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羽娘がいるからちょっと来て見たら?

637 二郎剤 ◆h4drqLskp. :2007/03/04(日) 22:03:19 ID:tJCfqFFo
19.休符一つ
 ――あれは、何のため。
    推測することが私の仕事であり、楽しみでもあるのです。

 ライラとエルヤの停止は、たった数秒に数えられる物。
 あくまで時計上での話だ。彼女たちには己の体が着地を完了するまで、長く長く、それは一時間以上にも感じられる時間で、研ぎ澄まされた神経は踊る毛先はおろか、相手の乱す空気すら察知するほどに過敏であった。引き延ばされた時間の中、己の体重移動を感知しつつ、エルヤは一つの事実に気づく。気づけば、鋭く細められた瞳が、視線を失った。
 醒めた。
 現実の時間を取り戻したのは、醒めたエルヤだけではなく、同じく事実に気づくライラも同等で。
――終わったぞ、ライラ。
「了解」
 無線機にやりとり一つ、そうしてから先ほどまで行っていた舞いのパートナーに視線を向ける。殺気も闘志も無ければ構えもなく、二人はただ立つ。
「役目は終えた。私達はそろそろ引く」
「目的は?」
「宣戦布告さ。やりがいの無い相手ならば、今日中に潰していた」
 エルヤは苦笑し、溶けたアスファルトを見つめた。先ほどまでの争いが評価に樽と知り、何故か面白いと思った。
「それはいい評価と取っておくよ」
 笑みはライラにも伝播し。改めてインバネスでそれをぬぐうように口元を覆った。
「来週の今日、全力で襲撃させていただく。十九時だ」
「解った、伝えておく」
 それと、と横を見た。
「ごめんね、ストラマ」
『ううん』
 歌声の否定一つ。
 左手を血に染め、右手を焦がしたストラマは苦痛の表情さえ無く。
「いいんだよ。ボクは少なくとも殺し合いはしない」
「甘い事を言う」
「とか言うけどね。互いに傷を受けなかったのは彼女のお陰じゃないか」
「私の弱さ、か。背負うのはメヒの魂で十分なのに……」
『全部私の友達……』
――うそばっかり。
 否定の歌声にため息が出た。それはエルヤだけでなくストラマも、そしてライラも。
 ライラはため息を推力に、背中を向けインバネスをはためかせ。
「今日はこれまで、一同撤収だ!」
 飛び立つ。空に寝そべる姿は薄く、スレンダーな体は翻る黒い布地に隠されてしまっている。長い黒髪は風に遊び、インバネスの一部のようだった。
「君は……染めているの?」
「ああ……」
 最後のやりとりは短く、追従する集団を追いかける者は居なかった。ストラマに毒気を抜かれた。そう思う者は少なくない。
「ちぇ……」
 シヴィルの不満を乗せた風が、一団の去る様を見送っている。

638 二郎剤 ◆h4drqLskp. :2007/03/05(月) 00:31:47 ID:TFlfCwF6
 時間を置いたアトラス内部は斜陽から逃れ、自然の暗闇を窓ガラスから通し、天井より降り注ぐ人工の光と争いを見せ始めている。
「うへー……」
 疲れ、半目で脱力した歩行を見せるエルヤの隣では、苦笑したナンナがねぎらいの言葉を定期的にかけていた。
「口約束だしねー」
 流石のシヴィルも楽天的に物事を捉えず、しかし質問攻めに会ったエルヤには同乗していた。
「ドリさんのおかげ、っすね……」
「まーね……」
 時間を少し遡る。
 再び会議室にて、ニコラスを初めとしたミュトイの面々と、スピネン、ノルストリガルズの大使が一堂に会し、ライラの残した言葉について、そしてストラマについてをエルヤに問うていた。
「……そんなもんだよ。ボクが聞いたのはそれだけ」
 受け答えに疲れたエルヤは、プライベートの口調でそう締めた。困惑のうなりは誰の元にもあり、だが、この場で活躍すべきドリスは気丈で。
「以上でよろしいでしょう。他に調べられることはありません。……皇子?」
「なんでしょう、少佐」
「宜しければ、襲撃予定時刻まで時間をいただけますか? 地の利を得るべく、我々に街を歩くことを許可していただきたいのです」
「解りました」
「半休状態でよろしいですか? 旅先ですし、休まらぬ状況は次回に響きます」
「……お上手ですね」
 ニコラスの苦笑にも笑みを崩さず、ドリスは表情をそのままに。
「この国を好きになって頂けますように」
「ありがとうございます」
 一礼の後、後ろに控える面々を見つめ、小さくブイサイン。
「姉さん、やるぅ」
 小さく言葉を紡いだドミナに、夕子が笑う。
「ひとまず、本日はこの辺にいたしましょう。休憩を願います」
 隊長の威厳を護るべくか、ティアの言葉があった。
「はい。お疲れさまでした。本当に助かりました……」
「有難う御座います」
 アナスタシアがニコラスに続き、恭しく礼を行い。
「無事で良かったです」
 誰ともなく、そんな言葉がある。
「それでは、お開きに」
 ニコラスの言葉を始まりに、三々五々の解散となった。

