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【場】『 倉庫街と海 ―臨海地域― 』
1
:
『星見町案内板』
:2023/07/10(月) 16:24:00
星見町の南端は遠州灘に面し、2つの『灰色の景色』を有する。
1つはどこまでも続く、灰色の砂浜で有名な海岸線。
荒波ゆえに『遊泳』は禁止だが、散歩や釣り、潮干狩りなどが楽しめる他、
隣接する『砂丘』の観光でも賑わい、湖畔の自然公園と人気を競い合う。
もう1つは、無機質な灰色のコンテナが立ち並ぶ倉庫街。
『治安の悪さ』が囁かれ、多くの町民は用も無く寄り付かないが―――――
この場所に密かに居城を構える、『アリーナ』と呼ばれる組織が存在する。
---------------------------------------------------------------------------
ミ三ミz、
┌──┐ ミ三ミz、 【鵺鳴川】
│ │ ┌─┐ ミ三ミz、 ││
│ │ ┌──┘┌┘ ミ三三三三三三三三三【T名高速】三三
└┐┌┘┌─┘ ┌┘ 《 ││
┌───┘└┐│ ┌┘ 》 ☆ ││
└──┐ └┘ ┌─┘┌┐ 十 《 ││
│ ┌┘┌─┘│ 》 ┌┘│
┌┘ 【H湖】 │★│┌─┘ 【H城】 .///《//// │┌┘
└─┐ │┌┘│ △ 【商店街】 |│
━━━━┓└┐ └┘┌┘ ////《///.┏━━┿┿━━┓
┗┓└┐┌──┘ ┏━━━━━━━【星見駅】┛ ││ ┗
┗━┿┿━━━━━┛ .: : : :.》.: : :. ┌┘│
[_ _] 【歓楽街】 │┌┘
───────┘└─────┐ .: : : :.》.: :.: ││
└───┐◇ .《. ││
【遠州灘】 └───┐ .》 ││ ┌
└────┐││┌──┘
└┘└┘
★:『天文台』
☆:『星見スカイモール』
◇:『アリーナ(倉庫街)』
△:『清月館』
十:『アポロン・クリニックモール』
---------------------------------------------------------------------------
2
:
白岸・N・トーリ『ダムゼル・イン・ディストレス』
:2023/07/11(火) 10:52:28
まだ日が昇りきっていない、休日の午前のこと。
海岸線に並ぶ『鮮魚店』に用事があったが、
あいにく今日は店主が急病とのことで、
帰りのバスが来るまでの間を海辺で待つ事になった。
ザザァーーーー ・・・
荒波をじっと眺める。
「…………」
周りには釣り人が数名いるくらいなので、
アウトドア趣味にも見えない少女が一人――――
ただ海面を眺めている姿は、否応なしに目立っていた。
3
:
ラッコ『ハッピー・スタッフ』
:2023/07/11(火) 16:57:09
>>2
ザプンッ
突如として海面に何かが浮かび上がった。
それは全身を毛皮に覆われた海に棲む生き物だ。
一般的には『ラッコ』と呼ばれている。
「ミャー」
海上にラッコがいるのは不思議な事ではないだろう。
4
:
白岸・N・トーリ『ダムゼル・イン・ディストレス』
:2023/07/11(火) 17:24:38
>>3
「……」
毛皮の塊が浮上してきたのを見て、
一瞬、いつも固い表情が固まりの極致に達した。
犬か何かが流されてしまったと思ったからだ。
「ラッコ……」
そして、思わず漏れた自分の言葉で、
それが何かの理解が追いつく。
星見町になぜかラッコがいるのは有名だ。
しかし……海で見るのは結構、珍しい。
「……」
スポ
サンダルを脱ぎ、手に持って。
ザッザッ…
素足になって砂浜を歩き、ラッコに近づいていく。
ゆっくりと、逃げないように。
この時間帯なら、まだ灰色の砂に足を苛む熱さは無い。
5
:
ラッコ『ハッピー・スタッフ』
:2023/07/11(火) 19:26:53
>>4
発見された当初は騒がれたが、住民の周知が進んだ現在では、
以前と比べて驚かれる事は少なくなった。
一時期のブームも終息し、すっかり町に溶け込んだ感がある。
色々な場所で目撃されているものの、海で見られる機会は意外に少ないらしい。
スィィ――――――………………
波間を漂いながら、少しずつ砂浜に近付いていくラッコ。
ザバッ
やがて、浜辺に『上陸』した。
「ミャア」
何を考えているのか、それとも何も考えていないのか。
感情の読み取りにくいつぶらな瞳で、辺りを見回している。
人間の接近には気付いていそうなものだが、逃げる様子はない。
6
:
白岸・N・トーリ『ダムゼル・イン・ディストレス』
:2023/07/11(火) 21:53:27
>>5
「あなたは。……」
何かを言おうとしたが、思い直した。
ラッコは言葉が通じないし、
返事のない相手に延々と一人話し続けるのは、
トーリにとってはかなり難しい芸当だ。
「…………いえ」
少し離れて立ったまま、ラッコを眺める。
「トーリは。そこにないものが、分からないのです」
そう呟いた。
…ザシュ
もう一歩だけ踏み出して、ぬかるんだ砂に足先が入る。
手が届く距離だからと言って、掴んで持ち上げようとか、
何かを餌として与えようとか……そんなことは、できなかった。
7
:
ラッコ『ハッピー・スタッフ』
:2023/07/11(火) 22:19:23
>>6
周囲を見渡していたラッコの視線が白岸に向けられる。
おそらく言葉が通じた訳ではないだろう。
常識的に考えるなら、たまたま近くにいて、
ちょうど声が聞こえたから反応しただけか。
トテ トテ トテ
人間よりも遅い緩やかな速度で、ラッコが白岸の方向に歩み寄っていく。
ザッ ザッ
その手前で歩みを止めると、前足で砂を軽く掻き分け始めた。
チカッ
砂の中に埋もれた何かが、太陽の光を反射している。
「ミャッ」
砂の間から顔を覗かせたのは、簡素な『ガラス瓶』だ。
それ自体は不思議でも何でもなく、ただの漂着物に過ぎない。
しかし、この瓶には中身があった。
『色あせた紙切れ』が入っている。
8
:
白岸・N・トーリ『ダムゼル・イン・ディストレス』
:2023/07/12(水) 00:30:20
>>7
「……」
視線が合ったことの、理由は『常識』でとらえた。
それでも、目を逸らすことはしない。
「……?」
「これは。……『ボトルメール』?」
スッ
指示があるわけではないが、
何か『啓示』のような必然性を感じる。
躊躇いがちに腰を曲げ、手を伸ばした。
「あなたは。これを…………」
届けに来た?
と、言おうとしたが、そんなはずは無い。
動物は動物だ。少なくとも野生動物は。
「……」
それでも。持ち帰って開けるというのは、
どうにもこのラッコに不義理なようにも思えた。
その場で瓶を開けることは出来そうか、試みてみる。
9
:
ラッコ『ハッピー・スタッフ』
:2023/07/12(水) 01:41:25
>>8
『ボトルメール』。
何らかのメッセージを託して海中に投じられた瓶。
足元のガラス瓶は、まさしくそのような表現が相応しかった。
「ミャッ」
とはいえ、ラッコに意図があるとは考えにくい。
偶然の発見だろう。
ちょっと気になったから掘り出してみたといった所か。
……………… ……………… ………………
かなり長く海水に浸かっていたようで、瓶の蓋は錆び付いていた。
強い力を込めれば開きそうではある。
ただ、平均的な女性の腕力では難しいかもしれない。
「ミャア」
ガラス瓶を手にした白岸を、ラッコは見上げている。
10
:
白岸・N・トーリ『ダムゼル・イン・ディストレス』
:2023/07/12(水) 08:47:35
>>9
ググ
力を込めてみたが、開きそうにはない。
「……」
辺りをゆっくりと見渡す。
方法はいくつか思いつきはするが、
周囲には……多くはないとはいえ、
釣り人などの人の目があったし、
みな、トーリからは忙しそうに見えた。
『忙しそう』――つまり関心されていないのなら、
人の目があっても問題ないのでは、とも、言える、が。
「トーリは。……決めるのが苦手です。
世界はとても、明るいのに。
どこに踏み出しても、きっと。
簡単に、穴に落ちるようなことはないのに」
ラッコに話しかけているわけではないが、
目の前にいる事で、思考は言葉になっていた。
「……」
そして、これぐらいの問題であれば、
ゆっくり考えれば……答えは出せる。
「正しいかどうか分からないことを。
自分で決めて……自分で、する。
誰もがそれを繰り返している。
トーリには。それ自体がとても、尊く」
ザシュ
歩き出す。ラッコが付いてこられる速さで。
「そして……苦しい。
これが正しいのか、トーリは悩んで……
終わってからも、答えを出せないのかもしれません」
もちろん付いてこないかもしれない。
それは、それで良いのだろう。
あくまで義理とか、情といった、人間世界の自縛なのだから。
11
:
ラッコ『ハッピー・スタッフ』
:2023/07/12(水) 15:25:26
>>10
ラッコの生活は至ってシンプルだ。
『食べる』・『寝る』・『毛づくろい』。
これら三つの要素で構成されている。
それなりに悩む時もあるが、人間のように複雑ではない。
もちろん『白岸・N・トーリ』程でもなかった。
トテ トテ トテ
ラッコはついて来た。
『白岸の後を追った』というよりは、
『白岸が持つガラス瓶』に興味を引かれたのかもしれない。
傍から見ると区別はつかないだろう。
トテ トテ トテ
四足の歩みは遅いが、足運びは真っ直ぐだ。
自分で決めて行動する事に対して、迷いがないように見えた。
それが何に由来するものかは分からない。
警戒心が薄いのか。
あるいは一種の自信のようなものがあるのか。
ラッコは霊長類以外で唯一『道具』を扱う高い知能がある。
しかし、ラッコに人間の考えは理解できないし、
人間はラッコの頭の中を読み取れない。
トテ トテ トテ
一つだけ確かなのは、『ラッコは白岸について来た』という事だ。
12
:
白岸・N・トーリ『ダムゼル・イン・ディストレス』
:2023/07/12(水) 16:53:59
>>11
ラッコが付いてきたのを振り返って確認して、
ゆっくりと瓶を振り上げた。
照らす陽光がそれを暖めるより、早く。
ひゅんっ
と、誰もいない岩場に、それを投げ付ける。
破片が海に流れてしまわないように……
なるべく、波から遠いところに。
「……」
割れたにせよ、割れなかったにせよ、やる事は同じ。
そこに歩み寄って、紙切れと、瓶の破片を集める。
13
:
ラッコ『ハッピー・スタッフ』
:2023/07/12(水) 17:33:32
>>12
瓶を割らずに開ける為には工夫がいる。
しかし、その必要がないのなら話は簡単だ。
『不慮の事故』を起こさない配慮も十分。
――――――パキャンッ
結論から言うと、『瓶は割れた』。
軽い破砕音を響かせて呆気なく砕け散る。
もちろん中身を確かめる事は容易い。
……………… ……………… ……………… ……………… ………………
年季の入った古めかしい紙の上に、印刷された『英字』が並ぶ。
どうやら『アラスカ周辺』の海流を調査する目的で、
大量に放流された内の一つらしい。
これを拾ったら、発見した場所と時を添えて、
付記された宛先まで郵送して欲しい旨が書かれている。
ささやかな謝礼も出るそうだが、今から送れるかどうかは定かではない。
文面によると、この瓶が流されたのは『一世紀』近く前だ。
ジッ
近付いてきたラッコが『瓶の破片』を眺める。
長い長い時間、海を漂い続けた瓶の残骸を。
ラッコは『アラスカ』にも生息している。
もしかすると同じ場所から来たのかもしれない。
だから、砂に埋もれた『ボトルメール』を掘り出したのだろうか。
「ミャー」
まぁ、そんな事をラッコが考える訳はないし、
何となく掘り起こしたという方が、よほど可能性は高い。
14
:
白岸・N・トーリ『ダムゼル・イン・ディストレス』
:2023/07/12(水) 18:36:35
>>13
「ああ。ああ……」
英語は読める。ゆっくりと目を通していくと、
それは、なにか、とても重大な使命に感じられた。
「トーリに。頼んだことではなくても、
誰かが『そうしてほしい』のなら……」
スッ
「……」
手紙だけを拾い上げて、
瓶の破片は、砂ごしに手で集め、一塊にして。
「『アラスカ』」
「ラッコはそこに住んでいると、
トーリは昔、水族館で見た覚えがあります。
この『瓶』は、あなたの……いえ。
今は。飲み込めば危ない……ただの、ごみです」
「トーリは。そう解釈します」
バッグから取り出した小さな袋に収める。
ラッコがひとかけらほど欲しがるなら、無理には奪わないが。
15
:
ラッコ『ハッピー・スタッフ』
:2023/07/12(水) 19:34:03
>>14
こうして実行されたという事は、なかなか規模の大きな調査だったようだ。
その内の幾つかは、未だに海上を漂っているのかもしれない。
砂の中に埋もれて、誰からも忘れ去られてしまったのかもしれない。
しかし、一つは白岸の手の中にある。
明確な目的を持って送り出された『手紙』が。
それは『指針』だ。
どうするかは白岸に託されている。
「ミャッ」
破片を片付ける白岸を、ラッコは大人しく見守っていた。
表情は読めないが、特に執着している様子もない。
どこか『納得』しているというか、『満足』しているようにも見える。
このラッコは『特別な力』を持っていた。
『幸せになれる力』の筈だった。
だが、仲間と違う個体は、存在するだけで『秩序』を乱す。
目覚めた力は、自分以外を『幸せ』には出来なかった。
『仲間の幸せ』の為には、群れから離れて生きる必要があった。
『故郷』に近い海域から流され、孤独に彷徨い続けた『ボトルメール』。
その存在に、ラッコは自分自身を重ねていた。
――――――などという事は多分ない。
トテ トテ トテ
まもなく、ラッコは再び歩き始めた。
ここは『海』であり、ラッコは海に棲む生き物だ。
もし帰るのなら、当然ここが『家』になる。
トテ トテ トテ
それにしては方向が逆のようだが、
常に水中で過ごさなければ生きられない動物でもないので、
陸上にいても平気なのだろう。
16
:
白岸・N・トーリ『ダムゼル・イン・ディストレス』
:2023/07/12(水) 21:41:48
>>15
「……さようなら」
ラッコが陸に向けて歩き始めるのは、
彼がこの町を『居場所』としているからだろう。
動物の思考に『情緒』がどこまであるかは未知数だが、
本能を指針としたとしても、彼の決めた事だ。
ザッ
ザッ…
素足のまま『水シャワー』の方へ歩いていき、
砂を落としてから……一本遅れのバスに乗って、
町の『郵便局』に向かうことにした。
『それ』が今でも届くのかは分からないが、
識者に鑑定を願えば『研究』や『保存』をされ、
『使命』が果たされることはなくなるのなら。
(夢やロマンではなく、ただ、センチメントのために)
届かないとしても、それは、届けようとしてからで遅くない。
17
:
りん『フューネラル・リース』
:2023/07/29(土) 12:34:06
あ゛ら゛い゛た゛て゛の゛シ゛ャ゛ツ゛ゥ゛
あ゛ら゛い゛た゛て゛の゛シ゛ャ゛ツ゛ゥ゛
あ゛ら゛い゛た゛て゛の゛シ゛ャ゛ツ゛ゥ゛
あ゛ら゛い゛た゛て゛の゛シ゛ャ゛ツ゛ゥ゛
あ゛ら゛い゛た゛て゛の゛シ゛ャ゛ツ゛ゥ゛
俺ぇ…あ゛ら゛い゛た゛て゛の゛シ゛ャ゛ツ゛ゥ゛
防波堤で魚釣りをしている頭に鈴蘭が咲いてる10歳くらいの少女
今日は風も強く波も荒くて良い釣り日和だ
18
:
りん『フューネラル・リース』
:2023/07/30(日) 21:10:15
>>17
今日は天気が荒れに荒れているだけによく釣れる
まさに入れ食い状態だ
ただ、釣れる魚は
りん「またハコフグかぁ」
ハコフグ、ゴンズイ、ミノカサゴ
どいつもこいつも有毒魚ばかりだ
類は友を呼ぶというのか、鈴蘭が咲いているだけあって有毒生物を引き付ける何かがあるのだろうか?
???「お前みたいな有毒生物ばっかりだな!りの字!」
りん「あ、あなたは!」
浜口(隣で釣ってた釣り人)「俺はフグ調理の免許乙4を持っている…」
「調理なら俺に任せろ!」
りん「ありがとう浜さん、お願いするよ」
その場で調理用の包丁を出し、釣りたてのハコフグを捌く浜口
浜口「捌くのは免許を取って以来だぜ、実に5年ぶりだ」
りん「え゛っ゛?」
りん「浜さん、本当に大丈夫…?」
浜口「ちょっとブランクはあるが、まぁ何とかなるだろ!」
ハコフグの腹を掻っ捌き、内臓を取り出す浜口
浜口「おぉ、新鮮で美味そうな肝だぜ!」
パクっ
浜口「こいつはうま…う、うげげ……っ!!」
りん「浜さん!?」
すぐさま救急車に搬送された浜口
医者「ハコフグの臓器を食っただと?」
看護師「それだけじゃなく、ゴンズイとミノカサゴも素手で触って…」
医者「もう生存免許を剥奪しろよ…」
ちなみに、今日は土用の丑の日なので堤防で釣れたウツボを食べたりんだった
__
_..:-:.: ̄;.:---: ̄:.`---、
/:. :. :. :. :(0):. :. o:. :. o:l0)、
{三三Ξヲ: : : : : : : : : : : :/,二_ヽ:.\三}
_ノ´: . レ. : . : . : . : . : . : ( く三Ξミミミミミヽ 、
{三|:.;' . . . . . . . . . . . . . . . . \二>-ミ ミ ミ ミ ミ ミ ミ 、
{彡1 . . . . . . . . . . . . . . . .ヾヾヾヾヾヾヾヽ
', ヾヾヾヾヾヾヾヽ
' , バi,゙i,゙i,゙i,゙i,゙i,゙i,',
ヽ ノ ゙i,゙i,゙i,゙i,゙i,゙i,゙iJ
` - _ ‐´ 川川 川J
` ‐ ------- 一 ' ´ 川川 |J
',川リJ
UU
終
制作・著作
━━━━━
ⓃⒽⓀ
19
:
美作くるみ『プラン9・チャンネル7』
:2023/08/09(水) 22:04:17
爽やかな海沿いの道を『ミニベロ』で走っていた。
明るい『カナリアイエロー』のボディーが陽光の下で照り映える。
ミニベロとは小型自転車の総称だ。
車種はドイツ製の『バーディー』。
折り畳み自転車の代名詞として知られている。
――――――キィッ
適当な場所に停車し、海を眺めながらスマホを取り出す。
画面に表示されているのは『有名動画サイト』。
美作くるみの『個人チャンネル』だった。
20
:
美作くるみ『プラン9・チャンネル7』
:2023/08/10(木) 19:29:10
>>19
海を眺めながらスマホを操作する。
考えているのは『今後の展望』について。
『正体』は隠すとはいえ、自分が『アイドル』として舞台に立つ事は、
もう二度とないと思っていた。
しかし、そういう訳にもいかなくなってしまったのだ。
『門倉派』をアピールする為には、『大きなイベント』を一つやるより、
まず『軽い企画』を打っておかねばならない。
「さて…………」
ただ、『準備』はしておくべきだ。
ここに来たのは単なる気分転換ではなく、
『アイドル候補』を発掘する目的もあった。
明確な意図を持って周囲を見渡す。
21
:
朱鷺宮笑美『トループス・アンダー・ファイア』
:2023/08/11(金) 00:08:22
>>19
海のあたりを見ると日傘を差しながら歩く女性の姿が見える。
涼し気なワンピースをしており、どうやら散歩をしているようだ。
22
:
朱鷺宮笑美『トループス・アンダー・ファイア』
:2023/08/11(金) 00:09:10
(
>>21
は
>>20
へのレスということでお願いします。)
23
:
美作くるみ『プラン9・チャンネル7』
:2023/08/11(金) 01:01:35
>>21
「………………ん?」
ふと見覚えのある姿に目を留めた。
愛車の『ランドクルーザー70』で『道の駅』までドライブして、
『フカヒレラーメン』を食べ、一緒に『温泉』にも入った事がある。
その時に見た『肌ツヤ』は、恐ろしい程に若々しかった。
もちろん『アイドル適性』とは別の話だ。
しかし、笑美なら『アイドルになれそうな人材』を知っているかもしれない。
「――――――よし」
ガチャリ
ザッ ザッ ザッ
スマホをポケットに入れて自転車を施錠し、海の方へ降りていく。
「笑美さん、こんにちは。今日はお散歩ですか?」
手を振りながら歩み寄り、笑顔で声を掛ける。
もう片方の手に持つ『電気カナリアのキーホルダー』には『鍵』が三つ付いていた。
一つは『バーディー』、残り二つは『ベスパ』と『ランドクルーザー』の鍵だ。
24
:
御子神『イン・ジャスティス』
:2023/08/11(金) 10:39:39
>>20-23
ザ ザ ザ ザ ザ ザ ・ ・ ・
海辺に佇む朱鷺宮、そんな彼女に近づく美作
その二人に向かって大柄な男の影が迫り来る
ザ ザ ザ ザ ザ ザ ・ ・ ・
いや・・・・影ではない マント
だが、影と見紛うばかりの黒衣の外套
それが太陽の内に存在する黒点のような不吉さをもって真夏の空にこびりつく
ザ ザ ザ ザ ザ ザ ・ ・ ・ ! !
男は真っ直ぐに美作へと歩み寄る
コンパスの長い足取りはすぐさま彼女との距離を詰めていく
「貴様は・・・・ 『あの時』の・・・・!!」
25
:
朱鷺宮笑美『トループス・アンダー・ファイア』
:2023/08/11(金) 13:32:41
>>23
日傘を差した彼女の姿は
穏やかな海と合いそうである。
「あら、あなたは美作さん」
くるみの声を聞いて振り向いた。
「またお会いしましたね。
…ええ。今は散歩をしているところです。
今日はちょっと涼しいので」
そう言って微笑みかける。
>>24
「…おや?」
ふと、何者かの影が近づいてくるのに気づく。
やたら大柄な男のようだ。
「美作さんのお知り合いですか?」
26
:
美作くるみ『プラン9・チャンネル7』
:2023/08/11(金) 19:00:11
>>24-25
「私は『サイクリング』をしてたんですよ。
ほら、あそこの黄色い『折り畳み自転車』です」
「実は笑美さんに聞きたい事が…………」
笑美に話し掛けた所で『声のする方』を振り向いた。
あの時は『その場の雰囲気』に流されてしまったものの、今は冷静だ。
だから、『目の前の男性』に対して、落ち着いた頭で考えられる。
外見は常識から外れているし、言動も真っ当とは言い難い。
ただ、性格が真っ直ぐな所だけは救いだろう。
ミマサカ
「『美作』――――」
ニコッ
「私の名前は『美作くるみ』です。
だから、そう呼んで下さいね」
訓練を積んだ『完璧なスマイル』を向けながら名乗る。
以前『故郷から遠く離れた町』と言っていたので、
おそらく『外国人』なのだろうと想像できた。
多少の事は仕方ないと割り切る。
きっと分からないことも多いだろうから。
だが、それを差し引いても『貴様呼ばわり』される筋合いはない。
「この方は…………知り合いというか何というか…………。
一度だけ会った事があるんです」
どう紹介していいものか迷いながら、笑美に答えた。
27
:
御子神『イン・ジャスティス』
:2023/08/11(金) 20:16:06
>>26
ザ ザ ザ ザ ザ ザ ・ ・ ・ ! !
潮騒の音を背後に、男は仁王の如く佇む
「『美作』・・・・・『美作くるみ』・・・・・!!」
「貴様の名前は『美作くるみ』と言うのか・・・・!」
ザ ザ
ザ ザ
ザ ザ ・ ・ ・ ! !
ザ
ザ
「一度の縁も奇縁なら、二度と会うのもまた合縁・・・・
己(おれ)の名前は『御子神 正信』だ」
「さて・・・・・」
>>25
男の背丈は高く、体つきはがっしりとしている
頭を覆う毛髪は老人のように白に染まっているものの、顔立ちは思ったよりも若い
しかし、眉間に刻まれた皺はこの男の人生を象徴するように深く、哀しみに満ちていた
「貴様もまた、美作くるみの知り合いか?」
「己もそうだ・・・・
く、ククク・・・・・・」
28
:
朱鷺宮笑美『トループス・アンダー・ファイア』
:2023/08/11(金) 20:34:57
>>26
+-27
「サイクリングもいいですねー。
風も気持ち良いですし。
…まぁ自転車に乗らなくなってひさしいですけど。」
「お話とは…」
と言ったところで話がとまる。
「なるほど、御子神さん、ですね。
私は朱鷺宮笑美と言います。
美作さんとは、はい…知り合いですね。」
御子神の様子を少し気にしているようだ。
「まぁ、一度だけでも縁があるという人はいるのでしょうね。
…一応名前を知っているようですし。」
「えっと、そういえば聞きたいこととは…」
御子神の様子はひとまずおいておくかのように
美作に話を聞こうとしている。
29
:
美作くるみ『プラン9・チャンネル7』
:2023/08/11(金) 21:12:21
>>27-28
美作くるみは『プロ』だ。
プロの『パーソナリティー』であり、
『エンターテイナー』であり『インフルエンサー』。
だから、内心の考えを表情には出さずに会話が出来る。
どんなに怪しい相手であっても、『笑顔』を絶やさず接しなければならない。
それは御子神と同じく『技術』の賜物だった。
「『御子神さん』ですか。お元気そうで安心しました。
こんな所でお会いするなんて奇遇ですね」
ニコッ
美作は『アイドル候補』を探している。
まず御子神は『論外』。
『アイドルになれそうな人材』に心当たりがあるとも思えない。
「えっと、笑美さん…………。
『若い女の子』の知り合いは多いですか?
実は、私の知人が『イベント』をやる事になりまして」
「お客さんの前で『パフォーマンス』を披露するという主旨です。
平たく言えば『アイドルショー』ですね。
今、その『出演者』を募集してるんですよ」
「誰か『出てくれそうな人』はいないですかねぇ?」
『スタンド使いの』という部分はぼかした。
御子神がいるからだ。
笑美はともかく、よく分からない人間の前で、
『スタンド』の事を話すつもりはない。
これは『自分』の為でもあるし『笑美』の為でもある。
また、『門倉』の為でもあった。
30
:
御子神『イン・ジャスティス』
:2023/08/11(金) 21:26:32
>>28
「『朱鷺宮笑美』か・・・・」
ザ ザ ザ ザ ザ ザ ・ ・ ・ ! !
「クククク・・・・」
潮騒の音に重なる様に、男の乾いた笑い声がさざめく
「『覚えた』ぞ
『朱鷺宮笑美』よ・・・・」
>>29
「奇遇か、それとも『宿命』か
貴様が『アイドル』を探しているというのなら、
これは『宿命』の側に寄っているのかもしれないな」
「『パフォーマンス』と言ったな?」
ずずい、と頭上から圧がかかるように、
御子神の顔が美作くるみに近づく
「それは・・・・どこで行われる『イベント』なのだ?」
31
:
朱鷺宮笑美『トループス・アンダー・ファイア』
:2023/08/11(金) 22:04:41
>>29
「へぇ、アイドルでパフォーマンスですか。楽しそうですね。
ふむ、若い女の子の知り合い…ですか?
まぁ知り合いは結構いますけどね…」
少し考え事をする表情を浮かべた。
(小石川さん…は、私よりも若いといえば若いけど
ちょっと求めてるのとは違うわよね。きっと。)
一瞬浮かんだ人間のことを考えて
大人びたものとは違うんだろうと思い直した。
「夏の魔物の一件で知り合った人に何人かいましたね。
若い子といえば…七篠さんとか、烏丸さんとか…ですかね?」
「…流石にうちの子はそういうのは得意そうにありませんし。」
>>30
「覚えていただけたのなら…光栄ですけど…」
何の笑いなんだろう。と思いながら彼の様子を見る。
32
:
美作くるみ『プラン9・チャンネル7』
:2023/08/11(金) 22:54:04
>>30-31
大男に迫られても物怖じせずに済んだのは、
つい最近『不良大学生達』に襲われたお陰だろうか。
いや、こんな事でビビっていたら『芸事の世界』では生き抜けなかった。
『アイドル』としての生活は『度胸』も育ててくれたのだ。
「あはは、『宿命』だなんて。そんな大袈裟な話じゃないですよ」
「でも――――私の事は『名前』で呼んでくれないと答えてあげませんよぉ?」
御子神の使う言葉は理解しがたい。
とはいえ『稲崎』という前例がある。
『独特の言語感覚の持ち主』には慣れていた。
「正式に告知する前なので、詳しくは『秘密』です。
これから準備しなきゃならない事は、まだ色々ありますので。
ここで言った内容が、そのまま実現する保証はありませんからね」
「もし話が聞きたいなら『問い合わせ先』は教えますよ」
御子神に答えてから、笑美に向き直る。
「そうですか…………。
とりあえず、その二人の『連絡先』を教えてもらえません?
もしかすると声を掛けるかもしれませんので」
『魔物』の話が出たという事は『スタンド使い』だろう。
この町に来たばかりの御子神には、何の事か分かるまい。
彼の性格だと本気にしそうだが…………『不都合な部分』は黙っている事にした。
33
:
御子神『イン・ジャスティス』
:2023/08/11(金) 23:34:01
>>31-32
「そうか・・・・『秘密』か・・・・」
がっかりしているようにも、悲しんでいるようにも見える表情
あるいは、何も考えていないのかもしれない
「しかし、だ」
ザ ザ ザ ザ ザ ザ ・ ・ ・ ! !
遠く、大型の波がテトラポッドにぶつかり、飛散する
砕けた波の欠片が男の背中を濡らす
「本人の承諾もなしに、『連絡先』の受け渡しとは感心しないな」
ふっ、と男の顔に影が差し込む
俯き加減の御子神の眼は少年の様に悲しみに満ちていた
「かつて、だ」
「かつて俺は・・・・一人の『友人』の居場所を、とある男に教えた事がある
信頼できる男だった・・・・いや、かつての俺にはそう見えていた・・・・」
自嘲するような笑み
「・・・・その『友人』と、二度会う事はなかった
全ては『物語』だ。もはや取り戻す事の出来ぬ悲しい『物語』・・・・」
34
:
朱鷺宮笑美『トループス・アンダー・ファイア』
:2023/08/12(土) 00:13:56
>>32-33
「…たしかあの時に連絡先を聞いていたはずなので…
連絡先を言うのは大丈夫だと思いますけど…」
スマホを見せながら答える。
二人がそれにオッケーを出すかは分からないが
とりあえず連絡先を伝えておいてもいいかもしれないと思った。
御子神の様子が気になって少し視線を向けた。
「…それは、悲しいことがあったのでしょうね。」
どうやら彼の様子が気になってしょうがないようだ。
35
:
美作くるみ『プラン9・チャンネル7』
:2023/08/12(土) 01:00:56
>>33-34
「――――あぁ、それもそうですね」
「じゃあ、こうしましょう。
笑美さんは『私の連絡先』を二人に伝えて下さい。
興味があったら連絡してもらえるように――――」
きっと御子神には『辛い記憶』があるのだろう。
文脈から判断すると、多分『生き死に』に関わる内容だ。
自分にも『覚えがある』。
「『人の心』なんて、なかなか分からないものですよねぇ」
『デルデルデ』と名乗った中東系の男性が思い浮かぶ。
一度会って話しただけで、知り合いですらないかもしれない相手。
だが、彼の『訃報』を知った時、もしかしたら『何か出来たのではないか』と感じたのだ。
『おこがましい』とは思いつつも、しばらく悩んでいた時期がある。
『眠目』や『鈴元』や『林檎』――友人達のお陰で吹っ切れる事が出来た。
「それから、もし今後『アイドルショー』に関心がある子と出会ったら、
『星見駅北口』の『門倉不動産』に行ってもらって下さい。
そこに『興行主』がいますから」
笑美に言った後、御子神の方を向く。
「御子神さん、『問い合わせ先』っていうのも『そこ』ですよ」
36
:
御子神『イン・ジャスティス』
:2023/08/12(土) 13:52:05
>>34-35
「ああ・・・・全ては『過去』だ。今ではない」
一つ、目を瞑る
暗闇の中、過去の記憶を腹の奥に埋めて再び目を開ける
夏の青空がそこにあった
「『門倉・・・・不動産』・・・・?」
「待て・・・・その名前には聞き覚えがある・・・・!
己がこの街の『活動拠点』を借りた・・・・『屋敷売り』だろう?」
「貴様・・・・美作くるみ・・・・己達を謀る気か?」
37
:
朱鷺宮笑美『トループス・アンダー・ファイア』
:2023/08/12(土) 14:32:43
>>35-36
「確かに…あの人の言う通りかもしれませんね。
相手の許可なしに情報を渡すのはよくありませんね。」
少し、考えてから彼女の言葉に同意した。
人まずは連絡先を受け取るべく、スマホを美作に向ける。
「じゃあまずは連絡先を受け取らせていただきますね。」
そう言ってうなずいた。
「過去はどうしようもないですけど、
きっとこれからはなんとかすることができますよ。」
そう言って御子神に視線を向けた。
先程まで異様に思えてきたが
だいぶ慣れてきたようである。
38
:
美作くるみ『プラン9・チャンネル7』
:2023/08/12(土) 18:32:26
>>36-37
「じゃあ、お願いしますね」
スッ
笑美に『名刺』を手渡す。
『星見FM放送』
『Electric Canary Garden』
『パーソナリティー:美作くるみ』
以上のような文字列と共に、
『電気コードの付いた小鳥』のイラストが添えられているのが、
御子神からも見えるだろう。
「――――あ、ご存知だったんですか?」
やや驚いたような表情で、御子神を見つめ返した。
(きっと門倉さんも苦労したんでしょうねぇ…………)
「あはは、別に『ウソ』なんて言ってません。
現代は『多様化』の時代なんです。
不動産屋が『他の仕事』をしちゃいけない決まりはありませんよ」
「でも詳しくは――――――『ヒ・ミ・ツ』」
人差し指を立てながら、御子神に笑い掛ける。
「もし信じられないなら、直接行って聞いてみたらどうですか?
