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スタンドスレ小説スレッド

1新手のスタンド使い:2003/11/08(土) 01:58
●このスレッドは『 2CHのキャラにスタンドを発現させるスレ 』の為の小説スレッドです。●

このスレでは本スレの本編に絡む物、本スレ内の独立した外伝・番外編に絡む物、
本スレには絡まないオリジナルのストーリーを問わずに
自由に小説を投稿する事が出来ます。

◆このスレでのお約束。

 ○本編及び外伝・番外編に絡ませるのは可。
   但し、本編の流れを変えてしまわない様に気を付けるのが望ましい。
   番外編に絡ませる場合は出来る限り作者に許可を取る事。
   特別な場合を除き、勝手に続き及び関連を作るのはトラブルの元になりかねない。

 ○AAを挿絵代わりに使うのは可(コピペ・オリジナルは問わない)。
   但し、AAと小説の割合が『 5 : 5 (目安として)』を超えてしまう
   場合は『 練習帳スレ 』に投稿するのが望ましい。

 ○原則的に『 2CHキャラクターにスタンドを発動させる 』事。
   オリジナルキャラクターの作成は自由だが、それのみで話を作るのは
   望ましくない。

 ○登場させるスタンドは本編の物・オリジナルの物一切を問わない。
   例えばギコなら本編では『 アンチ・クライスト・スーパースター 』を使用するが、
   小説中のギコにこのスタンドを発動させるのも、ギコにオリジナルのスタンドを
   発動させるのも自由。

 ★AA描きがこのスレの小説をAA化する際には、『 小説の作者に許可を取る事 』。
   そして、『 許可を取った後もなるべく二者間で話し合いをする 』のが望ましい。
   その際の話し合いは『 雑談所スレ 』で行う事。

530新手のスタンド使い:2003/12/30(火) 22:34
喰われながら生きているレモナにワロ他。

531新手のスタンド使い:2003/12/30(火) 23:28
ボスケテはすごいよマサルさんですかな?

532新手のスタンド使い:2003/12/30(火) 23:58
「ボス 決して走らず急いで歩いてきて
そして早く僕らを助けて」の略

533N2:2003/12/31(水) 20:39
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534N2:2003/12/31(水) 20:40

絶対包囲.com

「よし、それじゃ行ってくるぞ!」
ギコ、本当に大丈夫なのか…?
はっきり言って、虚勢を張っているようにしか見えない。
「…モナ太郎さんッ、あいつ本当に大丈夫なんでしょうか?」
「彼もスタンドが発現してもう何日か経っているのだ、きっと彼なりに策があるのだろう」
モナ太郎さんも随分と楽観的な意見だし…当てにならない。
「でももし駄目だったとしたら…」
オレが押さえ切れない不安をぶつけると、モナ太郎さんは気まずそうに目線をオレから逸らした。
「その時は…諦めろ」
な なんだってー!(AA略)
「言っておくがなギコ屋、戦いの世界においてはいざと言う時には自分の身内さえも見捨てて生き延びなくてはならないこともある。
私としても確かに彼を易々と見捨てたくはないが、もしそれで駄目だったら我々だけでも逃げて策を練り直すしかない」
「そんな…」
そりゃ確かにこの人の言うことは正論だ。
でも…オレにそんな事が出来るのだろうか?
もしギコが危機に陥ったなら、オレがどんな行動に出るか…はっきり言って自分でも予測出来ない。
とにかく今は、ギコの無事と勝利を祈るしかない。
「ギコ、絶対負けるなよ!!」
ミィの元へと向かう相棒はオレの声を聞いて一瞬立ち止まり、( ̄ー ̄) ニヤリと笑ってこちらを振り向いた。
「OK牧場」
…古い。お前何歳だ。

「ギコクン、マズハ キミカラ ミィノナカマニ ナリタイヨウダネ」
ミィと対峙したギコを、彼女は純粋無垢な笑顔を浮かべながら嘲笑った。
顔と言ってる事のギャップが大きすぎる。やっぱり怖い。
「…誰が手前なんかと同類になりたいと思うか、ゴルァ!」
ギコも負けじと言い返す。誰だってそー思う。オレもそー思う。
「激しく同意!!」
しかし彼女は尚も言い放った。
「・・・アーア、キミモ オトナシク センノウニ カカッタママノホウガ シアワセダッタノニネ・・・。 アノカタハ コレカラ セカイサイキョウノ AAトシテ コノヨニ クンリンナサルノヨ。
ソレナノニ ヤスヤスト ギコヤニ センノウヲトカレテ、ソレデ サイゴハ ワタシノチカラデ シンジャウンダカラ」
「…言っとくがな、俺は奴を最強になんかさせるつもりはねえ!多大なる犠牲を払ってまで強さが欲しいのか!?」
「おかしいぞ!ぜったいおかしい!!」
「ツヨサトハ タタカイヲモッテ シメサレルモノ、ヘイワトハ タダイナル ギセイニヨッテ カチエラレルモノヨ」
いきなりミィが思想的な話を持ち出した。これまでが感情論だったのに、御都合主義も甚だしい。
「ふざけるな、奴は別に世界平和の為にやってるんじゃねえ、ただの自己満足の為に人を殺しているだけだ!」
「そーだそーだ!」
明らかにあの男を侮蔑した発言に一瞬ミィの表情が乱れたが、じきにもう付き合っていられないと言いたげな顔をした。
「・・・モウ キミニハ カエスコトバモ ナイワ。サア、オトナシク ミィトオナジセカイノ ジュウニンニナリナサイ! テイコウシナケレバ ラクニイケルヨ」
「やってみな、手前の攻撃は俺には通用しない!」
「ソレジャア エンリョナク・・・ ダッコ♪」
ミィは自分が飛びかかる形でギコに接近し、スタンドで抱き付こうとした。
「ギコッ!!」
だがギコは全く抵抗しようとしない。
いや、むしろ全てを受け入れようとしているようにさえ見える。
そしてとうとう彼女のスタンドはギコをその腕の中に抱き込んだ。
「サア・・・ネムリナサイ。
・・・ツカレキッタ、カラダヲォーナゲダシテ♪」
ミィは自分のセリフが某歌謡曲の一節である事に気付き、調子に乗って途中から歌い始めた。
…やっぱり古い。こいつも何歳だ。
それでも相棒は何もせず、ただじっと目をつぶっていた。
…やる気が感じられない。こいつホントに死ぬ気か!?
「コーノーマチワー、センジョオーダカラ、オトコーハミンナ、キズヲ、オッタ、センシ♪」
「ギコ、何やってんだ!お前、遂におかしくなったのかァ―――ッ!?」
しかしギコはオレの言葉にさえも全く応じようとしない。

535N2:2003/12/31(水) 20:41

だがここでモナ太郎さんがある事に気付いた。
「ギコ屋よ、ちょっと彼を見ておかしいとは思わないか?」
おかしいって言っても…全然何も変わった様子は無い。
「失礼ですけど、何にもいつもと変わった様子はありませんよ」
「…その事自体がおかしいとは思わないか?」
その事自体が、って言っても、別にギコの顔に何か付いてる訳でも…。
…ってあれ?
「そう言えば何でミィのスタンドに抱きつかれて平気なんだ!?」
ギコの耳は全くいつもと変わり無く、また変化する兆しすら見られない。
「だが一体どうして…。彼には一体まだどんな能力が備わっているというのだ?」
よく見ると、ミィの表情に余裕が無くなっている。彼女もまたこの異変に気が付いたようだ。
「ドウゾーココロノ! イタミヲー! ヌグウッッテェーチイサナコドモノ! ムカシニ! カエェッテ! アツイムネーニー! アマエェーテェー!!」
もう歌もやけくそになっている。…失礼だが、さっきまでと大して変わっていないような気もするのだが。
そうして一番を聞き終えると、ようやくギコは目を開けて喋り出した。
「…どうだ?やっぱり手前の攻撃は俺には通用しないだろ?」
そう言ってギコは、今まで見えてなかったスタンドを出した。
「『バーニング・レイン』!ゴルァ!!」
ギコのスタンドの一振りは、呆気に取られていたミィの顔面に綺麗に入った。
高速で吹っ飛ばされたミィは壁に衝突し、見事にそこには穴が開いたが、それでも彼女は瓦礫の中から這い上がってきた。
言ってる事の不気味さにも増して、このタフネスさはバイオ級の恐怖だ。
「…推進力を加えたってのにまだ立ち上がれるとは…」
ミィの顔面はモウ ミテランナイ有様だったが、少しずつ再生しているようであった。
戻る様がまたグロテスクだ。
「・・・ドウシテ? ドウシテ ミィノウィルスガ キカナイノ? ドウシテ? ダレカオシエテ・・・」
彼女は半分錯乱しているようである。
ギコはちょっと勝ち誇ったような顔をして、ミィに言い放った。
「手前はこの音に聞き覚えはあるか?」
そう言ってギコは目をつぶり深呼吸をした。
Coooooo…という呼吸音には、オレも聞き覚えがあった。
この呼吸音は…、確か倉庫で戦った時にも聞いたはずだ。
そしてモナ太郎さんも知っているのか、相当に驚いているようだった。
「馬鹿な…この呼吸はッ!じじいのッ!!」
「どうしたんですか、一体!?あの呼吸は…?」
モナ太郎さんが答える前にギコが口を挟んだ。
「これは『波紋』と言ってな…特殊な呼吸によって生み出されるエネルギーであり、その力は言うなれば太陽のエネルギー…」
ああ、何だあれが波紋か。
「ギコ、波紋の事はもうモナ太郎さんから聞いたから…」
自信満々に知識の披露をしようとしていたギコは、突然知らされた驚愕の事実に唖然とした。
「もしかして説明不要ですかーッ!?」
「YES!YES!YES!“OH MY GOD”]
「…どこかでこんな会話を聞いたような…」
モナ太郎さんはデジャヴュにでもあったかのような顔をした。
一方ギコは最初はいじけているようだったが、急に何かを思い立ったのか立ち上がった。
「…それはともかく、俺も元々はこの能力が身に付いていた訳じゃなかった。
しかし、あの男は俺に波紋の才能があると見抜き、ちょっとしたトレーニングを課した。
奴もあの時は洗脳によって俺が完全服従していたからな、吸血鬼にとっては忌むべき存在の波紋使いを自分で生み出すことにはなるが、俺が更に強力な部下となる事の方が得に思えたんだろう。
…ところが俺に取り憑かせた霊魂が出来損ないの奴で、その内俺が奴を倒して自分こそが最強になろうと目論見始めたもんだから、
それで目障りになって奴はお前に俺を始末させようとしたんだ」
「なるほどな、自分で生み出してしまった波紋使いを始末するのは危険が伴うからか」
「そして俺のスタンド『バーニング・レイン』は本来エネルギーを司る能力!波紋が無ければその捻出には相当苦労したんだろうが、
今の俺には幾らでもエネルギーを作ることは出来るぞ!」

536N2:2003/12/31(水) 20:42

再びギコは『波紋の呼吸』をした。するとみるみるうちにスタンドの手には赤い光がともり、その輝きはますます強くなっていった。
       バーニング・ショット
「喰らいなッ、『火炎弾』!!」
そうギコが叫ぶと、「バーニング・レイン」の掌からは無数の紅い色をした銃弾が放たれた。
マシンガンかのような銃撃を受けたミィは、その傷口から炎が吹き出ていた。
「さて、これだけやればいい加減くたばるはずなんだが…」
しかしそれでもミィは生きていた。
しかもその表情には余裕すら感じられる。余計不気味だ。
「ギコクン・・・ミヤブッタワ、アナタノ ケッテイテキナ ジャクテンヲ。 ワタシヲ ココマデ イタメツケタカラニハ モウユルサナイ・・・ モウトリカエシノツカナイ ハイジンニシテクレルワ!」
「何だと!?手前まだ減らず口を利くなら今度は完全に冷やし切った後に粉々に粉砕してやるぜ!」
「・・・アナタ、ドウシテ スタンドノ カタテシカ ツカワナイノ?」
その指摘にギコははっと驚いた。一体何がまずいのだろう。
「アナタノ ハモンジュツナラ タシカニ ワタシノウィルストカモ フセゲル・・・ケドソレハ コキュウダケデハ フカンゼン。
アナタハ スタンドノカタテヲ ジブンノタイナイニ イレルコトノヨッテ! ジカニ ハモンヲナガシテ ワタシノウィルスヲフセグノニ ジュウブンナハモンヲ ナガシテイルノネ!!」
…えーと、読みづらい。
「くそッ、まさかネタがばれちまうとは…」
「だからネタって何だよ!?」
「ソウトワカレバ! スタンドト ワタシジシン! ソノダブルコウゲキデ マズハアナタヲ イタメツケテアゲル! アノカタハ「バーニング・レイン」ハ スピードニトッカシタ スタンドダト オッシャッテイタワ。
タシカニ アナタハカタテデ ワタシノスタンドニハ ジュウブンタイショデキルワ。 デモテカズガフエレバ・・・ドウカシラ?」
ああもう何を言っているのやら。
と困惑するオレには全く関心を持たずにミィはスタンドと共にギコへと突っ込んだ。
「なら手前自身をぶっ潰すまでよ!」
ギコの攻撃は完全に相手の本体狙いだった。
しかし、攻撃を入れども入れども向こうは平然としている。
「ギコクン、アナタハ ホントウニ ツヨイオトコダワ・・・。ケド アイテガワルカッタワネ、 ワタシハナニヲサレテモ ゼッタイニシナナイ 『フジミキャラ』。
ワタシニハ カテナクテ トウゼンナノ。 ソレニキヅイテイナガラモ メサキノアンゼンヲモトメテ ホンタイネライスルナンテ・・・ アナタハ スタンドツカイトシテ マダマダワネ
ホントウハ コレカラ アナタノセイチョウヲ ミタカッタノダケレド・・・ アノカタニハ カンゼンニ シマツシロト イワレテイルシ、 ワタシヲココマデ キヅツケタウラミハ アナタノシヲモッテ ツグナッテモラウシカナイワ。
・・・ソロソロ オワリニシマショウ」

537N2:2003/12/31(水) 20:45

ギコが完全に無視していた「シック・ポップ・パラサイト」の一撃ががら空きの胴に入った。
ウィルスには感染せずとも、もろに喰らった攻撃は戦況を完全にミィ優勢のものとしてしまった。
ギコは血を吐きながら吹っ飛び、そのまま壁を破っても尚その勢いは収まらなかった。
すぐにプールに人が飛び込むような音がした。
「・・・オフロバマデ フキトンダヨウネ。 デモ イマノイチゲキデ モウアナタニハ タタカウヨリョクハ ノコサレテイナイ!
サア! マズハアナタヲ キノスムマデ イタメツケ、 ソシテ ジックリトジックリト ウィルスニオカシ、 ソノイシキガ ウシナワレルスンゼンデ クビヲ オトシテクレルワ!」
ギコ、絶体絶命である。
「ちっ、この距離では時を止めても彼を救えない…。ギコ屋、逃げる準備をした方が良さそうだな。さもないと全滅の可能性がある」
「そんな…! …おいッ、ミィ!お前の相手はオレがするぜ!」
戦闘に関して三流と言われるかも知れない。でもオレにはとても相棒を見捨てることなんて出来ない。
気が付いたら、口から勝手に言葉が飛び出していた。
「待て、死にたいのかッ!?」
モナ太郎さんの制止を振り切り、オレはミィ目がけて突っ走った。
しかし、彼女は全くオレには目も触れなかった。
「ワタシモ アノカタニ オツカエシテ モウ5ネン・・・ イママデ カズオオクノ シュラバヲクグリヌケ、 トキニハナカマヲ ミステサエモシタワ。
ケレド、 ソレハワタシニトッテハ ムシロセントウニオイテ ヨリテキカクナハンダンヲクダス ダイジナカテトナッタワ! アナタノ ヤスッポイチョウハツニノルホド ワタシハアマクナイワ!!」
距離の差はおよそ5m。オレのスタンドでは届かない距離だ。
「カクゴシナサイ、ギコッ! コレガ アノカタニ サカラウモノノ ケツマツヨッ!!」
スタンドのパンチが浴槽目がけて振り下ろされる。
「うおおおおォ――――ッ!!!!」
「クリアランス・セール」を全力で飛び出させる。しかし、射程が足りない。
「・・・オワッタワネ」

538N2:2003/12/31(水) 20:45

「…波紋の扱いが精密に行える者は、例えば水なんかに波紋を流して自在に形を操れるんだ」
相棒が浴槽の中から立ち上がった。その中にはまだ沢山残っているはずの湯が無い。
…否、それはギコの手の内で四角い形を帯びて存在していた。
「どおおりゃああぁ――――ッ!!」
ギコの手に持たれた水がスタンドによってミィに叩きつけようとされた。
確かに先手はミィの方であった。
しかしギコの「バーニング・レイン」はオレよりも更に数段上のスピードを誇っている。
ミィは水を真正面からぶつけられると、そのままその中へと閉じ込められた。
「・・・ゴボッ!? ガバゴボゴボゲボ!!」
「そして波紋にも通しやすい物と通しにくい物があってな、水とか油なんかは非常に伝導率が高いんだ。
例え不死身の貴様であっても水中に閉じ込められて俺の全力波紋を受けて無事でいられるかァ――ッ!?」
「ゴボゴボゴボゴボ!!!!」
        レモンイエローオーバードライブ
「喰らいなッ、『黄蘖色の波紋疾走』ッ!!」
スタンドの手から放たれた鮮やかな黄色をした波紋は、激しい放電音と共にミィを電流で包み込んだ。
「ガバ-------ッ!!!!」

数秒の後、ギコが波紋を解除すると形を失った水の中から黒焦げになったミィが力なく落ちてきた。
もう全く動く気配は無い。
「…やったのか、ギコ!!」
「いや分からん、こいつが『不死身キャラ』である以上は全く安心出来ん。だが今こいつが倒れている内に、早く兄貴を助けて目を覚ます前に逃げるぞ!」
ギコはそう言うとすぐに走り出して俺達を誘導した。
正直こいつを放置しておくのは不安極まりないが、かと言って連れて行った方が余計危ない。
オレは横たわるミィを尻目にギコを追って階段を上った。

539N2:2003/12/31(水) 20:47

廃ビルの3階。そこにギコの兄貴は捕まっていた。
俺たちがそこに着くと、その男は天井からロープで吊るされていた。
「兄貴ぃ――――ッ」
相棒ギコの姿を見たギコ兄貴は、最初はその光景が信じられないような顔をしていた。
「…お、お前は弟か!?弟なのか!!」
「兄貴、助けに来たぜ!!」
「…そうか、お兄ちゃんはお前が必ず来てくれるものだと信じていたぞ…」
…一人称が「お兄ちゃん」…。相当なブラコンと見た。
「嬉しいぜ、兄貴!俺のことを信じていてくれたなんて…」
それを平気で受け入れる相棒も然りだ。
「よし、あのミィが目を覚ます前に逃げるぜッ!!」
「あのミィって、あいつのことか?」
「…へ?」
ギコ兄貴が指差す先には、黒焦げになり立つことすらおぼつかないようだが、壁に寄り掛かりながらもまだ闘志を燃やすミィがいた。
「シツコクミィキタ━━━━━(゚∀゚;)━━━━━!!!!」
「何てこった…。これじゃあ何をやっても無駄じゃないか!!」
うろたえる俺たちの声が耳に入っていないのか、ミィは1人で喋り出した。
「・・・ニガサナイ・・・ケッシテ・・・ワタシハフジミ・・・ケッシテアナタタチニナゾ・・・」
「くそっ、こうなったら奴を分解してその隙に逃げるっきゃねぇ―――ッ!!」
「で、でもそれでもこいつが生きている限りはいつまでも追ってくるぞ!!」
「うろたえるな、弟、ギコ屋。既に決着は付いた」
「…は?」
理解不能のオレ達にギコ兄は語り始めた。
「よく見ていろ、あいつの顔を。どういう変化をするのかしっかりとその目で見届けろ」
「…?」
変化…と言ってもミィの顔は相変わらず怨念と闘志に満ちている。
…が、心なしか表情がさっきよりも穏やかなような…と思うと、みるみる無表情になっていった。
「おい、こりゃどうなってんだ!ミィ、手前一体…」
「・・・ヒガシ」
「はぁ?」
「ヒガシ・・・イカナキャ・・・ ヒガシ・・・ドコ?」
何だあれは。
あれは最早ミィとは呼べない。ミィの皮を被ったでぃだ。
「な…何なんだよこりゃ!?兄貴、一体何したんだ!?」
自分を揺さぶる弟を一見してからミィの方を向くと、ギコ兄はスタンドを発現させた。
「ってあんたまでスタンド使いかいッ!」
「私の能力『カタパルト』はスタンドによって分析した物質を材料から複製することが出来る。
今私はあのミィの脳細胞の一部から奴に気付かれぬうちに「でぃの脳細胞」を複製してそのまま埋め込んだのだ。
でぃ族の要素が少しでも加われば、しぃ族は呆気なく堕ちてゆく…。彼女は一生あのまま東を目指し続けるだろうな」
流石にちょっとやり過ぎのような気がするが…、でもこうしなけりゃオレ達が死んでいたのだ。
これが勝負の世界の掟なのだろうか。

540N2:2003/12/31(水) 20:48

モナ太郎が不審に気が付いたのは、3人が戦いを終え小休止している時であった。
蛍光灯の光が、おかしい。さっきから急に明るくなったり暗くなったりを繰り返している。
(…まさかッ!?)
3人は全く異変に気が付いていない。今から口で言っても間に合わない。
「スタープラモナ・ザ・2ちゃんねる」

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

(ドォ――――――ン)
モナ太郎は3人をスタンドで掴むと、窓の方へと勢い良くぶん投げた。
そしてすぐに彼自身も窓へ向け駆け出し、まさに飛び込もうとしている時に時間が切れた。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

4人がガラス窓を破って外へ出た次の瞬間、つい一瞬前までいた廃ビルは雷の如き電流に包まれた。
「………!!!!!!??????」
3人は時の止まる前後の状況の余り変化に全く思考がついていかなかった。
「って何じゃゴルァァ――――ッ!!」
「…なっ、これは一体…!?」
「うわああああああ!!!!」
建物は見るも無残に崩れ去っていった。
もしモナ太郎が何も気付かずにあのまま建物の中にいたら、命は無かっただろう。
着地した時には、もう廃ビルは完全に原型を留めていなかった。

541N2:2003/12/31(水) 20:49

「…酷い真似を…」
ギコは廃墟を見つめながら1人呟いていた。
ミィはあの電撃で焼失したのだろう。
確かに自分を殺そうとした相手ではあったし、あのまま生きていたとしても決して幸福な人生を歩んでいたとは思えないが、
それでもギコは突然の惨劇に憤りを感じずにいられないようであった。
ギコ兄はそんな弟を尻目に「カタパルト」をコンクリートの山に登らせていた。
「…『カタパルト』でこの瓦礫の山を視たのだが、炭素反応は確かにあるがどれも微塵に分散している。
ましてや、生体は全く存在していないな」
ミィの結末を、ギコ兄は確かなデータから証明付けた。
それをギコは、ガラスを爪で擦る音を聞くような顔で聞いていた。

でも、一体誰がこんな真似をしたというのだろう?
これが単なる事故のはずなんてない。
何者かがオレ達を始末するためにやった事に違いない。
「…モナ太郎さん、これは一体どういう事なんでしょう?」
この事態に気付いたのはモナ太郎さんだけだ。
彼に聞けば何か知っているかもしれない。
「…分からんな。ただこれがスタンド攻撃であることは間違い無いのだが…」
オレの期待も空しく、モナ太郎さんも何も知らないらしい。

