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【場】『 大通り ―星見街道― 』

1 『星見町案内板』 :2016/01/25(月) 00:00:31
星見駅を南北に貫く大街道。
北部街道沿いにはデパートやショッピングセンターが立ち並び、
横道に伸びる『商店街』には昔ながらの温かみを感じられる。

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                 ミ三ミz、
        ┌──┐         ミ三ミz、                   【鵺鳴川】
        │    │          ┌─┐ ミ三ミz、                 ││
        │    │    ┌──┘┌┘    ミ三三三三三三三三三【T名高速】三三
        └┐┌┘┌─┘    ┌┘                《          ││
  ┌───┘└┐│      ┌┘                   》     ☆  ││
  └──┐    └┘  ┌─┘┌┐    十         《           ││
        │        ┌┘┌─┘│                 》       ┌┘│
      ┌┘ 【H湖】 │★│┌─┘     【H城】  .///《////    │┌┘
      └─┐      │┌┘│         △       【商店街】      |│
━━━━┓└┐    └┘┌┘               ////《///.┏━━┿┿━━┓
        ┗┓└┐┌──┘    ┏━━━━━━━【星見駅】┛    ││    ┗
          ┗━┿┿━━━━━┛           .: : : :.》.: : :.   ┌┘│
             [_  _]                   【歓楽街】    │┌┘
───────┘└─────┐            .: : : :.》.: :.:   ││
                      └───┐◇      .《.      ││
                【遠州灘】            └───┐  .》       ││      ┌
                                └────┐││┌──┘
                                          └┘└┘
★:『天文台』
☆:『星見スカイモール』
◇:『アリーナ(倉庫街)』
△:『清月館』
十:『アポロン・クリニックモール』
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866 比留間彦夫『オルタネイティヴ4』 :2019/10/07(月) 03:47:09
>>865

「『まゆ』さん――その名前は、よくお似合いですよ」

(どうやら随分と『特徴的な個性』をお持ちの方のようですね……)

「『比留間』と申します。
 『見知らぬ相手と同じテーブルに着く』というのは、
 確かに『小さな冒険』と呼べるでしょうね」

(『未知のスタンド使いと相席』……確かに『冒険』でしょう)

今の所、男の『表情』にも『体温』にも変化はない。
相席された事を良いとも悪いとも思っていないようだ。
だが、先程『赤かった』事は確認している。

(さて――まずは『簡単な質問』から始めましょうか)

「『ラフィーノ』……失礼ですが、『芸名』か何かでしょうか?
 どこかで耳にしたような記憶がありますね」

『嘘』だった。
少なくとも、自分は一度も聞いた事のない名前だ。
狙いは、相手の反応から『情報』を引き出す事にある。

867 ラフィーノ石繭『ミスティカル・ガイド』 :2019/10/07(月) 20:28:06
>>866
こいつあたしの名前知ってんの?普通の成人男性が占い師に興味持つ?
怪しいわね、『同業者』とかかしら

 「…そのようなものです」
 「『まことの名』とも言えます」

 「『運命』に耳を傾けることを生業としていまして」

うりゃ!これで伝わるか!
要するに『アヤシイ占い師』よ!
ちなみにこの芸名は中学生のころ考えたやつを徹夜のノリで採用したやつ。
数多くあるやりなおしたい過去のひとつね。!


  「あ、いいですか」
  「アイスコーヒー、ホットコーヒー、一つずつ」
  「ミルクもつけてください」

今のうちにカフェの店員捕まえて注文もしとくわ。

868 比留間彦夫『オルタネイティヴ4』 :2019/10/07(月) 21:10:49
>>867

少なくとも、男の外見は『占い師』には見えない。
何かしら『事務的な仕事』に従事しているような雰囲気だ。
しかし、会社員風とは違う。

「興味深いですね。
 差し支えなければ、もう少し詳しく教えて頂けますか?」

(『運命に耳を傾ける』……ですか。
 あまり一般的な職業ではなさそうですね……)

話を聞く職業といえば、まず『カウンセラー』辺りが思い浮かぶ。
しかし、『運命』と付くと途端に胡散臭く見えてくるから不思議だ。
もっとも、だからこそ関心を引かれるとも言えるが。

「どこで名前を聞いたか思い出せるかもしれません。
 こういう事を放っておくのは、気になる性分でして」

(もう少し喋って頂きましょうか……。
 私が考えていた以上に面白い方のようですからね)

聞けなければ聞けないで構わない。
会話が続けられたなら、それで十分だ。
言葉を交わす内に、『何か』が分かるかもしれない。

869 ラフィーノ石繭『ミスティカル・ガイド』 :2019/10/08(火) 00:15:50
>>868
「そうですね……『カード』」
「『タロットカード』『トランプ』、『☆戯王』とかでも」


「お好きなカードで、あなたの運命、『占います』わ?」


『タロット』『トランプ』『遊☆王』の札を鞄から出して見せる。
どれも、古より神との交信に使われてきた由緒正しきカードよ!


 「わたしは、分かりやすく言うところの『占い師』です」
 「比留間さん、お好みのカードはありまして?」


ちなみにあたしの雑感だけど、
『タロット』を選ぶ奴は、頭は回るが、『占い』に呑まれやすいこともある気質。
『遊戯☆王』を選ぶ奴は…性根が小学生男児。
『トランプ』……は、『呪術的なかんじ』に欠けるんで不人気。選ぶ人はちょっと変わった拘りがある人ね。

870 比留間彦夫『オルタネイティヴ4』 :2019/10/08(火) 00:55:52
>>869

「――――では、『トランプ』を選ばせて頂きましょう」

確たる理由はない。
強いて言えば、自分のスタンドとの共通点からだ。
そして、占ってもらう前に確認する事が一つある。

「『見料』は如何ほどでしょうか?
 あまり現金を持ち歩かない主義ですので……」

「『カード』は使えないでしょうね?」

大抵の買い物は『クレジットカード』で済ませる事にしている。
それは別として、彼女が詐欺師か何かでない保証はないのだ。
べらぼうな値段を請求される前に、確かめておく必要がある。

(『占い』……『能力』に関わるものでしょうか?)

本体とスタンドは密接に繋がっている。
言われてみれば、『水晶』というのは『占い師』らしくもある。
その職業も、『能力』との関係がないとは言い切れない。

871 ラフィーノ石繭『ミスティカル・ガイド』 :2019/10/08(火) 01:30:50
>>870
この男丁寧ね。『占い?ちょっとやってみせてよ』とかいうタイプじゃないのは好感が持てる。

「お代は結構ですわ」
「わたしが勝手にやっている事ですし」
「どうしてもというなら、ここのお勘定を払っていただく、などでも」

ま、代金はいらないわ。今日のこれは『スタンド』の試運転も兼ねてやってるのよね。
トランプの束をテーブルに置く。

  「比留間さん、『お悩み』などはおありですか?」

店員から受け取ったホットコーヒーを片手に、話を促してみる。

(ちなみにこの女は、店員が持ってきた『ホットコーヒー』『アイスコーヒー』を両方自分の前に置かせた。
 店員は不思議そうにしていた。)

872 比留間彦夫『オルタネイティヴ4』 :2019/10/08(火) 01:58:02
>>871

「それを聞いて安心しました。
 プロの方に対して『無料で』というのも失礼ですし、
 ここの支払いは私が持ちますよ」

(『それに見合うだけのもの』を見せてもらえるなら、
 払う価値はありますからね)

「『悩み』ですか……」

(なるほど――『占い』の『常套句』という所ですね)

基本的には、悩みの全くない人間はいないだろう。
探せば一つや二つは出てくるものだ。
最初の言葉として、これほど相応しいものはそうそうない。

「……そうですね。幾つかあるのですが――」

考え込む素振りを見せる。
これといって思い浮かぶようなものはなかった。
しかし、だからといって『何もない』と言ってしまってはつまらない。

「ここ最近、両親に『結婚の話題』を出される事が多くなりまして。
 生憎まだ予定がないもので」

「――――今の一番の悩みといえば、それでしょうか?」

実の所、結婚を急かされているというような事実はない。
つまり、これも『嘘』だ。
だが、その真偽を確かめる術はないだろうと考えた。

873 ラフィーノ石繭『ミスティカル・ガイド』 :2019/10/08(火) 02:14:55
>>872
(PLより:すみません、差し支えなければ、『悩み』の話をしているときの比留間PCの『体温の上昇』具合を観察していたことにできないでしょうか…?)

874 比留間彦夫『オルタネイティヴ4』 :2019/10/08(火) 02:26:38
>>873

『水晶の目』で男――比留間の『体温』を観察する。
その状態は、依然として『紫』のままだ。
『悩み』の話をしていれば、
少しは『変化』があっても不思議はないかもしれない。
しかし、全く『変化』が見られない。
単に、実際は『些細な悩み』だとも解釈できるが……。

875 ラフィーノ石繭『ミスティカル・ガイド』 :2019/10/08(火) 03:06:23
>>874
おかしくない?この年代の男が結婚の話をそんな平然とできるものかしらね。
ちなみあたしに『婚活』の話をさせたらきっとストレスで顔真っ赤っかね。アラサー独身の悲哀なめんなよ。

 「なるほど、では、簡単な『恋愛』の占いをいたしましょうか」

コーヒーカップを右手に強く持ち、コーヒーをすこし飲む。

    「…では、始めましょう」

トランプの札を表にし、テーブルに広げる。
左手で『ハートのカード13枚』右手で『ジョーカー1枚』を取り出し、比留間に見せる。
計十四枚を、混ぜ合わせ、手早くシャッフル。そして、『いちばん熱いカード』がてっぺんに来たら、シャッフルを止める。
私の『ミスティカル・ガイド』は、一度にも満たない温度差を判別することができる!

ふふふ…この状況で、いちばん温度を持ったカード……それは、
『ホットコーヒーのカップを持っていた右手』で触れたカード!

  「数字が大きいほど、『ラッキー』です。」
  「では、カードを引いてみてください」

比留間が引くカードは――――――『ジョーカー』よ!

(ちなみにこの間、『水晶の目のスタンド』がトランプの束を食い入るように凝視していのが、
 比留間には見えている。明らかにこの女アヤシイ、と気づくことができる…。)

876 比留間彦夫『オルタネイティヴ4』 :2019/10/08(火) 03:29:21
>>875

「――――…………」

(『スタンド』で何か仕込んでいる……という訳ですか)

当然、それが『何なのか』までは分からない。
だが、『スタンドの目』で見ている事は確かだ。
そして、彼女のスタンドは『水晶の目』を持つ。

(事実を考え合わせれば、その辺りに秘密がありそうですが……)

「では――――」

    スッ

現れたのは『ジョーカー』だった。
ゲームによっては『最高のカード』にも『最悪のカード』にもなる。
ゆえに、解釈が難しいが……。

「……『ジョーカー』には『数字』がありませんね。
 申し訳ありませんが、『解説』をお願いしても宜しいでしょうか?」

(『仕込み』なのは明らか――もう少し突っ込んでみますか……)

カードをテーブルに置いて、『ラフィーノ』に問い掛ける。
どのような返答を返してくるか。
それも一つの『参考』にはなるだろう。

877 ラフィーノ石繭『ミスティカル・ガイド』 :2019/10/09(水) 00:38:38
>>876
目論見通り、『ジョーカー』が出た。

 「わあ、特別な札が出ました。ラッキーてすね」
 「………と言えば、あなたは喜びますか?」

ここで、比留間とまた目を合わせ、顔を近づける。

 「恋愛運なんて、比留間さんには『重要ではない』、そういう事です」
 「あなたには、『本当の想い』がある」「違いますか?」

この職業で大事なのは、『私は貴方を見通している』、というアピールだ。
さあ、どう反応するかしら?あたしは性格が悪いので、こういう会話でマウントをとるのが好きなのだ。

878 比留間彦夫『オルタネイティヴ4』 :2019/10/09(水) 01:09:34
>>877

「なるほど――そういった解釈は思い付きませんでしたよ」

(『占い師』としての腕前は定かではありませんが、
 少なくとも『話し相手』としては優れた方のようですね)

「さすがに『プロ』の方の言葉は含蓄がありますね。
 まるで全てを見通されているようです。
 不思議なものですね」

(では――『これ』はどうでしょうか?)