『場所』は分かりますよね。私は止めませんよぉ?」
39
:
御子神『イン・ジャスティス』
:2023/08/12(土) 19:17:16
>>37-38
「『過去』は悲しみに満ちている
だが、全ては必要な犠牲であった」
「己に出来る事と言うのは、
犠牲が無駄にならないように歩みを進める事だけであろう」
どうやら、過去の出来事はこの男の中では納得済みの出来事らしい
そう言いながら、美作くるみの差し出した『名刺』をチラリと見る
「貴様・・・・・ッ!
そうか・・・・『ラジオ局』という事は貴様は『担い手』であったか・・・・ッ!!」
「『自由』を求める『革命』の気風を担う者・・・・!
く、ククク・・・・そうか・・・・貴様もまた己と『同類』の・・・・
と、なると」
何やら納得したような素振りを見せる
「その思わせぶりな態度も、『門倉不動産』のもう一つの顔も、全て納得がいく
『カバーストーリー』・・・・『アイドル』という名の『次世代の若者たち』の育成か・・・・」
くるり、と美作に向けて視線を向ける
その視線には剣の様な決意が込められていた
「美作くるみ・・・・!!
この己を・・・・『アイドル』にしろ・・・・!」
40
:
朱鷺宮笑美『トループス・アンダー・ファイア』
:2023/08/12(土) 20:20:43
>>38
「どうもありがとうございます。
連絡、しておきますね。」
そう言って頭を下げた。
「それにしても、アイドルのプロデュースなんて
なんだか楽しそうな話ですね。グループを作ったりするんですか?」
(…流石に今ここで
あの話をするのはちょっとまずいかな。)
小石川から頼まれていた話のことをずっと考えていた笑美だったが
隣に誰かがいるという状況では話すのは危なそうだと考えた。
「そうですか…
それならば、大丈夫そうですね。」
御子神の様子を見る限り
そこまで落ち込んでいるわけではなさそうだ。
それを見て少しホッとする。
「アイドル…ですか?」
御子神の言葉に少し驚いた表情を浮かべている
41
:
美作くるみ『プラン9・チャンネル7』
:2023/08/12(土) 20:50:30
>>39-40
『笑美の考えている事』には気付かない。
御子神に意識を持っていかれているのだろう。
何より美作自身の『プラン』の事に。
「そうですね。個性の違うメンバーを集めて、それでいて一体感もあり…………」
笑美に『自らの考え』を語っている途中で、御子神の言葉が割り込む。
「は………………?」
一瞬、呆気に取られた表情で立ち尽くしていたが――――。
「『ダメ』ですね」
即座に首を横に振り、躊躇なくバッサリと切り捨てる。
「私が探しているのは『若い女の子』です。
御子神さんは『条件』に合わないでしょう?」
言うまでもなく『なれる訳がない』。
選考する以前の問題だ。
仮に『何かの間違い』でステージに上がったとしても、
観客を引かせる未来しか見えなかった。
「…………一応『理由』だけは聞いておきます。
どうして『アイドル』になりたいのか説明して下さい」
42
:
御子神『イン・ジャスティス』
:2023/08/12(土) 21:08:50
>>40-41
「条件・・・・条件か・・・・
しかし、『若い娘』が必要だというのは本当に『門倉』の考えか?
あるいは・・・・貴様自身が『そうでなければならない』と思い込んでいるだけではないのか・・・・!?」
「・・・・いや、この話はまあいい
肝心な、己の『理由』の話をしよう」
「『アイドル』・・・・そう、『アイドル』であれば否応なく『最前線』に立つ事になるだろう
『鉄火場』であり『戦場』・・・・己自身の命を炎と燃やす炉心だ
そんな『騒乱の中心』であれば・・・・」
遠く、海の向こうを見つめる
「己は己の探し人を見つけられる可能性が高い」
「己は人を探しているのだ・・・・」
43
:
朱鷺宮笑美『トループス・アンダー・ファイア』
:2023/08/12(土) 21:55:12
>>41-42
「ふーむ…個性豊かでかつ、一体感のあるですか…
結構難しそうですね。アイドルグループというものは…
私もアイドルを見ることがありますが、
みんな個性的ですからね…」
なんとなくアイドルの話に興味が湧いたらしく
笑美もそれに関して語り始めた…
「人探し…ですか?」
御子神の言葉を聞いて
先程の言葉の真意はなんとなく理解できたようだ。
「…御子神さんの探している人はアイドルの方ですか?」
44
:
美作くるみ『プラン9・チャンネル7』
:2023/08/12(土) 22:50:22
>>42-43
「これは二人で『綿密な議論』を重ねて出した『結論』です。
『私が信じられないなら確認すればいい』と、さっきから言ってるじゃありませんか」
肩を竦めて溜め息をつく。
大きく息を吸い込む。
そして、再び口を開いた。
「大体ですね!
本気で『アイドルになりたい』と言うなら、
せめて『アイドルを理解してから』にして下さい!!
全然『アイドルらしさ』の欠片もないんですよ!
はっきり言って『向いてません』!!」
美作くるみは、この企画に『自分の可能性』を賭けているのだ。
門倉とは繰り返し話し合ったし、実現に必要な労力を割いてきた。
御子神は何の気なしに口に出したのだろう。
だが、『言ってはいけない言葉』だったのだ。
早い話が、御子神は『地雷』を踏んだのである。
「その風貌じゃあ、お客さんも他の出演者も怖がっちゃいますから。
当然、主催者側にも『マイナス』になります。
『あなたの為に用意された舞台』なら、何をしたって自由です。
でも、そうじゃないでしょう?」
そこまで説教した所で、
御子神が『アイドル』という言葉を正しく理解していない事に気付いた。
「はぁ…………やっぱり分かってませんでしたね。
そんな事だろうと思いました」
多分『意味を知らないんだろう』と何となく察してはいた。
しかし、『戦場』やら『鉄火場』やら『門倉派』の理念とは正反対だ。
人と人の交流は『財産』だが、『この手の出会い』ばかり続くのは困ってしまう。
「それで?誰を探してるんです?」
やや疲れ気味になりながらも、先を促した。
「あ、笑美さん。『アイドル』の話はまた後でしましょう。
涙音さんにも聞いてみたいですね。
友達に『有望な人材』がいないかどうか」
45
:
御子神『イン・ジャスティス』
:2023/08/12(土) 23:20:00
>>43
「いいや・・・・『アイドル』になるべき人間ではない
あの子は幸せになるべき人間だからだ・・・・」
「そう、幸せになるべき人間だ・・・・この己と違って・・・・」
呼吸を整え、その次を告げる
「己の探し人は『息子』だ
生きていれば12歳か、そこらになるだろう
白髪の・・・そう、生まれた時から全身を白に染めた、そんな子供だ」
>>44
「『アイドルらしさ』・・・・か
それでは貴様の言う『アイドルらしさ』とは一体何だ?
それは女子児童を集める事で得られるようなものなのか?」
「貴様は『アイドル』は何だと考えている・・・・?」
「そして」
「己の『答え』は必要か?」
46
:
朱鷺宮笑美『トループス・アンダー・ファイア』
:2023/08/12(土) 23:31:58
>>44-45
(やれやれ…御子神という人…
随分と大胆な言い方ばかりする人だな)
なんとなくだが、とても不器用な生き方の人間だと
彼女には思えてならなかった
「…涙音も友達が結構いるみたいですし
知ってる人の中にいるかも知れませんね。
今度聞いてみましょうか。」
涙音とはよく話をしあっている。
とはいえそこまで友達のことを詳しくは知らない。
ひょっとしたら美作の欲しがるような人材がいるかも知れないだろう。
「お子さん思いなんですね。あなたは。
幸せになって欲しいと言う気持ちはわかります。」
自分と違って、という言葉になにか引っかかるものを感じるが
御子神の言う事には共感を示している。
「あぁ、娘さんじゃなくて息子さんなんですね。
…白髪の子ですか…」
その言葉を聞いて首を傾げた。
(あれ、最近そんなふうな子とあった気がするけど。)
彼女には一人だけどこか思い浮かぶ姿があった。
「…名前とかはわかりますか?」
まさかと考えながらも質問してみた。
47
:
美作くるみ『プラン9・チャンネル7』
:2023/08/13(日) 00:08:56
>>45-46
「いいですか――――――」
「わ・た・し・は!!
あなたが『アイドルとは何か』も知らずに、
『アイドルにしろ』なんて言い出した事が『間違い』だと指摘してるんです!!
『鉄火場』とか『戦場』とか『騒乱の中心』とか、
『アイドル』は『そういうの』じゃありません!!
『アイドル』は『ファンを幸せにするもの』です!!」
「はぁ…………後は『門倉さん』に聞いて下さい…………」
御子神に合わせていると疲れるので、もう『門倉』に丸投げする。
相変わらず『貴様呼ばわり』も直っていないが、もう諦めた。
『もう一つの話』に集中してもらった方が楽だろう。
「心当たりありませんね。
でも、これから会う機会があるかもしれませんから、
私にも名前を教えてもらえますか?」
そう言いながら笑美を見やる。
美作が分からないのは当然だった。
『一抹』とは『電話』で話しただけなのだから。
48
:
御子神『イン・ジャスティス』
:2023/08/13(日) 00:43:49
>>46
「『貞世』・・・・ 己の息子の名前は『御子神貞世』という
いや・・・・今でもその名前を名乗っているとは限らないのだが」
「己の『妻』とともに姿を消した『息子』の名前だ」
過去を思い出すようにぼそぼそとその『名』を答える
>>47
「伝えなければ・・・・伝わらないものもある
己はどうもそれが人よりも多いようだ」
「貴様はどうだ? 美作くるみ」
49
:
朱鷺宮笑美『トループス・アンダー・ファイア』
:2023/08/13(日) 11:51:02
>>47-48
美作の苛立った様子に随分と驚いた様子を見せていた笑美だったが
その後の御子神の言葉を聴いて
「貞世…貞世…ですか…
もしかして…」
白髪の少年で、名前が貞世…
その名前に思い当たることがあった。
「もしかしたら私はあったことがあるかもしれません。
この町で。」
一人だけ、御子神の言った外見と名前に合致する人物のことを知っている。
50
:
美作くるみ『プラン9・チャンネル7』
:2023/08/13(日) 21:23:57
>>48-49
付き合いのある笑美も知っているように、美作が声を荒げる事は殆どない。
大抵の事なら笑って受け流す。
どうやら美作は、さっき話していた『アイドルショー』に対して、
相当な『熱意』を持っているようだ。
そこを無意識に御子神が刺激してしまったものだから、
過剰に反応してしまったのだろう。
結果的に、御子神は『美作の真意』を引き出したと言える。
「…………『似た名前』の人とは話した事があります」
「突然『公衆電話』に電話が掛かってきて、
たまたま私が近くにいたから出てみたんです。
会った事はないので『声』しか知りません」
「だから、息子さんかどうかは…………」
御子神の『親族探し』が、次第に美作の頭を冷やした。
そちらの方が『アイドル候補』を見つけるよりも、よほど難しいだろう。
そんな相手に大きな声を上げてしまった事を、内心で申し訳なく思う。
「――――笑美さん、会った事があるんですか?」
笑美の方を向き、彼女の言葉に耳を傾ける。
51
:
御子神『イン・ジャスティス』
:2023/08/13(日) 21:50:00
>>49-50
「・・・・驚きの情報だ」
この男にしては珍しく、呆気に取られたようにぽかんとした表情を浮かべる
色良い答えが返ってくる事にあまり期待していなかったのだろう
「教えて欲しい、その子供と出会った時の事を
どこで見かけたのか・・・・何をしているのか・・・・」
52
:
朱鷺宮笑美『トループス・アンダー・ファイア』
:2023/08/13(日) 22:10:29
>>50-51
「ええ、まぁ。
貞世という名前もそうそうあるとは思えないですし
御子神さんのおっしゃった特徴とも似ていたので
もしかしたら…と」
たまたまそっくりとも考えづらく、
笑美は間違いなさそうと思っていた。
「多分…本人だと思いますが、
違う可能性も一応ありますけど」
そう言って思い返す。
「湖畔の辺りで出会いましたね。その人とは。
今は、そう…他の人と仲良く暮らしているみたいですね。」
湖畔で出会った彼のことを思い返した。
老夫婦のもとで暮らしていたことがわかっていることだ。
(ttps://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/comic/7023/1630107603/749-764)
「…この街で色々とあったみたいですけど、元気に暮らしてます。多分…」
ひとまず元気であることは伝える。
連絡先を持ってはいるが、先程彼が言った通り気安く教えるのは良くないだろうと考えた。
53
:
美作くるみ『プラン9・チャンネル7』
:2023/08/13(日) 22:48:24
>>51-52
笑美の話を黙って聞いていた。
電話で話した相手と同一人物かどうかはハッキリしない。
何となく似ている気はするものの、確証とまでは言えないだろう。
「私からは大した事は教えられませんが、特に何かある印象は受けませんでした。
笑美さんの言う通り、きっと『幸せ』でいると思います」
『魔物』や『スタンド』に関する話は意図的に避けた。
(そうであってくれたらいいけど…………)
ただ、『人の心』は他人には分からないものだ。
人前では気さくで明るい外国人を演じていた『デルデルデ』が、
自分の中に悩みを抱え込んで命を絶ったように、
もしかすると本人しか知らない事情を抱えているかもしれない。
そして、それは『手遅れ』になってから初めて分かるケースも少なくなかった。
「――――きっと…………」
この場にいない相手に対して美作が出来るのは『願う事』だけだった。
54
:
御子神『イン・ジャスティス』
:2023/08/13(日) 23:10:42
>>52-53
「そうか・・・・『貞世』は良き人に恵まれているのか・・・・!
そして、『幸せ』に暮らしていると・・・・!」
ニヤリと、厳めしい顔つきが歪み笑みが零れる
凶悪そうな顔つきではあるが、見た目通り凶悪というわけではないのかもしれない
「情報提供に感謝する・・・・!
これで一つの『指針』が出来た」
そう言うとくるりと外套を翻す
薄汚れた黒い外套には波飛沫のせいか白い塩の結晶がごましおに浮かび上がっていた
「『湖畔』か・・・・・・・・・・・!!」
そのまま男はこの場を立ち去って行った
55
:
朱鷺宮笑美『トループス・アンダー・ファイア』
:2023/08/13(日) 23:16:20
>>53-54
「そんな感じ、ですね。
指針…そうなったのであれば嬉しいです。」
そう言って御子神が去っていく様子を見る。
「気をつけてくださいねー。」
そう言って彼に対し、手を振りながら見送っていった。
「あの人は…
あの子のお父さんで間違いないんでしょうかね…」
いかつい顔立ちからは想像がつかないと思った。
「再会できたらいいですけどねぇ。」
二人の間に何があるのかは、笑美は知る由もない。
56
:
美作くるみ『プラン9・チャンネル7』
:2023/08/14(月) 00:04:55
>>54-55
『一抹貞世の連絡先』は美作も知っていたが、
それを伝えなかった理由は笑美と同じだった。
「今日は暑いですからねぇ。
ちゃんと水分を取らないと途中で倒れちゃいますよ」
「笑美さんの言う通り、気を付けて下さい」
明るい笑顔で御子神を見送り、再び『二人』になる。
「…………正直、分かりませんね。
御子神さんは悪い人ではないとは思います。
ただ、本当に親子かどうかまでは…………。
笑美さんを疑う訳じゃありませんけど、私は半信半疑って所ですかねぇ」
「でも、本当に親子だとしたら、きっと『母親似』なんじゃないですか?」
『父親に似ていない』というなら、そういう解釈が自然だろう。
「――――ところで『さっきの続き』なんですけど…………」
「御子神さんの前では言わなかったんですけど、
実は『スタンド使いのアイドルショー』なんです。
『パフォーマンスに活かせる能力』なら、さらに良しですね。
そういう人を見かけたら、ぜひ紹介して下さい」
御子神がいなくなったタイミングで、『より深い話』を始める。
周りに他の人間はいない。
今なら『小石川に頼まれた話』も出来るだろう。
57
:
朱鷺宮笑美『トループス・アンダー・ファイア』
:2023/08/14(月) 00:17:33
>>56
「あそこまで細かく知っているとなると
親子の可能性はありそうな気はします。
…少なくとも、関連はありそうです。」
「確かに、母親の方に似ているのかもしれませんね。
だとしたら髪の色が父親に似ているのかも。」
そんな感じで、御子神の話をした後で
より深い話を提案された。
「スタンド使いでアイドルショーを?
それはまた斬新な試みですね。
パフォーマンスとなると…なるべく見栄えが派手なものがいいですね。
一般の人にも見えるようなものがいいでしょうか。」
「わかりました。検討しておきます。」
そう言って軽く頭を下げた。
「…そういえば、先程御子神さんが居た時は
話せなかったことがあるんですが…」
少しあたりの様子をうかがってから答える。
「実はその…
小石川という人から頼まれた話があるのですが…」
58
:
美作くるみ『プラン9・チャンネル7』
:2023/08/14(月) 01:01:38
>>57
「そうですね。
見た目がキレイだったりインパクトがあったりして、
『人目を引く』方が向いてると思います。
もちろん『危険じゃない』のが前提ですけど。
『一般人』にも見えるとアピールしやすいかもしれません」
「『スタンドを使ったイベント』というと『試合』が主流なんですが、
『主催者』の門倉さんは『新しい分野』を開拓しようと頑張ってるんですよ。
『エンターテインメント』の可能性を広げたいと。
私も彼の『心意気』に賛同して、『お手伝い』している訳です」
『興行』について語っていた時、『笑美の頼み事』が耳に入る。
「『私に』――――ですか?」
「興味深いお話ですけど、とりあえず詳しく聞かせて下さい」
59
:
朱鷺宮笑美『トループス・アンダー・ファイア』
:2023/08/14(月) 13:18:30
>>58
「新しい分野ですか…
色々と興味が引かれますね。
とてもいいことだと思います。」
「アリーナの話は私もちょっと聴いてますけど…
他のスタンドの使い道も模索していきたいですね。
可能な限り協力します。」
彼女の言う言葉にとても楽しそうに答える。
とはいえ、自分の伝えたいことも伝えないといけない。
「そう、その…実は小石川さんから
あることを調べたいので協力してほしいという話がありまして。
…それが、あるスタンド能力を使える人が必要ということで。」
そう言って笑美は自分が小石川に頼まれた内容を語り始めた。
(ttps://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/comic/7023/1688977700/30-41)
小林の消息、そしてその裏付け。それを調べたいのだということだ。
「…もちろんやろうとすることはきっと危ないことですし
悪いことだと思います。できれば協力してほしいとは思いますが…
もちろん強制はしません。」
そう言って頭を下げた。
60
:
美作くるみ『プラン9・チャンネル7』
:2023/08/14(月) 15:03:47
>>59
「…………お話は分かりました」
笑美の話を聞き終えてから、小さく頷いた。
「その『小林』という人は知りませんけど、
私も『魔物』の件には少なからず助力した自負がありますから、
あながち『無関係』でもないですね」
「笑美さんには話しておきますが、『私なら出来ます』」
「そして、『私しか出来ません』」
美作の『プラン9・チャンネル7』は、ある一つの専門のみに特化した能力だ。
すなわち『情報戦』。
強力ではあるが限定的であり、十分に活かせる場は少ない。
その為の『舞台』を提供してもらえる事は、願ってもない申し出だった。
しかし、一つだけ『無視できない問題』がある。
「とはいえ――――『モラルに反する行為』なのは間違いないですよねぇ…………」
『社会的良識に沿わない行為である』という事実が、
美作にとって大きな障害になっている。
美作くるみは強い『自己表現欲求』を持つと同時に、
高い『モラル』の持ち主でもあった。
もし美作に『良識』が欠けていて、
自分の『欲望』だけに忠実な人間だったとしたら、どうなっていたか。
『プラン9』を躊躇なく『濫用』し、
『ありとあらゆる機器』から好きなだけ『情報』を盗み出して、
この町を混乱に陥れていたかもしれない。
『そうならなかった』のは、
ひとえに美作が『モラリストだから』に他ならないのだ。
「でも――――『命に関わる話』でもあると…………」
また『デルデルデ』の顔が思い浮かぶ。
『人の心』というのは簡単には分からないし、
分かった時には『手遅れ』になっている。
自分が協力する事で、それを防げるかもしれないのだ。
『モラル』と『人命』。
重要な二つを天秤に掛けて、美作は深く悩んでいた。
「――――もう一度だけ『確認』させて下さい。
私が『力』を貸せば、それが『誰かを救う事』に繋がるんですね?」
61
:
朱鷺宮笑美『トループス・アンダー・ファイア』
:2023/08/14(月) 16:42:44
>>60
「…確かに。
この行いはモラルに反する行為です。
それに、これから新しいことを始めようとしている美作さんには
マイナスになる可能性が高いでしょう。」
彼女の意志を尊重しよう、と笑美は考えている。
「もしかしたら生きているかもしれない。
ということを確かめたいと言うのはありますね。」
そう言ってうなずいた。
「…以前に小林さんが死亡したという情報が
何者かによって流布されたことがありました。
少しの間とはいえ、行動をともにした人がいなくなったことに
私は少なからずショックを受けました。」
思い返すのはあの謎の情報(ttps://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/comic/7023/1456056964/749)のことだ。
「きっと私よりも傷ついてる人がいると思うんです。
だからもし生きていることが分かれば」
「私は誰かを救うことになると考えています。
きっと、小石川さんもそうだと思います。」
その目はいつになく真剣であった。
62
:
美作くるみ『プラン9・チャンネル7』
:2023/08/14(月) 18:21:44
>>61
『誰かを救う事になる』という笑美の一言が、美作の心に重く響いた。
「…………『デルデルデ』という人に出会った事があります」
しばし躊躇った後で、おもむろに口を開く。
「その人は外国から来た方で、キッチンカーでカレーを販売していたんです。
私は『マトンカレー』と『チャイ』を注文しました。
本格派の味で、とっても美味しかったですよ」
「お店の写真を撮らせてもらって、『SNS』でも紹介しましたしね。
でも、肝心の『料理の写真』を撮り忘れちゃって。
『今度は忘れませんから』と言って、その日は別れました」
次の言葉を発する前に、少しの間を開ける。
「しばらくして…………彼が『自殺』した事を知りました。
会話していた時は、とても陽気で楽しい人に見えたんですけど、
実際は凄く苦しんでいたみたいです」
「私は気付かなかったんです。
それで一時期は悩みました。
もしかしたら『何か出来たんじゃないか』と。
親しい友人でも何でもなくて、
一度会っただけの知り合いなのは分かってるんですけど…………」
「色んな人に相談に乗ってもらいました。
私は間違っていたのかどうか。
辿り着いた結論は『人の心に正解はない』って事です。
あるのは『自分が出した答え』だけ」
『鈴元涼』、『猫柳林檎』、『眠目倫』――――『三人の声』が思い起こされる。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「『人の心は玩具にあらず』とはうちの家訓やけど……その本質は」
「他人の心は決して分からない」
「やから、美作さんがほんまに間違うとるとは僕は思わへんよ」
「その答えを確かめることは出来ひんからね」
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「すれ違ってしまったかもしれないし、そうでないかもしれない。
正解がわからないのなら、これからのことを考えた方がいいんじゃないかしら?」
「あたし、難しいことはわからないけれど。『テツガク』っていうのも、
そういう答えの出ないことを考える学問なのでしょう?」
「でも、それも今までずっと考えてきた人がいて、これからも考えていく人もいるじゃない。
くるみさんの言う通り、あの時こうすればよかった、ではなくて
これからこうしよう、って考えることに意味はきっとあるはずよ」
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「言った言葉をどう受け取るかはぁ、その人の気持ち次第だから。
同じ人にぃ、同じ言葉を伝えても駄目なときは駄目です」
「美作さんが言うようにぃ、間違いだった『かもしれない』けど、
それはたまたま相手の人が受け止められるタイミングじゃなかっただけでぇ、
美作さんが気に病むことではないんじゃないかなぁって私は思います」
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
フゥ…………
深呼吸をして目を閉じ、すぐに開いて再び話し始める。
「――――――『私の力』を貸します」
「自分の『ポリシー』を曲げたのは初めてじゃありません。
『魔物事件』の時には『公共の電波』を利用してますから」
「これで『二回目』になっちゃいますね」
フフッ
冗談めかして言いながら、美作は明るい笑顔を見せた。
63
:
朱鷺宮笑美『トループス・アンダー・ファイア』
:2023/08/14(月) 20:17:24
>>62
「…そんな事があったんですね。
その人と会ったことはありませんでしたが…
せめてその人に相談ができるような相手が居たら…
いえ、すいません。」
デルデルデの話を聞き、少し悲しげな表情になる。
そして彼女の言葉に耳を傾ける。
「私も、そう思います。
人の心の数だけ正しさはありますから。」
彼女の言葉に何処か共感を覚えたようだ。
色んな人と出会ったこと、夏の魔物の一件で
それぞれの人の思いを知ったからこそ共感できたのかもしれない。
「ありがとうございます。
ご迷惑をおかけするかもしれませんが…
もう一回力をおかしいただけること、嬉しいです。」
そう言って感謝するように頭を下げた。
「そのことは小石川さんにお伝えしたほうがいいでしょうか…
連絡先は持ってます?」
改めてスマホを確認しつつ答える。
64
:
美作くるみ『プラン9・チャンネル7』
:2023/08/14(月) 21:09:41
>>63
問い掛けに対しては、首を横に振って応じた。
「いえ、持ってませんね。
笑美さんの方から伝えておいて下さい」
「『協力する』と言ったからにはキッチリやりますよ。
必ず『裏付け』を取ってみせます」
実の所、期待している部分もある事は否定しない。
ようやく『能力を発揮できるチャンス』が回ってきたのだから。
もちろん手放しで喜べる状況ではないが、引き受けた以上は役に立つつもりだ。
「その代わりと言っては何ですけど、ちょっとした『条件』を出させてもらえますか?
さっき話した『アイドル候補』。
『有望な人材』を探して欲しいんです」
「『涙音さんの友達』でも構いませんから、誰か『一人』紹介して下さい。
今すぐでなくて大丈夫です。
私が『協力』を終えた後でもいいですよ」
そして、『門倉派』としての仕事も忘れてはいなかった。
「とりあえず『笑美さんの連絡先』だけ頂いておきますね」
スッ
笑美に合わせるように、ポケットから自分のスマホを取り出す。
65
:
朱鷺宮笑美『トループス・アンダー・ファイア』
:2023/08/14(月) 22:08:13
>>64
「あー、はい。
わかりました。
小石川さんにはちゃんと伝えておきますね。
…期待してます。」
そう言って微笑んだ。
「アイドル候補ですかぁ…
そのこと、小石川さんにも協力していただいてもいいでしょうか?」
自分一人で選べるかは分からないと考え
協力は大丈夫か聞いてみた。
「了解です。
どうぞー。」
スマホを操作し始める笑美。
連絡先を受け取るのは直ぐにできそうだ。
66
:
美作くるみ『プラン9・チャンネル7』
:2023/08/14(月) 23:06:10
>>65
「あははは、笑美さんは気楽に考えて下さい。
とりあえず一人連れて来てもらえればいいですから。
見つかったら私に連絡を――――」
ピッ
連絡先を受け取り、スマホをポケットに戻す。
「『秘密にして欲しい』とは言いません。
というか、私に相談してくれても構いませんよ?
自慢じゃありませんが『見る目』は確かなんです」
「それに、『主催者』から『人材発掘』を任されたのは私ですからね。
あんまりサボってるのは申し訳ないですし」
「もし良かったら、最初は『涙音さん』と話し合ってみて下さい。
『学生ならではの繋がり』があるかもしれませんからね。
『清月』は大きいですし」
『清月学園』には、まだまだ『金の卵』がいる筈だ。
あれだけ大きな学校なら、さぞ人材も豊富だろう。
笑美に期待していない訳ではないが、
現役の学生である涙音の方が生徒達と関わる機会は多い。
「さて、と――――ずいぶん話し込んじゃいましたし、そろそろお暇しますよ。
もう少し走ってきたいので。
この辺りは丁度いいサイクリングコースなんです」
近くに停めた自転車に視線を移し、笑顔で会釈をする。
美作はサイクリングの続きに戻るらしい。
特になければ、このまま別れる形になるだろう。
67
:
朱鷺宮笑美『トループス・アンダー・ファイア』
:2023/08/14(月) 23:33:01
>>66
「了解です。
何かあったら相談しますね。」
そう言って連絡先を交換し、スマホをしまい込んだ。
「確かに、清月学園も結構いい子が揃ってるかもしれませんね。
それに、涙音も友達が結構いるみたいですし…
とりあえず色んな人に聞いてみますね。」
そう言ってうなずいた。
「ああ、そういえば私も散歩をしているんでした。
長話すいません。でも、ありがとうございます。」
そう言って微笑むと
「じゃあ私も散歩の続きをしますね。
またどこかでお会いしましょう。」
笑美は手を振りながらその場を去っていく。
この様子だと、美作とは別の道を散歩するのだろう。
68
:
斑鳩 翔『ロスト・アイデンティティ
:2023/08/19(土) 06:27:33
夏休み。
それは素晴らしい楽しみの季節。
海やプール、夏祭りに花火、河原でBBQ
お楽しみは沢山の季節……とても楽しい日々。
だけど月のないその日の夜、僕は頭が痛くて
唯一の電灯の下、影をアスファルトの地面に投げかけながら
灰色のコンテナの一つに背を力なく預けてずるずるとへたり込んでいた。
遠くで暴走族が乗り回しているのか、
バイクのエンジン音が生温い潮風とないまぜになって頭に響く。
汗でへばりついたシャツが気持ち悪い。
頼むから少し静かにしてくれと考えながら、
手で顔を覆う……本当に頭が痛いんだ。
69
:
御影憂『ナハトワハト』
:2023/08/19(土) 09:53:05
>>68
『夏』といえば『怪談』は外せない。
海外では『ホラー』の季節は専ら『冬』だが、
この国の文化においては『今が最も盛り上がる時期』とされている。
特に『Jホラー』の象徴的存在は、やはり『髪の長い女』だろう。
ズ ッ
(――――――………………)
『闇色の帽子と外套』を身に纏う女が、『コンテナを突き抜ける』。
明らかに異常な光景ではあるものの、それを見る事の出来る者は存在しない。
『闇』と『同化』する『ナハトワハト』の能力だ。
(………………『光』………………)
バ ッ
(………………邪魔くさい………………)
即座に『電灯』から距離を取り、コンテナに寄り掛かる少年を一瞥した。
『月のない夜』は『御影憂』の『活動時間』。
そして『今夜の獲物』として最初に目を付けたのが『斑鳩翔』だった。
しかし、『明かり』が邪魔だ。
『無敵』の『闇の衣』を破れる唯一の『天敵』。
(あっちには………………『もっと食べ応えのある奴ら』がいそうだし………………)
(………………ほっとくか………………)
そう思ったが、念の為に『光の外』で足を止め、少年を観察する。
相手の様子に、どこか妙なものを感じたからだ。
無論、ただの『気のせい』という事も大いにあるだろう。
70
:
斑鳩 翔『ロスト・アイデンティティ
:2023/08/19(土) 18:11:05
>>69
斑鳩は考える。
なぜ自分は、ここにへたり込んでいるのだろう?
しかし考えようとすると頭痛はその痛みを増すばかり、
光の中にいれど、霞んだ視界では闇の中に等しい
エンジン音と頭痛を振り払うように首を振ると、
一瞬、視界の端に誰か誰か立っているような気がした。
「……すいません、」
照明のしたの少年をよく見れば
およそ17〜8だろうか?