542N2:2003/12/31(水) 20:50

「…そんなの、奴の仕業に決まっているさ。
…言っとくが、俺たちを今暗殺しようとしても無駄だ…止めておけ」
突然ギコは右の拳で左の掌を叩いた。
そこから高速で銃弾が飛び出す。
それは近くのビルの壁にぶつかって反射し、その先には…人!?
いや違う、あれは人ではなく、人の形をした…光?
その右手には相当な大きさの金色に光る球が乗っている。
その光る人は自分に迫る弾を左手で指さすと、バリッ!という音と共に放電してかき消した。
「やはりな、ビル1つ崩壊させる電気を使えるスタンドと言ったら、奴の部下では手前だけだ」
自分の目論見を見破られたことを知っても、そいつは余裕のある含み笑いをしながらギコを見下ろした。
「流石だよギコ。奇襲から見事に逃れた時点で作戦が失敗したことは分かっていたが、私の行動をここまで見破るとは思いもしなかった」
「作戦が失敗した…って言っときながらその手にある電気の塊は何だ?」
ってあれは電気の塊だったのか。
もしあんなもん落とされてたら真っ黒焦げじゃ済まされない。
ギコが気付いていなかったら今度こそ命が無かっただろう。
「ハハ、失礼失礼。まあ、これ以上ここに居座っていてもしょうがないから、そろそろ帰らせて貰うよ」
電気の男はそう言って手の上の光を消滅させた。
「…待て、貴様どうして自分の仲間さえも巻き添えにした?」
作戦も失敗し、いざ帰ろうとする男をギコは呼び止めた。
「…元々君の兄上は君たちを全滅させる為の囮だったのさ。本当はビルに入った途端に殺しても良かったんだけど、
そういうのは私の美学に反するんでね…。元々それはあの方直々の作戦だったんだけど、ミィの奴はそんな事も知らずに見張り役になると言い出してね、ハハ、笑っちゃうよ」
…こいつ、自分の仲間が死ぬと分かっていながら…!
「手前、分かってたんならそうだと言ってやれば良かったじゃねえか!それなのに何で見殺しに…」
怒るギコを呆れたような顔で男は見た。
「そもそもあの方はあいつを前々から鬱陶しく思われていてね、不死身の肉体に危険なウィルスのスタンド、
自分の言いなりになっている内は良いが、もし離反でもしたなら脅威になりかねないからね。
あの方をそれを前々から私に漏らしていたから、事のついでに奴を始末したって訳だ。ハハッ、哀れな女だよ。
まさか奴も自分が見捨てられる側に立つなんて思っちゃいなかっただろうに」
…こいつぁーメチャ許せんよなあー!
「おいッ、電気!お前幾ら何でもひどすぎだぞ!!」
ギコ兄はそんなオレを見て疲れたような顔をしながら言った。
「…お前はもう少し冷静になれないのか?」
「…ハアッ!?」
「奴らとて馬鹿じゃないんだ、そういう『粛清』も時として必要になるものなのだろう」
「でもッ、だからってあいつのやった事は…」
「まあ待て、私が言ったのは一般論だ。大きい組織を維持する為には時には無実の人間を始末する必要も出てくる。
…但し、こんな自分勝手な人間の我儘に付き合うような男にそんな事をする権利があるとは私は思わん」
何だ、ギコ兄も冷静な風で結構分かってるじゃん。
「だから既に鉄筋を寄せ集めて槍に作り変えた。喰らえッ!」
ギコ兄は背後に回りこませたスタンドに鉄槍を投げさせた。
だが、相手はそんな攻撃にはお構いなしであった。
「…そろそろ時間だ。いい加減スタンドを遠征させたままではあの方の電気マッサージの時間に間に合わなくなる。
今日はこの辺で帰ることにしよう」
電気の男はそう言い残すと、辺りは雷の落ちたような光に包まれた。
…見ると、もうあいつの姿は無かった。
「畜生、逃げやがったか!」
「この周辺には異常なイオンの流れは見つからない…、どうやら本当に逃げたらしい」
悔しいが、今日の所は勝負はお預けのようだ。

543N2:2003/12/31(水) 20:51



「…でも不安ですよ、あなたが帰っちゃうなんて」
アナウンスが聞こえてくる。モナ太郎さんが乗る飛行機の搭乗の時間が近いらしい。
「本当は私もまだここにいたいのだがな、私も財団の関係者である以上どうしても世界各地を回らなくてはならないのだ」
モナ太郎さんがいなくなってしまって、果たしてオレ達は大丈夫なんだろうか?
「心配すんな相棒!この人がいなくたって俺がいるじゃねえか、ゴルァ!」
「そうだ、君には心強い仲間がいるじゃないか」
…そうだ、そうだよな。
オレにはギコというこの世で最高の相棒がいるじゃないか。
こいつさえいてくれれば、どんな奴が出てきたって大丈夫…のような気がする。
「それじゃあ、元気でな。私も暇を見つけ次第なるべくこの町に来るよう心掛ける」
そう言ってモナ太郎さんは去って行った。

「よーし、ギコ!絶対にあいつらをブッ倒すぞ!!2人で頑張ろう!!」
そう意気込むオレを、ギコは不安そうな顔で見てくる。
「何だよ、いきなり怖気付いて!さっき大丈夫って言ったのはお前の方だろ?」
「…いや…さ…、何だか俺の後ろから鋭い視線が…」
後ろ…?
ギコの後ろにあるものと言ったら電柱くらいしかない。
とその陰に何かが見える。
…あ。
「…ギコ屋よ、貴様のせいで弟は危険に晒されているのだぞ…」
うわあ。黒いオーラと共に発せられる言葉には凄みがあるッ!
「だがな、弟が貴様如きにわざわざ力を貸すと言っているのだ、私もこの戦いに協力しよう…。
但しッ!それはあくまで弟に対してだ、お前にではないッ!!」
オレもそこまで邪険に扱われるとは…。
「…私はいつも最寄の電柱の陰から『お前』を暖かく見守っているぞ。
…それとギコ屋。…二度と私のことを忘れるな」
無視されたことを相当根に持っているらしい。何て陰湿な性格なんだ。
「ああ、だから友達がいないからいつまで経っても弟離れ出来ずに…」
ふと気が付くと、さっきまで近くに停めてあった自動車5,6台が無くなっていた。

「ロードローラーだッ!!
ウリイイイイヤアアアッーぶっつぶれよォォッ」
だが着地した時にはもうオレとギコは遠くを歩いていた。
「なあギコ、今日は大分遅くなっちゃったけど晩ご飯は何にする?」
「そうだな、じゃあ奮発して外食にするかゴルァ」
「よーしパパ奮発しちゃうぞー」

「弟にまでスルーされた…」
ギコ兄には夜風がより一層冷たく感じられた。

544N2:2003/12/31(水) 20:51



この町で起こるあの男の野望をめぐる戦い。
オレ達はこの戦いが奴の凶行を食い止める為のものでしかないと思っていた。
しかしそれがこの町のものだけではない、
この時はまだ存在も知らなかった町「茂名王町」で起こっている争いにまで関わっているなど、
オレ達は、いやあの男でさえも知る由は無かった。
夜空に輝く月は不気味に紅く染まっていた。
まるでこれから起こる血で血を洗うような戦いを予言するかのように。

この町に渦巻いているのは、あの男の陰謀だけではなかった。



  /└────────┬┐
. <   To Be Continued... | |
  \┌────────┴┘

545N2:2003/12/31(水) 20:52

                  ∩_∩
                 G|___|
                  ( ・∀・)∩
                 ⊂     ノ
                  ) _ (
                 (_) (_)

NAME 逝きのいいギコ屋(通称ギコ屋)

各地でギコを売り歩く露天商(ほとんど赤字)。
基本的に能天気な性格だが、時として深刻に物事を捉えることもある。
情に厚く、サービス精神も旺盛。
だが時にはずる賢さが働くことも…。

たまたまやって来た町で「もう1人の『矢の男』」によって刺され、
以前から才能はあったスタンド能力が開花した。
どんなに滞在期間の短い町でも恩を忘れない精神から、
「もう1人の『矢の男』」討伐に燃える。

546N2:2003/12/31(水) 20:53

                ∧ ∧  |1匹300円|
          ⊂  ̄ ̄つ゚Д゚)つ|____|
            | ̄ ̄ ̄ ̄|     ||
            |____|     ||

NAME 相棒ギコ

ギコ屋に売られているギコ(見本)。
客相手にいつも商品の逝きの良さをアピールしている。
かつて一度本当に売られたことがあったが、
その売り主思いの性格に客は心打たれて返品し、以来生活を共にしている。

「もう1人の『矢の男』」によってスタンドが発現、洗脳された。
その時生来才能のあった波紋の呼吸法をマスターし、スタンドのエネルギーに活用している。
洗脳時に多くのAAを虐殺したことを心に病み、彼もまた「もう1人の『矢の男』」を討ち取ろうと意気込む。

ちなみに、一部設定では「彼と亡き妻の間には子供がいる」となっているが、
ここでは黙殺&無視している。

547N2:2003/12/31(水) 20:53

               |;;::|∧::::... / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
               |:;;:|Д゚;)< 弟が人物紹介されてる…
               |::;;|::U .:::...\________
               |::;:|;;;|:::.::::::.:...
               |:;::|::U.:::::.::::::::::...

NAME 相棒ギコ兄貴(通称ギコ兄)

相棒ギコの兄。
ギコ屋に売られる弟をいつも暖かく電柱の陰から見守っている。
いつか弟を奪還せんと考えており、一度だけ行動に移したことがあったが
その時はギコ屋に自分が何者であるかも知られることなく撃退された。

この「番外・逝きのいいギコ屋編」では遂にギコ屋と対面するが、どうやら彼とは反りが合わない模様。
彼のスタンド「カタパルト」は使い方次第でどんな悪事でも働けるが、
彼も真面目な性格であることからそういう事は考えていないらしい。
弟がギコ屋に協力することから、彼も仕方なく力を貸すことに。

548N2:2003/12/31(水) 20:53

             /;二ヽ
              {::/;;;;;;;}:}
             /::::::ソ::::)
             |:::::ノ^ヽ::ヽ
             ノ;;;/UU;;);;;;;ゝ


NAME もう1人の『矢の男』

ある町で『矢』を使いスタンド使いを増やしている吸血鬼。
その目的は謎に包まれているが、それは彼が「最強」となることと
何かしらの関係があるらしいが…。
また彼は『矢の男』、ひろゆき、モナ太郎の存在を知っており、
彼らに対して異常な嫉妬心を抱いているようだ。

ちなみに、彼の羽織っているマントは、姿を見られないためだけでなく
日光や波紋を遮断する効果を持つ特注品である。



※★AA作成依頼専用スレッド IN モナー板〜21★
195さんにイメージ図を作成して頂きました。
また採用は致しませんでしたが194 ◆ZRX/2gAGZg さんにも作成して頂きました。
御両名に、この場を借りてお礼申し上げます。

549N2:2003/12/31(水) 20:54

┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
┃            スタンド名:クリアランス・セール          ...┃
┃             本体名:逝きのいいギコ              ...┃
┣━━━━━━━━┳━━━━━━━━━┳━━━━━━━━━┫
┃  破壊力 -A    .┃   スピード -A  ....┃  射程距離 -E   ...┃
┣━━━━━━━━╋━━━━━━━━━╋━━━━━━━━━┫
┃  持続力 -B    .┃ 精密動作性 -C   . ┃   成長性 -A  ......┃
┣━━━━━━━━┻━━━━━━━━━┻━━━━━━━━━┫
┃殴った物質を分解するスタンド。                       ┃
┃分解といってもその形式は様々で、ガラスが割れるようにも、   ....┃
┃砂がこぼれ落ちるようにも出来る。                    .┃
┃ただし、分解出来る時間は現状ではせいぜい十数秒が限界。    ..┃
┃(今後延びる可能性あり)                          ..┃
┃またスタンドなど幽体には効き目が無い。                .┃
┃また本人の感情が余りにも高まっていたりすると、          ..┃
┃果たしていつ分解が解除されるのかは不明である。         ....┃
┃ちなみに、分解の最高レベルは原子単位までである。        ...┃
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛

550N2:2003/12/31(水) 20:54

┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
┃           スタンド名:バーニング・レイン             .┃
┃               本体名:相棒ギコ                ...┃
┣━━━━━━━━┳━━━━━━━━━┳━━━━━━━━━┫
┃  破壊力 -B    .┃   スピード -A  ....┃  射程距離 -E   ...┃
┣━━━━━━━━╋━━━━━━━━━╋━━━━━━━━━┫
┃  持続力 -B    .┃ 精密動作性 -A   ...┃   成長性 -A  ......┃
┣━━━━━━━━┻━━━━━━━━━┻━━━━━━━━━┫
┃身体のエネルギーを使い、あらゆる力に変えるスタンド。       .┃
┃基本的にはカロリーを消費して力を生み出すのだが、       .....┃
┃本体は波紋の呼吸法をマスターしており、その分のエネルギーは ..┃
┃それによって賄われている。                       ..┃
┃また力を固形化することも可能で、例えば力を銃弾にして発射し、 . ┃
┃打ち抜いた敵にその効果を与えることも出来る。          .....┃
┃扱える力の種類は多様で、火力(応用で吸熱力)・電力・風力・  .....┃
┃その他原子力なども可能。                         ┃
┃ただし、暴走時代よりも力の生産量は低下し、            ...┃
┃放射能などの強烈な放射方法も使えなくなった。           ..┃
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛

551N2:2003/12/31(水) 20:55

┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
┃              スタンド名:カタパルト             ...┃
┃              本体名:相棒ギコ兄貴             .┃
┣━━━━━━━━┳━━━━━━━━━┳━━━━━━━━━┫
┃  破壊力 -C  ....┃   スピード -B  ....┃  射程距離 -C  ....┃
┣━━━━━━━━╋━━━━━━━━━╋━━━━━━━━━┫
┃  持続力 -B   . ..┃ 精密動作性 -A.  . .┃   成長性 -C   ..┃
┣━━━━━━━━┻━━━━━━━━━┻━━━━━━━━━┫
┃物質を複製するスタンド。                           ┃
┃作るためには材料と構成のデータが必要であり、          ....┃
┃材料は分子構成が同じ、または似ている必要がある。       ....┃
┃またデータはスタンドがそのコピー元に触れて分析しなければ   ..┃
┃ならないが、一度分析したログは全てスタンドが覚えており、    ..┃
┃必要な時にいつでも使うことが出来る。                  .┃
┃複製の際に使用するデータは、細かい分子組成などは勿論の事、...┃
┃場合によっては分子の振動量(つまり温度)まで必要になる。   ....┃
┃また臓器なども作り出すことは可能であり、材料さえあれば      ...┃
┃人体を丸々製造することも出来るし、細胞も生きてはいるのだが  .┃
┃そこには意思が無く、結局は『死んだ』人間と同じである。      .┃
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛

スタンドのアイデアスレ327さんに感謝。

552N2:2003/12/31(水) 20:55

┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
┃            スタンド名:アナザー・ワールド          ..┃
┃             本体名:もう1人の『矢の男』           .┃
┣━━━━━━━━┳━━━━━━━━━┳━━━━━━━━━┫
┃  破壊力 -A    .┃   スピード -A  ....┃  射程距離 -D    .┃
┣━━━━━━━━╋━━━━━━━━━╋━━━━━━━━━┫
┃  持続力 -A    .┃  精密動作性 -A  .┃  成長性 -なし    .┃
┣━━━━━━━━┻━━━━━━━━━┻━━━━━━━━━┫
┃時間を数秒間逆行させる能力を持つ。                  ┃
┃逆行中は彼のみがその流れに関わらず動け、その他のものは  ...┃
┃それまでと全く逆の行動を辿る。                      .┃
┃また彼自身のねじ曲げた運命は再び時が正常に流れた時に    ..┃
┃そのまま逆再生する(つまり、彼自身が攻撃しても再び時が再生  ..┃
┃した時には全く逆の動きで傷が治ってしまう)ので意味が無いが、 ..┃
┃そのねじ曲げた運命が他の物質に及ぼした物理的影響は      ┃
┃逆行中はすり抜けるが正常再生した時には効果がある         ┃
┃(つまり逆行中に銃で相手を撃てばその間はすり抜けるが、     .┃
┃再び再生した時には後ろから銃弾が当たる)。             .┃
┃ただし、余談であるが本体はこの能力には全く納得しておらず、 .....┃
┃その事がこのスタンド自体の成長の可能性を奪っている。     ...┃
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛

553N2:2003/12/31(水) 20:56
    ∩_∩
 G|___|  ネタ被り防止のために
  ( ・∀・)

  ∧ ∧
  ( ゚Д゚)    一応今後予定のタイトルを張っとくぞゴルァ!

  |;;::|∧::::...
  |:;;:|Д゚;):::::.. それでは皆様、良いお年を…


  現在予定のタイトル(一部激しく課題)

  「ラーメン屋に食いに行こう」 「デムパ(・∀・)ハイッテル」 「バンガイ・シャイタマ」

554N2:2003/12/31(水) 20:57
以上です。長々と失礼しました。

555新手のスタンド使い:2003/12/31(水) 20:58
乙ッ!!

556新手のスタンド使い:2003/12/31(水) 21:18
お疲れです。「デムパ(・∀・)ハイッテル」吹いた。

557新手のスタンド使い:2003/12/31(水) 23:52
今年最後の作品乙です

558:2004/01/01(木) 00:02
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

      「モナーの愉快な冒険」
       番外・正月は静かに過ごしたい
       
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::


 俺は、窓を開けて朝日を眺めた。
 冷たい風が身を切る。
 それも悪くは無い。
 年号が変わってから、もう7時間ほど経過している。
 去年も何とか無事に過ごすことができた。
 もう、命があるのが不思議なくらいに。
 いい加減、『モナーの愉快な冒険』というタイトルは何とかしたいところだ。
 これっぽっちも愉快じゃない。JAROに訴えてやろうか…

 さて、今年の正月は例年とは違う。
 去年のように、家でゴロゴロするなんて勿体無い事はしない。
 振袖を着たリナーを連れて初詣に行って、ずっと一緒にいれるようにお願いして、
 帰りに手を繋いで甘いナイストークを交わし、家に帰って2人寄り添って、静かかつハァハァな正月を過ごす…
 そう思ってたのに…

「おい、窓閉めろゴルァ! 寒くてしょうがねぇ!」
「物思いに耽るモナー君も素敵だよ、ハァハァ…」
「センチメンタル タヌキ…! アヒャ!」

「なんで正月早々からお前等がいるモナァッ!!」
 俺は振り返って大声を上げた。
 大勢の知り合い共が、コタツを囲んでおせち料理をつついている。
 確かにクリスマスの時は、来年もこうして馬鹿騒ぎできれば…、みたいな事を思った。
 だが、正月くらい静かに過ごしたい。
 それ以前に、人の家のおせち料理を食うな。
 俺の分がなくなるじゃないか!!

「ちょっと兄さん… お正月くらいみんなで騒いでもいいんじゃない?」
「あの… 私、邪魔だったですか…?」
 ガナーと、その親友のしぃ妹が同時に口を開く。
「まあ、君らは別にいいモナ… でも、ギコ! しぃ!」
 俺は、コタツに入って寄り添っている2人を睨んだ。
「な、なんだゴルァ!!」
「お前等は、どっか別の場所でイチャついてろやモ゙ナァ!!」
「だって、みんなで集まった方が楽しいじゃない…」
 しぃが口を挟む。
「だからって、何でモナの家に集まってくるモナ!!」
 そして、微妙に三竦みに入っているモララー、レモナ、つーに視線を移した。
 そのバックでは、龍と虎が睨み合っている。
「新年早々、喧嘩するなら外でやれモナ! この三馬鹿がァッ!!」
「やーねー。ここはモナーくんの家なんだから、あのときのホテルみたいに炎上させたりしないわよ…」
「ソウダゼ! ショウガツ クライ、オオメニ ミロヨ!」
 口答えするレモナとつー。
「大体、オマエラは今、大変な事になってるはずモナ!! こんなとこにまでしゃしゃり出てくるなモナ!」
「まあ、そういうメタな話は置いといて…」
 レモナはまあまあ、といった風に俺をなだめた。
 俺はさらに視線を移動させる。
 お雑煮をむさぼり喰らっている三角頭が目に入った。
「おにぎりィィ!! 出番ないクセにこんな時だけ出て来るなモナ!!」
「それは違うぜ。出番がないからこそ、こういう時はすかさず出てくるんだ」
 おにぎりはキラリと歯を光らせる。
 確かに、それももっともだ。
「…でも、この場に居辛くないモナ?」
 俺はこっそり訊ねた。
 涙をこらえながら頷くおにぎり。
「みんな、知らないうちに遠い世界に行っちゃって… 俺だけヤムチャで…」
 これ以上責めるのもどうかと思ったので、彼に関してはそっとしておいてやろう。

559:2004/01/01(木) 00:03

「…私はいいのか?」
 黒豆の数を数えていたリナーが口を開いた。
「リナーは全然構わないモナよ」
「ちょっと〜! 露骨に態度違うじゃない…」
 抗議するレモナ。
「差別だ! モナー君、これは差別だ!」
 モララーまでが騒ぎ立てる。
 無視だ、無視。

 突っ込むべきヤツは、まだいる。
 さっきからカズノコばっかり食べている男だ…!
「キバヤシィ! 何でここにいるモナ!」
 キバヤシは顔を上げる。
「今年、人類が滅びるかもしれないんだよ!」
「だからどうしたァ!! 電波野郎ォォォッ!!」
 もう我慢の限界だ。
 何で、正月早々から俺ばかりこんな目に合う…!?

「やっぱり、お正月は賑やかなのがいいですね」
 特大ハンマーを抱えた女性が、おせち料理をつつきながら口を開いた。
「しぃ助教授まで何しに来てるんですかァ!!」
「いや…本部にいると、周囲がスタンド使いだらけで落ち着かないんですよ」
 涼しげに答えるしぃ助教授。
 ここも、そんなに変わらないと思うが…

「暇そうで羨ましいな、ASAは…」
 リナーは、しぃ助教授を鋭く睨んだ。
「人の家に居候している貴方にとやかく言われる筋合いはありませんよ、『異端者』…!」
 しぃ助教授はリナーを睨み返す。
 リナーは軽く笑った。
「お前もこの場に居辛くないか? 全く、いい年をして…」
 しぃ助教授のこめかみに、肉眼でも見えるくらいのブチギレマークが浮かぶ。

「貴方を有害なスタンド使いだと認定しました。その存在を抹消します…!!」
 しぃ助教授はハンマーを構えて立ち上がる。
「そこまで望むなら、お前も塵に還してやろう…!」
 リナーもバヨネットを抜いた。

「みんな、2人を止めるモナァーッ!」
 このままでは俺の家が潰れてしまう。
「まあまあ、ここは落ち着いて…」
「正月なんだから、平和的に…」
 俺達は、2人を何とかなだめた。
「まったく… なんでみんな仲良く出来ないのかしら…」
 レモナがナメた口を叩く。
「お前が言うなっ…! お前がっ…!」
 もう、なんか涙が出てきた。
 早くこいつらを追い返さないと、あのホテルの二の舞だ。

「そうだ! みんなでゲームとかしない!?」
 ガナーがロクでもない提案をした。
「萌えない妹ごときが、馬鹿な事言うな――ッ!!」
 馬鹿な妹を怒鳴りつける俺。
 すかさずガナーは、俺の顔面にアイアンクローをかました。
 頭蓋骨がミシミシとイヤな音を立てる。
「ホンマすいません。兄さん調子に乗り過ぎました…」
 素直に陳謝する妹思いな俺。
 妹が手を離すと、俺の体は床に崩れ落ちた。

560:2004/01/01(木) 00:04

「麻雀なんてどうだ?」
 おにぎりは言った。
「でも人数的に辛いんじゃない? それに、正月早々に麻雀っていうのも…」
 レモナは手をヒラヒラと振る。
「モナー ギャクタイ ゲーム ハドウダ?」
「大却下モナ。そもそも、そんなゲーム作らないで欲しいモナ…」
「お医者さんゴッコはどうだい!?」
 モララーが頬を赤く染めながら言った。
 レモナが大きく反応する。
「キャッ! じゃあ、モナーくんがお医者さんで私が患者ね! …私が医者でもいいかな?」
「…却下」
 俺はチラリとリナーの方を見た。
「みんなでノストラダムスの預言書を解読してみるというのはどうだ、モナヤ?」
「なんで正月早々にそんな事しなきゃいけないモナ…」
 ギコはポンと手を打った。
「正月らしく、羽根突きはどうだゴルァ?」
「お前、ムチャクチャ強そうだからなぁ…」
 イマイチ気乗りしない。
「じゃあ、カルタ取りなんてどう?」
 しぃ妹は言った。
「でも、この多人数でカルタはちょっと…」
 もっともな事を言うしぃ。
 確かに、この人数では混乱するだけだろう。

「では、『オメガカルタ』はいかがですか?」
 しぃ助教授が口を開く。
 なんだ、その胡散臭い名前は。
 ヤバそうな匂いがプンプンするんだが…

 しぃ助教授は指をパチンと鳴らした。
 空中から突然、丸耳が現れる。
「説明させていただきます。『オメガカルタ』とは、かってアステカ族に伝わっていたと言われている
 多人数での決闘方法です。まあ一言で言えば、一対一で行うトーナメント形式の百人一首カルタ取りなんですが…
 ややこしいルールは一切無しで、とにかく読み上げられた札を早く取った者の勝ちです」
「単純に、取った枚数が多い方が勝ち、って訳だな…!」
 ギコは言った。
「Exactry(そのとおりでございます)。なお、フライング・お手つき一回につき、ペナルティとして指一本が
 折られます。また、札を破壊する行為、及び審判への攻撃もペナルティですのでご注意を。
                               オ サ
 そして、そのトーナメントを優勝した者は一日族長となり、敗北者達は何でも言う事を聞かなければなりません」

 俺は生唾を呑んだ。何て恐ろしいルールだ…
「グッド。なかなかおもしろいゲームだ」
 おにぎりは言った。こいつ、意味が分かってんのか?
 頭の中でルールを反芻する俺。
 もし俺が勝ったら、リナーが俺の命令を何でも聞く…?
 走馬灯のように、妄想が頭の中を駆け巡った。
 ――お医者さんごっこしたり。
 ――「パンティーあげちゃうッ!」って言わせたり。
 ―― ○×△□。
「ウエヘヘヘ…」
 思わず笑いが漏れる。

「これで優勝すれば、モナー君を好きなように…」
「アヒャヒャヒャ…」
「ノストラダムス…!」
 他者も同様に、やる気マンマンのようだ。

561:2004/01/01(木) 00:04

「下らん。私はやらんぞ…」
 リナーは吐き捨てた。
 そんな…
 それでは、モナの野望は…!

