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なつやすみ

1_:2002/05/31(金) 09:25

嵐映画記念 短編小説
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2_:2002/05/31(金) 09:26

1. 母さんムカツク

やっぱシティーボーイがクールでしょ!
都会のネズミと田舎のネズミ、もう母さんが言ってた話なんてとっくに忘れたけど
カッコイイのは絶対都会のネズミ、これだけは何があっても譲れない。絶対の絶対
都会のネズミ、都会最高ビル大好き!人の波なんてねぇ、スイスイ泳げちゃうもん!
正直欲しいモンがパッと手に入らない所なんてニンゲンの住む所じゃないね!
田舎モンなんて道端で草とか食ってりゃいいじゃん!俺はピザ食うし!

「えぇーやだよ俺絶対やだ!」
「駄目よ翔さん、もう申し込んじゃったんだから」
「やだってマジ俺この夏は湘南でサーファーになるって決めてンだから!」
「・・・とにかく翔さん、もう申し込みも支払いも終わってるんだから1ヶ月しっかり
楽しんでらっしゃい。暑い夏を涼しい所でお友達と過ごすなんて素敵じゃない?」
「やーだっつーの!」
「・・翔さん。」
.

3_:2002/05/31(金) 09:28

もうちょっとで夏になる梅雨明けから暫く経った某日、俺は買ってもらったばっかの
輸入物のベッドの上でピタリと動きを止めた。目の前では眼の座った母さんがじっと
こっちを睨み付けてる・・・ハッキリ言って超おっかない、足がちょっと震えるのが
分かった。でも男だしバレたらヤじゃん?だからちょっと足を組み直してそれを
隠した。母さんもそれが分かったのかしんないけどフムッて変な溜め息(?)ついて
「翔さん、お約束」
て腕組みして呟いた。ほんとドスがきいてて恐いったらないっつーの!でも俺ほら
優しいじゃん?だからもう何百回言わされたか分かんないそのお約束をブスッと
した顔で言ってやったよ、だってほら俺オトナだから?
「駄々こねすぎたらお役所で名前を“ざぐら゙い゙じょ゙ゔ”に変える・・」
「・・・どうするの?」
「行くよー・・」
ねぇオトナの姉ちゃん教えてよ!(オヤジは帰れ!)ほんとお役所行ったら名前
とか変えられんの?俺騙されたりしてない?もーまだ俺4年生だからほんとそこん
とこ詳しく分かんないんだって!一応うちの父さん国に仕える仕事してるけど
(でも総理大臣じゃないと思う)いつも忙しくてそれにホラ、聞けないでしょ
そんな事!知ってて当然なんだから、多分。
「じゃ、夏休み、しっかり楽しんでらっしゃい」
そう言って母さんはドアをパタンと閉めた。ここクーラー無くて暑いんだから
開けてけよーコラー。俺は今まで読んでたガンガン(今俺のクラスで流行ってんの、
ジャンプなんてもう古いよ!)の厚い雑誌をベッドの下から取り出すとまた元の
ページを探して目を落とした。この微妙なマニアっぽさがたまんないんだって。
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4_:2002/05/31(金) 09:29

それにしても明日は終業式だ、終わると待ちに待った夏休みだ。
そんな事を考えながら短パンとグーグーガンモのTシャツでゴロゴロしてたら
下から母さんが電話よって呼ぶ声がした。暑いし丁度いいやって俺はそのまま
漫画を持って部屋を飛び出した。

