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【個】『烏兎ヶ池神社』【場】

95朝山『ザ・ハイヤー』:2019/05/05(日) 23:37:13
>>93-94

エッ子「うーん。境内に社務所、階段……あ、池も見に行ったような」

ムーさん「じゃあ私達はこの辺りを探すか」

城生「社務所で拾って貰ってるかも知れないね」

われらニュー・エクリプスの幹部の落とし物を探す任務っス!

ならば首領の私も幹部のお助けをするっス。まったく悪の首領も
気苦労が絶えないもんっス!!

と言うわけで、小走りで『池』まで向かうっス。大きな池っス

巫女さんに男の子がいたっス・・・んんっ!

「あー! それ、エッちゃんの落とし物っス!」

ビシー!! とボトルを指しつつ告げるっス。早速
ニュー・エクリプスの任務完遂っス! 流石は悪の首領っス。

「どうも拾ってくれて有難うっス!
それ、友達の落とし物っス!」

巫女さんに近づくっス。

96須磨『ズーマ』:2019/05/05(日) 23:51:40
>>94(鳥舟)
「ボクもそーいう『吉報』を持ってきたかったンだよなぁ。

 この間さぁ、『池の水』を抜こうとした、って話したら、
 ママにちょー怒られたんだ。……迷惑掛けちゃあいけませんって」

渋々、と事の顛末を説明する。
言動とは裏腹に、しゅんとした様子は全く見られない。
ショルダーポーチをガサゴソ漁り、綺麗に包まれた『瓶詰』を取り出す。

    「これ持って『謝り』に行くとか言い出したから、
     先回りしてきたんだ。ママ同伴なんて友達に見られたらハズいしー」

    「だから、それ捨てたのはボクじゃあないよ!
     給食に出た『抹茶牛乳』がエグくて、コッソリ掃除用具入れに隠したら、
     『大掃除』でボロッと出てきて以来、そーいうことはしないって決めてるんだって!」

バタバタと両手を振って、必死で無実をアピールする。
未開封のボトルが落ちてる理由も全く検討が付かないが、
『ポイ捨て』と耳にすれば、なんとなく悪いことだと察していた。

>>95(朝山)

>「あー! それ、エッちゃんの落とし物っス!」

    「あ、あぁ〜〜〜〜〜ッッ!!

     ポイ捨てしたヤツだぁぁ〜〜〜〜〜ッッ!!」

ボトルを指し示す姿に『カウンター』を決めるように、
『朝山』目掛けて指先を突き返す。

    「もぉぉ〜〜〜〜ッッ

     『池の水』を汚すなんて、良くないぜッ
     そーいうの、ぜってぇー『悪い』ことじゃん!」

『濡れ衣』でも着せられていたのか、
頬を膨らませながら、善人面して糾弾する。

97鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2019/05/06(月) 00:33:38
>>95(朝山)
>>96(須磨)

「――――――えらいねえ、須磨くん。
 疑うみたいな言い方をしちゃってごめんねえ。
 この前のことだってボクはもう気にしてないし、
 瓶詰ももらえるなら、なおさら気にしないからさ」

(まあ須磨くんも、そこまで気にしてないかもしれないけど)

もともと特に強く疑っていたわけでもないし、
思ったより無実を強調してくるので、
早めにそれを認めることにした鳥舟。

「ちなみにこれ、何の瓶――――」

と会話が『抹茶牛乳』などに差し掛かるより早く、
ちょうどその場に近づいてきた『朝山』のほうに振り向く。

「――――こんにちは、ようこそお参りです。
 えーと、エッちゃん……ああ、きみのお友達なんだね」

           スッ

「それで、その子――――」

その、『エッちゃん』本人に確認しないことには返しづらい。
高いものではないとはいえ……ここに来ているのかな、と聞こうとして。

「あっ、待って待って須磨くん、『落とし物』って言ってるからね。
 たしかに『池の水』を汚すのはよくないことなんだけど――――
 偶然落としちゃっただけなら、むしろ今頃見つからなくって困っているだろうし」

須磨が糾弾し始めてしまったので、間に入るようにしてなだめる。ペットボトルは手に持ったままだ。

98朝山『ザ・ハイヤー』:2019/05/06(月) 19:47:59
>>96

>『池の水』を汚すなんて、良くないぜッ
>そーいうの、ぜってぇー『悪い』ことじゃん!

「んのぉ!? おぉ!! その言葉通り、自分っ!
悪の組織の首領っス!! 初対面の人間にも知って貰えてるなんて
なかなか自分も有名になったもんっス!!」 ふんっス!!

何やら勘違いして受け取る、裏の顔は悪の秘密組織
そう、悪の首領モーニングマウンテン!!!

>>97

「こんちはっス! 自分朝山 佐生っス。清月の二年生っス!!
それはエッちゃん先輩と一緒に此処で貰ったんっス。踊ってる時にきっと
池にあやまって落ちちゃったんス。落としちゃって御免なさいっス
エッちゃん先輩やムーさん先輩に、のり先輩は社務所のほうにいるっス。
なんだったら今すぐ呼んでくるっス」

「それにしても綺麗な池っス。桜も満開だと何時もお花見し放題っス
此処で毎日過ごせるのってきっととっても楽しそうっス!」

なんだか綺麗な池を見てると体が無性に動かしたくなったス。

 ブゥン!

「楽しいので踊るっスーーーー!!!!」

『ザ・ハイヤー』で『再分配』しつつのエクリプス・ダンスだ!!

99須磨『ズーマ』:2019/05/06(月) 22:04:48
>>97(鳥舟)
>>98(朝山)
>「あっ、待って待って須磨くん、『落とし物』って言ってるからね。

    「うおッ  そーいうことなんだ!

     まさか『池の水』に『池の水』を落とすなんて、
     砂場にバーミキュライト撒くようなマネするなァァ〜〜〜ッッ」

『鳥舟』の仲立ちもあって誤解を解き、人差し指を引っ込める。
そのまま『ボトル』を返して、一件落着かと思いきや……。

>「んのぉ!? おぉ!! その言葉通り、自分っ! 悪の組織の首領っス!!

    「へ、へェェェ〜〜〜〜ッッ

     じゃあ、『池の水』も悪いことに使うの?
     ぜってェー、止めといた方がいいよぉー。

     こっちの巫女さんも水売って暮らしてるんだって。
     『水商売』って不安定だって、お兄ちゃんも言ってたしさぁ」

『悪の組織』と聞いて、思わず面食らって真顔になる。
今は踊ってるだけで悪いことはしてないが、
ポイ捨てで困ってる(>>19)と言ってたので、一応探ってみる。

     ククッ

        「ヨッ、ホッ!」
 
                  スッ

『Mステ』と小学校の『応援団』で磨いたダンステクで、
ギシギシバタバタとぎこちないダンスの振り付けで対抗する。

100鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2019/05/06(月) 23:17:31
>>98(朝山)
>>99(須磨)

「ん、ん、ん…………えーと、わざと落としたんじゃないんだよね。
 そう、そうだよね。悪の組織とはいえ、それならいいんだ。
 悪の組織……いや大丈夫、呼んでこなくっても、事情はわかったし」

        「…………悪の組織かあ〜」

ヒーローごっこ、という年にも見えない。
須磨に『今こういうの流行ってる?』と聞こうとしたが、
彼も面食らっているようだし、そうでもないのだろう。

(……『特撮』ファンなのかな。そういう雰囲気じゃないけど、
 この前そういうドラマがやっていたし、彼女も隠しているのかな)

自分で観たのは好きだった俳優が助演していた時くらいだが、
学生の頃に熱心なファンが同級生にいた、それは覚えている。

                 トリフネ マーヤ
「朝山さん、よろしくねえ。ボクは『鳥舟学文』って言うんだよ。
 呼び方はお任せするけど、気軽に呼んで、気楽に楽しんでいってね。
 ここでの時間が皆さんにとっても楽しいものなのは、ボクも望む所だからさ」

力の入った口調を『緊張』と誤解し、そのようなフォローを入れて。

「や、まあ、水だけ授……売ってるってわけじゃないけどね。
 お守りとか、破魔矢……わかる? あのお正月とかの矢ね。
 ああいう縁起のいいものも、社務所のほうで扱ってるんだよ。
 だから、『水商売』ってのはちょっと違ってくるんだけどね……」

須磨の『よろしくない』誤認をやんわりと訂正した。
ちょうど左右を振り向きながら話す感じで、なかなか疲れる。

「ああ。今時は学校で、ダンスが義務教育なんだっけ…………」

          「ノリノリすぎて池に落ちないようにねえ」

なので、踊る二人には突っ込まず……やや遠い目で眺めていた。
神楽をすることもあるが、さすがに対抗して披露するには理性が勝った。

「………………??」

「ん、いや、ちょっと待った。朝山さん『それ』はその、何をしてるんだい」

あるいは現実逃避だったのかもしれない――――『ザ・ハイヤー』を視認し、我に返る。

101朝山『ザ・ハイヤー』:2019/05/06(月) 23:40:51
>>99

 うーむ! この男子も中々のキレ味のあるダンスを持ってるっス!
もしかすれば何処ぞの別の悪の組織なのかも知れないし、正義の一団なのかも
知れないっス。 闘争心をムンムン沸かせつつ更に踊りを激しくするっスー!

「あっ! 池の水はシロボシ君(ムーさんの飼ってるペット ヨツアナカシパン)
の水槽に入れるっス。シロボシ君は海水でも湖の水でも泳げるスーパーな貝なんです。
もう少し成長したら、きっと空も飛べるかも知れないっス」

シロボシ君の成長には無限の可能性が詰まってるっス!

>>100

「それ? ・・・おー!! トリヤマさんはスタンド使いなんっスか!
ひゃっほーいっ! スタンド仲間なんっス!! ニュー・エクリプス・ダンスで
共にお祝いするっス!」 〜〜♫ ♪

喜びのエクリプス・ダンスを舞い踊るっス!!!

「自分のは『ザ・ハイヤー』って言うんっス。トリヤマさんの
スタンドの名前はなんっスか?」

102須磨『ズーマ』:2019/05/07(火) 00:03:04
>>100(鳥舟)
>>101(朝山)

やや危険な『勘違い』は未然に修正されたようだ。

   ヨッ ホッ
                             ドタッ
    「あの『矢』かァァ〜〜〜ッッ」
                         タン 


『朝山』に張り合うようにステップを踏んでたが、
しばらくして『ザ・ハイヤー』を使用した、
奇怪なダンスについていけなくなったか、息を荒げてへたり込む。

「うォー、ダメだァー。

 やっぱり『BGM』がないと、
 リズムと合一しての表現がムズいぃ〜〜ッッ」

どっかから借りてきた言動と共に、地面へ腰を下ろす。
額の汗をパーカーの裾で拭いながら、『朝山』を上目遣いで見る。

    「ねェー、『シロボシ』君にも負けず劣らず、
     将来性のあるボクこと『須磨回造』にさぁー、
     その水を分けてくれたりしなぁーい?」

    「中居くんのように『貝になりたい』わけじゃあないけど、
     ボクだって、その『ヴィジョン』が見えるから、
     『スター』になれる可能性を秘めてると思うしー」

ほどけた靴紐を直しながら、『朝山』に『神秘の水』を要求する。

103鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2019/05/07(火) 00:51:59
>>101(朝山)
>>102(須磨)

「『ニュー・エクリプス』っていうのが、組織の名前なのかい?
 『新しい日蝕』……? 今の番組は、『星座』がモチーフなんだっけ」

やや勘違いしつつも、踊りにあいまいな笑みを浮かべて見守る。

「『ヴィルドジャルタ』」

「そういう名前『らしい』けど――――
 ま、あいにくボクは見たことがないんだよね。 
 照れ屋なのかなんなのか、とんと姿を見せないからさ」

「お祝いありがとう。――――ちなみにボクの名前は『トリフネ』らしいよ。
 べつに、『マーくん』とか『あやちゃん』みたいに、呼んでくれてもいいけどね」

そして朝山の勘違いにも、特に笑みを崩すことは無い。

「池の水を? うーん、それはどうなンだろうなァ。
 この池、あんまり『魚』とかが棲む感じじゃないから、
 すごい貝とはいえちょっとだけ心配な気はするかな。
 ボクは海洋学者じゃあないから『責任』は持てないけど」

が、他人の水棲ペットの水槽に池で汲んだ水を入れるのはいかがなものか――――
詳しいわけじゃあないが『貝』には『海水』のイメージがある鳥舟は首を小さく捻る。

「まあでも、朝山さんの水なんだから――――
 好きに使ってくれるのが、そりゃ、一番いいんだけどね。
 一応ちょっと心配だから、大丈夫なのか調べた方がいいかも、ってね。
 ああ須磨くんもさ! よかったら、社務所で『授かって』みたらどうかな」

        「自分で授かった……え、見えるの?」

須磨を窘めようとしたが、思わぬ言葉に目を丸くした。

「『ヴィジョン』が? ……おいおい、なんだかすごい偶然だね。一度に3人も揃うなんてさあ!」

                   「けっこう、珍しいものだと思ってたんだけどさ」

以前話したスタンド使いも、『見えないヤツのほうが多い』と体験を語っていた。これは偶然か?
それとも、何か――――『神秘』というものが、あるというのだろうか。鳥舟は目に見えない何かを、疑う。

104朝山『ザ・ハイヤー』:2019/05/07(火) 22:18:29
>>102

「んんっ? お水が欲しいのなら、巫女さんに頼むか
買うのが一番っス。この水はエッちゃん先輩のだから
私が勝手にあげるのは不味いっス」

>>103

「綺麗なお水なんっスけどねぇ。まぁシロボシ君の具合が良くなさそうなら
ムーさんが普段使ってる海水に戻すだけっスからね」

池を見てみるっス。きらきら輝いてるっス
あと池の水とか入れてみようって発案はエッちゃん先輩にムーさんっス。

>>ALL

「な」

「なんとーーーー!! 全員スタンド仲間なんっス!
吃驚仰天エクリプスダンスを踊るしかないっス〜〜!!」

スタンド仲間に巡り会えた驚きと衝撃を舞いにつぎ込むっスーーー!!

105須磨『ズーマ』:2019/05/07(火) 23:53:53
>>103(鳥舟)
>>104(朝山)
「ボクのクラスには『ズーマ』が見えるヤツいないから、
 『超絶レアキャラ』だと思うんだよねぇー」

『水』はすっかり諦めて、休ませた足で立ち上がった。

    「じゃあ巫女さん、これあげるー。
     バアちゃんの家に行った『お土産』だけど、
     ヨーグルトに入れると、むっちゃウマいよ!」

さっきの『瓶詰』を『鳥舟』に手渡す。
中身は綺麗に包装された『マスカットジャム』だ。

    「じゃあな、エプリッツ!
     あんまり悪いことするなよ!」

    「出店の『空クジ』をシュパッと暴くみたいに、
      ボクがやっつけてユーチューブに載せちゃうぞ!」

踊っている『朝山』に軽やかに忠告をすると、鳥居をくぐって去っていった。

106鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2019/05/08(水) 02:46:41
>>104(朝山)
>>105(須磨)

「そうか――――やっぱり、驚くくらいには珍しいんだね」

仰天する朝山に、レアさを語る須磨。
やはりただの『偶然』で3人集まったわけではないのだろう。
が、今の鳥舟にその謎を解き明かすきっかけはないし、
そもそも、すべての謎に解き明かせる答えがあるものでもない。

「へえ! いいものをくれてありがとうね。
 『ヨーグルト』は結構食べるからさ、
 ちゃんと底に残った一匙まで使い切るよ」

         ニッ

「それじゃあね、須磨くん。
 また何か、あったらおいで」

用事でも、話題でも、企画でも、何かあったらだ。
それから朝山に向き直る。

「踊り、得意なんだねえ」

「烏兎ヶ池は、確かに月が映るくらいにはきれいだけど、
 『純粋』って意味のきれいさとは、違うからね。
 見てみて。底がまるで見えないだろう? 濁ってるんだよ……」

                「さて、と」

       スッ

「ボクは、お掃除の続きをしてくるよ。
 もしお参りでわからない事があったら、気軽に声をかけてね」

                  「それじゃあ、また」

池の周りでいつまでもいるわけにはいかないし、
踊りをずっと眺めていると、時間が経つのが早すぎる。

特に朝山から呼び止めるようなことがなければ、境内のほうへ戻っていく・・・

107朝山『ザ・ハイヤー』:2019/05/08(水) 22:34:39
>>105

「それじゃあまたっス! 学校で宇宙統一部を開設してるから
良かったら入部してみるっス〜〜〜!!」

ちゃっかり入部を促しつつ、手を振ってばいばいっス!

>>106

「お仕事お疲れ様っス! とりふねさんも、また今度
一緒に私達と遊ぶっスー!」

 「よし」

「ボトル見つかったス〜〜〜〜!!!! たったったっ!!

輝く烏兎ヶ池を後にして、悪の首領はニュー・エクリプスの
仲間のもとへ戻っていった。

108嬉野好恵『一般人』&ディーン『ワン・フォー・ホープ』:2019/07/06(土) 00:39:13

 テク テク テク

境内を一人の少女が歩いている。
花柄のワンピースに花モチーフの髪留め。
ポニーテールに括った髪が歩く度に揺れている。

 モゾ

背中に背負ったリュックが微かに動いた――――ように見えた。

109鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2019/07/06(土) 00:53:01
>>108

            コツッ  コツッ

「――――ようこそお参りです」

左がやや長い後ろ髪を同じく風に揺らし、
金色の瞳を笑みに細めながら女が歩いてきた。

女というか――――『巫女』だ。

「お嬢さんおひとりですか?
 お参り? それとも、お散歩にきたのかな」

        スッ

「どっちでもさ、ゆっくりしていってね。
 大したおもてなしとかは、出来ないんだけど」

膝を曲げて視線を合わせ、その実、目の先には『リュック』があった。

(歩いた振動で揺れた、ってフウではなかったけど。
 『子供一人』っていうのも合わせて……ちょっと気になっちゃうな)

110嬉野好恵『一般人』&ディーン『ワン・フォー・ホープ』:2019/07/06(土) 01:19:46
>>109

「こんにちはー!」

やや大きな動作でお辞儀をする。
そして、『金色の瞳』に視線が移った。
物珍しそうな目で、しばし見つめる。

「あっ……」

「そのー」

「何でもないですっ」

それが良くないことだと思ったようで、慌てて視線を逸らす。
別の話題を探しているらしく、目線が泳いでいる。
その時、少女を宥めるようにリュックが揺れた。

「えっとー、ヨシエはお参りに来ましたー!」

「――でも、『一人』じゃないよー」

ニコッ

落ち着きを取り戻し、明るく笑った。

111鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2019/07/06(土) 01:56:46
>>110

「そう? もし何でもあったら、いつでも言ってね」

目を見られていると気付いても、そこに抵抗はない。
もの珍しい気持ちは分かるし、相手は子供だし。
そこは特にコンプレックスというわけでもないし。

「それで……ああ、そうだったんだねヨシエちゃん。
 お友達か保護者の方がいるのかな? なら安心だ。
 ま、君くらいの子が一人で遊びにくるには、
 ここはあんまり来やすい場所でもないもんねえ」

「迷子だったりしたらどうしようかって、ちょっと心配してたのさ」

階段はあるし、場所も町から外れている。
まあ、単に近所の子なのかもしれないが……

        スイッ

ともかく、膝を伸ばして一旦視線を上げた。
うろたえている少女を見つめ続けるのは、
なにかいかにも糾弾しているような空気がある……

「――今日、ちょっと暑いね。日陰の方で話そうか?」

      「というか、ボクが暑いからさ。
       あっちの影に入らせてもらおうね」

見当たらない『保護者』ないし友達は気になるところだ。
妙なリュックもあって、巫女ながら『オカルティック』な想像が巡る。

・・・視線はまたも動きを見せたリュックから、思わず離せなくなっている。

112嬉野好恵『一般人』&ディーン『ワン・フォー・ホープ』:2019/07/06(土) 02:24:01
>>111

『一人じゃない』と言っているものの、近くに友達や保護者らしき人は見当たらない。
しかし、ウソをついているような雰囲気もない。

「今日は、ちゃんと『お出かけしてくる』って言ってきましたー!」

「何かあったら『電話しなさい』ってー」

花柄のケースに入ったスマホを取り出す。
最新型の機種だ。
通知がないか確かめて、視線を巫女の女性に戻した。

「――はーい!」

片手を上げて、元気よく返事を返す。
そして、巫女と共に日陰に向かう。
歩きながら、頭を動かして境内を見回す。

 キョロキョロ

「お姉さんは、ここに住んでるんですかー?」

そもそも巫女というのがどんな人なのかを、よく知らなかった。
テレビか何かで見たことがある気はする。
ただ、あまり理解しているとは言えない。

・・・・・・・・・・・・

リュックは沈黙している。
今のところ動く気配はなかった。
しかし、確かに動いていたのは事実だ。

113鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2019/07/06(土) 10:28:41
>>112

「なるほどねぇ。それならやっぱり安心みたいだ。
 ということは、お友達と一緒に来てるのかな……」

家の人に挨拶をしてきた、のなら。

スマホを持っているのは"そんなに"驚かない。
もう少し大人びた小学生もたまにここに来るし、
家庭によっては子供にも買い与えているのだろう。
最新型なのは、鳥舟の知識では判別できなかったが。

   スタ
     スタ…

「ん、そうだよ。ここがお姉さんのおうちなんだ。
 ヨシエちゃんでいう『学校』みたいに毎日来て、
 お勉強の代わりに、『お仕事』する場所でもあるね」

      ニコ…

笑みを浮かべて、境内を見渡す。
烏兎ヶ池神社――間違いなく家であり、仕事場。
それにしてもやはりヨシエの連れは見当たらない。
彷徨った視線は、最終的にリュックへと戻って来た。

「あ、そう……名前を、言い忘れていたよね。
 ボクは『鳥舟 学文(とりふね まーや)』だから、
 鳥舟さんでも、学文ちゃんでも、マーくんでも良いよ」

「それで……ヨシエちゃんの『おうち』も、この辺りなのかな?」

軽い自己紹介を挟みつつ、何となしに尋ねた。
家が近く、スマホで連絡が出来るという事なら、
それをもって『一人じゃない』と言えるのかもしれない。

(…………って、いうのは無理な解釈かな)

一人で来るのはおかしな話ではないし、無理に『謎』を暴く気はないが、
思わせぶりに蠢き……沈黙する『リュック』をスルー出来るほど器用でもない。

114嬉野好恵『一般人』&ディーン『ワン・フォー・ホープ』:2019/07/06(土) 15:02:38
>>113

「『学文のお姉さん』のおうちなんだー」

「神社がおうちってオシャレだねー!」

 ニコッ

子どもらしい笑顔で、無邪気な感想を口にする。
思ったことをそのまま言ったという感じだ。
実際、あまり深くは考えていなさそうだった。

「――ヨシエのおうち?」

 フルフル

質問に対して、首を横に振る。

「えっとー、今日は『バス』で来たからー」

「ヨシエは一人でバスに乗れるんだよー」

少なくとも、歩いて来れる距離ではないらしい。
件のリュックは、相変わらず動いてはいない。

「あっ――」

「今日はねー、『友だち』と来たんだよー」

思い出したかのように、少し前の話題に返事を返す。
しかし、周囲にそれらしい人影はない。

「――ふうっ」

背負っていたリュックを背中から下ろし、そっと地面に置く。
リュックの口は完全に閉じられてはおらず、隙間が開いていた。

「『一休み』しようねー」

115鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2019/07/07(日) 00:04:22
>>114

「そうかな? まあ――――良い家だとは思ってるけどね。
 それにしてもバスかあ。偉いんだね、ヨシエちゃん。
 ボクが子供だった頃は一人じゃとっても乗れなかった」

           チラッ

「降車ボタンを押すのだけは、すごく好きだったんだけどね」

「……」

「それでなんだけどさ」

1人で来たのに、『友達』。
そしてなぜか『空気が入る』ようにされたリュック。
もし蠢いてなければ、『ロマンチスト』として、
ぬいぐるみか何かとして納得できる話なのだが。

「ヨシエちゃんの友達なんだけど。
 その。……その中にいるのかい?」

          「…………そのかばんの中に?」

どんな友達なのだろうか――――こうなると『沈黙』が逆に怖い。

116嬉野好恵『一般人』&ディーン『ワン・フォー・ホープ』:2019/07/07(日) 00:39:39
>>115

「――――そうだよー」

先程とは反対に、首を縦に振る。
そして、小さな手がリュックに伸びた。

「そうそう――」

「『学文のお姉さん』にも、きちんと挨拶しなきゃねー」

 ジジィィィーーーーッ

リュックの口が少しずつ開いていく。
その中には、『黒い塊』のような何かが入っていた。

      モゾ

「ねー、『ディーン』」

          ヒョコッ

ヨシエの呼びかけに応じて、毛の短いチワワが顔を出した。
毛の色は黒一色だ。

「ヨシエの友だちだよー」

両手で抱き抱えたチワワに、頬を寄せる。
チワワの首には『DEAN』と名が入った首輪があり、革紐の『リボンタイ』が結ばれていた。

 ジッ

黒い両目で、目の前にいる相手を見つめる。

117鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2019/07/07(日) 01:32:11
>>116

――――――――――――――目が合った。

「………………犬かァ〜〜〜っ」

「いや、それはそうだよね。
 犬用リュックってあるもんねえ。
 ボクは昔から犬は飼ってないから、
 それがそうなのかは知らないけどさ!」

可愛らしい『チワワ』とだ。

どうやら杞憂だった――――というか、
伝奇モノやサスペンスの読みすぎだった。

「『ディーン』、っていうのかな? 首輪を見た感じだとさ」

そうして現れた犬……『ディーン』を改めて見る。
見つめられている。犬の考えなんて分かるわけはない。

「わりと、おとなしい感じなんだねえ」

              「お利口そうなお友達だ。
               類は友を呼ぶ、っていうのかな」

118嬉野好恵『一般人』&ディーン『ワン・フォー・ホープ』:2019/07/07(日) 02:12:42
>>117

チワワは喜んで尻尾を振っている訳でも、吠えたり唸ったりしている訳でもなかった。
ただ黙ったまま、巫女の『金色の瞳』を見つめていた。
犬の目では『色』が判別出来ないため、それが『金色』である事は分からなかったが。

《…………》

見知らぬ相手に出会った時は、まず敵意や悪意がないかどうか確かめる事にしている。
これは何も人間に限った話じゃないが。
リュックの中から、二人の会話は聞こえていた。
それを聞く限りじゃあ、少なくとも今すぐの危険はないだろうと感じた。
だから、これは『念の為の用心』ってヤツだ。

 スッ

ヨシエが俺を地面に下ろした。
俺が抜けた分だけ軽くなったリュックを背負って、奥の方を見つめる。
俺も同じ方向に視線を向けた。
こういう場所に来た事は――――ないワケじゃない。
だが、ここに来たのは俺も初めてだ。

「『お参り』って、どこでしたらいいんですかー?『学文のお姉さん』!」

そういえば、ヨシエはそんな事を言っていた。
『お参り』ってヤツが何なのか――俺は詳しく知らない。
だがまぁ、興味はあるな。
人間社会の知識ってのは、チワワにとっても有益だ。
知っていればいるほど、それだけヨシエを守るのに役立つからだ。

「あっちかなー」

辺りを見渡してから、ヨシエは歩き出しかけた。
それを見た俺は、ヨシエの隣に立つ。

119嬉野好恵『一般人』&ディーン『ワン・フォー・ホープ』:2019/07/07(日) 02:35:05
>>118

「そうだよー。『ディーン』は『ディーン』だよー」

「ヨシエの一番大事な友だち!」

「ヨシエはねー、よくディーンとお話してるんだー」

寂しがりのヨシエは、誰かと会う度に、こうして色々と喋ってしまう。
それが直りそうにないのが、俺にとっては悩みのタネだ。
まぁ、これくらいなら幾らでも誤魔化しは利くだろう。

120鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2019/07/07(日) 13:40:28
>>118-119

しばらく見ていたが、どうにも目が合い続ける。

      スッ

…………なんとなくバツが悪い気がして、視線を上げた。
沈黙する犬を見ているのは特別に楽しいわけではない、というのもある。

「お話? そう……ふふ、それはステキな話だね。
 ボクも……飼ってたわけじゃあないけれど、
 鳥とかとお話してた時期は、あったかなあ。
 今はもう、言葉が通じる気がしないんだけどさ」

犬と話す、という言葉も特に不思議には思わない。
ペットでなく友達として扱う相当な愛犬家のようだし、
むしろ話す事はないほうが不思議だ。まして子供だし。

それに・・・この『ディーン』についてはどこか、
人間の言葉くらい分かってそうな『智慧』を感じたのだ。

「ちゃんと本格的にやるならキマリがあるんだけどね。
 そうすると境…神社の入り方からの話になっちゃうし、
 そこのところはまた今度来た時にでも教えてあげよう」

       ザッザッ

「こっちだよ、おいでヨシエちゃん。
 それから……『ディーン』もおいで」

烏兎ヶ池神社は"動物"に所縁があるため、
世情の大勢とは異なり犬を入れる事に問題はない。

勿論、きっちりと面倒を見てもらうのは前提だが、
ヨシエとディーンについては、特に問題もないだろう。
鳥舟は、手水舎(ちょうずや)にゆっくりと歩いてく。

「ここで手と、口を洗うんだよ。
 神さまっていうのはすごく、きれい好きだからね。
 きれいにしてないと、お願いを聞いてくれないとか。
 そういうお話もあるんだ……『穢れ』って言ってね」

そこまで言ってから、気付いた。

「……あっ、ディーンは…………ごめん。
 うち、まだ……動物用の水場って無くってさ。
 噂によると、あるところはあるらしいんだけどね」

       「ごめんね、今回はヨシエちゃんが、
        ディーンの分までお願いしてあげてね」

手水舎の柄杓を取り水をすくいつつ、詫びを入れておく。

動物は『穢れ』ている……という言説は根深いもので、
烏兎ヶ池神社についても『ペット同伴』こそ可能だが、
ペット用の水場や本堂への参拝を許可しているほどは、
先進的……革新的ではないし、動物熱心でもなかったのだ。

121嬉野好恵『一般人』&ディーン『ワン・フォー・ホープ』:2019/07/08(月) 00:18:38
>>120

「――はーい!」

いつものように、ヨシエは元気よく歩き出す。
俺は、それに歩調を合わせてついていく。
自慢の鼻を時折ひくつかせ、辺りの様子を観察する。

「ヨシエもキレイにしてるよー。帰ったら、ちゃんとうがいして手も洗ってるしー」

「神様のおうちも、ヨシエのおうちと一緒だねー」

そう言って、ヨシエは柄杓とか言われてるらしいヤツを取り上げる。
俺は――まぁ特にする事もなさそうだから、ヨシエの足元に座った。
日陰のせいか水場が近くにあるせいかは知らないが、ここも割に涼しい場所だ。
もちろん、『クーラーの効いた部屋』ほどじゃあないが。
こっちは電気に頼らないって利点があるから、一概には比べられないな。

「えっ」   
       「……うん」

ヨシエの顔には、二つの表情が入り混じっていた。
落胆した悲しげな顔と、それを隠そうとする顔だ。
ヨシエは、周りに心配を掛けてはいけないと考えている。
そのために、『物分りの良い子供』でいようとする。
ヨシエは確かにしっかりしている方だが、普通の子供の枠を越える程じゃない。

     クゥーン

その場に座ったまま、俺は小さく鳴き声を上げた。
ヨシエと、『もう一人の相手』に向かってだ。
俺としては、『気にするな』という意思を込めたつもりだった。

『神様』ってのは、口や手を洗わないと願いを聞いてくれないらしい。
しかし、俺には誰かに頼みたい願い事は特になかった。
つまり言い換えれば、今ここで体を洗う必要がない訳だ。

ああ、いや――――『願いはない』というのは間違いだ。
『ヨシエを守る事』が俺の願いだからな。
だが、それは俺が俺自身の力で果たすものであって、誰かに頼むような事じゃない。

122鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2019/07/08(月) 01:50:09
>>121

「……」

ヨシエの悲しげな顔には、反応しないように努めた。
ディーンの鳴き声には、何となく『慰め』を感じて、
想像以上の利口さに驚くが……口には出さない。

『神』なら何だって、どんな生き物のだって、
願いをかなえてくれたら良いのに――――そう思う。
だが、『神社のルール』は自分や父の為でもある。
それを『情』だけで曲げるわけには、いかない。

かといって気の利いた言葉も、それ以上思いつかない。
そういう『妥協』もやはり言葉にはせず、手水舎の手順を見せる。

「これで『清め』は出来たから――――
 あとはあっち。よく見る『お賽銭』を入れる所に行こう。
 あそこもまあ、ちょっとしたルールはあるんだけどね、
 そこんところを教えるのも、巫女であるボクの務めだから」

               ザッ ザッ

「ボクの後ろ……ついてきて、ヨシエちゃん。
 それとね、今度は『ディーン』も一緒に出来るよ!」

             「……ちょっと難しいかもしれないけど」

などと語りつつ、『参道』の真ん中を避け、端を歩いて『拝殿』へと向かう。
ヨシエにも同じ道を歩くよう、促す――ワケの説明は『神』の狭量を強調しそうで、やめておいた。

                       ・・・ヨシエは気にしないとしても、だ。

123嬉野好恵『一般人』&ディーン『ワン・フォー・ホープ』:2019/07/08(月) 02:16:21
>>122

「――――うん!」

 パァッ

『泣いた烏がもう笑う』という言葉があるだろう。
それを思い出してみてくれ。
今のヨシエの反応は、丁度そんな感じだったからだ。

  テク テク テク

         トテ トテ トテ

よく見ると、どうやら進む道は決まっているようだ。
ヨシエは、それに従って歩いてる。
逆らう理由もないので、俺も同様だ。

「ね、一緒にできるんだってー」

 ニコッ

ヨシエは嬉しそうだった。
俺としては、別に無理して一緒にやる必要はないと思っている。
人間は人間だし、犬は犬だ。
お互いの距離を縮める事は出来ても、生まれ持った性質までは変えられない。
だが、まぁヨシエが喜ぶのは良い事だ。

   チラッ

俺は、この『学文』という人間を軽く見上げる。
その視線は、先程までの観察するようなものとは少し違っていた。
学文がヨシエに気を遣っているらしいというのは、態度で何となく感じる。
そういう人間には、俺としても好感が持てた。
だから、学文を見上げる視線にも、それが自然と表れたんだろう。

124鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2019/07/08(月) 05:04:58
>>123

      ホッ

笑顔に安堵する。こういう子供らしい子供は、
あまり頻繁に触れ合う事もない……あまり慣れていない。

    ザッ…

拝殿、賽銭箱の前で立ち止まった。

(ディーンが『芸』を仕込まれてるかどうかかな。
 いや、この子はなんというか、賢い犬だ。
 ボクの見よう見まねで……出来るかもしれない)

「あっ、ヨシエちゃん。お金は持ってきてるかな?
 もちろんボクが貸してあげてもいいんだけどさ。
 なんていうのかな。自分のお金でお願いした方が、
 効果を『信じられる』って、ボクは思うんだよね」

罰当たりに言えばプラセボ効果、という奴だ。
他人の金で得た安心は、たとえ少額でも話が変わる。
ヨシエくらいの歳なら、それでも別にいいのだろうけど。

「もちろん、気持ちだけでも……十分だけどね。
 ここは神様にお願い事をするところだからさ、
 しっかり挨拶とお礼さえすれば、それはそれでちゃんと届くよ」

125嬉野好恵『一般人』&ディーン『ワン・フォー・ホープ』:2019/07/08(月) 13:17:34
>>124

「うん!ちゃんともらってきたよー」

「――ほら!」

ヨシエは、ほんの少しだけ得意げに『小銭入れ』を出して見せた。
バスに乗った時も、その中の金を出して使っていた――――と思う。
俺はリュックの中にいて、直接見た訳じゃないからな。

  チャリッ

「えっと――『百円』でいいのかなー?」

小銭入れを開いたヨシエは、その中から一枚のコインを摘み取った。
多分だが、『大人になったような気分』でも感じているのだろう。
ヨシエの表情から、それが察せられた。

(さて……何をするのか教えてもらうとするか)

ヨシエの隣で立ち止まり、俺は見慣れない『箱』を観察する。
とりあえず、ここで『金』が必要になるのは分かった。
後は、『どう使うのか』――――だ。

(せっかくだ。俺に出来そうな事なら助かるな)

126鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2019/07/09(火) 01:07:27
>>125

「うん! 偉いね、自分のおさいふまで持ってるんだ。
 ヨシエちゃんはすごく、しっかりしてるんだねえ」

百円玉に視線を向けて小さく頷き、笑みを作る。
その額については、特にコメントはない。
5円だと『ご縁』みたいな話もあったりはするが、
当人が理解しないまま『げん』を担ぐ事もあるまい。

「それじゃあその100円玉を御賽銭にしよっか。
 これ、この箱の中に入れてみてくれるかな?
 賽銭箱、って言うんだけどね。この隙間に入れてみてよ」

         スッ

「あっ、入れるときは投げたりしなくって良いからね!
 よくいるんだけどね、投げ入れる人もさ……
 本当のところをいうと、ソッ……と入れて欲しいかな」

賽銭箱が傷付くし、こぼれ落ちたりする可能性もある。
投げる意図も分からないではないが、勧めはしない。

「もし投げるにしても、なるべくこう、ていねいにね」

なお…………この『祈願』の手順には、諸説がある。

鈴を先に鳴らすべきとか、賽銭が先だとか、
紙幣と硬貨どっちかにもよるんじゃないかとか、
いや先に礼からだとか…………だが、ハッキリはしない。
神さまに答えを聞いたとして、返っては来るまい。

その上で、今回は『お賽銭』に乗り気なヨシエの気持ちを優先した。
『信仰』には『納得』が重要と考える鳥舟には、正しい判断と自信があった。

127嬉野好恵『一般人』&ディーン『ワン・フォー・ホープ』:2019/07/09(火) 01:33:37
>>126

「はーい!わかりましたー!」

教師に対してするように、ヨシエは手を上げて答える。
もちろん、その様子を俺が見た事はないが。
ヨシエの家のリビングには、『テレビ』っていう『色んな景色が映る機械』があるからな。

  テク テク テク

ヨシエは、背筋を伸ばして箱に近寄っていく。
緊張しているのかもしれないな。
何か言おうかとも思ったが、邪魔しちゃ悪いから止めておいた。

「――お願いしまーす……」

            ソッ
               ――――チャリンッ

ヨシエが箱の中にコインを落とすのを見て、ふと俺は『別の箱』の事を思い出していた。
よく街中にあって、金を入れると飲み物が出てくるヤツの事さ。
同じ『箱』なら、俺はそっちの方が好きだな。

128鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2019/07/09(火) 01:46:19
>>127

「その調子、その調子。いい『お賽銭』だったよ。
 そしたらね、次はその鈴を鳴らしてみて。
 これは、まあ、意味は色々あるんだけど……
 鳴らすと『神さま』が嬉しくなるって思うと良いよ」

それで、神さまが何かを叶えてくれるのか? 本当に?
……巫女として口に出す言葉には乗せない感情。

参拝の意味は信じている。
然し『神』への畏敬を口に出す時、
どうしてもそれが心の中でざわめく。

「ここをしっかり両手で持って……こう。
 大きく動かすんだよ、ガラン、ガラン、っとね。
 ……これ、お賽銭の前にやるんだって話しもあるけど、
 まあね、そこまで細かく気にしなくて良いと思うよ」

「『祈る』気持ちがほんとなら、どっちでもね」

本坪鈴に添えていた手を離して、一歩引いた。
ヨシエにやってみるように促しながら、
なんとなく視線は『ディーン』に向けている。

この犬は何を考えているのだろう――そう思った。
犬が何かを考えるのかは知らないが、ディーンは考えていそうだ。
ヨシエを、あるいは自分を、常にヒトを観察しているような、その所作。

       (…………『鳴き声』一つにも、意味がありそうな感じがする。
        ああ、鳴いてるな。では終わらないような……不思議な感じだ)

129嬉野好恵『一般人』&ディーン『ワン・フォー・ホープ』:2019/07/09(火) 02:11:46
>>128

「うん――――」

  ガラン ガラン

両腕を上げて『綱』を掴み、ヨシエが鈴を鳴らす。
その音が、俺の耳に大きく響いた。
しかし、不思議と耳障りだとは思わなかった。
それはヨシエが鳴らしたからか、それともここに住んでいる『神様』の仕業か?
俺には、どっちとも判断が出来なかった。

   スイッ

視線を感じて、俺はその方向に頭を向ける。
その先にいたのは『学文』だった。
勿論それは当然の事で、別に何の不思議もない。

《…………》

しかし、その視線には『何か』を感じた。
上手く説明出来ないが、強いて言うなら『疑問』――か?
それが『俺に対して』なのか、『神様に対して』なのかは分からないが。

「――――次はどうすればいいですかー?『学文のお姉さん』」

人間と犬は大昔から関わってきたらしいが、あくまでも別の動物だ。
心が通じる事もあるし、そうじゃない時もある。
人間同士や犬同士でも通じない事があるんだから、違う生き物なら尚更だろう。

130鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2019/07/09(火) 14:10:30
>>129

「…………」

『ディーン』をしばらく見ていたが、
ヨシエの声に気づいて振り向いた。

「ん、あーっと。次は――――こう、『二礼』」

           スッ
              スッ

「お辞儀を、二回するんだ。なんで二回なんだろうね?
 ボクもそこんところ、答えはよくわからない。
 けど『作法』が正しいと、祈る『心』を整えやすいと思う」

「それから――――『二拍』」

           パンッ   パン

「こう。掌と掌を二回、打ち合わせるんだ。
 あんまり大きな音は立てなくっていいよ、
 大きければ良い、ってものじゃあないし、
 手が痛くなっちゃったら、よくないからね。
 それから――――『神さま』に『お祈り』と『お願い』を」

       スッ

「それが終わったら、もう一回『一礼』。
 お願いします……っていう意味の、お辞儀。

        ――――これが、『二礼二拍一礼』だよ」

流れるように『参り』の所作を済ませ、ヨシエに視線で促す。
・・・自分自身は『お願い』はしていない。『祈る』ことはしたけれど。

131嬉野好恵『一般人』&ディーン『ワン・フォー・ホープ』:2019/07/09(火) 23:10:08
>>130

「えっと、二回お辞儀して…………」

                    「――――二回叩いて……」

一つ一つ確認しながら、ヨシエは手順をこなしていく。
その辺りは、さすがに学文のようにスムーズにはいかない。
だが、ちゃんと出来てる――――ように、俺には見える。

「『これからも、ディーンとずっと一緒にいられますように』」

「『ヨシエが大人になっても、ディーンには元気でいてほしいです』」

「『いい子にするので――神さま、お願いします』」

           スッ

そのような事を口にして、ヨシエは最後の一礼を終えた。
俺は、ヨシエが何を願うつもりでここに来たのかを知らなかった。
だから、今初めてそれを聞いた事になる訳だ。

《――――…………》

犬と人間では『時間の流れ方』が違う。
ヨシエが大人になる頃には俺の寿命は終わってるか、その一歩手前って所だろう。
どれだけ長生き出来たとしても、ヨシエより俺の方が『早い』のは避けられない。
俺は――ヨシエの願い事を聞かされた神様が、少々気の毒に感じた。
そして、神様とヨシエの間に立つ『学文』の事も。

「ね、ディーンもできるんだよねー?」

自分の番を終えたヨシエは、至って明るい表情で俺と学文を交互に見た。
今のが手順の全てだとしたら、まぁ難しくはないな。
『ワン・フォー・ホープ』を使えば苦もない事だが、今はそうもいかない。
まぁ、それでも出来なくはないだろう。
そう思いながら俺はヨシエを見て、それから学文の顔を一瞥した。

132鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2019/07/09(火) 23:33:56
>>131

「―――――――――――― ・・・」

『都合のいい神さま』なんて、存在しない。
誰より神に尽くす父親がそうだったように、
運命はあくまで平等に、そして人の手は届かない。

(動物も人も死ぬ)

(『王様』も『殿様』も死ぬんだから、
 もし世界が不平等だとしても死ぬし、
 平等ならもちろん死ぬ。……そんなことさあ!
 わかってるんだけど……ああ、顔に出てなきゃ良いなァ)

当たり前の『現実』だ。
だが、神社は、巫女は『幻想』の域に半歩踏み入れている。
だから父親がそうだったように、神を否定は、しない。

「とっても素敵なお願い事、だね。
 それじゃあ……『ディーン』、出来るかな」

      「ボクの言葉が聞こえてるかは、
        ……まあ、わかんないけどさ」

   スッ

やや身をかがめて、こちらを見る『ディーン』に目を合わせた。
不思議な犬だ。でも、犬だ。『20年』先に、彼はきっといない。

だが・・・『願い』や『祈り』は、『記憶』――――『思い出』の一つとして残るだろう。

133嬉野好恵『一般人』&ディーン『ワン・フォー・ホープ』:2019/07/10(水) 00:17:23
>>132

 ワンッ

やってみるさ――そんな意を込めて、俺は学文に鳴いてみせた。
もっとも、俺の言い分が伝わってるかどうかは定かじゃないが。
まぁ、それはお互い様だろう。

「はいっ、ディーンの分だよー」

しゃがみ込んだヨシエが、俺の鼻先に百円玉を差し出した。
俺は、それを口に咥えて歩き出す。
向かう先は、正面に置いてある箱だ。

   ヒュッ
              ――――チャリンッ

俺は頭を振って、口に咥えた百円玉を箱の中に投げ入れる。
そっと入れるのが学文の要望ではあったが、あいにく俺には届かなかった。
なるべく丁寧に入れた筈だから、その辺は大目に見てくれ。

      スッ
           スッ

コインが落ちる軽い音を聞いてから、頭を二回下げる。
そして、綱を口に咥え――ようとした所で、少し迷った。
神様ってのはキレイ好きって話だし、直接口を使って良いものかどうか。

       ガラ ガラ

だから、俺は『後ろ足立ち』を披露する事にした。
上げた前足を使って器用に綱を揺らし、その先にある鈴を鳴らす。
ヨシエに比べて鳴り方が貧相になるのが玉にキズだが、まぁ仕方ない。

(――さて……)

「よいしょ――」

次に移ろうとした時、ヨシエが俺を抱え上げた。
確かに、この方が楽だろう。
俺は両手の代わりに前足を使って、『打ち合わせのような動作』をした。
さすがにヨシエや学文のように、『打ち合わせる』のは厳しいものがある。
これで勘弁してもらえると助かるな。

(俺には、『あんた』に頼みたい願い事はない)

(だから、これは『俺自身』に言う事だ)

(ヨシエを支えてやれ――『俺が生きてる限り』)

        スッ

最後に『一礼らしきもの』をして、俺の順番は終わった。
ヨシエは俺を下ろし、俺はヨシエを見上げた。
そして、学文の方を見つめた。
これで良かったのか?
そのような意味を込めて――だ。

134嬉野好恵『一般人』&ディーン『ワン・フォー・ホープ』:2019/07/10(水) 00:29:47
>>132

 ワンッ

やってみるさ――そんな意を込めて、俺は学文に鳴いてみせた。
もっとも、俺の言い分が伝わってるかどうかは定かじゃないが。
まぁ、それはお互い様だろう。

「はいっ、ディーンの分だよー」

しゃがみ込んだヨシエが、俺の鼻先に百円玉を差し出した。
俺は、それを口に咥えて歩き出す。
向かう先は、正面に置いてある箱だ。

   ヒュッ

俺は頭を振って、口に咥えた百円玉を箱の中に投げ入れる。
そっと入れるのが学文の要望ではあったが、あいにく俺には届かなかった。
なるべく丁寧に入れた筈だから、その辺は大目に見てくれ。

        ――――チャリンッ

コインが落ちる軽い音を聞いてから、次に移る。
綱を口に咥え――ようとした所で、少し迷った。
神様ってのはキレイ好きって話だし、直接口を使って良いものかどうか。

       ガラ ガラ

だから、俺は『後ろ足立ち』を披露する事にした。
上げた前足を使って器用に綱を揺らし、その先にある鈴を鳴らす。
ヨシエに比べて鳴り方が貧相になるのが玉にキズだが、まぁ仕方ない。

     スッ
        スッ

そして、頭を二度下げる。
次が少々難問だが――。

(――さて……)

「よいしょ――」

次に移ろうとした時、ヨシエが俺を抱え上げた。
確かに、この方が楽だろう。
俺は両手の代わりに前足を使って、『打ち合わせのような動作』をした。
さすがにヨシエや学文のように、『打ち合わせる』のは厳しいものがある。
これで勘弁してもらえると助かるな。

(俺には、『あんた』に頼みたい願い事はない)

(だから、これは『俺自身』に言う事だ)

(ヨシエを支えてやれ――『俺が生きてる限り』)

        スッ

最後に『一礼らしきもの』をして、俺の順番は終わった。
ヨシエは俺を下ろし、俺はヨシエを見上げた。
そして、学文の方を見つめた。
これで良かったのか?
そのような意味を込めて――だ。

135鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2019/07/10(水) 00:46:23
>>133

しんみりとしたムードに包まれていた鳥舟だが・・・

      ビクッ


「お、おお……思った以上に『出来てる』ね」

          「…………『名犬』って言葉を、 
           実在の犬に使う日が来るとは」

『ディーン』のあまりの『器用さ』に目を丸くし、うなずく。
利口な犬だとはもちろん再三わかっていたが、
物を投げる、頭をちゃんと二度下げる、『拍手』に似た動きをする。
それになにより、鈴を鳴らす時……あえて口ではなく手を使った事。
抱えられた姿勢なら、口のほうが犬としては楽な動作のはずなのに。

「それだけ、ヨシエちゃんとディーンの『信頼関係』があるってコトかな!」

・・・つまり『あえて』そうしたのだ。『思考』して、『適切な回答』を選び出した。

(『動物』が人間の指示を聞く事は、もちろんある。
 ボクの好きな『イルカショー』なんかまさにそれだ。
 ボールを投げたり、拍手をしたり、なんだってやる。
 今のディーンと違って、手助けすら無しでもやれる。
 ――――長い時間練習して、ご褒美も貰えるなら)

(この『ディーン』は違う……即興でボクの説明を理解して、まねした)

                (『普通の犬じゃない』んじゃないか……?)

鳥舟は『オカルトマニア』ではないが、『疑念』を忘れない人間だ。
単にめちゃくちゃ頭のいい犬というのもあり得るが、この世には『神秘』は、ある。

136嬉野好恵『一般人』&ディーン『ワン・フォー・ホープ』:2019/07/10(水) 01:24:28
>>135

「ね、ディーン――――」

「ディーンは何をお願いしたのー?」

話し掛けるヨシエの隣で、俺は学文の瞳の奥に、『さっきと同じ何か』を感じ取っていた。
つまり、『疑問』だ。
もし俺が人間だったとしたら、似たような感想を持ったかもしれない。

「じゃあー、帰ってから『お話』しようよー」

「――――ねっ?」

ヨシエは、先程と同じ内容を口に出した。
普通の人間なら、『子供の言う事』だと軽く流してしまうだろう。
初対面の時の学文が、そうであったように。

「あっ――」

(だが、今の『学文』は……)

彼女の瞳に映る『疑念』――それは俺の『謎』を解き明かしかねない。
直感というか本能というか、そういう原始的な部分が、俺自身に知らせてくるのだ。
逆に言えば、彼女は『何故そう思うのか』?

「そろそろ帰らなきゃー」

(まさか――――な…………)

『俺と同じ』、なのか?
学文を見上げながら、そんな考えが頭をよぎった。
『ルナ』の件もある。
可能性はゼロじゃあないが――。

「今日はお参りできてよかった!」

「ありがとうございましたー、『学文のお姉さん』!」

ヨシエがリュックを下ろし、俺も帰り支度を始める。
リュックの中に入る前に、チラリと学文に視線を送る。
その黒い瞳には、学文のそれと似た『疑問』の色が微かに見えた。

137鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2019/07/10(水) 04:14:24
>>136

「…………うん!」

「ボクの方こそ、ヨシエちゃんにお参りを教えられてよかったよ。
 それに――――『ディーン』にもね。
 犬にお参りの作法を教えた巫女は、全国でも初かもしれない」

        「すごく名誉だ。録画とかしておけばよかったなあ」

・・・帰り支度を始めた二人を見つめ、笑みを浮かべる。

爛々と輝く金色の瞳に、特別な意味はない。

(『お話』――――子供特有の言い回しだと思っていた。
 けれど、今考えれば『お話』は本当に出来る可能性がある。
 この世界には『不思議』を現実に出来る力があるんだから)

色が珍しいだけの、ただの視線――ただの『疑問』だ。
それはヨシエではなく、今は『ディーン』にも注がれていた。

(それがディーンのなのか、ヨシエちゃんのなのか、
 それとも単なるボクの自意識過剰ってやつなのかは、
 わからない――――ボク自身の力がいまだに鵺的なように、
 この『能力』というのは理屈だけで推論を立てられるものじゃあない)

「それじゃあ、帰り道には気を付けて。
 またいつでも来てね、ディーンと一緒でも、一人ででもね」

         (だけど)

         (――――あの二人、どちらかは『そう』なんじゃあないか?)

