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【個】『門倉不動産』【他】
1
:
『門倉派』
:2022/07/24(日) 21:12:16
『星見駅北口』を出てしばらく歩く。
『こんなに歩かされるなんて、これは道でも間違えたかな?』と思う頃に
ようやく現れるのが雑居ビルの一階にある『門倉不動産』―――
文字通りの『不動産屋』にして、これからは
『アリーナ』で『ショー興行』を目論む『門倉派』の根城だ。
詳細は
>>2
2
:
『門倉派』
:2022/07/24(日) 21:15:30
【このスレの説明】
・このスレは門倉良次『ソウル・ダンジョン』が営む
『門倉不動産』での日常・非日常を描く場所スレです。
・基本的には『門倉派』のPCが戯れたり、
『門倉派』に用事がある誰かが訪れたりする事でしょう。
・『個スレ』を名乗っていて申し訳ないですが、
来訪したら、いつでも『門倉』が対応するという性質の場所ではありません。
むしろ、基本的に『必要時以外は対応しない』くらいに思って頂ければと思います。
しばらく放置されたらご自身のタイミングでお帰り下さい。
・ただ、『門倉派』の他のメンバーがいる場合は対応してくれるかもしれません。
・今後、雑居ビルの二階以降の『店舗』がここで扱われるかもしれませんが、
先日、唯一存在した四階の『店舗』が法律的な問題で潰れ、
今現在、テナントは、入っていません。
・一応、『アリーナ派閥のアジト』ではありますので、
『通常場スレ活動』をあまりにも逸脱した行為をしたと判断した場合、
スレ主の独断で『相応の対応』をいたします。
【門倉派って?】
・『門倉良次』が『アリーナ』で『非バトル興行』を行おうと主催する派閥です。
基本的にPCで構成される予定で順次増えていくはずです。
・他の『アリーナ派閥』同様、『派閥構成員』と
『臨時構成員(一時的な雇われ)』で運営される予定です。
最新の説明は以下で確認してください。
ttps://wikiwiki.jp/stand0wiki0/『アリーナ』の派閥#f0a788c5
【門倉派の面々へ】
・『門倉派』の面々はこのスレを自由に使って構いません。
・『門倉』が居ない時も『門倉がどこか出かけている間の留守場をしている』など
程よい形で『門倉不動産』に居ていただいて構いません。
・『勧誘者』の面談に使ったり、『来訪者』の対応をしたり、
『門倉派』同士で『相談』したり、あるいは『一人』で何か楽しんでいても問題はありません。
・『門倉派』の『メール』や『電話』などのやりとりも、
『星間通信』でなくここでやって頂いても構いません。
・外部での『活動報告』など、ここにURLを張っておくと
後から探す時に探しやすいかもしれません(つまりは推奨です)。
・ただ、『門倉派』であろうとも、あまりにも『逸脱した行為』には
スレ主の見えない力で『相応の対応』をいたします。
『門倉派』の名に恥じない適切な行動をしていただければと思います。
3
:
美作くるみ『プラン9・チャンネル7』
:2022/07/24(日) 22:08:40
>>(門倉)
[こんにちは。『例の件』について、ご連絡しておきます]
ピッ
『高宮』との連絡後、
(ttps://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/comic/7023/1456056964/715-721)
『門倉』宛に『メッセージ』を送信する。
[単刀直入に言いますと、『一人』確保できました。
『どういった方か』は『後のお楽しみ』という事で]
[『残りの二人』も、じきに見つけてみせますよ。
期待して待っていて下さいね]
4
:
門倉『ソウル・ダンジョン』
:2022/07/25(月) 00:12:32
>>3
(美作)
『美作』からの『メッセージ』に目を見開く『門倉』。
町中で『スカウト』したのか、あるいは『知己』に連絡したのか、
いずれにせよ、早い。『美作』の優秀さを改めて実証した形と言えよう。
【さすがだね、美作さん。残り二人か。
期待はしているけど、無理だけはしないでね】
―――『返信』。
『合歓垣』の方でも見つけてきたとしても、
集まる人数が多ければ『選考』なんてことも出来る。
絶対に『三人』にこだわる必要だってないのだ。
なかなか幸先のいいスタートに、思わず顔が緩む『門倉』だった。
5
:
アラン・スミシー『ザ・ミレニアム』
:2022/07/25(月) 09:28:30
雑居ビルの前に、髪も眉も髭もない、悪い意味で他人の目を引く男が立っていた。
彼は流しのスタンド使いで、今は『アラン・スミシー』と名乗っている。
色々あって前に根城にしていた町に居づらくなった彼は、当てのない放浪の末、この町にたどり着いたばかりだ。
放浪生活で路銀が尽きかけていた彼はーーそういった時に良くやる方法としてーー雑居ビルの空きテナントに勝手に入り込むことにした。
そう遠くない未来に見つかって追い出されることになるだろうが、それまでは雨露をしのぐ屋根を確保できる。
目の前の雑居ビルに目をつけた彼は、自分の家に入る時のように何の気負いもなくビルの中に入っていく。
6
:
合歓垣 瑛『ブラス・コンストラクション』
:2022/07/25(月) 09:49:52
>>5
階下、『門倉不動産』ではツインテールの少女が首を傾げていた。
この上は現在、『空きテナント』になっていると聞いたような気がするからだ。
もしかしたら合歓垣の聞き間違いかもしれないが…。
「おじさーん、なんか変な音がするから見てくるねー!」
門倉が聞こえているのであれば、まだ一桁年齢の少女が空きテナントに向かうのを止めるかもしれないがはたして…?
7
:
門倉『ソウル・ダンジョン』
:2022/07/25(月) 10:42:34
>>5-6
(アラン&合歓垣)
「ああーーーただの軋みだろうけど。
ここは前に諸事情で大破しちゃってね、
あまりシッカリしてないんだよな。
今はちょっと『仕事中』だから、
一応、確認だけお願いするよ」
パソコン画面に集中しながら
『合歓垣』にそう告げる『門倉』。
深刻な事態とは捉えていないようだ。
8
:
アラン・スミシー『ザ・ミレニアム』
:2022/07/25(月) 10:45:47
>>6
合歓垣が上階に上がると、絶対に見たことないと断言できる異相の男が何かを探しているようだった。
空きテナントの場合、内見用に不動産業者が配電盤などに鍵を隠していることがある。それがないか探しているのだが、幼い合歓垣にはそこまではわからないかもしれない。
9
:
合歓垣 瑛『ブラス・コンストラクション』
:2022/07/25(月) 10:53:53
>>7
「はーい!
じゃあいってきまーす」
合歓垣はそう言うと物音がした『空きテナント』へと足を進めた。
>>8
「……?」
門倉は『ただの軋み』と言ったのだ。おそらくこのような男がいると知っていたとは思えない。
となると…。
合歓垣はなにかを探している見知らぬ男の後ろに立つと念のため防犯ブザーに手をかけながら話しかけた。
「おじさん、なにしてるの?」
泥棒かもしれない、そんな猜疑の目が向けられる。
10
:
アラン・スミシー『ザ・ミレニアム』
:2022/07/25(月) 11:12:19
>>9
アランは合歓垣の声で手を止め、視線を彼女に向ける。
(人が来るのは覚悟してたが・・・子供は予想外・・・)
防犯ブザーに手をかけているところを見ると、自分と違ってこの場にいることにやましさを感じるような立場ではないようだ。となると。
「この部屋に用事があるんだが、君はここの人かな?」
答えになっていない答えを返しながら、相手の情報を引き出そうとする。
11
:
合歓垣 瑛『ブラス・コンストラクション』
:2022/07/25(月) 11:22:01
>>10
「ここに用があるなら、どーして…んと、『家さがし?』してたの?
チャイムならしたり、下の『門くらふどーさん』にくればいいのに」
電話に出るときには自分の名前を名乗らない、必ず相手に名乗らせる。
不審だと思ったら自分の情報を与えないと教えているらしい母親の苦労が実っているようだ。
それでも対話しようとするあたり、まだ子供なのだろう。
「おじさん、なにしてるの?」
気付けば少女の足に見慣れぬブーツが現れている。
12
:
アラン・スミシー『ザ・ミレニアム』
:2022/07/25(月) 11:46:15
>>11
「そうそう、この部屋を(ただで)使いたいんだけど、どこで聞けばいいかわからなくてね。その、『かどくら不動産』?に聞けばいいのかな?」
警戒はしているようだが、これくらいの子供は大人に物を教えることに優越感を感じるタイプも少なくない。合歓垣がそうであることに期待し、無知を装って質問を続ける。
(スタンド・・・か?)
合歓垣の靴がいつのまにかおかしなデザインに変わっていることに気づく。
いざとなれば『ザ・ミレニアム』で防犯ブザーを奪い取ることも考えていたが、相手がスタンド使いであるなら、一筋縄ではいかないかもしれない。
13
:
合歓垣 瑛『ブラス・コンストラクション』
:2022/07/25(月) 11:55:00
>>12
「なんだ、お客さんなんだ」
合歓垣はほっとした表情で警戒を緩める。
しかし、門倉不動産も店舗である以上看板は出ているだろう。
それなのに何故この男は上階のこちらへ進んだのか、そう考えたところで合歓垣はもしかして、と口にする。
「おじさん、お店がこっちにあるってかんちがいしちゃったの?
ちがうよ、こっちだよ」
合歓垣はそう言うとスタンドを発現したまま、先行し階下へと案内しようとする。
防犯ブザーから手は離れており、視線もアランを向いていない。
14
:
アラン・スミシー『ザ・ミレニアム』
:2022/07/25(月) 12:08:56
>>13
「お、どうもありがとう。困っていたんだ。助かるよ」
『子供なのに大人の役に立つ立派な子』という自尊心をくすぐっていい気分にさせつつ、せっかくなのでもう少し情報を引き出そうとする。
「ところで、『ずいぶん変わったデザインの靴』だね?」
15
:
合歓垣 瑛『ブラス・コンストラクション』
:2022/07/25(月) 12:16:58
>>14
「……?」
合歓垣は振り返り、アランの視線が向かう先を確認する。
合歓垣の『ブーツ』はパイプで作られたような、明らかに特異な見た目をしている。
だが、これはあくまで『スタンド』だ。一般の人間には見ることは能わない。
本来履いている靴はあくまで普通の可愛らしい靴なので『ずいぶん変わった』と言われるはずもない。
ということは…。
「おじさん、『スタンド使い』なの?」
『スタンド使い』の『アイドル勧誘』を門倉に頼まれていることを思い出し、『歌って踊る』ことができそうかを考え、
小さな声でつぶやいた。
「んー…ちょっとむりがあるかも…」
手を顔に当ててまじまじとアランの風貌を確認している。
アイドル向きだろうか。
16
:
アラン・スミシー『ザ・ミレニアム』
:2022/07/25(月) 12:34:01
「ああ、やっぱり『スタンド』か。
その「かどくら」さんもスタンド使いなのかな?」
合歓垣はアランの顔をまじまじと見る。
髪も眉もない中年の男に声をかけるスカウトマンがいたとしたら、そいつは即座に首になることだろう。
テレビ番組の中よりは刑務所のマグショットで見る方が遥かに自然だと思えた。
17
:
合歓垣 瑛『ブラス・コンストラクション』
:2022/07/25(月) 12:46:00
>>16
「ひっ…」
改めて顔を見たところ、とても恐ろしい顔をしていたのに気付き合歓垣の顔がひきつる。
小学生がまず遭遇することのないだろう顔だ。
「べ、別にこわくなんかないしっ」
合歓垣はそう小さく呟くと改めて防犯ブザーに手を当て、いざとなれば足を盛大に動かしてやると覚悟し、
アランを上目遣いでにらめつける。
「なんでそんなこと言わないといけないの?
知らないおじさんに」
……一度解けた警戒が強まっているらしく、語気が荒い。
アランの人相の怖さとスタンド使いであるという恐怖からの強がりだ。
18
:
アラン・スミシー『ザ・ミレニアム』
:2022/07/25(月) 13:18:38
>>17
「怖い?人の生まれつきの顔を見て怖いとは失礼な子供だ」
また警戒されてしまったので、飴路線は諦めて鞭で行くことにする。
声を低く、硬く・・・普通の子供ならそれだけで身体が竦むくらいに、言葉の温度を下げる。
「それに、先にスタンド使いかと聞いてきたのはそちらだろう?
聞き返すのに何の問題があるんだ?」
声音と理屈、両方で合歓垣に『圧』をかける。
19
:
合歓垣 瑛『ブラス・コンストラクション』
:2022/07/25(月) 13:35:59
>>18
「う、うぅ…」
普段見ることのない大人の凄む顔だ。
睨んでいた顔も眉を垂らし目から今にも涙がこぼれそうになっている。
つまり、半泣きだ。
「だってこわいのはこわいんだもん!!
お金配りおじさん! やばいのがいるー!!」
謎の呼び名で何者かを呼びながら防犯ブザーを慣らし、足で地団駄を踏むように動かす。
防犯ブザーと『ブラス・コンストラクション』からそれぞれ大きな音が鳴り、重なり、『不協和音』となり周囲に鳴り響く。
『音響爆弾』だ。不快で派手な音がアランに向かう。
20
:
アラン・スミシー『ザ・ミレニアム』
:2022/07/25(月) 13:55:51
「ぐわぁっ!?」
突然の暴力的な音圧に思わず耳を塞ぎながら後ずさる。
(『音』の攻撃!)
雑居ビルの通路を走り、合歓垣から距離を取る。
『音』である以上、発生源から遠ざかればその威力は弱まるだろうと推測しての行動だ。
21
:
合歓垣 瑛『ブラス・コンストラクション』
:2022/07/25(月) 14:13:22
>>20
離れたことから『音』は当然減衰する。
だがここは屋内だ。『反響』もするし音の逃げ場は少ない。
減衰するとはいえ、屋外で距離を取る場合と比較するとそこまでのものは望めないだろう。
そもそも広さの問題もある。
合歓垣は一度防犯ブザーを止め、足を止めて観察する。
あまりに鳴らしすぎるとご近所迷惑だ。
「……ここで、なにしようとしてたの。
『ばくだん』とか、『さつじん』とか…?」
人相と恫喝、家探しで完璧に悪人だと認識されたようだ。
涙ぐみ、声を震わせながら、本人なりに気丈に問いかける。
互いに質問にきちんと答えない応酬のため、猜疑心ばかり強くなっている。
22
:
アラン・スミシー『ザ・ミレニアム』
:2022/07/25(月) 14:43:08
>>21
(場所が悪い・・・!)
屋内のため、距離を取ることに期待したほどの効果が得られないことに苛立ちを感じつつ、通路の角まで逃げて、身を隠すような形を取る。
「さっきも言った通り、部屋を使いたいだけだ!
どこからそんな物騒な単語が出てくる!?」
相手と会話しつつ、思考を巡らせる。
(応戦すること自体はできるが・・・向こうの発言から察するに『お金配りおじさん』とやらが近くにいるのだろう。やりあってしまえばそのおじさんとの敵対もほぼ不可避。今なら一方的に攻撃されただけと抗弁もできるが・・・あれを続けられるのはたまらんな・・・)
23
:
合歓垣 瑛『ブラス・コンストラクション』
:2022/07/25(月) 15:04:27
>>22
「だって、顔がこわいし…それになんかごそごそしてたし…。
……ホントに悪い人じゃない?
けーじドラマの悪役みたいだけど…」
ほぼ顔基準な上にテレビのイメージだったらしい。
マグショットで見るような恐ろしげな顔は小学生には逃げるか庇護してくれる相手を呼んで守ってもらわなければならない程度には恐怖を感じるもののようだ。
今、多少落ち着いて会話できているのは姿がほぼ見えなくなっているからかもしれない。
「……部屋使いたいなら、『かどくらふどーさん』に行って、
ちゃんと『身分しょーめい』して『お金』くれたらできると思うよ。
ほんとのほんとーに悪い人じゃないんだよね?」
指折り数えつつ門倉の仕事を思い返す。
おそらく契約に必要なのはそのあたりのはずだ、この怪しい風体の男に可能なのか訝しんでいる様子だ。
24
:
アラン・スミシー『ザ・ミレニアム』
:2022/07/25(月) 18:38:13
>>23
「子供とはいえ本当に失礼なやつ・・・とにかく、その門倉不動産に行けばいいんだな?
なら勝手に行くから早く消えろ」
角から手だけ出して「しっしっ」と追い払うジェスチャーをする。
25
:
合歓垣 瑛『ブラス・コンストラクション』
:2022/07/25(月) 18:48:28
>>24
合歓垣は追い払うようなアランの言葉に猜疑心を改めて抱いているようだ。
もしかしたら自分が目を離した瞬間にでもこの悪人のような人物はなにかやらかすのではないか。と。
じっとアランを見つめたまま、門倉にメールを送る。
〈上の階にへんな人がいました。
丸ぼーずで白くて赤くてスタンド使いのおじさんです。
ごそごそしててへんだけど部屋をかりに来たらしいです。
あたしを追いはらおうとしてます。
お店に来たいみたいなので連れてっていいですか〉
忙しい門倉から返信が来るかはわからないが、不審人物情報の共有を終えた合歓垣は一息ついて声をかける。
「下まであんないするよ?
あたし、『かどくらふどーさん』から来たし、お手つだいくらいならできるもん」
26
:
アラン・スミシー『ザ・ミレニアム』
:2022/07/25(月) 18:56:33
>>25
「なるほど、客をスタンド攻撃でお出迎えするんだな。
きちんとお手伝いできてえらいぞ」
伝わるかどうかは不明だが皮肉を言いつつ姿を表す。
もはや不機嫌さを隠そうともしていない赤い眼が合歓垣を睨んでいる。
27
:
合歓垣 瑛『ブラス・コンストラクション』
:2022/07/25(月) 19:04:10
>>26
「だっておじさんがいじめてくるんだもん!
ばーか! ばーか!!」
「それにあたし、お店の子じゃないもーん。
たまたま上の階に行ったらこわい人がいておどされちゃったから『正当ぼーえー』だしー?」
既に子供の喧嘩である。
涙の跡がにじむ目尻をぬぐいながら睨みつけている。
顔に『このおじさん嫌い!』とでも書いてあるようだ。
28
:
アラン・スミシー『ザ・ミレニアム』
:2022/07/25(月) 19:34:21
>>27
「脅されたんじゃあなく、勝手にビビっただけだろう?
何が正当防衛だか。こっちこそ『正当防衛』で返り討ちにしてもよかったんだぞ」
嫌われたようなのは火を見るより明らかだが、気にすることではない。
合歓垣の悪態に適当に返事をしながら、階下の『門倉不動産』を目指す。
29
:
門倉『ソウル・ダンジョン』
:2022/07/25(月) 21:10:40
>>27-28
(合歓垣&アラン)
『少女』に連れられて『アラン』は一階の『門倉不動産』にやってくる。
………
「―――ん?」
その気配にようやく『門倉』が『パソコン』から目を離す。
この分だと『合歓垣』のメールも確認していないのだろう………
「だ、誰だい―――?」
そして、『合歓垣』が連れてきた『アラン』に動揺を隠せない『門倉』。
二階に誰か居るなんて思っていなかった上に、異様な風体―――
驚くな、という方が難しいだろう。
30
:
合歓垣 瑛『ブラス・コンストラクション』
:2022/07/25(月) 22:12:37
>>29
「あ、この人ね、上でがさごそやってたんだー。
なんかお部屋かりたいみたいだよ?」
合歓垣はそう言うとすたこらと門倉の後ろに走って逃げた。
そして門倉にだけ聞こえるように小声でささやく。
「なんか、『スタンド使い』みたい。
すごくこわいの」
そう小声で言うとアランにあっかんべーをし、奥に下がった。
31
:
アラン・スミシー『ザ・ミレニアム』
:2022/07/25(月) 23:10:37
>>29
「あー、はじめまして。
君が『お金配りおじさん?』」
部屋の内装を眺めて門倉の経済状態を推測しながら挨拶する。
こちらの意図はわからないまでもジロジロ値踏みされていることは門倉にも伝わるだろう。
32
:
門倉『ソウル・ダンジョン』
:2022/07/25(月) 23:31:10
>>30-31
(合歓垣&アラン)
「『スタンド使い』の『新居探し』ね―――」
『合歓垣』の言葉で最低限の状況は理解する。
「『金配りおじさん』………?」
『アラン』の言葉に『合歓垣』の方をわずかに見やる。
「………まあ良い。座って下さい」
『門倉』は、片隅にある『ローテーブル』に設置された
『ソファ』に『アラン』を座るよう誘導する。
『アラン』がどれだけ『不動産屋』に入った事があるかは分からないが、
『門倉不動産』はいわゆる『町の不動産屋』といった形態だ。
『家具』も量産品が中心―――とりあえず儲かっているような感じは受けない。
『門倉』はちらりと『合歓垣』を見た。
『合歓垣』と初めてここであってからすでに何度も『合歓垣』はここに来ている。
なので、『合歓垣』はいわゆる『お茶セット』がどこにあるのかも熟知している。
出来たら『お手伝い』をして欲しい思いはあるが―――
あくまで『門倉派』の手伝いとして来た彼女をそういうふうに使っていいかの葛藤はあった。
………
「で―――どういった『部屋』をお探しで?」
まあ、とりあえず、要望だけきき、資料を出してからの『お茶出し』でもいいだろう。
たとえ怪しい『スタンド使い』でも客は客だ。
33
:
合歓垣 瑛『ブラス・コンストラクション』
:2022/07/25(月) 23:37:08
>>31-32
ちらと目線がこちらに来たのを感じ、いつもの仕事を考えるとお茶だろうと思ったのだろう。
合歓垣は奥でお茶セットを準備している。
かちゃかちゃと茶器を出す音やお湯をポットから注ぐ音が聞こえてくるかもしれない。
「……ちゃんとおてつだいできるし」
どうやら『スタンド攻撃でお出迎え』と言われたことを根に持っているらしい。
小学生なりに頑張った程度のお茶が出てきそうだ。
34
:
アラン・スミシー『ザ・ミレニアム』
:2022/07/25(月) 23:52:21
>>32
「正確に言うと、探しているのは『住む場所』と『仕事』だ」
門倉に進められるがままにソファに座ったアランは第一声でそう言った。
「この街に来たばかりだが、その両方の当てがまだない。
最初は寝床だけでも、と思っていたが、今はここで仕事にもありつけるかも、と少し思っている。
あの子もスタンド使いだろう?そういう人材の需要があるんじゃないか?」
推測混じりの勘ではあるが、外れていれば他を当たるだけだ。
「例えば、このビルを不法占拠しようとする輩を実力で排除するとか・・・
スタンド使いならトラブルに巻き込まれることも珍しくないだろう?
私の顔を見てビビるような失礼な子供よりは荒事に慣れているつもりだが・・・どうかな?」
35
:
門倉『ソウル・ダンジョン』
:2022/07/26(火) 00:12:52
>>33-34
(合歓垣&アラン)
「ふゥむ………」
『合歓垣』がそのうち『お茶』を持ってきてくれることを期待しつつ、『門倉』は腕を組む。
『仕事』をしてくれる『スタンド使い』―――それ自体は貴重であり歓迎すべき存在だろう。
ただ、『仕事』にはとうぜん『報酬』が必要だ。
今の時期、『門倉派』の『アリーナ開催』の為に持てる財力は使いたい。
眼前の彼が『アイドル』になりえないことは明白―――
であれば、『他で役立ってもらえるか』どうかが焦点か。
「つまり、『不動産屋』である俺に貴方を雇ってほしいと?
そりゃあ多少の揉め事はないとは言えないが、
常時、『用心棒だけの存在』を雇うような余裕はないんですよね―――」
そういうと『門倉』は値踏みするように『アラン』を見る。
『アラン』には『素性不明』というハンデもある。
『合歓垣』や『美作』は『夏の魔物事件』時にある程度、
その素性を予め把握していたので、容易に『門倉派』への協力を求めた。
ただ―――眼前の男は色々な意味で『怪しい』。
「それでも―――というのであれば、まずは、
貴方の『スタンド』がどれだけ動けるか、
どんな能力があるか、その詳細を見せてもらえませんか?」
なんにせよ『アラン』のスタンドの詳細を確認しておくべきだろう。
能力の詳細だけでなくヴィジョンがあるならその『スペック』も。
普段ならここまではしないが―――申し訳ないがいくらなんでも『怪しすぎる』。
もし、渋るようなら、仮に有用だとしても
いつ寝首をかかれるか分かったものではない。
お引き取りいただくしかないだろう。
36
:
合歓垣 瑛『ブラス・コンストラクション』
:2022/07/26(火) 05:14:38
>>34-35
「ととっ…」
お盆にお茶と菓子入れを載せて合歓垣が戻ってきた。
味はそこそこだろう。
「えー。そのおじさん、『用心ぼー』なの?
あたしがちょっとやっただけでにげてっちゃったよ?
ねー?」
どうやら門倉という大人がいる分、気が大きくなっているようだ。
まだ警戒しているのかスタンドは解除せず、すぐ門倉の後ろに隠れられるようにしているようだ。
37
:
アラン・スミシー『ザ・ミレニアム』
:2022/07/26(火) 07:01:50
>>35
>>36
「・・・・・・」
スタンド使いにとっては不躾と言ってもいい門倉の要求にも、合歓垣の子供じみた侮辱にも、アランはこれといった反応を見せることはなかった。
表情を変えず、微動だにせず、
ただ、座ったままのアランの傍らに、『剣』を持った人型のスタンドが現れる。
門倉がその姿を認めるや否や、残像が見えるほどのスピード(A相当)でスタンドの持つ『剣』が門倉の首を薙ごうと襲いかかる!
38
:
門倉『ソウル・ダンジョン』
:2022/07/26(火) 08:00:25
>>36-37
(合歓垣&アラン)
襲いくる『アラン』の突如の凶刃ッ!
いや、突如ではない。
そもそも『それ』を見せてくれと言ったのは『門倉』の方なのだ。
こういう流れもまったく想定していなかったわけではない。
ただ―――
(速すぎるッ!)
『門倉』の『ソウル・ダンジョン』もけして遅い方ではない。
だが『アラン』のスタンドの速度は、
『門倉』が今まで経験した中でもトップクラスのものだった。
『ソウル・ダンジョン』を本能的に出し、
腕で防御(ガード)はしてみたが正直どこまで間に合うか……
『ホーム』だからと言ってどこか油断していた『門倉』の失態なのかもしれない。
とはいえせめて『合歓垣』は守らないといけない。
『合歓垣』の位置からなら直ぐに外に出る事は容易だろう。
賢い彼女なら即座に適切な判断を下せるはずだ―――
39
:
合歓垣 瑛『ブラス・コンストラクション』
:2022/07/26(火) 08:19:02
>>37-38
「えっ…」
目にも留まらぬスピードで門倉が切りつけられたのを見て合歓垣が取った行動は先程の『音響爆弾』だった。
足を動かすスピードも防犯ブザーを鳴らすスピードともちろん人並みだが、『音』は光よりは遅くとも速く響く。
それも狭い室内だ、先程のように通路に逃げられない分ダメージは大きいはずだ。
そしてアランの方向に走り出す。
40
:
アラン・スミシー『ザ・ミレニアム』
:2022/07/26(火) 08:39:52
>>38
咄嗟に差し出した『ソウル・ダンジョン』の腕。
しかし『ザ・ミレニアム』の刃は何の抵抗もなくその腕に食い込み、一切の勢いを落とすことなく進み・・・
門倉の首を、スタンドの刃が通り抜けた。
門倉の腕も首も、痛みは全くなく、何も変化は起きていない。
「・・・・・・」
アランは依然座ったまま、合歓垣の出したお茶を啜っていた。
「『ザ・ミレニアム』は『10秒後の未来』を斬った。
あと5、4、3・・・」
>>39
「ぐわ!よく見ろバカ!」
合歓垣の出した爆音に、持っていた湯呑みを放り投げて耳を塞ぎながら、『ザ・ミレニアム』でローテーブルを蹴り上げる。
ローテーブルを遮蔽物に使うことで爆音の被害の軽減と、合歓垣の移動の妨害を行いながら、合歓垣に冷静になるよう促す。
41
:
門倉『ソウル・ダンジョン』
:2022/07/26(火) 12:16:46
>>39-40
(合歓垣&アラン)
『アラン』のスタンドの刃が『門倉』の首を通過する!
やはり、ギリギリ間に合わなかった―――
……はずだが、何の痛みもない。
「―――『未来を切る』?」
『アラン』の意味深な言葉と時限爆弾のごとき
『カウントダウン』に嫌な予感しかしない。
サァッ
咄嗟に後ろに大きくバックステップする『門倉』。
ただ、その勢いで前に出た『ネクタイ』は
元の『門倉』の首の部分に入ってしまうかもしれない。
42
:
合歓垣 瑛『ブラス・コンストラクション』
:2022/07/26(火) 12:19:01
>>40
目の前に現れた遮蔽物を一時的に浮き上がり飛び越え、アランの膝に着地するとすぐ飛び退き『アランのズボン』を『共鳴』させようとする。
「お金配りおじさんにひどいことしちゃだめー!」
「……え?」
『高速トリル』してめちゃくちゃにシェイクしようとした合歓垣だったが門倉の方を見て目をぱちくりさせる。
>>41
――……切れてない?
合歓垣は首を傾げながら注視する。
『10秒後』になにが起こるのだろうか。
43
:
アラン・スミシー『ザ・ミレニアム』
:2022/07/26(火) 13:52:08
>>41
>>42
門倉と合歓垣、そしてアランの視線の先、
そこには先程アランが放り投げた湯呑みが宙を舞い、門倉のネクタイがひらめく。
『シュバッ!ッキィン!』
空中に突如現れたその刃は、『10秒前』に『ザ・ミレニアム』の剣が描いた軌跡そのままに動き、湯呑みとネクタイの両方を切断した。
今や四つになった二つの物体は、空中という不安定な場所であったにも関わらず、最初からそうなるべく作られていたかのように綺麗な切断面を見せている。
「説明は面倒なので実技で示したが・・・。
私にとってスタンド能力の詳細は企業秘密。
軽い気持ちでそれを見せろと言ったわけではないと認識しているが?」
静かな口調ではあるがその声音には、門倉の選択の自由を尊重しようという意思は全く感じられない。
44
:
門倉『ソウル・ダンジョン』
:2022/07/26(火) 21:22:42
>>42-43
(合歓垣&アラン)
シュバッ! ッキィン!
『アラン』の『湯呑』と、『門倉』の『ネクタイ』。
この二つがきっちり『10秒』の時を経て、『破壊』される。
『湯呑』の方は切ったというより、叩き割ったに近い―――
それを見るに一閃の『破壊力(切断力)』は『常人レベル』のパワーなのだろう。
だが、仮にこれを『重ねられた』ら…………
「………」
『門倉』が少しばかり言葉を失ったのは、
『ザ・ミレニアム』と呼ばれた『アラン』のスタンドの脅威にもあるが、あと一つ。
つまり、『パフォーマンス』の過程で被害を受けた
『湯呑』も『ネクタイ』も『ローテーブル』も、
すべては『門倉』の所有物だということ―――
………
「―――よォく分かった。
貴方の能力のこと」
ようやく気を取り直した『門倉』は『アラン』に語り掛ける。
明らかに年上の男―――いつもなら『敬語』で話すが、
ナメられたくはないという思いがあるため、『普通に』、話す。
「………とりあえず、『住む場所』については、提供しよう。
この『テナント』の四階は、つい最近まで営業していたのだけど、
法律的な問題で『閉店』となってね―――
ちょっと調べればそんな経緯はすぐに分かるし、
しばらくは『空きテナント』間違いなしというところなんだ。
心配しなくても、警察が『証拠』を根こそぎ
持っていったから『変なモノ』は一切置いていない。
わりあい高級な『ふかふかベッド』が
一人では堪能しきれない残っているはずだよ―――」
詳細はボカしてあるが何かいわくつきの場所らしい。
ただ、こっそり隠れて住むよりは随分とマシな環境だろう。
45
:
合歓垣 瑛『ブラス・コンストラクション』
:2022/07/26(火) 21:32:47
>>43-44
合歓垣は唖然とした表情で先程まで自分がお茶を煎れていた湯呑みが切れるのを眺めていた。
そして、今の今まで自身がどれだけ危険な橋を渡っていたのか気付き顔を青くする。
慌てたように門倉の後ろに隠れる。
足ががくがくと震えているようだ。
46
:
アラン・スミシー『ザ・ミレニアム』
:2022/07/26(火) 22:59:25
>>44
「ありがたい」
問題のある物件であることは察したが、そうでなければ気前良く提供しようとも思わないだろう。
特に気にする様子もなく感謝の言葉を口にする。
「仕事については?
血生臭いことには人より慣れているつもりだが」
>>45
合歓垣がこちらに視線を向けるようなら、こちらも見返す。
ここに厄介になるなら今後も顔を合わせることがあるかもしれない。
付きまとわれると面倒なので怖がられておいた方がいいだろう。
47
:
門倉『ソウル・ダンジョン』
:2022/07/26(火) 23:50:02
>>45-46
(合歓垣&アラン)
「血生臭いことか―――
そういうのならそれこそ『アリーナ』が良いのかもしれないな」
『門倉』が『アラン』にそう告げる。
「この町にどのくらい滞在しているのかは知らないが………
ここでは『アリーナ』という『闘技場』がある。
『スタンド使いの闘い』を『見世物』とする場だ。
そこの『ファイター』となるのが一番稼げるだろうね。
一応、ツテがあるから、よければ紹介してあげようか?
もっとも、すぐに『試合』が組まれるかは『タイミング』もあるようだけど―――
一応、俺達もその『アリーナ』で『興行』しようとしてはいるんだが、
俺達の場合は少々毛色が違ってね―――
もっと一般的な『ショー』を行おうと考えているんだ。
貴方はそういう『見世物』に出るタイプではなさそうだし………
そもそも最初に行おうとしているのは『アイドルショー』だしね」
『門倉』が語り続ける。
「今の能力をみるに『用心棒』というのも心強いが、
早々、『敵』が襲ってくるという状況ではないのでね―――
常時雇って、暮らせるだけのお金を提供するというのは難しいかもしれない。
あとは、『スタンド使い絡みの案件』が入って来ることもあるけど、
不定期な上に不思議と『闘い』が必要なものは少なかったりするんだよな」
とりあえず、『闘技場』の『ファイター』という職なら、不定期ながらもあるようだ。
あとは『ショー』というが………あまり羽振りも良さそうではないし、
もし何かで手伝っても、あまり『報酬』は貰えないように思えた。
48
:
アラン・スミシー『ザ・ミレニアム』
:2022/07/27(水) 00:26:26
>>47
「見世物になるのは気が進まない。
単純に嫌、というのもあるが、自分の手の内を不特定多数の相手に把握される、というのは困る。
想像はつくだろうが、買った恨みの数は一つや二つではないし、今後も増えるだろうからな。
アイドルショー・・・ということなら、おいたをする困ったファンに対応する怖いお兄さんが必要なんじゃないか?」
と、そこまで言ってから気づく。
「まさか、アイドルというのは、その後ろで震えてるそれか?」
合歓垣を指差して尋ねる。
49
:
門倉『ソウル・ダンジョン』
:2022/07/27(水) 07:19:26
>>48
(アラン)
「彼女は『アイドル』じゃあない。
―――とりあえず今はね」
と、最初に『アラン』の問いに応える。
そして、次に本題、『仕事』についての相談だ。
「それなら………いくら『戦闘嗜好』があっても、
『闘技場』の方もご遠慮願いたいというところか」
『門倉』は再度、腕を組む。
「おいたをするファンか―――
そういうファンが出来るかどうかも分からないし、
今からそこにそれなりのお金をかけるというのもね―――」
実際、『門倉』に経済的な余裕はない。
『アリーナショー』の開催はいくらカネを用意しても用意しすぎるという事はない。
『ショー』に出てくれる、あるいは、サポートしてくれる者は当然確保する必要があるが………
単純な『戦闘員』を入れておく余裕と意味合いは今のところは薄いのだ。
そしてなにより、『買った恨みの数は一つや二つでなく、今後も増えていく』
この男を派閥に絡ませる事自体、『門倉派』が『逆恨み』を買うのではないか?という懸念が強い。
『用心棒』として雇った男のせいで、『用心棒』が必要な事態を誘発するのは『本末転倒』もいいところだ。
………
『能力を把握されたくない』―――理屈は分からなくもないが、
『スタンド能力が取柄であり、それで生計を立てたい』というのであれば、
それはもう『仕事のスキル』のようなものだ。
ある程度はそれを主張してアピールする必要があると思うが、
おそらく彼が今まで身を置いていた環境は
『能力がバレる事が生死に直結する』ような、殺伐とした世界だったのだろう。
『エクリプス』との闘争に明け暮れたという『昔の星見町』なら、
彼のような考えが主流だったのかもしれないが―――
………
「そうか―――なるほどね」
『アラン』と話していて、まったく別口で、とある考えが浮かぶ『門倉』。
かつてこの町に『エクリプス』という『スタンド使い』の悪党集団がおり、
『アリーナ』が総力をあげて退治した、と聞いている。
その経験がスタンド使いを見世物にする『アリーナ』を
継続する一因なのではないかという考えだ。
『戦闘嗜好があるスタンド使いに【真っ当な職】を与え、犯罪に走らせない】』事がまずひとつ、
そして、そのスタンド使いの能力を公に披露させる事で『その脅威を減じさせる』という考えがもうひとつにあるのだろう。
『見世物』にするには、『見世物』にするだけの『意味』がある―――
『アリーナ』は営利はもちろんだが、こういった形で『町の平和を護っている』とも言えなくもない。
………
「………となると、だ」
妙な事に気づいてしまったおかげで『アリーナ派閥』予備生としては、
眼前の男をこのまま放り出してはいけない気がしてきた。
どこから来たのか知らないが―――このまま放り出す事で、
『星見町』で揉め事をおこし、『犯罪者』になってしまえば、
初動で対応した『アリーナ派閥』としての責任問題となってしまうのかもしれない。
「………たとえば、『覆面』を被るなどして、『正体』がバレないようにしつつ、
『ショー』に出る、なんて事は考えられないかい?
もちろん、『アイドルショー』ではなく、別の機会という事だけど」
『可能性』を探っていこう。
ポジティブな事を言えば、『門倉』は『次回ショー』の構想が頭に浮かんでいた。
『闘技場での戦闘を好む観客』にも受けがいいであろう『武器』を使った、『刀剣演武ショー』。
『門倉』がオリジナルの名をつけるなら―――『刀剣乱舞』とでも言おうか。
それに眼前の男が出てくれるなら『確保』する事に、こちらとしての利も出てくる。
50
:
アラン・スミシー『ザ・ミレニアム』
:2022/07/27(水) 08:24:44
>>49
「誠意として言っておくが・・・この町に骨を埋めるつもりはない。
1ヶ月か、半年か、1年か・・・それはわからないが、どこかのタイミングでここを去ることになる。
その間でも構わないなら、詳しく話を聞きたい」
51
:
門倉『ソウル・ダンジョン』
:2022/07/27(水) 21:38:58
>>50
(アラン)
「………それなら、それで仕方がない。
逆に『アイドルショー』が絶対上手くいく可能性なんて無いからね。
もし失敗すれば、『次のショー』なんて存在しない。
つまりは俺の方こそ『約束』を違えるリスクがあるというわけだ………」
『契約不履行』をお互いに許容する―――
そんな曖昧な関係でも構わないと『門倉』は言う。
「そして、『ショー』の話をしよう。
貴方の『未来を斬る刃』―――
俺は非常に『映える』能力だと思っている。
そういった『武器』………
―――出来るなら『刃』で揃えた方がいいが―――
それに関係する『スタンド使い』を揃えて、
『演武』のような『ショー』を開くのはどうかと思ってね。
それなら貴方も存分に活躍できる。
『正体』を隠したいなら『覆面』でもなんでも使って構わないし、
『能力』も、演出次第では上手くごまかせるかもしれないからね。
それが始まるまでは、それこそ『用心棒』だとか『雑用』めいた事、
あとは『不動産屋』に舞い降りるちょっとした案件の
解決なんかをお願いしたいかな。
そうすれば―――最低限、『飢え死にしないくらいのお金』は渡せるよ」
『門倉』からの『提案』。
請けるかどうかは、もちろん『アラン』の自由だ。
52
:
アラン・スミシー『ザ・ミレニアム』
:2022/07/28(木) 15:21:46
>>51
「『ショー』、ね・・・」
アランはしっくりこない、と言った表情を浮かべる。
アランにとって『ザ・ミレニアム』の刃は、相手の死角から急所へと潜り込ませるものだ。
『いかに他人にその刃を見せないようにするか』が常に関心事であったと言ってもいい。
その逆は考えたことがなかった。
とはいえ、それ以外は悪くない条件ではあるし・・・何より、面倒になったら逐電するのはそう難しくなさそうだ。
「その条件で構わない。
食客としてしばらく厄介になろう」
53
:
門倉『ソウル・ダンジョン』
:2022/07/28(木) 20:30:53
>>52
(アラン)
「―――良かった。
そういえば、名を訊いていなかったね。
俺は『門倉』。『門倉良次』という」
さすがに『社会保険』だとか『福利厚生』だとか
『給料明細』だとかを求めるキャラじゃあないだろうから、
月にある程度の金銭を手渡しすればいいだろう。
そういえば、『アリーナ』絡みの税金はどうすればいいんだろうな、
などと余計な事を考えつつ、『門倉』は『アラン』と、
とりあえずの口約束での『契約』を果たした。
「細かい話だけど、『ライフライン』は一応通っているし、
『独り暮らし』の範囲内で自由に使ってもらって構わない。
………まあ、請求は俺のところに来るから、
もし異常だと感じたら問い質させてもらうよ。
『家具』の納入とかも『常識的』な範囲でやってもらっていい」
『四階』は『前テナント』が撤退した際に、『門倉不動産』の完全な管轄となっていた。
………怒った『オーナー』に押しつけられた、といった方が正しいかもしれない。
物品納入は『常識的な範囲』―――といったが、この男の『常識』については疑わしいところがある。
とはいえ、『警察沙汰』にならない程度ならば、放置してもいいかとも思っていた。
………
>『合歓垣』
『門倉』が『アラン』を雇うのに思う事があるかもしれないが、
空気を読んで、今は黙ってくれているようだ。
あとで機会をみてゆっくりと話そう、と考える『門倉』であった。
54
:
アラン・スミシー『ザ・ミレニアム』
:2022/07/28(木) 21:10:55
>>53
「『アラン・スミシー』と呼んでくれ。そう名乗っている
・・・それじゃあ早速休ませてもらう。これでも疲れてるんでね。そこの子供に攻撃されたりとかで。
・・・仲良くしてくれよ?」
黙ってる見ているらしい合歓垣に皮肉を飛ばしたら鍵を受け取って部屋に向かう。
55
:
門倉『ソウル・ダンジョン』
:2022/07/28(木) 22:35:07
>>54
(アラン)
「『アラン』ね―――了解した。
何かあれば声をかけるからよろしく。
………
仲良く―――そうだね、仲良くしよう」
去りゆく『アラン』を見送る『門倉』。
その後、蹴り飛ばされた『ローテーブル』や、
破壊された『湯呑』や『ネクタイ』の片づけを無言で行う。
それから言いたい事があるであろう『合歓垣』の相手をして、
そして、仕事の続きを終わらせ―――
………
ふゥゥ〜〜〜………
………
大きな『溜め息』がつい零れるが、このくらいは許してほしい。
アラン・スミシー『ザ・ミレニアム』→『門倉不動産ビル』の四階に住む
※『アラン』は立場上、『門倉派』というより、そちらで表現したとおり、
※『食客』に近いものですので
>>2
の『門倉派の面々へ』は適用されません。
※ただし、『テナント四階』に住んでいるのは事実ですので、
※そこに絡めた行動描写はして頂いても問題ありません。
※『門倉不動産』自体は『大通り』にありますので場スレ活動時は上手く使い分けて下さい。
※『門倉の手伝い案件』は『もしあればお願いする』程度の設定的なものしかありませんので
※『個別のミッション配給』などは期待しないでいただけると助かります。
56
:
門倉『ソウル・ダンジョン』
:2022/08/02(火) 21:43:31
「『部屋成分』が―――足りていないな」
『門倉不動産』の前で、『門倉』はそう独りごちる。
最近、良い『部屋』に巡りあえていない。
この場合の『部屋』とは『ソウル・ダンジョン』の『能力対象』となる『思い出の部屋』の事だ。
もちろん、普通の『部屋』には日常的に出会っている。
しかし、『門倉』が『思い出』とし、
能力を発現したいような『部屋』とはここ最近巡りあえていない………
と、そういう事だった。
………
「まァ………そう簡単に手ごろな『ストック』が集まるなんていう上手い話はないか」
『門倉』は大きく伸びをする。
自分の能力を手軽に強化しようなんていう横着は良くない。
ただ、『門倉派』を運営するにあたって、様々な『部屋』を確保しておいた方が事実だ。
『部屋』の多さは出せる『手数』の多さ―――
たとえ『偶然』でもいいから、なんとか魂にグッとくる『部屋』に巡りあえると良いのだが………
………
「そして、いつか、『彼女』の部屋にも………」
そして、あくまで……あくまで、
『門倉派』の親睦と、『能力強化』のために、『門倉』は、
とある部屋に入り込む算段を考え出す―――
57
:
美作くるみ『プラン9・チャンネル7』
:2022/08/07(日) 19:01:06
>>(門倉)
バァァァァァ――――――ッ
キィッ
所用の合間に、『愛車』で『門倉不動産』に立ち寄った。
『報告』のためであったが、生憎その時は『留守』だったようだ。
この後に追加の予定が入っていたので、
一枚の『メモ』だけを残して部屋から立ち去る。
『二人目』をゲット出来ました。
ご期待に答えられましたか?
『最後の一人』も見つけてきますよ。
最高のショーにしましょうね。
期待してますから。
隅の方には『署名』が添えられている。
『美作くるみ』を崩した書体。
その筆跡は『アイドルのサイン』を思わせた。
58
:
門倉『ソウル・ダンジョン』
:2022/08/08(月) 00:10:07
>>57
(美作)
「―――あ、来ていたのか」
『美作のメモ』を見つける『門倉』。
少し残念そうに、そのメモを手でくるくる弄んでから中身を読む。
「―――二人目、二人目か。順調じゃあないか」
ただ、『揃う』のはあくまで出発点だ。
『歌や振り付けを含む演出』や『訓練』、
『裏方の割り振り』などやるべき事はむしろそこからが多いだろう。
それに、『美作』を信用していないわけではないが、
メンバー選定の最終決定権は『門倉』にあるようにしたい。
『候補者』に本当に『ショー』を任せていいものかどうか―――
そこは、『門倉』が判断する必要がある。
あとは、『合歓垣』のラインでの勧誘も考えられるが―――
順調にスカウトできる『美作』の人脈とテクニックが凄いのであって、
幼い彼女にそこまで求めるのは酷という側面もある。
彼女には他に大事な役目があるのだし、
勧誘は『あわよくば』レベルだと思っておこう。
………
「―――それにしても」
『美作くるみ』の書体にさっと指をなぞらせる。
スカウトが出来て、パーソナリティも出来て、そして………
本当に良い人材と巡り合えたものだ、と心から思う。
59
:
美作くるみ『プラン9・チャンネル7』
:2022/09/25(日) 16:09:57
『星見駅前フリーマーケット』の終了から数日後――――。
ト ン
「――――…………」
『事務所』の一隅に背中を預け、『部屋の主』を待つ。
『トレードマーク』である『ビタミンカラー』の『アメカジファッション』。
『スタジャン』の下は、丈の短い『クロップドタンクトップ』だ。
丁度『ヘソ』の辺りが露出したデザインになっており、
しなやかなカーブを描く健康的な『くびれ』が覗いている。
両耳に装着した『ワイヤレスヘッドホン』からは、
明るいアップテンポの音楽が流れていた。
60
:
門倉『ソウル・ダンジョン』
:2022/09/25(日) 21:26:54
>>59
(美作)
「―――ん?
ああ、『美作さん』、来ていたのか―――!」
『昼食』でも食べてきたのか、いつもの『ワインレッド』の
ジャケットの『門倉』が『事務所』に戻って来る。
「今日は、なにかしらの『収穫』の報告かい?
いや、そんなものまるで無くても、まったく問題はないんだけどね」
『美作』を『門倉派』として迎え入れてから、
そこまで時が経っているわけではないが、
『アリーナ観戦』の日に濃密な時間を過ごし、
『門倉』としてはかなり親密になれたと思っている。
61
:
美作くるみ『プラン9・チャンネル7』
:2022/09/25(日) 22:43:42
>>60
「――――この前は『ご馳走様』でした」
スチャッ
『待ち人』の姿を認め、
音楽を止めたヘッドホンを外して首に掛ける。
「ステキな雰囲気のお店でしたねえ。お料理もバッチリで。
とっても『有意義な時間』が過ごせたと思います」
ツカ ツカ ツカ
意味ありげな笑みを浮かべながら、門倉に歩み寄っていく。
「『例の件』――首尾良く進められましたよ」
フフッ
「結論から言うと、『三人』揃いました。
『詳細』については、
『門倉さん』の方から説明してもらう事になってます」
「その場に私が『同席』出来るかどうかは、
ちょっと分からないんですけど」
『スカウト』した『三人』の事を考えながら、
ポケットから取り出したスマホを弄る。
62
:
門倉『ソウル・ダンジョン』
:2022/09/25(日) 22:55:45
>>61
(美作)
「楽しんでいただけたなら、本当に良かった」
『アリーナ観戦』の後のディナーは素晴らしいものだった。
『有意義な時間』―――まさしくそのとおりだった。
そして―――
「
!!
