「ぐ…っ!」
突然の衝撃波に、茂名が吹き飛ばされた。
ごろごろと路地裏を転がり、その勢いを利用して再び立ち上がる。 AA
茂名の視線の先にあったのは、先程までの真っ黒い影とは対照的な、真っ白い体をした人間だった。
だが、その顔はのっぺらぼうのように目も鼻も口も存在しない。
「貴様…『矢の男』…か…?」
「…その通り…確かに私は『矢の男』だった。だが、今となってはその呼び名も意味はない。
素晴らしい気分だよ。私という心の中に、幾つもの新しい人格がある。
その全てがお互いを補い、完璧に近い精神を形作っている。 King of The World
これからは…そうだな。<インコグニート>とでも呼んでくれ。この姿こそ…世界の帝王に相応しい」
「今じゃ!」
「ぅあああっ!!」
意味を成さない叫び声。
萎えそうになる両足に力をこめ、震える手を握り締めた。
<インコグニート>の残った腕を壁に押さえつけ、B・T・Bを具現化。
クゥゥ―――――ルッッッ
(刻むぞ静寂のビート!)(凍てつくほどにCoo―――――ooolll !!)
B ・ T ・ C
一瞬のタイムラグも無しにビート・トゥ・クールを発動。閃光の拳を心臓へと打ち込み―――