『もしもぉ〜し!しょうくぅ〜ん?』
電話の相手は同じクラスの松潤だった。俺コイツの喋り方鼻についててヤだから
うげって顔でつい電話出ちまったよ。したら母さんが横でオヤツの用意しながら
また睨んでたから俺はそのまま子機持ったままリビングの外に出た。モワッと
した湿気でかなり暑いけど電話を盗聴されるよりマシだよな。プラリバシーって
やつだよ。(俺ジオス行ってるから英語も出来る)
「何だよ松潤、電話して来んなっつっただろバカ!」
『ごめぇん〜』
こいつの甘ったれた喋り方って誰か注意しねーの?まるでオンナみたいじゃん。
「で用件は何だよ、もうすぐオヤツの時間なんだからさっさとしろよ」
『オヤツ?ボクも行っていい?』
「ダメ、絶対死んでもダメ、来るな。」
『なぁんでぇ〜しょうくんいじわるしてるとおばさんに言いつけるからねぇ!』
松潤の声が泣き声に変わった。コイツは子分の内の一人なんだけどホント弱くて
鬱陶しいからちょっとヤなんだよな。俺のグループん中でもカメって呼ばれてる。
そう言えば松本潤って名前だって何となくオンナみたいじゃん。
「あら、潤ちゃん来てもらえばいいじゃない」
リビングのドアが開いてその向こうで母さんが立ってる。盗み聞きだ!
.

5_:2002/05/31(金) 09:29

「いや違うよ、そうじゃなくて・・」
言い終える前に母さんは俺から電話を取り上げて機嫌良く松潤なんかと話してる。
電話の内容は多分松潤が今からここへ来る約束を取り付けてるみたいな感じだった。
「ちょっと母さん、ダメだって!」
母さんの白いエプロンを掴んで引っ張ったけど母さんはそのまんま。何で!
「・・そう、じゃあおばさん玄関の鍵開けたままにしておくわね、門開けれる?」
「ちょっと母さーん!」
もう!俺の背があと10センチ・・・20センチ高かったら母さんから電話取り上げて
やるのに。俺は母さんの周りをピョンピョン跳ねながら電話を奪い返そうと必死
だった。母さんはお気に入りの松潤と楽しそうにまだ喋ってる。見かけに騙されん
なよ、あいつオンナみたいな顔して結構ズル賢いんだから!
「じゃ、楽しみにしてるわね、潤ちゃん。」
そう言って母さんは電話を切ってそのままリビングに戻って行った。
これだからオトナってやつは!盗聴した上に人の電話まで切っちゃうなんて
常識ってやつが無いんだよ常識ってやつが!

リビングの前の廊下で俺はグーグーガンモの顔でブシッと鼻をかんでやった。
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6_:2002/05/31(金) 09:31

2. 松潤ムカツク

「しょうくぅ〜ん!」
リビングで怒って昼のワイドショー見てたら玄関から松潤の抜けた声が聞こえた。
母さんが玄関に行く前にダダダダダッて凄い音が聞こえてドアの向こうからピンク色
のオーバーオールを着た松潤が飛び込んで来た。コイツバッカじゃないの?こんな
ピンクとか着て恥ずかしくないの?そう思ったけどグーグーガンモがピンク色だった
から俺は背中を丸くしてそれを隠した。
「しょうくん、しょうくんやったね!」
松潤はほんと頭の中で考えた事すぐ言っちゃうから聞いてて分かんない事を口にする
事がよくある。ぐりんぐりんのオンナみたいな目をキラキラさせてこっち向いてるけど
何言いたいのか全然分かんない。何がやったね、なのよ。
「あのさ、ワッケ分かんない」
ぷいっとテレビの方に向いてやった。コイツ来たらオヤツ減るからヤなんだよ、もう。
「あのねしょうくん、夏休みの子供合宿にボクも申し込んだんだ、一緒だよ!」
「え゙ぇっ?」
「しょうくん、4年生の夏休みをしょうくんと過ごせるなんてボク嬉しい!ねぇしょう
くん何持ってくの?ボクはプレステでしょ、ゲームボーイでしょ、ポケベルでしょ、
あと漫画とオカシと・・・」
「お前なんか一緒に行くかよ!絶対ヤだもん俺!」
もーすっごいムカツイてたら大声で叫んだ。だってただでさえ田舎で合宿なんてヤな
のに何で同じクラスのコイツと行かなきゃならねーの?田舎行くなんて恥ずかしいから
どうやってクラスの奴に誤魔化そうか考えてたのにコイツとなんか行ったらすぐ喋っ
ちゃうじゃんか!それに夏休み中こんなうるさいのと一緒にいたら頭おかしくなるよ!
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7_:2002/05/31(金) 09:31

