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羽娘がいるからちょっと来て見たら?

622 二郎剤 ◆h4drqLskp. :2007/03/03(土) 19:58:34 ID:2jGvrMh6
*音開始
 対峙する黒翼の女とエルヤは、改めて距離を取る。周囲の喧噪と争いの中、誰にも邪魔されず優しい風に吹かれた二人。静かで、美しく、ゆるやかな時の中、視線と肌にある風だけがかすかな変動だ。
「ヤール。そして、ヴァルキリヤ」
 黒の女は小さく言葉を紡ぐ。喧噪と銃声にまみれた街路で、その声はエルヤにだけ届き。
「……」
「私は、ノルストリガルズの住人だった」
「……それが何故?」
「彼女に誘われたからさ」
「彼女?」
 疑問詞への返答は黒の女、その背後より現れる。
 視覚的な風だった。
 無色透明が青い線へ、そして青き塊となり、そして小柄な少女へ。
「今、私の居る国にはストラマ以外の神が居る。彼女の名はメヒ。彼女を信じて私はここにいる――」
 エルヤが唇を歯へ巻き込むことも構わず、食いしばりの表情に苦さを乗せた。
「ウートガルザ……」
 かつて、彼女の父親も、恋人も、そう称した存在に殺された。その言葉は人名ではなく、
「ああ、化外さ。私は――」
 化外、主の及ばぬ存在。その言葉を黒は飲み込む。そして、空気を溜めた肺が言葉を乗せる行為の準備をしていたことも、エルヤには解る。

「ウートガルザ・ライラ……! ヤール・エルヤに勝負を申し込む!」
「自ら化外を名乗るかッ!」
 エルヤの言葉をきっかけに空が開けた。
 その道は、誰にも見え。ただ二人にだけ、そのために存在した道。
 その道を、メヒと呼ばれた青の娘が先導していく。
 美しい空の青を纏った娘が、黄昏の紅に美しく映えた。
 二人は舞う。選ばれた道を。
 ただただ、空へ向けて。
 己の戦場へ。ストラマの空を別の神が切り開き、そこへ昇り行く。
 異なる神により二人の化外となった、たった一つ決められた異世界のライン。青い空の色をした亀裂が生まれ、メヒは歌う。ノルストリガルズの母国語で、意味のない文字の羅列。
 まるで神聖なスペルのようだ。耳にした誰もが思い、一時でも夕暮れに存在した青空へ目を留める。
「エルヤ様……」
 切なさを乗せた瞳が射抜く先は、昼と夕暮れの混ざる奇妙な空。
 この世界とずれた場所へ飛び立つ化外達に解らぬ瞳は、夕暮れのように寂しげだった。


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