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:
ヒロとセント
:2017/02/11(土) 12:48:27
【お題キャラ:くま&天満宮ベガ&伊藤早矢梨】
【お題:もしかして、私達、入れ替わってる!?】
【書いた人:セント】
「はちみつおいしい……」
「あれがベガ、あれがデネブ、あれがアルタイル……」
「待て待て待ちなさい、あなた達。現実を見ましょうよ」
一人の少女が素手を蜂蜜の瓶に突っ込んでは腕を引き抜いては舐めている。
美少女が一人、首を捻じ曲げながら虚空へ指を向けた向こうでは、天井が消滅して星空が広がっている。
大きな獣が一匹、理知的な眼で他の二人の肩を揺さぶっている。
「落ち着け、伊藤君。彼らとは言葉でも暴力でもまともに会話することは叶わないだろうよ」
「落ち着くなんて無理ですよ、どうなっているんですか会長!!」
希望崎学園生徒会長、孤守悪斗の腕を掴んで嘆いているのは伊藤早矢梨である。ここにはいつもの努力によって磨き抜かれたルックス、振舞いを見せている彼女のらしさは無い。何より、会長に縋りついている早矢梨とは別の早矢梨がここにはいる。
会長の隣にいた早矢梨の傍へ、一匹の獣、くまが近づいた。そして、人語でもって彼女を𠮟りつけた。
「何やってんのよ、私!! 情けない!」
「そんな状態で正気を保っているあなたがおかしいのよ!」
「おかしいおかしくないじゃないでしょ。これまでだって無理することなんて何度もあったんだから、今回だって我慢しなさいよ、私」
お題とここまでの流れを見てもらえば、作者がしようとしていることが少しは分かっていただけただろうか。今回は入れ替わりの物語である。具体的に言えば、くまはベガの姿に、ベガは早矢梨の姿に、早矢梨はくまの姿になっていることになる。
ではどうして彼女がくまになってしまったのか。そして、どうして彼女が二人も同時に存在しているのか、それらについて説明しておかねばなるまい。
本来、今日は次のハルマゲドンに向けた戦斗素体の実験テストを行う予定だった。戦斗素体が戦場でどこまで判断力を発揮し、作戦を遂行できるかについて確かめる必要があることは、生徒会長が事前にチームの者達に通知していた。
会長が自分の権限を使って広い空き教室を貸し切りにしてもらっていたので、空間の確保もばっちりである。
しかし、実際に予定が合って集合することができたのは、企画した会長の他には、早矢梨、くま、ベガ、ロボット研究会のメンバーだけだった。
「仕方が無い。生物部のセント君の例があるからには、戦斗素体の挙動については確認を行っておきたかったが、後で個別に協力してもらうしかないな。まあ、何にせよ今日集まってもらった君たちには早速実験してもらおう」
「我々ロボ研が十全なサポートを行います。どうぞ存分に申し付けてください」
そして会長とロボ研の指導の下、戦斗素体の実験を行ったのだが、一通りのテストが終わったあたりでロボ研の協力者、姉崎氏が唐突な提案を行ったのだ。
「私達の全力少年は周囲の戦斗素体の操作を行うための機能がありますが、同時に何体か動かすことができるかやってみたいんですよねー。できたらきっと便利ですよー」
思いつきの提案であったが、そこにあまり心配性な参加者もいなかったため、その案は受け入れられてしまったのだ。利用されたのは早矢梨、ベガ、くまの戦斗素体である。
この実験も最初は上手くいっているように見えた。三体の被操作機体は優雅な動きでダンスを踊り、クイーンビー顔負けのチアリーディングまでも実現してみせたのだ。
しかし、全力少年は戦斗素体同時操作の末にオーバーヒート。頭部の重要な配線が切れてしまったようで、動作を止めた全力少年はそのまま前方へと崩れ落ちた。
「うわーっ、ヒトロク式全力少年――ッッッ!!!」
「う、うろたえるな諸君! ロボット研究会はうろたえないっっ!!」
「&ruby(修理){緊急手術}だ、&ruby(部室){手術室}へ運ぶぞ!」
