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【場】『 倉庫街と海 ―臨海地域― 』

1『星見町案内板』:2023/07/10(月) 16:24:00
星見町の南端は遠州灘に面し、2つの『灰色の景色』を有する。

1つはどこまでも続く、灰色の砂浜で有名な海岸線。
荒波ゆえに『遊泳』は禁止だが、散歩や釣り、潮干狩りなどが楽しめる他、
隣接する『砂丘』の観光でも賑わい、湖畔の自然公園と人気を競い合う。

もう1つは、無機質な灰色のコンテナが立ち並ぶ倉庫街。
『治安の悪さ』が囁かれ、多くの町民は用も無く寄り付かないが―――――
この場所に密かに居城を構える、『アリーナ』と呼ばれる組織が存在する。

---------------------------------------------------------------------------
                 ミ三ミz、
        ┌──┐         ミ三ミz、                   【鵺鳴川】
        │    │          ┌─┐ ミ三ミz、                 ││
        │    │    ┌──┘┌┘    ミ三三三三三三三三三【T名高速】三三
        └┐┌┘┌─┘    ┌┘                《          ││
  ┌───┘└┐│      ┌┘                   》     ☆  ││
  └──┐    └┘  ┌─┘┌┐    十         《           ││
        │        ┌┘┌─┘│                 》       ┌┘│
      ┌┘ 【H湖】 │★│┌─┘     【H城】  .///《////    │┌┘
      └─┐      │┌┘│         △       【商店街】      |│
━━━━┓└┐    └┘┌┘               ////《///.┏━━┿┿━━┓
        ┗┓└┐┌──┘    ┏━━━━━━━【星見駅】┛    ││    ┗
          ┗━┿┿━━━━━┛           .: : : :.》.: : :.   ┌┘│
             [_  _]                   【歓楽街】    │┌┘
───────┘└─────┐            .: : : :.》.: :.:   ││
                      └───┐◇      .《.      ││
                【遠州灘】            └───┐  .》       ││      ┌
                                └────┐││┌──┘
                                          └┘└┘
★:『天文台』
☆:『星見スカイモール』
◇:『アリーナ(倉庫街)』
△:『清月館』
十:『アポロン・クリニックモール』
---------------------------------------------------------------------------

164美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2024/07/15(月) 00:35:54
>>163

軽く目を見開いて、眼前で繰り広げられるパフォーマンスを観察する。
客観的に見ても、かなりの練習を積んでいる事が窺えた。
なるほど、確かにレベルが高い。

  ただし――――『アマチュアとしては』だが。

歌も踊りも完璧に近いが、何もかも『教科書通り』だ。
はっきり言って、『完璧にこなすだけ』なら、訓練すれば誰でも出来る。
その人にしか出せない『独自性』が欠けていた。
しかし、これは『プロの舞台』ではない。
そこまで求めるのは酷というものだろう。

(せっかく新しい水着を用意したのに、
 見せる相手がいなくて退屈してたところだったし――――)

       ス ゥ ッ

(ちょっと声を掛けてみましょうか)

緩やかに身体を起こし、走り去った少年の方へ歩いていく。

「――――はぁい、こんにちは」

有鹿の視界に映るのは、スポーティーなデザインのビキニを纏い、
サンバイザーを被った若い女だった。
細すぎず太すぎず、適度に引き締まった理想的なスタイルだ。
明るい『ビタミンカラー』が良く似合っている。

「さっきカメラに映ってたでしょう?
 同業って訳じゃないけど、私も『メディア関係』の仕事をしてるから、
 少しだけ気になってたの」

       スッ

そう言いながら、よく冷えた未開封のスポーツドリンクを差し出す。

「いいものを見せてくれたお礼に私からの奢り。
 暑い中あれだけ動いたんだから、キチンと水分を取らなきゃダメよ」

もう片方の手には、同じペットボトル飲料を持っていた。
これは自分用だ。
それを剥き出しの肌に当て、暑気で火照った身体を冷ます。

165有鹿 真冬『アルカディア』:2024/07/15(月) 01:12:06
>>164
所詮は趣味の勢いを出れない誰かの歌しか歌えない紛い物だ。
身体能力に関しても男性の豪快さは有っても女性のしなやかさがない。
ただ、『アイドル』という存在に関しては熱い想いがあるようだ。

「こんにちは〜! お姉さんって誰かに似てるような…
 殉職した父が好きなアイドルに…」

「あはは、いやはや、一気飲みしようとしてたんですが身体に悪いか…」

「おっと、自己紹介自己紹介。ぼくは有鹿真冬。小学6年生です
 小さい頃から眠れなくてずっとアイドルを見てきたんです!」

それにしてもこのお姉さんってスポーツしてるのかな?
自分は食べないから痩せないとは違う引き締まったスタイルな気がする。

「メディア関係者。ううん…お姉さんに声がそっくりな人がいたような…」

ドルオタは推しじゃなかろうが記憶の底にアイドルたちの輝きを仕舞っている。
そこをキモいと取るかは人それぞれだが…

166美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2024/07/15(月) 02:01:08
>>165

ペットボトルを開封し、口をつけて喉を潤すと、素肌に浮かぶ汗が引いていく。

「あははは、ホントに『アイドル』が好きなのねぇ」

『殉職』という単語は聞こえたが敢えて触れない。
初対面の相手に聞くような話ではないだろう。
今は他に気になる事もある。

「自己紹介されたなら名乗り返さないとね。
 私は美作くるみ――『パーソナリティー』をやってるの」

そして、『星見FM放送』がある方角を指差す。

「知ってるかどうか分からないけど、『星見FM』に所属してるわ。
 『パラボラアンテナ』が目印の建物よ」

『アイドル時代』の芸名は『MIMI』。
本名である『美作くるみ』の『最初』と『最後』を取った名前だ。
アイドルとしての活動期間は数年だったが、飛ぶ鳥を落とす勢いの売れっ子だった。
流行の変化とライバルの台頭によって、徐々に世間からの人気が落ちていき、
ひっそりと引退した後は、当時の栄光は忘れ去られている。
しかし、『マニア』であれば『同一人物』である事に気付けるかもしれない。

167有鹿 真冬『アルカディア』:2024/07/15(月) 02:41:46
>>166
「ぼくにとってアイドルは希望にして最後の砦なんだ…
 ずっと眠れない日々も、家族が消えた今も耐えられる…」

『エクリプス』への『復讐心』は揺るがないがそれは義憤のようなものだ。
世界への強い『絶望』から『アルカディア』も生まれた。
だが、『アイドル』という存在はそれ以上に尊かった。

