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持ち帰ったキャラで雑談 その二

574雪中1:2012/09/18(火) 23:44:02 ID:pS0e5Gp20
季節外れの銀色の雪に覆われた大地はまるで生命の訪れを永遠に拒むようであった。

そんな場所とはまるで無縁であるような女性が一人、
そのやや硬い雪の中を足を取られぬように足跡を残しながら歩いて行く。
脚は膝ほどの深さまで沈み、歩くだけでも相当な重労働だ。
言うまでも無いが彼女は観光目的、避暑地目当てにここまで来たのではない。
過去の争いのけじめ(とはいっても彼女自身のけじめではないが)をつけに来たようなものである。
彼女の名前はフィオリーナ・ジェルミ。国連軍の特殊部隊の一員である。
当初はこんなに雪深いところまで来るつもりはなかったのだが、
反乱軍に誘われるようにして本来人の訪れるはずの無いここまで来てしまった。
引き返すにしても来る時につり橋を自らのミスで壊してしまい、自力で戻れなくなってしまったのである。

空は曇り、さらに雪が降り積もりそうな様相を呈している。
一歩一歩前に進むが周りの景色は雪一色、
目印になるようなものは何も無く全く進んでいる感じはしない。
その間にも着こんできた防寒着などまるで意味がないように体温を取られていく。
メガネは数分で曇り数歩歩くごとに吹かねば前がまともに見えない。
「全く、あれほど叫ばれていた温暖化とは一体何だったのか」、
フィオは出撃前まで見ていたドキュメンタリー番組の内容を思い出しながら一歩ずつ前へ進んでいく。
先ほど救難信号は出したのだが、ともすると吹雪さえ吹きかねない土地である。
救助は天候が回復するのは明日以降なのは確実、
最悪の場合この先吹雪が続き行方不明扱いにされてまう恐れさえあった。

しかしこれ以上歩いてもただ無駄に体力を消耗するだけ、
そう考えた彼女はもしもの時にと渡された携帯用スコップをリュックサックの中から取り出し、
日本人の女性軍曹、相川留美に教えてもらったかまくらという雪窟を作ることにした。
この地において雪窟を作るのはなんら難しいことではなかった。
入り口だけ階段状に深く掘り、あとはそこから中をかきだすようにして掘るだけ。
これで簡単に雪窟ができてしまうのだから。
雪窟の中は外にいるよりはまだいい程度の温度ではあったが、
フィオにはこれが今までの苦行よりははるかにマシに思え、天国に思えた。
リュックから固形燃料を取りだして使い、雪窟を溶かさぬ程度の弱い火で雪を溶かし温かいお湯を飲む。
体が温かくなったフィオは今までの過労からか、猛烈な睡魔に襲われる。
フィオは襲ってくる睡魔に逆らうことはせず、そのまま寝袋に入って明日まで寝てしまうことにした。

575汝は反逆者なりや?:2012/12/23(日) 12:00:40 ID:58bpE.IY0
「プレーシデンテ!早朝からすいません!いいニュースと悪いニュースが一つずつ!
まずは悪いニュースから、КГБとCIAから指導を受けた政権転覆を目論む反逆者があの小さな街の住人の中にいたことです!
そして昨日の夜にその反逆者がその町の人間を一人殺してしまったようです!これは非常にゆゆしき事態ですプレシデンテ!
そして次にいいニュースを!反逆者が逃げ込んだ街は小規模で見つけるのは一か月もあれば容易だということです!」
朝からひょうきんな男の秘書の声が島の中心に位置する総統府の中にこだまする。
軍服を着てひげをたっぷりと蓄えた、いかついサングラスをかけたプレシデンテはこう命令した。
「なら、炙り出してやろうじゃないか 秘密警察に命じてその街の住人が選んだ『他称反逆者』を一日一人ずつ殺すんだ そうすれば…」
プレシデンテの『粋な提案』に秘書は笑いながら「それはいいアイディアです!見世物にもなりますしね!早速実行いたしましょう!」
そうしてとてつもなく酷く、くだらない反逆者炙り出し作戦が始まるのであった。

