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羽娘がいるからちょっと来て見たら?

586 二郎剤 ◆h4drqLskp. :2007/02/17(土) 20:28:36 ID:OVKeGQEU
9.ふたたび、一。そして再び鬼一人。
 ――失言ほど無意識に発せられ、蛇を突く言葉もない。

 夕刻と呼ぶにはまだ早く、昼と呼ぶには遅すぎる。そんな時間だった。
「あらあら、廊下を占領して何をやっているんですか?」
 仁王立ちをかれこれ一時間以上通す娘が振り返る。
「あ」
 驚きから、ばつの悪そうな表情を見せ、そうしてからナンナはうつむいた。
「スノトラ様ぁー」
「助けてー……」
「限界……」
 説教よりもなによりも、正座で固められた下半身が悲鳴を上げている、その様子がよく分かる。折り畳まれた足を動かすでもなく、膝で歩く三者を見て、
「大丈夫ですか? ナンナさん、開放なさって? 可愛そうですよ」
「で、でもー……」
「お気持ちはよく存じてますから、ね?」
 優しく撫でる、青白い手にナンナは言葉を失い。
「スノトラ様、さっすがぁ」
「お願いします……ナンナさん」
「いやー、話せるなぁ。なんか冷たい人だと思ってたよ」
「今……」
「ん?」
 スノトラが笑顔で振り返った。先ほどまでの印象とは異なり、硬質な雰囲気のある笑顔はシヴィルに向けられ。
「何とおっしゃいました?」
「人形みたいって思っちゃったんだけど……」
「ナンナさん?」
「はい?」
「大尉だけはあと十時間ほどこのままで宜しいでしょう」
「は、はぁ……」
「ひぃー……ご、ごめんー!」
「許しませんわ」
 小首を傾げた笑顔に、開放される二名が寒気を覚えた。
 無論、それを口にすれば明日は我が身だ。沈黙のまま哀れみの視線をシヴィルに送る、それだけが精一杯の行為だ。
「わーん!」
 泣き言から、廊下のオブジェとなったシヴィルと、それをひたすら監視するスノトラが、同じフロアを行き交う誰の印象にも残った、それは言うまでもないことだ。
 印象的な竜の翼、それが悪魔のように映ったことは口には出せぬまま、ではある。

 言づて通り再びの会談が行われる、そのような事を告げられたのは夕刻、それも、少々異質な光景を見せていた面々に、である。
「かしこまりました。言づて、確かに」
「あのー、スノトラさん? ……いや、スノトラ様? そろそろお慈悲をー……」
 べそかき、そのような状況のシヴィルがおり。
「仕方ありませんね」
「わーっ!」
 シヴィルの背後に回ったスノトラが、襟首を長い鉄杖の尻でひっかけ、そのまま、
「よいしょ」
 飛脚が運ぶ荷物の如く、肩に担がれた杖があり、その先端には足を痺れさせ、もはや感覚のないシヴィルがつり下げられていた。
「うわーん! こ、これ首が……ぐえっ」
「皆様、言づてがございました」
 さほど大きくない、スノトラの声。しかしそれは鋭く、よく通った。
 状況の理解できた者から部屋を抜け、
「……なんだぁ?」
「大尉……?」
 異様な光景に目を白黒させながらそれを追従した。
「たーすーけーてーっ!」
 結局、全員が出そろうまで、彼女の物干し生活は続いた。


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