「あ、ああっ、動かしすぎました! ごめんなさいっ」
32
:
ヒロとセント
:2017/02/11(土) 12:48:56
「いや、これは俺達の責任だ。どうやら全力少年のスペックを過信し、君の操縦能力を過小評価していたようだ…… 姉崎氏、まさか試合直前になってもまだまだ成長しているとはな。本番でも、期待しているぞ!?」
「あ、ありがとうございます、任せてください部長さん!! この姉崎、まだまだ進化してみせます!」
「ははは、心強いな!! それではヒトロク式全力少年も更に君に合った形で改修を施すべきかな? よし、ついて来い姉崎氏、君のデータを測り直し、機能に反映させよう! 紅組の諸君、それでは失礼する!」
「すみません皆さん、私も失礼します!!」
ロボ研と姉崎氏がその場から去ると、そこには生徒会長孤守悪斗、伊藤早矢梨、天満宮ベガ、くまのみが残った(クマノミではない)。否、正確には彼らの戦闘素体も残った。
「あのー、会長。私達、というか会長以外の戦闘素体、動きが停止していません?これは大丈夫でしょうか。テストはこのまま継続しますか?」
「うーん、私も機械にはそこまで強くないからな。運動停止している機体にこのまま触れていいかも分からない。機械の専門家であるロボ研の皆が早く帰って来るのを待つべきだろう」
「私は良いですけど、あの二人はどうします?このまま待っていてもロボ研がいつ戻って来られるか分からない以上は、家に帰してあげてもいいのでは無いでしょうか」
「いや、セント君の例があるからな…… 急に自我が芽生えて逃げ出すか、いや場合によっては襲い掛かってくるやもしれん。その時には身を守るのに人数が必要だろう」
「はあ、それではこのまま待機ということで……」
しかし、それにしても退屈だ、と早矢梨は感じていた。会長は真面目だし男子だしで趣味の話をするのも難しいし、ベガはずっと架空の夜空の星を数えているし、くまははちみつを舐めている。誰かと会話しようとしても間が持たない。
彼女が軽い絶望に襲われていると、外から自身に満ち溢れた足音が聞こえた。
「わ〜っはっは! 困っているようだな紅組諸君、天才が駆けつけてやったぞ感謝しろ!」
現われたのはロボット部の自称天才、彩羽根彩羽である。右手にはコードレスハンダゴテ、左手には謎の基盤、抵抗、極小CPU、そしてハンダ! いかにもロボに詳しそうだ!
「ああ、君で良い。彩羽根君、どうやらそこの戦斗素体が動作不良に陥ったようだ。どうなっているのか調べてみてもらいたい。そしてできれば修理もお願いしたい」
「は〜っはっは、天才にかかればお安い御用だ。そもそも戦斗素体なんて使ってるから不具合なんて起きるのだ。まあ、それが分かってたら戦斗素体のテストなんか行かないだろう。だけど人の良い私はこうやって困っている皆を放っておけず、ついついここに来てしまったというわけさ」
「それで…… 君は今何をしているんだ?」
「え? 修理だが……」
「今君が弄っているのは、特に不具合の起きていない私の戦斗素体だが……」
「どうせ戦斗素体のことだ、後で不具合なんていくらでも起きるだろ、っと完成!!」
生徒会長が止める前に、彩羽が弄りまわしていた戦斗素体はいつの間にかスチール缶から作ったようなロボットに変わってしまっていた。
「メカラッタ!!」
そのロボットは怪奇な鳴き声を発し、目を光らせた。
「どうだ会長、これが私の考えた最強のロボット、アキカン大王だ。これで試合にも…… 勝利確実!」
「き、今日は戦斗素体の実験テストだったのに、これでは意味が無いじゃないか! ああっ、くま君のはちみつを盗み食いしようとして弾き飛ばされ…… 大破した! 明らかに弱体化してる、これで勝てる訳が無いだろう!!」
「ちっ、会長さんも私の才能を理解できないようだな。まあいい、そっちの奴らも今改良してやるからな」
「彩羽根君、ストップ! ストップだ。もういい!」
「わ〜っはっは!! そうはいくか〜〜!!」