―――『三人』、ついに揃ったんだね」
『美作』が時間をかけて揃えた『アイドル候補』たち。
おそらく『間違い』はないのだろうが―――
それでも、『門倉』自身も実際に会い、自らの観点で精査したいというのはある。
「できたら『同席』してもらいたいが………
まあ、難しいのならしょうがないね。
『詳細』についてはセッティングしてくれるなら、いつでも説明するよ」
63
:
美作くるみ『プラン9・チャンネル7』
:2022/09/25(日) 23:28:53
>>62
「あはは……そう言われちゃうと同席したくなっちゃうんですよ。
私、『おだて』には弱い方ですから」
ススッ
「それに、私がいた方が何かと都合はいいと思いますし」
スマホを操作し、三人の『連絡先』を表示する。
「それじゃあ、この『事務所』に来てもらう事にして……。
やっぱり『三人いっぺん』が手っ取り早いですかねえ」
ススッ
「それから『ガラスのスタンド使い』も。
とりあえず私の方から全員に連絡を入れておきますね。
『ここ』に来てもらえるように」
『スカウト』を引き受けた以上、
『人材の選定』にも自信はあった。
ただ、まだ『全員の顔合わせ』は済ませていない。
『個々の魅力』を最大限に引き出しつつ、
『相乗効果』で更に大きく出来ればいいが――。
「私も出来る限りスケジュール調整しておきます。
もし体が空かなかった時は、
『テレビ電話』で『リモート出演』って可能性もありますけど」
「――そんな感じでどうでしょう?」
64
:
門倉『ソウル・ダンジョン』
:2022/09/25(日) 23:49:15
>>63
(美作)
「『同席』はどんな形でも心強いよ。
お願いできるのなら是非お願いしたいね。
皆を一堂に集める―――
それぞれの予定が合うのならそれが一番かもしれないな。
『連絡』や『調整』は、申し訳ないが、『美作さん』に任せるよ。
………ああ、そうだ。
『契約書』とかそういうのも、正式に揃えた方が良い感じかな?」
正直、『門倉』は、『スタンド絡みの事件』の委託などの際も
口約束で済ませる事が多かった。
『スタンド絡み』の仕事の細かい部分は『契約』として書きづらいという側面もあった。
(単純に面倒だというのが一番だが)。
ただ、『美作』の集めたメンバーにそういうのを
気にする者が居れば作る必要がある。
いや、そうでなくても作るべきなのかもしれないが―――
65
:
美作くるみ『プラン9・チャンネル7』
:2022/09/26(月) 00:09:50
>>64
「じゃ、そういう流れにしておきましょうか。
『スカウト』したのは私ですし、
こっちから伝えた方が話は早いと思います。
門倉さんは、ここでドッシリ構えておいて下さい」
『一任』の言葉に、笑い掛けながら『肯定』を返す。
「何といっても『代表』なんですから」
続く提案には、人差し指を口元に添え、
少し考える素振りを見せた。
「そうですねぇ……。
『口約束だけじゃあ不安』っていう要望もありましたから、
『書類』も用意しておいた方が無難です」
「『作りにくい』っていう気持ちは分かりますけどね」
『門倉側』の事情も理解できる部分はある。
しかし、『出演者』に不信感を与えてしまっては元も子もない。
ここは頑張って拵えてもらうのが一番だろう。
「あとは――何か『ご希望』はありますか?」
頭の中で全員に送る文面を検討しながら、
『門倉の意向』を確認する。
66
:
門倉『ソウル・ダンジョン』
:2022/09/26(月) 00:25:07
>>65
(美作)
「よし―――じゃあ『書類』については用意しておこう」
これから『派閥』を大きくするにあたって、
なあなあではやっていけない事も多いだろう。
『美作』の言うとおり、ドッシリ構え、色々な意味で『しっかり』しなくてはならない。
………
「『希望』か。そうだな―――」
『仕事の面接』と考えれば、『履歴書』のひとつでも
用意させるべきなのだろうが、そういう堅苦しいのは『門倉』も好きではない。
重要なのは『ショーを成功させられるかどうか』………
「………まずはこちらが『説明』して納得してもらえてから、だけど、
『アイドル候補』の面々には、『特技』を披露してもらいたいな。
当然、『ショーを見据えた特技』―――
出来れば『スタンド』を交えた………ね。
だから、事前に準備しておいてもらえるよう、言っておいてくれないかな」
『重要』なのは、『それ』が出来るかどうか―――
『門倉』が一番観たいのは、そこだ。
67
:
美作くるみ『プラン9・チャンネル7』
:2022/09/26(月) 01:05:38
>>66
「ええ、分かりました。何よりも大切なのは『そこ』ですからね」
「その旨はハッキリと伝えておきます」
門倉から出された希望には、大いに同意するところだ。
それが出来なければ話にならない。
逆に、それさえ出来れば『ステージ』に立つ資格がある。
「それから――これは『私からの提案』なんですけど」
立てた人差し指を顔の前に翳し、
ウインクをするように片目を閉じる。
「各自の『立ち位置』を臨機応変に変えるのはどうでしょう?
『ポジション』を固定せず、
『メイン』になる出演者を順次切り替えて、
全員に『センター』を務めてもらうという形式です」
「これなら『奪い合い』になりませんし、『演出』の一環として、
ショーの『見栄え』を増す事にも繋がると思いますよ」
アイドル時代の美作――『MIMI』は『ソロ』で活動してきた。
しかし、今回は『グループ』。
その長所は可能な限り活かすべきだし、
懸念される要素には対策しておくべきだろう。
68
:
門倉『ソウル・ダンジョン』
:2022/09/27(火) 05:51:10
>>67
(美作)
「『ポジション』を固定しない………
『曲』や『演出』ごとに『メイン』となる人物を変えるという事だね。
うん、それが良いと俺も思うよ」
『スタンド使い』は個性や我が強い傾向にあるし、
『誰が一番か』などで無用な争いをさせる必要もないだろう。
また、『美作』の言うとおり、『演出』としても有用なはず。
メインに据える人物により、ショーのカラーをガラッと変えるのであれば
飽きの来ない『アイドルショー』が提供できるのではないだろうか。
「―――あとは、タイミングがあえば『合歓垣ちゃん』にも
立ち会ってもらった方が良いかな。
彼女くらいの年頃の『感性』も大事だし、何より『協力者』のひとりだからね」
『門倉』から伝えたいところはとりあえずはそんなところか。
あとは『美作』が日程調整してくれれば、『アイドル面談』が出来るだろう。
69
:
美作くるみ『プラン9・チャンネル7』
:2022/09/27(火) 15:59:40
>>68
「ン………………」
他に言い忘れた事がないか。
頭の中で考えながら、緩やかな歩調で事務所内を歩く。
『音声を出力可能な機器』――『プラン9』の『能力対象』を、
自分の目で確認するためでもある。
「とりあえずは『こんなところ』ですね」
この場で出せる意見は、今は思いつかなかった。
『面談』における自分の役目は『仲介』。
『お膳立て』に専念しよう。
「ええ、もちろんです。
事前に『顔合わせ』をしておいた方が、
今後の流れもスムーズに進むでしょうし」
ススッ
「そう思って、たった今『五人』に連絡しておきました。
具体的な『日程』は――――」
スマホを弄る手を止めて、
『関係者』に知らせた『予定』を門倉にも伝える。
(ttps://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/comic/7023/1456056964/744)
「それじゃ、名残惜しいですけど私はお暇します。
実は、これから『寄る場所』があるんですよ」
スタ
「仕事上、常に『アンテナ』を張ってる身として、
『最新情報』は見逃せませんからね」
スタ
「――――また『当日』に」
呼び止められる事がなければ、
そのまま『門倉不動産』を出て、
『愛車』が待つ最寄の駐車場に向かうだろう。
70
:
門倉『ソウル・ダンジョン』
:2022/09/27(火) 21:22:52
>>69
(美作)
「さすが、『美作さん』。仕事が早い」
手早く『連絡』を行った『美作』を褒め称える『門倉』。
日程を決め、後は待つだけというところか―――
「なかなか忙しそうだね………
それじゃあまた、『当日』に会えることを楽しみにしているよ」
『美作』を送り出す『門倉』。
いよいよ話は本格的になってきた。
『門倉派』初のショータイムは『アイドルショー』。
果たして上手く行くかどうか………
まずは『三人』の『アイドル』との邂逅。
『門倉』は期待して、『その日』を待つのだった―――
71
:
門倉『ソウル・ダンジョン』
:2023/06/21(水) 12:23:13
「―――ムぅ……」
『不動産』の応接間で目覚める『門倉』。
つい、うたた寝をしてしまった。
……今は何時だったか?
うたた寝と言いつつ、結構な時間、寝てしまったようだ。
身体がさび付いたような心持ちのため、思わずノビをする。
「………さて」
誰か来ればもちろん応対するし、
そうでないのならば、ゆっくりとこれからの事を考えていこう。
72
:
美作くるみ『プラン9・チャンネル7』
:2023/06/21(水) 20:46:27
>>71
目を開けると、テーブルの上に一枚の『メモ用紙』が残されていた。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
『差し入れ』を持って来たんですが、気持ち良さそうなので置いて帰ります。
『キャリアアップ』する為に、私も新しく『セルフプロデュース』を始めました。
もし『噂』を聞く事があったら、心の中で応援して下さいね。
カナリア
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
メモの隣には、見た目も涼しげな『葛饅頭』の箱があった。
『贈答用』としても使えるらしく、『ちょっと良い品』のようだ。
屋号は『御菓子司 鈴眼』。
73
:
御子神『イン・ジャスティス』
:2023/06/24(土) 19:36:40
>>71
「御免・・・・・!」
目覚めた門倉の目の前に、扉を開けて一人の男の姿が飛び込んでくる
壮年に至らぬ程度の見た目であるが、その髪は年齢不相応なほどに白い
しかし、内に秘める覇気は並の若者以上に満ち満ちている
男は身に纏っていた黒衣のマントを手で払う
こびり付いて固まっていた汚れがパラパラと床に落ちていく
泥と埃、そして僅かながらの血が乾いて固まっていたものだ
「この街で屋敷を売っているのは貴様か?」
74
:
門倉『ソウル・ダンジョン』
:2023/06/25(日) 11:36:57
>>72
(美作)
「……『セルフプロデュース』か」
『門倉派』の活動はこちらのせいで滞り、『美作』には連絡もとっていなかった。
申し訳ない気持ちは強くあるが、彼女が『セルフプロデュース』を経て、
それでもまだこちらに協力してもらえる気になったら、
その際には是非、協力をお願いしたい気持ちもある。
そのためにはこちらもこちらで何か『実績』を残した方が良いか―――
………
「―――ああ、『鈴元君』のところのお菓子か」
『鈴眼』の『葛饅頭』を見やり独りごちる『門倉』。
『鈴元』とは、とある事件でお世話になったことがある。
『整形外科の女医の元で起こった顔が崩れる事件』………その解決。
(★『せんせいのかくしごと』★
ttp://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/comic/7023/1534589466/401-698)
彼とも最近は会っていない。ただ、スタンド使い同士は『奇妙な縁』がある。
またいつかどこかで、会えると良い。
………
………
>>73
(御子神)
と、そんなふうに思いにふける『門倉』の眼前に。妙な男が飛び込んできた。
『薄汚れた黒いマント』から彼の異様さが容易に感じ取れる。
そして、出てきた言葉。いきなりの『貴様』よばわり。
「………」
「………とりあえず、お座りください」
『応接スペース』のローテーブルに『御子神』の着席を薦める。
これは人生における、ある種の『罰』なのかもしれない。
とはいえ、もう少しマイルドな『罰』から始めてほしかったなと思う『門倉』だった。
75
:
御子神『イン・ジャスティス』
:2023/06/25(日) 12:11:52
>>74
「座らせてもらうとしよう」
そう言いながら、遠慮する事なく門倉の対面に座り込む男
逞しい体躯が腰を下ろすとソファのスプリングがギシギシと音を立てる
巌の様な視線が正面から門倉へと注がれる・・・・
「・・・・先日、この街の警らに注意を受けた
どうやらこの街では路上で寝起きする事を許されていないらしい」
男は悪びれる事なく己の事情を語り出す・・・・
「最低限寝泊まりをする為の『家』が必要だ
用立てていただけないだろうか?」
76
:
門倉『ソウル・ダンジョン』
:2023/06/25(日) 12:48:46
>>75
(御子神)
「………なるほど。『家』が欲しいというわけですね。
でしたら、私ども、『門倉不動産』がお世話する事が出来ます」
話していくうちに、最初の印象よりはスムーズに行きそうだという安堵感が生まれてくる。
そりゃあ、怪しい点は多々あるが、『門倉』もまた、怪しい話を多々、仲介してきた男だ。
単純に『家を用立てる』という話に収まっているのなら『不動産屋』としてやりようはいくらでもある。
「―――まずはご希望を伺いましょうか?
『家』は賃貸? 購入? 住む人数やエキチカなど………
とにかく必要なご要望はなんでもおっしゃってください」
『路上生活』というワードからろくに『金銭』を持っていない可能性もあるが、
一方で、最初に『屋敷』などという言葉を使っており、『大豪邸』に住んでいた可能性もある。
あまり外見の印象だけで話を進めない方が良い。
77
:
御子神『イン・ジャスティス』
:2023/06/25(日) 13:51:28
>>76
「一人で住む事になるのだ。そんなに大きな家である必要はない
そう・・・・『アパート』、というのだったな。それくらいがちょうどいいだろう」
「いつまでこの街に留まるのかはわからない
貸し部屋で十分だ」
「贅沢を言うつもりはない
風呂やトイレに拘るつもりもな・・・・水を浴びる事が出来ればそれで良い」
突飛な外見で現れた男ではあったが、口にする言葉は意外と常識的であった
海千山千の経験を積んできた門倉にとっては十分に対応可能だろう
男の望む条件について、着々と話が進んでいく
「支払いは・・・・『これ』で足りるか?」
・・・・・・どすっ
男はそう言って目の前のローテーブルに薄汚れた『麻袋』を置いた
さて・・・・・貴方にこの袋の中身を見る勇気があるだろうか?
78
:
門倉『ソウル・ダンジョン』
:2023/06/25(日) 15:07:05
>>77
(御子神)
「………なるほど」
『アパート』という単語を知らないのであれば、
おそらく日本ではない『異国の出』………
堪能な日本語はその地の『日系何世』かだったのだろう。
「とにかくお安いのが良いのであれば、
木製アパート、築35年の『阿武名荘』というのがありますね。
『風呂』も『トイレ』もついているし、破格の値段………
『202号室』が空いていたはずだけど―――」
そう言いながら、『麻袋』に眼をやる『門倉』。
なんだかイヤな予感がするが、この時間をいくら引き伸ばしても
事態が進展するわけでもない。
「―――見せていただいても?」
許可が得られたのであれば、おずおずと『麻袋』を開ける。
79
:
御子神『イン・ジャスティス』
:2023/06/25(日) 15:23:20
>>78
> 「―――見せていただいても?」
門倉のその言葉に、男は無言のまま手の動きで”許可”の意思を示す
その動作に従って、君が麻袋の中を覗き見ると・・・・
ごとっ
袋の中から零れ落ちたのは金の大粒だ・・・・!
その他にも紅の輝きを見せるルビーに、エメラルド・・・・!
しかるべき場所に持ち込めば敷金・礼金・数か月分の家賃として申し分ない値打ち物・・・・!
80
:
門倉『ソウル・ダンジョン』
:2023/06/25(日) 15:45:19
>>79
(御子神)
ごとっ
「!!!」
いかにも高価そうな鉱物たちに思わず息を呑む『門倉』。
―――もっとも、『門倉』にその真贋を見極める眼はない。
ニセモノの可能性だって十分にあるが………
眼前の男はどうにも『詐欺』を働くようなタイプではないように思えた。
「………失礼しました。これだけあれば、
『相応』の住み心地の良い高級物件も十分に紹介出来ますが、
いかがいたしましょうか」
商売柄、様々な知己がある。
こういった貴金属や宝石に強い信頼できる者にしっかり鑑定させ、
相応の値段で換金してあげる事も十分に可能だろう。
あとは、眼前の男の望む物件を見つけてあげるのが『門倉』の仕事だ。
「………あ」
と、ここまで考えたところで『不吉』な考えが頭をよぎる。
「ところで、お客様。ご職業を伺っても?
身分を証明するものは本日はお持ちでしょうか?」
金があっても、身分が怪しい者には『オーナー』が難色を示すだろう。
眼前の男が意外にも堅実な職業であればいいのだが………
81
:
御子神『イン・ジャスティス』
:2023/06/25(日) 17:06:22
>>80
「いいや・・・・
贅沢をする為のこの街に来たわけではない
暮らしぶりは最小限で結構だ」
門倉の予感は正しい
差し出された『宝石』が如何に本物らしくとも、それが価値ある物だとしても
それが盗難品でない保証もなければ、男が真っ当な社会人である保証もない
「職業は・・・・・『革命家』とでも言っておこうか」
さて、この発言は君にとってどんな意味を持つだろうか・・・・・?
「身分証は保険証で構わないか?」
82
:
門倉『ソウル・ダンジョン』
:2023/06/25(日) 17:55:32
>>81
(御子神)
「―――『革命家』。『革命家』ね」
「………」
………まあ、保険証を持っているだけ幾分マシだろう。
『高級マンション』がご所望ならそれなりの『身分』は必要だが、
『最小限の暮らしぶり』でいいというのなら、話は別だ。
それこそ、先程、紹介した『阿武名荘』なら、様々な層が利用している為、
保険証があればとりあえずはクリアできるはずだ。
保険証を提示してもらえるのなら、
名前や生年月日、保険証の発行元などを確認する。
「――― 一応、物件を見に行きます?
私を信じて、『即決』なら手続きをしてしまいますが」
83
:
御子神『イン・ジャスティス』
:2023/06/25(日) 18:37:59
>>82
男が外套をごそごそと漁ると、中から一枚のカードが出てくる
保険証の発行元に不審な点は見受けられない
ごく普通の国民健康保険だ
名前は『御子神 正信』 年齢はどうやら『28歳』らしい
「ふむ・・・・・」
御子神の鋭い視線が門倉の目を見つめる
「いや・・・・ 己(おれ)は人を見る目はある方だと自負している
店主・・・・貴様からは己を騙そうという『悪』の気配は感じられない」
「――信じよう」
84
:
門倉『ソウル・ダンジョン』
:2023/06/25(日) 20:37:29
>>83
(御子神)
『28歳』……そう言われればそのくらいにも見えるが、
それ以上の『威圧感』があるようにも感じる。
「そう言ってくれるなら―――」
『門倉』は手続きの書類を出し、『大家』に連絡をとる。
問題なければ、このまま『手続き』を行い、
『阿武名荘』という名の木造アパートの『202号室』が『御子神』の『住処』となるだろう。
『宝石類』は、『門倉』経由である程度の現金に変える事が可能なようだ。
どの程度、『現金』化するのかは『御子神』の自由か―――
その他、生活するにあたって何かあれば『門倉』に依頼しておけば、
ある程度はやってくれるかもしれない。
「―――ああ、そうだ。『ケータイ』なんかは持っていますか?」
手続きの関係で『連絡先』を確認してくる『門倉』。
85
:
御子神『イン・ジャスティス』
:2023/06/25(日) 21:24:09
>>84
「『スマートフォン』だ」
そう言いながら男はスマホを取り出す
戦う男にとってスマホの有無は重要な事柄だ
・・・・・一通りの手続きが終わり、少しの間が訪れる
ちょっとした雑談。門倉にとっては厄介な客をなんとか処理した達成感があるだろうか
「そういえば、ひとつ貴様に聞きたい事がある」
ふと、御子神がそんな事を言う
「この街で白髪の子供を見た事はないか?
歳は・・・・『12歳』。」
86
:
門倉『ソウル・ダンジョン』
:2023/06/25(日) 22:49:28
>>85
(御子神)
『あ、スマホは知っているんだ』という謎の感銘を受ける『門倉』。
『連絡先』があるのならばよりスムーズに『手続き』は済む。
………
>「そういえば、ひとつ貴様に聞きたい事がある」
(もしかして貴様を丁寧な言葉だと思っているのかな? なんせ【貴】と【様】だものな)
そんな事を思いつつ、彼の問いかけを聞く。
「白髪の……子供。12歳ねえ。ふゥむ」
『門倉』は考えた末に―――
「いや………ちょっと思い出せませんね。
その子供が―――何か?」
そう答える。
この答えは『嘘』である。
『夏の魔物』事件で、大きな役割を果たした少年。
白髪の彼が、確かそのくらいの年齢だったはず。
ただ、素性も知れぬこの男に気軽に教える事は、
『門倉』の信用を大きく損ねる事に繋がるだろう。
87
:
御子神『イン・ジャスティス』
:2023/06/26(月) 00:26:03
>>86
「そうか・・・・知らないなら仕方がない」
呆気ない程あっさりと引く
どうやら男の方も門倉が子供の事を知っているとは思っていないようだ
「その子供こそ、己がこの街に来た理由そのものだからだ」
「何故なら・・・・その子は・・・・・」
こと、とペンをテーブルに置く
「己の・・・・息子だからだ
12年前に生き別れになった・・・・己の・・・・」
88
:
門倉『ソウル・ダンジョン』
:2023/06/26(月) 21:19:13
>>87
(御子神)
「ああ、息子………息子でしたら、そりゃあ捜しますよね」
『脊髄反射』で相槌をうつ『門倉』。
しかし次の瞬間、頭の中に、ごくごく簡単な計算式が浮かび上がる。
(28……
12………
28ひく12………
28ひく12は……16
………
16…か………)
「………」
「まァ、もし、情報があれば知らせますよ」
『異国』では『16歳の父親』など珍しくもないのだろう。
自分の常識を押しつけるべきではない―――『門倉』はそう自戒する。
「―――見つかると、いいですね」
まだ捜し始めたばかり、というのならば、
広いようで狭い『星見町』、ほどなくして見つかるだろう。
今の段階で自分が不義理をおして、伝える必要はないはずだ。
89
:
御子神『イン・ジャスティス』
:2023/06/26(月) 23:44:22
>>88
「――――頼んだ」
単純計算で言えば若すぎる程の年齢
『敵』を作らない為の言動は門倉にとっての生存戦略なのだろうか
とにかく、御子神の方はその事実に対して、何も悪びれる事も、気にする事もなく話が進む
「さて・・・・今日は世話になったな
余所者の己ではあるが・・・・どうかこれからもよろしく頼む」
そういうと御子神は門倉に対して頭を下げる
「さて・・・・ではそろそろ行くとしようか
私物は特にない。まずは装備を整えなければ・・・・」
そう言って、全ての手続きを済ませた後男はこの店を離れて行った
数多くの奇人たちが跋扈するこの星見町
そんな街に、また一人奇人が増えたところで問題はないのかもしれない
90
:
門倉『ソウル・ダンジョン』
:2023/06/27(火) 06:59:27
>>89
(御子神)
「―――ご成約、ありがとうございました。
なにかあればご相談ください」
『嵐』のような怒涛の男を対応を終え、ほっと一息つく『門倉』。
………あの風体、あの態度、あの血縁………
おそらくは、この『星見町』の灯りに吸い寄せられてきた『使える』者なのだろうと邪推する。
いつもの『門倉』ならそれとなく探っていくのだが、
どうにもその『オーラ』にあてられ、普通の『不動産屋』として徹してしまった。
まあ、そんな日があっても良い。
『超常現象解決のための仲介屋』や『門倉派』………
そういった込み入った事情から離れたシンプルな仕事が
今日の『門倉』にはちょうどいいように感じた。
「―――さて」
ただ一方で、そろそろまた、そんな込み入った仕事もこなしていきたい気持ちはある。
まずは『門倉派』。一度、『小さなイベント』でも開きたいとは思っているが……
………
「―――人材次第というところもあるか」
『門倉』は、長年、他のスタンド使いの力を借りて、問題を解決してきた。
また、ここに迷い込んできた人物の力を借りて、新たなステップを踏むのが良いだろう。
91
:
門倉『ソウル・ダンジョン』
:2023/06/27(火) 07:03:28
【改めてお知らせ】
『不動産絡み』、『門倉派』、『超常現象関連』、『個人的な門倉ファン』、『冷やかし』などなど。
>>2
も踏まえつつ、とりあえず、このスレに来ていただいて
何かやる分にはお気軽にどうぞ。
ただ、『門倉』が対応難しいケースもございますので、臨機応変にお願いします。
92
:
鷲見 健治 『2NDハンド・ファイア』
:2023/07/04(火) 22:05:14
頑是ない子供のような幼さの抜け切らぬ女顔。薄緑の雑に束ねたロングヘアと相まって子供子供した印象が強い青年が眼鏡を拭く。
ただの不動産屋にしか見えないが…
「こんにちはー! 美作くるみさんの紹介でやって来ましたー!」
眼鏡で弱気を演出しているが数多くの客を相手してきたなら鷲見の喧嘩好きな本性が一発で見抜けるかもしれない。
93
:
門倉『ソウル・ダンジョン』
:2023/07/05(水) 06:09:49
>>92
(鷲見)
「………ん?」
やってきた『鷲見』に目を向ける『門倉』。
「ふむ―――『美作さん』の紹介。
………『アイドル候補』………?
………ではないか」
『美作』の紹介だという青年にまずは、客席のソファを薦める。
「―――具体的にはどういったご用件かな?」
94
:
美作くるみ『プラン9・チャンネル7』
:2023/07/05(水) 15:49:32
>>93
(門倉)
『鷲見健治』が『門倉不動産』を訪れたタイミングで、
当の『美作くるみ』からメッセージが届いた。
[一つ『アイディア』を考え中なんですけど、聞いてもらえます?
『ゲリラライブ』と『フラッシュモブ』に着想を得ました]
[端的に言うと『私が歌います』。
ただし、姿は見せません。あくまでも『声だけ』です]
[私は『歌う曲』を決めません。
聴く人に選んでもらいます。
適当な『アドレス』を作って、それを広めるんですよ。
そこで『リクエスト』を募る訳です]
[募集を締め切った後で、この街の一角を『ライブ会場』に見立てるんです。
私の能力で、射程内の『あらゆる音響機器』から、
ランダムに歌声を『出力』すれば、それなりの『パフォーマンス』になる筈ですよ]
[もちろん『一人』ではやれません。
『門倉派』のイベントですから。
本格的に動く前に、まず『二人でやれる事』を試してみたいんです]
95
:
鷲見 健治 『2NDハンド・ファイア』
:2023/07/05(水) 16:06:14
>>93
「美作くるみ。彼女の名前を出せば『スタンド関連』の話を聞ける
聞いてやって来ました」
「スタンド使いの話を聞けるということは貴方もスタンド使いか?」
美作くるみさんの名前を出してアイドル候補と思われるとは…
この門倉という男性は何をしているのだろうか?
「初めに言っておきます。私の『2NDハンド・ファイア』は
真正面から戦うことしかできない」
「スタンドを纏い人外の膂力とスピードを得て、殴打した場所を
『赤熱』して炸裂させる」
「つまり、私のスタンドが貢献できるのは暴力ぐらいのもの」
96
:
門倉『ソウル・ダンジョン』
:2023/07/06(木) 20:01:17
>>94
(美作)
「お………ッ」
そうこうしているうちに『美作』からのメッセージだ。
「………『声だけのゲリラライブ』という感じかな?」
メッセージを読んだ感想を軽く呟く。
ただこれだけだと詳細が良く分からないところがある。
『アドレス』というのはホームページ的なものだろうか。
『美作』が自らの知名度をアピールするならば、
それなりに注目されるだろうが、謎の歌手では埋もれてしまう気もする。
いや、そこはそれこそ『演出』でカバーする形か。
『アイディアありがとう。精査するに値する企画だと思うよ。
ただ、今は来客中でね。
やってきた彼について美作さん、君に取り急ぎ確認したい。
君の紹介だと言う薄緑のロングヘアの青年なんだが、
確かに君が紹介した、という事でいいかい?』
ただまあ、とりあえず今は眼前の彼について確認しておこう。
>>95
(鷲見)
「『スタンド能力』は、使いよう。
『暴力』だけしか出来ないという事はまず無い。
君自身の中で、わざわざ能力の利用幅を狭める必要はないと思うよ」
名も名乗らずいきなり自身のスタンド能力を暴露する眼前の青年。
ちょっと変わった男だなと思うがそもそもスタンド使いはおおむねどこか変わっている。
「そして、『スタンド関連』の話、と大雑把に言われてもね。
具体的にどんな話を聞きたいんだい?」
『美作』の紹介という事は彼を、先程の『メールの企画』に参加させるという事なのだろうか。
しかし、直観的には街角ライブに役に立つ能力とは思えないが―――
97
:
鷲見 健治 『2NDハンド・ファイア』
:2023/07/06(木) 20:23:12
>>96
「そうだ、名乗り忘れていた。自分の名前は鷲見 健治。
清月学園の学生でもあり元カラーギャング」
「元というのはカラーギャングを俺がスタンドで潰したから。
故に関わったから難癖をつける奴らはもう居ない」
日に日に規模を拡大するカラーギャングがヤクザだの薬物だのに染まり弱者を踏み躙ることに鷲見は耐えられなかった。
しかし、鷲見はそれ以外にも気になって潰したのだ。
「スタンドに関連しているかもしれない話と言えば所属していた
カラーギャングの幹部たちが口癖のよう言った『エクリプス』と
『アリーナ』という組織について」
「『エクリプス』に所属するスタンド使いは殺しを当たり前のよう
に行い、『アリーナ』所属のスタンド使いは治安維持を目的
として互いに敵対し合っているようだった」
「彼等について何か知っていないか?」
98
:
美作くるみ『プラン9・チャンネル7』
:2023/07/07(金) 20:31:35
>>96
[『鷲見健治』君ですか?
ええ、私が『門倉不動産』を紹介しました]
[実は『歓楽街』で『タチの悪いグループ』に絡まれちゃって。
危ない所を彼に助けてもらったんですよ。
その『お礼』として教えた訳です]
[『スタンド使い』との『コネ』は、いくつあっても困らないでしょう?
それに、まだ『他の派閥』に目を付けられてなさそうでしたからね。
今のところ『優先度の高い能力』じゃあないと思いますけど、
これから『出番』があるかもしれませんし、『念の為』という事で]
[彼には、私の『名刺』を渡してあります。
ちょっと荒っぽい部分はありますけど、人間性に関しては信頼できますよ]
99
:
門倉『ソウル・ダンジョン』
:2023/07/08(土) 06:58:18
>>97
(鷲見)
「カラーギャング………」
最近はあまり聞かない言葉だが昔ながらのヤンキーも
稀に見かけるこの町では確かに存在している(いた)のだろう。
「………ちなみに、『何色』だったのかな。君のチームは」
どうでもいい事が気になる『門倉』はどうでもいい質問をする。
………
「そして、『幹部連中』は『エクリプス』や『アリーナ』を知っていた、と。
彼らもスタンド使いだったという事なのかな。
………『エクリプス』についてはそこまで詳しくはないけど、
『アリーナ』については多少は教えられる事もあるかもしれない。
………ただその前に訊きたいんだけど、『鷲見くん』は、
それを知って、どうするつもりなんだい?」
>>98
(美作)
『鷲見』とのやりとりの中、『美作』の返信を確認する。
『了解。いつもありがとう』
流石に話しながら、あまり長文は送れないので、
簡易な返信だけしておいた。
『美作』の言うとおり、とりあえず『スタンド使い』のツテはいくらあってもいいだろう。
『鷲見』の『意図』をしっかりと探り、適切な対応をしていくべきだ。
100
:
鷲見 健治 『2NDハンド・ファイア』
:2023/07/08(土) 11:23:27
>>99
過去には居たかもしれないがもう既に廃れつつある集団だ。
今は形が変わって半グレや闇バイトなどに悪化したが…
「赤だったなー。うわっ、なつかしー!」
「幹部はスタンド使いじゃないけどヤクザや『エクリプス』って
連中の雑用や下っ端への資金調達の指示かな」
「こっちが勝手に擦り寄っていたって感じだから潰れても反応は
無しで良かったような寂しいような…」
当時はヤクザとも付き合いが有ったのだから後ろ暗い資金調達でもしていたのだろう。
「あっ、いや、スタンド使いっぽいのが居た。ヴィジョンや能力は
絶対に見せずに明らかにスタンドの仕業なのに実力を隠してた」
「トップをやってた総長だよ。今はまた違う形で汚れ仕事をしてる
だろうから喧嘩を続けてれば、いつかは総長と戦えると思ってる」
鷲見はスタンド能力からして本当に喧嘩しか脳がない男だったので幹部未満下っ端以上の特殊な立ち位置だった。
実際に鷲見も権力に興味は無かったので良い距離感だったのかもしれない。
「『エクリプス』は、まぁ、深く知らなくても殴れば良いだけだし…」
「『アリーナ』も今は悪さしてるなら殴るのみ! なんだけれども
実はデカい恩が有ってさ」
「カラーギャング脱退時に総長からスタンド攻撃らしき攻撃を受け
たり下っ端に改造エアガンで撃たれまくってボロボロの俺を無償
で『アリーナ』のスタンド使いが助けてくれてな」
「無償で助けられるってそれまで無かったから恩を返せるなら返し
たいとは思ってンだよ」
101
:
門倉『ソウル・ダンジョン』
:2023/07/09(日) 08:07:47
>>100
(鷲見)
「『赤』か。いかにも、といった感じだね」
「そして、ふむ………」
『鷲見』の話を咀嚼する『門倉』。
「少し疑問なんだけど、君は『カラーギャングをスタンドで潰した』と言っていたが、
トップの『総長』とはやりあわなかったのかい?
戦っていないような口ぶりだが―――」
更に疑問を口にする。
「あとは………『アリーナ』や『エクリプス』について知りたい、というのは、
結局のところ、それらの組織が君の基準で『殴るに値するかどうか』を判断したい、
という事なのかな?
それとあわせて、恩のある『アリーナのスタンド使い』を捜したいというのもあるという事か」
102
:
鷲見 健治 『2NDハンド・ファイア』
:2023/07/09(日) 13:18:07
>>101
「ボスは秘密主義で自分が下っ端をぶっ飛ばしてるところを背後
から襲われただけだ」
「その代わりに攻撃を耐え抜いたのは想定外らしく人外のスピード
で迫る俺に顔を見られたら撒くだけの攻撃をして逃げちった」
纏うスタンドだからと言っても耐久力は上がらないがそれでも鷲見を侮っていたのかボスは接近を許してしまった。
「『アリーナ』と『エクリプス』を知りたいのは殴るに値するか
知りたいのと恩のある『アリーナ』のスタンド使いに会いたい
からだ」
「邪悪であれば殴る。良い組織ならたまにちょっかいを出す
俺の望みはそれだけだよ」
103
:
門倉『ソウル・ダンジョン』
:2023/07/09(日) 15:45:01
>>102
(鷲見)
「なるほどね」
この『鷲見』という青年のスタンドは驚異的な戦闘スペックを持つようだ。
一方のカラーギャングの『総長』は、『総長』といえどもあくまで一般人を束ねていた人物。
別に強力な『スタンド』を持たなくても十分にやっていけたのだろう。
さて、どうするか―――
一般の『アリーナ派閥』ならばバトルが出来る『鷲見』は喉から手が出るほど欲しい逸材だろう。
ただ、『ショー要素』を重視する『門倉派』にとっては、常駐してもらうようなタイプではない。
用心棒枠としても『アラン』という男で間に合っているとも言える。
であれば、『他派閥』を紹介して、『鷲見』とその『派閥』、双方に恩を売っておくのが得策か。
「まず、知っていると思うが『エクリプス』というのはすでに滅びている。
君の『カラーギャング』と同じ末路を辿ったわけだ―――
ただ、その『残党』というのは今も残っているようで、君が殴れるとしたらそっちの方だな。
一方の『アリーナ』………確かに『エクリプス』と敵対していたようだが、
けして完全な正義の味方というわけじゃあない印象だな。
あくまで俺の主観ではあるが―――
例えるなら、イタリアあたりのギャング組織の内部で、
『麻薬OKのなんでもあり』の派閥が『エクリプス』で、
ギャングの中でもある程度の倫理観を備えたのが『アリーナ』という感じだろう。
『エクリプス』を滅ぼしたにせよ、『闘技場』という血生臭い興行を主に添える
『アリーナ』は、ギリギリのバランスで運営されているのだろうし、更に言えば、
その中の『派閥』によって、その善し悪しは変わってくる。
こればかりは実際に君の眼で確かめて、君の価値観で判断した方が良いと思うね」
『門倉』は、話しながら、スマホをいじり始める。
おそらくだが、話に関係ある行為なのだろう。
「というわけで―――俺の方で『アリーナ』の派閥を紹介してあげてもいい。
君の『戦闘力の活用方法』、『アリーナという組織の見極め』、
『恩のあるスタンド使いの捜索』、すべてを満たせるいい話だと思うんだが、どうかな?」
104
:
鷲見 健治 『2NDハンド・ファイア』
:2023/07/09(日) 17:03:12
>>103
「『エクリプス』のスタンド使いは皆が命を張った戦いの経験者
なのではないかと思うほど異常な奴ばかりだった」
「あいつらがやるのは喧嘩じゃねぇ。殺し合いだ。
喧嘩は拗れたものを直す儀式。それを汚すあいつらは敵だ」
鷲見にとって喧嘩は拗れたものを直す儀式だった。
例え負けたにしろ敗者は次のチャンスがある公平さが大事なのだ。
殺し合いは勝った者が穢れを背負っていくもの鷲見は考えている。
「何でもアリな『エクリプス』にヤクザの『アリーナ』。
ブレーキが有る分だけ『アリーナ』の方がマシではある…」
「『派閥』ってやつは痛いほどギャング時代に厄介さを感じてた。
アリーナの『闘技場』が俺の考える喧嘩から違っていたら…」
「ん? 『派閥』の紹介をしてくれるのか? 全て満たせる良い話だが
頼んでいいか? 昔から利害調整や根回しみたいなのは苦手でさ」
105
:
門倉『ソウル・ダンジョン』
:2023/07/09(日) 17:40:41
>>104
(鷲見)
「『紹介』―――ああ、するとも。
ただ、これから紹介する『派閥』はあくまで『窓口』のような形となるかな。
その『派閥』が君を見定め、更に『適切な派閥』があれば紹介してくれる。
少しまどろっこしいかもしれないが、その過程に様々な『関わり』が出来るのは悪くない話だと思うよ」
先程、『漣派』に打診したところ、どうやら『漣派』自体では新規の戦闘者を募集していないようだ。
(ttp://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/comic/7023/1456056964/848-849)
ただ、『漣派』が窓口としての面接をしてくれるならば、それなりの『品質保証』となり、他派閥への良いアピールとなるだろう。
『鷲見』に告げた『様々な関わりが出来るのは悪くない話』というのは『門倉』自身にも還って来る。
彼の面倒を見るというテイで自然にコネクションを得られるのは『悪くない話』だ。
「ただ、『紹介』はする代わりと言ってはなんだけど、
もし俺が困った事があれば、ぜひ君に『手伝って』欲しい。
つまりは、ひとつの『貸し』という事だ」
この『鷲見』は昔の不良のように直情的だが、
直情的な故にこういった『貸し借り』は忘れないタイプと見た。
『門倉派』の活動にはもちろんのこと、『何でも屋』的な活動で役に立つ事はあるだろう。
106
:
鷲見 健治 『2NDハンド・ファイア』
:2023/07/09(日) 19:18:11
>>105
「職業適性テストみたいなノリで学生に助かるよ」
「関わりか。確かに関わりは大事だ。ギャング時代にそれは経験
した」
自分はそういったコネを清算しちまったから何も無い。
それをこれからまた作って行かなければならないと目の前の門倉を見て思う。
「今回は手間かけさせて悪かった。俺に出来ることは喧嘩ぐらいだ
が関わっていく内に新しいコネができるかもしれない」
「俺みてぇなはみ出し者に良くしてくれたことは忘れないぜ」
直情的ゆえにカラーギャングの歪みに耐えきれず直情的だからこそ使いやすくもある。
良くも悪くも表裏が無くて警戒する必要性がないのが鷲見という男である。
107
:
門倉『ソウル・ダンジョン』
:2023/07/09(日) 20:59:16
>>106
(鷲見)
「よし―――それじゃあ」
『門倉』がいくつかの『面接候補』の日程を提示する。
『鷲見』と『門倉』の予定が合うものがその中にあるだろう。
『面接の打ち合わせ』などもした方が良いのかもしれないが、
この『鷲見』という青年にはむしろそんな小細工は逆効果かもしれない。
「少し先になるが………『当日』は俺も行く。
よろしくお願いするよ」
今更ながら、『門倉不動産 門倉良次』とかかれた名刺を渡しておく。
住所電話番号もそこに書いてある。
あとは問題なければ『メッセージアプリ』などの連絡先も交換しておこう。
108
:
鷲見 健治 『2NDハンド・ファイア』
:2023/07/09(日) 22:57:03
>>107
「日程は分かった。当日はアンタも来てくれるのか」
まぁ、『アリーナ』の流儀が分からない俺を野放しにするのはな…」
名刺を受け取りこっちも連絡先を書いたメモを門倉に渡す。
これからどんな付き合いになるかは分からないが互いに連絡先は知っておくべきだろう。
「長居して悪かった。じゃ、また当日になー!」
門倉に一礼して門倉不動産から出て行く。
謎に包まれた『アリーナ』との邂逅に胸踊らせて…
109
:
門倉『ソウル・ダンジョン』
:2023/07/09(日) 23:45:35
>>108
(鷲見)
『鷲見』を見送る『門倉』。
この出会いは、『良かった』と言えるのではないだろうか。
………
「―――さて」
もしかすると『漣派』の面接の前に『アリーナ』の他派閥と
接触しておいた方が良いのかもしれない。
そういう機会がないかどうか―――アンテナを張っておくべきか。
>美作
『鷲見』が帰った後、『美作』に感謝の言葉と今回の邂逅の詳細をまとめたメッセージを送った。
『漣派』がセッティングする『面接』―――
『美作』の予定があい、更に『漣派』が許すのならば、彼女にもついてきてもらっても良いかもしれない。
110
:
美作くるみ『プラン9・チャンネル7』
:2023/07/15(土) 12:46:04
駐車場に愛車の『ベスパ』を停め、通い慣れた『雑居ビル』に入っていく。
コン コン コン
「失礼します。どなたかいらっしゃいますか?
『物件』を紹介して頂きたいんですけど」
音域を意識的に下げて、『アルト』の声色で室内に呼び掛ける。
『気付くかどうか』は相手次第だろう。
ちなみに地声は『メゾソプラノ』で、ラジオで喋る時は『ソプラノ』だ。
111
:
門倉『ソウル・ダンジョン』
:2023/07/15(土) 21:21:00
>>110
(美作)
「―――あ!
はい、ただ今、ドアを開けますので!
少々、お待ちください」
『美作』の声に反応してドア越しに『門倉』の声が返って来る。
明らかに『余所行き』というか『客向け』の口調………
聴き慣れない『美作』の音域に『門倉』はすっかり騙されてしまったようだ。
バ タ ン
「………アレ?」
『接客モード』で意気揚々と開いたドアの先に見知った顔が居たので、
『門倉』は大いに肩透かしを食らった様子だ。
目を丸くして『美作』を見つめる。
112
:
美作くるみ『プラン9・チャンネル7』
:2023/07/15(土) 22:06:55
>>111
「――――『美作くるみ』の案内で来ました」
ニ コ ッ
普段と違う『低めの声色』を維持したまま、
平常通りの『完璧なスマイル』を門倉に向け、横から室内を覗き込む。
「『アポなし』の訪問になっちゃいましたけど、今お客さんはいないみたいですね」
スタ スタ スタ
「ちょうど良かったですよ」
ドサッ
『勝手知ったる』といった調子で、
ローテーブルとセットで配置されているソファーに腰を下ろす。
「そういえば『鷲見君』が来てたんですって?」
スッ
スタジャンのポケットからスマホを取り出し、
先日受け取った『メッセージ』を眺める。
113
:
門倉『ソウル・ダンジョン』
:2023/07/16(日) 19:55:47
>>112
(美作)
「あ―――………」
『美作』の特技……いや『生業』と言った方がいいか。
『七色の声』にすっかりと翻弄されてしまった事に、
『門倉』は数瞬あとにようやく気付く。
呆然とする『門倉』をヨソに、『美作』がスマートな所作でソファに座る。
………
「………ああ、『鷲見君』。そうだね。
そして、『美作さん』。例の『面談』には君にも来てほしいような事を告げたが、
先方の意向でちょっと難しそうだ。申し訳ないことだけど。
まあ、俺も、君に『おんぶにだっこ』じゃあいけないという事だろうね」
『門倉』の性根は『仲介』―――『不動産』に限らず、
『超常現象の解決依頼』の際も、『門倉』は誰かに依頼する事でそれを解決してきた。
『門倉派』としてもその事自体はひとつのスタイルだとは思うが、
『いざ』という時にはやはり、自らが動かなければならないのだろう。
「『鷲見君』には、この『仲介』をもって、『一つの貸し』という事にしておいた。
もちろん、『面談』が上手くいかなければ、その効力は薄れるだろうが―――」
114
:
美作くるみ『プラン9・チャンネル7』
:2023/07/16(日) 21:05:49
>>113
「あははは、構いませんよ。
その間に私の方も『企画』を練っておきますから」
「でも、さすが抜け目がないですねぇ。
『派閥の代表者』と呼ばれるような人は、やっぱりそうでないと」
「私も上手い『パス』を出したとは思いますけどね」
「ところで――――」
スマホから顔を上げて、門倉に視線を戻す。
「――――私の事『どう思ってます』?」
なんの前触れもなく、不意を突くような質問を投げ掛ける。
「つまり『門倉派にとって』という意味ですけど。
ちょっと時間が空きましたし、一応『再確認』しておきたいんですよ。
私が『どの程度必要とされているかどうか』」
少々『意地悪な質問』だが、これくらいは許されるだろう。
そう考えた上での問い掛けだ。
内心を悟られないように、表情には出さないように努めている。
115
:
門倉『ソウル・ダンジョン』
:2023/07/18(火) 07:13:09
>>114
(美作)
『美作』の言葉をニコニコとうんうん聞いていた『門倉』だったが、
その話の流れが込み入った問いかけになってきたため、
自然とその表情はシリアスなものへと変わっていく。
………
「そりゃあもちろん、大いに、俺は君を必要としているし、
良好な関係をもっともっと築きたいと考えているよ。
―――いや、当然、『門倉派にとって』という意味だけれど。
………
連絡が滞っていたのは………本当にすまなかったと思うよ。
思うような進捗がなくてね、つい連絡できなかったというところだ」
『門倉』は率直な思いを愚直に『美作』に伝える。
彼女の『声の才能』や『実行力』、その落ちついた『存在感』は
『門倉』が求める『門倉派』の重要な軸となるはずだ。
とはいえ、『決める』のは『美作自身』。
『門倉』としては思いの丈を伝え、後は『判断』を待つしかないだろう。
『美作』を観察するが、ピカピカと輝く水面のようにその内心を推し量る事は出来ない。
116
:
美作くるみ『プラン9・チャンネル7』
:2023/07/18(火) 15:05:32
>>115
「ふっ――――」
「あははははっ!」
門倉の言葉を聞き終わると、堪えきれずに笑い出す。
「あはっ、ゴメンなさい。
ちょっとイジワルしたくなったんですよ。
でも、真面目に答えてくれて安心しました」
「私も『門倉派』を必要としてますからね。
私自身を最大限に輝かせられるのが『門倉派』だと思ってますから」
『美作くるみ』が『門倉派』に加わった理由。
『エンターテインメント』を追求する『理念』に共感したというのもあるが、
それだけではなかった。
美作のスタンド――『プラン9・チャンネル7』が、
『門倉派』の『目的』と合致するからだ。
「私も『スタンド使い』になってから、それなりに経ってますけど、
『能力』を使い切った機会なんて一回もないんです。
だって『場所』がないんですよ。
私が『スタンド使い』として『全力』を出せる『ステージ』が」
『他の派閥』では、いくら待っても『チャンス』は訪れないだろう。
『情報系』は貴重ではあるが、
結局『メインストリーム』になれるのは『戦闘可能な能力』ばかりで、
『宝の持ち腐れ』に近い状態。
『生まれ持った才能を活かせない』というのは、
『自己表現欲求』の強い美作にとって、
非常に『フラストレーション』が溜まるものだ。
「私は『門倉派』に『ステージ』を見出したんです。
ここなら私は『自分の場所を作れる』と。
『作ってもらう』じゃあなく『作る』です」
「――――『チャンス』は与えられるものじゃないですから」
そこまで言い切ると、にわかに口元を綻ばせ、挑戦的な笑みを浮かべてみせた。
117
:
門倉『ソウル・ダンジョン』
:2023/07/20(木) 07:12:55
>>116
(美作)
『門倉』は室内に響く『美作』の突然の笑い声に困惑の表情を浮かべる。
そして、彼女が紡ぐ言葉を、厳かな託宣を聞くかのように慎重に受け止めていく。
………
「………ああ、それなら良かった。
良かった、本当に」
『美作』の言葉を最後まで聞き終えた『門倉』は、そう胸を撫でおろす。
『門倉派』としては彼女は重要な軸となる存在だが、
彼女の方でもそう捉えてくれていたのなら純粋にありがたい事だった。
『門倉』は―――『仕事中』でなければ―――
本来はどちらかといえば人をからかうような飄々とした態度をとる男だ。
であるが、眼前の女性、『美作くるみ』の前ではどうにもいつもの調子が出ない。
女教師に叱られるようなバツの悪い男子高校生のような態度で、
ただただ謝罪し、受け入れられると素直に安堵の言葉を口にする………
「『チャンス』は与えられるものじゃあない―――
確かにそのとおりだね。
そして、そうだ。
この前、良い『アイディア(
>>94
)』を教えてくれたけど、
アレについてもう少し具体的に確認したいな。
『善は急げ』というわけで、始めるなら早い方が良いとも思うけど―――」
そして『門倉』は、なんとなくのバツの悪さを胡麻化すかのように、
話題を『美作の新アイディア』に意向させようとする。
118
:
美作くるみ『プラン9・チャンネル7』
:2023/07/20(木) 16:45:30
>>117
「――――――あぁ、『アレ』ですね」
「あのアイディアは『叩き台』みたいなもので、
まだ詳細が煮詰まってないんですけど、
話し合ってる内に固まってくると思うんですよ」
「だから、『意見の交換』は大歓迎です」
改めて門倉と向き合い、『議論』の態勢に入る。
「まず前提として、私達の『長所』を活かすべきじゃないでしょうか。
つまり、『フットワーク』の軽さです。
私達は『二人』しかいませんが、裏を返せば『動きやすい』。
これは『大きな派閥』にはない利点です」
「それでですね――――『広報』って大事じゃないですか?