街の住人は、数人のただの農家の人間を除けばとても独特で面白い職―というよりは、趣味?―に就いていた。
まずはこの街に反逆者がいると密告した秘密警察の人間―公衆電話からの連絡だったので誰かは知らないが―、
次に預言者気取り、医者気取りのまじない師―これも誰かは知らない―、
そしてマタギをやって暮らしている人間―無論、誰かは知らないし知っているわけがない―、
さらには自分を救世主だと信じて疑わない狂信者―だから誰が誰だかわからないんだってば!―、
最後に反逆者2人―わかったら苦労はしない―である。

派遣された秘密警察の男が集まった街の住人の前でこう言い放った。
「夕暮れまでに反逆者と思しき人物を一人ここまで連れてこい そいつを殺す」
こうして街の住人達も反逆者探しに躍起になるのだが…さあ、誰が反逆者かな?

576新任大使狂想曲:2013/08/02(金) 00:19:11 ID:dsbRSvqI0
グラディウス格納庫横の擬人化できるビックバイパー達の住まう擬人化寮は新たな任務とその人選により混乱に陥っていた。
そしてその彼女達を混乱に突き落とした任務と人選は以下のようなものであった。
『長らく空席になっていたグラディウスの駐バクテリアン大使であるが、新任大使の選定が決まったので以下を報告す
 エルミニア・バイパーを新任大使とし、ミルシェ・バイパー、ルジェナ・バイパーの両名を新任大使の補佐とする。』
外交に詳しくない彼女達でも今までの歴史や他の惑星の事象から大使が非常に大きな意味を持つことぐらいは知っていたのである。
ゆえに前皇帝ラーズ72世が暫くの大使代理となっていたときは皆安心していたのだが、
そのラーズ72世が現皇帝のラーズ73世と結託し新任大使を決めたのである。
これを聞いた時、政治を知らぬ彼女ら擬人化ビックバイパー達は恐れおののいた。
ラーズ72世は前任大使で現バクテリアン皇帝ファノリオスの皇后の一人となっているセイディー・バイパーを任命した時、
『今回から大使は擬人化ビックバイパーが歴任することになる』と明言してしまっていたからである。
つまり今回の新任大使もビックバイパーから選ばれるということはもはや確定であり、それがさらに彼女らを不安にさせていた。
新任大使の発表後は言わずもがなといった状態で、選ばれた3人はまさに絶望の淵に立たされているといった感じであった。
それに加えて今回選ばれたエルミニアらをさらに絶望の淵にたたき落としたのは謎の新要職の新設であった。
新設された要職は、まずは文字通り大使について外交の補佐を担当する外交補佐官。
これには外交経験も多く擬人化ビックバイパーの長として彼女らに気軽にアドバイスもできるビックバイパー現族長、
アストリッド・バイパーが着任し、これはバクテリアンへ派遣されるエルミニアらを喜ばせた。
次にビーコンMk.2の建造から始まったグラディウス、バクテリアン両国の技術交流と、
その技術発展のための懸け橋となるため、技術面での外交を担当する要職が設立された。
それが科学技術庁出張官であったが、これには彼女らをバクテリアン送りにした張本人ラーズ72世が着任。
これにはアストリッドの現地外交補佐官着任でぬか喜びしていた彼女らを不安にさせた。
さらにもう一つ別に新設された要職によって彼女らの心の中での今回の事態はより複雑を極めて行った。
それがグラディウスないしその友好国にあるバクテリアンが有事の際、外交の席に着く特別時軍事顧問の存在であった。
これには現バクテリアン皇帝であるファノリオス、フォイヴォス兄弟とも親戚として繋がりの深い、
現グラディウス陸軍元帥ブラン・ホルテンが兼任するという形で着任に至った。
これはただ、新たな親戚にあまり会えないブラン・ホルテン元帥のために作られた、いわば名誉職に近い物であった。
しかし表立って名誉職というわけにもいかず、またビックバイパー達にもその事実は隠されていたために、
エルミニアらが得意としている軍事にも政治的な対応しなければならなくなったということを嫌でも感じさせ
それがエルミニアらの心中を極めて複雑で難解なものにしていた。
かくしてエルミニアらは、バクテリアン行きのシャトルの中で大使就任の際の文言を考えながら、
これから始まるであろう艱難辛苦に一優するばかりであった。

