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【失敗】廃棄小説投下スレッド【放棄】
953
:
境界原理のフラクタル
◆.4U5FmAuIw
:2017/08/01(火) 17:11:44
西尾はケータイを耳に当てたまま、固まった。
上田の指示に従って屋上まで来たが、そこで見たのは相方が倒れている姿。
「あ……」
驚きの声を上げる前に、上田が話し出した。
「西尾さん、石拾った時どう思いました?」
質問の意図が分からない。
「どう……って」
「俺は思いましたよ。こんなすげえ石、一回拾ったら手放せねえなあって。
誰だって超能力には憧れる。空を飛んでみたいし、時間旅行もしてみたい。
それが強すぎると黒になる」
こんな話は聞いていられない。早く相方を助けよう。
そう思って一歩踏み出した西尾は、ハッと何かに気がついて止まった。
「お前ら……」
怒りに両手が震える。嵯峨根の腕が、両方ともへし折れてあらぬ方向を向いていた。
気を失っているのがせめてもの救いだが、自分が来るまでどんな目に合っていたのか、
考えるだけではらわたが煮えくり返る。
「こんな事しても、無駄やで」
「へえ、相方のこんな姿見ても、まだ冷静に喋れるんですか」
有田が挑発する。それにも、西尾は乗らない。この太い体は心も強くしていると、
自分で信じているからだ。
「すごいですよね、西尾さんは。怒りにまかせて俺たちをどうにかしようとか、
絶対考えない。だって白のユニットだから。正しい事しかしちゃいけないから。
俺たちを傷つけたら、その時点で西尾さんは"悪い奴"になっちまう」
「何を……」
「西尾さんは結局、それが怖いんでしょ?」
上田の言葉が、理解できない。立ち尽くしたままの西尾に、上田がさらに言葉をぶつける。
「白のユニットなんてものを作ったのもそう。悪いことできないけど、
だけど石の力に魅力を感じる、そんな小心者の西尾さんはぁ……
その矛盾をごまかしたくてしょうがない。
自分は正しい事をしている、それを、力を使う言い訳にしている」
否定したかった。なのに、西尾の口は動かない。
954
:
境界原理のフラクタル
◆.4U5FmAuIw
:2017/08/01(火) 17:12:22
「結局、西尾さんは、そのちっぽけなプライドが一番大事なんですよ。
本音は、白のユニットにもバラバラなままでいてほしい。
白に共感した奴らを引っぱって戦うなんて、そんな器じゃない」
「そんな……」
「どっちつかずなまま、白のリーダー気取ってる。その状態が一番楽なんだ。
黒に抵抗する奴らが、自分のふがいなさを責めないから、西尾さんは
内心ホッとしてたんじゃないですか?」
「そんなこと、あるわけないやろ!勝手な憶測で話すな!」
「だったら、なんで嵯峨根さんをほっとくんですか?」
まだ床に転がったままの嵯峨根を指さして、上田が言う。
「俺たちなんか簡単に倒せる力があるのに。それで相方を助け起こしてやらない。
たった一つ、自分を許してくれる大義名分を失うのが怖いから」
「ちゃう……俺は、ほんまに……」
何も言い返せない西尾の前で、有田は嵯峨根の首に手をかける。
ぎり、と力がこもって、嵯峨根が苦しそうに眉をよせた瞬間。
「やめろぉぉぉ!!!」
涙と共に、西尾の絶叫が響いた。
□ □ □ □ □ □
静かな大部屋。扉を開いてみると、寝かされた松本が
無邪気な笑みでごろんっと寝返りを打つ所だった。
世話をしていた芸人たちが収録で出て行ったので、部屋にはこいつ一人だ。
近づく足音にも、起きる気配はない。
俺は眠る松本の上にかがみこんで、額にかかった髪をどけてやる。
のんきな寝顔してやがんな、有田にバッシングさせてやるか。
「お前があんまり辛そうだからよ……丸ごと記憶を消しちまえば、
楽になれるかと思ったんだよ。まあ、半分だけだけどな。
お前の中から罪悪感を消して、黒に染めちまおうってのも、まあ、あった」
俺は言葉を切って、少しずつ自分の顔を近づけていく。
「お前はこんな結果、望まねえんだろうな。……物騒な能力だからよ。
誰かのために使おうなんて、多分今回だけだ。だから、人助けと思って、
俺のエゴに付き合ってくれ」
額を合わせて、目を閉じる。俺たちの体を、青い光が包みこんだ。
955
:
境界原理のフラクタル
◆.4U5FmAuIw
:2017/08/01(火) 17:13:12
「西尾か?……ああ、ここにおるけど。なんや、さっきまで泣いとってな。
話にならんかったわ。えっ?ああ、海砂利と会ってたらしいけど。
白のリーダーやる資格がないとか、なんとか」
大部屋の村田からの電話を受けている桶田は、「ちょっと待て」と10円玉を追加する。
「平気やって。嵯峨根?あ、ひどいケガやったけど、桜井がな。あ?
