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【ミ】『ハッピーハッピー・コメットテイル』

1『幸せ兎』:2016/02/19(金) 23:13:31
なんだ、あれが僕たちの探している青い鳥なんだ。
僕たちはずいぶん遠くまで探しに行ったけど、 本当はいつもここにいたんだ。

――メーテルリンクの『青い鳥』より。

769『猫の心、メイド知らず』:2016/08/05(金) 00:15:40
>>768(須々木)

広い庭。冬川一人で手入しているとも思えない。
植木屋とか、専門家を呼んでいるのかもしれない。

『冬川』:
「ただいま帰りました。こちら、専門家の須々木さんです。
 この度『びろうど』ちゃんの件でお助けいただく事になりました。」

そして、『須々木』も専門家扱いのようだった。
確かに『スタンド能力』は、極めて専門的な技術だ。

『絹』:
「あらぁ、そうだったのねぇ。
 まだお若いでしょうに、ご立派だこと……
 頼りにさせてもらいますねえ、須々木さん。」

『冬川』:
「――こちら、当屋敷の主人、『絹』さんです。」

伸びやかな口調で話す老婆は、『絹』と言うらしい。
冬川による相互紹介が終わって、またセミの声がうるさい。

『絹』:
「冷さん、私は上で読み物をしているから。
 何かあったら呼びに来てちょうだいねぇ。
 須々木さん、あまりお構いできませんけど、ごゆっくり。」

上というのは二階のことだろう。
そう言い残して絹は、屋敷内に引っ込んだ。
来客の相手は冬川の仕事、という事だろう。

『冬川』:
「畏まりました。――さ、どうぞ。お入りください。」

冬川が促してくる。外は暑いし、庭を満喫したなら入るのがよさそうだ。

770須々木 遠都『スモールタウン・ヒーロー』:2016/08/05(金) 21:07:59
>>769

 少しだけ、眉をしかめる。
 専門家、とはまた大きく出られたものだ。
 否定するにも面倒だし、かといって気にせずいれば後々新たな労力を生む。
 特にそう、スタンドの分野に至っては。

 ここで、『お任せください!』なんて胸を張れればいいのだが。

「は、はい……微力を尽くします」

 これが精いっぱいの見栄だ。

 老婆の背を見送り、冬川に耳打ちする。

「……『絹』さんは」
「『スタンド』のことはご存知なんですか。自分の愛猫の……」

 尋ねつつ、屋敷に入ろう。
 靴はそろえる、くらいの作法は守る。

771『猫の心、メイド知らず』:2016/08/05(金) 23:19:52
>>770(須々木)

老婆・絹は『須々木』の言葉を受け頷いた。
あるいは謙遜と受け取ったのかもしれない。

そして、冬川に事実を確認する――

『冬川』:
「『超能力』の存在は……ご存知です。
 『スタンド』という呼称は、知りません。
 おして、その使い手がこの町に多い、という事も。
 知ってしまうと、厄介事に巻き込まれかねませんので。」

との、ことだった。

「一応、『びろうど』ちゃんの能力は、
 私の知る範囲では教えています。
 万が一、という事もございますので。」

「……半信半疑といった所ですけど。
 決して頭の固い方ではないのですが、
 流石に世界観がトびすぎていたようで。」

ほとんどのスタンドに言える事だが――
『仕込み』や『トリック』の存在を疑う余地はある。
『ネコ好き』などと言った主観に関わる能力では尚更か。

「どうぞお入りください――」

屋敷に入り、靴を揃えて玄関に上がる。
邸宅のつくり自体は和式だが、家具や調度品は洋風。

      ガタン…          

――『須々木』の後ろで戸が閉まった。
外から入りこむ熱気は途絶える。涼しい。
セミの鳴き声も、はるか遠い世界のようだ。

「応接間にご案内します。」

      トコ
 
          トコ

同じく靴を脱ぎ、揃えた冬川が廊下を先導する・・・・

772須々木 遠都『スモールタウン・ヒーロー』:2016/08/05(金) 23:37:21
>>771

「ご賢察……だと思います。」

 素直に感じ入る。

 情報は知りすぎれば毒に、かといって知らねば落とし穴になる。
 適切なもののみを処理・編集して主に伝えたというのは、
 彼女が知性の人であることの証左のように思えた。


「……そう、それともう一つ。
 僕はこの町に住んでいるといっても、世間には疎いので
 改めて確認しておきたいのですが……
 この屋敷や敷地内、あるいは町内全体において、
 ペットの所有や鳥獣への対応に関する注意や、条例のようなものはあるでしょうか」

「何も知らず追いかけるというのは、避けたいのです」

 自分の『スタンド』を使うにあたって、調べておかねばいけないこと。
 知らねば落とし穴、だ。
 逆に、知っているのならば知らない者を、罠にかけることもできる。

「ああ、もちろん、なければない、でいいんですが」

773『猫の心、メイド知らず』:2016/08/06(土) 00:03:22
>>772(須々木)

『冬川』:
「ありがとうございます。
 正しいと自信を持っては、言えませんが。」

『須々木』を先導しつつ、冬川は応じた。
僅かな安堵が声色に感じられた。

そして。

「注意。条例――ですか?」

「飼い犬、猫の糞を片づける事。
 これはH市の環境マナー条例です。
 この家では……特に決めていた覚えは……
 ああ、動物への餌やりはご遠慮願っております。
 餌付けされた動物が集まってきては良くないので。」

この『動物』とは、猫に限った話ではないのだろう。
今のところ、他に思いだすものは無いようだ。
マイナーな条例などは、この女も知らなくて不思議ではない。

      トン

冬川が足を止めた。
戸の前で――ここが応接室らしい。

「少しばかり、前でお待ちください。
 内装など、整えて参りますので。」

        スッ

そう言うと、冬川はさっと室内に入っていった。
急な来客ということになるので、見せたくない物もあるのだろう。

            ・・・・廊下も十分に涼しい。

774須々木 遠都『スモールタウン・ヒーロー』:2016/08/06(土) 00:16:04
>>773

「なるほど、ありがとうございます。」

 よくあるマナー条例、といったところだろうか。
 しかし、事前に知っておけたのは良い。
 何に使うとも限らないが……知らないよりは。

「多少散らかっていても、気にしないので……」

 室内に向かう冬川に声をかける。
 お決まりの文句のようなものだ。
 実際に自分は気にしないが、見せる側が気にするということもある。


「…………」

 待つのは、好きだ。
 軽く屋内を見回す。床や壁の材質、部屋の数の概算……
 適当でいい。時間つぶしだ。

 そして、購入したマスクとサングラス……今は手元にあるだろうか。
 あるならば、試しに着けてみたい。

775『猫の心、メイド知らず』:2016/08/06(土) 00:36:25
>>774(須々木)

礼にお辞儀を返して室内へ消えた冬川。
必然的に生じる、待ち時間・・・・

     …ミン

           ……ミン

セミの声を遠くに聞きつつ、屋内を見回す。

――床や壁は木製のようだ。
整備が行き届いているのか、軋む感覚は薄い。
走り回ったとしても、床が抜けたりはするまい。

部屋は……この廊下にあと二つか、三つはありそうだ。
二階にも部屋があるのだろうし、奥にも部屋はあるかもしれない。
老婆と使用人の一人暮らしには広すぎる。猫がいたとしても……

      ガサ…

         バリバリ

包装を解いて、マスクをサングラスを出す。

つけてみると――中々フィットするが、やや暑い。
まあ、これならば一目で『須々木』の正体は見破れまい。

           スッ…

と、そこで戸が再び開いた。

『冬川』:
「その変装、中々お似合いです。
 お部屋の準備が整いましたので、どうぞ中へ。」

       ペコ

冬川が、小さく頭を下げて促す。
戸の向こうに見える応接室は、高級そうな家具ばかりだ。

       ニャア

それから――猫がいた。『びろうど』とは明らかに違う品種の子猫だ。

776須々木 遠都『スモールタウン・ヒーロー』:2016/08/06(土) 00:47:44
>>775

「……ありがとうございます」

 正体を隠す、ともすれば不審者としての変装だ。
 それが似合ってしまうというのは、こう。

 ともあれ、そのまま部屋に入ろう。
 いつ『びろうど』と出くわすかもわからない。

「……他の猫もいるんですね」
「あの子は普通の……つまり、『スタンド』を持たない猫ですか?」

 子猫を見ながら訪ねる。

777『猫の心、メイド知らず』:2016/08/06(土) 01:40:59
>>776(須々木)

『冬川』:
「いえいえ。」

お世辞だったのかもしれない。
まあ、こういう会話もあるものだ。
   
   ザッ

部屋に入った。
小さな猫の視線を感じた。

威嚇――というよりは、警戒か。

『冬川』:
「こちら、『しるく』ちゃんです。
 この子には特別な能力などは、ございません。
 『びろうど』ちゃんの妹分……といったところでしょうか。」

立ち位置は不明だが、ともかくびろうどの下らしい。
冬川は部屋の奥に歩み、子猫しるくをしゃがんで撫でる。

「この子は能力下にございません。
 同じネコだからか、感情的な問題かも。」

   ニャア

撫でられたしるくは少しだけ鳴いた。
冬川は、『須々木』に視線を向けた。

「さて、お飲み物でもご用意しましょうか。
 それとも何か食べ物……嗜好品などの方が?」

頼めば――よほどマイナーな物でなければ出してくれそうだ。

778須々木 遠都『スモールタウン・ヒーロー』:2016/08/07(日) 00:10:47
>>777

 猫を一瞥し―――視線を逸らす。
 彼女からしたら、自分は完全によそ者だ。
 しかも、姉貴分の自由を脅かす可能性のある不審者。
 自分が同じ立場なら、いい気分はしない。

 下手に懐かせようと撫でたり構ったりは、お互いに負担だろう。

「じゃあ、失礼します。」

 『しるく』とは少し距離を置くような位置に腰を掛ける。

「お言葉に甘えて……冷たい飲み物を、いただけるでしょうか。
 つまめる程度で構いません。かつ、あんまりあごが疲れないものを」

 スルメやら煎餅やらは、得意とするところじゃない。

779『猫の心、メイド知らず』:2016/08/07(日) 00:38:29
>>778(須々木)

   ニャア

猫はまた、小さく鳴いた。
特に向こうから近づいてくる事もない。
『須々木』が警戒されるのは、ある意味自然か。

『冬川』:
「かしこまりました。
 少々お待ちください。」

    ス…

冬川は部屋を出た。
頼んだ物を取りに行ったのだろう。

  ミン
       ミン…

特に何が起きるでもなく――
少し待つと、廊下から足跡が戻ってきた。
 
    コン

         コン

「――持ってまいりました。」

ドアがノックされ、冬川の声が聞こえる。
問題なければ、部屋に入ってもらうのが良かろう。

780須々木 遠都『スモールタウン・ヒーロー』:2016/08/07(日) 00:48:18
>>779

 ……気まずい。

 友達と、友達の友達と、三人で集まっているときに
 友達がどこかに行ってしまい、残された友達の友達と会話が弾まない……
 そんな気分だ。
 まあ、そうそう集うような友人もいないのだが。

 しかし、セミの声の激しいこと。

 家の中まで届くほどに焦がれて鳴いているのか、
 それとも壁がそもそもそれほど厚くないのだろうか。


「あ、はい。」

 冬川の声に返答し、扉を開けに向かう。
 茶や菓子を手に持っていれば、開け難いかもしれない。

781『猫の心、メイド知らず』:2016/08/07(日) 01:20:32
>>780(須々木)