整った黒炭のような短髪には
赤いメッシュがいれられているのが分かる
だがその瞳は虚で、周囲を映しておらず。
ライダースジャケットとズボンにはその場にへたり込んだせいか、土埃が僅かに付いていた。
「すぐ行きますから……立てるまで待ってください」
さて、具合が悪そうだという事以外に
妙なところは見当たらない
彼の発言は恐らく、貴女を管理者と誤解しての事であろう。
……そうして光の外に立った貴女の足下に、暗闇からゆっくりと転がって来たものが当たる、凡そ野球ボールのようだがこの暗さだ、手に取って見なければ解らない。
71
:
御影憂『ナハトワハト』
:2023/08/19(土) 22:14:28
>>70
少年が漏らした呟きを聞き取るが、『その意味』は考えるまでもなかった。
(………………『独り言』か………………)
一瞬『誰かが立っている』と思えたが、そこには誰もいない。
ただ『闇』があるばかりだ。
『ナハトワハト』を纏う御影は、『不可視不干渉』の『亡霊』と化す。
(………………変な奴………………)
自分を棚に上げて、少年を見やる。
そもそも、『こんな時間』の『こんな場所』に、
『未成年』が座り込んでいる事が妙だった。
しかも『1人』で。
まぁ、どうでもいいと言えばどうでもいいが、気にはなる。
大学における御影の専攻は『心理学』なのだ。
ス ゥ ッ
『転がってきた何か』が、御影の身体を『すり抜ける』。
能力を発動している御影には何物も触れられず、認識する事さえ不可能。
それが『ナハトワハト』の『無敵』たる所以。
(………………『気付いた』訳はないし………………)
ナイトビジョン
『闇の狩人』である『ナハトワハト』は、当然のように『暗視能力』を有する。
御影からは、周囲は真昼のような鮮明さで見えているという事だ。
わざわざ『実体化』せずとも、『何か』の正体は確認できた。
ジッ………………
――――――ゆえに『それ』を見た。
72
:
斑鳩 翔『ロスト・アイデンティティ
:2023/08/19(土) 22:37:24
>>71
少年は不思議そうに辺りを見回し、
その場に頭を押さえてうずくまった。
彼には何も見えず、ただ苦悶の表情を浮かべるだけ
光の中からは闇など見えない物だからだ。
もし彼が周囲にあった物を見えていたならば
苦悶よりも先に驚愕の色が浮かんでいたどあろう
そしてこの描写も序盤からこう変わっていた。
少年が苦しげにうずくまる周囲の夜闇の中には
特徴的な服を着た男達が10人程、
同じようにうずくまり
或いは倒れていた、大多数は意識がなく
残る僅かな者も時折呻き声をあげる程度で起きる様子がない
武器を片手に首を一周するような青アザのついた者
胴体に無数の打撃を受けたと思われる者
通話中のスマホを握り込んだまま倒れた者
……兎も角、無傷な者は1人としておらず。
月明かりのない事も相まってモルグの様相を呈していた。
その内の1人の懐から転がったモノが、
ナハトワハトを纏った者の脚をすり抜ける。
それは奇妙な、現実に存在する鎖の塊で作り上げられた球体だった
所在なく慣性に従って転がると……コンテナの一つにあたって僅かに跳ね返った後に止まり
鎖のひと粒ひと粒が、額縁から跳ねたジグゾーパズルのピースのように崩れ、消えていき
最後には何も残らなかった。
73
:
御影憂『ナハトワハト』
:2023/08/19(土) 23:44:15
>>72
倒れている一人一人を見下ろし、各々の状態を確認していく。
(………………『首にアザ』………………何らかの武器………………)
(………………『無数の打撃』………………一発でダウンを奪える力はない………………)
状況から判断すると、『1人で10人をやった』と考えるのが妥当だ。
『武道の達人』でもない限り無理だろう。
いや、そうであったとしても、得物を手にした多数が相手では持て余す。
だが、『ナハトワハト』なら余裕で勝てる。
そして、それが可能なのは『御影だけではない』。
(………………『スタンド使い』………………)
『同じ力を持つ者』として、自然と導き出される回答だった。
(………………『鎖』………………?)
御影憂は『恐怖』を与え、それを『糧』として生きている。
しかし、決して『一般人』を傷付ける事はしない。
自らに課した『掟』だ。
だからこそ御影は、紙一重の所で『善悪の狭間』に留まっている。
だが、こいつは『力を持たない者』を傷付けた。
(思った以上に………………ロクでもない奴………………)
あからさまに『侮蔑』の表情が浮かぶ。
御影がスタンドを得たのは、『力を持つ者』に虐げられた事が始まりだった。
それと同じ事をしたらしい目の前の少年は、
御影にとって『最も嫌いなタイプ』に分類される。
(………………その『顔』………………)
(………………『よく覚えておく』………………)
眼前の少年――『危険人物』の風貌を記憶する。
この年齢なら『高校生』だ。
『高等部』を当たれば『埃』が出てくるかもしれない。
いずれ『能力』も暴いてやる。
それに関しては御影自身よりは、『御影の仲間』の方が興味を持つだろう。
74
:
斑鳩 翔『ロスト・アイデンティティ
:2023/08/21(月) 05:12:28
>>73
少年は未だ痛みに耐え、ぐったりとしながら
時折何事かをうわ言の用に漏らすだけ
そして影の中より踏み込まない者は
顔を覚えるのに夢中で気にも止めなかった。
倒れた男達の中に、通話中のスマホを持った者がいて……
遠くに響いていたエンジン音が聞こえない事も
エンジン音が止まる時は、その車両が目的地に着いた時だ。
40台のバイクからのハイビームが
一斉に少年の辺りを照らし
再びエンジン音が至近で甲高い音を上げる。
それは搭乗者達の気性であり
威嚇のようでもあった。
先頭のバイクに乗った者に
背後からのハイビームが照り返し、真昼のような周囲に2Mはあるであろうパンクファッションに
かろうじて包まれた巨体が、ミラーボールのように瞬いた。
あからさまなハズレ者
半グレだの暴走族だのと言い換えても良い男達
その視線が少年に冷ややかに注がれ始める。
75
:
御影憂『ナハトワハト』
:2023/08/21(月) 08:44:32
>>74
『いずれ』というのは『この場で明らかにする気はない』という意味だった。
こうして夜毎に出歩いているのは、
実体なき『亡霊』として人々を『恐怖』に陥れる為だ。
『スタンド使いの調査』は『仕事』に近く、
『個人的な愉しみ』の方が優先順位は高い。
ス ッ
その場を離れかけたが、不意に立ち止まる。
(………………何か引っ掛かる………………)
おそらく、ほぼ一方的に叩きのめしている状況。
事実、あの少年は無傷に見える。
だからこそ、具合が悪そうにしているのは妙だ。
病気を患っている可能性も考えたが、
そのコンディションで圧倒できるかどうかは確実ではない。
そうしたチグハグさが御影の足を止めさせた。
その直後――――――
(――――――!!)
大音量で轟く『エンジン音』の接近を察知した瞬間、
頭の中に『危険信号』が鳴り響く。
御影が警戒したのは、社会不適合者の集団ではなかった。
他でもない『ヘッドライト』である。
タ ン ッ
豹のような身のこなしで跳躍し、即座に近くのコンテナに飛び込む。
現在、御影は『幽体化』している。
その身体はコンテナの外壁を『透過』し、最短距離で『反対側』に出る事が可能。
スゥゥゥゥ………………
コンテナの陰に身を隠し、様子を覗いながら『右半身』を『実体化』させる。
40台ものバイクの騒音に加えて、奴らの注意は少年に集中している筈だ。
超人的な感覚の持ち主でもない限り、感づかれる可能性は万に一つもないだろう。
(………………馬鹿な奴………………)
心の中で呟いた一言は少年ではなく、彼を睨む大男に向けられたものだった。
76
:
斑鳩 翔『ロスト・アイデンティティ
:2023/08/22(火) 19:01:01
>>75
眩しさに目を細め、右腕を盾にしながら
ゆっくりと、コンテナに擦り付けながら身体を引き上げる
……連中のリーダー格なんだろう
口内の隙間からシューシューという音と共に
僕の事を見据え、声にならない叫びを上げた。
同時に側から出てきた
僕の腰ほどしか背丈のない小男が
それに負けない声で叫ぶ。
「貴様か!我が同胞を痛めつけたのは!と!『ヒューマンガス』様は言っておられる!」
……なんだって?ヒューマンガス?
そもそも同胞ってなんの事だ?
そう考えた矢先に目に入って来るのは
倒れ込む影の群れ、およそ両手の指程も居るそれは
間違いなく人間だった……答えにはなったが
むしろ疑問が増えた。
「ヒューマンガス様!さっさとやっちまってくださ……!」
連中の仲間がそう言いかけた矢先にソイツが『空を飛んだ』裏拳の一発で……
「俺の力に縋るだけの弱者は不要だ。と!ヒューマンガス様は言っておられる!」
「疾く答えろ小僧!返答次第では生かして帰さん!と、ヒューマンガス様が言っておられる!答えんか!」
エンジン音より高い声は
頭痛の釘をハンマーのように叩く……
何とかエンジン音に負けないように返答する為には
叫ぶほかなかった。
「……ッ知らない!僕は何故ここにいるかすらわからないんだ!!」
頭痛の酷さにその場に再びへたり込む
嘘偽りのない回答ではあったが
それを判断するのは聞き手の方だ。
そしてどうにも向こうの姿は理性と言う言葉とは
縁が遠そうだった。
『ヒューマンガス』が叫ぶ。
言葉になってなくても今度は意味はわかる
回答がお気に召さなかったんだろう
バイクの一台が僕に向けて突っ込んで来たからだ。
眼窩がヘッドライトのハイビームで白く染まる
アスファルトの摩擦でゴムが焼け、エンジン音が際限なく吹き上がり、迫る。
衝撃。
肩に鈍い痛み。
咄嗟にエンジン音を頼りに左に飛んだが
受け身に失敗したかもしれない
背後から再びエンジン音が迫ってくる。
38の視線が僕に刺さっている
頭痛はもう耐えがい域になり
呻き声が口角から漏れ出す……2度目は無理だ。
『何で使えないんだ?』
77
:
御影憂『ナハトワハト』
:2023/08/22(火) 20:57:56
>>76
新手の『パンクス』か?
『乱闘騒ぎ』とか『キメてるヤツ』というのがステレオタイプのイメージだが、
そういう意味では基本を押さえていると言えなくもない。
なんにせよ見るに耐えない光景だ。
しかし、御影は『ほくそ笑んでいる』。
御影がターゲットにするのは、大抵『この手の連中』だった。
(ttps://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/comic/7023/1607077443/491-492)
『怖いものなどない』と言わんばかりに粋がっている人種。
そういう奴らが怯えながら悲鳴を上げ、逃げ惑う様を眺めるのだ。
もっとも、ここまでイカれたのは、そうそうお目にかかれない。
だからこそ興味をそそられる。
こいつらの顔を恐怖の色で染め上げ、
心の中に一生消えない傷跡を刻み付けてやるのは、
きっと『とても愉しい』に違いない。
「………………です………………」
ボソッ
「………………場所は………………」
ボソリ
こみ上げる『湿った笑い』を堪えるのには少々苦労した。
(さっきの『鎖』………………『スタンド使い』なのは明らか………………)
(………………油断を誘う為の芝居………………?)
そうしている間に事態は動き、少年めがけてバイクが突っ込んでいく。
それを見て、ふと思い出した。
以前、御影は『スタンド使いに襲われた少女』を助けた事がある。
(ttps://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/comic/7023/1614349342/167-179)
(でも………………ここまでされて使わないのはおかしい………………)
(『ナハトワハト』みたいに………………何か『条件』があるのか………………)
あの時は『過去の自分』を少女に重ねたからだ。
それに、少女は『一般人』だった。
だから無視する事が出来ず、つい手を出してしまったが、御影憂は『影』であり『闇』。
『優しくなんてならない』。
そうあろうとしている。
(だけど………………あいつらが来る前に感じた『引っ掛かり』………………)
(………………『心理学的見地』から見ると………………)
バイクに追い立てられる少年を『助けなかった』のは、そういう理由もあった。
78
:
斑鳩 翔『ロスト・アイデンティティ』
:2023/08/24(木) 22:12:14
>>77
一際甲高い絶叫の後に、ソレは動かなくなった。
次の瞬間、バイクとその乗り手は勢いをそのままに横転し。
ソレは空を飛んでいた。
ソレはバイクの衝突の瞬間、突進の勢いを利用し
乗り手をバイク事『蹴り飛ばした』反動で
コンテナ上までの跳躍を可能にしたのだ。
それは常人に可能な動作で構成された
常人には不可能な行動だった。
そしてソレは、少年だった。
コンテナの上でゆっくりと立ち上がるその姿には
もはや苦しみ、必死になる様子は無く
その四肢は先程までにない力と感情に満ち溢れ
眼下にある全てを氷のような瞳で見下していた。
僕が深海に沈み、
俺は起きた。
即座に背後から来る敵に飛び掛かると
蹴り飛ばして上空……コンテナ上に飛ぶ、
数で包囲されるのも少し面倒だったし
何よりあの野郎がなかなか意識から指を離さなかったからだ。
だがそれももういい。
「……神々は倒れ、夜は過ぎた。枷を外し、洞窟に伸びる影を背に、正午の中に歩みを進める。」
ここからは全てが見える。
「大いなる正午の中に……」
誰に言うでもなくそう呟くと
眼下の凍りついた醜い弱者の群れの中で
群がられていた強者が叫ぶ。
戦力比は絶望的だが、プランはもうできている。
久々に俺の日常を、味わう時が来た。
喧嘩という日常を。
79
:
御影憂『ナハトワハト』
:2023/08/25(金) 02:15:06
>>78
(………………『アレ』………………『素』の動き………………?)
人間業とは思えない少年のアクションを目撃し、無意識に目を細める。
しかし、まだ分からない部分が多い。
だが、それ以外の点に関しては概ね読めた。
(………………『解離性同一性障害』とは………………)
ズズ………………
『右半身』のみを表出させた人影が、闇の中に音もなく溶けていく。
(一人が『複数の人格』を持つように見えるが………………)
全身を『幽体化』し、再び『夜』と一つになった。
(一つの人格が分かれた状態であり………………言い換えると………………)
すなわち『触れざる者』になった事を意味する。
(………………『一つの人格も持たない状態』である………………)
スゥゥゥゥ………………
地面から両足が離れ、『闇の衣』を纏う身体が浮かび上がる。
もし見た者がいたとすれば、こう言っただろう。
『空を飛んでいる』。
『闇の加護』を受けた『ナハトワハト』は、
この世の誰にも認知されず、あらゆる物体を透過する。
そして、『浮遊』さえも可能とする。
(………………私は………………『無敵』………………)
『自分が怖い』くらいに。
スゥゥゥゥ………………
バイクの群れを抜き去り、コンテナに飛び乗った少年も通過し、
さらに高度を増して上昇していく。
最終的に全体を俯瞰できる位置で静止した。
眼下のバイカー共を震え上がらせてやりたかったが、地上は『光』が多すぎる。
あの渦中に踏み込んでいくのは、陽光に身を晒す吸血鬼だ。
ここから見せてもらう。
80
:
斑鳩 翔『ロスト・アイデンティティ』
:2023/08/27(日) 09:09:59
>>79
金属の悲鳴とともに、0からMAXへ
俺はコンテナ上を駆け出した。
俺の腕は2本だけ、39vs1は現実的じゃあない、ならどうするか?
『1vs1を39回』これが現実的な考えだ。
バイカー共が俺の背後で怒号を上げながら追いすがる間に
俺の速度は時速37kmに到達する。
平均としてはこれが限度。
人間としてはトップクラスでも、バイクに比べれば亀よりは早い兎同然だろう
アドバンテージは縮まり、光が俺の背後に手をかける。
コンテナを跳躍し、ぶら下がったクレーンを足場にして曲がる。
カーブで躊躇なくアクセルを吹かす奴、びびってブレーキをかける奴
仮にバイクを統一しても、その点ではえらく差が出る……統一できないなら言わずもがな。
狙いは奴らが縦列になる事だ。
『先頭から終わりまで1vs1を39回』
照明の陰で俺は飛んだ。
上を見ながら飛ばす以上、照明の光の陰では俺の動きを先頭が認識できないのは道理だ。
狙いは先頭車両への着地。
ハンドルを足蹴にして、先頭の奴の間抜け面を拝むと
何かする前に蹴り飛ばして後続車両へ。
俺にしか見えないオレンジ色の矢印が、最後までのルートを描いている。
蹴り飛ばし、跳躍し、ハンドルを倒させて微調整しながら、再び次の車両へ。
横倒しになった車両が、鉄パイプや木刀を別の車両ごと巻き込んでアスファルトに運ばれていく。
その顔面がゆっくりと……恐怖に歪んでいく様を横目に見ながら、先へ先へと。
アドレナリン・ハイの支配下にて、ひどくゆっくりとした視界には
その瞬間が永遠のように遅く、火の消える瞬間のようにあっという間だった。
「よう『ヒューマンガス』……」
興奮冷めやらぬ最中……俺は最後尾でそいつのハンドルを踏んだ。
ゴールにあるスタートテープを切ったんだ。
他にはもう誰もいない、倉庫街の外れに俺たちは到達し……どいつもこいつも置いてかれた。
「タイマンいいか?」
俺たちは同時にバイクから降りて……。
錆びついたコンテナの傍、切れかかった照明の下で対峙した。
81
:
御影憂『ナハトワハト』
:2023/08/27(日) 14:39:13
>>80
闇に溶ける帽子と外套を黒煙のように揺らめかせながら、
観察と並行して思考を巡らせる。
あの少年は『スタンド使い』だ。
先程の『鎖』が明確な証拠。
それを使うのかと思ったが、発現の兆候が見られない。
つまり、あれは生身の動きという事になる。
(………………『理屈』は分かる………………)
バイクが一列に並ぶように仕向け、それを足場にして最後尾まで渡っていく。
理論上は可能だろう。
だが、あくまで机上の空論に過ぎない。
実際にやろうとするのは馬鹿だ。
しかし、実際に『やり切ってしまった人間』が今この場にいる。
(………………こいつ………………)
(………………『何だ』………………?)
繰り広げられる『パルクール』を見下ろし、そう直感した。
何か得体の知れない部分がある。
『スタンド能力』とは別の側面において――――だ。
(………………これ報告したら………………『調べてこい』って言われそう………………)
(………………言われる前に………………やっといた方が早い………………)
御影が考えているのは『終わった後』の事だった。
その為に布石を打ったのだ。
おそらく、『タイマン』が終わる頃には、
『回転灯』の光と共に『サイレン』が聞こえてくるだろう。
82
:
斑鳩 翔『ロスト・アイデンティティ』
:2023/08/30(水) 06:37:24
>>81
数秒前の行動で、俺のアドレナリンはこれでもかとぶち込まれていた
だが、これから行うことである種致命的な事がある。
「一つ聞きたいんだが、なんで喋れないフリしてんだ?」
『ヒューマンガス』がくぐもった声でしゃべる
場末のボックス席からなら、地獄からの声に聞こえたに違いない、まったく。
マジにあの映画からでてきたんじゃねぇだろうな?それはそれで垂涎ものだが
「箔付けだ、受け皿に落ちても力だけでついてこないやつもいる。」
「群れの苦労ね……死ぬほど退屈そうだな、今日はソレを捨ててけよ。」
ヒューマンガスが構えをとった、ラオウが漫画から出てきたらこんな感じか?
どうやら俺との会話を長引かせるつもりはなさそうだ、当然だな。
時間稼ぎをして少しでもスタミナを戻したかったが。
闘争心のままに震えるこぶしを痛くなるほど握りこんで、俺は叫んだ。
なにせメイン・ディッシュなんだ。
「ファイト・クラブだ!いくぜリンカーン!」
「ガンジーにしろ。」
「ブラッドピットを譲れるわけねぇよ!」
地面を砕かんばかりに脚の親指から踏み込み
上体を沈み込ませ奴のリーチ……丸太のような腕を紙一重で搔い潜り、一撃。
拳が肉を叩く鈍い音が響き、距離を離す。
そして当然『効いていない』。
格闘技の重量制限…ヘビーだのフライだのが何故あるか?減量を必死こいてやる理由は?
簡単だ、『選手同士に僅か数キロの体重差があれば、殴打に意味がなくなるから』だ。
向こうの体格とそこからくるリーチは、俺の体重をはるかに凌駕して余りある。
フェイントを交えて拳を交差する、頬をキャンパスに赤い線が描かれる。
倒す方法の一つは、距離を保ったまま延々と奴に付き合って
奴に掴まれないまま剃刀みたいな拳を野郎に打ち続けること。
(だが……)
致命的なのは『体力差』だ。
仕方ないとはいえ俺は39+10人を相手に大立ち回りをかました。
もちろんそうしなきゃ俺の勝ちの目は藁より細くなったろうが……
その間、俺の目の前のヤツはなにをしたか?……『なにもしなかった』。つまり、『体力の温存』だ。
紙一重でかわし続けながら、奴の隙に効かない拳をねじ込む。
いくら俺が人一倍早く、強く、賢かろうがそれは俺が万全の時の話だ、
俺がヘロヘロで拳を構えててもそう見せないのが礼儀ってもんだが
ヤツは万全の状態でこう考えて俺の提案に乗った。
『万が一俺を倒せるならカウンターだ、バイクの速度はむしろ致命傷になる可能性がある。』
あいにく俺はそのカウンターを奴に一度見せた。
二度目は見せられなくなったわけだ。
83
:
斑鳩 翔『ロスト・アイデンティティ』
:2023/08/30(水) 06:44:05
>>82
そうして……何度かの拳の交差の後に
俺の脳裏に心底くだらない考えがよぎった。
(仮に……もし負けたら、万が一負けたら……)
いいや違う、なんでそんな事を今考えてる?
いまは勝負の最中だ。
(ああ、違う 絶対に違う。)
勝負の後の事を見ながら、目の前の勝負に目を逸らすな。
(確実に勝てる戦いは戦いじゃない、作業だ。俺は……戦いにきたんだ!)
口角を吊り上げろ、暴力が怖い?当たり前だ。恐怖をねじ伏せろ、見ろよ向こうだって血濡れで笑ってるじゃあねぇか。
ああ、野郎は笑ってる。馬鹿だ馬鹿だと笑うならそうさせておけ。
おぞましいほどに醜い弱者共に、俺達の気持ちなど解るものかよ。
人より優れていることを妬み、嫉み、崇拝して群がり、脚を引っ張る
『人より強くてそれがどうした?』『賢くなくても幸せになれる』と。力と勝利の価値を下落させ。
高いところに手が届かねぇからと、届くやつをお前が悪いと延々乏しめ続ける。
「周りが酸っぱい葡萄で埋め尽くされてりゃ満足か?俺ァ……いやだね。あぁ嫌だ!」
血混じりの唾とともに呪詛を吐き捨て、再び構える。
ケンイチローのやつ、僕のことをなんと言ったんだったか……あの評価は間違ってる。
誰よりも強く、賢く、価値あるものになり、夢を叶えたい。たった数度の勝利では到底満足などできない。僕たちは、人一倍強欲なんだ。
数分が数時間に感じる応酬だったが、此方はもうタンクの底が見えてきた
対して奴はまだ脚に力が入ってる。
(狙えるのは……。)
俺は震える手先で、懐から一つの鉛を取り出した。
よく見えないと思うが、釣り用の重りだ。
「構えな、『ヒューマンガス』。」
「次が俺の最後の拳だ、避けるも防ぐも好きにしな……ただし。」
「凌げなかったら俺の勝ちだ。」
俺は奴の首に鎌をかけた。
『拳』と言って次の俺の手がパンチだと相手に思わせたし
避けるも防ぐも好きにしろと言って、奴のプライドをくすぐり
その場から離れるという選択肢も封じた。
距離をとられて物でも投げられたら、それで俺は終わりだからな。
錘を空に放り、俺は動いた。
『顎を狙った蹴り』
奴のスタミナは関係ない脳天を揺らしてダウンを奪う一撃。
何とか今までの交差で奴の腕を鈍らせた、決まれば完璧だ……その筈だった。
一際激しい炸裂音が響いたとき、俺の蹴りは失敗したのが分かった。
爪先を野郎の顎にかすめなくちゃいけない以上、奴が片腕を支えに蹴りを受け止めたのは……蹴りにとっては致命的だ。
息を吐いて、その場に座り込む
これ以上は殴っても意味がない。
俺の蹴りは失敗に終わったんだからな。
……蹴りのほうは
俺が座り込んだ次に奴がゆっくりと……倒壊するアパートメントみたいに後ろに倒れこんだ。
……外から見てもわかりゃしないだろうが、殴り合いの最中でも脳を2個回す余裕と時間だけは有った。あとは計算だ。
蹴りを放った際に、空中で放った釣りの錘を蹴り飛ばし、奴の顎に横から弾丸みたいに叩き込んだのは……さすがに効いてくれたらしい。
もっとも、野郎はすぐに起き上がるだろうが……ダウンはダウンだ。
小さな満足感と勝利の余韻と共に、俺の喧嘩が終わった。
84
:
御影憂『ナハトワハト』
:2023/08/30(水) 11:44:18
>>82-83
『闇の使徒』――――御影憂は、血湧き肉躍る『闘争』の一部始終を見下ろしていた。
二人の男の『生き様』とも呼べる熾烈な闘いを目撃した。
その上で御影が抱いた感想は、至ってシンプルなものだった。
(………………くだらない………………)
格闘技の試合でもあるまいし、
路上で殴り合う事に何の意味があるのか、全く理解できなかった。
それで得られるものなど、せいぜい疲労と負傷ぐらいではないか?
少なくとも、御影の価値観ではそうだ。
もし見る人間が違っていれば、胸の奥に熱いものを感じ、
無意識に圧倒されていた事だろう。
だが、暴力の応酬の中に『美』を見出すような感性は、
御影の中には存在していない。
(………………男って………………)
ただ、全く時間の無駄だったかといえば、そうでもなかった。
あの少年については色々と分かった事がある。
それだけではない。
十分な『時間稼ぎ』も出来たからだ。
既に、布石は打ってあった。
ス タ ン ッ
『幽体化』したまま『浮遊』のみ中断し、
『光』の及ばない死角に向かって『自由落下』する。
ウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ――――――………………
同時に、この場所に『サイレン』の音が近付きつつあった。
少年が集団を蹴散らす前、御影は『スマホ(
>>75
)』を使って、
『警察(
>>77
)』に通報していたのだ。
そう長く掛からない内に『現場』へ到着するだろう。
(さ………………『どうする』………………?)
今回、少年は『スタンドを使わなかった』。
それは『スタンドなしでも立ち回れる事』を証明したに過ぎず、
『一般人に対してスタンドを使わなかった』という証にはならない。
依然として『警戒対象』である事には変わりないのだ。
(今日は………………『オフ』のつもりだったのに………………)
『スタンド使いの情報収集と監視』は、御影が属する『一派』が行う活動の一部。
もっとも、御影自身はさほど熱心ではなく、
『従兄に頼まれたからやっている』という程度でしかない。
一方、『スタンド使い』は『御影のみ』なので、
必然的に仕事が回ってきてしまう事は避けられなかった。
85
:
斑鳩 翔『ロスト・アイデンティティ』
:2023/09/01(金) 23:22:40
>>84
並列演算処理によるフロー体験、身体制御の最適化、反射神経の強化、跳躍コースの選定
『影』も俺もヘロヘロだが休めるのはまだ先らしい。
「…………。」
俺は奴の降りたバイクに跨り、数分ほど待つと。
タフな野郎は早々に目を覚ました。
「起きて早々悪いな、ひとつ聞ききてぇ」
「あのサイレン、テメェらか?」
ぶっきらぼうな口調で奴は返す
「違う」
顎は外れてないようで何よりだ。
俺は跨った鉄の馬を指した。
「だよな…………で、乗るか?」
「それは俺のだ。」
「以前はな、キーはおたくの懐にあるが。」
野郎は怪訝な顔で懐からバイクのキーを取り出した。
それを見て顔にさらに皴が刻まれる、おいおい老けちまうぞ。
「……何のつもりだ?俺を残して逃げればよかったろう。」
ごもっともだが、俺なりの筋を通した理由はある。
「俺は殴り合いしにきただけだ、カラスに突き出して町の掃除をする気も、お前らのアタマになる気もねぇ。」
「だが、コンテナに乗った時それらしい姿は見なかったが……
最寄りの警察署からパトカーでくるのが早すぎだ、あのサイレンの距離なら、通報は喧嘩始まってすぐになる。
どこの馬鹿かしらんが、横からハイエナみたいに俺の喧嘩にケチつけた野郎がいる。」
(見えねぇのなら理由は2つ、俺がスタンドを使っても見逃す程の距離か……そんな理由を『超越』してるか。)
(いくらここが人気がねぇからって、どちらとも断定はできねぇが……。)
「それが気に入らねぇのがひとつ。殴り合った野郎を無下にしたくねぇのもひとつ。」
「・・・・・・。」
バイクの燃料タンクをポンポンと叩く
さすがはバイカーのボスだ、中々悪くないマシンしてるぜ。
「こいつと……」
「俺なら逃げ切れるぜ、テメェ一人乗せてならな。」
「情けか?」
「敬意のつもりだ。」
「どうする?時間はねぇし、決めるのはテメェだ。」
向こうが殴り合いを選択すれば、時間切れにはなるだろう。
逃げるだけなら、この選択は愚かだ。だが俺は逃げにきたんじゃねぇ。
お互いがお互いの瞳をまっすぐに見つめ
静寂の間を遮るのは遠間のサイレンだけになった。
それが破られたのは、目の前に飛来したものを俺が受け止めた時だ
掌の中にあったのは、奴のバイクのキーだった。野郎が投げたんだ。
「おい?」
「俺は連中のボスだ。先にイモはひけねぇ。」
「…………。」
「理解できねぇな、弱者に優しくしてるとテメェが削れるぜ?」
キーを刺して回すと、エンジンを吹かす
嗅ぎなれた匂いと振動が脚から背骨を伝わってくる。
たぶんこいつなりの……責任の取り方なんだろう、群れるのも楽じゃねぇわけだ。
「後で返せ。」
「テメェが戻れたらな。」
ハンドルを握り、夜景が俺の横を流れ始める
それが今夜の俺たちの、最後の会話になった。
86
:
御影憂『ナハトワハト』
:2023/09/02(土) 06:22:36
>>85
この暗さだ。
明かりがなければ、まともに周囲を確認できないだろう。
だが、光のある位置に人の気配はない。
この闇の中では、それこそ『暗視装置』でもない限り、
正常な視界を確保する事は不可能。
だが、『ケチをつけた奴』は見えない程の遠い距離にいるのでもなく、
死角に隠れ潜んでいる訳でもなかった。
他ならぬ斑鳩達の間近で、堂々と正面に立っていた。
それにも関わらず、完全に斑鳩の『認識外』にいたのだ。
『斑鳩翔』の考えは正しかった。
(………………さすがに………………『追い掛ける』のは厳しいけど………………)
鉄の獣の唸りを思わせる荒々しいエンジン音が耳に響く。
『ナハトワハト』の最大スピードは、『それ』と同じ程度だ。
しかし、『スタミナ』は違う。
いくらスピードが互角であろうと、ずっと走り続けている訳にはいかない。
いずれ引き離されて見失う事は明らかだった。
(………………まぁ………………それは仕方ない………………)
まもなく匿名の通報を受けたパトカーが到着した。
その頃には、既に少年の姿は消え去っている。
追ってくる者はおらず、決して捕捉される事はない。
――――――『御影憂』以外には。
ここに警察が駆けつければ、
『バイクで離脱すると予想(
>>81
motorcycle escape predict)』していた。
だから、その前に『マフラーの内側(
>>84
in muffler)』に潜伏する事が出来たのだ。
結果、『霧形態』となった御影は、誰にも気付かれる事なく目的を遂げる。
(………………『お寺の隣』………………)
(………………の………………)
(………………『大きい家』………………)
バイクに『取り憑いた』まま、『少年の自宅付近』まで運ばれたのだから。
表札を見れば、『斑鳩』という名字も分かる。
今夜の所は、これくらいだろう。
バ サ ァ ッ
揺らめく外套を人知れず翻し、『亡霊』は宵闇の彼方へ消えていく。
87
:
徳間紬『シェアー』
:2023/10/15(日) 18:33:16
サロペットにカタツムリみたいなベレー帽、トートバッグの16歳。
それが徳間紬だ。
星見駅からふらふら歓楽街あたりをさまよっていたら、
海沿いまで来てしまった。10月の海には釣り人がまばらに見え、
『ちょいと釣りでもやってみようか?』
などと実現しない、マシュマロみたいな軽い考えを
頭の中でお手玉しながら、海沿いをぼんやりと歩く紬であった。
紬のトートバッグは何の変哲もない無地―――
………え? 無地じゃあないって?
『カタツムリ』と『麦穂』の模様?
なるほど―――
・ ・
それが見えるって事は、じゃあ君もまた、『特別』なのだろう。
『特別』な君には徳間紬と絡む権利をあげちゃおうじゃあないか。
88
:
名無しは星を見ていたい
:2023/10/16(月) 15:43:31
>>87
ザザァ―――…
ニャァ
ニャァー
ぼんやりと海を眺め思想に耽る耳に聞こえるのは
穏やかなさざ波と遠くから聞こえる『ウミネコ』の声―――
ニャァアー
――ザザァ
ニャァ
――『平和』だ。
何事もない平和な『日常』が、まもなく『終わり』を告げるだろう。
ザッバァアア――――――ンッ
「ふゥ――――・・・・・・っ」
「大量」
「大量オ〜〜〜〜」
「案外居るもんだナ」 「ガハハッ」
『海中』から、一人の男が『現れた』。
両手に魚を抱え、上機嫌だ。
89
:
徳間紬『シェアー』
:2023/10/17(火) 22:05:42
>>88
徳間紬と絡む権利は―――
いきなり現れた、『海中の男』に持っていかれた。
………
いやァ、確かにこの場所の特異性は『海』にある。ありますが………
『ラッコ』でもないのに、まさかそんなところから現れるだなんて!
「だなんて! さすがのワタシも ちょっとばかり驚いちゃいますよ」
紬は後ずさりながらも男の様子を確認し始める。
魚、魚、魚、魚………フツーに考えれば、
魚を捕っていたという事なのだろう。
そう考えれば、そんなに突飛な行動というわけでもないのか。
「あァ〜〜 だとしても だとしてもですよ?