彩羽が停止中の戦斗素体3体に詰め寄るのを会長と早矢梨が止めている時、彼らは新たに部屋の中に入ってくることには、誰も気づいていなかった。
「こんにちはー、すみません遅れましたー」
「……」
新たな侵入者はヒロインモドキのヒロと、自我を持つ戦斗素体のセントであった。
「ああ、セント君。丁度良い所に来た。君は自分の身体がどうなっているか分かっているかね? そこの戦斗素体が動作不良なので見てもらえると嬉しいのだが…… くっ、彩羽根君、そろそろ諦めてくれ。私は君のこれ以上の魔改造を見逃すわけにはいかない」
33
:
ヒロとセント
:2017/02/11(土) 12:49:33
「固いこと言うなよ会長さん、絶対アキカンの方が恰好良いって…… お、野良戦斗素体ではないか。お前もアキカンにしてやろうか〜〜!! 仲間になったんだからサービスだこれは!」
「……ッ!」
「あ、彩羽根君がそっちに向かってしまったか。すまんセント君、ヒロ君、ここのことは良い! 逃げてくれ!」
「え? あ、はい。逃げようかセント君」
「……(了承)」
「天才はアキカン候補を逃がさんのだよ!!! わ〜っはっは、はははは!!」
闖入者が去り、足音が遠ざかっていくと、会長は早矢梨に対し肩をすくめて見せた。
「このような立場の私でも、難しいな。万人を御するというのは。生徒会なら意欲を同じくして集まる者が多いからまだ楽だが、ハルマゲドンには不確定要素が多すぎる」
「でも会長は偉いですよ。それでも役割を放棄しようとしませんから。今日だって、会長がいなければ…… あっ、会長見て下さい、戦斗素体が動き出しましたよ、治ったんでしょうか、それとも」
最初に動き出したのは、ベガの戦斗素体だった。彼女はくまの戦斗素体が持っていたはちみつを取り上げると、瓶の中に腕を突っ込んで舐め始めたのだ。
「え!?」
次に動き出したのは、早矢梨の戦闘素体。彼女は首をグリン、と捩じり無理な角度を取ると、天井を指さして架空の星を観察し始めた。
「ええ!?」
最後に動き出した戦斗素体、くまの姿を取る戦斗素体は、自分の腕を見つめ、胴体を見つめ、足を見つめると声を上げた。
「えええ!?」
「ええええ!?」
早矢梨は絶句した。会長は面白げな表情をして目を細めた。くまの形をした戦斗素体は教室の後ろにあった予備のカーテンで体を包んだ。
「会長、これって……」
「ああ、入れ替わっているな」
「なんで少し楽しそうなんです?」
「気のせいだ。もしそのようなことがあるとしたら、一人だけ戦斗素体がアキカンになった挙句、大破したからではないかな」
「会長、彩羽根さんに戦斗素体を弄られて悔しかったんですね」
「立場上私以外の戦斗素体が改造されるのは止めたが、改造されなかった機体が正直憎かった」
「憎むなら彩羽根さんを憎んでくださいよ…… というか、冗談ですよね?」
「冗談だ。しかし、これが面白い光景なのも確かだ」
「はちみつこそきゅうきょくにしてしこうのしょくざい」
「あれはギャラクティック・ノヴァ、あれはM78星雲」
「ふ、服を着ないと…… いくらくまの姿でも裸は」
「はちみつおいしい」
「あれがアンタレス、あれがカウス・アウストラリス」
「ちょっ…… あなたたちはもっと動揺しなさいよ」
ベガとくまは自分達のスタイルを崩さないため、カオスは広がるばかりである。最初は本物の早矢梨が頑張っていた。頑張ってクマになってしまった自分を励まし、もしかしたら動揺しすぎて少し変になったのかもしれないベガとくま、戦闘素体達を落ち着かせようと話しかけもした。くまと化した早矢梨はその内落ち着いたが、他の二人と二体、(一人と一匹と二体?)はよく分からないことを呟くばかりだった。
「せめてその首はやめてベガさん! 痛めそうで怖いの!!」
「あれは王様、あれは王子、あれはイトコ達……グキッ」
「いま変な音した! 怖い! もういや!!」
カーテンを羽織ったくま、中身は早矢梨が、本物の早矢梨の肩に手を置き、優しい声で言った。