138嬉野好恵『一般人』&ディーン『ワン・フォー・ホープ』:2019/07/10(水) 05:27:44
>>137

「うんっ、また遊びにくるよー」

「学文のお姉さんにも会いたいから!」

結局の所、彼女が『俺と同じ』なのかどうかは分からない。
人間の世界で言う『神のみぞ知る』ってヤツさ。
そして、その『神』が何処の誰かを俺達は知らない訳だ。

「学文のお姉さんも気をつけてねー」

「――――さよならー」

  ペコッ

別れの挨拶と共に、ヨシエは頭を下げた。
『神様』ではなく、『学文』に。
俺もリュックの口から頭を出して、学文に『一礼』の真似事をする。

(『神様』か……)

(ひょっとすると、こいつの『謎』は『スタンド』より深いのかも――な)

説明はされたものの、『神様』が何なのか俺には今一つ掴みかねていた。
『実体』のようなものが感じられないから――かもしれない。
目で見えず、音も聞こえず、匂いもなく、触れられない。

「ヨシエのお願い、聞いてくれてるかなー」

     テク
         テク
             テク

俺にとって何よりも確かなもの――それはヨシエだ。
俺が傍にいる事がお前の幸せなら、俺はそうするさ。
今までもこれからも、命が続く限り。

「ディーンのお願いも聞いててもらえたらいいなぁ」

それを再認識させてくれたって意味じゃあ、俺も『神様』に感謝しよう。
それと――『学文』にも。
ヨシエの背中に背負われたリュックから頭だけを出して、俺は遠ざかる神社と巫女を見続けていた。

139斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』:2019/07/31(水) 21:23:23
偶にたわいもない、同じ事を考える。
神様は、僕を救ってくれるのか?
結論から言えば、NOだ。


額の汗を拭って、ペットボトルのお茶を一口、スカーフに包まれた喉を鳴らす
全然飲んだ気がしない、酷い蒸し暑さ、アスファルトの上よりはマシだけど。


 「あっついな……。」


汗が頬を伝って顎から滴り落ちる、まるでサウナに入っている気分。


此処に来たのは、両親の病気平癒の祈願の為だ
救わないと解っていて、それでも神様に縋らずにいられない
妙な話だとは、僕も思うけど。

奇跡は有った、『スタンド』という名前の奇跡は。

それでも神様は僕に、手を差し伸べないだろう
――いや、この世の誰にも差し伸べないに違いない。

そういう妙な確信だけは有る
何故かは知らない、自分の事は自分が一番解る、とか、僕なら鼻で笑う台詞だ。

神様に聞こえないように悪態をついて、木陰に座り込んだ
頬を風が撫でるのが、汗のお陰で感じられる。

周囲に誰もいないのを確認してから、少し休むことにした
寒いのよりはマシだとしても、暑いのも苦手だ……。

140鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2019/08/01(木) 22:46:26
>>139

誰もいない、猛暑の神社――――
唯一そこにいるのは斑鳩だけだったが、
それは『参拝客』に限っての話だった。

             ガララララ…

拝殿の戸が開き、中から女が姿を現す。
巫女装束に身を包んだ、『女』――――
顔立ちを見るに、少女と言っていい年頃だろうか。

「あっっっつ……あ」

        ペコ…

「ようこそお参りです。
 すいませんね、気が付かなくって」

「ご参拝ですか? 御祈祷? それとも、ご散歩?」

斑鳩から少し離れたところまで歩みより、声をかける。

「あの、もしかして、ご熱中症とかじゃないですよね?
 氷とか、冷たいのいります? 今日はちょっと、暑すぎますもんね」

涼やかな笑みだが、額から首筋へと垂れる汗は彼女も同じだった。

141斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』:2019/08/02(金) 21:37:02
>>140

夏の暑さは正常な判断すら鈍らせるようで
鼓膜から数秒遅れて鳥舟の声がようやく脳に届く

虚ろな視界に入ったのは金色の瞳、ボブの黒髪は左につれてゆっくりと長くなっている
巫女服を纏った女性が立っている、年は同じか、少し向こうが上か……やめとこう。
先に舌を回す時だ。

「マ……?」

(男……いや、女の子で、巫女さん?)
(男なわけがないよ、どうしてそう思ったんだ斑鳩?)
(それより、座ったまま相手するのは失礼だろ。)

思考が洪水のように流れては消えていく、舌が回らない
手を動かす事すら蝸牛の如く遅い、礼儀正しい女性に礼を失していいのか?いいわけがない。


――仕方ないのでペットボトルの中身を全部頭の上からぶちまけた。
温いシャワーがぶちまけられた気分、緑茶風味。


「おわぁ……ああ、大丈夫、大丈夫だよ、有難う。」


そう言いながら樹木に手をついて立ち上がる、あとでミネラルウォーターを買わないと
傍に立つ樹木は体重をかけてもびくともしない、なんて頼もしい奴なんだ。

……熱を吸い込む黒いジャケットなんざ馬鹿正直に着る必要は無いな、脱いでしまえ
脱いだジャケットの袖を腰に回して結ぶ、白いドレスシャツもこれで深呼吸できるだろう。


女性にしぶきがかかっていないかを確認して、一礼し、何とか舌を回し
髪をかきあげる、短髪なのでかきあげるほどはないが。



「『病気平癒』の……あー、『お守り』を買いに来たんだ、あるかな?」

(僕にも必要そうだしな。)

「冷たい水は、有れば……嬉しいな、うん、とても嬉しい。」

142鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2019/08/03(土) 00:53:08
>>141

左に行くにつれ、流れるように長く伸びた髪。
金色の目もあり、どこか『非日常』の気配漂う女性だった。
あるいは、それも熱にやられた認識の虚像かもしれないけど。

「わっ――――と、と。ワイルドですね。
 高校球児みたいだ――――って、
 高校野球に詳しいわけでも、ないんですけど」

頭から茶を被る斑鳩に、
ほとんど反射的に足を下げた。
おかげで水飛沫は少しもかかっていない。

「お守りは、ありますよ。
 『病気平癒』は特にね。
 授与は、あっち。社務所のほうで」

         スゥー

指でゆっくりと、その方向を指し示す。
まるで舞うように、と言うのは大げさだが、
斑鳩の見立て通り『礼』を感じる所作ではある。

        ザ…

「冷たい水と――――あとは、タオルも必要かな。
 今は貴方しか参拝客もいないみたいですし、
 巫女のほうもね、どうせボクしかいませんから。
 ゆっくりしていってもらっても、誰も文句言いませんよ」

「歩けますか? 背負っていける自信は、ないですけどもね」

木にもたれかかる動きに目を細めて、手を差し出す。
話しぶりも含めて、『熱中症』を疑っているのだった。それも、真剣にだ。

143斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』:2019/08/03(土) 13:50:51
>>142

 「どうも。
 ベースボールに興味が?ない?僕もそうではないけれど。」

差し伸べられた手と自分の手を見比べる
男女の違いと言うのは勿論あるが、僕の手は濡れてしまっている
結露したペットボトルを握ったからだ。

(――そこまで厚顔無恥にはなれないな)


 「失礼、お気遣いには感謝したい、でも僕の手は先程ので濡れてしまっている」


服も濡れている以上、拭いてもあまり変わらないだろう
お陰で頭はハッキリしたが、今はそれよりもお守りの方が大事だ。
差し伸べられた手をそっと押し戻す。

 「巫女さんの手を濡らすのは忍びない
 神様の機嫌を損ねるのも困る。」


自分の汗と肌を確認する、よし、乾燥はしておらず、肌も冷たくはない
熱射病か熱疲労まではいかないだろう、なった場合は病院のおでましだが。


 「……でも案内には喜んで従うよ、優しい人」
 「なあに、これでも歩くのは得意な方なんだ。」


僅かに傾きつつも、彼女の示した方に歩みを進めていく
彼女は社務所が確か…向こうだと言った筈だ。

(纏うタイプ……とはいえ、こういう時には便利だな、影の脚というのは。)

夏の日差しの中
それが聞こえる人間には、足音を多々鳴らしながら。

144鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2019/08/03(土) 21:49:34
>>143

「高校野球のシーズンだけは、
 テレビを付けるんですけどね。
 ルールも半分おぼつかないくらいで」

「ミーハーなものでして、ね」

    スッ

それから手を引っ込めて、小さくうなずいた。

「濡れてる位気にしませんよ。
 『神さま』だって、そう狭量でもない――――
 とはいえ、歩けるみたいなら、良かったです」

           スタッ スタッ

   「…………」

                    「……?」

そうして、伴うように社務所のほうへと歩き始める。
奇妙に重なる足音には疑問符を浮かべるが、口には出さない。

「それにしても、うちの神社を選んでくださってありがとうございます。
 評判は――――『インターネット』で? それとも、何かうわさでも?」

町の方にも神社はある。
烏兎ヶ池神社は『病気平癒』に強いとはいえ、選んでもらえた理由は気になった。

145斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』:2019/08/03(土) 22:37:20
>>144

我ながら嘘をつくのも得意になった
多少は冷めた思考で、彼女の言葉を反芻する


 「そうか、狭量ではないよな、神様なのだから。」


(なら、どうしてお前が罰を受けていないのだ?翔。
 行くべきなのはお前だった、貴方は連れて行く人を間違えた……。)

鳥舟へ微笑みながら、歩みは崩さず
社務所へと一歩一歩近づいて行く、妙に距離が遠くすら見える。

 「ああ、インターネット、それは思いつかなかった。
 うわさに頼る手も有った……んだな。」

我ながら何処か焦っていたのかもしれない
それが自分の生きる理由なら尚更だろう

その理由を問われて、話していい物か迷いが生まれた
彼女は関係が無い、無いが……答えたほうがいいだろう
何より巫女相手だ。


 「我ながら、貪欲なようだけどね」
 「実のところ、他のは『もう行ってきた』のさ。」

罰の悪そうに肩を竦め、ベルトポーチに手を伸ばしてジッパーを開く
中には、ポーチ一杯のお守りが、所狭しと詰まっていた。


 「歩き回って、近場のなら『全部集めた』」
 「ここで、最後なんだ。」

例え熱中症になりかけようが、その症状と危険性を理解していようが
『生きる理由』の前には障害にすらなりえない、この程度の症状なら少し休めば充分の筈だ。


 「――で、巫女さんは……ああっと。」

ふと思い至った、彼女の名前を知らないので問う事が出来ない
女性に先に名乗らせるのは失礼だと、僕のお祖父ちゃんも言っていた。

 「翔、斑鳩 翔(イカルガ ショウ) 鳥の名前の割には、空は飛べないのだけどね。」

 「お名前をお伺いしても?」

146鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2019/08/03(土) 23:45:11
>>145

「ええ、きっと――――ね」

息をするように、嘘をつける。

「ああ」

「それは――――」

だが、こればかりはほんの一瞬、顔に出てしまった。
無数のお守り。『神頼み』の結晶。

鳥舟学文は結局『神さま』に都合のいい夢を見られない。
誰よりも、『神さま』が報いてくれないことを見てきたから。

(そして、ボクの『ヴィルドジャルタ』も、
 どういうことが出来るのかは分からないけど、
 きっと神さまの代わりに成れるような力じゃあない)

       (――――都合のいい奇跡は、無い)

「『大トリ』を務める神社に選んでもらって、鼻が高いですよ」

降ってわいた『神託』も、その『詳細』は知れないままだが、
結局――――『願い』をかなえるようなものでは、ない。

それでも、否定できるはずはない。
信じられなくても、否定はできない。

「ボクは」

「ボクは、『鳥舟 学文(とりふね まあや)』です。
 ボクのほうは具体的に何の鳥ってわけじゃあないですけど、
 多少、『縁』ってヤツを感じますね。斑鳩さん、どうぞよろしく。
 呼び方は、苗字でも、マーヤさんとでも、マーくんとでも、アヤちゃんとでも」

            「それじゃ、お守りを選びましょっか」

『巫女』が『神秘』を否定するわけにはいかない。
民草がそれに心を預けることには、間違いなく価値があるのだから。

お守りの見本を、差し出す。伝統的なもの以外に、アクセサリー型の物もいくらかあった。

147斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』:2019/08/04(日) 00:38:57
>>146

鳥舟学文、その名前を脳に刻み込む
その度に僕のスタンド『ロスト・アイデンティティ』が僅かに震えた。

「それは光栄だな」
「では『鳥舟さん』と。」

縁が有るのは良い事だ、この出会いが幸運を引き寄せることを祈ろう。
それで両親が助かればなお良い。

鳥舟さんが持ってきた箱にはお守りが僕のポーチに負けず劣らず、多々乗せられている
時代や客層を反映したのか、最近ではアクセサリ型のも珍しくなくなった。

「やあ、色々ありますね、こっちはアクセサリ?」
「当然の事だけど、やっぱり僕より若かったり女の子とかも買って行くのかな」

迷うフリをしながら通常の紫色の物を手にとった
神秘と気品を表す色、これがいいだろう。
買えない値段でもない、有難い事だ。

「――ところで」

一瞬それを聞くか、聞くまいか迷った
少なくとも、それはその人の傷のように見えたし、人間生きていれば傷など幾らでも出来る。

そしてそれを他人が開くのは善ではない、と斑鳩は考えている。
彼女と友好を築いたのだし、初対面なのだからなおさら失礼な事だ。

「鳥舟さんの事なのですけど、『信仰』に疑いをお持ちですか?」

だが、言葉に出てしまった

それを問う斑鳩の表情は、逆光のせいか影になっていてよく見えず
その言葉には何処か氷のような冷ややかさがある物だった。

「巫女さんに何を、と言う話ですけど、むしろ神職には多いと聞きました。」

(一瞬、一瞬だが、彼女、鳥舟さん……『何か』が表情に出たな。)
(枝のささくれのような引っかかりだが、……我ながら恩を仇で返しているな。)

「『信じられないが故に信仰する』という人もいるとか……」
「どうなんです?」

8月というのは蝉の声がうるさい
逆に、それ以外の音は妙に静かだ。

148鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2019/08/04(日) 01:59:51
>>147

「ええ、今時『伝統』だけじゃあ、ね。
 パワースポットブームとかもありまして、
 お若い方にも参拝いただいてますから。
 そういう方にはやっぱり――――」
 
「『願いが叶いそうかどうか』よりも、
 『普段から持ち運びやすい』ものが好まれますね」

手を添えるように示すのは、ストラップ型のお守りだ。
戯画化された烏と兎、すなわち『金烏玉兎』――――
あるいは、『鵺』。

それはそこそこにして、紫色のお守りを『授与』した。

「――――?」

「ああ」

「それは――――『信仰』に疑問は、ありませんよ。
 本当にね。『信じる』ことは、心の支えになりますから。
 信じれば救われる――――そうとは言い切れはしませんけど、
 少なくとも『信仰している』間は、不安を遠ざける事が出来ます」

「ですので、『信仰する事』に疑いなんて、とても、とても」

疑うのは、『神秘』だ。
『信仰』は『人の手にある』……己の心にもある。だから、疑わない事も出来る。

「『何でも信じてる』わけじゃ、ないですけどね。ボクもやっぱり巫女とはいえ、人間なので」

149斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』:2019/08/04(日) 19:45:59
>>148

眼を閉じ、そして開く
声色には先程の冷気はもうない。

「流石、巫女さんだ」

(しかし、そうなると僕の勘違いか…?
お守りを見て顔が曇ったように見えたが、信仰ではない)

「不躾に変な質問をしました、お許しください。」

(違うな、お守り自体ではなく、お守りが起こす
結果の方か?『奇跡』だとか、或いは……
その過程の『神秘』か?)

(何にせよ、結果を焦るのは良くないな、ショウ。)

恥じ入り、眼を逸らした先に
兎の守りが目に入った、金鳥玉兎。

「……その兎の方も頂いても?」

「大陸の方だと、月の兎は餅ではなく、薬をついていると聞きました。」

追加した守りの分だけ余分に払い
兎を手にして眺めてみる、小ぶりだが、いいかもしれない。

「数があればいいと言う訳ではないでしょうが
少しでも、相性だとかなら……多い方がいい。」
「両親の為にも。」

150鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2019/08/05(月) 09:18:02
>>149

「ええ、『巫女』ですから、ね。
 ――――どうかお気になさらず。
 ボクとしても、疑問が晴れたなら、嬉しいですよ」

笑みを浮かべた。
これくらい、慣れた誤魔化しだ。

「ウサギですね! では、こちらを」

差し出すのは、兎を模したお守り。
と言うより、ほとんど『ストラップ』のものだ。
たしかに小振りだが、造りは本格的に思えた。
どの神社でも同じのを見かけるような既製品でなく、
ここの為に製造されているものなのだろう。おそらくは。

「…………」

両親。

(…………『病』について願う人は多い。
 病気は気から、って言葉もあるし、
 体の処置が十分なら、心の縋る先として……
 神様には、あってもらわなくちゃならない。
 神頼みで解決する話じゃあないとしたって、
 神に任せて救われる心も、あるはずなのだから)

(それでも)

都合のいい神はいない。
運命を捨てる神はいても、拾う神がいるとは限らない。

「仰る通り数が全ての世界ではないですけれどね、
 その方がいいと思うなら、そうしてみる――
 それが『信仰』を助けてくれると、思いますよ」

「『信じれば全てうまくいく』わけじゃあなくったって、
 『信じることで救われる』なにかは、あると思いますから」

神は、いると思う。だからこそ鳥舟は疑っている。
いないと断言出来れば、楽ではあるのだろうけど、残酷だ。

151斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』:2019/08/05(月) 20:35:06
>>150

 「信じることで救われる……か。」

(7年起き上がらない両親だ。今更お守りで変わるとは信じられない、けれど。)

結局のところ、こういう事だ

もし、神様が僕に救いの手を差し伸べたとしよう
あっさりと、悪い冗談のだったかのように、僕の両親が起き上がったとしよう

その時点で、僕の行動も、それに伴う『意志』も意味が無くなる
ポーチ一杯のお守りにも、此処での出会いも、僕と言う存在も。

神様は、僕の意志と行動に、価値を見出し続ける限り、手を差し伸べないだろう
……それを無意味にしないために。

(もっとも、この考えは神が存在して、何処かへと『向かい続ける意志』に価値を見出しているのが前提だが)


手の中で兎と鳥の守が、夏の日差しを浴びて黄金の色に輝く。


(たとえ苦しくとも、過去を振り返り、真実を見続ける事に意味があると、そう信じよう、信じられなくても。)
(それが僕にとっての『信仰』かもしれない。)

 「――成程。」

独り感心して頷くと、お守りをポーチに入れた、これで用事は完了……。

 「ッ……。」

急に視界が暗転し、戻る時には膝をついていた、とっさに『ロスト・アイデンティティ』自身が倒れまいと、
影の脚を伸ばして転倒だけは防いだのだろう。

鳥舟さんの言葉に関心して忘れかけていたが、だいぶ体がきついらしい。

「その……鳥舟さん、我ながら、情けないし恥ずかしいのですけど
お水とか、頂け……。」

……上手く舌が回らない、頭痛までしてきた、吐き気は無いが。

152鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2019/08/05(月) 22:10:46
>>151

「ええ、祈る心は、もしかしたら…………ね」

断言はできない。
それが巫女として理想形だとしても、
そこまでは踏み込めていなかった。

「……信仰の形は、結局、人それぞれです。
 『キマリ』に従って信仰する人もいますし、
 自分の中の『ジンクス』くらいの人もいる。
 毎日のように参拝に来る人もいますし、
 初詣だけ……気が乗った初詣だけ、という人も」

「いずれにしても、それの後押しを――」

      「あっ」

(しまった)

陽射しの下で持論を垂れていた鳥舟も、
膝をついた斑鳩に『それ』を思い出した。

「冷たいお水」 「ッを、持ってきますんでね!」

         たたたっ

「『日陰』入れます? 厳しいかな……!
 動けないなら無理しなくて良いんで、待ってて下さい」

         「2分も待たせませんからねッ」

そもそも彼が熱にやられていたのが話のきっかけだ。
歩けはしても体調が悪そうなのは明らかだった。
本業に気を取られすぎていたのを恥じつつ、水を取りに向かう。

     ………ミンミンミンミン

            ・・・斑鳩とお守り、鳴き始めた蝉だけが残される。

153斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』:2019/08/05(月) 23:25:05
>>152

駆けていく鳥舟の焦るような様子を見やり
何かしら言葉をかけようと口を開いたが、どうにも舌が回らない。

(我ながら、何とも間抜けでお粗末な……)

ペットボトルは空だ、ポーチの中身も今は役に立たないだろう
そうなると残っているのは一つだけだ、たった一つだけ。

(だが、これだけは何とか言えるだろう、僕の奇跡、僕の『スタンド』。)


 「――『ロスト・アイデンティティ』。」


そう呟くように唇からその名前を零すと
四肢に『鎖』が巻き付きだし、斑鳩の全身を精神のヴィジョンが纏わりつく

(柱への射程距離……4、5m…制限時間2分…。)

鎖を握り込み掌の中に、鉄球を作り出すと
それを鎖で出来た投石紐のように回し、遠心力で柱まで投擲する。

空中で鉄球が分離しつつ、ボーラのように形を変え、柱に巻き付いたところで結合する。

(後は、このまま鎖を縮ませつつ……ゆっくりと、日陰に移動だな)
(立ち上がるのは無理では無いだろうが……動けないだろう。)

まあ、僕がどうなるだのは構う事では無い
重要なのは両親だけだ、その前に倒れたら片手落ちだが。

(彼女が戻る前に何とか……むう)

154鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2019/08/06(火) 01:34:57
>>153

            ジャラララララ ・・・

『ロスト・アイデンティティ』の『鎖』を巧みに使い、
日陰のほうへと移動する斑鳩だったが――――

「……」

              スス …

残り1mほどまで『縮め』終えた時、
斑鳩の体に差し掛かる影は、鳥舟の物。

日を背負う彼女の手にはペットボトル。
『2分』は多めの申告、だったのだろう。

「そうか――――『貴方も』そうだったんですね」

ぽつりと零した言葉。
感慨はない。驚きは、少し混じっていた。

「ああ、いや、今はそんなことより。
 これお水です、急ぎだったもので、
 飲みさしですけど……背に腹は代えられない」

        スッ

            「どうぞ、蓋は開けてますからね」

ともかく、ペットボトルを渡した。それなりに冷えてはいるようだった。

155斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』:2019/08/06(火) 23:18:00
>>154

ペットボトルを受け取る
冷えたプラスチックの容器が手に吸い付くように
受け取った腕の鎖が一挙一動に張り付く

 「どうも、有難く頂きます」
 「喉がカラカラだ。」

苦笑しつつも一息に半分ほどを喉を鳴らしながら飲み干すと
肺に水が入ったのか、咳込みながら息を整える、その度に金属音を鳴らしながら

 「まあ、名前の縁の如く奇遇だったと」
 「『スタンド使い』というのは本当に奇妙な縁のような物が有りますね。」

肩を竦め、礼を一つ
頭の痛みは消えていくが、足の方にはまだ力が少し入らない。


柱に巻き付いた鎖が、最初から巻かれていなかったかのように解けると
斑鳩の左手に巻き戻り、消え去る。


 「……ここで『やりあう』というのは」
 「勘弁願いたいな、戦うのは苦手だし、痛いのも御免ですから。」

 「何より、恩人相手だ。」

 「まあ、そのつもりなら既に攻撃しているでしょうけど、ね。」
 「一応聞くだけ聞きますよ、――あなたも『スタンド使い』?」

――氷のような瞳が鳥舟を見つめる。

156鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2019/08/06(火) 23:53:18
>>155

「普通のミネラルウォーターです。
 ご存知かは分かりませんけど、
 うちの霊水ではないので、ご容赦を」

煮沸が必要な……もとい神聖な水を、
普段から飲み物にしていることはない。
コンビニで買ってきた、奇跡の欠片もない安心な水だ。

         スッ…

「ボクはあまり、『詳しい』方じゃあないですから。
 縁については、なんとも……心当たりはありますけどね」

水を渡すと、少し距離を置いた。
自分の身の安全のため、もあるし、
斑鳩の心を乱さないため、でもあった。

「…………ええ、どうやらそうらしいです。
 もっとも、ボクの『ヴィルドジャルタ』は――
 ボク自身見たことがない、鵺的な存在でしてね。
 もしやり合いたくても出し方すら分からないので、
 つまり、その、一応……『警戒』は無用ですよ」

「現にそう、あなたの言うとおりで……
 何かするつもりなら……好機はとっくに逃してる」

やや早口気味に、要点を伝えた。
斑鳩の、暑さを忘れさせる氷のような視線。
そこにまさしく『警戒』を覚えたから、だ。

「『スタンド使い同士が合うと戦うものだ』……
 って話じゃないでしょう? ぜひ平和に行きましょう」

冷や汗を垂らす。

もっと狂った目をした人間は勿論見たこともあるが……
斑鳩の冷たさは『筋』のある冷たさで、それが恐ろしい。

157斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』:2019/08/07(水) 22:33:09
>>156

子供の頃から散々晒されたその視線に、ゆっくりと口を開く
不快でもなんでもない、ただよく知っているというだけ。

 「……その眼」
 「何度か見た事が有る。」

(距離を取り、目の前で冷や汗を垂らしつつも、『スタンド』を出さない
 ……恐らく事実か、少なくとも近距離型ではない。)

全身に巻き付かれた鎖が、斑鳩から解けるように溶けて消えていく
鎖が枯れた蔓のように、大気に解けて消えていった。


 「鳥舟さん、僕は貴女のスタンドについて詳しく知りたい。
 もしそれが、僕の両親を助けられるなら、僕は自分の全てを差し出して貴方に願うだけだ。」


(或いは、一体化して、もう見えている……という線も有るが)

瞼を下し、瞳を閉じる
脚にも、もう力は戻っている、立ち上がるとジーンズの土を払った。

 「けど、僕は貴女を怖がらせてしまうだけらしい、恩人相手をそうするのは忍びないし
 両親にも胸を張れない事だ。」

 「この眼が怖いなら、瞼を閉じたままで――もう、行かなくては。」

鳥舟の方に一礼すると、その位置が解っているように
迷いなく神社の出口へ歩いて行く。

 「……お水、有難う御座いました」
 「貴女にも幸運が有りますように。」

158鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2019/08/08(木) 00:59:20
>>157

「いいや、怖くなんかは……
 …………………………ない、
 そう、ないはずなんです……何も」

        「…………」

言葉を弄するのは苦手ではない方だが、
この状況で斑鳩に掛けるべきそれが思い当たらない。

「ボクの『ヴィルドジャルタ』は…………」

なぜなら自分は、『ヴィルドジャルタ』を知らない。
出来るとも、出来ないともこの場で答えられない。
それは問題だが、急務ではないと何処かで考えていた。

「…………今はまだ、何も、『分からない』。
 何が出来るのかも……キミの信仰を受け止められるのかも」

だが……違う。
自分のスタンド能力を知らないのは……『大問題』だ。

「もし、助けられるような力なら…………そのときは」

      「そのときは…………」

自分に出来ることと出来ないことを知らないままで、
否応無しに『他のスタンド使い』と遭遇し続ければ、
いま斑鳩に手を差し伸べられず、否定も出来ないような、
対処不能の問題が降ってくるのは火を見るより明らかだ。

それ以上、何の希望を投げかけて引き止めることも出来ない。
巫女としての役目は果たした。スタンド使いとしての役目は……

159斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』:2019/08/09(金) 06:39:44
>>158

背後の言葉が悩みに止まっても
斑鳩には彼女にかける言葉は無かった。

ただ、自分の信仰が鳥船と言う善き人に
苦悩や悩みを与えたことを見てこう考えていた

自分の願いと言うものは、どうあがいても
他人を巻き込んで不幸にするだけではないかと。

噛んだ唇から血の味が口内に広がる
彼女に何か言葉を投げて、貴女のせいではない
と言うべきだと言う考えもあった

同時に、自分の中に、何処か言葉にし難い
鳥船に対しての理不尽な憎悪がある事に気付いた時

それが彼女を傷つけてしまうだろうと気付いた時
後はこの場から逃げるように去るしか無いと思い至り

鳥船がこれ以上自分の事で悩む事が無いように
そう祈りながらこの場から立ち去った。

160美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2019/09/04(水) 22:02:49

   キキッ

一台のスクーターが駐車場に停まった。
乗っているのはラフな『アメカジファッション』の女。
首にワイヤレスヘッドホンを掛けている。

「こんな近くにも、割と有名な神社があったのね。
 私も、まだまだ勉強不足だったわ」

            スッ

シートから降りると、境内に向かって歩いていく。
辺りを見渡しているのは癖のようなものだ。
何か変わったものでもあれば、『トーク』のネタに出来るから。

「――ついでに何か願掛けでもしていこうかしら」

161鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2019/09/05(木) 00:06:39
>>160

辺りを見渡せば、神の社に相応の清らかさがあった。
雰囲気もだが……ゴミが落ちていない、という事だ。
もちろんそれは神の御力のお陰というわけではなく、
掃除をしている人間がいるからだった。『巫女』だ。

「ようこそ、お参りです」

         ペコ……

わずかに秋めくも熱を残す風。
額に汗を浮かべちりとりと箒を持った少女。
『体育会系』とも『接客業』ともどこか異なる、
緩やかな笑みを浮かべた挨拶で美作を出迎えた。
もちろん『芸能』の世界の、華やかさとも違う。

「…………」

         さっ…

               さっ…

・・・それ以上、特に干渉はしてこない。

周りを見渡しているとはいえ余裕のある美作の気風に、
案内の必要性は感じなかった、という事かもしれない。

162美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2019/09/05(木) 00:44:22
>>161

「――――どうも、こんにちは」

『ご精が出ますね』と言いかけたが、この場合は意味合いが少し違うだろう。
万が一、それが失礼に当たっては不味い。
だから、軽い会釈と挨拶のみに留めておいた。

    スタ スタ

参拝の手順については、大体分かっている――つもりだ。
もちろん、神社によって種類があるだろうから、完璧とは言わない。
少なくとも、常識的な範囲であれば理解している。

「さて、と――――」

まずは手と口を洗おう。
それから拝殿に足を向ける。
道の真ん中は神様の通り道だから避けるべきだという話を、どこかで聞いた覚えがあった。

「『この橋、渡るべからず』の反対って所ね」

         ガラガラ
                  チャリン

参道の端を歩き、拝殿に向き合う。
鈴を鳴らし、賽銭箱に『二十五円』を入れた。
『二重に御縁がありますように』ってね。
『三十五円』とか『四十五円』にするっていう考えもあるだろう。
でも、それだとちょっと欲張り過ぎるから。

「えっと…………」

少しばかり考える。
一応は知っているとはいえ、そう頻繁に神社を訪れる訳でもない。
頭の中から、作法に関する知識を引っ張り出す必要があった。

「二回お辞儀して二回手を打って――」

             パン パン

「それから最後に、もう一回お辞儀だったかしら?」

思い出しながら、流れるように一連の手順をこなしていく。
せっかくだから、『願い事』もしておいた。
番組の発展や自分自身の成長に繋がるような、『ユニークな出会い』がありますようにってね。

163鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2019/09/05(木) 02:20:30
>>162

参拝をしている間、巫女から助言などは無い。
よほどのマナー違反でもない限りだが、
参拝の作法にあえて口出しはしない――――
もちろん知りたければ教えるようにしているが。

「…………」

       さっ…

          さっ…

(想像以上にしっかりした『作法』をお知りみたいだ。
 とはいえ作法が『身についてる』ってわけじゃあなさそうだし、
 『覚えてる』んだ。何か、すごく大事なお願いがあるのかもしれない)

「――――ええ、今のも『正解』ですよ。
 一通りではないんですけどね、
 その手順なら、何処の神社でも『おかしくない』」

参拝によく来るものは『身についている』。
つまり、考えるそぶりなく流れるように行う。
有名な作法に合っていようが、なかろうが、だ。
その点、美作の『考えながら』『正しい』作法は鳥舟の目を引いた。

「っと、差し出がましい事を言ってしまいましたね。とても綺麗な所作だったので、つい」

話しかけてから、そのように付け加えた。
目を引いた理由には、その動作の洗練もあった――――あるいは、どこかでの見覚えも。

164美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2019/09/05(木) 02:51:38
>>163

「ええ、まぁその――――」

    クルッ

「どうも、ありがとう。
 『関係者』の方から言われるのは光栄ですね」

    ニコリ

拝殿から離れ、口元に微笑みを浮かべる。
声を掛けた巫女らしき女性とは、どこか質の違う笑みだ。
神社を神聖な場所とするなら、より『世俗的』な雰囲気がある。
だが、別に何か裏があるという訳でもない。
言い方を変えれば、どことなく『職業的な匂い』が漂っていると言えた。

           ザッ

「お仕事中で申し訳ありませんが、
 もし宜しかったら、この神社について教えて下さいませんか?」

「たとえば、『由来』や『ご利益』なんかを。
 後は、何か『変わったもの』があるとか…………」

              ザッ ザッ ザッ

言葉を投げ掛けながら、巫女の方へ歩み寄っていく。
もし彼女に何らかの『見覚え』があったとしても、美作には知る由もない。
どちらかというと、『声を聞いた事がある』という場合の方が、今は多かった。

165鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2019/09/05(木) 10:38:57
>>164

世俗でありながら大衆とは異なる笑みにこそ、
どことなく既視感を覚えたのは確かだったが……
鳥舟も、その朧げな幻像をあえて掘り下げはしない。
どこで見たことがあっても今は参拝者で、自分は巫女。

「いえいえ、それもまた巫女の勤めですよ。
 とはいっても、なにぶん若輩者でして、
 調べて出てくるような知識ばかりですけれど」

      フフ…

笑みを浮かべ、近付いてくる美作を言葉で迎える。

「由来は、ですね。境内にある『烏兎ヶ池』ですね。
 神社としての名前もここから来ているんですけど、
 いわれといいますか、創建の根拠もそこでしてね」

視線を向ける先は、未だ青々とした葉を付ける木々。
ちょっとした林のようになった空間の、その先に、
パワースポットを謳われる『池』がある……ことは、
美作も境内を見渡した時案内板で知ったかもしれない。

「ご利益の方の根拠は祀っている神さまですけど、
 ここに神社を建てたのは、池があったからでして。
 まあ、これは根拠のない話になりますけれど、
 色々と……伝承の残っている、『霊池』なんですよ」

そこまでほとんど一息に言い終えて、
鳥舟は、吐き出した分の息を吸い直した。

「池の前までは入れますので、ご興味があればぜひに」

そして、そこで言葉を止めて一旦話を切る。
利益の中身や、変わったものについては分けるようだ。
もっとも、池自体が変わったもの、と言えなくもないが。

166美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2019/09/05(木) 22:36:31
>>165

「『霊池』――――ですか。いわゆる『パワースポット』ってヤツですね。
 それは大いに興味がありますねえ」

『烏兎ヶ池』について書かれた案内板は、さっき見かけていた。
参拝を優先したので、軽く目を通しただけで熟読はしなかったが。
いずれにせよ、『話のタネ』にはなりそうだ。

「後学のためにも是非お目に掛かっておきたいですね。
 えっと…………そこまで案内して頂けますか?『巫女さん』」

迷うような場所でもないだろうから、一人で行っても構わない。
ただ、せっかくなら『関係者』の話も聞いておきたかった。
『ネタ』というのは、多ければ多いほど良いのだから。

「何ていうか、こんな事を言っちゃあ失礼かもしれませんけど…………。
 普段あんまり使わない言葉ですよね。『巫女さん』って」

       クスッ

非日常的な巫女姿の女性を見つめて、気さくな微笑みを浮かべる。
普段の日常生活の中で、『巫女』と会話する機会は多くないだろう。
これも、ついさっき願掛けしてきた『ユニークな出会い』の一つかもしれない。

167鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2019/09/05(木) 23:15:42
>>166

「うちといえば、池。ってくらい皆さん見て行かれますからね。
 ボクとしても……せっかく来ていただいたなら見ていっていただきたいな、と」

非日常、という言葉を独特の一人称が支えていたが、
口調や、話しぶりは至って『一般的』な響きだった。
それも非日常の世界にせよ、奇を衒ってはいないらしい。

「それも…………『巫女』の案内付きで。
 なにせ、せっかくの機会ですからね。さ、行きましょうか!
 今日はいくらでも、『巫女さん』と。使って帰ってください」

そして言葉とともに、鳥舟は踵を返し手で着いてくるよう促す。

「『パワースポット』に、興味がおありですか?
 それとももっと広く、不思議なものに興味がおありで?」

         スタ…

            スタ…

「ああいえ、探るわけではないんですけどね……! なんとなく、気になって」

168美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2019/09/05(木) 23:53:25
>>167

「何たって『烏兎ヶ池神社』と呼ばれている訳ですしねえ。
 名付けの元になった『烏兎ヶ池』はチェックしておかないと」

「『ご利益』があるなら、それにあやかりたいですし――ね」

巫女と歩調を合わせる形で、後について歩く。
『ご利益』というのは、あくまでも『ついで』だ。
全く信じていない訳ではないが、自分にとっては『話を聞く』のがメインになる。

「そうですねぇ……」

       スタ スタ スタ

「珍しいものや変わったものには関心がありますよ。
 そういう経験は、自分にとって『プラス』になりますからね」

「――――こうして『巫女さんとお話する』のも、です」

            ニコリ

「ちょっとだけ質問しても良いですか?巫女さんのお仕事について。
 あんまり接する機会がないので、何となく気になるんです。
 どんな事をしているのかなって」

「もし『オフレコ』だったら、潔く身を引きますけど…………」

大体の部分は、何となく察せられる。
聞いてみたかったのは、見えていない部分についてだった。
巫女に直接聞けるチャンスは、きっと少ないだろうから。

169鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2019/09/06(金) 00:57:11
>>168

「――――御利益、そうですね。
 『具体的にどんな』ってワケではないですけど、
 そーいうのを体感される方も、いらっしゃいますよ。
 気分が前向きになったとか、不安が安定したとか、ね」

「パワースポットだから……というワケでもなくて、
 もっとずっと昔から、『縁起』って言うよりは、
 『ご加護』を求めての方がよく来られてたそうですよ」

鳥舟が口に出す具体的な利益は、どれも精神面だ。
嘘は言わない。だが、盲信を誘うこともしない。
疑いを秘める『神秘』の存在を、つらつらと語る。

「『日々是勉強』、っていう感じですかね。
 そういう考え方、すごく素敵だと思いますよ。
 ふふ……ボクに答えられるようなことなら、なんでも」

(…………『オフレコ』、か。
 ライターさん、記者さんって雰囲気ではないけど、
 ま、人を見かけで判断するものでもないかな。
 そういう仕事の人を沢山知ってるワケでも、ないし)

        ニコ…

「ま、とはいえ……ほとんどは掃除ですとか、
 それから社務所の受付ですとか…………
 皆さんの目に見える仕事にはなるんですけどもね」

ほうきとちりとりを少し持ち上げて、示す。

「ご興味があるのは、もうちょっと込み入ったところ――ですよね?」

歩いていると、案内板が示していた岐路がすぐ見える。
境内に広がる小規模な林、そこに伸びるのが池への道だ。

170美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2019/09/06(金) 01:37:32
>>169

「なるほど。『パワースポット』っていう言葉自体は最近のものですもんねえ。
 言葉があってもなくても、『霊池』は『霊池』だと思いますけど」

    スタ スタ スタ
 
「『信仰』っていう面で言うなら――たとえば、その場所が人達の『心の拠り所』だったとか。
 もしかすると、そういう事もあったのかもしれませんね。
 専門家でもない素人なので、ただの想像なんですが」

「『そこに来ると落ち着く』っていう事なら、何となく分かるような気がします。
 私にも、そういう場所はありますから」

             スタ スタ スタ

「センチメンタルになった時、そこに来て気持ちをリセットするっていうか…………。
 『イヤな事は忘れて心機一転頑張ろう!』みたいな感じで。
 アハハ、これは流石に砕けすぎかな?」

歩きながら、自身の考えについて思いのままに語る。
舌が回るにつれて、自然と喋り方がカジュアルになっていく。
『職業柄』というだけでなく、案内人である彼女の人当たりが良いせいもあった。

「そうですねえ。『目に見えるお仕事』は、もちろん大切な事だと思います。
 清掃も受付も。そのお陰で、私達みたいな参拝客が気持ち良くお参り出来る訳ですから」

「ただ――――『目に見えない部分』も気になっちゃいますよね。やっぱり。
 ほら、『巫女』っていうと『神秘的』っていうイメージがあるでしょう。
 『信仰の対象』は『神様』ですけど、こう……『間に立つ存在』っていうんでしょうか。
 そこに興味を惹かれるっていう人は、少なくないと思いますねえ」

「――――かくいう私も、『その一人』って事でしょうかねぇ」

                 フフ

言葉を紡ぎ出しながら、ふと思う。
『アイドル』も、ある意味では『信仰の対象』とも呼べる。
そう考えると、『巫女』と『アイドル』は少し似ているのかもしれない。

171鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2019/09/06(金) 02:25:58
>>170

「『信仰』は、心の支え、まさしく拠り所。
 ボクとしてもその考えは納得できますよ。
 どんな教えを信仰している人も…………
 それで『安心』を得ているのには変わりないですから」

すくなくとも、今話題にする限りは、だ。
イレギュラーは、鳥舟の配慮の範囲にない。

「ですからうちの神社も、『烏兎ヶ池』も……
 あるいは『パワースポット』って言葉そのものも、
 皆が『安心』出来るものとして、信仰されてるのかも」

      「――もちろん、『神さま』って存在もね」

林の中の道を歩きながら、振り返って笑む。
その時間はほとんど一瞬のようなもので、
すぐにまた、前を向いて歩き出した。

「お褒めいただいて、ありがとうございます。
 どんなに素晴らしいいわれがあったとしても、
 境内がゴミだらけじゃあ有り難みが、こう、ね。
 薄れるわけじゃなくても、感じ辛いでしょうから。
 そういう辺りが巫女の仕事の主な部分、ですけど」

ちりとりとほうきは使い込まれている。
もちろん、鳥舟一人で使い込んだのではない。
この社の代々の、あるいは一時的なバイトも含め……
とにかく、『よくしよう』という、巫女たちの意思だ。

「でも……やっぱり? ふふ……そういうとこ、ですよね。
 とは言ってもマア、巫女はあくまで巫女でして、
 そういう特別なお仕事といえば……うーん、
 いわゆる祈願ってヤツは、『手伝い』になりますし、
 ほんとうに神さまとの間に立つのは『神職』、ですからね」

悩むようなそぶりを見せ、少しして、思いついた。

「だから…………そう、神楽とか? いつもやるわけじゃあ、ないですけどね」

172美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2019/09/06(金) 03:16:21
>>171

「『神楽』?えっと『舞』と『御囃子』――――確か、そういったものだったかしら?
 うろ覚えだから、合っているかどうか分からないけど」

踊りと音楽。
それを聞くと、ますます似てるように思えてきた。
それを口には出さないが。

「ストリートパフォーマンスではないし、いつでもどこでもって訳にはいかないでしょうね。
 だからこそ、より神秘的に感じられるのかもしれないし」

『パーソナリティー』はトークを手段として使う『パフォーマー』であり、一種の『エンターテイナー』でもある。
聴衆を楽しませ、沸かせなければならない職業だ。
しかし、巫女は違う。
人々の崇敬を集めたとしても、それは秩序と静謐に包まれている。
言ってみれば『世俗』と『神聖』――大きく異なるのは、その辺りになるだろう。

「――――やっぱり『とっておき』は、『ここぞ』という時に出さなきゃね」

だが、それでも『通じる部分』は多少ある。
『決めるべき時に決める』という点においてだ。
おこがましいかもしれないけど、多分そこら辺は似ているんじゃないかなと心の中で思った。

「…………さて、そろそろ『霊池』のお目見えかしら?」

173鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2019/09/06(金) 04:18:02
>>172

「それで、だいたい合ってますよ。詳しいですねぇ。
 ただ、そう、残念ながらここでボクが踊って見せても、
 それっぽい踊りってだけで神楽とはならない……
 なにせ、神に奉納するための歌と舞、ですからね」

「こと、神社においては『お客様が神様』とも、
 とてもじゃないですけど言えませんし……ね」

柔かな語調で、『サービス』は出来ないと伝えた。
もちろんそこは分かっている『大人相手』ではあるが、
期待を持たせるようなことをするのも、かえって悪い。

人々を喜ばせるという側面もあるにせよ、
巫女の舞、その本質は神に捧げるものなのだ。
そこに100%の納得があるかは別の話としても、
盛り上がり、楽しむためのものとは、少し違う。

「時季を改めて、また来ていただければ、
 舞台――って言うとちょっと違いますけど、
 正式にお見せすることも出来るかな、っと」

「見えましたね、池――」

        オ オ オ オ ・・・

            ガァーッ ガァーッ

「あの鴨は、うちの神さまとかとも関係ないので。
 まあ…………おまけ程度に考えてもらったら。
 たまにですけど、いるんですよね。居心地良いのかな」

それは美しく澄み渡る池、といった様子ではなかった。
極度に淀んでいる、というわけでもないのだが、
底の見えない……ごく普通の池のように、見られるものだ。

それでもどこか、異質な空気を感じえるのは……
林の中の大池という、特殊なロケーションゆえだろうか。

174美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2019/09/06(金) 21:19:42
>>173

「あれは……『オナガガモ』かな?尾が長いでしょう。
 個人的な事ですけど、私は『バードウォッチング』が趣味なので」

「これはこれで風情があるんじゃないかしら。
 それに、『鴨』も訪れるくらい居心地の良い場所なの『かも』――――」

「えっと…………今のはシャレじゃないですよ。
 なぁんて言ったら、ホントにシャレで言ったみたいになっちゃいますねえ」

       アハハ

『烏兎ヶ池』に近付いて、しばし水面を眺める。
こうして見ると、普通の池だ。
そこまで珍しいものを期待していたという訳ではないので、別に不満もない。
ただ、神社に付随した池という所にはミステリアスなものを感じた。
『池が先』だという話だが、林の中の池というのも、それなりに神秘的ではある。

「『烏兎ヶ池』――堪能させて頂きました。満足です。お陰様で」

「『イヤな事は忘れて新しい自分で頑張ろう!』って気になれましたよ。
 案内してもらって、ありがとうございました」

お参りは済ませたし、見るべきものは見た。
帰るために踵を返して、足を踏み出す。
その途中でスタジャンのポケットを探り、再び振り返る。

「――――私は、こういう者でして」

名刺入れから取り出した名刺を、巫女に差し出す。

    【 Electric Canary Garden
      
           パーソナリティー:美作くるみ 】

氏名の片隅に、『コンセントの生えた小鳥』のイラストが添えられている。

「今日はプライベートで来ただけなので、
 取材とか宣伝って訳じゃないんですけど、一応ご挨拶という事で。
 神社じゃなく、案内してくれた貴女にね」

「また、いつか来ますよ。その時は、神楽を拝見させてもらいたいですねえ」

「それじゃ――――」

          ザッ

軽く会釈してから、駐車場に向かって歩き出す。
巫女との会話は、ちょっとした『ユニークな出会い』だ。
そういう意味では、自分としては十分な『ご利益』はあった。

175鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2019/09/07(土) 02:57:06
>>174

「へえ……さすが、関心が広いんですね。
 ボクは『鴨』としか思ってないものも、
 実際は色々事情とか違いがあるんでしょうね」

やや濁った水面が、顔を写す。
普通の水面と何も変わらないし、
写っている美作の顔も、いつも通りだ。

「ハハハ、シャレってことでもよかったんですけど」

そこにある『物』それ自体に神秘は無い。
あるとすればそれは、集まる人の心にこそ。

「ああ、ええ、こちらこそ。
 ようこそお参りでした。
 またいつでも――――ああ、ご丁寧に」

          スッ

その場でじっと目を通すことなく、
鳥舟は一読の上で挨拶を返す。
    
           トリフネ マーヤ
「ボクは――――『鳥舟学文』って言います。
 ラジオ、今度ぜひ聴かせてもらいますね。
 宣伝じゃあないとしても、何かの縁ってことで」

         「あ、そう!」

「むしろ逆に宣伝しちゃいますけど――――
 ラジオで今日のことをお話しされるなら、
 ウチの『名前』は出してくれちゃっていいですよ!」

       「それでは……また。神楽の時以外でも、いつでも」

その背中を見送って――――
今話していた人物が、かつて『録画』で見た『昔のアイドル』だと知ったのは、後のことだった。

176比留間彦夫『オルタネイティヴ4』:2019/11/20(水) 22:19:53

モノトーンのストライプスーツを着て、
中折れ帽を被った優男風の男性が、
一人境内を歩いていた。
型通りの参拝を済ませ、適当に辺りをぶらつく。
これといって目的はなかった。
あるいは、少し前に『妙な占い師』に出くわした事が遠因かもしれない。
だからといって、ここがインチキだなどと思っている訳ではないが。
『関係者』がいるか、あるいは『他の客』がいるか。
そんな事を考えながら、ただ何の気なしに歩いている。

177『烏兎ヶ池神社』:2019/11/20(水) 22:51:28
>>176(比留間)

境内には『巫女』など、関係者は見当たらない。
が、『他の誰か』はいるかもしれない………………

178比留間彦夫『オルタネイティヴ4』:2019/11/25(月) 22:33:45

「ふむ…………」

(『神様に嘘を吐く』というのも一興ですね)

参拝の際に思い浮かべた祈願は、
『嘘を吐く癖が治りますように』というものだった。
実際は、そんな事など少しも考えてはいない。
今の所、この『癖』を治すつもりは全くないのだ。
これも一種の『嘘』になるのだろうか。
その瞬間に、自分の心が『密かな愉しみ』を感じたのは事実だ。

(もっとも――――『神様』であればお見通しかもしれませんが)

    ザッ…………

最後に改めて境内を振り返り、そのまま神社を後にした――――。

179鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2019/12/03(火) 22:29:50

         ザッ …

            ザッ…

冷え込む境内で、巫女が掃き掃除をしていた。
左に流れるにつれて長くなるアシンメトリーの髪と、
ほとんど金色と言っていい色彩の瞳が特徴だった。

「……っくしゅん!」

        ブルッ…

咳をしても一人、という事もない。
境内には>>180がいる・・・
いるからどうという事もないが。

それに、いつからいるのか・・・
今来たのか? それともさっきからいたのか?

・・・それは、>>180と鳥舟のみぞ知ることだ。

180ラフィーノ石繭『ミスティカル・ガイド』:2019/12/05(木) 02:07:01
>>179
 「あら、可愛い巫女さんが」

どうも。まゆです。今日はここ『烏兎ヶ池神社』に来ました。
最近話題よねこのスポット。『願いが叶う』んだって。信じがたいわね。
ちなみに私は『(偽)占い師』。神社との関係は、あえて言うならば『同業他社』と思ってます。

そんな私は手水舎で手水をとった所でした。
要するにクソ寒い冬にクソ冷たい水で手を洗ったってわけね。

「っっっっっぶええェくしょ――――いィッッッ!!!!!!」

「…うふふ、冷えますわね うふふふふふふ」

181鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2019/12/05(木) 14:22:22
>>180

「お褒めの言葉、ありがとうございま……」

     ク…

         ルッ

声にゆっくりと振り向くつもりだったのだが、
大きなくしゃみに驚き、思いの外早くなってしまった。

「……す。えーっと……ようこそお参りです!」

      ニコ…

笑みを浮かべて、頭を下げる。
 
「冷えますねェー、もうほんと、最近はすっかり冬で。
 ボクも巫女なりに防寒に気をつけてはいるんだけど。
 ひょっとしたら年内に初雪なんて事も、あるのかな」

S県は『降雪』とはあまり縁がない地域で、
初雪は『年始』を大きく過ぎてからになりがちだ。
それでもそう言いたくなるくらいに、冷えた季節だった。

「それに水も……冷たいですしねぇ。
 そればっかりは『追い炊き』なんて、出来ませんし?」

      ザッ…

         ザッ…

「県内の、えー、どこだったかな、どこかの神社に、
 手水舎のお水が『温泉』の所があるそうですよ。
 いやお寺だったかなぁ……どっちにしても少し、羨ましいですね」

その女性は、手水舎の使い方は知っているように見えた。
つまりあれこれと案内をする必要は、無いのだろう、と。

182ラフィーノ石繭『ミスティカル・ガイド』:2019/12/05(木) 21:13:59
>>181
 「ええ、本当に……」

 「そういう神職の装束って薄くて寒いのでしょう?大変ですね」
 「けれど、似合ってらっしゃるわ 若いって素敵」

年末も近いし『アルバイト』の子かしら。
境内はしっかり掃き清められてる。がんばるわねーこの娘。
巫女服はかなり似合ってるわね。
あとお肌はすべすべだし。髪も傷んでないし。
目も綺麗だし。唇も瑞々しいし。
…若さが憎いわ。

私を見なさいよ。
雰囲気出すためにエスニック風のコーデを決めてはいるものの、
寒さに根負けしてブ厚いダウン羽織ってる惨めなアラサー女よ。
白い肌も白い唇もすっぴん風メイクよ。
でも目元は私の方が綺麗だけどね。造りがいいからね。

「追い炊き…ふふ、されてみては如何ですか。
 『建て替えの際に温泉を発掘しちゃいました』とか言って、
 こっそりガス管でも引いてしまって……」

「………というのは、冗談ですけれど。」

183鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2019/12/06(金) 00:02:12
>>182

「どうもどうも、ありがとうございます。
 『制服』みたいなものですからねェ。
 いくら寒くっても、これ以外を着てると、
 来てくださった方が驚くでしょうし!
 だから似合うに越したことは無いし、嬉しいです」

羽織を羽織ったりはするにしても、
外からの見た目が大きく変わるようなものは無い。

見た目は人の第一印象を大きく決める。
そして、施設の第一印象は人で決まる。
信じられるものを保つためのことだ。

「それは、ウーン、名案ですねぇ。
 お湯の方がお清めにもなりそうだし、
 神様も喜んでくださる、か・も」

    フフッ

「ボクのも勿論、冗談ですんでね」

「いやー、それにしても……お話がお上手ですよね。
 お仕事は……『敏腕営業マン』か何かで?
 お綺麗ですし、こう、なんというか、『雰囲気』がありますよ」

184ラフィーノ石繭『ミスティカル・ガイド』:2019/12/06(金) 19:45:41
>>183
営業マン、ね…『口車の巧いやつ』って事?
私が醸し出したい『雰囲気』ってそういうんじゃないのよねェ
あたしも確かに詐欺師みたいな事してるけどさあ

 「ふふ、とんでもございません」
 「…『コンサルタント』、のような事などはしていますが」

占いもコンサルも同じよ同じ。
この巫女っ娘いちおう神職従事者だからね、誤魔化しておくわ。

 「お悩みなどがありましたら……いえ、ここでは場違いですね」
 「不満、疑念、願いを、神様に聞かせられるだけ聞いてもらう場所ですもの」

 「『絵馬』もいいですね 
  ちょっとした悩みをたっぷり書いて、ぶら下げてしまいましょう

 「私…他の人が掛けていった絵馬を見るのも好きでして 
  悩みが願いがたっぷり集まってるの、不道徳かもしれませんがちょっと面白いですわ」

  「ふふ、私ったらお喋り。すみませんね」


大手同業他社の敷地内なので、褒めておくわ。自社の営業は控えめに。

185鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2019/12/06(金) 22:58:19
>>184

「コンサル! あんまり縁が無い業界ですケド、
 わりと『景気が良い』ってよく聞きますよ。
 や、まあ、縁がないってこともないのかな、
 神社専門のコンサルとか、あるらしいですし」

神社と『ビジネス』は縁が遠いようで、
人間が暮らしていく以上切り離せはしない。
例えばウェブサイトは自作ではないし、
取り扱うお守りなどについても幾らかはそうだ。

「仰る通り、『聞かせていただく』分には、 
 神さまはきっと、いつでも大歓迎ですケド」

「ただ、今すぐ聞いてほしい悩みとかは、
 今は……ないですねェ。神社にも、ボクにも。
 もしまた何かあれば、相談させてもらおうかな」

          ニコ…

それから、話に出た『絵馬』の方に視線を向けた。
参拝客が残していった、『神頼み』の結晶達。

「いえいえ、興味深いハナシですよ。…………」

その中のどれくらいが『報われた』のだろうか?
もし報われたとして、それは神さまのおかげだろうか?

「人の『お願い』を目で見られるっていうのは、
 確かになかなか無いかもしれませんね。
 それも人間へのお願いごとじゃなくって、
 『ただ、叶って欲しい』願いっていうのは、ね」

「どうです? お姉さんも書いて行かれますか、『絵馬』」

・・・行き場のない願いを『受け止める』役目は果たしている、とは思う。

186ラフィーノ石繭『ミスティカル・ガイド』:2019/12/07(土) 00:38:23
>>185
「折角ですしね おいくらですか?」

絵馬掛所に向かいつつ、ブツをお買い上げする。
デザインはどんな奴なのかしら?カワイイ奴だといいわね。

「絵馬を描いたからって、叶うものでもないでしょうけれど。 
 メモ帳だと思っておきます」


「うーん、どうしましょう 悩みますね」
「悩みを描こうとして逆に悩んでしまいますわね」


「『美肌』がいいかしらね それとも『商売繁盛』?」
「…一緒に考えてくださる?私の悩み」

187鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2019/12/07(土) 01:55:08
>>186

「うちは、『500円』ですね。どうぞ」

         スッ

「あとこれ。ペンは貸し出してますんでね。
 もちろんお手持ちの画材とかあれば、
 それを使っていただいても大丈夫ですよ」

渡した絵馬はごく普通のものだ。
ただ、小さく烏と兎の絵が小さく描かれている。

「ええ、メモ帳代わりにでもね。
 『願い』や『悩み』を、自分の中に閉じ込めず、
 アウトプットする……整理をつける。
 それも神社の役目の一つだと思うんです」

かなえてやれないことの言い訳だとしても。
それを信念として抱くのは、間違っていないと思う。
都合のいい神を疑えど、神頼みを否定はさせない。

「それから――――それをお探しするのも、ね」

          ニコ…

「『美容』も『商売』も、追及すればどこまでも出来ますからねぇ。
 そのあたりは皆さん書いて行かれる、ま、いわば『定番』です。
 商売……えー。コンサルみたいなお仕事でしたよね?
 つまり、個人にしっかり向き合っていくお仕事。
 なら……イメージですけど、それなら『千客万来』っていうよりは、
 新しい上客を一人捕まえる方が『ありがたい』仕事だったりするのかな」

             「そうなると……『良縁成就』なんてどうです?」

188ラフィーノ石繭『ミスティカル・ガイド』:2019/12/07(土) 02:33:45
>>187
うん、カワイイ絵馬ね。持って帰っちゃいたいくらいだわ。

「いいですわね リョ・ウ・エ・ン・ジョ・ウ・ジュ…っと」

確かに、良客には恵まれてないし、このトシで独身だし、良い願いね
……あ゛!?いい年してカレシすらいない哀れな女って言いたいわけ!?
心なしかペンを握る手に力が入るわね。うん。


「――――不躾ですが」

「あなた、実は神様を信じ切っておられませんね」
「願いにしても何にしても、『神様が見ていらっしゃる』と言えばいいのに
 …しかし、そうは言わない。あなた自身は気づかれていないかもしれませんが、
 あなたにはそういう側面があるようです」

そうなのよね。この巫女っ子、私の冗談とかにそこまで眉を顰めないのよ。
普通の神主さんとかだったらもう少し神様についてお喋りするのに、この子にそういう所はない。
ま、若い娘だしね。いろいろ思う所もあるんでしょう。

「でも、こうして、参拝客のことはしっかり考えてらっしゃる」
「それが面白くて ふふふ」

189鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2019/12/07(土) 03:12:38
>>188

「もちろんお決まりのフレーズじゃなく、
 『上客がさらに増えますように』ですとか、
 そーいう具体的なのでもアリなんですけどね」

ペンを走らせるところを横から見ていた。
その視線が、思わぬ言葉に止まった。

「…………いえいえ」

思わぬことを言われた、ではない。
思わぬ形で、図星を衝かれた。

「相談した相手の『問題点』を見つけて、
 アドバイスする、そう言う仕事……ですよね、コンサル」

「ボクはお姉さんを敏腕営業って言いましたし、
 お姉さんはご自身を『コンサル』と、おっしゃってましたケド、
 その折衷と言いますか、『敏腕コンサル』ですね。
 もしくは、ふふ、『心理学者』か、『占い師』か……」 
 
「おっしゃる通り、ボクはまだまだ『信仰』が足りない身でして。
 おと……ええと、『神主』さんなら、話は変わってくるんですけど」

だから鳥舟はあえてそれを認めた。
神さまが全て叶えてくれるわけがない。

「ふふ、未熟者ですみませんね、ですが――――
 『お願い』を見届ける役目は、しっかりさせていただきますよ。
 それから、そう、皆さんがいらっしゃる境内を綺麗にしたり、
 安心して神さまを頼っていただけるよう、お助けすることも」

「この神社の『巫女』として、ね」

だけど、心の『よりどころ』としての意義は知っている。

巫女はそれを保つ。
自分が信じていなくても、
信じている人の願いを保つ。
鳥舟は『神秘』に疑問を抱き続けるが――――否定はしない。

190ラフィーノ石繭『ミスティカル・ガイド』:2019/12/07(土) 14:30:10
>>189
「ちなみに私、神秘なんて『99.8%』信じていませんしね」

          カチャ…

―――この [志望校に受かる] って願い。叶うのかしらね。
私が上に絵馬を引っ掛けたせいで、
神様から見えなくなっちゃうんじゃないかしら

「受験なんて本人の頑張り次第でもあるだけれど…
 けれど、藁にでも縋っちゃいたいのは『誰』だって同じね」

  この子しっかりしてるわネー色々考えてるのね。
  バブみ感じちゃうわ。

「だから、しっかり者の可愛い『巫女』さん、
 いざという時は縋らせてね?おねがいっ 」

「―――というのは、冗談ですけれどね」
「残りの『0.2%』に頼ることにしますわ」

容赦なく絵馬を掛けてしまう。若人よガンバレ。

191鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2019/12/07(土) 23:12:35
>>190

「『100%』信じるのは、ボクらのお役目ですからね。
 『0.2%』でも、受験や大一番の時だけでも、
 信じたいとか、縋りたいとか……
 そういう気持ちを、受け止める場ですんでね!」

              ニコ

「神さまにでも、ボクにでも、ぜひ頼ってって下さいよ」

絵馬を引っかけるところを、言葉通り見届ける。
他の絵馬にかぶさるのも……それは、仕方ない。
自分の願いを聞き届けてもらおうとするのだから、
他の誰かの願いを優先しなくてはならない理由もない。

「――――さて!」

そうして、顔を上げた。
手には箒を持ったままだった。
つまり、まだやる事がある。

「もしほかに何かご案内出来る事がなければ、
 ボクはそろそろお掃除に戻ろうかと思うんですケド」

              「どうでしょう、お姉さん?」

192ラフィーノ石繭『ミスティカル・ガイド』:2019/12/08(日) 15:09:06
>>191
「あら、お喋りが長すぎました」

「事務所に『供養』したい変なものが溜まってきていまして…
 そのうち『お焚き上げ』か何かしに来させてもらおうかしらね、ウン」

「頼りにしちゃいますわよ、可愛い巫女さん。」

帰る。鳥居の前で一礼してから帰る。
参拝?しないわよ、ンなもん。
絵馬買ったから十分でしょ。
 

「―――ぶェーーーーっくしょいッッッッッッ」
「……くそ、『無病息災』にしときゃぁよかったわ」

193鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2019/12/08(日) 22:03:27
>>192

「いいえェ、ボクがつい時間を忘れて、
 お話に夢中になっちゃってましたね。
 それくらい楽しい時間を、どうもです」

    ペコ

「お焚き上げは、事前に予約があると嬉しいですね。
 物とか時期によっては受けられなかったりもして……
 申し訳ないですけど、そういうことがありますんでね」

笑みを向けた。
そして小さく頭を下げた。

「それ以外でも何かボクらに出来る事があれば、
 いつでもお気軽に、ご相談くださいね。
 それじゃ…………ようこそお参りでした、お気を付けて!」

そうして頭をあげて、箒を手に取った。
願い事の上から掛けられた絵馬を一度だけ見て、
触れることはしないでおいて、また、石畳を掃いた。

「…………」

      …ザッ

            …ザッ

                 …ザッ

194小石川文子『スーサイド・ライフ』:2020/01/02(木) 22:32:27

    ザッ……

元旦――神社へ初詣に訪れた。
普段とは異なる『和装の喪服姿』で境内を歩く。
自分なりの『新年の装い』だった。

         ガラ ガラ
                  チャリン

控えめに鈴を鳴らし、賽銭箱に硬貨を落とし入れる。
二度お辞儀して、二度手を打つ。
そして、もう一度頭を下げた。

  ――どうか……。

           スッ

両目を閉じて、静かに思いを馳せる。
心に浮かぶのは、『彼』と交わした『約束』のこと。
新たな一年間、それを果たせることを願う。

195鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2020/01/03(金) 00:02:08
>>194

元旦の境内――
市街から少し外れた『烏兎ヶ池神社』も、仄かに賑わう。
より大きな神社に比べればささやかな華やぎではあるが、
雰囲気が保たれているとも言える。喪服も浮いていない。

