?」
 ――それは、どうしようもないくらいに翡翠の弱点をついている。
 「そ、そんなことはっ!!……わ、私は、志貴様の事が……す、好きだからで」
 真っ赤になって、小さな声で。それでもその言葉はちゃんと遠野志貴には届いていた。
 「じゃぁそれでいいだろ?俺も翡翠のことが好きだからこうして看病する。いや、させて欲しい」
 好き、と言う言葉に反応して、彼女が更に顔を赤くして頷く。
 ――ふと気付けば外はもう夕暮れ。本当はこのまま泊まっていきたいが、何も知らない翡翠に心配をかけることはしたくはない。
 「――御免、そろそろ戻るよ。大人しくしてるんだぞ?……あ、そうだ翡翠。何か欲しいものはある?今度お見舞いに持ってきてあげるよ」
 ――ほんの軽い気持ちだった。翡翠はしばらく、考えた後にこう言った。

 「――また明日。来てくださいますか?私が一番欲しい物は、志貴様と過ごす日常ですから」

 ――ダメだった。本当にどうしようもないくらい、その言葉は遠野志貴の心を貫いていった。仮面なんてものを剥いで、彼の心に染み透っていく。――だが、それでも遠野志貴は、彼女のために、という最後の意志で持って、溢れ出す激情を隠しとおした。

 「あぁ、それじゃぁまた明日な。お休み、翡翠――」

41(編集人):2002/11/01(金) 02:25
走って、走って、ハシッテハシッテハシッテ――
 そうしてたどり着いたのは、夜の風が吹くあの日の草原。遠野志貴という、その原点。
 その勢いのまま、俺は手近な木に拳を叩きつける。
 何度も何度もなんどもなんどもナンドモナンドモナンドモ――
 皮が破れ、血がしぶき、骨に異音が走ろうとも止まることはない。

 ――――なんて、無様。

 遠野志貴は愛しい人が死に瀕しているというのに何も、――ただそばにいることも、そばにいて笑いかけてあげることさえできはしない。

 分からない。俺は一体どうすればいい?分からない。俺は翡翠に何をしてあげられる?わからない、ワカラナイ、ワカラナイ――

 いつしか遠野志貴は、まるでゼンマイの切れた人形のようにその場に横たわっている。

 「君、そんなことで倒れていると危ないわよ?」

 懐かしい、声。その声に導かれるように遠野志貴が再起動をはじめる。振り向いたその先、そこには――
 「え――――」
 「え、じゃないでしょ?こんなところで、そんな覇気のないような顔して。気をつけなさい。危うく蹴りとばれるところだったんだから」
 ――聞こえるその声は、何もかも昔のままで。だからこそこの現実とのギャップに、激しい嘔吐感を覚える。
 「――ふぅ。本当はもう2度と会うつもりはなかったんだけどね。君はもう一人で歩ける立派な大人だし。私といれば貴方には迷惑がかかるだけだろうから――」

42(編集人):2002/11/01(金) 02:26
――先生が、何を言おうとしているのかがわからない。
 「でも――君があまりにも見ていられなかったから…だから、特別サービス。私の教え子である君に対して…今度こそ最後のね」
 そうして、1度、言葉を区切る。言葉が遠野志貴に染み渡るまでの、その時間。人形の体に、血液が通い出す。止まっていた思考が動き始める。その瞳を見て、先生は大きく頷くと、厳かに述べた。
 「――貴方、彼女のために死ぬ覚悟は、ある?」
 ――何を、言っているのだろう?遠野志貴というこの体は、彼女がいなければとおの昔に鼓動を停止している。今更命を惜しむ必要がどこにある。それも彼女のために――
 俺の意思を感じとって、先生が歩き出した。そして、少し離れたところで振りかえり――

 「知ってる?癌のことをね、専門用語では、悪性新生物っていうらしいわよ?」

 それだけいうと、彼女は今度こそ振り向かずに歩き出す。最後に手を上げると、
 「――元気でね、志貴、縁があったら、また会いましょう」
 なんでもない事のようにいって、去っていく。
 ――でも、それだけで十分。何をすればいいのかは理解できている。もう、迷うことはない。だから――
 「ありがとう!!先生っ!!」
 別れの言葉でもな、決別の言葉でもない、感謝の言葉を、その背中にかけ――そうして、風に攫われたかのように彼女は消えてしまった。
 後に残るのは、ただ、大きな大きな、蒼い月――