「あなたもだんだん落ち着きを失ってるわよ」
「あなたはいつの間にか落ち着きすぎよ!!」
「まあいいわ、私がとりあえずこの場がこれ以上おかしくならないように見張ってるから、ロボ研でも何でも呼んできなさいな」
34
:
ヒロとセント
:2017/02/11(土) 12:51:18
くまの姿をした早矢梨は、そう言うと他の戦斗素体二人に近づき、声をかけるのだった。
「あなたたちも少しは協力して、混乱してるのは皆同じだから、少しづつ慣れるなり落ち着くなりしないと、会長も困るでしょ」
他の戦斗素体二人に反応は無い。くまの姿の戦斗素体は、少し詰め寄り、今度は二人の肩を揺すぶって言った。
「あなたたち、あんまりその体を汚したり、変な姿勢を取ったりしたら、隠れたのに匂いで場所がばれたり、本番で体を痛めたりするかもしれないのよ。自分の身体に戻るまでで良いわ、我慢しましょう?」
二人に反応は無い、というより彼らは正気を無くしたように動作を続けるのだった。ここで物語は冒頭まで戻る。
「我慢というか、今回ぐらいは嘆いたっていいじゃない。どうせロボ研が来ればどうにかしてくれるでしょ……」
本物の早矢梨はもうやけくそだった。そもそもどのようにしたらこの場が解決したと言えるのかもわからなくなったのだ。どうせ身体が元に戻っても、くまははちみつを舐め、ベガは星を眺めるのだ。
「あー、分かった。あなた、これを解決しようなんて思ってたのね。違うわ、私はそんなこと言ってない。我慢はそういう意味じゃない。あなた、私が最初に皆を励ましたのだって、解決のためじゃないでしょう?」
「え……?」
早矢梨は思い出した。この騒動が起きた後に自分が何故行動を起こしたのか、そしてもう一人の自分が何を言おうとしているのかを。
「カッコを……つけろってこと?」
「そうね、これまでだってそうだったでしょう。だったら今だってそうしましょうよ」
「そういえば、あなた最初、服が無いことを気にしてたわね」
「そ、裸じゃ恰好悪いから」
早矢梨は笑った。
「会長、ロボ研の人たちを呼んできてください。私はもう少し彼らが落ち着くようになだめてみます」
「そうか」
会長は大人しく教室を出ると、ロボ研のメンバーを呼んできた。
「落ち着いたのね、やっぱりその方が良いじゃない、私」
「そうね」
そうして彼女たち
彼女達は元の姿に戻ったのだ。
「格好悪い所見せてたら、山ノ端一人との差が広がっちゃうよね。せめて格好つけなくちゃ……」
終わり
ベガ視点モノローグも書こうと思いましたが時間が間に合いそうにありません。今日は用事があるので戻るのも遅くなります。それでは失礼
35
:
セントとヒロ(スマホから)
:2017/02/11(土) 13:07:25
一応モノローグ
私、天満宮ベガは少し自己評価の高いところがあった。シャフ度でも許されると思うところがあった。他人より優れているところがあると思っていた。
……それが何かは分からないけれど。
私は周りの人々を下らないと思っていた。蜂蜜ぬるぬるプロレス、放送部のはやりん☆、何を言ってるんだこいつは、というのが、私の希望崎生活の環境として私を取り囲んでいた。
だから、いつも私は上を見ていた。あてのない星を見つめて、他の人と目も合わせなかった。
ただ、今日私は伊藤早矢梨さんを実際に見て格好良いと思ってしまった。ただ格好をつけているだけではなかったらしい。あの山の端一人を意識していたのか。どうやったって、勝てるとは思えないのに。
それでも、少なくとも私は彼女に尊敬の感情を抱いた。あの二等星は、一等星よりも眩かった。
「あれは、私の好きな人」
呟いてしまった。
聞こえてはいなかったみたいだ。
36
:
セントとヒロ(スマホから)
:2017/02/11(土) 13:10:18
今投稿したのがモノローグというよりは、エピローグだった気がしてきました。頭が馬鹿になっている
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