 ある一室にて。
「や……いやーっ! 許してぇー……」
「うふふ。大人しくなさって? 軍曹、さぁ……」
 アンジェラの懇願と夕子の楽しげな声があった。
「はい……ごめんなさい、アンジェラさん……よいしょ!」
「ぅう――――っ!」
 食いしばった歯から苦悶が生まれ、うつぶせの手だけが必死に空を掴んで震える。
「これで応急処置は完了ですわ。検査も早くて、やりやすい所ですわね……うふふ」
 満面の笑みが白衣の夕子にあり、力尽きたと言った様子の顔がそれを見つめていた。
「は、はあ……技術国ですから……たたた……」
「処置は終わりましたけど、安静になさってくださいませ。軍曹、あとはお任せ致しますわ」
「はい。了解です」
 目配せの後、治療という任務と楽しみを兼ねた物を追えた白衣が部屋を去り、取り残されたのはラプンツェルと息も絶え絶えのアンジェラのみ。
「あの……先ほどの……」
「あ……えっと……ごめんなさい。まだ言えません……」
「解りました」
 気まずい空気があった。
「……すぐに、お話しできるときが来ると思います」
「はい」
 即答に頭を上げるのは何度目か、そんな事を思ったアンジェラの行為はそのままで。
「ごめん……なさい」
 申し訳ないと頭を下げ、視線を下に向けた。向けるだけ下に向けたい視線はうつぶせの状態ではベッドが邪魔をし、敷き布団のかすかなへこみは顎が作る。
「内緒にしていたことを、無理に使ったんでしょう?」
「え……?」
 また浮き上がった頭を見つめ、ラプンツェルが笑う。その笑みをアンジェラが認めれば赤面し、首元に押し込まれた枕に口元を埋め。
「解っちゃいますよ」
「凄い人、ですね」
「いいえ?」
 ラプンツェルが目を閉じる。
――相手にだけは余裕を見せる、でしたね。
 はしたなくも鼻息が少し漏れた。笑みの息だ。
「隠し事って、自分以外には良く分かるものですから」
「あはは……」
「えへ」
 アンジェラの苦笑に、思わず笑みがこぼれた。
――余裕はまだまだ、かな……。
 成長はまだ完了を見せず、進歩は終わらない。ポジティブに考えればそう言うことで。
 今のラプンツェルにはそう思うことが出来る。
 故に、遠慮無く笑みを見せた。

639 二郎剤 ◆h4drqLskp. :2007/03/05(月) 01:10:22 ID:TFlfCwF6
 早速、といった様子で街並みを楽しむ娘達が居る。周囲からすれば観光客にも思え、一瞥すれば活躍を見せた存在であったことを思い出し、瞳に焼き付ける行為があった。
「あー……あれ可愛いなぁ……」
 遊び相手を見つけた子犬、そんな様子で街並みのウインドウに張り付くのはユニーとドミナ、そしてセリエで。
「いいないいなー……大人っぽく見えるかなー」
「あ、そうすればいいんだ……ふむふむ」
 三者三様の楽しみ方に、保護者役となってしまった二人が笑う。
「服だけじゃ駄目なんですけどね」
 ドリスが苦笑し、隣を見れば。
「スノトラさん?」
「……はっ? な、何でしょうか」
 我に返ったスノトラは、夢から覚めたかのように視線を戻す。
「お洒落、好きですか?」
「え、ええ。大好きですよ」
 二人のやりとりに、三匹の子犬が振り返り。
「その格好、可愛いですねー」
「ふわっとしてる感じ……」
「可愛いお姉さんなコーディネイトですね」
「え? あ。そ、そうですか?」
 白い顔を薄紅に染め、防寒具で着ぶくれた体が揺れる。口元にやったミトンは意識しての事だ。
「わ、私って暑がりで寒がりで……困っちゃいます」
「あははー。この国ってお洒落でいいですよね!」
 セリエが笑い、スノトラも同じく笑みで返す。
「街並みの記憶は私がしておくから、楽しんでいいからね? ドミー」
「うんー! ありがとう、姉さん! でもー……」
 満面の笑みから視線をずらし、ユニーを見れば言葉はつながり。
「私も軍曹も頑張りますし、少佐も楽しんでくださいね?」
「うふふ。お言葉に甘えます」
 はしゃぐ様を、ガラス越しに鼻血女が見ていたことは、別の話。