猫は『須々木』の気も知らず、
特に可愛げもなく生活している。
猫好きにはいいかもしれないが……

   ミン

          ミン

カーテンの向こうは不明だ。
樹が近くにあるのかもしれない。
あるいはセミのデートスポットか?
まあ、多少うるさいくらいの話だ。

        ガタ…

『冬川』:
「ありがとうございます。
 お飲み物と、ゼリーをお持ちしました。」

「味は葡萄と、スターフルーツと。
 どちらから食べていただいても。」

冬川の持つ木のお盆の上には、
水の入ったグラスと、二つのカップ。
それから、猫用と思われるミルクの入った皿。

          コト

――お盆については、『須々木』の前に置かれた。

「ああ、それから。」

「夜までお暇でしょうけど、
 何か趣味の品はご入用ですか?」

これこそまさに至れり尽くせり、といったところだろうか。

782須々木 遠都『スモールタウン・ヒーロー』:2016/08/07(日) 22:53:33
>>781

 視線を気取られないように、目の端で猫を見守る。

 猫という動物は好きだ。
 しかし、それは構ったり、撫でたり、話しかけたり、
 そういう愛情を示す行動としての発露を伴わない。

 猫が好きな理由は、基本的にこちらに無関心だからだ。
 畢竟こちらも下手に相手にあわせなくて済む。甘えてきた時だけ、構ってやればいい。


「これは、ご丁寧に。」

 運ばれてきたカップに手を伸ばす。

 スターフルーツのゼリー。最初はこちらだ。
 想像のつかない味への期待と、もしハズレだったときに、ブドウという保険が残っている。


「……そうですね。『暇』には強い方ですが」

 至れり尽くせりに申し出てくれる冬川に、ちらと視線を向ける。

 何のことはない、この人にとっては、これが仕事なのだろう。
 ともすれば、遠慮も無粋だ。

「『びろうど』ちゃんのお話でも、軽く聞かせてもらっていいですか。
 どんな性格の猫だ、とか…… 好きなこと、嫌いなこと……
 それに、『初めてスタンドが発現したと発覚したときのこと』、なんかも」

 スターフルーツのゼリーを一口。
 味はどうだろう。

「それがかなわなければ、お勧めの文庫本の一つでもお願いします。」

783『猫の心、メイド知らず』:2016/08/07(日) 23:15:29
>>782(須々木)

スターフルーツのゼリー。
市販品のようだが、味はいかがな物か。
スプーンは、小さな木製の者が添えられている。

・・・色は黄色っぽく、匂いは薄い。

『冬川』:
「『びろうど』ちゃんの。」

    ニャア

呼応するように、『しるく』が鳴いた。
冬川は子猫の前に、ミルクの皿を置いた。

「そうですね、話すに越した事はないでしょう。」

          「――失礼します。」

  ストン


向かいのソファに、冬川がゆっくり腰掛ける。
それから、蛇のような視線を少し上に傾けた。

「性格、と言うよりは印象ですが。
 彼女は――世話焼きな性格といえます。
 猫のわりには、他の生き物によく、かまう。」

「あるいは、『社交的』――というのでしょうか。
 妹分が出来てから、よりその傾向は強く思います。」

びろうどは、『須々木』の知る猫像とは少し違うらしかった。
それは、『スタンド』という力があるからだろうか――

「好きな事は運動……これは猫の共通項かもしれません。
 それから、『猫用のチーズ』。これは庭の倉に保管しています。
 嫌いな事は、未知数ですが……他の動物と争う所は、見ないですね。」

分析は冬川の主観であり、彼女自身そのことは分かっているように思えた。
須々木はスターフルーツゼリーの味を口の中に感じていた。やや酸っぱく、梨風だった。

784須々木 遠都『スモールタウン・ヒーロー』:2016/08/08(月) 00:13:28
>>783

 酸味のある梨味のゼリーを食べ進める。
 『甘味』として味わえば、少し風変りにも思えるが、
 『前菜』や『寒天料理』と思えば、こういうのもありか、と納得できる。

「『世話焼き』、『社交的』……」

 まあ、そういう猫もいるのだろう。
 『猫とはこういうものだ!』と決めつけてしまうのは、ひどく窮屈だ。
 自分にとっても、猫にとっても。

「庭の倉に、『猫用のチーズ』」

 こちらは、先ほど言及した彼女の好物だろう。

 おうむ返しに相槌を打ちつつ、もう一つのゼリーに手を伸ばす。
 酸味の後ならば、甘さもひとしおだろう。

785『猫の心、メイド知らず』:2016/08/09(火) 00:50:41
>>784(須々木)

決して劇的に美味しい物ではない。
しかし、そう悪くない味に感じた。
珍しい素材のわりには、無難な味に。

『冬川』:
「チーズは必要でしたら、
 尾行の前にお渡しいたします」

「包装はしっかりしてますので……
 それの臭いでバレる、ことはないはずです」

冬川の言い分からするに、『須々木』の推測は当たっていそうだ。
チーズが好きな猫も変わっている――のだろうか。

さて、もう一つのゼリーに手を伸ばした。
葡萄は星見町において、古くから名産とされている。
味も――まさしく、その名産の味を再現出来ているようだ。

「能力の発現に気づいたのは……あれも夏の暑い日でした。
 実は『びろうど』ちゃんは以前一度、家出をしたことがあります」

そして冬川は話の続きを、思い出しながらつづり始める。
語りの声に沈むかのように、外のセミたちの声は遠く感じられた。

「あの時は、町中に張り紙をして猫探しの依頼を出しました。
 決して、自慢するような話ではありませんが、この時点では……
 私も、『びろうど』ちゃんの『能力』を存在も知りませんでしたし、
 私の『能力』は決して、探し物や追跡に向いた物ではありませんので」

スタンド絡みの事件である、と分かっていなかったらしい。
能力があくまで目に見えない形ならば、あり得る話かもしれない。

冬川はそこで少し、間を置いた。

「その先は――」

「顛末を細部までお話しましょうか。
 それとも……要点を簡潔に話した方が?」

口元に軽く手を当てつつ、そのように聞いてきた。それなりに長話になるのかもしれない。

786須々木 遠都『スモールタウン・ヒーロー』:2016/08/09(火) 23:25:50
>>785

 どうやら順番は正しかったようだ。
 酸味で引き締まった口内の感覚に、甘味は十二分に広がる。

 地元の人間だからこそ地元の味に疎い、というのはよくある話だが、
 それにしても、これなら帰りに銘柄を聞くのもいいかもしれない。

「―――お任せします。」

 冬川に判断を委ねる。
 何も無精というわけではない。いや、無精には違いないのだが、それだけが理由ではない。

「……概略には、うっすらと予想がつきます。
 『スタンド』によって起きた事件は、『スタンド』によって解決する。
 その口ぶりでは、きっと他の方が『スタンド』を使用されたんでしょう」

 冬川は、知性の人だ。少なくとも、自分にとっては。
 彼女の主に必要な情報のみをかいつまんで提供したように、
 必要な情報の取捨選択という面において、彼女は信頼できる。

「……それが他の方の、あるいは冬川さんの『能力』であったり……
 あるいは、この家にとって知られては困る情報だったり……
 そういうのを含むようであれば、僕としても無理に尋ねようとは思いません。」

「顛末を細部まで聞きたい気持ちはありますが……
 それは『捜索』のためではなく、ただの僕の『興味』と、
 あとは……ただの『時間つぶし』です。
 そしてそれは、もし冬川さんがお忙しいのであれば、
 それを妨害してでも優先したいほど、強い気持ちではありません。」

787『猫の心、メイド知らず』:2016/08/10(水) 00:09:38
>>786(須々木)

ゼリーの味を堪能しつつ――
判断は、冬川に任せる事にした『須々木』

『冬川』:
「――畏まりました」

実際、話すのは彼女だ。
彼女は『須々木』の言葉に、頷く。

「では、まず簡潔に話しましょう。
 貴方の予想は正しく……
 解決したのはスタンド使いです」

スタンドが引き起こした事件は、
大抵の場合スタンド使いが解決する。
それはこの町に根付く、『不文律』と言える。

「これは今思えば、僥倖でした。
 彼女のスタンドは強く、彼女は有能でしたから」

法で裁けない力は、別の力が裁く。
それによって危ういバランスは保たれる。

「『びろうど』ちゃんを慕う小動物の妨害を受けつつも、
 無事に家出先を発見し――傷つけず捕獲する事に成功しました」

「その家出の原因というのが、
 あそこにいる『しるく』ちゃんです。
 つまるところ――『びろうど』ちゃんは、
 親のいないあの子の世話をしていたのです」

          ニャ〜ア

『しるく』が名前に呼応するように、また鳴いた。
世話焼きな猫――というのは、その事件に起因するのかもしれない。

「この事件で『びろうど』ちゃんの能力について二点判明したこと。
 それは、『肉球でスタンプする事で能力下に置く』ということと、
 もうひとつ、『能力下に置かれた小動物間に連携が見られた』ことです。」

「……ここまでが、簡潔に述べた事件の顛末です。
 依頼解決者の能力はお話出来ません……
 申し訳ございませんが、信頼を損ないかねませんから。」

冬川はそこまで話し終えてから、口を止めた。
何か質問や――他に、『須々木』から言う事があれば、それを待っているのだろう。

788須々木 遠都『スモールタウン・ヒーロー』:2016/08/10(水) 00:34:11
>>787

「……なるほど」

 一言。

 感想がないわけではない。
 いい話だと思う。同時に、有益な情報でもある。
 ただそれを口に出して言うのが躊躇されるというだけで。

 それにしても、そのスタンド使いに頼めば話も早い……
 とは思ったが、やはり口には出さない。それはあちらの事情。
 同じ人物に何度も頼るというのも憚られるのだろう。

「じゃあ、今回ももしかしたら、そういう類かもしれないですね」

 ぶどうゼリーをもう一口。

「なまじ、『スタンド』が使えるから……何かを放っておけなくて……」
「……そういう、性分なんでしょう」

 食べ終えたら、椅子に背を預ける。

「……教えていただいて、ありがとうございました。
 あとは、文庫本をお借りできるでしょうか。夜まででいいので」

 質問はない、の意だ。

789『猫の心、メイド知らず』:2016/08/10(水) 00:39:56
>>788(須々木)

『冬川』:
「彼女に協力を仰ぐ事も考えましたが、
 恐らくは、顔を覚えられていますので」

それも、捕獲者として。
『須々木』に疑問には答えが提示された。

そして。

「『仲間を放っておけなくて』」

「そうであれば――
 どこか、誇らしく思います」

僅かに笑みを浮かべて、そういった。
それから冬川は『文庫本』の申し出に、小さく頷いた。

    スッ

少しすれば、彼女は本を持ってくるだろう。
それを読んでいれば、すぐに夜は訪れる・・・・

   ・・・

          ・・・

何かやり残しがあるなら、今の内がいいのかもしれない。
もちろん、何もないならば、冬川が戻るのを待てば問題ない。

790須々木 遠都『スモールタウン・ヒーロー』:2016/08/10(水) 23:08:44
>>789

(なるほど。)

 今度は声に出さず納得する。


 ……さて。

 準備という準備は、特にない。
 本を読み、時が過ぎるのを待つ。

791『猫の心、メイド知らず』:2016/08/10(水) 23:34:03
>>790(須々木)

冬川は数冊の文庫本を持って戻った。
『須々木』は読み始める――古い文学作品だった。


           ・・・

   ・・・

         ・・・


夜は沈黙の時間だった。

セミの大騒ぎは止んでおり、
何か別の虫が小さく鳴いていた。
外は日が落ち、電灯が点いている。

    ス…

家事のため部屋を出ていた冬川が、
替えの飲み水を持って部屋に戻ってきた。

『冬川』:
「じき、『びろうど』ちゃんが家を出る頃です。
 その前に軽食などご用意いたしましょうか――?」

――そのように、声をかけてきた。

尾行に数時間もかかる事は無いようにも思える。
食事は尾行を終え帰ってきてからでも、余裕はあるだろう。
 
       ニャァ

『しるく』は気まぐれに歩き回っていたが、
この時間になると眠いのか、ややおとなしい。

792須々木 遠都『スモールタウン・ヒーロー』:2016/08/11(木) 00:09:41
>>791

「…………」

 さて。と、実際に口に出して言ったわけではないが、文庫本を閉じる。
 続きはいずれ、時間がある時にでも図書館で探して読めばいい。


「お願いします」

 軽食の申し出に応じる。
 捜索にどれほどかかるかはわからない。
 万一、失敗に終わったとして、そのあとでいただくのもいたたまれない。

 食えるうちに食う。遠慮は省エネにとって大敵だ。

「……」 スッ

 『しるく』の鼻先に向けて、指を差し出してみる。
 匂いを嗅ぐだろうか。
 邪魔をしたことを詫びても、猫に通じる道理もない。挨拶の代わりとしたい。


「それで、『びろうど』ちゃんは今、どこに?」

 動きにくくならない程度に軽く腹を満たしたら、冬川に尋ねる。

793『猫の心、メイド知らず』:2016/08/11(木) 00:29:57
>>792(須々木)

