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ミカサ「この長い髪を切る頃には」
1
:
進撃の名無し
:2014/01/03(金) 16:53:51 ID:FYOOfyEA0
*現パロです。最初はミカサの黒髪が長いままで登場します。
*舞台は日本ですが、キャラの名前はカタカナのまま進めます。
*原作のキャラ設定は結構、崩壊。パラレル物苦手な方はご注意。
*基本エレミカ(ミカエレ)。他カプは展開次第です。
884
:
進撃の名無し
:2014/04/29(火) 22:27:55 ID:rXT.0elc0
再び、場転。レナ(エレン)のターン。
徹夜して王宮脱走計画を立てる(妄想)。スケッチブックに書き殴っている。
レナ(エレン)『うふふふ…ここをああしてこうして、こうすれば……出来る! 誰にも気づかれずに王宮を脱出する事が!』
レナ(エレン)『ただし! ここにそれを作る材料がない!』
レナ(エレン)『はあ……(がっくり)』
レナ(エレン)『妄想して発散したけど、一人では部品を買いに行くのすらままならない』
レナ(エレン)『せめて、ロボットのメンテナンス用の油くらいは、旦那様に買ってきて頂かないと…』
レナ(エレン)『………』
レナ(エレン)『もう朝の5時か……』
レナ(エレン)『せめてメモ書きでもドアに残して伝言しておきましょう』
メモ書きを持って、てくてくてく…。
レナ(エレン)『あら? タイ様のお部屋に明かりが……』
コンコン。
レナ(エレン)『また、徹夜されたのですか? タイ様』
タイ王子(ジャン)『あ、ああ……すまない。ついつい、研究の手を止められなくてね』
レナ(エレン)『以前から気になっていたのですが……一体何の研究をされているのですか?』
タイ王子(ジャン)『ん……女性にはあまり興味のない代物だよ。機械いじりだ』
レナ(エレン)『まあ! 一体、どんな機械をいじっているのですか?』
タイ王子(ジャン)『…………興味があるのかい?』
レナ(エレン)『ぜひ! 見せて下さい。私にも』
立体機動装置を二人で眺める。
レナ(エレン)『これは……見たことのない装置です。これは一体……』
タイ王子(ジャン)『だろうね。これは大昔、兵士が使っていたと言われる「立体機動装置」の原型だ』
タイ王子(ジャン)『その昔、人間は巨人と呼ばれる怪物に支配されていた時代があった』
タイ王子(ジャン)『それを絶滅させる為に人類が開発した装置、それがこの「立体機動装置」だ』
タイ王子(ジャン)『我が国に一つだけ残された、その原型がそれだ』
タイ王子(ジャン)『もう錆びている部分が殆どで、動力源も残っていないが、その構造自体は理解出来た』
タイ王子(ジャン)『だからそれを原型にして、もう少し軽量化して、長時間使える物を作れないかと思って、独自に研究していたんだ』
タイ王子(ジャン)『………まあ、何の為にやってるんだ、と突っ込まれたら「趣味だ」としか言えないんだけど』
レナ(エレン)『まあ……なんてロマンチックな研究! それなら是非、私にも手伝わせて下さい』
タイ王子(ジャン)『え?』
レナ(エレン)『私、機械をいじるのは得意なんです! こう見えても、工作が得意なんですよ!』
タイ王子(ジャン)『し、しかし……』
レナ(エレン)『着替えてきます! ああもう、こんなヒラヒラした服とはおさらばよ! うふふふ♪』
タイ王子(ジャン)『ちょ、ちょっと待ってくれ、レナ! その……気持ちは有難いが、知識のない人にあまり研究室に出入りされてもらっては……』
さあさあ来た。エレンがNGを連発した問題のシーンが。
ここからが、この劇が変わっていくポイントだ。ここを乗り切ればきっとうまくいく。
レナ(エレン)『!』
その時、思わぬハプニングが起きた。
タイ王子(ジャン)がレナ(エレン)の手を強く引っ張り過ぎたのか、レナ(エレン)の仮面の留め具が衝撃で緩んで、仮面がそこで外れてしまったのである。
火傷の言い訳は、実際にそういう特殊メイクをしている訳ではない。あくまで設定だ。
つまり、観客側にエレンのすっぴんがバレてしまった訳で。
こんなの、台本にはない。どどどどどどどうしよう?!
885
:
進撃の名無し
:2014/04/29(火) 22:53:16 ID:rXT.0elc0
カツーン……
仮面が舞台に落ちる音がこだました。静寂が、辺りに波紋のように広がる。
ペトラ先輩は顔面蒼白だった。誰もが、言葉を出せなかった。
ここから先はエレンがどうにかするしかない。
エレンが劇を進めなければ、ここで全てが終わってしまう…。
エレンとジャンが見つめあう。
長い長い間のように感じたが、実際は10秒にも満たなかったそうだ。
とにかく劇中の私達はこの時、頭の中が真っ白で、何も考えられなかった。
ただ、エレンを除いて。
レナ(エレン)『あ! (指を適当にさす)』
タイ王子(ジャン)『え? (視線逸らす)』
レナ(エレン)『そ、そうですよね。ごめんなさい。私とした事が、はしたない真似をしてしまって。妻の領分を超えるところでしたわ(仮面をさっと拾って顔を隠す)』
タイ王子(ジャン)『え? え?』
レナ(エレン)『では後で、この油だけ買ってきて頂けませんか? 必要な物なので。お願いします。(メモを渡す)それでは、失礼致します! (ダッシュではける)』
タイ王子(ジャン)『れ、レナー?』
タイ王子(ジャン)『………触ってしまった』
タイ王子(ジャン)『この自分が、か?』
タイ王子(ジャン)『……………(真っ赤になる)』
タイ王子(ジャン)も逃げる。早歩きでレナ(エレン)とは反対側にはける。
戻ってきたエレンがペトラ先輩に小声で謝り倒していた。
エレン「すんません、まさか仮面が途中で外れるなんて思わなくて……大幅に台詞を変えたら減点対象になるし、あれ以上の事は出来なかったです(小声)」
ペトラ「上出来よエレン! 良く劇を止めなかった。本当にありがとう……(小声)」
オルオ「おい、でもこの後どうするんだ。台詞を替えずにこのまま話を進めたら、矛盾する箇所が出てくるぞ(小声)」
ペトラ「そそそそそうよね。タイ王子はレナの顔を見て惚れる訳じゃない。あくまで研究を通じて好きになっていくのに、こんなシーンがあったら、あの時素顔を見ちゃったから、好きになったように観客に思われる(小声)」
エレン「細かい部分は流れに任せましょう。今は、とにかくこのまま続けますよ! (小声)」
エレンの汗が凄かった。それはそうだ。ずっと仮面をつけていたのだ。
仮面のせいで顔は余計に蒸し暑く感じていたはずだ。
今は、その汗をタオルで軽く押さえてあげるくらいの事しかできない。
エレン「……サンキュ、ミカサ(小声)」
ミカサ「頑張って(小声)」
もうこの劇の行方はエレンのアドリブ力にかかってしまった。
乗り込んだ船だ。エレンの舵に任せるしかない。
886
:
進撃の名無し
:2014/04/29(火) 23:15:15 ID:GZl34bVI0
とりあえず、ここまで。続きはまた。
887
:
進撃の名無し
:2014/04/30(水) 02:36:34 ID:FyaKheRQ0
ジャンが再び舞台に戻る。
メモ紙を見つめながら、ブツブツ続ける。
タイ王子(ジャン)『この油は……食用油ではない。まさか、本当に? 彼女は機械工学に通じているのか?』
タイ王子(ジャン)『女性でありながら、こういった泥臭い作業が好きなのか?』
タイ王子(ジャン)『いや、でも、彼女はほぼ毎日パーティーには出席していた』
タイ王子(ジャン)『一人でも出席するくらいだ。パーティーが好きなのだろう』
タイ王子(ジャン)『……でもこんなマニアックな油の名前を、何故彼女が…』
タイ王子(ジャン)『分からない。分からない……』
ツナギ姿のレナ王女。ロボットの解体をしている。
タイ王子(ジャン)『?! レナ?!』
レナ(エレン)『あ、おかえりなさいませ、タイ様』
レナ(エレン)『油の方はございましたか?』
タイ王子(ジャン)『ああ、あったよ。それに使うのか?』
レナ(エレン)『ええ。動力部分に適度に油を刺さないと動きが悪くなるので』
そして再び組み立てて見せる。少し時間がかかる。かちゃかちゃと音がする。
レナ(エレン)『はい、完成です。見ててください。ちゃんと動くんですよ』
ウイーン……
これはアシモ君のような小さなロボットを想像して貰うと一番分かりやすいかもしれない。
スカーレット先輩が実際に作ったミニロボットだ。フィギュアとか立体造形に関してはスカーレット先輩はエキスパートなのである。
まさかロボットもいける口だとは知らなかったが、簡単な動き(手をあげたり足をあげたり)が出来る物を作った。
エレンが舞台上でやってるのは、油をさすふりをしながら、一回電池の蓋をあけて、また入れなおしている動作だけである。
タイ王子(ジャン)『おお?! これはすごい。動力源は一体……』