「アイドルの歌が好き。踊りも好き。お喋りも好き。下ネタはちょっと…」

「そういえば、父さんは美作くるみさんのアイドル時代も好きだった
 名前が可愛らしくていつも元気で愛くるしい娘だと…
 本当に死ぬまで美作さんのアイドル時代をぼくに見せて…」

「仕事の都合上、握手会やライブには行けなかったが父さんは
 美作くるみさんのことが大好きだったと思う」

など、と真冬がアイドルを語っていると下からガリボリガリボリと何かを砕く音がする。
『鹿角』を有しカラフルな『エゾユキウサギ』が人参を食べているのだ。

「あーっ! もう食べちゃった! 『アルカディア』は仕方ないな…」

バッグから新しい人参を取り出して『エゾユキウサギ』に差し出すとバリボリとASMRめいた音を出しながら食べ始めた。

「美作さんの放送はいいよね。如何なる時も癒しをくれる
 音程が聞き取りやすくていいと思う! 絶対に意図的!」

「なんかたまに変なリスナーがお便り出してくる好きなんだぁ!」

ちょっとまたオタ話に着火している気がしなくもない。
真冬にとってアイドルとは自分を鼓舞してくれる存在なのだ。

「美作さんはアイドル…やってて楽しかった…?」

「私達ファンって世間じゃ疎まれてるけどアイドルにとっては…?」

過去にアイドルをしていた美作くるみにしかできない受け答えだ。
真冬は不安そうに美作を見上げ不安気な表情をしている。

168美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2024/07/15(月) 16:48:53
>>167

『MIMI』の本名が『美作くるみ』という情報は、
熱心なファンなら知っている事であり、有鹿の父は『そちら側』だったようだ。

「もう少し秘密にしておこうと思ってたけど、
 そこまで知られてるんじゃあ仕方ないわね。
 フフ、たくさん褒めてくれてありがとう。
 よかったら、これからもラジオを聴いてくれる?」

有鹿が人参を取り出している間に、足元の『エゾユキウサギ』を一瞥する。

「ええ、もちろん楽しかったわ。
 辛い事も沢山あったけど、楽しい事の方が多かった。
 だから、アイドルを続けられたのよ」

「結局は辞めちゃったけど……お陰で『今の仕事』に出会えた。
 私がアイドルを目指したきっかけも、
 ラジオから元気をもらった事だったから、
 私の『原点』みたいなものかしら」
 
「アイドルもパーソナリティーも、『マイク』を通して誰かを応援できる。
 そして、今も昔も『聴いてくれる人』に支えられてる。
 そんな仕事が出来て、私は幸せよ」

      ――――――ズギュンッ

言い終わると同時に、美作の肩に『機械仕掛けの小鳥』が出現した。
『アルカディア』と同じく『動物のヴィジョン』を持つスタンドだが、
どちらかといえば『動物を模した機械』という方が正しい。
近未来的な雰囲気を持つスマートなフォルムが特徴的だ。

「――せっかくだから、『こっち』の自己紹介もしておくわ。
 あなたのウサギさんみたいに動き回ったりはしないけど。
 とってもおとなしい子なの」

その言葉通り、『小鳥』は微動だにしない。
よく観察すれば、背中に『マイク』が搭載され、
口の中には『スピーカー』が内蔵されている事が分かるだろう。
それらが『何を意味するか』までは謎だ。

169有鹿 真冬『アルカディア』:2024/07/15(月) 23:40:25
>>168
「あはは、これからも手紙を送り続けて読ませちゃいますよ!」

下手なガチャより当たりを引き当てるのは簡単だろう。
しかし、やはり競争率というものは熾烈なものだ。
それでも推しに届くと信じて。

「ひとつひとつをそんなに大切にできる美作さんだから選ばれたの
 かもしれないよ。
 ぼくも美作さんのラジオに助けられてるから本当に感謝してる」

「ぼくには出来ない応援を今も昔も『マイク』一本でやれるアイドル
 こちらこそそんな美作さんの放送を聞けて幸せ!」

直後に現れたスタンドにはびっくりしたが可愛らしく機械仕掛けなところが美作さんらしかった。
昔に発現していれば、本物の小鳥が出て来たかもしれない。
何故か、マイクが付いてるが能力関連だろうか?

「アンティークショップに有りそうな格がある小鳥さんだ。
 マイクが有るってことは美作さんの歌を拡散できないかな?」

「では、ぼくも。こいつは『アルカディア』。『鹿角』に絶大なスタン
 ドパワーを宿しているよ。主にバスと正面衝突できるぐらいかな?」

「能力はね、『不自然殺しの冬』。人が作ったものなら大抵は『凍死』
 させるよ。概念や憲法に宗教までも『凍死』できるね」

「あと、こいつが能力を発動すると周囲30mが0度になるんだ…」

170美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2024/07/16(火) 01:06:05
>>169

「へぇ!なんだかスゴいのねぇ。
 私も顔は広い方だけど、そんなのは聞いた事がないわ。
 フフッ、今みたいな季節ならクーラー要らずで涼しくなれそうね」

ずいぶんと範囲が広い能力だし、その効果も変わっている。
途中までは『スカウト』する事も視野に入れていたが、
『射程距離』が耳に入った段階で、その考えは消えてしまった。
『周囲30m』では『観客席』にも被害が及ぶ。
調整が効かない能力を舞台に上げる訳にはいかない。
バスと正面衝突する『圧倒的なパワー』も『門倉派』では活かせないだろう。

「教えてもらって悪いんだけど、私の能力は秘密なの。
 ただ、『私に似た能力』は見た事がないわね。
 それだけは言えるかしら」

美作の肩に止まる『機械の小鳥』からは、
『アルカディア』のような破壊力や攻撃性といったものは全く感じられない。
しかし、美作の言動には確固たる自信が溢れている。
『自分にしか出来ない力』――『圧倒的な情報拡散能力』に由来する揺るぎない矜持だ。

「私の放送が聴けて幸せって言ってくれたから、
 そのお返しをしたいんだけど、さすがに今日は『名刺』を持ってきてないし……」

         パチンッ

その時、一つのアイディアが浮かび、指を鳴らした。

「もし良かったら、一緒に『写真』を撮らない?
 ここで私達が出会った記念にね」

耐水性のあるクリアバッグの中からスマホを取り出し、有鹿に提案する。
『水着姿の美作くるみ』は、それなりに『レア』な被写体だ。
そういう意味でも貴重かもしれない。

「――――どうかしら?有鹿くん」

171有鹿 真冬『アルカディア』:2024/07/16(火) 01:51:56
>>170
「あぁ、秘密でいいよ。よく考えたらスタンド能力ってバレたら
 不利になりそうだからね!」