秋の海から ザックリ飛び出してくるのは
ちょっとデリカシーに欠けるんじゃないですかねェ〜〜〜」
そういえば『デリカシー』って言葉の意味はちゃんとは知らないな。
コレであってんだっけ? と思いながらも、
いちいち訂正するのも面倒なので徳間紬は
そのまま『海中の男』を必要以上に凝視する事とした。
90
:
名無しは星を見ていたい
:2023/10/18(水) 15:52:30
>>89
海から現れた男を凝視する。
残念なことに、服は着ている様だった。
『浅黒い皮膚』に、『短く刈り揃えた黒髪』、
薄地の『アロハシャツ』と目元を隠すような『サングラス』を身に着けたその風貌から、
あなたはその男がこの街の住人ではなく、『外国人』であることに気づくだろう。
「ンンッ?」
突然海から現れた男に声を上げて驚く君。
男もそれに気づいたのかそちらに顔を向けた。
――ニカッ
「おォ―――っ!」
「どーもどーも」 「ハジメマシテ!」
「釣り人の方デスかァ?」
「チョーシどう? 釣れる?」
真っ白な歯を見せ、片手を上げて気さくに挨拶してきた。
脇から魚が零れ落ちる。
「ニッポンの海、寒いデスねェェェ」 「でもちょっと暖かい」
「でも、おかげで魚いっぱいだヨ!」
ジャバジャバと、足元の海水を音を立てて歩き、近づいてくる。
91
:
徳間紬『シェアー』
:2023/10/20(金) 09:49:22
>>90
(あァ〜〜『外国の方』ですか!)
と、紬は一瞬は思ったであろう。
だがッ!
今のご時世、人種だけで国籍を判断する事、
ましては『街の住人でない』と判断するなどという事は『先進的』ではないだろう。
我々は『アップデート』していかなければならないッ!
それがこれからの時代を生きる者の責務であり、また、必須技能でもある。
私も、君も、そのへんを考えて生きていこうじゃあないか。
「あァ〜〜 ガイジン! ガイジンさんですよねェ〜〜
全然日本人じゃないっポイですけど どこスミ? どこスミです?
釣り? ははは、釣りですって! ワタシ、釣り竿とか持ってないのに釣りとかできますゥ?
ははは、でも、ガイジンさんは竿なくても、たんまり捕ってるかァ〜〜〜サカナ」
………
いや、まあ、『アップデート』は自然な形で、『いずれ』でもいいかもしれない。
92
:
名無しは星を見ていたい
:2023/10/20(金) 12:20:31
>>91
「ワタシはァ〜〜〜・・・・・・」
「・・・『アメリカ』!」
「アメリカのォ、フロリダの方から来ましタァー」
「アナタはどこスミですかあーっ?」
H A H A H A !
陽気に笑い、『徳間』をジロジロと大げさに見る。
「OH・・・釣り人違う」 「残念で―――ス・・・」
「せっかく捕ったのに・・・」
肩を落とし、項垂れる『外国人』。
「それなら火ィ持ってない? ・・・ですかアー?」
「お魚食べたいしィ、ちょっと寒いネェェ」
ブルルッと身を震わせ、訊ねる。
全身からポタポタと海水が滴り、如何にも寒そうだ。心なしか肌も少し青白い。
93
:
徳間紬『シェアー』
:2023/10/21(土) 22:34:11
>92
『フロリダ』―――
『アメリカ合衆国』の南東部の州。
メキシコ湾と大西洋に挟まれるフロリダ半島の全域を占め、
北はジョージア州とアラバマ州に接しており、
サンベルトと呼ばれる比較的気候が温暖な州の1つでもある。
『となると、方向的には泳いできたのかな………?』
素朴な思いが紬の頭を一瞬かすめたが、
流石の紬もそれを『妄信』するほど愚かではなかった。
「あァ〜〜〜 フロリダ、フロリダですかァ。
もしかして泳いできたりとか? ザバザバっと力強く」
『妄信』はしない―――
『半信半疑』というところか………
「そしてワタシは 生まれもそだちもホシミっ娘。
ホシミってなにかと言えば それはつまり ここの地名なんですよね。
知ってました? 知らなかった? どっちだろ?」
………
「それはそうと 火、火、火ですかァ?
それなら、ちょうど………」
紬はゴソゴソとバッグを漁ると、
いわゆる『100円ライター』と呼ばれる簡易な造りの
『ライター』を取り出し、眼前の男に渡した。
「ちょうどちょうどです。
なんだか入ってましたし、どうぞどうぞ お使いください」
94
:
名無しは星を見ていたい
:2023/10/22(日) 21:18:29
>>93
「泳いで・・・・・・?」
「・・・?」
「ハッハー! 面白い事言うネェ―――っ!」
一瞬キョトンとした顔をした後、吹き出す。
「ワタシ、ただの『ニンゲン』! そんなの無理無理!」 「ナイスジョーク!」
「スティーヴン・セガールなら出来るかもネ!
でも、それじゃあ『不法滞在』になっちゃうヨ」
「・・・・・・それとも、アナタ『警官』ですかアー?」
大声で笑いながらバシバシと『徳間』の背を叩く。
「オッ、サンキュー」 「日本人みんな優しィーね」
「それじゃあ暖まりましょオ―――っ」
「ワタシ、『マイケル』いいマース」
「親切なお嬢さん、お名前はァー?」
ライターを受け取り背を向けて燃やせそうなものがないか探す『マイケル』。
・ ・
『――ボトッ』
95
:
徳間紬『シェアー』
:2023/10/24(火) 05:01:10
>>94
「あァ〜〜 さすがに泳いではムリですよね。ムリだ。
そうゆーのはワタシもすぐにピンときちゃうんですよ。
いやァ〜〜 そうですよね さすがにムリだァ
あ、それはそれとして 今の時期の海、まぁまぁ寒いでしょ?
ですからね、あったかいオチャでも一杯 ググイッと飲んどきます?」
紬はバッグからあったか〜いペットボトルのオチャを男に差出す。
「ワタシの名? それは徳間、徳間紬です。
あっ 分かりづらいか。
トクぅーマ ツムぅーギ
いや逆か………?
ツムゥーギィ トクゥーマぁ か。 あーいむ あーいむ」
『外国人』にあわせたインターナショナルな自己紹介をする紬。
「友達には『ツム』って呼ばれてますけど、
友達だからゆえの『ツム』呼ばわりです」
………
燃やせそうなモノ―――
由々しき環境破壊の波がこの星見町の海にも到来しており、
海辺には様々なゴミが散見される。
その中にきっと、手ごろなものがあるかもしれない。
96
:
徳間紬『シェアー』
:2023/10/24(火) 05:03:20
>>94-95
「………む?」
> ・ ・
> 『――ボトッ』
妙な音がした事に遅れて気付く紬であった。
97
:
名無しは星を見ていたい
:2023/10/24(火) 19:35:52
>>95-96
「『チュムギィー』ですかア――っ?」
「ハハッ、変わった名前…」
妙な音に気がつく『紬』。
だが、男はそれに気づいていない様だった。
「『お茶』! オーッ、『ニッポンのココロ』ネ!」
「丁度いい……体が温まりそうデェース」
ゴ・・・
男の体から何かが零れ落ちた音の様だった。
……魚だろうか? それにしては、いやに『小さい』――
ゴ
ゴ
少しばかり注視していると、男の足元に小さな『丸い物体』が転がっているのを見つける。
……あなたは偶然、『それ』と『目が合った』――
ゴ ゴ
ゴ ゴ
――『 ギ ョ ロ リ ! 』
・ ・ ・ ・ ・ ・
――――人間の、『眼球』と――――
ゴ ゴ
ゴ ゴ
98
:
徳間紬『シェアー』
:2023/10/25(水) 08:54:55
>>97
「そうです! 国際的に言えば『チュムギィー』です!」
英語が堪能な才女を想像しながら紬はそう主張した。
そして、お茶を堪能する外国人の男を見て満足そうに頷く紬。
「オチャに満足頂けたのなら なによりです。
そうです、『ニッポンのココロ』ってヤツですね」
そんな話をしながらなんとなく気になる『丸い物体』を目で追う。
「………
………
………?」
『丸い物体』はどこか生生しくて、『なんだろうな?』と
しばらく凝視した際、不意のタイミングでその『正体』に気付いてしまう。
「ひょ ひょ ひょ
ひ ょ え ェ ェ 〜〜〜〜
! ! ! ! 」
………
『眼』―――たぶん、『人間の眼』。
それが『おむすびころりん』のように無造作に
転がっているという現実に徳間紬は大いにビビった。
そして、ビビり散らしたまま、固まってしまう。
99
:
名無しは星を見ていたい
:2023/10/25(水) 22:05:36
>>98
グィイ―――っ
「プハァ――――ッ」
差し出されたお茶を、一息で一気に飲み干す。
「うん、有難う。『生き返った』気分でェェェス」
「デモこの『お茶』・・・・・・不思議でェすねェェェ―――
凄く温かい・・・・・・まるで『淹れたて』・・・・・・買ったばかりのよーな・・・」
「・・・・・・・・・おや・・・・・・・・・?」
奇声を上げ、転がる『徳間』を見下ろす男。
足元の『目玉』には気づいていないのだろうか
「・・・・・・どうか・・・・・・」
「・・・・・・しましたか・・・・・・?」
「『ツムギ』ィ〜〜〜〜・・・・・・」
ゴ ゴ
ゴ ゴ
ゆっくりと振り向く。
目元を覆う『サングラス』と逆光のせいでその表情が読めない。
『――ボト』
『ボトト』
100
:
徳間紬『シェアー』
:2023/10/25(水) 23:51:51
>>99
「あァ〜〜〜!!
な、な、なんか! なんかヤバい雰囲気です!
落ちてません? ええと、マイケルさん!?
落としちゃあいけないもの 落としちゃってませんっっ!?」
不気味に響く音に導かれ、発生個所を思わず見てしまう徳間紬。
緊迫した事態と裏腹にミョーに落ちついた『マイケル』の様子に奇妙さを感じる。
「………あ! そういえば今日、塾でしたっけ?
イ〜い 大学に入るには今のうちからコツコツと!
しとかなきゃあなんですよねっ お勉強!
そろそろ そろそろですかね!?
オイトマのタイミングゥ!」
わずかだが時間が経ち、身体も少しは動けるようになっただろう。
後ずさりでこの場から離れようとする紬。
101
:
名無しは星を見ていたい
:2023/10/26(木) 00:22:12
>>100
――ガシィイイッ
逃げ出そうとする『徳間』の肩を掴む。
「お茶・・・・・・有難ウ・・・・・・」
・ ・ ・ ・ ・ ・
「『ツゥゥムギィ』イイイ〜〜〜〜〜」
ボロ・・・
ボロ・・・ ベチャリ
渡された『お茶』を返そうと、『徳間』に差し出す。
その間も、絶えず聞こえる『何かが零れる音』――
掴んだ『指』や『腕』が静かに剥がれ落ち、
次第に中から赤黒い『骨』が剝き出しになって露になる。
・ ・ ・
そして―――
ドロォォオ・・・
男の『顔面』が、『溶けた』。
102
:
徳間紬『シェアー』
:2023/10/27(金) 22:29:45
>>101
「ふ、ふぎィ―――ぃいいいいい!!」
ホラー映画顔負けの現象に踏んづけた猫みたいな声を放つ紬。
そして、溢れんばかりの力で肩の手を振り払い 、
「あ、あ、悪霊ゥ たいさァ〜ん!!!」
ばしゃばしゃ
ばしゃり!!
『バッグ』から、『塩』をむんずと掴みとり、それを男にかけまくる!
もう怖さが臨界点に達しているので、
逃げられる感じならば脱兎のごとく逃げちゃうだろう。
103
:
名無しは星を見ていたい
:2023/10/28(土) 14:20:29
>>102
ばしゃばしゃ
ばしゃり!!
「ギイャァァアアアアア〜〜〜〜ッ!!!」
顔面に『塩』を撒かれ、
『ムンク』の様に頬に手を当てて同調する様に叫び声を上げる『骸骨』。
ボトボトと、両脇から完全に魚が零れ落ちる。
――逃げ出すなら、今の内かもしれない。
「――ッハハハア〜〜〜〜〜!!」
・
「ツゥゥ」 ・
「ムゥ」 ・
「ギ゛ィ゛イ゛イ゛イ゛――〜〜〜〜〜っ」
「ははははははははははははははははっはははあはははははははははははははははははははははははははははははははははは
ははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは
ははははははははははははははははははははははははハはははははははははははははははははははははははははははははは
はははははははははははははははハははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは
ははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは」
104
:
徳間紬『シェアー』
:2023/10/28(土) 21:16:25
>>103
「はわわわァ………」
なんだかとんでもない事になってしまったが、
もうなにもかも分からないので、とりあえず紬は逃げるしかないのだ。
シュタタタタタタ――――ァ!
足がすくみそうだが、そんな事は言っていられない。
「えらいこっちゃッ! えらいこっちゃッ!」
あらん限りのスピードで、その場を後にする紬。
問題なく逃げ切れたなら、後には恐怖のホラー骸骨が残る形になるだろう。
一体どこで道を間違えたのか―――
いや、これが正規ルートだったのか―――
今はもう何も分からない………
105
:
宗像征爾『アヴィーチー』
:2023/10/29(日) 17:57:42
珍しい『深海魚』が展示されているという話を聞き、
臨海地域に近い『水族館』を訪れた。
パンフレットを確認しながら歩き続け、目的の場所で立ち止まる。
水槽の中で悠然と泳いでいるのは、
鋸状に発達した『吻』を有する異形の『鮫』だ。
「『実物』は静かなものだ」
分厚いアクリルガラスの向こう側で、
体長170cm程の『ノコギリザメ』が視界を横切っていく。
長期間の飼育が困難であり、生体を扱っている施設は少ないらしい。
一度『本物』を見ておきたいと考え、こうして足を運んだ。
「『吻を振り回して小魚を真っ二つにする』」
名前の下に記された解説文を読み上げ、再び目線を上げる。
「その様子を見てみたいが――――」
不意に左手から力が抜け、パンフレットを落としてしまう。
咄嗟に掴もうとするが、上手く動かす事が出来ずに失敗する。
代わりに右手を伸ばしかけた時には、既に落下した後だった。
106
:
村田瑛壱『ディズィー・スティック』
:2023/10/30(月) 12:26:17
>>105
ビッ !
ス
「よお、こんなところで会うとはな。」
軽くかがんですくいとるようにパンフレットを拾い上げ、『宗像』に差し出す。
村田にしては珍しく―もっとも、宗像には知ったことではないが―、『学生服』ではない。
『館内アシスタント』の制服だ。
「命があって良かったな。おっさん。
さもなきゃ、こんなにのんびり魚眺める機会なんてなかったろうよ。」
107
:
宗像征爾『アヴィーチー』
:2023/10/30(月) 14:29:22
>>106
『村田瑛壱』の前に立つのは、カーキ色の作業服を着た男だった。
使い込んだ革手袋が両手を包み、無骨な安全靴が足元を覆う。
『あの時』と同じ姿だ。
「助かる」
まだ痺れの残る左手を一瞥し、右手でパンフレットを受け取る。
他の負傷が完治した後も、この『後遺症』が消える事はなかった。
これが『形見』だとすれば、おそらく完全に消えてしまう事はないだろう。
「俺の命があったのは君のお陰らしいな」
奴の懐に飛び込んだ瞬間、それ以外の全ては意識の外に追いやられた。
その意識すらも、最後の攻撃を行った直後に消え失せていた。
だが、あの状況で『救命』が出来た人間は、村田の他には考えられない。
「――――世話になった」
その場で姿勢を正し、村田に向けて深く一礼する。
この世に『借り』を残している。
だからこそ、俺は生きているのかもしれない。
108
:
村田瑛壱『ディズィー・スティック』
:2023/10/30(月) 15:44:20
>>107
「別にたいしたことはしてねえよ。
それをいや、最後にあんたを死地に叩きこんだのはおれだ。」
「『漣』の処置がなけりゃどのみち助からなかった怪我だったしな。
自分のやったことの『責任』を取っただけの話だ。
恨まれこそすれ、感謝されるようなことはしてねえ。ひとつもな。」
最後の最後、『足りない』ことを見越して宗像を『棒』で押し込んだ。
『目的』を達するための『手段』として最適だと思ったからだ。結果、正解だったといえる。
おそらくおれだけが、『驚愕』の顔を浮かべるマテリアの顔を目にしたのだから。
「ただ、もし『借り』があると思ってんなら、そうだな。
もうちょっと、ほんのちょっとだけ命を大事にしてくれ。」
もん
「あんたの『命』だから無理には言わねえが、あんな調子じゃ借りを返しきる前にお陀仏だ。
『借りっぱなし』に未練がねえってんならしょうがねえがな。」
あの形相だ。何かしら理由も裏もあるのだろうが、この男にそれは問うまい。
あの状況下で何もかもを投げうったのはこの男だ。
腹芸を考えていてできることではない。
それには『信用』で応えるのが礼儀というものだろう。
109
:
宗像征爾『アヴィーチー』
:2023/10/30(月) 16:55:32
>>108
やがて顔を上げ、改めて命の恩人と向き直る黒い瞳は、
虚無の奥底に鈍い光を湛えていた。
「いずれにしても俺は感謝している」
あの場において最も重要なのは『仕事』を成功させる事だった。
より確実に仕留める為には、村田の『後押し』も必要だっただろう。
俺自身、村田と赤月が残っていれば目的の遂行に支障はないと考え、
使い捨ての『弾丸』として前に進んだ。
同時に、僅かな期待もあった事は否定できない。
『殺し屋』と正面から対峙し、限界まで命を削り合う事で、
俺が探し続けていた『何か』を見つけられるのではないか――――。
「――――肝に銘じておこう」
結果的に俺は命を拾い、『それらしいもの』を得る事が出来た。
「こいつが『鋸』を振るう所を見たかったが、
もう『餌の時間』は終わってしまったのか?」
村田の服装から『関係者』だろうと推測し、
水槽の中で泳ぐ『ノコギリザメ』に視線を移す。
110
:
村田瑛壱『ディズィー・スティック』
:2023/10/30(月) 18:03:35
>>109
「『鋸』?」
水槽の中を見やり、中身を確認してからなるほどとつぶやく。
「こいつらは『夜行性』なんだ。
昼間にエサをやっても食いが悪くてな。
だから餌の時間も『夜中』ってわけだ。」
水槽の底で大人しくしているノコギリザメを見ながら言う。
その特異なフォルムはサメには見えず、どちらかというとエイのようだ。
似た形質を持つノコギリエイとは全くの別種で、見分け方は鋸についた『髭』の有無と鰓の位置だ。
「夜に来れば餌やり自体は見られるだろうが、『鋸』を使うかどうかはまたわからねえな。
餌は生餌じゃないし、なんにでも『鋸』を使うほど獰猛な生き物じゃあねえ。
こんなナリだが、かなり大人しいんだな。」
「野生下ではあの『鋸』で砂に潜ったエビやらカニを探して食ってるって話だ。
だから他のサメと違って平べったいし、口も下についてるわけだ。」
サメなどの鼻先には一種の電気受容体があり、これで生き物の筋肉が発する生体電気を感知して餌食を探すのだそうだ。
通常のサメは顔面前部にそれが配置されているが、ノコギリザメは特徴的な『鋸』の下部に配置されている。
しり鰭のない扁平な体型もあってあまり速く泳げず、基本的には水底での生活に適応した種だと言える。
・・・というどうでもいい情報は、パンフレットをよく見ると記載があるだろう。
「何度か通って、運が良ければ見られるだろうな。
『深海生物』がウリだから夜中でもやっているし、宿泊プランもあるぜ。」
星見町があるS県沖合には、日本で一番深いといわれる『駿河トラフ』が存在する。
日本列島がまたがる海洋プレートのうち二つの境目で、海洋学者には『深海生物の聖地』としても名高い場所だ。
光届かぬ深海を『夜空』に、その中で生きる奇妙な生物を『星』に例えて地域振興に役立てようとする動きもあるとかないとか。
・・・といった情報も、やはりパンフレットをよく見ると記載があるだろう。
111
:
宗像征爾『アヴィーチー』
:2023/10/30(月) 19:35:59
>>110
手元のパンフレットを確認すると、確かに村田の言葉通りの内容が記載されていた。
「説明されなければ、閉館まで待ち続ける所だった」
パンフレットは『館内地図』しか見ていなかった為、
細かな記述に関しては指摘されるまで気付かなかった。
そういう事であれば、いつかは目にする機会もあるだろう。
だが、今日中に見るのは諦めた方が良さそうだ。
「『本物』は随分と違うようだな」
『同じ名前』と『似た形』を持っているというだけで、
あくまでも『スタンド』は別物だ。
俺も常識がある方とは言えないが、
自然界に『回転鋸』を備えた生物が存在しない事は分かっている。
村田の話を聞く限りでは、『気性』の面でも対照的らしいが、
重なり合う部分がない訳でもない。
「だが、『必要がなければ使わない』のは、こいつも同じか」
『アヴィーチー』の場合、正確には『使えない』と言う方が正しい。
しかし、使用に『リスク』がある以上、結局は使い所を見極める必要が出てくる。
広い意味で捉えれば、『共通点』と呼んでも差し支えないだろう。
「――――いい勉強になった」
村田の役割は知らないが、これだけの説明が即座に出来るのは立派なものだ。
112
:
村田瑛壱『ディズィー・スティック』
:2023/10/30(月) 20:29:35
>>111
「確かに。あんたのは狂暴そうだったな。
スっ飛んでくるのをチラ見しただけだが、見た目以外は似てもいないな。」
轟音を立ててカッとんでくる『魚影』を思い出す。
突然の出来事過ぎて手が出せなかった。
「『勉強』はいいもんだぜ。暇が潰せてなにしろ無駄にならねえ。
おかげでこうやって、同級生がありつけねえようなバイトもできる。
時給もいいし、目の保養にもなるし。」
「『晩飯のメニュー』考えるのにももってこいだ。」
水槽を見ながらつぶやく。
水族館で魚を見て『美味しそう』という客はいるが、この男もそのタイプらしい。
「知ってるか?『ノコギリザメはウマい』んだ。
『スタンド』に味があるのかは知らねえが、あんたのは美味くなさそうだったな。」
歯を見せて笑いながら、宗像の腕と水槽を交互に見る。
あの修羅場で生き死にを争った人間とはとても思えない、『青年の顔』だ。
113
:
宗像征爾『アヴィーチー』
:2023/10/30(月) 21:57:24
>>112
マテリアにしても村田にしても、
訳の分からない存在が前触れもなく突っ込んできたようにしか見えなかっただろうが、
派手な『囮』としては悪くないタイミングだった。
「俺が理解している限り、『あいつ』は暴れる事しか考えていない」
村田の視線を受けて、自分の『右腕』を見やる。
「放っておかれた間は、さぞ苛立っていた筈だ」
『アヴィーチー』の一部である『ノコギリザメ』には、独立した意思が宿っている。
何があろうと『借り』を返さなければ気が済まない奴だ。
その行為は『復讐』に他ならないが、
ある意味では『義理堅い』と言えるのかもしれない。
「もし食えたとしても、かなり不味いだろうな」
表情に乏しい顔を変える事なく、村田の笑い顔を眺めていた。
笑い返すべきなのだろうが、そうする為の方法を忘れてしまった。
目の前の青年と俺の違いは、そこにあるのだろう。
「もう少しだけ、ここで見ているつもりだ」
聞くべき事は聞き、あの時の礼を言う事も出来た。
あまり話し込んでいると仕事の邪魔になる。
この辺りが切り上げ時だろう。
「色々と教えてくれて助かった」
それだけ言うと、水槽の中で遊泳する『ノコギリザメ』と、再び向かい合った。
114
:
村田瑛壱『ディズィー・スティック』
:2023/10/30(月) 23:16:55
>>113
「ああ、おれもあんまり仕事ほったらかしてるとドヤされそうだからな。」
水槽に向き直った宗像に背を向けるようにしてその場を去ろうとするが・・・
「そうだ、あんたには伝えておこう。『信用』できるからな。
『ハイネ』を覚えてるだろう。おれは顔を見れなかったが。」
「奴は『スタンド使いを増やしている』。方法までは伝えられねえ。
だが、あいつが『目覚めさせた』スタンド使いを、少なくとも3人倒した。
あいつがいる限り、まだ増えるだろう。」
歩き去る背中越しに、『感覚の声』で伝える。これが『確実』だ。
「『刀傷』に気を付けろ。
それが『ハイネ』の手駒の証だ。」
そのまま振り返らずに歩き去る。
ハイネに一撃叩きこみ、野望を砕いてやるのはおれだ。
そう考えてはいるが、その場に必ずおれがいるとは限らない。
ならばせめて、信用できる『仲間』に代わりを頼みたい。
115
:
宗像征爾『アヴィーチー』
:2023/10/31(火) 00:26:56
>>114
村田の『声』に触発され、マテリアを倒す為に集まった日の事を思い出す。
全員で話し合った際に、『刀を持った男』の話が出た。
その『不可解な所持品』を聞いた時に俺が考えていたのは、
同じように『奇妙な物品』である『白い本』の事だ。
『持つ者によって異なるスタンドを生み出す本』の存在を、
俺は『妖甘』と『道具屋』から知らされていた。
それを破壊し、持ち主の命を奪う事が、俺の引き受けた『仕事』だった。
『和国姉弟』は『スタンド能力を引き出す力』を持つ。
そうした事が出来るのは『藤原しおん』だけではないと理解したのは、
あの二人に出会ったからだ。
『スタンドを目覚めさせる人間』が複数いるなら、
『スタンドを作り出す物品』が複数あるのは、何ら不思議な事ではない。
事実、『白い本』は一冊だけではなく、この世に複数冊が存在しているらしい。
『白い本』の持ち主も『エクリプス残党』であり、
『刀の男』と同じように『通り魔』を行っていたという『共通点』も、
俺が『刀』に『スタンドを引き出す力』があるのではないかと疑った理由だった。
その考えは『見当違い』ではなかったようだ。
「――――『覚えておく』」
水槽を見つめながら、立ち去る村田に短い言葉を返す。
本人が『貴様では殺し尽くせない』と豪語するだけあって、
『チェーンソー』で切り刻まれても死なない『不死身ぶり』は尋常ではなかった。
あの異常な『しぶとさ』を思うと、奴を殺すのは骨が折れる『仕事』だろう。
「あるいは『お前』なら殺せたのかもしれないな」
『後遺症』が残る『左手』を軽く握り締め、
『それを刻んだ男』に問い掛けるように呟いた。
116
:
アヤメ『ジ・アルビオン』
:2023/11/15(水) 19:02:28
「『ラッコ』……やっぱり海から来たのかしら」
流木に腰を掛け、海を眺める。
先日遭遇した『ラッコ』からの贈り物、
『コバルトブルーのシーグラス』を空に掲げて思い耽る。
「……『ファンタジー』な体験だったわよねぇ……
いや、思えば『スタンド使い』になってからは妙に……」
「……実は、『奇妙なモノ』を引き付ける能力とかあるんじゃあないでしょうね……」
砂浜に突き刺した、巨大な『大剣』へ問いかけるように呟く。
117
:
小野塚遥『ブリリアント・レジリエンス』
:2023/11/16(木) 13:14:21
>>116
「奇妙なモノってどんなの?」「『ミイラ男』にならこないだ会ったけど」
「『それ』よりおかしなものには、中々お目にかかれない気がするなァ」
アヤメの背後に、いつの間にか缶ビールを持った長身の女が立っている。
紅潮した顔には薄ら笑いが張り付いているが、視線の注がれる先はアヤメではなく『大剣』だ。
「初めましてふへへへ。カッコイイ剣だねェー……」
「一応聞くけど、『モノホン』じゃあないよね。それ──『君の』?」
含みを持たせて問いかけ、ビールを一口呷る。
いつも通り酒を飲みながらぶらついていると、異物にも程がある大剣が目に飛び込んできて面食らったが──
さすがに『マジの普通のでかい剣』である可能性は考えたくなかったので、
自分が持っているのと同じ『超能力』だろうと見当を付け、声を掛けてみた訳だ。
急にでっかい剣を出せるようになって困惑中とか、多分この人もそーいうクチだろう。
なぜか『鎧』の能力に目覚めてしまった人間として、ちょっとシンパシーを感じる。
とはいえ、背後の女──小野塚は、見るからに酔っ払いである。
『能力』のことを話したくないなら、適当にあしらうか誤魔化すかしても問題は無さそうだ。
118
:
アヤメ『ジ・アルビオン』
:2023/11/16(木) 16:06:44
>>117
「そうねぇ…『ラッコ』だとか、『喋る人形』とか……
まあ、あとはちょっと変わった格好してる子が多かったわねぇ
悪い人って訳じゃあないのだけれど…」
「今思えばファンシーな子ばっかりだわ。
ふふっ、まるで冗談みたいだけど――」
「…………」
「……おわ!?」
背後からの声に気づかず『独り言』を続けていたが、
やがて話しかけられているのだと気がつき、ワンテンポ遅れて驚いて飛びのく。
「……こ、コンニチワ」
119
:
小野塚遥『ブリリアント・レジリエンス』
:2023/11/16(木) 18:55:30
>>118
「こんにちは。
君の『それ』は、『ファンシー』というより『ファンタジー』だねェ。
そーいう意味では、あたしのとちょっと似てるけど……
そんなにデカいと、却って何を斬るにも難儀するんじゃあないの?
ンふふふふ」
アヤメが飛びのくのを見て、愉快そうに含み笑いをしつつ数歩後ずさる。
警戒心を与えるのは本意ではない、ということかもしれない。
目の前の女は、ゆったりした地味な色合いの服にサンダルを履いており、
卑屈に背を丸めた、ファンシーともファンタジーとも程遠い風貌だ。
しかも片手には缶ビールを持っている。
「君、あたしよりは経験豊富っぽいな。
他にも結構いたりするの?『超能力者』って」
「後はその『大剣』も気になるなァ……
やっぱ君も『ある日突然出せるようになりました』ってクチかい?」
言い終えると、またビールを一口含む。アヤメの返答を待っているのだろう。
どうやらこの女は、自分以外のスタンド使いと出会うのは初めてで──
『スタンド』という名称すら知らないらしい。
濁った瞳に、僅かな好奇心の光が宿っている。
120
:
アヤメ『ジ・アルビオン』
:2023/11/16(木) 19:56:48
>>119
「ご、ごめんなさい。
誰も居ないと思ってたから、つい…」
独り言を聞かれていた恥ずかしさと無警戒に『スタンド』を出しっぱなしにしていた
自身の無防備さでやや早まる鼓動を押さえながら、砂ぼこりを払いゆっくりと立ち上がる。
「……貴女も知ってるのね。
『スタンド』のこと……」
『見えるだけ』ならば、一般人にも見ることが出来る『実体化』した自身の『スタンド』。
しかし『それ』がどういうものなのか理解しているのであれば
変にごまかす必要にもないだっろうと、素直に自白した。
……単なる『酔っ払いのたわ言』だったらどうしよう、とかは思っても言わなかった。
「別に経験豊富って訳じゃあないわ。
私が『自覚』したのも比較的最近だし……
最近知り合った人が、何人か『そう』だったってだけで」
「貴女も『スタンド使い』なのよね?
……えぇーっと……やっぱり『人型』なのかしら?」
121
:
小野塚遥『ブリリアント・レジリエンス』
:2023/11/16(木) 23:02:55
>>120
「『スタンド』?」
「超能力のこと?…………ふゥーン……スタンドか。スタンドね……」
口の中でもごもご「スタンド……」と繰り返し呟いていたが、
問いを向けられるとピクリと反応した。
「『人型』……そんなのもいるのか。
君のが『大剣』だったから、みんな『こんな感じ』なのかと思ってたけど」
「どうやらこっちの方が少数派なのかな」
女の身体から浮かび上がるように現れたのは、『黄金に輝く鎧を纏った人型スタンド』──
ドサッ ドサドサッ
──ではなく、『空っぽの西洋甲冑』だ。
全身のパーツを同時に発現したため一瞬だけ人型を保っていたものの、
すぐにバラバラになって地面に崩れ落ちていった。
「ファンタジーっぽさではいい勝負だと思わない?シンパシー感じちゃわない?」
「……でもやっぱり、『大剣』に比べるとインパクト薄いかなァー……
しかもこれ、自分じゃ着られないんだよね。スッ飛んでっちゃう」
そう言いながら、転がっている『兜』に爪先でちょんと触れようとした、その瞬間──
ドシュゥーーーーz____ッ
ザパアッ
『兜』は海に向かって物凄い勢いで吹っ飛んでいき、そのまま波間に消えていった……
「ね?」
女はのんきにビールを呷っている。なかなか難儀なスタンドらしい。
122
:
アヤメ『ジ・アルビオン』
:2023/11/17(金) 10:16:36
>>121
「聞いた話だと、そうらしいけれど……」
「でも、私が見たのってほとんど『違う』のよね……
貴女の『鎧』もそうだけど、なんか『翼』だったり『人形』だったり…(あれってスタンドなのかしら?)
『人型』にしてもやたら可愛らしかったり……まあ、偏っただけなのかもだけど」
>『大剣』に比べるとインパクト薄いかなァー……
「えっ」 「そ、そうかしら……」
自分の『スタンド』が『無骨』過ぎることを気にしていたためか、
珍しく褒められ(?)て、思わず気恥ずかしそうに照れる。
「で、でも貴女のもカッコ良くて素敵じゃない。
私なんてどっちかっていうと『地味』な方――
ドシュゥーーーーz____ッ
ザパアッ
――だ…」 「と」
「………………」
「『インパクト』ばっちしじゃない!!!」
弾丸の様な『スゴイパワー』で吹き飛んでいく『鎧』に悔しそうにツッコむ。
返して!私の純情で謙虚な気持ちをッ!