「うーん……いいわね、スノトラさんも……」
「いい加減やめなさいって」
「もう慣れましたよ、あたしゃ……」
 鼻血のティアと、それをたしなめるショーティに、ため息混じりの声はベリルの物だ。落ち着いたカフェで、三人はそれぞれに異なる物を吐き出している。
 ティアは鼻血を、ショーティは煙草の煙、ベリルはコーヒーの香りを。
 一つが途切れた。
「煙草……」
「いい加減やめなさいってば」
 立場が逆転した。
「まったく……良いコンビだこって」
 冷静に判断するベリルは、先ほど立ち寄った骨董品屋で見つけた年代物のオルゴールを分解し、修復にいそしんでいた。軽く向けた彼女の視線が、奥に存在するカウンターへ向かうショーティを見つめており。
「煙草、これだけ?」
「ああ。あんまり煙草は扱ってないのよ」
 どんな相手にも媚びない、そんな等身大の対応をする女将に機を悪くもせず、紙幣を一枚渡し。
「はい」
「何これ?」
 アルミの包装を施された煙草が、彼女の前に置かれる。先ほど見せたパッケージの上より、強固に密着したアルミがそれを開封することを拒んでいるかのように巻かれていた。
「貴女ね、さっきから吸い過ぎよ? 体のためにも今日はやめなさい」
「……しっかりした店だわ」
「ここじゃ、どこでもそうよ」
「心の栄養がぁー……」
 思わずカウンターにへたりこんだショーティを、二人分の視線が珍しい、と無言の語りを見せる。

640 二郎剤 ◆h4drqLskp. :2007/03/05(月) 02:16:06 ID:TFlfCwF6
 闇夜が始まる。翼を持った人々にとって、眼鏡無しでは活動できない時間だ。
 あてがわれた私室へ眼鏡を取りに行ったラプンツェルが、アンジェラの休む部屋へ戻れば書き置きだけがあり、彼女の姿はない。
「……?」
 残された文面通り、彼女は階段を探す。

「戦場とはまだまだ私達には相容れぬ場所だ。勉強になる」
「それはそれは。私達で宜しければご教授致しますの」
 テティスの感想に言葉一つ、白衣を脱がぬ夕子が茶をすする。
「戦という物は覚悟が物を言う。解るかね?」
「ん」
 エリクに対する短いうなずき、そして一服。真理は至ってマイペースであった。
 四人のくつろぐ部屋は静寂の合間に会話を持つ、穏やかな部屋だ。静寂を乱すことは簡単で。ノックの音一つで会話は収まる。
「あのさ、教導隊どうした?」
 顔を覗かせたシヴィルは、軽い黙礼を果たしてからそう問うた。
「通達があると、一旦国に戻りましたわ」
「あ、おっけー。邪魔したね」
 言うが早いが、覗かせた顔を素早く引っ込め。
「……?」
「簡潔であるな」
「いつものこと」
 そう言い、真理は再び湯飲みを煽る。
「蜂蜜パンならまだあるぞ」
 無限大のバッグなのかと思わせるほど、パンは良く出た。

 顔を引っ込めたシヴィルは、背後に待つ三人を見つめ、意地の悪い笑みを見せた。
「孝美は居ないみたいだ」
「羽根のばそっか」
「一安心……」
「失礼な物言い……」
 スヴァンの言葉は、エルヤもナンナもまとめて評し、呆れの色だけを残す。
「まーま、白いのだって大変だろー?」
「そ……それは否定しないけど」
「よーし、記憶したっ!」
「こ、こらっ!」
 似たもの同士のやりとりを笑い、エルヤがナンナを誘導する。
「屋上にでもいこっか。夜の街を一望とか、ロマンチックだし」
「まあ……エルヤ様ったら……」
 腕を抱き、ナンナがしなだれかかる様に苦笑しつつ。
「おいおーい、あたしらは蚊帳の外かい」
「邪魔するよりいいのではなくて?」
「あはは、折角だしお話しようよ。ナンナは後で……ね」
「え、エルヤ様ーっ!」
 騒ぎ立てつつ、階段を上る。屋上への道は良く分かっていた。
 だが、「こんなもの」があるとは聞いていない。
「もしもーし?」
「おーい?」
「何処でも良いの……?」
「ある意味才能ですね……」
 四人の見つめる先には屋上へと出るドアがあり。
「くー……」
 ドアを塞ぐように眠る存在があった。彼女たちが眠る姿を見慣れてしまった。そんな眠り姫が一人。
「あのさー! ソフィア! あたしら屋上に行きたいんだけど!」
 ご丁寧にライオン抱き枕を使い、あからさまに塞ぐ形で眠る彼女は、またぐことも出来ぬ障害であった。ドアは引く形で、引けばドアはソフィアに当たる。
「むにゅー。今日はここで仮眠するんですぅー……」
「……にしても、すっごいの……」
 エルヤの視線は思わず、といった様子で床に潰れるふくよかな胸を見る。
「えーるーやーさーまー!」
「いたたたた!」
 頬をつねり、いくらわめき立ててもソフィアは完全に目覚めなかった。それどころか、騒音から逃げるべくなのかは解らぬ事ではあるが、体を丸める様は重みを増す岩のようでもあり。
「しょうがないわね。部屋で休みましょう」
「だな……。行くぞー、エルヤ、ナンナ」
「そうですね」
「そ……痛い……痛いってばナンナーっ!」
 同じだけの騒がしさで、四人が階段を引き返す。
「ふにゅ……がんばるんですよぉー……」
 寝言が誰かに向けて発せられた。

641 二郎剤 ◆h4drqLskp. :2007/03/05(月) 02:16:41 ID:TFlfCwF6
次回音パートからっす。
今日はここらへんでー!