「・・・しょうくん・・」
気付いたら目の前では松潤がでっかい目に涙いっぱいためてこっち見てた。やばい。
母さんすぐそこにいるのに・・・
「潤ちゃんはいオヤツ、今日はケーキよ、はいどうぞ。」
テーブルの上にケーキを置いた母さんは笑ってたし松潤もそれで泣き止んだみたい
だけど俺は心臓を掴まれたみたいに縮こまってた。だって母さん・・・

「翔ちゃん、後でお話がありますからね」

絶対、絶ッ対怒ってた。これも全部松潤が悪いんだ、松潤が人ん家来るから、変な
合宿に参加するって言うから、全部全部松潤が悪いんだ。俺が悪いんじゃないもん。
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8_:2002/05/31(金) 09:31

「しょうくん、おパンツ多めに持ってく?」
恥ずかしそうに松潤が言ってたけど俺はしかめっ面で無視してやった。どうせ後で
たっぷり絞られるんだ、もうやぶれかぶれってヤツだって。
「ボク最近オネショの回数減ったんだよ」
って松潤が嬉しそうに耳元で言ってたけど俺はそれも何とか無視してやった。それが
何だよって凄いクールな表情だったと思う。アーノルドシュワルネガーみたいな感じ?
あ、ロボコップでもいいや。
「・・前までは週に7回だったけど最近6回になった!」
それってほとんど毎日じゃねーかって突っ込みたかったんだけどさ、俺その辺の
軽い男じゃないからグッと堪えた。それより俺はその後の説教ってやつがホント
恐かった。あぁいやだ。

イチゴケーキを食べながら俺はズズッと鼻をすすって、ピーコのファッション
チェックに夢中になった。
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9_:2002/05/31(金) 09:32

3. 乗り物ムカツク

終業式が終わって通知票を貰ったらすぐに俺は家に帰った。
だって学校になんかいたら夏休み何すんのとかすぐ聞かれて困るじゃん!昨日
松潤にはしつこく口止めしといたしあいつが帰ってからも潤ちゃんと仲良く
しなさいって死ぬほど絞られたから(潤ちゃんだって!ウゲェー!)子供合宿
の事については諦めた。だけどこの夏俺はサーファーになるってもう皆に言っ
ちゃってたからほんと必死で家まで走って帰った。子供合宿なんてそんなガキ
しか行かないじゃん、だからもう家までダッシュで帰った。モノサシ机の中に
忘れたけど気に入ってる水色のクールコンパス忘れなかったから多分大丈夫。
「翔さん、用意始めなさいよ」
「はーい」
家に帰って漫画読んでたら、幼稚園へ妹の舞を迎えに行って帰ってきた母さんが
声をかけた。何か母さんって舞が生まれてからちょっと俺に冷たい気がする。
だって舞は母さんがずっと欲しかった女の子だしリボンとかつけれるじゃん、
でも俺はそんなの無理だから母さん多分冷めちゃってんだよ。いわゆる倦怠期。
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10_:2002/05/31(金) 09:32

「しょうちゃ、すてられるの?」
棒のついたペロペロ飴を舐めながら舞が鞄に物を詰め始めた俺に言った。それ
を聞いた母さんはウフフと笑ってそのままエプロンをつけてキッチンに消えて
行った。否定しろよなバカ!
「しょうちゃ、はやくかえってきてね」
口の周りをベタベタにした舞はそう言ってニヘッと笑った。舞は笑うと俺に
ソックリなんだ。将来絶対美人になるぞ。
「翔さん、明日の朝のお弁当はハンバーグがいい?オムライスがいい?」
キッチンから母さんが声をかけた。そう、明日からウッザイ合宿なんだよな。
朝の6時に駅集合なんて早過ぎるよ。考えるだけでウンザリした。だって
コンビニもゲーセンも無い所に行かなきゃならないんだから。都会人の俺
に取ってそれは地獄だよ、ホント。田舎なんてなくなっちゃえばいいのに。
「ハンバーグとエビフライ!」
キッチンに向かってそう叫ぶと母さんのはいはいと言う声が聞こえた。
返事は一回っていつも自分が言ってんじゃん!
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11_:2002/05/31(金) 09:33

