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お題でマイナーカプを語るスレ
239
:
名前が無い程度の能力
:2012/03/03(土) 18:10:37 ID:0Q8gn3OM0
>>238
>不幸が立て続けに起こり神も仏も信じなくなった人間に少しでも信じる事を思い出してほしい
>そういった人のきっかけ作りに幸運を呼ぶ能力目当てで、てゐを追っかけまわす雛
>最初はうるさがっていたけど、そのお人好し具合が大国主様のようで、だんだん雛に好意を抱くてゐ
僭越ながらSSを書いてみたのでご笑覧ください。
ある弥生の昼下がり、うららかな春の日差しが感じられる幻想郷。
残雪に青竹が鬱蒼と茂る『迷いの竹林』を、緋色のドレスを着た厄神が歩いていた。
フリル盛りだくさんのドレスと同じ色のリボンで深緑の髪を胸元で結っている彼女の名は鍵山雛。
西洋人形のように端整な容貌はどこか愁いを帯び、きょろきょろと辺りを見渡している。
「今日は…いないかしら?」
「また来たのかい、厄神様?」
雛の独り言を遮るように、どこからか少女の皮肉めいた声が響いた。
ハッと雛は声のした方へ振り返ると、淡い桃色のワンピースにカーキー色のコートを羽織った少女が立っていた。
ウェーブのかかった黒髪から、白い兎の耳が生えている。少女の名は因幡てゐ、古参の妖怪兎だ。
「えぇ、どうしても貴女の能力を借りたくて……」
「何度も言ってるでしょう? あたしは利益になることはしない。見込み違いだよ」
雛の懇願を聞き終える前にてゐは冷然と手を振って断る。それでも、雛は引こうとはしなかった。
「貴女も知っているでしょう? この一年でどんな厄災がこの国に起こったか……」
「それは先刻ご承知ですよ。ウチの師匠は幻想郷の賢者殿と交友がありますから」
柳眉を八の字に顰め、てゐは苦虫を噛み潰した表情で雛を見つめ返した。
大震災・水害・豪雪など自然災害はもとより、人間が人間を苦しめる不幸が『外の世界』を覆っていた。
疑う事に疲弊し、未来に希望を見出せなくなった人たちは即物的・俗物的となって信仰心を捨て始めた。
『絆』なんて白々しいスローガンだけが虚しく響き、拝金主義・物質主義が哀しく謳歌されている。
「でも、それが人間たちの選んだ『幸福』じゃないんですか? 主観的な幸福を他人が杓子定規で測るのは、神様の傲慢でしょう?」
「……そうかもしれない。でも、私は信じたいの。もう一度、人間が敬虔な心で祈り、助け合える事を」
「めでたい神様ですね。生憎、あたしの能力は精々『四十葉のクローバー』程度です。とても人間を改心させるなんてできませんよ」
「それでも………いえ、今日はもう引き揚げるわ。でも、どうかよく考えてみて?」
雛は胸元の髪の穂先を無意識に弄りながら、痛々しい表情でてゐに背を向けた。
ザワザワと竹林の梢が震える。悔しそうな横顔で山へ帰っていく雛を、てゐは黙って見送った。
やがて雛の姿が見えなくなると、てゐはひとつ深い溜め息をついて空を見上げた。竹に切り取られた青空は高らかに澄んでいる。
「はぁ………愚直でお人好しで世間知らず、まるであの方にそっくりだ……」
そう言っててゐは自分の口角がわずかに吊り上がっていてる事に気づき、慌てて首を横に振った。
「やれやれ、大国主命様と似ていると思うのは畏れ多い。あたしも2千年以上生きてだいぶ幻想郷に染まったようだ……」
腰に手を当て、てゐは苦笑しながら棲み処である永遠亭に戻って行く。
その道中もてゐの表情は少し綻んでいる。いつしか、てゐも雛との逢瀬を愉しみにしている事に、彼女もまだ気づいていない。
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