レナ(エレン)『サン・単電池という物です。太陽のエネルギーを蓄えて動力源にしているんですよ。我が国で独自に開発した技術を使っているんです』
タイ王子(ジャン)『…………』
タイ王子(ジャン)『レナ。君が機械に携われる知識を持っているというのは、どうやら本当のようだな』
レナ(エレン)『はい。あくまで基本的な部分ですが、助手程度であれば出来ると思いますが』
タイ王子(ジャン)『では、本当に………一緒に研究室に入ってもらえるのか?』
レナ(エレン)『むしろ、させて下さい。私にも触らせて下さい』
タイ王子(ジャン)『………分かった。では早速今日から、お願いするよ。レナ』
レナ(エレン)『はい!』
888
:
進撃の名無し
:2014/04/30(水) 02:50:38 ID:FyaKheRQ0
それから数日間、夫婦は研究室に籠りっぱなしになり、滅多に人前に顔を出すことが無くなった。
そしてようやく研究の大枠が固まり、立体機動装置の改良版の試作品1号が完成する。
それが完成した時、やっと二人は外の光を目に入れた。
レナ(エレン)『うっ……眩しい』
睡眠不足の頭に朝日は眩しいものである。
タイ王子(ジャン)『ああ……でも、いい朝だ』
レナ(エレン)『あとはこれを実際に動かせるかどうか。協力して貰える兵士を募らないと……(ヨロッ)』
タイ王子(ジャン)『レナ! (支える)』
レナ(エレン)『!』
タイ王子(ジャン)『…………』
レナ(エレン)『だ、大丈夫ですよ(照れる)』
タイ王子(ジャン)『あ、す、すまない……つい(照れる)』
レナ(エレン)『ええっと、ちょっとお手洗いに……』
タイ王子(ジャン)『ああ……どうぞぞうぞ』
889
:
進撃の名無し
:2014/04/30(水) 03:07:29 ID:FyaKheRQ0
むずがゆいシーンがきた。練習中はここもしょっちゅう、エレンが笑い出してしまってNGを連発したものである。
今では大分慣れたが、それでも見ている分にもむずむずするのは否めない。
そしてレナ(エレン)のお手洗い後のシーン。
ここの台詞が少しだけ矛盾点をはらんでしまう。エレンはどうするのか…。
レナ(エレン)『……………』
考え込んでいるようだ。大幅な台詞の改良は減点対象になる。
多少の語尾や言い回しの変更は許容範囲だが、劇の内容を変えるような物はNGだ。
レナ(エレン)『ああ、やっと。タイ様の素顔を見る事が出来た。こんな事ならもっと早く、旦那様の事をもっと知ろうとするべきだったわ』
レナ(エレン)『でも彼に本当の事を打ち明けなくて、いいの?』
レナ(エレン)『彼は本当の自分を見せてくれたのに。私は素顔を隠し続けたまま……』
レナ(エレン)『本当は火傷なんかしていない。アレは縁談を破談にさせる為の嘘だったのに』
レナ(エレン)『もし、彼にいつか、本当の事を知られてしまったら、どうしよう……』
というのが、本当の台本の台詞だ。
これはあくまで火傷のない素顔をタイ王子(ジャン)に知られてない事が前提の台詞まわしだ。
でもここをこのまま言ったら、『さっきバレたじゃん』という話になってしまう。
レナ(エレン)『……………』
エレンはどう、切り抜けるのか。頑張って……。祈るしかない。
レナ(エレン)『ああ、やっと。タイ様の素顔を見る事が出来た。こんな事ならもっと早く、旦那様の事をもっと知ろうとするべきだったわ』
レナ(エレン)『でも彼に本当の事を打ち明けなくて、いいの?』
レナ(エレン)『彼は本当の自分を見せてくれたのに。私は自分を隠し続けたまま……』
レナ(エレン)『本当は火傷なんかしていない。アレは縁談を破談にさせる為の嘘だったのに』
レナ(エレン)『もし、彼にいつか、本当の事を知られてしまったら、どうしよう……』
一部だけ変更した。素顔→自分を変えてきた。この程度の変更なら恐らく許容範囲だろう。
でも、自分を隠す? え? どこを隠しているの?
レナもタイ王子に自分の趣味を曝け出したし、火傷のない顔もバレてしまった。
他に隠している事、あったかしら?
890
:
進撃の名無し
:2014/04/30(水) 03:16:51 ID:FyaKheRQ0
レナ(エレン)『………いっそ、本当に火傷をするべきかしら』
レナ(エレン)『そうね。それが一番、いい方法なのかもしれない』
レナ(エレン)『でも、それが出来なかった私は、本当は臆病者なの』
レナ(エレン)『自分を傷つけるのは怖い、卑怯者』
レナ(エレン)『だから、逃げる事ばかり考える。空想するの。現実から、逃げる自分を』
レナ(エレン)『機械を弄っている時だけは、現実を忘れられる』
レナ(エレン)『夢中でいられる時間が終わると、急に夢から醒めてしまうのよ』
レナ(エレン)『ふー……』
レナ(エレン)『何だか頭がぼーっとするわ。寝不足ね』
レナ(エレン)『少し疲れちゃった。ラボで休ませて貰おう』
ラボに戻ると、タイ王子(ジャン)が先に仮眠用のベッドで眠っていた。
その隣でレナ(エレン)も眠る。そして、暗転へ移動した。
891
:
進撃の名無し
:2014/04/30(水) 03:27:50 ID:FyaKheRQ0
眠い。もう限界。寝ます。続きはまたね。
892
:
進撃の名無し
:2014/04/30(水) 05:05:01 ID:9VMy72EQ0
怒涛の更新ありがとう!
いつも楽しみにしてる
893
:
進撃の名無し
:2014/04/30(水) 17:23:14 ID:FyaKheRQ0
そして少しの月日が流れ。
タイ王子(ジャン)『レナ』
レナ(エレン)『なんでしょう?』
タイ王子(ジャン)『やはり君は立体機動装置を使用するのはやめた方がいいのでは…』
レナ(エレン)『い、いやです! 絶対、完成したら私も一度、使ってみたいんです!』
タイ王子(ジャン)『しかし……いつまで逆さまでいる気だい?』
ブラーン……
レナ(エレン)が立体機動装置の訓練用の装置でひっくり返っている。
レナ(エレン)『うっ……今はバランスを取れませんが、いつかは必ず!』
タイ王子(ジャン)『でもなあ……やはりこの装置を使うにはある種の才能が必要なのかもしれないよ』
と、タイ王子(ジャン)がレナ(エレン)を元に戻してやるが、また、ブラーンと逆さまになってしまう。
タイ王子(ジャン)『ん?』
タイ王子(ジャン)『あ』
レナ(エレン)『え?』
タイ王子(ジャン)『すまない。良く見たら体を支える留め具が緩んでいたようだ。整備ミスだ。ちょっと一回、外すよ』
カチャカチャカチャ
タイ王子(ジャン)『よし、これでいいはずだ。もう一回やりなおすぞ』
今度はちゃんと、レナ(エレン)はブランコのようにバランスを取れた。
レナ(エレン)『やった! これで私も、あの装置が完成したら使う事が出来ますね!』
タイ王子(ジャン)『………本当に大丈夫かな』
レナ(エレン)『文献に残っていた訓練方法がこれ、なんでしょう? 正確に再現して器具を作りましたし。大丈夫ですよ』
タイ王子(ジャン)『うん……』
レナ(エレン)『それに女性も多くこれを使って空を飛んでいた、とあります。大柄な男性より小柄な女性の方が使いやすいのかもしれないですよ?』
タイ王子(ジャン)『でも、失敗したら死ぬよ。確実に』
レナ(エレン)『そ、その為の訓練です。大丈夫です。私、毎日練習しますから』
タイ王子(ジャン)『………やれやれ』
894
:
進撃の名無し
:2014/04/30(水) 17:32:59 ID:FyaKheRQ0
場転。王宮内。
ライ王子(オルオ)がタイ王子(ジャン)に話しかける。
ライ王子(オルオ)『お、久しぶりだな。引きこもり王子』
タイ王子(ジャン)『兄上……お久しぶりでございます(ぺこり)』
ライ王子(オルオ)『夫婦そろって顔を全く見せないとは……アレか? 子作りにでも専念してんのか? (ウリウリ)』
タイ王子(ジャン)『はあ?! 何を馬鹿な事を言ってるんですか!』
ライ王子(オルオ)『隠すなよ〜夫婦で部屋で籠ってやる事なんてひとつだろう。ま、お前にはお似合いのお姫様なんだろ? どうなんだ? 夜の方は』
タイ王子(ジャン)『下世話な話はやめて頂きたいのですが、兄上』
ライ王子(オルオ)『おっと、お節介が過ぎたか。まあたまには俺のパーティーにも顔を出せ。出ないとますます誤解されるぞ。ふふふ』
と、意味深に笑ってからかって退場するライ王子(オルオ)。
タイ王子(ジャン)は仕方なく、一度だけ、レナ(エレン)とパーティーに出席する事を決意する。
895
:
進撃の名無し
:2014/04/30(水) 17:46:22 ID:FyaKheRQ0
場転。王宮内。夜のパーティー。
レナ(エレン)『……どういう風の吹き回しですか? あんなに嫌がっていたのに』
タイ王子(ジャン)『聞かないでくれ。とにかく、今夜だけは出る事にしたんだ』
レナ(エレン)『? はあ……』
はてなが浮かんだままのレナ(エレン)。
そして次から次へやってくる来賓の挨拶。それをにこやかに答えて対応するレナ(エレン)。