――朝、パグみたいな顔で俺は集合場所に立っていた。
だって早いんだもん、ここまで母さんは車で送って来てくれたけど俺を
降ろすとここ駐車禁止だからってそのまま帰っちゃうんだもんな。いくら
舞の幼稚園があるからって冷た過ぎるんじゃないの?つーか眠過ぎて目が
ヤバい位開かないんだけど。それだってのにコイツは・・・。
「しょ〜うくぅぅんっ!」
もう嫌だ帰りたい、このまま電車乗ってコイツとど田舎行くのヤダ。
「しょうくん、見て見てこれオニューのバッグ!えろめすって言うんだ!
ママがこの前テストで100点取ったからって買ってくれたの!」
「あれ、松本君元気いいですね、はいじゃあ点呼取ったし電車乗りますよー。」
「はぁ〜い!」
こんなのと一緒に3週間も過ごせないよ、ヤダよ。超ウゼーよ。そんな俺の願いも
虚しく、そのまま俺達各小学校から集まったツイテナイ奴の団体は電車の扉をくぐ
って、ど田舎へのスタートを切った。
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12_:2002/05/31(金) 09:33

その電車は結構都会的で良かったんだけど、小さい駅で乗り換えたそのちっこい
電車がもうサイアクでほんと俺は吐きそうになった。しかもそれが長いっつーの!
もう2時間は乗ったんじゃないって所でまた乗り換え、次は走るとボロンボロン
って音出すバスで3時間、もう俺は死にそうだった。松潤なんてもう6回か7回は
途中で吐いてて引率の先生を困らせてた。俺は何とか堪えて吐かなかったけどそれ
でもサイアク、あともう1回これと同じ事をするのかと思うとほんと正直泣きそう
になった。母さんが鞄にスミント入れてくれてなかったら俺もヤバかったかもしれ
ない。そんな感じで始まったこの子供合宿はほんと俺にヤな思いしかさせないと
思った。バスから降りると辺りはいつの間にか昼を過ぎてて、そのバス停の前で
弁当を食べる事になったんだけどほんと殆ど食べれずにその弁当の時間は終わった。

東京よりうるさいセミの鳴き声と信じられないほどの量の緑に囲まれた俺は
フゥッと母さんみたいな溜め息をついた。
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13_:2002/05/31(金) 09:33

4. 田舎ムカツク

「はい、こちらは櫻井君がお世話になる大野さんご一家です」

順番に一人づつこの夏世話になる家に案内されるんだけど、俺が連れてかれた家
ってホントサイアクだった。何つーの?屋根がワラなの!最初豚小屋かと思った
もん。で、その豚小屋から出て来たのが、汚れた白いランニングシャツを着た
(もう汚くて茶色になってたけどね)ハゲたオッサンなの。腹が出ててほんと
最初ホームレスかと思った、マジ汚くて関わりたく無いタイプ!
「こんにちは、東京から来ました櫻井です。3週間よろしくお願いします。」
でもホラ、俺っていわゆる坊ちゃんだからきちんと挨拶(パターン4)したの。
だって真横に先生いたし、それにそのオヤジ真っ赤に日焼けしてて何されるか
分かんないと思ったし。最近何かとブッソウでしょ?だから。
「いやぁ、ほんとウチみたいな汚い家にこんな綺麗なぼっちゃん、本当申し訳
無いです。」
目の前のその黒いハゲはそう言って引率の先生に頭を下げた。一生懸命標準語
喋ってるんだけどハッキリ言って訛ってるのバレバレって感じで、それがまた
カッコ悪くて俺は心の中でウゲッて顔をしかめた。これだから田舎者は。ほんと
さっきからそればっか。田舎ってやっぱサイアク。
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14_:2002/05/31(金) 09:34