それが『簡単』で『確実』かつ『広範囲』に出来るとしたら」
スッ
「『これ』、見てもらえます?」
弄っていたスマホの画面を門倉に見せる。
・門倉派の宣伝とミニライブの予告
↓
・美作のミニライブとアイドルショーの予告
↓
・本命のアイドルショーを開催
「こういった『流れ』で進めるのはどうかなと思うんです。
『大きなイベント』を進めにくいなら、
『小さな目標』を積み重ねていきましょう。
私達の力で『どこまでやれるか』試したくないですか?
私達は今の『アリーナ』に『一石を投じる立場』なんですからね」
「『実行』には『私』と『スピーカー』があれば十分です。
いわゆる『スタンド音声』を『スピーカー』で『拡散』する訳ですね。
私の『プラン9』は、電源が入っていなくても能力に支障はありません。
だから、『電力の確保』は考えなくて大丈夫です」
「そして、『音量』は『機器の性能』に依存します。
要するに、『野外フェス』で使うような、
『大型スピーカー』さえ用意してもらえるなら、
私は相当な範囲の『スタンド使い』に『声』を届けられるという事です」
そこまで一気に喋った後、自信に満ちた声色で続ける。
「私が『広告塔』になります。
『情報系』の強さは『収集』だけじゃありません。
『発信』を使わないのは勿体ないですよ」
「私ほど『広報向き』の人材は、そうそういませんから」
こちらから行うべき提案はした。
『代表者』である門倉がどう思うか。
ソファーに身を沈め、彼の意見を待つ。
119
:
門倉『ソウル・ダンジョン』
:2023/07/21(金) 07:11:35
>>118
(美作)
「―――なるほど、本旨は『スタンド使いに対するアピールおよび宣伝』というわけだね。
『大型スピーカー』は今後も利用価値があるし、買っておくのは先行投資にもなるだろう。
良いアイディアだと思うよ、実に。
………ちなみに、『声』が『美作くるみ』というのは『明言』するわけかな?」
『美作』の説明を受け、『門倉』が確認する。
アイディア自体は『門倉』が言葉に出したとおり素直に良いと思う。
『スタンド使い』しか聴こえない音でやるのであれば、警察に届け出る必要もないし、
決行後は『門倉派』の存在を周知出来、人材確保もしやすくなるはずだ。
ただ、それを『門倉派の誰か』が行うのか、それとも『美作くるみ』が行うのか―――
この星見町において『美作くるみ』の名は、強い吸引力を持つ。
名もしらぬ『誰か』が行うより『ミニライブ』の『価値』も跳ね上がるだろう。
『宣伝』というのであれば、出すのが一番だが、それにより、『美作くるみ』が
『スタンド使い』であり、『アリーナの一派の一員』である事が多くの『スタンド使い』に知られてしまう。
それにより『本業』への影響や、妙なファンがつく事、
あるいは『アリーナの他派閥』からのちょっかいが考えられる。
『美作』は『門倉派』を『全力を出せるステージ』と考えてくれている。
それ自体はありがたい事だが、『他派閥』でも彼女の能力・声・知名度などは
『実況』や『広告』などで十分に有用だろう。
『門倉派』というまだショーのひとつもこなしていない半人前の『派閥』に
『なぜか』所属している『美作くるみ』を引き抜こうと考える『派閥』が出てきてもおかしくはない。
『美作』がそうコロコロ心変わりするとは『門倉』も思っていないが、
『スタンド』には『精神』を歪めたりするものもあるし、『強硬策』に出られないとも限らない。
『門倉派』で『美作くるみ』を全面に出す事は、『武器』であると同時に『リスク』でもある。
その『諸刃の剣』を『美作自身』はこの段階で引き抜くつもりがあるのかどうか―――
120
:
美作くるみ『プラン9・チャンネル7』
:2023/07/21(金) 13:53:32
>>119
「そこが『面白い所』なんですよねぇ。
『姿が見えない』っていうのは、逆に言うなら『何にでもなれる』んです」
フフッ
『待ってました』と言わんばかりに不敵な笑みを見せ、
スマホを手元に戻しながら口を開く。
「私は『カナリア』として『個人活動』もやってるので、
こっちで『同じ名前』を使うのもどうかなと思って、
とりあえず『本名』で門倉さんに説明しやすくしておきました。
でも、まぁ『カナリア名義』でも良さそうですね。
それはそうと、『正体』を隠しつつ『個性』をアピールする方法も、
しっかり考えてあるんですよ」
「端的に言うと、私は『人間じゃない何か』になります。
イメージとしては『音声合成ソフト』なんかが近いかもしれません。
そうですね――――『機械仕掛けの歌姫』なんてどうです?」
「『高度に発達した人工知能が意思を持った』とか、
『本体は巨大なコンピューターだから表に出て来られない』とか、
『半世紀は時代の先を行ってる天才科学者が作った』とか、
『近未来サイバーパンク風』の『世界観』でいきましょうか。
門倉さんと知り合って協力関係を結んだという『設定』で。
もし『都合の悪い事』を聞かれた時は、
『バグ』とか『自己メンテナンス』で乗り切りましょう」
「この辺はもう少し詰めたいですけど、
とにかく『インパクト』が強いに越した事はないですね」
『演出』の為の『背景』なら、どれだけ飛躍してもいいのだ。
むしろ、どこまで飛躍できて、その上で『演じきれるか』が勝負と言えるだろう。
『人前に出ない』というのは、『キャラクター』を徹底しやすいという利点もある。
「あ、それと『スピーカー』と一緒に『広報用原稿』を用意してもらえます?
『門倉派』を紹介するにしても、
最初から最後まで『アドリブ』で喋る訳にはいきませんから。
メモ書き程度でも構わないので、大まかな『方針』を知っておきたいんですよ」
121
:
門倉『ソウル・ダンジョン』
:2023/07/24(月) 07:04:17
>>120
(美作)
「―――ふゥむ」
『何にでもなれる』という『美作』の話に感嘆する『門倉』。
ただの『門倉派の一員』ではなく、かといって『美作くるみ』でもなく、
『機械仕掛けの歌姫』という新たな選択肢が示された。
「実に良いアイディアだと思うよ。これから『門倉派』を運営していくにあたって、
新しい『スター』をどんどんと作っていかなくてはならない。
『機械仕掛けの歌姫』はその試金石にもなるかもしれないな。
そういう『設定』みたいなのには俺は疎いんだけど―――
そうだな、『インターネット』でこっそり意見を募って、
設定を固めるとかもいいのかもしれない」
『何がウケるか』というのはやはり多数の意見を聞くのが良いのではないか。
『門倉』は詳しくないが、ネットではそういう意見を募れる場がある気がする。
もちろん、『企業秘密』的な要素もあるので微妙な部分もあるにはあるが………
………
「『広報用原稿』ね………分かった。
今すぐ、とはいかないが、
少し時間をくれれば、『方針』はまとめておくよ」
とりあえず、やってみて軌道修正していくのでも悪くないのかもしれない。
いずれにせよ、『鷲見』の件といい、停滞気味の『門倉派』の活動を再始動できる兆しが見えてきた。
122
:
美作くるみ『プラン9・チャンネル7』
:2023/07/24(月) 16:16:16
>>121
「大雑把な指示で大丈夫ですよ。
あとは安心して私に任せて下さい
『ラジオ』にも『台本』はありますけど、
その通りに進む事なんてまずないですから」
「万事上手くやってみせます」
美作くるみは、常に新しい『プラン』を考えている。
それを受け入れてくれる『門倉派』のスタンスは素直に有り難かった。
もちろん、代表者である『門倉』の柔軟性にも、大いに感謝したい所だ。
「あ、ソレいいかもしれませんね。
そっちの方は『美作くるみ』がやっても平気かもしれません」
ス ッ
スマホを手にしてソファーから立ち上がり、
『自撮り』の構えで窓際に歩いていく。
「こんにちはぁ〜、『美作くるみ』です!
『AI』の進歩って最近スゴいですよねぇ。
もっともっと『人間に近い人工知能』とか、
これから登場するんじゃないでしょうか?
進化しすぎて『反乱』を起こしたりされないか心配です」
「今の時期に『冷凍庫』が『一斉ストライキ』したらなんて考えると、
怖くて眠れなくなりますね…………。
あははっ、『夏』なのでちょっとした『ホラー要素』を入れてみました。
『起きたら全部溶けてる』なんて心臓に悪いですもんね。
ただの『故障』かもしれませんけど!」
「でも、『ユーザーインターフェース』は更に進むと思うんですよ。
より『親しみやすく』というか。
皆さんは、どんな『AI』とお喋りしてみたいですか?
是非『コメント』で教えて下さいね!」
「『次の動画』では、いただいたご意見を元に、
私くるみが『理想のAI』になりきっちゃいます!
題して『電気カナリアはアンドロイドの夢を見るか?』!
『喋り』を専門にする人間として、『人工知能』に負けないように、
私も進化し続けないといけないですからね。
皆さんからの『コメント』お待ちしてまぁ〜す!」
地声より高い『ソプラノ』で一通り喋り終わり、
スマホを下ろして門倉に笑いかける。
「――――こんな感じで『動画サイト』に投稿したらどうでしょう?
私個人の『チャンネル』もありますからね。
『リハーサル』にも丁度いいんじゃないでしょうか」
123
:
門倉『ソウル・ダンジョン』
:2023/07/26(水) 07:07:25
>>122
(美作)
『大雑把な指示で大丈夫』という『美作』の言葉に『門倉』は頷く。
………
そして、『美作』から淀みなく放たれる、
アドリブでの『理想のAI募集』を聞き、満足そうに微笑む。
『ラジオ』での『美作の語り』を聴けば、当然の技能ではあるのだが、
眼前で繰り出されるとやはり圧倒される。
「そうだね、これなら気軽に多くの意見を収集できるだろうし、
複数の意見を『たたき台』にして『機械仕掛けの歌姫』像を作成していけば
このアンケートが元ネタだとは分からないかもしれない」
『美作くるみ』の知名度で流行りをリサーチして、
それを『門倉派』の活動に活用していく。
彼女の表も裏も、上手に使いこなせるこの『企画』は、改めて優秀だと言えるだろう。
「それじゃあ、まずは『動画サイト』投稿での情報収集、
その後、『機械仕掛けの歌姫』のキャラクター造形を固める。
その間に、俺は『スピーカー』と『広報用原稿』を用意しておく。
そして、頃合いを見て、スタンド音声で『告知』、
『機械仕掛けの歌姫』のライブとショー予告を行う、といった流れで良いかな?」
今までの話をまとめてみる『門倉』。
124
:
美作くるみ『プラン9・チャンネル7』
:2023/07/26(水) 16:32:08
>>123
やはり『フットワークの軽快さ』は『門倉派』の武器だ。
少数である事は必ずしも弱点にはならない。
『他の派閥』が持ち得ない『機動力』を活用すれば、
『大手』にも食らいついていける。
「ええ、私からは特に異存ありません。
門倉さんの『オーケー』が出たなら、それで行きましょう」
「そうと決まれば『鉄は熱い内に打て』。
今後の『プラン』も纏まった事ですし、後は『行動あるのみ』です」
スタ スタ スタ
スマホをポケットに戻し、ドアの方に歩き始める。
その表情は、室内に入る前よりも活き活きしていた。
曖昧で実体のない展望が、少しずつ確かな形を成していく。
美作くるみは、この感覚が堪らなく好きなのだ。
これも、何らかの手段で自己を表現しようとする意思が強いせいだろう。
「早速、今日中には『動画』を上げておきますよ。
楽しみにしていて下さいね」
ガチャ
ドアを開け、最初の一歩を踏み出す。
「――――『See you』!」
パチッ★
挨拶と共に『ウインク』を送り、『門倉不動産』を後にするのだった。
125
:
門倉『ソウル・ダンジョン』
:2023/07/28(金) 23:31:34
>>124
(美作)
『門倉』の言葉に『美作』は迅速に呼応し、
次の一歩、『動画作成』の為にするりと『門倉不動産』を後にする。
あのフットワークの軽さは賞賛に値するし、『門倉』自身には無いものだ。
「それじゃあ、頼んだよ―――」
彼女の後ろ姿に聞こえるか聞こえないか。
『門倉』の言葉が『美作』の背中を後押しする形になれば良いのだが………
………
「さて―――」
『門倉』は『門倉』でやる事が出来た。
『スピーカー』の発注や、『門倉派』の『方針』を改めて言語化すること―――
『美作』に負けないよう、『門倉』も張り切らなくてはならないだろう。
そんな事を行いつつ、また、『誰か』の『来訪』を待とう。
そのための『ドア』は、いつでもこの『門倉不動産』に存在している。
126
:
御子神『イン・ジャスティス』
:2023/08/23(水) 18:03:47
「美作くるみから話は聞いた!
貴様は『アイドル』を募集しているようだな!」
先日、門倉が物件の世話をした男・・・・御子神
黒衣の外套を翻しながら、彼が再び飛び込んできた
127
:
門倉『ソウル・ダンジョン』
:2023/08/24(木) 18:33:14
>>126
(御子神)
………
いや、基本的には『信用』している。
『信頼』だってしている。
しているが―――
(―――いったい全体どういう意図で、
『美作さん』はこの男に『アイドル』の話なんかしたっていうんだ?)
………
………
「――――ええ、していますよ、それはもう、たっぷりと」
まあ、しかし。まあしかしだ。
ここは彼にアイドルについて語った『美作さん』を信じ、
変にはぐらかさず、真正面から話に乗ろう。
『美作さん』の事だから、この行為には深淵な意図があるに違いないのだから。
128
:
御子神『イン・ジャスティス』
:2023/08/24(木) 18:58:00
>>127
突然現れた不審者の存在に面食らいながらも、
彼が口にした『名前』から何らかの意図を読み取る門倉
その想いを知ってか知らずか、闖入者は続けてこう口にする
「やはりそういう事か」
その言葉には、互いに何らかの『意図』が通じ合った事を喜ぶ色があり
口元にはニヤリとした笑みが浮かんでいた
「ならば話が早い」
「俺を『アイドル』にしろ」
129
:
門倉『ソウル・ダンジョン』
:2023/08/24(木) 19:25:27
>>128
(御子神)
「…………………少し。
いや、少しではないな、
全くもって、話が読めないんですが」
何が『やはりそういう事』なのかも分からないし、
何で『ならば話が早い』のかも分からないし、
何故『俺をアイドル』にしなくてはならないのかも分からない。『分からない』の三重苦だ。
「―――『アイドル』という言葉というか概念についてはご存じですか?
もしお分かりにならないのでしたら、
『スマホ』を持っていたと思いますので、まずは一度、
どういうものか調べてみても良いのでは?」
とりあえず、思った事を口にしてみる『門倉』。
というか、まさかとは思うが―――
『美作さん』が、彼をスカウトしたという事なのか―――?
130
:
御子神『イン・ジャスティス』
:2023/08/24(木) 20:03:38
>>129
「ふむ・・・・『アイドル』の定義についてか」
手で顎に触れながら、少し考える素振りをすると
懐から『スマートフォン』を取り出す。
「その言葉の意味について、己はインターネットを使って調査を行った」
ススッ
スッ
意外な程に速く・・・・精密なフリック動作だ
流水の様な動きで入力される手捌きにはある種の美しさすら感じられる
スマートフォンのフリック操作選手権というものがあるのなら、間違いなく上位を狙えるだろう
「『アイドル』・・・・『偶像崇拝』が語源となった言葉だ
現代においては歌や踊りによって熱狂的なファンを生み出す
エンターテインメント的要素が強い言葉となっている」
画面上に映し出されるのは、今現在、音楽シーンを賑わせる芸能人の画像
また、一部には「わけあってアイドル!」「小さくたってアイドル!」など
二次元のアイドルコンテンツを源としたキャラクターのイラストが表示される
「『アイドル』とはつまり、芸能界を舞台に活躍する歌い手に相違ないだろう・・・・」
「・・・・だがここに裏の『意味』が存在する」
門倉へと軽い目配せを送る
131
:
門倉『ソウル・ダンジョン』
:2023/08/24(木) 20:28:19
>>130
(御子神)
「裏の『意味』…………ですか?」
インターネットを始めた高齢者がメディアリテラシーの無さから、
『陰謀論』を鵜呑みにしてしまう、などという話を聞いた事がある。
眼前の男も、もしかするとそういった状態なのかもしれない。
普段は与太話で煙に巻くような語りを行う『門倉』も、
『ホンモノ』にはただただ困惑するばかりだ。
とりあえず、相手の話の着地点を確認しない事には打つ手がない。
言葉少なに、『御子神』の話の続きを待つ『門倉』であった。
132
:
御子神『イン・ジャスティス』
:2023/08/24(木) 20:49:30
>>131
「ああ・・・・!」
力強く首を縦に振る
『陰謀論』にしろ『秘密の情報』にせよ、
どうやら彼がそれを確信している事は間違いないだろう
「『アイドル』というのは行政を欺く為の仮の姿
その正体は『革命』に向けた若い戦力の確保とその育成・・・・!」
「『革命戦士』・・・・!
それが『アイドル』という言葉が持つ本当の意味だ!!」
語気強くそれを断言する
133
:
門倉『ソウル・ダンジョン』
:2023/08/24(木) 21:12:47
>>132
(御子神)
「………」
「………か、『革命』」
「………ですか?」
しかもただの『革命』ではなく『革命戦士』ときた―――
現在日本の日常では、ニュース、あるいはゲームやアニメの中でしか聞かない言葉だ。
………
「……………いや、でも、しかし、ですね」
「それでしたら…………」
「………あなたはもう『若く』ないので
その意味で、『アイドル』にはなれないのでは?」
『御子神』の『思い込み』を根本から是正するのは困難、と判断した『門倉』。
なので、彼の『アイドル』の定義、『革命に向けた若い戦力の確保とその育成』、
というフレーズに触れ、『若い』という定義に御子神自身が当てはまっていない点を突いた。
自身の言葉からの『矛盾』であれば、彼も素直に退いてくれるのではないだろうか。
134
:
御子神『イン・ジャスティス』
:2023/08/24(木) 21:29:13
>>133
「己は若いが・・・・!?」
御子神に対して根本的な部分での反論は困難と判断した門倉
対症療法的に当たり障りのない是正を狙った彼の台詞は、
御子神からの強い反撃に跳ね返される
「己は未だ『28歳』だが・・・・!?
子供が居るとはいえ、未だ十分に意気軒高。十分な戦力になるはずだ」
135
:
門倉『ソウル・ダンジョン』
:2023/08/24(木) 23:10:39
>>134
(御子神)
「あ?
………
あァ―――………
………なるほど、なるほど」
『御子神』の『自分は若い』という宣言に
『門倉』は困惑したが、数秒後に得心がいったような表情に変わる。
『門倉』の感覚としては、『アイドル』という概念においての
『若い』はせいぜい『20代前半』までであり、『28歳』の『御子神』は範囲外。
それに加え、『御子神』という存在には実年齢を超えた『若さの欠如』がある。
そんな彼がこんなに真っすぐに『自身の若さ』を主張してくるとは思ってもみなかった。
ただ、『御子神』の思う『革命戦士(アイドル)』の概念はそれには当てはまらないのだろう。
言うなれば『会社の若手』的なものか。そういう事なら納得自体は出来るが………
「なるほど………ただ、ですね。
申し訳ないですが、御子神さん。
『育成』という意味では貴方は十分に実力もあり、『育ち過ぎている』………
俺としてはもう少し、未熟なところから育てていきたいんですよね」
一度、『御子神』の『革命戦士(アイドル)』の妄想に乗っかってしまった以上、
一般的な『アイドル』概念に回帰して論戦を繰り広げる事は難しい。
なので、今度は『育成』というワードに着目して、体よく断る方向に持ち込んだ。
136
:
御子神『イン・ジャスティス』
:2023/08/24(木) 23:44:32
>>135
「ふむ・・・・」
相手の『妄想』を否定せぬままに進む門倉の誘導に
御子神は思いのほかスムーズに乗って来た
「確かに。己は既に大人として完成されている
貴様が憂慮するのも納得がいくというものだ」
「・・・・わかった
己が『アイドル』となる事は諦めよう」
ふぅーっ、と長くため息をつくと、そう言って諦めの意思を見せる
「・・・・そうだ、最後に貴様に聞いておきたい事がある
『アイドル』という戦力を集めて・・・・貴様は一体何と戦うつもりだ?」
137
:
門倉『ソウル・ダンジョン』
:2023/08/26(土) 06:09:10
>>136
(御子神)
「………『それ』を他者にペラペラ話すようでは、『革命』は成りませんよ。
『御子神さん』、あなたなら分かるでしょう?」
『アイドル』を集めて何と戦うか―――
強いて言えば『観客との闘い』だとか『アリーナの権力闘争』だとかになるのだろうが、
そんな事を眼前の男に言ってもまた話がこじれそうだ。
『革命戦士は重要な情報を外部に漏らさない』………
『御子神』の妄想めいた『アイドル』観に従えば、
この態度の方が『御子神』の心証は良いはずだ。
………
「ただ、この町にも戦うべき『悪』はある、とだけは言っておきます。
『御子神』さんもそれを捜すと良いのかもしれませんね」
そして、目の前の男の良く分からない話から逃れるために
『門倉』は思わせぶりに曖昧な『悪』をでっちあげ、
そちらに意識を向けるように誘導し始めた。
おそらく、『御子神』はそういうのが好きなのではないだろうか。
138
:
御子神『イン・ジャスティス』
:2023/08/26(土) 14:42:22
>>137
「・・・・・・・・なるほど
己が居た街と違い、この街には平穏が満ちているように思えたが・・・・」
イリュージョン
「それはどうやら『まやかし』だったようだな」
男は門倉の言動を聞き、悲しみに眉を歪める
はらはらと小刻みに動く両腕は心に受けた衝撃の大きさを物語っていた
「戦うべき『悪』の存在・・・・
まだ見ぬ己の『息子』にも危険が及びかねないというわけか」
バサァッ!!
再び外套を翻し、出口へと向かう
「こうしてはいられない!
この街の『悪』が『貞世』に危害を加える前に・・・・保護しなくては!」
そう言って男は嵐のようにこの場を去っていった
139
:
門倉『ソウル・ダンジョン』
:2023/08/27(日) 18:28:31
>>138
(御子神)
「―――それでは、また」
慌ただしく外へと向かう『御子神』を見送る『門倉』。
『門倉』の言葉は予想以上に『御子神』に届いたようだ。
真夏の嵐のような怒涛の勢いの男、『御子神』。
彼に対し、いくら円満に話を終わらせる為とはいえ、
歪んだ『アイドル』観を否定せず、更に町に『悪』が居ると伝えてしまったのは、
後々、何かしらの遺恨を残すかもしれない。
………
「―――まァ、その時はその時か」
基本的に楽観的な『門倉』は、そう呟いた後に、また、自らの業務へと戻っていく。
ちょっとしたトラブルはむしろ日常を彩り、刺激となる。
次はどんな人物が訪れるのか―――
『門倉不動産』の門戸は基本的にウェルカムだ。
140
:
美作くるみ『プラン9・チャンネル7』
:2023/09/10(日) 08:22:55
『個人的な依頼』をこなしてから数日後、ここ『門倉不動産』を訪れた。
そろそろ本格的に動いてもいい頃合いだろう。
『頼んでいた物』は用意してくれているだろうか?
「――――門倉さん、いらっしゃいます?」
ガチャリ
そんな事を考えながら、入口のドアを開ける。
141
:
御子神『イン・ジャスティス』
:2023/09/10(日) 13:50:04
>>140
「門倉は現在留守にしている」
『門倉不動産』の事務所はいつも通りの光景だ
ここ最近、度々出入りを繰り返している美作にとっては見慣れた光景だろう
目の前に立つ『男』を除いては
埃まみれの黒いマントは清潔感のある室内では一種の異物の様な存在感を放っている
空調の風を受けてふわふわとした浮遊感を持つそれは
精悍で筋骨隆々なこの男の身を覆い、その一画に独特の世界観を醸し出していた
「用件があれば己(おれ)が・・・・む、貴様は」
「美作・・・・くるみ・・・・ッ!!」
142
:
美作くるみ『プラン9・チャンネル7』
:2023/09/10(日) 14:53:04
>>141
『目の前の男』を確認して、僅かな間が空いた。
これから大事な話をしようという時に、一番いてはいけない人間がいる。
はっきり言って『マズい』。
「あ、そうなんですかぁ〜」
ニコリ
いつものように『完璧なスマイル』を見せ――――――
スッ
「じゃあ、また後で出直しますねぇ〜」
――――――パタン
そして、『ドアを閉める』。
彼に関わると面倒だと思ったからだ。
そのまま足早に立ち去り、最寄りの『駐輪場』へ向かおうとする。
………………御子神は『どうする』?
143
:
御子神『イン・ジャスティス』
:2023/09/10(日) 15:16:46
>>143
「出直しか・・・・それもまあいい」
そう言って、応接間に備え付けられたソファーに座り直す
代わりに取り出したのは一冊の書籍と・・・・近くにあった将棋盤だ
パチン
パチン
盤上に駒が並べられていく・・・・・
これは・・・・『詰将棋』だとでも言うのだろうか・・・・!?
「門倉には後程、己から伝えておこう」
144
:
美作くるみ『プラン9・チャンネル7』
:2023/09/10(日) 16:19:37
>>143
ドアを閉める直前に見た光景を思い返す。
『アイドル』について、門倉に聞くように言ったのは美作自身だが、
まさか鉢合わせるとは思わなかった。
既に『説明』を受けたのだろうか?
どういったやり取りが交わされたのかは知らないが、何となく『想像』はつく。
門倉が上手く納得させてくれていればいいが…………。
ともかく――――今は『タイミング』が良くない。
ただ世間話をするだけなら、門倉の帰還を待っていても良かった。
しかし、検討に検討を重ねた大事な『計画』を、外部に漏らす訳にはいかない。
それは御子神に限った話ではないのだ。
ゴソ
スタジャンのポケットから『スマホ』を取り出し、おもむろに『入力』を始める。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
『例の計画』を話し合う為に寄ったんですが、お留守だったので出直します。
そろそろ『実行』に向けて本格的に動きたいと思っていますから、
門倉さんも『準備』をお願いしますね。
先日、『フーヴィアン派』の方と話す機会がありましたので、
失礼のないように挨拶しておきました。
追伸:御子神さんがいらしてましたよ。
『アイドル候補』について知人と話している時に一緒にいて、
それが彼の耳にも入ったんです。
『アイドル』について一から説明していると長くなりそうだったので、
手っ取り早く門倉さんの所に行ってもらいました。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
ピッ
門倉に『メッセージ』を送信し、愛車である『ベスパ』のシートに腰を下ろす。
「とりあえず…………『私の準備』を進めておきましょうか」
ド ル ン ッ
キックペダルを踏み込んで、エンジンを始動させる。
バァァァァァァァァァァァァ――――――――――ッ
『留守番』を務める御子神を残して、
『カナリアイエロー』の車体が颯爽と走り出し、徐々に遠ざかっていった。
145
:
御子神『イン・ジャスティス』
:2023/09/10(日) 19:13:10
>>144
「ふむ・・・・4六歩」
美作の意図を知ってか知らずか、男はその場に居座り続ける
時折、ぱちり、ぱちり、と駒を動かしながら・・・・
146
:
門倉『ソウル・ダンジョン』
:2023/09/14(木) 19:53:27
>>144
(美作)
『美作』のメッセージを確認した。
そろそろ始動の時期………
メッセージを送り返さないといけないが―――
>>145
(御子神)
「あなたの故郷(くに)ではどうだか知りませんが―――
ここには『法律』というものがあって、
他人の敷地内には勝手には入ってはいけないんですよ、『御子神さん』。
それが喩え、『不動産屋』だろうと………
『鍵』がかかっていたはずでしょう?」
外から帰ってきた『門倉』は、『美作』に返信するより、
まずは、闖入者の相手をしなければならなかった。
147
:
御子神『イン・ジャスティス』
:2023/09/14(木) 20:37:59
>>146
「戻ったか・・・・門倉・・・・」
外から帰って来た門倉を出迎えた者は
テーブルの上に駒を並べて一人将棋を始めていた
堂々たる態度だ・・・・『不法侵入者』にはとても見えない
「『法』が犯罪を抑止する・・・・やはり、素晴らしい街だな、ここは
だが、貴様にとっては不運な出来事が一つだけある」
「貴様・・・・鍵など掛かっていなかったぞ
かけ忘れていたのではないか・・・・?
おかげでこの己(おれ)が留守番をする事になってしまった・・・・」
そう言うと、再び卓上の将棋盤に視線を向ける
「貴様が留守にしている間に美作くるみが来ていたのだが・・・・
いや、それはまあいい」
「盤上を見ろ。門倉」
148
:
門倉『ソウル・ダンジョン』
:2023/09/17(日) 15:26:25
>>147
(御子神)
『あ、やっぱり法が犯罪を抑止しない場所に住んでいたんだ』
自らの疑惑を確信に変えつつ、『門倉』は『御子神』の応対を続ける。
「鍵がかかっていなかった………妙だな」
確かにかけた気がするが………
それよりも今は『御子神』の対応か。
「盤上―――将棋ですか?
私は、あいにく、ルールが分かるくらいのレベルですが」
149
:
御子神『イン・ジャスティス』
:2023/09/17(日) 17:04:38
>>148
事務所の鍵について僅かな疑念を抱きながらも
御子神に勧められた通りに盤上を見る門倉
そこには・・・・
「・・・・これは『星見町』の縮図だ」
そこには『星見町』の縮図のような盤面が広がっていた
「貴様に言われて気が付いた・・・・
この街は一見すると整然としているが、僅かな動きによって混沌に飲み込まれる
そんな薄氷の上の平和を享受しているのだと・・・・」
一見すると整然としている盤面が、御子神の動かす僅かな動きによって混沌に飲み込まれていく
まるで薄氷の上の平和を享受しているようだ・・・・ッ!!
「だが、ここに・・・・駒を一つ加える」
盤面に駒が一つ加えられる・・・・すると!
「見ろッ!
混沌とした盤面に一筋の光明が差し込んだ!!」
な、なんという事だろうか・・・・!
加えられた駒により、混沌とした盤面に一筋の光明が差し込まれていく・・・・ッ!!
「この『駒』は貴様だ。門倉」
150
:
門倉『ソウル・ダンジョン』
:2023/09/17(日) 18:28:58
>>149
(御子神)
「―――!
………?」
先程述べた通り、『門倉』の将棋への理解はルールを知っている程度で、
正直、細かい盤面の機微などはさっぱり分からない。
ただ、『将棋マンガを雰囲気だけで読む』ような形で、
盤面が『御子神』の説明通りになっているのだろうということは推測できた。
「―――つまり」
ただ………
「………この『星見町』に『光明』をもたらすのが、
この私、『門倉』だという事ですか?」
なぜそんな結論に至ったのか皆目分からないが、
『御子神』がそう思っているらしいので、
それをそのままオウム返ししてみた。
151
:
御子神『イン・ジャスティス』
:2023/09/17(日) 18:50:56
>>150
――――ニヤリ。
オウム返した門倉の言葉に、御子神は薄く笑みを浮かべる
その顔つきはまだ見ぬ『何か』を確信しているようだ
「『アイドル』・・・・そう、『アイドル』だ
貴様の持つ『アイドル』の力があればそれも可能であろう」
バッ!!
マントを翻し、外に出て行く
「忘れるな、門倉!
貴様の意思が全てを変えるきっかけとなり得る事を」
ザザザザザザザ――――
砂埃を立てながら、男は去って行った
後に残されたのは意味深な配置に並べられた棋譜のみ
これは何を意味しているのだろうか・・・・?
152
:
門倉『ソウル・ダンジョン』
:2023/09/20(水) 06:45:13
>>151
(御子神)
「………なるほど」
そして、『御子神』を見送る『門倉』。
あらゆる意味で一方的な宣言に、
とりあえず『なるほど』と呟いてみたが……正直なにもかも分からない。
そりゃあ『アイドル』が活躍すれば町が明るくなるかもしれないが、
それで町の混沌がなくなるかと言われれば微妙だ。
『御子神』は一体、『門倉』と『アイドル』に何を期待しているのか――
「―――あるいは、『そういう』表現しか出来ない人なのかもな」
何事も大げさな表現を使ってしまう人間も居る。
『御子神』は、そういうタイプの人間という事だろう。
話半分にきいておくのが正解か―――
『将棋』の細かい攻防の機微は分からないので、
意味深な棋譜が意味するところもまるで分からない。
分からないので『門倉』は少し休んでから、『美作』への返答を行う事とした。
………
そういえば、一つだけ気がかりな事があった。
なぜ、『門倉不動産の鍵は開いていたのか』。
>>153
に、それに関する何かが示唆されるのかもしれないし、されないかもしれない。
153
:
美作くるみ『プラン9・チャンネル7』
:2023/10/31(火) 16:02:21
ここ『門倉不動産』は、
雑居ビルの一階に位置する何の変哲もない『不動産屋』だが、
同時に『門倉派』の拠点でもある。
しかし、今は『主』が不在だった。
彼の代わりにソファーに座っているのは、『門倉派構成員』の『美作くるみ』だ。
「『意見』は集まってきたけど、あんまり欲張ると『方向音痴』になりがち。
集めた情報から『共通点』を洗い出して、皆が求めるものを探ってみましょうか」
「キーワードは『肯定』ね。
『肯定してくれるAIアイドル』――――」
「『オリジナル曲』を用意するだけの体力はウチにはないし、
何を歌うか決めておかないと」
スマホを操作しながら、今後のプランについて検討する。
「門倉さん達、今頃は『面接』の最中かしら。
上手くやってくれてるといいんだけど…………」
その件について思い出すと、やっぱり同行した方が良かったような気がしてきた。
曲がりなりにも一から『派閥』を作った門倉が頼りないとは言わない。
ただ、いざ『待つ側』になってみると、ほんの少し不安な気持ちが入り混じる。
「頼みますよ」
「『門倉代表』」
彼が帰ってきた時の為に、今の自分に出来るだけの事はしておこう。
154
:
美作くるみ『プラン9・チャンネル7』
:2023/11/28(火) 16:08:20
>>153
「――――改めて考え直してみたら、
『歌』でなければいけない理由ってないじゃない?」
「今の私の『持ち味』を活かすなら、やっぱり『喋り』かしら。
ひたすら『フリートークしまくる』っていうのもアリね」
「でも、ちょっと一方的すぎるし、
聞いてる人に『お題』を出してもらって、それについて喋るとか……。
『学習型AIに新しい情報をインプットする』とか、
『データベースを検索する』とか、そういう体裁で……」
「うん、固まってきた気がするわ」
引き続き『門倉不動産』で『プラン』を練っていた。
門倉が戻ってきたら、そのまま『プレゼン』出来るくらいの完成度を目指したい。
『門倉派』における『美作の価値』を上げるだけではなく
『アリーナ全体』における『門倉派の評価』を高める事にも繋がる。
「それと『名前』。
私が個人的に使っちゃってるから『カナリア』はダメ。
『新しい名前』を作らなくちゃ……」
ズズ…………
熱いコーヒーを啜りながら、『自分自身』について思いを巡らす。
「『プラン9・チャンネル7』は『電子機器』に関係する能力」
その瞬間、一筋の『閃き』が電流のように頭の中を駆け抜けた。
「『コンピューター』の計算は『二進法』。
『9』は『1001』で『7』は『111』」
「『1001-111(ナイン・セブン)』」
出来上がった『AIアイドルの名前』を口に出し、満足げな笑みを浮かべる。
「とりあえず、こんな所でしょうね」
155
:
美作くるみ『プラン9・チャンネル7』
:2023/12/15(金) 18:42:40
>>154
「私達が『勝つ』為には、やっぱり『大手に出来ない事』をしなくちゃ」
現在、『興行』のメインストリームは『闘技』だ。
血湧き肉躍るスタンド使い同士のぶつかり合い。
美作自身も一度『観戦』に出向いた事がある。
確かに見応えは十分すぎる程で、あれの為に大勢が詰め掛ける理由も理解した。
しかし、『美作くるみ』は、決して『物見遊山』に行った訳ではない。
「少なくとも『大手の欠点』は一つ見抜いたわ」
『門倉良次』と共に向かった『闘技場』は、
『舞台』と『客席』が『金網』で仕切られていた。
明確な『攻撃』が飛び交う戦いの場において、当然の『安全対策』と言える。
裏を返せば、そこが『闘技の限界』なのだ。
・・・ ・ ・・・・・
「――――彼らは『壁』を外せない」
『闘技』を主流に据えている派閥は、
『選手』と『観客』の間に『越えられない壁』を設けている。
そして、『闘技』の『観客』は『外野』に過ぎず、
結局の所は『観ているだけ』。
せいぜい『声援』や『野次』を送るくらいが関の山。
『観客』が何かしたとしても、それは『舞台』に何の影響も及ぼさない。
それこそが『闘技の弱み』であり、
『門倉派』が押さえなければならない『要点』なのだ。
「『観客』を単なる『見物人』ではなく『演者』として扱い、
『客席』すらも『舞台の一部』に取り込んでしまう。
『一体感』、『ライブ感』…………重要なのは『それ』よ」
『パフォーマンス』を主軸とした『興行』であれば、
『観客』と『出演者』の『距離』を、
限りなく『ゼロ』に近付けてしまう事も可能になる。
『危険』を売り物にする『闘技』には不可能な演出だ。
つまり、目指すべきは『観客が参加できる体験型のショー』。
「そうなると、ただの『トークショー』じゃあつまらないわね。
もっと『能動的』に『参加』できるような…………」
ソファーに身を沈め、目を閉じて考えを纏め始めた。
次々に浮かび上がるアイディアを、頭の中で取捨選択していく。
やがて、おぼろげな全体像が浮き彫りになる。
「フフ、早速いい『プラン』を思い付いたわ」
156
:
美作くるみ『プラン9・チャンネル7』
:2023/12/17(日) 22:28:15
>>155
つい先日、『山登り』に出掛けた事を思い出す。
その時に考えていたのは、
いかにして『プラン9・チャンネル7』の『全力』を引き出すか。
『プラン9』は『街中』でこそ最大限の威力を発揮するスタンドだ。
逆に、『山中』では『無力』に近くなる。
だからこそ、敢えて『文明』から離れた事で、『新しい利用法』を閃いた。
ススッ
ソファーに座りながら脚を組み、
スマホを操作して『H市のWebサイト』を表示させる。
「『学校』、『公園』、『公民館』…………」
『プラン9』の『能力対象』になり、
『町の至る所』に設置されていて、
なおかつ『高出力』の『音響機器』。
「――――『清月』にもありそうね」
すなわち『防災無線』の『屋外拡声器』。
星見町内にも『数十ヶ所』は設置されている筈だ。
その目的上、十分すぎる程の『出力』を備えている。
基本的に固定されているから、射程距離である『120m内』にありさえすればいい。
これらを『ファン』にしてしまう事で、
わざわざ『スピーカー』を用意する必要すらなくなる。
もはや『星見町全域』が『美作くるみのステージ』と呼んでも過言ではない。
無論、『正体』を知られる可能性は『皆無』。
「そう、私は『もっとやれる』」
フフッ
「素敵じゃない。『エネルギー』が湧いてくるわ」
『プラン9・チャンネル7』は『情報収集』に長けた能力だと思っていた。
しかし、それ以上に『情報発信』に特化した能力だったのかもしれない。
『情報を集めるだけ』でなく、
それを『効率的』かつ『広範囲』に『拡散』できる。
こういった方法は、まず人の目に触れなければ無意味だが、
『防災無線から聞こえる声』を聞き逃す可能性は有り得ない。
『情報』は『瞬時』に『周囲の全員』に『伝播』していく。
つまり、『不特定多数に対する情報伝達』の『確実性』が、
他の手段に比べて『桁違いに高い』という事だ。
これは『カナリア』としての活動にも活かせるだろう。
「これを機に『インフルエンサー』でも始めようかしら」
例えば、『広告主』から依頼を受けて、
『星見町全体』に『情報』を『発信』するのはどうだろう。
『スタンド音声』を使う事で、『スタンド使いだけ』に行き渡る。
自分の『才能』ながら、『プラン9・チャンネル7』の可能性を実感した。
157
:
コヤシキコヤネ『サイレント・ライト』
:2024/01/15(月) 00:37:02
「…………」
じぃい ぃぃ 〜
少女の大きな目が、ガラス越しに覗いていた。
建物の中を見ているのではなく、
『物件の張り紙』を見ているのだが、
その区別が必要をなさないぐらいには、
彼女の目は大きく、都市と人の営む光を反射し、
あるいは広い広い空の、日や月の光を淡く捕まえ、
いつも…………どんな時だって輝いている。
目映い目だけが目立つ見た目でもない。
『狐の耳』のような形で、蛍光色を灯すヘッドホンに、
柔らかい髪質なのか、微風に揺れる短いツインテール。
不動産の中に人がいれば気づくかもしれないし、
外を歩いている人間からしても、よく目立つ。
158
:
美作くるみ『プラン9・チャンネル7』
:2024/01/15(月) 01:06:44
>>157
バァァァァァァァァァ――――――――――ッ
キキィッ
軽快なエンジン音と共に、『カナリアイエローのベスパ』が、
『門倉不動産』近くの駐輪場に停車する。
「…………ん?」
シートから降りたのは、『アメカジファッション』の女だった。
そして、メイクもバッチリ。
メンズライクな服装が、素材の華やかさを引き立たせている。
(門倉さんは不在だけど、
もしかしたら『お客さん』かもしれないし、
とりあえず声だけ掛けておきましょうか)
スタ スタ スタ
車体からキーを抜き取ると、少女に近付いていく。
「あの、『門倉不動産』に御用の方でしょうか?」
159
:
コヤシキコヤネ『サイレント・ライト』
:2024/01/15(月) 01:28:38
>>158
パッ
ガラスから顔を離すと、目が閉じる寸前まで細まる。
人を見るために大きな目はいらない。
「わおわお〜オシャレなお姉さん!
カワイイバイクでご登場! どーも、こんこん〜」
ひらひらと両手を振って、『美作』に近づく。
「そ〜そ〜! そうだったんだ〜。
は〜い、質問。おねーさんは『門倉さん』?
それとも、通りすがりの親切でかわい〜お姉さん?」
振っていた手はリアクションを待たず、
背中の後ろに組んで、上目遣いに迫る。
「その服とってもか〜わい〜。アメカジだよね。
あたしもサロペットとかは夏によく着るけど、
そーゆーふーに着こなせるのは素材の良さだよ〜」
人と人の間にある遠慮の壁を知らないのか、
知って飛び越えることを躊躇わないのかは分からない。
160
:
美作くるみ『プラン9・チャンネル7』
:2024/01/15(月) 01:50:08
>>159
「あはは、どうもありがとう。
私だけじゃなくて『愛車』まで褒めてもらっちゃって」
ここに来る前に寄った『臨海地域』で、
少々『機嫌を損ねる出来事』があったせいもあり、
親しみやすい少女の言動には好感が持てた。
「この店は『門倉さん』が一人で運営していて、今は『留守』にしてるの。
私は『美作』っていうんだけど、『門倉さんの知り合い』よ」
チャリッ
『電気カナリア』のキーホルダーが付いた鍵を、ジーンズのポケットに入れる。
「ええと――立ち話も何だから、中で話しましょうか?
たまに手伝いに来る事があるから、『合鍵』をもらってるのよ。
『物件の紹介』は出来ないけど、『希望を聞く』くらいは出来るから」
そう言いながら、『門倉不動産』の入口に歩いていく。
当然のように施錠されているが、美作は『門倉派』のメンバーだ。
『門倉がいなくても入る手段』を持っている。
「それを私から門倉さんに伝えておけば、
次に来た時にはスムーズに案内できると思うわ」
161
:
コヤシキコヤネ『サイレント・ライト』
:2024/01/15(月) 02:44:25
>>160
「カワイイものはカワイイんだから〜。
言わずに口の中に置いといても美味しくないもんね」
ニコッ
「わおわお〜。キーホルダーもか〜わいいっ」
スタスタスタ
「あたし『コヤシキ コヤネ』 こんこん〜。
『コヤコヤ』ってカワイく呼んでくれる? お姉さん。
あ、お姉さんも名前で呼んで欲しかったら言って〜」
キツネのハンドサインを顔の前に作りながら、
一切の遠慮はせずに後ろをついていく。
「カワイイお姉さんにここまでしてもらったら〜、
また、門倉さんがいる時に来なきゃだよね!
それってちょっとカワイくないね〜。
でも、お姉さんがカワイイから、
うーん、まとめちゃえばプラマイプラかな」
施錠を開けるまでの間に、スマートフォンを取り出し、
持ちづらそうな狐型カバーのそれを片手で器用に操作する。
162
:
美作くるみ『プラン9・チャンネル7』
:2024/01/15(月) 03:28:58
>>161
「『コヤコヤ』さん――とっても可愛いお名前ね。
フフ、あなたのスタイルもステキよ。
『こだわり』を感じるコーディネートは、私も大好きなの」
――――カチャリ
「さ、どうぞ。私は『美作くるみ』。
良かったら『くるみ』って呼んで」
事前に受け取った合鍵を使い、入口の扉を開けて『門倉不動産』に入っていく。
まず目に入るのは、仕事用らしいデスクと書類棚だろう。
また、ローテーブルとソファーが置かれており、
そこが応接スペースになっているようだ。
「何か温かい飲み物を用意するから、そこに座って待っていて。
コーヒーでいいかしら?紅茶と日本茶もあるわよ」
コトッ
既に何度も訪れている為、大体の配置も把握している。
慣れた様子でカップを手に取り、飲み物の準備を始めた。
この分なら、すぐに出てきそうだ。
「『物件の希望』だけど、コヤコヤさんは『一人暮らし』?」
163
:
コヤシキコヤネ『サイレント・ライト』
:2024/01/15(月) 22:21:01
>>162
「カワイイのは名前じゃなくってあたし〜。
くるみさんはそこをちゃんと分かってくれてるね」
コトン
「あたし紅茶派、だ、こ〜ん。
ミルクと砂糖はなくっていいけど、
あるんだったらどっちも入れて。
ある中でいっちばんカワイイカップにね」
スマートフォンを机に置いて、
遠慮せずにソファに背を預け、
3本指できつねの顔を作って頷かせた。
勝手知ったるわけでもないが、
警戒をしなければならない理由もない。
「あ、お部屋? そうだね〜あたし一人だから。
この辺には知り合いも住んでないし〜
こんこんちきな生活も嫌いじゃないから、
ルームシェアとかも探したけど〜
カワイイおウチが見つかんなかったんだよね」
「だから、今はとりあえず、
『お一人様』で探してる感じ」
タッタッ
片手でスマホを操作しつつ、
顔だけ紅茶を準備する『美作』の方に向けた。
「くるみさんはさぁ、この『星見町』って住んで長いのかな〜?」
164
:
美作くるみ『プラン9・チャンネル7』
:2024/01/15(月) 23:05:26
>>163
「フフ、じゃあ『リクエスト』にお応えして紅茶にするわ。
ミルクと砂糖も忘れずに入れておくから」
あくまでも『不動産屋』なので、
『可愛い』と呼べる程のカップがあるかどうかは微妙だったが、
一応そこそこ洒落た物を選んでおいた。
「そうね……まぁ結構長い方じゃないかしら。
ここで紹介してもらった訳じゃないけど、私も一人暮らしなの。
『メゾネットタイプ』の『1LDK』よ」
コトリ
ミルクと砂糖を入れた紅茶のカップが、ローテーブルの上に置かれる。
「どうぞ、コヤコヤさん。
若い女性の一人暮らしだと、やっぱり防犯の行き届いた物件がいいわよね」
相応しい場所について考えながら、人差し指を口元に添える。
「あと『これだけは外せない!』みたいな条件があれば、
ぜひ聞いておきたいけど、そういうのは何かある?」
スマホは現代人の必需品なので、それ自体は気にならないし、
特に画面を覗こうという意識もなかったが、
スマホカバーまで統一する『こだわり』が印象に残り、無意識に視線が向いた。
165
:
コヤシキコヤネ『サイレント・ライト』
:2024/01/16(火) 02:18:03
>>164
「『防音室』」
「だ」「コン〜」
他の全ての話題に差し置いて、
コヤシキコヤネが答えたのは『それ』だった。
スマホには『配信サイト』のトップページが映る。
「レンタルよりは備え付けがいいんだあ。
性能とかは、別にレンタルでも良いけど。
手続きとかするのってカワイクないし〜
それにほら、防音室あるアパートとかだったら、
壁ドンとか、カワイクない事されなさそ〜でしょ?」
話を再開したためか『コヤコヤ』は画面を裏返し、
それ以上を確認は出来なかったけれど。
「わおわお〜、くるみさんっ流石ぁ!
分かるよ〜オートロックも欲しい〜。
世の中ってカワイイ人たちばっかりだけれど、
おウチにまでは、来てほしくないもんね」
スッ
そして渡したカップは受け取られ、
彼女はそれを口に近づける。
「このカップ。そんなにカワイクないけど、
一番カワイイのを選んでくれたんだよね。
気持ち分かるよ〜。ありがとね、くるみさん」
「あ、メゾネットってなんだっけ?
メゾンのネット……不動産サイト〜?」
166
:
美作くるみ『プラン9・チャンネル7』
:2024/01/16(火) 03:19:48
>>165
「『防音室』――――」
(なるほどね)
「こっちの音を聞かれるのも、隣の音が聞こえてくるのも、
いい気持ちはしないものねぇ。
人によってはトラブルの元にもなるし…………。
私も趣味で『楽曲制作』する事があるから、よく分かるわ」
『スマホの画面』と『希望条件』。
それらのキーワードを繋ぎ合わせ、一つの結論を導き出した。
おそらくは、いわゆる『配信者』の一人なのだろう。
「あははは……言ってなかったけど、門倉さんは『男性』だから、
ちょっと『可愛らしさに対する配慮』が足りないみたいね。
次に来る時には、もっと可愛いカップを出せるように伝えておくわ」
『あまり期待は出来ないでしょうけど』と、心の中で付け加える。
「『メゾネット』っていうのは間取りの種類の事よ。
一階部分と二階部分に分かれていて、階段で行き来できるようになってるの。
私の場合は二階を寝室として使ってるわ」
スッ
「ええと――――」
スマホを取り出して操作し、
『有名動画サイト』の『美作くるみのチャンネル』を表示させる。
チャンネル名は『電気カナリアの止まり木』。
『Electric Canary Garden』の公式チャンネルとは別に、
美作個人の『プライベート』な話題を扱うチャンネルだった。
タンッ
「――――『こんな感じ』よ」
その中から『ルームツアー動画』を再生すると、
『アーバンモダン』で統一された室内が映り込む。
ガラスのコーヒーテーブルに、
それを囲むように配置された一人掛けのソファーと、
ダクトレールに取り付けられたシーリングライト。
ガラスや金属を多く取り入れたインテリアは、
無機質で都会的な雰囲気を醸し出す。
部屋の一角には本格的な『シンセサイザー』が置かれている。
ベッドの近くには、丸みを帯びた『小鳥のぬいぐるみ』が飾られていた。
167
:
コヤシキコヤネ『サイレント・ライト』
:2024/01/17(水) 00:04:15
>>166
「くるみさんはよぉくあたしを分かってくれる〜。
外から選挙カーの声! 住所特定! 自宅凸!