タイ王子(ジャン)の方はそっぽを向いて遠巻きにしている。
来賓1(マーガレット)『お初にお目にかかります。私、一度、レナ様とタイ王子様とずっとお会いしたかったのですわ。最近、なかなか顔をお見せ頂けなくて、とても残念でしたから余計に、今日という日を喜びに感じますわ』
レナ(エレン)『ありがとうございます。ずっと席を外していて申し訳なかったわ。いろいろ諸事情がありまして』
来賓1(マーガレット)『いえいえ、分かっていますのよ。新婚ですものね。みなまで、察しておりますわ。うふふふふ』
レナ(エレン)『?』
来賓1(マーガレット)『早く第一子の御子がお生まれになられると、きっと両国の陛下もお喜びになられると思いますわ。うふふ』
レナ(エレン)『え……っと……』
ここでようやく事情を察したレナ(エレン)。赤くなってタイ王子(ジャン)に視線を送って確認する。
タイ王子(ジャン)は微妙な顔をして頷いていた。
レナ(エレン)『そ、それは御神が決める事ですので……おほほほほ』
と、愛想笑いでかわして逃げるレナ(エレン)だった。
そんなレナ(エレン)を遠くから眺める召使い(エーレン)。
そこには明らかに思慕の念が混ざっていた。
896
:
進撃の名無し
:2014/04/30(水) 18:21:40 ID:FyaKheRQ0
パーティー後。自宅の宮に帰還後。
レナ(エレン)『なるほど……二人して引き籠っていたから誤解されていたのですね』
タイ王子(ジャン)『ああ。今度からは面倒だけど、片方ずつ、交互に必ず出席しよう。兄上にいろいろ邪推されるのは面倒だ』
レナ(エレン)『そ、そうですか……』
レナ(エレン)『あの、でも…そういう事でしたら』
タイ王子(ジャン)『ん?』
レナ(エレン)『これからは、一緒に公式の場に出た方が良いのでは』
タイ王子(ジャン)『何で?』
レナ(エレン)『片方だけ社交場に出席すると不仲説が蔓延しますし、それは両国にとってもプラスにはなりません』
タイ王子(ジャン)『そんなに体面が大事かな?』
レナ(エレン)『少なくとも、私にとっては両方引き籠って蔓延した噂の方がまだマシです』
タイ王子(ジャン)『……………そういうもんかな』
と、困った顔をするタイ王子(ジャン)。
タイ王子(ジャン)『自分にとっては正直、どうでもいいんだけどな。そういうのは』
レナ(エレン)『ならこのまま研究の為に再び引き籠りましょう。私はそちらの方が一挙両得ですわ』
タイ王子(ジャン)『うー……』
もっと困った顔をするタイ王子(ジャン)。
タイ王子(ジャン)『分かった。そこまで言うなら仕方がない。パーティーは苦手だが、なるべくレナに協力するようにするよ』
レナ(エレン)『ありがとうございます(ニコッ)』
タイ王子(ジャン)『…………ま、君にはいろいろ世話になったしね』
と、ブツブツ言い訳している。
レナ(エレン)『では今夜も遅いですし、休ませて頂きますわ』
タイ王子(ジャン)『ああ、お休み』
そして夫婦は別々の部屋で寝る。レナ(エレン)が自室に戻ったその時……
897
:
進撃の名無し
:2014/04/30(水) 18:51:02 ID:sBfH9T620
コンコン。
レナ(エレン)『? 何かしら』
レナ(エレン)『タイ様、何か忘れ物でも…』
しかしドアの前に居たのは、あの時の召使い(エーレン)。
レナ(エレン)『こんな夜分にどうしたの? 何かあったのですか?』
召使い(エーレン)『いえ、その……あの……』
レナ(エレン)『あの、そのじゃ分かりません。貴方の主人は? ライ王子のところの召使いよね、あなた』
召使い(エーレン)『………………』
レナ(エレン)『?』
召使い(エーレン)『お、』
レナ(エレン)『お?』
召使い(エーレン)『お慕い申して、おります! レナ様。どうか、無理を承知でお願いしたい。この私を、貴方様の物にして頂けませんか!』
レナ(エレン)『え?』
召使い(エーレン)『この国の法律では、階級の下の者は、上の者同士の金銭のやりとりで所有権を移動させる事が出来るのです。どうか、私を……そちらの宮付きにさせて下さい』
レナ(エレン)『ちょっと待って頂戴。そんな大事な話を夜中にするものではありませんよ。それに貴方、一人でこんなところに来ては、もしそれが主人にバレたら、罰せられるのは貴方の方でしょう?』
召使い(エーレン)『レナ様であれば、きっと、ご内密にして下さると思い、ここに来ました。私も覚悟の上でございます』
レナ(エレン)『………参ったわね』
レナ(エレン)『そんな事は私の独断では決められません。この宮の主人はタイ様であり、私ではありません。貴方を買う権利を有するのは私にはないのですから』
召使い(エーレン)『では、タイ様にどうかお話を御通し下さい。それまでは宮の外で待たせて頂きます』
レナ(エレン)『旦那様はもう、お休みになられました。無理を言わないで下さい。どうか、お引き取りを』
召使い(エーレン)『……………』
レナ(エレン)『…………』
召使い(エーレン)『では、せめて』
召使い(エーレン)『そのご尊顔を拝見させて下さいませんか』
レナ(エレン)『は?』
召使い(エーレン)『レナ様の本当の御顔をどうか……』
レナ(エレン)『………………(はあ)』
レナ(エレン)『私の事情を知った上でおっしゃるのであれば、それは不敬罪として訴える事も出来るのですよ?』
召使い(エーレン)『…………』
レナ(エレン)『…………』
タイ王子(ジャン)『おい、一体何の騒ぎだ』
タイ王子(ジャン)が戻ってきてしまった。
召使い(エーレン)(ビクン)
タイ王子(ジャン)『君は……兄上のところの召使いだったな。何か火急の知らせか?』
召使い(エーレン)『…………』
タイ王子(ジャン)『また、アレか? 兄上の悪戯か? 全く。人の家の中をこそこそ嗅ぎ回らないで欲しいんだが…』
タイ王子(ジャン)『仕方がない。ほら、これで今夜のところは帰れ』
と言って、タイ王子(ジャン)は召使いに小銭を握らせて宮を追い出した。
レナ(エレン)『また? とは…』
タイ王子(ジャン)『ああ、たまに兄上が悪戯で、用もないのに自分の召使いをこっちの宮によこして、人の家の中を嗅ぎ回ったりするんだよ。やめろって前から何度も言ってるんだが……今の子は、前にも何度かうちの宮に来た事がある。面倒だがその度におっぱらうしかないな』
レナ(エレン)『…………』
タイ王子(ジャン)『びっくりさせてしまってすまない。レナも今度から、対応しなくていいからね』
レナ(エレン)『分かりました』
しかしレナには一抹の不安が残るのであった。
898
:
進撃の名無し
:2014/04/30(水) 18:51:52 ID:FyaKheRQ0
劇中劇パートが長くて申し訳ない。もうちょっとだけ続くが、
ここで一旦区切ります。続きはまた。
899
:
滅壊コメント
:2014/04/30(水) 20:05:36 ID:MpPX99vkO
残り101回、応援してるぜ!最高のクライマックスを見せてくれ!
900
:
滅壊
:2014/04/30(水) 21:16:34 ID:MpPX99vkO
900
後はお前がやれ!
お前は天才だ。
決して荒らしてる訳じゃない。応援しただけだ。
901
:
進撃の名無し
:2014/04/30(水) 21:48:26 ID:FyaKheRQ0
レナ(エレン)とタイ王子(ジャン)の仲は順調に良くなっていく。
割と頻繁にパーティーにも顔を出すようになり、下々の間ではレナ(エレン)の評判が良くなっていく。
他の姫様と違って気位も高くなく、優しくて思いやりのある王女だったからだ。
そして人々の間では、次第に、レナ(エレン)の仮面の下の火傷を治して差し上げたいという話が出てきたり、薬を王宮に届けようとする者まで現れる始末。
勿論、それに困ったのはレナ(エレン)自身だった。
タイ王子(ジャン)『受け取ったらダメだよ。キリがない』
レナ(エレン)『わ、分かっております』
タイ王子(ジャン)『ところで………その、火傷の件、何だが』
レナ(エレン)(ギクリ)
ああ、ここも。本当ならタイ王子(ジャン)が素顔を知らない設定で話が進む筈なのに。
既に知られている設定で、どう切り抜けるんだろう。
タイ王子(ジャン)『治したい気持ちがあるなら、名医を探す手配くらいは出来るよ。時間はかかるかもしれないし、完璧には治せないかもしれないが、レナ自身、ずっとこのままでいるのは辛くはないか?』
というのが本当の台本の流れである。
ジャンは一体、ここをどうやって、切り抜けるんだろう。
タイ王子(ジャン)『………』
ああ、考え込んでいる。ジャン、頑張って……。
タイ王子(ジャン)『………………』
ああ、ダメだ。ジャンは長い間を置いている。
ジャンも気づいているのだ。この台詞をこのまま言う訳には行かない事を。
タイ王子(ジャン)『………………………………』
ジャン! 何かアクションを起こして! 出ないと劇が進まない!