「新年、あけましておめでとうございます!」

     ペコ……

ふと、巫女の姿が目に入る。
アシンメトリーの黒髪に、金色の瞳。
まだ少女にも見える若い女性だったが、
巫女装束はバイトと言うには『堂に入った』ものだ。

そして……それは「振る舞い」の『甘酒』を配る姿だった。
今はあやかろうとする行列もなく、余裕を持って受取りに行ける。

196小石川文子『スーサイド・ライフ』:2020/01/03(金) 09:50:31
>>195

いつもの洋装であれば目立ったかもしれない。
しかし、元日には着物の参拝客が多い。
そのせいもあって、意外な程に浮いていなかった。

    ス……

参拝を終えて、緩やかに境内を振り返る。
その時、甘酒を配る巫女の姿が目に入った。
草履を履いた足で、石畳の上を歩く。

          ザッ……

  「あけまして、おめでとうございます……」

  「――お一つ頂けますか?」

『黒い着物』を身に纏う女が、巫女に微笑んだ。
一見すると、『黒留袖』――最も格の高い正礼装にも見える。
よく見れば、それが『喪服』であることが分かるだろう。

197鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2020/01/04(土) 00:26:08
>>196

巫女は、黒い和装に一瞬表情を固まらせる。

「――――ええ、勿論」

あけましておめでとう。
喪中の相手には相応しくない挨拶だったが、
同じように返された事で『切り替える』。
寺社仏閣への参詣自体、喪を重く見るなら避ける。
躊躇いや戸惑いは望まれていないだろう。

     ゴポポ…

「はいっ、どうぞ。暖まりますよ。
 初詣といえば甘酒……誰が決めたのか分かりませんケド」

注いだ甘酒を渡す顔は、緩んでいた。

「冬にもピッタリですからね。ああ、ヤケドはしないくらいの温度ですんで!」

湯気は立っていたが、手渡すカップ越しに掌に感じる熱は穏やかなものだ。

198小石川文子『スーサイド・ライフ』:2020/01/04(土) 01:01:24
>>197

  「――ありがとうございます」

おもむろに両手を伸ばし、カップを受け取る。
どちらの薬指にも、同じ『指輪』が光っていた。
飾り気のないシンプルな銀の指輪。

    ス……

カップを傾けると、ほど良い熱を持った甘酒が喉を通っていく。
心なしか、身体だけでなく、気持ちまで暖まるように感じられる。
体温が上がったために、頬には薄っすらと赤みが差していた。

  「この神社は初めて来たのですが……」

  「どのような由来があるのでしょうか?」

他の人が待っていないことを確かめてから、
ささやかな質問を投げ掛ける。
甘酒のせいか、それとも心の篭った持て成しのせいか、
少し言葉を交わしたい気分になっていた。
あるいは、楽しげに会話を弾ませる人々の様子を見て、
一抹の寂しさに駆られたせいかもしれない。

199鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2020/01/04(土) 01:46:17
>>198

参拝客はみな、『願い』を抱えてここに来る。
それが叶うと信じてではなく……大多数は、
それを言葉にする、あるいは吐き出すために。
神には届かずとも、巫女はそれを受け止められる。

……重い。両薬指の『証』と、喪服。
巫女がまず覚えた感情は、それだ。
どこまで踏み込むべきか……
それとも踏み出すのをやめるべきか。

「うちはですね、『鳥兎ヶ池』の信仰が元で、
 そこに神社を建てることになったそうです。
 神秘の池、なんて呼ばれたりもしてますけどね」

選んだのは、踏み出さない方だ。
初詣に、巫女にそれは望まれていない。
口に出さない思いを解釈することは。

「『烏兎ヶ池』は『鵺伝説』にまつわる地でしてね。
 お姉さんは『鵺』はご存知ですか――妖怪ってやつの名前です」

手を前に出し、『狐』の影絵のような指文字を作る。
鵺は狐とは関係ないが……『妖獣』を表しているつもりだ。

「お猿さんの顔に、タヌキの身体。トラの手足で……尻尾は蛇だったとか。
 トラツグミみたいな声で鳴いてですね、昔のえらい人を気味悪がらせたそうです」

200小石川文子『スーサイド・ライフ』:2020/01/04(土) 02:20:42
>>199

先程まで冷えていた両手に、今は温もりがある。
その暖かさが、身体と心に伝わっている。
だから、この一時は寂しさも忘れていられる。

「『鳥兎ヶ池』――『池』に『鳥』と『兎』がいらっしゃったのでしょうか?」

「何だか昔話のようですね……」

    フ……

『由緒』を聞いて、穏やかに微笑む。
その裏側には、消すことの出来ない陰があった。
しかし、今この瞬間は表には出ていない。

「……ええ、名前を耳にしたことはあるように思います。
 詳しくは存じませんが……」

「――その『鵺』が『池』と?」

話には聞いたことがあった。
不思議な動物だ。
『神秘性』という意味では、神社という場に相応しいように感じる。

201鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2020/01/04(土) 02:39:41
>>200

「『烏兎』は『金烏玉兎』……えーと。
 つまり太陽と月ですね。うちの『烏兎ヶ池』は、
 水底は濁ってますけども、綺麗に月を映すンです。
 太陽もね、そこから取られた名前なのかな、と」

いうのが、定説になっている。
というより……そうしようとしている、のか。

「ま、あくまで……説の一つですけどね。
 もー昔すぎて誰が付けたのかも分かりませんから。
 ほんとはそう、カラスとウサギがいたからかも?
 ウサギはともかく、カラスはよく見ますからね」

偶然よりは、『ありがたい』気がするから。
信仰を求めている神社が始めたのか、
信仰の拠り所を求めている民が始めたのか。
それも、疑えど答えを出すべきではないだろう。
 
「ただまあ、たいていの説で『鵺』は伝説に絡みます」

「『鵺』は最終的にお偉い方に退治されるんですよ。
 それで、妖怪だからですかね。斃された体が……ボン!」

「何か……爆発でもしたんですかねえ、あちこちにバラバラに飛んでいったとか。
 そのうち一つ……爪だか牙だかが、くだんの池に落ちたそうですよね」

202小石川文子『スーサイド・ライフ』:2020/01/04(土) 17:51:22
>>201

  「そういえば……『月には兎がいる』と言われますね」

  「いつか『やたがらす』という名前を聞いたことがありました。
   太陽の神様だと……」

  「『カラスが太陽』というのも、
   何となく分かるような気がします……」

伝承が本当かどうか。
少なくとも自分にとっては、さほど重要なことではなかった。
信じることで幸福を得られる人がいるなら、それが何よりだろう。
真偽を問うことが、その幸福を壊してしまうことになるのは、
悲しいことだと思う。
たとえ儚い夢であっても、それが心の支えになることもある。

  「『バラバラ』に――」

  「それは――凄いお話ですね……」

巫女の言葉で、ふと自分自身のことが頭に思い浮かんだ。
『スーサイド・ライフ』――自らの身体を自在に切り刻む能力。
『妖怪』も『スタンド』も奇妙な存在には変わりない。

  「そして『神秘の池』が生まれた……ということでしょうか?」

  「どのような『ご利益』があるのか教えて頂けませんか?」

203鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2020/01/04(土) 23:44:44
>>202

「ええ、月には兎がいるんです。
 それが科学的に正しいどうかじゃなくって、
 昔の人が『そうだと考えた』――――
 『そうだと考えた理由がそこにあった』
 そこに、ロマンがあると思うんですね」

「ロマンというか、一つの『信仰』といいますか。
 神さまっていうのとは、少し違うかもしれませんがね」

月の兎。
ヤタガラス。
現実に考えれば『無い』――――『スタンド』でもなければ。

「ですねえ。そういういわれがあっての『神秘の池』です。
 ま、もしかしたら『ご利益』が先にあって……理由が後、か・も」

だが、あるかもしれないと思うことは『意味』がある。

「池の『ご利益』っていうのは、まー漠然としてますけど。
 『池に落ちた人が神通力を得た』みたいな伝説とか、
 『池の水を毎日飲んだ子供が百人力の力持ちになったとか』」

「『怪我が治る』とかより、そういう方向性ですねえ」

            ニコ…

「残念ながら――――今は水に入るのは禁止ですし、
 飲むのも、煮沸をした方が良いと思いますね。安全性の面でね!」

204小石川文子『スーサイド・ライフ』:2020/01/05(日) 00:50:17
>>203

  「『信じることが心の支えになる』……
    とても素敵なことだと思います」

  「それが形のあるものでも、形のないものでも、
   『支えてくれる何か』があれば――日々を歩んでいける」

  「私は、そのように考えています……」

彼女が語る言葉に、『確信』を込めた頷きを返す。
胸の内には『約束』があり、指には『形見』がある。
それらが、今の自分を『この世界』に留めてくれているものだ。
きっと、いつでも『彼』は見守ってくれていると信じている。
だからこそ――『一人』になった今も生きていける。

  「……『信じれば叶う』という言葉を聞いた覚えがあります」

  「『神秘の池』が――
   『神様』が見守ってくれているという『信仰』は、
   そこを訪れた人達にとって、自分の道を歩んでいくための、
   『心の支え』になってくれたのでしょうね……」

  「そうして迷うことなく進んでいけば……
   いつか、私も『力持ち』になれるでしょうか?」

    クス……

口元に、柔らかい微笑が浮かぶ。
ちょうど同じ頃、こちらに近付く数人の参拝客の姿が見えた。
自分と同じく、甘酒をもらいに来るようだった。

  「すみません……すっかり話し込んでしまいました。
   他の方がいらっしゃるようですので、私はこれで……」

  「楽しいお話を聞かせて頂き、ありがとうございました」

           スッ

  「――失礼します……」

邪魔にならないように身を引き、巫女に会釈を送る。
黒い和装の後姿が、徐々に遠ざかっていく。
喪服に身を包んだ背中が、静かに雑踏の中に溶けていった。

205鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2020/01/05(日) 01:18:00
>>204

「いい考えだと思いますよ!
 もちろん、『支え無しでも生きられる』人もいるし、
 それはそれで立派なんだとは、思いますけどね」

「いざというときの、『拠り所』は一つでも多い方がいい」

神秘が科学に否定される。
それは何も間違いじゃあない。
神秘では炎は灯せない。
神秘では水は清められない。
そして神秘では…………

だが、『神秘を必要とする』人間は必ずいる。
いつまでかは分からない。だがそれまでは……『必要』だ。

「そうですね…………きっと『信じてない夢は叶わない』」

「『夢を信じるための心の支え』は、ボクらがしますからね。
 迷いそうになったら、いえそうじゃなくっても、いつでもまたどうぞ」

           ペコ…

                「それでは。ようこそお参りでした」

206鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2020/04/05(日) 00:09:53

     ザッ――

            ザッ――


春。芽生えの頃。今日も境内を掃いている。
無心で……という訳でもない。
『見たいテレビ番組』の事だとか、
今度観に行く『舞台』の事だとか、
むしろ『煩悩』は減る所を知らないが・・・


(……『ヴィルドジャルタ』!)

     ザッ――

何より、ここしばらく『それ』に関心が募っていた。
『ヴィルドジャルタ』――――
神託なんて大げさな話だと思うが、
ある日突然『知った』その存在。

(名前しか知らないボクの『スタンド』。
 そろそろ『知っておく』べきなんじゃあないか)

     ザッ

        (…………でも、それを知るってコトは、
         知らない時に逆戻りは出来ないってコトだ)

                  『コンッ』

    「あッ―――と」

思考の堂々巡りの中……箒に思わず力が籠り、空き缶を飛ばしてしまった。

207鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2020/04/07(火) 00:39:43
>>206

思考は巡るたびに募っていくが、その日は実りに結びつきはしなかった・・・

208一抹 貞世『インダルジェンス』:2020/04/08(水) 03:11:53
教会に集まる方々により良い道を示すべく
参考にするために烏兎ヶ池神社まで来たのだが…

「迷える人々に道を示す前に迷走しちゃいました…」

一人の小学生、いや、中学生がぐるぐると迷走する。
どうみても小学生だが中学生である。

「それにしても変な感じがするような…」

涼しく刺すような玲瓏とした風貌のあどけない少年は何かを感じている。
二回も死にかけたせいで視線や殺意に敏感になったのかもしれない。

「宗像さんに付いてきてもらえば良かったかな」

209石動 織夏『パイオニアーズ・オーバーC』:2020/04/08(水) 08:36:16
>>208
「おい、ぐるぐるとなにやってるんだい、アンタ」

迷走している一抹に中学生くらいの少年が声をかけてきた。
白黒の髪に黒の清月学園制服、海のギャング、シャチのような風貌をした少年だ。
鍛えているのか、一抹よりいくらか背が高く、がっしりしている。

210一抹 貞世『インダルジェンス』:2020/04/08(水) 20:24:12
>>209
制服と背丈からして上級生だろうか。
水泳部に入ってそうだな、と勝手な憶測をする。

「生まれて初めて神社に来たのですが
 何をすれば良いのか分からずグルグルと…」

「ん? もしかして清月学園の方でしょうか?
 凄く肉体を鍛えていらっしゃるようですね」

生まれてから父というものを知らぬ一抹は筋肉に興味津々だ。筋肉とは父性の象徴。
血管が見える透き通った不健康な一抹とは正反対だ。

「すごくつよそう」

目の前の少年の筋肉を凝視しながら呟く。

211石動 織夏『パイオニアーズ・オーバーC』:2020/04/08(水) 20:40:22
「ん、アンタもこの神社初めてかい?」

「俺も初めてだが……」
ズキュゥゥゥン!人魚のようなスタンドを上空に飛ばして辺りの様子を探る!

「俺も初めてだが……大体の方向くらいは分かるぜ。
あっちが『霊池』だ。」
『霊池』の方向を指差す。

「俺は石動 織夏(いするぎ おるか)。
ご察しの通り清月学園の中等部3年生だ。
水泳部で鍛えちゃいるが自慢するほどのモンでもねぇ。」

「アンタは……帰宅部かい?」

212一抹 貞世『インダルジェンス』:2020/04/08(水) 21:05:23
>>211
「『インダル…ん、お兄さんのスタンドでしょうか?」

筋肉質な人型スタンドが一抹の前に発現する。
二度も物騒な目に遭わされたせいで反応が常人から離れてしまっている。

「あわわっ、敵の攻撃と勘違いしちゃいました! ごめんなさい!」

『インダルジェンス』を解除。
石動先輩についていこう。 

「わたしは中等部一年生の一抹貞世です。
お恥ずかしながら帰宅部です」

「空を浮遊するスタンドって良いですよね。
 私は戦友というか、お兄ちゃんみたいな人も魚っぽいスタンドだったから懐かしいです」

213石動 織夏『パイオニアーズ・オーバーC』:2020/04/08(水) 21:29:12
>>212
「おおっと、アンタもスタンドが見えるクチか。パワーがありそうなスタンドでうらやましいな。」
『インダルジェンス』を見て呟く。

「俺のスタンドは遠くに行けて、空を飛べる分、あまりパワーが無くてなぁ。」
ボヤく。

「だが、浮遊するスタンドは便利だぞ。重力の枷から解き放たれるってのは気持ちがいい。」

「魚っぽいスタンド使いかぁ……自分以外には見たことがないが、意外といるのかねぇ。」

トコトコトコ……

「よし、『霊池』に着いたぞ。ここが『烏兎ヶ池』か。」
『霊池』に着いた!

「巫女さんとやらは居るのかな?」
『霊池』の周りをうろうろしながら、『巫女』を探してみる。

214一抹 貞世『インダルジェンス』:2020/04/08(水) 21:57:50
>>213
「私の『インダルジェンス』は岩を砕き、精密機械のよう
 な動きを得意としますが能力はメンタルケア向き」

「迫る危機に器用な対応が必要とされるから大変です」

立ち止まった石動の背後で軽く転ける。
それでも『パイオニアーズ・オーバーC』を一抹は観察していた。

「わたしの戦友さんは沢山の魚を発現し、『水槽』を作るスタンド使いでした。
非力なスタンドでしたがコカトリスを窒息死させるジャイアントキリングを成し遂げた凄い方なのです」

目をキラキラさせながら戦友の話をする。
彼は今でも町の何処かにいるのだろうか。

「『烏兎ヶ池』ですか。変わった名前の池ですね。
 ご利益でもあるのでしょうか」

石動先輩と『巫女』さんを探す。

215石動 織夏『パイオニアーズ・オーバーC』:2020/04/08(水) 22:14:38
>>214
「『巫女』さん見つからねぇなぁ〜。」

「しかも、この柵から察するにこの『霊池』は遊泳禁止みたいだしよぉ〜。」

「パワースポットで泳ぐってのを、いっぺんやってみたかったんだがな……」

※巫女さん(鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』)を待ちますか?

216一抹 貞世『インダルジェンス』:2020/04/08(水) 22:21:22
>>215
「学生ほど暇じゃないのかもしれません」

「…泳いでみます? わたしは泳げませんが」

※明日の21時まで待ってみましょうか?

217石動 織夏『パイオニアーズ・オーバーC』:2020/04/08(水) 22:34:43
>>216
「泳ごうと思ったんだが、ここまで禁止されてるとさすがに気が引けるぜぇ〜」

「しかし、一抹さん、泳げないってのは難儀だな。溺れた時とかどうするんだい。
なんなら、泳ぎ方を教えようかい?」

※ちょっと待ってみましょう。

218鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2020/04/08(水) 23:07:17
>>216
>>217

「…………」

          ザッ    ザッ

巫女は少し遠くでいたが、掃除をしているようだ。
そちらに気付く様子は無いので、用があれば話しかける必要がある。

219石動 織夏『パイオニアーズ・オーバーC』:2020/04/08(水) 23:17:51
>>218
「あ、いたいた。
もしもし、巫女さーん」

「この『霊池』ってやっぱり遊泳禁止?
いいパワースポットって聞いたんだけどさ。」
鳥舟に聞いてみる。

220一抹 貞世『インダルジェンス』:2020/04/08(水) 23:22:03
>>218
「あっ、居ましたよ。それっぽい人が。
 泳ぎはまた後で教えてくださると嬉しいです」

「巫女さま、巫女さま。この池にご利益があると聞いて来たのですが」

221鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2020/04/08(水) 23:36:07
>>219
>>220

「どうもどうも、ようこそお参りです」

          スゥ―

頭をゆっくりと下げて、箒を片手に歩み寄る。
金色の目と、左右で長さの違う髪が特徴の若い巫女だ。

「あー。すみませんけども遊泳は、禁止ですね!
 そこで『溺れたり』とかはもちろんですけど、
 ホラ。少し濁ってるでしょう? 『浄化』とか、してませんからね」

「飲用にするにも、煮沸がいるくらいには、『不安』なんですよ。
 それをまんいち飲んだりしてビョーキされたりしたら、
 ボクの方でこう、セキニンとか、取れませんから。
 仮に飲んだ事で御加護があっても、風邪とか引くときは引きますしね!」

指さす池は確かに、『得体が知れない』ものはある。
汚水と言うには透明すぎるが、『市民プール』のような安心感は無い。

「そちらの、『弟くん』……? きみの質問にも答えておくね。
 ここは『鵺』……ってわかるかな、昔の『すごい妖怪』なんだけど。
 まあ、『謎の生き物』が撃ち落とされて底に沈んだ――――なんて説もあってね」

「その『謎の生き物の謎の力』が、宿ってる池なんだよ。
 あとは、あー……『飲んだらすごい力持ちになった』なんて昔話もある」

       「ただほんと、現代人のボクらは『煮沸』ッて知恵があるから。
         昔話そのままみたいに直飲みしたりは絶対おすすめしませんよ」

最後の言葉は石動に向けているようだ。『保護者』と勘違いしているらしい。

222石動 織夏『パイオニアーズ・オーバーC』:2020/04/08(水) 23:53:34
>>221(鳥舟)
(おおっと、金色の不思議な目だ)

「なるほど、あの『霊池』には『得体の知れない』なにかがあるっちゃ、あるなぁ
 『謎の生き物の謎の力』……それが関連しているのかな?」

「たしか、ここの『霊水』買えるんだったよな?
 ボトル1つでお幾らだい?」

「あと俺らは兄弟じゃねぇよ」

223一抹 貞世『インダルジェンス』:2020/04/09(木) 00:08:40
>>221
「なるほど、この神社の『信仰』の元は妖怪。
 私は信じますよ。この町には変なのが沢山いますから」

「聖職者の息子として興味が有って来たわけですが他にも逸話はありませんか?」

224鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2020/04/09(木) 00:36:28
>>222

「あっと、これは失礼しました。早とちりでして」

まず、非礼をわびた。

「関連はあるのかもしれないし、ないのかもしれない。
 そこも『不透明』……なんちゃって、ね。
 『鵺伝説』ですからね、『分からない方がらしい』のかも」

「鵺的、なんて形容詞もあるくらいですからね」

その言葉自体、はぐらかすように『鵺的』だ。

「ああ、霊水はボトルで『300円』で授与しておりますよ!
 繰り返しますケド、飲むんでしたら『煮沸』してくださいね」

が、『授与』――――『商売っ気』は、それなりに『明快』なようだった。

>>223

「『神さま』と『妖怪』は紙一重――――
 っていうのは、きみのお家の考えとは違うかな。
 ごめんね、ボク基督教はあんまり詳しくなくって。 
 きみに失礼なこと言ってたら、ちゃんと叱ってね!」

「ボクも勉強させてもらうからさ」

宗教観の違いは『戦争』さえ生む。
鳥舟は『信じ切っちゃいない』が、
目の前の少年がどうかは分からない。

「変なの……アハハ、確かに『都市伝説』は多いよね。
 他の逸話……ん〜。ちょっと神社公式として言うには、
 眉ツバっていうかそれこそ『都市伝説』っぽくなるけど。
 『某戦国大名はこの池で体を洗ってから成りあがった』とか」

          「その手の『ご利益話』は、事欠かないよね」

225一抹 貞世『インダルジェンス』:2020/04/09(木) 09:52:10
>>224
「いえ、わたしは父と違う方向性の者ですよ。神も、妖怪も、ただの『都市伝説』みたいなものじゃないですか」

「そういえば、『都市伝説』と鵺って似てますよね。あやふやで無責任なところが」

私は学者ではないが教会と神社の違いは崇める神でなく、河童や悪霊などの恐怖を神格化する点だと思う。
日本三大悪霊の崇徳天皇や平将門など彼らは恐怖と紙一重の信仰を受けている。
菅原道真だけは少し影が薄い気がする。

「噂を広めるとき、人は安全な立ち位置と抜け道を先に確保するんです。危なすぎる話は遠ざけられるだけで決して広まらない」

「人間は自分が優位に立っていると思うから、無責任な噂を垂れ流せる。ただし、それが本当に安全なものかは怪しいのです」

「『都市伝説』を流す者が『きっかけ』の危険性を見極められているとは限らない」

こういった妖怪に関連する逸話が伝わる神社には祟りもセットで付いてくるものだ。
最近は勝手に心霊スポット扱いされる神社も少なくない。

「巫女さまは祟りとかに遭遇した経験はありますか? 落ちてきた鵺の正体を探ろうとしたら変な目に遭うとか」

「それはそうと霊水を買いますね。与太話を聞いてくださったお礼です」

226石動 織夏『パイオニアーズ・オーバーC』:2020/04/09(木) 12:46:37
>>224
「300円ね。」
300円を渡す。

「まぁ、お守り程度に考えとくさ。水素水よりはご利益がありそうだ。」

「『鵺』ねぇ。そんなもんいるんだか、いないんだか……。
あー、実はアンタさんが『鵺』の変化(へんげ)っつーオチか?
それはそれで面白そうだな。」

227鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2020/04/10(金) 02:11:26
>>225

「ああ、それなら――――そうだねえ。
 『信仰』を失ったり、毀損された神さまが、
 妖怪になるなんてお話もあったりするしね。
 『いないと思えばいない』『いると思えばいる」

「まあボクは、『いる』側の人間だけどね!
 『都市伝説』や『妖怪』と神さまが違うとしたら、
 それは多くの人の『支え』になってる事だろうね」

妖怪や都市伝説は、人の想像力に支えられる存在だ。
神さまも、そうかもしれない――だが『支えてくれる存在』でもある。

「祟り? ボクは――――フフ、そうだねえ、『ある』よ。
 それこそ、その池の掃除で水の中に転落しちゃってね。
 風邪を引いたんだ……いつもより、長引いちゃったんだ。
 勝手に入ったから、きっと鵺が怒ったのかもしれない」

「どうもどうも、霊水の授与は社務所でするね。そこに、置いてるから」

>>226

「はい、はい。確かに受け取りました。
 物は後で、社務所の方で授与しますよ。
 そっちの子の分と合わせて……
 そうですね、『ちょっと珍しいお守り』くらいの、
 そういう気持ちで持っててくれれば『気楽』ですよ」 

300円を受け取り、懐に入れる。
そして、怪しい笑みを浮かべる。
 
「……ボクが鵺ならこのまま持ち逃げしちゃう、かも?
 なんてね、ボクはちゃんと人間ですんで、安心してお頼り下さい」

「ちなみに、今日はやはり『霊池』を見に来られに?」

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229一抹 貞世『インダルジェンス』:2020/04/10(金) 06:00:41
>>227
「聖職者の息子的にも神さまは存在していた方が人々の支えになりますから。
 それに行き場の無い方々が来てくださり助けになれます。こちらより教会はボロいですけど…」

教会に捨てられた私が生きていられるのも直接的ではないものの、神さまのお陰ではある。
どうしょうもない者たちが最後にたどり着くのが宗教なのだ。良くも悪くも。

「逆に池の掃除をしてくれたから転落した貴女は助かったのかもしれませんよ。
 神と巫女は共存共栄の関係ですし、神が簡単に姿を現れでもしたら超越性が失われます」

ふと、こういった場所に宗像さんは来ないだろうなと思った。
地獄を生きる彼には神も仏もあるまい。
夕立先輩は…どうだろうか。神頼みするより自分を鍛えてそうだ。
隣の石動先輩も池を泳ごうとするぐらいだ。
基本的にスタンド使いは神を必要としない気がする。

「うん? そういえば、鵺って姿形が分からないらしいですね。
 なぜ、昔の人たちは池に落ちてきたのが鵺だと分かったのでしょうか?」

「謎が多いですよね、鵺って。既に死んだものを知ることは叶いませんが」

池に不気味なものを感じるが『インダルジェンス』のいる私に怖いものはない。
恐ろしいのは生きるに足る価値を失うことのみだ。

230石動 織夏『パイオニアーズ・オーバーC』:2020/04/10(金) 12:02:44
>>227
「ハハハ、300円で『鵺』が見れるんなら、アンタさんが『鵺』でも面白いってもんだ。」

「ああ、『霊池』を見に来たんだ。あわよくば泳いでみたかった。
 水泳大好きなんでな。
 水の加護とやらがあるんなら、見てみたいもんだ。」

231鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2020/04/10(金) 23:30:51
>>229

「確かに、そう言う考え方もあるかもねえ。
 神さまに報いていれば、いつか報われる。
 ボクもそうあってくれれば、良いと思うな。
 『願えば絶対叶えます』とは言えないけどさ」

そんなことはあり得ない。
どれだけ報いても返してはくれない。
『鳥舟学文』の存在がそれを示す。
答えが神の不在か、手抜きかは分からないけど。

(……願った事が支えになるなら、それでいい)

「そうだね、『姿が分からない何か』――――
 が、落ちて来た。だから『鵺』と呼んだのかもね。 
 それが何かが分かるなら、それの名前で呼ぶと思うんだ」

   U F O
「『未確認飛行物体』みたいにさ。っていうのは、神社らしくない例えかな」

>>230

「確かに、そう考えたらお買い得ですねえ。
 ま、鵺はさすがに保証できませんけども、
 『良い目』を見られるように、神さまにはお伝えしときますよ」

お伝えした結果も、保証は出来ない。
が、巫女の仕事は果たそう。
それで人々が安心できるなら。

「『水泳』ですか、なるほど…………
 とはいえ『春先』の水はまだまだ冷たいですからね、
 練習でしたら、屋内の温水プールをおすすめしますよ。
 それに、『記念』で飛び込む『水場』は『道頓堀』だけです。
 や、勿論あそこも飛び込まない方がいいでしょうけどね」

「マジメに行くと……この『霊池』にはですね、
 『水そのものにまつわる伝説』は、実はあんまりないんですよね。
 『水が暴れ出した』とか、そういうのはあんまりない。
 落ちた人にしても、飲んだ人にしても、『水』と『人』ばかり……
 そういう意味では『水泳選手』は、加護に『あやかりやすい』の、カ・モ」

232石動 織夏『パイオニアーズ・オーバーC』:2020/04/11(土) 05:58:16
>>231
「多少の寒さは大丈夫ってやつだ。『鍛えてますから』。」

「加護にあやかりやすい、たぁ面白い話だ。
これはもう『お守り』に使うしかねぇな。」

※特にこれ以上、話がないようならボトルを頂いて帰ろうと思う。

233一抹 貞世『インダルジェンス』:2020/04/11(土) 07:44:54
>>231
「成る程、正体が分からない存在に知ってる物の名前を被せれば、それは未知ではなくなりますね」

さっきから出しっぱなしの『インダルジェンス』も音仙さんに名づけられた未知の力だ。
違和感なく受け入れているがスタンドも鵺と大差ない不思議な存在である。
最近はうっかり発現したまま買い物に出るほど生活に馴染んでしまった。

「……根掘り葉掘り聞いて怒らないのですね。私は気になる事が有ると色々聞いてしまう癖がありまして」

「神父は懺悔を聞くだけ。根本的な解決をしたくなる私は神父に向いてない」

「巫女として『理想的』な貴女を羨ましく思います。すべてを受け入れる姿勢とか」

神に仕える者としては彼女の方が上だ。
財布から五百円を取り出して支払いの準備をする。

「追加で二百円。色々聞いてしまったものですから」


>>232
「次に会った時は筋肉を触らせてくださいね」

なんとなくだが石動先輩と夕立先輩は少しスタンスが似ている。
スポーツマンとは求道者。自分の歩む道に真摯な人が多いのかもしれない。

234鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2020/04/11(土) 22:37:00
>>232

「ええ、是非に是非に。
 良い事があったら、思い出してください。それで、もしですけど、
 悪い事が起きちゃった時も、『お守りが効かなかったせい』にしてください」

>>233

(あ。……あんまり自然だからなんとなく、気にしてなかった。
 この子は『スタンド使い』……珍しいにせよ、居なくはないんだな)

「怒らないよ。なにせ『巫女』はね、
 『参拝者』と『神さま』を繋ぐ存在だから。
 気になる事に応えるのも『役目』なんだ」

「『解決する』わけじゃないのは、神父様と同じだけどね。
 これからも理想的な巫女でいられるように、がんばろうかな」

          スッ

『500円玉』は、この場では受け取らない。

「どうも、ありがとう――――
 200円はそうだね、『お賽銭』にしておこう!
 ただ、支払いは、社務所の方でお願いしていいかな」

>両者

「っと、すみませんね、そろそろ『お掃除』に戻らせていただきます。
 ここはおかげさまで、綺麗に使っていただいてるので、ごみもありませんし」

「社務所の方に、『御水』の『授与』の方、準備してもらっておきますね」

235石動 織夏『パイオニアーズ・オーバーC』:2020/04/12(日) 03:45:35
>>233(一抹)
「やめてくれよ。俺の筋肉は見世物じゃねぇ。」

「なんつーか、水と暮らすための進化みたいなものなのさ。」

>>234
「ありがとよ、そうさせてもらうさ。」

「それじゃ、これぐらいで。サヨナラだ。」
手をヒラヒラとさせて、社務所の方へ向かう。

236一抹 貞世『インダルジェンス』:2020/04/12(日) 06:12:44
>>234
「我々の仕事は『解決』することじゃない。導くこと…」

「巫女さまは先輩ですからね。とても良い勉強になりました」

思わぬ場所で自分の『傲慢』に気づかされてしまった。
もっと早く出会っていればと心底思う。
これ以上は仕事の邪魔になる。手を振って社務所へと向かって行く。

>>235
「ブレない人だ。ふふっ…」

こういったストイックさには憧れる。
スタンド像を見た時に気づくべきだったか。
同じ学舎に通う者同士、再び出会うこともあるかもしれない。

237百目鬼小百合『ライトパス』:2020/05/25(月) 21:12:28

  ザッ ザッ ザッ
               ――――ザッ

「『烏兎ヶ池神社』――か」

鳥居を見上げ、しばし立ち止まる。
白いパンツスーツを着た背の高い女だ。
年嵩だが、居住まいには力強さがあった。

「せっかく来たんだし、『祈願』でもしていこうかねえ」

落ち着いた足取りで手水舎に向かう。
こういう場所に来ると、
自然と背筋が伸びて厳かな気分になるものだ。
神頼みする気はないが、自分に発破を掛けるには悪くない。

(アタシが子供の頃は境内で遊んだりしたもんだ)

ふと、少女時代の記憶を思い出す。
いわゆる女の子らしい遊びよりも、
男の子に混じって走り回る事が多かった。
今となっては、遠い遠い昔の話だ。

「どうも年を取ると感傷的になっちまうね」

238鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2020/05/25(月) 23:22:27
>>237

烏兎ヶ池神社――星見町に住む者なら、
知っていて何ら不思議はない名前だが……
同時に『誰もが知る』名前というわけでもない。
S県内には『三千』を超える神社が存在し、
中には全国より観光客が冷やかしに訪れるような、
極めて名高いものもある……ここはそれほどではない。

ともかく、百目鬼は足を踏み入れた。
閑散と、良く言えば『静謐』さ漂う境内だった。
少しも見当たらない『ゴミ』や『落ち葉』の類も、
その厳かな空気を引き立てる…………そして。

       ザッ…

         ザッ…

境内を箒で掃く『巫女』が、気付いて顔を上げる。

「ようこそ、お参りです」

         ペコ…

年若さを滲ませる顔立ちに、両目に灯る金色の瞳。
アシンメトリーの髪型も相まって、どこか華やかな佇まいだった。

239百目鬼小百合『ライトパス』:2020/05/26(火) 00:02:07
>>238

「――――ああ、どうも。最近、暑くなってきたね」

「ン…………」

軽い世間話をしながら、箒を手にした巫女に向き直る。
そして、その顔に目を留めた。
特徴的な『金色の瞳』に注意が引き付けられる。

「間違ってたら悪いんだけどねえ。
 いつだったか街で会わなかったかい?」

「『何処だかの店の前』だったような気がするよ。
 あれは確か……」

額に片手をやり、記憶の糸を手繰り寄せる。
『地下アーケード』だっただろうか。
『看板のない店』の前で言葉を交わした事を覚えている。

「――『骨董品屋』じゃなかったかねえ?」

出会ったのは一度だけだ。
だが、目の前にある『金色の瞳』は、強く印象に残っていた。
それ以外にも特徴はあるが、他の何よりも『瞳』が一番目立つ。

240鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2020/05/26(火) 01:02:23
>>239

「そうですねえ、すっかり日が落ちるのも、遅く……」

「ああっ――どうもどうも、あの時はどうもでした」
  
           スッ

巫女は箒の手を止め、百目鬼に歩み寄る。
間違いなく、『アーケード街』にいた女性だ。
レトロな印象のファッションは影も形もなく、
完全な『巫女装束』のセットを纏ってこそいるが。

「どうです、あの後アンティークに……っと、
 失礼しました、今はそういう事じゃないですね。
 ここでお会いしたって事は、今日は『ご参拝』です?」

「……あぁ、あの時は言ってませんでしたよね!」

単なる『通行人』同士での、邂逅だった。
互いの人となりはほとんど知らない。

「ボクは、この神社の『巫女』をやっている者なんです。
 季節限定のバイトとかじゃあなくって……本職で、ね」

241百目鬼小百合『ライトパス』:2020/05/26(火) 01:34:59
>>240

「なるほど、道理で」

「立ち姿といい所作といい『品格』がある訳だ」

『本職』――その言葉に、改めて巫女の姿を観察する。
形だけの雰囲気ならアルバイトにも出せるが、彼女は違う。
見る者に『説得力』を感じさせる力がある。

「アタシの用事は『参拝』だよ。
 『夏』に向けて、ちょっと気分を引き締めとこうかと思ってね」

「――暑くなってくると、『色々』あるからねえ」

       ザッ

一般的に、『夏』というのは最も開放的な季節だ。
そういう時期になると、人は羽目を外しがちになる。
結果として、『犯罪』も増加傾向に陥りやすい。
『風が吹けば桶屋が儲かる』ではないが、
『どういう時に犯罪が起こりやすいか』という話には諸説ある。
ただ、一笑に付す事の出来ない内容である事も確かなのだ。

「ところで、あそこは中々いい店だったよ。
 アタシの『目当ての品』はなかったけどね」

            スッ

柄杓を取り上げ、手を洗い清める。
目当ての品――すなわち、『法に反するもの』だ。
見つからなかったのは幸いだった。

242鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2020/05/26(火) 02:18:17
>>241

「お褒めに預かり、まことに光栄です。
 お姉さんも風格がおありでいらっしゃる。
 ……神社には、結構よく参られてるんですか?」

手水舎を使う姿を見て、微笑みを浮かべる。
歳を重ねても、『よく分かっていない』者は多い。
あるいはぎこちない事も……それは、何も悪くない。

が、百目鬼の作法は手慣れたものを感じた。
実際慣れているのか、堂々と芯の通った所作ゆえか。
淀みないそれを見るのは、もちろん気分が良い。

「そうですね、暑くなってきたら海開きもありますし!」

「もう少し先ですけど、お盆もありますしね。 
 それから、『夏まつり』なんかも…………
 ……っていうのはこっちの、神社の話ですケド。
 お姉さんの方も、夏場お忙しいお仕事なんですね」

盆は寺……仏教の行事と見られがちだが、
神社……神道にもルーツがあるとされる。
起源はともかく、烏兎ヶ池神社にも無縁ではないのだ。

「あぁそれは残念で……何を探してたんでしたっけ?
 あ、差し支えなければで結構ですんで!
 骨董品関係ならもしかしたら、お力になれる、かも」

骨董屋前で会った時のことを鳥舟は思い出す。
百目鬼は『何か探している』……『調べている』様子だった。覚えている。

そのことは鳥舟の中にも引っかかっていた……小さいが一つの『謎』として。

243百目鬼小百合『ライトパス』:2020/05/26(火) 02:54:28
>>242

「それ程でもないよ。子供の頃は良く遊びに来てたけどね」

「ここじゃあないけど、境内で『缶蹴り』とかねえ。大昔の話さ」

『お姉さん』と呼ばれるのは少々くすぐったい。
何しろ、『不惑』と呼ばれる年を十年も過ぎている。
巫女の年齢は知らないが、
彼女の両親より自分の方が年上でもおかしくない。
もっとも、礼儀としての部分が大きいだろうから、
敢えて訂正してもらおうとも思わないが。
『悪い気はしない』というのもある。

「はは、そうだねえ。夏ってのは何かと行事が多い」

「それに、つい気の緩みやすい時期でもある。
 参拝に来たのは『自分に渇を入れる』って目的もあるね」

      ガラ ガラ
             ――――チャリン

「ささやかだけど、ちょっとだけ『奮発』しとこうかねえ」

財布から『五百円玉』を取り出し、賽銭箱に滑り落とす。
賽銭とは気持ちが第一であって、金額が全てではない。
だから、これは単なる『気の持ちよう』だ。

「――――よし」

背筋を正して二度頭を下げ、二度手を打つ。
そして、最後に再び頭を下げる。
一連の流れを終えてから、やや肩の力を抜いて振り返った。

244百目鬼小百合『ライトパス』:2020/05/26(火) 03:08:35
>>242

「そうだね。大したもんじゃあないよ。
 強いて言うなら『ピンと来るもの』かねえ。
 『琴線に触れる』というか……」

「――説明が下手で申し訳ないね」

探していたのは、『法に触れるもの』だ。
それを説明するのは少し難しい。
話せない事ではないが、
『神社』で話すのに相応しい話題でもないだろう。

「そうだ。突然こんな事を言うのも変かもしれないんだけどねえ。
 アタシにはどんな品物が合うか教えてもらえないかい?」

「大体でいいよ。
 もしかすると、それがアタシの欲しいかもしれないしねえ。
 良かったら、何か適当に見繕ってもらえると助かるよ」

245鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2020/05/26(火) 03:12:25
>>243

「あぁ、そうだったんですね。
 昔はウチにも遊びに来る子がたくさんいたと、
 おと…………父や祖父から聞いた事がありますよ。
 最近も、まあ、いないわけじゃないんですケド」

(池の水を全部抜きに来た子とかいるし、ね)

少なくとも今、境内に子供の姿はない。
単にここのアクセスが良くないのもあるだろうし、
集まらなくても遊べる手段が増えたのもあるのだろう。

「あぁ、たしかにボクも夏はダレてしまいますね。
 自分に喝、ストイックでカッコいい考え方です」

参拝の様子は、静かに見守っておく。
賽銭の量も……内心はともかく口にはしない。
少なければ悪い、というわけではないからだ。
『一円』でも『ご縁』でも、『一万円』……
もちろん多ければありがたいという部分はあるが。

「…………ようお参りでした」

お参りを終えた百目鬼に、小さく、緩やかに頭を下げる。

246鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2020/05/26(火) 03:20:05
>>244

「いえ、なんとなく、わかりますよ。
 ボクも『これ!』って決めて店に入らずに、
 なんとなく、そう、琴線に触れたものを買う。
 そういう事って、よくありますからね……」

『衝動買い』と紙一重だ。
何かを買う、と決めてはいるにしても。

「お姉さんに似合うモノ、ですか。それはそれは大役を。
 そうですねえ……やはり『実用品』が良いでしょう。
 古いだけじゃなく、古いからこその『味』が出る」

「うーん…………」

少し考え込んだあと、鳥舟は小さく手を打った。

「ご自宅で本とか、読まれます?
 もし読まれるなら……『ライト』なんてどうですか?
 卓上灯……いいですよォ、アンティークの『光源』は。
 光の色とかね、普通の電灯とは違った味がありますよ」

「ま、一口にライトと言っても和風洋風北欧風、
 色々ありますけども……そのあたり、お好みとかは?」

247百目鬼小百合『ライトパス』:2020/05/26(火) 03:40:00
>>246

「ははあ、『ライト』ね。そりゃあいい」

「――気に入ったよ」

口元に薄っすらと笑みを浮かべる。
『光』という言葉が、己の『精神』――『能力』を思い起こさせた。
偶然だとしても面白い一致だ。
あるいは、彼女の『洞察力』は相当なものなのだろうか。
それは流石に考え過ぎかもしれないが。

「……『日本的』な奴、かねえ。その中だと」

「そうそう、『小百合』っていうのがアタシの名前だよ。
 『小さい百合』って書いて『小百合』さ。
 はは、あんまり似合わない名前だけどねえ」

「でも、まぁ――何かの参考になると嬉しいよ」

『苗字』を言わなかったのは、嫌いだからではない。
親から貰った名には誇りを持っている。
ただ、少々『可愛げ』に欠けるのも事実だ。

248鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2020/05/26(火) 04:07:01
>>247

実際、鳥舟は『百目鬼』の人となりに詳しくない。
ライトを選んだのはその滲み出る『正しさ』ゆえか、
『参拝の知識』などから『読書家』を想像したか、
単に鳥舟が好みのものを紹介しただけか、
それくらいの『偶然』に過ぎないとも言えるが――

――『スタンド使いは惹かれ合う』もの。
無意識の『運命』もあったのかもしれない。

「ははあ、『サユリ』……『小百合』さんですね。
 いえいえ、綺麗でロマンチックな良いお名前です」

           ニコ…

「『和風』のアンティークライトには、
 花の模様をあしらったものも多いですし、 
 小百合さんに似合うかもしれませんねえ。
 お名前からの連想で、浅い考えですケド」

とはいえ名前のイメージは大事だ、とも思う。
それが全てではないが、意味はある。

「あぁ、そうだ、ボクの自己紹介もしておきましょう。
 アーケードで会ってここでも会った、ご縁もありそうですしね!
 ボク、『学文(まあや)』って言います。『学ぶ』に『文章』の『文』でマーヤ」

「アヤちゃんでも、マーくんでも、学文さんでも、お好きに呼んでくださいね」

249百目鬼小百合『ライトパス』:2020/05/26(火) 04:30:55
>>248

「なるほどね。いやぁ、お蔭様で勉強になったよ」

「言われてみると、自分に合ってるような気がするしねえ。
 もし良さそうなのが見つかったら、報告させて貰うよ」

「学文さん――どうもありがとうねえ」

親しい仲なら砕けた呼び方もするが、まだ知り合ったばかりだ。
あまり馴れ馴れしい態度を取る訳にもいかない。
関係ない事だが、自分に『娘』がいたとしたら、
これくらいの年だったのだろうかと思う。
自分に結婚歴はないし、子供もいない。
我ながら『親不孝』も甚だしいが、『今更』だ。

    ザッ

「さてと……『渇』も入れたし、
 『目当ての品』でも探しに行くとするかね。また来るよ」

「――それじゃあねえ」

                 ザッ ザッ ザッ

片手をひらひらと振って、境内を歩き出す。
『目当ての品』は『二つ』ある。
『アンティークライト』と『犯罪』だ。

250鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2020/05/26(火) 13:35:50
>>249

「ええ、それじゃあまた、小百合さん。
 いつでもいらしてくださいね。
 ご参拝でも、そうでなくとも」

親子程に歳が離れていても『趣味』は共有出来る。
去る背中に手を振り、しばらくすると、掃除に戻った。

251百目鬼小百合『ライトパス』:2020/07/28(火) 21:45:16

    ザッ ザッ ザッ

白いパンツスーツの女が、ぶらぶらと境内を歩いている。
煙草を咥えているが、火は付いていない。
片手には紙袋を下げていた。

252『烏兎ヶ池神社』:2020/07/29(水) 01:31:01
>>251

未だ湿気の絶えない夏の境内に、
『巫女』の姿は見当たらないようだ。
他の誰か(>>253)は、いるかもしれない――――

253百目鬼小百合『ライトパス』:2020/07/29(水) 18:04:35

「『また今度』にしとくかねえ」

別に急ぐ用事でもない。
踵を返して池に向かう。
この神社の起こりになっている『烏兎ヶ池』だ。

「『鰯の頭』なんて言う気はないけど、
 『神秘的な力が宿ってる』と聞くと、
 それが本当に思えてくるから不思議なもんだ」

「『神秘的な力』ね……」

自分で言ってみて、妙な気分になった。
この池が『スタンドと関わっている』という可能性を考えたのだ。
頭に浮かんだ思い付きを、即座に打ち消す。

「ハ――――そんな訳ないさ」

254三刀屋『ブラック・アンド・ホワイト』:2020/07/30(木) 20:16:15
>>253
   カシャッ
          カシャッ

静謐な雰囲気を纏う『烏兎ヶ池』
その神聖な空気を無造作に引き裂くような『シャッター音』が不規則に響く

音の方向を見ると勤め人風のスーツを着た壮年の男性が目につくだろう
スマホを手に持ち、カメラの角度を変えながら、何度も池の撮影を行っている

「う――――ん・・・・この角度よりもこっちの方が・・・・
 いやいや、この方向の方が『何か出そう』な雰囲気が・・・・・あっ」

      パシャッ


歩きながらカメラの方向を変えていたせいか、百目鬼の姿に気が付かなかったようだ
カメラの向きを変えた拍子に思い切り百目鬼の姿を映す角度で写真を撮ってしまった


「あー・・・・これは失礼しました」


バツの悪そうな顔を浮かべる・・・・

255百目鬼小百合『ライトパス』:2020/07/30(木) 21:12:33
>>254

「ん…………?」

「いやいや、気にしなくってもいいよ」

           ザッ

「ここの巫女さんなら絵になったろうけど、
 こんな年増が写っちまってアタシこそ申し訳ないねえ」

軽く笑いながら男に向き直り、一歩近付く。
本人が言うように、女は三刀屋よりも年嵩だった。
外見から窺える年齢は、四十台の前半か半ば程度だろうか。

「アンタが言うように、確かに『何か出そう』ではあるね。
 『季節柄』って事もある。
 さて、『鬼』が出るか『蛇』が出るか……」

「――ハハ、まぁ『毒蛇』が出ないなら一安心だ」

池を取り囲む林を見回し、冗談交じりに呟く。
ひょっとすると、小さな蛇くらいはいるかもしれない。
少なくとも、今は特に生き物らしき影は見えなかった。

256三刀屋『ブラック・アンド・ホワイト』:2020/07/30(木) 21:37:10
>>255
「いえいえ、僕の方こそ『取材』に夢中になっていて不注意でした、すいません」

と、言いながら、スマホに撮影された百目鬼の写真を見せ、目の前で消す
肖像権を侵害する気はなかったという意思の表れだろうか
ふと、本日撮影したであろう写真がカメラロールの中に見える
同じような『烏兎ヶ池』の写真だが、少しずつ角度を変えながら何枚・・・何十枚と撮られている

ただの観光客というわけではなさそうだ


「ハハハ・・・『毒蛇』とは穏やかじゃない話ですね
 待ってくれ・・・『蛇』・・・・『鬼』・・・・『毒』・・・・いや?」

『毒蛇』という言葉を聞いて一瞬だけ冷っとした表情を浮かべるも
すぐに何かを思い浮かべ考えこむ様子でぶつぶつと呟いている

そして・・・不意に顔を上げると百目鬼に向かってこう言った

「あー・・・・ とても『変な』質問をするようで申し訳ないのですが・・・
 もし・・・・もしも、あなたが『悪い奴』と戦っているとして、
 この池で『何かヤバイもの』が出てくるとしたら・・・・・・・『何が』出てくると思います?」

257百目鬼小百合『ライトパス』:2020/07/30(木) 21:56:27
>>256

「おやおや――――そりゃあ、本当に『妙な質問』だね」

        フッ

「さて、どうだろうねぇ…………。
 『烏兎ヶ池神社』の『大元』を知ってるかい?
 大昔、この池の中に『鵺』が落ちたそうだよ」

水面に視線を落とし、腕を組む。
一見した所、何の変哲もない普通の池だ。
しかし、神社の敷地内に存在する事で、
何かしらの力があるようにも感じられる。

「いつの間にか『不思議な力がある』とかいう話が広まって、
 この神社が出来たって話さ。
 『巫女さん』が見当たらないんで、
 代わりに説明させて貰ったけど、間違ってたらごめんよ」

「――――もしかすると、その『鵺』が出てくるかもしれないねえ」

258三刀屋『ブラック・アンド・ホワイト』:2020/07/30(木) 22:19:56
>>257
「ふむふむ・・・なるほど『ぬえ』がですか
 『鵺』というと・・・確か、京都で帝の御所を飛び回っていた変な生き物、でしたっけ?
 京都はこの町から結構遠いのに、同じネタの『話』があるというのは確かに面白いですね」

百目鬼の視線に従い、池を見る
カメラのシャッター音が消えたことで周囲には静謐な空気が戻っている
この雰囲気なら・・・・確かに『何か』が出てきてもおかしくはない


「いやいや、ありがとうございます
やはり、詳しい方のお話を聞くと違いますね」

「あぁ、突然妙な質問をしてすいません
実は僕は漫画の編集者をやっておりましてね、ネタ探しを兼ねて取材に来たんですよ
いや〜、ハハハ、『敵のボスが出てきそうなヤバイトコロの資料』が欲しいとか急に言われても困りますよねぇ〜」

苦笑を浮かばせながら語る

259百目鬼小百合『ライトパス』:2020/07/30(木) 22:42:50
>>258

「ま、『化け物』の類ってのは色んな場所にいるからね。
 おっと、化け物なんて言っちゃあ、ここの『神様』に失礼か」

「へえ、それで『取材』ね。
 そういう仕事には詳しくないけど、ご苦労さんだねえ」

「――――で、『資料集め』は上手くいきそうかい?
 何なら、アタシを『資料の足し』にしてくれてもいいよ。
 話くらいなら付き合うからさ」

「せっかくだから名乗っとこうか。
 アタシは『小百合』って名前さ。
 『警備』の仕事をやってるよ」

『白百合』を象ったイヤリングが揺れる。
ベリーショートの黒髪に、180cm近い長身。
女っ気が欠片もない姿の中で、
唯一『女らしさ』の垣間見える部分だった。

「ずっと『アンタ』って呼ぶのも何だねぇ……。
 良かったら名前を聞かせて貰えないかい?」

260三刀屋『ブラック・アンド・ホワイト』:2020/07/30(木) 22:59:19
>>259
「僕の名前は『三刀屋(みとや)』と言います
僕としてはどちらかというと『化け物』がいてくれた方が楽なんですけどねぇ・・・ハハハ、なんて」

『化け物』の話に冗談交じりな口調で相槌を打つ

「『警備』のお仕事・・・それはまた大変そうですねぇ
失礼ながら女性の方の場合、危険な事も多いでしょう
いや、しかし・・・・確かにお話を聞かせていただけたら参考になりそうですね」

スマホの画面を操作して『メモ』を開く
白紙のページに一言、『警備』の文字をタイトルとして入れた


「『警備』の仕事をされていて出会った中で、『一番悪い奴』ってどんな人ですか?
・・・・・あッ! も、勿論、言える範囲の中で結構ですから!
聞いたら奴らは問答無用で『ブッ殺していい奴リスト』に入れられるようなやべぇ話は大丈夫ですからね! ・・・ハハ」

261百目鬼小百合『ライトパス』:2020/07/30(木) 23:38:40
>>260

「えらく物騒だね。そういう話の方が『資料』にはなるか。
 そんな大層なネタを提供できるかは保証しないけどねえ」

それから片方の目を閉じ、考える体勢に入る。
今の仕事は、昔のように、
『凶悪な人間』に出会う回数は少ない。
だが、それでも全く機会がない訳でもなかった。

「『悪い奴』――――色々あるけど、
 分かりやすいのは『盗み』だろうね。
 コッソリやるのもいれば、腕尽くで来るのもいる」

「まぁ、『対応』は同じだよ。捕まえて引きずっていくのさ」

「現行犯なら『傷害』や『放火』、
 『器物損壊』なんかがあるかねえ。
 たまに頭のネジが外れた連中もいて、
 面白半分でやってる事もある」

「でもねぇ、本当は『悪事』に『一番』も『二番』もないのさ。
 『ちょっとだけならやっていい』ってもんじゃあないからね」

「ただ、強いて言うなら、『殺し』をする奴が『一番悪い』。
 頭のネジが外れた奴だと、尚更タチが悪い」

「――――もちろん、
 そんなイカれたのは滅多に見ないけどねえ」

262三刀屋『ブラック・アンド・ホワイト』:2020/07/31(金) 00:03:45
>>261
   スッスッス
         スゥ――ッ

「なるほど、やはり『リアルな悪』はそんな感じになりますか」

スマホの画面をなぞりながら文章を打ち込んでいく
貴重な話だ 内容を包括的にまとめていく

「確かに貴重なお話ですが・・・・漫画の敵として考えると少し・・・・小市民的な感じですね
ああ、勿論こういう犯罪を馬鹿にしているわけではないのですけどねぇ
ただ、僕としてはもっとこうエキセントリックな・・・」

図々しい話だな、と自覚はしているが、口から出てしまう
より『面白く』、より『刺激的な』内容を求めてしまう

>「ただ、強いて言うなら、『殺し』をする奴が『一番悪い』。
> 頭のネジが外れた奴だと、尚更タチが悪い」

「へぇ・・・確かによくよく『漫画のネタ』になりますね・・・・その手のサイコ野郎は
 まあ、その辺で見かけるようになっちゃあ治安の終わりですがねぇ・・ハハ
 ちなみに、そんな『イカれた奴』に遭遇した事は・・・・?」

―――さらに一歩、踏み込む。
池の周りはほんとうに静かだ 時折、魚が水面に顔を出す

263百目鬼小百合『ライトパス』:2020/07/31(金) 00:26:03
>>262

「ハハ、そりゃあそうだ。
 世の中まともなのに越した事はないからね」

       カキンッ
              シボッ

おもむろにライターを取り出して親指で蓋を跳ね上げ、
煙草に火を付ける。
あちこちに傷がある年季の入ったライターだ。
口から煙を細く吐き出し、
その行く末をぼんやりと見上げていた。

「ええと……何の話だったかねえ……。
 年を取ると忘れっぽくなるもんでね」

「あぁ、さっき言った通りだよ」

「――――そんなのは『滅多に』見ないさ」

滅多に見ない。
つまり、『見た事がある』という意味だ。
深く語るつもりはないらしく、そこで言葉を区切った。

「おっと……つい無意識に火を付けちまったよ。
 良くないねえ。こんな『神聖な場所』で」

指の間に挟んだ煙草を持ち上げて笑う。
誤魔化そうとしているのかもしれなかった。
さらに突っ込むかどうかは三刀屋次第だが。

264三刀屋『ブラック・アンド・ホワイト』:2020/07/31(金) 00:49:41
>>263

「・・・・えぇ それはまあ、確かに『滅多に』見る事なんてないですね
ハハハ、ちょっと突っ込み過ぎた質問でしたね、忘れてください」

雰囲気の変化を察する
思った以上に『強固』である事を感じ、誤魔化すように笑いを浮かべる
へらへらとした力の抜ける笑いを

「いやしかし・・・・」

指先で四角形に『枠』を作りながら百目鬼を見る


「これはなかなか『画』になる光景ですねぇ
『熟達の戦士が聖なる場所に佇む』ようで・・・・なんというか、そう
 漫画で言えば『師匠枠キャラ』の大物感って感じの・・・そうか!」

何かを、閃いたように目を大きく開ける


「何も強大な『悪』が全てではないか
 主人公の師匠が裏切れば、それだけでかなりショッキングな展開になる
 あー・・・でもマーケティング的には不味いかな・・・・」

265百目鬼小百合『ライトパス』:2020/07/31(金) 01:23:03
>>264

「いやいや、そんなに偉いもんじゃないよ。
 褒めて貰って悪いけどね」

「でも、まぁ『参考』になったんなら良かったよ」

指先で形作られた『枠』越しに、
煙草の先端を三刀屋に向ける。
形式的な謙遜ではない。
決して驕らず常に『謙虚』である事が、
自分にとってのポリシーなのだ。

「ははぁ、漫画の話に関しちゃ素人だけど、
 そりゃあ確かに『ショッキング』ではあるだろうねえ」

頷きながら相槌を打つ。
実際、この手の話は全く分からない世界だ。
そういう意味では、ある種の新鮮さを感じてもいた。

「アタシにも『目標にしている人間』がいたからさ。
 その相手に裏切られた経験がある訳じゃあないけどね」

「いや――――」

「むしろ、アタシの方が『裏切ってる』かもねぇ…………」

266三刀屋『ブラック・アンド・ホワイト』:2020/07/31(金) 17:54:19
>>265
「へぇ・・・『裏切り』・・・・ですか
フィクションの中ではよくある話ですが、リアルでそういうのがあると・・・・
なかなか穏やかじゃあない話ですね」

裏切りの話というのはなかなかに興味をそそる内容だ
本音を言えば根掘り葉掘り聞いてみたい話だが・・・・先ほど『踏み込み過ぎた』ばかりだ


「・・・・・・・。」


一旦、口を閉ざす。
神社の静かな空気に任せ、話してくれるなら聞くという態度を示す
周囲の木々からは次第にカナカナという虫の声が聞こえてきた

267百目鬼小百合『ライトパス』:2020/07/31(金) 19:26:51
>>266

「ハハ――――いや、別に深刻な話じゃあないのさ。
 『目標にしていた人間』っていうのはアタシの『親父』でね。
 七十過ぎの頑固ジジイだよ。
 勿論とっくに引退してるけど、昔は『警官』だったんだ」

