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慰める者

1名無しに代わり進撃の巨人ちゃんねるがお送りします:2013/08/21(水) 18:05:46 ID:AjaiwrJY0
そこはウォール・ローゼの中にある、数少ない酒場の一つだった。
酒場と言っても狭く、満足な酒が置いてあるわけでは無かったが、
男たちが集まり、日々の不平を口にしたり、時には恐怖を振り払うように騒いだりするのには、
それなりに間に合っていた。

ギギィーっと重々しく扉が開いた。

「いらっしゃい」
この古く寂れた酒場に似合わない声が響いた。
柔らかく、穏やかに包み込むような声だった。
酒場に足を踏み入れた男たちは、その声の主に一瞬目を見張る。が、しかし次の瞬間、2人はいつもの無表情に戻っていた。

「初めてみるお顔。お二人さん?どうぞ。」
女は2人の男を右奥のテーブルへ座るように促した。
女の髪はきれいなブロンドで、緩く波を打ち腰のあたりまで伸びていた。
伸ばした女の髪なんて、久しぶりに見るな、と一人の男は思った。

「アル、酒をくれ!」

カウンターに座っていた男の声が響いた。

「わかったわ。ちょっと待ってね。」
ブロンドの女が穏やかに応える。
「早くしろよぉ!」
カウンターの男はもうすでに出来上がっているようだった。
頬が上気し、白目が充血していた。
ブロンドの女はテーブルに座った2人の男に苦笑いを向けると、
カウンターの中に戻った。

自分たちがテーブルを埋めたことで、酒場は満員だった。
いつ巨人が現れるかわからないこの状況だったが、
少なくともこの酒場の中は、100年と少し前の様な平和があるように見えた。

「アルが目当てで来たのか?」
テーブルのすぐ横の、同じくカウンターに腰かけていたいた男が2人を振り返って言った。
兵士なのか、鍛えられた体の持ち主であることが服の上からも見て取れた。
「あ!」
男はテーブルに座った2人を見て短く叫んだ。

「ごめんなさい。それでお二人さんは何にします?」
その時、ブロンドの女が戻って来た。
「・・・と言っても今日はもう麦酒か葡萄酒しかないのよ。」
女は申し訳なさそうに2人を見た。
テーブルの男たちは何も喋らなかった。女はもしかしたらこの人達は兵士かもしれないと思った。
鋭い眼差し、寡黙なところ、正直に言うと女が相手をするのに得意な人物達ではなかった。
けれども、女がこの酒場にいるのは「男たち」のためだった。
どんな男も、戦わなくてはならない。
ある男は軍人として。ある男は職人として。ある男は商人として。
その男たちの慰めになればと、女は思っているのだった。

女は突然左手を後ろに、右手を拳にし胸をドンと一つ叩いた。
それは巨人と戦う兵団の兵士がとる敬礼の真似だった。

「私の名前はアルディス・ラウロー。酒場の男たちに慰めを施す者です!」

カウンターに座っていた男たちがどっと笑った。
ブロンドの女、アルディスも笑った。花が咲いたような笑顔だった。
テーブルに座っていた男の口元もふっと緩んだ。
「私はエルヴィン。こっちはリヴァイだ。」

34名無しに代わり進撃の巨人ちゃんねるがお送りします:2013/09/02(月) 00:43:05 ID:AjaiwrJY0

「アルディス」リヴァイは名前を呼んだ。
「はい。」アルディスが答える。
「お前に、礼を言う。」
アルディスは微笑んで首を横に振った。

「リヴァイ。」部屋から出て行こうとするのを、アルディスは呼びとめた。
彼が振り返る。
「また来てね」アルディスはいつものように優しく笑った。
リヴァイは頷いて、扉を閉めた。

店を出て、リヴァイは膝を庇いながら歩いていた。
状況は厳しかった。
けれどもエルヴィンの立てようとしている作戦を、
今度こそ必ず成功させなくてはならない。
死んでいったリヴァイ班、その他の多くの仲間の遺志を背負って。
自分は歩かなければならない、最後の巨人を倒す、その時まで。



リヴァイの足音が消えて、アルディスは息を吐きながら、
再び崩れるようにベッドに腰を下ろした。

彼は気づいただろうか。
ベッドの向かいの壁には、沢山の絵にまぎれて、端の方にエルドの似顔絵が貼ってあった。

アルディスはしばらくその絵を見つめていた。
そしてその絵に語りかけた。

「・・・これで、よかった?」

みるみる両目から涙があふれ、こぼれ落ちた。
顔を両手で覆い、アルディスは一人、忍び泣いた。
 



                           完

35名無しに代わり進撃の巨人ちゃんねるがお送りします:2013/09/02(月) 00:50:56 ID:AjaiwrJY0
連続投下すいません。

終わりです。
読んで下さった方、本当にありがとうございました!!

36名無しに代わり進撃の巨人ちゃんねるがお送りします:2013/09/02(月) 12:43:45 ID:yF203i/60
乙。感動した。
なんか涙がとまらねぇんだが。

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