   パタン…

閉じられた文庫本に冬川は視線を向けた。
それから、『須々木』に向き直り、小さく頭を下げる。

『冬川』:
「――畏まりました。
 すぐに用意させていただきます。」

とのことだった。
何が用意されるのかは不明だ。

ともかく、エネルギーは補給できるだろう。

     ゴロ・・・

『しるく』は小さく喉を鳴らした。
それから、前足を伸ばし、軽く指を叩く。
猫じゃらしか何かと勘違いしたのか?
意図がちゃんと伝わったかどうかは、不明だ。

「現在は絹さんの部屋に。
 いつも通りでしたら……
 あと30分もすれば、お出かけかと。」

「では――失礼いたします。」

     ペコ

冬川はそう言うと、一礼して部屋を出る。
すぐにでも戻ってきて、軽食が用意されるのだろう。

794須々木 遠都『スモールタウン・ヒーロー』:2016/08/13(土) 00:08:19

>>793

「……」

 『しるく』の眉間をつつく。お返しだ。

「分かりました。あと30分、ですね」

 装備を確認しつつ、軽食を待つ。
 懐中電灯、虫よけスプレー。サングラスとマスク。

795『猫の心、メイド知らず』:2016/08/13(土) 00:42:10
>>794(須々木)

     ニャア

しるくは――人間でいえば、
眉間に皺を寄せるような顔で、ばっ!と飛びのいた。

  チク

   ――そして。
  
              タク

30分という時間は、すぐに経過する。
一時的に部屋を出ていた冬川が、
やや緊張したような面持ちで入室した。

『冬川』:
「びろうどちゃんが動きを見せました。
 おそらく、あと数分以内には――
 庭にある猫用通路から外へ出るでしょう。」

猫用通路。
猫が棲む家庭にはたまにある。
人間が通るには狭く低い、小さな出入り口。

「門から出る場合は、向かって左へ。
 すぐに見える角を曲がれば、
 猫用通路の先の路地と合流します。」

「あるいは――塀を超えていくか、です。
 ……もっとも、高さは2m以上。
 素手で超えるのは容易ではありません。」

とのことだ。
追跡者となる『須々木』も――動かなければならない。

796須々木 遠都『スモールタウン・ヒーロー』:2016/08/13(土) 01:08:02
>>795

「二つの道があって、片方は堅実だけれど迂回する。
 もう片方は直通だけれども、手間がかかるってことですね。」

 冬川の情報を復唱し、整理する。

 さて、問題は――――――どちらが、より低燃費かだ。


  (普通に考えて、1の『安全な迂回』だ……わざわざ疲れる道を選ぶ道理はない。
    けれども、遠回りして見失ったとしたら? それは余計な労費につながる。
     『険しい近道』を選ぶことは、より後の節約につながるんじゃあないのか?
      それに、僕自身が今どこまで動けるのか、正確に把握しておきたいな……)


「……行ってきます。期待しないで、待っていてください」

 『塀』を目指す。

797『猫の心、メイド知らず』:2016/08/13(土) 01:25:29
>>796(須々木)

『冬川』:
「まとめればそうなります。
 それでは――こちらへどうぞ。」

         ザッ

冬川に先導され、『須々木』は屋敷を出る。
夜とはいえ、外には熱気が漂っている。
セミは静かだが、眠っているのか、身を潜めているのか。

   ササッ

視界の端に、塀へ一直線に進む『猫』が見えた。
それは小さな穴を潜り抜け、外に出たようだ――

「塀を超えた先は路地です。
 車道ではないので、ご安心を。」

        ペコ

「それでは――行ってらっしゃいませ。」

冬川が礼をするのを背後に感じた。
眼の前に塀がある。高さは2m以上。
単純にジャンプをしただけでは、届かない。
・・・・びろうどは、既に向こうに抜けたろう。

追いかけるならば、一刻も早く――これを超える必要がある。

798須々木 遠都『スモールタウン・ヒーロー』:2016/08/13(土) 23:49:36
>>797


「……『スモールタウン・ヒーロー』」

 スタンドを発現し、身に纏う。

 塀から助走のために、十分に距離を取る。
 先ずは自分がどれほど動けるかを確認しなければいけない。

 全速力で塀に向けてダッシュ(スB)、
 一歩手前で跳躍し、
 勢いそのままに壁を駆け上がりたい。あるいは高さが足りなければ、塀のてっぺんをつかむ。

 つまりはSAS○KEの『そり立つ壁』の要領だ。
 ひとっ跳びには越えられなくても、十分な推進力があれば。

799『猫の心、メイド知らず』:2016/08/14(日) 00:30:45
>>798(須々木)

    ジャ

         キ ン!

『須々木』の身体に、赤と黒の装甲が纏われた。
それは動きをなんら阻害しない装甲にして、心の鎧。

    ダッ

走り出す。
ここで『須々木』は気づいた。まず一つ。

――『速くはない』事。(スC)

すなわち、走る速度は普段と変わらない。
人型形態ほどの速度は、この纏う形態には無い。
中に人間が、『須々木』が入っているが故だろうか?
しかし。今の形態には別の長所がある。それが分かる。

それが、二つ目。

       タンッ

――超人的な『身体制動』が可能な事。(精B)

手足が、完全にイメージ通りの動きをする。
理想通りの、精密な体の動きが可能になる。

     ダッ

          ダンッ!


駆け上がるかのようにして、塀を乗り越えた――!
訓練された動きは、勢いだけでは成し得なかっただろう。

 
  ザザッ

路地に着地する。人通りは無い――と。

           トト

『10m』ほど先に、『びろうど』がいた。
幸いにして、まだこちらには気づいていないようだった。そのまま歩いていく。

800須々木 遠都『スモールタウン・ヒーロー』:2016/08/14(日) 01:22:56
>>799

「……っとと、」

 思い違いからくる挙動の齟齬に戸惑う。
 慣れていないことをいきなり実践するものではないな、と独りごちる。
 ともあれ、急場でこなせたのは幸運だった。

 『スタンド』を維持したまま、尾行を開始する。
 そういえば、纏う装甲の下にマスクとサングラスはしているだろうか。

801『猫の心、メイド知らず』:2016/08/14(日) 02:09:39
>>800(須々木)

齟齬に早いうちに気づけたのは僥倖かもしれない。
少なくとも今、『須々木』を見ている人間はいない。
隙をついて悪事を仕掛けるような者も、いない。

      ・・・

          ・・・

そういうわけで『びろうど』の尾行が始まった。
特に急いではいないのか、走り出しはしない。
後ろを向くこともないし、向いてもすぐにはバレまい。
現在の距離は、変わらず『10m』程を保っている。

装甲の下は――元の『須々木』に等しい。
先ほど明いた30分に軽食(サンドイッチだった)が出た。
それを食べた後に着けたなら、今も着けているだろう。
    
            トトト

びどうどは直進を続けている。
あと数mも行けば、曲がり角になる。

            パタ

                   パタ

――――――――――――――――――――――――――――――
☆軽食は描写忘れでした。ご迷惑をおかけします。
★マスクとサングラスを装着しているかはお任せします。

802須々木 遠都『スモールタウン・ヒーロー』:2016/08/14(日) 22:58:26
>>801

 通行人がいないのは幸運だ。
 怪しまれる危険性がないし、『人型』への移行の必要も、今はない。

 しかし、『10m』……

 今はまだ向こうは『歩いている』だけだろうが、
 こちらに気付き、本気で『振り切ろうと走る』獣は本当に速い。

「……」

 『びろうど』が曲がり角を曲がったら、
 足音を殺すことを念頭に置きながらも、
 可能な限り足早に、曲がり角まで距離を詰めたい。

 その後、身を乗り出すようにして、角から『びろうど』の行方を観察する。

803『猫の心、メイド知らず』:2016/08/14(日) 23:34:37
>>802(須々木)
 
    スッ

足音を極力出さず――曲がり角まで駆けた。
そして、びろうどが曲がった方向をのぞき込む。

    トト

       トト

びろうどは相変わらず――歩いている。
位置は『5m先』といったところだろうか。
なお、この先の道は車が通れる広さだ。
が、車は今のところ無い。通りの多い道でもない。

   ニャオ

         ニャァゴ

その時びろうどが突如鳴いたかと思うと、
別の猫がどこかからうなるように呼応した。

その鳴き声も、『須々木』の近くではない。
気づかれた――というわけではないらしい。
猫は独自の社会を構築しているとも言う。その、挨拶か?

         パタ

    パタ

後ろから羽の音が聞こえる。
こんな時間だし、蝙蝠か何かが飛んでいるのかもしれない。
振り向いて確認するのもアリだが……びろうどからは目を離す事になるか。

                     ・・・・情報が、いくつもある。

804須々木 遠都『スモールタウン・ヒーロー』:2016/08/15(月) 00:12:46
>>803

 『5m』。

 この距離で一瞬目を離すだけであれば、消えて失せることもないだろう。
 羽音のする方向を振り返る。

805『猫の心、メイド知らず』:2016/08/15(月) 00:37:55
>>804(須々木)

そういうわけで――振り返った。

      パタ

            パタ

やはり蝙蝠だった。豚のような鼻。
間近で見るのは初めてかもしれない。どうだろう?

哺乳類の顔だが、飛んでいる。
その羽も鳥より、虫を思わせる。
漢字が「虫偏」なだけあるかもしれない・・・

   キー

         キー


         ・・・鳴いている。

別に超音波で耳が痛んだりはしない。
噛みついて来て血を吸ったりもしない。
何となくそこにいる、って顔をしている。

単なる蝙蝠のようだ・・・直ちに危険はない、気がする。
びろうどの方を振り返れば、こちらも特に何もなく歩いている。

       バウ!

どこかから犬の吠え声まで聞こえてきた。
どうにも小型犬という雰囲気ではなさそうだった。
夜の世界というのは、動物たちの楽園なのかもしれない。

806須々木 遠都『スモールタウン・ヒーロー』:2016/08/15(月) 23:36:48
>>805
  ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
 『ただのコウモリ』。

 実際に見るのは初めてだ。
 なので、実はこれは蝙蝠じゃなくて、生物学的には別のものだったとしても判別はつかない。
 ただ何となく、大自然特集のような番組でちらと見たことがあるその輪郭で、
 「ああ、たぶんこれ蝙蝠だな」と判別するほかはないのだ。


 しかし、知識だけなら持て余している。
 何せ、図書館には山のように本があるのだ。


   (……蝙蝠は『エコーロケーション』で障害物や仲間の位置を特定する。)


 ならば、こうして羽音が聞こえるまで人の近くに寄ってくるものだろうか?


    (『びろうど』の能力は『触れた動物を猫好きにする』……。
     加えて冬川さんは、前回の『しるく』の件の依頼でも、
     担当したスタンド使いは小動物の妨害にあった、と話していたな。)


 というわけで、警戒……というほど神経質でもないが、その蝙蝠に目を凝らす。
 どこかに『肉球』のスタンプのようなあとはないだろうか?

807『猫の心、メイド知らず』:2016/08/16(火) 00:00:34
>>806(GM)

蝙蝠という動物は、不思議な動物だ。
あまり見かけることはないが、よく話には出る。
そして、その特性も、思いのほか認知されている。

  キー

      キー

意味もなく近づいてくる動物ではないことも。
『びろうど』の能力がどういう物か、詳細は不明だが――



  パタ

       パタ

               …チラ

少なくとも、この『蝙蝠』には効いているようだ。

僅かに、羽の後ろに何かの『マーク』が見えた。
後ろに回り込まなければ分からないが……『間違いない』だろう。

          ・・・・ただ、今のところ何をするでもない。
              少なくとも、攻撃して来るような様子はない。

   ヘッヘッ
             ヘッヘッ

後ろの方から犬の声が近づいてくる。特に走って来たりはしていないけど。

808須々木 遠都『スモールタウン・ヒーロー』:2016/08/16(火) 00:15:48
>>807

 蝙蝠は糞害や吸血こそ恐ろしいが、一匹が今すぐどうこうするとは思えない。
 それよりも犬だ。野犬というのはなかなか侮りがたい。
 ……しかし、それに執心しては本懐を見失う。

 犬を一瞥した後、『びろうど』の追跡に戻る。

809『猫の心、メイド知らず』:2016/08/16(火) 23:27:24
>>808(須々木)

  ヘッヘッ

犬は柴犬だった。赤い首輪がついているが、紐は無い。
おそらくだけれど、どこかの飼い犬なのかもしれなかった。
一瞬だけ目が合ったが、その目は何か使命感に燃えていた。

・・・・しかし侮ってもよさそうな、牧歌的な顔をしている。

    スッ

そして『須々木』は追跡を続ける。距離は『6m』ほど。
今のところびろうど側には……何ら異常はない。
広い道だが、所々に電信柱などがあり、隠れる余地もある。

     トトト

             トトト

犬は……おとなしく『須々木』のあとを着いてくる?