現在、会話のイニシアチブは彼女に傾いている。
上を取る気はない。
むしろ、その『逆』をやる。
こちらが選ぶのは『更に持ち上げる』事だ。
そうする事で、『次の質問』に答えざるを得ない状況を作り上げる。

「確かにおっしゃる通りかもしれません。
 自分自身でも、まだよく分かっていないのですが……。
 言われてみれば、
 心の中に『何か特別なもの』があるような気がします」

「――――『それ』が何か、お分かりになるのですね?」

あたかも、
『彼女には全て分かっている』という前提で質問を投げ掛ける。
表面的には、相手の力量に感心しているように装う。
それは、相手の出方を窺うための手段だ。

(『分からない』と言うか、
 それとも『曖昧な言葉』ではぐらかすか……。
 お手並み拝見といきますか……)

879 ラフィーノ石繭『ミスティカル・ガイド』 :2019/10/09(水) 01:45:43
>>878
反応が来たわね。ここからは『占い師』特有の『それっぽい事を言う』段階よ

 「あなたは…ええ」
 「非常に冷静です。人から一歩離れた位置にいようと心がけている。」
 「世間というものにそこまで乗り気ではない。恋愛にしたって、そうでしょう?」

 「その一方で、好奇心が強い一面があり、あなたはその目でしっかり人を見ている。」

いかが?

 「『遊び心』ですわね、あなたには、それがある」
 「現にこうして、私で『遊んで』いる。違いまして?」

成人男性の『占い』にたいする心情など、だいたいこんなモノだ。
昼間からシャレオツに決めて一人で茶をしばく、知的な雰囲気の男性。
いきなりやってきた占い師に対しては嫌な顔をせず、会話を楽しむ。
人から距離を置くが、人間嫌いではない。『比留間』は、こういう人ね。エリートタイプ。


  「―――世界というのは、一種の『ゲーム』だ」
  「はい、私に続いて言ってみてください」
  「世界というのは、一種の『ゲーム』だ」

  「 『世界というのは、一種の『ゲーム』だ』 」

とりあえずそれっぽい事を言わせてみる。言わせて、比留間の反応を見る。
これは、彼がこの言葉を肯定的に反応するか、嫌悪感を示すか、それを測る『リトマス紙』のような言葉だ。

この間も、『ミスティカル・ガイド』は観察を続ける。大きな水晶の瞳で、比留間の顔を覗き込む。

880 比留間彦夫『オルタネイティヴ4』 :2019/10/09(水) 02:17:32
>>879

「『世界というのは一種のゲームだ』」

表情を変える事なく、言われた通りの言葉を繰り返す。
比留間彦夫の何よりの楽しみは『嘘を吐く事』だ。
見方を変えれば、『遊び心』と言えなくもない。
そのせいか、『体温』は若干上がっていた。
無論『ミスティカル・ガイド』にしか分からない程度の違いだが……。

「いや、参りましたよ。
 確かに、そんな気質があるのかもしれません」

「私の完敗です。あなたは大した方だ」

    ニコリ

こちらが取るのは――『負けを認める』事だ。
たとえば、自分が『殺人犯』で相手が『刑事』なら、こうはいかないだろう。
相手に腹の内を知られないように隠し通す必要がある。
しかし、この『ゲーム』には負わなければならない『リスク』などないのだ。
ゆえに、一本取られたとしても痛くも痒くもない。
それに、『本当の部分』が知られる筈もないのだから。
だからこそ、こうして『やり取り』を楽しんでいられる。

「おっと――そろそろ『事務所』に戻りませんと。
 まだ片付けなければならない書類が残っているもので」

「支払いは私が済ませておきますので、どうぞごゆっくり。
 お蔭様で、非常に『有意義な時間』を過ごせましたよ」

    ガタッ

穏やかな表情で一礼し、椅子から立ち上がる。
その『体温』は、今は『紫』に戻っていた。
ふと、レジの方へ向かいかけていた足が、途中で止まる。

「そうそう……『どこで名前を聞いたか思い出せるかもしれない』と言ったでしょう?」

「――――今、思い出しましたよ」

881 ラフィーノ石繭『ミスティカル・ガイド』 :2019/10/09(水) 02:31:04
>>880
む、体温上がってる。ストレスかしら、興奮かしら。
このへんは『ミスティカル・ガイド』じゃあわからないから、私の技量を磨いていく必要があるわね。
この男、表情から本心が読みにくい雰囲気なのよね。

 「そう言っていただけると何よりです。」
 「私としても、この出会いは…あなたの言葉を借りるなら、『有意義』でした」

『スタンド』の試運用ができたしね。本業にいきなり投入ってわけにはいかないもの。
道行く人間で試せたのはラッキーだったわ。
彼、今後『占い』に来る性格とも思えないし、後腐れなくテストができたってわけよ。

 「ご馳走になりますわ」
 「この出会いに感謝を。
  そして、あなたの『遊び心』に幸が有ることを、私が約束いたします」

コーヒーを口元に運ぶ。いやあ、無辜の市民を弄ぶのは楽しいわねーーーッ!

882 比留間彦夫『オルタネイティヴ4』 :2019/10/09(水) 02:46:45
>>881

「数日前、うちの事務所の女性が何人か、
 あなたの事を話していましてね。
 あなたの名前を出して、
 『インチキ』だの『イカサマ』だのと罵っていたんですよ。
 全く『酷い誤解』ですよね」

「彼女達には、私の方からハッキリと伝えておきますよ。
 『ラフィーノ石繭は決してインチキやイカサマなんかじゃない』とね」

当然、そんな話など聞いてはいない。
そう思っているのは、他ならぬ『比留間自身』なのだから。
だが、『本当の部分』を知る術はないのだ。

「それでは――――『良い午後』を」

    ニコリ

優男風の顔に穏やかな微笑を浮かべて、彼女の前から立ち去っていく。
『ノーリスク』とはいえ、ただ負けを認めるのもつまらない。
だからこそ、最後に置き土産を残していく事にしたのだった。

883 ラフィーノ石繭『ミスティカル・ガイド』 :2019/10/09(水) 03:02:59
>>882
「ぶーーーッ!?」「熱っ あっっつ !!」

コーヒーを口から噴き出す。
目を白黒させながら比留間を見る。
マジか。こいつ。
 
   「マジか」
   「あ、いえ…えっと、ごきげんよう」

良い性格してるわ。人生楽しんでる系男子ね。
…二度と会いたくないわ。

  「(ま、敗けた…)」

去り行く優男の背中を見ながらそんなことを思うまゆでした。ごきげんよう。

884 ブリタニカ『ハロー・ストレンジャー』 :2019/10/27(日) 23:44:24

夕刻の大通りに『一人の女』がいた。
背中に『天使の羽』を思わせる羽衣が備わり、
両腕は『羽毛』で覆われている。
踵の辺りには『蹴爪』が生えていた。

「お集まりの皆様――その目と耳で、ご覧下さいませ。
 どうぞ『瞬き』は控えめに」

    「♪♪♪」

         バササッ

       「♪♪♪♪♪」

              バササササッ

             「♪♪♪♪♪♪♪」

                     バササササササッ

女が『鳥のような声』を発すると、付近の『野鳥』が集まってきた。
ハトやカラスなど、種類は多種多様だ。
その鳥達が、女の指示に応じて周囲を飛び回って見せる。
まるで、巧みに飼い慣らされているかのような動きだった。
これが、この『ビジネス』のメインなのだ。

「――――本日はここまでです。またお会い致しましょう」

「それでは皆様、ごきげんよう」

観客の『人間達』に挨拶し、撤収の準備を始める。
といっても、今日の分の『稼ぎ』をしまうだけなのだが。
小銭ではあるが、それなりの額が集まった。

(『人間社会』に溶け込んで『知識』と同時に『食い扶持』も得られる。
 我ながら優れたアイディアですわ)

彼女は『ハーピー』と名乗っている。
『鳥人を模したコスチューム』に身を包み、
『鳥とコミュニケーションする技能』を駆使して、
街頭で『ショービジネス』を行っているという話だ。
メディアからの取材依頼もあるものの、それらは全て断っており、
素性やプライベートは一切が謎に包まれている。

(まさしく『一石二鳥』ですわね。
 この言葉の『字面』は、少々不愉快ですけれど)

その正体は『ハゴロモセキセイインコ』である。
彼女の名は『ブリタニカ』。
『自由』と『知識の追求』のためにブリーダーの下から脱走し、
野生化して今に至る。

885 日沼 流月『サグ・パッション』 :2019/10/30(水) 03:46:42
>>884

「超ウケる! この辺こんないっぱい『鳥』いたんだ!」

『野鳥』達と『ビジネス』を見せていた時、
そこから少し離れた『コンビニ』の前で、
たむろしていた人間の一人が声を上げていた。

「ちょいちょい、待って! にへへ……そんな時間取らないからさ」

・・・そして芸を終えた今、立ち上がって寄ってきた。
何か話していた彼女らの中で、代表するように。

「『ハロウィン』の人かと思ってみてたんだけど!
 お姉さんさァ〜〜〜、『何者』!?
 もしかして…………『大道芸人』ってやつ!?」

これは、どういう人間なのだろうか?

「てゆーかさ! その衣装すごいね。なんかのマンガのキャラ?
 衣装ってか『本物』みたいなクオリティ……ぷぷっ、それはないか」

           イヒヒッ

金とも銀とも言えない、流れに逆らう束が幾つもある長髪。
そして鳥にとっては吉兆とは言えなさそうな、猫系の顔立ち・・・

とにかく、そのような人間がブリタニカに、軽い調子で話しかけたのだった。

886 ブリタニカ『ハロー・ストレンジャー』 :2019/10/30(水) 07:08:13
>>885

「茜色の秋空を彩る『翼のショー』はお楽しみ頂けましたか?
 それは何よりでした」

やや芝居がかった口調で、丁重に挨拶する。
観客に対しては平等に応対する事にしている。
『見物料』とは関係ない。
払うかどうかは、あくまで個人の自由なのだ。
もっとも、『収益』によっては『場所』を変える事はあるが。

「『ハーピー』とお呼び下さい。
 ご覧頂いた通り『パフォーマー』を生業としております」

「――――『パフォーマー』」

実際の所は、別にどちらでもいいのだ。
ただ単に『響き』の問題でしかないのだから。
だが、『ビジネス』において『言葉の響き』は重要な要素となる。
何より、この『ブリタニカ』は『言葉のチョイス』にはうるさい方なのだ。
平均的な『人間』と同じか、それ以上には。

「ええ、もちろん『本物』ですわ。私は『ハーピー』ですからね」

            フフ

どこかミステリアスな笑みを口元に浮かべ、平然と答える。
『人間社会に溶け込む方法』を考えた時、
最終的に行き着いたのは『目立つ事』だった。
普通の状況であれば、この格好は『非常に目立つ』。
下手に隠そうとすればするほど、却って周囲から浮いてしまうのだ。
それならば、いっそ自分から目立ってしまえば良い。

「だからこそ、こうして鳥達と『コミュニケーション』を取れるのですよ」

『パフォーマー』であれば、注目を集めるような格好をしていても、
何ら不思議はない。
むしろ、『そうするのが当然』と言っても良いだろう。
だからこそ、目立つ格好をしていても『逆に目立たない』。
あえて『本物』と答えるのも『誤魔化すより良い』と思っているからだ。
大抵の人間なら、それも『演出の一環』だと受け取ってくれる。

887 日沼 流月『サグ・パッション』 :2019/10/31(木) 09:24:49
>>886

「ん、超ウケた。タネとか全然分かんなかったし!
 まぁタネが分かったら分かったで『逆に』ウケるけど」

「てかハーピーってさァ〜、『外国の妖怪』でしょ?
 ヤバ、流月『妖怪』って初めて見たかも! ぷぷっ……」

演出に本気で騙されているのか?
そうなってもおかしくはないだろう。
なぜなら、演出は『本物』なのだから。

それともそういう『ノリ』なのか?
真剣味に欠けているのか、これで真剣なのか……

「でも妖怪でも『お金』は使うよね?
 『パフォーマー』としてお仕事してるワケだし!
 でさ。流月らさァ〜、さっきからあそこで」

      スッ

指差す先は、コンビニ前の集団だ。

「見てたんだケドさ。タダ見みたいになってるじゃん?
 それはどうなのかな〜〜〜〜って思ったんだよね。
 だからコレ。流月が代表して払いに来たってワケよ」

「にへ、どれくらい渡すモンなのか分かんないけど……ホラッ」

       ジャラジャラ

ポケットから取り出したのは、百円硬貨が六枚ほど。
数えてみればあの集団+彼女の人数も六人。一人百円だ。

888 ブリタニカ『ハロー・ストレンジャー』 :2019/10/31(木) 18:26:07
>>887

『人間界』に溶け込む上で解決すべき問題は色々とあるが、
その中でも『食料』が占める割合は大きい。
この『ビジネス』を軌道に乗せるまでには、多くの苦労を重ねてきた。
『人間』について研究して『方法』を模索し、
『出演料』を交換条件にして『同族達』の協力を取り付け、
こうして一定の評価を得るまでには手間と時間が必要だった。

「ええ、仰る通りですわね。
 たとえ『人外』の身でも、
 『人の世』で生きるには『対価』が必要ですもの」

観客の内の何割かが払ってくれれば、この商売は十分に成り立つ。
しかし、出されたものを拒む理由もない。
羽毛に覆われた両手で、足元に置かれたアタッシェケースを開く。
ちなみに、これは『拾い物』だった。
まだ使えるというのに勿体無い事をするものだ。