642 二郎剤 ◆h4drqLskp. :2007/03/05(月) 20:52:01 ID:TFlfCwF6
 屋上にて。すでに輪郭のぼやけた外郭は闇との親和を始め、その外壁は居住空間としての役割よりも景色を選んだかのように空となじむ。鋭く明確な輪郭は、近寄れば再び生まれ、夜空を切り取る刃物として役割を果たすのであろうが、距離があれば景色としての任務だけを持つ。
「あれ……?」
 疑問符を闇に溶かす、それはラプンツェルの所行。
 呼び出した相手を捜し、眼鏡の補助を得た瞳で周囲を見舞わず。
「アンジェラさん?」
「ここです」
「え……?」
 舞い降りる黒。闇の中でも映える、つややかな黒。それを纏う人影がゆっくりとラプンツェルの視界に入る。
 シルクハットに燕尾服、どこかのパーティにでも出かけそうな衣装のアンジェラが帽子を右手に持ち、芝居がかった礼をする。
「不祥私、ラプンツェルさんにお礼がしとうございます」
「え……? お礼なんてされることは……それより羽根!」
「もう大丈夫ですよ。お礼は……私の思い切りを後押ししてくれた事、です」
 冬の風と言うには、少々柔らかい。肌に当たる温度はさほど冷気を持たず、それでいて通り過ぎた後に触れればよく冷えた肌がある。寒い空気を予備知識にしてしまいそうな季節に、暖かな己の肌という認識が逆転現象を錯覚のように与え、その錯覚は風と己の融和を感じさせた。
 そんな事を思いながら、ラプンツェルは相づちもせずに、風に舞うアンジェラのネクタイを見つめる。面接の癖か、相手の視線から僅かばかり下を見てしまう、そんな癖。
「今日のことで決めました。私はもっとあなた方にお手伝いをすると」
「それは……良いことですか? 無理は駄目ですよ?」
「無理じゃないですよ。えっと、ですから。お礼を一つ」
「……?」
 再びシルクハットを被り、左手のステッキを回し、空へ。再びアンジェラの手元に戻れば華になる。
「手品……」
「ええ。とっておきの」
 懐から懐中時計を取り出し、ラプンツェルにそれを見せ。時計は六時を回ろうとしている。
「ミュトイだからできる。素敵なマジックをお見せします」
 秒針が動き、直上まで後数秒。

643 二郎剤 ◆h4drqLskp. :2007/03/05(月) 23:31:32 ID:TFlfCwF6
*音開始
 秒針が真上に向かえば。軽い音がした。
「ショータイム……」
 静かに告げ、前へ、ラプンツェルへと差し出した指は、先ほど鳴らした動きの完了を見せている。手袋の上からでも華麗に響く音色はスイッチのようで。
「わ……」
 アトラスを始点に、放射状にライトアップが伝わっていく。円形に配置された都市ならでは、といった様子で、彼女たちを下から人工の星が幾つも照らす。
 初めは白だった。黄色、赤、青、三原色が追いかけ、それらを混ぜた色が追いかけるように溢れた。
 色彩のカクテルは次第に色を一つにしていく。遠方から見えるの光は、波長のいこ雷図された一つの光、その塊だ。塊はその色を暖かなオレンジの混ざる白色に定め、星々となった強い灯りすら飲み込んで、全てを二人に伝え。
 溢れる照明に目を釘付けにされたラプンツェルの横、アンジェラは満足げにうなずく。直立した姿勢が紳士を思わせ、そうして遠慮がちな咳払いがあり。
「空を……」
 アンジェラが誘う、上空の視線。
「あぁ……」
 光と闇を分断され、夜空をちりばめる星はそれでも己を主張する。
「宝石箱のマジックです」
「綺麗……」
 見入るラプンツェルの瞳が輝く、そうアンジェラは思い。
 映った星や夜景より、自然と内から輝く星を横目で見つめる。