123
:
小野塚遥『ブリリアント・レジリエンス』
:2023/11/17(金) 12:07:42
>>122
「ウンウン。その飾らなさが『イイ』。悪趣味な金ピカよりよっぽどいい」
スタンドの無骨さを気にしているアヤメに対して、
女はスタンドの派手さや華美さが気に入らないようだ。
別に可愛らしさを求めている訳でもないが。
「しかし──だよ。いくら『インパクト』があったとしても、だ……
正直『これ使って何すればいいんだ?』って思わない?」
アヤメのツッコミを軽く流し、くるりと向き直る。
「たぶん『翼』ってのは『空を飛べる』んだろ?
『人形』なら寂しいときの話し相手になってくれるのかも。
件の『人型』は、遠くにある物を取ってきたり、身の回りの世話したりしてくれる……のかな?」
出てきたワードからの安易な連想なので、微妙にイメージがズレている。
まさか『鉄の翼』や『魂が宿った人形』だとは思わない。
『人型』に至っては、『鎧』と『大剣』しか見たことがないせいでまるでイメージができていない。
「でも、『武器』って現代じゃあ出番ないよな」「護身用にはなるかもしれないけど」
──そして、それを使って『戦う』ということにも、考えが及ばない。
もっとも、同じ『初心者』であるアヤメも、そこは同様かもしれないが。
「ある日突然、『鎧』とか『剣』が出せるようになって……
それであたしたちは、これからどうすればいいんだろうね?」
124
:
アヤメ『ジ・アルビオン』
:2023/11/17(金) 13:26:31
>>123
「う…うーん……」
「そうね……確かに。考えもしなかったわ」
華麗にツッコミをスルーされながらも、真面目に訊ねられた疑問に対し今更ながら気づいたようにふと考える。
それまでは『普通』の人生を歩んできた自身にとって、
『スタンド能力』を『戦闘の為』に用いるという発想は(たとえ、物騒な『大剣』だったとしても)不思議と考えもしなかった。
幸いなことに今まで出会ってきた人達も、『戦闘』しなければいけないような、
危ない人物は誰一人としていなかったのだ(……約一名、ちょっと危ない『人形』を除いては)。
「――でも、それってそんなに重要なことかしら?」
やや考えた後、口を開く。
「例えばだけど――『人体』には進化の過程で『使われなくなった部位』っていうのが結構あるんだって。
代表的なのが『盲腸』だとか、『尾てい骨』だとか色々……」
「『スタンド』っていうのはその人の持つ、『精神の形』の現れ――『魂の像』だと、私は聞いたわ。
私の場合、『心の声』を聴いてもらって……それで『目覚めた』訳なんだけど」
・ ・ ・ ・ ・ ・
「つまり、『この子』も同じなのよ。
私たちが、『使っていなかった部位』……」
「元々私達の『傍に居たモノ』……今まで『自覚』していなかっただけで、ずっと傍に居たの。
それが『見える』ようになったからって、変に『変わろう』だとか、特別『どうすればいい』とかじゃあないと思うの」
「……上手く、言えているか分からないけれど――」
125
:
小野塚遥『ブリリアント・レジリエンス』
:2023/11/17(金) 15:43:55
>>122
「────なるほど」
「手に入れたんじゃあなく、もともと持っていたものが見えるようになっただけ……
「教えられてしまったな……見た感じ年下なのに」
しみじみと、アヤメの言葉を噛み締めるように頷く。
『できることの拡張』という意味では、『手に入れた』でも間違いではないのだろうが……
少し、『手に入れたもの』に囚われすぎていたのかもしれない。
「『ずっと傍にいた』──か」
『ブリリアント・レジリエンス』に限っては、その言葉は別の意味を持つ。
受け継ぐことを放棄した小野塚に唯一残った、受け継がれたもの。
『小野塚の血』に宿り、古くから継承されてきた『黄金の鎧』──
もっとも、『収集家』との取引によって『後継者の証』を手放した小野塚には、
真実を知る術はもはや残されていない。
鎧は何を語ることもなく、砂浜に転がったままだ。
「『スタンド』については、もっとよく知る必要がありそうだ──
──『この子』と呼ぶほどの愛着は、まだ持てそうにないけどね」
「んふふふ」
からかうように笑いつつ、残ったビールを一気に飲み干す。
「一体どんな人生を送ったら『精神の形』が『でかい剣』になるのか、あたしには知る由もないけど」
「きっととても『真面目に生きてきた』んだな、ということは分かるよ」
126
:
アヤメ『ジ・アルビオン』
:2023/11/18(土) 12:58:41
>>125
「あっ…ごめんなさい、初対面だって言うのに突然偉そうに……失礼だったわ」
「偉そうなこと言ったけど、私もまだ経験なんてないもの。
『スタンド』についてなんて……分からないことだらけだわ」
言い終わって、年寄りの様な説法を垂れてしまった事に
ちょっぴり罪悪感を覚えて頭を下げる。
「私も不思議よ。
なんでこんな物騒なのが私の精神なのかしら……
それこそ『剣』なんて『斬る』以外の用途がないじゃない。
もうちょっと『可愛げ』があってもいいと思わない?」
自虐気味にため息をつき、己が『大剣』に目を向ける。
「『無骨』というか、『無機質』というか……真面目というより、不器用なだけよね」
127
:
小野塚遥『ブリリアント・レジリエンス』
:2023/11/18(土) 15:54:33
>>126
「いやいや、面白みのない質問吹っかけたのはあたしの方だよ。
それに、昼間からお酒片手にフラフラしてるような相手に、礼も失礼もないさ」
むしろ、居酒屋でもないのに酒を飲みながら会話する方が失礼に違いない……
ということは気にする様子もなく、2本目の缶ビールを既に取り出している。
「ま、それが君の『精神の形』っていうなら、いずれ分かる日が来るんじゃあないの?
アレだ、スタンドを悪用する危ない奴も、世の中にはきっといるんだろう。
この町に……かは、分からないけど」
「そーいう相手には、君のでかい剣もでかすぎるってことはないのかもね。
さもなくば、『熊退治』とか?」
「ともかく……その不器用で素直な感じ、あたしは好きだよ。
言っただろう、『飾らなさ』がイイって」
口説き文句みたいになっているが、純粋にアヤメ(と『ジ・アルビオン』)を褒めている。
『スタンド』が『精神の形』なら、『飾らない』のは本体の精神性も同じなのだろう。
しかし……『可愛げ』を求める側としては、複雑かもしれない。
128
:
アヤメ『ジ・アルビオン』
:2023/11/18(土) 17:00:09
>>127
「……まあ、確かに『護身』程度には役立ちそうね。
『身を守る』っていう意味だと、私のは適役だわ。
貴女の『鎧』もそうだろうけど」
「でも、『悪用』……そうね。
普通の人には見えないってなると、悪いことに使おうと思えばいくらでもできそうだわ。
証拠が残らない暴力って考えるだけでも恐ろしいもの」
「……でもそう考えると、少し不思議よね。
悪用する人間がいるとするなら……この町って、逆に『平和すぎる』わ。
『警察』みたいな治安を守る組織でもあるのかしら?」
再び、考えるように思考を漏らす。
どうにも、自分は気になることを口に出す癖があるようだ。
「な、なんだかむず痒いわね。
褒められてるのって、あまり慣れてないし……」
「…それとも、プロポーズのつもりなのかしら?」
ふふん、と鼻を鳴らし、照れ隠しついでにからかい返す。
「……でも、素直に褒められうのは嬉しいわ。ありがとう」
「私も、貴女みたいな人、好きよ」
129
:
小野塚遥『ブリリアント・レジリエンス』
:2023/11/18(土) 19:11:17
>>128
「『悪い奴』がいるなら、『善い奴』もいるのは道理だね。
君の言うような組織があるんなら、ぜひ頑張ってもらいたいもんだ」
どこか他人事だ。
自分は『悪人』でも『善人』でもないし、今後どちらかになることもない──
そう思っているからかもしれない。
「おっと……あたしみたいなのは止めといたほうがいいなァ。
折角のプロポーズも、お酒臭かったら台無しだろ?」「うひひひ」
一瞬、アヤメの言葉に虚を突かれたように目を丸くしたものの……
直後には、冗談めかして笑いながらプシュッと缶のプルタブを開けた。
顔は既に赤くなっているため、照れているかどうかはよく分からない。
「でも、お友達にならなれそうだ」
「あたしは小野塚遥(おのづか はるか)。
こんな酔っ払いと話してくれてありがとうね。面白かったよ」
130
:
アヤメ『ジ・アルビオン』
:2023/11/19(日) 12:48:37
>>129
「ふふっ、それじゃあお友達からお願いしようかしら」
「私はアヤメよ。
西 殺女(カワチ アヤメ)―――」
顔を赤らめさせることに成功させた(?)のでちょっと『やり返した感』を覚え、握手を求める。
いや、顔が赤いのは元からだったか――と、ふと気づく。
「……ねえ、さっきから思ってたけど……
貴女飲み過ぎじゃない? 大丈夫?」
流石に少し心配になった。
感覚としては1,2レスに1回は飲んでるじゃあないか!
131
:
小野塚遥『ブリリアント・レジリエンス』
:2023/11/19(日) 17:39:37
>>130
カワチ アヤメ……
『河内 菖蒲』? 『川地 彩芽』?
脳内で予測変換しながら握手に応じる。
「お気遣いどうも。
でもな少女よ、お酒が人を大丈夫じゃなくするんじゃあない。
大丈夫じゃない時にこそ、人はお酒を飲むのさ……」
レス内における飲酒量はせいぜい缶ビール1本程度だが、
砂浜に来る前、すなわち描写の外でそこそこの量を飲んでいたのだろう……
あんまり大丈夫じゃなさそうなことを言いながら、小野塚は歩き去って行った。
132
:
アヤメ『ジ・アルビオン』
:2023/11/19(日) 23:24:41
>>131
「そ、そういうものかしら……
その割には顔が赤くない……?」
「…………」 ・・・ン?
「じゃあ大丈夫じゃあないじゃない!?
ちょっと! 途中まで送っていくわよ!?」
傍らに発現していた『大剣』を解除し、慌てて小野塚の後を追った。
133
:
美作くるみ『プラン9・チャンネル7』
:2024/01/11(木) 20:53:28
美作くるみは、自らが『主演』を務める『ショー』の準備として、
独自に『ゲリラ・マーケティング』を行っていた。
ここ『臨海地域』にも『防災行政無線』の『屋外拡声器』が整備されている。
広範囲に『情報発信』するには最適の設備だ。
「さすがに『冬の海』じゃあ効果が薄いとは思ったけど……」
『120m手前』に愛車の『ベスパ』を停車させ、小さな呟きを漏らす。
オフシーズンのビーチは人の気配が希薄だ。
街中ほどの『宣伝効果』は見込めないだろう。
「……ま、『一応』やっておきましょうか」
《『1001-111(イチゼロゼロイチ・イチイチイチ)』》
《『1001-111(ナイン・セブン)』》
『プラン9・チャンネル7』の能力下に置かれたスピーカーから出力される『スタンド音声』。
その『奇妙な放送』は、『半径300m内』の『スタンド使い全員』の耳に届く筈だ。
もっとも、『いるかどうか』は微妙だが……。
「とりあえず、ここが『会場』に選ばれる事はなさそうね」
目的を果たした後は、速やかに『プラン9』を解除。
『次の場所』を検討する為、スマホで『屋外拡声器』の位置を確認した。
それから顔を上げ、しばらくの間ぼんやりと海を眺める。
134
:
雨田 月人『インサニティ』
:2024/01/12(金) 11:11:25
>>133
(一応告げておきますけど、PCkill宣言とか無いので)
「こんにちは」
ざあーん・・・
ざあーん・・・・
波の音、それが愛しい『ミミ』を通じて僕の頭へ流れ込んでくる。
今朝も、叔母さんの部屋だった場所で。彼等の一緒に昔のボカロとか
名曲を聴いた。流行りの曲より、昔むかしの名曲は良いものだ。
街で、小角と言う娘を暇つぶしがてら探したりも最近は運命の『ミミ』と
探す傍ら、特徴は朝山と言う人物に聞いたので探してる。
朝山の『ミミ』。斑鳩の『ミミ』 どれも美しい人々だ。
余計な部分だけ無くして、僕の手元でそっと包み込んで添いどける。
それを何度も夢想するけど、運命の再会はまだ遠い。あの二人の『ミミ』は
似てるけど、僕の感覚のミミと異なる。
また新しい年。気分を変えて波の音の近くまで赴いた。
綺麗な貝殻も時々落ちている。法螺貝でも拾えたら拾おうか。
そう考えていると、車、そして不思議な数字。1001-111
いや……それより…………この音、声?
(何だろう、凄く最近、忘れがたい声だ)
否が応にも、そちらへと歩みは進み……そして、後ろ姿の
性別は女らしい存在が目に映った。
(『ミミ』……どんな、『ミミ』だ?)
海の色、それに冬の眩い陽が反射して『ミミ』がよく見え辛い気がする。
更に、一歩足を踏み出して良く見ようとする。心臓の動悸が高まっていく。
135
:
美作くるみ『プラン9・チャンネル7』
:2024/01/12(金) 18:56:23
>>134
海辺に停まっていたのは一台の『スクーター』だった。
『カナリアイエローのベスパ』だ。
現代では珍しく『セルモーター』を搭載していない『旧型』である。
(『スタンド音声』は『本来の放送』を邪魔しないし、
『スタンド使い』なら『スタンド音声の広域放送』を『無視できない』)
(しかも反応するのは『スタンド使いだけ』だから、
『プラン9』の『放送』が聞こえない『一般人』は自動的に弾いてくれる)
雨田と美作は『公衆電話』を通して話した事がある。
もちろん互いの正体は知らないし、美作は声色を変えていたのだから、
雨田が気付く可能性は極めて低いだろう。
また、同じ『奇妙なゲーム』に参加した事もあったが、
これについても対面する機会は一度もなかった。
(つまり、『今の』が聞こえた人は『全員スタンド使い』って事になるわね)
まず近付く足音に気付き、次に投げ掛けられた挨拶に振り返る。
「こんにちは」
ニ コ ッ
特技の一つである『完璧なスマイル』を湛えながら、挨拶を返した。
『美作くるみの耳』は健康的で血色が良く、
『ピアスを開けた穴』や『穴が塞がった跡』は見当たらない。
ごく一般的な感覚から言えば『綺麗な耳』と呼べるだろう。
136
:
雨田 月人『インサニティ』
:2024/01/13(土) 17:30:43
>>135
(何で、こんな反応をしたかは星見板の機能の
ダイスチャットの結果を見てくだされば解ります……)
それは、美しい『ミミ』。
彷彿とする、あの頃の幸福な思い出。そして、在りし日の愛する『ミミ』と
美作くるみを思い起こす。
糸目の中にある瞳は、憧憬の過去と今、目の前に現存するミミを照合していた。
嗚呼……この『ミミ』は。
「び」
「微妙……かぁ〜〜〜ぁ゛」 ハァ…
雨田には、独特の『センス』を有してる。
美しく、完成されてる『ミミ』であれば、老若男女問わず愛し
その手元に置きたい欲求を抱えてるが、センスから外れていると感じると
急にテンションも落ちて、勝手に自分の中でそのミミ(人物)に愛想を尽かす。
(いや、ミミに穴開ける肉の塊とかよりは綺麗なミミにしてるモノって
それよかマシだよ? でも、うーん……うん、やっぱ無いなぁ)
結論。美作 くるみは雨田の中では運命の相手では無かったようだ……。
「…………えぇっと、あ、はい……ハー……明けましておめでとー御座います」
さっきまで、好青年っぽかったような気がしたが。今は見るからに
何だか萎えたような、面倒そうな気配で美作に目の前の何だか凄い失礼な
学生らしい人物は改めて挨拶を返した。
「いやー、年明けですね。目出度いですね(棒読み)」
(どうでも良いな、この『ミミ』は)
始終やる気なく、早く家にいる『ミミ』達と過ごしたいと言う欲求が
大部分を占めてきている。
137
:
美作くるみ『プラン9・チャンネル7』
:2024/01/13(土) 18:14:59
>>136
美作くるみは『パーソナリティー』だ。
その職業柄『声』には人一倍敏感だった。
声色から相手の内情を察する事で、『どう進行するか』を決めるからだ。
そして『雨田の声』から、『何故か分からないがガッカリされたらしい』と気付く。
本人を前にして、堂々と『微妙』などと口に出す雨田の露骨な態度は、
さすがに少し気に障った。
しかし、こんなものはトラブルの内にも入らない。
その程度の事で感情を表に出すようでは、『ラジオの仕事』は務まらない。
「あはは、あけましておめでとうございます。
まだまだ泳ぐには早いですけど、こうして見ると『冬の海』も味がありますねぇ」
ド ル ン ッ ! !
『一分の隙もない笑顔』のまま、思い切り『キックペダル』を踏み込み、
『キックスタート』でエンジンを始動させる。
心なしか普段より『力が入っていた』のは気のせいだろうか?
いずれにしても、雨田には分からない事だろう。
「それじゃあ私はこれで――――」
ニ コ ッ
一度振り返って会釈すると、ベスパは颯爽と発進する。
バァァァァァァァァァ――――――――――…………………………
スピードを緩める事なく走り続け、すぐに見えなくなった。
言わずもがな『次の場所』へ向かったのだ。
自分でも知らない内に『危機』を『回避』していた事を、
美作は知る由もない――――――。
138
:
コヤシキコヤネ『サイレント・ライト』
:2024/01/27(土) 03:57:26
ガララ
ゴ ロ ロ ロロロ
歓楽街のカプセルホテルからスーツケースを転がして来た。
旅行者か何かにも見える事だろう。
地元民でこの辺りを独り歩きする女性は多くは無いから。
「ふぁ〜あ」
駅のロッカーに荷物を預ける前に、海を見に来た。
不合理としか言いようがないスケジュールだったけれど、
一度駅に行ってから戻って来る気もしなかったから。
「な〜んにもない海。かわい〜い」
ピロン
スマホのカメラで、自撮りを1枚。風景を数枚。
そんな光景が、ここを訪れた者の目にも入る。
139
:
甘城天音『ビター・スウィート・シンフォニー』
:2024/01/27(土) 12:24:58
>>138
真冬の海
冷たい風に吹き荒れる波
何も無い閑散とした風景…のはずだ
1箇所だけおかしな所がある
何故か海の家が一軒開いている
そして、そこでかき氷を食べている奴がいる
140
:
コヤシキコヤネ『サイレント・ライト』
:2024/01/27(土) 15:22:09
>>139
自撮り写真はよく撮れているようだった。
ほぼ閉じたような細い目、風の冷たさに赤らんだ頰。
……が、愛用している狐ヘッドホンに、
いつの間にかよく分からないゴミが付いていた。
これはボツにする。削除ボタンを押した。
「わおわお! この季節に海の家?
星見町って『夏にクリスマス』するらしいし〜
コヤコヤ時差ボケしちゃいそうで心配だあ」
ガララゴロロ
「あっ、『季』差ボケ?」
スーツケースが海岸線のコンクリートに擦れ、
がたがたと音を立てながら海の家に近寄る。
「こんこん〜。やっほ〜。あたしの席空いてる〜?」
『店主』がすぐ近くにいるならその人に、
見当たらないか遠くにいるなら『一人の客』に、
コヤシキコヤネがなれなれしく話しかける。
141
:
甘城天音『ビター・スウィート・シンフォニー』
:2024/01/27(土) 16:45:35
>>140
クゥー
クゥー
クゥー
一見、閑散として何もなさそうな海だが
よく観察すれば意外と色々な物がある
寒々とした冷たい水の上をカモメが飛び回っている
カモメは冬の鳥だ
春から夏にかけて日本に在住しているのがウミネコで
冬にいるのがカモメだ
店員「いらっしゃいませ」
店主かは分からないが店員が応対する
意外と繁盛しているのか、そこそこの客いるようだ
よって一人で座れる席は残っていないため、あま公と同席をさせられる事になる
「……」
こんな冬にかき氷とか寒くないのか?
という所だろうが、むしろかき氷は冬こそ美味いのだ
冬の氷は溶けにくいため、美味しい状態が長続きするだとか
科学的に証明されている事だが、まあ詳しい事は省略しよう
海の家はしっかり暖房が効いてるのかかなり暖かい
だから冷たい物を食べて大丈夫なのかというと
「……(><)」ブルブル
寒いもんは寒いんだよ!
震えながらふわふわのかき氷、恐らく天然氷にたっぷりの練乳がかけられ
種を抜いてくりぬかれたアテモヤの果肉やスターフルーツが盛り付けられて、その上に洋梨のソースがかかっている
かなり珍しいトッピングだ
142
:
コヤシキコヤネ『サイレント・ライト』
:2024/01/27(土) 17:01:24
>>141
飛んでいるカモメも、落ちているシーグラスも、
見る人が見れば宝なのだろうけれど――――
「あたしもこの子と同じ、このカワイイの〜」
特にメニューなどは見る事なく、店員に注文を伝えた。
『甘城』に話しかけるのは、店員が去ってから。
相席なんてカワイクないけど、
カワイイ子と同じ席だからラッキーかな〜。
こんこん〜。この辺の子〜?
あたしも今度からこの辺の子になるんだあ」
手で狐のサインを作り、小さく振ってご挨拶。
コヤシキコヤネのコミュ二ケーションは『陽気』とは少し背景が違う。
「ねえ、ここっていっつもこんなに混んでるの〜?」
細い目を開いて店内を見渡す。紫の瞳を宿す目は大きく、無暗に輝いている。
143
:
甘城天音『ビター・スウィート・シンフォニー』
:2024/01/28(日) 13:08:43
>>142
メニューも見ずに注文するが
値段とかを確認しなくて良いのだろうか
「こんこん〜…」
コヤシキコヤネの真似をして狐のサインで返す
>ねえ、ここっていっつもこんなに混んでるの〜?
「知らない、初めて来た」
店内を見渡すと、新し目な建築物である事が分かる
最近建てられたのだろうか?
クゥー
クゥー
カモメの声が店の近くから聞こえる
店の周りにカモメが集まっているようだ
店員「お待たせしました」
少しすると、コヤシキコヤネの元にかき氷が届けられる
美味そうだが冬にはキツイ冷気を放っている
本当に食べるのか?
144
:
コヤシキコヤネ『サイレント・ライト』
:2024/01/28(日) 15:52:42
>>143
「わおわお〜、ノリがいいねえ。
あたし、ノリがいい子って好き〜。カワイイもん」
「あっ!カモメもカワイ〜」
注文した後に改めてメニューを見る、ということもしない。
身なりは悪くないとはいえ、裕福な子女という風貌でもない。
カチャ
狐耳のヘッドホンを首に下ろして、目がまた細く閉じた。
「へ〜、新し〜いお店なのかなぁ?
あたし、新しい物も好きなんだあ」
『新しい物が好き』と『最近建った店が好き』は、
あまり直接結びつかない概念のようにも感じられるけれど。
「相席したのにお話しないってカワイクないよね?
お話するなら名前言っとかないと不便だし、
あたしのことは『コヤコヤ』って呼んでほし〜、こんっ」
「『コヤ』一回はダメ〜」
等と言っていると注文したものが来た。
「わおわお、カワイイメニューをカワイク配膳! どもども〜」
店員さんによくわからないお礼を言うと、かき氷に手を付け始めた。
季節感の無さは気にしていないのか、かえって良いと思っているのか。
145
:
甘城天音『ビター・スウィート・シンフォニー』
:2024/01/29(月) 15:39:44
>>144
かき氷に着手するコヤシキコヤネ
確かに冷たいが、体の芯から冷えるといった事はない
頭がキーンってなる(この現象はアイスクリーム現象という)事もない
何故そうならないのか、それは天然氷を使用したふわふわなかき氷だからだろう
たっぷりとかけられた練乳が染み込んだ氷は物凄く甘いが
洋梨のソースの酸味と合わさる事でバランスが整えられている
トッピングのアテモヤは森のアイスクリームと呼ばれるだけあって
とても濃厚の甘さだが爽やかな後味でくどさを感じさせず
星型のスターフルーツがサクサクと小気味の良い食感を演出している
>あたしのことは『コヤコヤ』って呼んでほし〜、こんっ
>『コヤ』一回はダメ〜
「何で一回はダメなの?こんっ」
そこは拘る所なのか?
まあ、本人にしか分からない拘りというのもあるだろう
と、ここで客の何名かが店を出ようとしたのだが…
その時だったッ!!
グ゛ゥ゛ー゛
グ゛ゥ゛ー゛
客「畜生、またかよ!」
出て行こうとする客にカモメが襲い掛かって来た!
どうやらこの店から出て来た人間の荷物を強奪しようとしているようだ
その鋭い目つきは、まるで海賊のようだ
店長「いい加減にしろよバカ鳥共、客の回転率が下がるだろうが!!!」
店もカモメ共の蛮行に困っているらしい
146
:
コヤシキコヤネ『サイレント・ライト』
:2024/01/29(月) 17:41:10
>>145
「コヤコヤをマネするなんてカワイ〜イ。
なんでって〜、1回だけだとカワイくないから?」
自分で言っておいて疑問形なのもおかしな話だ。
「わおわお〜、ホンモノの『盗賊カモメ』が大暴れ〜」
グチャッ
グチャッ
「迷惑だけど、カワイ〜ね。
あ、あとこれおいし〜」
一口食べ、ソースと氷をかき混ぜながら、
野次馬みたいなことを言う。
スッ
「カワイイけど〜。
もっとカワイイお店に迷惑かけてるし、
あたしの荷物も取られたらカワイクないよね〜」
そして空いた手を顔の前に出すと、その上に『ヴィジョン』が浮かんだ。
彼女のヘッドホンに似た、黄色いラインが走る『機械のカラス』だ。
この町で妙なヤツを見かけたらだいたいは『スタンド使い』。
スッ
「カワイイコヤコヤ、カワイイだけじゃな〜い。
迷える皆を導いてあげるために『魔法』が使えるの〜」
「信じてくれる?」
カラスは天井近くまで浮かぶと、カモメに向けて『光線』を放つのだった。
といってもレーザー砲みたいな話ではなく、『ハイビーム』のようなものだけれど。
147
:
美作くるみ『プラン9・チャンネル7』
:2024/01/30(火) 03:09:18
>>145-146
愛車の『ベスパ』――――ではなく『ランドクルーザー』で通り掛かった。
洒落た『スクーター』ではなく、質実剛健の『オフロード車』。
たまたま車を出す用事があったのだが、時期外れの『海の家』が視界に入る。
「…………新しそうなお店だけど、この前もあったかしら?
でも、せっかく見つけた訳だし、やっておいて『損はない』わよね」
営業しているなら人もいるだろう。
それなら『宣伝』の価値はある筈だ。
車を停めて『プラン9・チャンネル7』を発現し、『屋外拡声器』を『虜』にする。
《『1001-111(イチゼロゼロイチ・イチイチイチ)』》
《『1001-111(ナイン・セブン)』》
高さ10mほどのポールに設置された『スピーカー』から響く『スタンド音声』。
『半径300m内』にいる『スタンド使い全員』に届く『謎のメッセージ』だ。
少なくとも『コヤシキコヤネ』と『甘城天音』には聞こえただろう。
しかし、『成果』を確認する術は美作にはない。
言い方を変えれば、『誰にも知られずに立ち去れる』という事だ。
「――――『See you again』」
再び車を発進させ、一切の証拠を残さず、現場から走り去っていく。
「最近、『ガソリン代』高いのよねぇ…………」
『燃費の悪さ』をぼやきながら、『カナリアイエロー』の車体が遠ざかる。
148
:
甘城天音『ビター・スウィート・シンフォニー』
:2024/01/30(火) 16:19:08
>>146-147
この店に客が多いのは何故か
答えは帰ろうとする客にカモメが集って来るせいで、帰るに帰れないからだ
「魔法?」
コヤコヤから出て来た『機械のカラス』を見る
妙な奴はだいたいスタンド使い
スタンド使いは引かれ合うというか、類は友を呼ぶというか
「…狐じゃないのか」
散々こんこん言いながら⚠️狐には全く似ていません!⚠️
なカラスだという事はツッコミを入れるが
そこは別にそんな気にする事でもないかもしれない
カモメに向かってビームを照射するカラスを見て
「で、どんな魔法?」
>《『1001-111(イチゼロゼロイチ・イチイチイチ)』》
>《『1001-111(ナイン・セブン)』》
「?」
スタンド使い以外には聞こえないスタンド音声
店内に反応する人間は自分以外にはいない
「…これが魔法?」
このタイミングで流れたせいでコヤコヤの能力と勘違いしてしまったようだ
149
:
コヤシキコヤネ『サイレント・ライト』
:2024/01/30(火) 22:09:53
>>148
「わおわお、かわい〜いお間違い。
だってキツネはコヤコヤでしょ〜?
コヤコヤの『魔法』は、いつだってカラスなんだあ」
「それでねえ、魔法なんだけど〜」
キョロッ
「効いてな〜い。カワイクな〜い。
カモメって光に弱くないの? 残念だこん〜。
あたし、鳥とか虫とかあんまり詳しくないんだあ」
キョロ
「なぁんかカワイクない音も聞こえたし〜。
虫の鳴き声ってわけじゃないと思うし、
コヤコヤのは、もっとかわいいやつ」 「だ、こ〜ん」
『光を出すだけのスタンド』なのだとすれば、
それは決して強い能力とは言えないだろう。
「この近くに他にも魔法使いさんがいたのかもね。
だって、あなたの魔法はきっともっとかわいいんだろうから〜」
スイゥ
『機械のカラス』は入り口へ飛んで行った。
カラス自体はカモメに見えないけれど、迫る光は見えるし、
それで逃げなかったとしたら、不幸だ。見えない爪とくちばしに襲われるから。
150
:
甘城天音『ビター・スウィート・シンフォニー』
:2024/01/31(水) 15:28:45
>>149
『サイレント・ライト』と同じ
機械鳥のヴィジョンを持つ『プラン9・チャンネル7』によって謎の音声が発せられたが
はっきり言って意味不明だし、かわいくもない
その辺の野良スタンド使いの悪戯か何かだろうか?
そう認識されてもしょうがない
>この近くに他にも魔法使いさんがいたのかもね。
>だって、あなたの魔法はきっともっとかわいいんだろうから〜
スタンドに反応したのだから、こちらもスタンド使いという事は当然バレるだろう
けどお菓子を作るスタンドはかわいいか?まあ、能力はかわいい部類に入るのかもしれない
ヴィジョンは別にかわいくもなんともないが
何も無い空間から何故か光が照射されている
それは周囲の客にもはっきり見える奇妙な光景だった
謎の光は入口で出待ちしているカモメ達に向かって飛んでいき
奴らの目を焼いたッ!!!(マジで焼けるわけじゃないが)
うぎゃあああああああああああ
そんな風に鳴いたかはともかく、
人間ならそういう悲鳴をあげそうな感じでバサバサとその場を飛んで散っていくカモメ達
とりあえず、一時的には退散させる事は出来たが
奴らはすぐに戻って来るだろう、抜本的解決はしていない
解決する義理は別にないわけだが
「目潰しする魔法かぁ」
また微妙に勘違いしている
151
:
コヤシキコヤネ『サイレント・ライト』
:2024/02/01(木) 01:31:52
>>150
所かまわずスタンド音声を流すのは、メガホンで絶叫するようなもの。
迷惑がられてもとりあえず名前覚えてもらえ!の『選挙運動』等とは違い、
スタンド使い以外への波及も望めない。しかも中身は怪文書だ。
「とってもカワイイ人、なのかもねっ」
意味があるようには、あまり感じられない。
それ自体が何か、能力の種火なのかもしれない――――――
「わおわお〜ひどい誤解だ〜。
そんな悪者っぽいのじゃないんだけどなあ。
でも、いいよお。あなたはとってもカワイ〜から」
ヒュイ
~ン
手元に戻ってきた『機械のカラス』。
「カワイイ人は、カワイければそれでいいんだこん〜」
その頭をなでるようなしぐさと共に、ヴィジョンは消えていった。
ジュグジュグ
もう片手ではかき氷をかき混ぜて、すくって食べた。
「そういえば! コヤコヤまだ、あなたのカワイイお名前聞いてないなあ」
152
:
甘城天音『ビター・スウィート・シンフォニー』
:2024/02/01(木) 16:24:35
>>151
ちょっと時間が経ったのと、暖房が効いているせいか
コヤコヤのかき氷はほんの少し溶けていたが
冬のかき氷は長持ちするため本当に少ししか溶けていない
ちょっとだけ溶けているのが、食感と味に変化を齎している
ふわふわ食感の中に甘い液体が潜んでいるといったところか
一方、この騒動の間にも食べ続けていたあま公は既にかき氷を完食していた
(((>_<)))
やっぱり冷えるせいか微妙に体が震えている
>そういえば! コヤコヤまだ、あなたのカワイイお名前聞いてないなあ
「…甘城天音」
そう、簡潔に名乗る
「魔法は」
かき氷の器に軽く触れて手を離す
「こういう魔法」
器の中に出現したのはかもめの玉子
岩手県の銘菓だ
何故能力を見せたか?
それはコヤコヤがスタンドを見せたからか
こちらも見せなければフェアじゃないと判断したからかもしれない
と言っても、お互いチラ見せ程度だろう
カモメが一時的に離れたからか、身動きの取れなかった客がぼちぼちと帰り出す
153
:
コヤシキコヤネ『サイレント・ライト』
:2024/02/01(木) 20:09:33
>>152
「わおわおわお、それじゃ〜あなた『アマアマ』だ!