な〜んてカワイくない事件もあるコンなご時世、
こっちで対策できることはしておくべきだよね。
大多数のカワイイ子たちの安心のために〜」
コヤシキコヤネの『正体』はおそらく、
それほど結論からズレた物ではないだろう。
少なくとも『配信に興味がない』事はないはずだ。
「え〜? 男の人だってカワイイ時はカワイイよ。
その門倉さんにもきっと、
すっごくカワイイとこはあるんだろうし?
こだわらない所もあるって気持ちはわかるから〜」
「え〜見せて見せて」
ぱちっ
無遠慮に身を乗り出してスマホを覗き込むと、
コヤネの細めていた目が大きく見開かれる。
少しでも多くのものを捉えるために。
「わ〜お、とってもオシャレだね〜。
『ロフトつき』の仲間みたいなものかな。
住みたいおウチっていうよりは、
遊びに行きたいおウチって感じ?
あ! おっきい『ぬいぐるみ』カ〜〜ワイイっ
これがくるみさんちでしょ? 良いとこ住んでる〜う」
「今度遊びに行かせて〜」
『美作くるみ』の名前は動画内には出ないとしても、
この流れで紹介されれば類推は可能なことだ。
家具のセンスや内容に、話との符合も多い。
「ていうかねえっ、もしかしてだけど、
くるみさん、『これ』でご飯食べてるヒト?」
カチャ
ヘッドホンについた小さな『マイク』を指で示す。
「動画作りが『素人さん』のカワイさじゃないもん〜。
それともシュミっていうのは謙遜ってやつで、ミュージシャンさんとか?」
168
:
美作くるみ『プラン9・チャンネル7』
:2024/01/17(水) 21:07:39
>>167
門倉には『門倉の良さ』がある事は知っている。
『可愛い所』もあるとは思う。
ただ、多くの人が想像するような『可愛らしさ』を彼に求めるのは、
やはり酷な気がするのは否めなかった。
「そう、私が住んでるマンションよ。
基本的に『ロフト』は『物置』で、
『メゾネット』は『居室』っていう違いがあるの。
でも、イメージとしては近い感じだと思ってくれていいわ」
「フフ――コヤコヤさんも、いつか遊びに来てくれる?」
画面をタップして、動画再生を止める。
「曲作りに関しては、本当に趣味の範囲でやってるだけ。
このチャンネルも、半分くらいは同じようなものだから」
「こんな風に、ね」
そして、今度は『最新の動画』を再生する。
『電気カナリアはアンドロイドの夢を見るか?』というタイトルで投稿されていた。
一人掛けソファーに座る美作が、完璧なスマイルと共に画面の中で喋り出す。
「こんにちはぁ〜、『美作くるみ』です!
『AI』の進歩って最近スゴいですよねぇ。
もっともっと『人間に近い人工知能』とか、
これから登場するんじゃないでしょうか?
進化しすぎて『反乱』を起こしたりされないか心配です」
「夏の時期に『冷凍庫』が『一斉ストライキ』したらなんて考えると、
怖くて眠れなくなりますね…………。
あははっ、ちょっとした『ホラー要素』を入れてみました。
『起きたら全部溶けてる』なんて心臓に悪いですもんね。
ただの『故障』かもしれませんけど!」
「でも、『ユーザーインターフェース』は更に進むと思うんですよ。
より『親しみやすく』というか。
皆さんは、どんな『AI』とお喋りしてみたいですか?
是非『コメント』で教えて下さいね!」
「『次の動画』では、いただいたご意見を元に、
私くるみが『理想のAI』になりきっちゃいます!
題して『電気カナリアはアンドロイドの夢を見るか?』!
『喋り』を専門にする人間として、『人工知能』に負けないように、
私も進化し続けないといけないですからね。
皆さんからの『コメント』お待ちしてまぁ〜す!」
そこで動画は終わる。
どうやら視聴者から『理想のAI案』を募り、
それに美作がなりきる『チャレンジ企画』らしかった。
動画の中で本人が発した言葉から、
何かしら『喋りを専門にする職業』である事は察しがつくだろう。
「『マイク』は欠かせない『商売道具』だけど、
私の仕事はミュージシャンじゃないの。
でも、『リクエスト』があれば音楽も掛けるわね」
169
:
コヤシキコヤネ『サイレント・ライト』
:2024/01/18(木) 22:18:32
>>168
「わおわお〜行く行く〜。嬉しいなあ。
こっちにまだ遊びに行けるお家も、
遊んでくれる子もあんまりいないから。
コンなコヤコヤをよろしくね〜」
そう言いながら、コヤシキコヤネが画面を覗き込む。
「くるみさんって。かわいいよね〜。
お仕事は、カワイイカワイイ『声優』さ〜ん?」
そうして、そうだけ言うと顔を上げてしまった。
配信内容には触れていないけれど、
どうやらそれが、配信に対する感想のようだった。
「ま〜声優でもアイドルでもなんでもいっか。
やっぱり気持ちはわかるし〜。
なによりくるみさんは、とってもか〜わいいっ。
あ、それでだけどさあ。おウチのことなんだけど。
防音ありのメゾネットのお部屋とかあるかなあ?」
紅茶を少しだけ口に入れて瞼が緩んだのか
画面を見ていた目が、また閉じる寸前まで細まった。
「予算とかは門倉さんと話すと思うから〜
今はぜんぜん気にしなくてオッケ〜だこ〜ん」
170
:
美作くるみ『プラン9・チャンネル7』
:2024/01/18(木) 23:10:26
>>169
「そう、『声のお仕事』よ。
声優じゃないけど、ゆくゆくは『ナレーター』とか、
そういう方面の仕事も出来るようになりたいわね。
もちろんチャンスがあれば――だけど」
スイッ
テーブルの上に名刺を置いて、それを指先で押し出す。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
星 見 F M 放 送
* * *
Electric Canary Garden
* * *
パーソナリティー:美作くるみ
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「私は『パーソナリティー』で、要するにラジオの進行役ね。
お知らせとか近況報告なんかの為に、チャンネルを作ってるの。
もう一つあって、そっちは番組公式チャンネルよ」
自分自身の簡単な補足をしてから、提示された条件を頭の中で整理する。
「それだと、私の住んでるマンションは、
コヤコヤさんの希望に近いかもしれないわ。
私も『楽器』を使うから、防音は結構しっかりしてる所を選んだの。
オートロックも付いてるし、ちょうど空き室もあったような……」
「門倉さんなら、きっと相応しい物件を紹介してくれるとは思うけど、
もし見つからなかったら、『私のオススメ』も候補に入れておいてもいいかもね」
171
:
コヤシキコヤネ『サイレント・ライト』
:2024/01/22(月) 12:42:37
>>170
「くるみさんはカワイイねっ。
ラジオ離れはよく聞くけど〜、パーソナリティぐらい知ってるこ〜ん。
ふーん、『星見FM放送』かあ〜」
スッ
名刺を手で取り、目の前にひらひらかざす仕草。
「『星見町』〜? だけじゃなくて、『H市』?
名前は『星見FM』って言ってもさ〜、
コンな小さい町一つのラジオじゃないよね。
『S県』の人なら聴いてる可能性あるのかなあ。
人口は『70万人』? だっけ?ウィキペで見た」
「『パーソナリティ』になったら、
それだけ声を聴いてもらうチャンスがあるんだねえ」
もちろんそれで何かが透けて見えたりはしないのだろうけど。
「わおわお〜、くるみさん、あたしのご近所さんになれるなんて果報だね〜
気持ち、分かるよ〜?あたしもくるみさんのご近所さんになったら嬉しいもんね」
コヤシキコヤネは冗談めかした口調でそう言うと、
少し冷めたからか、紅茶の残りを一気に飲み干した。
「門倉さんが家賃タダのお部屋でも紹介してくれなかったら〜、そこにしちゃおっかな」
172
:
美作くるみ『プラン9・チャンネル7』
:2024/01/22(月) 20:39:05
>>171
「あははは……まぁ、難しい問題ね。
だけど、今はスマホアプリでも聴けるから、
そこから入ってくれるリスナーもいるの。
音声だけで伝える前提のメディアっていう事で、
『ながら聴き』にも最適だし――」
「名前が『星見FM』なのは、放送局が『ココ』にあるからよ。
中継局の電波は高出力って程じゃないけど、
送信アンテナの高度が高くて『良く飛ぶ』から、
『S県内』なら問題なく受信できるし、
『お隣の県の一部地域』でも聴けるみたい」
「潜在的なリスナーは多い筈だから、あとは『実力次第』って所かしら。
実際は他にも色々ある訳だけど、
私としては『どれだけ惹きつけられるか』が一番の勝負だから」
それは『パーソナリティー』としても、『スタンド使い』としても、そうだ。
「フフ、ご近所なら遊びにも行きやすいわね。
とりあえず物件の名前を教えておくわ。
『Luna-Polis』っていう10階建てのマンションよ。
さっきも話したけどオートロックで防音もあるし、
私から紹介すれば話も通りやすいんじゃないかしら」
クスッ
「希望を聞くだけのつもりだったのに、
なんだか本当に『不動産屋』になっちゃったわね」
思わず苦笑するが、予約して訪れた来客でもなく、
門倉の代わりに応対した訳だから、文句を言われる理由もない。
173
:
コヤシキコヤネ『サイレント・ライト』
:2024/01/23(火) 10:56:45
>>172
「ふんふん〜、そういう事なんだねえ。
星見FMの事を知ったコヤコヤなのでした〜」
真面目に聞いていない、というわけでもなさそうで。
話が終わってから名刺を一旦テーブルに置いた。
「今どきクリエイターも広報しないとだもんね〜?
配信でくるみさんファンを増やして、
そこ経由でラジオにも来てもらって〜?
お仕事に燃えてるくるみさんはかーわいいっ」
リスナーの中にいる『潜在的なファン』と違い、
非視聴層の中にいる『潜在的なリスナー』の獲得に、
演者である美作は強い責任を求められない筈だ。
(広報や、戦略・企画担当の責任といえる)
その辺りは星見FMの組織構造にもよるにせよ……
仕事熱心という評は大ハズレではあるまい。
Luna police
「『月の警察』?
わお〜確かにセキュリティばっちりそうだねえ」
トン
カップを音を立てて置いたのは、
お行儀の悪さというよりは、
それを、話を切る合図とするためだろう。
「今日はありがとうくるみさん〜。
本格的な話は門倉さんとすると思うけど、
おかげさまで住みたい部屋のイメージついてきた〜こんっ」
174
:
美作くるみ『プラン9・チャンネル7』
:2024/01/23(火) 17:26:50
>>173
美作が仕事に熱意を持っているという評価は正しかった。
何故なら『天職』だと思っているからだ。
昔のように『聴かせるだけ』ではなく、
もっと昔のように『聴くだけ』でもない。
『今の自分』だからこそ、その『両方』を同時にこなせる。
そうした環境で自らのスキルを高め、
また高めたスキルによって番組の質を向上させ、
より良い時間をリスナーに提供したい。
「私はね、この仕事が大好きなの。
そうそう、駅構内のマガジンラックに、
『星見FM』の『フリーペーパー』が置いてある筈だから、
もし駅に寄る事があったら一度見てみて」
ラジオ局が定期的に発行している広報用の印刷物が、駅構内において配布されている。
(ttps://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/comic/7023/1453647631/838)
番組や出演者の情報などが掲載され、人目につきやすい場所に置かれている物だ。
表紙に載るのはパーソナリティーである事が多く、
『今回の表紙』は以前と同じく『美作くるみ』が飾っていた。
「あ、『ポリス』は英語じゃなくてギリシャ語の方よ。
『都市』っていう意味だから『月の都』って感じね」
スッ
音につられて、テーブルに置かれたカップを一瞥し、ソファーから立ち上がる。
「コヤコヤさんの希望は、ちゃんと門倉さんに伝えておくわね。
『戸締まり』もしておくから、後の事は任せておいて」
ガチャ
相手の様子から『話の終わり』を察し、先に立って入口を開けた。
「今日はお話できて楽しかったわ。
また今度一緒にお喋りしましょうね」
そして、一分の隙もない『完璧なスマイル』でコヤコヤを送り出す。
175
:
コヤシキコヤネ『サイレント・ライト』
:2024/01/23(火) 20:07:24
>>174
「ああ、『ジョイポリス』のポリス! かわい〜ねえ。
そこに住んでるくるみさんは天女さまってところ?」
などと言いながら、立ち上がった。
「今度はもっと素敵なとこでお喋りしよう、くるみさん。
夜景見えるレストランとか〜、それとも、くるみさんのラジオでとか?
あ! 駅には後で荷物取りに行くから、その時にチラシも取ってくねえ」
クイッ クイッ
そして狐の形にした両手に頭を下げさせて。
「門倉さんにもコヤコヤをヨロシク〜、だこんっ。じゃあねぇ〜」
送り出されるのに従って、そのまま歩き去っていった。
176
:
美作くるみ『プラン9・チャンネル7』
:2024/01/23(火) 21:03:47
>>175
「――――――『See you again』!」
一人になってからカップを片付け、門倉のデスクに『メモ』を残した。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
『お客様』がご来店されていたので、私が代わりに応対しておきました。
若い女性の一人暮らしで、名前は『コヤシキコヤネ』さん。
『防音』の整った『オートロック』で『メゾネット』のお部屋をご希望です。
私が住んでいるマンションと条件が近いので、
『私からの紹介』という形で、そちらに入居してもらう事も可能です。
その場合、『門倉不動産』の直接的な利益にはなりませんが、
もし『紹介料』を頂いた時は、全額を『門倉派』に投資させて下さい。
美 作
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「――――これで良し。
それから『可愛いカップ』と…………。
『次の来店までに用意されてる』と思うのは、
やっぱり期待が過ぎるでしょうし、私の方で用意しておくのが確実かしら」
その後、『門倉不動産』の『給湯室』に『マグカップ』が一つ増えていた。
ポップなフォントの『Electric Canary Garden』のロゴと、
番組のイメージキャラクターである『電気カナリア』が描かれたオリジナルグッズ。
デフォルメされた小鳥に電気コードの付いたデザインは、美作自身の手によるものだ。
『来客の希望』を満たしつつ、訪れる人に『宣伝』も出来る。
これくらいの『ちょっとした役得』は許されてもいいだろう。
ガチャリ
『部外者』が立ち入らないように『施錠』を行い、
しっかりと確認してから『門倉不動産』を後にした。
177
:
美作くるみ『プラン9・チャンネル7』
:2024/01/31(水) 04:52:57
『合鍵』を使って『門倉不動産』に入り、ソファーに腰を下ろす。
「こういうのがあると、『派閥間』の『ご挨拶』の時に便利でしょうし」
眺めているのは一枚の『名刺』だった。
『パーソナリティーとしての』ではなく、『アリーナ構成員としての名刺』だ。
まだ門倉には話していないが、『仮デザイン』を考えてきた。
「門倉さんにも見てもらいたいから、『サンプル』を置いておきましょうか」
スッ
門倉のデスクに名刺を置く。
インパクトのあるデザインにする案も考えたが、ひとまず無難な形に落ち着いた。
余白を十分に確保したシンプルな名刺だ。
『門倉派:広報担当・美作くるみ』と綴られ、連絡先が併記されている。
一般的に『広報』は非常に重要な役職だが、
それを堂々と名乗れるのは、自分に『自信』を持っているからに他ならない。
「『天女様』って程じゃあないけれど、私の場合は『天の声』って所かしら」
この『星見町』だけでも結構な数の『スタンド使い』がいる筈だ。
並み居る敵を単騎で制圧する武力があれば、
千里眼の如く全てを見通す全知全能もいるだろうし、
あるいは運命にも干渉しうる力なんていうのが存在してもおかしくない。
『プラン9・チャンネル7』は、そのいずれも持たない。
完全な『非戦闘員』であり、『情報収集』は対象が限られ、
基本的には『喋るだけ』の能力。
『喋るだけのスタンド』。
そう――――こうして椅子に座ったまま、指一本動かす事なく、
ただ口を開くだけで『世界に影響を与えられる能力』。
現代で物を言うのは『情報発信力』だ。
もし避けられない敵が現れたとしても、美作は決して対峙しないが、
それは戦わない事を意味しない。
何故なら、面と向かった殴り合いなどする必要もなく、本体を秘匿しつつ、
『社会で生きづらくさせる』という事が出来てしまうのだから。
『プラン9』には『文明社会を操作できる力』がある。
そうしないのは美作くるみが『モラリスト』であり、また差し迫った理由がないからだ。
「使わなければ宝の持ち腐れ。
でも、そんな機会なんて巡ってこないのが一番よね」
チャリッ
手の中で『合鍵』を弄びながら、ソファーから立ち上がる。
「長い眠りから目覚めた『1001-111』は、ただいま絶賛『起動中』。
なにせ眠っている間に貯まった膨大な『データ』を処理しなきゃいけないんだから」
「でも、ぼちぼち『起動完了』させて――――」
ヒョイッ
「本格的な『プロローグ』に入りたいわねぇ」
――――――パシッ
投げ上げた鍵を片手でキャッチし、『門倉不動産』を後にする。
178
:
美作くるみ『プラン9・チャンネル7』
:2024/02/03(土) 05:35:13
ソファーに深く腰を下ろし、目を閉じて思考の海に身を沈める。
最近、考え事をする時は『ここ』に来る事が多い。
目下の検討事項は『駅前での失敗』。
落ち込んでいないといえば嘘になる。
はっきり言って『物凄く落ち込んでいた』。
だが、『後悔』は時間の浪費にしかならない。
必要なのは『反省』だ。
「まず『人が多すぎる場所』は避ける。
それから『音量』は『囁き声』程度に留める。
『絶対に苦情が言えない状況』を作ればいい」
頭の中を整理すると、気持ちの整理もつけられる。
苦い経験も『芸の肥やし』になると思えば、
『マイナス』どころか『プラス』なのだ。
それは『アイドル時代』から変わらない。
『収穫』があったのだから、落ち込んでいる理由なんてない。
どんな困難も『笑顔』で乗り切ってみせる。
「――――――よし!『反省会』終わり!」
ス ク ッ
自分を鼓舞するように立ち上がり、扉に向かって歩き出す。
「一度や二度の失敗じゃあ、私は立ち止まらないわよ」
これくらいでは『折れない』。
門倉の為にも、自分自身の為にも。
これまで培ってきた『全て』を、簡単には否定させない。
だからこそ『次』に挑む。
美作くるみは決して歩みを止めない。
179
:
美作くるみ『プラン9・チャンネル7』
:2024/03/11(月) 21:15:12
「これで『二つ』――――この調子で、すぐに『六人分』揃えてみせるわ」
「フ…………『魔法使い』を口車に乗せ、『解錠の呪文』まで会得しているとは、
それでこそオレの『メフィストフェレス』だ」
再び合流した美作とキリシマは、一旦『門倉不動産』に戻っていた。
門倉は不在だったので『合鍵』を使って入ったのだ。
ここ最近、考え事をする時に使っていたので、何となく落ち着く。
「あの二人の『使い魔』も、なかなかに『決まっていた』な……!
『朝山佐生』と同じような形をしていたが、
ああいうのが『トレンド』と言うのだろうか?」
「まぁ、そうね。
『コヤコヤさん』みたいなタイプは、どちらかというと珍しい方よ」
ズ ギ ュ ン ッ
「ちなみに私のは『これ』。
ちょっと『コヤコヤさんの』と似てるけど、
多分『中身』は全然違うんじゃないかしら」
『プラン9・チャンネル7』を見せつつ、手元ではスマホを操作する。
「そうこうしている内に『三人目』からの返事が来たみたいね。
ここに来てもらうから、キリシマ君は適当な場所で見ていてくれたらいいわ」
「フ……これでも『お茶くみ』の腕前には自信がある。
しかし、オレの出番は『最終決戦』。
『サポーター』の指示には素直に従おう」
180
:
美作くるみ『プラン9・チャンネル7』
:2024/03/11(月) 21:18:15
>高宮
半ば指定席となったソファーに一人で座り、『高宮一三』を待っていた。
順当に進めば、彼女で『三人目』。
元々『アイドル』としてスカウトした人材なので、説明の手間が省けるのは助かる。
181
:
高宮『リプレイサブル・パーツ』
:2024/03/12(火) 00:15:21
>>180
「こ、こんにちは」
やや緊張した様子で入ってくる。
「……高宮です」
182
:
美作くるみ『プラン9・チャンネル7』
:2024/03/12(火) 01:15:01
>>181
「――――こんにちは。お久し振りね」
ニコッ
ソファーから立ち上がり、笑顔で出迎える。
『オールブラック』の『モードストリート』を纏った美作は、
以前と比べると引き締まった印象だ。
もちろん『魔法使い試験』の事までは語らないが、
どことなく気合が入っているように感じられるかもしれない。
「今日は来てくれてありがとう。
ええと、そこに座ってくれる?
いくつか聞いておきたい事があるから」
ソファーを指し示して着席を促し、自分も再び腰を下ろす。
「なかなか連絡できなくてゴメンなさい。
あれから時間が経ってしまったから、
まずは高宮さんの意思を確認しておきたいの」
「まだ『アイドル』をやる気があるかどうか。
というより…………まだ力を貸してくれる気があるかどうか」
「私としては是非お願いしたい所なんだけど、
高宮さんの今の気持ちはどうかしら?」
183
:
高宮『リプレイサブル・パーツ』
:2024/03/12(火) 02:40:18
>>182
促されるままに席に着く。
ハの字の眉毛に目の下にクマ。
背筋も少しまるまった人物。
「……それは、はい」
「ぼくは……アイドルですから」
「決めた以上はやり遂げます」
184
:
美作くるみ『プラン9・チャンネル7』
:2024/03/12(火) 12:54:06
>>183
【対応してくださる方々へ】
ttps://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/comic/7023/1655987686/319
「そう言ってくれると思っていたわ」
ニコリ
「高宮一三さん、改めてよろしくね」
本人にやる気がなければ、ここには来なかっただろう。
それに、初めて出会った時に感じた熱意は確かなものだった。
だからこそ、美作も高宮に声を掛けたのだ。
「じゃあ、『本題』に入りましょう。
とりあえず、高宮さんの『スタンドの名前』を教えてもらえる?
出演してもらう側として、あなたの事を色々と知っておきたいから」
『魔法使い試験』の情報収集を始める。
高宮は『アイドル候補』でもあるから、『門倉派』にとっても必要な質問だ。
まさしく一石二鳥。
「それと、ステージに立った時の『決め台詞』や、
『キャッチフレーズ』みたいなものはあるかしら?
こんな事を言ってみたいとか――」
「あとは……何か『大事にしている物』はある?
私が聞きたいのは『形のある物』ね。
例えば、私の場合は『これ』よ」
フライトジャケットのポケットから、
『Electric Canary Garden』のキーホルダーが付いた鍵を出して見せる。
『バイクのキー』だ。
いつもなら『ベスパ』のキーなのだが、今は修理中なので、
代車の『ホーネット』のキーだった。
185
:
高宮『リプレイサブル・パーツ』
:2024/03/12(火) 18:15:06
>>184
「……『リプレイサブル・パーツ』」
スタンドの名前を伏し目がちに告げる。
「決め台詞……キャッチフレーズ……」
これでも一応、地下アイドルだ。
そういうものがないでもない。
ただ、本人が気に入ってるかどうかは別として。
(なんか……別の言葉にしたいけど)
即座に出る訳もなく。
「『黒色流星群』……です。ぼくのキャッチコピーは……」
それから、大事にしているもの。
「あ、あー……」
「これ……ですかね……?」
マイマイクだ。
何となく買ったものだが、自分の声やマイクの握り方に合うものを選んでいる。
186
:
美作くるみ『プラン9・チャンネル7』
:2024/03/12(火) 19:24:07
>>185
邪魔にならない程度に相槌を挟みながら、高宮の答えに耳を傾ける。
これで『三つの材料』が集まった。
残りは『スタンド』を使った『実演』のみ。
「どうもありがとう。とても参考になったわ」
「『黒色流星群』――ミステリアスで素敵な響きじゃない」
きっと高宮自身にも色々な思いがあるのだろうが、
期せずして『悪魔を召喚する魔法使い』にも適したフレーズが得られた。
「『アイドル』にとって『マイク』は『身体の一部』に近いものね」
マイマイクを見つめながら、無意識に目を細める。
「さて……と、それじゃあ『パフォーマンス』を見せてもらおうかしら。
でも、ここだと狭いから、すぐ近くの駐車場を借りましょう。
そんなに車も停まってない筈よ」
ソファーから立ち上がり、先に立って入口を出る。
高宮の退出を確認したら扉を施錠し、最寄りの駐車場に向かう。
目と鼻の先なので、到着まで一分も掛からない。
187
:
高宮『リプレイサブル・パーツ』
:2024/03/12(火) 20:29:39
>>186
「ミステリアス……ですかね……」
曖昧に頷く。
自分ではよく分からないものだ。
言葉のイメージとして、黒い流れ星に何となく縁起の悪いものを覚えたからかもしれない。
「さ、流石にライブでひとりだけマイマイクだと目立ちますけど……」
とはいえ、カラオケだけで使うのももったいないものだ。
「駐車場……分かりました……」
とことことついていく。
『リプレイサブル・パーツ』
自分の持つ能力。
異質な能力、だから異能。
普通とは言い難いものを持っていた。
188
:
美作くるみ『プラン9・チャンネル7』
:2024/03/12(火) 21:01:08
>>187
門倉も承知しているだろうが、この辺りは一等地とは言えない場所だ。
駐車場が空いているのも、それが影響しているのかもしれない。
今は一台の『スポーツバイク』が停まっているだけ。
4気筒エンジンを積んだ250cc。
『愛車』が戻って来るまでの間、これが美作の足代わりを務めていた。
「――――好きなタイミングで始めてくれていいわよ」
バイクの傍らに立ち、高宮に『実演』を促す。
『リプレイサブル・パーツ』は目にした覚えがあった。
確か『鎖鎌』のようなヴィジョンだった筈だ。
それを使って、どんなパフォーマンスを見せてくれるのだろう。
『魔法使い試験』を抜きにしても、現役の『地下アイドル』である彼女には、
『門倉派』の『アイドル候補』として大きな期待を掛けている。
189
:
高宮『リプレイサブル・パーツ』
:2024/03/12(火) 22:25:55
>>188
『リプレイサブル・パーツ』を手にした時から、高宮はこれを普通だと思ったことは無い。
一般人とはいえなくなってしまったし、鎖鎌などというものをみんなが使っているとも思えない。
だが、それで良かった。
アイドルは宗教――――それは高宮の座右の銘であり、確信。
芸能の道を行くものなど、真っ当ではいられない。
「ら、らら……」
モバイルスピーカーから音楽が流れ、音に合わせて踊り始める。
高宮が用意したのはデッサン人形だ。
予め用意したミニチュアのステージの上に立つ人形。
それに目掛けて、鎖が振るわれる。
固定された
『奪いたい』
歌詞に合わせるように能力が発動する。
分銅は切り離され、デッサン人形へと付着。
1mにつき1kg。
ミニチュアのステージが重みで崩れていく。
それだけ丈夫なステージを作るのも少し大変だったが。
『どこにいるの』
ステージが壊れる、デッサン人形が地面へ落ちる。
普段アイドルとして振舞っている時の気取った人格では無い、高宮一三本人の仄暗い人格。
星の光すら与えない夜闇のような精神。
『逃げられない』
その言葉で歌詞は終わり、人形を手にする高宮でパフォーマンスは終わる。
「えと……きゅ、急場だったのでこのくらいしか出来ないですけど……」
190
:
美作くるみ『プラン9・チャンネル7』
:2024/03/12(火) 23:37:31
>>189
『スタンド使いのアイドル』を発掘するべく、今まで数人に誘いを掛けてきた。
しかし、実際に『能力を活かしたパフォーマンス』を見たのは、これが初めてだ。
いつになく真剣な眼差しで、仮初めの舞台で舞う高宮一三を見つめる。
パチパチパチパチパチパチパチパチパチパチ
最後まで見届けた後で、惜しみない拍手を送る。
「率直に言わせてもらうと、凄く良かったわ。
小道具から歌や踊りに至るまで、あなた自身の『世界観』が強く感じられた。
その中に落とし込まれた『スタンド能力』が、食い違う事なく調和してる」
「私は『スタンドは武器になるだけじゃない』と思ってるの。
この町には『スタンド戦闘』を売りにしている『興行主』もいるけど、
見る人を楽しませたり魅了できるのは『戦いだけ』じゃない」
「あなたのパフォーマンスを見ていて、
『それが出来る』と改めて信じられた気分よ」
そして、同時に『魔法使い試験』の材料も揃えられた。
これで『三人目』。
目標は『六人分』なので、ちょうど『半分』だ。
「高宮さんの事は私から門倉さんに推薦しておくから、
この調子で『本番』もお願いね」
スッ
そう言って、『握手』の為に片手を差し出す。
191
:
高宮『リプレイサブル・パーツ』
:2024/03/13(水) 00:00:22
>>190
「あ。ありがとうございます……」
(あっぶな……鎖の長さミスりかけた……)
パフォーマンスとは往々にしてミスを悟られないことを祈るものだ。
「は、はい!」
そう言って握手を交わす。
192
:
美作くるみ『プラン9・チャンネル7』
:2024/03/13(水) 00:30:00
>>191
笑顔で握手を交わし、『ショー』の実現に思いを馳せる。
『リプレイサブル・パーツ』を熟知している訳ではないので、
高宮がミスしかけていた事には気付かなかった。
少なくとも、観客に悟らせないくらい自然だったのは確かだ。
「よろしくね、高宮さん」
当面の目的は果たした。
『魔法使い試験』の情報収集に加えて、
『アイドルショー』の企画も進められたのだから上々の成果だ。
折を見て『門倉代表』にも一報を入れておかなければ。
「これで今日の『面談』は終了よ。
お疲れ様。気を付けて帰ってね」
先程の真剣さとは打って変わって、美作の表情は穏やかだった。
しかし、心の奥には『情熱』が宿っている。
いずれにせよ、高宮の方から何もなければ、今は彼女を見送るだろう。
193
:
高宮『リプレイサブル・パーツ』
:2024/03/13(水) 00:31:33
>>192
「お疲れ様でした……!」
何とか一段落だ。
高宮は帰っていく。
昨日よりも少しだけ、成長したような気がする。
194
:
美作くるみ『プラン9・チャンネル7』
:2024/03/18(月) 23:02:04
今や座り慣れたソファーに腰を下ろして二人を待っていた。
『薄島漣』と『猫柳林檎』。
薄島は『アリーナに関する話』という名目で、
林檎は『アイドルショーの面談』という理由で呼んだのだ。
「…………そろそろ来る頃かしら」
スッ
スマホの時計を見て、おもむろに立ち上がる。
今の装いは『オールブラック』の『モードストリート』。
普段着の『アメカジ』とは一味違い、見る者に対して、
艶っぽく引き締まった印象を与えるだろう。
195
:
猫柳 柚子『カーマ・カメレオン』
:2024/03/18(月) 23:16:52
>>194
『コン、コン』
ドアに対してノックを2回。中にいるはずの、くるみさんに向けて声をかける。
「こんにちは。くるみさん、いらっしゃるかしら?」
中に入る前に、まずは様子見。多分、面接の時とかこーゆーのがいいんだよね?
人生で一度もやったことないから分からないけど。
友達の家じゃないんだから、いきなり中に入るのはよくないよね。多分。
ちなみに今日の格好は、いつもお仕事をしている時の『和ゴス』。
髪型は、軽くウェーブさせながらもほとんど自然に下ろす清楚な雰囲気。
仮にアイドルになって、違う衣装を着るとしても、お店の宣伝はしたいからね。
一応、こういう雰囲気のお店ですよっていう、代表?として行かなきゃ。
196
:
薄島漣『イカルス・ライン』
:2024/03/18(月) 23:21:53
>>194
「ここか……」
『門倉不動産』……仕事柄いろんな職種の事務所に配達で出入りするが、ここは初めて来訪する。
あまり積極的に営業している印象はない店だが……不動産屋なんてどこもそうか。
入り口付近に自転車を止め、普通にドアから入っていく。
いかにもアウトドアの格好だった山の時と違い、グレーのスーツに身を包んでいる。
生まれてこのかたオフィスワークの仕事に就いたことはないのだが、
『不動産屋』という集合場所で、どんな服で行ったらいいか掴みかねたため押し入れから引っ張り出してきた。
「どうも。……いやあ、正直社交辞令だと思ってました」
ソファに座る美作に挨拶をする。
197
:
美作くるみ『プラン9・チャンネル7』
:2024/03/18(月) 23:54:00
>>195
(林檎)
タイミング良く響いたノックの音を聞いて、入口のドアに歩み寄っていく。
――――――ガチャ
「久し振りね、林檎さん。元気そうで安心したわ」
ニコッ
明るい笑顔と共に、ドアを開けて林檎を出迎える。
一人の友人としても、こうして再会できた事は嬉しい。
しかし、今は『仕事』が優先だ。
「とりあえず、そこに座ってくれる?」
ソッ
声を掛けながら、片手でソファーを指し示す。
その時、自転車から降りたスーツ姿の男性が近付いてきた。
どうやら、彼が『もう一人』のようだ。
「こちらは『薄島漣さん』よ。
少し前、『スタンド絡みの事件』に巻き込まれた縁で知り合ったの」
薄島と呼ばれた男性と美作は、そこまで親しい間柄という雰囲気はなく、
比較的フォーマルな挨拶を交わしている。
>>196
(薄島)
門倉不動産の前で、『和ゴスの少女』がドアをノックしていた。
状況的に、彼女が『同席者』らしい。
ドアを開けた美作は、親しげに話しかけている。
「こんにちは、薄島さん。わざわざ来てもらってすみません」
薄島に会釈を送り、林檎の方に目線を向ける。
「彼女は『猫柳林檎さん』です。
私の友人でもあるんですが、
今日は『アリーナ』に関わる話をする為に来てもらいました」
ソッ
「詳しく説明しますから、そちらに座って頂けますか?」
林檎と同じようにソファーを勧め、自分も向かいに腰を下ろす。
198
:
薄島漣『イカルス・ライン』
:2024/03/19(火) 00:08:50
>>195
>>197
「やあどうも始めまして、薄島と言います」
猫柳にも挨拶する。
薄島は、着古している感じでもないのに新しさを感じない、長いことクローゼットで保管されていたような
地味な灰色のスーツを着て、ママチャリを漕いで現れた。
背格好も普通、体形も普通、髪形も工夫のない短髪で特徴のない背格好の男だった。
ただひとつ、輝きのない、何かを訴えかけるような黒い瞳だけが目を引いた。
(大正ロマンとかいうヤツか……?)
奇抜な格好だとは思ったが、こういった格好で接客する店がある事は知っているので驚くほどではない。
「あ、はい」
美作に勧められるまま席に着く。
199
:
猫柳 柚子『カーマ・カメレオン』
:2024/03/19(火) 00:18:52
>>197
ドアを開けてもらって、にっこり笑顔。
「うふふ。あたしも、くるみさんの素敵な笑顔が見られて嬉しいわ」
これはホント。
それでここにいるのが『お客さん』なら、軽く手でも握るところだけど。
そういうことをしにきたわけじゃないし、そもそもそういうことが効く人でもないと思うし。
「あら、あらあら?今日のくるみさんも、普段と違った雰囲気でまた素敵だわ!」
「いつものスポーティな飾らない美しさも魅力的だけれど、今日はとってもクールで
少しワイルドな感じね。あとでいっしょにお写真撮らせて頂いて、いいかしら?」
これもホント。というか今のところ、くるみさんにウソをつくつもりはないし。
そういうカッコもいいなぁ。今度、『柚子』の時に取り入れてみようかな。
とりあえず、くるみさんの指示通りに席に座るよ。
「…『スタンド絡みの事件』。なんだか、また危ないことに巻き込まれていたのね、くるみさん」
「心配になってしまうけれど…ううん、こうして無事にまた出逢えたんですもの」
「終わりよければ全てよし、かしら?」
>>196
「ご紹介にあずかりました、『林檎』よ。よろしくね、『漣』さん」
座る前に、スカート部の裾をつまんで、『カーテシー』。
スーツ姿の男の人を見ると、やっぱり大人っぽいなぁって思う。
けど、それ以外に今のところ、特徴的な感じはしない人。お客さんにいてもおかしくない雰囲気。
でも、眼はちょっと特徴的?ボクの明るい金色の瞳とは正反対みたい。
200
:
美作くるみ『プラン9・チャンネル7』
:2024/03/19(火) 00:53:39
>>198
(薄島)
薄島には、ショーを盛り上げる『裏方』として話を持ち掛けるつもりでいる。
当然、『能力』は知らない。
しかし、そこは演出次第だ。
他のスタンド使いと組む事で、力を活かせる場合だってあるだろう。
そういった『連携』も視野に入れていた。
>>199
(林檎)
「フフ、ありがとう。
林檎さんに言ってもらうと自信がつくわ。
私も『開催』に向けて、ちょっと『気合』を入れていこうと思ったの」
『黒』を基調としたファッションは『魔法使い試験』に合わせたものだが、
『アイドルショー』にも力を入れているのは本当だった。
「ええ、もちろん。
終わったら、一緒に写真を撮りましょうね」
気さくに言いながら、手にしたスマホを軽く掲げてみせる。
「その事件については『片付いた』…………
かどうかは微妙だけど、見ての通り私は無事よ。
なかなか出来ない経験が出来たと思えば、それも『芸の肥やし』になるものね」
>>198-199
(両者)
「まずは『ここ』――――『門倉不動産』の事から話しますね。
林檎さんも聞いておいてくれる?」
二人が着席した事を確認してから説明を始める。
「結論から言うと、『門倉派』という派閥の拠点です。
『アリーナ』は派閥ごとに目的や考え方が違っていて、
それぞれ多種多様な『興行』を行っていますが、
『門倉派』の理念は『ショービジネス』。
『戦闘以外のパフォーマンス』で観客を沸かせる事が、
『門倉派』の目指す所です」
「そして、現在進んでいる企画が『アイドルショー』。
『スタンド使いのアイドル』が『能力を活かしたパフォーマンス』を披露する。
そういった趣旨のイベントになりますね」
ス ッ
言葉の途中で、林檎の方に片手を差し出す。
「こちらの林檎さんは、その『出演者候補』。
つまりは『アイドル候補』という訳です」
201
:
猫柳 柚子『カーマ・カメレオン』
:2024/03/19(火) 01:24:00
>>200
「そうね、起こってしまったことは変えられないもの。それならせめて、前よりもっと強くなるべきよね」
くるみさんの言葉に頷く。
ボクも、過去のことを思い返してもしょうがないから。ああしておけばよかった、なんて意味がないから。
だから二度と傷つかないように、心が強くならないとね。
「なるほど、やっぱり他の『アリーナ』の方とはちょっぴり違うひとのようね」
「あたし、とっても素敵なアイデアだと思うわ。殴ったり蹴ったりするのを見るの、
あたしは楽しくないもの。それよりも、綺麗なものを見る方がずぅっと素晴らしいわ!」
手を胸の前で合わせて、頷く。
「あくまで『候補』ですけれど、今日はそれより前のステップに進むために、がんばるつもりよ」
202
:
薄島漣『イカルス・ライン』
:2024/03/19(火) 01:24:56
>>199
「し、下の名前!?
……よ、よろしくお願いします」
ちなみに漣は「れん」と読む。
>>200
「本当にひどい目に遭いましたね……
まあ、事件の首謀者は今も野放しになっているわけで、安心していいものかどうか」
『事件』についての林檎と美作の会話に口を挟む。
アレが最後のゲームとは思えない、いずれ第二第三の『ニンゲン』事案が以下略
「『ショービジネス』……アイドルショー。
必ずしも闘技ばかりでないと前回聞きましたが、そういうのもアリなんですね」
アリーナを観戦した経験があることも、美作が派閥に属していたなら不自然じゃない。
(前回ああいった話をしていたのもこのための布石か……?)
「なるほど……アイドル候補」
改めて猫柳を見る。
正直、芸能関係の審美眼は持ち合わせていない。
少なくとも素人目にはカワイイ子だと思ったし、先程の丁寧な自己紹介も好感を持ったが
じゃあ彼女はイケるのか?なんて自分には判断が付かない。美作がイケると言うのだからいいのだろう。
「それで僕は……?」
お前も歌って踊れと言われたら帰ろうと思った。
203
:
美作くるみ『プラン9・チャンネル7』
:2024/03/19(火) 02:05:48
>>201-202
(両者)
二人の顔を交互に見つめてから、軽く頷いて話の先を続ける。
「ええ、ここからが『本題』ですね。
実は『出演者』と同時に『裏方』をしてくれる方も探しているんです。
より一層ショーを盛り上げる『サポートスタッフ』ですね」
「薄島さんにお願いしたい事というのは、そちらの役割になります。
もちろん『適性』はあるでしょう。
ですが、一人でこなさなければならない仕事ではありません。
例えば、他の人と組んだりする事で、
より力を発揮できる場合もあるかと思います」
「そこで『薄島さんの能力』を見せては頂けないでしょうか?
実際に目にする事によって、
新しい『演出のアイディア』が浮かんでくるかもしれません。
抵抗があると言われるのでしたら、無理強いは出来ませんが…………」
「ただ、このイベントを成功させる為には、
一人でも多くの『協力者』が必要なんです。
『門倉派』は他の派閥とも交流を持っていますから、
今後『いいお話』があった時には、私の方から紹介する事も出来ます」
実際、『在野のスタンド使い』であった『鷲見健治』を、
『アリーナ』の他派閥に引き合わせたのは美作だった。
「どうか『門倉派』の為に、薄島さんの力を貸して頂けませんか?」
黒い瞳と真っ直ぐに向き合い、『裏方としての助力』を打診する。
204
:
猫柳 柚子『カーマ・カメレオン』
:2024/03/19(火) 02:18:50
>>202
(漣さん)
「あら、気を悪くしてしまったのならごめんなさい」
『ペコリ』
漣さんの方へと体を向け、お辞儀する。
「あたし、自分のことを名字よりも名前で呼んでほしいの。だから、人のことをつい名前で呼んでしまうのよ」
「漣さんが望むのなら、もちろん薄島さん、とお呼びさせていただくわ」
そう言って、眉根を寄せる。
猫柳っていう名字は好きだけど、だって『柚子』とおんなじ名字使っちゃってるし。
もちろん双子とかテキトーな言い訳すればいいんだけど、何が起きるかわからないから、
なるべくこっちのボクは『林檎』で覚えてほしいんだよねー。
「あら、あなたも同じ事件に巻き込まれたのね。ひどい話だわ」
くるみさん一人だけじゃなかったんだ。結構スケールの大きい事件なのかもしれない。
>>203
(くるみさん)
「『裏方』さんも大変なお仕事よね。あたしも『黒猫堂』というお店で
『キャスト』をしているからわかるのだけれど、どっちが欠けてもお仕事が成り立たないもの」
くるみさんの話に、うんうんと頷く。
「ちなみに、あたしもこの後『スタンド能力』を見せる予定よ。
それにもし薄島さんが望むのなら、あたしは一旦お外に出ても構わないもの」
くるみさんの援護射撃。
ボクは正直この人のことを全然知らないけど。でも、くるみさんかこの人を誘ってるから。
くるみさんが信じる人なら、ボクも信じる。同じ危険を乗り越えた仲間?みたいだし。
でも能力は知らない?
205
:
薄島漣『イカルス・ライン』
:2024/03/19(火) 11:56:20
>>203
(美作)
「裏方ですか。ステージの設営とか雑用とかAD的な事なら大丈夫です。
演出家や脚本家をやれと言われたら困りますけど……」
ステージの上に立てと言われなくてホッと胸を撫で下ろした。
「能力を……?」
ここでやっと美作の言う『アリーナ発のアイドルショー』の真の意味に気が付く。
「つまり『スタンド能力を使って演出したライブ』をやる、ということですか」
スタンド能力なら、高価な機材や準備が無くても特異現象でショウアップできる。
それどころかどんな機材でもできないようなことだって、能力次第ではできるだろう。
「それは……スタンド能力というものを世に喧伝することになりかねないのでは?」
観客には一般人も当然来るのだろう。
それを言うなら『闘技場』だって同じなのだろうが、アイドルのような芸能活動には
より強くムーブメントを広げようとする、いわゆる『バズる』面がある。
この狭い街の中での『地下アイドル活動』にとどまらなくなった時、支障が生じるのではないか?
しかしながら『そうならないように気を付ける』こともまた、『アイドル』のあり方として歪んでいるのではないか。
始める前から言うことではないのかもしれないが、少し気になった。
「まあ、あまり先のことを考えても詮無いか」
>>204
(林檎)
「ああ、いや、どう呼んでいただいても構いませんよ。
珍しいことなのでびっくりしました」
伏し目がちに笑った。
「そういうことなら、僕の方でも林檎さんと呼んだ方がいいですかね。
覚えておきます」
「ああ、出ていただく必要はないですよ。
戦闘という面では、見た目でどんなんかわかってしまうスタンドなので」
美作が信用した人間なら信用できるだろうと思うのは、薄島も同じだ。
>>203-204
(両者)
「僕のスタンドは……」
『イカルス・ライン』を発現してみせた。
その手には弓が握られている。
「ご覧の通り弓矢による射撃を行うスタンドです。
能力の発動には矢を相手に当てる必要がある……当然受けた相手は矢傷を負います。
観客に当ててしまうわけにはいきませんね……」
そう語るが、弓と番われるべき矢はどこにも見当たらない。
206
:
美作くるみ『プラン9・チャンネル7』
:2024/03/19(火) 15:39:21
>>204
(林檎)
後押ししてくれる林檎に心の中で感謝した。
彼女に同席してもらったのは、薄島から『魔法使い試験』の情報を得る為だが、
『ショーの裏方』というのも嘘ではない。
いずれにせよ、薄島を説得したいという部分は同じであり、
だからこそ林檎がいてくれるのは助かる。
「あぁ、さっき言った『事件』っていうのはね。
私を含めて『七人』が巻き込まれたんだけど、
それぞれの『場所』は別々だったのよ。
だから、『能力は知らない』の。
実際に顔を合わせたのも『事件の後』だったから」
「なんていうか…………『ローグライクゲーム』みたいな事をさせられたのよ。
『犯人』が言うには『ゲームの世界に引き込まれた』らしいわ。
『無作為に選んだ』とかで、たまたま『波長』が合っちゃったみたい。
注意しようがないかもしれないけど、林檎さんも気を付けて」
林檎の内心を察して、先程の話に関する補足をしておく。
薄島の言う通り『首謀者』は健在。
今も何処かで『ゲーム』が続いているのかもしれない。
>>205
(薄島)
「いえ、『普通のアイドル』のように街中に広める意図はありません。
『一般人お断り』という訳ではないですが、
普通のライブハウスでやるコンサートとは全く違いますからね。
『闘技場がショーに入れ替わった』と考えてもらうのが、
概ね分かりやすいイメージでしょう。
能力を知られるリスクは試合と同じですが、
『舞台そのもの』を工夫する事で、それも最低限で済みます」
「丁度いい機会ですから、『闘技場と何が違うか』もご説明しましょう。
見た事がなくても想像できると思いますが、試合では『攻撃』が飛び交い、
それゆえに『安全対策』には万全を敷いています。
逆に言えば、『観客と舞台の間』には、
決して取り外せない『分厚い壁』が存在する事になります」
「『戦闘行為のないパフォーマンス』だからこそ、
双方の間にある『壁』を極力取り去る事が出来るのです。
当然ながら、『安全に配慮しない』という意味ではありませんが――――」
「『観客と舞台の距離が近い』。
それが大きな『セールスポイント』なので、
『アリーナ』のメインストリームである『闘技場』とも共存できるのです。
だから、世間を巻き込んだ規模の拡大に腐心せずとも、
『ファン』を獲得できる見込みは十分にあります」
「『普通のアイドルの在り方』とは違うかもしれませんが、
『スタンド使いのアイドル』というのは『まだ存在しないもの』です。
明確な『らしさ』の基準はありません。
これから私達が『作る』のですから」
>>204-205
(両者)
初めて目の当たりにする『イカルス・ライン』を、真剣な眼差しで見つめる。
「――――『弓矢』ですか…………」
見た目だけでは能力を想像できないが、その『一端』を体験した事はある。
「あの時、私に『トイレットペーパー』を送ってくれましたよね?
やっぱり『何かを届ける』ような能力なんでしょうか?」
『ニンゲン』によるゲームの最中、薄島から『トイレットペーパー』が届いた。
美作自身も含めて、ゲーム中の『技能』は『能力』と無関係ではない。
何らかの繋がりがあると考えるのが自然だろう。
「『当てる必要がある』なら、私が『的』になります」
スタ スタ スタ
ソファーから立ち上がって、壁際に歩いていく。
「こちらは『能力を教えてもらう側』ですからね。
『ウィリアム・テル』は、息子が頭の上に乗せた『リンゴ』を射抜きました。
ここには『林檎さん』もいる事ですし、『縁起がいい』ですよ」
ト ッ
「薄島さんの『腕前』を信頼して、お任せしますから」
薄島に声を掛けながら、壁を背にして立つ。
強がって見せてはいるものの、やはり拭えない『怖さ』はある。
『プラン9・チャンネル7』は戦闘力のないスタンドなので、
仮に『事故』が起きても対処できないのだから。
207
:
猫柳 柚子『カーマ・カメレオン』
:2024/03/19(火) 20:17:13
>>205
(漣さん)
「まぁ!それはよかったわ。これからも漣さんとお呼びさせていただくわね」
にっこりと微笑む。
ボクの名前呼びも定着してもらえたし、ラッキー。
まーでも、もし『柚子と林檎』が同じ人たってバレたとしても問題ないかな?