577名無しさん:2013/10/18(金) 22:59:29 ID:2gkjndHQO
ヤラ:弁解を聞こうか
…前のPCに入ってました、ラストまで書けてたんだよ
ヤラ:なら何故投稿してないのかしら?ん〜?
は、ひっ、あの、今年は暑かったじゃん?
ヤラ:暑かったねぇ、あんまり暑かったからいつもより仕事がとーっても捗ったよ
…それただの八つ当たりじゃ
ヤラ:あ゛あ゛っ?
すいません!PCご臨終で全部消し飛びました!バックアップも忘れてました!
ヤラ:…素直でよろしい、でもちょっとムカついたんであんたシメるわ
え、ちょ、話がちぎゃあああ

578もう1つのFirst Order 1/2:2017/05/27(土) 20:01:53 ID:nA56LhoE0
遠い昔、遥か彼方の銀河系で……

「エドゥアール皇帝誕生!帝国は新体制へ!」
漆黒の闇と粒ほどの光が浮かぶ宇宙空間を音もなく、流線型をした銀色のクルーザーが進んでいく。
その中で一人の老人がホロネットのニュースを眺めていた。最も、中身よりはジャーナリストに目が行っているようであるが。

「統合軍の台頭の責任を取る形で退位した皇帝に代わってエドゥアール副帝が即位したのだ。軍に求心力がある強力なリーダーなのだ。
ちなみに私のおじさんでもあるのだー」

長く美しい緑色の髪に赤と青のオッドアイを双眸に宿した長身の女性がその整った容姿に似合わぬ独特の口調で新皇帝の特徴と今後の方針を
解説、あるいは予想していた。その仕草の1つ1つに彼は温かい視線とうなずきを送っている。
ふと、部屋のエアロックが外れ、金髪長身の女性が入ってきた。亜人だろうか、その耳は顔の横ではなく頭の上に付いていた。

「騒動の渦中の人物がここでのんびりしているだなんて、視聴者の何人が知っているんだろうね?」
「良いだろう、孫娘の成長を見るくらい」

女性がため息を漏らし、視線を下へと向ける。
老人はちらりと視線を送っただけで、またホロネットのキャスターに見入っていた。

キャスターはニトラ。若いながらもバクテリアン帝国のジャーナリストとして活躍し、看板番組も持つ有名人である。
バクテリアン帝国副帝の姫として生まれながら、行政や軍の怠慢に容赦なくメスを入れる筋金入りのリベラリストである。
老人は退位した銀河帝国皇帝・ファーマス1世その人である。彼はある失態から失脚し、息子に帝位を譲り渡した。
金髪の女性は八雲 藍。皇帝の側室の一人で、その正体は別の銀河系から来た妖怪・九尾の狐である。

「アテが外れたよ、九尾の狐に魅入られながら失脚するなんて」
「外れた方が市民達の為じゃないかね」
「まあ、私が国を傾けるまでもなく傾いたけれどね」
「それは耳が痛いな」

銀河帝国はシーヴ1世パルパティーンにより成立し、銀河大戦とファーマス1世の簒奪、ユージャン=ヴォング大戦という戦争と政争の歴史を刻みつつも
ホイルス銀河系を代表する政府及び国家として勢威を増していた。軍事力で圧制を敷いていた初代皇帝と違い、軍人上がりの先代皇帝は新共和国やチス・アセンダンシー、
バクリアン帝国と協力し、緩やかな連帯の下に銀河を治めていた。
パルパティーン皇帝のやり方は野蛮であったかもしれない。しかし、敵と味方をはっきりさせることができた。
ファーマス皇帝のやり方は理想的であったが、ついていけない者達を内部の敵へと変質させた。それこそが彼の政治的キャリアにとどめを刺したのである。