          ヘッヘッ

いや、これはむしろ須々木』を追い抜かす勢いだ。
パッと見では『肉球のスタンプ』は見当たらない。
とはいえ、尻やお腹は見えないので、実際のとこ不明だ。
何のつもりだか知らないが……『びろうど』に向かうのか?

    キー

     キー

        ・・・・蝙蝠はまだ後ろを着いて来ている。
            追い払わない限りは、そうなのかもしれない。

810須々木 遠都『スモールタウン・ヒーロー』:2016/08/17(水) 23:53:40
>>808

 きな臭い。

 ……が、こちらの用を邪魔しないのなら、特にこちらからもすることはない。
 能力の何かしらの関与を疑うにも、判断材料がまだ十分ではない。
 藪をつつく余裕はないのだ。時間的にも、エネルギー効率的にも。

 蝙蝠にしたって、天井裏にぶら下がっていれば楽なものを、
 わざわざこちらに近付いてくるというのは、何かしら大事な要件があるのだろう。
 それを無碍にするのは、なんというか、気が進まない。

 そういうわけで、変わらず追跡を続行する。

811『猫の心、メイド知らず』:2016/08/18(木) 00:29:24
>>810(須々木)

『須々木』は追跡を続ける。
動物たちの動きは謎だが、害は今のところない。
噛みついて来たりとか、ぶつかってきたりしない。

それをいちいち気にするのは、
確かにエネルギー的にも無駄だ……

      トト

         トト

人気のない夜道を、びろうどが歩いていく。
その後ろを着いて行く人間一人動物二匹。

  ヘッ
     ヘッ

          キーキー

『須々木』のやや前を歩く柴犬が、
まるで先導するかのように振り返ってきた。
蝙蝠は後ろを飛んでいるらしいが、暗くて見えづらい。

          ・・・

      ・・・

  ・・・

しばらくそのようにして歩いていると、
突然びろうどが歩みを止めて、向きを変えた。

    ニャオ

一声鳴いてから、また歩き出した。
柴犬も、それを追うように動きだした。

         オ オオオ 
                ォォォ

その方向を見ると――そこには、ちょっとした廃工場があった。
どうやら今は使われていないようで、また、人気もないようだった。

812須々木 遠都『スモールタウン・ヒーロー』:2016/08/18(木) 04:17:53
>>811

>『須々木』のやや前を歩く柴犬が、
>まるで先導するかのように振り返ってきた。


   (『金のガチョウ』か『ブレーメンの音楽隊』……
     さもなきゃ『桃太郎』だな。もっとも、主役は僕じゃあないけれど。)

 夜の静寂を楽しむかのような、かすかな足音と鳴き声。
 振り返る犬と目が合う……のだろうか。こっちは『スタンド』とサングラスだ。
 一応、応じるように肩を竦めたい。
 まるで自分も、この一団のメンバーになったような具合だ。

   (『びろうど』のあとを追っているのか……
     それとも、三匹とも同じ目的地に向かっているのか、だな。)


 ―――『廃工場』。

 オカルトやピカレスクやらで鉄板の舞台だ。
 こちとらまだ十代半ば、怯まないと言ってしまえばウソになる。
 『スタンド』がなければ、決して踏み入らないようなシチュエーション。
 それだって、絶対的に状況を有利に運んでくれるとは限らない。

 ……が、まあ。義理があるうちは、頼まれごとに励まなければならないだろう。
 変わらず後を追う。

813『猫の心、メイド知らず』:2016/08/18(木) 13:33:27
>>812(須々木)

   ヘッヘッ

犬には『スタンド』は見えていないのだろう。
警戒するような様子も、なかった。

       キー   キー

この童話のような集団が一体何を目的としているのか……
この犬と蝙蝠は一体何がしたいのか……
分からない事ばかりだ。
彼らの気持ちも、分からない。

しかし、今『須々木』がびろうどを追っていることには違いない。

       ・・・

             ・・・

     ・・・


廃工場――明らかに非日常な場所に足を踏み入れる。
足元には石やゴミが散らばるが、歩く邪魔になるほどではない。

        スス

犬も、それを避けて入りこんでいく。
野生のカンがあるかは謎だが……
少なくとも、とんだまぬけではないらしい。

              タタッ

びろうどが、工場内の小屋のような場所に入って行った。
そのドアには、鍵などは掛かっていないように見える。

     ニャ〜オ

               ニィ〜

    ナ〜〜オ

                      ・・・・猫の鳴き声が聞こえる。

814須々木 遠都『スモールタウン・ヒーロー』:2016/08/18(木) 21:28:54
>>813

 どうやら足場が悪いようだ。
 四足歩行の動物たちと違って、こちらは踏んだり物音を立てたりしないように慎重に進む。

「…………」

 複数の猫の声、だろうか。
 集会? それにしても、蝙蝠や犬に何の関係があるのだろう。

 猫が入っていったということは、扉が開いているということだろうか。
 こっそり中をのぞき見たい。

815『猫の心、メイド知らず』:2016/08/19(金) 02:28:59
>>814(須々木)

    ザッ

           ザッ

足元の雑多な物を避けながら歩く。
小屋までの距離は、そう遠くもない。
一般的なプレハブで、所々穴が空いている。

      ザ…

ドアは半開きだった。
犬がその前をうろうろしている。
たまに『須々木』の顔を見てくる。

体の柔らかい猫なら入れるだろうが、
そこそこ大きめの柴犬や、人間には無理だ。
   
   キー  キー

蝙蝠が屋根の方へ飛んで行った。
上から入ろうとでもしているのかもしれない。

           ソロ…

その、ドアの隙間から中を覗き込む――すると。

      ニャァ

                ニャゴ
   ナァ〜

猫がいた。一匹ではない。
目視で・・・・じつに『5匹』以上はいるようだった。
それぞれが少しずつ離れているが、くっつく猫もいる。

         ニャ〜〜オ

びろうどと思わしき猫が、そこに加わっていた。
別の、やや細身な猫に寄り添うようにして鳴いている。

                     ・・・・これは、猫集会か?

816須々木 遠都『スモールタウン・ヒーロー』:2016/08/19(金) 22:36:43
>>815

「……」

 うろうろしている犬を見る。
 入りたいのだろうか。
 申し訳ないが、手伝ってやることは出来ない。
 さすがにここに至って『扉を開くのは労費!』などとは言わないが、
 その前に様子をうかがっておかなければならないのだ。

 ……ただの猫の集会なら、冬川にそう報告するのみだが。
 もう少し、様子を見たい。

817『猫の心、メイド知らず』:2016/08/19(金) 23:33:08
>>816(須々木)

入りたいのかは謎だが……
中には興味があるのかもしれない。
まあ、中は猫の巣のようなものなのだ。
犬がノコノコ入って行くのもよくあるまい。

          パササ

もっとも、蝙蝠は無事に天井から入り込んだようだ。
猫たちにもまだ気づかれず、逆さに張り付いている。

   ニャア

        ニャオ

  ニャ〜ゴ

              ・・・・しばらく窺っていた。

猫たちは思い思いの時間を過ごしているらしい。
らしいというのも、やはり猫の心は分からないからだ。

ただ、それぞれにテリトリーらしきものがあり――

        ニャ〜〜オ

  グイグイ

『グルーミング』を行う、びろうどと隣の猫は、
その中でも近しい関係にあるらしいことは分かる。

          ヘッヘッ

犬が扉の隙間に顔を押し当てている。
向こう側――猫集会が見えているのか?

    フッ   フッ

さっきまでよりも、やや荒い息を見せている。
苦しそうというより、どこか燃え上がるような声色だった。怒りか、あるいは。

818須々木 遠都『スモールタウン・ヒーロー』:2016/08/20(土) 22:04:21
>>817

 これは、長丁場になりそうだ。
 本当にただの猫の集会であるのならば、
 これ以上に楽なことはないのだろうが……

 しかし、犬。
 この様子じゃあまるで、ストーカーだ。
 これを『迷惑防止条例』か何かに当てはめて、
 『スタンド』を発現できれば面白いのだが……


   (……試してみるにしても、僕も今は『ストーカー』みたいなもんだ。)

 この犬がストーキング行為あるいはそれに準ずることをしているのか。
 そしてこの『スモールタウン・ヒーロー』は動物相手にも発現できるのか。
 確かめるきっかけがあればいいのだが……

 もう少し様子を見て、動きがなければこちらから何か行動を起こしてみよう。

819『猫の心、メイド知らず』:2016/08/20(土) 23:32:05
>>818(須々木)

――『猫たちの意図』は、彼ら自身にしかわからない。

      ニャア

          ナァ〜
  
 ニィニィ

この集会の意味も――
距離感に込められた意味も――

       ゴロゴロ

写真そのままの『びろうど』と、
三毛猫らしき毛色の細身の猫は、
その中でも特別に……密な関係にある。

それだけは、見てわかる事だった。
猫には猫の事情があるのだろう。
人間の知らない、星見町の社会がここに。

        ウゥゥ

犬は、なにやら唸っているが・・・・
この中に乗り込めはしないらしい。
自制か、それとも猫の群れへの恐怖か?
どちらにせよ、中が気になりはするようだが。

            ワゥ…

彼を『違反者』に問えるかは、怪しい所だ。
犬は、『人間の法律』の当事者ではないのだから。

    ・・・ 

          ・・・  
                 
                     ザッ


どこかから――足音が聞こえてきた。
一つではなく、複数……とはいえ、それほど多くは無いか。2、3ほどだ。 

                   ・・・・こんな時間に、何の集まりだろうか?

820須々木 遠都『スモールタウン・ヒーロー』:2016/08/21(日) 00:09:06
>>819

「――――」

 いったん室内の集会はおいて、足音を警戒する。
 一番大事なのは、自分自身の身の安全だ。

 足音のする方角と、近くに隠れられそうな場所がないかどうか。
 最悪、室内突入もやむを得ないだろう。

821『猫の心、メイド知らず』:2016/08/21(日) 00:51:55
>>820(須々木)

       ニャア

  ナァオ

猫の鳴き声を背にしながら――
『須々木』は周囲を見渡し、隠れ場所を探す。

声の方角は、『須々木』が来たのと同方向だ。
つまり、道路の方から来るという事になる。
暗く静かな夜の事、足音は遠くから聞こえる物。

『須々木』はおそらく、まだ発見もされていないだろう。
投棄されたか、放置されたスクラップが小さな山を作っていた。
そこに隠れれば、回り込まれでもしない限りは見つからないはずだ。

         ヘッヘッ

犬は小屋の周りをうろうろしている。

         ・・・

             ・・・

  ・・・
          ザッ

               ザッ

廃工場に入ってきた、二つの人影は――若者だった。
それほど凶悪な面構えとか、釘バットを持ってるとか……そういうのは無い。

               ・・・・持っているのは、大きめの『カゴ』と『網』だ。

822須々木 遠都『スモールタウン・ヒーロー』:2016/08/22(月) 00:51:42
>>821

 嫌な想像を、した。
 それはつまり、あの『カゴ』と『網』を何に使うのか、ということだが。

「(……保健所の人間、だろうか?)」

 例えばここに野良(?)の動物たちが夜な夜な集まっているのなら、
 言っては悪いが格好の獲物、あるいは捕獲対象だ。
 市民的にも、治安や衛生の面を考えて、駆除してもらう方が助かる。

 助かる、のだが。


「…………」

 そっと扉を開けて、プレハブの中に入り、扉を完全に閉める。
 可能なら、犬も中に入れてやりたい。

 困った悪癖だ。
 自分では制御が効かないからこそ悪癖というのだろうが―――

 例え相手が悪人や、駆除されるべき対象だったとしても、
 目の前でそれが罰せられるのを見るのは、どうにも気分が悪い。
 保健所(推定)の所員さんには大変に申し訳ないのだが、
 ここは猫たちを逃がすために、ひと役買って出させてもらおう。

823『猫の心、メイド知らず』:2016/08/22(月) 16:44:44
>>822(須々木)