「スタンド使いの駆け引きと暗黙の了解とかよく知らないんだ…
 実はぼく、天然のスタンド使いだから親は居ない」

『アルカディア』を堂々と出している理由は彼の耳が良い点を利用してあるからである。
だが、本来は『概念否定系』という能力だから情報収集は苦手だ。
それに真冬は未だに親無しのスタンド使い。美作のスタンドを知ったところで真価を見出だせないだろう。

「えっ! め、名刺持ってない…んだ…」

「えっ、写真とか良いの!? なら、喜んで一緒に写りたい!」

「あっ、あと、バッグの父の遺品の手帳にサインしてくれないかな!
頼むよ! この通り!」

バッグから高級そうな手帳を取り出して頭を下げた。
生前に叶えられなかった父の願いを叶えてやりたいのだろう。
写真撮影に緊張してきたのか顔が真っ赤なだ。
こういった正直なところは小学生の特権だ。

172美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2024/07/16(火) 06:18:54
>>171

『スタンド能力がバレたら不利になる』という意見は正しい。
特に『プラン9・チャンネル7』に対しては。
例えば、さっき聞いた『アルカディア』の能力を、
この海辺に設置されている『防災無線スピーカー』を使って、
『半径300m内』の『不特定多数のスタンド使い』に『拡散』するというような事も、
今やろうと思えば出来てしまう。
それが『スタンド使い』としての『美作くるみの強さ』だ。
『不自然物』を『凍死』させる『アルカディア』とは対照的に、
まさしく『現代的な力』といったところだろう。

「ええ、勿論いいわよ。
 私のサインで良ければ喜んで。
 久し振りだから、ちょっと緊張するけど――――」

       サラサラサラ…………

差し出された手帳を丁重に受け取り、手にしたペンを紙面に走らせる。
そこには『美作くるみ』ではなく『MIMI』と綴られていた。
『リクエスト』に応えて、アイドル時代の芸名だ。

「――――はい、どうぞ!大事にしてくれる?」

             スイッ

手帳を返してから、赤面する有鹿に歩み寄って、躊躇なく肩を並べる。

「それじゃあ撮りましょうか。
 『私の』じゃなくて『有鹿くんの』じゃないとダメね。
 ええと、スマホは持ってる?
 近くにいないと二人が入らないから、もう少し側に来た方がいいんじゃないかしら」

お互いの距離は非常に近い。
このままシャッターを切れば、ちょうど『ツーショット』が撮れるだろう。
そのタイミングは有鹿に委ねられている。

173有鹿 真冬『アルカディア』:2024/07/16(火) 19:52:43
>>172
美作くるみの『プラン9・チャンネル7』は情報型スタンドとしてはかなり優秀な方だろう。
しかし、スタンド使いも人だ。テリトリーに見知らぬスタンド使いの話を垂れ流されては困惑、苛立つ者もいる。
要はその情報を求めている者にだけ情報の与えられるかが課題なのかもしれない。
それさえ見極められた時に星見町の情報の流れを『プラン9・チャンネル7』は支配できる。

「昔の芸名だ! 父さんやったよ! お供えしてあげるから…
 父さん…父さん…あなたの死が報われたよぉぉ………」

美作くるみのサインに感極まって涙を流す真冬。
誰にも賞賛されずに『エクリプス』の情報だけを残し口を割らず死んでいった父。
その死が報われたような気がしたのだ。

「ちょっと待っててね…自撮り棒…自撮り棒…有った…!」

顔を真っ赤にしながら自撮り棒にスマホをセットする。
これで準備万端だ。アイドルとツーショットなど恐れ多くて腕が震える。

「い、行くよ! 3! 2! 1! 0!」

      『ポコンッ』 
                  『パシャ!』

「うん、上手く撮れてる! 待ち受けにしよう! これで勝ち組だ!」 

何が勝ち組かは謎だが写真は上手く撮れていた。
肩を寄せ合い二人が笑顔を向けるツーショット。
普段から上級生の友達の心霊スポットYouTuber活動を手伝った賜物だろう。

174美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2024/07/16(火) 21:42:13
>>173

美作くるみは『モラリスト』であり、情報を悪用する気など全くない。

だからこそ、この街の住人に危害を及ぼす者が現れたとして、
それが美作の耳に入ったなら、あの『魔物事件』のように、
『注意喚起』を行う可能性が出てくるというだけだ。
そして、その時は『正式なアリーナ名義』で放送する。
無論、『有鹿真冬』が無秩序に人を傷付けるような人間ではない以上、
情報を知らしめる理由は何もなかった。

過去のゲリラ放送で、美作は『門倉派』の名前を出さなかった。
それは『布石』であり、一種の『演出』だ。
『その先のプラン』は、門倉には既に説明してあるのだが、
それ以外の者が知る機会は『もう少し後』になってから――――。

「うん、いい感じに映ってるじゃない。
 私のスマホでも撮らせてもらうわね」

      パ シ ャ ッ

確認を取った上で、今度は自分のスマホで撮影する。
こちらも良い画が撮れた。
有鹿は女装したまま映っているのだが、写真からは『同性』に見えるだろう。
 
「ねぇ、有鹿くん――『ビーチコーミング』を試してみない?
 遠い海の向こうから流れ着いた物を探してみるの。
 もしかしたら『宝物』が見つかるかもね」

有鹿を手招きしながら、寄せては返す波に近付いていく。
ふと腕を伸ばすと、一つの『貝殻』を拾い上げる。
表面の砂を指先で払い、それを有鹿に見せた。
パステルカラーのような淡いピンク色が目を引く『桜貝』だ。
アクセサリーの材料としても人気があるらしい。

「――――『季節外れの桜』ってところかしら」

辺りを探してみれば、他にも何か隠れているかもしれない。
ちょっとした宝探しだ。
きっと、それは『夏の思い出』の一つになるだろう。

175有鹿 真冬『アルカディア』:2024/07/16(火) 22:44:53
>>174
もし、美作くるみが情報を悪用する人物であったなら『プラン9・チャンネル7』は醜悪で下劣なスタンドになっていただろう。
しかし、大人としての矜持や高い道徳心が相まって問答無用で悪さができるスタンドではなく、主に人を繋げる情報伝達のスタンドの側面が強くなったのだろう。
スタンド本体は精神により形作られる。
『アルカディア』は全ての繋がりを絶ち孤立化させる。
『プラン9・チャンネル7』は全てを繋ぐ。
正反対の二人だが戦いにはならなかった。不思議なものである。

「これはネットに晒しても『同性』にしか見えないね…?
 我ながら母似で良かったなー、と思うよ!」

「あの、写真ついでに連絡先の交換…しないかな…
 美作さんが酷い目に遭った時にたすけるよ…!」

真冬の顔がさらに真っ赤になり茹で蛸のようだ。
受け取ったスポーツドリンクを一気飲みして色々誤魔化す!