でも、お店に来るお客さんは減っちゃうか。やっぱりバレない方がいいかぁ。
「あら。漣さんの『スタンド』はいざとなれば、戦闘もこなせるのかしら?それは頼りになるわね」
『黒猫堂』のバーテンダーの晶さんも、たまーに暴れちゃうお客さんを取り押さえたりしてくれるし、
そういうことができる人がいるのは心強いかも。でも専門の『警備』さんとかいるのかな。
でもでも、人数が多い方がいいよね。
>>206
(くるみさん)
「『ローグライクゲーム』?それはまた、とっても不思議な事件ね…」
「犯人の狙いは、なんなのかしら。まさか本当のゲームみたいに、試しに
プレイしてくれる人を探していたわけではないでしょうし」
顎に指を当て、上を向く。
ボクはゲーム好きだし、それを聞いてちょっとおもしろそうだなぁって思ったけど、
命がかかってたならやだなぁ。ただ間違いなく、波長は合っちゃいそう。
「ええ、ありがとう。犯人が知らない間に捕まっていることを願うわ」
くるみさんの言葉に深く頷く。
どこかの正義感の強い『スタンド使い』さんが、倒してくれないかな。
お金にならないなら、危ないことはしたくないよ。
「・・・・・・・・・・」
だから、自分から矢に撃たれにいくくるみさんを見て、思わず口元を手で覆う。
だって、弓矢でも人は死んじゃうでしょ?
漣さんがその気になれば、または手元が狂えば、今ここでくるみさんを殺すことだってできちゃう。
「漣さん、大丈夫かしら?」
ちらりと漣さんの方を見る。
208
:
薄島漣『イカルス・ライン』
:2024/03/19(火) 22:28:07
>>206
(美作)
「なるほど……芸能プロダクションのように所属アイドルを売り出すのが目的じゃなく
興行内容そのものを売り込むのが目的だと。確かにサーカスやプロレスの興行に近い」
「観客と舞台の間の『壁』……心理的なものも含むと理解しました。
実際のコンサートでもアイドルの立つ舞台と客席は明確に仕切られていますが……
まあ確かに物理的な距離で言ってもスポーツの試合でのそれよりは近いか」
面白いことを考えるものだ。
業界人の彼女ならではの視点と言えるだろう。
>>207
(林檎)
「表面上は戦闘しかできないのに、本質的には戦闘に向かなくてね……
近接戦闘は苦手だし、能力そのものは戦闘と関係がない。難儀なものです」
僕を用心棒として雇うのは、対スタンド戦が想定されて単独であるならお勧めできないと思う。
>>206-207
(両者)
「ええ、仰る通り僕の『イカルス・ライン』の能力は『送達』。届けるものは『情報』です。
えと……いいんですか?もう一度言いますけど、情報を受け取るには『矢』を受ける必要がある。
それは『矢に当たって傷を負う』という、文字通りの意味です。
そうであっても受け取りたい、届けたい……『切実に届けたい』言葉のためにこの力はあるんだと思います。
つまりその……体験してみたいなら『そうなる』ということですけど……」
本来、軽々しく『試し撃ち』などすることはこのスタンドの理念に反しているかもしれない。
森で木や的相手に練習していたのとは違うのだ。美作の覚悟はいかばかりか。
その瞳を見据える……
「すみません林檎さん、もし良かったらなんですけど……
今日ここに来る際のやり取りで林檎さんから美作さんに送ったメールがまだスマホに残ってたら、見せてもらえませんか?
ああ、事前に言っておきますが、そのメッセージをずっと残しておきたいならやめた方がいいですけど。消えてしまうので」
美作が『やっぱりやめる』などと言い出したりしなければ、林檎にそう尋ねる。
209
:
美作くるみ『プラン9・チャンネル7』
:2024/03/19(火) 23:30:52
>>207-208
(両者)
「『ゲームが好き』らしいから、動機は『愉快犯』って所ね。
終わった後に『ギフト券』を送ってきた辺りは、変に律儀だったけど。
多分、『迷惑料』のつもりかしら」
一見すると自然に聞こえるが、林檎に答える声は僅かに震えていた。
自分から言い出した事ではあるものの、『緊張』は隠し切れない。
まともに命中してしまったら、おそらく無事では済まないだろう。
「『闘技場』には、客席と舞台の間に『金網』があるんですよ。
例えば、それがないだけでも、かなり違ってくると思います。
心理的な面も含めてですね」
再び視線を戻し、改めて薄島に向き直る。
「あの時、『日記』の中に書きましたよね。
『私の技能は情報』――――私の能力も『情報』を扱うものです」
ズ ギ ュ ン ッ
美作の肩の上に『機械仕掛けの小鳥』が現れた。
『プラン9』のヴィジョンは『イカルス・ライン』とは全く異なる。
それでいて『情報』という共通点があるのは、一種の『引力』なのかもしれない。
「これが私の『プラン9・チャンネル7』。
薄島さんを信頼してお話しますが、『戦える力』は『皆無』です。
実は、最近『一般人』の『不良大学生』に絡まれてしまった事があるんですが、
その時も全く抵抗できませんでした。
運良く居合わせた『別のスタンド使い』に助けられましたけど…………」
正確には『不良大学生グループ』だが、
仮に相手が一人だったとしても、手も足も出なかっただろう。
あの場に鷲見がいなければ、本当に危なかった。
何をされていたか考えるだけで寒気がする。
「この前お会いした時に言ってくれたじゃないですか。
『そちらからの情報に助けられました』って。
私が情報を伝えた理由は、それが『誰かの助けになる事を願ったから』です」
いったん目を閉じて、また開く。
「『情報を届ける重さ』は理解しているつもりです」
美作は『メディア』に携わる仕事をしている。
そういう意味でも『情報の重み』を日常的に感じていた。
『スタンド使い』としてだけでなく『一人の人間』としても。
「…………でも、今後の為にも『大怪我』は避けたいですから、
出来る限り『掠める程度』でお願いしますね」
ピ ッ
そう言って、右手の人差し指を立てる。
「――――『ここ』を狙ってもらえますか?」
深呼吸して気持ちを落ち着けながら、『イカルス・ライン』を見つめる。
210
:
猫柳 柚子『カーマ・カメレオン』
:2024/03/20(水) 00:10:17
>>208
(漣さん)
「でも、弓矢は確かに人を殺められるのでしょう?」
「謙遜することはないと思うわ。少なくとも、あたしは漣さんの『イカルス・ライン』には勝てないもの」
弓矢が常に自分を狙ってくるって、結構怖い気もするし。
もちろん漣さんの言う通り、近付かれたら出来ることはないかもしれないけど、
『ショー』の舞台なら他にも『スタンド使い』の味方はいると思うし。
飛び道具があった方が、色々な状況に対応できるんじゃない?たぶん。
「あたしは、くるみさんが良いのなら構わないわ」
そう言って、くるみさんとのやり取りをしたスマホの画面を漣さんに見せる。
>>209
(くるみさん)
終わった後にお金を送ってくるなんて、どうやら『犯人』は完全に悪者ってわけではないのかも。
でも、はた迷惑な人ではある。ゲーム好きって点は気が合うから、楽しく遊ぶ目的でなら
その『スタンド能力』?味わってみたいけどね。
「…本当に、くるみさんはいやな事件に巻き込まれてしまうことが多いのね」
『不良大学生』に襲われた事件を聞いて、ふう、とため息をつく。
でもこうして無事に過ごしていられてるなら、それでいいけど。
今はその件に関して詳しく聞く雰囲気でもないし。
くるみさんの覚悟は本物だと思う。
だからこそ、ボクは成り行きを見守るしかないんだよね。
漣さんにスマホを見せたら、あとは二人がどうなるかって感じ。
211
:
薄島漣『イカルス・ライン』
:2024/03/20(水) 01:06:08
>>210
(林檎)
「いや、そんな……どうでしょうかね。細かい制限とか制約とかの話はしていませんし」
例えば矢は一本ずつしか作れないこと。自分自身からのメッセージには大きな制約がかかること。
開示した説明だけでは抜けている部分もたくさんある。
逆に、変わった利用法ができる部分なども隠してはいるが……。
彼女のスタンドを知らないので相性がどうかはわからないとしても、それはそれこそ彼女の謙遜だと思った。
>>209
(美作)
「小鳥……それで『カナリア』。なるほど」
『プラン9・チャンネル7』を見て、先のゲームでの名前に得心がいった。
「……立派ですね」
微笑む。この人は自分みたいな小物とは器が違うなと思った。
「僕は話術や交渉事が苦手だったもので、情報が足りないなという自覚があって。
そこで『カナリア』さんがその姿勢を崩さずいてくれるようにという……
結局は自分の利益のためでしたよ」
>>209-210
(両者)
「ありがとうございます。じゃあ──いきます」
林檎のスマホから『林檎から美作へ送信したメッセージ』の送信履歴を表示してもらい
その中のメッセージのひとつを開いてもらう。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
うふふ、わかったわ。それじゃあ次の土曜日に、15時前にお邪魔させてもらうわね。
それにしても、『スカウト』さんというのも大変なのね。
ショーに必要なひとを、たっくさん集めなくてはいけないんだもの。
くるみさんについての、お話?ふふ。何かしら、そのことも『面談』と同じくらい楽しみだわ。
あなたにお会いできる日を、待ちわびているわね。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
ズ オ ッ
『イカルス・ライン』がスマホの画面に触れると、そこから一本の矢が抜き出された。
同時に、画面に表示されたメッセージは、意味の読み取れない奇怪な『文字のようなシミ』に変わる。
それはまるで『意味』を抜き取られたかのようだ。
グ グ グッ
その矢を『イカルス・ライン』が持つ、和風の雰囲気を持った弓に番えると、
ヒ ュ ゥ ッ
美作に向けて放った。
矢は弾丸のようなスピードで空を切り、その軌道は風もないのに途中でカーブを描く。
ビ シ ズ タ ァ ー ン
……そして、そのまま美作の右人差し指を抉った。
指先ではない。指の基節、つまりいちばん根本に近い節のちょうど真ん中を狙った。
指先は神経が集中しているので痛いし、関節を傷つけると曲げづらくなるからだ。
そして……肉が裂け血が流れる痛みと引き換えに、美作の頭の中には上記のメッセージが再び復唱される。
「……これが『イカルス・ライン』の能力、『矢文』です」
212
:
美作くるみ『プラン9・チャンネル7』
:2024/03/20(水) 01:44:31
>>210-211
(両者)
「あははは…………その時は『お酒』が入ってたから、
ちょっとだけ注意不足だった事もあるかも。
林檎さんは知ってると思うけど、あんまり強い方じゃないから」
「あの夜は、そんなに飲んでない筈なんだけど……」
林檎と話して少し気分がほぐれ、照れたような苦笑いを浮かべてみせる。
「『ニンゲン』に感謝するべき点があるとすれば、薄島さんと知り合えた事ですね。
こうしてお話できた事は、私にとって貴重な『財産』です」
微笑を返してから、口元を引き締める。
「『お願いします』」
『矢』が現れ、番えられ、放たれる。
それら一連の動作を見逃す事なく観察し続けた。
『薄島漣』の『イカルス・ライン』の能力を。
ビ シ ィ ッ !
「――――――ッ!」
肉が抉られる感覚と同時に、鋭い痛みが襲い掛かり、唇を噛んで堪える。
『スタンドによる攻撃』を受けたのは初めての経験だった。
薄島の気遣いのお陰で痛みは少ないが、やはり痛いものは痛い。
それと共に頭に流れ込んでくる『情報』。
確かに『矢文』というのは言い得て妙だ。
「あ……ありがとうございました……。とても良く分かりました……」
「いたた…………」
出血する指を押さえて、薄島に謝意を告げる。
次は林檎に話を聞きたい所だが、とりあえず止血しなければならない。
絆創膏が置いてあればいいが、多分ここにはないだろう。
213
:
猫柳 柚子『カーマ・カメレオン』
:2024/03/20(水) 20:05:24
>>211
(漣さん)
「確かにそれは漣さんの言う通りね。ま、どちらにせよ漣さんの
『イカルス・ライン』が、矢を放つような事態にならないことが一番なのは間違いないわ」
髪を指に絡ませながら、うんうんと頷く。
何かしらの制約がある『スタンド』もあるって話は納得。特に強い『スタンド』ほど弱点もあるんだって。
漣さんの『イカルス・ライン』もひょっとして、何かあるのかも。マンシン?はいけないよね。
まぁとりあえず、その『イカルス・ライン』が能力を使うところ、まずは見てみよっと。
「『コピー』ではなくて、本当にメッセージそのものを抜き取っているのね」
能力を使用された『スマホ』の文は、もう読めなくなってる。
記録を残したくない秘密のやり取りにも便利かも?
でもその度に矢で撃たれて、痛い思いはしたくないよね。
そして『イカルス・ライン』が放った矢は、カーブしながらくるみさんの指を正確に射抜いた。
痛そうだなぁ。ボクだったら絶対に無理。
でも、こうして矢を曲げられるのってなんかスゴい。
>>212
(くるみさん)
「ええ、お酒が入ってしまっている時は仕方ないわね」
「でもあたしは、アルコールが入っていなくても、こんなことを試してしまうくるみさんの行動力が、既に心配だわ」
黒と赤で彩られたハンドバッグの中から『絆創膏』を取り出して、くるみさんの方へ近寄る。
くるみさんの手を取って、赤い血が流れる指を舌でぺろり。消毒できるんだよね、確か。
「動いてはだめよ?」
血が出てる部分を、きっちり絆創膏で止めよう。
214
:
薄島漣『イカルス・ライン』
:2024/03/20(水) 21:43:48
>>212-213
(両者)
「ああ言わんこっちゃない、大丈夫ですか?救急箱とか無いかな……」
事が終わりスタンドを引っ込めた。
キョロキョロ見回して救急箱を探すが、そんなものがあるなら
この場所の勝手知ったる美作が取りに行くだろう。
彼女がそうしないということは用意がないのだ。
もちろん、僕も持ち合わせていない……
ポケットのハンカチに気が付いて取り出そうとしたところで
それよりも早く林檎が動いた。
それを見て安心する。
「……でも、ここまでする必要があったんでしょうか?
知りたいだけなら、言葉で聞くだけでも十分だったような……」
僅かな切り傷とはいえ、『知りたい』というだけでは割に合わない負傷だったように思えた。
215
:
美作くるみ『プラン9・チャンネル7』
:2024/03/20(水) 22:44:25
>>213
(林檎)
軽く室内を見回してみたが、応急処置が出来そうな物は見つけられなかった。
「普段こんなに思い切った事はしないけど、
これで私の『本気』が伝わるなら安いものよ。
より良い舞台を作る為なら、身体を張る事も惜しまないわ」
口に出す言葉とは裏腹に、人差し指に残る痛みに表情が歪む。
「でも…………今回は少しだけ無茶しちゃったかも…………」
言われた通り立ち止まったまま、大人しく林檎の手当てを受ける。
さすがはホステスと言うべきだろうか。
この気配りの良さは、きっとステージの上でも活かされるだろう。
「ありがとう、林檎さん。手際がいいのね」
丁寧に絆創膏が巻かれた指を見て、目の前の林檎に笑い掛ける。
>>214
(薄島)
薄島に視線を向け、穏やかに口元を緩めた。
「確かに話を聞いて済ませても良かったかもしれません。
ですが、それだけじゃあ私の『熱意』は伝わらないと思ったんです。
これだって、なかなか出来ない経験ですし、
今後の『肥やし』にさせてもらいますよ」
自ら的になったのは『魔法使い試験』の為でもあるが、それだけではなかった。
美作が『興行』に注ぐ『情熱』を知って欲しかったからだ。
その為なら、指を出血する程度は厭わない。
「でも、凄かったですねぇ。
矢が迫ってきた時はドキドキしましたけど、
『和製ウィリアム・テル』を見ているようでした。
まさに『百発百中』って感じで」
徐々に指の痛みが引いてきて、表情も落ち着きを取り戻す。
>>213-214
(両者)
ひょっとしたら壁に傷が付いたかもしれないが、
『門倉代表』には『必要経費』だと思ってもらおう。
「最初に幾つか質問する予定だったけど、順番を変えた方が良さそうね」
改めて林檎に向き合い、『アイドル候補』の『面談』に入る。
「まずは『パフォーマンス』を見せてくれる?
せっかくですから、薄島さんもご覧になっていて下さい。
正式なお披露目前の『先行公開』という事で」
林檎に目配せしながら、薄島に声を掛ける。
彼女の能力が『ステージ映え』する事は知っていた。
それもスカウトした理由の一つだ。
216
:
美作くるみ『プラン9・チャンネル7』
:2024/03/20(水) 22:44:59
【対応してくださる方々へ】
ttps://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/comic/7023/1655987686/319
217
:
猫柳 柚子『カーマ・カメレオン』
:2024/03/20(水) 23:55:20
>>214-215
(お二人)
「慧可断臂、ね。お仕事をがんばるのも素晴らしいけれど、自分の身体も大切にしてほしいわ」
少し口を尖らせる。
お仕事にかけるくるみさんの情熱はすごいと思うけど、ボクは結構ひやひやする。
ボクは痛い思いをするくらいなら別のお仕事にするなぁ。
危険な目にあうかもしれない、くらいなら割のいいお仕事はするけどね。
ひとまず、絆創膏を貼り終えたくるみさんの手を離す。
「お店でケガをしてしまうお客さんも、たまにいらっしゃるの。大したことではないけれど、
それでもこういうことをするも喜んでいただけるから」
そして、くるみさんの言葉に頷いて『カーマ・カメレオン』を発現。
夜の闇を肌に纏ったかのような、漆黒のドレスを『和ゴス』の上に重ね着する。
くるりと周り、ひらりとはためく。
「その、改めて確認させて頂くのだけれど。周りのものが多少傷付いても大丈夫なのかしら?」
ハンドバッグの中から、水の入ったペットボトルやライターなどを取り出しながら、
くるみさんに訊ねる。広い舞台なら問題ないけれど、普通にものがあるここでも大丈夫かな?
机とか椅子とかずらしておけばいい?
218
:
薄島漣『イカルス・ライン』
:2024/03/21(木) 00:38:04
>>215
(美作)
「そうですか。美作さんが良しとしているなら、僕から言うことはありません」
『肥やし』になるかどうかは未来次第だが、そのポジティブ思考には好感を持った。
「『イカルス・ライン』の矢文は……その情報が『宛てた相手』にしか向かいません。
そしてその精度は『より狭い範囲の相手』に宛てたものであるほど精密なんです。
民族とかの『大きな括りの集団』より、家族のような『小さな括りの集団』というように。
『主語が大きい』文章は、必ずしも人の心に届かないものですから」
「今回は、美作さんという個人に宛てた情報だからこそ最大限の精密性が発揮できた。
……常に百発百中なわけじゃありません」
あとあと百発百中を期待されてヘマをしてもカッコ悪いので、一応付け加える。
「店の壁に穴を開けてしまいましたね……」
美作の心配通り、美作が背にした壁には穴が開いていた。
ただ雑居ビルは普通は木造ではなくコンクリートだと思うので、
表面の壁紙や断熱材を傷つけただけでコンクリは貫通していないだろう。
「はい、彼女が良いのならそうさせて頂きます」
>>217
(林檎)
「これは……衣服のスタンドということですか?
美しいですね」
ここからは自分は観客だ。
まずは『カーマ・カメレオン』の外見に感嘆する。
219
:
美作くるみ『プラン9・チャンネル7』
:2024/03/21(木) 01:29:57
>>217-218
(両者)
「…………そういう能力だったんですね。
『特定の個人に呼び掛けた方が心に届く』というのは、職業柄とても共感できます。
私も番組内で『リスナー』の方達と、一対一でお話していますから」
ふと、薄島の言葉を受けて振り返り、壁に開いた穴を見つめて苦笑する。
「あははは…………この辺りには、
『Electric Canary Garden』のステッカーでも貼ってもらいましょう」
元々が新しいビルではないので、さほど目立たないのが不幸中の幸いだった。
「あ、そうね。じゃあ、場所を移しましょうか。
すぐ近くに『駐車場』があるんだけど、
私が乗ってきたバイクを停めてるだけだから、広さには困らない筈よ」
――――――ガチャリ
林檎に頷いて入口の扉を開け、先導するように外へ出て駐車場に向かう。
そこに停まっているのは洒落たスクーターではなく、
『四気筒エンジン』を搭載した精悍なフォルムのスポーツバイク。
『スズメバチ』を思わせるカラーリングが施された『250cc』の『ホーネット』だ。
それ以外の車両は駐車されていない。
『パフォーマンス』を披露するには、十分なスペースが確保されている。
「今、『ベスパ』は修理中なの。
それまでの間、『この子』を借りてるのよ」
林檎に言いながら、バイクのタンクに片手を添える。
美作の愛車である『旧型のベスパ』は故障が多い。
簡単なトラブルなら自分でも直せるが、
今回は複雑なものだったので店に任せる事にしたのだ。
「――――それじゃ、お願い出来る?」
220
:
猫柳 柚子『カーマ・カメレオン』
:2024/03/21(木) 20:37:33
>>218-219
(お二人)
「うふふ。ありがとう、漣さん。あたしも『カーマ・カメレオン』の美しさに
関しては、他の方の『スタンド』が相手でも負ける気はしないわ」
胸に手を当てて、漣さんの言葉に微笑んだ。
だからボクは一番のお気に入り。でも、みんな自分の『スタンド』が一番気に入ってるか。
その人の精神性?が現れるって聞くし。でもでも、自分の嫌いなところが出てきちゃったらイヤかも。
「ええ、わかったわ。周りのものに注意は払うつもりだけれど、
万が一何かを傷付けて、くるみさんが責められてしまうのはいやだもの」
壁の傷は誤魔化せそうだしノーカンでしょ?
くるみさんの後をてこてこついて行くと、その先は駐車場。見たことない『バイク』が止まってる。
くるみさんのいつものスクーターじゃないんだ。
「ああ、そうなの。あの子はがんばりやさんだから、ゆっくり休まなくてはいけないものね」
「代わりにあなたに、くるみさんのことをお願いするわ」
そう言って、『ハチみたいなバイク』のシートを触る。
初めてくるみさんと会った時も、あの子が故障してたから出逢えたみたいなもの。
また元気なところを見たいな。
「ええ、準備をするわね」
先程取り出した、ペットボトルの中に入っている青みの強い『水』と『ライター』から、それぞれの『生地』を取り出す。
そして『手鏡』と、小さな『プリズム』を立ち位置の斜め後ろにそれぞれ置いておく。
これで準備オッケー。スマホから音楽が流れるように、タイマーをセット。
『生地』を袖の中に隠しながら、すっと二人の方を見る。
「それでは、いかせていただくわ」
にっこり笑顔でぺこりと一礼。やがて、音楽が流れ出す。
(ttps://youtu.be/xIKW3NKYBWw?si=8mgCYG0jIcrlOr9P)
ポップなリズムに合わせて、ひらひらと手足を動かし始める。
元から運動神経も悪くないつもりだけど、『カーマ・カメレオン』を発現している最中は
自分の身体を意のままに動かせるから。でも、『アイドル』に求められるのって
激しく上手さを見せつけるようなダンスじゃないと思うから。それは『ダンサー』で。
ボクが思う『アイドル』のダンスに必要なのは、かわいらしさと、目を惹く『パフォーマンス』。
【所詮雨が降っても消えない汚れを 貴方は隠してる】
身体の上に手を這わせながら、髪を払い、背中に隠した逆の手で『火の生地』を握る。
すると『カーマ・カメレオン』は、色を濃い赤へと変え、そして火の熱をもたらす。
更には火の明るさを放つその衣装、人目を引くには十分だろう。
【多弁振る舞った狂気の悪魔が踊る きっと飽きるまで踊るだろう】
そうして次に繰り出すのは、『青い色の水の生地』。
色もさながら、『液体』のような質感を備えたそのドレスは唯一無二だ。
胸の前で手と拳を合わせ、手を掲げる林檎の動きに合わせて、液体のようにゆったりと、独特のゆらめきを生じさせていく。
【血液のような酸っぱい臭いがまた 充満していたな】
サビの直前で能力を解除。漆黒のドレスに戻りながら、くるりと回って後ろに下がる。
そして『手鏡』と『プリズム』からつまむように『生地』を取り。
『プリズム』の生地を使い、『カーマ・カメレオン』の身に纏う。
【愛に縋って堕ちてゆく ただそれでも心は浮ついてる】
光を屈折させ、様々な色を見せる『プリズム』。
視覚的に最も派手なと言えるこれは、盛り上がりのサビには適しているだろう。
べっ、と舌を出しながら、指で髪の上にツノを生やすように踊る。
【衝動的で少し熱った 貴方が綺麗で】
胸の前で、手でハートを作りながらくるりと周り、両手で銃を作って、撃つようなマネ。
そうして満面の笑みを見せながら、両手の人差し指をぴっと立たせて。
【嗚呼 この瞬間に始まった気がした】
曲が終わりに向かう、最後に取り出す生地は『鏡』。
光を反射し、周囲の風景を映し出すそれもまた珍しい生地ではあるが、
一番の特徴は林檎の姿が見えなくなるということ。衣装が重ならない顔や手足こそ見えどすれ、
それもまた林檎の踊る挙動により、『鏡』の向こう側に消えていく。
揶揄うような笑みを見せながら、その姿を隠しては見せつけ、そして音楽はゆっくりと終わりへと向かう。
【〜〜〜〜〜♪〜〜〜〜〜・・・・・】
静かになる瞬間に、また能力を解除。
ベースとなる漆黒のドレスに戻り、終わりを示すようにぺこりと一礼。
ふぅ、と息を吐いて呼吸を整える。
「いかがかしら?本物の『アイドル』のように、踊りながら歌ったりはまだ、できないのだけれど」
流石にボクはシロートだからね。元アイドルの人とからならできるのかもだけど。
でも、できることは一通りやったんじゃないかな?
221
:
薄島漣『イカルス・ライン』
:2024/03/21(木) 21:13:10
>>219-220
(両者)
二人に追随して駐車場へ移動する。
「バイク好きなんですね。
僕も自分の自転車を相棒みたいに思っているから気持ちはわかります」
薄島のママチャリはなんだかんだ10年くらい乗っている。
元々リサイクルショップで安く買ったもので、足がないから一時的な間に合わせで買ったはずのものだった。
パンクしてはタイヤごと替え、鍵が壊れたら付け替え、前カゴが外れては交換した。
そうこうしているうちにすっかり愛着が湧いてしまった。
そして……
「これは……生地を物体から生成して、それを着ている……?」
『カーマ・カメレオン』の能力についてあれこれ考えるのも、始まる前までだった。
踊りが始まってからは、あまりの幻想的な光景に見惚れる外なかった。
歌声が彼女のものでないことに言われるまで気が付かなかったくらいだ。
222
:
美作くるみ『プラン9・チャンネル7』
:2024/03/22(金) 18:56:41
>>220-221
(両者)
レンタルした『代車』なので、バイクは綺麗に磨かれている。
「今はバイク屋さんにありますけど、私が乗ってるベスパは旧車なんですよ。
気温や湿度によってエンジンの調子が変わったり、
セルモーターがないのでキックペダルを踏んで動かさなきゃいけなくて。
でも、手間が掛かるから愛着が湧くんですよねぇ」
薄島につられて愛車の話を続けてしまいそうになるが、
気を取り直して本来の目的に意識を切り替える。
「雑談はこれくらいにして、鑑賞に集中しましょうか」
一人目の高宮一三は現役の『地下アイドル』だ。
つまり『本職』であり、アイドルとしては『実力派』と言えるだろう。
林檎に求めているのは高宮とは違った個性だった。
それは能力だけではなく、アプローチの方向も含まれる。
ギャラリーを楽しませる為に『多様性』は疎かに出来ない。
「――――――………………」
まさしく『カメレオン』のように変化を遂げていく林檎の姿を、
『元芸能関係者』として真剣な面持ちで見守る。
『カーマ・カメレオン』の能力は知っていたので、
どのような使い方がされるか、ある程度の予想はしていた。
しかし、こちらの見込みを上回る見映えの良さ。
純粋な歌と踊りなら高宮に軍配が上がるものの、
林檎は『愛嬌』で見る者の心を掴める。
どちらも甲乙つけ難い人材だ。
パチパチパチパチパチパチパチパチパチパチ
パフォーマンスを終えた林檎に、明るい笑顔で拍手を送る。
「林檎さんに声を掛けて良かったわ。
私が求めていたものを見せてくれたから。
『カーマ・カメレオン』が魅せる『華麗な変身』。
まるで『万華鏡の中で踊る妖精』みたいにね」
最終的な決定権は『門倉代表』にあるが、
これなら満足してもらえるのではないだろうか。
「――――いかがでしたか?
よければ、薄島さんの感想も伺っておきたいんですけど」
もう一人の観客である薄島に話を振る。
223
:
猫柳 柚子『カーマ・カメレオン』
:2024/03/22(金) 20:35:12
>>221-222
(お二人)
くるみさんの拍手に、にっこりと笑って見せる。
「ご満足頂けたようで、なによりだわ」
『カーマ・カメレオン』も解除。風を浴びるように、身体を軽く動かす。
汗をかくほどじゃないけど、それでも結構暑いなぁ。
2分も踊ってないはずだけど、やっぱり服の上に『スタンド』を重ね着してるからかな。
まぁもし本番が来たら、その時は服を着ないで『カーマ・カメレオン』を発現するだろうし、
それに本番までには特訓もして動くのにも慣れていけるだろうし。
そんなに問題じゃないかな。
> よければ、薄島さんの感想も伺っておきたいんですけど」
「ええ、漣さんはどのように感じたのかしら。忌憚のない意見をお聞かせくださる?」
微笑みながら、漣さんの方を見る。
行ったことないけど『アイドル』のライブって男性ファンの方が多いイメージだし、
男性からの意見もぜひ聞いておきたいところだよね。
224
:
薄島漣『イカルス・ライン』
:2024/03/22(金) 21:05:23
>>222
(美作)
美作のベスパ語りにうんうんと頷きながらも、
「おっと、そうですね」
横道にそれるのはそこそこにした。
>>222-223
(両者)
二人から感想を求められて、すぐには言葉が出なかった。
すごいものを見たので語彙が吹っ飛んでしまった、というべきか。
「……そう……ですね。
まるで『虹が舞い踊っている』みたいでした。
正直びっくりして……言われるまで歌ってはいないことに気付かなかったくらいです」
その時、僅かだが薄島の暗く沈んだ瞳に少し光が戻ったように見えたかもしれない。
225
:
美作くるみ『プラン9・チャンネル7』
:2024/03/22(金) 22:12:58
>>223-224
(両者)
『イカルス・ライン』と『カーマ・カメレオン』。
これで『魔法陣』の素材は『五人分』まで揃えられた。
美作の方針としては、早めに『情報収集』を完了させて、
残りは『考える時間』に充てたい。
最も労力を使う部分は、おそらく『そこ』になるからだ。
それに、後々『あれが足りない』という事が起きても、
時間的余裕があれば対応できる。
「薄島さんにも楽しんで頂けたみたいで、私としても嬉しいですよ。
やっぱり第三者の意見は貴重ですからね」
一瞬、薄島の黒い瞳に浮かぶ光を見た。
その微かな煌めきが言葉よりも雄弁に物語っている。
かつてアイドルだった自分が、世の中に新たなアイドルを作り出す。
それは美作にとって一言では言い表せない。
しかし、とりあえず結果は上々と言っていいだろう。
「林檎さん――それで質問なんだけど、この場で聞かせてくれる?」
「まずはステージに立った時の『キャッチフレーズ』と『決め台詞』。
『プロデュース』の参考にしたいから。
どちらか片方だけでもいいわ」
「あとは『大事にしている物』を見せて欲しいんだけど……。
それも『個性の表現』に使えそうだから」
『魔法陣』には、本体かスタンドの『モチーフ』を組み込まなければならない。
その為の材料にしたいのだ。
もちろん使い方によっては、
『アイドルショー』を盛り上げる要素にも成り得るだろう。
226
:
猫柳 柚子『カーマ・カメレオン』
:2024/03/22(金) 22:55:18
>>224-225
(お二人)
「うふふ。ありがとう、漣さん。そうまで仰って頂けると、本当に嬉しいわ」
そう言って、漣さんの手をぎゅっと握る。
やっぱり、人に褒められるのってとっても嬉しいよね。
そう考えると『アイドル』っていうのも、お金以外にもやりがいがあるのかも。
ま、まだなれると決まったわけじゃないけど。
「ふぅん。『キャッチフレーズ』、『決め台詞』、ね。お店で使っているものでよければ、あるわ」
「お店の宣伝も兼ねているから、同じものでも構わないかしら?」
自分の背中に手を回して、くるりと回る。そうして人差し指を、唇に当てる。
「『キャッチフレーズ』は、『選ばれた恋』。『決め台詞』は─────」
少しだけ、声を低くして。光源に背を向けて、首を傾げる。
「『あたしは林檎。ねぇ、禁断の果実。味わってみたいかしら?』」
なんて、ね。
べっ、と舌を出して、照れ隠しのように笑う。
そしてくるみさんから『大事にしているもの』を聞かれて、頷いた。
持ってきてって言われてるからね、ちゃんと用意してあるよ。
「ええっと…あらあら?」
ハンドバッグの中から取り出そうとしたら、一緒にぼろぼろの小さな黒猫のぬいぐるみが出てきた。
慌ててすぐにしまう。こんなの、人に見せるのは恥ずかしいから。
本当に見せたかったのは、これまたネコのしおり。
「このしおり、おばあちゃんが買ってくれたの。あたしが本を楽しく読めるようにって」
「高価ではなくても、これはあたしにとって、とても大切なものなの」
本に挟むと、ねこが顔を出してくれるのがとってもかわいいデザイン。
でも、普通の本よりマンガを読むことの方が多いかも。ごめんね、おばあちゃん。
でもでも、大事なのは本当だから。
227
:
<削除>
:<削除>
<削除>
228
:
薄島漣『イカルス・ライン』
:2024/03/22(金) 23:33:32
>>225
(美作)
「ええ、とても興味深い世界を見せていただきました。
僕は世界で初めて観客としてこの世界を見た……としたら嬉しいですね」
厳密に言えば誰かがスタンドでアイドル業をひそかにやっていてもおかしくないが
まあ、そんなことはどうでもいいのだ。
>>226
(林檎)
「いいえ、こちらこそ素敵なものを見せていただいてありがとうございます」
微笑んで林檎に握られた手を握り返す。
今のところ僕にあるのは男としての情動というよりアーティストに対する尊敬の念だ。
同性のスポーツ選手にそうするかのように握手した。
「猫がお好きなんですね」
ぬいぐるみも栞も猫。恐らくそうなのだろうと思ったままを口にした。
229
:
美作くるみ『プラン9・チャンネル7』
:2024/03/22(金) 23:56:03
>>226-227
(両者)
「とっても『林檎さんらしい』わね。そのままステージでも使えると思うわ」
猫柳林檎の『本当の性別』は知らない。
だが、彼女くらいの外見年齢でホステスという事実が、
十分に『禁断の果実』としての説得力を持つ。
先程の言葉は『そういう意味』で受け取っていた。
「…………?」
最初に出てきた『黒猫のぬいぐるみ』が、心の片隅に引っ掛かった。
彼女が苦労している事は、これまでの付き合いから何となく察している。
だからこそ、特に言及する事なく、『ネコのしおり』に目を留める。
「あら、素敵なアイテムじゃない!
きっと林檎さんのおばあちゃんは、
細かな気配りの出来る温かい人柄なんでしょうね。
『猫のモチーフ』はショーの演出に活かせそうだし、
今見せてくれてありがとう」
「『Electric Canary Garden』でも、こういうグッズを作ろうかしら?」
人と会話する時、美作は常に一定の距離を保っている。
誰に対しても踏み込み過ぎない事が、より良い関係を築くコツなのだから。
最後に冗談めかして軽く笑い、薄島の方に視線を移す。
「私自身、『スタンド使いのアイドルショー』が、
十分に『エンターテインメント』として成立する事が再確認できました。
『世界で初めての観客』――いい言葉だと思います。
フフ、表現の仕方がお上手ですねぇ」
「言葉のチョイスが上手い薄島さんにも、
『キャッチフレーズ』と『決め台詞』を伺ってもよろしいですか?
もし自分が『パフォーマー』としてステージに上がったらと仮定して――」
「『アイドルショー』に限らず、
『スタンドを活かしたパフォーマンスを披露するショー』は、
今後も色々やっていくと思いますから、参考までに。
本当に出演してもらう訳じゃありませんので、ぜひ気楽に答えてみて下さい」
230
:
猫柳 柚子『カーマ・カメレオン』
:2024/03/23(土) 00:30:11
>>228
(漣さん)
落ち着いて手を握り返してくれる漣さんに、頷いて手を離す。
これがお客さんなら、手ごたえを感じなくてむむっとなるところだけど。
純粋に『パフォーマンス』のできを褒めてくれることが、今は一番嬉しい。
「ええ、大好きよ。あたし、ねこがこの世で一番かわいい生き物だと思っているもの」
「漣さんは、好きな動物はいらっしゃるのかしら?」
あまり動物とかには興味ない人かな?
>>229
(くるみさん)
「うふふ、そうなのよ。おばあちゃんは、本当に優しい人だから。だからこそあまり
色々なことを考えないで、楽に暮らしていてほしいの」
おばあちゃんを褒められると、自分のことのように嬉しい。
やっぱりいっぱいお金を稼いで、おばあちゃんを心配させないようになりたいな。
おばあちゃん、ボクに負い目を感じてるような気がするし。
「ええ、素晴らしいと思うわ!かわいらしい『カナリア』のしおりなんかもオシャレよね。
『Electric Canary Garden』のリスナーさんたちも、きっと喜んでくれるはずよ」
一番は猫が好きだけど、小鳥もかわいくていいよね。
『カナリア』の形をした『ポケットラジオ』なんてのも、かわいい感じ。
くるみさんもキレイで素敵だから、それこそ自分が『広告塔』になればかなり売れそうだけど。
「あら、漣さんもステキなフレーズを考えてみるの?」
「あはっ、どんな言葉が出てくるのか楽しみだわ」
両手の指をくっつけて、どきどきしながら漣さんを見上げる。
『世界で初めての観客』って言葉、ロマンチックでボクは好き。
231
:
薄島漣『イカルス・ライン』
:2024/03/23(土) 00:55:05
>>229
(美作)
「え、僕もですか!?」
アイドルであれそれ以外であれ、自分がステージに立つことは想像できない。
当初そういう話になったら逃げようと思っていたくらいだ。
だが、ここまで見てしまった手前、『もしもの話』くらいは付き合うしかないだろう。
「……うーん……」
長考する。
美作の言うような言葉のチョイスの上手さが自分にあるとも思えないのだが……
「キャッチフレーズは『痛達(つうたつ)の射手』」
「決め台詞は……
『愛の言葉であれ憎しみの呪詛であれ、あなたの心臓を撃ち抜くのが僕の仕事です』
こんな感じ……かな……いやこれムチャクチャ恥ずかしいですね」
どうにか頑張って絞り出した。
>>230
(林檎)
「そんなにですか。好きな人多いですもんね。猫か……ああ、なんでもないです」
「鳥になりたいと思ったことはありますが、これはたぶん『鳥が好き』とは違いますね」
別に野鳥の観察が好きとかはないし。
猫を殺す女を見た話が喉元まで出かかったが、気分を害するだけだろう。
言うのはやめておいた。
232
:
美作くるみ『プラン9・チャンネル7』
:2024/03/23(土) 01:43:15
>>230
(林檎)
おばあちゃんが本当に好きなのだろう。
言葉の端々から、相手を思いやる気持ちが伝わってくる。
そして、彼女に『心の拠り所』がある事に安堵した。
「『オリジナルグッズ』は何種類か作ってるの。
例えば『こんなの』とかね」
チャリッ
フライトジャケットのポケットから、バイクのキーを取り出して見せる。
番組のイメージキャラクターである『電気カナリア』のキーホルダーが付いていた。
以前に渡した名刺にも、同じキャラクターが描かれていた筈だ。
「これ以外にも、『ステッカー』や『クリアファイル』に、
『アクリルスマホスタンド』なんかがあるわ。
私とお喋りしたリスナーさんにプレゼントしてるのよ。
時々『ラインナップ』は変わるから、
林檎さんにアイディアを出してもらう事もあるかもね」
そんな事を話していると、林檎が『いい質問』を投げ掛けてくれた。
なんといっても『材料』は多いに越した事はない。
『動物』は取り入れやすいモチーフと言える。
>>231
(薄島)
実際、順番を変えて『実演』を最初にした理由は、
薄島にも聞こうと思っていたからだった。
「あはは、突然すみません。
でも、キリッとしてカッコ良かったですよ。
実際に受けた私が言うんですから、胸を張って大丈夫です」
――――――パチッ★
「質問に答えて下さって、ありがとうございました」
絆創膏の巻かれた人差し指を立て、薄島にウインクする。
「薄島さんは『ヤガモ』ですからね。
私は『カナリア』でしたし、考えてみると面白い縁ですよねぇ」
『情報』を扱う能力といい、『共通点』に気付けた事も一つの収穫だろう。
>>230-231
(両者)
これで『必要な用事』は全て終えた。
『アイドルの面談』と『魔法使い試験の素材集め』。
一度に『二人分』を集められた事を含めると『一石三鳥』だ。
「お二人共、ご足労頂いてありがとうございました。
これにて本日の『面談』は終了です」
居住まいを正して二人に向き合い、丁寧に頭を下げる。
「最終的には、門倉さんと話し合って決める事になるけど、
林檎さんなら納得してもらえると思うわ。
その内『もう一人』も紹介するから、この調子で『本番』もよろしくね」
「薄島さんも、正式に『お手伝い』をお願いする場合は、
また連絡を差し上げる事になるかと思います。
もしそうならなかった場合も、今日のお礼として『いい席』をご用意しますよ」
ニコッ
林檎と薄島に言葉を掛け、口元を柔らかく綻ばせる。
「――――『お疲れ様でした』」
今日の美作に残っている仕事は『二人を見送る事』だった。
233
:
美作くるみ『プラン9・チャンネル7』
:2024/03/23(土) 04:07:45
>>232
二人に挨拶した直後、『約束』を思い出して指を鳴らした。
「そうそう!『写真』を撮らなくっちゃね!」
自分のスマホを取り出し、手が空いている薄島に差し出す。
「えっと、私達を撮ってもらえますか?」
スッ
「ついでに『この子』も一緒に」
『撮影』を薄島に頼み、林檎を促して『バイク』の傍らに立つ。
両サイドに立つ形にすれば、丁度いい構図になる筈だ。
『記念撮影』が終わったら、今度こそ『解散』だろう。
234
:
猫柳 柚子『カーマ・カメレオン』
:2024/03/23(土) 20:19:33
>>231-233
(お二人)
「あら。なりたいという憧れも、あたしは『好き』でいいと思うわ」
「鳥といえば、やはり飛び上がる姿かしら?あれは確かに、気持ちよさそうだものね」
ボクも一度くらいは、『スカイダイビング』とかやってみたいかも。
そういえば、自由に空を飛べる『スタンド』とかもいるのかな?
もしいたら、その人もなかなか『アイドル向き』かもしれないね。
>「キャッチフレーズは『痛達(つうたつ)の射手』」
>「決め台詞は……
>『愛の言葉であれ憎しみの呪詛であれ、あなたの心臓を撃ち抜くのが僕の仕事です』
>こんな感じ……かな……いやこれムチャクチャ恥ずかしいですね」
「素敵ね!痛みをともなってでも『メッセージ』を届ける漣さんのイメージ通りだわ」
「『愛の言葉』も『憎しみの呪詛』も、痛みによって生まれて、相手に痛みを与えることもあるものね」
ロマンチックで好き。センスいいなぁ。ボクのは店長が考えたのだから。
>>232
(くるみさん)
「あら、その子は既に『キーホルダー』になっていたのね。かわいらしくて素敵だわ」
くるみさんの番組といえば、この『電気カナリア』だよね。
どこで売ってるんだろう、あの建物の中で売ってたかな?と思ったら、くるみさんが教えてくれた。
「番組で取り上げてもらえると、そんな特典があるのね。あたしも『アイデア』を出すよりも、
くるみさんのラジオに採用してもらえるようなテーマを考えておこうかしら」
むむむ、と眉根を寄せる。
もし『キーホルダー』をもらったら、家のカギに付けておこうっと。
それで二年後に原付の免許を取ったら、そっちのカギに移そうかな。
なんて考えてたら、これで『面談』は終わりみたい。
多分合格だろう、というくるみさんの言葉にほっと胸をなで下ろす。
やっぱり紹介してもらったくるみさんのためにも、有能なところは見せておきたかったし。
「ありがとう。あたしも『本番』までに、もっと色々なことができるようにしていくわ」
「『お疲れ様でした』、くるみさん、漣さん」
そして、最後に大事なこと。
ボクも漣さんにスマホを手渡して、写真を撮ってもらいたいな。
「ごめんなさいね、漣さん。お願いできるかしら?」
『林檎』用のアカウントで、SNSに上げたいからね。
もちろん漣さんも一緒に写ってくれるなら大歓迎だけど、多分好きじゃなさそう。
235
:
薄島漣『イカルス・ライン』
:2024/03/23(土) 23:14:09
>>232
(美作)
「あはは、ありがとうございます」
頭を掻きながら照れ笑いをした。
中二病っぽかったな、いい歳をして……などと思ったが、まあ仕方ない。
「そういえば両者とも鳥ですね。
『ニンゲン』の奴が付けたニックネームでしたが……」
>>234
(林檎)
「いいな、と思うのは上空を滑空する姿ですね。
そんな風に障害物も何もない、地上から手も届かない空を悠々と飛べたら
どこへでも行けるだろうなって思います」
『どこへでも行ける』ところに惹かれるのだろう、
三次元移動的な意味でも距離的な意味でも悪路をものともしない意味でも。
「そう……ですね、『痛み』はキーワードだと思います」
>>232-234
(両者)
「写真ですね。わかりました」
自分は写る必要はなさそうだ。ホッとする。
────────────────────────
「それじゃあ……はい、チーズ」
カシャ
パシャ
美作と林檎、二人のスマホでそれぞれ撮る。そして、
「すみません、僕の分の写真も残しておきたくて……いいですか」
美作と林檎の写真は、広告として使ったりSNSに上げたりするようだから遠慮したが
それはそれとして自分用の写真は残しておきたかった。
スマホカメラのタイマーをセットし、『イカルス・ライン』の手に持たせる。
破スDDでも『カメラを持つだけのただの台』として使う分には問題ない。射程は5メートルある。十分だ。
急いで二人の元へ向かい、中央のバイクの前あたりに立つ。
……パシャッ
────────────────────────
「では、今日はここまでですね。楽しいひと時をありがとうございました」
二人と別れる。
あとは家路につくだけだ。
236
:
美作くるみ『プラン9・チャンネル7』
:2024/03/29(金) 21:14:27
>(門倉)
『高宮』と『林檎』の『面談』を終えた事でもあるし、
一旦『門倉代表』に『メッセージ』を入れておこう。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
『魔法使い試験』の準備は順調に進んでいます。
首尾良くいけば、もうすぐ『六人分』揃えられますし、
『小道具』にも『当て』がありますから。
それと並行して『アイドル』の件も進めておきましたので、ご連絡しました。
現状、有望な人材を『二人』用意しています。
一人は『高宮一三』さん。
現役の『地下アイドル』なので、
今回の興行には『うってつけ』の人材ですよ。
もう一人は『林檎』さん。
本業は『ホステス』で、人の心を掴む『愛嬌』に長けています。
お二人には『パフォーマンス』の『実演』をお願いしました。
最終的には門倉さんに決めて頂きたいんですが、
私が見たところ、二人とも問題なくステージに立てると思いますよ。
『二人の連絡先』を門倉さんに送っておきますね。
私を通さなくても話が出来た方が都合がいいかと思います。
それに、たまには『代表』にも動いてもらいたいですから。
もう一人くらい『個性が被らない人』が欲しいので、
『朱鷺宮涙音』さんにも声を掛けていますが、
念の為に『スカウト』も続けますよ。
『涙音さんの連絡先』も送っておきます。
彼女に関しては、まだ正式にスカウトした訳じゃないですけど、
『アイドルショーの話』はしてありますので。
アイドルとして出演してもらえなくても、
『ショーを盛り上げる裏方』としての協力は取り付けました。
『裏方』になってくれそうな方は他にも確保しましたが、
そちらに関しては追々お知らせします。
PS:お礼の『お味』はいかがでしたか?
237
:
門倉『ソウル・ダンジョン』
:2024/03/31(日) 23:22:22
>>236
(美作)
『美作』のメッセージが来ていたのを確認し、返信を行う。
――――――――――――――――――――――――――――――
『魔法使い』の試験については流石の美作さんだ。
他の二人の動向はまだ確認出来ていないが、
おそらく最速じゃあないだろうか。
とはいえ、『審査』するのは俺じゃあないからね―――
どうなる事かは神のみぞ知ると言ったところか。
『アイドルの件』は、『地下アイドル』の『高宮』さんと
『ホステス』の『林檎』さんね―――
『美作』さんの『選定眼』については信頼をおいているので、
大丈夫だとは思うけど―――まあ『代表』として一度は会っておくべきか。
『朱鷺宮』さんは夏の魔物事件で活躍してたんじゃあなかったかな。
『涙音ちゃん』はええと、娘さんだっけ?それともお母さん?