「素敵ですよね。人の力で下の星が生まれて……上の星も負けじと先輩の威厳を護ってるんです」
 笑みを漏らし、ラプンツェルの視線は空からアンジェラへ。
「詩人ですね」
 笑みと視線、言葉に気づき、アンジェラの慌てと赤面は同時で。
「あ、っと……その。一応国文科ですから」
「お上手」
 顔の横、重ねられた両手がある。アンジェラに合わせるかのようなラプンツェルの芝居がかった動き。
「あ……あはー」
 着飾り、芝居じみた先ほどまでの空気が崩れ、普通のアンジェラとして照れた。
「あれ……?」
 光が増える。下よりの光はざわめきを交え。昼と夜の境目から大人しくなった人の流れを復活させていく。
「ミュトイの夜は自由です。早くから光を使い、境目を仕事の終わりとして定めました」
 ラプンツェルはアトラスの縁まで歩み、そこで活動の熱を感じる。
「聞こえてきそう……」
 楽しげな喧噪や、話し声。それが収斂され、しかし上空に立つ彼女らにはぼやけた、騒がしいというニュアンスだけが伝わり。
「ミュトイの夜、といえば苦痛よりの開放、一夜のアバンチュールなんて、そんな比喩もあったりしたんですよ」
「なんか解る気がします」
「さて……」
 改めて芝居じみた動きがアンジェラにあり、片膝を付いて恭しくラプンツェルに左手を差し出す。
「空の旅は如何ですか?」
「あ、あの……」
「どうしました?」
「礼儀作法とか知らないんです……」
 申し訳なさそうに手を組み、うなだれる頭と視線の先へそれをやる。
「あはは。私もかじったきりです」
 ラプンツェルの組んだ手を、アンジェラの手袋に包まれた手が支え。
「行きましょう」
「羽根は……」
「大丈夫ですっ!」
 左手を掴めばすぐに、助走に入った。
「素敵な場所にお連れします」
 二人の体が空に舞い。
「いきますよー!」
 夕刻、スヴァンがそうしたように地を目がけ、落下に近い急降下が始まる。

644 二郎剤 ◆h4drqLskp. :2007/03/05(月) 23:32:03 ID:TFlfCwF6
「わああああ……」
 どこが地面なのか解らぬ恐怖、それよりも感嘆の声が口を付いて出た。腹側には光のパネルが幾つも流れ、背中側には溢れる喧噪と熱気が翼に伝わり、真下を向く視線には、近づく人工の宝石箱が近づいていく。
「そろそろ起きあがってくださいね」
「はいっ」
 空に寝そべる形、それに移れば上下の夜空が二人を迎え。そして下方の光に飲み込まれ。
「市街飛行といきましょう」
 街灯に彩られる街並み、そこを行く人々の頭上で腹這いの二人が屋根を避け、隙間を踊り。まるでダンスのようだと感じたラプンツェルは、相手がそうさせている物かもしれないと思う。
 上空よりの来客に、一瞬人々は驚き、それでも慣れがあるのかにぎやかさは少しずつ確実に戻っていく。
「……今の軍曹?」
「かもね」
「お相手ゲット、すかねぇ?」
「「また先を越されるの!」」
 カフェでは新たな騒ぎが一つ。
 夜空を舞う二人には関係のない事だ。

 屋根を渡り、夜風に踊り、二人はミュトイの光に遊ぶ。
「あははっ……!」
「どうですか。もっともっと……お見せします!」
 落下の勢いを利用した飛行は速く、再びそこから空へと舞い上がり。目指す先には光の環があった。
「あれって……」
「はい、ビルの間にある通り抜け口です。牽引機のお陰であんな構造なんですけど、夜中でも大丈夫なようにライトアップされてるんです」
 説明の間にリングを通り抜け、アンジェラの誘導する手は上空を誘う。
「ここからのが見やすいですから」
「……?」
 疑問の答えが出ぬ間に屋上へたどり着き。二人は屋上に降り立つ。
 喧噪より離れた屋上は、アトラスのそこよりも静寂があり、灯りも少なかった。
「文化庁だから遠慮無しです」
 軽い笑みから、手を繋がぬ右手が前から横へ、緩やかに動く。

645 二郎剤 ◆h4drqLskp. :2007/03/05(月) 23:32:35 ID:TFlfCwF6
「……あ」
「フォルトゥナは運命を定める環ですけど……」
 円弧が解る。三重のリングはその輪郭を小さな光の集合でおおよその形状を示し、赤の点滅が瞳に残像を与え、形状を露わにした。
「夜は天使の環なんですよ」
「綺麗ですね……」
「私達で護りたい物……なんですね」
 改めて意志を口にしたアンジェラが微笑みかける相手は、その意志を固めるきっかけになった娘だ。
「頑張ります!」
 光を映し、そして自ずから輝く瞳をアンジェラに向け、意志の光を彼女に見せる。対してアンジェラは満面の笑みを浮かべ。
「頑張りやさん。ラプンツェルさんはテレビでも今でも、そう思います」
 気恥ずかしそうに瞳を伏せ、笑みの表情がかすかにあった。
「私、いっぱい助けて貰ったんです」
「恩返しがしたい、ですか?」
「いえ……」
 改めて天使の環に包まれた宝石箱を眺め、両手を広げた。自然と翼がそれを追い、暖かな風が彼女を包む。
「私もそんな人になりたいんです。誰かを殺すんじゃなくて……誰かを助けて、ううん……」
 アンジェラは何も言わず、無言こそが的確と思いそれを実行するのみで。ラプンツェルの揺れる栗毛を見つめ、目を細める。