 あぁ、知らなかった――――――今夜はこんなにも、月がきれいだ。

43(編集人):2002/11/01(金) 02:27
――音も立てずに、忍びこむ。
 見慣れた病院内も、夜のしじまの中では隔離世へと続く異界だった。カツカツと響く靴音だけが、確かな現実を刻む。目的の扉にたどり着く。昼に来たときにそうしたように、音を立てないように病室に入る。
 月光に照らされた病室。そこに横たわる翡翠は、ほのかに薄蒼い光を浴びて――本当に、美しかった。
 ――覚悟は必要はない、決意は一瞬。そしてゆっくりと、眼鏡を外した。脇に置いてある、果物ナイフを手に取る。
 月明かりが照らす中に、不気味に動く黒い線が現れる。それはセカイそのものを侵食するかのようにうごめき、カタチを変える、死の具現――
 それが、彼女の周りを、ひときわ激しく包み込んでいるのが見える。だが、そんなことはさせない。彼女をそんなところへ落すわけにはいかない。

 ――だから、遠野志貴は今にも壊れそうなこの世界を現死する。
 視るべきものは存在する事象のその裏面。
 よすがとするのは、この何もかもが崩れそうなセカイで、ただ一つ確かなイノチを刻む、愛しい人の鼓動のみ――

 彼女を殺す、その線ではなく、彼女を殺そうとするその事象、それ事態が発する線を視る。それは人間には不可能なことだと脳が異常をつげ、人語に絶せぬくらいに頭が痛む。目は見ることを止め、ただ白い闇に包まれる中、遠野志貴は、ただ意思だけでその場に立つ。ブツンブツンと断線していく意識の中で一瞬を見逃さず、まるで機械のようにその腕が動いた。そして――

44(編集人):2002/11/01(金) 02:28
――そして静寂の中で彼女は目覚めた。

 ふと気がつけば、あれほどまでに体中を苛んでいた痛みが跡形もないほどに消えている。彼女とて馬鹿ではない。自分の体がどうなっているかくらいは把握できていたし、その上で皆が黙っているのならと、何も知らない振りをした。だがなぜ――
 ――と、胸元にあるもの―なんの変哲もない果物ナイフ―に気がつく。そして――
 「――志貴様っ!!」
 まるで人形のように静謐な顔で眠る愛しい人を見つけ、彼女は悲鳴を上げた――


 「――結局、こうなるんだよなぁ…」

 太陽の匂いのする病室、そのベッドの上で遠野志貴は深い嘆息を吐いた。その両の目には、白い包帯が幾重にも巻かれている。そして――
 「ほら、志貴さん、あーんして下さい。翡翠ちゃんが待ってますよ」
 「ちょ、ちょっと姉さん!!」
 ――見なくてもわかる。七夜さんが切った林檎を、彼女指導の元、翡翠が食べさせようとしているのだろう。聞けば快方に向かっているとはいえ、今だ入院中の翡翠はピンクのパジャマ姿だという…。なんというか、見えないのには酷く納得がいかない。そして俺の声を聞いて翡翠が――
 「でも志貴様、やはり私はこのほうが落ちつきます。それに――この方が志貴様と一緒に居られますし」
 恐らく顔を真っ赤にしているのだろう。動揺しながらもそれだけを言う。
 「あらあら、妬けちゃいますねー。では志貴さん。お邪魔虫はこの辺りで退散しますから。翡翠ちゃんをよろしくお願いしますねー」
 そういった後、バタン、と、ドアが閉まる音が聞こえる。…全く、相変わらず何を考えているのかわからない。
 「――翡翠?」
 「――はっ、はい!」
 ふと気付くと、どこからかしゃくりあげるような声が聞こえてきて――そこで詮索を止めた。今回の件で、勝手に行動したことで秋葉には死ぬほど睨まれたが、さすがにそこまで鈍感ではない…と思いたい。だから
 「――ごめん、俺疲れてるみたいだから、ちょっと寝る。それじゃ、お休み――」
 ただ目を閉じるだけのつもりが、思ったよりも疲れていたらしく、すぐさまに鉛のような眠気に支配されていった。