二人組――青年と女性は、無言だった。
あまり目立たない色の格好をしており、
足場に気を配りながらゆっくり歩いていた。

『保健所』。

それはありえない話ではない・・・気がする。
実際の所、彼らの思うところは分からない。
しかし、この場所に目的があるのは確かだろう。

それは一つの『正義』かもしれない。
しかし、『正義』の形というのは人それぞれで。
もっというならば……同じ人でも、時により流転する。

          ギギ

      バタン

―――――――――――――――――――――小屋に入った。

   ヘッヘッ

犬も、やや遠慮するかのように、入った。
そして『須々木』と犬は、猫社会を目にした。

            ニャア

  ニャーゴ

       ナ〜〜オ

猫たちは……一部は鳴いた。
そして、鳴いた者も含めて、全員が警戒しているようだった。

数は……6〜7匹はいるのではないだろうか。
毛の色も違えば、大きさも違う。
びろうどだけが首輪をつけており、他は異なる。

         タンッ

そして――『細身の三毛猫』が、『須々木』の前に出た。
どうやら、この猫たちのリーダー、あるいは出しゃばりは彼のようだ。


『三毛猫』:
「…………ナァーーーーオ」


警戒の姿勢を見せつつ、一鳴き。
その背後ではびろうどが、『須々木』の様子を見ていた。
言葉は、彼らには通じない。逆に彼らの言葉も通じない。

悪癖――――『須々木』の正道を通すためには、猫に通じる何かがいる。

824須々木 遠都『スモールタウン・ヒーロー』:2016/08/22(月) 22:50:17
>>823

 彼らが何のために来たのかは分からないし、
 もしかしたら正当な理由や正義があるのかもしれない。

「(……ただ、それは僕には関係がないってだけの話だ。)」

 さて、猫。

 動物と交渉した経験は、残念ながらあまり多くはない。
 そもそも人間相手にだって珍しいのだ。
 こちらの言い分を伝えて、果たしてどれだけ聞き入れてくれるだろうか。


「…………」 スッ

 というわけで、餌の登場だ。
 セレブご用達だから、いいやつだぞ。

 猫たちの目の前で封をわずかに空け、室内にその匂いを充満させる。
 これで、敵対するものではないと分かってもらえればいいのだが……


 と、同時に部屋の中を観察する。
 入ってきた扉以外に、外へ通じる出入り口(別の扉、窓、壁の穴など)はあるだろうか。

825『猫の心、メイド知らず』:2016/08/23(火) 01:25:39
>>824(須々木)

外で今、二人組が何をしているかは分からない。
耳のどこかに、少しずつ近づく足音だけが聞こえる。
だがそれより、今『須々木』は向かい合う存在は――猫たちだ。

     ス

猫の餌を取り出し、封を僅かに…………開けた。

           フ

             ワ

独特のにおいが、室内に漂う。
壁に大きすぎる穴などはなく、臭いも漏れ出しづらいだろう。
他に出入り口があるとすれば、入ってきたドアから見て向かいの窓か。

 ニャア

    ニャァー

         ナ〜ゴ

後方に控えていた猫たちが、数匹餌に釣られて鳴いた。
三毛猫はやや警戒した様子で、餌を、そして『須々木』を見つめている・・・・

『三毛猫』:
「…………ナ〜〜〜オ」

                バッ

そして『餌』を奪い取ろうとしたのか、二足で立つようにして手を伸ばして来た。
もちろん『須々木』ならば十分見切れる動きであり――異変もない。

ここからどのようにして、彼らを『逃がす』か。

                ・・・・びろうども、おとなしく見ている。

826須々木 遠都『スモールタウン・ヒーロー』:2016/08/23(火) 23:14:35
>>825

 とりあえず、良い意味で注意を惹けたらしい。
 通訳がいれば助かるのだが、そうも言っていられない。

 『びろうど』の反応はどうだろう?
 特にこれは、彼女のお気に入りのはずだ。

「…………」

 三毛猫を避け、窓へ向かう。
 内側から開くだろうか。

 開いたなら、先ずは一旦餌を桟に置き、
 それから猫が窓の高さまで登れるように、階段を作りたい。
 近くに木材や段ボール箱などは落ちていないだろうか。

 また小屋の外への注意、聞き耳も怠らない。
 もし彼らが入ってくるのなら、その前に『スタンド』を解除しておきたいからだ。

827『猫の心、メイド知らず』:2016/08/24(水) 00:27:29
>>826(須々木)

あいにく、喋られる猫はいないらしい。
びろうどは――様子を見ているように思える。

だが、視線は『餌』の方にくぎ付けだ。
間違いなく・・・・彼女も注意を惹かれている。
他の猫の手前か、はしたなく飛び出したりはしないようだが。

        ニャー

『三毛猫』:
「…………!」

    スッ


三毛猫は手を避けられ、少し退いた。
そして――窓を開ける『須々木』を見ている。

      ニャー

            ニャオ

数匹の猫が鳴いた。
近付いてくる人気を察したのか?
ともかく、『須々木』は作業を行う。

          ギギギ    ガチャン!

   ガラ ラ・・・

窓のカギは錆びついていたが、
装甲は『怪力』かつ『精密』にそれを開く。

    ドサ
            ドサ

ダンボール箱はいくつか積まれている。
中身は不明だが、これで階段が作れた。



壁□
壁□□
壁□□□

横から見るとこのような感じになり、これなら猫も昇れよう。

  ニャー

          ニャー

早速、餌目当てか、数匹の猫が動き出した。
それを見て――三毛猫も、ゆっくりと動きはじめる。
びろうどは――三毛猫に同行している。

        ザッ

               ザッ

       いよいよ小屋の前まで、足音は迫って来ていた。

828須々木 遠都『スモールタウン・ヒーロー』:2016/08/24(水) 22:37:16
>>827

 猫たちに見えるように、窓の外側に餌を落とす。
 つまり、『小屋の外に出ないと餌にありつけない』ことを理解させる。
 加えて、エサは一つ。急がねば、当然取り分が減る。

 ……野生ならば我先にと飛びつくだろうが、この猫たちはどうだろう?
 所作には余裕が見られる。あるいは、統率だろうか。

 続いて、スタンドを解除。サングラスも外しておきたい。
 『びろうど』には顔を見られてしまうかもしれないが、こればかりはしょうがない。
 マスクは、まあ、いいだろう。古びれた小屋は埃っぽいかもしれない。

 最後に、余裕があったら餌をもう一つ、封を開けた状態で、窓から小屋の外に向けて、出来るだけ遠くに投げたい。
 『余裕があったら』というのは、小屋の扉が開かれるタイミングまでに、ということだ。
 足音の大きさから推測できる距離と自分の挙動の速さを比較して、『ギリギリ』もしくは『間に合わない』と判断できるなら、やらない。

829『猫の心、メイド知らず』:2016/08/25(木) 09:03:47
>>828(須々木)
 
  トン
        カサッ

窓の外に落ちた餌――それを見て。

        ニャァ

  ナ〜

          ニャ〜〜ゴ

数匹の猫は動きだした。
それを追って、また数匹が。

『三毛猫』:
「・・・・・・ナァオ」

       シタタッ

そして――三毛猫も、『須々木』を一瞥し、走り去った。

統率よりも、腹の事情が優ったのかもしれない。
この『集会』に、人間のそれほどの重みは無いのか。
この『場所』である必要はなかったのかもしれない。

               ・・・どうにも分からないが。

   ニャ〜オ

びろうども、少し遅れて窓から出ようとしていた。
この辺り、飼い猫と野良ネコの生き方の違いなのか?
まだ『須々木』の手の届く距離なので、どうするかは自由だ。

『男の声』:
「……? 声が離れてってないか。
 ああつまり、猫の鳴き声の話だけど……」

『女の声』:
「もちろん私にも聞こえているけど……
 気づかれて……裏に窓でもあった?
 とにかく、逃げられたかも……しれない」

小屋のすぐ近く――ドア方向から、二人組の声が聞こえた。
追加の餌を投げる余裕はあった。

『男の声』:
「この中を……一応見とくか?
 何匹かは残ってるかも……しれないぜ」

『女の声』:
「真似しないで欲しい……
 でも……その方がいいかも……しれない。」

「……いないかもしれないけど」

窓の位置的に、逃げた猫の姿――および餌は彼らには見えない。
ドアに手のかかった音がした。次の瞬間には、開かれるだろう――

830『猫の心、メイド知らず』:2016/08/25(木) 09:06:06
>>828(須々木・追記)

『スモールタウン・ヒーロー』の解除と、
サングラスを外すのは特に問題なく行えた。
マスクをつけている以外、いつもの『須々木』だ。

びろうどは現在こちらに注意を払っておらず、
仮に顔を見られても、尾行は終わっている。問題もない。

831須々木 遠都『スモールタウン・ヒーロー』:2016/08/25(木) 21:28:36
>>829-830

 『びろうど』が上り終えた段ボール箱を足でどかす。
 そこに猫を逃がす階段があったことを、分からないように。

 あとは、部屋の中で声の主たちを待つ。
 対話の出来る人物であればいいが。

832『猫の心、メイド知らず』:2016/08/25(木) 23:38:14
>>831(須々木)

        ドサ

     ドサ

ダンボールには『中身』があったらしい。
それが何かは不明で、大して重さもないが……音はした。

とはいえ、崩せたのに変わりはない。
いくらでもごまかしようはあるだろう。

        ガタ

     ガチャ
         ン


ドアが開き――
その向こうに青年がいた。

・・・・大学生か何かだろうか?
お役所の役人、という風貌ではない。
明るい茶髪に、地味な色のパーカー。

『青年』:
「ぅわッ……っと!」

     ビクッ

彼は『須々木』を見ると、小さく飛退いた。
その手にはやはり、網とカゴがあった。

『女性』:
「どうしたの…………人?」

      「……ここ、溜まり場?」

彼の後ろにいる女性――黒髪の、同じく大学生くらいか。
その女も、『須々木』に気づいたらしく、訝しむ表情を浮かべた。

向こうは、次の句を絞りだせずにいるようだった。主導権を握れそうだ。

833須々木 遠都『スモールタウン・ヒーロー』:2016/08/27(土) 15:52:01
>>832

「……いえ」

 問答無用の人物ではないらしい。
 話が出来る。なら、情報を得ることだって可能だ。

「知人の猫が、いなくなってしまって」
「今、探してるんです」

「そちらは……同じような要件ですか?」

 手に持っている網を指さして尋ねる。

834『猫の心、メイド知らず』:2016/08/28(日) 15:24:46
>>833(須々木)

話せばわかる――かは、まだ不明だが、
少なくとも会話が出来ない人間ではないらしい。

『青年』:
「あー、猫が……」

     チラ

『女性』:
「へえ……そう、大変ね。
 私たちも同じようなものかも……」

「……」

     チラ

男と女は目くばせをしつつ、返答する。
怪しい動きもなく――暴力の気配もまた、ない。
しかし、『純粋な猫探し』という雰囲気でも、ない。

『女性』:
「ところで……猫を見なかった?
 と言っても、何でもいいわけじゃない。
 それなら猫カフェにでも行けば良い話……」

『青年』:
「おい、マナビ……」

マナビと呼ばれた女性は、
男にもう一度目くばせを返した。

『マナビ』:
「…………三毛猫。
 私たちが探してるのは、三毛猫よ。
 この辺りに縄張りを持ってる、細い三毛猫」

それは――『須々木』が先ほど目にした、彼だろう。
少なくとも他に、三毛猫らしき猫はいなかったのだ。
 
「今、この小屋に貴方がいて。
 さっき鳴き声はしたのに、猫はいない」

           「・・・何か、知ってる事はある?」

安心させようとしている『らしい』平坦な口調――確信は無いらしい。

835須々木 遠都『スモールタウン・ヒーロー』:2016/08/29(月) 06:46:26
>>834

「はあ。なるほど」

 相手方の目的に、大まかな検討がついた。
 が、今はそれにかまけている場合ではない。

「猫は何匹か見ましたが……
 あなたたちの探している猫かどうかの確証は、さすがに」

 こちらから出す情報は、あまり多くないほうがいい。
 真偽はともかく、自分からペラペラ話してしまうのはやましいことがある人間だ。

「猫たちなら、ついさっき……
 僕が入ってきた後に、窓から外に出ていきましたよ」

 そういえば、蝙蝠と犬はどうしたのだろう。
 確かにこの部屋にいたと思うのだが、キャットフードにつられたとは思えない。

「では、僕の方からも。
 僕が探しているのは『茶色い猫』です。絹のような毛並みで、首に黒いレースの首輪」

「猫を探しているというのなら、心当たりはありませんか?」

836『猫の心、メイド知らず』:2016/08/29(月) 18:03:12
>>835(須々木)