「その『お気持ち』――ありがたく頂戴致しましょう」

少女の前に、ケースを差し出す。
六枚の小銭を見て、反射的に考えた。
最も安い『シード』ならギリギリ二袋、
一段階ほどグレードが上がれば一袋といった所だろう。

「『♪♪♪』」

「『鳥の言葉』で『ありがとう』という意味ですわ。
 お仲間の皆様にも感謝を申し上げます」

正確にいうと少し違うのだが。
何しろ全くの『異種族語』なのだ。
いかに『バイリンガル』であっても、完全に訳し切るのは難しい。

889 日沼 流月『サグ・パッション』 :2019/10/31(木) 23:55:32
>>888

そんなブリタニカの努力など知るよしもなく、
食費となるコインをケースに収めていく少女。

「みんなにも伝えとくわ!
 鳥もありがとうって言ってたって……ぷぷ。
 てゆーかさ、今の声喉のどっから出てきてんの!?」

      「ピピッ!」  「出ないし!」

「その声出せたら流月も鳥呼べるのかなァ〜ッ。
 別に呼んで何がしたいってワケでもないケド。
 でもむしろ、何かしたいって思って呼ぼうとしたら、
 邪念! みたいなの伝わって『逆に』来なさそうだし?」

などと言いつつ、六枚目を入れ終えた。
六百円。彼女らには『大きな金額』ではないが、
それなりの食糧が買える額だ。鳥ならば、なおさら。

「んじゃ……流月あっち戻るね。
 ハーピーさんはいつもこの辺で芸やってんの?
 流月らはいつもこの辺にいるわけじゃないけどさ」

「また見かけた時のために『おひねり』用意しとくわ」

特に止められないなら、そのまま集団の方に戻る。
元よりソレを渡しに来ただけで、深い用事はなかったのだ。

890 ブリタニカ『ハロー・ストレンジャー』 :2019/11/01(金) 01:08:57
>>889

「『鳴管』からです。『声帯』と同じような器官ですわ」

インコが『人語』を発話できる理由は、
体内構造に人と共通する部分を持つためだ。
鳥類共通の発声器官である『鳴管』に加えて、
インコの舌は分厚く発達し、先端が丸くなっている。
これは人間の舌と似通っており、
それによって巧みな発声を可能にしているのだ。
もっとも、それは『一般的なインコ』の話。
『ハロー・ストレンジャー』の能力は、『更に先』を行っているのだから。

「そうですね。
 そのような声を上げられますと――――
 『ピッ!』という声が返ってくるのではないでしょうか?」

「『細切れに鳴く』のは『対象に注意を向けている時』ですの。
 『警戒』という程ではないですが、『緊張』している状態ですわ。
 それでも近付いてくるというのは、かなりの『反逆児』ですわね」

短く『鳥の声』を発声してみせる。
そして、ケースをパタンと閉じた。
いつもの店で『鳥用フード』を買って、
『出演者達』に『出演料』を配らなければならない。

「ここ以外にも色々な場所で披露しております。
 もし見かけた際は、是非お立ち寄り下さい」

「それでは失礼致しますわ。
 流月さん――――また何処かでお会い致しましょう」

謎めいた微笑と共に『礼』をする。
人間の文化や習慣を覚える必要がある。
単なる模倣ではなく、真に理解しなければならない。
それこそが知識の収集であり、知性の追求なのだ。
そのような事を考えながら、演技の場を後にした――――。

891 日沼 流月『サグ・パッション』 :2019/11/01(金) 01:42:51
>>890

「『鳴菅』! かァ〜、流月にはそれ無いわ。
 カラオケとかで『声真似』するのは、
 得意ってほどでもないけど出来るんだけどな〜ッ。
 んで、ハーピーさんはソレを持ってるってワケね!
 やば! それほとんど『鳥の仲間』ってことじゃん!」

       ケラケラ

仲間というか、『鳥』だ。
が、当然それを知るはずもない日沼は笑っていた。

「しかも鳥にめっちゃ詳しいし!
 ウケるね、鳥にも『反逆児』とかあるんだ。
 までも、群れとか作ったりするならあって普通かも」

「逆らいたくなるってのはさ」

日沼は、空をなんとなく見上げていた。
本当になんとなく……そこに鳥はいない。
いることを期待していたが、外れて良かった気もした。
期待通りばかりが良いことではないのだ。

「んじゃ、またねハーピーさん!
 今度はできれば、最初っから近くで見とくね!」

手を振って、同じくその場を離れて『群れ』へと戻る。
日沼もまた、『桜裏悲鳴』という群れの中にある。
そして……群れそのものが『反逆児』の集合であり、
その中でさえ、気に入らない『流れ』には『反抗』する。

ある意味では、人間社会の模倣には向かない。
ある意味では、人間の真の模倣には近付ける。
そうした存在との邂逅だった…………の、かも? しれない?

892 日沼 流月 :2019/11/01(金) 02:26:21
>>891(メール欄抜けてました)

893 エマ『ソルトフラット・エピック』 :2019/11/23(土) 23:47:03
古ぼけたキャリーバックを転がし、キョロキョロと見渡しながら商店街を歩いている。
中東系の女性で、服装も少々年季が入っている……端的に言えばボロい。おまけに半袖だ。
端から見れば、バックパッカー……以前に、ホームレスと見間違えるかもしれない。

「……クシュンッ!」

「……寒い」

894 ブリタニカ『ハロー・ストレンジャー』 :2019/11/24(日) 00:17:18
>>893

(あれが、いわゆるホームレスと呼ばれる人間でしょうか。
 初めてお目に掛かりましたわね)

鳥のような格好をした女が、そちらを見ていた。
詳しく言うと、背中には『羽』が備わり、両腕は『羽毛』で覆われ、
踵に『蹴爪』が生えている。
前髪をポンパドールにした長髪は、白と青と紫のトリコロールだ。
肩には、一羽の鳥が留まっていた。
ハトのようだ。

「その話は、また後で――」

「……あら、違いました」

「 『♪』 『♪』 『♪』 」

女が鳥のような声を発すると、ハトは飛び去っていった。
言葉が通じるのだろうか。
ともかく、女は引き続きエマを眺めている。

895 エマ『ソルトフラット・エピック』 :2019/11/24(日) 00:38:38
>>894
              バサッ バサバサッ

「鳩 だ……」

羽ばたく音に気が付いて、鳩のほうへと目を向けた。
そしてそのまま、偶然に目線を落としていき…ブリタニカの方へ意識が向かった。

 ・・・・・・・・?

   パチパチパチ
           クルッ パッ クルッ…パッ

         グググ・・・・・・グイッ 

その姿を見て少し動きが止まり……瞬きを数回、一度目をそらして再度元に戻すこと2回。
鳩が飛んで行った方を見て、再度視線をブリタニカへ向けること1回。
こちらを優雅に眺めるブリタニカは、この浮浪者のような女と目と目が合うことだろう、
そしてこう口走っていることは理解が行くはずだ。

「鳥 だ……」

896 ブリタニカ『ハロー・ストレンジャー』 :2019/11/24(日) 00:54:40
>>895

「あら――――」

実の所、『鳥だ』という言葉は真実を指していた。
自らのスタンドを駆使して人間に化けているが、

   ストレンジャー
この『妙な女』の正体は『ハゴロモセキセイインコ』である。
だが、ブリタニカは動揺しない。

    スタスタスタ

軽やかな足取りでエマの方へ歩いていく。
ほどほどに近い距離まで。
そして立ち止まる。

「失礼、私は『ハーピー』と申します」

「そう、『ご覧の通り』です」

正体を知られたとは考えない。
正体の秘匿には細心の注意を払っているのだから。
だから、『鳥だ』と言われても落ち着いていた。

「先程くしゃみの音が聞こえたもので、
 そちらに目を向けてしまいました。
 お気に障ったのなら謝りましょう」

897 エマ『ソルトフラット・エピック』 :2019/11/24(日) 01:20:12
>>896
「あ …ごめんなさい ハーピーさん」

  ペコォ

口元を手で抑えて、まずはブリタニカへ謝罪の言葉を口にした。
当然といえば当然だが、まさか目の前の『人の女性の形をしたもの』が人間ではない、だなんて
露ほども思っている様子はない。

「実は 最近この街にやってきた ばかりで
 服もあまり持っていなくて 住む場所とかも……」

近づいたブリタニカには解るだろうが、浮浪者……というには小奇麗である。
野良犬を干したような『エグみ』のある体臭もなく、服も着古したものではあるものの、
汚れなどが目立った様子はなかった……どうにも、チグハグとしている、と思うかもしれない。


「…… くしゅん!」

「… うう」

また1つ、抑え目ながらもくしゃみをして見せている。

898 ブリタニカ『ハロー・ストレンジャー』 :2019/11/24(日) 01:47:15
>>897

一方のブリタニカからは、『独特の香り』が漂っていた。
ナッツを齧った時に立ち上る香ばしい香りのような、
あるいは焼きたてのパンやバターのような、
もしくは天日干しされた洗い物に付いた太陽の匂いのような……。
このインコ特有の香りは、一部の人間達から『インコ臭』と呼ばれ、
こよなく愛好する者も数多いらしい。

「それはそれは…………」

「大変なお気持ちは、よく分かりますわ」

住処がないのは大きな問題だろう。
ブリーダーの下から出奔したブリタニカには、
その気持ちが何となく分かるような気がした。
家や食料を得るまで、自分も苦労してきた。
その甲斐あって、現在のブリタニカは複数の『隠れ家』を所有している。
街のあちこちに、密かに『巣箱』を設置しているという意味だ。

「いかがでしょうか?『お茶』でもご一緒に」

「丁度あちらに店があるようですし」

指差す方向には一軒のカフェがあった。
少なくとも、ここよりは暖かい。
本体である自分は、外気から隔絶された最適な環境にいるのだが。

(これも『知性』を深める経験になるかもしれませんわね)

相手は珍しい種類の人間のようだ。
このまま別れてしまうのは惜しい。
それに、何となく親近感を覚えてもいた。

899 エマ『ソルトフラット・エピック』 :2019/11/24(日) 02:08:30
>>898

 スンスン……

小さく、失礼にならない程度に鼻を鳴らす……変わった臭いだ、と思った。
鳥のような匂いと聞かされれば納得するだろう。
尤もそれは、目の前の人の正体が鳥である!という事実への理解というわけでなく、
羽をふんだんにあしらった衣服によるものだという認識によるものだが。

「クシュン! はい ぜひ……!
 ……カフェが あるんですね この街にも」

ブリタニアの誘いに、エマはクシャミと笑顔で頷いた。
そしてそれはもう、食いつかんばかりに頷いている。
半袖なのは暑がりなのではなく、本当にそれしか服の手持ちがないのだろう。と、察することが出来る。

「いろいろと 街のことを 教えていただけませんか?
 人と話すのは久しぶりで …ハーピーさんさえ よかったら ぜひ」

900 ブリタニカ『ハロー・ストレンジャー』 :2019/11/24(日) 02:33:51
>>899

「ええ、勿論。
 よろしければ、あなたの事も聞かせて頂きたいですわ」

生憎ブリタニカは『人』ではなかったが、それは今は問題ではない。
『コミュニケーション』として、こちらも笑い返す。
飛行のために『表情筋』の退化した本来の自分には出来ない芸当だ。

「私も他所から来た者ですの。
 最初は住む場所もありませんでしたが…………。
 今は何とかやっております」

「そうそう――まだ名前を伺っておりませんでしたね。
 何とお呼びすれば宜しいでしょう?」

先に立って歩き出し、ほどなくしてカフェの扉を開いて店内に入った。
ブリタニカの風貌を見ても、店員や客は特に驚いた様子を見せない。
この辺りは稼ぎが良いため、よく『仕事』で来ている。
だから、彼らも見慣れてしまっているのだ。
慣れというのは恐ろしい。

「――――『カプチーノ』を一つ」

メニューを一瞥し、オーダーを出す。
鳥の身では飲めないが、『ハーピー』なら別だ。
そして、改めてエマに向き直った。

「街について……でしたわね。何をお話しましょうか?」

901 エマ『ソルトフラット・エピック』 :2019/11/24(日) 02:52:47
>>900
     キョロ
          キョロ・・・
ブリタニカと共に入店し、そして……店員が驚かないことに軽く驚愕した。
軽く周囲を見渡す。ともすれば挙動不審とさえ見受けられかねないが……
やはり、ブリタニカの姿を見て驚く人はいなかった。