 彼女は、目の前で眠っている愛しい人をただ見つめる。眠る、というよりも停まるといった方がいいその寝顔は、まるで精巧な人形のようだった。
 彼は自分が何をしたか、けして話してはくれないだろう。彼女も、聞こうとは思ってはいない。彼を困らせたくない。だから、代わりに――

 ――その寝顔に顔を近づけ、ゆっくりと、優しく、長い口付けを交わした―――

                                         ――FIN

45(編集人):2002/11/01(金) 02:29
『Something Especial』有馬都古・支援
2002年6月19日(水)20時27分。
ROUND1.765レス目「no 」様によって投下。
 フォルテ(月姫)
 翡翠  (月姫)
 有馬都古(月姫)
 遠野秋葉(月姫)

外部リンク型。
ttp://moongazer.f-o-r.net/himejou/espec_1.htm

46(編集人):2002/11/01(金) 02:30
『ソドムの午後』乾有彦・支援
2002年6月20日(木)0時27分。
ROUND1.822レス目「七死さん 」様によって投下。
 英語教師アルクェイド(月姫)
 常磐くん      (月姫)
 高雅瀬       (月姫)
 乾有彦       (月姫)

外部リンク型。
ttp://moongazer.f-o-r.net/himejou/oboko_2.htm

47(編集人):2002/11/01(金) 02:31
『宵闇葬送曲』弓塚さつき・支援
2002年6月22日(土)0時10分。
ROUND2.16レス目「七死さん 」様によって投下。
 メシアンのシェフ(月姫)
 弓塚さつき   (月姫)
 カルハイン   (月姫)
 国藤担任    (月姫)

48(編集人):2002/11/01(金) 02:32

―――

ごめんね、遠野くん、ごめんね・・・・・・・・・
もう、駄目みたい・・・身体が悲鳴あげてるの

ううん、ヒトでなくなったから仕方ないもの
だから・・・お願い。遠野くんの手で楽にして・・・・・・・
最後のお願いだからコレくらいイイよね?

良かったぁ・・・・・・・コレで安心して消えれる・・・・・・・
ごめんね、ヘンなお願いして・・・・・・・
わたし消えてしまうからなにも残せないけど、気持ちだけは残せる
好きだったの・・・・・・・・・・前から
こんな時に言うけど・・・・・・・こんな時にしか言えないけど・・・
好き、世界の誰よりも一番・・・・・・・

嬉しい・・・・・・・・
ヒトである内にもう1歩踏み出せてたら良かったのにね
暖かいね・・・・・・・遠野くんの腕の中・・・
ヒトであるうちにこうしたかったなぁ・・・こうしてもらいたかったなぁ
幸せ、ほんと幸せだよ・・・・・・・・・

最後にありがとう・・・・・・・・・愛しています、ずっと・・・・・

―――

変えられない結末ならば、せめて安らかに・・・・コレも愛

49(編集人):2002/11/01(金) 02:33
『さっちん、バイトします!(コンビニ編)』弓塚さつき・支援
2002年6月22日(土)0時10分。
ROUND2.29レス目「奇譚」様によって投下。
 メシアンのシェフ(月姫)
 弓塚さつき   (月姫)
 カルハイン   (月姫)
 国藤担任    (月姫)

50(編集人):2002/11/01(金) 02:34
『さっちん、バイトします!(コンビニ編)』
(1)
わたし、弓塚さつきは、コンビニでバイトしています。
動機は友達に誘われたから…、としています。
でも、本当は遠野君と話せるぐらいハキハキした性格になりたいし、
もし、もし、デートなんて事になったらお金もいるし…。
という事でコンビニでバイトしています。
ちなみに、わたしは今バックルームで休憩中。
最近、人がいきなり休む事が多くて、よくかり出されます。
それをねぎらう意味で今日は休憩時間が長めに用意されました。
パイプ椅子に座ってほっと一息。
…はぁ、今日も疲れたなぁ。でも後少しで終わりだもんね。がんばろうっと。
休んでいても、視線はモニターの方へ行っています。
仕事熱心というわけでもないですけど、バックルームは何もないので、
何となくモニターを見てしまいます。
…今日もお店は繁盛。お客さんがいっぱいです。
塾帰りの小学生、中学生。仕事が速く終わったらしいおじさん。
のんびり雑誌を読んでいる大学生、そして、わたしと同年代、高校生。
…高校生?あれ、わたしの学校と同じ制服だ。知ってる人かな…って、え、ええっ…!