「負けるのが怖いんですね?」
 しぃ助教授はニヤニヤしながら言った。
 その姿を睨みつけるリナー。
「…前言撤回だ。その薄ら笑いを消してやる」
「やってみなさい、できるものならね…」
 睨み合う2人。周囲の空気が変わる。
 もう、この2人イヤだ…

 丸耳がいいタイミングで口を挟んだ。
「まあ血の雨を降らせるのはカルタが始まってからにして、トーナメント表を作りましょう。
 札の読み上げと審判は、この私がやらせて頂きます」

 俺達は丸耳の差し出したクジを次々に引いた。
 そして、トーナメント表ができあがる。


                    ┏━ ギコ
                ┏━┫
                ┃  ┗━ モララー
            ┏━┫
            ┃  ┃  ┏━ キバヤシ
            ┃  ┗━┫
        ┏━┫      ┗━ しぃ
        ┃  ┃
        ┃  ┃      ┏━ ガナー
        ┃  ┗━━━┫
        ┃          ┗━ しぃ助教授
 族長 ━┫
        ┃          ┏━ リナー
        ┃  ┏━━━┫
        ┃  ┃      ┗━ おにぎり
        ┃  ┃
        ┗━┫      ┏━ モナー
            ┃  ┏━┫
            ┃  ┃  ┗━ しぃ妹
            ┗━┫
                ┃  ┏━ つー
                ┗━┫
                    ┗━ レモナ


 俺の最初の相手は、しぃの妹か。
 それは楽勝だとして… 次の相手が、どちらに転んでもとんでもない。
 そもそも、つーとレモナがいきなり激突しているのはマズいだろう。
 それを何とか勝ち抜いたとしても、その次にはリナーが…

 なかなか、厳しい組み合わせだ。
 だが、リナーとハァハァするためには、どんな困難も乗り越えてみせる!!

 俺達は、テーブルを脇によけてカルタを並べた。
 最初の試合は、ギコVSモララーだ。
 向かい合って座る二人。

「…行くぜ!」
 モララーを真っ直ぐに見据えて、『レイラ』を発動させるギコ。
「悪いけど、僕は負けないんだからな…!」
 同じく、モララーの身体から『アナザー・ワールド・エキストラ』が浮かび上がる。
 手元でのスピードならば、完全にギコの『レイラ』が上。
 しかし、『アナザー・ワールド・エキストラ』には『次元の亀裂』をはじめ、多彩な応用が可能だ。
 この勝負、先が読めない。

「それでは参ります…」
 丸耳が、伏せていた読み札を手に取る。

 ――戦いの火蓋が今、気って落とされた…!!


  /└────────┬┐
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  \┌────────┴┘

562新手のスタンド使い:2004/01/01(木) 00:32
乙っっ!!
新年早々ワロタ

563N2:2004/01/01(木) 02:42
新年初作品乙です!!
今このスレに「朝まで生テレビ」以上の熱さを感じるッ!!

564新手のスタンド使い:2004/01/01(木) 11:59
明けまして乙!絶対死者出るよこのゲームw

565新手のスタンド使い:2004/01/01(木) 16:49
新年の作品乙です
キバヤシまで居るとは思わなかった…

566新手のスタンド使い:2004/01/01(木) 20:48
              ∧_∧
              (   ゚) 
             /´    `ヽ
            / /l    l\\
            / / |    |  \\
_______(_/ ヽ___○__ヽ_ ヽ__)_________
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「もう2004年か〜。」
とりあえず明けましておめでとうございます。

567新手のスタンド使い:2004/01/01(木) 20:49
合言葉はwell kill them!(仮)第六話―姿の見えない変質者その②



「いませんね〜。」
「ああ、全然見つからないな〜。」

今俺は先生のスタンド『ワールド・イン・マイ・アイズ』で級長に付きまとうストーカー野郎を探しているのだが、
捜索を始めて数十分。
これがいっこうに見つからない。

「あ〜あ〜何やってんだあいつ。水道の蛇口外しやがって。ずぶ濡れになってるぞ。」
鏡には水道で水を飲もうとして蛇口を外してしまい、慌てふためいている
男子生徒が映っている。
「あ、大丈夫みたい何とか元に戻せたみたい。」
「やれやれ、あいつ大目玉くらうぞ〜。」
まあ、犯人が見つからない原因の半分、いやそれ以上が俺と先生に有る訳で、
捜索をよそに生徒達のプライベートの覗き見に浸っている。
これじゃあまるで田代ではないか・・・。

しばらくして、俺は変な歌が流れているのに気が付いた。
「・・・・なんか珍妙な歌が聞こえてきません?」
先生に尋ねてみる。
「ちょっと待ってろ。集音モードに切り替えてみる。」
そう言うと先生が鏡につけたダイアルを操作した。
すると・・・・。

『あつくなぁ〜った〜♪ ぎぃ〜んのmetalic hearts〜♪
 どぉかせぇ〜んに〜♪火をつぅけぇ〜て〜ageる〜♪ 』

聞こえる聞こえる。さきほどの歌がはっきりと。
「・・・何だこの米軍の怪音波兵器を思わせるダミ声は・・・。」
「何処かで聞いたことある声だな・・・。歌の発信源は屋上からだぞ。」
スタンドを屋上へと移動させてみた。
そこに映っていたのは・・・。
「!!!テツそっくりの生活指導の先公!何やってんだこんなとこで・・。」
見ると水飲み場で自分の体を洗っていた。
「そういやあいつ自分の家の風呂壊れたって言っていたな。自分家の近くに銭湯が無いとはいえ
 まさかここを風呂場代わりにしていたとは。寒くないのか?まだ5月も終わってないというのになあ。」
「・・・・毎朝見ていて想像してたけどやっぱり毛深いっすねー。」
そのうちに干してあったズボンのポケットから何かを取り出すのが見えた。

シュッシュッ

「あ〜〜〜!あいつビンテージ物の香水なんか自分の体にふりかけてるぞ!」
「あ、あいつにそんな趣味があったとは・・・。あ、あ、あ〜〜〜股間にまで〜!」
そうやって先生と二人ではしゃいで居たら・・・。
バンッ!
机を思いっきり叩く音が聞こえた。
「いいかげんにしてよね二人とも!真面目に犯人探しするんじゃなかったの!?」
ヅーのお叱りを受けてしまった。
「「許してソーリー・・・。」」
思わず先生との台詞がハモッた。

568新手のスタンド使い:2004/01/01(木) 20:50
んでもって真面目に捜査開始。未だに成果0。
「・・・やっぱりいねーなー。」
「級長の勘違いってことは?」
「ありえねーよ。実際に写真があったもの。」
「ならば内部の者の犯行の線は?」
「ありえないとも言い切れないね〜。」
「それじゃあ別の場所探してみるか。」
そういって先生がスタンドを移動させようとしたときだった。
「ちょっちょっと待って!今カメラに何か映った!」
ヅーが叫んだので慌てて鏡を見る。
そこには明らかに不審人物と思われる男が立っていた。
しかも、いきなり空中から現れたのだ。
瞬間移動とかそんな柔な物じゃなく、別の空間から出てきたように・・・。
「な、なんじゃこりゃああ〜!」
俺は思わず大声で叫んだ。
「静かにッ!コイツ何か独り言を言っているぞ。」
集音モードにして聞いてみることにした。

『・・・うひひ・・・今日もばれる事無く侵入できたぜぇ〜!この前いきなり『矢』みたいなものでぶっさされて
 死ぬかと思ったがこんな力が手に入るとはねぇ〜!おっと危ない危ない。俺の能力はただマントのように羽織って
 他の奴らから見えなくするだけでばれやすいからな。誰かに見つかったら元も子もない。さ、今日も僕だけのレモナちゃんを
 撮りますか。ハァハァ ア ボッキシテキチャッタ 。』

そう言い残すと男はまた消えた。
「・・・・なんてこった。」
先生が呟いた。
「どうりで見つからない訳だよ。アイツはスタンド使いで、自分の消える能力でこの校内に侵入していた
 んだ。こんな能力があったなんて知らなかったな。すげ〜な〜。」
なに覗き魔に感心しているんだこの先公は。
「とにかく奴が校内に入った今ッ!叩くのはそこしかない!」
そう言って俺が走り出した時だった。
「ちょっと待てよ。どうやって見つけ出すんだ?奴は消えているんだぞ。」
「あっ・・・・・・。」
肝心なことを考えてなかった。
どうすりゃいいんだよ〜
「ねえ、そいつだったら私の『能力』で見つけ出せるかもしれないのだ。」
おもむろにヅーが口を開いた。
「ほ、本当か!?」
「うん。ただし、この空間からまったく姿が消えていたら無理だけど。」
「よし、早く行くぞ!」
俺はヅーの手を引いて職員室を後にした。

「なあ、どうやって犯人見つけ出すんだ?」
「簡単なことなのだ。いくら姿が見えなくなっても人間の『呼吸』『心拍数』『体温』なんかは
 どうやっても隠しようが無いのだ。」
ヅーの体からスタンドが浮き出した。
青い迷彩柄のガンダムのMSみたいなスタンドだ。
スタンドの出現と同時にヅーの顔にスカウターのような物が出た。
「いくよ!『メタル・ドラゴン』!」

569新手のスタンド使い:2004/01/01(木) 20:50
俺たちは下駄箱の近くに来た。
「時間から考えてこの付近に来ているはずだ。」
「とりあえず待ち伏せしてみるのだ。」
とにかくこの辺りに網を張る事にした。

しばらくして・・・。
「・・・・来た!」
ヅーが叫んだ。
「来たか!何処に居る!」
「佐藤君の斜め後方!今アヒャ君には目の前に5人しか居ないと思っているけど
 居るはずの無い6人目が見つかったのだ。」
ヅーが走り出したので俺も慌てて後を追う。
「位置は分かった!ならば狙うは顔面のッ正中線上ッ!」
『メタル・ドラゴン』の足が唸りをあげ、空を斬った。

メキャアアッツ!!!!
「ゴフアッ!」
――ジャストミート。
犯人の前歯が2〜3本吹き飛んだ。
と、同時に犯人自身も衝撃で壁に叩きつけられた。
「な、何でばれたんだ!?理解不能ッ!理解不能ッ!」
予想外の事態に奴はとまどっている。
「残念だったね。あいにく私も同じ能力が使えるんだ。さあ、レモナにしてきた事、
 全部償ってもらうのだ!」
「ひ、ひえええええぃ!!!」
男は慌てて逃げ出した。
「待ちな!逃がしはしないぜ!」
俺たちは後を追った。


  /└────────┬┐
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570:2004/01/01(木) 23:46

「―― モナーの愉快な冒険 ――   番外・正月は静かに過ごしたい 前編」



 俺は、モララーとギコの間に所狭しと並べられた百人一首を見つめていた。

 百人一首とは、その名の通り百首の歌で構成されたカルタである。
 1235年に、藤原定家が親戚に送ったという百枚の色紙がその起源となっており、
 江戸から明治時代に、本格的に庶民の遊びとして普及し始めたようだ。

 百人一首は、一つの歌につき、読み札と取り札の二種類ずつが用意されている。
 そして読み札とは、名前の通り読み手が読み上げる札で、取り札とは競技者の前に並べられる札である。
 ここで問題になるのは、読み札と取り札で記してある歌の部分が異なるという事だ。
 例をあげてみよう。

『秋の田の かりほの庵の 苫をあらみ わが衣手は 露にぬれつつ』

 田んぼで農作業していて服が濡れて冷たかったとかいう内容の、どっかの農民が詠んだ歌である。
 『秋の田の かりほの庵の 苫をあらみ』の部分が上の句、『わが衣手は 露にぬれつつ』の部分が下の句であり、
 読み札には上の句と下の句の両方が記してあるが、取り札には下の句しか記していない。
 つまり、上の句と下の句を両方暗記している者は、読み手が「秋の田の かりほの庵の…」と読んだ段階で、
 『わが衣では 露にぬれつつ』の部分が連想できるのである。
 一方、暗記していない者にとっては、下の句が読み上げられるまで、どの札を取っていいか分からない。
 これは大きなハンデである。
 つまり、歌を丸暗記している者には手が出ないという事だ。
 ちなみに、全てしぃ助教授の受け売りである。

 だが、それはあくまで一般人の話。
 俺には『アウト・オブ・エデン』がある…

「リナーは、百人一首暗記してるモナ?」
 ふと、俺はリナーに訊ねた。
「そんなもの、覚えてるわけがないだろう…」
 まあ当然か。
 もっとも、リナーの最初の相手はおにぎり。
 奴が百人一首なんて高尚な物を暗記しているとは思えない。
 純粋なスピード勝負ならば、リナーの楽勝だろう。


 第一回戦が始まろうとしていた。
 ギコは、軽く頭を下げる。
 丸耳は一枚の札を手に取ると、表側を自分の方に向けた。
 ギコとモララーの二人に、緊張が走る。

571:2004/01/01(木) 23:47

 丸耳は厳かに口を開いた。
「め――」

「ゴルァッ!!」
 
 バシィッ!!! という乾いた音とともに、ギコは右腕を一枚の札に叩きつける。
 場の全員、相対しているモララーも含めて、その一撃に呆然としていた。

「めぐりあひて見しやそれともわかぬ間に雲隠れにし夜半の月かな――紫式部だゴルァ!」
 ギコは取った札を、自分の方向に引き寄せる。

「――ぐりあひて見しやそれともわかぬ間に雲隠れにし夜半の月かな…」
 丸耳は最後まで歌を読み上げた。

 何だ、今のは?
 最初の一文字を聞いただけで、札を取りやがった…!

「ムスメフサホセだよ…」
 ギコは呟く。
 娘房ホセ?

「イカサマだァッ!!」
 モララーが立ち上がって、ギコを指差す。
「審判! こいつ、イカサマをしてるッ!!」
「ほぉ… 俺が、どんなイカサマをしてるっていうんだ、ゴルァ!?」
「そっ、それは…」
 言葉に詰まるモララー。

「ギコは何をやったモナ?」
 俺は、一番知識がありそうなしぃ助教授に訊ねた。
「彼が口にしたムスメフサホセ… これは、決まり字が一字の歌の総称です」
 しぃ助教授は言った。
「どういう意味モナ?」
「百人一首で、『め』から始まる歌は一首しかありません。今彼が取った紫式部の歌です。
 同様に、『む』で始まる歌は、『むらさめの』で始まる寂蓮法師の歌しかありません。
 こんな風に、最初の一文字が一枚きりしかない歌は全部で七首あります。
 そして、その頭文字を取って『ムスメフサホセ』と呼ばれているのです」
 なるほど。
 さらにしぃ助教授は説明を続ける。
「そして決まり字というのは、どの歌か確定させる文字を言います。
 例えば、『い』で始まる歌は…
 『今こむといひしばかりに長月の有明の月をまち出つるかな』。
 『いにしへの奈良の都の八重桜けふ九重ににほひぬるかな』。
 『今はただおもひ絶えなむとばかりを人づてならでいふよしもがな』の三首です。
 このうち、『いに』と読み上げられた段階で、『いにしえの…』の歌であることが確定します。
 同様に、『いまこ』の時点で『今こむと…』の歌、『いまは』の時点で『今はただ』の歌であると分かります。
 こんな風に、判別の確定条件にある文字を決まり字と言います」
「じゃあ、ギコはその決まり字を…」
「ほとんど暗記しているのでしょうね。こうなった以上、モララーに勝ち目はありません」
 しぃ助教授は断言した。
「私がストレートで優勝すると思っていましたが、なかなか手強そうですね…」
 何げにとんでもないことを呟くしぃ助教授。


 試合はそのまま続行された。
 丸耳は歌を読み上げる。
「かさ――」

「ゴルァッ!!」
 
 札に右手を叩きつけるギコ。
 当然ながら、モララーはピクリとも動けない。
「この…!」
 モララーはギコを睨みつける。

 ギコはそれを無視して、丸耳に訊ねた。
「審判、一つ質問だ。札を破壊する行為はペナルティと言ったが、激しい取り方をした為に札が破損した、
 っていう場合はどうなるんだ?」
「問題はありません」
 丸耳は答える。
「札を破壊する行為に対してのペナルティというのは、、残り札を全て抹消してゲームを有耶無耶にするのを禁じる
 ために作られたものです。自札になった以上は、その札に何をしても問題ありません」
「そうか…」
 ギコは再び姿勢を正すと、札の方に向き直った。

「たご――」

「ゴルァッ!!」
 
 一瞬で札を取るギコ。

「なにし――」

「ゴルァッ!!」
 
 モララーはピクリとも動けない。
 駄目だ、実力の差がはっきりしすぎている。
 茶道の師範に、表千家と裏千家の違いも分からない野球部員が挑戦するようなものだ。
 みじめすぎる…

572:2004/01/01(木) 23:47

「しの――」

「ゴルァッ!!」

 モララーは、視線を下げてうつむいている。
 戦意を喪失したようだ。

「これ――」

「ゴルァッ!!」

 ギコの所持手札50枚に対して、モララーは0枚。
 ギコがあと1枚取れば、自動的にギコの勝ちとなる。

 丸耳が、読み札に視線を落とした。
 モララーはうつむいたままだ。
 敗北を受け入れたのだろうか。
 しかし俺は、モララーの口端が僅かに歪んだのを見逃さなかった。

 歌を読み上げる丸耳。
「あはれ――」

 ギコの右肩が上がる。
 その視線は、1枚の札に集中していた。
 ギコの手が、瞬時に伸びる。

 その瞬間、モララーの身体が宙を舞った。
「強行手段だッ! 『アナザー・ワールド・エキストラ』!!」

「…読めてんだよ。ゲス野郎のやる事くらいはな…!」
 ギコの手は、畳に伸びていた。
「ゴルァ――ッ!!」
 ギコは畳のへりに手をやると、思いっきり引っくり返した。

 あれは… 畳返し!!

「なッ…」
 モララーの体に畳がブチ当たる。
 その上に並んでいた札が、花びらのように宙を舞った。
「こんなもの…」
 畳を弾こうとするモララー。
 その刹那、ギコのスタンド『レイラ』の刀が、畳ごとモララーの体を貫いていた。
 それだけではない。
 空中に舞った一枚の札を、同時に刺し貫いている。
『あはれともいふべき人は思ほえで身のいたづらになりぬべきかな』
 丸耳が読み上げた札だ。

 丸耳は声高らかに宣言した。
「ギコ選手、51枚取得!! 彼の勝利です!!」

 ズッ…! とモララーの体から刀を引き抜く『レイラ』。
「安心しな、急所は外してある…」

 当たり前だ。俺の家で正月早々に人傷沙汰とか勘弁して欲しい。
 ともかく、ギコは準々決勝に歩を進めた。


                    ┏━○ギコ
                ┏━┛
                ┃      ×モララー
            ┏━┫
            ┃  ┃  ┏━ キバヤシ
            ┃  ┗━┫
        ┏━┫      ┗━ しぃ


 第二回戦は、キバヤシVSしぃだ。

 畳を張りなおして、競技場(居間)は元通りになった。
 しぃとキバヤシは向かい合って座る。
「お、お願いします…」
 変人を相手に困惑気味にのしぃ。

573:2004/01/01(木) 23:48

 丸耳が、最初の歌を読み上げた。
「来ぬ人をまつほの浦の夕凪にやくや藻塩の身もこがれつつ…」
 必死で札を探し回るしぃ。
 キバヤシは、額に汗を浮かべて遠い目をしている。
「あっ… はい!」
 しぃは、札を取った。
 キバヤシは全くの無反応である。
 一体どうしたんだ…?

「――わかったぞ!」
 不意にキバヤシはアップになった。
「『来ぬ人』というのは、1999年に恐怖の大王が来なかったことを示しているんだよ!
 では、『来ぬ人をまつ』というのは、恐怖の大王を待っていた奴…
 ――レジデント・オブ・サン!!」
「な、何だってー!!」
「しかし、詩の後半がどうしても解読できない… 俺達は、何か重大な見落としをしているんじゃないだろうか…」

 アレな人には構わず、試合は進行していく。

「人もをし人もうらめしあぢきなく世を思ふゆゑに物思ふ身は…」
 丸耳が、札を読み上げた。

「はいっ!」
 札を取るしぃ。
 キバヤシは目の前の札には微塵の興味も示さない。

「そうか、そういう事か…!」
 キバヤシは顔を上げた。
「『世を思ふゆゑに物思ふ身は』という詩は、レジデント・オブ・サンの心情を表している。
 世界の事を考える故に…、そう。奴は、人類を統制する事が世界のためになると考えている…
 しかし、『物思う身は』の後が分からない… 詩がなぜ途中で切れているんだ…?
 後半を隠蔽した奴がいるという事か…!!」

 キバヤシが暴走している間にも、カルタ取りは進行している。
 しぃは、既に20枚近くの手札を所持していた。
「キバヤシ… そろそろカルタを取った方がいいモナよ…」
 俺はとりあえず忠告する。
「もう、どうでもいいんだ… そんな事は…」
 だめだ、こいつ完全にやる気が無い。

 そういう訳で、しぃが50枚先取のストレート勝ちとなった。

                    ┏━○ギコ
                ┏━┛
                ┃      ×モララー
            ┏━┫
            ┃  ┃      ×キバヤシ
            ┃  ┗━┓
        ┏━┫      ┗━○しぃ
        ┃  ┃
        ┃  ┃      ┏━ ガナー
        ┃  ┗━━━┫
        ┃          ┗━ しぃ助教授

 そうすると、準々決勝ではギコVSしぃか…
 カップル同士の対決だろうが、ギコの圧勝で終わる事は予想できる。
 そして次の試合は、ガナーVSしぃ助教授だ。
 正直、これはヤバい。

 俺は、しぃ助教授に擦り寄った。
「あの… ウチの妹、一応一般人なんで、大きな怪我とかは勘弁してやってほしいモナ…」
「…私を何だと思ってるんです? 普通の人相手にそこまでやりゃしませんよ」
 しぃ助教授は憮然とした表情を浮かべた。
 いや、相手が普通の人だろうが、遠慮なくハンマーで叩き潰す人だと思っていた。
 俺は胸を撫で下ろす。
「それはよかったモナ。ただでさえ乱暴でオヨメの貰い手も少なそうなのに、キズモノにでもなったら…」
「ガツンとみかん!!」
 突如現れた妹の回し蹴りが、俺の後頭部を直撃する。
 気のせいか、前にもこんな事が(何度も)あったような気が…
 そして、俺は意識を失った。

574:2004/01/01(木) 23:49

「――はっ!」
 俺は目を覚ました。
 隣には、腹から血を流しているモララーが寝かされている。
 怪我人用の部屋か。
 というか、俺の家なんだけど…
 とりあえず身体を起こすと、試合場である居間に戻った。

 ちょうど、リナーとおにぎりの試合が始まるところだった。
 しぃ助教授とガナーの試合結果は!?
 俺は近くにいたギコに訊ねた。
「ん? しぃ助教授の圧勝だぞ」
 まあ、それは分かっている。
 一介の乱暴娘とASA三幹部の一人では比べるまでもないだろう。
 問題は、ガナーがどれほどの怪我を負ったかだ。
 キョロキョロする俺の目に、五体満足なガナーの姿が目に入る。
 勝負に負けた後のヤツは大概不機嫌なので、傍には寄らないでおくが…
 それにしても、無事でよかった。
 俺は、改めて胸を撫で下ろす。
 すると、トーナメントは…

                ┏━━━○ギコ
                ┃
                ┃      ×モララー
            ┏━┫
            ┃  ┃      ×キバヤシ
            ┃  ┃
        ┏━┫  ┗━━━○しぃ
        ┃  ┃
        ┃  ┃          ×ガナー
        ┃  ┃
        ┃  ┗━━━━━○しぃ助教授
 族長 ━┫
        ┃          ┏━ リナー
        ┃  ┏━━━┫
        ┃  ┃      ┗━ おにぎり
        ┃  ┃
        ┗━┫      ┏━ モナー
            ┃  ┏━┫
            ┃  ┃  ┗━ しぃ妹
            ┗━┫
                ┃  ┏━ つー
                ┗━┫
                    ┗━ レモナ

 よく考えれば、次の試合も結構危ない。
 俺はおにぎりに擦り寄った。
「おい、棄権するモナ!」
「はぁ? 何言ってんだこの微笑みデブは…」
 俺を睨みつけるおにぎり。
 お前のために言ってるんだよ。
「いいから棄権した方がいいモナ。お前の身が危ないモナよ…!」
 おにぎりはニヤリと笑う。
「ハァ? あんなひ弱そうなネーチャンに、この俺がどうにかなるとでも?」
 いきなりおにぎりは立ち上がって、リナーを指差した。
「ヘイネーチャン! 俺が優勝した暁には、ハァハァな命令を与えてやるぜ!!」

 俺のリナーに何ぬかしやがるブッ殺すぞこの野郎!!
 と思ったが、俺の怒りは鋭い殺気の前に掻き消えた。

「――面白い事を言うな、お前…」

 突き刺されるような殺気。
 凍りつくような外気。
 リナーの方を直視できない。

 殺される殺される殺される殺される殺される。
 ――おにぎりは、リナーに、殺される。

 ギコは、殺気をモロに感じ取ったのか硬直していた。
 レモナやつー、しぃ助教授の動きも止まっている。
 ガナーやしぃ妹も、ただならぬ気配を感じたのか押し黙った。
 へらへらしているのは、おにぎりだけだ。

 止めなきゃヤバいんじゃ… 誰もがそう思っていただろう。
 だが、これは2人の戦いだ。俺達外野の出る幕は無い。

 丸耳が読み札を手に取る。
 全員が固唾を呑んで見守る中、第四試合が始まった!!