「ビーチコーミング! 我ながら女々しいけど貝殻のアクセサリー
 を作ったりしてるんだ!」

同じように桜色やアメジストのような宝石の如き貝殻を集めて楽しむ。
貝殻のアクセサリーが完成したら美作に贈るも自分がするも良し。

「あぁ、なんて楽しい…こんなの久しぶりだな…」

「サイン入り手帳にツーショット。まるで友達のよう…」

真冬は『復讐者』だがそれだけに重きを置いてない。
父から教わった人間の善性の発露『黄金の意志』も目指している。
今日の『思い出』は一歩だけ真冬をそれに近づけたかもしれない。

176美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2024/07/19(金) 00:22:24
>>175

有鹿真冬と美作くるみの能力は、見方によっては対照的な関係を持つと言える。
一方、スタンド使いとしての心構えには近い部分があった。
自らの才能を悪用しない『志』だ。

「ええ、もちろん――――」

     スッ

「でも、助けてもらえるのは嬉しいけど、
 できれば『それ以外』の時にお会いしたいかしら」

思い出したのは、『鷲見健治』と出会った時に巻き込まれたトラブルだった。
『プラン9』の専門分野は『情報戦』であり、腕ずくで解決するような力はない。
なるべくなら危ない目に遭うのは避けたいところだ。
ともあれ、頼りになる味方が増えるのは心強い。
連絡先の交換を滞りなく済ませ、有鹿と共に『宝探し』に興じる。

「フフ、私も何だか久し振りにのんびり出来てる感じよ。
 貝殻のアクセサリー、いつか完成したら見せてね」

有鹿に『目標』があるように、美作にも『目指すもの』がある。
『その時』は、まもなく訪れるだろう。
本当に『もうすぐ』――――。

177村田瑛壱『ディズィー・スティック』:2024/08/09(金) 23:33:21
コンクリートで護岸された岸辺で、波打ち際に目を凝らす。

 「この辺にもあると思うんだがな。」

夏の日差しにも関わらず『学ラン』姿の男の片手には『バケツ』。
手には『軍手』といういでたちだ。

178村田瑛壱『ディズィー・スティック』:2024/08/10(土) 22:52:21

 「お、あったな。」

お目当てを見つけると、波打ち際に腕を肩まで突っ込み、その『何か』をもぎとった。
濡れて黒く光る貝・・・『イガイ』と呼ばれる貝だ。

 「これだけあれば晩飯には十分だな。」

もぎとったイガイをバケツに放り込むと、日差しに顔をゆがめながら街へと帰っていった。

179甘城天音『BSS』with『ラムネ瓶猫』:2024/08/19(月) 23:21:58
青い小波の音がする静かな海岸
一匹の猫と飼い主が散歩をしている

猫というがイタチのような体型をしていて
水のように透き通った青い体毛をしている変な猫だ

180小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』:2024/08/23(金) 06:21:17
>>179

向こうの方から一人の女が歩いてくる。
洋装の喪服を身に纏い、黒いキャペリンハットを被っていた。
同じように散歩しているらしく、お互いの距離が少しずつ縮まっていく。

  「――こんにちは……」

会釈と共に挨拶を交わし、すれ違おうとしたが、不意に足を止めた。

  「……珍しい猫ですね」

ぽつりと呟くように、素直な感想を口にする。
一見して分かる奇妙な姿だ。
そして、変わった猫を見るのは初めてではない。

181甘城天音『BSS』with『ラムネ瓶猫』:2024/08/23(金) 16:07:42
>>180
お盆を過ぎたら霊に引っ張られるから海に入っちゃいけない
という俗信があるが、こういう話には意外とちゃんとした理由があったりするものだ

台風の影響で起こりやすくなる土用波や離岸流
そして大量発生するクラゲ
これが霊の正体というわけだ
なるほど、確かにこの時期の海には入らない方がよさそうだ

波に流され漂うクラゲを見ていると喪服を着た女性が歩いてくる
この時期の海に現れると、オカルト染みた事が起こりそうな雰囲気だ

「どうも…」

しゃがんで猫と思わしき生物に手招きをする

猫「シュワァァ」

鳴き声も変わっている
ラムネを開栓したような、炭酸飲料の発泡音のような鳴き声を出しながら飼い主に近寄って行く

182小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』:2024/08/23(金) 20:58:57
>>181

不思議な鳴き声を上げて飼い主に近寄っていく猫を見つめる。
同時に、体の何処かに存在するであろう『肉球の刻印』を探していた。
それが『マシュメロ』によって生み出された証だ。

  「……なんという名前ですか?」

飼われている猫が名付けられているのは、至って普通の事だろう。
ただ、この場合は確実に名前があるはず。
誰かが付けた名前を他の物に押し付けて猫に変える事が、
『ナイが連れている猫』の能力だったのだから。

      「――にゃあ……」

その時、不意に猫の鳴き声がした。
どうやら、この海岸には他にも猫がいるようだ。
かなり近くから聞こえたが、その割には姿が見えない。

183甘城天音『BSS』with『ラムネ瓶猫』:2024/08/24(土) 17:44:13
>>182
探して見れば胴体という結構分かり易い所に刻印があった
『マシュメロ』の眷属とみて間違いないだろう

「ナックラヴィー」

ラヴィーだけならかわいい感じがするが
ナックが付くととんでもない化け物と化す
皮膚の無いケンタウロスのような馬で、口から猛毒の息を吐く怪物だぞ
何でそんな名前付けたんだよ!?


>――にゃあ……

猫「シュ?」

猫の声に振り返るラムネ瓶だが、どこを見ても猫の姿はない
怪訝そうに周りをキョロキョロと見ている

184小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』:2024/08/24(土) 21:09:58
>>183

常識的な感覚では計り知れない奇妙な姿の猫。
きっと他にもいるのだろうと考えていたが、こうして出会うのは初めてだった。
やはり、この少女もナイの知人なのだろうか。

  「――とても可愛らしい子ですね……」

そう感じるのは、自分自身も猫と暮らしているせいかもしれない。

         ピコッ

同族の気配を察してか、キャペリンハットから猫の耳が生えた。

       「……にゃ」

まもなく帽子猫が目を開き、『ナックラヴィー』に向けて鳴き声を発する。
実際どうなのかは分からないが、挨拶しているようにも見えた。
その姿は帽子そのもので、目を閉じて耳を寝かせた状態では、
本物のキャペリンハットと見分けがつかない。

185甘城天音『BSS』with『ラムネ瓶猫』:2024/08/25(日) 17:36:39
>>184
でもナックラヴィーは伝承では海に生息する水妖
砂浜を練り歩いているのはむしろ自然なのかもしれない

>同族の気配を察してか、キャペリンハットから猫の耳が生えた。

「…猫耳?」

猫耳のついた帽子を被っているのか?
…まぁ、趣味は人それぞれだが
気になるのは猫耳帽子から声がした事だ
おまけに帽子に目まであり、下のラムネ瓶猫を見ている

こいつ、生きているのか!?