いずれにせよ『アイドル』の華になるポテンシャルはありそうだ。
なんにせよ、全ては順調といった報告で何よりだ。
お礼の味―――ああそうだ。遅れて仕舞ったけれど、
俺からも美作さんに渡すべきものがあったんだ。
後日、送っておくよ。
――――――――――――――――――――――――――――――――
後日、美作のところに『超高級のど飴』が上品な放送にくるまれ、送られてきた。
238
:
美作くるみ『プラン9・チャンネル7』
:2024/04/03(水) 22:38:11
>空織
『星見駅北口』の駐車場に停めた『スポーツバイク』。
250ccの『ホーネット』の隣に立ち、『六人目』に成り得る『空織清次』を待っていた。
美作の装いは『オールブラック』の『モードストリート』。
引き締まった印象を与える装いは、普段の軽やかさとは異なる力強さを感じさせる。
『試験』に挑む『勝負服』だ。
「キリシマ君には、
しばらく『ダンスの練習』に集中してもらうとして、
私は私の仕事をしなきゃね」
それとなく周囲を見渡し、『待ち人』の姿を探し求める。
詳しい話は『門倉不動産』でするつもりだが、駅前の方が分かりやすいだろう。
そういった意図で、この場所を指定したのだった。
239
:
空織 清次『エラッタ・スティグマ』
:2024/04/03(水) 23:10:41
>>238
(美作)
待ち人は『10分遅れ』でやってきた。
タクシーから降りてきた三十絡みの男の格好は、
英国風アップバングの黒髪を左右に流し、
チャコールグレーのオッドベストの上に
群青色のセットアップを着た『紳士風』。
だがそれらのボタンは一つも留められていなかった。
「遅れてすまない……
運転手が道を間違えちまってね」
「やあ……久しぶりだな、美作さん。
あの日買い物に付き合った以来か?」
見慣れぬ『愛機』のそばにたたずむ美作の姿を認めると、
手を上げ、片方の唇だけで微笑みかける。
依頼人へと歩み寄るその脚は、すこしよろけていた。
「それで……仕事の……話って……?」
240
:
美作くるみ『プラン9・チャンネル7』
:2024/04/03(水) 23:53:42
>>239
記憶に残る見覚えのある姿を見て、ひとまず心の中で安堵した。
「――――ええ、本当にお久し振りです」
ニコッ
空織に向けて笑顔で会釈する。
足元が覚束ない事には気付いたが、こちらから指摘するのは失礼だろう。
そう考えて、以前と変わらない態度で接する事を決めた。
「わざわざ来て頂いてありがとうございます。
これから詳しく説明しますけど、ちょっと長めの話になってしまうんですよ。
空織さんは『アリーナ』をご存知でしたよね?
それぞれ違った目的や考え方を持つ『派閥』の集合体です」
一拍の間を置いて、再び話し始める。
「…………何故こんな事を言うのかというと、
実は私が『アリーナ』に加わったからなんです。
『門倉派』という『ショービジネス』を理念とした派閥です。
空織さんにお願いしたい仕事というのは、それに関係していまして――――」
言葉を区切り、傍らの車体を見下ろす。
「ずっと立ち話もなんですから、詳細は『本拠地』の方で。
ええと、シートの後ろに乗って頂けます?
ご案内しますから、私に掴まっていて下さい」
スッ
ゴーグルとバイザーが付いたハーフヘルメットを被ると、
予備のヘルメットを差し出し、バイクに跨ってキーを差し込む。
241
:
空織 清次『エラッタ・スティグマ』
:2024/04/04(木) 23:13:50
>>240
(美作)
以前と異なる知人の様子にも、
ある種の『フェアさ』で応じる美作。
だが『仕事話』の距離まで互いが近づくと、
歳月が彼の心身に与えた罰に否応なく気づく。
その眼窩は落ち窪み、頬はやつれ、
肝機能の低下で肌はくすんで黄色みがかり、
だが下顎だけはむくんで膨らんでいる――
典型的な『アルコール中毒者』の末路だ。
そして美作にとって最悪なことに、
それは『現在進行形』だった。
「ちょっと、ちょっと……待ってくれ……
もうすこし、ゆっくり喋ってくれないか……?
半分も理解できなかったぞ……」
『熟慮』もなしに返ってきたハイな文面、
『開けっぱなし』の上着のボタン、
『千鳥足』のふらつき、
そしてなにより、会話から漂う明確な『酒気』……。
「仕事の話を振ったのは、確かにわたしだが……」
「久しぶりの再会を、
もっと寿いでもいいんじゃあないか……?
なあ……君には、聞きたいことが……
たくさんある……」
大仰に広げた手を、しかしすぐにパタリとたたみ、
力なく肩を竦めてうなだれる。
「ああ………いやそうか、そうか」
「実際忙しそうだもんな、君は……
ラジオ番組のMCに加えて、
『アリーナ』の仕事……だっけか?
無駄話をしている暇なんてないか……?
こんな酔っぱらいとは……フ、くくく……」
ひとりで会話を完結させ、顔を伏せて笑う空織。
それはどこか見覚えのある『自嘲的』な笑みだった。
美作からスペアのヘルメットを手渡されるが、
顎紐を締める手はおぼつかない。
「なあ…………美作さん…………
わたしは、タクシーで……
行ったほうが、いいんじゃあないか……?」
寝言のように呟きつつも、いちおう後部座席に跨る。
242
:
美作くるみ『プラン9・チャンネル7』
:2024/04/05(金) 01:16:09
>>241
大方の事情は察したが、決して『最悪ではない』。
急な呼び出しにも関わらず、こうして来てくれた。
『最悪』というのは、そもそも『繋がらない』という事だ。
そして、この世から永遠に姿を消してしまう事こそ『最悪の最悪』。
この町で一度だけ出会い、二度と会う事が出来なくなった『彼』のように。
ド ッ ド ッ ド ッ ド ッ ド ッ
ド ッ ド ッ ド ッ ド ッ ド ッ
「いえ、このまま行きましょう。すぐそこですから」
――――――だが、空織には『再会』できた。
「あんまり飛ばさないようにしますよ」
グ ォ ン ッ
空織に呼び掛けてバイクを発進させ、『門倉不動産』に向かって走らせる。
緩やかなスピードだ。
本来なら数分で着くところだが、もう少し掛かるだろう。
また、バイクに同乗してもらったのは『話をする為』でもあった。
こうして密着していれば、声が届かない事はない。
「…………『林檎さん』の事、覚えてますか?
最近、彼女にも会ったんですよ。
その時の写真があるので、あとで見せますね」
ハンドルを握りながら空織に語り掛け、彼の反応を見る。
酔っていても会話が成立しているからこそ、『林檎』の名前を出した。
そして、『林檎の近況』を伝える事は『美作自身の仕事』にも重なる。
「空織さんに会いたがっていましたから、いつか顔を出してあげて下さい」
「――――『黒猫堂』です」
しかし、今は『友人』として話そう。
酒が辞められないなら、せめて『目の届く場所』で飲んでもらいたい。
『二度と会えなくなる』という事のないように。
「…………いいお店ですよ」
以前、美作は『デルデルデ』という男性に出会った事がある。
『キッチンカー』を運営しており、そこで『マトンカレー』を食べ、
楽しい会話を交わした事を覚えていた。
ただそれだけの出会いだったが、彼の『自殺』を知った時はショックだった。
明るく振る舞っていたように見えたが、実際は相当追い込まれていたらしい。
赤の他人である美作が気付かなかったのは当然の事だが、
それでも『心に残るもの』はあった。
もしかすると何か出来たのではないかと。
自分は知らず知らずの内に、相手を傷付けていたのではないかと。
243
:
空織 清次『エラッタ・スティグマ』
:2024/04/05(金) 18:04:54
>>242
(美作)
バイクの『風切り音』が荒れるなかでも、
空織はひたすら美作へと話しかけつづけた。
「―――それであの時、グレムリンとのどさくさで……
わたしの『スマホ』はぶっ壊されちまった(※)だろ?
もちろん新調はしたんだが、
当日にもらったアドレスはまだ同期されてなかったのか、
全部吹っ飛んじまっててね……
けっきょく、あれから連絡できずにいたんだが……」
「……それでも君の声は、よく耳にしていたよ……
もちろん一方的に、こっちでな (ヘルメットの側面を叩く)」
「じつは……気まぐれに二、三度メールを
送ったこともあるんだぞ……
もちろん採用されることはなかったが」
「いったい採用担当は誰なんだ……?
まだ彼がディレクターやってるのか?
あの生真面目そうな……ええと、名前は……
何だったっけか……?
たしか『松木』……じゃなくて―――」
美作の返答を待つことなく、
空織は一方的に言葉を発しつづける。
それは久しぶりに会う旧友に向けて
必死にかき集めた花束みたいな思い出話で、
しかし実際には、自分を慰めるための
『独り言』の束でしかなかった。
『喋りのプロ』である美作にしてみれば、
ともすれば聞くに堪えない一方通行の言葉たち。
だが、それでも――――
美作が『林檎』の名前を口にした瞬間、
風切り音の中に、確かな手触りのある沈黙が生じた。
「…………………………
…………………………」
「そう、か」
「林檎君が元気なら、
それは……何よりだ」
「――――」
以降、空織は口をつぐむ。
長く痛切な無音の時間が訪れる。
そうして耳に届くのは、しばらく風の音だけになった。
――――――――――――――――――――――――――――――――――
【※『スマホがぶっ壊された……』はこの時のこと:
ttps://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/comic/7023/1612673497/128-130】
244
:
美作くるみ『プラン9・チャンネル7』
:2024/04/05(金) 21:11:24
>>243
空織の表情はサイドミラー越しに見る事も出来た。
しかし、敢えて見ない。
それは『フェア』ではないからだ。
「ディレクターの名前は『露木』ですよ。
あの時と同じように、今も彼が担当しています」
「採用されなかったのは申し訳ないですけど、送ってくれたのは嬉しいですよ。
なんだったら、今度は『電話』してきて下さい。
本名じゃなく『ラジオネーム』で構いませんから。
雑談とか質問とか相談とか、どんな話題でも大丈夫です」
あれから美作自身にも色々と転機があった。
『アリーナ』に加わった事だけでなく、
自らの能力を活かそうと日々試行錯誤している。
空織が抱えているような類の悩みは現状ないが、
少し前には友人達に相談を持ち掛けた事もあった。
「あははは…………私も林檎さんに『悩み』を聞いてもらった事があるんですよ。
『気付かない内に相手を傷付けていたのかも』って思う事があったんです。
私、この仕事向いてないのかなって考えちゃって」
苦笑いを浮かべながら、林檎から受け取った『助言』を紡ぎ出す。
(ttps://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/comic/7023/1630107603/10)
「全てを抱え込む人なら、
他人に気付かれたくないのかもしれない。
気付かない事が救いになるかもしれないし、
でも本当は気付いて欲しいのかもしれない。
そんなのは本音に触れないと分からない」
「それでも気になるなら、一歩踏み込んでみるしかない。
本気で嫌がられるか、助けを求められるかは、その人次第」
「でも、誰にでもそうはしない方がいい。
その人が特別な相手なら、そうするのもいいんじゃないか」
空織が何かしら大きな問題を抱えているのは分かる。
それに触れて欲しくないのかもしれないし、
助けを必要としているのかもしれない。
それは踏み込まなければ分からない事だろう。
そして、気軽に触れていい問題でもなかった。
だが、少なくとも『一歩』は歩み寄れるはずだ。
「――――そんな風に『アドバイス』してもらいました」
踏み込むべきか否かに関わらず、
『空織清次を気に掛けている』という気持ちは確かだ。
今、それだけは伝えておきたい。
もし、この場に林檎がいれば、同じようにしたのではないだろうか。
245
:
空織 清次『エラッタ・スティグマ』
:2024/04/08(月) 21:58:57
>>244
(美作)
美作がすべてを語り終えるまで、
そして話し終えてからもしばらくのあいだ、
空織は一言も声を発しなかった。
それは暗闇の中で痛みを覚えながらも
瞳に光を取り戻そうとする明順応のような時間だった。
ヘルメットに反射する春光に目を細めつつ、
とぎれとぎれの言葉で空織は返答を紡ぎはじめる。
「………実に、林檎君らしい言葉だな。
彼女は本当に……強い人だった」
「あの年齢でそんな強さを持つに至るまでに、
彼女はどんな人生を歩まねばならなかったのかと…
わたしは一人で身勝手な心配をしていたが……」
「結局わたしは、彼女が見せたその強さに
どこか救われてもいたんだろうな……」
美作が込めたメッセージへ、直接的な応答はない。
それでもアルコールで満たされた記憶の水面に、
確かな波紋が広がっていく感触があった。
「……今の君と同じようなことを、
かつて誰かが口にしていたような気がする」
『素直に自分の気持ちを伝えた方がいいよ』――
『それで距離を置かれるようなら、
その程度の繋がりだったって事』。
ふたつの座席の間にふたたび沈黙が挟まった。
やがて古い栞を引き抜くように、空織が口を開く。
「―――『黒猫堂』が『いい店』なのは、
わたしもよく知っているよ」
「あの店にいつか顔を出すときは……
君も来てくれないか、美作さん。
………また三人でいっしょに、
今度は再会の祝杯をあげたい」
美作の腰に回した空織の腕は、
以前よりずっと弱々しく頼りない。
それでも今、その手の中に
酒気とは異なる静かな熱が広がっていくのを、
美作は感じ取れるかもしれない。
去来する感情をヘルメットの内に潜め、
空織は静かに目的地への到着を待つ。
246
:
美作くるみ『プラン9・チャンネル7』
:2024/04/09(火) 17:27:38
>>245
空織の言うように、林檎は強い心の持ち主だと思う。
しかし、彼女にも『抱えるもの』がある事は察していた。
だからこそ、何かあった時には力になりたい。
それは空織に対しても同じだ。
一人の友人として、彼を放っておけないと感じる。
「フフ、とっても素敵な提案ですね。
きっと林檎さんにも喜んでもらえると思います。
だから、いつか必ず行きましょう」
「――――『約束』ですよ」
ギュオォォォォォォォォォォッ
力強いエンジン音を奏でながら、バイクが前進を続ける。
風を切って突き進む感覚は、車では味わえないものだ。
それから間もなく、二人は小さな駐車場に到着した。
「『あれ』です」
ス ッ
キーを抜いてシートから降り、雑居ビルの一階を指差す。
そこには『門倉不動産』という名前の『不動産屋』が店を構えていた。
一見したところでは、何の変哲もない。
「『雛形』さん、『新しい仕事』を始めたそうですよ。
あれから『Priceless』っていう喫茶店で会って、
ちょっと話す機会があったんです。
私も詳しくは知りませんけど、『マイクを使う仕事』だとか」
――――――カチャリ
ポケットから取り出した『合鍵』で解錠し、入口の扉を開ける。
室内にはソファーやローテーブルといった応接セットの他、
仕事用らしい書類棚やデスクなどが置かれていた。
奥には衝立があり、その奥は給湯室になっているようだ。
壁の一ヶ所には『Electric Canary Garden』のステッカーが貼ってある。
『イカルス・ライン』の『矢文』で、少しばかり『穴』が開いてしまったからだ。
「ここが『門倉派』の『本拠地』です。
空織さん、そちらに座っていて下さい。
今から詳しい説明をさせてもらいますので」
空織に声を掛けてから、衝立の向こう側に消え、
『マグカップ(
>>176
)』を手にして戻ってくる。
描かれているのは『Electric Canary Garden』のロゴと、
番組のイメージキャラクターである『電気カナリア』。
『コヤコヤ』の要望に応える為に置いていたものだが、
こんな形で使う事になるとは思わなかった。
「普段はコーヒーや紅茶を出すんですけど、
お酒を飲んだ後は脱水症状になりやすいですからね」
コト
テーブルに置かれたカップの中身は『水』だが、
水道水ではなく、買い置きのミネラルウォーターが注がれている。
247
:
空織 清次『エラッタ・スティグマ』
:2024/04/09(火) 22:41:35
>>246
(美作)
「おいおいおいおいおいおい……」
ヘルメットを脱いで美作へと手渡す。
だが視線は目的地の看板に釘付けになっている。
「なんてことだ……
君のもうひとつの根城は『不動産屋』なのか?」
なんの因果だこれは。
とつぜん脳内に矢を突き立てられたように、わたしが
抱きつづけてきた積年の『宿望』が鮮烈によみがえる。
『この街でふたたび、自分の店を持つこと』――
今となっては口に出すことさえ恥じ入るようになった『夢』。
それがまさか美作氏の『副業』と
こんな形でつながるとは……
この世に神がいるならば、
それはわたし以上にとんでもない『皮肉屋』だ!
直後に『その名』を出された影響だろうか、
わたしを尊大に見下ろす妄想の中の神の姿は……
なぜか『雛形弥生』の顔でイメージされた。
だが後光が影になり、その表情は判然としない。
彼女はいま、
一体どんな『笑み』を浮かべているのだろう……?
首を振り、酒気が作り出す馬鹿げた妄想を振り払う。
美作の後を追って店内へ。
すぐさま眼前のソファへ酩酊の身を投げ出したい
欲求に駆られるが、『仕事人』としての矜持で
かろうじて席までたどり着く。
「お心遣い痛み入る……。
なかなかどうして、立派な店じゃあないか……」
美作の厚意に頭を下げると、
すぐさま口元へ運び、カップを大きく傾ける。
グビィ――ッ
新たに話したいことはいくらでも浮かんでくる。
だがいまは『ホスト』が席につき、
主題を切り出すのを静かに待つことにした。
「…………」
一瞬で飲み干されたカップがテーブルに戻され、
空の陶器が立てるカタタ…という音が室内に響く。
248
:
美作くるみ『プラン9・チャンネル7』
:2024/04/10(水) 00:15:01
>>247
自らも空織の向かいに腰を下ろし、話を切り出すタイミングを見定める。
足元には『紙袋』が置かれた。
たった今、マグカップと一緒に持ってきたものだ。
「今は不在ですけど、ここの主は『門倉良次』という人で、
『門倉派』の『代表』でもあるんですよ。
私は『構成員』なので、こうして自由に出入りする許可をもらっているんです」
チャリッ
「『お褒めの言葉』を頂いた事は、門倉さんにも伝えておきますね」
目の高さに持ち上げた合鍵を、再びポケットにしまう。
「まず『門倉派』の概要から説明しましょうか。
前提として、『アリーナ』は派閥ごとに様々な『興行』を行っています。
その中でも『メインストリーム』は『闘技場』ですね。
要するに『スタンド使い同士の格闘試合』のようなものです。
私も一度だけ『観戦』した事がありますけど、相当な熱気でしたよ」
『スタンド使い同士の戦い』。
それが『アリーナ』の主流である以上、『活躍のチャンス』が与えられるのは、
当然『戦えるスタンド使い』に限られる。
『戦えないスタンド使い』は『チャンスすら与えられない』というのが現状だ。
かつて美作が参加したような『競技』もあるが、
そうした機会は滅多にないと言っていいだろう。
結局のところ、『後回しにされ続けている』のは否めない。
「しかし、私達が目指す『興行』は『戦闘以外のエンターテインメント』。
端的に言うと、『スタンド能力を活かしたパフォーマンス』です。
つまり、我々『門倉派』は、『アリーナ』という業界の中で、
未開拓の『新事業』を起こそうとしている訳です」
「最初、私は『興行の開催を手伝って欲しい』という理由で、
門倉さんに声を掛けられました。
私も『自分の能力』を活かしたい気持ちがありましたし、
同じ『非戦闘のスタンド使い』にも、
『能力を活かす場』を提供したいという思いがありましたから、
『正式な一員』として加わったんですよ」
美作の話し方は落ち着いているが、
その言葉の奥底には、確かな『情熱』が秘められている。
『プラン9・チャンネル7』という『極めて特化した能力』を持つがゆえに、
これまで『能力を活かせる場』に恵まれなかった美作にとって、
『門倉派』が掲げる方針は心から賛同できるものだった。
『戦闘力に依存しないエンターテインメント』に対する熱意は、
あるいは『代表者』である門倉より強いかもしれない。
「――――ここまでは理解して頂けましたか?」
『具体的な話』に入っていく前に、いったん言葉を区切り、少しの『間』を作る。
249
:
空織 清次『エラッタ・スティグマ』
:2024/04/11(木) 00:41:59
>>248
(美作)
「ふむ……」
正直言って……話をひとつ聞かされるごとに、
頭上に浮かぶ『?』が倍々で増殖していくような心境だ。
『そうなのか?』と『そうだったのか?』の連続、
シラフで聞いても素直に飲み込めたかどうか。
だが同時に、美作氏がこんなわたしに気を遣って
丁寧に話を運ぼうとしてくれているのも伝わってくる。
そしてわたしの前で初めて顔を覗かせた、
彼女の意外な『情熱』も……だ。
結局わたしが知る美作氏の顔というのは、
昼の間のほんの一面に過ぎんということだろう。
ともに『グレムリン』に立ち向かったあのときも、
戦場で闘うすべを持たない自分自身に
内心歯噛みするところがあったのかもしれない。
そんな想像が酒気でのぼせた頭によぎるが、
口には出さずに黙っている。
今のわたしが思ったことをそのまま口に出せば、
酩酊の勢いで無限に話を脱線させてしまいそうだ。
空のカップから顔を上げ、
うなずきと視線で美作氏につづきを促す。
250
:
美作くるみ『プラン9・チャンネル7』
:2024/04/11(木) 01:41:37
>>249
「ざっと説明しただけですから、ご不明な点もあるかと思います。
今すぐでなくても構いませんので、
今後『アリーナ』について分からない事があれば、いつでも聞いて下さい。
私も全貌を把握してる訳じゃありませんが、大体の事は答えられると思います」
なるべく伝わりやすいように話したつもりだが、
こちらの都合上どうしても手短になってしまう。
また、アルコールが入っている事も影響を与えるだろう。
しかし、確かに感じる空織の『真摯さ』を信じて話を続ける。
「それで、『門倉派』の『興行』ですね。
現在は『アイドルショー』の企画を進めています。
『スタンド使いのアイドル』が、
ステージの上で『能力を活かしたパフォーマンス』を披露する。
そういった趣旨のイベントです」
『元アイドル』の美作にとって、
『アイドル』という存在には特別な思い入れがあった。
とっくに引退した身である自分が、
今度は自らの手で『新たなアイドル』を世に送り出す。
そう考えると、否応なしに『気合』が入るというものだ。
「『出演者』の一人は、空織さんも知っている人です」
フフッ
「実は…………『林檎さん』なんですよ。驚いてもらえましたか?」
口元に悪戯っぽい表情を浮かべて、空織に笑い掛ける。
「彼女は『人の心を掴む術』を心得ていますし、
『能力』も『アイドル向き』ですからね。
私から声を掛けて『スカウト』したんです。
実際に『パフォーマンス』を見せてもらったんですけど、
こちらも上々の仕上がりでしたよ」
そこで『さっきの話』を思い出し、スマホを取り出して操作する。
「そうそう――――『写真』をお見せしますねぇ」
スッ
空織に差し出したスマホには、『バイクを挟んで立つ美作と林檎』が写っている。
『自撮り』ではないので、その場には『もう一人』いたようだ。
明るく微笑みつつ、再び口を開く。
「もし良かったら、そちらのスマホにも送りましょうか?
空織さんにも是非『応援』してもらいたいですしね」
251
:
空織 清次『エラッタ・スティグマ』
:2024/04/11(木) 22:27:24
>>250
(美作)
「…………………なるほど。
つまりこういうことか?」
「君は表で『MC業』に勤しむかたわら、
裏ではあの『林檎君』を『アイドル』として
絶賛『プロデュース中』であり、
ゆくゆくは『アリーナ』の舞台上で
『スタンド』を使ったショーをさせる予定、と……」
「ふ〜ん、そうなのか……」
「なるほどな……」
「へぇ〜〜……」
「…………」
両手のひらで顔を覆い、
そのまま動かなくなる空織。
「嘘だろ……マジか……」
「君たちふたり、
いま『そんなところ』まで行ってるのか……?」
「…………………………
…………………………
シラフのときに聞きたかったぁぁ……」
両手で隠されて表情はうかがえないが、
指の隙間から『万感の思い』を
詰め込んだ嘆息が漏れた。
美作の用意した『サプライズ』は、
空織に対して『クリティカル』に刺さったようだ。
マヌケなポーズで固まるその姿を見るに、
ある種の『酔い冷まし』にさえなっている。
やがて美作からスマホを差し出されると、
写真は好きにしてくれ……とぶっきらぼうに
言い放ち、頬杖をついて覗き込む。
「それで『応援』……『応援』、ねぇ。
なるほどな……」
自分が呼ばれた理由が
なんとな〜く『見えてきた』気がする。
片眉を上げてささやかな笑みを作り、美作を見返す。
252
:
美作くるみ『プラン9・チャンネル7』
:2024/04/11(木) 23:21:00
>>251
返ってきたリアクションを見て満足そうに笑みを深める。
「――――ご理解いただけて幸いです」
pi
そして、空織のスマホに写真を送信した。
「でも、応援してもらう為だけにお呼びした訳じゃありません。
最初に伝えた通り、空織さんに『お仕事』をお願いしたかったからです」
ガサッ
「とりあえず『これ』を見てもらえますか?」
足元の紙袋から中身を取り出し、ローテーブルに乗せていく。
『レザーキャップ』、『ジップアップパーカー』、
『カーゴジョガーパンツ』、『ハイカットスニーカー』。
動きやすさを重視した『オールブラック』の『モードストリート』だ。
「これは『パフォーマンス用の衣装』なんです。
私がコーディネートしたんですけど、まだ少し物足りないんですよね。
そこで、『専門家』である空織さんに、手を加えて頂けないかと――――」
『嘘』はついていない。
例の『最終試験』は、『審査員』の前で『魔法陣』を描き、
そこから実際に『悪魔』を召喚する。
ある意味で一種の『パフォーマンス』なのだから。
「この衣装には、明確な『コンセプト』があるんです。
空織さんは『サタニズム』というものをご存知ですか?」
『サタニズム』――『悪魔主義』だとか『悪魔崇拝』だとか呼ばれており、
怪しいイメージが付き纏う言葉。
ただ、美作が説明しようとしているのは、そうした類の話ではない。
言うなれば、もっと根源的な内容だ。
253
:
空織 清次『エラッタ・スティグマ』
:2024/04/13(土) 19:04:52
>>252
(美作)
「なんだ、違うのか?
わたしはてっきり『アイドル衣装を作れ』なんて
依頼されるんじゃないかと思ったが……」
視線を画面から卓上に移し、
並べられた衣装をぼんやり眺める。
「ふぅん。今日の君と『おそろい』だな。
君も踊るのか?」
頬杖をついたまま、他人事のようにつぶやく。
現時点では、さほど興味を惹かれていない……
というより、話の終着点を理解しかねて
当惑しているというのが正直なところらしい。
「『サタニズム』ぅ?
そりゃ辞書的な意味ていどなら知ってるが……」
足を組み直し、髪をぽりぽり掻く。
またも空のカップに視線。
「わたしはよくある『カウンターカルチャー』の一形態として、
『ヒッピー』とか『パンク』とかと同じ箱に入れてる程度の
認識しかしてないな。
……この話、なにか関係があるのか?」
254
:
美作くるみ『プラン9・チャンネル7』
:2024/04/13(土) 21:48:52
>>253
「あははは……私の格好は『願掛け』みたいなものですよ。
ええと、私が言いたい事も概ね似たような感じですが、
『補足』を兼ねて一応ご説明します」
「例えば、『原罪』というのは、
『人間は生まれつき罪を背負っている』という考え方ですよね。
それとは逆に『人間性を肯定する』のが『サタニズム』の本質なんです。
これって『スタンド』とも近い部分があると思いません?
ほら、『精神の象徴』じゃないですか」
『説明』を続けながら、用意した『衣装』に片手を添える。
「――――コンセプトは『現代のサタニスト』。
『現代の象徴』としての『ストリートファッション』を、
『サタニズム』を連想させる『黒』を基調とした『モード系』で纏めました。
そこに『スタンド』が関わる事で、本物の『悪魔』とも関連付けられて、
よりエンターテインメント的な掘り下げが可能になります」
「何故こんな事をしているかというと、空織さんが言われたように、
まさしく『カウンターカルチャー』ですね。
つまり、『アイドル』という存在に対する『対抗馬』です。
必ずしも『悪魔的』である必要はないんですが、
『ライバル』に据えるには分かりやすい方がいいですから。
『正反対のイメージを持つパフォーマー』を立てる事で、
幅広い客層にアピールしつつ、いい意味での『競争意識』を生み出し、
お互いに磨き合ってもらおうという意図です」
あるいは、かつての『美作くるみ』と『雛形弥生』の対比も、
それと似通っていたと言えるかもしれない。
「ただ、こっちの方が『人を選ぶ』と思いますから。
事前に少数の人達の前で披露して、反応を見る予定になっているんです。
『公開リハーサル』みたいなものですね。
そこでの結果次第によっては、
『プロデュース』に『軌道修正』を加えようと思っています」
流れるように出てくる言葉には、少しの淀みも生じない。
そして、これも『嘘』ではなかった。
せっかく『人が集まるイベント』があるのだから、
その機会を活かさない手はない。
『候補生』であるキリシマにとっては『最終試験』だが、
美作にとっては『プロモーション活動』の一環でもあるのだから。
『チャンスは見逃さない』。
「空織さんの『能力』で、この衣装に『刺繍』を施して頂きたいんです」
これが本当の意味で『本題』だ。
「『スタンドの力』――言うなれば『悪魔の力が宿った衣装』があれば、
一層『パフォーマンス』を盛り上げられる一因になります。
空織さんも御存知のように、
『カーマ・カメレオン』は『スタンドのドレス』ですから、
そちらとの『コントラスト』も引き立つはずですよ」
ひとしきり喋ってから一呼吸つき、
今日の中では最も真剣な面持ちで、
改めて空織と向き合う。
「…………これは『空織さんにしか頼めない仕事』なんです。
『服飾に適した能力』と『専門家としての知見』を兼ね備えているのは、
私の知る限りでは空織さん一人だけです。
どうか引き受けては頂けないでしょうか?」
『スタンドの力が込められた衣装』。
それが確保できれば、大きな助けとなる事は間違いない。
本当は『一から作る』のが理想だが、それは難しいだろう。
実現できる可能性を考えると、『刺繍を入れてもらう』のが妥当なラインだ。
『服飾』の分野において『エラッタ・スティグマ』よりも優れたスタンドは、
美作の知識と経験には存在しなかった。
255
:
空織 清次『エラッタ・スティグマ』
:2024/04/14(日) 13:36:26
>>254
(美作)
「…………」
しばし美作氏の独演に耳を預ける。
そのうち、組んだ足が解かれて正面を向き、
頬杖をついていた手が口元を抑えるように回り込む。
そこでようやく自分が前傾姿勢になっていたことに気づいた。
美作氏に返答を求められたところで、
あらためて重心を整え、背もたれに身を預ける。
「…………参ったな。
アリーナの副業がどうこうの話をしちゃいるが、
君の本分は明らかに『こっち』だった」
腕を組んで天井を見上げ、
やがて美作氏の顔に視線を戻す。
その顔には困ったような、しかし楽しげな
漂着者の微笑が浮かぶ。
「――まごうことなく『喋りのプロ』だ、君は。
こうも簡単にノセられちまうとはな」
「是非ともやらせてくれ。
ビスポーク
ひとりの仕立て師として、君の『要望』に全力で応えよう」
椅子の背もたれに手をつきながら立ち上がり、
美作氏へと右手を差し出す。
「―――で、肝心なところをまだ聞いてなかったな。
こいつを着るのは誰なんだ?」
256
:
美作くるみ『プラン9・チャンネル7』
:2024/04/14(日) 22:18:44
>>255
美作は『喋る』という分野に関して、人並み以上の自負を持っている。
だから、こうして口を開いたからには、
『何があろうと説得する』という意志で臨んでいた。
それは『最終試験』の完成度を上げる為であり、
また『門倉派』が行う興行の為であり、
そして自分自身のプライドを賭けた『小さな舞台』でもあったのだ。
「そう言って頂けて、私も安心しましたよ。
もし、ここで断られてしまっていたら、
『パーソナリティー』の看板を外す事を考えるところでした」
同じように立ち上がり、真剣さを湛えた口元を柔らかく綻ばせる。
「『よろしくお願いします』」
差し出された右手を取って、感謝の意を込めた握手を交わす。
「あ、そうですね。
『仕事』を依頼する訳ですから、その辺りも伝えておきます。
実際に会った方が参考になりそうなので、ここに呼びますよ」
そう言うとスマホを操作して、どこかに『電話』を掛け始める。
「――――もしもし?『キリシマ君』?
もうすぐ『レッスン』が終わる頃だと思ったから連絡したの。
そう、丁度いいタイミングね」
「悪いんだけど、今から『門倉不動産』に来て欲しいのよ。
『衣装』の事で大事な話があるから」
「ええ、それじゃ待ってるわ」
pi
まもなく通話を終えると着席し、再び空織の方に向き直る。
「これから来ますから、少し待ってもらえますか?
『キリシマ・アキト』っていう高校生の子なんですけど、
『ストリートダンス』の特訓をする為に、
『ダンススクール』に通ってるんですよ。
学校では『パルクール研究会』に所属してるので、
運動神経を活かせると思って私が勧めたんです。
もちろん『プロデュース』の一環ですよ」
「『とびっきりクールに仕上げる』って約束しましたからね。
他の誰でもない空織さんのご協力があれば、
『さらに良いものに出来る』と確信しています」
――――――パチッ★
『一流』と見込んだ仕立て師に向けて、模範的な『ウインク』を送る。
キリシマが来るまで、そう長くは掛からないだろう。
なるべくなら今日の内に『完成品』を手にしておきたいので、
彼と対面する事が『イメージ』を広げる助けになればいいのだが。
257
:
空織 清次『エラッタ・スティグマ』
:2024/04/15(月) 18:26:07
>>256
(美作)
美作氏の瞳から放たれたウィンクの流星を、
片手でペシっと払い落とすジェスチャーをする――
――直前で振り上げた手を止め、
今回は美作氏の『ファンサ』を真正面から受けとる。
茶目っ気のある既視感に、
片眉を上げて美作氏に笑い返す。
「たしか……こいつの価値は『100万ドル』……
……だったっけか?
あの時はとんだ値段を吹っ掛けられたもんだと思ったが」
「今のわたしには何より名誉ある報酬だな。
今回の仕事の対価としてありがたく受け取らせてもらうよ」
わざとらしく胸に手をあて、右手を握り返す。
が……その握手にはどこか『ぎこちなさ』が燻る。
まだ酒気が尾を引いているのかもしれない。
「……あー……すまないが、
『おかわり』をもらえるか?
(実はちょいちょいサインを送っていた)」
「高校生の前となりゃ、さすがに
もうちょっとマシな大人を演じないとな……」
襟を整えて着座。
美作氏の説明から、
だいたいこんな雰囲気の子か?
……などと束の間の想像を膨らませつつ、
もうひとりの役者の到着を待つ。
258
:
美作くるみ『プラン9・チャンネル7』
:2024/04/15(月) 21:23:44
>>257
「あははは、覚えていてくれたんですねぇ。
今でも『価値』は下がってませんよ。
あの頃より『輝き』は増してるはずですから」
『自らの才能を活かしたい』という気持ちは、以前からあった。
『アリーナ』が用意した舞台に立った時、かつての『ステージ』を思い出し、
『また参加してみたい』と思った事は忘れていない。
しかし、今は違う。
『舞台を用意してもらう』のではなく『自分自身の手で作る』のだ。
だからこそ、美作の心は『活力』に溢れている。
「すみません、気が利かなくって。すぐにお持ちしますから」
スッ
「久し振りにお喋り出来たのが嬉しかったもので」
空のマグカップを持ち上げ、軽やかな足取りで給湯室に消えていく。
空織のサインに気付かなかったのは、それだけ真剣だったという事だろう。
報酬とは関係なく、今回の依頼は大きな意味を持っている。
『美作くるみ』の実力が試されているのだから。
スタンド使いとして、また一人の人間として。
「――――どうぞ」
コト
ミネラルウォーターで満たされたカップを置き、空織と共に『候補生』を待つ。
……………… ……………… ……………… ……………… ………………
「『パル研』の活動に加えて『ダンス』の練習……。
なかなかに『試練』だが、
『メフィストフェレス』の導きなくして、
『魔法使い』の道は開けない……」
ザ ッ
「フ……しかし、この生活にも『慣れてきた』……。
『高鬼』、『いろ鬼』、『こおり鬼』……
幼稚園時代から『各種鬼ごっこ』で培ってきた『基礎体力』は、
この為にあったとさえ思える……」
ザ ッ
「――ありがとう……『水沢先生』……!」
十数分ほど経った頃、美作に呼び出された『キリシマ・アキト』は、
『門倉不動産』の前に立っていた。
今は『私立清月学園』の制服を着ているが、特に改造されていたりはしていない。
だが、『カッコ良さ』にこだわっているだけあって、『着こなし』には一家言ある。
それは至って単純で、『身の丈に合う格好を心掛ける』というものだ。
だらしなく着崩したりはせず、
どこに出しても恥ずかしくないくらいキチッとしていた。
独特の『センス』とは対照的に、妙な部分で『真面目さ』を発揮している。
そのせいで『内面が強調される』という結果を招くのだが。
ガチャ
入室したキリシマは、ソファーに座る二人を目に留めた。
先程の電話と合わせて大体の状況を把握し、空織に向けて一礼する。
『ここだけ』を切り取って見れば、単なる『礼儀正しい少年』に映るだろう。
259
:
空織 清次『エラッタ・スティグマ』
:2024/04/16(火) 15:36:34
>>258
(美作)
開扉の音に振り返り、少年の姿を認めると、
背もたれに手をついて立ち上がる。
「やあ、どうも。
君が『キリシマ君』かな?」
「今回、君の衣装製作を担当させてもらう『仕立て師』の
『空織 清次 (くおり きよつぐ)』だ。
いろいろと忙しい中で悪いんだが、ちょっとだけ
打ち合わせに付き合ってもらってもいいかな」
……ふぅ〜む。(まじまじ)
『パルクール部』とか『ストリートダンス』とか
事前に聞いた話と比べると
またずいぶん真面目そうな子だな。
ていうか最近の若者はみんな身綺麗で礼儀正しく
シュッとしてるのすごいよな……偉いよ……
物の値段とか上がってるのに……
(おじさん過ぎる思考)
……なんて取り留めのない考えを垂れ流しながら、
キリシマ君を迎え入れる。
彼の身体的な特徴を仕立ての目線でチェックしつつ、
ひとまず自己紹介を聞いてみるか。
260
:
美作くるみ『プラン9・チャンネル7』&キリシマ・アキト『候補生』
:2024/04/16(火) 18:49:29
>>259
キリシマの背丈は、男子高校生の標準よりは少し高いくらいだ。
運動部らしく引き締まった体つきをしている。
それ以外は平均的と言っていいだろう。
「フ……『話が早い』じゃあないか。我が『メフィストフェレス』」
バ ッ
「改めて名乗らせて頂こう。
『キリシマ・アキト』――『悪魔』と契約を結ばんとする『ファウスト』だ」
バ ッ
「『カッコ良く生きる事』こそ、オレ自身が自らに定めた至上の『使命』……!」
自分で考案した『ポーズ』を決めながら口上を述べる。
一種の『身体芸術』に打ち込んでいるだけあって、
さすがにキレのある動きだった。
しかし、客観的に見るとイマイチ決まりきっていないのは、
『余計な事』を喋っているせいだろう。
「――――どうぞ、よろしく」
一連の『演技』が終わると、また元通り姿勢を正し、軽く会釈する。
ここまでが『ワンセット』だったようだ。
黙って立っているだけなら、やはり普通の若者に見えた。
「あははは…………ありがとう、キリシマ君。
『練習の成果』は分かったから、とりあえず座ってくれる?」
キリシマに着席を促しつつ、美作は空織に耳打ちする。
「見ての通り、なかなか『個性的』でしょう?
でも、『パフォーマー』としては、確かな素養のある子ですから」
一応『フォロー』を入れておき、早速『仕事の話』に移る。
「それで『刺繍』についてなんですけど、さっきもお話した通り、
この『四つ』に『コンセプトに相応しいデザイン』が欲しいんです。
具体的な『図案』などは、お任せしても構いませんか?」
そう言いながら見下ろすのは、事前に用意した『衣装』だ。
「ただ、せっかく『スタンドの力』を使って頂く訳ですから、
『人間業とは思えない仕上がり』を期待したいですね。
その方が『インパクト』が出ると思いますから」
普通に考えれば、あまりにも無茶な注文。
しかし、空織なら出来るはずだ。
そう確信している。
261
:
空織 清次『エラッタ・スティグマ』
:2024/04/17(水) 16:32:47
>>260
(美作)
「………………………………………………
………………………………………よろしく」
「『キリシ……いや、
ファ……『ファウスト君』」
知らん間に『悪魔』にされてたんだが……?
耳打ちしてくる美作氏に、
『聞いてないぞ』と恨めしそうな視線を返す。
「……君が何もかもわたしに一任したいってなら
それでも構わないが、
もし意見やアイディアがあるなら、
それはどんなにちっぽけなものでも
ちゃんと伝えてくれると嬉しいね」
「『テーラーリング』の本質とは、
常に『ビスポーク』、『対話』にある。
わたしにとって『最良』の創造物とは、
一人の力で織り上げるものだとは思わない」
「たとえば衣服においてもっとも重要なのは、
それを縫う人間の意見ではなく、
それを着る人間の意見であるべきだ」
などと美作氏にビスポークの基本スタンスを伝えつつ、
あらためてキリシマ少年に向き直る。
……そうは言ったものの……
果たしてこの未知の『Z世代』と、
どこまで『対話』を成しうるだろうか……?
彼が求める衣服を正しく織り上げるためには、
わたしが彼に何より深く向き合う必要がある。
この対話の中で、『ファウスト』を自称する彼が
どこまでわたしに腹を割ってくれるか……
わたしにとっても『挑戦』だ。
「……ええと……『キリ……シマ君』?
君のことをもっと知りたいんだが、色々聞いてもいいかな。
たとえば好きなものとか、興味のあること、将来の夢。
誰かに伝えたいこと、楽しかったこと、友達のこと、
今回のパフォーマンスにかける想い。
君の話したいことなら何だっていい。
『キリシマ君』のことを、わたしに教えてもらってもいいかな」
「それと……君も『スタンド使い』……なんだよな?」
262
:
美作くるみ『プラン9・チャンネル7』&キリシマ・アキト『候補生』
:2024/04/17(水) 20:36:09
>>261
もし事前に伝えていたら、首を縦に振ってはもらえなかったかもしれない。
それも詳しく言わなかった理由の一つだが、あれこれ説明するより、
実際に見た方が分かりやすいというのもある。
そうでなければ、この場に呼ぶ必要はなかったのだから。
「ごもっともです。
実は、私にも『アイディア』はあるんですよ。
『ストーリー』と言った方がいいかもしれません。
空織さんのセンスにお任せしようとも思ったんですが、
『参考』の為に伝えておきますね」
「あ――キリシマ君は、ちょっとだけ待っててくれる?」
キリシマに声を掛けてから、簡単な『プレゼン』を始める。
「『ギリシャ神話』に『アラクネ』という人物がいますよね。
『神々を凌ぐ程の織り手』で、
『機織りを司る神』に『織物勝負』を挑み、
『勝利』したせいで命を落としてしまった。
それが大雑把な神話の流れになりますが、
ここからは私が構想した『背景』をお話します」
「『秀でた才能』のせいで神に疎まれた『アラクネの魂』は、
同じく『人知を超えた織り手』の技が込められた装束に共鳴し、
時空を超えて『一つ』となった。
この現世で、多くの人々から『支持』を得る事で『力』を蓄え、
もう一度『神々に立ち向かう為』に。
その『依代』として『アラクネの意思』に選ばれたのが…………」
「彼――――『キリシマ・アキト』だった。
キリシマは『自らを飾るに相応しい衣装』を手に入れ、
『アラクネの残滓』は『人々の目に触れる機会』を手に入れる。
互いの『利害』が一致した結果、
『二つの魂』は『共通の目的』に向かって歩み出す」
一呼吸ついて話を区切り、再び口を開く。
「と……大体このような感じです。
この『背景』を踏まえたものをお願い出来ればと」
「主に『悪魔』に絡めるのは、
『アラクネが蜘蛛に変えられた』というエピソードですね。
『傲慢の大罪』を戒める存在としても描かれていますから。
『目立つ事』を『傲慢』と解釈するなら、
その辺りも『パフォーマー』に重ねられると思います」
「それで、『女性と蜘蛛が融合した怪物』を、
象徴的な『モチーフ』にする案を考えているんですけど。
『人間性の肯定』という『サタニズムの本質』に則り、
神から『傲慢という烙印』を押された『誇り高い怪物』です」
空織には伝えられないが、
これら一連の細かな設定は『試験』の為に用意したものだ。
「とりあえず、私からの『リクエスト』は以上になります」
キリシマに目配せして、改めて彼に話を振る。
263
:
美作くるみ『プラン9・チャンネル7』&キリシマ・アキト『候補生』
:2024/04/17(水) 20:45:54
>>262
美作のアイコンタクトを受けて、キリシマが言葉を返す。
「フ……一つずつ順番に答えていく事にしよう……」
「好きな物は『カッコいいと思うもの』。
興味のある事は『カッコ良さを磨く事』。
将来の夢は『もっとカッコ良くなる事』」
「『カッコいい』という言葉を馬鹿にする者もいるが、
少し考えてみてもらいたい……。
『孔雀の飾り羽根』や『ライオンの鬣』は、
果たして『何の為にあるのか』を。
全ては『自分をカッコ良く見せる為』に他ならない。
自然界では『よりカッコいい個体』ほど、
『味方』を作りやすく『敵』を寄せ付けにくい」
「そう――『カッコ良さ』とは『生存力』であり、
『カッコ良くなりたい』という欲望は、
『三代欲求』にも匹敵する『第四の欲求』……!
オレが『カッコ良さ』を信奉する理由は、
正直なところオレ自身にも分からない……。
フ……抑えきれない『本能』なのかもしれないな……」
空織に比べれば若造の一人に過ぎないが、
キリシマにも独自の『人生哲学』がある。
それは『カッコ良く生きる事』だ。
何故ここまで追い求めるのか。
本当に『カッコ良さ』が『第四の欲求』なのだとすれば、
それがキリシマは人よりも強かったのだろう。
そうだとしたら、『本能』という表現は、
あながち言い過ぎでもない。
「誰かに伝えたい事は、
『まだファウストは読み終わってないから、
追加で二週間くらい貸して下さい』と、
『図書委員の小川さん』に伝えたい。
楽しかった事は、我が『パルクール研究会』を設立する為に、
そこら中を駆け回った事だな。
苦労の連続だっが、今となっては『古き良き記憶の欠片』……。
友達といえば、オレが卒業した後に、
後輩達が無事に『パル研』を守ってくれるかどうかが心配だ」
「今回のパフォーマンスには『悪魔との契約』が懸かっている。
オレの『眠れる魔力』を引き出す事が出来るかどうか……。
フ……しかし、余計な気負いはない。
ただ『十七年の全て』を賭けて『舞う』だけさ……」
空織の発した問い掛けに対し、
まるで『記者会見』か何かのように、いちいち律儀に答え切った。
根は真面目な性格なのだろう。
話し終わったタイミングで、横で見守っていた美作がフォローを入れる。
「彼は『スタンドが見えます』。
でも、『自分のスタンド』を出す事は出来ないんです。
キリシマ君が言ったように、まだ『眠っている状態』なんだと思います」
「でも、『スタンドが見える』という事は、
裏を返せば『目覚めかかっている段階』まで来ていますから。
適切な『刺激』を与えれば、完全に引き出せるかもしれません。
彼を選出したのは、そういう意図もあるんです」
「『アラクネの衣装』と『衣装を纏う者』の利害が一致したように、
『私と彼の目的』も重なった訳です」
事実、『試験』に『合格』すれば、晴れて『スタンド使い』になれるのだ。
細部こそ曖昧にしているが、大筋としては『ありのまま』を説明する。
『パフォーマンス』という『表向きの理由』があるからこそ、
ここで必要以上に隠し立てはしない。
264
:
空織 清次『エラッタ・スティグマ』
:2024/04/18(木) 12:26:51
>>262
(美作)
テーラーとしちゃアンフェアだが、
その人の『本質』を知りたければ『スタンド』を見るのが
いちばん手っ取り早い。
そんな皮算用での質問だったが―――
「『悪魔との契約』ぅ?
『見えるけど、まだ出せない』……?
―――ああ、なるほどね」
頭上に浮かんだ疑問符が、
『目覚めかけ』という美作氏の『翻訳』でストンと腑に落ち、
それから特に疑問を挟む余地はなくなる。
「……では、『暴発』には気をつけないといかんな。
もっとも君がついているならその点は安心できるが」
脳裡に浮かんだのは『雛形氏』の後ろ姿だった。
目の前の少年の行く末に、
自分も関心と注意を注ぐことを心中で誓う。
「それとスマンが……『紙とペン』をもらえるか?
君が語ってくれたストーリーは実に興味深い。
喋りに加えて『作話』の才能もあるとは驚いたな」
美作氏の多芸っぷりに素直な称賛の声を伝えると、
ふぅっと短い息を吐く。
そして眼前の『眠れる獅子』にあらためて向き直る。
265
:
空織 清次『エラッタ・スティグマ』
:2024/04/18(木) 12:32:00
>>263
(キリシマ)
「……………どうもありがとう。
とても参考になったよ」
「キリシマ君とはどんどん腹を割って話をしたい。
だからわたしも胸襟を開いて話をしよう」
「身体保護だの所属的連帯感だの社会地位表現だの、
人類にとって『衣服の役割』は数多ある」
「しかしこと『アトラクティブクローズ』においては、
わたしは『欲望を織る』ことが衣服の本質だと思っている」
「『欲望にどのような折り合いを付けて布の上に着地させるか』。
その『勿体の付け方』を人は『センス』だとか『洒落』と呼ぶ」
「で…………
君にとっての『欲望』が『カッコ良さ』だってことは、
実に、実によぉ〜〜〜くわかった」
「そうすると、次は『この先』を追求していくことになる。
つまり『カッコ良いとは何だ?』
なんとも掴みどころのない問いだが、
手掛かりはいくつかある」
「そのアプローチの一つが、『逆』を考えることだ。
君にとって『カッコ悪い』とはどういう事かな?
君が『最高にカッコ悪い』と思うのは、
どういう人や物や事だろう?」
「その『落差』に、君の布地に切り取るべき
『欲望』の本質が垣間見える」
「腰の曲がった老婆を君はカッコ良いと思うか?