575:2004/01/01(木) 23:51



    /       ,,/
   /      r‐'"    /
  l゙      丿     ,ノ              … モナー …… モナー …
  ゙l     (     l゙  ,,-――‐- 、          こんなに突然、お別れすることになるとはね…
   `ヽ、   )     ,,-'"    `ヽ  `ヽ
     \  "   ,/       │   ヽ     君はやさしいからきっと僕のために泣くだろうけど
      ヽ !、 /          l     i      でも、悲しまないで……これはなるべくしてなったこと
      丿 ノ |      _   ヽ_    i'|       誰かが言った……我々はみな運命に選ばれた兵士……
     i´  (  ゙l        `   `' -ィ゙ |        自分の戦場から逃げだすことは許されないんだ……
     ヽ_  `i、,,,,゙l、       L    、 ,!
       `i,/  ゙''       | `''ッ‐ " /      いまこの街にある本当の危機と出逢ったとき……
          /            ''"`  _/        君のやさしさがみなの救いとなるよ………きっとだ…
       |                ー''" ヽ
        |     ヽ_            |  _,,,,,,,,_     この街で君たちと友達になれて本当に良かった……
         ヽ      ゙゙`''- 、  、    |`゙゙゛    ` ヽ    もう、行かなくちゃ…みんなによろしくね……
        |\         i  l    ,l        )
        ゙l  `''―--、 _,,ノ ,/   ,ノヽ、      /   ときどき思い出してワッショイしてくれるとうれしいな…
        ヽ 、   `"  /"  ,,/   ゙゙"'''''ー-、 (_
          ) |     ,r'ヽ   ,l゙ /゙!、       ヽ  ヽ   おにぎり ワショーイ・・・
         ( ゙i、    /  (`'''"  ゙ヘミヽ、      l゙   )          ワショーイ・・・
           ) ヽ  l   `ヽ、   ``"ヽ    ノ   ,ノ             ワショーイ・・・
          ノ   ゝ  ゙''ー-、  `ー-、   丿   (    i′

※上AAはイメージです。
 モラマタ氏、AAお借りしました。申し訳ありません。

576:2004/01/01(木) 23:51

        ┃  ┏━━━━━○リナー
        ┃  ┃
        ┃  ┃          ×おにぎり
        ┃  ┃
        ┗━┫      ┏━ モナー
            ┃  ┏━┫
            ┃  ┃  ┗━ しぃ妹
            ┗━┫
                ┃  ┏━ つー
                ┗━┫
                    ┗━ レモナ


 次は、いよいよ俺の出番だ…!
 相手はしぃ妹。
 俺はしぃ妹と向き合って、座布団の上に座った。
「お願いします!」
 頭を下げるしぃ妹。俺もつられて頭を下げる。

 丸耳が、読み札の一枚を手に取った。
 『アウト・オブ・エデン』を発動させる俺。
 その札は、『ながからむ心もしらず黒髪のみだれて今朝は物をこそ思へ』。
 えーと、みだれて… あっ、あった。

 丸耳が口を開く。
「な――」

「モナァッ!!」

 あらかじめ見つけていた札を取る俺。
 『視る』事が、『アウト・オブ・エデン』の能力。
 多少卑怯だが、勝つためには仕方が無い。

 次の札を手に取る丸耳。
 俺は札を視た。
 『音にきく高師の浜のあだ波はかけじや袖のぬれもこそすれ』…だな。
 かけじや…っと…。おっ、発見。

「お――」

「モナァッ!!」

 ギコのように、一文字でゲットする俺。
 いやぁ、スカッと爽やか!!

 げっ!
 ふと見ると、しぃ妹が泣きそうな顔になっている。
 確かに、あらかじめ読まれる札が判っているというのは、反則ギリギリかもしれない。
 最後にほんのチョッピリだけ勝つぐらいにするか。

「…」
 丸耳は、怪訝そうな顔でこちらを見ている。
 まるで、カンニングがバレたような気分になる俺。
 おもむろに丸耳は10枚ほど手札を取ると、扇状に広げた。
 これでは、どれが読み上げられるのか判らない!
 こうなったら、丸耳の視線と思考を視て…

「なげけとて月やは物を――」

 駄目だ、全然間に合わない!

「はいっ!」
 しかも、下の句を読み上げられないうちにしぃ妹が取ってしまった。
 ギコほどではないが、そこそこ暗記しているようだ。

「あらし吹く――」
 駄目だ、『アウト・オブ・エデン』の処理がまったく追いつかない。
 やはり、感受性の強い人間には『アウト・オブ・エデン』で視られている感じ、というのが分かるようだ。
 どうする? 純粋に百人一首での戦いになったら、全く暗記していない俺に勝ち目は無い。

「瀬をはやみ岩にせかるる滝川の――」

「はいっ!」
 下の句を聞かないうちに取ってしまう、しぃ妹。
 こいつ、かなり強い…!

 どうする?
 このままでは、負ける。
 俺が負けてしまうと、リナーとハァハァできなくなってしまう…

『モナー… がんばれ…』

 今、リナーの声が聞こえた。
 俺は慌ててリナーの方を見る。
 みかんを食べててこっちの方なんぞ見ちゃいないが、間違いなく想いは届いた!!

577:2004/01/01(木) 23:52

「あしびきの山鳥の尾のしだり尾の――」

「はいっ!」
 またしても札を取るしぃ妹。
 俺の2枚に対して、しぃ妹は20枚ほど。
 このまま、まともに戦ったところで負けは明白…!
 ならば、何を視る…?

「君がため春の野にいでて若菜つむ――」

「はいっ!」
 手札を増やすしぃ妹。
 視るものは唯一つ。
 しぃ妹の思考と視線だ…!

「世の中はつねにもがもな――」
 しぃ妹の視線が素早く移動する。
 狙っているのは、一番右端にある札だ…!

「はいっ!」
 無残にも、俺より先に容易く取ってしまうしぃ妹。
 他人の視線と思考を解析しつつ、当の本人よりも早く札を取るなんて無理だ。
 そういう技は、スピードがあってこそ可能なのを俺は実感した。

 考えろ、考えるんだ…
 どこかに勝つ手立てがあるはず…!
 そうだ! モララーのように、強行手段に出るというのはどうだ!?
 しぃ妹はしょせん一般人。
 それなりに戦ってきたこの俺の敵ではない。
 だが…
 ちらりとしぃの方を見る。
 姉の目の前で、妹を串刺しにするのもあんまりだ。
 そもそも人として、いや主人公として何か間違ってる気がする…



「もろともにあはれと思へ八重桜――」

「はいっ!」
 しぃ妹は、51枚目の札を取ってしまった。

 …俺は、早くも1試合目にして敗北してしまった。
 すまない、リナー…

 フスマが開いて、もう目を覚ましたらしいモララーが入ってきた。
 肩を落としている俺を見て、大声を上げる。
「あーっ! モナー君、負けちゃったのかい!?」
 俺は首を縦に振る。
 モララーは悲しげに視線を落とした。
「せっかく応援したのに… 僕の想い、届いたよね…?」
 あれ、お前か…
 俺は大きなタメ息をついた。
 もう、どうでもいい。
 夢破れて山河ありだ。俺もサンガとやらになろう…


        ┃  ┏━━━━━○リナー
        ┃  ┃
        ┃  ┃          ×おにぎり
        ┃  ┃
        ┗━┫          ×モナー
            ┃
            ┃  ┏━━━○しぃ妹
            ┗━┫
                ┃  ┏━ つー
                ┗━┫
                    ┗━ レモナ


「モナーくん、モナーくん…」
「何モナ? モナは今からサンガになるから忙しいモナ…」
「今から私が試合するから、応援しててね!」
 …そうだ! 次はレモナVSつーだ!
 ヘコんではいられない。被害は最小限にとどめないと…

578:2004/01/01(木) 23:52

 座布団に座って、向かい合う2人。
 意外なことに、両者とも柔らかい笑顔を浮かべている。
 案外、平穏なカルタ取りになるか…!?

 固唾を呑んで見守る俺。
 ギコやしぃも不安そうだ。
 丸耳が、読み札を手に取る。

「夏の夜は――」

 2人は同時に動いた。
 つーの爪が、レモナの喉元に突きつけられれいる。
 だがレモナの左手に手首を掴まれていて、喉には届いていない。
 一方つーは、レモナによるボディへの打撃を左手で受け止めている。
 互いに右手に力を込めながら、左手で攻撃が届くのを防いでいた。
 その状態で、激しく睨みあう二人。
「あんまりナメた事しないでくれる? 私、いちおう兵器なんだからね…!」
「コッチ ノセリフダ。ブンカイ シテヤル… コノ ガラクタメ…!」
 いや、カルタ取りやれよ。

 2人は、互いの身体を弾き合って距離を取る。
 レモナは横に大きく飛び退くと、左腕から張り出した砲身を構えた。
 その際、テーブルがブチ割れてふすまが踏み壊された。
 それに並走して、何度も爪を振るうつー。
 レモナに撃つチャンスを与えない。
 畳や天井に爪痕がぁ…!
「この…!」
 レモナの右腕から、レーザーが噴き出した。
 それを剣のように扱って、つーの爪による攻撃を弾き返す。
「バルバルバルバルバルバルバルバル!!」
「こんのォ―――――ッ!!」
 激しく爪と剣を打ち合う2人。
 居間の壁をブチ壊して、2人の戦いは廊下にもつれ込む。

 レモナは、後ろに大きく飛び退いた。
 あの左腕から張り出した武器は、ある程度距離がないと使えないようだ。
 そして、つーはその特性を見抜いているのか距離を開けようとしない。
「えいっ!!」
 レモナは剣を大きく横に薙ぐ。
 つーは飛び上がると、天井を蹴ってレモナの眼前に着地した。
「バルッ!!」
 つーは左手でレモナの首を掴むと、思いっきり壁に押し付ける。
 貼ったばかりのカレンダーが、1月1日にして破れてしまった。

「バルバルバルバルバルバルバルバルバルバルバルバルバルバルバルバルバルバルバルバルバルバルバルバルバルバルバル…!!」
 レモナを壁に押し付けたまま、つーは爪を何度も何度もレモナの腹に突き刺した。
 血を吐いて崩れ落ちるレモナ。
「トドメダッ!!」
 つーは、爪をレモナに振り下ろそうとする。
 地面に崩れてぐったりしているレモナは、左手をつーの腹に軽く当てた。
 左手の先端は、ガトリング・ガン状に変形している。
 独特の回転音と、飛び散る薬莢。
 つーは血を吐きながら吹き飛んで、階段に激突した。
 大きく凹む階段。手すりもヘシ折れた。
 ああ、モナの家が潰れていく…

579:2004/01/01(木) 23:53

「やってくれたわね… ホントに…」
 ユラリと立ち上がるレモナ。
「死体も拾い集められないくらい、綺麗に消してあげるんだからァッ!!」
 レモナの髪が舞い上がり、背中から何かが発射される。
 それは天井に大穴を開けて、大空高く舞い上がった。

「ヤバいぞっ! クラスター爆弾だっ!!」
 ギコの叫び声。
 親爆弾から200個以上の子爆弾が飛び出し、周囲に絨毯爆撃を食らわせるという迷惑な兵器だ。
「モララー! お願いモナッ!!」
 俺は叫んだ。
「ウホッ!! モナー君からのお願い… 『アナザー・ワールド・エキストラ』ッ!!」
 モララーの身体から、スタンドが浮かび上がる。
「『次元の亀裂』AND『対物エントロピー減少』!!」
 『アナザー・ワールド・エキストラ』は両手を交差させると、大きく真横に広げた。
 はるか真上で、大きな爆発音が響く。
「…これで大丈夫だよ。丸ごとブッ飛ばしてやった…!」

 ほんの真上で、何かが大爆発を起こした。
 グラグラと揺れる家。
 瓦が砕け散り、屋根の半分がぶっ飛んだ。
「ごめん… 一個残ってたみたいだ…」
 呆然とした顔で呟くモララー。
 多分俺は、もっと呆然とした顔をしているだろう。

「ザンネン ダッタナァ!ガラクタッ!!」
 その隙をついた、つーの奇襲。
 爆発に気を取られていたレモナに、避ける余裕はない。
 つーの爪は、レモナの左肩から入って右脇腹に抜けた。
 レモナの体は袈裟切りで真っ二つになり、上半身が地面に崩れ落ちる。
「アヒャヒャヒャヒャ… ヒャ!?」
 地面に転がったレモナの上半身は、右手を差し出していた。
 その右手の照準は、つーの方を向いている。
 まるでロケットパンチのように、その右手が発射された。
「グッ…」
 右手はつーの腹に命中した。
 手首から4本のアームが伸びて、つーの体を固定する。
 そして、つーの体ごと空中へ舞い上がった。まるで打ち上げ花火のように。
 屋根に大穴を開けて、はるか上空へとすっ飛んでいくレモナの右手とつー。

 上空で激しい大爆発が起きた。
 さっきのクラスター爆弾よりも高度は上なので、俺の家への被害はない。
「綺麗な花火モナ〜!」
 俺は嬌声を上げた。もうやけくそだ。

580:2004/01/01(木) 23:53

 ギコとしぃ助教授が、転がっているレモナに駆け寄った。
「オイ! 大丈夫か!?」
 レモナの上半身を揺り動かすギコ。
「動作不良60%ってとこね。システムもダウンしてないし、しばらくすれば自己補修するわ」
 レモナは、平気な顔で答える。
「じゃあ、しばらく放っておいても大丈夫ですね…」
 レモナの脇でしゃがみ込んで様子を見ていたしぃ助教授が、腰を上げた。
「やだわ〜 この程度のダメージじゃ、私は壊れないわよ…」
 アハハと笑うレモナ。
 壊れたのは俺の家だ。

 空から何かが降ってくる…!
 それは、高速で俺の眼前に落ちてきた。
「こっちも、派手にやったな…」
 ギコが呟く。
 落ちてきたのは、真っ黒に焼け焦げたつーだった。
「息は…あるようですね」
 しぃ助教授が、脈を取って言った。
 こっちも、つーの生命力ならばすぐに回復するレベルだ。

「この場合は、どうなるんだゴルァ?」
 ギコは、丸耳に訪ねた。
「この状況は、ダブルKOに該当します。公式ルールに則り、後ほどジャンケンで勝敗を決める事になります」
 丸耳は、瓦礫や屋根の破片を端にのけながら言った。
 カルタを続行できるほどには片付いたようだ。

「では、試合を再開しましょうか…」
 しぃ助教授は言った。
 次の試合は、準々決勝にあたるはず。


                ┏━━━○ギコ
                ┃
                ┃      ×モララー
            ┏━┫
            ┃  ┃      ×キバヤシ
            ┃  ┃
        ┏━┫  ┗━━━○しぃ
        ┃  ┃
        ┃  ┃          ×ガナー
        ┃  ┃
        ┃  ┗━━━━━○しぃ助教授
 族長 ━┫
        ┃  ┏━━━━━○リナー
        ┃  ┃
        ┃  ┃          ×おにぎり
        ┃  ┃
        ┗━┫          ×モナー
            ┃
            ┃  ┏━━━○しぃ妹
            ┗━┫
                ┃  ┏━ つー
                ┗(ジャンケン)
                    ┗━ レモナ


 ギコVSしぃ、そして次の試合がしぃ妹VSジャンケンで勝った方だ。
 しぃは問題ないとして、しぃ妹は人外を相手にして大丈夫なんだろうか…

 ギコとしぃの戦いは、間違いなくギコが勝つだろう。
 しぃ妹も、人外相手に勝ち目はない。
 そうすると、準決勝がギコVSしぃ助教授、そしてリナーVS人外のどっちかか…
 リナーは百人一首を全く覚えていないらしいので、例え人外に勝ったとしても、
 決勝で苦戦を強いられるだろう。
 まあ、家がここまで破壊されてしまえばいっそ清々しい。
 もう好きなようにしてくれーって感じだ。

 さて、次の試合はギコVSしぃのカップル対決だ。
 俺は風通しのよくなった屋根を見上げて、再度涙を流した。


  /└────────┬┐
. <   To Be Continued... | |
  \┌────────┴┘

581新手のスタンド使い:2004/01/02(金) 09:31
お疲れ〜。
おにぎりついに死んだか・・・。

582新手のスタンド使い:2004/01/02(金) 11:01
お疲れさまです。
モナーが一回戦で負けるとは思わなかった

583新手のスタンド使い:2004/01/02(金) 19:20
貼ります。

584新手のスタンド使い:2004/01/02(金) 19:20
     救い無き世界
     第4話・交錯


 マララーとの闘いが終わってからものの十分も経たないうちに、
 物々しい車が数台やって来た。
 マララーは、気絶している所を厳重に拘束された上に、
 妙な注射まで打たれて車の中へと担ぎ込まれていく。
「・・・・・・・・・」
 みぃが俺の腕に強くしがみ付いて来た。
 怖がっているのか、微かに震えている。
 無理も無い。
 俺達もあれと同じ目に会うかもしれないのだ。
 かといって逃げようにも、
 既にあたりには何人ものぃょぅの仲間らしき連中が辺りを見張っている。
 俺達はまな板の上の鯉のように、ただその場でじっとしている他なかった。

「心配しなくてもいぃょぅ。
 君達にあんな事は決してしなぃょぅ。」
 ぃょぅは俺達の不安を感じ取ったのか、
 穏やかな口調で話しかけてきた。
「申し遅れたょぅ。我々はSSS(STAND−SECURITY−SERVICE)。
まあスタンド使い専門の警察みたいなものだょぅ。
君達にはただ、少し聞きたいことがあるだけだょぅ。
 それさえ済んだら、すぐに帰してあげるょぅ。」
 そんなの怪しいもんだ。
 唯のチンピラをあそこまでするような連中前にして、
 誰がそうそう信用出来る。

「あの人は…どうなるんですか…?」
 みぃが口を開いた。
「…彼はスタンドを行使出来ないように、
 然るべき処置を行ったうえで、
 我々の監視下に置かれる事になるよう。
 それがいつまでかは、ぃょぅにも分からなぃょぅ。」
 そうかい。
 つまり場合によっては俺達もそうなるという事か。
「・・・・・・。」
 みぃが沈痛な面持ちを浮かべる。
 やっぱり、こいつは馬鹿だ。
 あいつは俺達を殺そうとしたんだぞ?
 何故そんな奴を心配するんだ。
 というより俺達もああなるかもしれないんだぞ。
 人の事より自分の心配をしてろってんだ。
「…ぃょぅもやり過ぎかもしれないと思うょぅ。
 けど、もしスタンドを悪用する奴を野放しにしていたら、
 多くの人が傷ついたり、死んだりする事になるょぅ。
 スタンドはそれほどまでに大きな力なんだょぅ。
 どうかそれだけは、分かって欲しぃょぅ。」
 ぃょぅの言葉に、みぃは黙って頷いた。

 俺は自分の腕を見つめる。
 この腕。
 人を傷つけ、殺める大きな力。
 成る程、ぃょぅの言う通りだ。
 こんな物騒な力、そこかしこで好き勝手に振るわれては、
 たまったもんじゃない。
「それじゃあそろそろ、君達に話を聞かせてもらうょぅ。」
 ぃょぅが、俺に紙とペンを渡した。

585新手のスタンド使い:2004/01/02(金) 19:21


「……俄には信じ難い話だょぅ。」
 これまでの経緯を聞いて、
 ぃょぅは髭をさすりながら考え込んだ。
 そらそうだ。
 俺だって未だに本当かどうか信じられない。
「スタンド使いの猫又…
 自立意思を持つだけでなく、人に乗り移り使い手とするスタンド…
 スタンド使い以外にもスタンドが見える…」
 ぃょぅは何やらブツブツと言い始めた。
 何と言うか、すっかり別の世界に行ってしまっている。
「…生まれ着いての才能でも、『矢』によるものでもなく
 誕生したスタンド使い…これは、一体…」
「『矢』?
 何なのですか?それは。」
 みぃがぃょぅに尋ねた。
「…はっ!!!
 何でもない、こっちの話だょぅ。
 気にしないでくれょぅ。」
 どうやらぃょぅがこちらの世界に戻って来たようだ。
 というか、『矢』って何なんだ。
 まあ、聞いたところで教えてくれるとも思えないが。

「…それよりも、非常に言い難い事なんだけれど、
 君達を、すぐ帰す訳にはいかなくなったょぅ。
 済まないけど、これから我々と同行してもらうょぅ。」
 俺はとっさに身構えた。
 周りの男達も、それに気付いて一斉に警戒態勢を取る。
 やっぱり、そうきたか。
 さんざ旨い事言っておきながら、結局は俺達も連れ去る腹だったのだ。
「違うょぅ!!
 決して、君達に危害を加えるつもりで言ったんじゃ無いょぅ!!」
 信用できるか。
 このままむざむざと捕まりはしない。

 だけど、どうする?
 相手は俺が歯が立たなかったマララーを一蹴した奴だ。
 周りには仲間もたくさん居る。
 はっきり言って、勝ち目は無い。
 だけど、上手くいけばみぃだけなら何とか逃げ出せるかもしれない。
(馬鹿だな、俺は。)
 俺は自嘲した。
 みぃには自分の心配してろと思っていたくせに、
 俺もこんなときに人の心配か。
 まあ、いい。
 やれるだけやってや…

586新手のスタンド使い:2004/01/02(金) 19:22

「やめなさい。」
 俺がスタンドを発動しようとしたその時、
 不意に女の声がした。
 俺はそいつの顔を見て、背筋を凍らせた。
 端整な顔立ちをしており、微笑を浮かべて俺を見ている。
 だけど、目が少しも笑っていない。
 俺は視線だけで殺されるような錯覚に陥った。
「来ていたのかょぅ。ふさしぃ。」
 ぃょぅが女の名を呼んだ。
 どうやら、知り合いらしい。
「まったく、あなたは…
 順序を考えず、いきなり本題だけズバッと言うから、
 揉め事になるんじゃない!
 少しは状況を考えなさいよ!
 こんな場面でいきなり逮捕するみたいな事言ったら、
 怖がられて当たり前でしょう!」
 ふさしぃと呼ばれた女は、溜息を吐きながら言った。
「ごめんょぅ…少し配慮が足りなかったょぅ。」
 ぃょぅはしゅんと縮こまった。

 ふさしぃはそれを確認すると、今度は俺の方に体を向けた。
「あなたも!少しは自分の体が今どういう状況にあるのか少しは自覚しなさい!
 いい?スタンドっていうのはね、銃や刀剣よりずっと危険な代物なのよ。
 あなたはそれを完全には制御出来ていない。
 いつ暴走するかも定かでない。
 これがいかに危険な事か分かってるの!?
 もしこのまま町に出て、スタンドで人を傷つけるような事にでもなったら、
 あなたはどう責任を取るつもり!?」
 ふさしぃに叱責され、俺はぐうの音も出なかった。
 俺は、俺が化物同然であることをすっかりと忘れていた。
 何時何処で誰を傷つけるのかも分からないのに、
 そのまま逃げるだと?
 何ておこがましい事を考えていたんだろうか。

 ふさしぃは、今度はみぃの方を向く。
「ごめんなさいね〜。怖かったでしょう?
 大丈夫、私達の仕事場に行って、
 簡単な研究の協力をしてもらうだけだから。
 もし変な事をする奴がいたら、
 私が即ミンチにするから、心配しないで。
 あ、そうだ!
 あなたさえ良かったら、用事が済んだ後に一緒に
 服でも買いに行きましょう!
 元が良いから、きっと何着ても似合うわよ。
 うーん、何を着せるか、今から迷うわね…」
 …差別だ、これは。

587新手のスタンド使い:2004/01/02(金) 19:23

「…と、とにかく、我々は別に、君達を監禁したり、
 拷問したりするつもりは全く無ぃょぅ。
 ただ、でぃ君のスタンドを制御する手助けをしたり、
 猫又であるみぃ君のスタンドと我々一般人とのスタンドに
 何か違いは無いか調べたいだけだょぅ。
 君達の尊厳を踏みにじるような真似は、絶対にさせなぃょぅ。」
 ぃょぅが気を取り直して言った。
「いざとなったら、私が何とかしてあげるから、安心して。」
 ふさしぃの目に、先程俺に向けられた殺気はもう、無い。

 はっきりいって、まだ完全にこいつらの事を信用出来てはいない。
 だけど、ぃょぅの俺を見る目に、
 ふさしぃが俺を見るの目に、
 嫌な感じは全く無い。
「大丈夫…この人達、良い人です…。」
 みぃが、俺の手をそっと握る。
「…来て、くれるかょぅ。」
 俺は、小さく頷いた。


「SSSにようこそモナー。」
「貴方達がぃょぅとふさしぃの言っていたご客人ですか。」
 SSSの拠点の一つというビルに着いた俺達を、
 二人の男が出迎えた。
「紹介するょぅ。
 右が小耳モナーで、左がタカラギコ。
 ぃょぅの同僚だょぅ。」
 ぃょぅがそれぞれを紹介した。
「初めまして、歓迎しますよ。」
「自分の家と思って、くつろぐモナー。」
 二人が手を差し伸べてきた。
『でぃです。よろしくお願いします。』
 俺はメモ用紙にそう書いて、二人と握手を交わした。
「あ…あの、みぃと言います…。初めまして…」
 みぃも、たどたどしく自己紹介しながら握手する。
 何か、拍子抜けしてしまった。
 スタンド使い専門の警察というからにはどんな凄い所かと
 思っていたら、普通の会社といった感じだ。

「あら…ギコえもんは?」
 ふさしぃが尋ねるように言った。
 何だろう。他にも誰かいるのか?
「…彼は迎えには来ないそうだモナー…」
 ふいに小耳モナーの顔が暗くなる。
 他の人も全員何やら思う所でもあるのか、気まずい雰囲気が辺りに流れた。
「ま、まあ、取り敢えずお二人の部屋でも案内しましょうか。」
 タカラギコが場の空気を打ち消すように口を開いた。
「そ、そうね。
 まず今日の寝床を案内してあげなくちゃね。」
 ふさしぃも話題を変えるように喋りだした。
 俺は何が起こったのか分からなかったが、
 何やら面倒そうなので聞くのはやめておくことにした。

588新手のスタンド使い:2004/01/02(金) 19:23


「ご苦労様。これで今日の検査は終わりだょぅ。」
 ぃょぅが俺にタオルを渡しながら言った。
 SSSに来てからはや三日。
 正直、ここで俺はどんなひどい目に会うのかと内心怯えていたが、
 実際は町に居るときよりも遥かに良いものだった。
 まあ体に変な機会をつけられた状態でスタンドを出さされたり、
 スタンドでいろんな物を殴らされたりと、
 変な検査に付き合わされはしているのだが、
 まともな食事と寝床にありつけるのはかなりありがたかった。

『色々な事をやらされたけど、
 何か分かった事はあったのですか?』
 俺はここの職員から渡されたホワイトボードにそう書いた。
「…申し訳ないけど、詳しい事はまだ分からなぃょぅ。
 だから、ぃょぅの憶測でしか話せないけど、
 それでもいいかょぅ。」
 俺は頷いた。
「分かったょぅ。
 まず君のスタンドは、今は安定状態にあると言えるょぅ。
 君から聞いた話だと、感情の昂ぶりによって
 スタンドが発動したという事だから、
 もしまた激昂するようなことがあれば、
 暴走する可能性はあるかもしれないけど、
 そうでない限りは、安全だと思うょぅ。」
 つまりは、あんまり怒ったりするなという事か。

「で、次に君のスタンドの能力だけど、
 現在の観測結果から判断すると、
 何の特殊能力も無い唯の近距離パワー型だと考えられるょぅ。
 ただ、まだ君が完全にスタンドから能力を引き出せていなくて、
 未知の能力が内に眠っている可能性も十分にあるょぅ。」
 俺はただ、うんうんと頷きながらぃょぅの話を聞く。

「最後に君のスタンドがスタンド使い以外にも見える事だけど…
 これは正直よく分からなぃょぅ。
 スタンドの中には、能力の性質上例外的に一般人にも見える
 というタイプのものが、幾つか確認されているょぅ。
 だけど、君の場合スタンドが一般人に見える必要性が無ぃょぅ。
 これは大きな謎だょぅ。
 そこでぃょぅは一つの仮説を立てたょぅ。」
 ぃょぅの話は止まらない。
 俺はぃょぅに質問した事を後悔し始めていた。
「それは君のスタンドは、君の体を媒介にして発動している
 というものだょぅ。
 つまりはスタンドを発動すると、君の体が
 半人間、半スタンドという非常に曖昧な存在になり、
 それ故スタンド使い以外にも見えるという事なんだょぅ。」

 俺は愕然とした。
 馬鹿な。
 それじゃあ、俺の体が半分乗っ取られているって事じゃないか。
 冗談じゃ無い。
「体を貰う」とはそういう事か?
 そんな事、あってたまるか…!

