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持ち帰ったキャラで雑談 その二
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:
楽園・エルルーン1138 1/2
:2017/06/06(火) 16:37:18 ID:dADaGbOE0
―――エルルーン1138 未知領域 ホイルス銀河
「ふぬっ!」
安全用ヘルメットにツナギを着た少女がその小さな身体に似合わぬ大きな斧を振り下ろすと、繊維が千切れていく音を立てて
巨木がゆっくりと倒れて行く。完全にそれが地面に横たわるとたちまち似たような恰好をした少女達が現れて斧や鋸で解体し、
装軌式のトラックに積み込んで行く。彼女達の目の前には鬱蒼とした森林が広がり、その後ろには切り株が点在し、
遠くでは切り株を掘り起こし、その後をトラクターが耕して農場へと変えて行く風景があった。
エルルーン1138はつい最近デスの探検家によって発見された惑星であるが、元々何もない荒涼とした惑星であった。
しかし、その存在が知れ渡るとすぐさま彼女達はユージャン=ヴォングの生命工学を利用し、テラフォーミングを行った。
数か月で惑星は大気を形成し、主だった大陸は森林に埋もれた。そして彼女達は惑星に降り立ち開拓を開始したのである。
―――デス・タウン エルルーン1138
夜の帳が降りると、彼女達は自分達の集落へと戻る。入植当初は掘っ立て小屋しかなかった集落も不断の努力により、
様々な施設が立ち並び、「田舎町」と呼べる程度には発展していた。
集落の中心にはコンビニがあり、カンティーナや宇宙港、ホロネットの送受施設が建設され、掘っ立て小屋も徐々に
アパートへと変わり始めていた。
行き交う人々もデス達だけではなく、人間やウーキー、スクイブ、チスといったエイリアンも街の住民となりつつあった。
ここ数週間のニュースと言えば、ニモイディアンの銀行家が入植したことだろう。強欲で抜け目のない彼らが来たということは、
銀河系の基準から言って、有望な惑星であると言えた。
「うぬー、今日もいい仕事したのだー。マスター、いつものー」
「はーい」
そう言ってカンティーナの席に着いたのは美しい緑色の髪をショートボブにした長身の成体デスであった。
彼女の名前はアビガイーレ、製造されてからバクテリアン宇宙軍の空母デスのOSとして4年間勤務した後除隊し、
大学に6年間通って通信工学と法学及びパントラン文学を学び、ギリギリの成績で卒業した。
卒業後のプランはデスらしく何も考えていなかったが、友人がエルルーン1138に入植していたため、後を追って住み着く。
その頃、エルルーン1138は食糧に関して自給自足ができるようになり、社会的分業が見られる時期となった。
デス達は「タウン」という行政単位を非常に重要視する。銀河政治にはごく僅かな例外を除いて関心を示さないが、
自分達の身の回りについては自治的な傾向を強く示す。そしてタウン行政に必要な役職を任命し始めたのであった。
すなわち、町長、判事、保安官、民兵隊長、郵便局長である。
エルルーン1138には当時200人のデスと48人のウーキーが入植していたが、大学を出ていたのは3人のデスと10人のウーキーだけであった。
そして、郵便事業に関係のありそうな学位を持っていたのはアビガイーレだけであった。彼女はなんとなく引っ越した惑星で突然重要なポストについたのである。
人口300人に満たない惑星における郵便局長の仕事はなかなか多忙である。
古代から連綿と続くやり方―――フリムジに直筆でしたためた手紙を回収して、100パーセク離れた帝国領のはずれの郵便局まで運び、
反対側に70パーセク離れた共和国領のはずれの郵便局まで運ぶこともあれば、ホロネット通信施設の維持管理も行う。
今日もホロネット送受機の不具合を修理してきたところであり、このカンティーナのテレビで流されている野球のメタリオン・シリーズも彼女の働きにより
始球式に間に合ったのである。
「できたのだー」
「わーい」
マスターが頭に料理を載せて運び、飲み物を置いた後に湯気の立ち上るジェノベーゼとソーセージを並べる。
アビガイーレは毎晩、カンティーナでブリシュト・ジュースと共にこれを楽しんでいた。
そしてこれは全てこの惑星の大地で収穫されたものであった。
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:
楽園・エルルーン1138 2/2
:2017/06/06(火) 16:37:51 ID:dADaGbOE0
「やあ、局長」
「むぬ?ぬー!」
口いっぱいにパスタを頬張っている彼女に隣に腰かけてきたエイリアンが挨拶する。
青い肌に燃え上がるような赤い瞳を持った男はエンジニアのアルテンシナイであった。
閉鎖的なことで知られるチス達だが、何故かデスの入植地ではよく見かけられる。チス・アセンダンシーが彼女らを注意深く監視しているのか、
もっと友好的な理由かは定かではないが、デス一族と同盟を組んでいるとされるエイリアンのリストの筆頭に来る存在である。
飲み込めないままアビガイーレはルテンスに挨拶を返す。彼女はシステム的な不具合に対応することはできるが、メカニカルな不具合は彼に頼る外無い。
彼はチス・アセンダンシーにおいて最高の機械工学を学んだ上で外の世界へと旅立ち、ここにたどり着いたのであった。
「この前のケーブルの件だが、0.9×2Pの規格ではもう古いと思う。他のは手に入らないのかな?」
「それは私も思うんだけどねー、ヘンキョーじゃモノがあるだけありがたいのだー」
「それはそうなのだが、セブリ高地の冬季における雪害に耐え切れないぞ」
「まー、ここがもーちょい発展したらコマース・ギルドやヴァリー様のボーエキセンダンが立ち寄るのだ。そしたら色々買えるのだ、おでんとか」
「君は結局そこなのだな」
「うむ!デスのソウル・フードなのだ!」
チスが肩をすくめる一方で、目を閉じて右手を口元にあてて宙を仰ぐデス。最後に屋台のおでんをつまんだのはいつのことだっただろうか。
最近できたコンビニで調達は容易になったが、それまでは祖国から大事に運んできた冷凍食品のおでんが頼りだっただけにデスの彼女にとっては
この惑星の生活は過酷なものであった。
「ところで今度入植してた集落への延線の話だが―――」
彼が新しく話題を切り開こうとして目の前が暗転した。次に目を覚ましたのは焼け焦げた臭いの中であり、煤だらけの顔をしたアビガイーレの今にも
泣き出しそうな顔があった。そして全身に痛みがある。
「よ、よかったのだー!」
「い、一体これは……?」
はっきりしない視界の中でまず確認したのは自分の身体だった。あちこち切ったり打ったりして出血及び内出血があるが、致命傷では無いように思われた。
次に見えたものは先程まで居たカンティーナの無残な瓦礫の山であった。マスターが料理中にメタリオン・シリーズら夢中になりすぎて爆発事故を起こしたのだろうか。
最後に見えたのは装甲ブーツを履いた兵士であった。
「我々は統合軍・第20軍団の先遣隊である、私は第21戦闘団長にしてこの地区占領行政管理者のクルッツェン大佐だ。現在、この惑星は統合軍の支配下にある。
喜びたまえ、君達は新世界創成の労働部門における尖兵としての役割と名誉を与えられたのだ」
装甲ブーツを履き、全身をグレーのアーマーで覆った兵士達の奥で装甲車輌から身を乗り出した司令官が演説をしている。
広場に住民が集められているようだが、全てでは無いようだ。破壊された家の下から助けを求める声が聞こえたり、遠くの方で悲鳴や銃声が聞こえていた。
何が起きたかを全て知ることは難しいが、市民達は1つのことを共有していた。
楽園は失われたのだと。
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