902
:
進撃の名無し
:2014/04/30(水) 22:13:56 ID:FyaKheRQ0
その時、ジャンの「あーうー」という態度に、エレンが、
レナ(エレン)『私の事は気になさらずに』
タイ王子(ジャン)『!』
レナ(エレン)『どうか、お願い致します(深々と頭を下げる)』
タイ王子(ジャン)『……………分かった』
うわあ。大幅カットになってしまった。
ジャンの台詞を1個飛ばして、尚且つエレンの台詞まで短くなった。
本当なら、『私にかけるお金があるなら、研究費に回してほしい』という旨の台詞も入るのだが、そこも全面カットする事にしたようだ。
ペトラ『う、うまい……エレン、これで何とか、タイ王子に素顔の事を触れさせない空気を作ったわ(小声)』
オルオ『ああ、ツッコミたくても突っ込めない空気を作っちまった。タイ王子は、何となく事情を察した風になってるぞ(小声)』
減点対象にはなるだろうが、とにかく劇の大筋を狂わせない方向にはなったようだ。
タイ王子(ジャン)『レナがそういうのなら、そうしよう』
タイ王子(ジャン)『ではせめて、他の事で何か、欲しい物とか、ないか?』
レナ(エレン)『欲しい物ですか?』
タイ王子(ジャン)『ああ、出来るだけ手配させよう。可能な限り』
レナ(エレン)『では……新しい六角レンチを用意下さいませ。5ミリ以下の小さいサイズがないのは不便でしたし』
タイ王子(ジャン)『ああ…そうだな。ついでにレナ用の工具も一式揃えないといけないな』
タイ王子(ジャン)『では早急に手配しておこう(タタタ…)』
タイ王子(ジャン)が先にはける。
レナ(エレン)が舞台に残って、しばし俯いている。
そしてタイ王子(ジャン)を追いかけて、二人は舞台袖にはけた。
903
:
進撃の名無し
:2014/04/30(水) 22:23:39 ID:FyaKheRQ0
ジャン「もうどうすんだよこの先……(小声)」
エレン「し、仕方ねえだろ! このままいくしか…! (小声)」
ペトラ「うん、今のは良かったわよ。エレン、でかしたわ(小声)」
オルオ「だがペトラ。話の筋が少しずつズレている以上、減点対象は免れねえ。ここから先は、台本無視でもいいから、とにかくエレンのアクションに任せる方向にしないか? (小声)」
ペトラ「そうね。もうこうなったら腹括るしかないわ。エレン、貴方がこの舞台を指揮して。皆を導いて(小声)」
エレン「……すんません、オレのせいで」
ペトラ「ううん。私が甘く見てたのが悪いのよ。最後の方で素顔を見せるシーンを優先するあまり、エレンの素顔に特殊メイク入れなかったんだもの」
万が一の事を考えて、やはり特殊メイク(火傷入り)を実際に入れて仮面をかぶるべきだったのだ。
もしそうしていれば、先程の仮面が外れたシーンも辻褄を合わせられたのに。
メイクを外す時間が間に合わないかもしれない事を考えて、火傷の細工のシーンは、あくまでそういう『設定』という風の演出にしたのがここにきて悪い方向に転がってしまったのだ。
904
:
進撃の名無し
:2014/04/30(水) 22:47:01 ID:FyaKheRQ0
役者さんは舞台に上がる際に『ドウラン』という油の濃いメイクを入れる。
それは照明の熱から顔を守る為であり、またそれによって、いろんな役どころを演じる事が出来る。
エレンも仮面の下には女性の顔を作っていた。
エレンの素顔は直接的には観客には見せないが、鏡越しに一瞬だけジャンがエレンの素顔を見るシーンを入れていたので、その関係で最初から素顔の上に仮面をかぶっていたのだ。
お客さんの席の角度によってはエレンの素顔が見える可能性もあるし、真実がバレるシーンで、その設定を無視したらそれこそ劇が進まない。
故に素顔を優先した。これはリヴァイ先生が言った『裏方の動きを省略する』過程で行った物である。
リヴァイ先生の提案が、悪い方向に転がった、とも言えるのだが…。
今更そんな事を言ってもどうしようもない。
今、舞台で私達の公演を見て肝を冷やしているのはリヴァイ先生自身だろう。
でも、先生の失敗だとしても、それを受け入れて行ったのは私達、生徒。
修正する事が出来るのも生徒の私達だ。
905
:
進撃の名無し
:2014/04/30(水) 23:29:09 ID:FyaKheRQ0
すみません。出来ればキリのいいところまで書きたいけど、
明日は予定有るんで、夜更かしできない。時間ない。
演劇大会編を出来れば1000レス以内に収めたいとは思いますが、
途中でコメント入っちゃうと、レスが(絶対)足りなくなるので、
ここから先はどうか、気持ちを押さえてレスをお控え下さい。ご協力お願い致します。
あ、ちなみに1000超えても、次スレ立てて続きは書きます。
2はある。予告しておきます。
………もし収まらなかったら、2で続けるけど、
すっごくキリが悪くなると思う。まあ、そん時はその時で。ではまた。
906
:
進撃の名無し
:2014/05/01(木) 18:50:47 ID:4HlcJnpk0
エレン「………」
エレンは何か考え込んでいる。そしてふと、私の方を見た。
エレン「……ミカサ(小声)」
ミカサ「何? (小声)」
エレン「お前ならどうする? (小声)」
ミカサ「私? (小声)」
エレン「もし、自分の好きな人……愛する人に隠し事がバレてしまったら、それをずっと誤魔化し続けるか?」
私は、即座に首を左右に振った。
ミカサ「いいえ。嘘を突き通せる程、私は器用ではない……ので(小声)」
エレン「………だよな(小声)」
エレンの顔が、何故か確信を得たように笑った。
私の言葉で何かいい案を思いついたようだ。
エレン「ペトラ先輩、この後のシーン、少しアレンジを入れさせて下さい(小声)」
と、前もって言ってエレンは自分の案を説明し始めた。
レナ(エレン)がお風呂に入って脱衣所を上がって、鏡の前で着替えている。
そこにタイ王子(ジャン)が偶然やってくる。その時、タイ王子(ジャン)は鏡越しにレナ(エレン)の火傷のない素顔を初めて目にする。
その気配に気づいて慌てて仮面を被りなおす、というのが、当初の予定のシーンだったが、実際の劇中では既にその件はバレてしまっているので、そこに話の辻褄を合わせて演技も変えていくしかない。
エレンはどう、ここを変えていくのか。ぶっつけ本番でやるしかないが…。
レナ(エレン)『あっ………』
ここの驚き方が、少し弱くなっていた。台本では『あっ……!』である。
レナ(エレン)『タイ……様』
ここも、『タイ……様?!』と大げさに困惑するのが本来の演技。
でもエレンは平然としている。
同じセリフでニュアンスが大幅に変わっていた。
そして何より、本来ならここで仮面を被りなおすのに、エレンはそのまま続行した。
顔を隠さないでいるのだ。つまり、観客にはエレンの顔が丸見えである。
観客は少しざわめいている。エレンの顔を凝視しているのだ。
この変更が意味するのは、恐らく重要な何か。
タイ王子(ジャン)『……顔……火傷……してない』
ここも本来なら『……顔……火傷……してない?』と驚くところだ。
でもジャンもニュアンスを変えている。そうか。
レナ(エレン)の素顔を見るのは2回目だから「やっぱり、そうだったのか」という確信を持つシーンに変えたのか。
レナ(エレン)『…………』
タイ王子(ジャン)『あの時は、嘘をついていたのか』
ここも本来なら『あの時は、嘘をついていたのか?』という疑問を浮かべる。
そこも確認する意味での、自分に対する説明的な台詞に変更になった。
907
:
進撃の名無し
:2014/05/01(木) 18:52:41 ID:4HlcJnpk0
レナ(エレン)『………はい』
タイ王子(ジャン)『……もしかして、兄上に見初められるのが嫌で……か?』
ここはそのまま。
レナ(エレン)『はい。加えて言うなら、カプリコーン国との婚儀そのものを壊すつもりでした』
タイ王子(ジャン)『……すまなかったね。そうとは知らず、自分が代わりに君を貰ってしまった』
レナ(エレン)『いいえ。それは…』
タイ王子(ジャン)『よほど、結婚が嫌だったのだろう? 今からでも遅くはない。君が望むのであれば、今の関係も解消して……』
レナ(エレン)『それは嫌です! (食い気味に)』
タイ王子(ジャン)『!』
レナ(エレン)『その……離縁になれば両国の関係が悪化しかねないですし、その…今更そんな事をする意味が…』
タイ王子(ジャン)『しかし自身の気持ちを犠牲にするのは意味がない。君自身に無理強いをさせているのだとしたら…』
レナ(エレン)『無理はしておりません! (再び食い気味に)』
タイ王子(ジャン)『? そ、そうか…では、今まで通り、私の妻でいると、いうのか』
レナ(エレン)『……はい』
この時、エレンは赤面して、下を俯いた。
か、可愛い。やばい。何、あの生き物。と、女の私がそう思ってしまった。
タイ王子(ジャン)『分かった。しかし、君が本当は火傷を負ってなかった事が、もし兄上にバレたら……………面倒だ。その仮面は今まで通りつけ続けてくれるか?』
レナ(エレン)『それは、勿論です(こくり)』
タイ王子(ジャン)『………二人きりの時は、外していても構わないが』
レナ(エレン)『え?』
タイ王子(ジャン)『あ、いや、何でもない! そこは君の自由にしていてくれ!』
と言って、先に舞台をはけるタイ王子(ジャン)。
レナ(エレン)は照れくさそうに仮面をつけなおす。そして追いかけるようにはける。
レナ(エレン)の素顔を前面に観客側に押し出す、という大幅なアレンジを加えた事以外は、ほぼ台本通りに進んだ。
ここから先はもう、今までの台本通りに進める事が可能だ。
山場を乗り越えて、エレンが袖でふーっと息をついた。
ペトラ「エレン! 良くやった! 今のシーンのおかげで流れを修正出来たわ! (小声)』
オルオ「ああ。ここから先は台本通りでいける。もう心配いらないな(小声)』
エレン「……まあ、演じてるのが男だって全面的にバレたでしょうけどね(小声)」
ペトラ「そこはもう、いいわよ。問題はそこじゃないもの(小声)」
オルオ「ああ。問題は男だろうが女だろうが、レナを「美少女」として観客が認めたかどうかだ(小声)」
そうなのだ。エレンが仮面をつけていた理由はもうひとつある。
レナを美少女設定にしてしまった以上、演じる人間がある程度「美少女」でないといけない点だ。
もし美少女ではない人間が美少女役を演じたらどうなるか。
大抵の観客は「あの程度で美少女? ぷっ!」と、言って嘲笑するだろう。
そうなると劇の印象が悪くなってしまう。例えどんなに演技力があっても、顔のインパクトでマイナスになってしまうのだ。
加えて言えば、例えどんなに美少女でも、100人中100人が美少女と認めるような少女はごく稀にしかいない。
なので劇中は観客側がそれぞれ思う、理想の美少女をレナの仮面の下に想像させる方が良いと思ったのだ。
908
:
進撃の名無し
:2014/05/01(木) 20:51:45 ID:4HlcJnpk0
エレンの顔は、私から見たら十分美少女だと思う。
でも、難癖をつける人間は必ずいる。「ブスに美少女役をさせるな」という中傷だってくるかもしれない。
そのリスクを背負っても、エレンは話の筋を修正する方を選んだのだ。
そしてお話は進み、召使い(エーレン)が遂にレナ(エレン)の秘密を知り、それを主人であるライ王子(オルオ)に進言する。
ライ王子(オルオ)はレナ(エレン)の秘密を知れば、自分の妃に迎え入れようとするだろう、と。そう考えて。
案の定、ライ王子(オルオ)は真実を知ってブチ切れる。
ライ王子(オルオ)『なに?! それは真か? あのレナが、本当は火傷など負っていないと?』