相席だけの縁じゃないかもね。やっほ〜よろしく〜」
要するにコヤコヤの名前も『そう』なのだろう。
「やっぱりカワイ〜ね、アマアマさんっ。
いや、これはもうアマアマちゃんだねえ。
タマゴを生む魔法だなんて。
まぁ〜、生きてる卵なら可愛くないけど」
ザグザグザグ
「あ〜、甘くて冷たあ〜い。
その卵と同じだあ。
甘いし、生きてないしね」
あまり深い感想も言わないまま、かき氷を食べ終えた。
わざわざ来てわざわざ食べ終わったのだし、
口に合わなかったこともなかったのだろうけれど。
ダラン
「カワイイみんなが帰ってくこん〜。
あたしも食べ終わったし、もう行こうかな。
アマアマちゃんとは、またどこかでお喋りしたり、
遊んだり、もっと仲良くしたり出来そうだもんねっ」
首だけを後ろに倒して入り口を見ていたが、
だいたい最後の1人と言える人が出たら、そう言い出した。
154
:
甘城天音『ビター・スウィート・シンフォニー』
:2024/02/02(金) 15:17:04
>>153
「アマアマ…」
そういう呼ばれ方をされた事も
あると言えばあるが、呼ばれ慣れているわけでもなく、妙な感覚を覚える
コヤコヤが首を倒して入口を見ると、まだ何人かは居るようだが
大体の客はもう退店していた
ピッ
ボタンを押して店員を呼び出すあま公
既に食べ終えているため、こちらももう会計をするようだ
店員「2000円になります」
祭りとかの屋台で売ってるかき氷と比べるとべらぼうに高い
ああいったかき氷は原価20円程度で2、300円の値段で売っているのだが
ここのかき氷は天然の氷を使用し、アテモヤといった珍しいフルーツも使っている
意外と値段相応なのだろうか?いや、それでも割高かもしれない
あま公が会計をしている最中、店内で話し声が聞こえる
店員「何であのカモメ達、うちに何か恨みでもあるんですかね?」
店長「ちょっとカモメの巣から卵を取ってゆで卵とか目玉焼きにして売ってるだけしなぁ
恨みを買うような事した覚えなんかないぞ」
155
:
コヤシキコヤネ『サイレント・ライト』
:2024/02/02(金) 21:10:42
>>154
「カワイイお店、カワイイメニュー。
それにカワイイお店の人。あと、カワイ〜いアマアマちゃんも。
星見町って、とってもカワイイ町かもねえ」
ゴソ
特別、こともなさそうに1000円札を2枚。
自分の分のお解決も済ませると―――――
「アマアマちゃんとあたしの出逢いに、
こんこんグラッチュレーション〜」
ヒョイ
狐のハンドサインを両手で作ってそれをくっつけ、
それから、席から立ち上がった。
「それじゃ〜ね。お相手はカワイイコヤコヤでした〜。ばいば〜い」
カモメもいない今、立ち去るのはすぐ。
海岸線の灰色の景色に、その姿は結構遠くまで見えていたけれど、
行く方向が同じでもないなら、やがて見えなくなって、町の中に消えていった。
156
:
甘城天音『ビター・スウィート・シンフォニー』
:2024/02/03(土) 16:23:52
>>155
2枚の1000円札で支払うコヤコヤに対して
紫式部が描かれた紙幣1枚で会計をするアマアマ
レア紙幣だが特別エラーなんかが無ければ額面通りの価値しかない
「ばいば〜い、こん」
狐のサインを作るコヤコヤに狐のサインで返す
鬼の居ぬ間にならぬ、鳥の居ぬ間に店を出るコヤコヤ
アマアマも続いて店を出ていく
二人が店を出て行った後、カモメ達はすぐに戻って
ピーヒョロロー
先程よりも更に数を増しているカモメ達がけたたましく鳴いている
店員「店長!奴らまた来ましたよ!」
店長「どうしたもんかなぁ、あいつらにカモメの卵料理を振舞ったら許してくれると思うんだけど」
店員「それ良い考えですね、そうと決まったらもっと卵を乱獲しましょうよ!」
店長「よーし!それで行くか!
そうと決まったら獲って獲って獲りまくるぞ!!!
うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉやるぜよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!」
この世界は弱肉強食だ
カモメとこの店の戦いはしばらく続く事になる
157
:
名無しは星を見ていたい
:2024/06/15(土) 22:16:18
問題名:『憤怒の鎮火』
出題者:門倉
主な状況:
出くわしてしまったのは『拳銃』をもった二人の男。
静かな『憤怒』を備えた二人は、それぞれ君に『拳銃』を向ける。
近くにある『スーツケース』を見るに、おそらくは
何らかの『取引』を君が目撃してしまったというところか。
十中八九、一般人ではあるが、対峙したこの段階で、
『拳銃』の使い手を鎮圧するのはそれなりに骨が折れそうだ。
『場』に混乱をもたさらないよう、速やかに男たちを制圧する必要があるだろう。
詳細:周囲の細かい部分は参加者次第。
常識的な範囲で自分の有利な設定にして構わない。
必要条件:『スタンド』をしっかりと使おう。
実行途中で自らの『スタンド名』と『決め台詞』を口に出そう。
備考:『魔法の呪文はおこのみで!』関連の活動です。
対応いただける方は、以下のURLおよび※の説明をご確認ください。
ttp://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/comic/7023/1655987686/319
※『朝山』&『木崎』チームのうち、『朝山』が諸事情により抜けたため、
※『門倉』&『木崎』チームとなり、緊急で『魔法使い』の情報や
※小道具となりうる『魔法使い由来のアイテム』の入手先を探しています。
※基本ルールは『妄想クロスワード』の出題に準じますが、『リアル』です。
※上記の問題は『門倉』が『演出』しているものであり、『解決』は、
※『門倉』および『木崎』に『観察される事が前提である』事をご了承ください。
158
:
鷲見 健治『2NDハンド・ファイア』
:2024/06/20(木) 00:35:56
>>157
「拳銃かァ〜! 超久しぶりだなァ! まぁ、当たらねぇがよ!」
「行くぜ!『2NDハンド・ファイア』」
近くのスーツケースを超高速で奪い取り銃弾を躱し男の顔面を殴打する(パス精:BBD)
さらに背後から発射される銃弾をスーツケースで防ぎながら男に接近して顔面に殴打して『赤熱』を付与。
「俺の『2NDハンド・ファイア』は殴打を『赤熱』に変える」
最大で『1500℃』まで上げられるんだぜェ?」
「さらに『炸裂』させて顔面を木っ端微塵にもできる」
「だからよォ〜ボスの居場所を吐けやこらァァァ!!」
5分後、そこには『500℃』で顔面を焼かれた男たちが転がっていた。
再び、裏の世界に帰ってきた鷲見とヤクザたちの戦いが火蓋を切って落とされた。
159
:
『憤怒の鎮火』
:2024/06/24(月) 23:28:06
>>158
(鷲見)
ttp://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/comic/7023/1453050315/237
近距離パワー型にとって、銃弾の対応は出来ない所業ではない。
精密性の低さがややネックではあったが、『スーツケース』という
『盾』を上手く用いることで、『鷲見』は銃弾をうまく防ぐことが出来た。
『500度』で顔面を焼き、更に尋問のひとつでもしようとするが―――
「揉め事かッ? 警察が来るぞ――ッ」
どこからともなくそんな声が響く。
これ以上ここにいるのは面倒な事になりそうなので、
鷲見は撤退する事になるだろう。
⇒『CLEAR!』
……… ……… ………
「………けっこうエゲツなく、やっちゃったな」
『倉庫街』の屋根の上で『門倉』と『木崎』が見守っていた。
正直、怪しいルートから雇ったそれなりに怪しい男たちだし、
『危険』も折り込み済みの契約だから良いと言えば良いのだが、
むしろ『鷲見』に無駄な罪を重ねて欲しくない関係上、
『警察が来た』とか言ってなんとか追い払った。
「―――ゆだねくん、大丈夫かい?
君にはちょいと刺激すぎたが、
目の前の所業は、『悪魔的』と言えるかもしれないな。
『彼』を取り入れるかは、よく検討しよう」
そうこうしているうちに本当に誰かが呼んだのか、『パトカー』のサイレンが響き始めたので
あわててその場を後にする二人であった。
160
:
美作くるみ『プラン9・チャンネル7』
:2024/07/11(木) 19:37:23
ジェットキャップとスポーツウェアを身に纏い、
自転車に乗って海沿いのプロムナードを軽快に走り抜けていく。
明るい『カナリアイエロー』に塗装された車体は、
『バーディー』と呼ばれるドイツ製の折り畳み自転車だ。
ビーチに到着すると、手頃な場所にレジャーシートを広げ、
海の家でレンタルしたパラソルをセッティングする。
「さてと――――――」
ス ル ッ
バ サ ッ
そして、躊躇する事なく衣服を脱ぎ始め、健康的な肌を惜しげもなく晒す。
当然ながら、ウェアの下には『水着』を着用していた。
スポーティーなデザインが特徴的なオレンジ色のビキニ。
理想的なスタイルを維持する為には、こうして人前に出る事も大切だ。
シートに腰を下ろし、リラックスした気分で、打ち寄せる波の音に耳を傾ける。
161
:
有鹿 真冬『アルカディア』
:2024/07/14(日) 20:44:27
>>160
「はァァァ〜〜〜いッ!! 今年も突撃アイドル取材をしちゃうぞ!」
筋肉質な司会進行の男性が少女に叫ぶ。
カメラに映るのには慣れてないのか表示は真っ赤だ。
その足元では『鹿角』を生やしカラフルな体毛を生やした『不自然』な『エゾユキウサギ』が人参をバリボリと食べている。
「ダンス! 歌唱力! 可愛さ! これらをマスターしていれば、君はアイドルだ!」
「きみの可愛さは満点〜!」
テレビの収録を見ようとした観衆から薄っすらと見えるかもしれない。
濡羽色の髪を背中にまで伸ばしたユニセックスな風貌。色素の薄い黄金の瞳。人間性を感じさせない優美な顔立ちは、少年の凛々しさと少女の可憐さを完璧に両立させている。
退廃的な儚さと淫靡な魅力を人間が成長するに伴い失う幼い子供の神性に近いあるがままの美しさを留め持つ美少女だ。
「いや、アイドルに成りたいけど今は復讐で手一杯で…
というかこの姿も授業をサボった罰なんだ…」
嫌がるりつつも振り切れない真冬の女性と聞き間違える可愛らしいハスキーボイスがまた司会進行を興奮させる。
足元にいる『不自然』な『エゾユキウサギ』はスタンドにしか見えないが本体を心配することもなく人参を食べている。
162
:
美作くるみ『プラン9・チャンネル7』
:2024/07/14(日) 21:39:50
>>161
降って湧いた騒がしさに気付き、レジャーシートの上に寝転びながら視線を向ける。
おそらく『ローカル番組』の撮影か何かだろうと結論付けた。
あの場慣れしていないMCは、とても『全国放送』とは思えない。
「ふぅん――――」
どちらかといえば、『インタビューされている相手』が目を引いた。
美作自身、『国民的美少女コンテスト』の『準優勝』がきっかけで、
芸能事務所にスカウトされた人間である。
まずルックスや愛嬌などの『素材の良さ』が最初にあって、
『アイドルとしての実力』は後から培われたのだ。
もちろん我ながら才能があったと思うし、それを伸ばす努力も怠らなかった。
だからこそ、一時代とはいえ一世を風靡する事が出来たのだろう。
(ずいぶん堂々と『スタンド』を出してるのね)
そして、美作は『スタンド使いのアイドル候補』を探している。
目の前の光景に興味を持つのは自然な成り行きだった。
だが、誰でもいい訳ではない。
もし適当な人材を連れて行ったら、
『スカウト担当』として自分の評価が下がるだけでなく、
『門倉派』の看板にも傷がついてしまう。
つまりは『能力』によるという事だ。
「まぁ、収録の様子でも見学させてもらおうかしら」
あんなに大勢いる前で『スタンド使い』だと明かす気にはなれない。
このまま『日陰』で眺めておこう。
自分が『スポットライト』を浴びていた日々は、もう過去の思い出なのだから。
163
:
有鹿 真冬『アルカディア』
:2024/07/14(日) 23:32:02
>>162
「先ずは歌ってもらえるかな?」
司会進行にマイクをヒョイと渡された途端に真冬の表情が変わる。
『アイドル』にとって武器とは『歌』なのだ!
先程までとは姿勢が違う。頭の中でもセトリを組んでいく。
ttps://m.youtube.com/watch?v=a51VH9BYzZA&pp=ygUW44G744GX44G-44Gh5b2X5pifIOatjA%3D%3D
ttps://m.youtube.com/watch?v=t506FUrsOa4&pp=ygUc6Zuq6Iqx44Op44Of44KjIOODleOCqeODi-OCpA%3D%3D
ttps://m.youtube.com/watch?v=8tCT0I9Tc7s&pp=ygUS55yf44Gj6LWk44Gq6KqT44GE
「いつまでも! 何処までも! いつまでも! 何処までも!」
(※実際とは違う歌詞を歌っています)
頼まれてもいないの次々と歌い続ける真冬。
水を飲まず汗一つかくこともなく3曲を歌い終える。
その頃には観客は数倍になっていた。
「き、きみ、歌上手いねェェ!? しかし、ホロライブの歌が多い!」
「それに間奏の間に側転とバク転を隙あらば!!」
容姿が良いから声をかけたらガチな奴に出会ってしまった感じだ。
歌唱力とダンスも文句も完璧にこなす野良SSR原石だ。
「物心ついた時には歌を、塾でダンスレッスンを受けてました
ホロライブの曲が多いの箱推しだから!
ダンスレッスンはころねさんに憧れてですね〜」
「けど、男じゃぼくの望む可愛いアイドルにはなれない!
だからお誘いはお断りします」
「ぼくは罰ゲームで化粧をされただけの男です!
男は可愛いアイドルになれないんだッ!!」
歌や踊りが上手い重度の極めたオタクなだけだったが磨けば光るものがある。
司会が真冬を改めて勧誘するが男だからという理由で断られてしまった。
どう見て女だが罰ゲームの化粧による力らしい…
そのまま真冬は可愛いアイドルになれない現実を叫ぶと観客を押しのけて逃げていく。
164
:
美作くるみ『プラン9・チャンネル7』
:2024/07/15(月) 00:35:54
>>163
軽く目を見開いて、眼前で繰り広げられるパフォーマンスを観察する。
客観的に見ても、かなりの練習を積んでいる事が窺えた。
なるほど、確かにレベルが高い。
ただし――――『アマチュアとしては』だが。
歌も踊りも完璧に近いが、何もかも『教科書通り』だ。
はっきり言って、『完璧にこなすだけ』なら、訓練すれば誰でも出来る。
その人にしか出せない『独自性』が欠けていた。
しかし、これは『プロの舞台』ではない。
そこまで求めるのは酷というものだろう。
(せっかく新しい水着を用意したのに、
見せる相手がいなくて退屈してたところだったし――――)
ス ゥ ッ
(ちょっと声を掛けてみましょうか)
緩やかに身体を起こし、走り去った少年の方へ歩いていく。
「――――はぁい、こんにちは」
有鹿の視界に映るのは、スポーティーなデザインのビキニを纏い、
サンバイザーを被った若い女だった。
細すぎず太すぎず、適度に引き締まった理想的なスタイルだ。
明るい『ビタミンカラー』が良く似合っている。
「さっきカメラに映ってたでしょう?
同業って訳じゃないけど、私も『メディア関係』の仕事をしてるから、
少しだけ気になってたの」
スッ
そう言いながら、よく冷えた未開封のスポーツドリンクを差し出す。
「いいものを見せてくれたお礼に私からの奢り。
暑い中あれだけ動いたんだから、キチンと水分を取らなきゃダメよ」
もう片方の手には、同じペットボトル飲料を持っていた。
これは自分用だ。
それを剥き出しの肌に当て、暑気で火照った身体を冷ます。
165
:
有鹿 真冬『アルカディア』
:2024/07/15(月) 01:12:06
>>164
所詮は趣味の勢いを出れない誰かの歌しか歌えない紛い物だ。
身体能力に関しても男性の豪快さは有っても女性のしなやかさがない。
ただ、『アイドル』という存在に関しては熱い想いがあるようだ。
「こんにちは〜! お姉さんって誰かに似てるような…
殉職した父が好きなアイドルに…」
「あはは、いやはや、一気飲みしようとしてたんですが身体に悪いか…」
「おっと、自己紹介自己紹介。ぼくは有鹿真冬。小学6年生です
小さい頃から眠れなくてずっとアイドルを見てきたんです!」
それにしてもこのお姉さんってスポーツしてるのかな?
自分は食べないから痩せないとは違う引き締まったスタイルな気がする。
「メディア関係者。ううん…お姉さんに声がそっくりな人がいたような…」
ドルオタは推しじゃなかろうが記憶の底にアイドルたちの輝きを仕舞っている。
そこをキモいと取るかは人それぞれだが…
166
:
美作くるみ『プラン9・チャンネル7』
:2024/07/15(月) 02:01:08
>>165
ペットボトルを開封し、口をつけて喉を潤すと、素肌に浮かぶ汗が引いていく。
「あははは、ホントに『アイドル』が好きなのねぇ」
『殉職』という単語は聞こえたが敢えて触れない。
初対面の相手に聞くような話ではないだろう。
今は他に気になる事もある。
「自己紹介されたなら名乗り返さないとね。
私は美作くるみ――『パーソナリティー』をやってるの」
そして、『星見FM放送』がある方角を指差す。
「知ってるかどうか分からないけど、『星見FM』に所属してるわ。
『パラボラアンテナ』が目印の建物よ」
『アイドル時代』の芸名は『MIMI』。
本名である『美作くるみ』の『最初』と『最後』を取った名前だ。
アイドルとしての活動期間は数年だったが、飛ぶ鳥を落とす勢いの売れっ子だった。
流行の変化とライバルの台頭によって、徐々に世間からの人気が落ちていき、
ひっそりと引退した後は、当時の栄光は忘れ去られている。
しかし、『マニア』であれば『同一人物』である事に気付けるかもしれない。
167
:
有鹿 真冬『アルカディア』
:2024/07/15(月) 02:41:46
>>166
「ぼくにとってアイドルは希望にして最後の砦なんだ…
ずっと眠れない日々も、家族が消えた今も耐えられる…」
『エクリプス』への『復讐心』は揺るがないがそれは義憤のようなものだ。
世界への強い『絶望』から『アルカディア』も生まれた。
だが、『アイドル』という存在はそれ以上に尊かった。
「アイドルの歌が好き。踊りも好き。お喋りも好き。下ネタはちょっと…」
「そういえば、父さんは美作くるみさんのアイドル時代も好きだった
名前が可愛らしくていつも元気で愛くるしい娘だと…
本当に死ぬまで美作さんのアイドル時代をぼくに見せて…」
「仕事の都合上、握手会やライブには行けなかったが父さんは
美作くるみさんのことが大好きだったと思う」
など、と真冬がアイドルを語っていると下からガリボリガリボリと何かを砕く音がする。
『鹿角』を有しカラフルな『エゾユキウサギ』が人参を食べているのだ。
「あーっ! もう食べちゃった! 『アルカディア』は仕方ないな…」
バッグから新しい人参を取り出して『エゾユキウサギ』に差し出すとバリボリとASMRめいた音を出しながら食べ始めた。
「美作さんの放送はいいよね。如何なる時も癒しをくれる
音程が聞き取りやすくていいと思う! 絶対に意図的!」
「なんかたまに変なリスナーがお便り出してくる好きなんだぁ!」
ちょっとまたオタ話に着火している気がしなくもない。
真冬にとってアイドルとは自分を鼓舞してくれる存在なのだ。
「美作さんはアイドル…やってて楽しかった…?」
「私達ファンって世間じゃ疎まれてるけどアイドルにとっては…?」
過去にアイドルをしていた美作くるみにしかできない受け答えだ。
真冬は不安そうに美作を見上げ不安気な表情をしている。
168
:
美作くるみ『プラン9・チャンネル7』
:2024/07/15(月) 16:48:53
>>167
『MIMI』の本名が『美作くるみ』という情報は、
熱心なファンなら知っている事であり、有鹿の父は『そちら側』だったようだ。
「もう少し秘密にしておこうと思ってたけど、
そこまで知られてるんじゃあ仕方ないわね。
フフ、たくさん褒めてくれてありがとう。
よかったら、これからもラジオを聴いてくれる?」
有鹿が人参を取り出している間に、足元の『エゾユキウサギ』を一瞥する。
「ええ、もちろん楽しかったわ。
辛い事も沢山あったけど、楽しい事の方が多かった。
だから、アイドルを続けられたのよ」
「結局は辞めちゃったけど……お陰で『今の仕事』に出会えた。
私がアイドルを目指したきっかけも、
ラジオから元気をもらった事だったから、
私の『原点』みたいなものかしら」
「アイドルもパーソナリティーも、『マイク』を通して誰かを応援できる。
そして、今も昔も『聴いてくれる人』に支えられてる。
そんな仕事が出来て、私は幸せよ」
――――――ズギュンッ
言い終わると同時に、美作の肩に『機械仕掛けの小鳥』が出現した。
『アルカディア』と同じく『動物のヴィジョン』を持つスタンドだが、
どちらかといえば『動物を模した機械』という方が正しい。
近未来的な雰囲気を持つスマートなフォルムが特徴的だ。
「――せっかくだから、『こっち』の自己紹介もしておくわ。
あなたのウサギさんみたいに動き回ったりはしないけど。
とってもおとなしい子なの」
その言葉通り、『小鳥』は微動だにしない。
よく観察すれば、背中に『マイク』が搭載され、
口の中には『スピーカー』が内蔵されている事が分かるだろう。
それらが『何を意味するか』までは謎だ。
169
:
有鹿 真冬『アルカディア』
:2024/07/15(月) 23:40:25
>>168
「あはは、これからも手紙を送り続けて読ませちゃいますよ!」
下手なガチャより当たりを引き当てるのは簡単だろう。
しかし、やはり競争率というものは熾烈なものだ。
それでも推しに届くと信じて。
「ひとつひとつをそんなに大切にできる美作さんだから選ばれたの
かもしれないよ。
ぼくも美作さんのラジオに助けられてるから本当に感謝してる」
「ぼくには出来ない応援を今も昔も『マイク』一本でやれるアイドル
こちらこそそんな美作さんの放送を聞けて幸せ!」
直後に現れたスタンドにはびっくりしたが可愛らしく機械仕掛けなところが美作さんらしかった。
昔に発現していれば、本物の小鳥が出て来たかもしれない。
何故か、マイクが付いてるが能力関連だろうか?
「アンティークショップに有りそうな格がある小鳥さんだ。
マイクが有るってことは美作さんの歌を拡散できないかな?」
「では、ぼくも。こいつは『アルカディア』。『鹿角』に絶大なスタン
ドパワーを宿しているよ。主にバスと正面衝突できるぐらいかな?」
「能力はね、『不自然殺しの冬』。人が作ったものなら大抵は『凍死』
させるよ。概念や憲法に宗教までも『凍死』できるね」
「あと、こいつが能力を発動すると周囲30mが0度になるんだ…」
170
:
美作くるみ『プラン9・チャンネル7』
:2024/07/16(火) 01:06:05
>>169
「へぇ!なんだかスゴいのねぇ。
私も顔は広い方だけど、そんなのは聞いた事がないわ。
フフッ、今みたいな季節ならクーラー要らずで涼しくなれそうね」
ずいぶんと範囲が広い能力だし、その効果も変わっている。
途中までは『スカウト』する事も視野に入れていたが、
『射程距離』が耳に入った段階で、その考えは消えてしまった。
『周囲30m』では『観客席』にも被害が及ぶ。
調整が効かない能力を舞台に上げる訳にはいかない。
バスと正面衝突する『圧倒的なパワー』も『門倉派』では活かせないだろう。
「教えてもらって悪いんだけど、私の能力は秘密なの。
ただ、『私に似た能力』は見た事がないわね。
それだけは言えるかしら」
美作の肩に止まる『機械の小鳥』からは、
『アルカディア』のような破壊力や攻撃性といったものは全く感じられない。
しかし、美作の言動には確固たる自信が溢れている。
『自分にしか出来ない力』――『圧倒的な情報拡散能力』に由来する揺るぎない矜持だ。
「私の放送が聴けて幸せって言ってくれたから、
そのお返しをしたいんだけど、さすがに今日は『名刺』を持ってきてないし……」
パチンッ
その時、一つのアイディアが浮かび、指を鳴らした。
「もし良かったら、一緒に『写真』を撮らない?
ここで私達が出会った記念にね」
耐水性のあるクリアバッグの中からスマホを取り出し、有鹿に提案する。
『水着姿の美作くるみ』は、それなりに『レア』な被写体だ。
そういう意味でも貴重かもしれない。
「――――どうかしら?有鹿くん」
171
:
有鹿 真冬『アルカディア』
:2024/07/16(火) 01:51:56
>>170
「あぁ、秘密でいいよ。よく考えたらスタンド能力ってバレたら
不利になりそうだからね!」
「スタンド使いの駆け引きと暗黙の了解とかよく知らないんだ…
実はぼく、天然のスタンド使いだから親は居ない」
『アルカディア』を堂々と出している理由は彼の耳が良い点を利用してあるからである。
だが、本来は『概念否定系』という能力だから情報収集は苦手だ。
それに真冬は未だに親無しのスタンド使い。美作のスタンドを知ったところで真価を見出だせないだろう。
「えっ! め、名刺持ってない…んだ…」
「えっ、写真とか良いの!? なら、喜んで一緒に写りたい!」
「あっ、あと、バッグの父の遺品の手帳にサインしてくれないかな!
頼むよ! この通り!」
バッグから高級そうな手帳を取り出して頭を下げた。
生前に叶えられなかった父の願いを叶えてやりたいのだろう。
写真撮影に緊張してきたのか顔が真っ赤なだ。
こういった正直なところは小学生の特権だ。
172
:
美作くるみ『プラン9・チャンネル7』
:2024/07/16(火) 06:18:54
>>171
『スタンド能力がバレたら不利になる』という意見は正しい。
特に『プラン9・チャンネル7』に対しては。
例えば、さっき聞いた『アルカディア』の能力を、
この海辺に設置されている『防災無線スピーカー』を使って、
『半径300m内』の『不特定多数のスタンド使い』に『拡散』するというような事も、
今やろうと思えば出来てしまう。
それが『スタンド使い』としての『美作くるみの強さ』だ。
『不自然物』を『凍死』させる『アルカディア』とは対照的に、
まさしく『現代的な力』といったところだろう。
「ええ、勿論いいわよ。
私のサインで良ければ喜んで。
久し振りだから、ちょっと緊張するけど――――」
サラサラサラ…………
差し出された手帳を丁重に受け取り、手にしたペンを紙面に走らせる。
そこには『美作くるみ』ではなく『MIMI』と綴られていた。
『リクエスト』に応えて、アイドル時代の芸名だ。
「――――はい、どうぞ!大事にしてくれる?」
スイッ
手帳を返してから、赤面する有鹿に歩み寄って、躊躇なく肩を並べる。
「それじゃあ撮りましょうか。
『私の』じゃなくて『有鹿くんの』じゃないとダメね。
ええと、スマホは持ってる?
近くにいないと二人が入らないから、もう少し側に来た方がいいんじゃないかしら」
お互いの距離は非常に近い。
このままシャッターを切れば、ちょうど『ツーショット』が撮れるだろう。
そのタイミングは有鹿に委ねられている。
173
:
有鹿 真冬『アルカディア』
:2024/07/16(火) 19:52:43
>>172
美作くるみの『プラン9・チャンネル7』は情報型スタンドとしてはかなり優秀な方だろう。
しかし、スタンド使いも人だ。テリトリーに見知らぬスタンド使いの話を垂れ流されては困惑、苛立つ者もいる。
要はその情報を求めている者にだけ情報の与えられるかが課題なのかもしれない。
それさえ見極められた時に星見町の情報の流れを『プラン9・チャンネル7』は支配できる。
「昔の芸名だ! 父さんやったよ! お供えしてあげるから…
父さん…父さん…あなたの死が報われたよぉぉ………」
美作くるみのサインに感極まって涙を流す真冬。
誰にも賞賛されずに『エクリプス』の情報だけを残し口を割らず死んでいった父。
その死が報われたような気がしたのだ。
「ちょっと待っててね…自撮り棒…自撮り棒…有った…!」
顔を真っ赤にしながら自撮り棒にスマホをセットする。
これで準備万端だ。アイドルとツーショットなど恐れ多くて腕が震える。
「い、行くよ! 3! 2! 1! 0!」
『ポコンッ』
『パシャ!』
「うん、上手く撮れてる! 待ち受けにしよう! これで勝ち組だ!」
何が勝ち組かは謎だが写真は上手く撮れていた。
肩を寄せ合い二人が笑顔を向けるツーショット。
普段から上級生の友達の心霊スポットYouTuber活動を手伝った賜物だろう。
174
:
美作くるみ『プラン9・チャンネル7』
:2024/07/16(火) 21:42:13
>>173
美作くるみは『モラリスト』であり、情報を悪用する気など全くない。
だからこそ、この街の住人に危害を及ぼす者が現れたとして、
それが美作の耳に入ったなら、あの『魔物事件』のように、
『注意喚起』を行う可能性が出てくるというだけだ。
そして、その時は『正式なアリーナ名義』で放送する。
無論、『有鹿真冬』が無秩序に人を傷付けるような人間ではない以上、
情報を知らしめる理由は何もなかった。
過去のゲリラ放送で、美作は『門倉派』の名前を出さなかった。
それは『布石』であり、一種の『演出』だ。
『その先のプラン』は、門倉には既に説明してあるのだが、
それ以外の者が知る機会は『もう少し後』になってから――――。
「うん、いい感じに映ってるじゃない。
私のスマホでも撮らせてもらうわね」
パ シ ャ ッ
確認を取った上で、今度は自分のスマホで撮影する。
こちらも良い画が撮れた。
有鹿は女装したまま映っているのだが、写真からは『同性』に見えるだろう。
「ねぇ、有鹿くん――『ビーチコーミング』を試してみない?
遠い海の向こうから流れ着いた物を探してみるの。
もしかしたら『宝物』が見つかるかもね」
有鹿を手招きしながら、寄せては返す波に近付いていく。
ふと腕を伸ばすと、一つの『貝殻』を拾い上げる。
表面の砂を指先で払い、それを有鹿に見せた。
パステルカラーのような淡いピンク色が目を引く『桜貝』だ。
アクセサリーの材料としても人気があるらしい。
「――――『季節外れの桜』ってところかしら」
辺りを探してみれば、他にも何か隠れているかもしれない。
ちょっとした宝探しだ。
きっと、それは『夏の思い出』の一つになるだろう。
175
:
有鹿 真冬『アルカディア』
:2024/07/16(火) 22:44:53
>>174
もし、美作くるみが情報を悪用する人物であったなら『プラン9・チャンネル7』は醜悪で下劣なスタンドになっていただろう。
しかし、大人としての矜持や高い道徳心が相まって問答無用で悪さができるスタンドではなく、主に人を繋げる情報伝達のスタンドの側面が強くなったのだろう。
スタンド本体は精神により形作られる。
『アルカディア』は全ての繋がりを絶ち孤立化させる。
『プラン9・チャンネル7』は全てを繋ぐ。
正反対の二人だが戦いにはならなかった。不思議なものである。
「これはネットに晒しても『同性』にしか見えないね…?
我ながら母似で良かったなー、と思うよ!」
「あの、写真ついでに連絡先の交換…しないかな…
美作さんが酷い目に遭った時にたすけるよ…!」
真冬の顔がさらに真っ赤になり茹で蛸のようだ。
受け取ったスポーツドリンクを一気飲みして色々誤魔化す!