犬は――いた。部屋の中にまだいる。
ちょうど窓の下の辺りに座っている。
窓から出たいのか? じっと見上げている。
戸の向こうにいる二人組からは、
『須々木』が壁になって見えないはずだ。
あるいは……見えていて犬には興味が無いのか。

蝙蝠は天井に張り付いていたが、
今どこにいるのかは……分からない。
小さいし、目立たない生き物だ。
天井から出て行ったのかもしれない。

『青年』:
「てことは、三毛猫はいなかったって訳か」

青年は早合点して頷く。
マナビはそれを尻目に言葉を返す。

『マナビ』:
「窓から……ね。
 分かった。ありがとう」

「確証がないなら、いたかもしれない。
 すぐに後を追うわよ。猫の脚は速いから」

彼女は細い目を糸のように絞り、青年に告げた。
満足はしていないが、納得はした、ってところだろうか。

そして、『須々木』は――質問を返した。

『青年』:
「…………あん、茶色いネコ?
 『三毛猫』の噂を集めてる時に聞いたぜ。
 首輪をつけた茶色い猫が、そいつのツガイだとか」

『マナビ』:
「……それこど確証もない話だけど。
 たまたま一緒にいただけ、かもしれない」

         「さ、行くわよ」

答えは――『須々木』がそうしたように、あまり多くは帰ってこなかった。
引き止めないならば、男女はこの小屋を後にするであろう雰囲気だ。

              ・・・・あるいは、『須々木』も『目的』は果たしているか。

837須々木 遠都『スモールタウン・ヒーロー』:2016/08/30(火) 18:04:39
>>836

「ツガイ、ですか」

 そして、『びろうど』はメスだったはずだ。

「……待ってください。『三毛猫』を探しに行くんですよね」
「そして、僕はそのツガイの『茶色い猫』に用がある」

「よかったら、一緒に探しませんか。その方が効率も良いでしょう」

 怪しげな二人組を、目の届くところにおいておけるという意味で。

 もちろん、あちらから見ても、こちらは素性の知れない少年だろう。
 あるいは、向こうの目的に都合が悪いだろうか。

838『猫の心、メイド知らず』:2016/08/30(火) 18:19:53
>>837(須々木)

『マナビ』:
「……………」

「分かった。私たちは『三毛猫』。
 そして貴方は、『茶色い猫』が目的」

   コク

       「協力しましょう」

マナビは少し考えたのち、そう言った。
思考は不明だが、『須々木』と同じかもしれない。

『青年』:
「…………」

青年はやや威嚇的に、
ジロジロ『須々木』を見ている。

信用しきれないのを隠せないらしい。

「自己紹介は必要?
 どちらにせよ、歩きながらにしましょう」

       「まだ追いつけるかもしれない。
        足跡もある……かもしれないわ」

   ザッ

マナビが踵を返すと、『青年』もそれに従った。

窓から餌を追って出て行った猫たちが今、
何をしているかは、小屋の中からは分からない。

    バウ

犬が短く鳴いた。
青年が一度振り返ったが、特に反応はなかった。

839須々木 遠都『スモールタウン・ヒーロー』:2016/09/01(木) 23:09:13
>>838

「まあ、最低限で……」
「須々木です」

 自己紹介を済ませる。呼ぶのに必要だろう。
 さて、どうしたものか。監視するための名目は出来たものの。

 吠え声につられるように、犬を改めて振り返ってみる。

「…………」

「この辺、結構出るんですか? 野良犬とか、野良猫とか」

 話を振ってみよう。

840『猫の心、メイド知らず』:2016/09/01(木) 23:20:12
>>839(須々木)

       ザッ

『マナビ』:
「私はマナビでいいわ」

『青年』:
「……神前(かんざき)。
 神頼みの神に、後ろ前の前な」

    ザッ

歩きながら、簡単な自己紹介を済ませた。

    ヘッヘッ

後ろから犬が着いてくる。

『神前』:
「そいつ、飼い犬か?
 猫と一緒に飼ってんのか?」

神前がやや顔をしかめてそれを見る。
とはいえ、犬は『須々木』の方はそれ程見なくなった。
何か……別のものを追い求めているのかもしれない。

『マナビ』:
「犬は知らないけれど……
 野良猫は、そこそこ多いわね」

「実際には半飼い猫、って場合もある、かもしれない。
 私たちが追ってる『三毛猫』は、完全に野良だけれど」

            ザッ

二人組は窓の方向――つまり扉の裏側へ回っていく。
特に理由が無いなら、着いて行くことになるだろうか。

「こっちへ行ったはず……」

そういえば・・・窓から投げ捨てた『エサ』が、落ちている可能性もあるか?

841須々木 遠都『スモールタウン・ヒーロー』:2016/09/03(土) 01:47:16
>>840

「彼(?)は、知らない犬です。僕たちと同じく、猫を追いかけているみたいなんですが」

 特に肩を持つ義理もなければ、こちらも肩を竦める。

 彼らは、野良猫を捕まえようとしているだけのようだ。
 その行為自体は、特に大きく咎められるものじゃない。

 さて、そろそろ彼らと猫を向かい合わせてしまう時だろうか。
 その前に、その目的の真偽をしっかりと問いただしておかなくてはならない。

「……その野良の『三毛猫』ですが」

「見つけたら、どうするんです?」

 先ほどまでは、『同じようなもの』の言葉通り、飼い猫を連れ戻す可能性もわずかにあった。
 しかし、野良、といったのだ。

「――――高値で売りさばく、とか?」

842『猫の心、メイド知らず』:2016/09/03(土) 09:04:24
>>841(須々木)

『神前』:
「犬が猫を? ナワバリ争いか?」

『マナビ』:
「そういう事もある……かもしれない。
 まあ、理由はこの際なんでもいいわ」

      ヘッヘッ

二人からも、犬は特に咎められる事もない。
着いてくるどころかむしろ追い抜く勢い。

そして――

『神前』:
「……マナビッ」

『須々木』の質問に、神前が警戒を強めた。
警戒とは目に見えない物だが、気配でわかる。
マナビは足を止めず、振り向かずに口を開く。

『マナビ』:
「……後で揉めるよりは、
 今の内に教えとくべきかもね」

口調にはわずかに後悔の色が見えた。
喋り過ぎたとでも思ってるのかもしれない。

「……ご明察。例の『三毛猫』は――オス。
 その価値は貴方も知っている、のでしょう。
 珍しいという事は、それを欲しがる人がいる」

          「私たちの仕事よ。今夜のね」

『私たち』――には、もちろん『須々木』は含むつもりはないのだろう。

         ニィ ニィ

『神前』:
「オッ……小屋の裏にいるのか?」

猫の声が聞こえた。
餌を投げ捨てた事には、意味があった――らしい。

あと少し歩けば、恐らく落とされた二つの餌に群がる猫たちと鉢合わせる。

843須々木 遠都『スモールタウン・ヒーロー』:2016/09/04(日) 00:03:04
>>842

「…………そうですか」

 それを悪と断定することは、できない。
 野良猫を家で飼う。ただそれだけのことで、過程は問題じゃあない。
 ただ店で大枚を叩いて買って名をつけて愛でるか、価値あるものを拾って手に収めるかだ。
 三毛猫にとっても、野良でしぶとくしたたかに生きるか、飼われて安全かつ不自由に生きるか。
 どちらが幸せかを決めるのは、自分ではないというだけの話だ。

「…………じゃあ、ちょっとお仕事のご相談なんですけれど」
「それ、買い手はもう決まっているんですか?」

 そして、マナビ女史が衝突を避けるためにリスクを負って話してくれた。
 ならば、こちらもより無難な終着点を見つけるために、しかるべき労力を払わねばなるまい。
 もし自分だけが得をする道を選ぶなら、このまま『びろうど』を連れて帰り、最低限報告をするだけだ。
 ……果たしてそれは、最も労力の少ない道足り得るだろうか。

「みんなまとめていてくれれば、面倒はないんですが」

 二人に続いて、小屋の裏へ。

844『猫の心、メイド知らず』:2016/09/04(日) 00:55:18
>>843(須々木)

『マナビ』:
「商談は歓迎だけれど、
 ………………みんな?」

答えは出さず、マナビは小屋の裏へ入った。
神前、『須々木』、それから犬も同じように入る。

『神前』:
「うおっ……」

     ヘッヘッ

犬が少し離れてその様子を見ていた。
その様子とは――人間三人が目にした、『猫の群れ』だ。

    ニャア

            ニャオ

   ニャゴ

           ニィ〜〜

  ナ〜ォ


『マナビ』:
「お互いのお目当てもいるようね……
 それにしても、これだけの数の猫。
 さしずめ、『猫社会』ってところかしら」

『神前』:
「これ全部引き取れってぇか!?
 マナビ、そりゃ無茶な話だろうぜ。
 ただの野良ネコ、買い手もつかねー」

          「……分かってるよな?」

神前は何か――諭すような口調でマナビに声を掛ける。
一方のマナビはと言うと、猫の群れを熱心に眺めているばかりだ。

        ニャオ

       ・・・・『びろうど』と、目が合った。何か感じる事があったのだろうか。

845須々木 遠都『スモールタウン・ヒーロー』:2016/09/06(火) 06:06:20
>>844

>       ニャオ

「……」

 当座の依頼は、彼女を連れ戻すことだけでいいはずだ。

「猫、好きなんですか?」

 マナビ女子に尋ねてみる。
 ビジネスライク……とはまた違うが、目的を重視する神前に対して、彼女はいくらか情に寄るのだろう。
 ただまあ、自身もスタンスとしては神前に近い。
 頭匹が増えれば、当然負担も増える。
 それに、野良には野良の自由があるはずだ。介入するのは、最小限にしておきたい。

 とりあえず、『びろうど』に歩み寄ってみる。
 そういえば、持ってきた餌に余りはあるだろうか。

846『猫の心、メイド知らず』:2016/09/06(火) 15:01:04
>>845(須々木)

     ニャオ

  トト

          ナ〜〜オ

びろうどは特に逃げる様子もない――他の野良ネコもだ。
人に慣れている、というのとはまた何か、違う。
この群れは人を『敵』とは見ていないのか? 意図は不明だ。

持ってきた餌にはまだ、一つ余りがあった。
・・・『須々木』の影に隠れるようにして、犬もびろうどを見ていた。

『マナビ』:
「いや別に? 好きでもないわ、
 好きだとしても仕事とは別だし」

      ス

猫から『須々木』に目を逸らすマナビ。
口調がやや、急いた物になっていた。
神前はその様子を注意深く見ているようだった。

恐らくは――『須々木』の想像は、当たっているのではないか。
もう一声か、二声くらいかければ『情』を上手い事くすぐれるかもしれない。

『神前』:
「おいおい……トボけは仕事の後で良いだろ。
 とりあえず、とっとと目当ての猫だけでも・・・な?」

『マナビ』:
「いや、別にトボけてはいないわ……
 そうね、逃げられるかも、しれない。
 逃げられた場合、追いつけないかもしれない」

          スタ

「手は打っておいた方がいいわね。
 ……誤解するかもしれないけれど、
 猫に暴力を振るおうって話じゃあないわ」
 
       「…………なんて言っても、
        猫には通じないでしょうけど」

              スタ

神前の窘めるような声に、マナビは意味深に二歩ほど下がる。
びろうどや、他の猫――三毛猫含め、僅かにそちらに視線が走った。

『神前』:
「……須々木クン、自分の猫は早めに確保しとけよ。
 大人しいが、万が一ってこともあるかもしれねえからな」
 
                     ・・・『何かする』気だろうか?

847須々木 遠都『スモールタウン・ヒーロー』:2016/09/07(水) 07:01:56
>>846

「…………そうですか」

 先ずは、『びろうど』の確保だ。近付いて、抱き上げたい。
 他の目的に手を出すのは、目の前のやることをやってから。
 省エネの基本である。

 ……とはいえ、彼らの言動が気にならないでもない。
 暴力ではないのは一安心だが、ならばこちらの猫を『巻き込まれないように』気にかけるのは何故だ。
 視線は外さないでおこう。

848『猫の心、メイド知らず』:2016/09/07(水) 14:46:04
>>847(須々木)

大人しい――というのがマナビを指すのか、
それとも猫を指すのか不明だが、後者かもしれない。

  ヒョ
    イ

現に、びろうどは簡単に、省エネで捕まえられた。

       ニャオ

借りてきた猫のように、ってところだ。
あるいは夜遊びを叱られた子どもか……
それとも、餌を与えたのが功を奏したのか?