               ジリッ・・・

「ひょっとして 私の認識の方が間違ってる?
 この街ではこれが普通? 
 食屍鬼街にも似たような格好の人はいたけど……案外これは ポピュラー?」

    グッ

頭を少し抱えたそうな素振りを見せたが、さすがにそこは我慢してブリタニカと共に席に着いた。
メニューを広げ……目を丸くする。

    パララ・・・・
          パラララララ・・・・
                          ・・・・パタ・・・・・

「み 見たこともないようなものが……
 たくさん種類がある……! 
 え えーと ……お 同じものを」

数分程度メニューを眺めていた……が、端から見ても解るだろう。
どんな品物が出てくるのかが解らない様子だ。
何の知識もない人間が、薬剤師の免許がないと処方できないような薬のリストを見せられたときのような反応といえるだろう。
結果、エマはブリタニカに合わせることにした。

   パタン・・・

「あ ごめんなさい 名前をまだ…
 私は エマです エマ・ティファニー 
 最近 この街にやってきたんです ……移住というか 引っ越しのために」

それで、と小さく前置きをして

「働く場所とか 住む場所とかを探していて……
 でも どうやって探せばいいのか 解らなくて
 なかなか人に 声もかけられなくて…… ハーピーさんと こうやって話をしたのも
 それこそ 数年ぶりくらいかも……」

902 エマ『ソルトフラット・エピック』 :2019/11/24(日) 03:10:30
>>901

903 ブリタニカ『ハロー・ストレンジャー』 :2019/11/24(日) 03:18:44
>>901

『食屍鬼街』――――何やら不穏な名前が聞こえてきた。
どんな場所かは知らないが、そこからやって来たのだろうか。
ともかく、人と人の姿をした鳥との会話は続いていく。

「エマさんとおっしゃるのですか。
 失礼ですが、他所の国からいらっしゃったようですわね」

鳥から見ても、この国の人間でないのは察せられた。
人間の中には、髪の色や目の色を変える人間もいる。
だが、そういった人間とは雰囲気が違う。
そのエキゾチックな印象のせいか、エマを意識する者もいるようだ。
普通なら、むしろブリタニカの方こそ目立つ筈なのだが。

「『数年ぶり』とは随分と長いようで……。
 色々とご苦労がおありだったようですね」

「住む場所や食い扶持に関しては、私も苦労して参りました。
 ご参考になるかは分かりませんが、
 私の『仕事』についてお話致しましょう」

「私は『ストリートパフォーマンス』で生計を立てております。
 具体的には『鳥とのコミュニケーション』ですわ」

    ズズ

「鳥と対話をして、
 道行く人々に『パフォーマンス』を披露していますの」

運ばれてきたカプチーノに口をつけながら、自身の仕事を語る。
より正確な表現をするなら、
『同族』である野鳥達の協力を得ているのだ。
無論タダではなく、収益の一部で『鳥用フード』を購入し、
報酬として現物支給するというシステムを構築している。

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906 エマ『ソルトフラット・エピック』 :2019/11/24(日) 18:17:47
>>903
あまり見ない外見なのは間違いがない……
少なくとも、星見の外からやってきた人間であることは間違いがなかった。
その容姿や服装からしても、ブリタニカの言う通りそれなりに人の目を集めているのだが、
幸か不幸か、エマはそのことをあまり意識はしていなかった。
……いや、気が付いているのだが、自分がそう見られているとは思っていない、といった具合か。

   スッ……   ペチペチ
               ・・・・…ズズ……

運ばれて来たカプチーノを口に含みながら――
―― ひとしきり、そのカプチーノの外見を物珍しそうに観察し、
初めて見る昆虫に触れるような手つきでカップに触れて温度を確かめ、
確かめるようにしてゆっくりと―― ブリタニカの話を聞き、ふんふん、と頷く。

「鳥とのコミュニケーション…… 『パフォーマンス』 ですか!
 なるほど だから そんな鳥みたいな格好をしているんですね」


   ポン      

合点がいった、と手と手を合わせて軽く音をたてた。

「この街の 流行の服だったりするのかなとか 思ったんですけれど
 私の前に居た場所…… そこでも いろいろな格好をした人が いたんですが」

907 ブリタニカ『ハロー・ストレンジャー』 :2019/11/24(日) 20:17:04
>>906

(彼女のリアクションは『普通の人間』とは思えない)

(『まさか』とは思うけれど――――)

(いえ、少なくとも『可能性』はある…………)

カプチーノに対するエマの反応を見て、一つの疑念が浮かぶ。
もしかすると、自分と同じく『人外』なのではないか?
人間に成りすましているが、
本当は『人以外の何か』なのではないだろうか?
自分も最初の内は、無意識に不審な行動を取ってしまっていた。
だからこそ、『擬態』の可能性を考えたのだ。

「お口に合いますでしょうか?」

「――――『初めて』のようですが」

そうだとしても、『同族』ではあるまい。
それは、あまりにも偶然が過ぎる。
では何だろうか。
『哺乳類』か、それとも『爬虫類』か?
知性のレベルを考えると、やはり『哺乳類』が妥当か?

「その通りですわ。私は『ハーピー』ですもの」

    フフ

「この格好が流行するとしたら、
 私の『ビジネス』が大いに成功した時になるでしょうね」

この格好は否応なしに目立つ。
そう、普通なら。
しかし、『パフォーマー』なら話は別だ。
人目を引く格好をしていても、決して不自然には見えない。
だからこそ、こうして人間社会に溶け込む事を可能にしている。

「失礼ですが、エマさんは何か『特技』などをお持ちですか?」

「私も『特技』で生計を立てる身。
 それを仕事に活かすのも一つの方法かと存じますわ」

908 エマ『ソルトフラット・エピック』 :2019/11/24(日) 20:56:17
>>907

   ズズ・・・・    

「ええ こういう飲み物は 『私』は 『初めて』で……
 『特技』 ですか?」

尋ねられて、カプチーノを飲む手をふと止めた。
…まさか目の前の人物(いや、鳥物というのが正しいのか?)が、
自分のことを人類ではないのかと疑っているとは思ってはいない。
しかしブリタニカの質問の内容は、少し答えに困る内容のものだったようだ。

   クルッ クルクルクル・・・

「うーん」

     クルクルクル

人差し指をくるくると空中で回し、虚空を見上げる。
答えられない……というよりかは、何かしっかりした特技なりなんなりがあるのだが、
それを伝えるための言葉を選んでいるような様子だと思えた。


 クルッ・・・

「うーん そうですね……
 『占い師』……というか あるいは 『カウンセラー』のようなことを していました
 人と話をして その人の将来をこう 指し示すというか……」

指を止めて、一番しっくりきたらしい言葉をつかってそれを表現する。
どうにも歯切れが悪そうだが……

「……でも それはもう 廃業してしまっていて
 この街では何か もっと別の仕事ができればいいかなあ と」

909 ブリタニカ『ハロー・ストレンジャー』 :2019/11/24(日) 21:22:57
>>908

人か『それ以外』か。
それ以上の追求はしない。
ブリタニカも『正体』は秘密にしているのだ。
必要な理由がない限り、他者の秘密を暴こうとは思わない。
心の中で、密かにそのような事を考えていた。

「なるほど――さしづめ『新しい出発』とでもお呼びしましょうか」

『占い師』あるいは『カウンセラー』。
最初に浮かんだのは『音仙』の存在だ。
彼女も、それと似たようなものだと考えている。
では、エマも同じような仕事をしていたのか?
それこそ、『まさか』とは思うが。

「では、ひとまず『アルバイト』から始められてはいかがでしょう?
 何事にも先立つものは必要ですし……」

    スッ――――

「仕事をしながら『行く末』を模索するのも悪い話ではないかと」

話しながら、店の一角を指差す。
そこには一枚のポスターが貼られていた。
『スタッフ急募』と書かれているようだ。

910 エマ『ソルトフラット・エピック』 :2019/11/24(日) 21:59:35
>>909
「え 本当に?」

   ジーッ
                コクコク……

思慮を巡らせるブリタニカの考えに至れるわけもなく……
それよりも『スタッフ急募』のポスターに目を奪われた。
書いてあることを読み、うんうんと頷く。


「こういうところで 仕事を見つけるんですね… なるほど 解りました
 ありがとうございます!ハーピーさん お願いしてみようと思います」

笑顔を浮かべて頷く。
その表情はブリタニカが思う『音仙』に近しいものか……
あるいは、かけ離れているのかは、ブリタニカにしか解らないだろう。

911 ブリタニカ『ハロー・ストレンジャー』 :2019/11/24(日) 22:36:20
>>910

表面的な情報だけでは、内面までは分からない。
事実、自分も『人に成りすました鳥』なのだから。
しかし、エマの表情が形だけのものとも思えなかった。
それに、自分と彼女は偶然出会っただけ。
深い部分を知る必要などないのだ――――『お互い』に。

「いえ、お役に立てれば私としても幸いですわ」

    フフ

一通りの話が終わる頃には、カップは空になっていた。
カップをテーブルに置いて、窓の外に視線を向ける。
街路樹の枝には、一羽の『鳩』が留まっていた。
それは、先程ブリタニカの肩にいた鳩だ。
といっても、『同族』でもなければ区別はつかないだろう。

「私も『仕事』に戻る事にしましょう。
 そろそろ人通りの多くなる時間帯ですから」

「もし宜しければ、少し見物していかれませんか?
 『ギャラリー』が多くて困る事はありませんもの」

備え付けのナプキンで口元を軽く拭い、誘いの言葉を掛ける。
見物料の事は考えていない。
足を止めて見ている人間がいるだけで、宣伝効果は得られるのだ。

912 エマ『ソルトフラット・エピック』 :2019/11/24(日) 23:04:25
>>911
「本当ですか ぜひ見てみたいです」

   ガタッ

頷いて席を立つ、その顔には笑顔をたたえて。
これは偶然の出会いだ。たまたま私が大通りを歩いていて……
そこをたまたまブリタニカが歩いていた。
たまたまブリタニカが私に興味を持っていて、
たまたま、私がそれに気が付いた……これは単なる偶然の出会いだ。だが。


「あと その できれば…… 
 まだ いろいろとお聞きしたいこととか あって……
 それに 何かお礼とかもしたいですから その……
 お友達になっていただけますか? ハーピーさん」


               グッ

この街ならきっと、新しい人生が始められそうだ。
そう思いながら、ブリタニカのショーを見学していった……帰りにバイトの申し込みをするのを忘れないように。

913 ブリタニカ『ハロー・ストレンジャー』 :2019/11/24(日) 23:38:12
>>912

「『お友達』…………」

「――――ええ、喜んで」

    フッ

『友達』という言葉の意味は知っている。
人種が違っても、人は友人になれるらしい。
では、『種族』が違っても友人になれるのだろうか?
改めて考えると、なかなか興味深いテーマだった。
それに、こうした繋がりが増える事は純粋に良い事だ。

「生憎、適当な『連絡先』の持ち合わせはありませんが、
 街のあちこちで『仕事』をしておりますので」

「見かけた時に声を掛けて下されば結構ですわ。
 この姿を見間違える事は、まずないでしょうし」

「では、行きましょう。特等席でお見せ致しますわ」

エマと共に店を出て、街道に向かう。
ブリタニカが目配せすると、肩の上に先程の鳩が舞い降りた。
彼は新入りで、色々と説明する必要があったのだ。

「――――お集まりの皆様、私の名は『ハーピー』。
 人と鳥の間を繋ぐ者でございます。
 この一時の間、暫し現実という地面から離陸し、
 大空のキャンバスを鮮やかに彩る『翼の芸術』をご堪能下さいませ」

「 『♪』 『♪』 『♪』 『♪』 『♪』 」

    バササッ
            バササササッ
                      バササッ

『ハーピー』ことブリタニカの『呼び掛け』に応じて、
多数の野鳥達が空を舞う。
人と鳥を繋ぐ。
確かにその日は、
鳥であるブリタニカと人であるエマが繋がりを得た日であった。

914 ディーン『ワン・フォー・ホープ』&ヨシエ『一般人』 :2019/12/14(土) 18:05:19

「んー……」

冬の大通りを、リュックを背負った小さな少女が歩いている。
時折立ち止まり、目を閉じて鼻をひくつかせる。
まるで『動物』か何かのように。

「――こっち!」

分かれ道に来る度に、そう言って先に進んでいく。
それを繰り返し、やがて少女は立ち止まった。
目の前には、オレンジ色のキッチンカーが停まっている。

「一つ下さい!」

まもなく、店員から湯気の立つ『スイートポテト』が手渡された。
それを手にして、少女は適当な場所に腰を下ろす。
研ぎ澄まされた嗅覚で感じる匂いは、普段よりも強烈だ。