柔らかい笑みを浮かべながら、片手をヒラヒラと振る。
言葉に過去形が混じっているが、
既に『故人』という訳でもなかった。
もっとも、年が年なので、
いついなくなったとしても不思議はないが。

「良く言えば正義感の強い、悪く言えば堅物の男でねえ。
 何だかんだでアタシも影響を受けたって訳さ。
 体を張った仕事をしてるのも、そのせいだよ」

父親は、かつて『鬼』と呼ばれた刑事だった。
そして、いつしか自分も『鬼の小百合』と呼ばれていた。
刑事になったばかりの頃は、
古株達から『鬼娘』と呼ばれた事もあった。

「ただ、結局ずうっと『独り身』のままだったからねえ。
 孫の顔も見せてやれないなんて『親不孝な娘』だと、
 この年になってみると感じるんだよ。
 『期待を裏切っちまった』――――ってね」

「ま、『男運』がなかったからね。
 長いこと男所帯の中にいるってのに、
 これっぽっちも男が寄り付きゃしない。
 むしろ避けられたりしてねぇ」

全ては過去の話だ。
今の自分は、民間の警備会社に属する一員でしかない。
『自主的な活動』を行っている事以外は。

「ハハハ、そういう事さ。
 つまんない話をしちまって悪かったね」

268三刀屋『ブラック・アンド・ホワイト』:2020/07/31(金) 20:12:18
>>267
「『警官』のお父さんですか、さぞかし御立派な方だったのでしょうねぇ」

百目鬼の半生を聞き、ぽつりと呟く
面白さの方向性としては、求めていたものとは違うかもしれないが、
それはそれとして、興味を惹かれる内容だ

「それにしても・・・・ハハハ・・・僕自身、身につまされる話ですねぇ
この歳まで独り身でいると、それなりに罪悪感もありますから
ありがとうございます、直接ネタにするわけにはいきませんが、参考になりました」

269百目鬼小百合『ライトパス』:2020/07/31(金) 20:58:02
>>268

「なぁに、三刀屋さんぐらいなら『まだまだ』いけるよ。
 近頃は結婚年齢が上がってるって聞くし、
 胸を張って生きてりゃ、その内いい人が見つかるさ」

「アタシは、もう諦めたけどね。ハハハ」

肩を竦めて笑う。
仕事ばかりしてきて、気付いたら年を食っていた。
『今更』という所だろう。

「さてと、そろそろ引き上げるとするかねぇ。
 三刀屋さん――アンタと話せて楽しかったよ」

「そうそう、アタシの『名刺』でも渡しとこうか。
 何かしらネタの足しにでもなるといいんだけどね」

           スッ

懐から名刺入れを取り出し、その中の一枚を差し出す。
装飾の少ないシンプルな名刺だ。
連絡先と共に、以下のような文面が記載されていた。

    『 大門総合警備保障

            主任指導官

                百目鬼小百合 』

270三刀屋『ブラック・アンド・ホワイト』:2020/07/31(金) 21:28:46
>>269
「お互い、ですよ 百目鬼さん」

顔を合わせて、苦笑いを浮かべる

>「そうそう、アタシの『名刺』でも渡しとこうか。
> 何かしらネタの足しにでもなるといいんだけどね」

「そうですねぇ、また面白い話があれば聞かせてください
 『本物の現場』にいる方の意見というのはやはり貴重ですからね」

百目鬼が取り出した名刺を一瞥し、こちらも名刺入れから一枚を取り出す
エンタメを扱う会社という割には意外なほどにシンプルなデザインだ
一か所だけ、端の方にデフォルメされたキャラの顔が描かれている

中心には三刀屋 路行の名前がフルネームで記載されている

「では、また何かありましたら」


最後に一言、そう言うと三刀屋は神社から離れていった
静かな池のほとりには百目鬼だけが残った

271百目鬼小百合『ライトパス』:2020/07/31(金) 22:15:18
>>270

「ハハハ、お世辞でも嬉しいよ。これでも一応『女』だからさ」

「それじゃ、またねぇ」

三刀屋を見送った後、『烏兎ヶ池』に視線を落とす。
もしかすると、何かがあるのかもしれない。
今はなくとも、昔はあったのかもしれない。

「『鬼』が出るか、『蛇』が出るか――――」

         ザッ

「――――それとも『鵺』でも出るのかねえ」

やがて烏兎ヶ池に背を向け、静かに歩き出す。
その背中越しに、紫煙が緩やかに立ち昇っていた。
『池』は、黙して語らず――――。

272ラッコ『ハッピー・スタッフ』:2020/12/21(月) 21:22:23

『烏兎ヶ池』。
烏兎ヶ池神社の敷地内に存在し、
霊験あらたかな『パワースポット』として知られる名高き霊池。
信仰の由来には諸説あり、
多くの人々が『御利益』を求めて訪れている。
謎と神秘に包まれた奇跡の池。
柵で囲われた池の近くに、今『野生のラッコ』がいる事は、
伝承とは何の関係もない。

         ミャー

林の中で、『ラッコ』は柵越しに池を眺めていた。
もしかしたら参拝に来た誰かが目撃するかもしれない。
しないかもしれない。

273ラッコ『ハッピー・スタッフ』:2020/12/29(火) 17:08:50
>>272

まもなく、ラッコは姿を消していた。
池の周辺には、『奇妙な足跡』が残されていたらしい。
それと同じ頃、四足の哺乳類らしき影が、
目撃されたとかされていないとか。

274ソラ『ステインド・スカイ』:2021/01/23(土) 12:37:26
丑三つ時の神社、そいつはいた
真っ暗闇の中で光る、深紅の瞳と真っ白な髪の毛の童
その姿はまるで妖怪のようだ

275鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2021/01/23(土) 17:32:04
>>274

寝付けないので、冷たい夜風を浴びに外に出た。
鳥舟の住居は『社務所』と一体のため、
外に出るといえば、境内に出る事になり、
夜霧の立ち込める中、『それ』を見た。

「わっ」

と思わず情けない声が出た。
丑三つ時の神社に人がいる事自体は、
巫女を長くやっていれば何度かは見たし、
悲鳴を上げるほどではないのだが……

      「ああ!」

少しして、それが『子供』と気付いた。
それは別の種類の焦燥を生む。

「ねえ、きみ……ああ、ええと、どう言うべきだろう。
 もしかして、うちに『お詣り』に来てくれたのかな?」

     「この辺に住んでる子……
       じゃあ、なさそうだけどさ」

目立つ風体は、見覚えは無い。
巫女という職業柄『地元』には詳しい。

「……って、こんな夜中にいきなり話しかけちゃあ、
 ボクってやつは、『不審者さん』だよね。
 ボクはね、ここの『巫女』をしてる人なんだ。
 や、この見た目じゃ信じないかも、しれないけどさ」

対する鳥舟自身も、ほぼ部屋着の格好であり、
普段神社を訪れる者だとしても、見慣れた姿ではないが。

276ソラ『ステインド・スカイ』:2021/01/23(土) 18:10:08
>>275
「おぉ、巫女さんか
 こんな夜中にご苦労だね」

巫女を名乗る鳥舟に謎の労いをする

「散歩がてらに近くに寄ったんでね
 ちょっと参拝に来たのさ
 まぁ、お賽銭は持ってないんだけど…」

何故こんな真夜中に散歩をしていたのかは謎である

277鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2021/01/23(土) 18:22:03
>>276

「いやあ、巫女である事には。朝も夜もないからね。
 きみこそ……夜遅くによおこそお詣りです。
 お賽銭はね、本当は無くたって別に構わないんだよ。
 『祈り』の気持ちがあるんだったら、それでね」

        ザッ…

「もちろん、あると喜ぶことも、あるんだけどさ」

笑みを浮かべて、少しだけ近寄り、
視線を下げてある程度目を合わせる。

「夜の散歩って、良いよね!
 ボクはね、散歩するなら夜か明け方が好きだよ。
 しん、と静かでさ……考え事がよくまとまるから」

話しかけながら、頭から足の先まで、
改めて観察するが……やはり『子供』だ。
中高生ならまだ『共感』するところはあるが、
この歳の子供の一人歩き、しかも深夜だ。
流石に、内心『警戒』する所はある。

――同じくらい、『謎』に思うところも。

「ボクがきみくらいの歳の時はこんな時間は眠くて、
 とても楽しめなかったけど――きみは大人なんだねえ」

「そんなきみの……ああ、嫌なら言わなくたっていいけど、
 今日のお散歩はさ、お家の人には内緒の冒険なのかな?」

目の前の子供は『家出』という様子も、
発作的な深夜徘徊という様子もない。
むしろ落ち着いている……謎と感じるほどに。

場合によっては『警察』の世話になると思いつつ、話を続ける。

278ソラ『ステインド・スカイ』:2021/01/23(土) 18:39:43
>>277
合わせた童の不気味な赤い目が、じっと鳥舟を見つめる

「うーん、別に内緒ってわけでもないけど…
 出かける時に一々報告したり許可を取ったりもしない
 私は私の思うままに動くだけだからな」

家の者に報告も許可も取らずに出てきたと言う
この子供は自分の思いついた事をすぐに行動に移してしまう無軌道なタイプらしい

「さて、じゃあさくっと参拝でもしてくるか」

そう言うと、賽銭を持たずに賽銭箱の前へと移動する

279鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2021/01/23(土) 19:10:54
>>278

鳥舟の金色の瞳が細まったのは、
夜霧の中でその赤を見つめるためであり、
また、笑いかけるためでもあった。

「それは――いや、なるほど。
 そうだねぇ、親はすぐ心配をするからさ。
 夜中の散歩をするなら、そうするしかないよね」

放任主義という言葉もあるが、
それにしても奔放すぎる。
勝手に出て来たならまだ良いが、
暴くべきで無い『闇』があるのか?

「案内しようかな、巫女として……
 ほら、なにせ足元も暗いしさ。
 昨日の朝なんかは、水溜りが凍ってたりもして、
 ほんと、転んだりしないようにね、気をつけるんだよ」

後ろをついていく。
参拝のマナーなどを教えるためでも無く、
言葉通り……そして言外の不安から、単に見守るためだ。

(……家まで送っていくべきかな、
 警察を呼んだ方がいいのかな。
 それとも、『家に帰してもいい』のかどうかなんて、
 そんなことまで考え出したら、それこそ答えが出ない)

       (……この子は、どこから来たんだろう?)

280ソラ『ステインド・スカイ』:2021/01/23(土) 19:27:17
>>279
「おっ、ほんとだ、つるつるしてる」

凍結した地面で遊び、滑りながら歩いて行く
こういう所は子供らしいと言うべきなのか
忠告したのに言う事を聞かない愚か者というべきか

そうこうしているうちに賽銭箱につく

ガラガラガラガラ

と鈴を鳴らし、二礼二拍手一礼
賽銭こそ入れなかったがその動作は意外と丁寧だった

281鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2021/01/24(日) 00:44:47
>>280

「ああ、やっぱり凍ってる。
 ほんと危ないからさ、気を付けてね。
 明日の朝……や、この後ででも、
 ちゃんと割っとかないと、いけないなあ」

               フゥ ――― ・・・

白い息を吐いて、
滑り歩く子供を後ろから眺める。
転びそうなら、すぐ支えるためだ。

「……」

(――――ああ、『知ってる』んだ。
 ということは、『うち』じゃないにしても、
 どこか……神社によく来てる家の子なのかなァ)

人の参拝に口出しする事は、
それを望まれない限りはないが――
仮に望まれても、この子の参拝作法に指摘するのは難しい。

何を願うのかは分からないが、それを終えるまで静かに待つ。

282ソラ『ステインド・スカイ』:2021/01/24(日) 09:57:25
>>281
「南無妙法蓮華経、南無阿弥陀仏、オン コロコロ センダリマトウギソワカ」

何かおかしい!
神道の神に対してお経を唱えだした
神に祟られても文句は言えない罰当たりな行為だ

「神様、優しい母上に出会わせてくれてサンキュー」

神に対して願いではなく、感謝の祈りを捧げる
祈りとは、神を畏れ敬い、感謝を捧げる事である
神に対して好き勝手に願いを言う事ではない
それにしてもやけにフランクだが
母に出会わせてくれてというのも妙な言い回しだ

283鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2021/01/24(日) 12:13:48
>>282

「……………………………」

(信心深い家の子……なのかなァ。
 この調子で『聖書』の一節も誦じれそうだ)

鳥舟は、『神』を『信じて』はいない。
尊ぶのは人々の『信仰』という『行い』だ。
この子供が信仰のためにそうしたいなら、
それも、あえて止めはしない……

(とりあえず、家族の仲は良い、ってことみたいだ。
 お父さんに、触れてないのは、気になるけどさ。
 ……『出会う』って言い方も、なんだか普通とは違う。
 ああ、なにか、難しい事情があるのかもしれない)

例え『祈り』がどのようなものでも、
よりどころになれるなら、それはそれで良い。
神を『使う』のは悪いことじゃあない。
……巫女はその手伝いをする仕事であって、
『カウンセリング』をする者とは考えていない。
少なくとも、ここで掘り下げるのは下世話だろう。

「…………」

それにしても、やはり不思議な子供だ。
よく知っているし、分かっているが、不可解さもある。

参拝はもうじき終わるだろう。それまでは待っておく。

284ソラ『ステインド・スカイ』:2021/01/24(日) 12:52:15
>>283
「よーし、参拝終了
 別に信じてもいない神様にお祈りをするっていうのも疲れるな」

ソラも特に神を信じているわけではないらしかった
参拝が終了したソラは、グルりと辺りを見回す

「うーむ、折角神社に来たんだし、何か面白い物は無いかな
 おみくじを引こうにも金が無いしな」

そう言って、面白そうな物を探し探索をし始める
そう言って

285鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2021/01/24(日) 13:47:44
>>284

境内にはもちろん他の人はいないし、
鳥居や狛犬といった一般的なものはあっても、
ここにしか無いような、珍奇な物は見当たらない。

「んー、社務所自体、この時間は開けてないしねえ。
 後は……きみが楽しんでくれるとしたら、
 そうだね、『池』くらいしか、ないけどさ」

「今は夜だし、それに芯まで染みるくらいに寒いし」

空は真っ暗で、霧が立ち込めていて、
どこか不安になる夜でもあった。
霊池、『烏兎ヶ池』は『見所』だが、
これ以上子供を歩き回らせるのも、怖い。

「こんな時に水辺に行くのは、ちょっとどうだろうね。
 ま、柵はあるけどね、間違えて落ちちゃったら大変だ。
 また、明るい時間にでも見に来たらどうかな?
 なにせ池だからさ、逃げたりはしないんだし」

       「そろそろお家に帰らないかい?
        家の前までは、送ってくけど」

早いうちに帰宅するように促しつつ、後をついていく。

286ソラ『ステインド・スカイ』:2021/01/24(日) 14:12:25
>>285
「そうだなぁ…
 そろそろ眠くなってきたし、今日はもう帰るか…」

とりあえず辺りを見回し、目ぼしい物が見つからず
帰宅を迫られたソラは大人しく帰る事にした

その時、その頭には雲を纏った冠が現れ、その手には杖が握られた

「送迎の提案ありがとう、だがそこまでしてもらわなくて結構だよ」

「なんせ私は」

「『雲魔人』だからな!」

突然、その口から『雲魔人』なる謎単語が飛び出てきた
それと同時に、その妖怪のような少女は人間とは思えないスピードで駆け、神社を去って行った

ターボババァならぬターボ幼女か…

287鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2021/01/24(日) 23:49:03
>>286

「うんうん、それが良いよ。
 昼間の方が色々見るところも多いしさ。
 実はボクも、今、結構眠かったりするしね」

ちょうど眠気が来てくれた。
後は送迎だけして――――

「いや、夜は何があるか分からないよ。
 遠慮をしなくたって――――え?」

           「……!」

『スタンド』。
そう直感したが、『知らないタイプ』だ。
『2つのヴィジョンがあるタイプ』もあるのか。

「あっ、速い……」

(あれは、ちょっと追いかけられない。
 ああいう『能力』もあるんだ。
 『動きを速くする』――――『雲魔人』って言うんだし、
 きっとそれ以外にも、何かできることがあるんだろう)

           「……じゃあ、ボクは?
            『ヴィルドジャルタ』――」

                 「きみは何が出来るんだい」

霧の夜の中、己の『力』は今だ応えない――――『謎』だけが渦巻く。

288風歌鈴音『ダストデビル・ドライヴ』:2021/02/25(木) 17:33:36
夏ならば未だ日も残っていようが、魂さえも凍えるこの時期である。丑三つ時では無くとも、草木は眠りだす時間だろう。
しかし、その様な時間に、道端の雑草にも等しい社会のクズ、風歌鈴音は神社の境内に姿を現した。
見た所、既に社務所も閉まっており、人気と言うものはめっきり無い。パワースポットであろうとも、冬の平日のこの時間帯に訪れるのは、余程頓狂な人間か、風歌の様に明瞭な目的を持った人間だけだろう。

(人気なんぞ欠片もねぇ。時期遅れの初詣だってこの時間にはねぇだろう)

風歌が訪れた目的は、『ダストデビル・ドライヴ』の訓練である。
未だ、風歌はこの才能を使いこなしているとはとても言えない。有り体に言えば、武器を手にした素人なのだ。
学ぶ、必要がある。自分を深く知る為に、そして、これから起こり得る『驚異』に備えるために。遊園地で晒したような醜態を二度とは晒したくなく、再度誰かと組む時に、足手まといにもなりたくなかった。
そして、自らのホームである公園で訓練を行いたくない『事情』があった。

(あの辺は、他の連中もいるからな……)

他のスタンド使いが公園で能力を見せようとも、彼らは『来訪者』であって『居住者』ではない。万が一、何か『奇妙』な光景を見ても、君子危うきに近寄らずの鉄則を貫くだろう。
だが、風歌は『住人』である。生活補助に使うレベルを越えた、『訓練』のレベルで能力を使えば、他の『住人』に感じ取られる可能性もある。
そうなれば、危うい。社会のゴミにもゴミなりのコミュニティはあり、ゴミの群れはゴミ故に異端を嫌う。得体の知れない力を持っているとなれば、間違いなく『今』のままでは済まないだろう。
万が一の、可能性ではある。しかし、命に関わる万が一を怖れない度胸は風歌にはない。
そこで、風歌は他のホームレス達が近寄らず、かつ人気のない場所として日の落ちた神社を選んだ。

(さて、やるかね)

風歌は、手近な木に近づくと、『ダストデビル・ドライヴ』を出し――未だ枝にへばり付いている枯葉に、掌を向けた。

289御影憂『ナハトワハト』:2021/02/26(金) 01:02:03
>>288

見る限り、人影は無い。
『誰もいない』。
そう考えたとしても不思議は無いだろう。

(――――…………?)

人知れず佇む者がいた。
『闇の衣』を身に纏い、見られる事も触れられる事も無い。
『ナハトワハト』の本体である『御影憂』が、そこにいた。

(この前…………見たっけ…………)

少し前に起きた『遊園地』の事件。
そこに居合わせた人間達の中に混じっていた筈だ。
『スタンド使い』なら、『観察』する価値はある。

(…………『人型』)

『不可視の幽体』となって、『ダストデビル・ドライヴ』を見つめる。
『情報収集』の為だ。
ここに来た『当初の目的』とは違うが、悪くは無い。

290風歌鈴音『ダストデビル・ドライヴ』:2021/02/26(金) 17:26:56
>>289
風歌は影の視線に気づかず、ただ自らの訓練に集中していた。より厳密に言うならば、枯れ木に残った木の葉に。
そして――『ダストデビル・ドライヴ』の手の穴から、最小範囲(指先サイズ)の風が放たれる。
人を傷つけるには、最大威力でも眼球か耳に撃ち込むでもしなければ足りない威力の突風だが、木にしがみつく木の葉を吹き散らすには十分な威力。枯葉は一瞬で木との永別を果たし、ひらひらと舞い降り始める。
そこから――舞い降りる木の葉目掛け、風歌は更に『ダストデビル・ドライヴ』の風を撃つ、撃ち続ける。

(『ダストデビル・ドライヴ』は思うままに狙えるが……アタシが狙うのが下手だと意味がねえからな)

いわば、風歌が行っているのは射撃訓練である。小さな目標を地面にぶつけずに風に乗せ続ける。
威力精査、命中精度、そして自分の噴射時間限界の感覚的把握を行う為の訓練であった。

291御影憂『ナハトワハト』:2021/02/26(金) 18:47:19
>>290

    スタ スタ スタ スタ スタ

目を細め、風歌に向かって歩いていく。
相手は『未知のスタンド使い』。
普通であれば、無防備に近付くのは、
『トラブルの元』になりかねない。

                   ――――――スルゥッ

御影の体が風歌と重なり、そのまま『すり抜ける』。
『非実体化』した『ナハトワハト』は、
あらゆる物に干渉されない。
比喩や誇張ではなく、絶対的な無敵状態だ。

(手に『穴』…………そこから『風』が出る…………)

(葉っぱを落とさない程度の『速さ』と『精度』もある…………)

『ダストデビル・ドライヴ』の正面に立ち、訓練の様子を眺める。
風歌の眼前には、
『闇色の帽子と外套』に身を包んだ長髪の女がいる。
そして、その存在に気付く者は誰もいない。

(これは『スタンドの練習』…………)

(つまり…………『目覚めたのは最近』…………)

次に目を留めたのは、風歌の外見だった。
『どういう身分か』は分かる。
重要なのは『危険性が無いかどうか』だ。
『円谷世良楽』と共に『遊園地の事件解決』に尽力した一人。
しかし、『万一』が無いとは限らない。

292風歌鈴音『ダストデビル・ドライヴ』:2021/02/26(金) 19:14:07

>>291

(よし、こんなもんだろ)

一枚目を地面に落とし――その後、数枚ほどに同様の訓練を続けた風歌は、この訓練の一段落を決めた。
突風を起こす時に感じる『息を吐き続ける』感覚は、実際に息を吐いている訳ではない。
しかし、突風を起こし続ければ、気持ち的に『呼吸が乱れる』感覚に囚われる。
3枚の後半から徐々に狙いが乱れ始め、5枚目にはとうとうろく突風が当たる事なく地面に落ちた。狙い続ける限界は、今の所この辺だろうと風歌は判断。

(鍛えれば鍛えるだけ伸びるのかも知らんが……今は、まず『己を知り』ってやつだ)

そう思いながら、意識的な呼吸を整えた風歌は、次いで『型稽古』を始めた。
『ダストデビル・ドライヴ』にファイティングポーズを構えさせ――握った両拳を突き出す。
否、乱れ撃つ。
人の限界を超えているだろう速度(スB)で、人並の拳(パC)が狙いなどを一切付けずに繰り出される。目の前に『人間』がいたならば、確実に叩きのめせる乱打であろう。
相手の速度と精密性が『風歌を下回っている』、という都合のいい前書きはいるだろうが。

(……あのクソフクロウみたいに『硬い』や『触れない』相手じゃなきゃあ、これを撃ち込める距離まで近づければどうにかなるよな)

自らの『最大火力』を眺めながら、しかし、これだけでは足りないと思う。

(もうひと工夫……)

風歌は、腕を組んで唸り始めた。

293御影憂『ナハトワハト』:2021/02/26(金) 20:10:58
>>292

(…………『スタミナ切れ』?)

口出しも手出しもする事無く、『観察』に徹する。
枯葉の落下。
それを見て、『息切れ』を察した。
具体的な感覚までは分からないが、動きに乱れが生じてきた。
つまり、何度もやってると『キレが鈍る』という事だ。

      ドババババババババババババババ

           (おー…………)

      バババババババババババババババ

          (…………速い速い)

      バババババババババァァァァァッ!!

『ダストデビル・ドライヴ』の両拳が『正面』に――
すなわち、そこに佇む『御影』に叩き込まれた。
的確に放たれる疾風のような乱撃。
無論、『ノーダメージ』だ。
この身を包む『闇の衣』は、
単純なパワーやスピードの一切を『無力化』する。
『硬い』のでは無く『触れられない』。

          (あ…………終わり?)

思案を始めた風歌を見つめる。
『風』を放つ事による遠距離攻撃。
そして、接近戦の火力も十分。
範囲に穴が無く、味方につければ心強いだろう。
逆に言えば、こういう相手は敵に回すと面倒な事になる。
念の為、『弱点』も把握しておきたい所だ。
パッと見では、『風の連射はそれ程でも無い』くらいか。

294風歌鈴音『ダストデビル・ドライヴ』:2021/02/26(金) 21:28:15
>>293


(工夫……)

思慮の果て、風歌は一つの答えに至る。
遊園地――かの戦いにおいて、ミゾレに行った思いつき。

(風の勢いを、拳に乗せる――)

その一打を持って、ミゾレの戦闘能力を大きく削いだ事を、忘れていた。
『ダストデビル・ドライヴ』が裏拳を放つ。あの時と同じ様に――風の噴射が乗った裏平手を。
風の唸る音を立てながら、『ダストデビル・ドライヴ』は裏の平手を放つ――そして、握る。風歌は溜息を付く。

(平手のまんまじゃ威力が足りねーし、あん時は上手く言ったが、命中直前に拳を握れるかどうかは、運だな……)

根本的に、欠陥がある。決まれば威力は上がるし、急激な速度変化は、何かの本で読んだ『拍子』の変化をもたらし、命中確率を上げるだろう。しかし、握れなければ、『ダストデビル・ドライヴ』のパワーでは実害は与えられまい。
それでも、ほんの一発、たった一発を叩き込む局面であれば有効だろう。それ以外では、単純に1段階上の速度を求める時か。

(肘はどうだ?)

思いつくままに、風歌は『ダストデビル・ドライヴ』の風噴射を行いながら、肘打ちの所作を行う。
打ち下ろし、バックエルボー、横突き……

(初速の勢いを乗せられる分、不意打ちならこっちの方がいいか……)

本当に地味な試行錯誤を行っていた風歌は、一息を付くと、『ゴミ箱』を探し始める。

295御影憂『ナハトワハト』:2021/02/26(金) 22:09:16
>>294

      ――――ドシュゥッ!!

追い風を受けて放たれる『バックハンド』。
速度を増した一撃は、文字通り風を切った。
『あれ』を不意にやられたら、
相手は意表を突かれるに違いない。

(『いい応用』…………)

裏を返すと、事前に分かっていれば対策を立てられる。
そして御影は、今それを『目撃』した。
もし敵対した場合、最初から織り込んでおく事にしよう。

                  ブォンッ!

             ゴァッ!

      ドバァッ!

(『肘』を使って…………『威力の底上げ』…………?)

挙動を観察して、風歌の『意図』を悟った。
妥当な改善案だ。
加速に加えて、命中時のリターンも大きい。
あの『精度』なら、的確に一点を狙い打つ事も出来るだろう。
欠点があるとすれば、どうしても大振りになる点か。
出は速いが、放った後に隙が生じる。
今後『敵』になった場合は、
『あれ』を外させた直後を狙うのがいいかもしれない。

          (…………何か探してる?)

      スタ スタ スタ

さながら『背後霊』のように、風歌の後ろについていく。
ここまで来たら、とことん付き合おう。
あくまでも『一方的』ではあるが。

296風歌鈴音『ダストデビル・ドライヴ』:2021/02/26(金) 22:46:23
>>295
ゴミ箱――それも、各種の分別毎に別れたゴミ箱を見つけた風歌は、周囲の人影を改めて確認する。ない、誰もいない。
これから行う『最後』の訓練は、明らかに視覚的な異常を伴う上に、万が一誰かを巻き込んだら怪我をさせる予定があるからだ。

(よし、と)

風歌は、護身用に持ち歩いている『カップ酒』の空き瓶を地面に置くと、踏み砕く。ミゾレからの報酬で買った踏み抜き防止の鉄板底の靴でなければ、まず足を怪我していただろう。
カップ酒の空き瓶が「破片」になった所で――距離を取ると、残骸を中心に『渦』を起こす。
必然、『地面に落ちたゴミを質量を無視して飛ばす』風に乗った残骸は、渦に乗って土煙と共に巻き登る。厚手の服を着ていれば防ぎきれるだろうが、渦の『中』に巻き込まれていれば、まず『顔』に破片を浴びる事になる。
なんなら、釘とか、画鋲とかを代わりに持ち歩いてもいいのだ。

(地雷にも、不意打ちにも使える……けど、これもやっぱり欠陥があるよな……)

凶器の渦を眺めながら、風歌は悩む。そも『知られて』いたら無意味だし――わざわざ危険物を撒いたら、確実に利用を感づかれる。釘とか画鋲の様な露骨な危険物を持ち歩いて撒いたら、それの武器利用を疑うなというのが難しい。撒いたら、どんな馬鹿でもまずは『浮く』事を疑うだろう。

「もう一手、足んないんだよなぁ」

ぼつり、と呟く声を風歌が漏らすと共に『渦』は止んだ。重力に従って、破片が落ちる。
風歌は丁寧に破片を拾い集めて、カン・ビン入れに地道に捨てた。破片を捨てるのはマナー違反であろうが、放置よりはマシだろう。

「まぁ、ないない言ってもしょうがない……あるもん磨いていくしかねえか」

本日の訓練を終えた風歌は、境内を去り始めた……

(風歌これで帰っちゃうので、干渉がなければ次で終了でお願いします)

297御影憂『ナハトワハト』:2021/02/26(金) 23:10:46
>>296

(へぇ…………)

渦に舞うガラスの散弾を見て、声に出さない感嘆を漏らす。
『リトル・スウィング』を思い出す光景だ。
準備は必要だが、広範囲かつ高威力。
『氷の散弾』程ではないが、十分に切り札として使える。
狭い場所なら、より効果的か。

(『牽制』として使われたら…………厄介)

強力な手札ではあるが、欠点が無い訳ではない。
準備の段階で悟られる可能性があり、
感付かれたら警戒される。
それなら、いっそ『警戒させてしまう』という手もある。
『渦』に意識を向けなければならなくなると、
その分だけ他の注意は疎かにならざるを得ない。
隠すのが困難なら、逆に見せ付ける事で、
動きを制限するのも一つの策だろう。

(『仕事』は完了…………)

      スッ

(ここからは…………『プライベート』の時間…………)

         ドッ 
             ヒュゥゥゥゥゥ――――――ッ!!

風歌に『明瞭な目的』があったのと同様に、
御影にも『目的』があった。
ここを訪れる人間に『恐怖』を与える為だ。
普段は『歓楽街』周辺を『狩場』にしているが、
たまには『趣向』を変えてみようと考えたのだ。
しかし、御影は『悪意の無い人間』は狙わない。
結局『いつもの場所』に戻る事にしたのだった――――。

298百目鬼小百合『ライトパス』:2021/04/13(火) 22:41:51

「さて、来てみたはいいものの…………」

人のいない境内に、一人の女が立っていた。
白いパンツスーツを着た背の高い女だ。
具体的な年齢は分からないが、四十台頃だろうか。
両耳には『白百合のイヤリング』が見える。
煙草を咥えているが、火は点いていない。

「――――『アポ』を取るべきだったかねえ」

呟きと共に、辺りを見渡す。
出掛けているのかどうか知らないが、
『目当ての人物』は見当たらない。
佇む女の足元には、『紙袋』が置かれていた。

299薄島漣『イカルス・ライン』:2021/04/13(火) 23:14:14
参道から鳥居をくぐり、境内に入ってくる一人の男の姿があった。
歳の頃は20代後半から30代前半といったところ。
ラフな服装で、取り立ててセンスがいいとも悪いとも言い難い。
背は高くも低くもなく、太っても?せてもいない。
顔立ちは美形でも不細工でもない。
取り立てて特徴のない中庸な人物……そういう印象の男だった。
ただ、何かを訴えかけるように、生気のないじっとりとした目つきをしていた。

>>298
先客を発見する。
軽く会釈をした。


「……………………。」


周囲を見回す。
神社が彼女以外には無人であることを確認した。


「ええと、この神社の人……じゃないですよね。
休みかぁ……」


薄島は普通に参拝に来たのだが、お守りを買いたかった。
がっかりした気持ちが顔に出てしまう。

300百目鬼小百合『ライトパス』:2021/04/13(火) 23:35:03
>>299

挨拶に応じ、こちらも会釈を返す。

「そう。アンタと同じ参拝客さ」

「見ての通り、今は生憎『ご不在中』みたいだよ。
 休みかどうかは知らないけどねぇ」

       スッ

話しながら、上着のポケットからライターを取り出す。
使い込まれたオイルライター。
『真鍮削り出し』の一品だ。

「アタシは、ちょっとした『用事』があって来たんだけど、
 また出直さなきゃあならないね」

身に着いた『癖』で、それとなく男の全身を観察する。
どうにも妙な雰囲気の男だ。
特におかしな格好をしている訳ではなく、むしろ逆なのだが、
ここまで無味乾燥で没個性的だと、
逆に特徴的だと言えるだろう。
それに、あの目付きだ。
『何がどう』とは言えないが――――。

「アンタはお参りに来たのかい?」

301薄島漣『イカルス・ライン』:2021/04/14(水) 00:03:22
>>300
「ああ……やっぱりそうですか。
お互い災難でしたね……って、お参りするだけなら別に問題ないか。
僕は『お守り』を買いたくて」


恨めしそうに目を細めて、閉まっている授与所を見つめている。


「用事ですか。出直しますか。そうですね、それがいい。
そんな時は出直した方がいい。
そういう時、どっちに行ったらいいかもわからないのに
右往左往して探し回るような無駄は……」


そこまで言って、何かを思い当たったかのように言葉が途切れた。


「いや、これは僕の事か。
それも『夢』の話だ」


独り言のように小さくそう言ってから、言葉を続ける。


「すみません、変な事を言って。
ここのところ『おかしな夢』を見ることが多かったから、
どうにも『道に迷っている』みたいで」

302百目鬼小百合『ライトパス』:2021/04/14(水) 00:22:33
>>301

「あぁ、『お守り』を――そいつは残念だったね」

       カキンッ

おもむろに親指を持ち上げ、ライターの蓋を跳ね上げる。

「――――『夢』ねぇ」

「夢っていうのは願望の現われだとか、
 記憶を整理するためだとか、色んな説があるそうだね」

「まぁ、アタシも詳しい訳じゃないけどさ」

言葉を返しながら、軽く笑う。
『夢』――最近は、あまり見た記憶がない。
年を取ったせいかとも思ったが、おそらくは関係ないだろう。

「ところで、どんな『夢』だったんだい?」

『本来の用事』は空振りだったが、
目の前の男には少しばかり興味が湧いた。

303薄島漣『イカルス・ライン』:2021/04/14(水) 00:53:30
>>302
「仕事で悩んでて。
それで、もう辞めようって辞表……いや退職届か。
届まで書いたんですけど、やめとけって止められて。
それで『商売繁盛』か『出世昇進』のお守りでも買おうかなと」


光のない大きな……『つぶら』と言うには薄気味の悪い、
『動物園の檻の中で鬱屈とする獣』を思わせる目で百目鬼を見た。


「でも、やっぱりいいか。
ここで買えないってことは、そういう事なんでしょう」


ふう、と息を吐く。


「家に帰れないっていう夢ですよ。
通い慣れた道で迷ったり、電車が止まったり、無謀な距離を歩こうとしたり……
今はない、むかし住んでた家に帰ろうとするんですけど。
『夢占い』なんかだと、『あの頃に帰りたい』って意味らしいんですが。
……『むかし住んでた家』って言っても、僕はあちこち転々としてるもんだから、いくつもあって。
どの家か、どんな道を通ってか、何に邪魔されるか……細かいところは違うんですけど、
何度も何度もその筋書きで似たような夢を見るもんだから、何か意味があるのかなって」


「それで……聞いて……」


薄島の顔色が青ざめる。


「……誰に?誰に聞いたんだ?
はて……?」


なにか、混乱しているようだ。

304百目鬼小百合『ライトパス』:2021/04/14(水) 01:13:27
>>303

「なるほど――――」

       ボッ

「『巡り会わせ』って奴か。
 アンタがそう感じるんなら、そうなのかもしれないねぇ」

ライターを点火しながら、男に頷いてみせる。
お守りを買えなかったのは、
単にタイミングが悪かっただけとも言える。
そう思うが、口出しをする気はなかった。

「ははぁ、そりゃあ確かに『変わった夢』だね。
 ま、『夢』は『現実』じゃあない。
 大なり小なり、『不条理な部分』はあるもんだ」

「しかし、そんな夢を見るって事は、
 アンタの心の中に『何か』があるんじゃないかと思うよ」

「もちろん、『それ』が何かは分からないけどさ」

そこで言葉を切り、相手の様子を黙って見つめる。
顔色が変わる様子を前にして、目を細めた。
手の中では、ライターの火が微かに揺れている。

305薄島漣『イカルス・ライン』:2021/04/14(水) 01:34:30
>>304
「人に止められたんで辞めるのはやめましたけれど、
その気になればいつでも辞めていいし、無理に職場で出世しなくても良くなりましてね」


「いつだって、どっちへ進んだらいいもんだかわからないことばっかりですよ、人生。
だから今日の巡り合わせも……『これ』も……『道しるべ』だと思うんです」

そう言って手のひらを見つめ、笑みを浮かべる。




「……すみません、取り乱しました。
誰か、会って話をした人がいるんですが、その人の事がどうにも思い出せなくて……
大事なことだったような気がするんですけど。
それこそ、それは夢の中の出来事だったんでしょうか」


落ち着きを取り戻した。
百目鬼をじっと見て言う。


「突然、変な事を聞いて申し訳ないのですが。
僕が何を言っているのかわからなかったら、忘れてほしいのですが。


…………『ファム・ファタール』という言葉に、聞き覚えはありませんか?」

306百目鬼小百合『ライトパス』:2021/04/14(水) 02:02:02
>>305

「ハハハ、気にしないでいいよ。
 人間、生きてりゃ色々あるもんだ」

    「おっと…………」

          ――――パチン

その時、無意識の内に、
煙草に火を点けようとしていた事に気付いた。
さすがに神社の境内で喫煙するのは行儀が悪い。
ライターの蓋を閉めて火を消し、元通りポケットに収める。

「『夢の中で会った』って事かい?」

「『現実で会った人の夢を見た』っていうんなら、
 何となく分かるけどねぇ」

それから、ゆっくりと首を振った。

「――――『無い』ね。
 少なくとも、アタシは聞いた覚えが無い」

「『会って話をした相手を覚えてない』ってのは、
 アンタの記憶が何かの理由で飛んじまってるか――――」

「もしくはアンタの言うように、
 『夢だった』って事になるんだろうねえ」

307薄島漣『イカルス・ライン』:2021/04/14(水) 02:25:47
>>306
「そうですね。
煙草ですか?僕は平気ですが……あ、神社ですもんね」


そうするなら最初から取り出さなければいいのではと思ったが、口には出さない。
なにかしら咥えていることで禁煙に繋がる、というのを何かで読んだ気もする。


「……そうですか。
声と名前、声からして女性だろうという事しか覚えていません。
覚えていないというよりは、そもそも姿を見ていない、声だけ、だったのかも。
『夢で会った人』なんて、実際に存在するかどうかもわかりませんね……。
知っている人がいたら探せるかもと思いましたが」


「じゃあ、僕はこれで。
話を聞いてくれてありがとうございました。
いい『道しるべ』になりました。『用事』が早く済むといいですね」


別れを言い、来た道へ去る。
その目に少しだけ光が戻ったように見えた。

308百目鬼小百合『ライトパス』:2021/04/14(水) 02:44:14
>>307

実際、火の点いていない煙草を咥えていたのは、
喫煙の欲求を抑えるためだった。
気休めに過ぎないが、それでも無いよりは幾らかマシだ。
『禁煙』するつもりは今の所ないが。

「人生、人それぞれ――――アンタもアタシも色々だ」

「ま…………少しは『足し』になったんなら良かったよ」

「暇があったら、また来なよ。
 アタシは関係者じゃないけど、
 ここの『巫女さん』は聞き上手だからね。
 何かしら役に立つ助言が貰えるかもしれないねぇ」

      「じゃあね」

男を見送ってから、足元に置いてあった紙袋を持ち上げる。

         ザッ

    「――――アタシも『出直す』とするか」

                         ザッ ザッ ザッ

309りん『フューネラル・リース』:2021/05/06(木) 08:06:07
「キボウノハナー」

年齢は10歳程、鈴蘭があしらわれたワンピースを着た少女が、歌を歌いながら神社にやってきた
別に何て事は無い、普通の子供だろう

頭 に 鈴 蘭 が 咲 い て い る

という事を除いては…

310鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2021/05/06(木) 10:50:54
>>309

境内には、今日は『巫女』がいた。
左右で長さの違う髪と、金色の瞳が目立つ。

       ザッ―
            ザッ―

境内の掃き掃除をしていると、
その少女の姿が目に入った。
いや、正しく言えば…………

「……?」

(リアル過ぎる気がするんだ、髪飾りにしては――)

その頭に『ついた』鈴蘭のことが目に入った。
とはいえまさか生花ではないだろう。
あれは『毒』があるのだし――

「やあどうも、お嬢さん。今日は『お詣り』ですか?」

           ニコ…

声を掛けた。
いきなり髪飾りに話を触れる事はしない。
珍しくはあるが、参拝客なのは間違いないからだ。

     ……

それと同時に、視線を周囲に巡らせ『保護者』の有無を探す。

311りん『フューネラル・リース』:2021/05/06(木) 11:06:20
>>310
「あーっ、巫女のおねえさんこんにちわー」

鳥舟の声に反応して、そちらに歩み寄りぺこりとお辞儀をする鈴蘭の少女
歩いたり、お辞儀をする度に揺れるそれは

ど う 見 た っ て 本 物

造花にしてはあまりにも精巧過ぎる

「おねえさんの目、金色できれいだねー
 うち、目が綺麗な人ってすきだな〜」

出会ってそうそう、目について褒める奴なんて怖いだろう

>それと同時に、視線を周囲に巡らせ『保護者』の有無を探す。

周囲を見渡し、『保護者』を探す鳥舟だったが、それらしき人物は見当たらない
今、この神社にいるのは鳥舟とりんの二人だけのようだ

「『お詣り』?うーん……
 うち、家族にあげるためにお水買いに来たんだけど
 そうだなぁ、『お詣り』もしていこうかなぁ?」

312鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2021/05/06(木) 13:07:37
>>311

「はい、こんにちは。挨拶が出来て偉いねぇ。…………」

(まいったよね。本物にしか見えない。
 ――や、ボクは造花には詳しくないんだ。
 それくらいのクオリティなのかも、しれないし)
  
         ……チラ

(親御さんが『防犯』として付けてあげてるなんて、
 まさか、そんなことも、ないだろうしさ。
 だって毒の花だ。それも、頭にだなんて)

明らかに『本物』だ。鳥舟にも分かった。
だが、そうだとして意図が読めないし、
彼女が平気そうにしてるのも『謎』だ。
保護者に聞く余地も無さそうだし、
それは、『暴くべき』謎なのか?
そうでもない気もする。

「へえ! 家族のために、お使いに来たわけだね。
 良い子だねぇ、階段登るのとか、大変だったでしょ。
 水はこっちで『授与』してるからさ、ついておいで」

(…………子供に『買いに来させる』っていうのは、
 神さまのやつがもし見てると信じてるならさ、
 それは、あんまり良くないんじゃないのかな。
 ボクがこの子にそんな顔をしちゃ、いけないけどさ)

烏兎ヶ池神社はあまり『アクセス』は良くない。
秘境というわけではないが、子供の遊び場には適さない。
見当違いの思いを抱きつつ、『りん』を案内する。

「っと、でもそうだね――お参りをしてくれるなら、
 先にそっちをした方が『荷物にならない』のかな」

「お参りの仕方、知ってるかな。ええと――ああ!
 ボクは『鳥舟 学文(とりふねまーや)』」

     「――きみのお名前も、教えてくれるかい?」

313りん『フューネラル・リース』:2021/05/06(木) 13:32:07
>>312
「う〜ん……そうだねぇ〜
 先にお参りしていこっかな」

まずは参拝を優先する事にしたようだ

「『鳥舟 学文』だね!うち覚えたよ!
 うちはね、『りん』っていうんだ、覚えてくれると嬉しいな」

『りん』とだけ名乗る鈴蘭の子
名字は…?

「お参りの仕方、うち知ってるよ〜っ
 人間の事いっぱい調べたからね!
 二礼二拍一礼……でいいんだよね?」

314鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2021/05/06(木) 14:19:07
>>313

「りんちゃんか、綺麗な名前だね。
 教えてくれてありがとう。
 ボクのことは、なんて呼んでくれてもいいからね。
 マーヤさんでも、マー君でも、あやちゃんでもね」

(…………高学年くらいに、見える気がする。
 この歳の子はまだ『名前だけ』言うものなのかな?
 確か、ヨシエちゃんはそうだったけど、
 あの子は多分『低学年』くらいの年だ。
 須磨くんは……や、あの子はちょっと『マセてた』か)

(お使いといい、家庭に、何かあるのかもしれない。
 ……ただ、この子を見るのは今日が初めてだ。
 多分だけど。…………親がうちの氏子さんなら、
 この子もこれまでに連れてきてないとおかしいし、
 ミーハーなだけなら、わざわざウチを選ぶのも変だ。
 ……………っていうのは、悲しい話ではあるけどさ。
 実際、知名度とアクセス的に、もっと『ある』だろう)

自分は小学校高学年くらいの頃にはすでに、
自己紹介で『苗字』も名乗ってた気がする。
――すずらんだけじゃない。何かと『謎』がある。

「そう、正解! りんちゃん、本当に詳しいんだねえ。
 その通り、お参りは『二礼二拍』最後に『一礼』だよ」

(………………人間の事??)

『謎』が、ある。

「りんちゃんみたいな小さい子が知ってくれてるのは、
 ボクとしても、なんだか嬉しくなっちゃうな。
 決まり通りじゃなきゃダメ、ってわけでもないけどさ」

巫女としての言葉を選びながらも、
内心ではこの不思議な少女について、大いに気になる。

「あー……お参りはさ、分かってるなら、ボクは邪魔しない方がいいかな?
 それとも、場所とか、そういうのを案内した方が良かったりするかな?」

315りん『フューネラル・リース』:2021/05/06(木) 14:40:26
>>314
>ボクのことは、なんて呼んでくれてもいいからね。
>マーヤさんでも、マー君でも、あやちゃんでもね」

「あやちゃんって言うの可愛いなぁ〜
 じゃあうち、あやちゃんの事あやちゃんって呼ぶね〜」

あやちゃん、という可愛らしい響きが気に入ったらしい
りんの中では鳥舟の呼び方はあやちゃんで決定した

>「あー……お参りはさ、分かってるなら、ボクは邪魔しない方がいいかな?
>それとも、場所とか、そういうのを案内した方が良かったりするかな?」

「ん〜?別にいても良いよ〜?
 っていうか、うちは人間と一緒にいたいから
 一緒にいて見ててくれると嬉しいなぁ
 うちのやり方間違ってたら、教えてほしいし、また人間の文化を勉強しなおしたいから」

「あっ、そうだ、入れるお賽銭は5円でいいんだよね?」

そう言うとポケットから鈴蘭柄が入ったお財布を取り出して5円玉をあやちゃんに見せつける

316鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2021/05/06(木) 16:55:38
>>315

「どうぞどうぞ。
 何回でも呼んでくれていいし、
 いつだって呼んでくれていい」

子供から親しくされるのは嬉しい。

「それにしても勉強熱心だねえ、りんちゃんは! 
 そういう姿勢ってさ、素晴らしいと思うんだよ。
 良いよ、ボクもついてこう。なんでも教えたげるからさ」

(なるほど、この子は『他人』の事を、
 『人間』と呼んでるのかもしれない。
 人間のことを調べた、ッていうのは、
 他の人の参拝を見て勉強した、って意味かな)

             (……本当に?)

頭のすずらんがどうしても目に入る。
神の存在とは別に『スタンドはある』。
つまり『想像の外の存在』は、『ある』。

「ああ、『ご縁がある』、ってね。
 たしかに、五円のお賽銭をする人は多いかな。
 ただ、お賽銭の額なんていくらでも良いんだよ。
 十円だって『遠縁』だから良くないって言われがちだけど、
 『重ね重ねご縁がありますように』とか言うこともあるしさ」

    「だから――――大事なのは、気持ちだよ」

深く頷いて、それから『鳥居』の方に視線を向けた。

「それじゃ、試験じゃないけど――
 とりあえずりんちゃんの思うように、やってみてもらえる?」

317りん『フューネラル・リース』:2021/05/06(木) 18:01:40
>>316
>「だから――――大事なのは、気持ちだよ」

「気持ちかぁ……やっぱりうちは、沢山の人間達とご縁が欲しいから5円を入れるね」

「えぇと、鳥居は真ん中を通っちゃ駄目なんだよね、神様が通るから
 神様っているかどうか分かんないけど……」

神様がいるかどうかなんて事は、観測しようがないため分からない
故にあまり信じてはいないが、人間の慣習という物に倣い、鳥居を端からくぐる

「次は、手を洗えばいいんだよね
 やっぱり、花も洗わなきゃいけないかな?」

第一関門を無事クリア出来たのなら、次は手を洗いに行かなくては
もちろん

                頭 の 花 も だ

318鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2021/05/06(木) 20:24:31
>>317

「沢山のご縁――――そうだね。
 その気持ちがあれば、きっと良い方向に進むと思う。
 ボクも、きっとそうなるように、応援してるよ」

「少なくとも、ボクとの縁は結ばれたんだから」

願ったから、ではない。
ここで『願いを言葉にしたから』。
あるいは、願いを叶えるために動いたから。

「その通り、神さまの通り道――って、言われてるね。
 今ここにいるかどうかを確かめる方法はないけど、
 今日は神さまを頼りにしてきたんだから、さ」

その方が、納得を得られる。
納得は多くのことに優先する。
この点で、りんと『あや』のスタンスは、遠くはない。

「ここまでは順調って感じだね、りんちゃん。
 でも――――手水舎で身を清めるのは合ってるけど、
 ちょっとだけ間違ってるかな!」

「花は洗わなくっていいんだよ。
 ボクらだって、頭……髪の毛は、洗わないからさ」

        「清めるのは『手』と『口』。
         それも、ちゃんと柄杓を使ってね」

(……………洗う必要があるってことは、
 その花はやっぱり、きみの体の一部って事なのかな)

内心の疑問は膨らみつつ……
どうあれ、熱心に参拝を進めるりんを指導しつつ見守る。

319りん『フューネラル・リース』:2021/05/06(木) 20:43:56
>>318
「そっかぁ〜、花は洗わなくていいんだ
 何か洗わないと、物凄く失礼な気がしたんだけど
 あやちゃんがそう言うならしなくていいんだよね」

何気にバイオテロを働く寸前だったのだが
あやちゃんが指摘してくれたおかげで未然に防がれた

「まず、えぇと…?左?」
まず、右手で柄杓を持ち、左手を清める
「左の次は、右だよね」
次は左手で、右手を清める
「美味しそうだなぁ…飲んじゃ駄目?」
花の本能で飲もうと水を飲もうとするが、そこはグッと堪えて口を漱ぐだけに留める
最後に柄杓自体を清めて完了だが…

「美味しそうだなぁ……美味しそうだなぁ……」

ダラッと涎を垂らし、非常に名残惜しそうに手水舎を後にする
「やっぱり飲みたいなぁ…」
物凄く未練がましい

そして次は賽銭箱の前だ

320鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2021/05/06(木) 21:48:13
>>319

「ここのお水って結構冷たいからさ。
 頭から被ったら、きっと風邪を引いちゃうし、
 そしたらご縁を探しに出かけられないからね。
 左手、右手、それから口――――そう、それだけ。
 冷たくて美味しいかもしれないけど、
 飲んじゃダメだからね。そう! 偉いねえりんちゃん」

手水舎を突破したりんを、本心から称える。
誘惑が想像以上に強いものである事には、
恐るべきバイオテロの兆候と同様に、
当然ながら、気付く事はなかったが……

この年頃の子供がほぼ完璧に作法を熟すのは、
相当に熱心な氏子さんの家の子くらいのものだ。

「おっと……ほら、口の周り。水がついてるからさ。
 これで拭ってから、いよいよ『参拝』だね。
 とは言っても、それのやり方は知ってるみたいだけど」

袖口から手拭いを出して、渡してやる。
よだれだとまでは思っていない。

「終わったら、ちゃんとスーパーで買った、
 人間が飲むためのお水をご馳走したげるからさ。
 手水舎のお水よりそっちの方がきっと、美味しいよ」

        「……」

とはいえ水が飲みたいのは伝わった。
今、だと文字通り水を差すことになるので、
これが終わったら社務所に行って水を汲んで来よう。

321りん『フューネラル・リース』:2021/05/07(金) 09:31:44
>>320
「ありがと〜あやちゃん」

借りた手拭いで涎を拭きとって返すりん
汚い


「えーと、5円玉」
沢山の人間とのご縁がありますように、というゲン担ぎで5円玉を賽銭箱に投入

ガラガラと鈴を鳴らし、二礼二拍手
と、ここまでは良かったが…

「うーん、ねぇあやちゃん、神様にお祈りする時って、何かお願いした方がいいのかな?」

「うち、神様がいるかどうかは分かんないけど、もし神様がいたとして
 こういう時にお願いをするのって何か違うかなーって思うんだ。
 だって、神様も神様の都合があって、人間の願いを何でも叶えてくれる都合の良い存在じゃないでしょ?
 人間がみんな次から次へとお願いしてたら神様も疲れちゃうと思うんだよね…
 それにうち、音のおねえさんに鈴蘭を食べてもらうのは、神様に叶えてもらうより自分の実力で叶えたいんだよね。
 だから……どうすればいい?」

322鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2021/05/08(土) 02:33:51
>>321

「良いよ、気にすることじゃあないさ」

手ぬぐいを両手で受け取り、
濡れた面を内に畳み、
袖の中に再びしまう。

           「……」

その後は、参拝を見守っていたが――――

「それ、は」
 
      (いや、ちょっと待った)

「そうだね――――うん、りんちゃんは賢い。
 『お願い』は、絶対しなきゃいけないものじゃあない」

「むしろお願いじゃあなくって、
 『宣言』をする場、って考え方もあるんだよ」

ネットに流れる真偽不明の『神社マナー』だが、
願うだけで叶わないよりは、建設的とも言えた。

―――のだが、それより。

      (すずらんを……食べてもらう……!?)
 
「つまり――――『私はこうなりたい』『こうしたい』
 『そのために頑張る』『だから見守っててください』」

      (それを頑張るのは、その、不味いんじゃないか?
       『音のお姉さん』ってひとは、恨みでも買ってるのか?
       いや……話しからして、そういう風でもない)

「誰かが見てると思うと、
 一人で抱えてるより、きっと気が楽になるし」
 
「それに――――見てるだけなら、神さまもきっと、しんどくないよ」

しんどくなどあるはずがない。何もしないのだから。
だが――――それが夢を支える力になるなら、無意味ではないだろう。

                   (いや……これを、応援していいのかな。
                    止めるべきなンじゃあないのか?
                    頭に花が――――『咲いた』子の言う事、とはいえ)

323りん『フューネラル・リース』:2021/05/08(土) 08:20:47
>>322
「そっか、『宣言』かぁ
 誰かに宣言すればもっと頑張ろうって気になれるもんね
 流石巫女さんだよあやちゃん!」

あやちゃんのアドバイスを聞き、神の前に目を瞑り祈祷を始めるりん

「音のおねえさんに食べてもらえるような、美味しい鈴蘭料理を作るから
 見守っててね、神様」

傍から見るとただの殺害予告にしか聞こえない

最後に深いお辞儀をして終わり
「あやちゃんどうだった?うちのお参り?ちゃんと人間らしく出来てた?」
これにてお参りの全ての工程終了である、採点はいかに?

「あー……そう言えばうち何しに来たんだっけ…?
 あっ、お水買いに来たんだった」

324鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2021/05/08(土) 22:36:41
>>323

「――――ふふ、ありがとう。
 きみの役に立ててたら嬉しいよ、りんちゃん」

巫女とは神と民の仲介者だ。
神がいないと仮定しても、
『どこでもないところ』への言葉を、
受け止めてどこかに運ぶものだ。

「…………」

(『害意』じゃあ、ないんだろう。
 でも、だからこそ、悲劇が起きるかもしれない。
 いや、劇なんて言葉には収まらない。
 起きるのは、純粋な『悲痛さ』だ)

「ああ、ええとね――――『完ぺき』!
 ッて、言いたいところなんだけどね、
 りんちゃんが満足したかどうかが一番大事なんだよ」

「でも。少なくとも、マナーとか、順番とか、
 そういうのはバッチリだったから、ね。
 とっても『人間らしかった』。ただ……いや、後にしよう」

問題があるとすれば、
その宣言の内容だろう。

「『お水』の『授与』を、きっとお待ちかねだろうからね。 
 ついでに普通の冷たい水も持ってくるからさ、
 悪いんだけど、あそこでちょっと待っててくれるかい?」

社務所の方を指さして、『りん』が動き始めるのを待っている。

325りん『フューネラル・リース』:2021/05/09(日) 07:51:04
>>324
*神前で音のおねえさんに鈴蘭を食べさせる事を誓い
*りんは決意で満たされた。

「うん、じゃあ先にお金払っちゃうね」

りんはお財布から千円札を3枚取り出しあやちゃんに渡した
10本買うつもりだろうか

「じゃあ、待ってるからね〜」

社務所に移動して座り込み
折り畳み式の鈴蘭柄のエコバックを広げて待っている
結構大きい、10本くらい入るかもしれない

326鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2021/05/09(日) 20:03:26
>>325

     バターカップ
奇しくも『有毒の花』絡みの悲劇が起きた作品の構文は、
りんの中に燃え沸る『決意』がマジである事を伺わせる。

「おっと! 10本か、たくさんだね。持って帰れるかな。
 無理そうなら、その分のお金は返すからさ、
 とりあえず……必要な分を持って来るよ」

(……10本も? いや、そういう事はあるけど、
 家族に『あげる』……『あげる』?
 待てよ、その言い回しも、なんだか妙じゃあないか?)