猫の気持ちはやはり分からないが、
少なくとも、受けた依頼はこれで完遂だろう。

   ナ〜オ

           ニャオ

三毛猫と腕の中のびろうどが鳴き合っている。
他の猫たちは、やや須々木から距離を置いていた。

      ヘッ  ヘッ

犬は『須々木』の脚に遠慮がちにぶつかって来る。痛くはない。

           ・・・・そして。

849『猫の心、メイド知らず』:2016/09/07(水) 14:47:46
>>847(須々木)

『神前』:
「分かってるよな、
 お目当ては三毛だぜ」

『マナビ』:
「…………ええ」

念を押すように言う神前。
マナビは鬱陶しげに頷く。

「他のは金にならない――でしょうね。
 分かっているわ。依頼をこなすのが第一」

             ジャ
                  キン

マナビの手に、『ライフル』が発現する。
何より奇妙なのは――それには、銃口が二つあるという事。

                    ・・・スタンド使いだ。

≪……野良ネコは飼い猫よりずっと捕まえにくい。
  兎を狩る獅子じゃないけれど、『出し惜しみ』はしない≫

          ≪……聞こえていないのが、一番いいけれど≫

『スタンド会話』――マナビの声が、心に聞こえる。
銃口が三毛猫に向けられた。引き金に指が掛かっている。
普通に考えて、殺すとは思えない――何らかの能力を浴びせる気なのだろう。

             ニャオ

            答えるように、びろうどが鳴いた。
             マナビの視線が、こちらに向いた。
              鳴き声の意図を察しかねているのか・・・

850須々木 遠都『スモールタウン・ヒーロー』:2016/09/07(水) 22:35:28
>>848-849

>犬は『須々木』の脚に遠慮がちにぶつかって来る。痛くはない。

 なんじゃい。もとい、なんだろうか。
 自分にではなく、おそらく『びろうど』への要件なのだとは思うが。
 かがんで、犬と視線の高さを近くしてみる。


「……何してるんですか?」

 一方で構える動作を見て、尋ねる。
 銃口。能力の如何を問わず、それを向けるというのは、穏やかな心地はしない。

 しかし、軽率には動けない。
 相手の能力は知れない。可能ならば、その発射と、それによって何が起こるかを見守る。

851『猫の心、メイド知らず』:2016/09/07(水) 23:00:35
>>850(須々木)

    ワンッ

           ワンッ

視線を合わせてやると――犬が鳴いた。
力の入った鳴き声だった。

    ニャオ
           ワオン

すると、びろうどが小さく鳴き返した。
犬は小さく、短く鳴いた。

何らかのやり取りが、そこにあったのだろうか――?

『神前』:
「ヘンな犬だぜ……」

神前はそう独り言ちて、

『マナビ』:
≪三毛猫を、逃げられないようにする。
  私にはそれが出来る力がある。名前は≫

       カシャン

            ≪――『ペインキラー』≫

    パシュ 
      パシュ

銃口から放たれた二発の弾丸は、螺旋を描いて飛ぶ。

           パ
                パン

そして、二発が同時に三毛猫の頭に当たり、はじけた。
血しぶきも、一切の悲鳴もなく――

     コテン

              三毛猫がその場に倒れた。
               腹が僅かに動いている・・・『寝た』?

    ワン
            ワンッ!

『神前』:
「うわッ……」

 ニャー
               ニィ〜〜
       ナゴ

少し遅れて犬が猛烈に吠えて、猫たちが散って行った。
場に残されたのは人間三人、びろうど一匹、三毛猫一寝、犬一匹。

犬は倒れた三毛猫の周りを、手持ち無沙汰そうにぐるぐる回っている・・・

852須々木 遠都『スモールタウン・ヒーロー』:2016/09/11(日) 06:37:18
>>851

「『鳥獣保護法』」

 倒れた三毛猫に歩み寄る。
 能力は麻酔銃のようなものだろうか?
 銃口の向く先には、気を付けなければならないだろう。

「正しくは、『鳥獣の保護及び狩猟の適正化に関する法律』……『狩猟法』とも言って、
 生物多様性の確保と自然環境の保護、その均衡を保つために定められたものです」

                      ・ ・ ・
「……ごめんなさい、あなたたちを釣ろうとしていたわけじゃあないんですが」

 彼らがそれを乱そうが、そんなことはどうだっていい。
 こちらには何の害もない。『びろうど』を連れ帰れば、それで冬川の依頼を達成したことになる。
 神前もマナビも、こちらを巻き込まないように配慮してくれた。

 けれども、

「ただ……頼まれると、断れない性質なんです。」

 『スタンド』―――赤いヒーロースーツを身に纏う。
 随分と、この身に不釣り合いな装いだ。その色も、性質も、自分が役者として不足していることは分かっている。
 それでも、今この目の前の状況に、手を差し伸べない理由にはならない。

 倒れた三毛猫と、犬をかばうように立ちふさがる。

「退いてくれませんか? 三毛猫を諦めろ、とは言いません。
 こちらで買い手を探して、後日あなた方に連絡し、支払ってもらうように繋いでみます。
 ただ……、この場を少し、僕に任せてくれるだけでいいですから。」

853『猫の心、メイド知らず』:2016/09/11(日) 23:27:57
>>852(須々木)

――『スモールタウン・ヒーロー』を与えられた時、『須々木』は聴いた。

この力は『須々木』の『答え』にはならないが……
答えを出す事を助ける、道具にはなるかもしれない、と。

             ・・・『正義』の答えを出す時だ。

       ジリ

マナビが後ろに下がった。
神前は、マナビよりもやや、前に。

『マナビ』:
「…………『スタンド使い』は、法では裁けない。
 貴方の『性質』に裁かれる気も、勿論ないけれど――」

スタンド会話ではなく、肉声が夜の廃工場に響く。

              カチャ

     「……戦うべきでは、ないかもしれないわね」

そうは言うものの――マナビは『ペインキラー』を解除してはいない。
銃口はやや下げており、『須々木』に向けてはいないけれど。

           ヘッ  ヘッ
  
犬が、三毛猫に近付いた『須々木』を見上げている。
腕の中のびろうどが小さく鳴いた。心は分からないが『想像』は出来る。

     ・・・

           ・・・

二人との間に、目には見えない『線』を感じる。
これを誰かが超えれば――『状況』は『戦況』に変わる。

『神前』:
「チッ……マナビ、信用できると思うかよ。
 スタンド使いっても、どう見てもただのガキだ。
 何の保証もねえ、単なる出まかせかもしれねえんだ」

      「確実に貰える報酬を捨てる事になっちまうぜ」
  
緊張を感じさせる、やや早い口調で、神前がマナビに捲くし立てる。
マナビは三毛猫――あるいはその傍の『須々木』から目を切らない。

『マナビ』:
「…………そう、保証。
 既に買い手が決まっている、というわけでもないし、
 探してくれるというのならやぶさかではない……
 けど、貴方に任せていいという『保証』は何かあるの?」

「私にとって、戦いは望ましくない――何か『保証』があるのなら、退けるかもしれない」

854須々木 遠都『スモールタウン・ヒーロー』:2016/09/12(月) 19:35:00
>>853

「僕も、戦うのは嫌です」

 最も労費的な行為だ。
 そしてたいていの場合、あとには何も残らない。
 友情だとか、勝利だとか、目に見えないものばかりだ。


     ・・・

           ・・・


「『びろうど』……この猫の飼い主に掛け合ってみるつもりです」

 腕の中の茶猫を抱き上げ、切り出す。

「僕の依頼主でもあります。
 大富豪……とまでは断定できませんが、少なくとも資産家であることに間違いありません」
                                      ・ ・
「猫想いの人たちです。事情を説明したなら、応じてくれる『かも』しれない。
 確たる『保証』は用意できませんが、掛け合うだけなら、無料でしょう。
 それに彼女たちが応じなければ、そこからどうこうする気は、僕にはありません。ご自由にどうぞ」

「『保証』は出来ない……僕にできるのは、より労力の少ない道を指し示す『提案』だけだ」

 彼らの言葉が真実で、本当に『びろうど』と三毛猫のオスがつがいだったならば。
 もしかしたら、すべてが上手く着地するかもしれない。
 最小限の努力で、最大限の幸福を。省エネの基本だ。


「三毛猫のオス、その相場は『3000万円』……
 例えばそれをペットショップに持って行って、その場でポン!と買い取ってもらえるでしょうか?
 多くの店に、そんな用意はない。需要だってそうです。手を出すのは道楽か、さもなくば研究目的でしょう」

 『神前』『マナビ』の口調からするに、彼らはあまり、慣れていない。
 つまり、こういう道のプロフェッショナルではない。
 それはつまり、いざという時のバックがないということだ。
 慎重さも、その裏返しだろう。
 ならば、口八丁――――省エネ主義の出番である。

「では、伝手はありますか?
 あなたたちが信頼できる売り手であると証明する根拠は?
 僕にではなく、オークションの運営者と、その買い手たちにです。
 血統書もなければ、売り手としての背景もない。
 門前払いか、悪ければ法外に買い叩かれる可能性だって大いにある」

 『スモールタウン・ヒーロー』は解除しない。
 言外の脅しだ――――この場で決裂するならば、強硬策を取る、という。
 今この場から、下手をすれば売り手が見つかるまで。
 実行策としては下の下だが、脅しの手段としては悪くない。交渉には、時に強引さも必要だ。

「僕の『提案』は……その前に、より安全な橋を渡ってみないか、ということです。」

855『猫の心、メイド知らず』:2016/09/12(月) 23:24:39
>>854(須々木)

       ニャァ

抱きあげられたびろうどが小さく鳴いて、ややもがいた。

そして『須々木』が切り出した提案を、マナビは黙って聞く。
神前も、警戒を隠す様子はないが――彼から動く様子はない。

     ・・・

          ・・・

   ・・・


           ――『須々木』が話し終えた。

『マナビ』:
「場慣れしているの? 口が上手いわね。
 ……言っていることも妥当だわ、そうでしょう?」

マナビは感想を述べると、神前に話を振った。
神前は振り返らず、一度頷いてから――

『神前』:
「チッ……」

わざとらしい舌打ちを打って、指を一本立てる。
納得はしているが、気に入らない、という顔だ。

「確かに俺たちにも、仕事の『根拠』はねえ。
 やりようはあるが……『安全な橋』じゃねえ。
 その『提案』が嘘でも、リスクがあるわけでもねえ」

              「……提案に乗るぜ」

彼は懐から、銀色のスマートフォンを取り出して見せた。

          ザリ
        
マナビは更に一歩下がり、『ペインキラー』の銃口を地面に下ろす。
犬が『須々木』の顔を見上げている。あるいはびろうどの顔を。

「ただし――今の内に、須々木クンの連絡先を教えてもらおうか。
 悪用はしねえ……勿論だが、こっちの連絡先も教える。純粋に連絡用だ」

                 「問題はあるか? メアドで構わねえ」

856須々木 遠都『スモールタウン・ヒーロー』:2016/09/13(火) 18:26:05
>>855

「そんな、まさか」

 交渉は、成功とみていいだろう。着地点は妥当だっただろうか。

「ただ、面倒が嫌いなだけです」

 内心で安堵しながら、片腕で『びろうど』を収まりの良い体勢に抱きなおす。
 人馴れしているのか、それともこちらの意図を介し、それに沿ってくれたのだろうか。
 いずれにせよ、おとなしくしていてくれて助かった。

 神前の提案に頷いて返し、携帯電話を取り出し―――横目で、マナビを捉える。
 口八丁に自信がないではないが、彼女が取り成してくれたことが成功の大きな要因だ。
 神前の視線がそれたら、その隙に軽く会釈でもしておこう。そのくらいの手間は許されるべきだ。

 さて、戻るなら朝を待つべきだろうか。
 携帯を取り出した際に、時刻を確認しておきたい。

857『猫の心、メイド知らず』:2016/09/13(火) 23:44:15
>>856(須々木)

