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羽娘がいるからちょっと来て見たら?

646二郎剤 ◆h4drqLskp.:2007/03/05(月) 23:33:39 ID:TFlfCwF6
 手を引かれるがまま、夜風に体を踊らせるラプンツェルは、引かれる手の方へ体を運び、風に負けぬだけの声量で疑問を放つ。
「ど、どこへ?」
「良いところです!」
 落下、そして滑空。アトラスから飛び立った事を再び行う。しかし、勝手が多少違った。文化庁の周りは穏やかで、喧噪も灯りも少なく。アンジェラの誘導だけが頼りだった。
 ようやく降り立った場所は暗闇の多い公園のようで、静寂の隙間から小さな喧噪は遠くからの物だ。
「ここで少々お待ち下さい」
 暗闇に遠慮がちな光を交えたそこには、踊る月が寝そべっていた。
「ここって……」
 案内された、文化庁の前、そこにあった池だと確信し、改めて疑問を持つ。そして、期待を一つ。
「本日のフィナーレです。さぁ、お嬢さん? 拍手の準備は宜しいですか?」
 道化の真似事を交え、池を背にアンジェラがおどけた。
 対して観客であるラプンツェルが笑い、芝居に乗ってやろうと思い立ち。
「手品師さん、期待してますよ」
 小首を傾げ、逆光の相手へ輝くような――文字通り輝く――笑顔を見せた。
「宜しいですね。では、フォー、スリー、ツー、ワン……」
 左手が指折りを始め、右手はシルクハットの鍔を持つ。
 あと一秒がもどかしく、楽しみに。じらすような秒読みに感じられるほど時の流れは濃密に変わっていく。


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