 両手を空に、翼を風に。ラプンツェルは意志の現れを空へと。
「幸せにしてみたいんです!」
「私は、貴女のおかげで頑張れて、すごくすっきりしました」
 みんなもそうですよ、と告げ。アンジェラは隣にラプンツェルを置く位置へと歩み。
「貴女の一生懸命は、とっても元気を貰えます!」
「えへへ……嬉しいなぁ……」
 つま先立ちでラプンツェルがアンジェラの姿を認め、そのまま方向転換は回転へ。
「みんな凄く強くて、色々……。私って才能無いのかなって思ってたんです……」
 ネガティヴな発言を風に流しながらも、彼女のソロダンスはくるりくるりと留まることが無く。浮き上がりながら文化庁の縁を回り。
「追いつこうって、見習おうって、頑張って良かった……」
「ええ。文化庁に来たときも、メモを頑張って……嬉しそうで……」
「お勉強とか大好きですから。えへへ……」
 回転が止まり、彼女は一つ跳ねた。一瞬だけ広がった翼が閉じ、同時に手は後ろで組まれ、顔は笑みでアンジェラを迎え。
「私は幸せですよ。貴女とお話しできて……」
「も……もぉっ。からかっても何も出ませんよ!」
 いつものからかわれ癖が反論をつむぎ、それでも高揚した感情が彼女の頬を膨らませるサービスを込め。
「本音ですってばー……っと」
「どうしました?」
「そろそろ……! こっちへ!」
 慌てるアンジェラがラプンツェルの手を掴み、再び空へと己を踊らせる。

646 二郎剤 ◆h4drqLskp. :2007/03/05(月) 23:33:39 ID:TFlfCwF6
 手を引かれるがまま、夜風に体を踊らせるラプンツェルは、引かれる手の方へ体を運び、風に負けぬだけの声量で疑問を放つ。
「ど、どこへ?」
「良いところです!」
 落下、そして滑空。アトラスから飛び立った事を再び行う。しかし、勝手が多少違った。文化庁の周りは穏やかで、喧噪も灯りも少なく。アンジェラの誘導だけが頼りだった。
 ようやく降り立った場所は暗闇の多い公園のようで、静寂の隙間から小さな喧噪は遠くからの物だ。
「ここで少々お待ち下さい」
 暗闇に遠慮がちな光を交えたそこには、踊る月が寝そべっていた。
「ここって……」
 案内された、文化庁の前、そこにあった池だと確信し、改めて疑問を持つ。そして、期待を一つ。
「本日のフィナーレです。さぁ、お嬢さん? 拍手の準備は宜しいですか?」
 道化の真似事を交え、池を背にアンジェラがおどけた。
 対して観客であるラプンツェルが笑い、芝居に乗ってやろうと思い立ち。
「手品師さん、期待してますよ」
 小首を傾げ、逆光の相手へ輝くような――文字通り輝く――笑顔を見せた。
「宜しいですね。では、フォー、スリー、ツー、ワン……」
 左手が指折りを始め、右手はシルクハットの鍔を持つ。
 あと一秒がもどかしく、楽しみに。じらすような秒読みに感じられるほど時の流れは濃密に変わっていく。

647 二郎剤 ◆h4drqLskp. :2007/03/05(月) 23:34:12 ID:TFlfCwF6
 左手の指は全て収まり、拳となった。同時、シルクハットを空に遊ばせる。
「はいっ!」
 主の元より飛び立ったシルクハットよりも、何よりも高い白が地よりわき上がり、空を目指す。
「わ……」
 高らかに上がる噴水、それを確認できたのは周囲から突き刺さる光の柱、サーチライトによる物で。その水源より色とりどりのライトが水柱を美しく彩る。
「ふふっ。私のとっておきです!」
 自由落下したシルクハットを頭に湛え、傾いたままのそれを正さず、両手を広げアンジェラは微笑んだ。
 微笑んだ、と解るのは逆光のせいで視覚のおかげではなく、あくまで声色から推測する事だ。
「綺麗……」
「大好きなんです。私……水と光が……独り占めしてたんですよ!」
 嬉しそうな声色は上ずり、その声色に当てられたのか、声の主は少しずつ浮き上がる。
「ああ……ラプンツェルさんに見せられて良かった!」
 痛めた羽根はどこへやら、黒い人影が水柱の周りを螺旋状に飛び上がる。
 上昇からこぼれた水滴までもが彩られ、宝石の雨のようだ。そうラプンツェルが思い。

