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【供】『豊饒の夜』

115 名無しは星を見ていたい :2020/07/03(金) 22:06:58
『名前』:エデロ=バロト
『ユ メ』:
生い茂る樹々のように見えた物は、屹立する肉塊だった。
その表皮が老人のように乾き、ひび割れていたから樹木に見えたのだ。
風に揺らめいていた枝葉は、爬虫類のような鱗の生えた歪んだ五指だ。
数え切れぬほどの手が、私を手招きしていた。
ベッドの中で私はまどろんでいる。目の前のスマートフォンの画面は、ホラー映画のワンシーンを垂れ流していた。
連続しない記憶が、今、私は夢の中にいるのだと自覚させる。だからといって何も出来ない。
「再生数9回突破記念です」「人肉食はもう古い」ガラスの割れる音「電子音」
耳からノイズが入り込むたびに、知識が尿道から排泄されていく気がする。
積み重ねてきた人生というジェンガとキャッチボールをする感覚は、
叩きつけるボールが浮気をした恋人の頭部である快楽と等しい。
ベッドの中で私は嘔吐した。目の前のスマートフォンの画面には、死んだ子供の写真が写っている。
「パパの子供で私は幸せだったわ。私の体の半分はまだ見つかっていないけれど、もう良いのよ。諦めて」
私に娘は居ない。それでも狂うほどの怒りと罪悪感が胸を締め付け、何も出来ない無力さに血涙が流れる。
せめて、せめて彼女の顔だけでも見つけなければいけない。
ベッドの中で私はスマートフォンの画面を膨張した腹部に叩きつけた。
「ハッピーバースデイ!」
破裂と共に、血の海で娘の顔面が祝福の言葉を上げた。
バースデイケーキにはロウソク代わりに樹木が立つ。
アマゾンを切り取ったように、樹々が生い茂っていた。私はその中央で動けずに死んだ。
『イ マ』:
仮眠の筈の10分で私は一生を繰り返した。
今、生の実感が、薄い。


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