召使い(エーレン)『はい、確かに。この耳で聞き、目で確認しました。あの仮面は、偽りでございます』
ライ王子(オルオ)『という事は何か? タイの奴は、その、美少女を自分の嫁にしているのか?!』
召使い(エーレン)『はい、毎日仲睦まじく、過ごされておられます』
ライ王子(オルオ)『うぬぬ……許せん! タイのくせに生意気だ! 弟の身分でこの俺の嫁より美女を嫁にするとは……』
悪い顔をする、ライ王子(オルオ)。
ライ王子(オルオ)『では、その真偽をこの目で確かめたい。タイの奴に気づかれないように、レナを連れてまいれ!』
召使い(エーレン)『御意』
レナ(エレン)が攫われて、冷静でいられないタイ王子(ジャン)は正面突破では恐らく門前払いを食らうと思い、別の手段でレナ(エレン)を奪還する事を決意する。
そう、開発を進めていた「立体機動装置」を真夜中に使用する事にしたのだ。
技術屋(アーロン)『正気ですか?! 昼間ならまだしも、夜中にこいつを使うなんて自殺行為ですぜ?!』
タイ王子(ジャン)『………(無視)』
カチャカチャカチャ……
技術屋(アーロン)『本気、なんですね』
タイ王子(ジャン)『ああ、今回はばかりは兄上もやり過ぎた』
タイ王子(ジャン)『もうここには戻らない。今までありがとうな』
技術屋(アーロン)『分かりました。では……ご武運を!』
タイ王子(ジャン)が夜の王宮を飛び回り(ここはスクリーンで表現)、ライ王子(オルオ)の宮まで単身潜入する。
ライ王子(オルオ)とタイ王子(ジャン)の真夜中の決闘が始まった。
フェンシングに近い動きをどこかに入れたいと話していた件はここに入れられる事になった。
数分に渡る戦いの末、タイ王子(ジャン)が見事に勝って見せる。
ライ王子(オルオ)『な…お前、引き籠ってばかりいたくせに、どこにそんな力が!』
剣術で負けたライ王子(オルオ)はショックで青ざめる。
タイ王子(ジャン)『………それを教える義理はない』
タイ王子(ジャン)『レナは私の妻だ。例え兄上であろうと、譲る気はない。レナを返して頂きたい!』
レナ(エレン)『!』
タイ王子(ジャン)『レナ、大丈夫か。何もされなかったか』
レナ(エレン)『はい。何もされておりません』
タイ王子(ジャン)『良かった。本当に……』
タイ王子(ジャン)がレナ(エレン)を確保して背景セットの方に向かう。
ライ王子(オルオ)『待て! タイ、そこの窓から降りるつもりか?! ここは7階だぞ! 落ちたら死ぬぞ?!』
タイ王子(ジャン)『自分の事は死んだ事にして下さい。さようなら……兄上』
レナ(エレン)『あ……あー?!』
二人で窓の外に飛び降りる(背景セットの裏側に移動するだけ)事で脱出する。
しかし立体機動装置のおかげで、二人は無事に地面に着陸する。という事にする。
909
:
進撃の名無し
:2014/05/01(木) 20:55:44 ID:4HlcJnpk0
レナ(エレン)『こ、怖かった……(ドキドキ)』
タイ王子(ジャン)『ごめん。まだ立体機動装置を使い慣れてなくてね』
レナ(エレン)『いいえ、大丈夫です……(フラフラ)』
タイ王子(ジャン)から離れて立とうとするものの、腰が抜けているレナ(エレン)。
タイ王子(ジャン)『! …………』
ここで、タイ王子(ジャン)の姫様抱っこのシーンだ。
腰の抜けたお姫様を抱えて、背景セットを通って舞台袖にはける。
お姫様抱っこをした瞬間、観客が「きゃああ」と歓声をあげた。
やっぱりここはお姫様抱っこで正解だったようだ。
レナ(エレン)『た、タイ様……』
タイ王子(ジャン)『ん?』
レナ(エレン)『その、どちらに行かれるんですか? その……そっちはタイ様の宮の方向では……』
タイ王子(ジャン)『うん。まだ決めてない。何処へ行くかは』
レナ(エレン)『え?』
タイ王子(ジャン)『レナの行きたい場所でいい。王宮以外の場所なら何処でも。こいつがあれば、どこへだって行けるよ』
と、言ったのは腰にぶらさげた立体機動装置。
この辺りからBGMが変わる。
流れるのは、ライク・アンド・シェルの『自由への招待』だ。
タイ王子(ジャン)『………………』
タイ王子(ジャン)『……………………』
長い、長い間が入る。早く言ってー! ヘタレ王子!
タイ王子(ジャン)『い、一緒に………』
レナ(エレン)『はい!』
タイ王子(ジャン)、がくっと、する。
まだ言ってないのに。食い気味でOKを貰ってしまったのだ。
その瞬間、湧き上がる、小さな笑い。
照れくさそうに笑う、タイ王子(ジャン)。
二人が完全にはけてから、音声だけが響く。
タイ王子(ジャン)『早いところ、二台目の立体機動装置、作らないとな…』
タイ王子(ジャン)『レナ、ちょっと重いし……』
バシッ! 叩かれる音。
タイ王子(ジャン)『…………ごめん』
…………………………。
お、終わった。
終わったああああああああああ!
ライク・アンド・シェルの『自由への招待』がいい感じの余韻を残してエンドロールだ。
幕が徐々に降りていく。終わった。とにかく終わったのだ。
ハプニングを切り抜けて、何とか終わった。
幕が完全に降りた直後、エレンとジャンが同時にぶっ倒れてしまった。
それを慌ててペトラ先輩とオルオ先輩が抱えて撤収する。
オルオ「急いではけるぞー!」
一同「「「「おー!」」」」
私達は、風のように舞台を撤収したのだった。
910
:
進撃の名無し
:2014/05/01(木) 21:15:11 ID:4HlcJnpk0
控室に戻ってわいわい言いながら、メイクや衣装を外して制服姿に戻る。
大道具の私達は次の学校の手伝いがあるのでまだ仕事が残っているが、役者達はここで自分の役目は終わったようなものだ。後はそれぞれの係に戻るだけである。
エレン「あーしんどかった。まじで心臓止まるかと思った……」
ジャン「同感だ……仮面外れた時、やばかったな……」
マーガレット「にしても変ですね。仮面の留め具、入念にチェックしてたのに」
スカーレット「………留め具じゃなくて、紐の方がなんか怪しい」
マーガレット「え?」
スカーレット「まさかと思うけど……誰かに悪戯されたのかな」
ペトラ「えええ? 嘘?! 誰に?!」
マーガレット「考えられるのは他校の生徒じゃないですか? うは! まるで硝子の仮面みたいな展開ですね〜」
ペトラ「笑ってる場合じゃないわよ! もしそうだとしたら許せん! 犯人捜しちゃる!」
オルオ「やってる場合か! もう、舞台で仮面が外れるのを見せちまった以上、もし勝ち上がったとしても、この流れのまま行くしかねえぞ」
ペトラ「うっ……そうね。アレはアレで確かにいい演出にはなったけど」
ペトラ「にしても、ごめんね。エレン……結局、顔出ししちゃった」
エレン「あーもう、しょうがないっすよ。ま、美少女設定に説得力がなくなったとしても、そこはそこで」
ミカサ「そんな事はない。エレンは美少女だった」
マーガレット「そうよ! エレンは綺麗だった。だからきっと大丈夫よ」
ジャン「これが本当に女だったら、まあ、オレも放ってはおかなかったかもな」
………………。
その発言後、マーガレット先輩の目が光った。怖い。
マーガレット「やだ、ジャン。ちょっと目覚め始めてる? もしかして、そうなの?」
ジャン「ちょっと……その目やめて下さい! あくまで「女」だったらって話ですからね?!」
マーガレット「隠さなくてもいいのにーうりうり♪ 先輩、そういう話が大好物なのよ?」
エレン「………(冷たい目)」
ジャン「エレンもそんな目で見るな! 悪かったよ! 今のは無しだ!」
と、控室でわいわいおしゃべりしながら(でも手は休めない)ドウランを落としたり、掃除をしたりする。
911
:
進撃の名無し
:2014/05/01(木) 21:53:46 ID:4HlcJnpk0
そんなこんなで私達の出番は終わり、大道具の私は他校の公演を手伝った。
全ての公演が終わり、結果発表までしばし時間が空いた。
その間、舞台裏の後片付けをしていたら、大道具の先輩と思われる他校の生徒に声をかけられた。
大道具3年「ねえねえ、君、講談の1年だよね」
ミカサ「…………(無視)」
作業中だ。無駄話をしている場合ではない。
大道具3年「もう公演は終わったんだし、そう急いで片付けなくてもいいだろ? 後で、メルアド……」
リヴァイ「おい、そこの3年」
大道具3年「は、はい!」
リヴァイ「さっさと終わらせろ。場見の外し忘れをするなよ」
大道具3年「は、はいー(くそー)」
よしよし。遠足も帰るまでが遠足である。後片付けもちゃんとしないといけない。
そんな中、私の耳にある噂話が入ってくる。
観客女子1「ねえねえ、集英の演劇ってさ。どっかで似たような話、見た事ない?」
幕は下ろしたままでも、観客の声がこっちまで聞こえる事はある。
恐らく前列のお客さんが話しているのだろう。
観客女子2「入れ替わりネタだからじゃない? よくあるじゃん。その手の話」
観客女子1「いや、そういう次元の話じゃなくて……ああもう、はっきりと思い出せないんだよね」
観客女子2「でも集英って「創作脚本」でしょ「既存脚本」の方じゃないから、ちゃんと誰かがオリジナルで書いてるんじゃないの?」
観客女子1「うーん、でも、どっかで見覚えあるんだよねー。どこでだったかなー?」
観客女子2「え? それってまさか、既存の脚本をパクッて創作って言い張ってるかもしれないってこと?」
観客女子1「え? あー……もしそうなら、やばくないかな? バレたら失格になるんじゃないの?」
観客女子2「ええ?! 集英に限ってそれはないでしょ……多分」
観客女子1「そ、そうだよね。私の勘違いかな? あはは」
今の話の半分くらいしか理解出来なかった私は、特に気にも留めずに手を進めていたが、マーガレット先輩の目の色が変わった。
マーガレット「…………」
ミカサ「先輩?」
マーガレット「確かに、私も見覚えがある。あれと似たような話をどこかで……」
マーガレット「!」
マーガレット「ミカサ、ごめん! 後、お願い!」
ミカサ「え?」
マーガレット先輩が仕事を放棄して駆け出してしまった。
リヴァイ「おい、チーフ! どこに行く気だ!」
マーガレット「クソしてきます!」
リヴァイ「ならよし!」
ならいいんだ。ちょっとびっくりした。それもそうか。
912
:
進撃の名無し
:2014/05/01(木) 22:11:55 ID:4HlcJnpk0
にしても、一体どうしたんだろう。何かあったのだろうか。
スカーレット「………いや、まさか。でもねえ」
ミカサ「スカーレット先輩、どうしたんですか?」
スカーレット「いやね。集英が既存の話をパクッて創作だと言い張ってるかもって話。幕の外で話してた子、いたじゃない?」
ミカサ「その、既存と創作の違いって何ですか?」
スカーレット「ああ、劇はね、既存の話。つまり既に世の中に発表されている作品を舞台化するパターンと脚本を自分で書く場合と二種類の舞台があるの。私達がやったのは「創作脚本」の方ね。今は創作脚本の方が多いのかな? 既存のやつだと、舞台化する時に、著作権料を支払う場合もあるのよ」
ミカサ「タダで舞台化してはいけない…という事ですか?」
スカーレット「そう。だからもし万が一、世に出ているお話を勝手にパクッて、舞台化したら、それは著作権の違反になるのね。だから、その辺の審査は厳しいはずだけど…集英高校、限りなくクロに近いシロ、なのかもしれないわ」
ミカサ「そ、それは卑怯なのでは……」
スカーレット「ええ、卑怯よ。でも、審査員が気づかなかった場合はシロよ。その確認に行ったんじゃないかな? マーガレットの家には、週刊少年ジャンプーのバックナンバーが1年分、山積みされてるし」
ミカサ「1年分?!」
それはすごい量だ。でも、そんなのを今から確認して間に合うのか?