統合軍とは、各国の軍隊が集まって組織された集団である。
バクテリアン帝国が治めるテスラ系銀河を脅かす、シェブール王国に対し結成された。
しかし、3つ問題があった。1つはそれぞれの指揮系統から離脱して集合したものであるということ。
もう1つはその最高司令官にファーマス皇帝の側室であるシュヴェルトライテが就いたということであった。
そして最後の問題は、シェブール王国が降伏した後その大半を不法に占拠し、独立した勢力となったことであった。

579もう1つのFirst Order 2/2:2017/05/27(土) 20:02:38 ID:nA56LhoE0
シュヴェルトライテは平和の恩恵よりも戦場の狂気に身を委ねることを元々好んでいた人物である。
先代皇帝がパルパティーン死後の混乱を収め、未知の脅威と戦っていた間は重宝された。
しかし、先に見ていたものがお互いに違うことに気付かなかった、あるいは気付かないふりをしていたのだった。
先代皇帝はもたらされる平和によって、旧共和国の最盛期のような自由で豊かな社会を望んだ。
シュヴェルトライテは平和は次の戦争の為の準備期間程度にしか考えていなかった。

シュヴェルトライテは不満を感じていた。あまりにも危機感が無さすぎる、と。
皇帝であり、夫でもある彼は腐敗しきった取り巻き達の言いなりになり、色欲に溺れている。
シュヴェルトライテは飢えを感じていた。あまりにもこの世界は退屈である、と。
戦意を掻き立てる炎、闘争心を煽る硝煙の匂い、緊張感と高揚感をもたらす兵士達の怒声が彼女には必要であった。
だが、彼女を取り巻く世界はあまりにも静かで、清潔で、安全で……生の実感を認識することは困難であった。

「こんな世界はいらない」

戦いを取り上げられた彼女は自分を守る為に自ら戦いの幕を上げた。
今までの児戯に等しい突発的なものではなく、永遠に戦いを楽しむ為に。
願わくはその最中で、戦塵に塗れて斃れることができるようにと願って。

「一体、何が不満なのか」

皇帝も居並ぶ高官達も首をかしげていた。
半世紀に渡って皆が求めていたものがようやく手に入ったのに。
三度に渡る戦争で銀河系は荒廃し切ったが、ユージャン=ヴォングの生命工学とどんなところでも開拓するデス達の組み合わせは、
難民と化した人々に新しい故郷を与え、停滞と閉塞感に悩まされていた生き残った人々に希望と未来を与えた。
再び、銀河系が活力に満ちた時代がやってきたのである。その矢先に皇后の一人が行動を起こした。

軍人は戦いに生きることもあるかもしれない生き方である。しかしながら、必ずしも好戦的ではない。
皇帝は彼が帝位を簒奪する契機となった敗戦を経験していただけになおさらそうであった。
戦わずに済むのであればそうしたい、というのが彼の生き方であり、指導者となっていく彼の子息達にもそう教えていた。
願わくば次の世代は戦争を、そして荒廃を知らない人々になって欲しいと願って。

「皇帝は老いた」

ダーラ大提督とファズマ将軍をはじめとする人々は考えが違った。
パルパティーンの帝国の最盛期を理想とする彼女達は今の皇帝と取り巻き達は柔弱であり、それは老いによるものと決めてかかっていた。
最盛期の頃とほぼ指導者達は変わっていないにもかかわらず、帝国は大きくそのあり方を変えていた。敵であった反乱同盟軍のように。
元老院を復活させ、禁じていた宗教を復活させ、再び銀行家や大企業が経済を牛耳るようになっていた。
軍人は帝国のヒエラルキーの中で一番高い位置を占めていた。しかし、今は宮廷もその外も政治家や科学者、銀行家が幅を利かせていた。
皇帝は神に赦しを求め、科学者達は政治顧問として好き勝手な政治を行い、政治家達は総督達に自らの決定を追認させ、官僚達は民間とパーティに明け暮れていた。
「唯一の法、唯一の思想が銀河を一つにする……」この言葉で幕を開けた帝国は完全に変貌してしまっていた。