「『ディーン』も食べるー?」

少女が独り言を言っている。
『イマジナリー・フレンド』という奴かもしれない。
少なくとも、周囲にはそれらしき人間はいないようだ。

915 ディーン『ワン・フォー・ホープ』&ヨシエ『一般人』 :2019/12/20(金) 18:00:33
>>914

《いや、いい。
 たっぷり入った砂糖やらクリームやらは、
 俺達には刺激が強すぎるんだ》

「うーん、そっかー」

    パクッ
           パクッ

「寒かったけどあったかくなってきたー」

「じゃあー、遊びいこー!」

    ――――ヒュバッ

韋駄天のようなスピードで少女が駆け抜ける。
『高速で走る少女の噂』が、また一つ増えたのだった。

916 ブリタニカ『ハロー・ストレンジャー』 :2020/01/11(土) 17:26:19

ある日の大通り。
その一角に、ちょっとした人だかりが出来ていた。
中央に立つのは、
『鳥人』を思わせるコスチュームに身を包んだ女だ。
彼女の周囲には、多種多様な野鳥が群れを成して飛んでいる。
まるで訓練されているかのように統率された軌道だ。

「お集まりの皆々様、
 私『ハーピー』のショーはお楽しみ頂けましたでしょうか?」

「――――それでは、またの機会にお会い致しましょう」

    バサササササササササ
               ササササササササササァ――――ッ

両肩に野鳥を留まらせたまま、恭しく礼をする。
それを合図に、鳥達が一斉に飛び立った。
『仕事』を終えて、各々の場所に帰っていくのだ。

「ふう」

    パタン

やがて、見物客達も同じように立ち去り始めた。
人間達の様子を見届けてから、
足元に置いていたアタッシェケースを閉じる。
その中には、今日の稼ぎが収められていた。

「さて」

          スタスタスタ

片手にケースを下げて、緩やかな足取りで歩いていく。
これも『宣伝活動』の一つだった。
一人でも多くの人間に、この姿を認知してもらう事が利益に繋がる。
それは食い扶持を得るためだけではなく、
人間という生物を観察して研究するためでもある。
さらに『正体』を隠蔽する役にも立つのだから『一石三鳥』だ。

917 ブリタニカ『ハロー・ストレンジャー』 :2020/01/18(土) 16:41:50
>>916

    ピタッ

やがて、その歩みが止まる。
視線の先には、鳥のイラストが描かれた看板。
そこには、こう書かれていた。

【種類に合わせたフード、止まり木、ケージ、おもちゃなど、充実の品揃え!!】

         スタスタスタ
               ――――ガチャ
                      
                      「いらっしゃいませェ〜」

918 鉄 夕立『シヴァルリー』 :2020/01/20(月) 22:38:59
商店街を一人歩む、学生服姿の男子高校生。肩には竹刀袋をかけている。
ぶつからないように左端を歩きながらも、時折行き交う人の顔を見るようにチラリと目線を走らせる。
それをしばらく繰り返しながら進み、一つのお店の前で足を止めた。

「『バターどら焼き』四つ下さい」

『和菓子屋』だった。

919 三枝千草『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』 :2020/01/20(月) 23:40:23
>>918

「――――あ、鉄先輩」

「こんにちは」

    ペコ

先輩を見かけたので挨拶しましょう。
この店には、少し前から来ていました。
でも、こんな所でお会いするとは思いませんでした。

「先輩は『バターどら焼き』ですか?」

「千草は『クリーム大福』です」

    ス

片手に持った袋を持ち上げます。
それから竹刀袋に目線を合わせました。
先輩は、やはり部活動の帰りなのでしょうか。

920 鉄 夕立『シヴァルリー』 :2020/01/20(月) 23:56:43
>>919

「ん?」

名前を呼ばれ、振り向く。視界の先、ではなく下。
見知った可愛らしい顔がそこにあった。

「おや。こんにちは、三枝さん」ニコリ


>「先輩は『バターどら焼き』ですか?」

>「千草は『クリーム大福』です」


「そうだよ。家族からも頼まれてね」
「しかし『クリーム大福』?そんなのもあるのか、チェックしてなかったな…」

ううむと唸り、お品書きを改めて見る。『クリーム大福』、冷やしても美味しそうだ。
と、そこで三枝さんの視線に気付いた。

「そうだよ、今日も部活帰りさ」「三枝さんは、最近『生徒会』はどうだい?」

921 三枝千草『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』 :2020/01/21(火) 00:15:43
>>920

「ご苦労様です」

    ペコリ

「――はい。
 お陰様で生徒会の仕事にも随分慣れたような気がします。
 『気がする』だけかもしれませんが……。
 まだまだ学ぶ事は多いので」

「最近は、『他にも何か出来る事がないか』と考えています。
 何か――何か千草に出来る事があればと……」

学校の屋上で日沼先輩と会った時のこと。
それから、教室で斑鳩先輩と出会った時のこと。
頭の中に、その二つが思い浮かびました。

「でも、なかなか上手くいかなくて……」

千草は『墓堀人』を使って、学校から『ゴミ』を減らそうとしました。
でも、ちょっと空回りしてしまったみたいです。
新しい事を始めるのは難しいです。

「――――先輩は如何ですか?」

922 鉄 夕立『シヴァルリー』 :2020/01/21(火) 00:39:13
>>921

>「最近は、『他にも何か出来る事がないか』と考えています。
> 何か――何か千草に出来る事があればと……」
>「でも、なかなか上手くいかなくて……」

少女の語る言葉に相槌を打ちながら、内容に耳を傾ける。
実に善良な、彼女らしい悩みだ。聞いていて、何とも微笑ましくなる。
とはいえ三枝さんは真剣に悩んでいるのだ。それを表面に出すことはしない。

「何事も最初はそんなものだ。オレも『剣道』で、上手く一本が決まらない時期があった」
「所謂『スランプ』というやつだな。焦れば焦るほど、心と竹刀が先走って有効打にならないんだ」
「ただ、そんな時は一度冷静になって。自分の課題をしっかり見て、どうすればいいのかを考え、そして解決策に向けて努力する」
「オレは正直、器用な方じゃないからな。一つ一つ、ゆっくりと確実にやっていくしかできないって気付いたんだ」

と、そこで店主が『バターどら焼き』を袋に入れて持ってきてくれた。
お礼を言いつつ代金を支払い、それを受け取った。

「何かの参考になれば幸いだ」


>「――――先輩は如何ですか?」

「今度、『団体戦』でもレギュラーに選ばれてね。近くの高校、何校かと総当たり戦をやるんだ」
「良い結果を残せるように頑張ってくるよ」

923 三枝千草『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』 :2020/01/21(火) 01:04:49
>>922

「一つ一つ――ですか……」

言われてみれば、千草は少し焦っていたのかもしれません。
何かをしようとしても、いきなり成功するのは難しいでしょう。
失敗したからといって、そこで止めてしまえば終わってしまいます。

「今日の失敗は明日の成功に繋がる一歩――」

「そんな風に考えてみる事にします」

    ニコリ

「ありがとうございます、鉄先輩。
 先輩のお陰で、また頑張ろうという気持ちになれました」

「試合も応援しています。
 『先輩が頑張っているから千草も頑張る』。
 そういう気持ちになれますので……」

「あの――もしよろしければ、少し歩きませんか?」

先輩が袋を受け取ったのを見て、視線を通りに向けました。
道にはゴミ一つありません。
もしゴミが落ちていたら『片付ける』事が出来たので、
少しだけ残念に思いました。
でも、ゴミがないのは良い事です。
だから、ゴミがあった方が良いと思うのは良くない事です。

「そういえば、鉄先輩は『斑鳩先輩』の事をご存知でしょうか?
 この前お会いしたのですが、先輩と同学年だったようなので」

「何だかこの所、
 『高等部二年生』の方にお会いする機会が多いのです。
 『日沼先輩』、『斑鳩先輩』、『猿渡先輩』……」

指を折って数えます。
そしてもちろん、『鉄先輩』も入っています。
何かの縁があるのでしょうか?

924 鉄 夕立『シヴァルリー』 :2020/01/21(火) 01:37:12
>>923

「そうか。なら良かった」
「三枝さんは、『生徒会』に入りたいという夢をしっかり叶えた人だからな」
「キミならば、諦めなければきっと大丈夫だとオレは信じている」

三枝千草。彼女とは、互いの頑張りを感じてより目標に向けて邁進できる関係だ。
断る理由もない、共に歩こうという申し出に頷く。

「『斑鳩』くん…ああ、珍しい名字の人だな。聞いたことはあるが会った事はない」
「どんな人だったんだい?」

「ちなみに猿渡くんは会ったことがあるよ」「中性的で、大人びた雰囲気の人だったな」
「色々と面白い話をしてくれたんだ」

925 三枝千草『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』 :2020/01/21(火) 01:57:52
>>924

「あっ、猿渡先輩とお知り合いでしたか。
 千草は『学生寮』に住んでいるのですが、
 わざわざ訪ねて来て下さいました」

「カップケーキをご馳走になって……」

そこで思い出しました。
千草は『寮生』になったのです。
鉄先輩にお伝えしていたでしょうか?

「その、鉄先輩にお話していたでしょうか?
 千草が『学生寮』に入居したことですが……」

「少しでも自分を成長させたいと――そう思ったのです」

「斑鳩先輩は…………不思議な感じがする人でした。
 詳しくは分かりませんが、
 鉄先輩のように何か『目標』があるように見えました」

あの時、千草は窓から突き落とされて、
いつの間にか気を失っていたようです。
そのせいでよく覚えていませんが、
きっと斑鳩先輩が助けてくれたのでしょう。
次に会ったら、お礼を言わないといけません。

「猿渡先輩とは、どんなお話をされたのですか?」

926 鉄 夕立『シヴァルリー』 :2020/01/21(火) 20:57:28
>>925

「そうなのか。カップケーキを…流石猿渡くん、おしゃれだな」
「ん?…いや、それよりも」

>「その、鉄先輩にお話していたでしょうか?
> 千草が『学生寮』に入居したことですが……」

>「少しでも自分を成長させたいと――そう思ったのです」

「・・・・・そうなのか」

腕を組み、三枝さんの言葉に対して思案する。
もちろん、彼女に対して信頼はある。三枝さんと世間一般の中学一年生には、隔たりがあると自分は思う。
主に、責任感や実行力などにおいてだ。
だがしかし、それでも彼女はまだ、ついこの前までランドセルを背負っていたのだ。
友人とはいえ、あまりこういった事に口を出すべきではないのだろうが。

「…『学生寮』の中には、優しい人はいるか?」「生活に関しても、特に困った事はないか?」

つい心配してしまう。
自分は『学生寮』の仕組みについて詳しくはないが、彼女は家を離れることに不安はなかったのだろうか。

「…斑鳩くんが、か」「ありがとう、今度少し話しかけてみるよ」

『目標』というのは少し気になる話だ。それが学生のスケールの話ならば、そこまで関係はないが。
自分と同じように、命を懸けても成したいことがあるのか。
それならば、もしかしたら『スタンド使い』絡みか?

「猿渡くんとは『図書室』で出会ってね。彼が借りた本とか、後は…」
「…そうだな、男同士の会話は少し」

彼に気になる女性がいる云々の話は、ここで話すべきではないだろう。適当な言葉で濁しておく。

927 三枝千草『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』 :2020/01/21(火) 22:08:26
>>926

「――――?」

猿渡先輩と鉄先輩。
何だか曖昧にされた気がしますが、
こういう時は聞かないのが礼儀です。
だから、そのままにしておく事にしました。

「はい、今は大丈夫です。
 分からない事がある時もありますが、
 周りの人達に助けて頂いていますので……」

「中等部三年の『黒羽先輩』も、同じ寮生です。
 幾つも賞状を貰っていて、とても凄い人です」

「以前、黒羽先輩の部屋でお茶とお菓子をご馳走になりました。
 その時に、鉄先輩についても少しお話しました」

「ですから――大丈夫です。ただ、少しだけ…………」

「少しだけ寂しい時はありますが……」

家を離れる前から、ある程度は考えていたつもりでした。
それから実際に家を出て、改めて思いました。
千草の家族も、似たような気持ちを感じているのでしょうか。

「――――いえ、大丈夫です」

       ニコ

「千草は、もっと『成長』したいですから。
 家に帰るのは、成長した姿を見せる時にしたいのです」

寂しくても、家に戻ろうとは思いません。
千草は、『立派な人物』になりたいのです。
誰からも尊敬されるような人になって、
『素晴らしい最期』を迎えたいのです。
それが千草の叶えたい『目標』です。
そのために、千草は『成長』したいのです。

928 鉄 夕立『シヴァルリー』 :2020/01/21(火) 22:32:17
>>927

>「はい、今は大丈夫です。
> 分からない事がある時もありますが、
> 周りの人達に助けて頂いていますので……」

「…ああ、それならいいんだ」

食事なども、『寮母』が用意してくれるのだろうか?
学業と生徒会活動に加えて、帰宅後に『家事』までするのは流石に負担が多いだろう。そうだと思いたい。
何にせよ、周りに協力してくれる人がいるならば、少し安心できる。

「『黒羽』さん?…いや、名前を妹から少し聞いたことがあるような」
「確か、広報系の人材だったと記憶しているな。その賞状は、それに関したものなのかい?」

自分の事を話したとは、一体何だろうか。
猿渡くんの時も思ったが、正直自分はあまり目立たない方だと感じている。
人に話して面白い男だとは認識していないだけに、少し意外だ。