『マナビ』:
「そう――良い考え方だと思う」

      「運が良かったかもしれないわ。
       この仕事の決行を今夜にしたのは」
 
  フ

マナビは小さく笑うと、『ペインキラー』を解除する。
とはいえ――距離はそこそこ空いている。詰める気もなさそうだ。

    ピ  ピ

『神前』:
「こっちも面倒が減るなら、
 それに越したことはねえからな」

スマホを弄る神前――連絡先交換はすぐ済むだろう。
その隙にマナビに会釈をすると、同じように返された。

     ピ

「赤外線で送るぜ。それともそっちが送るか?
 まさか『ライン』教えるってこともないし、振る必要はねえよな」

――現在の時刻、『23:30』ごろ。

冬川はまだ起きているだろう。
しかし――金銭面を頼るなら、絹も起きている必要がある。

               ・・・朝を待ってもいいかもしれない。

858須々木 遠都『スモールタウン・ヒーロー』:2016/09/16(金) 22:15:16
>>857

 無事に交換を終えたら、携帯をしま……おうとして、それをやめる。
 連絡先のリストから冬川を探し、電話をかけてみる。
 寝ているかもしれないので、3コールまでだ。

 絹を待つのはもちろんのことだが、可能ならば彼女には事前に話を通しておきたい。

859『猫の心、メイド知らず』:2016/09/16(金) 23:31:02
>>858(須々木)

交換は特に問題なく、完了した。
神前は何か確認した後に、スマホをしまう。

『神前』:
「よし……これで完全に成立だな。
 俺たちは一旦退散させてもらうぜ」

     「三毛猫はしっかり抑えとけよ」

『マナビ』:
「『ペインキラー』はそう長くは続かない。
 道具――カゴを貸してもいいけれど、どうかしら」

マナビと神前はそのように提案してきた。
ともかく――『須々木』は『冬川』に電話を掛ける事にする。

「依頼主に電話かしら?
 使うかもしれないから、カゴは置いておくわ」

            「ああ、網もね」

    prr

        prr 

2コールほどで、冬川は電話を取った。

     『冬川』:
     「もしもし、冬川で御座います。
      ……『びろうど』ちゃんの件でしょうか?」

860須々木 遠都『スモールタウン・ヒーロー』:2016/09/17(土) 22:36:27
>>859

「ありがとうございます。飼い主には、上手いことぼかして事情を説明しますので」

 通話を待つ間、二人に礼を言う。



「もしもし、須々木です。夜分にすみません」

 さて、ここからはまたどうしたものか。
 正直に彼らについてのすべてを伝えてしまっては、得られる心象は決して良くはないだろう。
 ただでさえ猫好きなのだ。

「『びろうど』ちゃんについては、行先を確かめたのち保護しました。
 特に危険に巻き込まれていたわけではなく、
 もちろん無事なのですが……ちょっと厄介なことになってまして」

「どうも、野良の猫とつがいになっていたみたいなんです」

 まずは、この辺りから切り出していこう。

861『猫の心、メイド知らず』:2016/09/17(土) 23:58:15
>>860(須々木)

『神前』:
「進展があったら連絡してくれ。
 失敗してもな。まあ、ダメ元だからな」

『マナビ』:
「それじゃあ、吉報を楽しみにしてるわ」

         ザッ

二人の、速やかに遠ざかる足音――
そして、電話の向こうの冬川の声がやや明瞭さを増す。

『冬川』:
「いえ、とんでもございません。
 私が依頼した事ですから……」

「それで――」

びろうどちゃんは、と言い掛けたのだろう。
『須々木』は、事情を説明する――『上手く』だ。

交渉の失敗は、『須々木』にとっての損は齎さない。
とはいえ、『最大の幸せ』のためには、『得』が必要だ。

                    ・・・話し終えた。

「……それは。無事は何よりです。
 それで。ええと、つがい……野良の猫ですか」

            ニャオ

びろうどが一鳴きした。
電話口の向こうで、冬川の安堵の声が漏れた。

「びろうどちゃんが無事なのは、いいのですが、
 野良……首輪や、何か印はありませんか?
 ああ、というより、その野良は確保できましたか?」

「あ……びろうどちゃんに怪我などは、ないのですね?」

冬川はやや困惑――といった、動揺した口調で、確認してきた。
無事だ、と言っているのに再度聞いてきたのは、やや混乱があるのかもしれない。

862須々木 遠都『スモールタウン・ヒーロー』:2016/09/19(月) 21:50:44
>>861

「首輪や印……ですか。ちょっと待ってくださいね」

 眠っている三毛猫のオスの体をくまなく見る。
 メスではないだけ、憚る気持ちも少ない。
 そして、びろうども。彼女は女性だ。ちら、と体と四肢を見やる程度。


  (僕は冬川さんを――――『いい人』なのだと思う。
    主人を思って、事実をぼかす。猫を思って、探偵を依頼する。
     言動や淡泊な振る舞いへの評価はおいても、動機は『いい人』のものだ。)


「……ええ、怪我はありません」


  (けれど――――それと、僕がしなければならないことに関係はない。)


「ええ、このつがいなのですが……『三毛猫のオス』なのです。
 猫好きの冬川さんなら、もしかしたらこの意味は伝わるのではないでしょうか」


  (『最大の幸せ』には、『ちょっとずつの対価』が必要だ。
    僕は無償の労力を払う。彼らには悪いが、相場より安い金額を提示する。

    そして、彼女に対しては『嘘をつかずに騙さなければ』いけない。
     彼らの心象を悪くしないまま、この交渉を妥当なものに見せかけなければ。)


「彼らは、とても仲がよさそうに見えたのです。
 僕としては、二人もとい二匹仲良く暮らしてほしいのですが……」

 『良識』は備えているつもりだ。
 しかし、『良心』が痛むことはない。

「ただ、悪いことに三毛猫のオスについては、先に発見者がいたのです。
 彼らも当然、その価値を知っています。値次第では、こちらに譲ってもいい、と」

「そこで、前もって冬川さんにお尋ねしたいのですが……
 『言森家』に、もしくは冬川さん個人に、彼を受け入れる余裕、その可能性はありますか?」

863『猫の心、メイド知らず』:2016/09/19(月) 23:09:48
>>862(須々木)

猫二匹の身体を確認する――言われたような物は無い。
つまり、三毛猫の『識別用の何か』とか、びろうどの傷とかだ。

     ニャ〜オ

逆に、三毛猫にはいくつか傷が見られたが、これは野良故だろう。
頭部、『ペインキラー』が撃ち込まれた部分には、何ら変化は見えない。

           ・・・まだ目覚める様子も、ない。

『冬川』:
「それは幸いに思います――
 それで……ええと、『三毛猫』の」

           「……『オス』」

冬川の声のトーンは一段階上がった後、一段階半ほど下がった。
つまり、意図が通じているのだ。

   ・・・

              ・・・

「私は」

幾ばくかの沈黙の後、冬川は――口を開いた。

「私は、びろうどちゃんの幸福を常に願っています。
 『ベルベット・タッチ』の能力下に無くとも、常に……」

           「彼女の気持ちが分からずとも」

       「……それが幸せなのだとすれば、私は」

冬川は――そこでいったん言葉を切った。
それはおそらく、『個人』で可能な決断では無い、という事だろう。

「『言森家』……絹さんもまた、びろうどちゃんを、猫を愛しています。
 『新しい家族』に異論はないでしょうが、資金は『無限』ではございません」

    「相談の必要は、もちろんございますが――」

         「……びろうどちゃんの幸福は、
          おおよそ『相場ほど』で買えるのですか?」

                    ・・・そして、それくらいなら『言森家』は払えるらしい。

864須々木 遠都『スモールタウン・ヒーロー』:2016/09/21(水) 20:36:42
>>863

「…………これは確約できないのですが」

 合わせて、声のトーンを落とす。

「交渉次第では、買い叩けます。少なくとも、『相場ほど』よりは。」

 まるで蝙蝠だ。
 どちらにもいい顔をして、この交渉が妥当なもののように思い込ませている。
 あとでしっぺ返しがなければいいのだが。

 そういえば、例のコウモリはどこへ消えたのだろう。


「先ず、彼らは……恐らく、専門の売り手ではありません。
 それは、『信頼できる仲介ルート』を持たない、ということです」

 当人たちに説明したとおりだ。
 どこで外れるかもわからない危険な橋を渡るより、多少値は落ちても安全な橋の方が良いに決まっている。
 冬川にならば最低限の情報で通じるだろう。ある程度は省く。

「次いで、彼が『野良猫』ということです。
 血統書もなければ、毛並みや健康状態も良いとは言えません」

 『新しい家族』として迎え入れる『言森家』にとってはともかく、
 『稀少な珍獣』を欲している『コレクター』にとっては、これは大きな減点ポイント足り得るだろう。
 おそらく診断書などがなければ、危ない橋を渡ったとしても同様に買い叩かれるはず。


「この二点。この二点で、幾らかは割り引けると僕は踏んでいます。
 しかし、だからといって吹っかけてしまえば、彼らも他の売り先に向かってしまうでしょう」

 薄氷を踏む用に、慎重に値引かなければいけない。
 ……とはいえ、そうなってしまったとして、こちらの懐に痛いものはないのだが。
 悲しむのは『びろうど』と三毛猫……もしかしたら、犬も悲しむだろうか。冬川は。言森のお婆さんは。
 どうにも幸福というものは安くはないらしい。やはり省エネに生きるに限る。

「……僕の方からは、無理強いはしません。
 明日の朝に、もう一度そちらにお伺いできればと思います」

865『猫の心、メイド知らず』:2016/09/21(水) 23:34:49
>>864(須々木)

『冬川』:
「交渉、ですか。
 私は女中ですので、
 専門ではないですが……」

この言い方から察するに、
値引ければ値引きたいのだろう。

先ほどの蝙蝠は……見当たらない。
びろうどが安全と見て去ったのかもしれない。

      ヘッ
         ヘッ

              ・・・野良犬はいる。

「…………なるほど」

そして『須々木』の提示する『二点』――
冬川が電話口の向こうで頷いたのを感じる。
恐らく、『須々木』の意図をある程度察したのだろう。

幸福に値をつけようとするならば、
その行為に――妥協は出来ない。

「いえ、無理強いなどとは思いません。
 むしろ――取次ぎ、ありがとうございます」

「朝、10時以降にお電話ください。
 時間を作っておきますので――
 絹さんには、私から話を通しておきます」

            「……では、失礼いたします」

呼び止めないならば――冬川はここで電話を切ると思われる。

866須々木遠人『スモールタウン・ヒーロー』:2016/09/22(木) 21:42:56
「10時、ですね」

復唱して確認する。
電話を切ったあとは、小屋にでも向かって朝を待とう。

三毛猫とびろうどは両脇に抱え、小屋に入ったら窓など閉める。
犬は勝手についてくるだろうか。

「……うまくいかなくても恨むなよ」

誰にともなく呟く。

867『猫の心、メイド知らず』:2016/09/22(木) 23:29:03
>>866(須々木)

10時です――――最後に冬川は復唱を返した。
小屋の中に入り、窓を閉める。
外からは何事も無い、近寄りがたい廃工場にしか見えない。

朝まではとても長い時間があるが・・・
幸いにして、気候は温暖。天候も穏やか。
小屋内は、それほど不快な環境ではない。
眠って待つことも出来るだろう、人目も無い。

   ニャオ

びろうどが鳴く。
三毛猫が腕の中でぴくりとうごいた。
そろそろ目を覚ますのかもしれない。

     ブン
 
  ブン

犬は小屋の入り口で、猫二匹を遠巻きに見ている。
特に暴れ出したり、吠えまくったりする様子はない。
この犬も朝までここにいるつもりなのかは分からない。

;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;:;:.:;:;,,:.;:,,::;:;,,:,:,::..,. ..

;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;:;;::,.;;:;:,.;;:;::....,,.,.
;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;:;;,;:.:;;:;:.::.,,.
;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;:;;:,:.:;:.::,,..,,,...,

;;;;;;;;;;;;;;;;,;:.,:;.,.;:.:;,:;.. ..,,. .. .
;;:;;:.,;:,.:,.:.,,..,.,...:.,.:



・・・気づけば、朝が近づいてきている。

よく眠れただろうか? あるいは寝てないだろうか。
特に、夜間に異常なことなどは起きなかったようだ。      
猫も近くにいる。三毛猫もだ。脱走などはしなかった。
びろうどとの間で、何らかのやり取りがあったのだろうか。

868須々木 遠都『スモールタウン・ヒーロー』:2016/09/23(金) 22:04:57
>>867

 浅い眠りと覚醒を繰り返し、朝を迎える。
 冷たい床に段ボール、けっして心地いい寝床とは言い難いだろう。

 三毛猫の様子はどうだろう。
 昨日『ペインキラー』とやらを受けていたが、現在の行動に異常なものはみられるだろうか。


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