 たまらず、ラプンツェルも飛び上がる。
「素敵な物をありがとうございます!」
「いいえ、見せたかった物です!」
 水柱を間に置き、二人の手を繋がぬダンスが笑い声に彩られ。
「ラプンツェルさん……私、今幸せなんですよ」
「私も……!」
 色づいた光が霧に押し込められ、虹色となる。水柱はそれに応えるかのように色彩の光を交えつつ、一時の飛行を楽しみ。
 水は彼女たちにも当たり、濡れた髪が体温を奪う。それでも二人には内からわき起こる熱量があり、冷えた事など些末な事実で、発熱は終わることがない。

「あの……あのっ!」
「どうしました?」
「大好き……です。ずっとテレビで見て……いつも想ってました……」
「……」
「あ、えっと、えっと……! 困らせてるわけじゃなくて……! 大ファンです!」
「嬉しいです……よ……」
「私……貴女が一番……お手伝いしたい人です!」
「はい……」
 ラプンツェルの瞳の中、ゆっくりと動くアンジェラと。地へ戻らんとする水滴が虹色に染まる様が焼き付けられ。
 頬の紅さは何に映っているか、それは誰にも解らぬ事で。
「私のこと、好きなのかな……」
 つぶやいても、答えは無く。細い声は水音がかき消すだけだ。

*音ここまで
Clean Tears ( 勝史 )様
Cosmic Display
http://www.muzie.co.jp/cgi-bin/artist.cgi?id=a003738

648 二郎剤 ◆h4drqLskp. :2007/03/05(月) 23:36:28 ID:TFlfCwF6
×いこ雷図
○イコライズ
これは特に酷い誤字ですねorz

649 二郎剤 ◆h4drqLskp. :2007/03/06(火) 02:53:41 ID:0.ocYtk2
「だーかーらぁ……エルヤ様は私だけを見ていれば……うぅっ」
 酒の勢いに任せ、ナンナがシヴィルにしなだれかかった。酒気を帯びぬシヴィルは戸惑いつつも苦笑いの反応のみを見せ。
「はいはい、だからって真理の刑とはね……」
「いいえ。それはいけないことよ中尉! 愛という物は淀みなく一人に対して……」
「酔ってるし……」
 白い肌を薄桃に染め、シヴィルに食ってかかるスヴァンは明かな酩酊の様相を見せていた。
「あー……あたしも飲むかな……」
 左右から酒気に挟まれ、中央のシヴィルからはため息が漏れる。
「うー……はずかし……」
 小鶴の刑を受けたエルヤがおずおずと部屋へ入り込み。
「ぶふっ! 何それ!」
「な……ナンナからの指示……」
 バニースタイルのエルヤが申し訳なさそうな様子を表情に乗せ、すでに疲労困憊と言った様子をシヴィルと分かち合うべく彼女の眼前に座る。
「ぶらっくばにー……ぶらっくばにー!」
「黒なの! 白にしなさいよー!」
「二人とも落ち着け……はぁー……」
「はぁぁ……」
 騒ぎ立てる者二人、うなだれる者二人。それが一室の喧噪を埋めている。くたびれる側の二人は額をつき合わせ、騒ぐ二人が左右を彩り。
「聞いて下さいよースヴァンさん! エルヤ様って小さい頃から可愛らしくて……ほらー!」
 何故か涙で顔を溢れさせつつ懐をまさぐり、ナンナの手が写真を突き出す。
「こ……これあったんだ……」
「……可愛いじゃん」
「これはいいですね……教育したくなります。うふふふ……」
「白いの怖……」
 十歳くらいだろうか、小さな少女が自信満々に仁王立ちをする姿、それが写真の内容だ。加えるならば、アザラシの頭らしき物を被り、広がった皮はマントのように長い髪と背中を包みつつ、あぶれた丈が地を這いずっている。
「エルヤ様が初めて飛んだ日の写真なんですよ! 可愛いですよね中尉! ね!」
「う……うん。とりあえず落ち着こうよ?」
「飲んでらっしゃらないから……」
「ちょ……ちょっとま……むぐぐぐぐ!」
 しばらくの抵抗があった。
 現在では酒瓶が口に刺さったまま停止している。
「エルヤ様もー!」
「飲みましょうヤール!」
「ちょ、ちょっとスヴァンさんまでー! むぐぐぐぐ!」
 酒宴はまだまだ続く。

 数時間後、他の物は就寝し、ただ一つ騒がしい部屋がある。
「ナンナがねー……もーベッドで離さないんだよー。けらけら」
 酒気にまみれるエルヤが楽しげに笑い。
「ほほー? じゃー……」
 同じく、アルコールに流されたシヴィルがナンナを見やり、そのすわった瞳は楽しげな目尻を持っている。
「あーまーえーさーせーろー!」
「……エルヤ様って最近浮気っぽくてもー!」
 包容を返した。
「な、なんだとー! こりゃー! なーんーなー!」
 反対側からエルヤが張り付き。
「これも愛よねぇ……」
 酒瓶を煽り、スヴァンがうなずく。
 朝焼けを目にしたのは誰でもなく。見つめられぬ朝焼けは無情にも昇っていく。