「もちろん、これはあくまで仮説に過ぎなぃょぅ。
 そもそも、この説だと何で直接実体化せず、
 体を媒介にするなんて回りくどい方法を取るのか分からなぃょぅ。
 この事は、すぐ忘れてくれていぃょぅ。」
 ぃょぅはそう言ったが、俺は忘れるなんて出来そうになかった。
 自分の体が別の「何か」に変わるなんて、有り得ない。
 そんなこと、信じられなかった。
 信じたく、なかった。

589新手のスタンド使い:2004/01/02(金) 19:24


 俺はぃょぅのいる部屋を出てから、
 何気なくSSS館内を散歩していた。
 というより、さっきのぃょぅから聞かされた事が頭にちらつき、
 じっとしていたら気が滅入ってしまいそうで、
 何かしておらずにはいられなかった。
 ふと、廊下に見知った姿が目に入る。
「あ…でぃさん、お久し振りです。今晩は。」
 みぃも俺に気付いて、声をかけてきた。
 みぃは俺とは別に検査を受けていたらしく、
 ここに来てから顔を合わせる機会は無かった。
 都合三日ぶりの再会といった所だ。
『ああ。久し振り。』
 俺もホワイトボードに文字を書き、
 挨拶を返した。
「あの…もし時間があるなら、少しだけ一緒にお話してもいいですか…?」
 みぃは小さな声で俺に聞いてきた。
 何でこいつはそんな事でいちいちそんなにかしこまるのか。
『別にいいけど。』
 俺もどうせ暇だったので、付き合ってやることにする。

 俺達は、近くにあった長椅子に並んで腰を掛けた。
「あの…でぃさん。
 どこも体の調子が悪い所はないですか?
 ひどい事、されてませんか?」
 みぃが心配そうに聞いてきた。
 つくづくこいつは人の心配ばかりする奴だ。
『別に心配無い。
 それよりそっちこそ大丈夫なのか?』
 俺もみぃの事を聞き返した。
「あ、はい。大丈夫です。
 みなさんとても良い人達ばかりです。
 特にふさしぃさんには、お世話になりっぱなしで…」

 この前ぃょぅから聞いた話によると、
 みぃにセクハラ紛いの事をしようとした奴が
 何者かのしわざで病院送りにされたらしい。
 犯人は間違いなく「あの人」だ。
 みぃには、この事は黙っておくことにする。

『あのさ…みぃ。ええと、何だ、その…
 この前はありがとう…』
 いきなりの俺のお礼に、みぃが目を白黒させる。
 俺は何をやっているのか。
 こんなこと唐突に伝えたって、相手を困らせるだけだろう。
『いや、その、ナイフで刺された時とか、
 マララーにやられた時の怪我を治してもらったお礼を、
 まだ言ってなかったから…』
 俺は恥ずかしさで頭に血が昇っていくのを感じた。
 ああ、糞。
 こんなことなら、助けてもらったとき、
 すぐに礼をいっとくべきだった。
 というか別に今礼を言う必要も無かったじゃないか。
「べ、別にそんな、お礼なんて…
 私のしたことなんか、そんな大したことじゃ…」
 みぃがしどろもどろになる。
 阿呆。
 お前までそんなリアクションされたら余計に困るだろうが。

590新手のスタンド使い:2004/01/02(金) 19:24

 俺達の間には、気まずい沈黙が流れていた。
 と、そこへ一人の男がこちらに歩いてきた。
 そいつはまるで青い狸といったような姿で、
 腹にはポケットのような物がついていた。
「お前か。ぃょぅの連れてきたでぃってのは。」
 そいつは俺を蔑んだ眼つきで一瞥した。
「まったくぃょぅの奴も困ったもんだぜ。
 こんなゴミを拾って帰ってくるんだからな。」
 明らかに敵意剥き出しである。
 こんな事を言われるのはもう慣れきっていたが、
 ただ一つ気になる事に、その口調に込められていたのは、
 町の奴らのような嘲りや蔑みではなく、
 純粋なまでの憎悪だった。

「…でぃさんに、謝って下さい…」
 みぃが、青狸の前に立ち塞がった。
「謝る?何を?」
 青狸がわざとらしく挑発する。
「…でぃさんは、あなたにゴミだなんて言われる様な人じゃありません…!」
 こいつは、馬鹿か。
 弱いくせに、何やってんだ。
 お前に何の関係がある。
「はっ!!
 何寝惚けたことをいってんだ!!
 いいか!?知らないなら教えてやる。
 でぃってのは社会の何の役にも立たないゴミ同然の生物なんだよ!!
 人様に迷惑しか掛けられねえ、便所のタンカスだ!!
 そいつがスタンドなんか使えた日にゃあ、何するか分かったもんじゃねえ。
 本来なら即処分されて当然なんだよ!!
 生かしてやってるだけありがたいと思えってんだゴルァ!!」

 廊下に乾いた音が響く。
 みぃの平手が、青狸の左頬を打ったのだ。
「―――て…」
 青狸の目に怒りの色が浮かび、
 みぃに向かって手を振り上げる。
 俺が間に割って入ろうとしたその瞬間、
 青狸の腕は後ろから伸びた手に止められた。
「やりすぎだょぅ。
 ギコえもん。」
 手の主は、ぃょぅだった。
 ギコえもんと呼ばれた青狸は舌打ちをすると、
 掴まれた腕を乱暴に振り払って不機嫌そうに廊下の向こうへと
 歩いていった。
「…済まなぃょぅ。不愉快な思いをさせて。
 けど、あいつは、ギコえもんは本当はとても良い奴なんだょぅ。
 彼を、許してやって欲しぃょぅ。
 彼に、あんなことさえ無ければ―――…」

「ぃょぅ!!
 余計な事を言うなゴルァ!!!」
 ぃょぅの言葉は、ギコえもんの怒号で阻まれた。
 許すも何も、俺はもうあんな事を言われるのに何の感慨も無い。
 それよりも、俺には無関係であるはずのみぃが怒ることが
 理解出来なかった。
 みぃの方を見てみる。
 みぃは下に俯いて肩を小さく震わせていた。
 …泣き虫め。
 俺はみぃの頭を軽く撫でた。

 余計なことばかりしやがって…
 でも…

 …でも―――

 …ありがとう。

591新手のスタンド使い:2004/01/02(金) 19:25


 私は今町の歓楽街にある行きつけの飲み屋にいる。
 乾ききった咽に、よく冷えたビールを流し込んだ。
 ―――美味い。
「悪ぃょぅ、ギコえもん。
 今日は俺の奢りだなんて。」
 私は机の向かいに居るギコえもんに礼を言った。
「別にかまわねぇよ。さっきの詫びだ、ゴルァ。
 けどな…」
 ギコえもんが周りに視線を移す。
「俺はお前に奢ると言ったんだぞ!!
 何でこいつらまでちゃっかり付いて来てんだゴルァ!!!」
 そこにはふさしぃ、小耳モナー、タカラギコと、
 SSSスタンド制圧特務係A班の面子が勢ぞろいしていた。
 正確に言えば、私が連れて来た。
 せっかくの飲みなのだ。
 久し振りに全員揃って飲むのも悪くない。
 どうせ、ギコえもんの奢りだし。

「アハハハハ!まあ良いじゃないですか。
 なかなか皆で飲む機会もなかったんですし。」
 タカラギコが笑う。
 別に彼は笑い上戸という訳ではない。
 癖みたいなものだ。
「モナ達だけ仲間はずれなんて、良くないモナ〜。」
 小耳モナーは上着を全部脱いで、ネクタイを鉢巻にしている。
 こちらは既に出来上がりかけているようだ。
「全く、何で俺がこいつらにまで…」
 ギコえもんは憮然とした様子だった。
 まあ、決して多くない給料から今夜だけで多大に散財する訳だから、
 当たり前と言えば当たり前だが。
「そう言うなょぅ。
 けど、ふさしぃだけにでもちゃんと奢っておくべきだょぅ。
 ぃょぅはまだ君には死んで欲しくなぃょぅ。」
 私はギコえもんに言った。

 ギコえもんがふさしぃの方を向く。
 ふさしぃの艶やかな毛が逆立ち、顔には血管が浮き出ている。
「ぃょぅに感謝することね、ギコえもん。
 もしあの子に指一本でも触れてたら、あなたミンチになってるわよ。」
 その口調も表情も、穏やかそのものだ。
 しかしそこには泣く子も黙るような威圧感が漂っている。
 と、ふさしぃの持つグラスにひびが入り、
 音を立てて砕け散る。
 これは、「お前もこうなるぞ」というメッセージだ。
 周りの客が一斉に引く。
 無理も無い。
 何の変哲も無い飲み屋の中に、凶暴な獣が放たれようとしているのだ。
「あら、つい力が入り過ぎちゃったみたいね。
 ごめんあそばせ。」
 ようやくふさしぃの体から威圧感が薄れた。
 飲み屋にいる人全員が、ほっと胸を撫で下ろす。
 もともと青いギコえもんの顔が、さらに真っ青だ。
 彼は今、自分が生きているという奇跡に感謝していることだろう。
 しかし、ふさしぃはよっぽどみぃ君のことを気に入ったみたいだ。
 その辺りの理由を、今度聞いてみよう。

「それにしても非紳士的ですねえ、女性に手をあげるなんて。
 野蛮な人だとは思っていましたけれど、
 まさかここまでとは…」
 タカラギコが皮肉っぽく言った。
「全くモナ!!
 ギコえもん、最低だモナー!!」
 べろんべろんになった小耳モナーもそれに続く。
 というか、これじゃ単に酔っ払いがクダを巻いてるだけだ。
 最低なのは、君の酒癖の悪さもそうだぞ。
「うるせーなー!
 分かってるよ!私が悪う御座いました!!
 だからこうして奢ってやってるんだろうがゴルァ!!」
 ギコえもんは半ば開き直りかけている。

592新手のスタンド使い:2004/01/02(金) 19:26

「…ギコえもん。
 分かっていると思うけど、君が本当に謝るべきなのは、
 ぃょぅ達じゃなく、でぃ君と、みぃ君だょぅ。」
 私はギコえもんに釘をさすように言った。
「……」
 ギコえもんは黙ってしまった。
 彼の性格のことだ。
 自分が悪いと認めることは出来ても、
 恥ずかしがってなかなか謝ろうとはしないだろう。
 しかし、それではギコえもんは卑怯者になってしまう。
 私は、彼が卑怯者になって欲しくはない。
「ギコえもん、君が過去に受けた傷の深さは、分かっているょぅ。
 だけど、その事と彼らとは、何の関係も無ぃょぅ。
 自分が悪いと分かっているのなら、
 ちゃんと謝らなければ駄目だょぅ。」
 言ってからすぐに、私はこの言葉を口に出したことを後悔した。
「…分かってる。
 そんなこたぁ、分かってるんだ…」
 ギコえもんは痛みを噛み締めるように呟いた。

 最低だ、私は。
 あの事件で彼がどんなに他人には計り知れないほど深く傷ついたか。
 それなのに抜け抜けと「傷の深さは分かっているつもり」だと?
 何て傲慢さだ。
 私は激しい自己嫌悪に苛まれた。
「ごめんょぅ…ギコえもん。
 ぃょぅは…」
 馬鹿か。
 一体この私がどの面下げて何を彼に言えるというのだ。
「!
 いいってことよ!気にすんなって!!
 さ、しけちまったし飲み直そうぜ!!」
 私の雰囲気を察したのか、
 ギコえもんは、わざとらしい程明るく振舞った。
 それが、いっそう私の心を痛めた。

593新手のスタンド使い:2004/01/02(金) 19:26

「すみません、こういう酒の席でなんですが、
 少し仕事の話をいいですか?」
 タカラギコが、ふいに喋り出した。
「?ぃょぅは別に良いけど、皆はどうだょぅ。」
 私は他の人に意見を促した。
「私は別に構わないわよ。」
「手短にな、ゴルァ。」
 ふさしぃとギコえもんはOKみたいだ。
 小耳モナーは…
 完璧にぶっ潰れて吐瀉物の海に沈んでいるので
 放っておくことにする。

「マララーを尋問したところ、
 どうやら変な男に『矢』で撃たれた事が原因で、
 スタンド能力に目覚めたという事を聞き出せました。」
 一同がやっぱりかといった顔をする。
「…これで『矢の男』によって引き起こされたスタンド犯罪が、
 検挙出来ただけで、十一件目って事か…」
 ギコえもんが硬い表情で呟く。
「『矢』に撃たれたらしき傷が原因で人が死亡した、
 殺人事件の件数と合わせると、五十五件になります。
 尤も、表沙汰になっていない事件がどれだけあるかは
 想像もつきませんけどね。」
 タカラギコが肩をすくめた。
 数ヶ月前突如この町に出現した『矢の男』。
 その被害はゆっくりと、だが確実に増えていっている。
 必死の捜査にも関わらず、私達は『矢の男』の足取りはおろか、
 目的さえ掴めずにいた。

「…ぃょぅ、でぃ君と、みぃちゃんは、
 本当に『矢の男』とは関係がないの?」
 ふさしぃが、私に尋ねてきた。
「嘘発見器にかけての質問でそれとなく聞いてみたけど、
 彼らが嘘吐きの達人でない限り、
 『矢の男』とは無関係だょぅ。」
 私は首を振りながら答えた。
「…そう…」
 ふさしぃが残念そうに俯く。
 またもやさしたる手がかりは無しという事になる。
 辺りを思い空気が包んだ。
「…何か、嫌な予感がするわね…
 『矢の男』もそうだけど、もっと大きな別の何かが…」
 ふさしぃが心配そうに言った。
「へえ、それはどうしてですか?」
 タカラギコが、ふさしぃに聞いた。
「良い女の勘!」
 ふさしぃが即答する。
「けっ、何が良い女だ。
 この妖怪暴力女が…」
 ギコえもんが、呟いた。

 杞憂であって欲しい。
 『矢の男』だけでも手一杯なのに、
 さらに何かが起こるような事があっては、
 さらなる人々が傷つくことになる。
 だが、昔からふさしぃの『良い女の勘』とやらは良く当たるのだ。
「これから、どうなるというんだょぅ…」
 思わず弱音が漏れてしまう。
 だけど、臆するわけにはいかない。
 私は、立ち向かわねばならない。
 それが、SSSたる私の務めなのだから。

 後ろからギコえもんの豚のような悲鳴が聞こえてくる。
 どうやら今取り敢えずの問題は、
 彼をどうやって死地から生還させるかのようだ。
 思わずタカラギコと目が合う。
 私達はお互い力なく微笑んだ後、
 溜め息をついてがっくりと肩を落とした。

594新手のスタンド使い:2004/01/02(金) 19:26


 私は、夜道を行く人々を観察していた。
 そして、探していた。
 今夜の標的を。
 この『矢』で射るに相応しき者を。
 相手は、慎重に選ばなくてはならない。
 下手に撃ちまくっていては、
 後々私の邪魔になる可能性があるからだ。
 そんな自分で自分の敵をわざわざ増やすような愚行は、
 絶対に避けなければならないのだ。
 慎重になりすぎる事に、越したことはない。
 世界を憎む者を、世界に害悪を撒き散らす者を。
 そして、真の強者に成り得ない、
 矮小な心を持つ者を。
 そんな、弱き、哀れな者を。

 …居た。
 今日はあいつだ。
 私は気付かれないようにそいつの背後に回りこむと、
 弓を構え、弦を引き絞った。

595新手のスタンド使い:2004/01/02(金) 19:27


 男は、窓から夜景を眺めていた。
 広いその部屋には何もなく、明かりもついていなかった。
 月と、町の光だけがその部屋を照らしていた。
「…どうなされました、1総統。
 何やら物思いに耽られていらっしゃるようですが。」
 名を呼ばれ、男は声をかけた相手に顔を向けた。
「失礼、気を悪くなされましたか…」
 声を掛けた男は、うやうやしくお辞儀した。
「いや、いい。
 少し町の夜景を見ていただけだ。」
 1総統と呼ばれた男は、大儀そうに返事を返した。
「ほう、夜景を、ですか。」
 もう一人の男が、相槌を打った。
「ああ、いずれこの町の灯が、
 戦火によって、もっとさらにより見違うほどに
 大きく紅く熱く猛々しく勢いよく美しくなるのかと思ったら、
 ついつい見とれてしまってね。」
 男はその目に狂気を宿し、恍惚の表情を浮かべて言った。
「成る程成る程。
 困ったものです。
 総統は本当に好きなのですねえ、
 戦争が。」
 もう一人の男の目も、既に常人のそれではない。
「何を言う。
 君だって大好きなくせに。」
 男は相手の目に己と同じ狂気を見て、睦言のように囁いた。
「これは手厳しい…
 一本取られましたな…」
 男達は微笑を浮かべた。
 にっこりという表現が正に似合うような、
 しかし途轍もなくおぞましい笑みを。

「満ちた…
 いよいよ、時は満ちた…
 再び、我々は再び帰ってきた。」
 そう言うと、視線を再び夜景へと移した。
「命令だ、梅おにぎり。
 やり方は任せる。
 狼煙をあげろ。
 幕が開いた事を、
 全ての者に知らせるのだ。」
 男は、そう言い放った。
「かしこまりました。
 すぐに手配いたします…」
 梅おにぎりは、そう言うと音もなく
 その部屋から出て行った。

 男はまた独りになると、
 最初は静かに、しかしだんだんと大きく、
 最後には狂った様に大きな声で笑った。
 実際、彼はすでに正気など失っているのだろう。
 笑い声は、その部屋の闇へと、
 そして窓の外の夜景へと、吸い込まれていった。


  TO BE CONTINUED…

596:2004/01/04(日) 22:23

「―― モナーの愉快な冒険 ――   番外・正月は静かに過ごしたい 後編」



 ギコはどっしりと座布団に座った。
 対面に座り、着物の袖をまくるしぃ。
 そして、互いに礼をした。
「お手柔らかにお願いします…」
「お前には悪いが、真剣勝負だぜゴルァ!」

 この戦いの勝敗は明らかだ。
 しぃに、勝てる見込みは全く無い。

 丸耳は、読み札を読み上げた。
「む――」

「ゴルァッ!!」

 対モララー戦のごとく、一瞬で札を取ってしまうギコ。
 しぃは全く動けない、と思ったら…
 なんと、しぃの着物の帯がほどけてしまった。
「あ…! きゃぁっ!!」
 必死で前を押さえるしぃ。

 余談だが… 着物の正しい着方として、下着は着用しないのがマナーだ。
 そして着物というものは、帯を解いてしまえば、自然にスルスルと下に流れ落ちてしまう殿方便利設計である。
 今のしぃが下着をつけているかどうかは分からないが、つまりはそういう事だ。

「な…! 見るなゴルァ!!」
 俺達の視線を遮断するように、慌ててしぃの前に立ち塞がるギコ。
「審判、タイムだタイム!」
 ギコは叫んだ。

「ギコ君、帯結ぶの手伝ってくれる?」
「おう。一重太鼓でいいな?」
 前を押さえて立ち上がるしぃ。
 ギコは軽く帯を巻くと、ゴソゴソと巻く作業をしながらしぃの周囲を回り始めた。
 帯はみるみる形になっていく。

「ギコ君、帯の結び方知ってるんだね…」
 しぃは前を真っ直ぐ向きながら呟いた。
「あ、おお…」
 胡乱な返事をするギコ。
 それも当然だろう。
 ギコは以前に自分で言っていた。
 成人式帰りの年上の女性とホテルに行った時、着付けのやり方を完全にマスターしたと…

 程無くして、帯が結び終わった。
「流石ギコ君、随分上手だね」
 にっこりと笑うしぃ。
「あ、おお…」
 ギコは、ガクガクブルブルしている。

「じゃ、再開してください」
 しぃは、丸耳に言った。
「これからギコ君とたっぷり個人的な話をしますけど、構わず続けて下さいね…」

「了解しました」
 丸耳は、読み札を取る。
「夏の夜は――」

「…ゴルァ」
 ギコはちらりとしぃの顔色を盗み見て、その札を取った。
 しぃは微動だにせず、不意に口を開いた。
「…で、何人目?」
 凍りつく俺達。
 しぃの柔和な笑顔は崩れていない。
 
「な、何がでしょうかゴルァ」
 ギコは、明らかに動揺していた。
 手の震えが肉眼でも分かる。

597:2004/01/04(日) 22:24

 そんな2人に構わず、丸耳は札を読み上げた。
「秋風にたなびく雲の絶え間よりもれいづる月の影のさやけさ…」

 最後まで読み上げられてもなお、両者とも動かない。
 しぃは呟く。
「――何がって… そんなこと、聞かなきゃ分からないのかな…?」
 ギコは少し声を荒げた。
「聞かなきゃ分からない…ってお前、質問の意味が…」

 バシィッ!! と、しぃは床を叩いた。
 ビクッとするギコと俺達。
 いや、今のは札を取ったのか。
 獲得した札を、自分の手許に引き寄せるしぃ。
「――帯を結んであげた人の数、今までつきあった人の数、本当に愛した人の数、それぞれ私は何人目?」
 
 静まり返る座。
 丸耳の、読み札を読み上げる声が閑かに響く。
「世の中よ道こそなけれ思ひいる山の奥にも鹿ぞ鳴くなる」

「もちろん、本当に愛したのはお前一人に決まってるだろゴルァ…!」
 ギコは、札には目もくれず答えた。

 バシィッ!!
 再び、しぃは手を床に叩きつけた。
 …いや、札を取った。
「ギコ君がそのセリフを吐いた女の数、ってのも追加で…」
 その柔和な笑顔を崩さずに、しぃは告げた。
 ギコはかわいそうなくらいガクガクブルブルしている。

 それには一切構わず、丸耳は無機質に歌を読み上げていった。
「ちはやぶる神代もきかず竜田川からくれなゐに水くくるとは…」

「この歌の作者、ギコ君なら知ってるよね…?」
 しぃはにっこり笑って言った。
「あ、在原業平ですゴルァ…」
 ギコは縮こまって答える。
 しぃは静かに札を取った後、口を開いた。
「在原業平って、すごく遊んでる人だったみたいだね。誰かとおんなじで…」

 段々小さくなっていくギコ。哀れすぎる。
 もはや公衆辱めだ。

「あと、その語尾のゴルァって何? 反抗的な態度を表してるの? 優位性が自分にあるのを主張したいの?
 それは誰に対して? 私? 周囲の人? それとも自分自身?」
 しぃは、札を取りながら上目遣いで言った。
 
 ギコは、スッと手を上げた。
「この勝負、棄権します…」
 
「…では、勝者はしぃさんとさせて頂きます」
 丸耳はそう宣言した。
 なんと、予想に反してしぃが勝ち残ってしまった…

 しぃは、青くなってガタガタブルブルしているギコに声をかけた。
「やだなぁ、ギコ君。冗談よ、冗談…」
 ぱっと顔を上げるギコ。
「そ、そうだよなぁ… すっかり騙されちまったぜ! ハハハ…」
 ギコは引きつった顔で笑い声を上げた。
「アハハハハ…」
 つられたように、しぃも笑う。


       (  _,, -''"      ',             __.__       ____
   ハ   ( l         ',____,、      (:::} l l l ,}      /      \
   ハ   ( .',         ト───‐'      l::l ̄ ̄l     l        │
   ハ   (  .',         |              l::|二二l     |  ハ こ  .|
       ( /ィ         h         , '´ ̄ ̄ ̄`ヽ   |  ハ や │
⌒⌒⌒ヽ(⌒ヽ/ ',         l.l         ,'  r──―‐tl.   |  ハ つ │
        ̄   ',       fllJ.        { r' ー-、ノ ,r‐l    |  ! め │
            ヾ     ル'ノ |ll       ,-l l ´~~ ‐ l~`ト,.  l        |
             〉vw'レハノ   l.lll       ヽl l ',   ,_ ! ,'ノ   ヽ  ____/
             l_,,, =====、_ !'lll       .ハ. l  r'"__゙,,`l|     )ノ
          _,,ノ※※※※※`ー,,,       / lヽノ ´'ー'´ハ
       -‐'"´ ヽ※※※※※_,, -''"`''ー-、 _,へ,_', ヽ,,二,,/ .l
              ̄ ̄ ̄ ̄ ̄       `''ー-、 l      ト、へ

 女の強さ、とくと見せてもらった。
 それにしても、開き直れる強さも必要だぞ、ギコ…

598:2004/01/04(日) 22:25
                        ×ギコ
               
                        ×モララー
            ┏━┓
            ┃  ┃      ×キバヤシ
            ┃  ┃
        ┏━┫  ┗━━━○しぃ
        ┃  ┃
        ┃  ┃          ×ガナー
        ┃  ┃
        ┃  ┗━━━━━○しぃ助教授
 族長 ━┫
        ┃  ┏━━━━━○リナー
        ┃  ┃
        ┃  ┃          ×おにぎり
        ┃  ┃
        ┗━┫          ×モナー
            ┃
            ┃  ┏━━━○しぃ妹
            ┗━┫
                ┃  ┏━ つー
                ┗(ジャンケン)
                    ┗━ レモナ


 すると、準決勝1回戦はしぃVSしぃ助教授か…
 まさか、しぃ助教授に勝ったりしないだろうな…?