スカーレット「大丈夫。うちらには、OBとOGという、強い味方がいるから。今頃応援を頼んでいるはずよ」
何だかとんでもない事になってきたような気がする。
そしてマーガレット先輩が汗だくで帰ってきた。そしてぐっとサイン。
マーガレット「イザベル先輩達に連絡とってきた。うちの家に寄って貰って、怪しい号をこっちに持って来てくれるって。役者組の方に確認作業任せてみる。もし黒だったら、絶対訴えてやる!」
ミカサ「ほ、本当にパクってるんですか?」
マーガレット「話の大筋はかなり。設定も似てる。審査員の人達は年配の方が多いから、気づかないとでも思ったのかしら。うふふふ……オタクなめんなよ」
と、マーガレット先輩の顔が怖い。
そして後片付けを済ませて控室に戻ると、エレンとジャンが「確かに似てるかも?」と頷いた。
エレン「あーそう言われれば、この漫画の金魂の話に似てるかもな。でも、設定そのものはかなり弄ってなかったか?」
ジャン「微妙なラインだなー…パクリと言われればパクリにも見えるが、違うと言い張られたら、認めざる負えないような…」
マーガレット「でも台詞の独特の言い回しとか、似てなかった? 絶対これ怪しいよ!」
ガーネット「そうねえ……でも一番の違いは「あまんと」が出てこなかった点じゃない?」
スカーレット「そうね。SF要素は全部カットされていた。というか、ノリには金魂の同人みたいな?」
ガーネット「オマージュですって言い張られたら、こっちはどうにもならないわよ」
マーガレット「うぐっ……」
マーガレットが非常に悔しそうだ。
913
:
進撃の名無し
:2014/05/01(木) 22:48:23 ID:4HlcJnpk0
マーガレット「悔しいいいいい! プロの漫画のネタを舞台脚本化したら面白いに決まってるじゃない! そんなの勝てる訳ないわよ!」
スカーレット「まあまあ……でもこれって、審査員の中で誰かが気づく可能性もあるよ?」
マーガレット「でも審査員の人達、年食ってる人ばっかりだったわよ。ジャンプー読んでいる世代がいるとは思えないけど」
オルオ「そこは読んでいる審査員がいると信じるしかねえだろ。……賭けだが」
ペトラ「……そうね。ここで私達がうだうだ言ってても仕方がない。このジャンプーをもって直訴しても、私達では……」
リヴァイ「ふむ。だったら俺が一応、提出しておこう」
その時、ひょいっと戻ってきたリヴァイ先生がジャンプーを持って行った。
リヴァイ「これが証拠なんだろ? 俺たち教員は劇の点数をつける訳じゃないが、一応、出すだけ出してみる」
マーガレット「先生!」
リヴァイ「まだ審査中の筈だ。間に合えば、空気を変えられるかもしれん」
と言ってリヴァイ先生が出て行ってしまった。
残された私達は、審議の時間、ただ待ち続けるしかなかった…。
チクタク。チクタク。
全ての審査が終わり、いよいよ結果発表の時間になった。
私達はやれるだけの事はやった。後は祈るしかない。
会場は生徒達で埋まっている。神聖な空気が漂っていた。
審査員『では、審議の結果を発表させて頂きます』
ドクン……ドクン……ドクン……
審査員『小学館高校………優良賞』
優良賞はまあ、努力賞のようなものだ。
A会場の中で一番良かった、つまり1位のみが九州大会へ行ける。
A会場、B会場でそれぞれ1校ずつ。それを2日間行うので、計4校が九州大会へ行けるのだ。
審査員『竹書房高校………優良賞』
審査員『集英高校………優良賞』
ざわっ……。
空気が動いた。観客の予想は恐らく集英高校だったのだろう。でも集英は予選敗退だ。
914
:
進撃の名無し
:2014/05/01(木) 23:04:54 ID:4HlcJnpk0
審査員『岩波高校………優良賞』
審査員『偕成高校………優良賞』
審査員『講談高校………最優秀賞』
聞き間違いではない。
勝った。
私達の、勝ちだ。
審査員『更に講談高校には舞台美術賞の方も同時に贈られます。では、壇上へどうぞ』
パチパチパチ……
トロフィーを受け取った先輩達だ。ペトラ先輩は信じられない顔をしている。
席に戻ってからもまだ、顔色が戻っていなかった。
審査員『では続きまして、総評に移らせて頂きます』
審査員『審査委委員長から、お願いします』
マイクを受け取って審査委委員長が話し始めた。
審査委員長『えー今回の演劇大会ですが、非常にバラエティに富んだ物を見せていただきました』
審査委員長『ギャグ、シリアス、恋愛、ミステリー、悲恋、ファンタジー。あらゆる要素を見せてもらったといえるでしょう』
審査委員長『ただ、まだまだ彼らにも未熟な部分もあります。特に基本的な発声がまだ、出来てない高校もありました』
審査委員長『しかし後半、総合的に良くなっていった高校もあり、弱点を克服していく様も見せて貰いました』
審査委員長『演劇は総合芸術であり、ひとつの芸に秀でていればそれで完成するものではありません』
審査委員長『役者、裏方、衣装、音響、照明、そして演出。どれを欠いても劇としては成り立ちません』
審査委員長『そういった意味では、チームワークが問われる球技スポーツと通じる物があるでしょう』
審査委員長『今回、審査員の中でも、意見がかなり分かれました』
審査委員長『テニスで言うならば、完成された熟年のオールラウンダーと、若いサーブアンドボレーヤーの戦いに似ていました』
審査委員長『戦況は、オールラウンダーの方が優勢ではありました。しかし……』
審査委員長『後半、若きサーブ&ボレーヤーの、サーブだけではなく、ボレーの方も活きてきた』
審査委員長『結果は、紙一重でした。しかし今回はその紙一重が明暗を分けました』
審査委員長『そういう意味では、ヒロインをあえて男が演じるという劇も少なくなっていると思います』
審査委員長『私達は今回、演劇の原点に還り、彼の演技力を評価し、彼の今後に期待して、今回は特別に彼に主演特別賞を与えたいと思います』
審査委員長『エレン・イェーガー君、壇上にどうぞ』
ざわざわざわ……
すっぴんのエレンが壇上にあがると、ざわめきが更に広がった。
「え? 男?」「嘘だろ?!」という悲鳴に近い声がひそひそと聞こえる。
915
:
進撃の名無し
:2014/05/01(木) 23:22:33 ID:4HlcJnpk0
審査委員長「私は本気で女性が演じていると途中まで勘違いしていたよ」
エレン「え?」
審査委員長「『エレン』という名前は女性に多いじゃないか。まあ、男性にもいなくはないが。君の演技は大変素晴らしかった。これからも頑張って下さい」
エレン「あ、ありがとうございます……(照れる)」
パチパチパチ………
審査委員長『そして講談高校は、舞台美術に関しても一切、手を抜かなかった。背景セットは当然だが、小道具に対する愛情は他の高校の群を抜いていた。その点も評価したいと思います』
マーガレット先輩達は顔を赤くしていた。褒められ慣れてないらしい。
審査委員長『勿論、他の学校も素晴らしかった。しかし、勝負は紙一重の世界です。その一歩先の評価を得るには、多くの時間を犠牲にする事でしょう。しかしその経験は、皆さんの血となり肉となり、更なる今後に繋がっていく事になります。敗退した側も、勝ち上がった側も、今後も弛まぬ努力を続けて下さい。では今回はこの辺で総評とさせて頂きます』
パチパチパチ………
大会が終わって気合が抜けた。
皆、ぼーっとしながら会場を後にしている。
ペトラ「…………」
トロフィーを持ったまま、まだ実感の沸かない様子の先輩達だった。
ペトラ「………結局、脚本賞は、集英が持って行っちゃったわね」
そう。舞台美術とは別に、脚本賞というものもあるそうで、そっちは取れなかったのだ。
ペトラ「ま、そらそうよね。素人が書いた脚本だもの。粗があって当然よね」
マーガレット「というか、パクリ疑惑があるのに脚本賞って……」
リヴァイ「ああ。会議では一応提出したが……そもそも「入れ替わりネタ」自体が古くからよくある手だという事になってな。あの程度でパクリだとか何とか言ってたら、他の劇も似たような要素があるから、という話になったんだ」
マーガレット「そうですか……」
一番残念そうなのはマーガレット先輩である。
916
:
進撃の名無し