引率の先生が次の生徒を案内するために帰ってしまうと俺は何だか不安になった。
マジ?マジで俺、ここで3週間もいなきゃならないの?サイアク!持って来た
ブランド物のバッグ(母さんが貸してくれたやつ、ポチって名前だって)を
ぎゅっと握り締めた。ほんと生きて帰れるの?ワラで出来た社会の資料集で
見るような屋根を見上げたままそう思った。こんなボロい家、地震が来たら
一発だよ。
「・・まぁまぁ、か〜わいい子やねぇ!」
そのまま外で立ってるとタオルみたいの(それ手ぬぐいって言うんだって)
を頭に巻いたおばさんが奥から走り出てきた。何この人?オンナなのに真っ黒に
日焼けしてて変なの、着てる服もダサいし。香水もつけてないみたい。
「アンタ、この子が今年の東京からの子か?」
「そうじゃ、ほんま利口な顔しとるのぉ、慶応やと。」
「まるでオナゴみたいな可愛い子や、僕名前は?」
カチンと来た。誰がアナゴだよ!人間に向かって何言ってんだよ!ほんと
ムカムカしてたからそのまま帰ってやろうと回れ右したらそこには女の子が
立ってた。かわいい。すごい好み!
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15_:2002/05/31(金) 09:34

「・・・ただいま。」
俺がそのままそこに突っ立ってたらその子はそう言うと恥ずかしそうに中に入って
しまった。あ、そっちは豚小屋だよ・・ついそう声を掛けそうになってそれを喉の中
に押し込める。そうだよな、こんなカワイイ子が住んでんだから豚小屋な訳ないよ
な、立派な人間小屋だよ!ただちょっと豚小屋に似てるだけ。
「こらさと・・」
テレビでやってた映画でちょっとだけ見たやくざの映画に出てるやくざみたいな
喋り方で目の前の黒ハゲはその子に向かって言った。するとおばさんがそいつに
何かボソボソって耳打ちした。何だよ、誰かの目の前で内緒話はマナーがなって
ないって習わなかったのかよ。あ、田舎者だししょーがないか。
「さと、二宮さん家行ってこれ渡して来てちょうだい」
そのまま奥に入ったおばさんがその子に(さと!かわいい名前!)何か頼んでる
みたいだった。どんな声なのかな?東京にもメッタにあんなかわいい子いない。
着てるものはダサいけど白くてぷよぷよでクリクリの目で・・・。
「櫻井君、名前は」
「櫻井翔です、飛翔の翔の字です。」
ダメ、この子マジでメチャクチャカワイイ。本気かも。
だから将来のお義父さんにとくべつ丁寧に挨拶した。黒ハゲはまた感心してた。

案内された部屋の中は狭いし汚かったけど、あの子と同じ部屋だと分かって俺は
心の中でゴールを決めた翼君の気分だった。
.