 とにかく次の試合だが、つーもレモナもくたばったままじゃないか?
 しぃ助教授が、ようやく身体が繋がったレモナと真っ黒コゲのつーを競技場まで引き摺ってきた。
「ちょっと〜 まだ直りきってないんだからね…」
 レモナは文句を言っている。
 しぃ助教授は、つーの顔に往復ビンタをかました。
「ナニシヤガル!!」
 ぱっと目を覚ますつー。

「では、ジャンケンして下さい」
 ほとんど説明もなく、しぃ助教授は二人に告げた。

 睨みあうレモナとしぃ。
「ズット、テメーガ ウットーシカッタンダヨ… モナーニ ベタベタベタベタ シヤガッテ…」
「羨ましかったんなら、素直にそう言ったら?、『オレモ ベタベタ シタイゼー』ってねェ!」
「フン、メイワク ガラレテルノニ キヅキモ シネーデ… ノウナイデ ヨロシク ヤッテロ、テメーハヨォ!!」
「あんたに言われる筋合いはないわよ! つー!!」
「『サン』ヲ ツケロヨ、ネカマ ヤロォ!!」
 いい具合にヒートアップしていく2人。

「はい、ジャーンケーン…」
 音頭を取るしぃ助教授。
「ホイ!」
 という合図とともに、つーの左ストレートがレモナの右頬にブチ込まれた。
 同時に、レモナの右ストレートがつーの顔面にメリ込んでいる。

 グーであいこ… というか、クロスカウンターだ!!

 つーは、そのままスローモーションで地面に崩れ落ちた。
「あんたの敗因はたった一つよ… 『あんたは私を怒らせた』」
 ポーズをキメて勝ち誇るレモナ。

「ホントの勝因は、ダメージからの回復力の差だったんですけどね」
 しぃ助教授は冷静なツッコミを入れる。

「相手が左ストレートを打ってきたところに、タイミング良く自分の右ストレートをかぶせてクロスさせる事によって、
 通常のパンチよりも4倍の破壊力を生む… それが、クロスカウンターなんだよ!」
 以上、解説のキバヤシさんでした。

「本来あいこなんですが、この際レモナさんの勝ちにしましょう…」
 丸耳は言った。
 段々、判定もいい加減になってきているようだ。
 ともかく、次の大戦はしぃ妹VSレモナである。
 だが… 何か様子がおかしい。

「あ、大きな光がついたり消えたりしている… おーい、誰かいませんか…?」
 レモナは意味の分からない事を口走っている。
 どうしたんだ? なんか、かなりヤバそうだぞ?

「レモナの方も、無事では済まなかったみたいですね…」
 ぶっ倒れたつーを運びながら、しぃ助教授が言った。
「上半身と下半身が繋がったところに強い衝撃を与えたから、少し思考回路がイッちゃったのかもしれません。
 ちょっと前も、相当興奮していたみたいですしね…」
 おいおい。
 とりあえず、俺はレモナに話しかけた。
「レモナ! 早くしぃ妹と勝負をしないと、いつまでたっても進まないモナよ」
 レモナはぎょろりと俺の方を見る。
 明らかに焦点が合っていない。
「勝負…? 俺が勝つ方に、花京院の魂を賭けよう…」
「分かったから、とっとと座るモナ…」
 俺はレモナを抱えると、座布団のところまで運んでいった。
 レモナは対面に座るしぃ妹を見据える。
「あの… お願いします」
 少し動揺しながら頭を下げるしぃ妹。
 久々に、普通の人間の反応を見たような気がする。

599:2004/01/04(日) 22:26

「では、始めさせて頂きます…」
 丸耳は読み札を手に取った。
「わたの原漕ぎいでてみれば久方の――」

「はい!」
 やはり、上の句だけで取ってしまうしぃ妹。
 さすが俺を破った相手だぜ…!

 一方、レモナは首を360度回転させたりと、不気味な行動を取っている。
「フフフフフ名まえがほしいな『しぃ妹』じゃあ今いち呼びにくいッ!
 そうだな……『メキシコに吹く熱風!』という意味の『しぃタナ』というのはどうかな!」
 頭を回転させながら、意味不明な事を口走るレモナ。
「あの… お断りします」
 しぃ妹… いや、しぃタナは拒絶する。

「夜もすがら物思ふころは――」

「はい!」
 何気にかなりの強さを見せるしぃタナ。
 これは、ギコやしぃ助教授クラスでないと太刀打ちできないのではないか?

「巻き舌宇宙で有名な紫ミミズの剥製はハラキリ岩の上で音叉が生まばたきするといいらしいぞ。要ハサミだ。61!」
 それに対して、壊れっぱなしのレモナ。
 勝敗の行方は明らかだ。


「51枚目の札を獲得しました。しぃタナさん、準決勝進出です!」
 丸耳は告げた。


            ┏━━○しぃ
        ┏━┫
        ┃  ┗━━○しぃ助教授
 族長 ━┫
        ┃  ┏━━○リナー
        ┗━┫
            ┗━━○しぃタナ


 いよいよ、準決勝だ。
 4人中3人がしぃ族で占められているのが不気味だが、まあいいだろう。
 心配なのは、リナーVSしぃタナだ。
 しぃタナはギコほどのスピードはないにしろ、上の句だけで札を取れる。
 百人一首を覚えていないリナーに勝ち目があるのだろうか。
 おにぎりのように、瞬殺する訳にもいかないだろう。 …たぶん。

 当然、俺はリナーに勝ってほしい。
 普段はシャイで俺に積極的になれないリナーも、これを機に、
「モナー… 実は、君が欲しいんだ…」
 とか言っちゃったりして、俺は、
「モナも、同じ気持ちモナよ…」
 と優しく告げて、アハハハハと笑いながら二人で砂浜で追いかけっこしたりしなかったり
 ということがある可能性もないとは言い切れないだろう。
 いや、大いにあるはずだと言ってくれ。
 
 などと妄想しているうちに、しぃVSしぃ助教授の戦いが始まった。
 もしかしたら、しぃがまた黒さを発揮して、番狂わせがあるかもしれない…!

「ほ――」

「はいッ!!」
 バシッ! と札を叩くしぃ助教授。
 対ガナー戦は、気絶していて見れなかったが… メチャクチャ強いじゃないか。
 スピードもギコと同レベルだ。
 さすがのしぃも、全く手が出ない。
 勝負は瞬く間にしぃ助教授の圧勝に終わった。

「ちょっと、大人げなかったですかね…?」
「いえいえ、すごかったですよ!」
 なごやかに試合後の会話をする二人。
 そして、ガッチリと握手を交わした。
 今までこういう爽やかな展開はなかったな。
 みんな、遺恨とか残し過ぎだ。


              ━━×しぃ
        ┏━┓
        ┃  ┗━━○しぃ助教授
 族長 ━┫
        ┃  ┏━━○リナー
        ┗━┫
            ┗━━○しぃタナ


 次は、リナーVSしぃタナである。
 果たして、リナーに勝機はあるのだろうか…!

 向かい合って座る二人。
 丸耳が最初の札を読み上げた。
「この――」

 バシィッ!!
 リナーは、瞬時に左手を札に叩きつけた。
 その札は、確かに丸耳が読み上げた札だ。

「リナー、百人一首は覚えてないって言ったモナ…!」
 驚愕した俺は、リナーに訊ねた。
「あれから何戦やったと思ってるんだ? あれだけ目の前で札を読み上げられれば、馬鹿でも覚える…」
 なんと、リナーは他人の戦いを見て、全ての札を覚えてしまったらしい。

「しら――」

 バシッと取ってしまうリナー。
 こうなってしまえば、スピードで致命的に劣るしぃタナに勝ち目は無い。

「51枚先取により、リナーさんの勝ちとなります」
 結局、リナーが軽く勝利を収めた。
 そう何度も番狂わせは起きなかったようだ。
 ゲッ! すると、決勝戦は…!!


              ━━×しぃ
        ┏━┓
        ┃  ┗━━○しぃ助教授
 族長 ━┫
        ┃  ┏━━○リナー
        ┗━┛
              ━━×しぃタナ


 しぃ助教授VSリナー…!
 ヤバい戦いになりそうだ…!!

600:2004/01/04(日) 22:26

「では決勝戦に向けて、10分間の休憩に入らせて頂きます」
 丸耳は告げた。
 弛緩した空気が場に流れる。
「リナー、強かったモナね!」
 俺はリナーの脇へ行った。
「別に…」
 無愛想に返事をするリナー。
 だが、その内面はしぃ助教授との激突に向けて昂ぶっていることは予想がつく。

「では、少し部屋に戻る…」
 そう言い残して、リナーはボロボロの居間を出て行ってしまった。
 たぶん、装備を整えに行ったのだろう。
 モナコンネンIIとか持ち出してこないだろうな…?

 一方、しぃ助教授は既に座布団の上に正座している。
 その横には、当然のようにハンマーが置いてあった。
 使う気マンマンだ…

「いよいよ決勝ね、モナーくん!」
 レモナが、不意に話しかけてきた。
「もう大丈夫モナか?」
 嬉しそうに頷くレモナ。
「もうシステムも安定したしね。あっ、つーちゃんも目覚めたみたい…」
 見れば、黒コゲのつーも座布団の上に座っている。
 つーにしてはやけに大人しい。やはりダメージが蓄積しているのだろうか。
 そして、並んでいるカルタの方に向き直るレモナ。
「さーて、どっちが勝つのかしらね〜」

 …妙だ。この態度は明らかに妙だ。
 レモナとて、自分が勝ちたかったはず。
 悔しさを微塵も見せないのはレモナのキャラクターゆえか、それとも…


 …ギシッ。 …ギシッ。 …ギシッ。
 ボロボロになった床板を踏む音。
 その足音は、ゆっくりとこの競技場に近付いてくる。

 ――来る。
 吸血鬼を殺す事のみに特化した存在、代行者。
 吸血鬼にとっての死神。
 そして、『異端者』の名を冠した女、リナーが居間に戻ってくる。
 フル装備状態なのは間違いない。
 彼女が一歩歩いただけで、廊下はギシギシと音を立てる。
 もう、この家は崩壊したも同然だ。

 フスマがゆっくりと開く。
 強い殺気を撒き散らしながら試合場に入ってくるリナー。
 彼女の手にしている武器に、驚きの視線が集中した。

 ――それは、剣と言うにはあまりにも大きすぎた。
 大きく、ぶ厚く、重く、そして大雑把すぎた。
 それはまさに鉄塊であった。

 ゆっくりと、しぃ助教授の向かいまで移動するリナー。
 3mはある大剣を畳に突き立てると、座布団に座った。

「全く… ロクでもないものを持ち出してきますね…」
 しぃ助教授がため息をついた。
「お前のハンマーに対抗するため、『教会』から取り寄せた…」
 リナーはしぃ助教授を睨む。
 2人の間に火花が飛び散った。

601:2004/01/04(日) 22:27

「さて、それでは… これより、『オメガカルタ』決勝戦を開始します!」
 丸耳は高らかに宣言した。
 固唾を呑んで見守る俺達。
 リナーが勝つか、しぃ助教授が勝つか…
 両者の実力は伯仲している。予測は不可能。成り行きを見守るほかにない。

 丸耳は読み札を取った。
 そして、厳かに読み上げる。
「うか――」

 最初に、リナーが動いた。
 しぃ助教授目掛けて、大剣を大きく横に薙ぐ。
 姿勢をかがめてやり過ごすしぃ助教授。学帽の半分が吹き飛んだ。
 そのまましぃ助教授はハンマーを掴むと、低い姿勢から思いっきり振り上げる。
 それを剣で受け止めるリナー。
 重い金属同士がぶつかり合う衝撃音。
 互いの武器に力を込める2人。

「どうやら、力は互角のようですね…!」
 鍔迫り合いをしたまま、しぃ助教授は言った。
 それを聞いて笑みを浮かべるリナー。
「こういう場合、『互角だな』とか言い出した方が弱い。まして、目的をすっかり忘れるような奴はな…!」
「目的を忘れる…?」
 しぃ助教授は、瞬時にリナーの足元に目をやった。
 リナーの足は、一枚の札を踏んでいた。
 丸耳が読み上げた札だ。
 リナーは、足で札を取っていたのだ。

「くっ、そうきましたか…、卑怯な…」
 しぃ助教授は唇を噛んだ。
「卑怯?」
 リナーが薄く笑う。
「卑怯とは、こういう手段のことを言う…」
 リナーは、懐から何かを取り出した。
 あれは… 時限爆弾だ!!

「貴方、一体何を…!」
 流石のしぃ助教授も慌てている。
 時限爆弾は、すでに作動しているようだ。
 リナーはそれを無造作に床に置いた。
「あと1分で爆発する。だが、アナログタイマーを使った簡単な構造だ。お前なら1分あれば解除できるだろう?」
 とんでもない事を言い出すリナー。
 しぃ助教授は、リナーを睨みつけている。
「それが、本物の時限爆弾であるとは限りません。それに、貴方も爆発させる気はないでしょう?
 貴方が、ここにいるモナー君達や、近所の人達をも巻き込むとは思えません…!」
「では、そのまま放置してカルタ取りに熱中すればいい…」

「この…」
 しぃ助教授は何か言いたげに口を開いた後、爆弾の前にしゃがみ込んだ。
 たとえフェイクだと分かっていても、ASA三幹部の一人という立場がある限り、町を危険にさらす事はできない。
 テキパキと爆弾を解体するしぃ助教授。
 タイマーと起爆装置を完全に沈黙させる。
 その間に、リナーは2枚の札を手にした。

「コードを切って… これでよし!」
 言うが早いか、しぃ助教授は作業が終わるなりハンマーを手に取った。
 そのまま素早くリナーに接近すると、思いっきり振り下ろす。
 大剣を薙いで、それを弾くリナー。
「20秒もかからないとは、なかなかだな。そっち方面でもやっていけるんじゃないか?」
「あんまりナメた口を叩かないでくれませんか…! 私、そろそろブチ切れそうなんで…!」
 肩をブルブルと震わせているしぃ助教授。
 もうそろそろ、避難の頃合か?

602:2004/01/04(日) 22:27

「その割には、なぜスタンドを使わない…?」
 リナーはしぃ助教授を見据える。
「…」
 しぃ助教授は押し黙った。
「答えられないなら、私が言ってやろう。『サウンド・オブ・サイレンス』で力の方向を変えれば、
 散らしきれなかった『力』が、他の札を巻き添えにする可能性があるからだ。
 そうなれば、お前のお手付きになるんだろう…?」
 それに対して、しぃ助教授は口を開く。
「貴方も、威嚇以外で爆発物は使えませんがね…!」

「ひと――」
 札を読み上げる丸耳。

 2人は同時に動いた。
 ハンマーと大剣を激しく撃ち合う。
 互いの足を封じるために、下段への攻撃を交える2人。
 その戦いに見入っていた俺だが、ふと背後から違和感を感じた。 

 ――嫌な空気。
 妙な『敵意』が視える。
 俺は後ろを振り向いた。
 モララーと目が合う。
 奴は、口の端に笑みを浮かべていた。
 その口がゆっくりと開く。
「ねぇ、モナー君… この戦い、あの泥棒猫に勝たせる訳にはいかないんだよ…」

 …こいつ、まさか!?
 モララーは、しぃ助教授と打ち合うリナーに向けて右手を構えた。

 テメェ…!!
 モララーの『アナザー・ワールド・エキストラ』の腕から、『次元の亀裂』が放たれる。
 リナーはそれに気付いたが、しぃ助教授の猛攻によりかわしきれない。

「このォッ!!」
 『アウト・オブ・エデン』を開放。
 同時に俺はリナーの真横に飛び込むと、『次元の亀裂』を破壊した。

「悪いけど… リナーには指一本触れさせないモナ…」
 バヨネットを構えて、リナーの前に立ちはだかる俺。
「なんで… なんで、そんなやつをかばうんだァッ!!」
 モララーは歯軋りをした。
 そして、『次元の亀裂』を乱発してくる。

「くっ!!」
 その場から飛び退こうとするリナー。
「気が逸れましたねッ!」
 その隙を突いて、しぃ助教授が札を取ってしまった。

「リナー! しぃ助教授との戦いに専念するモナ! モララーはモナが相手をするモナ!」
 俺は叫んだ。
「…すまない」
 そう言うと、リナーはしぃ助教授に斬りかかった。
「あっ、この…!」
 『アナザー・ワールド・エキストラ』でリナーに殴りかかるモララー。
「どこを見てるモナァッ!!」
 俺は、『アナザー・ワールド・エキストラ』にバヨネットで思いっきり斬りつけた。
 『アウト・オブ・エデン』は、『不可視領域に干渉』できるスタンド。
 そして、視えたものは破壊できる。
 スタンドといえど、生命エネルギーのヴィジョン。
 視えた以上、『アウト・オブ・エデン』で破壊は可能。

「そこまでして、あの泥棒猫を守るんだな…!」
 モララーは憎々しげに呟いた。
「それ以上僕の邪魔をするんなら、モナー君には多少痛い目を見てもらうよ…?」
「御託はいいから来いよ、変態野郎…」
 俺は吐き捨てた。
 モララーの顔色が変わる。
「僕が、モナー君には何もできないって思ってるんだったら… 大間違いなんだからなッ!!」
 俺の挑発に乗って、狂ったように『アナザー・ワールド・エキストラ』の拳を振るうモララー。
 その攻撃は、直線的で読み易い。
 スタンドのスペックに頼っているだけでは、戦いには勝てないことを判っていないのだ。

603:2004/01/04(日) 22:28

 その瞬間、俺の頭上を何かが高速で通り過ぎていった。
 『それ』は、リナーの前に着地する。
 あれは… レモナ!!

「全く… みんな、考える事は同じのようねぇ」
 レモナは涼しげに言った。
「お前も、邪魔をするという訳か…!」
 リナーは大剣から左手を離すと、その手を懐に突っ込んだ。
 そして、バヨネットを取り出す。
 右手に大剣、左手にバヨネットを構えるリナー。
 いくらなんでも無茶だ。レモナとしぃ助教授の2人を同時に相手にできる訳がない。
 助けに行こうにも、俺はモララーを抑えるので精一杯だ…!

「私は、あなたの心根が気に入らないのよ…」
 レモナは、リナーの目を見据えて言った。
「…何の事だ?」
 不審気に訊ね返すリナー。
「『何くわぬ顔してとぼける…』。泥棒猫って、みんなそんな態度を取るのよねェー」
 ニヤニヤしながら言い放つレモナ。
 だが、その目はこれっぽっちも笑っていない。
「で、お前は何が言いたい…?」
 リナーは睨みをきかせた。
 おにぎりの時に匹敵する殺気だ。

「モナー君に全部押し付けて、自分は受身でいようなんて… 
 そんな、傲慢で自信過剰で狡猾で卑怯な態度が気に入らないのよ!!」
 そう叫びながら、レモナはリナーに飛び掛った。
 激しく拳を振るうレモナ。
 リナーの大剣と互角に打ち合っている。

「ほらほらァ! よそ見をしてる暇があるのかい!」
 俺の意識はモララーの方に引き戻された。
 こいつの猛攻もかなり厄介だ。
 俺は必死で『アナザー・ワールド・エキストラ』の拳をかわす。
 流石に『次元の亀裂』などの技は使ってこないものの、拳の攻撃を1発でも喰らえばKOだ。
 しかし、ここでモララーをレモナに加勢させる訳にはいかない…!
 その俺の耳に、ヤツの声が届いた。

「ジャア、ソロソロ オレノ デバン ダナ…」

 しまった! まだ、こいつがいた。
 手を交差させて、爪を出すつー。
「ネカマニ スケダチ スルノハ キニ サワルガ、シカタネェ…! バルバルバルバル!!」
 つーは一直線に、レモナと激戦を繰り広げているリナーの方へ向かう。
 まずい! このままじゃ…!

 突進するつーの背後に、影が躍り出る。
「ゴルァッ!!」
 『レイラ』の刀が、つーに振り下ろされた。

「テメェッ!!」
 つーは大きく跳ぶと、ギコの方を向いて着地した。
「ナンデ ジャマ シヤガル!!」
 大声で威嚇するつー。
 ギコは、『レイラ』の刀を真っ直ぐにつーに向けた。
「気にいらねーんだよ。真剣勝負に水を差すテメーらの性根がな…」

「ギコ! サンクスモナ!!」
 俺はギコに声援を送った。
 ギコはニヤリと笑う。
「なぁに、今日はカッコ悪いとこ見せちまったからな…」

 確かに、あれはホントにカッコ悪かった。
 今さら格好つけたって挽回不能な程に。

「おい、お前ら。今すぐここから離れろ。ここは戦場になる…!」
 ギコは後ろを振り返ると、しぃ達に言った。
 しぃは頷くと、しぃタナとガナーを連れて競技場を出て行った。
 流石に避難誘導も手馴れたものだ。

「さて…」
 睨み合うギコとつー。
 ギコの正眼に対して、つーの無形。
 その刹那、両者は激突した。
「ゴルァァァァァァァ――――ッ!!」
「バルバルバルバルバルバルバルバルバルバルバルバルバル!!」
 爪と剣を打ち合う二人。
 つーに、ギコのスタンド『レイラ』は見えていない。
 ヤツは勘だけで戦っているのだ。
 ギコの洗練された動きに対して、つーは思うがままに爪を振り回すだけ。
 しかし、両者はほぼ互角に打ち合っている。

604:2004/01/04(日) 22:29

 その一方で、リナーとレモナの激突も白熱していた。
 リナーに突進するレモナ。
 まるでそれを打ち返すように、リナーは大剣を大きく振る。
 レモナは素早く大剣の上に飛び乗ると、リナーの顔面に拳での一撃を食らわそうとした。
 その腕に、リナーは左手で持っていたバヨネットを突き刺す。
「この…」
 レモナはリナーに蹴りを入れた。
 思いっきり吹っ飛んで、壁に激突するリナー。

 レモナは右腕に刺さっているバヨネットを引っこ抜くと、ボロボロの畳の上に投げ捨てた。
 その右腕からは、血がポトポトと垂れている。
 レモナはその右手をじっと見ながら、開いたり閉じたりしていた。

「右手への伝達中枢を切断した。しばらく、その手は武器としては使えない…」
 リナーは立ち上がると、レモナへ歩み寄りながら言った。
 それを睨みつけるレモナ。
「ふん、やるじゃない… 抱かれるのを待ってる女のクセにッ…!」
 リナーは落ちていた大剣を拾い上げると、上段に構えた。
「その薄汚い口を開くな。解体されたくないならな…!」

 そんな二人の様子を、じっと眺めているしぃ助教授。
 その姿からは、『やな戦いに巻き込まれちゃったなー』的な雰囲気が漂っている。

 レモナは自分の右手を肘の部分から引っこ抜くと、無造作に投げ捨てた。
 その部分から、巨大な銃口がバキバキと突き出す。
 いや、右手そのものが巨大なライフルになった、と言った方が正確だろう。
 そして、リナーを睨みつけるレモナ。
「解体されるのはあんたよ。そうなったら、モナーくんの心に爪跡くらい残せるんじゃない…?
 モナーくんの背中に爪跡を残すのは、私の役目だけどねェ!!!」
「口を開くなと言ったはずだァッ!!」
 二人は、互いに向けて突進した。
 思いっきり大剣を振り下ろすリナー。
 レモナは、銃口の部分で弾き返した。
 そして、銃口をリナーに向ける。
 あんなのを喰らったら、例えリナーでも…!