:2014/05/01(木) 23:53:52 ID:4HlcJnpk0
ちゃららら〜らら〜らら〜らら〜♪
リヴァイ「ん?」
電話だ。リヴァイ先生の携帯電話のようだ。
リヴァイ「ああ、そっちも終わったか。B会場は……白泉高校か。分かった」
ぴっ。
リヴァイ「ファーランから連絡があった。B会場は白泉高校が勝ち上がったそうだ」
オルオ「今年もやっぱりきましたね」
ペトラ「強いわね。さすが古豪」
ミカサ「確か、白泉は女子高でしたよね」
記憶を引っ張り出す。確か白泉は古くからあるお嬢様女子高校だった筈。
制服がすごく可愛らしかったのを覚えている。
リヴァイ「ああ。あそこは大女優、チグサ・ツキノカゲを輩出した演劇の名門校だ」
今は往年の女優だが、60歳を過ぎてもなお、20代の役をやったりする通称「お化け女優」の異名を持つ。
あの女優さんの出身の高校なら、確かにライバルとしては手ごわいかもしれない。
リヴァイ「九州大会では今回の失敗の反省点を踏まえていろいろ調整するぞ」
一同「「「「はい!」」」」
リヴァイ「今日は全員、疲れただろう。早めに帰って休………」
と、言いかけたその時、
ハンジ「やっほー! リヴァイお疲れー!」
エルヴィン「お疲れ、リヴァイ」
ニファ「お疲れ様です」
女子体操部員「「「お疲れ様でーす」」」
男子体操部員「「「お疲れ様でーす」」」
リヴァイ「お前ら……何でこっちに」
ハンジ「今から打ち上げやるんでしょー? カラオケ店押さえておいたから、皆で行きましょうか!」
リヴァイ「ちょっと待て。こっちは疲れ切ってるんだぞ。早めに帰って休ませて……」
ハンジ「ええ? ダメだよーもう予約しちゃったし。いいじゃん、引率いるんだし」
リヴァイ「よくねえよ……こっちは一日中、フル稼働で動いて………」
ぐう………。
リヴァイ先生の(恐らく)腹の虫が、鳴った。
リヴァイ「……ちっ」
ハンジ「リヴァイ、素直じゃないねえ。お腹減ってるじゃない。ほらほら、カラオケ店でご飯食べればいいじゃない! 皆もすぐ、お腹に何か入れたいでしょう?」
エレン「まあ、本音を言えば……」
ジャン「弁当だけじゃ足りなかったのは事実です」
ハンジ「じゃあ決まりだね! 体操部と合同だけど、いいよね?」
オルオ「別にいいですよ。でも金は出しませんよ」
ハンジ「おっと、奢られる気満々だね! いいよ! 今日はエルヴィンいるし」
エルヴィン「慰労会だ。遠慮はいらないよ」
一同「「「あざーっす」」」
という訳で、私達はそのまま会場を後にして、団体でカラオケ店で打ち上げをする事になってしまった。
917
:
進撃の名無し
:2014/05/02(金) 00:19:56 ID:VspzaOfE0
わいわいわい。ええっと、何人いるんだろう。
演劇部と体操部の合同打ち上げ会なので、………数えるのが面倒だ。
多分、30人くらいはいるだろう。部屋を二つに分けて、適当に分かれて、ご飯を食べながら、カラオケ大会だ。
演劇部員はとにかく先にご飯を食べた。歌は体操部が殆ど歌っている。
リヴァイ先生もお腹が減っていたようだ。ガツガツ食べている。
私も遠慮はしない。このポテト、うまい。から揚げとか、摘まみやすいものをどんどん注文して食べていった。
ニファ「リヴァイ先生、差し入れです(すっ)」
手作りのクッキーを差し出してきた。ああ、アルミンによく似た彼女だ。
ニファ「先生の好きなアールグレイも持って来てますよ。どうぞ」
リヴァイ「ああ、ありがとう。頂く」
おおっと、ペトラ先輩の目が一気に険しくなった。オルオ先輩は心配そうに見つめている。
ペトラ「ちょっとニファ?! こんなところで得点稼ごうなんてずるいわよ?!」
ニファ「あら? 何の事ですか?」
ペトラ「わざわざ差し入れを持参する辺り計算してるでしょ!」
ニファ「そんな……計算、だなんて。たまたまですよ(ニコッ)」
おおっと、女の戦いが勃発している。席を離れて逃げておこう。
関わらないのが一番である。うむ。
エレンはまだ、ぼーっとしているようだ。
ミカサ「エレン、食べた?」
エレン「ああ、食べた食べた」
ミカサ「今日はお疲れ様。舞台、大変だったでしょう?」
エレン「あ? ああ………」
エレンはこっちに体を向き直して私に言った。
918
:
進撃の名無し
:2014/05/02(金) 00:31:54 ID:VspzaOfE0
エレン「ミカサ、ありがとうな」
ミカサ「え?」
エレン「あの時、オレの質問に答えてくれて」
ミカサ「あの時………ああ!」
舞台袖で問われたアレか。
ミカサ「別に。あの時は、素直にそう思った事を言ったまで」
エレン「ま、そうなんだろうけど……アレがオレにとってのターニングポイントだったんだ」
ミカサ「そうなの?」
エレン「ああ。アレがなかったらきっと、劇の辻妻をうまく考え出せなかった」
と、ジュースを飲みながら言っている。
エレン「仮面外れた時は本当、ひやっとしたけどな。でも、アレはアレでかえって良かったのかもな」
ミカサ「そうね。あの瞬間、物凄く、劇の中に引き込まれた」
静寂が広がった瞬間、ドキドキしたのだ。
あんなドキドキ、なかなかそう味わえるものではないと思う。
ミカサ「凄く綺麗だった。エレンも、ジャンも。素敵だった」
エレン「そっか……」
ジャン「オレはミカサと演技する方が良かったけどな……」
と、エレンの隣に座っていたジャンが急に話に入ってきた。
ジャン「最後の姫様抱っこ、本当重かったんだぞ。女子の方が軽いし、そっちの方がオレは楽だったが……」
ミカサ「私、エレンより重いけど………」
ゴーン……。
気まずい空気が流れてしまった。だって本当の事だ。
ジャン「そ、そうだとしても! 女子を抱える方が心理的に楽というか……」
と、慌ててフォローを入れるジャン。もう、別にいいけど。
919
:
進撃の名無し
:2014/05/02(金) 01:03:56 ID:VspzaOfE0
エレン「ははは! ミカサが演じてれば、最後のシーンはもっとリアルな声になったかもな!」
ミカサ「エレン、酷い……」
ジャン「そ、そうだぞエレン! レディに失礼だぞ!」
ミカサ「ジャンも酷い…」
ジャン「すまん……」
ああもう。拗ねるしかない。
エレン「でもさ、今回もし、男女で演じてたら、勝ち上がれなかったと思うぞ」
ジャン「うっ……」
エレン「審査委員長が言ってただろ? 演劇の原点に還って評価したって。オレ、女役、ちゃんとやれたって事だよな。観客を騙せてたって証拠だよな?」
ジャン「ああ。悔しいが、お前の女役の演技はうまかった。ミカサを真似してたって言っても、それでも限界があるだろ。よくやれたよな……」
エレン「んー……」
エレンは頬を掻いた。言いにくそうに。
エレン「いや、オレよりも、もっと頻繁に女に間違われる身近な親友がいたのも、勝因のひとつかもな」
ジャン「…………あ、あああ!」
手をポンと打って納得するジャンだった。
ジャン「アルミンか! そうだな。確かに。言われてみればその通りだ」
エレン「女として間違われるくらいの演技って、実際そうなってる奴を見た方がいいだろ? まあ、複合的に観察していろいろ要素を混ぜこぜにしたんだけどな」
ジャン「いや、それにしてもすげえな。お前……そう割り切ってたとしても、実際やれるか否かは別だろうが」
エレン「そうか? うーん、まあ、あの時はもう、やるしかねえって感じだったけどな」
と、ジャンとエレンは話し続ける。
エレン「でも、ジャンの演技も良かったと思うぞ。なんていうか、ヘタレなところ。ヘタレ王子って感じだった」
ジャン「うぐっ………」
エレン「明日からヘタレ王子と呼んでもいいか?」
ジャン「やめろ。広まるだろうが」
エルド「お、ヘタレ王子ー」
グンタ「お疲れ、ヘタレ王子ー」
ジャン「早速、広めないで下さいよ! 先輩!」
笑いが起きた。皆、ようやくリラックス出来たようである。
920
:
進撃の名無し
:2014/05/02(金) 01:06:02 ID:VspzaOfE0
そんな中、ハンジ先生が何やら怪しげな顔で、リヴァイ先生のグラスと自分のグラスを入れ替えていた。
ミカサ「あ」
ハンジ「しっ!」
ミカサ「?」
何で入れ替えたんだろう? 何か悪戯する気かしら?