51(編集人):2002/11/01(金) 02:35
(2)
と、遠野君!?
ど、どうしてここに!?しかも一人…?
わたしはとっさに立ち上がります。
遠野君に会いたい…!今の立場なら遠野君とお話しできる、しかも自然に!
けれど、わたしはまた座り込んでしまいました。
髪型おかしくないよね?服は…制服だから関係ないよね。えっと、鏡、鏡…。
ああーっ、ここには鏡がない!どうして、バックルームに鏡がないんですか、店長!
…しかし、もはや一刻の猶予もなりません。
早く行かないと、遠野君は目的をすませて帰ってしまいます。
とにかく、今できる限り、おしゃれをしていざ出陣!
バックルームから飛び出します。
けれど、わたしの足はすぐにぎくしゃくとしてしまいます。
…遠野君が見てるかもしれない…
自然に、普通に。遠野君が見ていてもおかしくないように。落ち着いて、落ち着いて。
…レジに到着。
「あれ、弓塚さん休憩はもういいの?」
「…は、はい店長。もう充分休ませてもらいました!」
…遠野君、まだいるかな…
「そう?それなら…私は納品チェックしてくるからレジお願いね」
…チャンス到来!

52(編集人):2002/11/01(金) 02:37
(3)
「は、はいっ」
レジは、店の設計上、店内がくまなく見渡せるように設計されています。
…遠野君は…遠野君は…いた!
遠野君は雑誌コーナーにいました。何かの雑誌を立ち読みしています。
…遠野君、どんな雑誌読んでるのかな…気になるよう。
…本を整理するフリをして後ろに回り込めないかな、
あ、でもそれだとすぐにばれちゃうからだめだよね。
でも知りたいよう…遠野君の趣味が解れば、わたしも同じ事を勉強する事ができるし、
そうしたら…自然にお話しできる…!
…遠野君、昨日の○○見たー?(ああ、弓塚さん、見たよ)
面白かったねー。(そうだね、俺は特にあの○○の所が…)
あー、遠野君マニアックー。(おいおい、弓塚きついなー)
えへへっ
「…あの」
…遠野君
「…あのー」
…遠野君…はっ!
「これください」
「あ、は、はい。これとこれとこれで…423円になります」
「ありがとうございますー」
…あ、あぶなかった。ちゃんとお仕事しないとね

53(編集人):2002/11/01(金) 02:38
(4)
「…お願いします」
あ、はーい。えーとこれは…え?あのこれは…エッチな本?どんな人が買っ…
……神様、わたしの目や頭がおかしくないなら、この人は遠野君ですよね?
「………」
…あ、遠野君真っ赤だ。わたしが固まっちゃたから、白い目で見てると思ったのかな…
違うよ、遠野君!うん、遠野君は男の子だし、こういうのも読みたくなるよね…。
「…543円になります」
…でも、遠野君こういうのが趣味なのかな…
「じゃあ、千円で…弓塚!?」
「あ、あはは…」
…やっと気づいた。
「…い、いや、弓塚。とにかく誤解だ。これは罰ゲームなんだ。
有彦との賭に負けたんだ。それで…」
「う、うん…」
遠野君も真っ赤。わたしも真っ赤。
…私に気づいてくれて、うれしいようなうれしくないような…複雑。
「じゃ、じゃあな」
「う、うん…」
…遠野君は逃げるように店の外へ。そこには…乾君がいました。
何か遠野君が乾君にまくし立てています。
あっ、こっち見た。乾君もこっちを見ます。乾君大笑い。
遠野君、何か言おうとしましたが…しょんぼりとうなだれます。
そして、帰る二人。
乾君はまだ笑っています。遠野君は世界の終わりのようにしょんぼりして、
とぼとぼ歩いていきます。