ダーンス4やダーンス4。半拍遅れの。そうそう、右端でオチ言うとる、
おもろい顔のあいつや。その桜井がな、治してくれる言うねんけど、北条がおらんから」
また10円玉を入れて、桶田はちらっとボックスの外で頭を抱える西尾を見る。
「せやから……おう、そういう事や。北条見かけたら頼むわ。
嵯峨根はまだ眠らしとくわ。うん。……ほな、またあとで」
受話器を置いて、桶田はボックスを出る。
これが相方の村田なら、優しくなぐさめる所だったが。
「動かんデブはただのデブや。下りるか、戦うか、はっきりせえ」
厳しい言葉だけを吐き捨てて、桶田はさっさと大部屋へ帰っていった。
一週間後――。
「加賀谷、これどないした?」
顔の傷を目ざとく見つけた村田さんは「ちょお、待ち」と持ち前の
世話焼きを発揮して絆創膏を貼ってやる。
「なあ松本、お前こいつにどんな事させとんねん」
聞いた村田さんの声には、わずかな怒りが見える。
「しゃあないやないですか。誰かさんが俺に石を使わすから……」
答えた松本は、それっきり加賀谷も視界から外してネタ作りに戻る。
まだ何か言いたげな村田さんを、加賀谷は「いいんです」と止めた。
俺はその光景をじっと見ていた。
松本の中で何かが確実に変化している。それがどう転ぶかはまだ分からない。
ただ一つ言えるのは、罪の意識から解放された松本は、
また別のものに囚われたということだった。
【終】
956
:
境界原理のフラクタル
◆.4U5FmAuIw
:2017/08/01(火) 17:13:44
一旦終わりです
補完というにはいろいろハンパですみません
957
:
名無しさん
:2019/11/15(金) 01:11:32
こんな時期にチュート関連のものを投稿するなんてどうかしてるぜという話ですが、空気を読まずに投稿。
Last Saturdayで、吉田氏ならギリギリ意識を保っているのでは?と思い、書きました。徳井氏がトイレに立っている間の話です。
ブラマヨの能力を考えた方の『石がなんなのか分からず、人助け的に戦っている』という設定が微かに登場します。
山も落ちもない稚拙な文章です。
◇ ◇ ◇
(何をしとんねん、自分……)
酒の席ならではの盛り上がりを余所に、彼――吉田敬は自らの言動を咎めた。
自分たちが持つ不思議な石の事は誰にも言わないでおこうと小杉と決めたのに。それを徳井の前で露呈してしまった。
テーブルへ両肘を突き、頭を抱えるようにこめかみへ手を伸ばす。すると、徳井の石を未だ握っている事に気が付いた。手をさげ、拳を見下ろす。
掌の中の石は、自分が持つべきでない物。一刻も早く返したい。しかし、徳井は席を立ったきりだ。この果実に似た石を、預けたまま――。
拳を眺めてから数秒後、彼は忌々しげに目を細めた。
(クソッ、いつまで持っとんねん俺)
同期が使っていた割り箸の側へ、果実ことプリナイトを置いた。即座に手を引き、果実から顔を背ける。この石は今の吉田にとっては眩しく、あまり目に入れたくない物だった。
何故、高揚に任せて徳井の石を見たいなどと口走ったのだろう。石を他人へ見せる事がどれほど危険かは戦いの中で学んでいる筈なのに。
徳井には悪い事をした。
思えばこの一週間、妙に気が引き締まらない。物憂げにぼーっとし、何度も名を呼ばれてから我に返る――そんな場面を幾度と繰り返した。肉体が自分のものではないような、気味の悪い感覚。判断力が鈍った、とも言える。
しかし今日、息を潜め続けた感情が一気に爆ぜた。何が起爆剤となったのか、吉田自身にも分からない。
ただ、今は夢から醒めたような心持ちだった。苦悩こそしているが。悪夢から解き放たれた気分にある。徳井がトイレへ立つ前までのテンションとは違い、妙に冷静だった。