子を産むために糞にたかる蝿は?」
「君にとっての『カッコ良さ』と『カッコ悪さ』を分かつ、
そのちょうど『境界線上』に立つものは『何』だと思うかね?」
ここまで一息に言い切って、
キリシマ少年の反応を見る。
しかし……相手はまだ高校生だ。
抽象的な情動の言語化は難しかろうな――
などと内心では思っていたりする。
正直……刺繍のインスピレーションを得るだけなら、
美作氏のネタだけで『十分以上』だ。
『傲慢なアラクネ』と『サタニズム』を
『人間性の肯定』で繋ぐ視点はユニークで、
刺繍としての『画力』もある。
そう思いつつも、なかば祈りのように少年の返答を待つ。
着る人の『本質』をほんの少しでも布地に織り込みたい。
そう願ってしまうのがテーラーの『本能』だ。
266
:
美作くるみ『プラン9・チャンネル7』
:2024/04/18(木) 17:39:53
>>264
‐265
キリシマは言動こそ奇矯だが、他の部分に関しては意外に『まとも』だ。
ある意味で『バランス』が取れている。
彼と付き合ってきて、それは理解していた。
ただ、初めて顔を合わせる相手には『仲介役』が必要だろう。
そして、その考えは正しかったらしい。
「これでも『プロデュース担当』ですから。
私の『プラン』は無制限です。
それが『門倉派』にスカウトされた理由ですよ」
ソ ッ
指定された物をデスクから探し、空織の手前に置いておく。
ここは余計な口を挟まず、キリシマに任せよう。
おそらく悪いようにはならないはずだ。
267
:
キリシマ・アキト『候補生』
:2024/04/18(木) 17:45:14
>>264
‐265
究極的な意味において『カッコいいとは何か』――
それは他ならぬ『キリシマ自身が知りたい事』でもあった。
生涯に渡って取り組むべく『ライフワーク』として位置付けている。
その『問い』の答えを見つける為に、
日々『カッコ良さ』を追い求めているのかもしれない。
「フ……『最高にカッコ悪い事』か……」
「今のオレは一人の『高校生』に過ぎない……。
『社会戦士』の経験もない未熟者……。
『この身だけ』で出来る事は限られている」
「だが、自分で自分を理解できれば、『道』は開ける事を実感した」
『遠い過去』を回顧するかのように目を細める。
実際は、ほんの『二年前』の事だ。
だが、『高校生の二年』は実際の時間よりも長い。
「『身体一つ』で『カッコ良さ』を表現できる世界。
それが『パルクール』だった。
『パル研』を立ち上げたのは、
中等部から高等部に『昇級』を果たした『一年生』の時……」
「『難色を示す担任』を説得し、
『体裁』を整える為に学校を走り回って『会員』を集め、
『顧問』になる条件と引き換えに『体育教師が出した課題』を乗り越えた。
そこで、あたかも『天啓』の如く、オレは閃いた……」
「『やれば出来る』……!」
なんの捻りもないフレーズを、堂々とした口調で言い放つ。
「しかし、残念ながら『正式な部』としては認められなかった……。
ゆえに『パルクール研究会』として『妥協』せざるを得なかった……。
『やれば出来る』が、『やっても出来ない事もある』……。」
「だが、『今は出来ない』というだけだ……。
オレが一流の『社会戦士』になる頃には、
『パル部』という名の『新たな門出』を迎えてくれると信じている……!」
長い長い『前口上』を終え、ようやく話題が『本筋』に戻ってくる。
「老婆であれば腰は曲がるだろう。
歩行を補助する為に杖を使い、慎重に歩いているかもしれない。
己を受け入れ、深く理解している者でなければ出来ない事だ。
蝿が糞に集まるのは、生存の道筋を見出した結果。
自らを理解した上で、彼らも為すべき事を為している」
「オレが『最高にカッコ悪い』と思うのは、『身の丈に合っていない事』だ。
『準備運動』もなしに『派手な動き』をやろうとすると『怪我』をするのは必至……!」
「自分に何が出来るのか?何が出来ないのか?どうすれば出来るようになるのか?
それを理解しようとしないのは、誰であろうと『カッコ悪い』と断言しよう……!」
キリシマの『真面目さ』も、そこから来ている部分が大きかった。
「『一介の高校生』にも出来る事がある。
もちろん出来ない事の方が多いだろう。
いつか出来るようになるかもしれない。
それらを正しく理解する事が、オレを『カッコいい生き方』に導いてくれる……」
「オレは、そんな気がしている」
結びの言葉で締めくくり、空織に視線を投げ掛ける。
268
:
空織 清次『エラッタ・スティグマ』
:2024/04/19(金) 21:06:22
>>266-267
(美作・キリシマ)
「…………………………………。
なるほど」
キリシマ少年の朗唱を聴き終え、
目を閉じて小さくうなずく。
彼の中の『欲望』を手繰る長い旅。
これまでの濃密な応答から導き出される
彼の『本質』とは、すなわち――
『普通』だった。
ひたすら『ふつう』。
言ってることは仰々しく装飾過多だが、
今までマジに当たり前のことしか言ってない。
キリシマ君は……『よくいる普通の17歳の少年』だ。
言葉遣いが人より変わっているだけで、
中身はむしろ好青年なほう。
初対面時の断絶感からすれば印象ははるかに好転したが、
モチーフとしては逆に『魔法』が解けて難しくなった。
まぁでも……そうだよなぁ……
林檎君とか三枝君とかと会ってマヒしてたけど、
10代の子どもって、まあ普通こんなもんだよなぁ……
『普通』……『まじめ』……かぁ……
うぅ〜〜〜ん……
眉根を揉んでうなりつつも、
受け取った紙の上にこれまでのワードを並べ、
自分なりに点綴していく。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
・『サタニズム』=『原罪の否定(カウンター)』 → 『ストリート』
→ 『人間性の肯定』 『本能の追求』
・『アラクネ』=『神に挑む才覚』→『傲慢の罪』 『試験』 『罰』
→『協力者』
・『蜘蛛の糸』=『再起』 『再挑戦』のアイコン?
・『獅子のたてがみ』 『未達』=『等身大』 ← 『加飾』 ……
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
「…………」
「ちなみに……キリシマ君の方から、
衣装や今度のパフォーマンスについて
わたしに何か言っておきたいことはあるか?」
ペンでこめかみをコツコツ叩きながら、
おそらく最後になるだろう質問。
269
:
キリシマ・アキト『候補生』
:2024/04/20(土) 04:40:42
>>268
「フ……我らが『織り手』に一つ語らせてもらおう……。
なぁに……難しい事じゃあないさ……」
空織が発した問い掛けに対し、薄く笑いながら言葉を返す。
「オレの『魂』を織り込もうとしてくれる厚意には感謝の意を禁じ得ない。
しかし、敢えて『神に歯向かう覚悟』で言おう……。
全身全霊を以て『拒否』する……!」
「何故なら――――」
バッ!
「『カッコ悪い』からだ…………!」
ググッ!
不意に立ち上がり、拳を強く握り締める。
「今は『修練の身』であり、これは『儀式』の為に用意された装束……。
ゆえに、オレには『魔力』は『まだない』。
『紋章』に刻まれた『アラクネの加護』が、
『眠れる魔力』を解き放つ助けとなってくれるだろう……」
「だが……!
『オレ自身の魂』が『紋章』の中に描き出されるのは、
『魔力に目覚めた後』でなければ『身の丈に合っていない』……!」
空織は『キリシマの個性』を織り込もうとした。
しかし、この場では『不要』だと言い切る。
何故なら、今の自分には『その資格がない』からだ。
「見事に『契約』を果たしたならば、改めて『その時のオレ』に相応しく、
『キリシマ・アキトの魂』を『紋章』に描き加えてもらいたい……」
ス ッ
やがて落ち着きを取り戻し、今度は静かに着席する。
「――それがオレ自身に課した『使命』だ」
270
:
美作くるみ『プラン7・チャンネル9』
:2024/04/20(土) 05:44:25
>>268-269
『着る者の個性』を活かす。
空織の『仕立て師』としての考え方は正当であると理解できるし、
それは普段なら大変ありがたいものだ。
ただ、キリシマは『良し』としなかったらしい。
どうすべきか考えて、助け舟を出す事にした。
空織とキリシマの両方に対して。
「…………さっきの続きになりますが、もう少し詳しくお伝えしましょうか。
まず、『彼が依代に選ばれた理由』から。
これには『三つ』あります」
ピ ッ
指を三本立てながら、『さらに深い部分』について述べる。
「『カッコ良くあろうとする気持ちが強い』というのは、
言い換えれば『自分自身に誇りを持つ気持ちが強い』という事です。
それが『アラクネ』の持つ『誇り高さ』と波長が合った。
まず、これが『一つ目』ですね」
「『二つ目』は、彼が『複雑な思想や理念を持たない事』です。
『依代』となる人間の役割は、
人々と『アラクネ』を繋ぐ『パイプ』のようなものですから。
現世の人々から、いかに効率良く『支持』を集め、
いわば『信仰』という名のエネルギーを吸い上げられるかが重要になってきます。
『複雑な意思を持つ依代』だと、
吸収する過程で『依代自身の思考』が『不純物』として混じってしまって、
『純度の高いエネルギー』が『アラクネ』に行き届かないんですよ」
「『三つ目』は、さっきもお話した通り、
彼が『大勢の人々の目に触れる機会を持つ』からです。
だから『彼が選ばれた』。
これで、両者の関わり方が分かりやすくなったんじゃないでしょうか」
紙面に書き綴られた内容に目を通しつつ、顎に人差し指を添える。
空織が悩んでいる事は一目で分かった。
様々なキーワードが並んでいて、これらが調和できるのなら最良だろう。
危惧しているのは、全てを取り入れていった結果として、
却ってチグハグな印象になってしまわないかという事だ。
要点を絞り込む必要性を感じる。
「『アラクネ』を大きく描画して強調し、それと繋がるような形で、
全身に『糸』を思わせる『ステッチ』を入れるというのはどうでしょう?
『アラクネの加護を受けている』という『暗示』です。
これなら全体の統一感も出せるんじゃないかと思うんですけど」
「『サタニズム』の象徴としては――――『枷』なんてどうです?
『アラクネ』の首や手足に『枷』が付いていて、
それに繋がる『鎖』は引き千切られている。
『原罪から解き放たれている』イメージです。
さらに言うと、これは『依代とアラクネを結ぶ糸』との対比でもあります。
『動きを封じる為』のものではなく、
『人間性を肯定する者同士』の一種の『絆』として」
空織のメモを見た上で、『サポーター』としての意見を伝える。
彼が何と言うかは分からない。
だが、『より良い衣装』を確保する為に、
こちらも最大限のアイディアを出す用意はあった。
271
:
空織 清次『エラッタ・スティグマ』
:2024/04/30(火) 21:25:55
>>269
(キリシマ)
「……!」
キリシマ少年の真正面からの『決起と宣誓』に、
眼鏡の奥で驚きの波紋が広がる。
「……ほう」
わたしは先ほど、彼の内面を
『真面目で普通な年相応の少年』と評した。
その浅薄な人物評を心から詫び、訂正しよう。
彼は―――『熱い男』だ。
今回のパフォーマンスに臨むにあたり、
彼の決心は『本物』だ。
その内面には常に青い炎が燃えている。
『十七年の全てを賭けて舞う』という彼の宣言は、
決して修飾過多な『飾りの言葉』ではなかった。
キリシマ・アキトという少年はおそらく、
どんな相手にも『本気』で『本心』から向かい合う――
そういう男なのだろう。
「……君はいま、自らを『身の丈に合っていない』と表現した。
だが実際、君の齢でそれを自覚できる人間はそういない。
それだって立派な君自身の『本質』の一つであり―――」
それを理解した瞬間、
わたしの中でも静かな創発の火が灯る。
「君自身がすでに獲得している『カッコ良さ』の一つだ。
『今の自分が着飾るにはカッコ悪い』とも君は言ったが」
「その決意表明を聴いた今、わたしは逆にこの目に映る
『キリシマ・アキト』という人間の『カッコ良さ』を、
俄然この布の上で表現してみたくなった」
『着る者の意見をもっとも尊重する』。
だがそれは決して『一方通行』を意味しない。
それこそがまさに『ビスポーク』――『対話』の本領だ。
次はわたしが自らの意志を彼らに伝える番だ。
異なる『欲望』を布の上にどう着地させるのか?
それはこの先の『対話』で決まる。
自らの腕に重ねるように
『エラッタ・スティグマ』の右腕を彼方から引き出すと、
その手業を借りながら素早くペンを走らせる。
そうしてひとつの『スケッチ』を完成させると、
紙面をふたりに示して向きあい、『提案』を始める。
272
:
空織 清次『エラッタ・スティグマ』
:2024/04/30(火) 21:34:07
>>270
(美作・キリシマ)
ttps://downloadx.getuploader.com/g/hosimi_001/112/Bespoke.jpg
「先ほど、キリシマ君はこう言ったな。
『ライオンのたてがみは何の為にあるのか』――。
その問いに対する君の答えが、先の『宣誓』とで結びついた」
「わたしが捉える、今のキリシマ少年の『本質』――
それは『眠れる獅子』だ。
スタンドをめぐる君の現状がそうであるように、
今の君は『目覚めを待つ』仔ライオン――」
「ゆえに、そのたてがみはまだ未熟で『生えていない』。
君が心から追い求める『第四の欲求』、
存在しない力の象徴である、存在しないたてがみを――」
「アラクネが『糸で編む』ことで『創り上げる』。
『糸のたてがみ』という仮初の美で『支える』。
そうして、君の求める『理想の姿』への成長を『後押しする』」
「君の『欲望の形』をめぐる対話の中で、
わたしの中には浮かんだのはそんな『仕立て図』だ」
「他方……美作さんの紡ぐ『アラクネ』の物語もまた、
唯一無二の魅力的な作品像だ」
「ただわたしはアラクネを『演者を支える者』として、
あえて表面ではなく『背面』に配置したいと思った」
「イメージしたのは、儀式に必要な
『サタニズムの魔法陣』を『蜘蛛糸で編む』姿だ」
「ただしその彼女の『傲慢さ』を強調する要素として、
解き放たれた『鎖』もまた『蜘蛛脚』に見えるような――
自らを拘束していた鎖でさえ自らの手足とするような、
そんな構図を試してみたい」
「『獅子と蜘蛛』は一見突拍子もない組み合わせだが、
『七つの大罪』において、
『獅子』は実際に『傲慢』の役を担う『象徴動物』だ」
「ゆえに獅子は、『サタニズム』と『傲慢なアラクネ』という
テーマの『経糸』を繋ぎ止める『緯糸』にもなりうる」
紙上を指差しながら、ここまで一息で二人に伝える。
それから息を吐いて背もたれに身を預けると、
表情を緩め、キリシマ少年だけを見つめる。
「だがキリシマ君。
君が望むなら、この図面はすべて引き直そう。
テーラーはこうして常に君との『対話』を試みるが、
もっとも重要視すべきなのは『着る者』の意見だとする
その姿勢に一切の変わりはない」
「君自身が描かれることをやはり『カッコ悪い』と感じるなら、
そんな駄物をお仕着せられる道理などあってはならん」
「ただ……
その理由を、君は『身の丈に合わない』からと言った。
だがどんな衣服も『人の身の丈に合わせる』こと――」
「それこそが、『仕立て屋』にとって最大の職務であると、
わたしはそう信じて……いま君の前に立っている」
ビスポーク
「長くなったが――以上がわたしの『提案』だ」
「『キリシマ君』。
使命のために君がまとい、君の舞台を彩るための衣装だ」
「どうすべきか、君に選んでもらいたい」
273
:
美作くるみ『プラン7・チャンネル9』
:2024/05/01(水) 20:21:14
>>271-272
「――――なるほど…………。
とても理に適った解釈だと思います。
その『プラン』は大いに『アリ』ですね」
空織の解説に耳を傾けながら、
『エラッタ・スティグマ』が描き上げた『スケッチ』を注視する。
そこに示された『デザイン』は、非常に完成度が高い。
『魔法使いの衣装』として申し分なく、『芸術的』ですらあった。
「空織さんに頼んで『大正解』でした。
ただ、もう少し早く教えてくれたら、さらに良かったですねぇ。
こちらとしても、それによって出せるアイディアが変わってきますから」
「でも、フフ――――そんなのは『帳消し』ですよ」
「…………ちょっと整理させて下さい。
基本的な構成要素は、
『枷のあるアラクネ』・『糸の魔法陣』・『鬣のない獅子』ですね」
顎に手を添え、しばし目を閉じ、再び開く。
「『傲慢』を司る悪魔が、
『糸』で編んだ『鬣』という形で、『矜持』という名の力を与える。
『枷を持つアラクネ』と『鬣を持たない獅子』で『対比』も生まれますね。
『枷』を物ともしない『アラクネ』と、
『鬣』を持たずとも毅然とした『獅子』に共通するのは、
決して屈しない『誇り』・『自尊心』・『プライド』――――」
美作とキリシマが共同で進めている『最終試験』の準備。
それに合致するかどうかというのも重要だが、これなら問題なさそうだ。
都合上、空織に全てを打ち明けられないのがもどかしい。
「『獅子』が『キリシマ君』なら、『アラクネ』は『私』ですね」
呟くように発した一言には、様々な意味が込められていた。
『候補生』と『後援者』。
『力を持たない者』と『力を持つ者』。
『世に出ようとする者』と『かつて世に出ていた者』。
キリシマを『魔法使い』に押し上げる事で、他ならぬ美作自身も、
大きな『キャリアアップ』を成し遂げられる。
「一番はキリシマ君の意思ですけど、
『プロデュース担当』の意見として、私は『秀逸な案』だと思います。
『衣装』で『ストーリー』を語る方が、
言葉で長々と説明するより、遥かに伝わりやすいですからね。
観ているだけで自然と分かってもらえるというのは、
多くの『支持者』を集める為にも必要な条件ですし」
一通りの見解を話し終え、隣のキリシマに視線を移す。
「キリシマ君の考えを聞かせてくれる?」
274
:
キリシマ・アキト『候補生』
:2024/05/01(水) 20:37:26
>>271-273
「フ……『仕立て師』の使役する『悪魔』か……。
『人の形』をしているものが多いと聞いたのは確からしい……」
『聖別』が施された目を細め、
器用にペンを走らせる『エラッタ・スティグマ』のヴィジョンを捉えた。
ただ『見る事』しか出来ない。
だからこそ、それに『全力』を傾けられるのだ。
「今、この胸の内を明かそう。
オレは『空白』によって、『未達』という『鍵』を表現しようとした……。
『何もない』という事は『何にでも成り得る』のではないか。
ゆえに『契約』を果たした『証』として、
『オレの紋章』を刻んでもらいたいと考えていた……」
全くの門外漢であるキリシマに、『デザイン』の事は皆目分からないが、
だからといって何も考えていない訳ではなかった。
「だが……『儀式』を成就させねば『その先』はない……!
そして、『仕立て師』殿の『絵図』が、
より『契約』を成功に導けると、オレは感じている」
「何よりも…………」
「今のオレは『獅子』には満たない。
しかし、『鬣を持たない獅子』は、
我が『魂』の『象徴』に相応しいと言えるだろう……」
ス ッ
両手を膝の上に置き、空織に向けて深く頭を下げる。
「改めて――――『紋章の刻印』をお願いしたい」
275
:
空織 清次『エラッタ・スティグマ』
:2024/05/01(水) 22:33:17
>>273-274
(美作・キリシマ)
「言っとくが『早く教えて欲しかった』のは
こっちのセリフだからな」
「君がこんな『プロデュース業』やってるのだって
今日始めて知ったんだぞこっちは」
美作氏の軽口に口を尖らせて笑いかけつつ、
キリシマ少年の低頭に向かい合う。
「先ほどの君の『宣誓』には、
若々しくも不退転の『決意』が見て取れたよ。
正直シビれた」
「そんな覚悟だって過ちと思えば素直に撤回できる、
それも君自身が誇るべき『カッコ良さ』の一つだな」
テーブルに手をつき、ゆっくり立ち上がると、
卓上に広げられた衣装を指差す。
「じゃあさっそく『仕立て』にかかるとしよう。
で、だ。キリシマ君……良ければその衣装に
いま着替えてくれないか?」
「わたしの刺繍は『着た状態で』やる。
服というのは『立体』で見た時に
もっとも美しく見える存在でなければならんからな。
君の肉体の起伏と陰影、重力による身頃の緩み、
それらすべてを織り込んだ上で最適な刺繍を施そう」
「いわば『立体裁断(ドレーピング)』ならぬ
『立体縫製』って感じだな。
これはまだこの世に名前のない技法になる」
凡手には決して不可能な縫製法――
それを可能にする『魔法の手』がわたしにはある。
空織が魂の針糸でその図像を織り上げると、
『エラッタ・スティグマ』がその傍らに編み出される。
各部に糸車を備えた、無貌の機械人形のヴィジョン。
「準備ができたら始めるぞ」
276
:
美作くるみ『プラン9・チャンネル7』
:2024/05/02(木) 15:08:48
>>274-275
キリシマが納得してくれた事に、そっと胸を撫で下ろす。
同時に、『自分も知らなかった彼の一面』が見えた事も収穫だった。
美作にしても空織にしても、
他人の目を通して窺い知れる部分は僅かなものだろう。
「『複数の企画』を抱えてると、なかなか手が回らなくって。
いえ、それは言い訳ですね。
伝えるのが遅れてしまって申し訳ありませんでした」
ス ッ
丁寧に頭を下げたかと思うと、すぐに顔を上げて明るく笑う。
ニ コ ッ
「それじゃあ、今後は全面的に協力して頂けると考えていいですか?
空織さんの事、これからも頼りにしてますよ」
冗談めいた言い方ではあるが、期待しているのは本当だった。
『個性に合わせた刺繍を施せる』というのは、
今回に限らず『門倉派』にとって有用な人材だ。
『専門家』として力を借りられたなら、心強い事は間違いない。
「『空織さんが手掛けた衣装』を着て、
『パフォーマー』が『ステージ』に立つ。
それは私達だけの利益じゃなく、
空織さんも大きな『チャンス』に繋がると思うんです。
良かったら考えておいて下さい」
『タイアップ』を匂わせつつ、キリシマに視線を向けて『給湯室』を指差す。
「キリシマ君、あっちで着替えてきてくれる?
もうじき『ピース』が揃うから、気持ちを引き締めていかないとね」
『候補生』であるキリシマなら、この言葉の意味が分かるはずだ。
『空織清次』は『六人目』。
『最終試験』に臨むための最低限の条件が整う事になる。
277
:
キリシマ・アキト『候補生』
:2024/05/02(木) 15:35:27
>>275-276
空織の傍らに佇む『物言わぬ機械的な人型』を見上げ、その全身像を観察する。
「……『メフィストフェレスの使い魔』も『機械仕掛け』だったが、
あちらは『雄弁』で『近未来的』な印象を受けた。
『仕立て師の使い魔』からは『熟成された技術』の趣を感じるな……」
「フ……『社会科』の『歴史』で学んだ記憶がある……」
ス ゥ ッ
「『顧問』の『体育教師』に言われたが……
機械というのは、複雑化するほど予期せぬ故障が増えていく。
だが、構造が単純な道具は滅多に壊れないし、修理するのも容易い。
そして、『キリシマ・アキト』は、圧倒的に『後者』だと……」
バッ!
静かに立ち上がり、半身に構えて『ポーズ』を決める。
「フ……『褒め言葉』として受け取っておいた……」
キリシマが『魔法使い』を目指した理由は『カッコいいから』に他ならなかった。
雑賀のように『崇高な理想』も、木崎のように『切実な願望』もない。
『底が浅い』と思う者もいるかもしれないが、
『カッコ良さ』の為なら『悪魔』に魂を売る事も厭わない意思を持っている。
「分かっているさ……『メフィストフェレス』。
これから『衣替え』に取り掛かるとしよう……」
『衣装』を手に取り、『給湯室』に消える。
『魔力の宿った衣装』を身に着ければ、『儀式』は成功に近付くだろう。
一方で、気になる事もあった。
『魔法陣を描く為の道具』だ。
これは『魔法使いの衣装』と同じくらい重要のはずだが、
何故か美作は何も言ってこない。
(まさか『メフィスト』が忘れているとは考えられない……。
オレを試しているのか、何かしら智謀があるのか……)
ザ ッ
(フ……後ほど確かめてみるか……)
素早く着替えを終え、再び二人の前に姿を現す。
『オールブラック』の『モードストリート』。
ここまでは美作が事前に用意したコーディネートだ。
278
:
空織 清次『エラッタ・スティグマ』
:2024/05/03(金) 00:21:19
>>276
(美作)
「『プロデュース業』のおかげか知らんが、
ずいぶんと『タフ』になったみたいだな、君は」
美作氏の『口八丁』に、困ったような笑顔。
『喋りの土俵』で彼女に勝てるわけもない。
「君の提案は……真剣に考えておくよ。
他に『衣装』を求める人や機会があるなら、
ぜひとも紹介してもらいたいしな」
「わたしと違って、
君はこの町にずいぶんと顔が利きそうだ」
「……言っとくが、これは『皮肉』じゃないからな」
279
:
空織 清次『エラッタ・スティグマ』
:2024/05/03(金) 00:25:14
>>277
(キリシマ・美作)
「…………君は人に恵まれてもいるな。
その顧問との付き合いは大事にしたまえ」
キリシマ少年の『置き土産』に真顔で応じつつ、
装いを新たにした彼を迎え入れる。
「――ほう、よく似合っているじゃないか」
「それじゃあ、そこに立ってくれ。
動かないように無理して力む必要はないぞ。
リラックスしてくれていい。
わたしのスタンドの『技巧』を信じてくれ」
「では――いくぞ」
『機械人形』の『左手』がそっと伸び、
キリシマ少年のまとう黒衣の左胸に触れる。
「あ」
と同時に、その手甲に埋め込まれた『糸車』が、
カラカラと乾いたループ音を室内に響かせる。
これは……虚しい『空転』の音だ。
「『糸を忘れた』」
・・・ポカッ
「オホン―――というのは、『冗談』だ」
真意不明の咳払いをしつつ、みずからのスーツから
シルクの『ポケットチーフ』を取り出す。
「わたしの『エラッタ・スティグマ』は、
万物を『糸』に変える。素材の調達は自在だ」
「そして『蜘蛛糸』の図柄を表現するなら、
やはり『絹糸』がよかろう」
そう告げつつも、動きを止めて二人を見やる。
「ただ一つ付け足すなら……
こいつが『糸』として扱える物の中には、
たとえばガラスだとか合金だとか、
通常の刺繍には絶対に用いえぬような個体も含まれる」
「だから……もし君たちに、
今回の縫製に使う『糸』の素材自体に、
なにか『演出』に関わるような『アイディア』が
あるのなら、それはぜひ聴いておきたい」
「特に問題がないようなら、
わたしは図示通りにこの白色のシルク糸で
縫わせてもらうつもりだが――」
280
:
美作くるみ『プラン7・チャンネル9』
:2024/05/03(金) 12:53:20
>>278-279
今しがた提案した内容は、
空織を『真っ当な道』に戻す手助けをしたいという気持ちもあった。
『お節介』かもしれないが、自分に出来るのは精々このくらいしかない。
少しでも『きっかけ』になれたなら、それは本望だ。
「――――あはははは…………」
『空転』を目の当たりにして、苦笑しながら肩を竦める。
「それで足りなければ、ここにある物を使ってもらって構いませんから。
『タオル』くらいならあったと思いますし」
空織の言葉に返しつつ、『ポケットチーフ』を見やった。
「同じような事は私も考えていたんですけど、
『動きにくくないか?』というのが気になって。
『糸』として扱われている間は問題ないとしても、
『その後』が不安なんですよねぇ」
フフッ
「でも、『ご心配なく』。ここは『プラン』の見せ所です」
「ちょっと待っていて下さい」
キリシマと入れ替わるようにして『給湯室』に入り、
一本の『スプーン』を手にして戻ってくる。
「皆様、私の『右手』を御覧下さい。
こちらに見えますのは『ピュータースプーン』で御座います」
ソ ッ
さながら『バスガイド』を思わせる所作で、
『右手に握ったスプーン』を左手で紹介する。
「『ピューター』ってご存知ですか?
食器やアクセサリーに使われる『錫合金』で、とても柔らかいのが特徴なんですよ。
『白鑞(しろめ)』とも呼ばれていて、色が『銀』に似ていますから、
『シルク』の代わりとして『蜘蛛糸』に見立てるのも遜色ないと思います。
それに、見方によって『糸』にも『鎖』にも見えるじゃないですか」
グッ
美作が軽く力を入れると、『ピューター製のスプーン』が容易く曲がった。
このように人の手でも簡単に形を変える事が出来るのだ。
『スプーン曲げ』を披露してから、さらに話を続ける。
「で――――ここからが重要なんですけどね。
『全米フィギュアスケート選手権』では、『金・銀・銅のメダル』に加えて、
『四位の選手』に『ピューターメダル』が授与されるんです。
『第四の本能』や『未達』を表現するにはピッタリな素材だと思いません?」
『金銀銅』に次ぐ『第四位』。
装飾品に用いられるだけあって、酸化しにくい安定した金属で、
柔軟性を持つ為に動きも阻害しない。
『シルク以外の候補』を挙げるとするなら、『これ以外にはない』だろう。
281
:
キリシマ・アキト『候補生』
:2024/05/03(金) 13:03:25
>>278-280
キリシマという人間は『複雑さ』とは対照的で、美作が話していた通り、
それが『アラクネ』に選ばれた一因と言えた。
単純ゆえに容易には壊れず、壊れたとしても簡単に直す事が出来る。
『リボルバー』が『オートマチック』よりも『信頼性が高い』とされているのは、
前者の方がシンプルな構造で、『動作不良』を起こしにくいからだ。
「『仕立て師』の技術が確かでなければ、あの『青写真』は描けない……」
「フ……『信頼』するさ……。我が『魂』に誓って……」
…………ス
空織の前で足を止め、自然な姿勢で立つ。
それ以外には何もしない。
だが、美作の動きは目線で追っていた。
おそらくは、また何か『考え』があるのだろう。
短い付き合いではあるが、今まで行動を共にしていれば分かってくる。
「『メフィストフェレス』の『智慧』は見せてもらった……。
身に纏ってみない内は分からないが、オレの感想を言うなら『悪くない』……」
「いや――『結構カッコいい』か……!?」
『スプーン』に映り込む自らの『鏡像』。
それに問い掛けるように自問自答する。
やがて空織に向き直り、おもむろに口を開く。
「フ……ここは『仕立て師』の見解を伺いたい……」
キリシマ本人としては美作の案に肯定的だが、
『空織の能力』を知り尽くしている訳ではない。
言葉では説明されても、実際どうなるかを見ていないのだ。
空織が『問題ない』と判断すれば、それでいいのだろうが。
282
:
美作くるみ『プラン9・チャンネル7』
:2024/05/03(金) 16:27:41
>>280
先程の『スケッチ』を一瞥し、手の中でスプーンを弄ぶ。
「今の話を『物語的』に解釈するなら、
与えられた『枷』すら取り込み、その力を『我が物』とした『アラクネ』です。
『糸と枷』が混ざり合う事で、より強靭な『金属糸』を編み出せるようになった」
「…………といったところですかねぇ」
そのように付け加え、空織の返答を待つ。
283
:
空織 清次『エラッタ・スティグマ』
:2024/05/03(金) 22:08:06
>>280-282
(美作・キリシマ)
「…………『面白い』」
口元を抑えながら、
指の隙間からこぼれるような一言。
最小限、ゆえに自分にとっては
最大限の『称賛』の声だ。
「『ピューター』の本場は『テーラリング』と同じく
イギリスにあったはずだが、
こいつを『縫製』に使う発想はなかったな」
天啓の素材を受け取るべく、
『エラッタ・スティグマ』が美作氏に右手を差し出す。
「ただ……芯糸を持たない純正の『金属糸』は、
通常の糸よりも『固い』がゆえに『鋭く脆い』」
「糸のかわりに『ホチキス』で縫合された上着を
思い浮かべてみるといい。
その服の『末路』は想像に難くないだろう」
「だがそれはきっと、『撚り方』や『編み方』を
適応することで乗り越えられる――はずだ」
「『2000T/m』以上の『強撚糸』と、その『合糸』。
補強に『ダーニング』の裏縫いを援用すれば、
あるいは――」
美作氏の『ビスポーク』を受け、
瞳の中で創造性の炎が燃え立つ。
口からひとりでにアイディアが溢れる。
だがそれを自覚した瞬間、
フッと我に返って顔を上げる。
視線の行く先は、キリシマ少年へ。
284
:
空織 清次『エラッタ・スティグマ』
:2024/05/03(金) 22:24:28
>>281
(キリシマ)
「だが……当然ながら『デメリット』はある。
一本一本は細い金属糸でも、
今回のような『刺繍』の密度になると問題が出てくる」
「固い『金属線』の集合はまさしくホチキス針のように
布地の伸縮性を固着させ、
『活動着』としての着用性は確実に悪化する」
腕を組み、眉根を寄せて嘆息する空織。
「それはキリシマ君……
君の本番に必要な『パフォーマンス』に、
それこそ『銀の足枷』をはめることになりかねん」
「そんな無用の負担を着用者に強いるなど、
衣服としちゃ下の下の案だ」
「ゆえにこれは、演者である君にしてみれば
一分の理もない『愚策』になるが――」
片眉を上げ、キリシマ少年へと
同い年の少年のように笑いかける。
「『君の肚はもう決まってる』。
そうだな?」
ギュ ル ルルルルルルル ――――
わたしの精神の風によって、
『エラッタ・スティグマ』の『糸車』は回る。
美作氏から原材料を受け取り次第、
その右手は『錫合金糸』へと『分解』を始めるだろう。
285
:
キリシマ・アキト『候補生』
:2024/05/04(土) 16:55:04
>>283-284
『衣類の本分』に反旗を翻すような美作のアイディア。
空織によって突き付けられる『避け難い問題点』。
それらを前にして、キリシマは静かに俯いた。
「フ…………『枷にも成り得る衣装』か…………」
「フフフ…………フフフフフ…………!」
両肩が打ち震える度に、抑えきれない笑い声が溢れ出す。
「『この時の為』に……!
今まで『パルクール』で培ってきた『身体能力』は『この為にあった』……!」
ガバァッ!!
とうとう全身を震わせながら、勢い良く面を上げる。
その表情には『喜色』が満ちていた。
『ずっと探し続けていたもの』を見つけたような顔だ。
「つまり……『オレが上手く動けば解決する問題』なのだろう……?」
キリシマの最大の武器は、『パルクール研究会』で鍛えた『運動神経』だ。
『枷にも成り得る衣装』だからこそ、『着こなせる人間』は限定される。
逆に言えば、『選ばれた者の衣装』と呼ぶに相応しい。
「『何も問題はない』……!
オレの『身体能力』ならば『着こなせる』……。
むしろ『キリシマ・アキトでなければ着こなせない』……」
空織を真っ直ぐに見据え、堂々と力強く『宣言』する。
「『これを着て動ける』という『事実』そのものが『最上級の自己表現』……!!
我が『使命』を象徴する『魂の戦装束』だ……!!」
キリシマの視線が、回転を開始する『糸車』に向けられた。
これから起こる一部始終を見逃さないように、目を見開いて刮目する。
『エラッタ・スティグマ』の『能力』を。
286
:
美作くるみ『プラン9・チャンネル7』
:2024/05/04(土) 17:01:21
>>283-285
空織の指摘は尤もだ。
だからこそ美作としても、『芸術性』と『実用性』に折り合いをつけ、
自分に出せる『最高の答え』を用意した。
そこから先は『空織の腕前』に託すしかないが、
それについての『不安』は感じていない。
「『ホチキスの針』は『スチール』でしょう?
用途も『紙を綴じる事』ですから、
一概に同じとは言い切れないんじゃないですか?」
臆せずに口を挟んだ直後、悪戯っぽく微笑する。
「あはは…………私の『専門』は『喋る事』なので、
具体的に『どうするか』は、『プロの判断』にお任せしますよ」
「――――『出来ますよね?』」
スゥッ
さも当然のように告げると、口元に笑みを浮かべながら、
右手に握っている『スプーン』を差し出す。
「そうじゃないのに『素材のアイディア』なんて求めないはずでしょう。
さっき『空織さんにも大きなチャンスに繋がる』と言ったじゃないですか。
『一流のテーラー』に『神業』が加われば、
これくらいの『注文』は乗り越えられると信じていますから」
「私だって『出来ない人』には依頼しません」
朗らかに言葉を紡ぎ、空織からキリシマに視線を移す。
「それに――――『着こなせない人』にも言いませんよ」
キリシマが『パルクール研究会』に所属していると知った瞬間から、
彼の『個性』を活かす方向でプロデュースしてきた。
『モードストリート』でコーディネートし、
『ストリートダンス』の練習をさせている。
もちろん『踊ってもらう』のだが、『枷を物ともせずに舞う』というのは、
より大きなインパクトを残せるだろう。
そして、『ただのダンス』でもない。
その為の『プラン』は出来ている。
「『私』と『空織さん』と『キリシマ君』。
この『三人』だから『実現』できるんです」
今は『空織清次』の『技術力』と、
『キリシマ・アキト』の『身体能力』に期待するだけだ。
287
:
空織 清次『エラッタ・スティグマ』
:2024/05/05(日) 21:42:40
>>286
(美作)
「『糸は伸縮する(遊ぶ)』が、
『金属は伸縮しない(遊ばない)』。
こいつをこうして、数十回もてば良いほうだな」
自分の肩周りにコの字針を打ち込む真似をし、
そのまま両手で『バンザイ』を数回くりかえす。
そして悲しそうに首を振る芝居。
「だが――その金属に『遊び』を作る方法がある。
そのうちの一つがご存知『バネ』だ。
『コイル状』になれば金属は『伸縮する』」
「ならば『芯』となる柔らかな糸を別に用意し、
その上に『バネを巻きつける』ようにして
『撚り糸』を作ればいい」
「その特別な『撚り方』をした糸のことを、
『カバリング糸』という。そこで……」
ギュルルルルルルル ル ル ――
スプーンの『嚥下』を終えた
『エラッタ・スティグマ』の右手に、
空織はさらに『ポケットチーフ』を手渡す。
「わたしが用意した『シルク糸』を『芯』として先に縫込み、
君が用意した『ピューター糸』をその上から
極細のコイル状に『撚りながら巻きつける』」
「わたしと君の『合糸』――『カバリング』によって、
『柔軟性』を保った『金属の刺繍』が編み出せる」
「……ハズだ」
説明の間に、右手甲の『糸車』が止まる。
その手で存在を解かれたふたつの素材が、
三人の想像を繋ぐ『糸』へと紡ぎ直される。
「―――そして、君の言うことは『ごもっとも』だ。
わたしの『エラッタ・スティグマ』は
断じて『ホチキス』などではないのだからな」
「『任せたまえ――わたしたちに』」
288
:
空織 清次『エラッタ・スティグマ』
:2024/05/05(日) 21:50:20
>>285
(キリシマ)
悪友のような笑みを作り、
『エラッタ・スティグマ』とともに
キリシマ少年のそばに立つ。
「そう来なくっちゃあな」
少年を緊張させることのないように、
大げさな芝居で人差し指を唇にあてて笑う。
「ただし――これから行うのは
わたしにとっても『挑戦』になる。
すこしだけ……静かにしていてくれ」
目を閉じ、長く深い息を吐く。
その吐息に乗せるように、密やかな呟き。
「『獅子がキリシマ君なら、
アラクネは美作さん』――か」
「であればわたしは……
この布の上で君たちを形作る模様の中で、
どこかの一本の『糸』になれることを願おう」
ルルルルルルルルル ル ル………
空織の没入と同調するように、
『機械人形』の心臓部に埋め込まれた『糸車』が
静かに回り始める。
加速するその風音が自らの拍動の音と重なったとき、
空織は目を開いて『愛機』の名を呼ぶ。
「行くぞ…… 『エラッタ・スティグマ』」
タ タ タ タ タ タ タッ
『エラッタ・スティグマ』がその『左手』を弾くように動かし、
少年の衣服の両面に『シルク糸』の精緻な『刺繍』を編み込む。
タ タ タ タ タ タ タッ
そして一呼吸の後――極細に撚り上げた『ピューター糸』を、
寸分たがわずその上から『巻きつける』ように縫い込む。
(すべて『精A』)
289
:
美作くるみ『プラン9・チャンネル7』
:2024/05/06(月) 16:09:58
>>287-288
着々と準備を進める『エラッタ・スティグマ』の一挙手一投足を見守る。
ここに至っては他にするべき事はない。
ただ『完成』を見届けよう。
「空織さんみたいな方と仕事するのは楽しいですよ。
いい刺激をくれて、私の『プラス』になりますから。
それぞれの『アイディア』が一つになっていくのを見るのも好きですし」
そして、キリシマを見る。
彼の個性がなければ、今のような『プラン』にはならなかっただろう。
もちろん、どんな人材でもサポートできる自信はあったが、
今までの『キャリア』になかった一頁を加えられたのは確かだ。
「キリシマ君――――『期待』してるわよ」
そう言い残し、『エラッタ・スティグマ』の動きを注視する。
困難な仕事になるのは間違いないが、『仕上がり』には信頼を寄せていた。
何故なら、自分と同じく『プロフェッショナル』だからだ。
290
:
キリシマ・アキト『候補生』
:2024/05/06(月) 16:14:36
>>287-289
美作の言葉に目線で合図を送り、『エラッタ・スティグマ』と向き合う。
「これでも『体幹』には自信がある……。
今のオレは、たとえ『膝カックン』されようとも微動だにしないと宣言しよう……」
「フ……空前絶後の『静止』を保ってみせるさ……」
徐々に施されていく『刺繍』。
それは無地の『キャンバス』に『絵』が描かれていく光景に似ている。
『描画』と比例するように、心が『高揚』するのを感じた。
この身体に『エネルギー』が注がれているようだ。
『モチベーションを高めるには形から入る』というのは、
衣装を用意した時に美作が言った事だった。
実際、『候補生』としての自覚が増し、活動の『意欲』に繋がったように思う。
今、その『効果』は更に高まりつつある。
(だが、『精神』は熱くも『頭脳』は冷静でなければ、『契約』の道は開けない……)
密かに内省し、『糸』によって『獅子』と『アラクネ』が融合するように、
『熱意』と『冷静さ』を自分の中で調和させ、双方の統一を図る。
291
:
空織 清次『エラッタ・スティグマ』
:2024/05/06(月) 21:54:32
>>289-290
(美作・キリシマ)
・・・・ トンッ
最後の『糸始末』をつけ終えて、
『エラッタ・スティグマ』がその指先を衣装から剥がす。
前面に『糸のたてがみを持つ眠れる獅子』、
背面に『魔法陣を紡ぐ枷から解放されたアラクネ』の刺繍。
『ピューター糸』の穏やかな反射光を受け、
精緻な図像が少年の黒衣の中に浮かび上がる。
「――――…… 『終わった』ぞ」
「ありがとうキリシマ君。
君の協力に感謝する」
意識を没入から引き上げ、ふーっと長い息を吐く。
その吐息に吹かれるように、心臓部の『糸車』が
最後にゆっくりと一回りし……やがて完全に止まった。
「で………… この店、鏡はないのか?
まあとにかく、動いて着用感を試してみたまえ。
『本番』を考えると多少走ってくるぐらいでいいかもな」
きょろきょろ首を振って店内を見回しつつ、
記録のためにスマホで彼の全身図を撮影する。
鏡代わりにインカメラを貸してもいいが、
まあキリシマ少年は自分でなんとかするだろう。
「――――特に問題がなければ、
わたしの『今日の仕事』も『終わり』だ」
そう言って、美作氏を見る。
292
:
美作くるみ『プラン9・チャンネル7 』
:2024/05/07(火) 15:42:10
>>291
まるで『生命』を宿しているかのように、
複雑な『刺繍』が形を成していく様は、一種の『パフォーマンス』に近い。
そこには見ている者を惹きつけるだけの力がある。
美作も例外ではなく、思わず息をする事さえ忘れてしまいそうだった。
「さすがに全身が映るような鏡は置いてませんねぇ。
ここは一応『不動産屋』ですし…………」
『パートナー』の姿を上から下まで眺め、仕上がり具合を確かめる。
「少なくとも、私からは『完璧』な仕事に見えますよ」
グ ッ
『最大級の賛辞』と共に親指を立てる。
その状況における『ベスト』を出せるのが『プロ』だ。
ただ、必ずしも『ベスト』と『完璧』は一致しない。
たとえ『プロ』であっても、『完璧』というのは気軽に使えない表現だが、
それに値する成果を見せてくれた。
やはり、これ程の人材を腐らせておくのは惜しい。
「キリシマ君もお疲れ様。
これで一層、身が引き締まったんじゃない?
最後まで『全力』を尽くしましょう」
『戦装束』を纏ったキリシマに目配せし、『次の行動』を匂わせる。
『現場の下見』や『音響関係』などは、『本番前』に済ませておきたい。
常に『ベスト』を出すのが『プロ』であり、
やるからには一歩でも『完璧』に近付けたかった。
「ついでと言ってはなんですけど、もう少し付き合ってくれません?
ちょっとした『アンケート』を取らせてもらいたいんです。
もし自分が『パフォーマー』として舞台に立ったとしたら、
どんな『キャッチフレーズ』と『決め台詞』がいいか教えて欲しいんですよ。
あくまで『もしも』の話なので、気軽に答えてみて下さい」
「参考までに『林檎さんの回答』を。
『キャッチフレーズ』は『選ばれた恋』でした。
『決め台詞』は――――」
ソッ
「『あたしは林檎。ねぇ、禁断の果実。味わってみたいかしら?』」
『林檎』のように人差し指を唇に添えて小首を傾げ、
『林檎の声色』を真似て発した言葉が空中に溶けていく。
「――――林檎さん程は可愛らしく出来ませんけれど。
それはそれとして、今後の『興行』の為にも、
是非『空織さんの言葉』を頂きたいですね」
これは『魔法使い試験』にも使われる可能性があるが、
その点については伏せておかなければならなかった。
293
:
キリシマ・アキト『候補生 』
:2024/05/07(火) 15:48:05
>>291-292
「フ…………フフフ…………フフフフフ…………!!」
バッ!
バッ!
バッ!
次々に『独自のポーズ』を繰り出し、自らの身体で『着心地』をチェックしていく。
その動きにはキレがあり、与えられた『枷』を物ともしていない。
無論、キリシマ自身の身体能力だけではなく、
空織の『工夫』によるところが大きいだろう。
「これで心置きなく『戦える』……!
文句のつけようもなく素晴らしい出来栄えだ……!」
『魔法の力』が込められた装束。
キリシマにとって、それは単なる衣装以上の意味を持つ。
美作は『人間性の肯定』が『サタニズム』の本質だと言った。
この『精神の高揚』が『悪魔』を呼び出す『礎』となる。
心の奥底で、そんな感覚を抱いていた。
「『仕立て師』殿には心より感謝したい」
ス ゥ ッ
「――――『どうもありがとうございます』」
姿勢を正し、深々と『お辞儀』をして謝意を示す。
「フ……『当然』だ……。
オレが目指す道は『この先』にある。
『契約』を果たし、『使命』に邁進しなければな……」
バッ!
美作に言葉を返しながら、さらに『ポーズ』を決めた。
そして、そのままの体勢で二人のやり取りを見つめる。
美作の意図は理解しているので、余計な口は挟まない。
294
:
空織 清次『エラッタ・スティグマ』
:2024/05/07(火) 21:22:39
>>293
(キリシマ)
「今回の仕様はなにぶん初めて尽くしだったもんで、
いくらか心配な気持ちもあったが……」
「…………『杞憂』だったな」
くたびれた三十絡の目には、
キリシマ少年の『活力』と『実直さ』が時々
あまりに眩しく感じるな。
「『どういたしまして』。この先、衣装のことで
話したいことがあれば何でも相談してくれ」
ジャケットの内ポケットから
連絡先の書かれた名刺を取り出し、少年に手渡す。
これで今日の仕事は『一段落』だ。
295
:
空織 清次『エラッタ・スティグマ』
:2024/05/07(火) 21:41:06
>>292
(美作)
「……………………」 「なるほど」
「美作さん、君も中々すごい『胆力』だな」
14、15の女の子の決め台詞を真似する成人女性、
普通に考えると『危険信号』なのだが……
不思議と妙に『様になっている』。
そこで、美作氏も立派な『元アイドル』だったことを思い出す。
そんな美作氏の真っ直ぐな称賛を
心地よく受けとりつつも、
質問に対しては明確に苦笑して首を振る。
「わたしはもともと表舞台に立つような性質じゃない。
そういう人たちを支える『裏方』の人間だ。
考えてみたが、そんなフレーズは何一つ思い浮かびそうにないな。
だが『もしも』を答えるなら――」
「『もう言った』。それでいいだろう」
苦笑いしながら、猫を手で追い払うような仕草。
もともと『皮肉屋』の性分だ。これ以上は勘弁願いたい。
……わたしの性格を知る美作氏にしては、
ずいぶんとまた『妙な質問』だな?
そんな『怪訝さ』を一瞬顔に浮かべつつも、
黙々と帰り支度を始める。
「ちなみに……
君は我々にとって一番重要なことを
まだわたしに伝えていないが――
後で連絡してくれるのか?」
296
:
キリシマ・アキト『候補生 』
:2024/05/08(水) 13:51:14
>>294
「フ……『仕立て師の護符』……確かに受け取った……。
まだオレは持つべき身分ではないが、『契約』を果たした暁には、
用意してもいいかもしれないな……」
両手で『名刺』を受け取り、丁寧に財布の中にしまう。
「『仕立し師』殿に『儀式』を見せられないのが残念でならない。
だが……!必ずや『成就』させよう……!」
本来であれば特等席を用意すべき相手だが、この件に限ってはそうはいかない。
その代わり、『試験の成功』が『恩返し』になるだろう。
今や『最終調整』も間近に迫っている。
「――――この誇り高き『紋章』に誓って…………!!」
297
:
美作くるみ『プラン9・チャンネル7 』
:2024/05/08(水) 13:55:52
>>294-296
「ちゃんと分かってくれてると思いますけど、
『こういう事』を誰の前でもやってると思わないで下さいね?」
空織の反応から、まだ錆びついていなかったらしい事を悟り、ほんの少し安心した。
「あ!それも『アリ』ですね!
敢えて自己紹介しない事で『シニカル』なキャラクターを強調する…………。
そういう人が合間に入ると、結構いいアクセントになるんじゃないでしょうか?