猫「ジュゥゥゥ」

挨拶を返しているのか、
それとも上から見下ろす帽子猫が気に食わず威嚇しているのか
鳴き声の性質故にどっちとも取れるような声を出している

「何ですか、それ」

186小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』:2024/08/25(日) 23:08:53
>>185

おもむろにキャペリンハットを脱ぎ、帽子猫の体を軽く撫でる。
そうすると、体毛の下に『肉球の刻印』が存在するのが見えた。
この猫は長毛種なので、見えにくい位置にあるようだ。

  「――私の帽子から生まれた猫です。
   『ナックラヴィー』と同じように……」

         ソッ

そして、帽子猫を優しく地面に下ろす。

  「……名前は『撫子』と言います」

撫子は大人しい性格らしく、その場から動いていない。
ただ、ナックラヴィーには関心を寄せている様子で、
控えめながらも匂いを確かめているような所作が窺えた。
やはり、初めて出会う同族には興味があるのだろう。

187甘城天音『BSS』with『ラムネ瓶猫』:2024/08/26(月) 17:55:49
>>186
「生まれた?帽子から」

私も欲しい!
その帽子どこで買ったの?
とかそういう事を聞けるような話じゃない

さらっととんでもない事言ってるが
どうやらラムネ瓶猫と同じような出自らしい

猫「ジュイ」

撫子を物珍しい珍獣を見るように
そっと近付き様子を伺うラムネ瓶の猫

そーっ

その飼い主もそっと手を降ろし撫子に触ろうとしている

188小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』:2024/08/26(月) 20:04:43
>>187

徐々に近付くナックラヴィーを見て、撫子も少しずつ距離を埋める。
帽子のブリムに当たる部分は、体毛で構成されているらしい。
四肢は非常に短いようで、マンチカンに似ていた。

  「私の友人に、灰色の猫を連れている方がいます。
   その猫が帽子に触れて……撫子に変わりました」

おそらくはナックラヴィーも、同じような経緯で誕生したはずだ。

  「……撫でられるのが好きなので、撫子と名付けました」

         スン スン

甘城の手に意識を向け、そちらの匂いを嗅ぐ撫子。
しかし、それ以上の事はしてこなかった。
撫でて欲しいのかもしれない。

         「にゃあ……」

ナックラヴィーと撫子は、お互いに触れ合えそうな位置まで歩み寄った。

189甘城天音『BSS』with『ラムネ瓶猫』:2024/08/27(火) 18:40:30
>>188
「灰色の猫」

そうだ
ラムネ瓶の猫が現れた時も、灰色の猫がいたんだ
灰色の猫が親だとしたら、ラムネ瓶と帽子の猫は兄弟という関係にあたるのだろうか?

猫「シュッ」

パシッ
猫パンチ、って程の強さでもない
撫子に前足を触れて電光石火のように引っ込める
未知の存在に対する好奇心と恐れから、こいつが何なのか確かめるように

一方、飼い主の方はというと

さわっ
大人しそうな帽子猫をそっと触れる
帽子を撫でるというのはあんまりない事なので
どれくらいの力加減で撫でればいいのかは分からない
やっぱり優しく扱うべきなのか、結構力を入れていいのか?

190小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』:2024/08/28(水) 03:53:08
>>189

お互いの姿形こそ全く異なるが、同じスタンド能力によって生み出された。
その繋がりは血縁関係に近いものがある。
撫子自身も、それを本能的に感じ取っているのかもしれない。

         ピンッ

動きを止めた撫子の両耳が、張り詰めたように立ち上がる。
突然の接触に驚いたのだろう。
撫子から見ても、ナックラヴィーは未知の部分が多い存在だ。
ただ、興味を持っているものの、積極的に干渉しようという素振りは窺えない。
思慮深い気質なのか、どうすべきかを考えているらしかった。

  「仲良く出来ればいいのですが……」

撫子は奇妙な姿ゆえに、普通の猫と関わりを持つのは難しく、
こうして同族と出会える機会は貴重なものだった。

      「――……にゃ」

半球状の帽子猫に触れると、猫らしい体温の温もりが感じられ、
確かに生きている事が伝わってくる。
長毛種なので毛量が多く、短毛種よりも柔らかい手触りだった。
ちょうどナックラヴィーに触れられた直後に甘城が落ち着かせた形になり、
心地良さそうに目を細めているところを見ると、
撫でられるのが好きというのは本当のようだ。

191甘城天音『BSS』with『ラムネ瓶猫』:2024/08/28(水) 18:41:53
>>190
本当に猫なんだな…
こうして触ってみると、ただの帽子じゃない事を再認識出来る
生きている温もり、鼓動
猫の毛皮で作った帽子じゃない

猫「シュゥゥゥ」

撫子を撫でているとラムネ瓶が飼い主の手をパシパシと叩いてくる
猫は嫉妬深いというが、ラムネ瓶にも適用されるんだろうか?
誰よ、その猫!

すると飼い主がポケットからビー玉を出す
ビー玉をほいっと投げるところころと転がっていく

「取って来い」

ラムネ瓶の猫は本能的にビー玉を追って走り出した

ガブッ

ビー玉を咥えて飼い主の所に持って来る様は何か犬っぽいかもしれない

192小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』:2024/08/28(水) 23:56:17
>>191

一般的に、短毛種は野生の習性が強く残っているので、
活発な猫が多いと言われている。
長毛種は人間の手が加わっている為、落ち着いた性格になりやすい。
スタンド生物にも当てはまるかどうかは分からないが、
もしかすると反映されている部分があるのだろうか。

  「――愛されているのですね……」

        ニコ…………

甘城の手を叩くナックラヴィーを見て、穏やかな微笑を浮かべる。
嫉妬は愛情の裏返し。
好意がなければジェラシーを抱く事はないだろう。

  「……挨拶が遅れました。
   私は小石川文子という者です」

        スッ

手にしたクラッチバッグからスマートフォンを取り出す。

  「よろしければ、連絡先を交換しませんか?
   同じ経緯で誕生した猫を連れている方に、私は初めてお会いしました。
   お互いの猫の事で、またお話したいもので……」

動物の芸というのは、コミュニケーションを取る事で信頼関係を築くと共に、
健康状態を推し量れる利点もある。
撫子にはナックラヴィーのように活動的な芸はない。
帽子に擬態する事が撫子の持つ芸だ。