16_:2002/05/31(金) 09:34

5. 二宮ムカツク

「ねぇしょうくん、家の人どうだった?ボクほんとサイアクなの!」
荷物を置いて集合場所に行くとすぐ松潤が泣きながら抱き着いてきた。松潤は
人より大分色が白いから周りがみんな黒いこんな所にいると余計に目立つ。
近くで見てもオンナにしか見えない。ちょっと周りに人がいたし恥ずかしかった。
「ねぇ聞いてよボクん家ねぇ、おばさんチョーデブなの!だからうわーデブだって
言ったらそこん家の子に殴られたぁ!うわー!」
そう言い終えるとすぐに松潤はわんわんと木造の校舎が見える運動場で本格的に
泣き始めた。つーかそれって殴られて当たり前じゃん、そういう事は思ってても
言ったらマズイ事くらい分かんないのコイツ?
「そいつ二宮って言うんだけどもーホントムカツク!」
・・・ん?二宮?頭の中でさとちゃんの事を思い浮かべる。おつかい頼まれてたよな。
ぼやっと炎天下の下そのまま立っていると運動場の隅にさとちゃんが歩いている
のが見える。何かスケッチブックみたいなものを持って白いTシャツに黄色い
短パン・・ほんとかわいい!もうたまんないよな〜。
「ちょっとしょうくん聞いてる?ヒドいと思わない?びぇー!」
「あー分かったよ泣くのやめろよお前!ウルセー!」
「しょうくんちっとも分かってなーいー!うわー!」
.

17_:2002/05/31(金) 09:35

「おい、泣き虫やい!」

そのまま松潤をテキトーになだめてるといやにムカツク声が聞こえる。
そっちを振り向くと松潤に負けないくらい肌が白いヤツがこっちに棒を向けている。
何か色は白いけど野生児みたい・・・。ボーッとそっち見てたらそいつ、こっちに
向かって棒を振り下ろしてきた。
「うわぁ」
地面にカッと音を立ててその棒がぶち当たる。あぶねー!無意識に突き飛ばした
松潤は歯を地面にぶつけてしまったらしくまだギャーギャー泣き叫んでる。
「しょうくん、ボクがでっぱになったらどうしてくれんのさ〜!」
「お前モトから出っ歯だろ!」
そっちに気を取られていると第2発目が振り下ろされるのが分かったから急いで
それをよけた。この野蛮人何すんだよバカ!また土の地面がカッと音を立てる。
「しょうくんソイツだよ二宮、ボクをぶったやつ!」
後ろで松潤がそう叫ぶのを聞いて俺はナットクする。なるほど、こいつなまいきな
顔してる、絶対俺のクラスにいたらチョーシの乗り過ぎて苛められるタイプだぜ。
.

18_:2002/05/31(金) 09:35

「お前、人の母ちゃんの事デブって何じゃ!あやまれ!」

周りには先生はいなかったしクールじゃない他のヤツなんかがスケダチする訳ない、
俺はそいつと見詰め合ったまま(オエ!)しばらくそのままでいた。ハッキシ言って
俺ケンカした事無いし(ケンカは話し合いが出来ない野蛮人がする事だった母さん
言ってた)どうやったらそいつの事泣かせられんのか分かんなかったから漫画で
見たカメハメハのポーズを取った。
「お前、どけ!俺はそっちのアホに用があるんじゃ!」
そいつの上の歯に銀歯が見えた。コイツ、かなりの狂犬だぜ。
「・・・お前、カメハメハでこっぱみじんになりたいか。」
「なにィ?」
どうやら相手はかの有名なカメハメハを知らないらしい。人生の半分以上ソンしてる。
これだから田舎者は。俺はネは優しいからそいつに説明してやった。
「カメハメハっていう技はな・・こうガーンと来てドーンなンだよ・・分かったか。」
実演付き、とくべつに一回だけ『か・め・は・め・は』のポーズをそいつに見せて
やる。そいつは棒を持ったままそれをじっと見ていた。ふ、ビビッたか。
.

19_:2002/05/31(金) 09:36

「何かよう分からんけど覚えとけ!」
後ろに先生が来るとその二宮はそう言って校庭のすみにあるヒマワリ畑に消えて行った。
そのまま俺達はつぶれかけの校舎の中に案内されて、そのまま解散した。帰り松潤が
いっしょに来てとうるさかったけど俺はさとちゃんに会いたかったからすぐに帰った。
でも家にはさとちゃんはいなくて、仕方が無いから松潤の家、つまり二宮の家をおば
さんに教えてもらってたずねる事にした。他校から来ているヤツはマジメそうなヤツ
ばっかだったしそれだったらまだうるさい松潤の方がマシだった思ったから。ぜったい
寂しかったからとかじゃないね!