やはり何かがおかしい。身も、心も。
958
:
名無しさん
:2019/11/15(金) 01:12:33
なんだか考えれば考えるほど沼にはまって行く感覚になる。こんな時はタバコでも吸おう。
気分を変える為に彼は、少し離れた所にある灰皿を引き寄せようと手を伸ばした。その時だった――。
横から別の手が伸びて来て吉田の手首を唐突に掴んだ。突然の出来事に体をビクリと震わせて横を見上げると、そこには小杉が立っていた。
なんだ小杉か、と空気が抜けるように息を一つ吐く。
「タバコ吸い過ぎやっていつも言うてるやろ?」
「うっさいわ、お前俺のおかんか。って、お前福田と飲んでたんちゃうん?」
小杉の手を振り解きながら尋ねる。
「ああ、飽きたからこっちに来たんや」
「飽きたって……」
そう言いつつも吉田は助かったと思った。福田には悪いが、今は徳井の石から意識を遠くに置きたかった。小杉が話し相手になってくれるなら最良だ。
「すまん、小杉……俺、石のこと徳井に話してもうた」
これは報告しておくべきだろうと考え、正直に打ち明ける。
「うん、俺もやで」
若干縮こまって話した吉田とは対象的に、小杉は平然と大っぴらに言ってのけた。それが当然であるかのように。
「お前も?」
やはり自分は――いや、自分たちはなにかがおかしい。
「なんか、ここ一週間の俺ら変やないか……?」
正直な思いが口を突いて出る。それを聞いた小杉の目にほの暗く鈍い光が宿った事に吉田は気づかなかった。
「変やないで、むしろ嬉しいくらいや。……それより」
その瞬間、小杉の声が一段低くなる、
「お前、自分のやるべき事分かってるか?」
なにを言われているのか分からず、きょとんとして『なにが?』としか返せない。
そんな吉田に小杉は眉間に皺を寄せ深い溜め息を吐き、徳井の石の方を一瞥した。
「……ほんなら思い出させたるわ」
そう言う小杉の声は地を這うように低かった。そこで気づく、こいつは自分の知っている小杉ではない、と。
それでも吉田は哀れにも思い過ごしであってくれと願い『どないしたんや? 体調悪いんか』と精一杯取り繕った。情けない話だがその声は震えていた。
小杉はその問いに答えず、無言でドロマイトをはめた方の手を吉田の首元へ伸ばし始める。
『避けろ!』と自分の石が叫んだような気がした。しかし出来なかった。小杉の手が目の前に迫った時、吉田は見てしまった。小杉の石に渦巻く、くすんだ濁りを。
それに気を取られた時にはもう遅かった。小杉の手が吉田の首元へ到達すると、チョーカーに付いたアクアオーラを握り込んだ。
その瞬間、二人の石と彼らに仕込まれた黒い欠片が共鳴し、吉田の最後に残った正常な意識を呑み込んだ。
先ほどまでの悩みも苦悩も、全て黒く塗り潰された。全部が悪夢の中へ帰って行く。
頭を支配するのは一つだけだった。
“石を、奪う”
ただそれだけだ。
「思い出したか?」
小杉が暗く淀んだ声で訊く。
吉田は同じ声色と光を失くした虚ろな目で答える。
「ああ……お陰でな」
そして先ほどまで眩しく思い見るのも嫌だった徳井の石へ目を向けると、それを手に取る。
「まずは一つ、やな」
小杉にプリナイトを渡し、歪んだ笑みを浮かべた。
こうして、悩める一人の男は黒き闇へと堕ちて行った。悩みは晴れた訳ではなく、大いなる黒き力に呑み込まれる形で消えた。
もう一つの石も手に入れるべく、彼らは行動を起こす。自分たちを操る者へ捧げる為に。
戦いが始まるまで、もうまもなく――。
959
:
名無しさん
:2019/11/15(金) 01:14:54
以上です。お目汚し失礼しました。
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