>「ですから――大丈夫です。ただ、少しだけ…………」

>「少しだけ寂しい時はありますが……」

「・・・・・・・・・・」

「なぁ、三枝さん」

袋を持っていない方の手で、少女の頭をゆっくり撫でる。妹が同じぐらいの年の頃、そうしたように。

「キミはまだ中学一年生だ。目標は立派だと思うし、オレも応援してるが、あまり無理をしないようにな」
「人間の心には限界がある。オレだって、必要なら自分を追い込むことに躊躇はないが、それでも限界を迎える前に一旦身を引く」
「いつでも帰りたい時は帰っていい。頑張る為には、そういうのも必要だ」
「そうしてまた、戻ってくればいいんだ」

929 三枝千草『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』 :2020/01/21(火) 23:02:44
>>928

「…………はい」

ただ黙って頭を撫でられました。
何か言おうかとも思いましたが、何も出てきませんでした。
鉄先輩の言葉が『正しい』と感じていたからです。

「無理をして失敗したら元の木阿弥ですね」

          ニコ

「だから、無理はしません。
 無理はしませんから――『出来るだけ』頑張ります」

千草は、『自分の限界』が、まだ分かりません。
だから、それを知りたいと思っています。
そのためにも、『出来るだけ』頑張ろうと思います。

「黒羽先輩は『新聞部』の方です。
 部屋には『新聞大会』の表彰状がありました。
 それから、『書道コンクール』なども……」

「運動部の取材を考えていらっしゃったようなので、
 それで鉄先輩の事をお話したのです」

「生徒会の事も幾つかお答えしました。
 仕事の内容など……」

そこで思い出しました。
鉄先輩の妹さんも、中等部三年だったと思います。
黒羽先輩と同じ学年です。

「先輩の妹さん――『朝陽さん』も黒羽先輩と同じ学年ですね。
 朝陽さんの具合はいかがですか?
 その……『怪我をしてピアノが弾けない』とお聞きしていたので」

930 鉄 夕立『シヴァルリー』 :2020/01/21(火) 23:18:51
>>929

三枝さんの返事に頷き、手を頭から離す。
妹からは、中学生をあまり子供扱いするなと言われてはいる。
しかし親元を離れて暮らすなど、高校生ですら中々できない事だろう。
立派な事だが、それはつまり同じくらい大変という事だ。
彼女は少し、焦っているようにも見受けられる。できれば、無理はしないで欲しい。

「ああ、成る程…運動部への取材か」
「しかし『書道』でも表彰される程の腕前とは…自ら記す内容に対して、誠実であるという印象を受ける」
「了解した。もし彼女からそういった申し出があれば、喜んで受けさせてもらうよ」

とはいえ、自分はあまり面白い記事に繋がりそうな事など言えないが。
しかしそういったのを人が見たがる記事にするのも、書き手の実力なのかもしれない。
何にせよ、三枝さんの紹介ならば断る理由もない。

「…ケガ自体はそう重いものじゃあないんだ。既に治って、リハビリもこの前終わった」
「ピアノの腕も戻ったように聴こえる。まぁ本人は、『友達に差を付けられてる、もっと頑張らなきゃ!』って言っていたけどな」

そういって、少し苦笑する。
そう問題なく傷は治っている。身体の傷は、だが。
しかしそれ以外の話は彼女に伝えるべきじゃない。この子は、そういったのを苦手としている。

931 三枝千草『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』 :2020/01/21(火) 23:46:40
>>930

「そうですか。それは……良かったと思います」

「あの――――本当に……」

もっと気の利いた言葉が言えれば良かったのですが。
でも、上手く出てきませんでした。
デリケートな話題です。
そして、千草が『苦手な話題』でもあります。
ただ、それでも具合を聞いておきたいという気持ちがありました。

「その、朝陽さんに伝えて頂けないでしょうか?
 『もし良かったら一緒に頑張りましょう』――と」

「千草に何か出来る訳ではないですが、
 頑張り合っている人がいれば、少しは支えになれるかと……」

「千草も、さっき鉄先輩が頑張っているのを聞いて、
 『頑張ろう』と思えたので……」

千草に出来る事は少ないです。
でも、少しでも何か出来る事があるなら、
誰かの力になりたいと思っています。
大げさかもしれませんが、
その積み重ねが大事なのではないでしょうか。
鉄先輩も言われました。
『一つ一つ確実に』――――と。

932 鉄 夕立『シヴァルリー』 :2020/01/22(水) 00:04:36
>>931

>「あの――――本当に……」

「ん?」

顔を横へ向け、少女の方を見る。

>「その、朝陽さんに伝えて頂けないでしょうか?
> 『もし良かったら一緒に頑張りましょう』――と」

>「千草に何か出来る訳ではないですが、
> 頑張り合っている人がいれば、少しは支えになれるかと……」


「…キミは、本当に優しい子だな」「ありがとう。しっかりと、朝陽に伝えておくよ」
「まぁそれで張り切り過ぎて、『わたしも寮生活する!』なんて言い出したりしないか心配だが…」
「そうなったら兄として、全力で止めさせてもらおう」

少し笑いながら、三枝さんの言葉に頷く。
自分より二歳も年下なのに、実家を離れて頑張っている少女の言葉は、きっと妹に届くだろう。
そうして、心の傷もやがては癒えてくれていったならと、切実に思う。
現代社会で人混みを常に避けて生きていくのは、大変で、辛いことだ。

「─────と、それじゃあオレはこちらの道だから」
「まだ日は落ちてないが、それでも気をつけて。何かあったら、すぐに呼んでくれよ」

今回は休日の部活帰りともあって、冬といえどまだ夕暮れだ。もちろん警戒するに越したことはないが。
寮には他に同じ学生もいるだろう。いざという時は、その人達も頼りになるはずだ。
その中に『スタンド使い』がいれば、なおさら安心だ。

「今日はありがとう、三枝さん」「さようなら、また今度」

そう言って手を振り、十字路の別れ道を進んでいく。
…もし、三枝さんの言葉などで朝陽の心の傷が完全に癒えたら。そしてこれ以上、『通り魔事件』が発生しなかったら。
一旦、区切りは付けるべきかもしれない。犯人は探したいが、何も起きなければ、それに越した事はないのだろうから。

933 三枝千草『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』 :2020/01/22(水) 00:42:19
>>932

「いえ、こちらこそありがとうございました」

     ニコ

こんな千草でも、誰かの役に立てるのでしょうか。
そうだとしたら、とても嬉しい事だと思います。
『小さな一歩』を踏み出す事が出来たと思えるからです。

「はい、またお会いしましょう、鉄先輩。
 朝陽さんにも、よろしくお願いします」

     ペコリ

先輩と別れ、『清月館』に向かって歩き出します。
足元からは影が伸びていました。
細く黒い影が――――。

       スタスタスタ

「『It’s now or never』」

934 比留間彦夫『オルタネイティヴ4』 :2020/02/20(木) 22:23:24

午後の時間帯――オープンカフェに一人の男が座っていた。
ストライプスーツを着て、フェドーラ帽を被った男だ。
テーブルの上には、コーヒーカップと共に小さな石が置かれている。

「『ラピスラズリ』――
 確かに神秘的な力を秘めているように見えますね」

少し前に、ある『占い師』から購入した品だ。
深い青色に黄色の斑点が浮かんでいる。
その色や模様は、夜空に輝く星々を思わせた。

「もちろん本当にパワーがあるかどうかは別として、ですが」

石から視線を外し、コーヒーカップを傾ける。
その時、9mほど離れた植え込みの中で何かが動いた。
白い鎧を身に纏った小さな『兵士』だ。
別に何かをしようという訳ではない。
ちょっとした『実地テスト』の一環だ。

935 日下部『アット・セブンティーン』 :2020/02/26(水) 23:09:00
>>934

「『パワー』がほんとにあるかは分かんないけど〜」

               カチャ…

隣のテーブルに座ったのは、白い女だ。
服も、髪も、肌さえ新雪のように白い。

「『価値』はあるよねえ。お隣失礼しまあ〜す」

一般的には失礼なほどの距離ではない。
が、人のパーソナルスペースは目に見えないものだ。

「その石、お兄さんの? 私ね、パワーストーンに最近凝ってるんだ〜」
「『神秘』とかは分かんないけど、『見た目が綺麗』だから。……んふふ」

首から提げた、『ゴールドルチルクォーツ』を使ったネックレスを手に取っていた。
それが白に染まった女の、目に見えてもっとも映える『色』なのは言うまでもない。

・・・彼女に実地テストに気付いている様子はない。少なくとも、『目に見える範囲』では。

936 比留間彦夫『オルタネイティヴ4』 :2020/02/27(木) 05:48:11
>>935

「あるいは『見た目の美しさ』こそが、
 こうした石の持つ大きな力なのかもしれません。
 古くから、『何かがある』と思わせる魅力に引かれる人間は、
 数多いと聞きます。
 そのために大枚を叩く方も後を絶たないとか」

「――私も詳しくはありませんが、ね」

    ニコ

優男風の顔立ちに穏やかな微笑を作り、『白い女』に言葉を返す。
あたかも色素が欠落しているかのような容姿に、
少々の驚きを感じた。
しかし、それを表情には出さず、首の宝石に目を留める。

「そちらの『石』も素敵ですよ。
 生憎と種類は分かりませんが、
 知識のない人間にも『美しさ』は理解出来ます」

「失礼ですが、どちらでお求めに?
 私は『ある占い師』から買いましてね」
 
「『ラフィーノ石繭』――ご存知ですか?
 よく当たると評判の占い師ですよ。
 私も占って頂きましたが、なかなか鋭い方のようでして。
 まさに『的中』といった所です」

実際、当てられたのは確かだ。
『嘘をつくのが楽しみ』であるという自分の本質を言い当てられた。
占い師としてはイカサマだが、人を見る目はあるのだろう。

「もし機会があれば、一度占って貰う事を勧めますよ」

『兵士』は動かしていない。
もし見える人間がいれば、
その反応を確かめようという意図もあった。
だが、何も自分から積極的に姿を見せる必要も無いのだ。

937 日下部『アット・セブンティーン』 :2020/02/27(木) 22:47:22
>>936

「『ゴールドルチルクォーツ』だよ」
「『お金を呼び込む石』」「呼び込むかは分かんないけど」
「これ一つで『10万円』也〜」

     キラ…

「これはね、『友だちに貰った』んだ〜。んふふ」
「今の説明もね、全部教えてもらっただけで、私も詳しくはない」

10万円の石をくれる友だちとは、『猫』だ。
あえてそれを口に出さないくらいの『社会性』はある。

「『ラフィーノ』? 聞いたこと……あったような〜」
「私ね、占いってあんまり興味ないんだよねえ」
「未来ってねえ、変わるときはすぐ変わっちゃうし」

「私はあんまり信じないな〜」

目に見えないことを重視していない。
占いは『統計』や『心理学』の観点もあるらしい。
そういう意味で、全く何もないものではないのだろうけど。

「ちなみに、お兄さんはどんなこと占ってもらったの〜?」

それでも未来はいつでも不確定だ。『的中』刺せたというのは気になった。

938 比留間彦夫『オルタネイティヴ4』 :2020/02/27(木) 23:54:08
>>937

「ははあ、なるほど。
 いえ、そこまで値打ちのある物とは思わなかったものですから。
 見た所お若いようですが、
 結構な品をお持ちでいらっしゃるようで」

「ちなみに、これは『ラピスラズリ』という石だそうです。
 『誠実さ』や『思いやり』、『高潔さ』を象徴するのだとか」

「ここだけの話ですがね。私のは『五百円』でして。
 いや、お恥ずかしい」

           フフ

人の良さそうな微笑と共に、ラピスラズリを胸ポケットにしまう。
金額が全てとは言わないが、これは少し差が大きすぎる。
それにしても十万円の宝石をくれる友達とは、
一体どのような人物なのだろうか。
気にはなったが、突っ込むつもりは無かった。
曖昧な言い方から見て、恐らく聞いても答えてはくれまい。

「そうですね。
 『自分自身を見つめ直す手助け』をして貰った――
 とでも言いましょうか。
 自分の事というのは案外分からないものですから。
 客観的な視点からアドバイスをして頂いたのですよ」

「私も占いに傾倒している訳ではありませんが、
 彼女の『観察力』や『洞察力』は優れていると感じました。
 少なくとも、そういった『実践的な方面』の実力は本物ですよ」

比留間は、彼女の占いは『インチキ』だと思っている。
『運命が視える』などという謳い文句は、
客寄せの為の口八丁に過ぎないと。
しかし、『確固たる土台を備えたイカサマ』でもあると考えている。
単なる口からの出任せではなく、
それに信憑性を持たせるだけの『根拠』が伴っている。
その点において、ラフィーノには一種の『敬意』を抱いていた。