54(編集人):2002/11/01(金) 02:39
(5)
「…行っちゃった」
…あっという間でした。短い間にいろいろな物がぎゅっと詰まった、そんな時間でした。
ただ、解っている事、それは…。
「もう遠野君、ここには来ないだろうな…」
…がっくり。
「…弓塚さん、もうあがっていいわよ」
「…はい、店長」
「あら、弓塚さん、やっぱり疲れてた?」
「い、いえ、そうじゃないんですけど…あはは…」
遠野君に出会えたけど、遠野君に気づいてもらえたけど、
遠野君とお話しできたけど、何か違うように感じたそんな一日でした。

…あの本、どっちが持つ事になるのかな…。
(おわり)

55(編集人):2002/11/01(金) 02:40
『さっちん、バイトします!2(ウェイトレス編)』弓塚さつき・支援
2002年6月22日(土)2時31分。
ROUND2.29レス目「奇譚」様によって投下。
 メシアンのシェフ(月姫)
 弓塚さつき   (月姫)
 カルハイン   (月姫)
 国藤担任    (月姫)

56(編集人):2002/11/01(金) 02:41
『さっちん、バイトします!2(ウェイトレス編)』
(1)
わたし、弓塚さつきはファミレスでウェイトレスをしています。
動機は、前のバイトを辞めてしまったから…としています。
でも、本当は恥ずかしがらずに、遠野君とお話しできるような性格になりたいし、
もし、もし、学校から一緒に帰るなんて事になったら、いろいろ行きたい所もあるし、
そうなったらお金も少し欲しいし…。
という事でファミレスでバイトしています。
ちなみにわたしは今ウェイトレスの制服を着てお客さんの応対をしています。
今、時刻は午後8時。
今日は平日という事もあって、休日に比べてお客さんは少ないですが、
それでも夕食時は混んできます。わたしも、お客さんの応対にてんやわんやです。
このお仕事、制服が可愛いから、仕事も楽なんじゃないの?と言われたりしますが
そんな事ありません。結構い肉体労働も多くて、食器を運んだりとか…。
それでも、やっていくうちになれてきます。
…これって体力がついてきたって事だよね。
それは良いんだけど、足が太くなったりしたら嫌だな…。

57(編集人):2002/11/01(金) 02:42
(2)
ウェイトレスさんはお店の顔なので、服装にはうるさく言われます。
長い髪はアップにする、ストッキングは必ず着用、などなど…とても厳しいです。
その代わり、一つ一つ守って、ピシッと決めると、なんだか自分が自分じゃないような気がします。
先輩たちも、バイトの時と、それ以外の時では別人のようです。
なんか、バイトの時はとても綺麗でかっこいい…。
わたしもああいう風になれたらいいな。
カランカラン
あ、お客さんが来た。
「「「いらっしゃいませー!」」」
挨拶は店員全員でするけど、入ってきたお客さんの応対は一番近くにいた店員が
担当します。その間に、他の店員はお客さんの人数、性別などを素早くチェックして、
お冷やを造ったり、おしぼりを持っていったり、メニューを勧める文句を考えたりします。
お客さんの数は…二人。男の人と女の人。
カップルかな、いいなぁ…って…!
…と、遠野君!?またしても、遠野君!?
どうして、ここに遠野君が…ううん、そんな事より、

 ソノ、トナリノ、オンナノヒトハ、ダレ、デスカ?

58(編集人):2002/11/01(金) 02:44
(3)
きれいな金髪、スラッとした体、楽しげに遠野君に笑いかけるその笑顔…
…うう、同姓のわたしが見ても…可愛いよね。
そうなんだ…遠野君、彼女がいたんだ…それもあんなきれいな人が…。
はぁぁ〜、一気に力が抜けちゃった…ハッ!いけないいけない!
まだ彼女と決まったわけじゃないもんね、うん、わたしだってずっと遠野君見てきたんだもん!
彼女だとしても、負け…ないのかな…うう…。
と、とりあえず、応対を…あ、先輩が行っちゃった。
……コーヒー二つのオーダーが通った。本当はわたしが持っていきたいけど、
わたしは他のお客さんを担当してるから、だめだよね…。
「あ、弓塚さーん、わたし、手一杯だからコーヒー二つ13番卓にお願いできる?」
…チャンス、到来…!