「ならば新しい帝国をシュヴェルトライテ陛下の下で」

彼女達は各国の戦友達を同志にし始めた。自分達が選ばれた階級であり、世界を導く存在だと信じて。

シェブール動乱が国王・フェリペの退位をもって幕が引かれた数年後、ファーマス皇帝を退位に追い込んだ統合軍戦争が幕を開ける。
餓えた狼の群れが満ち足りた羊達を恐怖に陥れようとしていた……。
父から衣鉢を受け継いだ3人の皇帝、退位に追い込まれた皇帝、市民を守ると誓いを立てていた人々、自分達のコミュニティを守る為に立ち上がる人々……。
もう1つのSTAR WARSはまだ終わらない。

580楽園・エルルーン1138 1/2:2017/06/06(火) 16:37:18 ID:dADaGbOE0
―――エルルーン1138 未知領域 ホイルス銀河


「ふぬっ!」

安全用ヘルメットにツナギを着た少女がその小さな身体に似合わぬ大きな斧を振り下ろすと、繊維が千切れていく音を立てて
巨木がゆっくりと倒れて行く。完全にそれが地面に横たわるとたちまち似たような恰好をした少女達が現れて斧や鋸で解体し、
装軌式のトラックに積み込んで行く。彼女達の目の前には鬱蒼とした森林が広がり、その後ろには切り株が点在し、
遠くでは切り株を掘り起こし、その後をトラクターが耕して農場へと変えて行く風景があった。

エルルーン1138はつい最近デスの探検家によって発見された惑星であるが、元々何もない荒涼とした惑星であった。
しかし、その存在が知れ渡るとすぐさま彼女達はユージャン=ヴォングの生命工学を利用し、テラフォーミングを行った。
数か月で惑星は大気を形成し、主だった大陸は森林に埋もれた。そして彼女達は惑星に降り立ち開拓を開始したのである。


―――デス・タウン エルルーン1138


夜の帳が降りると、彼女達は自分達の集落へと戻る。入植当初は掘っ立て小屋しかなかった集落も不断の努力により、
様々な施設が立ち並び、「田舎町」と呼べる程度には発展していた。
集落の中心にはコンビニがあり、カンティーナや宇宙港、ホロネットの送受施設が建設され、掘っ立て小屋も徐々に
アパートへと変わり始めていた。
行き交う人々もデス達だけではなく、人間やウーキー、スクイブ、チスといったエイリアンも街の住民となりつつあった。
ここ数週間のニュースと言えば、ニモイディアンの銀行家が入植したことだろう。強欲で抜け目のない彼らが来たということは、
銀河系の基準から言って、有望な惑星であると言えた。


「うぬー、今日もいい仕事したのだー。マスター、いつものー」
「はーい」

そう言ってカンティーナの席に着いたのは美しい緑色の髪をショートボブにした長身の成体デスであった。
彼女の名前はアビガイーレ、製造されてからバクテリアン宇宙軍の空母デスのOSとして4年間勤務した後除隊し、
大学に6年間通って通信工学と法学及びパントラン文学を学び、ギリギリの成績で卒業した。
卒業後のプランはデスらしく何も考えていなかったが、友人がエルルーン1138に入植していたため、後を追って住み着く。

その頃、エルルーン1138は食糧に関して自給自足ができるようになり、社会的分業が見られる時期となった。
デス達は「タウン」という行政単位を非常に重要視する。銀河政治にはごく僅かな例外を除いて関心を示さないが、
自分達の身の回りについては自治的な傾向を強く示す。そしてタウン行政に必要な役職を任命し始めたのであった。
すなわち、町長、判事、保安官、民兵隊長、郵便局長である。

エルルーン1138には当時200人のデスと48人のウーキーが入植していたが、大学を出ていたのは3人のデスと10人のウーキーだけであった。
そして、郵便事業に関係のありそうな学位を持っていたのはアビガイーレだけであった。彼女はなんとなく引っ越した惑星で突然重要なポストについたのである。

人口300人に満たない惑星における郵便局長の仕事はなかなか多忙である。
古代から連綿と続くやり方―――フリムジに直筆でしたためた手紙を回収して、100パーセク離れた帝国領のはずれの郵便局まで運び、
反対側に70パーセク離れた共和国領のはずれの郵便局まで運ぶこともあれば、ホロネット通信施設の維持管理も行う。
今日もホロネット送受機の不具合を修理してきたところであり、このカンティーナのテレビで流されている野球のメタリオン・シリーズも彼女の働きにより
始球式に間に合ったのである。