「『運命』や『未来』といった神秘的な分野に関しては、
 私からは何も言えませんが。
 何しろ『素人』ですので」

同時に、非常に興味ある『遊び相手』だとも思っている。
だからこそ、こうしてラフィーノを持ち上げているのだ。
彼女の所に一人でも多くの客が行くように仕向けたい。
そうする事で、
もっと彼女のイカサマを引き出してみたいという意図がある。
そんな事をする理由は、それが『面白そうだから』だ。

「――貴女は『神秘的な力』は信じない主義で?」

この世界には、不可思議な力が実在する。
『スタンド』という力。
自身の『オルタネイティヴ4』も、その一つだ。

939 日下部『アット・セブンティーン』 :2020/02/28(金) 00:22:57
>>938

「『500円』でそれだけ綺麗なら良いよね〜」
「私の石と、『99500円分』も綺麗さは変わんない気がするし」
「お買い物上手なんだよ〜、お兄さん」

笑みを浮かべて、自分の石から手を離した。
そして自分の席に着き、自分のコーヒーを手に取る。

「なるほど〜〜〜」
「『人生相談』ってコトなんだ。それなら『ホンモノ』かも、しれない」
「だって人生は本物だから!」

ラフィーノ石繭。
覚えておく名前ではあるが・・・『興味』はそんなに、無い。
人生について特別に、他人に見てもらいたいわけでもない。

そして続く問いかけには・・・目を細める。

「んん、未来予知とかはね、わかんないじゃ〜ん」
「『第六感』とかもわかんないよね〜」
「証拠の出しようがないもん」

「目に見えない、説明も出来ないものが『神秘』なら、信じないよ〜」

940 比留間彦夫『オルタネイティヴ4』 :2020/02/28(金) 00:55:08
>>939

「いや、ごもっともです。
 根拠のないものが信じられないのは当然の事ですからね。
 私も全く同感ですよ」

「そうですね――『神秘』とまではいきませんが、
 ちょっとした『手品』をお見せしましょうか。
 最近、少し練習していましてね。
 本来なら披露する程のものではありませんが、
 少々お付き合い頂ければ幸いです」

    スッ

人知れず発現していた『兵士』を解除する。
懐に入れた手を抜き出すと、そこには五枚の『カード』があった。
実体化スタンドである『それ』は、
質感もサイズも実物のプラスチック製トランプと同様だ。
もう片方の手にはハンカチが握られている。
ブランド品のようだが、特に何の変哲もない品物のようだ。

「今から、この『カード』を消してご覧にいれましょう。
 私がハンカチを被せてから三つ数えます。
 ハンカチを取り払ったら、『カード』は消えている筈ですよ」

           パサッ

「何分まだ練習中ですので、上手くいくかは分かりませんがね。
 もし失敗しても、お許し願いますよ」

「――『1』……『2』……『3』……」

            バッ

ハンカチを取り除くと、そこには確かに『カード』は無かった。
最初から存在していなかったかのように消えている。
『解除』したのだから当然ではあるが。

「おっと……どうにか消えてくれたようですね。
 失敗するのではないかと思って、内心は冷や冷やしましたよ」

「もっとも、これは単なる『手品』ですので、
 『神秘』でも何でもありませんが――ね」

941 日下部『アット・セブンティーン』 :2020/02/28(金) 01:32:46
>>940

「根拠が無くても信じたい気持ちも、分かるけどねえ」

「ん、手品? お兄さぁん、『マジシャン』っぽいもんね」
「『人は見かけによる』んだねえ」「んふふ」

          カタ…

椅子を動かし、身を乗り出して『手品』を見る。
手品。『タネがある』という宣言だ。

「それ、トランプ〜?」「いや、ちょっと違うかな〜?」
「わあ、良いハンカチ持ってるねえ」

品々に寸評を入れつつ、目を細めて見守る。
そして――――その視界は『騙される』。

「わあ〜すごい、すごぉい」

           パチッ  パチッ

「上手いねえ、全然分かんなかったよ」
「机の下に隠すとか、袖に入れるとかだと思ったけど」
「『何処に』『いつ』やったかわかんなかった」
「お兄さ〜ん、器用なんだねえ」

「ねえ、それでトランプはどこ行ったの?」
「そこんとこ知りたいなあ、んふふ。どうなんです〜?」

942 比留間彦夫『オルタネイティヴ4』 :2020/02/28(金) 02:09:27
>>941

「どうも恐縮です。
 趣味でやっているだけですので、
 そうバリエーションがある訳ではありませんが」

『手品』にはタネがある。
しかし、『これ』にタネは無い。
何故なら、手品というのは『嘘』だからだ。
実際は『神秘的な能力』の産物。
だから説明のしようがない。

「『どこに行ったか』ですか?
 そうですね。『ここ』か、それとも『こちら』か……」

「いえ――恐らくは『この辺り』ではないでしょうか?」

    スッ

何かを探しているかのように、
ジャケットのポケットを上から軽く叩く。
そして、おもむろに片手を首の後ろに回した。
手を引き戻すと、そこには再び『カード』が現れていた。

「いや、見つかって安心しました。
 もし消えたままになっていたら困る所でしたよ」

           シャッ

『カード』を扇状に広げて見せる。
四隅に四つの『スート』が配され、
中央に『道化師』の顔が描かれたデザインだ。
その裏面は、『トランプ』に酷似していた。

「今は、この辺りが限界といった所でしょうか。
 お付き合い頂き、感謝致しますよ」

そう言って『カード』を懐に収め、同時に『解除』してしまう。
あまり突っ込まれると、誤魔化し切れなくなるからだ。
だから、更に追求される前に切り上げる事にしておいた。

943 日下部『アット・セブンティーン』 :2020/02/28(金) 02:50:47
>>942

「わ〜ッ、すごいねえ、すごいよお〜」

感心した表情で再び手を打つ。

「どうやってそんなところに入れてたんだろう」
「さっきのとは別のカードだったりとか〜?」
「んふ、『タネ』があるってわかってても凄ぉ〜い」
「むしろ、わかってるからすごいって思うのかな〜?」

などと褒めたおしていたが、やがてカードの絵柄に視線を移す。
それが懐に収められると、顔を上げた。

「『ジョーカー』がメインみたいな絵柄だったよねえ〜。今のカード」
「なんだか珍しいなって」「トランプ自体が『マジック用』だったりとか?」

「んふふ、まあいいやなんでも〜」

引っ掛かりはしても不思議ではない。
そして、別に不思議でもかまわない。
目に見えるものを信じるだけだ。目に見えないものを暴きたい気持ちはない。
目に見えないものは、嫌いとかイヤとかじゃあなく、どうでもいいのだ。

「だって楽しかったもんね、私が〜。んふふ……」
「相手してくれてありがとね、手品が得意なお兄さ〜ん」

そして自分の席に戻る。自分の感情は、はっきりそこにある・・・コーヒーを飲んだ。
彼女の方から、これ以上深く何かを追及したり、話しこんだりする様子は無さそうだった。

944 比留間彦夫『オルタネイティヴ4』 :2020/02/28(金) 03:22:09
>>943

「こちらこそ『楽しい時間』を有り難うございました。さて――」

    ガタッ

「仕事が残っていますので、一足お先に失礼します。
 この店のコーヒーは、値段の割には中々質が良いですからね。
 私も時々、立ち寄っているんですよ」

「もしお会いする事があれば、また何かお話が出来ればと。
 ご都合が宜しければ、ですが」

「――――では、これで」

椅子から立ち上がると、会釈して会計に向かう。
心の中には、小さな満足感があった。
『嘘をつく事』が、自分にとって何よりの楽しみだからだ。

(もっとも『同じかどうか』までは分かりませんが――)

            ザッ

(――今日の所は良いでしょう)

『力を持つ者の反応を見る』というのが当初の意図だった。
それは果たせなかったが、別に構わない。
いずれにしても、『価値ある時間』であった事は確かなのだ。

945 日下部『アット・セブンティーン』 :2020/02/28(金) 03:52:35
>>944

「わかるよお。私もたまに来るからね、ここには」
「待ち合わせとかにもちょうどいいし〜」

騙されている。
それが事実――――だが『分からない』。
実感がないし、気付くことも今は無い。
実害がないし、引きずる理由も無い。

だから、日下部虹子には問題にならないのだった。

「んん、また会ったらね」
「次は私も何か、面白いハナシ考えとこうかな」

        ヒラ…

小さく手を振った。

「じゃあね、ばいば〜い」

会わなければそれはそれでいい・・・会いたくなれば探せばいい。

946 三枝千草『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』 :2020/03/09(月) 21:32:24

    トッ 
        トッ
            トッ
                トッ
                    トッ

その日、千草は『歩道橋』を上っていました。
両手には、大きめの手提げ鞄を持っています。
中には、図書館から借りてきた本が詰まっていました。
将来のために、今から色々と勉強しておきたいのです。
でも今回は、『それ』が悪かったようです。

    ガ ッ

        「あッ――――」

                 ド シ ャ ァ ッ

気付いた時には、最上段の段差に躓いて転んでいました。
両手が塞がっていたので、そのまま倒れてしまいました。
そのまま階段を転がり落ちていかなくて幸いでした。

        「ッ…………!」

少し体を打ったようですが、『死ぬ程』ではないです。
でも、一歩間違えたら死んだかもしれません。
『九死に一生を得る』というやつでしょうか。
とにかく立ち上がりましょう。
いつまでも倒れていると、他の人の迷惑になってしまいます。

     「――――痛い…………」

ただ、もう少しだけ時間が掛かるかもしれません。
思ったよりも『痛かった』からです。
あと、ほんの少々待って頂けますでしょうか。

947 ラフィーノ石繭『ミスティカル・ガイド』 :2020/03/15(日) 19:25:33
>>946
 「……………(ムカッ)」

だれも助けへんのかい。
なんかあるでしょ、声かけるとかさ。

「……はぁぁぁ〜〜〜っ……」
「この町は糞糞の糞ねッ 地獄に落ちるわよッ!」


どうも。末石まゆです。
職業:占い師(偽)です。
ラフィーノうんとかとかいう芸名もありますが
今はオフなので、ただの末石まゆです。

 「オチビさん 立てます?」
 「おぶってさしあげましょうか?」

 「痛いでしょう…大丈夫、大丈夫ですから」
 
チビっこの前にしゃがんで目を合わせ。
周りに落ちてるものとかあったら拾ったりとかしちゃう。

948 三枝千草『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』 :2020/03/15(日) 21:01:05
>>947

  「はっ――――いえ、あの」

            「大丈夫……ですから……」

      …………ザッ

声を掛けられて、何とか起き上がりました。
この方は、見ず知らずの千草を気遣ってくれています。
なかなか出来る事ではないでしょう。
とても『立派』です。
こういう良い部分は、どんどん見習っていきたいです。

「お気遣いありがとうございます」

         ペコリ

きちんと姿勢を正して、お礼を言いましょう。
両手に持っていた鞄は落としてしまっていました。
中に入っていた本が散らかっています。
これでは通行の迷惑になります。
早く片付けないといけませんが、
お礼を疎かにしていては『立派な人』にはなれません。

949 ラフィーノ石繭『ミスティカル・ガイド』 :2020/03/15(日) 22:08:49
>>948
「ほんとうに大丈夫です?膝とかすりむいていない?」
「絆創膏あるから 貸してあげますよ 貸すだけですけれど」

そんな感じに声を掛けながら、チビっこが落とした物を拾う。

「…いろいろ読んでンのね」
「立派ね」

本か。
私の事務所にもいっぱいあるわね。
風水とか星とか心理学とかFXとか漫画とか。

こんなにたくさん、この子は何を読んでるのかしら。
お勉強の本とかかしらね。

950 三枝千草『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』 :2020/03/15(日) 22:33:18
>>949

散らばった本には、色々なジャンルのものがありました。
特に多いのは、『社会勉強』に関係した本です。
『社会の仕組み』や『職業の解説』や『資格の取り方』などですね。

「あっ、ありがとうございます」

拾っていただきながら、自分でも本を集めます。
二人だったので、すぐに片付きました。
お陰様で、とても助かりました。

「いえ、とんでもないです。
 知らない相手を気遣える方こそ立派だと思いますから」

「――――『膝』、ですか?」

見下ろして気が付きました。
言われた通り、擦り剥いていたようです。
少しだけですが、そこから『血』が出ていました。

       グラリ…………

『それ』を見た瞬間、体が大きく傾きました。
血を見たせいで、意識が『飛んでしまった』ようです。
気絶したまま、ゆっくりと後ろに倒れていきます。

951 ラフィーノ石繭『ミスティカル・ガイド』 :2020/03/15(日) 23:13:18
>>950
年相応ではないものを読んでいてびっくりした。
このコ、まだ小学生くらいでしょ。