「ビーチコーミング! 我ながら女々しいけど貝殻のアクセサリー
を作ったりしてるんだ!」
同じように桜色やアメジストのような宝石の如き貝殻を集めて楽しむ。
貝殻のアクセサリーが完成したら美作に贈るも自分がするも良し。
「あぁ、なんて楽しい…こんなの久しぶりだな…」
「サイン入り手帳にツーショット。まるで友達のよう…」
真冬は『復讐者』だがそれだけに重きを置いてない。
父から教わった人間の善性の発露『黄金の意志』も目指している。
今日の『思い出』は一歩だけ真冬をそれに近づけたかもしれない。
176
:
美作くるみ『プラン9・チャンネル7』
:2024/07/19(金) 00:22:24
>>175
有鹿真冬と美作くるみの能力は、見方によっては対照的な関係を持つと言える。
一方、スタンド使いとしての心構えには近い部分があった。
自らの才能を悪用しない『志』だ。
「ええ、もちろん――――」
スッ
「でも、助けてもらえるのは嬉しいけど、
できれば『それ以外』の時にお会いしたいかしら」
思い出したのは、『鷲見健治』と出会った時に巻き込まれたトラブルだった。
『プラン9』の専門分野は『情報戦』であり、腕ずくで解決するような力はない。
なるべくなら危ない目に遭うのは避けたいところだ。
ともあれ、頼りになる味方が増えるのは心強い。
連絡先の交換を滞りなく済ませ、有鹿と共に『宝探し』に興じる。
「フフ、私も何だか久し振りにのんびり出来てる感じよ。
貝殻のアクセサリー、いつか完成したら見せてね」
有鹿に『目標』があるように、美作にも『目指すもの』がある。
『その時』は、まもなく訪れるだろう。
本当に『もうすぐ』――――。
177
:
村田瑛壱『ディズィー・スティック』
:2024/08/09(金) 23:33:21
コンクリートで護岸された岸辺で、波打ち際に目を凝らす。
「この辺にもあると思うんだがな。」
夏の日差しにも関わらず『学ラン』姿の男の片手には『バケツ』。
手には『軍手』といういでたちだ。
178
:
村田瑛壱『ディズィー・スティック』
:2024/08/10(土) 22:52:21
「お、あったな。」
お目当てを見つけると、波打ち際に腕を肩まで突っ込み、その『何か』をもぎとった。
濡れて黒く光る貝・・・『イガイ』と呼ばれる貝だ。
「これだけあれば晩飯には十分だな。」
もぎとったイガイをバケツに放り込むと、日差しに顔をゆがめながら街へと帰っていった。
179
:
甘城天音『BSS』with『ラムネ瓶猫』
:2024/08/19(月) 23:21:58
青い小波の音がする静かな海岸
一匹の猫と飼い主が散歩をしている
猫というがイタチのような体型をしていて
水のように透き通った青い体毛をしている変な猫だ
180
:
小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』
:2024/08/23(金) 06:21:17
>>179
向こうの方から一人の女が歩いてくる。
洋装の喪服を身に纏い、黒いキャペリンハットを被っていた。
同じように散歩しているらしく、お互いの距離が少しずつ縮まっていく。
「――こんにちは……」
会釈と共に挨拶を交わし、すれ違おうとしたが、不意に足を止めた。
「……珍しい猫ですね」
ぽつりと呟くように、素直な感想を口にする。
一見して分かる奇妙な姿だ。
そして、変わった猫を見るのは初めてではない。
181
:
甘城天音『BSS』with『ラムネ瓶猫』
:2024/08/23(金) 16:07:42
>>180
お盆を過ぎたら霊に引っ張られるから海に入っちゃいけない
という俗信があるが、こういう話には意外とちゃんとした理由があったりするものだ
台風の影響で起こりやすくなる土用波や離岸流
そして大量発生するクラゲ
これが霊の正体というわけだ
なるほど、確かにこの時期の海には入らない方がよさそうだ
波に流され漂うクラゲを見ていると喪服を着た女性が歩いてくる
この時期の海に現れると、オカルト染みた事が起こりそうな雰囲気だ
「どうも…」
しゃがんで猫と思わしき生物に手招きをする
猫「シュワァァ」
鳴き声も変わっている
ラムネを開栓したような、炭酸飲料の発泡音のような鳴き声を出しながら飼い主に近寄って行く
182
:
小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』
:2024/08/23(金) 20:58:57
>>181
不思議な鳴き声を上げて飼い主に近寄っていく猫を見つめる。
同時に、体の何処かに存在するであろう『肉球の刻印』を探していた。
それが『マシュメロ』によって生み出された証だ。
「……なんという名前ですか?」
飼われている猫が名付けられているのは、至って普通の事だろう。
ただ、この場合は確実に名前があるはず。
誰かが付けた名前を他の物に押し付けて猫に変える事が、
『ナイが連れている猫』の能力だったのだから。
「――にゃあ……」
その時、不意に猫の鳴き声がした。
どうやら、この海岸には他にも猫がいるようだ。
かなり近くから聞こえたが、その割には姿が見えない。
183
:
甘城天音『BSS』with『ラムネ瓶猫』
:2024/08/24(土) 17:44:13
>>182
探して見れば胴体という結構分かり易い所に刻印があった
『マシュメロ』の眷属とみて間違いないだろう
「ナックラヴィー」
ラヴィーだけならかわいい感じがするが
ナックが付くととんでもない化け物と化す
皮膚の無いケンタウロスのような馬で、口から猛毒の息を吐く怪物だぞ
何でそんな名前付けたんだよ!?
>――にゃあ……
猫「シュ?」
猫の声に振り返るラムネ瓶だが、どこを見ても猫の姿はない
怪訝そうに周りをキョロキョロと見ている
184
:
小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』
:2024/08/24(土) 21:09:58
>>183
常識的な感覚では計り知れない奇妙な姿の猫。
きっと他にもいるのだろうと考えていたが、こうして出会うのは初めてだった。
やはり、この少女もナイの知人なのだろうか。
「――とても可愛らしい子ですね……」
そう感じるのは、自分自身も猫と暮らしているせいかもしれない。
ピコッ
同族の気配を察してか、キャペリンハットから猫の耳が生えた。
「……にゃ」
まもなく帽子猫が目を開き、『ナックラヴィー』に向けて鳴き声を発する。
実際どうなのかは分からないが、挨拶しているようにも見えた。
その姿は帽子そのもので、目を閉じて耳を寝かせた状態では、
本物のキャペリンハットと見分けがつかない。
185
:
甘城天音『BSS』with『ラムネ瓶猫』
:2024/08/25(日) 17:36:39
>>184
でもナックラヴィーは伝承では海に生息する水妖
砂浜を練り歩いているのはむしろ自然なのかもしれない
>同族の気配を察してか、キャペリンハットから猫の耳が生えた。
「…猫耳?」
猫耳のついた帽子を被っているのか?
…まぁ、趣味は人それぞれだが
気になるのは猫耳帽子から声がした事だ
おまけに帽子に目まであり、下のラムネ瓶猫を見ている
こいつ、生きているのか!?
猫「ジュゥゥゥ」
挨拶を返しているのか、
それとも上から見下ろす帽子猫が気に食わず威嚇しているのか
鳴き声の性質故にどっちとも取れるような声を出している
「何ですか、それ」
186
:
小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』
:2024/08/25(日) 23:08:53
>>185
おもむろにキャペリンハットを脱ぎ、帽子猫の体を軽く撫でる。
そうすると、体毛の下に『肉球の刻印』が存在するのが見えた。
この猫は長毛種なので、見えにくい位置にあるようだ。
「――私の帽子から生まれた猫です。
『ナックラヴィー』と同じように……」
ソッ
そして、帽子猫を優しく地面に下ろす。
「……名前は『撫子』と言います」
撫子は大人しい性格らしく、その場から動いていない。
ただ、ナックラヴィーには関心を寄せている様子で、
控えめながらも匂いを確かめているような所作が窺えた。
やはり、初めて出会う同族には興味があるのだろう。
187
:
甘城天音『BSS』with『ラムネ瓶猫』
:2024/08/26(月) 17:55:49
>>186
「生まれた?帽子から」
私も欲しい!
その帽子どこで買ったの?
とかそういう事を聞けるような話じゃない
さらっととんでもない事言ってるが
どうやらラムネ瓶猫と同じような出自らしい
猫「ジュイ」
撫子を物珍しい珍獣を見るように
そっと近付き様子を伺うラムネ瓶の猫
そーっ
その飼い主もそっと手を降ろし撫子に触ろうとしている
188
:
小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』
:2024/08/26(月) 20:04:43
>>187
徐々に近付くナックラヴィーを見て、撫子も少しずつ距離を埋める。
帽子のブリムに当たる部分は、体毛で構成されているらしい。
四肢は非常に短いようで、マンチカンに似ていた。
「私の友人に、灰色の猫を連れている方がいます。
その猫が帽子に触れて……撫子に変わりました」
おそらくはナックラヴィーも、同じような経緯で誕生したはずだ。
「……撫でられるのが好きなので、撫子と名付けました」
スン スン
甘城の手に意識を向け、そちらの匂いを嗅ぐ撫子。
しかし、それ以上の事はしてこなかった。
撫でて欲しいのかもしれない。
「にゃあ……」
ナックラヴィーと撫子は、お互いに触れ合えそうな位置まで歩み寄った。
189
:
甘城天音『BSS』with『ラムネ瓶猫』
:2024/08/27(火) 18:40:30
>>188
「灰色の猫」
そうだ
ラムネ瓶の猫が現れた時も、灰色の猫がいたんだ
灰色の猫が親だとしたら、ラムネ瓶と帽子の猫は兄弟という関係にあたるのだろうか?
猫「シュッ」
パシッ
猫パンチ、って程の強さでもない
撫子に前足を触れて電光石火のように引っ込める
未知の存在に対する好奇心と恐れから、こいつが何なのか確かめるように
一方、飼い主の方はというと
さわっ
大人しそうな帽子猫をそっと触れる
帽子を撫でるというのはあんまりない事なので
どれくらいの力加減で撫でればいいのかは分からない
やっぱり優しく扱うべきなのか、結構力を入れていいのか?
190
:
小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』
:2024/08/28(水) 03:53:08
>>189
お互いの姿形こそ全く異なるが、同じスタンド能力によって生み出された。
その繋がりは血縁関係に近いものがある。
撫子自身も、それを本能的に感じ取っているのかもしれない。
ピンッ
動きを止めた撫子の両耳が、張り詰めたように立ち上がる。
突然の接触に驚いたのだろう。
撫子から見ても、ナックラヴィーは未知の部分が多い存在だ。
ただ、興味を持っているものの、積極的に干渉しようという素振りは窺えない。
思慮深い気質なのか、どうすべきかを考えているらしかった。
「仲良く出来ればいいのですが……」
撫子は奇妙な姿ゆえに、普通の猫と関わりを持つのは難しく、
こうして同族と出会える機会は貴重なものだった。
「――……にゃ」
半球状の帽子猫に触れると、猫らしい体温の温もりが感じられ、
確かに生きている事が伝わってくる。
長毛種なので毛量が多く、短毛種よりも柔らかい手触りだった。
ちょうどナックラヴィーに触れられた直後に甘城が落ち着かせた形になり、
心地良さそうに目を細めているところを見ると、
撫でられるのが好きというのは本当のようだ。
191
:
甘城天音『BSS』with『ラムネ瓶猫』
:2024/08/28(水) 18:41:53
>>190
本当に猫なんだな…
こうして触ってみると、ただの帽子じゃない事を再認識出来る
生きている温もり、鼓動
猫の毛皮で作った帽子じゃない
猫「シュゥゥゥ」
撫子を撫でているとラムネ瓶が飼い主の手をパシパシと叩いてくる
猫は嫉妬深いというが、ラムネ瓶にも適用されるんだろうか?
誰よ、その猫!
すると飼い主がポケットからビー玉を出す
ビー玉をほいっと投げるところころと転がっていく
「取って来い」
ラムネ瓶の猫は本能的にビー玉を追って走り出した
ガブッ
ビー玉を咥えて飼い主の所に持って来る様は何か犬っぽいかもしれない
192
:
小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』
:2024/08/28(水) 23:56:17
>>191
一般的に、短毛種は野生の習性が強く残っているので、
活発な猫が多いと言われている。
長毛種は人間の手が加わっている為、落ち着いた性格になりやすい。
スタンド生物にも当てはまるかどうかは分からないが、
もしかすると反映されている部分があるのだろうか。
「――愛されているのですね……」
ニコ…………
甘城の手を叩くナックラヴィーを見て、穏やかな微笑を浮かべる。
嫉妬は愛情の裏返し。
好意がなければジェラシーを抱く事はないだろう。
「……挨拶が遅れました。
私は小石川文子という者です」
スッ
手にしたクラッチバッグからスマートフォンを取り出す。
「よろしければ、連絡先を交換しませんか?
同じ経緯で誕生した猫を連れている方に、私は初めてお会いしました。
お互いの猫の事で、またお話したいもので……」
動物の芸というのは、コミュニケーションを取る事で信頼関係を築くと共に、
健康状態を推し量れる利点もある。
撫子にはナックラヴィーのように活動的な芸はない。
帽子に擬態する事が撫子の持つ芸だ。
――――ペタン
甘城に撫でられていると、帽子猫の耳が伏せられた状態になった。
193
:
甘城天音『BSS』with『ラムネ瓶猫』
:2024/08/29(木) 21:44:15
>>192
「甘城天音…です」
帽子猫を触りながらスマートフォンを出す
連絡先の交換くらいは簡単に出来そうだ
「こういうの…他にもいる?」
灰色の猫がこういう珍妙な猫を量産しているとしたら
ラムネ瓶や帽子の他にもわけのわからん猫がわんさかいそうだ
今までラムネ瓶の他に見た事は無かったが
> ――――ペタン
「…嫌だった?」
猫がペタンと耳を伏せるのは、
恐怖を感じたり何か嫌な事がある時だと言われている
撫でられるのが好きと言っても、あまりしつこいのは嫌かもしれないし
知らない奴に触られるのはストレスかもしれない
194
:
小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』
:2024/08/30(金) 06:59:15
>>193
甘城の同意を得た上で、連絡先の交換を行いたい。
「いえ――撫子は耳を撫でられると、
『元の帽子』の姿に戻る習性があるようなのです」
この芸は、小石川が教えた訳ではなかった。
撫子に触れていた甘城の手先が、たまたま耳を撫でたらしい。
それがきっかけとなって、反射的に擬態したのだろう。
スゥゥゥゥ………………
甘城に撫でられて気持ちが安らいだせいか、少しずつ目が閉じていく。
嫌がっているなら、そのような反応はしない。
むしろ落ち着いているようだ。
撫子は眠る事も好んでいる。
その個性も擬態に適した特徴と言えるのかもしれない。
「撫子とナックラヴィー以外に見た事はありません。
ただ……おそらく他にもいると思っています」
誰かに名前を与えられる度に、それを他の何かに押し付けているのだとしたら、
いくらでも同族が増えていく可能性はあるだろう。
「……甘城さんは『ナイ』という女の子をご存知でしょうか?
人と『交換』するのが好きな子で、私の友人です。
灰色の猫はナイさんと行動を共にしていて、
私の家へ遊びに来てくれた事がありました……」
あの時は『紅茶のシフォンケーキ』と『ささみ』を、
『ブドウ味のガム』と『ほしみまくろうキーホルダー』に交換した事を覚えている。
195
:
甘城天音『BSS』with『ラムネ瓶猫』
:2024/08/30(金) 20:16:32
>>194
猫からすれば
芸をしているつもりはないんじゃないだろうか
帽子としての修正なのか、この個体の癖なのかは分からないが
そーっ…
静かにゆっくり帽子を持ち上げて…
スチャ
被ってみる
猫の被り心地っていうのはどういう感じなんだろう?
そんなわけのわからない事をしながらスマホの交換を済ませる
>……甘城さんは『ナイ』という女の子をご存知でしょうか?
「ナイ?」
交換好きな女の子というと確かに知っている
「金髪のじじい口調の?」
ラムネ瓶の猫が出て来た時も確かに
ナイと灰色の猫は一緒にいたが
飼い主ってわけでもなさそうだった
猫「ジュィィ」
飼い主が構ってくれなくて
うろうろしているラムネ瓶が小石川の傍に近付いてくる
196
:
小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』
:2024/08/31(土) 03:53:58
>>195
見る人によっては芸と表現する事も出来るかもしれないが、
帽子猫が擬態する様子は、自然に身に付いた習性の方が適切だ。
「……私と遊んでくれますか?」
ソッ…………
ビー玉を受け取る為に、ナックラヴィーの口元に片手を差し出す。
また、空いている手でラムネ瓶に似た体を撫でる。
どのような感触なのだろうか。
「ええ、そのナイさんです……。
彼女から聞いた話では、よく家に来る猫だという事でした」
飼われているのではないが、完全に野生という訳でもなく、
おそらくは半野良に当たるのだろう。
「――どうでしょう……?」
撫子を被ってみると、意外な程に違和感がない。
ほんのり体温が伝わる辺りに生き物らしさが感じられるものの、
重さ自体は普通の帽子と大差ないようだ。
シルクのように柔らかな被毛で、優しく頭を包み込んでくれる。
197
:
甘城天音『BSS』with『ラムネ瓶猫』
:2024/08/31(土) 18:43:35
>>196
猫「ジュ」
口元に手を持って来られて、反射的にビー玉を渡してしまう
猫「シュワ?」
ラムネ瓶の猫を撫でてみると、
ガラス瓶のような硬い感触がするが、
同時に猫らしいしなやかで柔らかい感じもする
青い体毛はふわっとしていてちゃんと人の手で手入れされている事が伺える
野生だったらごわごわしていそうだ
硬いのに柔らかい、矛盾しているような不思議な感覚だ
>ええ、そのナイさんです……。
>彼女から聞いた話では、よく家に来る猫だという事でした
「家あったんだ」
家なき子…ってわけじゃないだろうが
雰囲気的にそんな印象を感じていた
あの灰色の猫、首輪も無いしやはり野良だろうか
地域猫ならともかく、野良猫を勝手に餌付けしたりするのはよくないんだが
子供にそんな事言ってもって感じか
>――どうでしょう……?
「軽くて良い」
頭に乗っているのが生命というのを感じるが
重量的には軽く、被り心地は中々
「これ欲しい」
勿論冗談だが
198
:
小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』
:2024/09/01(日) 02:48:00
>>197
ラムネ瓶猫の毛並みに触れて、丁寧にブラッシングされている事を察した。
長毛種の手入れは特に大事なので、そうした部分には気付きやすい。
愛情を持って接してもらえているのであれば、きっとナックラヴィーは幸せなのだろう。
「――……どちらにありますか?」
スッ
ラムネ瓶猫の眼前に握った両手を差し出す。
隠されたビー玉の位置を当てる遊びだ。
ちなみに今回の正解は左手だった。
「ナイさんは……お爺さんの家だと言っていました。
最近はノエという方もいらっしゃるとか……」
普通に考えれば祖父の家と解釈できるのだが、
自分の名前も持たないくらいなのだから、正直どうなのかは定かではない。
それなりに付き合いのある小石川も、
ナイを取り巻く生活環境に関しては分からない事だらけだ。
少なくとも本人は寝る場所に困っていない様子ではあった。
「……撫子は大切な家族ですから、差し上げる事は出来ません。
甘城さんと私が出会った時には触れ合えますので、
これからも仲良くしていただけますか?」
撫子を被った甘城を見つめ、それからラムネ瓶猫に視線を落とす。
「ナックラヴィーとも仲良くなりたいですから……」
今日こうして出会えた事も、もしかすると同じ眷属の引力によるものかもしれない。
199
:
甘城天音『BSS』with『ラムネ瓶猫』
:2024/09/01(日) 22:18:53
>>198
猫「シュ?」
ビー玉を隠されて両手を突き出してきた意図が分からない感じだ
猫「シュワ、ワ」
ちょっと思考した後、小石川の右手に触った
意味が分かっているのかは不明だ
>ナイさんは……お爺さんの家だと言っていました。
>最近はノエという方もいらっしゃるとか……
「カタカナが多い」
ナイとかノエとか
日本人か?
いや、日本人かもしれないが
ナイに関しては日本語は流暢だが見た目は日本人っぽくなかったが
>……撫子は大切な家族ですから、差し上げる事は出来ません。
>甘城さんと私が出会った時には触れ合えますので、
>これからも仲良くしていただけますか?
勿論本気で言ってるわけじゃないが
家族をくれと言われて、はいどうぞなんてくれるわけがない
うん、と頷くと撫子を手に取り
足元に居るラムネ瓶の猫に…
猫「ジュ?」
乗せた
200
:
小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』
:2024/09/02(月) 00:27:14
>>199
ナックラヴィーの反応を見ると、こうした遊びに興じた経験はないのだろう。
――――――パッ
まず右手を開けるが、当然そこには何もない。
「こっちですよ」
ソッ
それから左手を開け、ビー玉の位置を確認してもらう。
何度か繰り返せば、一連の流れを理解してくれるかもしれない。
今度は右手にビー玉を握り、改めてラムネ瓶猫の前に両手を差し出す。
「――……?」
甘城の考えが分からないまま彼女の行動を見守っていたが、
その結果を目の当たりにして口元を綻ばせる。
「ふふ……」
ラムネ瓶猫の上に帽子猫が乗っている。
奇妙で愛らしく何とも言えない光景に、思わず淑やかな笑みが零れた。
同じ体勢を普通の猫で見る事は難しい。
「……にゃ」
ピクッ
ふと撫子が目を覚まし、帽子の耳が起き上がった。
近くにいるナックラヴィーの気配に感づいたらしい。
とりあえず嫌がってはいないようだ。
スッ
とても短い撫子の右前足が、飼い主の右手を指している。
201
:
甘城天音『BSS』with『ラムネ瓶猫』
:2024/09/02(月) 20:58:20
>>200
猫「シュゥゥ…」「シュィ」
猫(ラムネ瓶)が猫(帽子)を被っている
かなりレアな光景を飼い主はスマホで撮影しているが
ラムネ瓶の猫はこの状況にちょっと戸惑っている
嫌がっているわけでもないが、乗っている猫を落とさないように動きが慎重になっている
猫「ジュン」「ジュゥゥ」
撫子が小石川の右手を指したのを見て一瞬首を捻り
反対の左手を指してみた
ルールを理解したのだろうか?
202
:
小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』
:2024/09/03(火) 03:58:23
>>201
ナックラヴィーに乗せられた撫子も、猫らしくバランスを取って安定を保っていた。
ソ ッ
おもむろに両手を開き、ビー玉の在り処を開示する。
「よく分かりましたね。とても上手ですよ」
正解を引き当てた撫子を見つめながら、その結果を大いに褒める。
これにより、ビー玉の位置を当てたら褒められるという流れを、ラムネ瓶猫に伝えたい。
その上で、次は必ず正解できるように、ちょっとしたヒントを用意しよう。
「――どちらでしょうか……?」
再び左手に隠しているが、握った手を開き気味にして、
隙間からビー玉が見えるようにしておく。
それが視界に入れば、正解の場所が分かるはず。
果たして今度こそ上手くいくだろうか。
「……にゃあ」
飼い主の雰囲気から何かを察したのか、撫子は手を出さず、ナックラヴィーを見守っている。
203
:
甘城天音『BSS』with『ラムネ瓶猫』
:2024/09/03(火) 20:47:33
>>202
猫「ウジュ?」
褒められている…上に乗っかっている猫が
しかし、褒められているという事を理解出来るか?
言葉だけでなく、褒美もあった方がより分かりやすいのではないだろうか
>再び左手に隠しているが、握った手を開き気味にして、
>隙間からビー玉が見えるようにしておく。
猫「ジュゥゥゥ」
手の隙間からキラリとビー玉の光がちら見えする
猫の本能が刺激されるのか、低い唸り声をあげてビー玉の光を凝視している
猫「ジュッ!…シュ」
思わず飛びつきそうになるが、撫子がいる事を思い出し大人しくなる
ピトッ
ビー玉が入っている方の手をちょんちょんと前足でつついている
204
:
小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』
:2024/09/04(水) 03:16:48
>>203
この場合、言葉を理解するかどうかよりも、
優しく声を掛けるという行為そのものが大事なのだ。
穏やかな声掛けを行えば、猫も心地良く感じてくれる。
もちろん本当なら、気持ちの良い部分を撫でるくらいの事はしたかった。
しかし、撫子はナックラヴィーの上に乗っており、迂闊に触ればバランスを崩す。
だったら退かせばいいと思うかもしれないが、
せっかく2匹の距離が近くなって仲良くなれそうなのに、
それを邪魔するような事はしたくなかった。
そして、猫の健康を守る為には、安易におやつをあげたりするのは良くない。
褒めるという行動で妥協したのは、そうした理由があったからだ。
ただ、ナックラヴィーの気持ちを考えれば、
撫子の目の前にビー玉を持っていった方が分かりやすかったかもしれない。
言葉の通じない動物と暮らすというのは、こうした試行錯誤の積み重ねだ。
「……いい子ですね」
ス ッ
帽子猫を気遣う様子を目にして、たおやかに微笑むと、
ビー玉の乗った左手を開き、ラムネ瓶猫の近くに持っていく。
「甘城さん、お願いがあるのですが――」
「よろしければ一緒に写って頂けないでしょうか?」
そう言って、2匹の猫を撮影している甘城に視線を向けた。
「この子達と私達が知り合えた記念として……」
2匹の猫と2人の飼い主が、同じ1枚の写真に収まるという趣旨だ。
205
:
甘城天音『BSS』with『ラムネ瓶猫』
:2024/09/05(木) 21:41:45
>>204
犬もそうだが、猫も表情や声色から人の感情を読み取ってくる
取り合えず声だけでも、この人間は喜んでいるという事くらいは分かるはずだ
ただ、全ての猫が飼い主を喜ばせるために動くわけじゃない
というか、猫っていう生き物は性質上、人のご機嫌取りなんてしないような個体の方が多いので
そこは猫毎に教育方針を変えていく必要があるかもしれない
猫「ジュビ」
小石川の掌の上にあるビー玉を肉球でちょん、ちょんと触り転がしている
>よろしければ一緒に写って頂けないでしょうか?
「いいよ」bグッ
そう言うと、飼い主の隣に人型の何かが現れる
何だ?幽霊か?
人の気配が自分達以外ない静かな海岸
居るのはクラゲや海鳥ばかり
海から這い出て来た幽霊が出て来てもおかしくない雰囲気ではある
しかし、小石川にはそれが何なのかは分かるだろう
もし小石川が分かる人でなかったなら
突如スマホが空中に浮く怪現象にしか見えない
ポルターガイストか!?
と、そんな怪現象を起こしておきながら何食わぬ顔して小石川達の輪に入る飼い主
206
:
小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』
:2024/09/06(金) 02:20:31
>>205
ナックラヴィーの反応を見ると、このコミュニケーションは正しかったらしい。
自分が選んだ行動の結果に安堵し、出現した人型に意識を向ける。
無論、それが幽霊ではない事は分かっていた。
ラムネ瓶猫がスタンドの産物であるなら、
飼い主がスタンド使いだったとしても不思議はないだろう。
小石川自身にも同じ事が言える。
「私達の共通点は猫だけではなかったようですね……」
しかし、挨拶代わりに出すつもりはなかった。
そうする必要がないからだ。
ナイフのヴィジョンは、撮影の役には立てない。
「……あとで写真を送ってもらえますか?」
上手い具合に2人と2匹が収まるように配慮し、人型スタンドと向き合う。
中央にラムネ瓶猫と帽子猫が入り、両側に人間が写るような構図になるだろうか。
大体そのような想定だが、甘城の立ち位置は彼女の判断に委ねる。
「――にゃあ」
初めて同族と出会えた撫子の鳴き声も、心なしか嬉しそうに聞こえた。
207
:
ラッコ『ハッピー・スタッフ』
:2024/09/21(土) 11:57:55
まだまだ残暑の厳しい9月の海――――――。
プカァ…………
「ミャア」
『野生のラッコ』が波間を漂っていた。
ここ星見町では多くの人々が見慣れた光景だ。
どのような場所にもラッコは現れる可能性がある。
ドドドドドドドドドドドドドドドドドド
そして、一隻の『ボート』が海獣の周りを旋回していた。
『銛』を手にした『人型スタンド』が船上に佇み、
いわゆるラジカセに近い意匠の『ラジオ』が積載されているようだ。
受信しているのは『音楽専門チャンネル』らしく、
スピーカーから古い洋楽が流れている。
《〜〜〜〜〜〜〜〜♪》
アコースティックギターで演奏される『カントリーミュージック』らしい。
ガンガンガンガンガン
お腹の上に石を置くと、そこに貝を叩きつけて割り、
器用に中身を取り出して食べ始める。
海の上で音楽を聴きながら食事を摂るラッコ。
今日の波は穏やかだ。
208
:
ラッコ『ハッピー・スタッフ』
:2024/09/26(木) 17:27:23
>>207
「ミャッ」
食事の後、ラッコは日課の毛繕いを始めた。
それと同時に、人型スタンドがラジオを操作する。
チューニングが完了すると、音楽に代わって軽やかな声が周囲を満たす。
《――――今日も貴方の隣に『電気カナリア』の囀りを》
〜〜〜〜〜〜♪
《まだまだ残暑の厳しい季節ですが、皆様いかがお過ごしでしょうか?
『Electric Canary Garden』――――
パーソナリティーは『美作くるみ』がお送りしまぁ〜す!》
《最近ちょっと涼しい時もあったんですが、
また暑さが戻ってきちゃいましたねぇ。
なんだかんだ10月くらいまでは暑い日が続きそうです。
でも、油断してると急に寒くなったりしますから、
日々の体調管理には気を付けたいところですね》
《さて!本日のテーマは『もしかして私だけ?』です!
『これって私だけかも?』というアレコレを、
リスナーの皆様から大募集しています!
採用された方には、番組オリジナルグッズを差し上げちゃいますよぉ〜》
《ちなみに、くるみの『もしかして私だけ?』は…………》
「ミャー」
209
:
佐良 猟果『マンティコア』
:2024/10/16(水) 18:42:11
陽が落ちてもなお熱気が残る夕暮れ時に、女子高生がしゃがみ込む。
路肩に停めたピカピカの自転車の隣で、難しい顔をしながらイヤホンを外す少女のことを、気にかける方が難しいかも知れない。
「どっちだどっちだこれはさあ」
何事か呟きながら、アルバイトのために常用しているスニーカーを弄る。
その靴紐を弄る。
「左……かな!?決めた!絶対に左から履くんだ!」
言いながら、左脚の靴紐を緩める。
何がどうなっても、そちらから履けるように。
はいすいのなにがしと呼ぶらしい。
「寒くなったり暑くなったりホントごめんだよねえ。
『梅雨明け』に来るつもりだったんだよ私はさあ」
一人なら言い訳だってできた。
喋る練習をしているから、きっと誰かが聞いているかもしれなかった。
210
:
ニア『セレクター』
:2024/10/17(木) 14:31:39
>>209
「まったく同感だね。
最近はまた暑くなってきて、汗をかいてしょうがない」
佐良の独り言を聞き、あまつさえ返事までしてきたのは、
ボサボサの金髪にニット帽を被った若い女だった。
振り返ったなら、言葉とは裏腹に冬物のパーカーを羽織り、
手に買い物袋を持った女の姿が目に入るだろう。
「ところで、左ってなんのこと?」
そして、当然のように会話を続けようとする。
まっすぐに佐良を見据える目はまるで、
自分が『変な人』であることに気付いていないかのようだ。
211
:
ニア『セレクター』
:2024/10/22(火) 00:18:47
>>210
佐良がその問いかけに答えるより先に、
ニット帽の女は何かに気付いた様子で目を見開き、
ビニール袋をぎょろりと見下ろすとガサガサ揺らして見せた。
「おおっと。
そういえば、さっきコンビニで『雪見だいふく』買ったんだ。今思い出した。
それじゃ、また今度『左』の意味教えてね」
きっと、帰宅して『雪見だいふく』を食べるのだろう。
自分から話しかけておいて自分から会話を打ち切り、
女は足早に立ち去っていった……
212
:
村田瑛壱『ディズィー・スティック』
:2025/03/12(水) 00:57:36
ピク!
「ん?」
何とはなく、学ランの男は浜と海を眺めていた。
それが急に、髪か袖かを引かれたように振り返る。
「なんだか呼ばれた気がしたんだが、気のせいか。」
213
:
村田瑛壱『ディズィー・スティック』
:2025/03/14(金) 04:01:25
>>212
「あまり張りつめていても仕方がねえか。
正直なところ『出たとこ勝負』なわけだからな。」
海を横目に眺めた後、その場を去った。
214
:
こうめ『ヘヴン・フォービッド』
:2025/06/14(土) 18:10:38
薄暗く人気の無い倉庫街
屋内か屋外か分からないが、どっちでもいいか?
そこにいるのは5歳くらいの女の子と
「今日はどんな風に縛ってくれるの?」
縄を持った
>>215
自分の能力で自分を縛る事も出来るが、いつもそればっかりじゃない
期待の目で
>>215
を見ている
215
:
手嶋 縺 『ムーンライト・ホロウズ』
:2025/06/15(日) 20:26:50
>>214
「……縛…なんですって?」
『シュロ縄』を取りに、ボロい倉庫にやってきたワケです。
ーーーーーーーーーー
(追想)
昨日、降りしきる雨の下、樹を縛ってたのです。
ああいや、そういう趣味の話ではなく。いや、私そういう趣味はあるんですけど。
ちがくて。仕事で。
ズボラな依頼人、漁師の爺さんがです、私の『フラワーショップもづる』に、
「今から盆栽とか庭の手入れしといてくれん?」と。
梅雨の蒸れで腐ったらかなわんという事でね。
我が家は代々植物屋。植木の剪定はできますとも。
でも数週前には電話しといて欲しかったですね。
それで、昨日から、作業着着込んで玄関先の『門かぶり松』、縛っていた訳なのです。
ハイ。依頼人の爺さんがボロい投網とか放ったらかしてある、この倉庫に、縄を取りに、昨日から何度か。
(追想ここまで)
ーーーーーーーーーー
トタトタ…
やや地面のほうから、野花のように可愛らしい声。何?
縄片手に硬直するしかなく。枯木のように。
暗い倉庫に入ったばかりの昼目では、客体の姿も捉えられず…
「…はハイ、こちら『フラワーショップもづる』でこざいまづ」
なぜか電話口の対応。噛んだし。
216
:
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217
:
こうめ『ヘヴン・フォービッド』
:2025/06/17(火) 18:53:58
>>215
えっ、ひょっとして全く知らない人と話してるの!?
それじゃあ、小梅がいきなり知らない人に縛ってってお願いする変態みたいじゃないか!
でもここは強引に話を進める事にしよう
「わぁシュロ縄」
「うめ、あんまりシュロ縄は使わないけど
これも縛ってみると肌触りがよくて結構気持ちいいんだよね〜♪」
下から聞こえる声は、もう手嶋のすぐ真下まで来ている
きゅっ、と小さい子供の手が、ズボンの裾を掴む感覚がする
「ね♪」
屈託のない子供の笑顔が手嶋を見ている
手嶋というか、その手に持っている縄をかもしれないけど
218
:
手嶋 縺 『ムーンライト・ホロウズ』
:2025/06/17(火) 21:22:41
>>217
あまりに下から聞こえてくる、鈴蘭のような声。逃さぬような、引きずり込むような手。
妖怪化生の類に違いなく。恐ろしすぎてこちらからは視線を遣りたくない。
(互いにぜんぜん知らない人っぽい。お互いに怖い遭遇になってしまいましたね。申し訳なさはある。
…別に知ってる人相手でも普通に怖い会話じゃないですか?とりあえず倉庫での会話じゃ無くないですか!?)