ああ、だとしたらいい気味なので、スルーしてやる。
エレンの腹ゲシゲシの件をまだ、私は許していない…ので。
リヴァイ(ごくごくごく)
おお、飲んでる。飲んでる。激辛とか? 激甘とか?
リアクションをわくわくして待つ。さあ、吹き出せ。
リヴァイ「……………」
あれ? ノーリアクション?
リヴァイ「………(赤くなってる)」
あれ? でも、顔は赤い。
リヴァイ「………暑い。脱いでもいいか?」
ハンジ「いいよー! どんどん脱いじゃってー!」
リヴァイ「マイクを貸せ」
ハンジ「はいはい、ライク・アンド・シェル、入れといたよー」
リヴァイ『ああ? それを歌えばいいのか? ふん……聞かせてやる。俺の歌声を』
ペトラ「?!」
何故かリヴァイ先生がステージに上がった。そしてかかる曲は……
ああ、『自由への招待』だ。リヴァイ先生が一人で歌い始めてしまった。
しかも何故か上半身裸で、なおかつ、マイクは逆手持ちで。
ハンジ「エルヴィン! 撮影OK?」
エルヴィン「ああ、ばっちりだ。明日、このネタでリヴァイを憤死させよう」
ハンジ「本当、アルコール入ると、ノリノリだよね。後で我に返って憤死するけど」
なるほど、先程、ハンジ先生はリヴァイ先生にアルコールをこっそり飲ませたのか。
それはいいことを聞いた。私も写真に取って、ネタにしていじめてやろう。
ペトラ「いやあああああ! (連続撮影中)」
ペトラ先輩がスマホでリヴァイ先生を撮影しまくっている。
後日が楽しみだ。うふふ。うふふふふ。
921
:
進撃の名無し
:2014/05/02(金) 01:19:52 ID:VspzaOfE0
リヴァイ『ふっ……他に歌ってほしい曲はあるか? お前ら』
ニファ「次はザ・リレクテッド・ヒーローズをお願いします! (シュバッ)」
リヴァイ『あ? 良く分からんが……適当に歌ってやるぞ(ヒック)』
ああ、酔っぱらってる。ダメだ。マイクを独占されてしまった。
ペトラ「ちょっと、次はフラワーでしょ!?」
ニファ「ライクばっかり嫌ですよ! あ、フォーエバーもお願いします」
ペトラ「絶え間なく注ぐ愛の歌は歌わせない!」
喧嘩? のような言い争いだ。あーあ。知らない。
エレン「…………んーどうする? オレらも何か歌うか? 隣の部屋で」
ジャン「そうだな。こっちはリヴァイ先生に支配されちまったし」
ミカサ「そうしましょう」
そんな訳で隣の部屋に私達は移動して、体操部のメンバーと合流して順番に歌った。
ミカサ『おーとこにーはーおとこのー♪』
エレン「ナカジマ派かよ?!」
ジャン「淡々と歌いこなしてるな…」
古い歌で申し訳ない。けど、歌いやすいので好きなのだ。
ジャン『ラブ♪ ソースィーッ♪』
エレン「ラブソングばっかりかよ!」
ジャン『うるせえな! いいだろ別に』
そしてエレンの番になると、
エレン『いらなーい、なにも〜すててしまおう〜♪』
ミカサ「まさかのラブファントム」
ジャン「ラブ繋がりか。よし、受けて立とうじゃねえか!」
その後は「ラブ」縛りで何故かジャンとエレンの歌合戦。
ネタが出なくなったら負け、という勝負に発展した。
結果はジャンが勝った。
ジャン「よっしゃー! どうだ! ミカサ!」
ミカサ「うん、うまいうまい」
エレン「くそー! もうさすがに分からん! ラブソング! でねえ!」
何でこう、この二人はすぐ張り合うのか。意味が分からない。
という訳で、皆で楽しくわいわいやっていたらあっという間に時間が過ぎた。
るるるる……カラオケ店からの「終了」の電話だ。
922
:
進撃の名無し
:2014/05/02(金) 01:29:56 ID:VspzaOfE0
ハンジ「はいはい。10分前ですねー了解です」
何故かハンジ先生がこっちに来ていた。電話を応対している。
ハンジ「はい。延長はなしでーす。すぐでまーす」
という訳でカラオケはお開きになりそうだった。
ハンジ「はい! もう時間だから店出るよ! 片付け片付け! 撤収!」
撤収はお手の物である。私達はさっさと片付けて店を出た。
リヴァイ先生は………うわあ。酔い過ぎてエルヴィン先生におんぶされてる。
エルヴィン「では今日はここで解散だ。皆、気を付けて帰るように」
一同「「「「はい!」」」」
エルヴィン「寄り道するなよ。この辺は不審者や痴漢も多いからな。男子は女子を送ってあげるように。いいね」
男子「「はーい」」
エルヴィン「では、解散!」
という訳で、各自、それぞれ帰る事になった。
リヴァイ「すまなかった……削り過ぎた………むにゃむにゃ」
ハンジ「あらら……珍しく愚痴ってる。何か失敗したのかな?」
エルヴィン「ふふっ……次の店で吐かせてやろう。いろいろあったようだからな」
ハンジ「だねー♪ リヴァイの愚痴を聞くのがいい酒の肴だもんねー♪」
と、先生達は笑いながらリヴァイ先生を運んでいた。
923
:
進撃の名無し
:2014/05/02(金) 01:56:45 ID:VspzaOfE0
ペトラ先輩は物凄くぽーっとしている。
ペトラ「我が生涯に一片の悔い無し……」
マーガレット「ダメですよ! 昇天したら!」
オルオ「………気持ちは分からんでもないが、やれやれ」
オルオ先輩はペトラ先輩を送っていくようだ。
オルオ「女子は一人では帰るなよ。男子が送ってやれ。いいな」
一同「「はーい」」
私は当然、エレンと一緒に帰る。
電車を乗り継いで自宅にたどり着くと、すっかり夜も深まっていた。
エレン「あー……」
ミカサ「?」
玄関に入る前に、エレンが家の前で、立ち止まった。
ミカサ「エレン? 入らないの?」
エレン「ミカサ」
エレンは私を見上げて、笑っていた。
その笑顔は普段と同じもので。
だからこの時、私は想像もしていなかった。
まさか、エレンがあんな事を言い出すなんて。
エレン「オレも隠すの、やめにする」
ミカサ「え?」
エレン「だから、オレも、レナと同じく、自分を隠すの、やめる事にする」
ミカサ「……………」
急に何の話だろうか。
エレン「つっても、いきなり言われても、困るかもしれんが……」
ミカサ「うん?」
エレン「オレ、たぶん、いや………」
そして、エレンは私に言ったのだ。
レナを演じている時よりも、もっと素直な表情で。
エレン「オレ、ミカサの事、好きだ」
…………………と。
エレン「この長い髪を切る頃には」に続く(予定)
924
:
進撃の名無し
:2014/05/02(金) 02:02:49 ID:VspzaOfE0
次はエレン視点で話が進む予定です。
何か、レス足りないかも…やばいやばいやばい……
とか焦って書いてたら実際は意外と余裕あった。
でも、レス足りないかもと思いながら書くのは心臓に悪いので、
次も残り100レス超えたらレス自重のお願いを勧告するかもです。
新スレは出来れば早く建てたいけど、
たまに立てられない場合もあるので、その時は待ってみます。
あんまり乱立すると、新しいスレ立てにくくなるみたいだしね。
では、次のスレでまたお会いしましょう。それでは。
925
:
進撃の名無し
:2014/05/02(金) 02:15:39 ID:ljaAFgZo0
とうとう言ったのか!あんだけイチャイチャしてたもんなww
とりあえずおつかれ
次の楽しみにしてる
926
:
流星
:2014/05/02(金) 02:16:47 ID:aHLtRt8kO
これはどう?あれから10年後のミカサのプロポーズ編
927
:
進撃の名無し
:2014/05/02(金) 02:17:10 ID:.GKcadPg0
エレンやるじゃん!
益々楽しくなりそうだな
乙でした!
928
:
進撃の名無し
:2014/05/02(金) 03:14:25 ID:TMVpg0Jc0
演劇部の追体験させてもらったよ
翌日憤死のリヴァイ先生ww
しかしいいところで終ったな〜
次も期待!
929
:
進撃の名無し
:2014/05/02(金) 03:46:43 ID:aHLtRt8kO
>>927
あの…残り73ですよ…まだいけるではないんですか?
930
:
進撃の名無し
:2014/05/02(金) 09:09:49 ID:.CcJA6JAO
マイクの逆手持ち想像して吹いたwww乙!
931
:
進撃の名無し
:2014/05/16(金) 00:08:33 ID:9I5h95A20
エレン「この長い髪を切る頃には」
http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/comic/6689/1398969061/
続きはこちらで。リンク貼っておくの忘れてました。
一応貼っておきます。
タイトルが何故、エレン「この長い髪を切る頃には」なのかは、
まだ秘密です。ネタバレになるんで、言いません。
では引き続きよろしくお願いします。
932
:
進撃の名無し
:2014/09/05(金) 18:30:31 ID:u77iekT.0
エレン「この長い髪を切る頃には」2
http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/comic/6689/1406282036/
こっちもリンクを貼っておきます。そろそろ2のレスが埋まりそうなので。
>>931
から続けて2の方へ移動して下さい。
933
:
進撃の愛知県
:2015/11/08(日) 21:24:37 ID:gYHS8/ts0
エンダアアアアアアア(´・_・`)
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