「ちょっとだけそこで座って待っていてね」

内心には疑問が再燃するが、
手際良く札を数えると、
そのまま『社務所』に歩いていく。

    ・・・
        ・・・
            ・・・

少しして、『神社』らしくはない『クーラーバッグ』と、
完全に私物であろうレトロなガラスコップを持って来た。
コップの方には、透き通る水が入っている。

「ここに『10本』、間違いなく入ってるから。
 一応りんちゃんの目でも、見てもらえるかな」

と言いつつ、空いている椅子にクーラーバッグを置く。
なるほど、中身は揃っている。

「あのね、一応だけど……これを『飲む』前には、
 絶対に『沸騰』させてから、飲むようにするんだよ。
 ありがたいお水だけど、外にある池の水だからさ、
 何か変なものが混じってたりすると、良くないし」

        「なにせ」

当然ながら、必要なだけの処理はしているが。
……それから少しだけ間を空け。

「人間の体って、思ってるよりも、弱いものだからさ。
 煮沸したら平気になるものなら、まだいいんだけど」

    「……さっきのお願い事。
     りんちゃんも分かってはいると思うけど、
     鈴蘭の毒は、煮沸じゃあ済まないからね」

『すずらん』の危険性にはやんわりと触れておく事にした。

327りん『フューネラル・リース』:2021/05/09(日) 20:25:08
>>326
「ありがと〜あやちゃん
 いーち、にーい、さーん」

あやちゃんが持って来てくれたお水を、1本1本数えていく
10本全部ある事を確認し、エコバッグに仕舞い込む
「これで鈴蘭茶を淹れたら美味しそうだなぁ〜」

「お水頂きまーす」

コップに入った綺麗な水を、美味しそうにごくごくと飲む少女
そして…

「頭のお花にもあげなきゃねぇ〜」

半分くらい飲んだお水を、頭から被った!!
その姿はまるで、『禊』でもするかのようだ

>絶対に『沸騰』させてから、飲むようにするんだよ

「うん、うちはそうするけど、家族はそれ必要かな…?」

まるで家族には『沸騰』は必要無いかのように言う

>鈴蘭の毒は、煮沸じゃあ済まないからね

「うん……そうなんだよね
 普通の人間は危険だから困ってるんだぁ
 この前も、おじさんがうちの花を触った指舐めちゃって大変な事になっちゃったし
 だから今、普通の人間でも食べられるように無毒な料理を研究してるんだぁ
 うちの家族、大切な人に食べて欲しいし、家族もきっと、人間に美味しく食べてもらったら嬉しいと思うから」

328鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2021/05/09(日) 22:38:20
>>327

水は冷たく、味は高級なミネラルウォーターのそれだった。

「わ! ちょっとちょっと、風邪を引いちゃうんじゃあないかな。
 とはいえ――――確かに花には水が必要だ。
 こうなるんだったら、タオルも持ってくれば良かったね」

手ぬぐいで拭える量でもないし、
タオルが手元にあるわけでもない。
何かないかと思っていると――――

(――――『謎』を暴くつもりじゃあなくっても、分かる事もあるんだ)

(花をアクセサリーとして付けてるならこんな事はしない。
 水を『あげる』って言う言い方――――
 今の『水を遣る』行動、それに――――)

「それは、さ」

「…『口から飲むなら』大人の人でも煮沸した方が良いよ。
 何かを清めるとか、水やりに使うとかだったら、
 そのままでも良いとは思うけど、ね」

そう前置きをしてから。

「りんちゃんが『何者』なのかは、ボクには分からないしさ、
 分かったってきっと、正しい事を全部は教えてあげられないんだ。
 でも、きみがちゃんと鈴蘭の事を分かってて、考えてるのは分かったし、
 きみはボクが教えた神社の事を、ちゃんと覚えてくれる子だ」

鈴蘭の毒、彼女の『家族』の毒。
『鈴蘭が家族である理由』は分からないし、
彼女の頭の花にも毒性がある、という恐ろしさや、
今受け取った3千円の出所も、何もかもが分からない存在ではある。

「――――『いい子』ってことさ。だから、きっと心配はいらないんだろうね」

            「願い、叶うようにって。ボクも応援させてもらうよ」

だが、『善性』であり、なおかつ『理性』ある存在だという事は、今の言葉で十分分かった。

329りん『フューネラル・リース』:2021/05/10(月) 09:18:22
>>328
りんは、ポケットから鈴蘭の刺繍が入ったハンカチを取り出して頭を拭いた
あやちゃんは手拭いの類をりんに貸さなくて良かったかもしれない
それで拭いたら手拭いに鈴蘭の毒が付着してしまう可能性もあるだろう

>『口から飲むなら』大人の人でも煮沸した方が良いよ。

「あやちゃんがそう言うなら、そうする事にするね」
正直、りんの家族にとってそれは余計な手間なのだが、
あやちゃんの言う事ならばと、手間を甘んじて受ける事にするりんだった

>願い、叶うようにって。ボクも応援させてもらうよ

「ありがとうあやちゃん!あやちゃんが応援してくれるなら、
 うち絶対作れる気がするよ!もし料理が完成したら、あやちゃんも食べてね!」

鈴蘭食わせるリストにあやちゃんも登録されてしまった!

「お水ご馳走様、凄く美味しかったよ
 また来るから、今度はうちの鈴蘭茶をご馳走してあげるねぇ〜
 じゃあねぇ〜」

そう言うとりんは、10本もの水が入った重そうなバッグを持ち
重そうに引きずりながら神社を後にした

あやちゃんにとって何もかもが『謎』な鈴蘭女は
あやちゃんに鈴蘭料理を食わせるだの鈴蘭茶を飲ませるだのと言っていたが
果たしてあやちゃんの運命やいかに

330鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2021/05/10(月) 23:10:18
>>329

「ウン、聞き分けがよくって良い子だよ、本当にさ。
 ――――鈴蘭、もし食べられるようになったら、
 そうだね、その時はご相伴に預からせてほしいな」

彼女なら無理に食べさせたりはしない。
善性を、そして理性を信じたい。
彼女が――――

「それじゃあ、また。いつでもおいで」

――――彼女が、『すずらんの精霊』か何かだとしても。

331飯田 咲良『シスター・ゴールデンヘアー』:2021/05/11(火) 10:56:39
茶髪を二つに結わえた少女が、制服姿で鳥居をくぐった。
どうやらお詣りに来たらしい。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

意外と、遠かった…!
ここがこの街の神社かぁ。

「ふう、とうちゃーく!
 最近変な人によく会うから神頼み…ってね」

みんな見かけが変な人なだけで良い人だったけど、それでもびっくりはするから…。
それに、引っ越してきてまだこのあたりの神様に挨拶してないことに気付いちゃったしね。
えっと、拝殿は……。

332『烏兎ヶ池神社』:2021/05/11(火) 12:47:40
>>331

星見町内には他にもいくつか神社があるが、
中でもこの『烏兎ヶ池神社』は、
いわゆるパワースポット神社として名高い。
故にか、他にもちらほら参拝者は見あたる。
拝殿の位置も、人の流れで分かるだろう。
>>333も、その内の1人かもしれない。

巫女や宮司等は、今は境内には見当たらない。
何か、忙しくしているのかもしれない――――

333宗像征爾『アヴィーチー』:2021/05/11(火) 18:35:35
>>331

    ザッ ザッ ザッ

少女の背後から、一人の男が歩いてきた。
カーキ色の作業服を着た中年の男だ。
両手には革の手袋を嵌めている。

               ――――スッ

男は少女の横を通り過ぎ、
そのまま前方に向かって歩いていく。

334飯田 咲良『シスター・ゴールデンヘアー』:2021/05/11(火) 19:25:16
>>333

横を通り過ぎていく男の人に目を取られた。
クソ親父くらいの年齢かな?
筋肉質な人だ。クソ親父と比較しちゃいけないくr――

「きゃあ!」

余所見してたからだと思う、気付けば私は石畳の縁に足を引っかけて転んでしまった。
それも、あの男の人にぶつかってしまうような形で。

「ご、ごめんなさい!痛くないですか!?」

335宗像征爾『アヴィーチー』:2021/05/11(火) 20:18:16
>>334

不意に声が聞こえると同時に、体に軽い衝撃を受けた。
その場で立ち止まり、何が起きたかを確認する為に振り返る。
最初に視界に入ったのは、地面に倒れた少女だった。

「いや、俺は平気だ」

次に、自分自身の手を一瞥する。
使い込まれた手袋は綺麗とは言えないが、
俺自身の手よりは恐らくマシだろう。
そのように考えてから、おもむろに片手を伸ばした。

       スッ

「――――大丈夫か」

声を掛けながら、少女が立ち上がる手伝いをする。
本来、この手は人に触れるべきではない手だ。
だが、役立てずに腐られておくよりはいい。

336飯田 咲良『シスター・ゴールデンヘアー』:2021/05/11(火) 20:43:19
>>335

「あ、ありがとうございます…」

こういう風に人の手を取って立ち上がるの、なんだか恥ずかしいな…。
握った手は大きくて、革の手袋は柔らかかった。よく使い込まれているんだろうね。
革製品って大人の男の人って感じがすごいよね。なんて言うんだっけ? 硬ゆで卵?みたいな。

立ち上がり顔を見上げて、びっくりした。
すっごく大きい!私より40センチくらい違うんじゃない…!?

「…………。
 ご、ごめんなさい。すっごくおっきくてびっくりしてました…!」
「ぶつかっちゃってごめんなさい。
 お兄さんも、参拝ですか?」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
飯田の身長は146cm

337宗像征爾『アヴィーチー』:2021/05/11(火) 21:48:15
>>336

「怪我をしなかったなら、それでいい」

少女を立ち上がらせた後、静かに手を離す。

「確かな目的があって来たのとは違う。
 歩いていたら辿り着いただけだ」

しばらく歩き続けていると、
いつの間にか鳥居の前まで来ていた。
自覚している限り、そこに理由らしいものは無い。
あるいは、何か理由があったのかもしれない。
自分自身が、それに気付いていないだけか。
考えてみても、どちらなのかまでは分からなかった。

「だが、来た以上は参拝するのも悪くない」

         ザッ

安全靴の底が石畳を踏み締め、
拝殿の方向に視線を向ける。

「この神社には、前に一度だけ来た事がある。
 その時は『関係者』に案内してもらった」

「――――今はいないようだな」

周囲を軽く見渡すが、そこに『巫女』の姿は無かった。

338飯田 咲良『シスター・ゴールデンヘアー』:2021/05/11(火) 22:18:05
>>337

「はい、怪我とかはないみたいです。
 ありがとうございます」

ちょっと膝は赤くなってるけど、怪我という怪我はなさそうだった。

「お兄さん、ここに来たことあるんですか?
 私、実ははじめてで…その、もしよかったら一緒に参拝してくれませんか…?」

お兄さんを見上げながらちょっと不安げに話した。
周囲には参拝者がちらほらいるし、たぶん拝殿はあっちの方だってこともわかった。作法もたぶん大丈夫だと思う。
だけど、今までは隣にお母さんがいた。知らない土地の神社に一人でとなると少し不安かもしれない。

一緒の参拝でもよさそうなら拝殿の方向に歩きながら話を進める。

「『関係者』…って、巫女さんですか?
 確かここには巫女さんがいらっしゃるんですよね。どんな方だったんですか?」

地元の神社にはアルバイトの巫女さんが年末にいるくらいでプロの巫女さんなんてみたことない。
どんな人なのか興味があった。

339宗像征爾『アヴィーチー』:2021/05/11(火) 23:00:29
>>338

「別に構わない」

「何かの役に立てるなら、そうする事にしよう」

言葉を返し、拝殿の脇を見やる。

「最初は『向こう』だそうだ。
 信じる心があれば、
 必ずしも細かい手順は重要ではないらしいが、
 決まった手法に則る方が『入りやすい』と聞いた」

         ザッ ザッ ザッ

そう言い置いてから、手水舎へ歩いていく。

「少なくとも、俺の見た限りでは親切な人間だった」

「祈願する内容を考えていなかった時に、
 この神社の『得意分野』を教えてもらった覚えがある。
 『旅の安全』と『病気平癒』という事だ」

「それ以外は――――『金色の目』を持っていたか」

記憶を遡り、『巫女の両目』を思い出す。
見る者によっては、
『神秘的な輝き』と表現する事も出来るだろう。
それが神性に由来するものかどうかは知らないが。

340飯田 咲良『シスター・ゴールデンヘアー』:2021/05/11(火) 23:19:25
>>339

「ありがとうございます!
 お兄さん、優しい方なんですね、初対面でぶつかっちゃった私にも親切にしてくれて…」

この街の人は優しい人ばかりなのかな。
ちょっと優しすぎてびっくりかも。

「まずはお手水ってことですね」

ついていって柄杓を取る。水が冷たくて気持ちいい。

「『旅の安全』…!
 私、田舎から出てきてるので実質『旅』ですね、もしかしたら得意分野なのかも!」
「『金の目』って神秘的ですね、もしかしたら外国の人だったりするのかな?いつかお話ししてみたいです!」

お手水で清めながらお話しする。
うん、この街で安全に過ごせるようにお祈りしちゃお。あと、いつか巫女さんに会えるように!

「お兄さんはこの街、長いんですか?
 一回だけ来たことあるってことは地元って感じじゃなさそうですよね?
 あ、答えにくかったら全然大丈夫ですから…!」

うーん、詮索のしすぎ…?
伺うように見上げて首を傾げる。

341宗像征爾『アヴィーチー』:2021/05/12(水) 00:08:25
>>340

多くの言葉がそうであるように、
『優しい』という言葉にも幾つかの解釈が存在する。
それが『人を傷付けない』という意味なら、
俺は自分が優しい人間だとは思わない。
だが、それを敢えて口にする必要はないだろう。

「日本人のように見えたが、確かに珍しい色だった。
 言われてみれば外国の血が混じっているのかもしれない」

「どちらにせよ、ここにいたとしたら見間違う事はないだろう」

           スッ

同じように柄杓を手に取り、手順を済ませる。

「長いと言えば長い。
 ただ、しばらく他所で暮らしていた。
 帰ってきたのは最近の事だ」

刑務所で過ごした二十年は長かったとも思えるし、
逆に短かったとも思える。
だが、出たからといって許されるとは考えていない。
許されてはならない。
それが罪の重さというものだ。
生きている限り、償いは永遠に続く。

「街の様子が色々と変わっていた事には驚いた。
 だが、身近な場所でも、
 知らない部分というのは意外に多い」

「例えば、この場所にしても同じ事が言える」

この神社に来たのは、出所した後が始めてだった。
恐らく、それ以前からあったのだろうが、
これまでは縁がなかったのだろう。
案外、そんなものなのかもしれない。

「――――拝殿では『二礼二拍手一礼』だそうだ」

            ザッ

手水舎に背を向け、拝殿に向かって歩き始める。

342飯田 咲良『シスター・ゴールデンヘアー』:2021/05/12(水) 00:30:49
>>341

「そうなんですね、ハーフさんとかなんでしょうか?
 巫女さん、次来たら会えるといいなぁ…!」

見間違えないくらい特徴的ならきっといつか会えるだろうし、また今度ここに寄ろっと!



お兄さん、話してくれた…ってことは大丈夫な感じだったのかな?
よそってことは『Iターン』とかで違うところから戻ってきたとか?
お兄さんと話してると知りたいことがどんどん増えて、なんだか楽しいかも。

「遠くに行かないと地元なのにわかんないことってありますよね!
 私、最近越してきたんですけど、田舎の風景と重ねて知らないことがたくさん見えて面白いなって」

話しながら拝殿に向かう。
ここは山の姿も、海の有無も、人の優しさも全然地元とは違う。
私が愛人の子だなんて言う人もいないし、困ってたら親切にしてくれる人がいる。優しい街だよね。

「んと、5円玉5円玉…。
 せっかくだから『15円』にしよっと。ここに来たおかげでお兄さんと会えたんですし、『いいご縁』です」

そう言いながらお金を取り出し、お詣りを始める。

343宗像征爾『アヴィーチー』:2021/05/12(水) 01:14:40
>>342

「場合によっては、その逆も有り得る」

「君は田舎から来たと言ったが、故郷に帰った時、
 今まで気付かなかった点に気付く事が出来るかもしれない」

「それの良し悪しは別として、
 視野を広く持つ事は有意義だと言えるだろう」

百円硬貨を取り出して、賽銭箱の中に落とす。
これといって深い意味はなく、
最初に目に付いたというだけの理由だ。
そこまで済ませて、忘れていた事を思い出した。

「ああ――――」

「『祈願の内容』が必要だったな」

以前に来た時は『仕事の成功』を祈願した。
事実、成功はした。
『全治七ヶ月』と引き換えではあったが。

「『病気平癒』――――ではないな」

「多少違うが、『健康』を祈願しておく事にしよう」

今は完治しているものの、少し前までは入院中の身だった。
能力の都合上、『スタンド絡み』の仕事をする場合、
どうしても負傷は避けられない。
だが、あまり入院が長引くと『本業』に差し障りが生じる。
前回の参拝を考えると、
あるいは『御利益』があったのかもしれない。
なかったとしても、
自分自身の決意表明という意味はあるだろう。

344飯田 咲良『シスター・ゴールデンヘアー』:2021/05/12(水) 01:50:29
>>343

「田舎に帰ったとき、うーん。どうだろ?
 ちょっと帰るときが楽しみになったかもしれません、ありがとうございます」
「視野を広く…できたらいいなって思うんですけど…」

正直、帰ったからといってなにか見つけられる気がしないのは…
まだ経験が足りないからかな、それとも気付きたくないのかな。
わからないけど難しそうに思える…。

「私は…『旅の安全』と『旅先でのご縁』を願います。
 あ、『お兄さんの健康』も…って欲張りすぎですかね?」

 チャリン
   ガラガラガラ
       パンパン

引っ越してきました。ここの神様、よろしくお願いします。
叶いますように!

安全は気をつけるに越したことはないけど、私が足りてないところは神様が叶えてくれると信じて拝殿から離れた。

「ふぅ、一緒に参拝してくれてありがとうございました!
 あ、そうだ!自己紹介してなかったです!
 私、『飯田咲良(イイダサクラ)』っていいます。
 えっと連絡先交換しませんか…?」

制服のポケットからスマホを取り出して聞いてみた。
大人の男の人に、連絡先聞くのってなんだかちょっと恥ずかしい…。
でも神様が繋いでくれたご縁だ。仲良くなれるならなってみたい。

345宗像征爾『アヴィーチー』:2021/05/12(水) 12:57:40
>>344

どんな人間にも、心の奥に何かがある。
彼女の場合は、故郷に起因するものか。
言い淀んだ事から察せられたが、
それを追及する義務も権利もない。

「――――『宗像征爾』だ」

取り出された『スマートフォン』を見下ろす。
この街に戻ってきてから気付いた事は多い。
『これ』も、その一つだ。
最初は何なのかさえ分からなかった。
今は誰でも持っていて、
それを持つ事が半ば当然のように考えられている。

「『それ』は持っている。
 ただ、俺は扱いに慣れていない」

          スッ

「悪いが、君の方で適当に済ませてくれ」

ポケットから出した『スマートフォン』を、
飯田と名乗った少女に差し出す。
ケースや保護フィルムの類は使われておらず、
剥き出しの状態だ。
店員に勧められるままに契約したものの、
今に至るまで使いこなせていない。

346飯田 咲良『シスター・ゴールデンヘアー』:2021/05/12(水) 13:49:07
>>345

「『宗像』さんですね、登録しちゃいますね」

手渡された『スマートフォン』を操作する。
私の連絡先を『宗像さんのスマホ』に、『宗像』さんの連絡先を『自分のスマホ』に登録して返した。

「登録終わりました。ありがとうございます」

連絡先交換を頼んでおいて、ちょっと言うのも気まずいけど…言っといた方がいいよね…?

「……宗像さん、その、今スマホ貸すと悪いこともできちゃう時代なのでちょっと不用心かもです…。
 もし、スマホの使い方とか、困ったら連絡ください。手伝えることがあればがんばります」
「今日は本当にありがとうございました!
 あの、ぶつかって本当にごめんなさい!」

お礼と謝罪を言って、なにもなければこのまま寮に帰るかな?

347宗像征爾『アヴィーチー』:2021/05/12(水) 14:46:17
>>346

「――――そうなのか」

少し前にも、同じような事をやった覚えがある。
確か『湖畔』の方だったか。
あの時は指摘されなかったが、
同じような事を思われていたのかもしれない。

「今後は注意しよう。
 忠告してくれた事に感謝する」

返却されたスマートフォンを受け取り、一礼する。

「あの程度ならどうという事もないだろうが、
 ぶつからないに越した事はない」

「相手によっては、面倒な状況になる事も無いとは言えない」

「万一そうなった時は手を貸そう」

      ザッ

「俺の『健康』と、君が『街』に馴染める事を――――」

                   ザッ ザッ ザッ

別れの言葉を告げ、背中を向けて境内から立ち去っていく。
実際に『御利益』があるのかどうか。
それは分からないが、あったとしても頼る気はなかった。
参拝は単なる意思表明だ。
今後『次の相手』に出くわした時は、
もっと的確に仕留めなければならない。

348喜古美礼『ビトウィーン・2・エンズ』:2021/05/15(土) 14:30:01
『場所』が環境で決まるというのならば、『時刻』はこの私が決めさせてもらおう。

さまよい歩いて辿り着いたのは『9時01分』。
私は、ここ―――『烏兎々池神社』に居た。
せっぱづまった思いで、神社の由来をしっかり熟読する。
『霊池』があるのか。『お祓い』などはしてもらえるのだろうか。

社務所が空いているのなら何はなくても『お守り』を買っておこう。
『参拝』もしておこうか―――鳥居は端をとおらないといけないんだったか?
私は自分が納得できるまではここに居ようと誓った。

349『烏兎ヶ池神社』:2021/05/16(日) 03:54:25
>>348

「ようこそお参りです、こちらの『お守り』ですね」

社務所には『巫女』がいた。
金色の瞳と、アシンメトリーの髪は神社には珍しいが、
普通に手慣れた様子で『お守り』は売ってもらえた。
――なお、彼女曰く『売る』ではなく『授与』らしい――
なお、祈祷やお祓いも社務所で受け付け出来るが、
それなりの初穂料がかかり、時間もかかるようだ。

社務所には他の参拝客は少しいるので、
彼女はそこからは離れられないようだ。
少ししたら話はまた別かもしれないが、
しばらくは彼女から干渉はしてこないだろう。

参拝なり池を見に行くなりするとすれば、
>>350のような『誰か』に遭遇する事もあり得るだろう。

350ラッコ『ハッピー・スタッフ』:2021/05/16(日) 15:58:46
>>348

『幸せに生きる事』。
それが彼の生涯における最大の目的である。
とはいっても、
特に『信念』だとか『決意』だとかがある訳ではない。
強いて言うなら『本能』だろうか?
食べ物に不自由せず、外敵に襲われる事もなく、
のんびりと平和に暮らしていきたいと思っている。

だが、時には気分転換をしたくなる事もある。
気の向くままに散歩したくなったりもするのだ。
そんな時、彼は別の場所まで足を伸ばす。
どうやって?
それは誰にも『分からない』。

              ガサッ

不意に、『烏兎ヶ池』に通じる林の中から物音がした。

          ヒョコッ

そして、草陰から『哺乳類』が顔を覗かせる。
犬猫の類ではない。
近い動物を挙げるとするなら『イタチ』や『カワウソ』だ。
しかし、それはイタチでもカワウソではなかった。
海に暮らす海獣――――『ラッコ』である。

      他の人間達は、まだ誰も気付いていない。

351喜古美礼『ビトウィーン・2・エンズ』:2021/05/16(日) 17:24:33
>>349
金色の瞳の『巫女』はすこし印象的だ。おそらくは『カラーコンタクト』?
いや、アジア系以外の血がまざっているだけかもしれない。

いま購入した『カラスとウサギ』の模様の『お守り』というのは、ここのオリジナルらしい。
ただの地名由来のものかと思ったが、手持ちの『スマホ』で調べてみると
『烏兎(うと)』は、『太陽と月』をしめすようだ。

『太陽と月』―――
今が『朝』だったり『昼』だったり『夜』だったりすることを明確に教えてくれる存在。
彼らあるいは彼女らを肌身はなさず持ち歩く事は、私に加護を与えてくれるような気をした。

『お祓い』については、説明をきき、今回は『見あわせる』こととした。
時間や金銭的なこともそうだが、自分のような一見の参拝者がうけても
効果があるのか疑問に感じてしまったからだ。
(そもそもふだんは、こんなこと自体、信じていないのにね)。

 〇 ● 〇 ● 〇 ● 〇 ● 〇 ● 〇 ● 〇 ● 〇 ● 〇 ● 〇 ●
>>350

さて、『お祓い』をしないのであれば、
私はどうやって『明け方の幽霊』の呪縛をとりのぞくべきか?
『お守り』だけで効果はあるのか………などと思案していると。

              ガサッ

不意に、『烏兎ヶ池』に通じる林の中から物音がした。

          ヒョコッ


私は見なれない『哺乳類』の『顔だけ』を、草陰の隙間に発見した。
それ以外の身体部分は私の位置からは確認する事ができず、正体は不明。


                        「――――――――『鵺』?」

                私の口から、思わずそんな言葉がこぼれる。

『鵺』。
この神社の由来を看板で読んだときに知った『妖怪』。
『体の部位ごとに姿が違う、得体のしれない存在』。
あいまいな『変わり目』に心を揺らしてしまう私にとっては『天敵』。
ただ、いまどき、『そんなものに出逢うはずもない』という
現代人としての『楽観』もあったのだが―――

『明け方の怪異』をなんとかしようとすがるように
辿りついた『神社』でさらなる『怪異』と遭う………
私の日常がすこしずつ綻びはじめているのは、もしかして『あの日』から?
勢いにまかせ、『心の声』なんていわなきゃあよかった?

352ラッコ『ハッピー・スタッフ』:2021/05/16(日) 18:01:59
>>351

もし、ここが『海』であったなら、
そこにラッコがいるのは自然な事だ。
厳密には、『野生のラッコ』と遭遇する機会は、
普通ほとんどないだろう。
たとえそうであったとしても、『海にラッコがいる』のは、
自然界の法則には反していない。
だが、ここは『神社』である。
常識的に考えて、神社にラッコはいない。

『鵺』――この神社の由来に深く関わる存在。
林の中には『鵺が落ちた』と称される『霊池』がある。
頭だけを出した『奇妙な生物』は、
果たして伝説の『妖怪』なのだろうか?
『場所柄』を考えれば、
決して有り得ない事ではない……かもしれない。
木立や草葉に遮られ、その全体像は窺えない。

      「ミャー」

ふと、『鵺らしきもの』が鳴き声を発した。
『鵺』という言葉に反応を示したようにも思える。
あまり馴染みのない鳴き声だったが、
威嚇しているとか警戒している感じはしない。

                   「ミャー」

その表情からは、何を考えているかは読み取れない。
あるいは、何も考えていないのかもしれないが。
『鵺かもしれない存在』が目の前にいる。

――――――どうしよう?

353喜古美礼『ビトウィーン・2・エンズ』:2021/05/16(日) 20:29:47
>>352

      「ミャー」

私がどうすべきか熟考していると、眼前の『不明な存在』が突然鳴いた。
確かに看板にも『鵺は鳴く』と書かれていた。ただ、書かれてはいたが、
それが『ミャー』なのかまでは書かれていなかったように思う。書いておいてほしかった。
しかしそもそも『ミャー』は私が感じた声であって本当は『ピャー』だったかもしれない。
そうなるともう、仮に書いてあったとしても、『八方ふさがり』ではないか―――

『スマホ』で悠長に『鵺』について調べている余裕は、ない。
もし向こうが害をなす存在なのであれば、
その隙にザクリとやられても文句は言えない。

――――――どうしよう?


  ┣¨ ┣¨ ┣¨ ┣¨ ┣¨ ┣¨ ┣¨ ┣¨  ┣¨ ┣¨  ┣¨ ┣¨ ┣¨ ┣¨

        『心の声』・・・・・・  『覚醒』・・・・・・ 『未知なる能力』・・・・・・

そうだ、『この場面』だ。
おいそれと使ってはいけないと思っていたが、
いま使わなくて、いつ使うというのだ?

私は軽い深呼吸ののち、いのり、ねんじて、自分の『分身』―――
『ビトウィーン・2・エンズ』を傍らに発現させる。

『魔法使い』のようなローブをまとった人型の『それ』。
『スタンド』というらしい『これ』に対し、未だにどこか違和感を覚える。
それでも、自らの意思で自由に操作可能な
この『魔法使い』の存在は、眼前の『未知』と対峙する勇気を私に与えてくれた。

『謎の存在』に、『ビトウィーン・2・エンズ』をゆっくりと近づけていく。
聞いた話だと『一般生物』は『これ』を認識できないという。
よって、これに反応するようであれば、
眼前の存在は『一般ではない』………つまりは、『鵺』だ。

                   「ミャー」

のんきに鳴いていられるのも今のうちだ。

354ラッコ『ハッピー・スタッフ』:2021/05/16(日) 21:09:27
>>353

接近する『ビトウィーン・2・エンズ』に対し、
『鵺らしきもの』は大きな反応を示さない。
やはり『鵺』ではないのか?
その時――――――。

        「ミャッ」

                 ガサリッ

草陰から『鵺らしきもの』が飛び出してきた!
同時に、その全貌が露になる。
体長は『130cm』程で、全身は『毛皮』で覆われており、
短い『尻尾』が生えているようだ。

           「ミャー」

『鵺らしきもの』の姿は、
『鵺』として広く知られている姿とは大きく異なっていた。
だが、『ビトウィーン・2・エンズ』が見えているらしく、
その動きを目で追っている。
いわゆる『一般生物』には不可能な芸当だ。

突如として『烏兎ヶ池』近辺に出現した『怪生物』――
その『正体』の解釈は、相対した者の判断に委ねられる。

355喜古美礼『ビトウィーン・2・エンズ』:2021/05/16(日) 21:44:03
>>354

 出てきた―――ッ

  見えている―――ッ

   見えているなら―――ッ

     こいつッ! 『鵺』かァ―――――ッ!?

『鵺』『鵺』『鵺』『鵺』『鵺』『鵺』『鵺』『鵺』『鵺』『鴎』『鵺』『鵺』………

脳みそをフルスロットルで回転させて、看板に書かれた『鵺』について思い出す。
たしか、『体の部位』がそれぞれ別の動物になっていると書いてあったが………
駄目だ。その具体的な『内訳』はまるで思い出せない。

落ち着け。『冷静』。そう、今の私に足りないのは『冷静さ』だ。
情報はあるのだ。『体の部位ごとに違う動物』。
つまりそうでないのなら、『これは鵺でない』事になる―――

観察してみよう。

『顔』―――これは『ラッコ』そっくりじゃあないか。
『手』―――これは『イタチ』に似ている気がする。
『体』―――これは『ビーバー』と共通点がある。
『尾』―――これは『カワウソ』みたいにみえるな。

           「ミャー」

結論は出た。

    これは伝承どおりの―――『鵺』。

私は『ビトウィーン・2・エンズ』を自らの方にすばやく戻し、
ソロリソロリと後ずさりでその場から撤退する。
ただでさえひとつ『怪異』を抱えているのだ。
これ以上の『怪異』を抱える必要は微塵もないだろう。

356ラッコ『ハッピー・スタッフ』:2021/05/16(日) 22:11:56
>>355

眼前の生物は、疑う余地もなく『鵺』である。
そう結論付けられた『鵺らしきもの』は、
ただ『ビトウィーン・2・エンズ』を見つめていた。
つぶらな瞳の奥に、
何かしらの『思惑』を秘めているかのように。

    ――――――もしくは、何も考えていないかのように。

           「ミャー」

                  ガサガサ

『鵺らしきもの』は、最後に一声鳴き声を上げると、
林の奥に引っ込んでいった。
『住処』に帰ったのだろうか?
その後、『烏兎ヶ池近辺で鵺を見た』という噂が、
星見町の一部であったとかなかったとか。
『鵺』という言葉には、
『正体のハッキリしないもの』という意味もある。
このささやかな一幕の結末は、
まさしく『鵺的』であった……のかもしれない。

357喜古美礼『ビトウィーン・2・エンズ』:2021/05/16(日) 22:27:32
>>356

           「ミャー」

                  ガサガサ

見苦しいかもしれないが私は逃げた。
『鵺』の方も引っ込んでくれたようだ。

『魔法使い』を得ても、私の心がついていっていない。
怪異と分かって、立ちむかうほどの勇気は持てない。

 『魔法使い』―――そうだ、『魔法使い』。

私は『明け方の幽霊』の事を思い出した。
あの『時間帯』だったら私の『魔法』で『確かめる』事ができるではないか。
『幽霊』じゃあなければ、次に『変わり目』が来るまで私は安心していられるはずだ。


                            喜古美礼『ビトウィーン・2・エンズ』
                                   →『大通り』へ再度戻る

358小翠『タキシードムーン』:2021/05/24(月) 19:18:03

  ガラララララ・・・・

  パン! パンッ!!

「・・・・・・。」

神社の境内にて、小学生くらいの少年が一人参拝のために頭を下げていた
口元でもごもごと、何やら願い事を言っているようだ
何の変哲もない光景・・・・・なのだが

   ペカー

少年の頭の上に豆電球ほどの大きさの『ホタル』が止まっていた
それは通常のホタルではありえない程の強い光を発している

359『烏兎ヶ池神社』:2021/05/24(月) 19:38:31
>>358
境内には他の参拝客はあまり多くは無い。
故にか、まだ『ホタル』に何かを言う者はいないが、
あるいは気にしている者はいるかもしれない。

例えば>>360――――あるいは、神社の関係者か。

360鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2021/05/25(火) 01:54:00
>>358

(最近は、小さい子がよく…………? なんだろう?
 あれは、『ホタル』……『夜じゃない』のに?
 いや、ああいうアクセサリーが流行ってるのかな)

          サッ
             サッ

境内を箒で掃きながら、
その様子を遠巻きに見る巫女がいた。

もっとも、参拝の最中には気付かないだろうが――――

361小翠『タキシードムーン』:2021/05/25(火) 19:45:51
>>360

「・・・・お爺ちゃんみたいな凄い男になれますように」

「よし!」

少年は願い事を言い終えたのか、顔を上げ、ポケットの中に手を入れた
『賽銭』を入れようとしているのだろう
本来ならば、願い事を言う前に入れるのが作法なのだが、どうやら順番を間違えたようだ

「あ、あれ? おかしいな?」

少年は何度も何度もポケットの中を探る
そこに何もなかったためか、胸ポケットの中も探しているが、
何かが出てくる気配はまったくない

「ない・・・・ないぞ・・・・」

362鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2021/05/25(火) 22:04:57
>>361

        ザッ
               ザッ

箒を持った状態で、ゆっくりと歩み寄り…………

「――――『無くってもいい』よ。
 お詣りには、絶対必要ってわけじゃないからさ」

と、一言だけ小声で伝える。

「『気持ち』が一番、重要だからさ。
 それがあれば、他のことは、無くっても良いんだよ」

周りに保護者も見当たらないし――――
『賽銭』は『有難い』が、参拝には『無くても良い』のは事実だ。

363小翠『タキシードムーン』:2021/05/25(火) 22:24:09
>>362

「あ、あぁ・・・・えぇっと・・・・」

>「――――『無くってもいい』よ。
> お詣りには、絶対必要ってわけじゃないからさ」

「え? あ、もしかしておねえさんってここの人?
 でも・・・お金がないとおねえさん達も困るんじゃあ・・・・」

テレビなどでよく見る観光地の神社と比べるとここは人が少ない
子供心ながら、神社の経営の事を心配しているようだ

364鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2021/05/25(火) 22:42:19
>>363

「うん、ボクは『ここ』の巫女をしてるのさ。
 名前は『まーや』……『鳥舟学文』。
 呼び方は、キミの好きにしてくれたって良い。
 それじゃ困るなら『鳥舟さん』でも良いし、
 『まーくん』でも『あやちゃん』でも良いよ」

少しかがんで視線を合わせ、先に自己紹介をしておく。

「キミは……良い子なんだねえ。
 でも、心配はご無用、ボクも考えがあるんだ。
 今、キミを無理矢理追い返したりしたらさ、
 キミはきっと、ここにもう来てくれないと思うんだ」

そして、ナイショだよ、と言わんばかりに、
指を一本だけ立てながら話をし始めた。

「でも、今日ちゃんとお詣りが出来たらさ――
 そしたら、ここの事を良い神社だと思ってくれてさ、
 それで、また来てくれるかも、しれないんじゃあないかな?」

      「それに、もしかしたら友達とか、
       ご両親を連れて来てくれたりとか……ね!」

この少年は『聡い』。
大人の領分、という物を分かっている。
あるいは、『分かりたがっている』。

「長い目で見たら、その方がお得ってワケだよ。
 ふふ、納得してもらえたかな――――どうだろう?」

だから、隠すより『正直に伝える』ほうが、きっと嬉しいだろう。

365小翠『タキシードムーン』:2021/05/25(火) 22:57:22
>>364

「それじゃあ、うーん・・・まあやおねえさんって呼ぶ事にするよ」

視線を合わせてくれた鳥舟の顔を真っ直ぐに見つめる

「うん・・・良い子かどうかはわからないけど、悪者じゃないよ
 うん、うん・・・・なるほど・・・・」

少年は鳥舟の語る『大人の理屈』に素直に頷く
ときどき、そうか、とか なるほど、とか 相槌を打ちながら話を聞いている

「わかった! これって『先行投資』ってやつなんだ!
 俺のお爺ちゃんもよく言ってた!」

「女の人と仲良くなる時は最初に十分な『先行投資』が必要なんだって
 まあやおねえさんがやってるのはそういう事なんだね!」

366鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2021/05/25(火) 23:08:36
>>365

「良いとも、良いとも。
 まあやおねえさん……良い響きだよ。
 ぜひともそう呼んでくれるかな」

子供から『おねえさん』と呼ばれるのは、
そう悪い気はしない。満更でも無いって奴だ。

「そう、先行投資ってやつだ。
 よく物事を知ってるんだね、
 お爺さまが、素敵な人だったのかな――」

彼の言葉振りから、『お爺ちゃんっ子』なのは伝わる。
ただ、なんというか……

(……子供に『モテる秘訣』を教えるだなんて、
 だいぶファンキーな方なのかな、この子のお爺さまは)

「ま、うちは神社だからさ。
 女の子じゃあなくって、参拝の方にモテるためだけどね!」

もう少し年上の子ならわからなくはないが、
モテる、と言うのを気にし出すには少し早く見えていた。
最近の子はマセているとは言うが……
この場合、『お爺ちゃん』とやらに謎がある。

「ああ、ちなみに……ボクはキミをなんて呼べば良かったかな?」

       「――っと、話は場所を移そうか」

と、そこまで話してから拝殿の前なのを思い直す。
幸い他に人はいないが、話をするのに適した場ではない。

少し歩いて、離れたところにある椅子に少年を案内する。

367小翠『タキシードムーン』:2021/05/25(火) 23:45:55
>>366

お爺ちゃんの事を褒められるや否や、少年はその言葉に食い付く

「そうなんだよ! 俺のお爺ちゃんは凄い人なんだ!
 たくさんの女の人に好かれててさ! 誕生日には凄い数のプレゼントをもらってたんだ
 俺もお爺ちゃんみたいに女の人にモテモテの男になりたいなー」

どうやら、少年の『お爺ちゃん』はとても奔放な・・・・
いや、爛れた生活を送ってきた人らしい
しかし、少年はその辺の事がまだわかっていないのか、純粋に祖父を尊敬しているようだ

「俺の名前は『小翠 蒼輝』っていうんだ
 えーっと・・・小翠でもアオキでも好きに呼んでよ」

と、椅子を示されたのをみて、腰かける

368鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2021/05/26(水) 00:08:46
>>367

「よし、それじゃあ小翠くんと呼ぼう。
 キミは苗字で読んでくれるからさ、
 ボクも、それで返した方がきっと良いと思うんだ」

大人扱いが好きなのかは分からないが、
子供扱いするのは、悪い気がしたのだ。
勿論子供なのは違いはないのだが……

「そっか――――」

鳥舟は目を細める。
彼女は『ロマンチスト』であり、
そうした『伊達男』や『遊び人』というのは、
演劇とか、物語の中では好きなのだが……

(…………いや、よそう。 
 道徳的にどうか、とかはこの子には今は関係ないし、
 お爺さんがこの子に優しかったのも、確かなんだろう)

「それは、凄いね。きっとお洒落なお爺さまだったんだ。
 男の子も女の子も、モテるに越したことはないしね、
 ボクはあんまり縁はないワケだけど――――」

椅子があるのは、社務所の近くだ。
社務所に立つ事務職の方に会釈をして、
小翠の横の椅子に座る。

「きっと、とても社交的な人だったんだろうね。
 色んな人に優しくってさ、それに、キミにも優しかったんだろう」

「『誰にでも優しい』ッて意味では、凄く見習いたいよね……」

……しかしながら、『そうなりたい』というのは、
子供らしいのかもしれないが、強く背中は押せない。

最も強く否定は出来ないので、歯切れの悪い反応をしたが……

369小翠『タキシードムーン』:2021/05/26(水) 00:25:02
>>368

鳥舟の心に飛来するもやもや感が示すように、
この少年の『祖父』は倫理的にはちょっと・・・・あれな人間なのだろう
だが、少年は嬉しそうに『祖父』の事を語っている

「うんうん! 俺の親はおじいちゃんの事が嫌いだったみたいだけどさ
 俺にはすっごい優しい爺ちゃんだったんだ
 よく昔の武勇伝とか話してくれてさ、超かっこいいんだぜ!」

社務所の近くに置かれた椅子に座る
一瞬だけ、事務職の方と目が合ったが、恐らく苦笑いを浮かべていただろう
そして・・・・・

「まあやおねえさんに縁がないって・・・・それって、おねえさんがモテないって事?」

普通の大人であれば、言いにくい・・・・濁すような言葉を躊躇うことなく口にした
子供故の・・・・・残酷な言葉だ・・・・・!

「そんな事ないと思うなー
 だって、おねえさん、凄い綺麗な人だから」

370鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2021/05/26(水) 01:30:07
>>369

              ギシ

パイプ椅子はあまり座り心地が良くはなかった。
お察しの通り、繁盛していない証の一つかもしれない。

「武勇伝か――――良いねえ。
 ボクもさ、演劇とか……小説とかでさあ。
 そういうカッコい〜いオトナの人に憧れた事は、あるよ」

「キミと違って、身近にはいなかったけどね――――」

親が嫌うのはそれはそうだろう。
小翠が好むのも、それはそうだろう。
そして親が小翠を窘めているのであれば、
鳥舟からあえて何かを言う必要もない。

「ただ――――そうだね、劇の主人公みたいには、まだ、なれてないなァ」

残酷な言葉にはあいまいな笑みを浮かべた。
実際、鳥舟はあまりモテる方ではない。

「え。綺麗? そう? ふふ、ありがとう。お爺様の教育の賜物かな。
 嬉しいよ――――――ただ、そう言ってくれる人と、会う機会がなくってさ」

            「白馬の王子様が来てくれたらいいんだけどね、
             いや、王子じゃあなくってもいいけど、
             そういう……運命の相手って、言うのかな?」

どこか遠くを見た。
より厳密に言えば、『相手を見つけられない』
――――鳥舟学文は、『理想が高い』のだ。

「あ、いや。まあボクの恋愛事情は置いとこう。
 キミのさ、お爺様の話とかもっと聴かせてくれない?」

小翠が楽しそうなので、その話に戻そうとする。

       ……いや、自分の恋愛の話から軌道修正したいからもあるが。

371小翠『タキシードムーン』:2021/05/26(水) 21:07:50
>>370

椅子の座り心地はそれ程良くはないが、小翠は気にしていないようだ
ぎしぎしとフレームを軋ませながら、楽しそうに話をしている

「白馬の王子様に、運命の相手かー
 やっぱり、女の人達ってそういう人に憧れるものなんだね」

うんうん、と頷きながら頭の中に何人かの人達の顔を思い浮かべる
お爺ちゃんと仲良くしていた女性たちはお爺ちゃんと一緒にいるといつも嬉しそうだった

・・・・・・まあ、お爺ちゃんがいなくなると少し『嫌な雰囲気』だったけれども

それにしても、『運命の相手』かー、と思いながら話を聞いていると、
小翠の中に一つの『考え』が思い浮かぶ

「ねえ、まあやおねえさん・・・・
 その、『運命の相手』なんだけどさ・・・・ほんの少しの時間だったらここに呼ぶ事も出来るかもよ?」

小翠は唐突に一つの提案をした
少年の頭の上で『ホタル』が身じろぎをする・・・・

372鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2021/05/26(水) 23:26:28
>>371

「いやあ、どうだろうね?
 ボクはそういう出会いを、したいけどさ。
 イケメンなら誰でも良いってヒトとか、
 運命なんて要らない、ってヒトもいるとは思うし」

       「男の子だって憧れるんじゃないかな。
        や、ま、キミのお爺さまは、
        自分が王子様ッてタイプだろうけどね」

誰もが自分のようなロマンチストではない、
と客観視できるくらいの見識は鳥舟にもあった。

そして。

「え? あ、いや、それは――――――」

          タジ…

「なんだろうね、『占い』とか、そーゆーハナシ。
 じゃ、無いみたいだね。………………『それ』」

             「『スタンド』……かな?」

一瞬戸惑うが――謎だった『蛍』と、繋がった。
どのような能力なのかは分からないが、その言葉を出す。

373小翠『タキシードムーン』:2021/05/27(木) 00:28:43
>>372

「うーん・・・・俺は別に『運命の人』って言われてもなあ
 お爺ちゃんも言ってたけど、『とくていの誰かに縛られない自由な生き方』がしたいぜ
 あ・・・・ でも、そのせいでお爺ちゃんは・・・・」

話の中で、少しだけ暗い表情を浮かばせる小翠
だが、この後に鳥舟が発する言葉を聞いて、急に『ギクッ』としたように身体を強張らせる

>             「『スタンド』……かな?」

  ギクッ!

「もしかして、まあやおねえさんも・・・・見えるの?」

少年の頭の上の『ホタル』が一際光量を上げる
びっくりしたかのようなリアクションだ

「そうなんだ、こいつは俺のスタンド『タキシードムーン』
『理想の姿』になる能力を持った、俺の相棒さ」

374鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2021/05/27(木) 01:43:20
>>373

祖父の話をこれ以上掘り下げた場合には、
きっと『不幸』な事まで言わせてしまう。
そう判断し、曖昧な、鵺的な笑みに留めて。

「――――もちろん、見えるとも。
 ボクは巫女だから……ッてわけじゃあないけどね!
 スタンド使いなんだ。内緒だけどさ」

          ヒラ…

「もっとも、ボクのスタンド――
 『ヴィルドジャルタ』のことは、
 ボク自身あんまり分かっちゃいないけど……」

袖を軽く振るが、何も出て来ない。
『知る手段』はあるにはあるのだが、
鳥舟の心の準備の方が、まだ済んでいない。

「『タキシードムーン』
 それで、ボクの理想の恋人像になってくれるって事か」

得心した様子で、頷くが――――

「……いやいや! それはちょっとなんていうかさ。
 恥ずかしいというか……
 それこそ、心の準備が出来ないし」

「キミにボクがデレデレしてる所を見せるのもさァ、
 なんていうかさ、こう、よくない気がするんだよね!」

それが招くのは幸福だけではない気がする。
何よりここは白昼の神社だし、自分は今オフでもないし、色々……だ!

375小翠『タキシードムーン』:2021/05/27(木) 21:57:39
>>374

話の流れが変わった事で、祖父についての悲しい話から興味は移ったようだ
少年の顔に先ほどまでの憂いた表情は消えてなくなる

「そっかー、漫画とかでも『巫女さん』は凄い能力を持ってたりするからね!
 それなら、スタンドが見えても・・・・・って、なんだ、おねえさんもスタンド使いだったんだ」

露骨にがっかりした表情となる
スタンド使いというのも十分に凄い存在なのだが
少年自身がスタンド使いであるためか、それ程興味はないようだ

「そう! 俺の『タキシードムーン』は女の人の『理想』を映して変身するスタンド
 だから、こいつの能力なら・・・・え? やめちゃうの? なんで?」

心の底から不思議そうな顔を浮かべる
小翠にとって『理想の男性』というのは、すなわち『理想のヒーロー』と同等に思っているのだ
「好きな仮面ライダーに会わせてあげるよ」と言われたら
「やったー!行く行く!」と答えるような子供に、どうやら男女の機微はまだわからない様子・・・・

「よくないんだ・・・・こういうのって
 ふーん、よくわからないけどわかったよ!」

そんな事を話していると、そろそろ日が傾いてきた
どこからともなく『夕焼け小焼け』のメロディも流れ始める・・・・

「あ、そろそろ帰らないと」

376鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2021/05/27(木) 22:13:57
>>375

「フィクションの巫女さんみたいにさ、
 他の誰も知らない不思議な力を使えたら、
 それは凄く素敵なんだろうね」

「それでお願い事を、叶えてあげられたら、さあ」

残念ながらこの世界は現実で、
信じられないことは起きても、
暴いた先には剥き出しの真実だけがある。

「そういう意味では……キミのスタンドの能力は、
 人の願いを叶える力は、きっと凄い事なんだろうね。
 ――ただ、ちょっとね、や、ボクの価値観の話なんだ」

「そうしてほしい、って人も、きっといると思うんだよ」

よくない――――とも限らない。
そのあたりはまさに、『機微』の話と言えるのだろう。

「ああ、チャイムが……そうだね、此処は夜は暗い。
 今日はそろそろ帰って、また、いつか来てよ」

       「それじゃ…………ようお詣りでした」

                ペコー

頭を下げて、立ち去るであろう少年の背を見送る。
今度は家族も連れて、一緒に来てくれるだろうか? それとも――

377小翠『タキシードムーン』:2021/05/27(木) 23:28:01
>>376

「うん! 俺もこの能力で、おねえさん達を助けてあげたい、って考えてるんだけど
 うーん・・・・何がいけないんだろう、まだまだ全然願いを聞けてないんだ
 さっきも、まあやおねえさんは嫌がってたみたいだし、なんでだろう・・・・?」

先程の様子を見る限り、繊細な女性の心というものをまだまだ小翠は理解していない様子
わからない事がわからない・・・・その事に小翠は悩んでいる様子だ

小翠はチャイム音に耳を傾ける

「うん、今日はありがとう、まあやおねえさん!
 また・・・今度はちゃんとお賽銭を持って来るよ!」

と、言うと、鳥舟に向かって手を振りながらこの場を去って行った
少年が宣言通りに再来するかどうか・・・それはまたのお話に

378七篠 譲葉『リルトランク』:2021/06/04(金) 06:52:27

 雨の中、クチナシの浴衣を着た少女が一人――七篠だ。境内をゆっくりと散策している。

 普段は背中に流している焦げ茶の髪を、一本足の簪――簪に見えるが実際は『木の枝』だ――でまとめ上げている。かんざしの先にはクチナシの花が一輪。まるで本物のように香っている。
 近くには『樹木の精』のような人影が付き従っているようだが…。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

――この時期は…いつも『とうかさん』で隣の県までおばあちゃんに連れてってもらったなぁ。

 『とうかさん』とは稲荷大明神を奉るお祭りで、七篠がここに来るまで住んでいた近くの県で毎年6月の第一金曜日から始まるものだ。
 『浴衣の着始め』として、七篠は毎年傘を片手に浴衣を着て『とうかさん』で屋台に舌鼓を打っていた。

 だが、ここは星見町。
 『とうかさん』はなく、『浴衣の着始め』もないだろう。
 それでも染み付いた習慣は変えようがなく、七篠はどうしても思ってしまった。

――やっぱり夏前には浴衣を着たい…!

 そうして思わずやってきてしまった神社。
 しかし、夏祭りには早いこの時期に、屋台はなく、仕方なく散策をしていたわけだ。

「ふぅ…」

 七篠は小さくため息をついた。

379『烏兎ヶ池神社』:2021/06/05(土) 00:35:45
>>378

晴れ姿にも天気はお構いなく、降り注ぐ雨――――
それゆえにか境内に人は少なく、『スタンド』に気付く者もいない。

とはいえ――――

全く人がいないわけでは、ないようだった。例えば、>>380のような。

380甘城天音『ビター・スウィート・シンフォニー』:2021/06/05(土) 08:20:20
>>378
「……」

首からカメラを提げた
七篠より一回り身長の低い少女が、
左手で傘を差し、右手で額を抑えている

「ん…?」

七篠と隣の人影の存在に気付き、じっと見つめている


七篠と同じ歳、同じ学校だが知り合いかどうかは貴方に任せる

381七篠 譲葉『リルトランク』:2021/06/05(土) 08:40:07
>>380

 七篠は甘城に気付いたのか、浴衣のたもとを軽く押さえながら手を振った。

「甘城さんも、お詣りですか?」

 どうやら二人は顔見知りのようだ。
 七篠は『リルトランク』を追従させながら、甘城に近付いていく。
 一般人には見えないそれが、甘城に見られていることに気付いていないようだ。

「あ、カメラ…!
 もしかして、お詣りじゃなくて撮影でしたか?」

382甘城天音『ビター・スウィート・シンフォニー』:2021/06/05(土) 09:01:08
>>381
「…こんにちは、ゆずポン」

ゆ ず ポ ン

とんでもなく馴れ馴れしいあだ名で七篠を呼ぶ
七篠は怒らないだろうか?

「雨の日の神社は絵になるかと思って」

雨の日の神社も中々風情があっていい物だ

「来た甲斐はあった、片頭痛はするけど…」

苦しそうに額を抑えながらも、良い被写体に出会えたことを喜ぶ

「ところで、1枚いい?」

そういうと七篠と『リルトランク』にカメラのピントを合わせる

383七篠 譲葉『リルトランク』:2021/06/05(土) 09:27:08
>>382

――何回聞いても、美味しそうで楽しいあだ名。
――それに…やっぱり私は『ユズ』って呼んでもらえると嬉しい…。

 意外なことに、七篠は美味しそうな『ゆずポン』というあだ名を内心喜んでいたようだ。

「神社はやっぱり雨の日がいいですよね。わかります」
「頭痛、大丈夫ですか? 頭痛薬持ってきてたらよかったんですが…」

 七篠にとって、神社――特に『浴衣始め』は雨降りのイメージがある。
 まだ梅雨も明けない時期に傘を差して祭りに行くのが『浴衣始め』なのだ。それ故、『神社=雨』という方程式があった。

「私なんかでよければ、被写体になりますよ」「うん、やっぱり神社なら風景メインですよね」

 七篠はファインダーの先が自身を中心ではなく、ややずれていることに気付いた。
 だが、『神社と浴衣の少女』という写真であれば当然メインは神社だろうと思ったようだ。

384甘城天音『ビター・スウィート・シンフォニー』:2021/06/05(土) 09:45:02
>>383
>頭痛、大丈夫ですか?

「大丈夫よ…、そこまで酷い物じゃないから、気にしないで」

多少の痛みは感じるが、それ程症状は酷くないらしい

>私なんかでよければ、被写体になりますよ
>うん、やっぱり神社なら風景メインですよね

「風景も良いけど、もっと『面白そうな物』が撮れるかもね
 『二人とも』並んで…」

『二人とも』、『七篠とリルトランク』にそう声をかけシャッターを切ろうとするが…

「…私も入る」

写 り た が り あ ま ち ゃ ん

自らのスタンド『ビター・スウィート・シンフォニー』にカメラを持たせ
七篠と『リルトランク』の傍に行き一緒に写ろうとする

385七篠 譲葉『リルトランク』:2021/06/05(土) 09:58:34
>>384

「頭痛、大丈夫そうならよかったです」

 七篠はほっと息を吐くが気遣わしげな様子だ。

「『面白そうなもの』…? 『二人』…!!?」

――もしかして、甘城さん『見えてる』…!?

 七篠は驚いた表情でまじまじと甘城を見つめている。
 そして『すらっとした体躯のスタンド』が現れ、それにカメラを預けたのを見たところで混乱が最高潮に達した。

――この間戦ったスタンドは、『ヘッドライト』から出た『光』を浴びせることで行動を制限した…!
――もし、『カメラ』から出た『フラッシュ』やなにかできるスタンドだったら!?
――一抹くんは言ってた。スタンド使い相手は、何でも起きるし備えないといけないって…。

――でも、どうして、本体がスタンドを置いてこっちに来るの…!?

 七篠が混乱の末取った行動は、『カメラの射線』から逃れることだった。
 横にずれ、写らないように離れる。

386甘城天音『ビター・スウィート・シンフォニー』:2021/06/05(土) 10:14:52
>>385
「(´・ω・`)」

『カメラの射線』から難なく逃れる七篠

私とは写りたくないのかなぁ…
こんな風に避けられると、ちょっと、いや
大分傷ついた顔するあま公
まるで飼い主に捨てられた仔犬みたいだぁ…

「…私、何か嫌われるような事しちゃった…?」

泣いてはいないがやや涙声で七篠に聞くあま公
自分の能力を警戒されている事に気付いていないらしい

387七篠 譲葉『リルトランク』:2021/06/05(土) 10:23:42
>>386

 涙目の甘城の言葉に七篠は罪悪感を抱いた。
 二人には身長差がある。結果、甘城はほぼ上目遣いになり、涙目の威力は倍増している。
 だが、涙目上目遣いの甘城を見てもなお警戒しているのか、少しだけ距離を置いて口を開く。

「えと、その、嫌いとかそうじゃなくて!
 ……甘城さん…『スタンド使い』…だよね…?」
「実は私、ちょっと前に、スタンド使いと戦って…。
 そのときに一緒に戦ってくれた子が『スタンド使いは警戒した方がいい』みたいに話してたからつい…」

 甘城に対して七篠は敵意を持っていない。
 だが、先日一抹が怪我をしてしまったのを見た後だ。どうしても『スタンド使い』への警戒心は出てしまう。

388甘城天音『ビター・スウィート・シンフォニー』:2021/06/05(土) 10:51:30
>>387
「そう…戦ったの…」

スタンド使いならば、スタンド使いを警戒するのは当然の事だろう
『スタンド』とは特殊な精神が形を持った物だ
故に『スタンド使い』は『普通の精神の持ち主』ではなれない
必然的に『どこかおかしな精神性』でなければなれないのだ
どんなおかしな奴が、どんなおかしな能力で何をしてくるか分からない

しかしあま公――甘城天音には、スタンド使いと戦った経験が無かった
今まで色んなスタンド使いと出会ってきたが、どのスタンド使いにも襲われた事が無く
ちょっと変わった連中程度の認識でしかなくなっており、感覚が麻痺していたのかもしれない

「私は、スタンド使いと戦った事が無いから、その感覚がよく分からないけど
 無神経な事して怖がらせたみたいね…ごめんなさい…
 私のは『お菓子を出す』事しか出来ないから、安心して」

そう言って『ビター・スウィート・シンフォニー』の能力で何かお菓子(君の好きなお菓子を記入してみよう)を出した

『お菓子を出す程度の能力』
お世辞にも戦いに向いているとは言えない能力だ
今、目の前にいる七篠にも勝てないだろう

389七篠 譲葉『リルトランク』:2021/06/05(土) 11:15:04
>>388

「戦ったことない、んですね」

 戦闘経験の有無は度胸や覚悟の有無に繋がる。
 戦ったことのなかった七篠は戦ったことのある今の七篠とは違った。
 警戒を即座に解けるものではないが、それでも多少身体の強張りは解けた。



「大丈夫です、こちらこそすみません。
 『お菓子』…! 素敵な能力ですね!」

 ここが神社だからだろう、お祭りの定番である『綿飴』が甘城のスタンドから出される。

――ふわふわで柔らかそうで、怖くなさそう…。

「私のは、こんな能力なんです」

 七篠は安心したようだった。
 自身の簪(木の枝だが)を抜き髪がはらりと落ちる。
 そして枝を解除する。七篠は手に残ったのは簪にくっついていたゴミだった。
 七篠がそのゴミを広げると手のひら大の紙切れになった。小さなそれに『リルトランク』を触れさせると今度は『みかん』を2つ実った状態で生やす。

「柑橘類ならだいたい生やせるんです」

 一つだけもぎ取り、残りを枝ごと甘城に渡そうとしてみる。

390甘城天音『ビター・スウィート・シンフォニー』:2021/06/05(土) 11:40:14
>>389
「…ありがとう」

七篠から枝を受け取り、『みかん』をもぎ取って
その一粒を何の警戒も無く食べるあま公

モグモグ

「美味しい(小学生並の感想)」

ちょうどお腹が減っていて、喉も乾いていたので『みかん』は丁度良かった
美味しい『みかん』を食べて笑顔になるあま公

「お礼に、綿飴あげる」

先程出した『綿飴』を七篠に差し出す
七篠の警戒は少しは解けたとはいえ、スタンドが創り出した物を食べるだろうか?