650 二郎剤 ◆h4drqLskp. :2007/03/07(水) 23:36:44 ID:TVHhKElM
20.百を超えさせないで
 ――自分ではなんとかできない自分の事。
    寿命が縮まっても感じていたいのは、やっぱり。

「というわけで、本日のミーティングは終了。各員は地域把握と待機に別れてね」
 あれから三日。全く同じ言葉は三度目で終わる朝のミーティングは通過儀礼だけの、ほぼ意味を為さぬ集会に近い。
「本当になんもないな……。暇だし」
「今の内に何かしときゃいいんすけどね、調査くらいしかできねっす」
 愚痴るシヴィルに、倦怠の色を乗せるベリル、二人の言葉は誰もたしなめる者がおらず、ただ日常の言葉として一同の耳を通り抜け、無言の通過は肯定を示す暗黙の了解となる。
 暫定対策本部となった会議室、そこより流れ出る人波の中、動かぬ長机には三人の人影。
「んー……?」
 手をひらひらと遊ばせるセリエの表情は疑問を彩り、隣の存在を伺う。
「今日も雨、多分」
 短く、的確に告げる真理の言葉は天気予報ではなく、珍しい事態になっているこの三日を指している。
「でも、降らないんですよねー。こっちが普通だったりして」
 疑問の表情を悪戯っぽい笑みに変化させ、セリエの手のひらは踊り続けた。
「はー……」
「そろそろ起こして。任務いく」
「りょーかいっ。ラプちゃーん? 朝ですよー!」
「え? あ……ごめんなさいっ!」
 気を取り直し、ラプンツェルが椅子より立ち上がる。集中できぬ事態は珍しいことではなく。
「今日も白紙ー? ちょっと休んだら?」
「す、すいませんっ! 頑張ります! やれます!」
「准尉。曹長のお相手。実地調査行く」
「はーい。任されましたっ!」
 無表情、真理がラプンツェルに与えるのは普段と変わらぬ雰囲気のそれだ。
「曹長には休息を命じる。ですね」
 三人の背後、穏やかなままのドリスが居る。彼女は平坦な日々に休息を与えること、それに誰の問題も無い事を思い、責任者を通すまでもなく指令を与えた。
「さっすがドリス少佐! 話が分かるぅ!」
「うふふ。加えてラファール准尉、お二人で書類整理をして頂けます? 私は都市の見取り図を暗記しますので」
「はーいっ!」
 うろたえ、しかし声も出せずに慌てるラプンツェルを余所に、周囲は動く。
「少尉はどうしますかー?」
「ん、見回りで良い」
「えー。ラプちゃんと仲良しだし、良いと思うんですけどね」
「すいません……」
 見限られた、そのような恐れを抱き、ラプンツェルの謝罪。
「ん。大丈夫。軍曹は一人でも立ち直れる子。二人も手助け、要らない」
 言うなり会議室を出る。
 迷わなきゃ迷路じゃない。そんな言葉を残し。
「うーん……信頼ですねぇ。意味解ります?」
「いえ……」
 書類整理係の二人が揃って右へ首を捻る。

 書類整理。普段の軍部で行う作業ならば、すべてドリスが済ませてしまうこと。それは膨大で、ほぼ半日を費やしす毎日を二人は記憶している。それが今日の書類整理は一人で行っても三時間もかからない分量だ。停滞は書面として、平積みされた紙束として、目に見える形で現れている。そのような分量を二人でこなせば。
「あっさり終わっちゃいましたねぇ……」
「まあ、いいんじゃないですかー?」
 いつも通りの伸び。デスクワークに手を抜いて過ごす定時においても、実務を終え、今日の千切り記録を達成したときにも行われるセリエの伸び。両手を頭上で組み、羽根は左右でバランスを取る、おきまりのポーズだ。
「あの……」
 勢いよく開かれた翼に困り顔を見せながら苦笑する。勢いよく伸びた翼がラプンツェルの眼前まであり、それは整理したばかりの書類を幾枚か一時の飛行を与えている。
「あ、ごめーん」
 小さなはためきを繰り返す翼が、下から上へ風を送り、遊覧飛行の紙片を弄ぶ。哀れな旅行者を空で掴み、ラプンツェルは吐息を一つ。吐き出した吐息と一緒に紙の山へ遭難者を帰すと、改めてため息を吐く。先ほどまで浮き上がっていた軽やかな旅行者も飛び立てぬ、上から下の風は、湿っぽく、そして重い。
「恋煩い?」
 いつもの直線思考だ。
「え? え? や、やですよー! なんで任務中に!」
 反応だけは異例だった。
「ははーん」
 直線軌道すら回避できぬラプンツェルの瞳に、意地の悪い笑みが映る。


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