ガクガク…
「…お電話掛け間違いではございませんでしょうかッ」
「今一度連絡先の方確認いただけますでしょうかっ…当店『フラワーショップもずる』でございますッッ」
…状況が判らな過ぎて、電話口の対応を続けてしまう。
当日予約即対応に来ただけなのに、秘密の逢瀬、 禁断の解放…連絡先はこちらXXXXXXXXX!
大丈夫か?悪質なスパム扱いで
>>216
みたいにガオンされてしまわうのではないか?
「すいませんお客様当店、縛りの経験は植物ばっかで…その…」
シュッ
「…この『シュロ縄』は…『松の木』を縛るためのヤツでしてぇ…」
「……こう、竹とかの長い棒で作った支えに、縛り付けるんですよォ〜…」グルグル
「…『上に伸びないように』縛り付けるヤツなので、こ、子供にはあんまり良くないやつじゃです〜、ハハ…」
「…あッあと、あいにく、長い棒の手持ちが無くって!都合よく落ちてるワケも無いですしィ〜!」
目線は下げぬまま、冷や汗まみれの植物屋トークで切り抜けを試みる。上手い事なぁなぁになれッ!
219
:
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220
:
こうめ『ヘヴン・フォービッド』
:2025/06/18(水) 20:56:06
>>218
‥‥逃さん‥‥
‥‥お前だけは‥‥
エッチな話をしてるわけじゃないんだし、
何もやましい事はないんだから何も心配もないが
熱い縛りトークの末に消されてしまったらそれはそれで一興ではないだろうか
「あれ、間違えちゃったかもしれないなぁ」
「でもうめ、そういうのも大好きだよぉ〜♪」
「棒とか柱に縛りつけられたりして」
「この前も木に縛り付けられたり、吊るされたりして気持ち良かったなぁ〜♡」
「松の木でもやったけど、あれは硬くて痛かったよぉ
でもそれがまた、何かいいんだよね♡」
何かよく分からないけどなぁなぁになっているのか?
「あ、長い棒?
それって、どれくらい長いのが良いのかな?」
221
:
手嶋 縺 『ムーンライト・ホロウズ』
:2025/06/18(水) 23:30:21
>>220
「…既にご数名ほど手にかけてらっしゃる!?」
縛るだの吊るされるだの。『コウモリランの板付』とかの話だと信じたいね私…
そろそろ水苔が乾いてる頃かしらん…水やりしなきゃ…などと思考は飛ぶばかり。
「長…えっまぁ、伸びた枝を縛る程度、3メートルほどもあれば…」
「…どっちかというと量?…地面に支柱建てたりで5本はあると気が楽………」
「…イヤイヤイヤ!いやそんな!…ハイ!無いですもんね!棒!残念だなぁ〜〜ッ!」
なぁなぁに…なっていない!むしろ建設的なお話が始まってしまった!
このままだとキャタツ組んで竹で支柱を作って…本当の意味で建設的なお話になってしまう!
なにやら棒の長さを聞いてきたがまさか、棒を用意してくださる流れですかコレ!?
縛る流れなんですかコレ!?
この声と手の主が、もしも妖怪化生の類なのならば絶対なんかの罠だし、
もしも普通に人間だったとしたら社会通念的にそんな事しちゃいけない!
…逃げよう!上手い事離脱できるムードを作らねば!
「…そう、他に!」
「その…!玄関の!玄関の松を縛るものですから!ね!」
「屋内じゃあ出来ないな〜いったん表に出なきゃなぁ〜」
「…だからちょっと手を離して下さらないかな〜ッなんて!」
ジワリ…
勇気を出して、じんわり後ずさり開始。
222
:
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223
:
こうめ『ヘヴン・フォービッド』
:2025/06/20(金) 18:01:42
>>221
この人の手を離さない。僕の魂ごと離してしまう気がするから
と思ったら、ズボンから手が離れる感覚がする
結構すんなり離れるもんだ
もし、手嶋が後ずさった時に妖怪化生と思われる女の子の姿が見えたら
その頭上に天使の輪のようなものが浮かんでいるのが見えるかもしれない
その輪は縄で出来ているが
「あぁっ、もうっ」
「今日は 誰かにっ 縛ってほしい の にっ」
「はぁっ がまんできなくてっ 自分でしばっちゃった よ♡」
見えなかったら分からないかもしれないが
見えたら女の子はいつの間にか縄で後ろ手に縛られているのが確認出来る
「じゃあ、表に出なきゃだね♪」
224
:
手嶋 縺 『ムーンライト・ホロウズ』
:2025/06/21(土) 00:12:59
>>223
「ーーーーーっ」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
小さな手が離れ
見えた
見えてしまった。
後ずさりの際に視界が開け、意図せず。姿も、奇妙な『輪』も。
幽霊なんだ。たぶん。不可思議な力を持つ。(スタンド使い初遭遇者感想)
クレーン車のアクシデントとか一家でのアレとか猟奇ナントカとかで、望まず縄状物体に包まれて。
止まってしまった時間の内で、道連れを探してるのか…あるいは、縄で酷い姿になってしまった未練で、せめて傷を隠す美しい緊縛姿を求めて…
…後者な気がしますね。
前者だったら、私から手を離してくれた事に説明が付かない。
(…ともあれ、であれば、門外漢なりに手を尽くすしかないのですかね?)
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「…あー……いったん表はいいです…それでなんですけど」
ズズイ…
近寄ります。「腕の縄」が気になっちゃって。
「私流ですけど…末端を縛るなら、腕は下向きじゃなくて上向きが良いかと。ワキを見せる感じです。」
「ちょっとその腕…貸してもらえます?」
『時間の止まった』『小さきモノ』を『縛る』行為については、手覚えがありますとも。
いやホントそういう趣味の話では無く。『園芸』の話です。
『盆栽』ですよ盆栽。年に数度、『縛って』手入れをするのです。
225
:
こうめ『ヘヴン・フォービッド』
:2025/06/21(土) 20:11:18
>>224
「表でやるのも開放感あって好きだけどね」
縄に絡まれた死んだ哀れな幽霊(違う)
満足させてやれば成仏するだろうか?
「うん」
「うめは下向きが好きだからいっつも下向きにしてるけど
うぇへ、今日は お兄さんの好きなようにしてほしいなっ♡」
手嶋に身を預け全てを委ねる
こうして他人に好き放題縛られると、
普段自分でやらないような新しいものを得られる事がある
それにしても
「(,,>᎑<,,)」
この幽霊(違う)、
縄のせいで酷い死に方した割りに縛られる事を心底楽しんでいる
226
:
手嶋 縺 『ムーンライト・ホロウズ』
:2025/06/21(土) 22:26:41
>>225
うんうん、楽しんでくれてるのならいい事だなぁ(微笑み)。
幽霊…幽霊なのか?楽しそうだぞ?でも幽霊でしょ。
超能力者とか自分以外に見たこと無いですし。じゃあ幽霊ですよ。
「今ぐらいの時期は『針金』なんですけどね。カエデとかを、風通しのために。」
「…『縄』で縛るのは、冬のシラカバとか。なので『シラカバの箒づくり』風にやります」
バンザイをしてもらい、頭部の後ろで、二の腕、ヒジ付近をぐるぐる縛る。
キツく縛るというより、枝(腕)が暴れない程度に『絞る』イメージ。
…あ、人間の構造だと、前腕がクロスしちゃうんだ、へぇ〜…
…髪の毛は、巻き込んじゃっていいのか…?…やめとく。傷まないように。
手首を、ブラブラしないように巻いて固めて…
ギュッ…
「…こんなモンですかね。胴と脚は縛んないです。ゴメンなさいね。
でもシラカバみたいに、手を入れなくても綺麗ですから…」
パタパタ… ピタ
(あなたから離れ、あなたの周りをぐるぐるし、左前方ぐらいで止まり)
「…肩幅程度に開いて…左足をちょっと引いてもらって」
「…そのまま…指をパっと、ピンと伸ばしてもらえますか?」
指でカギカッコを作り、少女を収めるように見ながら、
モデル相手のカメラマンの指示みたいな事をしだした。
この男もなんだかんだ楽しんでやがる。
「……よければ写真って要ります?」
ホントにカメラマンみたいな事言い出した。でも幽霊って写真映るんですかね…?
227
:
こうめ『ヘヴン・フォービッド』
:2025/06/22(日) 19:00:00
>>226
「えぇ〜針金も良さそう」「鎖とか金属も硬くてちょっと痛いけど悪くないよね」
「でもうめは縄が好きだからいっつも縄なんだけどね(笑)」
小梅の胴も縄でぐるぐるに縛られていたが、
手嶋流緊縛の邪魔にならないように胴の縄を緩めて解く
この縄、幽霊(幽霊じゃない)の思うがまま、自由自在のようだ
「あはっ、こうなっちゃうんだ」
手を頭の後ろに回し、
植物のように成すがままに縛り上げられる
「左足を引いて……指をパッと、ピンと…
ん〜……
はっ、これでいいかな?」
縛るっていうのは気持ちが良いけど、それだけじゃない
かわいくて、きれいに魅せる
縛るっていうのは芸術でありファッションでもあるんだ
「うん、おねがい
かわいく撮ってほしい…」
頬を紅潮させながらちょっと恥ずかしそうに薄い笑みを浮かべる
228
:
手嶋 縺 『ムーンライト・ホロウズ』
:2025/06/22(日) 20:13:32
>>227
こういうのは、鑑賞する向きが大事なわけですよ。
パッと見は価値を感じない造りの盆栽でも、鉢を回してみると、
ちょっとした枝と枝の間に、ハッとするような『角度』が現れる瞬間がある。
つまり、そういう事でしょう?この子は縄を操る幽霊かもですが、
今はこの、『楽しそうなかんじ』の瞬間だ。スマホで撮影。
…パシャ!
「…ハイ!ありがとうございます良い感じです。」
「データはどうやって送りましょう?メール?Line?林檎ならエアドロで…」
共有のために、写真フォルダを確認。
撮れている。バッチリ。心霊写真とはとても思えず。腕を絞って、箒にしたような姿。
何となく頬を桃色にした、はにかむ少女の緊縛姿。
「…」
…まずいな。一旦まずいな。
冷静になりました。やってる事ヤバいですよ私。
変態おじさんの誹りを免れない。写真まで撮ってるぞこの変態おじさん。
早急に、縄を解いてあげねばならないッ
「…うんうん〜お疲れ様でした〜、
じゃあ〜後始末をしなければいけませんね〜、」
ジリ…
「そのシュロ縄を解いてあげます、ね?どうです?
大丈夫ですよ〜キズは付けませんから〜…」
ジリ…
ジリ…
腰の作業用ポーチから、デカい園芸バサミを引き抜き。刺激せぬよう中腰でじりじり、迫る。
後始末とか言って目撃者を殺しちゃうタイプの変態犯罪者っぽい。自覚はある。
229
:
<削除>
:<削除>
<削除>
230
:
こうめ『ヘヴン・フォービッド』
:2025/06/23(月) 20:50:16
>>228
たのしい たのしい!!!
誰かに縛られてを縄化粧をしてもらって…
そんな瞬間に、生きている歓びを小梅は感じる
しかしこの幽霊…
触れるとしっかりとそのふにふにの柔肌に触る事が出来るし
写真にはくっきりと写り込んでいる
本当に幽霊なのか?
まあ幽霊にも色々いるし、触れたり実体のある幽霊もいるかもしれないが
ただ、頭の輪は何故か写真に写っていない
「じゃあLineに送ってくれる?」
足首に縄が現れ、足に巻き付いた縄がしゅるしゅると伸びる
伸びた縄が小梅の体を這い、服のポケットからスマホを掴み出した
「わっ っと…」
「あっ」
少しバランスを崩してしまい、倒れそうになる
231
:
手嶋 縺 『ムーンライト・ホロウズ』
:2025/06/23(月) 22:22:11
>>230
…なまえ、『梅』って言ってたな…
…やわらか〜、髪綺麗ぇ〜…
…腕とか頭部に、なんか高めの体温を感じました…
…幽霊ってLINEするんですね…
冷えた頭から、疑問が次々湧いてきています。
もしかして、『普通に女の子』なんじゃないですか?
この蒸し暑い季節だからに違いない、
擦り寄る靴の中に、やけに湿り気を感じる。
でもなんか、寒いですね。これ、冷や汗って奴です?
> 「わっ っと…」
縛られているのは、人間にとっては『不自然』な状態。
必然、バランスを取りにくくもなる…
受け身を取る為の腕も、使えない状態…
> 「あっ」
フ ラァ…
…一瞬で、視界が真っ青になった気がする。血の気が引いた、と言う奴。
―初めて手掛ける盆栽素材に、浮かれていたんだな?
―重心が危うい状態の作業…これは予期できたミスですよ。
―安定させる『鉢』をとっとと用意しなかったの、馬鹿ですか?
―『駄温鉢』と『赤玉』ぐらい見繕っときなさいよノロマ。
(君の事が盆栽に見えてる。)
「っ、わあぁッ!」
園芸バサミを手放し、青い顔で少女に駆け寄る。
全身でキャッチ…受け止めるように胸で受け、抱きしめる。折る訳にはッ!
232
:
こうめ『ヘヴン・フォービッド』
:2025/06/24(火) 20:05:54
>>231
ぽん
手嶋の腕の中に小さな体が落ちて来た
「ありがとう」
もしも、ハサミを持ったままだったら
その繊細な肌に傷がついていたかもしれない
腕の中に納まった少女の体からは、
ドキ ドキ
と、強く高鳴る心臓の鼓動が響き、生命を感じさせる
「足を縛って転んじゃって、うめもまだまだだよぉ」
「でも、こういうのもちょっと楽しいね」
そんな状況すらも楽しいのか、小梅は手嶋の腕に抱かれながら笑っている
233
:
手嶋 縺 『ムーンライト・ホロウズ』
:2025/06/24(火) 21:51:31
>>232
大慌てでペタ、ペタと腕や首を確認します。足も見たいが…
…シュロ縄、邪魔ですね!わなわな落ち着かぬ手つきで、縄を解きながら…
「『枝』は!折れていませんか!?」
「『根』も大丈夫ですか!?捻ったり…細いのだから…!」
怪我などあれば、これからの樹形構想に影を残してしまわないか。
家庭菜園だけだぞ、『怪我の功名』が許されるのは…
(まだちょっと君を盆栽と混同している。)
>「足を縛って転んじゃって、うめもまだまだだよぉ」
>「でも、こういうのもちょっと楽しいね」
「え、えェ…ハイ。ハハハ…」
(…無邪気で何よりです。私もドキドキしております。恐慌で。)
膝を折って密着する形になり、『梅』さんのからだに耳を当てる事になりましたが…
正直、自分の心臓の早鐘しか聞こえていないですし、体温を感じるどころではない冷や汗でした。
それでも、形のある生命の『硬さ』と『しなやかさ』は、ひしひしと。
私の腕の中の細い幹から縄を解くたびに放たれる、赤く縄の痕のついた樹皮に。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「違和感を感じたらすぐ、すぐお医者さんに診てもらってください。」
「お金は出しますから…連絡先を渡しておきますっ」
作業着の胸ポッケからぐしゃりと適当にわし掴んで、ペラく簡素な名刺を渡す。
よそのお庭で作業するとき、お隣さんとかに挨拶する用の、控えめな奴です。
電話番号とLINEを乗っけてます。
【フラワーショップもずる 手嶋縺 庭園の整備承っております→XXXXXXXX】
234
:
こうめ『ヘヴン・フォービッド』
:2025/06/26(木) 18:45:17
>>233
「うん、だいじょうぶ」
「わぁ…ほら見て、綺麗な痕♡」
「シュロ縄でやるのはあんまりないけど、こんな風になるんだぁ…」
縄を解かれ、腕に残った縄の痕跡
うっとりとした恍惚の表情でそれを見て、それを付けた本人にも見せる
「あっ、新しい扉を開く機会だって」
「縄占いに出てる」
縄占い
縄の跡から運勢やらなにやらを読み取る占いだが、
当たるかどうかは…不明だ
電話番号とLINEの乗った簡素な名刺を受け取った小梅
「あの…ね
うめ、また花屋さんに縛ってほしいの」
「今度は棒とかも使って、本格的に…ね?」
名刺のお返しにと自分のスマホの連絡先を渡そうとする
235
:
<削除>
:<削除>
<削除>
236
:
手嶋 縺 『ムーンライト・ホロウズ』
:2025/06/26(木) 22:44:39
>>234
「綺麗…かは…ちょっと…勉強不足で…」
「占い…?ええ…それは…あなたの…?良い報せ…なんですかね?」
細くも荒々しいシュロ縄…ヤシの木の樹皮の繊維は、『梅』さんの肌に、
波濤に立った角(ツノ)のような、寒々しくもエキゾチックな痕を残していた。
綺麗かはともかく、なんとなく、『凛々しい』痕だな、と思った。
…縄占いの仔細は存じ上げませんが。『扉』?おじさん怖いや。ノーコメントです。
「新しい機会ですとか、お縛りのご要望に叶うかは、自信ないですけど」
「…気楽にご連絡ください。植物についてのお悩みなら、ぜひ。」
>連絡先
「……」
「………ハイ」
ペコ
苦悩ののち、自分のスマホを出し、登録。繋いだ。妙な縁を。
私の社会的立場が危険なお誘い。とはいえ既に私側に弱みがあるというか。
撮った写真を編集して、送らなきゃですし…
それに、なんか…今後が心配ですよこの人。フと消息を絶つタイプの求道者。
私はセーフティーネットになれるほど立派な人間じゃあないですが、
この人が『命綱』を舫っておく『杭』の、候補のひとつに数えといてもらいたいものです。
〜♪ 〜♪♪ (手嶋のスマホから着信音)
「あっ失礼、電話です……爺さんか…せっかちですね…」
「ごめんなさい、今のお仕事の依頼人から、催促の電話が掛かってきまして。」
「『梅』さん。今日はこのへんで失礼させていただきますね、私。」
「…ではっ」
余ったシュロ縄をかき集め、慌てて出ていった。
237
:
こうめ『ヘヴン・フォービッド』
:2025/06/27(金) 21:02:00
>>236
「じゃあね〜、花屋のおにいさん」
手嶋が倉庫から去って数分の後に出て来た小梅
明るい陽に晒された小さな体
その腕に付いた縄の跡を、日に掲げ今一度見て目に焼き付ける
縄の跡は時間が経てばいずれ消えてしまう
愛しくて、儚い、瞬間のアートだ
でも小梅は、目を閉じれば思い出す事が出来る
縛られた時の痛みを伴う快感と高揚感を
小梅はまた求めて彷徨う
今度は誰が縛ってくれるかなぁ?
238
:
村田瑛壱『ディズィー・スティック』
:2025/07/25(金) 13:58:44
ずっと考えていたことがある。とはいえ答えのない問いだ。
何しろ答えを持っていたはずの男は、あちら側でおれのことを手ぐすね引いて待っている。
「あれだけの能力があって、『マテリア』は何故『あちら側』に与し続けたのか。」
奴の『スタンド』は強力だった。素早くかつ正確で、防御を許さない。
それをもってして尚、解けない軛があったのか。それとも奴もまた『諦め』を抱えていたのだろうか。
少なからず、奴の行動と最期には『それ』が見えた気もする。
いくら考えても当然答えはない。主観的なそれは本人にしかわからないことだ。
ならばと客観的な判断を下そうにも、それを組み立てる情報がない。知るものがあるとすれば・・・
「『アリーナ』。」
倉庫街を見ながらつぶやく。
それは『虎穴』だ。ただ答えを求めるためだけに相手取るには厳しい相手だ。
『殺した相手のことを知りたい』だなどという要求が通るかは・・・
「う〜むむむ。」
視線を返して海を睨む。
別段そうしたからといって答えがでるわけではないのだが。
239
:
宗像征爾『アヴィーチー』
:2025/07/28(月) 05:31:04
>>238
海辺を通り過ぎようとした瞬間、見覚えのある後ろ姿が視界に入った。
共通の仕事を請け負った間柄であり、命の恩人でもある。
こうして気付いた以上、挨拶するのが礼儀だろう。
「――――そちらは変わりないようだな」
村田の隣に歩み寄り、その場で一礼する。
以前に『水族館』で再会した時と同じカーキ色の作業服だ。
乾いた土埃、あるいは泥土を思わせるような、くすんだ色合いだった。
「『殺手のマテリア』と呼ばれた男の背景が気にならないと言えば嘘になる」
おもむろに左手を持ち上げ、具合を確かめるように軽く握り締める。
使い込まれた革手袋に覆われた左手には、依然として『後遺症』が残っていた。
『マテリア』によって刻まれた呪縛であると同時に、
手放すことのできない形見でもある。
「『アリーナ』が必ずしも全てを把握しているとも限らない」
あの組織も決して万能ではない。
例の件でも『ハイネ』の介入を許していた。
また、監視の目を潜り抜けてきたという事実は、
それだけ奴がスタンド使いとして優れているという見方もできる。
240
:
村田瑛壱『ディズィー・スティック』
:2025/07/29(火) 19:31:21
>>239
「よお、そっちも見たところ変わりねえようだな。安心したぜ。」
「ああは言ったが、あんたみたいのが大人しく言うこと聞いてくれるとは思ってないんでな。
もっとも、そいつはそのままおれに返ってくるわけだが。」
声に振り向き、宗像を上から下まで眺めた後に笑って返す。
「それはそうだろうな。把握してるんだとしたら、対応が後手に回りすぎている。
あんたがあそこで死にかけることもなかったろうよ。」
「とはいえ、だ。『アリーナ』の連中はまだ何かを隠しているように思う。」
「『嘘はない』」
「『だが全ても言っていない』」
「ややこしい話だぜ。権謀術数ってやつには縁がねえ。」
言いながら、海へ視線を戻す。
潮騒は寄せては返すばかりで、応えを運んで来はしない。
241
:
宗像征爾『アヴィーチー』
:2025/07/30(水) 10:36:10
>>240
事前に『威武』も予測していたが、その警戒を嘲笑うかのように、
『ハイネ』は悠々と現場に姿を現した。
少なくとも、総合的な戦力では『アリーナ』が上回っているはずだ。
それでも確実な先手を打つことができないのは何故か。
最大の窮地を乗り越えて生き延びた者達の力量を示すと同時に、
巨大すぎる規模が弊害を招く実例だろう。
今後、駒の進み方によっては、
ここから盤面を引っくり返される可能性も十分に有り得る。
「説明する必要がなければ明かさないというのは同感だ」
村田から教えられた『刀傷』の件を思い出す。
核心に触れる部分は伏せられたものの、個人的に思い当たる節があった。
かつて『エクリプス残党』と交戦した際、依頼人である『和国姉弟』を通して、
『スタンドを生み出す白い本』の存在を知らされている。
『スタンドを引き出す人間』が1人ではないのなら、
『スタンドを引き出す道具』が複数あったとしても驚くには値しない。
所有者に『エクリプス』絡みの共通点が見出だせることも含めて、
『スタンドを引き出す刀』という推測が成り立つ。
「奴が背負っていた何かについて、
俺には想像することしかできないが、
多少は参考になるかもしれない」
静かに左手を下ろすと、村田に倣って海を眺める。
「それで良ければ話そう」
根拠は皆無に近く、あくまで憶測の域を出ないが、それ以下でもない。
242
:
村田瑛壱『ディズィー・スティック』
:2025/07/30(水) 21:44:06
>>241
「聴こうか。どのみち答えは本人に聞くしかねえんだ。
いつか『答え合わせ』はできるだろうが、当分先の予定だからな。」
「『回答候補』は多いほうがいい。」
身体を海へと向けたまま、顔だけを宗像のほうへ向ける。
熱気を伴った海風が、男たちの間を通り過ぎる。
この寡黙な男は『わけあり』なのだろうと思ったが、それを聴く気にはならなかった。
同じ鉄火場をくぐった身として、なんとなく感じていた。
こういった機会が稀だろうということも。
243
:
宗像征爾『アヴィーチー』
:2025/07/31(木) 15:16:49
>>242
改めて『村田瑛壱』という少年を見やる。
あの戦いで俺が目撃したのは、村田が持つ底知れない力の一部に過ぎない。
それでも凄まじいものを感じざるを得なかった。
もし、何らかの事情で敵に回った場合、恐るべき脅威に成り得るだろう。
そうならなかったのは、あらゆる意味で幸運だ。
「俺は『マテリア』が『後継者』だった可能性を考えている」
一陣の熱風が過ぎ去り、再び海面に視線を戻すと、自らの考えを口に出した。
「『前任者』が引退した後で、『仕事』を引き継いだのかもしれない」
打ち寄せる波の音を聞きながら、水平線を見据えて言葉を続ける。
「しかし、おそらく強制された結果ではないはずだ」
そう感じる理由は俺自身の中にあった。
「あくまでも自分自身の意志によって選んだのではないかと思う」
左手に残った『後遺症』と同時に、奴の『生業』を引き継ごうとしているのは、
他の誰かに言われた訳ではなく、自らの意思で決断したことだ。
244
:
村田瑛壱『ディズィー・スティック』
:2025/08/01(金) 19:24:34
>>243
「あんたはそう思うかい。」
変わらず、二人の男は海を見つめている。
話や気分の暗い明るいにかかわらず、波が日光を反射して輝く。
「そうだといい。せめて自分で選んだなら、浮かばれもするだろうさ。
選択と過程、それにふさわしい最期ってやつでよ。」
はるか遠く、水平線を眺める村田の表情は見えない。
「あんた気絶してたから知らないだろうが、『マテリア』の末期は『穏やか』だった。
それが『納得』から来るものなのか、『諦観』からなのかは分からないが。」
人 殺 し
「『ああいう手合い』が死ぬときは、もうちょっとジタバタするもんだと思ってたよ。」
煙草を取り出して、火をつける。
紫煙がひとすじ流れる。
「これからはもっとひどい戦いになる。そんな『予感』がする。
『その時』が来たとして、おれは『マテリア』ほど『上手に逝ける』だろうか。」
「そんなことばかり考える。」
245
:
宗像征爾『アヴィーチー』
:2025/08/03(日) 00:03:18
>>244
村田の言葉を受けて考える。
あの夜、『ハイネ』には何らかの約束事があったらしい。
『自分の手だけでは足りないから誰かの手を借りる』と。
おそらくは『依頼』するつもりだった。
自分にとって都合の悪い『何者か』を消したがっていたことは明白だ。
「今後の争いが激化する可能性は否めない」
『契約』は果たされなかったものの、不穏な気配を感じさせるには十分だった。
「奴の最期を見届けることはできなかったが、落ち着いていたとしても不思議はないな」
互いの命を削り合いながら、『死』に向かって落ちていく最中、
『マテリア』の態度に動揺の色は見えなかった。
村田の言うように諦めていたのか、あるいは得心していたのか。
少なくとも『いつか終わりが来る』という認識はあったのだろう。
「――――――それを聞けて良かった」
一瞬、村田の側から流れてくる紫煙が、死者を弔う線香を連想させる。
「君と同じ年頃の『青山流星』という少年を知らないか?」
水面の照り返しに眩しさを感じ、無意識に目を細めていた。
246
:
村田瑛壱『ディズィー・スティック』
:2025/08/03(日) 01:33:56
>>245
「『青山流星』?聞き覚えのねえ名前だ。
珍しい名前だし、一度会ってたら忘れなさそうな名前だ。」
問いかけに反応して、宗像のほうを見る。
光の加減かもしれないが、宗像の顔が記憶よりも穏やかに見えたような気がする。
「『こんな』だからよ、あいにくあんまり友達の多いほうじゃねえんだ。
殴ったか殴られたかはしてるかもしれねえけど、そういうやつの名前はワザワザ聞かねえしな。」
「そいつに何か用でもあるのか?
名前探すぐらいなら、まあ何とかなるとは思うけどよ。」
247
:
宗像征爾『アヴィーチー』
:2025/08/03(日) 21:26:08
>>246
「青山は俺達と同じ『スタンド使い』で、人一倍『正義感』が強かったようだ」
当時の記憶を辿りつつ、一つずつ思い起こしながら話を続ける。
「躊躇なく『正義は悪に負けない』と明言する姿からは、
『確かな信念』を持っている様子が窺えた」
何が正義で何が悪か。
それは個人の価値観によって変わり、絶対的な基準は存在しない。
だが、どのような形であれ、確固たる信念は尊敬に値する。
「そして、俺は彼に助けられたことがある」
この場で青山の名前が思い浮かんだのは、村田と同年代の少年というだけではなかった。
「たった一度だけ『共通の仕事』を引き受け、『エクリプス残党』と交戦した時、
もし青山がいなければ、俺は命を落としていただろう」
村田と同じように共闘し、同じように救われた恩があるからだ。
「いつか借りを返したいと思っていた矢先、風の噂で『訃報』を伝え聞いた」
実際に確認した訳ではなかったものの、何故か『確信』に似たものを感じた。
「『もう借りを返せない』というのは居心地が良くない」
そう言うと同時に身体の向きを変え、隣に立つ村田に向き直る。
「『行く末』は分からないが、俺が『借り』を返すまでは生きていてくれ」
248
:
村田瑛壱『ディズィー・スティック』
:2025/08/03(日) 22:37:56
>>247
「あんなのを『貸し借り』に数えんのは良くねえんじゃねえのか?
いちいち数えてたらおれだって借金だらけで首まわんなくなっちまうぜ。」
煙草を咥えたまま、呆れたように笑い―――
「ま、それであんたの気が済むってんなら『貸し』といてやるぜ。
その代わり、あんたも出来るだけ生きておけよ。
なんであれ、おれは『貸しっぱなし』にはしとかえし、根に持つタイプだ。」
あいつ
「『ハイネ』からも必ず返してもらう。耳そろえてな。」
「あんたもそのつもりだろ?」
249
:
宗像征爾『アヴィーチー』
:2025/08/03(日) 23:58:55
>>248
『青山の死』は意外な程に呆気なく、
『いつか恩を返す』という認識が甘かったことを思い知らされたからこそ、
このように強い印象を残したのかもしれない。
「俺の価値観において、何かが本当に重要であるかどうかは、
その相手がいなくなった後に気付く場合が多かった」
『愛する者』を失った時も、『憎むべき敵』を失った時も、同じ感覚を覚えた。
どちらも俺にとっては『生き甲斐』だった。
それらが目の前から消え去った時、『自分自身』さえも見失った。
「だから、俺は『義理』を欠くことはしない」
『借りを返すこと』は『生きる意味』に通じる。
この身に宿った『能力』も、『それ』に見合ったものだ。
まだ『復讐』は終わっていない。
「それが何であれ『借り』は必ず返すつもりだ」
『恩』であろうと『仇』であろうと。
「もし『マテリア』の話が耳に入ったら、その時は君にも知らせる」
緩やかに踵を返し、光り輝く太陽に背を向けた。
無骨な安全靴の靴底が、灰色の砂浜を踏みしめる。
呼び止められることがなければ、そのまま海岸を歩いていくだろう。
250
:
村田瑛壱『ディズィー・スティック』
:2025/08/07(木) 09:16:46
>>249
「おっと、最後にもう一つあったんだ。
あんた、あの時は病院直行だったんで知らねえだろうから伝えとくが」
「『赤月』。あいつ何か隠していやがるぞ。
『何を』ってとこまでは分からねえが、仕事の前と後で様子が明らかに違った。」
去り際の背中に視線をやって、声をかける。
あの鉄火場にいた『もう一人』の男の変化について、だ。
「『マテリア』が死ぬときはおれも傍にいたから、そこで何かあったとは考えにくい。
そうなると、『ハイネ』とやりあったときに『何かあった』と考えるのが自然だ。
『ハイネ』とあったやり取りのうち、『何か』を隠している。おれたちにも、当然『アリーナ』にもだ。」
「具体的にどうしろってところまでは言えないが、気に留めておいてくれ。」
そこまで言って、視線を再び海に戻す。
「まだまだ暑い日は続きそうだな。
身体には気をつけろよ。『資本』だからな。」
少々うんざりとしたようなセリフを呟き、ぎらつく太陽とそれを反射する波間に眼を細める。
正直言って、暑いのはあまり得意ではないからだ。
251
:
宗像征爾『アヴィーチー』
:2025/08/07(木) 19:59:01
>>250
足を止めて村田の話を聞き、それと同時に過去の状況を振り返る。
「赤月と共闘している最中、脳天に重い一撃を受けて、俺は意識を奪われた」
高層階のフロアを丸ごと借りていることを知らされていたので、
『蝙蝠の本体』は同じ階にはいないはずだと思い込んでいたが、
これは致命的な読み間違いだった。
『漣派』と繋がりを持つホテルである事実も、
先入観を助長する一因になっていたと言えるだろう。
あの一件で思い出したのは『経験に勝る教師なし』という言葉だ。
『アリーナ』の情報だからといって、無条件で鵜呑みにしてはならない。
特に『エクリプス』を相手にする場合は、見聞きした全てを疑う必要がある。
「奴は『とどめ』を刺すこともできたはずだが、
簡単に引き上げていったところを見ると、
何らかの『取引』があった可能性も有り得る」
『マテリア』と共に落下した瞬間だけでなく、
『ハイネ』の目前で倒れた後も、そこで終わっていたかもしれない。
しかし、俺が目覚めると、既に奴は逃げ去ってしまっていた。
当時は意識が朦朧としていて気が回らなかったが、
『何かが起きた』と思うのは自然な筋道だ。
「『その時』が来るまでは、お互い『命』を大事にしておくべきだろうな」
かつて村田から言われた言葉を返し、今度は立ち止まることなく海辺を歩いていく。
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