 リナーは弾かれた衝撃を殺さずに、そのまま1回転した。
 レモナは射撃体勢をとる。
 銃口から弾丸が発射されるのと、リナーの大剣が銃口に直撃するのは同時だった。
 真ん中でへし折れ、真っ二つに砕け散る剣。
 その銃口も、レモナの右腕ごと大破した。
 その衝撃で二人の体は大きく吹き飛ばされる。

「では、そろそろ行きますか…!」
 しぃ助教授は、倒れているリナーに思いっきりハンマーを振り下ろした。
「漁夫の利を狙うとは… ASAもたかが知れているな!!」
 懐からマシンガンを取り出すと、乱射するリナー。
「そんなオモチャ、効きません!」 
 しぃ助教授は、ハンマーを振るって銃弾を叩き落した。

605:2004/01/04(日) 22:29

「モナー君… 忘れていたのかい…?」
 モララーの余裕たっぷりのセリフが、俺の意識をこちらに引き戻す。
「僕が、瞬間移動を使えるってことをね…!」
 …し、しまったぁ!!

「お前も忘れてたモナ?」
「仕方ないだろぉ! 『アナザー・ワールド・エキストラ』は応用性が広すぎるんだ!」
 そう言って、モララーは姿を消した。
「あの野郎…!」
 俺は、激闘を繰り広げているしぃ助教授とリナーの方に走り寄る。

 リナーの背後に現れて、『アナザー・ワールド・エキストラ』の拳を振りかぶるモララー。
 俺は、モララー目掛けてバヨネットを投げた。
 見事にヤツの右肩に突き刺さる。

 そこへ、ぶっ倒れていたレモナが突っ込んできた。
 リナーを狙ったタックルだ。
「うおおおおおお!!」
 俺はリナーが落としたマシンガンを拾うと、レモナに向けて乱射した。
 当然ながらビクともしない。
 このままじゃ、レモナの体当たりがリナーに直撃する…!

「伏せろ! モナー!!」
 ギコの声が響いた。
 俺は素早くその場にしゃがみ込む。
 俺の目に映ったのは、つーに背負い投げを掛けるギコの姿だった。
 高速でぶっ飛んで来る、つーの身体。
 それは、そのままレモナに激突した。

「あんまり、スタンドにばかり警戒してるから、こうなるん、だよゴルァ…」
 息を切らしながら言い放つギコ。
 どうやら『レイラ』の方をオトリにして、本体が投げたらしい。

「コノヤロウ…!!」
「痛った〜い!!」
 同時に起き上がるレモナとつー。
 事態はバトルロイヤルの様相を表してきた。
 カルタなど忘却の彼方だ。
 丸耳が札を読み上げているようだが、リナーもしぃ助教授も聞きやしない。

 …キバヤシはどこだ?
 俺は周囲を見回す。
 ブチ割れたテーブルで、お雑煮を食べている姿が目に入った。
 あれは俺の夜食だが、まあいい。
 奴まで戦いに加わってきたら、本当に収拾がつかなくなる。

 しぃ助教授とリナーの戦いも、佳境に入ってきたようだ。
 二人とも疲れきっている。
「そろそろ… 限界じゃないんですか…、『異端者』…」
「強がるな… お前も、フラフラだろうが…」
 あっちの勝敗が決まるのは近そうだ。

「おい! モナー!! 加勢してくれッ!!」
 ギコの叫びが耳に入ってきた。
 見れば、つーとレモナを相手に頑張っている。
 俺はマシンガンを手に取ると、ギコに加勢した。

「僕を忘れてないかい…?」
 いきなり乱入してくるモララー。
「やかましー! 喰らいやがれッー!!」
 マシンガンの銃口をモララーに向ける。
「ちょ、ちょっと…! あの人外どもと違って、僕は生身…!」
 『アナザー・ワールド・エキストラ』で、必死で銃弾を弾き返すモララー。
「うるせェ――ッ!!」
 もう、この戦場に立ち入るヤツは敵だ。みんな撃ち殺す。

606:2004/01/04(日) 22:30

 いきなり、ギコの身体が飛んできた。
 俺の身体にブチ当たり、もんどりうって倒れる俺とギコ。

「サッキノ オカエシダ…アヒャ!」
 どうやら、つーが投げつけてきたようだ。
 そして、つーは転がっていたタンスを持ち上げる。
「クラエ――ッ!!」
 つーは、そのまま俺達目掛けて投げつけてきた。

 …あれが直撃したら、ヤバい!
 ギコの体を払いのけて、素早く立ち上がる俺。
 『アウト・オブ・エデン』で、その軌道を視る。
「モナァ――ッ!!」
 俺は渾身の力を込めて、投げられたタンスを弾き飛ばした。

 俺が弾き飛ばしたタンスは、なんとしぃ助教授と向き合っていたリナーの後頭部に直撃した。
「…」
 無防備な後頭部に打撃を受け、ゆっくりと倒れるリナー。そのままタンスの下敷きになる。
 さすがのしぃ助教授も呆気にとられていた。

「ああっ! やっちまった――!!」
 頭を抱える俺。

 しぃ助教授がタンスをどけて、リナーの顔を覗き込んだ。
「これは… 完全に気絶してますね。元々、フラフラでしたから…」
 そう呟くしぃ助教授。
 そう言う彼女自身もフラフラだ。

「ちょっと待て… じゃあ…」
 ヨロヨロと立ち上がるギコ。

「『オメガカルタ』の優勝を勝ち取ったのは、しぃ助教授となりました!! 彼女に一日族長の資格が与えられます!!」
 丸耳は右手を大きく掲げて宣言した。

  オ サ   オ サ   オ サ
 族長! 族長! 族長!

 アステカの民衆達も、声援に駆けつけたようだ。

 まあいい。俺はリナーを背負った。
「じゃあ、気絶してるリナーを部屋まで運んでくるモナ…」
 これで、当初の目的は達成できる。

「…うん?」
 俺の背中で声を上げるリナー。
 チッ、目を覚ましたか…
「私は、気を失っていたようだな…」
 リナーは自分の足で立つと、軽く頭を振った。
「リナーが気絶してる間に、しぃ助教授が優勝したモナ…」
 俺は、リナーに告げた。

「私は、あれで負けたとは思っていない…」
 しぃ助教授を睨みつけながら、リナーは言った。
 学帽を被り直すしぃ助教授。
「正直、決着をつけたかったんですが。これ以上モナー君の家を破壊するのも気が引けますしね…」
 何を今さら…
 もう、ここまでやられたら一緒だ。
「確かにそうだな。決着は、次の機会まで預けておくか…」
 リナーは武器を服にしまいながら言った。
 あの、ブチ折れてしまった大剣はどうするつもりだろうか…

「でも、この『オメガカルタ』の勝者は私ですよね…」
 ニヤリと笑うしぃ助教授。
 一体、どんな恐ろしい命令を…!
 しぃ助教授は、スタスタと俺の前まで歩いてきた。
 そしてにっこり笑う。
「今から、私とデートしましょうか」

 ゲッ!! それはヤバい!!
 何がヤバいって、レモナが巨大な銃口でこっちを狙っている。
 モララーは『アナザー・ワールド・エキストラ』を発動させ、右腕を差し出している。
 つーは腕を交差させ、鋭く伸びた爪を輝かせている。
 リナーはバヨネットを構え… ウホッ! それって嫉妬…!?

「フフッ、冗談ですよ…」
 パッと俺から離れるしぃ助教授。
「モナー君を狙ったら、命が幾つあっても足りませんから… ねェ?」
 しぃ助教授は、イヤな目つきでリナーを見た。
「そういう訳で、私はそろそろ帰ります」
 しぃ助教授はハンマーを抱えると、玄関跡に向かった。
 その後ろを、丸耳がついていく。

607:2004/01/04(日) 22:31

 玄関跡には、しぃやしぃタナ、ガナーの姿があった。
 静かになったから戻ってきたようだ。
 玄関跡で俺達は解散する事となった。

「ASAは『矢の男』の存在を抹消しますので、ゆめゆめ忘れないように…」
 しぃ助教授はモララーに向き直って言った。
 なんか今さらだなぁ…
「それではみなさん、よいお年を…」
 しぃ助教授は頭を下げて、俺の家を後にした。

「じゃあ、俺達もこのへんでお暇するぞゴルァ!」
 ギコとしぃ、しぃタナも帰って行く。
「じゃあモナーくん、またね〜」
「アヒャヒャ… ジャアナ!」
 みんな、それぞれの家に帰って行ってしまった。
 俺は、ボロボロに半壊した俺の家を見上げる。

「まあ、費用はASAに請求すればいいだろうが…」
 リナーは呟いた。
 ガナーはさっきからポカーンとしている。
 精神的ショックが大きすぎたんだろう…

 俺達は再び家の中に入った。
 リナーの部屋は、扉がしっかり残っている。
 俺の部屋など見るも無残なのに…

「私の部屋は、比較的被害が少ないな…」
 無表情で呟くリナー。
 と言うか、リナーの部屋に引火したら大変な事になりそうな気がする。
 家での火遊びは控えるとしよう…

 ボロボロになった居間には、遠い目をしたキバヤシの姿があった。
 俺と目を合わせて、フッと笑うキバヤシ。
「みんないなくなると、急に静かになる。それはそれで少し寂しいな…」
「うるさい帰れ」
 なんでこの家の住人みたいな口を叩いてんだ、こいつは。

 俺はキバヤシを追い出すと、居間の真ん中にテーブルを置いた。
 そして、そのテーブルを囲んで座る俺達。
 俺は口を開いた。
「なんか異常に幸先悪いスタートとなりましたが… 今年も精一杯がんばるモナー!!」
「イェー! ニコガク、イェー!」
 大はしゃぎする妹。どうやら、一連の出来事で一皮剥けたようだ。
「まあ、私もいつまでここにいるか判らないが …今年もよろしく」
 リナーは寂しい事を言った。
「リ、リ、リ、リ…」
 『リナーはずっとこの家にいてもいいモナよ。モナのお嫁さんとして…』
 そう言おうとしたが、舌がもつれて言えなかった。
 俺のヘタレさここに極まる。
 こうして、俺の… 
 いや、みんなの苦難に彩られた一年は幕を開けようとしていたのだった。



::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

      「モナーの愉快な冒険」
    番外・正月は静かに過ごしたい
        ―THE END−

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608新手のスタンド使い:2004/01/04(日) 23:20
本当に乙です

609新手のスタンド使い:2004/01/05(月) 07:20
大作乙!
結局最後まであのまんまの呼び名だったしぃ妹と
ルーキーズネタに大爆笑した。そのセンスの良さには脱帽です。

610新手のスタンド使い:2004/01/05(月) 11:45
乙!
最後におにぎりがいない・・・・。

611新手のスタンド使い:2004/01/05(月) 13:00
貼ります。

612新手のスタンド使い:2004/01/05(月) 13:00
     救い無き世界
     第五話・ドキッ!スタンド使いだらけの水泳大会
         〜ポロリもあるよ〜 その1


 ここはSSS内にある俺に割り振られた部屋。
 俺が昼食を取って腹休めに自分の部屋で横になっていると、
 突然部屋のドアがノックされた。
 俺は「どうぞ」ということは無理なので、
 面倒だがベッドから降りてドアを開けた。
 そこには、ふさしぃの姿があった。
「やっほう、でぃ君。
 元気にしてる?」
 この人は無駄に元気が有り余っている様子だ。
 うざったいので、適当にあしらうことにする。
『まあ、普通といったところです。』
 俺はホワイトボードにそう書いた。
「あらあら、『何の用だよ。うざってーなー。
 うっとおしいから適当にあしらっておくかー。』
 とでも言いたげな感じねえ。
 お邪魔だったかしら?」
 ふさしぃは笑顔のままそう言った。
 …この人はエスパーか何かか?
「ま、いいわ。
 それよりこれからみぃちゃんとデパートに買い物に行くんだけど、
 あなたも荷物持ちとして来てくれないかしら?
 もちろん、少しくらいはお礼するわよ。」
 俺は即首を横に振った。
 馬鹿馬鹿しい、何でそんなことせにゃならんのだ。
 俺がそんな人の多い所にいってみろ。
 周りの奴らがどういう反応するかぐらい分かるだろう。
『悪いけど、気が進まないので、
 他を当たってはくれませんか。』
 俺は丁重に断ろうとした。
「あらそう、残念ねえ。
 ぃょぅも一緒に行くって言ってるんだけど…」
 その時俺の背筋が一瞬で凍りついた。
 ふさしぃの握っているドアノブが、
 みるみる音を立てて握り潰されていくのだ。
 ふさしぃは相変わらず柔和な笑みを浮かべている。
 が、この時はそれが一層恐怖を駆り立てた。
 断れば、死。
 それはコーラを飲めばゲップがでるぐらいに確実ことだった。
『あ、何か俺、
 急に買い物に行きたくなってきたかなー。』
 俺はこう書く他無かった。
 今この場を人生の幕切れにする程の覚悟は、俺には無い。
「あら本当に!?
 悪いわねー。なんだか無理強いしちゃったみたいで。」
 「みたい」でなく「そのもの」だ。
 というかこれはむしろ脅迫に近い。
 だが俺には言い返すことなど出来る訳がなかった。
 『力こそ正義』、これがこの世の絶対の法理であることを
 俺は実感していた。
「あら、ドアノブが…
 全く安物は困るわねー。」
 そういうとふさしぃは、半壊したドアノブを木に生った果物のようにもぎ取り、
 地面に投げ捨てたのだった。

613新手のスタンド使い:2004/01/05(月) 13:01
「う〜ん、どれにしようかしら。
 これ?いやでもあれも捨てがたいわね…」
「わ、私はあんまり派手なのは…」
 みぃとふさしぃが、色々と服を物色する。
 俺はぃょぅ、ふさしぃ、みぃと共に、
 町で一番大きいデパートに買い物に来ていた。
 もっともこれはふさしぃとみぃが自分達の買い物に
 俺とぃょぅを無理矢理荷物持ちとして引っ張ってきたからで、
 俺は本当はこんな場所になど来たくはなかった。
「ちょっと…あそこの…」
「しっ…指差しちゃ駄目だって…」
 すれ違う人すれ違う人が、俺に向かって奇異の視線や言葉を
 投げかけてくる。
 ぃょぅとみぃが、俺を心配そうな目で見てくる。

 やっぱり思った通りだ。
 こういうお互いが不愉快な事になると思ったから、
 俺は断ろうとしたのだ。
 ふさしぃは、一体どういうつもりで俺をこんな所に
 連れて来たのか。
「もっと胸を張りなさい、でぃ君。」
 ふさしぃが、言った。
「あなたは別に悪いことをしたり、
 人に迷惑をかけたりした訳ではないんでしょう。
 なら、あなたが周りに引け目を感じる必要なんて、
 全く無いわ。」

 …分かったような口利きやがって。
 それは強者の理屈だ。
 あんたはいいさ。
 強いんだから。
 けどな、あんたはゴミ溜めの中で、
 明日をも知れない生活をしたことがあるってのか。
 あんたは大勢の奴から殴りつけられたことがあるってのか。
 自分の無力さを呪ったことがあるのか。
 あんたに、俺の何が分かる。
 それとも、あんたが俺を助けてくれるとでも―――

 その時、凄まじい爆音と振動が俺たちを襲った。

614新手のスタンド使い:2004/01/05(月) 13:02


 私の名は毒男。
 このデパートの警備員をしている。
 警備員暦十五年、独身である。
 もちろん童貞。
 今日もいつもと変わらない一日を漫然と浪費していた。
「ねえ、あれ買ってよー。」
「ははは、分かったよ。
 今日はお前の誕生日だもんな。
 何でも買ってやる。」
 カップルが楽しげにショッピングをしている姿が目に映る。
 こん畜生が。
 人目も憚らず、公衆の面前でイチャイチャしやがって。
 いっぺん死んできやがれ。

「ぎゃあああああああああああ!!!」
 突然場内に響き渡る絶叫。
 見ると、カップルの男の方が、腹を血まみれにして倒れていた。
「い、いやあああああああ!!!」
 女の方がそれを見て悲鳴を上げる。
 が、一人の男が女に近づくと、
 その胸に血まみれの大きいナイフを突き立てて
 その悲鳴を強制的に中断させる。
 女はしばし痙攣した後、すぐに動かなくなった。
 ざまあ見ろ、天罰だ…
 ではない。
 明らかに殺人事件である。
「お、おい!!何をやっている、貴様!!!」
 俺は職務を果たすべく、警棒を取り出し、男に近寄った。
「…ダライアス。」
 俺が男のナイフを握っている右手に警棒を振り下ろそうとした時、
 男が何かぼそりと呟いた。
「!!!!!!!」
 次の瞬間、俺の足が重力から開放されたかのように地面から離れた。
 俺は自分に何が起こっているのか、全く理解出来なかった。
 思わず手足をバタつかせる。
 すると信じられないことに、
 周りの空気がまるで水のように重く俺の体に纏わり付いてきた。
 何だ!?
 これは、これは何…

 突如俺の首筋に鋭い痛みが走る。
 次の瞬間、そこから血が噴水のように噴出した。
 しかし血は地面に落ちることなく、空中を漂う。
「は、はわわわわわわわ〜〜〜〜…」
 思わず情けない悲鳴が咽からもれた。
 同時に、私の意識が一気に遠のく。
 周りからは、耳をつんざくばかりの悲鳴と、
 断末魔の叫びが聞こえる。
 おそらく客がパニックを起こしているのだろう。
 しかし、やがてそれも聞こえなくなる。
「さあて…次は花火といこうか。」
 おびただしい数の死体の中、
 男が楽しそうに誰に言うでもなく喋りだす。
 それが、私の最後の記憶となった…

615新手のスタンド使い:2004/01/05(月) 13:04
「!!!!!!!」
 激しい音と振動に、俺は思わず倒れこんだ。
 みぃも悲鳴を上げてその場に倒れる。
「!!何!?爆発!!?」
 ふさしぃが辺りを警戒しながら言った。
 周りを見ると、デパート内のあちこちから黒い煙が立ち込める中を、
 人々が逃げ惑っている。
「取り敢えず、早くここから避難するょぅ!!」
 ぃょぅが叫ぶ。
 俺達は無言で頷き、出口に向かって走り出した。

「えーん、えーん…痛いよぉ…痛いよぉ…!」
 俺たちが出口に近い吹き抜けのホールまで来た時、
 誰かの泣き声が耳に入ってきた。
 そちらに視線を移す。
 そこでは、小さな女の子が倒れて泣いていた。
 周りの人は、自分が逃げるのに必死で女の子に目もくれない。
「いけない!助けないと…!」
 みぃが急いで駆け寄る。
 俺達も、それに続いた。

「…駄目…左足が下敷きになってる…!」
 みぃの言葉通り、女の子の左足は完全に瓦礫の下に埋まっていた。
 瓦礫は大きく重く、普通の力では動かせそうになかった。
『どけっ!!!』
 俺はみぃを押しのけると、スタンドを発動させ、
 瓦礫を力ずくで持ち上げた。
 ふさしぃとぃょぅが、急いで女の子の足を引っ張り出す。
「……っ!!!!」
「…ぃょぅ……!」
 ふさしぃとぃょぅの顔がこわばる。
 女の子の足は、もうすでに原型を留めていなかった。
「…ひどい……」
 みぃが悲痛な声を上げる。
 足は完全に押し潰され、みぃのスタンドの力でも完全な修復は不可能なことは、
 明らかだ。
「痛いよぉ…ママ…ママぁ…ママはどこ…?」
 激しい痛みと出血のせいか、少女は意識を失いかけていた。
「まずいわ!早く外に出て医者に見せないと!!」
 ふさしぃが女の子を抱え上げた。
「わ、私が取り敢えず応急処置だけでも…!」
 みぃが女の子に触れようとする。
「駄目だょぅ!こんな危ない所にいつまでもいるわけにはいかなぃょぅ!!
 それに、ここで君まで倒れるようなことがあったら、
 どうするつもりだょぅ!!」
 ぃょぅがそれを制した
「分かりました…」
 みぃが涙をこらえて頷く。

616新手のスタンド使い:2004/01/05(月) 13:04
 俺はふと、周囲を見回してみた。
 その時…

「・・・・・・!!!?」

 …その時、俺の目に一人の男の姿が飛び込んできた。
 そいつは、吹き抜けのホールの上の方から、
 下の惨状を見下ろしていた。
 そいつの顔には、邪悪な、満足そうな笑みが浮かんでいる。

「!!!!!!」

 俺は直感的に理解した。
 あいつがこの惨事の原因であることを。
 あいつが、それを見て笑っていることを。
 あいつが、この女の子の、足を―――…

「!!?
 でぃ君!!!
 何処へ行くつもりだょぅ!!!」
 俺は気が付くと、奴に向かって走り出していた。
 奴は奥へと姿を消す。
 逃がさない…!
 報いは、受けてもらう!!!

 後ろの方でみぃ達の俺を制止させる為の悲鳴にも似た叫びが聞こえる。
 だが、そんなものはもう耳には入らなかった。
 今、俺の頭の中にあることは唯一つ、
 奴を壊すことだけだった。


  TO BE CONTINUED…

617:2004/01/05(月) 23:08

   ∧_∧  / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
  ( ;´∀`)< 劇中、9月・・・
  (    )  \_____
  | | |
  (__)_)     /´ ̄(†)ヽ
            ,゙-ノノノ)))))
            ノノ)ル;゚ -゚ノi! <・・・!!
       ___/,ノくj_'',凹と)__
      / \ (´::)     ___\
     .<\※ \______|i\___ヽ.
        ヽ\ ※ ※ ※|i i|.====B|i.ヽ <エイダァァァァァ――ッ!!
        \`ー──-.|\.|___|__◎_|_i‐>
          ̄ ̄ ̄ ̄| .| ̄ ̄ ̄ ̄|
               \|        |〜

「―― モナーの愉快な冒険 ――   ツーチャンはシンデレラに憧れる・その4」




 その姿までも変わり果ててしまったつーは、ゆっくりとこちらへ近付いてくる。
 俺の『アウト・オブ・エデン』は、つーの全身から放つ殺気をとらえていた。
「ど、どうするモナ…!」
 キバヤシに向き直る俺。
「ここから逃げるか、それとも戦うか… まあ、逃がしてくれそうにないがな…」
 キバヤシは眼鏡の位置を整えた。

 仕方ない、身を守る為だ…!
 俺はバヨネットを取り出して構える。
 向かってくるなら、やるしかない!!

 キバヤシめがけて突進するつー。
 両腕から飛び出しナイフのように、刃状のものが張り出した。

「くっ…」
 バク転して飛び退くキバヤシ。
 彼がいた床に、大きな亀裂が刻み込まれる。
 キバヤシの反応があと0.1秒遅れていれば、彼は完全に真っ二つだった。

 つーは、俺とキバヤシを見比べている。
 キバヤシは、豹変したつーの姿を見据えて口を開いた。
「その外見… そのスピード… やはり、『蒐集者』に何かされたらしいな…」

 『蒐集者』は実験とか言っていたが、一体これは…
 しかし、当のつーは動かない。
 さっきから、不思議そうに俺とキバヤシの顔を見比べたままだ。

 俺は『アウト・オブ・エデン』でその思考を視る。
 かなり視えづらいが… 何か戸惑っているような感じ。
 俺は、キバヤシに視線をやった。

「ああ、判っている。 モナヤは、つーは本当に敵か…?、と思っているんだろう?」
 その通りである。
 つーは、『矢の男』や『殺人鬼』のように、人格が乗っ取られているようには見えない。
 むしろ、姿こそ違うものの内面はいつものつーである。

「だが、あの女性をバラバラにしたのは、間違いなくつーの仕業なんだよ」
 キバヤシは言い切った。
 確かにその通りだ。返す言葉もない。
 レモナの無残な姿を思い出す俺。
「だから、俺達はこいつと戦わなければならない!」
 アップになるキバヤシ。
 だが、俺はつーを傷つけたりはしたくない。それは確かだ。
 俺はキバヤシの目をまっすぐに見て言った。
「でも… つーは大切な友達モナ!」

 キバヤシはニヤリと笑う。
「甘いな、モナヤは… だが、お前のそういう所は嫌いじゃないぜ…」
 お前…、それ80年代のセリフだ。

「仕方ない。俺が汚れ役を引き受けよう…」
 キバヤシは、ズボンのポケットに両手を突っ込んだ。
 その様子を凝視するつー。
 キバヤシはポケットに両手を突っ込んだまま、つーの近くへ歩み寄った。

「俺が、スタンドを使いたくない理由は2つ…。 
 1つは、余りにも凶悪で卑怯だからだ。乱用は絶対に許されない。
 もう1つは… 俺の能力を知れば、仲間から間違いなく拒絶されるからなんだよ!
 簡単に仲間を信頼してしまう、馬鹿なお前の前だからこそ使うんだぜ、モナヤ…」
 横目で俺を見るキバヤシ。
 仲間からも拒絶されるような、凶悪で卑怯な能力…?