         ――――ペタン

甘城に撫でられていると、帽子猫の耳が伏せられた状態になった。

193甘城天音『BSS』with『ラムネ瓶猫』:2024/08/29(木) 21:44:15
>>192
「甘城天音…です」

帽子猫を触りながらスマートフォンを出す
連絡先の交換くらいは簡単に出来そうだ

「こういうの…他にもいる?」

灰色の猫がこういう珍妙な猫を量産しているとしたら
ラムネ瓶や帽子の他にもわけのわからん猫がわんさかいそうだ
今までラムネ瓶の他に見た事は無かったが

>         ――――ペタン

「…嫌だった?」

猫がペタンと耳を伏せるのは、
恐怖を感じたり何か嫌な事がある時だと言われている
撫でられるのが好きと言っても、あまりしつこいのは嫌かもしれないし
知らない奴に触られるのはストレスかもしれない

194小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』:2024/08/30(金) 06:59:15
>>193

甘城の同意を得た上で、連絡先の交換を行いたい。

  「いえ――撫子は耳を撫でられると、
   『元の帽子』の姿に戻る習性があるようなのです」

この芸は、小石川が教えた訳ではなかった。
撫子に触れていた甘城の手先が、たまたま耳を撫でたらしい。
それがきっかけとなって、反射的に擬態したのだろう。

         スゥゥゥゥ………………

甘城に撫でられて気持ちが安らいだせいか、少しずつ目が閉じていく。
嫌がっているなら、そのような反応はしない。
むしろ落ち着いているようだ。
撫子は眠る事も好んでいる。
その個性も擬態に適した特徴と言えるのかもしれない。

  「撫子とナックラヴィー以外に見た事はありません。
   ただ……おそらく他にもいると思っています」

誰かに名前を与えられる度に、それを他の何かに押し付けているのだとしたら、
いくらでも同族が増えていく可能性はあるだろう。

  「……甘城さんは『ナイ』という女の子をご存知でしょうか?
   人と『交換』するのが好きな子で、私の友人です。
   灰色の猫はナイさんと行動を共にしていて、
   私の家へ遊びに来てくれた事がありました……」

あの時は『紅茶のシフォンケーキ』と『ささみ』を、
『ブドウ味のガム』と『ほしみまくろうキーホルダー』に交換した事を覚えている。

195甘城天音『BSS』with『ラムネ瓶猫』:2024/08/30(金) 20:16:32
>>194
猫からすれば
芸をしているつもりはないんじゃないだろうか
帽子としての修正なのか、この個体の癖なのかは分からないが

そーっ…

静かにゆっくり帽子を持ち上げて…

スチャ

被ってみる
猫の被り心地っていうのはどういう感じなんだろう?

そんなわけのわからない事をしながらスマホの交換を済ませる


>……甘城さんは『ナイ』という女の子をご存知でしょうか?

「ナイ?」

交換好きな女の子というと確かに知っている

「金髪のじじい口調の?」

ラムネ瓶の猫が出て来た時も確かに
ナイと灰色の猫は一緒にいたが
飼い主ってわけでもなさそうだった


猫「ジュィィ」

飼い主が構ってくれなくて
うろうろしているラムネ瓶が小石川の傍に近付いてくる

196小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』:2024/08/31(土) 03:53:58
>>195

見る人によっては芸と表現する事も出来るかもしれないが、
帽子猫が擬態する様子は、自然に身に付いた習性の方が適切だ。

  「……私と遊んでくれますか?」

        ソッ…………

ビー玉を受け取る為に、ナックラヴィーの口元に片手を差し出す。
また、空いている手でラムネ瓶に似た体を撫でる。
どのような感触なのだろうか。

  「ええ、そのナイさんです……。
   彼女から聞いた話では、よく家に来る猫だという事でした」

飼われているのではないが、完全に野生という訳でもなく、
おそらくは半野良に当たるのだろう。

  「――どうでしょう……?」

撫子を被ってみると、意外な程に違和感がない。
ほんのり体温が伝わる辺りに生き物らしさが感じられるものの、
重さ自体は普通の帽子と大差ないようだ。
シルクのように柔らかな被毛で、優しく頭を包み込んでくれる。

197甘城天音『BSS』with『ラムネ瓶猫』:2024/08/31(土) 18:43:35
>>196
猫「ジュ」

口元に手を持って来られて、反射的にビー玉を渡してしまう

猫「シュワ?」

ラムネ瓶の猫を撫でてみると、
ガラス瓶のような硬い感触がするが、
同時に猫らしいしなやかで柔らかい感じもする
青い体毛はふわっとしていてちゃんと人の手で手入れされている事が伺える
野生だったらごわごわしていそうだ
硬いのに柔らかい、矛盾しているような不思議な感覚だ


>ええ、そのナイさんです……。
>彼女から聞いた話では、よく家に来る猫だという事でした

「家あったんだ」

家なき子…ってわけじゃないだろうが
雰囲気的にそんな印象を感じていた

あの灰色の猫、首輪も無いしやはり野良だろうか
地域猫ならともかく、野良猫を勝手に餌付けしたりするのはよくないんだが
子供にそんな事言ってもって感じか

>――どうでしょう……?

「軽くて良い」

頭に乗っているのが生命というのを感じるが
重量的には軽く、被り心地は中々

「これ欲しい」

勿論冗談だが

198小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』:2024/09/01(日) 02:48:00
>>197

ラムネ瓶猫の毛並みに触れて、丁寧にブラッシングされている事を察した。
長毛種の手入れは特に大事なので、そうした部分には気付きやすい。
愛情を持って接してもらえているのであれば、きっとナックラヴィーは幸せなのだろう。

  「――……どちらにありますか?」

         スッ

ラムネ瓶猫の眼前に握った両手を差し出す。
隠されたビー玉の位置を当てる遊びだ。
ちなみに今回の正解は左手だった。

  「ナイさんは……お爺さんの家だと言っていました。
   最近はノエという方もいらっしゃるとか……」

普通に考えれば祖父の家と解釈できるのだが、
自分の名前も持たないくらいなのだから、正直どうなのかは定かではない。
それなりに付き合いのある小石川も、
ナイを取り巻く生活環境に関しては分からない事だらけだ。
少なくとも本人は寝る場所に困っていない様子ではあった。

  「……撫子は大切な家族ですから、差し上げる事は出来ません。
   甘城さんと私が出会った時には触れ合えますので、
   これからも仲良くしていただけますか?」

撫子を被った甘城を見つめ、それからラムネ瓶猫に視線を落とす。

  「ナックラヴィーとも仲良くなりたいですから……」

今日こうして出会えた事も、もしかすると同じ眷属の引力によるものかもしれない。

199甘城天音『BSS』with『ラムネ瓶猫』:2024/09/01(日) 22:18:53
>>198
猫「シュ?」

ビー玉を隠されて両手を突き出してきた意図が分からない感じだ

猫「シュワ、ワ」

ちょっと思考した後、小石川の右手に触った
意味が分かっているのかは不明だ


>ナイさんは……お爺さんの家だと言っていました。
>最近はノエという方もいらっしゃるとか……

「カタカナが多い」

ナイとかノエとか
日本人か?
いや、日本人かもしれないが

ナイに関しては日本語は流暢だが見た目は日本人っぽくなかったが

>……撫子は大切な家族ですから、差し上げる事は出来ません。
>甘城さんと私が出会った時には触れ合えますので、
>これからも仲良くしていただけますか?