391七篠 譲葉『リルトランク』:2021/06/05(土) 11:56:06
>>390

「『みかん』、美味しいですよね。
 私の能力で出した果物は売られてるものと同じくらい美味しいんですよ」

 そう言いながら七篠は自分の手にあるみかんを口に入れる。
 当然毒もないし、ただの普通のみかんだ。

「『綿飴』、ありがとうございます。
 いただきますね」

 甘城が自分からこちらのスタンドで生成されたものを食べたのだ、もう警戒は不要だろう。
 七篠は綿飴に顔を埋めて食べた。口の中に甘さが広がる。思わず七篠は笑顔になった。
 神社に浴衣、綿飴。これぞまさしく『浴衣始め』だ。

「美味しいんです…!
 まさかお祭りでもないのに食べられるなんて…!」

 喜びながらどんどんと食べ進めていく。
 ……七篠は当然知らないことだが、この『綿飴』は七篠の体重を増やしてしまうのだろうか。
 七篠は完食しつつある。

392甘城天音『ビター・スウィート・シンフォニー』:2021/06/05(土) 12:31:23
>>391
何でもない普通のみかんも、素朴な味わいがあって良い物だ

「良かった…喜んでくれて」

自分の(スタンドが)創った物を、こうも美味しそうに食べてくれると嬉しい
完食時の体重増加ペナルティーは無しにしてやろうと思うあま公だった

「…一緒に写っていいかしら?」

改めて、一緒に写真に写る事を提案する

「そういえば…何で浴衣?」

今更ながら疑問に思う

「今日、お祭りなんかあった?」

393七篠 譲葉『リルトランク』:2021/06/05(土) 12:43:47
>>392

 七篠は綿飴を完食してから甘城に言葉を返す。

「はい、ぜひ!
 すみません、さっきは逃げちゃって…」

 七篠は先程の謝罪をし、身体を甘城に寄せた。
 後ろには『リルトランク』がいるが、『スタンド』は写真には写らない以上女子高生が二人神社を背景に写真を撮っているものになるだろう。

「あ、実は星見町に来る前に住んでたあたりの『着物始め』のお祭りがこの時期なんですよ。
 それで、せっかくだから着たいなと思っちゃって」

 あまりほかの場所にはないらしいその習慣に七篠は「『着物始め』がないならいつ始めるんですかね?」と言いながら首を傾げる。

「あ、スタンドさん、綺麗に撮ってくださいね!」

 カメラを構えている甘城のスタンドに意味はないかもしれないが声をかけた。

394甘城天音『ビター・スウィート・シンフォニー』:2021/06/05(土) 13:07:17
>>393
「前の所のお祭りね…
 似合ってて良いと思うわよ、クチナシの浴衣」

>あ、スタンドさん、綺麗に撮ってくださいね!
BSS『はい、チーズ♪』

キェェェェェェアァァァァァァシャァベッタァァァァァァァ!!
ずっと喋る機会が無かったため、あま公自身も忘れていた事だが
BSSは自立した意思を持つスタンドだった

パシャ☆

BSSが撮った写真には、『リルトランク』は写らなかった
ただ、甘城と七篠の二人が写っているだけだった
あま公が思ったような『面白い』写真にはならなかったが、これはこれで良い

「写真、今度送るからね」

こうしてまた思い出が一つ増えた

さて、これからどうしようか
もっと写真を撮ろうか、ゆずポンと一緒に神社を散策するのも良いか

395七篠 譲葉『リルトランク』:2021/06/05(土) 13:26:09
>>394

――スタンドが、喋った…!!?

 想定外の事態になんとか笑顔を維持しながらもびっくりしているというなんとも器用な表情でシャッターは切られた。
 もしかしたら、これはこれで味わい深い写真になっているかもしれない。



「写真楽しみにしています。綿飴もありがとうございました。
 ちょっと、やりたいことを思い出したので今日は寮に戻りますね。
 じゃあまた、学校で!」

――綿飴食べたら、他の屋台の味も恋しくなっちゃった。
――キャベツとイカ天と、割り箸買って『はしまき』作ろうっと。

 美味しい綿飴を食べた七篠はせっかくなのでお祭りグルメを自作するつもりのようだった。
 浴衣のたもとを押さえ、手を振りながら神社を後にした。

396鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2021/07/20(火) 19:51:55

七夕の時期も終わり、酷暑も深まるが、
夏祭りに向けての準備は欠かせない。
もっとも、烏兎ヶ池神社の敷地は広くも無いし、
祭りの規模もさして大きなものではない。
他の神社の行うそれや、町の行うそれに比べて、
祭り目当ての『客』は、さほど来ないだろう……

「…………」

             サッ
                  サッ

それを示すように、今参拝者はごく少ない。
鳥舟としてもそれは承知の事なので、
『神秘の池』こと烏兎ヶ池の周辺を、いつも通り掃除していた。

397ナイ『ベター・ビリーブ・イット』:2021/07/20(火) 21:51:12
>>396

「はあ、はあ、はあ、はあ」


鳥舟が掃除に赴くと、池の近くで、子供が座り込んでいた。
息は荒く、汗だくで、ピンクのTシャツがまるで雨に降られたかのようにずぶ濡れだ。
長い金髪からポタポタと汗が滴っている。
ほっとくと熱中症で倒れそうだが、暑さのせいではない。
単純に運動の結果だろう。


「お、おかしいの……なんでダメなんじゃ?」


子供は地面に置いた新聞紙に、木の棒をあて、ひたすら擦っていた。
原始人が火を起こそうとしているような光景だ。
傍らには、『花火セット』

398百目鬼小百合『ライトパス』:2021/07/20(火) 22:17:35
>>396-397

「さてと…………」

手に紙袋を持って神社にやってきた。
以前から何度か足を運んでいたが、
『目的の人物』には会えなかった。
今日はいるだろうか?

399鳥舟 学文『リトル・スウィング』:2021/07/20(火) 22:24:59
>>397

左右不揃いな髪の下の金色の瞳が、
湖の近くにいる、その奇妙な存在を捉えた。

「ん……」

一瞬『迷子』をという言葉が頭を過ぎるが、
それより先に傍らの『花火』に視線が行く。

「おっとっとっと! お嬢さん、お嬢さん。
 ここはね、花火で遊んじゃあダメなんだよ」

      「花火は公園とか……
       や、公園も良くないのか。
       して良いところで楽しもうね」

と、声をかけてから――
『火気』の方のクオリティに、気がついた。

「って……もしかして。
 えっと、それで火を着けようとしていたのかな」

400ナイ『ベター・ビリーブ・イット』:2021/07/20(火) 22:35:52
>>399

「なんじゃお前さんは……?
 ええ……!? ここはいかんのか?」


子供は声をかけられて驚いた様子だ。
そして言葉の内容にショックを受けたようだった。
これだけの頑張りが否定されたのだ。逆に(?)火がついていなくて良かった。
成功したとたん否定されたらそのまま倒れていたかもしれない。


「そうじゃ……テレビだとこれで火がついておったんじゃが……
 ここも公園もいかん、火もつかんでは、わしはどうしたらいいんじゃ?」


疲労と不満で不満そうな顔をする子供。悪びれた様子がない。
そもそも、ここが神社の敷地内という意識が無いのかもしれない。


>>398

「お……?
 あそこに見えるは探偵さんじゃないかの?」


背後から声をかけられ、振り向いていた子供が向こうからやってくる百目鬼に気づく。

401鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2021/07/20(火) 22:52:22
>>399(ナイ)

「ええとね、ボクは、ここの巫女…………
 ああいや、この池の掃除をしてる人なんだ。
 実は、それがボクのお仕事でさ」

しゃがみこんで視線を合わせる。
珍しい色の瞳でこそあったが、
目付きに剣呑な物はない。

「ああ……これで火を付けるのはね、凄く難しいよ。
 実はボクも昔やってみたことはあるけど……ね。
 何時間も何時間もやっても、つかなかったなァ」

「その時も、この辺でしたんだったっけ。
 近くに水があるから大丈夫だろ、ってね!」

鳥舟はロマンチストでミーハーだ。
昔も、テレビでやっていたから試したのだ。
もっとも、これが齎すロマンというのは、
少し趣向が違う物ではあるのだが……

「ウーン、一番良いのはお家なんだけどねえ。
 これくらいの大きさの花火だったら、
 湖畔公園とかなら、しても良かったかなあ……ん」

              「『探偵さん』?」

一緒になって花火のできる場所を考えていたが、
ナイの『第三者』の存在を示す声に――振り返る。

>>398(百目鬼)

境内にはそれらしい人はいなかったが、
神秘の池、『烏兎ヶ池』へと小径を進み、
件の霊地に踏み入ると、巫女の姿があった。

そして、『ナイ』の声に振り返る。

「――――よおこそお詣りです」

現れた女性に小さくお辞儀する。
単なる参拝客なのであれば、
それ以上干渉はしないが――

(こんな小さい子が探偵さんなんて言うから――
 てっきり『ホームズ』みたいな人かと思ったんだ。
 でも、なんていうか、ホンモノの人って感じなのかな)

402百目鬼小百合『ライトパス』:2021/07/20(火) 22:53:11
>>399-400

先日参加した『アリーナ』の試合で、
トレードマークのジャケットがボロ切れにされてしまった。
そのため、今日は上着を着ておらず、
黒いワイシャツ姿だった。
相変わらず煙草を咥えているが、火は点いていない。

「何をやってるんだい?」

歩いていくと、その光景が目に留まった。
もちろん場所もあるが、
子供が一人で『火遊び』というのはいただけない。
もっとも、あの方法では『着火』は難しいだろうが。

「お嬢ちゃん、また会ったね。まぁ、一休みしなよ」

紙袋を地面に下ろし、
ポケットから出したハンカチで少女の汗を拭いてやる。
本格的にブッ倒れる前に水分補給が必要だ。
同時に、鳥舟の方に顔を向けた。

「鳥舟さん――いてくれて良かったよ。
 実は、ちょっと『見てもらいたいもの』があってねぇ」

それというのは『紙袋の中身』の事だ。

403ナイ『ベター・ビリーブ・イット』:2021/07/20(火) 23:00:03
>>401-402

「池の掃除か……テレビで見たぞ。池の水を抜くんじゃろ。
 しかし……そうか、これではダメなのか?
 テレビは嘘じゃったか……」


しょんぼりする子供。
疲労か、気力を失ったか、がっくりと地面に手をつく。


「うむにゅ……」


と、そこへハンカチが押し当てられる。
風呂後の犬のようにむにむにと汗を拭かれた。

404鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2021/07/20(火) 23:21:08
>>402(百目鬼)
>>403(ナイ)

「流行ってるんだねェ、あの番組って……
 小さい子もみぃんな見てるんだね。
 テレビも嘘だけじゃあないんだけど、
 全部本当じゃあ、なかったりはするんだよね」

ボクも見てるよ、と付け加えて――

「ええと、探偵さんって呼んだ方がいいですか?
 や、小百合さんのお仕事がそうだったのは、
 初めて知ったわけですけど――」

         クス

(前には違う、って言ってた気が、するんだよね。
 あの時は何かを調べている風だったし、
 誤魔化したのか、それともこの子の勘違いか。
 五分五分ってところなのかな――――)

何となく、『小百合』とこの童女の関係は、
微笑ましいものに感じられた。
しかし――

「とりあえず、お参り――ではないみたいですね」

彼女の目的というのは、一体なんだろうか?
紙袋に視線を向ける。

「どうですかね、小百合さん。この場で拝見しても?」

405百目鬼小百合『ライトパス』:2021/07/20(火) 23:48:21
>>403-404

「まぁ、基本的には間違っちゃいないと思うけどねぇ。
 そのやり方で火を起こすのは大変だよ」

アウトドアの専門家ではないが、
そういう方法がある事は知識として知っている。
摩擦熱を利用するという方向性自体は正しいのだろう。
ただ、それをやるには道具が粗悪すぎるし、
子供の力では荷が重い。

「汗をかいた時には、ちゃんと『水分』を取るんだよ」

    グシ グシ グシ

             「それから『塩分』もねぇ」

                グシ グシ グシ

    「――――よし、綺麗になった」

顔の汗を一通り拭き終わり、ハンカチを離す。

(『ライター』は出さない方が良さそうだね)

ここが花火をしても問題ない場所なら、
手を貸すのも吝かではないが、そういう訳にもいくまい。

「ははは、『探偵』か。いや、『小百合』でいいよ」

実際、それは少女の勘違いなのだが、
何やらショックを受けているらしい直後のため、
この場で訂正するのは躊躇われた。

「勿論いいよ。
 前に『アンティークが好きだ』って言ってたね?」

          ゴソ

「掃除の途中で『これ』が家から出てきたのさ。
 それで、せっかくだから『目利き』を頼みたいんだよ」

紙袋の中身は、年代物らしい『鉄製の行灯』だった。
台座の上に、蝋燭を設置する箱状のスペースがあり、
その上部に持ち手が付随している。
正面には、『すりガラス』のはまった扉が設けられていた。
(ttps://www.rafuju.jp/products/detail.php?product_id=787211)

406ナイ『ベター・ビリーブ・イット』:2021/07/20(火) 23:56:00
>>404-405

「嘘ではないが、わしでは無理ということか?
 わしも探偵さんみたいに強くて速いオバケがおったらのー……」


自分が子供で非力な事はわかっているためか、
なんとなく火がつかない原因を理解したらしい。


「お二人はお知り合いかの?」


とりあえず顔の汗は拭かれた。
全身汗だらけで服は透けてるまであるので焼け石に水感はあるが。


「ほう、これは……なんじゃこれは?
 カゴ……?」


とりあえず火をつけるのを諦めた子供は、行灯をまじまじと見つめる。

407鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2021/07/21(水) 00:29:32
>>405(百目鬼)
>>406(ナイ)

「そうだねえ、大人だって難しいんだから。
 凄く練習した大人の人が何分もやって、
 それでようやく……みたいな、お話なんだよ」

       (……おばけ? 『もしかして』)

「…………え! や、参りましたね、小百合さん。
 たしかにアンティークは好きなんですけど、
 ボクも趣味であって、鑑定眼とかは、どうにもね。
 それも承知で……ッて事なんでしょう、から」

          ス……

「ボクなりに目を利かせてもらいますので」

     「はい、お預かりしますよ……っと」

手袋もつけていない手なので、
紙袋ごと受け取って中身を見る。
日頃馴染みのある品では無いが――――

「ん……ははあ、はあ、これはまた。
 『アンティーク風』じゃあなくって、
 本当にちゃんと、歴史を重ねてるヤツですね。
 実直で、良い作りだと思いますけど…………ね。
 いや本当に……それくらいしか言えないですねェ」

鳥舟の好みは、以前の服装通り、
どちらかと言えば舶来の品に偏っている。
故にこの行燈の『質』を語る言葉を持たない。

「資産価値は保証できませんケド、
 足の所の作りなんて、モダンで素敵ですし。
 ボクとしては……ボク個人としては、
 捨てるのが勿体無い品だとは思いますよ」

     「――っと、ちなみにねお嬢さん。
      これは昔の『お部屋のライト』。
      ここ、この扉に灯りを入れるんだよ」

ナイの視線も感じつつ、無難な評定だけを下した。

「…………そういえば、ボクと小百合さんは、
 以前にも何度かお会いしてますけども。
 小百合さんと、このお嬢さんは、どんなご関係で?」

紙袋を返そうとしながら、気になるところを問い掛ける。

408百目鬼小百合『ライトパス』:2021/07/21(水) 00:54:20
>>406-407

「そうだよ。鳥舟さんとは前に会った事があってね」

全身汗だくの少女を見つめながら、
『風歌』を自宅に招いた時の事を思い出した。
風呂に入れてサッパリさせてやりたい所だが、
他所の子供を勝手に連れて行くのは問題がある。
以前に会った時といい、この子供からは、
『普通ではないような雰囲気』も感じてはいるが……。

「ま、カゴって言えばカゴだねぇ。『火を入れるカゴ』さ」

「これは『行灯』っていうんだよ」

鳥舟からの説明もあったので、補足程度に付け加える。
『家にあった品物』ではあるが、使った覚えはなかった。
自宅は庭付きの『日本家屋』だが、
さすがに蝋燭の明かりに頼るような生活はしていない。

「古い物なのは分かるんだけど、
 いつ頃からあるのかは分からなくてね」

「アタシが生まれる前か……。
 それとも親父が子供の頃からあったのかもしれないねえ」

「どうもありがとう。
 そう言ってもらえると、アタシも持ってきた甲斐があるよ。
 埃を被らせておくのも勿体無いし、
 たまには使ってみるのも風情があっていいかもねぇ」

気さくな笑みと共に、紙袋を受け取る。
別に値踏みを頼んだ訳ではなく、
自分以外の人間の意見が欲しかったのだ。
それを考えた時、真っ先に浮かんだのが、
『アンティーク』について語っていた鳥舟だった。

「この子は『知り合い』って程じゃないんだけど、
 一度たまたま顔を合わせた事があるのさ」

会った場所は古めかしい『立ち食い蕎麦屋』。
そんな所で会ったとは、夢にも思わないだろう。
そういえば、あの時も『風歌』が一緒だった。
『スタンド使い』が三人同じ場所に集まっていた事になる。
思い返してみると賑やかな話だ。

(さっき一瞬『間』があったように見えたのは、
 アタシの『気のせい』かねぇ…………)

409ナイ『ベター・ビリーブ・イット』:2021/07/21(水) 01:06:19
>>407-408

「探偵さんとは一緒にご飯を食べたんじゃ。
 立ち食いソバ屋での。風歌……風歌ちゃんが奢ってくれての。
 それで探偵さんのオバケが椅子になってくれたんじゃ」


簡潔に話す百目鬼に対し、いらん事まで言う子供。
風歌とも百目鬼とも、自己紹介したわけではないが、互いに呼び合っている名を覚えていた。
そして以前立ち食いソバ屋で話した時にすでにわかっていたことだろうが、
この子供はスタンドの事を隠すべきだという意識はあんまりないようだった。


「ほう、これは火がつくのか。
 ちょうど良いではないか。
 どこにスイッチがあるんじゃ?」


花火をしてはいけないのだから、ちょうど良いも何もないが、
子供の興味は花火というより、火を得る事に向いてしまったようだった。
そして木の棒を擦って火をつけようとする原始的手法から一転、
スイッチ一つでなんでも動く現代っ子感覚を出してきた。

410鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2021/07/21(水) 01:18:52
>>408(百目鬼)
>>409(ナイ)

「なるほど――――――――」

     (『スタンド』――――か)

「――――それは、なんだか不思議なご縁なんですねェ」

彼女らの出会いについて、
それ以上掘り下げるのは一旦止めた。
ほぼ間違いなく『スタンド絡み』だ。
今、鳥舟は、己の『それ』に対する向き合い方を決めかねていた。

「オホン、ともかくボクの目と頭で分かるのは、少なくとも、
 これは『実用品』として作られた、ってコトだけです。
 昭和よりは、ずっと前のモノだとは思いますけど」

             ニコ ・・・

「それが今でも使えるんだから、
 やっぱり――――アンティークは、浪漫ですよねえ。
 例えば読書灯に使うと、浸れるんじゃあないかなァ……
 ……や、もちろん使い方はなんだって、お任せしますけどね」

やや上気したような口調でそう述べると、
紙袋に向けていた笑みを百目鬼へ――――否、ナイへと向けた。

「惜しいよね、これは火が点くんじゃあないんだよ。
 これの中に、点けた火を入れて使う……そういう道具、なんだよね」

           「点いたって点けちゃあ、いけないけどさ。
            ああそうだ小百合さん、一寸聴きたいんですけどね、
            この辺で花火が出来る公園なんて、ありましたかね?」

実際問題、タバコの火やろうそくの火くらいで火事になる可能性は低い。
だが、決まりを一度緩めれば、より大きな異物が入って来る要因にもなるのだ。

「まあ、花火を急いでするって気分でも、なくなったのかもしれませんけどもね」

411百目鬼小百合『ライトパス』:2021/07/21(水) 01:36:38
>>409-410

(おやおや――――)

『スタンド』の事まで明かすつもりはなかったのだが、
話されてしまったものは仕方がない。
もっとも、この年頃なら、
『子供の話』で済ませてしまう事も可能だ。
だが、それはそれで不義理ではある。
そして、自分の見た所では鳥舟は『鋭い』。
指摘するかどうかは別として、
下手な誤魔化しは通用しないだろう。

「――――ま、そんな所だよ」

考えた結果、少女の言葉を『肯定』する事にした。
否定はせず、あくまでも自然に対応する。
それに『先程の事』もある。
『お化け』という言葉を疑問に思うのは普通の反応だが、
鳥舟からは『別の何か』があるようにも感じられた。
もし鳥舟が『分かる人間』なら、納得してもらえるはずだ。

      (なるほどねぇ)

両の目を細め、鳥舟の顔を見た。
『何を思ったか』は表情で分かる。
おそらくは、『そういう事』なのだろう。

「ははは、ごめんよ。『スイッチ』はないのさ」

「何しろ『昔の道具』だからねえ」

その様子を微笑ましく感じながら見ていたが――――。

「『花火』か……。
 最近は公園でも、
 出来る所と出来ない所があるからねぇ…………」

腕を組みながら考えていると、
『風歌を招いた件』が再び頭に浮かんだ。

「あぁ、それだったら丁度いい場所があるよ。
 公園じゃなくて『ウチの庭』なんだけどね」

「それなりに広いから、花火をするには十分さ。
 アタシと親父しかいないから、遠慮する事もないしね」

「――――どうだい?」

412ナイ『ベター・ビリーブ・イット』:2021/07/21(水) 01:51:11
>>410-411

「昔の道具? ほう、そうじゃったか。
 残念じゃが、仕方ないの」


多少がっかりした様子で、行灯が入った紙袋を見送る。


「庭か……しかし……
 わしの……いや、爺の家にも庭はあるんじゃが、
 この、これ、花火? なんか爆発とかするらしいからの……。
 それは危ないかと思って外でやろうと思ったんじゃが」


花火の威力を相当高く見積もっているらしい。
神社や公園ではダメ、という説明でますますそのイメージを強めたのかもしれない。


「家が壊れたら大変じゃからの。
 さすがにそこまで迷惑はかけるつもりはないぞ」

413鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2021/07/21(水) 02:10:22
>>411(百目鬼)
>>412(ナイ)

百目鬼の返答に、深く頷く。
今ここでスタンドを見せてもらうつもりも無いし、
同じくスタンド使いであろうナイにも、同じ事だ。

「ああ、ええと――――」

「驚かせすぎちゃって、ごめんね。
 花火自体はさ、そんなに危なくはないよ。
 ただ……どうしても火が出ちゃうからさ。
 草が多いところでやると、燃えちゃうんだよ」

          スッ

「お嬢さんのお爺様のおうちの庭が、
 そういう場所じゃあないなら、
 そこでやっても良いとは思うけど――」

ちら、と百目鬼の顔を見る。
この童女の祖父とやらがどんな人物かは不明だが、
百目鬼の人柄はある程度以上信頼出来る。

「せっかくお誘いいただいてるし、
 小百合さんのお家をお借りしてみるのは、
 結構いいんじゃないかな、って、思うんだよね」

(もちろん、この子のご家族も一緒なら、
 それが一番良いんだとは思うけど…………
 家族との折り合いがいい家庭だけじゃあないし、
 りんちゃんみたいな『存在』だって、いるしさ)

「もちろん、それは、ボクの家じゃあないから、
 ボクから『是非そうしなさい』とかは言えないんだけどさ」

彼女自身が申し出てくれた事とはいえ、
百目鬼に押し付けるようで悪いが……
彼女は、何というか『頼れる』感じがする。
『何か』ある子だとしても、『任せられそう』な雰囲気がある。

414百目鬼小百合『ライトパス』:2021/07/21(水) 02:35:40
>>412-413

「あっはっはっ――――『爆発』か。いや、そりゃあ『大変』だ」

予想外の言葉を聞いて、思わず笑いが零れる。

「よっぽど変な事をしない限り、
 『爆発』なんてしないから平気だよ。
 子供が一人でやるのは危ないから、
 大人がついてなきゃあいけないけどねぇ」

本当に危険なものだとしたら、
そこらのコンビニやスーパーで売ってはいないはずだ。
『中身』を取り出して一ヶ所に集めて、
それに火を付けたりでもしなければ、そこまで危なくはない。
そんな事をするのは、よほどの馬鹿だけだろう。

「だから、『家の心配』はしなくてもいいよ。
 壊れたりしないから、ウチでやってくれて構わないさ」

「あぁ、ついでに『風呂』にも入れてあげようか。
 ウチのは『檜風呂』でね。結構評判がいいんだよ。
 実は、風歌さんにも入ってもらった事があるんだ」

「汗びっしょりのままじゃあ気分も良くないだろ?
 花火をやるにしても、サッパリしてからだ」

普通の子供なら、勝手に連れて行く訳にはいかない。
常識として『家族の許可』が必要になる。
しかし、『それが当てはまらない人間』も、世の中にはいる。
たとえば、『ホームレス』である『風歌』のようにだ。
年齢や風貌こそ違うが、この少女からは、
『風歌と似た雰囲気』を感じ取っていた。
完全に『同じ』とは言わないが、
何かしら『事情』を抱えているような……。
敢えて『家族の話』を出さなかったのは、そのためだった。

「だけど、『火を点ける』のはアタシがやるよ。
 それだけ守ってくれたら、あとは何も問題ないさ」

         ――――ジッ

『世話』を引き受ける。
そういう意味を込めた視線を、鳥舟に送った。
もちろん『ずっと』ではないが、
風歌にしたのと同じ程度の『もてなし』は出来る。

415ナイ『ベター・ビリーブ・イット』:2021/07/21(水) 02:53:40
>>413-414

「なんじゃ、そうじゃったか。
 だったら心配はいらないの」


2人からの説得を受けて、安心したようだ。
そもそも、そこまでの爆発が起こると思っていたなら、
なぜ花火などしようと思ったのだという話だが。


「ふむ、2人が勧めるなら……
 それでは世話になろうかの。
 探偵さんにも花火をやるからの。一緒に爆発させよう。火と交換じゃ」


立ち食いソバを奢ってもらっている時点でわかるが、
あんまり遠慮はしない性質らしい。
さすがに家が壊れる可能性があるとなると躊躇していたが、
そうはならないと分かれば、断る理由もないようだ。
地面に置いてあった新聞と棒と花火の袋を拾い上げる。

416鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2021/07/21(水) 03:20:11
>>413(百目鬼)
>>414(ナイ)

          ホッ

とした気分だ。
神社で火気を扱おうとすることも、
花火のやり場を与えてやれないことも、
この童女の生きる環境自体への心配ごとも、
どれも一挙に、ひとまず『安心』だ。

           ・・・解決ではないが。

(とはいえ、現実問題ってやつには、敵わない。
 子どもをちゃんと導いてあげるためには、
 神さまが見てるよって言うだけじゃあ、
 それだけじゃあボクだって納得しないんだ。
 大人として…………ちゃんと導いてあげるしかない)

百目鬼という『大人』がいてくれて、助かった。
自分も成人こそしてはいるわけだが――
あらゆる意味で、モラトリアムの中にいるのだろう。

(――ボクも大人では、あるんだけどさ。
 いや、そうなんだよ。それは忘れたらダメだろう。
 それに巫女なんだ、投げっ放しっていうのは)

「すみませんねぇ、小百合さんに任せきりで。
 花火――――盛大にやるんだったらさあ!」

       (それはちょっとさあ)
 
「ボクもお休みを頂いている日だったら、
 火の元の見守りくらいは、しに行くからさ。
 ま、その、お邪魔にならないなら――ですけどね」

       「任せてばかりも、悪いですからね」

(全部は、出来ないけど……これくらいは、さあ)

とはいえ鳥舟には同情深い、感情移入の気質がある。
任せて終わりというのは、なんというか、
何かが喉に引っかかるものがあったので…………
ナイと百目鬼を交互に見ながら、そう付け加えて。

「いずれにしても、ここは小百合さんとは、
 連絡先でも一つ交換しておくべきなんでしょうね」

などと言いながら、何か納得するように一度大きく頷いた。

417百目鬼小百合『ライトパス』:2021/07/21(水) 03:35:32
>>415-416

「ははは、ありがとう。そう、『交換』だ」

流石に爆発させる気はないが、あまり細かい事は言わない。
生来ガサツで大雑把な性格なのだ。
年を重ねた事で、昔と比べると思慮は備わっているが、
『三つ子の魂百まで』という諺の通り、
生まれついての気質は変わりにくいものだ。

「それじゃあ、『ウチ』まで案内するよ」

「そんなに遠くないからね」

少女に声を掛けてから、鳥舟に視線を移す。

「鳥舟さん、今日は色々と貴重な意見をくれて助かったよ。
 お陰様で『これ』を大事に出来そうだ」

        スッ

改めて謝辞を告げ、紙袋の中身を一瞥する。

「さっき言われた通り、
 夜中に本を読む時にでも使ってみるつもりだよ。
 前に会った時にも助言してもらえたしねぇ。
 『アタシには照明器具なんかが良さそうだ』ってさ」

「今度は『お参り』に来させてもらうよ」

それから少女の手を取って、
『自宅』に向かおうとしたが――――。

「あぁ、そうだね。花火は大勢でやった方が楽しいもんだ。
 時間があったら、鳥舟さんも来てくれると嬉しいねぇ」

「それに、花火だったら『夜』の方が映える。
 今日、夜の時間に『空き』はあるかい?
 もし都合がつくんだったら、
 この子と鳥舟さんとアタシの三人で花火が出来るよ」

        ゴソ

ポケットからスマホを取り出し、操作する。

「――――その時のために、連絡先の『交換』だ」

418ナイ『ベター・ビリーブ・イット』:2021/07/21(水) 03:47:33
>>416-417

「鳥舟ちゃん? もやるかの? 花火。
 おんなじのじゃったらいくらでも出せるから数は心配いらんぞ」


子供的には歓迎のようだ。
そして、2人がスマホを取り出したのを見て、
少し離れた場所にある茂みに向かう。


「わしも持っておるぞ」


持ってきたのはリュックだ。そして中からスマホを取り出した。
リュックを離れた位置に置いておいたのは、爆発で吹っ飛ばないように、だろうか。
2人が連絡先を交換するのに、自分も混ぜてもらおうとする。

419鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2021/07/21(水) 15:48:51
>>417
>>418

「今夜! ですか、もちろん空いてますよ。
 せっかくのお誘いですし――――
 それに、ボクも花火は人並みに好きなンです。
 思いがけず楽しめる機会が増えて、嬉しいですよ」

「その時、これも、せっかくですからね。
 行灯を使ってるところを見せてくれませんか?
 小百合さんはきっと、絵になるでしょうから」

ナイに対しては大人であり、
百目鬼に対しては子どもであり、
そういう鵺的な領域に鳥舟は立っている。

「あっと、そっか、今の子は持ってるんだよね。
 それならお嬢さんとも、交換しておこうかな」

小学生がスマホを持っているのは、
もはや何度か目撃しているので、
さほど驚くことではなかった。
連絡先の交換は、三人で行うことにする。

(…………スマホは持たせてるし、
 花火も持って行かせるし、
 よっぽど、しっかり者だと思われてるのかなァ)

行動とも合わせて考えると、
彼女の保護者は相当な『放任主義』なのだろうか。
いずれにせよ、花火の間は自分達で保護すれば良い。

420百目鬼小百合『ライトパス』:2021/07/21(水) 18:07:44
>>418-419

「おや、お嬢ちゃんも持ってるんだねぇ」

これは少々意外だった。
もっとも、風歌もスマホを持っていたのだから、
不思議ではないのかもしれない。
まぁ、これについては深く追求しない事にする。

「よし、それなら三人で『交換』しようか」

滞りなく連絡先の交換を済ませた。
この少女は普通ではない所があるが、これで話が出来る。
根本的な解決にはならないまでも、
多少なりとも不安は解消するだろう。

「そりゃあ良かった。これで決まりだね」

「鳥舟さんの時間が空き次第、連絡してくれるかい?
 家までの『道順』を教えるからねぇ」

「その間、この子を風呂に入れておくよ。
 ついでに冷えた飲み物とか、適当に見繕っておこうか」

二人で見守っていれば、
間違っても『事故』は起こらないだろう。
自分自身が言ったように、
出来るだけ大勢でやった方が楽しいというのもある。
鳥舟とは話が合うし、来てくれるのは素直に嬉しい。

「花火の最中、『これ』は縁側に置いておくよ」

           スッ

        「なかなか『風流』だ」

行灯の入った紙袋を軽く持ち上げてみせる。

「そういえば、汗で濡れた服を、
 そのまんま着せる訳にはいかないねえ。
 それは洗濯するとしても…………」

予定が決まった所で、改めて少女の姿を見やる。

「アタシが子供の頃に着てた『浴衣』があるから、
 それをお嬢ちゃんにあげるよ。
 どうせ、もう使う事もないしね」

『白百合』の図柄が入った子供用の浴衣だ。
押入れかどこかにしまってあるはずだった。
おそらく探せば出てくるだろう。

421ナイ『ベター・ビリーブ・イット』:2021/07/21(水) 22:31:33
>>419-420

交換した連絡先によると、『雪白 権六郎』らしい。
子供、というか、このスマホの本来の持ち主の名前だろう。


「ユカタってなんじゃったか。
 テレビで聞いたことある気がするが。
 うーん、着るということは、服じゃな?」

「フーリュー、も、時々ニュースで聞くが意味はよくわからんな」


首を傾げるが、ワクワクしてきたらしく、ひひひと笑う。

422鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2021/07/21(水) 23:36:26
>>420
>>421

「ええ分かりました、終わったらすぐ連絡します。
 ええと五時半、いえ六時くらいになるかな、
 それまで待たせちゃってお嬢さんには――」

       チラ

連絡先を見てみる――
が、名前は分からなかった、
まさか『権六郎』ではあるまい。

「――悪いんだけどね。
 浴衣を合わせて貰って待っててね」

今の時期は格別な忙しさではないので、
帰ろう(家はここだが)と思えば帰れるはずだ。

「飲み物は、ボクの方でも持って行きますよ。
 余らせてたジュースが確か、ありましたんで……」

「大きい容器に氷と水を入れて、
 そこに缶や瓶のジュースを入れて。 
 そーゆーのも、風流な感じがしますねぇ」

百目鬼邸にそういうものがあるかは分からないが、
容器や氷くらいなら持って行くことも出来る。

「や、まあ、ボクも風流に詳しくはないんですがね。
 ある程度はボクの方でも、物は用意しますんで」

場所を用意してもらうのだ。
楽しむための物は、こちらで用意しても良いだろう。

423百目鬼小百合『ライトパス』:2021/07/21(水) 23:56:57
>>421-422

「洋服じゃあないけどね。後で着せてあげるよ」

「『風流』ってのは『雰囲気がいい』って事さ。
 気持ちで感じるものだから、
 ちょっと説明するのは難しいけどねぇ」

(一応、『保護者』はいるって事か…………)

『連絡先の名前』を見て考える。
血の繋がった家族なのかどうかは怪しい。
日本人離れした少女の外見が、
『雪白』という苗字と釣り合わないからだ。

「あぁ、そりゃいい。
 ははは、何だか懐かしい感じがするよ」

「もっとも、今のアタシは『こっち』の方が好みだけどね」

言いながら、『酒器』を持つポーズを取る。

「ま、その辺はアタシが勝手に準備するよ。
 良かったら鳥舟さんもどうだい?」

鳥舟の年齢は知らない。
だが、少なくとも成人はしているだろうと思っている。
人には好き嫌いがあるので無理にとは言わないが。

「――――ところで、お嬢ちゃん」

「まだ名前を聞いてなかったね。
 改めて名乗らせてもらうけど、アタシは『百目鬼小百合』。
 お嬢ちゃんは何ていうんだい?」

いつまでもお嬢ちゃんというのも呼びにくい。
苗字で呼ぶのも堅苦しい。
また顔を合わせた時のためにも、
名前を知っていた方が何かと便利だ。

424ナイ『ベター・ビリーブ・イット』:2021/07/22(木) 00:14:34
>>422-423

「おお?
 わしも色々出せるぞ?
 駄菓子とか……やっぱりアイスが良いか?
 服とかジュースとかと交換しよう」


ひょこひょこ、と無意味に跳ねるようにうろつきながらそう言う。
テンションが上がって体も動いてしまっているのだろう。


「わしか? 名前はない……まあ、ユキシラとかナイとか呼ばれておるの!」


           ガッ

「おああ!?」


池のそばで無駄に動き回っていたので、蹴躓いた。
このまま池に落ちる確立90%
残るは左に身をかわす確立5%
右に身をかわす確立5%

425鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2021/07/22(木) 00:25:35
>>423
>>424

「あぁ! そうですねぇ、それも良いなァ。
 もし良かったら御相伴に預かりたいですね。
 ボクもですね、そういうのは結構――――」

などと歓談していると、
ナイが妙な動きをし始めたので、
そちらの方に視線を向けた。

「無い……? あ、ナイちゃんか、綺麗な名前だね。
 それで、ええと、出せるっていうのはさ、
 それはポケットから――」

この容姿で(推定)日本人の名前なのは――
両親の事情なのか、何かもっと別の事情が――

            「――――!!」

池の周りには『柵』がある。
躓いても落ちることはない、無いと思いたい、が。

      タッ

咄嗟に地面を蹴って、手を伸ばし、掴もうと――

            ――しかし、間に合うか?

426百目鬼小百合『ライトパス』:2021/07/22(木) 00:40:48
>>424-425

「ははは、いいよ。好きなだけ『交換』してもらおうじゃないか」

特に悪い事ではないし、断る理由もない。
この前は『ライター』を交換できなかったというのもある。
本人は気にしてはいないと思うが、
その穴埋めとしても丁度いいだろう。

「そうかい。それじゃあ『ナイちゃん』って呼ばせてもらうよ」

(…………『名前がない』、か)

『訳あり』なのは想定していたが、
まさか『名無し』とは思わなかった。
『雪白』というのが義理の親だとしても、
名前ぐらい付けるのが自然だ。
『人情』としてもだし、そもそも名前がなければ、
不便で仕方がないはずなのだが……。

「鳥舟さんも結構いけるクチかい?
 何にせよ、付き合ってくれるなら嬉しいよ。
 一人でやるのもいいけど、
 こういうのは相手がいた方が楽しく呑めるってもんさ」

ナイの動きを横目で見つつ、
鳥舟と酒の話で盛り上がっていたが――――。

           「おっと――――」

     ズギュンッ

傍らに『ライトパス』を発現する。
『特殊警棒』を携えた人型スタンド。
その両肩には、イヤリングと同じ『白百合の紋章』。

         ド ヒ ュ ウ ッ

ナイが柵にぶつかる前に、空いている腕で小さな手を掴む。
高速を超えた『神速』だ。
十分に間に合うだろう。

427ナイ『ベター・ビリーブ・イット』:2021/07/22(木) 00:49:35
>>425-426

「ぬわ……!」


よし! それでいいっ! それがBEST! と評価されそうな対応により、
子供は無事、池に落ちる……可能性は柵があるから元々90%はありえなかったとしても、
柵にぶつかることも、倒れこむこともなかった。
むしろ助けようとして飛び出した鳥舟の方が勢い余ってぶつかる可能性があるかもしれない。


「す、すまんぅ……」


子供は迷惑をかけてしまったことを謝り、一気にテンションを降下させた。
まあ、百目鬼の家に向かっている間に……あるいは最悪でも花火が始まればまたテンションを復活させるだろう。
とりあえず大人しくなった。

428鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2021/07/22(木) 01:05:27
>>425
>>426

「――――っと、と、流石です小百合さん」

       トトッ

踏み出しかけた足を止め、
その『ヴィジョン』に視線を向ける。

(スタンド。これが無かったら、
 ナイちゃんは池に落ちてたかもしれないし、
 そうじゃあなくっても、きっと怪我をしてた)

「マァこれについては――
 ボクも、『視えて』はいるんですけどね。
 ただ、こういうのには、使えないものですんでね」

 (――――ボクは自分の能力を恐れている。
  強いとか弱いとかじゃあなくって、
  ボクの理想を、叶える物じゃあなかったら……)

スタンドを傍らに立たせる百目鬼に、
一度ゆっくり頷いてから、ナイに視線を合わせる。

「ナイちゃん、お楽しみは後に――
 今夜の花火の時にさ、ちゃんと取っておこうね」

       「もちろん、ボクも楽しみだしね。
        いや本当に、楽しみなんですよ」

429百目鬼小百合『ライトパス』:2021/07/22(木) 01:17:03
>>427-428

「なぁに、気にしなくてもいいよ。子供は元気が一番さ」

「だけど、転ぶと危ないからね。足元にも注意するんだよ」

叱る程でもないが、今後のために一言だけ言っておく。

          フ ッ

役目を果たした『ライトパス』を解除する。
自身のスタンドの『強み』は理解している。
『速さ』だけではないが、この場は『それだけ』で十分だった。

「はは――――いや、『そうじゃないか』とは思ってたんだ」

「さっきは言いそびれたけどねえ」

軽く頷いて、鳥舟の言葉に同意を示す。
鳥舟の『スタンド』について詳しく聞こうとは思わない。
必要に迫られたとはいえ、
こっちが勝手に出したまでの事だ。

「さてと、ナイちゃん。ぼちぼち行くとしようか。
 花火の前までに綺麗にしとかなきゃあいけないからねぇ」

           ソッ

「鳥舟さん、また後で。アタシも楽しみにしてるよ」

「丁度いい機会だ。
 『とっておきの一本』を用意して待ってるからね」

名残惜しいが、鳥舟の仕事を滞らせてしまっても悪い。
それに、どこかにしまった浴衣も探さなければならない。
ナイの手を取って、『家』に向かう事にしよう。

430ナイ『ベター・ビリーブ・イット』:2021/07/22(木) 01:22:52
>>428-429

「鳥舟ちゃんもスタンド使いじゃったか?
 オバケおらんのか? わしと一緒じゃな」


さすがにコケそうになってすぐはテンションは上げないが、
仲間だと思ったのか少し嬉しそうにそう言った。


「とっておきのジュースか? わしも飲むぞ」


小さな手が百目鬼の手を握って、ついていく。

431鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2021/07/22(木) 01:30:56
>>429
>>430

「ボクのは――や、そうだね。
 スタンド使いで、でも、オバケが出せない。
 お仲間として、よろしくお願い出来ると嬉しいよ」

ナイのそれは恐らくニュアンスが違う。
が、否定はしない。

「あらっ、良いんですか? 嬉しいなあ。
 小百合さんにはホント、敵いませんよ。
 ええ、終わったらすぐ! 本当にすぐ、
 連絡させて貰いますんでね」

百目鬼の言葉に笑みを浮かべ、
それから、ナイには微笑んでみせて。

「それじゃ――――また今夜。またね、ナイちゃん」

早く駆けつけるためにも、
今はとにかく、掃除に戻ることにしよう――

432『その日の夜』:2021/07/22(木) 01:43:42
>>430-431

その日の夜、『百目鬼家』にて、
三人による『花火』と『宴会』が行われた。
鳥舟には秘蔵の日本酒『鬼ころし大吟醸』が、
ナイには『とっておきのジュース』が振る舞われた。
また、ナイには、百目鬼小百合から、
『白百合の図柄が入った浴衣』が贈られたそうだ――――。

433りん『フューネラル・リース』:2021/08/22(日) 08:02:03
「たまや〜」

年齢10歳程
鈴蘭模様の浴衣を着た頭に鈴蘭を咲かせた少女が
神社の屋根から花火を眺めている

434氷山『エド・サンズ』:2021/08/22(日) 10:11:52
>>433

「か〜ぎや〜〜〜!」

神社の屋根にもう一人、高校生くらいの女子が上っていた
浴衣を着て花火を見るその姿は驚くほどに白く、近くに寄るとひんやりとした『冷気』を感じる

どうやってここに上って来たのか・・・・?
自身の能力で『梯子』を出して・・・・

何故、こんなお行儀の悪い事を・・・・?
今が『夏』だからだッ!

435りん『フューネラル・リース』:2021/08/22(日) 10:59:38
>>434
「お〜、銀冠だ!」

おつまみのチーズを摘まみながら、スマホで花火を撮影する

「今年のは気合入ってるなぁ」

グイッ

そして持ち寄った果実酒(鈴蘭酒)を御猪口に入れて呷る

「う〜ん、今年のは良い出来だなぁ」

ほろ酔い気分でいるところに、何やら『冷気』を感じ
氷山の存在に気が付いた

「あれ?あのおねえさんは…」

りんと氷山は、実は少し前に殺し合った仲なのだが
ほろ酔いなのでそんな事は大して気にせずに氷山に近付く

「お〜い、おねえさんお久しぶり〜」

氷山は覚えているだろうか、この鈴蘭女を

436氷山『エド・サンズ』:2021/08/22(日) 11:20:32
↓遅ればせながらこんな感じです!
【対応してくださる方々へ】
ttps://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/comic/7023/1617983099/150-151

>>435

神社の屋根に無断で上がり、アルコールまで・・・・?
この幼女、遵法意識が乏しいのでは・・・・?

「お久しぶりですー」

氷山もやはり、鈴蘭の少女を覚えているようだ
しかし、少し前に殺し合った仲だというのに、このフレンドリーさ・・・・何故?
夏だ! 今の氷山は夏のテンションで生きているため、細かい事にはこだわらない!
(しかも今は半分人間辞めてるし・・・・)

「いいですね・・・・花火
 ちょっと隣に失礼しますね」

りんの隣に座り込む
神社の屋根は敷かれる屋根材によって萱葺き、桧皮葺き、銅板葺などがあるが
恐らく人が乗る事は想定されていないだろう
人間の体重がかかり、屋根材が軋む音が聞こえる・・・

「花火、詳しいんですか?」

437りん『フューネラル・リース』:2021/08/22(日) 11:53:23
>>436
>【対応してくださる方々へ】
了解しました

「良いよね、花火…」

隣に座る氷山に応えるりん

「あ、おねえさんも食べる?」

氷山におつまみのチーズおかきを勧めてみる
流石に鈴蘭酒は勧められないが…

「専門家みたいに詳しいっていうわけじゃないけど、
 好きだから結構調べたんだ
 人間が作った芸術の中でも最高傑作だと思うよ!」

>屋根材が軋む音

あっ…(察し)

438氷山『エド・サンズ』:2021/08/22(日) 12:15:12
>>437

↓ちなみに今は状況が進行してこんな感じにもなってたりします
ttps://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/comic/7023/1617983099/163

「あ、ありがとうございます」

もらったチーズおかきをカリカリと食べ始める
お返しにさっき夜店で買ってきたたこ焼きを開けてりんに差し出した

「へぇ〜、やっぱり鈴蘭が咲いているだけあって、
『花』とかそういうのが好きなんですね
 まあ・・・・私もこういうの彩りがあって好きなんですけどねー」

  どーん  どーん という花火の音を背景に
  お互いに手持ちの料理を出し合いながら話を始める

「ねえ、鈴(りん)ちゃん」

439りん『フューネラル・リース』:2021/08/22(日) 12:47:35
>>438
>進行状況
わーおいしそー(白目)

「あち、あちち」

チーズおかきと交換にもらったたこ焼きを食べながら、氷山と会話をする
熱々のたこ焼きで飲むのもまた乙なものだ

「あれ?
 うち、名前教えたっけ?」

氷山に名を名乗った覚えはないはずだ
何故、彼女が自分の名前を知っているのか?
いや、今は酔っていて記憶が朧げなだけで、本当は名乗っていたのか?

花火の爆音と黄金の枝垂柳をバックに、不思議そうに氷山を見つめるりん

「あれ?何かおねえさんの近く、涼しくない?」

氷山に近付くと、妙に冷たい空気が気になる
というより、氷山自体が冷たい…?

440氷山『エド・サンズ』:2021/08/22(日) 13:01:11
>>439

「やっぱり・・・・」

銭湯で2人が会った日・・・・あまりの慌ただしさにお互いに名乗った事はなかった
しかし、氷山は『りんちゃん』という名前を知っている・・・・これは・・・・?

「調べてみたんですよ・・・・『鈴蘭の少女』・・・・20年前に起きた『事件』の事を」

氷山の周囲に季節外れの冷気が走る
非人間的で心の隙間に入り込むような妖しげな寒気・・・・

「『りんちゃん』・・・・あなたは20年前に亡くなっていませんか?」

441りん『フューネラル・リース』:2021/08/22(日) 13:22:52
>>440
「っ…」

氷山の体から発せられる冷気のせいか?
それとも、彼女の口から紡がれる言葉のせいか?
酔いで火照ったはずの体が冷めていくのを感じる
その冷たい感覚が、りんの体を震わせる

「20年前…?」

分からない
氷山が何を言っているのか、分かりたくもない
怯えと戸惑いの感情がりんを支配する

「ん〜、あの、何の話かよく分かんないんだけど…」

朗らかな笑顔を氷山に向けながらも、
その表情は怯えを隠しきれていない

自分は一度『死んでいる』
音のおねえさんに教えられて、それは自覚していた事だ
それはもう、受け入れたはずだ…
だけど…それ以上は…聞きたくない

442氷山『エド・サンズ』:2021/08/22(日) 13:41:27
>>441

「・・・・これです」

氷山が荷物から取り出した紙切れ・・・・それは20年前の新聞記事であった
当てにならない三流記事の切れ端ではあったが・・・・どうやらビンゴだったらしい

その記事には『鈴蘭の少女』に関する『事件』が記載されていた

「やはり・・・・あなたは『鈴ちゃん』なのですね?」

氷山は何故こんな風にりんを追い詰めるような真似をしているのか・・・・
それはここ最近身の回りをうろうろしている『見えない黒い影』に原因がある
『黒い影』が『幽霊』かもしれないと思った氷山は今までに関わった事のある幽霊的事象を追う事にしたのだ

443りん『フューネラル・リース』:2021/08/22(日) 14:21:23
>>442
氷山が取り出した新聞を読む
信憑性に欠ける捏造新聞だ、こんな物は信ずるに値しない

…が

「…何これ…」

この件に関しては、捏造を交えながらも
ある程度の事実に基づいて書かれている

「薬…?鈴…?妹…?」

ウゥ…

苦しそうな顔で呻きながら、頭を抱え俯く

いや、万能薬って何さ…
何で妹の名前がひらがななの…

そもそも、妹なんていたっけ…
いたような、いなかったような…

そういえば、昔、薬で凄く苦しい事があった気がする
それから、ずっと、暗くて、日の届かない所にいた
…ような気がする

あぁ、嫌だ!これ以上考えたくない!
これ以上考えると…

           『うち』が『うち』でいられなくなる

そんな気がする

「ね、おねえさん
 この話もう、やめよ?楽しくないよ
 もっと面白い話しようよ、鮫の話とか…!」

まるで罪人を糾弾するかのように、
りんを追い詰める氷山に恐怖を覚えつつ、
必死に話題の転換を試みる

氷山に何か外見的におかしな点はあるだろうか?
あるいは、近くに何かおかしなものが存在していたりはしないだろうか…

444氷山『エド・サンズ』:2021/08/22(日) 14:41:19
>>443

「ごめんなさい・・・・ でも・・・・!」

遠雷の様に花火の音が聞こえる屋根の上でりんは氷山の様子を観察する
以前会った時、氷山はりんの命を脅かしながらも、他者に対する気遣いの様なものがあった
しかし、今の氷山はどこかテンションがおかしい

『ジャパニーズホラー映画終盤で今まさに真相に迫ろうとする主人公』のように
鬼気迫る使命感に燃えているような・・・・そんな感じだ


   クスクス
            クスクス

屋根の軒先でかすかな笑い声が聞こえる
りんがそちらを見れば、そこに小学生くらいの大きさの『黒い影』が見えるだろう

445りん『フューネラル・リース』:2021/08/22(日) 15:03:38
>>444
おかしい…
前に会った時は、こんなに強引じゃなかった
今の彼女は、まるで…

          何かに『取り憑かれてる』みたいだ

   クスクス
            クスクス

「?」

かすかに聞こえる笑い声の方に、顔を向けるりん
そこに人はいない、人がいなければ『人影』は出来ない
なのに、何故か存在する子供の『影』

「…君は?」

りんを責め立てるように迫る氷山に命の危機を覚えつつも、
この事態をこっそり眺めながら笑う『影』の方へ近寄る
ひょっとしたら、おねえさんの様子がおかしいのと、何か関係があるかもしれない
その思いがりんを動かした

446氷山『エド・サンズ』:2021/08/22(日) 15:27:34
>>445

「・・・・・・? どうしたんです?
 まるで『何か』がそこにいるような・・・・まさか!」

かすかに笑い声をあげる『黒い影』に近づくりん
『黒い影』はどうやら本のようなものに何かを書きつけているようだ
だが、その影に氷山が気づいた様子はない!

    クスクス・・・・    クスクス・・・・

『黒い影』に話しかけても影は何も応答しない
ただ、氷山の方を向きながら何かを書き続けている

「まさかそこにいるのですか・・・・・『幽霊』が!」

447りん『フューネラル・リース』:2021/08/22(日) 15:45:41
>>446
「『幽霊』…?」

クスクスと笑い声を出しながら、氷山を観察し
何かを書いている『影』に話をかける

「あなたは『幽霊』なの?」

この問いかけにも『影』は言葉を返さないだろう

>まさかそこにいるのですか・・・・・『幽霊』が!

「お姉さんは見えないの?」

氷山には見えていない?
自分にしか見えていないのか?
疑問を抱きながらも、氷山の問に応える

「『幽霊』かは分かんないけど
 そこにいるよ、ちっちゃい子供みたいな『影』が」

『影』の方を指し示す

「何か、おねえさんの事見て、何か書いてるみたい」

448氷山『エド・サンズ』:2021/08/22(日) 16:18:31
>>447

「うっ・・・・ や、やっぱり書いているんですね・・・・何かを!」

これで3度目になる『黒い影』の目撃談に狼狽し、立ち上がる
重心の変化に屋根がぎしっと軋む・・・・

「ゆ、『幽霊』・・・・」

その恐ろしさからか、氷山の全身に滝の様な汗が流れる
砂糖水の様に甘い香りを放つ汗が・・・・・!
ぽたり ぽたり と屋根に垂れる

「『りんちゃん』は・・・・・ 『黒い影』のお化けとは関係がなかった・・・・?」

先程のりんと同様に、恐怖心からガタガタと震え始める

449りん『フューネラル・リース』:2021/08/22(日) 16:50:38
>>448
「おねえさん、大丈夫!?」

恐怖に震える氷山から流れる、甘い香りのする汗
異常だ、この上なく
そう思いつつも、妙に粘着性のあるその雫を少しだけ舐めてみる

「『甘い』…」

人間の汗が甘いなど、あり得ない
一体、氷山の身に何が起きているのか…
りんには見当も付かない
どうすればいいか分からない

だが、目の前で怯えている人間を放っておく事は出来ない

「おねえさん、大丈夫だから落ち着いて…」

恐怖でガタガタと震える氷山の体を、優しく抱き締める宥める
何が大丈夫なのか分からないし、自分に何が出来るわけでもない
無責任な慰めかもしれない

それでも、こうしてあげたいから
怯える氷山を少しでも助けてあげたいからこうする
以前、彼女のスタンドが自分にそうしてくれたように

450氷山『エド・サンズ』:2021/08/22(日) 17:20:44
>>449

―――『夏の楽しみ』とは人それぞれである
友人との楽しい思い出、ひと夏の出会いの切なさ、憧憬
しかし、今日この時この瞬間において氷山は
『夏のホラー映画』という『恐怖』の感情に捕らわれていた

「こ・・・・怖い・・・・・っ!」

ガタガタと震える身体、流れ出る『シロップ』
その異常事態に臆す事無く、りんは氷山の身体を抱きとめる

「『りんちゃん』・・・・・・っ!
 『りんちゃん』! 『りんちゃん』! 『りんちゃん』ッ!?」

だが、夏の楽しみ方が人それぞれであるのと同様に『ホラー映画』のジャンルもそれぞれである

「『りんちゃん』・・・・  『 り ん ち ゃ ん 』 ! !」

もしも・・・・氷山が今、捕らわれている『恐怖』が
                    ・・・・・・
伝統的な『ジャパニーズホラー』ではなく『サイコホラー』だったとしたら・・・・?


   ぎゅっ!!

恐慌状態に陥った氷山の右手が、りんの頭の『鈴蘭』を握りしめる・・・・

451りん『フューネラル・リース』:2021/08/22(日) 18:01:16
>>450
冷たい…夏だというのに
これが人間の体温か…?
抱き締めるには冷たすぎる、氷山を温めるように抱き締めるりん

だが、その時

   ぎゅっ!!

「!!」

氷山の手が、自分の『命』とも言える
大切な『鈴蘭』を掴み取った

「……ッ!!」

今、氷山に噛みついて『毒』を流し込み、動きを封じる事は出来る
しかし…

「大丈夫…ッ、大丈夫だからね…ッ」

氷山に『命』を摘まれそうになった、痛ましい記憶が蘇る
恐怖に圧し潰されそうだ、胸の鼓動が高鳴る
それでも…りんは離れない
今、恐怖を感じているのは氷山も同じだ
怯える人間を突き放す事が、りんに出来るわけがない…

りんは、氷山を信じる

452氷山『エド・サンズ』:2021/08/22(日) 18:34:29
>>451

ミシ・・・・
         ミシ・・・・

どれ程の時間、こうしていただろうか
『恐怖』に怯える氷山と、彼女を支えるためその身を差し出すりん
非生物的な『冷気』がりんの身体を芯から冷やす

    ミシ・・・・

             ミシ・・・・・

いや、りんが感じる寒気はそれだけではないのかもしれない
文字通り『命』とも言うべき『花』が握りしめられ、今にも摘まれそうになっているのだから
それでもなお、りんはその気高い精神力でこの状況を耐えている

まるで時が凍ったように二人の動きが止まった

「・・・・・『りん・・・・・ちゃん』・・・・・」

状況が動いたのはそれから数分後だ
それまで『ホラー映画』のような『恐慌』状態に陥っていた氷山の眼に正気の光が宿る
目線がりんの顔から頭上の『花』へと動き、慌てた様に口を開く

「え・・・・っ! あ、ああっ!?」

慌てて『花』から手を放そうとするが、流れ出た汗が冷気によって凍り付き、
手の平が『花』に張り付いていた・・・・・『事故』が起きたのはその時だ


 ミシィィィ・・・・・・・      バキィッ!!

           ふらっ・・・

「あ・・・・」

・・・・・神社の屋根は人が乗るようには出来ていない
『恐慌状態』に陥り、足場に負担がかかった影響で屋根材の一部がへし折れる
流れた汗が雪解け水のように足場に溜まっていた事もあり・・・・氷山は足を滑らせて落下してしまう!

『花』は・・・・・ 大丈夫なのだろうか!?

453りん『フューネラル・リース』:2021/08/22(日) 18:58:33
>>452
「ッ!?」

花を掴んだまま手が張り付き離れない
そして、足元の汗で滑り落下する氷山

引き千切られる…?

りんは一瞬『死』を覚悟した
だが…ッ!!

うちは死にたくない!死なせたくもない!
それに…

殺しを背負わせたくもない!!