意外性のある演出で、なかなかイケますよ。
いやぁ、ステージに立ってもらわないのが勿体ないくらいですねぇ」
突き出された『皮肉』を笑って受け流し、さらなる『アイディア』を仄めかす。
空織が『皮肉屋』であるように、美作は『タフ』なのだ。
あらゆるものは『チャンス』に繋がり、そうやってここまで来たのだから。
「もちろん『結果』が出たら、ご連絡します。
こうして確認してくれた以上、『これっきりサヨナラ』なんてナシですよ?」
『名刺』を手に取るキリシマを見て、ふと思い至る。
「あぁ、そうそう…………私、空織さんに『名刺』渡してましたっけ?」
名刺入れから『二枚の名刺』を取り出し、それらを差し出す。
一枚は『星見FM放送』の『ラジオパーソナリティー』としての物で、
番組の『イメージキャラクター』である『電気カナリア』が描かれている。
もう片方は『アリーナ』名義であり、
『門倉派:広報担当・美作くるみ』と綴られていた。
「今後『門倉代表』に用がある時には、
『そちら』を出してもらえれば話が早いと思いますよ」
298
:
空織 清次『エラッタ・スティグマ』
:2024/05/09(木) 11:04:47
>>296
(キリシマ)
「その刺繍……紋章を編んだ特殊な『糸』は、
まだこの世に呼び名のないまったく新しい糸だ。
まだ存在しない君の『たてがみ』と同じくな」
「だから君が力に目覚めた暁には、
君のスタンドからその糸の名を貰うことにしよう」
『エラッタ・スティグマ』がキリシマ少年に目礼すると、
そのまま仕付け糸を解くように虚空へと消えていく。
「君の一世一代の大舞台、わたしも楽しみにしている。
当日は現地で応援するよ。
もちろん衣装の最後の『手直し』も兼ねて舞台を―――」
「――――えっ……
み、『見せられない』……?」 ガーン
>>297
(美作)
「『局の名刺』は前回貰ったが、
『こっちの名刺』は初めてだな……」
「ってちょっと待て待て待て待て、違う違う。
わたしが言ってるのはそういうことじゃない」
名刺入れを懐にしまいつつ、
ほとんど口角泡を飛ばす勢いで美作氏に詰め寄る。
「君はそもそも一番重要な『日程』をわたしに伝えていないだろ。
当日はわたしも予定を空けねばならんから、
早めに連絡をしてもらわんと―――」
「――――えっ……
け、『結果だけ』……?」 ガガーン
299
:
空織 清次『エラッタ・スティグマ』
:2024/05/09(木) 11:16:31
>>296-297
(美作・キリシマ)
「わたしは現地に『観戦』しに行ってはいかんのか?
わたしが仕立てた衣装を背負って舞台に立つ、
キリシマ君の人生を懸けた大一番を?」
「招待席とかないの?」
ガガガーン
今回の件を『公開リハーサル』(
>>254
)としか
聞いていない空織は、二人の急な突き放しに
露骨にしょぼくれた顔をする。
それからも空織はゴニョゴニョと、
『いや観戦やら招待やらの前にそもそもわたしは
衣装スタッフとして絶対に同行すべきで……』だとか、
『当日の現場や本人の様子を見て
ぜったい手直しを加えた方が……』とか、
必死に持論をまくし立てるのだが、
やがてどっかでグヌヌ……と引き下がることになった。
(あまり少年に見せたくない『三十路の拗ね』だ)
「クッ…………わかった、もういい……
だが一つだけ言っておくぞ」
「わたしはな、『自分がいちど仕立てた衣装は生涯面倒を見る』。
布の前に立つときはいつもその覚悟を持って挑んでるんだ」
「それを『これっきりサヨナラなんてナシですよ』――だと?
それはこっちのセリフだ! まったく……」
「いいか、キリシマ君。
君の横にいる『プロデューサー様』はな、
澄ました顔しているがとんだ『人誑し』だからな。
ちょっと甘い言葉かけられたからって誘いに飛びつくなよ」
わたしみたいになるからな―――などと
露悪的な顔で少年に大人げない忠告をすると、
そのまま大股で入口までずんずん一人で歩いていく。
そこでクルッと振り返り、二人に向かって別れの言葉を叫ぶ。
「―――じゃあな、諸君!
キリシマ君、君の成功を心から祈る!」
「だがたとえどんな結果になろうとも、君ならいつか
自分だけの『たてがみ』を絶対に手に入れられるだろう!
それからひどい薄情者の美作さん!」
「君が今回の件をわたしに依頼してくれたことに心から感謝する!
おかげで忘れかけていた『夢』を一つ思い出せた!
君の厚意に救われた一人のテーラーがいたってことを、
どうか覚えておいてくれたまえ!」
「――『黒猫堂』の話もな! 忘れるなよ!」
最後に悪童のような笑顔を二人に見せると、
果し状を叩きつけるみたいにドアを閉める。
そうして空織は『門倉不動産』の看板を背に、
春の陽光に向かって歩き始める。
その足取りは真っすぐで軽やかで、もはやふらついてはいなかった。
300
:
美作くるみ『プラン9・チャンネル7 』
:2024/05/09(木) 15:46:52
>>298-299
困ったように肩を竦めた済まし顔で、正当な権利を主張する空織の弁論を眺める。
常識的に考えれば、『テーラー』には同席する権利がある。
そう考えるのは至って自然な事で、本来なら一緒に来てもらいたいところだ。
「あらら、人聞きが悪いですねぇ。
『事前に少数の人達の前で』と伝えた時、空織さんは確認しませんでしたよ。
『そこに私は入っているんだろうな?』って」
だが、今回だけは『NG』だった。
一人の『プロ』として『仕事』に『私情』は持ち込めない。
無事に『試験』が終わったら、『結果』と同時に事情を説明するつもりでいる。
(空織さん、ゴメンなさい。この埋め合わせは今度させてもらいますから)
心の中で謝罪しつつ、立ち去る空織に向けて、にこやかに片手を振る。
――――――フフッ
「こんなに大人げない空織さんの事を、私が忘れるはずないじゃないですか。
あなたは『素晴らしいテーラー』で、それと同じくらい『素敵な友人』ですよ。
いつか一緒に『黒猫堂』で一杯やりましょう」
確かな足取りに安堵しながら、遠ざかる空織を見送った。
その姿が見えなくなると、美作は表情を引き締める。
『材料』は全て揃った。
空織を含め、多くの知人に力を貸してもらったお陰だ。
彼らの助力を活かす為にも、
『最終試験』では『最高の成果』を披露しなければならない――――。
301
:
キリシマ・アキト『候補生 』
:2024/05/09(木) 15:53:08
>>298-300
こうして『条件』が整った今、残るは『魔法陣を描く道具』と『場所』くらいだ。
『その他の小道具』は必要だろうか。
美作には何か考えがあるようだが、十分に納得させられるものであれば、
その提案に従う事には異論はない。
「フ……『美作くるみ』は、オレの『メフィストフェレス』……。
既に『悪魔の誘い』に乗ってしまった身では、
この運命から降りる事は叶わないさ……」
ス ゥ ッ
「そして、『悪魔』に『魂』を売り渡したからこそ、
誇り高き『鬣』を手に入れてみせよう」
音もなく姿勢を正し、己の『決意』を真っ直ぐに告げる。
「また会おう!『悪魔の織手を従えし仕立て師』よ!」
別れの挨拶と共に、空織の背中に深々と頭を下げた。
『魔法の力が宿った衣装』を身に纏っている。
その事実はキリシマの心に火を灯す。
「……『本当の戦い』は『これから』だ」
静かな闘志を滾らせながら、自らに言い聞かせるように呟きを漏らした。
302
:
美作くるみ『プラン9・チャンネル7』
:2024/05/09(木) 20:31:53
>>301
「――――ええ、その通りよ」
『空織清次』と別れた後、キリシマが発した呟きに答えるように美作は言った。
「あくまでも『本番』は『これから』。
それと、ちょっと『予定変更』するわ」
ソファーに座り直し、フライトジャケットからスマホを取り出す。
「最初はね、『ラジオアプリ』を使おうと思ってたの。
キリシマ君が『リクエスト』した曲を私が流して、
それに合わせて踊ってもらうつもりだった」
そこまで言うと、小さく首を横に振る。
「でも、そんな程度の『演出』じゃあ満足できなくなっちゃったから。
それに、『もっといいアイディア』があるのよ」
『魔法陣』を描くのが『候補生』であれば、『補助』は可能というルールだった。
美作自身も『傍観者』に徹する気は毛頭ない。
これは『美作の戦い』でもあるのだから。
「キリシマ君から何か聞きたい事は?」
303
:
キリシマ・アキト『候補生』
:2024/05/09(木) 20:37:51
>>302
「フ……だから『曲を決めておけ』と助言していた訳か……。
『悪魔を憐れむ歌』をリクエストするつもりだったが、
そういう事なら別の機会に回すとしよう……」
美作の向かいに腰を下ろしながら、合点がいったように頷く。
『ラジオパーソナリティー』としての立場を活かした演出は悪くない。
だが、『魔法使い試験』のサポートとしては、
少々インパクトが不足している点は否めなかった。
「オレが気に掛かっているのは『魔法陣を描く道具』だ……。
『魔法使い』にとっては『衣装』と同等か、
それ以上に重要な要素になるだろうな……。
まさか忘れている事など有り得ないとは思うが……」
正面から美作を見据え、口元に不敵な笑みを浮かべる。
「『そちら』の方も、何か『企み』があるんじゃあないか……?」
304
:
美作くるみ『プラン9・チャンネル7』
:2024/05/09(木) 20:40:32
>>303
「『ダンス』の練習に集中してもらう為に、今まで黙っていたの。
だけど、そろそろ伝えておきましょうか」
キリシマを見つめ返す美作の顔は、奇妙な『自信』に満ちていた。
「『魔法陣を描く道具』は『もう手に入れてある』。
正真正銘『魔法の力』が込められた道具よ。
こんな形で役に立つとは思わなかったけど、
私の『とっておき』を貸してあげるわ」
そこで、ふと不安げな色が表情に混じる。
「ただし、すごく『危険』なの。
くれぐれも取り扱いには注意してね」
『魔法によって作られた物』を用意すれば、
『パフォーマンス』の評価は上がる可能性が高い。
それを踏まえた上で、美作には『切り札』があった。
大きな『インパクト』と『魔力』を兼ね備えた『小道具』が。
「『今』は渡せない。
それと、この事は誰にも言っちゃダメ。
特に『私から借りた』なんて事は、絶対に口に出さないで」
「――――『約束』してくれる?」
305
:
キリシマ・アキト『候補生』
:2024/05/09(木) 20:44:01
>>304
「フ……言わずとも分かっているだろう……。
その質問の答えは『無論そうする』だ……!」
少しの迷いも躊躇もなく、首を縦に振って『肯定』を示す。
「元より断る理由など何もない……。
『メフィスト』の『魔道具』が手に入るのであれば、
我が魂に懸けて『血の署名』を行う覚悟は出来ているさ……」
美作の面持ちからは相当な自信が感じ取れた。
それだけでも、かなりの『大物』であろう事は察しがつく。
この好機を逃す手はない。
「しかし……!しかしだ……!
丁重に取り扱う為には、深く知らねばならない……。
それが『危険な代物』であるなら尚更だ……」
「…………もう少し『詳しい話』を聞かせて欲しい」
306
:
美作くるみ『プラン9・チャンネル7』
:2024/05/09(木) 20:48:31
>>305
「率直に言うと――――――『剣』よ。
『刃渡り1m』の『サーベル』。
『レプリカ』じゃあなく『本物』の」
キリシマの問い掛けに対し、真剣な顔色で端的な説明を口にする。
美作は『スタンド能力で生み出された世界』から、
一振りの『サーベル』を持ち帰っていた。
いわば『異世界の魔剣』だ。
ttps://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/comic/7023/1653187672/444
この国の『銃刀法』に抵触してしまうので、
仕方なく自宅に保管していたのだが、
まさか日の目を見る時が訪れるとは考えもしなかった。
ttps://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/comic/7023/1664796340/196
「『危険』の意味は分かってくれたでしょう?
これを出すのは、私も『勇気』が要るんだから」
情報化社会においては、ささいな事柄が大きなスキャンダルに発展しかねない。
誰かに見られて、あらぬ噂を立てられる可能性を考えると、
迂闊に処分する事も出来なかった。
それを表舞台に出すのは、決して小さくない決断を必要としたのだ。
「『当日』には持ってくるから、そのつもりでいて」
307
:
キリシマ・アキト『候補生』
:2024/05/09(木) 20:51:04
>>306
「フ…………フフフ…………フフフフフ…………!!」
美作の言葉を聞いた瞬間、無意識に『歓喜の笑い』が溢れる。
にわかには信じ難いが、どうやら『真実』らしい。
しかし、まさか『剣』とは。
全くの予想外だが、これでテンションの上がらない男子高校生はいないだろう。
もちろん、キリシマ・アキトも例外ではなかった。
『魔法使い』と言えば『杖』のイメージが強いが、
『剣を使う魔法使い』には違った魅力を感じる。
しかも『本物の魔剣』。
――――――『超カッコいい』じゃあないか!!
「『魔力を秘めた装束』に『魔力を秘めた剣』…………」
バ ッ ! !
「今…………オレの中に宿る『戦意』は『最高潮』に達している…………!!」
両手の拳を握り締め、勢い良く立ち上がって天を仰ぐ。
しばらくして落ち着きを取り戻し、美作に向き直った。
もう一つ済ませておくべき事がある。
「……そうなると、次は『場所探し』。
我が『心の火』が衰えない内に向かうとしよう……」
308
:
美作くるみ『プラン9・チャンネル7』
:2024/05/09(木) 20:54:16
>>307
「『鉄は熱い内に打て』――その意見には『賛成』よ。
どんな場所がいいかは決めてあるから、良さそうな所を探しに行きましょうか」
キリシマに続いて席を立ち、マグカップを片付けた後で、
ポケットから『バイクのキー』を引っ張り出す。
カチャリ
『門倉不動産』を出て扉を施錠し、その足で駐車場に向かう。
「フフッ、何だか私も熱くなってきたわ」
ドッ ドッ ドッ ドッ ドッ
「ちょっと飛ばすから、しっかり掴まっていて」
ギュオオオオオオオオオオッ
二人を載せた『ホーネット』は、力強くエンジン音を響かせて疾駆し、
瞬く間に街の彼方へ消えていった――――。
309
:
美作くるみ『プラン9・チャンネル7』
:2024/05/16(木) 16:48:02
>(一抹)
駅前の駐車場に、一台の『中型バイク』が停まっている。
その傍らで、時折スマホを眺めながら、一抹貞世を待っていた。
『オールブラック』の『モードストリート』を身に纏う姿は引き締まった印象だ。
310
:
美作くるみ『プラン9・チャンネル7』
:2024/05/16(木) 17:53:06
>>309
【対応してくださる方々へ】
ttps://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/comic/7023/1655987686/319
311
:
一抹 貞世『ディヴァイン・インダルジェンス』
:2024/05/17(金) 01:13:58
>>309
駅前の中型バイクの傍らにいる美作くるみらしき人物に近づく。
引っ込み思案なので勇気を出すのに時間がかかったが…
「み、美作くるみ…さん…ですか…」
涼しく刺すような玲瓏とした風貌のあどけない少年声が震わせて話しかける。
312
:
美作くるみ『プラン9・チャンネル7』
:2024/05/17(金) 02:57:31
>>311
呼び掛ける声に反応し、見下ろしていたスマホから顔を上げる。
「もしかして一抹君?こうして顔を合わせるのは初めてね。
急に呼び出したのに、わざわざ来てくれてありがとう」
ニコッ
「そう――――私が『美作くるみ』。どうぞよろしく」
特技の一つである一分の隙もない笑顔で、待ち人を出迎えた。
「今日は連絡した通り、『アクセサリー』を作りたいと思ってるの。
それで一抹君にお願いしたい事は…………」
スッ
途中で言葉を切り、『ヘルメット』を差し出す。
「その前に、とりあえず移動しましょう。
落ち着いて話せる場所があるから、後ろに乗ってくれる?」
チャリッ
シートに腰を下ろし、手の中で『キー』を弄ぶ。
313
:
一抹 貞世『ディヴァイン・インダルジェンス』
:2024/05/17(金) 06:06:51
>>312
「あわ…あわわ…一抹貞世ですぅぅ…!!」
ヘルメットを受け取りながら思案する。
確かに『インダルジェンス』なら大抵のアクセスは作れる。
しかして美作さんの要望を叶えられるかは…
「ふぁっ!? 一緒に移動!? お洒落で怖い!!」
意味の分からないことを言いながら中学1年に成り立ての身体で何とか美作さんの背後に乗る。
二人乗りなんて初めてなので落ちないか般若心経を唱えながら恐怖心に耐える。
314
:
美作くるみ『プラン9・チャンネル7』
:2024/05/17(金) 12:46:33
>>313
一抹のスタンドについては以前に聞いた事があった。
『悪感情』を『鎮静』する『インダルジェンス』。
今回は頼る機会はなさそうだが、貴重な能力である事は確かだろう。
「あはは……ゆっくり走るから大丈夫よ。私に掴まっていていいからね」
ドッ ドッ ドッ ドッ ドッ
声を掛けながらキーを回すと、点火したエンジンがアイドリングを始める。
「――そういえば『七篠さん』ってどういう人?先輩だって聞いたけど」
グォンッ
周囲を確認してハンドルを握り、二人を乗せた車体が滑るように動き出す。
おそらく、そう時間が経たない内に『門倉不動産』が見えてくるはずだ。
『門倉派』の拠点だが、まだ言うべきタイミングではないと考え、
自分が『アリーナ』の一員である事は伏せてある。
315
:
一抹 貞世『ディヴァイン・インダルジェンス』
:2024/05/17(金) 16:54:45
>>314
「大丈夫…大丈夫…バイクに轢かれた事があるから怖くない…!」
「七篠先輩ですか? 程々に勇気があって礼儀正しい方です。
かなりスタンド能力が物騒なんですが戦闘は好みませんね」
「優しい娘で野生動物のスタンド使いを二人で助けてあげたんです」
「悲しい事に私がきっかけで2度ぐらい事件に巻き込まれまして。
私が夏の魔物に取り憑かれても決して諦めない芯の強い娘です」
七篠先輩の事が誇らしいのか嬉しそうに喋る一抹。
だが、彼女のスタンド能力については恐れているようだ。
316
:
美作くるみ『プラン9・チャンネル7』
:2024/05/17(金) 18:50:33
>>315
「…………かなり『ハード』な体験してるのねぇ」
『試合』を『観戦』した事はあるが、実際の『戦闘』は更に激しいのだろう。
そういう領域には踏み込めないし、踏み込みたいとも思わない。
『門倉派』は――今の『美作くるみ』は、
『場を与えられる側』ではなく『機会を提供する側』だ。
ギュオオオオオオオオオオッ
「最近、私も『事件』に巻き込まれた事があったわ。
『ローグライクゲーム』の世界に放り込まれたっていうか……
そこまで『危険』じゃあなかったのは幸いだけど」
キ キ ィ ッ
やがて辿り着いたのは『雑居ビル』の前だった。
最寄りの駐車場にバイクを停め、エンジンを切ってシートから降りる。
ポケットから『門倉不動産の鍵』を取り出し、入口に向かって歩き出す。
「『ここ』よ――――『門倉不動産』。
知り合いがやってるお店でね。
たまに手伝う代わりに、お休みの時には使わせてもらってるの」
カチャリ
解錠した扉を開け、一抹に笑い掛ける。
「飲み物を出そうと思うんだけど、一抹君は何が好き?
ええと……コーヒーと紅茶と緑茶があるみたいよ」
317
:
一抹 貞世『ディヴァイン・インダルジェンス』
:2024/05/17(金) 19:31:30
>>316
「ハード…いや、まぁ、毎年のように酷い目に遭ったり知らない派閥
にいつの間にか入れられたり…」
「『ローグライク』…? それって普通に危険じゃ…」
雑居ビルに着いてからは落ちないようにバイクから降りる。
なるほど美作さんはここを借りて発信の場にしているのか!
「バイクに乗った事がなかったので楽しかったです!」
「やはり抹茶はマイナーですよね」ボソッ
「砂糖入りの紅茶をください! 苦いのは苦手で…」
318
:
美作くるみ『プラン9・チャンネル7』
:2024/05/17(金) 20:18:52
>>317
室内にはローテーブルとソファーがあり、そこが応接スペースになっている。
また、仕事用のデスクや書類棚も見えた。
奥の方には給湯室があるようだ。
「あははは…………今度は『抹茶』も用意しておくから、
今日のところは『砂糖入りの紅茶』をお出しするわ」
コト
給湯室で温かい紅茶を用意し、スティックシュガーと共にテーブルの上に置く。
「さて、それじゃあ『アクセサリー』について話しましょうか」
ス
取り出してみせたのは『鈴蘭の押し花』だった。
「この『押し花』は『お友達』にもらった物でね。それから『これ』――――」
もう片方の手には、3cm角の『透明な立方体』が乗っている。
「この『アクリルキューブ』と『押し花』を使って、
『ペンダントトップ』を作りたいと思ってるの。
私の方で『作り方の手順』を考えて、
あらかじめ『必要になりそうな物』は準備しておいたから」
『アクリルキューブ』と『押し花』をテーブルに並べ、
さらに『別の二つ』を見せる。
『アクリル用カッター』と『アクリル用接着剤』だ。
どうやら、これで全部らしい。
319
:
一抹 貞世『ディヴァイン・インダルジェンス』
:2024/05/17(金) 21:31:25
>>318
「いえいえ、そこまでしなくても…抹茶はマイナーですから…」
謎の失意を抱えながら紅茶を待つ。
門倉……何処かで聞いたような気がするが…?
今はそれよりも美作さんの依頼を聞こう。
「私の『インダルジェンス』はトップクラスの精密動作性と
それなりのパワーを持っています。だから…」
ttp://marbleart.sakura.ne.jp/
ttps://takumi.leadkonan.jp/work/page43.html
「とかどうですか?」
320
:
美作くるみ『プラン9・チャンネル7』
:2024/05/17(金) 22:11:42
>>319
「私が考えていたのは、この『アクリルキューブ』の中に、
『鈴蘭の押し花』を閉じ込めたアクセサリーなの」
アクリルキューブを手に取ると、自分の『プラン』を語り始める。
「まず、アクリルキューブを二つに割って、
その間に押し花を挟んで接着するでしょう?
そして、『鈴蘭の入ったアクリルキューブ』を、
『鈴蘭の形の彫刻』に仕立てる。
まるで『鈴蘭の中に鈴蘭がある』みたいに。
もちろん、それが『可能』なら…………」
今度は一抹の提示したアイディアに見入り、注意深く検討していく。
「『マーブルアート』――――コレ、すっごくキレイねぇ。
ただ、ちょっとキレイすぎて、押し花が負けちゃってる感じはするわね。
とっても素敵なアイディアなんだけど、あくまでも『主役』は『鈴蘭』だから、
なるべく『素材の良さ』を活かしたいのよ。
私が『アクリル』を選んだのも、それが理由だから」
アクリルはガラスよりも透明度が高く、軽くて丈夫な素材だ。
鈴蘭の存在感を妨げないし、身に着けて動く事を含めても都合が良かった。
そこまで考えた時、不意に重要な事を思い出す。
「一抹君の『インダルジェンス』――どんなスタンドなのか見せてもらえない?
それを知らないと、お互いの認識に『ズレ』が出ると思うし……」
321
:
一抹 貞世『ディヴァイン・インダルジェンス』
:2024/05/17(金) 23:15:12
>>320
「なるほど、主役は『鈴蘭でしたか。であれば、美作さんの
アイディアの方が優れています。」
アクセサリーが主役より目立ってはいけない。
誰が使うのか分からないが基礎の基礎を忘れていた。
「えっ、私のスタンドですか? この間も聞かれたような…」
「えっとですね。私のスタンドは戦闘に向いてないし、能力も派手
でも何でもないです」
『ディヴァイン・インダルジェンス』を発現する。
身体のいたるところに十字架の意匠がある近距離パワー型なのが見て分かる。
「パワーは猛獣並、スピードは人並み、精密動作性は精密機器並み
ハッキリ言って能力が戦闘向きでないので使えるモノは使って
勝つしかない珍妙なスタンドです」
「そして、私のスタンド能力は『悪感情』の『鎮静』。
さらに頭に触れれば『安息』を与えて安らかな世界へ…」
「それと私の切り札がこれ! 『慈悲の刃』です!」
手の甲から『20cm』まで刃がいきなり飛び出た。
普段から出しておけば良いのに出さないのには理由がありそうだ。
「実はこの刃の耐久性は猛獣に殴られたら折れる程度でして…
それに加えて『無痛』の斬撃なものですから…」
「しかし、これでも20人ぐらいは斬っているのですよ
どうですか? 弱そう? 強そう? それとも?」
322
:
美作くるみ『プラン9・チャンネル7』
:2024/05/18(土) 00:01:09
>>321
「この前は『聞いた』だけで、『見た』訳じゃないでしょう?
『百聞は一見にしかず』よ」
大きく目を見開いて、『インダルジェンス』――
正確には『ディヴァイン・インダルジェンス』を観察する。
「私は『戦闘』に関しては『素人』だから、
そっちに関するコメントは差し控えさせてもらうわ。
ただ、そんな私から見ても、十分『強そう』に見えるわね」
常人を遥かに上回る『腕力』と、それ以上の『精密性』。
さらに『武器』まで持っているとなれば、弱そうに見える訳がなかった。
美作自身が『非戦闘員』だからこそ、尚更そう感じる。
だが、彼のように『戦闘力が欲しい』とは全く思わない。
何故なら、『プラン9・チャンネル7』には、
圧倒的な『情報拡散力』があり、それは『美作だけが持つ力』だからだ。
「しかも、随分と『経験豊富』なのねぇ。
そんなに戦ってるとは思わなかったからビックリしちゃった。
『スタンド使いは争いに巻き込まれる』って言ってたのも納得できたわ」
フフッ
言葉とは裏腹に、表情には余裕が窺える。
『戦闘経験』こそないが、美作も自分なりに活動を続けてきた。
たとえ危機に直面したとしても、多少の事なら切り抜けてみせるという自負だ。
「見せてくれてありがとう。
その『慈悲の刃』があるなら、『カッター』は必要なさそうね。
じゃあ、早速だけど――――」
トッ
そう言いながら、『アクリルキューブ』を一抹の方に押し出す。
「とりあえず『真っ二つ』にしてもらえるかしら?」
323
:
一抹 貞世『ディヴァイン・インダルジェンス』
:2024/05/18(土) 00:15:41
>>322
「何十人斬ったのも戦いに勝ったりしたのも夏の魔物から助けられた
のは沢山いる先輩や街のみんなのお陰です」
「戦闘に素人…? 情報系のスタンド使いの形ですか!
なら、お願いがあるんです!」
「血の繋がりも何もかも違うけど絆だけは本物の義兄。
小林 丈。水球を操る事が出来るスタンド使いを探してくれませんか!」
ひとしきり喋り終えた後に『慈悲の刃』で『アクリルキューブ』を真っ二つにする。
本体である一抹が興奮しているにもかかわらずズレ一つなく『アクリルキューブ』を『インダルジェンス』は真っ二つにした。
一抹本人の言う通り精密機器に匹敵する精密動作性だ。
324
:
美作くるみ『プラン9・チャンネル7』
:2024/05/18(土) 00:55:12
>>323
「一抹君の事を教えてもらって悪いんだけど、私の能力は『秘密』よ」
ピッ
片目を閉じながら、口元で人差し指を立てる。
「でも――『小林君』なら知ってるわ。『ブリキの金魚』を使う人でしょう?」
かつて美作は、『小林丈』に出会った事があったのだ。
もう随分と昔の話だが、その時に交わしたやり取りは覚えている。
小林は『シャボン玉』を舞わせ、美作は『歌声』を披露した。
(ttps://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/comic/7023/1453049221/392-399)
「私にとっても知人だし……協力するのは構わないわよ。
今は忙しいけど、落ち着いたら力を貸すから」
『プラン9・チャンネル7』の能力を使えば、
町中のスピーカーを利用して、情報提供を呼び掛ける事も出来る。
そこで本人が見つかればいいし、そうでなくとも手掛かりが得られるかもしれない。
ただ、美作は『門倉派』の正式な構成員で、そちらの活動も抱えていた。
やるからには中途半端は出来ない。
そこが辛いところだ。
「――――――っと」
見事に『真っ二つ』になったアクリルキューブを見て、思わず感嘆の吐息が漏れる。
「実際に見てみると迫力あるわねぇ。こんなに綺麗に割れるなんて」
気を取り直し、工程の続きを告げる為に口を開く。
「次は、この二つの間に『接着剤』を塗って、『押し花』を挟んで固定するの。
ええと、やってみてもらえる?」
325
:
一抹 貞世『ディヴァイン・インダルジェンス』
:2024/05/18(土) 01:36:14
>>324
「いいんですよ、私の能力はバレても損もしない得もしない」
「けれど、美作さんのスタンドは自分とは違う。価値が違う」
秘密にするということやはり真正面から戦えないタイプ。
戦闘力に自信があるスタンド使いは自分から種を明かす傾向がある。
バレてもあまり被害の少ない『インダルジェンス』とは違うのだ。
「彼は2度も私の命を救った恩人にして義兄。
噂によると夏の魔物を始末した後に知らない男と立ち去ったとか…」
「もし、それが本当ならば…私は…」
本物の殺意というものが少年の瞳に現れる。
何を犠牲にしようとも怨敵を殺す。
中学1年生のする目とは思えないものだった。
「あ、あっ、作業の続きをしなきゃ!」
『インダルジェンス』が溢れない最低限の接着剤を塗って押し花をズレないように最低限の力で挟んで固定する。
高度な精密動作性によるものだからかケチをつけるところが無いほどの完成度だ。
326
:
美作くるみ『プラン9・チャンネル7』
:2024/05/18(土) 02:17:00
>>325
『プラン9・チャンネル7』の能力を秘密にしたい理由は、
単純な戦闘力とは別次元で強力すぎるから。
もし美作が『やろう』と思えば、知っているスタンド使い達の情報を、
星見町全域に公表する事も出来てしまう。
確かに『プラン9』は戦えない。
直接的に危害を加えるよりも、もっと恐ろしい事が可能なのだ。
『そうしない』のは、本体が『モラリスト』である点に尽きるだろう。
「うん、さすがの完成度ね。
ほんの少しのズレもないし、本当にピッタリよ。
思わず拍手したくなっちゃうくらいだわ」
一抹の瞳に浮かんだ『感情』を見て取ったが、敢えて追求はしなかった。
何も言わない方が良い時もあるのだ。
『喋りのプロ』だからこそ、『喋るべきではないタイミング』も心得ている。
「――――さて!ここからが『一番大事な部分』よ。
『鈴蘭が入ったアクリルキューブ』を『鈴蘭の形』にして欲しいの。
さっきも言った通り『鈴蘭の中に鈴蘭がある』みたいにね」
『最後の仕上げ』となる『彫刻』を『ディヴァイン・インダルジェンス』に委ねる。
このパワーと精密性に『慈悲の刃』が加われば、おそらく問題ないはずだ。
やや身を乗り出した姿勢で、一抹の作業を見守る。
327
:
一抹 貞世『ディヴァイン・インダルジェンス』
:2024/05/18(土) 04:44:24
>>326
「もしも、美作さんに宿敵のようなスタンド使いが現れたらどうします?」
「私の場合は『悪霊』を操り堅牢を極めた鎧に何十ものスタンド。
つまり、普通のスタンド使いでは絶対に敵わない最強の存在」
「しかし、その男と真反対の性質を持つ『慈悲の刃』を先輩に
貸し出した途端、無敵の鎧は剥がれ何十ものスタンドは剥がれた」
「もしかすると美作さんにもそういった宿敵と相対することが
あるかもしれませんね」
「だから危ない時は読んでくださいね。
知り合いがうっかり死んでるなんて洒落になりませんから…」
「…………………………」
それっきり一抹は黙り『鈴蘭が入ったアクリルキューブ』を『鈴蘭の形』にする作業に入った。
『アクリルキューブ』は『インダルジェンス』の神業に等しい彫刻作業で少しづつ削り『鈴蘭の形』になった
『インダルジェンス』のパワーと神業を可能とする精密動作性で僅かな部分を削り『鈴蘭の中に鈴蘭がある』ように見えるモノが出来上がった。
「ふぅ〜お仕事完了です…! たぶん!」
「まだ加工して欲しいモノが有れば言ってください。
我が家は古い物を義父がコレクションしていて木蝋とかありました」
328
:
美作くるみ『プラン9・チャンネル7』
:2024/05/18(土) 18:23:44
>>327
一抹の言葉を受けて、しばし黙考する。
少なくとも『スタンド関連』において、
『宿敵』と呼べる程の相手に出会った事はない。
強いて言えば、それに該当しそうなのは『コヤコヤ』か。
実際、今まさに競い合っている最中なのだから。
『プラン9・チャンネル7』と同じ『機械仕掛けの鳥』を持つ者であり、
『ラジオ』と『配信』の違いこそあれ、
情報発信を行う『インフルエンサー』という共通点もあった。
「……『宿敵』……『宿敵』ねぇ……」
「それなら、むしろ『歓迎』したいくらいよ。
しのぎを削る『ライバル』の存在は、私にとっても『プラス』になるから。
もちろん『戦闘』はゴメンだけど、
『エンターテインメント』なら何時でも勝負してあげるわ」
「『私と互角に張り合える人がいれば』ね」
美作の表情には『自信』が見て取れる。
自分の得意分野なら、誰にも負けないという強い意思が。
それは一抹が秘める鋭さとは別種の強さだった――――。
「――――――とうとう『完成』したみたいね。
お見事な出来栄えよ、パーフェクト!
フフ、一抹君に頼んで良かったわ」
『アクリル製の鈴蘭』を手に取り、その完成度に目を見張る。
神業的な精密性と『慈悲の刃』によって製作された芸術品だ。
これが『魔法によって作られた物』と判定されるかどうかは分からないが、
『りんの一部』である『鈴蘭の押し花』と合わさる事で、効果は上がると信じよう。
「…………『木蝋』?」
確かに『魔法使い』らしくはあるが、それよりも欲しい物がある。
「『古い物』って事は『アンティーク』よね。
そのコレクションに『トランク』なんてないかしら?
『1m』くらいの物が入ると助かるんだけど……」
『サーベルを入れたいから』などという事は口が裂けても言えなかった。
329
:
一抹 貞世『ディヴァイン・インダルジェンス』
:2024/05/19(日) 06:02:00
>>328
「宿敵とは必ずしも良い者ではありませんから…
運命をドン底に突き落とす『厄災』」
「しかし、「美作さんの『宿敵』か…
真っ当に戦わずにこちらを翻弄するみたいな…?」」
「あぁ! 『アンティーク』の丁度いい『トランク』ならあります!
義父は偏屈ですが私の頼みは断れないんです!」
一抹の義父は偏屈者だが息子には甘いようだ。
上手いこと一抹を使えば『トランク』は手に入るだろう。
330
:
美作くるみ『プラン9・チャンネル7』
:2024/05/19(日) 17:36:42
>>329
一抹の言葉を聞いて、美作は柔らかく微笑んだ。
「『私の宿敵』は『私自身』よ。
私は『自分の能力を活かしたい』と思ってるけど、簡単には出来ない理由があるの。
『使いたい気持ち』と『使っちゃいけない気持ち』の狭間で揺れていて、
その相反する思いを両方とも納得させなきゃいけない。
だから、『美作くるみ』にとっての宿敵は『美作くるみ』」
もし『美作の宿敵』に成り得る者がいたとすれば、
単純な殴り合いなどにはならない事だけは確かだ。
『言葉』というのは恐るべき武器になる。
誰かを貶める事も傷付ける事も、場合によっては殺す事も出来るのだから。
そんな風に『情報』を使う者がいたとしたら、美作は許せないだろう。
美作にとっての『宿敵』というのは、
使い方を誤れば大きな被害を及ぼしてしまう『自分自身』だった。
「『宿敵』とは言えないけど、私の『ライバル』になるかもしれない人はいるわね。
そういう相手がいるからこそ、私も張り合いがあるのよ」
ここを訪れた『コヤコヤ』に応対し、『魔法使い試験』でも関わる事になった。
それは何か『引き合うもの』があったせいなのか。
ともかく今は『試験』に集中しなければ。
「じゃあ、お義父さんに頼んで『トランク』を貸してもらえる?
さすがに高価な物でしょうから、もらう訳にはいかないしね。
それから『タダヒト派』と『最中派』の連絡先を聞いておくわ」
スッ
「これを一抹君に。この前は電話越しで渡せなかったから」
『星見FM放送名義』の名刺を取り出し、一抹に差し出す。
『Electric Canary Garden:パーソナリティー・美作くるみ』と綴られている。
番組の『イメージキャラクター』である『電気カナリア』のイラストが添えられていた。
331
:
一抹 貞世『ディヴァイン・インダルジェンス』
:2024/05/19(日) 20:07:17
>>330
「もしかして『死亡発動型』スタンド…
そんなわけないですよね」
「使うとモラルに反する、または被害が大きいとか…」
思い返せば一抹の戦ってきた敵は個人規模の破壊力しか持たなかった。
美作さんのポリシーからすると安易に使ってはいけないものだろうか。
「ライバル! 良いですね! 私もライバルが欲しいです!
いや、赤月先輩は、あれは、何だろうか…」
「先ずはタダヒト派の緒方さんの連絡先をお渡しします。
タダヒトはエクリプス全盛期にかなりエクリプス狩りををした
ようで今でも『悪霊』と化した残党を狩るほどです」
「ただ、リーダーの『タダヒト』さんが忙しいので連絡が取れる
かは運任せですね」
「続いて最中派の北落さんの連絡先を…
彼女は時間を巻き戻す能力を持ちますが…持っているんですが…」
「最中派は女性の性を食い物にするドクズのカスな派閥です。
私も頼まれて一戦しただけなのに何故か最中派所属に…」
タダヒト派について語る時は誇らしいものを語るようであたったが…
最中派には良い思い出がないのか親の敵の如くボロクソに語った。
「わっ! わーわー!!私の記念品ボックスに仕舞っちゃいます!」
余程、嬉しいのか小さい身体でぴょんぴょん跳ね回る。
大人びても初戦は中学1年の男子である。
「あっ、『トランク』は持って来てもらいますか?
義父なら私が頼めば来てくれますよ!」
332
:
美作くるみ『プラン9・チャンネル7』
:2024/05/19(日) 20:47:30
>>331
『門倉派』の掲げる理念は特殊で、『アリーナ』の中では少数派だ。
他の派閥と関わる機会は、あまりないだろう。
しかし、連絡手段を持っていて損はしない。
「フフ、解説ありがとう。
私の知らない事が色々と分かって勉強になったわ。
私も『アリーナ』の試合は観戦した事があるし、
一度だけ『競技選手』として参加した経験もあったから、
ちょっと気になったの」
それらは紛れもなく事実だが、
自らが『アリーナの一員』である事は口にしていないので、
全てを語っている訳でもなかった。
「そうね……『トランク』は『ここ』に持ってきてもらえるかしら?
返す時には一抹君に伝えるから」
無事に『トランク』を借り受けたら、このやり取りも終わりに向かうだろう。
333
:
一抹 貞世『ディヴァイン・インダルジェンス』
:2024/05/20(月) 00:35:54
>>332
「ちょっと待ってくたさいね…」
スマホを取り出すとニコニコで電話を掛け始める一抹。
相手が出たのは興奮した様子で要件を語りだす。
「お義父さん! お義父さん! あの古いトランクを譲りたい人がね…」
「えっ、嫌だじゃないよ。夏の魔物の時に助けてくれた人がね
どうやら必要としてるらしいんだ!」
「それも美作くるみさんだよ! とにかく来てね!」
「『門倉不動産』って場所にいるからね! バイバイ!!」
半ば強引に了承を取付けた一抹が嬉しそうに振り返る。
何度も死の淵に叩き込まれようが無事なのは図太さ故かもしれない…
334
:
美作くるみ『プラン9・チャンネル7』
:2024/05/20(月) 06:33:49
>>333
こちらが頼んだ事とはいえ、
予想していた以上に一方的な要求になってしまい、苦笑しつつ肩を竦める。
「あはは…………急に無理を言って、お義父さんには申し訳ない事をしちゃったわね。
まぁ、確かに『魔物事件』で私が果たした役割は、
なかなかのものだったとは思ってるけど。
その為に『電波の私的利用はしない』っていうポリシーも曲げてる訳だから」
事実、美作がメディアを使って拡散しなければ、
あれほど爆発的に広まる事はなかったはずだ。
他の面々とは違い、直接的に事態の解決に当たってはいないものの、
被害者を救う上で大きなウェイトを占めていた事は間違いない。
それを免罪符にするつもりはないが、今回の交渉においては有利な条件だった。
「ところで、どうして私が『トランク』なんて欲しがるのか気にならない?
実は、ちょっとした『イベント』の企画に携わっていて、
その『小道具』として使いたいのよ。
今は進行途中の段階だから、
詳しい内容は『企業秘密』で明かせないけど、十分に活用させてもらうわ」
『トランク』が届くまでの間、
『試験』に支障が出ない程度に事情を説明しておき、引き渡しの円滑化を図る。
335
:
一抹 貞世『ディヴァイン・インダルジェンス』
:2024/05/20(月) 19:28:10
>>334
「何となくお仕事で使われるのだろうな、とは予想できますが…
もしかしてとっておきの手品をするとか!」
「むむっ、やっぱり大規模な情報操作能力の予感!」
「いや、やっぱり分かりません!」
と、しばらくの間を二人で喋っていると外で自動車が停車する音がした。
窓から外が見えるなら年季の入った軽トラックが見えるだろう。
自動車から降りる音がすると老いたにもかかわらずドスの効いた声が聞こえてきた。
「一抹がお邪魔してるのは此処でしょうか?」
その声に反応した一抹が扉を開けると同時に老いた老人のものとは思えない拳が一抹の顔面に叩き込まれ部屋の隅まで一気に吹き飛ばされた。
「私の名前はアイラト。息子が迷惑をかけたお詫びにきました。
トランクの他にも軽トラに積んできました。よろしければ…」
どこか傲慢なところのある、明王様に似た顔つきの自尊心が強そうな強面の老人が軽トラを指差す。
顔には少なくない古傷が刻み込まれたロシア人顔。
確実に若い頃はナニカしらのそういった仕事をしていたのが予想できる。
336
:
美作くるみ『プラン9・チャンネル7』
:2024/05/20(月) 20:44:05
>>335
いきなり予想外の光景を見せられて呆気に取られたが、こちらも『プロ』だ。
なるべく表情には出さないようにする。
しかし、それを以てしても完全に隠し切る事は不可能だった。
「はじめまして、私は『美作くるみ』という者です」
挨拶の言葉と共に、『アイラト』に頭を下げる。
「いえいえ、ご迷惑だなんて。
一抹君には私から『お手伝い』をお願いしたんですよ。
ここは私の顔を立てると思って、そのくらいで許してあげて下さい」
本来なら家庭の事情に首を突っ込む事などしないが、
目の前で『家庭内暴力』が行われたとなれば、話が違ってくる。
さすがに『通報』は差し控えるものの、
今回の件に関しては、元を辿れば自分に責任があった。
したがって、美作には一抹を弁護する『義務』が生じるのだ。
「では、『トランク』は有り難くお借り致します。
こちらの用事が済みましたらお返ししますので」
彼が乗ってきた軽トラに近付き、予定通り『トランク』を引き取る。
これだけでも十分ではあるのだが、わざわざ持ってきてくれた以上、
無碍にするのも憚られたので、念の為に他の品々も確認しておく。
もしかすると『掘り出し物』が見つかるかもしれない。
337
:
一抹 貞世『ディヴァイン・インダルジェンス』
:2024/05/20(月) 21:39:53
>>336
「いや、こいつはまだ懲りてない。
だから痛い目を見た方がいいんですよ」
アイラトがトランクを大事そうに美作に差し出す。
手入れはある程度されているがアンティークな雰囲気が隠しきれない。
「お義父さんはそう言うけどロシアのマフィアでしたことから
逃げて結婚してケジメのひとつも取れないひとでなしだよ」
「スタンド使いにしか入れない事情にスタンド使いじゃない
お義父さんが入るのは傲慢じゃないかな?」
鼻血を服で拭いながら実の父を挑発する一抹。
なんとも殺伐とした親子関係だが元マフィアに育てられた結果がこれだ。
両者とも修羅の道を生きる者ゆえに譲らない。
「どうか、他のアンティークを見てやってください。
もう老いた身が持つだけじゃ物が可愛そうだ」
「ということで何でも持って行ってください!」
(『アンティーク』品は言い切りで発見してOKです!)
338
:
美作くるみ『プラン9・チャンネル7』
:2024/05/20(月) 23:16:26
>>337
丁重にトランクを受け取ってから、軽トラの荷台を覗き込む。
「…………ずいぶん沢山お持ちなんですねぇ」
ソッ
しばらく目移りした後、その中から手に取ったのは、
古めかしい『アンティークリネン』だった。
すなわち100年以上前に製造されたリネン製品を指す。
贅沢な装飾が惜しげもなく施された芸術的な織物だ。
「ありがとうございます。こちらを使わせて頂きますね」
改めて礼を言いながら、内心で『親子喧嘩』にため息をつく。
本来は『代表』が対処すべき状況だが、生憎『門倉良次』は不在だ。
この『美作くるみ』が『代理』を務めなければならない。
「『迷惑を掛けたお詫びに来た』と仰いましたが、率直に申し上げますと、
この場で乱暴な振る舞いをされる事は、我々にとって迷惑なのです。
『どうしても』と言われるなら、『ここから立ち去った後』になさって下さい。
不在中の『代表』に代わってお伝えしますが、
この場所では『暴力行為』は一切お断りしていますので」
「ここは『アリーナ』――『門倉派』の『本拠地』です。
あまり目に余るようですと、『No.2』として『然るべき対応』を取らざるを得ません」
努めて落ち着いた口調でアイラトに告げた後、今度は一抹に向き直って耳打ちする。
「『そういう訳』だから、一抹君も『続きは帰ってから』にしてね。
ここで喧嘩されると、ウチの『看板』に傷が付いちゃうから」
これは『忠告』だ。
小規模ではあるが、ここは『アリーナ派閥の拠点』。
マフィアであろうと修羅であろうと、無関係な揉め事の持ち込みは容認しかねる。
「私達の目的は『エンターテインメント』の追求。
このトランクやリネンも、その為に役立たせてもらうつもりよ」
ス ッ
一抹に『もう一枚の名刺』を差し出す。
『アリーナ構成員』としての名刺だ。
そこには『門倉派:広報担当・美作くるみ』と綴られている。
339
:
鷲見 健治『2NDハンド・ファイア』
:2024/05/21(火) 00:18:13
>>338
「ここの人の広報担当だったんですか?」
「なら、今度のこれは広報に関わること!
古い煙草とか珍しいアルカナカードとかありますよ」
と、言いつつ『インダルジェンス』でアイラトを『鎮静』して自分に都合良く進める一抹。
やはり子供と言えどスタンド使いであることに変わりはない。
その姿勢がアイラトを激怒させるのだろう。
「今度からまたスタンド使いに関わっちゃ「ごめん無理だよ」
「ほら、お義父さん謝ろうね?」
一抹に促されるままに謝罪させられるアイラト。
『インダルジェンス』は無力とは言ったがそうはとても思えない光景だった。
「もうちょっと探しても良いんですよ?
ショー?みたいなことをするみたいですが…」
物に執着しない一抹にとって価値が分からないものばかりだ。
だから価値が分かる美作さんに全てを任せる。
「でも、もう陽も暮れて来たから帰りましょうか。
事務所をいつまでも占拠するのもアレですし…」
トラックに乗った一抹は貰った名刺を手にぶんぶんと手を振る。
とんでもない親子だったが気前は異様に良かったのであった。
340
:
美作くるみ『プラン9・チャンネル7』
:2024/05/21(火) 20:39:38
>>339
大抵のスタンド使いなら、一般人相手に手も足も出ないという状況は少ないだろう。
たとえ戦闘向きでない能力であっても、工夫次第では戦えるはずだ。
そうではない能力を持つ美作だからこそ、門倉の掲げる理念を高い次元で共有できる。
「――――お二人共、ご理解いただけた事に感謝します」
おそらくは、ここを出た後で喧嘩が再開するのだろうが、そこまでの責任は持てない。
「そう、私達は『ショービジネス』をしているのよ。
今回の『責任者』は私だから、内容に相応しい品物を吟味してるの。
どれも素敵な品々だと思うけど、何でもいいって訳でもないから」
カチャ…………
「ええと…………『ジランドール(枝付き燭台)』と『木蝋』をもらえる?」
荷台に積まれたアンティークの中から、さらに二つを手に取る。
既に『何をやるか』は決まっており、それに沿った小道具が必要だ。
ただ、『古い煙草』や『アルカナカード』は嵩張る物でもないし、
また別の機会に役立つ可能性もあるので、一緒に頂戴しておいた。
「今日は色々ありがとう。お陰様で随分と助けられたわ。
良かったら、また会いましょうね。それから『ラジオ』もよろしく」
雑居ビルの外に立ち、一抹に向けて手を振り返す。
これで一連の準備は完了した。
あとは『当日』までの微調整を残すのみとなった。
(『門倉派』の『第一回興行』…………必ず『成功』させてみせる)
静かな決意を胸に秘め、遠ざかる軽トラを見送った。
341
:
名無しは星を見ていたい
:2024/06/15(土) 22:17:39
問題名:『傲慢の勧誘』
出題者:門倉
主な状況:
『門倉』が『何でも屋』や『門倉派』の為に、
『有用なスタンド使い』を探しているのを、
風の噂で知る事が出来た者も居るだろう。
そんな人物がたまたま、この『門倉不動産』を訪れ、
『スタンド使いとしてのアピール』のため、
『スタンド能力』や『スタンド名』などを見せつける。
そんな事もあるといいな、と『傲慢』にも『門倉』は思っている。
必要条件:『スタンド』をしっかりと使おう。
実行途中で自らの『スタンド名』と『決め台詞』を口に出そう。
備考:『魔法の呪文はおこのみで!』関連の活動です。
対応いただける方は、以下のURLおよび※の説明をご確認ください。
ttp://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/comic/7023/1655987686/319
※『朝山』&『木崎』チームのうち、『朝山』が諸事情により抜けたため、
※『門倉』&『木崎』チームとなり、緊急で『魔法使い』の情報や
※小道具となりうる『魔法使い由来のアイテム』の入手先を探しています。
※上記の問題は『門倉』が『演出』しているものであり、『解決』は、
※『門倉』および『木崎』に『観察される事が前提である』事をご了承ください。
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