勿論本気で言ってるわけじゃないが
家族をくれと言われて、はいどうぞなんてくれるわけがない

うん、と頷くと撫子を手に取り
足元に居るラムネ瓶の猫に…

猫「ジュ?」

乗せた

200小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』:2024/09/02(月) 00:27:14
>>199

ナックラヴィーの反応を見ると、こうした遊びに興じた経験はないのだろう。

       ――――――パッ

まず右手を開けるが、当然そこには何もない。

  「こっちですよ」

     ソッ

それから左手を開け、ビー玉の位置を確認してもらう。
何度か繰り返せば、一連の流れを理解してくれるかもしれない。
今度は右手にビー玉を握り、改めてラムネ瓶猫の前に両手を差し出す。

  「――……?」

甘城の考えが分からないまま彼女の行動を見守っていたが、
その結果を目の当たりにして口元を綻ばせる。

  「ふふ……」

ラムネ瓶猫の上に帽子猫が乗っている。
奇妙で愛らしく何とも言えない光景に、思わず淑やかな笑みが零れた。
同じ体勢を普通の猫で見る事は難しい。

     「……にゃ」

             ピクッ

ふと撫子が目を覚まし、帽子の耳が起き上がった。
近くにいるナックラヴィーの気配に感づいたらしい。
とりあえず嫌がってはいないようだ。

          スッ

とても短い撫子の右前足が、飼い主の右手を指している。

201甘城天音『BSS』with『ラムネ瓶猫』:2024/09/02(月) 20:58:20
>>200
猫「シュゥゥ…」「シュィ」

猫(ラムネ瓶)が猫(帽子)を被っている
かなりレアな光景を飼い主はスマホで撮影しているが
ラムネ瓶の猫はこの状況にちょっと戸惑っている
嫌がっているわけでもないが、乗っている猫を落とさないように動きが慎重になっている

猫「ジュン」「ジュゥゥ」

撫子が小石川の右手を指したのを見て一瞬首を捻り
反対の左手を指してみた
ルールを理解したのだろうか?

202小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』:2024/09/03(火) 03:58:23
>>201

ナックラヴィーに乗せられた撫子も、猫らしくバランスを取って安定を保っていた。

         ソ ッ

おもむろに両手を開き、ビー玉の在り処を開示する。

  「よく分かりましたね。とても上手ですよ」

正解を引き当てた撫子を見つめながら、その結果を大いに褒める。
これにより、ビー玉の位置を当てたら褒められるという流れを、ラムネ瓶猫に伝えたい。
その上で、次は必ず正解できるように、ちょっとしたヒントを用意しよう。

  「――どちらでしょうか……?」

再び左手に隠しているが、握った手を開き気味にして、
隙間からビー玉が見えるようにしておく。
それが視界に入れば、正解の場所が分かるはず。
果たして今度こそ上手くいくだろうか。

     「……にゃあ」

飼い主の雰囲気から何かを察したのか、撫子は手を出さず、ナックラヴィーを見守っている。

203甘城天音『BSS』with『ラムネ瓶猫』:2024/09/03(火) 20:47:33
>>202
猫「ウジュ?」

褒められている…上に乗っかっている猫が
しかし、褒められているという事を理解出来るか?
言葉だけでなく、褒美もあった方がより分かりやすいのではないだろうか

>再び左手に隠しているが、握った手を開き気味にして、
>隙間からビー玉が見えるようにしておく。

猫「ジュゥゥゥ」

手の隙間からキラリとビー玉の光がちら見えする
猫の本能が刺激されるのか、低い唸り声をあげてビー玉の光を凝視している

猫「ジュッ!…シュ」

思わず飛びつきそうになるが、撫子がいる事を思い出し大人しくなる

ピトッ

ビー玉が入っている方の手をちょんちょんと前足でつついている

204小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』:2024/09/04(水) 03:16:48
>>203

この場合、言葉を理解するかどうかよりも、
優しく声を掛けるという行為そのものが大事なのだ。
穏やかな声掛けを行えば、猫も心地良く感じてくれる。
もちろん本当なら、気持ちの良い部分を撫でるくらいの事はしたかった。
しかし、撫子はナックラヴィーの上に乗っており、迂闊に触ればバランスを崩す。
だったら退かせばいいと思うかもしれないが、
せっかく2匹の距離が近くなって仲良くなれそうなのに、
それを邪魔するような事はしたくなかった。

そして、猫の健康を守る為には、安易におやつをあげたりするのは良くない。
褒めるという行動で妥協したのは、そうした理由があったからだ。
ただ、ナックラヴィーの気持ちを考えれば、
撫子の目の前にビー玉を持っていった方が分かりやすかったかもしれない。

言葉の通じない動物と暮らすというのは、こうした試行錯誤の積み重ねだ。

  「……いい子ですね」

              ス ッ

帽子猫を気遣う様子を目にして、たおやかに微笑むと、
ビー玉の乗った左手を開き、ラムネ瓶猫の近くに持っていく。

  「甘城さん、お願いがあるのですが――」

  「よろしければ一緒に写って頂けないでしょうか?」

そう言って、2匹の猫を撮影している甘城に視線を向けた。

  「この子達と私達が知り合えた記念として……」

2匹の猫と2人の飼い主が、同じ1枚の写真に収まるという趣旨だ。

205甘城天音『BSS』with『ラムネ瓶猫』:2024/09/05(木) 21:41:45
>>204
犬もそうだが、猫も表情や声色から人の感情を読み取ってくる
取り合えず声だけでも、この人間は喜んでいるという事くらいは分かるはずだ
ただ、全ての猫が飼い主を喜ばせるために動くわけじゃない
というか、猫っていう生き物は性質上、人のご機嫌取りなんてしないような個体の方が多いので
そこは猫毎に教育方針を変えていく必要があるかもしれない

猫「ジュビ」

小石川の掌の上にあるビー玉を肉球でちょん、ちょんと触り転がしている


>よろしければ一緒に写って頂けないでしょうか?