59(編集人):2002/11/01(金) 02:45
(4)
「は、はーい、大丈夫でーす」
さっそくコーヒーを作らなきゃ。遠野君が飲むんだから特別おいしいのを入れないとね。
といっても、ここのコーヒーって同じコーヒー豆しか使わないから基本は同じだっけ…。
ううん、マニュアル通り、カップに熱湯を入れておいて温めて、
別のお皿にミルクを3つ乗せて、スプーンを添えて、ソーサーにカップを乗せて…。
これがわたしのせいいっぱい、かな。
あ、二つ作らないと。…こちらのカップにこっそりアレを…いけないいけない、
お仕事はちゃんとしなきゃ。
「お待たせしましたー、コーヒー二つお持ちしました」
「あ、ありがとー。志貴、これがコーヒー?」
「…そうだよ。おい、恥ずかしいから、あまり大声出さないでくれ」
「では、ごゆっくりどうぞー」

60(編集人):2002/11/01(金) 02:46
(5)
わたしがテーブルを離れた後も、二人はお話ししている。
女の人は楽しそう。志貴君は、困った顔をしながら楽しそう。
遠野君って、あんなに気さくに女の人とお話しできるんだ…。
……私だって気づいてもらえなかったな…
わたしは今、髪を一つにまとめてアップにしてるし、
制服も着てるから印象も違うかもしれないけど…
やっぱり、わたしって遠野君の眼中にはないのかな…。
…あ、お客さんだ。今は…私が行かないと。
カランカラン
「いらっしゃいま
「…失礼します」
…え?
お店に入ってきた女の人は、わたしにはかまわずに店内を見回して…
一つのテーブルに目を付けた。…遠野君がいるテーブルだ。
…え?え?遠野君に関係のある人…?

61(編集人):2002/11/01(金) 02:47
(6)
その人は遠野君のいるテーブルに到着すると、
「…兄さん、門限はとうにすぎているはずですが」
「…あ、秋葉、いや、これには深いわけがあってだな…」
「ふにゃー、妹、こわいにゃー」
だきっ!
あ、あ、あ、遠野君に抱きついて…いいなぁ、いいなぁ…!
「ななな、なにをしてるんですかアルクェイドさんっ!こらっ、離れなさいっ!
あなたが、いつもいつもいつも兄さんを連れ回すせいで当家はとても迷惑してるんですよっ!
少しはそこの所を自覚したらどうですかっ!」
「むー。吸血鬼は夜、活動する者なのよ?今、志貴と遊ばなくっていつ遊べっていうのよー」
「簡単です。あなたが実家やら、本国やらに帰ればいいんです」
「あー、妹、志貴にかまってもらえないからってヤキモチ焼いてるー」
「なんですって!」
…なんかケンカが始まっちゃた。こ、こんな時はどうすればいいのかな…。

62(編集人):2002/11/01(金) 02:49
(7)
「…会計お願いします」
…あ、会計…今は私の担当だね。
「はい、コーヒー二つで630円になります…って!?」
と、遠野君?どうして?…もう帰…仕方ないよね。
「え…あ…弓塚?」
「う、うん…」
「き、奇遇だな」
「そ、そうだね…あはは…」
「…弓塚、悪いな。バイト先で騒ぎ起こしちゃって…」
「う、ううん、いいよ。片づけはわたしがやっておくし…」
「…ありがとう、弓塚。助かるよ」
にこっ
遠野君が笑った。…吸い込まれそう。…あ、どうしよう。
胸のどきどきが大きくなってきちゃった。あ、顔も熱くなってきて…。

 その時、わたしは自分の顔が赤くなってる事に確信が持てました。

遠野君、好きです。やっぱり、わたし、遠野君が好きです…。
「じゃあ、弓塚。あの二人は連れ帰るから…」
「…う、うん、ばいばい、遠野君」


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