「できたのだー」
「わーい」

マスターが頭に料理を載せて運び、飲み物を置いた後に湯気の立ち上るジェノベーゼとソーセージを並べる。
アビガイーレは毎晩、カンティーナでブリシュト・ジュースと共にこれを楽しんでいた。
そしてこれは全てこの惑星の大地で収穫されたものであった。

581楽園・エルルーン1138 2/2:2017/06/06(火) 16:37:51 ID:dADaGbOE0
「やあ、局長」
「むぬ?ぬー!」

口いっぱいにパスタを頬張っている彼女に隣に腰かけてきたエイリアンが挨拶する。
青い肌に燃え上がるような赤い瞳を持った男はエンジニアのアルテンシナイであった。
閉鎖的なことで知られるチス達だが、何故かデスの入植地ではよく見かけられる。チス・アセンダンシーが彼女らを注意深く監視しているのか、
もっと友好的な理由かは定かではないが、デス一族と同盟を組んでいるとされるエイリアンのリストの筆頭に来る存在である。
飲み込めないままアビガイーレはルテンスに挨拶を返す。彼女はシステム的な不具合に対応することはできるが、メカニカルな不具合は彼に頼る外無い。
彼はチス・アセンダンシーにおいて最高の機械工学を学んだ上で外の世界へと旅立ち、ここにたどり着いたのであった。

「この前のケーブルの件だが、0.9×2Pの規格ではもう古いと思う。他のは手に入らないのかな?」
「それは私も思うんだけどねー、ヘンキョーじゃモノがあるだけありがたいのだー」
「それはそうなのだが、セブリ高地の冬季における雪害に耐え切れないぞ」
「まー、ここがもーちょい発展したらコマース・ギルドやヴァリー様のボーエキセンダンが立ち寄るのだ。そしたら色々買えるのだ、おでんとか」
「君は結局そこなのだな」
「うむ!デスのソウル・フードなのだ!」

チスが肩をすくめる一方で、目を閉じて右手を口元にあてて宙を仰ぐデス。最後に屋台のおでんをつまんだのはいつのことだっただろうか。
最近できたコンビニで調達は容易になったが、それまでは祖国から大事に運んできた冷凍食品のおでんが頼りだっただけにデスの彼女にとっては
この惑星の生活は過酷なものであった。

「ところで今度入植してた集落への延線の話だが―――」

彼が新しく話題を切り開こうとして目の前が暗転した。次に目を覚ましたのは焼け焦げた臭いの中であり、煤だらけの顔をしたアビガイーレの今にも
泣き出しそうな顔があった。そして全身に痛みがある。

「よ、よかったのだー!」
「い、一体これは……?」

はっきりしない視界の中でまず確認したのは自分の身体だった。あちこち切ったり打ったりして出血及び内出血があるが、致命傷では無いように思われた。
次に見えたものは先程まで居たカンティーナの無残な瓦礫の山であった。マスターが料理中にメタリオン・シリーズら夢中になりすぎて爆発事故を起こしたのだろうか。
最後に見えたのは装甲ブーツを履いた兵士であった。

「我々は統合軍・第20軍団の先遣隊である、私は第21戦闘団長にしてこの地区占領行政管理者のクルッツェン大佐だ。現在、この惑星は統合軍の支配下にある。
喜びたまえ、君達は新世界創成の労働部門における尖兵としての役割と名誉を与えられたのだ」

装甲ブーツを履き、全身をグレーのアーマーで覆った兵士達の奥で装甲車輌から身を乗り出した司令官が演説をしている。
広場に住民が集められているようだが、全てでは無いようだ。破壊された家の下から助けを求める声が聞こえたり、遠くの方で悲鳴や銃声が聞こえていた。
何が起きたかを全て知ることは難しいが、市民達は1つのことを共有していた。

楽園は失われたのだと。


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