「いいよ」bグッ

そう言うと、飼い主の隣に人型の何かが現れる
何だ?幽霊か?
人の気配が自分達以外ない静かな海岸
居るのはクラゲや海鳥ばかり
海から這い出て来た幽霊が出て来てもおかしくない雰囲気ではある

しかし、小石川にはそれが何なのかは分かるだろう
もし小石川が分かる人でなかったなら
突如スマホが空中に浮く怪現象にしか見えない
ポルターガイストか!?

と、そんな怪現象を起こしておきながら何食わぬ顔して小石川達の輪に入る飼い主

206小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』:2024/09/06(金) 02:20:31
>>205

ナックラヴィーの反応を見ると、このコミュニケーションは正しかったらしい。
自分が選んだ行動の結果に安堵し、出現した人型に意識を向ける。
無論、それが幽霊ではない事は分かっていた。
ラムネ瓶猫がスタンドの産物であるなら、
飼い主がスタンド使いだったとしても不思議はないだろう。
小石川自身にも同じ事が言える。

  「私達の共通点は猫だけではなかったようですね……」

しかし、挨拶代わりに出すつもりはなかった。
そうする必要がないからだ。
ナイフのヴィジョンは、撮影の役には立てない。

  「……あとで写真を送ってもらえますか?」

上手い具合に2人と2匹が収まるように配慮し、人型スタンドと向き合う。
中央にラムネ瓶猫と帽子猫が入り、両側に人間が写るような構図になるだろうか。
大体そのような想定だが、甘城の立ち位置は彼女の判断に委ねる。

        「――にゃあ」

初めて同族と出会えた撫子の鳴き声も、心なしか嬉しそうに聞こえた。

207ラッコ『ハッピー・スタッフ』:2024/09/21(土) 11:57:55

まだまだ残暑の厳しい9月の海――――――。

    プカァ…………

            「ミャア」

『野生のラッコ』が波間を漂っていた。
ここ星見町では多くの人々が見慣れた光景だ。
どのような場所にもラッコは現れる可能性がある。

  ドドドドドドドドドドドドドドドドドド

そして、一隻の『ボート』が海獣の周りを旋回していた。
『銛』を手にした『人型スタンド』が船上に佇み、
いわゆるラジカセに近い意匠の『ラジオ』が積載されているようだ。
受信しているのは『音楽専門チャンネル』らしく、
スピーカーから古い洋楽が流れている。

        《〜〜〜〜〜〜〜〜♪》

アコースティックギターで演奏される『カントリーミュージック』らしい。

      ガンガンガンガンガン

お腹の上に石を置くと、そこに貝を叩きつけて割り、
器用に中身を取り出して食べ始める。
海の上で音楽を聴きながら食事を摂るラッコ。
今日の波は穏やかだ。

208ラッコ『ハッピー・スタッフ』:2024/09/26(木) 17:27:23
>>207

        「ミャッ」

食事の後、ラッコは日課の毛繕いを始めた。
それと同時に、人型スタンドがラジオを操作する。
チューニングが完了すると、音楽に代わって軽やかな声が周囲を満たす。

《――――今日も貴方の隣に『電気カナリア』の囀りを》

          〜〜〜〜〜〜♪

《まだまだ残暑の厳しい季節ですが、皆様いかがお過ごしでしょうか?
 『Electric Canary Garden』――――
 パーソナリティーは『美作くるみ』がお送りしまぁ〜す!》

《最近ちょっと涼しい時もあったんですが、
 また暑さが戻ってきちゃいましたねぇ。
 なんだかんだ10月くらいまでは暑い日が続きそうです。
 でも、油断してると急に寒くなったりしますから、
 日々の体調管理には気を付けたいところですね》

《さて!本日のテーマは『もしかして私だけ?』です!
 『これって私だけかも?』というアレコレを、
 リスナーの皆様から大募集しています!
 採用された方には、番組オリジナルグッズを差し上げちゃいますよぉ〜》

《ちなみに、くるみの『もしかして私だけ?』は…………》

        「ミャー」

209佐良 猟果『マンティコア』:2024/10/16(水) 18:42:11
陽が落ちてもなお熱気が残る夕暮れ時に、女子高生がしゃがみ込む。
路肩に停めたピカピカの自転車の隣で、難しい顔をしながらイヤホンを外す少女のことを、気にかける方が難しいかも知れない。

「どっちだどっちだこれはさあ」

何事か呟きながら、アルバイトのために常用しているスニーカーを弄る。
その靴紐を弄る。
 
「左……かな!?決めた!絶対に左から履くんだ!」

言いながら、左脚の靴紐を緩める。
何がどうなっても、そちらから履けるように。
はいすいのなにがしと呼ぶらしい。
 
「寒くなったり暑くなったりホントごめんだよねえ。
『梅雨明け』に来るつもりだったんだよ私はさあ」

一人なら言い訳だってできた。
喋る練習をしているから、きっと誰かが聞いているかもしれなかった。

210ニア『セレクター』:2024/10/17(木) 14:31:39
>>209

「まったく同感だね。
 最近はまた暑くなってきて、汗をかいてしょうがない」

佐良の独り言を聞き、あまつさえ返事までしてきたのは、
ボサボサの金髪にニット帽を被った若い女だった。
振り返ったなら、言葉とは裏腹に冬物のパーカーを羽織り、
手に買い物袋を持った女の姿が目に入るだろう。

「ところで、左ってなんのこと?」

そして、当然のように会話を続けようとする。
まっすぐに佐良を見据える目はまるで、
自分が『変な人』であることに気付いていないかのようだ。

211ニア『セレクター』:2024/10/22(火) 00:18:47
>>210

佐良がその問いかけに答えるより先に、
ニット帽の女は何かに気付いた様子で目を見開き、
ビニール袋をぎょろりと見下ろすとガサガサ揺らして見せた。

「おおっと。
 そういえば、さっきコンビニで『雪見だいふく』買ったんだ。今思い出した。
 それじゃ、また今度『左』の意味教えてね」

きっと、帰宅して『雪見だいふく』を食べるのだろう。
自分から話しかけておいて自分から会話を打ち切り、
女は足早に立ち去っていった……

212村田瑛壱『ディズィー・スティック』:2025/03/12(水) 00:57:36
ピク!

 「ん?」

何とはなく、学ランの男は浜と海を眺めていた。
それが急に、髪か袖かを引かれたように振り返る。

 「なんだか呼ばれた気がしたんだが、気のせいか。」

213村田瑛壱『ディズィー・スティック』:2025/03/14(金) 04:01:25
>>212

 「あまり張りつめていても仕方がねえか。
 正直なところ『出たとこ勝負』なわけだからな。」

海を横目に眺めた後、その場を去った。


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