 キバヤシはつーの目前で立ち止まると、ポケットから片手を出した。
 その手には、何かが握られている。
「人間は、火とともに言葉を武器にした…」
 キバヤシは呟く。
 手に持っているのは、何の変哲もないジッポライターだった。
 そのライターに火を付けるキバヤシ。
 それを、自らの顔の前にかざす。
「『始めに言葉ありき』… 生きている限り、ヒトは言葉と言う呪縛からは逃れられないんだよ…!」

 つーが動いた。
 腕から張り出した刃が、キバヤシの腹部に吸い込まれるように突き刺さる。
 軽い金属音を立てて地面に落ちるライター。
「え…?」
 驚いたようなキバヤシの顔。
 そのまま、キバヤシは前のめりに崩れ落ちた。

618:2004/01/05(月) 23:08

 …ちょっと待て。
 事態についていけない。
 今の状況も含めて、キバヤシの能力なのか?
 …いや。キバヤシは、どう見てもぶっ倒れている。
 それを、汚物のように見下ろすつー。
 もしかして、スタンドが不発…!?

「この… 役立たずがァッ!!」
 俺はキバヤシに駆け寄った。
 こいつ、本当にリナーと同じ代行者なのか?
 つーは、そんな俺の様子をじっと見ている。動く気配は全くない。
「おい、起きろ! キバヤシ!!」
 必死でキバヤシを揺り動かす。
「何だ、モナヤ?」
 ぱっちりと目を開けるキバヤシ。何事もなかったかのように起き上がる。
 そして、懐に手を突っ込んだ。
「たまたま、このノストラダムスの『諸世紀』を懐に入れていたから助かったようだ…」
 何から突っ込めばいいのか…

 その自慢げに掲げていた『諸世紀』を掴む、つーの手。
 『諸世紀』は、アッという間にドロドロに溶けてしまった。
「なっ! 何をするだァ――ッ!!」
 英国の片田舎の方言で怒りをあらわにするキバヤシ。
 そして懐から銃を抜き出す。
 つーは素早く飛び退いた。

「喰らえッ!!」
 何度も引き鉄を引くキバヤシ。
「バルバルバルバルバルバル!!」
 つーは両腕から突き出た刃を振り回す。
 つーの体に届く前にバラバラになる弾丸。

「まずいな… あいつに通用するような武器は持ってきていないぞ…!」
 銃を投げ捨てるキバヤシ。その額を汗が伝う。
「キバヤシのスタンドは…?」
 俺は、恐る恐る訊ねた。
「ああ、効かなかったようだ」
 そよ風のように、あっさりと答えるキバヤシ。
 何か悲しくなってきた。
 こいつのせいで窮地に追い込まれて、これっぽっちも役に立ちやしない。
 本当に代行者なのかどうか疑わしくなってきた。
 キバヤシは、俺の不審の視線を感じ取ったようだ。
「俺の能力が効かないヤツなんて初めて会ったんだよ。目の前のあいつは、人間でも吸血鬼でもない…!
 それに今の俺は、代行者である『解読者』じゃなく、MMRのキバヤシなんだ。まともに武器も持ってきていないんだよ!」
 確かに、つーの様子が尋常でないのは俺にも分かるが、それにしても情けなすぎる。

 そんな俺達の様子を眺めていたつーが、不意に動き出した。
 体が激しく発光し、周囲がスパークしている。
 あれは、電気!?
「『アウト・オブ・エデン』!!」
 危機を感じ取った俺は、スタンドを発動させてバヨネットを構える。
 同時に、つーの全身から電撃が放たれた。
 あれは… 空中放電だ!!
 『アウト・オブ・エデン』で、つーの体から放たれる稲妻が確かに視えた。

「うおおぉぉッ!!」
 電光をバヨネットで切り裂く俺。
 『電気』を破壊。
 出来るかどうか分からなかったが、何とか成功したようだ。
 だが… キバヤシはまともに喰らって、地面にぶっ倒れた。
 MMRと大きくプリントされたTシャツは焼け焦げ、全身から煙を噴き出している。
 一方、つーの動きは再び止まっていた。

「キバヤシ!!」
 俺は再びキバヤシの体を揺さぶる。
 駄目だ。 息はあるが、完全に気を失っている。
 …もういい。
 俺は、つーの方に向き直った。
 こいつのチグハグな動きの意味が、やっと分かった。
 今のつーは、『敵意』というのを敏感に感じ取っているのだ。
 キバヤシは痛めつけても、本気で俺を殺そうとはしてこない。

619:2004/01/05(月) 23:10

 つーは最初に、俺とキバヤシの顔を見比べていた。
 俺から『敵意』を感じないのを不審に思いつつ、明らかに『敵意』を振りまいているキバヤシを攻撃したのだ。
 俺の『アウト・オブ・エデン』は、さらにつーを分析する。

 今のつーに、視覚はないのではないか?
 対象の方向に顔は動かすものの、視線というものを全く感じない。
 いや、聴覚も嗅覚も存在していないような印象を俺は受けた。
 つーの感覚が集中している箇所を視る。
 ――額の触角か。
 つーは、全てをあの触角で感じ取れるのだ。特に『敵意』を敏感に。
 なら、あの触角をチョン切ってしまうか?
 いや、そんなことをしようものなら、俺の体はたちまちブツ切りだ。

 仕方ない。こうなったら、ナ●シカ作戦でいくか…
 俺はバヨネットを地面に投げ捨てた。
 そして、にこやかな笑みを浮かべて両手を広げる。
「大丈夫、怖くないモナ…」
 ゆっくりとつーに近付く俺。
 つーは明らかに動揺しているが、先程までの殺意は嘘のように消えている。

「ほら… 怖くないモナ…」
 俺は、優しくつーちゃんを抱きしめた。
 プルプルと震え出すつーの体。
 どうやら、俺の作戦は上手くいったようだ…

「キモチワルインダヨ、コノ タヌキガ――ッ!!」
 つーのカエル跳びアッパーが俺の顎にヒットした。
「バベーッ!!」
 俺の体はオモチャのように吹っ飛んで、そのまま地面に激突した。

「いたた…」
 ヨロけながら立ち上がる俺。
 つーは、その一瞬の間にすっかり元の姿に戻っている。
「つーちゃん!!」
 俺は、つーに駆け寄った。
 つーは首をプルプルと左右に振る。
「アタマガ ボーット スル… マタ、ヤッチマッタ ラシイナ…」
 やっちまったとは、さっきの体の変化だろうか。
「トコロデ、アレハ ダレ ナンダ?」
 ブスブスと焦げながら、口から煙を噴き出しているキバヤシを指差すつー。
「今朝会ったばかりのどこかの馬鹿モナ…」
 俺は、ため息をついた。
 つーは疑わしそうに俺の顔を見る。
 そして、怪訝そうに口を開いた。
「マア、シンジトイテヤル…」
 嘘は言っていないし、正直キバヤシとの同盟も破棄したい気分だ。


「で、さっきのアレは何モナ?」
 俺は当然の疑問を口にする。
「武装現象(アームド・フェノメノン)よ」
 その疑問にレモナは答えた。

「で、そのアームド…うわぁぁぁぁぁぁッ!!」
 俺は悲鳴を上げた。
 レモナは首から下がなかった。
 満面の笑みを浮かべながら、レモナの生首が宙に浮いている。
 その髪飾りが激しく回転して、ヘリコプターのようにホバリングしているのだ。

「そこまで悲鳴を上げなくても… 胴体の復旧に時間がかかりそうだから、一時的に分離しただけよ」
 嬉しそうに言うレモナ。お前はジオングか。

「それで、私は今からモナー君に悲しい告白をしなきゃいけないの…」
 目を伏せるレモナ。
「実は私、人間じゃないのよ…!」
 いや、見りゃ分かる。

「オイ、オレノ コトハ イイノカ…?」
 つーが話しに割り込んできた。
 人間離れしてるのは、どっちもいい勝負だ。
「そうね、今はつーちゃんの話だったわね…」
 レモナの首は口を開いた。
「でも、話が長くなりそうだから、少し座らない?」

620:2004/01/05(月) 23:12


 座卓の周囲に、座布団が3つ。
 俺とつーが向かい合って座る。
 レモナの首は座布団の上に着陸したようだが、茶卓に隠れてよく見えない。
 キバヤシはもちろん放置。
「まず、今のつーちゃんは『BAOH』なの…」
 レモナは口を開く。
 つーも、自分の体に関する事だけに大人しく聞いている。
 レモナの言葉に熱心に耳を傾けるつーなど、初めて見た。
 それにしても、『BAOH』って何だ?
「もう何十年も前に、ある研究組織… 『ドリル』だったっけ? そういう名前の特殊兵器開発機関が存在したの…
 そこで生み出された生物兵器が、『BAOH』なのよ」
「『BAOH』が兵器… ということは、つーちゃんが兵器になったって事モナ?」
 俺は思わず声を上げた。
「うーん、厳密に言うとそうなんだけど… 『BAOH』は兵器と言うより、人体の強化変成って言うのかしら?
 そういう技術なのよ。兵器としての性能なら、私の方が遥かに上」
 何故か誇らしげなレモナ。
「それで『BAOH』の性質なんだけど、『敵意』に敏感に反応して、その体を戦闘用に変えるの。
 それが、さっき言った武装現象(アームド・フェノメノン)よ…」
 やっぱり、『敵意』か。
 そして、さっきの豹変した姿が武装現象…!
「さっきからモニターしてたんだけど、モナーくんも武装現象の種類をいくつか見たわよね」
 腕から刃が突き出したり、体から放電したアレだな。
「まず、腕から出た刃物が、『BAOH RESKINIHARDEN SABER PHENOMENON』…通称『BRSP』ね。
 手首の皮膚を鋭く硬質化させたブレードよ」
 俺は、床にできた亀裂に目をやった。人体くらい、苦もなく寸断されるだろう。
「私がやられたのもこれよ。部屋に上がろうとした一瞬の隙に刻まれて…」
 レモナは、つーの方を睨んでいるらしい。座卓に隠れて見えないが。
「オマエガ、テキイヲ モッテタ カラダロウ…」
 つーにしては弱々しい物言いだ。
 流石に、やり過ぎたと感じているのだろうか。
「BAOH化すると、『敵意』を持ってる相手に相手に対しては抑制が効きにくくなるのよ」
 それが、俺とキバヤシの差だな。
「で、武装現象に戻るわね。分厚い本を掴んで溶かしたのが、『BAOH MELTEDIN PALM PHENOMENON』。
 通称、『BMPP』。掌から特殊な液体を分泌して、ほとんどの物質を溶解してしまうのよ。
 そして電撃を放ったのが、『BAOH BREAK DARK THUNDER PHENOMENON』。『BBDTP』ね。
 TTP合成酵素っていうのかしら? とにかく、電気ウナギと同じメカニズムらしいわ」
 ただでさえ物騒なヤツなのに、厄介な能力を持ったものだ。

「でも、なんでつーちゃんが『BAOH』になったのかは謎なのよね… 『ドリル』はもう潰れたし…
 『バカチン』とかいう所に、データや技術が流れたとは聞いたけど…」
 バカチン? 間抜けそうな名前だな…
 などとボケている場合じゃない。
 ヴァチカン… 『教会』だ!!
 『蒐集者』が言っていた、成功した実験体とは、つーの事で間違いないようだ。

621:2004/01/05(月) 23:12

 それにしても、なぜレモナがそこまで詳しいのかも気にかかる。
「なんで、レモナがそんなに『BAOH』について知ってるモナ?」
 俺は何気なく訊ねた。
 レモナが目を伏せたのが雰囲気で分かる。
「私を造った組織も、その『ドリル』なのよ…」
 何だって!?
 どうでもいいが、『バカチン』という名が思いっきり間違っていた以上、『ドリル』という名称も怪しいものだ。

 だが、まだ気になる事はある。
 『蒐集者』が実験をしている以上、『ドリル』とやらの『BAOH』は未完成だったのだろうか?
 いや、レモナは既知の技術のように語っていた。
「その、『BAOH』ってのはどうやって作るモナ?」
 俺はレモナに訊ねる。
「『BAOH』って言うのは、バオー寄生虫っていうのが宿主の脳に取り付くことによって完成するの」
「ウゲッ…! キセイチュウ!?」
 つーが声を上げる。
 確かに、気味の悪い話だ。
「でも、おかしいのよね。さっきつーちゃんの脳をスキャンしてみたんだけど…
 本来ならバオー寄生虫はもっと活発なんだけど、大人しすぎるのよ。まるで眠ってるみたいに。
 それなのに、武装現象はちゃんと発動してるし…」
 レモナは首を傾げる。
 おそらく、『蒐集者』の実験とはそこらへんだろう。
 新種の『BAOH』を研究していたとか…
 俺は、ヤツの言葉を反芻した。

 『素体が優れていたというのが最も大きな要因でしょうが、それだと汎用性に欠ける、という事にもなる』

 『素体が優れていた』… つまり、つーの頑丈な体は『BAOH』に適していたという事か。
 汎用性に欠けるというのは、限られた者、…それこそつーのように頑強な者にしか、新種の『BAOH』の
 適正がないという事というのが想像できる。

 そして、奴はその後にとんでもない事を言ったのだ。
 『何しろ量産が前提ですからね…』と。
 量産だって…!?
 つーには悪いが、こんなバケモノを量産して何をする気なんだ…?

 ふと、気になった。
 つーが俺とキバヤシの前で武装現象を発動する際、『オマエラ、グルデ オレヲ ミハッテタンダナ…』と言っていた。
 ――見張っている。
 つーは、そう感じていた。
 誰が、何の目的で見張っている…?
 いや、そんなのは自明の事だ…!

「出て来いよ。ずっと、見てたんだろう…?」
 俺は立ち上がると、窓の方に向かって言った。

 どんな手段を使っているか分からないが、窓の外のすぐ近くに奴がいる。
 俺の『アウト・オブ・エデン』は、それを確かに感知した。

 窓が音を立てて開く。
 普通に見れば、誰もいないのに自然に窓が開いたようにしか見えないだろう。
 ストッ、という軽い着地音。
「見つかってしまったようですね。土足で失礼…」
 その勘に触るしゃべり方。人をなめた態度。
 窓の外から、風が吹き付ける。
 その場に薄く浮き上がる青年の姿。
 それが徐々に実体化していく。
 漆黒のロングコート。柔らかな笑み。
 そして、欺瞞に満ちた存在。
 『蒐集者』が、そこに立っていた。



  /└────────┬┐
. <   To Be Continued... | |
  \┌────────┴┘

622新手のスタンド使い:2004/01/06(火) 13:04
貼ります。

623新手のスタンド使い:2004/01/06(火) 13:05
      救い無き世界
      第六話・ドキッ!スタンド使いだらけの水泳大会
          〜ポロリもあるよ〜 その2


 でぃ君は何やらどこかを熱心に見つめていたと思ったら、
 急にデパートの奥へと走り出した。
「!!?
 でぃ君!!!
 何処へ行くつもりだょぅ!!!」
 私は思わず声を張り上げた。
「ちょっと!!待ちなさい!!でぃ君!!!」
「でぃさん!!!」
 ふさしぃやみぃ君も彼に向かって叫ぶ。
 しかし、でぃ君はそんなものには耳も貸さないといった様子で、
 そのまま止まらずに走り去って行った。

「…ふさしぃ、みぃ君とその女の子を頼んだょぅ。」
 私は、言った。
「!ぃょぅ、あなたは!?」
 ふさしぃが、聞き返してくる。
「ぃょぅはでぃ君を連れて帰るょぅ。
 君達は早く逃げるょぅ。」
 早くしないと、女の子の命が危ない。
 ここで立ち止まっている時間は、一秒たりとも無いのだ。

「…分かったわ、お願い。」
 ふさしぃはそれを察したらしく、素直に了解した。
「わ、私も一緒に…」
「駄目だょぅ!!!」
 私はみぃ君の申し出を即座に却下した。
「君の役目は早く外に出て、
 女の子に治療を受けさせてあげる事だょぅ!!
 ついてこられても、足手まといになるだけだょぅ!!!」
 みぃ君は顔を曇らせた。
 確かに、少し言い方が悪かったかもしれない。
 だが、今は皆で楽しくお買い物といった状況では断じて、無い。
 彼女を死なせない為にも、
 厳しい言葉をぶつけてでも絶対に連れて行くことは出来なかった。

「分かりました…
 でぃさんを、お願いします…」
 みぃ君は声を押し殺して言った。
「まかせるょぅ。
 でぃ君は必ず、無事に連れて帰るょぅ。」
 彼女の為にも、何としてもでぃ君は連れて帰らねばならない。
 全く、女を泣かせるような事をするなんて、
 でぃ君も相当罪な男だ。

「…ぃょぅ…絶対、生きて帰って来るのよ…」
 ふさしぃが、私を見つめて言った。
「大丈夫、すぐに戻って来るょぅ。」
 私もこんなところで死ぬつもりはさらさら無い。
 それに、生きて帰らなければ、ふさしぃに殺されてしまう。
 おっと…これは矛盾かな。
「みぃちゃん!走るわよ!!」
「は、はい!」
 ふさしぃ達は、出口へと駆け出した。
 私はそれを確認すると、でぃ君を追う為に
 走り出した。

 何故、こんな真似をしたのか。
 彼には小一時間ほど問い詰めたい所だった。
 しかしその為には兎にも角にも彼に追いつかねばならない。
 私はデパートの中を全力で走り抜けた。

624新手のスタンド使い:2004/01/06(火) 13:06
「でぃ君!!!
 どこだょぅ!!!」
 彼の名を大声で叫びながら、私はデパートの中を探索していた。
 私は完全に彼を見失っていた。

「でぃ君!!
 聞こえたら返事をするょぅ!!」
 しかし返事は返って来ない。
 私はかなり焦っていた。
「!!!
 これは…!?」
 でぃ君を探していると、
 床に大量の奇妙な死体が倒れているフロアを見つけた。
 死体はここに来るまでにいくらか見てきたので、
 それ自体は珍しくは無い。
 しかしこれらの死体はおかしい。
 刃物による切り傷や刺し傷、
 銛のようなものが刺さっている等、
 死因が爆発とは関係が無さそうなものばかりなのだ。

 これはどういうことなんだ?
 この混乱に乗じて、何者かが殺人を行っている?
 私は何かその場に醜悪な悪意を感じた。

「ひいっ!
 お願い、誰か助けて…!!」
 いきなりこちらに向かって一人の女性が
 何かから逃げるように走って来た。
「!?
 君、一体何が…」
 私がその女性に声をかけようとしたその瞬間、
 彼女の心臓を一本の矢みたいなものが貫いた。
「!!!!!!!」
 彼女はしばし口を金魚のようにパクパクと開閉させると、
 悲鳴も上げることなくその場に倒れ伏し、絶命した。

625新手のスタンド使い:2004/01/06(火) 13:06

「んん〜、命中。」
 女の後ろの方から、
 まるでゴミ箱に投げたゴミが入った時のような口調で喋りながら、
 一人の眼鏡をかけた男が姿を現した。
 その手には、水中銃のようなものを持っている。
「おやおや、まだこんなとこにも生存者がいたんだ。」
 そいつは、私に向かって喋りだした。
「なあ、何人死んでた?」
 男は唐突に質問してきた。
「…どういう意味だょぅ。」
 私は男に聞き返した。
「いや、君が来る途中に何人位死体があったかってこと。
 今回僕が何人殺せたか知っときたいんでね。
 一応僕も見回ってはみたんだけど、
 見逃してるかもしれないし。」
 男は悪びれもせずに言った。

「…言いたい事はそれだけかょぅ……!!」
 私は湧き上がる怒りを抑えられそうになかった。
 こいつは、救いようの無い悪だ。
 ゲロ以下の臭いがプンプンする。
 ここまで他人に対して怒りを覚えたのは、初めてだった。

「…いつもなら私は『抵抗しなければ危害は決して加えない』
 と言うょぅ…
 しかし、お前に対しては別だょぅ…
 好きなだけ抵抗するがいぃょぅ。
 けど……」
 私は私のスタンド『ザナドゥ』を発動した。
「こちらも遠慮せず危害を加えるょぅ!!!」
 私は奴に向かって突進した。
 許さない。
 命は取らないまでも、生まれて来たことを
 後悔するような目に合わせてやる。

「『ダライアス』!!」
 男の叫びと共に、男の体がダイバースーツのようなものに包まれた。

 !!
 まさか、こいつもスタンド使いだったとは。
 しかし、構わない。
 このまま奴の頭に拳をブチ込む!!

「!!!!なっ!!?」
 その時、私の体がいきなり宙に浮かんだ。
 しかも、まるで水の中にいるみたいな感覚に襲われる。
 まさか、これが奴の『能力』か。
「くっ…『ザナドゥ』!!!」
 私はすぐに奴を「風」で吹き飛ばそうとした。

626新手のスタンド使い:2004/01/06(火) 13:07
「んん〜?心地良いそよ風だなぁ。
 何だ?これは。」
 馬鹿な。
 全力に近い力で「突風」をぶつけたはずだ。
 何故、奴は微動だにしない!?
「…まさか……」
 考えられることは一つだった。
 空気が水の様に重くなっているせいで、
 風がまともに起こせないのだ。
「ちっ!!!」
 急いで距離を取ろうとする。
 が、地に足が着いていないうえに、周りの空気が水の様に絡み付いてきて
 素早く行動出来ない。
「逃がすかよ!!!」
 奴が私にさっきの女性を殺した凶器と思われる
 水中銃を発射してきた。
 とっさにスタンドで防御しようとする。
 しかし、動きが鈍くなっているせいで上手く防げず、
 肩や足に何発か貰ってしまった。
「がは!!」
 痛みに思わず声が漏れる。
 だが、幸いにも、急所だけは外れているようだ。

「いや〜、驚いた。
 まさかスタンド使いだったとは。」
 奴が余裕綽々といった感じで喋った。
「しかし、怖いなあ。
 『危害を加える』だなんて。
 まあ、無理っぽいけどね」
 奴が皮肉を言う。
 内心腸が煮えくり返る思いだったが、
 ここで冷静さを失う訳にはいかなかった。
 認めたくはないが、私のスタンドの奴のスタンドに対する相性は、
 致命的に悪い。
 状況は最悪と言わざるを得なかった。
 そして、おそらく奴はそれに気付いている。
 冷静に対処しなければ、即死だ。

 私は今度は奴に向かって行く。
 奴との距離を詰めねばならない。
 このまま、奴に遠間から水中銃で攻撃されては
 こちらが圧倒的に不利だ。
 これだけの『能力』。
 奴のスタンドはその『能力』の方に殆どのパワーを
 使っているはずである。
 ならば、純粋な力による接近戦ならば私にも分があるはずだ。

「そうくると思ったよ。」
 男は、私が近づこうとすると、
 素早く身を翻し見事なフォームで泳ぎ、
 瞬く間に私との距離を開けた。
「近づけば何とかなると思ったんだろうけど、
 それは無理だね。
 確かに僕のスタンド『ダライアス』は
 パワーは大した事は無い。
 けど、この空間内でのスピードは、ちょっとしたもんだよ。」
 そう言うと奴は再び私に水中銃を発射してきた。
 必死に受けようとはするが、
 やはり全ては防ぎきれない。
 体に次々と矢が突き刺さる。
 まずい。
 このままではいずれ射殺される。
 万事休すか…!

(!?でぃ君!!!)
 その時、私の視界にでぃ君の姿が飛び込んで来た。
 彼は奴の後ろから今まさに奴をスタンドで殴りつけようとしていた。
「!?」
 男が私の視線に気付き、後ろを振り返る。
 しかしでぃ君の拳は、もう奴の目前まで迫っていた。

627新手のスタンド使い:2004/01/06(火) 13:08
 俺はさんざん走り回った末、
 ようやく男を見つけた。
 ぃょぅがそいつと戦っているみたいだ。
 男の顔はダイバースーツのようなものに隠れてよく見えない。
 だが、俺はそいつが俺の追う男であることを確信していた。
 奴から感じる腐ったような悪意。
 それが全てを物語っていた。

 俺は気付かれないように男に近づく。
 と、ある程度近づいた所で
 体が水の中に居るかの如く、宙に浮かんだ。
(!?これは、何だ?)

 しかしそんな事はすぐにどうでも良くなった。
 何でもいい。
 俺が今考えるのは、
 奴に俺のスタンドを叩き込む。
 それだけだ。

 男の注意はぃょぅに完全に向いていて、
 俺には気が付いていない様子だった。
 俺はゆっくりと、しかし確実に、泳いで距離を詰める。

 近づいた。
 今だ!!

 腕をスタンド化させ、
 そのパワーでの腕かきにより一気に距離を詰める。
 そして男に向かって腕を振りかぶる。
 俺に気が付いたのか、
 男は振り返る。
 しかし俺は構う事無く、拳を突き出していった。


  TO BE CONTINUED…

628神々の遺産を書いている人:2004/01/06(火) 18:43
突然ですが、今、私が書いている「神々の遺産」の続きを書くことを
やめます。読まれている方には大変申し訳ないのですが(読まれている人
がいるのかが疑問ですが)ご了承ください。

629アヒャ編を書いている人:2004/01/06(火) 19:23
そうですか。続編は気になってたんですけどね。
お疲れさまでした。


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