その二宮の家にさとちゃんが遊びに来てたのを見た俺は、さっきのカメハメハを自分
めがけてうちたくてしかたなくなった。(出ないけど)
.

20島流し:島流し
島流し

21島流し:島流し
島流し

22島流し:島流し
島流し

23島流し:島流し
島流し

24島流し:島流し
島流し

25島流し:島流し
島流し

26_:2002/06/03(月) 22:59
>>20 訂正

6. 黒豚ムカツク

ごめんくださいって丁寧に挨拶したのに、そのボロっちいさとちゃんチックな家には
ガキしかいなくて(ガキってさとちゃんの事じゃないよ)俺はなんだかガッカリした。
ちゃんと挨拶してソンしたじゃねーか。
「あ、お前・・」
目の前の豚小・・部屋には二宮とさとちゃんがいて、足元には体中にラクガキされた
松潤が転がっていた。(ちょっと面白かった)
二宮の手にマジックがあるのを見て、俺は
「松潤に何すんだよ!」
って言ってやった。フダンこんなの言わないんだけど、ちょっとさとちゃんにオトコ
らしいトコ見せとこっかと思って・・・。オトコごころってやつだって。キッて二宮を
かっこよく睨んでるとさとちゃんがそれ見てるのが分かった。あー見てる!さとちゃん
こっち見てる!俺は羽根が生えて天国に飛んでっちゃいそうになった。だってさと
ちゃんがうるうるした目でこっち見てるんだもん!きっとカッコイイって思ってるんだ!
でも俺はそれに気付かないふりして松潤のそばにしゃがんで
「大丈夫か松潤?ケガはないか?」
ってかっこよく、んー多分トランクスみたいな感じで言ってやった。俺の髪はちょっと
茶色がかった黒でトランクスみたいな銀色じゃないけど、さとちゃんはきっと俺のこと
カッコイーなんて思ってるはず!チョー照れる!
.

27_:2002/06/03(月) 23:01
「こいつええかっこしぃやから俺きらいじゃ!」
二宮のキンキン声がチョー耳にささって痛い。もー何コイツ?さとちゃんに俺の
かっこいいトコ見せてんだからジャマすんなよ!そう思って怒鳴ってやろうとしたら
奥からカバがダンスしてるみたいな足音が聞こえてきた。
「カズ〜!カズ〜!」
って声も聞こえる。何だって思ってたら二宮が
「あ!母ちゃん!」
って叫んで汚い板で出来た廊下をドタドタ走ってった。ヤッパあれだよな、田舎者って
廊下は走っちゃいけないとか多分習わないんだよな、だって学校だっていまどき木造
だったしあんなの火事とか地震とかどうするつもりなの?ほんと田舎ってヤダ。
.

28_:2002/06/03(月) 23:01

て言うかひとつ気付いた事があるんだ。田舎の家って多分超つくりが似てると思う。
ワラの屋根でしょ、それで木で出来た台風の時使うみたいなドアがあって、その奥が
すぐ家の中なの、つまり多分俺が思うにそれが玄関ってヤツ。で、玄関入ったら何か
靴脱がなくてよくてそこに台所があるの、よく分かんないけどジャグチとかナベとか
あるから多分台所だと思う。で、その台所のすぐ横には広いタタミの部屋があって
そんでその真ん中にはながーい棒みたいのが垂れ下がっててその先に傘の取っ手
みたいのが付いてて、んでそれにナベがかけられてあるの。その下には砂があって
(でも多分砂場の砂とはちょっと違うみたい)木のワクがあって、俺ん家にある
暖炉とはちょっと違うけど火がついてるの見たから多分暖炉?ナベがあるけどまあ
いいや、そんな感じ。変わってるね。で、その奥にフスマがあって廊下があって
部屋が何個かあってって感じ。天井がスッゲー高い、ほんと体育館みたい。
田舎の人は体育館に住んでんの。不思議発見!
.


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