自分の『花』を切り離す事で、生き残る方法が一瞬脳裏を過った
しかし、りんの取った行動は…

氷山に抱き着いたまま自分も一緒に落下する事だ
そして、自分が下敷きになる事で氷山の落下ダメージを軽減する

運が良ければ…生き残れるかもしれない

454氷山『エド・サンズ』:2021/08/22(日) 19:27:42
>>453

人間に『殺し』を背負わせたくないという献身の心がりんにその行動を取らせた
屋根材をへし折り、屋根から地面に落下する氷山を追う様にりんの身体が宙を踊る!

   グチャァアッ!

これは『天罰』だろうか・・・・
祭殿の屋根に上るという神をも畏れぬ所業に、この社の祭神がバチを当てたのか
大きな音を立てて二人は地面に落下した

「いたたたた・・・・・ ・・・・ッ!? りんちゃん!」

氷山の右手には今も『鈴蘭の花』が握りしめられている・・・・
だが、その『根』は・・・・ッ?

ひょこっ

『無事』だ!
氷山とともに自身の身を投げ出したその献身の心が活路を開いたのだろうか
『鈴蘭の根』は今もりんの頭に繋がり、その命を繋げていた

「ご、ごめんなさい・・・・! 私は大変な事を!」

455りん『フューネラル・リース』:2021/08/22(日) 19:56:41
>>454
「えっへへ
 いいんだよ、おねえさん」

優しい笑顔を浮かべて、氷山の頭を撫で上げるりん

今回も、何とか命を繋ぎとめる事が出来た
だが、その代償は決して軽くはなかった
屋根からの落下は、小さなりんの体には
かなり大きな衝撃を与えたのだった

「おねえさんが…無事でよか…った…」

『命』を握られているという恐怖、そして体の痛みからか、
緊張の糸が切れたりんは涙を流しながら意識を手放した

456氷山『エド・サンズ』:2021/08/22(日) 20:07:11
>>455

「私は・・・・私はなんという事を・・・・・!」

正気に戻った氷山は弱弱しく横たわるりんの身体を抱きしめる
この高さからの落下だ・・・命に別状はないとはいえ、小さな彼女の身体には多大な衝撃だろう

「ごめんなさい・・・・ ごめんなさい・・・・」

体中の痛みから意識を手放したりんの身体を抱え、病院へと向かった
彼女の治療を行うために・・・・

(この子の秘密を探る事が・・・・この子の不幸に繋がるとしたら・・・・
 私はどうしたら・・・・)

457りん『フューネラル・リース』:2021/08/22(日) 20:47:21
>>456
夜空を彩る大輪の花火を背景に、
りんを抱えて病院へと歩を運ぶ氷山

病院へ連れて行くと、彼女のかかりつけの医者がやって来た
こんな奇妙な体を持つ少女だ、かかりつけがいてもおかしくはない

落下による全身打撲により入院、しばらくは安静らしい
入院中、公園の花畑が心配で気が気じゃない
そして病院食の味気無さが不満で頻繁に病院を抜け出すりんだった

ところで、神社の屋根…
あのまま放置してきちゃったけど大丈夫なんだろうか?

458鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2021/08/23(月) 22:36:38

「あれっ……………!?」

           スルッ

        バシャ …

手に持っていた『神秘の水』のボトルを、
思わず取り落としてしまった――

「参ったな、壊れちゃってる……」

屋根の一部が破損していたからだ。
いつの間に――それ以上に、『なぜ』だろうか?

ともかく、境内から神社の、拝殿の屋根を見ていた。

459ダイアナ『オンリー・ガール』:2021/08/24(火) 00:09:26
>>458

今から『二分前』――――――。

           「フン!フン!フン!」

             ババババババッ!

『オンリー・ガール』を発現し、
境内の隅っこで『シャドーボクシング』を行っていた。
先日参加した『水着相撲大会』。
そこで『憎き相手の一人』と再び戦い、『また負けた』。

「『Bloody hell(クソが)』!!」

     ドッシュゥッ!!

腹立ち紛れに足元の『石』を全力で蹴り飛ばす。

              ガッ

                 「――――――あ」

勢い良く吹っ飛んだ石が屋根に当たり、
同時に少しだけ冷静になった。
巫女の姿を認め、反射的に視線を逸らす。
その背後には、『空間の歪み』を思わせる『人型』。

        ススッ

『蹴り』の体勢を取っていたそれが、静かに姿勢を元に戻す。

460鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2021/08/24(火) 01:11:17
>>459

幸いと言うべきか、どうかは分からないが、
屋根が壊れた原因はもっと『前』(>>452)だ。
そしてこれは幸いではないと思われるが……
ダイアナの背丈では屋根は意識しないと見えない。

「――――どうも、どうも。ようこそお参りです」

つまり石が屋根に当たってから、
屋根が壊れてるのを見た事になる。

いずれにせよ、巫女がそちらを見たのは、
どこかから飛んできた石の出元を向いたからだ。

「それで……もし、もし。ええと――
 ボクはあんまりグローバルじゃないから、
 英語で気の利いた事が言えないんだよね。
 や、英語圏の子かどうかも、わからないけど」

         ザッ

「ボクは、それが見えるタイプの人間なんだ。
 それは先に言っておこうと、思ってさ」

それから周囲を見渡す。
周りに人がいたら危ないでしょ――――
そんな話をしようとして、実際人がいるか確かめた。

答えとしては『いない』……ダイアナの行動を見た者は。

461ダイアナ『オンリー・ガール』:2021/08/24(火) 01:48:03
>>460

『ここで何が起きたか』ダイアナは知らず、
屋根に注意を向けたのは『石が当たった後』。
それを見て、ダイアナは次のように考えたのだ。
『自分が蹴った石が当たって壊れた』。
彼女の『思い込みの激しさ』は周囲だけではなく、
『本人自身』にも適用される。
『オンリー・ガール』に『視聴覚』が存在した事も、
それを助長した。

「えッ!?」

「そ、そうね。『オマイリ』よ」

「今度こそ負けないように『必勝祈願』に来たの」

嘘ではない。
神の威光に縋る気はなかったが、
『病は気から』という言葉もある。
ずっと負け続けていると、
忌まわしい『敗北』の匂いが体に染み付いてきてしまう。
それを払い落とすために、ここに来た。
『トレーニング』は、あくまでもついでだ。

「へえ――――」

「フフン!でも、いいこと教えてあげるわ。
 わたしの『オンリー・ガール』は『誰でも見える』の。
 『空気』と一緒になってるのよ」

      スッ

「触ってみたら分かるわ」

上に立てるチャンスとばかりに、
両手を腰に当てて自慢げに講釈を垂れる。
同時に、『オンリー・ガール』が右手を差し出した。
『握手』するつもりらしい。

462鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2021/08/24(火) 12:06:04
>>461

「必勝祈願! なるほど、そうだったんだねェ」

(うちは、どっちかっていうと、
 安全とか、病気が治るとかが得意ではあるけど。
 この子はそういう話じゃあなくって、
 神社って場所を、頼ってくれてるんだろうなあ)

「勝ちたい、って気持ちでやることは、
 今すぐ結果につながるかは分からないけど…….
 きっと、この先無駄になったりはしないと思うよ」

ダイアナは見るからに子供で、
実際屋根が壊れた原因は別なので、
鳥舟は怒ってはいなかった。
願いの詳細がわからないので無難な事を言うが、
それも、本心から出た言葉には違いなかった。

「それにしても――――」

金色の双眸で、『それ』を視界に捉える。

「誰にでも見える、っていう事もあるんだね。
 ボクは、この手のものは知ってるけど、
 詳しいとかは全然、これっぽっちも無いけど、
 珍しいような気はするかな…………じゃ、失礼して」

         スッ

握手を返す。
スタンドは発現しない――――出来ないから。

(石を蹴飛ばしたくて蹴った、ってわけじゃあ、
 ないのかな……いや、蹴飛ばしたけど、
 思ったより遠くまで飛んじゃったって感じ、かな。
 だとしたら……そんなに強く怒るのは、的外れだ)

463ダイアナ『オンリー・ガール』:2021/08/24(火) 22:19:13
>>462

「――――『ダイアナ』よ」

    ギュッ

『オンリー・ガール』で巫女と握手する。
スタンドの手を通じて、柔らかな感触が伝わった。
空気の詰まったクッションのようだ。

「フフン、他にも色々できるのよ。
 たとえば、こんな風にね」

        ズギュンッ

持ち歩いている大きなテディベアの中に、
『オンリー・ガール』が飛び込む。

              ズズズ

ぬいぐるみの胴体から『両腕』が伸びてきた。

「こうやって色んなものに入れるの。
 スゴいでしょう?フフン」

初対面であるにも関わらず、
『能力』を自分からペラペラ喋る。
思えば、まともに使われた事は一度もない。
いつも使う前にやられているからだ。

「でも、負けてる訳じゃないのよ!諦めた時が負けた時!
 一番の敵は自分なんだから!」

「諦めなかったから私は負けてない!
 ただ…………」

朝山・八瀬・氷山・甘城――『敗北の記憶』が脳裏を掠める。

「…………そんな事より、とにかく祈願よ!」

話題を逸らし、拝殿の方に向き直る。

464鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2021/08/24(火) 22:55:28
>>463

「ダイアナちゃん、だね。
 ボクはマーヤ……鳥舟 学文(とりふね まあや)
 気軽に……マーくんでも、あやちゃんでも、
 好きに呼んじゃってくれていいからね」

握手に出した手は、想定外の感覚に包まれ、
思わず手先に視線が向く。悪くない心地だった。

「たくさん見せてくれて、ありがとう。
 ボクのは…………
 見せる、っていうのが出来なくってさ。
 不公平だなって思ってはいるんだけどね」

テディベアに潜ったそれは隠れているが、
己の『ヴィルドジャルタ』はそれ以上に、
いまだに、片鱗さえ見た事が無く、
出会う機会にも、二の足を踏んでいた。

「ダイアナちゃんは……スタンドも凄いけどさ、
 ダイアナちゃんは偉いと、ボクはホントに思うよ。
 向上心があって、それに諦めないことも、本当に」

            ザリッ …

「参拝の仕方って、分かるかな?
 や、どんなやり方だって――その気持ちさえあれば、
 きっと、ちゃんと、意味はあるとは思うんだけどね」

やり方が正しければ、気持ちは入りやすい。
だが確固たる意思を持つ子どもであれば、
イマジネーションの方が大事なのかもしれない。

砂利の音と共に体を捻り、拝殿の方に自分も向き直る。

465ダイアナ『オンリー・ガール』:2021/08/25(水) 00:36:00
>>464

「ふぅん?別にいいわ。私は気にしないから」

「私は心が広いから見せてあげただけなんだから」

「フフン!」

ダイアナはスタンドに関する知識が乏しい。
だから、何となく『そういうのもあるのだろう』と考えた。
それ以上は深く尋ねる事もしない。

「そうよ。分かってるじゃない。フフン」

上機嫌で小さく頷く。
自分で自分を優秀だと思ってはいるが、
やはり人から言われるのは違う。
とても晴れやかな気分だった。

「え?」

(や、『やり方』?そんなのあるの?)

(調べてくれば良かった……!)

「――――し、知ってるわ!」

       ザッ ザッ ザッ

「私が好きな言葉は『権威』・『権限』・『権力』よ!」

本当は知らないのだが、
反射的に意に反する言葉が口から飛び出た。
頭が混乱したせいで、
ついでに余計な事まで口走ってしまっている。
必死に記憶を検索しつつ、とりあえず拝殿と向かい合う。

466鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2021/08/25(水) 12:25:26
>>465

「心の広さに、ありがとうって改めて思うよ。
 ダイアナちゃん、それで――――」

実際、贔屓目を抜きにしても、
ダイアナは『歳の割には』間違いなく優秀な人間だ。
そう、歳の割には……

「――――ああ、それは失礼!
 それじゃあ、ボクは見てるだけにするからねェ」

     (なんていうか、随分な趣味だけど……
      お家が、そういうのを持ってるのかな。
      きっと英才教育ってやつなんだろう)

子供が一人で神社に来ている事態は、
特にスタンド使いの場合――『慣れてきた』。
が、何かないとは限らないので、
一応彼女の後をついていくことにする。

「案内なんてのも、いらないかもしれないけれど。
 もしかしたら……ウチに来てくれるのは初めてかもだしね」

……それとなく、アドバイスをするのも、仕事だ。
別に間違っていてもいいのだが、彼女は後で気にするだろう。

467ダイアナ『オンリー・ガール』:2021/08/25(水) 22:26:55
>>466

(うッ……!み、『見られてる』……!)

一人になれたら誤魔化す事も出来たが、
見られているとなるとそうもいかない。

「ま、まぁ……『ここのルール』は特別かもしれないしね!」

「いくら私でも、『全部』は知らないし……」

「もし『分からなかった』としても仕方ない事よね!」

「――――フフン!」

そう言って、自分でも予防線を張っておくのだ。

(確か『最初』は…………)

      ソッ

おずおずと紐を掴んで『鈴』を鳴らす。

     カランカランカラン

         カランカランカラン

             カランカランカラン

(『次』は…………『次』は…………!)

考えてはいるのだが、『次』が思い浮かばない。
よって『鳴らす』しかない。
冷や汗を流しながら時間稼ぎをしつつ、
頭の中はフル回転中だ。

468鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2021/08/25(水) 22:51:58
>>467

「そうだねェ、特別なルールって、あるんだよね。
 参拝の作法っていうのは――――
 時代によって、地域によって、
 けっこう違うこともあるんだよね。
 もちろん、基本っていうのはあるんだけど」

         スッ  

「それだって、細かいところに差があったりとかね!
 ボクだって、全国の全部は、ちょっと知らない」

ダイアナに同調しつつ、歩みも、歩調を合わせる。

「例えば『お賽銭』!
 金額は『五円(ご縁)』?
 それとも多ければ多い方がいい?
 そーゆーのはほんと、人によってでも違う」

巫女として多くの祈りを見てきた。
その全てが正しかったわけではないし、
正しかったものが、報われたわけでもない。

「投げて入れるのは良いって人もいるし、
 危ないから良くない、ッて人も、いたりするんだ。
 ボクは、投げない方が、いいと思ってるけど」

      「思うようにやるのが、
       結局――いちばん、良いんだろうね」

言葉とともに、要するに、次に何をするのか、
それを説明する――『知ってる人に話す体裁で』。

469ダイアナ『オンリー・ガール』:2021/08/25(水) 23:24:04
>>468

「そ、そうよね。『それぞれのやり方』があるものね!」

「現代社会で『個性』は尊重されて当然よね!」

         ゴソ

高級感のある三つ折りの財布を取り出す。
どこから?
『テディベアの中』から。
これは『収納』にもなっているのだ。
市販ではなく、『オーダーメイド』である。

「私は『10倍』入れるわ。フフン!」

         チャリン

賽銭箱に『五十円』を投入する。
投げるのは『品がない』ので、手から滑り落とす形で入れた。
さっき石を蹴り飛ばしていた人間の考える事ではないが。

         チラッ

(このまま『乗り越える』……!)

背中越しに、さりげなく巫女の様子を窺う。
『次の話』を聞くために。
それまでは動きが止まるので、
どう見ても『待っている』のは明らかだ。

470鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2021/08/25(水) 23:52:52
>>469

「ああ良いね、上手だ。流石だねえ」

静かに入れられた賽銭に内心胸を撫で下ろす。
やはり、乱暴な子では、無いのだろう――と。

「……多様性の時代、だからね。
 昔っからの一つのやり方に拘ったら、
 良くないってみんな分かってる時代だ。
 もちろん、拘らなきゃいけないことも、
 無いわけじゃあ…………ないんだろうけどね」

        ス ――

            スッ

「二礼」

       パン パン

「それから二拍手。
 掌をキッチリ、合わせて」

             ……スッ

「で、祈って…………最後に一礼。
 この流れなんかは、どこでも大体同じかな?
 や、でも、二拝二拍手一拝、って、
 そーいう呼び方も、する所はあるんだけどね。
 お辞儀の深さが違うとか、そういう話もあるし」

     「ダイアナちゃんが知ってたのは……
      ボクがやったのと同じだったかな?」

これだけ『ちゃんとしようとしてる』子に、
恥をかかせてやろうとは思えない。
今知らないのは最早明白なのだが、
今日、知って帰ってくれれば……それが何よりだ。

471ダイアナ『オンリー・ガール』:2021/08/26(木) 00:48:31
>>470

「フフン!お父様とお母様も言ってたわ。
 『上に行くためのやり方は一つじゃない』ってね!
 何でも吸収しないと成り上がれないのよ!」

「私のお父様とお母様は偉いんだから。
 何も持ってなかった所からスタートして、
 色んなものを手に入れたの」

「でも、私は最初から色々もってた。
 お父様とお母様がくれたからよ。
 だけど、私は『自分の力』で手に入れたいの!」

「だから――――私はもっと『上』に行くわ!」

ダイアナの両親は、いわゆる『成り上がり』である。
成り上がり同士だった二人が結婚し、ダイアナが生まれた。
両親と違い、ダイアナは最初から色々なものを持っていた。
しかし、それでは満足しなかった。
尊敬する二人と同じように、
自分自身の力で何かを成し遂げたかったのだ。

「!!そ、そうね!私が知ってたのと同じだったわ!」

「――――『偶然』ね!!」

         ススッ

               パン パン

                       スッ

巫女に倣い、同じように参拝を済ませる。

「次は絶対に絶対に勝ちますように」

「ううん…………違うわ!『勝つ』のよ!」

         ドギュンッ

テディベアから、『オンリー・ガール』が飛び出してくる。

    オンリー・ガール
「私は『唯一無二』のダイアナよ。だから絶対に『勝つ』!!」

神社の厳かな雰囲気とは程遠い力強さで、
自らの決意を神前で『宣言』した。

472鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2021/08/26(木) 21:25:38
>>471

「とびっきり素敵なご家族なんだって、
 ダイアナちゃんを見てるだけでも分かるよ。
 うらやましいくらいね。……や、もちろん、
 ボクの親だって負けないくらい素敵なんだけどね」

      「そこは競ってもしょうがないか。
       ボク達同士ならまだしも、ね!」

人生は与えられたカードを切るもので、
なおかつ新たなカードを得る方法もある。
ダイアナはその両方を勝ち取ろうとしている。
眩い存在でさえあるのだろう。

「神さまがそのお願い事を、
 すぐ叶えてくれるかは分からないけど――
 少なくとも、ボクは応援してるしさ。
 神さまに届くよう、しっかり、祈っておくよ」

願うなら、それが大人になっても続く事だ。
だが、それも心配は無いように思える。

「――こうやって、静かに……心の中で、ね」

           ス

それはそれとして一応正解も見せてはおくが、
本来、祈りの作法は『宣言』はしないものだ。
もっとも、はっきりと指摘はしない。

            ペコ

(神さまに届かなくっても、
 きっとこの子は自分自身で願いを叶えられる。
 けど、せっかく頼ってきてくれたんだからさ。
 ――ちゃんとやらないと、それは、嘘になる)

ただ、鳥舟の手で代わりに行ってはおこう。
神がいようといまいと、最善を尽くし、天命を迎える。

473ダイアナ『オンリー・ガール』:2021/08/27(金) 18:26:25
>>472

「――――ふぅッ!スッキリしたわ!」

          クルッ

『間違った参拝』を終えて、巫女の方を振り返る。
さりげない配慮には気付けなかった。
言いたい事を言って満足していたからだ。

「『私以外のスタンド使い』は『悪いヤツ』が多いけど、
 あなたはいい人みたい」

         トコ トコ トコ

「『動けなくしてくすぐってくるヤツ』とか、
 『いきなり湖に突き落としてくるヤツ』とか、
 『大きな岩を落としてくるヤツ』がいるの。
 あなたも気を付けてね」

境内に戻りながら、
『朝山』・『氷山』・『八瀬』の悪評を吹聴する。
ダイアナとしては間違った事は言っていないし、
『された事』の内容も事実だ。
ただ、『その発端は自分にある』というだけで。

             ズ ズ ゥ ッ

         トスッ

『オンリー・ガール』を『椅子形態』に変形させ、
そこに腰掛ける。

「フフン、そうだわ。
 私も『マーヤ』のお願いが叶うように応援してあげる」

「『マーヤのお願い』は何なの?」

『椅子』の上で生意気に足を組みつつ、巫女に問い掛ける。
相手に『願い』があるのかどうかは、
当然ながらダイアナは知らない。
ただ、『親切な相手には相応の敬意を払う』というのが、
両親から受けた教育だった。

474鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2021/08/27(金) 22:26:41
>>473

「神社っていうのはさ、お願いを言って、
 もちろん神さまに届けるんだけど……
 言うだけでも、結構すっきりするんだよね。
 自分のお願いを、見つめ直す機会にもなるし。
 また、必要な時があったら、いつでもおいでね」

ダイアナの『本性』は知らないが、
知っても、鳥舟は納得するだろう。
幻滅する様な『裏』ではないし…………
子供扱いしているから、というのも、あるが。

「へぇ……そんな人たちも、いるんだねえ。
 ありがとう、気をつけるよ。
 誰か神社の屋根を壊した人も、いるみたいだし。
 あったかい季節だからかなぁ、物騒だよね」

鳥舟は屋根の破損とダイアナの間に、
一切因果関係を抱いていないので、
その様な事を言って。それで。

「はは、ほんとに? 嬉しいなあ、ボクの願いはね」

叶わない。

生まれた瞬間にそう決まった。
死んでも、余計、悲しませるだけだ。

「みんなのお願いが叶います様に!
 ただそれだけ。もし応援してくれるとしたら、
 ダイアナちゃんの願いが叶うかもしれないね!」

今ここに鳥舟学文がいるから、
鳥舟学文の願いが叶うことは無い。

「や、でも舞台のチケットが当たってほしいとか、
 欲しいグッズが通販もされてほしいとか!
 そーゆーのは、あるかもしれないなァ」

あるとしたら、それは、次善、次々善の願いだけだ。

475ダイアナ『オンリー・ガール』:2021/08/27(金) 23:00:57
>>474

「ふぅん?そんなのでいいの?」

『無知』ゆえの無遠慮さで尋ね返す。
ダイアナは『不自由』した事がない。
生活は勿論だし、欲しいものがあれば簡単に手に入った。
自ら宣言した通り、それに『満足』はしていない。
だが、やはり幼すぎる。
思慮や経験を含め、全てにおいて何もかもが乏しい。
だから、巫女の発した願いの『真意』を読む事などは、
到底不可能な芸当だった。

「まぁ、構わないわ。
 私は、もっともっと『上』に行きたいと思ってるから。
 そうなった時は、マーヤの事も良くしてあげる」

「――――フフン」

上に行く。
それは目標というよりは『当然の摂理』だ。
少なくとも、ダイアナ自身にとっては。

「『あッ』………………!!」

       ピョンッ

「そ、そろそろ帰らなきゃ。
 き、今日は『バレエ』のレッスンがある日だから」

                 ヨロッ

            「とっとっ…………」

『屋根の話』を思い出した途端、
焦った表情で『椅子』から飛び降りる。
慌てたせいで、少々バランスを崩してしまった。
壊れたのは別の要因だが、
ダイアナは『自分が壊した』と思い込んでいた。
このまま話していては、さらに突っ込まれて『バレてしまう』。
そうなる前に、ここから立ち去らなくては…………!

         トッ トッ トッ

「さよなら、『マーヤ』。悪いヤツには注意してね!」

テディベアを片手に持ち、空いた手を巫女に振りつつ、
足早に神社から去っていく――――。

476鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2021/08/28(土) 04:01:26
>>475

「ボクはそれくらいで幸せなんだよねぇ。
 でも、ま、上に行くに越した事はないから!
 いつかおこぼれに預からせてね、ダイアナちゃん」

          ニッ

二心のない笑みを向けた。
実際、その気持ちに嘘はない。

「バレエ……踊る方のかな。
 流石、ステキな習い事をしてるんだねぇ。
 それじゃあ行ってらっしゃい。
 ダイアナちゃんなら心配無いだろうけど、
 熱中症とか……周りにも、気をつけてねェ」

そして裏もなく、去って行く背を見送った。
石を蹴った事への『話』も、特にはしなかったが、
恐らくは事故だったのだろうし、まあ、構わない。

「それにしても…………………」

(あの屋根は結局、どうしちゃったんだろう。
 ――――風だって強くなかったし、
 老朽化してるなんて話も、なかったはずなのに)

残ったのは謎くらいだが、
それも犯人がいるという発想に辿り着く前に、
屋根を直す方に意識が向く事だろう――――

477りん『フューネラル・リース』:2021/09/11(土) 09:06:41
「与作は木を切る…
 ヘイヘイホー ヘイヘイホー」

カンカンカン

歌を歌いながら、神社の屋根を修繕しているのは
年齢10歳程の 頭 に 鈴 蘭 を 咲 か せ た 少 女 だ

>>433-457で壊してしまった屋根を修復していたのだが

ガンッ!

「あああぁぁぁ!!」

誤って金槌で親指を叩いてしまった!
金槌を下に落としてしまった!
下に人がいたら大変だ!

478ナイ『ベター・ビリーブ・イット』『ディスタント・ラバー』:2021/09/12(日) 14:18:17
>>477

「クリスマスはシュウキョウ的ギシキらしいの。
 ということはこの建物も冬にはクリスマスになるはずじゃ。
 このトリイとやらも赤いし……」


サイズの合っていない靴をパカパカさせながら、神社を訪れた金髪の少女。
そこに突然の悲鳴。声のした方を見上げてみれば、降ってくる金槌!危い!


「なんじゃとぉぉ――!?
 髪の毛を一本、『鳥のぬいぐるみ』に『交換』!」


突如、金髪の少女の頭上に茶色い塊が出現!
キーウィのぬいぐるみだ。押すと鳴き声が出る。

            ピーィィ

こんな風に。クッションで完全に防がれた金槌は地面に落下! 勝った! 金槌、完!


「……今のは一体?
 そういえばサンタは屋根から侵入すると聞くが……」


金槌を拾い、頭上をうかがう。
どこか登れそうなところはあるだろうか?

479りん『フューネラル・リース』:2021/09/12(日) 14:41:35
>>478
>どこか登れそうなところはあるだろうか?

丁度そこに、梯子が立て掛けてある

「あぁ痛…」

神社の屋根から、頭から花が咲いた少女が下の様子を見やる

下を確認したりんは、ナイを認識する

「あぁ!
 すいません!大丈夫ですか!?怪我してませんか!?」

慌てて梯子から降りようとするが
右手の親指を負傷していて上手く降りられない
爪がバッキバキにひび割れて血が滲み出している
相当痛そうだ

480ナイ『ベター・ビリーブ・イット』『ディスタント・ラバー』:2021/09/12(日) 15:05:58
>>479

「わしは平気じゃが……」


梯子を登ろうとして、さすがに手が塞がっていることに気づく。
キーウィぬいぐるみを先に屋根の上に放り投げることにした。
成功するかどうかは不明だ。
金槌はさすがに投げられない。まあ、持っていても登れるだろう。


「赤い……お嬢ちゃんはサンタ……?
 ……いや、血が赤いのは普通じゃったな。
 しかし……ならばなぜ屋根に……? 頭のそれは……?

 いや、聞いたほうが早いの。
 一応聞くがお嬢ちゃんはサンタかの?」


屋根に登り、りんの姿をきちんと視認した少女はしばし悩んだ様子だったが、
ひとつの質問を投げかけてきた。この女の子一体!? もしかしてサンタなのか!?

481りん『フューネラル・リース』:2021/09/12(日) 15:17:06
>>480
「うわっ」

いきなり下からぬいぐるみが飛んできて驚愕するも
飛んで来たぬいぐるみを両手で受け止める

「いぃぃぃっ!!」

キャッチする時にひび割れた爪がぬいぐるみに当たってしまい大ダメージを受けた!

>サンタ

「いっひっひっひ
 いかにも、わしが真っ赤な血を流したサンタクロースじゃ…
 って違うよ」

痛みで涙を堪えながらノリツッコミ

「今の時期はサンタさんはシーズンオフ
 別の仕事をやってるよ」

482ナイ『ベター・ビリーブ・イット』『ディスタント・ラバー』:2021/09/12(日) 15:28:26
>>481

「そうじゃろうな。わしはわかっておったぞ。
 ……大丈夫か? バンソウコーなら持っておる。
 今回に限り無料でやろう」


もちろん最初からサンタでは無いと見抜いていた。と頷く。
それはそれとして、金槌を置き、背中のリュックを降ろし、
中から『絆創膏』を取り出して、近づいてきた。


「しかしサンタで無いというのならば、なぜ屋根の上に……?
 それにまるでサンタと知り合いのような口ぶり……
 確かに今はクリスマスではない。しかし近々クリスマスにしなければならんのじゃ。
 お嬢ちゃん、サンタの連絡先を知っておるか?」


『絆創膏』を指に巻いてやろうとする。
その手つきは器用そうには見えない。

483りん『フューネラル・リース』:2021/09/12(日) 15:52:26
>>482
「あ、いいの?
 ありがと〜」

『絆創膏』を巻いてくれるというナイに
素直に右手を差し出し委ねる

「この前、ここで花火を見てたらうっかり屋根を壊しちゃったんだ〜
 その時はね、後二人、おねえさんと『黒い影』みたいな子がいたんだけど、
 その『影』みたいな子がおねえさんをじーっと見てて、おねえさんが怖がっちゃったり
 おねえさんが何か『かこ氷』みたいになってて大変だったんだぁ〜」

いきなり訳の分からない事を言い出す鈴蘭少女
普通の人が聞いたら、こいつ脳まで花に浸食されてるのか?
と思うだろう
いや、普通じゃない人が聞いても正気を疑うだろう

「怖がったおねえさんがうちの『鈴蘭』を掴んだりして
 引っこ抜かれそうになって危なかったよぉ〜
 流石にあの時は死ぬかと思ったなぁ…」

>その手つきは器用そうには見えない。

「あ…だ、大丈夫?」

その手つきに不安を感じ、嫌な予感がするが
ナイを信じて彼女に身を委ねる

484ナイ『ベター・ビリーブ・イット』『ディスタント・ラバー』:2021/09/12(日) 16:04:32
>>483

「大丈夫じゃ」


とは言うが、絆創膏はズレていた。指という湾曲した部位に貼るのは難しい。
しかし「これは追加特典?なので無料じゃ」の言葉と共に、さらなる絆創膏が追加され、
最終的にりんの指は何枚もの絆創膏でぐるぐる巻きになった。
まあ、厳重に保護されてはいる。


「ふむ。よし。
 壊したから直していた。か。納得じゃな。
 しかし……」


りんの指を見て満足気に鼻息を漏らす少女。
かと思いきや、何かひっかかるものがあったのか、虚空に視線をさまよわせる。


「氷みたいに……うーむ?
 ところで、お嬢ちゃん、ひっこぬくだのなんだの。
 その頭の花は、もしかして生えておるのか?
 飾りとかではなく」


アイデアロールに失敗したらしい。何もひらめかなかった。
興味は目の前の女の子の頭上に向かう。

485りん『フューネラル・リース』:2021/09/12(日) 16:26:34
>>484
「Oh…」

絆創膏でグルグル巻きにされた親指を見る
うわぁすっごい指、こんな景色、あたし初めて見たよ

>もしかして生えておるのか?

「そうだよ〜
 うちだけの特別な花…で…」

一瞬得意気に胸を張って自らの頭部の花を自慢するりんだったが
ナイの視線を感じ、身の危険を感じる

これでまでの経験からして、これはまたぶっこ抜かれそうになるパターンなのでは…!?
ましてや、相手は自分と同じくらいの歳の子供だ
これくらいの子供は興味本位で突発的に何をするか…

「えぇ、えぇ〜と、さっきクリスマスの話してたよね?
 うちは、その、サンタさんの連絡先は知らないけど…
 どうして今クリスマスをやらなきゃいけないのかなぁ〜?」

挙動不審に目を泳がせながら話題を逸らそうとする

486ナイ『ベター・ビリーブ・イット』『ディスタント・ラバー』:2021/09/12(日) 16:38:56
>>485

「やはり生えておるのか?
 わしはテレビで見たことがあるぞ。
 トチュウカソウとかいう……お嬢ちゃん、寄生されておるのではないか……?」


頭に花の生えた女の子に詰め寄る少女。
屋根の上だ。暴れれば命は無い! というほどではないが危ない。
ちなみに冬虫夏草はキノコである。


「うん? ……クリスマスか?
 ああ、うむ。
 夏のオバケを倒すのに、町中を冬っぽくしなければならんらしい。
 それでクリスマスをするらしいんじゃ」


一度に2つの事は考えられないらしい。
質問されて目論見通り花から気がそれている。

487りん『フューネラル・リース』:2021/09/12(日) 16:57:12
>>486
よ、よかった…
「あはははは」と、朗らかな笑顔を作りながらも、冷や汗をかきながらびくびく震えるりん
前は誰にでも無防備に触らせていたが、こう何度も抜かれそうになると
流石に警戒心が芽生えたようだ
節度ある大人なら、前もって「抜いちゃ駄目だよ?」と注意しておけば抜かないだろうし
触らせてあげてもいいのだが…、この子の場合はどうなんだろう?

「夏のオバケ…?
 うーん、よく分かんないけど
 そのオバケっていうのは、何か悪い事したの?」

悪い事をしていないのにオバケだからといって退治されるのはあんまりだろう
だが悪さをしたのなら、まぁ、仕方ないかもしれない

488ナイ『ベター・ビリーブ・イット』『ディスタント・ラバー』:2021/09/12(日) 17:11:46
>>487

「えーと、オバケのせいでいっぱい人が死んでおるらしいぞ」


現在被害に遭っている2人……(うち一人はまさにりんが語ったおねえさん)はまだ生きているが、
それ以前の被害者も沢山いるらしいので、まあ、間違ってはいないだろう。
細かいことを覚えていないのは、単に記憶力が無いからと、
メールで貰った情報を断片的にしか読めていないからである。
(漢字があまり読めないのだ)


「それでわしは準備のために色々しておるんじゃが……
 紙を配ったり、クリスマスっぽいものを集めたり。
 そうじゃ、お嬢ちゃんは何かクリスマスっぽいもの、持っていたりするか?」


とりあえず話題は完全にクリスマスに移った。
まあ、りんの頭の花はこれ見よがしに目の前にあるので、いつ話が戻っても不思議ではないが。

489りん『フューネラル・リース』:2021/09/12(日) 18:01:21
>>488
オバケのせいで、大勢の犠牲者が出ていると聞いたりん
その瞬間、りんの顔からは笑顔が消え、
悲しむような、険しい表情へと変わった

「…そっか、『人間』がいっぱい死んでるんだ…」

その声は、先程までの優しさを残しつつも辛そうなものだった

「冬っぽい事をすれば、そのオバケを止められるって事かな?
 うちに何が出来るか分かんないけど…
 うちに出来る事があるなら、協力させてもらうよ

 これ以上『人間』を死なせたくないから…」

懐に手を突っ込み、何かを探すりん

「あ、これ、クリスマスっぽいかどうか分かんないけど」

何やら『押し花』のような物を取り出した
いや、『押し花』だ『鈴蘭』の

「前に千切れちゃったうちの頭の『鈴蘭』を押し花にしたんだ
 これ、今度クリスマスのプレゼントにしようと思ったんだけど」

その押し花にはサンタクロースが描かれていたり何かクリスマスっぽい飾りが施されている
いやしかしこれを、クリスマスっぽいというには流石に乱暴な気がする!

490ナイ『ベター・ビリーブ・イット』『ディスタント・ラバー』:2021/09/12(日) 22:16:09
>>489

「もうクリスマスのプレゼントを用意しておるのか?
 気が早いの。
 好都合と言えば好都合なんじゃが……」


少女が『押し花』に疑問を持った様子は無い。
商売繁盛のお守りを、赤いからという理由でクリスマスグッズだと納得するやつなのだ。


「うーむ。欲しいところじゃが、しかし本当のクリスマス用のプレゼントであれば、
 今交換するのも悪い気がするの……
 お嬢ちゃんとしても、コピーが出回ったりしたら嫌じゃろう?」

「……」

「というか、これ、頭の……?
 受け取ったらわしの頭からも花が生えたりせんじゃろうな。
 やはりお嬢ちゃん、花に操られておるのでは……?
 仲間を増やそうと……?」


花が話題にあがったことで再度、頭の花に注目が行ってしまう。

491りん『フューネラル・リース』:2021/09/13(月) 08:18:17
>>490
「人間の役に立てるなら、うちとしては本望だよ
 …え?コピー?」

コピーという言葉を聞いてきょとんとした表情になる

「えぇーっと、『押し花』のコピーなんて
 出来るもんなのかな?」

『押し花』をコピーする技術など聞いた事が無いりん
そんな技術があったとしたら新しい発見だ
やはり人間の可能性は無限大だな!
改めて人間は凄いと思うりんであった

いやまぁ、普通に偽造する技術とかあるかもだけど
とりあえずりんはそういうの知らないという事で

>仲間を増やそうと……?

「そうだよ〜
 うちの鈴蘭を受け取った人間は、
 みんな鈴蘭に寄生されて脳を溶かされて
 やがて頭の中が花に埋め尽くされて…って違うよ!」

再びノリツッコミ

「うちの花はそんなに危なくないよぉ
 頭から離れたら普通の花だしね」

本人がそう思ってるだけで実はやべーもんかもしれない
人の頭に咲いてるという時点で普通じゃない

492ナイ『ベター・ビリーブ・イット』『ディスタント・ラバー』:2021/09/13(月) 11:19:23
>>491

「わしならできる。
 まあ、危険ではなく、コピーしてもよいというなら欲しいが……
 わしは金は無いから何かと交換じゃ、何か欲しいものあるか?
 お嬢ちゃんなら……お菓子とか、この鳥のぬいぐるみとかどうじゃろう。
 あとは……防犯ブザーとか……?」


キーウィのぬいぐるみは、鳥っぽさはあまりない。茶色い塊だ。
さきほどりんが受け取った時に血がついてるかもしれない。


「本当に冗句か?
 操られているとしたら『危なくない』は信用し難いしの……
 操られていないとしても、本当に危険が無いのかわからん。
 とてもお腹がすいたり、気づかぬうちに移動していたりとか、ないのか?
 というか、頭から離れてないと普通の花ではないのか?」


頭の花をよく見ようと、りんの頭に顔を寄せようとする。
つむじとかから生えているんだろうか。

493りん『フューネラル・リース』:2021/09/13(月) 11:42:35
>>492
「交換?
 うちは無料でもいいんだけど、交換してくれるっていうんなら…」

キーウィのぬいぐるみを交換してくれるというナイに対して

「え?
 こんな良い物貰っちゃっていいの?
 うちの押し花じゃ釣り合わないんじゃないかな…?」

ぬいぐるみは結構高かったりする
自分の押し花とは釣り合わないのではないのかと懸念するりん
とはいえ、結構気に入ったようだ
交換成立したといっていいかもしれない

「あ、あうっ…」

ずいっと顔を寄せて頭部を見るナイ
その花は、完全に根本が頭頂部に融合しているようだ
マジで生えている奴だ

自分の頭部をじろじろ見るナイに
血生臭いぬいぐるみを抱き締めながらびくついている

494ナイ『ベター・ビリーブ・イット』『ディスタント・ラバー』:2021/09/13(月) 12:02:58
>>493

「先ほども言ったが、わしはコピーできるからの。
 いや、コピーとは違うんじゃが」


キーウィのぬいるぐみはデカい。枕にできそうだ。


「おお、本当に生えておる。
 ところで、操られて無いなら、なぜ花を生やしておるんじゃ?
 頭を洗う時に不便ではないのか?」


花に手伸ばす少女。コーヒーカップのまわりをうろつく猫くらいの緊張感が漂う。
だが、その時、「ピーィィ」という音がした。このぬいぐるみは抱きしめると鳴くのだ。
そこでりんが怯えている様子に気づいた少女は、素直に引き下がった。

495りん『フューネラル・リース』:2021/09/13(月) 12:34:10
>>494
「うわっ」

抱き締めていると鳴き出したキーウィに驚くりん
そのキーウィのおかげで助かったのだから感謝しなくてはいけない
これからニュージーランドに足を向けて寝られないな!

「この花はね…
 えっと…いつからだっけ…
 気が付いたら生えてて……
 ……そうじゃなくて、生まれた時から……」

――――――違う
      私は『花』だ

――――――違う!
      うちは『人間』だよ!!

「あっ…うっ…
 あぁぁあぁ……っ!!」

突然、頭を抱え込み苦痛の声を上げる少女

――――――――――――――――――――――――――――――
     私は
              うちは
                      僕は

何だ?
――――――――――――――――――――――――――――――

「…あのね、この花を引っこ抜かれたら
 うちは多分、死んじゃうと思うんだ
 だからお願い、この花を…
 抜かないでほしいの」

496ナイ『ベター・ビリーブ・イット』『ディスタント・ラバー』:2021/09/13(月) 12:50:16
>>495

「ぬお、大丈夫か?」


心配そうに声をかける。
敵対しているわけではないのだし、ちゃんと話せば伝わるだろう。


「……う、うーむ。花を抜くと死んでしまうのか。
 あれか。頭……脳に根っこが生えているみたいな……?」


しかし、いきなり苦しみはじめ「花を抜かないで」と言う女の子。
客観的に見て、「やっぱり洗脳されているのでは?」みたいなムーブではある。
仮にそうだとしても、花を抜くと死んでしまうと言われるとどうにもできないが……


「そうじゃ、ちょっとそのぬいぐるみ、いったん離してもらってもいいかの?」

497りん『フューネラル・リース』:2021/09/13(月) 13:08:11
>>496
突然苦しみ出して花を抜くと死ぬなんていう
狂ったような話を信じてくれたナイ
実際のところ、脳に直結しているのかどうかは分からないが
頭部と完全に融合しているため、無理に抜こうとすると
頭部ごと引き千切れて死亡してしまうのは確かな事だ
もしも、この花が引き抜かれて死亡した場合

一 体 何 が 起 き る の か
ナ イ の 安 全 も 保 障 は 出 来 な い


>ちょっとそのぬいぐるみ、いったん離してもらってもいいかの?

「これ?はい」

ナイの言う通り、キーウィのぬいぐるみを手放すりん
一体何をするというのだろうか?

498ナイ『ベター・ビリーブ・イット』『ディスタント・ラバー』:2021/09/13(月) 13:32:34
>>497

「さっき『交換』してよいと言ったの?
 というわけで、今から『交換』するぞ。見ていろ……
 はあああ……!」


手放され、屋根の上に置かれた『キーウィのぬいぐるみ』に手をかざし、
「えいやぁーッ」っという裂帛の気合いと共に、特になんのエフェクトも無く、
まだりんの手の内にあった『押し花』と『キーウィのぬいぐるみ』の位置が『入れ替わった』
つまり、りんの手に『キーウィのぬいぐるみ』が、屋根の上に『押し花』が出現することになる。


「見たか!
 わしの『交換』は位置ごと『交換』できるんじゃ。
 花を『交換』して瞬間移動させれば、
 無理矢理引っこ抜いて脳が取れてしまうことは無いと思うんじゃが、どうじゃ?」


実演ののち、そんな提案をしてきた。
『交換』には同意が必要だし、断っても無理矢理力づくで花を抜いてくるというのも、まあ無いだろう。
少女は花を抜いた際のリスクなど認識していないが、屋根の上で暴れれば普通に落ちる危険性はあるのだ。

499りん『フューネラル・リース』:2021/09/13(月) 14:10:25
>>498
「!!」

ナイの行った『交換』による『入れ替え』
その不思議な術に驚きの顔を見せるりん

「こう…かん…?」

『花』と『交換』
今みたいに『入れ替わる』

もしも『頭の花』が『入れ替わったら』…?

どうなるの…?


               試してみれば?

やだ…怖い…

             いい加減、現実を直視しなよ

はぁ……はぁ……はぁ……
過呼吸気味に、ナイの目を見る

「わ…うちは…」

ナイの提案に、応えようとしたその時

「あっ…」

ふわり

がたがたと怯える体、不安定な足場
十分な要素が揃っていた

りんの体は

屋根から滑り落ちた

500ナイ『ベター・ビリーブ・イット』『ディスタント・ラバー』:2021/09/13(月) 14:25:24
>>499

「大丈夫か……?」


少女が心配そうに近づき、手を伸ばす。


「なにーっ!?」


だがその手は空を切った。
小さな――少女とちょうど同じ背丈の――体が落ちていく。


「お嬢ちゃん! 『招待』する! 受け入れるんじゃ!」


少女は花の生えた女の子を追うように屋根から落下。
リュックに『屋敷』を発現。射程1m。りんを『招く』。
自分とりんをミニチュアの『屋敷』内部にある豪華プールに着水させる。
その後、リュックごと地面に落ちるので、ちょっと揺れるだろうが、
屋敷自体はわりと頑丈だし、プールに入っていれば衝撃はそれほどではあるまい。

501りん『フューネラル・リース』:2021/09/13(月) 14:51:24
>>500
ついこの前、ここから落ちたばかりだ
あの時と同じ光景を見る
あの時と違うのは、今落ちてるのは一人だという事、今は昼だという事
……そんな事はどうでも良い事だ

この前の怪我は、まだ完治したわけではない
動く事を拒む体に鞭を撃ち、屋根を直しに来たのだ
あやちゃんに迷惑をかけたくないから

今落ちたら、今度こそ命は無いかもしれない

――――――――――――――――
あぁ、今度こそ終わっちゃうのかな
もう、悩まなくても、いい…のかな…
――――――――――――――――

目を閉じると、暗闇の中で少女の脳裏に奇妙な映像が過った

             『自分の死の瞬間』を

>お嬢ちゃん! 『招待』する! 受け入れるんじゃ!

『招待』?何の事かな…

バシャアアアアアアン

屋敷のプールに着水したりん
水の中でりんは、『何かの声』を聞く

――――――――――――――――
もう、認めちゃえば楽になるんだよ…

                                 うるさい

502ナイ『ベター・ビリーブ・イット』『ディスタント・ラバー』:2021/09/13(月) 15:09:48
>>501

「あぶ、あぶ……
 嬢ちゃん? お、溺れる……
 た、助けてー『ディスタント・ラバー』さーん」


落下激突はしなかったものの、花の少女は意識がはっきりしない様子だ。
少女では抱えてプールから上がる事は難しい。
『屋敷』に住まう『ディスタント・ラバー』さんも応援に駆け付けるが、わりと非力だった(パD)


「木ーッ!」


最終的に、服をどデカイ『ナラの木』に『交換』する。
ミニチュアの『屋敷』のプールに浮いた、というか半分はみ出た『木』、
その上に横たわった頭に花の生えた少女、という妙な光景になってしまった。
まあ、とりあえず命は助かった。


「おーい、嬢ちゃん? 大丈夫かー?」


ぺちぺちと頬を叩き、呼吸やら心臓の鼓動やらを確かめる。

503りん『フューネラル・リース』:2021/09/13(月) 15:34:35
>>502
音のおねえさんも言ってたよね?貴女は一度『死んでる』って

               そうだよ!だからどうしたの!?うちは今、『生きてる』んだよ!

人間の『命』はね、『一つ』しかないんだよ

                                   …それがどうしたの?

貴女は本当に『人間』?
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「やめ…て…」

ゴホッ ゴホッ

咳をしながら水を吐き出す
どうやら生命活動を再開したようだ

「あぁぁ…ぁぁぁぁぁぁぁ……」

開かれたその目は、何かに酷く怯えている

「うるさい……
 黙って……黙れえええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっっっ!!!!!!」

突然、大声で叫び出した少女
りん、ナイ、『ディスタント・ラバー』の3人だけの空間に絶叫が木霊する

かと思えば

ぎゅっ

突然、目の前のナイに抱き着いた

「ねぇ…うちは『人間』だよね…」

とにかく『人間』の温もりが欲しかった
『人間』である事を誰かに認めて欲しい

うちの中の何かが、否定をしてくる
うちが『人間』である事を証明しようとする度に、全部否定される

それでも…
自分が『人間』だと思い続ける限り、自分は『人間』だ……ッ!!

504ナイ『ベター・ビリーブ・イット』『ディスタント・ラバー』:2021/09/13(月) 15:49:10

>>503

「ぬわ!?」


びっくりしている間に抱き着かれる少女。
服を木に『交換』してしまったので、夏で薄着だったこともありパンツ一丁だ。
2人の濡れた体に、子供の高い体温がじんわりと感じられた。


「そんなにうるさかったかの……」


よくわからないが、温かいし、抱きしめ返して、頭を撫でる。
髪が濡れていて花も生えているので、あまりうまく撫でられていないが。


「ええ……いや、知らんが……
 人間なんじゃないのかの……そう見えるが……」


全霊の問いに、曖昧な言葉が返ってくる。
子供は時に無慈悲に残酷だ。
空気読まず、欲しい答えをくれるとは限らない。


「うーむ、お嬢ちゃん、名前は?」

505りん『フューネラル・リース』:2021/09/13(月) 16:12:40
>>504
それは当然だ、突然叫び出し
自分は人間かどうかなどと、訳の分からない事を聞かれて
大人でもきちんと答えられるわけがない

震えるりんの頭を撫でるナイ
例え適当で曖昧な答えだったとしても
りんにはそれが嬉しかった

「…ありがとう」

自分の『人間』を否定してくる自分に怯える心を落ち着かせるには
その優しさだけで十分だった

「…『りん』」

涙濡れた後の見られる顔で
必死に笑顔を作りながら、真っ直ぐナイの顔を見る

「それがうちの名前」

「貴方は?」

506ナイ『ベター・ビリーブ・イット』『ディスタント・ラバー』:2021/09/13(月) 16:24:46
>>505

「わしか? 名前は無い。
 こっちは『ディスタント・ラバー』さんじゃ」


囚人服みたいなデザインの水着を着た人型スタンドが手を振って、
バランスを崩して木から滑り落ち、プールに沈んでいった。


「戸籍も無いが、あんまり気にせず生きておるぞ。
 ほら、生まれたところとか親とかも覚えとらんから、
 わしだってもしかしたら人間じゃないかもしれんし……
 わしは気にせんが」


底辺アピールをしているわけでもないが、慰めているらしい。


「頭に花が生えてても人間でいいんじゃないかの。
 よしんば人間じゃなくても、そんな気にする事ないと思うし……
 いや、さっきから色々大変そうじゃから、頭の花が原因なら取った方がいいかもしれんが」

507りん『フューネラル・リース』:2021/09/13(月) 16:50:24
>>506
「そっか、無いんだ名前」

水の中に沈んでいった
ちょっと面白い人に手を振る

「あっははは、ありがとう」

戸籍も無い親無き子である事を語るナイ
一口に人間と言っても種々様々だ
人間の中には、そういう人間もいるだろう
だからりんは、それを聞いても、彼女はそういう人間なのだとすんなり受け入れる事が出来た
そして、りんは彼女を「強い人間」だと思った

「この花を……取っちゃうのが怖いんだ
            きっとこの花は」

「『自分自身』だから」

「あの…だから、その…
 まだ、取っちゃう『覚悟』は出来…ない…」

「…だけど、もしかしたらいつか…『その日』が来るかもしれない」

思いつめたような顔で、しかし、さっきとは違う
何かを決意しようとしているような、そんな顔だ

「だからその時は、力を貸してほしいんだけど…
 あの、スマホって持ってるかな?」

懐から鈴蘭柄のスマホ(防水加工済み)を取り出す

508ナイ『ベター・ビリーブ・イット』『ディスタント・ラバー』:2021/09/13(月) 17:46:52
>>507

「花もお嬢ちゃんの一部ということか?
 そういえば『ディスタント・ラバー』さんが見えておるな。
 スタンド使いなのか?
 まあ、妖怪とかでも見えるのかもしれんが」


『屋敷』は実体化しているが、『ディスタント・ラバー』は非実体だ。
ダメージフィードバックは無いので呼吸も必要ないのだろう。
飛び込んでも大丈夫なように深いプールなのか、沈んだままだ。


「濡れておるが大丈夫か?
 わしのはリュックの中じゃな。射程内か」


防水加工のことは知らないらしい。
『屋敷』はリュックに生えているので1m以内。取り寄せ可能だ。
名も無い少女の手に、スマホが出現する。

509りん『フューネラル・リース』:2021/09/13(月) 18:15:36
>>508
「こういう事が出来る人、スタンド使いって言うんだね
 うちは、スタンド使い…なのかな?
 スタンド使いのみんなみたいに、何か出せるわけでも
 特別な事が出来るわけでもないから…」

頭から鈴蘭を咲かせている時点で十分特別だ
更に彼女には、体液に鈴蘭の毒を混ぜるという悍ましい能力がある

そして彼女の人間の部分その物が
実体を持つスタンド物質なのだが
彼女にはその自覚は無い

りんは本当に自分を、『普通の人間』だと
そう思い込もうとしている

「えっと、何て呼べばいいか分かんないけど…
 名無しさん、うちと連絡先交換してくれますか?」

510ナイ『ベター・ビリーブ・イット』『ディスタント・ラバー』:2021/09/13(月) 18:35:54
>>509

「わしの『ベター・ビリーブ・イット』も最初は何も無いスタンドじゃったが、
 今はこうして小さいが『屋敷』も出せる。
 りんちゃんもスタンドが成長とかするかもしれん。まだ小さいしの。

 ん? 連絡先か? よいぞ」


返事……双方の合意の後、操作もしないうちから、スマホに勝手に連絡先が表示される。
それが『交換』であれば、電子データであってもおかまいなしらしい。


「わしはナイとか呼ばれておるな。名前が無いからの。
 あとは、住んでおる家の名前でユキシラとか」


連絡先のデータによると、スマホの所有者の名は雪白 権六郎というようだ。

511りん『フューネラル・リース』:2021/09/13(月) 19:11:40
>>510
「何も無い所から、こんな『お屋敷』を出せるようになったの?
 凄いよ名無しさん!」

ナイの0からのスタートから始まった
努力の結実と言える『屋敷』に感服する

「『成長』か…
 うちも『成長』するのかな…」

自分は『成長』するのか?
するとしたら、『成長』をするのか…

想像をするりんだったが…すぐにやめてしまった
何か…途轍もなく恐ろしい予感がする
知らない方が幸せ…そんな気がする

しかし…いつかはこの気持ちの正体を、知らなければいけない時が来る
そんな確信が心のどこかに存在した

「えっと、じゃあユキシラ ナイちゃんでいいのかな?
 これからよろしくね、ナイちゃん!」

こうしてりんとナイは知り合いとなったのだった

「そういえばすっかり忘れてたけど
 オバケを退治するのにクリスマスをしなきゃいけないんだよね
 うちも出来る限りの事はするから、任せて!」

その後、ナイと別れたりんはいそいそと何かの準備に、自分の小屋へと帰って行った

後日、神社がクリスマス仕様に魔改造されていたのは恐らく鈴蘭少女の仕業だろう
あやちゃんに無断で勝手に

512ナイ『ベター・ビリーブ・イット』『ディスタント・ラバー』:2021/09/13(月) 19:28:10
>>511

「すごいじゃろ」


と胸をはる。パンツ一丁で。
文字だからいいが、映像つきならば即死だった……(児童的なアレで)


「そういえばそうじゃったな。クリスマス……
 ぷしゅむ……まずは乾かさんとな」


と小さなくしゃみをして、2人はプールからあがり、しばしくつろいだ後、別れたのだった。

513水宮アリア『ブラッディー・マリー』:2021/09/18(土) 07:50:35
水色の髪の少女が一人、神社を訪れていた

「……」

海を思わせるような碧い瞳
日本人のようで、西洋人のようでもある顔立ちをしている

514『エド・サンズ』:2021/09/18(土) 20:21:52
>>513

『甚ッ 狂ウ べぇ! 甚ッ 狂ウ べぇ!』

『甚ッ 狂ウ べぇ! 甚ッ 狂ウ べぇ!』

『甚ッ 狂ウ べぇ! 甚ッ 狂ウ べぇ!』

神社の裏から人々に狂気を齎す様な悍ましきチャントが聞こえる
野太い男性の様な声だが、感覚の耳でしかきこえない『スタンド音声』だと水宮はわかるだろう

515水宮アリア『ブラッディー・マリー』:2021/09/18(土) 20:34:33
>>514
「……?」

少女は凄く困った顔になる
神社の裏から、『スタンド』っていうのが何か騒いでる声がする…

この声は、確かめに行った方がいいのだろうか?
不用意に不審な声に近付いて、変な事に巻き込まれたりしないだろうか?

ゴンッ!

「…」

迷ったアリアは…
何故か強風で飛ばされてきて自分の頭にぶつかった来たお鍋の蓋(凄く痛かった)を盾にして
声の方に近付いてみる事にした

そろり…そろり…

516『エド・サンズ』:2021/09/18(土) 20:53:35
>>515

『ウオオオオオッ! モウ一丁!』

『甚ッ 狂ウ べぇ! 甚ッ 狂ウ べぇ!』

『スズ ガ ナルゥ―――――――ッ!! YEAHHHH!!』

  ドンドコドコドコ

          ドンドコドコドコ

迷いながらも神社の裏手に回った水宮は常軌を逸する光景を目の当たりにする

そこでは『和風の意匠を持つ人型スタンド』が右手にさすまた、左手に提灯を持ち踊り狂っていた
地面を踏みしめる震脚の音が低く大地を揺らし、自己の存在を主張する

『ウ〜〜〜〜ン・・・・何か違ウンダヨナァ〜〜〜
 あきはノ奴はモットいい感ジニ歌エテイタハズナンダケドナァ〜〜〜〜
 ヤッパリ、朝陽ノ嬢ちゃんニ教エヲ乞ウカ・・・・・誰ダ!?』

水宮の気配を察知したのか、急に大きな声で誰何してきた

517水宮アリア『ブラッディー・マリー』:2021/09/18(土) 21:12:00
>>516
「…???」

アリアは目の前で起こっている
異常な出来事に脳の処理が追い付かないのか
頭の中がグルグルになり眩暈を起こして倒れそうになる

…ひょっとして、ジングルベルを歌っているのか…!?

周りに人はいないけど、スタンドだけなのか…?

別に悪い事をしてるわけじゃないし…
見なかった事にしてそっと戻ろうとした時

>誰ダ!?

「!?」

『エド・サンズ』に見つかってしまった水色の髪の少女

ぶるぶると震えながら、ノートを取り出してページを捲る
ノートには予めいくつか言葉を書かれているようだ

『エド・サンズ』に見せたいページを見つけて、
彼の前に出すアリア

『悪霊退散悪霊退散悪霊退散悪霊退散』

518『エド・サンズ』:2021/09/18(土) 21:26:35
>>517

(ホォ〜〜、俺ノ声ガ聞コエルッテ事ハ「スタンド使い」ミテェダナ・・・)

ぶるぶると震える水宮に近づく『エド・サンズ』
そこで目の前に突き付けられたページを眺め・・・・・ハハハ!と大きな声で笑う

『ハッハハハハ! 俺ノ事ヲ悪霊カ何かダト思ッテルミテーダナ、嬢ちゃん!
 ハハハハ・・・・悪霊ダッタラヨォォ〜〜〜〜!』

ズイッとさらに接近する

『「お経」ガ書イテネー部分ダケ喰ッチマッタライイダケノ話ダヨナァァ〜〜〜〜ッ!』

いかにも悪霊の様な、唸るような低い声で言った

519水宮アリア『ブラッディー・マリー』:2021/09/18(土) 21:42:24
>>518
「〜〜〜〜〜〜っ!!!」

接近してくる『エド・サンズ』に
あわわという感じで(声は出していない)
怯えながら後ずさり

どさっ

後ろ向きに歩いていたので石に躓いてしまい
転んで尻もちをついてしまった

「……っ」

その時、アリアの『海の様に碧い眼』から、
一滴の『血の様に紅い涙』が零れ落ちた

――またこれを使っちゃった…
  もう、使いたくないのに…

ピチャッ

地面へと落ちた『涙』は、瞬く間に周囲に広がり
『血の海』へと姿を変えた

ザバァァァン

『血の海』からは『血まみれの天使』
『ブラッディー・マリー』が這い現れ、
『血の海』は地面へ吸い込まれるかのように消えていった

『エド・サンズ』とアリアの間に現れた
『マリー』のグーパンチが『エド・サンズ』に炸裂するッ!!(パス精CBB)

520『エド・サンズ』:2021/09/18(土) 21:47:18
>>519

『ホォ〜〜ソイツガお前ノ「スタン・・・・ダグホッ!!』

血の海から現れた『血の天使』が『エド・サンズ』の顔面をグーで殴る
人間以上の速度で放たれた殴打をもろに顔面で受けて、後方に吹っ飛んだ

  ドサッ!