「立派… そんなことないと思うけど 実際、気まぐれよ。」

 >グラリ…………

 「エッ うわっマジ?  『ミスティカル・ガイド』!」

両手に本を抱えている状態なので、
仕方なく『人型スタンド』で素早く受け止め、ゆっくり倒してやる。
こういう時も周りの連中は遠巻きに眺めてるだけなのよね
くそッ 腹立つ。

 「オーーーイ  聞こえる?大丈夫ですよ」
 
 「『怪我』が怖かったのですか? 」
 「…とりあえず絆創膏貸しますよ 貸しですからね」

自分の鞄から水玉模様の絆創膏を取り出し、チビッ子の膝に張っておく。

 「大丈夫 もう怖い事はありませんから」
 「……生きてる?救急車呼びますよ?」

952 三枝千草『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』 :2020/03/15(日) 23:37:31
>>951

遠くの方から、誰かが呼んでいる声が聞こえました。
どなたでしょうか。
そんな事を考えていると、
少しずつ目の前が明るくなってきたようです。

「――――う…………」

まだ頭がぼんやりしています。
でも、生きているようですね。
一安心です。

「大丈夫……です。ちゃんと生きてます……」

「だから……救急車は結構ですので……」

最初に見えたのは、先程の親切な方でした。
そして、『絆創膏』が目に留まりました。
血が見えなくなったので、もう意識が飛ぶ事もないと思います。

「……絆創膏、『お借りします』。ありがとうございます」

「この御恩は、いつか必ずお返ししますね」

         ペコリ

             「あっ――」

お辞儀をして、また頭を上げた時に気が付きました。
その人の近くに、見慣れない姿の『スタンド』がいる事に。
だから、そちらに視線が向く事は避けられませんでした。

953 ラフィーノ石繭『ミスティカル・ガイド』 :2020/03/16(月) 00:04:16
>>952
「生きていてよかった。安心ですね。」


>  「あっ――」

「んっ」

職業柄、人の視線とかよく見ちゃうから。
…その視線移動。わかっちゃったわ。
正体が子供にバレた。これはよくない

 「……『御恩』……そうね、恩ですね」
 「絆創膏……あげるから」

チビっ子の肩をつかんでグイっと迫る

 「『内緒』にしていただけませんか……」

顔面を近づけ小さな声で喋る。

「『スタンド使い』ってのは知恵が回る
 …ズル賢い。裏をかく。油断ならない。
 さらにオカルトに耐性がある。 
 そういうわけで、わたしの商売にはちょっぴり厄介なのです」

「しかし、自身の心情、ルールに逆らうことはしない」
「そういう傾向がある。『奇妙』な人々です。」

「あなたもそうなのでしょう」

「でも……立派な人間なら『恩返し』、できますよね?」
「あなたはしっかりした子だから」
「『内緒』に。ね?できますよ、あなたなら」

954 三枝千草『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』 :2020/03/16(月) 00:25:32
>>953

「ひッ――――」

後ずさる暇もなく、瞬く間に肩を捕まれました。
その素早い動きに、圧倒されるような『迫力』を感じます。
喉の奥から悲鳴に近い声が漏れてしまったのは、
そのせいかもしれません。

「は、はい。誰にも言いません。『絶対』に」

「『内緒』にします。約束します」

スタンド使いは知恵が回るというのは本当でしょうか。
千草は自分の事を賢いとは思いません。
でも、きっとこの方は賢い人なのでしょう。
態度や言葉の節々から、
『強さ』が滲み出ているような気がします。
そういう部分は、是非とも見習いたい所です。

「千草は『立派な人間』ではないですけど、
 『そうなりたい』と思っています」

「だから――『約束』は守ります。
 『恩返し』しますから……」

     コクッ

小さく頷いて、ハッキリと宣言します。
恐いからではなく、
そうする事が『立派な人』になるために必要だからです。
『立派な人間』なら、恩返しをしなければいけません。

955 ラフィーノ石繭『ミスティカル・ガイド』 :2020/03/16(月) 00:54:55
>>954
『あの占い師さん!知ってる人です!スタンド使いです!』
などと他のスタンド使いに言いふらされれば『神秘』の『格が落ちる』。
そういうわけでちょっと圧を掛けてみたのだ。

 「………『約束』ですからね」

最後に、眼が水晶となった、岩のような体を持つスタンドで睨みを利かせ、
チビッ子から離れてあげる。

 「…ふふ、……怖がらせ過ぎてしまいました ごめんなさい」

 「別に『地獄に落ちろ』とか『死ね』とかではなくて…
  ただ、『オカルト』というのは厄介なものだな、という、」

 「それだけの話です。とって食べたりなんてしませんから 安心して」

 「もう怖い事はありません 絆創膏もあります」

ちょっと怖がり過ぎじゃないこのチビっこ。
この臆病さで『スタンド使い』か。逆に怖いやつね。
かわいい子だけど要注意。
とはいえ可哀そうなものは可哀そうなのでちょっとフォローはしておいた。

956 三枝千草『イッツ・ナウ・オア・ネヴァー』 :2020/03/16(月) 01:17:50
>>955

『水晶の眼』を見ていると、
何だか考えを見抜かれているような気がしてきます。
もしかすると、本当にそうなのかもしれません。
『人の心を読み取る能力』――
『スタンド』には、そんな力もあるのでしょうか。

「は、はい。よく分かりました」

「――『約束』です」

千草は誰からも尊敬されるような『立派な人間』になりたいです。
立派な人間になって、『素晴らしい最期』を迎えたいのです。
そのためにも、この秘密は『墓穴』まで持っていく覚悟です。

「あの……『勉強』があるので、これで失礼します」

「色々と親切にして頂いて、ありがとうございました」

       ペコッ

最後に、もう一度だけ頭を下げて、歩き出します。
いつか、あんな風に『賢くて強いスタンド使い』になれるでしょうか。
それは分かりませんが、
この『出会い』も、きっと『肥やし』になってくれると信じます。

957 ディーン『ワン・フォー・ホープ』 :2020/03/20(金) 18:29:43
>>853

時々、こう考える事がある。
俺が『人間』だったなら、
ずっとヨシエの傍にいてやれたのかもしれないと。
だが、俺が犬じゃなければ、ヨシエと出会う事はなかっただろう。

(――『発想』を変えてみるか)

もしヨシエが『犬』だったらどうだ?
そうしたら、俺はヨシエを支え続ける事が出来たかもしれない。
そこまで考えて、俺は軽く頭を振った。

(いや……我ながら馬鹿な思い付きだったな)

こうして自分だけで歩いていると、
どうでもいいような事が思い浮かんでしまう。
もっとマシな時間の使い方がある筈だ。
そう思って、俺は周りを見回した。

  クゥーン

ここは『公園』だ。
コンビニが近いせいか、『人間』は程々にいる。
『犬』は俺だけだ。

今頃ヨシエは、『人間の友達』と遊んでいる。
ヨシエは『人間』であって『犬』じゃあない。
だから、『犬』ばかりではなく、
『人間』との付き合いも大事にするべきだ。

958 ディーン『ワン・フォー・ホープ』 :2020/03/28(土) 19:11:28
>>957

     トッ トッ トッ

しばらくして、俺は歩き出した。
こういう時には、場所を変えてみるのも『一つの手』だろう。
俺にあるのは『前足』であって、『手』じゃあないが。

             トッ トッ トッ

959 美作くるみ『プラン9・チャンネル7』 :2020/03/28(土) 21:34:48

  バァァァァァ――――ッ

軽快な走りで颯爽と通りを駆け抜けるスクーター。
その上に乗っているのが私。
風を切って進む感覚が心地良い。

                   プスンッ

       「――――あら?」

徐々にスピードが鈍り、ついには路肩で停車した。
また『ご機嫌』を損ねてしまったのだろうか。
そう思い、シートから降りて各部を点検する。

「しょうがない子ね」

           カチャッ

これくらいのトラブルなら、少し構ってあげれば直るだろう。
シート下のスペースには車載工具が入っている。
その中から六角レンチを取り出して、車体を弄り始めた。

960 <削除> :<削除>
<削除>

961 名無しは星を見ていたい :2020/03/31(火) 00:46:05
>>959

『コツコツコツ』

そこへ、小さな靴音が近づいて来た。年齢は中学生くらいだろうか。髪は背中まで届くセミロングだ。
華奢な身体に、所々和装の趣が入った黒いドレスを身に纏い、足元には厳つめのブーツを履いている。

「ねえ、ねえ」「これは何をしているの?」

訊ねながら、美作の隣で座り込んだ。興味深そうに、二輪と六角レンチを眺めている。

962 美作くるみ『プラン9・チャンネル7』 :2020/03/31(火) 01:16:12
>>961

「――――ん?」

『足音』が聞こえてくる。
てっきり、そのまま通り過ぎるのだろうと思っていた。
しかし、どうやら違ったらしい。

「これはね、ちょっとした『トラブル』っていうか――」

    カチャ

「まあ、そんな大変なものでもないんだけど――」

                     カチャ

「たまに調子が悪くなっちゃうのよね。今みたいな感じで――」

            カチャ

「――でも、慣れてるから大丈夫よ」

作業を続けながら、隣に言葉を返す。
一段落してから、相手の方に視線を向けた。
そして、その服装を軽く観察する。

「なかなか個性的なファッションね。
 『和洋折衷』って言うのかしら?」

こちらの格好は、ラフなアメカジスタイルだ。
化粧っ気のある二十台半ば程の女。
対照的という程でもないが、イメージはだいぶ異なる。

963 名無しは星を見ていたい :2020/03/31(火) 01:46:22
>>962

「『トラブル』」「ああ、この『二輪車』、動かなくなっちゃったのね」

美作の言葉を反芻しながら、うんうんと頷く。
慣れている、と言った彼女の言に偽りなく、会話をしながらでもその動きに淀みはない。

「お姉さんは、普段からこういったお仕事をされているの?」
「それとも、この子がちょっと『問題児』なのかしら?」

首を傾げながら、スクーターを指差した。
そして美作の視線に気付き、肯定する。やや広がったデザインの袖口に手を隠し、自分でもそのドレスを眺める。

「『和ゴス』って言われているらしいわ。あたし、よく知らないのだけれど」
「それでも、似合っていると言ってくれたから。ねえ、お姉さんからは、どう?」

白い肌に対照的な、黒いドレス───和ゴスの子は立ち上がり、くるりと回った。
裾の長いスカートがふんわりと舞い、一回転すると、笑顔で美作に問いかける。

964 美作くるみ『プラン9・チャンネル7』 :2020/03/31(火) 02:19:30
>>963

「あはは、『仕事』って訳じゃあないかな。
 これは何というか――趣味みたいなものかしら?」

「本当にどうしようもない時は、
 修理屋さんに出さなくちゃいけないんだけどね。
 ちょっとした故障くらいで持っていくのも考え物だから。
 それで『応急処置』の仕方を覚えたの」

「まあでも、『問題児』なのは確かね。
 でも、それなりに長く乗っていて愛着があるから」

    ポンッ

「それに、『手が掛かる子ほど可愛い』とも言うし――ね。
 私が『親バカ』なだけかもしれないんだけど」

鮮やかなイエローの車体を軽く叩き、明るく笑う。
その目に映るのは、白と黒のコントラスト。
あまり見かけない珍しいファッションなだけに、
自然と興味を引かれた。

「そうね……うん、『綺麗』だと思うわ。
 『可愛い』って言うべきかもしれないけど、
 どちらかというと『綺麗』の方がしっくり来る感じ。
 ブーツがアクセントとして効いてるわね」

「――なぁんて、何だか偉そうな事を言っちゃった。ごめんね。
 でも、感想の方は本当だから」

そう言いながら、少しだけ昔の事を思い出した。
『ステージ衣装』を着ていた頃の事を。
ただ、『和ゴス』ではなかったが。

965 名無しは星を見ていたい :2020/03/31(火) 02:33:58
>>964

>「それに、『手が掛かる子ほど可愛い』とも言うし――ね。
> 私が『親バカ』なだけかもしれないんだけど」


「──────────」

それは、数秒にも満たないほんの僅かな間。
笑顔を浮かべる少女が、まるで一時停止ボタンを押されたかのようにフリーズした。
が、すぐに動き出し、袖で口元を抑える仕草をする。

「うふふ。お姉さんって、モノをとても大切にする人なのね」「いい人ね」
「あたし、そういう人は、好きよ」「要らないからって、すぐに手放したりしない人って」

美作の衣服に対する感想に、少女はとても嬉しそうだ。ドレスの裾をつまむと、軽く広げて頭を下げた。

「ありがとう」
「あたしはお姉さんを信じるけれど。これが仮にお世辞だとしても、嬉しいわ。あたしもこのドレス、とても気に入っているの」
「お姉さんも、そのスポーティなファッション、とても似合っているわ。活動的な大人の女性って感じで、カッコいいもの」

手を後ろに回して、上体を曲げながら美作の衣服を眺める。

「お姉さん、今日は『オフ』なの?それとも、お仕事の時もそういう格好なの?」


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