地面に倒れる『エド・サンズ』
その両手は降参を示すように空へとあげられている

『ア〜〜、スマネェ、悪カッタ
 降参ダ・・・・変な悪ふざけデびっくりサセチマッテ悪カッタナ・・・・』

521水宮アリア『ブラッディー・マリー』:2021/09/18(土) 22:06:27
>>520
マリー『あ…
    悪い人じゃないのかな…?』
アリア「……」

『マリー』に対して、
何か手話で何かを使えるアリア

マリー『う、うん…そうだね』

ぶっ倒れた『エド・サンズ』に恐る恐る近寄る二人

マリー『あ、あの…
    いきなり殴っちゃってごめんなさい…』
アリア「…」

倒れている『エド・サンズ』に、ぺこりと頭を垂れる二人

マリー『あの…
    ここで何してたのかなって、気になっちゃって…』

522『エド・サンズ』:2021/09/18(土) 22:13:58
>>521

『ヨットォ!』

体幹をバネのように使って起き上がる

『俺ノ方コソイキナシ「怪談」ミテーナ事シテ悪カッタナ
 俺ノ事ガ見エル奴モ少ネーカラ、チョットカラカッテミタクナッタンダ』

ぽりぽりと顎を掻くような仕草をしながら謝罪をする

『俺ノ名前ハ「エド・サンズ」ッテェンダ
 チョットバカシ「夏のクリスマス」ヲスル必要がアッテヨオ
「さんたさん」にナルタメニ「クリスマスの歌」ヲ練習シテタンダガ、ドウニモ調子ガ良クネェヤ』

『ソレデココイラデ練習シテタンダガ・・・・耳障りダッタカ?』

523水宮アリア『ブラッディー・マリー』:2021/09/18(土) 22:36:37
>>522
マリー『「夏のクリスマス」…?』
アリア「…?」

二人は『夏のクリスマス』という
矛盾した言葉にきょとんとした顔で首を傾げる

マリー『あ、やっぱりさっきの
    「ジングルベル」だったんですね…』

まるで歌舞伎のようなジングルベルに
ちょっと苦笑してしまう『マリー』

アリア「…」
マリー『うん、分かったよ』

アリアが手話で『マリー』に何かを伝えると
『マリー』は『エド・サンズ』に話しかけてきた

マリー『あの、「僕」…
    あっちの方が「水宮アリア」で
    僕は「ブラッディー・マリー」って言います』
マリー『良かったらですけど、
    僕が「歌」の練習の手伝いしましょうか?
    僕、「歌」だけは自信があるんです』

――――アリアは、この『天使』に『歌わせる』のは苦手だ
    アリアは、自分は誰かと会話する価値が無いと思い
    自分の『声』を封じた
    それなのに、この『天使』の『声』を聴かせる事は矛盾している気がする

    けど、僕の『歌』が誰かの役に立つなら…

    自分の『歌』のせいでお父さんもお母さんも死んだのに
    それにお姉ちゃんも――――

524『エド・サンズ』:2021/09/18(土) 22:44:37
>>523

『俺ノ「本体」ガヤバイ事ニ巻き込マレテヨォ
 助ケルタメニ夏ニ「クリスマス」ヲ開ク必要ガアルンダガ・・・・
 マア、お嬢ちゃんニハアマリ関係ナイ話ダナ』

『ソウヨ! ソノ「甚狂うべぇる」ッテヤツガ「クリスマス」の歌ラシイカラ練習シテタンダ』

快活な口調で自分の事情を説明する
そこに水宮達からの提案が入る

『オッ? 俺ノ「歌」ノ練習ニ付き合ッテクレルノカ?
 ソイツハアリガテェ! 感謝スルゼ!』

『ヨォシ・・・ソウト決マレバ、サッサトヤッチマオウ!
 行クゼ・・・・俺ノ「甚狂うべぇる」!!』

『甚ッ 狂ウ べぇ! 甚ッ 狂ウ べぇ!』

『甚ッ 狂ウ べぇ! 甚ッ 狂ウ べぇ!』

ふふふ・・・・・感覚の耳でよぉく聞いてみろ・・・・・

・・・・『壊滅的』だ

音程?リズム?抑揚? そんなの・・・うちにはないよ
爛れ蠢く白痴の王のような歌声が神社に響く・・・・・多分、祭神も吐き気を催す事だろう

525水宮アリア『ブラッディー・マリー』:2021/09/18(土) 23:09:30
>>524
アリア「…?」
マリー『「本体さん」がですか?
    「エド・サンズ」さんは
    「本体さん」と別に動けるんですか?』

アリアと『マリー』はあまり離れて動く事が出来ない
周りに人間はいないのに、『エド・サンズ』はこうしてこの神社でどんちゃん騒ぎをしている
完全に本体から自立して動いているのか…?
アリアは少し不思議そうに『エド・サンズ』を見ていたが

だがそんな事はどうでもよかった!
何故なら

>『甚ッ 狂ウ べぇ! 甚ッ 狂ウ べぇ!』
>『甚ッ 狂ウ べぇ! 甚ッ 狂ウ べぇ!』

狂うぅ^〜〜〜(雑音で)
脳が腐りそうよ。(鏡まん)

神社に人がいたら
「ドッカンバッカンうるせーんだよ!近所迷惑だろーが!」
と怒鳴りこんできたかもしれない

そのあまりの怪音波にアリア達の鼓膜は破壊され
目、耳、口から血を吐き散らし倒れる

バタッ

マリー『ちょ、ちょっと待ってくださ…
    ごふっ!』

思い切り吐血をする血まみれの天使『ブラッディー・マリー』

マリー『はぁ…ぼ、僕がお手本を見せますからちょっと…』

526『エド・サンズ』:2021/09/18(土) 23:15:07
>>525

『甚ッ 狂ウ べぇ! 甚ッ 狂ウ べぇ!』

『甚ッ 狂ウ べぇ! 甚ッ 狂ウ べぇ!』

『甚ッ 狂ウ べぇ! ・・・・・オッ?ソウカ?
 お手本ヲ見セテクレルッテェナラアリガテェナ!ヨロシク頼ムゼ』

幸いにも近くにスタンド使いの隣人はいなかったようだ
怒鳴り込んでくる様子は(今の所)ない

『アー・・・・ソウソウ。元々ハ俺モお前らミタイニ普通ノ「スタンド」ダッタンダケドヨ
「夏の魔物」ッテ奴ニ俺ノ本体ガ「かき氷」ニサレテカラハ、ナンカ一人デ動ケルヨウニナッタ
 デモマア・・・・本体ガ居ネェトツマラネェカラナァ・・・・』

『ダカラコウヤッテ、「夏のクリスマス」ヲ頑張ロウッテ気ニナッテンノヨォ』

527水宮アリア『ブラッディー・マリー』:2021/09/19(日) 07:58:56
>>526
アリア「」
マリー『』

バリバリ
パリーン

『エド・サンズ』の破壊音波によって
神社の窓ガラスが何枚か割れてしまった!

致命的なダメージを受けて体中から血を流しながらも
何とか立ち上がり『エド・サンズ』と会話する

マリー『「かき氷」!?』
アリア「…?」

二人とも、『エド・サンズ』の言っている意味が分からないという顔だが
そういう能力のスタンドもあるんだ…と思う事にした

マリー『えっと、そのぉ…
    その「夏のクリスマス」をやれば
    本体さんは元に戻るのかな…?』
アリア「…」
マリー『そうだね
    「僕」も出来る限り協力します』

そう言うと、『天使』は一度深呼吸をする

マリー『じゃあ、聴いてください
    「ジングルベル」』

♪Jingle bells, jingle bells,
Jingle all the way.
Oh what fun it is to ride
In a one-horse open sleigh.♪

その優しい『歌声』は透き通るように美しく
『魂』に直接響く、まさしく『天使のような歌声』
その『歌声』を聴いた者は比喩表現ではなく『言葉を失い』
『血の涙』を流すだろう

528『エド・サンズ』:2021/09/19(日) 10:13:38
>>527

>『エド・サンズ』の破壊音波によって
>神社の窓ガラスが何枚か割れてしまった!
あっ! 言い切りで神社に被害が!

『ソウソウ。「かき氷」ダ』

『ドウモ「夏の雰囲気」ヲ原動力ニシタスタンドミタイデヨォ
 反対ノ空気・・・・「冬の風物詩」ヲブツケリャア止マルラシイゼ
 俺モ詳シイ事ハヨクワカンネェカラ、他の連中カラノまた聞きダケドナ』

『マ、俺モ「本体」ニマタ会イタイカラ頑張ルシカネエヨナァ・・・・・・オ?』

目の前で『天使の歌声』が響き渡る
『エド・サンズ』のそれとは違い、澄み渡る様な透明感を持つその歌声は
スタンドという人ならざる身に対しても、その魂を直接揺さぶる程のパワーを持っていた

声の力に場の空気が書き換えられる中で、『エド・サンズ』は『血の涙』を流す

529水宮アリア『ブラッディー・マリー』:2021/09/19(日) 10:36:45
>>528
神社という神聖なる場に響く『天使の歌声』
天使は『歌』を終えると、満足したような表情で頭を下げる

マリー『あ、じゃあ
    今みたいな感じで歌ってみてください』

何のアドバイスにもなっていない!
教えるのに向いていない!

530『エド・サンズ』:2021/09/19(日) 10:44:58
>>529

『ヨッシャア! ワカッタゼ!』

『イヨォォォ〜〜〜〜〜!』

『甚ッ 狂ウ べぇ! 甚ッ 狂ウ べぇ!』

『塵王・ザ・ウェェェェェイ!』

悪化した! これは酷い!

531水宮アリア『ブラッディー・マリー』:2021/09/19(日) 11:15:10
>>530
バキバキバキバキ
ミシミシミシミシ
ガシャーーーン

『エド・サンズ』が発生する空気の振動は
神社の窓ガラスを割り、柱を蝕み
つい最近誰かが補修したばかりの屋根を破壊する

このままでは神社が『エド・サンズ』に破壊しつくされてしまう!

マリー『ま、待って!
    「冬の風物詩」だったらいいんだよね?
    あの、じゃあ「歌」以外の事をやればいいんじゃないですか
    あの、ほら…』

『エド・サンズ』に周りを見るように促す
『マリー』もアリアも全身から血を流し死ぬ寸前
神社は歌による衝撃波のダメージであちこちが破壊され
軋む音を立てて悲鳴を上げている
先程まで飛んでいた虫や小鳥は、内部から爆裂して死んでしまっていた

こんな音響破壊兵器を世に出しては世界の危機だ

マリー『う、歌は僕に任せてください
    呼んでくれれば行きますから
    あ、でもスマホ…』

スタンドである『エド・サンズ』はスマホを持っているのか?

532『エド・サンズ』:2021/09/19(日) 11:24:47
>>531

な、何かおかしい・・・・!『エド・サンズ』はただ歌を歌っているだけなのに・・・・!
まさか『エド・サンズ』第2の能力『塵王・ザ・ウェイ』が発動を・・・・!?

『オ?マジカ!?
 イヤー、正直ニ言ッテ歌ヲ歌ウノハあんまし得意ジャアネエカラアリガタイゼ
「クリスマス」の予定ハドウヤラ「別動隊」ノ連中ガ立テテルミタイダカラ
 予定ガ決マッタラ、駅前の掲示板ニ連絡ヲ書イテオクゼ』

『俺ハ「スマホ」ッテヤツを持ッテナイカラヨォ』

『歌』の力で散々な状況になった境内をさっぱりとした表情で見つめる

『ア〜〜・・・・トコロデ、お嬢ちゃんハ歌ハ歌ワネエノ?』

533水宮アリア『ブラッディー・マリー』:2021/09/19(日) 11:47:13
>>532
満身創痍のアリアと『マリー』
『エド・サンズ』が『歌』をやめると分かって安堵する

マリー『あっはは…
    分かりました、明日から掲示板を見ておきますね
    僕もクリスマスの日には歌いに行きますから』


――――そうなると多数の人間に
    『ブラッディー・マリー』の『歌』を聴かせる事になるのだろうか?
    アリアは、『マリーの歌』を人に聴かせる事は
    あまり良く思っていない
    『自分の歌』であって『自分の歌ではない』
    そんなもやもやした感じがする

    それに、『自分の声』を仕舞い込んだのに、
    『マリーの声』を聴かせるのは、すごくズルい気がする…――――

>ア〜〜・・・・トコロデ、お嬢ちゃんハ歌ハ歌ワネエノ?

アリア「……」

彼の言葉を聞いたアリアは、とても苦々しそうに
悲しそうな顔で俯いてしまう

マリー『……「僕」……
    アリアは「声」を出さないって決めたんです
    ちょっと、色々あって
    自分が許せないっていうか…』

534『エド・サンズ』:2021/09/19(日) 12:03:18
>>533

『ソッカ・・・・マア、ソレハ仕方ネエナァ』

『俺ニモソウイウ経験ハ少シクライハアルカラナァ・・・
 俺ノ「本体」ガ「かき氷」ニサレタ時ニハ、結構ヘコンダモンダゼ・・・・
 デモマア・・・・ ソレダケデ終ワラスツモリハネェケドヨォ・・・・』

『アンタノ「歌」、スッゲェ良カッタゼ!
「クリスマス」が始マッタラ絶対ニ来テクレヨナ!待ッテルゼ!』

そういうと『エド・サンズ』はふんふんふーん♪と鼻歌を歌いながらこの場を去って行った
後日、『クリスマス』の予定が駅前の掲示板に張られる事だろう・・・・

535水宮アリア『ブラッディー・マリー』:2021/09/19(日) 12:45:35
>>534
「…」

『夏のクリスマス』
きっと多人数に『ブラッディー・マリー』の歌を聴かせる事になるだろう
アリアはあまり気乗りはしなかったが、それでも自分の『歌』が誰かの役に立つなら

『エド・サンズ』が去って行った後、アリアは当初の目的であったお参りをする

500円玉を入れ、手を合わせる姿は
ともすれば神に祈りを捧げる聖女のように見えるかもしれない

――――僕があそこで、あんな『歌』を歌わなかったら
    あの人は来なかったと思う…
    僕の『声』は、人に聴かせる価値なんて無い…
    僕は僕を許せない

    僕の中から出て来る物全部が『血まみれ』なのは
    きっと、あの日の事を引き摺ってるからかな…
    だから、僕はこの『天使』が苦手…

    『天使』はいつも僕に都合の良い、優しい言葉をかけるけど
    それはきっと、あの時の僕自身が言い訳をしているからだと思う

    僕は『強くなりたい』
    『血塗られた過去』を乗り越えて、僕の『青』を取り戻したい
    そしていつか、自分を許せるようになったら
    もう、『マリー』に頼らずに今の『自分自身の歌』を歌えるように

    その時は、もう『マリー』とはお別れなんだと思う
    でも僕は…

    その時まで、見守ってて、お姉ちゃん――――

帰り際、『エド・サンズ』から受けたダメージが祟ったのか
段差を踏み外して大怪我をしてしまい病院に担ぎ込まれる事になった

未だに目覚めない姉、水宮カノンの眠る病院へ

536『烏兎ヶ池神社』:2021/09/30(木) 07:01:29

――――『破損していた』(>>476)屋根は修理された。
『クリスマス仕様』にされていた(>>511)部分もすべて『戻っている』。

     ┌──────────┐
     │   防犯カメラ作動中   │
     └──────────┘

あまり神秘的ではない文言も、貼り付けられていた。

いま、この神社で『何か』をするのであれば、
それはいつも以上の『厳戒』を以て迎えられる可能性が高い。

    ・・・正規の参拝客や、遊びに来た子供には無関係だろう、けど。

537小林 丈『リヴィング・イン・モーメント』:2021/10/01(金) 19:19:02
(鳥舟PCへと 1レスのみ)
小林 丈は、その日。一人の巫女に事情を説明した。

街中で冬の風物詩を満たす為に、あらゆるスタンド使いが奔走している事。
当日には冬のイベントを至る場所で行い、服装も冬柄のマークが描かれたものを
着こなして貰うように、お願いしてる事。

「……そして、日暮れの時間になるかと思いますが『除夜の鐘』を決行する予定です。
その日だけ、お手数ですが私に こちらの境内の鐘を鳴らす許可を頂きたい。
 私にとって大切な人を助ける為なんです」

頭を下げて嘆願する。渡せるものは私には、もう殆ど残ってない。
 ただ、願うだけだ。誠心誠意で お願いをするのみ。

538鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2021/10/02(土) 02:56:32
>>537

「そっか――――そういう、理由があったんですね。
 だったら犯人捜しは、しない方がいいんだろうなァ……」

             「でも、ですけどね。
              ボクが着るこの『巫女服』ってやつは、
              一日だけ間違えて冬の装いに出来たとしても」

境内を見渡す――――
参拝に来ている老爺と目が遭い、軽く会釈をした。

「大事な事なんです。
 小林さん――――『ウチに釣鐘は無い』んですよ。
 このことは調べても出てこないと思いますし、
 ある神社にはあるから。頼ってくださったのは、嬉しいけど」

                 フゥ ―――― ・・・

期待に応えられない重い気持ちは、ため息として吐き出す。

「除夜の鐘は基本的には、『仏教』の行事で。
 うちは、ザクッと言えば、『神道』なンです」

       (……あってもきっと、許可は出来ない。
        『信仰』のルールは、簡単に変えて良い物じゃあない。
        …………鳴らしたことを、見逃す事くらいは、出来たのかな)

変えようのない事実だ。
神社の一年は、それを過ごし、行うことで信仰する人の拠り所となる。
仮に出来たとしたら、『不良少年の悪戯を見逃す』事くらいだっただろう。
だが、そもそも『ない袖は振れぬ』というものだ。

「……そんなボクが助言するのも、なんなんですけど。
 『クリスマス』の流れを作ってるんでしたら、
 除夜の鐘は『お正月』だし、クリスマス中に鳴っても、
 なんというんですか、『相殺し合う』気がするんです」

         「だから。普段はある意味『ライバル』なんですけどね!
          今回は、頼るべきは『クリスマス』の総本山。
          ――――『教会』に声をかけてみたら、いかがでしょうか?
          あそこには、たしかリンゴーンと鳴る、『鐘』もあったはずですから」

鳥舟に出来るのは、『軌道修正』だけだった。
聞いた話からして目指すべき冬は『Xmas』であって、『お正月』は『不純物』だ。

                          ――――それ以上はしてやれない。

539小林 丈『リヴィング・イン・モーメント』:2021/10/02(土) 09:47:56
>>538(返信ありがとう御座います。この1レスのみで終えますので)

>――――『ウチに釣鐘は無い』んですよ。

「ぇ 無い……のですか?」

愕然とした声が漏れる。当たり前だ 小林にとって掛け替えのない人間の命の
瀬戸際なのだ。星見町では知名度もある場所の此処で、鐘楼が無いと言う可能性が
抜け落ちてたのは過失だが、衝撃は大きい。

茫然となってた小林の意識を揺り戻させたのも、彼女『鳥舟』の言葉だ。

「相殺……か……有り得なくもない、のか……?
そうだ、私とした事が別の冬の行事との複合がどのように影響されるか
考えてなかった。クリスマスムードと正月気分が混ざり合えばムード『雰囲気』が
混ぜ合わさってしまう……なら 『クリスマス ベル』……か」

(……北落さんへの依頼。各寺院の除夜の鐘と提示したが、今からでも
予定の変更は……何とか、可能か。……町中に音を鳴り響かせる条件は同様。
 寺院関係でなく教会だけを指定して鐘を星見町全域に鳴らす……か。
どれ程、教会が建造されてるかで効果も違ってくる。博打だが、元々の依頼からして
効果は未知数。鳥舟の助言に従いクリスマス ベル……)

「あわてんぼうのサンタクロース……クリスマス前にやってきた……♪
いそいで『リン』『リン』『リン』……鳴らしておくれよ『鐘』を……か」

馴染みあるクリスマスソングのフレーズ。それを吟味するように
ゆっくりリズム交じりに呟き、力強く頷くと鳥舟さんに告げる。

「有難う御座います。では、予定を変更し星見町全域の教会を急いで検索しつつ
決行日にあたりたいと思います。
 ……鳥舟さんも、その日は巫女の業務が終えてからでも構いません。
クリスマスツリーを無理に飾れとまでは言いませんが、冬柄のシャツなり宜しければ
休憩の間でも良いので着るのを、どうか宜しくお願いします」

そう、お願いだけ言い残して小林は今度こそ烏兎ヶ池神社から去る。

(待っててくれ一抹君)

 (何としても君を……私が差し出せる全てを支払ってでも君を目覚めさせる)

540鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2021/10/02(土) 20:15:02
>>539

「そう、無いんです。こればっかりは、どうしてもね」

覚悟や犠牲で変えられるのは『現在より先』だけだ。

鐘のある神社、は確かに存在はする。
だが、その多くは寺院から持ち込まれた物であり、
神社そのものには『鐘』を設置する理由は無い。
逆に、神仏分離、あるいは大戦の金属供出――――
神社から鐘が失われる機会は、歴史の中に複数あった。

「ウーン……冬を作る、のに『何日かかける』なら、
 クリスマスの次の日にでも除夜の鐘が鳴り響けば、
 それはもう年末と錯覚しちゃうほどでしょうし。
 もしくは午前はクリスマスで夜はお正月とか、
 そういう方式なら、アリなんでしょうけど……ね。
 や、ボクに夏の魔物の気持ちは分かりませんけど」

   「ただ、所感としてはそうですねェ。
    クリスマスの途中に108回鐘が鳴って、
    それだけで意味は掴めないでしょうね、
    冬らしければ何でも効くなら別でしょうけど」

鳥舟としても『効果』は読めない。
仮に冬にまつわる物なら何でも効くとして、
夏の魔物に冬を解釈する能力はどこまであるのか?

「エエ、出来る範囲では手伝いましょう。
 早めに上がって、冬の格好で、『冬になった』街に繰り出しますよ」

          「…………小林さんも、どうぞ、
           ご無理のない程度に頑張って下さいね」

いずれにせよ、巫女の身で出来る協力は少ない。
だが……出来る限りのことはする。鳥舟学文という私人の領域で、だ。

541天之 月夜『レンブラント』:2021/11/14(日) 08:26:10
「…」

銀色の右目と金色の左目、
長い黒髪を持つ中学生くらいの少女

サッ サッ サッ

箒で落ち葉を掃き、一か所に集めている
もう結構な量の落ち葉が集まり、山のようになっている

542『烏兎ヶ池神社』:2021/11/14(日) 13:27:50
>>541

そこに声を掛ける者は今のところいない。
巫女などは不在なのか、別な事をしているのか。
参拝客の途切れた時間帯だったのかもしれない。

だが、これから来る者はいるのだろう。
例えば>>543のような―――――

543鉄華『オール・ユー・キャン・イート』:2021/11/14(日) 21:56:50
>>541
神社の階段の下から音が響く

グォー
    ギュルルルル

グギュルルルルルル

      グボォォォ
ケモノの鳴き声ではないがなんだか鈍い音だ。

だんだん近くなってくる

「…なか…いた…」
声がなんだか聞こえてくる

544天之 月夜『レンブラント』:2021/11/15(月) 10:03:52
>>543
「?」

何か分からないが凄い音が近付いてくる

それはそれとして

カチッ カチッ

石を打ち合わせ、落ち葉に火を付ける
焚火というやつだ
この女、無許可で神社で火をつけているぞ

「お芋さん おいしくなーれ」

メラメラ燃える火の中に、数本のサツマイモを投入する

545鉄華『オール・ユー・キャン・イート』:2021/11/15(月) 16:06:10
>>544
グギィュルルル

段々と音はでかくなる。

「…くんくん」

しばらくすると階段を上がってくる足音が聞こえてくる。

「いいにおい…たべもの!」
しばらくすると、よだれを垂らした女の子が階段を勢いよく上がってくるのが見えた。

546天之 月夜『レンブラント』:2021/11/15(月) 16:28:42
>>545
「ん」

よだれを垂らしながら駆け上がって来る女の子を確認

「お前 新しい楽器に」

グギュルルル

「お腹減った」

今は殺る気になれない
腹ペコなのはお互い様のようだ

パチパチ

焚火の中でお芋さんの焼ける良い匂いがする

「お前も 食べる?」

547鉄華『オール・ユー・キャン・イート』:2021/11/15(月) 17:00:37
>>546
「たべ…」
お芋の匂いを嗅いで一気に目がキラキラと輝いた。

「たべていいんだ?」
とても嬉しそうな顔でお芋へ一直線に歩いてくる。

「たべる、たべる!!」
うなずいて手を差し出す。

548天之 月夜『レンブラント』:2021/11/15(月) 17:07:38
>>547
「美味しい物は 誰かと分け合うと もっと美味しい」

グサッ!
その辺の棒で焚火の中のお芋を串刺しに!

「あげる」

串刺しになったアッツアツのお芋を鉄華に投げ渡す

続いて自分用のお芋を棒で刺して取り出し、皮ごと齧りつく

「熱い」

口を火傷した!
トロトロの安納芋だから猶の事熱かった

549鉄華『オール・ユー・キャン・イート』:2021/11/15(月) 17:52:44
>>548
「わーい!ごはん!」
どうやらとても嬉しいようだ。

「ありがとう!だいすき!」
熱々のお芋をもらい、ニコニコしながらお芋を口に運ぶ。

「むぎゅう!あつぅい!」
びっくりして思わず口から離す。
慌ててふうふうと息を吹きかけ始めた。

「こんなにあついのははじめて…」
見たところ少女はみすぼらしい格好をしている。
こういうのは初めて食べるのかもしれない。

「いただきますー。」
そう言ってまた口元にイモを運んだ。

550天之 月夜『レンブラント』:2021/11/15(月) 18:11:51
>>549
「ん どういたしまして」

お礼を言われて、こくこく頷きながら熱々トロトロのお芋を食べる

「あつい うまい あつい うまい」

齧る度に火傷をし、火傷だらけの口でお芋を食べる
鉄華のようにふうふうしないので中々冷めない
これは学習能力が無いのか?火傷を楽しんでいるMなのか?

>「こんなにあついのははじめて…」

「初めてなの?」

無表情な月夜の銀と金の瞳が、じーっと鉄華を見つめる
恰好からして貧乏なのかもしれないが、お芋さんを焼くくらいは出来るだろう
…芋も買えない程貧乏なのか?
いや、単に焼きたての焼き芋を食べた事が無いってだけかもしれないが

鉄華が焼けたお芋さんを口に運ぶと
トロッとした粘性のある、なめらかの食感と
小細工抜きの純粋なサツマイモの甘さが口の中を支配する
中々高級な芋を使っているのかもしれない
ただ、焼き芋ほくほく派には不評かもしれない

551鉄華『オール・ユー・キャン・イート』:2021/11/15(月) 18:28:44
>>550
「むぐむぐ…これ、とってもおいしい!
 おいしい!」
ハフハフと口の中でイモを転がしながら美味しそうな表情を見せた。
どうやらこの味はとても満足したらしい。

「うん、はじめて。
 こういうふうにあついごはんは、たべたことないかも…」
見た感じ貧乏に見える彼女だが
どうやらできたてのものなどは食べたことがないようである。

ともあれその表情はとても美味しいと言うのが伝わってくる。

552天之 月夜『レンブラント』:2021/11/15(月) 18:47:32
>>551
モグモグ ごっくん

「舌 いっぱい火傷した」

ベーっと真っ赤になったベロを出しながら言う

「お水 お水」

水筒からお水(さっき手水舎で汲んできた)を出して、
ちょっと舌を水に浸して飲む

「やっぱり 分け合うと美味しい」

美味しそうにお芋さんを食べる鉄華を見て、無表情な顔で言う

>こういうふうにあついごはんは、たべたことないかも…

「熱いの 食べた事無いの?」

じーっと鉄華を見る月夜
何かを考えているのやら、いないのやら
ただ只管に無表情で見つめている

「一緒に もっと食べる?
 これから 栗やりんごも焼く」

553鉄華『オール・ユー・キャン・イート』:2021/11/15(月) 19:06:36
>>552
「とってもあついから、びっくりしちゃった。」
そう言って、またお芋に口をつける。
味が気に入ったらしい。

「んー、そう。」
そう言ってもぐもぐとご飯を食べる。

「びんぼー、っていうのかなー。」
そういいつつ顔はさほど気にしてないようである。

「もっとたべられる?
 じゃあもっとたべる!」
嬉しそうな顔で月夜の提案に同意した。

554天之 月夜『レンブラント』:2021/11/15(月) 19:19:51
>>553
「良かった まだいっぱいあるから」

お芋を気に入ってくれた鉄華にいっぱい食べるように勧める月夜

>びんぼー、っていうのかなー。

「そーなの 月夜さん食堂は 無料(ただ)だからいっぱい食べてって良い」

勝手に神社を食堂にしやがった月夜

「じゃあ 栗剥く」

そう言ってイガグリを手で掴んで割ろうとする

グサグサ

「痛い」

当然そんな事をすれば棘が手に刺さって血塗れだ

だらーっ

555鉄華『オール・ユー・キャン・イート』:2021/11/15(月) 19:37:19
>>554
「しょくどう?ここはおみせだったんだー」
どこか嬉しそうだ。

「それじゃあいっぱいたべる!たべるのだいすき!」
とてもはしゃいでいるようで
見たところ楽しそうだ。

「ん!」
突然手から血が出たのを見て目を丸くした。

「だ、だいじょうぶ?けが?けがしてる!」
とても心配そうに声をかけた。

556天之 月夜『レンブラント』:2021/11/15(月) 19:47:37
>>555
心配そうに声をかける鉄華に

「大丈夫 わたしつよい」

血でべったりと穢れた手を、鉄華に見せつける月夜
無表情だが、ちょっと涙が出ていた

「難しい ちょっと頑張る」

すると、月夜のゴスロリ衣装が
『夜空の様に仄かに輝く漆黒のドレス』へ変化する

すると彼女の手捌きは、達人のように精密になり
イガグリを上手に向いてポイポイと栗を火の中に放り込んでいく

557鉄華『オール・ユー・キャン・イート』:2021/11/15(月) 20:13:02
>>556
「へーきならいいけど…」
彼女の表情を見て鉄華はどこか安心したふうだ。
泣いているのは微妙に見えていない風に見える。

「がんばれー…?」
なんとなく応援していると、突然月夜の衣装が変化した。

「おー。まほうしょうじょ!
 へんしん!」
どうやら彼女の衣装が変化したのを見て
それにかなり注目しているようである。
目をキラキラさせながら見ている。

558天之 月夜『レンブラント』:2021/11/15(月) 20:23:05
>>557
「わたし まほーしょうじょ
 とっても つよい」

調子に乗ったのか、煌びやかなドレスを見せびらかすように
くるくると周る月夜

パンッ! パンッ!

「あいたっ」

火の中に放り込んだ栗が弾け飛ぶ、猿蟹合戦状態

弾けた焼き栗をそのまま口の中に放り込み、ガリガリ音を立てて食べる

「ん」

違和感があったのか、舌を出して確認してみると

栗虫「コンニチワ」

バリボリバリボリ

貴重なたんぱく質だ
好き嫌いせずに栗虫を食べる月夜

「食べる?」

焼き栗を数個掴んで鉄華に手渡そうとする
熱々だ

559鉄華『オール・ユー・キャン・イート』:2021/11/15(月) 20:27:25
>>558
「かっこいい!とっても!」
楽しそうに彼女の様子を見る鉄華であったが

バチン!と弾け飛んだ栗が口に入るのを見る。

「わー…もしかしてこれってこういうふうにたべるの?」
とりあえず気をつけながら栗を手に取る。

「あついー。」
慎重に触りながらポンポンと栗をお手玉した。
このままだと栗の皮ごと食べてしまいそうだ。

560天之 月夜『レンブラント』:2021/11/15(月) 20:39:38
>>559
「ん」

バリボリバリボリと皮付き栗を食べながら、
鉄華に渡した栗の皮を器用に剥く

「ごめん 皮剥かなきゃ駄目」

あーん、と口の中を軽く見せる月夜
咥内は皮でズタズタに切れて血だらけ
軽くグロ画像だ

「でもほくほく 甘くておいしい」

ごくごく水筒の水を飲みながら言う
火傷の時といい、口を怪我したらとりあえず水を飲めばいいと思っているのだろうか?

561鉄華『オール・ユー・キャン・イート』:2021/11/15(月) 20:46:29
>>560
「あ、このままだとあぶない?」
じっと見ているとたしかに月夜の口の中が色々と大変なことになっていた。

「すごくけがしてるけど…だいじょうぶ?」
その顔はとても心配そうだ。

「おみずをのめばへいきなのかな…」
とはいえ平気そうなのもあって

「それじゃあ、いただきます」
器用に向かれた栗を口の中に放り込む。

562天之 月夜『レンブラント』:2021/11/15(月) 20:56:11
>>561
「大丈夫」

ごくごく

「大丈夫」

無表情で泣いている
全然大丈夫じゃなさそうだ
水を飲んだくらいでどうにかなるわけが…ない!

剥き栗を口の中に入れてみると、
アチアチでほくほく、素朴な甘みがする
こちらはさっきのお芋と違って、そこら辺で取って来たような感じだ
…ひょっとしたら栗虫も入っているかもしれない

563鉄華『オール・ユー・キャン・イート』:2021/11/15(月) 21:03:35
>>562
「だいじょうぶなら…ん、ないてるみたいだけど…」
未だその表情は心配そうだ。

一方口の中の栗は
「んふ、とてもおいしい…
 これもとってもおいしいんだね。」
そう言ってもう一つ口の中に放り込む。

すると

クシャリ
と口の中で音がする。

「んんん?へんなあじがする…」
少し顔をしかめながら首を傾げている。

564天之 月夜『レンブラント』:2021/11/16(火) 10:36:45
>>563
クシャリ

鉄華が嚙み潰した異物感
味は今食べている栗に似ていてほんのり甘く
動物性たんぱく質とクリーミー、ジューシーさもあり結構美味い
その違和感の正体は…

栗虫「イタイ」

クリシギゾウムシの幼虫だ

「ん それ栗虫
 毒じゃないから大丈夫 それ入ってる栗美味しい」

痛みで涙目になりならがら栗虫入りの皮付き栗をバリバリ食べながら言う月夜

「デザート りんご焼く」

そういうとりんごを二つ取り出してフルーツナイフで芯をくりぬき
中にシナモンとバターを突っ込んで焚火に投入した

バクッ ガリッ ガリッ

徐にりんごの芯を齧る月夜

565鉄華『オール・ユー・キャン・イート』:2021/11/16(火) 15:56:40
>>564
「むう…たしかにおいしいかも…
 むし?ももっとたべてみようかな…」
どうやら栗虫の味は嫌いではないらしい。
最近流行りの虫食に目覚めかけているように見えた。

「ん、だいじょうぶ?けが、してない?」
相変わらず涙目の彼女を見て鉄華は心配そうである。

「りんご…たべる!」
とはいえ、やはりデザートを前にすると食欲が優先されるようだ。

566天之 月夜『レンブラント』:2021/11/16(火) 16:20:31
>>565
ガジガジガジガジ

りんごの芯を噛みながら、焚火の中のりんごを木の枝で転がす

「嚙み切れない 飽きた」

ペッ

噛んでいた芯を吐き捨てて、
丁度頃合いになって来たしわしわの焼きりんごを枝で突き刺し取り出した

「熱いから 気を付けて」

ガブッ

自分で言ってる傍から熱いりんごに齧りついて火傷する月夜

567鉄華『オール・ユー・キャン・イート』:2021/11/16(火) 17:04:37
>>566
「まんなかのところはかたいみたいだね…」
彼女の様子を見てうなずくと
鉄華もりんごをもぐもぐと食べ始めた

「うー、ちょっとあついけど…
 これはとてもおいしい!」
どうやら今までの中で一番気に入ったようだ。
とても嬉しそうにもぐもぐと食べ続けている。

568天之 月夜『レンブラント』:2021/11/16(火) 18:00:41
>>567
むぐ むぐ

「おいしい」

りんごは過熱すると美味しくなる果物だ
熱々でジューシーなりんごに
シナモンの香りと濃厚なバターが合わさり相乗効果で美味さが増している
ここに冷たいアイスなんかを乗っけたら最強だったかもしれない

カァー カァー カァー

食事を頼んでいるうちに、いつの間にか日が暮れて来たようだ

「美味しかった 二人で食べると 凄く美味しい」

無表情だが鉄華と一緒に食事した事は楽しかったようだ

「わたし 月夜 お前 名前なに?
 また一緒に 食べたい」

569鉄華『オール・ユー・キャン・イート』:2021/11/16(火) 18:46:21
>>568
「んー、あったかいものってとてもおいしいの!
 もっといっぱいたべたい!」
そういいつつどんどんとりんごを食べていく。

「アイスもたべたくなってきた…」
だが段々と温かいものを食べていると冷たいものも恋しくなる。
そう考えているうちにどんどんりんごを食べ勧めてしまった。

「つきよ、つきよだね!
 わたしは、かねは!わたしもかねはといっしょにまたごはんたべたい!」
そう言って微笑んだ。
いくつか残っていた食べ物を抱えている。
持ち帰るつもりなのかもしれない。

570天之 月夜『レンブラント』:2021/11/16(火) 19:04:25
>>569
持ち帰ろうとしている鉄華を止めない月夜
止めないという事はそのまま持って帰って良いという事だろう

「アイス… 食べたい」

アイスを食べたいという鉄華に釣られて
アイスが食べたくなってきた月夜

「アイス 食べに行く かねはも一緒に 来る?」

水筒の水をがぶがぶと飲み干して言う
そしてそのまま返事を聞かずにアイス屋さんへと向かう月夜

焚火の火を消す用の水も飲んでしまい、そのまま火を消さずに行ってしまったが
まぁ、大丈夫だろう
後で誰かが消してくれるよ、たぶん、きっと、おそらく…

571鉄華『オール・ユー・キャン・イート』:2021/11/16(火) 19:25:26
>>570
「つきよもアイスたべたい?」
彼女の様子を見て微笑んだ。

「わたしもアイスたべたい!
 …じゃあわたしもいっしょにいく!」
どうやら彼女に同意したようだ。
鉄華は彼女の後を追うようについていく。

…この後炎はしばらく燃え続ける。
この日は比較的湿気が少ない日であるだけに
誰かが消してくれたものと思いたいものである。

572『烏兎ヶ池神社』:2021/11/16(火) 19:59:16
>>570-571(火の不始末コンビ)

ほんの少しだけ後――――

         バシャ

           ア!!

「いや、危ない、危ない――
 ホント、最近はおかしいんですよね。
 防犯カメラだって増やしたのにさァ。
 警備会社とか、雇った方がいいのかも?
 お父さんは、嫌がるだろうけど……」

『神秘の水』を汲んできた鳥舟が通り掛かり、
なんとか事なきを得たのだった。

「前のは事情は分かったけど。
 今回は……火の不始末にしたって、限度があるし」

        「実際」

             ジュ

        ゥゥゥ
           ーーーー ・・・

「『どんなやつがこういうことをしてるのかな』」

額を拭い、箒を取りに立ち去る鳥舟――
背後で、火と交わった水は蒸気となり、
その中に『ヴィジョン』を浮かばせたが、
鳥舟学文が『それ』を知るまでには、
もう少しだけ時間がかかるのだろう・・・

573猫『マシュメロ』ナイ『ベター・ビリーブ・イット』『D・L』:2022/06/08(水) 22:33:36
   「ナー」


「……」

      「ナー」
 「ナー」

          「ナーン」

      「ニー」

   「ナー」       「ナー」

          「ナン…」

「……」


神社の境内に生えた立派な木から、やたらと猫の鳴き声がする。
木の下では金髪の子供が、座り込んで地面をじっと見ていた。

574『烏兎ヶ池神社』:2022/06/08(水) 22:49:08
>>573

猫の声が響くほど、今の境内は静かだった。
とはいえ参拝者が全くないような寂れた社でもない。
じきに誰か来るかもしれない……たとえば>>575のように。

575猫『マシュメロ』ナイ『ベター・ビリーブ・イット』『D・L』:2022/06/09(木) 22:50:06
>>574

  「なんだこの音!? 新種のセミか!?」


金髪の子供とそう歳の変わらなそうな男の子たち数人がやってきた。
ヤンチャそうな少年が駆け寄ってくる。


「お? なんじゃお前さん達」            「ナー」
                                    「ナ〜」
 「いやこれ猫じゃね?」「金髪だ」
    「セミはまだ早ぇーって」         「ナー」

「わしは交換屋をやっておるんじゃが」            「ナウウー」
                    「ナン」
 「めっちゃ鳴いてる」 「お前飼い主?」
   「転売屋?」                            「ナー」   

「いや、飼い主……では無いな。転売屋でも無」
                                    「ナー」
  「降りれないんじゃね?」 「あー」
 「ちょっとどけよ」
                                        「ナー」
「ああ、うむ……」
                               「ウルル」
 「どうすん?」「あれじゃね? 灰色のやつ」
     「登るわ」  「まじ?」
                                   「ナー」
「……」
                                      「ナー」
  「これちょっと持ってて」「落ちたらヤバくね?」
      「カッちゃんすげー」


少し離れたところに退いた金髪の子供は、
虫取りならぬ、猫取りに挑む男子たちをしばらく見ていたが、
やがてとぼとぼと去っていった。

576『スフィンクス・チャレンジ』:2022/09/10(土) 06:25:08

『烏兎ヶ池神社』の敷地内に、一匹の『猫』が佇む。
『毛』と『髭』がない特異な風貌が目を引く。
ひょっとすると、ここで飼われているのかもしれないが、
少なくとも普通の野良猫ではないだろう。
太く濃い『アイライン』に縁取られた『琥珀色』の瞳には、
どこか『知的』な輝きが宿っており、
静寂に包まれた境内を眺めている。
その様子は『誰か』を待っているようにも見えた。

彼の名は『ロダン』――――『スフィンクス』だ。

――――――――――――――――――――――――――――

タイトル:『スフィンクス・チャレンジ』
GM:小石川
危険度:E(危険は一切なし)
難易度:D(しっかり考えなくても分かるレベル)
報酬:1万円相当の宝石
募集人数:1名
進行:場スレと同程度
期間:場スレと同程度
概要:
『スフィンクス』の『ロダン』は『謎』を好む。
彼は気紛れに町を歩き、『声が聞こえる者』に『謎掛け』を行う。
『今日の舞台』は『ここ』だ。

備考:
『どこかの場スレ』に現れる『ロダン』を見つけたPCが参加できます。
出される問題に答えられたらクリアです。
問題数は『一問』です。

577奈津川恋子『クワイエット・ガーデン』:2022/09/13(火) 21:38:17
>>576
「こんにちは……」

神社に相応しくない、緑髪を靡かせた女が
きょろきょろと周囲を見渡した後、ゆっくりと『ロダン』へと近づいて来た。
おもむろに挨拶の言葉を口にすると、しばらく黙り込んで様子を伺い、
目の前の猫が逃げていかない事を確認すると、
しゃがみ込んで『ロダン』と目線を合わせ、

「……こんにちは」

と、もう一度声を掛ける。

578『スフィンクス・チャレンジ』:2022/09/14(水) 10:29:06
>>577

『神社』という場所に似つかわしくない『一人』と『一匹』。
周囲に『他の人間』はいないし、『他の猫』もいない。
近付いてくる奈津川を見ても、猫は逃げる様子がなかった。
かなり人に慣れているのだろうか?
ただ、妙に堂々とした猫の態度からは、
『それだけではない雰囲気』が感じられる。

       ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・

そして、『奈津川恋子』は、改めて『ロダン』に声を掛ける。
やや風変わりな絵面ではあるものの、
概ね微笑ましい光景と言えるだろう。
それが『普通の猫』であったのなら。

《『君達』に合わせて、こう言っておこう》

                  《――――『こんにちは』》

『鳴き声』の代わりに、猫は『言葉』を返してきた。
空気を振るわせて伝わる生の肉声ではなく、
『スタンド』を通して発せられる声だ。
より正確に言うなら、『猫自体』が発したものではない。

       《私は『ロダン』》

 ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド

               《『スフィンクス』だ》

いつの間にか、猫の背後に寝そべっている『ヴィジョン』。
胸から上は『人間』で、『獅子』の胴体に、『鷲』の翼を併せ持つ。
姿を現したのは『スフィンクスのスタンド』だ。
極めて生物的なシルエットとは裏腹に、
その質感は至って無機質で、『石像』に近い。
神話に登場する『伝承上のスフィンクス』と、
現実に存在する『石造りのスフィンクス』のハイブリッド。

  《君に『ストーン・エイジ』が見え、
   『私の声』が聞こえるのなら――――》

      《少しの間だけ『遊び』に付き合ってもらいたい》

『ロダン』の言葉が何を意味するかは不明だ。
少なくとも、今のところ、
『ストーン・エイジ』は目立った動きを見せていない。
危害を加える意思はない――ように思える。

579奈津川恋子『クワイエット・ガーデン』:2022/09/14(水) 16:44:43
>>578
「猫が喋った……!」

思わぬ返答にパッと後退りした。
発言内容とは裏腹に、あまり驚いているようには見えない。

「すみません、あまりにも月並みな反応をしてしまいました。
恋子、一生の不覚。
ふうむ、これは……『スタンド』ですか。
『スタンド使い』の『猫』……なるほど。
こんにちは、ロダンさん。
私は奈津川恋子といいます。わざとじゃない方の恋子です」

律儀に名乗り返して、ふかぶかとお辞儀をする。
頭を上げ、『ストーン・エイジ』のヴィジョンを見とめて首を捻る。

「『遊び』……? 
もしかして、『謎かけ』ですか?
間違えた時に取って食ったりとか、そういう危険はナイんですよね?
でしたら、まあ……吝かではないですが」

580『スフィンクス・チャレンジ』:2022/09/14(水) 20:13:42
>>579

《私は『私の声が聞こえる者』を探している》

            ジッ

   《『ナツカワ』――――『君のような人間』を》

『ストーン・エイジ』を従えたロダンは、
距離を取った奈津川を見つめている。
相手の反応を見定めるような視線だ。
その間も『スタンド』が動く気配はない。

《そして、君は『理解』が早いようだ》

         《『素晴らしい』》

緑髪の少女の目の前で、ロダンは満足げに尻尾を揺らす。
彼の声から受ける印象は、『成熟した男性』を思わせる。
人間で言えば、そのくらいの年齢のようだった。

《私は『謎掛け』を『生き甲斐』としている。
 君が言うように、ささやかな『謎』を一つ解いてもらいたい。
 『命懸けのゲーム』のような『スリル』はないが、
 私と同じ時間を共有してくれたなら、
 それなりの『謝礼』を約束する》

《見事に『正解』を言い当てた時は、
 もう少しだけ君のために『私の力』を使って、
 その分を『報酬』に『上乗せ』しよう》

果たして『猫の出す報酬』というのが、
どういったものかは分からない。
しかし、何らリスクを背負う必要のない勝負だ。
試してみても損はないだろう。

《『答えるチャンス』は『一回』のみ。
 ただし、君は『三回』まで『ヒント』を求める事が出来る》

《『どの辺りで悩んでいるか』を示せば、
 私から『相応しい助言』を与えよう。
 その内容を参考にして、
 君は考え方の修正を行えるはずだ》

《無論、『ヒントなし』で答えられる自信があるのなら、
 それでも構わない。
 『報酬』は変わらないが……私は君の『勇気』に対して、
 大いに『敬意』を表する》

一通りの説明を終えたらしく、ロダンは言葉を区切った。

    《――――君の『参加意思』を聞こう》

もし特に尋ねる事がないのなら、
本格的に『スフィンクスの謎解き』が始まるだろう。

581奈津川恋子『クワイエット・ガーデン』:2022/09/14(水) 20:43:40
>>580
「なるほど。つまりロダンさん。
あなたは私がスタンド使いだとわかっていたのではなく、
こういう声かけを日頃からしていたというわけですか。
それって、結構地道な活動ですね」

猫との会話という状況に、
どういう姿勢でいれば良いかわからずそわそわしていたが、
最終的には腕を組んで、真顔でロダンの話を聞く。

「……まあ、なんですか。
猫に喋り掛ける活動よりはずっと生産的だと思いますし……
私がとやかく言える事ではありませんが」

「ええ、勿論受けて立ちますとも。
ふっふふ、私、勉学の方はあまり得手ではありませんが、
クイズ的なものなら………まあ、多分、それなりです」

最後は尻すぼみになったものの、参加の意思を示した。

582『スフィンクス・チャレンジ』:2022/09/14(水) 22:33:15
>>581

《だからこそ、ここで君と出会えた事は、
 私にとって『何物にも替え難い喜び』と言えるのだよ》

     《『値段が付けられないもの』――――》
 
             《『プライスレス(至上の価値)』だ》

自身の心境を語るロダンの表情は、落ち着きを保っている。
一方で、声色からは喜色が滲み出ていた。
自らの『知的好奇心』を満たすためなら、
地道な活動も惜しくないといった様子が窺い知れるだろう。

     《それでは『始める』としよう》

             ズ ッ

ロダンの言葉で、初めて『ストーン・エイジ』が動きを見せた。

     バ  サ  ァ  ァ  ァ  ァ  ァ  ッ

鷲を思わせる『翼』を大きく広げ、それで『地面』を撫でる。

        ズズズズズズズズズ…………

その動作を合図にして、一枚の『石板』がせり上がって来る。

   カリカリカリカリカリカリカリカリカリ

           カリカリカリカリカリカリカリカリカリ

                  カリカリカリカリカリカリカリカリカリ

目に見えない鉄筆を走らせているかのように、
『石板』の表面に『彫刻』が施されていく。
見る見る内に刻まれるのは『文字』だ。
さながら『ロゼッタ・ストーン』の如く、
『石板』に『文章』が浮かび上がる――――――。

―――――――――――――――――――――――――

底冷えする程の寒空の下で、
『ある男』が日暮れ近い山中を歩いていた。

男は荷物を失っており、何も持っていなかったが、
『無人の小屋』を見つけて中に入っていく。

内部を調べたところ、『電気』や『ガス』は通っておらず、
『水』は井戸から汲み上げる仕組みになっているようだ。

彼は、次のように希望していた。

燃料の入った『ランプ』で室内を明るくし、
薪が置かれた『暖炉』に火をともし、
水を張った『浴槽』を沸かしたい。

幸い、小屋の中で『マッチ箱』を見つける事が出来た。

しかし、生憎『マッチ』は『一本』しか残っていない。

全ての目的を確実に実現するため、
男は最大限に頭を働かせ、完璧な考えを纏め上げた。

知恵を絞った彼が、『最初に火をつけたもの』は何か?

―――――――――――――――――――――――――

《――――――ほんの『小さな謎』ではあるが…………》

             《答えていただこう》

583奈津川恋子『クワイエット・ガーデン』:2022/09/15(木) 04:24:58
>>582
「ふーむ……この謎が、どういう類のものかによって答えは変わりそうですね。
先程申しましたとおり、勉強のほうはアレですから……
『サバイバル知識』みたいなものについても、からっきしです」

何となく問題の情景を想像してみようとする。
山中の小屋、井戸、マッチ箱……いずれも自身に馴染みのないものだ。
まずは暖炉に火をおこし、火種を大きくするのが重要だろうか。
それなら、何か紙のようなものに火を移して……と、そこまで考えたところで軽く手を打つ。
この謎の答えは、恐らくもっと単純なものだ。

「ですが、回答いたします。
この男が最初に火をつけたもの。
それは、残った一本の『マッチ』に他ならないでしょう。
彼の『完璧な考え』の内容についてはわかりませんが、
『最初』というのなら、それ以外にありませんよね?」

「……いかがでしょうか」

584『スフィンクス・チャレンジ』:2022/09/15(木) 17:19:18
>>583

『奈津川の解答』を受け、ロダンは僅かに目を細めた。

《今後、君と『再会』できた時のために話しておこう》

《何らかの『専門的知識』を要する類の『謎』は提示しない。
 『条件』は『平等』――それが、
 『スフィンクス』としての私のポリシーだ》

《無論、『今回』も『例外』ではなく――――》

              カリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリ

         カリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリ

   カリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリ

ロダンの言葉と同時に、
『石板』に新たな『彫刻』が描かれていく。
今度は『文字』ではなく『絵』だ。
先端に小さな炎を宿す『一本のマッチ』。
『ストーン・エイジ』は極めて高い精度を持つようで、
非常に緻密なディティールで描画されている。
石板上に現れた『マッチの絵』は、
奈津川の考えが『的を射ている』事を意味していた。

《ナツカワが指摘した通り、
 『焦点』となっているのは『最初に点火したもの』……。
 『どのような段取りで希望を実現したか』は無関係だ。
 いかなる考えがあったとしても、
 まず『マッチ』に火をつけなければ、
 『その先』には進みようがないのだから》

   《惑わされる事なく『本質』を突いた君は、
    見事に『正しい答え』を導き出すに至った》

          ス ゥ ッ

《『価値ある時間』を提供してくれた『対価』として、
 私も『約束』を果たすとしよう》

おもむろに『ストーン・エイジ』が『尻尾』を持ち上げる。
そこに何か小さなものが見えた。
どこにでも落ちている何の変哲もない『小石』だ。

         ヒョイッ

尻尾が跳ねるように動き、『小石』が軽く放り投げられる。

   バ  ッ  サ  ァ  ァ  ァ  ッ

それを『ストーン・エイジ』の『翼』が受け止め、
覆い隠すように包み込む。

《ナツカワ――君の『髪の毛』と同じ色を選ばせてもらった》

             ソ ッ

    《『これ』を君に進呈しよう》

静かに開かれた翼の上に『小石』はなかった。
美しく澄んだ『緑色』の輝きを放つ『宝石』が載っている。
詳細な知識を持たずとも理解できるのは、
それが紛れもなく『本物』の『エメラルド』であるという事だ。

《さらに、君は『謎』を解いた。
 ゆえに私は君のために、もう少しだけ『力』を使う事にする》

《この『エメラルド』を『宝石彫刻』に仕上げた上で、
 ナツカワの手に渡そう。
 『どのようなデザイン』でも構わない》

《『お気に召すまま』に――――だ》

ロダンは奈津川に『彫刻の注文』を求めている。
ここまで見た限り、『ストーン・エイジ』は、
『鉱物に関わる能力』を持つらしい。
『石板』を出現させたり、『小石』を『宝石』に変えたのも、
その能力を用いたのだろう。

585奈津川恋子『クワイエット・ガーデン』:2022/09/16(金) 20:32:00
>>584
「やったー!」

と、両手を挙げて発声した。
少しの間を置いて、無表情のまま腕を下ろす。

「……まあ、それはそうとして。しかし正解で良かったです。
『フェア』ですね、ロダンさん。
対価……そうでした。それは、『石』」

『ストーン・エイジ』の力を目の当たりにして、目を見開く。

「驚きました……『宝石』ですね、これは。
なんという、羨ましい能力」

「……間違えました。素晴らしい能力ですね。
なるほど、宝石彫刻……そうですね」

ロダンの言葉を受け、少し考え込む。
緑色の輝きを眺めて、やがて口を開いた。

「それなら、『星』がいいです。
この街の、そして私の敬愛する母の名前です。
鎖は自前で用意しますので、こう首から下げるような形に出来ますでしょうか?」

586『スフィンクス・チャレンジ』:2022/09/16(金) 22:02:58
>>585

《このような力が、私の中に芽生えた事実に対しては、
 自分自身でも不思議に思う事がある。
 私を含めた多くの生き物にとって、
 この小さな結晶は『珍しい石』に過ぎないのだから》

《だが、こうも考えるのだ。
 私は『人間達が治める世界』で生きている。
 『人にとって価値がある』という事は、
 私にとっても『間接的な価値』に繋がるのだよ。
 だからこそ、『今の私』があるのだろうと》

《『生命に関わり得る案件』を除けば、
 私が力を使うのは『知的な対話』のみ。
 それが私自身に定めた『ルール』だ》

『宝石』――――すなわち『財産』を生み出す能力。
その気になれば、『無限の富』を築く事さえ、
おそらくは可能なのだろう。
しかし、ロダンが『ストーン・エイジ』を用いるのは、
主に『出題』と『報酬』に限られるようだ。
『謎掛けのための能力』とまでは言えないものの、
『スフィンクス』という役割には適している。
『知恵の獣』であろうとする精神性が、
こういった力を目覚めさせたのかもしれない。

《では、君のために『星』を一つ作る事にしよう。
 昼夜を問わず、君の傍らで輝き続ける『小さな星』を》

        ズズズゥ………………

翼の上で、『エメラルド』が次第に形を変えていく。
さながら『モーフィング』を思わせるような、
滑らかな形状変化。
僅かな時間を経て、『星』を象った『宝石彫刻』が完成した。

            《受け取りたまえ》

                スゥッ

    《『ナツカワコイコ』――――『君の星』だ》

頭の中で思い浮かべたイメージと、
寸分違わぬ『エメラルドの星』が、奈津川に差し出される。

587奈津川恋子『クワイエット・ガーデン』:2022/09/18(日) 20:00:15
>>586
「なるほど。確かに宝石というのは『人間の価値』。
それを対価に謎解きと対話ができるのがあなたの価値というわけですね」

そっと手を出し、『星』を受け取るついでにロダンの頭を撫でられるか試してみる。

「ありがとうございます。大切にしますとも。
良い謎があったら、また教えてください。
私達、もうお友達ですからね」

588『スフィンクス・チャレンジ』:2022/09/19(月) 10:38:07
>>587

《差し支えなければ、『君の名前』は覚えておく。
 また一人、新たな『旅人』と出会えて、私はとても嬉しい。
 『月並み』な言葉で恐縮だが…………『楽しい時間』だった》

     《また何処かで出会う事があるなら、
      私はその機会を大いに歓迎する》

             スィッ

ロダンの頭に触れようとした時、
鳥居の方から数人の参拝客が歩いてくる。
それを見て、ロダンは軽く身を引いた。
どうやら、彼は神社から立ち去るらしい。

《『君達』に合わせて、こう言っておこうか》

               《――――――『ごきげんよう』》

『烏兎ヶ池神社』を舞台にした『一人と一匹の対話』は、
このような形で幕を下ろした。
しかし、これは『最初』ではなく、『最後』でもない。
いずれ『別の場所』に、『新たな謎』が現れる事になるだろう。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

奈津川恋子『クワイエット・ガーデン』⇒『二万円』相当の『エメラルドの宝石彫刻』を入手

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